>1あなたに乙を
ハ
ノ( ◇)
>>1は乙、
>>2は水没、
>>5はシン
―――lv-v 我は一振りの剣にて全ての「
>>1」を乙り「悪」を滅する!!
ノ >., 我が名は「ハクメン」、推して参る!
ただ>1乙貫くのみ!
新スレ記念「シン・アスカ大戦」
戦場のあらゆる物を断つ斬艦刀を持って戦場を翔るグルンガストに乗るシンがいた。漆黒の鎧を纏い、巨大なビームクロウを持ったデスティニーに乗るシンがいた。
デスティニーに乗って異世界の公国軍の残党と戦うシン、誰よりも感受性が強いニュータイプとともに戦って成長していったシン、逆にニュータイプの呪縛を諦めぬ不屈の闘志で断ち切った少年とともに戦ったシンがいた。
他にも見渡す先にそれぞれにシン・アスカがいた。そして自分は見えない地面に1人ぽつんと立ち尽くしていて、今の愛機であるヴァイサーガはおろか、他の仲間達の機体の姿も見当たらない。
「こ、これは…!?」
「シン・アスカ、お前は世界を旅しなければならない」
現在の状況がまったく理解できず半ば混乱状態にあるシンの後ろから声が聞こえた。振り向くとそこにいたのは「この」シン・アスカは出会ったことがない銀髪の男。
「旅?どういうことだよ!?」
「俺達がそれまでこの世界を支えている。だから…お前は全てを破壊し、全てを繋げ」
「ハァ!?何まるでだめなオッサンみたいなことを…」
だが男はシンの言葉を聞いていないのか、懐に手を入れてある物を探し始め、何かを取り出した。
「そ、それは…!」
銀髪の男、クォヴレー・ゴードンの両手の上に乗っかっている物体を見てシンは言葉を失う。危険だ、逃げろ、そのようにシンの本能が警告を発していた。
何がどのように危険なのかを考えることすら危険なのではないか。ラクシズ結成に大いに寄与した盲目の宗教家がレッツパーリするより危険だ。
双判断したシンは何も言わずに後ろを振り向いてその場から逃げ出した。両腕が、両足が、呼吸器系が許す限りの力を振り絞って走り続ける。
だが、後ろから何らかの気配を察して振り向くと、クォヴレーの懐から取り出されたモノがまっすぐにシンを追ってきていた。その物体とシンの距離は少し、また少しと縮まっていき…シンはそれに飲み込まれた。
「ぎゃああああぁぁぁ!」
腹の底からひねり出したような叫び声をあげて目を覚ます。もうこの世界に来てから随分経つので既に見慣れたものとなった天井が視界に入り、今見た出来事が夢であったのだとシンは認識する。
肌着は脂汗を吸ってべったりと肌にへばりついており、ベッドの上の枕もかなりの湿り気を帯びていた。到底歓迎できない夢による後味の悪さを振り払うべく、シンはベッドから立ち上がり洗面所へと足を向ける。
裏切者の元上役と異なり侵食が進んでいないデコの部分の汗を手で拭い、デコから湿気を帯びている頭皮、その先にある毛髪へと手が伸びたときだった。
触感がおかしい。指先に伝わってくる触感は普段の真っ直ぐにツンツンと伸びたクセっ毛ではなかったのである。
髪の毛一本一本がくるくると回転しながら伸び散らかしており、全体のボリュームも普段より増量中状態になっている気がする。
寝ぼけ半分の脳では大方寝癖が爆発しているのであろうと思ったが、どんな頭になっているのか興味半分で頭を上げて鏡をみたシンの目に入った光景は…
アf・・・
続かない。だが少し反省はしている。
てつを、懐かしいよてつを。BLACKとRXは俺の幼少期のスーパーヒーローだよ。つか年齢バレルwww
昨日のディケイドはBLACK、リボルケインにロボライダー、バイオライダーと、もうマジに最初からクライマックスw
>10
ディスレヴかと思ったらアッアフロなのか!?
>>10 逆シンスレの首領アスカかよw
いいぞもっとやれwww
生身ユニットで参戦して、決戦時には巨大化して大首領アスカにパワーアップとか?
そうなるとこっちにも記憶をなくした赤鬼がいるわけなんだがw
今にもオールキャストになりそうなディバインSEEDなら、このまま対大ショッカーになってもおかしくない世界観だ……
首領アスカこんなところにまで
あのスレの感染力は強烈だなw
シンが垣間見た可能性の中にはプランAに乗った首領アスカもいたんだろうか?
プランAに対抗できる機体はインモラルぐらいか?
>>15 シンケンジャーの世界=特撮大戦や宇宙刑事魂の世界
>>18 Gカイザーを忘れては困る。
あとX運命のとこのトリプルXとか
>>18 最近止まってるけどデモベクロス系で魔導に入ったシンと改修インパルスなんかも結構凄い事に
>>18 むしろプランAのネタ元がインモラルだろwww
ただプランAに乗るシンも可能性の一つとしてはあるだろうな
そういえば11氏は逆シンスレの肉塊要員でもあったな
なんか寂しくなったな。
みんな試験中かね?
静かだな……みんなバイトか帰省中?
妙に静かだな
せっかくダブルてつをのダブルライダーキックでテンション上がったのに
朝一でダブルてつをの実況をして真昼間には電王の実況してた俺参上
もしヴァイサーガに蹴撃技あったら次回の話の決め技が決まってたところですたw
種時代のキラと種死時代のキラが
並んでフルバーストかませばオーブ一人で守れるね
こうだな
>>27 現地改修と特訓による新技開発と言う便利なモノが御座いまして、、、
OGでも雷凰有るみたいだしダイナミックゼネラルガーディアン二機の中から登録データ見つかるとか
カイさんの究極ゲシュペンキックモーション開発に協力しながら自身も作り上げるとか……
素のヴァイサーガでもライダーキックは無理でもアルクベインキックは出来ると思うんだ
烈火刃を敵に投擲して刺さったそれを蹴り抜くって感じで……マイナー過ぎか
復讐の鎧乗りか
クロスオーバーSSのシン達が頂点を決める為激突する
シン「流れぬ夢を見ろ。歌姫の墓標の下で」
ディバイン SEED DESTINY 第十七話 共闘
シンは自分の機体の後方で並列して飛ぶ二つの機影を見ていた。大洋州連合から派遣されたタック・ケプフォードとマリナ・カーソンが搭乗しているガンアークという機体である。
上半身が滑らかな曲線で構成されている人型で純白の機体がタック機、赤い機体がマリナ機だ。今、ガンアークは四肢を折り畳んだマニューバー・モードの形態をとっている。
きな臭さが年中漂っているような地球圏の状況を考えれば、大洋州連合が他国に依らぬ独自の機動兵器開発に踏み切ったのも分かる話ではあったが、はたしてどれだけの性能を持っているのか、興味の尽きぬ所だ。
大洋州独自の機動兵器開発と軍備増強はザフトひいてはプラントとの関係悪化も考えられるが、その上でなお実行に踏み切ったのだから、少なくともカーペンタリアのザフトの戦力を相手にできる程度の性能はあるのだろうと、シンは考えてから目を離した。
アンノウンことルイーナの軍勢の戦闘が行われている地区へ派遣されたクライ・ウルブズの戦力は、ジニンが指揮をとる形でシン、ステラ、スティング、アウル、刹那、ロックオン、ティエリア、レオナ、アクセルの十人が選抜されている。
インパルスは修復の終わった飛鳥シルエットと調整済みの斬艦刀を携え、スティングのアカツキはあまりにも費用のかかり過ぎるヤタノカガミの大部分を、アンチビームコーティング(ABC)を施した金色の別装甲に換装している。
更にその上に増加装甲を装備し、スプリットビームキャノンや重力場を形成する打突用のグラビティバックラーなど、総合的な攻撃力の向上が図られている。
レオナのガーリオンカスタムも、大気圏内用の試作装備であるイカロス・ユニットを装備している。肩や胴体、背部を大きく覆う航空能力を強化する為の装備だ。テスラ・ドライヴの普及で空戦能力を備えたMSが主流となった現状で優位を得る為の装備でもある。
イカロス・ユニットはガーリオンのシルエットを準特機並みに厳つく大きなものに変えているが、その巨体に反してザフトのフォースインパルスと同等かそれ以上の機動性を得ている。
シン個人としてはあのイグニスという男が駆る機体の強さと数の不利を考えると、クライ・ウルブズ全員で相手をしたい所だが、タマハガネを空にするわけにも行かないだろう。
刹那との二人掛かりでも苦戦した相手の力量と負の思念を吸収して再生した機体の特性には脅威を感じるが、同時にイグニスらと戦っている者達の事も同様に気に掛かる。
大洋州連合の部隊ではあるまいしザフトが独自開発した機体と、それを運用する部隊という可能性も薄い。
今のザフトにとってはまさに生命線である大洋州連合領内で了承なしに部隊を動かして、関係悪化につながる様な事を自ら行うとは思い難いし、カーペンタリア基地には常時大洋州連合の監視が行われている。
機動兵器の運用ともなればその目を晦ます事は簡単な事ではないだろう。
隔たれた宇宙との連絡や行き来の正常化を第一に望んでいるのは、この地上でザフトを置いて他にはないだろうが、そのザフトの行動というにはあまりに軽率な行為だ。となれば――
「また、どこかの組織かよ」
前大戦最終決戦で、ようやく戦争が終わると思った自分達の目の前に悪夢が現実と変わったかの如く姿を見せたAI1セカンドや、ルオゾールの事がシンの脳裏に過ぎった。あの時同様にザフト内部の裏切りか、まったく別の組織が動いている可能性もある。
イグニスやその尖兵と戦った時に感じた違和感や見た事のない兵器の数々といい、未知の組織の可能性の方が当たりかもしれない。
「お、シンちゃんよ。大洋州の連中が言っていたのはあれでないの?」
これはガーリオン・イカロスと飛鳥インパルスに両腕を掴まれて運ばれているソウルゲインの中のアクセルだ。
本人の記憶喪失が本物である事が保証され、また行く宛てがないから、とアクセルがそのままクライ・ウルブズに残留を希望した為、少尉待遇で受け入れて戦力として扱っている。
「……“ちゃん”付けは止めてくれ」
「そいつはごめりんこ」
「良い年した大人が何言ってんだよ。精神年齢五ちゃいですか? 馬鹿ですか? アホですか? マヌケですか?」
「ちびしー、もとい厳しいな」
「アクセルさん見たいなタイプは初めてだよ。じゃあ、そろそろソウルゲイン落としますよ」
「初めて女の子のおっぱいを触った時みたいに優しく頼むぜ?」
「…………」
初めての時は……優しく触れなかったなあ、と思いだしつつシンはレオナと息を合わせてソウルゲインを地上へ落した。地面に盛大に罅を入れつつ着地したソウルゲインは、特に関節に過剰な負荷がかかった様子もなく立ち上がった。
シンが初めて女の子のおっぱいを触ったのは、あれは戦後の事であった。リハビリの最中、お見舞に来たステラと話をして居てベッドから起き上がる時に誤ってステラの大きく膨らんでいる乳房をこう、むにゅうっと掴んでしまったのである。
何ぶん不可抗力による事態だったせいで手加減なんかできなかったから、こう力強く握ってしまった。ステラが母乳が噴き出る体だったら、たちまちぴゅっと白い軌跡が空中に描かれているに間違いない位に力強く。
当のステラも初めて異性に力強く乳房を揉まれてしまった事への戸惑いや恐怖以上に、痛みが先行していた。
痛みにきゅっと眉根を寄せるステラに気づく前に、シンは突然左手の中に生じた柔らかく暖かな感触に、理解が追い付くのが遅れてしばらく指をわきわきと開閉してしまい、途中でブラ越しにコリっとした感触にも触れたのを鮮明に覚えている。
とりあえずそれは、ステラに遅れて入室してきたスティングとアウルが、目の前の光景を視認し反射的にシンの顔面に向けて飛び蹴りを食らわせるまで続いたのである。すんごい痛かったが、引き換えにするには十分なおっぱいだったと、シンは思う。いやマジで。
破壊された大洋州連合の偵察部隊の機体や、アンゲルス、ベルグランデの残骸が徐々に大地に骸を晒しはじめ、レーダーにも戦闘によって発生する熱量をはじめとした反応が捉えられ始めている。
望遠倍率を最大にした飛鳥インパルスのカメラが、あのイグニスの機体と剣を交える二機の機動兵器を映し出す。戦っている二機は見た事のないタイプだが、強いて言えばインペトゥスに近い意匠の様に見える。
それに、シンの第六感には、戦っている二機の機動兵器から発せられる気配はまともな人間のそれとは違う様に感じられる。イグニスはともかく戦っている相手をどう判断するべきか、ジニンの判断を待った。判断は素早く下された。
「二機の内、白いのをスノー1、青黒い方をウィンド2と呼称する。こちらからは極力しかけるな。エペソ司令からの厳命だ。我々はイグニスと名乗った相手の機体群を交戦目標とする。ケプフォード中尉とカーソン少尉は自分に続け。各機散開」
ジニンの言葉を合図に、シンは背の飛鳥シルエットにマウントされている斬艦刀の柄を飛鳥インパルスの手に取らせる。
ズフィルード・クリスタル精製技術の応用で充填した改良型刀剣用マシンセルが柄の噴出口から漏れだして、瞬く間に巨大な刃を形作る。
通常八十メートルを超す長大重厚な斬艦刀であるが、MSであるインパルス使用時には、形状はそのままに刃の長さを二十メートルほどに抑えてある。
これだと斬艦刀とシシオウブレードを兼ねる獅子王斬艦刀とではあまり違いないが、こちらは再生機能を持つマシンセル製だから、多少の刃毀れなど即座に修復するし切れ味が鈍る事もない。
前大戦からさらに剣戟戦闘に特化したシンにとっては、獲物の劣化を気にしないで済むから、扱いやすい武器だ。それに斬艦刀の刀剣としての機能性を別にしても、シンにとって斬艦刀以上に思い入れのある武器はない。
ジャン・キャリーが開発し改良を加えた最新のパワーシリンダーを内蔵した飛鳥インパルスにとっては、MSサイズの実体剣は人間が小枝を振る程度の負荷に過ぎず、風の様に速く軽やかに、夢幻の様に変幻自在の太刀筋を操るシンの力量を十分に発揮できる。
グルンガスト飛鳥よりもさらに操縦者との適応性や順応力が増すシステムを搭載しているDC製インパルスは、まさしくシンの肉体の延長線上と言っても過言ではないほどに柔軟・緩急極まった動きを見せる。
この世界でのMS開発の歴史を考えれば、数十年単位の歴史を持つ他世界の技術を有するDCでなければ到達し得なかったであろうレベルだ。
乱暴に落とされたソウルゲインからアクセルの言う文句が聞こえてきたが、とりあえずシンは無視した。アクセルの氏素性はさっぱり分からないままだが、実力が確かなのはシンも知っている。
状況はイグニスと名乗った男の機体が敵対している二機と一進一退の戦いを繰り広げ、その周囲をアンゲルスやベルグランデが取り巻いて静観していた。包囲殲滅する為というよりも逃がさぬための配置であろう。
あのイグニスとやらはスノー1ことファービュラリスを徹底的に追い回していて、新たに姿を見せたDC・大洋州連合の部隊に興味はないらしい。
「悪いけどあの二機にイグニスの相手をしてもらうかっ」
飛鳥インパルスのテスラ・ドライヴが低い唸りから一瞬で透き通ったような高音へと変わる。蒼刃を右下段に構え飛鳥インパルスはポールハンマーを構えたベルグランデの群れへと突っ込んだ。
正面から突っ込む姿勢から風に流された木の葉の様に機体を翻し、飛鳥インパルスの背後から途方もない大きさの光の柱が放たれ、まとめてベルグランデを破壊し尽くし、その一撃に慌てて機体を動かした他のルイーナの機体にビームが次々と突き刺さる。
ティエリアのヴァーチェとロックオンのアヘッドスナイパーカスタムの直接火力支援だ。機械的なまでに精密な射撃精度に人間特有の有機的な呼吸や間が加わり、絶妙なタイミングで次々とベルグランデの数を減らす。
後ろに目があるにも等しいシンの感覚からすると、ロックオンの方はまだ気配の呼吸や目標を狙い澄ました際の殺気を感知できるのだが、ティエリアの殺気や破壊の意思というのはなにか違うものを感じるから、視覚外からの援護だとつい背筋がひやりとする。
人間の情動が生む感情の波と同じ――同じはずなのだが、なにかが違う。たとえば黒一色の中に黒に限りなく近い灰色が混じっている。そんな感覚。何か、言葉に言い表せない程度に何かが違う。
それはティエリアを人間ではなくイノベイターという別種としてシンの感覚が捉えているからかもしれないし、あるいはティエリアの発する特殊な脳量子波をシンの超知覚がわずかなりとも感知しているからかもしれない。
とはいえティエリアやロックンの技量と機体に使われている技術を考えれば、誤射の可能性はほとんど皆無に等しい。シンは後方の憂いを忘れて三百六十度映し出す全天モニターに投影された敵へと向けて、戦意を研ぎ澄ませる。
光の剣を展開し振り上げたアンゲルスの懐へ、ひどく透明なアンゲルスのパイロットの破壊の意思と呼吸に合わせて飛び込み、横殴りの勢いで斬艦刀を胸部へ思い切り叩きつける。
斬艦刀は鋭さで斬るシシオウブレードなどに比べ、ジンなどザフトMS初期の機体が使用していた重斬刀などと同様に、重さで叩き斬るか叩き潰すタイプだ。刀身を小型化していてもそれは変わらない。
しかし斬艦刀を操るのが飛鳥インパルス、飛鳥インパルスのパイロットがシン・アスカとなると話はまるで違う。青い光の軌跡が一つ描かれれば、後に残るのは鏡の様に研ぎ澄まされた斬痕を晒す物体が二つ。
斬った手応えで敵の撃破を確信し、シンは次の敵を視覚と第六感で捉えて機体とシルエットのスラスターを噴かす。放たれる敵からの殺意が見えざる針となってシンの神経を刺激し、次に襲い来る脅威を事前に理解する。
四肢を振り乱して目まぐるしく重心を移動し回避行動を取った飛鳥インパルスに四方八方から放たれたビームは装甲に当たる事無く、ミサイルは画面に映る前に動いた斬艦刀の刃に斬り払われる。
久方ぶりに主人を受け入れた事を喜んでいるかのように飛鳥インパルスは、獅子奮迅の活躍を見せはじめる。その周囲ではフルアーマーアカツキを駆るスティングが、追加武装の具合を試すように、極端な接近戦を行っていた。
高性能炸薬を内蔵した炸裂ボルトを装備した右拳部と、局所的な超重力による暗紫色の半球形ドームを形成して対象を圧壊するグラビティバックラーを装備した左拳部が、交互にベルグランデの上位機種であるベルグランデSに叩きつけられている。
右の拳がベルグランデSを叩くたびに小規模の、しかし高熱量と強力な爆発が生じて装甲を抉って吹き飛ばし、左の拳が叩きつけられれば過剰な重量負荷によって装甲が内部のメカニズムごと潰れて行く。
機械とは思えぬアカツキの柔軟な間接がプロのボクサーの連打を完璧なレベルで再現し、一機のベルグランデの上半身が見るも無残な姿へと変わるのに、五秒とかからなかった。炸裂ボルトの炸薬が尽き、予備の弾倉を装填する。
右手の甲に被された追加装甲上部に右腕部追加装甲内部から、予備の弾倉が嵌め込まれる音がした。コンピューターに記憶された動作だから、故障などの不具合が無い限りは生身の人間と違ってとり落とす様な事や失敗する様な事はない。
弾倉交換のみならずビームサーベルの取り出しや収納なども同じで、こういった類の交換作業の正確さは人間と違ってMSなどの機械ならではの長所と言えるだろう。
肘や肩関節、フレームに掛かった負荷の数値に目を走らせていたスティングは、とりあえず実用には耐えられると判断する。テストこそしてあるが、実戦で初めて使用する立場にされたのだから、それなりに不安があったのだ。
DCにはなまじC.E.の常識では想像もつかない様な敵との交戦記録がある所為で、MSとの戦いには絶対に必要ないだろうと評されるような装備、兵器が開発されている。たいていそう言うのを実戦で試す羽目になるのが、クライ・ウルブズなのだ。
その分給料は一般のMSパイロットに比べてかなり良いのだが、それでも時折割が合わないよな、とスティングは思う。
まあ、そう言った兵器や機体でないと対応できないような相手とちょくちょく遭遇するのも確かで、そのような時には助かっているしこれはもう運命というかクライ・ウルブズについて回る宿縁みたいなものと一部の隊員は諦めている。
ブーストハンマーを振り回し、次々と敵の頭ばかりを狙って鋼鉄のミンチを作っていたアウルが、気化した冷却材を金色の装甲の隙間から吹き出しているFAアカツキの傍らにエムリオンRCを横付けた。
「なんだよ、スティング、まるでボクサーじゃん。そっちに興味あったっけ?」
「ヒュッケバインMk−Vのオプションの使い回しだってよ。ヒュッケの格闘戦オプションに似た様なモン使うらしいぜ」
「へえ、あれって一機で戦局を覆す性能ってのが目標なんだろ。おれがぜってえパイロットになってやる」
「お前はエムリオンマイスターになるんだろ?」
「っざけんな! そんなんなる位ならブリッツボールの選手になるっつーの!!」
「……あいつ本当に気にしてんだな」
怒鳴り声の後にブツッと通信を切る音がしてモニターに映っていたアウルの顔が消える。消える寸前に見たアウルは、女の子みたいな顔に朱の色を昇らせていた。かなり本気で怒っている証拠だから、スティングは小さく嘆息する。
ちなみにブリッツボールとは固形酸素剤を含んだ状態で球形状のプールコートに潜って、点を取り合うサッカーとドッヂボールを掛け合わせたようなスポーツだ。ここ最近オーブ諸島で流行のスポーツである。アウルはこれがプロ選手並みに上手い。
「はあああああ!!」
数機のアンゲルスが射出したチェイサーミサイル十数発をサキガケ7S頭部のGNバルカンで迎撃した刹那が、鋭い呼気を吐きだして、侍が左腰に佩いた太刀を抜刀するがごとくGNドウタヌキを走らせる。
サキガケ7Sの背部から溢れる赤いGN粒子の放出量が増し、加速した機体がビームソードを閃かせるアンゲルス達の間隙を縫う。重力の鎖にとらわれぬGNドライヴ駆動機特有の滑らかな動きだ。
金属が金属に切り裂かれた音というにはあまりに短い一瞬の切断音がし、順ぐりにアンゲルス達の機体が斜めにずれ始めて行く。
灼熱させた刀身やビームサーベルの切断痕は融解して赤く輝くが、実体剣による斬撃の後は歪な凹凸が生じ、半ば千切られた様になる。
しかしGN粒子を刀身表面に付着させて切断力を増したサキガケのセブンソードに依る切断の後は、そうなるように時間をかけて磨かれたように滑らかな痕を残す。ずるりと滑った機体の切断面が灰色の空を映した次の瞬間、爆発が生じる。
数珠繋がりに生じた毒々しい爆発の花を後方モニターで確かめた刹那に息つく暇を与えず、上から下から左から右からビームが襲い来る。
ファービュラリスとストゥディウムをインペトゥス一機が抑えている為に、残るアンゲルス、ベルグランデまたそれぞれの上位機種達には、クライ・ウルブズと大洋州連合へと襲いかかる余裕があった。
かわしきれぬビームの数条がサキガケ7SやFAアカツキ、エムリオンRCの装甲をしたたかに打ちつける。
Eフィールド装備のエムリオンRCや、増加装甲に加えてABC済みの基本装甲を持つFAアカツキ、複合装甲内部にGN粒子を循環させて装甲性能を上げたサキガケ7Sといえど、着弾が連続すれば撃墜の可能性が高まる。
MSレベルでは格段の防御能力と耐久性を持つDC製のMSにもやはり限界は存在し、着弾の数が増すごとに揺さぶられるコクピットの中で、刹那達は反撃の糸口を掴み取るべく歯を食い縛って耐えた。
反撃すれば五倍近くになって帰ってくるビームの雨に苦しめられる刹那達を、その上空を抑えていたルイーナの、さらに上空を取ったヴァーチェとデュミナスが救った。
「やれやれ、おれ達の連携もまだまだ改良の余地ありって所か。とにかく今は狙い撃つ」
「GNバズーカ、バーストモード」
GNキャノン、GNバズーカ、さらにGNオクスタンスナイパーライフルが次々とルイーナの機体をただの残骸へと変える。周囲からの射撃が四分の三に減った瞬間を見逃さず、刹那、スティング、アウルがほぼ同時に動く。
サキガケ7Sの投じたGNコヅカ二振りはGN粒子を纏って車輪のように回転し、狙い過たずアンゲルスS二機の頭部を貫き、視界を潰す。アンゲルスSそれぞれが機体の動きを乱すのに半瞬遅れて、サキガケ7Sが疾駆する。
右手のGNドウタヌキを突き込み刀身に抗う敵機の装甲を無視して、機体のパワーを頼りに串刺しにする。深く食い込んだ刀身と全面の装甲との接触点から漏電し、青白い電気が刀身にまとわりついて火花を上げる。
GNドウタヌキに貫かれたままアンゲルスSがサキガケ7Sの右腕を抱え込み、離れられないようにする。有人機ながら自己の命を顧みぬミーレスがパイロットである為に、行動に躊躇はなかった。
GNコヅカをメインカメラから生やしたまま、残ったアンゲルスSが砲口をサキガケ7Sへと向けて輝かせる。右腕を絡め取られ動きを制限されたサキガケ7Sに、動かぬ右腕を軸に逆上がりの要領で機体を回転させ、頭を地に足を天に向ける姿勢を取らせる。
ゼロコンマ秒前までコクピットのあった虚空をアンゲルスSのビームが貫く。刹那自身の頭に血が上るのを感じつつ、天地逆転の姿勢のままサキガケ7Sの左腕に握られていたGNショートビームサーベルを投げた。
射撃の方は不得手な刹那だが、実体剣やビームサーベルなどを投げると恐ろしく命中率が高い。血色の刃を光らせるGNショートビームサーベルがアンゲルスSの頭部へとさらに突き刺さる。
GNショートビームサーベルに押される形でさらにGNコヅカが食い込み、首から更に胴部上端まで貫く。内部を純度の低い鮮血色のGN粒子に蹂躙されて、物理的にも機能的にも繊細な内部危機を破壊されたアンゲルスSが力を失って落下する。
さらにそのままサキガケ7Sの爪先で右腕を封じ込めているアンゲルスSの頭部を蹴り潰し、そのまま潰した頭部を足掛かりにしてGNドウタヌキを引き抜く。
サキガケ7Sを包囲しようとしていたベルグランデを、後方からステラのエルアインスが撃ったビームが貫く。
「刹那、機体は平気?」
「ステラ・ルーシェ……問題ない。敵指揮官機の様子はどうだ?」
「あの二機を追っている。私達は周りの敵を減らすのが先だ」
普段のぽやぽやとした朗らかな調子のステラの声とは違い感情を排した機械的な声の違和感に刹那は眉根を寄せる。
既に幾度か戦場で轡を並べ、ステラが交戦時には普段の様子からは信じられぬほど攻撃的になる事は目にしていたが、未だに目の当たりにすると小さな驚きを覚える。
そのステラの豹変ぶりが、刹那自身がそうであったように兵士に仕立て上げられた人間であると認識させるからだ。ステラの場合は刹那以上に、兵器あるいはMSを動かす為の生体パーツという備品扱いの存在であったと知った事も大きいだろう。
ステラ達三人がDCに強奪(連合側からすれば)されてからはほぼ健常な体に治療されたとはいえ、今もMSのコクピットや血と硝煙の匂いが香る戦場に立てば、精神の奥に埋蔵された攻撃性が表出する。
刹那の記憶から神の兵士として洗脳された頃の事が消えないように、ステラ達も数年を経てなお兵器として変質させられた性質が残っているのだ。そしてMSのパイロットとしてその凶暴性を露わにしている。
ステラ達に戦わせているDCに対する不信感こそ拭えぬが、刹那はステラの意見に異を唱える所はなく、改めて操縦桿を握る手に力を込めてレンジ内に捉えている敵機へと機体を動かした。
*
自分のアヘッドに追従するガンアーク二機の動きに、ジニンは機体の高い完成度とパイロットの錬度を内心で評価していた。もっともパイロット二人には機動兵器のパイロットとしては軽視できない欠点がある。
タック・ケプフォードは機械音痴で機体の操縦の大部分をフィーリングで行っているらしく、またマリナ・カーソンは長時間機動兵器の操縦をしていると乗り物酔いを起こしてしまうと事前にバルクホルツ博士から渡されたパーソナルデータにあった。
それでもガンアークのパイロットを任されていると言う事は、欠点を上回る実力の持ち主だと言う事だろう。実際目にしている範囲ではその通りとジニンには見える。
それにしても――
「この世界にはどれだけ敵対勢力が存在していると言うのだ。こんな事では世界の統一など、DCの軍事力を持ってしてもいつ叶うか分からんな」
陰でアヘッドマイスターと呼ばれるほどアヘッドの操縦に長けたジニンによって、性能を百二十パーセント引き出されたアヘッドは、左右から挟撃を掛けてビームを撃ち掛けてきたアンゲルスを、GNビームライフルで牽制する。
左右から斜めに交差する射線からアヘッドは浮き上がるように機体を上方に動かして躱す。ジニンの錬熟した手腕によってGNビームライフルはマシンガンさながらの連射速度で、アンゲルスの機体を紅色の輝きの中に飲み込む。
すでにかなりの数のルイーナの機体を撃墜しているのだが、グラキエース達が破壊した地下基地のゲートの奥から新たな増援が姿を見せており、撃墜するペースと増援の出現するペースとがおおむね同じ状況だ。
クライ・ウルブズ側が消耗を強いられていると考えればやや不利と見える。しかしインペトゥスを相手にしているウェントス達の決着如何で、この膠着寸前の天秤は傾くだろう。
ボディラインをくっきりと浮かび上がらせるバルクホルツ考案のパイロットスーツに身を包んでいたマリナが、ガンアークの計器を見て上空から発した高エネルギーに気づき、一方でタックは計器類よりもうなじをちりちりとさせた直感で上空を見上げた。
それぞれ気付いた過程は異なるが、同じ結論に辿り着いた二人が異なる口から同じ言葉を発した。
「ジニン大尉、上です!!」
「なんだ、黒い雷!?」
マリナとタックからの警告によって上空を見上げようとしたジニンの瞳を、灰色の空と砂漠を繋いだ赤黒い雷が貫いた。機体の光量調節機能を壊しかねぬほど強力な閃光とエネルギーを持った雷が落ちた後に、機動兵器の影を認めてジニンが目を細める。
短い二本脚で腕部は二本腕ではなく涙滴型の盾の様なパーツが肩から繋がっていた。インペトゥスが外見そのままに炎の様な重圧を放つのに対し、こちらは周囲の空気そのものを重く押さえつけるような重圧を発している。
小豆色の装甲の奥からこちらを見下ろしているパイロットが放つ重圧であろう。こちらの世界に来る以前から長く戦場に身を置いてきたジニンでも、初めて感じるものであった。
シン達古参のクライ・ウルブズの面々と違い、ヴォルクルスやAI1セカンドといった超常的な存在と相対していない分、ジニンの受けた衝撃は大きい。
「新たな敵という事か」
新たなルイーナの機体フォルティス・アーラを駆るのは赤銅色の肌を持ち、右目を眼帯で覆った巨漢である。地球人の遺伝子を基に創造された疑似生命メリオルエッセである証拠に、露わになっている左目は金の輝きを帯びている。
眼には見えぬがまるで巨人に足蹴にされているかのような錯覚を覚えさせる威圧感を持つこの男は、アクイラという。
「苦戦しているようだな、イグニス」
「アクイラ!? 貴様がなぜここに」
「グラキエースとウェントスの廃棄だけでなく地球人達も相手にするのでは、貴様だけでは手が回るまい」
「ちっ……好きにしろ」
「貴様に言われるまでもない。……おれはルイーナのメリオルエッセ、アクイラ。地球人よ、お前達の嘆き、憎しみ、怒りを苦悶の闇の中で吐きだすがいい。このフォルティス・アーラがお前達の絶望そのものだ」
「何を言っているのだ、こいつらは!?」
人間相手の戦争のみを体験してきたジニンにとっては、アクイラの言葉は気の触れた人間か、終末信仰にでも染まった狂信者の妄言にしか聞こえなかっただろう。
アクイラの言葉は感情を削ぎ落した果ての様に機械的な冷たさを帯び、決してアクイラが錯乱しているのでも、狂気に陥っているわけでもない事は分かる。
アクイラへ向けて問い詰めようと口を動かしたジニンを遮る様にして、フォルティス・アーラが動いた。盾のような両腕の地面を向いていた方の尖った先端をアヘッドへと向けるや、円筒型の砲身が覗き薄い紫色の太いビームが放たれる。
フルティス・アーラの動きに応じてジニンがアヘッドを動かし、そのビーム攻撃――サギッタルーメンを回避する。
一般的なMSの場合、指揮官機だからと言って極端に量産機と性能が異なるものではないが、このルイーナの軍勢の場合、指揮官機とそうでない機体の間にある性能の差はかなり大きいようだ。
回避したサギッタルーメンのエネルギー量は、アンゲルスやベルグランデの用いる兵装を大きく上回る数値だ。GNフィールドを発生させるシールドをアヘッドは携行しているが、それで受けても腕の一本は持っていかれるほどの威力。
「くっ、ケプフォード中尉、カーソン少尉、こいつを叩くぞ」
「了解」
一方でマリナとタックもまたジニン同様に、アクイラの放つ背筋に氷を当てられたように怖気を覚える雰囲気に、強いプレッシャーを感じていた。シミュレーターやザフトから払い下げられたMSでの戦闘の経験はあるが、その経験に該当する者が無い現象である。
死の吐息が頬を嬲る戦場に身を置けば、時に敵の殺気という様なものや考えが分かる事、死人の声が聞こえてくると言った錯覚に陥る事はあるが、メインカメラ越しにこちらの神経を圧する生の威圧を感じると言うは初めての事だ。
フォルティス・アーラが並みのMSをはるかに上回る巨躯を持ち、その巨躯の視覚的効果によって威圧感を覚えているのも事実だが、それとは違う生理的な部分でタックとマリナはアクイラに脅威を感じていた。
二機のガンアークとアヘッドの張る弾幕を見かけの重厚さを裏切る運動性で、フォルティス・アーラは大きく右に弧を描きながら動いて躱す。
腕は確かなジニン達三人の狙いからは、完全に逃れる事が出来ずに着弾もあるがフォルティス・アーラを揺るがしはしても、目に見えるダメージまでにはつながらない。やはり特機級の装甲と耐久性を持っていると言う事だろう。
「MSの武装ではそう簡単に落とせないな」
臍を噛むジニンの目の前で、フォルティス・アーラが両肩や首回りの装甲を開いて内蔵していたミサイルの弾頭や光学兵器のレンズを薄暗い世界に露わにする。フォルティス・アーラはメリオルエッセの使う機体の中でも射撃戦に秀でた機体であった。
「爆ぜよ。苦痛と悔恨と共に」
フォルティス・アーラの持つ全兵装を発射するカリドゥムサギッタだ。一機の機動兵器では展開不可能に思える圧倒的な弾幕が、ジニンとタック、マリナ達へと一挙に襲いかかる。
コンピューターが合成した映像を映し出すモニターを埋め尽くすミサイルと尾を引く白煙。一度の攻撃で一個中隊程度なら壊滅させて余りある火力の嵐。
「ガンアークの運動性ならっ」
タックとマリナはコンピューターがはじき出したミサイルの予測弾道から機体を外し、動いた先にも降り注ぐミサイルに対して、さらに新たな回避機動を取らなければならなかった。
三人の前上方向からのカリドゥムサギッタは、津波の様に逃れる隙間なく襲いかかっくるが、その恐怖に飲まれて判断を誤る事こそ本当に命取りになる。
タックとマリナはアークライフルとミサイル、補助武装も動員して撃墜できるものは片端から撃墜し、出来た空隙に機体を滑り込ませることを繰り返して被弾を最小限に抑えた。
ジニンも同様の行動に出ていて、左腕のシールド上に発生させたGNフィールドも使いつつ、カリドゥムサギッタが途切れるまで耐えようとしている。
「大丈夫か、マリナ!」
「タックこそ」
「くそ、あいつ、フォルティス・アーラって機体はどれだけ弾薬を積んでるんだ。その癖あの重装甲、並大抵の武装じゃ抜けないぜ」
「けど、これだけ一度に弾薬を消費するなら連射はできないはずよ」
「お前達の力で破滅に抗う事が出来るかどうか、このおれに見せてみるがいい」
「なら、ご希望通りに、とくとごろうじろってな!」
「ぬう!?」
「この切っ先、触れれば斬れるぞ」
砂漠に聳える岩山を足場に、上空数百メートルの位置にいたフォルティス・アーラ目掛けてソウルゲインが文字通り跳んでいた。
飛行能力を有さぬ為に、全機種飛行可能なルイーナの軍勢相手に上手く攻勢に出られずにいたが、カリドゥムサギッタの発射直後のわずかな硬直の瞬間を見逃さず、アクセルがフォルティス・アーラの首を取りに動いた。
眼前で交差させたソウルゲインの肘に生えた銀色のブレードがさらに鋭く長く伸び、その青い巨体が左右に大きくぶれた次の瞬間には、霞の如く消え去っている。ソウルゲインの超高速移動が、フォルティス・アーラの捕捉速度を上回ったのだ。
フォルティス・アーラの左側面からの第一撃にアクイラは反応し、カオスラディウスで受ける。
「っ」
「受け止められたか。ならお次はどうだ!」
ソウルゲインの肘ブレードが引き抜かれた、とフォルティス・アーラを揺らす衝撃からアクイラが判断した時、すでに反対の右側に回り込んでいたソウルゲインの次なる一撃が右肩口から入り、胸部まで斜め一文字の斬撃痕を刻む。
フォルティス・アーラの装甲を裂いた肘ブレードの銀色の軌跡がアクイラの瞳に残っている間に、ソウルゲインが今度は上へと動いていた。アクイラの目にも止まらぬ軽妙神速の体捌き、いや、機体捌き。
首きりの蛮刀の如く肘を振り上げてフォルティス・アーラの頭頂へと振り下ろすソウルゲイン。フォルティス・アーラは回避行動をとる暇もない!
「舞朱雀!」
「おれが――」
アクセルの瞳に、再び装甲を開いてミサイルの弾頭を覗かせるフォルティス・アーラの姿が映る。自爆覚悟あるいは誘爆を恐れぬ所業である。この至近距離でのミサイル攻撃など!
「戦う価値はあるようだな、人間」
「ええい、南無三!!」
振り下ろされる純銀の刃、放たれる無数のミサイル。そして、ソウルゲインとフォルティス・アーラの二機を飲み込む巨大な爆発。カリドゥムサギッタを凌ぎ切ったジニン、タック、マリナが爆炎の中から現われるのがどちらであるか、目を見張って見守る。
爆炎の中に黒い影が浮かびあがる。ソウルゲインだ。青い装甲のそこここに破損の箇所を留めつつ、地面に着地する。大きな蜘蛛巣状の罅の中心で、流石にソウルゲインも軽視できないダメージを追ったようで、細かな動きの一つひとつに鈍さが目立つ。
「アルマー!!」
「大尉、まだ気を抜くな。やっこさん、おれよりもピンピンしていやがるぜ」
「なに」
ソウルゲインが落下してきたのとは逆方向に向けて、フォルティス・アーラが爆炎の中から飛び出して姿を見せる。右の肩口や上空からの舞朱雀によって胴体に縦一文字に浅く斬痕が刻まれている。
自爆に近い至近距離でのミサイルの爆発による回避の余波によって、機体各所の装甲が砕け内装の一部が覗いてはいるが、威風堂々とソウルゲインを見下ろす姿からは戦意がわずかなりとも衰えていない事が伝わってくる。
機体から立ち上って風になびいている黒煙は爆炎の名残だけでなく、フォルティス・アーラの機体内部から生じている分もあるだろう。
「ち、機体もパイロットも頑丈にできていらあね」
「ソウルゲインは動けるか?」
「ぼちぼちってところかね。なに、やってやれないことはないさ」
「ケプフォード中尉、カーソン少尉も問題はないな。今度こそ仕留めるぞ!」
ジニンの号令と同時に二機のガンアークとアヘッド、そしてソウルゲインが手負いのフォルティス・アーラへと挑みかかる。手傷こそ負わせたが、手負いの獣ほど怖いものはないとも言う。
「おれに敗北を味あわせる事が出来るかどうか、足掻くがいい」
先程の爆発でフォルティス・アーラの首周りのミサイル発射機能に異常が生じたが、残りの箇所はまだ健在だ。アクイラは動じず揺るがず迫りくる四機の機動兵器へと狙いを定めて、カリドゥムサギッタのトリガーを引き絞った。
*
「グラキエース、人間の人達、かなりやるね。アクイラも来ているみたいだけど、そろそろイグニスをどうにかした方がよさそうだ」
「そうだ、なっ!」
ウィリテグラディウスで受けたインペトゥスの炎の剣を弾き、機体を後退させて距離を置いたグラキエースが、変わらず穏やかなウェントスの声に同意する。
烈火の如く激しい攻撃を加えてくるインペトゥスと戦っていたファービュラリスとストゥディウムは、同格の機体で二対一と有利な状況ながら、それなりのダメージを負っていた。
「ふん、抵抗するだけ無駄だ。いずれ破滅の王に全ては滅ぼされる運命。ラキ、ウェントス、お前達がいかに抗おうと無駄な足掻きだ。せめて同じメリオルエッセであるおれの手で先に破滅の王へと還るがいい」
「イグニス、お前から強い怒りの波動を感じるぞ。なぜそんなに怒っているのか、自分で分かっているのか? お前と同じものだった筈の私が変わってしまった事に、怒りだけを感じているのか?」
「知った事か!」
イグニスはグラキエースと言葉を交わす度に胸の内に生じる感覚に戸惑っていた。疑似生命であるメリオルエッセに、感情は不要なものとして備えられてはいないはずだ。であれば、今自分が感じているものは何なのかと、イグニスはより一層苛立ちを募らせる。
突きだしたインペトゥスの両腕の先端から紅蓮の炎が吹き出し、オーストラリアの空を赤々と染める。氷雪の化身と見間違う美しいファービュラリスの巨躯が、その熱量に押されたかのように炎の舌に絡め取られる前に大きく左に動いて避けた。
二十メートルほど右方を通り過ぎた数千度を越す熱量が、ファービュラリスの装甲表面の温度を瞬く間に上昇させる。先ほどからのインペトゥスの炎の攻撃の連続で、機体の外も中も相当温度が上昇している。
機体内部に警告音が鳴り響く中、グラキエースはインペトゥスを照準内に捉えあくまで冷静にサギッタルーメンのトリガーを引く。攻撃一辺倒に傾倒するイグニスは回避行動をほとんど取らずに、サギッタルーメンを次々と受ける。
エクスハラティオーの猛火を受けた盾が急速に灼熱し、ファービュラリスの左腕部に異常が生じるのにも構わず撃った一弾が、インペトゥスの姿勢を大きく崩し、そこへストゥディウムが突っ込んだ。
人型からワイバーン形態へと変形したストゥディウムの巨大な爪が、擦れ違い様にインペトゥスの左肩を大きく抉る。ルイーナの機動兵器中最高速度を誇るストゥディウムのスピードを生かしての一撃離脱戦法だ。
「く、ウェントス、おれの邪魔を」
「するさ。君だけじゃない。ルイーナすべての邪魔をする」
「廃棄されるはずだった貴様如きに」
左肩を抉られた衝撃から立ち直る前のインペトゥスへ、ファービュラリスの背から延びている六枚の翼から、無数の氷の破片が放たれる。それらは瞬く間に周囲の水分と熱量を操作して巨大な氷の塊を造り出す。
ファービュラリス最大の攻撃コンゲラティオーだ。雪の代わりに鋭い氷の刃が吹きすさぶ吹雪さながらにインペトゥスへと吹きつけて、炎の色の装甲へと刃を突き立て抉ってゆく。
「ぐ、ぐぐ、ラキ、お前は、なぜ運命に抗う」
「そう教わったからだ。ジョシュアに、な」
次々と刺さる氷刃に埋もれながらインペトゥスは機体の全身からこれまで以上に巨大な炎を発し、コンゲラティオーによって生じた氷刃を全て蒸発させる。摂氏数万あるいは数十万度にも届くであろう、イグニスの激情が変わったかのような炎だ。
イグニスは自身が唯一執着するグラキエースが、自分の理解の届かぬモノに変わってしまった事を悟ったのか、グラキエースを道連れにする覚悟でインペトゥスに最大燃焼を命じていた。
小さな太陽が生じた様な莫大な輝きがインペトゥスを中核にして溢れだし、周囲の気温が目まぐるしく上昇してゆく。
パイロットスーツや防護服の類を身に着けずに外部に出たら、たちまちのうちに昏倒してしまい、ローストヒューマンになるのに時間はかからないだろう。
「ラキ、おれの手で塵芥に変われぇ!」
インペトゥスの全身から噴き出ていた炎が両手へと集中し、触れるもの全て燃やし尽さずにはおかぬ超高熱の大火球が生まれる。一発は躱せても二発目は回避できない。
炎の熱を昇らせた思考の中でその執着心故に、グラキエースを己れの手で滅すると決意したイグニスは、必殺のタイミングを逃さなかった。
ファービュラリスの回避不可能を見て悟ったウェントスが、すぐさまストゥディウムを駆ってグラキエースを助けようと動くが、ストゥディウムの性能を誰よりも知るウェントスだからこそ、わずかに間に合わないことを理解する。
「グラキエース!」
「…………!」
グラキエース自身も躱しきれないと悟りつつも、一発目の大火炎弾を回避してファービュラリスの盾を機体の前面に突き出してせめて直撃を避けようと足掻く。インペトゥスの可能な限りの火力を注いだ火炎弾だ。
ファービュラリスの装甲がどこまで保つのか、グラキエースにも無理であるとは分かっていた。だが出来る事がそれしかない以上そうする他ない。二発目の火炎弾がファービュラリスごとグラキエースを飲み込むその寸前、ひとつの機影がその間に割り込んだ。
「チェエストオオオーーーーーー!!!」
呼吸と練気で自在に血流や脳内物質の分泌をコントロールできるシンだからこそ耐えられる、パイロットに過剰負荷をかけて殺しかねぬ加速で突っ込んだ飛鳥インパルスである。
腰の回転運動から発したねじりを最大限にいかし、肩に担ぐようにして振りかぶった斬艦刀の一閃で、大火炎弾を真っ二つに割りファービュラリスを背後に庇う。
わずかに遅れてストゥディウムが人型へと変形してファービュラリスの右側に寄り添った。三人の戦いに割り込み、かつグラキエースを庇ったシンの真意を測りかねているのだろうか。
シンは視線と飛鳥インパルスのメインカメラをインペトゥスに向けたまま、オープンチャンネルで背後に庇ったファービュラリスとストゥディウムへ呼びかける。
「そっちの白い機体、前の借りはこれで返したからな!」
前の借り、とは刹那と二人でイグニスに挑んだ時にグラキエースが介入した事であろう。
グラキエースが介入しなければ刹那とシンのどちらかが撃墜された、というような状況ではなかったが、グラキエースの意図が自分たちを助けるものだったと何とはなしに察したシンは、一応借りとしてカウントしていたようだ。
シンは特に返事は期待していなかったが、二人から返事が返ってきた。シンにとっては意表を突かれた気分であった。
「分かった。これで貸し借りはなしだな」
「女の声?」
「私はグラキエース・ラドクリフ」
「ぼくはウェントス・リムスカヤ」
「人に名を訪ねる時はまず自分から名乗れとジョシュアとリムから教わったのでな。まずは名乗らせてもらった。お前の名は?」
「……ああ、シン・アスカだ」
全くふざけた様子はなくあくまで真面目に自己紹介をするグラキエースとウェントスに、ステラとはまた違った意味でどこか世間ズレしているな、とシンは感じた。
「とりあえず、割り込んだが、アンタ達はあのイグニスとか言うのの敵で、おれ達にとっては味方って考えてもいいのか」
「イグニス達、ルイーナの敵である事は確かだよ。でも君達の味方というのも少し違うかな」
「少なくとも私達にお前達と敵対する意思はないし、関わるつもりもない。私達の目的はルイーナだ」
「他はどうでもいいってわけか。そのルイーナってのと戦う分には共闘できるって事でいいのか?」
「うん。そう受け取ってもらって構わないよ」
苦労を知らずに育てられた大店の若旦那みたいに人の良さ気なウェントスの言葉を、シンはとりあえず信用する事にした。
それにそろそろ敵が痺れを切らす頃合であった。グラキエース必殺を期して放った大火炎弾を防いだのが、前に一度自分の手を煩わせた相手である事を思い出したイグニスが、前に見えぬ気炎を纏っている。
負の波動をエネルギー源とするルイーナの特性を反映してなのだろうか、パイロットであるメリオルエッセの発する負の感情、思惟、波動といったものが機体に力を与えているようだ。
ディス・ヴァルシオンのコクピットの中で相対した真ナグツァートに近しいものの様に感じられる。流石に億単位の霊魂を吸収し、数万年を経た怨念を中心核とした真ナグツァートに比べればはるかに小規模ではあるが。
「グラキエースとウェントスはイグニスに隙を作ってくれ。おれが一撃で斬り伏せる。できるか? それとも、おれはまだ信用できないか?」
「いや、お前を信用してみよう。ウェントス、私が牽制する。ストゥディウムでイグニスの注意を引いてくれ」
「分かった。シン、うまくやってくれるかい?」
「任せとけ。前に一度イグニスの機体とは戦っているからな。大体斬るコツは掴んでるし斬艦刀もある。空母だって真っ二つにするさ」
「うん、頼もしいね」
「よし、仕掛けるぞ」
氷の鈴が風に鳴らされれば、きっとこんな音色になるのだろうと、シンはふとグラキエースの声を耳にして思った。涼しげで美しい声だった。
――つづく
お久しぶりです、こんばんは。
最近、すっかり語意が底を尽き始めたなと痛感しております。国語辞書でも読むか。
話は変りますが、なんでてつをは年をとっても相変わらず格好いいんですかねえ。あとシャドームーンがやっぱりというかっけえ。
もうヒーロー戦記つながりでギリアムに関係したキャラとして出してしまおうかと、考えてしまうほどです。しかしまあ、ギリアムって改めて考えるとすごいですね。
シャドームーンにシロッコにヤプールが本当に忠誠誓ってるんだもの。
では、今回はここまで。ご助言ご指摘ご感想お待ちしております。お邪魔しました。
総帥乙!
うおお、黒い稲妻をともなう登場キター!
やっぱりメリオルエッセといったらこれだなあ
イグニス初登場のときはこの演出が無かったので物足りなかったけど、今回は大満足
てつをの格好良さはヤバいよねえ
もちろん戦ってるときも格好良いんだけど、最後の笑顔が素敵すぎる
あれが一世を風靡したスーパーヒーローの格というものなんだろうなあ
ギリアムというかアポロンがチートなのには心から同意
とりあえず、シンのラキスケが許せねえ……
色々あったがこれが一番だ!!
ってーかジニンさんマジでアヘッドマイスター呼ばわりされるようになってるwwwwwww
ちくしょう!!
どうせシンは2種類の極上ミルクをのめるようになるんだからゆるさねぇ……。
ロボットではない方の三機合体を書いてくれますよね?総帥さん!!
それと、てつをなら時空を超えても参戦しても全く違和感ありません。
やはり最強のライダーは違います!!
スパロボ→(ギリアム関連)→ヒーロー戦記→(てつを関連)→ディケイド
よし、行ける! 理論上は戦隊物の世界までつながっているぜ!
アカツキがとうとうただの百式になっちまったwww
てか炸裂ボルトパンチてスピリッツの滝さんじゃないか
ブリッツボール噴いたwwwwwww
俺、シンを倒したら消えるなら!
>>49 シン対アウル第二ラウンドフラグが立ちましたwwwww
つかコテwwwww
52 :
通常の名無しさんの3倍:2009/08/06(木) 00:33:27 ID:BkpVzf73
申し訳ない・・・上げちまった
人が死ぬ度に
ユウナは踊り続ける・・・
アウル「小躍りですか」
ユウナ「しないから」
そうそう今回アニメ化されるユニコーンは機体はいいコンセプトですな。
なんか格好いいです。変形してフェイスオープンなところが。
あれは他のUCガンダムを踏み台にしているっぽいとこが気に食わん。
まあ、制作側にも老害が発生している時分だろうし、世代交代が完了するまで待機してるわ
最近でたIGLOO以外のガンダム作品に一言
ガンダムをスーパーロボットな決戦兵器にするんじゃねえ
>>57 昭和平成含めてスーパーロボットな決戦兵器じゃないガンダムの方が少数派だろうに
>>57 初代からして最後の切り札的存在だし
スーパーロボットな決戦兵器はガンダムの伝統と言える
消える「なら」ってなんだwww
これからDCD見に行く方へ
私が行った劇場ではシンケンジャーが終わったら、お子様方がライダーそっちのけで騒ぎ出しました
ぶっちゃけ電王単品のときとは明らかに客層が違います
しつけの行き届いてないガキとそれを注意しない親に対する心の備えを
まて、決戦兵器なんてガンダムはあまり存在しないぞ
せいぜい決勝トーナメント用のゴッドぐらいで後のガンダムは決戦用以外の目的で作られている!
>>57 お前ガンダムをリアルロボットだって勘違いしてる口だろ?
ガンダムに比べたらマジンガーZの方がよっぽどリアルロボットだ
ガンダムはスーパーロボット
>>57 ガンダムはリアルロボットアニメだが
ガンダムはリアルロボットじゃないぞ?
そこを勘違いする奴が多くて困る
まあ、作品によっては下手なスーパーロボットよりも本気で洒落にならんガンダムが居るからな。
ゴッドガンダムとか∀ガンダムとかガンダムDXとか
SDは・・・規格外か
>>65 武者にしろ騎士にしろGフォースにしろ次元が違いすぎるからな……
彼等は…勇者だ!!
真マジンガーを見たけどあしゅらがまるで主役すぎて困る。
何気に甲児とZのあつかいひどくねぇ?
プロの方が酷くね?いきなり死人だぜ
>>70 死んでいると断言されてましたよ。
ディバ種の番外編を投下しようと思うのですが、アダルト表現があり、またyagami、便乗、冥王などがゲスト的に顔を出しています。
そんな内容なのですが、投下しても良いでしょうか?
アダルトキタ――――(゚∀゚)――――!!
では投下。
ディバイン SEED DESTINY If02 とある未来のシンの未来
注意*R−18
本編には一切関係ありませぬ。エロいのでそういうのイラネ、な人は読まぬが吉でございます。冥王、yagami、便乗、凡人という単語に思い当たる所の無い方は、シン女難関係に目を通していないと分からない箇所ありです。
アダルトな表現が存在する為、そういった表現に不快感を覚える方はブラウザバックなさってくださいますよう、お願いいたします。
C.E.7×――
血で血を洗い、死には死を持って償いとした人類史上最悪の戦争が終結して、数年が経ち、世界は平穏な日々を迎えていた。
簡単にダイジェストで解説すると以下の様になる。
汎イスラム会議の首都で起きたスクールバス・ハイジャック事件は、たまたま居合わせたアザディスタン王国皇女マリナ・イスマイールが、王家秘伝の流派中東不敗の絶技を駆使する事で、一人の犠牲者もなく鎮圧されて無事事なきを得た。
DC技術開発局総局長ドクター・ヘルの仲介によって、闇の帝王を君主に置くミケーネ帝国との友好通商条約の締結は無事滞りなく進んだし、爬虫人類と地球人類のハーフであるカムイのクーデターによって、親人類派が政権を取った恐竜帝国との関係も良好だ。
ブライ大帝率いる角ある人類――百鬼帝国との技術交流をはじめとした国交も、順調に回を重ね、双方の持つ技術の融合によって日々新たな発見が成され、技術の進歩を促している。
日本地区九州に突如蘇った邪魔大王国は、オーブに身を寄せていた異世界人ククルがアドバイザーとなって、幾度かの武力衝突と交渉を重ね、現在は領土分割を主眼に置いた交渉が継続中である。
接触が持たれた人類外の知的生命体は地球を源流とする勢力のみに留まらなかった。
火星圏に現れた母星を失った宇宙の彷徨人バーム星人との地球圏移住計画の交渉は、バーム星人側の代表リオン大元帥を暗殺しようというバーム星人内での企てが、未然に防がれた事で多少のいざこざはあったが、今も無事に継続している。
交渉が上手くゆけばバーム星人十億の民は、火星開拓の為に移住した地球人類マーシャンと協力し、火星のテラフォーミングを推し進める事になる。
だが、人類以外の知的生命体との接触の全てが、友好的なものではなかった。様々な事情や欲望によって地球圏の支配を目論む侵略者達との戦いも行われたのである。
一万二千年前にはるか海の底で眠りに着いた筈の妖魔帝国が蘇り、人類支配を掲げてDC本土オーブ諸島を強襲したのである。
先だっての戦争でヴォルクルスによる本土襲撃を経験していたDCは、本土全域を覆うエネルギーの盾“イージス”によって妖魔帝国の初撃を水際で防ぐことに成功する。
本土防衛用に配備していた量産型ヴァルシオン百五十機、グルンガスト弐式二百機からなる量産型特機を主軸に置いた総数一千余の機動兵器部隊の反撃によって、妖魔帝国の先陣は壊滅する。
更にかつて妖魔帝国を封じた古代ムー帝国の守護神ライディーンの復活により、戦況は地球人類有利に傾斜する。
それから約半年にわたる攻防の果てに迎えた、妖魔帝国の支配者である悪魔王にして妖魔大帝バラオとの決戦は、まさしく神代の戦いの如き形容しがたい魔戦となり、戦場は地獄絵図と化した。
赤く染まった海は煮えたぎり海底火山は次々と噴火してかつて海底に沈んだムー大陸やアトランティスが浮上、天は一秒と同じ色を止めず万の色に変化し、海から逆しまに迸った雷は虹色に揺らめく雲へと吸い込まれ、歪んだ空間の向こうには巨大な瞳や泡が見えた。
重力は狂い、尋常な物理法則ははるか彼方へと追いやられ、地球の常識の通じぬ異次元の法則に支配された戦いが繰り広げられたのだ。バラオのまさしく神か悪魔の如き超絶の魔力の前に、ライディーンは破壊寸前まで追いやられる。
しかし、かつてラ・ムーの星の力を取り込んだAI1のデータと、妖魔帝国以外にもムー帝国を滅ぼそうとした異界の邪神を封じたムー帝国の魔道士五人の生まれ変わり達の助力もあり、七日七晩に渡る死闘の末、ライディーンの勝利に終わる。
ゼーラ星人によって作り出された機械神ダリウス大帝率いる暗黒ホラー軍団との一大決戦は、地球人、恐竜帝国、ミケーネ帝国、百鬼帝国、邪魔大王国の連合が迎え撃った。
ミケーネ帝国七大軍団、ドクター・ヘルの機械獣軍団、百鬼帝国の百鬼獣軍団、邪魔大王国のハニワ幻人軍団、DC・ザフト・地球連合のAM、PT、特機、MS、MAの機動兵器総数一万五千超、戦闘参加艦艇数二千隻超の大軍団である。
更に超能力者集団コンバット・フォースと異形の戦艦大空魔竜、そしてスーパーロボット・ガイキングや古代の呪宝“銅鐸”を持つマグネロボット・鋼鉄ジーグ、妖魔帝国との戦いを終えた勇者ライディーンも轡を並べていた。
冥王星近宙で行われたダリウス大帝率いる暗黒ホラー軍団四天王との激戦は、橋頭保として建造された宇宙要塞リーブラ、バルジ、メサイアから出撃したミケーネ帝国司令官暗黒大将軍が先陣を切った事によって火蓋が落とされた。
地球側はDC技術開発局製の反応弾、ディメンション・イーター、フェミニオンミサイル、ソーラー・レイシステム、コロニー・レーザー、カイラス・ギリー、さらにジェネシス、熱核反応弾といった大量破壊兵器によって暗黒ホラー軍団の出鼻を挫く事に成功する。
乱れた戦線を暗黒ホラー軍団が立て直すのよりも早く、DC総帥親衛隊ラストバタリオンが、スーパーロボット軍団と百鬼帝国の鉄甲鬼、白骨鬼、胡蝶鬼、牛骨鬼、あしゅら男爵、ブロッケン伯爵と共にダリウス大帝の本陣へと突入。
暗黒ホラー軍団の仕掛けた人工ブラックホールによる超重力攻撃によって窮地を迎えるものの、ミケーネ帝国の支配者“闇の帝王”の援護と、はるか地球からの邪魔大王国女王ヒミカの呪詛による超遠距離霊的攻撃によって状況を打破。
大空魔竜、ガイキングが半ば相討つ形でダリウス大帝を斃したことにより、対暗黒ホラー軍団との戦闘は終結を迎える。ダリウス大帝に支配されていたゼーラ星人達はその後地球側と終戦条約を締結する。
暗黒ホラー軍団との戦いを終えてから一年後、今度はベガ大王率いるベガ星連合軍とザール星間帝国軍、ボアザン帝国軍、キャンベル星軍と四つの勢力からの同時侵攻を受けることとなる。
宇宙にその名を轟かせていた暗黒ホラー軍団を壊滅させた地球を警戒し、各侵略者達は共闘姿勢こそ取らなかったものの、地球圏の戦力を壊滅させるまでは一切戦闘しないという暗黙の了解を持つ。
暗黒ホラー軍団との戦いによって被った痛手から復興した地球は、新たな侵略者の影をバーム星人、ゼーラ星人達の情報網や地球に亡命していたボアザン星人、フリード星人達の口から知る事となる。
新たな侵略者の出現に際し、地球側は改めて種族を越えた連合勢力を樹立。端的に地球軍と呼称される連合軍が設立される。参加勢力は――
DC、ザフト、旧地球連合、ミケーネ帝国、百鬼帝国、恐竜帝国、邪魔大王国、更に友好条約が成立したバーム軍も名を連ねる。
これにベガ大王に滅ぼされたフリード星の守護神グレンダイザー、火星でバーム星人とマーシャン達の間を取り持っていた闘将ダイモス、ザール星間帝国に滅ぼされたエリオス皇国の最終兵器ダルタニアスが加わる。
冥王星までの太陽系全域をカバーする空間転移探知網とイノベイターの持つ距離を無視した脳量子波を利用する事によって、四大勢力の地球圏侵攻地点を事前に察知した地球軍は、ワープアウトした各勢力の先遣艦隊に奇襲を仕掛けた。
ベガ星連合軍は、ワープアウト直後に斬艦刀究極奥義・星薙ぎの太刀の直撃によって旗艦が消滅、指揮系統が混乱している間にDC・恐竜帝国混合艦隊、そしてグレンダイザーの猛攻によって壊滅。
ボアザン帝国はL3宙域まで侵攻したものの、ソーラー・レイシステムを随伴していた旧地球連合宇宙軍を主力とする艦隊と遭遇、当初は地球軍相手に互角以上に戦うものの、ソーラー・レイの照射を許し形勢一変。
さらに母艦スカールークが超電磁マシーン・ボルテスXの決死の攻撃を受けて撃沈し、太陽系内への侵攻基地設立に失敗する。
キャンベル星軍は、月軌道上で無敵要塞デモニカとミネルヴァを旗艦とするザフト・ミケーネ帝国混成艦隊と衝突。戦闘獣とキャンベル星の用いるマグマ獣が互角の戦いを繰り広げる中、機動性で勝るMSの集中砲火を受けてキャンベル星軍の母艦が大破する。
形勢不利を見てとったキャンベル星軍が撤退しようとした矢先に、超電磁ロボ・コンバトラーVの必殺技・超電磁スピンの直撃を受けて轟沈し、残存部隊も月面から発射されたレクイエムによって欠片も残さず消滅する。
ザール星間帝国軍は木星と金星の中間に位置する宙域まで侵攻するが、ダルタニアスを先頭に置く邪魔大王国とバーム星軍に迎撃され、バーム星軍の母艦コブラードと幻魔要塞ヤマタノオロチが激烈な猛攻を仕掛ける。
撤退の動きを見せたザール星間帝国艦隊に対して激しい追撃戦が行われ、その半数を撃退しつつもザール星間帝国を取り逃がしかける。
しかし、ワープに入ろうとしたザール星間帝国の眼前に、完成したばかりのマクロス級一番艦マクロス、マクロス7、マクロスギャラクシー、マクロスフロンティアがフォールドアウトし、全主砲を一斉発射。これを撃滅させる。
それから各勢力とのうおおおーーー! うぎゃああ!! どわお!? 負けられねえ!! この命に代えてもおおおお!!!! な最終決戦が繰り広げられ、多大な犠牲を払いながら、辛くも地球側は勝利を収める事に成功する。
かくてわずか数年の内に度重なる侵略をうけつつも、地球とそこに生きる人類及び非人類知的生命体達の平和は守られる事となった。
地球人類同士の戦争終結から時を経ずして勃発した侵略宇宙人達との戦いの中でも、最も勇名を馳せたのがDC所属シン・アスカである。
暗黒ホラー軍団襲来から四大勢力の壊滅に至るまでの通称“スーパーロボット大戦”において、常に重要な戦局で多大な戦果を上げた彼の名は実質地球圏最強の機動兵器パイロットとして銀河に知れ渡っていた。
これは、スーパーロボット大戦終結時、撃墜スコア八二四七機をマークしたウルトラエースとなった、とある並行世界のシン・アスカの新たな受難のお話である。
*
ようやく迎えた平穏を地球圏の様々な人類達が享受している、そんな或る日の事。オノゴロ島軍施設内、高級士官用個室にて。
赤道直下の国ではあるが空調がよく効いて過ごしやすい筈の部屋は、密林の中に迷い込んだような錯覚を覚えるほどの熱気が籠っていた。
肺に僅かでも混入すれば脳を揺さぶり、理性の枷を全てはぎ取って何も考えられなくなってしまいそうなほど、強い雌と雄の匂いも。
たっぷりと時間をかけて肉の奥に眠る快楽の根を刺激して、肉欲の花を咲かせるまでねっとりと粘っこい愛撫が施されなければここまで匂うまい。肌の上で珠を結ぶ滴にも、むせかえる様な性欲の匂いが混じっているだろう。
味気ない白一色のベッドの上で絡み付くのは肌色の体と金と黒の髪である。少女を組み強いているとも、絡み掴まれているとも見える少年の体は見事なまでに鍛え抜かれている。
人並みの背丈だが、細い鋼鉄のワイヤーを束ねて作り上げた様に圧縮された筋肉で構成された肉体だ。鋼の高度、柳のしなやかさ、ゴムの柔軟さ、それらすべてをシンが収めた武術に必要な量だけ備えている。
不足はなく、過剰な筋肉の量もなく、細身に見えるが故の軟弱さなど欠片も見えない。服を着ていたなら、年相応の体格にしか見えぬが、民製品のナイフや包丁程度なら突き立てられても、わずかに切っ先が食い込む程度だ。
まだ二十歳にもなるまいが、年齢以上の時を費やしてもこれほどの肉体を作り上げることが、どれだけの人間にできるだろう。
たった十年にも満たぬ時間を言語に絶する圧倒的な密度の修錬と戦闘経験を積む事によって、“武”に生きる者の究極を体現した肉体であった。
日に焼けると言う事を知らぬのではと思う様なぞっとするほど白い肌に、星明かりだけの夜の色を写し取った黒の髪。瞳は刃で斬られた乙女の肌に浮いた血の珠と同じ色をしている。
自分以外のすべてを無価値と見下しているような冷たい笑みを浮かべれば、心臓を体の中から掴まれているような恐怖と共に支配されたいという被虐の思いに囚われるだろう。
誰でも浮かべるような朗らかな笑みを浮かべれば、それを目にしたものが一生の友としたいと願う様な、暖かな思いを抱くだろう。
少年――DC屈指のエースパイロット、シン・アスカがどんな性状の主であったとしても、関わる人間を魅了せずにはおかない雰囲気であった。
普段は鉄の理性と強過ぎるほどの意思の光を宿している瞳は、体の奥からとめどなく溢れだす肉の欲望と目の前の少女を大切にしたいと思う理性とに揺れている。そして、その天秤は肉欲の側に大きく傾きつつあるようだ。
ベッドの上でどこを隠す事もなくシンに自らの生まれたままの姿を晒している少女――ステラの、あどけなささえ残す顔貌に比べて大きな実りを結んだ肉体を前にすれば、それも無理からん事なのかもしれない。
首筋にふんわりと掛かる金色の髪は、本物の金を加工して一本一本植えた様な輝きを放ち、今はステラ自身の体から分泌された汗に濡れて雪原の様に白く広がるうなじに張り付いている。
星が輝いていそうな大粒の菫色の瞳がしとどに濡れていて、磨き抜いた本物の宝石を象眼しても、到底この瞳の美しさを再現できるとは思えない。
無垢な子供が大切な友達や家族に向ける笑みを浮かべているのが一番似合うステラであったが、体の全体から尽きぬ泉の様に溢れてくる未知の快楽に戸惑いながら徐々に染まってゆく表情の変化は、それだけで絶頂に達するのに値する。
仰向けに寝そべって重力に引かれて潰れる筈の乳房は円やかなラインを描いたまま、ふわふわと揺れている。手のひらに収まりきらぬ柔らかな質量を、シンは飽く事無く楽しんでいる。
今までにラッキースケベった回数は美人のみを相手に三桁を越えて久しいが、あくまで自分の意思で――ラッキースケベである以上、あくまで不意の事故である――異性の胸元へ手を伸ばしたのは、この夜が初めての事であった。
初めて女性の乳房を触るのだから、最初は腫れものを扱うように優しく、砂の城を崩さぬように繊細に、傍から見たら滑稽な位遠慮がちに触れた。
柔らかい、あったかい。
馬鹿みたいだがこんな感想位しか思い浮かばなかった。女性の乳房をマシュマロと評する喩えをよく耳にするが、確かにその通りだと思う。
てか、なんでこんな柔らかいんだよ!? と叫びそうになったのを必死に堪えなければならなかった。
だって柔らかいのだ。柔らかいんです。柔らかいんだよ。
指が驚くほど肉のタンクの中へ沈みこんで、そのままステラの乳房に溶けてしまいそうだと考えた所で、ゴム毬の様な弾力に指が跳ね返された。
部屋にだいぶ前からたちこみはじめた淫香に肺も脳も毒されて、正常な判断など欠片も出来なくなっていたシンは、最初の遠慮など忘れ果ててすぐに揉みしだき始める。
手のひら一杯に乳房の感触を確かめる様に五指を伸ばして、ぐにゅ、ぐにゅ、と音を立てそうな勢いでステラの乳房が形を変える。握りこんだ指の間から薄桃色の肉がはみ出る度に、シンの息は荒々しさを増す。
指が開くのに合わせて元の水蜜桃の様な形を取り戻す乳肉の変化は、シンの雄の本能をこれ以上ないほど刺激する。
薄桃色に染まった肌でもはっきりと分かるシンの指の跡が、赤くいくつも残る。乳房全体を赤い紅葉模用が埋め尽くすと、シンはぎゅう、ぎゅう、とまるで乳搾りでもするかの様に乳房の付け根から先端へと向けて徐々に強さを増しながら揉み込みだした。
あ、ふ、ん、と小さく千切る様な熱い吐息が乳房への刺激に合わせてステラの唇から間断的に零れて、シンの胸板に当たって砕けた。砕けたステラの吐息をシンが吸い込んで、とびきりアルコール度数の高い酒を飲んだような酩酊感にくらくらと視界が揺れる。
「んん、うぁ、ああ……、ああ、ぁあう」
ステラの胸板の上で突きたてのお餅のように柔らかく揺れていた乳房への愛撫から、青さの残る桃の様な芯を残した尻へとシンの指が移る。
まだ雌脂が薄いステラの若々しい張りに満ちた尻を、長年の苛烈な修練で節くれ立ち荒れたシンの指が撫でさすっていた。経験がないためかやや荒い動作で食い込むシンの指を、ステラの尻肉はその都度飽きず押し返す。
陶磁器の様な、と使い古された表現そのままの滑らかな肌は熱に張り詰めて、水風船のような弾力を持っていた。
肌肉に沈みこむ指をそのまま咥えこんで離さず、絞りつくそうとするのが熟れた女の体ならば、この反応はまだ男への期待と不安が混じる若い女の体ならではの反応だ。
今日のこの夜まで誰にもされた事のない、そして誰にも許した事のない卑猥な行為である。透ける様に白かった肌はしっとりと汗ばみ、肌の内側から熱を孕んで薄桃の色を帯び始めてから、ずいぶんと経っている。
閉ざす事が出来ない桜唇からは、絶えず火傷しそうなほど熱い吐息が喘ぎ声と一緒が吐き出されていた。シンの指がステラの尻への愛撫へと移っている間に、シンの伸ばした舌がぬらぬらと唾液の痕を残しながら、ステラの肌を舐めまわしていた。
ベッドの上に仰向けに寝そべるステラの上に覆い被さる位置のシンが、たっぷりと淫水を吸って重く湿り始めたシーツの上で一糸纏わぬ裸身を晒すステラの下腹部に頭を埋めて、いやらしい水音をたてている。
ステラの体が分泌した汗を丹念に舐め取り、淫熱にうなされるステラの体にも負けぬ熱量を持った熱い舌が、まだまだ味わい足りぬというシンの欲望を露わにして薄桃色の体の上を這いまわる。
「くすぐ、ったい……ぅ、ん、ひぅっ」
「舐められるのは、苦手?」
「ふ、く、ん……」
欲情した蛇の様にステラの臍から首筋に掛けてまでゆっくりゆっくりとシンの舌は這いあがってゆく。ステラが返事が出来なかったことから、ステラの体の味を知り、自分の体を覚えさせようと言うシンの意図は十二分に成功しているだろう。
抑えきれぬ喘ぎ声をそれでも必死に抑えようと食い縛ったステラの真白い歯の奥から、燃える火の様に熱く、腐った果実の様に過度に甘い甘美な声が乱れた調子の歌の様にこぼれ出る。
鼓膜を震わす度にぞくぞくと背筋を震わせるその声を、シンはもっと聞きたくて指を、舌を、唇をステラの上で動き回らせる。
ステラの体をシンが性的に征服し蹂躙しようとしているのか、それともステラの体がシンの理性を溶かし貪っているのか。熱病に魘されている様に赤い顔をした二人の様子からは、どちらとも判じ難い。
細胞一つ一つが覚える悦びを押し隠して、ふるふると小刻みに唇を震わせて、こそばゆさを告げるステラの唇をシンの唇が塞いだ。下唇を挟みこみ、くにゅくにゅとシンの唇が柔らかく揉みこむ。
ステラの唇を割り開いて潜り込ませた舌を動かし、ずるずると啜る音が室内に響くほど強く、ステラの果汁の様に甘い唾液をシンは飲み下した。喉を通り食道を通る度、焼けつくような熱を感じる。
そのように錯覚するほど、ステラの体はどこもかしこも熱くて、そうさせたのが自分だと思うと、シンの体も心臓の鼓動に合わせて熱くなる。
このままどこまでも熱く昇りつめ、その果てに二人の体が溶けて混ざり合い、一つになるのではないかと思うと、倫理や道徳などすべてどうでもよくなる快楽を覚える。
ステラの柔らかな金髪に指を通して頭を抑え込み、手で梳きながら深く舌を伸ばしこんで、ステラの舌の根元から絡み合わせる。長く伸ばして尖らせた舌の先端が、ステラの舌の裏側を突き歯の裏側や上顎の内側を、強弱を変えながら愛でた。
口の中で蠢くシンの舌の心地良い動きに、蕩けていたステラの瞳がより一層潤んでゆく。
「はく、うん、んん。むちゅ、ぅはぁ、ああ……」
「力、抜いて」
ステラの舌も顎も歯も歯茎も、口の中の全てを味わう為にシンの舌は休む事を忘れて動き続ける。滑らかなエナメル質の歯と歯茎の境目に差し込む様に舌を突き立てて細かく動かす。
羽毛でくすぐられる様な柔らかな刺激に、ステラの体が小さく震えた。唇から引き抜かない程度に舌を引き戻して、上と下の唇の裏側を丹念に舐め続けた。火が着いた様に熱い唇は、どこからがステラの肉の花びらで、どこまでが自分の肉舌なのか分からなくなる。
手を動かすよりもステラの唇を貪る事に夢中になり、呼吸する事さえも忘れてシンはまるでステラの唇を食いちぎるかの様に荒々しく唇を重ねた。あるいは本当にステラの唇を、と一瞬でも考えたのかもしれない。
それほどまでにシンの勢いは激しく、止め処なかった。捩じ切る様に自分の唇でステラの唇を開き、ステラの舌を強引に自分の口の中へと誘い込む。
シンの舌に今一度絡み付かれ、攫う様にしてあっという間に自分の舌を持っていかれて困惑したステラも、たちまち味覚器官を絡ませ合い唾液を啜り合う快楽に抵抗を止めて、シンに身を預ける。
シンもステラも時がたつのを忘れて、許されるのならば、水音が零れるほどに激しい口と口との性交を永遠に続けたいと心から願った。
しばらくしてステラが呼吸ができず苦しそうにする様子が見え、シンは交合する蛇の様に絡み合わせていた舌をぬらぬらと互いの混じり合った唾液にぬらめかせながら引き抜く。ちゅぱ、と音がしてシンの舌杭がステラの唇から離れる。
口を埋め尽くしていた存在が離れた事に未練を訴えるステラとシンとの間を、二人の唇からつっと伸びた銀糸が繋いでいた。一度は離れたシンの舌が再び伸びて唾液の糸に惹かれる様にしてステラの唇を舐める。今度は口の中ではなく唇そのものを求めたのだ。
自分の唇をゆっくりと味わう様にして動くシンの舌が与えてくるくすぐったさと、心地良い気持ちよさに、荒くなっていたステラの呼吸が穏やかなものに変わり、体全体が弛緩してゆく。
ぴちゃぴちゃと猫がミルクを舐めるような音が、むっとするほどの熱気に満ちた部屋に長い事響いた。
「ふあ、くちびる、溶けてなくなっちゃいそう」
「ん、気持良かった?」
「……うん」
シンの質問に、シンの唾液に塗れてすっかり濡れた自分の唇を指で触れて、ステラはぼう、とさらに頬を羞恥と快楽の赤で染めて消え入るような小さな声で頷いた。
シンの部屋に入ってからの時間の間にステラの体は驚くほどいやらしいまでの淫らさを花開かせ、隣に立った男が視線を剥がせなくなるような色香を手に入れている。
なのに、恥ずかしげに眼を伏せて告白するステラは、シンが初めてであった頃と変わらぬ幼い少女の様であった。そのギャップがまた、シンを魅了してやまない。
ああもう、これは食えって事だよな、答えは聞いていない!! とシンが理性とか人間が野の獣とは違う生き物である為に必要そうなものをかなぐり捨てようとした時、横合いから延びて来た影にそっと唇を吸われた。
影の首筋から零れた髪がさらさらとシンの首筋をくすぐった。
「シン君、私にも……」
自分が恥知らずな願いを口にしている事を十分に理解しながら、それでも求めずにはいられない淫猥な欲求に急かされて、女性はシンへと希う。部屋に居たのは、シンとステラの二人だけではなかった。
控え目に、それでも精一杯に快楽の共有と愛情を求める声を出したのは、星色の瞳の中に振り向いたシンの姿を映し、あまりにも美しすぎて手折る事を躊躇う花に通ずる儚さを纏っている美女であった。
時に佳人薄命という言葉を想起してしまうほど、その美貌故に悲しい結末を迎えてしまいそうな儚さと脆さが、大地に落とされた影の様に付き纏っている。その美女をシンは心から愛していた。
だから、ちょっと悪戯心が湧いた。シンは好きな子には意地悪したくなるタイプなのである。
「セツコ、おれの手だけじゃ物足りなかった?」
「……ぅ」
心を許した相手にだけシンが見せる悪戯小僧っぽい笑みよりも、口に出すのが躊躇われる淫らな本音を言い当てられて、セツコはぴくん、と一度体を震わせて顔を俯ける。思った通りの反応に、シンはくすりと小さく笑った。
“さん”付けせずに、セツコと呼ぶようになったように、シンのセツコに対しての接し方も出会った頃とは多少変わったようだ。
ステラよりもずっと長く、背の中ほどに届くまで伸ばされたセツコの髪は職人の目が選び抜いた絹糸の艶やかさに輝いている。ステラ同様に幾筋かがしっとりと濡れ光るほど淫汗に濡れそぼっていた。
シンが片手と唇でステラを愛撫している間、残る手がセツコの体を愛した成果である。
女性との性交渉は、今夜が初の事ながら同時に二人を相手にして、必死に実体験を伴わぬ知識と、相手への配慮を第一にしたシンの技巧は二人の体に、三人共に初めての行為とは思えぬ快楽を産んでいた。
シンは上半身を起して、セツコの反応から臍の辺りを中心に撫でまわし、摘み、突っついていた左手をセツコの腰に回して抱き寄せた。
ステラと同じかそれ以上に大きくほれぼれするほど美しいラインを描くセツコの乳房が、ぐにゅりとシンの胸板にぶつかって潰れる。
セツコが、あ、と小さく呟く暇こそあれ、ステラとの激しい口交で濡れていたシンの唇は、今度はセツコの唇を塞いでいた。ただしステラとのディープなキスとは別の、触れるだけの優しいものだ。
それだけでもセツコには嬉しかったようで、うっとりと瞼を閉じて歓喜に震えるセツコの首筋を、ちゅ、と音をたてながらシンの唇がついばんでゆく。シンの鋼の筋肉で形作られた背に、たおやかなセツコの両腕が回される。
何かを求める様な動きだが、あるいは与えられる快楽に抗う為かもしれない。晒した首筋を何度もシンの唇が小鳥がついばむようにして口づける音が、一定のリズムで続いてゆく。
胸元へ埋める様にシンの頭をセツコが抱え込み、ふうふうとセツコの口から零れる吐息もその熱さを増していた。ほんのり桜色に色づいたセツコの首筋に赤いキスマークが花びらみたいに幾つも出来る。
この雪肌に最初に男の痕跡を残す興奮と征服感、独占欲といった黒々とした欲望が、シンの心の中でタールの様にどろどろと渦巻いて、噴出する時をいまかいまかと騒ぎ立てている。
「ステラもぉ」
「やぁ、ステラ、ちゃん。だめ、シン君だけでも、すごい、のに!?」
「んん、セツコの体、いい匂い」
セツコとシンの情事に惹かれて、骨を抜かれたようにすっかり弛緩し脱力しきっていたステラが体を起して、シンと抱きしめ合うセツコの背後から抱きついてきた。
セツコの背中にふにゃ、と柔らかい感触がして、体の前面に回ってきたステラの手がセツコの慎ましい形の臍と、シンの胸板に潰されているセツコの乳房を赤ん坊が母親のおっぱいを求めるような要領でやわやわと触りはじめる。
シンの固い胸板に潰れた乳房全体とのその先にある肉粒から感じる気持ちよさ、横や下から絶妙な加減で触れてくるステラの指の刺激は、絶えずセツコの背筋に快楽の電流を流し続け、愛する二人との肉の触れ合いにこの上ない幸福感を覚える。
ステラはセツコの胸をいじるだけでは物足りなくて、甘く薫る髪越しにセツコの背中や耳の裏、うなじに口づけ、子犬が甘える様に優しく噛み始めて、不意の刺激にセツコの声が一オクターブ上がる。
「ひゃ、あぅ、うううう」
「あんまり、ん、我慢しないほうがいい。セツコの声は聞いてて気分がいいし、いくらでも聞かせてほしいな」
「シ、ン君、んぅうう」
シンはセツコの首筋から耳に掛けてまでこってりと唾の層が出来る位に舐め上げて、耳たぶをそっと自分の唇で挟み込みながら囁いた。その囁きが優しい毒となって、セツコの体に残っていた抵抗を奪い去り、ステラとシンがセツコを前後に挟み込んで支える。
しばらくそのままシンとステラとでセツコの体を責め立てると言うにはあまりに優しく、その癖淫らなことこの上ない愛撫が続いた。
不意にセツコの肩越しにステラが顔を突き出して、堪え切れぬ心地よさにのけぞっていたセツコの唇を吸い始めた。くちゅ、ちゅう、と耳の奥から一生消えそうにないいやらしい水音が、すぐに聞こえはじめる。
最初は驚いた様子を見せたセツコも一心に唇を寄せてくるステラを愛おしそうに見つめると、すぐに唇を開いて二人の美女たちの唇の間で互いの舌と舌とが絡み合い始める。シンとするのとはまた違う、同性同士で行うが故の淫らさにシンは我を忘れて見惚れた。
零れる吐息は熱く濡れ、潤んだ瞳は互いだけを映している。ぼぉっと見惚れていたシンも、やがて二人のあられもない姿に堪え切れず、手を握り合っているステラとセツコを抱きしめて、絡み合っていた二人の舌に自分の舌を伸ばす。
新たな参加者に気づいた美姫二人が、喜びとともに向かい入れる為に大きく口を開いた。シンとステラとセツコと、三人が寄り添う様にして抱きしめ合い、六枚の肉の花弁と生暖かく濡れた肉蛇三匹がこの世のものとは思えない淫らさで絡み合い触れ合い始める。
ぬくもりと確かにそこにいるという存在感と悦楽と、そして愛しさを伝える相手の事しか、三人の心には無かった。この瞬間、彼らの世界は彼らだけで完結しこれ以上ないと断言できる幸福に包まれていた。
やがて、ぬめった吐息と共に三つの唇が離れた時、シンはステラとセツコをベッドの上へと優しく、しかし抗えぬ力強さで押し倒した。シンがこれから何をしようとしているのか察して、一層セツコとステラの頬が赤く染まる。
ステラが仰向けに寝そべり、その上にセツコが覆い被さる態勢だ。そしてシンだけが、二人から離れた位置で見ている。絡んでいる二人の足を割り開いてシンが体を推し進め、四つん這いになっているセツコの腰を支える為に左手を回してお腹を支える。
残った左手は推し進めた腰で開いたステラの左足の太ももを抱えた。しっとりと指に吸いついてくる女の脂肪が乗りつつも、鍛えられた筋肉が適度に着いた張りもある。
セツコが両肘をベッドについてステラの体と密着して、二人の色づいた体がそのまま融け合ってしまいそうな錯覚にシンは頭に血が昇るのをはっきりと感じた。
首を起こしたステラと後ろを振り返ったセツコがかすかに息を呑む音がやけに大きく響く。自分達の腰や足を掴み、これから串刺しにしようとしているシン自身を目撃したからだ。
「いくぞ」
「うん」
シンは震えそうになる声を必死に抑える為に、短い言葉しか掛けられなかった。それでも、万感の想いは籠っている。それが分かるから、ステラとセツコは異口同音に受け入れる言葉を返した。
よく爆発しないなと思うほど激しく脈打つ心臓の鼓動が騒々しい。ごくりと飲み込んだ生唾の音も大きい。
いよいよ、とシンとステラとセツコの三人が思った時、美しい輝きを放ちながらも、圧倒的な暴力性を備えた桜色の閃光が、部屋の壁をぶち抜きシンを飲み込んで吹き飛ばした。
ステラとセツコの目を焼き潰しそうなほど強烈な閃光よりも、いきなりシンが吹き飛ばされて目の前から消えた事態に理解が追い付かないようで、ぽかんとしている。
三人が居た部屋は三階建ての宿舎の一番上の端に位置している。非常階段側の壁が屋根ごと吹き飛んでいて、南国の夜風が濡れ光っているステラとセツコの体を撫でて行く。
「し、シン君!?」
「シン、シンーー、シン何処!!」
ようやく事態を認識した二人が、大声を上げてシンの姿を求めた。湿ったシーツを引き寄せて自分とステラの体を隠したセツコが、月光に晒されながら空中に佇む四つの人影に気づいて顔を上げる。
ステラとセツコを見下ろす位置に浮かび見下ろしている。浮かんでいる? 何かの上に立っているわけでもないのに、生身の人間が空中に浮かんでいるという事態に、セツコの目が大きく見開く。
「シン!!」
「あ、シン君!!」
セツコが空中に浮かぶ四人に驚いている間に、ステラはその四人の後ろにシンの姿を認めて声を挙げる。シンは先程の桜色の砲撃によって意識を刈り取られたのか、気を失っているようだ。
先ほどまで情交を交わしていただけに、一糸纏わぬシンの兵士というよりは武人の肉体は横倒しにされていて、何か光輝く輪の様なもので拘束されている。ステラとセツコの呼びかけにも応える様子はない。
生身でMSを撃墜する戦闘能力を持つシンを不意を突いたとはいえ意識を奪い、拘束していることから、目の前の四人が並みならぬ戦闘技術か何かを持っている事は察しがついた。
セツコはステラをひしと抱き寄せながら、眦を吊り上げて珍しく怒りを露わにして上空の四人を問い詰める。
「貴方たちは一体何なんですか!! シン君を返して下さい!!」
セツコの胸の中に抱きかかえられたステラも、戦闘時と同じ険しい表情を浮かべ喉の奥で犬科の猛獣に似た唸り声を上げている。一目であの四人が敵だと判断したのだろう。
その声に煌々と輝く満月を背にした四人の内の、小柄な影が美しくもひどく冷たい笑みを浮かべる。茶色の髪をバッテン印の髪留めで止めた少女だ。小さな黒い六枚の翼が背から延び、右手に杖を持っている。
まるで旧世紀に流行った魔法少女のアニメーションに出てくる主人公の様な姿だ。いや、この小柄な少女だけでなく他の三人も似た様な姿をしている。杖や銃器を持ち、三人共が目を引く美貌に恵まれた少女達だ。
ちらちらと後ろのシンを振り返っては、顔を赤面させているのが妙に子供っぽい。シンの裸身に興奮しているらしい。
それが分かるから、ステラとセツコの嫉妬と敵対心が大井に掻き立てられる。セツコもステラに遅れて目の前の四人が敵であると認識するに至る。
バッテン印の髪留めをつけている少女がシンを手中に収めた優越感と興奮に浮かれた様な調子の声を出す。不思議なイントネーションであった。
「ふっふっふ、シンは私達が頂きや。この世界のシンだけじゃない。全ての世界のシン・アスカは私達のモノにする。私達、大機動六課が!!」
「だ、大機動六課?」
聞いたことのない組織名だ。まあ“課”というのだから、組織の中の一部門に過ぎないのだろうが。目をぱちぱちさせるセツコに、栗色の髪を両サイドでまとめた白い衣服の少女が杖の先端を向ける。
「未遂で済んだから良かったけど、でもやっぱりシンだけじゃなくて貴女達も頭、冷やそうか?」
数多の戦場を戦い抜き、歴戦の猛者となったセツコをしてなお言葉にし難い恐怖を覚える冷笑であった。まるで抗えぬ絶対の暴力と恐怖――例るえなら“死”を前にしたような。
管理局の白い悪魔、二代目冥王と恐るべき異名を欲しいがままにする(本人が望んでいるかどうかは別として)迫力と、実力を備えた実力者なのである。
「そうだね、やっちゃう? やっちゃおう♪」
と何やら便乗して楽しげに言うのは、スーパーモデルもかくやという抜群のスタイルに、月と星の光の祝福を受けて輝く金髪を長く伸ばしたこれまたとんでもない美人だ。
こちらもツインテールに髪を結って、超ミニ丈の黒いスカートの上に白いマントを羽織っている。すぐに栗色の髪の美女の言葉に乗じた辺り、あまり自主性が無いのかもしれない。
金髪美女の便乗を、その右隣のオレンジ色の髪をした美少女が止める。他の三人も和解が、この少女は更に二つ三つは年下だろうか。袖無しのジャケットに健康的な魅力に溢れる太ももが露わな姿だ。
「まあまあ、一番の目的は果たしたんですから」
と背後のシン(フルチン)を振り返って耳まで赤くする。それに便乗して同じように振り返った美女もシン(すっぽんぽん)の姿に、首まで赤くして俯いて、そ、そうだねと呟く。男性への免疫に関してここにいる面子は大体同じ程度の様だ。
鼻の頭を押さえたバッテン印の少女が(鼻血が出そうになったようだ)、杖を夜天に掲げる。
「この世界のシンは頂いた!! これは始まりや、私……じゃなくて、私達があらゆる世界のあらゆるシンを独占し、シンだらけの世界を手に入れる為の、みんなの夢を叶える始まりなんや!!」
本音は自分だけのモノにしたいらしい。少女の力強い宣言を合図に、四人と拘束されたシンが空中に浮かびあがり、あっという間に姿が見えなくなって視界から消えてしまう。シンの名前を呼ぶステラとセツコの声は、夜の空に吸い込まれて消えてしまった。
これが、時空を股にかけたシン・アスカ誘拐事件の始まりである。謎の大機動六課を名乗る組織を追う為に、急遽追跡の為の部隊が結成されかすかな反応を追って大追跡劇が開始される。
ワープ航行機能を新設したスペースノア級の最新艦を母艦に、スティング、アウル、トビー、デンゼル、さらにエペソのスフィルード・ダ・ガーンを加えた少数精鋭部隊がこの任に着いた。
サイバスターの操者マサキ・アンドーも当初参加が予定されていたが、愛妻テューディ・ラスム・アンドーが三人目の子供を妊娠している事が判明し、二人目の出産の際に危うく流産しかけた事を配慮したセツコとステラの勧めで、地球に残る事になった。
この様にして“時空管理局”という未知の組織とのファースト・コンタクトは図られ、そして一人の男を巡るあまりにも不毛な理由によって、地球は新たな戦乱に襲われたり襲われなかったりするのである。
ぎゃふん。
続かない、多分。
本番書いたらここには投下できないだろう、と判断した為、本番はなし。また具体的な性器の描写も避けました。大機動六課の大は大ショッカーから。
では、楽しんでいただけたのなら幸いです。
GJ!!なにやってんだwww総帥
乙!
って総帥ww
逃げて!いろいろとぶち込まれるから管理局逃げてー!
カオスにカオスを重ねまくった大山脈状態すぐるwwwwwwwwwwww
抵抗するには機動兵器に頼らず生身で戦うシンだな
でもって掲載終了しエピローグで時間経過していない全盛期でだな・・・
で、どうにかなるのか?
流石に不快だわ
ギャグだとしても不快過ぎる
シンセツならまだしもなんでリリなののキャラをそういう風に出してくんのか理解出来ないわ
ここまで追っかけてきたのか、女難アンチは
個人的には面白かったけど、やっぱり向こうに投下してもらった方が無難だったかもしれませんね
知らない人置いてけぼりすぎるし、>86-87みたいなのも出てくるしするので
というかなあ、俺は女難スレなんて全然知らないが今回のはちょっと不快だった
この話を見ると女難スレは最低SSの分かりやすいハーレム見たいな物にしか見えない。
そういうのは嫌われてアンチが出るのは当然だし、
知らなくとも不快に思う人が出るのも必然だと思う
>>90も言ってるが知らない人置いてけぼりだし。
直ぐに荒らし、女難アンチとか認定するのはどうかと思う。
第一、そういうスレのアンチが出来るような嫌われやすい要素があるようなスレのノリとかはさ、外に出さない様にするのが最低限のマナーじゃないの?
シンセツもこのスレでは王道でも、他所のネタスレとかではスレ違いと叩かれて排斥されていたしな。
93 :
通常の名無しさんの3倍:2009/08/10(月) 03:28:55 ID:yajBgBtm
女難スレは実質外部との接触を断ってるスレだからこのネタはまずいと思われ、つかさすがにロボット作品じゃないから駄目だと思う
なのは好きとしてはこういうキャラ崩壊ハーレム要員としてキャラを使われるのは非常に不愉快
しかもクロスカプだし
他所のスレのノリを持ち込んでそれを受け入れない奴は荒らし、って言う奴の方がよっぽど荒らしだと思うわ
最初に注意書きあるし、それでも見て文句言うのはどうかと思う。
でもこんな流れになるから、女難系の投下は止めた方がいい
相変わらず狂った種厨に粘着されてるのな、女難……
三■目も当然この中にいるんだろうが、まだやってんのかよ
すでに荒れ始めてるけどスパロボ関係ない作品は出さない、他のクロススレネタしないという方向で落ち着いたほうがいいと思う
方向ってか常識レベルじゃないのそれ
もうこの話題は打ち切ろうよ・・・
>>97で結論出てるし荒れる一方だ
だが勝手にルール作ってそれで職人を縛ったスレは次々と消えていく
いくつものスレが通った道だ
>>95 あの注意書きじゃ女難スレがどんなものかはさっぱり分からん訳で
>>81 女難スレは別に何処でやろう何をやろうと勝手。
だが、それを他所様のスレに出すのは流石に無神経過ぎる。
自分の所の議論とか全然進めないで他所様に迷惑を掛けるなんてどういう了見だ?
女難スレでの不満、枝葉を伸ばしたかったら女難スレ改善に動けよ。
それを放置してやりたい放題とかマジで頭冷やせ。
>>100 テンプレを議論する上で、ガチガチに決めて脳汁が出る人
緩めてゆっくりやりたい人が居て決めると片方を切り捨てる事になる。
なのでどっちか決めると面倒だしデメリット。
だが、逆に決まってないとごたごたと揉めて面倒。
諸刃の刃なんで住人同士良く話し合って慎重に進めた方が良いです。
とりあえず、総帥が何かコメント出すまで、この話題はここで終了な
以後、この事について触れた者は荒らしとみなす
では再開
↓ ↓ ↓
冥王っていったらスパロボなら
ゼオライマーだろう常識的に考えて…
そっちの知識がないとわからんような注意書きされてもね
アダルトっていったからコミック版ゼオライマーを
想像したなんて言えない!
残された大物たち
・宇宙魔神ダイケンゴー・機甲艦隊ダイラガー]X・光速電神アルベガス・グロイザーX
・ビデオ戦士レザリオン・星銃士ビスマルク・機甲創世記モスピーダ・機甲界ガリアン
・超力ロボガラット・ヤットデタマン・逆転イッパツマン・太陽の使者鉄人28号・ARIEL
・惑星ロボダンガードA・闘士ゴーディアン・装甲騎兵ボトムズ・特装騎兵ドルバック
・亜空大作戦スラングル・超攻速ガルビオン・大魔獣激闘鋼の鬼・流星機ガクセイバー
・装甲巨神Zナイト・ゲッターロボ號・超電動ロボ鉄人28号FX・レッドバロン・ガサラキ
・無限のリヴァイアス・無敵王トライゼノン・VS騎士ラムネ&40炎・ヤマトタケル・機神兵団
・超合体魔術ロボギンガイザー・超音戦士ボーグマン・サイコアーマーゴーバリアン
・BLUE GENDER・超神姫ダンガイザー3・デュアル!ぱられルンルン物語・ヴァンドレッド
・銀装騎攻オーディアン・Z.O.E Dolores, i・リーンの翼・コードギアス反逆のルルーシュ
・破邪巨星Gダンガイオー・Get Ride! アムドライバー・絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク
・高機動幻想ガンパレード・マーチ・REIDEEN・機神咆吼デモンベイン・天元突破グレンラガン
・獣装機攻ダンクーガノヴァ・機神大戦ギガンティック・フォーミュラ・鉄のラインバレル
・ANUBIS ZONE OF THE ENDERS・ゾイド・ゾイド新世紀スラッシュゼロ・砲神エグザクソン
残ってるだけでまだこんだけあるよな、未参戦作品……
広井系入れてないからまだまだあるんだが
>砲神エグザクソン
お前、こんなん無理に決まってんだろwww
第一、原作未完どころか途中で休載してんじゃねぇか!
>>106 ダイケンゴーはMXで参戦候補に入ってたとかいう話を聞いたことがあるな
戦闘シーンがスパロボ的に映えそうだし、ストーリーも単純明快でメインにも食い込んで来ないだろうし、使い易そうなんだけどな
これがいないじゃないか
・獣神サンダーライガー(新日本所属)
>>107 あれ終わってるだろ。最後のほうは色々とすごいことなってたけど
ゲームありならサイバーボッツ、キカイオー、バンガイオー、オメガブーストなんかも捨てがたい
デュアル!を入れたら天地無用が付いてきそうだな
115 :
通常の名無しさんの3倍:2009/08/10(月) 19:07:07 ID:WuLzusA2
ARIELは出て欲しいけど、戦闘向きじゃないから無理だろうな…
敵も味方も技術とか懐具合が極端すぎる
>ANUBISとドロレスだけなら
TESTAMENTも忘れんといて!!
>>110 MJD?
ありがと。スレ見ててよかったわ。
アマゾンか中古で探すかなぁ。
ANUBISに出てくる前作主人公の中の人って鈴村さんだよな?
ただしANUBISの時だけね
前作のときは中の人が違う
>>破邪巨星Gダンガイオー
これも確か未完だよな?
こんばんは。お話の途中で失礼します。
この度、私の配慮が至らぬばかりに、大変ご迷惑をお掛けしてしまいました。
不快に思われた方々には、お詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。
感想を下さった方、ご指摘くださった皆さんには感謝しております。暫らくの間、頭を冷やそうかと思います。
改めてお詫びします。申し訳ありませんでした。
度々すみません。今回のif02ですが、私にまとめの方に編集する意思は無く、皆様にもまとめの方への編集はしないでいただければ、と思います。
身勝手なお願いですが、ご理解の程よろしくお願い致します。また、普段編集してくださった方には深く感謝しています。失礼増しました。
個人的には馬鹿馬鹿しいの大歓迎ですぜ
まぁ、やっぱり程々にせんといかんのもありますかね・・・
>>118 >>119 ちょっと前に思ったが、原作シン的には無印のヴァイオラな気がした
『俺は全てを失って 戦いの中で生きてきた
家族を奪われ 恋人を殺され 男として生きていくことの出来ない身体に・・・はなってないけど
俺は実力で生き残ってきた
それをお前(アスラン)は足蹴にした
ラクシズの存在そのものが・・・俺の人生の否定だ
アンタたちは一体何なんだ!? 俺の何がアンタに劣っている!?
アンタたちが・・・一体どんな苦しみを味わってきたっていうんだ・・・!!
・・・いよいよ最期の時が来たらしい・・・やっと終わる・・・俺の忌まわしい日々が・・・やっと・・・
ステラ・・・やっと・・・君の・・・許へ・・・』
みたいな
>>121 やらかしちまったのは残念ですが、作品を完結させてくださるんなら文句は言いません。
頑張ってください。
>>106 地味にレイアースがハブられている、だと・・・
そういや、何でエロいのはエロパロでやらんの?
寸止めとか萎えるんだけど
本番プリーズ!
どうでもいいが、ダンクーガならBURNに出て欲しいと思うここ数年……。
クロスボーンガンダム的に。
>>126 どっちもアニメ化してほしいなぁ
ノヴァやるよりBURNアニメ化して欲しかった
……ダイラガー]Xって、脅威の15機(有人)合体だから、精神コマンド15人分か?
そーだったら、高レベルまで使えない機体か、シナリオ後半だけとかになりそう……
いや、合体メカが5人×3チーム構成だから、精神使えるのがリーダー三人だけにすれば
バランス取れるんじゃね?
>>129 それだとせっかく15人乗っている特色がな…
ここはメイン3人×5+サブ12人×1の27種仕様に。
序盤はSP不足で使えないサブキャラの精神もあり、高レベルになってくると解禁されるとか。
小学校の1クラス全員が何らかの役目で乗ってるゴウザウラーのほうがすごいことになりそうだけどどうなるんだろう?
イデオンがどうだったか考えれば自ずと答えは出るはず
そう言えば、ゴッドライジンオーも1クラス全員乗ってたよなー。
まぁ、そう言うこと言い出だすと、戦艦ユニットはもっと凄い事になるがね。
各部署のリーダー抜き出しただけでもかなりの人数になると思う。
たまにはアストナージが精神要員になっても良いのにな
艦長、副長、通信士、操舵士の他に精神コマンドをつけるとしたら整備士だな。
補助的な精神コマンドを揃えてとかさ。
あとなんでラーカイラムの副長はスパロボに出てこないのかな?
SEEDのナタルやナデシコのジュンみたいに...
影が薄いからさ…
だって思い出せないんだもん、顔も名前も
オクトバーは覚えてるのに
っていうか、ラー・カイラムに副長なんていたんだ
まともな運営の戦艦にはいるさ
ホワイトベースとかネェルアーガマとか怪しいもんだけど
139 :
135:2009/08/13(木) 19:42:21 ID:???
たしか逆シャアでブライトがみんなの命をくれとか言ったシーンで、
ブライトの後ろでアムロと一緒にいた人だったよな?
戦艦クルーネタで思い出したけど、
サエグサってヤザンのプチモビに轢かれて死んだとばかり思ってたけど、
リタイヤしただけでちゃんと生きてたんだな。
戦艦と言えばナデシコは簡略化されたとは言えオペレーターはルリだけだったな
夜間警戒態勢での移動は二人でも可能だし
艦長席から砲撃管制も出来るとは言え長時間の包囲戦とか弱点多いな
>>140 最終回に出てたり、ZZ終了後設定のMXではサブパイになってたり・・・だな
サルファとかだとラーカイラムの副長はトーレスがやってるのかな、と妄想
狙撃でドラマなぁ
最近のゆとりでもエヴァくらい浮かぶだろうに
ゴメン、誤爆った
保守しとくかね
狙撃・・・ウェーバーのことかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
あとミシェルと録音
ところで、今日の昼飯食った後にうとうとしてたら
ディケイドがノリダー世界に現れる夢を見た
予知?
戦場ではスナイパーは、捕まったら必ず殺されると聞くが。
全員、死因はそう言う事では無いしなw
149 :
135:2009/08/17(月) 23:50:12 ID:???
ロボットアニメのスナイパーは死亡プラグ?
150 :
149:2009/08/17(月) 23:52:05 ID:???
フラグの間違いだ、失礼した。
というかロボットアニメでクルツ、ロックオン、ミシェル以外に専門的なスナイパー、または狙撃用機体に乗った奴ってどんなのがいたっけ?
スパロボで狙撃がつくのは大概射撃が得意な奴だが…
完全な狙撃用ってわけじゃないがウィングゼロやダブルエックスも超距離攻撃可能だな
機体半壊状態でマニュアルでコンマ二桁の誤差だったり超超距離からこれまたコンマレベルの微調整射撃やらかしてる
>>151 狙撃専門って訳じゃないがコマンドウルフなどゾイドには多いぞ
あとガンダムならアドバンスドヘイズルとか
浪花十三
J9のキッドもだっけ?
スナイパーは一人居るだけで中隊規模の部隊を足止めできるからな。
数は居ないんだし、確実に殺しておくにしくはなし。あとは実際に仲間を殺された感情的なもんだろね。
>>151 Vガンのファラ中佐とかあと08小隊も狙撃できるな
メカがヒト型の方が狙撃もやっぱり感情移入されますよな。
ヒト型以外の狙撃ってんなもんあったっけ?
Xのグランディーネくらいしか思いつかんぞ
ヒルドルブは…むしろ砲撃か
>>160 上でも出てたがゾイドは狙撃機(非砲撃機)かなりいるぞ。
アニメでもガンスナイパー、ケーニッヒウルフ、バトストでスナイプマスター、改造機なら有名なとこだとセイバータイガーとブレードライガーが狙撃機に改造されてる。
とりあえず応急にネット環境回復したんで生存報告&酉テスト
元々考えてた設定が最近やったゲームと壮絶に被ってしまってたのでプロット段階から組み立て直してます
最初に投稿したクライマックスシーンと投稿済みのプロローグには何とか話をつなげてボツにはしないのでご容赦を
酉キーが思い出せない
レス内容から推測するにATX氏かな
こちらは気長にいつまでも待ってますよォ
何と被ったか興味深いw
未プレイだった別のスパロボだったりしてw
今後はこの酉で行きます
キー間違えてるのか、PC変えると酉も変わってしまうのかorz
>>165 そうです
>>166 「あいとゆうきのおとぎばなし」です
出てすぐやっとけば良かったのに、何年も積んどくからこんなことにw
まさかマユが脳髄だけになっちゃう予定だったとかw
わぁいATXさんの生存報告きたー
これで俺は10年戦える
ディケイドみたくいくつものスパロボ世界をまわるシン、敵は大DCだ!
でカタカナは普通だから名前そのものを変更する
リュウセイ→ユウセイ
キョウスケ→キュウスケ
マサキ→ミサキ
ゼンガー→ゾンガー
クスハ→ユズハ
アイビス→アルビス
ラミア→エミア
セツコ→セツナ
ミスト→フォッグ
ディエンドポジションにコブレー
でもDCって元から複数組織が結集してるよね
A、R、D、J、W、K、XO、衝撃、MX、魔装、真魔装じゃダメかね?
ディエンドの世界は64で。
……うっかりZとC3ディスってしまった。単品作品だけ上げてたつもりだったのだけど。
細かい事だがハブるのはディスることにはならんw
>>163 見た作品をそのままパクるやつが沢山いるんだから、たまたま似ちゃったことくらい
で気にしないでいいと思うが
>>174 個人的にはシンケンポジションにムゲフロかナムカプを!
ダイダルってすっかり忘れられているんじゃないかと不安になる時がある
実はダイダルとデュミナス(R)が兄妹とかそんなんあるんじゃないかと思った
そんな時期もありました
>>175 普通はそうなんですが
時空の設定と敵の設定、二つとも被っちゃったんでこれはもう
「偶然です」は通用しないかとw
総帥:ダークブレイン
副総帥:完璧親父
参謀:ユーゼスな奴ら
兵器開発局所長:ビアン
親衛隊隊長:アルヴァ・・・絶望せよぉぉぉぉ
第一部隊隊長:ヴィンデル
第二部隊隊長:ゼゼーナン
第三部隊隊長:ラオデギヤ軍団
独立遊撃部隊隊長:アサキム
マスコット:真ん丸アイスント
神像:ガンエデン
サポートロボ:デュミナス
訓練校鬼の教官:修羅王
こんな敵組織と戦ってみたい今日この頃
.>独立遊撃部隊隊長:アサキム
なんか部隊なのに、こいつ一人しかいなさそうだ。
>訓練校鬼の教官:修羅王
卒業できる猛者がいるのかこれwww
生徒が片っ端から死にそうだ(w
それとも生徒全員修羅なのか?
183 :
149:2009/08/24(月) 14:18:22 ID:???
>179
濃すぎるわー!
おいらなら入隊して1日も持たない!
修羅王はダメダメなやつは最初から切り捨てる感じがする
谷底に落とされるのは見込みのあるやつだけ
問題は切り捨てられた場合どうなるかだ
一般の軍隊なら入隊不許可とか、後方部隊にまわされるとかで済むけど
186 :
通常の名無しさんの3倍:2009/08/24(月) 19:49:53 ID:T/6WotuU
>179
ってか総帥より副総帥の方が強い気が……本体じゃないんだね!
それと局長(ロボオタ)と参謀(特撮オタ)が壮絶な論争を繰り広げそう
>なんか部隊なのに、こいつ一人しかいなさそうだ。
それを言えばカイメラなんて一部隊につき人間が隊長一人ずつしかいないじゃないか・・・
隊員は無尽兵器ばっかし・・・
無尽兵器って何書いてんだ俺
フューリーとルイーナとザ・データベースか
もしくは遊星主
アプリカントは人格や自我を与えなかった子供を死地に送った外道と時々言われるが
実は連合からゲットしたセーフティシャッターで五体満足で脱出したディセイバーが
休憩・交代を繰り返しつつ修理したマシンで出てきているんだと俺は思っている
フューリーもおおよそ同様
ルイーナはなんかもう闇の中から沸いて出てきてるっぽい気がする
もしくはユキムラみたいにファブラ・フォレースの向こう側から混沌の中の可能性をサルベージみたいな
神像の中身が気になるな…
ロリなのかアダルトなのか
>>189 ロリだと組織のマスコット、またはアイドル。幹部連中がぶっきらぼうに頭撫でたりしてます
アダルトだと崇拝の対象
192 :
149:2009/08/24(月) 22:47:38 ID:???
ケイサルなんじゃ?
>>192 アンタさっきからコテ付けっぱなしになってるぞ
いけね、すまん。
保守
VSアストレイズのライブラリアンとかいう組織がモロにデータベースな件
そういえば総帥は趣味で機体を作る悪癖があったはず。
……今川版マジンガーZ、というよりゴッドスクランダーを作ったりしないだろうか。こう、ゴッドスクランダーシルエットとか言って。
>>196 某スレでギナコピーと聞き、ここでデータベースと聞いてWを思い出す俺。
だけど43話分岐は何のフラグも立たないのでアストレイルートは1度しか行かなかったなぁ……。
>>197 このスレ的には、変形するなら刀、かな?斬艦刀・真打とか。
>199
ゴーダンナーのセレブレイターみたいな感じですかね?
それだと振るう奴がいないとなんかしまらないな。ダグオンのライアンみたいじゃないか。
やっぱ剣は振るってなんぼだと思うよ。
>>201 世の中にはなぁ、中に乗っている主人公(の意識体?)が、
剣に変形したロボットを振るってラスボスを一刀両断した漫画もあるんだぜ。
ラスボスが剣を振るう主人公を見て仰天してた所を見るに、
どうやら実際に見えたらしいな……。
>>199 SRX計画にR-SOWDっつうR-GUNのソードバージョンの計画があったな
結局ヒュッケVのボクサーモジュールになったけど(Gソードダイバー形体がその名残)
>>203 銃に変形した戦艦を立体映像越しに構えて撃つ特撮ヒーローも居るしな。
>>204 ふふふ、スーパーヒーロー作戦もよろしく……
そういえばすっかりSRXの武器としての印象ばかり強くなったが
元々主人公メカだったんだよなぁ
イングラムも本来スパヒロ世界の人物でα世界にやってきたんだよな。そのまま来たか転生して来たかわからないが...
α最終話でリュウセイで説得して条件が揃うとスパヒロの時の記憶がよみがえるシーンが見られる。
>>207 元々はパワードスーツだったんだっけ?
総帥ならば作ってくれるかな、転送システム付きでw
>>209 ゲシュペンストとR-GUNが混ざってる件
>>204 それ既に総帥が出してるな
しかも世界を斬り裂く剣にまで昇華されてたけどw
パワードスーツR-GUNでメタルジェノサイダーモードって・・・
イングラム「リュウセイ、ライ、アヤ、ヴィレッタ
ヴァリアブルフォーメーションだ!!」
チャーラーチャラッチャチャーラーララーラーラー♪
つ【マイク】
シン「え?俺、俺が歌うの?」
『そびえたつ 目の前の壁 胸を打つ 高鳴る鼓動』カーン
「・・・・・・」
天下無敵のスーパーロボット ここに見参!!
シン「うぉぉぉぉぉ…!!
見たかこの姿!最強のスーパーロボットだ!
これでラクシズも一網打尽に…」
イングラム「よせ、シン…無駄なハッタリは…」
シン「なんだって、どういうことだよ!?合体したSRXならラクシズなんて」
イングラム「みんなは…みんなはな
SRXの合体で死んだんだ(全身複雑骨折)」
『みんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
「仇は必ず討つ…!!」
キラ「アホだ…」
シン「ふと思ったんですけど、合体する必要があったんですか
合体しなければみんな雲にならずに済んだんじゃないんですか!?」
イングラム「馬鹿者!何も知らぬ子供が好き勝手言うな!
これには深い事情があるんだ…
合 体 し た 姿 を 個 人 的 に 見 た か っ た」
シン「そ、そんな理由が…」
キラ「びょ、病気だ…」
こんな感じになりそうなんですが
>>210 >>212 間違えたwリュウセイ達がミンチよりヒデェことにwww
でも総帥なら…総帥ならファイナルフォームライドの謎変形機能を再現してくれる!
続きは映画館でね!
>>212 なにそれ、リュウセイ・ライ・イングラムが手を組んでアヤに脱衣麻雀
しかけてそうなの。
ライいらんからマイ入れようぜ
>>215 >>216 イングラム「あ、マイのそれロン」
マイ「え、当たったのか、マイちゃんびっくり」
イングラム「それじゃー一枚脱いでもらおうか」
マイ「恥ずかしいけどルールなら仕方ないな」
アヤ「ちょちょっと、脱ぐって何のことよ…!?」
『何ってそりゃー【脱衣麻雀】に決まってるじゃないですか』
アヤ(は、ハメられた…!!)
こうですか、分かりません
そしてユウナが麻雀外交でジブリール相手に命と牌を削りながら戦う姿を見たが
これも無限の可能性の一部か・・・
そして機械化され復活を果たす偉大なるラクス様・・・
>>217 リュウセイにマイづくしを仕掛けてそうだな
投下…投下がない!
「いやぁ!やぁ!」
夏も真っ盛り、だというのにシンは…いや軍の男共は訓練室にこもり特訓に明け暮れていた。
なんか、気が抜けている気がする。
絶えず現われる新たな敵、それもその都度強さも増して。
苦戦を強いられるばかりでは男がすたる、ここにきて強化合宿を行うことになった。
「はぁー、はぁー」
汗まみれとかした上半身から滝のような汗が流れ出る。
ゼンガーが、ブリットが、アラドが、シンが、いや今いる男共全員が汗水たらし
その鍛え抜かれた体を汗と共に惜しみなく見せつけ稽古に励む。
そしてその様子をみている女性陣、ようやく休暇をもらえたというのに合宿中の
男共に相手にされずに各々悶々と過ごしている。
「うわぁ…」
「これは…」
「ですの…」
「過ち…これが過ち」
裸の上半身をぶつけ合い、鍛え抜かれた男たちの汗と肉体がほとばしるぶつかり稽古が始まる。
その様子を見て上からラト・マイ・アルフィミィ(遠方から監視)・デスピニスが感嘆の声を
あげる。こころなしか全員の頬が赤く染まっていた。
無いなら投下しよう!小ネタだけど
ンオッフゥ、何とも男臭いネタですねぇココココ
>221
ああ、純真なおにゃのこが汚れていく...
>>222 王騎将軍、スレが違います(((;゚д゚)))
魅門「頑駄無とやらの世界には悩みを抱える者が多いようじゃ。
苦しうない、望みを言ってみよ」
シン「妹とフラグを…」
レイ「長生きしてみたい」
ルナ「射撃名人にして」
シンはそこら中女の子を妹にしようと声をかけまくり
レイは仙人になって山に篭り
ルナはその辺の人や物を的に見立てて発砲した。
キラ「駄目だこの人達…早くなんとかしないと…」
魅門「汝はどうか?」
ラクス「世界征服という望みはありますが、そのくらいは自分でできますから…」
会長「!!」
〜〜尽くしと聞いて吉六会奥義を思い出したのは多分俺だけ
>ユウナが麻雀外交
カガリ「無茶だユウナ!そのまま続けたらお前が燃え尽きてしまうぞ!!」
ユウナ「ならその灰を集めてジブリールの前に置くといい
僕はたとえこの身が燃え尽きようと
この国を守るッ!!」
天 地 開 闢 <ビギニング オブ ザ コスモス>
ユウナ「ロード=ジブリール・・・良い勝負だった
また打とうじゃないか」
ジブリール「ええ、今度はダイダロスで・・・」
綺麗なアズラエルがあるなら、たまには綺麗なジブリールがあっても面白い
SSとはそういうものじゃないかと思ったり
綺麗なジブリールなら、前に見たぞ。
アストレイの火星人に、そいつが落とした連合兵士のデータを突きつけて、
何で殺した!と言い放った奴が。
セトナとラヴラヴしている、魔改造ジブリールだったし、
そのSSの最後は老魔法王が最後のフォースを振り絞って地球滅亡の危機を回避して終わったけど、
なんか変な魅力があって結構好きだったなー。
>>229 あのぶっ壊れぶりは東○カ○ボーイに通じるものがあった
SEEDIF統合スレの、千億の星、千億の光。
配下にジェダイ騎士団とイスカリオテを引き連れた老魔法王ベネディクトが、
元気玉で世界を救って終わった異色作……。
アレ途中までは読めたけど、おかしな火葬ネタが絡みだしてから読まなくなった
陽電子博士が亡命して来て地球に害が無い陽電子砲とか
クルーゼ生存とか負債と同じ顔したキャラが何人も出るとか
MSに乗らないで死ぬキラとかネタ満載だったな
火葬ネタをやり過ぎなければな……。
特定の火葬戦記の読者じゃないと置いて行かれるSEED小説って実際どうよ?
いやぁ、アレが大々的に使ってた火葬ネタ、火葬戦記読みからしても作者スルー余裕でした、な作品なんで……
確かにわかったんだけどさ。本筋に殆ど関係しないのにかなりの文量になってたし、残念だったとしか。
ジェダイもレッドミラージュも出てきたのにまったく活躍せんかったからなぁ
レッドミラージュ本気出したら地球がSOS
そういえば4次で出て来たレッドミラージュはかなり洒落にならん強さだったな
あれはブラッドテンプルだろ
まあレッドミラージュの元ネタではあるが、FSSにはブラッドテンプルの名前だけ
流用した別機体もあるから
永野がスパロボにモーターヘッド出させない理由は、
「モーターヘッドがそこらのメカにやられる訳が無い」だっけ?
ある意味潔いというか、最強厨乙というか・・・
設定が無茶過ぎて上手くバランスがとれないとかからかな?
そう言えば緑川さんはデモベ参戦希望しているてか?
>>243 Yes。なかなか出してくれないから似たコンセプトのアサキムで鬱憤を晴らすがごとく
「これ完璧テリオン(デモベの緑川の担当キャラ)じゃねーかwww」
な演技したんじゃないかと俺は睨んでいる。
でもレギスと名無し以外はスパロボ戦力でも倒せそうだよな、トラペゾ取得デモベは最後の方に持っていけばいいし。
……と言うか、ゲッターを虚無らせたり、ラーゼフォンを小説版で補完させたりすれば、
レギスどころかニャルちゃんアザトース辺り相手でも普通に戦えると思うぜ。
特にゼフォンは、小説版だと無限螺旋を外から消滅とか普通に出来るからねー。
周囲の数千の世界をついでに巻き添えにして……。
残した根っこの方からまた生えてくるから問題ないって、
アンタどこまでマクロな視点からモノ見てるんよって、読んでて本気で突っ込んだしなー。
完璧親父とナイアはどっちが強いかな?
アザトースVSナイアルラトホテップとな?
>>245 魔術加護に目を瞑れば普通の鬼械神と同程度の耐久力だろうデモベが
西博士製とはいえ破壊ロボの物理攻撃でダメージ負うからな。
それを上回る理不尽さのスパロボ軍団なら多少の魔術加護でも砕くだろ
あ、腐れゾンビオカマは別ね。あれは光子魚雷級の広域破壊兵器で消し炭にしても
生き残りそうだし。テッカマンやモヒカンなら大丈夫だろうけどwww
ナグツァートと一緒に並べてみたいな、ベルゼビュート。
>250
グロすぎるわ!
>>250 顔会わせたら即食い合いになるんだろうな
だがそこに銃神悪魔王が降臨してTHE END
あと虚無ゲッターといえば
アカシックレコードやら無限力は異なるアプローチで人類の進化発展やら促すのが目的だったりするが
石川宇宙っていうか魔獣戦線だとゲッターは時天空を滅ぼす為に神様が用意した武器の一種って感じだったよね
魔獣とかゲッターとかひょっとしたらラ・グースとかもそういう一種で
チェンジ!でゲッター艦隊がラ・グースぽいインベーダーか何かと戦ってるのは兵器トライアルみたいな感じなのかと思ったのだが
そんな神様の思惑で戦わせられるスパロボとかどうじゃろう
ナイアさんも早乙女博士も十蔵爺ちゃんもテムもユーレンもみんな最強兵器を生み出すためにお膳立てされてて
さぁ各々世界から代表出して対時天空代表決めようじゃないか、みたいな
まぁそれこそ最終選抜候補が限られてきそうだし、単にパワーだけならデモンベインの場合エドガーが代表になっちゃうねぇ
ナイアさんはそもそも邪“神”様のパシリな件について
>>253 眠れる邪神様を起こすために奮闘するやつだよな確か
起こすっつかトラペゾの中っぽいとこから解放する為だね
トラペゾ壊す為のナイアさんの孤軍奮闘夢日記がデモベのメインストーリー
>>252 ラ・グースも神が作り出した兵器の一つらしい。
ただし、これ以上成長はしても進化はしないので、存在としては既に頭打ち。
ま、当て馬だわな……。
>>253 原作クトゥルフだと、そんなに奮闘してないけどね。
つーか、そもそもニャルちゃんは使者ではあるけれど、パシリではないし。
なんつーか、封印されていることになっている邪神達の中の、
ニャルちゃんをパシらせられる連中は、
そもそもパシらせようなんて考える事自体が無い状態にあるから、
ニャルちゃんに指示することが無いんだよね。
だから、ニャルちゃんは好き勝手にわけのわからないことをやってるけど、
あれはあくまでもニャルちゃん自身が好きでやってることになる。
……まぁデモベではそうじゃないのかも知れんけどな。
>>252 エドガーデモベはトラペゾ無しなら最強だもんなー
つか原作じゃトラペゾがニャル召喚アイテムだよな
ニャル様と完璧親父が出逢ったら...
宇宙オワタ!
石川宇宙はあれだ
壺の中にいっぱい虫入れて、生き残ったのが最強ってあれの世界だと思う
最近誰も来なくて不安なんだぜ
俺はヒーローになれないなら
せめてヒーローを信じて待つ脇役になりたいんだぜ
フリーマン乙。
フリーマンと聞くとパンツ一丁で戦う泣き虫刺青男を思い出してしまうw
そろそろ総帥復活しないかな
信じて待つさ
268 :
11 ◆Qq8FjfPj1w :2009/09/12(土) 19:28:58 ID:j1frLMww
第39話「SRX降臨!(後編)」
「あれがSRX…!」
ついにシンの前にSRXがその姿を現した。戦場の視線がその一身に集まるとともに、その独特のフォルムの圧迫感が周囲の者の言葉を奪っていた。
だがSRXの出現は、DCの部隊にとっては厄介な敵が現れたということ以外に意味はない。ガーリオンやバレリオン、量産型ヒュッケバインMK−UらがSRXを取り囲み、携行火器の銃口を向けてその引鉄を引く。
放たれた多くの銃弾が全長50メートルの巨体に命中する軌道を行き、そのほとんどがSRXに降り注ぐ。だが、SRXはこれらを回避しようとはしなかった。
回避することができなかったわけではない。回避する必要がないのである。放たれた全て攻撃は、SRXに命中する前に機体の前に展開したグリーンに輝く壁―念動フィールドに阻まれ、爆煙のみが広がってゆく。
これによりSRXの視認が不可能になったDCのAM部隊であったが、次の瞬間、その各機は爆煙の中からその煙を貫いて射出されたビームに貫かれて爆発へと姿を変えた。
搭載されたT−Linkシステムは、相手の悪意や殺気などから敵機の位置把握を可能とし、晴れてきた煙の中から姿を現したSRXは左右の腕の各指を突き出していた。
SRXについて詳しい者が見れば、各指から十条のビームを広範囲に発射するハイフィンガーランチャーが放たれたことはすぐにわかることである。
初めて目にした、新西暦の世界の地球の秘密兵器ともいうべき特機の力の一端を目の当たりにしたシンの脳裏には、一瞬だけではあるが強大な火力を備える点で共通するデストロイの姿が浮かぶ。
ただ、デストロイはベルリンなど幾つもの歳を滅ぼした悪魔の機動兵器であったが、SRXはシンも信頼する仲間達が乗り込む地球人類の守護者であり、とても頼もしい味方である。
そんなことを考えたシンは、大地に組み敷いたエルアインスを押さえ込みながらコックピットの位置を探していた。
先ほどまでの会話を聞いている限り、この機体にはラトゥーニやアラドのスクール時代の仲間が乗っていると考えて間違いない。
ステラに施されていたような精神制御がされている可能性が高い以上、可能であればコックピットから直接引き摺り出すのが最も確実な救出方法だと考えることができる。
しかし、そんなシンの作った筋書きを嘲笑うかのようにヴァイサーガに1機の敵機が近付いてきていた。
「クソッ、ファルケンか!」
押し倒されたエルアインスを誤って撃ち抜かないようにビームソードを構えてビルトファルケンが迫ってくる。かつての愛機の同型機であるビルトビルガーがファルケンを追ってきているが、距離的に間に合うとは考え難い。
やむをえずエルアインスの両腕から手を離し、その場を急速に離脱するヴァイサーガであったが、そのモニターがある1つの機動兵器を捉えていた。
「!あれは…いや、でも…!」
銀と薄紫色の塗装が施され、両サイドに備え付けられた巨大なビーム砲、中央でドッキングしているラピエサージュは、エターナル先端に搭載された、フリーダムとジャスティスの支援ユニットであるミーティアをシンに連想させる。
だが、連想されるのはミーティアだけではなかった。両サイドのビーム砲の上部には巨大なシールドと思しき構造物があり、記録映像で見たことがあるタスクのかつての愛機ジガンスクードを彷彿とさせる。
このユニットの名称はジガン(Gigan)・ミーティア。その名の通り、シャドウミラーが彼らの世界から持ち込んだジガンスパーダ、ラクシズの持ち込んだミーティア、
DCの集めたジガンスクードのデータの統合を図るとともに、防御力・重火力・機動力の全ての獲得を目指して開発された機体である。
ただノイエDC・シャドウミラー・ラクシズとも連邦のような多数の敵との戦闘を予定していることから実質的に利害状況が重なったという事情もG・ミーティア開発の背景にはある。
現段階では、試作段階以前のテスト機にすぎないのだが、一部の者から鋭く指摘されていたフルバースト時の棒立ち状態をグラビティ・ウォールとジガンの装甲でカバーするとともに、
ジガンスパーダの砲門を減らす代わりにジガンスクードのようなシールドを装備することでミーティアユニットの弱みであった装甲の脆弱性をフォローしている。
そしてミーティアやジガンスパーダと同様に多数のビーム砲門とミサイルを内蔵して多数の敵との戦闘に対しても十分な備えを図っている。
「気を付けろ!あのジガンみたいな機体、火力がハンパじゃない!」
「ってことはお前の世界の機体か!?」
「似たようなのは知ってる!」
「そこまでだ、リュウセイ!」
ライの警告を受けてリュウセイはSRXに回避行動を取らせる。そしてSRXがいた付近を通過していった極太のビームがリュウセイ達にG・ミーティアの攻撃力の高さを知らしめ、彼らの顔を引き締めた。
だがG・ミーティアの攻撃行動はまだ中断してはいない。続けて両サイドの巨大ビーム砲に加え、機体各部の小型ビーム砲やミサイル発射管が開放される。
「でっかいのが来るぞ!」
シンの檄が飛ばされリュウセイがモニターに映る後退中のR−GUNやフェアリオン、マイのヒュッケバインを見やる。距離を考えれば射程距離外にまで逃れたとまでは言い難い。
G・ミーティアは無慈悲にもほとんどの火器の展開を終わらせて、機体からは夥しい数のミサイルとビームがSRXやその周辺にいるハガネ・ヒリュウ改所属の機体へと襲いかかる。
「おう!ライ、アヤ!こっちもぶっぱなすぜ!」
他方、リュウセイはそう言ってSRXを上昇させるとともに機体の火器のロックをすべて解除して各兵装の照準をG・ミーティアへと合わせ始める。
背後に離脱中の仲間達を背負い、SRXのゴーグルは表面に光を収束し始める。さらに両腕は開いたまま前面に突き出され、脚部のテレキネシスミサイルコンテナが機体内部から姿を現した。
そして、リュウセイ、アヤの機体に備え付けられているT−linkシステム、ライの天才的な機体制御に支えられ、SRXは短時間のうちにロックオンを完了した。
「テレキネシスミサイル!ハイフィンガーランチャー!!ガウンジェノサイダー!!!」
ミサイルコンテナから飛び出していった各ミサイルがG・ミーティアから放たれたミサイルの一つ一つを追尾・撃墜するとともに、両手の各指の先端からビームのエネルギーが射出され、G・ミーティアのビームと相殺し合う。
SRXの頭部から放たれたゴーグル型のエネルギーがG・ミーティアの両サイドから放たれた2条の大型ビームとぶつかり合い、周囲に衝突の余波を撒き散らしつつも互いに力を失って消えていく。
撃墜され損ねた互いのミサイルも念動フィールド、G・ウォールのそれぞれに遮られてSRX、G・ミーティアともに受けたダメージはない。
両機体の間に生じた大きな爆煙が互いの姿を隠しリュウセイ、キラともにその一瞬の間に大きく息を吸って酸素を体内へと取り入れる。
かくして最高のコーディネーターと同等の能力と悪魔のマン・マシンインターフェースであるゲイムシステム、そして大火力と高い防御力を備えたG・ミーティア、
リュウセイとアヤという二人の念動力者とT−Linkシステム、EOTであるトロニウムエンジンを含む機体制御を天才と呼ばれたパイロットであるライの力が合わさったSRX、
この両者の最初の攻撃は引分けに終わった。だが戦闘はまだ始まったばかりである。
「うおぉぉぉっ!」
そして先に次の攻撃に移ったのはリュウセイであった。SRXが拳にエネルギーを纏わせてG・ミーティアへと向かっていく。放たれるビームを、機体を左右に揺らして回避しながらSRXは敵機との距離を詰めていく。
これに対応するためにミーティアから放たれる火線の数が増加するのだが、SRXを捉えることができたビームは機体に到達する前に念動フィールドにかき消されてしまった。
SRXが自らの間合いにG・ミーティアを捕らえると、かつてR−GUNリヴァーレの顔面も一撃で半壊させたほどの威力を持つ拳を振り下ろす。
それに対するG・ミーティアも、SRXを迎え撃つべく機体前面に伸ばした両腕付近にバリアを集中させて、繰り出されようとしている拳に向けた。
SRX自身のパワーと纏わせたエネルギーが展開されたG・ウォールがぶつかり合い、相殺され損なった両機のエネルギーが周囲に弾き飛ばされて2機を揺らす。
だがキラ・ヤマトはいち早く次の行動へと移り、相手の機体の動きが止まったところを突くべくミサイル発射管を開いた。そこから放たれた数十発のミサイルは上下左右からSRXへと向かっていく。
リュウセイは機体を後退させつつ、放たれたミサイルへとロックを合わせ、SRXの両腕が再び前方へと伸びた。
「ハイフィンガーランチャー!」
SRXの両腕にある10本の指の先端から10条のビームが放たれると、それぞれの光条が迫ってきていたミサイルを貫き、ミサイルは爆発して姿を消していく。
SRXからのビームを逃れたミサイルも、他のミサイルの爆発に巻き込まれて誘爆を起こすこととなり、姿を消した。だがキラ・ヤマトにとっての本命はばら撒いたミサイルではない。
G・ミーティアは先端の大型ビームサーベルの起動を終えて、その巨大なビームの刃をSRXの頭上から振り下ろす。
だが対するSRXも胸部内部からゾル・オリハルコニウム製の剣を取り出し終えていた。
「うおおおぉぉぉっ!」
天上天下無敵剣というリュウセイによる独特のネーミングで呼ばれる剣がG・ミーティアのビームの剣を受け止めると、そのまま今度はSRXとG・ミーティアの力比べが始まった。
もし仮にSRXに相対するのが何らの改良等も施されていないミーティアであればビームサーベルの出力、機体自身のパワーともに相手にならなかったであろう。
だが現在SRXと鍔迫り合いを行っているのはシャドウミラーのやってきた世界のジガンスパーダをベースに開発された、いわば全く新しいミーティアである。
大型ビームサーベル2本分のエネルギーを1本に集めることで長時間でなければEOTを利用した地球圏最強クラスの武器とも渡り合うことができるようになっていた。
結局一進一退を数回繰り返した後、これ以上のビームサーベルへの負担を嫌がったキラ・ヤマトの方が機体をいったん後退させた。
他方で、キラ・ヤマトとG・ミーティアに対峙しているリュウセイ達はG・ミーティアを想像以上に厄介なものだと感じ始めていた。
なんと言ってもジガンスクードそっくりなだけあって防御力が高いし、機体のパワーも特機クラスに分類可能なほどにあるため、喰らった一撃が致命傷になる危険がつきまとう。
しかも多数のミサイルを始め、小型・大型のビーム砲、大型ビームサーベルなどの手数も多い上に、先ほどからSRXの攻撃を予想したかのような動きをする
そして、対峙しているリュウセイ、ライ、アヤの3人はこのような相手に遭遇したことがある。
それは、旧教導隊の1人テンペスト・ホーカー、リュウセイにとっては因縁の相手ともいうべきテンザン・ナカジマ、アードラー・コッホにより無理矢理戦闘を強制されたシャイン王女、
最近ではさきほどまでシンが押さえ込んでいたスクールの長姉オウカ・ナギサ達であることは言うまでもない。
「こいつ…さっきからこっちの動きを…!まさかあの機体にもゲイム・システムが!?」
「おそらくな。だがスクールの人間と違ってあのパイロットは自分の意思で戦っているはずだ。こちらからの揺さぶりはできんぞ」
真実を知らないライの言葉は覇王が聞けば鼻で笑われてしまうようなものかもしれないが、真実を知らぬ者にできる推測としてはおかしいところはないであろう。
そして、皮肉なことに自分自身の正体と存在意義について正確に知らされていないキラ・ヤマトが対峙するSRXチームに向けて口を開いた。
「どうして君達は戦っているんだ!?連邦軍のしてきたことを聞いたばかりじゃないか!」
「ふざけんな!わざわざ余所の世界に来てまで暴れまわりやがって!
「戦いたくもない人たちを戦わせてる連邦を放ってはおけないじゃないか!
「てめえらといるババアがさっき言ってたことはどうなんだ!?」
「でも…あの人はラクスに手を貸してくれている…だから…!」
「だから何なんだ!?テメェらは人間を一体なんだと思ってやがる!」
ラトゥーニ達からスクールでの悪魔の研究とその悲劇を聞かされているリュウセイがアギラら旧スクール関係者とその協力者であるラクシズに対して持つ感情はシンがそれらに対して持つものと重なるところが多い。
シンとリュウセイ。それぞれ異なる世界で戦い続けながらも、似たような所業と対峙し、それに対する怒りを覚えてきたことには共通する部分がある。
「リュウセイ!話は終わりだ、いくら話した所で態度を変える連中でもあるまい。それにさっきのような攻撃が何回も繰り返されたら隊長やマイ達も危ない。増援が来る前に一気に勝負をつけるぞ!」
「おう!アヤ、まだいけるか!?」
「ええ…!フィールドの維持は任せて!」
「ようし…!いくぜえぇぇっ!!」
リュウセイの掛け声とともにその念の力を受けてゾル・オリハルコニウム製の剣の輝きが増していく。
ライの微細な機体制御とアヤによる念動フィールドの収束によって、SRXの周囲に展開している念動フィールドはより密度の濃い、頑強なものへと変化し、剣の強度もさらに強固なものへとなる。
刀身に集められた膨大なエネルギーはそこから漏れ出して、オーラが溢れ出ているかのような形状の剣が形成されると、
SRXは機体各部のブースターを一斉に開き、剣の切っ先をまっすぐ前方に向けて、これまでにない速度でG・ミーティアへと向かっていった。
「天上天下念動爆砕剣っ!!!」
「そんな簡単にはいかないっ!」
距離が比較的開いている所から一直線に攻め込んできたことはキラ・ヤマトにとっては到底驚くべきものではない。その行動は容易に予想できていたものであり、それに対する準備は完了していた。
G・ミーティアの左右の砲塔から放たれた大型のビームは、距離を詰めつつあったSRXに直撃して大きな爆発が起こる。
G・ミーティアの前方に広がっていく爆煙は放たれたビームのエネルギー量の多さを物語るものであったが、それ故に実際に相手の機体がどうなったのかを知ることを困難にさせている。
「やった…の…?!」
G・ミーティアの武装の中でも最強クラスの攻撃が直撃したことは確実であり、手応えがなかったわけではない。
また、これまでの経験を踏まえる限りでは撃破又は相当のダメージを与えることができたはずだと考えられる。
だが、次の瞬間にゲイム・システムがキラ・ヤマトにあるビジョンを見せる。そして、次の瞬間には空中を漂う爆煙の動きに変化が生じた。
その中からエメラルド色に美しく輝く刃、そして奥に鋭い二条の輝きを持つゴーグルがキラの目に映り、続けて先程以上に念動フィールドに覆われたSRXの姿が映り込んできた。
とっさにキラはその攻撃に対処するべくG・ミーティアの前方、SRXの進行方向の先にG・ウォールを展開させる。
SRXの前方に展開したG・ウォールとエメラルド色のオーラを纏ったがごとき念動爆砕剣がぶつかり合うと、これにより行き場を失ったエネルギーが八方へと飛び散って周囲のものを吹き飛ばしていく。
リクセント公国の王女シャインの予知能力の研究により完成を迎えることが出来たゲイム・システムのおかげでSRXの攻撃をいち早く知りえたキラとしては、最大出力でG・ウォールを展開していたことが幸いした。
リュウセイらもG・ミーティアの一撃一撃には強い警戒心を抱いているが、キラ・ヤマトも連邦軍最強とも言われるSRXの高い攻撃力には小さからぬ恐怖を感じている。
必死にG・ウォールの出力調整をしてSRXの攻撃を防いでいるキラと、それを打ち砕くべく渾身の力と念を込めて剣を押し込もうとするリュウセイ、
その双方の意地がぶつかり合った結果、G・ウォールの表面にわずかに日々が入り、その表面に柄から切り離されたエメラルド色の刃が突き刺さった。
他方、それと同時にSRXの動きの勢いも完全に殺されてしまい、キラとしては相手の攻撃は防ぎきることに成功し、まさに計画通り、という意識を少なからず抱いている。
だがリュウセイの目は未だ死んではいなかった。むしろ刃の先端が突き刺さったときから次の行動を始めている。SRXは、手の空いた右腕に収束させた念動フィールドを再びまとわせて、その拳を振り上げる。
「うおおぉぉぉっ!破ぁっ!!」
リュウセイの咆哮が戦場に響き渡ると、SRXがその拳を突き刺さった刃に振り下ろし、力任せにゾル・オリハルコニウムの刀身を最後の一押しとばかりにG・ウォールの奥へと押し込んだ。
いかに強固なダムの壁であってもほんの小さな一穴さえあれば崩壊するように、初撃で一穴が開いていたG・ウォールは続く拳撃によってまず小さなヒビが走り、そのヒビはより多く、より大きくなり、
間もなくG・ミーティアを守護していた防御壁は粉々に砕け散って姿を消した。
さらに、凄まじいエネルギーが込められた拳撃により新たな運動エネルギーを得てフィールドを突き破ったエメラルド色に輝く刃は、
そのまま一直線にミーティアの中央やや左へと突き刺さり、間もなく大小幾つもの爆発が起こり始める。
「念動…爆砕!!」
そして、ミーティアの奥深くへと突き刺さった刃がリュウセイの叫びに呼応するかのように再び流動的なエネルギーへと形状を変化していく。
膨張を始めたそのエネルギーは中心から機体を飲み込みだし、間もなく機体全体を飲み込み終えた。
他方、爆砕剣の直撃を免れることができたキラ・ヤマトは、ゲイム・システムによってミーティアの限界をいち早く知らされたため、
膨張するエネルギーに飲み込まれる直前にラピエサージュをG・ミーティアから切り離して脱出することに成功していた。
4人目のキラ・ヤマトにインプットされている情報の中でここまで追い込まれたのは、先ほどまで戦っていたシン・アスカのインパルスと戦い、フリーダムを失ったとき以来である。
また、キラ・ヤマトとしては、特機と戦ったのは初めてであり、そのパワーがここまでのものだとは思わなかったというのも原因だと考えていた。だから今、ミーティアを撃破されたことは仕方ないのである。
そして、このまま正面から戦ったのでは勝ち目があるとは考え難く、ミーティアはもう1機あるのだから、なんとしてもエターナルの下へと逃れて再びドッキングすればいい、彼はそう考えていた。
だがSRXから逃れ、母艦たる覇王の居城エターナルへと戻ろうと動き出したラピエサージュのモニターは突如として暗くなり、機体が鳴らす警告音はさらに大きくなり敵機の接近を告げる。
「!?」
モニターが暗くなる、それはつまり太陽光が遮られていること、ひいては自機の上空を取られてしまったのだということを意味している。
そして、上空を見上げたキラ・ヤマトの左右の眼に映ったのはラピエサージュへ向けて先ほど以上の勢いで突っ込んでくるSRXの姿であった。
「超必殺…!ブレードキィィィック!!!!」
脚部に重点的に、そしてブレード状に収束させた念動フィールドを纏ってSRXは再びラピエサージュへと突っ込んでいく。
機体全体を覆う念動フィールドと背部バーニアから噴出する推進剤がかけ合わさることによって、SRXは両翼を大きく広げる白鳥のようにも見える。
そして、ゲイム・システムが攻撃を予知するものであったとしても、回避が不可能であれば、敵の攻撃を迎撃するほかはない。
だがミーティアから脱出するのに精一杯でガンレイピアを失い、ソリッドソードブレイカーはヴァイサーガによって撃破され、
残る武装はマグナムビークとマシンキャノンのみであるラピエサージュには攻撃の勢いを殺す、という形での迎撃は不可能である。
もはや打つ手なく、わずかでも激突の衝撃を緩和するべくラピエサージュは後退しながら両腕をコックピットの前でクロスさせてガード態勢を取る。
SRXの渾身の蹴撃は、まず激突したラピエサージュの両腕を粉砕するとともに、続けて激突したコックピット部分を内側へと大きくめり込ませ、機体のフレームをも激しく歪ませた。
キラ・ヤマトにとって唯一幸運であったことは、激突するときのエネルギーが大きすぎたせいで両腕を砕かれたときにほんのわずかに機体がずれて、コックピット部分が一撃で粉砕されずに済んだことである。
衝撃で吹き飛ばされたラピエサージュはそのまま地面へと激突し、周囲には大量の土ぼこりが舞う。
コックピット内部のキラ・ヤマトも、体がめり込んだコックピット部分によって潰されたことの激痛に加えて、機体が地面に激突したときの衝撃で意識を失っていた。
「トドメだ!」
そう言ってリュウセイがSRX頭部のゴーグルにエネルギーをチャージさせてガウンジェノサイダーの照準をラピエサージュへと合わせた。
しかし、ラピエサージュをロックオンし終えて手元のトリガーの引鉄を引こうとした直前に、思わぬ乱入者が現れた。
「ビルトファルケンが来るぞっ!」
ライの警告を受けてとっさにリュウセイは機体を後退させる。そして次の瞬間にはSRXがこれまでいた所をビルトファルケンから放たれた一条のビームが通り過ぎていった。
その隙にエルアインスと、オクスタンランチャーを手に持ったままのビルトファルケンが、ラピエサージュの両脇を抱えて後退を始めた。
それにあわせてエターナルから撤退を命ずる信号が上がり、残ったDCの機体も一斉に戦場からの離脱を開始し始めた。
そして、アギラの指示を受けて戦闘不能になったラピエサージュを回収するべく、リュウセイ達SRXチームの前に現れたのであった。
結局、リュウセイは手元のトリガーを引くことができず、できたのはただその両腕を震わせることのみであった。
SRXであれば照準を再び合わせて止めをさすことは容易である。だが、シンやアラドと同様に、ラトゥーニやアラドのスクールでの仲間を巻き添えにすることはできるはずもない。
そして、リュウセイがやり場のない悔しさを何とかして抑えようとしているところに、ファルケンらを追っていたヴァイサーガとビルトビルガーが合流する。
「すまないリュウセイ…ファルケン達を抑えきれなかった」
「いや…しょうがねえよ。ラトゥーニの話じゃ相手はスクールの中でも手強い連中みたいだからな。それにこっちも奴を取り逃がしちまった」
「いや、アイツが生きてたんなら俺が止めをさせばいいだけだ、気にすんなよ。それより早くハガネに戻った方がいいんじゃないか?きっとマイ達が待ってる」
「ああ…そうだな」
その後、ハガネに戻ったシンやリュウセイ達をまず出迎えたのは先に戦場から離脱したマイとラトゥーニであった。
リュウセイ、アヤ、マイ、ラトゥーニが何か話を始めるとともに、その近くでライとヴィレッタも何かを話し始めている。
特にマイとアヤにはほんの小さな溝があったのかもしれないが、お互いの気持ちがわかっている以上、特に問題はないであろう。
過去に妹を失ったシンにとっては、姉妹が強い絆で結ばれていることを見られるだけで今回の戦闘で奮闘した甲斐はあったような気がする。
そして、アメリカ大陸へと近付いていくハガネの中でシンはこの世界のアメリカ大陸で出会い、姿を消した、兄想いの妹のことをふと思い出していた。
男の意識は深い闇の中にあった。裏切者のコーディネーターと言われながら友人達を守るためにストライクと呼ばれたMSに乗って古くからの友人や同胞と戦い続けた日々は彼の精神を限界まですり減らしていった。
そして、ヤキン・ドゥーエでの最後の戦いで男は、守ろうとして傷付け、救おうとした相手を目の前で失った。
己の出自からスーパーコーディネーターと呼ばれたその男を憎み、呪怨の言葉を浴びせたラウ・ル・クルーゼを男に残された唯一の物、最後の力で滅ぼした後、その男―キラ・ヤマトの心、精神というものは一度崩壊した。
そして、彼に残った「力」がその意思に反して利用されぬよう、あまりにも傷付来過ぎた心がこれ以上傷付かぬよう、赤い髪の女フレイ・アルスターの本当の想い、最後の力が、キラ・ヤマトの精神を封じ込めた。
それ故、キラ・ヤマトはその肉体が自然に朽ちるその日までもう目覚めることはない…はずであった。
これをよしとしない者がいたからである。
己の野望を実現するために、その者―CE世界という乱世に降誕した覇王ラクス・クラインにはどうしてもスーパーコーディネーターの力が必要であった。
そのため、連合が開発した精神制御装置を入手し、ヤキン後にオーブに潜伏して力を蓄えつつ覇王はスーパーコーディネーターのオリジネイターであるキラ・ヤマトを目覚めさせようとしていた。
当然のことながらそれをフレイ・アルスターは妨げようとする。しかし、彼女は戦争が再び勃発した連合・オーブとプラントとの戦いの期間中キラ・ヤマトの心を守り通すことはできたものの、とうとう限界が訪れる。
(ごめんなさい…もう…私の…力……は…)
(え、フレイ?それってどういう…!?)
まだ事態がよくわかっていなかったキラ・ヤマトは己に生じた異変にようやく気付いた。自分の両足にピンク色の何かが纏わり付き始め、それはどんなに力を込めても振りほどくことはできなかった。
続いてキラ・ヤマトが自分の足元から、まるで底無沼に引き込まれるが如く、ピンク色の中に沈んでいくことに気付くと、それに抗おうと残された上半身を必死にバタつかせるのだが、自分が沈んでいくことを止めることはできない。
これとともに自分の意識がぼんやりと薄れはじめ、その部分がピンク色の何かに侵食されていくような感覚がキラ・ヤマトを襲いだす。
そして首の下まで沈んだ彼は、残った力の限り左腕を伸ばしてフレイ・アルスターの手を掴もうとするが、その指が女の手に届く寸前に、彼の意識は呑み込まれた。
その頃、覇王の居城エターナルの奥深くにある覇王の自室では、その主がプラント製の最高級のソファに深く腰掛けながら今後の対策を考えていた。
結果としてG・ミーティアを1機失う結果にはなったが、連邦軍最強ともいわれるSRXにそれなりに対抗してみせた以上、性能テストとしては十分であるし、SRXの力を実際に見ることできた。
あとはテストタイプではない、今回の戦闘データも踏まえた完全なモノを作ればいい。イーグレット・フェフからマシンセルの提供を受けることができれば、さらなる性能強化も期待できる。
パイロットは4人目がもう使えないようであればしばらくはアスラン・ザラをメインに使うことでも十分であろう。
あとはシャドウミラーと結んで戦力の充実を図った上で元の世界に帰還すればよい、そのように考えていたときであった。
奥の部屋で何か物音がするのを覇王の耳が捉えた。その部屋にあるモノは限られており、物音から連想される自分の予想が正しければそれは覇王にとって正に福音となる。
念のため用心しながら奥の部屋の扉を開いた覇王の目には、およそ2年ぶりに開いたゆりかご、そしてその中からゆっくりと体を起こそうとするオリジナルのスーパーコーディネーターの姿であった。
かつてNJキャンセラーを手にしたムルタ・アズラエルが、誰の目もない自室でしたかのように、体と腹の底から湧き上がる声を用いて強大な力を手に入れた喜びを現したいという欲望を必死に抑えながら、
普段と変わらない、CE世界の新たな人類コーディネーターを統べる者としての微笑を浮かべながら覇王はゆっくりと口を開いた。
「おはようございます、キラ」
そして覇王は心の中で呟いた。
これで手駒は揃った!
つづく
総帥でなくてすいませんwリアルにジョブチェンジすることになり、引継ぎやらニュージョブのための勉強とか色々忙しかったりしました
そしてもう9月なのにオチが超電王w
おお!おひさー
乙でござりまするー、しかしこれでオリキラvs4thキラの対立ネタが発生したか
某バカピンクのとは逆にコピーが不具者なのねー
おーつ!!
さてさて、どうなることか
このキラが仮に後々改心したとして、家族の爆殺実行犯には違いないしねぇ
受け入れられるか・・・妥当なとこで命で購うことになるだろうかね
覇王道連れとかで
新ジョブを☆☆☆できるように頑張ってください
・・・そういやアイツもDFFだとあの声だったなぁ
全然印象が被らないからいいけども
GJ!
SRXとタイマンでここまで戦えるとか、G・ミーティア強ええ・・・
SRXやダイゼンガーとかならともかく、ヴァイサーガでこれに勝てるのか
やはりヴァイサーガも強化改造をほどこさねばならんな
マントつけてることだしクロスボーンフルクロスみたいな方向性がいいか?
違いますよ。11氏の作品でシンの家族を殺したのは「二人目」のキラで、オリジナル・キラが殺した名持ちキャラはニコルとクルーゼぐらいですよ。
>11氏におけるキラの経歴(多少うろ覚えの箇所有り)
一人目(オリジナル)・生存…ストライクのパイロット→ヤキン戦でのフリーダムのパイロット→その後心神喪失状態でラクス達に洗脳処理を受け続ける→今回洗脳が完了した。
二人目・死亡…フリーダムの初代パイロット→メンデル戦でフレイに出会ったことで精神が不安定に→戦闘後、ラクスに殺される。
三人目・死亡…CE世界でシンが遭遇したのはコイツ→ストライクフリーダムのパイロット→新西暦世界でサイバスターに殺された。
四人目・生存…ラピエサージュのパイロット→一人目の復活で用済みに?
なにはともあれ11氏GJ!
>>279 それもそうでしたね
失礼
一人目はストライク止まりだったんでしたね
なんだか総帥の影響で、
別にヴァイサーを改造しなくても機体に斬艦刀さえ持たせれば、
なんでもずんばらりんできそうな気がする不思議!
ヴァイサーガには斬艦刀はあんま似合わん気がする
あれにはパワーで叩き斬る斬艦刀よりスピードでスパっと斬るような剣がいい
剛の親分、静のシンみたいな対比も作れるし
>>282 いや、力の親分技のシンじゃね?
ヴァイサーガっつかシンの機動傾向は静とは程遠い気が
巨大な剣でぶった切るのもいいけど
Gコンパチやヴァイサーガみたく剣をがりがり擦りつつ
めちゃくちゃな速さで敵に突っ込むのも好きだ
OG2の時点で使えそうな特機用の武器となると
設定上は参式の1号機に装備する予定だったけど龍虎王になったんで外伝で3号機が持ってる参式獅子王刀
本体はリシュウ先生用に調整中な零式斬艦刀
元はダイゼンガーに装備する予定だったGインパクトステークとネオチャクラムシューター
外伝まで封印中のガーディアンズ・ソード
OG1のあと解体されたっぽいヴァルシオン改のディバインアーム
こんなとこかね?
AMボクサーのGソードも調整次第で使えそうだな
元々SRX用のを改造しただけだし元に戻すと考えると結構簡単?
上の方で力の〜、技の〜と言う話が出ているが俺の経験上
達人の域にある人たちは力だろうが技だろうが、それこそ柔や剛の
技だろうが自在に使いこなしているものです。
では何故偏りが出るのかと言うと好みの問題だそうです(師範談
この話をしてくれた人は95kg(脂肪率15%)の俺を55kgの体で3〜4m弾き飛ばす
技の持ち主です…(その後、吐遮物で汚した畳の片づけを命じられました)
それってもちろん拳だよな?
剣術でそれだと化け物だが…
AMボクサーも、戦闘中に『こいつを使え!』と言いながらヒュッケバインから射出する手もアリじゃないかな。
やはりここは種らしく母艦から射出して…
「これを使うが良い!!」
「踏み込みが甘いな!」
「…こっちが取る前にストレートでいっちゃたよ」
総帥の書くシンは剣に生きる達人気質だが
11氏の書くシンにとっては剣は数ある武器の一つにすぎないイメージがあるから
剣をバージョンアップさせるようなパワーアップはないような気がする
11氏のシンは剣というか機体そのものが消耗品扱いだな
某最低野郎ばりの乗り換えっぷり
異能助平体とな
>>290 本来の演出は
飛来した剣が敵機に突き刺さる
↓
そこに自機が突っ込み、剣をつかんでさらに押し込む
↓
そのまま上に切り上げるまたは下に切り下げる
↓
再突撃で一刀両断
ですね、頭に浮かびました
>>292 ビルトシュバイン、ガーリオントロンベ、ビルガーを経由してヴァイサーガだからな
もうかれこれ4機目ってのはOGだと
鰤(ゲシュ、ヒュッケ、参式、虎)かパピヨン(ガーリオン、ランド、ラーズ、レイヴン)並だな
鰤はあと2〜3機くらい乗り換えが確定してるしな
シンの場合単純に現状でヴァイサーガ以上の機体がないから改造で凌ぐしかあるめぇ
ふと思ったけど、ヴァイサーガに運命のアレをスケールアップした特機用のVL積んだら強そうだよな。
なにせ、CE随一の超技術、核分裂で使えるブーストに使用可能な光子ロケット(笑)だし。
あの光の翼、理屈の上ではどんなコロニーレーザーよりも高密度・高出力の光線だから、
盾にすればなんでも受け止められるし、掠めて斬撃すればネオグラの装甲でもぶった切れんぜ?
その上、ヴァイサーガの機体特性やデザインにもマッチしている。
……なんか、序に光の翼を基にして超高出力レーザーソード作ればそれで済む気がしてきた。
エピオン並みにコロニーぶった切れそう。
ソウルゲインが何か魂みたいなの集めて強くなってるみたいな描写がOG外伝にあったから、ヴァイサーガも似たような機能ついてないかな
>>297 11氏はあんまり理系方面に明るくなさげだから、
総帥の方のヴァイサーガに期待だな
>>298 あれってアインストと干渉したからでデフォの能力じゃなくないか?
まああれもDML搭載機だから気合いでパワーアップしてもおかしくないけど
ヴァイサーガにデスティニーウイング付けて尚且つV2みたいな使い方できて
更にウイングパーツを剣と合体させて巨大なビーム剣とか
>>242 亀だけど
出さない1番の理由は
「自分を虚仮にしたバンダイグループに俺のFSSの版権を使わせない」というのが一番の理由
バンダイの横やりでZ〜CCAのメカデザ降板させられたのを根の持ってて
その上CCA降板直後、バンダイがFSSのプラモ出してやるから
版権許諾しろと横柄な態度で迫ってきて
キレた永野が「あなた方には金輪際FSSの版権は使わせません、お引き取りください」
と追い返した
その後もブレンパワードでも似たような理由で喧嘩別れしたから
スパロボ参戦は不可能だと思うよ
永野には、あんまり触れない方が良いと思うけどね。
彼は自分の世界の中だけで仕事してる方が、自他共に幸せだと思う。
ガンダムファンにアンチ多いしね
まあ光が強くなると影も強くなるもんさ
>>305 ガンダムファンに罵られる位しか利用価値無いだろ
つか売れてるの?ガンダム好きでFSS好きはいないと子犬も断言してるし
ガンダム・FSSなんか両方好きなんて奴聞いたことない
スマン・・・その・・・両方というかロボならだいたいイケルくちなんだ・・・
嫌いじゃないな
ただ大好きって訳でも無い
HGのエルガイムは買ったけど
ガノタっつーかロボオタなんで大抵のは好きだ
>>311 若いガノタは物凄く嫌ってて吹くんだよな
>>307 昔は俺は両方好きだったが、現状どっちも止めてるな。
FSSはあまりにも先が見えなさすぎるし、ガンダムは種やOOがダメ過ぎるし。
FSSやエルガイムのメカは格好は良いのだが、プラモは「作りにくい、モロい、遊べない」の三拍子で、
全く魅力無いからな。
バンダイの技術云々ではなくて、デザイン自体がおもちゃ向きじゃない。
ガレキなら置物と割り切って作る層も居るが、プラモデルは売れないだろう。
ガンプラは、1年戦争関連のMGが充実してるんで、最近はたまに作ってるくらいだ。
種やOO関連は買う気が全くしないな。
ポージングが様にならないというのなら解らないでもないが
遊べないって超合金のノリで吹くわ
何を言うか
ブンドドはロボ好きの基本にして永劫回帰ぞ
FSSはキットがウェーブってのも悪い気がするが、確かにデザイン的にポージング決めて遊ぶ向きじゃあないよな。
ガレキみたいに、ポーズ固定ならいいんだろうが。
あと俺はミスターブシドーは大好きだったりする。
>>316 Waveが最初に出したFSSインジェクションキットはバンダイ長野工場の設計製造だったけどね
プラモ狂四郎は永遠の憧れ
数々の名SSが生まれ
こんなにも良い気分が買えるなら・・・
これまでアニメによって負った犠牲など安い・・・
安いわけないだろ…
ガンダム業界や小売店が負った傷がどれだけ深いことか
閣下の山脈や十円カオスの投げ売りを忘れたか?
>>319 ZとZZ除けば概ねリアル路線だし
90年代はカトキがガンダムプロデューサーやってくれたからアニメもロボット造形もガンプラも
劇的に進化したよ
ザンボットからリアル路線だよ
ザンボットとトライダーG7はリアルな世界観でスーパーロボットが戦うパターンだな
ファーストもリアルな世界観でスーパーロボットが戦う話だろ
性能やらなんやらはともかくとして
一応「軍が開発した兵器」だからリアルということにしておけ
そうなるとダンクーガもリアル系になってしまうがw
>>327 ノヴァで葉月博士もウィルからデータ貰ってダンクーガ作ったなんて後付されたけどな
あの後付は決して認めん
だからノヴァもくらら以外認めん
ダイガードだって軍が制作したからリアルロボになるぞ。
でもトタン装甲的意味でもリアル系だけどあれはファンから熱血リアルロボと呼ばれてるぜ。
ステキな博士や教授や高齢者が一緒か、そうじゃないかでいいじゃん
とすると素敵なレイ博士がいる初代はスーパーになるな
あと高齢者の多いVもスーパーだね
まあ、実際に分類する場合は戦闘の描写が
回避メインか防御メインかでスーパーorリアルを決めてるみたいだけど…
そうなると、いよいよ初代の分類に困るわけだが…
回避メインなマジンガーはリアルですね、わかります
結局総合判断になるんだから画一的な判断なんて不可能だろ
11氏の方はVLとテスラ・ドライブが有れば両者の兼用で推進剤無しが現実的に可能になるから強力だわ
運命の残骸がマオ・インダストリーとテスラ研のどちらに送られたかで状況が変わってくるけど
ピンク側もストフリのVLが有ったけどマサキに機体ごとスクラップにされた(残骸も回収出来てない)
から予備のパーツがあっても再現は難しいだろうし出来ても時間が掛かる
隠者のVLが残ってるんじゃないの?
確かあれも設定上VL搭載のハズだが
VLとテスラドライブって何がどう凄いの?
誰か文系の俺に教えてエロい人
後者は慣性と重力を無視できる
>>338 テスラドライブ→小さな推力で大きな効果を得る
VL→エネルギーさえあれば推力が得られる
二つを合わせると推進剤抜きで電気さえあれば自在に飛びまわれるようになる
デスティニーは核分裂炉とVLだけで空中で静止できるほどの推力を出していたので
プラズマリアクター搭載のグルンガストなんかはえらい事になる
和田のVLは空間操作できるとか聞いたんだけどマジか
>>341 むしろ運命のVLが出来ないと言ったほうが正しい。
本家のVLも空間操作してるし
運命のはVLの近似型だから、まあそれでも推進力得るには十分だけど
種作中に出てくるVL系技術搭載機の中では運命に使われてるVL技術が一番下だし
>>341 和田というかターンデルタやスターゲイザーのVLにそういう能力がある
例としてはデルタのエネルギーを空間跳躍で送るとかスターゲイザーのビームリングとかな
んで和田のはスタゲの「発展型VL」だからそういう能力がついているだろうという想像であって確定事項ではない
ちなみに運命のVLは基礎理論が同じなだけの類似品。ただシンはそのパチモンVLで
スタゲみたくビームをコントロールしたかのような描写があるそうな
あとVLは単体ではただの帆だから勘違いしないように
運命の場合おそらく背部ウィング内にVLを展開、その後方から特殊な光圧を吹き付けて
推進力にするというよくわからん機動方式をとってるものと思われ、設定上は
以上雑学でした
V2と似たような物か?
電気エネルギーを何らかの粒子に(OOのGN粒子みたいな物)変換して噴出、
その反作用で推進するのかとおいらは解釈していたが...
似たような、というかV2のパk…
>>344 運命のVLは、単純に光子ロケットだろ?
つーか、自分で噴出したものを自分の背部にある翼で受けて前方に移動するなんで、それこそ空間でも歪めない限り不可能だ。
VLの同系技術は、光圧を任意の移動方向に制御する為に、放出する光子を翼の形状に保持、操作する部分だと考えるほうが自然だが?
そうすると、光の保持&コントロールする力場?みたいなものが存在するわけだから、それを利用したビームのコントロールも一応可能になる。
追記すると、スタゲと和田のVLは、本来はまともな推進力にはならない。
何でかって言うと、光圧ってのは凄い微弱な力なんでそれを効率よく捕らえる為に光帆が必要になる。
それも、全長数キロとか、そういうレベルで……。
だから、光圧受けてダッシュできるなら別に光帆なんざ作らずとも光に圧されて移動してしまう。
運命のVLは、理屈の上ではダッシュや戦闘機動も可能だけれど、
そのために必要なエネルギーの量は、ぶっちゃけ太陽の全光量一点集中しても無理なレベル。
つーか、微小な加速を延々続けて亜光速に至る、ひ推力で勝負するタイプの光子ロケットにすら、
最低でも反物質炉が必要になると言われてるくらい。
>>333 何度も言われてるけど、スーパーとリアルの分類は別にスパロボ発祥じゃなく
80年代にはもう出来上がってた分類だから
たとえズムシティがあれだろうとw1stガンダムはリアル系というのは動かしがたい
>>347 光子じゃなくてビームエネルギーならゲシュマヒツィパンツァーで制御してると考えられるし
それならビームを反射するのも納得できるんだがな…まんまV2だが
光子を任意方向に制御とか空間制御つーか重力制御レベルの技術いるんじゃね?
いや、それ言うならスタゲも一緒だろ?
光帆はその名の通り帆なんだから、
帆を動かさず受ける光の方向が変わらないなら、
同じ方向にしか移動できない。
だから、スタゲのアレだとスタゲが体を動かして調節しない限り、
移動方向は変えられないよ。
でも、VLの技術の根本が、
光子の保持とその力の方向性の制御にあるとすれば、
スタゲの起動も同系異種の技術であるディスティニーの翼もそれで説明が付く。
「まあなんて美味しいスシなのでしょう」
「そうだね、僕がオーブにいたときもこんなに美味しい寿司は食べたことないよ」
「まさかシンにこんな特技があったとはな」
ラクス・クライン、キラ・ヤマト、そしてクライン派が栄華を極め、
政治・軍事を我が物にしているプラントに嫌気が差したシンはオーブに戻り、ささやかな退職金で回転寿司屋をオープンさせていた。
それからしばらくして、評判を上げたシンの店には外遊でオーブに寄ったラクス・クライン、キラ・ヤマト、
彼らをもてなすアスラン・ザラが今日、シンの店を貸し切っていた。
三人は寿司レーンに流れる皿に手を伸ばして食欲という本能の赴くままに寿司を口に運んでいく。
その一時間後、用意した全てのシャリとネタを調理しレーンに流し終えたシンは近くにあったおしぼりを手にとり、腋の下に延ばす。
他方食事を終えた三人はその礼をするべく厨房へと歩き出していた。
そしてSTAFF ONLYと書かれた紙が貼られている扉のノブをアスランが手に取り、扉が開かれたとき、彼らの時は止まった。
彼らの目に映ったのは、臍の下から太ももまでを覆う藁の腰簑を纏い、
シャリでカピカピになった左右の腋の下を拭うシン・アスカの姿であった。
以後、ラクス・クライン、キラ・ヤマト、アスラン・ザラは謎の原因による拒食症となり、
残りわずかの人生を栄養の点滴無しに過ごすことはできなかった。
そして、この出来事は、後にアングラ社会においてはラクシズ崩壊の始まりとなったアスカスシ・クライシスと呼ばれ、
脈々と語り継がれる呼ばれる事件となったのだった…
誤爆りました…すいません…
しかもトリ外し忘れるとか…痔並に迂闊で残念じゃねぇか…orz
ネコジタ谷の大きな悪魔かw
腰ミノは見た、スネ毛は死の香りwwwクソ懐かしいwwww
なんとなく思ったがOG世界技術で運命を改修したらどこまで強くなるだろう
動力をプラズマジェネレータorリアクター、疑似VLをテスラドライブに変えるだけでも
けっこうなパワーアップだと思うがこれ以上だとなにができそう?
名無し砲をオクスタンライフルに
>>357 いやむしろグラビトンライフルだろ
んでアロンダイトは斬艦刀(一発変換で斬漢筒orz)かオルゴンソード辺り
いや、擬似VLは主機出力に合わせて再設計したものを乗っけるべきだ。
そもそもテスラドライブは擬似慣性制御なんで、元手となる運動エネルギーは必要になのだよ。
その点運命のVLは推進剤いらずな上に、出力と耐久性さえ足りていれば亜光速まで加速可能、
更に見た目で加速方向が全くわからない……。
これとテスラドライブを組み合わせれば、なかなか面白い事になるぞ。
後は、手のパルマの性能を上げて、Ζのビームナギナタみたいな感じで、
低出力連射型、高出力近接型、サーベル型とモードチェンジできるようにすれば、
高機動型MSとしてかなり完成する。
>>359 元手となつ運動エネルギーいらないよ。推進剤非依存推進(PIP)機関としてもつかえるようだし
実際アステリオンAXが全部テスラドライブのみで動いてるからね
OG外伝以後だと、修羅神を元にした新しい関節機構が開発されそう
あいつら明らかに他のロボと動き違うし
>>361 んでもって非常に柔軟な関節構造と高い追従性をもったバルゴラが生まれると
>>349 亀だが
>たとえズムシティがあれだろうとw
どういう意味?
>>363 まるでビグザムの上半身にでもなりそうなデザインの建物が存在しましてね・・・
装甲悪鬼村正の体験版をやってたら、レールガン居合いに吹いた
総帥のシンなら使ってもおかしくなさそう
>>363 >>364も言ってるけど
人間の国家の首都なのに、まるで悪の帝国の基地のようなデザインなんだよw
ドズルも明らかにキャラデザがキャラ設定と合ってないよな
怪我の巧妙で「見た目は怪物だが中身は熱い武人で良き上司で良き家庭人」といういいキャラになったが
F完のドズルとの決戦は一番敵を倒したくないと思わせるシナリオだった……
最終決戦はジャブロー上空に青葉区が浮遊して総力戦みたいな感じだったら・・・
>>357 ほんでもって円卓の騎士繋がりで名前をフェイルノートにでもすればいいな。
>>362 バルゴラはエリック博士(グランゾン開発者の一人)がソウルゲインのデータから作るんじゃね?
あれって修羅神並の動き可能だしなんかグランゾンに対抗できるスペックってあったから
スフィアが絡んでくるんじゃないかと
>>371 キャラ被り気味だもんな
ジエーとエリック
もう平行同位体でも驚かないぞ
ジ・エーデルとジエー見た後じゃ
>>360 確かにそれはそうだけどアステリオン系の機体は元々戦闘用の機体じゃないし
量産した場合兵器としての信頼性に欠ける可能性が有る(量産機に積むには性能が過剰すぎる)
値段の関係で量産は出来ても少数に限られるだろうし今までに無い新機構は熟練兵なんかに評判が良くない
>>373 大丈夫、新兵から普及させて行けばいい
切り替えられない熟練兵は淘汰されていくだろうし
いやだからプロジェクトTDでアレだけ訓練だとかに時間が掛かって人も選ぶ上
整備も複雑になってるだろうから主力量産機には向かないだろ
量産機に求められるのは操作性・量産性・整備性・コストなんだし
TD系機体は従来の量産機と運用ノウハウが違いすぎるし性能が偏りすぎで多彩な任務に
対応出来ない、その点VLとテスラドライブ兼用なら従来機の機能の拡大だから問題ない
>>376 字の並びの所為で、某闘将のヒロインとライバルの父親かと
>>360 色々亀レスだけどさ、他の推進機関を持たない、テスラドライブのみによる航行システム為に、
プロジェクトTDは何段階にも分けて機体を開発し、テストを繰り返しながら新型機を設計開発したわけだろ?
恒星間航行の為の、推進剤要らない駆動システムの完成の為にさ……。
ディスティニーの改修後付にテスラドライブだけの運動システム積むのはどう考えても無理じゃね?
機体データの後継機や新型機の、改修して後から積んだテスラドライブ云々といった記載は、
全部、バーニアなんかと併用して用いるタイプのテスラドライブだと思うんだが?
>>358 もう全部ガナリーカーバーに任せた方がいいんじゃないかな
>>379 いや待て、そもそも単独での恒星間航行の為にはそんなしょっちゅう
きちんとした整備が必要なようでは困るのだが。
>>382 実戦投入する場合、だろ?
元々、ああ言った機関で恒星間航行などの超長距離移動を行う場合は、
比推力(ながーい期間低出力を出す)で速度を出すのが普通……。
瞬間的な高出力が必要とされる戦闘機動とは、負荷の掛かり方が根本的に異なる。
言ってしまえば、
外部からのエネルギー供給要りません、ノーメンテナンスで百年持つぜな超高品質ビルと旧式な要塞、戦闘後に沢山の保守点検が必要なの、どっち?
といった所だ。
それに大体、あのシリーズはOGではまだ試作段階だし、完成したアレにしたって、恒星間航行機として十全かといわれれば大いに疑問だ……。
>>380 知ってるか?
麒麟・極って只の分身じゃなくて、無数の平行世界から大量のツヴァイザーゲインを呼び出してフルボッコにする技なんだぜw
そしてガン見してるだけと……
>>385 戦闘が終わっても平行世界からの呼び出しが掛かるようになる
諸刃の剣だな…ついでに同じ敵を何回も攻撃しなきゃならんし
相手が強いと平行世界で死ぬかも知れんし忙しい技だ
けど、ミラコロを本当の分身へって発想は悪くないかもな。
OG世界のフィールド技術で、ミラコロを固定するドラグーンっぽいのを作れれば、
フィールド体当たり攻撃を行える戦闘機動可能な分身が作れるからさー。
運命のバーニア取っ払って運動系をVL+TD併用期間にすれば、光以外は放出しなくなるわけだし、フィールドで囲めば相当誤魔化せそう。
OG世界なら、魔を断つ剣みたいな無限パルマとかできそうだ。
>>388 最終的に
「野郎、ぶっ殺してやる!」「きゃあ自分ごろし」
になるわけですね、わかります
>>389 OG世界でもすでにASソレアレス・ASアレグリアス のプリズムファントムあるじゃん
幻像はもちろん本来の用途が光学迷彩だから隠密性もアップの一品だぞ
ドラグーンの関してもエルマ級のAIもしくはダミーファミリア使えば楽勝で使用可能
スクラップにしたアッシュセイバーからパクレばよくね?
武装がグチャグチャになるよ!
実はロウもOG世界に来てたりとか
まあ時系列的にヴァストレイの後になるだろうけど
>>392 あれってWシリーズ系の人造人間しか使ってなかった気がする
リープスラッシャー・ファングスラッシャーもあるけどこれは一個だけだしな
もうモモゼインがアシストやるでいいじゃん
お久しぶりです。頭を冷やしていた660です。投下いたします。
ディバイン SEED DESTINY 第十八話 青天
グラキエースとウェントスが、二人がかりで戦ってなおイグニスと互角近い戦いしかできなかったのには、無論理由が存在する。
本来同格といってよいグラキエース、ウェントス、イグニスであるが、グラキエースとウェントスは製造後まもなくして、ルイーナから離反した為に破滅の王より供給されるエネルギーが断たれ、与えられた力を完全に発揮する事が出来ずにいる。
また、睡眠も食事も不要な筈の擬似生命体メリオルエッセの肉体も、その頑強さを支えるエネルギー源が断たれた為に、人間同様に食物の摂取などによるエネルギーの補充を必要としていた。
グラキエースとウェントスは、他のメリオルエッセとは異なり、この世界で再生される以前の記憶を有していて、その記憶が理由でルイーナから離反し、また離反した後もこうして敵対の道を選ぶ事になっていた。
離反当初はまだ他のメリオルエッセと変わらぬ力を保持していた二人も、離反から時が経過するにつれて徐々に力を失いはじめ、単機ではルイーナに残ったメリオルエッセには勝てないまでに弱体化している。
見方を変えれば破滅の王からのバックアップが無い場合の、本来メリオルエッセが持って生まれた能力のみの状態とも言えよう。
このような理由によって、二人はイグニスを相手に互角の戦いを演じる事となったのだが、そこに新たな乱入者としてDC所属の若きエース、シン・アスカが加わり舞台は新たな一幕を迎え、そして幕を下ろさんとしていた。
グラキエースとウェントスとの戦闘で多くの被弾を受けて、傍目にも損傷が見えるイグニスのインペトゥスと、二十メートルほどに縮小した斬艦刀を構える飛鳥インパルス、その左右やや後ろに佇むファービュラリスとストゥディウムが対峙している。
インペトゥスの業火を散々に受けて表面が融解し始めているファービュラリスの盾を、グラキエースは投棄しようかとも考えたが、予備があるわけでもないかと思い直す。
幸いにして、ファービュラリスもストゥディウムも実弾系の武装はない。機体の動力さえ生きていれば半永久的に戦闘は可能な仕様だ。そのパイロットであるメリオルエッセには三年ほどで細胞が崩壊すると言う寿命付きではあるが。
新たに姿を見せたルイーナ側の増援であるアクイラは、アクセルのソウルゲインと、ジニンのアヘッド、タックとマリナのガンアークの四機掛かりで抑え込んでいる。シンの目にアクイラはイグニス同様に強敵と見えたが、形勢は五分五分と判断した。
残存しているルイーナの量産機と地下基地奥深くから姿を見せた増援部隊を相手に、刹那、ティエリア、ロックオン、レオナは数の不利を負いながら、善戦している。ルイーナの指揮官機のどちらかを撃退するか撃墜すれば、この場の戦闘の趨勢は決まるだろう。
逆にDC側が一機でも落とされると途端に苦しくなる事を、シンは理解していたからイグニスとの決着をいささか急いでいた。
自分が最も得意とする接近戦で最大の戦闘力を有する飛鳥シルエットを装備し、一応味方と判断できるのが二機、こちら側についている。欠片ほども不安を抱かずに背を預けるには、まだ心許ないが、勘は大丈夫だと告げている。
そして、これまでの激戦でシンを生き残らせてきた大きな要因は、この勘であった。故に、シンは理性が諸手を上げて賛同はしていないが、この勘を信じてグラキエースとウェントスに背中を預ける決断を下した。
対峙しているイグニスはもはや言葉を吐く事さえ厭い、イグニス自身の負の感情が自身の能力を向上させている。他者の憎悪、絶望、恐怖、怨恨、怒りを利用し、糧とするルイーナの軍勢の特性か、メリオルエッセ自身の負の感情が自身を強化する。
イスペイルが秘匿していたマイナスエネルギー収集装置の近くではない為、前の戦いの様に見る見るうちに機体の損傷まで修復する様な事はないが、周囲の風景がぐにゃりと歪んで見えるほどの熱量がインペトゥスより噴き出ている。
まさしく煉獄から現界に生じた魔神のよう。いまのイグニスの炎なら機体と肉体のみに留まらず、魂さえも燃焼しつくして灰燼に帰してなんの不思議があろう。
負傷を負ってこそいるが、今のイグニスは前の戦いの時に比べてはるかに凶悪かつ強力である事は、疑う余地がない。機体の耐久力の上限値が下降している事がせめてもの救いだろう。
シンは隙を作ってくれ、とウェントスとグラキエースに告げたが、区切り直したイグニスとの戦いの初撃は自分自身がとった。
足場のない空中だとシンが修めた武術を十全に活かす事は出来ない。空中戦を想定した武術など、古今人類が創始した事はないからだ。
一部の特機には、武術の達人を操縦者として想定し、機体がどれだけ搭乗者の動きを再現できるかに腐心するタイプの機体が多い。シンはこの手の機体の思想とは真逆のパイロットであった。
血肉に変え、骨にした技術を機動兵器で再現するのではなく、生身の人間では不可能な動きを可能とする機動兵器に適した形に応用し、昇華させる事が出来る。
無論、機動兵器の搭乗者の動きへの追従性・再現性が高い方が良いが、シンはMSや特機に生身の時以上の動きをさせる事が出来る稀有な資質の主なのだ。
これまでの激戦に次ぐ激戦と、類稀なる、という言葉でも足りぬシンの武技の才能の二つ、加えて全並行世界のシン自身の無意識との接触による潜在能力の開花もあればこその、異質な才能と言えよう。
右八双の構えから飛鳥シルエットの推力を全開にした飛鳥インパルスが、正直過ぎるほどにインペトゥスへと斬り掛かる。
大地を蹴る反動を利用した踏み込みが行えぬ代りに、機体の内部を流動するエネルギー、推進剤の爆発の瞬間を、武術の呼吸と整合させて行う移動のタイミングだ。機体越しに相手の虚を明確に感知し、突く。
武林に生きる生身の達人でも、はたしてこのレベルの技術を成し得るものがどれほど居る事か。
だらりと下げられていたインペトゥスの腕が動いたと見えた時には、飛鳥インパルスの進行方向前面に無数の火球が放たれていた。
人体をベースに遺伝子レベルで、戦闘用コーディネイターと同等かそれ以上の戦闘強化処置を受け、負の感情を吸収してさらに身体能力全般を向上させたイグニスも、単純な数値で言えば、人間の領域を大きく超えている。
でなくば、こうも素早く飛鳥インパルスの進行方向状に火球を冷静にばらまく事は出来ない。
冷たく燃え盛るイグニスの憤怒の炎は、さながら咲き誇る鳳仙花の花畑が眼前に広がったかのよう。
MS一個小隊程度ならまとめて吹き飛ばす、美しくも残酷な魔炎の群れである。
神話の物語を描いた絵巻物の中に咲くのが相応しい魔炎の花々を、根元から一陣の刃風が切り裂く。
斬り散らされた炎の花弁は散るからにこそ美しく、突進する飛鳥インパルスの装甲表面に触れては幾百幾千の緋色の粉へとさらに砕ける。
火の粉の雨が、刹那、人型に膨れ上がり、青、赤、白に彩られた飛鳥インパルスに変わる。飛鳥インパルスの機体の外縁部を彩る無色の剣気に、イグニスは到底止められぬかと悟る。
ぎり、とイグニスのは奥で岩と岩とが擦れるような音がした。
――忌々しい!!
インペトゥスの右腕に燃え盛る紅蓮の炎剣が生まれる。刃渡り二十メートル、縮小した斬艦刀に匹敵する大剣だ。イグニスは以前戦った時と、インパルスの姿が違う事には気付いていたが、その事自体にはさほど警戒していなかった、
姿形が変わろうが凄惨無惨な死を与えてくれるという決意に変わりはないからだろうが、それが手痛い失態につながる。あろうことか斬艦刀を手にしたシン・アスカと接近戦を演じたのである。
飛鳥インパルスの右八双からの一太刀目。到底、人造の機械の腕とは思えぬ滑らかな動きで、飛鳥インパルスの腕が動き、刃は疾風を唸らせる速さで振り下ろされた。イグニスはその速さに驚いたが対処できぬほどではないと、上方に掲げた右の炎剣で受ける。
噴き出す炎の刃に斬艦刀の刃が止められるさまに、イグニスは冷笑を浮かべ、ついで襲い来た衝撃に驚愕した。受け止めた筈の刃に交差した状態からそのまま押し切られて、炎の剣がインペトゥスの額部分を強く強打した。
数世紀も昔、極東の島国で幕末と呼ばれていた時分、名もなき薩摩の剣士の刀を受けた侍は、受けた刃の力強さに押し切られて自らが手にする刀の峰で、額を割る者が続出したという。
まさに今の飛鳥インパルスとインペトゥスの様に。
全身全霊を込めた一太刀のなんたる苛烈さよ。
飛鳥インパルスの肩――上半身を構成するチェストフライヤー部分――には、工学博士の本業に戻り、DC技術開発局に移籍したジャン・キャリー謹製、新型パワーシリンダーが搭載されている。
新型パワーシリンダー、グルンガストタイプに使用されている、関節の荷重を大幅に軽減するTCGジョイント、膨大なエネルギーを生み出すプラズマリアクター、それらを高レベルで制御し、機体の挙動へと変えるTC−OS。
莫大な開発費と新旧の技術を投じたDCインパルス、そして飛鳥シルエットのみが、唯一それを可能とした。
薩摩の土地が育んだ剣術の血脈を受け継ぐシンの一撃が、特機級のパワーを誇るインペトゥスに痛打を浴びせたのである。一刀に込めた気迫そのままに、引いた斬艦刀が横薙ぎにインペトゥスの首を斬り飛ばしに襲いかかる
受ければ首を刎ねられる。まるで自分の首も一緒に刎ねられるような悪寒に襲われながら、イグニスが空いていた左腕の先端から火炎を放射して、飛鳥インパルスを後退させた。
ぶお、と音を立てて噴水に似た勢いで大輪の花を咲かせた炎を斬艦刀の腹を盾代わりにしつつ、シンはわずかに自機を下げた。
遮光フィルターが無ければ目を潰されたであろう炎を前にしても、シンは目を閉じずに、炎の花の向こうに居るインペトゥスを睨んでいる。
飛鳥インパルスの背後からインペトゥスを上下に挟んで、ファービュラリスとストゥディウムが挑む。眼下に広がる炎に照らされて、純白の装甲を朱に染めるファービュラリスは、上方からサギッタルーメンを。
青黒い装甲を毒々しい赤色に染めつつ、ストゥディウムはワイバーンショットを連続でインペトゥスへと放つ。
火炎放射の為にわずかに動きを止めた隙を狙ったグラキエースとウェントスの攻撃に、歯軋る間もあれば、イグニスは機体表面に防御用の炎を放出しながら、急速に機体を後退させる。
着弾したサギッタルーメンとワイバーンショットの半数近くは、機体の装甲表面から噴き出ている防御力場代わりの炎が防いだが、残る半数はインペトゥスの機体を強かに打ちすえて、元から負担のかかっていた装甲が大きく砕け行く。
人型からワイバーンへと変形したストゥディウムと、氷剣を掲げたファービュラリスがインペトゥスを逃すまいと、勢いを激しく変えて斬り掛かる。速度の異なる二機が対応の困難な上下から襲い来る。
機体が万全ならざるイグニスは、自身の気迫こそ天井知らずに燃え盛るが対応しきれずに、ストゥディウムの巨爪に右腕の肘から先を抉り取られ、雪粉を撒き散らす氷剣はインペトゥスの頸部を切り裂いていた。
人ならまず助からぬ致命傷である。撃墜されていてもおかしくない連携攻撃を、かろうじて凌いだイグニスの力量は称えるに足るものであったろう。
しかし気を逸らし、一撃必殺の刃を持つ敵を留めていた炎を止めたのは、失策であった。
炎と共に黒煙を機体の内部から噴き出しながら、まだ動く気配を見せるインペトゥスに、斬艦刀の切っ先を右下段に流した飛鳥インパルスが迫る。
機体内部を巡るエネルギーの流れ、関節の軋み、変動する推力その全てをシンが把握して最良最大の一撃を見舞う。
シンの剣気を乗せた斬艦刀は目に見えぬ陽炎に包まれているかのように、イグニスには感じられた。
物理的には何の作用もないであろう気迫が、斬艦刀の切れ味もなにもかもを増大させていてもおかしくはない。
そう錯覚しかねぬ物理的な圧力を伴うシンの気迫。それに打たれたイグニスがわずかに体を硬直させる。
「おれが気圧された!?」
「ッツアァァアアアーーーー!!!」
とある剣術の一派には達人の一喝によって、対峙する者の心身を緊縛する心の一方と呼ばれる極意が存在するが、シンの叫びもそれに近い領域にあるということか。
頭上高く振り上げられた斬艦刀が、灰色の空ごとインペトゥスを切り裂く勢いで振り下ろされる寸前、体の自由を取り戻したイグニスが、喉の奥で叫びを殺しながらインペトゥスに回避行動をとらせる。
斬、と心臓まで響く振動と共にインペトゥスが大きく揺れる。インペトゥスの頭頂から胸部まで縦一文字に刻まれる斬痕。コクピットのモニターを斬艦刀の斬撃の余波が切り裂き、イグニスの視界にモニターを通さぬ生の外界が映る。
「ぐぐ、くそがぁっ!!」
もう一撃、それで決着が着くと、シンとイグニスのみならずグラキエースとウェントスが悟るにはあまりあるダメージが、インペトゥスに与えられていた。振り下ろされた斬艦刀を握る飛鳥インパルスの手首が捩じられた。
シンは返す刃でインペトゥスを両断する腹積もりなのだ。ぎしり、と飛鳥インパルスの関節が重く軋る。
*
アクイラを追い詰めたアクセル、マリナ、タック、ジニンは四方から襲い来るアンゲルスに阻まれて、今一つ、いや今三つほど決定打を欠いていた。
対する三機の質は高く、それを操るパイロットの力量も油断ならぬ――そう判断したアクイラは機体の大火力を活かして、アンゲルスも巻き込んだ弾雨を展開している。味方ごと吹き飛ばす事を、嫌ってはいられぬ敵だ。
一方でジニン達も徐々に追い詰めつつある状況に、胡坐を掻く事は出来なかった。
正面モニターを埋め尽くすミサイルの嵐の内、数発をもらって動きを鈍らせれば、たちまち餌に群がるピラニアの様に新たな弾幕が襲い掛かってくる。ものの数秒で跡形もなく吹き飛ばされるのは目に見えている。
アクイラのフォルティス・アーラのダメージは大きいが、ソウルゲインも相当被弾しているし、ガンアークとアヘッドではそもそも無傷の状態でもあっという間に撃墜されるだろう。
胃を締めつけられるような緊張を感じながら、四人は四方八方から撃ちかけられるビームとミサイルを回避し続ける。
機動性に富んだガンアークはともかく、汎用性と発展性はあるが、格別突出したもののないアヘッドと、特機であるソウルゲインが、ここまで猛攻をしのいでいるのは操縦者達の練達の域に達する技能あらばこそ。
人員こそ大人数を確保しているものの、その多くが未熟な新兵である地球連合や、そもそも生産層の重要な位置を占める若年層を、あたら戦争で消費しているザフトの軍部なら、宝石よりも貴重だと叫んで、喉から手を出して欲しがるレベルの有能な人材である。
もとから技術面では他の勢力の一歩、二歩先を行くDCだが、このような人的資源に恵まれている事も、DCを強国たらしめている大きな要因だ。
二機のアンゲルスと激しく交差しながらドックファイトを演じるタックのガンアークの後ろを、別のアンゲルスが取ってパルスアローの銃口を向けた。全方位に可能な限りの注意を向けていたタックは、かろうじて撃たれる前に気づく。
機体を捻りざまにアークライフルで反撃し、ガンアークの左肩装甲をパルスアローがかすめた直後に、アンゲルスが胴体をビームに貫かれて新たな火球へと変わる。バランスを崩したタックのガンアークを、すかさずマリナがフォローに回る。
流石にパートナーとして長く訓練を受けた二人とあって、互いの動きをよく見てフォローしあっている。
一発一発の出力を落とし、連射性を高めたGNビームライフルは、ジニンの的確かつ素早い照準によって、フォルティス・アーラの放つミサイルを発射直後に撃ち落とし、襲い来る脅威を未然に防いでみせる。
後方警戒信号が、ビ、と長く音を鳴らすよりも早く反応し、ジニンはアヘッドの左手にGNビームサーベルを握らせていた。
空間に赤い斬弧が描かれ、一瞬で消えるより早く、ポールハンマーを振り上げていたペルグランデの胸中央部を、赤い刃が貫く。
ズン、とGNビームサーベルの柄越しにアヘッドの関節に負荷と衝撃が加わる。ジニンはそれを操縦桿伝いに感じ、GN粒子の供給をカットして機体をペルグランデから離れさせる。
爆発に巻き込まれない為である。
ジニンが少数で多数を相手取った戦闘経験は、生前の西暦二十四世紀の世界では反政府勢力カタロンとの戦いくらいで、それとても、擬似太陽炉搭載機の圧倒的な性能で旧型機を圧倒したもの。
そう性能の変わらぬ敵を相手に多数を相手にするのは、こちらの世界に来てからの経験だ。多数を相手にする戦闘はシン達の方が積んでいる。
「ジニン大尉、こりゃちょっとしんどいな?」
二機のペルグランデの頭部を握り潰して盾代わりにしているソウルゲインからだ。
軽微な損傷を負っていたが、自己修復装甲が少しずつ機能を発揮し、先ほどジニンが確認した時よりも装甲が幾分綺麗になっている。
「アルマーか、特機乗りのお前に期待したい所なのだがな」
「あっはっは、おれはスーパーマンじゃないぜ」
よほど肝が太いのか、からからと気持ち良い位にアクセルは笑う。その笑い声に、大した奴だ、とジニンは内心で感心した。
笑い声の残滓がジニンの耳に残っている間に、アクセルはがらりと変わった声を出した。
体から血が流れれば、一緒に鉛玉が流れて、硝煙の臭いが立ち込める様な、骨の髄まで兵士だと分かる男の声であった。
「だが、ま、ここで死ぬのはあり得ねえやな。援護頼めるかい?」
「了解した」
「じゃあ1、2の3で突っ込むぜ。マリナとタックにはそのまま戦っていてもらうさね。いい囮だからな。さ、カウントスタートだ。1、2……」
「3!!」
絶えず動き回って周囲の敵を牽制していたジニンは、合図に合わせて速射モードのGNビームライフルを撃ちかけながらフォルティス・アーラに仕掛け、腰裏のハンドグレネードをまとめて三つに投擲する。
通常の高性能炸薬型と黒色ガス、さらに圧縮した高濃度のGN粒子を充填し、局所的に極めて強力な電波障害を発生させると同時に数秒間GNフィールドを形作る、GNハンドグレネードだ。
赤いビーム弾に貫かれて爆発を起こすミサイルに連鎖して、ハンドグレネードも巨大な火球を生み、ついで黒色ガスがフォルティス・アーラを包み込み、一時、その目を晦ました。
黒色ガスの向こう側から、爆炎と煙に影響されないサギッタルーメンが放たれて危うい所を掠めて行く。
アクセルの駆るソウルゲインは、その黒色ガスの頭上を飛んでいる。ソウルゲインの足が踏んだ大地は、大きく陥没し蜘蛛の巣状の罅が大きく広がっている。
黒色ガスと爆発に目を騙されなかったアクイラは、正確にその隻眼に青い拳闘士の姿を捉え、機能が生き残っている首周りのミサイル発射管の開口板を開く。
腕を交差させて頭部を庇っているソウルゲインの両肘の、白銀色のブレードは舞朱雀の発動時と同じく、長く伸びて灰色の空から零れる鈍い光に妖しく輝いている。
「分かりやすい事だ」
淡々と呟くアクイラは、かちりとトリガーのスイッチを押しこんだ。実弾兵装ながら、どういうわけかフォルティス・アーラに内蔵されたミサイルは、機体のエネルギーを消耗する形で発射される。
負のエネルギーを吸収さえすれば半無制限に発射できるミサイルは、アクイラが脳裏に描いた未来図通りに尻から白煙をたなびかせてソウルゲインを包み込んだ。
いかにソウルゲインの重装甲といえど、フレームも残らぬ火力の集中を、鮮やかな紅色の光の膜が遮った。かすかにアクイラの隻眼が動いた。この戦いで何度も目にした擬似太陽炉が生むGN粒子の色である。
ソウルゲインが飛び上がり様、アヘッドが投げたGNハンドグレネードを掴み取り、ピンを抜いてミサイルへと投げつけたのである。
遮断膜となったGNフィールドに踵を引っかけて支点代わりにし、ソウルゲインは半月を描いてくるりと動いたかと思えば、高濃度のGN粒子が渦巻くGNフィールドを足場代わりにして跳んだ。
青い弾丸と化したソウルゲインに対し、機体の最大火力を放った直後故、動きの鈍るフォルティス・アーラは躱す暇はない。
「決める時は決めんとな!!」
「……」
きん、と空気が凍る音がした。空中に交差した十文字の銀光が大気を裂いた音だ。厚重ねの装甲を断つ時に発して良い音ではなかった。
肘の刃を振るったソウルゲインが、重力の鎖に絡め取られ、重々しい地響きを立てて大地に片膝を突いた姿勢で着地する。その背後で、フォルティス・アーラがゆっくりと傾いでゆく。
*
残心を取り、血振りの動作を一つし、斬艦刀を左八双に構えた飛鳥インパルスが、真っ二つになって大地へと徐々に落下してゆくインペトゥスの姿を見下ろしている。
斬ったものと斬られたものの無情な光景がそこにあった。
頭頂から股間まで綺麗に斬断されたインペトゥスの残骸からは、それでもなおイグニスの精神が発する激情の炎が、シンの頬を叩いている。
サブモニターには、ジニンとアクセルの連携で、胸部に深くX字の斬痕が刻まれて爆炎に飲み込まれるフォルティス・アーラの姿が映し出されている。
言葉にはし難い不気味さの強敵だが、新しく加入した戦力の力もあって、なんとか撃退できた、といった所か。
かすかに安堵の息を吐くシンの目の前で、インペトゥスとフォルティス・アーラの両機が、姿を見せた時と同じ黒い雷を今度は機体から放出し始める。
飛鳥インパルスのセンサーが、空間の歪みを感知し警告音を発した。重力震を伴うゼ・バルマリィ系、ゼントラーディ、メルトランディ、バッフ・クランなどのワープとは異なる波長系だ。
以前、シンはヨガを極めたと言われる古木の様な老人に、思念集中によるレビテーションや、分子浸透と並ぶヨガの奥義の一つであるテレポートを見せてもらった事があったが、その時に感知した感覚に近い。
「逃げる気かっ!!」
咄嗟に張り上げたシンの声など聞こえていないのか、無視したのか黒雷に飲まれて、したたかに破壊されたルイーナの機体が溶ける様にして消えて行く。応えはなく、インペトゥスとフォルティス・アーラの機影は虚空に消えた、
「逃げられたな」
苦いものをかすかに潰したジニンの声に、シンは眉間に深い皺を刻んだ。指揮官機が撤退した事を受けて、残っていたルイーナの機体も急速に戦域を離脱するか、自爆している。
流石に大多数を相手取った事で、各員の疲労が濃いと判断したジニンは、追撃は命じず後続の大洋州連合の特殊部隊と、タマハガネに長距離通信用のレーザー回線で報告を入れた。
空間の距離を無視しニュートロンジャマーの影響をうけぬフォールド通信も、目下研究中だが、まだ試作の段階だ。
風の精霊を媒介にしたわずかなタイムラグのみで会話できる精霊通信も、同じく研究中だが、精霊と使用者の相性次第で精度に変動が出るという欠点がある。
こちらは現在友好国に夫ともども出張しているテューディ・ラスム・アンドー女史が、三機目、四機目、五機目の魔装機神の開発と合わせて改良中だ。
現在正式採用されているC級魔装機は、ブローウェルとティルウェスだけだが、三機種目をどうするかでも忙しく、最近化粧の乗りが悪いというのが、テューディの口癖だ。大抵、その翌日、マサキ・アンドー十七歳はげっそりとやつれている。
閑話休題、通信を終えたジニンは手早く指示を出して、後続の部隊が来るまでの間、各機に警戒を指示し終えると、ふう、シンの飛鳥インパルスの近くにいるファービュラリスとストゥディウムを、モニターに捉えた。
氷雪と疾風の機体は、こちらに敵対する姿勢は見せず、肩を並べて飛鳥インパルスと対峙している。
「どうしようか、グラキエース」
あるか無きかの涼しげな微笑を浮かべているウェントスに、グラキエースは感情の色が窺えぬ冷めた美貌のまま、答えない。口を開かず淡い色合いの唇を結んでいる様は、鋼の玉座に腰かけた雪の女王を思わせる麗しさだ。
思わずグラキエースの白雪の肌に触れた指は、色の白さそのままに冷たく柔らかな感触にハッと息を飲み、彼女の体の中に流れる血は、赤い血ではなく済んだ氷水だと悟るだろう。
黙考していたグラキエースが、ようやく口を開いた。兄でもあり義理の弟でもあるウェントスに、
「彼らには彼らの戦いがある。私達の戦いはルイーナの目論見を防ぐ事だ」
と告げる。今回は協力を仰いだが、やはりルイーナとの戦いは自分達で決着をつけると、固く決意しているようだ。
「そうだね。でも、南極に気をつける様に注意だけはしておこうか? ぼく達はルイーナから離脱したのが早かったから、ここと南極以外の基地の位置をまだ把握していないしね」
「ふむ、それもそうだな。では、シン・アスカ、聞こえるか?」
「なんだ、グラキエース? できれば、このままおれ達に付いて来て欲しいんだけど、乱暴にはしないって保証するよ」
「申し出はこちらにとっても悪くないが、私達には私達でやる事があるからな、お前達とは一緒に行けない。代わりにルイーナの本拠地の位置データを教えておく」
「……なに!?」
「ただ、特殊なエネルギーフィールドで覆われているから、行っても無駄だとは思う」
ぎゃふん、となるのをシンは堪えた。いきなり謎の敵性勢力の本拠地を叩くチャンスが来たか、と思ったらしっかりとオチが着いてきた。
グラキエースとウェントスが、わざわざ南極以外の基地に攻撃を仕掛けているのも、本拠地にはまだ手が出ないからなのだろうか。
グラキエースらの戦力が乏しい事もあるだろう。
「でも、グラキエースとウェントスの二人だけじゃ、あいつらとは戦えないだろう。おれ達や他の軍隊の力を借りないとルイーナは倒せないぜ」
「その時はちゃんと三つ指を突いてお願いする」
しれっと言うグラキエースの言葉に、シンはちょっと首を捻る。ふざけているのかといえば、そのような調子ではなく至極真面目で、本当にお願いしそうである。
グラキエースほどの神秘的な美貌でお願いされたら、大抵の男は軍を動かす事に危うく承知仕掛けるだろう。
ウェントスもそうだが、どこか人間的な感情や情緒の薄い二人の顔立ちは、人間に似ていながら異なる事への薄気味悪さよりも、極めて精緻な古代の彫刻像を見た時の様な感動を呼び起こす美しい造形だ。
どうしても力づくで引っ張る気にはならず、どういえばついて来てくれるかな、と悩むシンを他所に、ワイバーン形態のストゥディウムとファービュラリスがくるりと背を向ける。
思わず飛鳥インパルスの手を伸ばすその先で、ストゥディウムと、ストゥディウムの翼に手をかけたファービュラリスが、ブースターを噴かし二機分の推力を合わせて彼方へと飛び去ってゆく。
制止の声をかける間もなく見る見るうちに小さくなってゆく二機から飛鳥インパルスに、グラキエースが言った通りにデータが送信されてきた。嘘を吐いた様子の無いグラキエースを信じるなら、手こそ出せぬがルイーナの本拠地の位置はこれで把握できる。
この戦いで失ったのが弾薬や装甲、パイロットの体力くらいである事を考えれば、得たものは実に実り大きいものと言える。
ジニンらはそのまま大洋州連合の部隊と合流し、地下基地の調査と接収が始まる。厳重な装備の特殊部隊と研究者達が地下基地に足を踏み入れ、色々と調べ物をしている間、シン達はローテンションを組んで警備に当たる。
DCに属するシンらはタマハガネに帰還するよう命令が出るかとも思われたが。大洋州連合の指揮官は、そのまま残る事を要請してきて、また地下基地から見つかったデータなどは全てDCにも包み隠さず提供するとまで言う。
どうやら、ザフトを見限ってDC側に着く事を本気で考えているらしい。
*
地下基地の近くに建てられた仮設テントの中に、シンや刹那、ティエリアなど先発隊の半数のメンバーが詰めていた。仮設テントといっても、宇宙開拓に熱を上げていた時代に開発された植民用のテントだ。
見た目は銀色の半球形のドームだが、小さなスペースデブリの直撃を受けても、衝撃吸収素材が完全に衝撃を吸収しきるし、宇宙を満たしている各種放射線や、太陽熱を完璧に遮断する密閉性もある。
入口を閉じて外部から完全に密閉しても内部には十人が一瞬間生き延びるだけの食料の備蓄と、循環装置の類が常備されている。盗聴の心配もまずないから内緒話には最適だ。
ちなみに、近くにはボディアーマーとコンビネーションガンで固めた大洋州連合の兵士達がちらほらしている。
テント同様、強化ビニール製の椅子に腰かけてオレンジ色のビタミンドリンクを飲んでいた全員の視線が、大洋州連合調査チームの第一次報告を持ってきたアクセルに集中した。
右手に持っていた資料の紙が全員に行き渡り、各々が目を通す。
「機動兵器の類は残っていなかったか。使われていた機材は地球のと変わらないってことは、宇宙人とかわけのわからないバケモンてわけじゃないんだな」
安堵したと言うか呆気なかったと言うか、若干気の抜けたロックオンに、アクセルが続く。
「つっても、データバンクにはない機体なんだろ? 未知の組織の出現てのは確かだな。ルイーナだっけか? そのグラキエースちゃんとウェントスってのが言うには」
「色々と知っている口ぶりだったから、そうだと思う。たぶんルイーナを離反したんじゃないかな」
「その癖、お前さんが引き留めるのを聞かずに行っちまったんだろ? 自分たちで何とかするって息巻いているのかもしれんが、あのレベルの機体とパイロットがごろごろしているのなら、ルイーナは二人でどうにかできる相手じゃないぜ」
「おれ達みたいに組織のバックアップが無いとなんにしろ詰んじまうだろうな」
しみじみとロックオンが呟く。ソレスタルビーイングのガンダムマイスターとして、世界中を転戦したロックオンだ。
バックアップなしの戦いがどれほど苦しいものか、三大国家群に擬似太陽炉が渡り、ヴェーダのバックアップも失った時の経験から、よくわかる。
そのような芸当ができたのは、ガンダムの圧倒的な性能もさることながら、世界中に存在していたソレスタルビーイングの支持者とエージェントのバックアップあればこそ、とよく理解している。
地球はエイプリルフールクライシスや前大戦によって、通信・交通網は世界規模で壊滅し、また新たな戦火にぎりぎりと張り詰めた糸のような緊張に満ちている。
たった二人と少人数であっても既存の機動兵器の枠に収まらぬ機体を操り、なんの伝手もなく世界を彷徨うグラキエース達は、途方もない肉体的・精神的苦労を負う事になるだろう。
「他には、なにかエネルギー関連の設備が多い、か。どこかに膨大な量のエネルギーが供給されていた形跡があるか。オーストラリア大陸のどっかに別の施設があるのかね?」
おどけたようなロックオンの言葉に、刹那が何か口にしかけた時、不意にそれまで黙っていたティエリアが顔を上げ、繊細な美貌に驚きの色を刷いている。
「ティエリア、どうした?」
刹那の訝しげな声も聞こえていないのか、ティエリアは慌てた様子でテントの外に出る。残されたアクセルやシンは、それぞれ顔を見合わせたが、珍しいティエリアの様子に、後を追う事にした。
開けっ放しにされたテントのドアから、驚きと喜びに満ちた喝采の声が聞こえてくる。いや、音だけではない。かすかに開かれているドアから、うっすらと光が滲みだしている。
その光は、地球の誰もが再び見る事を望んだものに違いない。その事に気づいたシン達は、ティエリア同様に走ってテントの外に出た。
勢いよくドアを開いたシン達を、気を重くする灰色から心の闇の奥を払う爽快な青変わりつつある。空が、あの青い色に、戻っている!
憂鬱な青ではなく、自由、開放を思わせるどこまでも透き通るような青に!
「こりゃ、ひょっとしてこの基地を制圧した所為か?」
確たる証拠や根拠はないが、青空が戻ったタイミングの合致に、アクセルが驚きの声を上げる。オーストラリアだけではない。
この瞬間、南北アメリカ大陸、北極・南極の両大陸、アフリカ大陸、ユーラシア大陸の全ての空が、青に戻りつつあり、空を見上げる全ての人々は、性別も年齢も国境も宗教の境もなく、同じように喜びの声を上げていた。
ティエリアが走り出したのは、この状況をいち早く――方法は不明だが――気付いたのだろう、と刹那達は解釈していたが、その方法はDCの人間では、ティエリア本人とデスピニス以外には想像のつかぬものであった。
それはイノベイターと超兵であるアレルヤ、ハレルヤ、ソーマ、マリーのみが操作できる脳量子波による通信だ。
イノベイターだからといって自在に相互通信ができるわけではないが、この時、ティエリアは、冥王星のデュミナスから送られてくる通信を、久方ぶりに受信し、考えるよりも早く体が動いていたのだ。
DCも大洋州連合もなく歓喜の声を上げる皆の中で、ティエリアだけは違う世界で一人、孤独に青空を見上げていた。その影さえもどこか、薄くおぼろげなもののように見えた。
*
地球を覆う次元断層の消失および負の感情のエネルギーの変動は、ルイーナのみならず、それに近い性質を持った者達にもよく感じ取る事が出来たとして、なんの不思議があるだろう。
DC本土・オノゴロ島の市街地にぽっかりと空いている閉鎖工場区画へ差し込み始めた光明を受けて、艶やかに輝く黒い体を持った巨漢がいた。
上唇から額の辺りに掛けてまでが一つに溶けて、斜め前方に太い一本角となって伸びている。それだけでなく唇の無い口には、鮫の歯のような形状の、金色の牙がずらりと並んでいる。
この牙で被りついたら、人間の首など簡単にもげるだろう。そして首を無くした体が溢れる血潮を、この巨漢は喉を鳴らし飲みほすに違いない。
そんな妄想に囚われずにはいられない凶悪な姿である。ある惑星の住人が抱いた負の感情より生まれたイディクス幹部の一人、イスペイルだ。
どんな目論見があって人気のない工場区画に居るのかは分からぬが、惑星一つを破壊する事を必要とあらば躊躇なく行う精神構造の主だ。放置するにはあまりに危険な存在を、いまだ地球圏の者達は知らない。
「ぬうっ、これは!」
地の底から響く亡者の呻きの様な声だった。地を這い聞く者の心胆を寒からしめる、恐怖を伴う声。
驚きの声を上げるイスペイルの横っ面に、唸りを上げた飛び蹴りがめり込んだ。ごきごきん、とイスペイルの首の辺りから聞こえない方がいい音がする。
イスペイルの骨格と金属質の体ではなく、並の人間だったら蹴りの勢いで首が二、三回転くらいはするだろう。
首がもげそうな蹴りの勢いを、体を捻って殺すも、六メートルほど吹っ飛んだイスペイルは、工場の壁際に積まれていた廃材の山に頭から突っ込み、がらがらぐしゃん、とけたたましい音を立てて崩れる廃材に埋もれた。
飛び蹴りの主は、イスペイルの鉄板みたいな顔を蹴った反動でとんぼを切って鮮やかな着地を決めた。すたん、と音も立てぬ猫科の動物を思わせるしなやかな動きだ。遠巻きにしていた周囲から、おお、と喝采の声が上がる。
後頭部でまとめた桃色の髪の毛の中からにょっきりと飛び出た三角形の耳、頬に走る黒い爪痕の様な文様、強気と勝ち気を掛け合わせたような意志の強い瞳。
イスペイルと同じイディクス三幹部の一人、ヴェリニーである。腰に拳をあてて、廃材の山から首だけ出したイスペイルに、立て板に水を流すか如き勢いで怒鳴りつけ出す。
「イスペイル、あんたなにアドリブ入れてんのよ! そこは高笑いしながら。覚えていろって叫ぶところでしょうがっ。それ位の事も覚えていられないオツムなわけ? 馬鹿、馬鹿なんでしょう!」
「ぐおお……、ヴェリニー、だからといって飛び蹴り食らわせるのは……」
「黙らっしゃい!!」
ぴしゃりとイスペイルの言葉を叩っ斬るヴェリニーの様子に、撮影スタッフを兼ねていたヴェリニー兵とイスペイル兵達が、そろってやれやれ、まただよ、と囁き始める。一方的にイスペイルがやり込められる光景は日常化しているようだ。
どうやら、ここは例の(有)イディクスの看板番組魔法少女マジカル・レム☆の撮影現場だったらしい。
「ふ、ヴェリニー、そうイスペイルを責めてやるな。エネルギー収集装置の一件と言い、イスペイルに負担をかけ過ぎたのも確かだからな」
主演のレム役のガズムだ。十歳かそこらのなかなか愛らしい少女の姿をしているが、中身はイディクスの幹部であり男性的精神の持ち主である。
兵達が用意した椅子に腰かけて、肩からコートを羽織り、左手には長いストローが差し込まれたジュースのグラスを持っている。お前はどこの大御所だと言いたくなる様子だ。
獣の威嚇の様子そのままにイスペイルに牙を剥いていたヴェリニーも、ガズムの取りなしに牙を収めてガズムの隣に用意された椅子に優雅に腰かけた。
廃材の山からようやく脱出したイスペイルが
「ガズム、ヴェリニー、感じんか? 負のエネルギーの流れが変わったぞ。私が目撃した例の連中に何かあったようだな」
「……へえ? イスペイルの言う通りじゃない。そろそろ私達の出番かしらね、ねえ、ガズム」
「くくく、どうやら我々もこの遊びを終わらせる時が近づいているようだな。イスペイル、機体の状態は問題ないのだろうな」
「なんとかな。しかし、エネルギー収集装置の方の充填率はいま一つ伸びん。次元隔壁を突破する術もいまだしだからな」
――もっとも、ル・コボルを斃す力を蓄えるまでお前達にはここで手を拱いてもらう事になるがな。
イスペイルは己の心の中で、そう囁く。ガズムやヴェリニーにいい様にあしらわれている姿からは想像もつかぬ、邪悪な笑みであった。
――つづく。
久々の更新に歓喜をこめて乙す!!
イスペイルが!イスペイルがヤル気だ!!
こいつぁひょっとしたらひょっとするのか!?
・・・でもイスペイルなんだよなぁ
ラキとウェンも栄養失調せんうちに仲間入りするといいですね
GJ!
ラスボス(予定?)の位置がわかっても手を出せないのは何とももどかしい
しかし飛鳥インパルスTueeeeewwwゴッドガンダム相手でもやりあえそうだw
おつおつー
>>407 でも総帥の世界のGガン勢ってどんな強さなんだ……(;^ω^)
確かにw
更にトンデモなさそうだなw
キラル・メキレルの描く曼陀羅は別の宇宙でも驚かない
おぅ、続き読みたいなーと思ってたところでktkr
総帥乙!
シンはあいかわらずだのう…アクセルも大概だがwww
Kのボスキャラってどことなくお間抜けで迂闊で残念なんだよね…だがそれがいいわけだが
ビアン総帥他宇宙にいる人たちは地球が無くなってから復活するまでどう過ごしてたんだろうか…
時間遡って宇宙ルートとかやるのかな
俺はもう今からOGでのミストさんの扱いが楽しみで堪んないわww
>>413 補正かかって身内以外へも惜しみない友愛を抱き
機械補正に頼らずとも仲間たちと心束ねてル=コボルを打ち倒すよ
・・・多分ね
>>414 ミストさん「でもソレって根本的な解決になってないですよね?」
ミストさんは「それって〜」とか言って周囲から白い目で見られるかカイさん辺りに
怒鳴られるのが関の山のKYにしかならん気がする
>>416 設定的に考えると体内のル・コボルの欠片によってなんらかの影響を受けてるとしか…
欠片の集合体たるイディクスの幹部達も迂闊で残念属性あるしそういう物なのかも
三番目のC級魔装機かあ。
汎用性でギルドーラも悪くないと思うがやっぱガディフォールかなあ。
あれ本当に優秀だから。
……で、五機目の魔装機神ってなんだ。
>>415 >>417 続編ではミストが新たなル=コボルになっちゃいましたとかだったり・・・
ガズム以外は地球圏を漂ってるんだよな、欠片
まさに根本的な解決になってないような・・・まぁそのうち消えるとか言った気も駿河
>>418 イズラフェール?
・・・そういや既に第一部から何度か出てきてたっけ
>>420 ……をい。
けど、メインパイロットがシンで、ステラとセツコさんがサブシートを取り合ってたら笑えるかもな……。
セツコさんサブパイロットだと、必殺技が射撃系になりそうだけど。
で、主人公がプラーナ消費しすぎて、キスで補給してもらうイベントはあるんだよな?
422 :
通常の名無しさんの3倍:2009/10/04(日) 17:34:56 ID:mnuLAOMk
実際に3機合体系なのかな?シンの後継機は?
すげー気になる。
こんばんは。投下します。
ディバイン SEED DESTINY 第十九話 彷徨う流星
意図せずして地球を覆い隠していた次元断層の解除に、シン・アスカをはじめとしたDC精鋭部隊が一役買うまでの間、宇宙の一隅でも小さな、しかし重大な意味を持つ動きがあった。
低軌道上に浮かぶ戦闘要塞化した軌道ステーション“アメノミハシラ”は、改めて言うまでもないが、DCの宇宙における一大生産拠点であると同時に、二つしかない要塞のひとつである。
DC総帥ビアン・ゾルダークが、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの招きに応じてアーモリー・ワンのレセプションに赴き、その帰り道の途上でユニウスセブン落下事件が勃発。
地球に落下する寸前まで落ちたユニウスセブンを、辛くもシンと飛鳥インパルス、斬艦刀によって、この破砕に成功するも、直後宇宙から地球が見えなくなると言う前代未聞の事態が勃発した。
幸いと言うべきか、光学的に認識する事は出来ないが、地球が変わらずにそこにあると言う事は、各種の観測機器のデータから判明したため、最悪の事態は免れていたと言うべきだろう。
しかし、地球との交易によって生活を成り立たせている大多数のコロニー住人やプラント人民、また月に駐留する地球連合宇宙軍の多くの将兵にとっては、大きな問題である事は変わりない。
彼らの生命を支える食糧・弾薬などは、補給がままならず備蓄が尽きれば、そのまま死につながりかねない状況とあって、事態を楽観視する者は無かった。
DCも同様の事が言え、アメノミハシラと旧オーブが保有していた一部のコロニーの生産能力では、宇宙に居るDC関係者の腹を満たすのは極めて困難な事だった。
軍事結社である以上、DCの生産能力の大部分を軍需物資に割いているから、その分を生活物資に割り振れば延命もできようが、それとて先は見えている。
それに、宇宙は宇宙で緊迫した情勢だ。
月に駐留する地球連合の戦力は、それだけでもプラントとDCそれぞれを上回る大戦力だったし、プラントはプラントで地球からの補給線が絶えた現状を好機と狙って、ザフトに月への侵攻を命じるかもしれなかった。
DCも月の地球連合軍を警戒して下手に部隊を動かす事は出来ず、地球連合は連合で、ザフト・DCの連合部隊の侵攻を警戒して戦力を分散させるようなことは控えていた。
かくて、三竦みの様相が出来上がり、宇宙は戦火の種は燻っていたが、大火に変わる様な事はどの勢力も慎んでいたのである。
しかし、その影で小規模の部隊の謎の失踪が相次ぎ、互いの動きを怪しんだ各勢力は、積極的に特殊任務部隊や工作員、諜報員を動かして情報収集に当たっていた。その中には、セレーナ・レシタールが属するチーム・ジェノバも含まれている。
では、この間に各勢力が起こしたアクションのいくつかをここに挙げてみよう。
*
地球から最も離れた引力緩和地帯に存在するプラント本国、首都アプリリウス市にある議場の議長執務室に、ギルバート・デュランダル議長は三名の人間を招いていた。
白皙の顔立ちにいつもの柔和な笑みを浮かべ、プラント最高権力の椅子に腰かけたデュランダルは入室してきた三人を招き、椅子に腰かけるよう勧める。
入ってきたのは、背の高い二人組とその二人の腹位までしかない小柄な影の三人である。背の高い二人は、鏡に映したように同じ顔立ちの青年である。
ザフトエリートの証である赤服を纏い岩から掘り上げた様に固く表情を排した様子からは、彼らを髪型以外では区別ができそうにないし、また人間らしさ――生気の様なものにどことなく欠けているように見える。
だが、それでもこの二人はまだいい。若々しい顔立ちに逞しい体つきはザフト軍人としては申し分ないものといえる。だからこそ、この二人の影に隠れる様にしている小さな影はいやおうにもその小柄さが際立っている。
利発そうで優しげな少年だ。精々十歳かそこらであろう。プラントの流行には当てはまらない独特のデザインの服を着ている。軍服を纏っていない事から、すくなくともザフトの人間ではないと分かる。
若年層を兵士に採用しているプラントといえども、さすがにこの年齢の子供を戦争に駆り出す様な事はしていない。
赤い髪の青年達はそれぞれ、ディバイン・ノヴァ、ブリング・スタビティ、そして少年がラリアー・デュミナス。
三人が三人共、正規のプラントの住人ではない。ある事情からデュランダルの下へと協力を申し出て、籍を置いている。
おもむろにディバインが口を開いた。機械が口を開いた様な錯覚を覚える声であった。同じ特徴を持つ者が、他にも何人かいた。たとえば、DCのティエリア・アーデの様に。
「我々を呼んだ用件は?」
「単刀直入だね。だが、話が早くて助かるとしておこう。君達も耳にしたかもしれないが、消失していた地球が再び観測された。カーペンタリアやジブラルタルとも連絡がつき、幸い戦火を交えているような状態ではなかった」
「それで、ぼく達に何を?」
おそるおそる言葉を発するラリアーに、デュランダルは柔らかな笑みを向ける。三十代半ばとは思えぬ若々しい顔立ちだが、その笑みには苦しみも悲しみも積み重ねてきた者のみが浮かべる、透き通ったような輝きがあった。
「君達にはミネルバに合流してほしい。いまはカーペンタリア基地に居るが、すこし先行きが怪しくてね。実力のある君達に向かって欲しい」
「戦争になるんですか?」
やや不安げなラリアーである。しかしデュミナスを通じて主であるクリティックが、地球圏に新たな戦乱を起こす事を望んでいるのを知っているから、この問いは無意味なものだ。
「そうはならぬよう全力は尽くすさ。しかし、世界は私一人の思い通りに動くほど簡単ではなくてね。私だけでなくプラントの人々が争いを拒み平和を望む声を上げても、それを聞き届けてくれる人々は少ない。それに、我々も一枚岩ではないしね」
デュランダルが含みを持って口にしたのは、地球が消失している間に起きたある事件の事を指している。
アプリリウス市に軟禁されているラクス・クライン邸襲撃事件の事だ。
先の大戦において最新鋭戦艦エターナル、核動力機フリーダム、ジャスティスの強奪、一部将兵の扇動を行った重罪人である。
国家反逆罪をはじめ処刑されてしかるべき罪状の数々を持っていたが、彼女の行った行為がプラントにとって利益的行為であった事、またプラント内の内憂を一手に引き受ける形で将兵を先導した真意が汲まれ、軟禁という形に落ち着いていた。
もともとラクスが国民的アイドルであった事や、父シーゲル・クラインのプロパガンダとして政治的影響力、カリスマ性を持ち、プラント国民から絶大な支持を得ており、処刑などした時にどのような反発が起きるか、それを議会が恐れたと言うのもある。
そのラクス・クラインが厳重なガードで軟禁されていた邸宅を、国籍不明の集団に襲撃され、使用人に変装していた兵達は皆殺しにされ、ラクス・クラインは姿を消していたのである。
これにはクライン派――とりわけラクス派と言われる思想先行・武力本位の傾向がある連中の仕業かと思われた。
しかし前大戦中に議長の席を追われたシーゲルと、終戦時にラクス自身から過激な行動を慎むようにと通達され、現在、彼らは政治的・軍事的行動を自粛している。
群衆に石を投げればクライン派に当たる、と一部の政界人に揶揄されている位だから、潜在的には、プラントの国内情勢を引っくり返せるだけの脅威が息を潜めているので、安心はできない。
デュランダルが把握している限りにおいて、シーゲル派・ラクス派両方共に、今回のラクス失踪には混乱し、直接膝を突き合わせてシーゲルに問いただした時にも、シーゲルに嘘を吐いた様子は見られなかった。
プラントが大きな行動に出られなかったのは、今回の事件を重要視し、慎重に事を進める事を選んだデュランダルの意向が大きく関わっている。
「ブリング、ディバイン、君達には先日完成したセカンドステージのMS、セイバー、プロトセイバーを託したい。なに、プロトと冠してはあるが、実用には何の問題もない。ラリー、君は自分の機体を使いなさい」
ラリアーは固く頷き、三人はセイバー・プロトセイバーの受領後すぐさま、地球軌道上に展開している艦隊と合流し、カーペンタリアを目指す事になる。
ラリアーの扱いはデュランダルの御稚児さん、小姓扱いしている者達が多いが、彼自身は公的にはPMCからの出向人員と言う事になっている。
年齢の幼さは、民間で特別に調整された戦闘用コーディネイターであると説明されている。もっとも半信半疑であるが。
ちなみに、この場合の御稚児さん、小姓という言葉には性愛的な意味合いを含む。
これは日本の戦国時代の武将にはやった衆道(見目麗しい少年に対する同性愛のようなもの)を知る、一部の日本マニアが広めたとされる。
当時、女は子供を作るだけの相手――道具とみなす者もいた――に過ぎず、真の愛とは同性の相手の間にあるもの、というのが概要である。
特筆すべきプラントの行動は、このような所だ。では、DCはどうだろうか。
ヤキン・ドゥーエやエンデュミオン・クレーター並か、それ以上の重武装戦闘要塞と化したアメノミハシラ内部で、DC総帥ビアン・ゾルダークは黒檀のデスクに肘を突き、両手の指を組み合わせた上に顎を乗せて目を閉じていた。
何か、目には見えぬ苦行に耐える修行者の様な、近寄りがたい荘厳な雰囲気である。
そのビアンの傍らに立っていた長身の人影が、その雰囲気を打ち破って面白げな調子で、ビアンに声をかけた。
DC副総帥ロンド・ギナ・サハクである。
以前から愛用している長丈の黒コート姿で、190センチに届く長身に良く映えている。
不敵、あるいは傲慢なまでの自信に満ちた雰囲気は変わらぬが、ビアンに対しては気心の知れた友人に対する気安さの様なものがある。
「こってりと絞られたな、“総帥殿”」
「……皮肉はよせ」
ビアンの声には心なしか元気が無い。
というのも、つい先程まで交信の回復したオーブ諸島から連絡のついたロンド・ミナ・サハクに、色々とお小言を頂いていたのである。
その様を見ていたギナいわく、借りてきた猫が粗相をやらかし、飼い主に叱られている様だった、との事である。
艶めいた笑みを浮かべたまま、淡々と変わらぬ調子で問い詰めてくるミナは、実に恐ろしかった。特にアカツキが保管されていた保管庫に秘匿していたアレが見つかったのが不味かった。
念の為言っておくが、十八歳未満禁止系のナニソレではない。
ビアンがこっそりとちびちび余剰予算を回し、こつこつと作っていた遊び心満載の品であっただけに、そんな暇があるならもっと実用的なものを作れと、暗に言われてしまったのである。
ロマンチストとリアリストを兼ねるビアンだが、ミナはよりシビアに現実を見る人なので、ビアンの遊び心に対して厳しい。
ビアンは気を取り直して、ミナが苦言と共に送ってきたデータに目を通す。同じものがそろそろマイヤー・V・ブランシュタインDC宇宙軍総司令や、ロレンツォ・ディ・モンテニャッコ大佐などの重鎮にも行き渡る頃だろうか。
特に目を引くのは、やはりオーストラリア大陸などで接触したルイーナなる謎の軍勢である。
宇宙側でも、アーモリー・ワンに出現した所属不明のランドグリーズの出所名を調査していたが、こちらは雲をつかむ様に遅々として調査が進まず、早くも迷宮送りになる可能性が頭をもたげている。
DCは地球消失以来、手を拱いていた、というのが厳しいが実情であった。手元にホログラフを呼び出し、データを表示しながら、ギナがビアンに問うた。
「大洋州連合と協力して南極に調査部隊を送るのか? ザフトはどうする?」
「……うむ」
「地球連合とザフトならまだ動きが予想できるが、ルイーナとやらが相手ではそうも行かぬか。南極に手は出せぬと、グラキエースという女は告げたと言うが、まずは確かめねばなるまい」
「ルイーナ共が潜伏して待ち受けているかもしれんと考えれば、半端な戦力を割いていらぬ被害を負うのは避けたい。こうなるとユニウスセブンの一件で地球連合が、戦端を開くか開かぬか、さっさと決めてもらいたい所だな」
「まず戦端を開くだろうさ。大洋州との動きでザフトが我々を警戒するかもしれんが、今はルイーナの件を秘して、動くとするか。クライ・ウルブズをそのまま南極に差し向けるか? カタロンもそろそろ行動を再開する頃合いだろう」
「難しい所だな。むっ」
緊急の報告がある事を告げる回線からの連絡に、ビアンがギナとの会話を中断して回線を開いた。デスクの上の通信機に相手のバストアップ画像が投影される。
「私だ。……うむ、うむ。本当か? 分かった。付近に展開している部隊を急行させろ」
話が進むごとにビアンの声色と顔が険しくなっていった。ビアンの隣にいたギナも、聞こえてきた内容に、思案する様子を見せている。
それは、地球連合のとある動きを告げる報告であった。地球消失から解放までの期間中、最大の事件は、今、起きたのである。
それは――地球連合艦隊によるDSSDの制圧。
DSSDのステーションは内部に潜入していた地球連合工作員による工作もあり、治安部隊を順次無力化されていった。
派遣されたのは旗艦を務めるガーティ・ルー級一隻、アークエンジェル級一隻、ネルソン級一隻、ドレイク級三隻の六隻からなる艦隊で、DSSDから出撃してきたMS部隊も、瞬く間に撃墜されていった。
DSSD側の主力MSはシビリアンアストレイなどのバッテリータイプで、連合側もダガーLを中心とした旧型機であったが、ウィンダムが数機、さらにアークエンジェル級艦載機は最新のプラズマタイプの機体が含まれていたのである。
地球連合が狙ったのは、DSSDの保有する各種の特殊技術と、DCからの技術提供によって加速度的に開発が進んでいた人工知能の奪取である。
電撃的な攻略によってDSSDのステーションと局長やフィリオ・プレスティ博士らを含む主要陣は身柄を確保されていたが、幸いにして、地球連合の本命であった人工知能及びプロジェクトTDの機体は、戦闘の混乱の隙を突いて脱出していた。
ここまでが、ビアンをはじめ地球連合以外の勢力が手に入れた最新の情報である。
現場では、取り逃がしたプロジェクトTDの機体――アルテリオン、ベガリオン、そしてスターゲイザーを確保するため、高速艦であるアークエンジェル級が先行し、遅れてネルソン級が追跡行に加わることが決定した。
目的としていたプロジェクトTDの機体が現行の機体を上回る高速型である事を憂慮していた艦隊司令によって、諸艦には地球上から大気圏外へと艦艇を打ち上げる大推力ブースターが装着されていた。
この為に、さしものアルテリオン、ベガリオンでも、追撃の手から逃れる事は出来ず、DSSDステーション戦闘宙域から離脱してから三時間後、ついに追撃手アークエンジェル級三番艦ゲヴェルに捕捉されるに至った。
ゲヴェル艦長は前大戦時と同じユーラシア連邦軍レフィーナ・エンフィールド中佐、副長はテツヤ・オノデラ大尉である。
戦略的見地から言うとさほど重要視はされていない今回の作戦に、レフィーナほどの実績と能力を併せ持った有能な人物が任じられたのは、その能力を見込まれたからではなかった。
レフィーナの実力に対して、あまりに役不足な作戦と言えよう。レフィーナの軍務経験からすれば艦隊戦や、機動兵器を相手にした戦闘の方が適任だ。
前大戦時にムルタ・アズラエル率いる子飼いの部隊の護衛を行った縁があった事が、新たなブルーコスモス盟主ロード・ジブリールの癇に障ったようで、このような仕打ちを受けたのである。
新たな盟主殿は先代盟主の匂いが殊の外嫌いなようで、レフィーナのみならずカイ・キタムラやアーウィン・ドースティン、グレース・ウリジンなどにもおよび、それぞれ母国や僻地に飛ばされている。
有能な人材をあたら無駄にするような人事に、軍内部でも反発は大きいのだが、かといって癇癪持ちのジブリールに意見して睨まれてまで庇おうという人物も少なく、かような人事がまかり通る次第となっていた。
レフィーナにとって気乗りしない今回の任務であったが、軍人としての責務から命令に反する事は出来ず、また自分が指揮する事によって被害を最小限にとどめようと言う意図もあったのかもしれない。
赤毛で巻き毛のあどけなささえ残す美貌に、内心の憂慮は出さず、レフィーナはレーダーレンジに捉えた三機の機動兵器を捕獲すべく、機動兵器部隊に出撃を命じた。
アークエンジェル級独特の前方に突き出た鉄蹄型カタパルトデッキから、三つの人影が射出されて、前方を行くアルテリオンらに戦闘を仕掛けたのは、およそ十分前の事であった。
ややデブリの多い宙域に、白銀の流星が細かく蛇行して、無数のビームを躱している。同じようにして緋色の彗星も、ミサイルの弾幕や電磁加速された実体弾を回避し、装備されている各種のミサイルで反撃を試みていた。
白銀の流星アルテリオンを駆るのは、赤毛にこめかみの横を流れる毛だけ黒い少女と言っていい年齢の女性だ。大きめの赤い瞳に瞬く強い意志の光が印象的な、アイビス・ダグラス。
サブシートでオペレートを担当しているのは、ウェーブしている茶髪の女性である。アイビスよりはいくらか実年齢は上だが、眼鼻の造りはどこか子供っぽくて幼く見える。
プロジェクトTDの主要開発陣の一人、ツグミ・タカクラ女史である。二人とも高機動タイプであるアルテリオンに搭乗する為、耐G性に優れたアストロノートスーツを着込んでいる。
体にフィットしてボディラインを露わにする軍のパイロットスーツよりも、何重にも特殊繊維を織り重ねた生地を重ねているから、まるで着ぐるみの様に見える。
彼女らの夢を兼ねる為の船である筈のアルテリオンに乗る彼女らは、しかしとても夢に瞳を輝かせてはいなかった。
後方から迫るミサイル群に対するツグミの声に、アイビスは良く応えて咄嗟に操縦桿を倒し、外れたミサイルは漂っていた隕石群へと衝突して爆発する。
アルテリオンの傍らを、真紅の姉妹機ベガリオンが飛翔していった。アルテリオンよりも一回り大きいが、まるで鈍重さなど感じられぬ見事なまでの機動を見せる。
ベガリオンを駆る長い青髪の美女スレイ・プレスティは、やや吊り上がった目に、ことさら厳しい光を浮かべて、110mmGGキャノンの照準に、アルテリオンの背後を追っていた機体を捉える。
110mm大口径の弾丸のオレンジ色の射線は、刃の翼を広げていた漆黒の機体に触れる事無く虚空を流れていった。ベガリオンの射線を見切った敵機の機動をこそ褒めるべきだろう。
回避機動を取り様、漆黒の機体ストライクノワールは、両手に持ったビームライフル・ショーティーの銃口をベガリオンに向け、停滞も迷いもない動作でトリガーを引き絞る。
連射速度の代わりに威力を犠牲にしたショーティーの一弾、一弾はさしたる攻撃力ではなかったが、ベガリオンの左翼付近の装甲に着弾し、大きくベガリオンを揺らす。
回避機動の最中、高速で移動するベガリオンを捉え、ほんの数発といえども着弾させたストライクノワールのパイロットの技量に、スレイは大きな舌打ちを一つ打つ。
巡航速度でさえ連合側のMS三機の最大速度を上回るベガリオンとアルテリオンを、逃さずに包囲網の内に捕えている連合側のパイロットの技量は、スレイやアイビスからすれば呪いたいものであった。
スレイがフォローを入れたアルテリオンにも、ヴェルデバスター、ブルデュエルからのビームと拡散砲弾が撃ち込まれ、アルテリオンの機動を正確に読み切った砲撃に、あわや直撃かと思われた所を、彼方から放たれた数枚の光輪がビームを相殺した。
連合に追われる三機目の機動兵器――スターゲイザーだ。白雪のように繊細な純白の装甲に黄金のラインが流れる美しい外見は、兵器ではなく人類を新たなステージに導く開拓者、観測者として造られたからであろうか。
外宇宙での運用に際し搭載される筈のAIスターゲイザーは、今はアルテリオンのコンテナに収納され、搭乗しているのはセレーネとソルの二名である。
ヴォワチュール・リュミエールの起動に伴う副作用として発生する、極めて高い切断力を持つビームリングを放って、アルテリオンをフォローしたのだ。
咄嗟に打った手が成功した事に、色白い細面のソルが安堵の息を吐いた。その後ろ、やや高い位置にあるシートにはセレーネが腰かけて、ソルの操縦のバックアップを行っている。
こちらはコーディネイターらしい美貌に、油断ない警戒の色を浮かべて、めまぐるしく自分達を包囲し続けている敵を射抜くように睨んでいる。元が美人だけに、冷たい表情になると一段と迫力が増す。
「ここまで来たのは良かったけど、そろそろ追い詰められたかな」
「弱気にならないの。ここまで来て連中にこの子たちを渡すわけには行かないでしょう?」
突然の地球連合軍の襲撃から、決して軽くない疲労に襲われているソルの言葉も無理のない事ではあったが、セレーネは優しい言葉をかけず叱咤する。だが、確かにセレーネの言う通りであった。
プロジェクトTD、そしてスターゲイザーをむざむざ地球連合の手に渡らせ、戦争の道具にするわけには行かない。
「そうじゃないと、ステーションに残ったエドになんて言うの?」
「そう、だね」
ソルの叔父エドモンド・デュクロは、内部工作員が手招きした連合兵との銃撃戦を繰り広げ、ソルとセレーネがスターゲイザーに搭乗するまでの時間を稼いだのである。エドの生死は、不明だ。
「それにしても、まさかスウェン達と戦う事になるなんて、悪い夢みたいだよ」
「……言ってもなにも始まらないわよ。今は敵なんだから」
さしものセレーネの口調にも、どこかやるせないものが混じっている。あの謎の組織の襲撃以来、親交のあったスウェン達、DSSD駐留地球連合艦隊との戦闘は、民間人である彼らには少なからぬ心理的動揺を与えている。
純白と白銀と緋、三色の追われ人達は、かろうじて被弾こそしていないが、精神的肉体的疲労が蓄積している事は、機体越しにもよく分かる。
クルーズ・フィギュアからドールズ・フィギュア(ようするに人型)へ変形したアルテリオンの駆るアイビスが、悲痛な声でストライクノワールに呼びかけた。全周波通信ゆえに、受信域に居るもの全てに聞こえるが構わない。
「やめてよ、スウェン! 私達一緒に戦って、星の海に行こうって話した仲間じゃない!?」
「……」
アイビスの声にも、ストライクノワールを駆るスウェン・カル・バヤン中尉は、感情の色が薄い瞳に、感傷と呼べる類の色は一切浮かべる事はない。
返答は冷たく非情で、凶悪であった。ストライクノワールのノワールストライカーに接続されている実体剣兼用のレールガンを、アルテリオンめがけて精密な狙いで撃ち掛けて来たのである。
ブルデュエルを駆るミューディー、ヴェルデバスターのシャムスも、スウェン同様にアイビス達に容赦のない攻撃を加える。撃墜・撃破判定が下されない程度になら破壊してもいいと、艦隊司令のホアキン中佐から命令を下されている。
また、今回のDSSD襲撃に際し、一時ホアキン中佐に預けられた第119独立特務艦隊に召集されたスウェン達には、ヤキン・ドゥーエ戦役で使用していたアクタイオン・プロジェクトのGATシリーズが与えられている。
前大戦時核分裂炉とNJCを搭載して、圧倒的な性能を見せたこれらの機体を、最新の技術によって改修が施されている。動力はプラズマジェネレーター、推進機関にはテスラ・ドライブ、OSにはTC−OSが使用されている。
新型のウィンダムかフラッグもあったが、スウェンらが前述した二機に比べ、アクタイオン・プロジェクト機に対して高い適性を持っていたため、前大戦で彼らから取り上げられた機体を使用する事になった。
これには、本作戦の為に、哨戒任務のためにアステロイドベルトを航行していた所を呼び出されたゲヴェル艦長、レフィーナ中佐からの意見具申があったためともされる。
もっとも、ゲヴェル艦内に、前大戦からストライクノワールなどがそのまま安置されたいと言うのもあるが。パイロットがいなくなった機体を、基地に預け様にも、どこかの誰かの嫌がらせなのか、一切引き取る先が居なかったためである。
本作戦参加前まで、ゲヴェルの艦載機はアズラエルの息が掛かっていたと言う事で、特別睨まれていたWRXの三機だけで、ブルデュエルなどは乗り手不在でホコリを被っていた状態だったのである。
なおWRXチーム指揮官イングラム・プリスケン少佐は、一年前から行方不明となっている。アズラエルに近かった人物として、ジブリールの意を受けた何者かに謀殺された、と口にする者もいる。
「少しだけど、アンタ達の事気に入っていたわ。けど、命令が来た以上、仕方ないじゃない?」
「なるべくコクピットは外すから、動くなよっ」
それはミューディーやシャムスらなりに、アイビス達に対して出来る最大限の譲歩であったろう。
ブルデュエルのリトラクタブルビームガン二丁と、スコルピオン機動レールガンの三つの銃口を向け、ヴェルデバスターは複合バヨネット装備型ビームライフルを手に握っている。
「そんな、どうしてこんな事に」
「悩んでいる暇はないぞ、アイビス。こうなったら戦って血路を開くしかないぞ」
「で、でも」
果断な性格のスレイはスウェン達との交戦を覚悟し、アイビスに強く言い放つが、それでもアイビスは迷って答えを濁らせる。アイビスの性格を考慮すれば無理からん事ではある。
スウェンのフォローによって、以前の戦闘では何度か命を救われたのだから。
「聞きなさい、アイビス。私達がここで捕まったら、アルテリオンもベガリオンも、スターゲイザーも、すべて戦争の道具になり下がるわ。貴女はそれでもいいの?
私はごめんよ。私は星の海に行く為に、人間がまだ知らない宇宙を見る為に、この子たちを作ったのよ」
火を吐くようなセレーネの言葉であった。彼女が半ばまで実現させた夢の象徴であるスターゲイザー。それを他人の手に――しかも最悪の用途に用いられる事がはっきりと分かっている――委ねる事は出来ないという思いは、アイビスにも分かった。
スレイや自分が、血を吐くような猛訓練に耐えて、このシートに座ったのは断じて戦争に加担する為ではない。また、フィリオやツグミがプロジェクトTDを立ち上げたのも、そんな事の為である筈がない。
「分かったよ。あたし、戦うよ。ツグミ」
「サポートは任せなさい。慎重にね」
「うん。行くよ、スウェン」
DFからCFへと形態を変えたアルテリオンが、90mmGGキャノンで牽制しつつ、ストライクノワールらへと機首を向ける。
散開した三機から、機体すれすれを掠めて行く精密射撃が雨あられと降り注ぐ中を、アルテリオン、ベガリオン、スターゲイザーは、持前の高機動性をいかしてヒットアンドウェイ戦法などとって対抗する。
スターゲイザーの、軍用のモノよりは低出力のビームガンを回避したブルデュエルに、ベガリオンのCTMの一種スピキュールが放たれ、それぞれランダムな軌道で襲い来るミサイルを、ミューディーは慌てず迎撃する。
機体がヴァリアブルフェイズシフト装甲であることも考えれば被弾をさほど恐れず、正確に着弾する可能性の高いミサイルだけを撃ち落とし、さらにソニックカッターを展開して高速で迫るアルテリオンにビームサーベルを抜き放つ。
MSには望めぬ高速で襲い来るソニックカッターを、見事ビームサーベルで受け流して見せたのは、まさにミューディーの腕の冴といえる。
ブルデュエルの機体が大きくバランスを崩し、そこにベガリオンがGドライバーの照準を向けるのを、シャムスのヴェルデバスターが妨げる。
両肩から延びる350mmガンランチャー、ビームキャノンを交互に撃ち、オレンジとグリーンの光条が、緋色の軌跡の後をわずかに遅れて通過してゆく。
加速したベガリオンの姿を逃さず追従するシャムスの動体視力と、高性能な新型FCSの両方があってこそといったところか。
シャムスにゲヴェルからの艦砲射撃も加わり、110cmの大口径リニアガンや各種弾頭のミサイルが、星への道を塞ぐべく襲い掛かる。
ストライクノワールが手首から射出したワイヤーにビームガンを絡め取られたスターゲイザーは、ソルのとっさの判断でビームリングを発生させ、機体を四重に取り囲み、球形を描くように回転して即席のバリヤーとブレードとなる。
ビームリングでワイヤーこそ切断したものの、ワイヤーの圧搾によってビームガンが破壊され、スターゲイザーに残された武器は、VLの生むビームリングのみとなる。
「ソル、プラズマジェネレーターとはいえ、あまり何度も使える武装ではないわ。百発百中のつもりで撃って」
「言われなくても分かってはいるけど!」
口数は少ないが、星を見つめる瞳に宿る光に、少なからず共感を覚えていたセレーネは、スターゲイザーのモニター中央に映るストライクノワールに、複雑な瞳を向けていた。
戦闘のプロフェッショナルではないなりに、ソルは懸命にスターゲイザーを操作していたと褒めるべきだろう。
非ブーステッドマン系のナチュラルとしてはトップクラスの腕前を誇るスウェンを相手に、十分以上持ちこたえているのだから。
光輪を纏ったスターゲイザーから、ストライクノワールめがけて万物斬断の光の輪がいくつも放たれ、周囲のデブリを鮮やかに切り裂いてゆく。
推力を持たぬノワールストライカーで、スウェンは最小限の動きと最小限の推進剤消費で回避して見せ、ビームライフル・ショーティーからは反撃の光の短矢が何度も放たれる。
その半数を回避し、残る半数を光輪で防ぎ、スターゲイザーはなんとか喰い下がろうとストライクノワールと何度も交錯しながら、宇宙の闇に光の軌跡を描いてゆく。
絶妙なゲヴェルからの援護射撃、各種軌道パターンを組みこまれたミサイル、数年にわたる経験から生まれたスウェンらのコンビネーション。
機体性能ではGATカスタム三機と同等か、それ以上と言っていい77シリーズとスターゲイザーであったが、戦闘のプロフェッショナル相手に徐々に追い込まれてゆくのは当然の話であった。
バヨネット装備型ライフルを連結させたバスターモードの砲撃を、スターゲイザーがビームリングで防ぐも、圧倒的な出力に押し込まれて動きを止めた隙に、ブルデュエルのスティレット三枚が機体を直撃し、大きく吹き飛ばした。
純白の装甲を汚し、死に体になるスターゲイザーに、ビームライフル・ショーティーの着弾が続いて、装甲に少しずつ罅が入ってゆく。着弾の衝撃は繊細な内部危機にも負荷を与える。
「く、流石に、スウェン達はプロだな!」
「デブリ帯に逃げ込みましょう」
「セレーネ!? スターゲイザーはともかくアイビス達は」
「大丈夫だよ、ソル。それ位なら訓練メニューでこなしてきたから」
「アイビスの言う通りだ。あの程度のデブリ、目をつむっていてもくぐり抜けられる」
流石に目をつむってというスレイのセリフは言いすぎにしても、プロジェクトTDのメンバーに課せられた猛訓練をこなしたスレイとアイビスなら、セレーネの提案通り大小無数の岩石漂うデブリ帯も突破できる。
サブシートでデブリ帯突破のルート探索を行っていたツグミが、スターゲイザー、ベガリオンに算出した移動ルートのデータを転送する。
先だって実戦を経験した事から、DSSD襲撃にあっても大きな動揺や恐慌に陥る事はないようだ。実年齢よりいくつも下に見られるツグミの童顔は、凛々しく引き締められていた。
「このルートでいけば、ベガリオン、アルテリオン、スターゲイザーなら追いつかれずに逃げられるはずよ」
ただ、逃げたその先に何があると言うのか、どこを目指せば良いのか、逃げた所でどうすればよいのか、それは彼女たちの誰にも分からぬ事であった。
アイビスがアルテリオンの機首をデブリ帯へと巡らした時、それはあらわれた。ゲヴェルから出撃したのは、ストライクノワール、ブルデュエル、ヴェルデバスターの三機。
ではスウェンらの合流前にゲヴェルに搭載されていた機体は?
その答えは、デブリ帯の奥から出現した巨大な機影であった。五十メートルを超える特機級の巨躯に、特徴的な横長の頭部。青、赤、白を主な装甲色とし、三機の機動兵器の合体によって完成する地球連合最強の機動兵器WRX。
「デブリ帯に逃げるのを読まれていたの!?」
それだけではあるまい。おそらくはDSSDステーションを脱出後も、追跡に現れたゲヴェルによって巧妙に、この宙域に進路を向ける様に誘導されていたに違いない。
アイビス達はレフィーナの仕掛けた網と罠に自分達から入り込んでしまったのだ。
前方には地球連合現最強特機WRX、後方には最新技術によって強化されたGATカスタム機。星の海を行く筈の船と、星を見る者達は、ついにその道を閉ざされようとしていた。
――つづく
以上です。
今さらですが、このお話は原型の名残を留めていない原作キャラが大多数を占め、独自設定が氾濫しています。オリキャラは滅多に出ませんが。
シンの後継機ですが、百話位で最終回をメドにしているので、60〜70話くらいで登場するかもです。
とりあえず、チャンバラができて鬼のスペックを誇る機体になると思います。目指せ新シャア板最強のデスティニーなので。
では、ここはこうすればもっと面白い、とか、ここはおかしいな、などご指摘お待ちしています。おやすみなさい。
乙〜
インパルスでもGガン級の性能なのにそれ以上強くしてどうするwww
目指せ打倒FUG!!!
飛鳥インパルスの時点で特機クラスの打撃力を持ったMSサイズの機動兵器というSRX涙目な性能なのに
デスティニーはどれだけの存在になることか……
全天昇華呪法ビッグバン・パルマ・インパクトで完璧親父を全宇宙ごと昇滅させたりする
飛鳥インパルス
↓
飛鳥デスティニー
↓
ダイアスカ
↓
アークアスカ
↓
大銀河アスカ
↓
天元突破アスカ
↓
神飛鳥
ですね!
新シャア版最強のデスティニー…
今の所その称号はデモベクロスが持ってるのか?
いや、なのはクロスにもトンでもデスティニーがいた気がするな
>>436 デモベの方は魔導探偵見習いのシンとロイガー、ツァール装備のインパルスか
お侍さんとこで登場したてで性能不明の運命だな
運命に魔導理論ぶっこんだ後継機がかなりぶっ飛んだのになるらしい
なのはの犬師匠は色んな意味で別格
好きな形態(狼や龍とか運命)に変身する何処の竜機神? って感じの存在だから……
438 :
766:2009/10/05(月) 18:02:09 ID:???
デモベは知ってるがなのはの方はしらないので作者kwsk
>>438 お前コテのせいでどこにいたかモロバレだぞw
はやく逃げとけ、後ろから貧乳派MSが…
それと総帥乙でした!
スウェンたち元の機体戻ってきたけど、やはり敵対かぁ…
ビアンにちょっと萌えたのは内緒
最強のデスティニーとかどうなるんだろ…
手甲のビームシールドユニットからサーベル展開はデフォかな
>>438 例のMS郡からは逃げ切ったか?
とりあえずクロスWikiのなのは項の3を見るんだ ヒントは運命
まあ龍とかに変身してるのは回想シーンだけど番外編ではデンドロ系ユニットに組み込まれたりやりたい放題だぞ
>>441 サンクス
まだ三機の無人MS達から逃げてるさ。俺はAI娘ならバッチコイというのに…
最強のデスティニー…いかなる困難にもめげず、いかなる苦境にたたされても
あきらめず、いかなるピンチをも切り抜ける。
その名も…コブラデスティニー!!
他にもセガールデスティニーとか!?
とりあえず、最終型デスティニーが単機でズフィルード・エヴァッドを倒せれば大丈夫ですかね?
ゼントラーディ基幹艦隊を単機で壊滅させたというあの要塞型ズフィルード。
……(;´∀`)
総帥のGガンは原作状態の魔を断つロリコン旧神Ver.と張り合えるLvだとよくわかりました
つまりズフィルードが雑魚として宇宙怪獣のごとく無限に小隊編成で湧いてくると
最強のデスティニー
通常の装備には飽きたらず、性能低下承知の上で対艦機関砲を外付け
撃墜されても直ぐ復帰 パイロットを強引に乗せて「シン、休んでいる暇は無いぞ。出撃だ!」
>>447 むしろズフィルードクリスタルとナノマシンで形相干渉システムの如く自身を分解・再構成して武器使い放題でですね
増殖したデスティニーが合体して真デスティニーになるんですね
最近のネタを引っ張ってくるならロケットパルマ百連発じゃないか?
それは良くないフラグだからやめとけw
グレートデスティニーズチャイルドに乗った戦闘のプロ登場フラグだな
>447
ルーデルさん自重w
最強のデスティニーの議論もいいが俺は
最強のシン・アスカも気になるな…
それはやめておくんだ
最終的にアフロの破壊者が現れる
全てを破壊し、全てを繋げ!
次回、アフロライダーディケイ首領ア○カ
「アフロデスティニー大戦」
そんなに首領がすきなのか?
最強のシン・アスカ
ブリーフ一丁で窓際に立ち、背後に忍び寄ったルナを裏拳一発でノす
給料の振込みはスイス銀行で。
そのうちDGGシリーズの大飛鳥ならぬ首領飛鳥が出てきそうな勢いw
ダイナミック・アース・カイザー
ダイアスカーか
アース・カイザー……つまり地球皇帝か
>>461 「ぶるぁああああああああああああああ」
金枝篇片手に変態衣装の若本が・・・なんだ?こんな時間にいったい誰g
>>462 ニトロの最新作だと男装のょぅι゙ょがその名前を名乗ってるんだぜ…
おいおいあれが幼女だったらラトゥーニやマイが赤ちゃんになっちまうぞw
OGシリーズにおける修羅の出番はなくなりました……か。
え、もう一体の天級修羅神とか、俺達はまだ神化をもう一回残してるとかの伏線は全部そっち行き?
遂に修羅の生身バトルが拝めるのか
丁度、修羅中心のSS書きたいと思ってたから参考になりそうだ
覇皇拳と機神拳両方使える主人公らしいな
OGと密接に関わるキャラとのことだから
まず間違いなくあの男の関係者・・・っていうか血縁であることは間違いあるまい
とてもそうは見えんが
修羅って「○○拳、奥義」とさえ言っておけば何やっても許されそうなのが便利で良いな
それどんなボーボボ?
>>471 志村ー、名前名前ー
まぁ南斗水鳥拳奥義とか南斗孤鷲拳奥義とか南斗鳳凰拳奥義とか言えばどんな技でもそれらしく見えるからな。
流派東方不敗も何気に気孔波とか撃ってるけど(生身で)
スパロボとかでもすっかりもう誰も何も言わないしな
なんかバジルールが師匠を化け物呼ばわりしたのが一番最近な気がするぜ
逆にああいう常識的反応が新鮮というかなんつーか初々しいっていうかなんてーか
べ、別にバジルールに萌えてるとかそんなんじゃないんだからねッ!!
修羅は往年のジャンプ漫画の要素がかなり入ってるからなー
モチーフが北斗なのは言うまでもないが、他にも星矢とかのノリもちょっと入ってるね
奥義と言えば男塾を忘れてはならない
ところで勇者スレで「勇者だけ別スレ立てるの意味なくね? スパロボスレとかぶるじゃん」
みたいな意見が出ていたがこのスレ住人としてはどうだろうか?
ちゃんと分けると全く違うものになるな
勇者とエルドランならともかく
全然違うだろ
勇者はテレビ、スパロボはゲームだぜ?
かぶるとかほざく奴が正気とは思えん
>>476は、スパロボスレはスパロボ未参戦の版権もありだから、わざわざ分ける意味が無いという趣旨だな
ぶっちゃけどっちも過疎ってるし
>>476 統合されたらゴミクズが若干一匹ついてくるからイリマセン…
というか大分別物なきがするけどな、勇者とスパロボ
勇者にもブレサガみたいなのがあること考えると結局大してかわらんな
要は種を基準にロボット物がクロスしてりゃいいってのがこのスレだし
まあ既に存在してるスレなんだから、無理に一緒にする必要は無い
ただこのスレで勇者扱うのは1ミリもルールに抵触していないので全然OK
わざわざ統合とかめんどいけど、こっち来たいってんなら勝手にすれば? ってくらいか。
むしろ勇者スレと統合なんて真っ平ごめんだな
ラクシズみたいなキチガイに来られたんでは迷惑以外の何物でもない
ラクス本人がスレに書き込みとな?
21:30頃から投下します。勇者スレ云々の話が出ていますが、最初はダイノガイストをこちらで出すつもりだったのも懐かしく感じます。
単にダイノガイスト対ヴァルシオンで、中の人が同じ対決をやりたかっただけですけれども。
支援!!!
ディバイン SEED DESTINY 第二十話 争乱の宇宙
地球と月の元となった巨大な隕石二つが衝突した時の残骸によって、形成されたというデブリベルトに、DSSDの誇る二大プロジェクトの成果を追いこみながらも、地球連合製WRXのメインパイロットの顔色は陰っていた。
清らかな水の流れの様に美しい水色の長髪を専用ヘルメットの中に押し込み、大粒の瞳に小さな造りの唇や鼻と、実年齢よりもあどけない印象の、美人と言うよりも可愛らしい容貌の少女であった。
軍人稼業に身を置く人間とは思えぬ華奢な体つきも、いまだ女として欄熟の時期を迎えてはおらず、二年近くを経てなお地球連合最強の機動兵器と名高いWRXのメインパイロットを任された女傑とは信じられない。
イングラムおよびヴィレッタによって、『念動力を有さないパイロット用として再設計されたSRX』であるWRXのパイロットに抜擢された、精鋭中の精鋭、ムジカ・ファーエデン少尉だ。
前大戦時は友軍に畏敬の眼差しで見つめられたWRXチームも、いまや便利屋か使い捨ての駒程度に冷遇されていて、今回のDSSD襲撃に駆り出されていた。
スウェンとムジカらに囲まれて退路を断たれたアルテリオンやベガリオンを、ムジカは気まずげに見ていた。
今回、自分達が行った作戦が、大衆に胸を張って誇れるようなたぐいのものではないと意識しての事だろう。
代々軍人の家系に生まれたムジカだ。上層部からの命令がいかに軍と言う組織の中で、絶対的なものであるかは理解している。
地球連合という空前の規模の大組織の末端にすぎぬムジカらに、作戦に異議を唱える権利はないし――命令が正規のものであるか確認する位は出来るとしても――、すでに行動に移しているのだ。
いまとなっては彼らが抵抗せずに大人しく降伏してくれる事を祈るばかりである。
すでにDSSDステーションは、内部の工作員と特別工作部隊チーム・ジェノバをはじめとした複数の部隊の投入によって既に占拠が済んでいる。
スウェン、シャムス、ミューディーらが、スターゲイザーらに油断なく銃口を向ける中、ゲヴェル艦長レフィーナ・エンフィールドが降伏勧告を告げ始めた。
本作戦のブリーフィング時も、ムジカと同じように幼さを残した美貌に暗い影を刷いていた事を、ムジカは思い出していた。
『プロジェクトTDおよびプロジェクトスターゲイザースタッフ、応答願います。アークエンジェル級三番艦ゲヴェル艦長、レフィーナ・エンフィールドです。本艦は武力を持って貴方がたを拘束する権限を与えられています。
これ以上、抵抗するのであれば、不本意ではありますがその権限を行使します。貴方がたの生命の安全は私の責任を持って保障します。武装解除し、投降してください。すでにDSSDのステーションは制圧しています。貴方がたに帰る場所はありません』
アルテリオンらのパイロットに動揺が走るのを、ムジカは宇宙空間越しに感じた様な気がした。前大戦に参加してから、妙に勘が鋭くなって、他者の思考や感情と言ったものを鋭敏に察知できるようになっていた。
「大人しく投降してくれるかな?」
確認するというよりは、そうして欲しいという感情が濃く滲み出たムジカの声に、WRXを構成するR−2パワードのパイロットを務めるグレン・ドーキンスが、厳しい声で答える。
「するんなら、ああまでスウェン達相手にドッグファイトを繰り広げたりはしねえさ。機体もそうだが、パイロットの腕も確かだ。それに、投降したらしたで自分達の技術がどう扱われるかも分かっているだろうしよ」
「でしょうね。軍が本作戦を敢行したのもDSSDの持つ技術を独占し、DC、ザフトの新型兵器に対抗する為でしょうし、パイロットも……」
R−3パワードのパイロット・ジョージー・ジョージは言葉尻を濁す。プロジェクトTDのスタッフ達の行く末が、戦争に利用されるだろう事を案じたからだろう。
一部上層部が、狂気的民族浄化思想に汚染されている地球連合が、彼らの身柄をただ拘束するだけで済ますとは到底思えない。戦後の処遇や身の安全と引き換えに、戦争に協力を強いるのは十中八九間違いないだろう。
アルテリオンらのパイロットもそれを理解しているだろうから、最後まで抵抗するのではないか、とジョージーは無言の内に告げているのだ。
ムジカにもそれは簡単に想像がつく。だからこそムジカは本作戦に対し不満と上層部への疑惑を抱いてしまう。
DSSDは、確かに地球連合寄りでもザフト側でもない中立の立場を取っているが、旧オーブの様な武装した独立国家ではないし、あくまで学術的な目的を戴く集団だ。
彼らの研究の成果が人類全体にとって益となるものである事は、多くの人々が知っている。
大本はザフト資本である事や、コーディネイターが多数在籍しているために、敵視する者もいるにはいるが、それでも理性のある者なら、彼らに手を出すのは末期的状況に追い込まれた組織位だと嘲るだろう。
まだ明確に戦端が引かれたわけではないが、戦争を優位にする為の準備行動と、今回のDSSD襲撃は位置付けられる。それほど戦争を再開させたいのだろうかと、ムジカはチャームポイントである太めの眉を寄せた。
「投降して……」
そう願うムジカの声は、込められた痛切な狙いに反して、運命を決める何者か、そしてアイビス達には届かなかった。届く筈もないと、ムジカ自身理解はしていただろう。
『エンフィールド艦長、こちらはプロジェクトTDチーフ、ツグミ・タカクラです。投降の申し手ですが、お断りします。私達には行くべき場所があり、それは叶えるべき夢でもあります。
DSSDの皆の願いと夢、そして存在意義を、武力で持って理不尽に制圧しようと言う地球連合に屈するわけにはいきません。プロジェクトのスタッフであるアイビス・ダグラス、スレイ・プレスティも同じ意見です』
『プロジェクトスターゲイザーのセレーネ・マクグリフです。私達もタカクラチーフと同じ意見です。我々のプロジェクトが求めた技術を、軍事目的に利用させるわけには行きません。最後まで私達は貴方がたに抵抗します』
レフィーナのツグミらへの返事は、極めて事務的だった。
『……残念です。イーゲルシュテルン起動、バリアント、ゴッドフリート照準合わせ、ミサイル発射管対宙拡散溜弾装填。
スウェン中尉、ムジカ少尉、目標アーマードモジュール及び、モビルスーツの無力化を行ってください』
嘘偽りのない最後の一言を皮切りにして、スウェン達は素早く動いた。スターゲイザーを主に、アルテリオンとベガリオンは臨機応変に狙ってゆく積りか。
「ムジカ、手を抜こうなんざ考えるなよ!」
「……分かってる。ぼくだって、軍人なんだ」
「エンフィールド艦長より、全武装使用許可が下りました。ムジカ様、ハイフィンガーランチャー、脚部マイクロミサイル、ガウンジェノサイダー、ブレードキック、全ファイアリングロック解除しました」
「うん。行くよ!」
「おおっ!!」
大量の推進剤に点火し、爆発的な勢いでWRXが動いた。クルーズ・フィギュア形態のアルテリオンと、大型MAに見間違えられそうなベガリオンが、ムジカのメインモニターに映し出されている。
流石にDSSD肝入りの機体とあって、その機動性、加速、運動性、現行の機体のほとんどを上回るものであることは、スウェン達との一戦の様子から良く分かる。
ムジカはWRXの十指を広げて、大きく射撃角度を取りハイフィンガーランチャーをアンロックのままぶっ放した。
戦艦の主砲級の砲撃を毎分二百発で撃つ事も可能なハイフィンガーランチャーの高エネルギーが、雹の如くアルテリオン・ベガリオンへと降り注ぐ。
WRXが蛇行する様な機動を取りつつ、数を頼みに射撃されている。撃たれる側のアイビスとスレイにとっては肝が冷えるなどと言うレベルではない。
一撃でアルテリオンとベガリオンが航行不能になってもおかしくないエネルギーが、雨霰と自分達めがけていつ止むともなく降り注いでくるのだ。
明確に狙いをつけず、大雑把に自分達の後を追っての射撃とは分かるが、機体の付近をかすめるだけで大きく揺さぶられ、その度に神経に小さな牙を突き立てられるようにガリガリと削られて、集中を大きく妨げられる。
気乗りしない様子であったムジカとは思えぬ容赦のない殲滅行動に見えて、その実、可能な限り出力を落とし、ベガリオンらに直撃弾があってもそう簡単には落としてしまわないように配慮してはある。
スウェン達が武装の出力を落としてアイビスらを追いまわしていたのと同じだ。
「速いな、あいつら」
「ジョージー、ジェネレーターの温度は?」
「冷却は間に合っています。許容範囲内です」
「ムジカ、マイクロミサイル、ばら撒くぞ」
「アルテリオンの予測機動方向、2・5秒後位置に!」
「分かっているって!」
真空の空間ゆえ、がしゃん、と音を立てる事もなくWRX脚部の側面装甲が開き、技術の進歩から威力はそのままに小型化して、装弾数が五割増しになったミサイルの三分の一が、グレンの照準に従って白煙の尾を引いた。
行く手を塞ぐミサイルの軌道にいち早く気付いたツグミのナビに従い、迎撃のためにアイビスとスレイがミサイル群、GGキャノンの弾幕で撃ち落とすも、爆発の余波と広がった爆煙が一瞬彼女らの視界を遮る。
機体の操作にわずかな鈍さが生じた隙に、ムジカは機体出力を推進システムに振り分けて、一気に距離を肉薄させる。
足の甲に伸びた白い三角片の噴射口からは、ブレードキック発動の為のエネルギーが解放の時を今か今かと待っている。
「ちい、流石にかつては地球連合の切り札と言われただけの事はある」
アイビスがまだ機体のバランスを取り戻すのに手古摺る間に、機体を立て直したベガリオンが、レフトテールノズルから、ひときわ強い光を発して機首を急角度で曲げ、WRXと向かい合う。
超加速されたGブレイクドライバーの人体の限界を超えた超高速弾頭を、ムジカは額の内側に走った弱い電流に従い、WRXに半身をずらす最小の動作で回避させる。
電流にはスレイの敵意と破壊衝動が混じり、ムジカは顔も声も知らぬ女性の思惟を、明瞭に感知していた。
前大戦時に芽生えた超直感ないしは直接に意識を感じ取る繊細な感覚は、約二年を経た今、ムジカの内側で太い根を張る大樹の様に育っていた。
WRXが巨体に似合わぬ風に舞う蝶の様な軽やかな動きでかわすのに、スレイは少なく無い衝撃を覚えたが、その指は休まずCTM−07プロミネンスのトリガーを引いている。
さらにベガリオンの装備するCTMシリーズで最も広い射撃範囲を持つCTM−05プレアディスも、残っていた虎の子の一発を撃つ。
異なる弾頭のミサイルの津波の様な二射に、WRXは怯む様子さえ見せず、頭から向かっていた姿勢をくるりと変え、脚部をアルテリオンらに向けて一気に加速した。
ブレードキックの態勢だ。宇宙の闇を切り裂く光の筋となったWRXの機体を、展開されたターミナス・エナジーが攻防を兼ねる翡翠色のフィールドを形成する。
このフィールドプラス、異邦人達の言う所のニュータイプたるムジカの超人的危機察知能力、反射神経、爆発的なWRXの加速、これらが回避行動を取らずに攻撃を敢行する理由か。
はたせるかな、WRXに群がる鋼の飢えた肉食魚の群れの中を、WRXは一筋の流星となって駆け抜けて、光が通り過ぎた後には無数の爆裂が数珠繋がりに発生し、宙域を赤々と照らす。
瞬きする間にモニターの中で巨大になるWRXがベガリオンの直撃コースを取っている事を察し、スレイは危ないと意識が警告を発すると同時に操縦桿をかすかに傾けていた。
脳を大きく揺さぶる衝撃は、ベガリオンの左の主翼の先端を粉砕していった。
「ぐう、狙いは、アルテリオンか!?」
大きく傾ぐ機体バランスを立て直したスレイは、WRXがブレードキックを敢行したのは、ベガリオンとアルテリオンが一直線に重なった瞬間を狙ったのだと咄嗟に見抜いていた。
ベガリオンに回避されても得た加速を生かしてそのままアルテリオンへ、斬撃力を伴う蹴撃を見舞うつもりなのだろう。
「アイビス!!」
スレイの絶叫に、アイビスはよく応えた。
「こんのおおお!」
「いっけええ!!」
CF形態の加速を、DFへの可変による重心移動によって急激に方向を転じて、かろうじてブレードキックを躱す。寸前を過ぎ去ってゆくWRXの纏う高エネルギーの余波によって、アルテリオンの円錐形の胸部先端装甲がひしゃげた。
「胸部90mmGGキャノン発射口が歪んだわ。機体それ自体へのダメージは胸部装甲のみ。機体制御に問題はない」
「了解、機動性ならアルテリオンの方が上なんだ。ヒットアンドウェイに徹すれば!」
CTM−02スピキュール、さらにつづけてCTM−07プロミネンスと、アイビスはアルテリオンに細かい機動を取らせながら、スレイが先程仕掛けた様なミサイルの壁を形成して、WRXに叩きつける。
迫りくるミサイルの半数をムジカの反射と知覚器官によって回避し、残りを胸部のメガネの様なゴーグルから放たれたビームが横薙ぎに振るわれて、一瞬でミサイルの残数をゼロにする。
ミサイル群の迎撃を終えたWRXを、数発の着弾が大きく揺らして、Eフィールドを貫通した弾丸が装甲を砕いた。ミサイルの発射に時間差で放ったGアクセルドライバーの高加速弾頭である。
揺れるコクピットの中、アルテリオンを視界の中央に捉え、歯を食い縛って衝撃に耐えたムジカは、即座にWRXの姿勢を安定させて再度アルテリオンに機体正面を向ける。
緋色の軌跡を描いてこちらに迫るベガリオンも忘れてはいない。ベガリオンとアルテリオンそれぞれにハイフィンガーランチャーの指先を向け、散弾モードにしたエネルギー弾を発射する。
*
WRXが意外な苦戦を見せる中、スウェン達三人を相手にするスターゲイザーは苦戦を強いられていた。
戦闘用の訓練を積んでいないソルとセレーネ達に、スウェン、シャムス、ミューディーらと互角以上に戦えと言う方が酷であったろう。
かろうじて被弾こそ免れてはいたものの、ヴォワチュール・リュミエールの副産物であるビームリングの多用によって、エネルギー残量はすでに半分を切り、連戦による疲労も極限状態を前に危険な段階になっている。
荒くなったソルの吐息がヘルメットの内側を白く曇らせている。セレーネは気丈にも弱音を吐く様な事は無かったが、大粒の汗がやわ肌に幾つも浮かびあがっている。
アイビスらは健闘していると言ってよかったが、スターゲイザーの撃墜か鹵獲はもう間もない事かと思われた。
なんとかパイロット達の命だけは助けられないものかと、レフィーナが心中で思案する中、オペレーターの一人が、困惑した様子で報告を告げる。
「現宙域に急速接近する機影を確認。数は一」
「後続の艦隊ではないのか?」
レフィーナの隣に立つ副長テツヤ・オノデラ大尉に、オペレーターは首を振って否定した。
「アンノウンです。約50メートル、は、速い、まもなく視認領域に入ります」
「これほどの速さで動ける機体、リュウセイのヴァイクルでしょうか?」
「彼との合流は予定にありませんし、いまは月軌道艦隊に転属している筈です」
レフィーナ達がアンノウンの正体を訝しむ間に、それが姿を見せる。人型と言うにはいささか歪なシルエットだった。白い装甲に円盤に近いボディ、獰猛な獣が牙を剥き出しにしたような顔面に、額からは緑色の角が十字に広がっている。
アンノウンの中で、削いだ頬と鋭角に曲がっている白銀の髪に、冷酷な印象の強い青年パイロットが、WRXの姿を捉えて肉付きの薄い唇を吊り上げた。
ゲヴェルから発せられる警告を一切無視し、アンノウンは止まることなくアルテリオン、ベガリオンと高機動戦闘を繰り広げているWRXへと急速に接近する。
「え、な、なに!?」
「ふん、これがWRXとやらか。おれのヴァイクランの贄となるがいい!」
アンノウン――ヴァイクランの機体から、四基の小型砲台が射出された。ドラグーンと同じような無線誘導式の砲台ガン・スレイヴだ。
前大戦最終決戦において、ネオ・ヴァルシオン、グルンガスト飛鳥、ヒュッケバイン、ナシム・ガンエデンと融合した冥府の銃神が持つ武装と同系統のものであろう。
青白く発光する光球が次々と発射されて、とっさに回避行動を取ったWRXの至近距離を通り過ぎてゆく。
「ちい、ムジカ構わねえ、一発ぶちかましてやれ」
「艦長からも交戦許可が下りています。アンノウンを敵性勢力と断定」
「っ!!」
グレンとジョージーに言われるまでもなく、ムジカは襲い来るヴァイクランとそのパイロットが手強い敵であると根拠無く理解していた。
彼女に芽生えた直感的な察知能力、理解力が猛烈に放射される敵意を痛いほどに受け止めていた。
だからこそ照準をつけるのは容易い。使用許可の下りていたマイクロミサイル、ハイフィンガーランチャー、ガウンジェノサイダーが最大出力でヴァイクランへと殺到する。
ムジカが殺意を迸らせたのは、対峙するヴァイクランとそのパイロットの危険性をこの場の誰よりも強く理解していたからだろう。
「はははは、ぬるい攻撃だな!!」
ヴァイクラン機体前面に展開された超強力な念動フィールドが、WRXから放たれた武装のほとんどをシャットアウトし、ガン・スレイヴから放たれた雷光の弾丸は反対に次々とWRXの巨躯を捉えて行く。
「きゃあああああっ」
「悲鳴を上げられるのも今日が最後だ!」
アルテリオンやベガリオンには目もくれず、ヴァイクランの猛攻はWRXを捉えて行く。一方でムジカが果敢に行う反撃は、ヴァイクランの超重厚な念動フィールドに阻まれてわずかな傷を与える事も叶わない。
念動力を有さぬパイロット運用を前提に置いたWRXとはいえ、こうも一方的にヴァイクランに圧倒されるのは、機体性能の差であろうか。
「貴様以外にもザフトのWRX、そして二機のヴァイクルを破壊せねばならんのでな。貴様らはとっとと消えるがいい。ゲマトリア変換、食らえ、ベリア・レディファー!!」
ヴァイクランに搭載されたシステムによって変化させられた暗黒物質が、オウル・アッシャーの念波を受けて一時意識を混濁していたムジカとWRXに容赦なく襲いかかり、世の万色を溶き合わせた様な極彩色の渦が、WRXを上下に挟み込む。
空間そのものが捻られたように旋回する渦が次々とWRXの装甲を、乾いた土を砕く様に呆気なく粉砕して行く。
合体機構搭載機ゆえ、結合部に脆弱な部分を残すWRXの各所から、紫電と爆炎が一斉に噴き出して、WRXの両脚部、左腕、顔の左半分が無残にも破壊されていた。
前大戦時、ヴォルクルスを相手に勇猛な戦いぶりを見せたWRXが、こうも簡単に破れるとは。
「スウェン中尉、WRXの回収を! パイロットが危険な状態です」
「DSSDの機体は?」
「WRXの回収を最優先にしてください。責任は私が負います」
「……了解。シャムス、ミューディー、行くぞ」
「特機相手かよ」
「言っても仕方ないでしょ?」
「ふふん、虫けらに何ができる。このハザル・ゴッツォの敵ではない!」
自在に飛翔していたガン・スレイヴが列を成して一斉に雷光を放つ。
スウェンらはそれに当たる様な事は無かったが、動きのとれぬ状態のWRXに用意には近づけないように、ハザルがガン・スレイヴを展開し、オウル・アッシャーの念波も際どいタイミングで放たれる。
理不尽とも思える武装や能力を持った存在との戦いは、ヴォルクルス戦で免疫ができていたので動揺する事は無かったが、面倒な武装を備えた強敵相手にスウェン達は思う様にWRXに近づく事も出来ずにいる。
時折ヴァイクランからの攻撃の合間に、ビームライフル・ショーティーやレールガンが放たれるも、ヴァイクランの巨体にそぐわぬスピードとハザルの強念者としての資質、念動フィールドを前に牽制にもならない。
「艦砲でアンノウンを牽制します。バリアント、ゴッドフリート、発射!」
「ふ、どんくさい戦艦の砲撃など、かすりもせん」
やすやすと迫りくる超高速実弾とビームを回避し、ヴァイクランが従えるガン・スレイヴ二基がゲヴェルへと飛翔し、追い払わんとハリネズミのように撃ちかけられるイーゲルシュテルンの75mm対空溜弾の網の目をくぐる。
ネームドシップ艦となったアークエンジェル同様純白の装甲に、次々とガン・スレイヴからエネルギー弾が撃ち込まれ、直径数メートルほどの穴が開いてゆく。
「何だか知らないけど、いましかないわ。スレイ、アイビス、セレーネ、この隙に現宙域を離脱するわよ!」
「確かにチャンスではあるが……」
言葉尻を濁したスレイだが、確かにツグミの言うとおり先程までのゲヴェルMS隊による包囲網は、突如乱入してきたヴァイクランによって崩壊している。
この場を逃げ出すのに、いまほど都合の良いタイミングは無いだろう。追い込まれつつあったスターゲイザーのソルとセレーネからも同じように離脱を促す。
「そっちはまだ動ける? スターゲイザーはまだ何とかいけるわ」
「離脱ルートの算出は終わっているよ」
「アイビス、アルテリオンの推進機関にも問題はないわ、急いで!」
「……分かった。スレイ、ソル、付いて来てよ」
「お前の方こそはぐれる様な事はするなよ」
純白と白銀と緋色の流星に、ハザルは興味がないようで、彼女らが離脱してもガン・スレイヴ一基を向ける事もなく、ゲヴェルと半壊したWRX、ストライクノワールらへ猛攻を加える。
船体全体を揺らす大きな振動に襲われる中で、レフィーナが声を張り上げていた。
彼女や傍らのテツヤからも、急速に戦場を離れて行くプロジェクトTDの機体の事は、思考から抜けていた。
作戦目標であるアルテリオンらの鹵獲どころか、自分達が星の海に散りかねない、抜き差しならぬ窮状に追い込まれてしまっていたから。
「イーゲルシュテルン二番から七番、十二番、十五番沈黙、バリアント一番基部破損、右艦尾ミサイル発射管全門沈黙、さらに居住ブロックに被弾、火災発生! 機関出力安定しません」
「ダメコン班急がせろ、隔壁下ろせ!」
「WRXとスウェン中尉達は!?」
「アンノウンに阻まれて、動けずにいます。本艦との距離、七〇〇」
「艦長、ローエングリンでスウェン達とアンノウンの中間を撃っては? 当たらなくても離脱の隙は作れるかもしれません」
「スタンバイ中に被弾すれば艦に甚大な損傷を負います。それにアンノウンから射出された小型誘導兵器だけでも、大きな脅威ですし、後続の艦隊が来るまでなんとか耐えるしか」
「消極的な策しかとれないということですか」
「艦長、インディゴ8−3−1、デルタ3−4方向より接近する機影、1!」
「またアンノウンですか?」
「いいえ、識別信号は友軍です。データバンクに照合するデータあり! これは、R−GUNパワードです」
「R−GUN!? では、行方不明になっていたイングラム・プリスケン少佐?」
ストライクノワールの左手から射出したワイヤーでガン・スレイヴの一基を巻きとり、ミューディーに撃ち落とさせていたスウェンは、モニターに新たに映し出された機体に気づく。
両肩後方から斜め前方に向けて長く伸びる砲身が特徴的な機影は、記憶の中にあるR−GUNパワードのモノと寸分の狂いもない。ザフトにも全く同じ機体が存在していたが、スウェンは根拠無く、イングラムのものかと感じていた。
「プリスケン少佐の機体、か?」
自分でも気付かないうちに零したスウェンの独白に、答えがあった。前大戦時に轡を並べて冷たい印象の端正な男の顔が、サブモニターに映し出される。波打つ長い髪に、切れ長の怜悧な瞳に、変化は見られない。
『スウェンか、変わりないようだな』
「やはり、貴方か。見ての通り、WRXが撃破された。ムジカ達の意識レベルが危険だ。早急に医務室に運ぶ必要がある」
『時間稼ぎはおれがしよう。しかし、いままでどうしていたとは聞かんのか?』
「今はムジカ達の命が最優先だ。それに、その質問はムジカやリュウセイ達がすべき質問だ」
『お前は少し変わったようだ。おれがあの機体を足止めしよう』
何を考えているか分からぬ所がある、とスウェンはイングラムを内心で評していたが、意外にあっさりとこちらの思い通りの言葉を返してくれた事に、小さな驚きを覚える。
とはいえせっかくの申し出である。どのような理由があって行方を晦ましていたのかは、いずれ追及しなければなるまいが、ゲヴェルとWRXの状況を鑑みればその暇さえ惜しむ必要がある。
スウェンがその判断を下すのよりも早く、ゲヴェルの方でもテツヤが具申した撤退をレフィーナが聞き入れていた。突如出現したアンノウンの圧倒的な戦闘能力の前に、なすすべがない現状を考えれば仕方のない事ではあるだろう。
ストライクノワールとブルデュエルに左右から支えられたWRXを、ハンガーに固定し、殿を務めていたヴェルデバスターがゲヴェル後部船体に着地して、大部分が沈黙した砲塔代わりを務める。
イングラムの真意の誰何や目的を問う事もなく、レフィーナは素早く艦を転舵させて後続の艦隊との合流を決意していた。
「ムジカ少尉、グレン少尉、ジョージー少尉達三人は?」
「今、医務室に運びこまれました。詳しい容体は不明ですが、軽視出来る状態ではないようです」
「……イングラム少佐は?」
「アンノウンと戦闘を始めました」
「分かりました。機関最大、本艦は現宙域を離脱します!」
後方を映すモニターに、背を向けて離脱してゆくゲヴェルの姿を確認して、イングラムは完全に意識を目の前のヴァイクランに集中する。
「貴様はアウレフか、バルシェム共のオリジナル!」
「おれをアウレフと呼ぶのか。その機体、やはりバルマーのものだな」
「ふふ、ゴラー・ゴレムの人形どもが貴様を目の前にしたらどうするか、興味はあったが、いまここでこのおれとヴァイクランが消し去ってやろう」
「やれるものなら、な」
ツイン・マグナライフルとガン・スレイヴ、オウル・アッシャーが両機の間で絶え間なく放たれはじめる。
失踪していた間、イングラムがどのような時間を過ごしていたのかは謎だが、少なくとも機体の整備が出来る環境ではあったらしく、軍から持ち出したR−GUNパワードは完全に機能を発揮している。
左手で投じたT−LINKブーメランが、ヴァイクランの念動フィールドと接触し、双方の思念が翡翠色の飛沫に代わって刃と壁の間で幾百も溢れる。
高速旋回するブーメランの刃に亀裂を刻まれたフィールドに、イングラムが正確な狙いでツイン・マグナライフルを連射して、これまで鉄壁を誇ったヴァイクランの防御を破った。
手元に戻ってきたT−LIMKブーメランをそのまま左手に握らせ、イングラムはツイン・マグナライフルの連射と共にR―GUNパワードをヴァイクランへと突っ込ませる。
念動フィールドの再構築よりも早く、ヴァイクランにダメージを素早く蓄積させるためだろう。
「この程度で、父上から賜ったこのヴァイクランに傷がつけられると思うか!」
「自慢するだけの事はあるようだな」
「余裕ぶったその顔を、恐怖で歪ませてやろう。ゲマトリア変換!!」
「ほう、この念動力、予想以上の完成体だな」
「深く暗い闇に沈め、アウレフ・バルシェム! ベリア・レディファー」
WRXを大破せしめた兇悪な思念と共に放たれる空間の変異現象に、R−GUNパワードは逃れる術なく飲み込まれたかのように見えた。長大な砲身も含めてR−GUNパワードの機体は、残らず渦の中に消えた。
「ふん、アウレフといえどこの程度、か。所詮はユーゼス・ゴッツォの作ったおもちゃに過ぎんか。ふふふ、ふはははっはははは!!」
勝ち誇ったハザルの哄笑がヴァイクランのコクピットの中に木霊する中、R−GUNパワードを飲み込んだ渦の中から、紅色の魔法陣が大きく展開した。
オカルティックな、血で描かれた悪魔召喚の魔法陣のようである。それを肯定する様に魔法陣から発せられる重圧は、ハザルの念者としての感性に言い知れぬ恐怖の黒雲となって感じられる。
それはハザルから勝者の余裕をはぎ取り、浮かべていた笑みを凍らせて狼狽を露わにした。
「なんだ、これは……クロスゲートか!?」
見通せぬ紅の魔法陣の中心から、イングラムの声が暗黒の宇宙空間に響き渡る。人類の営みなどちっぽけなものと見下す、強大な力を持つ魔王の嘲笑の様に。
「出でよ、R−GUNリヴァーレ」
ベリア・レディファーの残滓が晴れたその後には、R−GUNの名を冠しつつも、まるで名残を見つけられない巨大な人型兵器の姿があった。
赤紫色を主な装甲色とし、背には悪魔のものとも天使のものとも見分けられぬ翼が広がり、掌の先には指一つなく、手持ちの兵装は一切見受けられない。R−GUNよりもはるかに巨大化し、PTから特機へと変貌したかの様である。
「機体を呼び寄せたのか? だが、どんな機体だろうとこのヴァイクランには及ばぬ」
「アストラナガンほどではないが、このリヴァーレ、やすやすとは倒せんぞ」
不敵なイングラムの囁きが、ヴァイクランとリヴァーレの魔戦の幕引きとなった。
ヴァイクランの乱入によってかろうじて離脱出来たアイビス達チームTDとスターゲイザーだったが、ゲヴェルにヴァイクランの脅威が襲いかかって来たように、彼女達にもまた休む暇は与えられなかった。
行く当てもなくかろうじて命を拾えた事に安堵の息を吐こうかという時に、無数の敵影がアルテリオンらを取り囲んでいたのだ。
敵を察知でき無かったのは、敵が優秀なステルス装備を有していた事もあろうが、アイビス達の体に貯まっていた疲労のせいもあったろう。
スターゲイザー達の周囲を飛び回り、ビームの雨を降り注がせているのは、かつてDSSDステーションを襲撃したハリネズミことガロイカである。
ウニかハリネズミよろしく四方に突起が伸びた特徴的なシルエットは見間違えようが無い。
すでに一戦交えた相手とあってアイビス達も対処法は心得ていたが、操縦桿を来る手の動きは鈍く、瞳は霞んで焦点をうまく結べずにいる。
咄嗟の瞬間に生死を分ける判断力は鈍り、機体の機動に体は大きく持っていかれて更なる疲労が、体の内側に溜まってゆく。
「アイビス、ソル、セレーネ、聞こえるか、例の指揮官機を狙うぞ。この状況を突破するにはそれしかない」
スレイの言うとおり前回の戦闘で指揮官機と認識されたゲイオス=グルードが一機、ガロイカの群れの中に姿を見せていた。
サイズこそ二十メートル前後だが、その性能はMSの比ではない。堅固な装甲に支えられた高い耐久性、パワー、機動性に至るまでが特機レベルの性能を誇っている。
スターゲイザー、アルテリオン、ベガリオンの三機がかりでも、周囲にはゲイオス=グルードを援護するガロイカは無数にあり、ましてアイビス達のコンディションは劣悪である。
ゲイオス=グルードに攻撃を仕掛けるのは危険な賭けと言う他ない。しかし、これ以上戦闘を続けても状況が悪化するだけとあっては、その一か八かの賭けすら打てなくなる。
「分かったよ、アルテリオンはベガリオンに合わせる」
「スターゲイザーはVLであいつを真っ二つにするつもりでいてくれ。あれの重装甲では私達の機体の武装では、致命打を与えにくい。頼んだぞ、ソル」
「分かった。責任重大だね」
アイビスらが自分達の生死を賭け金にした博打を打とうとしている間に、ゲイオス=グルードのパイロットであり、ガロイカ群の指揮官であるジュスティヌ・シャフラワースは、アルテリオンらの動きを察知し、深く息を吸った。
ジュスティヌ――愛称セティは、艶やかな光沢を放つ髪をショートにまとめた妙齢の美女である。ふっくらと膨らんだ唇に理知的な目元、左目には網膜投影式のディスプレイを装着した若き女将軍が、セティの正体だ。
「ゼブの報告通り、あきらめが悪そうな相手ね」
そうは言いつつも、嫌いではない、と口調が告げている、愛機がまだ修理中の為、数段性能の劣るゲイオス=グルードでの出撃となったが、幸い狙いの獲物はひどく消耗している。
手負いの獣は生を掴むために最後の最後まで足掻くから恐ろしい。その事を念頭に入れて、相手をせねばなるまい。
しかしこちとら白い流星や赤い彗星をはじめとした変態パイロットやら、ゲッター線の使徒やら、魔神皇帝やら、炎となったトップ兵器やらを相手にして戦ったのだ。
並大抵のパイロットと機動兵器が相手なら対して、驚くにも値しない。プロジェクトTDなどの機体は、確かにこの世界の機動兵器としては破格の機動性を持っている。パイロットもそれをうまく活かしている。
しかし、撃たれる前に回避行動を取っているわけではない。脳波コントロールの無線誘導兵器との神がかったコンビネーションがあるわけでもない。
一撃で戦艦どころか艦隊が消滅する様なふざけた火力があるわけでもない。機動兵器の集中砲火に耐える物理法則を無視しているのか、と言いたくなる装甲があるわけでもない。
それならば、心胆を寒からしめてまで恐れる相手ではない。油断はないが、過度に警戒する必要もない。デュアルレーザーソードを一振りし、セティは螺旋の動きを見せるアルテリオンらに細めた眼を向ける。
ガロイカ達に三機一組の正体編成を取らせ、四方八方からガトリングビームが光弾の檻を作る中を、アルテリオン、ベガリオン、スターゲイザーは目を見張る機動で回避して見せ、見る間にセティのゲイオス=グルードに襲いかかる。
残っていたわずかなミサイルのすべてを撃ち尽くし、Gアクセル・Gブレイクドライバーの両砲も、正確な狙いをつける間も惜しんで放たれる。
数機のガロイカを盾にして砲撃の半数方を防ぎ、爆炎のど真ん中を突っ切って襲い来たアルテリオンが、目前でCFからDFへ変形した勢いをそのままに、大きく展開したソニックセイバーを、ゲイオス=グルードへと叩きつけてくる。
「これなら!」
「これ位の攻撃は、慣れっこなの」
セティから見て右側に機体を動かし、アルテリオンの左ソニックセイバーをデュアルレーザーソードで受け流すその一瞬で、ゲイオス=グルードの左足をアルテリオンの脇腹にたたき込む。
砕けた破片と共に、アルテリオンがピンボールの様に大きく後方に弾かれて、たちまちの内にガロイカに囲まれる。
息つく間もなくゲイオス=グルードめがけて降り注ぐ110mmGGキャノン、Gブレイクドライバーの連射を、セティはデュアルレーザーソードの刀身を盾代わりにして初弾をかわし、ベガリオンへと機体を走らせる。
「こいつ、戦い慣れている!?」
「ロンド・ベルに比べれば、貴方達は可愛い相手よ」
先の戦闘で機体左部に損傷を負っていたベガリオンは、刹那の攻防に対応しきれず、ゲイオス=グルードの振るった輝線に機体を斬られて、緋色の装甲が無残にも抉られる。
セティは左目の網膜に投影された画像データに従い、ゲイオス=グルードに次の行動を取らせる。セティの目には、光輝く輪が幾重にも重なって見えていた。それは、美しいとさえ言える光景であった。
単純な三機の連続攻撃だが、即興の連携にしては及第点か。
「ジェット・ストリームアタックと言った所かしら、ね!」
ソルの付けた狙いよりもはやくゲイオス=グルードは動いて見せる。
搭載された優秀な慣性制御装置が、ゲイオス=グルードにジグザグの機動を許し、真ゲッターほどではないにせよ、テスラ・ドライブ機でもそうは行えぬ直角の動きで光輪の合間を縫う。
「ソル、来るわよ」
「く、ビームガンで止められる相手じゃあ」
ない、と続けようとしたソルは、ゲイオス=グルードから放たれるダブルキャノンやドライバーキャノンの回避に神経を割かねばならなかった。先ほど相手にしていたヴェルデバスターさえ生ぬるく思える大火力である。
軍事技術への技術転用という点での発想力こそ、セティの所属する国家は地球に大きく劣るが、基本的な技術においては上を行く。それはこのC.E.世界でも同じ事が言える。
特機など極一部のイロモノキワモノ機体を除けば、セティやゼブらの集団の方が、運用する兵器の質は数段上であった。
「ゼブの失点もこれでカバーできるわね」
ダブルキャノンの直撃がスターゲイザーの左腕を吹き飛ばし、機体の挙動が乱れた隙を狙ってセティはデュアルレーザーソードを、白雪のように滑らかで美しい装甲の胸部へ突き込む。
「セレーネ!」
咄嗟に後部座席のセレーネを振り返り、ソルは庇おうと体を固定しているベルトを外そうとした。
ゲイオス=グルードによって与えられた損傷が原因で、機体の姿勢制御に狂いが生じたベガリオンは、よたよたと頼りなく動くきりでスレイには見ているだけで何もできなかった。
アルテリオンは猟犬に追い立てられた獲物のように、ガロイカに周囲を十重二十重に囲まれて、助けに行くどころか自分達が撃墜されないようにするので精一杯だった。
救いの手はもはや伸びる事はないかと思われた。しかし、デュアルレーザーソードがスターゲイザーを貫くよりも、飛来した一条の光が、ゲイオス=グルードの右手を貫く方が早かった。
「良いタイミングで乱入してくるわね!」
かすかな苛立ちを込めたセティの呟きは、乱入者の耳へは届かなかっただろう。
「ヒュッケバイン? バニシングトルーパーがどうしてここに!?」
セティの目には、前大戦時ステラ・ルーシェによって運用されて大きな戦果を挙げたヒュッケバインの姿が、そこにあった。
ただしカラーリングはブルーではなくグリーンで、搭載されている動力機関も、ブラックホールエンジンではなく、プラズマジェネレーターである。ゲイオス=グルードに向けた右手にはフォトンライフルが握られている。
「ヒュッケバインという事は、DCかしらね?」
右手首から先を失ったゲイオス=グルードを、スターゲイザーから遠ざけながら、セティの目はガロイカの残余戦力を確認しつつ、新たな敵影の戦闘能力の分析に努めた。
生前の対ロンド・ベル戦でもヒュッケバインとグルンガストの戦闘能力には、散々煮え湯を飲まされた経験がある。その同型機とあれば、セティも否応にも警戒心を掻き立てられる。
更に姿を見せたのはヒュッケバインのみならず、その後方から400メートル近い巨影が現れたのである。セティが知る限りどこの組織にも無い船影で、なおさら奇々怪々な兵器を作る傾向のあるDC製であろうと、確信を深める。
見れば見るほど異様な戦艦だ。船首にはクワガタの様な小さな黄色い角が伸びている。船体に砲塔らしきものはほとんど見受けられないし、機動兵器を搭載する格納庫もないし、カタパルトらしきものもない。
三年前からMSの運用を前提とした戦艦類の設計・建造が行われているというのに、まるで運用意図が外観から見取れぬ奇妙な船である。
所属不明のこの艦は、デストロイドアグレッサーという。最近完成したばかりの新造艦であるが、ゲイオス=グルードとチームTDらとの戦闘に割って入ったことからすれば、アイビスらに与するつもりなのだろう。
「一体、どこの船なのかしらね、名前を教えてくれない?」
セティが地球の国際救難チャンネルに合わせてデストロイドアグレッサーに言葉を投げかけたが、まさか答えがあると思っての事ではない。
「名無しのままではいささか不便か。ふ、ではレーツェル・ファインシュメッカーと覚えて頂こう。そのヒュッケバインは」
「………………ミルヒー・ホルスタインだ」
「『謎の食通』に『牛乳・牛』? 翻訳機が壊れたのかしら? 名前にしてもどう考えても偽名じゃない」
ミルヒーと名乗った方の青年の声は、ひどく不機嫌そうである。名乗りたくて名乗ったわけではない事は、その声音だけで分かる。名乗るのを楽しんでいるようなレーツェルに対し、正反対の反応だ。
「フロイライン、我が友の夢たる星の海を行く船と星を見る者を、君達に渡すわけには行かん。横やりを入れてでも妨げさせてもらおう」
「やっぱり、邪魔ものって事ね」
「ミルヒー、アルテリオンの援護を。指揮官機と敵主力は私が叩く」
「了解。…………その名前、何とかならないのか?」
「ふ、代案があれば聞くが?」
「……」
代案は無いらしい。ミルヒーと名乗った金髪の青年は、ヒュッケバインをガロイカに追い立てられるアルテリオンへと向け、援護すべく動き始める。
「ヒュッケバインの相手はガロイカに任せるとして、戦艦を落とさせてもらうわよ」
もとの船体色が何かは分からぬが、真っ黒に染められた戦艦にセティは残ったガロイカの三分の一を差し向けた。ベガリオンは機能不全を起こしたのか、動きが定まらずスターゲイザーが守る様にして寄り添っている。
あれならそうは動けないだろうから、しばらくはこの闖入者に集中しても大丈夫だろう。ゲイオス=グルードの右手は使いものにはならないが、それ以外に問題はないし、戦闘能力もさほど低下したわけではない。
このゲイオス=グルード一機でも十分に戦艦の一隻、二隻、星の海の藻屑にするのはどうと言う事は無い。
「それなりの秘密が無いと、すぐに落ちてしまうわよ!」
「では、このデストロイドアグレッサー・トロンベの真価をお見せしよう。トランスフォーム!!」
デストロイドアグレッサーの艦橋で、レーツェルと名乗った男がそう叫ぶのを聞き、セティの心の中でトテモイヤナヨカンが鎌首をもたげた。
この手の気合いの入った叫びは、敵対する者にとって極めて厄介な代物である事は、いやになるほど痛感している。
船体をいくつかのブロックに分けて接続して構成していたようで、セティの目の前で、デストロイドアグレッサーは船体の一部を回転させ、あるいは付け替えて見る間に形を変えて行く。
我を取り戻したセティのゲイオス=グルードとガロイカから、砲撃が遅まきながら放たれるが、あのレーツェルと名乗った男の手腕によるものか、変形中でありながらデストロイドアグレッサーは、回避機動を取り命中弾は数えるほどしかない。
船首と思しかった部位は背に回って、かろうじて人型? と言えなくもない姿に変わった異形の戦艦が現れた。変形したデストロイドアグレッサーはなんと、ほぼ二頭身のロボットへと変わっていたのである。
三本爪の両手の甲の部分の、右手側には二本の砲身の間に矢を装填したパーツ、逆の左手には万力みたいなものが装備されていた。頭部はモノアイでザフトのゲイツに似ているが、額から一本角が伸びているのが特徴的だ。
しかし、実に400メートル前後の戦艦が機動兵器に変わるなどと馬鹿げた代物に、セティも一瞬我を忘れた。
まあ、七キロメートルの宇宙戦艦とか二〇〇メートルの合体ロボとか相手にはしたし、暴走したエヴァンゲリオン初号機が使徒を食った場面に遭遇した時など、驚きを通り越して恐怖さえもした。
「フューラーザタリオン・トロンベェ!!」
大見栄を張って威風を露わにするフューラーザタリオン・トロンベを前に、・にしていた目を元のパッチリとした瞳に戻して、思い切り叫んだ。
「……だからイヤなのよ、地球の連中を相手にするのって!!」
いまや、セティの前にいるのは鈍重な戦艦ではなく、未知の力を秘めた巨大人型機動兵器であった。
――つづく。
フューラーが出たのでそのうちジェネラルも出ます。・・・・・・疲れてんのかなぁ
総帥乙ですぜ
これは・・・ハイパーヴァーチェとかFFとかファイナルフォーミュラーとか出たり・・・
まさかの坊ちゃんwwwwwwwwwwww
あの威風堂々としたへタレぶりは嫌いじゃないんで暴れて欲しいもんだなwwwwwwwwww
乙でー
ジェネラルジオングですね分かります
つまりリジェネの応援でティエリアがソウルドライブするんですね、わかります
ヤベエ、今回突っ込みどころ大杉w
ハザル坊が出た時点で吹き出したのに、まさかフューラー引っ張り出してくるとわw
あとミルヒー・ホルスタインって、えっ、まさかのだめ?
ミルヒの名前みた瞬間に胡散臭さMAXな竹中直人が浮かんだw
フューラーザタリオンってwww持ってたw
空間ごと消滅させるブリーズドディストラクションやマイクロブラックホール撃ちだすグラビティブレーカー、
1億度のプラズマカノンが通常武装のあいつwww
フォートレスエンペラーGも好きでした。
地球各地に封印されている五体のロボットを目覚めさせて・・・
的な展開もあるな
超機人?
朱雀、白虎、青龍、玄武、黄龍ってところか...
あ、いやSD外伝でそういう話があるんだ
ゴッドマーズ的なロボで主人公の兄が洗脳されていて
主人公のコアロボとは別のコアロボで五体のロボを争奪したり
なるほど、サンキュー。
>>510 ガンジェネシスか。
あれ限定セット書き下ろしで7体目の機甲神ができて、7体合体形態がでてきたんだよな。
のだめネタがわかる人がいるとは意外。いつか必ずブランシュタイン弟に名乗らせようと貯めていたネタでしたw
これを基準に『地球人』を語らないでくれと言いたい……
やはり黒く塗られて家紋入りなんだろうか。
……出所は総帥か? といっても他にありえそうなところは無いが。
つーことはアレか?
ミナ様が呆れていたあれもSD関連?
普通に考えると、どんな色物でもミナ様が総帥の作った人型機動兵器を見て解体を真っ先に考えるなんて、殆ど有り得ないもんな……。
ガンダム頭がブリッジのガンダムサイとかか
>>517 艦艇はいくら総帥とはいえ、コツコツ夜なべしてできるもんではあるまい
ここでSDガンダムフルカラー劇場の面々(未起動)を挙げてみる
がんだむ、きゃのん兄弟、たんくのれんぽー初期メンバーですよ
>>516 竜機ドラグーンやキングオブハートとか鉄機武者とかか
>>516 ミナシオーネアイドル仕様とかなら解体するだろうな
ミナリオンとギナリオンってフリフリドレスの色違いロボが踊りながら
敵をフルボッコするという電波を受信した
あと騎士飛鳥インパルスと武者飛鳥インパルスって外装を作って
鞘に挿したまま刀振って鞘を砕いて敵に不意打ちするが
総帥がせっかく作ったのにー!
って涙目になる電波も受信した
おまえら、DCが何を乗っ取ってできた国だか忘れたか?
アカツキの予備装甲を使ってのスペリオルドラゴンに違いあるまい。
いやいや、ここはゴジラのスーパーX2だろう
んなもんメカゴジラに決まってるだろ。ちゃんと昭和・平成・機龍と三バージョンで。
モデルならメカザウルスとかいっぱいあるし
ガルガウ修理したらいつのまにかメカゴジラになっていたぜ的な
昔、メカガリというのがあってな
本人より優秀なんですね、分かります
最強の特撮機体(しかも金ピカ)の事ですね>メカガリ(正式名称スーパーメカカガリ)
ビームを跳ね返すわ、ビーム使わずにPS装甲破壊するわ、鉄球をキャッチ&リリースするわと大活躍。
>>528 作者の許可貰った別の所のSS職人がスパロボSSで出してたな。ネタとして。>メカカガリ
遅くなったけど総帥GJ!
ノリノリのハザルに対して、いきなりリヴァーレ召喚するイングラムも大概だけど、トロンベのはっちゃけぶりが次元違いすぎwww
みなさん、いつもご感想ありがとうございます。なによりの励みです。ファイトが湧くというもの。
これから10分後くらいに投下します。
投下しようと立ち上げたら総帥の投下予告キター
好敵手対ぼっちゃんクルー
では私は日曜くらいに延期して逃亡します
大きいおっぱいは正義d
ディバイン SEED DESTUNY 第二十一話 狂気戦争“序”開幕
音がした。
何百年、何千年の月日と叡智の積み重ねによって創り上げられた技術によって、生み出された鋼の産物が、一瞬の光によって融解し、粉砕され、爆発する音だ。
いや。
宇宙空間で音が伝播することは内。とすれば、聞えてきたのは鋼の上げる断末魔の声なき悲鳴であったろうか?
ガロイカの群れを飲み込んだ光は、漆黒の巨躯にある一族の家紋が捺された機体――フューラーザタリオン・トロンベの両肩部分の砲口から放たれたものである。
本来の機械生命体であるフューラーザタリオンの武装であったなら、現在の地球圏の技術レベルではほとんど再現不可能なレベルである。
しかしフューラーザタリオン・トロンベは人造の機体であり、その武装は本来のものほどには強力ではない。それでも群れなすガロイカを屠るには十分すぎる力を持っていた。
さらにどこに発射口があるのか分かりにくいが、光子ミサイルが放たれ、宇宙の暗黒を閉じ込めた様に黒い装甲を、一瞬のきらめきが輝かせる。
回避を言葉にして意識するよりも早く、フューラーザタリオン・トロンベの挙動に危険なものを感じたセティは、眉間に寄せた皺を深くして、ゲイオス=グルードの機体を本能に任せて傾かせる。
搭乗者の網膜を保護する為に自動で光量を絞る機体の機能が、強烈な光からセティの目を守ったが、モニターの先で光子ミサイルによって粉砕されたガロイカまでは守ってはくれなかった。
セティが、いま、ガンバスター相手にネモあたりで挑んでいる様な気分になっていると言えば、彼女の心情の悲惨さをご理解いただけるだろうか。
これがエリート兵や親衛隊の乗ったガザCやドーベンウルフなら、相手がスーパーロボットだろうが、ぐっと勝率は増すのだが。
左目に当てている網膜投影型ディスプレイに表示されるガロイカの残機数は、すでに二桁を切り、両手の指よりも少ない数を表示している。
本格的な戦闘行為を行うには時期尚早と、ガロイカばかりを引き連れて来たのが失敗だったか。それともなんとか話をつけてライグ=ゲイオスを持ってくればよかったか。
まだセティらは拠点としている場所の機能を把握し切れておらず、兵器生産プラントが十分に活動しておらず、ライグ=ゲイオスの数は今の所五十機もない。
「そういうレベルじゃないわね、これは」
苛立っている様な、疲れている様な、呆れている様な、複雑な声音であった。彼女の同僚であるゼブやロフ達なら心から同意してくれるだろう。
彼女らの最後の愛機となったゼイドラム、オーグバリュー、ビュードリファーは地球製の悪い冗談みたいなスーパーロボットとも、互角以上に戦える性能を持った超高性能機だが、一応、まっとうな技術の産物である。
しかして地球系の兵器と言うのは、物理法則に真っ向から喧嘩を売っているような代物が多くて、その手強さとはまた別に、常識的な兵器を運用する彼女らにとっては頭の痛くなる思いを覚えるのである。
目の前に現れた二頭身のおもちゃっぽいが、確かに身の竦むような威圧感を放つ(400メートルを超すサイズとは別に)変形巨大ロボットは、恐るべき強敵だ。
セティらの所属する組織には首領が二人いるのだが、その内の片割れが特に気にかけているのが、プロジェクトTDやスターゲイザーをはじめとした人類が外宇宙に進出する事を目的とした機体だ。
かねてからその強奪や破壊を目的として監視を行っていたのだが、地球連合の襲撃を好機として、今回セティが派遣されたのである。
地球連合の追ってとの戦闘で疲弊した所を狙おうと遠巻きに見ていた時に、ハザル・ゴッツォの乱入と、イングラム・プリスケンの介入があった時はどうしようかと迷ったが、アルテリオンらが離脱したので、実力行使にうつった。
それも、今回の作戦目的は達成寸前と言う所でこの意味不明なというか、不可解な偽名を名乗る連中に邪魔をされてしまった。
かつてロンド・ベルを相手にした時もあと一押しと言う所で、強力な援軍が現れ形勢が逆転する事はあったが、まさかこちらでもそうなるとは。
セティはすでに、残された戦力でフューラーザタリオン・トロンベとグリーンカラーのヒュッケバインを撃破して、アルテリオンらの捕縛する事を諦めていた。
「ゼゼーナン卿にお小言を貰うかしら。というよりはウェンドロ司令に何か言われそうね。あの坊や、笑顔のままで怖い事言うし」
気の重いこと、と口の中で呟き、セティは右手首を失ったゲイオス=グルードの残りの武装をありったけ撃ちながら、ガロイカ全機に後退を命じる。
アルテリオン、ベガリオン、スターゲイザーの捕縛に動かしていたガロイカは、ヒュッケバインによって七割がたが撃墜されている。
セティの知っているヒュッケバインと同じものかどうかは確証がないが、高性能を差し引いても乗り手がよほどの手練なのであろう。
往々にしてセティが相手にするのは、ベテランかエースばかりの部隊であることが多いけれども。
「残念だけど、今日はここまでね」
「もう終わりかね? まだまだ戦えると見たが」
「冗談はよして、そんなふざけた機体を相手に戦う気にはならないわ」
「それは残念だ」
潔く背を向けて離れて行くゲイオス=グルードを、レーツェルは敢えて見逃した。
深追いする事の危険を避けたというのもあるが、受領したばかりのフューラーザタリオン・トロンベが、急遽行ったトランスフォームによって機体状況にエラーが発生していた。
レーツェルの手練手管によってなんの問題もなく戦闘を行っていたように見えるが、その実、繊細かつ大胆な操縦技術と豊富な実戦経験を併せ持つレーツェルでなければ、こうもセティを騙しとおす事は出来なかっただろう。
ヒュッケバインが、フューラーザタリオン・トロンベの傍らへと期待を寄せる。フォトンライフルを腰裏にマウントし、戦闘態勢を解いている。ミルヒーも、セティが完全に撤退したと判断したのだろう。
フューラーザタリオン・トロンベが再びトランスフォーメーションを行って、デストロイドアグレッサー形態に変形する。
アガメムノン級戦闘空母を上回る巨体ながら、船速はナスカ級高速艦やアークエンジェル級の追従を許さぬ速度を誇り、MSの搭載機能を犠牲にした代わりに単艦での戦闘能力を追求した代物である。
かるくブースターを点火し、この場を離れようとするレーツェルとミルヒーの偽名兄弟が、事態の急転に呆然としているアイビス達に最後の通信をつなげた。
「とりあえず当面の危機は退けた。君達はこれからオーブへ向かうと良い。彼の地の軍事力は前大戦時を上回るものがあるし、連合やザフト、先程の彼女らも迂闊には手を出せん。
君達の機体を悪く扱う事もあるまい。断言はできんが君らの懸念しているような事態にはならずに済むだろう」
「あの、貴方達は」
声を張るアイビスに、レーツェルは薄く笑みを浮かべて応える。
「ふ、通りすがりの食通だ。レーツェル・ファインシュメッカーとミルヒー・ホルスタインの名前、良ければ覚えておいてくれたまえ。機会があればまた会おう」
憶えていなくていい、とミルヒーが顔を顰めて一心に念じていたが、レーツェルはそれを知ってから知らずか、薄く笑みを浮かべているきりであった。
*
地球を覆っていた次元断層が消失し、ルイーナの地下基地を壊滅させた事もあって、当面は大洋州連合に危難が振り掛かる事もないだろう、とロンド・ミナ・サハクは判断し、派遣した部隊の本土帰還を命じていた。
慌ただしくタマハガネに帰艦して機体をメンテナンスベッドに固定したシン達は、急な帰還命令に愚痴をこぼす暇もない。
地下基地の調査には後々オーブ諸島――DCの本土に元のオーブの名前を残したままでいいのか、という声はあるが、国民感情に配慮してこう呼んでいる――から、EOT関連の技師が来る予定になっている。
シンをはじめ、先のルイーナ戦に参加した面々と機動兵器部隊隊長アルベロが、大洋州連合から派遣されたバルクホルツ技術少佐と、マリナ・カーソン、タック・ケプフォードと別れの挨拶を交わしていた。
「マリナさん、タックさん、今回は助かりました。お二人とも原隊に戻られてもお元気で」
快活な少年らしい笑みを浮かべたシンが差し出した手を、タックとマリナが順番に握り返す。刹那やスティングらを代表してシンが分かれの握手を交わす大役を任されたのだ。
「今度の事で世界が広いってよく分かったよ。シン達も元気でな。また、生きて会おう。今度は美味いフィッシュ&チップスの店を紹介するよ」
悪評の多いフィッシュ&チップスであるが、美味い所のは美味いのである。タックにジャンクフードの組み合わせは、なるほどよく似合う。シンは独身男性の悲哀を見た気がした。
「成長期にそういうのばっかり食べたら背が伸びないわよ」
マリナは背の事を気にしているシンをからかった。実際あと十センチは欲しいなあ、と心の底で願っているシンは、乾いた笑みを浮かべる事しかできない。
パイロット同士がくだけた調子で和やかに会話を交わす一方で、バルクホルツとアルベロ、エペソの方も話をすすめ、今後カーペンタリアのザフトの対応や、対地球連合戦線の構築などについて、現場レベルで話せる事を話していた。
とりあえず三日後にはビアンをはじめとした官僚の一部がヤラファス島首都オロファトに帰還し、連絡がつかなかった間のごたごたをざっぱりと済ませる予定である。
もっとも、この間連絡を取った時に、ミナからビアンが秘匿していた冗談半分の兵器の事で愚痴を聞かされていたエペソは、ビアンの最初の仕事はミナに愚痴を聞かされる事だ、とほくそ笑んでいたが。
エペソもこう言う所は人並みに意地が悪い。
エペソが内心で自軍の総帥の苦労をせせら笑っているとは知らず、ガンアークの開発者であるバルクホルツは、今回のDCとの共同作戦で得られたデータに、ほくほく顔である。
バルクホルツの手元にあったデータだけでも十分と言える戦闘・運用データがあったが、やはり生きた新鮮なデータが手に入るのはありがたい。
今回の戦闘で予想以上というか、ほとんど未知の強敵との遭遇で得られた戦闘データは、大洋州連合の主力機動兵器の座を射止めたガンアークに反映されて、より優れた機体となるだろう。
タックとマリナが乗っているガンアークが先行量産型か試作型か実験機かまではDCに知らされていないが、それ以上の性能であったなら、DC最新型のエルアインスにも溝を開ける高性能機になるに違いない。
量産型ガンアークの開発・配備が順調に行ったなら、将来的に各国の主力機動兵器の優劣は、大雑把にこうなるだろう。
ガンアーク(大洋州連合) > エルアインス・アヘッド(DC) > フラッグ(大西洋連邦)・イナクト(ユーラシア連邦)・ティエレン(東アジア共和国)・ゲシュペンストMk−UM(正統オーブ)≧ガーリオン(DC)。
これらにやや差をつけられてザクウォーリア(ザフト)・ウィンダム(地球連合) > リオン(DC) > 核融合炉・TC−OS・テスラ・ドライヴ搭載の壁 > DC以外の旧世代MS。
まあ、こんな所だろう。ランドグリーズや飛行ユニットを装備したランドグリーズ・レイブンも優れた砲戦型機だが、運用の場面が限られる事を考えると上記に加えるべきではなかろう。
DCの場合さらにヴァルシオン改、グルンガスト弐式の二大量産型特機が加わり、地球連合には量産型ガルムレイドが加わる。
特機の配備・開発状況においては、ザフトとその他の勢力が全く進んでいない事が注目に値しよう。
もちろん開発は水面下で行われてはいるが、地球連合では特機に新型MAで対抗しようという考えが強く、ザフトではアクア・ケントルムがパイロットを務めるインパルスの開発経緯から考えて、開発は絶望的だろう。
大洋州連合が親プラントから親DCに鞍替え(と言ってもプラントとDCは友好勢力同士であるが)するつもりなのは、DCにとっては暗黙の了解の内で、彼らが独自の戦力を持つ事を嫌ってはいない。
自国の兵器以上の性能を持つ機体の開発を厭わないというのも、これはこれでかなりおかしな話ではあるが、DCにはAM、PT、MSを問題としない特機の存在もあるし、ビアン総帥手製の奇妙奇天烈機体の存在が軍部に余裕を抱かせている。
統一が成ったアフリカ大陸や南アメリカ合衆国、赤道連合を傘下に置いて爆発的に国力・人員が増大して、前大戦で資源・資金・軍事力で最弱だったのが、約二年で東アジア共和国並みの国力を得ているのも大きい。
最も、必ずしも軍事・政治・経済の足並みがそろっているわけではないのが問題だ。ま、東アメリカとアフリカのトップが元DCの人間と言う事もあって、上層部に置いてはさほど危惧する状況ではない。
――のだが、だが、である。地球の歴史上類を見ない巨大な軍事政権(なにしろ南半球ほぼ全域が版図だ)の樹立というわけで、各国の識者はしきりにDCの存在を危険なものと声を上げている。
その煽りと軍事優先の政策や、反コーディネイター感情で溢れる世論に反し、官民問わずコーディネイターにも平等な政策などから、DC勢力内の民心が必ずしも好意的とは限らないのが悩みどころである。
旧オーブの場合、オーブがそもそもコーディネイターを受け入れる数少ない国家であり、総帥となったビアンも異邦人である為にナチュラル・コーディネイターの差別感情が無かった事もあって、それほどには問題ではない。
いまも重要なポストに居る五大氏族も、サハク家のミナとギナが養子縁組で向かい入れられたコーディネイターである事から、実力重視の気風でナチュラル・コーディネイターの出自に拘らないものが多い(全くいないわけではない)。
それでも隠れコーディネイターというコーディネイターである事を隠している人々もいるし、まったく差別が無いのか、というとこれは真っ赤なウソになる。
とはいえ地球上の国家ではコーディネイターに対する寛容さでは一、二を争う国家である事は確かで、難民の受け入れなども行っていることからコーディネイター難民も多い。
積極的に有能な人員を登用し、チャンスを掴んだ、陽のあたらない所にいたオーブ下級氏族も、鼻息を荒くして活躍の場を求めていて、DCの工業力や技術力をはじめ、マンパワーも右肩上がりだ。
前大戦時、ヴォルクルス分身体とデモンゴーレム、ゾンビーMSという非常識極まる存在に蹂躙されて万人単位で死傷者が発生したものの、ボスボロット、軍用パワードスーツの大量投入によって、街並みは復興している。
DC政権に対する不信の声も、本土襲撃の際に大火となるも、軍事独裁政権と言われた否定できないDC側が、意外にも柔軟な対応を取り戦災者への積極的な補償や陳謝を行っており、現在は声高に現政権を批判する者は少ない。
本土攻防戦やヤキン・ドゥーエ決戦における多大な被害などによって、財政はかなり逼迫し軍需物資も心許なくなったが、赤道連合・大洋州連合からの援助によって持ち直している。
赤道連合は地球連合からDC寄りへ立場を移す事の見返りにリオンをはじめとしたDC製兵器のライセンス生産や、防衛戦力の要求、戦後の優遇措置をはじめとした見返りを求めて。
大洋州連合はDCがアフリカ大陸と南アメリカを傘下に収めた後、親プラントからDCの広げた傘の下に入り、今世紀勃発した混沌とした戦乱を生き残る為に。
景気良く特機・MSの新型機を開発し実戦配備しているように見えるDCだが、その実財政的には危うく火の車になりそうな所を、なんとか回避したという苦しいものだった。
南アメリカは、武力併合・独立戦で鬼神の活躍を見せた“地獄の戦士”ローレンス・シュミット大佐(昇進した)と、切り裂きエドことエドワード・ハレルソンが上手く軍民の心を掴んでいて、DCには友好的だ。
貴重なマスドライバーが健在で、戦中・戦後もたびたび大西洋連邦と小競り合いが続いており、DCからの援助が無いと単勢力で大西洋連邦の圧力を跳ね返すのは厳しいという事情もある。
今年に入って、アマゾンに存在する地下大空洞を利用した42万uにも及ぶ総敷地面積を有し、宇宙艦艇の建造ドック、MS工廠が存在する軍事都市ジャブローの建設が終了し、ようやく安定を見せている。
南北アフリカは、元の新西暦世界でビアンの傘下にあったバン・バ・チュンが軍部を掌握こそしているものの、南と北で対立していた頃の悪感情や、飽くまで現地勢力による自治を望む弱小の武装勢力が混在しており、統治が中々うまくいってはいない。
バン・バ・チュン、元の世界でもこちらでも苦労の人である。
安定せざるアフリカ大陸は、対地球連合戦後の優遇政策を約束して、なんとか足並みを揃えようと躍起になっているのが現状で、旧世紀から続く部族間抗争の火種も転がっており治安も良いとは言い難い。
ちなみに、南アメリカとアフリカの主戦力はリオンとストライクダガーである。
汎ムスリム会議がDC側に着いてくれれば、アフリカ近辺の世情も余計な警戒に戦力と神経を割かずに済んで、幾分マシになるのだが、これも今のところ良い結果を得られずにいる。
中立である汎ムスリム会議に色よい返事を求めて何度も交渉を持ってはいるのだが、主要国家であるアザディスタン王国をはじめとする、各構成国が渋い顔をしているのが現状だ。
地中海沿岸を制圧し、聖地を含んだ領土分割を餌にでもしなければ汎ムスリム会議の助力を得るのは難しいと見る意見も多い。
いっそのこと武力併合を、という意見もないではないが旧暦の頃からなにかと紛争の絶えぬ地域とあって、無理な武力行使は嫌う声と制圧後の統治難を訴える声が大きく、DCが汎ムスリム会議と戦火を交える事はないだろう。
単に、そんな余裕がどこにある? というウナト氏の意見が一番現実を物語っているだろうけれども。
まあ、現場レベルのシン達にはどうこう出来る問題でもないし、彼らの間で話題に上る事も滅多にはない事情だ。
ガンアークの有用なデータを得られ、タック達にも経験を積ませる事が出来て、笑みを浮かべるバルクホルツらと別れて、シン達は一路オーブへ帰還の途についた。
*
シンやビアンらがオーブ諸島に帰還した頃、遥かに離れたプラント首都アプリリウス市で開かれた議会では、紛糾していた。
地球の姿が再び無窮の暗黒で満たされた宇宙に復活してから数日、地球連合から通達された通告が、あまりにも問題のある内容だったためである。
ユニウスセブン落下事件を引き起こしたテログループの引き渡し要求である。それ自体はまだいい。すでに全員死亡という通達を伝え、連合側も一度はそれを了承したにも関わらず、それを無かった事にしたような通達である。
さらにその内容は、賠償金要求、現政権の即時解体、武装解除、連合理事国の最高評議会監視員の派遣となっている。
これらを受諾する事は、前大戦後、アイリーン・カナーバの奇跡的な外交活躍によって獲得したプラントの自治を投げ捨てて、再び地球のプラント理事国の膝下に屈する事を意味する。
再び理不尽なノルマを課せられ、自由を束縛され、ナチュラルの為に働く労苦を背負う事は、プラント市民の誰も望まぬところ。
自分達の力と多くの犠牲の下に自治を獲得したという誇りと、自分たちよりも能力・判断力で劣る旧人類に支配されるわけにはゆかないという優越感混じりの感情が、評議員の誰の胸にも渦巻いていた。
彼らだけではなくプラント市民二千万の全てがこの要求を知れば等しく憤慨して、厚顔無恥なる地球連合に非難の声を上げるのは間違いない。
また、彼らは知らなかったが、DCにも似たような内容の通達が送られていた。
ユニウスセブン落下事件の際に、阻止の為に使用されたDCの兵器(シンが使った星薙ぎの太刀の事)が発生させた莫大なエネルギーによって、地球が次元断層に覆われたと断言し、プラントと同じような要求がされていた。
そしてプラント・DCに贈られた通達の肝心な所は、こうだ。
『――以下の要求が受け入れられない場合は“プラント/DC”を地球人類に対する極めて悪質な敵性国家とし、これを武力を持って排除するも辞さない』である。
事実上の宣戦布告と何も変わらない通達である。
いずれ近いうちに再戦となると踏んでいたDCはともかく――なにしろ世界征服を標榜している――二度目の大戦の勃発を避けようという意識の強いプラント評議員達を、激昂させるには十分な内容であった。
テログループの情報配信、次元断層の責任をDCに求めるに至った分析結果、メディアを通じてのバッシング、世論操作に至るまで、戦端開幕に向けて一連の流れとなっており、一つの意思によって描かれた脚本に則っている印象が強い。
ユニウスセブン落下阻止によって地球上の被害はなく、月の戦力も無傷。地球連合構成国はいずれも意気揚々としている。いますぐ戦端を開いても、ザフトを圧倒する物量をあっという間に整えられるのは確かだろう。
次元断層が消える寸前、月の連合基地では司令部が独断で艦隊の編成を行い、政府の許可なしにプラント攻撃へ向けて動かす寸前までいっていた。その時の編成そのままの戦力でも、十分すぎるほどの脅威だ。
DCの宇宙戦力は、抑えるだけなら地上から打ち上げた戦力でも可能だろう、というのがザフト情報機関の見解で、DCから援軍の来る見込みは小さい。
ザフト単独で、はたして地球連合の大艦隊をよく迎え撃つ事が出来るか否か? 連合からの通達の非常識さに、劣等種であるナチュラルへの怒りを露わにするのは、その不安の反動であったのかもしれない。
数では劣ろうとも質でははるかに自分達が勝るものと自負する評議員達の中には、いまにも武力には武力を持って答えようと言いかねない様子だ。
武力を行使しようとしているのは地球連合のナチュラル共であって、今回も我らは被害者であると認識が、彼らに共通している。
それでも、デュランダル議長があくまで理性的に、自分達は対話による解決を試みるべきと訴えかけるのに、声を荒げかけた評議員達も平静を取り戻す。
この場の誰も戦争を求めてはいなかったのである。また、短絡的で野蛮なナチュラルと違い、新人類たる自分達コーディネイターは、けして理性を捨ててはならないのだと強く自負が、彼らの胸の内には強く存在していた。
結論として、プラントはあくまで平和的な対話による解決を求めるものとし、あくまでプラント本国防衛のため、地球連合艦隊迎撃のため、部隊を展開するに留まった。
動きを見せつつある地球連合艦隊への先制攻撃は控えられたのである。
これに伴って、同じように連合から宣戦布告をされたDCと共闘も打診されたが、根拠地との連絡断絶による混乱から、DC宇宙軍は動けず、という返事で芳しいものではなかった。
実際にはマイヤーとロレンツォをはじめとした将校・佐官が辣腕を振るい、迅速な部隊展開を可能としていたのだが、連合の手並みを拝見する為にザフトと一合わせするのを見る腹積もりであった。
見え透いた魂胆に連絡を取ったプラントの人間は、コーディネイターらしく整った顔に、苦いものを浮かべるのを隠さなかったが、マイヤー自身が戦端が開かれれば必ずや助力すると確約しただけでも由としたようだった。
*
そして、久しぶりにオノゴロ島地下の艦船用ドックに帰還したタマハガネの艦内で、シン達はそれを目にし、耳にした。
グローリスターの面子と、ステラ、レントン、刹那、エウレカ、デスピニスで食堂の一角に陣取っていた時、立体TVに大西洋連邦大統領コープランドの緊急声明が映し出され、その場にいた全員の耳目を集めた。
恰幅の良い男性が、デスクの上で指を組み、沈痛な面持ちで静かに語りかける。静かな声音には、わずかに聞きとれる程度に悲哀の響きが混じっていた。弁舌家としては当たり前の話術だろう。
「――この事態を打開せんと、我らは幾度となく協議を重ねてきました。が。いまだ納得できる回答すら得られず、この未曽有のテロ行為を行った犯人グループを匿い続ける現プラント政権は、我らにとって明らかな脅威であります。
また、地球上の全市民を混乱に陥れ、無用な恐怖を与え、地球と宇宙の断絶を招いたユニウスセブン事変の犯人引き渡しを拒絶し、軍事拡大を続け世界の脅威となっているDCもまた同様です」
事前にエペソを通じてミナから、地球連合の通達を聞かされていたとはいえ、シンはコープランド大統領の言葉に、思い切り歯を食い縛るのを堪えられなかった。
地球連合の連中が何もできずにいたとき、最後まで地球落下を阻止すべく尽力したのは、シンやセツコをはじめとしたDCの人間と、ザフトのミネルバ隊、それに遅ればせながら駆けつけた正統オーブの兵士たち。
いずれも宇宙に住む者達だ。とくにプラントの人間にとってはほとんど対岸の火事だと言うのに、ぎりぎりまで命がけでユニウス落下阻止のために動いたのだ。
それを知っていようものなのに、地球連合の連中は、あたかも戦いを望むのはDC(これは事実だが)とプラントであり、自分達は仕方なく戦うのだと、自国民を守る為に仕方なく、という風に振舞っている。
これでは茶番だ。真相を知っていれば、子供でさえ理解できる三文芝居、とうてい観客から金など取れぬ素人にさえ劣る構図と脚本だ。
シンやDC、ザフトの皆が地球とそこに生きる命を守る為に命がけでユニウスセブン落下阻止のために働いた事実を抹殺され、ナチュラルに恨み持つコーディネイターの暴走という片一方の事実だけを強調し、加工し、真実として語る。
シン達からすれば戦争を望んでいるのは地球連合の方としか思えない。そして、DCと地球連合の間で再び戦端を開く口実に、自分が利用されている事が、シンには我慢ならない。
自分の所為で戦端が開き、大切な人達が危機に晒されるのかもしれないとあれば、到底軍人とはいえない精神的な甘さと未熟さを持つシンには、耐えがたい事であった。
当然、シンの心境など露知らず、さらにコープランド大統領の声明は続く。
「――よって、さきの警告通り、地球連合各国は本日グリニッジ標準時午前零時をもって、武力によるこれらの排除を行使する事を、DC、プラント現両政権に対し、通告いたしました」
「要するに、開戦するってことだろ……?」
煮えたつ溶岩の様な怒りと憎しみが吐き出させたシンの言葉に、隣に座っていたステラとセツコのみならず、テーブルを囲んでいた皆が一様にシンを振り返った。
まただ。前大戦時、オーブ解放作戦と名付けられた戦闘同様に、子供にも通じぬ理屈をあたかも正義と大義の証の如く振りかざして、他者を力で屈服させるやり方。
椅子を蹴倒して立ち上がり、瞳の中で血が溢れている様な瞳を見開き、鋭い犬歯を剥き出しにしたシンの姿は、付き合いが長く深く理解しあっているステラならともかく、セツコやデスピニスには恐ろしく映ってさえいた。
迂闊に触れてしまえば、こちらの手を炭に変えてしまう烈火の怒りが、シンの体の中に渦を巻いていそうで。
立ち上がったシンは、誰に何を言うでもなく、その場を後にする。食堂の出口へと向かうシンの背に、デスピニスや刹那、セツコだけでなくステラでさえ、声をかける事は出来なかった。
「シン君、すごい怒ってる?」
セツコは、思わず口にした。短い付き合いだが戦端を開くだしに自分を利用されれば、その事を悲嘆するよりも怒る性格だとは、分かっているつもりだ。それにしても、あの怒り様は、想像以上だった。
「シン、本当は戦争、すごく嫌いなの。でも、マユとお父さんとお母さんと、友達を守りたいから戦っている」
「ステラちゃん……」
「だから、戦う理由に自分がなっちゃったことに、すごく悲しんでいて、同じくらいに怒っているの」
「……」
「前よりもシンの守りたいものはずっと増えてる。たくさんの人を守りたいってシンは思ってる。セツコの事も」
「……私、シン君の事、追いかけます」
「ステラも!」
セツコとステラの二人が経ちあがって、お互いの顔を一瞬見つめ合って頷くと、すぐにシンの後を追って駆けだした。肩を並べてシンの後を追う二人の様子を見ていたトビーとデンゼルが、
「うちのアイドル、射止められましたかね?」
「まだ浅いから微妙じゃないか? それにしてもシンは幸せ者だな。しかし、二股はなぁ……」
「まあ、泣かせたら一発殴るって事で」
「おれと中尉とで二発だな」
「やっぱり一人二発にしておきます?」
「悪くない案だな」
と言った。
*
大西洋連邦大統領という傀儡を介しての宣戦布告から遡ること数刻。
ずらりと等間隔に並ぶプラント本国の前面に築かれた、ドーナツの様なザフト軍事ステーションから続々と、戦艦とMSが出撃し、迫りくる地球連合艦隊を迎え撃つべく布陣を始めている。
前大戦終戦時より工業生産力の大部分を用いて、MS・戦艦を生産し続けてきたザフトである。あまりの戦闘の激しさにボアズとヤキン・ドゥーエが使い物にならなくなってしまったが、それをカバーする為にプラント宙域に無数の軍事ステーションを建設していた。
戦力はステーションの内本国近辺の者から急きょ掻き集め、本国防衛に残されていたものを動員した。
先にアーモリーワン襲撃という事態から、かくプラントに割り当てた防衛戦力を水増ししていた事が、功を奏して戦力の集中は迅速に行われた。
内訳はローラシア級三十隻、ナスカ級二十二籍、エターナル級十隻、MSはゲイツRが三百、ザクウォーリアが四百五十、ザクファントムが百、ジャスティス五十、フリーダム五十、ミーティアは各十機、プロヴィデンスも二機。
後方には旧式化したとはいえ数だけはあるジン、シグー、ゲイツが控えている。近辺宙域には宇宙機雷、自動攻撃砲台が無数に配されて、ザフトが尽くせる人事は全て尽くしたと言った所か。
兵器の質を考慮すれば、おおよそ同数前後だったヤキン・ドゥーエ決戦を上回るザフトの戦力だ。
ただそれを操る人員はと言うと、約二年の間にアカデミーを卒業した新兵の割合が多く、苛烈極まる前大戦を生き抜いた歴戦の猛者の多くは、アズライガー、デビルジェネシス、ヴォルクルスとの戦闘で落命している。
さらに敵対する地球連合の戦力はそれを上回る。月基地に駐留していた戦力だけで、だ。ザフトもDCも羨む大戦力といえた。
幸い、地球に居るエースクラスが顔を揃えていないのは、ザフトにとっては幸運だったろう。
パプティマス・シロッコやパトリック・コーラサワー、グラハム・エーカー、セルゲイ・スミルノフ率いる頂武は、作戦参加が間に合わず所属国の基地で今回の初戦を見守っている。
今のザフトに、上記のウルトラエースに対抗できる人材は極めて少ない。
そんなザフトの中で、全勢力を通じてトップクラスのエースに位置するメンバーが、ザフト艦隊の中でもひときわ目立つ三隻のゴンドワナ級大型空母の内の、一隻に顔を揃えていた。
ずんぐりとした薄めのグリーン色の船体が、全長千二百メートルにも及ぶゴンドワナ級は、十六本ものMS発進用多段カタパルトを有し、その内部には艦艇の収納さえ行える。
マクロス級にも匹敵する巨大な空母は、艦というよりも動く要塞のようだ。プラントの国力でよくもまあ、三隻も揃えたと呆れる様な巨大艦だ。
その三隻を惜しげもなく投入した光景は、DCの面子でも初めて見た時は呆気に囚われるだろう。
ゴンドワナ級の士官室のひとつに集まっていたザフトのトップエースとは、ザフトWRXチームの事である。ザフトの軍服としては異色の制服に身を包んだ彼らは、ひとしく難しい顔をしていた。
ザフト兵の中には地球連合の理不尽な要求に怒りを燃やし、闘志を燃やしている者も多いが、前大戦の苦境を味わったベテランの彼らは到底そうは思えない。
あの戦いで地球連合・ザフト双方がどれだけの被害を出し、数え切れぬ人命が犠牲にして得られた平和が、わずかに二年にも満たぬ時間で破られるとは、到底納得がいかない。
彼ら自身命の価値が恐ろしく軽く、信じられないほど呆気なく失われる戦場の最前線に立ち、多くの戦友を失っている。その時の喪失感、虚しさ、それがまた繰り返される。
その事が全員の胸に大きな洞を穿っている。
特に副隊長職について数年を経てようやく落ち着きを得始めたイザーク・ジュールも、今回の事態に苛立ちを隠せず、士官室内は肌に痛みを覚える緊張感に満ちていた。
居心地悪そうに、例のボンテージ水着ことDFCスーツに身を包んだルナマリア・ホークとシホ・ハーネンフースは、居心地の悪さにもじもじ身もだえしつつ、何と言えばよいか口籠っている。
二人とも約二年という時間を経て、ゆっくりと少女から大人の女性へと熟成しつつあり、きわどい露出の服装に豊かな肢体を押し込んだ姿は、まともな肉欲を持った男なら生唾を飲まずにはおれまい。
そんな二人の姿もすっかり見慣れたイザークとレイ・ザ・バレルは、思春期の青少年の癖にまるで気にも留めない。
イザークの不機嫌の理由は、ルナマリアとシホの二人にも大いに共感できるものであったから、大きく文句は言わなかった。
レイは目を閉じて沈黙している。白皙の美貌故にまるで雪花石膏から彫琢した石造の様なレイは、イザークの放つ緊張感にもなにも感じる様子はなく、それがまたルナマリアにはちょっと癪だ。
とにかく、はやくヴィレッタ隊長に来て欲しい、と切にルナマリアは祈るばかり。そして、決して戦端が開く事が無いように。ただそんな願いはけたたましくゴンドワナの船内に鳴り響いた警報によって破られる。
舌打ちを打ってイザークが立ち上がるのと同時に、ヴィレッタが室内の入り口から顔を見せる。二年前からほとんど変化の無い怜悧な美貌の女隊長は短く告げた。
「出撃よ」
WRXチーム戦用に設けられたパイロットロッカーに向かって素早く着替え、今度はそれぞれの愛機へと向かう。
誰もが再度の戦争を望んではいなかった。評議会の方も事態を何とか対話で解決しようと様々な外交手段に訴えていたが、すべては水泡に帰してしまった事になる。
警報はいっかな止む様子はなく、しばらくは睨みあうままになるかとも思われた可能性はなくなり、早くも交戦する事態となってしまった。
残骸と成り果てたヤキン・ドゥーエ近海で、両軍は砲火を交わす事となった。
彼方に見える無数の光点のすべてが地球連合のMSかと思うと、歴戦の猛者に恥じぬ戦果を挙げたイザークやルナマリアでも、多少の畏怖は感じる。
地球連合の総合的な工業力は、日刊駆逐艦・週刊戦艦・月刊空母と例えられるほどである。
宇宙に拠点をほとんど持たぬ地球連合の、大部分の戦力が集中しているとはいえ、それでもこれだけの物量を備えられる相手を、侮る気にはなれない。
イザークは、管制からの報告に耳を傾けた。
「第一戦闘群、まもなく戦闘圏に突入します。全機オール・ウェポンズ・フリー」
ノイズ混じりのその声に遅れて、周囲の味方と彼方の敵が備えた火器を一斉に発射し始める。
両軍の間にはまだかなりの距離が空いてはいるが、光の速さのビームにとっては、ほんのささやかな距離だ。数が十分にそろった状態での緒戦の撃ちあいで撃墜されるか否かは、技量云々よりも運の要素が大きい。
時折新兵が、地球連合は数だけだ、一人一人では自分達の方が優秀なのだと豪語して、周囲のイエスマン共が同調して調子こいているのを、思いだしたイザークはいまごろその新兵が肝を潰しているだろうと、鼻を鳴らした。
――肝は潰しても死ぬなよ、ヒヨコ共!
モニターの向こうで徐々に大きくなりつつあるのは、地球連合三国で共用されているGAT−04ウィンダム。ストライカーシステムを採用したこの機体の多くは、宙間戦闘に際して、エールストライカーの改良型を装備している。
後方にはランチャーストライカーを装備した機体も存在していた。せっかくのストライカーシステム搭載機に、何も装備させずに戦線に出す様な真似はしないらしい。
コスモグラスパーやメビウスの姿が無いが、足の速さを利用して主戦場を迂回させて後方のプラント本国を叩くつもりなのかもしれない。
前大戦時に本隊を囮にして陽動の部隊を用意した地球連合によって、プラントが核の脅威に晒されてしまった。
あの時はラクス・クライン率いる離反部隊と、瀕死の淵から蘇ったシン・アスカの助力が無ければ、いまこうしてはいられなかっただろう。
一度はめられた戦術に、二度も引っ掛かるとは思いたくなかった。イザークは、一抹の不安を胸中で押しつぶし、重火器を満載したデス・ホーラーを装備したR−1を駆る。
両腕のライトヘッド・レフトヘッドの銃口から、大口径実体弾弾頭を機関銃さながらにばら撒かれ、恐ろしく正確な狙いによって次々とウィンダムの繊細な電子機器の詰まった頭部やコクピットを貫く。
銃撃の反動と機体各所の姿勢制御機器と連動させ、イザークはR−1を独楽のように回転させ、脇をすり抜けようとしたウィンダム、前方で射撃体勢を取っていたウィンダムを瞬く間に花火に変える。
百数十億年の歴史が詰まった宇宙の闇は、音も熱も伝える事はないが、推進剤に引火したウィンダム達はオレンジ色の真珠のように輝く。
黄金の薬莢が漂う中を、腕を交差させて縦向きの拳銃を額に当て、両足を曲げたポーズは実にスタイリッシュであった。
ロウ・ギュールの作成したOSは、時折無為なタイミングで拳法の構えを取ってしまう事があったが、イザークの場合はマニュアルで行っている。
激情家でまっすぐな性格の彼らしくない不可解な行為だが、WRXチームはすっかり慣れ切ってしまったので、戦闘の渦中にかようなカッコイイポーズを決める奇癖を無視している。
デス・ホーラー装備のR−1に乗っている時、イザークが妙に無口になるのも、一部の同僚には知られていて、司令部にも黙認されている。
イザークは腰に両方の銃をマウントし、デス・ホーラー側面部を前方ウィンダム群に向ける。開かれた側面部装甲の奥から、マイクロミサイルが一斉に射出されて円形上の軌道を描いて、ウィンダムの白い装甲に襲い掛かる。
ウィンダム側もトーデスシュレッケン12.5ミリ自動防御火器や、ビームライフルを使ってミサイルの多くを撃ち落とす。
しかし撃ち落としている間は無防備で、その隙をルナマリアのR−2パワード、レイのR−3パワード、シホのR−GUNパワード、ヴィレッタのR−SWORDパワードからの射撃が加わる。
連合側と銃火を交わしてからわずか数分、WRXチームの撃墜数は十機を数えていた。
「イザーク副隊長、気合入っているわね!!」
今では増産される事のなくなったターミナス・エナジー・エンジン搭載機であるR−2パワードの大火力を生かし、一個中隊級の弾幕を展開するルナマリアに、シホが応じた。
「誰だってそうでしょう、こんな状況じゃっ」
ビームカタールソードで胴を薙ぎ真っ二つにしたウィンダムが爆発する前に、その機体を蹴り飛ばし、ツイン・マグナライフルで迫りくる敵機を牽制しながら、良くも返事ができたものだ。
支援
戦闘中に片手間の調子で会話ができるのも、胆力と実力兼ね備わっていないとそうそう出来たものではない。アドレナリンの過剰分泌によってハイになっているわけではなさそうだ。
「隊長、司令部よりWRXチームは現宙域にて戦闘を続行との指示です」
「分かったわ。レイ、常に周囲の状況把握を」
「了解です」
イザークよりもよっぽど隊長の補佐らしいレイが、ブリーフィングの時と同じ冷静な声で応じる。
ヴィレッタはそれに対して信頼を抱いているようで、それきり何を言うでもなく、両肩にマウントしているシールド兼用のブレードを機体に握らせて、手近なウィンダムに斬り掛かる。
いきなり本国壊滅の危機に晒されたザフトの部隊で、大物量の連合相手に怯まず猛攻を仕掛けるのはWRXチームに限らない。
ユニウスセブン落下時に、怒涛の気迫でテロリストと戦ったサトー隊は、スラッシュウィザードで統一され、各隊員は気焔を吐きながらスラッシュザクファントムを駆る隊長に続く。
各隊員はスラッシュウィザードのハイドラガトリングビーム砲で、前方に翡翠色の驟雨を降らせて多くのウィンダムが、たちまちの内に穴だらけになってゆく。
咄嗟にABCシールドを掲げて銃火を免れても、長柄のビームアックスを振り上げたサトーのスラッシュザクファントムによって、シールドをかちあげられて、あいた左胴を割かれる。
WRXチーム、サトー隊、ホーキンス隊、ヴェステンフルス隊といった古参部隊に、ドラグーンを搭載したプロヴィデンスを駆るラルフ・クオルド、コートニー・ヒエロニムスらは、素晴らしいの一言に尽きる活躍ぶりである。
それでもかつてのヤキン・ドゥーエ決戦のようなアズライガーの如き超規格外の機体は無いが、こちらにもDCの戦力はないしジェネシスもない。もっとも、ジェネシスは使うわけには行かぬ禁断の兵器だが。
OSの補助に頼るナチュラルのパイロットは、名を馳せたエースでもなければ、イザークやサトークラスのパイロットには敵ではない。
次々と撃墜スコアを伸ばして行くザフト側のエース達だったが、いくら敵の大群に穴を穿っても、後から後から新たな機体が現れてその穴を埋めて行く。
はたして、ザフトは地球連合の猛攻を跳ね返し、無事にプラント本国を守り切れるのだろうか。
――つづく。
サルさんくらっちまったぜ・・・・・・
11さん、順番譲っていただいてありがとうございます。投下、首を長くして待っていますぜ。好敵手とぼっちゃんは次回に持越しです。
支援してくださった方にも感謝を! ではではご指摘・ご助言・ご感想お待ちしております。お邪魔しました。
総帥の型、乙でしたー。
……イザークが声にのっとられつつあるのか?
総帥乙!
イザーク別次元に引っ張られすぎだw
セティさん…なんというか、珍しいキャラだな。自分が勝てないとヒシヒシ感じるとか
11氏ここはいいスレだぞー!はやくもどってこーい!
>>545 ゲスト3人衆って、終盤は次々戦力増強されるロンドベル隊に、勝てないとわかっていつつも、友のために最後まで逃げずに戦うという連中だからな。
4次は寡兵での防衛任務に当てられたロフが一人だけ先に戦死したことで他の二人がゼゼーナン見捨てて撤退したけど、Fでは最後はまさに一蓮托生という感じ。
なんだかんだでゾヴォーグ勢は親玉以外は割と仲良いんだよね。
まぁメキボスはヴィガジ見捨てたが。
総帥乙ですー
>ガザCやドーベンウルフ
スパロボF(完結編)だと超電磁スピンぶち当てても場合によっちゃ3割削れるかどうかも怪しい奴らですね
ガンバスター以上のHP
νガンダム以上の機動性
マジンカイザー以上の装甲
お前ら本当にありあわせの量産MSかと、特にガザC。
パイロットはパイロットでサーベルもってりゃ「踏み込みが足りん!」でニュータイプのファンネルすら切り裂く奴らばっかり
初めてが新スパでぬるくダンクーガ無双してた自分にはきつすぎたよママン
エリート兵さんの強さは異常
近年のスパロボではトンと見なくなった光景だよな、踏み込みが足りん!
第40話「兄の想いと兄への想い」
マイの素性が明らかにされ、幾許かの衝撃を各人に与えたのであるが、ダイテツが信じていたように徐々にハガネ・ヒリュウ改の面々はマイを受け入れるようになっていった。
さらにその後、オペレーション・プランタジネットを実行すべく、サイバスターやアステリオンらの活躍によって両艦はアメリカ大陸への突入に成功する。
だが、この突入作戦に参加していないパイロットが3人いた。ゼンガー・ゾンボルト、レーツェル・ファインシュメッカー、シン・アスカの3人である。
とはいえ、作戦に参加していなかったのは、彼らやその機体に異常があったからではない。
突入作戦時に艦内で待機していた彼らの機体は、現在ハガネとヒリュウに先行してアメリカの大地と空を駆け抜けている最中である。
機動性と突破力に秀でた機体を駆る彼らは、テスラ研奪回という重大な任務のための先遣部隊として温存されていた。
そして、異邦人であるシンにとってもテスラ・ライヒ研究所は因縁浅からぬ場所である。
宿敵アスラン・ザラに敗れた後にギリアムとエルザムの手によってアメリカ大陸に連れてこられた折に、異星人インスペクターと戦い、
必ず再び戦いを挑みテスラ・ライヒ研究所を取り戻すと誓った場所であり、また、兄のことを心の底から案じていた少々強気な妹、スレイ・プレスティと出合った場所でもある。
「兄を悲しませるようなことはしない」
そう言い残して姿を消した彼女とその機体―緋色のカリオンであったが、先刻の突入作戦のときに確認することができたので、シンはその無事を知って幾らか安心した気分になっていた。
ただ、かつて妹を持つ兄であった人間の1人としては、兄を持つスレイには無茶をしないで欲しいという強い気持ちを覚えざるにはいられなかった。
そんなシンの想いを余所に、グルンガスト参式、ヒュッケバインMk−Vの後に続いてアメリカの大空を行くヴァイサーガのレーダーが、テスラ・ライヒ研究所が近付いてきた辺りで同所の方向へ向かう1つの機体の反応を捉えた。
機体のカメラを最大望遠にして反応があった方向をシンが見ると、先ほどその目で見たばかりの緋色のカリオンがテスラ・ライヒ研究所のある方角へ空をいく姿がモニターに映る。
「レーツェルさん、この機体…スレイさんのカリオンです」
「ああ、こちらでも捕捉した」
「あの方向、テスラ研に向かってるのは間違いないですよね」
「だが先ほどの作戦行動からさほど時間が経っていないことからすると、無補給のままと考えるのが妥当だろうな」
「俺が行って止めてきます」
「…作戦開始に遅れるなよ?」
「了解!」
言うが早く、ヴァイサーガは緋色のカリオンの方向へ、背部のマントを風でなびかせながら向かっていった。
そして、機体越しにではあるもののレーツェルのゴーグルの奥にある瞳は優しい微笑を浮かべていた。
「…何も言わないのか、ゼンガー」
「あいつにも歩んできた道はあろう。まだヒヨっ子な所もあるが、既に1人の戦士でもある」
「願わくばシンの思った通りになってほしいところだ。思うところは私も同じだろうからな」
レーツェル自身、ライという弟を持つ1人の兄でもある。そのため、レーツェルにはシンがスレイ・プレスティのことを気にかける気持ちがわからなくもない。
むしろ、妹を戦争で失ったという過去故にシンには、兄を持つ妹の1人であるスレイの無事が気懸かりなのであろう。
テロからコロニーの住民を守るためとはいえ、妻を自らの手にかけて失った過去を持つレーツェルにはシンの想いがよくわかる気がしていた。
「スレイさん!聞こえるか!?一人で突っ込むなんて無茶だ。戻ってくれ」
「その声…あのときの男か」
やや離れたところにあった3つの機体の反応のうちの1つが自分の方へと向かってきていたこと、時間的・場所的に考えてそれが連邦軍の機体であろうことはわかっていた。
だが、それがかつてテスラ研がインスペクターの侵略を受けたときにほんの一時的にとはいえ、行動をともにした者であるとはスレイも予想はしていなかった。
そして、そのときにやや強い口調で自分の行動を諌められたことがあったため、スレイとしてはシンに対して憎悪に基づく敵対心こそ抱かぬものの、
こちらに接近して来る近接戦用とおぼしき特機を見ながらやや構えた表情を浮かべる。
「ああ、そうだ。これから俺達が先行してテスラ研を奪還する。だからスレイさんは引いてくれ、一機じゃ死ににいくようなもんだ」
「断る!以前、お前は兄様を助けるチャンスは必ずあると言ったな。覚えているか!?」
「あ…あぁ。覚えている」
「お前達が突っ込んで行くなら、兄様を助けるまたとないチャンスだ!見逃すわけにはいかない」
「だからってそんな機体の状態で何ができるんだ!?」
アメリカ大陸突入作戦の時刻からまだほとんど間がない今、スレイのカリオンが先ほどの戦闘を終えた後に整備や補給を受けたものと考えることは難しい。
同作戦行動での戦闘では、インスペクター側に幹部クラスの機体はなかったものの、その分鹵獲等により異星人の手先となった地球側兵器が数多く現れたため、弾薬等の消費も相当なものとなってことは想像に難くない。
そうであるとすれば、そのような消耗した状態でインスペクターが占拠するテスラ研に突っ込んでいくことが賢明な判断であるとは言い難い。
それ故、かつて妹を持つ兄であったシン・アスカには、このままカリオンを放って置いてスレイを危険に晒すようなことはできない。
しかし、スレイとしては、表面上でこそ兄フィリオ・プレスティに反発するような言動をするものの心の中では兄への深い情愛を抱いている妹として、
また、その兄の夢の結晶であると同時に兄が作り上げたプロジェクトTDの機体パイロットの誇り高きナンバー1として、相手の言うがままに後退して兄の行く末を委ねることは到底できなかった。
「私をお前達と群れている負け犬と一緒にするな!どうしても邪魔をするというのなら………ここで貴様を排除するまでだ!」
「くっ!やめてくれ、スレイさんっ!」
カリオンは機体の先端をヴァイサーガに向けるとともに、機体左右の砲門が開いてGドライバーが放たれる。
シンは機体を左方向へ流すことでこれを回避するが、カリオンはさらにGドライバーを放ちながら接近してくるとともに、機体をしきりにロールさせながらミサイルをばら撒いていく。
ヴァイサーガは左右に移動させながら回避行動を取りつつ、その妨げとなるコース上に来るミサイルを排除すべく列火刃を投げ放つ。
クナイに貫かれたミサイルは爆発へと姿を変えてヴァイサーガの全身を覆ってしまいシンの視界が奪われてしまう。
これではシンだけでなくスレイも相手の機体の居場所を把握することが出来ず、有効な攻撃をすることができないはずである。
シンは機体各部のカメラを操作しながらコックピット内のモニターを見渡してカリオンの手掛かりを探すものの、影も形も見つけることができなかった。
だがシンの努力を嘲笑うかのようにヴァイサーガのすぐ近くを1発の弾丸が通り過ぎていく。
「!?」
しかも、さらに数発の弾丸がヴァイサーガの傍を通過していっただけにとどまらず、スレイとカリオンの射撃精度は徐々にではあるが確実にあがってきている。
こちらから相手の機体が見えない以上相手からもこちらの姿は見えないはず、ならばどうやってスレイはヴァイサーガの居場所を推測しているのか―シンが自問自答している最中にも
次なるGドライバーの弾丸がヴァイサーガの顔面すぐ近くを通過していった。このとき、シンはスレイが精度を高めていくカラクリの正体に気が付いた。
「くそっ!やってくれるな、スレイさんっ!」
スレイにとっては、ばら撒いたミサイルが迎撃されることなどとっくに織り込み済みなのである。
その上で、迎撃されたミサイルが生じさせた爆煙の中から一定の範囲内に予測をつけて、修正を繰り返しながらヴァイサーガの居場所を突き止めようとしていた。
スレイの意図した通りにならぬよう、シンは急いで爆煙の中からヴァイサーガを脱出させるのだが、この行動もスレイの想定の範囲内であった。
「温いぞ、シン・アスカッ!」
空を見上げたシンの目に、モニターを通じて上空からヴァイサーガに真っ直ぐに向かってくるカリオンの姿が映る。
ブレイク・フィールドを纏いながら猛スピードで相手に突っ込んでいくカリオンの攻防が一体となったソニックカッターを回避しきることができない、シンはそう判断すると、これを迎え撃つ決意を固めた。
「水流…双牙っ!」
両腕のカギ爪を伸ばし、ヴァイサーガは右腕の爪をカリオンに向けて振り上げた。
だが、機体の機動力と地球の重力で勢いを増したブレイク・フィールドと、ヴァイサーガが咄嗟に繰り出した攻撃とでは運動エネルギーの大きさの違いは相当なものがある。
正面からのブレイク・フィールドの直撃は避けることができたが、エネルギーの差とカリオンの突撃により吹き荒れた突風にヴァイサーガは嫌が応にも巻き込まれてしまい、弾かれ吹き飛ばされてしまった。
激しく揺れるコックピットの中でシンは歯を喰いしばって衝撃をこらえながら、スレイが次の攻撃行動を開始する前に素早く機体の態勢を整え直す。
ヴァイサーガは、カリオンが旋回を完了する前にその姿を機体正面に捉えると同時にシンは1つの決意を固めた。
「スレイさん…アンタの気持ちはよくわかった……けどそれなら俺だって力ずくでアンタを止めてみせる!」
「貴様にそれができるならやってみろ!ナンバー1の実力というものを教えてやる!!」
シンがスレイを実力で捻じ伏せてでもテスラ研に行かせないと決めたのは、彼のエゴ以外の何者でもない。
少し冷静に思考する余力が残っていればテスラ研まで供に行動する、という選択もあったのかもしれない。
にもかかわらずそれがシンのオプションになりえなかったのは、かつて妹を持つ兄であったシン・アスカが、妹が兄のためにその身を危険に晒す、ということが断じて許しえなかったからであった。
これは、相手の意思を完全に無視した、父権的・強権的な保護といっても誤りではない。
だが、妹を戦争で亡くして心に深い傷を負ったシン・アスカという人間にとっては、妹が兄のために危険な行動に出ることは最も忌避すべきものなのである。
シンが真紅の両眼で鋭くカリオンの姿を捉えるのと同時に、これと呼応したかのように顔を上げたヴァイサーガのツイン・アイも残光を引きながら赤い輝きを放った。
続いてヴァイサーガは五大剣の柄に手をかけ、正面にカリオンを捉えながら左方向へ回り込む。だが当然ながらカリオンもそうやすやすとシンの思い通りに動き回ってはくれなかった。
逆にカリオンもヴァイサーガの横を、そして背後を取るべく同じ方向へ回り込むべくスピードを上げる。
これに対しヴァイサーガはカリオンが加速を開始したところを見計らって既にエネルギーのチャージを終えていた剣を鞘から勢いよく引き抜く。
「地斬疾空刀ッ!」
鞘の内部で蓄積されていたエネルギーは、剣を伝って放たれることにより斬撃へと姿を変えてカリオンへと向かっていく。
だが既に機体のスピードが相当程度上昇していたこと、また、距離が離れていたこともあって、最低限機体をロールさせるだけでカリオンはこれを回避した。
続いてヴァイサーガは回避行動中のカリオンに向けて列火刃に投げ放つのだが、ほとんどのクナイは相手の機体をかすることすらできない。
辛うじて戦場を我が物といわんばかりに駆け回る緋色の彗星を捉えることができた数本も、ソニックカッターのために展開されたブレイク・フィールドに全て弾き飛ばされてしまい有効打にはなりえていない。
対するカリオンは再びGドライバーを撃ちながらヴァイサーガへ接近するのと同時に、またもミサイルをヴァイサーガを取り囲むようにばら撒いていく。
そして今度は回避軌道を予想しながらミサイルが発射されたらしく、ヴァイサーガの回避方向から多くのミサイルが迫ってきていた。
しかも数発のGドライバーが上空から放たれてヴァイサーガの手前を連続して通過していくと、ヴァイサーガの動きが一瞬止まってスピードが殺されてしまった。さらにそこへミサイルが大挙して押し寄せてくる。
これはもう回避しきれない、今までの戦いの経験から直感でシンは判断した。
パイロットの思考を機体に伝えるダイレクト・フィードバック・システムによりシンの判断を反映させたヴァイサーガは鞘から剣を引き抜き、その刃をミサイルへと向ける。
数条の光が煌いた後には迫ってきていたミサイルの全てが斬り落とされていて、ヴァイサーガはミサイル包囲網に開いた穴から即座に離脱していく。
だがスレイとしてもこれをむざむざと逃がすほどお人好しでもなければ、迂闊でもない。カリオンのソニックカッターがミサイルの包囲網から離脱しようとするヴァイサーガへと襲いかかる。
他方のヴァイサーガも今度は不安定な姿勢ではなく、それなりの状態で迎え撃つ程度のゆとりくらいはある。
迫り来るソニックカッターに対してヴァイサーガは五大剣を振り下ろす。ブレイクフィールドと斬撃の両者がぶつかり合うと、周囲にエネルギーを分散させながら両機の力比べが始まった。
スペック上の機体データからすれば特機であるヴァイサーガのパワーの方が勝るのであるが、いま繰り出されたヴァイサーガの斬撃はやや態勢を崩しながらのものである。
そのため十分に加速を付けた上でのソニックカッターのエネルギー量であっても、ヴァイサーガの斬撃に劣ることはなく、
五大剣とブレイクフィールド先端が交わる部分はかすかに前後することはあってもどちらかが大きく押されるということはなかった。
ほぼ互角となった両機の攻撃をこれ以上続けることはエネルギーと精神力の無駄であると考えたスレイは、機体の先端をずらして態勢を整えなおそうとひとまずそこから離脱する。
対するシンもその場に留まっていてはまたカリオンの集中砲火を受けかねないので、そこから離れながら態勢を整えてカリオンを正面に捉える。
そしてヴァイサーガは剣を構えなおしてカリオンへと向かっていくが、そこへカリオンから数発のGドライバー、続けてミサイルから放たれる。
ヴァイサーガは1、2発目のG・ドライバーを上昇して回避し、3、4発目のものを五大剣で斬り捨てるとともに、空いている左手で列火刃を取り出して命中コースを辿ってきていたミサイルに向けて投げ放った。
再び爆煙がヴァイサーガを覆い隠すが、カリオンは既に始めた加速をやめることはしない。G・ドライバーを爆煙の中に打ち込みながら、煙の中に隠れたヴァイサーガのいる場所を絞り込んでいく。
そして、幸運にも発射された弾丸が作った爆煙の切れ目からヴァイサーガの赤いマントのかすかな影がスレイの目に飛び込んできた。
「もらったぞ、シン・アスカ!」
勝利を確信したスレイは、テスラドライブの出力を最大にして作り出したブレイクフィールドを纏わせて爆煙の中に突っ込んでいき、爆煙を抜けたその先にヴァイサーガを捉えた。
そして、カリオンの機体両端のソニックカッターがヴァイサーガのボディを貫こうとした瞬間であった。
ヴァイサーガはその体をほんのわずかだけ反らして、ソニックカッターの刃が空を切った。それと同時にスレイはあまりに想定外の出来事に声を失い、その薄紫色の瞳が驚きを纏って大きく広がる。
向かってくる軌道がわかるのであれば、その軌道から最低限の動きをすることで回避することも不可能ではない。
そんなことをできるパイロットも、そんな俊敏又は柔軟な機体も多くは存在しないが、今回は可能なパイロットと機体が存在した、ということであった。
さらに、最低限のモーションで回避したヴァイサーガとシンにとっては、攻撃を失敗したばかりのカリオンは隙だらけである。バックががら空きになったカリオンに向けてヴァイサーガが最大戦速で迫っていく。
「しまった!?」
スレイの表情が驚きと後悔によって歪んだ。後方の敵機に向けてカリオンがミサイルをばらまいて障壁にしようとするのだが、
ミサイル自身の速度では現在のヴァイサーガを捉えることは敵わず、ミサイル同士はヴァイサーガの後方でぶつかり合って自爆する。
そして、そうこうする間にヴァイサーガが自らの間合いの中にカリオンを捉えた。
「はあぁぁっ!」
構えられた五大剣が緋色の軌跡を描く機体に向けて振り下ろされた。輝く銀色の刃が煌いて、カリオンの背部のウイングの一部が本体から切り落とされて吹き飛んでいく。
これによってカリオンは機体バランスを崩し、スレイがなんとかして機体の制御を取り戻したときには、カリオンのコックピットには
太陽光を反射して銀に輝く刀身の先を突きつけるヴァイサーガの姿が彼女の視界のほとんどを占めていた。
もはや勝負はついた、スレイがそのように認識するにはあまりに十分な結果であった。
「くっ…!」
「…もうその状態じゃ満足に戦えない。それに今の戦いでもう弾だってもう少ないだろ。ここは引いてくれ、スレイさん」
今の一撃でカリオンの翼の何枚かが失われたため、機動力が命綱のカリオンは機体バランスを大きく失ったことは明らかである。
高速での戦闘が強く求められる機体にとって機体バランスの喪失は致命的ともいうべき損傷に等しい。
また、アメリカ大陸突入の際の戦闘からあまり時間が経っていないことからすれば、その戦闘後に補給したとは考え難く、今の戦闘も併せて考えれば弾薬や推進剤の残りも十分ではない。
「今の戦闘だって機体の状態が十分だったら俺が負けてたかもしれない」
「…」
「テスラ研は俺達がきっと奪回する。頼む、俺達に任せてくれ」
スレイは何も言わずにコックピット内のディスプレイに映る弾薬等の残量表示に視線だけを向けた。確かに連続の戦闘で弾薬の残りは心許ないし、機体自体のエネルギー残量も少ない。
シンの言うとおり、先の戦闘でアイビスに競り合って弾薬の多くを使ってしまい、自分でも無意識のうちに使う弾を節約していた結果として、戦い方がワンパターンになり、相手に付け入る隙を与えてしまったのかもしれない。
スレイはこのように思いながらそれと同時に、シンに自分と自分の機体の状態を見透かされていたことは彼女のナンバー1としてのプライドを大きく傷つけていた。
支援
「黙れ!」
「っ!」
「私にフォローをいれたつもりか!?ここまで馬鹿にされたことは初めてだ!」
「そ、そんなつもりじゃない。ただ俺はスレイさんが…」
スレイをスレイたらしめているもの、それがプロジェクトTDのパイロットのナンバー1としてのプライドに他ならない。
スレイ自身は本気で勝つために全力を尽くして戦った以上、理由はどうあれ敗れた相手から気遣いをされたなどということはスレイにとって屈辱そのものであり、彼女の誇りやプライドが小さからず打ち砕かれたことは否めなかった。
「そうやって私を辱めて楽しいか!」
「違う!そうじゃない」
「なら一体何が違うというんだ!?」
「俺はただ、アンタに死んで欲しくないだけだ!」
「…え?」
シンの突然の言葉によって毒気の全てを抜き取られてしまったスレイから、一言、否、一文字の言葉が意図せず、ポロリと漏れ出した。
当然ながらシンが言った言葉は、かつて妹を失った兄として、大げさな言い方をするのであれば、妹を持つ全銀河の兄の気持ちを代弁してのものである。
その他にはハガネ・ヒリュウ改でともに戦う仲間であるアイビスやツグミの仲間であったスレイが傷付くことが容認し難いという心境以外に他意はない。
流れと勢いと当時の心理的緊張からの逃避願望からルナマリアとの距離を縮めたことはあったが、基本的には男女の機微には疎い方であるシンが女性の歓心を買うようなことを意図的に言えるものではない。
だが、このようなことは当然ながらスレイの知るところではない。
また男というものに対する免疫は兄以外にほとんどない上に、負けたショックで精神的に動揺があったスレイにとっては、
突然出てきた(ように聞こえた)今の一言は、シンの本意とはやや異なった意味を有しているように思えてしまっていた。
「?…スレイさん?」
「………う、五月蝿い、黙れ変態!」
「っ!へ、変態…?」
突然の大声、そして生まれて初めて言われた変態という言葉にシンは驚きながらも浅からぬ心の傷を負ってしまった。
確かに自分のいた世界でも、この世界に来てからも、ラッキースケベと評されるような予期せぬ幸運な出来事に遭遇することは幾度かあったものの、それらは故意にやったものではない。
「変態」という言葉が持つニュアンスとシンが持つ自分自身のイメージの位置付けの間には小さからぬ隔たりがあったため、スレイの言葉は鋭いナイフとなってシンの心に深く突き刺さった。
そしてシンが心理的なショックによって胸に手を当てながら硬直していたわずかな隙に、カリオンはいきなり浮上すると、わずかに揺れながらその場を急速に離脱していった。
オートパイロットでノイエDC本隊の集結場所への帰還を始めたカリオンのコックピットの中で、スレイは兄の身を深く案じつつ、
それと同時に生涯で初めて顔を真っ赤にしながら両手を頬に当ててその火照りを必死に覚まそうとしていたのであった。
つづく
今回はタイトルを「シスコン男とブラコン女」にしようか迷ったw
>総帥
まさかセティに萌える日が来ようとはww
11氏乙!
シンさんの妹キラーっぷりマジぱねぇッスwww
>>559 妹キラー……スレイ(プレスティ家の妹さん)とラミア(Wシリーズの末妹)と…他はいないな、うん。
【シスコン】11氏のシンがイモウトハンターになるようです【スケベー】
こうですか
次の話は親分に持っていかれるからココらへんは押さえとかないとな
次回のシンの台詞は「なんてパワーとスピードだよ!」以外ではどれぐらいあるかなw
11さん乙!
変態はあんまりじゃんよw
>>560 妹キラー・・・シスターキラー・・・なんかコンパチぽいな
ていうかだよ
00からすればみんな弟妹なんじゃよ・・・Wナンバーズ
姉の06より老けて見える16も
おや?こんな時間に外が随分騒がし(ry
>>560 OGS→外伝という流れならフィオナがいるが、11氏のはGBA版を元にしてるんだっけか
アニメ版からゲームの2に派生してるね
後は・・・マイとショウコとか?
11さん、乙&GJでした。
妹キャラか、ラミア、マイ、フィオナ、ショウコ、スレイが例に挙げられていて、
あとは考え様によっては、ラトゥーニ、ゼオラも入るのかな? ほとんど相手がいますけれども。
妹キラーに関しては、これは私の頭に無かったのでおお! て感じです。OG2で考えるな折り返しくらいですか。
ラスボスが誰になるのかも楽しみ。
>>565 以前にアクセルが双子の片割れを云々というくだりがあったから
アニメ版からOGS版の2って流れだと思う
たまにはage
>>566 ゼオラはアラドより年上だから姉キャラでは
↑
スマソ、オウカ姉さんのこと忘れてたぜ
罰としてオウカ姉さんと二人っきりでしっぽりお説教されてくる
シン、スレイの態度を軟化させるにはエルマみたいなしゃべり方をするべきだw
年下シスコン男と年上ブラコン女か
なんというデコボコ
あれはちんまいロボットだから可愛いんであって
シンがあんな喋り方したら怖いw
みなさま感想ありがとうございます。感想レスからネタを閃くこともあるので書く側としてもとても嬉しいところです。
次回以降ですが、大方の予想とは違ってそこまでシンが空気化したりはしない予定です。
あと、ゲームではテスラ研奪還戦に出て来ないキャラが3人ほど出る予定です。
親分無双を期待していた方には申し訳ないです。
スレイも別に小さくはないんだがラミアに比べると見劣りするからなー
(おもに胸囲が)
なんか凄い顔したスレイがカリオンでそっち向かったぞ
スレイの場合は胸的には、ラミア、ゼオラ、クスハ、エクセレン、ツグミに次ぐくらいかねぇ
リオ、レオナ、カーラ、アイビスあたりよりは豊かなイメージあるんだが
>>577 アイビスはその列に入れるのも憚られるくらいの(ry
アイビスは絵師を疑うぐらいの洗濯板だからな
キャラデザインで洗濯板にしたのに温泉絵では谷間を描いたさっちんはどういう意図だったんだw
さっちんは筋金入りの巨乳メェーニアだから仕方ない
アイビスの胸は確実に上からの指示だろうが、お遊びが許されるイラストでSAGAを抑えきれなかった
ムゲフロ新作のヒロインもさっちんのおかげで意図せず巨乳になっちまったみたいだし
シン「こ、これは、アイビスさんに胸がある」
レイ「見るな、さっちんは既に錯乱している」
>>582 初期案から巨乳だったのが二回り大きくなったらしいからな。
だからと言って横乳はみ出しまくりとかあざという他ない。
スレイのブラコンも相当なモンだけどシンのシスコンもかなりハイレベルだからな
当時14才で思春期真っ盛りの筈で妹とか鬱陶しくなる頃なのにそんな素振り一切ないし
後ろから枯れ葉ぶつけられても笑いながら「こらーwマユーw」って言いながら
恋人風追いかけっこ楽しんでるし…
まあマユも「お兄ちゃんが怒ったーw」とか言ってるから妹もブラコンなんだろうけど
シンとキラが入れ代わるSSではシンの両親は共働きで
シンとマユの二人で過ごす事が多い事から互いに必要になったなんて話になった
あれ? 何かで『アイビスの胸は大きい』と公的コメントがあったように思うんですが、記憶違いかな?
高いGがかかる宇宙船の開発だから、胸がスーツで圧迫されているとばかり思ってました。
昨日からこのスレにミサイルがやたら降り注いでるなw
命中率低いから素人の住人にすら当たらないけどなw
初期では命中率に大幅+補正が掛かる武器でもザコ敵にすら当たらないアイビスはホント地獄だぜ
そういえば鬱ビスの方が参戦してるSSはまだ無いのか
ふと思ったがスパロボオリキャラ(ムゲフロ除く)での
巨乳と貧乳TOP3ってどうなるだろ?
巨乳は順当にラミア、ゼオラ、クスハで
貧乳は幼女組にアイビス等のまな板連合が食い込む感じじゃない?
シンはあのまま平穏に暮らしてたら妹系エロゲの主人公に成ってたな…
とりあえずよー、幼女組は除くとすれば
アイビスとフィオナの2トップは誰にも防ぎようが無い>貧
ディセイバーは胸あったけか?
最巨乳ったら
元祖乳揺れのあの方しかおるまい
アウルゲルミル
使ってくる攻撃的にはぴったりかも知れない
ラクスが生えたヴォルクルス下
>>596 イージー版ゼロムスを思い出してしまいました
ちょっとダーク股ー集めてくる
スパロボの女性キャラ=ほぼ巨乳
何か問題でも?
アイビスに土下座して謝ろうか
「ほぼ」とは例外の存在を示す言葉ですよ
そしてほぼ巨乳だからこそ貧乳が活きるのさ。
見ろ、あの巨乳ばかりの中できらりと光り輝く錫華姫の艶姿を!
ミスト(貧乳はステータスだってこんなに俺と地球人で意識の差があるとは思わなかった…!)
>>598 普通サイズの子ってそういやいないな
巨か貧だけなのかね?
やっちまったorz
ちょっとヤキ入れられに逝ってくる
ブロンコのカチーナさんは可愛すぎる
お前ら…折り曲げられても知らんぞ…
スレイって何歳だっけ結構いい歳だったと思うけど
しかし乗機はしばらくカリオンのままかゲーム的に考えれば間違いなくスタメン落ちだな
>>606 例のうどん同人ですかww
確かにカチーナ中尉はかわいかった
胸が話題になっていて気になった事を一つ。
スパロボではなく種の方からで、ロンド・ミナを私は巨乳として扱っていますが、逆襲スレや四馬鹿兄弟スレでは絶壁クラスの、その、貧しい方なようなのですが、皆さんどう思われますか?
可哀相な方なら、今から何とか矯正しようか、劣等感を克服する為に密かに豊胸手術を受けた設定にでもしようかと考えています。
あと、スペリオルドラゴンですが、武器はダブルソードと肩の火龍砲と、元祖オリジナルのランサーと弓以外に何かありましたっけ?
両スレ共ネタなので気にしないほうが良いと思いますが……
とは言え、ギナとミナをわざと混同してる戸田verは兎も角、設定画、ときたver、緒方ver、町田verでさえ、その……膨らみが皆無なのは確かな話な訳で……。
ギナと区別つかないとさえ言われたりしますが、豊胸手術は哀れ過ぎますから……イレギュラー(さっちん)の介入で急に大きくなったとかは如何でしょうか?
>>612にも書いてあるが
総帥はここが何処とのクロスでクロス先のキャラデザイナーの
患っている病気について思い出すべきだな
多分水をかけるとミナになってお湯をかけるとギナになることからの混同でしょう
よくあることだ
その勘違いなら仕方ないな。
それだと巨乳になるだろ元ネタ的にw
そういえやあの頃は乳首丸出しでおっぱいぷるんぷるんだったな
いい時代だった…
水をかけると大きくなる・・・
つまり温泉に入ったからアイビスは大きくなったのか
逆襲のミナは、あれは胸囲は大きいけど筋肉でしょ?というオリキャラヒロイン(絶壁)のネガキャンだと思われます。
あと幼女化したみなさま。
公式で数値が設定されてないですし、どこかの歌姫さんたちのようにでっかいとの残念なのがはっきりとわかってるわけでもないですし問題ないと思いますよ。
伊東岳彦「俺が広井さんとスパロボ嫌いで(*´・ω・)(・ω・`*)ネーのコピペ、あれ嘘ですから
てなわけでアウトロースターとゼーガ出して」
>>611 筋肉に裏打ちされた垂れない巨乳でいいじゃないですか。
スキエンティアとヴァルザカードとサピエンティアの光の翅は
ゼーガペインの参戦予告だと思っている俺
アウトロースターは・・・最終回のアレなら結構いけると
総帥。心の底から発言します。
ぜひ! 巨乳で! もっと上でもいい!
我らがさっちんが全力で画くぐらいで!
要は、
計れば大きい数字がでるが、夢や希望やロマンが詰まった果実は実ってない
こういうことd
え?ミナ様に女らしさ期待するとかかなり無茶じゃね
>>626 なんて失礼な!
1/100天発売記念でダムAに掲載された町田さんの漫画だと、妙にロリロリしてる上にセトナのデザート食べてニヨニヨしてる所を部下に目撃されて恥ずかしそうに頬を赤らめる乙女な人なんだぞ!
……その後、同じ号のデルトレイを見ると悲しい気持ちになるけd
スリーサイズ公表されていないからこそボインからぺったんまで、
無限の可能性を持ったミナ様が同時に存在している……
ミナ様マジでシュレディンガーの乳
ううむ、私が間違っていました。ミナは美巨乳ということで今後も通してゆきます!
ディバイン SEED DESTINY 第二十二話 宇宙の戦火
万の光を黄金に染めて跳ね返す無数の黄金の筒が、虚空に一筋の線となって放出された。大口径拳銃二丁が、さながら機関銃の如き高速連続射撃を行っている為に、空薬莢が絶えずエジェクトされてそう見えるのだ。
頭部、胸部、腹部と三点射を受けたウィンダムが、着弾の衝撃と炸裂した弾頭内部の炸薬の爆圧と熱量によって瞬く間に火球へと変わる。
無数の破片とわずかな爆煙を伴う爆発は、イザーク・ジュールの駆るR−1デス・ホーラーを中心として、球形状に広がっていた。
重力のくびきと足場となる大地が無い代わりに、銃撃の反動と機体各所の推進機関を利用して、イザークは変幻自在の動きで二丁の大型自動拳銃の銃口の先に、新たな獲物をとらえ続ける。
プラントという人工の大地こそあるが、無重力である宇宙に生まれて育ったプラントのコーディネイター達にとっては、宇宙での戦闘こそホームグラウンドであり、より能力を発揮する事が出来る。
それはイザークに限らず他のコーディネイター達にも言える事で、ウィンダムとザクの性能はほぼ互角ながら、ザフトが戦闘を優勢に進められていることがそれを証明している。
ぼきゃ、と装甲を貫いた弾丸にフレームが撃ち砕かれて、ウィンダムの右腕が根元から歪んで千切れる。大きく機体バランスを崩したところに、徹甲弾が正確な狙いでコックピットを穿った。
周囲に漂う黄金の空薬莢の中心で、イザークはレフトヘッド、ライトヘッドの銃身下部の弾倉を取り外し、新たな弾倉を装填する。
前大戦時、核分裂炉を搭載し、フリーダム・ジャスティスと同等以上の性能を誇っていたが、新たにプラズマ・ジェネレーターなどをはじめとした新機軸の装備を投入している。
純粋なMSとしても、ザフトの威信をかけたザフトインパルスにも基本性能では劣らぬモノがあり、ザフト屈指のエースにまで成長したイザークがパイロットという事もあって、獅子奮迅の活躍を見せている。
レーダーがさらに新たな反応を見せる。初戦の艦艇砲撃ではこちらに多少なり被弾が出たというのに、地球連合側の艦隊の被害は少ない。
ドレイク級、ネルソン級、アガメムノン級各艦のうち大部分が、船首に光波防御帯応用のビームシールドを展開しており、ローラシア級、ナスカ級の砲撃のことごとくが無力化されている。
無傷で残った艦から次々とMSが出撃しており、MAを相手にしていた頃のキルレシオを失っているザフト側は、絶えず出血を強要されていた。
ランチャーストライカーを装備したランチャーウィンダムが浴びせ掛けてきたアグニの連射を、機体を半身にずらして躱し、イザークは背のデス・ホーラーを肩に担ぎあげ、鋼鉄の棺桶の中から覗いた砲口を向ける。
「いい加減しつこいんだよ、貴様らはっ!!」
プラント謹製高性能炸薬満載の砲弾が射出され、ネルソン級戦艦を一撃で沈める火力がランチャーウィンダムと、その背後から姿を見せていたエールウィンダム二機をまとめて火焔の中に飲み込む。
高熱に融解した装甲が、続いて襲い来た爆風によって飴細工のように簡単に破壊されて散華する。
落としても落としても姿を見せる連合のMSに、イザークは弱気な姿こそ見せないが、さすがに苛立ちは隠せぬようで、声を大いに荒げる。
散弾状にTEをばらまいて多くの敵を吹き飛ばしていたルナマリア、その護衛を行っているシホ、周辺の警戒と他の部隊との連絡の取次と戦闘を並行しているレイも、通信機越しに聞こえてきたイザークの怒声に、含み笑いを零す。
ようやく普段のイザークらしい態度に変わったからだ。それだけ戦闘時の取りすました態度が似合わないと、全員が常々思っていたのである。
「きりがない! 前の時もそうだが、よくもこれだけ数を用意してくる」
「それだけ我々の事を評価しているのでしょう」
「ふん、高く評価された所為で一人残さず殺そうとしてくるとあっては、面白くもない」
「そうですか」
淡々としたレイの台詞にも慣れたもので、クルーゼ隊在籍時なら戦闘中でも噛みついていただろうイザークは、レイとの会話で適度に緊張を緩和しているようで、さらに二、三言交わす間も二丁拳銃の銃火は絶えない。
艦隊の砲撃戦は濃密に展開されたアンチビーム爆雷によって大きく主砲が減衰され、遠距離からの主砲の撃ち合いでは致命打が出にくくなっている。
ザフト側は地球連合MS部隊の重厚な布陣をいまだ突破する部隊がなく、連合側も決死の覚悟で立ち塞がるザフトの防衛陣を前に足を留めている。
内部機関をはじめとした装備を一新したフリーダム・ジャスティスの内、ミーティアを装備した機体の火力は、小規模な艦隊と同等かそれ以上と活躍ぶりが凄まじい。
地球連合側のMS部隊もそれらのミーティア付きや、ドラグーンによって一度に無数の機体を撃破しているプロヴィデンスに照準を合わせて群がっている。
ガナーザクウォーリアの小隊が一斉に放ったM1500オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲が、ウィンダムの掲げるABCシールドを砕いてその奥の機体を貫けば、報復のビームが嵐となって降り注ぐ。
地球連合MSの隊列に空いた穴は、すぐさま周囲の部隊が埋めて部隊統制を取り戻し、かならずペアないしは小隊を組んで技量で勝るザフトに戦いを挑んでいる。
前大戦の経験を経て、MSを用いての戦闘に習熟したベテラン達が相当数戦線に顔を並べているのだろう。新兵が少なくないザフトにとっては数倍する数のみならず熟練兵の存在も、頭痛の種だ。
防衛部隊の指揮を任されていたレイ・ユウキの指示を受けたヴィレッタが、別の隊に現宙域を任せて部隊を後退させる。
一時的に後方に下がったWRXチームに、コートニーとラルフのプロヴィデンス二機、リーカ・シェダーのミーティアフリーダムをはじめミーティア付きのフリーダムが二機と護衛のサトー隊など複数の部隊が集まる。
コートニーは元は民間の技術者だった男で、前大戦から優れた技術力と客観的な視野でMS開発に大きく活躍してきた青年だ。高いパイロット能力に加えて空間認識能力も併せ持ち、数少ないドラグーン操者の素養を持つ。
ラルフ・クオルドはラウ・ル・クルーゼやエルザム・V・ブランシュタインと並びザフトのトリプルエースと称されるウルトラエースだ。
前大戦では隊を率いてアズライガーの前に立ちふさがり、ほとんどの隊員を失いながらも痛打を浴びせた猛者である。
彼もまた高度な空間に指揮能力とニュータイプ的な感性を持っており、連合のムジカ同様の優れた戦闘能力で、今回の戦闘で大きな戦果を上げている。
リーカ・シェダーは、オルガ・サブナックらに強奪されたカオス・ガイア・アビス三機のGのテストパイロットを務めた女傑だ。コーディネイターには珍しく生まれつき全盲で、それを電子機器で矯正している。
そのような身体的ハンディキャップを持ちながら、赤服を纏いテストパイロットを務める優れた能力を持ち、生来の前向きで明るい社交的な性格もあいまって、周囲からの評価は高い。
プラント前面に多重に横列陣形で展開していた地球連合艦隊の他に、プラント前面に展開していたザフト艦隊の横腹を突く形で、さらに艦隊が姿を見せて包囲網を形成されてしまう。
三方から囲い込まれて集中砲火を浴びる事を嫌ったユウキの要請により、前面に展開する連合艦隊にザフト側の精鋭を当てて、一気に大打撃を当てる事になった。
この時プラント攻撃に合わせて、別の地球連合艦隊がアメノミハシラを包囲しており、DCからの援軍は見込めていない。
もしユニウスセブンが落下していれば、地球連合側もこれほど迅速に大部隊を展開する事は出来なかったろうが、一時的な混乱こそ発生したものの、地上への被害は皆無であったから、このような大規模作戦も可能だった。
このまま物量で押し切られる前に、戦闘早期の内に連合側の指揮を挫く打撃を与えたい。となればザフト最強の機動兵器WRXに機体が掛かるのも無理からん事。
ヴィレッタも戦況が窮状に陥る前に自分達が戦果を上げる事の必要性はよく理解でき、チームのメンバーに司令内容を通達する声は、イザーク達にはいつもよりわずかに熱がある様に聞こえた。
「こちらの最大火力で一気に敵艦隊に切り込むわ。サトー、コートニー、リーカ、ラルフ、背中と横は任せます」
それぞれから短い返事が返ってきたのを確認し、ヴィレッタはすぐさま高機動戦闘中のヴァリアブル・フォーメーションを展開し、正面地球連合艦隊へ向かって部隊を進めながらWRXへの合体を始めた。
*
地球連合VSザフトの大規模戦闘が行われている宙域から、遠く離れた場所に一隻の船があった。船首に行くにつれて細く狭まる曲線のみで描かれたシルエットで、船体後部には、翡翠色の水晶の様に美しい多節の突起が伸びている。
全長が実に四キロメートルにも達する超規格外の巨大戦艦である。ゼ・バルマリィ帝国の主力艦フーレ級の一隻だ。
DCのスペースノア級でさえ及ばぬであろう高い戦闘能力とワープ機構、自己修復素材で造られた船体を併せ持ち、単独でも現地球圏の艦艇では太刀打ちできないだろう。
その異世界の船の艦橋に、傍目にも不機嫌な事が明らかな男の姿があった。正面幌ディスプレイに映し出されたWRXの姿に、眉間に刻まれている皺の深さが増す。
鋭い角度で曲がる灰銀の髪に、大きく剃刀で削いだような頬の若い男――ハザル・ゴッツォその人である。
ムジカ・ファーエデンがメインパイロットを務める地球連合WRXを打倒し、その直後イングラム・プリスケンの召喚したR−GUNリヴァーレと戦闘に入ったはずだが、無事に生還したようだ。
「ヴァイクランさえ本調子なら、このおれの手であいつらをまとめて葬ってやるものを!」
実はこの時、フーレに格納されているハザルの愛機ヴァイクランは、イングラムとの戦闘によって大きなダメージを受けており、自己修復機能を持ってしても数日は動けなかった。
今は、地球に送りこんだゴラー・ゴレム隊を招集してイングラムの追跡に当たらせてはいるが、結果が出るのはまだしばらく先の事だろう。
ゴッツォの枷が無い状態のイングラムは恐るべき強敵だ。何を押しても第一に抹殺を考えるべき、と指令を受けている。しかし、ハザルはあくまでWRXとヴァイクル――特にリュウセイ・ダテの搭乗する――の破壊に固執していた。
このハザルもまたこの世界に転移してきた死人であるが、前の世界で破壊された精神を修復する際に記憶操作も受けている。それでもリュウセイに対する執念は消えずに残り、強い敵愾心が唸り声をあげているのだ。
そしてハザルは、超高出力のハイパー・ターミナス・エナジー・ソード『エヌマ・エリシュ』を初撃に放ち、一直線に地球連合艦隊を貫いて撃破したWRXを忌々しげに見つめながら、イングラムとの戦いを思い出していた。
*
チームTDおよび地球連合WRXとの戦闘で、ラアム・ガン・スレイヴを数基落とされはしたが、戦闘能力をほぼ完璧な状態で残していたヴァイクランのコックピットの中で、この時ハザルはほくそ笑んでいた。
イングラムが召喚したリヴァーレのデータは手元にはないが、所詮はR−GUNパワードの代わりに呼び出した機体と、侮ったのである。
強念者としてのハザルの鋭敏な感性は、眼前の機体を脅威とみなしてはいたが自分自身と、敬愛する父から託されたヴァイクランへの絶対の自信がハザルの心を満たしていた。
「バルシェムのオリジナルか、肉片の一つでも持ち帰れば父上のお役に立つかもしれん。跡形位は残してやろう」
「ふっ」
父の威光と自身の能力に後押しされた絶対の自信で告げるハザルを、イングラムは嘲侮の響きを隠さずに鼻で笑う。それを聞き取った瞬間に、ハザルの脳は怒りの熱で沸騰した。
紫の翼を広げ魔界の侯爵の様に悠然と佇むリヴァーレめがけ、残るラアム・ガン・スレイヴが飛翔する。
「命乞いの文句でも考えるがいい」
「直情径行なのはリュウセイと同じか。いや、リュウセイよりも単純かもしれんな」
「リュウセイと言ったか、貴様ぁ!!」
「それがどうした? 余計なお喋りはここまでだ。行け、ガン・スレイヴ」
ヴァイクランのラアム・ガン・スレイヴに呼応するようにリヴァーレの背中からも三基のガン・スレイヴが射出され、操者の思念を受けて近距離で交差し、離れ合い、光弾を撃ち合い始める。
地球外技術によって作られた両機の武装たるガン・スレイヴは、近似兵装であるドラグーンが一撃ではMSを破壊し得ない出力なのに対して、大口径ビームライフルにも匹敵する破壊力を誇る。
深い色合いの無限の闇の中に、星以外の輝きが光の速さで互いの間を行き交い、まるで小さな流星群の流れの中に身を任せている様な、幻想的な光景が広がる。
しかし、現実にもそうであるように流星群のひとつにでも触れれば砕かれるのは自分の機体であり、ひいては自分の命である。
流星群の中を縫う様にしてヴァイクランとリヴァーレは高速で飛びまわる。時に上下左右、背後からも放たれる光弾を軽やかにかわしているのは、後ろに目があるかどこから攻撃が来るか予め知っているかのようだ。
リヴァーレの手首から白みがかった黄金の光が溢れだして地を這う蛇のように伸びて、先端には鋭い光の剣が顕現する。手持ちの近接武器とは異なる独特の軌道を取るリヴァーレの近接用武器ロシュ・ブレードだ。
鞭のように大きくしなって袈裟斬りに襲い来るロシュ・ブレードに、ハザルは着斬箇所に念動フィールドを集中させて防ぐ。
精神的攻撃性を持つ広範囲武装オウル・アッシャーで反撃を試みるが、その寸前に跳ね返したロシュ・ブレードがラアム・ガン・スレイヴの一基を斬り落とすのを見て、ハザルは
「ちい、狙いはヴァイクラン本体ではないのかっ」
「小うるさい蠅を狙っただけの事。いちいち騒ぐ必要はあるまい?」
「このおれを見下した物言いを」
「ふっ」
「!!」
更に数を減らしたヴァイクランのガン・スレイヴは、自在機動からヴァイクラン周辺に集まり、防御重視の布陣に変わる。イングラムは表情を変える事もなく、ガン・スレイヴとロシュ・ブレードの変幻の組み合わせで間断なく攻め立てる。
近接武器の無いヴァイクランではロシュ・ブレードの光刃を受ける事は出来ず、防御をガン・スレイヴの砲弾と合わせて、念動フィールドとズフィルード・クリスタル製の装甲の強度と再生力を頼りにするほかない。
立て続けに機体を揺らす衝撃に、ハザルは奥歯を砕けんばかりに噛み締めて耐えて、逆に戦意を強く燃やした。感情に釣られて高まる念の力を受けた念動フィールドは、爆発的に強度を増す。
斬り込んだロシュ・ブレード二刃とガン・スレイヴの砲弾が全て弾かれ、冷静に虚空越しのヴァイクランを見つめていたイングラムの冬の湖の様な蒼い瞳に、警戒の色がうっすらと浮かび上がる。
「貴様如き人形が、思い上がるなぁ!」
ヴァイクランの機体から強い光を放つエメラルドグリーンの光が溢れだし、カルケリア・パルス・ケルディムが増幅する思念を受けて、強化されたオウル・アッシャーが、リヴァーレを守る空間歪曲フィールドを破る。
四十メートル以上あるリヴァーレの装甲表面を強打し、厚い装甲を透過して搭乗者の精神にも作用する攻撃に、イングラムの眉根が寄る。
苦痛ではなく虚脱の感覚に近い衝撃であった。ふっと精神が肉体の檻から引きずり出されて、イングラムの意思を無視して精神と肉体の繋がりを引き剥がされる。
「このおれを、舐めるなよ!!」
「なるほど、多少は評価を修正する必要があるか」
ハザルの怒声に鼓膜を揺さぶられながら、イングラムは遠のく意識を強い意志力で引き戻し、ロシュ・ブレードの光鞭を幾重にもくねらせてヴァイクランへと振り下ろす。
一方はヴァイクランから見て斜め上前方から天空から大地に落ちる流星の様に迫り、残るもう片方はヴァイクランの右側に大きく弧を描いて背後から串刺しにしようと動く。
準サイコドライバークラスの強念者であるハザルは時間差で襲い来るどちらも、ヴァイクランを春風の中を飛ぶ蝶を思わせる軽やかな動きで操り回避する。
有視界戦闘での見本にしたい位に鮮やかな動きであった。
ロシュ・ブレードを操った姿勢でわずかに硬直していたリヴァーレの隙を的確に見抜き、ヴァイクランの周囲に侍らせていたガン・スレイヴを動かし、軌跡の光の尾が虚空に残っている間に、高速の連射をリヴァーレに叩きこんだ。
胴体を中心に正確に命中する雷光の弾丸が空間歪曲を打ち破り、リヴァーレの装甲を抉り、大小の穴がそここそに出来上がる。自己修復機能を持つリヴァーレは、すぐさまに修復にかかるがそれは相手も同じであった。
リヴァーレの連続攻撃が与えたダメージも、イングラムの瞳の中で徐々に塞がり出している。互いに優れたバリアと自己修復能力を有する為に、戦いの決着は長引くかと思われた。
しかし、ハザルはそれを是とするような性格ではなかった。
大いなる自己への自信と過大な自尊心、勲功を上げる事で父に認められたいという願いが、ハザルにたかがバルシェムのオリジナル如きに手古摺っている事態を許容しない。
それまで一瞬たりとも足を止めずに無重力の世界を飛んでいたヴァイクランが動きを止め、機体周辺に一際強固な念動フィールドを展開するや、虚空に足を広げて踏ん張る様な姿勢を取る。
もはや気力の限界にまで到達したハザルが展開した念動フィールドは、生半可な攻撃をすべて鉄壁となって遮断して見せるだろう。
リヴァーレの三つの兵装の中でも、ヴァイクランの念動フィールドを突破できるものとなると、最大火力を誇るアキシオン・バスターを置いて他にない。
互いの最大火力の同時射撃となれば、どのような被害が双方に発生するか分からない危険な行為だ。
ハザルがそれを理解した上で、自分の機体に自信があるから選択したのか、後先を考えず感情の濁流に任せて選択したのか。どちらにせよ、こちらもまた最大の一撃で応えるしかあるまい。
頭に血が昇りきってはいない証拠に、ハザルは残っていたガン・スレイヴをリヴァーレの周囲に展開しており、回避行動を見せればすかさずに砲弾を叩き込んで動きを止める配置をしている。
ガン・スレイヴにガン・スレイヴで応じる時間があれば、ベリア・レディファーの発射は間に合うだろう。ヴァイクランのベリア・レディファーの効果範囲は広く、大きく回避行動を取らねば逃れる事が出来ない。
防御を固めて直撃を防いでも少なくないダメージをリヴァーレは負う事になるだろう。
パイロットの性格に難はあるが、ヴァイクランはゼ・バルマリィ帝国の宰相であると同時にディス・レヴを開発した天才科学者シヴァー・ゴッツォが、突出した地球の軍事技術を盛り込んで作り上げた強力な機体だ。
単純な性能を見るならばリヴァーレをもってしても油断の二文字はあり得ない。ここまでの思考を一瞬で終えたイングラムは、周囲を忠実な下僕の様に飛んでいたガン・スレイヴをリヴァーレの至近位置に集めた。
リヴァーレの胸部の禍々しい魔花の蕾の様なパーツが花開くように三方に展開され、中に秘していた砲身が現れる。
リヴァーレから見て逆三角形の位置に配されたガン・スレイヴが、それぞれ真紅の光線を胸部の砲身目掛けて放射し、リヴァーレの胸部に圧倒的なエネルギーが集中する。
カルケリア・パルス・ティルゲムが増幅した思念を研ぎ澄まし、放出していたハザルはリヴァーレの機体に集中する膨大なエネルギーに気づくが、億さず怯まず構わずヴァイクランの最大攻撃を放つ!
「くらえぃっ!!」
「アキシオン・バスター…………」
「ベリア・レディファー!!!!」
「デッド・エンドシュート!!」
両者の喉から発せられた叫びの残響が宇宙に木霊する中、両機の中心位置に太陽の誕生を思わせる強烈な光が、極彩色に彩られて発生した。
空間歪曲作用を有する両兵装の衝突によってごく短時間に発生した超エネルギーと、空間とエーテルを揺るがせる次元振動は地球圏に伝播し、いくつかの勢力によって観測され、超兵器同士の戦闘が確認される事となった。
*
全身全霊を込めたベリア・レディファーを放った後の記憶がぷっつりと絶えたハザルが目を覚ました時には、いま建っているフーレ級の医務室に運びこまれて、医療用のカプセルに全裸で寝かされていた。
戦いの決着を確認すべく、医療用バルシェムの制止を振りほどき格納庫に到着したハザルが見たのは、四肢の欠損こそないものの機体全体に大きな損傷を負った愛機ヴァイクランの姿であった。
凶悪な獣を思わせる顔面にも少なからず罅が走り、滑らかな装甲の多くが破れ、凹み、削られている。
父シヴァーに託されたという思い入れがあり、格別の愛着を抱くヴァイクランの無惨な姿に、ハザルはしばしその場に呆然と立ち尽くすほかなかった。
強く噛みしめすぎて口の端から血を滴らせたハザルは、地球連合とザフトの大規模戦闘の報を受け、心中の葛藤の噴出をかろうじて抑え込みこうして艦橋に立って、こうして遠距離から戦闘を傍観しているのだ。
モニター越しとはいえ目の前で勇猛に戦っているWRXの姿に、ハザルは抑えきれぬ苛立ちに足で何度も床を叩いている。艦橋にハザルの他にはバルシェムばかりかと思われたが、他にも小柄な影が一つある。
頭がハザルの胸に届くかどうかという位に小さくて、とても戦艦の船に居るにふさわしい人物とは思えない。
黒い生地のボディラインをはっきりと浮かび上がらせるスーツが首元から爪先、指の先までを覆い隠し、小さな乳房の下半分や下腹部、肘から先はオレンジ色の光沢をもっている
また首元や肩には緑色の宝玉の様なものが埋め込まれており、一風変わった衣装であった。
少女は金銀妖瞳のやや吊り上がり気味な瞳、額に刺青の様に描かれている緑色の刻印、まだ十代前半としか見えない幼貌に不釣り合いに艶めかしい朱の唇といい、男を狂わせる背徳的な雰囲気を纏っている。
短く切り揃えられたピンクに近い赤い髪の少女である。仮面で顔を隠したバルシェムらとは明らかに違う衣服に、わずかに感情の色が見える顔と、この少女が別の存在である事は明らかだ。
「ハザル様、まだ起きてはなりません。見た目に大きな怪我はありませんが、いまはお体をお休みになられませ。カルケリア・パルス・ティルゲムの負担も軽くはありません」
「レビか。貴様如きがおれに命令するつもりか!?」
これまで表面上は抑えていた鬱憤を晴らすかの様に、舌鋒激しくハザルが背後のレビを振り返り睨みつける。ゴッツォの思念に縛られたレビの念動力は、ハザルと同等かあるいは上回るほど強力だ。
その事が分かるのか、ハザルは普段からレビに対して格別冷たく、バルシェム達に対するのと同じような態度を取っている。
レビが下賜されたジュデッカの性能が、レビとハザルの実力関係同様、ヴァイクランと同等である事も、ハザルが厳しい態度を取る一因を買っている。
それに対してレビは自分に向けられる軽蔑の感情など、気に留める様子もなく機械仕掛けの美しい少女人形のように、従順に従っていた。
「畏れ多い事でございます。私にそのようなつもりは。ただ、ハザル様はバルシェムとは違い代わりの利かぬ御身体です。御身を大事になされませ」
「くどくどと説教をする。このおれの事はおれ自身が一番理解している。おれが構わぬと言えばそれに従え!」
「……はっ」
これ以上抗弁しても怒りを買うだけ、下手をすれば頬を張られる位はすると分かったのか、レビはそれ以上ハザルに何を言う事はなく、奮闘するWRXをその色違いの左右の瞳に映した。
ザフトWRXと二機のヴァイクルの破壊を達せぬ限り、ハザルは誰の言葉にも耳をかす事はないだろう。
*
「ぬおおおおおお!! くらえぇええ、EFナッッコォオオーーーーー!!!!!!」
喉よ破れろ、とばかりに叫ぶイザークの気迫が籠ったWRXの右拳が、前方アガメムノン級船首に展開された陽電子リフレクターを容易くぶち抜き、三百メートルある船体のど真ん中を、貫いた。
斬艦刀や獅子王斬艦刀、ミーティアの大型ビームサーベルでもなければできない様な事を、EFを纏った拳でやって見せるとは、見事というべきか流石というべきか。
「まとめて落とす、シホ!!」
「はい、HTEキャノン、エネルギー充填率98……99……100パーセント、ルナマリア、照準を!」
「了解、右前方ネルソン級ロック、イザーク副隊長トリガーを預けます」
「よぉし! プラントを狙った事を存分に後悔させてやる。いっけえええええ!!」
WRXの左手に構えられたR−GUNパワードの砲口から溢れた莫大なターミナス・エナジーは、ザフト最強に相応しくセンターマークに捉えたネルソン級の胴体を横に貫き、さらにその先に展開していた艦艇と護衛のMS群を飲み込んで行く。
発射体勢を維持するWRXを狙う連合の機体は、ことごくリーカやコートニーらがシャットダウンし、直衛のMSを減らされて隙の出来た艦艇にはラルフの駆るプロヴィデンスのドラグーンが群がって、一分とかけずに沈める。
少数精鋭で持って敵本陣に切り込み、驚くほどの戦果を上げる彼らであったが、反面被害も大きく、サトー隊の隊員の多くとミーティア付きのフリーダムが二機とも撃墜されている。
WRXも若干の被弾が出ており、イザークの操縦に若干遅れを見せ始めている。連合艦隊は、旗艦を沈められ多くの将校・佐官の乗る艦艇を沈めた事で指揮系統に混乱が見えてはいる。
それでも左右から現われた別動艦隊はザフトの横腹に猛烈に食い込んでおり、ザフト側の必死の反撃と拮抗状態が続いている。
イザーク達の活躍によって三方からの完全包囲という事態だけは避けられそうだが、以前数で押されるザフト側の旗色の方が悪いのは否めない。
「く、隊長、このまま連合の艦を片っ端から沈めましょう! 母艦を沈めればMSの展開も迅速には行えなくなる」
「その前に私達が落とされるわ。一度、後退しないと……。っ!」
「隊長?」
「まずい、図られたわ」
「なにがあったんです!?」
常に冷静沈着なヴィレッタの声に隠しきれない焦燥の響きを聞き取り、イザークの詰問の声は激しさを増す。
「さらに別の艦隊が姿を見せたのよ。前の時と同じ核弾頭装備のウィンダムがね!」
「なんだとお!?」
やや遅れてヴィレッタの言葉の意味をイザークが理解した時、ヴィレッタに対する言葉遣いも忘れて驚愕の声が口から突いて出た。
ザフト側気付いた時、クルセイダーズと名付けられた核弾頭運用艦隊は、ガラ空きのプラント本国目掛けて悠々と帆を進めていた。
プラントの極軌道から姿を見せた数隻の戦艦から出撃した数十機編成の、核装備ウィンダムは、核弾頭の目標を銀色の砂時計へと無慈悲に向けている。
艦隊を構成しているアガメムノン級の一隻ネタニヤフの艦橋で、熱烈なコーディネイター殲滅思想者である艦長は、これから自分の決断によって起きる一大スペクタクルに、胸を躍らせていた。
NJキャンセラーを搭載した核ミサイルはすでに射程圏内に忌々しい砂時計を捉えている。今さら気付いて部隊を急行させた所で間に合うものか。
前大戦でムルタ・アズラエルが成しえなかった偉業を、この自分が成すのだ。神が今も下さぬ天罰に代わり、コーディネイターに殺された無辜の人民の無念を晴らす人罰を下すのだ、今、ここで、自分達が!
舞台に上がった劇役者のように胸中で弁を振るう艦長に、オペレーターが水を差した。潜めていたのか三隻のナスカ級が、プラント本国を守る様にして姿を現したのである。
しかし、たかが三隻で何ができると、艦長は鼻で笑った。
あの三隻の抱えたMSがどれだけ高性能であろうとも、数十機に及ぶ核装備のウィンダムを迎撃しきれるものではない。もしミーティアかWRXクラスであれば別だが。
沸き起こった不安は黒い霧となって艦長の踊っていた心を覆ったが、英雄願望に取りつかれた艦長は、すぐにその霧を晴らした。神か悪魔であろうとも、今さらこの状況を覆せるものか。
そう考える艦長の目に、三隻のナスカ級の内中央の艦に、見た事のない装備が映る。薄い円盤を何枚も貫いた錐の様なそれは、艦長だけでなくクルセイダーズの誰にも用途は想定できなかった。
かりにそのナスカ級の装備が何を巻き起こすものか察知できたとしても、彼らになすすべは無かっただろう。核ミサイルの射程圏にプラントを捉えた様に、その装備の射程圏に彼らは捉われていたのだから。
そして、ゆっくりと振動を始めたその装備から放たれた白い光が、核装備ウィンダムとクルセイダーズ各艦艇を飲み込んだ次の瞬間、圧倒的な熱量によって艦長は骨の一片も残す事無く蒸発していた。
発射された核ミサイル、発射前のランチャー内部の核ミサイル、そして艦艇の中に収納されていた核ミサイルもすべてが強制的に起爆させられて、内側からウィンダムを、艦艇を焼き尽くす。
核ミサイルを強制的に起爆させた装備をNスタンピーダーという。プラントの対核攻撃を想定した防衛の切り札である。外部から任意に核兵器を起爆させるこの兵器がある限り、連合側の核兵器は無力化される。
迂闊に核を持ってプラントに近づけば、この兵器によって逆に我が身を核の炎に焼かれるのだから。これは核兵器を切り札として運用する連合側にとっては最大級の脅威に違いない。
しかし、射程距離には限りがあり使用に必要とされる資源は大変希少なもので、完成品も一度照射すればそれだけで機能を停止してしまう。
実用を知っているプラント側からすれば、多用する事の出来ない代物であり、その効果と存在で連合の核兵器という手札を封じられればよし、とする意見もある。
ただ、核を強制的に起爆するこの装備は地球上で復興しはじめた原子力施設への脅威ともなり、地球連合側にさらにプラント脅威とみなし態度を硬化させてしまう危険性もある。
プラント側に都合のよい面ばかりを持った兵器でない事は事実であった。
とはいえ、プラント壊滅の最大の切り札であり要であった核兵器が全て無力化され、旗艦の多くを沈められた連合艦隊の混迷の度は深まり、攻撃の手が目に見えて勢いを失う。
核のない以上、DCという強大な敵を残した現況でこれ以上戦力を失う事を嫌ったのか、指揮系統繋ぎ直した連合艦隊は、鮮やかに船首を翻しプラントに背を向け始める。
本国を責められた事で激昂したパイロットの幾人かは追撃を行おうとしたのだが、ベテランパイロットや、司令部が強くこれを押し留めた。ザフト側もここまでの防衛戦で多くの血を流した事を理解していたのだから。
こうして、互いに百機以上のMSと多数の艦艇を失いながら、ザフトと連合艦隊による戦闘は、取りあえずの終結を迎えたのである。
*
そして、プラント本国同様に連合艦隊に包囲されていたアメノミハシラでも、マイヤー?V・ブランシュタイン宇宙軍総司令率いるDC宇宙軍との間で、苛烈な戦闘が繰り広げられていた。
ブロック交換によって砲戦にも空母にもなるペレグリン級と、五門ものローエングリンをもつアルバトロス級の効果的かつ迅速な運用によって、艦隊戦ではDC側が優位に戦闘を進めていた。
機動兵器同士での戦闘も、兵器の性能差を前大戦よりも埋められたとはいえ、現行の主力量産機では最も優れているエルアインスと、ヴァルシオン改タイプCFの部隊が津波の様に襲い来る敵をよく押し返していた。
特に要所で活躍しているのが、宇宙軍親衛隊トロイエ隊の運用する量産型ヴァルシオーネだ。
ヴァルシオーネに装備された敵味方識別機能を備える広域先制攻撃兵器であるサイコブラスターは、他の勢力で再現出来ていない技術の一つで、これは低威力ながら一度に多数の機体がダメージを受ける脅威であった。
高い錬度とマイヤーへの篤い忠誠心に支えられたトロイエ隊の連携によって、連続して放たれるサイコブラスターによって、一度に二十機近くが撃墜される局面も見られたのである。
宙間戦闘にチューンしたヴァルシオン改タイプCFが大量に配備されていた事もあり、連合側のMSは時を重ねる事に、撃墜数が右肩上がりになってゆく。
DCの足を止める事が主目的であり、アメノミハシラの陥落までは命じられていなかった連合艦隊に、撤退の意思を固めさせたのは、上記の機動兵器の活躍もさることながら、マイヤーの新たな旗艦の馬鹿げた戦闘能力も大きかった。
アルバトロス級ナハトから乗り換えた新たな戦艦の艦橋で、マイヤーの威厳に満ちた低い声が雷鳴の如く轟く。
「トランスフォーム!! ジェネラルガンダム!!!」
艦長席アームレストに設置されたレバーをマイヤーが引き、同時に戦艦ジェネラルの艦橋が船体本体との接続が解かれて上昇する。
船体本体が九十度起き上がってメインスタビライザーが左右に割れ、キャタピラを備えていた部分が移動して足に変わる。主砲を備えていた個所は手首が伸びて明らかに腕部の形を成す。
変形に備えてジェネラルのスタッフが衝撃と船体各所の移動に、マニュアルにそって各所に動きまわる。艦橋でもマイヤーの副官リリーが、艦長席を揺れる体を支えていた。
そして――戦場に居る誰もが度肝を抜かれるものが姿を見せた。よもや戦艦が全高442メートル、重量5230トンもの桁違いの数字を持つMS(?)に変形すると、一体誰に想像がつくだろう。しかも、二頭身である。
メインスタビライザーの下の船体部分が、そのままデュアルアイとブレードアンテナが特徴的なGタイプの頭部だったのである。
C.E.ではガンダムという言葉は特定のMSの種別には使われぬが、仮にU.C.世界の住人がいたら、百人が百人ともガンダムというだろう。どちらかといえばデコレーションMSの類ではあるだろうが。
「変形完了! ジェネラルガンダム!!」
マイヤーの獅子を思わせる二度目の咆哮が響き渡る中、艦橋もまた変形をはじめ、二連の砲口が覗き、銃把が左右に伸びる。
銃把をジェネラルガンダムが掴み取り、機体各所の姿勢制御スラスターが機体のバランスを整える。肩のコスモナバロン砲、プロミネンスキャノンが旋回して砲口の先を前方に向ける。
大口径砲に変形した艦橋のオペレーター達が忙しなく報告を上げ始める。
「粒子極性転換フィールド展開」
「総員対ショック対閃光防御!」
「全砲門開け!」
「目標、前方地球連合艦隊に向けコスモナバロン砲転回!!」
一斉にジェネラルガンダム前方に展開していたDC側の機動兵器部隊が上下左右に分かれ、射線軸に連合艦隊とMS部隊のみを残す。DC側の動きに気づいた連合側も部隊を退避させる。
それでも多くの地球連合部隊が射線軸上にあった。ジェネラルガンダムの砲撃の射程がずば抜けて広大であった為だ。
「一斉砲撃、ギャラクシーギガクロス、ファイヤー!!!」
銀河に輝く星の光が全てそこに集約されたような光であった。ジェネラルガンダムの持つ最大火砲二つの内の一つは、進行方向上にあるすべての物体をその超エネルギーで粉砕し消滅させてゆく。
展開されていたビームシールドも、重厚な戦艦や空母の装甲もまるで意味を成さない。
冥府に流れる死の河がこの世に溢れだしたかの如き一撃。
二頭身の機動兵器というおもちゃじみた外見ながらのこの攻撃力。
何をするかわからない、何を持ちだしてくるかわからないという恐怖が、影のように付き纏うDCとの戦闘とはいえ、これは、あまりにも現実離れし過ぎている。
強烈すぎる外見の巨大MSの攻撃によるインパクトに、地球連合側諸兵が雷に打たれたように呆然自失する中、絶叫にも等しい咆哮を挙げたマイヤーは、あくまで悠然と艦長席に身を沈めていた。
「これで、今回は詰みか」
「追撃の艦隊はジェジャン中佐とロレンツォ大佐に指揮を任せられては?」
「あまり深追いせぬよう通達しておけ。地球連合側も今回はさほど気を入れてはいなかったようだ。下手に手負いの獣の気を荒立てても仕方あるまい」
「分かりました。追撃艦隊の編成と艦隊の被害をすぐにまとめさせます」
頬杖を突き、こめかみのあたりを人差し指で叩いていたマイヤーが、ぽつりと呟いた。
「今頃はザフト、そしてオーブ諸島も囲まれているだろう。ビアンがいれば問題あるまいが、どうなるかな?」
マイヤーの言葉通り、宇宙での戦闘に遅れて数日後、DCと地上ザフトの部隊は地球連合の部隊と砲火を交える事となるのだった。
――つづく。
胸関係に関してご意見ありがとうございました。今後ともあの方の胸にはたくさんの夢とロマンをつめたままにしておきます。
地味な中佐がwwwwwwwwww
つーかジェネラルガンダムとかどんだけ懐かしいネタ使うんだ………
乙ですぜ総帥
・・・色々ありすぎて何から言ったらいいのかわからないぜ・・・
総帥殿、乙でありました。
……ネタ兵器に汚染されるCE世界。しかしその原因にビアン博士がいるだけで納得できてしまう不思議がココにある。
最後のマイヤーの台詞が俺の脳内では全て若本ボイス付きで再生されますたw
乙
フューラーが出たことにも驚いたがまさかのジェネラル
総帥とは絶対同年代だと思うわ
>>611で伏線が張られてるから
きっとブシドーの最終機体は武者か・・・
>>643 もはや超機動大将軍とか天鎧王とか出て来ても驚かないぜ
ジェネラルガンダムwww
高すぎて買えなかった思い出。
初代闇皇帝が大好きな俺は、多分、一世代前……。
でてきてくれないかなー。
あの光背が良いんだよ! あの光背が!
>>611 最近出たSDXで確認したら、
それの他にはドラゴンヘッドの盾の口の中にキャノンが一門あったね
あとは新設定のオーラエフェクトソードぐらい
ダブルソードの刀身にオーラを纏わせたやつ
ていうかリアル等親のスペドラはGガン編のスペリオルカイザーと考えていいのかな
>>648 スペリオルカイザーはデンドロみたいなものだし違うんじゃない
そういやスペリオルドラゴンはSガンダムモチーフじゃないなんてデマ流したの誰なんだろうな
背部のブースターが明らかにSガンダムの意匠なのに
あ、いやいや
デザインとかがリアル等親スペドラじゃないか?
ガンレックスの胸部からでてきたスペリオルドラゴンはドラゴン形態で突撃をしていたな
>>650 結構違うぞ
スペリオルカイザーは肩にガンダムフェイスあるし羽も変わってる
何よりカラーリングが違うしスペリオルカイザーには武器はなかったはず
規制に引っかかった奴多数?
かなりの規模で規制なってるみたい
にしても総帥は暴走しまくってるな
バン・バチュンは超機動な大将軍で魔装機の有る公国はサンダーソード奥義な城かね
規制以前に昨日はスパロボ新作の発売日だろう…
Wiiは持ってるけど村正やるのに忙しくてNEOまで手が回らない
ファンには悪いがあの託児所戦艦はいい加減にしてくれよ
ガキどものツラなんてほとんど同じに見えてきたし
聞くところによると参戦キャラの八割が小学生とか
ゲッター、J9、グッドサンダーチームの平均年齢高めの会話がオアシスのように感じるとは意外だった
NEOはゲッターチームの性格の改変振りがひどすぎる。
というかそもそも出すハードを間違えている。
まだちょっとしかやっていないけど新システム自体は調整すればいいだけだと思うけどな……でもなんかよくないと感じてしまう。
某メガテンのように高水準のクオリティを維持し続けるのは至難であると思うがシナリオでは「W」以降は下降の一途を
たどっている気がするのは気のせいでしょうか?逆に言えばWはシステム面ではシンプルだったけどシナリオのおかげであんまり気にならなかったし。
>>659 女神にしか真面目に祈りを捧げず天罰喰らった事もある前世はモンクなものぐさ坊主と実は百歳越えてるエルフ兄妹の立場が……
据え置きスパロボはプレステ以外は実験作品って感じだな
プレステのは小隊をベースにした地味な改変しかしないし
思い切ったシステムでかなり冒険してる・・・大成功とは行かないけど
シナリオはしっかり練ってほしい…
なんかWより後のは迷走気味な気が。
イドロがシャルを捕獲して洗脳したと言ったとき
なぜかエロいものをそこに感じたのは俺だけだろうか…
ここもシナリオスレと変わんねぇな
どうせSC2もやったことないのが大半だろ
それでW以降は迷走だのよく言えるわ
ラクシズが味方になるという理由だけで十分だ!(AA略)
今回の戦艦は総帥がロボを隠すのに使いそうだ
>>665 スクコマ2のプレイの有無が何の関係があるんだ?
これじゃー真・マジンガー参戦してもメインキャラが相当修正されるかもしれないな。
あれも結構バイオレンスだし。ぜひともそのまんまの新ゲッターと同時に参戦してほしいが……。
エルドランにロボットよこせって総帥が言って
アメノミハシラとオーブ国内の学校がロボになる夢を見たんだ
真マジンガーってまだ続編くるんじゃないの?
正体バレバレな勇者ブレードの正体明かしだってまだなに
こんばんは、40分くらいから投下します。支援よろしくおねがいします。
ディバイン SEED DESTINY 第二十三話 ワイズ・ドール
冷たさばかりが感じられる扉を前に、少年は足を止めた。備え付けのインターフォンのスイッチに伸びた指も、同じようにして空中に固定されている。
扉に感じた印象は、材質の持つ雰囲気というよりはそれを前にした少年の心境の所為であろう。扉を前に珍しく弱気な表情を浮かべて、訪れる事に躊躇しているのはシン・アスカであった。
大西洋連邦のコープランド大統領の声明を耳にし、その場から逃げだす様にして飛び出たその後の事である。シンの足は一路ある場所へと向かい、そこにいるであろう人と話がしたいと痛切に願っていた。
けれど、実際にそれが出来る直前まで来てしまうと、急に心の中に不安が湧き出して、何かに追い立てられるようにして動かしていた足は、その場に縫いつけられたように止まり、伸ばした指は見えない糸に絡み取られてしまった。
どうして、後一歩踏み出す事が出来ないのか、訪問を告げる鐘の音を鳴らせないのか。
答えは分かっている。そんな事はあり得ないと分かってはいても、責められる事が怖いのだ。
全幅の信頼を寄せる人から、お前のせいだと、責任はお前にあるのだと告げられてしまうかもしれないという可能性が、シンの心に水が沁み入る様にして入り込み、水嵩を増している。
コープランドの言葉に瞬時に沸騰した怒りが、指先にまで行き渡り、開いた毛孔から炎となって噴き出しそうな心理状態に突き動かされ、ここ――ビアンの執務室に足を向けたのは、言い訳をする為だったかもしれない。
自分の所為じゃない、たしかにユニウスセブンを砕きはしたけれど、だからといってあんな地球と宇宙が隔離されるようなことの原因になる筈はない、そう弁明して開戦の理由の一つにされてしまった事を許されたいのだ。
いざ執務室の前まで来ると、ようやく自分を突き動かしたのがそのような惰弱な感情である事に気づき、シンは猛烈な羞恥と自己嫌悪を覚えて足と指を止めたのだ。
その二つの感情によって頭に上っていた血と熱が抜けて、頭が冷えるや否や今度は自分の責任が追及されるかもしれないと言う事に思い当たり、止まった足は前に進む事を拒絶している。
なんと情けない事だろう。思う以上に弱く脆い自分の心の有り様と考えに、シンが顔を俯かせた時、扉が向こう側から開いた。下を向いた顔を反射的に上げて、シンは扉の向こうに立っているビアンの顔を見上げた。
天に角突く山脈を前にしている様な迫力はいつもと変わらぬが、シンの姿を写す瞳は親しい者の前にだけ見せる柔らかな光を湛えている。
訪問者を映すカメラの映像から、シンが扉を前にして躊躇している姿に気づき、訝しみつつこちらから扉を開いて迎えたのである。
「あ、えっと、その」
何を言えばいいのか、とっさに思いつかなかったシンが、目線を逸らして決まり悪く俯き、なにやら暗い沼地に沈んでいる様な雰囲気を纏っている事に気づいて、ビアンは声音を柔らかなモノにした。
戦場に立てば一騎当千と称賛するに値する働きを見せるこの少年が、それ以外の場面では年相応であることを思いだしたからだ。
そうでなくとも、シンを戦争に巻き込んだという負い目が常にビアンの心にあるから家族の事や友人達の事など、出来得る限りのケアには気を遣っている。
「こんな所で立ち話も何だ。中に入りなさい」
「……はい」
二人の姿は一軍の長と末端の兵士ではなく、傷つく事に怯えている少年とその少年を導こうとする壮年の教師か、父親の様であった。執務室の中にはビアン以外には姿が無く、中に招かれたシンと二人きりになる。
「なにか飲むかな?」
「いえ、気を遣わないでください」
ソファと飲み物を勧めるビアンに丁重に断りをいれ、シンは腰かけるに留めた。ビアンは沈鬱の海の底に沈んでいるシンの声に、ふむとひとつ頷いたきりで自分のコーヒーを淹れてから、シンの体面に座る。
最高級品の本革張りのソファは、腰かけるもの体重・姿勢に合わせて最も快適で負担のかからない角度に調節される。
MSのコックピットシートのみならず、長時間使用される兵器のシートでも使われている素材だ。これのお陰で丸数日腰かけ続けなければならないような戦闘でも、腰痛に苦しむ事は無い。
ビアンがコーヒーを淹れて腰かけるまでの間、シンは落ち着きがなくそわそわとした調子でいた。それも、目の前にビアンが深く腰を下ろした事でぴたりと収まる。
その代りいよいよ体は緊張をましてじわじわと、軍服の下の服が石にでも変わっているかのようだ。
どこをどのように見ても緊張に凝り固まっているシンの様子に、コーヒーカップに口を着けながら、ビアンはどうしたのかと、心の内で疑問符を浮かべていた。
悩んでいるばかりでなく、何かを恐れているようでもあるし、さらにはビアンに対して遠慮している、いや、負い目を感じているような素振りもかいま見える。
複数の感情がタペストリーの様に織り重ねられたようにして、シンの心に重圧となってのしかかっているようだ。
三年近い付き合いの中で、単純明快なシンの性根を察していたビアンはその理由がなんであるかと、推察しようとしたが、てっとり早く直に聞く事にする。
シンはお世辞にも口の達者な少年ではないし、気まずくはあろうが、単刀直入な物言いの方がシンも話を切り出しやすいだろうという配慮の上だ。
「何かあったと顔に書いてあるが、どうかしたか? 私に気を遣う様な事でもしたのかね?」
「っ、それは」
肘の上に置いていた自分の手の甲をじっと見つめていたシンの視線が、ぱっと上げられたかと思うと、また左右に泳ぎ出す。ビアンは何も言わずシンの方から話の糸口を紡ぎ出すのをしばらく待った。
シン自身、自分が隠し事の出来る正確でない事は知悉しているし、沈黙の重さと気まずさ、それに早く心中を吐露して楽になりたいと言う欲求の後押しが、すぐに錆ついた鉄の扉の様に閉じた唇を開かせるだろう。
コーヒーカップの中の黒い水面の水位が、半分ほどになった頃、シンがようやく決意してビアンの顔を赤い瞳に映しながら口を開き、ぽつりぽつりと語り始める。
見る者によってはルビーのような、とも血を琥珀のように固めたような、あるいは薔薇の赤を映した様だとも評されるシンの瞳は、厳格な父親の一括を恐れて縮こまる幼子の様に揺れている。
誰かがいまのシンの様子を見たなら、猛獣を前に怯える子兎などの小動物を想起したかもしれない。すくなくともビアンはそう連想した。
聞かん気の強い生意気盛りの少年といった風貌のシンであるが、心の扉を開いた相手に対しては、こちらの方が危うく思うほど無防備で信頼しきる傾向にある。
実の父に対するのと等しくビアンを信頼し尊敬しているからか、負い目を感じている今のシンは、砂の城の様に脆く見える。
シンの声は小さく、見た目の雰囲気そのままに重々しい。
「……大西洋連邦の大統領の声明で、おれがユニウスセブンを壊したから地球があんな風になって、その事が開戦の理由にされたのを聞いたら、頭の中が真っ白になってわけわかんなくなって、気づいたら、ここに足を運んでいて」
「その事か。私もコープランドの言葉は聞いたが、そこまでお前が悩む事はないだろうに」
「だって、おれが、おれのした事をあんな風に利用されるなんて、ぜんぜん考えてなかったから!」
必死に言い募り腰を浮かしかけたシンを、ビアンが突き出した右手で制した。カタリと小さな硬質の音を立てて、コーヒーカップをソーサーの上に戻し、ビアンはふむ、と一つ息を吐く。
手で制されて勢いと熱した感情を冷まされたシンは、腕を組んで髭を弄る――考え事をする時の癖の一つだ――ビアンが、次に何を言うのか針の筵の上に座らされている気分でじっと待つ。
ビアンは細い針金よろしくじょりじょりといった感触のする自分の顎髭を撫でつつ、意外なシンの反応に考え込んでいた。
シンが怒りで頭の中が一杯になったというところまでは、この少年を知る者なら誰でも想像がつくだろう。
けれどさらに怒りの感情の先に、戦争の理由にされた事への申し訳なさに鬱屈の底なし沼に沈み、こうして打ちひしがれた姿を晒すのは予想にしなかったものではあった。
コープランド大統領の声明を聞き、その中でシンが行ったユニウスセブン破砕を言及されていたのを知りながらそこまで考えが及ばなかった事を、ビアンは恥じた。
DC領海に迫りつつある地球連合艦隊の報告を受けて、思考が別の事に割り振られていたと言う事もあるが、前大戦の激戦を生き抜き、成長したシンがかような反応を示したのも意外であった。
戦士としての技量は稀有なまでの完成度を誇り、また更なる成長の予感を感じさせ、その精神も武道家として理想的な高潔さを身につけつつある。
それでも、変わらずシンの本質は善良で、正義感の強い多感な少年だ。
繊細な感性を持った少年が、故郷を焦土にされるかもしれぬ引き金にされた事に傷つかない筈が無かったのだ。激しい怒りを感じているのも確かだろうが、ビアンの前ではそれ以上に苦悩の様子を色濃く見せている。
自分の弱い所を見せる事が出来る相手がいると言う事は、人生において幸せなことではある。ましてやシンの心情に理解をよく示してくれる人であればなおさらのことであるだろう。
「月並みな事しか言えんが、戦端が開かれたのはお前のせいではない。あの時お前がユニウスを破砕しなければ、億単位の被災者が出て地球に住む人々は今よりもはるかに大きな災害に襲われていた。
むろんこのヤラファスもオノゴロもだ。お前がしたことはお前の家族を守り、国を守り、星に生きる人々を守ったのだ。それを小賢しくも戦争の引き金を引く理由に利用した者達を蔑みこそすれ、お前を責める様な事はせん」
「…………」
シンはきつく拳を握りしめ、顔を俯かせたままだ。よほど力を込めているのだろう。シンの拳の指の付け根は白く盛り上がり、今にも爪が皮膚を破って血が滴り出してしまいそうだ。
ビアンはシンが体の内側から引き裂かれるような痛みを堪えている事に気づいてはいたが、変わらず言葉を続ける。シンに語った言葉に偽りはない。月並みな言葉は、真実であるからこそ長く時を越えて使われるのだから。
「それに、先日オーストラリア大陸にあったルイーナの基地の第二次調査報告を受けて、興味深い事が分かった。あの施設は、どこかへエネルギーを供給する為のものであったらしい」
「それが、いったい?」
「分からんか? お前達があの基地を攻略して機能を停止させてから空は青色と太陽を取り戻した。ということは……?」
ビアンの言わんとしている事はシンプルだ。シンも頭の中でビアンの言った事柄の点と点を結び合わせて、ひとつの考えに行きつく。
「あのルイーナって連中が、地球を封鎖したって事ですか!?」
「その可能性はある。惑星をまるまる一つ覆い尽くす次元断層を発生させるエネルギー源が一体何なのか、そのエネルギーをどのように確保し、供給していたのか、その方法までは分からぬがな」
「総帥、おれは」
「お前がした事は誇るべき事でこそあれ、そのように自責の念に駆られる様な事では決してない。都合良く利用しなどという者達の言葉など気に病むな。お前が間違っていない事は私が保証する。
私以外のお前をよく知る者達もみな、お前の味方をするに決まっている。お前を言葉の剣で傷つける者達からは、私達が盾となって守ってやるとも。だから気に病むな。何度も言うぞ、お前に責任はない」
ビアンは力強く断言してシンの肩を叩き、揺さぶる。ビアンの顔には笑みが浮かんでいた。巌のように固く厳しい威圧的なビアンが、柔らかく笑むと不思議と険しさが取れて誰でも笑い返したくなる暖かなものに変わる。
普段の表情だったら、泣いている子供がさらに泣き出しそうな風貌なのだが、シンに向けているのと同じ笑みであったなら、はぐれて迷子の子供も安心して涙を引っ込めて、小さな手を預ける事だろう。
そんな暖かな笑みが向けられて、シンは弱々しく笑み返す。傷ついた心が辛苦の感情の海から、固く大きく暖かな手に引き上げられるのを、強く感じていた。
シンは、それから席を立って何度も頭を下げて執務室を後にした。ビアンはやれやれと、苦笑まじりの溜息を吐く。
こうも自分がシンやステラ達に心を砕くのは、実の娘であるリューネに対して満足に親らしい事もしてやれぬまま死別した反動であろうか。ふと、そんな事が頭に思い浮かんだ。
実の子供の代わりとしてあの子らに対して優しく接しているのなら、それは不実な事だろう。本心からではなく代替としてシンや、ステラ、スティング、アウルらに親めいた親愛の情を押し付けていると言うのならば。
リューネに対しては、確かにDCの後始末や来る異星人との戦いを任せてしまった事や、小さな頃から機動兵器のパイロットとなるよう教育を施すなど、自分は良い父親とは到底言えなかっただろう。
それでも自分なりにリューネの事を愛していたと断言できる。だからこそ父親らしい事をしてやれなかった負い目から、シン達に対する行動で目を背けているのだろうか?
機動兵器の開発や設計に関してはシュウ・シラカワと並び、世界で五指に入る明晰な頭脳の持ち主ではあったが、父親としてみればビアンもまた平凡に悩む人であった。
父親として取る行動が、機動兵器パイロット用の教育を施し、専用のロボットを製作するなどと非常識ではあるが。
自分の態度がシンやステラ達に対して不誠実なものはないのか? その悩みはもう何年も心の内に抱えていたものだった。
執務用のデスクの椅子に戻ったビアンは、シンが晴れやかな顔で退出したのとは逆に、深い皺を眉間に刻んだ表情であったが、扉の外を映し出すインターフォンのカメラが写した映像に、小さく笑顔を浮かべ直す。
シンが一人ではない事を示す映像が、そこには映し出されていた。
「私がシンに何か言う必要もなかったか。ふふ、シンの人徳かな? これ以上盗み見るのは悪趣味だな」
画像を切ったビアンが浮かべた笑みを、もし他者が見ていたならば、子供の無事に安堵した親の様な笑みだと誰もが口にした事だろう。ビアンが浮かべていたのは、そのような優しい笑みであった。
*
強さ以上に危うい脆さを抱えた繊細な心の空を覆っていた鉛色の暗雲が消えたのを感じて、シンは部屋に入ってきた時とは別に晴れやかな顔に変わっていた。胸を張って歩きだそうとしたシンに、おずおずと声が掛けられた。
いつもは無償の愛情をこめてシンにかけられる声は、シンの荒ぶっていた心の嵐が鎮まったかどうか、案じる響きに満たされている。
「シン? なんのお話してたの?」
「ステラ、それにセツコさんも」
「うん」
軽く握った拳を胸元に押し当てて、菫色の瞳をうっすらと潤ませたステラと、その左手を握るセツコが、執務室の扉のすぐ外でシンを待っていた。
本来特務部隊所属とはいえ末端の兵士であるステラやシン達は、政庁の心臓部である執務室にまで来られる立場にはないが、ステラなど極一部はビアンの許可を得ているから顔パスだ。
シンとステラがここまで何の咎めもなく来られたのも、同じ理由である。セツコが同伴でも問題視されなかったのは、ステラが頻繁に執務中のビアンの所に顔を出した前例があったからだろう。
セツコにどうしたんですか、と聞こうとして喉まで出かかった言葉を、シンはすんでの所で飲み込んだ。
心細げなステラの様子と気づかわしげに自分とステラに、交互に目線を送るセツコの様子から、自分に用事があってきたのだと言う位には察せられた。
シンは、オーブ解放作戦以降の人生が戦いづけであった事もあり、女性から向けられる恋慕の情に関してはかなり鈍感である。
それでもステラからは限りない愛情を二年近く与えられて、またシン自身もステラに対して抱いている自分の感情を流石に意識している。だから、どうしてステラ達がここに来たのか、すぐに理解した。
ステラとセツコは自分の事を心配してここまで来てくれたのだ。あの演説を聞いてから憤激に駆られて、その場を立ち上がって去った自分の心を。
その事が分かる余裕があるのも、ビアンにお前に責任はないと言ってもらえて、両肩に重々しく圧し掛かっていた荷が下りたからこそだ。
心配そうに自分を見つめるステラの髪に手を伸ばして、ゆっくりと撫でた。
金色の髪のぷかぷかと空に浮かんでいる雲みたいに柔らかな感触と、少し火照った様な暖かな体温を掌越しに感じ、心地良さげに目を細めて頬をうっすら赤く染めるステラの様子に、シンの心も温まる。
ステラをあやしているのはシンの方なのに、ステラの元気を分けてもらっているようで、シンは心に残っていたささくれ立った部分が癒されてゆくのを感じて、たまらない愛しさで胸がいっぱいになる。
自分がステラに抱いている感情の強さを、シンは改めて噛み締める。ステラは大好きな飼い主に頭を撫でられる子犬や子猫の様に薄く目を細めて、心地良さげに体から力を抜いている。
シンの手を拒絶する素振りなど欠片ほども見せず、ただただシンのしたい様に身を委ねている。
シンの指一本一本は琴の操者のように細長く繊細な造りなのに、所々剣ダコで覆われていて、細身の見た目にそぐわず硬い。
ステラはその手が好きだった。木の瘤みたいに硬いタコは、そうなるまでシンが重ねた日々の象徴そのもの。
守りたいと思う人を守る力を手に入れる為に、たくさんの時間と普通の少年らしい生活を犠牲にした証。
シンの優しさとその優しさから生まれた強さを、シンの手は良く表している。だから、ステラはシンの手が好きだった。
大好きなシンの手に触れられると、シンが守りたいと願う人の中に自分がいる事、自分もシンの事を守りたいと願っている事を、強く感じる事が出来る。
眼を細めていたステラが、胸元で握っていた手を伸ばし、飽いているシンの左手の軍服の裾を握って、おずおずと口を開く。くぅん、と子犬の鳴き声に聞えたのは、シンの耳の錯覚とは言い切れなかったかもしれない。
「シン、もう怒ってない? 大丈夫?」
「大丈夫だよ。ステラが来てくれたから、もう平気さ。総帥にも励ましてもらったしね」
「本当?」
「うん、本当」
「ん。なら、いい」
シンに髪と頬を撫でられるがままで、その心地良さに夢見る様にうっとりとしていたステラは、シンが浮かべた朗らかな笑みにつられて微笑む。
ステラはシンの体の中で荒れ狂っていた感情の嵐が静まっている事を敏感に感じ取って、心の底までシンの手にされるがままにする。シンの手は飽きると言う事を知らず、綿あめみたいに柔らかいステラの金髪と頬を撫で続ける。
握っているステラの左手から力が抜けて、傍目にも緊張の抜けきった様子が分かるのにセツコは微笑する。ステラにとってシンがこの上なく掛け替えのない人なのだと言う事が良く分かる。
「セツコさんもわざわざすみません。おれが勝手に怒って勝手に出て行ったのに」
「ううん、私はステラちゃんについてきただけだし。あ、でも、シン君の事が心配じゃなかったってわけじゃないよ。シン君が初めて見る位に怒っていたのには驚いたし、気になったのは本当だから」
「おれ、頭に血が昇りやすくって。だいぶマシになったんですけど、たまに自分でも感情を抑えきれなくなる時があるんです。かっこ悪い所見せちゃって、なんだか恥ずかしいですよ。忘れてください」
はは、と乾いた笑いを一つ零して照れ臭そうに頬を掻くシンの仕草を、セツコは年下の男の子らしいな、と微笑ましく思った。
シンが元の調子を取り戻しているのを肌と心で感じて、ステラはすっかりご機嫌になり、前にカーラに習った『男の子が元気になる四十八手』――内三十七手がミナによって禁止令が下されている――のひとつをとった。
別に特別な事をしたわけではなかった。ただ、シンの左腕に自分の両腕を絡めて抱きついたのだ。年齢と比べればずいぶんと大きく育ったマシュマロみたいに柔らかい胸を押し当てて、頭はシンの肩に預ける。
「ステラ?」
「ん、ステラの元気、シンに分けてあげるの」
シンは鼻をくすぐる甘く優しいに香りで肺を満たしつつ、腕に感じられる途方もなく柔らかい感触二つと、こちらを見上げるステラの瞳にそれ以上何も言えなくなった。
少女特有の柔らかな肢体、尽きぬ香泉とでも形容しようか、いつまで顔を埋めていたくなる心地良い匂いは、シンの理性をあっという間に叩きのめしてしまう。
ビアンに会っていた時とはまったく別種の緊張に体を強張らせているシンの事は知らず、ステラは元気を分けてあげるという言葉通りに、ぎゅうっと抱きしめたシンの腕の存在を確かめる様にさらに強く抱く。
「ん〜♪」
大好きなシンと体を密着しあって、互いの存在を感じ合える状況が嬉しくて、ステラは鼻歌の様に陽気で、甘い睦事の囁きの様に蕩けた声を出した。
セツコもいつもの事とはいえ、ステラの人目を憚らない大胆な行動にうっすら口を開いて、何を言えばいいのか、どうすべきかとっさに思いつかず、どうしたものかと少し困った顔をしている。
そんなセツコの様子を見て、ステラはにこっと笑って、太陽のように輝く笑みと共にとんでもない事を言った。
「セツコも」
「……? …………え、ええ!? 私も!!」
「シン、セツコの事が大好きだから、もっと元気になるよ?」
「え、あの……シン君」
「い、いや、セツコさんの事はそりゃ、嫌いじゃないですよ。むしろ、その、すごく美人で近くにいるとどうしていいか分かんなくってその、き、緊張しちゃう位で、っておれ、何言ってんですかね!?
ステラもそんな事言ってセツコさんを困らせちゃダメだってば!」
「でも、シン、セツコの事嫌いじゃないって言ってる。ステラは、好きな人と一緒だと元気でるよ? セツコ、シンの事、嫌い?」
慌てふためくシンの事などお構いなしに、ステラは続けて特大サイズの爆弾を連続して投下し、左手を封じられているシンとセツコに一瞬呼吸する事を忘れさせた。
知らず知らずシンとセツコの瞳が交差して、星色と赤色の瞳の中には二人の姿が、互いの瞳の色に染まって映っていた。
交差していたのも一瞬、ステラのセリフが耳の奥にこびり付いていた二人は、ぱっと顔を背けて、同じように顔を赤くして俯いた。
自分が放った言葉の破壊力をいまいち理解していないステラは、揃って同じ反応をしたシンとセツコを不思議そうに見つめている。その間もシンの腕を抱きしめる力は変わらず、二つの豊丘で挟んでいるままだ。
「ステラちゃん、あのね? 私は、シン君の事、嫌いじゃないよ。私よりも年下なのにとても真似が出来ない位凄い実力だし、優しいし、すごくいい子だもの。多分、弟がいたらこんな風なのかなって思ってるの」
嫌いじゃない、弟みたいに思っているという評価に、シンは嫌われてはいなくて良かったと安堵するのと同時に、何か失望する様な気持ちになって、自分の心理状態の変化に納得がいかずに少しだけ眉を寄せる。
どこか言い訳がましくもあるセツコの言葉に、ステラは完全には腑に落ちなかったようだが、それでも大好きなセツコが大好きなシンの事が嫌いじゃないと言う事は嬉しかった。
だから余計にセツコにもシンを元気にして欲しいな、とも思っていた。
「じゃあ、どうしてだめなの?」
小首を傾げて可愛らしく無垢な瞳で訴えかけてくるステラの瞳に射竦められて、セツコはあうぅ、と進退窮まった声を出して、形の良い眉根を寄せてシンをもう一度見つめる。
シンは何処か縋る様な、訴えかける様な、嗜虐欲をそそる哀れな小動物めいた表情を無意識の内に浮かべている。天性のサディストなら、思わず舌なめずりをするに違いない
普段の清冽で精悍なシンの雰囲気とは真反対の弱々しげな姿に、セツコは下腹部の辺りが熱を帯びるのを感じた。
そっと、雪花石膏から削り出された彫刻の手の様に美しいセツコの手が、あいていたシンの右手を握りしめた。柔らかく暖かなセツコの手の感触に、シンはただでさえ高まっていた心臓の鼓動が大きく鳴るのを聞いた。
初めて握るセツコの手の感触に、シンは小さな感動さえ覚えていた。ステラの手とはまた違うぬくもりと柔らかさである。
全体的にややほっそりしていて、終日シミュレーターで猛特訓に励んでいると言うのに、絵画の中の貴婦人のそれとしか思えないほど華奢で清楚な造りである。
際限なく高鳴る心臓の所為か、シンの声は未知の快楽を教えられる寸前の青少年の様に、期待と不安に震えていた。
「せ、セツコさん?」
「シン君」
「は、はい!」
恥じらいに頬を染めつつも上目遣いでこちらを見つめてくるセツコは、幼い少女のように愛らしく、同時に一国を思うがままにした傾国の美女の様に妖艶で、シンは何も言えず口をぱくぱくと開いては閉じてを繰り返す。
「動いちゃ……ダメだよ?」
セツコさんの声は甘い毒だ。シンは心の底から思った。あまりに心地よくて、抗う気力が湧き上がってこない。
耳からするりと忍び入ってきた声に揺さぶられて、脳はとろりと溶けてしまい、シンは何も考えられない。今のシンなら、幼児だってKOできるだろう。
左腕から伝わるステラの肉の感触とセツコの声の誘惑に溺れていたシンは、セツコに握られていた右手に伝えられた新たな感触に、息をする事さえ忘れる。
それは、音にするならこうだった。
むにゅ
「!!!!!!!」
鼻がくっつきそうな位近くにあるセツコの白磁の頬が、かすかに白桃のように淡い桃色を帯びていくのを、シンの瞳は映していたが、それどころではなかった。
(むにゅが、むにゅが両腕、二つ、セツコさん顔赤い、ステラはうれしそうだな……。胸、おっぱい、密着で柔らかい? 二人とも、いい匂いだな、なんでこんなにいい匂いがするんだろう? それにしても……むにゅ? むにゅ!?)
シンの脳は、およそまともな思考なぞ銀河の果てまで吹き飛ばしていたからだ。
大きくて、柔らかくて、温かくて、すげえいい匂いがしました――byシン・アスカ。
*
地球連合艦隊接近の報がDC軍司令部の間を雷光の速さで駆け抜ける中、オーストラリア大陸の激戦から無事帰還したクライ・ウルブズの面々は交替で一日ずつの休暇が許されていた。
そんなわけだから、ロックオン・ストラトスことニール・ディランディは、一人でぷらぷらとヤラファト島を歩き回っていた。ティエリアや刹那、デスピニスなど普段一緒に行動しているメンバーの姿はない。
今日はプライベートだから、流石にそこまで彼らと一緒というわけではないのだろう。艦内に居る時と同じ袖無の合成革製のベストとグリーンのシャツというラフな出で立ちである。
ヴォルクルスの蹂躙による数万単位の死傷者を出した爪痕は消え去り、街並みを行く人々の体に戦禍の残り香はまとわり着いてはいない。
噴水のある公園でホットドックを一つ買い、ベンチに腰かけて齧り、良く噛んでからコーラで流しこむ。
戦争の影が見えない暗雲となってこの街の空をも覆っている筈だが、買い物帰りの親子連れの会話や、暢気に餌を突いている鳩の鳴き声を聞いていると、ついつい戦争の当事者である事さえ忘れてしまいそうになる。
「ミス・スメラギとヴェーダはよくこき使ってくれたっけな」
まだ24世紀の世界でガンダムマイスターとして戦っていた頃は、セカンドチームであるトリニティが現れるまで、世界中の紛争幇助と見做した相手に武力介入を繰り返し、休む暇はほとんどなかった。
一日だけとは言え誰の目を気にする事もなく休暇を満喫できると、逆に忙しかった頃の事が思い出される。
こちら側にもティエリアや刹那といった問題児が本人としか思えない性格と容姿で現われたが、あちらの刹那とティエリア達は上手くやれているだろうか。
一度は死に、別の世界に転移などという三文小説じみた境遇に陥った自分が思いを馳せた所で、どうしようもないと頭では分かっているのだが、前の世界の仲間達への思いから、ロックオンはしばしば過去に思いを馳せる。
ロックオンが家族の仇であるアリー・アル・サーシェスとの戦いでこちらに来た時の状況が、ソレスタルビーイングにとって最大の危機であった事も大きいだろう。
たった四機しかないガンダムの内一機が、ああも破壊されては迫りくる三大国の部隊への対応にも、並みならぬ苦労を強要されたに違いない。
前の世界の仲間達を信じてはいるが、年長のガンダムマイスターとしてそれとなく仲間内の関係には気を遣っていた。
戦いの日々が過ぎて、お互いを仲間とはっきり意識出来る関係になるまで、色々と問題があって苦労したからどうしても気になってしまう。
ましてやこちら側でも刹那とティエリアの面倒を見る事になったのだから、前の世界に残してきた問題児達の事が気になって仕方がないのも無理はない。
おれって奴は苦労人だねえ、と我がことながら苦笑し、ホットドックの残りを一気に口の中に放り込んで、コーラで胃袋に流しこむ。
ひとたび戦場に出れば、やたらと前に出たがる刹那やシンの援護に忙しくなるとは言え、こうも何もしなくていい時間が続くと、退屈の度も過ぎると言うもの。尻をぱんぱんと叩いて、ロックオンは立ち上がる。
「さて、と。次はどうしたもんか。カーショップにでも顔を出すか……ん?」
立ち上がったロックオンの視線の先に、公園に面した通りを歩く一組の男女の姿が映った。ひょろっと背の高い朴訥とした印象の青年と、やや癖のある髪をバレットでまとめた垂れ目がちの女性だ。
食料品を詰め込んだ紙袋を抱えたが青年が、長袖のシャツと黒いスラックスで全身を覆っているのに対して、女性の方はオーブの気候に適したラフな格好だった。
袖無しのデフォルメされたネコのプリントシャツの胸元は、ふっくらと丸く押し上げられていて、下半身の方はほとんど足の付け根でカットしたカットソー、足元はミュールと涼しげだ。
特別に目を引くような奇異な容貌でも、自ずと耳目を集める端麗な容姿というわけではないが、ロックオンの眼が吸い寄せられたのはその男女が見覚えのあるものだったからだ。
ロックオンは急いで駆けだし、通りを歩いてゆくカップルの背に声をかけた。
「リヒティ、クリス!」
リヒティと呼ばれた青年とクリスと呼ばれた女性は、ロックオンと同じ驚きを共有した顔で振り返る。それは、その二人が確かにロックオンの知る人物であるという証明でもあった。
そして、二人はロックオンを指さして大通りのど真ん中で思い切り叫び声を上げる。
「ああーーーーーーーー!!!!!!」
リヒティの抱えた紙袋から、カボスがひとつぼとりと音を立てて落ちた。
*
生死を越えて再会したリヒティとクリスに案内されて、ロックオンは湾口の近くにある小さな事務所に到着した。事務所の後ろでちゃぷちゃぷと音を立てる波の上に、小舟が一艘浮いている。
スチールブルーの船体色に、ロックオンは懐かしいものを覚え、事務所に掛けられた看板に書いてある社名を見て、口元に淡い笑みを浮かべた。
そこには『トレミー・デリバリー・サービス』と書いてあったのだ。それは、生前ロックオンとリヒティ達が拠点としていた船の愛称だ。
「もし、あっちの誰かが来た時にすぐ分かるようにって、相談して決めたんすよ」
がらがらと引き戸を開きながら、リヒティが微笑しているロックオンに告げた。さきに見つけちゃいましたけど、と呟いてリヒティとクリスが事務所の中に入るのに続いて、ロックオンも足を踏み入れた。
中は零細企業に相応しく質素なもので、応接セットが一つと事務用のスチール机が二脚に、がらがらの棚が一つ。奥の方に流しと扉が一つある。扉の奥から二階の居住室に繋がっているらしい。
「すぐにコーヒー淹れるね。ロックオンもコーヒーでいい?」
「そうだな、何も入れなくていいぜ。リヒティとクリスの二人だけか?」
冷蔵庫に買い物袋の中身を詰め込んでいるリヒティがしゃがんだ姿勢のままロックオンの質問に答えようとした時、ちょうど奥の扉が開いて新しい人影が姿を見せた。
新たな登場人物の顔を見て、ロックオンの顔にリヒティ達を見つけた時と同じ再会の喜びと、この世界で出会ってしまった事の悲しみの混じる笑みが浮かびあがる。
この世界で出会えたと言う事は、あちらの世界では死んでしまったということなのだから。
「おれの知っているドクター・モレノであっているのかい?」
「そうなるな、相変わらずの用でなによりだ。ところで、その右目はどうしたんだ?」
サングラスをかけ、髪を切り揃えてオカッパスタイルにしている四十〜五十代ほどと思しい白衣姿の男――ドクター・モレノは唇を吊り上げて笑い、ロックオンの一見健常そうな右目を指さした。
モレノやリヒティ達が知っているロックオンの最後の姿は、仲間をかばって右目を傷ついた者の筈だ。なのに、いま目の前にいるロックオンの右目は、眼帯をつけるでもなく陽光の下に無事な姿を晒している。
「そういえば、どうしたんすか、その右目? ひょっとして……偽物のロックオン?」
冗談交じりに疑わしげに言うリヒティに、瞼を下ろした右目を軽く突いてロックオンは答えを返した。
「電子義眼だよ。サイバネ技術の賜物だな。いまのおれは、右目と脳神経系の一部だけサイボーグってわけさ」
茶化した調子のロックオンの言葉の内、サイボーグという言葉にかすかにリヒティの肩が震え、その理由を知るモレノもサングラスの下の目を細める。
「どうした? 何か、気に障る様な事を言っちまったか?」
「い、いやあ、流石ロックオン! 死んでもただじゃ起きないっすね。今度から不死身のロックオン・ストラトスなんて名乗ったら格好良いですよ」
「止してくれ、一度は死んだからここにいるんだ。不死身なんておこがましく名乗れないさ」
「はい、お待たせ。ロックオンもリヒティもブラックね」
「お、悪いな」
「クリスのコーヒーは美味いってお客さんの間でも評判なんですよ」
「開店以来ずっと閑古鳥が鳴いているけれどね。はい、モレノさんの分」
「すまんな。大抵の問題はコーヒーを一杯飲む間に解決しているものだが、こればかりは商才がないとどうしようもないな」
「おいおい、それでよく生活が出来ているな。第一、戸籍なんかはどうしたんだ?」
「それは、ぼるくるすだっけ? あれの所為でこの国が大混乱している時期におれ達三人でこっちに来たんす。その時のごたごたに紛れて」
「なるほどねえ、あとはクリスのハッキングでって所か?」
悪戯好きな生徒を叱る様な眼で自分を見るロックオンに、クリスは可愛らしく小さな舌を覗かせて返事をした。
クリスは知らなかったが、彼女がハッキングした時期は、シラカワ・イクナート印の超悪質魔術混合セキュリティが実装前の事で、実装後であったならば最高軍事機密にもアクセスできる凄腕ハンターのクリスでも危険だった。
具体的に言うと非正規アクセスをしているのがばれると、逆探知されてハッカーの使用しているパソコン画面に召喚魔法陣が起動し、無限の飢餓に襲われている餓鬼塊が出現して、肉片一つ残さず食われてしまう。
砂嵐の走るPC画面の前にはただ赤い血溜まりが広がり、クリスも下手をすればその実例の一つになる所だったのである。
その後、ロックオンが今は傭兵という事でDCに身を置いている事や、こちらの世界生まれの刹那やティエリア達と再会している事などを話し、ロックオンの休暇は予期せぬ再開によって有意義なものとなった。
*
ロックオンが休日を満喫し、シンがこの世の春を謳歌して二日後の事、地球連合艦隊迎撃作戦に向けてDC全体が慌ただしくなる中で、クライ・ウルブズのメンバーも休暇明けから忙しく働く事となった。
オノゴロ島地下にある艦船用ドックにある広大な機動兵器格納庫に、シン達は集められていた。例によって新型機動兵器の配備か新メンバーの顔見せだろうな、と古参組は察している。
特機級の格納も想定しているようで、天井まで百メートルはある。シン達が入ってきた入口と反対の壁際には、シートを被せられた機動兵器らしい物体があり、ステラ達は渡されたキャットウォークの上にいる。
隊員の中でニコニコと世の中楽しい事ばかりといった具合に笑い続けているシンを、スティング達は気味悪げに見ていた。数年来の付き合いだが、ここまで異様に機嫌が良いのは初めて目にする。
シンに比例するようにステラもなんだか嬉しそうだし、逆にセツコは縮こまるみたいに隅の方に隠れる様にしているし、どうにもこの三人の間で何かあったらしい事は確かだった。
ひそひそとスティングとアウルとタスクとアクセルが手で口元を隠して、何があったかと若干桃色っぽく推測を交わしていると、アルベロとエペソとビアンが後から姿を見せ、その後ろに一人の女性を連れている。
やはり予想通りに新メンバーの追加があるようだ。どの国のどんな集団の中に放り込んでも、目を惹く美貌の女であった。
優美に伸びた四肢のラインと染み一つない綺麗な肌を露わにしている美躯は、息をする事さえ忘れそうな位に完璧で、大抵の美醜観の違いなどなんの問題もないだろう。
足首から付け根まで大胆に露出し、慎ましく窪んだ臍や深く広い魅惑的な谷間が露わなピンク色の生地の服や、鉤爪みたいなパーツの着いたアクセサリーも奇抜だが、その中身の完成された造形美の方が圧倒的である。
なにもせずにただそこにいるだけで人々の関心を引く美貌だと言うのに、人間的な生命力や生物的な雰囲気にはまるで乏しく、ともすれば美の女神の彫像を前にしたかの様な錯覚を与える。
新メンバー紹介もお決まりのパターンで、上司の登場にアウル達は私語を慎むが、自軍の最高責任者直々の登場に、新参組のデスピニスやセツコらは驚いた顔をしている。
DCの技術的屋台骨を支える大人物とは言え、総帥直々に顔を見せるのだから、このクライ・ウルブズという部隊がDCの中でどれだけ特異な立場にあるか、わかろうものだ。
さっと敬礼するのに手を上げて答えて、壁際にシートを掛けて立っている機動兵器を背に、アルベロが一つ咳払いをした。
「お前達に紹介する。フレモント・インダストリー社からの出向で、今日から預かる事になったエキドナ・イーサッキだ。預かって早々だが、次の戦闘から参加してもらう事になる」
アルベロに促され、一歩前に出たエキドナが沈黙して言葉を待つシン達に向けて唇を開いた。感情に乏しいと言うよりは人間の形をした美しい機械が口を利いている様な印象である。
「エキドナ・イーサッキだ。乗機はラーズアングリフを使う。よろしく頼む」
なんとも簡潔な自己紹介だ。フレモント・インダストリー社(FI社)というのは近年、飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を伸ばし、アクタイオン・インダストリーやフジヤマ社、モルゲンレーテからも注目されている軍事企業である。
DCとも関わり合いが深く、特に脳波を用いた機体制御や遠隔操作兵器に関してはFI社の技術に、喉を唸らせている。
独特の機動兵器のOSやシステム機器、武装開発を行っていて、エキドナの機体はラーズアングリフだというが、武装や内部危機に関してはFI社製の品を使うに違いない。
ラーズアングリフとランドグリーズに、レイヴンユニット以外にも拡張性を求める計画があり、その一環としてエキドナが最前線に常に投入され続けるクライ・ウルブズに出向という形になったのだろう。
ラーズアングリフとランドグリーズに最も習熟しているのはサイレント・ウルブズに出向しているリルカーラ・ボーグナインと、ユウキ・ジェグナンだから、この場に不在である事が惜しまれる。
シン達の誰にも興味のない冷めた目をしていたエキドナだが、アクセルの顔を視界の内に捉えたときだけかすかに視線を留める反応をした。
エキドナとは正反対に新しいお仲間に興味津々だったアクセル・アルマーは、自分の方を向いた時に関心を見せたエキドナに目ざとく気づき、自分の頬を撫でつつぽつりと呟く。
「エキドナちゃん、どうやらおれに興味ありげなようだぜ、これがな」
ふふんとどこか誇らしげに言うアクセルの肘を突いて、トビーが釘を刺した。
「自信過剰は空振りした時格好悪いぜ」
「モテる男はいつでもやっかみを受けるもんさ」
「そこまで言い切られると何も言う気にならないな。ま、うまくやったら教えろよ」
「あんたも好きねえ」
短いエキドナの自己紹介が終わり、次の話に進む中、エキドナはにやにやと軽薄に笑うアクセルへと再び視線を寄せていた。
何を考えているのか、何を思ってアクセルを見つめているのか、その表情から読み取る事はニュータイプにもできそうにはなかった。
――つづく
チャンバラが書きたい。切にそう願いつつ投下終了です。規制が早めに解けてよかった。
誤字脱字感想ご指摘もろもろございましたら、ぜひくださいまし。何よりの明日への活力でありますから。ではでは、お邪魔致しました。
ええいシンもげれシンもげれ
ところで東方不敗師匠とか種系・OO系以外のお亡くなりな方々も居るんだろうか
そこまで出してどーすんの?
今でも大杉なぐらいなのに
どんなスパロ……あ、ここスパロボスレだなw
らめえ、人が多すぎて把握できないのおおおおおお
ってなるSSはそうは見ないが……恐ろしいぜ総帥。
つシロッコ
やつの例があるからガンダム系は来る可能性があるっぽい
シロッコはクローン含め大量に死んだからじゃね?
シロッコはラスボスやったしね
そういやメカギルギルガンも出てくるのだろうかw
あれも一応スパロボオリだしw
総帥GJ!
エキドナが加わったか。ラキスケから逃げられればいいね!
そういやテンザンは何やってるんだろうか。影も形も見あたらないが…?
総帥のところの変形戦艦だらけの状態がヴァルザガード登場のフラグにしか見えない。
Aアクセルルートのラミアが来たのかと思ったら普通にエキドナだった
エキドナって確かラミアをも上回ってるんだよな……ある部分が
ようやく規制解除かな…?
とりあえず一言、シロッコはゲストの作ったクローンではなかろうか。
あと出てきそうな版権キャラだと末弟除くザビ家3兄弟かな。
シャピロが当落線上だろうか。
>>690 つーことは鷹の眼のオヤジ(本物)かなぁ味方は
一応ヴァルザガード一式全て設計してるしDCの技術なら後はお茶の子さいさいか?
>>693 プロトンドライブは再現できるかわからんがそのほかはできそうだな
クローン云々の大それた設定こそ無いが
毎度ほぼ独自路線になるあの男が来たら・・・
そういや一度ブルコスだったなぁ
三輪長官
それなりに有能なのがタチ悪いとこだなあのおっさん
まあ最後は一矢ポジの人にボコられてムショ送りかジェネシスで体パーンの運命だろうがw
たしかあのひとスパロボでの死亡率100%なんだよな
原作では死んでないのに
いや、確か少なくともAではほぼ原作どおりの逮捕オチだった
第四次はガルダ級か何かで出てきて最後は戦死だったかな
ジャミトフに意見したり一番まともな三輪だったとか
MXのはあの世でギガノス兵に詫び続けろ
つーか、第四次のはマジで普通の軍人じゃなかったか?
確かに。
融通の利かない堅物な普通の連邦軍人って感じ?
あーあとは思ったが特にざまあ見ろとは思わんかったなあ。
こんばんは、投下しますね。
ディバイン SEED DESTINY 第二十四話 翼の無い天使
「W16で良かったのか?」
部屋に入っていきなりの言葉に、椅子に腰かけていた女性は感情の薄い笑みを浮かべた。
身に纏っているのは、およそ軍人とは思えぬ大胆に太ももの付け根までスリットが入り、豊かな乳房の上半分と谷間の覗く、扇情的な衣服である。
軍関係者というよりも、世界中の男共を指先一つ、妖しい瞳の一瞥で操る魔性の女という方が彼女と初対面を果たした人間は納得がゆく事だろう。
無色の霧の如く纏う退廃的でどこか憂鬱な雰囲気が女性の美貌とあいまって、どこか浮世離れした印象を見る者に与える。質問を投げかけた壮年の男にとっては見慣れたもので、さしたる感銘も受けぬようではあったが。
薄い桃の色合いのウェーブしている髪を掻き上げる仕草と共に、女性――レモン・ブロウニングは椅子を回転させて、背後に立っていたヴィンデル・マウザーと向き合う。
ヴィンデルは巨大な岸壁を風雪が長い時間をかけて削ったような威圧的な顔立ちに、常に襲い掛かる苦行に耐えている高潔な人物を思わせる表情を浮かべている。
実際、ヴィンデルは常に自分達の血と死と破壊を伴侶とする理想の実現に向けて、思考を巡らしているから、あながち間違いとは言い切れないだろう。
世俗の救済を望む僧と混沌の先の秩序を望むヴィンデルとでは、同列に扱う事はとてもではないが出来ないにせよ。
レモンはヴィンデルがレモンの美貌を見慣れているのと同じように、ヴィンデルの雰囲気に馴染み、性格を知悉しているから余計な言葉ではぐらかす事はせずに、ヴィンデルに答えを返した。
「大丈夫よ。あの子もちゃんと潜入工作のエキスパートよ。ウチの中でも任務成功率はトップクラス、それは貴女も知っているでしょ?」
「だが、アクセルがいなくともW17の方がW16よりも任務達成率は高い筈だ。なぜ奴を選ばなかった?」
「試す様な物の言い方は貴方の悪い癖よ。理由ね、そうね、まずこのコズミック・イラという世界は、明らかにこの世界のものではない異物が無数に混入されているわ。私達の様に自力で来たかどうかは別にしてね。
そして、異物は高度な技術レベルを持った存在である事、彼らの存在によってこの世界の技術レベルが劇的に上がっているのは知っているわよね。その中に私達が所有しているのと酷似したものもあるわ」
「DCのランドグリーズとエルアインス、それにオーブのゲシュペンストとベーオウルフ、ゲシュペンストMk−Wか」
「ええ。ひょっとしたら私達と同じ世界の人間か、極めて似た世界の人間がいるかもしれないわね。だとすると私達の存在が知られている可能性も大いにあり得るわ。
そんな危険な所に潜入させられる能力があり、万が一失っても補填が効くとなると、W17よりもW16の方が適任と判断したからよ。もちろん、W16が上手くやってくれると確信しているけれどね」
「楽観的なものの見方は感心せんが」
「そこは私の技術を信じて欲しい所ね。それに、DCに居ると言うアクセルらしき人物との接触は絶対に行わないとならないでしょ? 必要とあればあの人も切り捨てるのが貴方だけど、頼りにしているのもホントの事ですものね」
「奴にしては行動が妙だがな。DCの懐に飛び込んでいながら何も行動を起こしていない。奴になにか問題があったと考えるべきだろう」
「道は遠く険しく、茨に覆われているみたいね」
くすりと無責任だが魅惑的な笑みを一つ零し、レモンは陶磁器の様に滑らかな肌を露出している両肩を竦める。世の多くの男達を魅了する笑みではあったが、それが通じぬ対象の一人がヴィンデルであった。
への字に固定した唇と吊り上がり気味の眉尻は不動のまま、ヴィンデルは岩と岩が軋る様な声で喋る。聞く者の背筋に鋼の芯を通す人の上に立つ者に相応しい声であった。
「それでも行くと決めた道だ。二度目の失敗を犯すつもりはない」
「頼もしいわね、司令官さん」
「ふん」
顔面の筋肉の一筋もピクリとさえ動かぬヴィンデルに、レモンはからかって笑いかけるばかりだった。
*
レモンとヴィンデルの話題に挙げられていたW16ことエキドナ・イーサッキは、自己紹介とDCの新型機動兵器のお披露目その他を終えた後、格納庫で解散となって散ってゆくメンバーの中の、赤毛の男を呼びとめた。
周囲に人影が無い事を確認してはいるが、念の為か、声はひどく小さい。薄すぎず厚過ぎない肉の乗った唇の色艶と張り、それだけでもエキドナを創造したレモンは造詣の神に愛されていると分かる。
「アクセル隊長」
「おんや、早速お声掛けかい? でも残念、おれは隊長じゃないんだぜ、エキドナちゃん」
鉄の硬さと氷の冷たさを纏う美仮面然とした無表情のエキドナに、アクセルは悪戯っぽくウィンクを一つしたが、宙を飛んできたハートが白い頬に当たっても、エキドナは人工筋線維の一筋を動かす事もしなかった。
「我々の他に人はおりませんが、そこまで徹底されるのは流石です。これを」
「ん? データディスクか。なんかお薦めのバラエティかミュージックでも入ってんのかい?」
「必ずソウルゲインの中で内容をお確かめ下さい。それでは」
「……」
アクセルの質問には答えず踵を翻すエキドナの背を、アクセルはしばし見つめたが、右手の指先に摘まんだデータディスクへと視線は移された。エキドナの言動はどう考えても、アクセルの失われた素性を知った上でのもの。
――おれの無くした記憶を知っている、か。
嘆息しつつアクセルは思考を巡らせる。エイプリルフールクライシス、ディバインウォーズと世界規模の混乱期が続いていたとはいえ、DCの最前線にこうも容易く侵入し、そうしてまで接触を求めてくるとなると。
「おれってば、意外に大物らしいな。しかも、相当にやばい組織の、な。参ったぜ、昔のおれはなにして暮らしていたんだか」
未だ知らぬ過去の自分に対し、アクセルは自分自身の中に正体不明の厄介者を抱えた事を噛み締めて、我知らず頬肉を歪ませたが、その中に諦めの成分はわずかも混入していない。
その事が、この一見軽薄そうな男の精神的なタフネスさをよく表していた。
顎に手を添えたなかなか様になるポーズでディスクを見つめていたアクセルは、ふとある事を思い出して溜息を吐いた。
「ソウルゲインで再生しろとは言うが、確か壊れたまんま何なんだよなあ、メディア関係」
機体のメイン駆動系や機関系に大きな損傷はなく、ソウルゲインの持つ自己修復機能によって、大部分の機能は完全な状態を取り戻してはいたが、まだ内部の機器に不具合が残っている。
整備士に告げられたその事実を思い出し、まだ当面は内容の確認ができそうにないデータディスクに向けて、アクセルはこいつめ、どうしてくれようか、とやや八つ当たり気味の言葉をぶつけるのだった。
*
大西洋連合を中心に若干名のユーラシア連邦、東アジア共和国からなる地球連合の第二次オーブ解放作戦従事艦隊に対する警戒の密度は、日々、いや一刻を重ねるごとに増している。
南アメリカ共和国の地獄の戦士ローレンス・シュミットと、切り裂きエドことエドワード・ハレルソン、白鯨ジェーン・ヒューストンらが直々に軍を動かし、北アメリカの国境沿いに部隊を展開している。
その部隊への警戒を怠るわけにも行かず、大西洋連邦の北アメリカ大陸の軍が全て動いているわけではない。
明るい情報と言ったらそれ位で、前回の作戦で大きな勝因となった重力アンカーも、二度目は通用しないだろうし、互いの運用する機体の性能差もグンと縮まっている。
DC側の戦力の充実ぶりは前大戦時とは比べ物にはならないが、それ位は地球連合側も想定済みである。当然対応できるだけの戦力か特殊な兵器の一つ二つでも用意しているだろう。
本土に敵群を近づければその時点で王手となるDC側の兵士達の緊迫感は、薄氷の上を行く不遇の旅人のそれよりも厳しいものであった。
DC最精鋭の第一特殊任務部隊クライ・ウルブズの面子も新型機動兵器の受け取りとレクチャーと骨休めが終了次第、早速仕事に駆り出されていて、バラック・ジニン大尉を小隊長とする小隊が、偵察任務に着いていた。
他にもデンゼル・ハマー大尉が率いる小隊が同任務に着き、アルベロ・エスト少佐は母艦タマハガネにて待機している。
そして、ジニン率いる偵察小隊は、太陽が真上に登った時刻、海上を行く鋼の巨人の一団となっていた。
先頭を行くのは、背部の改良型擬似太陽炉からオレンジ色のGN粒子を放出し、青い海面に異なる彩りを添えているジニンのアヘッドである。
内部パーツの刷新とオーバーホールによって、総合的に十数パーセントほど性能が向上したアヘッドの腰部には、超長距離行動用のブースターと大容量GNコンデンサー、細長い円筒形のプロペラントタンクが装着されている。
装備もGNビームライフルからGNオクスタンサブマシンガンに変えている。従来のオクスタン同様、実弾・ビーム弾を選択出来る装備で、さらに実弾にGN粒子をコーティングし攻撃力を増す事も出来る。
解析が完了し、DC独自の改造すら施された擬似太陽炉の電力変換効率も増し、オレンジ色のGN粒子の生産量もまた右肩上がりで増えている。
兵器開発部門が新たに機動兵器に導入したバイオコンピューターも装備し、機体のパイロットへの追従性も増して、新型リニアシートやアームレイカーという円球形操縦桿などの装備も頼もしく感じる。
異世界とはいえDCの保有する数多の技術に、小隊長を務めるジニンは小さくない感嘆の念を抱いていた。
ソレスタルビーイングの二個付きガンダムの性能は凄まじいものがあったが、いま搭乗しているカスタムアヘッドなら、そう容易く敗れる様な事はないだろう。
機体性能を三倍化させるトランザムを使われたら、流石に埋めようのない性能差となるが、通常の状態でならパイロットの腕次第で互角以上に戦えるかもしれない。
そこまで考えながら、ジニンは背後に映る小隊員の乗っている機体を愉快ならざる暗い感情を込めた瞳で見つめた。
今回、ジニンが預かっているのは刹那・F・セイエイの乗るサキガケ・セブンソード、ロックオン・ストラトスの乗るアヘッドスナイパーカスタム・フルシールド、それにティエリア・アーデの乗るガンダムヴァーチェの三機である。
そこはかとない悪意の霧が漂っている様な気がしたのも、無理はないだろう。
民間協力者であるロックオンと刹那は、素性の不明瞭な点があって完全に信を置く事の出来ない相手であったし、ティエリアなど乗っている機体が、ソレスタルビーイングの使っていたガンダムそのままときている。
ジニンが生まれ、育ち、そして死んだ元の世界で、世界を三分割していた三大国のみならず、あらゆる紛争へ武力介入を行い、理念の翼を広げて幾千、幾万もの人々に不幸の影を落とした忌むべきソレスタルビーイング。
その実行部隊であったガンダムの一機が、ガンダムヴァーチェだ。ティエリアとその背後にある組織に対する不信と疑念は、ジニンのみならずDC側の首脳部にも存在しているのは間違いない。
いずれ尻尾を出すまで懐の内で飼うつもりなのだろうが、それでもジニンとしては、かつての仲間を殺したガンダムと戦場を共にする事は、気持のよいものではなかった。
ジニンの軍人としての部分はそれを割り切れと囁いていて、取りあえずの所、ジニンは自分の内側の声に従っている。
定期報告時刻になり、タマハガネに連絡を入れようとしたジニンは、偵察装備の一つであるマウントディスプレイヘッド型の高感度センサーが捉えた反応に気づき、望遠カメラの倍率を最大に上げて感知方向に向ける。
MSや戦闘機というには大きな機影と反応だ。周囲にはジェットストライカーやノワールストライカーを装備したウィンダムが六機、護衛に着いている。黒塗りの巨大な機影は地球連合で採用されているMS輸送機だ。
内部に横に寝かせたMSを二機まで搭載でき、無補給で地球を一周半できる航続距離を誇る。しかし、艦隊への補給や物資の輸送というには奇妙なタイミングであった。
たった一機の輸送機で運べる物資の量はたかが知れているし、MSの一機や二機でどうにかできる規模の戦いではないだろう。
「いや、DCの例もあるか」
たった一機、二機の機動兵器が戦局を大きく変える戦闘能力を有している例は、皮肉と言うべきか、ジニンが席を預けているDCにいくつか存在している。
最悪、ジニンの想像通りのとてつもない性能の機体が運ばれているなら、動いていない今の内に破壊するなり鹵獲するなりした方が吉だろう。
「セイエイ、ストラトス、アーデ、あの輸送機を捕縛する。ストラトス、輸送機の足を止められるか?」
「加減が難しいが、善処するさ」
言葉とは裏腹に自信に満ちたロックオンの返事だ。信用が置ききれないのは事実だが、その実力に関しては、精鋭部隊アロウズに所属していたジニンの厳しい目をしても、認めるに足るものである。
輸送機の周囲を固めていたウィンダムの数機がこちらに気づき、機首を振り向かせる動きを見せ、即座にロックオンがオクスタンスナイパーライフルの照準を向ける。
左右の肩に装備されているフルシールドと、狙撃中の機体制御及び回避運動を相棒のオレンジハロに任せ、ロックオンはコックピット上部から競り出してきた専用スコープの向うの輸送機へと、引き金を引き絞る。
かつてはロックオンの大敵として戦った擬似太陽炉の生むエネルギーは、赤色の光の粒子ビームとなって、高速で逃げ出そうとしていた輸送機の左主翼を撃ち抜いた。
光の速さの粒子を遮るものは大気と輸送機の装甲だけで、それでは到底圧縮されたGN粒子の光の槍は防ぎえない。
青空に光条から零垂れた粒子が赤い飛沫となって輝いて散り、燃料を満載していた左主翼は大きく爆発を起こして真っ黒い煙を噴き上げる。
「って、おいおい、やりすぎちまったか?」
ロックオンの予想を越える被害を与えてしまったが、幸いなことに輸送機の操縦士は最後まで諦めぬ精神力と、確かな操縦技術を持ち合わせていたらしい。
ふらふらと左右に頼りなく揺れる輸送機は、果てしなく広がる青い海洋の中に、砂粒の用にぽつんと浮かんでいた小島に落着した。海辺に胴体着陸して分厚い装甲を歪ませる音をたてながらようやく止まる。
「ロックオン、ヤリスギ、ヤリスギ!」
「言うなよ。輸送機は無事なんだぜ。あれなら中身も大丈夫さ」
眼に当たるREDを点滅させながら抗議するハロに、ロックオンは左目でウィンクして言い訳をした。操縦士の方はどうか分からないが、輸送機の方は空こそ飛べなくなったものの、爆発を起こす様な様子は見られない。
護衛対象をあっさりと撃墜されてしまった哀れなウィンダムの残りを始末してから、輸送機の中身を引きずり出す位の時間は十分にあるだろう。
「さて、次の相手を狙い撃つぞ、ハロ」
ノワールストライカー翼部に内蔵されているリニアガンの発射光を、ロックオンの右眼窩に収められた義眼は左目よりも、精密に、そして確実に捉え、伝えられた情報に、ロックオンは操縦桿を素早く傾ける。
超音速の雷光色の弾丸を、下に垂直に沈み込んで回避したアヘッドSCの構えたオクスタンスナイパーライフルから、連射モードのGN粒子ビームが連続して放たれる。
最初の一発を機体前面に掲げたABC(アンチビームコーティング)シールド防いだウィンダムだが、立て続けの着弾に盾を支ジェット左腕が徐々に衝撃に揺さぶられだす。
半径一メートル以内に集弾したビームの四射目によって左腕を大きく弾かれて、ガラ空きになった胴を、五射目のビームに貫かれたウィンダムは、がくんと力無くうなだれてから数秒の間を置いて爆散する。
無数の破片と推進剤などが混じり合った混合ガスの花弁と変わったウィンダムを視界の端に映し、ロックオンは次の敵を探し求める。
生身の左目も、人造の右目にも、どちらにも宿っていたのは、次なる獲物を求める冷徹な狙撃者の眼光であった。
狙撃者が引き金を引けば確実に人が死ぬ。その事を骨身に刻み、罪悪の意識を確かに感じながら、引き金を引く事を躊躇わなくなってしまった人間の――殺人者の眼光。
ジェットストライカーの生み出す莫大な推力とテスラ・ドライヴの慣性制御機能は、ジェットィンダムに速さと、ジェットヘリよりも小さい旋回半径を与えている。
早くも一機を失い、五機に減らされたウィンダム達は、ランダムな回避機動を取りながら距離を維持し、ロングレンジからの射撃戦に徹する動きを見せた。
彼らの任務の目的が輸送機の護衛である以上、無理に前に出ようとしない選択肢は当然のものであったろう。
輸送機を背後に守り、プラズマジェネレーターから供給されるエネルギーを矢に変えたビームが、次々と刹那達へと放たれる。
刹那の乗るサキガケ7Sは、ロックオンの支援射撃と、派手な一撃で敵の目を奪う役割を負ったヴァーチェの大火力砲撃の合間を縫い、爆発的な推進力で一挙に敵機との距離を詰める。
ヴァーチェが胸前面に構えたGNバズーカの砲口が上下にスライドし、収納されていた砲身が前方へと展開する。
足を止めたヴァーチェへ緑色のビームが幾筋か放たれるが、同時に展開されているGNフィールドによって阻まれ、球形の表面に沿って無数の粒子へと散ってゆく。
ヴァーチェを震わせる振動を感じながら、ティエリアは無駄な事を、と優位に立つ者の傲慢さを心中に滲ませながら、ウィンダムのパイロット達の行動を徒労と切りすてる。
「GNバズーカ、バーストモード」
ティエリアの声は、断頭台の死刑囚に向ける執行者の声音に似て冷たく厳しい。GNバズーカの砲身に生じた小さな太陽を思わせる強烈な輝きは、そのままヴァーチェの五倍はある奔流となって溢れだした。
ランチャーストライカーやガナーウィザードらの装備が慎ましく見える大火力は、グルンガストタイプのファイナルビームにも匹敵するか、あるいは凌駕しているかもしれない。
当てる事を目的とした砲撃ではなかったから、ノワールウィンダムやジェットウィンダムに消滅させられた機体は出なかった。だが続く連続攻撃の牙の内に、彼らの数機は飛びこまざるを得なかった。
「消えてもらおう」
氷と雪の国の女王が白い世界に相応しい心で鳴らした鈴の音――美しく凛と響くも、聞く者の心に霜を降ろして体を冷たさに震わせる。そんなティエリアの声であった。
ヴァーチェの両肩に装備されているGNキャノンの、二門ずつ計四門の砲身が、それぞれ広い角度を取る様に瞬時に調整されて、上下左右に難を逃れたウィンダム達へと新たなGN粒子の死を放つ。
一門の砲口から複数のビームが放たれて、一機のウィンダムの頭部、右腕部、そしてコックピットのある胸部をまとめて貫き、海面に叩きつけられるよりも早く空中で黒い煙を四方に撒きながら爆発する。
ティエリアがちら、と目をやれば、ジニンはGNオクスタンSBの猛射で二機のウィンダムを牽制しつつ、強化されたアヘッドの推進力でもって一気に懐に飛び込み、肩口からGNビームサーベルを抜きざま叩きつける。
鋭い刃で敵の脳天を斬ると言うよりも、重い鉈で頭蓋を叩き割る動作に見えた。脳漿の代わりに、細かな電子機器の部品とひしゃげた装甲とバイザーの破片をまき散らすウィンダムを蹴り飛ばす。
ビームサーベルを抜く反動を利用し、ジニンは背後から斬り掛かってきたノワールウィンダムの振り上げた実体剣フラガラッハを受け止める。
実体剣とビームサーベルなら、膨大な熱量を持つビームサーベルの方が基本的に有利だ。ラミネート装甲やABC済みでもない限り、数秒と持たず実体剣の刀身が融解して折れるか焼き斬られるかするのだ。
拮抗する両者の刃がじりじりと重なり合っている間に、右遠方からのロックオンの狙い澄ました一撃がノワールウィンダムの頭部を焼失させ、ふっとフラガラッハから力が抜けるのを逃さずに、ジニンはアヘッドを動かしていた。
無防備にさらけ出されたノワールウィンダムの機体の、胸部にビームサーベルを突き込み、ノワールストライカーを貫いて背の先にビームサーベルの切っ先が出てくるのを視認してからサーベルをオフにする。
ジニンは、オクスタンスナイパーライフルの銃口をおろしてこちらを見つめているロックオンのアヘッドSCを一瞥した。精密な狙撃を得意とする腕っこきの狙撃手が味方に居る事を頼もしく感じたのは事実だった。
そいやっと支援
生身の左目も、人造の右目にも、どちらにも宿っていたのは、次なる獲物を求める冷徹な狙撃者の眼光であった。
狙撃者が引き金を引けば確実に人が死ぬ。その事を骨身に刻み、罪悪の意識を確かに感じながら、引き金を引く事を躊躇わなくなってしまった人間の――殺人者の眼光。
ジェットストライカーの生み出す莫大な推力とテスラ・ドライヴの慣性制御機能は、ジェットィンダムに速さと、ジェットヘリよりも小さい旋回半径を与えている。
早くも一機を失い、五機に減らされたウィンダム達は、ランダムな回避機動を取りながら距離を維持し、ロングレンジからの射撃戦に徹する動きを見せた。
彼らの任務の目的が輸送機の護衛である以上、無理に前に出ようとしない選択肢は当然のものであったろう。
輸送機を背後に守り、プラズマジェネレーターから供給されるエネルギーを矢に変えたビームが、次々と刹那達へと放たれる。
刹那の乗るサキガケ7Sは、ロックオンの支援射撃と、派手な一撃で敵の目を奪う役割を負ったヴァーチェの大火力砲撃の合間を縫い、爆発的な推進力で一挙に敵機との距離を詰める。
ヴァーチェが胸前面に構えたGNバズーカの砲口が上下にスライドし、収納されていた砲身が前方へと展開する。
足を止めたヴァーチェへ緑色のビームが幾筋か放たれるが、同時に展開されているGNフィールドによって阻まれ、球形の表面に沿って無数の粒子へと散ってゆく。
ヴァーチェを震わせる振動を感じながら、ティエリアは無駄な事を、と優位に立つ者の傲慢さを心中に滲ませながら、ウィンダムのパイロット達の行動を徒労と切りすてる。
「GNバズーカ、バーストモード」
ティエリアの声は、断頭台の死刑囚に向ける執行者の声音に似て冷たく厳しい。GNバズーカの砲身に生じた小さな太陽を思わせる強烈な輝きは、そのままヴァーチェの五倍はある奔流となって溢れだした。
ランチャーストライカーやガナーウィザードらの装備が慎ましく見える大火力は、グルンガストタイプのファイナルビームにも匹敵するか、あるいは凌駕しているかもしれない。
当てる事を目的とした砲撃ではなかったから、ノワールウィンダムやジェットウィンダムに消滅させられた機体は出なかった。だが続く連続攻撃の牙の内に、彼らの数機は飛びこまざるを得なかった。
「消えてもらおう」
氷と雪の国の女王が白い世界に相応しい心で鳴らした鈴の音――美しく凛と響くも、聞く者の心に霜を降ろして体を冷たさに震わせる。そんなティエリアの声であった。
ヴァーチェの両肩に装備されているGNキャノンの、二門ずつ計四門の砲身が、それぞれ広い角度を取る様に瞬時に調整されて、上下左右に難を逃れたウィンダム達へと新たなGN粒子の死を放つ。
一門の砲口から複数のビームが放たれて、一機のウィンダムの頭部、右腕部、そしてコックピットのある胸部をまとめて貫き、海面に叩きつけられるよりも早く空中で黒い煙を四方に撒きながら爆発する。
ティエリアがちら、と目をやれば、ジニンはGNオクスタンSBの猛射で二機のウィンダムを牽制しつつ、強化されたアヘッドの推進力でもって一気に懐に飛び込み、肩口からGNビームサーベルを抜きざま叩きつける。
鋭い刃で敵の脳天を斬ると言うよりも、重い鉈で頭蓋を叩き割る動作に見えた。脳漿の代わりに、細かな電子機器の部品とひしゃげた装甲とバイザーの破片をまき散らすウィンダムを蹴り飛ばす。
ビームサーベルを抜く反動を利用し、ジニンは背後から斬り掛かってきたノワールウィンダムの振り上げた実体剣フラガラッハを受け止める。
実体剣とビームサーベルなら、膨大な熱量を持つビームサーベルの方が基本的に有利だ。ラミネート装甲やABC済みでもない限り、数秒と持たず実体剣の刀身が融解して折れるか焼き斬られるかするのだ。
拮抗する両者の刃がじりじりと重なり合っている間に、右遠方からのロックオンの狙い澄ました一撃がノワールウィンダムの頭部を焼失させ、ふっとフラガラッハから力が抜けるのを逃さずに、ジニンはアヘッドを動かしていた。
無防備にさらけ出されたノワールウィンダムの機体の、胸部にビームサーベルを突き込み、ノワールストライカーを貫いて背の先にビームサーベルの切っ先が出てくるのを視認してからサーベルをオフにする。
ジニンは、オクスタンスナイパーライフルの銃口をおろしてこちらを見つめているロックオンのアヘッドSCを一瞥した。精密な狙撃を得意とする腕っこきの狙撃手が味方に居る事を頼もしく感じたのは事実だった。
残りのウィンダムはどうなったか、とすぐさまモニターに映し出されている戦況データに素早く目を走らせると、五機目のウィンダムを刹那が両手で構えたGNドウタヌキの右袈裟斬りで、ウィンダムを両断する所だった。
残る最後の六機のジェットウィンダムは砲撃戦用機と見てとったヴァーチェへ牽制のビームライフルを放ちながら、左手にビームサーベルを抜いていたが、彼我の距離が三百メートルまで迫った所であえなく散った。
機体胸部前方に構えたGNバズーカと両肩のGNキャノンの集中砲火を浴びせられれば、原形を留めた残骸など残りもせず、ジェットウィンダムはパイロットの肉片一つ残す事も出来ずに爆発した。
小隊としての連携はさほど優れたものではないが、個々の実力がその拙劣な面をカバーして余りあるだけのものはある。それには、使っている機体の性能に依る所が大きいのもまた事実の一つであった。
タマハガネと付近の友軍に当てて今回の遭遇戦について連絡を入れつつ、ジニンが新たに指示を下す。
「ストラトス、セイエイ、輸送機の内部を確認してこい。アーデとおれが周囲の警戒に当たる」
「了ー解、それじゃ行こうか、刹那」
「了解」
ゆっくりと海岸に落着している輸送機めがけて、刹那のサキガケ7SとロックオンのアヘッドSCが降下してゆく。
DCの軍人ではない二人に輸送機のチェックを命じたのは、もし内部で銃撃戦などになっても、負傷するのは自軍の兵士ではないという考えが、ジニンの思考の片隅に存在していたからかもしれない。
また、あの二人の性格からして虚偽の報告をするような人物ではない、とジニンが評価していたのも事実だ。完全に納得はしていないが、ビアンから刹那とロックオンの身元の確かさは保証されてもいた。
ロックオン達が機体を降りて輸送機へと歩み寄るのを見てから、ジニンは偵察装備の高感度レーダーとEセンサーの効果範囲を最大に引き上げた。
ティエリアはジニンの指示に何の応答も返しはしなかったが、了承していたようで、油断なくヴァーチェにGNバズーカを構えさせながら周囲を警戒する様子を見せている。
一応、理不尽な命令であったり非効率的な指示でなければ、ティエリアはそれに従う姿勢を見せている。
パイロットスーツのまま、銃とハロを抱えた二人が輸送機のハッチを開き、中へと足を踏み入れて行く。
ロックオンがハロを持っていったのは、小型携帯端末としてのハロの優れた情報処理能力が役に立つと判断したからだろう。
リファインモデルのM4カービンを両手に構えた刹那に続き、Cz75を右手に携えたロックオンが続く。
曲がり角から顔を覗かせていた刹那が、こちらを振り向いて頷くのを確認し、ロックオンも頷き返して先へと進む。
落着の衝撃を受けても内部の電源は無事だったようで、天井に設えられたライトは煌々と照っている。硬い床が音を立てぬよう慎重に歩を進める二人は、しばらくは輸送機の搭乗員と顔を合わせる事は無かった。
運んでいたのがMSなら、メカニックかパイロットあたりが同乗しているかもしれないが、片翼を失った状態での胴体着陸の衝撃は相当なものであったろうから、中の人間が全員気を失うなりしてくれていると楽なのだが。
壁際の端末にハロを接続して、輸送機の状態を確認させる。積荷はMSだ。異なる機種のものを二機。どちらもDCのデータバンクには登録されていない新型である。
「こりゃ大当たりかもしれないな」
「ロック解除、ロック解除」
「よおし、よくやった、ハロ」
端末とハロを繋いでいたコードを戻し、ロックオンはハロのつるりとした表面を撫でて報う。数歩先に居た刹那がロックオンとハロを振り返る。
「ロックオン、どうする?」
「MSに乗り込まれて暴れられちゃかなわん。向こうさんも積み荷を渡すまいと動くだろうしな。まずは格納庫だ」
「ああ」
眉一筋動かさず、首だけ縦に振って肯定し、刹那は再び歩を進めた。周囲に人の気配はなく、ハロの方でも特に感知した様子はない。
自動で開いたドアの先に敵が待ち構えていないか慎重に確認し、さらに一歩を踏み出そうとした時、外の気配がにわかに騒がしくなった。
「なんだ?」
「敵機接近、敵機接近!!」
ハロがぱたぱたとまん丸い体の上にあるこれまた丸い蓋を、ぱたぱたと動かして警戒の声を出す。輸送機と護衛部隊の危難を察知した地球連合の部隊であろう。
ハロが敵の接近に気づくのに先んじて、アヘッドのEセンサーが高速で接近する機影群を捉えていた。速度と大きさからしてMSではなく戦闘機か、あるいは可変機だろう。
数はさほどではない。ついさきほど撃墜したばかりのウィンダムと同じ六機編成、二個小隊ほどだ。輸送機の発した救難信号をキャッチして急行してきたのだろう。
有視界距離に入った敵機の姿に、かすかにジニンの石の硬さの眉間に皺が刻まれる。
人間を模したスタイリッシュな四肢のウィンダムとは違い、頼りない位にひょろりと長い手足、アンチビームコーティングによって黒く塗装された装甲、顔面をカバーするオレンジのマスク。
今は戦闘機形態へと変形したその機体は、大西洋連邦の最新鋭主力量産機フラッグ。
通常薄い紫紺色の塗装が成されるフラッグと異ならカラーリングは、それらの機体が精鋭部隊用に特別にチューンされたカスタムタイプの通称オーバーフラッグである事を証明している。
フラッグは順調に配備が進んでいるが、上位機種のオーバーフラッグの数はまだ少ない筈だ。そのオーバーフラッグを任される精鋭が、よもや姿を見せるとは、ジニンの予想の範囲には入っていない事態である。
「セイエイ、ストラトス、機体に戻れ。新しい敵が来た」
二人の返事を待たず、ジニンは戦闘のオーバーフラッグめがけてGNオクスタンSBのトリガーを引く。特に狙いを着けずに撃った散弾的な射撃だ。接近までの時間をわずかでも稼ぐためのものである。
毎分七〇〇発の連射能力を、トリガーを引きっぱなしにして最大限に活かしてジニンのアヘッドは足を止めずに赤色の雨をオーバーフラッグ隊へと叩きつける。
一発二発は当たるかと思われた弾丸は、先頭のオーバーフラッグがひらりとかわすのに合わせて散開し、どのオーバーフラッグに命中する事もなかった。機体に相応しい力量の持ち主たちなのだろう。
「アーデ!」
「言われなくても」
短縮したチャージでGNバズーカを即座に発射し、肩のGNキャノンの目標も各個べつべつに四機分捉えた。熟連のMSパイロットでもこうはいかぬ、神業的な補足速度である。
イノベイターとして想像されたティエリアの人間の限界値か同等以上に設定された身体能力と、復活したデュナミスとのリンクが、彼に極めて高いパイロット能力を齎していた。
空と海の一角を照らし出すピンク色の膨大なGN粒子の光の先にオーバーフラッグは、またも隊長の合図で五機が周囲に散り、直撃を避けて見せる。ひらりひらりと蝶のように華麗に舞う姿に、ティエリアは苛立ちを禁じ得ない。
「ただの人間がこうも動いて見せるのか」
すぐさまGNバズーカの砲口を調整し、今度こそと必殺を狙うティエリア。同じようにジニンもまた軽快な動きを見せるオーバーフラッグに対応すべく、目まぐるしくレーダーとモニターに映るオーバーフラッグを視線で追う。
輸送機からはまだ刹那とロックオンが戻ってきてはおらず、隣に鎮座しているアイドリング中のアヘッド二機に期待するわけにはいかない。
オーバーフラッグ隊が連続して撃ちかけてくるビームライフルをかわし、かわし切れぬ分は左手のGNシールドで受けつつ、ジニンは自軍の救援が来るまで持つか、あくまで冷静にカウントしていた。
一機のオーバーフラッグがMS形態へと変形しながら、肩からビームサーベルを抜き放ち、大上段に叩きつけてくる。ジニンは素晴らしい反射速度で左腕を掲げ、刃状のビームを真紅の光の盾で受ける。
受けた一瞬の衝撃を利用して後方へと機体を大きく下げさせ、同時にGNオクスタンSBの照準内に捉えるが、相手もさる者でジニンの指が引き金を引き斬るよりも早く動いて見せていた。
オーバーフラッグが下方に滑らかに動くや、左腕のビームライフルで牽制の射撃を加えて来たのである。サーベルとシールドの衝突の反発を利用したのはジニンばかりではなかったということだ。
オーバーフラッグとアヘッドの間を幾つもの大小長短さまざまなビームが繋ぐが、どちらの弾丸も互いの機体に触れる事は無かった。
二十四世紀の世界でならば、アヘッドとオーバーフラッグとの間には埋めがたい性能差が存在するのだが、このコズミック・イラの世界ではそこまでの差は存在していない。
卓越した技量を見せつけるオーバーフラッグのパイロットが指示したのか、他の機体からの横槍は今のところなく、ジニンは目の前の敵に集中できたが、それはティエリアに敵の攻撃が集中していると言う事だ。
苦境に立たされたかと口内に苦汁を滲ませたジニンに対し、オーバーフラッグのパイロットは、互角の戦いを演じるジニンの力量にかすかに喜悦の笑みを浮かべていた。
まだ二十代なかばほどであろう青年実業家の様な、癖のある金髪の青年である。いまにもらんと輝きだしそうな瞳は、高ぶった戦闘意欲の炎に揺れている。
前大戦で大きくその武勇を馳せた大西洋連邦のエースパイロット、グラハム・エーカー大尉である。
「友軍の危機に駆けつけてみれば、これは思わぬ強敵。落ちた同胞の仇、このグラハム・エーカーが討たせてもらおう!」
グラハムのオーバーフラッグの放った一撃が、ジニンのアヘッドの左肩装甲を抉り、アヘッドの放った銃弾の雨が、オーバーフラッグのディフェンスロッドを強かに打つ。
経験、戦闘技術、士気、機体性能、それらを統合すれば両者の戦闘能力はほぼ互角といえた。気炎を吐くグラハムの猛攻に、ジニンはこめかみを伝う汗の冷たさを感じながら凌ぐ。
ただ、“ほぼ”互角という事は、完全に互角という事ではない。ジニンよりもグラハムの方が上を行くようだった。
*
ジニンとティエリアがグラハム率いるオーバーフラッグ隊と戦闘を繰り広げている頃、すでに刹那達は輸送機の格納庫へ到達していた。
途中、落下の衝撃で崩れた荷物の下敷きになった整備士や、頭から血を流している輸送機のクルーの倒れ伏した姿があった。
もともと搭乗員が少なかったうえに、落下の衝撃で大半が意識を失うか死亡してしまったようだ。死者へ憐憫の情が湧かないではないが、敵対者である以上は幸運というべきなのだろう。
さしたる妨害もなく順調に格納庫に辿りつけた事は幸運だったが、外の敵に対応する為にアヘッドの下へ戻るのには時間がかかる距離まで来てしまってもいた。
動かせるか保証のない大西洋連邦の新型を奪うよりも、自分達の機体の下へ戻るべきかと思考の迷路に入ろうとしたロックオンの目の前で、流れ弾か狙い澄ました一撃か、二人のアヘッドにビームが着弾してしまう。
輸送機の壁際にある窓の向こうで、頭部や肩の辺りにオーバーフラッグのビームを受けたサキガケとアヘッドSCが融解した装甲の破片と、黒煙を噴きだしながら大きく傾いで浅瀬に倒れ伏す。
「くそ、あれじゃまともに戦えやしねえ」
「なら、この機体で戦うしかないだろう」
「ぶっつけ本番か。ハロ、起動コードの解析とシステムの掌握は任せるぞ。刹那、お前は大丈夫か?」
「手順は頭に叩き込んである。Dコンも持って来ている」
そう言って刹那は左手に持った携帯端末をティエリアに見せてから、格納庫に横たわる機体の内、手前にあったものへと走り寄る。
刹那の野良猫みたいに身軽な動きに感心しながら、ロックオンも奥の機体へと駆け寄って、コックピットの位置を適当に検討をつけてよじ登り始める。
刹那が駆け寄った機体は胴や両肩を青に、四肢と頭部は白に塗装していて、ロックオンの方は青い箇所をモスグリーンに変えたカラーリングの機体であった。
ロックオンはその機体を横から眺めていた時からもしや、とは思っていたが、胸部の上に立ち機体の頭部や全体をかろうじて見える位置までくると、一瞬、息をとめてから、はは、と小さな笑い声を挙げた。
くしゃ、と音を立てて茶の髪に右手の指を差しこみ、そのまま数度頭を掻いた。
「ロックオン? ロックオン?」
「ああ、なんでもないさ。そうさ、なんでもねえよ」
心配そうに見えるハロに、ロックオンは誤魔化す様な声で応え、その機体のコックピットハッチを開いて、その中へと体を躍らせた。
パイロットの居住性を考慮して広くスペースの取られているDCのものとくらべて、狭小なコックピットであった。細かな違いはあったが、そこはロックオンにとって見慣れた場所だった。
ただ、シートに座したロックオンから見て右前部にあった、ハロを収める為のスペースが無い。しかたなく膝の上にハロを置き、コンソールとハロをコードで繋ぎながら、機体の立ち上げ作業を進める。
かつて、ザフトのクルーゼ隊が資源衛星ヘリオポリスから地球連合のGを強奪した時、今次大戦、アーモリーワンからザフトのセカンドステージのG三機が強奪された時よりも早く、ハロは機体の掌握を終えていた。
パイロットの認証セキュリティのひとつであるバイオメトリクスがまだ未登録であった事は僥倖といえた。連合が本来予定していたパイロットに代わり、ロックオンがその機体の正規パイロットとして登録される。
「まったく、こっちでもお前さんに乗る事になるとはねえ。どこのだれが作ったんだかは分からないが、今度は壊さないようにうまく使って見せるからさ、よろしく頼むぜ、相棒」
稼働し始めた擬似太陽炉がGN粒子を機体全体に供給し、ロックオンが懐かしげに声をかけるその機体――ガンダムデュナメスは、静寂の眠りから目を覚ました。
ロックオンが運命の皮肉を感じさせるかつての愛機との再会に、苦笑未満の表情を浮かべている頃、やや遅れて刹那もまたコックピットに座して機体の掌握を終える所であった。
シートの傾斜と位置を調整し、栄養不足で成長不良の小柄な体格に合わせる。刹那のヘルメットの奥の顔はいつもと変わらぬ無表情であったが、その体の中では熱い血潮が心臓から全身へと送り出されていた。
身を預けている機体を見たとき、刹那は電撃に撃たれたように体を震わせた。この機体を目に映した時、刹那の脳裏に鮮明に描き出されたのは、かつて戦場で刹那を救ったMS――ガンダムだった。
刹那がかつて目撃した0ガンダムと、いま身を預けている機体は似ても似つかぬものではあったが、信仰と憧憬とが混ざり合った想いを向ける0ガンダムを確かに想起した。
この機体の何が刹那の心にそのような化学変化を起こさせたのかは分からない。だが、
刹那は根拠のない直感で確信していた。神からの宣託を受けた預言者に似た心であったかもしれない。
刹那の乗り込んだ機体のツインアイに光が灯り、緑の輝きが輸送機の天井をかすかに照らし出し、機体の背にある円錐状の物体から、夕陽色の粒子が溢れ始める。
格納庫の中で乱舞する粒子は、二機のガンダムを煌々と照らしだし暖かな色合いに染め上げる。それはまるで、機体に血が通い出し、装甲という名の皮膚が色づき始めたかの様だ。
素早くコンソールを操作し、操縦系統の確認と、機体の名称を確認する。マティアスに拾われた頃に、地球連合・ザフト・DCいずれの勢力の機体でも、問題なく扱えるよう訓練を受けていた。
「操縦に問題はない」
フットペダルを踏み込み、操縦桿をゆっくりと動かして機体の動作の確認を取る。刹那は静かな興奮を胸中に抑え込みながら、心と口の両方で呟く。
――おれの、ガンダム
――おれがガンダムになる為に
――おれは、おれが!!
「エクシア、おれのガンダム。……おれの、ガンダム!!」
ガンダムエクシア。それが、刹那が手にした運命の名前。
「刹那、ティエリア達が苦戦している。すぐに外に出て援護するぞ」
「分かった。エクシアで天井を切り開く」
「エクシア、か。やっぱりな」
デュナメスと同じように、横に寝かされていた時のシルエットからもしやとは思っていたが、刹那の選んだ機体がエクシアとは。これでアレルヤとキュリオスがいたら、かつてのガンダムマイスターが勢揃いではないか。
ロックオンが感傷に浸っている間に、刹那は仰向けのままのエクシアの右腕に装備されていたGNソードを展開し、GN粒子によってコーティングされ、切断力を増した銀刃を閃かせる。
きん! と硬いものを切り裂く甲高い音とともに輸送機の天井に黒い線が走り、そこから外の光が差し込み始める。
切り裂いた天井が落ちて来るよりも早く、デュナメスの肢がそれを蹴り飛ばし、外に溢れる陽光が雪崩のように格納庫を満たし、天使の名を冠した二機のガンダムを祝福する様に照らし出す。
「ガンダムエクシア、刹那・F・セイエイ、目標を駆逐する」
それはこれからの長い戦いの中で、刹那が幾度となく口にする言葉であった。
ガンダムデュナメスを手に入れました。
刹那・F・セイメイが嫁(ガンダムエクシア)を手に入れました。
――つづく。
支援ありがとうございました。なんだか文頭に刹那の名前が大量に出ておりますなあ、な二十四話でした。
刹那とグラハムでチャンバラ出来ると思ったら、ブシドーじゃないから出来ないと気付き、残念。ではでは、お楽しみいただけましたら幸いです。
お邪魔しました。
最後の最後で
×刹那・F・セイ”メ”イ → ○刹那・F・セイ”エ”イ
ほかにも誤字脱字ありましたら、ご指摘くださると幸いでございます。
おつでしたー。
ガンダムきた。そしてサキガケとアヘッドSCおつかれ。
あと、前話ですがドクター違ぇ。
後のミスターブシドーことハムキターw
つか辞任さんはブシドー=ハムって知ってるんでしたっけ?
おおー、とうとうロックオンも過去世の愛機に……これもまた運命か。
そして刹那の小隊長orACE技能って絶対「ガンダム」搭乗時に攻撃力upだと思う今日このごろ。いや、他の能力値にも補正入るかもしれないけどね。
>>715 旦那、作品投下時または自作品への言及、対応時以外はコテ外した方がいいですぜ。
流石に自己主張が激しいと思われちまいやすぜ。
ジニンさんはハムに関しては知ってるだろうけど…?
総帥乙!
連合にも疑似太陽炉技術は伝わってたか。ザフトにも恐らくあるだろうし、CBガンダム系列は00本編と比べて隔絶した性能差があるわけでもなさそうだ。
さぁ、せっちゃんはどうなる。
エキドナさん、せめて軽く探りを入れてからにしなさいよ…
アクセルの明日はどっちだ。あと、嫁と巡り会うことはできるのか。
誤字報告。
>>立て続けの着弾に盾を支ジェット左腕が徐々に衝撃に揺さぶられだす
>>刹那は左手に持った携帯端末をティエリアに見せてから
前者は支えるで、後者はティエリアでなくてロックオンですよね。
>>717 以前の話でデータベース組がエクシアとかもロールアウトしたとか言ってたシーンがあるので、
協力関係なマティスあたりの手引きで郵送中だったと思われ。
連合自身はまだ太陽炉技術を持ってないんじゃないかな。
ガンダムが2機増えて心が折れそうなジニン頑張れ。
>>717 つってもデータベースの疑似太陽炉はワンオフとはいえ四年前のアルヴァトーレのもの
DC側は量産型とはいえ四年後にエース・隊長級に配備されてたアヘッドのもの
改良次第ではわからんが元の完成度はDCのほうが上だな
>>720 ところがギッチョン、データベース側にはアルヴァトーレだけではなくアルケー搭載のイノベイター製高性能擬似太陽炉(最新版)も存在しています。
粒子が無毒化されていないけど、性能面ではアヘッド以上なのは確実かと。
>>721 あ〜そういやそうだったな。あれ? でもそれだとアルヴァトーレの存在意義ないじゃん
アルケーはこっちの技術で再生産したレプリカじゃないの?
あと偶に見かけるけど赤疑似粒子は有毒でオレンジ疑似粒子は無毒って公式?
ご感想、ご指摘ありがとうございます。
>>714さん
JB・モレノ医師のことですよね。コーヒー云々のくだりをテクス先生から無断拝借した件でしょうか。
>>718さん
仰せの通りでした。支ジェットは、エール→ジェットで置換した時の見逃しですね、それにティエリアはヴァーチェで頑張っているので、いるわけがないですよね。
他にも誤字が・・・・・・
×GNオクスタンSB → ○GNオクスタンSMG
サブマシンガンの略称でSBはないですわいな。
×マウントディスプレイヘッド → ヘッドマウントディスプレイ
逆なのでした。
×ABC(アンチビームコーティング)シールド防いだウィンダムだが → ○ABC(アンチビームコーティング)シールド『で』防いだウィンダムだが
接続詞が抜けていました。
>>705と
>>707が重複しておりました。何をやっていたのでしょう、私は。他にも何かありましたら、またお教えください。読んでいただきありがとうございました。今後ともご贔屓くださいますよう、お願い申し上げます。
> ジェットィンダムに速さと、
ジェットウィンダムに速さと、
>>722 圧縮粒子は全部基本的に人体に有害。
それを無毒化するフィルターのようなのが
第一世代マイスターのプルトーネ暴走を期にオリジナルに取り付けられた。
疑似に関しては一期は有害だが、
二期までの間にオリジナルと同様のフィルターのような物が開発された。
と言うか有毒なのは圧縮粒子だけのはず、圧縮してない粒子は無毒じゃなきゃおかしい
疑似とオリジナルの性能差も二期じゃ作戦行動時間とトランザムぐらいしか無かった
トランザムも後に疑似に搭載されたけど
>>721 アルケー搭載が高性能なんて何を根拠に言ってるんだ?
イノベイターが作った太陽炉が高性能である根拠は?
727 :
721:2009/11/10(火) 20:35:24 ID:???
HGガデッサ(リヴァイヴ機)の解説から、イノベイター製の機体の擬似太陽炉は改良されていると表記されていました。
それとHGアルケーの解説に(アルケーは)スローネツヴァイの設計データをベースに最新技術を導入したと書かれていました。
セカンドシーズンに登場したイノベイター製の機体の擬似太陽炉はヴェーダの蓄積したデータを元に改良されているという文章はグレートメカニクスなどでも書かれていたのが根拠です。
728 :
721:2009/11/10(火) 21:08:58 ID:???
って、しまった!! アルケーの方は旧スローネやGN−XTに使われた初期型擬似太陽炉を三基(胸部に一つ、脚に各一つ)を搭載しているんだった。
改良型擬似太陽炉はガデッサ系列やリボーンズガンダムしか搭載してない!!
アルケーの良い所なんてトランザム使える以外ない!
なんだかんだで脱出装置って大事だよね
流れをぶった切って悪いが皆が好きな必殺技BGMを好きな理由と共に挙げて欲しい
ちなみに俺はガンダムXのサテライトキャノン発射時の曲が嵐の前の静けさを
表しているみたいで気に入っている
THE BEASTU
答えといてなんだがスレチだろ
容量もアレで職人も投下出来んし
というかもう495KB越えか。
そろそろ次スレの季節
といっても俺は立てれないんだがorz
>>735 スレ立ておっつおっつ
次のスパロボはどーなるんだろうねぇ
今年(2009/12/31マデ)は三作完全新規で出したけど、来年は何作作られるんだろうか
据え置き新作か、携帯機か、はたまた移植か。OGシリーズにはあんまり期待できないなぁ…
Wを据え置きでリメイクとかだったら最高なんだがな
ニコ動であったみたいにテッカマン系イベント会話声付きでやったらマジ感動モノ
いきなり話し変わるけど、総帥のところでトウマって出たっけ?
OG続編はEXみたいにラギアスでやるか魔装チームでてきたら神なんだけど
普通にマサキ、リューネ自体が消えそうだからね、消えたら多分もうOGやらんけどw
WもいいけどJかDを据え置きでリメイクもしくは移植+追加要素でも俺は嬉しいな!
ラ・ギアス関連はZで真魔装機神登場フラグたったと聞くが?
確かアサキムが真魔装機神の主人公の一つの未来だとか従来のマサキの闇の同位体だとか
新スレにミストさんが大量発生してるwww
埋め
>737
Wというと竜馬が華ちゃんにボン太くんをさして「中の人はいないんだ!!」と言ったり、
クルーゾーがボン太くんを試着しようとしたり、
ストーリーの初っ端からボン太くんが出てきて
カリーニンとマデューカスが熊かネズミか談義をマジで繰りひろげたりとボン太くんネタばかりが真っ先に思いつく。
埋め
ヽヽヽ ブーン
丶 /⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
| /
( ヽノ
ノ >ノ
レレ
腕が ││
│││折れたぉ
∩││││∩
|| /⌒ヽ||
Lニ( ^ω^)」
| /落ちるぉ
( ヽノ
ノ >ノ
レレ
│││パイルダー
`___ ││___ オン!
| |/⌒ヾ| |ス
`丶丶^ヽ ^ω^/´7 ポ
「Λ ̄ヘ__| ̄7 ッ
-=二)_ ̄^ヘ | ̄7ニ=-
|_  ̄-―三-1
|\ | |||/
_-| /T ̄ ̄T|-_
\/ | ||  ̄
 ̄‐_ ‐′
そういえば
/⌒\人/⌒ヽ
ノ \(○)/ ヽ
Lノ⌒ ( ( ⌒\_」
く \
も死人だったっけw
出ないだろうけど、こいつの体力的についてけないだろうし
埋めついでに置いて行きますね
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梅干 ヅケ 奈良漬 天むす ちりめん山椒 からし菜 エビフライ
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赤飯 肉味噌 わさびツナマヨ いくら 沢庵漬 ネギトロ あさり佃煮
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甘塩鮭 いか明太 千枚漬 カツむす 鮭わかめ エビチリ 蟹マヨ 岩塩
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酒盗 高菜 おかか こんぶ 江戸むらさき わさび漬け 焼たらこ
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鶏飯 明太子 おかかちりめん ゆかり 柴漬 塩辛 牛肉しぐれ
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鮭ハラミ 明太マヨ 野沢菜 玉子焼 葉わさび エビマヨ 鮭マヨ 赤穂の塩
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辛子 猿脳 ホンタク 木乃伊 カツオノエボシ トリカブト シュールストレミング
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阿片 ジョロキア ベニテングタケ ゴキ卵 コカ ヒ素 イエローケーキ
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蛙 イモガイ イナゴ アメフラシ ハバネロ 河豚卵巣 蛙マヨ うるし
夜食にでもどうぞ
しまった、毒具の方も貼っちまった……orz
∧||∧
( ⌒ ヽ
∪ ノ
U U