【もしも】種・種死の世界に○○が来たら 6【統合】
___l___ / ///: ://: : ::/: : :://| |: : : : : /: : : : :l: : : :ヽ: : :.へ: :
ノ l Jヽ レ/::/ // / /: : ::/: : ::/. / l |: : : : ::|ヽ: : : : l: : : : .|_| |_
ノヌ レ /.|/ /: : : :i: : ::/ | \ lヽ,: : : :| \: : :|\: :《 》
/ ヽ、_ / | /: : : :::l: : ::k≫===\ノ: : ::ト、__|__! ̄| | ̄
ム ヒ_ / /: : : : ::l: : ::《 !ト \ | / "'''=z_Y: ::ヽ彳
月 ヒ. / l: : : : : ::l: : :| ≦三 ヽミ;、 ||L |: : : : : :
ノ l ヽヽ,ノ / |: : : : : ::l: : ヽ ゝ〃/: : : : : : /
 ̄ ̄ / ィ |: : : : : : |/\\_ / \ /: : :/: : ::/
__|_ ヽヽ...../イ// /|: : : : : : ::イヘ. ̄/ ヽ─── __/: :/: : ::/
| ー / |: : : ::/ |/V 〃⌒ヽ_ >イ: : : : ::/
| ヽー ./イ |: : :/ \|Y/ ヽ _, イ: ::|: : : : /
| / ,..イ/ l | ハマ/|/!/: : : :/
| | | |. ..../,-'´/ ' | | }ノ \ ソ|: : /
・ ・ ・ ・ .....イ /  ̄ \ ノ ヽ,.彡 ´
穏やかに広がるカスピ海の水面を眼下いっぱいに見下ろして、その上へと機影を投げかけΞガンダムが空を駆ける。
ガンダムの巨大な人型の機体の全体は閃光に包まれて、光輝をまとっている様に見えていた。
その閃光は、Ξガンダムが搭載したミノフスキー・システムが発生させる機体全体を包むビームのバリアーが、超音速で接触する大気との摩擦によって発生させるものだ。
円錐形に展開されたビームが大気の抵抗を減殺し、整流効果を生み出す事で、Ξガンダムは空力学的には不利なMSの形態のままでのスーパーソニッククルーズ(超音速巡航飛行)さえ、可能とする事が出来るのだった。
幸い空はきれいに晴れ渡り、水面上の低空を這う様に飛ぶΞガンダムの発する輝きも水面上に煌めく光の中に紛れ込んでいた。
「ここまでは全て順調、遅延なし。だな……」
Ξガンダムのコクピット内。飛行予定のチャートを確認しながら、サブシートに座ったイラムが言う。
「ああ、周囲四方に敵影なし。完全に地球軍の警戒の範囲外の様だ」
各種のセンサー類に、サイコミュとサイコフレームが増幅する自身の感応波による索敵の結果とを合わせて口にするハサウェイ。
ミノフスキー粒子の影響が無くなった状況下にある事で、U.C.世界のマシーンが持つ各種のセンサー類もまた、
元の世界ではまずありえない、その本来の持てる高性能をフルに発揮して、マフティーの装備に絶大な探査能力をも与えていた。
Ξガンダムの場合は更にそこへサイコミュ系の機能も加わるので、現状でΞガンダムは絶大な戦闘力のみならず、索敵・警戒機としての機能においてもまた超越的な存在となっていたのである。
流石にそのΞガンダム程ではないにせよ、他のメッサーやギャルセゾンも状況は同様で。
特にギャルセゾンは単なるMS輸送機ではなく、メガ粒子砲を用いての空戦や爆弾を搭載しての対地爆撃も行える戦闘爆撃機としての機能や、空中哨戒・管制機としての運用すらも可能な万能機であり、
単なる大きな航続力だけではなしに、それがこの様な分進合撃の作戦にもきちんと成算が見通せる、その根拠ともなっていた。
「その意味では、一番心配なのは単独行動中のセイバーガンダムか」
イラムがやはり気がかりの様子で言う。
「アスランの技量と経験を信じるしかないな」
ハサウェイはそう応じる。
平たく言えば「出戻り」のアスランを、再びザフトのみならずプラントの多くに受け入れさせるには、「派手な実績≠付帯しての復帰」の形にするのが最善の方策であろうと言うのが、
彼と言う人物の扱いを検討したデュランダル議長と彼らの結論だった。
ザフトのエリート、特務隊フェイスとしての活躍は、本人の能力を考えれば充分に計算できるものではあったが、
その周囲もまたその成果をより大きく演出すると言う政治的な判断も同時に、行動の方針の中には含まれることになっていたのである。
ただ、やはりその為には当のアスラン本人にも、時にはこうした冒険的な賭けと言える様な行動も実際に取って貰わねばならない。
この賭け≠ノ負ける事なしに、勝って――生き延びて、見事成果を手にして欲しいものだと言うのが、彼らの正直な思いだった。
「間もなく次の変針点にさしかかります。3、2、1、チェック!」
パイロットスーツの膝上に置いたノート型のワークステーションを見ながら、航法士としての役割を務めているメイリンがそう告げる。
「チェック!」の声は自身も口に出して唱和し合って、自身の航法ともズレの無い事を確認しながら、アスランはMA形態での高速飛行を続けているセイバーガンダムの進路を飛行予定チャートの通りに変針させる。
「メイリン、大丈夫か?」
そこで傍らのシートに座る少女を気遣って尋ねるアスラン。
通常よりもどうしても窮屈になってしまう作り付けのシートだ。普段のミネルバのオペレーター席に着いているのとはわけが違うし、より厳しく不慣れな緊張感をも間違いなく強いられる。
その疲労を考えてやらねばいけなかった。
「ありがとうございます。まだ平気です」
微笑みを見せながら、メイリンの方は気丈にそう答える。
今のところは敵の影も形も一切無く、戦闘をせずに済んで来ているので、まだ余裕はそれなりには有ったのだった。
疲労度の生体データを取ると言う意味でなら、あるいは戦闘機動を交えると言う事になった方が良いのかも知れなかったが。
「でも……」
と、そこでしかしメイリンは呟く。
「?」
アスランが表情で問いかけると、彼女は続けて言った。
「これが、お姉ちゃんもいつもそうしている、パイロットの人達が見ている世界≠ネんですね」
離れた地点の空を今頃同様に、ギャルセゾンに載って飛んでいるであろう姉の事を思うメイリンだった。
「私は普段はミネルバで、発進していくお姉ちゃんやザラ隊長の事を送り出す方ですから。そうやって送り出した人達はその先≠ナ、こうしているんだな……って、そう思ったんです」
だから、そういう知らなかった部分をこうして知る事が出来て、良かったと思います。
そう言っていい笑顔を見せるメイリンに、アスランも安心させる様に頷く。
「大丈夫だ、ルナマリアはきっと。シンも、レイもね。マフティーの人達と一緒なんだ、多少の困難などはねのけてくれると俺は信じているよ」
こっちも、こう順調に行けているんだからね。そう言って微笑むアスランに、メイリンも頷いた。
ここまでの飛行は全く問題の無い、しごく順調なものとなっていた。
通常ならば文字通りに孤独な、単独飛行≠行わねばならない筈のところを、一緒に飛んでくれる存在〈メイリン〉がいると言うのは不思議と安心感を覚える様な気分になる。
「オーブから飛んだこの間≠ノ比べれば……」
アスランは思わずそう呟いていた。
オーブに入国を試みてスクランブルを掛けられて、そこから大気圏上層まで飛び上がる弾道コースでカーペンタリア基地を目指すと言う、先日強いられる事になった様々な意味でギリギリな飛行とは、
えらい違いだったから。
変形によって航空機の特性を得る事が出来るこのセイバーガンダムや、かつての愛機である核動力機のジャスティスガンダムと言う「特別な機体」を駆ってのMS単機での単独行の経験そのものは、
この世界の住人としては珍しく持ってはいるアスランだったが、やはり様々な意味でそれはキツいものであった。
今回の移動も2年前の時と同様に、プラントから地球の大気圏突入軌道上までの間は、有人の小型快速MS輸送艇が母艦代わりに運んでくれるので、
そのキャビンで身体も休められるし、精神的にも楽なのだが(これはシーゲル・クラインからフリーダムを託されたかつてのキラも、クライン派の手の者からやはり同様のサポートを受けていた)、
その様な支援の体制がなければ、大気圏突入後の単独長距離飛行などはまず不可能であるだろう。
そう言った部分に照らしあわせると、ギャルセゾンと言うサポートマシンを用いて長駆侵攻を行えるマフティーのMS運用法は、
自分達も現に宇宙では一部行ってはいる運用体制を、非常に洗練された形で発展進化させており、大気圏内においても実現させているのだと判る。
マフティーの持ち込んだMS運用概念は、まさにC.E.世界の人間の頭に根本的なショックを与える代物であると言う事実を、自分自身でも実感しているアスランだった。
そんな思索の中にあったアスランは、傍らに座る少女がふと漏らした呟きに引き戻される。
「オーブ、ですか……」
「え?」
思わず彼女の方を見やったアスランに、メイリンはふと思いに浮かんで来た先日来の疑問を口にしていた。
「お姉ちゃんがちょっと前に私に言ったんです。『シンは私達と違ってオーブ育ちのコーディネーターだって事、なんで気付かなかったんだろう……?』って」
「ルナマリアが?」
メイリンは頷いて、続けた。
「それを聞いて、2年前の大戦の後はオーブに行かれていたザラ隊長とシンは入れ違いみたいな感じになったんだな……って事に気が付いたんです」
「……入れ違い、か。確かに、シンと俺とはそうなるのか」
言われてみれば、と言う具合にアスランは頷く。
「2年前の戦争で家族を亡くしたらしいって話だけは私も耳にはしましたけど、シンも自分でそんな辛い話をしてくれるわけじゃありませんから詳しい事は判りません……。
でも、その後にオーブに行かれていたザラ隊長ともこうしてご一緒させて頂く事になって、自分もそれでオーブって言う国の事がちょっと気になったんです」
そこで一度言葉を切り、一呼吸を置いてからメイリンは続けて言った。
「もし良かったら、なんですけど……。聞かせて頂けませんか?オーブの事」
私も、もっといろんな事を知らなくちゃいけないんだって、そう思ったんです。
そう言うメイリンの表情も口調も、単なる興味本位のものでは無かった。
彼女もまた、インド洋での会戦後の一連の後始末≠竅A先日共に見聞きしたガルナハンでの事から様々に考える様になっているのだと言う事が判るものだった。
「そうか……」
アスランはそう呟く。
彼女の言葉に気付かされた事が彼にもあった。
自分とシンとはさながら、2年前の大戦を挟んで線対称の様な立場にいた者同士なのだと言う事に。
どうしてシンのことが不思議と気になるのか?と言う理由にはそれが多分にあるのかも知れないなと思えたし、また彼とはそういう事をもっとちゃんと話すべきなのかも知れないと、そう思った。
(その練習≠ニ言うわけでもないけれど……。いや、本当は俺自身もずっと、誰かに話したかったのかもな……)
アスランは内心でそうひとりごちて頷くと、口を開く。
「うん、そうだね。聞いてくれるか、メイリン? その代わりに、と言ったら何だけど……俺も、聞かせて欲しい。前の戦争から後の、俺の知らないプラント≠フ事を……」
「はい」
頷くメイリンに向かって、アスランは思いつくままに訥々と、これまでの事を語り始めるのだった……。
『シン、そろそろ見えてくる頃の筈よ?』
ミヘッシャからの接触回線でのその声に、シンはディアクティブモードに落としていたフォースインパルスガンダムのVPS装甲をオンにと戻しながら、
ギャルセゾンの甲板上からガンダムの機体を飛び立たせて、全周警戒・直援の態勢を取る。
分進している各戦闘単位の中でも、一番の最短ルートを飛ぶ事になっていた6ギャルセゾンとフォースインパルスガンダムの戦闘小隊は、
途中に敵影を見る事も無しに予定通り、合撃へと移行する為の途中集結地点へと到着しようとしていた。
ガルナハンから北東の方角の荒野で、この世界のMS作戦行動半径の限界から考えて明らかに地球軍の警戒の範囲外。
しかしギャルセゾンを用いれば、短時間でガルナハンへと到達出来る程度の距離であるエリアの中に見繕った場所だった。
地球軍はもちろんの事、普通に人がまずいないような土地であり、
出来ればシェルター代わりになりうる様な洞窟などがある地点が望ましい――と言う条件に見合った地点を探すのには、この地域の住民の協力が不可欠だったと言うわけだ。
(!?)
ローエングリンゲートがある峡谷の地形とも、どこか似かよった印象の起伏を見せる地形の中の窪地の様な平坦な一角に、シンは発煙筒の煙が上がるのに気が付いた。
『あそこに!』
『ええ、こちらでも確認したわ』
発見を告げるシンの言葉にそう答えながら、インパルスガンダムのコクピットにもギャルセゾンの望遠映像を送るミヘッシャ。
二機の接近に気付いて発煙筒を焚いた3つの人影が、こちらを見上げて大きく両手を振って合図を送っている。
『先に行って確認します』
シンはそう言うや、周囲の様子にも気を配りながらギャルセゾンに先駆けてそこへとガンダムの機体を降下させて行く。
距離を縮めて行くインパルスガンダムのモニターにも、より詳細に発煙筒の周囲の3人が明らかにこの地域の人であろうことが映し出される――3人の内の一人は明らかに子供であったからだ。
砂塵を舞い上げながらその3人のやや手前の大地にと降りたたせたガンダムのコクピットからシンが顔を覗かせると、その3人がガンダムの方へと歩み寄って来る。
その中でも真っ先に飛び出して、
「おぉーい!」
と手を振りながら駆け寄って来るのは、あのコニールだった。
「コニール!」
少女の姿を認めて、ヘルメットを外して顔を見せたシンに向かってコニールは嬉しそうな顔で彼の名を呼ぶ。
「シン!本当に来てくれたんだな!」
ガンダムのコクピットからシンがワイヤーで降りてくるのを、待つのももどかしいと言った感じでいたコニールは、そこでやっと気が付いたかの様に共にいた二人の大人の男達の事を振り返った。
日に灼けた顔に髭をたくわえた、いかにもこの地の住民と言う雰囲気の二人の大人も眼前に立った地球軍のものとは違うMSの威容と、変わった格好をした上空の飛行機≠ニを、やはり驚きを隠せない様な表情で見上げていた。
その様子に自分も気が付いて、OKのサインを送って見せるシンの姿を確認して、インパルスガンダムの傍らにと6ギャルセゾンが降りてくる。
そこから姿を現したミヘッシャと、待っていた3人の内のリーダー格の男との間には、先日のガルナハン潜入時に既に面識があった為、すぐに両者の間で明日の作戦についての最終確認を始める事が出来た。
その間に、シンはギャルセゾンから降りて来たスタッフの面々と共に、コニール達に設置を託していた警戒用の聴音マイク(それで彼女らもギャルセゾンの接近を知ったのだ)のチェックと更なる追加設置を行って、後続の友軍機を迎える為の準備作業を行って行く。
その作業を行っている間にも、設置済みのマイクがそれぞれ別方向から接近して来る各ギャルセゾンの音を拾って、その接近を知らせる――それがそのままテストの代わりともなっていた。
一方、作戦の最終的な計画と、その中においてのガルナハンのレジスタンス組織が果たす役割を、ミヘッシャが持参してきた「作戦説明書」をじっくりと読み込みながら頭に叩き込んで行くコニール達3人。
万が一の証拠とはならない様に、全ては記憶の中に納めてもらうより他に無い――作戦はもちろんの事、彼ら自身の安全の為にも。
「成程な、よぉく判ったぜ。確かにコイツはとんでもない作戦だ」
ミヘッシャに二、三の簡単な確認を行って納得したリーダー格の男が、感心するのを通り越してやや呆れたと言う様な感さえ浮かべて言う。
「な、アタシが言った通りだろ?」
そんな彼に向かって、どこか得意げな感じに言うコニール。
もちろん作戦はこれからではあるのだけれども、だけどあのシンを始めとした今度の連中≠ヘやっぱりどこか違っていた。
自分達と同じ目線に立って気持ちを判ろうとしてくれて、そうして約束を守ってこうして敵中突破の危険を犯してちゃんとここまで来てくれた。
今度こそ信じていいと思うし、信じたいと思うのが彼女の素直な気持ちで。
これまでの経緯もあってどうしても懐疑的にもならざるを得ない大人達への、必死に訴える動機にもなっていたのだった。
無事に到着し始めた、それぞれMSを載せたギャルセゾンたちの姿を目にあたりにしながら、
「それじゃあ、俺たちは引き上げる。明日の作戦、よろしく頼むぜ?」
そう言ってレジスタンス達は奇襲部隊の集結完了を待たずに引き上げの挨拶を寄越す。
これから3人はそれぞれ急いでガルナハンの街へと取って返して、レジスタンス側の明日の作戦準備の手はずにかからねばならないのだ。
恐らく休む間もあるまいが、それも明日までの話だ。
「シン! じゃあな、ガルナハンでっ!」
そう言って手を振るコニールに、シンも手を振り返す。
「ああ、明日な!」
そうしてバギーに乗って遠ざかって行く3つの影。
(気を付けてな……)
それを見送る奇襲部隊の面々はそれぞれにそんな想いで、コニールらを見送るのだった。
「シン!」
そうして去るコニール達と入れ違うかの様に背後からかけられる、馴染んだ声。
振り返ったシンにと向かって、大きく手を振るルナマリアと、それとは好対照に静かなままにサムズアップを見せる――そういうことをする様になったと言うだけでも、
本人としてはハサウェイらからの影響で気付かぬ内に相当にさばけて来てはいるわけなのだったが……――レイが歩み寄って来ていた。
ひとまず互いに無事に到着し得た事を喜び合う3人。
もちろんマフティーの存在あっての事であるとは言え、彼らの感覚から言えば「信じられない様な挑戦」である事を、実際見事に成し遂げて見せたわけであるのには間違いなかったからだ。
その上気した表情が、この作戦がC.E.世界においては「本当に凄い事」である事を如実に物語っている。
作戦行動自体のメインはこれからながら、ここまで来てしまえたのならば明日の奇襲の成功は、まず疑いが無いと言える処だった。
「これで、後は……」
そう呟くレイに頷くルナマリアとシン。
セイバーガンダムのザラ隊長と、同行しているメイリンが無事に辿り着いてくれるのを信じるだけだ――流石にΞガンダムの事は心配すらもしない――と言うよりも、そんな思いを抱く事さえ失礼だ! と、言う様な認識で見られていると言う事だったが。
徐々に陽が沈み込んで行く中、今夜の仮泊地と為す為の準備はマフティー側の手慣れた流れによって着々と進められて行き、
ギャルセゾン各機も両軍のMSも即時発進も可能な様に気を配りながら、それぞれに割り当てられた天然のシェルターの中へと移動されて隠され、
ザフトのMS各機には6ギャルセゾンで運んで来た急造の野戦バッテリー補給器が、メッサーによって取り付けられる――ぶっちゃけ言えば、携帯電話の電池式急速充電器のお化けをセットする様なもので、
インパルスガンダムも2機のザクもそれぞれ、シルエット/ウィザードの外から更に大きなバックパックを増着した様な、いささか不格好なスタイルになっているのはご愛敬と言う処だった。
もう1機、セイバーガンダム用のものも準備は済ませてギャルセゾン各機に分乗して来たマフティーの整備スタッフ陣が、それが無駄になる事が無い様にと無事の到着を願っている処へ、
追加設置されたマイクが予定通りの方面から接近するセイバーガンダムの音紋を捕捉した。
「メイリン!」
それを知ったルナマリアも、妹の出迎えにと急ぎ足で出て来る。
沈み行く夕日の緋に赤い機体を更に染めながら、MS形態へと戻ったセイバーガンダムが実にスムーズに降りてくる。
順調な飛行であったのだろう事は、その機動からも明らかだった。
大地にと両足を付けたセイバーガンダムから降りて来たアスランとメイリンを先着のザフトの3人が出迎えて、今度こそ本気で無事の再会を喜び合うザフトの若者達だった。
そしてアスランがセイバーガンダムを洞窟内へと隠し、同様にバッテリー補給器が取り付けられて機体のVPS装甲をオフにした、
陽がほとんど没しさろうと言う段になって、最後に発進し、もっとも長距離の迂回飛行コースを飛ぶ事になっていたΞガンダムの接近が確認された。
降着地点を示す為に、ほんの僅かな間だけ灯されて着陸を待たずに再び消された照明を見逃す事無く、Ξガンダムもスムーズに降りて来る。
そのまま洞窟内へと歩み入れさせてから待機モードに落としたΞガンダムから降りて来るハサウェイとイラムを、先着していた全員が控えめな歓呼の声でもって出迎える。
かくして奇襲部隊は1機も欠ける事無く、見事に長駆敵中への侵入を果たし、集結を完了させたのだった。
「……それで、そのクェスって子はどうなったんですか?」
「死んだよ……俺の、目の前で……。殺してしまったんだ、俺が、この手で……」
一語一語を、噛みしめる様にして答えるハサウェイの言葉に、まさかそんな事があったのだとは想像も出来なかったが故に、平気で聞いてしまったルナマリアは絶句させられる。
「ああ、いいんだ、ルナマリア。それは、この俺自身が背負って行かなければならない罪業なんだから……」
そんな彼女達の反応を見て、寂しげな微笑を浮かべながらそう言うハサウェイ。
「指導者マフティー≠ネんて言う、柄でもないだいそれた事をやっているのも、あるいはそんな自分に対しての逃げなのかも知れないな……」
自嘲も込めながら、しかし悲壮と言うよりもどこか遠くを見るような表情で言うハサウェイ。
余りにも重く苦すぎる、痛恨の過去の記憶。鬱病にまでなり、また彼自身にマフティー・ナビーユ・エリンとなる事を選ばせたその出来事を
乗り越える、と言うわけには行かないまでも、ようやく今までとは少し違った心境で向き合える様にとなっている事に、当の彼自身が驚いてもいたのだ。
夜、無事に集結を終えたザフト・マフティー合同の奇襲部隊の面々は、夕食を済ませた後の時間を、車座に焚き火を囲んでの一時を過ごしていた。
夜と言う時間と、それを照らし出す赤い炎が持つ魔力に――あるいは明日に響かせない程度のアルコールの勢いにも――助けられ、
いつしかザフトの若者達に向かってぽつぽつと、「向こうの世界」においての自身の事を語って聞かせているマフティーの面々がいたのだった。
これまでも共に戦う年長の戦友としてマフティーの面々とはうちとけて来ていたミネルバの面々ではあったが、流石にその様な部分までをも聞かされるのは初めての事で、
そうして聞かされる様々な人の過去と想い、(異世界とは言え、同じ)人間世界の現実≠ニ言うものを圧倒される想いで聞くザフトの若者達だった。
「………………」
ハサウェイがその語りを終えると、一通りそれぞれなりの話≠ェ語り尽くされた後の沈黙がしばし、座を支配する。
まるでその沈黙を呼び水にしたかの様に、アスランは自然と口を開いていた。
「俺は今、再びこうしてここに――ザフトにいます……」
胸元から取り出した1枚の写真を手に見つめながら、そう語り出したアスランをメイリンはハッとした表情で見やる。
フライト中にと彼が自分にと話してくれた過去の痛み≠、アスランは今それを皆にも語ってみようとしていたのだ。
手にしていたその写真を回して見せるアスラン。
そこに写っていたのは今よりも少年に近い彼自身と、彼と面影のよく似た美しい女性――恐らくは彼の母親だろうと思われる――が一緒に写っていた。
(母さん……)
その写真を見てハサウェイは、恐らくもう二度と会う事は出来ないだろう、文字通りに「遠く離れて」しまった母ミライ・ヤシマの事をふと考えた。
「今の戦争が始まった時、有事の最中なのに訪問中の俺の為にわざわざ時間を割いて下さったデュランダル議長から頂いた、父の遺品です。
議長の執務机の最奥に、隠すようにひっそりとしまわれていたと言うこの写真を手渡されて、俺はそこからザフトへの復帰を決意しました……」
一回りして手元にと戻った写真を再び手にしながら、自らがザフトに戻ったその理由を語り始めるアスラン。
結果的に見れば、やはり知らぬが故にそこまで深刻には思わずに聞いてみる事の出来たメイリンの、数時間前に投げた聞かせて欲しいと言う願いが、ある意味では彼がそれを口に出来る予行演習ともなっていたし、
そしてそれに応じられたと言う事もまた、アスランに自身の想いの扉を自ら開かせる事にと繋がっていたのだった。
「俺の母は、ユニウスセブンで死にました。3年前の、血のバレンタイン≠ナ……」
自らが進んで戦争の中へと足を踏み入れて行くことになった、前大戦の時の事からアスランは語り始めた。
ナチュラルの友人も多かったアスランの母、レノア・ザラは植物学者としての自身を活かせる道として、
プラント内のユニウス市のコロニー群10基の内の7〜10の4基をプラントの人口を養う農業生産基地たるコロニーへと改装する計画の要員として参画し、
武力を用いるのではなく、自給自足を可能とする体制を構築する事による平和的な手段でのプラントの自立を目指すと言うやり方でもって、彼女なりの方策で
国防委員長として盟友のシーゲル・クラインらと共に、プラントの独立を勝ち取る為に日々奔走している夫パトリックを手助けしようとしていたのだった。
だが、その努力はブルーコスモスの一兵士が無警告にユニウスセブンめがけて放った核ミサイルによって、無惨に打ち砕かれる。
C.E.70年2月14日、その日ユニウスセブンにと居合わせた、レノアを含む24万3721人もの人々――もちろんその大半はコーディネーターだったが、
その中にはレノアの意志に共感し、協力をしていたナチュラルの学者や研究者達も含まれていた……――の全てが、一瞬にしてその生命を奪われたのだ。
「本当に何一つも残らず≠ノ、ある日突然母がいなくなってしまった……。その日の朝、いつもの様に挨拶を交わして見送られたのが、母上を見た最後になるだなんてな……。信じられなかった、いや、信じたくなど無かった……」
思い出すのはやはり辛い、過去の記憶を掘り起こしながらアスランは語って行く。
あくまで平和的な手段と対応でもって、プラントに生きるコーディネーター達を人間としてまともには扱おうとはしない理事国相手に向き合おうとしたレノアの努力と想いを、愚かなナチュラルどもは最悪の形で裏切った。
恐らくその思いが、母の死に衝撃を受けた父をあんな狂気の道へとひた走らせて行ったのだろう。
自分はそれを止める事も出来なかった。父の支えになってやる事も出来なかった……。
「俺に出来たのは、自分自身も理不尽にある日突然に母を奪われたと言う事への怒りと、子供の浅知恵で自分なりに父の助けになろうと言う思いとで、ザフト軍学校〈アカデミー〉の門を叩く事だけでした……」
アスランは自嘲気味に呟いて、寂しそうに笑った。
そうしてアスランは順々に語って行った。
アカデミーで一緒になった戦友達。
ヘリオポリスでのG兵器強奪と、かつて友と呼んだキラとの余りにも皮肉な形での再会。
次々と倒れて行くニコルら戦友達、地球上で互いに本気で殺し合ったキラと、そしてカガリとの出会い。
そんなカガリから、またラクスから投げかけられる問い。それに答えられない自分に与えられる核動力搭載機ジャスティスと、フリーダム追撃任務。
どれもみな、重く苦い記憶だった。
(そんな事が……)
語りを聞かされながら絶句しているルナマリアもまた、ザフト軍人の先輩であり、前大戦の伝説的なエース≠ニ呼ばれたアスランに対してのこれまでの自身の目の向け方と言うものを、省みさせられていた
――そこには彼女達とも大して変わらない、一人の青年がいるだけだった。
それも、ほんの少しだけしか年上でないのにも関わらず、自分達よりも遙かに重いものを何重にも背負う事を運命付けられた青年が。
(そう言えば、この人も父親≠も喪った、ひとりぼっちの立場なんだ……)
先程メイリンが気付かされたのと同じ事実にやはり思い至り、もう一度その事実を噛みしめ直している妹と、彼女もまた思いを共有していた。
「………………」
そして、ある意味ルナマリア以上にその事実に気が付き、その重さを我が身を重ねて噛みしめているシンがいた。
初めて聞かされるアスランの過去語りに誰よりも衝撃を受けていたのは、あるいは彼だったかも知れない。
(何で……俺は気付かなかったんだ? この人も俺と同じ、自分の家族を戦争に殺された$lだったって言う事に……!)
アスランの基本的な来歴そのものは、(有名人であるだけに)一応は知ってはいた。
けれどもそれはあくまで列記された情報≠ニ言う形のものでしかなかった。
今こうして目の前で、自らの口で当時を振り返りながら語るアスランの過去を直に聞かされて、シンは彼が自分と似た境遇――下手をすれば、自分以上に悲惨なのかも知れない――の人であると言う事実に、今初めて気付かされていた。そして、
(この人は、あの時自分の母親の墓標<ユニウスセブン>を自分自身の手で砕いていたんだ……!)
その事実に気が付いて圧倒され、無意識に妹の形見の携帯電話を握りしめながらただただその話に引き込まれていたシンは、そのアスランがふいに顔を上げて自分の方にと呼びかけて来た事に驚かされる。
「初めて出会った時から、俺が不思議と君の事が気になっていたのは多分、君の境遇に、どこか自分に似た様なものを感じていたからかも知れない……。
だから、ついつい余計な口出しをしたくなってしまう部分があるんだろうな、きっと」
すまなかったな、他人が知った様な口出しを〜って言う、不愉快な思いを何度もさせただろうけど……。
そうやって詫びながら、アスランは更に語りを続けて――そうして同時にシンにと語りかけていた。
連合のオーブ侵攻作戦に個人的な意志で介入してから先の、前大戦の帰結と、その後にプラントを離れてオーブに身を寄せていた頃の事。
そして彼自身の目が見て来たオーブと、代表として立ったカガリの想いとを。
そしてアーモリーワンから始まったシン達との出会いと、ブレイク・ザ・ワールド(ユニウスセブン落着事件)により勃発した今時の戦争のさなか、デュランダル議長との会談によりザフトへの復帰を決意し、
ハサウェイ達マフティーの面々と、シンやルナマリアらの年少の戦友達と共に、今は新たな道を探ろうとしている今≠フ自身の想いを。
アスランは余すことなく率直に語っていった。
「俺は英雄≠ネんかじゃない。今もこうして迷い悩みながら、それでもこんな自分にも何か出来る事はある筈だって、もがいているだけの男なんだ……」
一語一語を自分自身でも噛みしめる様にして言うアスラン。
彼自身は、ただ正直に自分はこの程度の人間なのだと詫びているつもりだけだったのだが、
そんな彼を見ているマフティーの大人達はその姿にこそ彼の確かな成長を見て取っていたし、
またシンやルナマリアにとっても彼と言う人物をより深く知る事による、自然な共感や敬意が生まれて来る様にとなっていたのだった。
「俺は今、ザフトにいます。でも、2年前の戦争の時までは、オーブにいました……」
アスランが語り終えた後の僅かな沈黙を挟んで、今度はシンの声がそれを破った。
今度は傍らに座るルナマリアの方をはっとさせながら、シンは先日彼女にだけは語って聞かせた自分の過去と想いとを、皆にも語り始めた。
支援
コーディネーターもナチュラルと変わらずに受け入れてくれる、平和な国だったかつてのオーブ。
そこに暮らしていた、平凡だけど平穏な家族の暮らし――そしてそれが無惨にも打ち砕かれた、戦争。
その手に握りしめた形見の携帯電話を開いて、そこに遺された妹の肉声を皆にも聞かせてみせ、自身もやはり過去の出来事の一つ一つを噛みしめるようにして語ってゆくシン。
そんな彼が呟いた一言は、いま間違いなく日々覚醒をしつつある、アスランの心に鋭く突き刺さった。
「そうやってオーブは、その理念≠ヘ守り抜いたのかもしれないけれど、俺の家族の様な、国民の事は守ってくれなかったんだ……」
「ッ!」
判っているつもりだったその事実は、その当事者が哀しみをもって語る声を前にしては所詮つもりでしかなかった≠フだと、アスランは思い知らされるしかなかった。
「俺の家族はオーブに、アスハに殺された≠だ!」
と言う、初めてあった時にシンから投げつけられたその言葉を、もう一度思い出して向き直ってみる。
(カガリ、俺達はこのシンの様な境遇に追いやられた人々に、本当にちゃんと向き合っていただろうか?)
アスランはハサウェイやイラム達と出会い、その導きを受けられる様になる以前の、ほんの少し前までの自身を省みながらそう内心で呟いた。
世界の――天下国家の有り様を心配するのも大いに結構。
実際にこの世界(のその有り様)≠ヘ本当に酷いのだから――マフティーの人々から聞かされた「彼らの世界」と比較して見れば一目瞭然だと、嫌でもそう理解せざるを得ないと言うのは間違いなくあった。
しかし、だからと言って余りにもそちらにばかり目が行きすぎていて、足下がおろそかどころでは無い事になっていたのだと、今では思う。
(要するに、頭でっかちになり過ぎてるんだな、この世界の住人=q俺達〉の多くは……)
それ自体は純粋さ、あるいは健全さの発露ではあるのだろうから、そういった事を懸命に考える、それ自体はいいとしても、
結局はそこまでで止まってしまっていて、そこから先の事≠ヘ?と聞かれたならば、とたんに言いよどむ。
それはそこまでのビジョンを持たずにそうしているからなのだと、ようやく気が付いて来ていた。
それでなくとも実際に何ほどの事が出来るだろうか?と言うのがあると言うのに、その中で自分に出来る事は何なのか?
それを考えて行動しなければ意味が無い――そうでなければ、ただ単に自分はこんなに頑張っているんだ!と言う様な単なる自己満足的なものだけで終わりかねないし、
更に下手をすればそこから、自分はこんなに頑張っているのに、何故それが通らないのか!とでも言う感じに、歪みかねない。
ハサウェイ達マフティーと言う良き教師を得、そしてかつての自身を(こちらも良き?)反面教師として、遅まきながらもその本来持っていた筈の素養を急速に成長させつつあるアスランだった。
もちろん、その様な事を考えながらシンの語りにも耳を傾けているアスランは、シン自身もやはり同様に成長しつつある事を感じさせられていた。
「インド洋での戦いで、俺は……何にも分かってなかったそのせいで、沢山の人達を傷付けてしまって……それでもう、二度と戦えないかも知れないって思いました……。でも……」
それでもやっぱりこうして目の前で、かつての自分の家族の様に身勝手に戦争なんかをやってる奴らの犠牲にされてる人達がいたら、俺はそんな人達を放ってはおけないって、そう思ったんです。
「俺みたいな思いを味わう人は、もう一人もいて欲しくない……今は、前よりももっと、ずっとずっとそう思うから……」
「シン……」
ルナマリアが呟く。
彼女が語って聞かせてくれた自分の事や、アスランが語ってくれた自身やオーブの――アスハ(この場合はカガリ個人)の話を聞いて、シンはそんな想いが自分だけのものではないのだと言う事に目を開こうとしていた。
「そうだな……。多分、俺達は誰もがみんな本当はそれを願っているんだ。でも、それが一番難しいんだよな……」
アスランがそう呟く。
それを受けて、それまで黙って聞きに回っていたレイが初めて口を開いた。
「一人一人のそんな想いが、必ず何かを変える。そう信じて頑張ってくれと言う、ギル……いえ、デュランダル議長からの言葉を頂きました」
俺も、その言葉を信じて戦っています。
「そうだな……。その為にも、今はまず明日だ」
引き取って言うハサウェイの言葉に、皆はそろって頷く。
翌朝の決戦を控えての志気は静かに、だがしっかりと高まっていた。
「シン?」
テントの外から遠慮がちなルナマリアの声がした。
「ルナ。ああ、起きてるよ」
寝付けないまま、丸めたままの寝袋を座椅子代わりにしていたシンは身体を起こしてテントの外へと顔を出す。
そこに立っているやはりパイロットスーツ姿のままのルナマリア。
どうしたんだ?
そう表情で問いかけつつ、シンは彼女を自分のテント内へと招き入れる。
「うん、お邪魔≠ンたいだから出て来ちゃった……」
そう苦笑しつつ中へと入ってくるルナマリア。
「? ……ああ」
一瞬間を置いてその意味する処に気が付いて、シンもまた苦笑する。
同じテントに〜と言うわけではないが、ルナマリアが付いて回っている様な格好になっているエメラルダの眠る隣のテントに、彼女といい仲の相手であるレイモンドが来ていると言うわけだ。
シンの傍らに、寄り添って腰を下ろすルナマリア。
彼女の甘い香りがシンの鼻孔をくすぐって、シンは自然とその肩に手を回して抱き寄せる。
ルナマリアもシンの身体にもたれかけさせて、その頬に頭を寄せた。
普通なら、そのまま抱き合いたいと思うのだろうけれど、あたたかさで心が満たされている様な気分でいるせいか、今はそれ以上には求めようと言う気には不思議とならなかった。
そうして寄り添って互いの体温〈ぬくもり〉を伝えあっている、ただそれだけで良かった。
「…………」
「…………」
しばし互いに黙ったままそうしていた後で、不意にシンはぽつりと呟いた。
恐らくはその想いが自然と紡ぎ出させた一言を。
「ありがとう……ルナ」
「え?」
驚きを覚えながらシンの横顔を見やるルナマリアの目の前で、シンはしみじみと言う感じに呟いた。
「俺がひとりぼっちでどうしようもなくなってた時に、ルナが側にいてくれた。側にいて、生きている事の温もりを教えてくれた……。
自分の想いなんか誰にも判らないって一人で勝手に思い込んで、俺は自分で周りを拒絶してた――本当は辛くて、苦しくて、たまらないのに……。
だけど、本当はそうじゃなかった。ルナにも、隊長にも、ハサウェイさん達マフティーの人達にだって、皆それぞれなりの想いや辛さがあるんだって事、やっと分かったよ。
俺が自分で気付かなかった――いいや、気付こうとしてなかっただけで、気持ちを分かってくれる人達は俺の周りに、ちゃんと大勢いてくれたんだ……」
そう呟くシンの横顔は、今までの彼とは明らかに違っていた。
支援
俺と同じ様な想いをする人達をこれ以上増やしたくないって、その思いを持ってこうして戦う事が、家族のみんなが死んでしまったのに一人だけ生き残った俺に出来る事――俺が生き残った意味なんだって、今はそう思う……。
そうやって想いを吐き出しているシンの脳裏には、戦場のただ中に一人生き残った自身の事を保護し、戦後にはプラントへと移り住む便宜をはかってくれた、一人のオーブ軍士官の事が思い出されていた。
家族を目の前で失い、自分一人だけが生き残ったと言う衝撃に打ちのめされていた当時の自分にその士官――確か……そう、トダカさんだった……――がかけてくれた言葉の意味を思い出し、そしてそれが正しかったと、今しみじみとシンは感じていた。
「よかった……」
ルナマリアはただ一言、それだけを呟く。
「え?」
今度は自分の方が彼女を見やったシンの目の前で、ルナマリアは本当に安心した……と言う表情を浮かべていた。
「ちょっと前までのシンね、見ていてもホントに辛かったもの……。でも今はね、凄くいい顔してる」
「ルナ……」
シンは自分では分からない事を指摘されて、やや戸惑いを覚える。
でもそれは、決して不快では無かった。
そうして二人は寄り添ったまま、いつしか心地良いまどろみの中にと落ちて行くのだった……。
『……本日の風向は、南西の風、風力は2……砂嵐が来る…………』
ガルナハンの街から発振された天気予報≠フ放送の声を、それぞれ別のギャルセゾンの通信士席に座っていたチャチャイ・コールマンとヨーゼフ・セディの二人ともが傍受して、急いでギャルセゾンのキャビンから降りて来ると、
外に居並んでめいめい準備された簡単な朝食を取っていた仲間達へと、拾ったその放送内容を報告する。
ニュートロンジャマーの影響による長距離の通信妨害があるとは言え、それよりも遙かに強力なミノフスキー粒子の散布下にある「宇宙世紀」製の機材であるマフティーの持つ機材は、その弱い電波をもしっかりとキャッチしていた。
「地球軍の防衛戦力が減少している、か。我々にとっては良い兆候と言えるな」
報告を聞いて、イラムはそう頷いた。
何の変哲もないかの様に聞こえるその天気予報≠アそが、彼らに協力するガルナハンのレジスタンスからの地球軍の配備状況を報告する通信となっていたのだ。
南東の風≠ヘ、北東方面からガルナハンへと侵攻する奇襲部隊に対峙する格好となる、地球軍の防衛戦力の存在を示す暗号であり、
同様に風力≠フ後に付く数字はその戦力の度合いをレベルで示す指標であった。
「地球軍<彼ら>もそれなりには警戒≠してはいると言う事ですね?」
と、そう尋ねる様にレイが呟く。
「ああ、そう考えてまず間違いは無いだろうな……」
「同感です」
熱いスープのカップを手にしながら、それぞれ頷くハサウェイとアスラン。
アスランがイラム達とガルナハンへと現地偵察に潜入した際に比べて、地球軍の防衛戦力のレベルが1ランク下がっていると言うのはつまり、その引き抜いた分をローエングリンゲートにと回した可能性が高い。
対峙するザフトのマハムール基地に増援が到着して戦力が再編・増強されていると言う動きを見れば、新たな攻勢の準備段階に入ったと判断して、自分達も対応すべく後方に下げていた戦力を再び前線<想定主戦場>へと戻すと言うのは自然な判断ではあるからだ。
「いずれにせよ、我々にとってはやりやすくなったと言う事には間違いないな」
イラムがまとめる様に言う。
敵の戦力規模が小さければより制圧に要する時間も短縮出来る筈であるし、そもそもザフトの再攻勢を予想される状況でありながら後方のガルナハン守備戦力を減らすと言うのは、後方に脅威が現れる可能性など基本的に考えていない事を示しているからだ。
天気予報と言う形の中に紛れ込ませた先程のレジスタンスからの報告――つまりその予報≠セけは天気の内容としては大嘘もいい所なのだが、一度きりの定時の予報がデタラメであってもそれに気付く者はまずいまい。
昨日の訓練に紛れての奇襲部隊の発進もそうだったが、この日の作戦に合わせての逆算による欺瞞作戦の数々は作戦開始の前から既に徹底して行わせているマフティーだった。
確かにこの状況を考えた場合、反面でミネルバ以下の主攻部隊にとってはより敵の戦力が増えると言う事でもあるわけだが、後方に敵部隊出現!と言うまさかの急報に地球軍を浮き足立たせると言うのも作戦の内であり、決して極端な不利にはならない。
……その筈である。
「我々がヘマをやらかさなければね」
そう言って冗談めかして言うアスランの言葉に、ミネルバやハイネ隊らの事を考えたメイリンも安心した様に笑うのだった。
そしてハサウェイはそうして結論付けた「状況判断」を皆にと示し、作戦の成功は疑い無しだと言う鼓舞の短い演説をすると、皆を見回した。
「では、時間合わせをする!……ガルナハン作戦のAコード時間合わせ……各、戦闘時計、時間合わせっ!」
その合図に合わせて、その場に集った奇襲部隊の全員が一斉に、時計を合わせた。
これもまた、士気を高揚させる為の一つの儀式だった――どれほど技術が進歩していようとも、結局は事を為すのは人間<ヒト>であると言う現実を示す一つの証でもあろう。
ともあれ戦闘ゼロ時刻にと定められた現在――午前8時を基準にして各マシーンが行動を開始する。
整備スタッフ達によって次々と各マシーンが立ち上げられて行き、各機のエンジンは(その機関システムはそれぞれ異なるが)揃って小気味よく吹き上がって行く。
その喧噪を耳にしながら、各パイロットは手早くビタミン剤と精神安定剤を服用する。
「この期に及んで言う事は何も無い。ただ全力を尽くそう」
MSパイロット達だけを集めた輪の中で(例外的にイラム、ミヘッシャ、メイリンの3人だけが一緒にいたが)、こちらではハサウェイから譲られたアスランが皆にとそう言って、出撃前に皆の心を一つにする儀式を簡潔に終えた。
「おう!」
そして異口同音に揃って唱和して、各自がおのおの自分の愛機へと散会して行く。
ここまではMSにと同乗してきたイラムとメイリンも、本格的な戦闘以外にする事がないここから先はミヘッシャの乗る6ギャルセゾン――今回はMS母機ではなく空中戦闘管制機としての任に就く機体だった――へと乗り移るのだ。
そんな中、一度きびすを返して愛機のインパルスガンダムへと向かおうとしかけたシンは振り返り、思わずアスランの方にと目を向けて彼と目を合わせてしまう。
「シン、どうした?」
そう尋ねて寄越すアスランに向かって、シンは一端うつむいてから再び顔を上げ、たどたどしい感じながらもアスランへとキチンと目を向けて語りかける。
「隊長、あの…………その、俺……色々と、本当にすいませんでした……」
これまでの自分が彼にと対して取っていた態度を詫びようとしているシンを見て、アスランはふっと優しい微笑みを浮かべた。
「いいんだ、シン」
「隊長……」
「俺も、もっと早くちゃんと君とも沢山話さなくちゃいけなかったんだな……と思っているよ」
これが終わったら、一杯付き合ってくれないか?
微笑を浮かべたまま、そう言うアスラン。
「隊長……。……ええ!」
彼の方から手を差し伸べてくれたのだと言う事はもちろんシンにも理解できたから、素直な気分でシンもまた頷く事が出来た。
そして二人は互いに敬礼を交わし合って、それからきびすを返して自機へと急ぐ。
準備を終えて洞窟の中から歩み出て来たメッサーとザクが、それぞれのギャルセゾンの上甲板上へと次々と乗り移り、搭載を終えたギャルセゾン各機が次々にVTOL発進を行って行く。
そして上空で待つそれらの中へと3機のガンダムもおのおの飛び上がり、全機無事に発進を終えた奇襲部隊は今度は一団となったそのままに、高速で一路ガルナハンへの侵攻を開始するのだった。
18 :
166:2008/12/31(水) 02:32:41 ID:???
お待たせしました、機動戦士ΞガンダムSEED Destinyの本年分の最後となります
(11)の方を投下させて頂きました。
自身もまた、この異世界の少年達を相手にしての様々な影響を受けて変わりつつもあるハサウェイらマフティーの面々の語りを呼び水に、
想いを吐露し合い、そして互いの想いを理解し合うアスランとシン、そして彼らの周りの仲間達の連帯が深まり行くその過程を描いてみたかったと言うのが、
この物語を思い付いたそもそものきっかけでした。
その意味で、シンがこの場にいなければそもそも駄目だと言う事で、廃坑無視は決定しました(笑)。
今年も残りは時間で数える程になりましたが、こちらにて書かせて頂ける様になりまして
とても充実した想いで取り組ませて貰っています。
見て下さり、また反応を頂ける皆さんに感謝しております。
次回、(12)はいよいよゲート攻略戦のバトルシーンです。
その分多少長くなって投下をお待たせしてしまいそうですが、お待ち頂ければ幸いです(苦笑)。
それでは、皆さんどうぞよいお年を!
〔追記〕
前スレ
>>872さん
GFFのΞガンダムは自分も奮発して入手しました。
カッコイイですよね、あれ♪
でもすいません、この物語のマフティーMSはΞもメッサーも、
小説版での方でイメージ設定してたりします(苦笑)
GJ!
なんというか、本当に暖かい人の調和を見た気がする。
別のSSでもたまにあるけど、シンとアスランが良好な関係になると
互いを知る事でそれぞれ自分を振り返って成長に繋がるものなんだな。
TV版でも本来そうなると思われ、いや普通そうするのが当然だったはずなんだが…
つか
ユニウス破砕から帰った時には妙に仲良くなってたんだがな
凸が辛いだろうことを察して無神経なバカを怒鳴りつけたりw
GJっすー
地元民は普通に知ってるような廃坑を基地建設時に見落とすとかありえませんよねえ
いやはや、やっぱCEには若者にいい影響を与える年長者が足りませんな
本来なら艦長が色々叱ったり仲裁したりすべきなのに
一つ気になったのは、コロニーに核撃ち込んで死体はキレイになくなりますかね?
真空中だと衝撃波が伝わらないので穴が開いて空気が抜けて全滅、程度じゃないかなあと
細かい話ですいません
誰か、前スレにあった奴もこれも纏めてwikiにいれてくれないかな
>>21 熱核兵器が「コロニーの中で」炸裂して、その爆心地に近ければ容れ物が破裂する前に中の空気が
一瞬にして摂氏4桁に達して燃え尽きると思うよ
GJです
ところで6/12の所なんか抜けてませんか?
クェスの話への入り方が唐突すぎる様な…
26 :
166:2008/12/31(水) 17:01:42 ID:???
コメントをありがとうございます。
確かに、ユニウスセブン破砕後のシンとアスランはそれをきっかけに、
以後いい関係も築けそうな雰囲気だったと思うのですが、その後の展開は……。
嫁が致命的に人間関係ってものを描く能力が無いと言う事を、
これでもか!と見せ付けられるだけ〜でしたよね(嘆息)
キラやラクスも含めての話ですが、その意味で本編はキャラクター達がみんな本当に可哀相です;
ですので、自分なりにそれをどうにか出来ればいいなとは思っているのですが……。
>>21さん
>地元民は普通に知ってるような廃坑を基地建設時に見落とすとかありえませんよねえ
うーん、我々の普通の感覚で言えばそうだろうとは思うのですけど、
地球軍が「まともに政治(軍政)なんかやる気がない」外来の単なる収奪者的な存在でしか無いのならば、
そこまで調べたりとかしないかも知れないのかも知れないかなと。
後は、入れ替わりで上に来る連中が信頼できるか否か?の如何に関わらず、
そういう隠し球的な情報等を持っておくのが、
支配されるのに慣れた側の人々の知恵かも知れないとは思いますね。
それと、宇宙空間での核兵器に関してですが、
>>24さんが書いて下さった様に、「コロニーの中で」爆発すれば中の大気が超高熱になりますし、
羅門祐人氏が「灼熱の竜騎兵シェアードワールド」の作家対談で語られていた話では、
宇宙空間で核兵器を使う場合の最大の威力発揮は、大気がある所での核爆発によって大気中に伝わる猛烈な爆圧の衝撃波による破壊効果なので、
その意味ではスペースコロニーの様な「密閉された大気のある空間」に向けて使うのこそ、宇宙空間における核兵器の「正しい使い方」なのだそうです。
もっとも、種劇中の描写では砂時計の継ぎ目の辺りでの核爆発で真っ二つに割れて、
内部は急減圧による沸騰で凍り付いた〜って言う風に描かれてますが。
その辺りはあえてあまり突っ込まない方向で考えてますので、ご理解頂ければと思います(苦笑)
>>25さん
6/12のクェスの話に切り替わるシーン、構成上はあの通りなのですが
確かに言われてみますと、そう感じさせるものになっていたかも知れません;
せっかくご意見を頂けましたので、ちょっと文章の流れの入れ替えたのを再投下してみますね
「メイリン!」
それを知ったルナマリアも、妹の出迎えにと急ぎ足で出て来る。
沈み行く夕日の緋に赤い機体を更に染めながら、MS形態へと戻ったセイバーガンダムが実にスムーズに降りてくる。
順調な飛行であったのだろう事は、その機動からも明らかだった。
大地にと両足を付けたセイバーガンダムから降りて来たアスランとメイリンを先着のザフトの3人が出迎えて、今度こそ本気で無事の再会を喜び合うザフトの若者達だった。
そしてアスランがセイバーガンダムを洞窟内へと隠し、同様にバッテリー補給器が取り付けられて機体のVPS装甲をオフにした、
陽がほとんど没しさろうと言う段になって、最後に発進し、もっとも長距離の迂回飛行コースを飛ぶ事になっていたΞガンダムの接近が確認された。
降着地点を示す為に、ほんの僅かな間だけ灯されて着陸を待たずに再び消された照明を見逃す事無く、Ξガンダムもスムーズに降りて来る。
そのまま洞窟内へと歩み入れさせてから待機モードに落としたΞガンダムから降りて来るハサウェイとイラムを、先着していた全員が控えめな歓呼の声でもって出迎える。
かくして奇襲部隊は1機も欠ける事無く、見事に長駆敵中への侵入を果たし、集結を完了させたのだった。
夜の帳は降り、無事に集結を終えたザフト・マフティー合同の奇襲部隊の面々は、夕食を済ませた後の時間を、車座に焚き火を囲んでの一時として過ごしていた。
夜と言う時間と、それを照らし出す赤い炎が持つ魔力に――あるいは明日に響かせない程度のアルコールの勢いにも――助けられ、
いつしかザフトの若者達に向かってぽつぽつと、「向こうの世界」においての自身の事をおのおの語って聞かせている、マフティーの面々がいたのだった。
「……それで、そのクェスって子はどうなったんですか?」
「死んだよ……俺の、目の前で……。殺してしまったんだ、俺が、この手で……」
一語一語を、噛みしめる様にして答えるハサウェイの言葉に、まさかそんな事があったのだとは想像も出来なかったが故に、平気で聞いてしまったルナマリアは絶句させられる。
「ああ、いいんだ、ルナマリア。それは、この俺自身が背負って行かなければならない罪業なんだから……」
そんな彼女達の反応を見て、寂しげな微笑を浮かべながらそう言うハサウェイ。
「指導者マフティー≠ネんて言う、柄でもないだいそれた事をやっているのも、あるいはそんな自分に対しての逃げなのかも知れないな……」
自嘲も込めながら、しかし悲壮と言うよりもどこか遠くを見るような表情で言うハサウェイ。
余りにも重く苦すぎる、痛恨の過去の記憶。鬱病にまでなり、また彼自身にマフティー・ナビーユ・エリンとなる事を選ばせたその出来事を
乗り越える、と言うわけには行かないまでも、ようやく今までとは少し違った心境で向き合える様にとなっている事に、当の彼自身が驚いてもいたのだ。
これまでも共に戦う年長の戦友としてマフティーの面々とはうちとけて来ていたミネルバの面々ではあったが、流石にその様な部分までをも聞かされるのは初めての事で、
そうして聞かされる様々な人の過去と想い、(異世界とは言え、同じ)人間世界の現実≠ニ言うものを圧倒される想いで聞くザフトの若者達だった。
「………………」
大トリと言う格好になったハサウェイがその語りを終えると、一通りそれぞれなりの話≠ェ語り尽くされた後の沈黙がしばし、座を支配する。
まるでその沈黙を呼び水にしたかの様に、アスランは自然と口を開いていた。
「俺は今、再びこうしてここに――ザフトにいます……」
GJ!
このアスランは間違いなくもう裏切らないな。
ていうかこれで裏切ってAAに行こうものならマフティーを初めとしてシンたちに血眼で追いかけられるぞ…
GJ!
>>28 確かにまず裏切る事は普通ありえないだろうけど
AAに拉致・監禁されて独房の中でorzするなんて事になる可能性も・・・
徹しきれないってか甘いところがあるからなぁ。
カミーユスレの奴みたいに連中に拾われて帰れなくなったら、
本心から敵に回らないにしても、中から説得しようとして結局抜け出せなくなりそうな気も。
今回の場合、後年の伏線や示唆が度々示されてるから大丈夫と思いたいが。
むしろ変化や成長がなさそうなキラクス(たぶんマフティー組からは
WBのグロなカリカチュアを演じていると冷たく笑殺されそうな)との対比が
みどころの一つにもなりそうだし。
新年明けましておめでとうございます。
ということで、投下します
第6話 別離…激闘の果てに
爆音と供に、ストライクノワールが爆発する。インパルスとレジェンドが倒したのである。
それとともに、レーダーで、シンがかなりの打撃をこうむっていることを知る。
「シン!?よくもぉぉぉ!!」
ルナマリアがライフルを撃ちながら、空中に浮かぶスターゲイザーめがけ、突っ込んでいく。
「やめろ!ルナマリア!」
レイはルナマリアを追う。
スターゲイザーはインパルスのライフルを回避しながら、サーベルを振り下ろすルナマリアに対して、
肩の円の形をしたビームサーベルを伸ばし、機体を吹き飛ばす。
「きゃああああ!!」
「ルナマリア!」
レイは、ルナマリアのインパルスを支えながら、
一撃で機体の腕を吹き飛ばした、その攻撃力に驚く。
いや、それだけではないだろう。あれだけの攻撃を加えながらも、なんなく回避していく、その操縦技術も凄まじい。
これが遺伝子の組み合わせにより出来た存在だというのか。
ギルは…議長は、このようなもののために、この技術を用いたわけではないというのに…。
『…敵を無力化する』
スターゲイザーは、その手に何か円形の形をしたものを持っている。
それが何かはすぐにレイにはわかった。
レイの機体の画面に映し出される反応…それは核だ。
「バカな!?地球上において核を使う気か!?」
「核?」
レイとルナマリアを無視し、スターゲイザーは、それをこちらに投げてくる。
レイは瞬時にライフルでそれを撃つ。
核兵器といっても起爆さえしなければ、撃墜することは可能だ。
だが…敵があれを何個も使い出すとすれば厄介だ。
「すぐに決める!」
レイは、ライフルを撃ちこみながら、スターゲイザーに隙を与えないよう攻撃を仕掛けていく。
スターゲイザーは、そのレイの攻撃を軽々と避けていく。
まるで踊っているようだ。
研究施設内の上での戦闘の音は、地下深くにあるここには届かない。
拳銃を向けるステラを前にしてマオは、ゆっくりと歩きながら話し出す。
「ステラ・ルーシェ、君はこの施設を見て何も思わないかい?人間は、戦うことをやめられない存在だ。
そして、勝利のためなら人間はなんだってする。複製だって、精神や身体を改造する事だって厭わない」
「…」
「あのラクス・クラインもそうさ。前の前の大戦だったかな。
あれで自分たちの勝利のために力を求めてギアスに手を出した。
結果があのありさまさ。精神が蝕まれ…。
だったらどうすればいいと思う?
争いをやめられない人間は、いっそのこと死滅させて、新しい人類に未来を委ねようとは思わないかい?
それが、君のような強化人間でもいいさ。ボクのギアスユーザーでもいい。
愚かな人間は、僕らのような存在で管理しなくちゃならない」
マオは、ステラを見つめ囁きかけていく。
「なんだったら、君の失ったものをボクがつくりだしてもいいんだよ?君の戦友であった、アウル、スティング……他にも必要かい?」
そのマオの言葉はすべてステラの心を読み取って話をしているのである。
ステラの暗い過去、記憶…それらを次々と盗み見ていく。
「君にはあるはずだ。深い、深い罪悪感…。だからだろう?
君の、君自身の複製を助けようとしたのは。それは結局、彼女を助けたいためじゃない」
「やめろ……」
マオは後ろにいる複製されたステラを見て微笑み、再び前にいるステラを見る。
「君は、彼女を自分と見立てて、自分を救いたいと考えているんだろう?
今まで失ったもの、君が殺してきた人間達に対する贖罪として…」
「やめろぉぉ!!!」
ステラの拳銃を握る腕が震え、銃を撃つ。
だが、それはマオを掠めることなく空を切る。
相手を睨む澄みきった瞳からは、涙が流れる。そんなこと、言って欲しくない。
彼女が見ている中で…自分のことしか考えていないなんてこと、言ってほしくない。
「やめろ!やめろやめろやめろやめろ!!」
大声をあげながら、マオに叫ぶステラ。
そんなステラを見て高らかな笑い声をあげるマオ。
人間、心を隠している。
それを一番知られたくない人の前で…こんな形で。
「所詮、自分のことしか考えていないのは、強化人間だろうと、変わりはしないということだね。なんとも面白い話じゃないか?」
「……」
ステラは銃を下ろして、うつむく。自分の見せたくないものを曝け出された絶望。
「どれだけ強い機体に乗ろうが、身体を強化しようが…人間は均等に心が弱い。
それは誰であれかわりはしない。ボクはそれを攻撃できるのさ?アハハハハハ」
拍手をするマ。
そんなマオに対して、その背後にいる複製されたステラは、そのマオの発した言葉に口元を緩める。
ステラの思い…さすがは、同じ自分だけある。
「…ステラ!」
その大きな声に、ステラは顔をあげる。
始めて名前で呼ばれた。もう1人のステラは、ステラを見つめて。
「私も、あなたと同じ。あなたに優しくされて…あなたに心を触れられて、嬉しかった。
誰かにこんなに優しくされたこと…なかったから。戦うことしか、私は知らなかったから…。
だけど、あなたに対する気持ち…それは感謝だけじゃない!
自分もこんな風にできるのかなって、あなたを私に置き換えていた。
私もこうやって誰かに優しくすることができるって……それを強く考えていた」
「……ステラ」
「あなたと同じなの。だから……落ち込まないで。
私達…ステラ・ルーシェは、こんなことで、止まらないはずだから…」
2人はお互いを見つめ、頷き合う。
心が繋がった感覚。
彼女の気持ちが、自分の気持ちが伝わる。
ステラは改めて、銃をマオに向ける。
「無駄だって言っているだろう?君がボクのどこを狙っているかなんて楽にわかるさ」
マオのギアスが輝き…ステラの心を見る。
先ほどとは違う?さらに冷静になっている…焦りを感じない。
しかし、おかげで…余計に心が見えるさ。
「アハハハ〜、やることも変わらないね?強化人間もやはり、僕の理想とする世界には受け入れられ……」
「……(…)」
ステラの、動揺もしない表情。そしてそのステラの視線は自分の背後に向けられている。
マオは、咄嗟に後を振り向く。
そこには、ステラと同じように銃を構えている複製されたステラの姿があった。
心の声…それはまるで一人の声のように聞こえる。
だが、それは2人分のもの。同じ人間同士だからできる、共鳴行為。
マオは良く聞き取ろうとしても少しのズレもない。完全なシンクロ。
驚愕するマオ。
「なんなんだ!!なんなんだよ、これ!!こんなの反則じゃないか!!」
マオの絶叫の中…銃声が響きわたる。
『シン!シン、返事をして!シン』
ルナマリアの声…、シンは、なんとか目を開ける。機体には損傷した部分に対する警告音が響きわたっている。
「ルナ…俺は」
シンは額に流れる血を拭う。意識が飛んでいたのか、現状を把握するまでしばらく時間がかかった。
やがて近くで聞こえてくる爆音などで意識が戻ってくる。
「くっ……あ、あいつは!?」
『今、レイが…』
ルナマリアとシンがレジェンドで戦闘を行うレイを見る。円形の形をしたサーベルが、伸びてレジェンドのジャベリンを弾く。
『うわああああ!!』
「レイ!!」
シンは助けようと、機体を動かそうとするが、唯一動くのは手だけである。
シンは、操縦桿を握り動かすがどうしようも出来ない。
『シン!』
「くそぉぉぉ!!!何も、俺たちは何も出来ないのか?」
そんなとき、別の方角からスターゲイザーを攻撃する黒き機体。
それは、ここにきた最初に攻撃を仕掛けてきたストライクノワール。
そう、あのキラ・ヤマトが乗っていると思われる機体である。
ライフルを連射して、敵の動きを封じる。
「あれは…」
シンは、なぜ自分たちを助けるのか分からないその機体に目を見開く。
レイもまた、同じようになぜこちらを助けるようなことをしたのかわからないキラの行動を不自然に感じていた。
『…パイロット、聞こえているか?』
「キラ・ヤマトか!こちらを助けるとは、なにが狙いだ」
『僕は、あれを止めたいだけだ。
ラクスの亡骸を弄び、利用したあれを許すことは出来ない。
そのために…あれを破壊する』
「……俺達と戦う意思はないというのか?」
『…信じられないのはわかるけど、僕は無益な争いは望まない』
レイは、その言葉を信じることはできない。
かつてラクス・クラインの名の下で世界を掌握しようと、混乱に陥れた存在だ。許されるべきものではない。
『僕を撃つというのなら好きにしてくれていい…』
キラはそういうと、スターゲイザーに攻撃を開始する。
レイは、感情を押し殺して冷静に考える。今ここでキラ・ヤマト、そしてスターゲイザーを敵に回すことが得策とは思えない。
ならば…まずは核を持つ、このスターゲイザーを倒すことが先決である。
「シン、ルナマリア…スターゲイザーを第一目標とする」
レイははっきりと告げる。
「そんな!」
「シン、私達の作戦は、この基地施設の制圧よ」
「だけど……」
シンは悔しそうに声をだしながらも、身動きの取れないこの機体では何も出来ない。だが、このまま見ているわけにも行かない。
「ルナ、手をかしてくれ」
「どうするつもり?」
ルナマリアの問いかけに、シンは唯一動かすことができる腕を動かす。
「かけてみる……この残った腕で」
その腕……それは、かつて改造されたコードギアス・ディスティニーの所以である『輻射波動』である。
ルナマリアは、その動く腕を見てシンのやろうとしていることがわかった。
倒れるマオ…、サングラスが落ち、耳のイアホンもズレ落ちる。
そこから漏れるのはC.C.の自分に対する声…。
床に倒れたマオは、口から血を流しながら倒れている。
ステラはそのまま、施設のブレーカーを落す。
建物全体が一瞬、暗くなるが、すぐに非常用に切り替えられる。
だが、非常用は建物全体の電力をまかなえない。
研究の要であり莫大な電力を消費する、この複製を製造するための装置は、
結果的にエネルギー供給を断たれたことになる。
「…これでいい?」
ステラは、もう1人の自分に駆け寄り問いかける。複製されたステラは笑顔で頷く。
「始めて…笑った」
そういわれて始めて自分が笑っていることに気がつくもう1人のステラ…。
「さぁ、行こう?シンたちも待っているから……」
「私が仲間に…迎えられる?」
「大丈夫…。ステラに任せて」
2人は双子の姉妹のように微笑みながら、足元がふらつく、もう1人の自分自身の身体を支え歩き出す。
これから、自分が見せてあげる。
この大きな広い世界のことを…戦争だけが全てじゃないって。
ここには優しい人も『敵』じゃない人だっていっぱいいるんだってこと。
「!」
もう1人のステラが、咄嗟にステラを突き飛ばす。
ステラは、そのまま床に転がる。短い銃声の先には、撃たれた腹部を押さえながら立つマオがいる。
「アハ、アハハハ…ぼ、ボクはね?こんなところじゃ死ねないんだよ。C.C.が待っているんだ。
僕の愛するC.C.が待っているのさ…だ、だから…こんなところで死ねないんだよ」
マオに撃たれた複製されたステラはその場で崩れ落ちる。駆け寄るステラ。
「あ…あぁ、いや…いやいや……」
抱きかかえ、声にならない声で、呼び続ける。
そんなステラに対してもマオは容赦なく拳銃を向けた。
「安心して…君もすぐ、彼女と同じところに……」
『マオ』
「し、C.C.〜〜〜!!」
ふと顔をあげるマオ、そこにたつのはC.C.の姿。
マオはその久しぶりに見る素顔に、歓喜の声をあげて、C.C.の元に近づいていく。
だが、抱きしめようとした瞬間、C.C.の姿は目の前で消える。
空を切る腕。マオは何がなんだかわからずに、あたりを見回す。
「C.C.!!どこだい!?C.C.どこに、どこにいたんだい!?ボクの…」
そんなマオの背後で涙を流しながら、ステラはもう1人のステラを抱きしめながら、銃を握り、撃つ。
それは、マオの身体を貫通する。飛び散る血。
それと同時に振り返るマオ。まるで銃など効いていないとう感じだ。
マオはあたりを見回しながら…。
「そ、そんな…君も、君も見ただろう?C.C.が、そう、すぐそこにC.C.がいたんだよ!嘘じゃない!!嘘なんかじゃ!!」
「うわああああああああああ!!!」
ステラは大声を上げて銃を連射する。
マオの身体に、銃弾が次々と貫いていく。
そして最後の一発、崩れかかるマオの額にめがけ撃ちこむ。
あたりを血の海に帰るステラ。
戦いが終わって、静まり返る研究所……。
溢れてくる血、ステラはもう1人の自分自身をしっかりと抱きしめていた。
「……」
「……」
お互いに向けて、会話を少しだけして…もう1人のステラは、微笑みながらステラを最後の瞬間まで見つめて目を閉じる。
ステラの重い絶叫が研究所内に響きわたった。
投下終了です。
本年もよろしくお願いします。
もしも種時代に融合体が来たら
そこら中にMSや戦艦の残骸在るしデビルガンダム以上に洒落にならねぇ....
悪魔化して生き返る連中も出るだろうけど悲惨な未来しか無いからな
シンとかハイネなんかが悪魔化したらよりダークヒーロー色強められるんだけどな
黒幕は○キオ→seed理論→遺伝子至上主義→(飛躍)→ゲノム党@狂四郎2030
などという連想がここ数日頭の中に。
投下します
最終話 未来…託された世界
「…」
緑色の髪の女が一枚の絵を眺めていた。
彼女が立つのは、様々な絵が並ぶ白い空間。
女は、絵から視線をそらす。
そこに映し出されていたのは、マオの姿である。
恐怖と絶望の表情を浮かべながら、こっちを見つめ、手を伸ばすようにして、絵画にとどまり続けている。
女は、マオを避けるようにして、その絵から視線を外し、歩き始める。
様々な絵が飾られたその道、光の先にいるものたちに向かって……。
「奴を仕留めるには…これしかない」
寒空の下で、激闘繰り広げ続けるシンは、レイとキラがスターゲイザーと戦う姿を眺めながら、ルナマリアに告げる。
スターゲイザーは、相手が二機にも関わらず、そのパイロットの技量の高さも相まって、負けておらず、さらにいえば…。
「くぅぅぅ!!」
「バカなっ!?最新鋭機を圧倒しているというのか!」
レイは悔しそうにコクピットをたたき怒鳴る。
スターゲイザーは、円状のサーベルを伸ばし、二機を近づけさせない。
あのスターゲイザーを野放しにするわけにはいかない。
大量の核爆弾を搭載している、あの機体は一機でも、地球圏の環境を激変させる能力を持っている。
「ルナ…頼めるか」
「いいわよ。それしか手がなさそうだし…」
ルナは、やれやれといった形で、頷いてシンのディスティニーの肩を支えながら立ち上がる。
ディスティニーは、両足の機能を麻痺させており、インパルスに支えられている。
『両機、聞こえる?』
ルナマリアの言葉に答えるレイとキラ・ヤマト。
そのルナマリアの提案を聞いた2人は…。
「わかった。ディスティニーのパイロットにかけるよ」
「…シン、決めろよ」
2人の言葉にシンは頷く。
「邪魔だ」
スターゲイザーが一気に殲滅しようと、核爆弾を再び出そうとする。
レイとノワールのエネルギー残量も少ない。よって攻撃に関しては、これが最後となる。二度目は無い。
「いくぞ!!」
ルナマリアのインパルスがディスティニーを担ぎながら、ディスティニーのブースターも合わせて全開にして飛翔する。
それを見たスターゲイザーはハエを叩き落すかのごとく、ライフルを構え、撃つ。
ルナマリアは、それをシールドで防ぎながらなおも上っていく。
さらには、左右両方向から、スターゲイザーに向かってノワールとレジェンドが切りかかる。
スターゲイザーの両翼から、円形のサーベルが、両者に伸びる。受け止める二機。
「いまだ!シン!飛べ!!」
レイの声に合わせて、シンのディスティニーを上に、押し出すルナマリアのインパルス。
加速をつけて、スターゲイザーに突っ込む。衝撃が、両者に襲い掛かる。
始めてはいった、敵との近距離。
「全身の部分を破壊した…、お前には何も出来ない」
まるで機械のような口調…、これが遺伝子で造り上げられた強化人間。
シンは、そう思いながらも、操縦桿を握り締めた。
「まだ俺には、これが残っている!!」
シンが繰り出した唯一の腕でスターゲイザーの頭部を掴むディスティニー。
「!?」
腕の内部からの強力なエネルギーの反応に、驚くスターゲイザー…。
だが、気づいたときにはもう遅い。シンは操縦桿の端をあけ、そこにあるスイッチを押す。
「輻射波動!!」
沸騰するように、期待の内部に送り込む衝撃波。
みるみる、機体はふくらみ、機体内部から破壊されていく。
コクピットにいる、作り出されたラクス・クラインの容姿をした強化人間もまた、その強力な衝撃波に頭を抱える。
遺伝子による無理矢理な強化は、その圧力で、人間の構造バランスを崩す。
悲鳴をあげながら血を溢れさせる。
「シン!!」
エネルギーを使い果たした、シンのディスティニーはそのまま、スターゲイザーから離れ、落ちていく。
それをキャッチするルナマリア。
それと同時に、スターゲイザーは身体のあちこちから爆発を起こし、空中で爆散する。
「…やったわね、シン」
「俺だけのおかげじゃない。レイ、ルナ……そして、今回は、あいつも」
心の底から喜ぶようなことはしないシン。
キラは、爆発するスターゲイザーを眺めながら、残り僅かなエネルギーの中で、レイたちに背中を見せる。
「これからどうするつもりだ?」
レイは、ノワールを見て聞く。
「……僕は、ラクスの求めていた世界を守るつもりだ。
今の作られたラクス・クラインが、彼女の求めた世界かどうかを見極めたい、そして…俺は、ラクスを利用したものを叩く」
そういうと、キラは、ノワールを基地施設に向ける。ライフルを向けるキラ。
残ったエネルギーで、基地施設を破壊するつもりだ。
だが、そのとき、大きく基地が轟音を響かせて爆発する。
「なんだ!?」
「自爆した…」
炎の柱が立ち上る中、シンたちは驚きの表情を見せていた。
そこを走る影…、それは、ステラの機体である。シンはそれを見つけて叫ぶ。
「ステラ!」
シンの声に、レイは頷き追う。
ルナマリアもまたシンのディスティニーを抱えて、ステラを追う。
残ったキラ・ヤマトは自分を利用したものの最後を見ながら、飛び去っていく。
キラが離れていく様子を確認するレイ。
レイは、キラを追う事はしなかった。感情を押し殺し、任務に従った結果である。
これが正しい結果だったのかはわからない。だが1つはっきりといえる。
自分たちは戦いに勝った。異邦人の力を借りず、自分たちの手で未来を守った。
これは、価値ある、大きな勝利なのだ。
ステラのMSが止まった場所は、湖だった。
いつしか、空は灰色の雲に覆われて白い雪が降り出し始めていた。
下がっていく気温の中で、ステラは、亡骸である彼女の分身を、湖の前においていた。
ステラは彼女のもう二度と動かない身体を見つめながら、思い出していた。
今までのことを。本来ならば、これからもっといろいろな世界を見ていくはずだった。
自分が感じたものを一緒に共有できるはずだった。
彼女は、このまま眠る。
誰の手も届かないところで、誰にも邪魔されることなく深い水のそこで。
もし、自分だったら…どうして欲しいかを考えて至った結論。
「……ステラ」
振り返るステラの前にいたのは、シンやルナマリア、レイたちの姿だった。
シンは、ステラの前に横たわるもう1人のステラを眺めていた。
何があったかははっきとはわからない。だが、現実はこうして横たわっている。
すべてが上手く行くわけじゃない。
もし、ルルーシュが、ベルリンでステラを助けなければ、こうなっていたのは今のステラのほうかもしれないのだから。
「戦うこと……本当は好きじゃなかった。みんなと一緒にいたいって…言ってた」
「あぁ。わかっていたよ」
「ステラ、忘れない。絶対に……」
ステラは強い口調で、そう告げる。
レイは目を閉じ、その言葉を聞き続ける。
強化人間と、複製された存在。やはり、それは悲劇を生み出すもの。
自分やステラは、その中でも恵まれた存在なのだろう。こういったものたちを二度と生み出してはいけない。
レイは、心に刻み込む。
「……もう、誰も苦しめない。誰も虐めない……」
ステラは、亡骸を湖の中に沈めていく。
ゆっくりと沈んでいく亡骸。
本当は、傍においておきたかった…離れたくなどなかった。
だけど、彼女は、研究施設にて最後にステラと約束をした。
「…いやぁ、いやぁあぁぁ!!」
大声で施設中に響くように叫ぶステラ。
そんなステラの頬に手をあてたもう1人のステラは、眠そう目を必死にあけるような少女のように、優しい表情だった。
「私は、あなたとずっと一緒にいる。あなたが笑えば、私も一緒に笑う。あなたが哀しめば、私も一緒に哀しむ…」
「…そんなこと、出来ない。ステラがいなきゃ、一緒にいてくれなきゃ出来ない!!」
感情的になるステラを見つめ、首を横に振るもう1人のステラ。
「鏡を覗いて見て。そこに、私はいるから…」
「かがみ?」
「…そう、私はあなたの虚像、だから…。話せなくなっても…一緒にいるよ、ずっと」
「約束?」
「うん、約束…」
2人は小指を重ねる。
互いに向けて、微笑む2人……。
そして、彼女は眠るように目を閉じた。
雪の降る中、沈んでいく彼女との約束。
そう、彼女を忘れなければ、彼女は自分と供に存在する。
誰かが覚えていれば、その人間がこの世界に生きていた証はあり続ける。
だからステラは忘れない。
もう二度と。自分と出会った人たちは…みんな、全員。
海の中に消えていくものを最後まで見届けながら、ステラはお守りである、首にかけられた起動キーを握りしめ続ける。
スイスにおける戦いは、ザフト上層部に伝令された後、戦いはなかったこととして抹消されることになる。
火種を大きくすれば、自分たちの身も危ないと判断したためであり、素早い切り捨てだろう。
複製技術を利用しようとしていたザフト上層部の目論見を潰したミネルバに対しても、
これにより大きなペナルティーは科せられることもなかった。
こういった科学技術の叛乱は、おそらくどこの世界でも起きることだろう。
今回は、上手く止めることはできたが、また起きない保証はない。
ミネルバは今後もこのようなことが起きないよう、世界の平和、未来を守るために動き続ける。
ミネルバのステラの部屋にある鏡。スイスでの戦いの後、ステラが自分で購入したものである。
苦しいこと、楽しいことがあったときは、すぐに報告するようにしている。
答えてくれないけど、でも、きっとそこにいる人は聞いてくれているから。
「…ステラ、行くぞ?」
部屋の外からシンの声が聞こえる。
ステラは、返事をして部屋から出て行く。
今も、ステラは戦いを続けている。
先の、苦しいことがあっても
ルルーシュたちが造り上げて、そして受け継いだ未来を守るという意志
そして…未来を生きることが出来なかったものたちから託された世界を守るために…。
支援
投下終了です。
かなり反省点としてはいろいろありますが、ありがとうございました。
wikiにのせてくれた方、読んでいただいた方ありがとうございました。
GJ!
そして乙!
次の希望は種死を去ったルルーシュに00にいってほしい!
CEにテム・レイが来たら
もし種世界にマジンガーの甲児くんがやって来たら
スパロボのシンジみたいに甲児くんの子分的ポジを体験しながらもその影響でアツくなるキラ
甲児はあれで自力でTFO作っちゃう天才だからなぁ
ちわ〜
ちゃんとした投下はまとまってからなんだが、CEに00が来たSS投下しようと思っとるもんですがここなら問題無し?
ある意味スレタイの文字どおりだしいいんでない?つかwktk
だよな良いんだよな?〇〇を00と読んでしまったんだが微妙に違うみたいで悩んでたんだわ
ちょっとだけ予告
CE.82 地球とプラントは過去おける三度による闘争の末ラクス・クラインがプラント評議会、議長となり地球連合首脳アスラン・ザラと和平を条結したことにより平和的な腐敗の中へ沈んでいた。
度重なる戦争によりエネルギーは枯渇しプラント主導による太陽光発電をマイクロウェーブ化する形の発電によって全世界へのエネルギー供給はなされていた。
言わばプラントによるエネルギー管理である。
しかし、これに異を唱える者もいた。彼らは各地で抵抗を続けたが「親衛隊」の手により壊滅していく。
「……レイ・ザ・バレル」
シンは青春を共にした親友からの手紙を見てため息をはく。
なぜなら彼は既に他界しているからだ…
誰が……
「久しぶりだな。シン。いや初めましてと言うべきなのか?」
薄く笑うブロンドの「美女」レイ・ザ・バレル
「シン!!デットリーアームからライディングアームに切り替えて!!」
獅子の落とし子「アレックス・ユラ」
「なぁ。ロウ。俺達は何のために戦うんだ?……俺はな、こんな世界がイヤだからさ。だから、狙い撃つ……。」
記憶無き狙撃手「デュナメス」←先にネタバレ「ロックオン」
「面白い!!この私、ワンマンアーミーが相手になろう!羽のガンダム!!」
「こいつ!!フリーダムをガンダムって……」
世界を混沌に突き落とす存在「アロウズ」
そして世界の歪み
「「「ああ、そうだ。僕達は全てキラ・ヤマトだ。」」」
世界の歪みを破壊するため少年は剣をとる。己の信じる神『ガンダム』になるため
「俺が……俺達が!ソレスタルビーイングが!『ガンダム』だ!!」
以上。
>>地球連合首脳アスラン・ザラ
エエエェェェェェΣ(゚Д゚;)ェェェェェェェェェェエ!!
驚くのはそこだけじゃあないな
駄作と駄作を掛け合わせて良作を生み出せるか?!
こういうのは「来た」とは言わないんじゃね?
とりあえず、やってみるわwww
空手とブーメランを組み合わせたって、ねぇ・・・
>地球連合首脳アスラン・ザラ
地球終わり過ぎwwww
いろいろ終わってるなあ
世紀末救世主はまだか?
そんな世界なら
メガテンのように悪魔に世界を支配された方が
まだマシだな。
69 :
通常の名無しさんの3倍:2009/01/09(金) 07:46:32 ID:3Z7ZYNfb
ガンダムF90(漫画版)と種死とのクロスはどうだろう、
一応構想があるが・・・。
某マッドテープのせいで
種世界と宇宙戦士バルディオスをごっちゃに想像してしまう
クロスオーバー難しそうだ
>>69 ラクシズとの勝ち目無くなりますねw期待してよいですかwww
>「「「ああ、そうだ。僕達は全てキラ・ヤマトだ。」」」
やっぱクローンだったんだなwww
最初に七体いれば世界を破滅に導くぼーるずでも召還してみるか
やっちまった…
先に断っておく。死人が居たりしてカオスだ。ついでに下手に期待しないでくれ。俺は作文は上手くない。
つかシリアスなギャグ路線になりそうで怖いわwww
とりあえず投下すっから苦情よろしくwww
「灰ってのは雪に似ているよな。」
シンは誰に言うでもなく呟き灰色の空を見つめていた。傍らの少年は聞いているのか、無心に彼の機体、そのアクチュエーターを取り外している。
「ダメだ。左足のアクチュエーターはやっぱ死んでるよ…コレじゃ右足のサーボもご愁傷様かも」
……まだ10歳に満たないような子供である。それが元モルゲンレーテ製の実験機ツキカゲをいじっている。
少年の名はアレックス。彼は…孤児だ。
「なぁ。子供なら子供らしく雪ではしゃいだりしろよ。」
頬を機械油で汚した少年にシンは投げやりに話し掛ける。
「シンがツキカゲの足を潰してなけりゃちょっとははしゃぐよ…」
「悪かったなヘタクソで!」
あからさまな嫌味にカチンとくるあたり子供だなと思いう。だが言いたくもなるだろう。コイツの維持費は馬鹿にならない。
「…ゴメン。」
「……なんだよ。俺が悪いみたいだろ。」
シュンとするアレックス。
「でさぁ。バレル…さん?だっけ。美人だった?」
「お前…スレたガキだな。つか女だって教えてないはずだ……」
アレックスの言葉に驚きつつ、シンは苦い顔で旧友を思い出す。
「だって、切手の裏に口紅があったし、シンがそわそわしながらスーツを着てたなんて悪夢か、昔の恋人か!?……で美人?」
このっ餓鬼!!と言う言葉を飲み込み。シンは灰色の空を見つめる。
「あぁ!美人だよ!!ホレ。」
「え?マジ?」
再開の時に仕掛けておいた隠しカメラで撮った写真をアレックスにほうる。
写真には20代半ばのプラチナブロンドの美女が写っていた。目鼻立ちは整い。切れ長の目、唇が薄めだがそれが彼女の知的さを際だたせる。そして何よりレイに瓜二つだった。
「ありえねー!!なんでこんな美女がシンに!!つうか!シンどこで知り合ったんだよ!?」
「それが知らねーんだよ。」
ガリガリと頭をかきむしりシンはアレックスから写真をひったくる。
「……レイはな。俺のダチだったレイは男だった。だがコイツは女なんだ。それだけじゃねぇ、レイは死んだはずなんだ。」
「……双子の妹とか?」
「違うな。クソッタレ。なんなんだよ。」
シンは苛立ちを隠さずに吐き捨てた。
同刻、タクラマカン砂漠
「チィ!」
「オラー!!滅殺!!」
「ウザイ…」
「タラタラしてんじゃねーよ!!」
照りつける熱線の中ビームが煌めき大地がはぜる。灼熱の大地の上、MSが激しい攻防を繰り広げている。
赤、黒、オレンジの機体が一機の白い機体をなぶるような構図である。
その中の白い機体。ガンダムヴァーチェのパイロットは苦々しく三機のガンダムを見つめる。
「スローネ…なる程こちら側の世界で改修を受けたのか……だが、マイスターたる私が遅れを取るわけにはいかん!!」
「ハァ?なに頑張ってんの?」
深紅の粒子を撒き散らしながら赤い機体が猛撃を行う。微妙にタイミングをずらしたビームはその全てがGNフィールドにより無効化される。
「オラー!!瞬殺しろ!!ファング!!」
無数に放たれる小型砲台。ヴァーチェのパイロットはそれを目で追うのをやめると機体に握られた武装を接続する。
「やれよ!!ファング!!」
「GNバズーカ、解放。」
一斉に襲いくる砲台に対し、ヴァーチェは接続した武装を発射。器用に機体を回転させ撃墜する。
「クロト!!てめぇも死ねや!!」
「クッ。」
見ればツヴァイの後方にアインが控えており、
「GNメガランチャーか!?」
同士討ちを恐れない。連携と呼ぶにはあまりにもかかわらずデタラメで完璧なタイミング。一瞬の動揺が回避のタイミングを逃した。
高出力のビームがヴァーチェを襲う。パイロットは薄く笑い機体に取り付けられたシステムを解放する。
「南無三!!……トランザム!!」
GNメガランチャーがヴァーチェを直撃する。爆発。しかし、緑色のGN粒子は見当たらない。
異変にいち早く気付いたのはクロトと呼ばれたツヴァイのパイロットだ。爆発の中。凄まじいスピードでアインへと飛びかかる何かが見えた。
次に気付いたのは、ドライのパイロット。何かがアインを蹴り飛ばした瞬間に動きが止まったからだ。
女。
「は?」
「そんな腕で勝てるものか!!」
深紅の女がドライの右腕を斬り捨てる。そして三機のガンダムへ宣言をする。
「ナドレ。ガンダムスローネを破壊する。」
更に同刻 宇宙
「すまねぇな。本当に何にもおぼえてねぇんだ……」
「気にすんなって!!俺は宇宙一のジャンク屋だ。記憶だって治してやるよ!!」
ジャンク屋ロウ・ギュールは、大破したMSで漂流していた男と話していた。かなり長い間漂流していたのだろう男は酸素欠乏症となってしまっていたがすんでの所で一命を取り留めたのだった。
「……でもどうやって治すのよぅ。」
「ソイツはこれから考える。所で、アンタの名前なんだが、「デュナメス」ってのはどうだ?」
デュナメスとは彼の乗っていたMSに刻まれた文字だ。多分、機体名だろうが名無しの権兵衛よりかはマシだろう。
「ついでに自己紹介だ。俺の名前はロウ・ギュール。宇宙一のジャンク屋だ!!」
「私は山吹樹里。よろしくね。」
「デュナメスか……悪くないな。よろしく頼むぜ。ロウ。ミス山吹。」
彼の記憶の中のビィジョンがそうさせるのか立ち上がり握手をしようとするデュナメス。
「ってまだ動いちゃダメよ。」
「そうだぜ。今はゆっくり体を休めてくれ。記憶以外にもアンタはボロボロなんだからな。」
「わりぃ。」
とりあえずおしまい。さぁ罵声を浴びせるが良い!!www
絶望と録音が来てるのかwww
というか00組はまだ出てこないだけで結構いる。むしろだす。
世界背景は種だけどかなり「歪んでる」感じす。因みに実は00組で「来てる」人達は来てる時間帯が違ったりする。
ガンダム=第二期始まる前
録音(兄)=デュナメスがひろしに完全に破壊(ここは原作と違う)されて漂流中
電波=同じく大破漂流中
先生=00の第二期で死んだ後(未定だから第二期で死ななければ00第二期の10年以上後)
先生だけ激しくずらした感じにしたい。
投下乙
CEにB・Jが居てラクスの声を変えたら
とりあえず一行ごとの空行は勘弁prz
デスティニー終了後世界に
バルディオスが来た話をつくってみた
(序盤の脚本だけ)
上空から見れば波ひとつ見えない、そんな海の上を行く2つの白い航跡。
白く塗装された丸い頭の人型マシーンが2つ。
ザクと呼ばれるそのマシーンの一方が、もう一方の肩にさながら話しかけるように右手を乗せた。
*「キャップ、もう少しで巡視行動の境界線です」
明るい女パイロットの声。
*「OK、そろそろ引き返そう。救難信号、それから漂流物の見落としはないな」
それに応える男パイロットの声。
*「ありませんっ、いつもそうだけど新人みたいなミスチェックしなくても結構よ」
*「こないだ燃料切れの漁船をあやうく見過ごしそうになったのはどこのどなたでしたっけ?」
職務中ということを忘れたかのような砕けた口調に変わる。
一言二言話した後は、この2人はいつもこうらしい。
そうしたやりとりの最中に、女パイロットの口調の雰囲気が変わった。
「あれ、シン今何か光らなかった?」
しかし男パイロットはそっけない。
*「よくある勘違いじゃないのか?海で何か反射したとか」
*「違う、雲の近くよ海じゃないわよ」
ふくれっつらをしたような口調だとわかる話しぶりに、いつものことだと思うしかなかった。
しかし男パイロットも上空に一瞬光るものを発見した。
*「なんだあれは、大きいぞ」 見る見るうちに影のようなものが視界に入り、それが大きくなってくる。
気づくのが遅れたと判断した男のパイロットはとっさに
「離れろ!」と叫んだ。もう1機のザクの右肩を押しのけて急速に離れる。
その間を割るように大きな影が一瞬で通り過ぎた。
風圧に飛ばされよろめいたザクを立て直しながら、男はシマッタ、と一瞬悔やんだ。
こちらに近づいてくる速度を読み違えたためである。
仲間のザクを気遣いながら、その男、シン・アスカは海に吹き上がった巨大な水柱を見ていた。
*「ルナ、大丈夫か!」
*「なんとか。それよりあの大きな落下物よ」
2機が揃って落下した物体に近づいていく。
肩から上を水の上に出して浮かぶそれはこの世界の人型機械・モビルスーツのように見えた、しかし
「大きすぎる・・・」 モニターに映る女パイロット、ルナマリア・ホークはその物体を驚いたように凝視する。
シンの目から見た、モニターに映るルナマリアの表情が、こちらを向いて驚いたように見えた。
ルナ「何を怒ってるの?」
シン「なんだよ、そんな風に見えるのか?」
シン「落下物に近づいてから、見る見る顔が変わってるよ」
聞き流すようにシンの白いザクは巨大な物体の手前30メートルに近づいた。
この物体が起こしうる危険がわからないため、これ以上は近づけない。
シン「まるで、ガンダムタイプだ」
嫌な記憶が一瞬よぎる、それをすぐかき消してシンは外部スピーカーで呼びかけた。
シン『おい聞こえるか。お前たちはどこの者か、怪我はしていないか』
意外なほど巨大な物体の返事は速やかだった。
物体『お前は、誰だ』 オウム返しのように聞き返される。続けて物体から言葉が飛んでくる。
物体『パイロットのひとりが怪我をしている。頼む、手当てをしてやってくれ。』
返事にたいしてシンのザクは過敏な反応を見せた。
唯一武器として使える装甲ナイフをザクの手に持たせて前に突き出す。
シン『動くんじゃない!』 物体から聞こえる返事は今度は懇願に変わった。
物体『頼む、早くしなければライタが死んでしまうんだ!』
それは以前の戦争で町を焼き払った、巨大なガンダムタイプに見えた。
その外見が彼が唾を吐きたいほどの苛立ちを生む。
〜数時間後 海上〜
白色の船が空を行く。周囲には1機のVTOLがプロペラを回して飛び、上部甲板へ降りようとしていた。
船の船底につながれた20数本のケーブルが先刻海上に落ちた巨大な物体を吊り上げ、一路西へ向かって移動していく。
その格納庫、ヘルメットを脱いで歩くシンに部下が駆け寄った。急ぎの用事のためか敬礼もなく話しかける。
部下「キャプテン、あれは見たところモビルスーツではなさそうです。該当する機種が存在しません」
シン「該当ナシ?」
部下「とにかく、陸に揚げましょう。それからでないと調べられそうにありません。何しろモノが大きすぎますから」
シン「ありがとう、あとは頼みます」
年上のベテランメカニックマンだったせいか、最後だけ丁寧な受け答えをして見せる。反対側を見やると、
担架で運び出される者がいた。怪我をしたパイロット、どうやら大柄な男のようである。
2人のパイロットがその担架に駆け寄った。言葉をかける間もなく警備兵に取り押さえられる。
ルナマリアはうなづいて警備兵に指示した。「手順どおりよ、連行して。」
殺風景な独房に放り込まれた2人は、アフロヘアーの男に、青い長髪の男。
長髪の男は、扉の鉄格子につかみかかるように叫び続けていた。
「なぜこんなことをする!」
「教えてくれ!ライタは無事なのか!」
「俺たちが何をした!俺は、敵ではない!」
「なぜだ!」
忌まわしい戦乱を終えたこの世界、
3年にわたって微小な紛争すらないという空前の平和を、人類は謳歌していた。
文になってる分だけ腹くくって投下しました
CE世界についての知識は多分諸氏に比べると相当乏しいですが
なんとかシンたちに対して真剣に向き合ってみたいとです
>>87 覚悟決めて書いてる分書けない奴より上なんだ。
頑張ってくれ
アフロヘアーの男が
アフロディアの男に見えた。
初歩的ミスを犯した
シン「なんだよ、そんな風に見えるのか?」
ルナ「落下物に近づいてから、見る見る顔が変わってるよ」
正しくはこうですスマソ
とりあえずメカニックはこんな感じです、みたいな説明は
作中に必要なければ特に後に書かなくても問題なす?
ガンダムマイスターたる者。いかなる時も頑張らなければならない。
俺はは種死も00も世界設定が微妙だが突撃してるから大丈夫。
MGストライクマワールを作りながらネタ考えてたらキラをマワールに乗せたくなった……更にカオスになるな……www
続き行きまーす。
「……そうか。アラスカで…。わかってる。」
ガチャンと音を立てて豪奢な電話機に受話器を叩きつける白髪の男。アスラン・ザラ。「頭髪の後退はほとんどしてない」が「ストレスの為白髪になってしまった」為に老人のようにも見える。この時勢に電話機を使うあたりストレスを少しでも無くしたいのだろう。
「…又か、私はラクスになんと報告すれば良いのだ…」
…「又か」…かつてのモルゲンレーテ製コアシステム実験機。通称月影(ゲツエイ)。それを奪取し地球圏統一連合国に対し一個人で戦いを続ける男がいた。シン・アスカである。
彼は、戦争犯罪者であり歪んだ思想の持ち主「カガリ・ユラ・アスハ」の洗脳を受け今なお、各地のゲリラと共に連合へ楯突くいわば不穏分子である。
「馬鹿やろう…」
「ザラ様。会議のお時間です。」
「今行く。先に始めていてくれ。」
会議と言っても中身は経済状況や国内状勢の報告だ。その上最初には媚びへつらう内容の世辞が飛ぶのだ。鬱屈とした気持ちの中アスランは部屋を出る。
「シンもなかなかやるものね。これで45箇所目…コアシステムの中枢…ツキカゲだけで良くもまぁ。」
ハンディディスプレイに映し出されるのはアラスカのマイクロ波受信装置。それを黒い機体が完全に破壊している姿だ。赤髪の秘書。ルナマリアは扉を見つめつつ今し方出て行った人物へ憐れみの言葉を投げかける。
「ねぇ?アスラン。」
アラスカ
シン・アスカがツキカゲを修理していたその頃、彼とは違う場所で男が女へ問いかけていた。
「レイ・ザ・バレル。お前は何者だ?なぜエクシアについて知っている。」
「正確にはこの世界の歪みについてだ。」
「エクシアの件は感謝する。が、答えろ?貴様は何者だ?」
エクシアのマイスター「刹那」はレイに向け銃を構える。口調も命令口調になり完全に命令している。がレイは動じない。
「私を撃つか?」
レイに向けられた銃に力が入る。刹那がトリガーに指をかけた時、
「そこまでだよ。刹那。彼女は敵じゃない。」
「アレルヤ・ハプティズム……無事だったのか……?」
「助かったぞ。アレルヤ。いくら私でも撃たれれば痛い。それに私も一応は女だ。出来れば弾痕を残したくはない。」
まるで気にした風を見せずにレイは刹那から目を離す。その目は刹那の後ろのドアから入って来た長髪の青年を見つめている。
「の割に女性らしさは感じられないけどね。」
アレルヤは彼女と親しいのだろう。呆れたようなジェスチャーを見せ窓から外を眺める。レイは刹那に目を戻す。刹那は銃を片手に目をそらす。まるで叱られた子供のように。
「……」
「刹那。君とエクシアの力が必要なのだ。協力してほしい。」
「……俺はガンダムではない。」
「今すぐにとは言わない。だがいつか君のガンダムの力が必要になる。だから」
刹那は女を見つめ、一瞬だが困った子供のような顔をした。
「……保証は出来ない。……俺はソレスタルビーイングのガンダムマイスター、刹那・F・セイエイだ。お前が紛争を広げるなら…」
そこまで聞いたレイは見た者全てを魅力するような笑顔を見せる。
「……な」
「どうした?」
「お前は……卑怯だ。」
「……どういう」
これ以上話すことは無いといいたげに刹那は部屋を出て行く。このアラスカの施設において、いや、彼女と一緒に行動していての刹那の居場所は限られている。すなわち、誰も居ない場所だ。
刹那はレイと出会った時のことを思い出す。彼は四年前、ソレスタルビーイングとして、ガンダムエクシアのマイスターとして……紛争根絶を目指し武力介入を行っていた。そしてその最中、敗れ、死をも覚悟したはずなのに。
何故?気がつけば刹那はプラントと呼ばれる場所でコーディネーターと呼ばれる人たちに混ざりながらエクシアを直しつつ生活をしていたのだ。彼にはプラントもコーディネーターも聞いたことの無いものだ。しかし自分はその存在を認め、知りもしない世界の歴史を知っている…
そんなとき、彼女が現れたのだ。
「刹那・F・セイエイ。君の神は何処にいる?」
レイ・ザ・バレル。彼女はただ一人エクシアについて知っており又、刹那の過去の記憶の世界も知っていた。そして気がついた時には彼女と共に地球へ降り今はアラスカに来ている……
「アレルヤ・ハプティズムは何も感じないのか?他のマイスター達は……」
一人外をにらみつける刹那。
異常だ。だが誰一人気づいていない。そこが異常なのだ。
「この世界は歪んでいる……」
「あぁ。そうだ。アロウズとでもしよう。世界の法たる者たち。アロウズだ。」
「素晴らしいですわ。アスラン。して、その概要は?」
「全ての国家からラクス。君に対して忠誠心の有る者や、高い戦闘力を持つ者、その他、色々な背景や思想の審査を行い集める。詳細はルナマリアに送らせる。」
オーブ中枢会議室。何度となく壊滅的な被害を受けたオーブに対しアスランが作り上げた。非常に強固な地下司令室兼、会議室となっている場所でアスランはプラント最高評議会議長ラクス・クラインと共に地球に残るゲリラ達を完全に掃討する為の組織について会議を行っていた。
「わかりました。例の装置は私の方で手配しておきましょう。」
「すまない。ラクス。では又連絡しよう。」
そういい、アスランはディスプレイを切る。心なしか緊張が解けたようにも見えるのは歌姫の圧力か……
「GNドライブTを搭載した機体。GN-Xだけではいささか心許ない。と?」
「アレハンドロ・コーナー……確かに疑似太陽炉は凄まじいが、全世界にいるゲリラを根絶やしにするには少し足りないのです。」
「その通り。だから宇宙の大型製造工場で作ってもらう。のですかな?」
「平たく言えばな。」
アスランは続いて現れたGNドライブなる新型ジェネレーターの提供者を見やる。
「まぁ。構いませんが、それよりも…そのアロウズとやらに何名か推薦したい者がおりまして……」
「構わないさ。」
アスランは又、コイツの相手をしなければならないのか。と心の中で呟いた。
〜大型巡視船 取調室〜
「ジャック・オリバーに、マリン、レイガン。年齢は21歳、所属は『世界連盟軍のブルー・フィクサー』
もうちょっとましなウソでもついたらどうなんだ」 シンがペン先を手元のメモに突きたてる。
未知の漂流者2人への尋問は45分を超えていた。
最初に取調官があまりに噛み合わない尋問に業を煮やしてしまい、
シンが取調べをおこなうこととなった。しかし冒頭で
1人目の取調官が聞き取りをしたメモを見て腹を立てたのである。
シン「もう少し質問を変えてみるか? あんた生まれは?」(オリバーをボールペンで指し)
オリバー「ニューヨークだ。ブルックリン島」
シン「んで、あんたは」(マリンを指し)
マリン「S1(エスワン)星だ」
「真面目に答えろと言ってるんだ」 シンは苛立ちを隠さず再びメモをペンで突き刺す。
シン「あんなものに乗って、あんたら一体何をやっていた?」
マリン「軌道上で敵の戦艦と戦っていた。体当たりをかけた瞬間に辺りが真っ白になって、
気が付いたら、俺たちはここに飛ばされていたんだ。ここは地球で間違いないんだな?」
シン「そう地球だよ。でもねえ、このご時勢に戦艦なんて!」 さらにシンはまくしたてた。
シン「ニューヨークってんなら話はわかる、血液も組織も調べさせてもらったが
確かにあんたは(オリバーを指差し)ナチュラルのアメリカ人、ホワイトアングロサクソン。
だがあんたは!(マリンを指差し)自分が宇宙人なんて言ってる。
(椅子にふんぞり返り)本物の宇宙人がいたらお目にかかりたいとは思ってたけどね」
マリン「俺はウソは言わん」
尋問をさえぎるようにゴウーンという音が響いた。船が減速を始めた証である。
『キャプテン、まもなくハルシマに到着します』スピーカーの声にシンの口調が再び静かになった。
シン「とりあえず一旦打ち切りだ。」疲れたような顔で椅子から立ち上がる。
マリン「雷太は無事なのか!」
オリバー「面会ぐらい許可してくれ」
シン「だめだ。それから勝手な行動も厳禁だ。」
マリン「雷太を収容して手当てをしてくれてる人を、裏切るようなまねはしない」
オリバー「宇宙人云々を信じられないのは仕方ねえ。でもな、俺たちにとって
あいつが大事な仲間だってことぐらい信用してくれたっていいだろ!」
シンは今の言葉をウソだとは思えなかった。
ただしオリバーも宇宙人云々を否定しないことだけは気になっていた。
シン「いずれにしても今は無理だ、輸血やら何やら済ませればじきに面会できる。ただし、警備は付けるからな」
マリン「ありがとう」
オリバー「感謝する」
シンにとって、彼らの供述は信用できなかったが彼らから悪意を見て取ることはなかった。
そもそも彼は根っから冷たく割り切れるような男ではない。
タクラマカン砂漠
「すまない。ヴァーチェの外装はどうだろうか?」
「って、そりゃあ敵さんのビームを直撃させた奴の言う言葉じゃありやせんぜ。」
「うっ……すまない。許してもらえないだろうか……」
申し訳ない。と自分の親ほどもありそうな整備長に頭を下げるティエリア。
先のトリニティに辛くも勝利を収めたティエリアだが、代償にヴァーチェの外装を取られ、更にトリニティは撃墜までは至らなかった。だがガンダム三機を相手に勝ちを取ったのは非常に幸運であったのだが、問題があった。
それは機材と資材の少なさだ。ついでに言うならば、ティエリアはこの整備長が少し苦手なのだ。悪い人ではない。つかみ所がないというか、要はいつもティエリアをからかうのだった。
今現在、新造艦ファヌエルにティエリアは帰投しMSハンガーには外装を失ったガンダムヴァーチェ。つまりガンダムナドレが単機で格納され、傍らには消し炭となった外装が鎮座している。
「マードックさん?」
「い!?スメラギ艦長さん?」
「ティエリアで遊ばないでいただけますか?」
その消し炭をみてため息をついていたコジロー・マードックだが、後ろから現れたスメラギに一瞬だが驚く。
「はっ!?まさか又、私はかつがれた
〜春島(トラック諸島)〜
2人の漂流者が警備兵に連行されるその前に、巡視船からタラップが伸び、泊地と船とをつなぐ。
ゆっくりと圧力扉が開き、マリンとオリバーが警備兵に付き添われて一歩歩き出す、そこで足が止まる。
マリン「島だ!」
オリバー「陸地があるぞ!」
警備兵も、その後ろで見ていたルナマリアにシンも、
思うところは同じであった。こいつらは何を言い出すんだ、と。
「ここはまだ、戦いで荒らされてない。まだ 」
そう言うとマリンはタラップの手すりにすがりつくように崩れる。さっさと歩け、と促されて
立ち上がったマリンは顔を涙でクシャクシャにして、それを隠すようにぬぐって歩き出した。
遠目に見ていたルナマリアとシンは、目を丸くしてお互い顔を見合わせた。
「この状況、どう思う?」という一種のアイコンタクトである。
〜春島基地 映写室〜
『キャプテンが伝えてくれた記録によると、このデカブツは大気圏から落ちてきたものとしか
考えられません。全長はおよそ100m、重量は800トンを超えます。
戦闘または機動試験をおこなったためでしょうか、左足の装甲板がひどく損壊していました。
装甲は恐らく、ある程度の加工だけ施した鋼材です。あとの詳細は分解して調べないと解らないでしょう。』
映写機の画面が消え、映写室全体が明るくなった。シンを中心にスタッフ4名が机を囲む。
ルナマリア「見れば見るほどばかばかしい代物なのね、これって」
メカニック「こいつを何とかしないことには、監視員からどんなお達しが来るか・・・」
シン「面倒面倒、って言っちゃいけないんだよな。」
ルナマリア「キャップ!」
シン「わかってますよ。とにかくいま治療をやってるパイロット1人の回復と尋問が最優先。
監視員は連絡が来てから考える。
あのデカブツはなんとかどこかを開けて調べよう、いいな」
部下一同は「はい」と声をそろえて返事をして見せた。
巡視船の隊長に就任して以来シンは十二分に仕事を果たしていた、その証でもある。
〜独房〜
コンコン、と鉄の扉を叩く音。
何があったかと扉を覗き込んだマリンとオリバーの目に飛び込んできたのは、
巡視船クルーの引き締まった顔から普段の表情に戻ったルナマリアであった。
ルナマリア「あの人の尋問を受けてるみたいだけど、どうか気を悪くしないで」
マリン「なんだ、何を言い出すかと思ったら」
オリバー「悪いやつじゃないだろ。ホントはいいやつさ」
マリン「あいつ、キミの恋人か?」
意外な逆質問に驚いたのはルナマリアのほうである。
ルナマリア「いや、なんというか、付かず離れずって感じ・・・かな。」
マリン「口下手なんだな。きっと応えてくれるさ。俺も、いつかあいつがわかってくれると信じてる。」
廊下を歩くルナマリアはつぶやいていた。
「ちょいと濃いめのいい男、おっといけないいけない」 ルナマリアは、少し自分自身をだらしなく思った。
ティエリアの今行る場所。それはソレスタルビーイングだ。ただしそれはあの世界のではなく、この世界のである。
この故意に歪められた世界を破壊するためにティエリアはソレスタルビーイングを作り上げた。幸い、スメラギや他のクルーはすぐに見つかり、又、全てを話せはしないが頼もしい仲間たちも出来た。後はマイスター達だけである。
そしてあの組織が結成された。
『……我々は混沌とした世界に秩序をもたらす者たち。アロウズである!!』
「だそうだ。やってくれたぜ。全くよ。」
「元々テロリストみたいな私達ですものね。」
「あのピンクのお姫さんも本腰って事なんだろうな。戦術予報士さんはどう思うよ?」
モニターに映し出される金髪の男性。ムウ・ラ・フラガ。先ほどの通信を聞きに来たスメラギは軽くため息をつく。
「今はマイスターも居ないし、戦力不足は否めないわね。かと言って…このままでは、」
「なぁ。例のアラスカの件だが行ってみないか?コンタクトをとるだけでも良い。このままじゃジリ貧だぜ?」
「フラガ艦長…そうね。私も気にはなっていましたし一か八かコンタクトをとってみます。」
アラスカの件。実は5日前にファヌエルに対して直にある人物から通信が来たのだ。送り主は…レイ・ザ・バレル。
内容は、ガンダムマイスター二人の保護と資金援助。更に物資補給をこちらに行いたいとの事なのだ。
当初、その怪しさから全く相手にしてなかったが、今となっては非常にありがたい話ではある。計算すればもらった日にファヌエルで指定ポイントに向かっていればこの声明時にこちらもソレスタルビーイングの声明を出せたのだから……
「こればかりはね。仕方ないわ。」
つづく。
題名かコテかトリップ付けてくれないかな
スマソ立体交差状態になってしまった
種デスバルディオスはとりあえずここまでが書き上げた部分です。またできたら投下
設定云々の質問とかはすでに作ってる部分に関してはお答えします
作ってないものについては作ってないと答えて謝ります
>>100 確かに見づらい。題名…っても無いな。
次からなんかつけるわ。
103 :
00の人:2009/01/11(日) 01:29:41 ID:???
追加
ティエリアの「私は又、かつがれたのか!?」
の後に
思わずあの台詞を言いそうになったティエリアだった。
「ヴァーチェの外装は消し炭だけど予備ぐらい有るわよ。」
「そんな……私はてっきり無いものだと……」
そういい若干うなだれるティエリアをみてスメラギは変わったな。と思う。以前なら謝りに行くことすら考えなかっただろうに、時と仲間はティエリアにとって良い影響を与えたのだろうか。
その時、携帯端末へ通信が入る。
「スメラギさん。AAのフラガ艦長より入電です。至急ブリッジへお願いします。」
「分かったわ。所で、ノイマン君はビールとワインどっちが好きかしら?」
「僕はアルコールは飲みませんよ……」
「いけずねぇ」とつぶやきながらスメラギは通話を切り。マードックへ声をかける。
「ちょっと用事が出来たみたいで、宴会は又今度ね。」
「ま、仕方ねぇでさぁ。なんならAAのクルーも一緒に飲めばいいですぜ。あそこは艦長やその奥さんもザルみたいなもんですから。」
昔の上官を思い出しマードックはガハハハと笑う。それを見てスメラギも又、ニヤリと笑い。「じゃあね。」とブリッジへ戻ってゆく。
が入る予定だったorzためた分を調節しながら張り付けてたから一つ飛ばしてた。スマソ
なんか頭がポルナレフになりそうだった
とりあえず二人共コテハンをつけるんだ
106 :
00の人:2009/01/11(日) 21:04:48 ID:???
把握。これで良いか?
こちらはこれでいきます
今夜中にもう少しここに貼れる筈
おけ。あとは名前欄を一切変えないこと。
「パルサー・フライ」 前編
〜停泊中の大型巡視船 第1ブリッジ〜
「来ちゃいましたよ、来るべきものが」
通信士のメイリン・ホークがため息をついてシンにテレックスを渡す。
メカマン「どうなったんです?」
シン「かいつまんで言うと、『4日前に海上で収容した物体及び搭乗員を、
速やかに監視員へ引き渡すこと。』監視員は明日トラック諸島へ入るそうだ」
メイリン「いつものこととは思うんですが、横暴ですね」
ルナマリア「あいつらに渡しちゃったら、あの3人は何をされるか・・・」
シン「そもそも、何かの意図を持って俺たちが準備したものじゃないんだぜ、引き渡す義務はない。
あれがプラントの準備したものだったら話は別だけど。 あれ、どうなんです」
メカマン「左足を開けて中を調べましたが、どうやら空を飛べるのは間違いなさそうです。
それから、水圧に十分耐える補強がなされていました」
シン「ふ、ふふふ・・・もう笑っちゃうしかないよ。すると何?あれは空も宇宙も飛べて海にも潜れるのか」
メカマン「この大きさですから、陸上を歩くことのほうがかえって不都合です」
ルナマリア「なおさら、誰が何のために作ったか謎になってきちゃうわね、
それでキャップ、あの2人のパイロットさんは?」
シン「相も変わらず。(肩をすくめて)いつまで俺はエスワン星人って言い続けるつもりなんだか。
おかしなことに地球についての知識だけはしっかりしてんだ。
これは・・・・さぁ。まさかとは思うけど、あれが噂になってる方の監視員だったら。聞いた事あるだろ?」
一同は絶句した。一切の武装保有を禁じた新しい平和条約が発効して以来、
この世界で平和を監視する役目を負ったのはプラント指導のもとに創設された監視機構である。
そのうち、元連合・元ザフトを問わず元軍人があてがわれた、監視員と言われる平和監視部隊の
横暴ぶりはたびたびシン達の耳にも入っている。
そしてもうひとつの噂もあった。武装を試みた組織とその指導者を消してしまう本当の監視員がどこかに存在する、と。
沈黙が流れる。
シン「ごめん!今の話ナシ、な。」
メイリン「ナシ、と言ってしまったって・・・」
ルナマリア「もう遅いわよ」
この推論に至ってしまうのも時間の問題だったかもしれない。
“巨大すぎるマシーンとパイロット。彼らは監視員、または監視員の作ったモノではないのか。”
この4人だけでなく巡視船のクルー、あるいは春島基地のスタッフがうすうすと感じていたことであった。
パルサー・フライ前編 続き
〜翌日、同じく停泊中の巡視船ブリッジ〜
「来ました。回線つなぎますか」 メイリンの声を聞くや、船長席に座ったシンが立ち上がった。
思い出したかのように傍らの帽子をかぶってモニターの前に出る。
モニターに映る軍人は名乗りもせずにいきなり本題をシンに投げかけた。
「先刻通達した、落下物および人員の引渡しは本日の12時である。」
シンはモニターに映る中年の軍人が癇に障ったのか、食ってかかる。
シン「待ってください、あれはそもそも我々の領海32カイリ以内で拾ったものです、
もしこれが正体不明の物である以上、処遇を決める権利はこちらにあるはずです。
これがプラントに籍を置く物であるならば、プラントの法規が適用されるのでそちらに引き渡しますが」
モニターの声の返答はそっけなかった。巷の噂どおり横暴な一言。
「命令に変更はない、速やかに引き渡しに応じること。さもなくば貴船を臨検し落下物と搭乗員を接収する。以上」
モニターの映像が切れた。巡視船の仕事を始めて彼らが何度も遭遇していることではあるが、
監察官の性質が悪いとこういう幕切れになる。
メイリン「会話になってないですよ。」
シン「俺は悪くないぞ。めぐり合わせが悪かったんだ・・・・(口ごもる)」
メイリン「監視員の中に、警告ナシで銃撃してくるやつがいるとか聞いたんですけど、
ああいうヤツなんですかね」
シン「おどかすな・・・・ったくあいつらが来て以来、
何でこんな面倒ばっかり起きるんだよ、ルナのやつどうしたんだか。」
パルサー・フライ前編 つづき
〜独房〜
マリン「引き渡す?」
どういう風の吹き回しか、囚人扱いの人間には不釣合いなほど
奮発した食事を持っていったルナマリアである。
独房の鍵を空け、3人してトレイを囲み床に座り込んでいた。
トレイからサンドイッチをつまもうとしたオリバーの手が止まる。
伏目がちなマリンはコーヒーの紙コップに口をつけようとして手を止めた。
ルナマリア「監視員という軍隊に
あなた方を引き渡さないといけないかもしれない。いま病棟にいる人も含めて」
オリバー「とんでもない!怪我して面会謝絶の人間を連れていくのだけは・・・・」
マリン「そうだ、何とか取り計らって欲しい。俺たちは構わないが、雷太はまだ置いてやってくれ。」
真剣に仲間をかばう2人の様子を見て、何だか妬いちゃったな、とルナマリアはふと考える。
ルナマリア「あなた恋人は?」
マリン「何?」
ルナマリア「あなたがこの間聞いた質問のお返し。残してきた人、いるんじゃないの」
マリン「・・・・死んだよ」
ルナマリア「えっ」
マリン「忘れるもんか。ここに飛ばされてくる4日前だ」
聞いてはいけないことを聞いてしまったと思った。
ルナマリアはばつの悪い表情に変わり顔も下向きがちになる。
ルナマリア「ごめんなさい」
マリン「気にするな。俺たちをその監視役に引き渡すことになっても、気兼ねしなくていい」
オリバー「勘弁してくれよ、お前ヤケ起こしてんじゃないだろうな」
マリン「そんな風に見えるかい。どんなことがあろうと、必ずもといた場所に帰るさ」
その時ズシーンという音、ハッと気づいて天井を見上げる。
次の瞬間には船が傾いたのかと思うほど揺さぶられる。
床が傾斜して瞬間ルナマリアが壁に向かって流れそうになった。マリンがルナマリアの右手をつかんで止める。
ルナマリア「あ、ありがとう」
マリンはルナマリアを気に留めない。傾斜が元に戻ったところであっさり手を離す。
マリン「ご挨拶だな。何だったんだ」
オリバー「どうも音だけ聞いたら、ミサイルでも打ち込まれたみたいなんだがな。」
マリン「司令室か格納庫に急いで行ってみろ。何かあったかもしれん。」
まるで軍人から指図されたように素早く指示を受けてルナマリアの返事も素早かった。
「え、ええ!すぐに行きます、なにかあったらいけないから、鍵は開けておくから。」
ルナマリアが廊下を走っていく。 ほどなくして警報のブザーが鳴り始めた。
前編おわり
112 :
00の人:2009/01/11(日) 22:19:40 ID:???
シン達がいい味だしてるなぁwww
続いて俺も行くか……
113 :
00の人:2009/01/11(日) 22:24:54 ID:???
(題名もつけてみた)機動戦士ガンダムSEED 灰の雪が降る世界
『矛盾を追いかけても終わらない。何故?僕は戦うの?』
飛び交う火線の中。漆黒の反逆者は舞い踊る。手に持つビームショーティを乱れ撃つ。流麗な動きはまるでガンカタの様にも見える。
アィルカ・マトヤ。彼も又、シン・アスカ同様プラントに対して戦いを挑む者である。
アロウズの結成宣言後。アラスカ付近にいた全部隊がシン達ゲリラの居た隠れ家を強襲した。それにより部隊は壊滅、シンも死を覚悟したが、黒い反逆。
アィルカ・マトヤの駆るストライクノワールカスタム「アヴェンジャー」により辛くも生き残り機体を修復後、生き残った者を脱出させるために囮動作戦をしたのだが……
「コイツ!!」
「うわぁぁ!」
敵部隊のまっただ中、アヴェンジャーはシン達の脱出の為、敵部隊を文字通り皆殺しにしていた。囮、の筈だが、実際には掃討戦になっている。それだけアィルカの腕が抜きんでている証拠である。
「覚悟ぉ!!」
単機で突撃を行うダガーS。ストライクににているがダガーシリーズの上位番、ウィンダム寄りもストライクよりの機体であり、同じく士官向けの機体だが前線での戦闘、特にストライク寄りの反応を獲得している
114 :
00の人:2009/01/11(日) 22:27:36 ID:???
アヴェンジャーは突撃してくるダガーSに向けワイヤーを射出する。それを瞬間的に回避し更に接近。ビームサーベルで斬りかかってくるダガーS。
「来い。」
鈍重な動きでサーベルを振るうダガーに対しアヴェンジャーはスラスターを全開にし紙一重でかわす。そのまま左手を上に上げる。
とっさに機体に防御を取らせるがダガーにはいつまでたっても衝撃は来ない。何故ならアヴェンジャーは掌からワイヤーを飛ばし上方に移動したのだから。
「それがナチュラルの限界だ。」
アィルカは呟くと仲間に当たるのを恐れていた雑魚を真上から撃ち下ろす。
「卑怯者!!」
ダガーから女の声が響くがアィルカにはどうでも良かった。罵られようと、非難されようとアィルカには取らなくてはならない仇がいる。
ショーティを仕舞い更に片方のワイヤーで残骸を捕縛。左手のワイヤーを仕舞いながら自由落下、機体のスラスターとモーターを最大出力で回転させ…………
ハンマーの様に振りダガーに叩きつける。
「ヒッ!?」
グシャリとぶつかりダガーSも動かなくなる。
「追撃か、派手に遊びすぎたか。シン。撤退状況は?」
「シン。撤退状況は?」
通信機からはアィルカからの変声機ごしの声が響いてくる。だが返事
115 :
00の人:2009/01/11(日) 22:36:37 ID:???
「……やるしかないな。」
「ハッ!!」
ツキカゲは対装甲用ナイフ。アーマーシュナイダーを右手に引き抜き。左手でビームショーティを構える。その構えは、即ち格闘戦。
「俺とやろうってのか。良い度胸だ。」
敵の未確認機も又、ビームサーベルを引き抜く。二機のMSは静止し互いを見つめ合う。
先に動いたのはシンだった。ただし、隙を見せただけだが。
「がら空きだぜぇ!!」
未確認機……後にGN-Xと呼ばれる機体はビームサーベルをツキカゲに突き立てる。がツキカゲは車で言うところの軽自動車、むしろ小型作業車でも通るほどの軽量さだ。
その凄まじい瞬発力はGN-Xのパイロットの範疇を越えていた。瞬時にツキカゲも前にでる。金属同士がぶつかり合い。いやな音を立てる。体当たり。いや違う。ツキカゲはGN-Xの体を捕縛したのだ。
「な!?野郎っ!?」
気付いた時にはもう遅い。ツキカゲはGN-Xの右腕を脇に挟みサーベルの持つ右腕を引き伸ばす。そのままマニピレーターをアーマーシュナイダーで突き刺しエネルギーの供給をストップさせる。
そのまま引き倒し、掌で胸部をへこます。続いて左肩アーマーに膝を乗せ右肩部のアクチュエーターを撃ち抜く。そのまま馬乗りになり首の接続部へ刀身を押し付ける。
「CQCだと!?なめんじゃねぇ!!」
クローズドクォーターコンバット。その特性から柔道と混同されやすいが実際には閉鎖空間での敵の無力化をするために作られた戦闘術の一つだ。
その動きをMSで行うのは非常に困難だが、ツキカゲの特性によりシンは可能としていた。
116 :
00の人:2009/01/11(日) 22:38:50 ID:???
突如、GN-X足にに力が入り蹴り飛ばされるツキカゲ。空中に放り出されるが各所のスラスターで立ち直り片手で前転の要領で跳ね上がる。だが着地時にビームがツキカゲを襲う。
即座に飛び上がりアクロバティックな動きで右へ側転を行いながらのビームショーティ。そのまま近場の森に姿を隠す。
「……はは。まさかこんなパイロットが居たなんて。な?」
シンはコクピットで乾いた笑いをしながら息を整える。ヤバい。シンの本能はあのパイロットはかつてのフリーダムクラスだと告げている。射撃速度、格闘戦時の反応、精度…全てが洗練されている。
今自分が生きているのが嘘のようでもある。
「シン・アスカ……お前は負けるわけにはいかないんだぞ?なぁ。シン・アスカ…」自分自身に問い掛ける。俺はやれる。今までだって反応できた。やれる。
「ははは!!楽しいなぁ!!ガンダム!!」
「ほざけ。」
漆黒の反逆者がビームショーティを連射する。しかしその全てを避けてみせる黒の機体。シンとの連絡が取れなくなってからそろそろ15分……アィルカはシンの力を知らない訳ではない為、信用はしてるがこの分では危険かもしれない。
「そして何よりコイツが俺を苛立たせる。」
「さぁ、見せてみろ!!ガンダム!!私に君の力を!!」
煩い…
「黙れ。そんなに望むならば貴様はなぶり殺しだ。」
アヴェンジャーは両手を肩の辺りでクロスさせそのままフラッグへ向け突撃する。
「あぁ!!全身全霊で私を愛してくれ!!ガンダム!!私もその全てを尽くして返礼しよう!!そうだ。私はグラハム・エーカーだ!!」
「……変態め。」
交錯するMS。すれ違い直後にアヴェンジャーは回転し右手の高振動ワイヤーを振るう。更に左手のワイヤーを振り、流れるような動きで敵を捕縛しようとする。
「グラハムスペシャル!!」
そのワイヤーを事ごとくかわしてゆくフラッグ2。リニアカノンを捨てワイヤーをサーベルで弾き飛ばす。
「出来るな。だが。」
「まだ、終わりではないだろう!!」
回し蹴りのモーションでアヴェンジャーはワイヤーを更に一本飛ばしそのまま突撃する。右手は5.4m対MS刀である。その長さから脇差しに近いがMSを攻撃するのならばこれで十分である。それをいわゆる居合い抜きの構えで突撃する。
117 :
00の人:2009/01/11(日) 22:42:00 ID:???
「居合いか!!面白い!!」
フラッグ2も又、両手でサーベルを持ち突撃する。互いの距離が0になるときアヴェンジャーは鯉口を、切る。
「斬る」
「クッ!?」
右腕を切り捨てられ空中に一瞬だが静止するフラッグ2。その隙を逃すほどアィルカは優しくはなかった。斬り上げた脇差しをコクピットへ向け振り下ろす。
「だが!!」
脇差しが振り下ろされる瞬間にフラッグ2は下へと落ちてゆく。そして地上スレスレで反転し撤退を開始する。
「あのタイミングでかわす。か……あの男………後悔するかもしれないな。」
アィルカは去って行くグラハム・エーカーなる人物を見つめた。
「クソっ!!」
「ガン」とシンはモニターを叩く。GN-Xとの更に二合撃ち合ったその最中の事だ。ツキカゲのエネルギーが尽きてしまったのだ。そのためPSは落ち、機体も完全に停止してしまった。
「システムトラブルか?かまわねぇ。機体だけはいただいてパイロットには死んでもらうぜ。」
GN-Xはゆっくりと歩いてくる。それを見ながらシンは必死に操縦桿を叩く。
「動け、動けよ!!俺はまだ死ぬわけには行かないんだ!!動け!!動いてくれ!!腕一本でも良い!!動いてくれ!!」
だが現実は無情だ。GN-Xはコクピットブロックへ手をかけようとする。
その時だ。
「アレルヤ・ハプティズム。目標へ飛翔する!!」
高速で迫る戦闘機。その姿は非常に不格好だが確かに戦闘機だ。それがビームを放ちGN-Xを遠ざける。
118 :
00の人:2009/01/11(日) 22:43:55 ID:???
「だれだ…」
「邪魔すんじゃねえよ!!」
GN-Xがビームを放つ。がそれを器用にかわしツキカゲに通信を入れる。
「ニュートリノビームを照射する。短時間だが、合体には十分だ。その後、マニューバーをこちらへ。」
「アンタ…一体……?」
ニュートリノビームが一瞬だけだが照射されツキカゲのエネルギーがレッドゾーンに戻る。
「……クソっ!!コントロールを渡す!!ユーハブコントロール!?」
モニターに映る男の顔は微笑むと、
「アイハブコントロール。」
そのままアレルヤは続ける。システムチェック。ツキカゲは何年も昔の機体であるため整備状況によってはメイン、サブのバイパスが使えないかとも思われたがその問題はないようだ。
シンはどうやらその意味も知っていた様だ。合体機構まで完璧に整備してある。
「コアシステム、オールグリーン。GNアーマード、オープン。」
ツキカゲは全エネルギーを使い空中へ飛び出す。同時に戦闘機が機体軸を合わせそのまま失速。
その姿をバラバラに展開する。シンはまるで特撮番組かご都合主義のアニメーションの主人公の気分だった。
何故ならツキカゲが目の前で合体したのだから。
「なん…だと?」
「キュリオスのGNドライブと可変機構をを使い完成した月影用の外装パーツ。それをフレームであるツキカゲが装着した姿。」
ビームサーベルを引き抜くオレンジ色のガンダム。
「名前は…ガンダムエアリス!!」
119 :
00の人:2009/01/11(日) 22:48:04 ID:???
「……野郎…このタイミングで合体だぁ?寝ぼけるのは!!あぁん!!撤退だぁ?」
GN-Xのパイロット、アリー・アル・サーシェスはコクピット内で怒り狂う。別動隊であるグラハム・エーカーの指揮する部隊が撤退したためにサーシェスにも撤退命令がでたためだ。
「ガンダムエアリス…ってたな。次に会うときはバラバラにしてやるからな…首洗って待ってやがれよ……」
「エアリスか、悪い名前じゃないな。だがガンダムってOSの略式か?」
「え?GNドライブを積んだ機体はガンダムだろう?」
「どうやら聞かないといけない話が沢山あるんだな。」
シンはこの人物を向けた人に心当たりがあった。そしてそれは的中する。
「そういやアンタ……なんでコイツのアーマーシステムを……」
「アレルヤ。アレルヤ・ハプティズムだ。レイから頼まれた。シンを助けてほしい。ってね。」
「……俺はシン・アスカ……って知ってるんだったな。」
シンは笑いながらシートに沈み込む。遂にあのレイに全てを聞かなければならないようだ。
その時、ハッと気付き周りを見渡す。
「アレックス達は!?」
「安心して、僕が誘導した。今はゆっくり休むと良い。レイのいる施設にいるから」その言葉に安心したシンの意識はそこから先は聞き届ける前に沈んで行く。
今はただ無性に眠りたかった。
おしまい。
120 :
00の人:2009/01/11(日) 22:56:20 ID:???
な ぜ だ ?
途切れやがるorz
「シン。撤退状況は?」
通信機からはアィルカからの変声機ごしの声が響いてくる。だが返事などしてられない。何故なら、シンの駆るツキカゲの方にも敵部隊が来ていたから。
「ちょいさぁ!!」
「っの野郎!!」
「どうした?どうしたァ!?ガンダムさんよぉ!!」
やってくれる。一言で言うならばそれにつきる。元々フレームだけのツキカゲに対してついてくるなんてなかなか出来る芸当ではない。
その上奴の機体にはバリアの様な物が有るのだろう。ビームショーティは弾かれてしまった。Nジャマーでも出来ないような高密度のジャミングの状況下では無線機も信用ならない。
アィルカの雑魚戦が終わった辺りの明らかに途切れてる部分の元テキスト。すまぬ。気をつけてるんだがなんか途切れてるorz
ハンス・ウルリッヒ・ルーデルさんが出てきたら偉いワロスな状況になるんではなかろうかw
赤い彗星なんか目じゃねぇwww
誰か書いてくれる勇士はいないか?
ドイツ空軍の英雄すか?
KY准将と良い勝負だなwww
一つ聞きたい。
別に本編(アニメ)のシンを飛ばさなくてもいいんだよね?
高山版とか小説版とかジェネCE版とかスパロボZ版とかを飛ばしてもこのスレの趣旨からは外れないよね?
実はZ版シンとある作品のクロスを妄想中なんだが。
>>123 特に問題はないのでは。
自分の貼ってるモノも、スパロボZから影響を受けている。
パルサー・フライ 後編
〜停泊中の大型巡視船 第1ブリッジ〜
あわただしくメイリンがインカムを身に着け、艦長席の前、操舵席を兼ねたコントロール席に座った。
シンは艦長席から腰を浮かしたくてうずうずしているようにも見える。
シン「上空には誰も来ていないはずだ、どうしたんだ!」
メイリン「水中爆発1、種類はおそらく長距離の水中ミサイル。
信管不良のため手前で爆発、被害はありません。」
シン「この後来るぞ、メイリンはエンジンを立ち上げて。
(受話器を取り)ルナマリア!ルナマリアホークは格納庫で待機!
クルーは全員持ち場へ、クルー以外は船外へ!
本船は緊急発進準備! ほらブザーだよ早く、手前のオレンジのスイッチ!」
シンの指図は素早かったが、この後起こることを切り抜けられるか、そんな自信はとても持てなかった。
旧ミネルバ型戦艦を転用した大型巡視船とはいえ、
かなりの機材が民生品に置き換わっているため、戦闘を想定した設計ではない。
メイリン「非常配置完了、発進できます。」
シン「よ、よし。出航位置まで微速前進。あとは任せる、俺はデッキに降りるぞ!」
メイリン「キャップ!キャップがいないと退避位置がわかりません」
シン「あのね、向こうも素人軍隊なんだよ。まっすぐ離水して飛んじゃえばいい、いざとなったらザクを出すぞ」
姉ゆずりのふくれっ面を見る間もなく、シンはエレベータへ急いだ。
〜独房〜
『長距離レーダー、監察官らしき飛行物体キャッチ、
えっと、数はおよそ6、ザク1番2番、スタンバ、あ!飛行物体増えます!ミミサイル!』
マリンにオリバーも肝が据わっていた。残りのサンドイッチを平然とほおばっている。
しかし船が2回連続で揺さぶられるのを見て取ると表情を変えた。
オリバー「今のは至近弾だな?命中してない。賭けるか」
マリン「そんな気分じゃない。・・・単純計算で敵の数は約3倍か。」
オリバー「こっちのカードの分は悪い。ジョーカー出してやってもいいんだが、俺は気が進まないね」
マリン「俺は行くぞ。急がないと港から船が離れてしまう、雷太が起きなきゃ、合体したままでは使えない。
だがパルサバーンだけでも力になれるはずさ」
オリバー「止めても無駄か。しょうがねえから付き合うぜ」
重い腰を上げたオリバーと、臨戦態勢のマリン。2人とも廊下を走って行く。
オリバー「勝手知ったる他人の家って言うだろ」
軽い口調でボタンを押し、オリバーは圧力扉を開けてみせた。すでにタラップはない。
合図と共に船と岸壁の間を飛んだ2人、数秒後には滑走路の巨大メカに向かって走り始めていた。
パルサー・フライ 後編続き
〜巡視船、上甲板(カタパルトデッキ)〜
吹きさらしの甲板にエレベータで上がったシンの白いザク。
今回ばかりは何が起こるかわからないため、
すでに装甲ナイフを持たせてあらゆる事態に対応する心積もりであった。
一方船首部分にはルナマリアの同じく白いザク。この船首にはこの船唯一の武装が付いている。
すでに18ノットの速度で外洋に出ていた巡視船。いつでも離水して飛べる態勢である。
『ウィンダムタイプと思われます、数は6、ザク・スクランブル準備。本船出力、離水まで10秒、どうぞ』
カタパルトに足をかけたシンのザクは勢いよく滑り上甲板から飛び出した。それを離水した巡視船が追う。
「おいおい、ヤツら出てきたぜ」
「ポンコツが。いっちょ遊んでやるか」
ウィンダムのパイロットは一言二言会話を交わすと編隊を組んで速度を上げた。
有人機1機にそれを両側から無人機で援護する3機編隊、これが2つで合計6機。
高度を上げるシンのザクを左右から挟み撃ちにしようとする。
「不利だ!」と直感的に操縦桿を切るシン、
ミサイルでも撃たれたらまず助からないと感じ、低高度へと降りていった。
ミサイルやビーム砲を使えるであろうウィンダムに対し、シンのザクが持っている武器は余りにも貧弱である。
「近づいて来たら、こいつを使うわよ」
ルナマリアは船首に取り付けられていた2連の高射機関砲を取り外しザクに持たせた。
持ち手と引き金が付いておりいざという時モビルスーツが使用できる仕様となっている。
ぐんぐんと高度を下げて迫ってくるシンのザクを見て、
その後ろから追ってくるウィンダムに引き金を引くことを一瞬ためらう、近すぎる。
近すぎる、と思ったにもかかわらず、スイッチが入ってしまったかのようにルナマリアは引き金を引いた。
ドン、ドン、ドンと音を立ててザクのボディを左右にブレさせ断続的に押し込みながら弾丸が打ち出される。
ばかやろう、と叫んでシンは右に舵を切る。
弾が当たらずなおもムキになって撃ち続けるルナマリアを今度はウィンダムのミサイルが襲った。
近接信管が作動したことによる爆発の衝撃と、ミサイルの破片を食ってザクのボディが流れた。
両手で機関砲を抱えて支えが効かないザクは船首から足を踏み外して真っ逆さまに落ちていく。
悲鳴を上げる間もなく墜落し水柱を上げたルナマリアのザクを見てシンは怒る。
ウィンダムが発射した第2波ミサイルをジグザク飛行で避けて見せ、
あっという間に1機のウィンダムの至近距離をとると、装甲ナイフで胴を切り払っていた。
「何ぃ、落ちるぅ!」と最後の声を上げて機体ごと墜落していく敵のパイロットには目もくれず
残りの5機をにらみつけ、恨み節を叫んだ。
シン「こんなやりたくもない事をやらされるのも、あいつらのせいだ!」
後編まだ続く
すいません最後の行訂正 推敲した結果直すことに
シン「こんなやりたくもない事をやらされるのも、あの3人のせいだ!」
書いたら1日寝かせてから推敲するのがお勧めです
130 :
00の人:2009/01/12(月) 19:13:09 ID:???
そういや連発だもんな。感想や質問も聞けないし、ちょっと間を置くのは必要かも。
パルサー・フライ 後編続き
〜海中〜
巡視船などに配備されたモビルスーツには大抵大型の風船が数個、胴体に仕込んである。
しかし今海中に沈んでいくザクは、本来動くはずの風船がまったく作動しない。
コックピットの中には、気を失ったルナマリアがシートに横たわっていた。
このままでは沈むだけ沈み、水圧に潰されるのがオチだ。
不意にガクンという衝撃、ルナマリアが我に返る、左右を見る。
背中からザクを押し上げるような振動を感じ、恐る恐る全周モニターの後ろを見ると、
まるで台船のような物がザクを押し上げている。
その隣には速度を同調させて海中を上昇していく、箱型の物体。
「何よ、これ・・・」
ルナマリアは、海を沈んでいくところを助け上げられたという気分にはなれなかった。
〜上空〜
ウィンダムは2機を失った。しかしシンのザクは満身創痍となりつつある。
命中弾こそ全部かわしたが、至近弾の破片を受けてその傷み具合は隠しようがない。
唯一の武器であるナイフの振動用の電源もいつまで持つか、もはや2振り3振りできればましなほうである。
最後のミサイルがウィンダム4機から発射され、ザクを捉えた。
ナイフを持たない右腕と盾を差し出して防ごうとするが、腕ごと飛ばされてザク本体も落ちていく。
ここまでか、とシンは唇を噛んだ。
『あきらめるな、落下する姿勢を立て直せ。拾ってやる!』
無線で誰かが呼びかけてくる、誰だ。
言われるがままにザクの姿勢をまっすぐに直すと一瞬でかっさらわれるように機体が加速した。
何かの上に載っているらしい。足元の全周モニターを見やると、それは40メートルはあろうかという航空機。
『周波数は合わせたから、聞こえているはずだ。お前たちを救出に来た。』
「救出?」
シンはとっさに起きた事の成り行きをまだ飲み込めない。
〜巡視船 第1ブリッジ〜
メイリン「無事? うんザクは動かない、それで救助したあのマシーンは?」
空中で待機している巡視船のブリッジで、
メイリンは舵を握りつつインカムに話しかけ、姉の無事を確認していた。
安定して人手が確保できないこの船では、
シンが不在となるとブリッジ要員は現在のようにメイリン一人になってしまう事がある。
不意にブリッジ後ろの扉が電動で開き、大男がブリッジへ入ってくる。メイリンは気配を感じて後ろを向く。
メイリン「ひっ!・・・だ、誰ですか?」
雷太「誰ですかはねえだろ、医務室に俺を放り込んでおいて」
メイリン「そっか、あの人たちの仲間の」
雷太「おうよ、北斗雷太だ。海に浮かんでるのはバルディ・プライズだな」
メイリン「じゃあ、今キャップのザクを載せて飛んでるのも・・・・」
雷太「あいつがパルサバーン。
ま、簡単に言やぁ、バルディオスを3つにばらしたうちの2つを持ってきたんだな」
メイリン「怪我は・・・・」
雷太「へっ、こんなもん怪我のうちに入るかってんだぃ」
雷太と名乗った男は頭の包帯も邪魔だと言わんばかりに取り去って見せた。
メイリンはとりあえず理解した。あの巨大なマシーンは分離するんだ、と。
技術者や生粋のモビルスーツ乗りだったら、
これだけ仕掛けばかりゴテゴテ付いたマシーンと知ればあきれるところである。
〜上空〜
空中を飛ぶパルサバーンとザク。目下の課題は残り4機のウィンダムにいかにお引取り願うか。
マリン「あいつに戦闘機用のレーザーは効くか?」
シン「整備十分だったらダメだ。フェイズシフトで弾かれる」
マリン「なら方法はひとつだ。すれ違い様に斬ってしまえ。こっちがレーザーで牽制してやる。行くぞ!」
シン「お、おう」
機首2門、背部1門のレーザーを乱射しつつパルサバーンが高速で編隊に突っ込んだ。
タイミングを計ったザクがジャンプ、
大きな的と化したパルサバーンに4機のウィンダムがビームライフルを撃ちこむ。
何発かが命中したと、有人機のパイロットが喜んだ。しかし次の瞬間にはザクが迫る。
ナイフの2振りで無人のウィンダムの翼を切り落とし、墜落に追い込む、
そのまま編隊の後ろへ駆け抜けパルサバーンの背中に乗って離脱。
「この野郎、あとで吠え面かくんじゃねえぞ」
ありがちな捨て台詞を残してウィンダムは退いていく。
パルサバーンはビームを受けた傷こそ生々しいが平然と飛び続けていた。
「やっぱりあいつは、監察官の作ったモノじゃないのか」
「そんな一方的に・・・私たちを助けてくれた人なのに」
「パイロットも、エクステンデッドかもしれないだろ!これまでの行動を見りゃ、辻褄が合うはずだ」
「キャップ、プラントがエクステンデッドを作ったって言うんですか」
「分からないよ!連合からぶんどって準備していたかもしれないだろ!
もう俺たちは、この船は、危ない橋を渡れないんだ。」
〜巡視船の独房〜
今度は3人揃って乱暴に鉄の部屋へ放り込まれた。
これまでより手荒な扱いになったことにマリンは戸惑いを覚えた。
警備兵に付き添ったシンが、3人へ冷たい言葉を投げかける。
シン「ゴロツキを追い払って、俺たちを助けたつもりだろうが、いい気になるな。
計算どおりなんじゃないのか?・・・俺はだまされないぞ!」
マリン「俺は・・・・!」
オリバー「この野郎・・・」
雷太「畜生め!何て言い草だ!」
マリンは初めて険しい表情を扉の鉄格子ごしにシンに向けた。それは隠しようもない苛立ちと怒り。
シンは去り際にもう一言投げかける。
シン「見てろ!今にあんたらの化けの皮をはがしてやるからな!」
後編終わり
書き上げたのはここまで
確かに感想質問推敲とか考えると、急ぎすぎたかな・・・
135 :
00の人:2009/01/13(火) 11:51:10 ID:???
さて、と。やれるときにやれることはしますか。
色々、訳分からない話になってきてるけど出来る限りつじつまを合わせるように書いた説明話。行きます。
136 :
00の人:2009/01/13(火) 11:52:06 ID:???
機動戦士ガンダムSEED 灰の雪が降る世界
『さぁとりもどしにいこう。見失ってしまった自分を、』
「お兄ちゃん。こっち。こっちだよ。」
「マユ。こら。待てってば!」
あぁ。懐かしいな。確か、家族で花見に行ったときの話かな。マユの奴が俺の携帯を……そう、ここで俺はマユに飛びかかるんだ。
「どうだ!マユ!」
ゴロゴロと転がるシンとマユ。そして世界は変わる。
「オニイチャン。オ゛ニ゛イチャン。ナンであの時『逃げたの?』」
マユの声が歪み、焼け野原で焼け爛れ、死体のようなマユが問いかける。
「シン…私はお前をシンジテタノニ…」
「シン。シン…」
続いて、カガリ、ルナマリア、レイ、ヨウラン、ディーノ、グラディス、アーサー、ステラ……皆が俺を囲む。
いつもの夢だ。一時は治療により緩和されたが、彼女が、カガリ・ユラ・アスハが暗殺されてから又、起こるようになった悪夢だった。戦争による心的外傷による悪夢らしいが…
「っあぁあああ!!」
『ゴツン』
「っ!シン…痛いぞ。痛くて泣いてしまいそうだ。むしろ泣いているぞ?私は今泣いているんだ。」
頭が激痛を訴える。シンには状況が理解できなかった。
「プ、クスクス」
アレルヤは思わず笑ってしまった。だってそうだろう?突如うなされだしたシンの様子を見に顔を近付けたレイにシンは頭突きを見舞ったのだから。
おまけに、さっきのレイの言葉だ。笑わない方がおかしい。があの二人は違うようだ。
刹那は立ち尽くし何ともいえない顔で二人をみている。アィルカは壁にもたれ掛かり一瞬だけだが口元を歪ませ元の能面に戻る。
「レイ…、大丈夫か?」
刹那が言葉少なく心配をする。どうやら彼にも思うところはあるようだ。
「大丈夫だ。…かなり痛いが、一瞬だが星が見えたぞ。刹那もやらないか?」
頭を押さえながら刹那へ返事をするレイ。それに刹那は「い、いや。遠慮する。」と断りを入れる。
「いてぇ……クラクラしやがる……ここはどこなんだ?」
シンも頭突きのダメージから頭を押さえながら誰ともなく質問する。アィルカがそれに答える。
「アラスカの廃棄された小型の前線基地。だった場所だ。あのお嬢様を野宿させる訳にはいかないからな。」
医務室にアィルカの声が響く。それは変声機越しの声ではなく肉声であった。シンはアィルカを見る。そういえばアィルカとはモニター越しでしか話したことがなかったなと思いながら見つめる。
137 :
00の人:2009/01/13(火) 11:54:10 ID:???
サングラスで目元を隠し、地毛なのだろう…「茶色」の長髪はボサボサの延び放題。それを適当に手入れしてある。背格好は「165」位か?
「アィルカ…無事。だったのか?」
「あぁ。」
「私は無事じゃない。」
涙目で訴えるレイ・ザ・バレル。その印象とは余りにかけ離れた彼女とそのセリフに笑みがこぼれる。
「悪かったよ。この通りだ。」
頭を深々と下げるシン。それをみて満足らしいレイは立ち上がる。もしかしたら、他人に無視されるのが途方もなく嫌なのだろう。自己主張が意外と強いのかもしれない。
「で、色々、有るんだが……先に言わせてくれ。」
「レイ・ザ・バレル。アンタは本気で世界を敵にするのか?」
シンがあの時の問いをレイに返す。
つい先日レイに連合占領下の街へ呼び出された時だ。待ち合わせ場所は今は使われていない。劇場だった。
「久しぶりだな。いや、始めましてと言うべきか?」
「アンタ……レイ。じゃないな。何者だ?場合によっては……」
「銃ならやめてもらいたいな。私は君に敬意を払い護衛は勿論、催涙スプレーさえ持ってきていない。」
「いつ変質者にあうかビクビクしながらここに来たのだよ。」と冗談めかしている相手を見つめる。ジャケットの内側から手を出すとシンは彼女を上から下まで眺める。武器は無いみたいではある。
シンは周辺を見渡し、適当に腰掛ける。本当に、護衛もいない。護衛なんてつけれる身分じゃない俺ならわかるが
この女……正気か?
「シン。単刀直入に言う。」
そういいながら彼女は近づいてくる。そのまま、シンの隣へ腰掛け、
「君は世界を敵に回す覚悟はあるか?……私はある人物と共にプラントと連合を、いや、この歪んだ世界を破壊する。」
「君の力を貸してほしい。」
「当たり前だ。ソレスタルビーイングはそのために存在する。」
レイは心外だと言わんばかりに返答する。それだけでシンには十分だった。
「で、教えてくれないか?なにが起きているのかを……」
「先ずは、俺からだな。」
「アィルカ?」
「シン。教えてやろう。世界がどう歪み始めたのかを。」
「初めは些細な事だった。いや、本当はもっと前から歪んでいたのかもしれない。ストライク。連合製の試作機Gの一機だった機体だ。」
138 :
00の人:2009/01/13(火) 11:55:40 ID:???
「この機体はオノゴロ島沖の戦いでイージスに組み付かれ、自爆により破壊された。だが、そのパイロットは奇跡的に助かった。」
アィルカが一旦区切る。シンは気付かずに口を開いていた。
「キラ…ヤマト…!!」
「そうだ。その後、彼はフリーダムを奪取し、後は知っているな?」
「あぁ…知っているさ。嫌なほどに。」
「だが実際には彼は別なものだ。」
「なっ!?」
「フリーダムを奪取したのはキラ・ヤマトではない。それを模した模造品。クローンだ。奴らは、キラ・ヤマトを回収し、それを調べた。」
「それにより、彼が特殊なコーディネーターだと知り、彼の細胞片から彼と同じ物を作り上げ、電子操作により彼の記憶を刷り込み、そして洗脳した。」
「まてよ!?なら…そのキラって人は…?」
シンが大声を上げる。もしアィルカの話が本当ならば…
「生きている。いや、生かされていた。その後も、奴らはキラ・ヤマトが死ぬ度に本物のキラ・ヤマトから細胞片を入手。再生していた。つまりはコピーを取るためのオリジナルだ。」
「そんな事が許される訳が…」
淡々とアィルカは続ける。
「そうだな。だから俺は奴らを皆殺しにしなければならない。奴らはその後も、アスラン・ザラを次の標的にしその人形により…」
アィルカが又、区切りを入れる。無理もない。アィルカはそんなに雄弁な方ではないため話慣れていないのだろう。にしてもキラ・ヤマトとアスラン・ザラ…なんて事だ。いつ頃からアスランは変わっていたのだろうか?
「カガリ・ユラ・アスハを暗殺した。だが、奴らにも誤算があった。本物のアスラン・ザラがキラ・ヤマトを連れて脱走したのだ。」
「又かよ…じゃなかった。なんだって!?」
シンはつい本音が出てしまったが、そんな事より、カガリの暗殺についてだ。この話はシンにとっても他人事ではない。彼女の最後の場には彼も居たのだから。
「アスハは…最後に俺にツキカゲと…を託して、アスランと話し合いに行くと…」
「そうか。ならばその後、人形のアスラン・ザラにより射殺されたのだな…」
空気が重たく感じてきたが、アィルカは続ける。
「一、二年前のコロニーメンデルの爆破事件を覚えているか?俺は覚えている。忘れはしない。例え記憶を失っても俺は、忘れるものか……」
139 :
00の人:2009/01/13(火) 11:57:33 ID:???
憎悪?いやもはや殺意すら超えた怒りがアィルカからは感じられた。レイは顔を伏せている。アレルヤはあまり関係がないのだろう。壁際でアィルカの話を聞き、刹那はなにを考えているかは解らないが奥歯をかみしめている。
「頼む!!誰でもいい。キラを!!キラを助けてくれ!!」
コクピット内に響き渡る悲痛な叫び。叫ぶ青年は腹部から激しい出血を見せている。もはや長くはないのは日をみるより明らかだ。
「アスラン。ダメだよ。そんなに叫んだら、アスランが死んでしまう……」
「馬鹿やろう!!お前は、お前等は必ず助ける。俺の命に代えてもだ!!」
「アスラン……」
「ヤマトは喋るな。ずっとカプセル内にいたんだ。私がアスランを……」
「俺は、もう長くない。だから……せめて、最後ぐらい。」
「親友の為に死なせてくれ……」
「アス……ラン?」
「俺は、裏切って、見捨てて、開き直って、その上騙されて、大切な人をみな……」殆ど視力のないキラの視界が赤く染まる。
「ザフトも、カガリも、シンやミネルバも、みんなを裏切って……だから……死に際くらいは、お前たちの……」
「ゲフ」とアスランが赤い何かを吐き出す。
「アスラン。……アスラン…。お前の気持ちは、受け止めたぞ。お前の最後の叫びも、懺悔も、その意志も。私が……」
「レイ……キラの治療が終わったら……サーペントテールと……傭兵を……」
「分かった。喋るな。」
「アスラン……アスラン…」
「俺は、キラ・ヤマトだ。」
シンは拳を握ってしまった。アィルカからの告白。今までの説明を聞けばある程度予想は出来る。だが、あえて言う必要のある話ではない。
つまり、彼はどうしても、伝えておきたかったんだろう。なんて不器用な……
「アィルカ」
シンがアィルカに話し掛ける。次の瞬間アィルカの体は宙を舞う。きりもみし、そのまま部屋の端まで転がっていき頭から壁にぶつかる。
「これで全部チャラだろ?」
顔を歪め立ち上がろうとしたアィルカに手を伸ばすシン。アィルカも又、手を取り立ち上がる。
「男同士だな。」
刹那はその姿をみてつぶやくがレイはオロオロしている。
「レイ。コレが彼らなりの精算なんだ。」
アレルヤもフォローを入れる。
「でも、ならレイは…」
「わ、私はレイ・ザ・バレルの遺伝子を用いて作られた……戦闘用のクローンだ。私のような物は……たくさんいる。」
彼女がレイににている理由はそう言うことらしい。
140 :
00の人:2009/01/13(火) 12:00:42 ID:???
「今や、ザフトはもちろん、連合にも私のような物はたくさん居る。戦いのない世界に戦うために作られた物が」
「違う。」
レイの言葉を遮る刹那。
「お前は、生まれこそそうかもしれないが、今のお前は違う。この世界を破壊する。そうお前もソレスタルビーイングだ。」
「刹那……マリナ姫は良いのかな?」
「あ、アレルヤ・ハプティズム!」
刹那の言葉にアレルヤが笑いながら、横槍を入れる。対するレイは何故だかぼぅと刹那をみていた。
「じゃあ、次の質問良いか?」
シンがニヤニヤしながら、声を掛ける。ルナ達は昔こういう気分だったのだろうか……
「GNドライブってなんなんだ?ソレスタルビーイングは?」
「GNドライブ……太陽炉とも呼ばれるまぁMS用の推進装置兼ジェネレーターだね。重粒子の崩壊により発生するエネルギーにより機体を駆動させ、その課程で発生した変異ニュートリノにより高密度のジャミングも可能な理想的な駆動装置だ。」
「そして、ソレスタルビーイングはガンダムを用いて紛争根絶を目指し武力介入する…」
「言わばテロリストだ……」
アィルカが後を続ける。シンは急に頭が痛くなってきた気がした。俺はもしかしたらとんでもない事をしでかさないといけないのかもしれないと。
「違う。ソレスタルビーイングは存在する事に意味がある。力による圧力や武力による平和を無くすための……」
「紛争を終わらせるための象徴。それがガンダムでありソレスタルビーイングだ。」刹那がアィルカを否定する。
つまり、どこも武器を持てばいい。だがそれを使えばソレスタルビーイングが叩き潰す。
そしてソレスタルビーイングは絶対にその力を紛争根絶以外にはつかわない。ソレスタルビーイングを利用しようとする者も許しはしない。と言う事なのだろう。
「で、俺達でソレスタルビーイングをやる。と……だが、アンタ達は……」
刹那がアレルヤを見る。アレルヤは黙って頷き……
「俺達は……いや、GNドライブやソレスタルビーイングはこの世界のものではない。」
「この世界?寝ぼけるのは大概にしてくれ。まるでアンタ達が別な世界から来たみたいじゃないか?」
「その通りだ。俺達ソレスタルビーイングは4年前に、全世界に宣言をしている…」「4年……前!?そんなもの……!?」
シンは今のアィルカの話よりも更に驚いていた。
141 :
00の人:2009/01/13(火) 12:02:11 ID:???
そうだろう?同じ記憶。それも同じ様に別な人間が、同じ事を記憶し彼らはその結末までも知っている。それは事実なのだ……いや、
「待てよ。それって、ラクス・クラインが集団を洗脳したって事か?」
やりかねない。シンは今し方のアィルカの話を思いだし、真っ先に浮かんだ問いを投げかける。
「違う。この世界にはGNドライブの理論さえ存在しなかった。GNドライブは木星圏等の非常に重力の強い場所でしか製造出来ない。又、製造自体にも非常に時間を要する。生産性は皆無といって差し支えのない物だ。」
「僕達の世界では20年以上かけて5機のGNドライブが作られた。考えてほしい。20年以上前のこの世界に、MSと言う概念があったかい?」
「……」シンは押し黙る。
「シン。非常に信じがたい話なのだが、彼等は別な世界の人間なのだ。馬鹿げてると思ってくれてかまわない。実際、彼等の機体に使われている素材や技術は私達の世界の物より何世代も上の物なんだ。」
「プシ」と音を立てて、モニターにMSが映し出される。ツインアイにブイアンテナ。その外見は「ガンダム」タイプと呼ばれる機体だ。
「ガンダムエクシア。いやガンダム「アヴァロン」エクシアだな。」
「この機体……エクシアじゃない……!?」
「正確にはエクシアの完成系である機体を模してエクシアを修復した姿……ごめんね。アヴァランチのEカーボンを作る施設が確保出来無かった。」
素直に謝るレイ。刹那はそのエクシアを見つめ、
「ハイブリッドか……」
「この機体は、このソレスタルビーイングの象徴だ。装甲材にはEカーボンを用いておきながら内部装甲とアヴァランチ……アヴァロンにPS装甲を採用。更にGNソードとGNブレードにはAPS(アドヴァンスドフェーズシフト)を採用し」
「待てよ。それだけのエネルギーをどこから引っ張った?」
説明をするレイにシンが突っかかる。APSとは最近になり実用段階に至ったPS装甲の一種でその特性は単分子カッターに近いPS装甲とでも言うものである。
そんな最新技術を用いることもだが、全身をくまなくPS化しているこの機体のエネルギーはまさかGNドライブだけでまかなえるのだろうか?
「……核融合炉。更にGNドライブを同時に。だ。主には核融合炉をPS装甲の維持に。GNドライブはビーム生成と推進装置として使われる。」
「……やっぱり、こんな機体、どこで?」
「蛇の道は蛇だ。どこも叩けば埃くらいでるさ。」
142 :
00の人:2009/01/13(火) 12:04:35 ID:???
「刹那……」
「アヴァロン……エクシアを次ぐもの……レイ。分離は可能なのか?」
「やっぱり気に入らなかったのか……」
目に見えて落ち込むレイ。だが刹那は再度、聞き直す。
「戦闘時アヴァロンユニットの重量が邪魔になった場合、その核融合炉を搭載したまま分離は可能なのか?」
「え?核動力は本体内に組み込んで、各部のスラスターとも同調してあるから、分離しても問題ないが……」
「……そうか。」
「気に入ったみたいだね。刹那。」
アレルヤが刹那の代わりに代弁する。
「刹那は苦手なんだ。人付き合いとか、さ。」
「わかったよ。信じる。ハイブリッドの機体まで持ち出されたらどうしようもない。それよりこれからの話だろ?」
シンは手のひらをひらひらさせながらベットに腰掛ける。ゆっくりとレイはモニターを切り替えながらモニターの隣に立ち
「オーブへ行く。」
とんでもない発言をかました。シンは思わずせき込んでしまう。
「戦力的に私達は乏しいが、合流予定の仲間と共にオーブを挟み撃ちにする。その後、オーブの通信施設により、プラントと連合にソレスタルビーイングの意思表明を行いたい。」
「馬鹿言ってるんじゃない!?死にに行くようなものだぞ!?あそこは連合の中枢みたいなもんだ。」
「だからこそソレスタルビーイングの力を見せつける良い機会だ。」
アィルカが続ける。
「合流予定の仲間は戦艦二隻。それにGNドライブ搭載型だ。我々の目的はあくまで全滅ではない。よってGNドライブ搭載型の機体でモルゲンレーテを強襲。発進までに敵を可能な限り破壊し、同時に囮動を戦艦二隻で行う。」
「本気。なのか?」
「本気だ。そのためのエアリスとエクシアだ。」
目が訴えていた。本気であると、確かにプラントをいや、ラクス・クラインを倒すならそれ位は必要だと思うが、勝率はかなり低い。それとも、GNドライブってのはそこまで強力な物なのか?
「どうやってオーブまで行くんだ。」
「超高速輸送機を用意した。GN粒子を散布しつつ移動する。」
「アレックスは……」
アレックスをこんな死ぬような戦いには連れていけない。いや、そもそも俺はアレックスの事を思うなら、参加すべきじゃない……
「彼なのだが…」
143 :
00の人:2009/01/13(火) 12:09:10 ID:???
「GNドライブってすげーな。核融合炉より出力が出るみたいだぜ。「ここにはエクシアとディスティニーと俺がいる!」って感じだわ。」
医務室のドアが開かれる。と同時に嬉しそうに声を上げる少年の姿があった。
「アレックス!?」
「シン!?起きてたのかよ。それより見ろよ。このスペックデータ。アヴァロンって奴、マジですげーよ。」
そう言いながら、先程、アレックスが再調整したエクシアのスペックデータを見せてくる。だがデータよりも
「……お前。その服は?」
「レイさんに貰った。俺もさ。オーブに行くからな!!お前だけじゃ危なっかしいし。」
「アレックス!?お前話しを聞いたのか?」
「聞いたよ!!だから行くんだ。俺だって、メンテぐらいやれるし。シンが守ってくれるんだろ!?」
頭の中がハツカネズミになりそうだった。しかもこのガキは変な所だけ母親に似てるから質が悪い。
「クソッたれ。勝手にしろよ。けど死んでも恨むなよ!」
アレックスは俺が守る。アスハとの約束だ。戦いで世界を平和に出来るなら俺は……
シンはアレックスの頭をアイアンクローしながらじゃれついた。
144 :
00の人:2009/01/13(火) 12:15:04 ID:???
とりあえず、アラスカ編おしまい。
次のオーブ編の構想はまだなんで結構かかると思う。
現状で分からない点の質問、感想があれば次から考えたいのでよろしく。
>「又かよ…じゃなかった。なんだって!?」
ワロスwwww
>144
乙 複雑な話を書けてうらやましい。
前振りしておくと、今から投下する分は一番やりたかった話、だけど
シン一行にキャラ設定考慮なしで暴れさせてるので怒られるかもしれない です
「チャージアップ・アンド・ソード」 前編
平和な時代である。しかしそれまでの平和ではない時代に慣れてしまった人々もいる。
戦後に軍から社会への復員を果たせたもの、それは軍に関わった人間の全てではない。
そしてそれらを放置しておけば、重犯罪や下手をすると内乱の火種となってしまう。
プラントはその対策として、元軍人のうち、動けるが復員困難な者については受け入れた。
受け入れたというより、抱え込んだ。
過程で連合とプラントの間にどんな力関係が作用したのかは謎とされるが、
ともかく復員困難な元兵士を抱え込んだのはプラントだけである。
そのような手合いの成れの果て、
武装解除によって多量にこの世界にあふれた兵器を玩具にしている連中が、監察官。
そのような平和の守護者が、この戦後という時代の現実である。
―――エクステンデッド、つまり連合製の強化兵士の特徴は、
ある程度までは普通の人間と変わらない情緒と、
ある種宇宙人か子供のような一風変わった感性。―――。
シン達の外形的なエクステンデッドに対する知識はこうである。
空から落ちてきた3人の特徴は、この特徴とかなり合致していた。
そしてエクステンデッド用に作られたマシーンと、空から落ちてきたマシーンの共通点も合わさってしまうと・・・・。
〜午後7時 春島基地 食堂〜
どこの伝統を引き継いだのかまでは彼女たちは知らないが、
この組織では、決まった曜日にカレーライスが出る。
出来合いの大きな缶詰を鍋で温めて米飯と一緒に盛って食べる、
戦時中の戦闘食よりはるかに人間らしい食べ物であった。
トレイにコーヒーにカレー、そしてサラダを乗せてテーブルにつく赤い髪の2人。
メイリン「キャップは?」
ルナマリア「陸(おか)の工場でザクを直してるわよ。一旦始まるときかないんだから。」
メイリン「やっぱり、あの連中がまた来ると思ってるんだ。」
ルナマリア「あたしだってそう思う。プラントの人たちが実験で作って、間違って地球に落しちゃった、
確かに、こう考えると全部の辻褄はあっちゃうものねー。
・・・・で、本来条約違反のそいつを力づくで取り戻しに来てる」
メイリン「あの3人どうなっちゃうのかなー・・・・」
ルナマリア「さあ、機械もばらしちゃうんでしょ、どうなるんだろ・・・あなた見た?空から落ちてきた3人さん」
メイリン「あのガッシリした人だけ。」
ルナマリア「一度見物してきなさいよ。青いロングのハンサムさん。情が移っても知らないけどねー」
メイリン「お姉ちゃん!」
からかわれたメイリンは顔を膨らまし、何もすくっていないスプーンを裏返して少し唇にくわえた。
〜翌朝5:30 独房〜
前編つづき
金属の皿3枚に、スプーンが独房の入り口に3つ。
「空から落ちてきた3人」は冷たいコンクリートの床に大の字になってこそこそと会議中であった。
会議というより逃げ出す算段を話し合っていると言う方が雰囲気としてはふさわしい。
マリン「雷太も目が覚めたか?」
オリバー「おいマリン、このままココにいてはマズイんじゃねえか」
雷太「そもそも、ここはどこなんだよ?」
マリン「どこか広い海の上の小さな島だ。
俺たちの世界じゃ、すでに海に沈んだはずのこんな小島がまだ残っていた。
それどころかここには世界連盟がなくて別の政府がある。アルデバロンもいない。」
雷太「じゃあ俺たちは飛ばされて・・・・」
オリバー「何か別世界の地球に飛んできちまったのか」
マリン「わからん、だが状況証拠だけ見ると、そうとしか考えられない」
ガチャリ・・・・と鍵を開ける音がした。
マリン「誰?」
雷太「おまえさんは・・・・」
薄暗い中に見えるのは特徴的なツインテール。
「シッ 黙って付いてきてください」
4人が歩いて行き着いた先は、建物の出口の外。
滑走路が広く視界に広がり、その右、遥か先には静かに波音を立てる水平線。そこでメイリンは再び口を開く。
メイリン「ここから先に行って滑走路の端の倉庫に入れば、
そこが第1ドックです、あなたがたのマシーンもそこに・・・」
マリン「キミは?」
メイリン「何も聞かなくていいんです。このままここにいても、誰も皆さんを受け入れようとはしない。
それどころか・・・。 数日中にあのマシーンも分解して使えなくするって、キャップが。」
マリン「そうか。」
オリバー「壊しちまうのか。」
雷太「あれがないと、帰れないぜ・・・行くか?」
マリン「キミ、雷太も、オリバーも。すまんが、俺は逃げない」
メイリン「えっ!? でも・・・・」
マリン「スパイの烙印を押されて逃げて何になる。例え今信じてもらえなくても、俺は残る。」
雷太とオリバーも驚きの表情を見せたが、メイリンもまた、予想外の答えが返ってきて言葉に詰まる。
しかしマリンと長いこと連れ添ってきた仲間だけはあっさりしていた。
オリバー「ふふっ、これが最後のチャンスだったかもしれねえのに、マリン後悔すんなよ。」
雷太「しょうがねえ。やめだやめだ。」
雷太とオリバーは口々に「やれやれ」を言いつつ寝そべってしまう。マリンは少し表情を柔らかくした。
マリン「頼みがあるんだ。ここで少しだけ海を見たい。そうしたら部屋に戻ろう。」
前編つづき
〜基地建物の外 芝生〜
芝生に座りこみ、海を見ていた。風はないが雲はいくつか空にかかっていた。間もなく日も昇るだろう。
メイリンはなぜ彼らを連れ出したのかと今頃になって考えていた。
ただの好奇心のためだとは思いたくなくなり、考え込む。
マリンは相変わらず黙って海を見ているのみ。雷太とオリバーは芝生に転がって寝てしまった。
メイリン「何を考えていたんです、故郷の事・・・・・それとも、大事な人」
マリン「そんなところかな」
メイリン「お姉ちゃんから聞いて・・・・亡くなられたんですって?」
マリン「こんな海を見ながら、夕焼けの海を見ながら、俺の腕の中で死んでいった。キミの、大事な人は?」
メイリン「あの人は・・・どこかへ行っちゃった。」
マリン「そうか。」
メイリン「今どこにいるのか。でも、でもね、この星空の、どこかにいるんじゃないかって。
あたしが、キャップとお姉ちゃんを巻き込んでこの隊に志願したのは、
星空の向こうにその人を探しているからかもしれない。だから、だからね、
あたしは、こんな綺麗な星空や海を乱す人たちが、許せないんです!」
マリンはかすかに涙ぐんだメイリンの両肩を両の手でつかんでいた。
マリン「そうだよ!そんな奴ら、この前のような奴らは、放っておいちゃいけないんだ!」
〜工場〜
白いザク2機が並んで立つ。どちらも表面の傷はまったく修理されていなかった。
1機は、色が違うありあわせの右腕を取り付けて、これもまたありあわせの盾を持たせている。
もう1機は内部機構の調整を終え、各所のハッチが開いたままだった。
その足元でシンが毛布をかぶり寝息を立てている。
「・・・・ン、シン、 シン!シンってば!」
身体を揺さぶられるような感覚に、ひどく不機嫌そうな顔で顔を上げると、見慣れた赤い髪。
シン「なんだよしゅういはおわったろ・・・・・あんだ、まだ朝の6時か」
ルナ「大変よ!あの3人がいないの!メイリンも!」
シン「なに!」
〜基地建物の外 芝生〜
「ここじゃない!」
「シン!こっちでもない!」
息を切らしながらシンとルナマリアが走る。警報を鳴らすだの警備員を集めるだのすることが普通なのだが、
2人揃って気が動転してしまったためかどちらもそのことを言わず、ただほうぼう足り回って探すのみである。
施設を探し始めて20分ほど、芝生にいる4人をシンが発見した。
「あ、メイリンとあの3人!」
「メイリン離れろ!あの野郎!」
驚いて立ち上がるマリンに、貴様、の一言と共にシンが右の拳を左頬に見舞った。
まともに拳を受けてはそのまま倒れる以外にない。
シン「メイリンをたぶらかして逃げる気か!」
マリン「違う!」
問答無用のもう一撃がもう一度、
立ち上がりざまに「逃げたりしない」と弁明するマリンの左頬を打つと、マリンの表情が憤怒をあらわにした。
「分からず屋!」の一言を浴びせてマリンが反撃の拳を打つと、
そのまま双方避けようともしない殴りあいにもつれこむ。
ルナマリア「やめて!」
メイリン「2人とももうやめて!」
必死に叫ぶ2人の女とは対照的に、申し合わせたようにシンの背後とマリンの背後に回る2人の男。
雷太「やめとけ。もう何言っても無駄だぜ」
オリバー「男の戦いさ」
「必ず信じさせる!」とマリンが口にしたところに拳の直撃、
倒れかかったマリンを抱えて、雷太がそのまま押し戻す。
雷太「おらよっ、まだ早いぜ」
「そんな出まかせを言いやがったところで!」とシンが口にしたところに今度はマリンの拳、
こちらは倒れかかったところにオリバー、やはりそのままシンを輪の中に押し戻す
オリバー「気が済んでねえだろ、そら、もう一息だ」
シンとマリンの右拳が交差すると、互いの頬を打ち抜いて終わった。
映し鏡のように両者が芝生に崩れ落ちる。
ゴングは鳴らないが、代わりに警報のサイレンが鳴り始めた、招かれざる来客。
シン「見てろ、勝負はお預けだ。ルナ行くぞ!メイリンはこいつらを連れ戻せ、拳銃を使ってでもな」
シンは少しよろめいたがそのままザクの待つ工場へルナマリアを連れて走っていく。
マリンも少しよろめきながら芝生の上に立ち上がった。
雷太「じゃあ、お嬢さんの引率で戻るか。」
オリバー「今回はいいのか?俺たちはいちばんいい手札らしいぜ」
マリン「誰があいつなんか・・・・!」
マリンはギリッと口元を噛み締めている。
前編おわり
今日はこれまで
シン一行に、思いつく限り熱い(暑苦しい)やり取りをさせたかったとです
153 :
00の人:2009/01/14(水) 15:43:35 ID:???
バルディオス乙
>>145 つい口に出した本音ですwww
>>146 実は書いてる本人もいまいち把握できないかもと思っている。
ヤキン・ドゥーエ戦後の議長がデュランダルではなく、ラクスだったら
ユニウス落下は全く阻止できず、地球滅亡
その後生き残った宇宙連合軍に核撃ち込まれてプラント終了
人類は火星で細々と生き残るのみとなる・・・
>154
停戦出来ずに泥沼の戦い
もし、ユニウス落下が起こる事もなくプラントと連合が協調体制を取って
AAの摘発に動いていたら
>>154 それに近いようなことを
ふとじっくり考えたことがあったり
159 :
00の人:2009/01/15(木) 00:27:28 ID:???
>>154 上記の奴以外なら
ラクス様マンセーな世界を作り上げ世界じゃうの反対者は下僕AとBで鎮圧するwwwもちろんもっともらしい適当な前振り有りで。
これ言っちゃっていいのかな?
いまやってるバルディシードデスティニー
ラクシズが新世界創製の立場に立って
さぁ2年後にどうしてるでしょうね、ちゃんと仕事してるぅ?
というのが絡む 最初は予定外だったけど混ぜる
161 :
00の人:2009/01/15(木) 09:29:08 ID:???
俺はあの覇王がちゃんと仕事するかどうかって次元じゃないから何ともいえんが
あの人に覇王へあの台詞を吐かせてやる予定だからいんじゃね。
ネタバレは良くないが…
162 :
通常の名無しさんの3倍:2009/01/15(木) 23:53:41 ID:W0M3hATl
退かぬ、媚びぬ、顧みぬ!!
>>155 ユニウス落としで地球壊滅
↓
連合軍最後の反抗
↓
キラ「話し合いで道を探すラクスの邪魔をするなんて、許せないじゃない?」
凸「行こう…キラ!」
魔乳「前進!!」
↓
連合軍壊滅
プラント無傷の大勝利
↓
地球復興はほぼ不可能
でもオーブは無傷
↓
キラ「それでも…花を植えるよ……」
↓
手を取り合うラクシズ
↓
ハッピーエンド
こうでしょ?
ってかここの住民はラクスが好きなのか?嫌いなのか?
各作品によってことなる
オーブしか地球に残ってない時点で飢え死に決定過ぎるw
もしも火山怪鳥バードンと暴君怪獣タイラントが種世界にきたら
何なんだそのニッチなセレクトは
>>167 兄弟最強のタロウを倒した怪獣とウルトラ兄弟五人抜きした怪獣をガンダムで倒せと?
とりあえずゾフィー的な意味で噛ませ犬は誰か?
チョットマテ
ゾフィー兄さんの頭を焼いた上に殺してタロウとメビウスを一度は退けた猛毒持つ奴と
ウルトラ兄弟5人倒してファイエボで脅威の超進化した奴はコロニーレーザーでも無理だろ。
とりあえず、ファイヤーヘッドはストフリで
>>170 待ってくれ
バードンなら火山に誘導すれば倒せる可能性ある
タイラントは知らん
隊長的意味でゾフィーはアスランで
見える…見えるぞ!
バードンの火炎によって凸の髪の毛が燃やされていくのが!
そういや種ってアラスカでドンパチしてたなぁ〜って思い出してたら
アラスカ→アメリカ領土じゃなかったっけ
ってなり某大統領のパーティー参加決定なるものを受信した
ロシアから10円で買ったんだっけ>アラスカ
>>167 二大怪獣に蹂躙されるだけだな
倒すにはシンがウルトラマンの力に目覚めるしかない
つるのか
>>173 アメリカの正義の守護神たるあの方ですね。
洒落になんねーよ。あの空間を無視したパワードスーツは
あの人いたら、それは私が大西洋連邦大統領だからだ!
と、たった一人でプラント壊滅させちゃうから駄目でしょう。
……もし、コープランド大統領が、伝説の大統領専用パワードスーツを受け継いでいたら……こぇぇ
。
ジェネシスに打たれ壊滅した基地の中から、
一人身を起こす黒いパワードスーツ!
身に余る長大な火器を掲げたそれは、紳士の時間は終わりを告げたと、プラントに向けて一人突貫を開始する。
アメコミヒーローがやってきたら
スペースゴジラと言う悪例があるから種キャラとカネゴンの心温まるお話になります
チャージアップ・アンド・ソード
後編のさらに前半分
〜格納庫〜
「すいません!・・・・遅くなった。このサイレンは?」
「管制塔から所属不明機が数機接近との連絡を受けました。」
「所属不明ってことは・・・」
「所属識別信号を出さないで無事に飛べるのは監察官ぐらいでしょう。こちらの無線にまったく答えません」
格納庫にたどり着いたシンはメカマンから事の詳細を耳にして、不満げな顔を浮かべる。
すでにルナマリアは20mリフトに自分の体を乗せ、2番機のザクに乗り込もうとしていた。
シン「くそっ、目的も分からないし耳も貸さないんじゃどうしようもない。
なんとか直談判だ。 おーい!白の旗だ!モビルスーツ用のを出して!」
いま格納庫の壁にかかっているモビルスーツ用の停戦白旗は、基地の小道具の一つ。
海上保安隊と何らかの船舶が銃撃戦になった場合などを想定して仲裁用に用意されたもので、
こんな事態に果たして使えるかどうかは未知数だ。
ロックを外された白旗をルナマリアのザク2号機の右手がつかむと、
左手に持たせていた40ミリ機関砲を左太腿横のアタッチメントに固定した。
小型の単装機関砲で、形は人間が使う短機関銃に相当する。
シンの1号機も白旗を壁から取り外すと、左手の対装甲ブレードを腰のラックに回して固定した。
こちらは、前回の出動まで使っていた対装甲ナイフを長尺にしただけのものにすぎない。
彼らのザクの装備が、海賊風情の持つ武装船舶やガラクタ同然のモビルスーツを相手にするならまだしも、
軍に相当する装備に張り合えると思う整備士はまずいないだろう。
取りうる選択肢は・・・・
前回ちょっかいをかけてきたウィンダムを海に叩き落としておいて話が通じるのか、そんなことを考える余裕はない。
空から落ちてきた連中を問答無用で引き渡してでも、監察官との衝突を避ける。
死なずに済むには唯一の方法。
つづき
シンにせよ、ルナマリアにせよ、ヘルメットはおろかパイロット服を着る余裕もない。
シートと体を固定させるようにベルトを巻きつけて左手元のボタンをいくつか押す、無線の周波数を合わせる。
管制塔にはメイリンが入っているはずだ。
シン「全速力、できるだけここから遠い場所で接触を試みる。ルナは続け!」
ルナマリア「了解!」
メイリン「東南東より接近中、機数約10、どうぞ!」
2機のザクは背中のジェットを思い切り吹かして飛び上がる、30秒もすればその姿は管制塔からは2つの点のように映る。
いっぽう上空のザク、今にもボディが折れんばかりの急加速を続けていた。
全開で燃焼させる時間のさじ加減を間違えればジェットを生み出している機関部が焼きついて墜落する。
シンの秒読みが続く。コンソールパネルの燃焼時間限界を示すカウンターはあくまで目安、
それより何割り増しで早めるかは、その機体を使い慣れたパイロットのみが勘でつかむ。
シン「3・・2・・1、止めろ!」
ルナマリア「了解!」
勢いよく噴き出していた青白いロケット光がおとなしくなる。コックピットの全周モニターは
それまで流れるように動いていた周囲の雲も落ち着いて見え、その遠くにいくつかの影。
2機のザクは右手に持たせた白旗を軽く振り、なびかせて高く掲げながら飛び続ける。
「聞こえるか、こちらに戦闘の意思はない!」
シンのザクは可能な限り送信用の出力を上げて前方のモビルスーツ群に呼びかけていた。
左腕は武器などを何も持たない状態で真横に広げ、機体を左右に揺すっている。
「即刻基地の落下物を引き渡す、こちらは抵抗の意思はない、待て!何をする!」
シンの優れた視力がとらえたのは、ウィンダムのミサイルが発射される瞬間の光。
切り離されてロケットノズルを噴射した一瞬の光を見逃さず回避行動に入る。
整備状態のよくないザクで最初の挙動が遅れたら、一斉に飛んでくるミサイルをかわしきれない。
この数日で酷使されたザクは、以前シンが乗り組んだ優秀なモビルスーツには程遠い。
直線的にミサイルから逃げるしかないシンと、それに動きをあわせるしかないルナマリア。
2つのロケット光が、ミサイルの近接爆発の閃光を寸前で交わしながら飛ぶ。
聞き入れられそうにもない訴えを叫び続けながら、緩いカーブを描いて飛ぶ。
「なぜ聞き入れない!こちらの話を聞いてくれ!」
つづき
〜春島基地 陸上管制塔〜
「ミサイルらしき反応が複数、ザク1番2番、共に追われている模様」
「監察官は、ウィンダムらしきタイプが9!」
低高度レーダーと高高度レーダー、2人の観測手が画面に映った映像を見て即座に状況を読み上げている。
メイリンは通信手席に座ってはいたが、心なしか席を立ちたいような落ち着かない調子で
画面、室内右手、室内左手と視線を動かしている。
そのメイリンの様子がさらに落ち着かなくなったのは、
状況の変化を知らせるレーダー手の声の調子が変わった時。
「高度4000、後方より新しい反応が現れました!」
「おそらくモビルスーツらしきものが9、さらにモビルアーマーらしき大型の反応が1!」
回線を開くのを忘れてメイリンの動きが凍りつく。
「なんでよ、なんでそんなものが・・・」
「副長!・・・副長!」
レーダー手に呼ばれて、メイリンが画面から目線を上げる。
「あ、はい!反応は・・・」
「後ろから増援多数です、回線を開いて連絡を取ってくださいよ」
「ちょっと、ここを頼みます!」
どこへ行くんです!という声を背にしてメイリンが駆け出していた。
管制塔の下、建物の地下へ向かって。
〜独房〜
オリバー「あーあ、あのお嬢さん、律儀に鍵かけていきやがった」
雷太「てめえのせいだぞマリン」
マリンの目の前、雷太に耳を貸さず、ただ目の前に、自らの腕の前に、なくしたものの影をぼんやり見る。
それは3人がこの島の海に放り込まれる前の出来事。
『私が、死んでも・・・私の、してきたことは、消えない・・・』
『何を言う!しっかりしろ!しっかりするんだ!』
『いいのだ・・・これで私は、休める・・・
お前の手、とても、あたたかい・・・・』
『アフロディア!俺たちは、帰ってきたんだ、俺たちの星へ!
死ぬんじゃないぞ! アフロディア! アフロディア!!』
「おいマリン!おい!こら!」
手を目の前でさかんに振られていることに気づくのに何秒か。ようやく我に返る。
マリン「?・・・どうした?」
マリンの視線がマリン自身の手元をさまよっていたのを変に思った雷太だった。
なにか、空気かさもなくば幻を抱えているような手つきでいる。
雷太「おめえはな、こりゃ具合がおかしい、と自分で思う瞬間ってないのかい」
オリバー「お前は疲れてんだよ。このところ状況がバタバタ動きすぎだったからな。」
冗談交じりでも、気遣いの言葉だった、これが彼らの仲間内の流儀。
ここへ飛ばされてくる前に、マリンに悲しい出来事があった、そのことを知らない2人ではない。
ゴンゴン、という鉄の扉を叩く音。
とうとう引き出されるのか、と考えると振り返って扉を見る気になどなれない。
扉に背を向けてあぐらをかいたままだ。しかし予想に反して背中に弱々しい声が飛んでくる。
「あの、3人さんに頼みたいことがあります」
後編つづく
今日はこれまで。
正直、両者の背景事情を文中に織り込むのに苦しんでいます。
ツッコミドコロも多々あるかと思いますが
最低限、ぶん投げぶっきらぼうな作業にならぬようやっていきますハイ
もしも円盤生物シルバーブルーメが種世界に来たら
それと
>>188 GJ
プラントは壊滅して地上も…地球、終わったな。
あ、でも落ちてしまったウルトラマンスレでキラがレオと協力して倒してたな。
もし種世界にグリッドマンのカーンデジファーがやって来たら
ネット世界に怪獣を送り込んでプラントの各機能麻痺
MSが一斉にMD化して大混乱
遥か昔に書いたものを微妙に修正したので書き込んでみたりする。
事実上のプラント国軍である自由条約黄道同盟(Z.A.F.T)。
その士官学校に所属する少年、シン・アスカは、努力の人である。
沸点の低いシンには、決して少なくない数の敵が存在したが、その中でも最も彼を嫌う者ですらその事実はまったく否定できない――シンはそれ程の努力家であり、その結果として彼の成績は士官学校の同期の中でも五本の指から落ちたことがなかった。
だからシンの敵は、その評価を否定する代わりに、頭にただ二言を付け加える。
……いわく、ナチュラルのように非合理的な。
そしてこちら側の評価も、シン・アスカの多いとは言えない友人の中の、最も親しい者ですら否定する事はできなかった。
今は、コーディネータの体力が微かに努力を上回っているが、もしその紙一重のバランスを崩す事があればシンは底の底まで転がり落ちるだろう――それが、敵味方関係なく、周囲の人間がシンに抱く嘘偽り無い感想だと言えば、その異様さが解るだろう。
彼の努力はそれほど迄に我武者羅であり、端的に言えば無茶苦茶だった。
シンのルームメイトであり親友、更に言えば、こちらも同期屈指の努力家として知られるレイ・ザ・バレル――最も、彼の努力はコーディネーターらしい計算されたものだったが――をして『あの訓練量は異常』と言わしめる程の訓練を、彼は自分に課している。
……そんなシンが突然変わったのは、教官や友人たちが、彼の訓練依存症を修正する事を諦めてから、しばらく後の事だった。
「……今日も行くのか?」
寮の消灯時間から幾許か……巡回の移動を見計らい、窓に手をかけた黒衣黒髪の少年(シン)に、作り付けの机に座り、本を読んでいた金髪の少年(レイ)がそう声をかける。
消灯後に寮を脱走、深夜まで公園で自主訓練を行う事が、ここ数週間のシンの日課であり、本来レイはそれを止めるべき立場にあった。
「悪い、いつも迷惑をかけて……」
だが、そう、すまなそうに頭を下げたシンに、レイは微かな苦笑を浮かべる。
そして、読んでいた本を机の中にしまいながら、奥の装置のスイッチを入れた。
「気にするな。俺は気にしない」
出会った当初は無関心から、親しくなり始めた頃は友人としての情から……シンを訓練(その頃は、今ほど激しくはなかった)に送り出していたレイだが、訓練量が限度を超えてしまった様に見える今でも、それは変わっていなかった。
「だが、シンはもう少し自分を気にした方がいい。
もし他人に知られたくないと言うのであれば、養父(ちち)に頼んで信頼の置けるカウンセラーに相談してもらうが……」
シンのルームメイトであるレイは、彼がオーヴで家族を失い、それがフリーダムの手によるものだと言う事実を、割りに早い時期に打ち明けられていたからである。
『……とうさん、かあさん、マユッ!』
夜、毎晩のように過去の無力に魘されていたシンが、それから逃げるように深夜の訓練を始めた事を知っているレイは、彼にそれをやめろと強く言うことができないでいた。
同じくフリーダムの手によって家族(ラウ・ル・クルーゼ)を失ったレイは、そんなシンの姿に、あの時の自分にギルが居なかったら……と、思わずにいられないのである。
『シンを、本当に友だと考えているのなら、力尽くでも止めてやるべきだ』
――そう主張するレイの理性と、
『自分がシンでもああなったかもしれない。止められない』
――そう感じているレイの感情……。
レイは、そんな二つの思いの狭間で、妥協とも言える第三の道を選んだ。
シンを止めず、しかし、その結果がより良い方向へ向かうように手助けをする。
そして、そんな彼の選択は、今のところ旨く――シンに対して余りに親身なレイに、一部女生徒が在らぬ噂を立てたりと言った副産物も無いではないが――転がっているようだった。
「……ああ、そうだな」
僅かな躊躇……しかし、レイへ向ける信頼の厚さを示すように、シンの首は縦に振られる。
そしてシンは、少し困ったような顔でこう続けた。
「ただ、もう少し待ってくれないか。
貯金は使いたくないし、次の給料が出るまではちょっと余裕が無い」
士官学校は、ZAFTに参加を希望した者を対象とする訓練機関である。
所属する候補生達には一応給料が出るが、未だ練成途上な上に、最低限の衣食住が保障されている事情もあって、支給される金額は小遣いに毛が生えた程度の物でしかなかった。
それは、レイや、シンのもう一人の友人、ルナマリア・ホークの様な、保護者存命のプラント出身者には充分な額ではあったが、家族を失い、身一つでやってきたシンの様な者にとってはそうではない。
「いや、そのことは気にしなくていい」
先の会話で、レイが『他人に知られたくないと言うのであれば』と前置きしたのも、シンが、前大戦の被災者を対象とする奨学金の給付を受けている事を知っていたからだった。
能力的には非の打ち所の無いシンだったが、沸点の低い性格や、目的はともかく寮からの脱走で捕まった経歴等から、素行面は余り褒められた物ではない。
これ以上失点を重ねれば、シンへの奨学金受給の再審査が行われる可能性もあったのだ。
「いや、けど……」
そして、そんなシンの経済状況を慮ったレイに、彼はそう言葉を濁す。
日頃、この饒舌とは言えない友人に頼りがちなシンではあったが、そんな彼にも節度と言うものはあった。
「気持ちは嬉しいけど、さすがにそこまでは頼れない……」
元々シンは義侠心の強い性格を持った少年である。
日頃レイを頼っている、迷惑を掛けていると言う自覚があるだけに、護るべき一線は普通よりも強固だと言えた。
「……だから、次の給料日過ぎまで待ってくれないか?」
だが、きっかけはどうあれ、レイもそんなシンを理解し、その心根を好ましいと感じているからこそ、こうしてここまでの肩入れをしている。
そんな言葉で引く積りのないレイは、予想通りの答えに予定通りの言葉を返す事にした。
「前大戦でトラウマを受けたものはプラントにも数多い。
そう言った者の支援プログラムは、プラント市民なら誰でも無料で受けられる物だ」
因みに、レイの言及した支援プログラムとは小額の補助金制度であり、当然その申請にお金はかからない――かかるはずも無い。
だが、移民してきたばかりの彼が、そういった制度の詳細を知っているはずも無く……
「……じゃあ、頼む。
いつもすまないな、レイ」
……信頼するレイの初歩的な詐術に、シンはあっさりと引っかかった。
「だから気にするなと言っている。
それともシンは、俺に気にしてほしいのか?」
引き出しの奥で、密かに動かしていたレコーダー。
確かに言質をとったレイは、内心ほくそえみながら、シンにそんな軽口をたたく。
そして、珍しく饒舌なレイに、シンは微かな苦笑を浮かべ……
「……ああ、少しは気にしてくれないと、借りばかりが溜まってく」
そんな言葉を返しながら、静かに、しかし無造作に部屋の窓を開いた。
成績、素行ともに同期のトップを堅守するレイの協力により、巡回ルートや時間などは完全に把握済み……そして、シンは素行ではレイに圧倒的に劣っても、フィジカルな面では同期一のエリートである。
「じゃ、行って来る」
気軽にそう言い残して窓に手を掛け、シンはその身を闇に躍らせた。
二階の部屋から、数メートル下の舗装された地面へと身を投げたシンは、最初の衝撃を両足で殺すと慣性を回転運動に変換する事で、音の発生をほぼ完全に抑える。
そして、回る体の両足が再び地に付くや否や、シンはその回転をスタータに、恐ろしい勢いで走り始めた。
組織の性格と言うか、歪みと言うか、ZAFTと言う組織には、ただのお題目でしかないコーディネーターの理性を過剰に信頼しているような所がある。
それは、主に多くは規律の緩さや身内への監視の甘さという形で表に現れており、この寮も、現実を知る教官達の巡回さえかわせば、規定時間外の入外出はほぼ自由と言う余り褒められない状態にあった。
さらに言えば、軍に志願するほど血の気が多い若者(ティーンエイジャー)が、夜中に寮をこっそり抜け出し、向かう場所など高が知れている。
最短の答えに飛びつき、固執するのはコーディネーター全般に見られる悪癖だが、この場合もその例に漏れず、シンの様な存在は、完全に教官達の想定外だったのだ。
「……しかし、相変わらずのザル警備だな」
前線の軍事施設の警備が、本国の士官学校と同程度だと考えているわけではないが、ZAFTの軍人達はそのほとんどがこの学校で教育を受けているのもまた事実である。
ZAFT軍人を教導する教官たちの巡回から、毎回こんなに簡単抜け出せてししまっていいのだろうか……シンは、多少不安に思いながらも、目的の場所へと足を速めた。
シンが訓練場所として用いているのは、寮からかなりはなれたある緑地公園だった。
自由に使える土地の絶対量が少ないコロニーでは、空間の占有には驚くほどの金がかかる。
庭付きの一戸建てなどは、金持ちか、体面を必要とする政治関係者の占有物で、一般的なプラント市民にとっては、夢のまた夢と言ったような代物だ。
だから、と言うわけではないが、シンが訓練に使用しているような緑地公園は、狭い閉鎖空間から来るストレスを発散させる必要もあって、コロニーの随所に配置されている。
初めは、適当な距離にある幾つかの公園をローテーションしていたシンだが、この場所を見つけてからはずっと、この少しばかり遠い公園で訓練を行っていた。
幾何学的に区切られた――まるで、出来の悪いユートピアの様な――街を駆け抜け、公園を囲う低くない柵を、無造作に飛び越える。
速度を落とさず木立を駆け抜け、茂みを飛び越えたその先に……シンは見つけた。
街灯の下の、木製のベンチ。
故郷で家族と過ごした思い出の公園にも似た情景の中に、そこに居る筈も無い人がいる。
「……マ」
ベンチに腰掛ける少女は華奢で、その姿は酷く儚げに見えた。
シンの記憶より、背は幾分伸びているものの、かつては溌剌として生命力に溢れていた姿は、今は見る影も無く痩せ衰えている。
そして、シンの目に何より痛々しく映ったのは、幾分健康そうに見える彼女の右腕だった。
そう、健康そうな右腕は、酷く痩せた左腕と比べて、明らかに太く、長い。
成長の早い子供の義手は、幾分大きめに作ると聞くが、痩せすぎた彼女の左腕と比べ、肉付きの良すぎる右腕は、誰の目にも明らかな『異物』に思えた。
「ュ……」
シンの咽喉から漏れる、声とも息とも付かぬ音。、
それに気づいたのだろうか?
夢の中、幾度と無く肉片となった少女の姿が、立ち止まったシンへと視線を向ける。
「……お兄ちゃん」
そんな少女に目を見開き、愕然と立ち尽くすシンの耳に、酷くか細い声が届いた。
「ひさりぶりだね」
幾分痩せて、多少大人びた――けれど、見紛い様も無いその面立ちに、少女は余りに可憐な笑顔を浮かべる。
「本当にマユ……、なのか?」
一瞬、その笑顔に見惚れ、続けてシンが放ったそんな問いかけは酷く揺れていた。
目の前にいるのは、マユ・アスカ。
かつて失ったシンの妹。
その筈なのに、それ以外の何者にも感じられないのに……しかし、シンの中には激しい違和感があった。
なぜ今になって現れたのか――否、そんな違和感は些細な事だ。
どうしてここにやってきたのか――否、マユの生存の事実と比べれば、どうでもいい。
不審な状況は多々あったが、それら全ては無視できる。
そもそも、こんな大掛かりな罠を仕掛けてシン・アスカを嵌めて、誰がどのような利益を受け取ると言うのだ?
「うん、そうだよ、お兄ちゃん」
マユはシンの問いかけに、咲き零れる花な笑顔を浮かべそう告げる。
だが、そんな彼女は、シンの記憶の中のマユと限りなく同一でありながら、しかし、余りに違いすぎた。
仮に、記憶の中のマユを陽の下の向日葵に准えるのであれば、目の前のマユは闇夜に咲く月下美人と言ったところか?。
闇夜、街灯の明かりの下に浮かんだ笑みは、酷く――そう、今までマユに肉親の情以外抱いた事の無いシンが、強く異性を感じるほど――可憐で……。
「……アンタ、いったい何なんだ?」
だからシンは、そう問いかけていた。
目の前の少女は断じて妹では――否、目の前にいる少女(うつわ)は確かにマユ・アスカだが、その中身はマユではない。
そう、例えるならソレは、宇津保になった繭の中に、悪魔的なナニカが入り込んだかのような……。
「……酷いな、お兄ちゃん。
わたしは、マユ……マユ・アスカだよ。
お兄ちゃん、マユの事を忘れちゃったの」
そんな言葉で、表情(かお)で……全身で悲しみを訴えながら、マユはシンへと歩み寄った。
「ほら、もっと良く見て!」
どこか、悪夢の中に迷い込んだような、違和感。
そう悲しげに告げるマユの表情には、どこか笑みが混じっている様にも見える。
「もっと近くで見れば、きっと判るから!」
現実味が失せた世界の中心に、ただ白く朧気な繭が、シンを見上げていた。
悲しむマユ、背筋がぞくりとする程匂い立つ、月下美人のような、香気。
繭玉の中にあるのは、蝶か、蛾か、或いは、蛹の中を食い尽くしたナニカか?
背筋に走る戦慄……動けない少年へと、少女の体から作り物の白い右手が延びる。
魅入られたかのように、その手が頬に触れる事を期待して、シンの心臓が高鳴った。
そして……
「ごめんなさい、趣味が悪かったわね」
するり、その頬を、掌とそんな言葉とが撫でて行く。
「けれど、私はマユ・アスカでもあるわ。
……これは本当」
そして、少女は離れた。
余りにも魔的な、可憐な笑顔。
舌を少し出しておどけたその姿に、シンは微かに妹を感じ……そして、そう感じてしまった自分を強く恥じる。
「アンタはいったい何なんだ!
俺に、何がしたいんだよ!」
何故、目の前の少女をマユと同一視したくないのか?
彼自身、その理由もわからず、シンはただ怒りと戸惑いとを吐き捨てた。
「私は……」
そんな彼にそう答えかけ、マユの姿をした少女は、言葉を区切る。
「……いえ、まずはあなたの妹の話をしましょう。
見ての通り、あなたの妹、マユ・アスカの肉体は生きています」
その言葉は、先にシンが感じた印象の全肯定だった。
宇津保になった繭の中に、隠れ潜む、ナニカ。
では、本来、中にいた筈のマユはどこに行ったのか?
彼女の言葉は、同時にその答えでもある。
「マユは、どうなったんだ」
その言葉を理解して、しかし、重ねて尋ねるシンに、目の前の『繭』は――その中にいるモノ――は、解っていると言わんばかりに頷いた。
「……マユ・アスカの心は、フリーダムの砲撃と、自分の我侭が原因で家族の全てを失った衝撃とに耐えられなかった。
『マユ』は砕けて自閉したまま、辛うじて機能したまま回収された器は、眠り続けたわ。
酷い状況だったオーブでこの器が維持され続けた理由は、海外の報道機関が、ニュースで植物状態のマユの姿を放送したからよ。
それを更に、戦争終了後オーブに入ってきたボランティアと言う名の利権団体が引き継いだ。
意識も返らず、酷い状態で、親兄弟も見つかっていないこの人形は、いろいろな意味で都合が良かったのね」
まるで、人形でも愛でる様に、『繭(ジブン)』を撫で回すナニカ。
「そして、ソレは私も同じ。
私は遠い場所にいて、そこでも用事を抱えている――いつもここに居るという訳にも、いつでもあなたの相手が出来るわけでもない」
その様が妙に艶かしく感じられて、シンは唾を飲み込んだ。
「だから彼女の体を借りたの。
ねえ、お兄ちゃん、マユと取引しない?」
ソレに気付いてか気付かずか?
ナニカは『繭』の胸元のボタンを外すと、前を無造作に肌蹴てみせる。
「………ッ!」
顔をそむけ、目を瞑ろうとするシンの顔に、伸びる作り物の右腕……抑えられ、凝視させられたシンの目の前に、薄い胸を覆うブラと、覗く肌一面を覆う無数の傷跡が見えた。
「ねえ、見て……」
その無残な有様に、シンは先とは別の意味で息を飲み込む。
目を逸らせない。
怒りと、悲しみと、綯い交ぜになったナニカが、シンの胸の奥を焦がしていた。
それが、目の前を直視しろとシンに呼びかける。
これは、シンの罪だ。
シン・アスカは、大切な妹を護れなかった。
妹の心は砕けて死に、体は傷跡だらけで、人形として操られている。
「私達は……」
……そして、抵抗をやめ、素直に胸元を覗き込むシンの、頭を押さえた右手から力が抜けた。
「……人の体に宿る事で、その力をほんの少しだけ後押しする事が出来る」
抑えるのをやめた右腕は、シンの頭を抱きかかえるように……ナニカは更に左腕を伸ばし、幼子に言い聞かせるようにして彼の癖の強い黒髪を撫ぜた。
「そう、消えない傷が薄くなったり、奇形的な肉体が、少しだけ正常に近づいたり……或いは、砕け散った魂を、拾い集めてつなぎ合わせたり」
そして、抱きかかえられたシンの目の前、少女の言葉を実証するように、無数の傷が動く。
否……動いたのではない、薄くなっていくのだ。
引き攣れ、盛り上がった肉は低く薄く、色合いは初めからそうであったように周囲のそれに近付いていく。
「………!?」
ソレは微かな、変化にしても、時間にしても、ほんの微かなものだった。
シンの頭から腕が外され、即座に見上げたその先には僅かに上気した少女の笑顔。
繭にとっても、中のナニカにとっても、それは簡単な事ではなかったのだろう。
微かに熱っぽい息を吐きながら、ナニカは微笑んでいた。
「マユは、生き返れるのか?」
呆然と放たれた問いに、ナニカは首を横に振る。
「いいえ、マユはまだ生きているわ。
そのままでも、目覚める可能性は0じゃない。
そして私は、その心の生きようとする力を、ほんの少しだけ後押しできるだけよ」
ナニカはそういうと、胸元のボタンを留めながらシンを見上げた。
あたかも悪魔のように、可憐に。
「……さあ、どうするの、お兄ちゃん?」
◆◆◆
明くる早朝、ベッドから身を起こしたレイが初めに見たものは、自分のベッドに腰掛け、見るからに似合わないピンク色の携帯端末を眺めるシンの姿だった。
そんな彼の服装は、昨晩寮を出る時に来ていた黒いトレーニングウェア……。
「……シン!?」
そしてレイは、明らかに様子のおかしい友人に、驚きの声を上げた。
トラウマから逃れるために訓練狂となったシンは、体を疲れ果てさせなければ眠れない。
何事にも我武者羅なシンだが、その反動で朝だけは遅く……起床時間ギリギリになってからレイが彼を起こすのが、二人の朝の日常となっていた。
勿論、シンがレイより早く起きたことが無いわけではないし、彼が妹の形見だという携帯端末を、思いつめた目で眺めているのは、決して珍しい話ではない。
珍しく早起きしたシンが、空いた時間に携帯に記録された画像データを眺めるのは、いかにもありそうな話だったし、眺める彼の表情が歪んでいる事にも、特に不思議はなかった。
尤もそれは、シンの服装が彼が普段寝巻きに使っているスエットであれば……の話であり、今の彼の服装が、何時もなら汗まみれ泥まみれで放り出されている筈の訓練用のジャージであると言う時点で話は異なる。
ジャージ姿で携帯を眺めているシンの姿がレイに示すモノは、昨晩の彼には訓練を中止せざるを得ない理由があったと言う事情と、その結果、シンが眠っていないと言う可能性だった。
「何か、あったのか?」
教官にでも見つかって連れ戻されたのか、何らかの事件にでも巻き込まれたのか?
レイが朝まで起こされず、シンも五体満足で落ち着いている所を見れば、それほど悪い状況ではないのだろうが、あのシンが訓練を取りやめたと言うだけで、それは充分な異常事態である。
そんな心配が篭るレイの問いかけに、シンは何処か吹っ切れたような笑みを浮かべた。
「おはよう、レイ」
そしてシンは、今までの彼とは違う、どこか軽やかな雰囲気でそう挨拶を投げる。
そう、シンが抱える行き場のない怒りと罪悪感とが生み出す、どこか荒んだ不安定さはその影を薄め、変わりにその身に纏うのは、背に一本筋が通った様な安定感……彼だからこそ気付いた、シンの変化だからこそ気付けた『それ』に、レイは思わず息を呑んでいた。
男子三日合わざれば刮目して見よと言うが、僅か一晩の間にシンの身に何が起きたのか?
文字通り目を擦ったレイに、シンは手にした携帯を差し出した。
「なあ、レイ。
これを見てくれないか?」
携帯に映し出されているのは、プラントの有料制ニュースチャンネル……それも、主に、地球から輸入したニュースを配信しているサイトである。
「ニュースチャンネル?
日付は一週間前……配信されたばかりの最新号か」
支援!
一週間前が最新と言うと遅く感じられるかもしれないが、ニュートロンジャマーの電波妨害と量子通信のコスト高から、プラント市民が安価に地球のニュースを入手するには、記録媒体の直接輸送と言う手段を取らざるを得なかった。
そういった事情に、コーディネータ特有のナチュラル軽視の思想が重なった結果、プラントで入手できる地球のニュースは最新のモノでも、配信から一週間は遅れているのが実情である。
国民より理念を選んだ故郷を憎むシンが、何故金まで払って、地球のニュースなどを眺めていたのか……レイは、そんな疑問を感じながら、映し出された画面をスクロールさせていった。
映し出されていた紙名はモーニングサンタイムズ、どうやらオーヴの新聞らしい。
記事の内容は、連合のオーブ攻略戦で重傷を負い植物状態に陥っていた少女が、奇跡的に目を覚ましたと言う物であった。
その紙面に記された少女の名は……マユ・アスカ!
「まさか、シン、これはッ!」
驚きに目を見張るレイに、シンはひどく複雑な笑顔を見せた。
喜びと……どこかやりきれない様な、そんな痛み。
しかし、これだけの驚きに晒されている状況では、流石のレイもそれには気付けない。
「ああ、そうだ。
マユが、生きていたんだ。
それで……レイ、悪いけど昨日の話は無しにしてもらえないか?」
そして、シンがそんな表情をたたえていたのも、僅かな瞬間に過ぎなかった。
「会いに、行くのか?」
そう問いかけるレイに、シンは首を横に振る。
「昨日の便でトダカさんからメールが届いたんだ。
コーディネータ相手の医学はプラントの方が進んでいるから、マユがこっちに来るって……」
そして、シンが返したそんな答えに、レイは怪訝な顔で首をひねる。
「ずいぶん急な話だな?」
オーヴは自称中立国であり、地上における数少ないコーディネーター受入国の一つだ。
前大戦における三隻同盟との絡みもあり、プラントとの仲もそう悪いものではない。
故に、マユの肉体が地上では対応できないコーディネーター特有の問題を抱えているのであれば、プラントの病院へと移転される可能性もない訳ではなかった。
だが、報道されてから一週間と言う時間は緊急輸送にしては遅すぎ、逆に、唯一の肉親がプラントにいることを見越しての移動と考えると、さまざまな面で唐突に過ぎる。
そんな当たり前の疑問に、シンは苦笑……レイから携帯を受け取ると、そのメール画面を呼び出して見せた。
移民してすぐに士官学校に入った為に交友関係が狭く、ほとんど活用される事が無かったメール画面を、トダカという差出人からのメールが埋め尽くしている。
「同じ便で、メールが8通届いたよ。
誤配か何かで滞っていたらしい」
ニュースと同じ理由で、プラント地球間の通信も決して早いとはいえない。
それに誤配などのミスや事故が重なれば、こういう状況も無いわけではなかった。
尤も、今回は事故や遅延の類ではなく、単にマユが裏工作で滞らせていたのだが、相手がレイと言えども流石にそれを言う事はできない。
「……そうか、それは良かったな」
理性にも、感情にも、どこか釈然と出来ないしこりが残る……だがそれでもレイは、シンをそう言って寿いだ。
家族を失い、迷走するシンに、有り得たかも知れない自分を重ねたのはレイの勝手である。
妹の生存を知り、シンが落ち着きを取り戻し成長した事に、寂しさや嫉妬めいた感情を抱くのは、全くの筋違いである事はレイ自身理解していた。
だが、コーディネータの中に紛れ込んだナチュラル――その中でも異端の紛いモノ(クローン)――であるレイにとって、シンとは同じ過去を分かち合う、ただ一人同胞の如き存在である。
そんな彼が遠くなる事に、負の感情を抱かずにいるのは、聖人ならぬレイには不可能であった。
「悪いな、せっかくレイが手を回してくれたのに……」
どこか、不満げなその姿を、彼の手回しが無駄になったからだろうと解釈したシンが、レイにそう言って頭を下げ……
「いや……、気にするな。俺は気にしない」
そんなシンの姿に、レイはあわてて首を振る。
「……それより、シンの妹はいつプラントに到着するんだ?」
有耶無耶にしようと畳み掛けるように尋ねたレイの、その視線の先――シンが握ったままの携帯電話から、メールの着信を伝える少女の声が響いた。
シンは、見計らったような着信に苦笑を浮かべると、レイに一言断ってからメールを開く。
差出人名、マユ・アスカ。
「いいタイミング、なのかな?
……今、アプリリウスに付いたって」
シンは、『やっぱりなぁ……』とか思って、困った表情を作ると、レイへとメールの内容を告げた。
支援ありがとうございます。
以上七星種死第一話でした。
アルファ系クロス懐かしい
208 :
00な人:2009/01/20(火) 20:38:53 ID:???
GJ
続きをwktkしてる。
209 :
00の人:2009/01/20(火) 22:07:42 ID:???
機動戦士ガンダムSEED 灰の雪が降る世界
『たどり着く場所さえも、わからない。届くと信じて、』
「なるほど、良い案だ。問題は敵部隊だが。そこは信用してかまわないのだな?」
「大丈夫だ。エクシアとエアリスがこちらにはある。」
ティエリアは通信室でレイ・ザ・バレルと通信をしていた。先の話ではただ接触するだけだったのだが、どうやら彼ら世界に喧嘩を売る気らしい。
ヴェーダが存在しないこの世界でティエリアの目的だった事を行う。と言うのだ。
いやそんな生ぬるい話ではない。彼らは、ソレスタルビーイングになろうとしている。
行幸だった。恐らく、スメラギらも納得するだろう。
「では、一旦こちらでも話し合ってみよう。」
「後…、ソレスタルビーイングの声明についてなんだが。君にしてほしいと、刹那が言っていた。」
「覚えておく。」
「なるほどね。どう思われます?フラガ艦長。」
「悪くはないがそりゃあ無茶だぜ。」
ブリッジで通信を行うスメラギ。フラガ艦長の言う事もわかる。
「確かにな。俺たちはオーブの意志を潰したピンクの嬢ちゃんと戦うが、死にたい訳じゃないんだ。」
「お言葉ですが、彼女達はオーブでの宣言後に最も危険な相手と戦うと言っていました。」
「やる事は同じってか?スメラギさんはどう思う?」
ムウはスメラギに意見を求める。こう言うとき戦術予報士の意見は重要だ。
「それを私に聞くのは……私は元々ソレスタルビーイングのメンバーですが、」
「そっちじゃない。オーブの奪還についてさ。やるなら派手な方が良い。」
笑いながらムウはレイよりもとんでもない話を口にした。
「あ?」
「どうした?」
「急に無線機が…」
「Nジャマーの影響じゃないか?」
30分後、彼らは何故無線機が使えなのいか理由を知ることになる。
「ソレスタルビーイングの御披露目か……レイ。敵についてなんだが…」
「どうした?」
モニターには緊張感の無い指揮官の姿が映る。
ここ二、三日で分かったことだが、彼女はレイであるが「レイ」ではない。断じて、三時にショートケーキを食べたがる「レイ」を認めるわけにはいかない。
そして今も彼女は後方の輸送機内で祝賀用の食べ物や、ティエリア・アーデ……合流予定のマイスターだ。の衣装について考えたりしている……もう泣きたい。
210 :
00の人:2009/01/20(火) 22:09:30 ID:???
「敵部隊の戦力についてだ。確認したい。」
「それならばGN-Xを15機。ウィンダムが想定60機、イージス艦が30隻、ムラサメは恐らく100は超えるな。だが安心してかまわない。ムラサメは外洋を防衛する部隊に配備されている。時間をかけなければ相手にする事すらない。」
シンは内心で「多いな。」と思う、既にオーブ領海内だが気付かれていないことを考えるならば、交戦の可能性は低いが、軍縮して想定数がこれだ。実際は倍近いかもしれない。
「アィルカ、アレルヤ、刹那、聞こえるな?」
「あぁ、手筈では俺と、刹那でモルゲンレーテを強襲。シンは海洋部隊の迎撃だ。」「想定時間より10分早く終わらせるぞ。」
「遅いな。15分だ。刹那・F・セイエイ。作戦を開始する。」
刹那の宣言の直後、オーブ方面より巨大なビームが見える。ヴァーチェのGNバズーカだ。
「ヴァーチェ。目標を破壊する。」
ティエリアの駆るガンダムヴァーチェから狼煙(ビーム)があげられる。作戦開始時刻より若干早いが囮である以上目立たねばならない。ティエリアは刹那達の到着時刻を予想し、ティエリア側に敵部隊を引きつけ始めた頃に刹那達が強襲出来るように攻撃を開始したのだ。
「派手にいくねぇ。んじゃあこっちもだ。ゴッドフリート一番二番用意。ついでにヘルダートとコリントスも忘れるなよ。」
オーブ領海付近にて、発見されるように接近したヴァーチェの一撃をみたムウはオペレーターに指示を出す。同時にモニターに映るフェヌエルを見る。新造艦であり旧式のAAを改造した自分の艦よりもよっぽど働きそうだ。
「足付きの力を見せてやるぞ。」
「ティエリア機。交戦を開始しました。」
オペレーターのフェルトが状況を解説する。同時に三連装リニアカノンにエネルギーチャージを行っている辺り実戦には慣れているのだろう。慌てながらミレイナが続く。
「敵部隊。こちらに向け移動を開始。本隊が海岸線に到着したようですぅ。」
「そう、」
「頼んだわよ。刹那……」
「いっけぇ!!」
エアリスのビームライフルが的確に敵機を撃ち落とす。スクランブルした戦闘機だ。
敵部隊の攻勢は当初の予定よりも弱い。だが、スクランブルで戦闘機がくる以上ムラサメ大隊も接近してきているはずだ。シンは迅速に敵部隊を叩く為にトリガーを引ききる。
211 :
00の人:2009/01/20(火) 22:11:48 ID:???
「ザラ様。よろしいのですか?ムラサメ大隊を発進させれば迎撃も可能と思われますが?」
「ルナマリア。何のために旧式や高速偵察機を残したと思っているんだ?」
「なぜでしょう?あまり効率的ではないとおっしゃるのですか?」
シン達がモルゲンレーテを強襲したその頃、領海域ギリギリの辺りに停泊していたタケミカヅチ級の空母。そのブリッジからモルゲンレーテを眺めるアスラン・ザラ。
「彼等はオーブの都市部は焼こうとはしない。」
「処分待ちだった兵器を叩き、オーブの奪還を確認し安堵した所で一気に圧殺する。こう言うのはタイミングと勢いが重要なんだ。」
「……B-9クリア。エクシア、何かにおわないか?」
「……確かに想定よりも戦力が少ない。軍縮を進めていたのか?」
格納庫を破壊するアィルカ。ほぼ全ての区画を制圧したが、敵MSとの交戦は無かった。正直拍子抜けである。
「エクシア、残存MS無し……続いて……」
「その必要はない。先ほど、総督府より降伏の申し出があった。」
「ティエリア・アーデ……」
「久しぶりだな。刹那・F・セイエイ。」
ヘルメット越しだが彼は確かに薄く笑っていた。
「(ビクッ)り、了解した。予定どうり合流する。」
「やれやれ。あの若白髪は仕事をしてたのかね。軍縮してたとは言え、仮にも連合のトップだろ…」
AAのブリッジでムウはぼやく。戦闘を開始して15分強。敵艦隊は脆くも崩れさり、もはや降伏勧告をだし、従わない部隊を各個撃破の状態になっていた。
「……脆すぎるわね。フェルト。敵戦力は?」
「70%を撃破。残り20%が抵抗を続けています。」
「楽勝ですぅ」
「だと良いけどね。」とスメラギは飲み込み、ミッションプランケースGを思い直していた。
「本隊を別な場所に待機させて集合しだい全滅。いやな予感がするわ。」
「ッ!?スメラギさん。太平洋側から一機…MSが高速で接近!!刹那達に約170秒後に接触します!!」
212 :
00の人:2009/01/20(火) 22:16:02 ID:???
「……大佐…すみません。けど、あのガンダムだけは、俺が…俺が大佐に捧げたいんです!!」
「馬鹿な真似は止せ!!貴様一人で何が出来る!!」
凄まじい剣幕で怒鳴りつけるモニターの女性。カティ・マネキン小佐である。自分用にカスタマイズされたGN-Xのコクピットでパトリック・コーラサワーは目視にてガンダムを補足する。
「がーざーGN粒ざー通信がーざー」とごまかし通信を遮断する。パトリックは「すみません。」と謝り、操縦桿を握り、スロットルを引き絞る。
「なる程。な。気持ちは解らんでもないさ。マネキン小佐。」
カティからの報告を受けたアスランはため息をつきつつ時計をみた。
「は!!」
「MS部隊を全機発進させてくれ。パトリック中尉には例の部隊を指揮させてくれ。」「は!?」と言う単語を飲み込みつつ再度敬礼を行うカティ。口元を歪ませながら、アスラン・ザラは続ける。
「偶然とは言え、なかなか出来る芸当じゃないな。このタイミングなら敵は油断しているはずだ。」
「は。」
「君の力。見せてもらうぞ。カティ・マネキン小佐。」
「は!!」
「てめぇら!!俺様のいない間に好き勝手しやがって!!」
「……なるほどな。巧い作戦だ。市街地も退避済みって事だな。」
刹那はパトリックが叩きつけたビームサーベルをGNロングブレイドで受け止める。赤いGN粒子が飛び散りエクシアを照らす。
「ソレスタなんたら!!俺はずっと待ってた!!」
エクシアのブレイドを跳ね上げ横凪ぎにビームサーベルを振るうGN-X。エクシアはGNフィールドを最大出力にし、左腕に圧縮。サーベルに対しシールド代わりにして弾き返す。
「GNフィールドにゃあ、実体剣が有効ってのは」
サーベルをしまい、肩アーマー付近から何かが射出される。それを掴みエクシアに突き立てる。
「オーブでも研究済みなんだよ!!」
213 :
00の人:2009/01/20(火) 22:17:03 ID:???
「クッ。PS装甲でなければ、やられていた……」
GNナイフとでも呼ぶのだろう。GN-Xの手には短刀の様な格闘武器が握られている。
「ガンダム!!てめぇにはデッカい借りがあるんだよ。」
さらにもう一撃と言わんばかりにナイフを突き立てるがエクシアはソードを振り牽制。距離を開ける。
「この男……コーラサワーと言ったか?……2000回は伊達じゃないと言うことか。」
刹那はダメージチェックを行う。パトリック・コーラサワー……確か、エクシアで最初に相手にした、AEUのエースだ。不意打ちで撃破したに近かったが、機体の性能差と言うことだと改めて認識する。コイツは……エースだ。
「うぅ……左舷(ひだりげん)に着弾ですぅ」
「敵、ムラサメ部隊。高速で再接近。」
「リニアカノンで応戦して!!」
刹那がパトリックと交戦していた頃、AAとフェヌエルも又、敵部隊の攻撃にさらされていた。いち早く察知して、合流したシンとアィルカはティエリアの駆るヴァーチェと共に防戦している。
「刹那は!?」
「まだ、GN粒子の濃度が高すぎて回線開けません。」
「無事でいて……刹那。」
「クソォ!!」
エアリスのビールライフルからビールが連射される。その一発がムラサメを捉え蜂の巣にかえる。これで六機。エアリスは空中戦を得意にする機体だが、陸海空全ての位置からの攻撃を捌き切るのは至難の業だ。
「MAまで居るなんて聞いてないぞ!!」
「ぼやくな。今は一機でも多く叩き潰す。それだけだ。」
見ればアヴェンジャーはワイヤーでMAを捕縛し、真上に飛び移っている。
「相変わらず器用な奴……」
聞こえないようにシンは呟いた。
「これは、参ったな。/(^_^)\」
「いや。のんきに頭に手を当ててる場合じゃないっしょ!?どうすんの!?どうすんのさ。レイさん!?」
皆が強襲を受けたその頃、レイたちも敵に捕捉されていた。レーダーには敵影6である。
「仕方ない白旗を……」
「白旗かよ!!」
思わずツッコミを入れてしまうアレックス。なぜ彼女はこうもマイペースなのか……
「しかし、我々には戦力は「殆ど」無い。ここは白旗しか……」
「ミサイルとかないの!?」
「有るぞ。」
しれっと言ってのけるレイ。アレックスは堪忍袋の尾が切れた。
「なら撃てよ!!」
214 :
00の人:2009/01/20(火) 22:19:27 ID:???
「今日の俺は一味違うぜ!!」
「迎撃する。」
狙いこそまだ甘いが、パトリックのGN-Xはエクシアへ向け砲身が焼け付く寸前のビームの連射を浴びせる。回避しつつGNフィールドで捌くエクシアだが反撃も忘れない。
パトリックの一瞬の隙をつき、GNダガーを投げつけ距離をつめる。
ガンダムの投げた「サーベル」を切り払い、パトリックはモニターを見る。モニターには砲身熱量過多が表示され、パトリックは、GN粒子の温存と冷却の為にGNナイフを構える。
炭酸「俺はぁ!!」
GNナイフがエクシアのコクピット近くに突き刺さる。入射角により致命傷にはならなかったが確実にダメージとなってゆく。
炭酸「スペシャルで!!」
続いて頭部をかすめる。カメラアイを守るために、刹那が避けたのか、それとも偶然か、エクシアにチャンスが生まれる。
刹那「二千回で!」
コクピット内で刹那が叫ぶ。瞬時に操縦桿を押し倒しながらボタンを押す。エクシアのGNブレードが唸りをあげマニュピレーターごとナイフをもぎ取る。
炭酸(刹那)「模擬戦なんだ(ろ!!)よぉ!!」
GN-Xの手首から先のない右手がエクシアの頭部に突き刺さりエクシアの左手もGN-Xのコクピットを捉える。
「コーラサワー!!」
声を上げてからカティは自分のしたことに気づき、はっとする。モニターにはパトリックのGN-Xのコクピットがひしゃげる映像が映し出されている。
「……っ!!戦局は!?」
誰かが告げようとしたときだ。オペレーターの一人が金切り声を上げる。
「コーラサワー機!!健在です!!」
215 :
00の人:2009/01/20(火) 22:25:47 ID:???
「コーラサワー機!!健在です!!」
「あぁ……そうだ!!ガンダム!!」
幸いにもコクピットフレームが頑丈だったのか「不死身」の力なのか。GN-Xはまだ動けた。なら……
「でもな!!お前らガンダムを倒さなけりゃあ……俺は「大佐」にスペシャルなんて名乗れねぇのさ!」
「この……男!」
「コーラサワー…何を…」
「貴様は歪んでいる!!」
「歪んでいるのはお前らだろ!!」
刹那はエクシアを乱暴に振り回し、GNソードを突き刺す。だがGN-Xは止まらない。
「何が武力介入だ!!何が紛争根絶だ!!」
パトリックのGN-Xから急速にGN粒子が放出される。
「お前らのやっていることはただのテロリズムじゃねえか!!」
「違う!!俺はあの男とは違う!!ガンダムはソレスタルビーイングは、存在することに意味がある!!紛争根絶を行うための象徴だ!」
パトリックの言葉により、刹那に火がつく。雄叫びをあげながら、エクシアはGN-Xの左腕を斬り飛ばし、続いてGNロングブレイドを右肩に突き刺す。
「うぉおおおお!!」
返す手で回りながらGNショートブレイドを首筋辺りに突き刺し、GNソードで腰辺りから真っ二つにする。
落下してゆくGN-X。
「コーラサワー……何故だ……何故だァ!!」
カティの悲痛な叫びがブリッジに響き渡った。
ついでに出来てる分の投下。炭酸がカッコいいのは作者補正です。炭酸は00で一番お気に入りだったりwww
乙ですよ
乙、勿論コーラは生きてるよね?w
218 :
00の人:2009/01/20(火) 22:57:02 ID:???
>>217 炭酸「この俺様が簡単に死ぬわけねぇだろ!!」
爽やかな笑顔&サムズアップ
だそうですwww
〜春島基地 独房〜
「監察官がまたこの基地に攻撃を仕掛けています。数は20近くで、
いま基地にあるザクで対処できる数では・・・」
個人的な感情を押し殺して、客観的な説明をするメイリン。
余計な物言いを嫌うようにマリンが言葉でそれをさえぎる。
マリン「つまり、あいつらを助けろ、って言いたいんだな」
メイリン「はい・・・」
マリン「勝手だな・・・」
最初は抑え気味のマリンの口調が、今度は一気に語気を強めて続く、語気を荒げて。
マリン「勝手だ!この仕打ちをしておいて、勝手だ!何を今更!」
扉の格子につかみかからんばかりの勢いでマリンはまくしたてる。
語気に押されるように、メイリンは下を向いて話を続けるしかない。
メイリン「あんなことをしておいて、こんな勝手な頼みごとをできる義理ではないことは、わかっているんです。」
でも、あの人たちは私にとっては数少ない身内なんです!キャップも、お姉ちゃんも!だから・・・」
言い分を言って押し黙ってしまったメイリンに代わって、扉に背を向けてもたれかかったマリンが問いただす。
マリン「ことわっておくが、俺はキミやあいつが心配した通り裏切るかもしれない。それでもいいんだな」
押し黙ったままのメイリンを伺うことなく続ける。
マリン「キミやあいつが疑ってる通りの、いかがわしい連中の手先かもしれない。それでもいいんだな」
メイリンはかろうじて言葉を搾り出した。
メイリン「今は、信じるしかありません」
ひと呼吸置いてマリンが振り返る。
マリン「パルサバーンを用意しろ。雷太、オリバー、止めても無駄だぜ」
雷太「へっ、振り回されるのは慣れっこだ」
オリバー「強がり言っても、俺たちがいなけりゃバルディオスは合体できねえんだ。やってやるよ」
マリン「じゃ、決まったな。」
表情で快哉を表すと、メイリンは扉の鍵を開けて走り去る、一度立ち止まり振り返ると
メイリン「すぐ格納庫を開けます!通信回線は開いておいてください!」
もう一度言い残してメイリンが走り去っていく。
「さぁ、行くか!」
「おう!」
〜春島東海上 上空〜
「ルナ、応戦しろ!」
「了解!」
執拗に飛んでくるミサイル、事の深刻さをシンとルナマリアに知らせるには十分すぎる波状攻撃だった。
白旗を空中に捨ててそれぞれ武装をザクに持たせて戦闘態勢に入る。
ルナマリアのザクが構えた銃、これは戦時中に潤沢に揃えられたビーム銃ではなく機関砲なのだが、
これを間違えて遠距離から撃ってしまう。
当然脅しにもならず、空しい発射音を断続的に立てるだけ。
機関砲弾は敵に対して効果的な距離まで届く前に、空気抵抗と重力に負けて落ちていく。
ルナマリア「しまった!これ、機関銃だった・・・・」
反対にザクを有効射程距離の外から撃てるウィンダムのビームライフル、
こちらは数発ずつ、ザク2機を弾幕で包み込むように
組織的に発射することで的確に2機を追い込み、逃げられなくしつつある。
シンのザクには射撃戦に使える武器などない。ルナマリアに射撃の指示をするのが精一杯だ。
シン「弾切れを待って接近戦で何とかするしかない!できるか?」
ルナマリア「無理よ!数も性能も違い、あっ!」
精度を増してきたビームライフルの射撃がルナマリアのザクを捉えた。
機関砲を持つ左手の前腕関節に命中したビームは、
幸運にも、貫通してザクのエンジンまで破壊するところまでは行かなかった。
しかし機関砲は爆発し、残りの機関砲弾に火がついて飛び散る。
そしてあまりにあっけなく戦闘力も機体のコントロールも失ったザクは、
背中のノズルで落下速度を自動的に和らげるのがやっとだ。このまま海へ落ちていく。
「ルナは!・・・・・助かるか。しかし、こりゃ、駄目だ!」
比率は約20対1、モビルアーマーまで後方に確認しては、
シンの闘争心は沈んでいく表情にリンクして、萎える一方だ。
後方のモビルアーマー、緑の甲殻類のような風貌の機体のコックピットには、先日追い払われた監察官パイロット。
「こいつを持ってくるまでもなかったか・・・だがあいつは潰す!」
あっけない戦況の進展にも、表情からは憎悪の念は消えない。
何より、いま空中で生き残っているザクは、前回自分を撃退した仇敵。
〜滑走路〜
マリンらが乗り込むための20mリフト3台、
用が済んだこの機材をあわただしくどけて、第1ドックと呼ばれる大型格納庫は色めき立っていた。
メカニックマンの数名は、これまでわけがわからず触ることもできなかった3つの大型機が、
それこそ、彼らの常識ではこれが空を飛ぶとはとても想像できない3つのメカが、
エンジンを始動させて飛び立つところをただ眺めるしかない。
すでに滑走路へ進入した3つのメカ、コックピットの3人は、エンジンの吹き上がりを確認すると
通信機からまもなく聞こえるであろう音声に耳を傾ける。
メイリン「戦闘空域と思われる反応、真東から東南東へ移動中です。・・・・行けますか?」
マリン「余計な心配はするな、約束は必ず守る。行くぞ!」
メイリン「はい!ハンサムさん、どうぞ!」
マリン「俺はマリンだ!ハンサムじゃない!」
メイリン「す、すいません!マリン機発進、どうぞ!」
ぎこちないやり取りの後、パルサバーンは勢いよく後部ノズルを噴射し飛び立ってゆく。
オリバー「オリバー機、パルディプライズ・発進!」
メイリン「どうぞ!」
雷太「雷太、キャタレンジャー・行くぜ!」
メイリン「どうぞ!」
箱のような巨大な物体が次々に滑走路から飛び出していく。
ここまでくると、メイリンも他の管制塔のスタッフも、彼らがわけのわからない世界から来たのではないかと
思わずにはいられなかった。
書き上げた文だけ投下しました
しかしルナが海に落ちてばっかり・・・・・
お二人ともGJ!です、
224 :
00の人:2009/01/20(火) 23:29:01 ID:???
GJ!!
次回のバルディオスVSウィンダムにwktk
ザクなんだから仕方ないかと、むしろ船に大きな被害を出さずに落ちないシンが上手いんじゃないか。
>>206 お、久々に気になる作品が投下されてる
続きに期待!
お久しぶりとなりました。
今回の投下は、コードギアス DESTINYの前に起こった出来事となります。
それでは投下します。
プロローグ 白き旋風
アーモリーワン襲撃から端を発し、ユニウスセブン落下事件などを得て、始まった地球連合軍(ブルーコスモス)とザフトの戦争は、
強制力(ギアス)を持った歌姫の騎士団を率いるラクス・クラインの計画によって起こされたものであった。
これに対抗し、軍需産業ロゴスをその手中に収め、
オーブ軍を摂取した黒の騎士団、ゼロ=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、これを打倒。
ラクス・クラインは、歴史の裏に葬られ……
彼女の替え玉としてミーア・キャンベルが『ラクス・クライン』として、歴史の表舞台にたつこととなった。
だが、この真実は一部のものしか知ることはない。
実際の表の歴史はゼロ率いる黒の騎士団が、様々な人間を洗脳し攻撃を仕掛け、ラクス・クラインがこれを打ち倒したということとなった。
正しい歴史が、必ずやいい結果をもたらすことではない。
嘘、偽りは……様々な面において、時として必要なのだ。
それと同じく……ラクス・クラインもまた、真実を隠された姫である。
ルルーシュが、C.E.から戦争を廃絶した以前、ひとつの大きな戦争が行なわれた。
それはヤキン・ドゥーエ戦役と呼ばれた壮絶な戦いであった。
このとき、ラクス・クラインは戦争を平定する筆頭となり、指揮者として戦乱の中心となり戦ってきた。
その時のラクス・クラインは決して戦いを求めた狂姫ではなかった。
真実は時として隠される。
だが、真実は現実として存在する。
この相反する二つは、どちらも正しく、どちらも間違っているといえよう。
だからこそ、それを判断するのは、その人自身である。
ルルーシュは世界を正しき方向に、神と称される集合無意識の願いの元、
ギアスにおいて世界の明日が来ないことを止めた。
ならば、ラクス・クラインは何をなしたのか……。
Cの世界には、それを示した絵画が存在する。
ラクス・クラインと1人の白き騎士の姿とともに………。
「キラァぁああああ!!」
「アァずらぁああん!!」
豪雨の中、MSストライクとイージスの激闘が繰り広げられる。既に両者は周りが見えなくなっている。
それこそは戦争の悲劇。ストライクに乗るキラ・ヤマトは友人であるトールをイージスに乗るアスランによって殺された。
そしてストライクに乗るキラは、アスランの友人であるニコルを殺害している。
戦争は相手の命を奪うもの……
特機に乗っていたキラ・ヤマトには、その人間の具体的な死というのが、よくわからなかったのかもしれない。
「お前が!お前がニコルを殺したぁああ!!」
イージスは変形して、MA形態となりストライクをその腕で機体を捕獲。
中央にある高出力のエネルギー砲にてストライクを倒そうとする。
だが、激戦の果てにエネルギーを使いすぎたため、イージスの内部のエネルギーが尽きた。
機体の動きが、止まる中、ストライクに乗っていたキラは、チャンスとばかりに、掴まれていたイージスを離そうと動き出す。
これは千載一遇のチャンス……。
アスランは、イージスに取り付けられている自爆装置のスイッチを入れる。
復讐。
そう、キラは自分の友人を殺した。
ならば、その罪は……命を持って償わなければならない。
アスランはコクピットハッチをあけると、そこから飛び出す。
黒い雲から雨が降り続ける中、アスランは、距離をとる。
イージスの爆破スイッチが起動。キラ・ヤマトの搭乗するストライクを巻き込み、イージスは爆破する。
炎と、黒い煙が立ち上る中、アスランは、その場から走って逃げていく。
現実とも悪夢ともつかない、曖昧な感覚で、自分はキラを殺したという、虚無感だけが頭を支配していた。
アークエンジェルは、キラ・ヤマト、トール・ケーニヒをMICとして判断。
戦線を離脱することとなった。それはザフトの追撃部隊が迫っていることもあったからである。
アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスにとってみれば、それは仕方が無い判断であった。
雨の振る中、炎はいまだに燃え続けている。
ここで、本来の歴史では見えない隠された部分が現れる。
…1人の青年と、それよりかは少し年のいった男性が、意識を失っているキラ・ヤマトを担いでMSから救出していた。
本来なら動かすべきではないかもしれないが、あのままというわけにもいかない。
「協力、感謝します」
白きパイロットスーツを着た青年は、その落ち着いた風貌の男…マルキオに告げる。
「……君や、この子のような若い勇敢な未来を担うべき青年が戦場に駆り出され、死んでいくのは……嘆かわしいことです」
マルキオの言葉に青年は首を横に振り
「この世界にいる以上は、誰もが当事者であり。
他人事であってはいけない。それは大人であれ、子供であれ同じことです」
青年は強く、そう言う。
その青年の瞳は既に、多くのことを経験しているかのような目をしていた。
マルキオは、彼ともう少し話をしていたかったが、青年にかかってきたコールでそれは中断される。
『スザク君、南西から連合軍の部隊がこちらに向かっています。
接触まで0010。任務遂行を優先し、迎撃の許可を与えます』
「イエス・マイロード」
茶色い髪の毛を雨に濡らしながら、スザクは既にその言葉の意味がなくなっているにもかかわらず、
返答はいつもとかわらない。マルキオにキラを託し、スザクは岩肌を駆け下りていく。
戦いは…その世界におけるものたち全てが当事者。
戦争の責任は、誰もが持っているという……。
誰かの責任として押し付けあった結果がこれだとするならば、自分もやるべきことをやらなくてはいけないのだろう…。
それは、彼も同じなのだ。
岩肌を駆け下りたスザクの前に膝をつき隠れて置かれているスザクの新たな機体。
そこに待っているのは青い髪をしたセシル・クルーミーである。
スザクは、調整を終了させ、コクピットからでてきた彼女に挨拶だけすると機体に乗り込む。
乗り込んだスザクは、起動キーをかける。機体の内部が輝き、画面が開かれる。
『ランスロット・トラファルガー……発進』
「ランスロット・トラファルガー、出撃!!」
スザクの声と供に、ランスロットは空に舞上がると、一気に近づいてくる連合軍の航空部隊に接近する。
周辺の部隊に気づかれないため、遠距離砲撃などは使えない。
また航空機を撃墜し爆破させるのも好ましくは無い。
『…敵は、戦闘機。羽を破壊し戦闘不能に持ち込んでください』
セシルの指示の元、ランスロットから伸びたワイヤーが、敵の戦闘機を次々と海に落としていく。
敵は反撃もままならぬまま、撃墜されていく。その強さはまさに鬼人のごとく。
状況を報告するため、逃げ出す戦闘機。
だが、スザクはそれを逃さない。
トラファルガーのフロートシステム、さらには、エナジーウィングは、こちらの技術を用い高性能化している。
瞬時に先回りし、ワイヤーで撃墜する。
その戦闘時間は、僅か一分にも満たない。
「ランスロット・トラファルガー…状況を終了」
『了解。至急島から撤収する』
セシルは、ランスロットの新型の起動実験もかねたこの、戦闘に満足した結果を持っていた。
できることなら対ナイトメア戦闘で見てみたいところだが、ここは、そういった場所ではない。
それに……こんな異世界にきてまで戦闘に明け暮れることなど出来ない。
なるべくなら早くもとの世界に戻らなくてはいけないのだから。
「……ロイドさん、ランスロット・トラファルガーの戦闘は問題はありません。
ただ、やはりエナジーウィングのこれ以上の増加は機体がもたないと思います」
『そうかい。残念だね〜……。
まぁ、ここにはラクシャータや紅蓮もいないようだし、とりあえずは、これで十分かな。
スザク君からの報告は、こっちに戻ってきてから報告を貰うよ。
お姫様も、待っていることだし』
「はい、わかりました。失礼します」
セシルがそんな報告をしている中、ランスロットが戻ってきていた。
セシルは降り立つスザクの元にと向かう。
「スザク君、お疲れ様。すぐに島から離脱して、彼をコロニーまで移送するわ」
「わかりました。急ぎましょう。おそらく敵の部隊はすぐに着ます」
スザクとセシルが敵を迎撃、殲滅を終了したことを聞いたロイドは、通信を終え、振り返る。
そこには心配そうな表情を浮かべるものがいた。
「安心してくださいお姫様。彼は無事ですよ」
「そうですか!良かった…スザクは無事なのですね」
花園の庭園の中、その白いドレスを身にまとう、コーディネイターのアイドルである、ラクス・クラインは、
先ほどの心配していた表情から一変し、笑顔でその報告を聞いた。
コズミック・イラ……。
ヤキンドゥーエ戦役
ルルーシュがこの世界を訪れる前、
真実を隠された、1人の騎士と1人の姫の悲劇の戦いが、始まろうとしていた。
投下終了です。
以前のように一気に投下は出来ないかもしれませんがよろしくお願いします。
改めてクロスは【コードギアス 反逆のルルーシュ×機動戦士ガンダムSEED】です。
MIC…マイク?
233 :
通常の名無しさんの3倍:2009/01/21(水) 23:30:09 ID:JxOo4RVA
>「アァずらぁああん!!」 wwww
さり気なく吹いたwww
アデランに続き、アヅランか……
一癖(寸鉄?)あるのがなんともすごいなと思ったですよ
236 :
00の人:2009/01/22(木) 00:57:36 ID:???
GJ!!
アヅラン……だと……使えるなwwwマイクはMIAの撃ち間違いだろうな。ミッシングインアクションで良いんだったか?
23時に投下予告をしておきます。
MIC=MIAのミスです。失礼しました。
勝手ながら、バルディオス氏のSSをクロスオーバー倉庫Wikにまとめておきました。
メニューバーの 「Seed-クロス統合」 から入れます。
時間となりましたので投下します
第1話 無力、故に……。
「……枢木スザク、任務を終え戻りました」
宇宙に浮かぶコーディネイターが生活の拠点とするプラントに戻ってきたスザク。
そこは、ラクスの憩いの場であり、草原が広がり、様々な植物と花が広がっている場所。
明るい人工太陽の日差しの中、地面に片膝をつき、スザクは、目の前にいるラクスに報告する。
「お疲れ様でした。スザクさん、私の我侭につき合わせてしまって申し訳ありません」
今回のアスランとキラの戦いを止めるよう指示を出したのはラクス・クラインその人である。
以前、ラクスはアークエンジェルに捕虜となった。
その時優しくしてくれ、アスランに捕虜であった自分を返してくれたキラ・ヤマト。
そして婚約者であるアスラン・ザラが戦い、傷つけあうことを恐れたラクスは、スザクに頼み、今回のこととなった。
しかし、結果的には間に合わなかった。
今はキラの命だけは…かろうじて救うことができただけでも、今はよかったと思うしかない。
「…いいえ。部外者である僕たちをこうして救ってくださったラクス様のお願いです。僕の力でよければ使ってください」
スザク、ロイド、セシルの3人はこの世界に飛ばされた。
気がついたときには、宇宙空間にて新造戦艦アヴァロンUとともに、この世界に飛ばされていた。
動揺する3人の前に現れるザフト軍。
こちらが応答をしたところで、向こうは一切の意見を聞こうとせず、攻撃が始まろうとした。
そのとき彼女……ラクス・クラインが現れ、スザクたちを救ってくれたのだ。
『そのものたちは、私を守る騎士です』
ラクスの咄嗟のいいわけだった。目の前で人が死ぬのを見たくはない。
ラクスにできる唯一の手段だった。そのおかげで、スザクたちは今、こうして生きながらえている。
しかも今の地位は、コーディネイターのアイドルである、ラクス・クラインの護衛となっている。
「……僕たちを助けてくださった、その恩がありますから」
白き礼服を身に纏いスザクは助けてくれた恩を心に秘め、ラクスに告げる。
「ありがとう、スザク。あの、私の事はラクスでいいです。『様』なんでなんだか他人のようで……」
「で、ですが……ラクス様はザフトのアイドル。部外者である自分が、そんな気安く…」
そういうスザクの手を握り、スザクと同じ視線にまでしゃがみこむラクス。
スザクは、突然近づいて、しゃがみこみ自分の顔を見るラクスに驚く。
「…私は、あなたと普通のお友達としてお話したいんです。ダメでしょうか?」
「い、いえ…あ、あの……わかりました。ラク…ス、さ……いえ、ラクス」
スザクは戸惑いながらも、ラクスの言われたとおり、『様』を取り払い、名前で呼ぶ。
ラクスは嬉しそうに微笑み、スザクの手を持ったまま立ち上がる。
「私からのお礼は……紅茶をいれて上げることしか出来ないんですけど……いただいてくれますか?」
ラクスの言葉に、スザクは笑顔で頷き、白いテーブルにある席につく。
ラクスは紅茶をカップにいれて、スザクの前に差し出す。
「ありがとうございます」
カップに注がれた紅茶を飲むスザク。そのスザクの様子を眺めるラクス…。
その表情はどこか切なげだ。
「どうしたんですか?ラクス?」
「いえ。なんでもありませんわ」
スザクの答えにすぐに、ラクスは表情を変えて答える。
そんなとき、庭園にとやってくるものの影。ラクスはスザクの後のほうに視線をやる。
スザクはすぐそれに気がつき、立ち上がり背後を見る。
そこには、白いザフトの軍服を身につけた仮面の男。
禍々しいオーラを感じる。まるで、それはゼロのようだ。
いや、ゼロよりも、もっと破滅的な…。
「……どうかなさいましたか?クルーゼ隊長」
仮面をつけ、そう呼ばれたラウ・ル・クルーゼは、頭を軽く下げてラクスを見る。
「いえ、我が隊アスラン・ザラが足つき、梃子摺っていた連合軍の戦艦のMSを撃破したという報告がありましたので、
いの一番に、あなたに、そのことをお伝えしようと……」
「私は……戦争での功績などに興味はありませんわ」
「そうはいっても、彼は今後、我が隊から抜け、昇進し、本国の防衛任務にと就きます。
これからは、2人で時間をすごすことが多くなるでしょう……」
「アスランが…」
アスラン・ザラ…。ラクス・クラインの婚約者と名乗っていた人物。スザクは、まだそのものとは会ったことがない。
「ときに、スザク君といったかな?」
突然、自分に話を振ったクルーゼにスザクははっとしながら視線をクルーゼに向ける。
「くれぐれも、お2人の邪魔はしないように……。
騎士ならば騎士らしく、その身分相応に動くものだ。
騎士は力を持てないクイーンを守るのが仕事だからな」
「はい。心得ています」
「いい目だ。幾多の戦場を知っているような……。
君とはまた時間があったときに話したいものだな。
では、私はこれからオペレージョン・スピリットブレイクがあるため、地球に降りますので失礼します」
クルーゼは微笑むと、会釈をし、振り返り戻っていく。
戦争はいまだ続くのか……確か、今度の闘いはかなりの大規模なものになるという話だったが……。
「……スザク?」
「はい?」
ラクスはどこか哀しげな表情を浮かべながらスザクを見ていた。
「…私は、無力です」
「どうしたんですか?突然?!」
「……私には戦う力がありません。スザクや、そしてアスランのようにMSに乗ることも出来ない。
私はこうして、皆さんの帰りをまっていたり、歌を歌ってあげることしか出来ない……。
みなさんが血を流し、涙を流しているというのに……」
ラクスは沈んだ声で唱える。
常に考えていた。戦争が始まり、もう何人の人間が亡くなったのだろう。
その度に、悲痛な声をあげる人々が自分のもとにやってくる。
自分はそのものたちを慰めることしか出来ない。何も出来ない……。それが辛くてたまらないのだ。
「優しいのですね。ラクスは……」
「え?」
スザクは笑顔でラクスを見つめ
「ラクスの、その優しさこそが力です。
人にはそれぞれ1人1人にしか出来ない力があります。
僕がそれがたまたまパイロットであっただけ。
ラクスにはラクスにしか出来ないことがあるんです。それを誤解しないで欲しい」
「……」
歌を歌い、優しさを授けることが自分の力…。
ラクスは自分の手のひらを眺めながら考える。
「それに……過ぎたる力は、己の身を滅ぼします」
スザクは、かつての経験からそれを知っている。
ゼロ=ルルーシュ・ランペルージは、強制力=ギアスを用いて世界を変えようという、とてつもないことを考え出した。
もし、ギアスなんかに出遭わなければ…。
彼は、あのような道を歩むことは無かっただろう。
ギアスが人の心を変える。精神を崩す。
人が持つにはあまりにも強大な力なのだ。それが人を……変えてしまう。
「ラクス、力なら僕が幾らでもなります。だから、ラクスは帰りを待っていて欲しい」
「……ありがとうございます。スザク、貴方にそんなことを言われて、嬉しいですわ」
スザクの言葉にラクスは頷く。
残りの紅茶を一気に喉にと押すと。スザクはラクスから離れ、敬礼する。
「枢木スザク、報告任務終了します」
「…もう少しお話していってくださいませんか?」
どこか名残惜しそうにするラクスにスザクは首を横に振って
「すいません、これからランスロットのチェックにいかないと…」
「そうですか。また……一緒にお茶してくださいね?」
「よろこんでお供します」
ラクスとスザクは見つめ合い微笑み合うと、スザクは花園を通りながら施設にと戻っていく。
ラクスはスザクを見送りながら、どこか寂しさが募っていることを感じていた。
「えぇ〜〜?戻ってきちゃったのぉ?」
ランスロットの整備に戻ってきた開口最初に、ロイドが溜息をついてスザクを見る。
「ロイドさんが、最初に言ったんじゃないですか!?機体の感想を言えって」
「そうは言ったけどさ〜。折角のお姫様との仲良しの時間を裂く必要はないんだけど〜」
「え!?ロイドさん、そんなことを気にしていたんですか?」
話の内容はともかく、ロイドさんが人に気を使うなんて……
きっと明日は雪が、いや、ここは宇宙だから隕石群が落ちてくるんじゃないかという気持ちになるスザク。
「違うの、スザク君。お姫様と仲良くなれば、それだけ開発費を回してくれるんじゃないかって言うのよ……」
「あ、そうでしたか。一瞬、こっちの世界に来てロイドさんが別人になっちゃったんじゃないかと思いましたよ」
「……君達が、僕のこといつも、どういう目で見ていたのかよくわかったよ」
ロイドはむすっと顔を膨らまし、いじけはじめる。
スザクとセシルは苦笑いを浮かべて、ロイドの機嫌を直そうと必死になる。
キラ・ヤマトはベットで目覚め、自分がどうしてここにいるのかわからないまま、建物を彷徨い、外に出る。
そこに立つラクスの姿。
「あら?起きられたのですね」
「君は……」
ラクスは、キラに、紅茶を出そうと準備を始める。
だが、キラは歩き出す。
「どこにいかれるんですか?まだ、あなたの身体では…」
「僕は、守りたい人がいるんだ。そのために、戦わなくちゃ…」
キラは、ラクスに、そう言葉を吐き出す。
ラクスはその言葉に険しい表情を浮かべ
「……そのために、あなたはザフトを討つのですか?
ザフトにも貴方と同じように、守りたい人、大切な人がいる人間を、あなたは…」
そこで思い出されるアスランのこと。
自分がトールを死んで哀しんだように、アスランもまた自分にプリッツのパイロットを殺害してしまった。
だけど、それが戦争のはずだ。相手を倒さなくては自分も倒される。
「だけど、それが戦争だ。戦争は相手を倒さなくちゃ……」
「戦争に固執することが全てではないはずです」
ラクスの言葉にキラは話が良く飲み込めない。彼女は何が言いたいのか…。
「双方が争い合うことが戦争の解決策ではありません。
互いを憎しみ合う争いは、また別の争いを呼び込み、それは永遠と続いていくこととなります。
本当に戦争をやめさせたいのであるならば、倒さなくてはいけないものは、人間の中にある欲であると思います」
「……戦争を止める」
戦争が全てを破壊した。
ザフトと連合の戦い…それによって巻き込まれ犠牲となった人々。
すべては争い合うことが原因で。
戦いが人を狂わしていく。
「一緒にきていただけますか?」
ラクスはキラにつげ、歩き出す。キラはラクスの後を言われたままついていく。
ラクスは、自分なりの力を行使しようと決めた。
自分はただ守られるだけのクイーンでありたくない。
少しでも誰かの力になりたい。自分なりの力の行使……。
スザクがいった言葉。
ならば、今、自分ができることを行使しよう。
この私が信じたアスランの友人であり、自分を守ってくれた方に……。
2人が辿り着いたのは、格納庫が見える場所。
窓を見るとそこには一機のMSが置かれてある。
「…ザフトの新型フリーダム。あなたに乗ってもらいたいMSですわ」
「僕に?」
キラは驚き、ラクスを見る。
自分に機体を渡すというのか?
敵であるかもしれないものに。
「僕は、これを使って、あなたの掲げるものとは違うことをするかもしれませんよ?」
「……私はあなたを信じます。このMSは手段です。
あなたがこの手段を使い、何をなさるかは、任せます。
ですが、私は信じています。あなたがこれまで経験したことを元に、手段を用い、どんな結果を求めるのか……」
「……」
キラは、何も言うことは無く、格納庫にと向かう。
ラクスは、そんなキラの背中を見送りながら、自分の行なったことが何かの力となることを信じた。
クイーンはただ見ているだけじゃない。
自分にでもできることがあるのだと。
『フリーダムに何者かが搭乗!逃げます!!』
数分後、格納庫ではフリーダムが何者かに奪取されたという事件が飛び交うことになる。
「ご存知ですか?」
「いいえ、今聞きましたわ」
スザクから話を聞いたラクスは、そう答えてみせる。
キラ・ヤマト……あなたには未来をかけます。
どうか、この世界の復讐の連鎖を断ち切ってください。
私は、信じています。
「……手引きしたのは、ラクス・クラインという話ですが」
暗闇の中、唯一光る監視モニターに映し出されたラクスとキラの姿を見ながら話を聞くパトリック・ザラ…。
「シーゲル……恨むならば、お前の娘。
そして…既に私達は退けないところまで着ているということを察することが出来なかった己の力量を恨め」
パトリック・ザラは、クライン派を国家反逆罪として指名手配することを、決定する。
戦争を、そして現実がわからないラクス・クラインは…
己の力を行使することが、全てプラスに影響することはないということをまだ知らないでいた。
投下終了です。
ラクスは、初期の天然っぽいところから、後半にかけて一気に変化を遂げているところが
どうにも違和感を感じたので、天然ながら、今の状況にもがいていく…という感じにしました。
コードギアスの方GJです。
ラクスが……白い…
それと一つ。
プリッツってwww
ブリッツですね??
暗黒面に堕ちるのが確定しているのがつらいね・・・
本当に白いラクスは6年前にほぼ絶滅しているから・・・
初めてみたけどなぁんてカオスなスレだw
21時から第2話を投下予告します。
いまのうちに種デスバルディオス投下します
〜春島東海上 上空〜
「シールドが!」
前大戦で戦闘経験豊富なパイロットだとしても、いかに優秀な能力を持っていたとしても、
20対1で一方的にビームライフルを撃たれるのであれば、回避し続けるのにも限度がある。
シンが初めて避け損なった。シールドを装備していたザクの右手に受けたビーム。
幸運にも右手の破壊を免れたがシールドは吹き飛んでいる。
後ろから熱源接近を告げるアラームが鳴るのを耳にしてシンは耳を疑った。
まったく想定していない後ろからの反応。
シン「後ろから!ミサイル?」
反応が視界に入る、見たことのない不恰好なロケットが1本。
それが自分のザクから離れた左横を素通りして、ウィンダムの戦闘集団に向かって飛んでいくのを見届ける。
近接爆発によって飛び散った破片と黒煙は、通常用の対空ミサイルよりはるかに大きなもの。
爆発を回避して後ろに下がった戦闘集団も、ザクのシンも、ミサイルを撃ったものの正体を見た。
春島の方角から飛んでくる3つの飛行メカ、
そのうち重機のような風貌のキャタレンジャーが発射したミサイルが
戦闘集団をビームライフルの射程距離の外に追いやったのだ。
不可解な事態だったことの輪郭を飲み込んで、シンはミサイルの主に腹を立てる。
シン「あんたら何のつもりだ!」
マリン「お前たちに加勢するぞ、共同戦線であいつらを片付ける!」
シン「信用できるか!あんたらは!」
マリン「そちらが嫌でも俺たちは勝手にやらせてもらう。ツインテールのコの頼みだからな!」
シン「メイリンが!?」
シンとマリンの噛み合わないやりとりが続いていたが、
オリバーと雷太、彼らは腹を決めた分対応が早い。
オリバー「マリン、9時の方向に飛んで高度を上げろ!」
雷太「合体だ!思い切りやったれ!」
マリン「了解だ!お前も死にたくなかったらついてこい!」
真南に向かって飛んだ3機、あわててついて行くザクも合せて4機、
ちょうど太陽を背にする格好となった。
高度な電子兵器が増えてきた時代では忘れられがちなことだが、
太陽を背に、逆光にまぎれる位置を取ることは空戦では有利となる。
合体時間を稼ぐ余裕ができたことを確認するオリバー、そしてマリン。
オリバー「これなら数秒は邪魔は入らねえ!」
マリン「雷太、キャタレンジャーの自動装置は動かない。合図に合せてドッキングレバーを!」
雷太「おうよ、合図はいつも通りだ」
シンは彼らが何を始めるかまったく想像がつかない。
シン「何をするつもりだ?」
マリン「行くぞ!バルディオス!」
マリンの声に合わせて3人が一斉に合図を出す。
『チャージ・アップ!』
パルサバーンの機首が折れ曲がると各メカが忙しく機構の変形を始める。
3機編隊の後ろに隠れるような格好でザクがあっけにとられて観察する。
シン「ガッシャンガッシャンと、何をやっているんだ?」
左足、右足、胴体になった3台が合体を完了すると、頭部がせり出してくる。
シン「あいつら、単独でドッキングしたぞ!?」
完成したメカ・バルディオスは右腕を突き上げて、そのままウィンダムの戦闘集団へ突っ込んだ。
驚いてビームライフルを乱射するウィンダム、そのうち3発をボディに受けたバルディオス、
一瞬たじろいだような挙動をしたが、すぐに向き直る。
反撃を指示する雷太とオリバー。
雷太「マリン撃て!」
オリバー「ショルダー・キャノンだ!」
バルディオスの両肩のシャッターが開くと大砲がリフトアップして現れる。
いきなりそれが2門同時にビームを撃った。
照準精度こそ大雑把だが大口径のビームは、回避し損なったウィンダム2機を吹き飛ばしてしまう。
もう一度バルディオスは加速し、編隊の中へ突っ込む。
正面の進路に入ったウィンダム3機を跳ね飛ばし、
その奥の1機には、両拳を合わせたスレッジ・ハンマーを叩きつける。
両隣のウィンダムに向かって、両手を勢いよく広げて振り込んだ。
右の1機はかわすが左のもう1機は頭と右腕、さらに飛行ユニットを破壊され、海に落とされる。
果敢にビームサーベルを奮って接近戦を挑んだウィンダムには、
マリン「このおっ!」
マリンの怒声とともに振るわれたバルディオスの右手刀が、縦一文字にボディを引き裂いてしまった。
海に墜落したルナマリアのザクは、胸部からフロートを出し、海上に顔を出して浮かんでいる。
シートのルナマリアが見上げる全周モニターが、一気に様変わりした戦況を捉えていた。
ルナマリア「4〜5機は撃ち落しちゃった・・・・何よ、あいつ」
一気に戦力を減らしたウィンダムはザムザザーを中心に編隊を組みなおした。
火力を集めて一矢報いようという判断か。
ザムザザーのパイロットは驚愕を隠せない、
それまでの絶対的優位が1分少々で逆転されようとしているのだから。
「こんな『Gタイプ』がいてたまるか!」
先制攻撃を仕掛けたバルディオス、再びショルダーキャノンを撃つが、
今度はザムザザーを中心に形成されたフィールドらしきものが弾いて、ダメージを許さない。
今度はバルディオスの3人が驚いた顔を見せる。
マリン「跳ね返されたぞ」
オリバー「接近戦で片付けろ!」
雷太「逃がすんじゃねーぞ!」
バルディオスの背中のランドセルから、ロケット光が勢いよく輝く。
格闘戦を挑もうとして目と鼻の先に接近したバルディオスに、ザムザザーとウィンダムのビームが襲い掛かる。
恐怖にかられたパイロットらによる弾幕射撃は生やさしいものではない、
あらん限りの武装のビームを近距離で撃ってくれば、的が大きいだけに回避もかなわず、全弾命中。
「うあっ!」というマリンの悲鳴にコントロール系がリンクしているわけではないのだが、
上半身を傷だらけにしてバルディオスがよろめいた。
ヘマをやったマリンに、オリバーと雷太の檄。
オリバー「さっさと勝負を決めろ!」
雷太「どうしたぁマリィィンっ!!」
遥か後方で高みの見物になってしまっていたシンも見かねたのか、
電波障害もなく明瞭に聞こえる遠距離通信で呼びかけてきた。
シン「それ見ろ!うかつに近づくから!」
マリン「お前の意見など聞いてない!」
シン「なんだとぉ!」
マリン「外装ぐらいは剥ぎ取ってやる! サンダー!!」
マリンの絶叫に呼応して、ザムザザーに組み付いたバルディオスの主砲が作動する。
胸部エンブレムが、遠くのシンが直視しても目が眩みそうな発光を始める。
シン「光ったぞ!」
海面のルナマリアからは、太陽がもう1個生まれたように見える光球。
ルナマリア(海面)「何よあれ!」
その光は拡大したストロボの光のように極大化して・・・
「フラーッシュ!」
マリンの最後の絶叫。
ストロボ光のかたまりをその場に発射してバルディオスは反動で後ろへ飛ぶ。
ザムザザーの防御装置、陽電子リフレクターはこの光を防いでみせた、機体上部に関しては。
機体下部はおろか編隊全体をカバーしてしまうプラズマビームを受けてしまっては、防御する術がない。
残りのウィンダムは全て逃げ切れず、燃えながら分解してゆく、
ザムザザーも下部は損壊し上部構造物も継ぎはぎのような状態にまで痛めつけられた。
シン「“タンホイザー”を接近戦で撃ったのか?」
マリン「ぼさっとするな!そっちへ向かったぞ!」
シン「・・・ッ!あいつかよ!」
半壊状態になったザムザザーは獲物をザクに求めた。
バルディオスからいち早く逃げ去るかと思うと距離を置いてから反転、
残りの武器で、ザクだけでも仕留めようと向かってくる。
「コーディネイターのこいつだけでも、手土産に!」
生き残った右腕の爪がザクのボディをとらえようとする瞬間、シンの判断は冷静だった。
左腕をザムザザーの爪にわざとくれてやる。腕が引きちぎられて機体の自由が利く瞬間、
右手に持ち換えさせた装甲ブレードを真上から突き立てる。これで勝負ありだ。
ザムザザーはエンジン部分に爆発を起こす、その瞬間にザクも破片とともに飛ばされる。
突き立てて折れたブレードの柄を握ったまま、片腕のみになったザクが海へ落ちていく。
落下速度を速める前にガクン、と落下が止まったことに驚くシン。
リニアシートの後ろを振り向くと、全周モニターが、自分を両手で抱えるバルディオスの姿を捉えている。
シン「なぜ俺を助ける?」
呼びかけにこたえるマリン。
マリン「約束したんだ。お前らを助けると。」
シン「俺だったら、お前らを助けようとはしない!」
今度はオリバーが答える。
オリバー「俺たちは、お題目で自分の行動を縛れるようなご大層な奴じゃないんだよ。」
シン「あんたら・・・」
さらに雷太も続く。
雷太「おめぇは気にいらねえ。だがあのお嬢さんの頼みとなると話は別さ。
本心から頼み込んできたからな。おいマリン、さっさと帰ろうぜ」
ザクを抱えてトラック諸島へ飛ぶバルディオス、その姿を見ながら
置き去りにされたと気づいたルナマリアが、
海面に浮かぶザクの中で癇癪を起こしていた。これは2時間後に回収されるまで続く。
ルナマリア「ちょっとぉ!レディファーストって言葉を知らないんじゃないでしょーね!」
〜春島基地 滑走路〜
「キャップ!お姉ちゃん!」
メイリンが助け出された2人へ駆け寄る。
バルディオスチームの3人は、帰りを待つ基地スタッフが取り囲む中を進み出た。
マリン「さぁ、始末するなり何なり、もったいぶらずに好きにしろ。」
マリンの一言にいちはやく噛み付こうとしたのはルナマリア。
「あんたらねえ、一体どこのだれ・・・・シン!?」
片手を顔の前に出され制されるルナマリアに代わってシンが進み出た。
ぎこちない格好で海軍式の敬礼をして見せるシン。
シン「基地や船の被害もなく、部下の命も救われた。この基地のキャプテンとして、
全クルーに代わって、感謝する」
ニヤリとするオリバーに雷太、それを見てシンがムッとした態度を見せる。
オリバー「カタいな。」
雷太「まったくだな。」
シン「なんだっ、あんたらは・・・」
マリンが黙ってシンの目の前に右手を差し出す。
マリン「お堅いのは性に合わないのが俺たちさ。ブルーフィクサーの挨拶はいつもこうだ。」
「ああ、そうか」といわんばかりに目を丸くしたシンだったが、
すぐに表情を柔らかくした。すぐさま握手を交わす。
シン「俺はシン・アスカ。巡視船ミネルバ2世のキャプテンだ。」
書き上げた分まで投下終了。
トンデモガンダム・バルディオスの初登場時は思い切り暴れさせてやろうと決めていました
>238 ありがとうございやす、むしろ畏れ多いぐらいで
…誰だ、このシンってやつは?
時間となりましたので投下します。
第2話 ギアス〜悪魔の果実〜
ラクスは、自分の行なったことが良い方向になることを信じて疑わなかった。
庭園から部屋に戻ったラクスは、気分良くハロを撫でながらベットに腰をつける。
そんなとき、ノック音ともに部屋にはいってくるスザク。
「スザク?」
その表情は焦りと、緊急を要しているものだとすぐにわかった。
ラクスはそれが何を察しているのかわからないでいた。
「すぐに、ここから逃げてください!」
「え?」
ラクスは何がなんだか、わからないでいた。
スザクはラクスの手を引き、ロイドとセシルが待つ、外待たせてある玄関に置かれた車まで走っていく。
ラクスは訳がわからないまま、腕にしっかりとハロを持ったまま、車に乗り込む。
「ロイドさん、急いで」
「わかったよ。どこまで行けばいいのかな?」
「とりあえず、格納庫へ…」
セシルの言葉に従い、格納庫にと向かう車…
まだ何も分かっていないラクスのために、ロイドは助手席でラジオのスイッチをいれる。
『…クライン派は、フリーダム強奪事件に関して、手引きしたことが証明された。
これは誠に残念なことだ。だが、動揺してはいけない。我々は今こそ一致団結し、この事件に対処しなければならない!』
これは…アスランのお父様である、パトリック・ザラ?
それにクライン派とは一体?
困惑するラクス、話は続いていく。
『連合軍と内通していたことがわかったシーゲル・クライン、そして彼の娘であるラクス・クライン、
それに従うものたちは既に指名手配をかけている。潜伏しているものたちに告げよう。大人しく出てきなさい。
釈明の機会、裁判の機会も与えよう。だが、我々の極秘で開発されていたものが。
こうして奪取という最悪な形で行なわれたことは決して許されることではない。
それに関しては、強く抗議する』
奪取?
そしてお父様と私の名前…。
まさか…。
そこでラクスは自分が起こしたことが、どういったことなのかがわかった。
勿論、いけないことだとはわかった。だけど、こんなに大きいことになるなって知らなかった。
お父様が、なんとかしてくださるって……。
だって、いつも……。
私が物を壊しても、お父様は笑って許してくださった。
なんで?なぜこんなことに……。
「ラクス、君はやはり…」
スザクは隣の席でラクスを見ずに言う。ラクスは身体を震わしうつむきながら
「私……、だって、知らなかったんです。
こんなことになるなんて…私は、良かれと思って…戦争を、争いを止めたくて」
「……ラクスの考えには賛同できる。だけど、それを受け止められない人も大勢いるんだ。
残念ながら…人間は正しいことを受け止めるのが難しい」
「格納庫にまではいけるけど、僕らもきっと指名手配犯だよねぇ〜〜、どうやって機体を確保できるかな…」
ロイドの言葉どおり、道では既に検問が始まっている。
ロイドの隣、セシルは眉間に皺をよせて、エンジンを強く踏む。
「みんな、捕まっていて!」
「え?えぇえええ!!ちょ、ちょっと!!」
車内にロイドの悲鳴が轟く中、セシルは車を走らせ、路肩に車体をだしながら、検問を通り抜ける。
すぐに後方からサイレンの音が鳴り響く。
「せ、セシル君、ちょ、ちょっと!ぼ、僕はまだ死にたくないんだからねぇ!?」
「何を言っているんですか?捕まってでもしたら、それこそ死んでしまいます。ここはなんとか逃げ切らないと」
「だからって、わ、わぁあああああああ!!」
ロイドは死にたくない、死にたくないと泣きながら懇願する。
ラクスはスザクに身をよせながら、自分の父親が無事であることを強く願っていた。
車は警備を突破し、格納庫にと到着する。
まだ機体の完全な封鎖までには至っていないようだ。
車から降りると、スザクはラクスをつれて後部座席から降りる。
「さぁ、ここから脱出しよう」
「できませんわ」
「どうして!」
スザクはラクスの手をひきながら、問いかける。
ラクスは首を横に振りながら、涙を零しスザクを見上げる。
「私が、いけないから……。このままスザク達に迷惑をかけられない。」
「そんなこと今更、僕は…」
「いいの、行って!お願い……私は、やっぱり何も出来ないわ。
何かをすればこうしてみんなに迷惑をかける」
ラクスは顔をうつむけ、己のしたことを思い返し反省する。
自分は自分のやるべきことをやったはずだった。
だけど、結局それは、他の人に迷惑をかけることにしかならなかった。
スザクたちまでもを巻き込むわけには行かない。
そうすれば、本当に自分が許せなくなってしまう。
「スザク君、あなたの命は、あなただけのものじゃないわ!」
セシルがスザクの肩を掴み叫ぶ。
スザクは、息を呑む。
自分にはやらなくてはいけないことがある……それはルルーシュとの約束。
こうして自分が別の世界に飛ばされている間、ゼロはいない。
もしもの場合、用意はしてはいるが、だけど…それでも。
「……ラクス!!」
ロイドとセシルに引っ張られるようにしてランスロット・トラファルガーに引っ張られていくスザク。
ラクスはスザクを最後まで見ながら、彼が無事、生き残ってくれることだけを強く願った。
ラクスの正面に、兵士達が集結する。
その筆頭に立つのは、アンドリュー・バルドフェルドである。
彼は北アフリカでストライクと戦闘し、敗北。
だが、その命は辛うじて助かった。
本国での治療後、公安部に回され今回の件と遭遇した。
兵士達に銃を向けられたラクスは、ただ震えることしか出来ないでいた。
「……お姫様、残念だったな?あなたのやったことは、国家に対する叛乱だ。
悪いが命令どおり、ここで死んでもらう、あなたの父親と同じように」
ラクスは涙を流す顔をあげてバルドフェルドを見る。
「い、今……なんておっしゃいましたか?」
「…あなたの父親、シーゲル・クラインは国家反逆罪で拘束後、反抗したためやむなく射殺したという話になっている。
結論は変わらないが、そのほうが国民も納得するだろう」
「お……お父様」
ラクスは絶望の中にいた。
自業自得……その通りだろう。
だけど、そんなに自分はいけなういことをしたのだろうか。
戦いが終わって欲しいという願いは、そこまでいけないことなのだろうか。
ラクスは、向けられる銃を見ながら、何も考えられなくなっていた。
自分は無力、自分は用無し……。
「私は……」
『力が欲しい?』
振り返るラクス。そこに立つのは黒きシスターの姿…。
その女性はラクスに向かって歩いてくる。
「止まれ!止まらなければ撃つぞ!」
バルドフェルドの声も聞こえないのか、シスターはただラクスだけを見ている。
ラクスもまたシスターを見ながら、呆然とした表情をしている。
『人間の摂理を超え、この終わり無き争い、終わりなき理不尽を終わらすことができる力をあなたは望む?』
ラクスに囁く、その声はあまりにも気持ちが良いものであった。
力が欲しい
ずっと願っていたことだ。
それが今、手にはいろうとしている……。
籠の中の鳥として過ごし、求められるのはアイドルとしての存在だけ。
自分がいなくなれば新たなものがとって代わるだけ。
『……過ぎたる力は、己の身を滅ぼします』
スザクに言われた言葉が頭を過ぎる。力を求めるものは力に溺れる。
それはわかっている。
わかっているけど……このまま、死ぬ?
スザク……。
私は、スザクともっと話がしたい。
スザクからいろいろ学びたい!私は……。
「……私は、力が欲しい…ですわ」
ラクスは手を伸ばし、シスターを求める。
悪魔のささやきなのかもしれない。
かつてアダムとイブは悪魔にそそのかされ、知恵の実をかじったことで、エデンから追放された。
自分は今、その知恵の実を食べようとしているのかもしれない。
『ならば、契約しましょう。人としての理を捨て、あなたは人とは違う場所で生きることとなる』
シスターの手が伸び、ラクスの差し伸ばした指に触れる。
ラクスの目の前が広がる。
それは白き世界……。
様々な人間が苦痛でもがき、様々な人間が歓喜に満ちている。
戦争と平和……その永遠ともいえる連鎖。
それを断ち切る力。
私は、それが欲しい……。
立ち上がるラクス。
銃口を向けるバルドフェルドは、ラクスの雰囲気が変わったことを感じた。
ラクスはピンクの長い髪の毛を、払いながらそこにいる兵士たちを見つめる。
「なんだ?何があった!」
バルドフェルドはラクスに問いかける。
立ち上がったラクスは、片目を擦りながらそこにいるものたちに静かに語りだす。
「みなさんは、戦争をいつまで繰り返すつもりなのですか?」
「……戦争は、相手が撃ち、こちらが撃ち返す。
やがてそれはどちらが最初に撃ったのかわからなくなり、そして…相手を滅ぼすまで戦争は続いていくものだ」
「相手が滅ぶまで?」
「そう、あなたのような現実を知らないお姫様にはわからないかもしれませんな。現実の戦場という場所が…」
ラクスはこくりと頷く。
「あなたのおっしゃるとおりです。私は、なにもしりません。
ですから、これからは世界を見たいと思います。
私の力で、この復讐の連鎖を止め、戦争を終わらせます」
バルドフェルドはそのラクスの言葉に思わず笑ってしまう。
「フフフ…失礼。残念だが、あなたの夢は、死んだ後、その父上としてもらおう」
「いいえ……。私の夢は、今ここから始まりますわ」
ラクスは片目から手を離し、バルドフェルド率いる兵士たちを見る。
「ラクス・クラインが命じます。私のことを好きになりなさい!」
ラクスから放たれたギアスが兵士達の脳にと送られる。
兵士達は、銃口を下ろし、ラクスの前で整列する。
「わかりました、姫様」
赤くギアスの印を受けた兵士達は敬礼をして、ラクスに対して忠誠を誓う。
その光景を見つめるラクスは、己の得た驚くべき力に言葉が出ない。
だけど…私は力を得た。
人が持つことは出来ない戦争を終わらせる力を。
これをもってすれば、戦いを終わらすことができる。
私の夢は今、ここから始まる。
もう誰にも力を持っていないとは言わせない。
守ってもらうだけの存在じゃ…もうない。
私は……。
投下終了です。
誤字脱字、毎回申し訳ありません。
まとめと感想もありがとうございます。
これからゆっくりと彼女の運命がまわり始めます。
貴重な白ラクスが・・・
……『白ラクスを飼っているんですが』スレで相談されてそうな事例だな
ギアス与えたのが○キオじゃなくてシスターなんだ。
あとまとめ読んで思ったんだけどギアスのせいでルルーシュが変わったとスザクがいってたけどこいつの方が性格激変したと思うけど。
この世界でのナイトメアってあれかな
スパロボでのダンバインや英雄譚でのボトムズみたいな扱いかな
最初の話だと確かラクシャータがMSサイズのKMFを開発したとかじゃなかったっけ
宇宙戦とか普通にこなしてるし、CEの技術も入ってるのは間違い無いな
多分ロイドも同じことができるんだろう
バル
流石Zシンだ冷静だな
コード
このラクスが後々、マワサレルのか
>267
ウザクの主観だろ?
ルルーシュの場合、基本的に戦うための武器を手に入れた以上の意識の変化は無かったと思う。
まあ、早いうちにマオの現状を知ったり、ギアスの暴走でユーフェミアを虐殺皇女にしたりで力に溺れるより
力の危険性に気づかざるを得なかったてのもあるだろうけど。
パワポケのカメダが種世界にやってきたようです
予約が入っていないようですので投下します。
第3話 運命の船出
「それは本当ですか父上!?クライン派が反逆を起こしたというのは!!」
アスランがプラントに帰還した直後、
その話は彼の父、そして今は最高評議会議長となったパトリック・ザラからその話を聞かされた。
パトリック・ザラは、新たな最高評議会議長の席につきながら、頷く。
「私としても信じたくは無かったが……
彼の娘、ラクス・クラインがフリーダムの強奪に関与していることが判明した以上は……」
「ラクスが!?そんな…バカな」
「……お前には早速だが、そのことで仕事がある」
席から立ち上がったパトリック・ザラはアスランを見る。
その強い瞳には決意が篭っていた。
「フリーダムを奪還して欲しい。もしくは破壊だ。あれを敵に使われるわけには行かない」
「……わかりました」
アスランは言い返すことは出来ない。
自分には事情が良く分からないのだ。
ここで言い争ったところで何も解決には繋がらない。
アスランは敬礼をして部屋を出る。
ラクスが……フリーダムを渡したというのか。
信じがたい事実である…。
それにしても、なぜラクスはそんなことを?
彼女に利益があることはなにもないはずだ。
まさか、最近護衛についたという、者にけしかけられて……、
いや、そうであっても、彼らがスパイである可能性は低い。
なんせラクス自身が彼らを自分の騎士と位置づけたのだから。
プラント内、アスランは夜の闇を利用してラクスの邸宅に向かっていた。
やはり、どうしても自分の目で確認しなければ信じられないからだ。
ラクスのいた邸宅は、まだその形をとどめている、既に捜索は終了したのだろう。
立ち入り禁止のテープだけ張られたり、今は誰もいないようだ。
アスランは、それを潜り、敷地内にと入っていく。
静かな場所……草木にかこまれ花が咲き誇っていた場所は、ラクスのお気に入りの場所だった。
彼女は世間を知らない……あるのは、兵の士気をあげるライブとここでの限られた空間だけが彼女にとっての世界である。
だからこそ…キラに捕まったときは焦った。
彼女が戦争というものを理解せず、なにかするんじゃないかと…、結果的にはキラがつれてきてくれたわけだが…。
キラ…。
彼は死んだ。
戦いの中、自分は2人の友人を殺してしまったことになる。
ニコル、そしてキラ。俺は彼らになんと言えばいいのだろうか。
戦いの中で、これは褒められることなのかもしれない。だが決して、その傷は癒えることは無いだろう。
ラクスの邸宅にはいったアスラン…やはり随分と漁られている。部屋内は無茶苦茶だ。
自分もここには何度も訪れているだけに、やはりこれが現実であるとは思えない。
「……私のせいですわ」
その小さい言葉にアスランは振り返る。
そこにラクスが夜の明かりを窓から受け、照らされながら立っていた。
その表情は暗く疲れているようであった。
「ラクス……。本当に君が、フリーダムを?」
アスランは、信じられない現実を、否定するように問いかける。
嘘だといってほしかった。だが、それはイコールとして、自分の父が嘘を告げているということになる。
アスランにとっては、どちらをとっても哀しみにしかならない。
「……真実ですわ」
「誰かに頼まれたのか?脅されたり…そうなんだろう?ラクス!君は戦いを知らない。
こんなことをしても、君にはなんら利益にはならない」
アスランは、それでもなお、この結末を変えたい気持ちでラクスに問いかける。
ラクスは、そんな自分を気遣うアスランに対してやりきれなさと、優しさに感謝をする。
「私は……この戦争を止めたいんです。血で血を洗うだけの戦いの末に、何があるのでしょう?
このような争いは悲劇しかもたらしませんわ」
「だからといって、それがフリーダムを渡すことには繋がらない!」
「……ですが、それがアスラン…。
あなたの友人であるキラであるなら、私は信じることができます。
きっと、彼なら…私の気持ちを分かってくださると思いますから」
「キラ!?あいつは生きていたのか?」
「……はい」
安堵とともに、自分が再び彼と戦うという切迫した気持ちが湧く。
彼は敵だ。討たなくてはいけない。撃たれる前に…。
「また、戦いますか?」
ラクスの問いかけに、アスランは言葉が詰まる。
頭では理解をしている。キラは敵は撃たなくてはいけないと。
だが、感情的な部分がそれに疑問を持っている。
「…アスラン、あなたが友人を失ったように、キラもまた友人を失いました。
復讐といって撃ち合い続ければ…それは連鎖し、誰もとめられなくなります」
復讐の連鎖…。
キラもまた友人を失った。
自分と同じように…、戦争である以上それは避けられないことなのだろう。
だが、それを許容してしまえば、戦争は終わらない。
復讐は復讐を呼び戦いは続いていく。
「……考えてください。本当に今、しなくてはいけないことを…」
ラクスは、アスランにそう告げると夜明かりから影に消えていく。
アスランはラクスが暫く合わないうちに、成長を遂げていることに驚きを感じていた。
まさか、あそこまで切羽詰っていたとは思わなかった。
自分が感じている以上に戦争というものの、悲惨さ、そして自分に何ができるのかということを考えていたのだろう。
「俺は…」
このまま、父上の言うことを聞き、あてもない戦争を続けていくべきなのか。
それは本当に正しいことなのか。
アスランは自問自答を繰り返す。
「すいません、スザク…。こんな私に付き合ってくれて」
建物から出たラクスを出迎えるスザク。
「いいえ。こんな状況下にどうしても会いたいということは、それだけの人だということでしょうから…」
「私の我侭が招いた結果、スザクたちには苦労をかけます」
格納庫にて、ラクスはギアスに目覚め、目の前にいた将兵を自分の駒とした。
ラクスは、この力を誰にも知られたくはなかった。特にスザクには…。
そう、これはスザクのいう『過ぎたる力』に他ならない。
きっと知られてしまえば嫌われてしまうだろう。
それだけは避けたかった。絶対に…。
だから、この者たちは、自分の部下であるという風に告げたのだ。
スザクとロイドたちがランスロットにて脱出を図ろうとした際、スザクはやはり、自分を見捨てられず、戻ってきた。
そのときに、ラクスは咄嗟にそういった。
今では、そのときに備えて準備をしている。
ギアスを用いて仲間を増やしてはいるが…。
『ギアスは、その力を使うたびに強くなっていく。あなたの精神までを取り込まれないように注意すること……』
シスターが告げた注意事項。
ギアスは、身を滅ぼす力ともなるということ。毒を持って毒を制す…、それに繋がるのだろう。
だが、今更それは遅い。
一度願った、クイーンとして守られるだけではなく、自分の力で戦争を止めたいという力。
ならば、それを利用し、なすことをなさなくてはいけない。
そのために、スザクにはナイトとして頑張ってもらう。
私はクイーンとしてナイトを、全身全霊で守りましょう。
「いたぞ!!」
スザクとともに、その場から去ろうとしていたラクス達の前に眩しいばかりの照明が照らされる。
2人は建物の影に隠れる。
「やはりアスラン・ザラとの接触を図ったか!絶対に逃がすな!」
どうやらアスランはつけられていたようだ。
ラクスは、自分の危機感のなさに、情けなくなる。
だが…今の自分にはギアスがある。
スザクに気づかれないようにかければ問題は無い。
ラクスは覚悟を決めるが…。
「安心して、ラクス。ここからは僕の仕事だから」
「スザク……」
スザクは、銃を取り出すと、前にいるものたちの銃だけを狙い撃つ。
それはすべて命中し、銃が落ちる、最後にスザクはたかれている照明に目掛け銃を打ち込む。
照明が消え、暗くなった中、ラクスとスザクはその場から脱出。
敵の追跡から逃れ、自分達の拠点である場所にと向かう。
やるべきことはした。
最後にアスランに会い、彼の気持ちを向けることで…運命を託す。
本来ならばギアスを使ってでもいいところではあったが、なるべくなら使いたくは無い。
キラやアスランには…。かつて知った友人であるからこそ。
ラクスとスザクが向かった先…そこは格納庫である。
そして、そこにある一隻の戦艦。
スザクはラクスにノーマルスーツを着させ、自身も着ながら、艦にと向かう。
ラクスはスザクのエスコートを受けながら、プラントを見るのもこれで最後になるかもしれないという想いの中、
一度だけ振り返り、そしてさよならと心で告げると艦にはいっていく。
「こちら、バルドフェルドだ。戦艦エターナル…出撃するぞ」
『こちら管制塔、確認する……。バルドフェルド?
あなたは確かラクス・クライン捜索後行方不明になっていたんじゃ?』
「そうだったんだがね、事情が変わった」
『待て!それはどういうことだ!』
通信をきるバルドフェルドは、艦橋にとやってきたラクスを見つめる。
ラクスはその服を変え、スザクが勧めてくれた昔の日本の着物に近い服にとなっていた。
「姫、お似合いですな。ところで…どうやら、向こうは我々を出してはくれないようです」
バルドフェルドの言葉を聞き、仕方が無いとラクスは思い、手を前に出す。
「私達は行かねばなりません。ここで立ち止まるわけには行かないのです。
エターナル発進!敵を振り切り脱出します」
「了解。エターナル発進。ハッチを突き破るぞ」
エターナルからの砲撃…。ハッチを破壊しそのままエターナルは格納庫から、波乱に満ちた出航をする。エターナルの格納庫では、ロイドとセシルが調整に入っていた。おそらく敵はすぐに追撃を始めるだろう。そのために、今度は騎士の出番だ。
「…それにしても、これだけの準備、ラクスさんがしていたなんて…」
セシルは、のほほんとしていたラクスが、これだけのことを計画していたとは思えなかった。
「それについては同意見だね」
コンピューターの点検を終え、コクピットから出てきたロイドも腰に手を当てて頷く。
「あのお姫様が、ここまで軍に手を回せるとは思えないんだけどね〜」
「ラクスは、意外としっかりしているんですよ」
ロイドとセシルの元にやってきたスザクは、パイロットスーツを着ている。
初の宇宙間戦闘となる。
こんなことで宇宙に出るとは思えなかったわけだが…。
「そういうものかなー…」
「スザク君、事態がはっきりしない以上は無理をしないで」
「わかりました。オペレーターはセシルさんにお任せします」
スザクはランスロットのコクピットに乗り込むと、ハッチを閉じる。
MSとはまったく異なった機体コンセプト。
それはまさにザフトにとっては脅威となるだろう。
そう思われているだけでこちらは十分だ。
本音で言えば、宇宙での戦闘になれていないこっちとしてみれば、
慣れている向こうとの戦闘はかなり厳しいことになるだろう。
ロイドとセシルはスザクの無事を祈りながら、格納庫からでていく。
2人は無重力にまだなれていないのか、ロイドにいたっては、かなり壁に当たったり飛ばされそうになっている。
セシルは、ロイドを誘導しながらなんとか出て行く。
「はぁ……僕としては早いところ地上に降りたいところなんだけどねー…。
なんというか地に足がつかないっていうのは凄く不安だよ…」
「なれれば楽しいものですよ?」
セシルはニコニコ笑いながら、艦橋にと向かう。
震動が艦に響く。
どうやら敵の追撃部隊の射程に入ったようだ。
まだこっちとしては万全ではない。
ロイドとセシルが艦橋にはいると、そこでは敵の部隊からの通信がはいっている最中であった。
『直ちに、艦を停止し投降しなさい。さもなければ、我々ザフト軍は、貴艦を敵と認識し撃沈する』
「わぁ〜お、元々、逃がすつもりなんかないのに、よく言うよね〜」
ロイドが頭に手を回して言う。
セシルは、そんなロイドに黙るように目を向ける。
ラクスは通信を聞きながら回線を開く。
「私はラクス・クラインです。今回のことについては私に全て責任があります。
MSを強奪を幇助したのも私の一存です。他の方には一切関係のないことです。
ですから、私以外の者を討つことは誤りです。討つのならば私を狙ってください。
ですが、私もただやられるわけにはいきません。
この無益な、争いの応酬を終わらしたい、そのために私は戦います。
皆さんが、傷つき、互いを憎しみ合う連鎖を止めるために……」
スザクはランスロット・トラファルガーに起動キーを挿入する。
光が機体内部を輝かせ、画面が開かれていく。
自分は再びナイト・オブ・ゼロとして戦場を駆けよう。
今だけはゼロという鎖からとかれ……。
1人の姫を守ろう。
かつて守れなかったものを今度こそ。
『ラクス・クライン!お前の言っていることは、臆病者の言うことに過ぎない!』
プラント側からの回線だ。
その言葉を放つのはプラントの最高評議会議長であるアスランの父、パトリック・ザラである。
「ひょぉ〜これは面白くなってきたねぇ〜公開トップ会談だね〜ぇ」
「ロイドさん!」
ラクスは、現れた父の仇に対して怒りの感情が走るが、それもまた、結局は元を正せば自分にと跳ね返ってくる…。
今はただこのやり場の無い気持ちを押さえ込み、この場を凌ぎきるだけだ。
『我々は、連合軍にプラントを破壊され、さらには、ここまで独自で築き上げてきた我々に対して傘下に下れといってきたのだ。
馬鹿にされ、踏みにじられたのだ。それを許しておくべきか?
既に矢は放たれた。もはや、この戦いはどちらかが潰されなければ終わることはない!!
にっくき連合を潰してこそ、我々コーディネイターの真の未来が訪れるんだ』
「やはり…そうなりますか。戦争は悲しみと不幸しか呼ぶことは無いというのに……。
それを続けることで世界は確実に滅亡にとひた走ることになることになぜ気がつかないのでしょうか。
争いは何も生みません。過去を変えることも勿論出来ません。
ですが未来を変えることは出来ます。
今ある命を私達は守ることが出来ます……どうか共存の道を」
『そんな脆弱な楽観主義者の考えなど……聞けん!』
回線が切れる。
結局、こうなることはわかっていた。
だが、それでも一部の望みを託したかった。
「敵の部隊、こちらに攻撃を開始します」
バルドフェルドの言葉にラクスは目を閉じ、そしてギアス以外の力を行使する覚悟を決めた。
自分はクイーンである。
ただ守られるだけではない、力を行使するもの。
「スザク……頼みましたわ」
『イエス・ユア・マジェスティ』
ランスロット・トラファルガーの目に光がともる。
投下終了です。
ルルーシュとラクスの差というのは今後も重要なところになります。
立場の差や、様々な要素もくわわってくることになるでしょう。
技術に関してはラクシャータとほぼ同じです。
保守レス乙
>>272 奴がC.E.にやってきたら間違いなくラクスに取り入って上手く利用し、
やがては追い落としてC.E.の征服を狙うだろうな。
最終決戦で搭乗する機体は世界観に合わせてフリーダムガンダーロボで。
シン「カメダ!アンタは絶対に許すわけにはいかない!!この戦争を裏で操っていた、アンタだけは!!」
カメダ「フン!シン・アスカ、お前は救いようの無い愚か者でやんすねぇ。
この世界に永久に平和をもたらそうとしている偉大なヒーローであるこのオイラに楯突こうなどとは…」
シン「偉大なヒーローだと…!?永久の平和だと…!?何を言ってるんだ、アンタは!?」
カメダ「オイラがこの地球圏の覇権を握り、絶対的な支配者として君臨することで、
この地球圏には絶対的な秩序ができあがり、そして永久の平和が訪れるのでやんす。
そんな偉業を成し遂げることになるこのオイラが偉大なヒーローを名乗るのは当然のことでやんす。」
シン「・・・・・・」
カメダ「それに戦争の無い平和な世界…そんな世界を誰よりも願っていたのは、他でもないお前じゃないでやんすか。
そんなお前が何故オイラに楯突くんでやんすか!?」
シン「…確かに、俺は戦争の無い平和な世界を望んでいる…。
だが、アンタのやろうとしていることは独り善がりのエゴに満ちた絶対的な暴力による支配だ!
アンタの歪んだエゴに支配された世界が、平和な世界であるものか!!俺は、そんな世界は認めない!!」
カメダ「オイラの崇高な理想が理解できないとは…。
やれやれ、お前がここまで救いようの無い愚か者だとは思わなかったでやんす。」
シン「愚かなのはアンタだ!それに、あれだけの多くの罪の無い人間の命を奪ったアンタが、
偉大なヒーローであるものか!!」
カメダ「あれだけ多くの?何千万人でやんすか?それとも億単位でやんすか?
ザフト、連合、オーブ、あのバカな歌姫とその信者たち…プラント、地球、火星を合わせてどのぐらいの人数でやんしたっけ?
何をあんな程度の犠牲で怒っているんでやんすか?」
シン「…あんな程度、だと…?」
カメダ「あんな人数、この宇宙にとってゴミみたいなものじゃないでやんすか。
まぁ本当に宇宙のゴミになっちゃったんでやんすけど♪」
シン「!!!!アンタって人はァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!
どこまで腐りきってるんだ!!アンタはァァァッッッ!!」
カメダ「フン!あんなゴミどもの犠牲に怒るなど、どこまでも青臭いガキでやんすね。
それに、大勢の人間が幸福な生活を送るためには、少しぐらいの犠牲が出るのはしかたがないのでやんす
故に、あのゴミどもの犠牲もこの世界には必要だったのでやんす。それを理解するがいいでやんす!」
シン「そんな、勝手な理屈を!
そういうことを言う奴は多いが、自分を「少数の犠牲」の側に置く奴を俺は見たことがない!
結局、そんなものは犠牲者が出ることを正当化するための見苦しい言い訳だ!!」
カメダ「こ、このクソガキ…「あの宇宙」の「あの男」みたいにオイラに説教するつもりでやんすか!
もうお前と話すことはないでやんす!お前もあのゴミどものもとに…家族のもとに送ってやるでやんす!
オイラに深く感謝しながらあの世に逝くがいいでやんす!!」
シン「俺は死ぬつもりはない!俺はまだ生きてるんだ!この世界で生きていくんだ!
俺は絶対アンタを認めない!アンタのせいで未来を奪われた人たちのためにも、アンタは絶対に俺が倒す!!
このデスティニーで!!」
>>274 乙でした。次回も楽しみにしています。
地球を守るぅ〜♪祈りで満ちればぁ〜♪
予告もないようなので投下します。
第4話 歌姫の騎士団
『ランスロット・トラファルガー…発艦!』
「発艦!」
スザクの操るランスロットが初の宇宙間戦闘に挑む。
目の前に迫る敵の追撃部隊。
主にジンのカスタム機で構成された、部隊はライフルをエターナルに向ける。
「ここで、ラクスをやらせるわけにはいかない!!」
ランスロット・トラファルガーのエナジーウィングが輝く。
それは、ランスロットの運動性を高め、敵に目掛け、一気に距離を縮める。
通り過ぎた敵のジンは気がつかぬまま、その機体をバラバラにさせられる。
だが、決してコクピットは狙わない。
『……スザク、あの方々も生きているんです。どうか…命だけは』
「イエス・ユア・マジェスティ」
スザクは、その圧倒的な運動性で敵を壊滅させる。
追撃部隊はもはや、何も出来ない。その白き悪魔の戦闘をただ眺めることしか…。
前後左右、自由に飛びながら、ジンの背後に回り込んだり、さらには相手の死角を突く頭上からの攻撃であったり……。
まるでジンが子供の玩具のようだ。
追撃艦隊を指揮している将兵は、そのあまりの圧倒的な戦闘に呆然としてしまう。
「ぜ、全滅!?バカな……12機のジンが、全滅!?3分もたたずにか?たった一機に…」
将兵がその報告を聞いて呆然とする中、艦橋の目の前にライフルを向けたランスロットが姿を現す。
「う、うわああああああ!!」
自分が死んだと確信した将兵は悲鳴を上げるが、ランスロットは、そこで動きを止めると、
そのまま再び速度を上げて、戦場から離脱する。
腰を抜かす将兵。
『おい、艦長…報告をしろ!聞いているのか?』
パトリック・ザラからの通信が聞こえるが、暫くの間、将兵は身動きが取れないでいた。
こうしてエターナルは、プラントから離脱。
パトリック・ザラの膝元から悠々と離脱したラクス・クラインは、その手腕に恐怖される結果となった。
ただのアイドルから反逆の先鋒……。
誰もがまさか?と思い、そしてプラントが大きく揺るぐ結果をもたらした。
「なんということだ!なぜ、このようなことに……」
パトリック・ザラは両手を、机に叩きつけて唸るように言う。
「へ、陛下…アラスカの作戦が失敗しました。降下部隊が壊滅……敵は大規模兵器を用いた模様です」
「なんだと!?」
このラクス・クライン反逆事件の最中、連合軍本部に送り込んだザフト降下部隊は、
アラスカで連合軍が用意していた大質量破壊兵器サイクロプスを起動させ、ザフト部隊が壊滅させられていた。
パトリック・ザラはダブルパンチを受けた結果とになり、
今回の事件の結果、戦闘を地球から宇宙にと移行させざるを得ない状況となっていく。
「……だが、我々には、まだプラントには、コーディネイターには手立てがある。
宇宙に上るなら上がるがいい。そこがお前達の墓場となる。
ラクス・クラインも地球連合もまとめて叩き潰してくれる!」
パトリック・ザラは、笑みを浮かべ立ち上がる。
彼にはまだまだ手立てがある。
それにニュートロンジャマーがある限り、プラントにおける直接攻撃は難しい。
ナチュラルの野蛮な攻撃に何を恐れるころがあろうか!
コーディネイターの英知により、この戦争は勝利する。
そしてナチュラルを1人残らず絶滅させ、世界を……。
エターナルに着艦するランスロット…。
ハッチが閉じられ、真空状態から、酸素のある状態にと移行する。
それまでは、コクピット内でゆっくりと息をつくスザク。
『スザク君、始めての宇宙での戦闘はどうだった?』
セシルの言葉にスザクは、笑顔で
「まだ、慣れてはいませんが、それでも自由に飛びまわれるのは空での戦闘とは違い、重力が無いので楽です」
『お〜めぇ〜で〜と〜う、スザク君。君にならできるとおもっていたよ?』
ロイドが画面にうつるセシルさんの間に入ってそういう。
スザクは苦笑いを浮かべながらロイドを見る。
『あ、そうそう。君が到着したと同時に、お姫様がそっちに向かったからしっかりとエスコートしなきゃ……ダメだよ?
なんてったってこっちの開発費を彼女はっ!』
言葉を続けようとしているロイドは背後にいたセシルさんの手によって…。
と同時に画面が消える。
コクピットハッチをあけるスザク、既に空気が戻っているため、スザクはノーマルスーツをとる。
戦闘にはなれたが、どうにもノーマルスーツだけはなれない。
視界が狭まるような気がしてならないからだ。今度、ロイドさんに相談してみよう。
「スザク!!」
「ら、ラクス?」
ロイドさんの言うとおり、その姿を現したラクス。
いきなりで驚いたスザクだが、ラクスは、そんなスザクのことなど気にしないで満面の笑顔を向ける。
「よかった。無事でしたのね。本当に……」
「大丈夫。僕はそんな簡単にやられたりしないから…」
ラクスはそういうスザクに対して首を横に振り
「スザクに……こんな大変なことを1人任せてしまっていることが……申し訳ないのです」
「ラクスだって、これだけのことを1人で成し遂げたんだ。
僕になんかこんなことは出来ない。ラクスにしか出来ないことだよ…」
ラクスはそのスザクの言葉に嬉しそうに頷く。
そう、自分は、自分にしか出来ないことをしている。
ラクス・クラインとしてしか出来ないことを……。
それは、素晴らしいこと。
スザクにも褒められた。
私は…もうただのアイドルなんかじゃない。
世界を変えることができる。
「…ただ」
「?」
スザクは嬉しそうなラクスを見ながら、不安気に小さな声でつぶやいた。
「……あんまり無茶をしないで」
「わ、わかってます。大丈夫ですわ」
スザクの言葉にラクスは自分が少し落ち着きがなかったことを反省する。
これではいけない。
また…キラのときと同じく自分の力に溺れてしまうところだった。
自分の力はプラスだけには働かない。クイーンの力は……双方向に働く。
ただ前ばかりを見ているわけには行かないのだ。
『ラクス様、至急ブリッジにお戻りください』
「…もういかないと。スザクはゆっくり休んでくださいね?」
ラクスはスザクと離れるのがいやだったが、自分は今ただの一個人ではないということを意識して、スザクから離れていく。
スザクは、そんなラクスを見ながら、彼女がどこか急いでいるように感じられた。
でも、それも仕方が無いか。
ラクスは一刻も早く、この戦いを終わらせたいと願っているのだから。
「…今後のとこですが、我が隊に反応を示してくれる場所がなかなか見つかりません」
ブリッジでは、バルドフェルドは、画面の地図を見ながら、進行方向を指し示しながら話を続ける。
「仕方が無いだろうね〜ぇ、なんせ僕らはプラントからのお尋ね者。引き入れる場所があれば、すぐに大部隊が送られて壊滅させられちゃうよ」
「だからといって連合に身を寄せるわけにも行きませんし」
ロイドとセシルも、無事出撃できたものも、今後のことを考えると、
なんとも頼りないものと思う。だいたいラクス・クラインの行動自体が行き当たりばったりという風に思えてしまう。
スザクはラクスを擁護するが、フリーダム奪取にはじまり、今回の離反行動。
確かにラクスにとっては思い切った行動ではあるが、その先が無い。
少なくとも今はそれを見ることが出来ない。
「…このまま連合とプラントが潰し合ったのち、そこを掠め取ろうって言うのなら勝機はるかもしれないけどね〜」
「それは出来ません!」
ロイドの言葉にブリッジに戻ってきたラクスは、強い言葉で拒否を示す。
ラクスは自分の席につくと地図を見つめる。
「私達と同じ想いを示すものたちが必ず現れるはずです。それは……キラやアスランたち」
「しかし、彼らとは音信不通です。もしかしたら連合軍が使用した質量兵器で攻撃を受けているかもしれません」
「いいえ、彼らはそんなことでやられたりはしませんわ」
ラクスは、画面を見つめながら自分に言うように告げる。
そのラクスの楽観主義ともいえるような様にロイドとセシルは何も言えなくなってしまっていた。
ただ、これまで楽観主義とも言えるようなことを覆してきた実績を持つ彼女に、何も言うことはできない。
それに、ここまで来てしまったら信じるしかない。
その頃、地球での任務を終了したラウ・ル・クルーゼはプラントに戻る最中であった。
アラスカ基地で手に入れた女と一緒に……。
「ほぉ、クイーンが動いたか……。ラクス・クライン、ただのお飾りというわけではなかったようだな」
クルーゼは、ニュースにてプラントにてラクス・クラインがプラントを反逆、離脱したという話を聞き感嘆の声を漏らした。
自分の計画には、入っていない行動。
こうでなければ面白くない。
全てが計画通りでは…。
「……」
クルーゼの隣、フレイ・アルスターはただ黙って地上から再び自分の父が死んだ宇宙にと戻ってきたことが哀しく感じられた。
さらには、地上で別れたキラやサイたちは無事だろうかという思いも…。
「何も心配する必要はないよ。君は本来戦うべき人間でないことは十分承知のうえだ。
それに私は君に尋問やそういったことをするつもりもない」
フレイはクルーゼの言葉を鵜呑みには出来ない。
勿論、簡単に信用してくれないことはクルーゼにもわかってはいる。
だが、クルーゼにとって、幸運な拾い物である彼女は人質という効果だけではない様々な用途で使用することができる。
なんだったら、アークエンジェルの破壊工作でもやらせようか、
いや……もっと他にもいろいろとある。
「……とにかく、これからの戦闘は宇宙にとあがるだろう。彼らも、あんなところでやられはしないだろうからな」
「彼ら?」
「あぁ、君が知っているキラ・ヤマトやアークエンジェルは…」
ラクスの祈りが届いたかどうかは定かではない。
だが、オーブではアラスカから離脱したアークエンジェルを迎え入れ、
連合との戦闘に突入、オーブにかなりの被害をもたらしながらも、宇宙にとあがることとなった。
このよきのオーブでの被害はかなりのものであり、オーブ国民の1人……
この後歴史の表舞台にたつことになるシン・アスカの家族もこの戦闘により被災した。
キラ・ヤマトとアスラン・ザラはラクスの言葉に影響を受け、戦争を止めるという共通の目的を持つこととなった。
「……連絡がとれたって?」
スザクは廊下にてラクスに話しかける。
「はい!ようやっとですわ。近いうちに合流ができると思いますの」
ここ数日間は、暗証空域にある資源採掘工場を交渉の上、使用(ラクスによるギアスで手に入れる)することで、
エターナルの姿を隠し、沈黙を守っていたが、ここにきてようやく動き出すことができる。
ラクスは、嬉しそうにスザクの手を握る。
「これで、スザクにも無理に戦いに出てもらう必要はなくなりますわ」
「そうは行かない。誰かが戦っているのに僕だけ見ているわけには…」
スザクの言葉にラクスは、自分で何をいっているんだろうと思い、言葉を改める。
「ごめんなさい。戦力が増えますから…という意味だったのですけど」
「うん。まだアスランやキラという人たちには挨拶さえ済んでいないから」
「皆さん、とてもいい人たちですわ。きっと……スザクとも仲良くしてくださいますわ」
ラクスは、自分の思ったとおりにことが進みだしたことを実感し始めていた。
キラとアスラン…それにアークエンジェルという強力な艦がつくことで、自分の戦力は倍増する。
それでも連合とザフトの戦力にはまだまだ劣る。
でも、大丈夫……。
私にはギアスがある。
私の強力な力が…。
「オーブと連合、そしてラクスたちザフトが手を組むということになると名称を決めないといけないね」
「そうですわ…なにがいいかしら?」
スザクは、そこでふと思い出されるフレーズがあった。それは決して褒められた言葉ではない。
だが、自分達の世界では、その名前は栄光と希望に満ち溢れた言葉。
「…騎士団。ラクスにかけて…歌姫の騎士団なんかどうかな?」
「なんだか照れくさいですけれど……でもスザクが決めてくださったのならそれでいいですわ」
ラクスは照れながら、それでも気に入ったようで手を合わせて微笑む。
すぐに集合ポイントに元連合軍戦艦、アークエンジェルとオーブの戦艦、クサナギがやってくる。
ラクスはブリッジにて回線を開き、そこにうつる同じ同志達に言葉を向けた。
『ようこそ、歌姫の騎士団へ……私は、ラクス・クラインです』
ラクスは、このとき宙に浮いた気分であり忘れていた。
ギアスの脅威を……それはすぐに自分にと跳ね返ってくることになる。
投下終了。
今回はワンテンポ置く回です。
自分で歌姫というのは…まー恥かしい感じですが。
陛下じゃなくて、せいぜい閣下ね、ザラパパンは
292 :
00の人:2009/01/26(月) 01:02:52 ID:???
ロイドさんがツボったwww何故かピコハンでポコポコされてるロイドさんが浮かぶwww
00も投下しますー
293 :
00の人:2009/01/26(月) 01:04:54 ID:???
機動戦士ガンダムSEED 灰の雪が降る世界
『見え透いた嘘。重ねたって痛みは消えやしない。』
「うっ…うう……」
泣き崩れるカティ。脳裏によぎるのはうっとおしい位に付きまとうパトリックの姿だ。
『パトリック・コーラサワーです!!宜しければお食事をご一緒しませんか!?』『お前は今の情勢について何も考えることはないのか?』『ありません!!』
『ほぅ、コーラサワー貴様にしては、良い趣味じゃないか。』『はい。3ヶ月前から予約していました。』『もし、私が、既に食事をすませていたらどうするつもりだったのだ?』『それは……』
あの日は、既に食事を済ませ、今後の作戦について考えながらベッドにいたのだったか……
「チッ、野郎……ステラ!!パイロットを回収しろ!!」
「わかった。」
スティングはスローネツヴァイのモニターに映るガンダムエクシアを睨みつける。
「へへ。2000回とか言ってもさ……やられちゃ意味ないよなァ!!」
「止めろ。あの男はイイ線行ってたぜ。それ以上にエクシアって野郎が強かったんだ。」
アウルがアインのGNメガランチャーを発射する。射線軸は脱出したパイロットを避けるように取っている。問題無い。
「スローネか!?ドライだけ撤退する……」
「お前の相手は僕たちだ!!ステラにはちかづかせないよ!」
「この動き……違う!?」
ステラは脱出した士官をコクピット内に招き入れる。士官はパイロットが女だと知り驚きつつも、礼を言う。
「悪ぃ。カッコ悪いとこ見せちまったな。」
「うぅん。スペシャルさんかっこ良かった。」
スペシャルさん…言わずもがなパトリックの事だ。初めてあったときにパトリックは
『俺はパトリック・コーラサワー。スペシャルで、2000回で、模擬戦で負け知らずなスペシャルな士官様だ!お前ら!!俺の言うことは素直に聞けよ!!』と自己紹介し、長かった為ステラはスペシャルな士官とだけ覚えてたのだ。
「スペシャルさん…あぁ。…カッコ良かったか!?ステラちゃん…だっけ?」
溢れそうな涙は感動からか痛みからか…パトリックはうろ覚えの彼女の名前を言ってみる。何故か目を輝かせるステラ。
「うん。ステラはステラ。スペシャルな士官様カッコ良かった。」
「そっか。そっかぁ……」
294 :
00の人:2009/01/26(月) 01:06:01 ID:???
「あの……マネキン小佐……」
「……どうした……そうだったな。作戦の指揮を……」
失意のカティに対し、先ほどパトリックの機体をモニタリングしていたオペレーターが声をかける。彼女はどう声をかけるべきか悩んだ後、分かりやすく彼女に教える。
「コーラサワー中尉なんですが……脱出装置が……」
「わかってる。これ以上私情を挟むわけには……」
カティは聞きたくないと暗に口にするが、教えなければならない。パトリックが脱出出来たことを。ハッキリと言うことにした。
「AAの方はどうだ!!」
カティは気丈に声を張り上げる。パトリックの事を忘れようと、まだ戦いは続いているのだ。泣くことや嘆くことはすべてが終わって……
「パトリック・コーラサワー中尉は生きてます!!ステラ・ルーシュ小尉が回収しました!!」
あぁ……叫んでしまった……オペレーターは迷ったがこれが手っとり早いと判断したためだ。
沈黙が数秒……恐らくブリッジ中に響き渡っただろう。
そして、スペシャルな士官はステラだけではなくみんなの英雄(ヒーロー)となった。
「スメラギさん!ががが、ガンダムがまた出てきましたぁ!!」
「あれは……スローネ!?出てきたわね……」
スメラギは先日のトリニティではないスローネを思い出す。あの三機はトリニティと違う戦い方をしていた……疑似GNドライブ搭載型が量産されていることから恐らくはオリジナルのスローネではない。スメラギは唇をかむ。
「まだ、終わりではないわ。」
「そうだ!!終わりではないぞ。アィルカ、シン。二人は私と共に輸送機と母艦の援護だ。ヴァーチェはエクシアの確保。急げ。」
戦場でオープンチャンネル、いやそんな生ぬるい物じゃない。外部スピーカーで堂々と言ってのける奴がいた。レイである。
「オープンチャンネル……」
「むしろ外部スピーカーをつっこもうぜ。アレルヤ。」
アレルヤは苦笑し、シンは脱力する。普通に通信すればいいだろうにと思いつつ、あぁ…こういう奴だよな。と諦める。
「すまん。腕は良いんだが致命的に不器用でな……」
そんな二人にアィルカが頭を抑えながら謝る。付き合いが長いからだろう。異常に説得力がある。
そして言ってのけた本人は臨戦態勢のようだった。
295 :
00の人:2009/01/26(月) 01:10:31 ID:???
「では行くか。アレックス。輸送機の操縦をオートに、自動迎撃状態にしていればいい。」
レイは初めて使うタイプの旧式コクピットに驚きつつもアレックスへ指示を出す。
彼女の乗る機体はシグー、ディン。どちらにも似ているが、どちらとも違う。強いて言うならシグーがベストだろう。AMF-101カスタム シュバイツァー月並みだが名付けの親であるためか気に入っている。
この機体はディンをベースに装甲材を軒並み発砲金属に変更し、バックパックをシグーの物を改造した物に変更、各部のモーター類もグフ等のニューミレニアムシリーズに合わせて交換が施され、耐衝撃性を無視した軽量化を施されている。
武装は5連チェーンガン内蔵シールドとAPS重斬刀を持たせ更に追加武装に三連装マシンキャノンを頭部の左右、肩付近に増設されている。
かたかたとキーボードを叩き、機体に火が入る。続いてリニアカタパルトと行きたいが輸送機にはそんな上等な物はない。レイは手動でハッチを開き……
飛び降りる。
「艦載機が発進したか……落とすぞ!」
ムラサメ小隊の隊長は先ほどの馬鹿げた真似をした輸送機から発進した機体を見つめる。外部スピーカーで作戦指示など……
「一つ」
ドンと爆発し墜落するムラサメ。両機のパイロットは信じられなかった。シグーである。シグーが墜落していく機体の背中にあたる部位に着地していたのだ。
深々と突き刺さった重斬刀が痛々しく、きりもみを始める。
「クッ、許せ!!」
ビシュウとビームが墜落していくムラサメに注がれる。その様はあたかも共食いのようだ。
「そうだな。共食いだ。……醜い物だろう。なあ?……」
スラスターを「一瞬だけ」吹かし、シグーはムラサメ小隊よりも高度を取る。
「なる程、まるでF1だな。」
レイは機体の反応を確かめながら自由落下しつつチェーンガンを連射する。
「散開しろ!うわぁああ……」
2つ爆発を確認し残りはぎりぎりでかわしてゆく。
「逃さん。」
散弾銃とマシンキャノン、突撃銃を構え回避した機体達に弾丸の雨を降らせる。連射兵器に散弾銃という偏った兵装の正しい(?)使い方だ。
「ほかに使い方があるか?いや、無いな。」
「おのれ……オーブ万歳!!」
生き残りの機体が一機変形して特攻を仕掛ける。レイは口紅を塗るかのように滑らかな手つきで各部のロックを解除。
「それだけの覚悟があるにも関わらず……」
296 :
00の人:2009/01/26(月) 01:11:36 ID:???
「何故だ?」
モニターにはロックオンの表示がでている。レイは躊躇うことなく後退しながらトリガーを引ききる。着弾してから約.5秒、文字通りムラサメは蜂の巣にされ爆発する。
「PS装甲ならこうは行かなかったな。」
モニターにはキラキラと次のお客さんの姿が映っている。
「並んでくれ。と言っても聞いてくれないか……」
「レイ・ザ・バレル。目標を蹂躙する。」
輸送機を援護しつつAAとフェヌエルに接近する旧式機。ある意味オーブ軍にとっては悪夢だろう。何故ならオーブ軍の正式量産機ムラサメがシグー一機にカトンボの様にポンポンと落とされるのだから。
「……スゲェ…」
思わず呟くシン。開いた口がふさがらないとはこの事だ。彼女は自機に向けられる弾を、銃口を、敵意さえ完全に把握しているかのように的確にかわし、かわせない様ならば撃たれる前に破壊し、圧倒的な瞬間火力でただ蹂躙していく。
「ティエリア。フェヌエルとAAで包囲網に穴をあけるわ。早く刹那を、」
GN粒子のジャミングの中、スメラギがヴァーチェへ通信を送る。続いてシン達への回線をひらく。
「ミッションプランを提示するわ。エアリスとアヴェンジャーでスローネを迎撃。レイ・ザ・バレルさん…でいいのかしら?」
「レイで構わない。私が前面に立とう。このままではかなわないだろう?」
ニヤリとレイが笑う。スメラギはそれを見て満足気に頷く。
「お願いします。……戦術予報士の戦い方を教えてあげるわ……」
後半は通信を切り誰ともなく呟く。内心で「戦闘指揮は苦手なんだけどね」と思いながらスメラギは奥歯を噛み締める。
297 :
00の人:2009/01/26(月) 01:12:31 ID:???
「お姉ちゃん……どこに行くつもりなの…?」
「いかせて…」
アスランの乗るオーブ軍の旗艦。その格納庫のメラサメに乗るためのタラップでルナマリアは自らの妹とにらみ合っていた。
「行かせない。シンの所には……アスランの元にいれば何不自由なく生きていける……私、お姉ちゃんがあの男の所に行って不幸になるのは……」
不幸……飼い殺しよりかはマシだ。と感情が訴えている。あの日……カガリさんが死んだあの日シンは、……
「愛しているのよ。」
「傷をなめあっているだけじゃない!!」
メイリンが声を荒げる。確かにそうだろう。自分でもそう思う。けど、
「退きなさい。でないと……撃つわ。」
カチャリとルナマリアは銃を抜く。その目は本気であり、メイリンは萎縮する。が両手を広げルナマリアを睨みつける。
「お姉ちゃんがシンと一緒にいても、幸せにはなれないわ!!カガリさんの事で、ッ!!一生悲しい思いをしなければッ!!」
その後は銃声がかき消した。
「頭を狙った」……さようならメイリン。メイリンは銃弾で飛び上がり回転しながらタラップにうつ伏せに倒れる。血が床をぬらしてゆく中その上をルナマリアは歩いてわたりムラサメで出撃する。
「……ごめんね…私もすぐ後を追うから……」
「うぅ……」
メイリンはタラップの手すりを使い立ち上がる。「肩」からは出血している。銃弾は……残っているみたいだ。
「お姉ちゃん……」
騒ぎを聞き駆けつけた整備班がメイリンに声をかける。
ルナマリアが出撃した頃、戦場は混沌を極めていた。そして自由の使者が舞い降りる。
「落ちやがれ!!」
「ウザイ、ウザイ、ウザイ、ウザーイ!!」
「滅殺!!」
「……確かにな。貴様達は少し煩い。」
「アィルカ、ENは!?」
空中で交錯する五機のMS。シンとアィルカは的確にダメージを与えつつ、三機のスローネを翻弄する。その姿は、かつてのフリーダムとジャスティスを彷彿とさせる。対するスローネは仲間割れまで起こしながら攻撃を仕掛ける。
最初こそ混乱したが、どちらかが二機を相手にしもう片方を一対一に持ち込めば苦戦させられる程ではないと気付いてからは長期戦の形に収まった。フェヌエルの方は無事なのか……
298 :
00の人:2009/01/26(月) 01:14:50 ID:???
「君は!!もう止めるんだ!!」
「私もそうしたいがな。止まったら撃つだろう?」
「君は……僕に撃たせないでッ!!」
「ぶっちゃけ撃つ気まんまんか……そうまでして私も討ちたいか?キラ・ヤマトくん。」
超高速でドラグーンがシュバイツァーを集中攻撃する。レイは刺突とビーム両方を瞬間的な加速で回避し続ける。
「君が……君がラクスの邪魔をするから…」
「大層な理由だな。そうやって父と兄も殺したのか?」
「違う!!」
フリーダムの腹部からビームが放たれる。続いてサーベルを引き抜くフリーダム。レイは体の限界が近いのを察し、反撃に転じる。
「違わないさ!何も!!」
「君は!!ラウ・ル・クルーゼ!?」
「私は『レイ・ザ・バレル』。貴方は悲しい男だな。」
フリーダムに向け大量の弾丸を見舞う。命中。装甲に傷はない、当たり前だがPS装甲に対して実弾は無意味だ。が衝撃はパイロットと機体を襲う。
「貴方は、そうやって生きていけば良い!!」
口の端から血が流れ出す。口の中が苦い。APSを起動させフリーダムに勢い良く叩きつける。既に機体も私もレッドゾーンだ……
舞散る火花。ガリガリとPS装甲を斬り刻む。
「うわああああ!!」
キラ・ヤマトの悲鳴と共にSEEDが覚醒する。その動きに対抗できるほどレイとその機体は万全ではなかった。
がしゃりと頭部を掴むフリーダム。その衝撃により今度はレイが呻き、腹部を抑える、そのまま吐血。レイはモニターに突っ伏し、動かなくなる。そしてビームサーベルがコントロールを失ったシュバイツァーに向け……
アィルカ(シン)「やぁめろ゛ぉおおお!!(止めろぉおおお)」
スローネを撤退させたアィルカ達が目にしたのはボロボロのシグーを掴むフリーダム。シンはとっさに、アィルカは本能でフリーダムに向け射撃を行う。
アィルカ「はぁぁあああ!!」
シュバイツァーを離し回避したフリーダムに向けショーティを乱射するアィルカ。
「この動き……君は……僕!?」
「貴様ぁ!!貴様は、俺から全てを奪うのか!!」
「大丈夫か!?レイ!!……レイ!?」
モニターには苦しげに血まみれのレイが映る。なんとか自力でヘルメットを外したのだろう。パイロットスーツの上に赤い血がべっとりと着いている。
「やぁ、助かったよ。ダーリン(笑)」
苦しげに吐き出した強がり。だが、痛々しさは変わらない。
「フェヌエルへ連れて行く。大丈夫か?」
299 :
00の人:2009/01/26(月) 01:18:16 ID:???
「シン、お前…超KYだな……」
「馬鹿やろう……こんな時にもとぼけてる場合か……」
シンは機体を揺らさぬようにフェヌエルに着艦する。
「輸血をしながら医務室に連れて行く。着いたら直ぐに再生治療装置に入れるぞ。良いな?」
「お願いします。」
イアンはシンに短く説明し担架を押してゆく。シンもそれを手伝いながら一緒について行く。
アレルヤにはコクピットに残って貰った。シンはコクピットから引きずり出したレイを思い出す。……驚くほど彼女は軽かった。コクピットを見れば大量の血がこびり付いており……
「吐いた……」とレイは言っていたが、量がおかしい。あの機体の対G装置は最新の物を積み込んでいるが殺しきれない。らしいが、にしても量がおかしい。その時シンはある答えに辿り着いた。
「俺は生まれつき、テロメアが短いんだ。」
シンは確信した。
「レイ……まさか……」
レイは蒼白な顔で笑っていた。
おしまい。
感想、意見、指摘、等あったらお願いします。
乙、やはりコーラさんは無事だったかw
後で「本当に死んだと思ったんだからな!!」と泣きながら殴られるんだろうかw
バルディオス投下します
きょうから話のサブタイトル変わります
『憎しみの砂漠』
〜春島基地 工場〜
夕方になってもせわしなく工作機械やクレーンが走り回っていた。
鉄材を吊り上げて動こうとするクレーンの傍らには、分解されたザクの足。
そこへ入ってきたのは焦った様子のシン。周りを見回し何かを探している。
「マリンはどこ!」
溶接機を使って鋼板を貼り付けていた男にシンが尋ねる。
「はぁ?なんだって」
けたたましい機械音に遮られたか、溶接面で顔を隠した男は聞き返す。
「マリンはどこだ!って聞いてんです!」
溶接機が止まり、男が溶接面を顔から外す。
「俺に何か用か?」
特徴のある青いロングヘアが顔をのぞかせて、シンは驚いた。同時に不機嫌な顔になる。
「困るんだよ、勝手に工場の仕事をやられては。」
「そんな事言ったってお前、人手が足りてないんだろ。見ろ、あの白いメカだって、もう一息だ」
先の出動で2台の白いザクは酷使を極めた。そこで2台とも分解し、使える部品で1台を組んでしまおうというのである。
いまマリンが指差す先には、左足だけがフレームむき出しになったザクが直立している。工程は残り1割ほどか。
「あんたらは、保護観察という扱いになってるんだから・・・」
「なら、大人しく部屋に戻るか。あいつらも連れ戻してくる」
「あの2人も?」
「タダ飯食わせてもらうわけにはいかない、ってな。3人で取り掛かったから、バルディオスの調整はもう終わってるぞ」
「終わった、って・・・」
滑走路のバルディオスは、先の出動でビームを受けた傷もまだそのままに、仰向けに寝かされている。
畑違いの技術の塊とおぼしきこの巨大な物体をどういじればいいのか、とシンは考えをめぐらせていた所であったものを。
「反動エンジンの調整手順は、じきにここの連中に教えておくさ。」
言ったそばから後ろを振り返らず“バイバイ”のそぶりで手を振りつつ工場を出ようとするマリン、
それを慌てて呼び止めようとするシン。
「じゃあ、もうあいつは動くのかよ!」
「今度は最大出力で動けるぞ、じゃあな」
「おい、だから待てって!」
〜滑走路〜
バルディオスの右脇腹に当たる箇所。この部分にのみ溶接機のスパークが輝いている。
溶接面を取り去った雷太とオリバーが呼び声に気づいて振り向いた。
「2人とも引き上げようぜ。」
マリンからの意外な提案は雷太とオリバーを不満げな顔にする。
「なんでぇ、もうちょっとでおしまいだってのに。」
「内部がむき出しになってるのはここだけだ。あり合わせの鉄板を貼り付けてるだけだがな。」
シンが続いてお小言。基地と船の管理者になって以来、こういう小言を言うのがシンの日課になりつつある。
「何かをやりたいってのはわかるんだが、少し大人しくしてくれ。」
「どういうこったぃ」
「素性のわからない人の扱いが、そんな簡単に変わるはずないだろ、あくまで建前上は」
シンの小言に、マリンが皮肉めいた言葉で返す。
「シン、ハッキリ言ったな。本音はこんなもんか」
「すまん」
「まあ、気にするな。だがこいつの完全修理も考えたほうがいいぞ。
こないだのヤツがまた来るんじゃないか?」
「そんな事は、あいつらは全員・・・・!」
シンが言葉を途中まで発して思いとどまった。それ以降は喉の奥に引っかかったまま封じ込めてしまう。
「すまん、何でもない」
この時彼が思い出したのは、最初にミネルバ2世と交信してきた、横柄な態度の士官である。
〜春島基地 第2ドック〜
「ちょうどよかった!ちょっと手伝ってもらえません?」
メイリンに呼び止められて3人がドック入り口の前で立ち止まった。
雷太とオリバーがマリンの背中をいきなり押し出した。2人ともニヤッとした表情で。
「へへッ、行ってこいよ“ハンサムさん”」
「俺たちゃ先に帰って着替えてるぜ」
「お前らなぁ・・・すまん、行こう」
一瞬口をへの字に曲げたマリンがメイリンに付いて倉庫へと向かった。
照明がまだ生きている第2ドック、ここは実質上はただの倉庫として使われている。
ドック内に入ったマリンは倉庫の中身に目を奪われた。そこには整然と並べられた機械。
「組み立て途中のメカ・・・」
「戦時中に放棄されたモビルスーツとか、そんなんです。ここは忘れられた島なんで」
「忘れられた島?」
「戦争からも復興からも取り残されて、ここはもぬけの殻になったんですよ。基地だけが残されて」
「それじゃあ、この島のスタッフは?」
「戦争が終わって、仕事がない人たちが集まったんですよ。あとはココにあるものを使えるようにして・・・」
「なるほど。それが巡視船の正体か」
「ここを通る船の面倒を見て、船主から報酬をもらうのが仕事なんです。
この辺は政府もあまり機能してないから・・・コレなんですけど」
メイリンが取り出したのは何かの小さな部品。
「無線装置の基盤じゃないか」
「これを、こっちから、取り外したかったんですけど・・・」
身振り手振りで、予備の部品が付いている機材を指差していく。
「ピンが硬くって・・・!!」
手袋越しに右手同士が触れたのを感じてメイリンの手が止まる。
「どいてみろ、こいつは・・・・よしッ」
右手に残る感触を左手で確かめているメイリンに、取り外された部品が手渡される。
「こんなのもよくいじってたんですか?」
「フィクサーに入る前は研究生だったよ。じゃ、俺はもう帰る」
そっけない態度に面食らったメイリンを残して、マリンは勝手に歩き去っていく。
「ま、待ってくださいよ!」
「俺とつるんでるとシンに何か言われるぞ、じゃあな」
すっかり遠くなってしまったマリンに呼びかける。
「今度聞かせてください!学生のときの話!」
立ち止まって振り返るマリンがメイリン同様の大きな声で聞き返す。
「どうせ聞いても信じないだろ!おとぎ話みたいに聞こえるぞ!」
「いいですよー!」
今日の分は投下終了
非ガンダム系キャラとガンダム系キャラにフラグっぽいものをちらつかせていいものか
ちょっと迷いました
投下作者様、皆様乙です。
自分も投下させていただきます。
第5話 夢と現実
「ようこそ。歌姫の騎士団へ」
平和…戦争の無い世界を目指し、決めた名前…。
小惑星資源発掘基地を改造した、その場所に招き入れるラクス。
激戦を繰り広げ、ここまで辿り着いたアークエンジェルのクルーはようやく落ち着いたといった形で、降りてくる。
アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスとオーブ首長国連邦カガリ・ユラ・アスハ、キラ・ヤマト、アスラン・ザラを出迎えるラクスとスザク。
「こうして再び会うことになるとは思いませんでした」
「それは私も同じことですわ。キラもアスランも…剣を交えることなくこうして一緒に姿を見せてくれたことを……大変嬉しく思います」
ラクスはキラとアスランが、自分の願った通りに復讐の連鎖を止めてくれたことに、自分が1つの成果を導き出せたと感じていた。
そう、復讐の連鎖、暴力の応酬は止めることができる。
それは、1人1人の努力によるものだ。
「…初めまして、枢木スザクといいます」
スザクは、キラとアスランの前に姿を現し、
ラクスが進めた、ブリタニア軍にいたときの、騎士爵を任命させられたときの派手な白い正装で挨拶をする。
「君が…」
噂でしか聞いたことがなかった…ラクスの護衛を担当する騎士。
そのMSの操縦技術と、系統不明な、MSはザフトのありとあらゆるMSが歯が立たないという。
「よろしくね、スザク君」
キラとスザクは笑顔で握手する。
どちらも、あんまり人に対して敵意を向ける人間ではないのだろうか、アスランは、この2人なら仲良くなれそうだなと感じた。
「こちらこそ、今までラクスを守ってくれてありがとう。その類稀な戦闘技術…俺にも今度是非見せて欲しい」
「そんな…僕は、まだまだ宇宙戦闘においては素人で、それに機体におけるバックアップもかなりあるから……」
謙遜するスザクの背中から顔を出すロイドと申し訳なさそうに頭を下げるセシル。
「はぁ〜〜い!その機体を設計しましたロイド・アスプルンドだよぉ〜〜!」
「せ、セシル・グルーミーです。どうぞよろしくお願いします」
キラはそんな2人に対しても笑顔で挨拶を交わすが、アスランは逆にますます怪しく感じてくる。
1人の女性はまともだが、まず機体が系統不明のオリジナル機体、そして彼らがコーディネイターなのかどうか不明であること…。
なによりも、この博士は普通ではないことは明らかだ。
「なーにー、ジロジロ見ちゃってぇ〜僕に気があるのかなぁ?」
突然顔を近づけてくるロイド。
「バっ!な、なにをいっているんですか!?あなたは?」
「アハハ、冗談だよ冗談、よろしくねぇ〜〜」
アスランは本当にこんな人たちと一緒にやっていけるのか、凄く不安になりだしていた。
エターナルにて、今後の方針決めていく話合いが始まる。
ラクスとカガリ、マリューの代表者によって始められる。みんなの意見も問いたいところだが、
そんなことをすれば、人数が多くて混乱するだけだ。
別室にて、その会議のことはカメラで中継するということとなった。
怯えるアスランを笑うキラとスザクがいる中…3人が席につく。
「私達の、想いはひとつだと思ってここにいると、私は考えています。
この無益な争いを終わらせるため、苦しむ人々を救うためだと……」
「…それに関しては同意します、ラクスさん。ですが…」
「あぁ、平和を私達が願ったところでそれを快く思わない人間もいる」
マリューとカガリは実際にそれをイヤというほど経験をしてきた。
勝利のために、簡単に人の命を切り捨てることができるものたちのことを。
「彼らが存在する限り、戦争はなくならない!連合…いや、大西洋連邦は止めなくては、そのために…私の父は!」
ラクスは、うつむく。
復讐の連鎖は、ここにも生まれている。いや、どこにかしこにも存在している。
だけど、それが戦いを生み、戦いにと私達を走らせる。
「私は、戦闘を望みません」
ラクスの言葉にマリューとカガリはラクスを見る。その言葉に驚いたのは別室で話を聞いていたアスラン。
キラとスザクは黙ってラクスの言葉を聞く。
ラクスは強い気持ちでカガリとマリューの2人を見る。
「私は、そういった戦いの無い国をつくろうと考えています。そして大々的に宣伝します。
そこではコーディネイターやナチュラルも差別無く過ごすことができる場所。
戦争に疲れた人たちは誰であれ招き入れます。私達が今必要なのは希望だと思います。
私達は対立する二つの種族は憎しみ合うことなく、仲良くなれるということを見せ付けるべきだと思うんです」
その、あまりにも突拍子の無い言葉の連続に、なんといっていいかわからないマリュー。
カガリは机に手をおき
「そんな生易しい夢のような話ができると思っているのか!?オーブがそうだった、
コーディネイターとナチュラル、その垣根を越えた優しい国だった。
それを奴らは、奴らは破壊したんだ!」
カガリの大きな声をたいしてもラクスは、譲らない。
「……だからといって、その復讐のために連合を討つというのでは彼らと同じです。
それに、今の戦力と、さらなるMSの量産を行い、国を防衛する部隊を作ります。
あくまで、それは防衛部隊ですから、攻めることはしません。
私達が、国の1つに纏まった国の目標を示せば、二つの国も世論がかわって……
きっと私達に賛同してくださいますわ」
カガリはそのラクスの言葉を聞き、話にならないといった感じで席について腕を組む。
ラクスにとって、それは大真面目な考えであった。
戦争だけが解決手段ではない。そんなことをすれば、結局は連合軍やザフトと同じになってしまう。
それではいけないのだ。
復讐の連鎖、暴力の応酬を止めるには、それ以外の方法を求めなくてはいけない。
「……スザク君、彼女の考えって」
セシルは、スザクの背中を見ながら、問いかける。
ロイドもセシルも、そしてスザクもなんとなくわかっていた。
ラクスはかつてスザクを認めたブリタニア皇女であるユーフェミアに似ている。
この考えも、特区日本と考え方が似ている。
「……ユフィも、きっと同じことを言うでしょうね……」
「だからかい?彼女を守りたかったのは?」
ロイドはスザクを見つめながら聞く。そんなロイドに対してスザクは首を横に振り
「いいえ。僕は…ラクス・クラインとして彼女を見ています」
「……だったら、いいんだけどね。変に彼女の面影を見るとかえって辛くなるからさぁ〜」
ロイドはそういって再びテレビ画面を見る。
ユフィ……。
自分の世界では、彼女はもういない。
ゼロ=ルルーシュのギアスにより、彼女は錯乱し、そして殺された。
彼女は平和を求めた。自分はなにも出来ないかもしれないと思いながらも、それでも必死になって……。
ラクス、君も…彼女と同じく、平和のための険しい道を歩もうというのかい?
「…ラクスさん、あなたのおっしゃりたいことはわかります。
戦いをしながら、平和を訴えてしまうことは矛盾でしょう。
ですが、今の現状を考えてみてください。私達には満足な装備も補給も出来ない。
さらには、連合は私達を…ザフトは貴方方をこのまま見逃すはずは無いでしょう。
きっと追撃してきます。そのときに、彼らは私達が国を作り、そして平和を訴えたところで、
おそらく、なんの迷いもなく武器を撃って来るでしょう。
私やカガリさんは、たくさんの人員の命を預かっている身です。
撃たれたら撃てといわざるを得ない」
マリューは、ラクスに対して落ち着いた言葉で言う。
ラクスはマリューの言葉に言い返そうとした。だが、マリューは言葉を続ける。
「……ラクスさん、私達は追撃者を排除し、戦闘の火種となるものと戦います。
誤解なさらないでください。私達もあなたと同じ…、戦争をなくしたい。
ただ、そのためには…戦うことも必要なんです」
「……」
「少し、休憩にしよう。お互い考えを纏めるためにも」
カガリがラクスの沈んだ顔を見て提案する。ラクスは、席をたち部屋を出ていく。
スザクは彼女の元にいこうとしたが、キラが止める。
「……きっと、ラクスもわかっているはずだから。それに、1人で考える時間もあるし」
「…はい」
キラに言われて、スザクは頷き席に着く。
……。
ラクスの言葉は『理想』なんだ。
それは悪いことではない、素晴らしい目的であり、いつかは叶えなくてはいけない事。
だが、それをするには、今という世界はあまりにも狭く息苦しい。ラクスも、今それを痛感していることだろう。
窓から宇宙を眺める……。
ラクスは、壁にもたれかかりながら、自分の考えと周りの考えのギャップに戸惑っていた。
戦いでは何も見出せない。
復讐と暴力だけが永遠と続いていく。なんでそれがわからないだろうか。
だけど……マリューさんの言うこともわかる。
でも、それは防衛という手段を持ってどうにかすれば……。
そんなに人間が信用できないの?
頭の中に様々な考えが浮かんでは消えていく。
「…私は、戦いたくない。戦い、相手を傷つければそれは……
その方の大切な人を怒らせ、憎しみが生まれていく……それではいけないのです」
『……文句を言うものがみんな、いなくなればいいのに』
ラクスはその突然聞こえた声に驚いて後ろを振り返る。
だが、そこには誰もいない。気配さえ感じなかった。
今のは一体……幻聴?疲れているのかしら。
額を抑えるラクス…そんな中、突如として艦内に警告音が鳴り響く。
ラクスは立ち上がりエターナルの艦橋にと移動する。
エターナルの艦橋には既にバルドフェルドやスザクが待機している。
「アークエンジェル、クサナギも出港準備完了です」
「どこの軍がここの場所を?」
ラクスは、前面の画面に敵の姿を映し出す。
そこに映し出されたものを見てロイドとスザク、セシルは目を見開く。
それはアヴァロンU……ロイドたちが乗ってきた新造戦艦であり絶対守護領域を装備した強力な戦艦である。
「ぼ、僕の艦なのにぃ!!」
ロイドは画面を指差して大声を上げる。そんなロイドを抑えるセシル。
「スザクたちの?」
ラクスはスザクやロイドたちを見る。
すぐに、他の艦であるアークエンジェルとクサナギから通信が入る。
『あれはザフトの艦で間違いないんですか?』
『敵であるというなら、私達も迎撃に』
ラクスは戸惑う。平和を訴えるためには、自らが手を出すわけには行かない。
だからといって、このままでは敵に…。
強烈な震動が、艦内に響く。
「撃ってきた!?」
バルドフェルドは、こちらに接近するその艦を見据える。
ラクスはどうしていいのかわからない。
このまま戦いを続けることは、理想を裏切ることになる。そんなことは…
自分は、戦いたくない…戦えばみんなが憎まれる。そんなことは出来ない。
『だったら、それを知っている人間をみんなあなたの言うことを聞かしてしまえば?』
まただ。
さっきから声が聞こえる。
ラクスが辺りを見回したところで誰もいない。
さらには、自分以外どうやら誰も聞こえていないようだ。
なぜ、こんなときに…ラクスは人にわからないように、頭を抑えながら…冷静に考える。
ここで動揺すればスザクやロイド、セシルに迷惑がかかる。自分はクイーンなのだ。
人を先導するものだ。
そんな困惑するラクスを見てスザクは、前に出る。
「各艦を出撃させてください。以後は迎撃体勢に……」
「スザク!?何を勝手に…」
ラクスはスザクの言葉に思わず声をあげる。
だがスザクは動揺せずラクスを見る。
「後で処罰等は甘んじて受けます。……これは僕の独断です。
ラクスの命令ではないことを承知ください」
「……スザク」
それは、スザクの心遣い…。
理想を掲げるものからの口からは決して戦うことをむける言葉を出してはいけない。
ラクスの気持ちを察したスザクの思いやりである。
ラクスは自分の情けなさとスザクの優しさに、何も言えなくなってしまう。
「ロイドさん、セシルさん…以後の僕のオペレーターをお願いします」
「…わかったよ。くれぐれも気をつけるんだ、あのアヴァロンには……」
「はい!」
スザクがブリッジを出て行こうとする直前、ラクスは何かを告げなくてはいけないと、
スザクのほうをむき、声をあげる。
「スザク!……頑張って」
「…イエス・ユア・マジェスティ…」
スザクはラクスの方をむくことなく、それだけ告げてブリッジを出て行く。
ロイドとセシルは、画面に映るアヴァロンを見ながら、
たった一隻でここまで追撃をかけるものたちが果たして誰なのかを考えていた。
アヴァロンUでは、小惑星地帯から姿を現す戦艦たちを確認していた。
ブリッジではミサイル攻撃の指示が出されており、さらに小惑星地帯に目掛けミサイルを撃ち続けている。
戦闘ブリッジに立つ男は、小惑星地帯から現れる戦艦を見て口元を歪ませる。
再び、このような戦場に赴けるとは思えなかったのだ…当然といえば当然だろう。
「反逆者、枢木スザク…ここで引導を渡してくれる」
それこそは、かつてシャルル・ジ・ブリタニアのナイトオブワンであった男、ビスマルク・ヴァルトシュタイン。
その片目を赤く輝かせ、戦闘ブリッジに立つ。
アヴァロンUからは、複数のMSが出撃を始めていた。
投下終了です。
本編では酷い有様だったラウンズを活躍させようということで。
勿論、彼らがこの世界にきた理由はあります。
スザクとラウンズの降臨理由が本編に大きく関わってくるはず…です。
ノネットさんが来てるか来てないかそれが問題だ
え?
以前からこのSSにだけ設定の不備やスレ違いへの指摘すら許さないすっごく痛い信者が付いてるよね
予約が入っていないようなので投下します。
第6話 復讐の連鎖
ミサイル攻撃を続け、小惑星地帯を攻撃、敵をあぶりだそうと続けるアヴァロンU。
それに耐えかね、アークエンジェル、そしてクサナギが姿を現す。
敵はザフトである、自分達にとっても敵であることは変わりない。
ここで逃亡するわけには行かない。
アークエンジェルのマリューはそう判断を下す。
「フリーダムとジャスティスを順次出撃させて!バスターとストライクは、艦の防衛に。クサナギにも連絡を」
「了解!フリーダム、ジャスティス、発進…どうぞ!」
マリューの指示の元、ミリアリアがオペレーターとして仕事をこなす。
その言葉と供に、アークエンジェルから
キラの操る白と青色の機体色であるフリーダムと、赤色を主体とするアスランの操るジャスティスが出撃する。
アヴァロンUからのミサイル攻撃を防ごうと、敵のミサイルをサーベルで撃墜していく。
アークエンジェルの防御に回ったディアッカ・エルスマンのバスター、ムウ・ラ・フラガのストライクもライフルでミサイルを撃ち落としていく。
爆音と閃光が小惑星地帯を照らしていく。
その閃光の最中、ストライクに目掛け突出してくるもの…。
それはランスロットに似ている機体。だが、頭部など形が異なっている。
キラはサーベルでそれを受け止める。
すぐにライフルで攻撃を繰り出そうとするが、その姿はすぐに消える。
キラは後退しながら、こちらにビームライフルを撃つ、その機体を追撃し捕らえようとするが、なかなか照準が定まらない。
「くっ!」
キラはライフルでの攻撃を諦め、サーベルで直接戦闘に切り替える。
相手も、それを察知したのか、ビームサーベルではないランサーに切り替え、ストライクとぶつかり合う。
「このパイロット……今までの人たちとは違う!」
『…我らラウンズに、ここまで迫るものが、他にもいるとは』
キラと剣を交える、その機体にのる女は、歯を食いしばりながら、機敏な動きでストライクを撹乱する。
その二機のやりとりを見ていた、エターナルにいるロイドは目を見開く。
キラのフリーダムと戦う機体は、見たことのあったものであった。
それも、それはブリタニアにて、今現在は存在しえないもの…。
「あれは……まさか、ラウンズ専用機!?」
「え、えぇ…おそらくは、しかもあのカラーリングは…『ナイトオブトゥエルブ』モニカ・クルフェスフキーです」
ラクスは、その2人のやり取りがいまいち、つかめないが、相手が強敵だということだけは理解できた。
キラと戦闘を行う、その黄緑色の新型の機体にアスランは、敵がなんなのかわからない。
あのような機体…連合にもザフトにもなかったはずだ。
系統としては、スザクの機体と似通っているが。
『お前の相手は、私だ!』
「なに!?」
油断したアスランに襲い掛かる新たな機体。それもまた、自分の知らないものである。
黒い機体色をした重装甲な機体。
両腕にランサーを装備しており、手首を回転させランサーをまるでドリルのようにしている。
アスランはビームサーベルで受け止めようとするが、
その回転の勢いに、受け止めきれずに距離をとるアスラン。
『フフ……、我がナイトオブフォー、ドロテアの愛機、アグラヴェインの力、ここで見せてくれる!』
「お前達のようなものに、俺達の未来を潰させはしない!」
ライフルを撃ち込み、敵の動きを止めようとするアスランだが、そのライフルさえも回転したランサーを前に弾かれる。
アスランは迫るアグラヴェインの前に防戦一方となる。
そんな中、猛スピードで迫る機体。
『きたか……枢木スザク』
ドロテアは、アスランから距離をとって、目の前に現れるその白き、自分をかつて容易く倒したその機体を睨みつける。
「貴方達がどうしてここに!?」
スザクは、かつて知った顔のものであり、この異世界にそして死に絶えたものが眼前に現れたことに衝撃を覚える。
そんなスザクの驚きを嘲笑うかのようにドロテアは剣をスザクに向ける。
『お前を倒すために、地獄から蘇った。そういえばお前にはわかりやすいだろう。
以前は、機体が無く後れを取ったが、今日はそうはいかない。
お前を倒し、失墜したラウンズの栄光を取り戻す!』
ナイトオブフォーである、ドロテアの操るアグラヴェインは再び二刀流のランサーを高速回転させ、
憎しみをこめてスザクに襲い掛かる。
スザクはそれをアスランと同じようにハドロンライフルを撃つ。
それをかわすドロテア。
『はああぁあぁぁぁ!!』
「うおおぉぉぉ!!」
スザクは、ドロテアの高速回転を行なうランサーの突きをサーベルで向きを変えさせたことで、姿勢を崩す。
目の前で、完全に露になるアグラヴェインの胴体部分。
止めを刺すことはできた。
だが、そこでスザクの脳裏に蘇るラクスの言葉。
『戦い、人を殺せば…復讐の連鎖が生まれる』
出来なかった。
ラクスの前でラクスの理想が崩すことは……。
スザクは、アグラヴェインを素手で殴る。
それだけでも、機体にはかなりの衝撃が加わる。
勢い良く殴られたアグラヴェインは、後退する。
『こ、この私が……情けをかけられたというのか!』
それは撃墜されると感じていたからこそ、思う屈辱。
コクピットでドロテアは拳を壁に叩きつける。
さらには、撤退命令…。
ドロテアの機体に近づくモニカ。
『…ドロテアお姉さま。連合軍の艦が近づいています。ここは撤退を』
『わかった。引き上げる……この屈辱忘れはしないぞ、枢木スザク!』
二機はアヴァロンUに引き上げ、アヴァロンUも離脱していく。
その余りにも早い退却に、キラとアスランも不思議に思う。
だが、マリューにはそれがなぜかわかっていた。
連合軍の艦が、ここでの戦闘に気がつき、近づいていたのである。
「連合軍の戦艦接近、これはっ!アークエンジェルの同型艦です!」
ミリアリアの報告を聞き、驚くマリュー・ラミアス。
先ほどの戦闘に続いて再び、脅威が現れるとは…。
その新たな連邦軍の接近は、クサナギ、エターナルにも報告が入っていた。
連戦となると、さすがにエネルギー供給などが間に合わない。
ここは、撤退したほうがいいだろう。
「全部隊、速やかに撤退、MSを回収し現宙域から離脱します」
『…クサナギもアークエンジェルに続く』
エターナルにいるラクスは、自分の理想とは程遠い現実に、何も言えなくなっていた。
戦いは続く。
どうすれば、みんながわかってくれるのだろうか。
いいえ、もうそれには時間が無い。
戦いは戦いを呼び、悲しみは悲しみだけを生み出していく。
「…お姫様、あなたが指示を出す番ですよ?」
見ていたロイドが、戦場を呆然と見ていたラクスに問いかける。
ラクスは自分の思い描いた世界に霧がかかり始めていたことを知った。
「……え、エターナルも……両艦に、続いて……回収後、宙域を、り、離脱してください」
バルドフェルドがそれを聞き、エターナルも離脱する。
アヴァロンUでは、その撤退の様子をモニターにて眺めていた。
ブリッジでは、ビスマルクと、今回の戦闘には参加していなかったナイトオブテンである、
オレンジ髪のルキアーノ・ブラッドリーが、頭に両手を回しにやにやと笑っている。
「……相変わらず、偽善者気取りかよ。あいつは」
ビスマルクは、そんなルキアーノを横目で見ながら再び正面の画面を見る。
「強さに関しては以前と変わらない。
実力を出し切った我々であっても勝てるかどうかは難しいところだな」
「随分と弱気ですね。それとも一度敗れたことで自身が喪失してしまいましたか?」
ルキアーノはビスマルクであっても決して引かぬ態度で皮肉る。
ビスマルクはそんなルキアーノを相手にはしない。
「我々の目的は…この世界における異邦の存在を抹消すること。
それ以外には興味はない。戦闘したとしてもそれは、あくまで足止めにしなくてはいけない。それを忘れるな」
「…わかってますってば。そうじゃなきゃ…折角生き返った俺達の存在も消されちまうってことでしょう?」
ルキアーノはそれでも楽しそうに笑っている。
再び戦闘を行い、さらには一度相手をしたかったスザクと戦うことができるのだ。
一体どのようにして彼を追い詰めようかを考えている。
ビスマルクはこのような、事の大きさも分からないような存在までもをこの世界に呼び寄せたことに対して不満が残る。
実際自分がなぜこの世界に呼び出されたかははっきりとはわかっていない。
ただ『集合無意識』と呼ばれる皇帝陛下が言った『神』に等しい存在により、この世界に送り込まれたのは確かなのだ。
自分の復讐を成し遂げるためにこの世界に送られたとは考えにくい。
「……しかし、今はこのものであっても利用するしかない。全ては、歴史の修正。
シャルル皇帝陛下の理想を実現させるため」
ビスマルクは目を閉じて、改めて自分の気持ちを確認し、とりあえずの目的であるスザクを倒すことを誓う。
エターナルに戻ってきたスザクはロイドとセシルに話を聞くことになる。
今、現在…連合軍との距離とは一定を保ったまま行動している。
すぐに補給作業を行い、迎え撃つか、それともこのまま逃げ切るかを考えなくてはいけない。
だが、それと同じく、今回戦ったアヴァロンUを持つラウンズの亡霊たちのことがスザクにとっては気がかりだ。
「……やはり、そうでしたか」
スザクは険しい表情でロイドたちから話を聞く。
「おそらく、あの艦にあった部品やら資料を見て機体を作ったんだろうね。
それか…僕らと同じく飛ばされてきたか」
「……確認したところ、今回の戦闘に参加していたのは戦死したラウンズ、ナイトオブフォー…ドロメア、ナイトオブトゥエルブのモニカの両名です」
スザクは、自分達の世界の人間達の、この世界に対する介入が不思議であった。
それは最初から考えていたことでもある。
「…僕らがこの世界に飛ばされた理由はおそらく、ルルーシュとC.C.と一緒に誓った『人類の未来』が原因だと思います。
ようするに、この世界で、『人類の未来』が損なわれることが起きそうになっているということです」
「えぇ、それはこのナチュラルとコーディネイターの種族をかけた戦争であると私は考えていたんだけど…」
セシルとロイドには、ルルーシュの家のメイドであり、
今現在、自分の世界でゼロの影武者を務めているであろう篠崎咲世子とともに『ゼロレクイエム』時に、
Cの世界の一件を伝えてある。
「……どうやら、それだけじゃないみたいだね。彼らがここにいる理由。ここに飛ばされた理由は僕達のとは別にあるのかもしれない」
ロイドは、悩みながら考える。スザクも一体自分達に何をさせようとしているのか、
それがわからない以上は、ただこのまま流れに乗ることしかできない。
「……ところで、ラクスは?」
今回の出来事で、かなり心に傷をつけているだろうスザクはそんな彼女に、言葉をかけてあげたかった。
彼女はまだ軍人になりきれていない。
それはそうだ。アークエンジェルにいたものたちと違って、ラクスはこの前までただの一般市民であり、アイドルとして活躍をしていたのだ。
戦いを現実に見せつけられ、そしてそれを指揮する立場にあたる彼女に対する期待は、計り知れないプレッシャーとなっているだろう。
「…今は自分の部屋で休んでいるみたいよ」
「機体の整備はやっておくから見てきてあげて」
「…わかりました」
スザクはロイドとセシルにお礼を言うとラクスの部屋に向かう。
ラクスの部屋は暗闇に包まれていた。そしてベットの上、膝を丸めて、震えている。
声が……声が聞こえるのだ。
さっきからずっと…。
『あなたの理想は、あなたの声じゃ届かない』
『あなたの求める世界は、訪れない。あなたは結局誰も救えない。お父様も…誰も』
「やめて!もう…やめてください!」
ラクスは声が聞こえないよう両手で耳を抑えるが、それでもなお声が聞こえてくる。まるですぐ隣から話しているようだ。
『……力を行使すればいいじゃない。みんなあなたのギアスで平伏せばいいわ。
そうすれば、誰も血を流さない。誰も死なない。理想の世界が出来上がるわ』
「そんなのは平和とは呼びません!偽りの平和、そんなものは……」
『だったら、あなたはどうするの?邪魔者を排除するの?パトリック・ザラのように…』
お父様が殺されたやり方で…だけど、それは元々自分の行動が原因。
人を恨むのは間違っている。私は、人を恨まない、人に復讐なんかしたくない。
「私は、私は……一緒になんかなりませんわ!戦うだけが解決策じゃないもの。話をして、聞いてもらえばわかってくれますわ!!」
『いいえ。わかってくれないわ。今日の戦いを見たでしょう?あなたを狙うものは、あなたの言葉なんか聞かない』
「あなたは…あなたは誰なんですか?どうして……私に付きまとうの?!」
ラクスは暗闇の中、顔を上げる。
ラクスの前にあるのは鏡……。
『私は……あなた。あなたの心……』
鏡に映るラクスは、そういって微笑んだ。
投下終了です。
精神的にはルルーシュと違い未熟なラクスにとってギアスの影響は大きく出ている
ということです。
なお、オリジナルのラウンズ専用機の名前はランスロットなどと同じく
『アーサー王伝説』からとりました。
さすがに、ラウンズが旧型量産期では…ということで。
遅くなりましたが、wikiまとめ毎回ありがとうございます。
また読んでくださっている方もありがとうございます。
ところでおまいらマナカナのどっちが好き?
ほくろのある方
今更だがラクスに違和感がありすぎ(ry
違和感と言えば、飛んでくるミサイルをサーベルで撃墜できるの?
ミサイルの速度による
334 :
00の人:2009/01/28(水) 00:58:22 ID:???
>>328 乙ー
>>332 相対速度さえあえば案外楽かもよ。真正面からだと、針管を外して斬るなんて芸当は不可能に近いから必然的に機体にぶつけるような形になるかな。
っても、その前にバルカンとかで撃ち落とす方が安全だけどさ。
台風怪獣バリケーンがオーブ首長国に現れたようです
そういやウルトラマンインパルスの続きも読みたいだがねぇ。
区切りどころかエピソードの途中で途切れちゃってて、
以来数年間ずっと待ってるんだが…
>>332 キラさんはビームさえも斬り払ってるので問題なしw
予告もないようなので投下します
第7話 狂気の胎動
「…アークエンジェルは、補給作業を完了。反転し、敵戦艦に攻撃を迎撃するとのことです。姫様」
バルドフェルドの言葉を聞いたラクスは頷くと受話器を持ちアークエンジェルに連絡を行なう。
「ラクス・クラインです。敵に対する攻撃より、私は接触を図ろうと思いますわ」
そのラクスの言葉にスザクはラクスのほうを見る。
部屋内に迎えに行ったとき、ラクスは暗い部屋からでてきた。
その様子はどこか違っていた。表情は虚ろであり、かなり疲れた顔をしていた。
「それは重々承知しています。ですが、私達は同じ人間なのです。
話をして通じない相手ではないと思います。どうか……チャンスだけでも」
ラクスの言葉に、どうやらマリューはその話を受けたようだ。
アークエンジェルは、回頭し、連合軍の戦艦のほうを向く。
一定距離で相手にプレッシャーをかけていた連合軍の戦艦もまた、そのアークエンジェルの対峙する覚悟がわかったのだろう。
接近…、その姿を現すこととなる。
「あ、あれは!?」
スザクはその戦艦を見て驚く。
それは黒いアークエンジェル……。
「同型艦だね。同じ連合軍が作ったというのなら、ありえない話じゃないけど」
ロイドは落ち着いて分析する。
ということはアークエンジェルの武装と同じであるともいえる。
主砲のローエングリーン…見たことはないが、かなりの破壊力という事から、
それさえもつけているとなると厄介な相手であることは確かだ。
『……私は地球連合軍、ナタル・バジルールである。
貴艦、アークエンジェルには戦場からの離脱、任務の妨害などで本部に出頭命令が出ている。
直ちにこの命令に従ってもらいたい』
その人物は、ラクスは知らないがマリューやアークエンジェルの元副艦長であり、
その実直な性格で幾度と無くマリューと対立してきた。
だが、それは任務であって、決して仲が悪いわけではない。
マリューもナタルもそれはわかっていた。
時として、ナタルの厳しい采配が、窮地を救うことも幾度と無くあったわけだから…。
『……こちらはアークエンジェル、マリュー・ラミアスです。久しぶりね、ナタル』
アラスカ本部にての防衛任務についたマリューと違い、ナタルはアラスカ本部に到着後、
転属命令が出され、二番艦であるドミニオン艦長に就任することになる。
それは、ある1人の人間の意見でもあった。
『お久しぶりです、ラミアス艦長…。このような形でお会いすることになるとは思いませんでした』
『えぇ……そうね』
『お願いします!武装解除し我々と供に本部に来て下さい。助力ながら私も弁護させていただきます』
ナタルは自分でも驚くほど感情的になっているように感じた。
おかしな話だ。
アークエンジェルの搭乗員であったときは、そこまで一緒にいようとは思わなかったというのに…。
『ごめんなさい、ナタル。私は連合軍の体質、構造、理念…そのものに疑念を抱いているの。
私だけじゃないわ。連合に街を焼かれたオーブの人たちも一緒よ』
クサナギに乗るカガリもそのやりとりを眺めている。
『……おっしゃりたいことはわかります。ですが!軍というのは…』
『いいの、ナタル……本当にありがとう』
ナタルの優しさを感じてマリューは礼を告げる。
だが、ナタルはそれでも諦めたくない。
『……このドミニオンにはアークエンジェルの武装と同程度の力があります。
そして私は、かつてそこにいた。あなたの癖や指揮を知っている。
これでも戦うというのですか?』
『…それでも、自由と正義が、正しく行なわれるために、私達は私達の道を行く』
ナタルは、良く悪くも相変わらずだなと感じた。
そのナタルの背後では戦場では場違いともいえるスーツを着こんだ男がクスクスと笑い始める。
「アハハハ!艦長さん、お話はおしまいだよ。
さっさとあの目障りな不沈艦アークエンジェル、仕留めちゃってくださいよ。
こっちの兵士も戦いたくてうずうずしているんだからさ〜?」
ナタルは横目でその男…連合軍に資金提供を行なう軍需産業であり、
反コーディネイターの政治団体で、ブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルを見る。
ナタルは仕方が無く戦闘命令を行おうとした。
『なりません!!』
その言葉にマリューとラクスは発せられたエターナルのほうを見る。
エターナルにて立ち上がり声を荒げるラクス。
「貴方達は、かつて一緒に戦場を渡り合った戦友、お友達なのでしょう?
なぜ、戦う必要があるのですか?それが、軍隊としての立場だからでしょうか!?
ザフト、連合…そんな立場は必要ないはずです。あなたは、あなた……。
何の縛りも無い1人の人間のはずです。自分の気持ちに逆らってまで、
大切な人を撃つ必要がどこにあるのですか!?」
キラとアスランはフリーダムとジャスティスに乗り出撃の合図を待ちながら、そのラクスの言葉を聞いていた。
彼女は、あくまでも戦うことを拒み続けるのか…。
そして、自分達のように、友人で戦う悲劇を避けようというのか……。
アスランは拳を握り締める。
やはり…彼女は戦場に出る人間ではなかった。
このような優しさはかえって混乱を与えるだけだと…。
『…』
マリューとナタルの間に沈黙が流れる。
友人……戦場の無い場所で会うのならばきっとそうなるだろう。
だが、ここは戦場であり、お互い立場もある。
ならば、それに答えるのもまた友人としての責務。
…ナタル
ラミアス艦長…
『フリーダム、ジャスティス発進』
『第一戦闘配置、各MS部隊出撃、後続艦隊からも順次MSを出撃』
ラクスはその声に、席に崩れ落ちるように座る。
やはり……ダメなのだろうか?戦いは止められないのだろうか。
悲劇を繰り返すことだけは避けなくてはいけない。
これ以上、誰にも辛い思いをさせたくはない。そのためなら…。
『そのためなら……あなたにはこれがあるじゃない?』
一瞬、ラクスの目に赤い光が灯る。ラクスは頭を横に振る。
自分はギアスを使ってはいない。なぜ勝手に?
これも、彼女……私の心に宿り始めた黒き心の影響なのだろうか。
「ラクス?大丈夫かい?」
「は、はい…スザク、私は大丈夫です。スザクもアークエンジェルを助けに…。
出来ることなら、戦力を無力化し、命だけは助けるように…」
「わかった……」
ラクスの傍にいたかったスザクだが、この場は出撃するしかない。
同盟関係を結んでいる艦が戦っているというのに、自分たちだけ放ってみているわけには行かないのだから。
スザクがブリッジからでて、本日二度目の出撃の用意に取り掛かる。
ラクスは、頭に鳴り響く声を振り切るように頭を振る。
「エターナル前進、敵戦艦に接近し、注意をこちらに向けさせてください!」
「了解」
エターナルが前進することで、ドミニオンはアークエンジェルだけを攻撃することが出来なくなる。
ドミニオンから出撃した連合軍の強化人間(ブーステッドマン)の搭乗するカラミティ、フォビドゥン、レイダーは
キラのフリーダム、アスランのジャスティスと戦闘しており、ドミニオンの援護には回れない状況となっている。
ラクスは、親しいものが戦闘をし、傷つき合う姿は見たくはなかった。
よってそうさせないために、自らが楯となろうとしたのである。
「…なんなんですか?あのザフトの艦は…。こちらに特攻でもするんですかねぇ?」
目の前に近づいてくるそのエターナルにアズラエルは、不機嫌に吐き捨てる。
ナタルとしてもアークエンジェルを抑えなくてはいけないという気持ちから、エターナルを相手にする暇は無い。
だが、ブーステッドマンが抑えられている以上は…。
「…ローエングリーンスタンバイ!正面、エターナルに向け発射準備」
「アークエンジェルのためにとっておきたいところですが、仕方が無いでしょう。
平和は、ザフトがいなければ可能だっていうころを、身をもって示してもらいましょう。あのお姫様に」
アズラエルの言葉など耳を塞いでしまいたいところだが…ナタルは、ローエングリーンを発射態勢にしてエネルギーの収束を開始しようとした。
だが、そこでレーダーに映る機体を把握する。
「まさか!?」
それは、ローエングリーンを狙うランスロットの姿。
そう、スザクはこの状態では敵は主砲を撃つであろうことを予測していたのである。
これではローエングリーンは使えない。
量産型MSでは、新型で高い運動性を誇るランスロットを止めることはできないだろう。
「……このままではエターナルに突撃される。ドミニオンを後退させ、距離をとれ」
「なるほど…。アークエンジェルだけが脅威というわけではないようですね。
いい参考になりました。今は艦を撤退させ、再び距離を置いて追撃をかけましょう。次の攻撃可能予測場所を提示しておいて欲しいな、艦長さん」
アズラエルは、エターナルのラクス・クラインが思い切りのいい存在であることを認識した。
ただの夢想家であることに変わりは無いが。
「……了解しました」
ナタルは撤退信号をあげて、戦闘宙域から撤退する
マリューは、ドミニオンを眺めながらラクスの言葉を思い出す。
キラとアスランは、友人であり…そして分かり合えた。
自分たちにもそれが可能なのだうか。
だが相手は連合の艦長、それも軍人としての意識が強いナタルだ。
「……ドミニオンは撤退します」
エターナル、いや…ラクスの勇猛果敢、いや下手をすれば落とされていたかもしれない、その行動にロイドとセシルは内心かなり焦った。
それにしても…。
「…信頼しきっているのかな?躊躇も迷いも無いよね、ここの兵士たち」
「そういわれれば……」
ロイドの言葉にセシルは小声で答える。
ラクスはそんな2人のやり取りなど気がつくことなく、頭痛に悩まされていた。
『やっぱり……あなたの言っていることは夢』
『誰も救えない、誰も守れない』
『誰も…誰も……』
『あなたができる事は、力を使用すること……』
ラクスはこの後、再び体調不良の訴えで自分の部屋に戻ってしまう。
スザクは、そんな彼女を気遣いながら部屋まで見送った。
「ごめんなさい、スザク……迷惑ばかりかけてしまって、本当に…」
「いいんです。ラクスはラクスの最初の目的を守って頑張ればいい…」
「ありがとう、スザク…、あなたがいてくればければ私はどうなっていたか…」
ラクスにとってスザクと会話をしているときだけは、あの声を聞かずにすむ。
頭痛の和らぐのだ。どうせならずっと話をして欲しいと思う。
部屋のベットの上に倒れるラクス。
暗い部屋の中……耳を塞いで聞こえてくる声を無視する。
「ラクス!ラクスはどこだ!?」
それはアスランと彼を止めにきたカガリ・ユラ・アスハである。
「アスラン!落ち着け、お前が怒鳴ったところでどうこうなる問題じゃない!」
「そうはいかない、カガリ…。あんなことがいつまでも通りはしない。
俺達は平和を求めるために戦いをしてはいるが、全員にそれがわかりはしない。
時には暴力も許容されるということを、ラクスにはわかってもらわないといけない!」
我侭な子供の躾に親からの暴力というのは許容される。
それと同じことだとアスランは思っていた。ラクスのいっているのは甘やかしなのだと。
アスランはスザクの到着を待たずに、カガリとともにラクスの部屋にと到着する。
「ラクス!アスランだ、はいるぞ?」
「お、おい!アスラン!」
カガリの制止を振り切りアスランは部屋の中に入る。
そこは真っ暗だ。
「ラクス?いないのか?」
アスランは部屋の中にはいり、あたりを見回す。
カガリは扉で待ったまま、電気をつけようとスイッチを探す。
「どなたですか?」
カガリはその声がすぐ隣から聞こえたのに驚いて、思わず身体を後ろに下げる。
「ラクス?」
ラクスは、壁に寄りかかりながら立っておりうつむいている。
その表情はアスランが知っているラクスとは程遠い。
疲労も重なっているのだろうか…。
アスランは彼女が精神的に参っているのだろうと判断した。
「やっぱり、君には軍隊を指揮するなんて無理だ。
すぐにバルドフェルド隊長に連絡をして、君を……」
アスランはラクスに近寄り、彼女の状態を確認しようとした。
ラクスはそんなアスランの手を払いのけ、顔をあげる。
虚ろな表情の中、その瞳には赤い光があった。
「ら、ラクス?その目は…一体?」
アスランの目の中に赤き光が吸い込まれていく。
「うあぁ……」
突然声をあげ、その場にしゃがみこむアスラン。
カガリはなにがあったのかとアスランに駆け寄る。
「お、おい!お前…アスランに一体なにを!?」
カガリもまた、ラクスのほうを見る。そこでカガリは寒気を感じる。
ラクスは微笑んでいた。
それは平和の歌姫とは程遠い……。
悪魔の笑顔。
そしてその片方の瞳には赤き光が照らされている。
「ラクス!!」
スザクが兵士を連れて部屋にとやってくる。
丁度、アスランとカガリが部屋から出て行こうとしていたときだった。
「2人とも、用件は済んだのかい?」
こちらに乗船したときのアスランの憤慨振りから、トラブルでも起こったんじゃないかと思ったスザクだったが、
どうやらそういうことはなかったようだ。
スザクはラクスを見つめ、『大丈夫?』と問いかけるとラクスは優しい笑みで頷く。
スザクはラクスから視線をそらし、廊下を歩いていくアスランとカガリのほうを見る。
淡々と歩いてく2人…。
スザクは彼らがラクスに何を言いに来たかは見当がついたが、よく納得してくれたなと思ってもいた。
「…でも、今は味方の中でいざこざを起こしている場合でもないから、わかってもらうしかない」
スザクは、そう結論づけて、ラクスには暫くの間再び休ませることにした。
廊下を歩くアスランとカガリ…。
その目は大きく開かれ、赤きギアスの効力を示す光が輝いていた。
投下終了です。
明日は投下できるかは微妙なところです。
本編では、ラクスの強い意志は、かえって彼女を追い詰めることになって行きます。
ビームを切り払っていたのは知りませんでした…。
バルディオス今から投下
かなーり中だるみです
〜トラック諸島沖〜
箱型の不恰好な艦が海を西へ行く。艦は周囲の海面に対して勢いよく空気を噴出し浮力を得ている。
加えて後部ノズルから噴出すジェット流が推進力を生み出していた。
艦橋とおぼしき司令室では地図を挟んでの会議が続いている。とはいえ、その参加者はわずか3人。
「20機はすべて未帰還、とするしかないでしょう。」
参謀らしき将校の説明を聞く白髪交じりの指揮官。
既にパイロットスーツに身を包んでテーブルの作戦図に目を通している。
「わが隊がここまでの損害をこうむった事はない。
しかし、わが艦が到達すれば、恐れるに足らん」
「稼動状態のモビルスーツは残り6機。整備は万全です。」
右手に持った指示棒を左手に勢いよく当てた指揮官。パシッという乾いた音。
「予定通り私も出る。226号の凍結解除と調整は、作戦に間に合うか」
「タイミング的に微妙ですが、間に合わせます。」
「うむ。青き清浄なる平和のために・・・」
〜春島基地 工場〜
「ほら、マリン行って来いって。」
「だからお前ら、何で俺にばっかり押し付けるんだ」
「だってよ、ご指名受けてんのはオメェだぜ。」
「雷太、オリバー、覚えてろっ」
自分をからかったように見えた2人を指さし、半分冗談半分本気の恨み節。
この日もメイリンに機械いじりを頼まれるマリンである。
「部品を取り替えたら動かなくなって・・・無線のレシーバーなんですけど」
マリンが機械を手に取ると、精密ドライバーで樹脂製の箱を開けていく。
「どこを替えた?」
「外側のスピーカーです、音がガサガサするようになったから」
「参ったな、本来はそういうのは専門外だ・・・ここかなッ」
内部部品のひとつを押さえてパチンという音。
スイッチを入れるとザーという音が鳴り始めた。
「ありがとうございますっ・・・専門外って言ってたのに。」
あっけなく終わった修理。マリンが箱の蓋を今度はネジ止めしていく。
「接触不良だったら、キッチリはめ込むだけで済む話だもんな。
機械に強いってのと、機械作りのコツってのは別なんだ」
「それって・・・あてつけですか?」
ピタリとドライバーを持つ手が止まる。
「ん?・・・いや、すまん。何か気を悪くしたのなら・・・」
「いいんです。ナチュラルとコーディネイターなんて言っても、わからないですよね。」
「よく、わからないな。機械は共通みたいで、助かったけど」
ネジ止めを終えたレシーバーを手渡す。マリンはすっかり困り顔になってしまった。
「てっきり、工科大学の人かと思ってました」
「全然別だよ。こっちの言葉じゃ、環境システム科って、言うんじゃないか?」
「皆さんの隊の名前、ブルー・フィクサーって言ってましたよね?」
「ああ。俺は隊の名前の響きは好きだ。」
「私はあんまり・・・こっちだとブルーコスモスって言葉があって。」
「知らないな・・・・」
「知らないなら、いいんです、うん。 ?・・・何か聞こえる」
声がレシーバーから聞こえたような気がして、メイリンは機械のボリュームを上げてみる。
『所属不明の飛行編隊!総員直ちに部署に付いてください!』
「えっ・・・」
「ばっ・・・馬鹿なっ!」
怒りの形相のような剣幕にマリンが変わった。メイリンの胸倉をつかむ。
「なんて迂闊だ!近くの海に空母がいることぐらい考えなかったのか!」
乱暴に手を離してマリンが走っていく。
メイリンは走り出すのを忘れて数秒間呆然とその場に立っている。その間にもレシーバーは・・・・
『ミネルバ非常発進スタンバイ、繰り返す、ミネルバ・・・』
書き上げた分だけ投下終了
立場の違いをさりげなーく出すのって難しいですね・・・
ブルーフィクサーとブルーコスモスの類似?ネタは突発的な思いつきですが
コードギアスの人は種本編見てないのか…?
ビーム切り払いとか見てればわかると思うんだが
353 :
00の人:2009/01/29(木) 03:33:34 ID:???
んー。ビーム斬り払いはフリーダムがプロヴィデンスのドラグーンを捌ききれないから斬り払いしたってのは覚えてるがどうなんだろ。
誰も居ない投下するなら今の内www
354 :
00の人:2009/01/29(木) 03:35:33 ID:???
機動戦士ガンダムSEED 灰の雪が降る世界
『絶望食らって立っても、呆れるほどの思いで儚い命しがみついていけばいい』
「すみません……再生治療装置…?でしたっけ。それを使う前に、彼女の細胞組織、テロメアの長さを調べてもらえませんか?」
担架を押す手を緩めながらシンはイアンに間違いであってほしい可能性を教える。
「テロメア…だってぇ?……」
担架が止まる。と同時にレイが苦しげに再び血を吐き出す。その中に自壊した肺が混じる。
「やっぱり……」
「おい!?嬢ちゃん!?どういう……」
「右腕の、アン……プルを打ち込め……」
「わかった。……これだな……」
シンはレイのパイロットスーツにくくり付けられていたアンプルを首筋に沿わせるとそのまま打ち込む。ピシュンと音が鳴り薬剤がレイの体を巡り始める。
「すまん。後は輸血で十分だ……」
「シン、早くいけ。アィルカ一人ではそうもたない……」
シンはレイの顔を覗き込む。先ほどに比べて顔色が良い……残してきたアィルカも気がかりではある。
「……………レイを………お願いします。」
搾り出すようにシンは告げると、走り出す。頭の中では、ステラやアスハの…カガリと分かれた日のことがグルグルと回り始める。
『今なすべき事をやったばかりに、マユもステラもルナもカガリも…みんな失って、生きてきた。』
心の声を振り切りタラップへ
「ちっくしょおおぉぉお!!」
開いたままにしたコクピットにガダンと滑り込む。と同時にモニターに少女が映る。
「ひぇ!?」
「うわっ!?」
「シン…イライラするのは解るがいじめるのは…」
アレルヤが非難を浴びせてくる。罪悪感とちょっとした嗜虐心が沸き上がるが、それよりも…
「ごめん。状況は?。」
モニターに映る愛らしい少女は似合わない口調で状況を説明する。
「現在本艦は…オーブ軍の包囲から脱出し後退していたのですが、大気圏外からガンダムが降下してきて……」
「フリーダムだ。艦の位置からしてフリーダムが退路に陣取ったんだな?」
訂正しつつ補足を入れてゆく。シンはそのまま続ける。
「となると、現状……こっちの方角か……刹那達は?」
「ほぇぇ〜スゴいですぅ。スメラギさんとおんなじ事言ってるのですぅ、えっと、エクシアはヴァーチェと合流。現在は海洋を北上しつつ合流地点へ移動中ですぅ。」
彼女の物言いに一抹の不安を感じつつも戦況を予想する。
355 :
00の人:2009/01/29(木) 03:36:34 ID:???
「わかった。なら、フリーダムは俺が相手をする、フェヌエルはそのまま移動してくれ。」
バイザーを下ろし、シートベルトを締める。GN粒子は既に全回復しており、機体状況も悪くはない。
「え!?あのガンダムをですか?」
「アイツとやり合うのは初めてじゃない。エアリス、出ます!!」
ぶっきらぼうに告げ、カタパルトからエアリスを発進させる。
ルナマリアは破壊され尽くしたモルゲンレーテ工場で必死にある物を探していた。月影用のウェポンシステムの内完成していた物を届けるために、
「来ると思ったわ」
「エリカ…主任!?どうして……!?」
瓦礫の山の中を走り回るルナマリアに声をかけるエリカ・シモンズ。元モルゲンレーテ開発主任であり、ルナマリアの元上司に当たる人物だ。
「そんな場所にいないで、貴方の探している物はこっちよ。」
瓦礫の山の中にいるルナマリアを外に出てくるように言い手を伸ばす。
「……なにだかわかるんですか?」
「月影用のウェポンシステムでしょう?貴女がいた頃の物はもうないわよ。」
「そんな……」
ルナマリアは肩を落とす。試作型だが、陽電子砲やビームガトリング等があったはずなのに。
「代わりに例のアレを完成させてあるわ。」
「アレを!?」
ルナマリアの声がうわずる。アレとは、PSABシールドの事だ。 かなりのエネルギーを使う上に実用するには材質面でかなりのコストがかかる為、試作すらされなかった物だ。
「でも、あんな物を…」
「面白い発想だったからかしらね。こんなこともあろうかと……って奴よ。」
エリカが妖しく笑う。色っぽく見えるが、これはマッドサイエンティストの笑いだ。
「こっちよ。いらっしゃい。」
「戦闘機……ですね。」
目の前に見えるそれは戦闘機の主翼と機首が一体化したようななだらかなフォルムで全体的に薄く作られつつ表面積が大きい不思議な形をしている。どことなく見る者に日本刀をイメージさせた。
「驚いた?」
「……あの……これが盾に?デザインも私達が考えたのよりも攻撃的な……」
「エドワード・ハレルソンって人物を知ってるかしら?」
「切り裂きエドですか?」
「彼の「切り裂き」はね、パナマじゃないの。」
ルナマリアは眉をひそめる。切り裂きエドと言えば、パナマでの返り血を浴びたソードカラミティだ。
「彼はスピアヘッドでディンを切り裂いた事が有るのよ。」
356 :
00の人:2009/01/29(木) 03:38:28 ID:???
エリカは機体のチェックをしつつコンソールを叩く。ルナマリアはエリカの言葉に驚く。
「いぃ!?まさか、ソードストライカーを積んだりしたのですか!?」
「違うわよ。」
「主翼をディンのコクピットに叩きつけたのよ。」
これを、こうね?とエリカはジェスチャーを行う。
「まさか…」
「うふふ。貴女にはぴったりの機体でしょう?戦闘機なのが問題だけど、」
「それ…イヤミですかぁ?」
「まさか、良いから乗りなさいな。発進まではセッティングしてあげるから、」
ルナマリアはしぶしぶコクピットに滑り込む。キャノピーは無く、完全に密閉型のコクピットは戦闘機なのに違和感があるが文句も言えない。何故なら、この機体の正しい使い方をするならキャノピー式だと危険すぎるのだから。
「簡単に説明するわね。右のミサイル用のスイッチがブーストよ。押せば急加速するから後は射線を確保して当てるだけ。」
ルナマリアの事など意に介さないようにエリカが続ける。
「あぁ、そうそう。体当たりする時だけは機体のPS装甲が展開されるから安心なさいな。」
いや。無理っしょ?という単語は飲み込む。
「後、左のスロットルでPS装甲は任意で展開できるから覚えておきなさい。」
短く教えるエリカ。正直、コレが開発主任かぁとため息をついてしまった。
「君とは!!分かりあえたと思っていたのに!!」
「奇遇だな!俺もアンタと同じことを思っていたよ!!」
「なら!!どうして!?」
フリーダムがスキュラを発射する。それをバレルロールのようにかわし、ビームライフルを発射する。着弾。いや、ビームシールドか。シンはサーベルを抜くと接近する。
「アンタが、アンタが……実の「妹」まで殺したからだ!!」
「!?」
「アスハは……カガリはなぁ!!」
「あれはカガリが悪いんだ!!ラクスに逆らうからッ!!」
「アンタって奴はどこまで腐ってるんだぁ!!」
エアリスがサーベルを振るう。フリーダムはそれを急上昇でかわし後ろから二刀流で「達磨」にするように斬りかかる。
「当たるかぁ!!」
機体をスピンターンさせ回し蹴りを叩き込むエアリス。
「カガリは!!カガリなぁ!!最後まで…『話せばきっと分かりあえる』って!!」
「そうだ!!カガリだって同じ物を見ていたはずなんだ!!」
エアリスもサーベルをもう一本抜き、互いに打ち合い、鍔迫り合いを始める。
357 :
00の人:2009/01/29(木) 03:41:38 ID:???
「そんな物、見ているのはアンタ達だけだ!!カガリはいつだって戦いを止めるために!!」
「それはラクスも同じだ!!」
「アンタは……そうやっていつも!!」
エアリスがサーベルを押し込む。
「うわぁあ゙あ゙あ゙!!」
キラの雄叫びと共に互いのサーベルが弾き飛ばされる。
「ラクスだって!!……君だけは許せない!!」
フリーダムはいち早く立ち直りサーベルの飛んでいってしまった右手を握りエアリスへストレートを叩きつける。
「なんでみんなラクスの言うとおりに出来ないんだッ!!なら、撃つしかないじゃないか!?」
更にエアリスを掴み二回三回とフックを叩き込み、最後にローキックで水面に叩きつける。
「クッ……ラクス…ラクスって女々しいんだよ!!アンタは!!」
突然エアリスの機動が変わる。エアリスは水上を水しぶきを上げながら高速移動しビームライフルを連射する。アレルヤだ。
「シン。落ち着いて、冷静に相手の動きを見るんだ。」
「アレルヤ……その……」
「君は、一人じゃない。だから。」
アレルヤが言外に熱くなるな。と諭す。シンはそんなアレルヤを見て何とも言いがたい感覚に襲われる。
「ドンマイ。」
そう言いアレルヤは笑ってみせる。むずがゆさかこみ上げシンは
「悪い。」
とだけいう。
「はぁああああ゙あ゙あ゙!」
激情と共にドラグーンを射出するフリーダム。シンは冷静に全てを把握する。
「後ろ。直撃コース。」
「かわしてみせる!!」
ビームが凄まじい勢いでエアリスに向け放たれる。それを命中寸前でかわし、何もない方向へライフルを向ける。
「三秒後。今!!」
ビシュウと放たれたビームは移動してエアリスを狙うドラグーンを三機撃墜する。
「!?君はなんなんだ!?」
「脳粒子波……君の攻撃は僕達には効かない!!」
「なら!!」
左手でサーベルを再度抜き、フリーダムは接近戦を試みる。
「望むところだ!!」
シンが吼える。エアリスは両手両足からビームサーベルを展開し、フリーダムと衝突する。
シン(キラ)「はぁああああ!!」
互いに譲らぬ接近戦の中二機に急接近する機体が現れる。
ルナ「邪魔よ!アンタ!」
それは真正面からフリーダムにぶつかる。衝撃でフリーダムが吹っ飛ぶ。
キラ「ッ!!」
反射的にビームライフルを撃つフリーダム。
シン「ルナァ!!お前!!」
ビームが戦闘機に直撃する。それを見たシンは激昂するが、戦闘機は無傷だった。
シン「な!?」
358 :
00の人:2009/01/29(木) 03:44:41 ID:???
ルナ「シン!!ドッキングよ!!」
速度をそのままに、ルナマリアはスライスターン。コースをエアリスに合わせる。
シンは再会を喜ぶよりも、ルナマリアの言葉に驚く。
シン「ドッキング!?」
ルナ「私を愛してるなら信じなさい!!」
シン「なんだよそれ!?……クッソォ!!やってやるよ!」
エアリスはドッキングの為に水上で急加速。水しぶきを上げながら戦闘機との相対速度を合わせる。
シン「ウェポンシステム?PSABシールド……コレ!?」
アレルヤ「システムモード……ユーハブコントロール!」
ルナ「アイハブ!!」
シンを無視しながら、ルナマリアとアレルヤが進めてゆく。
ルナ「いっけぇ!!」
戦闘機から何かが射出される。それは瞬時に変形し笹の葉の様な形を取る。
「受け取ったぞ!ルナの愛!!」
シンは苦笑しながらルナマリアに合わせる。
「ちょっと!?アンタ恥ずかしくないの?」
あぁ……この物言いはルナだ……とシンは思いつつ、機体に新しくついた武装をチェックする
それはMSとほぼ同じくらいかそれ以上のサイズの盾だ。形は笹の葉型で……はっきり言うとMS用サーフボードに近い。
それをエアリスはシールドのグリップの様に突き出た保持するためのグリップを握り、盾の様に保持する。
「へぇ……面白いね。」
アレルヤが色々といじり回す。レーダーがフリーダムの接近を告げるとシンはそれを掲げて、振り回し投げる。
「新しい武器?シールド!?ブーメラン!?」
キラは困惑する。なぜならエアリスは新しい装備を頭の上に掲げ大剣の様に振り回すと、それを投げつけたからだ。
サイズや形状はシールド的なのにブーメランの様に投げる……キラは瞬時にそれが投擲可能な攻防一体兵装と認識する。
だが、それは間違いだPSABシールド通称「火鼠乃衣(ヒネズミノカワゴロモ)」は本来斬撃用の武装なのだから。
「当たるわけにはいかない!」
火鼠乃衣をかわし追走してきたエアリスへライフルを放つ。
「GNフィールド。シン…投げたは良いけど。」
「俺に考えがある。」
「なら決めないとね。……GNドライブには一種のオーバードライブ機能があるんだ。」
フリーダムのビームのGNフィールドで弾き飛ばしエアリスは直進する。
「オーバードライブ?」
「そう、『トランザム』システム。これを使うことによってエアリスは通常時の三倍近いスペックになる。」
359 :
00の人:2009/01/29(木) 03:47:34 ID:???
『シンはMSの操縦中に頭が真っ白になったりしたことはないか?』
『どうしたんだよ。突然。』
『良いから答えろ!!』
『うーん。ザフトにいた頃は良くあったかな。ていうか、その直ぐに怒鳴る癖、直せよ。』
『お前なぁ。そういう事をはっきり言うか?』
『変に取り繕うとカガリは気持ち悪がるだろ?』
『まぁな。で……な。』
『そうだった。あれはなんなんだよ。』
『私にもわからん。でも、あれは破滅を呼ぶ力だ。』
『破滅?……大袈裟な…』
『大袈裟な物であるか!。シン。あの力はSEEDは絶対に使うな。あんな物に頼って戦えばいずれ全てを歪ませる。』
『………わかった。もう使わないよ。カガリがそんなにまでなるんだ。もう使わない。でもさ、』
『それって今日の模擬戦のあてつけだろ?』
「オーバードライブか、……」
シンはかつてカガリとの約束を思い出す。シンはエアリスを使いこなしているように見えるが、操縦事態はアップアップな事態である。アレルヤもそれを考慮して今まで黙って居たのだろう。
シンの脳裏にあの日のカガリが鮮明に映る。
「三倍……」
正直な話無理だ。使いこなせるわけがない。だが、SEEDを使えばあるいは……
そうこうしている内にエアリスが火鼠乃衣に追いつく。
「アレルヤ……トランザムだったな?」
「あぁ。……」
エアリスが水上を高速飛行する火鼠乃衣に着地する。シンは覚悟を決める。
『今まで、何度も死に欠けたが使わなかった。けど……』
心の中で亡き主に謝る。自分は再び、あの力を使わなければならない。と
シン&アレルヤ「トランザム!!(きゅるぴーん)」
シンの頭の中に種が弾ける映像が流れ込むと同時にエアリスが真紅に染まる。機体のパワーゲインは三倍をゆうに越えエアリスが超高速で動き出す。
「ウェーブライド!?だからなんだって!」
フリーダムが残りのビームライフルやスキュラと言った飛び道具を撃ち込むがエアリスは火鼠乃衣を用い水上でサーフィンの様に複雑な軌道を取り巧みにかわす。その上、トランザムの超ハイスペック状態である。
「やれる……やれるぞ。いっけぇ!!」
水上でスピンターン。水しぶきが敵のロックオンを妨げる。そのままフリーダムへ直進するエアリス。
360 :
00の人:2009/01/29(木) 03:53:53 ID:???
「ッ!?見えない!?そんな!?」
バシャアとフリーダムに大量の水が掛かる。火鼠乃衣の衝突した衝撃は来ない。不審に思うキラにアラートが上だと告げる。
「上!?」
見上げると、エアリスは空中で宙返りをうち、降下する手前だった。先の水しぶきはエアリスが急上昇したための物だったのだ。だが気付くには遅すぎた。かわせない……!!
「今度は……」
自重による落下+トランザムの超出力。視認不可能なスピードでエアリスは火鼠乃衣を足元から手元へ、そしてトンファーの様な構えを持って右腕を切断する。
「アンタが達磨になる番だぁ!!」
シンの叫びと共にフリーダムは両手両足、更に推進装置も破壊され完全に達磨状態となり水中へ落下してゆく。
「はぁはぁ……ちくしょう………ちくしょう!クソッタレ!!俺なんて!俺なんて!!」
シンはコクピット内で考えつく限りの単語で自らを罵った。
おしまい。
アレルヤってトランザム係だけどマイスターでは割と便利で良いかもwww感想、質問、指摘等あればお願いします。
なんつーか、
ここにくる作品はオリジナル設定がてんこもりだからまとめにない話は筋がよくわからん。
頼む、文章を統一してくれ
台本調なのかテキスト調なのかSS調なのかキッチリしてくれないと読めない。
改行はしてねっと
語られてないストーリーが前提にあるんじゃ、わけがわからん。
せめてスパロボのテロップ程に状況説明してくれ。
ビーム斬り払いって00の連中当り前のようにやってるんだよな
ブシドーが撤退する寸前に「ペシッ」って感じでビーム払ってたのには笑った
最近あぼーん指定ばっかりで読めるのぜんぜんこないぜ
お前の指定の都合なんか知るかカス
最近、誰のセリフなのかよくわからないとか、状況説明が無さ過ぎて
何がどうなってるのかサッパリ分からんのが増えたな
369 :
00の人:2009/01/29(木) 13:59:28 ID:???
なんか、俺が荒れた原因みたいだな。
なんかごめんなさい。
>>361&364
俺もそこは気にしてた。負債みたいだが、次はその辺のオリ設定のまとめを作る。
>>362 そこは意図して変えてた。テキスト量を考えると、あるのか分かりもしない心理描写や不要な描写を省いたりして短くしたり、逆に一部の戦闘描写は単調で薄ぺらい台本形式だと味もないから所々に心理描写を乗せたりとか。次からは統一してみる。
>>367 いや。
>>366も意見だと俺は思うよ。だからやめようぜ。
>>368 感じるんだ。ってのは冗談で、上で説明した通り台本形式にし過ぎると薄く、かと言って厚くするとテキスト量が印刷物並みになるから場合によって俺は飛ばしてた。とりあえず複数の人物の台詞の前に名前を付けてるように、個々のとこも付けとく。
つか、安価無いからわからんが俺で良いんだよな?
↑自意識過剰乙
レイ「これで良し。と」
>>369 いや、文章量増えてもいいから台詞の前に名前つけるのはやめろよ
ネタスレなら簡潔にするためにそれもありだが、SSスレなんだからw
Gクロスの人、続きまだかなぁ…
>>369 脳粒子波とは独自設定?トンファーてモノだろ「のような構え」ってどういう表現だ?
「」と『』が混在しているのは何か意味があるのか?
三点リーダが好きなのか?なぜ記号を半角にする?
オリ機体がお気に入りだからって、いちいち書かなくてもわかることを連呼させるのはどうよ。
そのくせ誰がどういう場面で喋ってるか非常にわかりにくいし、その対案が台本形式の混在なわけ?正気ですか?
ひょっとして貴方、好きなモノを書くのに労力は惜しまないけどそうでないトコで手を抜くタイプ?
このごった煮スタイル、ご自分でグチャグチャしてると思いませんか、もうちょっと頑張りましょうよ。
>>372 00の人じゃないが、脳粒子波は脳量子波の打ち間違いでしょ
個人的にはオリジナル設定てんこ盛り過ぎてワケワカメの状態以外は特に気にならなかったけどな
一つ言わせて貰えば、コクピットに乗り込む→少女が映る〜→アレルヤ「いじめるのは」の会話の流れがわからん
何が「いじめる」なんだ?
クスィーの人まだかな
シロッコの奴が未完で終わってたのが残念だ
軽くて面白かったのに
過労死しそうなシロッコだな
377 :
00の人:2009/01/29(木) 21:48:05 ID:???
>>372 とりあえず穏便言うが、指摘はありがたいが言葉を選んで。な?
それじゃあネクタイが曲がってたから空港のガードマンを殴るみたいな物だから。普通に曲がってますよって教えような。
>>373 すまん。その通り脳量子波の間違いだ。
そこは、アレルヤから見たら、シンはレイの事で冷静さを失っていて帰ってくるなり大きな音を立てて同時にミレイナが驚いた為勘違いしてる所。かな。描写不足は確かにあったと思う。
言おうか迷ったんだが、これから先はもう新しい設定は出てこないが、種死終了から10年近い為これらの時間を埋めるための設定に当たる部分はある意味オリジナルになると思うんだ。
終わってない00二期を混ぜるのは不味いし、かといってイナクトやティエレンじゃあ種死の技術的に辻褄が合わない。一応、GN-Xは居るけどね。
同じ事はシンや刹那達にも言える。10年の時間を埋めたりする。そのために訳わからん設定を作ってキュリオスに至っては文字通り電池係になってしまっているんだが。
うまく言えないが、その状態が肌に合わないとかならスレも荒らしたくないし黒歴史扱いにして、投下するのは止める。
軽々しく止めるとか言われるのも実は困る。
たとえ仮に今回のが口調はともかくまともな批判や指摘であったとしてもだ、
これが前例になると荒らしが味をしめてわいてきて、図に乗って他のSSにも居丈高に
言い掛かり付けまくり出しかねないから。
>377 辛抱強く続けるべし 口は出さないが応援はしておりますゆえ
職人を叩くのが趣味のクソ野郎が職人を叩き出しまくった時期もあるからなぁ・・・
これは良くない対応だったな
これで、「煽られたら辞めます」と宣言したも同然だからなぁ
止める事は、ないんじゃないかな
でも、読解力が足りなかったねかキュリオスがただの電池だってのは、
今まで理解出来てなかった
電池なら何でアレルヤが乗ってる必要があるんだろ、って新しい疑問がわいた
383 :
00の人:2009/01/29(木) 23:16:50 ID:???
いやねー。俺が叩かれたり煽られるんは構わないんだよ。それが他の所に影響し始めるんが耐えられんくてね。
そもそもこれだけ埃が出たのは実際腕が悪いだけだからさwww言ってることはわりとまともだし、落ち度があるから脳量子波の話もあるんだろうし。
なんか逆に空気が悪くなったなら謝るわ。
>>382 トランザムにはマイスターが乗ってる必要があるのさ…
あとシンで回避しきれないときの回避要員+脳量子波レーダー
385 :
00の人:2009/01/29(木) 23:30:25 ID:???
うん。まぁ最初の理由がシン=ディステニーだと何で?って自分で思ったからキュリオスを電池代わりのオリ機を当ててあげたんだよね。だからアレルヤにはかなり酷いことを最初にしてる。
そこから例のストライカーモドキを作って、アレルヤどーすんの?→合体するか…→いる意味は?→トランザムがあるじゃないか!!
で今ここらへん的に固めてラストでマイスターにシンを組み込んで何かしらイベントをしたり、今回の話みたく疑似アレハレ状態にしたりも出来るなって話は全体を固めたときに出来たんだよね。だからみようによっては電池扱いなんだ。
凄まじくアレルヤに失礼だな。ちょっとハレルヤに「楽しいよな。アレルヤァ!!」されてくるわ。
>>383 よけいに空気が悪くなるから、もう黙っている方が良いよ
00の人すごい香ばしい臭いがしてきたからもうやめとけ
あと改行しろ
口はペラペラと良く回るけど、作品は稚拙
こんな奴は、何処行っても嫌われるぞ
バルディオス投下します
〜ミネルバ2世 第1ブリッジ〜
サイレンが鳴り続ける中、ルナマリアが1人、正規のブリッジクルーであるメイリンを待つ。
2機のザクは分解してシンの1号機に部品を全て回してしまったため、ルナマリアに乗機はない。
不機嫌な顔のルナマリアの前に、電動ドアの音がしてメイリンが駆け込んでくる。
「お姉ちゃんごめん!遅くなっちゃった・・・」
「ま〜た油売ってたんでしょう!アイツと」
「違います! えっと、機関待機、出力60パーセント、タラップ上げます」
「すぐごまかすんだから・・・あのね、あの男はどっか信用なら」
通常以上に早口で手順を読み上げるメイリン、ルナマリアの方は見ず、コンソールパネルから目を離そうとしない。
「スクランブル中の私語は厳禁! VTOLのジョイント固定、チェック、
ザク1号機、フル装備スタンバイ。バルディオスとの回線、開いておきます。」
ルナマリアは張り切った様子、肩をいからせて船首機銃のコントロールパネルをにらむ。
「わかったわよ、対空機銃はしっかり見張っといてあげるから・・・・」
がらんとしたミネルバのデッキに直立するザクは、
現状で装備できる全ての兵装を装備してカタパルトに乗ろうとしている。
全ての兵装といっても、背中のラックに40ミリ短機関砲1丁、
右足側面に装甲ブレード1本、腰側面ラックに機関砲のマガジンが2丁ではあまりにも心許ない。
ブリッジより先に、滑走路に留め置かれているバルディオスチームと交信を開始したのは、
ザク・コックピット内のシンである。
「マリン、出動は少し待っててくれよ」
この期に及んで何を言い出すのか、とマリンの反応。
「お前、正気か?」
シンが続ける。
「俺はもう軍人じゃないんだ。可能な限り戦闘を避けることをしなくちゃいけない」
マリンは半分あきれたような口調に変わる。
「話し合いが通じる相手なものか・・・お前に任せるが、攻撃を受けたら出動するぞ。一瞬でな」
事の次第がわかってか、雷太にオリバーが続く。
「ああ、本当に一瞬で行っちまうからな。」
「ま、頑張って交渉して来いよ。」
何のジョークを言っているのか、シンは理解できない。彼らなりのジョークかと納得して返答する。
「ああ、一瞬か・・・そんときゃ、頼む。シン・アスカ、出ます!」
カタパルトを蹴って飛び出したザクに続いて、離水したミネルバ2世が続く。
航行灯を点滅させて敵意がないことをアピールしつつ。
ミネルバの第1ブリッジのレーダー画面には大きな影が映る。
「長距離レーダー、艦艇確認!これは・・・陸上戦艦!?ハンニバルクラスです」
先行するシンは、ザクの操縦桿から右手を離し頭を抱える。
「とんでもなく厄介なものが来た・・・射程距離まで約180秒、交信を試みる!」
無線の出力を最大にしてシンが発信を始める。これで何度目かなどは考えない。
上手くいくかどうか、そんなことも考えにはない。一心不乱にメッセージを送り続ける。
「聞こえるか!こちらには攻撃の意思はない!
収容しているモビルスーツらしきものも、我々の関係者ではない漂流物と、その搭乗者だ!」
シンが遠くに気配のようなものを感じ、操縦桿を振り込む。左へ回避。
ザクの遥か右をすり抜けていくビームが1本。通常の射程距離より遠い位置で撃ってきたものだ。
「・・・高エネルギービーム!」
シンの脳裏に嫌な予感がよぎる。
「今のビーム、昔俺が乗っていた機体のものじゃないのか・・・」
続けて同じビームが2連射。
機体をバンクさせつつシンは苛立ちを大声に変えて吐き出した。
「戦争がしたいのか!」
遥か遠方を飛行する6機のモビルスーツ編隊。その姿はまだシンからは完全には確認できない。
ジェットストライカーを背負ったダガーLが5機、その先頭には翼の付いたガンダムタイプ。
ビームライフルを構え飛行するガンダムのコックピットには、白髪交じりの指揮官。
息が詰まるのを嫌ってか、ヘルメットのバイザーはまだ下ろしていない。
「試し撃ちはこの辺でやめだ。記録はとってあるな!」
後方の戦艦のブリッジからの返信が聞こえてくる。
「本艦の4つのカメラで追っています。記録送信開始、全て正常」
「対艦ミサイル、射程に入ったら遠慮なく撃ちこんでやれ!
さぁて・・・あんなのが相手では面白くもなんともない。
誰が、20機以上のモビルスーツを叩き落したのかな?」
コンソールパネルには、既に逃げ回り始めたザクの姿があった。
指揮官はおもむろにヘルメットのバイザーを下ろす。同時に足元のペダルを踏み込む。
「アイツでないのは確かだ。実験兵器は、このフォースインパルスで引きずり出してやる!」
書き上げたぶんのみ投下終了。
敵高性能機としてフォースインパルスを出すというのは、深い意図はなく単なる思い付き
誰も予約がないようなので投下します。
今回は予定ではなかったのですが、番外編を1つ投下します。
EX話 Cの世界
白き世界の中、様々な絵画がその場所では並んでいる。
その絵画を一枚ずつ見て回る白き拘束着を着た緑色の髪の少女…C.C.
「……さて、これまでお前達はこの私達が介入してきた世界を見てきたわけだが、
登場人物の多さ、話の順番がバラバラで、話が上手くつかめないものもいるだろう。
今回はそういったことを解消するために私がわざわざ出張ってきて説明をしてやろう。
あくまでこれは番外編だ。なぜ私がルルーシュと一緒にいないのか、などという野暮な質問は受け付けないぞ」
C.C.は一枚の絵画の前に立つ。
そこには、巨大な黒きMA…デストロイが立ち、そこに人型機動兵器、インパルスが挑んでいる。
「これは私、ルルーシュ、カレンとともに介入した世界だ。
作品で言うと機動戦士ガンダムSEED DESTINYとなる。
介入した私達は、そこで戦争を勝ち抜き、様々な勢力の力を摂取しながら、戦争をなくすための努力をしていくことになる。
そこで待っていたのが歌姫の騎士団である、ラクス・クラインなわけだ」
C.C.は絵画から離れるとゆっくりと歩き出す。
私達が、このようにCの世界を彷徨う理由はひとつ。
コードギアス本編にて、ルルーシュの両親、シャルル・ジ・ブリタニアとマリアンヌが
神と称す人類の無意識的集合体をCの力を借りて抹殺をしようと企んだ。
ルルーシュはそれを邪魔し、私やスザクとともに人類の未来を願ったことで、シャルルとマリアンヌの野望は潰えた。
だが、それは二つの大きなことを起こした。
まず1つは、シャルルとマリアンヌの行なった無意識集合体を殺害する儀式は、
始まっていたことで、何人かのギアスコードを持つものが、Cの世界から解放され、
様々な世界に彷徨い出ることとなってしまった。
それが結果的に、世界を混乱と絶望に導くこととなるわけだ。
2つめ、ルルーシュや私達が願った人類の未来を守る…それは、様々な世界も指し示しており、
私達は様々な世界を人類の滅亡から救うために彷徨うこととなったわけだ。
それの1つが、ギアスを持ち精神を著しく崩壊させるにいたったラクス・クラインとなるわけだ。
ラクス・クラインの持つギアスは、かつて私が持っていたギアスと同じ『魅了のギアス』相手を自分の虜にして、
思うがままに言うことを聞かせようという代物だ。
それは私達の手によって、上手く倒すことが出来たわけだ。
今回のスザクの話もそういうことになる。
スザクもまた、私達とは別に、この世界の未来を救うためにCの世界、集合無意識から派遣された存在であるといえよう。
スザクが誰を倒さなくてはいけないのか、という話は、また本編で明かされることになるだろう。
私達は目的を達成させ、世界に未来を齎すことができたならば、
再び別の世界に旅立たなくてはいけなくなる。
それがどこの世界かはわからないわけだが…。
ここまでが私達が世界をなぜ跳んでいるのかの理由となる。
まったく、困った話だ。こんなことを永遠と繰り返していたら命が幾つあっても足りないぞ。
次には科学技術の話となるが…ロイドとラクシャータがパーフェクトな科学者だからだという理由で、これはいいか…。
ナイトメアフレームとMS技術とでは形容は違うが、同じロボットということで、そのMSの機体性能、
製造過程を研究し、それを応用することは可能だ。
今回のスザクのように平和をただただ訴えるラクスの傍にいるのは、ルルーシュにとっては稀だな。
それが反逆者と呼ばれたスザクの今回は対比なのかは分からないが。
現在の勢力としては、ラクス・クライン&スザク、アークエンジェル、クサナギの三隻同盟、そしてドミニオン率いる連合軍、大西洋連邦…、
そしてギャラハッドを有する、スザクと同じくこの世界に導かれた、ビスマルクとラウ・ル・クルーゼのザフト軍となっている。
誰が本当の敵で誰が味方なのかはまだこの段階ではわからないが…。
ちなみにビスマクルもまたCの世界の意志によって導かれたものの1人だ。
理由は本編を勧めていくとわかってくぞ。
ラクス・クライン……私達がいった世界、そしてスザクがいた世界双方でもっとも鍵となる人物だ。
どうにも悪いイメージで囚われがちだが、彼女自身は、平和を訴える良くも悪くもただのアイドルに過ぎない。
ただ、慰問を行うにつれて、彼女の心の中で、このままではいけないという想いだけは強くなっていったようだ。
それが帰って強くなったために、無謀な戦争撤廃行動(フリーダム強奪幇助)を行い、
最終的には、謀反を起こすこととなったわけだ。
彼女はギアスに精神を犯され、彼女の中の黒き部分を呼び覚ましていく。人間誰しも、心には悪の心と善の心がある。
彼女はそれが形となってでてくるわけだ。詳しくは本編を見てもらえばいいわけだが、
ラクス・クラインはそれとの心の葛藤ながら、事態を良き方向に進めていこうとしていくことになる。
彼女がこれからどうなるかは本編で明かされていくわけだが、彼女がそもそも悪人であり、
世界の破壊を望んではいなかったということだけは、はっきりと告げよう。
あくまでもそれはスザクまでの彼女のことだが。
ルルーシュのように生半可でない覚悟と目的、その目的を実行しえる、
過ぎたる力をもって、物事をこなすことは、かなりの精神的な部分に負荷をかけることになる。
ラクスの場合はその精神的な部分が響いたのかもしれない。
世界の英雄となるにはそれなりの覚悟が必要というわけだ。
この世界が、私達の介入後、どのようになったかは…わからない。
だが、私達が行かなくてすんでいるということは、皆元気にやっているということだろう。
今度、またステラにでも会いにいってやろうか。
今回このような話をしたのは……、
まぁ、たまには纏めてみるついでに本編を休んでもいいんじゃないかということだ。
スザクとラクスがいかにして、あのヤキン・ドゥーエを納めたかは、次回にと続くぞ。
投下終了ということで、EX話です。
作品数が多くなればやはり一度は自分も整理させるために纏めてみなければということで…。
次回からは普通に戻ります。
最後になりましたが、投下作者の方々乙です。
バルディオスの人お疲れ様
ダガーLと一緒に攻めてきたのがインパルスなのは生産国も世代も違うしどうなんだろ
そういやZ終盤でミネルバが敵のときシルエットはどうしてたんだろ^^
ギアスの方は閑話ですね
>彼女がそもそも悪人であり、
の下りは
>彼女はそもそも善人であり、
のほうがいいんじゃないなと文脈的に
そういやCの世界って何の略か公式で出てましたっけ?
予約が無いようなので投下します。
第8話 メンデル攻防戦〜混沌する宇宙〜
『このまま進むと、廃棄コロニー付近に進みます。
暗礁宙域もあるここでは、敵の待ち伏せが予想されます。
さらには連合軍のドミニオンも依然として本艦の追跡を敢行しており、最悪の場合は、この双方と戦闘にはいることが予想されます』
マリューからの言葉にラクスは頷く。
「……わかりました。私達もアークエンジェルを援護し、あくまで逃走経路の確保を前提とした攻撃支援を行ないますわ」
『感謝します。ラクスさん』
通信が切れる。ラクスは、ただ暗い正面の宇宙を見つめる。
ロイドとセシルは、アークエンジェルのほうが、だんだんとこちらに痺れを切らしているのではないかと思い始めていた。
本来ならば、ここにいるクルーが全員、そう思ってもおかしくはないはずだが…。
「……スザク」
「はい」
ラクスは、スザクのほうを見ずに、言葉をかけ、スザクはラクスのほうを見て答える。
「私は……みなさんに迷惑をかけているんでしょうか?
私は、私の理想を掲げるために、プラントを出てきたというのに、結局…何も変えることが出来ない」
力なく、ラクスは弱弱しい声でつぶやく。
スザクは、そんなラクスを見ながら
「…ラクスは勘違いをしている」
「え?」
「仲間、友人という絆はそんな簡単に切れるものじゃありません。
そして、平和というものは、決して目に見えるものでもない。
ラクスがマリュー艦長や、ドミニオンにいるナタル艦長に告げた言葉は決して無視されたものではないはずです。
ラクスには、ラクスにしか出来ないことを、行なっていけばいいんです。
僕は、そのための剣となります」
「……ありがとう、ございます。スザク」
そう…。
そうなんですね、私は急ぎすぎているんですね。
あの声に、あの囁きによって。
今日…アスランがきたとき、私の心は、身体は…彼女に乗っ取られてしまいました。
私の意識は深い闇に落ちて…。記憶が曖昧になってしまって。
これがギアスの力の代償……。
私は…その力に溺れたくない。この力はあくまで非常用の手段。
平和をつくりだすための手段であって、この力で人類の意志を一つに纏めるわけにはいかない。
それでは、力で人々を統一しようとするザフトのパトリック・ザラや、連合とかわりない。
だけれど……、本当に私の声で世界に平和が訪れるのだろうか?
復讐の連鎖、暴力の応酬が止められるのだろうか。
ラクスは、赤くオン・オフが出来なくなってしまった己のギアスの効力を防ぐために使用するコンタクトをつけながら、
悲しみに満ちた表情を浮かべうつむいた。
スザクは、ラクスと別れて格納庫にと向かう。
その長い廊下の先、ロイドとセシルが立っている。
壁に寄りかかるロイドとスザクを見つめるセシル。
その表情は険しいものとなっている。
「……スザク君、話があります」
スザクは2人の前で立ち止まる。
「ここでなら監視カメラ等もないからね」
ロイドは、スザクを見つめこちらに身体を向ける。
「お姫様の行動が、わからなくてね。
やりたいことはわかるんだけど、それに対して彼女自身が余りにも理想を追い求めすぎている感じがしてさ。
そして、それに対して艦内にいる誰もが、疑問も何も浮かべない。彼女に意見する人が誰もいない」
「……ザフトのアイドルであって士気があるのはわかるけれど、だけど…少し異常な気がして」
セシルもロイド同調するが、その言い方はスザクに配慮したものとなっている。
スザクは、そんな2人の話を聞きながら頷く。
「ラクスは理想を現実にするように求めているんです。そうじゃなきゃ、こんな無茶な行動は出来ないですよ」
戦いをなくす。
そのために戦うという矛盾をラクスは作り出したくないだけだ。
だから最低限、どうしても回避できない戦い以外は回避したい。
誰も傷つけたくなくて、そのためにできる限りの努力を行なう。
それが連合軍とアークエンジェルの回線に割って入り意見を述べた行動に当たる。
それ自体は、ラクスの理想に基づくものであると思う。
「僕は、彼女を信じます。彼女の理想に殉ずる気持ちは本物ですから」
スザクはそういって歩き出す。すぐに戦闘が始まる。ランスロットに搭乗し戦闘準備を行なわなくてはいけない。
ロイドとセシルの間を通り過ぎるスザク。
「僕たちは、君のおまけだから…君のやることにケチはつけないよ?
だけど、忠告はしたからね?ラクス・クラインは君の言う理想のためなら、どんな手段も使いかねないっていうことを……」
ロイドの言葉にセシルも息を飲む。
スザクの言うとおり、平和に対する気持ちはラクスは人一倍だ。
だからこそ、その覚悟のために、誤った手段を講じる可能性があるとロイドは告げる。
「……ラクスは、そんなことはしないです。彼女はゼロとは違う」
それは自分に言い聞かせる言葉だったのかもしれない。
スザクは格納庫にと消えていく。
ロイドとセシルは、スザクに忠告は告げた。
後は…彼次第であると考える。
コロニー・メンデル宙域
「…敵戦艦確認、以前戦闘した新造戦艦『アヴァロンU』です」
ミリアリアの言葉を聞き、マリューは後方にあるドミニオン…ナタルがこのタイミングを逃すまいと確信した。
漁夫の利を狙うか。それとも双方を潰しにかかるか。
「第一種戦闘配置、MSを発進させて」
その言葉を聞きMSに移動するアスランとカガリ…。
キラは様子のおかしい2人に声をかけようとしたが、どうにも無表情のままで声がかけられない。
こんな状態になったのは、エターナルにいってからだ。
何かあったというのだろうか?
アスランとカガリはぶつぶつと何かを告げながらMSにと乗り込んでいく。
前方に現れるアークエンジェル、エターナル、クサナギ……。
これらを落せば、おそらくは自分たちがこの世界に導いた存在の狙いは達成されるのだろう。
格納庫にて、己の操る改良型の機体、ギャラハッド・ボーグに乗ったビスマルクは、1人頷いた。
「いうことを聞かなくてはいけないというのは尺だが、仕方が無いか……。
モニカ、ドロテア、準備はいいか?」
『問題ありません。必ずや今度こそ反逆者のクビをとります!』
『……私もこれ以上ラウンズに汚名を着させません』
少し力んでいる感じがするが…問題は無いだろう。
自分たちは神聖ブリタニア帝国最強の騎士、ナイトオブラウンズだ。
それがここまできて、遅れを取ってしまっては、それこそ皇帝、帝国の名を汚すことになる。
それだけは避けなくてはいけない。
「いいだろう。私達の狙いは枢木スザクだけだ!他のものには目をくれるな」
ビスマルクは、回線を開き、ルキアーノを呼び出す。
「お前のやりたいことをさせてやるための作戦だ。我々はランスロットを狙う。
お前はお前のなすべきことをしろ」
『了解しました。お任せください…』
ルキアーノ・ブラッドリー……。
奴の行動が吉と出るか凶と出るか。
ルキアーノの行動に心配をするビスマルクに、今度は別の回線がこちらに開かれる。
『……こちら、クルーゼ隊、隊長ラウ・ル・クルーゼだ。
今回の作戦は我らも協力させてもらう。あのコロニー、そしてあの艦には知り合いもいてね』
ラウ・ル・クルーゼ…。自分達に、敵から奪取したアヴァロンを渡したもの。
自分たちが何者であるのか、そういったことを問い正そうと彼はしなかった。
「好きにすればいい。我らの邪魔をしなければ」
『あぁ、そうさせてもらう』
この戦い……様々な思惑が交錯する場所となるか。
ビスマルクはこの世界に渦巻くものを感じながら、出撃する。
「…我が艦も攻撃を仕掛ける。狙いはアークエンジェルのみだ。ザフトの相手はするな」
ナタルも、漁夫の利を狙ってもいいのだが、やはり敵に撃墜されるよりかは、自分の手で決着をつけたい。
それが…『友人』としてのせめてもの…。
「火中の栗をあえて拾いますか?まーそれでもかまいませんけどね。
折角戦場に来たんだ。戦争をしなければ意味が無い」
アズラエルは、ナタルの隣で笑いながら答える。
虫唾が走るその言葉。
だが、それもアークエンジェルが撃墜されるまで、自分の命令はそこまでだ。
乗員をみんな殺せとは言われてはいない。
軍規に従えば、己の心情から外れることは無い。
こんな考え方に至ったのも、あの人のおかげか…。
ナタルは自分の心を笑いながら、ブーステッドマン三機に量産型MS部隊を出撃させる。
そんなナタルの前、既に戦闘は開始させられていた。
「枢木スザク、覚悟!」
ドロテアの鋭い攻撃がスザクのランスロットを狙う。
スザクはその回転するランサーの攻撃を避けるが、真上からモニカのライフルの攻撃を受ける。
「くっ!」
「ハハハハ…。お前を倒せば私は満足だ。ここで宇宙の塵となれ!」
スザクは、向かってくるドロテアに、強力なハドロン砲を打ち出せるライフルをむけ、ドロテアに放つ。
それをなんなく回避し距離をつめるドロテアのアグラヴェイン。
手首を回転させたランサーをスザクに向ける。
瞬時、スザクの瞳が輝く。
それは、かつてゼロ=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがあたえた彼に対するギアス。
『生きろ』というギアスの力。
それは彼の意識に関係なく、生存のための最良な方法をとり、行動する。
そして、それはスザクがコントロールすることもできるようになっていた。
スザクは、ドロテアの眼前にてワイヤーをだし、それを上で砲撃を繰り返しているモニカの機体に巻きつけると、
ドロテアから後退する反動を使って、巻きつけたワイヤーを引っ張り、モニカの機体をドロテアに目掛け振り落とす。
『機体の制御が取れない!!』
『何っ!?』
モニカの機体がドロテアに衝突する。頭部を潰し合った二機はバランスを失う。
『くそぉぉぉ!!』
ドロテアはやけになり、ランサーをスザクに向けて撃ち出す。
スザクはその放たれたランサーをワイヤーで切り払う。
スザクはやはり、そこで二機に止めを刺さず、その場から離れる。
ドロテアはあまりにも容易く扱われたことに、プライドを大きく傷つけられていた。
モニカはそんなドロテアは放って脱出を図ろうとするが、衝突した影響で絡み合ってしまい、バランスがとれない。
そこに見えてくる連合軍のMS。
『あ、あぁ……こ、こんなところで!』
ブーステッドマンはまるでゴミといわんばかりに、フォビドゥンが強力な射撃をそこに目掛け食らわして二人を纏めて焼き尽くす。
スザクは戦場を駆け、艦を狙う敵を次々と撃墜していく。
そこに現れる黒き影。
「あれは!?」
『枢木スザク!』
かつてのナイトオブワンであり、ギアスユーザーでもあるビスマルクである。
スザクは、その強力かつ巨大な剣を受け止めるが、
パワーでは大きくスザクのランスロットを凌駕するギャラハッドは、スザクを押していく。
『貴様、なぜこの世界に飛ばされた。お前も、この世界に呼ばれたというのか!?』
「この世界は未来の扉が閉じようとしている!それを止めるために、僕らは呼ばれたはずだ!」
『そうだろう、そうだろうな…。だが!私はそのようなものに身を捧げたつもりは無い!
私が敬愛し、唯一命令ができる方は、シャルル皇帝陛下とマリアンヌ様だけだ!』
「あなたも未来を見ずして過去に生きる人かぁ!!」
スザクは、剣を押し返し、離れるとライフルを撃つ。
ビスマルクはその目を輝かせ、相手の攻撃パターンを予測し回避していく。
その射線や敵の動きは『未来線のギアス』をもてすれば、回避など造作の無いこと。
『一度は貴様の腕を見誤ったが二度目は無い!!』
「くぅぅぅ!!」
スザクはギャラハッドの猛攻に押されている。
ビスマルクは、それでいても作戦は忘れてはいない。
ラウンズの2人を失ったが……ランスロット、枢木スザクの目は完全にこちらにむいた。
後は…奴次第だ。
「敵接近!まっすぐこちらに向かってくるぞ!」
バルドフェルドの声とともに姿を現すのは、ルキアーノが操る専用ナイトメアフレームのパーシヴァルである。
防衛を行なうのはオーブからカガリとともに訓練を受けたM1隊である。
ルキアーノを通すまいとライフルを撃ち込むが、それらはシールドによって防がれる。
「アハハハハハ、お前達弱いよ、弱すぎる!」
ルキアーノは、一気に二機のM1アストレイをドリルのよう回転させ、コクピットから串刺しにして爆破させる。恐怖に怯えるもう一機。
「怖いか?怯えているか?ならば、悲鳴をきかせろ!俺に心の奥底に響くような悲鳴をぉ!!」
そのまま機体を真二つとするルキアーノ。
圧倒的な強さを前に、マリューは、ビーム機銃で敵を近づけないように指示する。
ルキアーノは笑いながら、アークエンジェルではなく、その隣にあるエターナルに目をつける。
エターナルの機銃を回避し、そのブリッジに接近したルキアーノは、ドリルをむけてそこで制止する。
『ナイトオブワン、エターナルを抑えました』
ビスマルクは、その声を聞き口元を歪ませる。
『枢木スザク、クイーンの命は我らが抑えた』
「しまった!」
スザクはそこで、自分がギャラハッド…ビスマルクとの戦闘に夢中になっていることに気がついた。だがそれはもう遅い。キラやアスランたちが、エターナルを見る。
そこでは高らかに笑い声を上げるルキアーノの乗るパーシヴァルがあった。
『フフ、フハハハハハハ!!武装を解除しやがれ、お前達はここで終わりだ!』
ラクスは、そんな声を聞きながら、黙って前だけを見つめていた。その声を聞き、勝利を確信したビスマルクだったが、そこに現れる黒き機体…。
シルエットとしては、まったくの最新鋭機である。それに搭乗するものが、ラクスのエターナルにと近づき回線を開く。
『……ラクス・クライン、あなたを招待しよう。全ての真実、この戦いの全てを……』
ラウ・ル・クルーゼは最新鋭機であるナイトメアフレームと、ザフトのMS技術を組み合わせ開発させたプロヴィデンス・インビジブルに乗り、微笑む。
投下終了です。
プロヴィディンス・インビジブルはオリジナルです。
原作ではこのときはまだ量産型でしたが…はやいうちにということで。
乙でやんす
オリジナル設定メカってのがうまく作れる人は羨ましいと思う
>398
監察部隊は連合ザフト混成を前提に考えていましたが、
正直、MS製造系統のばらつきはまったく考慮に入っていませんでした・・・
この後もこういうアベコベ現象?は続くかもしれないです。申し訳ない
ちょっと前に七星種死なる駄文を投下したものですが、続き行っても良いでしょうか?
結構長いので、出来たら保守をお願いしたいのですが……。
書き忘れましたが、乙です。
おk支援しましょう
んじゃいきます。
……理由が理由、身内に甘いコーディネーターと、いくつかの条件が揃っているとはいえ、士官学校の授業はそう簡単に休めるものでもない。
また、昨晩、既にマユの肉体とは再会しており、今日もまた本物のマユと再会できない事を知っているシンにはそれほど急ぐ気もなく、シンとマユの『公式』な再会の日程は、その日の放課後になった。
もっとも、その代わり……と言うわけではないが、シンはレイの協力もあって、今日一日ではあるが、外泊の許可を取り付けている。
「……まったく、優等生様は得よね〜」
……とは、感動の再会に野次馬根性から同行を望んだルナマリア・ホークの言葉ではあるが、それが許された背景には、これを契機に落ち着きを手に入れたシンが、名実共にレイと並び今期のツートップになってくれるのではないかと言う教官達の期待があった。
「お姉ちゃん!
……すいません、こんな姉ですけど、悪気はないんです」
そんなルナマリアの言動に、更におまけで付いてきた彼女の妹――メイリン・ホーク――が、姉を咎めながら、そうシンとレイとに頭を下げる。
無論、メイリンは姉と二人との友人関係を知っているが、今期きってのエリートで、仄かな憧れの対象たるレイ、成績優秀ながらも狂犬と嫌われ、一部口さがない者達にはハーフナチュとまで揶揄されるシンの二人に向けた言動だけに、その表情にはかなりの緊張があった。
「気にするな、俺は気にしない。」
「……まあ、ルナマリアに何を言われた所で、もう今更だよなぁ」
そんなやり取りに、レイは何時も通りのポーカーフェイスで、シンは微かに苦笑を孕んだ笑みを浮かべてそう答え、赤毛をショートカットにした少女(ルナマリア)は『ほら大丈夫じゃない』と言わんばかりの視線を、自分に良く似たツインテールの少女(メイリン)へと向ける。
「けど、私達まで着いてきて、本当に良かったんですか?」
そんな姉を一睨み……メイリンがそう尋ねると、シンは苦笑したまま顔を俯けた。
「……ああ、情けない話なんだが、一人で会っても、どうしたら良いかがよくわからないんだ」
マユ自身を含むその場の全員が、彼女達は死んだと思い込んだあの場の惨状に加え、シンは自らの意思であの場所を離れたわけではないと言う事実……。
「仕方ないとは言いたくないけど、俺は一度、妹を残して逃げてしまったから……」
状況的に考えてシンに非は無かったが、人の心はそう容易く割り切れるようなものではない。
これから行う茶番に、観客はいた方がいい……そんなマユの指示が生んだ今の道行きだが、シンがメイリンに告げた言葉自体には、嘘偽り無い彼の本音があった。
正直な話、シンには、心が砕け操り人形と成り果てた妹の前で、平静を保てる自信がない。
「「………」」
そして、そんな姿を見せられては流石のルナマリアと言えど軽々しく言葉を返せず――ホーク姉妹は無言で顔を見合わせ、レイはそんなシンの肩を、気遣うように軽く叩いた。
「ごめん、なんか、気を使わせちゃったみたいで……。
その、みんなは、いつもどおりにしてくれればそれでいいから」
暗くなってしまった雰囲気を変えようと、シンは無理に作った笑顔でそう告げるが、この状況下でそんな事が簡単に出来るはずもない。
特に、シンの事はほとんど風説でしか知らないメイリンは、悪名高いシン・アスカの意外な面に、かなりの衝撃を受けているようだった。
「……気にするな、とは流石にいえないが、俺も気にしないように勤めよう。
まあ、シンの自慢の妹なら、話半分でもその程度は理解できると思うが」
「……そ、そうよね。
なにしろ、シンの自慢の妹だものね」
レイとルナマリアが何とかそう返したところで話は途切れ、それから待ち合わせの場所にたどり着くまで、誰一人として口を開くものはなかった。
葬列の様に粛々と、少年少女はバスを乗り継ぎ、軍施設の集中する港湾部の士官学校から、アプリリウス中央の市街地へと向かう。
シンに連れられた三人が辿り着いた場所は、プラント最大の総合病院だった。
「シンの妹はここに入院するのか?」
そもそも、頑健な調整者を主な住民とするプラントには、病院は余り多くない。
プラントの建造理由、一方的且つ独善的な独立の経緯、先の戦災等から、身体的損傷に対応するサイバネティックス技術や、調整者特有の遺伝調整、
それに起因する弊害の除去と言った分野の技術は抜きん出ていたが、一般的な医療技術においては、地上のそれの足元にも及ばなかった。
彼らの目の前にある病院は、そう言ったプラントでは手薄になりがちな分野もフォローしている総合施設であり、幅広い分野をカバーする反面、浅く広くと言った傾向を持っている。
プラントの医療を受けに来るマユは、そう言った先端分野に強い病院に入院するのだろう……当然そう考えていたレイは、待ち合わせの場所がこの病院である事に驚きを感じたのだ。
「……ああ。
そうだけど、それがどうかしたのか?」
怪訝な顔で足を止めたシンに、レイは苦笑して驚いた理由を説明する。
そして、その説明を受け、メイリンがシンへ笑顔を向けた。
「……ってことは、シンさんの妹さん、思ったほど重症じゃないって事ですよね?
良かったじゃないですか?」
広く浅いと言う特徴を持った病院で対処可能なのだから、当然、マユはそれほど深刻な状態にはない筈だ。
「……確かに、そういわれてみればそうよね。
よかったじゃない、シン」
そう考えたのだろう妹の言葉に、ルナマリアの顔もまた、笑顔を取り戻す。
シンの事を考えてか、それとも単に沈み込んだ空気が苦手なのか?
場を盛り上げようと、少々辛い笑顔を見せる姉妹に、シンも僅かに上向いたようだった。
支援
「……ああ、そうだな」
『彼女』の説明で、マユの現状を医者より正確に把握しているシンだったが……いや、だからこそ彼は、ルナマリアとその妹が、自分を気遣ってくれるのが嬉しい。
今までのシンは、自責から逃げるように思い出を怒りにくべ、暴走を続ける機関車だった。
走り続けている間ですらその自覚を持っていたシンは、マユとの再会で足を止め、周囲を見回した今、追いつかれた自責の影響もあって、その思いを更に強くしている。
そんなシンにも、レイやルナマリアと言った得難い友人がいて、彼をよく知らない筈のメイリンですら気遣ってくれていた。
それが嬉しく、そして、悲しい。
マユのために、『彼女』に付くと決めたシンは、場合によってはZ.A.F.T.を裏切らなければならない……いや、裏切ると、そう決めた。
『……俺は、弱くなった』
泣きそうになるのを我慢して、シンは笑う。
「……ありがとう」
そして、三人に対していささか唐突に頭を下げると、再び先導して歩き始めた。
背中で三人が戸惑ったように顔を見合わせ、ついで、追って歩き始めるのを感じ取りながら、黙々と病院の正面入り口を潜ると、受付には目もくれずにその奥の扉を抜け、中庭に至る。
『……マユ』
その先……入院患者の憩いの場として緑地化された中庭の、その中央にある噴水の縁に、腰掛け、本を読む少女の姿が見えた。
扉の音に気付いたのか、右腕が奇妙に大きい少女は直ぐに本を置き、こちらに視線を向ける。
そして、まだかなり遠いはずのシンの姿を一目で見分けると、勢い良く立ち上がろうとして、大きすぎる右手のアンバランスに少しだけよろけた。
右手を振り回す様に、振り回される様に……マユは、満面の笑みを浮かべ大きく右腕を振る。
「お兄ちゃ〜ん!」
それが、記憶の中のマユと重なり、シンは思わず足を止めていた。
彼女がマユでは無い事は、充分理解しているはずなのに、それでも、シンの中には、目の前の少女をマユと思い込みたがっている自分がいる。
先ほどの一件で、既に決壊寸前だった涙腺が緩み、流れるものを留めようとしたシンの、鼻から啜り上げる様な音が響いた。
『……くそ、何で俺はこんなに泣きそうなんだよ』
懐かしいマユの姿を目の当たりにしたからか?
それが、ただの操り人形に過ぎないからか?
それとも、マユの為に、後ろにいる仲間達を裏切る決断をしたからなのか?
嬉しくて、悲しくて、愛しくて、憎くて、悔しくて……もうなにがなんだか判らない胸の内を噛み締めて、シンは思う。
泣く、もう泣く、すぐ泣く、絶対にだ。
俺は泣いて良いのだ、いま決めた。
そうだ。俺が泣けば、感動の再会の演出に丁度良い。
マユは、そんな俺を不審がるかも知れないが、もうそんな事はどうでも良かった。
裏切ると決めた、彼女の仲間になると決めた。
望むなら、後ろの三人の首だって掻き切ってやる。
『だから、だから今日……いや、今ぐらいは泣かせてくれよ……な、マユ……』
そして、シンが顔の力を緩めた途端、その胸にひたりと押し当てられる暖かな、感触があった。
「……お兄ちゃん、相変わらず涙脆いんだね」
くすりと笑う様な、そんな声が、シンの腹の辺りを擽る。
マユ・アスカが、その体を操るものが、シンに抱きつき、そう笑いかけていた。
「……マユ」
シンの口から零れたそんな呟きと同時、その目からも大粒の涙が零れる。
もう、目の前の少女が、マユでもそれ以外でもどうでもいい。
シンは少女を硬く抱きしめそんな事を思う
「……うっ、うっ……」
口から漏れる嗚咽。
涙は滂沱の如く、そして、恐らくは鼻水も漏れている事だろう。
既にシンは、人目を憚らずに号泣していた。
「…………」
「……シン」
「……シン、さん」
腕の中にいる少女が誰なのかも、裏で俺を見ている人達の存在も、もうどうでもいい。
ただ……
『……もう少しだけでいい、今は夢を見させてくれ』
そして、シンは泣き続け、少女は、ただそんな少年を、優しく抱きとめていた。
◆◆◆
……結局、それからシンが泣き止むのに、十数分もの時間を要した。
「……ごめん、情けないところを見せた」
噴水の縁にマユと並んで腰掛け、レイから借りたハンカチで恥ずかしげに顔を拭うシンに対し、目の前に立つ少年はいつものように首を横に振る。
「気にするな、俺は気にしない」
そして、御馴染みのフレーズを口にするレイに、ルナマリアも口元を綻ばせた。
「ま、レイの言い草じゃないけど、シンがどんな姿をさらしたって、もう今更だしね」
レイを見ながら、『ま、あたしらは、シンがマユちゃんの携帯に話しかけたりしてたの知ってるし……』と、締めたルナマリアに、メイリンもまた、くすりと笑う。
「へぇ……シンさんって、そんなことをしてたんですか」
すっかり打ち解けた様子の、メイリンの笑顔。
シンは、彼女とは殆ど初対面だった事を思い出し、気恥ずかしさに赤面……したが、すぐなにかを思い出したような表情を作ると、ハンカチを膝の上に置いてポケットを弄った。
いつもの場所から、少年には不似合いなピンク色の携帯を取り出して、マユへと差し出す。
「ほら、マユ。
……取って来たよ」
シンは、つい今それを頼まれたように言うと、会心の演技でマユに笑ってみせた。
本物のマユに返そうと、今まで渡していなかったこの携帯電話だったが、レイはその辺りの事情も知っている。
話題に上った以上、マユに返さないのは不自然、それに目の前の女性になら、家族との思い出の携帯を託してもいい――シンはそんな気分になっていた。
ちなみに、それは泣かせてくれたから、と言うわけではない、多分。
「……けど、その携帯、今までお兄ちゃんが使ってたんでしょう?
新しい携帯買ってからじゃないとお兄ちゃんも困るだろうし……。
それに……」
そう言って差し出された携帯に、しかし、マユは首を横に振る。
今まで、シン達を楽しそうに見つめていた瞳に、微かな憂いを乗せて、マユはこう続けた。
「……それに、本当の事言うと、まだその携帯を見るのは辛いんだ。
あの時、マユがわがまま言わなかったらって思うと……。
だからお兄ちゃん、もう暫く、マユの携帯を預かっていてもらえる?
お兄ちゃんが全てを終わらせて……それで、マユにこれをもう渡してもいいって思ったら、その時に渡して、マユに返して……ね?」
自分の手で、本物のマユに返してやれと言う事なのだろう――差し出された携帯を、シンの手ごと不揃いな両手で覆い返すようにして、『彼女』は悲しげに笑って見せる。
「……ああ、判った。
マユがそう言うのなら、暫く俺が預かっておく事にするよ」
恰も、形に出来ない内心の感謝を示すように……シンは、やんわりと押し戻された携帯をおしいだく様にして引き戻すと、そのまま自分の服のポケットに押し込んだ。
そして、蚊帳の外の観客達を思い出したように振り返り、シンはその顔に苦笑を浮かべる。
「……悪い、ずいぶん長い事時間を掛けてしまって。
そろそろどこかに移動しようか?」
先の自分の大泣きを気にしているのか?
羞恥の宿る表情で周囲を気にしながら、幾分唐突に言葉を連ねたシンに、レイが首を傾げた。
「それは構わないが、妹さんの方は大丈夫なのか?」
病院の手続きの状況や病状……マユはまだ早熟なプラントでも保護者が必要な年齢だから、ここまで付き添っていた大人との兼ね合いもある。
そんな当然の疑問を発するレイに、マユはにっこり笑って口を開いた。
「はい、レイさん。
入院は明日、付き添いの方とは、夕食の時に合流する予定ですから、それまでは大丈夫です。
もう、それほど時間はありませんけど……」
訓練後、すぐに士官学校を出たとはいえ、外延の港湾部から病院までの移動に再会の一幕にと、結構時間を使ってしまっている。
会食の時間と場所が正確に判らないから確信は出来ないが、時間的な余裕は一時間から、まあ長くて二時間強と言ったところか?
皆で遊びに繰り出す程ではないが、どこか喫茶店にでも入って話をするには充分な時間だ。
「じゃあ、取りあえず移動して、どこか待ち合わせ場所に近い喫茶店にでも入ろうか?」
そう考えたルナマリアの提案に一同異論は無く、マユを四人が囲むようにして歩き始めた。
「そう言えばマユちゃん、シンの事を泣き虫って言ってなかったっけ?」
「泣き虫じゃなく、涙もろいですよ、ルナマリアさん」
物怖じしないルナマリアが(主に、シンの情けないエピソードを求めて)マユを質問攻めにし、マユが楽しそうにそれに答える。
なんだかんだと言って面倒見のいいレイが、暴走気味のルナマリアからマユを庇い……何を思ったのかシンは、そんな道行きを嬉しいとも、悲しいとも付かぬ奇妙な表情でただ眺めていた。
「……マユちゃん、大した事無いみたいで良かったですね」
そして、自分が外様だと言う自覚がどこかに持っているのだろう――シン同様、そんな三人を輪の外から眺めていたメイリンが、そんな彼の様子に気付いて、そう声を掛ける。
今日、士官学校を出た頃には『狂犬』シン・アスカに対する恐れのようなものを抱いていたメイリンだったが、余りに濃密なこの数十分で、彼女の警戒心はすっかり緩んでしまったようだった。
まあ、アレだけ情けないところを見せた男に警戒を抱くのは至難の業だろうが……シンはすっかり打ち解けた表情のメイリンに苦笑を浮かべると、彼女と、もう十年来の付き合いのように仲間達とじゃれているマユとに交互に視線を向ける。
「元々、腕を除けば後遺症は殆ど無いって聞いてたけど、ここまで元気だとは思わなかったよ。
……こっちの病院に入院するって聞いてたから」
先のシンを踏襲するように、メイリンは苦笑する優しいお兄ちゃんと、自分の困った姉とを見比べる様に視線を動かすと、少しおどけたように腕まくりをして見せた。
「お兄ちゃんとの再会が、それだけ嬉しかったんでしょうけど……でも、もう少し落ち着かせた方がいいですよね。
私、お姉ちゃんを止めてきます」
そう言って、メイリンは三人の輪に割り込むと、レイに加勢してルナマリアを抑え始める。
「お姉ちゃん、マユちゃんは病み上がりなんだから……」
「そうだ、ルナマリア。
明日から入院するシンの妹を、そんなに疲れさせてどうする」
「ええ、けどマユちゃんこんなに元気だし、大丈夫だよねー」
「あははははっ」
そしてシンは、そんな暖かな光景を一同の最後尾で眺めながら、目の前の少女が本物のマユだったら……と、虫の良い夢想をせずに入られなかった。
先の号泣で鬱屈したものを吐き出し、彼女に従う決断を強くしたシンではあるが、そもそも情深い彼に、友人達やZ.A.F.T.への友情、愛着といったものが容易に断ち切れるものではない。
それが、マユと仲間の両者に対する後ろめたさとなって、シンに彼らとの距離を置かせ、その立ち居地が否応無く浮かび上がらせる夢想は、自己嫌悪となって彼の心を苛んだ。
断ち切れない弱さ、或いは、情を残してしまう優しさ。
そう言ったものが生み出す鬱屈こそが、ただひたすら前に進むしかない『シン・アスカ』を作り上げた根源ではあったが、未だ心が一方に定まらぬ時のそれは、強さの余り彼の心を引き裂こうとする拷問器具のようなものでしかなかった。
そう、シン・アスカと言う人間は、土台、裏切りに向いてはいない。
全て吐き出してしまった筈の涙が、再び沸いて来ようとするのを抑えながら、シンは、目の前の眩しさは、二度と自分の手には入らないものだと思った。
彼女はマユではなく、本物のマユが蘇ったその時に、彼は裏切りを完遂しているのだから。
だからこそ、いとおしいと思う、眩しいと思う。
そうそれは、一夜の夢だからこそ、こんなにも光り輝いている。
それを味わえるなら、シン・アスカは何でもするだろう。
だが、シンにとって、何でもすると言う事は、それを味わう資格を失うと言う事だった。
「……ほら、シンさんも何か言ってくださいよ」
妹と、友人達がじゃれている姿を見て、感極まった……先の涙の影響もあり、メイリンに今のシンはそう写っているのだろう。
姉を抑えながらシンに話を振った少女に、少年は息を吐き、天を仰いだ。
ぎゅっと目を瞑り、涙を、震えだそうとする心の糸を、無理に押さえ込む。
何を言えばいいのだろう。
判らない。
何を言っていいのだろう。
判らない。
何を演じればいいのだろう。
それだけは判った。
だからシンは、マユを見てこう口を開く。
「はしゃいでくれるのは嬉しいけど、余りはしゃぎすぎるのは良くない。
……そう言えば、マユ。
体の傷は一通り治っていて、後遺症も出てないって話だったけど、なのにどうしてわざわざプラントの病院に入院する事になったんだ?
レイの話だと、あの病院に入院するなら、そんなに酷い状況じゃないって事だったんだが」
妹を気遣う兄……それを演じようと決めた時、シンの震えはぴたりと止まった。
これは、演技なのだ。
目の前のマユが偽りであるのと同様、自分も偽りの兄を演じているのに過ぎない。
大切だった仲間達を、自分の欲望の為に騙している、そんな最低の筋書きの中の、中でも最悪の大根役者、それが、自分なのだ。
だから、シンが触れた途端、幻は色褪せる。
そして、罪悪を飲み下す事は、共に憧れを切り捨てる事に比べれば、余りに簡単だった。
そう、家族を喪ったあの日から、シンはずっと罪悪感を飲み込み続けていたのだから。
支援
「うん、取りあえずは検査入院って事らしいよ、お兄ちゃん」
そんなシンに視線を向けて、『彼女』は少しだけ困ったような顔で答えた。
それは、マユの演技ではなく、昨晩垣間見た『彼女』自身の表情。
彼女は、困った子ね……そう言いたげな微笑でシンに答えると、マユに戻ってこう続ける。
「詳しくは知らないけど、何故昏睡して、何故目覚めたのか全くわからないんだって。
バイタルも時々昏睡時に近い状態になったりするから、このままだと、またいつ昏睡状態になるかわからないし、今度そうなったら、そのまま目覚めなくても不思議じゃない。
それで、元々地上では調整者関係の医術情報は殆ど出回っていないし、もし遺伝調整された肉体特有の現象とかだったら、地上の医学ではどうにもならないから……」
余り悲観したような表情は見せず、そうあっけらかんと言ってのけたマユに、まず声を上げたのはこの場で一番冷静沈着なはずのレイであった。
「…ッ!
それでは君は、いつ爆発するか判らない、爆弾を抱えているようなものでは……。
……マユ、それは医者が君に、面と向かってそう言ったのか?」
短いテロメア、薬の助けを借りねば容赦なく進んでいく老化、薬の副作用に刻一刻と蝕まれていく肉体……自らも爆弾を抱える者として、彼女の発言には看過し得ないものがあったのだろう。
年齢を考えれば、死を理解できていない、実感を持っていないと考えるのが普通だが、レイがそう考えるには、今までのやり取りで知ったマユは聡明に過ぎた。
「ううん、違うよ。
お医者様は何も教えてくれないで、検査を繰り返すだけだったから、マユが自分で調べたの」
そう言って、手をキーボードの上で動かす動作を見せたマユに、レイはかすかに目を見開く。
病院のデータバンクに侵入でもして、自分の治療情報でも盗み見たのだろうか?
早熟なコーディネーターだけに行為自体には不思議はないが、それを平然と言ってのけるマユが、自らも突然の死と隣りあわせで生きているレイには、酷く不思議だった。
マユの告白の、その余りの内容に呆然とするホーク姉妹、なぜか慌てる事無く、マユとレイとを見守っているシン……そんな三人を尻目に、レイは言葉を連ねる。
「マユ……君は本当にそれを理解しているのか?
いつ死ぬか判らない、そう言われているんだぞ!?」
そして……そんなレイの必死の問いかけに、マユは微笑んだ。
それは酷く可憐な、花の様な、笑み。
「いつ死ぬか判らないのは、どこの誰でも同じじゃない?
マユは、死の可能性に怯えて生きるより、死ぬまでに何が出来るかの方が大事かな?」
そう言ったマユの言葉は酷く陳腐な内容だったけれど、しかし、レイは何故かその言葉に、酷く強い説得力を感じていた。
生死の境を乗り越えたものの迫力とでも言うのだろうか?
陳腐な言葉に力を与えるだけの迫力が、マユの微笑には宿っている。
『特に……あの眼差し』
あれは、悲しむ事をやめ、怯えるのをやめ、歩き出す事を誓った者の物だ――レイは、理由も無くそう感じ、シンへと視線を移した。
「……シン、お前の妹は素晴しい女性だな。
お前があれだけ自慢していたのも、よくわかる」
心からの感嘆をこめてそう告げるレイに、まずルナマリアが硬直から解き放たれる。
能力・外見共に最高位にあり、多くの女生徒の憧れの存在でありながら、今まで浮いた噂の一つも上がらず、一部生徒の間ではシンとの怪しい関係が実しやかに語られているレイだ。
そんな彼が、これほど熱っぽく女性の評価を語るのを、友人であるルナマリアですら聞いた事は無く……それに頭をぶん殴られたような衝撃を受けた少女の口から、思った事がそのまま漏れる。
「……え、それって、もしかしてロリコン宣言?」
そう言いながら、結構なマジ顔でマユを護るように抱きしめた姉に、メイリンもまた目を丸くした。
彼女は元々、シンともレイともそれほど親しくしているわけではない。
……否、高嶺の花である上に、狂犬シン・アスカとつるんでいる事が多いレイと親しくしている女生徒など、そもそも彼女の姉のルナマリアくらいしかいなかった、と言った方が正しいか?
「え、レイさんって、もしかして『そう』なんですか?」
また、メイリンにとっては、彼女と同室のチアキが強く主張する所のレイ×シンな関係でいられるより、まだそちらの方がありがたいと言った事情もあり……そんなこんなでメイリンは、姉の余りに説得力ある仕草をあっさりと丸呑みにした。
「違うッ!」
初めはジョークだと思っていたのだろう。
レイは姉妹の冷え切った態度に、珍しくも慌て、声を荒げての反論を初め……そんな姿を眺めながらメイリンは、心のどこかで『同室のチアキが悲しむな……』とか思っていた。
……以上です。
支援ありがとうございました。
結局途中でさるさんにつかまりましたが、日付変更直前にしてよかった(苦笑)
乙でやんす
支援した甲斐があった
おー続き来たか
GJ!
これどうなっていくんだろ
今後が凄い気になる
名前欄にタイトル入れてほしいな…
GJ
しかし、最後の文が伏線なのかネタなのかが気になるw
バルディオス投下します
中だるみ(しかもシンがあまり活躍しない)が続く
〜ミネルバ2世 ブリッジ〜
「対空ミサイル警戒!機銃安全装置解除!」
船首の40ミリ2連機関砲がせわしなく旋回を始める。
落ち着きのない動きは、コントロールしているルナマリアの動きそのままだ。
メイリンがさすがに姉の様子を見かねてたしなめる。
「お姉ちゃん落ち着いて・・・・」
「うるさいわねえ、一気にミサイルが来たら対応しなきゃでしょ・・・あ、来た!」
対空レーダー画面に映ったのは、ダガーLのジェットストライカーから発射されたミサイル。
「お姉ちゃん、ぶつかってくる物だけ迎撃したらいいんだから・・・」
メイリンの指示が煩わしいとばかりにルナマリアの声が飛ぶ。
「わかってるわよ!掃射開始!」
2連機関砲の旋回が止まると今度は微動しながら断続的に射撃を始める。
射撃が始まって2秒、3秒、4秒・・・・・
第1ブリッジの右50メートル付近にミサイルの爆発と黒煙。
「やったわ!」
「横へそれて行くコースの弾よ・・・」
この時飛んできたミサイルが無誘導ミサイルだということは彼女たちは知らない。
一方ミネルバ2世の東側の海上では・・・・
〜海上〜
「こいつは前菜だ!適当にあしらってやればいい・・・」
指揮官の軽い指示に合わせるようにダガーLの鶴翼編隊が崩れる。
1列縦編隊でザクへ向かっていくと、カーブを切りながら順繰りにビームと近接機関砲を発射していく。
シンのザクは右に、左に、また左に、と機体を振ってビームを回避、さらに盾でビーム1発をブロックする。
その間にも12.5ミリ弾をボディに受けたのをシンは音で気づく。
距離があるため威力を失った機関砲弾は、カンカンと音を立てる。
「当たったかっ・・・まだダメージはないな・・・」
コックピットのシンは逃げることで精一杯、反撃を考える余裕などない。
部品を寄せ集めて作ったザクで攻撃を防げるだけでも奇跡である。
「あいつら、気付いてくれたかな・・・」
頼みのバルディオスがたとえ発進しても、自分が撃ち落されミネルバが沈むまでに間に合うのか。
それを一瞬考えると、シンの表情は暗くなるばかりだった。
「もう駄目かもしれない」、と。
〜春島基地 滑走路〜
バルディオスのツインアイが鈍く光り、手足が動き始める。
100メートルの巨人がランドセルの噴射音を響かせ、アスファルトを削りながらゆっくりと立ち上がり・・・
コックピットの3人はというと、戦意旺盛というより、シンに対して腹を立てている。
口火をきったのは雷太。
「だから言わんこっちゃないっつったんだ、あのへぼキャプテン・・・」
それをなだめるオリバー。
「いいじゃないか雷太。おかげさまでマリンがここで颯爽と登場だ。な、白馬の王子様」
出動前にからかわれたマリンは腹を立てる。
「無駄口を叩く暇があるか!反動エンジン、亜空間エンジン、パルサービーム作動、行くぞ!」
バルディオスが直立した状態から徐々に空中へ浮上を始める中、マリンは無線交信を続けていた。
「こちらマリンだ!船の位置はどこだ!できるだけ正確に伝えろ!」
「・・・マリンさん!こちらミネルバです!メイリンです!」
「早く位置を言え!!」
「どう言えばいいんですか!!」
「あんたねえ!怒鳴らなくたっていいでしょ!」
交信に割り込んでくるのは、メイリンと一緒に怒鳴り込むルナマリアの声。
「緯度と経度!ジャイロコンパスを見るんだ!」
「ほ、北緯7度49分25秒!東経が〜・・・152度35分25秒!急いで!」
「よぉし! バルディオス!亜空間突入!」
マリンの座る操縦席、コンソール画面では、空間座標のグラフ曲線がうねうねと動き、
3本の曲線が交差する点が画面中央へ。
高度を取り始めたバルディオスが白く光ると、ブゥン、という妙な機械作動音。
それっきり春島基地からは一瞬で見えなくなってしまった・・・・
〜海上〜
「ザク1号機離れていきます!・・・あ!本船に向かってくるミサイル確認!距離6000!」
「戦艦から撃ってきたわね!」
ミネルバのブリッジからも光る点が確認できる。戦艦から発射された垂直発射ミサイル。
「数は16!いや、増えます・・・・20!回避運動、取り舵いっぱい最大戦速!船内ブザー鳴らします!」
警告用のブザー。これが軍艦であるならば、こういう時のブザーは
船の舵を急に切る衝撃に備えろ、という意味と、ミサイル命中時の衝撃に備えろ、という意味になる。
機銃操作のパネルに指をかけていたルナマリアの反応は早い。
「機銃座、迎撃するわよ、撃ちかた始めます!」
「どうぞ!」
ただし、2連機関砲だけで防ぎきれる数ではない。
回避出来なければアウト、という次元はとうに超えて、
いま飛んでくるミサイルが誘導ミサイルであったら即座にアウトだ。
「ミサイル、前方でカーブ!だめぇ!」
ミネルバの上部構造物付近に集中するミサイルの光と煙が1点に集まる。
音のない光・・・続いてもう一度光。爆発音と炎、
そして黒煙とミサイルの破片がブリッジ付近に舞い込んで来る。
覚悟して顔を両手で隠していたホーク姉妹が、
様子がおかしいことに気付いて窓の外を見たのはその5秒ほど後。
煙の中、両腕を広げたバルディオスがミネルバの100メートルほど前に立ちふさがっている。
「・・・?何ともない・・・っ! あれは何!?」
「なんでアイツがいるの!?船の真っ正面にぃ!」
バルディオスの3人はというと・・・・
雷太が損害を調べる。
「危ねぇ危ねぇ。さすがにこっちも無傷とはいかなかったな」
オリバーの軽口が続く。
「白馬の王子様にありがちな、登場の仕方じゃないか?なぁマリン」
マリンは意に介さず。
「損傷はまだ軽微だ、バルディオス・ゴー!」
体勢を立て直したバルディオスは背中のノズルを輝かせて戦艦へ向かっていった。
遠く離れた空中、自分に向かってくるミサイル1発を短機関砲で撃ち落したシンのザク。
「危なかった・・・・ん? ダガーが離れていく!」
シンのシートのスピーカーが、後退していく戦闘集団の無線交信を拾っていた。
「巨大兵器らしきもの出現!」
「対空電探はどうしたぁ!捕捉しなかったのか!」
「反応ありませんでした!」
シンは発進前のやりとりをふと思い出す。
「あいつら一瞬、って言ってたな・・・まさか!?」
ミネルバのブリッジ、ホーク姉妹も同様の反応を示す。
「メイリン、今あいつらが来たの、気付いた?」
「レーダーには何も映らなかった・・・」
「あいつら一体何なんだ・・・?」
シンの口癖がふと口を突いて出た。
投下終了
シン、すまないがザクに乗ってる間はどうがんばっても活躍無理っすよ・・・
痛恨のミス 訂正 最後の2行
「あいつら一体何なんだ・・・?」
ザクのコックピットでは、いつもの口癖がふとシンの口を突いて出た。
申し訳ない。
まとめwikiに載せてくれている人が表現を直してくださってるのは助かります。
至らない点を補ってくださって有難うございます
投下作者様乙です。
予約も無いようなので投下させていただきます。
第9話 明かされた真実
廃墟とかしたコロニーメンデル…。
そこに案内された、ラクス・クラインとその騎士スザク…そして因縁があるキラ・ヤマトとムウ・ラ・フラガ……
エターナルに止めを刺すことができなく不満を残すビスマルクもまた、この場所にと集められた、
護衛としてきたディアッカ、そしてザフト側のイザークは建物の外で待っている。
彼ら二人もまた戦友であり、同じクルーゼ隊にいた仲間である。
「どうしてお前が!」
「……ナチュラルだの、コーディネイターで戦争をしている場合じゃないってことなんだよ。イザーク」
そんな2人の会話を聞き、ラクスは心を痛める。ここにもまた戦場によって己の友を討たなくてはいけないという、
悲劇が齎されるのか…。スザクはラクスを気づかいながら移動する。
「クルーゼ、何か考えがあってのことだろうな?とどめを刺すことは出来たのだ。それを止めるとは……」
ビスマルクは暗い廊下を歩きながら前を歩くクルーゼに問いかける。
クルーゼはそんなビスマルクの言葉に振り向かずに答える。
「この戦いの意味を知らずして、勝利を手に入れたところで、それは何にもならない。
私のこの無限に湧く憎悪は決して潤うことは出来ない。
だからこそ、私の本当の敵である彼らには知ってもらわなければいけない。
そうでなければ……」
クルーゼから発せられる、その強烈な殺気。
その原因がここにはあるというのか。
ビスマルクは、建物の廊下の先、一つの扉があることに気がついた。
そこに開かれたのは様々なガラスのカプセルなど、実験道具などが置かれた場所である。
キラとムウ、そしてラクス、スザクは敵の護衛に拳銃を突きつけられた状態で、その部屋の中にとはいっていく。
冷たく、暗いその場にと…
「……ここが私の生まれた場所だ」
「なに?」
ムウは、その廃墟とかした様々な実験機械のある周りを見渡す。
「……人間が、昔から何を求めているか知っているか?
古代エジプト、そして旧世紀における独裁者…誰もが望んだことは不老不死と呼ばれるものであった」
クルーゼは振り返り、ラクス・クラインを睨む。
その仮面の下…彼が何を考えているかはわからないが、ラクスは、ただ、クルーゼとの対話を望んでもいた。
平和の解決に結びつくことを考えて……。
「不老不死…」
スザクは、思い出す。彼の前にもその存在は現れた。
そして、その力を持ち世界の変革を行なおうとしたものがいたことを…。
「だが、人間にはそれを可能とする技術が未だに存在しない。
よって、それを代用する技術の実験が行なわれた。それが複製だ。
同じ人間を複製することで、その人間は新たに生まれ変わり、その人間のDNAは永遠に生き続けることとなる」
クルーゼは朽ちたその場所を歩きながら話す。
「……愚かな、DNAは同じとはいえ、記憶までを複製できるわけではない。
形が同じとはいえ、その後の環境に左右され人間などどうとでもなる」
その言葉を聞いたビスマルクはくだらないといわんばかりに告げる。
「その通りだ。だが、人間は手に入れた科学技術というのは、使わないといられないのだよ。
そして私は生まれた。ムウ・ラ・フラガ…貴様の父親に」
「親父に……だと?」
「ムウさんの!?」
ムウは、その言葉がにわかに、信じがたい。
だが、そうであるならば、幾度と無く戦場で交えてきた。
その互いの存在を感じられるという、あの能力の説明はつく。
「私は複製人間として、この世に生を受けた。
だが、私以外にもここで生まれた存在はいる。それがキラ・ヤマト…君だよ」
「!?」
キラは言葉を失う。
まさか……自分もここで。実験道具として生まれたというのか?
だけど、僕がカガリと兄妹として…。
「君は、類稀なコーディネイターとして、生まれた。私とは違って…。
私はDNAのトロメアが複製のため短かったのだ。よって老化現象も早い。
私は失敗作だったのだ!!それを知ると、ムウ・ラ・フラガ…お前の父親は私を捨てた。
ゴミのようにな。そして、私は誓ったのだ。
人間の醜い部分を見続けた私ができる事は、その醜さでこの世界を覆いつくし、そして…、この世界を破滅に追いやろうと!!」
クルーゼは、声たからに笑いながら、そこにいるものたちを見る。
スザクは感じていた。
このラウ・ル・クルーゼ…最初に感じていた禍々しい雰囲気は、そこから来ていたのかと。
人間を滅亡させてもなお、余る、強烈な憎悪。この存在がCの世界が指し示した排除しなくてはいけない、存在だというのか。
「それが、お前の狙いか!随分と勝手な理由だな、それに巻き込まれた身にもなってみろ!」
ムウはクルーゼに向かって怒鳴る。クルーゼはそんなムウのほうを見て、微笑む。そこには余裕が感じられる。
「私にはわかるよ。人間の心の奥底にあるものが、結局は誰もが同じであると…」
クルーゼは仮面の目の部分を開く。そこには赤き光が輝いている。それこそはギアスの印。
それを知るスザク、ビスマルク、そして……ラクスが驚く。
クルーゼは、その赤き目を輝かせ、周りを見渡す。
「私には、この悪魔の力がある。お前達の心の声などは手に取るようにわかるのさ」
スザクは、背後で銃を突きつける兵士を振り向きざまに、肘で顔を殴る。
スザクを止めようとしたもう1人の兵士はキラとムウが押さえつける。
ビスマルクは、どうすればいいべきか、考えあぐねながらも、その場を立ち去ることにする。
クルーゼは、そのことを知っていたかのように、微笑みながら、
朽ちた研究所の瓦礫の中にと姿を隠し、ビスマルクと同じく逃げていく。
ラクスは、そのクルーゼの真意を知り、彼もまたギアスユーザーであることを知った。
彼は自分と同じなのだろうか…、自分もギアスに取り込まれることであーなってしまうのか。
『あなたは、あなたの想いで世界を一つに纏めるのでしょう?』
私の中にいる、私とは別の私が優しく語りかける。それは悪魔のささやきであることにかわりはない。
ギアスによる世界統一。
それは、クルーゼ隊長が言うギアスによる世界の破壊とは違うように聞こえる。
だけど、ギアスを持って行なうそれは、結局変わりがないのではないか?
それを持ってしてでも、世界を守るしかないのか……。
「ラクス!ここは逃げよう」
「はい!わかりました」
ラクスはスザクの手を握り、その場から離れる。廊下を走る中、ラクスは振り返る。
この場所でクルーゼ隊長の憎悪は始まった。
私は?私は人を憎悪しているのか…。
いいえ、私は平和のために……。平和をもたらすためには……。
「……ラウ・ル・クルーゼ。貴様、わざと逃がしたな?あいつらのことを……どういうつもりだ!!」
ビスマルクはギャラハッドに乗り込むと逃げ出したランスロットたちを追撃しようと試みる。
クルーゼは、そんなビスマルクの言葉を聞きながら、戦場の声を聞いていた。
クルーゼのギアスは『心を読む』もの。相手の心理など、これを見ればすぐにわかる。
「フ…どうやら、この世界は、何が起ころうとも破滅に導けるようだ」
「どういう意味だ!?」
「そんなことよりも、ここは一度撤退するぞ。彼らとの決着は、このような場所でするべきではない」
クルーゼはそういうと、ビスマルクから離れていく。
ビスマルクは、クルーゼが何を狙っているかは定かではないが、
こちらとしても連合の足止めのために戦力を消費しているのは事実だと判断し、撤退を決断する。
「ちっ!!俺の折角の楽しみが、あの男…ラウ・ル・クルーゼめ、あいつだけはゆるせねぇ!」
ルキアーノは連合軍相手に徹底的な殺戮をおこない、
ブーステッドマンと戦闘を行っていたが、その撤退命令に感情を露にする。
クルーゼはヴェサリウスに撤退をしながら、計画を実行する。
ヴェサリウスから放たれた船…。
『連合軍に、人質を解放する』
そこに乗っているのはフレイである。
フレイは自分の存在を教えようと見えるアークエンジェルに声をだす。
その声はオープンチャンネルになっており、戦場に聞こえる。
ルキアーノはその震える声に快感を覚え、避難船にライフルを向ける。
「アハハハハ、あんな男の計画通りにさせるかよ!」
ルキアーノはライフルを向ける。声を駆けつけたキラが向かうが、間に合わない。
「ちっ!」
そこにブーステッドマンがルキアーノを止めるべく攻撃を仕掛ける。
『人質を、救い出す!あれはアルスター家のご息女だ!』
それはナタルである。本来ならばキラに返すべきなのだろう。
だが、今の状態では仕方が無い。ナタルは、隠しメッセージをアークエンジェルに送る。
艦内のことはアズラエルにはよくわからないはずだ。
『ちょっと待て!罠だっていう可能性もあるんじゃないのか?』
アズラエルは、ナタルが救出しようとするのを止める。
フレイはその回線の割り込みの声を聞いて、自分が撃ち落されるかもしれないという不安に陥る。
「私、私は戦争を終わらす鍵を持っている!」
『…へぇ〜面白いこというじゃない彼女』
アズラエルはその言葉を聞いて落ち着きを取り戻す。
ナタルはそんなアズラエルを見て
『懇願する彼女は敵といって、あのような戯言は信じるんですか?』
『だって、面白いじゃない。戦争を終わらせる鍵なんてね』
ブーステッドマンによりフレイは救出されることとなった。
ルキアーノも仕方が無く撤退することに、キラはフレイを目の前で助けることが出来なかった悔しさに、コクピットで唸る。
「フレぇええええいい!!!」
マリューにはナタルからの連絡が届いていた。
そこにはフレイ・アルスターは自分が責任を持って預かるということ。
そしていつでも、自分はアークエンジェルの投降を待っているということが示されていた。
ナタルの優しさにマリューは心を温める。
コロニーメンデルでの戦闘は終わりを告げた。
様々な思惑が巻き上がる中で、友人同士が互いに銃を向ける状態だけは続いていく。
そして…それを求め、復讐の連鎖を呼び起こそうとする存在がいることを、スザクは知った。
「可能性は高いだろうね、そのクルーゼって言う人がギアスを持ち、そんな考え方なら尚更だねぇー」
ロイドもセシルも、スザクの意見に同意した。
Cの世界が倒さなくてはいけないと、未来を覆う影だと示したのは…あのクルーゼだろう。
ギアス人の心を読む。それは敵としては厄介だ。
こちらの動きは全て読まれてしまう。動揺も誘えるだろう。
「…スザク君」
不安気なセシルに対してスザクは笑みを浮かべ
「大丈夫ですよ。それにこの戦争の元凶がつかめたんです。
彼を倒すことで、この世界の戦争は止めることができるかもしれません。
これは希望ですよ」
「……そうよね、そう考えないと……」
セシルもスザクの言葉から元気を貰い頷く。
そう、自分たちは…確実に前に進んでいる。
この先、戦いはラウ・ル・クルーゼを中心に進んでいくだろう。
あの人を止めなくては、復讐の連鎖は続き、この世界の未来は消失する。
だから止めなくちゃいけない。絶対に。
「…スザク、護衛、ありがとうございました」
ラクスが廊下にそって姿を現す。ロイドとセシルは礼だけして、その場から離れていく。
ロイドにいたっては、ちょっと見ていようと思ったが耳をセシルに引っ張られ強制的に退場させられる。
ラクスは微笑みながら、二人を見送る。
「かまわないですよ、ラクスがあれだけ冷静にいられたなんて……指揮官が板についてきましたね。
体調は大丈夫?」
「えぇ、今は落ち着いてます。おそらく、次の戦いは…ヤキンドゥーエ、ザフトの本拠地になるでしょう。
そこで、この戦争を終わらせます」
「はい、それが最後の戦いになるはずです。
この戦争を終わらして、ラクスの理想とする未来を作ればいい…」
ラクスはこくりと頷く。
「私も、覚悟を決めました。
この戦争を終わらせるために…平和を導くために、この身を捧げると…」
「ラクス…。僕は、君がどうしても無理をしているように思えてならない。だから…」
そんなスザクの身体にラクスは突然抱きつく。
スザクは何が起こったのかわからずに戸惑うが、
ラクスはスザクの背中に手を回し肩に顔を乗せ、目を閉じる。
「お願いします、スザク……ただ頷いてください。あなたの優しさが私の覚悟を、鈍らしてしまうから……」
「ラクス……わかったよ」
スザクはラクスの言葉を承諾する。
「……私は、平和を、この世界に平穏な世界を取り戻すために、この身を捧げます」
「うん……」
ラクスは目を開ける。
そしてスザクのぬくもりを感じながら、その自分の目の前に立つ、もう1人の黒き自分自身を見る。
『……平穏を取り戻すために、契約するのね』
それが悪魔の契約であっても、これ以上…友人同士が、人が死ぬのは見たくない。
そのためには、あなたと契約を結びましょう。
戦いを繰り返す存在を排除し、そして…ギアスの力を持ってして、この世界を……。
『その契約受け取りましたわ、私(ラクス)』
戦場は、次なる場所にと移る。
そう……復讐の連鎖は行なわれる。
クルーゼはそのために、フレイ・アルスターに持たせたのだ。
勝利のための鍵を…。
復讐の連鎖は誰に求められない。
決して、誰にも…。
投下終了です。
ラクスがギアスの力を受け入れた回となりました。
葛藤の中でそれしか手段がないと判断した結果です。
ギアスを使うって言うのは並大抵の精神じゃなきゃもたないってことです。
>>432 ダガーLが相手なら、活躍出来ると思うよ?
ていうか意味がわからん
シン達はいったいどういう立ち場にいて何をやっていていつの話でどういうifが発生しているのかがまったくわからん
>立場 MSや船を直して武装の極力ない巡視船まがい。付近航路の船舶の面倒を見て金をもらってる
>時期 CE77 種死終了から3年
>発生IF シン一行が異世界の巨大メカを偶然拾う羽目に。
それを平和監視部隊からよこせだのよこさないだの・・・・
がいちおう話の軸でいいんでしょうか・・・・
年代説明などは、まとめwikiに直してくだすって載ったほうの文章が非常によくできています
説明べたでスマソですが、こういうところです
うーん、ジャンク屋が傭兵やってるみたいなもの?
どっちにしても種世界じゃギルド化されてるからはっきりした方が良いと思うよ。
にしても艦長がホイホイMSに乗って前線に出て良いんだろうか
指揮系統がいい加減なザフトでも隊長と艦長は分けてたけど。
もしもスレはよくわからん話が多いな
オリジナル設定出まくりのもあるし
すげー
死ねとか言っちゃってるよw
このスレの某作品にケチをつけたとみなされたのだろう
狂儲がいるみたいだからな
いや、良く考えてみろ。
>>446はCCAアムロifスレに
>>445を送り返した。
だが、
>>447はCCAアムロifスレに
>>445がきたら迷惑だから氏ねとかいっている。
よって氏ねとか言っているのはCCAアムロifスレの人間であることが分かるわけだ。
後、
>>449はただの作品アンチだろw
451 :
445:2009/02/01(日) 02:48:58 ID:???
CCAアムロifスレって何?
CCAのアムロが種世界に来たらってIF系SSスレさ
そこの住民はとにかく保守的で融通が利かない
ここに統合するのを拒絶したっけな
統合するのを拒絶しただけで保守的で融通が利かないというのか、
最近はまともな教育も受けていない人間が増えてきたな……。
おや、保守的で融通の利かないお客さんのお出ましだ
統合の拒絶はその一例として挙げただけなんだけどね
どうやらまともな教育受けてないのは君のようだね・・・
とっとと巣に帰んな
455 :
445:2009/02/01(日) 03:25:23 ID:???
別に統合しなくて良いってならしなくてもいいだろ…常識的に考えて…
ずっと職人も来なくて保守が続いてるような所は統合した方がいいだろうが…
お前が言うな
統合する
↓
つぶす
↓
まとめて潰せて荒らしウマー
これがやりたかっただけだろ、統合しなかったスレ叩いてる荒らしは
叩くのが趣味らしいぞ
どうせなら俺の肩を叩いてくれ
100mのロボが寝れる滑走路があったり50mもあるメカが納まるドックがあったり
大型巡視船てかいてあるけどタケミカズチみたいな空母かな。
そういやスパロボZで不思議なんだがバルディオスやダイターン3なんてどうやって積んでんだ。
キングビアル以外は無理だろ
失敬失敬、ドックの方は基地だっけ
>>450 今度からは気軽に死ねとか言わないようにな447=450
>>460 スパロボのアーガマは基本四次元ポケットに近い
「アーガマの底が抜けそうだぜ」なんて台詞もあったな
とりあえず通報した
Z、マクロス、ゾイドは統合すべき
そこら辺は書き手が居ないから取り潰しで新シャアで語る〜に名を変えるのも良し
>>460 ダイターンは確か甲板に立ってろと言われたこともある
Wikiより大きさ比較
バルディオス
全長 100.0m
重量 900.0t
ザムザザー
全高 47.13m
重量 526.45t
デストロイガンダム
全高 56.30m
頭頂高 38.07m
重量 404.93t
インパルスガンダム
全高 17.76m
重量 63.54t
どうみても脅威だろJk
これを抱えて白を切ってたら
戦争がしたいのか!>そりゃおまえらだろと言われても仕方ねえ
>>466 他二つは知らんがマクロスは書き手がいるぞ
それと単独スレの維持が出来なくなってからでいいだろ統合なんて
CCAアムロスレとかマクロススレはアムロやらマクロスやらの話題が山ほど濃く語られてるスレだぜ
統合したらここで永延その話題で進むぞ絶対『出て行け』って事になるね
ゾイドだけ今まで一度もSSが投下されてはいない
ただスパロボK次第だが今後、種XジェネシスのSSが投下されるかも知れない
>>471 スパロボで来るのならスクコマ2の後で旦那とのクロスオーバーが来てたな
スクコマ2は実際には、ダンナーと種死は全然クロスオーバーしてなかったけどな
しかしこの組み合わせで真っ先に思い浮かんだのが、静流死亡の際にキレたシンにブン殴られるゴオだった
ゾイドのほうも今2スレ目に突入して、前スレにはいくつか投下があったぞ。
結局、3スレ共書き手がいるって事ね。
ニセ情報が根拠のスレ潰しか、今後は統合系の話題はスルーで
AA荒らしの大量潰しの中での生き残りの為の統合スレだったんだが、
統合スレを論拠にしたスレ潰しが発生しちゃったな
>>473 原作準拠だとゴオってまんま凸と同じルート辿りそうだもんな
シンにロートルと見下される→実力発揮して見直される→ルゥや剣とのエピソードで再び失望される→そして
>>473の展開へ…
蟻は脅し目的で告訴をちらつかせた前科もあるし、一回逮捕されて現実を思い知ったほうがいい
統合だから「統一せねばならない」訳で総合とかなら「あいつらは統合するのを嫌ったからマジキチ」と言う流れは起こらない
最初にこのスレを立てた人間の配慮の無さと似たような事が何度も起きたのに変えなかった住民の無関心さが原因
前に荒れた時に対象スレが稼動してるなら特に統合する必要は無いと結論出てるんだから今更だよ
この議論、っていうか煽りはこれで終了
予告がないようなので投下します
第10話 ヤキン・ドゥーエ〜交錯する想い〜
「アハハハハハ!やったぁ、やったぁぞぉぉぉ!!」
アズラエルの目の前、まばゆい光が、前方を照らしている。
ニュートロンジャマーキャンセラを適応した核ミサイル攻撃による、ザフト軍宇宙要塞ボアズを壊滅させる。
圧倒的なまでのその攻撃力は、ザフトに大打撃を与えた。
ナタルはこの大量破壊兵器が、正義とは到底思えない。
いや、こんなものを使えば本当に世界を壊滅させかねない。
思い出すナタル……。
マリューに対して秘密裏に連絡を取りフレイの安全を約束したナタルに届いた、マリューからの返信。
そこには感謝とともに連合軍の惨状が書かれていた。
アラスカにて、自分たちをザフト共々、破壊兵器で殺そうとしたことなどが書かれていた。
いささか、信じられない話だったが……この様子を見ていると、あながち嘘とも言い切れない。
勝利のためなら同胞さえ捨て駒にし、手段を問わない。
ヤキンドゥーエにも、その核攻撃によるボアズ壊滅の報告はすぐに届いた。
怒りを露にするパトリック・ザラ…。
「おのれ、おのれぇえええ!!ナチュラル共め、もはや許しては置けん。あれの準備を始めろ」
兵士は敬礼をして、司令室から出て行く。
画面に映し出されるその核攻撃を受けるボアズの映像を見ながら、パトリック・ザラは拳を握り締めている。
続いて部屋にはいってきたのは、ラウ・ル・クルーゼである。
「…クルーゼ、どういうことだ!新型を与えてやったというのに、連合も、そして反逆者ラクス・クラインさえ仕留めきれないとは!」
「……申し訳ありません閣下。なんせ新型の性能が高いために、慣れるまで時間がかかりました。
もう大丈夫です。命令があれば攻撃に向かいますが?」
その言葉にパトリック・ザラは表情を変えてほほえむ。
「その必要はない。やつらはヤキン・ドゥーエにて迎え撃つ。奴らが野蛮な核を使うというのなら、私達は…ジェネシスを使うまでだ」
クルーゼには、パトリック・ザラの心が読めていた。
彼にはもっと、怒りを燃料として、頑張ってもらわなくてはいけない。
そう、連合を地球圏を焼き続けてもらうために。
両者共倒れにならなくては意味がないのだから。
拮抗した戦力による永遠ともつかぬ争い。
それこそが、復讐の連鎖を生み、暴力の応酬を生み出す。
世界は、恐怖と破壊により争い続ける。
醜さを現した人間など、そうやって滅びるのが、一番なのだ。
なんとも面白い。
すべてはこのギアスにより、人間の精神構造を読めるようになってからだ。
これのおかげで私の計画はより完全となったのだ。
ギアスという手段を用い、この世界は大きな花火のように散っていく。
私を人体実験道具として生み出した愚かな者達に思い知らしてやるのだ。
私の人生は復讐だった。
造り上げ、欠陥・失敗作というレッテルを貼り、捨てた者達よ。
お前達は、その欠陥品によりその種族の明日を閉ざされる。
フフフ……フハハハハハハハハ。
エターナル、アークエンジェル、クサナギは、補給作業を並行して行ないながら進路を、ヤキンドゥーエにと向けた。
先の攻撃により、かなりの被害をうけた。
おそらくは、双方の戦闘の直前か直後に到達となるだろう。
「……私達は、戦いの中心にある存在を倒します。
ザフト軍、パトリック・ザラ。連合軍、ドミニオン…ムルタ・アズラエル、そして戦争を巻き起こす存在、ラウ・ル・クルーゼ」
ラクスの言葉、それは今までのただの平和主義とは異なる。
しかし、彼女の平和に対する考え方は、変わらない。
なるべくなら人を殺さないように……。
倒すべき存在はその3人だけなのだ。
後は……自分がもつギアスに操られているようなもの。
ラクスは、自分の隣にたつ、自分にしか見えない存在…『黒きラクス』の存在を感じながら、
ただ一刻も早くこの戦闘が終わることを望んだ。
『…平和のためにギアスを用いる。あなたをみんなが見れば、あなたに従えば、戦争は終わりますわ。
そうすれば誰も争いの起きない素晴らしい世界が造り上げることができます』
そうでしょうね、それは世界の征服と変わりはない。
なぜなら誰もが私を見るのです。私しか見ないのですから……。
『そうでもしなきゃ、この戦争は終わらないわ。
あなたにしか終わらせることが出来ないんですもの……』
悪を持って巨悪を制す。
それが正しい手段とは到底思えませんわ。
だけど今はそれしかできないのでしょうね。
私は力を欲しました。そして、それはこのような状況を打破するために……持ったものですから。
スザクは格納庫にいて最終的な装備の点検を行なっていた。
ロイドとセシルもそこにはいる。
ランスロット・トラファルガーには新たな剣が用意された。
それは激戦とかするだろう、戦いを制するためのもの。
「……アーサーの剣」
それが与えられた名前。
細長いその剣が熱を帯び、触れたものを溶かす、と斬るの両方を行なうものである。
「私達にはこういったことしか出来ないから」
「後は君次第だね〜、ぜひ勝ってきて欲しいな?騎士団との戦いじゃ負け戦だったからねぇ〜」
「……わかりましたロイドさん、セシルさん。必ず特派の名前にかけて」
スザクはロイドとセシルに敬礼をする。
「頑張ってねぇ〜〜、応援しているよ〜」
「スザク君、ラクスさんのことは私達がフォローするから」
スザクは頭を下げて、2人にラクスのことを任せることとなった。
ラクスの歌がこの世界を、変える。
争いを終わらせるために。
スザクはそう信じていた。
ロイドとセシルは接近しているであろう、最後の戦いを思いながらも、やはりラクス・クラインに対する不信感は消えないでいた。
だが、今それをスザクにいったところでプラスには働かない。
ならば、彼を励ますために嘘をつくことも必要である。
ヤキンドゥーエでは、既に連合軍の核攻撃部隊、ピースメーカー隊が攻撃を開始していた。
護衛するためのMS部隊も発進し、連合軍の総攻撃が始まっている。
ピースメーカー隊を防ぐためにザフトMSも出撃を始めている。
だが、それらを待っているのはブーステッドマンたちである。
「ダメだよ、アレの邪魔をしちゃ……とっても綺麗なんだから」
「させるかぁあああああ!!」
イザークが奮闘するものの、敵の物量の前には、彼1人戦ったところで、その数を抑えることは難しい。
その戦闘の様子を眺めるナタルは唇をかみながら、様子を見つめる。
心配そうに、前を見ているフレイ・アルスター…彼女もまた、己の決断にて、この戦艦のオペレーターを選んだ1人である。
ナタルとしても月においていけば、再び戦火に巻き込まれる可能性があったため、
傍においておくのが安全とも思えた。
どちらにしろ、危険の可能性は残されてはいるが…。
「愚かなコーディネイターに、裁きの鉄槌をくだしてやりましょう」
ピースメーカー隊の前進はもはや食い止められるものではなくなりつつあった。
だが、そこに、現れた影が、ピースメーカー隊を次々と撃破していく。
イザークは、驚きの表情で、それを見た。
『私は、ラクス・クラインです。
連合軍の皆様にお伝えします。
私達は、貴方方の、戦争をしない方々に対する核攻撃を許しません。
戦争を繰り返し、憎しみだけを生み出す行動は、ザフトであれ連合であれ…行なってはいけないことなのです。
私達は、戦争を終わらせにきました。
そのために、平和を訴えるために……今は武器を取りましょう。
貴方達に家族があるのなら、大切な方がいるのなら、考えてください。
戦争を、人が哀しむ行為を繰り返すことになんの意味があるのかということを……』
ラクス・クライン率いるエターナル、アークエンジェル、クサナギの部隊が姿を現す。
ピースメーカーを落としているのはキラ、アスランたちである。
彼らには強力なミーティアという換装パーツを渡しており、これで高出力の攻撃が可能であり機動性も格段に上がる。
対の敵もこれでなら、かなり有利に戦闘を行なえるだろう。
ラクスの言葉が戦場に響きわたる。
それが通じることを信じるラクスだが、現実はそう甘いものではないということも知っている。
だからこそ、自分たちは戦う。
「ランスロット・トラファルガー、発進します」
格納庫にて発進の号令をかけるスザク…。
そのタイミングで、声が聞こえた。
『…スザク、私の騎士。あなたとともに、私もここで戦います。
この世界に未来を齎すために、手をとり……ともに行きましょう』
「イエス・ユア・マジェスティ」
スザクのランスロットは、エナジーウィングを広げ宇宙にと飛び立つ。
最初の目標は、ピースメーカー隊、核攻撃部隊を倒すことである。
連合軍との戦闘に突入する。
マリューもまた、最後の戦いを行なうために、宿敵である、ドミニオンの元に向かう。
ディアッカもまた、親友であるイザークの援護と回る。
誰もが思い思いを胸にして戦場を駆ける。そこにあるには絶望なのか?
希望なのかはわからない。
だが、今動かなければ、後悔をしてしまう。
それだけは避けなくてはいけない。自分の今できるべきことをしなくてはいけないのだ。
ランスロット・トラファルガーは、戦場で核攻撃を行なうそのピースメーカー隊のミサイル迎撃から始める。
一発でもプラントにあたれば、それだけで致命傷になりかねない。
そう、それはあの自分達の世界で行なわれたフレイヤに相当する。
『枢木スザク!!ここで終わりにしてやる!!』
それはルキアーノ・ブラッドリーである。
エターナルを人質として投降を迫った彼は、再び彼を背後から強襲しようとしたのである。
勝てば、例え卑怯な手段であれ正当化される。
そうやって彼はラウンズにまで上り詰め、ブリタニアの吸血鬼という異名まで轟かせたのだ。
「ルキアーノ!!」
スザクはその強力な回転するランサーをルキアーノの頭上を飛び越えるように、回避し、ルキアーノの背後にと回る。
すぐに振り向くルキアーノ。
『お前は前から気に入らなかったんだ。澄ました顔をしやがって!イレブンの癖に』
「……僕はイレブンじゃない。日本人だ!」
スザクは、アーサーの剣を握り、ルキアーノ目掛け、突っ込む。
『アハハ、返り討ちにしてやる!』
ルキアーノはランサーをかまえ串刺しにしようとした。
だが、ランスロットは、まるで光のように自分を通り過ぎる。
『!?』
なぜ、なぜあいつが後に?
あいつは…自分に串刺しにされて死ぬんだ、そ、そうだ…このラウンズである俺が二度も負けるはずがない。
負けるはずが……。
ルキアーノの操るパーシヴァルの機体が上下真っ二つに割れるとともに爆発を起こす。
スザクは、彼に言葉をかけることもなく、ピースメーカー部隊にと向かう。
支援
「不沈艦、アークエンジェル……今日こそ仕留めて差し上げましょう!」
ドミニオン…ナタルとアズラエルの前にと姿を現すアークエンジェル。
マリューは、そこにいるであろう友人を思う。
ラクスが語ったこと……立場を違えてもなお友人という関係は変わらないはず……。
マリューは、受話器をとった。
ドミニオンに直接通信を開く。
その行動にミリアリアやサイ、ナタルを知る者たちは、黙って彼女の行動を見届ける。
『……この期におよび、何か御用ですか?ラミアス艦長』
ナタルは、素っ気無く告げる。だが、それでもなお、回線を開くというのは彼女もまたこちらと話がしたかったためであろう。
マリューは、ナタルを見つめ、ただ微笑む。
ナタルは、マリューの行動の意図が分からない。
『なにをしているんだ!?艦長!敵と連絡している場合ではないはずだ!』
ナタルの隣、画面に映りこむスーツの男、アズラエル……。
それこそが、この戦争を拡大化させる存在。
ナタルは、何も言わず、視線でそれをマリューにと告げる。
「……核攻撃を、やめてください」
マリューは、アズラエルに向けて声を出す。
アズラエルは、そのマリューの言葉に取り乱した表情から冷静な表情にと戻ると同時に高らかに笑い声を上げる。
『今更、なにをいっているんだい?
状況はどう考えてもこちらのほうが勝っている。
だいたい、コーディネイター側から仕掛けた戦争だ。
僕たちがやめる理由なんかないんだよ。
あいつらを討たなければこちらが討たれるんだ!
自己を防衛する必要があるんだよ。
あなたみたいな、国家を裏切った人間にはわからないだろうけどね〜』
「……私は、戦いを見てきました。
あなたのように書類と一部の映像ではなく、現実に触れてきました。
そこでは、戦争に苦しむ人間…そこにはナチュラルもコーディネイターもありません。
戦いは、悲劇しか生み出さない。
そして、今私達はナチュラルもコーディネイターも一緒にいます。
争いなど起こさずにともに手を取り合っています。
私達ができて、他の人が出来ないはずがないんです」
マリューは力強くアズラエルに告げる。アズラエルは鼻で笑いながら、回線を切ろうとした。これ以上、話が通じない人間と話をしても無駄だと判断したからである。
「ナタル…、あなたとの約束は守るわ。絶対に」
『……』
回線が閉じる。
約束…今度は、戦場のない場所で会おうという約束。
ナタルは、目を閉じ、そのアラスカでの言葉を思い出す。
軍規には従わなくてはいけない。そうでなければ組織は成り立つことはないからである。
だが、ラクスの言葉がどうにも引っ掛かる。
そしてラミアス艦長の優しさが…。
「くっ、ピースメーカー隊がほぼ壊滅とは、あの3人はなにをしているんですかね。
こうなったら月のプトレマイオスから増援を呼び寄せて攻撃を…」
アズラエルはだんだんと苛立ちを見せてきた。
受話器を握り回線を開く。
『既に艦隊は出撃しています。すぐにそちらに到達するでしょう』
「頼んだよ、新たなピースメーカー隊も配備させるんだ」
アズラエルは、とっとと勝負を決したかった。
なんせ、ナタルが言うことを聞かないからである。
不審な動きを見せるようなことがあれば、とっとと始末をつけてしまおうと考えていた。
「敵の増援を確認しました!」
ヤキン・ドゥーエにて、パトリック・ザラはそのタイミングを見計らっていた。
そして、そのときはようやく訪れた。
敵が物量で来るのは分かっている。
「目標プトレマイオスクレーター!」
「了解、ジェネシス攻撃態勢に移行、ミラージュコロイド開放、PS装甲展開」
「目標誤差修正…」
姿を現すその巨大なレーザー砲……そこから光が収束されていく。
「ジェネシス発射!」
その掛け声とともに、強力な光が宇宙を走る。
投下終了です。
13話くらいで決着がつけられればと思います。
今回は、アニメ本編と同じようにジェネシス発射で終わりにしています。
支援ありがとうございました。
490 :
166:2009/02/01(日) 23:02:34 ID:???
こんばんは、機動戦士ΞガンダムSEED Destiny筆者の166です。
すみません、結局1月中は投下出来ずに終わってしまいました;
またバトルシーンの回なもので、(7)の時と同様に文量が増大していて純粋に執筆時間がかかっている上に、
仕事の方もかなり忙しくてその分も余計に遅延を招いている状況であります。
今回も1回では投下しきれない、最低でも前後編になるのは確定しておりますので、
もうしばらくお待ちいただければ幸いです。
もっとも、職人の皆様がそれぞれにご活躍して下さっておりますので、自分があせる必要も無いのかな?
と言う妙に安心感もある様な気も致しますが(苦笑)
とりあえず、今回は(8)から引っ張って来てしまっておりましたオリ設定の一つ、
セイバーをどんな風に改修したのか?はお見せできる予定です。
そんな感じで、ひとまず生存のご報告まで
乙
続きを待ってる人もいるみたいだけど
無理のない範囲でやんなっせ
>>490 当たり前のように続きは待ってる
けど当然無理はしないでほしい
なんてったってリアルが第一
>>477 シンだと静流死亡のシーンでまず自分を攻めて追い込みそうなイメージが
そういや昔インパルスと飛ばされてインパルス改とジェットボーイ等ボーイ級をシルエット代わりに戦う構想練ってたけど挫折した覚えが……
つかダンナーとクロスするなら、シン1人よりも、多くのMSが擬態獣と戦う方が面白そうな気がする
原作だって、ゴーダンナーだけじゃなくて各国のロボ達が協力して事にあたってたりするし
純粋なパワーはサイズ差の関係でダンナー系列のロボのが上だろうが、運用できる火力と汎用性は種のが上だから、擬態獣とも普通に戦えるだろ
ゴーダンナーはどちらかといえばスーパー系の世界観だからそこにMSの軍隊を送り込んでもミスマッチにしかならないんじゃ?
立場としてはマジンガーとかゲッターだぜあの世界の各国のロボ
>>494 某同人にコペルニクスの前にデビルガンダム、ベータ、擬態獣、インベイダー(チェンゲ)、エイリアン(ソーマ)が襲来してプラントと連合が同盟を結んで地球の脅威と戦う事になり
ピンチの度に盟主王がコスプレをしてスティルボンバーで戦ったりコーウェン&スティンガーと復活したグレートウォン&ウルベが死んだニコルやまりもをDG細胞で復活させインベイダーに食わせたゾンビインベイダー兵にし言葉責めにする作品があった。
因みにトールはグラスパーから晴れて新型機のトートに乗り変えた次の横浜基地戦でトートが暴走しトートエイリアンの鉄拳を食らい潰れたトマトに…
>>496 とりあえずとんでもない鬱作品と言うのは理解した。
>>494 確かに擬態獣相手だったら、そこまで絶望的な戦力差は感じないな
並の擬態獣程度だったら、運命でも真っ二つに出来そうだし
>>495 一応量産型で組織された軍隊はちゃんと存在してるけどね
言うほどミスマッチでは無いと個人的には思ってるんだが
予約が無いようなので投下します
歴代ガンダム&主人公が一斉に種世界に来たら
第11話 魅了する歌姫
放たれた巨大なジェネシスの輝きは、
射線上にある連合軍増援艦隊を飲み込み、
連合軍基地であるプトレマイオスクレーターに突き刺さる。
その巨大な光の柱は、ヤキン・ドゥーエからもしっかりと見ることが出来た。
そのおそるべき攻撃に、ラクスは、とうとうこのような攻撃の応酬が始まってしまったのかと、目を閉じて考える。
『一度放たれた、銃弾は元には戻らないわ。誰もあなたの言葉を聞こうとはしない。
ならば、その言葉を聞くように仕向けなくてはいけないでしょ?』
耳元に囁きかける、黒き自分の姿。
「……もう、それしかないのですね」
『そう、あなたにならできるわ。魅了させましょう。
あの狂気の中心に向かえば、すぐにでもできるわ。時間もないですわ。
いつ…あれが地球に向けられるか…』
「……わかっています」
ラクスは、囁き続ける自分の幻を振り払うように立ち上がる。
「目標、ジェネシスに……あの兵器を破壊します。
アークエンジェルはドミニオンを押さえている間に決着をつけますわ」
バルドフェルドがそれに従う。復讐の連鎖、暴力の応酬はここで終わらせる。
終わらせなくてはいけない。
そのために私のギアス、力は受け取ったのだから。
「……なんだ、なんなんだよ!あれはぁ!!何がナチュラルの野蛮な核だ。
あんなとんでもない兵器のほうが遥に野蛮じゃないか!!」
ドミニオンに搭乗するアズラエルはその破壊力に席から立ち上がり怒鳴り散らす
ドミニオンに次々と被害報告が出される。
「生き残った部隊は、被害を受けた艦隊の救助に当たれ」
「ダメだ!!」
アズラエルは、ナタルに向かって叫ぶ。
ナタルはその既に正気を失っているのではないかというアズラエルの形相に、身を引く。
「あんな!あんな恐ろしい武器が、地球に撃たれない可能性がどこにある!?
今すぐにでも、破壊しなくてはいけない。生存部隊は戦力を集中させて、核攻撃を続行する」
「見捨てろというのですか!?」
「あぁ、そうさ。今やらなくてはいけないことは、あの兵器を壊すことだけだ!!」
「……」
ナタルは、アズラエルの言葉に従い、席に着く。
おそらくは、この男とはどれだけ時間をかけて話をしたところで分かり合うことは出来ないだろう。
そして、このような状況下では、士気にも大きく関わる。
ラミアス艦長、あなたの道が正しいとは、はっきりとはいえません。
ですが……少なくともその気持ちはわかります。
あなたが約束を守るというのなら、私もそれに答えなくてはいけないのでしょう。
宇宙では既に戦闘が後半にはいっていた。
ジェネシスの攻撃により、連合軍はほぼ壊滅したが、
それでもピースメーカー隊、そしてナタルの発した総攻撃により、
連合軍攻撃部隊の全部隊が発進させられることなった。
その中を駆けるスザク。
『私達は、ジェネシスを掌握します。
アスランとカガリさんを護衛として、スザク…あなたもきていただけますか?』
「イエス・ユア・マジェスティ」
スザクはその大質量兵器フレイヤを遥に凌ぐ強力な兵器の登場に、
この世界の科学力とそして、世界は違っても、戦争は同じであるということを痛感していた。
人間とは、こうやって戦争を繰り返しているのか。
そして…それこそが、ラウ・ル・クルーゼという人間の策略なのか。
スザクは核攻撃部隊を、キラ達に任せ、自分はジェネシスにと向かう。
『アスランとカガリさんは、ジェネシスの破壊を……
私達は、内部からジェネシスのコントロールルームを抑えます』
エターナルは、アスランとカガリの護衛の中、ジェネシスに接近する。
スザクもまた、機動力で敵を撃墜していく。
「はぁああああ!!滅殺!」
「ラクスの道の邪魔はさせない!」
アスランの目はラクスによる忠誠に輝き、その力も相まってブーステッドマンを撃墜する。
ミーティアによる強力な攻撃力もあるだろう。
巨大なサーベルがレイダーを切り裂く。
それと同じように、他のブーステッドマンの操る機体もプラントを守ろうとするイザークと、
立場は違えど、志は同じなディアッカの2人のコンビネーションで撃墜する。
「道は開けたぜ、ラクス様」
ディアッカの言葉をあえて聞き流し、ラクスの艦を見逃すイザーク。
2人はそのまま他の連合軍部隊に攻撃に向かう。
ラクスは、自分の行いが正しいことを感じ始めていた。
分かり合える…そう、復讐の連鎖は止めることができる。
自分の力で…私は無力だった。だけど、それは変わろうとしている。
ギアスを授かったときから……。
ラクスはエターナルがジェネシスに接近、接岸したとき、アークエンジェルに回線を開いた。
「…ラミアス艦長、私達は今からジェンシスを止めてまいります。
あなたには、ぜひ、親友を……助け出して欲しいです。
きっとそれはあなたにしか出来ないことなのですから」
『…わかっています。ラクスさんも、どうかご無事で』
「はい」
回線を切るラクス。
ラクスはバルドフェルド、そしてロイドとセシルに後を任せて、ノーマルスーツに着替え、ジェネシスにと向かう。
戦いを終わらせるために…平和を求めるために。
一進一退の攻防が続いていく中で、アークエンジェルもまた、ドミニオンを追い詰めていた。
ディアッカ、イザークがザフト軍の体勢を立て直し、ピースメーカー部隊を迎撃。
さらにはアスランがブーステッドマンを撃墜したことが、
大きく敵の攻撃力を削ぐ形となった。
「悪いな、イザーク…手伝ってもらって」
『……勘違いするな、俺はお前達と手を組んだわけじゃない。
今倒すべき敵は、連合であるだけの話だ』
「はいはい…、わかってるよ」
ディアッカはイザークの背後に迫るストライクダガーを撃つ。
それと同時にイザークもまたディアッカの背後に迫ったピースメーカーのメビウスを撃墜する。
二人の息のあったコンビネーションは健在だ。
連合軍の旗艦ドミニオンは、窮地にと陥っていた。
正面には迫るアークエンジェルにナタルは唇を噛む。
ラミアス艦長との約束、軍規。どうすればいい…
どうすれば、私は、一体どうしたらいい。
ナタルが苦悶の表情を浮かべる中、フレイが立ち上がる。
「もうやめて!これ以上、アークエンジェルを!」
「うるさぁい!!」
いらついたアズラエルは、拳銃を抜き取りフレイに向ける。
フレイはその向けられたものに、はっと息を呑んでその場に座り込む。
「そんなものを持ち出して、どうするおつもりですか?
この艦を乗っ取るとでもいうのですか?」
「あぁ!?うるさいんだよ、あんたは。どうして僕の言うことが聞けないんだ!?
わかっているのか?あれが!あんなとんでもない兵器が地球に向けられてからじゃ遅いんだ。
早く、一刻も早くあれを潰さないといけないんだ。
こんなところで、あんな反逆の船に時間をとられている暇はないんだよ!!」
ナタルは目を閉じる。
ここで、この男を釘付けにし、アークエンジェルに討たれる。
それも悪くはないか。この混沌とした状況、
自分の道すらしっかりと決めることも出来ない私には…それがいいのかもしれない。
ラクスは、スザクとともにジェネシス内部、中央司令室に潜入する。
スザクのその格闘能力は、潜入工作には持って来いという所だろう。
次々と拳で相手の気を失わせていく。
さすがに殺害するのは、ラクスのいる前ではスザクは出来ない。
中央司令室では、パトリック・ザラが画面を見ながら、ジェネシスの第二射の準備を行なっていた。
彼は勝利が目前と迫った今、徹底的な打撃を与え勝利を収めようと考えていた。
その狂気に、周りの部下も驚きと恐怖を感じている。
「フ、ふふふ……我が軍は圧倒的じゃないか。
このまま決着をつけてやる。ボアズや、アラスカなどの復讐を今ここで果たしてくれる」
「お待ちなさい!」
振り返る一同。そこにはラクスとスザクが立っていた。
パトリック・ザラはその突如現れた、予想外の人間に一瞬、言葉を失う。
すぐにパトリック・ザラの隣の護衛が銃を抜き取ろうとするが、それをスザクは銃を向けて相手をいなす。
「…ラクス・クライン!?どうやって……」
「私は、貴方がたに戦争を、これ以上戦火の拡大を防ぐために参りました」
ラクスは敵前の中、臆することなく堂々と告げる。
「バカな、奴らは今もなおこちらに攻撃を仕掛けて来ている。
それをなぜやめなくてはいけない!撃たれる前に撃つのだ!」
パトリック・ザラは、ラクスに対して身振り手振りで説明する。
「そういった考え方が戦火を拡大しているとなぜ気がつかないのですか!」
「議長、これ以上の戦争継続おやめになってください。お願いします」
ラクスは強くパトリック・ザラに告げるが、パトリック・ザラは首を横に振りそれを拒否する。
「私は、誰がなんと言おうとも、ナチュラルを殲滅する。そのためのジェネシスだ!」
パトリック・ザラは振り返ると、発射のスイッチボタンに手をかける。
「やめてください!」
スザクが銃をかまえてパトリック・ザラを見る。
パトリック・ザラは振り返りスザクを見る。
「撃ちたいのなら撃ちたまえ。私は自分の信念を持っている。
そのためになら命など惜しくはない!!」
その強い信念…それとも、こちらが本当に彼を撃つ気はないということを知っているのか。
スザクはどうするべきか悩む。
ここで再びジェネシスが放たれるわけには行かない。
だからといってラクスの前で人を殺めることは……。
そのとき、その制御室に銃声が轟く。
スザクは自分の銃を見る。
放たれた形跡はない。
そこに立つのは1人の兵士である。
兵士は銃を握りながら大きく息を吐き、震えている。
「う、撃たなくてはいけない……そうだ、アスラン、そうだろう。私達がこの世界を変えなくては……」
パトリック・ザラは、そう最後までナチュラルに対する憎悪を口にして、意識を失う。
スザクは、そんなパトリック・ザラを前に、ただ何もすることが出来なかった自分が悔しかった。
他に手立てがなかったというのか。そんなことは…。
「皆さん、お願いがあります。手を貸してください。
これ以上、悲劇を繰り返してはいけません。
今ある命を助けるために……この無益な争いを止めるために!」
ラクスは、スザクを元気付けるため、さらには周りの者達に訴えかけるように告げる。
その声を聞いた者たちは、次々と動き始める。
この戦いを終わらすために……そう、戦争は何も生み出さないのだ。
「……スザク、ここは私にお任せください。あなたは連合軍と、そして倒さなくてはいけない敵の下へ」
「…ラクス、君も気をつけて。そして…君は本当に勇気のある人だ。僕の知る人にそっくりだよ」
スザクはラクスにそう微笑みかけてその場を後にする。
スザクの告げた人は…ユーフェミアである。
平和のために己の身を呈して奮闘する彼女、スザクはそんな彼女に惹かれた。
そして、今も……。
ラクスの力は、この世界を変える。
きっと…。
そして、そのためには…倒さなくてはいけない。
彼を…。
「……」
ラクスは、スザクを見送った後、息をつく。
『さすがに、彼の前でギアスを使ったのは覚悟が必要だったわね』
「……スザクには、私がこのような力を使っているなんて、思われたくないですもの」
ラクスは、周りの赤きギアスの光を受けた兵士たちを見ながら、小さな弱々しい声でつぶやく。
もはや止めることはできない。
こうしなければ、パトリック・ザラを止めることはできなかっただろう。
『後は、連合軍に呼びかけるのね。そして、この戦争は終わるわ。
あなたが平和の姫として、この世界の平和を構築するのよ』
「……えぇ」
黒き己の影の言葉にラクスはただ頷くことしかできない。
こうしなければダメだった。仕方が無かったのだ…。
ラクスは言い訳を続けながら、それでもなお自責の念に駆られ続ける。
『…安心して。あなたには私がいるわ。あなたは1人になんかならない。
スザクだってきっとわかってくれるわ。あなたのことを信用しきっているもの。
ギアスなんか使わなくてもいいくらい』
「スザクには、ギアスは使いません!絶対に…」
ラクスは、そこだけははっきりと拒否の視線を、黒き自分に言い放つ。
『フフ……そうですわね、あなたの大切な人ですものね』
黒いラクスは、ラクスを眺めながら微笑む。
大切な人であるスザク……。
だけれども、それを伝え、そして自分が幸せになる権利は自分にはない。
こうして幾多の人間を利用してしまっている、自分には……。
ただ罪と罰だけが残るだけでいい。幾多の人間が犠牲になるよりかは
自分だけが犠牲となればそれでいい。
ラクスは、回線を開き、戦場に戦う全て者に、声をかけ始めようとした。
「ラクス様!大変です、ジェネシスは生きています」
「!?」
ラクスは、前の画面を見る。
そこにはジェネシスが自動で時間が来ると自爆とともに発射するよう仕向けられている。
誰かが意図的に既に発射を行なおうとしていたということになる。誰が……。
『…戦いを繰り返そうとする方でしょうね』
「……」
それはたった一人しかいない。
スザクは、ランスロット・トラファルガーで戦場にと戻ろうとした。
だが、その前に現れる黒き機体。
「ここで、終わりにさせよう…」
ギャラハッドが正面に現れる。どうやら待ち伏せをしていたようだ。
スザクはもはや語るべきことはないと感じてアーサーの剣を向ける。
「はぁああああ!!」
ビスマルクとスザクの最後の戦いの火蓋が切っておとされるなか、静かに破滅に向かう時計は進んでいく。
「……そう、戦いは終わってはいけない、復讐の連鎖は永遠と続いていくのだ。人間は人間の醜さをだしあい、自滅するのだよ…」
プロヴィデンス・インビジブルに乗り、宇宙にと駆けるラウ・ル・クルーゼは微笑む。
投下終了です。
後2話で終わると思います。
ちょうど1クール(13話)で終わらそうと心がけていますので。
戦争において、復讐の永遠の繰り返しは、どこの話でも結構絡んでくる話ではありますね。
乙
しかし、どう考えてもおかしいよな…ナタルの思考…
ムル太の方が正しいだろ
魔乳のギアス?
それはそれでなんか恐ろしそうだな
ムルタの方が正しいに同意
ドミニオンごとぶつけることになってもジェネシス破壊しろよ、地球の軍人
>「もうやめて!これ以上、アークエンジェルを!」
>「うるさぁい!!」
> いらついたアズラエルは、拳銃を抜き取りフレイに向ける。
> フレイはその向けられたものに、はっと息を呑んでその場に座り込む。
>「そんなものを持ち出して、どうするおつもりですか?
> この艦を乗っ取るとでもいうのですか?」
いや普通に、戦闘中に敵艦を攻撃すんなとか言い出したフレイの方に問題あるだろ…
マジでギアスかけられてるとしか思えないぞナタル
本編はどうだったっけ?
ジェネシスで月基地と艦隊の半分が消滅
→撤退を考えるナタルに対し、アズラエルはプラントへの核攻撃を指示
→ナタルは、それじゃ脅威の排除にならないから、まずはジェネシスを潰す事を進言しようとする
→それを遮ってアズラエルが拳銃を突き付けながら命令
→その場は従うが、そうこうしてる間にAAが目前に来たので、アズラエルはローエングリンを撃とうとする
→あとは大体
>>510と一緒
UCのキャラがCEに来る話はあるけど、逆にCEのキャラが1年戦争に来る話はどうだろう。
ジャニーズを太平洋戦争に放り込むようなもんだぞ
つまり仮面ライダーGが太平洋戦争を舞台に戦う話か
ヴィンテージがなんだっけ?wwwwwwww
>>516 今、僕のヴィンテージが芳醇の時を迎える!
>>517 CEのMSはUCに比べると重すぎるとか否定的に扱われるけど、
あの重さでUCのMSと遜色ない機動性を確保したり可変させて飛ばしたりしてるのはスゲエんじゃねえの。
カラミティ乗せて飛べるレイダーみたいなMSなんてUCにないだろ。
ミノ粉なしで飛ばしてる時点で技術レベルがダンチだよなぁ
バッテリー技術なんて技術革命が起きかねないくらいの差があると思うぜ
実際
>>517のSSだと、コウがCEのバッテリー技術について感激してたな
Ξ氏のだとマフティーの方々が「なんてこった!連邦海軍はクゥエルを飛ばす装備を開発したのか!?」と驚愕していたな
だがそんな技術があってもミノ粉対策がないのでUCの戦場に出た瞬間ぶっ壊れると言う悲劇www
>>517 ああ、あのシンがブシドー化してガトーとバチバチやり合ってたヤツか
CEの世界は物理法則が違うので、同じMSをUCの世界で飛ばそうとしても浮きもしない可能性も・・・
そもそもCE世界のMSにUC世界の法則が通用するのか?
UC世界の法則がCE世界で通じるのもおかしいよな。
ミノ粉がなければUCのMSは製造できんハズだろ。クロスさせると何で造れるんだよ。
法則自体は共通だと思いたいが、推進系とか考えるとなぁ……
あと、ミノ粉はあくまで「発見」だから、同じように作れば同じように作用するはず。
一行目を考えると疑わしくなるけど。
そこまでガチガチに考えるとクロスなんて出来なくなるぞ
作品に必要な設定とそうでない設定を、適度なところで線引きしないと
予約が無いようなので投下します
第12話 明日への砲口
「はぁああああああ!!」
『うおぉぉぉぉぉ!!』
ギャラハッドとランスロットの戦いは続いていく。
機動性で勝るランスロットを相手に、ビスマルクはギアスの未来線を読みながら、スザクの動きを読んでいく。
スザクは、相手に完全に動きが読まれていることを感じながらも、それでも相手の反応を超えようともがく。
『残念だったな、枢木スザク、貴様の動きは全て読める。
そして、以前のようにお前に対しては一切の加減はしない。
隙も与えない。ここでお前は朽ちてもらう』
ギャラハッドは攻撃を回避しながら、的確にランスロットを剣で狙う。
スザクのランスロットのコクピットを狙うビスマルクは、強力な剣を何度も、突き刺そうと試みる。
動きが読まれているスザクは、何度もそれに阻まれ、相手にダメージを与えることが出来ない。
それよりか、相手の動きを回避することにかける集中力が大きく、彼の精神力と体力を奪っていく。
「はぁ、はぁ…」
『貴様の腕は確かだ。だからこそ惜しいな……』
ビスマルクは、攻撃を続けていたランスロットが距離をとったところで相手の体力の消耗を感じ取る。
枢木スザク……反逆の騎士。
ここにて因縁を断ち切らせてもらおう。
ビスマルクは、一気に距離を縮めて、決着をつけようと試みた。
相手の動きは読める。
剣をまっすぐにランスロットのコクピットめがけ突き刺そうとした。
スザクは、そこで自分に迫る強烈な殺気をコクピットから感じ、
そして自分の命が消えそうな瞬間を感じ取った。
そのとき、彼の中にあるギアス『生きろ』と呼ばれるものが覚醒する。
ギアスの瞳に灯る、赤き輝き…。
スザクは、ギアスの力を受け、ビスマルクの未来線を、恐るべき速さで行なう。
ビスマルクは、その速度についていけない。
『!?』
気がついたとき、ビスマルクの機体をスザクは真っ二つにと切り裂いていた。
突き入れようとした剣、それに対してスザクはランスロットの頭を中心に回転し、
剣を回避するとともに、背後に回りこみ、
そこから、ギャラハッドの背中めがけ、アーサーの剣をコクピットから貫通するように刺し込んでいた。
『……一度ならず、二度までも、この私が……』
「……教えてください。なぜ、あなたがこの世界に召喚されたのか」
『例え、どのような理由があろうとも私の理由は変わらない!
シャルル陛下、マリアンヌ様の理想……実現こそが、ナイトオブ……ワンである、私に課せられし……』
スザクは剣を引き抜き、その場から離れる。ビスマルクは薄れゆく意識の中で、思い出していた。
白き長い廊下の中、絵画の前で立つ自分……。
その絵画には、ある女が、人々を先導し、屍を踏みつけ行進する姿が描かれている。
その女…ビスマルクはふと気がついた。
それこそが本来の自分がここに呼び出されたことに対する理由というわけか…。
彼は答えがようやくわかりながら、その世界から姿を消した。
『皆さん、私はラクス・クラインです。空域で戦闘を行っている皆さんにお伝えします。
両軍直ちに双方に対する戦闘を停止してください。
現在、ジェネシスが自爆シークエンスにはいっており、このままでは地球圏にかけて、発射される可能性があります。
どうか、皆様の力をお貸しください。
私は、何度も言います。戦争は何も生み出しません。
残るのは悲しみだけなのです。
戦いは、人々を狂わせて、そして命を、今ある命を奪っていきます。
私達は、優れた科学を持ち、そして、こうして人類の生活圏を宇宙にまであげてまいりました。
それをもってしてもなお、なぜ愚かな戦争を続けるのでしょう。
私達は話し合えるはずです。お願いします。
どうか……互いの向けた銃口を、おろしてはいただけないでしょうか?
私達の戦いで傷つくのは人間だけではありません、人間はどこからきたのでしょうか?
それは地球です。
ナチュラルもコーディネイターも変わらず、私達は、地球から生み出された存在なのです。
愛する地球は決して我々だけのものではありません。
動物、植物、それは地球上で生み出され、そして宇宙に生活が移ったいまであっても、
それらの故郷であり、そして、地球でしか見ることの出来ない動植物が存在しています。
生きているんです』
ラクスは訴えかけるように言葉をつむいでいく。
それは、ザフトだけではなく、連合軍の通信にも割り込んで訴えかける。
ラクスは、自分の言葉を繰り返すように、指示をして、自分はギアスを使い、ザフトの兵士達に対し使用し魅了していく。
話だけで聞くものは少ない。
今やるべきことは、こうしたギアスでコントロールすることだけだ。
それは今までの経験で十分味わった。
誰も話など聞きはしない。悲劇だけが繰り返されていく。
だから、私は……。
ラクスは、そうすることしか出来ない人類に半ば絶望していた。
『そうですわ。
今はギアスを使い、あなたを中心とした世界を確立するのが1番なのですから…』
ラクスは悔しそうに唇をかみながらもギアスを使い続ける。
その副作用を忘れて…。
宇宙では、そのラクスの言葉が繰り返されていた。
平和を訴える彼女の声……そして地球圏全体に迫る危機。
ドミニオン艦橋では、その声を聞いたアズラエルがその声を聞いている。
ナタルはアズラエルの気が別の場所にむいているのを察知し、
軍隊でつちかった技術でアズラエルの銃を持つ腕を締め上げえる。
「うわぁああ!お、お前ぇ!今がどういうときかわかっているのか!?」
「少なくとも核攻撃を行なうのでしたら、アークエンジェルを攻撃するのではなく、ジェネシスを優先させるべきですね」
「くぅぅぅ…ぼ、僕にこんなことをしてただで済むと思っているのかぁ!?」
「……責任は私が取る。アズラエル理事を部屋に閉じ込めておけ」
ナタルは、銃で艦橋で取り出し、喚き散らして場を混乱させ、
感情的に陥る彼をここにおいておけばそれこそ、
今以上の混乱を起こしかねないと考えたため、その処置をとった。
無論、許されることはないだろう。だが、今やるべきことはザフトを倒すことではない、
地球圏に向けられているあの破壊兵器を倒すことだけを考えればいい。
『こちら、ドミニオン艦長、ナタル・バジルールである。連合軍部隊は、速やかにジェネシスの攻撃にあたれ。
艦は、先ほどの攻撃の救助に……、あれを地球に向けて撃たせてはいけない!』
その声…マリューは、ドミニオンが、アークエンジェルに向けられていた砲身を変えてジェネシスに向けたのを見て、
自分の意図が伝わったと感じた。
「……ナタル、供に……行ってくれるのね?」
マリューはアークエンジェルの隣を進むドミニオンを見て、通信を送る。
返事はすぐに返ってくる
『…約束は果たせそうにありませんが、ですが…今、自分が何をすべきかわかっているつもりです』
ナタルの言葉…。おそらくはひと悶着あったのだろう。
彼女を助けることはしたい。だが、今はそれよりもジェネシスを止めるのが先決だ。
マリューは、前を見る。
今まさに、先ほどまで戦っていたものたちが、暴走するジェネシスを止めようと一致団結しようとしている。
人間は……まだまだ、こうして1つになることができる。
『こちら、バルドフェルドだ。ザフト、連合軍がジェネシスに対して攻撃を開始している。
どうやら、声が届いたようだ。俺達も今から攻撃を開始する』
中央司令室にて、ラクスは振り返り、画面に映るバルドフェルドの言葉に驚く。
そんな……、自分の言葉が届いた?
あれだけ訴えかけたというのにもかかわらず、誰も聞こうとはしなかったのに、どうして今になって……。
ラクスは、今自分が行なっているギアスの無意味さを感じた。
そんな……自分のやっていたことは無意味だったというのか。
元から信じればよかったというのか。
自分自身の力を。
だって、それじゃー…。
ラクスは言葉を失ってしまう。
「……そう、人間は、1つの脅威に対して、1つになることができる」
それはルルーシュが行なったことと同じだ。
自分を全世界の敵と示すことで世界を纏めようとした。今、それが起こっている。
ラクスの言葉が引金となって…。ラクス、君の声は今、届いた。
スザクは、そのジェネシスに向かう、軍を人種を超えたものたちでジェネシスに攻撃を仕掛ける。
勿論、そこにはアークエンジェル、エターナルたちも含まれている。
「キラ。アスランたちは既に向かっている俺達もいくぞ」
「はい!ムウさん」
キラとムウもその戦列に加わり、攻撃を仕掛けようとしていた。
だが、そんなムウのストライク目掛け放たれるビーム。
「うわぁあああ!!」
「ムウさん!!」
ムウの悲鳴とともに、周りにある艦艇やMSが次々と爆発していく。
それこそはドラグーンシステムを搭載し、ナイトメアフレームの強力な運動性を参考にと改良を重ねた、
プロヴィデンス・インビジブルである。
『ちっ……、まさか、こうなるとは。この私の考えが裏目にでたか』
クルーゼは、ジェネシスに向かう連合&ザフトの双方の部隊を見ながら吐き捨てるように告げる。
だが、発射されれば、それでいい。今はただ時間を稼げばいい。
『復讐の連鎖は、終わらない。終わらせてたまるか!お前達はここで己の業に飲まれて、消えていくんだ!!』
「そんな、そんなふざけたこと……させてたまるかぁ!」
キラは、ミーティアにて、プロヴィデンスに攻撃を仕掛ける。だが、機動力では圧倒的なプロヴィデンスを、
巨体なミーティアでは捕らえきれない。
クルーゼは、ドラグーンを射出して、ミーティアを攻撃、
キラは、ミーティアから離脱してフリーダムの状態でプロヴィデンスを狙う。
「あなたは、この状況でもまだ人間が醜いといいますか!?ひとつの目的を持ってすれば、
人間は己の業、それらを超えて1つになれるんです!」
『だが、その人間が人を殺し、復讐を呼び起こし、
世界を破滅させる存在にもなりえるものともなりうるのだ!
その業、その罪、つくりだしたのは誰だ!?君とてその1人だろうが!』
クルーゼはフリーダムに猛攻をくわえる。
さらには、クルーゼのギアスである、人間の心を読むギアスも相まって、
キラの動きを読み取り、その攻撃を避け、確実にダメージを与えていく。
「うわぁああああ!」
キラのフリーダムは、片腕をドラグーンシステムにより吹き飛ばされる。
クルーゼは、フリーダムに止めをさそうとした。
だが、その背後から、強烈な『心』をもったものが近づいてくるのを察して、プロヴィデンスは振り返る。
『枢木スザク!!』
クルーゼは、サーベルを抜き出し、ランスロットとぶつけ合う。
「これ以上、この世界の未来を閉ざすわけには行かない」
『愚かな。どんなものにも始まりがあれば終わりがある。
それはお前達のような異世界からきたものたちには無関係なことだ!』
クルーゼは気がついていた。
いや、彼だけでなく、気がついているものは気がついていただろう。
枢木スザクや、ビスマルクなどといった存在がこの世界の住人でないということは。
MSとは明らかに違う系統の機体を見ればわかる。
だが、そんな非現実的なことを信じることもできないので、曖昧にしていただけだ。
さらにいえば、クルーゼは、そのギアスを授かってもいるからである。
「だからこそ、見えてくるものもある!」
『騎士である立場の君には、クイーン以外のものなど見えてはいないだろう!』
ドラグーンシステムがランスロットを狙い打つ。
背後からの攻撃に、ランスロットはそれらを避けきれない。
MSサイズにナイトメアフレームが変更されなおかつ装甲がある程度強化されていたことから耐えられたものも、
これがナイトメアフレーム並みのものであったなら命はなかっただろう。
「僕は、この世界を守りたい!懸命にいき、そして……必死に暴力や不幸から立ち上がろうとして、生きる人々を……」
スザクの目が輝き、ギアスの力が発揮される。生存本能を掻きたてられ、
なおかつそれをコントロールするスザクの動きは、心を読むクルーゼさえ、追いつけない。
『バカな!心の読みが間に合わないだと!?』
「あなたは、人間の負の部分しか見ようとしなかった!そんなあなたが、人間のすべてを語る資格は無い!」
『くぅうぅぅぅ!!』
スザクのアーサーの剣が、プロヴィデンスの腕を切り落として、コクピットを狙う。
だが、そこでランスロットの周りを取り囲んだドラグーンが一斉発射される。
攻撃…いや止めを刺すときにコクピットを狙うため動きが止まる。
それを読んだクルーゼの作戦に、かかり、ランスロットの機体をビームが突き刺さる。
「うわぁあああああ!!」
バランスを崩しエナジーウィングなどが破損する。スザクは、目の前でライフルを構えるプロヴィデンスを見る。
『フ、フフフ……残念だったな。枢木スザク!』
そんなプロヴィデンスの背後に突撃をする、機体…。
それはキラ・ヤマトのフリーダムである。
サーベルはまっすぐにプロヴィデンスを貫通している。
スザクの記憶を読むことに集中していたクルーゼはキラの反撃を予想できなかったのである。
『ク、クハハハハハ……ま、まさかこの私がやられるとは。キラ・ヤマト、枢木スザク。
これでお前達の願いが正しいとは思わないことだ。
確かに、貴様達が見せた人間も真実だろう。
だが、私の言う人間もまた真実。
今後、先……どちらの人間の心が台頭するか見させてもらおう。
フフ……フハハハハハハハ』
キラがプロヴィデンスから離れる。
スザクとキラの見る中で、クルーゼは高らかに笑いながら、プロヴィデンスは爆発する。
人間の心…それは確かに、両方あるのだろう。
復讐の連鎖・暴力の応酬…それをしたかと思えば、世界の破滅に向かって敵だったものが協力してともに戦う。
それもまた人間なのだ。
ザフト軍司令室からエターナルに移動したラクスは、
連合軍・ザフト軍とともに、ジェネシスの破壊作業を行なっていた。
ラクスは、連合・ザフト双方の指示の声が飛び交う中、1人座って様子を見ていた。
『ジェネシス内部にて、ジャスティスの自爆スイッチを確認。
パイロットが無事です。これで地球圏に向けてのジェネシス発射は防がれました』
マリューの声とともに歓声が上がる。
ラクスはほっとした表情を浮かべたが決してそこには、嬉しさなどはなかった。
ひとつの目的のために人類は一致団結をして、世界の危機を救った。
そして、双方の長きに渡る戦争も、ここで決着をつけることとなった。
投下終了。
次が最終回となります。
もう少しだけお付き合いください。
次スレ立ててきます
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
(☞゚∀゚)☞
. ヘ○ヘ ! _、_ n
|∧ ( ,_ノ`)( E)
/ | ̄ ̄ ̄|
. | ̄ ̄ ̄| |.XPSP |
. ( ^ω^)| .2000. | | |
| ̄ ̄ ̄. | | |
| 98SE |.. ウッウー | |
. (´ー`)| | ( ゚д゚) | |
(・∀・)| ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄.... |
 ̄ ̄ ̄ 98 | |XP無印. |
95 | | |
| | | 人
| | | (. )
| | |ヽ( ゚Д゚)ノ ウンコー
| orz |  ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ Vista
Me