第3次スパロボキャラが種・種死・00世界に来たら
クォヴレー『アイン・ソフ・オウル!』
キラ『アッー!』
>>1乙
キラ「スーパー系とオリジナルが来ませんように」(切なる願い)
ゼオラ専用ブルンバストが最強ですね
ゴルディオンクラッシャーでプラント壊滅。
ガンエデンで地球封じ込め。
地球の中でオリキャラが世界統一。
かくして平和は訪れた。種キャラは全滅で。
ゴルディオンクラッシャーでトレミー壊滅。
ガンエデンで地球封じ込め。
地球の中でオリキャラが世界統一。
かくして平和は訪れた。CB全滅で。
だってあいつらオービットベースについて
「中のヤツラさっさと追い出してしまえ。俺たちのほうがどうせうまく使えるんだからよー」なんてほざくような集団だよ。
そろそろ93氏のターンかな?
14 :
10:2008/07/11(金) 01:17:09 ID:???
>>9の人じゃなくてもいいからだれか知ってる人詳しく教えて、すげー気になる
ところで
>>9は何の話をしてたの?
テッカマンブレードのラダムの話?
つか避難所の広告業者死ねよ
開始から変な流れだな
職人の皆さん早く来てくれ
すいません、スレ立て早かったです
日曜日の夜には29話投下できるかと…
ここに限らず、これからのスパロボSSでは時空振動弾が連発されるのかな
>11氏
期待してます
スレ立てお疲れ様です。
私は火曜か水曜には何とか形にはなるかと……。
すいません、投下が深夜から明日にズレ込むかもしれません
理由は投下された話を読んでいただければすぐわかると思いますので…
今完成しました…
少し直して明日投下します。遅れてしまい申し訳ないです……
29話「黒死の蝶」
シロガネの格納庫中を歩いていくユウは歩きながらも眼球を左右に動かして格納庫の様子をつぶさに観察していた。スレードゲルミルのような特殊兵器を持つシャドウミラー隊の素性は
ノイエDCの中でもあまり知られておらず、構成員に旧DCからいたメンバーはいない。しかも先日、連邦軍のスペースノア級一番艦シロガネの奪取に成功したらしく、
シャドウミラーが持つ機動兵器の性能と得体の知れなさが併さってユウの抱く警戒感は日増しに高まっていっていた。
ところでアーチボルド隊所属のユウ、そしてその後ろからついてくるカーラがシロガネにいるのには訳がある。
バンからの命令でシロガネまでラーズアングリフとランドグリーズの改修を受けるようにとの命令が発せられたからである。
以前にユウが提出したラーズアングリフの改造プランが採用されたのであろうと、内心結構喜びながらシロガネまで赴いたユウであったが
目に映るシロガネ格納庫内の機体と、そこにいるパイロット達の顔を見て徐々にその顔を渋くさせていく。
「ねえユウ。なんで羽付きのランドグリーズがたくさんいるわけ?」
「おそらく俺が以前に提出したラーズアングリフの強化改造プランが採用されたのだろう。高機動力の付加は以前から要求していたのでな」
「ああ、あのジャスティスとかって機体に負けてからだったよね」
「嫌なことを思い出させるな」
格納庫内ではランドグリーズへの増加パーツ設置が各所で行われていた。まず目を引くのが背部のテスラドライブを搭載した大型のブースターである。
外観から明らかなように移動力にやや難のあるランドグリーズを飛行させることで、地形の影響をなくしつつ、同時に機動性を高めることが狙いであろう。
次に、新たに左肩に加わったリニアカノンがユウの視線を釘付けにする。これにより中〜遠距離戦で高い戦闘力を持つランドグリーズの砲撃戦能力が単純に2倍になり、
飛行ユニット自体に搭載されているミサイルなどと併せて火力は飛躍的に高まることとなる。
そしてランドグリーズと同系色をベースに分厚い鋼鉄を載せた巨大なシールドが左腕に備わっている。ランドグリーズのコックピットは頭部に、
半ば剥き出しのような形であるためパイロット達からの評判があまりよくない。このシールドがあればそれをやや緩和することができるであろうし、
万が一敵機に距離を詰められた場合でもシールドでガードすることが可能になるため、パイロットの生存性と接近戦闘能力の向上が期待できる。
ユウの提出したプランにはなかったものもあるが、ランドグリーズの長所をさらに伸ばすとともに、短所を補う形での改修が行われたのだろうということがわかる。
そして、やや奥まった所に1機の特機がそびえ立っているのが見えた。
頭部のアンテナとはまた別個に、口元から髭のようにも見えるパーツが左右に鋭く伸びており、また、左右の肘にも鋭く伸びたブレードがセットされている。
一見して固定兵装を持たない上に、武装をセットする機構らしき部分も見当たらないことから近接戦闘にかなり特化した機体であることがわかるが、
ユウキがいる位置からでは細かい所までは見当たらない。
「でもせっかく要求が通ったっていうのになんでそんな渋い顔してんの?」
「お前はさっきからランドグリーズの足元にいるパイロット達に見覚えはないのか?…そうか、お前はそんなに他の部隊のパイロットを知らなかったな」
「どうせあたしはユウみたいなベテじゃありませんよ」
「ベテって…そう拗ねるな。さっきから目にするパイロット達…皆、他の戦線のエース級のパイロットばかりだ…」
「それってどういうこと?」
「近頃インスペクターへの大規模な反攻作戦が噂されているが、いよいよそれが真実味を帯びてくる、ということだ。それにこの前のアインストとかいう連中、それに…」
「それに?」
「あのエターナルとかいうピンク色の連中…奴らの戦艦にジャスティスという機体。どうも系統がわからん。そもそも当初は連邦でもDCでもなかった奴らがどうしてあんな戦力を持っていたのかも不明だしな」
「もう!いつまで負けたことを根に持ってんの?」
「そういう訳ではない。腑に落ちんから信用できない、というだけだ」
「なにその屁理屈」
「あら、痴話喧嘩だったら余所でやってくれないかしら?」
声のした方向へユウは目を向けると、そこに立っていたのは見覚えのある1人の女性。
先端にゆるやかなウエーブをきかせ、ボリュームのある桃色の髪をゆるやかになびかせながら、懐かしいものをみるかのような瞳でユウキとカーラを眺めている。
レモン・ブロウニング。シャドウミラーの技術担当兼アースクレイドルのザ・マッドその3であり、
シン・アスランにラーズアングリフを激しく損壊されたアクセル・ユウキにトラウマものの長時間の説教を喰らわせた女傑であり、女としての本能で嫌悪し合う覇王の宿敵である。
「失礼しました!お久しぶりです、レモン・ブロウニング博士!」
「元気そうね、少尉さん。あれからラーズを大切に使ってくれてるかしら?」
「も、もちろんであります!」
以前のトラウマからか、ユウキの声が普段よりも上ずる。いつも冷静な思考の維持を強く心がけている相方の、いつもとは違う珍しい様子にカーラが相方をよく観察してみると、
額や首筋にはじんわりと汗がにじみ出ている。それだけでなく、たまに目元が引きつり、目も全く笑っていないし、余裕も感じられない。
「あなたの提案したプラン、見ての通り採用させてもらったわ」
そう言ってレモンは目元に笑みを浮かべながら改修が進んだランドグリーズを見渡す。
「お役に立てたのなら光栄であります!」
「ふふ、どういたしまして。こっちとしてもいい仕事をさせてもらったし、今回は色々と助かったわ」
「色々?でありますか?」
無意識のうちに必死に目の前の相手の機嫌を損ねないように振る舞ってしまっているユウキが聞き返した。
彼の基本的にアーチボルドの無茶な考えやカーラのボケにツッコミを入れる立場である。そのため、ユウキに自覚こそないが突っ込まれるとあまり強くない。
それ故、カーラの嘘泣きに騙されたり、異星人の存在が公表されたときは平静を装ってはいたものの内心小さからぬ衝撃を受けていたのだ。
「そう。色々とあるのよ、女にはね」
例えば本能的に気に喰わない女の思い通りに物事を運ばせないためとか。
「それよりも注文の品は完成してるわよ。名前は私の独断でレイブン・パーツ。で、武装はどっちの方がいいかしら?」
「武装は換装式なのですか?」
「他の人にも案をもらって複数の強化武装を作ってみたのよ、まだ2つしかできてないけど。
1つはあなたから提案のあったラーズアングリフの射撃戦闘能力をさらに高めつつ、弾薬で機体重量が肥大化しないエネルギー系の武装。
名前は収束荷電粒子砲。燃費は難があるけど、ラーズアングリフは他にエネルギーを消費する武装を持ってないし、威力・射程ともに相当のものよ。
もう1つがアースクレイドルのクエルボ博士から提案があったもので、ラーズアングリフの弱点である近距離戦闘能力の低さを補うための、接近戦用の武装ゴッドランス。
普段は日本刀でいう『ワキサシ』くらいの長さだけど、『射殺せゴッドランス!』の音声入力で刃と棒の部分が伸びてランスまたはロッドとして使うことができるわ。
さらに刃の部分は特殊な液体金属で作ってあって、敵に突き刺せば刃の部分が変形して亀の甲羅の紋様みたいな形で相手を絡め取って動きを封じるわ!そしてその隙に飛び蹴りを…」
「せっかくですが前者の方でお願いします」
「…やけに判断が早いわね」
徐々に語り口が熱く、激しくなりつつあったレモンの口調は少々残念そうなものとなっていた。
「いえ、やはり自分が提案したものです。自分なりに考えているところが色々とありましたので」
「あら…せっかくゴッドランスを選んだなら機体色も熱く苦しい赤から青に塗り替えようと思ってたのに…じゃあ別の色、考えといてくれる?改修が終わったら塗装するから。
機体色が赤のままじゃ、あの根暗で辛気臭いまな板電波女のところの機体と色が被るのよ」
「赤い機体…イーグレット博士の所のアスラン・ザラですか?」
「たしかそんな髪の薄そうな名前だったわね。あの女…絶対に友達少ないわよ。女に嫌われるタイプだわ」
「まぁ好感が持てない所には同意しますが…」
「そういえば、あなたが一番最初にあの根暗電波の部隊と接触したんだったわね」
「ええ。フォールデリングソリッドカノンの照準をブリッジに突きつけて、降伏勧告の回答を待つ間にあのジャスティスとかいう機体が仕掛けてきました」
「降伏なんて生ぬるいことしてないで、ソリッドカノンをぶちかましとけばよかったのよ、私が許すわ……ちょっと熱くなりすぎたわね、とにかく、色を考えといてね、色」
「サナギから蝶へと変態を遂げ、大空を羽ばたく翼を得たラーズアングリフ・レイブンの色、か…」
「じゃあ改造に取り掛かる前にバン大佐からの命令書を渡しておくわ」
そう言ってレモンが懐から1枚の紙を取り出した。それをユウキは受け取り、その書面に目を通す。
確かにそこにはノイエDCのトップであるバン・バ・チュンの直筆サインがされており、その宛名にアーチボルド隊のユウキ・ジェグナン、そしてリルカーラ・ボーグナインの他、
先ほど格納庫内で見かけたノイエDCの各戦線のエースパイロット達の名前が記されている。
レモンがラーズアングリフを置いた場所へと足軽に向かっていったのを確認したユウキは、自称相方で命令書に名前の記載があったカーラの方を見やる。
すると急に自分の方に振り向いたユウキを不思議に思ったカーラの方が先に口を開いた。
「どうしたのユウ?」
「俺達に転属命令が出た」
「転属命令?」
「ああ。俺達は対インスペクター部隊へ配置されることになった。もっとも、その隊の責任者はアーチボルド少佐だし、おそらく現場指揮だけは俺が取ることになる」
「へえ〜、じゃあ今までと大して変わらないんじゃん?」
「そんなことはない。インスペクター戦を前提とした部隊ということは、今まで以上に戦いは厳しくなるはずだ」
命令書に記されていたのは、対インスペクター戦のために結成された特殊奇襲部隊―機動力と火力を両立し、奇襲・強襲に特化してインスペクターの幹部機体とも戦えるようになった
機体で編成された部隊の結成がバン・バ・チュンの考えたそもそもの趣旨であった。
「部隊名はオーバーレイブンズというらしい」
「オーバーレイブンズ?」
「ああ、対インスペクター戦用特殊部隊の正式名称だ。公にはレモン・ブロウニング博士の手で全機がカスタマイズされたことにより
『レイブン』の名が付いたラーズアングリフとランドグリーズで構成された独立部隊ということになっている」
「じゃあさっきいたエースパイロットの人が補充のパイロットってこと?」
「ああ、それも各部隊の精鋭達だ。合計15機のラーズアングリフ・レイブン、ランドグリーズ・レイブンによる大部隊になる。かなり大掛かりな作戦があるのかもしれんな。気を引き締めろよ」
このような部隊をバンが結成したのには訳がある。
元々旧DCの残党が主たる構成員であるノイエDCには、旧教導隊のエルザムやゼンガー、テンペスト・ホーカーのような極めて大きく名前の売れたパイロットが率いる部隊を持たない。
他方の連邦には、主にSRX計画の機体で構成され、単艦でDC本拠地を落としビアン・ゾルダークを破ったハガネ、
主にATX計画の機体で構成され、これまた単艦で宇宙統合軍旗艦艦隊を撃破したヒリュウ改というかなり有名な部隊を抱えている。
友軍の士気高揚も兼ねて、バンがかつてビアン・ゾルダークから酒の席で見せてもらったことのあるジャパニメーションに登場する部隊
―武力による紛争の終結を目指し、天上人を名乗る私設武装組織が作った4つの機体に対抗すべく結成された特殊部隊を―参考にしたのであった。
そして、ちょうどそこにある情報がバンの耳に入った。
レモン・ブロウニングが、ラーズアングリフ、ランドグリーズ用強化改造パーツを本来は2つのところを『とある事情』から時間稼ぎのために15基も作ってしまったというのである。
そこでバンはヴィンデル・マウザーに要請して協力を取り付けた上で、レイブン部隊の結成を思い至ったのであった。
「ふうん…なんかユウが変に洒落た台詞を言い出したり、やられてから変な仮面付けなければいいんだけど…」
「だがそれがいい…」
「有り得ないし。そしたら私、別れるから」
「………!ちょっと待て」
「やだ〜別れるってのは冗談に決まってるじゃ〜ん!」
「そうじゃない。そもそも付き合っているという既成事実を勝手に作るな」
「あちゃ〜バレたか。でもユウが隊長ってことは上級中尉とかに昇進したりするの?」
「………………いや、それはない」
「そうだよね〜ガーリオンもランドグリーズも壊しちゃってるのに」
「……………………………」
反論の余地はなく、ユウキはトボトボとラーズアングリフの方向へと歩き出し始めた。
ユウキはハワイでのビルトファルケン強奪作戦の折、アラドのフォローで教導隊のカイ・キタムラのゲシュペンストと戦ってガーリオン・カスタムを壊し、
ゼオラのフォローでシン・アスカのビルトシュバインと戦ったときにランドグリーズを壊してしまっている。
このことを実はかなり気にしていたユウキは、このときカーラの一言でわりとへこんでしまったのだが、それは誰も知らない。
所は変わってヒリュウ改のブリーフィングルームでは、先日のペルゼイン・リヒカイト戦の映像を踏まえての対策会議が開かれていた。
部屋の前方には2分割されたスクリーンの中には片方にペルゼイン・リヒカイト、もう一方にはレイの乗るペルゼインが現在映し出されている。
そして動きや機体構造の推定・分析を行っていたリョウトがスクリーンの手前に立って分析結果の報告を始めた。
「今画面に映っているのが先日、中国で僕達が戦ったアインストの指揮官機、コードネーム『レッドオーガ』です。そしてその隣に映っているのが、ジャスティスという機体とノイエDCが
日本に攻めてきたときに初めて姿を現して、先日レッドオーガが現れたのとほぼ同じタイミングで現れた『アカオニ』です。
この2機は姿こそ別ですが、鬼の面のようなものを飛ばして攻撃する共通点があり、またアカオニが初めて現れたとき、一瞬だけレッドオーガの姿で現れたのが既に確認されています」
「じゃあやっぱりこいつらには何らかの関連性があるってことか?」
「おそらくな。アカオニが初めて現れたとき、レードオーガが現れるときに聞こえる声のようなものが俺には聞こえた。無関係とは言えんだろう」
規制対策
タスクの問いにキョウスケが口を挟んだ。
現時点でアインストと関係がありそうだと考えられているのは「声」らしきものを聞いたと言うキョウスケ・エクセレンと、超機人絡みで交戦したタスク達に限られている。
そのため、自然と口を開く者は限られてくる。それの現れであろうか、次に口を開いたのはブリットであった。
「レッドオーガのパイロットは、遠く離れた日本でヒリュウ改がノイエDCの部隊に足止めされてることを知ってました。日本でアインストの出現がなかったなら、やはり関係があるんだろう」
「でもアカオニの中の奴はお前らが言うみたいに妙チクリンなことは言ってなかったぜ。ってかむしろ軍人じゃない普通の人間っぽかったような…なあ?シロ、クロ」
「まぁ言われてみれば確かににゃ」
「なんせマサキと口ゲンカ始めちゃうくらいだったからニャ…」
「よけいなことまで言うんじゃねえ!」
「ま、まあ正体は一先ず後にして、次は動きについてですが…」
マサキの言葉をやや強引に押し流してリョウトが今度はペルゼイン・リヒカイト2機の予測機体スペック、動作、攻撃モーションなどについての説明を開始する。
これまでの流れをシンは黙って見ていたが、アルフィミィが乗っている方のペルゼイン・リヒカイトとは直に激しい戦闘を行ったことから、レイのペルゼインの方に自然と注意が向いていた。
ペルゼインが大剣ペルゼインスォードを携えてノイエDCの部隊に斬りかかって行く様子、敵の攻撃を回避する様子がシンの目に映っていくのだが、
行動の節々の細かい所にどこか見覚えのあるモーションがあったような気がしてくる。とはいえ、この段階ではそれはまだまだ「なんとなく」の域を出ない。
しかし、ペルゼインが肩から射出した小さな鬼面を飛ばして周囲の敵を攻撃する映像を見たとき、シンの「なんとなく」の感覚は、ある「推定」に達した。
鬼面の動きは、今は記憶なき戦友レイ・ザ・バレルのドラグーンの動きによく似ているような気がするし、
大剣での直接攻撃こそ面影はゼロだが、他の動作の所々にはアカデミー時代からの付き合いの戦友がするのとそっくりの動作が少なくない。
(この動き…レイ?いやまさか…)
とはいえ、記憶をなくしたレイがこんな機体を持っているとは考えられないし、シン自身にはアインストとの繋がりは全くないためレイにもアインストとの繋がりがあるとは考えられない。
だが他方で細かいモーションの類似点が、ダイレクトにシンの頭に、ペルゼインのパイロットはレイなのだと告げている。そして、シンの理性と合理的な判断がそれを必死になって否定する。
双方のせめぎあいは始まって間もなくシンの思考を支配し、結局シンの気付かぬ間にブリーフィングは終了した。
ブリーフィングが終了して続々とクルー達が部屋から出て行く中、ほとんど腕を組んだままほとんど動かないシンに気付いたのは、
戦いでよくタッグを組むブリットでも、アインストの正体の推測にかなりのめり込み始めたキョウスケでも、レイにパーツ泥棒の悪の組織のボスの汚名を着せられたマサキでもなく、
向かってくる以上敵であると割り切って考えるラミアであった。
普段は割と明るいシンが黙り込んで動かない様子を不思議に思ったラミアの足は自然とシンの座席の方向へ向けて動き出し、シンの横で止まる。
「アスカ様、何かわかっちゃったりしましたか?」
「!?」
言語回路に生じた支障が、日が経つに連れて大きくなりつつあるラミアの異様な言葉にシンの思考が中断する。
そして目の前に飛び込んでくる2房の巨大な超高級マスクメロン。
本能の赴くままに事故を装い、眠りの小五郎やお前はもう死んでいるな拳法家や新宿の種馬ではないゴッドバレー、つまり神々の谷間に飛び込みたい衝動を
未熟な理性が死に物狂いで押さえつけ、ラミアの問いへの答えを探し始める。
「あ…いや、そんな大してわかったことなんてないですよ」
「やっぱりアスカ様も気付きやがったんですね」
「え?」
今の今までオーバーヒート気味に動いていたシンの思考が一気にフリーズした。
なぜ目の前のラミアにレイのことがわかったんだ?という冷静になればすぐにわかるようなことも、マスクメロンに理性的思考の98%を持っていかれているシンにはわからない。
もしレイの動きにそっくりな動きをしていると他の者に知られれば、今のレイの身が危うくなってしまうのではないか。
せっかく体に何の問題もなく、しかも戦場から離れることができたレイを自分のせいで戦場に引きずり込んでしまったらどうしようか。
取り越し苦労になるとは知らず、そのようなおそれすら生じ始めていた。
「あのアカオニの動き…出鱈目なようで細かい所はしっかりと基本に忠実な動きがされてますことでしょう?やっぱりあれは然るべき訓練を受けた人間の動きでは…」
「………そ、そうですよね!やっぱりラミアさんもそう思いました?ハハハハ、さっすがラミアさん、イザというときの眼光がロボットよりも鋭いですね、ハハハハ…」
「!?そ、そんな大したものじゃありやがりませんでございますのよ?ホホホホ…」
今度は逆に正体がバレたのかとギクリとしたラミアが一瞬、フリーズ状態に陥った。
噛みあっている様で実は噛みあっていない会話から生じた乾いた笑い声がブリーフィングルームの中に響き渡った。
ちなみにこのとき、「またシン君ってばラミアちゃんとイチャついちゃって」とこれまた噛みあっていない誤解を、
聞こえてきた笑い声に釣られてブリーフィングルームを覗いていたエクセレンもしていた。
所はとある無人島付近に停泊しているシロガネの格納庫に戻る。
ヒリュウ改への攻撃を仕掛けるためにエキドナが率いる部隊が発進準備を進めているシロガネの格納庫では、連日の作業の末にラーズアングリフの改修がもう間もなく終わろうとしていた。
「蝶サイコーだ…」
改修の完了したラーズアングリフ・レイブンを見上げて、思わずユウキが心のうちにある感動を言葉に現す。
弾速に難のあるリニアミサイルランチャーを補うべく連射性を高めたへビィ・リニアライフル、レイブンパーツのウイングに連なる艦隊戦をも考慮して搭載されている対艦ミサイル、
ラーズアングリフの最強砲撃兵装であったフォールデリングソリッドカノンがもう1門肩に搭載されたツイン・ソリッドカノン、
そして空を羽ばたく飛行ユニットのウイングとレモン・ブロウニング謹製の長距離狙撃用兵装収束荷電粒子砲を目にするユウキの心は感動に打ち震えていた。
「ふふ…気に入っていただけたなら嬉しいわ。塗る色は決まったかしら?」
「はい。サナギから変態を遂げ、大空を翔るその翼からインスペクターに奇襲と死を告げる火薬というリン粉を振り撒く黒死の蝶…それが生まれ変わったラーズに相応しいかと」
「ということは黒ね。じゃあこれから塗装に入るわ」
レモンがそういった矢先、警報音とともに格納庫の扉が開き、着艦した2つの機体が格納庫へと入ってきた。
1機は銀色を纏った鶏冠と関節を持つ、覇王の無限なる正義を世界の隅々にまでいきわたらせるべくザフトから窃取され、この世界でマシンセルによる飛躍的パワーアップを遂げたジャスティス。
もう1機はアシュセイヴァーを母体として、強奪されたビルトファルケンやATX計画のデータを参考にしてカスタマイズされた「継ぎ接ぎ」の名を冠した機体、ラピエサージュであった。
ユウキとレモンの目に付くところで停止した両機体のコックピットが開き、パイロットスーツと纏った2人の男が機体から降りてきた。
そして2人は着地するとまっすぐに、ユウキと、凄まじく不愉快だという顔を露骨にしているレモンの下へと歩いてくる。
片方の顔にはユウキも見覚えがあり、上官であるアーチボルド以上に嫌悪する青い髪の男を見て、先ほどまでラーズアングリフ・レイブンの完成で恍惚としていた顔が見る見るうちに険しくなっていった。
そんな敵意を感じたのであろうか。ユウキに不愉快さを乗せた視線を向けながら青い髪の男、アスラン・ザラが口を開いた。
「久しぶりだな。元気そうで何よりだ。リクセント公国を落とされてさっさと逃げてきただけはある」
「フッ…貴様こそサイバスターを討つことが出来なかったにとどまらず、『アカオニ』とかいうアンノウンに再生機能付きのその機体を大破させられたそうじゃないか。
貴様の毛根と同じで機体も息が絶え絶えにでもなったか?なんなら俺の髪を分けてやってもいいぞ?」
「貴様…!これ以上口を開けば容赦はしないぞ」
「面白い。吹っかけてきたのは貴様だろうにそれすら忘れたか」
「アスラン、そろそろ」
「…そうだったな、すまないキラ。俺達はこんな連中の相手をしに来たわけではなかったな」
以前、アメリカ大陸で刃を交え、アースクレイドルで衝突したユウキ・ジェグナンとアスラン・ザラは互いに最大級の嫌悪感をぶつけ合っていた。
レモンと覇王が理屈を通り越した女の本能のレベルで嫌悪し合うのと同様に、この2人も理屈を超えて、もはや生理的に互いを受け付けられなくなっているのである。
キラに諌められてアスランは視線を、ユウキとアスランに「もっとやれ」という顔を向けていたレモンの方へと移し変えた。
「あら坊や達もうお終いなの?まあいいわ。ところであなた達はこんな所までどういったご用件かしら?」
「レモン・ブロウニング博士、用件はわかっているはずです。ヴァイサーガ改修の件、忘れたわけではないでしょう」
「忘れてたわ」
「何ですって!?ふざけてるんですか!」
「人間には嫌なことを記憶から切り捨てて、明日への活力を維持する忘却って能力があるのよ」
「なら命令書を見て思い出していただきます」
「はいはい、冗談よ冗談。でも見ての通り、今さっき突貫作業が終わったばっかりなんだから休ませなさいよ。といっても、塗装がまだだからすぐというわけにはいかないわよ」
「ではその後に取り組んでいただけると?」
「さあ、どうかしらねぇん?急患が入ってきたりしなければいいんだけど」
「レモン・ブロウニング博士、僕達も遊びで来ている訳じゃないんです。ふざけるのも大概にしてください」
ジャスティスも捨てがたいが、ヴァイサーガとラピエサージュを通じてキラ・ヤマトと肩を並べ、背中を預けあってドラマチックに戦っていきたい願望があるアスランにとっては
なんとしてもヴァイサーガを手に入れて、皇帝のような金色と赤に塗り上げたいと考えていた。
しかし「素体」の影響か、レモンはユウキとは違ってアスランの口撃をのらりくらりとかわすため、今度はキラ・ヤマトが口を開いた。
「はいはい、わかってるわよそんなこと。あの根暗電波は嫌いだけど、命令書持って来られちゃってるんだからやらないとは言わないわ。安心なさい」
「!ラクスを悪く言うのはやめてください!彼女がどんな想いでいるかも知らないくせに!」
「あら、ご主人様から随分とよく躾けられてるみたいね」
「そんな!彼女は僕を導いてくれたんです!きっとこれからも!」
「それで、思い通りに動かされていくって訳ね」
「あなたは!でも…だからって…僕は…」
「ペット君の言うことなんて私にはどうでもいいわ。ヴァイサーガは改修してあげるから、いい加減それまでどっかで待ってなさい」
「いい加減にするのはあなただ、レモン・ブロウニング!これ以上キラを侮辱するのはやめてもらう!さもなくば…!」
覇王に付き従うキラ・ヤマトに対して、覇王へのものとはまた別の嫌悪感を向け始めたレモン・ブロウニングに対してアスラン・ザラの感情が爆発した。
レモンの作ったWシリーズの方が少なくともまともなことを喋るし、はっきりと物事を喋るので、キラのような喋り方に対してレモンは創造をする人間としての嫌悪を覚えていたのだが、
そのようなことはアスラン・ザラの知るところではない。ただキラ・ヤマトのことを想うと感情がフィーバー、つまり熱病のように熱くこみ上げてくるアスランにとっては
キラ・ヤマトが酷い侮辱を受けていることが我慢ならなかったのである。
「アスラン!いいんだ、僕のことは…」
「あそこまで言われて黙っていられるか!もう俺はお前のためならテンションフォルテッシモにだってなれる!俺達はなまかじゃないか!」
「お前ら随分にぎやかに騒いでるな!」
「誰だ!?」
横から入った声がアスラン・ザラを遮った。
そこにいた全員が声のした方向、マスタッシュマンと連邦では呼ばれる接近戦用特機の方へと視線を向ける。
正式にはソウルゲインと呼ばれる機体の影から出てきたのはグレーのツナギのような服を纏い、やや挑発的な視線を向ける一人の男。
その名はアクセル・アルマー。
そしてここに、シン・アスカと何かしらの因縁を持つ4人―アクセル・アルマー、ユウキ・ジェグナン、アスラン・ザラ、キラ・ヤマト―が集結した…シンの居ないこの場所で。
「アクセル!あなたいつから!?」
「最初からだ。別世界の人形どもがやかましくてオチオチ昼寝もしてられん」
と、言いつつ実のところは、隙を見てベーオウルフことキョウスケとアルトアイゼンに戦いを挑もうとソウルゲインに乗り込んでいたのだが、
格納庫に人が多くて出撃するに出来なかったという状態だったのである。
そんなことは口に出せないし、割となりゆきの関係に近いとはいえ、人形風情が自分の女に喰ってかかるところを見るのはアクセルとしてもおさまりがよろしくなかった。
「人形風情が人の女に随分な口を聞いてくれるじゃないか。さすがに聞いていて面白くなかったぞ」
「ちょ、ちょっとアクセル!?」
これも「素体」の影響であろうか。まれに正面から言われると思わずドキッとしてしまうレモンであったが、ここはすぐに正気を取り戻した。
そして、後にアルフィミィからツンデレと評されるアクセルに対してアスランが喰いかかっていく。
「アクセル…確かシンにやられてた奴だな?その程度の腕でよくそんな台詞が言えたものだ」
「ほう、口だけは達者のようだな人形」
「ぼ、僕達は人形なんかじゃない!」
「なるほど、口答えして歯向かう分だけマシということか」
「あなたはどうして…!」
「フン。自分の意思も持たない人形が人間を気取ってるのが気に喰わないだけだ」
「俺達は自分で考えたからここにいる。よく知りもしないで喋っていると恥をかくのはそっちだぞ」
ここでキラ・ヤマトについては置いておくとしても、アスラン・ザラについては話が変わってくる。
なぜアスラン・ザラがキラ・ヤマトを絶対の基準にするのかについて言及をしなければ、アスラン・ザラはラクシズへ復帰する時には常に自分で考えた上でラクシズの下へと走っている。
オーブ解放作戦において、模擬戦の覇者ではない方のパトリックから受けた命令を放棄してオーブ軍に手を貸したときはキラ・ヤマトを助けるために、
エンジェルダウン作戦後、メイリン・ホークを手篭めにしてザフトから脱走したときも、キラ・ヤマトのフリーダムの映像を消したデュランダルを疑い、
キラ・ヤマトの討伐を命じたザフトを見限った上でシンとインパルスにやられたキラ・ヤマトはきっと生きていると信じ、その手助けをするためにグフを強奪してラクシズの下へと走ったのである。
「『自分で考えた』か。お笑いだな」
「いい加減黙ったらどうだ。これ以上言うのならここで白黒はっきりさせてもいいんだぞ」
「面白い、一体どうやって付けるのか教えてもらおうか。アカオニに退治された正義の味方とやらにな」
「!」
「俺には貴様のような無様な真似はしようとしてもできんな」
「お前の機体に貴族のお漫才以外の機能があったとは初耳だな。なんなら小道具のワイングラス型の武器でも作ってもらったらどうだ」
「両名ともそこまでだ。これ以上の口論は私が許さん」
「!…チッ、ヴィンデルか」
アスランとキラにとっては聞き覚えのない声がアクセルとアスランを黙らせた。
シャドウミラーのトップであり、シロガネの奥深くに眠るツヴァイザーゲインを操る凄腕のパイロットでもあるこの高潔な軍人の言葉には相応の重みがあったのである。
「アクセル、お前はレモンを部屋まで連れて行け。レモンは連日の作業で疲れている。我々の機体の整備を確実にするためにも体調を崩されでもしたら作戦行動に支障が出る」
「そう怒鳴るなよ。…レモン、行くぞ」
「そ、そうね…」
そう言われて、仏頂面を浮かべたアクセルがヴィンデルの怒鳴り声に少々驚いているレモンの手を掴んで格納庫を後にした。
「ラクス・クラインの使いの者達もこれ以上の騒ぎは遠慮してもらう。部屋は用意させたからそこで待っていてもらう。異論があるならシロガネから去ってもらうがどうか?」
結局その後、キラ・ヤマト、アスラン・ザラはヴィンデルに従い、用意された部屋へと案内されることとなった。
さすがの彼らもシャドウミラーのトップに容易に異を唱えることはできず、覇王の指示もない所では物事を思い通りに運ぶことができなかったのである。
「ここで失敗をするわけにはいかんのだ…今度こそは…」
他方で部下二人の起こした騒動に頭を悩ましているのがヴィンデルであった。
アースクレイドル責任者のイーグレット・フェフ、アギラ・セトメやノイエDCのトップバン・バ・チュンとの話し合いの末、形式的にはラクシズをシャドウミラーの下に置くことにはなったものの、
シャドウミラーの幹部であるアクセル、レモンの2人がラクシズとトラブルを起こしていることはあまり楽観視できることではなかった。
規制対策2
インスペクターへの反攻作戦の準備が進められる今こそが、ヴィンデル達の世界で果たせなかった目的を成し遂げるために重要な時期なのである。
そうだとすれば、アクセル、レモンの両名にはシャドウミラーの本懐達成のための活動に心身ともに専念して欲しいところである。
にもかかわらず、レモンはラクシズの首魁との折り合いが著しく悪く、アクセルはベーオウルフキョウスケ・ナンブへのこだわりが強い上に、Wナンバーズやラクシズとの相性もよくない。
現状では世界どころか、自分の身内の混沌すら制御しきれていないのが正直なところであろう。
結局、どうしたものであろうかと考えても、頭痛の「種」らをどうにかする術はなかなか思いつけるものではなかった。
そして、なんとかレモンを寝かしつけたアクセルの足は、軽い疲労感を伴いながらも、エキドナの部隊が出撃しようとして慌しくなった格納庫へ、愛機であるソウルゲインの下へと向かっていた。
アクセル達が自分達の世界を捨ててこの世界に来る前からともに戦ってきた蒼銀の巨人は、魂を擁する者という名の如くアクセルの力を自らの力に変えて立ち塞がる敵を砕き、貫いてきた。
だがその力を持ってしても、人智を超えた力を得た連邦軍特殊鎮圧部隊ベーオウルブズとその隊長ベーオウルフことキョウスケ・ナンブとの決着を付けることはできなかった。
宿敵の片腕を斬り落とすことはできたものの、至近距離から散弾を喰らい勝負は五分五分というところでタイムオーバーとなり「こちら」側の世界へとやってくることになる。
コックピットのシートに深く座り込み、背もたれに体を預けて目を閉じる。そんなアクセルの瞼の裏に浮かんでくるのはこれまでの戦いの日々であった。
連邦軍に入り、特殊部隊シャドウミラーへと配属された。宿敵ベーオウルフと出会ったのも、始まった戦いの日々の中の1コマでの出来事である。
そして侵略を開始した異星人インスペクターとの戦いが始まり、その末に地球圏を守ることはできた。しかし今度は訪れた平和が徐々に世界を腐らせていった。
その様は政治などにさほど関心を持たないアクセルにとっても決して面白いものではなかった。
自分も含めて命を懸けて戦ってきた者達の信念が冒涜されたような気がしたからか、戦いを求める獣としての本能からなのかはわからなかったが、
最終的にシャドウミラー隊長ヴィンデル・マウザーの誘いに乗り、混沌による世界の発展という企てに手を貸すことを決意した。
そして彼の前に再びあの男、キョウスケ・ナンブが現れる。今度は以前よりも遥かに強大かつ得体の知れない力までをも携えて。
人間とは思えないほどにまで変貌し始めた宿敵との命の奪い合いを重ねつつ、他に立ち塞がる者達も容赦せず貫き、その者達の信念や恨み、憎悪をも引き受けながら戦ってきた。
その過程でとある兄妹の片割れを目の前で奪いもしてきた。
特殊部隊ゆえに隊で撮影した集合写真を機体に張るようなことはなかったが、肩を並べて共に戦ってきた仲間達の顔は忘れていない。
しかし最後に蘇った光景はアクセルの手足となったソウルゲインが、変貌を遂げたゲシュペンストMK−Vと戦っているというものであった。
ソウルゲインの回し蹴りがゲシュペンストMK−Vを捉えて僅かに浮き上がらせたところで、肘部分のブレードから最大出力のエネルギーの刃が伸びていく。
そしてその刃がゲシュペンストMK−Vアルトアイゼンの象徴とも言うべきステークもろとも右腕を斬り落としたのだが、
残ったコックピットに狙いを定めたところで、アルトアイゼンに残った左肩から一斉に放たれた鋼鉄のベアリング弾に襲われソウルゲインは吹き飛ばされた。
次いでソウルゲインのコックピット内に、宿敵の何を考えているのか皆目検討もつかない不気味な笑みが映し出される。そのキョウスケは何も喋らず、ただにやついてアクセルを見ていた。
そしてアクセルは意識を取り戻し、目を開いた。肉体の疲労が幾分か和らいでおり、デジタル表示の時計の時間もやや進んでいる。どうやら少しだけ眠っていたらしかった。
「ベーオウルフ…!やはり貴様は…」
ソウルゲインがシロガネから飛び出していったのはそれから間もなくのことであった。
この世界にいるベーオウルフことキョウスケ・ナンブが、自分達が戦ってきたベーオウルフとは異なる人物であるということはヴィンデルやレモンから何度も言われたし、
直に幾度も死闘を重ねたアクセル自身がヴィンデル達以上にわかっていた。だがそれだけを理由にベーオウルフを捨て置こうとも思えなかった。
もちろん別人物とはいえ、この世界における因縁ある宿敵を倒したいという気持ちがあることは否定できない。
世界を守るためなどという殊勝な心がけを持った覚えはないが、このまま捨て置いてベーオウルフが世界を脅かすような手に負えない力を手に入れる前にしとめておきたいという気持ちもある。
グリムズ・アーチボルドがエルザムとライの心に楔を打ち込んだのと同様に、ベーオウルフことキョウスケ・ナンブがアクセルの心に楔を打ち込んだことも否定できない事実であった。
「やはり貴様は…俺が仕留める…!!」
今の宙ぶらりんな心境から脱するために、今のうちに災いの芽を摘んでおくために、異世界の宿敵を倒して己の知るベーオウルフへ引導を渡すための足がかりにするために
アクセルは再び青い巨人と一体となり、ベーオウルフことキョウスケ・ナンブのいる日本へと向かっていった。
つづく
次回予告風なもの
レモン「!?アクセルがいないじゃないの!え、日本に向かった!?」
ヴィンデル「ベーオウルフへのこだわりは捨てきれないようだな。ところでレモン、アクセルがお前を寝かしつけるってまさか…」
レモン「それ以上言ったらセクハラで訴えるわよ」
ユウキ「というか途中から俺は忘れられてたな」
レモン「まあそこはレイブンで我慢してちょうだいな。それより、あなたも腕枕はちゃんとしてあげなさいよ?」
シン「アンタ達って人はあぁぁ!これ以上言ったらもうホントにこの板に居られなくなるだろうが!」
レモン「あら、あなた私の可愛い娘にあんなこと、こんなことして辱めたっていうのによく言うわね」
シン「ちょwあ、あれは事故じゃないですか!事故!!」
レイ「という訳で次回、エキドナ達と戦うヒリュウ改の下に現れた髭男爵。立ち向かうキョウスケやシン達。そして3度目となる俺、参上!
次回、スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーションズD第30話『貫け、奴よりも速く』を期待しなくてもいいから見逃すんじゃねえぞ!」
シン「見て欲しいのかそうじゃないのかどっちだよ!!ってかまたお前出てくるのかよぉぉぉぉ!!!!また俺の影が薄くなるだろうが!」
レモン「そういえばアクセルも出てたんだったわよね、あの特撮」
ヴィンデル「そういうことか。だがそうすると、狙い打って降臨する白鳥男はどうする?まだ奴はアビアノルートのはずだろう」
レモン「そこはまあ今回は無理そうだからまたの機会に降臨してもらうってことで」
ユウキ「それよりもアカオニが出てきたら今回のアクセルのシリアスな余韻がぶち壊しにならないか?」
レモン「じゃあ次回は赤鬼さんが出て来たところで『続く』って感じになるんじゃない?」
ヴィンデル「次回の終わり方までぶっちゃけちゃっていいのか?」
レモン「それでもいいんじゃない?基本的に『どんだけ〜!?』ってツッコミ入れながら読むこと推奨なんだし」
シン「そんなの初耳なんですけど…」
アスラン「じゃあみんな次回までテンションフォルテッシモ〜!!!」
シン「ちょwwwwアンタは、アンタのせいで朝っぱらから作者がテレビの前でぶちまけたオレンジジュースを返せえええええ!!!」
11氏GJ
しかし支援ができんかった無念
GJ!! そろそろベオとチャラ男をデビューさせたいおいら剣山。
支援できなかったのは俺もだ。コッチは現在シンよりもATXチームの方が有名になりつつある………
ロリ鬼とマッチョ鬼どうしよう。オーブの先住民族にでもしようかな………?
GJ
だけど、相変わらずシンの影は薄いなw
ユウキ辺りに主人公食われるんじゃないかと内心で恐々としてるぜ
あかん、どいつもこいつも濃すぎる…どれだけシンの影を薄くすれば気が済むんだw
>>39 臍プリンセスは欲しいけど、脳筋鬼は出来れば出ないの希望
勿論シンパチ氏がどうしても出したいというのであれば文句は言わないけれど
ちと声優ネタがクドイ気がしますね。あんま乱発されるとついてけない……
それはちょっと同意する。
スパイスとしてならありなんだけど、やり過ぎるとキャラ崩壊するから気を付けて欲しい。
実際俺、まだレイのキャラに違和感があるんだ(´・ω・`)
とりあえず早く相応の機体に乗り換えないと、真面目にシンがやばい。
レイの場合、記憶喪失でそもそも別人格なんじゃね
>>41 臍姫は大人気だけど、それに反比例して守天は嫌われてるよな
まあ作中の言動を考えれば好きになれる要素がほぼ皆無だから無理もないけど
>>44 それは分かってるけど、特撮ネタなんて大して知らないから、連発されると付いて行けなくて困る。
断じて強制じゃないが、電王は一部ようつべにもあるから気が向いたら見てみれば?
抵抗あるかもしれんがなんつーかあんまり特撮っぽくなくて力抜いて見れるよ
>>47 元ネタである作品を知ってる、知らないの問題ではなく、そういうパロディが過剰気味だとは思うよ
自分は11氏が使ったパロディの元ネタは殆ど知っているが、使い過ぎてて少々くどく感じる
それに、そういうのを楽しいからって入れ過ぎていくと、最終的に収拾がつかなくなって変な方向へ進む可能性が増えるのが心配だ
正直、パロディが多すぎてラクシズがどうこうよりもつまらなく感じる話もある。
声優ネタも一回二回なら話のアクセントだけど、こう連発されるとしょっぱくて萎える。
声優ネタ、特撮ネタ、アニメネタというスパイスを使いすぎているんだよな。
それ自体は本家スパロボでも使っているからまずいとも思わないけど。
OG世界+死種がこのSSのメイン料理なのに、スパイスでそれが
見えなくなっているという。ゲゲ、スパイスの山だ! タキシードの
復讐者じゃあるまいし。
11氏のSSは面白いし量も読み応えあるからスパイスの分量を
控えめにして(ゼロにしろとは言わない)がんばって欲しい所。
シンとラミアのからみをもっとふやしてくれ。主に肉体的な意味で。
トリップテスト
おや?
これはシュウと愉快な仲間たち+シンの物語が投下されちゃったりするのかな?
ほう、それはwktkせざるを得ないな。
ボケの洪水に飲まれたR組登場フラグがw
つかアクセルちょっとカッコよかったじゃねーか
>>52 そのつもりだったりしちゃったりしましたのですけど
予定が狂ったので後日投下なんかしちゃったりしますです
拙作においては。
やや改変のあるα世界と、α世界におけるラ・ギアス。
それぞれの世界観を説明しないと話が進められないので現段階では種勢の出番は僅少になりますが
ご理解のほどを
こんにちは。なんとか今晩に投下いたします。よろしくお願いします。
ビアンSEED 第六十三話 種達の未来
母なる星“地球”。どこまでも広がる青い海と留まる事を知らぬ白雲に彩られた美しい星を慈母のように抱く宇宙は『黒』に満たされている。
宇宙のほとんどは『闇』の世界だ。ならば闇夜を煌かせる星の明かりも月の輝きも太陽の光も、全ては闇の深さと暗さ、そして人の夢も希望も何もかもを飲み込んでしまう果ての無さを際立たせる為にあるのだろう。
その暗黒よりなお暗く黒い球がその寿命を終えた時、残っているモノはなにも無かった。無かったのだ。残骸は無い。人間の握り拳ほどの装甲の破片も無い。砕け散った岩塊さえも無い。
『砲身強制冷却。BHエンジン出力安定。システムオールグリーン』
“破壊”にあらず“消滅”を生み出した長大な砲身から、気化した冷却材を噴き出すBHキャノンの接続を解除し、青き凶鳥は双眸に冷たい光を宿していた。
DCが作り出した超技術の集大成の一つであるブラックホールを動力源とするパーソナル・トルーパー、の模造品であるモビルスーツ“ヒュッケバイン”。
後に全てを消滅させる最強の兵装から、“バニシング・モビルスーツ”と敵勢力の兵士たちに。尋常ならざる死を与える凶鳥として恐怖を抱かれる機体である。
本来搭乗予定の無かったヒュッケバインのコックピットの中で、純金の輝きと絹の細やかさを持った髪に、大粒の赤い瞳を持った少女が補助AIの音声を無感動な表情で聞いていた。
どこか妖精めいた浮世離れした雰囲気だが、それはむしろ精神的な幼さ故の無垢さによるものだろう。DC最精鋭にして最強の特殊任務部隊クライ・ウルブズ所属のステラ・ルーシェである。
宝石の様な輝きを秘めた瞳の端に、モニターに表示される機体ステータスを映しながら、ベルゼボに迫る衛星ミサイルのほとんどが撃墜されている事と、タマハガネの無事を確認する。
BHエンジンによって核融合ジェネレーターすら歯牙にもかけぬ絶大な出力を誇るヒュッケバインのエネルギーでさえ大量に消費するBHキャノンは、一度での戦闘で補給なしの場合精々三発がいい所だったが、その威力はつい先ほど証明されたばかりだ。
直撃すればアガメムノン級戦闘空母、いやアークエンジェル級やスペースノア級も轟沈せしめるであろう、破壊の力、あるいは“消滅力”とでも呼ぶべき威力を惜しげもなく披露したBHキャノン。
実戦での使用は初めてであったが、出来すぎと言いたくなるほど完璧に起動したのは僥倖に違いない。
ステラはベルゼボ近辺の敵機が撤退してゆくのを見届け、BHキャノンを腰後部にマウントし、右腰アーマーのオクスタンライフルを握らせる。先程のヒュッケバインが起こしたあまりに飛び抜けた現象に、連合の部隊は動きを鈍らせていた。
直接目にしたが故に、MSや既存の兵器と比べてあまりに理解し難い現象に襲われるのも止むからぬ事であろう。
オーブ本島で発揮されたヴァルシオンの重力兵器からも、DCの保有する技術が既存の世界のソレとは異なる方向で発達していたのはこの世界にとって周知の事実であるが、極小規模のブラックホールを人工的に発生させるほどの技術を持つとまで予測し得た者がいたかどうか。
破壊にあらぬ消滅。存在の痕跡さえ残せぬその現象を前に、人はより根源的な恐怖を駆り立てられていた。ナチュラルもコーディネイターも関係ない。それは命を持つ者なら等しく抱く恐怖なのだから。
ベルゼボより離れた宙域で連合とクルーゼの率いたザフトの部隊と熾烈な戦闘を繰り広げていたアークエンジェルの環境は、彼方に見えた信じがたい事態に静謐に襲われていた。
周囲のザフト・連合の部隊も、BHキャノンのみが理由ではないが、それをきっかけに部隊を引き上げ始めている。
「なん、なの。あれは」
「おそらく、局地的な重力異常。……ブラックホールと思われます、が……」
「あり得ない。連合もザフトも直接的な重力制御の技術はまだ未開拓の分野なのよ!? いくらDCが超技術を保有しているからって! ローエングリンどころじゃないわ。アレは……核以上の脅威よ」
アークエンジェル艦長マリュー・ラミアスは元が技術士官であるだけに、ヒュッケバインの異常性を一際強く理解し、恐怖を露わにしていた。ほんの数瞬前に、重力兵器と言うカテゴリーが人類の兵器史に加えられる瞬間を目撃してしまったのだ。
数十キロメートルにわたるデブリ帯を跡形もなく薙ぎ払ったスレードゲルミルの“星薙ぎの太刀”もまた、これまでの常識を打ち破る途方も無い攻撃であったが、現実にする為に必要とされる極めて高度な技術という点では、あのBHキャノンも引けを取らない。
ラクスがDCを最大の脅威として警戒する気持ちが、この時マリューには心から理解できた。
DC……オーブを母体として鬨の声を挙げた軍事結社。だが、彼らはあれほどの超技術を一体どこから手に入れたのか。
カガリや合流した旧オーブの軍人や技術陣に聞いても、ヴァルシオンをはじめ、テスラ・ドライブやTC−OS、核融合ジェネレーターは、すべてビアン・ゾルダーク発案のものだという。
ある日、サハク家のお抱え技術者としてモルゲンレーテに姿を見せた男の経歴は、その全てがサハク家による偽りのもの。だが、それが分かっても、偽りに隠された本当の経歴は誰にも解き明かせなった。
当たり前だ。このC.E.世界においてビアン・ゾルダークが生まれ育った記録など元からないのだから。
故に、マリューやラクス達だけでなく連合の上層部やプラントの評議員達でさえ、ビアン・ゾルダークについて知っている事は少ない。
無視できない巨大な武力を持ち、確たる信念の元で軍を率いて世界に覇を唱えた危険人物であると言う事だ。
そしてそのビアン・ゾルダークが例え希代の天才とは言え、たった一人の人間がこれほどの革新的な技術を生み出せるものだろうか? 世界中から選りすぐった頭脳達が長い時をかけてようやく形になるようなものばかり。
これらの技術と知識と、いったいどこから現れたのか。マリューは改めてDCの脅威を噛み締めながら、モニターの向こうのヒュッケバインを睨んだ。
撃ち抜いたシュリュズベリィの艦橋が爆発の中に消えるのを見届け、エルザムとライはヒュッケバインの雄姿を見つめていた。外見はガンダムタイプに極めて酷似しているが、用いられている技術は明らかにこの世界のものではない。
「兄さん、あの機体は」
「EOTの中に重力制御に関するものがあり、それを利用した新型PTの噂は耳にしていたが、あの機体……。よもやビアン博士が完成させたものか」
「アーチボルドが言っていたが、父さんがDCに与していると言うのは……」
ライとエルザムの父、現DC宇宙軍総司令マイヤーの事だ。これもややこしいが、今DCに参加しているマイヤーは、このライとエルザムの実父ではなく、別世界のライとエルザムの父に当たる。
自分達同様、死んだあとにこの世界に来たであろう父の行方が掴めずにいたライとエルザムには、それを確かめるすべはない。
「それを確かめる術はない……今はな。周囲の連合を撃退するぞ、ライディース」
「了解。しかし、本当に良かったのか? ラクス・クラインに手を貸すような真似をしたと分ればザラ議長が何を言うか……」
「議長はそこまで視野を狭めてはいないさ。シーゲル元議長をオブザーバーにおいているのも、穏健派への牽制もあるが、まだ有益な人材とそうでない者を区別する判断は出来ている証拠だ」
「では、ラクス・クラインがザフトにとって利のある人間だ、と?」
「少なくとも、彼女がクライン派のもっとも過激な者達を連れだした事で、ザフト内の不調和音をある程度是正出来た。残るクライン派もシーゲル元議長の声明もあり成りを潜めている。
潜在的なシンパはまだ多いだろうが、ラクス・クラインがプラント本国への直接的な行動を控えている内はまだ抑えが効く。それにザラ議長もクライン派を左遷して人材を無為に腐らせぬだけの分別は残している。それと、ザフトに、ではなくプラントに、だ」
「ザラ議長の事も見切った上での彼女の行動か」
ライがある程度納得した様子を見せたのは、ザフトの情報部を介して兵器開発局にフリーダムとジャスティスや、各種MSのデータが定期的に届けられているのを知っていたからだ。
ラクスに強奪されたフリーダム一号機にアスランがそのまま略奪したジャスティス一号機の戦闘データを筆頭に、ゲシュペンスト・タイプSやラピエサージュ、スレードゲルミルの解析データは、それの送り主の素性を語っている。
最高レベルのパイロット達が、あらゆる局面で一対多の戦いを行ったその生きたデータは、地球に対し五〇〇対一という人口比故に、戦場で常に一対多を強いられるザフトにとっては黄金に勝る価値があった。
ラクス一党の各地での地球連合との戦闘で得られた詳細な実戦データと、プラズマ・リアクター、テスラ・ドライブ、ズフィルードクリスタル、機能停止したマシンセルなどの超技術は、既にプラントの集中にあった。
「ウィクトリアと共に後方の連合の艦隊を叩く。この場は彼女らに任せても問題はあるまい」
「分かったよ。……兄さん、アーチボルドはあれで死んだのだろうか?」
「少なくとも生命反応は無い。だが、分からん、確かに艦は沈めたが奴が死ぬ様を直接目にしたわけではないからな。ひょっとするとまだ生きているかも知れんが、その時は今度こそ私達の手で討つ」
「ああ。奴はエルピスの人々と、そしておれ達自身の仇なんだ」
そう答えるライを振り返り、エルザムのジャスティス・トロンベのメインカメラに映ったエターナルを見つめた。
今はプラントとそこに住む妻カトライアの為にザフトに身を置く以上――
「ラクス・クライン。貴女がプラントに害なす存在と分かった時には、我がトロンベが引導を渡そう。そうならぬ事を祈るがな」
別れの言葉の代わりにそれだけ呟き、エルザムはノバラノソノ艦隊の後方で、連合軍と砲火を交えるウィクトリアへと機体を向けた。
漆黒の正義と自由が光の尾を引いて盲目の偉大なる魔術師の名を持った艦の成れの果てから離れてから、数分後。虚空を漂う残骸の只中で、確かに生命の息吹を挙げるものがあった。
離れて行くジャスティス・トロンベとフリーダムの姿を確認し、残骸に紛れた脱出ポッドの中で、アーチボルドは唸るように笑い声を零していた。
「ふっふふふ、さてさてこちらの世界での楽しみも確認できましたし、クルーゼからの依頼はこれで良いでしょう。次は連合ですか。ライディースくん、エルザムくん、そしてラクス・クライン。貴方達は皆私の手で引導を渡して差し上げますよ」
そう呟いてから、浮かべていた冷たい爬虫類じみた笑みを取り払い、瞼を閉じた。ポッドには一週間分の酸素と食料を積んであるが、連合の回収要員が来るまでは出来るだけ温存しなければならない。
その為に、アーチボルドは静かに呼吸を整え始めた。いずれあの兄弟達の命を摘み取るその時を待つ為に。
ガンバレルと周囲の連合軍の機体が張った弾幕に阻まれ、追撃を諦めたWRXチームは全機損害軽微、このまま戦闘を継続しても問題のない状態にあった。
ヴィレッタの乗るR−SWORDパワードを中心に、ルナマリア、シホ、レイ、イザークが機体を集めて、周囲の敵機の反応を確かめる。
「どうやら、連合は引くみたいですね。最初に姿を見せた艦隊の一部はまだ残っていますけど」
R−GUNパワードの中でDFCスーツに青い果実のような肢体を包んだシホが、いつもと変わらぬ落ち着き払った声で告げた。シホたちからの位置だと、ベルゼボの至近距離 で発生したブラックホールは、ちょうどベルゼボに隠れて確認できない。
シホ同様に敵性反応がないことを確認したヴィレッタが撤退を発言した。
「そのようね。追撃の必要はないわ。友軍と合流してベルゼボに戻りましょう」
「了解です。それにしてもあの連合のガンバレルダガーのトリオ、すごく強かったわね。機体の性能なら私たちの方がずっと上なのに。レイもそう思うでしょう?」
「そうだな。ルナマリアの言う通りだ。連合にあれほどのパイロット達がいたとは、な。あちらのWRXチーム以外にもまだまだ侮れない敵が多いということだ」
「そうよねえ。そもそも地球連合の方がずっと人数多いわけだし。ナチュラルの天才ってやつも元の人口が人口だからたっくさんいてもおかしくないのよね」
このC.E.宇宙には数えるほどしか存在していないニュータイプ二名とその近縁種の一人をまとめて相手にしたとは知らぬルナマリアは、これから先グレースやアーウィン、モーガンクラスの敵がわんさかと出てくるのでは、
という不吉な予想に、整った美貌を険しいものにしていた。
一方で、浮かべる表情そのものはいつもの作り物めいたレイが、ルナマリアにフォローを入れた。なかなか珍しいと見えて、無表情の仮面の下に仲間を思う思いやりを持つレイは、よく仲裁役やフォローに回ることが多い。
「そうなるな。だが、それを覆すためのおれたちとWRXだ。そうでしょう? 隊長」
「ええ。プラントの総力を結集して開発したWRXは、『単機』で戦局を覆す戦略級の兵器。レイの言うとおりよ。それを託されているという事の意味を、貴方達には忘れないでいて欲しいわね」
模範的なレイの言葉に、ヴィレッタはかすか微笑を浮かべていた。氷でできた女神像が、不意に春風のぬくもりを帯びたような、やさしい微笑みであった。
惜しむらくはそれを目撃する者がいなかったことだろう。浮かべるヴィレッタ自身も、自分の唇の動きに気付いているとは思えない。
そのヴィレッタ本人は、WRXの原型であるSRXが、対怪獣用の一撃必殺兵器であったと知ったらレイ達はどう思うかしら? と割と別の事を考えていた。
仲間達の言葉を、これまで沈黙と共に聞いていたイザークが、不意にメインモニターに捉えたとあるMSの姿に息を呑んだ。
抑えの利かぬ激烈な感情を宿す瞳に映っていたのは、ザフトの自由と正義を体現し、プラント市民の生命と未来を守り勝ち取るために造られた筈の『フリーダム』と『ジャスティス』。
そしてイザークは知っていた。正義を名に持つ紅のMSを受領し、そのまま持ち去ってしまった反逆者の名が、イザークが心の奥底で認め、必ず越えると誓っていたライバルと同じであると。
「アスラン……!!」
R−1というプラントの運命を大きく握る機体を任され、また多くの戦場を体験した事により、自分の立場というものを強く意識するようになり、これまでの癇癪性を抑えていたイザークの理性がこのときばかりは一気に沸騰した。
貴様は、なぜ、ソレに乗って、ここにいる!?
脳裏を占めた言葉を認識するよりも早く、イザークはR−1をジャスティスめがけて加速させていた。
ベルゼボの司令室から無視するよう命令されていたラクス一党の象徴の一つである、禁忌の核動力機めがけて突然動いたイザークに、ルナマリアとシホの戸惑いに満ちた声が掛けられた。
「イザーク副隊長、駄目ですよ! こっちからアレに攻撃するなって命令が!?」
「止まってください!」
「うるさい! あいつが、アスランがいるんだぞ! 機体から引きずり出してどういうつもりでザフトを、プラントを裏切ったか力づくでも聞きだしてやる!」
すっかり荒々しい気性の地を曝け出し、イザークはR−1の両手に超規格外の巨大自動拳銃ライトヘッドとレフトヘッドを握らせ、MSが携行するシールドさえ一撃で破壊する猛弾の照準をジャスティスに向けていた。
一方でジャスティスの中のアスランも、自機めがけて猛烈な勢いで迫るR−1も気付いていた。ただしそのパイロットが誰か、までは知らない。
知っているのはメンデルでの戦闘の折に垣間見た極めて高い戦闘能力と、R−1という機体名称だ。
二つの銃口がジャスティスを捉えられた、とアスランが認識した瞬間には、掲げたアンチビームシールドを中心に無数の巨弾が機体を揺らしていた。
通常の重機関銃やMS用に開発された実体弾系の武装とは比較にならぬ威力に、あろうことかジャスティスの機体が一挙に後方へと押し込まれているのだ。
「アスラン!」
「くっ、大丈夫だ」
掲げた左手のシールドを支点にするように機体を半回転させ、アスランはモニターに捉えたR−1へとルプスビームライフルの銃口を向ける。丸いがらんどうの筒から放たれる光の矢が、ひとつ、ふたつと虚空を射抜く。
あくまで虚空の闇を射抜いたのだ。背に負った超重量の装備を感じさせぬ軽やかなR−1の動きに、アスランの中で警戒の度合いが高まる。
ジャスティスの本領が発揮できる近接戦闘へ持ち込もうと、フットペダルを踏み込む瞬間に、R−1が右肩に鋼鉄の棺桶が。
縦に割れた棺桶の中からMSの腕が丸々収まりそうな巨大な砲身が現れた。内蔵した巨大ロケットランチャーの一撃“Death Bllow”だ。
ジャスティスの防御を司るPS装甲ならばその直撃にも耐えられる、とアスランの理性は語ったが、億を超える虚空の破壊神達との戦いを知る魂は叫んだ。
ヨケロ、カワセ、アレニアタルナ!
「っ!」
ジャスティスの傍らを過ぎ去ったランチャーの弾頭が、後方にあったローラシア級の残骸に直撃し、七〇メートルはあった朽ち果てた船体を猛烈な爆発の中に飲み込んで見せた。
「なんて無茶苦茶な威力だ。誘爆を恐れていないのか!?」
そういう間もR−1の両手に握られた地獄の番犬の左右の頭からは、絹糸のように降り注ぐ雨に似た弾丸が無数に放たれていた。もとより巨大な銃身ではあるが、どう考えても許容量を超えた装弾数だ。
乱れ散る黄金の空薬莢の只中で、すでに五十に届こうかというマズルフラッシュと虚空の闇を震わせる銃声が続く。アスランもその銃撃の嵐の中に僅かな間隙を見出し――その隙を見出すこと自体が神業のように為し難い程の銃撃だ――こちらは光の矢で反撃する。
ジャスティスから放たれたビームは、無数の銃弾と衝突していくつかを融解させるも止む事の無い鋼の魔弾の中に飲み込まれR−1に届くことはなかった。
何より、まるでこちらの軌道を読み切っているかのようにジャスティスの向う先に、魔犬の牙が群がってくる。
友の苦戦にキラもフリーダムで割って入ろうとするが、こちらは残るWRXチームのメンバーが抑えにかかり、四方八方か降り注ぐ攻撃を捌くので精一杯だった。
「動き自体は相変わらずだな! アスラン!」
「イザーク、イザークなのか!?」
「そうだ。このおれ、イザーク・ジュールだ!」
銃撃を止め、銃口をジャスティスに向けたままのR−1の通信に、アスランは小さくない驚きの声を上げた。
暗黒に染まる宇宙に散らばる空薬莢が、R−1を夜の真っただ中に降る黄金の雨の中に佇んでいるかのような錯覚を覚えさせる。
「貴様あ、よくもぬけぬけとその機体に乗っておれたちの前に顔を出せたな!」
「イザーク……」
「なぜ裏切った、アスラン! お前ほどの男がジャスティスを奪い、ラクス・クラインに加担しザフトに、プラントに弓を引く!」
ジャスティスの通信を聞いたキラが、フリーダムを動かす動作はそのままにアスランに聞いた。
「アスラン、知っている人なの?」
「ああ。デュエルのパイロットだ。おれの、戦友だな」
「デュエルの」
キラの脳裏に思い描かれたのは、第八艦隊が壊滅した低軌道会戦の折りの事。降下するヘリオポリスの避難民が乗ったシャトルを守り切れず、デュエルに撃墜されそうになった時の絶望、後悔、恐怖。
シャトルこそ、当時はアンノウンだったユーリアのガーリオン・カスタムの介入で助けられたが、その後幾度となくアークエンジェルを追い、苦境に立たせてきたザフトの敵。アラスカではフリーダムと共に乱入し、機体を損傷させて撤退を促した相手。
そのデュエルのパイロットが、今、アスランとこうして敵対している。かつての自分とアスランのように。
「アスラン……」
「大丈夫だ。もう同じことは繰り返さないさ。はやく、ラクスやマリューさんの所に行ってくれ」
「でも」
「いや、イザークならおれと同じことを考えているさ」
一人アスランを残すことを危惧するキラに諭すように告げるアスランの目の前で、イザークに頼まれたか命じられたのか、他のWRXの機体が踵を返して母艦ドルギランへと戻り始めていた。
少なくとも、デュエルのパイロットとアスランは、かつての自分たちよりは互いを敵と見ていないのだとキラは感じ、フリーダムを動かした。
「アスラン、僕たちみたいなことには」
「ああ。……しないさ。おれもイザークもきっと追い求めるものは同じだからな」
キラやヴィレッタらWRXチームが去り、アスランとイザークだけ残った。砕かんばかりに歯を噛みしめているイザークに向かい、アスランは訥々と語り始める。優柔不断で流されやすいが、誠実で生真面目なこの少年らしい声音だった。
「聞いてくれイザーク。おれは、ただ軍の命令に従って引き金を引く事が本当に正しい事だとは思えなくなった。命じられるままに引き金を引き、殺して殺されてを繰り返して、それで本当に平和になるのか!?」
「それでも軍人か、アスラン。見ろ! そうは言っても地球連合は容赦なくおれたちコーディネイターの敵となってこうして迫ってくる。撃たねば守れぬなら、撃つ事に躊躇いなどあるものか!」
「だが、それでは互いが互いを憎しみ合い続けるままだ。それでは、いつまた同じ過ちが繰り返されるか」
「では、貴様が今している事は、立っている場所は過ちではないと、誰が証明する? 誰が証明できる!? 正しいと誰かに言ってもらえなければ戦えんのか、貴様」
「それは……」
「後の歴史が、などと知ったような口を利くなよ、アスラン! おれが聞きたいのは今のお前の言葉だ。誰かに言われたから、誰かに導かれたから、そんなモノはいらん。アスラン・ザラ、お前の本当の本音で言え!」
「おれは、今でもプラント人々を守りたいという気持ちは変わらない。ただ、だからといって地球の人々を撃つ事が正しいとは言わない。イザーク、一体どれだけのプランの人々が本当に地球のナチュラルの人達の事を知っている?
前線で戦っているおれ達でさえ本当にナチュラルの事を知っているのか、と言われれば答えはノーだ。おれ達はよく知りもしない相手とそう命じられたからと、そう教えられたからと諾々と戦うだけの存在か?」
「お前に一部の理があることは認めてやらんでもない。だがな、軍の命令に不審を覚えたからと言ってジャスティスを、ニュートロンジャマーを搭載した機体を強奪して良い事にはなるまい。
ザフトの敵ではない。連合の味方でもないというのなら、貴様らは誰の敵で誰の味方だ。誰の敵でもないということは誰の味方でもないということだ。そしてお前達は放置するには過ぎた力を持ちすぎている。貴様らは行動に一貫性が無さ過ぎるぞ!」
「おれ達は、ただ今みたいナチュラルだからと、コーディネイターだからと争い合う世界を止めたいだけだ」
「ならばその為の方法は! 手段は!? どのように行動し、どうすれば、いつ、お前たちの求める世界が来るか、貴様ちゃんと考えて行動しているのか!」
「それは……」
本来の歴史同様、アスランには答える術がない。キラには一緒に探そうとは言われたが、彼らは結局二年後の運命の戦いにおいてさえ答えを見出すことはできずにいた。結局は言葉よりも武力による解決方法しか選べぬ愚かさは、アスラン達も変わらない。
「この戦争に勝ってプラントの独立を手に入れる。かつての理事国の膝下にあったプラントが、正当な権限を得る為の戦いだ。
そしてプラント市民の自由と平和を勝ち取る為の戦い。それがザフトの大義だ。ではお前達はどうなんだ? 貴様とてプラントの同胞を討つつもりなどあるまい」
この世界のラクス・クラインの場合、主眼に置いているのはプラントがこの戦争に勝つ事だ。加えて長期的な観点から、ナチュラルとコーディネイターの融和も願っている事を加味して、どちらか一方の大量虐殺を伴う勝利の妨害もある。
すでにクライン派のザフト兵からヤキン・ドゥーエ付近にて建造されているザフトの切り札の存在を知り、連合軍が再び手にした核の脅威が現実となった以上、両者が地球とプラントを撃たない様に立ち回る事が目下の方針となる。
プラントが手にした力は容易く地球を焼き払い、また地球連合の核兵器はユニウスセブンの悲劇を体験したプラントからすれば、強烈なトラウマとなる脅威だ。その事実がたやすく両社の心を憤りと恐怖と絶望、なにより憎悪に染める。
そうなれば、これから更に数十年、数百年単位で、これまで人類の歴史に存在したあらゆる差別の歴史を超える悲劇の幕が上がるだろう。
ラクスはすでに上がりつつあるその幕をこれ以上晒さぬように動いている。ラクスの思惑としてはあくまでプラントの側に立った遊撃戦力、というのがノバラノソノの面々の立ち位置だ。
すでに答えを出しているラクスに対し、まだ答えを探していると思い込んでいるキラやアスランには、イザークの確たる言葉に答えるモノがなかった。
向けられた銃口の先で、アスランは長い事沈黙していた。イザークは、それでも辛抱強く待った。目標にさえしていたこの男が、道は違えてもふさわしい言葉を吐く時を。
そして――
ヒュッケバインによる衛星ミサイルの直撃の阻止の他、それ以外のミサイルもDCやザフトの部隊、突如現れたラクスの部隊に迎撃された事に、ジーベルはヒュプノシスの艦長席から立ち上がり、血走った瞳でモニターを睨んでいた。
MS部隊も既に三分の一以下にまで数を減らし、増援として姿を見せた各艦隊も各個の判断で離脱し始めている。
「……ちょう、艦長!!」
「っ、なんだ!!」
癇癪をぶちまけるかの様なジーベルの怒声を受けたオペレーターであったが、彼はそれどころではないとばかりに怒鳴り返した。
「敵機接近、ワラキア、オクタヴィアヌス、ガリアダーク沈みます!」
「くそ、ありったけのMS隊を出せ! 全ての部隊を呼び戻して返り討ちにしろ!!」
「ゴーレム1、ルーク2反応ロスト! MS部隊突破されました!! MS間に合いません」
「なんだとお!?」
ジーベルに恐怖と絶望と屈辱がブレンドされた叫びを挙げさせたのは、レオナのガームリオン・カスタム・ラーを先頭に、損傷したままで戦闘を続行しているクライ・ウルブズの面々だ。
クライ・ウルブズを城壁を崩す破城鎚の代わりにして、ザフトのジンHM2型とゲイツが、それぞれ二機ずつ同伴し前方で弾幕を張る連合の部隊に踊り込んで行く。
各機の構えたライフルのビームや銃弾が飛び交い、たちまち両者の間に光の雨が行き交う世界が生まれた。
片方の足を失い姿勢制御に難が出ているものの、無事なフルドドのパーツとの組み合わせでスラスターやバーニアの位置を工夫しで性能の低下を抑えたラーが、
ストライクダガー三機の集中砲火を何度も旋回しながら回避し、すれ違いざまにBモードのオクスタンライフルを撃ち込んで火の玉に変える。
その爆炎を裂いてジャンのヒュッケバインMk−UとアルベロのFAガームリオン・カスタムがドレイク級駆逐艦とネルソン級戦艦に取りついて、至近距離からありったけの弾丸を撃ち込んで船体に大穴を開けて見せる。
それに勢いづいたザフトの部隊も、残る連合艦隊の猛火の雨を避けながら一射二射とライフルを撃ち返しながら少しずつ連合の部隊を削っていた。
「ええい、馬鹿な、このおれの策がこんな力づくしか知らぬような連中に破られると言うのか!?」
その力づくしか知らないような相手に使う策が、物量に頼るのに毛が生えた程度なのだから仕方がない、とは気付いていない。
「大型熱源感知! 北天より急速接近!!」
「対空砲火用意、イーゲルシュテルン照準合わせ!! 対空雷幕弾を」
哀れなジーベルに迫るのはMSの四、五倍はあろうかと言う白い鋼の幻獣『ヴァイクル』であった。機体中央部から艦船でも一撃で沈みかねない高出力のオプティカルキャノンを乱射しながら、その周囲には無数の白い十字の下僕を連れている。
乱雑と見えてその実正確無比な狙いのオプティカルキャノンは、進行方向上に存在するMAや艦船をデブリごと貫き、無数の十字群『カナフ・スレイブ』は三百六十度、三次元のあらゆる方向から光刃の嵐となってヴァイクルに迫る全てを切り裂いていた。
既に戦闘が始まって長時間が経過しつつも、無数の遠隔操作兵器を変わらぬ集中力を維持するテンザンである。無数の爆発を景気づけとばかりに、がはは、と笑いながらテンザンは正面に捉えたヒュプノシスに向かって機体を加速させる。
「ひゃっはははは! これでミッションクリアってかあ!? 落すぜえ!!」
周囲のドレイク級がヴァイクルと迫りくるクライ・ウルブズ、ザフトのMS部隊によって轟沈される中、ジーベルは目をあらん限り見開き、己の命を摘み取る無慈悲な死神の姿を映した。
「お、おのれえええ!? このおれが、こんな所で死ぬなど、馬鹿な事があって……たまるかああぁぁああ!?」
ヴァイクルの胸部に宿った苛烈な光の奔流が、無慈悲にジーベルのいる艦橋を直撃した。死の瞬間に苦痛を感じる事も無かったのは、せめてもの救いであったろうか。
やがて艦橋のみならず船体を貫いたオプティカルキャノンンによって、船体各所から爆炎を噴き上げて、ヒュプノシスは轟沈した。
彼方で爆発する連合の艦隊の姿を捉え、同時に芽生えた超感覚によって撤退を始める連合諸兵の思惟を感じ取り、クルーゼはここまでかと淡い笑みの下で判断を下した。
ビアンは一命を取り留め、DCとラクス・クライン一党をひとまとめに――ベルゼボのザフトも含め――壊滅させる試みは失敗に終わったわけだ。
まあいい。ビアン・ゾルダークの戦線離脱と、ムウの新たな力を確かめられたのだから全く収穫が無かったわけではない。
プロヴィデンスとドラグーンストライク。同じドラグーン搭載機と言う極めてまれな激突の明暗を分けたのは、両者の実力でも、芽生えた超感覚の覚醒具合でもなく、純粋に搭乗機の性能差によるものだった。
まだ余裕の笑みさえ湛えるクルーゼに対し、機体こそ無傷だが、ムウは荒い息を付いていた。
未だ試験段階だったドラグーンを元とするストライクに対し、こちらも急造という批判は免れぬものの、それなりにテストを繰り返した上で完成と相成ったプロヴィデンスのドラグーンとでは、搭乗者に掛ける負担や火力、精密な動作、反応速度などに差があった。
加えて核動力機とバッテリー機との地力の差もある。ラピエサージュやゲシュペンストから得られたデータを反映しているとはいえ、ストライクとプロヴィデンスとの間にある性能の差は深く広い。
「腕を上げたな、ムウ。だがまだだ。私の憎悪を止めるには、私の欲望を阻むには、私の怒りを鎮めるにはまだ足りない! ムウ、愚かなもう一人の私の息子よ! この歪んだ父の残した忌まわしき産物である私を、ラウ・ル・クルーゼを止められるかな!」
「止めて見せるさ! おれを誰だと思ってやがる!」
「『私』の子供さ! そうだろう!?」
「く、まだそんなことを言うのか、お前は!」
ストライクのビームライフルとプロヴィデンスのユーディキウムビームライフルの銃口が、互いの機体のコックピットを正確に狙いつけた。互いの思考を感じ取り殺気を読み取り、そして命の鼓動を聞く。
血のみを分けた偽りの兄弟、虚偽の親子は、これが自分達の絆なのだと告げる様に、お互いの命を奪いに掛かった。く、と互いの人差し指がトリガーに掛かる。MS、パイロット双方の指が。
死の神の握る鎌がどちらかの魂を刈り取るその刹那の瞬間、けたたましい警告音がプロヴィデンスのコックピットの中に木霊し、ラウはそれを聞いた聴覚よりも稲妻のように背筋に走った第六感に頼った。
引き金を引く一瞬を、機体を後退させる動作に振り分けた。装甲を焼く音さえ聞こえるような至近距離を、二条のプラズマの槍が穿っていた。
数分の一秒前までプロヴィデンスがいた空間を穿ったプラズマの源を辿り、モニターの片隅に映し出された二機のMSを認めて、クルーゼの笑みがムウと対峙した時とはまた別の狂気に彩られた。
「来たか、忌まわしきメンデルの兄弟」
「ムウさん!」
アスランと別れ、先にエターナルへと戻ろうとしていたキラだ。純粋なC.E.世界の人型機動兵器としては、現在最強の一角を担うフリーダムを愛機とする運命の少年が、ムウの窮地を救った。
クルーゼはムウとの戦闘で相応の消耗を強いられていたが、それも新たに姿を見せた因縁の怨敵の姿に高揚した精神が、束の間忘れさせてくれた。
機体の円盤のようなバックパックと、腰アーマーに接続されていたドラグーンの子機を射出し、フリーダムに差し向けた。
キラは、ムウのドラグーンストライカーとの模擬戦で体験した、このドラグーンシステムの脅威を思い出し、即座に機体を散開させる。
「これは、ドレッドノートの後継機!? フリーダムとジャスティス以外の核動力機か!」
常に動きまわり、わずかでも機体の動きを緩めれば即座にドラグーンが構成する光の檻に捕まり、無数の光の糸がフリーダムの全身に繰り糸の如く繋がれ、その鋼の四肢を引き千切るだろう。
キラは、時にアンチビームシールドや、ビームサーベルでドラグーンのビームを防ぎ、切り払い、回避し続ける。風に誘われた一片の花びらのように軽やかな動きは一種の舞のようでもあった。
だが実際には、その動きを止める事は餓えた狼の群れの中に放り出されるのに等しい、市の約束がなされている。
誤解されがちだが、PS装甲は一応通常の走行よりもビームに対する耐性が備わっている。それに加えて、ドラグーンは個々の威力は小さく、数をもって敵機を破壊する兵器だ。
それゆえに、砲撃の大多数の回避を可能とするパイロットの技量とMSの性能が噛み合ったキラは、被弾するにしても一発当たるかどうか、というのが希に起きる程度であった。
かつてメンデルで相対した時に見たのとは格段の動きの違いに、さしものクルーゼも目を見張る。
今のキラ・ヤマトには、はるか異世界で共に終焉の銀河を戦い抜いた新たな因果律の番人から与えられた、闘いの記憶がある。
本人達が自覚することなくその魂に息吹く闘いの記録は、本来の歴史に於けるこの時点での彼らの実力をはるかに凌駕し、ニュータイプへの覚醒の階段を昇るクルーゼの想像を超える猛者へと変えていた。
「これだけのドラグーンの一斉砲火を、ほとんど被弾せずに済ますだと!?」
「気をつけろ、キラ! そいつに乗っているのはクルーゼだ!」
「!? ……ラウ・ル・クルーゼ」
クルーゼの注意がキラに向いた隙を狙い、ドラグーンを展開してプロヴィデンスに撃ちかけながらのムウだ。
疲労によって集中力を欠いたドラグーンはプロヴィデンスを捉える事はできなかったが、三対一の状況に、クルーゼも表には出さぬ内心で焦りを募らせた。だが、積もる焦りを超えてクルーゼは笑う。
「さすがスーパーコーディネイターといった所かな、キラ・ヤマトくん!!」
「貴方はっ」
「男子三日あわざれば刮目して見よというが、それ以上じゃないかね?」
「こんな時にまで貴方は! そこまでぼくが憎いんですか!? 自分の軍が攻撃を受けているんですよ? そちらを助けようとさえ思わないんですか!」
「はっ! 言った筈だよ。私はムウの父親のクローンだと。私がナチュラルであることさえ見抜けず、怪しむ事もしない無能共だ。同朋意識など元より持ち合わせてはいない。思い通りに、いやそれ以上に動いてくれる駒ではあるがね」
「人を、なんだと思っているんだ!」
「君が、ソレを言うのかっ!!」
フリーダムを囲んだ三基のドラグーンの砲撃をひらりと機体を捻って交わし、宇宙の闇に溶け込んでいるドラグーンの子機をほぼ同時にフリーダムのライフルが撃ち落とす。
それぞれが高速で動き回るドラグーンをこうも容易く撃ち落とすキラの技量は、確かにクルーゼの言葉通りメンデルの時とは比べ物にならない。
クルーゼがムウとの戦いで消耗している事を差し引いても、瞠目に値する技だ。
「貴方はここで止める」
「止まるものか。せっかくここまでお膳立てしたのだ。この戦争の終幕、人類の終焉を見るまで、私は止められない! 君に止められるのかね!?」
「止めてみせる。貴方の狂気も、こんな戦いも必ず!」
「無駄だよ。たとえこの戦争を止める事ができたとて、人類は戦いから離れる事叶わぬ! なによりも人類の歴史そのものが証明しているだろう!
他者と己を比べ、己こそがより優れた存在でありたいと、願うが故に他者を完全に受け入れることなどできはしない! 理解することもない! これからも人類は永遠に戦い続ける。それが人間だ。だからこそのこの世界!」
「それでも人間は何とかここまでやってきたんだ。ぼくは貴方ほど人間を見損なってなんかない」
「君も私と同じものを見れば同じように思うさ! 人の欲望、願い、好奇心、向上心。人間の文明を押し上げてきたその原動力がいかにおぞましく醜いものかとな。
君とて謂われなき恐怖を、暴力を、憎悪を向けられた事が無いなどと言えはしまい。その綺麗ごとしか吐けぬ口でもなあ!!」
ずぶりとクルーゼの言葉がキラの心に突き刺さった。ヘリオポリスの崩壊から、これまで言われてきた言葉が蘇る。そうだ。この人の言う通りだ。誰もぼくの気持なんか知らないで、できるから、君しかいないから、そういって戦いに駆り立てる。
誰も殺したくなんかいないのに。誰も撃ちたくなんかないのに。
怯んだ隙を見せたフリーダムの右腕をドラグーンが撃ち抜き、姿勢を崩したフリーダムにユーディキウムビームライフルの一撃が直撃して右股関節をカバーする装甲が吹き飛んだ。
「さようならだ。キラ・ヤマト」
姿勢制御を失うフリーダムを、いくつものドラグーンが取り囲み、獲物を追い詰めた猟犬と猟師の囲いが整った。わずかな失望を感じている事に、クルーゼは驚いた。ムウだけでなく、この少年に討たれる事を願っていたのか、自分は?
「それでも……」
光の速さで告死の矢が放たれるよりも速く、フリーダムはクルーゼの目の前で機体を持ち直し、青い翼から白い光を爆発させてプロヴィデンス目がけて機体を加速させた。
「守りたい世界があるんだ! 世界は、時々だけど美しいから、それでぼくには十分すぎる!」
サイやミリアリア、トール達と交わした何気ない言葉、再会した時のフレイの涙交じりの笑顔、アスランと相撃ち傷ついたキラが聞いていたラクスの歌、守ろうとしたあのエルという少女のあどけない笑顔と折鶴。
確かに世界は醜く歪んでいるのかもしれない。いずれ、キラもまたその醜さに足を絡めとられ、憎悪の声に押し潰され、恐怖を根源にした差別の視線に切り刻まれるだろう。
それでも、まだ、まだキラは戦えた。世界の未来がより良いものであると信じて戦うことが。
ユーディキウムビームライフルと残るドラグーンを集中させての砲火を、すべて交わし、フリーダムは抜き放ったビームサーベルを振り被っていた。
「クルーゼーーー!!」
「おのれぇっ!!」
振り被られた刃が過ぎ去った時、そこに残っていたのは斬り落とされたプロヴィデンスの左腕だ。間一髪回避運動が間に合ったクルーゼは、連れてきた部隊の消耗と撤退を始めたラクス一党と連合艦隊の動きを見て、潮時を感じた。
すでにムウのストライクが、フリーダムとプロヴィデンスの間に割り込んでいる。
「残念だが、決着はまた今度だ。だが、連合がボアズに攻め込むのもそう遠い未来ではない。私たちの因縁が終わるのもようやくだ。それでまでは無事でいてくれたまえ。ムウ、キラくん」
クルーゼの挑発交じりの声に答える事はせず、ムウはプロヴィデンスの機影が見えなくなってから背後のフリーダムの中のキラを気遣った。
「無事か。キラ」
「ムウさん。はい、大丈夫です。フリーダムもなんとか」
「そうか。ストライクは結構やばいな。にしてもよく言い返したじゃないか。あいつの名前を叫ぶ所なんて良い意味でお前らしくなかった位だ」
キラは答えず、弱々しく笑っただけだった。
旗艦ヒュプノシスの轟沈に伴い、一斉に撤退を始める連合の部隊の様子に、衛星ミサイルを斬りまくっていたシンは安堵の息を吐いた。
機体と獲物のサイズを考慮し、衛星ミサイルのロケット部分や敵機の迎撃に専念していたゼオルートのM1カスタムがグルンガスト飛鳥の横に並んだ。見れば四肢の関節のあちらこちらから煙と紫電が迸り、機体の限界が近い事を伝えている。
これではもはや修理するよりも新しいM1を用意してゼオルート用に調整する方が早いだろう。
シンは飛鳥に両手で握らせていた獅子王斬艦刀の展開を解いてシシオウブレードに戻した。ゼオルートと肩を並べ、向かい合う雄々しき巨人を見た。
右肩に担ぐ様にして青き斬艦刀を構えた天下無双の武を誇るスレードゲルミルは、その中の搭乗者の気迫を体現した様な機体だ。人の顔を模した頭部は、時にウォーダンからの通信ではなくスレードゲルミルが喋っているような錯覚をシンに何度か与えている。
鞘に納められた刃を思わせる声が聞こえた。ウォーダンだ。
「どうやら愚策は尽き、連合の部隊も退くようだな」
「……」
「シン・アスカ。このたびの戦い、またいずれという形でよいか?」
「……ああ。あのまま戦っていたら負けたのはおれさ。文句を言う資格はない。それに、無様な所も見せちまったから」
「ふっ。お前くらいの年でアレほど怒り狂う何かがあると言うのも決して悪い事ではないのだろうがな。だが、あのような狂態でおれの前に現れれば、次こそは屍をさらす事になるという事を決して忘れるな」
「言われなくても、分かっている。だから、今度こそ最初っから本当のおれと飛鳥であんたと闘う」
「そうなればよいがな」
「おれが信じられないってのかよ?」
「そうではない。ラクスとDC、果たして次に見えた時互いを敵とみなすか否か、と言っているのだ。この場での戦いも、正直に言っておれとおまえが戦わねばならぬ理由が、あったか?」
「う。で、でもあんたらはザフトから新型機を強奪して国家反逆罪で指名手配されているんだろう? だったらザフトと同盟組んでいるおれ達DCにとってあんたらは味方じゃないだろ」
「確かにな。お前の言う通りだが……。ふ、いやあまりおれらしくもない、無用な問答であったな。シン・アスカ、ゼオルート=ザン=ゼノサキス、願わくば五体無事な再会を。そして叶うならば、戦場ではないどこかで剣を交える機会に恵まれる事を祈る」
「ああ。あんたとはきちんと決着をつけたい」
「そうですね、戦争が終わって骨休みした後でなら私も喜んで一手ご教授に預かりたく思います」
死線を越えて刃を交わし合った強者だけが共有する共感か、ウォーダンの言葉に、シンとゼオルートは快く答えた。その口元には確かな微笑が一つずつ浮かんでいた。
斬艦刀を元の肩アーマーの飾りに戻し、左肩にはめ込んだスレードゲルミルが踵を返して飛鳥とM1カスタムに背を向けた。無論、その背を追うものも、斬りつける不埒者も居はしない。
決着こそ付かなかったが、この瞬間彼らは全力で戦った強敵であり、同時に再会を誓った戦友であった。
そうしてスレードゲルミルを見送って数分後、そろそろタマハガネに戻ろうとシンに声をかけたゼオルートはいよいよ危ない音を立て始めた愛機に気付き、珍しく慌てた様子を見せた。
「おっと、これはいけませんよ。再会を誓ったばかりだと言うのにこんな所で死んでしまっては申し訳がありませんからね。シン、早く艦に戻りましょう」
「はい。……あれ?」
シンはふと感じた違和感に声を挙げてヘルメットの中を漂う赤い雫を見つめた。一つ二つ三つ、いくつも浮かび上がり無重力によってぶよぶよと表面を波打たせる球体が浮かび上がってくるではないか。
戦闘中にGの過負荷などによって嘔吐した時の為にあるヘルメットの吸引器のスイッチを入れようとして、シンは赤く染まる視界に気付いた。
「え? え? ええ?」
思わず操縦桿を離した手も、パイロットスーツの中で生ぬるい感触に包まれている。いや、手だけではない。癖の強い黒髪にも赤い雫が絡みつき、手に留まらず爪先から太もも、脇腹や背中、胸、首とありとあらゆる肉体の箇所が不快な感触に包まれている。
絡みつくような生ぬるい霧に包まれ、不快さを駆り立てる愛撫を受けているかの様。
その現実を否定するようにヘルメットの吸引器のスイッチを押すが、それでもバイザーの内側を濡らす赤は絶える事を知らない。
つっと、両耳からも新たに赤い筋が流れてインナーとシンの肌を赤く塗らす。それだけではない。ぬるりとした感触は顔にも及び、額やこめかみに結露した赤い血の玉が無数に浮かび続けて吸引機に吸い込まれていた。
眼球から焼けた鉄の杭を差し込まれたように脳が沸騰したように痛い。生きたまま体の内側から焼かれる苦痛が、シンの全細胞を襲っていた。
シンは知らなかった。暴走したカルケリア・パルス・ティルゲムと憎悪に駆り立てられたシンの思念が、シンの肉体的限界をはるかに超えた力を引き出していた事を。いまだ遠く及ばぬはずの剣士達と互角に戦えた対価を、今死神が取り立てに来ていることを。
体の中で何度も血管が千切れる音が続く。溢れ出た血潮が細胞を熱く赤く塗らす。これまで過度の荷重に耐えていた骨格が軋む音を立てている。
肌から血の玉が生じ、鼻からも耳からも口からも血の筋が零れだす。熱く熱せられたそれらは、シンの命の熱を連れて外の世界に飛び出し、シンの体を徐々に冷たくしていった。
「あっ……あぐ!? がはぁ、はあ……げほ、ぐほぇ」
剥き出しにされた神経一本一本を丁寧に炙られる苦痛に引っ切り無しに襲われる中、シンは自分の視界が赤く染まったのが、流れ込んだ血潮と破れた眼球の毛細血管の所為だと気付くよりも早く、喉の奥から込み上げてくる熱を意識した。
上りくるものをこらえようと意識したのと同時に、喉の奥から込み上げてきたものを盛大にシンはぶちまけた。吸引機が吸い込み切れず、バイザーの中を赤く濡らしてゆく自分の吐血を見つめながら、シンは抗えぬほどの重さで落ちてくる瞼を開こうと足掻いた。
応答の無いシンを心配したゼオルートの呼ぶ声が、ひどく遠いものに聞こえた。シンはその声に縋るようにして意識を保とうとしていた。このまま瞼を閉じてしまったら、もう二度と目覚める事のない闇の中に落ちてしまうと理解していたからだ。
そしてすぐに、闇がシンをあらゆる苦痛から隔離してくれた。
機体が限界を迎えたゼオルートが、抱えたグルンガスト飛鳥をなんとかタマハガネに着艦させ、事前に要請していた救護班達と共に飛鳥のコックピットを外部操作で開く。
ゼオルート達より一足早く艦に戻っていたステラやスティング達も慌ただしい様子に気づいてシンに何かあったのかと遠巻きに見ていた。
やがてコクピットの中の惨状に顔を顰めた救護兵たちがコクピットから引きずり出したシンの姿を見て、ステラの目が大きく見開かれた。傍らのスティングやアウルも同じであった。
両腕を抱えられたシンの顔が見えない。バイザーがすべて内側からこぼたれたシン自身の血潮で染まっていたのだ。
ヘルメットが外され、途端に血の玉がいくつも浮かび上がる。頬も額も鼻も唇も耳も髪も何もかも赤く染まったシンが、二度と開かぬように瞼を閉じていた。
その姿を認め、ステラはたちまち涙を瞳に浮かべて叫んだ。ビアンだけでなく、シンまでもが――それはステラの精神の許容をはるかに超えた恐怖と同じだった。
「いやああああああ!!!???」
――続く
総帥GJでした。
総帥のシンはきちんと主人公してるから見てて気持ちがいいっす
ですよねー!?(血涙)
元々チートな転移組、クォヴォレーのチートに預かった人たちに比べれば、
シンが何のデメリットもなしにウォーダンとかとやり合えるとか、都合良過ぎですよね
またシンのターンはしばらくお休みか?
ビアンと一緒に寝込んじゃうのか、それともあっさり復活するのか
……ついでにキラがなんか主人公してた気もしなくもない
そして、アスランサイドはなんかいい方に転ぶかトチ狂うのかもわからないなぁ
いっそ最終決戦までお休みして、それまで他のクライウルブズの面々中心に話進めるぐらいでもいいかも
その間の戦いは「こんな時シンがいれば…」みたいに喪失感をアピールしつつ、最後の戦いで満を持して復活とか燃えるわ
>>70 カミーユ化ですか!?
それよりは期間は短いだろうけど…
その短い間にすっかり存在感薄れてキラサイドに主役奪われる予感も。
ってか展開的に、デカい戦いは後1〜2回ぐらいっぽいけど
ステラが篭っている部屋の近くに被弾、ステラの悲鳴を感じ取って復活
これはサイヤ人フラグかターちゃんフラグか・・・
個人的にはパワー分離機にかけられメンデルに封印されたシンのパワーの源を
スティング、アウル、ステラの三人で開放に行くっていうのが
29周年ktkr
最終決戦でバタバタ人が死んでくが、シンのシードフラッシュで全員復活するわけだな
つまりシンの火事場の○○力に脅かされるのを恐れた
邪神3人組葺駄、ボロ澤、茸堕の加護を受けたキラ、凸、宗男あたりが王位継承を争うわけかw
読んでくださった皆さんありがとうございます。とりあえずシンがリスクなしであんな強かったわけじゃないよ〜という形で締めました。
今月中に終わるかな〜と思ったけど終わりそうにありませんよ、これが。五十話ぐらいからいっている気もしますが、最終決戦も間近です。
よろしければお付き合いくださいませ。
>>76 名有キャラは連合・DC・ザフト合わせて7、8人位死にます。今の処。
まさかのシン一時退場と来たかー
やべえなあ。死んで欲しく無いキャラ結構いるのにそんなに死ぬのかー
………この話読んでると本編で感じたジレンマが
蘇ってしまう。ムウの兄貴は好きだが、ネオ大佐は嫌いだから
格好よく退場して欲しいんだがやっぱ兄貴には死んで欲しくない。
けど、種本編と死人っつーといの一番に思い浮かぶのは兄貴なんだよな……
久々の投下開始します
Middle Intermisson−1 妖魔帝国の興亡
「それ」はいつどこで生まれたのか。
「それ」自身にもわからない。
「それ」に自我が目覚めた時は、すでに「それ」は古代の南太平洋の海洋民に神として崇められていた。
海から突き出た巨大な岩。
そこが「それ」の宿っていた場所。
彼らは信じていた。
いつの日にか「それ」は蘇り、彼らを苦しめる南の大陸の帝国を滅ぼしてくれると。
その帝国の名は「ムー」と言った。
帝国は西や東の大陸とは隔絶した文明を誇り。
ましてや周辺の島々など歯牙にもかけない存在であった。
帝国に抗う術を持たぬ島々の人々を、帝国は奴隷として狩り出し帝国内で過酷な重労働を強いた。
彼らの怨嗟は「それ」に集められた。
しかし、いかに血涙のこもった怨嗟でも、無機物に意思を与えるに至るには程遠い。
「それ」に自我が芽生えるまでに至ったのにはまた別の力が介在していた。
人々は「それ」をバラオと呼んだ。
彼らの言葉で「破壊するもの」と言う意味だった。
しかし、そのバラオに捧げられる呪文は、彼ら自身も意味不明のものだった。
ただ何百、いや何千年も前から、この大洋の島々に人々が住み始めたころから「子々孫々に伝えなくては
いけないが、決して大きな声で唱えてはならない」という必伝にして禁忌の言葉として伝承されていた。
その禁忌を、彼らは帝国への怨嗟のために破った。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」
意味も知らず、ただだ怨嗟と遺恨の念を込めて、彼らはバラオの前でその呪文を唱えた。
その度に、深遠の底から絶大なる力の微かな残滓がバラオへと注ぎ込まれている事など知る由もない。
ある日、帝国に連れ去られた恋人が無残にも殺された事を知った一人の娘がバラオと呼ばれる岩の上で自ら
の喉を突き命を絶った。
その血を吸った「バラオ」はついに目覚めた。
岩の中から一回り小さな岩が出現したかと思うと、その岩が見る見るうちに巨大な人型の像となり。
そしてその目が光ったかと思うと、巨大な足を踏み出し始めた。
周囲の海底岩たちにも命を与え、バラオの軍団が大陸へ向けて進軍した。
人々は狂喜した。
しかし、バラオは彼らの怨嗟をエネルギーとしただけで、彼らを救う気などまったくなかった。
バラオの軍団の進軍は大津波と大暴風を巻き起こし、彼らは憎っくきムー帝国よりも先に滅ぼされてしまった。
高度な文明を誇ったムー帝国も、命なき岩塊から無限に増殖する軍団と、強大な魔力を誇るバラオの前に国王
ラ・ムーをはじめとした王族をほぼみな殺しにされてあっさりと滅亡した。
そしてムー大陸を足ががりに世界を征服したバラオは百年近く地球の支配者として君臨した。
後世、失われた史書に「悪魔世紀」と呼ばれた時代の到来だった。
だがムー帝国の生き残りの反乱により、帝国に大いなる文明を与えていたムートロンの力でバラオは海の底に封じられた。
その代償として、ムー大陸は沈んだ。
バラオの封印には大陸を沈没させるだけのエネルギーが必要だったのだ。
それから一万年近い時が流れた。
ムー大陸ごと封印されていたバラオはようやくその機能の一端を回復していた。
思うところあって帝国の生き残りを殺さずに洗脳し共に眠りにつかせていたが、その一部を目覚めさせ
ラ・ムーの血を引く一人の戦士に自らの息子であるという偽りの記憶を与えて尖兵とし地上に送り出した。
その尖兵を打ち破ったものはライディーン。
忌まわしきムートロンの力で動く神秘の神体。
ムーの守護神であったライディーンがバラオのムー侵攻を阻止しなかったのは、ムーが周辺を弾圧する
専制帝国と化していたからだった。
神体に搭乗すべく選ばれた戦士がどんなに力と気合を込めても、ライディーンは動きもしなかった。
しかし全世界を征服したバラオ封印の時には、誰も乗ってもいないのにムートロンを放出して封印を手助けした。
此度のバラオの復活は全世界の危機の最中であり、ライディーンはラ・ムーの末裔ひびき洸を自らに招き入れて
まで復活した。
のみならず、全世界から地球の危機を救うべく集まった勇者達と共にバラオの尖兵を粉砕した。
力が蘇りきらない今、あの勇者の軍団には勝てない。
バラオは逼塞し、本格的復活を待っていた。
そんな時だった。
ライディーンがわずかな戦力と共にバラオの潜む海域にやって来たのは。
これなら勝てる。
急遽復活したバラオとその眷属はライディーンに襲いかかった。
そこに現れたのが、洸の母であり、かつてバラオ封印の中心として動いた最後のムー王女レムリアだった。
レムリアが命と引き換えに開放した純度の高いムートロンにより、ライディーンはバラオと同じサイズにまで巨大化した。
それでもバラオの人とは異なりながらどこか人にも似た心は愉悦に踊っていた。
すでに遠い西の大陸の、高き山々の底に封印されていた眷属たちを蘇らせいていたのだ。
それも今自分の周りを固めている、間に合わせにその辺の岩石に命を与えた代物ではなく。
悪魔世紀の支配を助けた強力な眷族達が。
その眷属たちが到着すれば、ライディーンを粉砕し、そのムートロンエネルギーを奪える。
そうすればあの勇者の軍団とも戦えると。
しかし。
いつまで待っても眷属たちは来なかった。
時間稼ぎのつもりで余裕で戦っていたバラオだが、無限のムートロンによるパワーアップと、母の死に激昂する洸の気迫に
次第に押されていった。
そればかりか。
ただの岩だった自分をここまで強力な存在にした人々の怨嗟。
一万年立っても尽きせぬその負の精神エネルギーの集合体が、どこかに吸い上げられていった。
ライディーンの放つゴッドボイスに砕かれた時、すでにバラオはバラオではなかった。
「それ」はただの砕かれた岩に過ぎなかった。
バラオの呼んだはずの眷族はどこに消えたのか。
バラオをバラオたらしめていた、負のエネルギーはどこに吸い上げられたのか。
それは誰にもわからなかった。
少なくともこの世界では。
Middle Intermisson−2 凶賊の永訣 忠臣SIDE
吾輩は死を恐れぬ。
既に一度、ステュクスとやらを渡りかけた身ゆえ。
かつて戦場で爆風により頭を吹き飛ばされ、当にこの世にいないはずだった吾輩がまだこの世に生を
つないでいるのは、わが主の人知を超えた科学力ゆえである。
主によってこの世に繋ぎ止められて以来、吾輩はその主の世界制服の野望のために力を尽くしてきた。
はっきり言おう。
わが主は天才的な頭脳の持ち主であるが、お世辞にも高貴なる人間とは言えぬ。
裏町の溝鼠が何かの間違いで神のごとき知恵を得たような、そんな存在であろう。
本来ならばプロイセンのユンカーの血を引く吾輩が仕えるべき主とは言えぬ。
されど、吾輩は義を重んずる騎士でもある。
命の恩人である主に対して忠義を尽くさずば、我が一族の旧西暦時代以来の伝統に傷がつく。
その一念で、理不尽なる主の命に従ってきた。
しかしそれも今日までの事。
我らは最後の時を迎えている。
主より我が軍団の母艦として託された飛行要塞に吾輩と主は乗っていた。
本拠地を解決させられての当てのない逃亡である。
しかしそれはほんの数時間の逃亡に過ぎなかった。
追いついてきた鋼鉄の巨人どもに我が飛行要塞は撃墜されたのだ。
そして今、吾輩はここにいる。
かつて垣間見た冥界の入り口とはまた違った、見知らぬ場所に。
主の生死は不明だ。
これもはっきり言えば、生死自体は大して気にしておらぬ。
吾輩が最後の最後まで主に殉じたこと、それさえ認識してもらえれば、主が生きながらえようと逝こうと
かまわぬのだが、それを確かめる術はない。
それだけが、心残りである。
いや、もうひとつ心残りはある。
吾輩が矢面に立って戦ってきた鉄の巨人。
その中に乗って、われ等が野望を阻み続けた戦士たち。
彼らに対する敵意と同じくらい、吾輩には羨望の念もあった。
わが主も同様のものを手駒として吾輩に与えてはくれたが、それは自律回路にて制御さるるものである。
吾輩も鉄の巨人を騎馬とし、戦場を駆けてみたかったものよ。
それもいまさら詮無きこと… しかし、ここはどこなのだ。
明るい光に照らされたこの場所が地獄とは思えぬが、天には太陽を模したような光球が中天に燦然と
輝いている。
地球を照らす太陽とは似て異なる物である。
されど、ここが何処であろうと、゜吾輩は既に一度は死したる者、懼れるものなど何もなし。
凶賊の永訣 僭主SIDE
息が苦しい。
全身が痺れて痛みすら感じない。
背骨に風が当たっている。
体のあちこちに大穴が開いているのか。
誰か、誰か助けてくれ……。
彼は救いを求めていた。
墜落し爆発した巨大航空機の残骸の中で、壊れた機械と機械の間に挟まれ、体の一部はミンチとなり
内臓のいくつかが零れ落ちている。
そんな状態で彼は救いを求めていた。
普通の人間ならば、極限状態では母親に救いを求めるという。
しかし彼は母親を下等な家畜同然の人間と見下しきっていた。
彼がその面影を思い浮かべ、救いを求めたのは一人の女性だった。
彼は並外れた天才的な頭脳を持ちながら最悪の家庭環境と陰鬱な容貌から人に疎まれて育った。
そんな彼に初めて優しく接してくれた一人の女性。
しかし。
彼女は別の男と結婚してしまった。
しかも。
今彼を襲っている災難。
全身を半分磨り潰される悲惨な状況に彼を追い込んだのは、その男の作ったマシーンと、その男の
息子が作ったマシーンと、その男の弟子が作ったマシーン。
そればかりか。
その男の息子の母親は彼女であり、マシーンのパイロットの一人の祖母もまたしかり。
人生の中でただ一人光り輝いている女性の息子や孫によって、彼は死の淵に瀕していたのだ
なんと哀れな人生なのだと自嘲する。
長じて彼は天才科学者として数多くの発明を為し、莫大な富を手に入れたがそれでも少年期・青年期
の心の荒みは癒せず、エーゲ海の孤島・バードス島で古代文明の遺産「機械獣」を手に入れた時から
世界征服の野望に取りつかれた。
一年戦争の混乱を利してバードス島に秘密基地を建造。
数年後、恐竜帝国の地上侵攻と妖魔帝国の復活という好機にいよいよ世界征服へと乗り出した。
しかし。
その彼の野望は恐竜帝国のあえない撤退により目算が狂い始めた。
異星人バルマー帝国の襲来に乗じて侵略活動を開始したはいいが、地球圏の混乱は各勢力が保有
していた特機や精鋭人型兵器部隊の結集を生み、彼の勢力では太刀打ちできない物になってしまった。
二人いた腹心の一人もその戦いで命を落とした。
そんな強力な軍団がダカールでのティターンズとの決戦で姿を消した。
それから三ヶ月、彼は待った。
衝撃波からの地球圏防衛計画「イージス計画」の達成を。
さすがにこの計画の邪魔をすれば、世界征服に成功したとて手に入るのは荒れ果てた廃星だからだ。
計画成功と同時に、密かに増産した機械獣の大軍団で一気に世界を制圧する。
その夢は、まさに計画達成寸前に鋼鉄の軍団が戻って来た事により霧散した。
のみならず、増産した機械獣の配備により密かに用意した新本拠を突き止められるという逆効果。
新たな力を得た「鉄の城」と「偉大なる勇者」によって新本拠「地獄城」は陥落。
空中要塞で脱出をはかったが撃墜され、今こうして瀕死の重態になっていた。
走馬灯が回り終えると、彼の内心に怒りが湧き上がっていた。
客将でありながら、敵来襲の肝心な時に地獄城から部隊を率いて逐電した男への怒りを。
その男が擁していた新型の妖機械獣を根こそぎ失ったがために、逃亡すらかなわずここで
物言わぬ骸になりかけているのだ。
それとは逆に、共に空中要塞で逃げた、残る腹心の部下の安否が気づかわれた。
彼にもまだ、一片の人間性が残っていたのだ。
その部下は彼自らの施術で死の淵からサイボーグとして復活した元軍人。
同じように墜落に遭っても無事な可能性もあったが、生命反応はなかった。
最も恃みとする腹心すら心底から信じられない彼は、部下の生命を文字通り握っていたのだ。
常に手にし、今も動けぬ自分の目の前で転がっている杖には、部下に与えた第二の生を停止
させる仕掛けが施されていた。
そして杖には宝石が二つ埋め込んである。
そのうちの一つは先ほどまで、空中要塞が撃墜されるまでは自然の照光反射とは別の光を
発していたが、今はもう一つの宝石同様に光を失っている。
増幅光の消失は生命反応の途絶えた印だ。
出来れば使いたくなかった二つの装置は、二人の腹心が最後まで彼に殉じた事により使わず
に済んだ。
心の底から、改めて二人の腹心の冥福を祈る一方で、裏切り者への猛烈な怒りが、彼の中
に渦巻く。
死んでも死に切れないとはまさにこの事か。
結局、彼はここでは死ななかった。
その優秀な頭脳を惜しんだ地下勢力により回収され、巨大サイボーグに改造され、再び宿敵
たちの前に姿を現す事となる。
宿敵たちへ復讐心のみならず、裏切り者への悪意と、部下たちへの弔意を胸に秘めて。
そして彼はその数奇すぎる人生の最期には「地球人」として逝った。
無論知る由はない。
彼の最後に残った部下の生命反応が消えたのは「死んだ」からではなく「消えた」からだと言う
ことなど。
そう、それは死ではなくこの世界からの消滅であったのだ。
クォヴレー・ゴードンとαナンバーズの「再会」より半年後。
「第十三次全権代表イルムガルド・カザハラ様ですね」
プラント最高会議議長官房つきザフト武官、アイザック・マウは緊張した面持ちでその男に声をかけた。
「議長がお待ちです、こちらへ」
「全権代表か、まあ確かに全権を委任されてはいるんだけどね」
自らに付与された呼称に面映ゆいものを感じつつ、イルムはかけていたソファから腰を上げる。
「これが『フォリナー』なのか」
日頃の勤務への励行ぶりと、物堅い性格を買われ、下手をするとデュランダル政権が転覆しかねない重大な秘密を、ごく一端ながら明かされたアイザックは、存在自体がその秘密そのものである人物をつい凝視してしまった。
ここはプラントの首府アプリリウスの郊外ブロックに位置するザフト・アカデミー。
通常の軍における士官学校にあたる機関である。
外来の訪問者の待合室となるロビーに、アイザックは議長が招待した人物を迎えに来たのだ。
イルムらが何者なのかまではアイザックは知らない。
わかっているのは「フォリナー(異邦人)」と言うコードネームを与えられている集団だと言う事と。
どうやら全員がナチュラルで構成されているらしいこと。
彼らとプラントが、正確には当時のプラント最高会議学術委員長・現最高会議議長ギルバート・デュランダルが接触したのはほんの半年足らず前のことでしかないが。
秘密裏に彼らから供与された技術が短期間で多大なる恩恵をプラント、そして地球上の友好国にもたらしたという。
ナチュラルによってコーディネイターに科学技術がもたらされるなど信じがたかったが、多少秘密に関与する立場となったアイザックはそれが事実だと認めざるを得なかった。
「フォリナー」は月に二・三度、試験運用艦専門の機密宇宙港に宇宙軍艦で入港してくる。
それが今回で第十三回目にあたった。
今次の代表であるイルムという男は、代表団に加わること四度目、アプリリウスを訪れるのも三度目と言うことで、迎えも待たずアカデミーを訪れた。
(そういえば今日は…)
自らもアカデミーの出身であるアイザックは、今日が卒業を間近に控えるパイロット候補生たちの戦技披露会であることを思い立った。
(それに何か関係が…)
しかし仮にはそれ以上の詮索は権限外であった。
アカデミーのMS訓練場に臨時にしつらえられた貴賓席。
そこでプラント最高会議議長ギルバート・デュランダルはイルムを待っていた。
「よく来ていただきました、中尉」
何度も会っているイルムに対し、デュランダルは「フォリナー」内部でのイルムの階級で呼びかけること
で親しみを示す。
「ご用件は、伝えられたものでいいんですね」
イルムも堅苦しい挨拶はすっ飛ばして確認を取る。
「あなた達のパイロットメンバーの中で、一番ハイブリットの開発に関与していただいたのは中尉ですからね
」
「まあ、開発パイロットは向こうにいた時の本職ですから」
そう言ってイルムは議長の横に腰を下ろす。
「候補生はこの三人です」
ギルバートが手ずからコンソールを操作し、モニターに三人の少年少女の顔写真を映し出す。
金髪の美少年、赤毛の美少女、そして特徴的な紅い瞳の黒髪の少年。
「?」
驚愕するイルム。
その三人の顔すべてに見覚えがあったのだ。
そのうち、二人までは不思議はない。
金髪の少年、レイ・ザ・バレルは保護者であるデュランダルを通じて面識がある。
赤毛の少女、ルナマリア・ホークの名は初めて耳にする。
しかしその容姿は見知っていた。
アブリリウスを散策した時に、休暇で外出していた彼女とその連れについ「向こうにいたときの癖」で声
をかけてしまったことがあったのだ。
奇しき縁だが、さして不思議でもない。
だが黒髪の少年は別だ。
この紅い瞳の少年の顔には見覚えがある。
いや、それどころではない。
イルム自身の主観時間で一年前、遥かなる世界で共に戦った戦友だ。
他人の空似でもない。
何故なら顔写真に添えられた名前も同じだったのだから。
少年の名はシン・アスカと言った。
虚空、果てなく 〜SEED OF DOOM〜
第三序章 とあるパイロットの激動の日々
新西暦188年3月。
地球圏を襲う衝撃波を防ぐ「イージス計画」は成功した。
しかし、その立役者であり、前年末には地球圏の実権簒奪寸前だったティターンズを排斥した「プリベンター」
に対する連邦政府および連邦軍上層部の処置はあまりにも情も敬も礼も欠いたものだった。
プリベンターは基幹要員のみを残して解散、ロンドベル隊のような実戦部隊を失い単なる情報組織のような形
となり。
のみならず、メンバーの何人かがバルマー戦役時の不審な行動などを理由に拘禁される始末。
その拘禁予定者の一人に、イルムガルト・カザハラ中尉もいた。
試験機であるグルンガスト改とヒュッケバインEXの盗難という、一時は不問に処された事を一事不再理の原則
を無視して追求されたのだ。
もっともその拘禁命令が出た頃、当のイルムは既に姿を晦ませていたが。
グルンガスト改が保管されていて、彼の父ジョナサン・カザハラが所長を務めるテスラ・ライヒ研究所。
ヒュッケバインEXが返品されていて、イルムがかつて出向していた、そして現社長と個人的に特別な関係に
あるとされるマオ・インダストリー。
そのどちらにもイルムは姿を見せなかった。
ただマオ・インダストリーの重役の娘であり、バルマー戦役時にイルムと行動を共にしていたリオ・メイロンが
失踪したため、イルムに拉致あるいは同行した可能性があるとされた。
なにしろ失踪したのはリオのみにあらず。
プリベンダーのメンバーで解体後に軍を退いたリョウト・ヒカワ。
GGGとして新編立ち上げ中だった宇宙開発公団のスタッフ、ユウキ・ジェグナン。
破乱財閥の嘱託エージェント、タスク・シングウジ。
SDFのバルキリーパイロット、レオナ・ガーシュタイン。
この四人も同時期に消息を絶ったのだから。
彼らはいずれも、イングラム・ブリスケンの計画により戦争に巻き込まれ旧ロンドベル隊に所属していた
パイロットだった。
念のため、彼ら同様の立場でバルマー戦役直後に民間人になった二名の少女と一人の少年についても
追跡調査された。
そのうちクスハ・ミズハとブルックリン・ラックフィールドの二名はバルマー戦役後ティターンズによって不当
に拘束され、ティターンズの崩壊後もその後の混乱で数ヶ月拘束されたままになっていた事がわかった。
調査時には何者かによって解放され、テスラ・ライヒ研究所に匿われていた。
残る一名、リルカーラ・ボーグナインは完全に消息を絶ち、イルムらと合流したという見方が強まっていた。
そしてさらに。
連邦軍極東基地に保管されていたはずのグルンガスト零式、グルンガスト壱式(一号機・二号機)の三機
が忽然と姿を消している事が判明した。
グルンガスト壱式一号機はかつてイルムがPTXチーム在籍時に使用していた機体であり、一連の失
踪事件との関わりが取り沙汰された。
もっとも、この時期連邦軍装備の謎の消失は相次いでいた。
後にそれらの機体は再蜂起したネオ・ジオンに略取されていたり、ゾンダリアンによってゾンダー化され
たものとわかり、グルンガストシリーズ三機もその線であろうと結論付けられた。
そう、そのゾンダーの跳梁に象徴される「封印戦争(と、後に命名された戦い)」の勃発でイルムらの捜
索どころでなくなったのだ。
人員不足の折、拘禁されていたヴィレッタ・バディム大尉らが解きはなたれ、イルムへの訴追もうやむや
になり。
そして「封印戦争」も終わったある日のこと。
フォン・ブラウンの衛星都市群の一つであるセレヴィス・シティ。
この月面都市はいわばマオ・インダスリーの「企業城下町」であり、市の中央部にあるホテルはマオ社新
製品の発表会などでご用達のホテルでもある。
そのホテルのスイートルームで、マオ・インダトリー代表取締役社長リン・マオは実に微妙な表情を浮か
べていた。
その日は彼女の29回目のバースデーであった。
大企業の社長でありながら華美なことを好まない彼女は大々的なパーティーなどはしなかった。
特に女性として20代最後のバースデー等有難くもない。
ただ内輪で彼女の誕生会が企画され、その席に顔を出していた。
数年ぶりに会う仲間たち。
レナンジェス・スターロード。
パトリシア・ハックマン。
グレース・ウリジン。
ヘクトール・マディソン。
ミーナ・ライクリング。
アーウィン・ドースティン。
いずれもリンとは士官学校とパイロット訓練校、その両方で同期だった間柄。
一人二人とならともかく、全員と同時に顔を会わせるのはおそらく訓練校卒業以来だろう。
誕生日はどうでもいいが、彼らが駆けつけてくれたことは嬉しかった。
その反面、ここにいてしかるべき、そして一番いて欲しかった人間の不在がリンの喜びに水を差していた
。
リンとは士官学校・訓練校のみならず配属された部隊まで父の後を継ぐため退役するまで一緒だった
イルムガルト・カザハラの不在が。
仲間たちがわざわざ都合をつけて全員そろってリンの元を訪れたのも、イルムの失踪からそろそろ一年が
経とうとしていたため、リンを元気付けようと気遣っての事だった。
リアルタイム遭遇
支援〜
あーなんか規制ひっかかったぽいな支援
まさか、ここで切られるってことはないと思いたい…
多分、今夜にでも再開してくれるさ!
エクセレン、昨夜の続きが投下されるぞ
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/くi^!ヘ
,'' ̄ ̄へ'´/ミヾヽ.
| ノ/ノハヘ/ ハノハリ))
. ヽゞ´_ゝ/ヾリ゚∀゚ リ <え? ああ、私達のラブラブSSね?
[ つ旦O ( つ旦O
と___)_)ノと__)_)
自分で書いてろ、俺は読みにいくぞ…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/くi^!ヘ 三 .,'' ̄ ̄へ.
<彡'´/ミヾヽ. 三 | ノ/ノハヘ
ミ/ .ハノハリ)) 三 ヽゞ`_ゝ/
煤S リ;゚∀゚リ 三 [ つ__[ iつ
__ ∫ ( つ旦O 三 人 =Y
(__()、;.o:。___)_) 三 し'(_)
「リン、本当にいいの?」
「いいんだ、勝手にいなくなったやつなんて」
ミーナの問いかけに決まりきった答えを返すリン。
退役し、小さな興信所を開いているミーナは仕事が一段落するたびにイルムの消息を調べようかとリンに持ちかけて
リンがそれを固辞する。
ここ一年近く、何度も交わされた会話。
強がりでも遠慮でもなく、友人としては信頼しているミーナの探偵としての能力を疑問視しているからでもあるが。
「困った人ですね〜イルムは〜」
グレースが元軍人とは思えない間延びのした口調で言う。
「リンがオバさんになるまで待たせるつもりでしょうか〜」
「お前も同じ年だろうっ!まったく、お前たちはどうしてあいつの話ばかりするんだ」
彼らはリンの前で平気でイルムの話をする。
一つにはリンがそれを嫌がってるのはポーズだと長い付き合いから見抜いている事もある。
そしてもう一つ、彼がもうこの世にいないではという漠然とした不安を拭い去るために、殊更に彼のことを話題にしている
面もあった。
彼が自分の意思で失踪したのではなく、何者かによって「消された」可能性は限りなく高い。
バルマー戦役時に独自の思惑で過激な行動をした彼は公式に訴追を受けたのみならず、少なからぬ勢力から敵視されて
いたのだから。
いかにその行動に義があれ、個人で武力を行使するということは命を競売にかけるに等しい。
そのことはイルム自身もわかっていたはずだった。
夜も更けて、リンは一人スイートルームのベランダで、眼下に広がるホテルの中庭の庭園がライトで照らされる光景を眺めて
いた。
パーティーがお開きになり、六人はそれぞれのカップル毎に自室へと戻っていた。
それはパイロット訓練校時代には既に出来上がっていた組み合わせ。
したがって八人のグループで行動すると、自然とその頃はまだ恋人関係ではなかったイルムと二人になる機会が増えた。
つまり、本来ならこんな時には自分の隣にはイルムがいるはずだったのだ。
冷たい「夜風」が肌に凍みる。
本来ドーム都市のセレヴィス・シティにはそんなものが吹いている筈はないが、確かにそれは夜風だ、
月生まれのリンだが軍人時代は地球にいたためその感覚をよく覚えている。
それを再現した絶妙の空調が、リンの寂寥感を煽り立てる。
いなくなってわかる大切さ、それを今のリンは感じていた。
イルムとはいつも一緒だったわけではなく、彼の「浮気」が原因で一年近く絶交状態だったこともあったが、そんな時でも
イルムがどこにいるかは知っていた。
しかし、今イルムがどこにいるのか、いや生死すらリンは知らない。
もう彼に会えないのではないかと言う恐怖心がリンを怯えさせる。
「わたしは弱くなった…」
生まれてからの29年間、リンは自分が女であることをハンデと考え、男に負けまいと生きてきた。
パイロットとしても、父の後をついでの会社経営者としても、常にトップを目指してきた。
その甲斐あってパイロットとしてはPTXチームの一員に選ばれ。
マオ・インダストリーも月を代表する企業としてアナハイム・エレクトロニクスに迫る勢いを見せている。
そんな充実しつつも張り詰めた日々の中、リンにとってのイルムは、いつのまにか心の安定剤になっていた。
初めは好意どころか嫌悪しか感じなかった。
美女ながら見るからに気の強そうなリンが生まれて初めて口説かれた相手であったが、彼は見目麗しい女性
なら老若問わず声をかけるような相手であったのだから。
しかし、イルムはリンにいくらつれなくされてもめげなかった。
いつの間にか一緒にいるようになり。
軍で同じ部隊に配属されたことで完全にパートナーシップを築き、いつしか男と女の関係になった。
その関係は一事の断絶期間を挟んでもう七年も続いている。
それなのに、イルムは彼女の前から消えただけでなく、完全に消息を絶ったのだ。
「誕生日のプレゼントなんていらない、イルム、お前が戻ってきてくれれば他にはなんにもいらない…」
女・齢30寸前、崖っぷちになってもまだ素直になれないリンが、誰も見ていないとはいえ本音を口にしたことを、
この世界を統べる神が哀れと思し召したか。
あるいは単なる偶然か。
彼女のささやかながら叶えられ難い願いはあっさりと叶えられることとなる。
「むっ」
俯いていたリンだが、長年培ったパイロットとしての注意力が異変を察知した。
光度の大幅な上昇を。
必要充分な照明で照らされ、幻想的な雰囲気を醸し出していたホテルの中庭が、まばゆい光に包まれていたのだ。
その光の原因は上空にあった。
ドーム都市であるため天が低く、当然飛行物体の使用は禁止されているセレヴィスシティの空に裂け目のような物
が現れた。
そしてその裂け目から、なにやら巨大な物体が姿を現した。
「あれは?」
見たことのない物体だ。
しかし、その意匠はかつて目にした物と酷似していた。
二年前のバルマー戦役の時に見た、異世界バイストンウェルのオーラシップ。
それとよく似た形状の巨大な空中軍艦、いや、もはや空飛ぶ要塞と言ってもいい代物だ。
密閉されたドームの中にそのような物が突然出現したのだ。
ホテルの周囲は大騒ぎとなり、リン同様に異変を察知したのか仲間たちもリンの部屋へと駆けつけて来た。
「なんなのあれ?」
大きな目をさらに見開いて、ベランダから空を見上げるパット。
「ん?ありゃ姐さんの会社で作ったのか?」
とぼけたコメントを述べて。
「違うし、その呼び方はやめろと何百回言わせるヘクター」
しっかりとリンに突っ込まれる旧世紀日本の古典落語の愛好家であるヘクター。
「資料で見たオーラシップに似ているな」
リンと違って直接目撃していないにもかかわらず、類似点を発見するアーウィン。
「おい、なんか出てくるぞ?」
ジェスが目敏く気づく。
空中要塞の腹部が開口し、そこから降下してきたのは一回り小さな、やはりオーラシップらしい外観の航空艦。
それはホテルの中庭へと着陸した。
支援
「あ、あれは?」
目を疑うリン。
その空中艦から姿を現したのは、外観は見覚えのある機体ではある。
ヒュッケバイン008。
マオ社の連邦軍とのビジネスにおける主力商品であるヒュッケバインMkUタイプM(マスプロダクツ)の原型である
(正確には不安定なブラックホールエンジンをプラズマリアクターに換装した009とピーキーな機体をデチューンした
試作型MkUを経てタイプMに至るのだが)
マオ社の開発センターに安置されていて、つい三日ほど前にも目にしたダークブルーの008とはカラーリングが違う。
だがそのライトブルーのカラーリングは見覚えのあるカラーリングでもある。
「008Rと同じ?」
ヒュッケバイン008は当初二機存在した。
008Lと008Rの二機が。
しかし008Rの方は連邦軍テクネチウム基地での起動実験の際にブラックホール・エンジンの暴走で基地施設の大半を
巻き込んで「消滅」し、ヒュッケバインがその名のとおり不幸を呼ぶ凶鳥、あるいは「バニシング・トルーパー」という不名誉な
名で呼ばれる原因を作った。
その失われた機体とそっくりのカラーリングのヒュッケバインが、オーラシップと思しき艦から姿を現したのだ。
続いてモビルスーツやパーソナルトルーパー、さらにはヴァリアブル・ファイター。
そしてグルンガストタイプの特機までが、次々と現れる。
通常ならテロか、あるいは本格的な戦争かと思わせる光景ながら、何の前触れもなく出現した空中艦はそのファンタジック
な外観もあって現実感を感じさせなかった。
無論、実際には機体群はただ姿を現したのみで何のアクションも見せない。
「なにがはじまるんでしょうね〜」
「うーん、名探偵ミーナの推理によると…あれ?みんなはグレース?」
「あれ〜、いませんね〜」
ベランダにはテンポの遅い女性とテンポのズレた女性のみが残され、他に人間はリンを先頭に中庭へと駆け出していた。
リンは一目散にヒュッケバイン008Rへと駆け寄った。
何かの予感に急き立てられて。 そしてその予感は正しかった。
ヒュッケバインのハッチが開き、そこから一人の男が姿を現した。
「ああっ」
リンの目から涙が零れる。
「おや、まさか戻ってくるなりお前と会えるとはな」
そう言って笑顔を見せる男。
ここ数年ずっと後髪だけを伸ばしたマレットにしていた髪を若い頃の様に無造作に伸ばし、ヒゲすらもたくわえていたが、
見間違いようはない。
彼女の求めた「誕生日プレゼント」が、目の前にいたのだ。
ワイヤーを伝って大地に足を下ろしたイルムに、リンは飛びついた。
ほす
「おいおい、リン」
「馬鹿、馬鹿、どこへ行ってたんだお前はっ」
「まあ話せば長いことになるぞ」
「後でいい…」
そう言ってイルムの胸に顔を埋めるリン。
その肩を優しく抱くイルム。
感動の再会シーン。
しかしそのような美しいシーンは長くは続かなかった。
ヒュッケバインのコックピットから、イルム以外の人間が降りてきたのだ。
リンの前に降り立ったのは、流れるような長い黒髪の美女と、紫の髪のまだ幼さを残した美少女だった。
「隊長、ゲート閉鎖の時間です」
美女が事務的に告げる。
「これ」
美少女が、リモコンのような物をイルムに差し出した。
「ああすまんな」
イルムがそのリモコンのようなものを操作すると、再び上空に空間の裂け目が生まれ、空中要塞がその
裂け目へ入っていく。
ものの数十秒で、巨艦の姿は消え、空間の裂け目も消え去った。
「世話になったな、ヨルムンガンド」
イルムが万感のこもった声をもらす。
その片腕はリンの肩を抱いたまま、のはずだったが。
いつの間にか宙空に浮いていた。
「ん?」
気づくとリンは、自分と少し離れた位置に腕を組んで立っている。
視線を美女に、続いてまだ幼さすら残る美少女に向ける。
イルムがこの二人と、せまいコックピットで密着していた。
その事実を認識すると同時に。
「この誘拐犯がっ!」
イルムの側頭部めがけて、強烈なハイキックを叩き込んだ。
「ふげっ」
モロにくらって昏倒するイルム。
「お前がリオたちを誘拐したなどという話、信じたくはなかったが、こんな年端もいかない娘まで誘拐して
いたとは?」
「なに?その無茶苦茶な誤解?」
何やら懐かしさすら感じる鈍痛のする即頭部をさすりながらリアクションするイルム。
「そもそもアレはなんだ?」
激昂覚めやらぬリンが巨艦が消え去った方角へと指を指すと。
「オーラバトルシップ『ヨルムンガンド』です」
側頭部を抑えているイルムに代わり、美女が答える。
「こっちがオーラシップ『グリムリー』」
着地している、時空の裂け目に消え去った艦と比較すれば小型の艦を指差して、愛らしい容姿の割にぶっきらぼうな口調で美少女が言う。
「やはりオーラシップか…なぜそんなものに乗って現れ…まさか?」
ここでリンはようやく激昂を抑え、持ち前の明晰な頭脳を回転させた。
「イルム、お前今までバイストン・ウェルに?」
「惜しいな、ニアピン賞だ…」
「あっ、リン社長!」
三機のグルンガスト・タイプの一機、赤いカラーの二号機から降り立った少女がリンに声をかける。
「リオ、無事だったか、やはりイルムと一緒だったのだな、常務が心配してたぞ」
その少女リオ・メイロンの父、ユアンは先代以来の社の重鎮であった。
「心配かけてごめんなさい」
「リン社長?」
そしてもう一人、見知った顔がいた。
その少年は見慣れぬ機体から降りてきた。
かつてのマオ社の新入社員で、数奇な運命によって同僚のリオと引き離され、ロンドベル隊の一員として試作型ヒュッケバインMK-U一号機、そしてヒュッケバインMK−VタイプLのパイロットを務めたリョウト・ヒカワだった。
ロンドベルを離れた彼をリンはマオ社に戻って来ないかと誘うつもりであったが、その矢先にイルム、リオらと同時期に失踪したのだった。
「君も一緒だったか、リョウト」
「はい」
各機体から降りてくる面々を見ると、いくつか見知った顔があった。
いずれもかつてロンドベルにいて、イルムと同時期に失踪してた少年少女。
彼らが全員揃っていた。
「これはどういうことだイルム?」
あまりに出来すぎた顔ぶれに、リンは個人的憤怒を抑え込んで問いただす。
「これだけの面子を連れて、お前はどこで何をしていた?バイストンウェルではないのだな?」
「さっきみたいに可愛く聞いたら教えてあげ…いや、なんでもない」
イルムの軽口は、罵声も暴力も用いない、ただの威圧のみで封じられた。
「実はなリン、俺たちが今までいたのは『ラ・ギアス』だ」
続く
支援するけどいいよね?答えは聞かないけど
言うまでもなく
>>94の
>>90は
>>91の間違い
連投規制のことを考慮してなかったw
支援に感謝
続きはなるべく早い時期に
支援の必要なかった…orz
続き待ってますノシ
おつでした。リアルタイム遭遇だー。
次から次へと色々出てきて何がなにやら…。
総帥さんのとは違うベクトルに、けれど負けないくらい風呂敷の広い話になりそうですね。
次も楽しみにさせていただきますですよ。
ドデカいパズルの断片だけを次々と見せられている感じだな
これを上手く一つに集結させることができたら凄い話になるだろうが、大風呂敷広げすぎで大丈夫か?とも思ってしまうw
ラ・ギアス事件か!?
全体像が見えないのは同感だなぁ
こっからラ・ギアスでシンとイルムが出会う顛末やるのかな?
完結することに期待しながら、乙
GJでした〜
しかし、ヨルムンガンドとは、またマニアックな物を・・・
こういうネタは大好きだ(´∀`)
こんな状況でナンパすんなよイルムw
ゲーム版に出てきたオーラシップだっけ?>ヨルムンガンド
各作品の設定の掘り下げ方といい、この作者かなりそれぞれの原作に精通してるな
ドクターヘルの生い立ちが桜田漫画版だし
プロッケンの性格がマジンガーアンソロジー版だw
>>107 本編は各主人公の視点にストーリー軸を固定するので
序章とインターミッションで一度世界設定さえ紹介しきれば後はそれほど膨大な量にはならない「予定」
アヴァンでクライマックスも先に提示してあるので「落としどころ」も確定済みだしね
>>110 >>112 正解
持ち主を出すか出さないかは未定
>>113 ヘルはモロにそれだけどw
プロッケンはオリジナル改変
そのアンソロジーについてkwsk
113じゃないけど
双葉社のスーパーロボットコミックマジンガーZ編だとおもう。
そのなかに、命を救ってもらった恩返しに恩人の村を襲った暴走機械獣と戦う
カッコイイブロッケンの話がある。ちなみに合体機械獣ガラダブラMK01が初登場したのも
このアンソロ。
>>115 トン
それは読んだ事ある
最近はスパロボアンソロ減っちゃったなぁ
ブライトがアンソロ作家吉田創Verだったら嫌だw
むしろ、ブラック・シーラ様で一つ。
あの方の修正は受けてみたいw
>>117 キ「なぜあなたたちは僕たちを!」
ブ「それは貴様らがラクシズだからだ」
こうですね、わかりますw
アンソロと言えばK-X6氏Verのシャアを使いたかったけど
残念ながらこの作品世界でもシャアは死んでますw
>>118 黒シーラ様ってどんなやつだっけ?
シーラのネタキャラと言えば昔統一時代シャア板のお風呂スレにあった浄化シーラ様を思い出す
>>119 学研のスパロボアンソロで嶋田尚未が描いていた
ブライト艦長の怨念を浄化して変貌したシーラ様
修正は対象の頭を自分の胸に押し当てますw
>>120 浄化の証して相手の頭を胸に押し当てていいこいいこするわけか。
キラ「シーラ様!」
凸「シーラ様!」
シン「シーラ様!」
アウル「ママ!
「シーラ様!シーラ様!シーラ様!」
ラクス「何故、何故私の話を聞いてくれないのです!?」
>>120 そーいやあったねそんなのw
>>122 .:::i :! :l .:::/ ! .: .:::,./ , ィ´ ,. ‐'´
::l ! : :::| :| :::ハ :! ::: ::/ ''´ / ,. ィ'´::/::::: :
:| | ::::::i, ハ :! i | : :: ::/ ノl´ ! ::/ :/ :::::
:! ! : :::::| !-'! i ハ ::::i l ^ ! /! イ :: :/!/
' ', ::. ::::l-ィ'´ ̄`ヽ;、 :::!' ヽ,;;. -‐''゙ ヾ'、/ .:::: ::/ ' i
ヽ::i::. ::! ! ・ ヽー、!:: ::::/ ・ i/ :,':::ノ::::::;;!
i 、!::::.. ヽヽ___ , ‐' `::::. ヽ、_ / ィ'//|::::::::::i::
ノ :::::::|`゙ヽ::::: !::::::. `´/'´ l ::::l::::::::::/::
/::| : :::|、 /( ; :::::: ゙ :::/ ::::|:::::: / : :
. /,,ノ! : ::::! 〉、 ::^_ _' _::.. /| ::::::|:: / ::
‐,'´:::::| :::|::::::\ ` 、三二三+ ' イ:::::| :: ::|:.:/ : ::
'.::::::::::| :i:|::::,r |: \ / |ヽ/| :: :::!' ::::::
:: : 〃| ::i:!/i;;;;;| :::::::`ヽ、 ,. '´:::::::::l;;;;;;/|: : :::|::::::
' :::::| :::|! ! !;| ::::::::::::::::::: ::!;;;/' !: ::|:::
ああっ
洗濯板のようなもので削られた
>>122らしき死体が…っ!!
保守
保守
ほす
保守
保守
保守
ひだりげん! 保守薄いよ、なにやってんの!
アスラン「邪魔をするなぁっ!!」←陰者の脚ビームサーベル
エリート兵「踏み込みが甘いな!」
シン「でたー、エリート兵さんの切り払い」
ルナ「あ、あっちではフリーダムのドラグーンが切り払われてる」
Zは種死関連の情報全然出ないな
果たしてどんな風に仕込んでるのやら
運命伝説和田淫邪が戦闘画面に出て来たときに能力と敵味方どっちかで一騒動ありそうだな
インパルス吶喊時の敵側フリーダムの盾が確か右についてるから自由は味方側のグラフィック有るんだろうな。
まー、味方参戦というより第三軍で出てきて敵側に攻撃しかけた時用だろうが。
ほす
スパロボDみたいだったら味方になるよな、つーかフラグさえ消化すればステラ
達も味方になる可能性も。
>>405 インパルス吶喊時の敵側フリーダムの盾が確か右についてるから自由は味方側のグラフィック有るんだろうな。
は?
保守
そろそろ透過こないかな
だが、保守なのだあ
今日も保守
ほしゅ
すみません、どなたか総帥の61話と11氏の27話を更新していただけませんか?
どうも前スレに載っていたらしく、更新する前に前スレが落ちてしまったようです。
なにとぞお願いします。
>>146 まとめサイトアップローダーにテキストアップしておきました。
更新お願いします。
☆ チンチン 〃 ∧_∧
ヽ ___\(\・∀・) 保守代わりに、投下マダー?
\_/⊂ ⊂_ )
水曜か木曜になんとか…………。
また〜り待ってます
151 :
146:2008/08/04(月) 23:25:03 ID:???
>147
11氏の27話を更新しようかと思ったんだが、パスワードが設定されてるので更新できない
153 :
147:2008/08/06(水) 07:52:18 ID:???
>>152 うわ、削除パスワードとダウンロードパスワード間違えて設定してた。
スマソ、パスワード外して再うpしました。
まとめサイトの更新ありがとうございます。お礼代わりと言ってはなんですが投下いたします。楽しんでいただければ幸いです。
ビアンSEED 第六十四話 盟主王降臨
母艦ヒュプノシスの轟沈を確認したモーガン、グレース、アーウィン三人のガンバレルダガー三機は、搭載していたMSをすべて失った他のアガメムノン級に乗艦して、なんとか月基地まで生きて帰りつくことができた。
エンデュミオン・クレーターに戻ってから一晩が立ち、詳細なデータとして報告された友軍の目も当てられぬ惨状に、いつもはマイペースを崩さぬグレースも心持ち美貌に翳を差し、言葉を見つけられない様子だった。
しゅんと肩を落とすグレースの様子に、なんだか胸がモヤモヤする……とまではいかぬが不快な気持ちになっていたアーウィンは声をかける決意を固めた。
エントランスにある長椅子の上で、購入したドリンクパックを握ったままのグレースの隣にさりげなく腰を下ろす。
床に目を落としていたグレースが、大粒の宝石みたいな瞳をあげた。夜の海に瞬く星の光のようにきらきらと輝く瞳を、アーウィンは時と場所を忘れて美しいと感じていた。
「ウィン?」
「ん、いや、隣、いいか?」
「……どうぞ〜。というか〜もう座ってますぅ」
「そ、そうだったな」
「あ、ウィンも〜飲みますか〜? まだ口はつけてないですから〜間接キスにはならないですよ〜。残念でしたぁ」
「遠慮しておく。……グレース」
「はい?」
「その、あまり気を落とさないでくれ。君にそんな顔は似合わない」
「あは、ウィン、私の事気にしてくれていたんですねぇ〜。でも大丈夫ですよ、ウィンが励ましてくれたから、いつもの私にすぐ戻りますから」
夏の日差しの下で、涼風に揺れるひまわりみたいな笑顔を浮かべるグレースを、しかしアーウィンは痛ましげに見つめていた。
この青年にはわかるのだ。グレースが浮かべる笑みに影のように貼り付いた不安や後悔が。
あのベルゼボを巡る戦いにおいて、連合側のエースだった自分達は、結局ザフトのWRXチームに抑え込まれて、十二分に戦う事が出来なかった。より優れた装備を与えられ優遇されるのはそれに見合う戦果を挙げるエースだからだ。
傾いた戦況を覆し、困難を打破して友軍に活路を見出させるのがエースと呼ばれる者の義務であり責任ともいえる。
ならばあの時自分達はエースの宿業を果たせなかった。あの時自分達が抑え込まれることなく、もっと寄せられる期待に見合う戦いができていたならば、今ここにいない者達の何人かは助かったのかもしれない。
あるいは、そんな事を考えるのは傲慢で、たかがMS三機が最大限に機能したところで助けられる命は知れたものだったかもしれない。それとも、逆に自分達が命を落とす事になっていたかもしれない。
戦場で、いや、生きていく上で過ぎ去った過去に“もし”という夢想を重ねても意味はない。過ぎ去り、取り戻せぬから過去なのだ。取り返しがつかないから人間は後になってから悔む。
「グレース、おれ達はあの時ベストを尽くした。その結果、おれも君も生き残った。シュバリエ大尉や他の皆もだ。死んでしまった者達の事を忘れろとは言わない。ただ、今は生き残った人達の事を考えよう。過去を振り返るのは、未来をつくってからだ」
「……ふふ、ウィンらしくないお説教ですねえ」
「そうか」
「ん〜〜でもぉ、そういうウィンも素敵ですう。そんな風に慰めてくれるのは、ひょっとして〜ウィンが私にメロメロだったりするからですか〜?」
「……ノーコメントだ」
「あ、ウィンたら耳まで真っ赤っ赤です〜。か〜わいい〜」
「だ、誰が可愛いんだ。誰が!」
「ウィンですよ〜」
惚れた弱みか、口でアーウィンがグレースに勝てる見込みは果てしなくなさそうだった。
周りの連合の兵士達が、呆れたような、からかうような、羨むような、と様々な視線を寄せているのにアーウィンが気付き、グレースの手を握ってその場を後にしたのはそれから三分後の事だった。
そして自分の手が力強くグレースの手を握っている事に気づいたウィンが、これまた顔を赤らめて手を離し、にこにこと満面の笑みを浮かべていたグレースは名残惜しそうに、握られていた自分の手とウィンの手を交互に見ている。
「ウィン〜、もう一回だけ〜ぎゅって握ってください」
「だ、だめだ」
「え〜? 私の意見なんか聞かずにあんなに激しくしておいて……きゃっ」
「人聞きの悪い事を言うんじゃない!」
グレースは『きゃっ』のあたりで頬を両手で挟み、もじもじと軍服に肉感的なラインを浮かび上がらせる体をくねくねと揺らす。言葉の内容に頬を染め、なんだかんだでグレースには勝てないウィンは、目の前の女性に反論の一欠けらもできそうになかった。
廊下の真ん中で堂々と夫婦漫才とでも揶揄されるようなやり取りをしている二人に、声が掛けられた。
「あ〜、うぉっほん。もういいか? お前達。第三者の目というものをだな、もう少し気にした方がいいぞ。まあ、お前らもまだ若いから仕方ないが」
「あ、シュバリエ大尉〜、どこ行ってらしたんですか〜?」
「こ、これはグレースが」
「……アーウィン。グレースになら尻に敷かれ甲斐もあるとおれは思うぞ」
「大尉!!」
「やだもう、大尉ったら。セクハラですよぉ〜?」
「お前らは見ている方が目の毒だ。もう少し場所を考えろよ。それよりもお前達二人に新型機が回されるそうだ。ついてこい」
そういってモーガンが背を向け、流石に惚気ていたグレースや、頬の赤みを維持し続けていたアーウィンも、言い合っている場合ではないと上官の背を負った。
最も、グレースはちょっとやりすぎちゃいましたね〜、と心の中で小さな赤い舌を出していたが。
グレースにさんざんからかわれ憤懣やるかたないアーウィンだったが、クールだ、クールになれ、と自分に言い聞かせて思考を切り替える事に務める。
「新型機か。GAT−Xナンバーですか? シュバリエ大尉」
「いや。特機と試作のMSだ。アーウィンがMS。グレースが特機を任される」
「特機を? いったい何時の間に」
「特機の方は鹵獲機だそうだがな」
「えぇ〜? 中古ですかぁ〜?」
「文句を言うな。実物を見ればもっと文句は言えなくなるぞ」
と、モーガンもなにか含むような言い方で釘を刺し、アーウィンとグレースは黙って上官の後を追った。
モーガンが二人を連れて案内したのはエンデュミオン・クレーター基地の最深部にある巨大な格納庫の一つだった。特機級の整備・開発を目的に急増された区画で、ヒューゴ・メディオに任されたガルムレイドなども同区画内でメンテナンスや補修を受けている。
厳重なセキュリティをいくつも越え、モーガンが目的の格納庫の扉の向こうへと入るアーウィンとグレースも間をおかずモーガンに続き、自分達の目の前に立つ機動兵器の姿に息を呑んだ。
天井や床、壁に設置された照明の中に五十メートルを優に超す巨大なシルエットと、こちらは通常のMSとそう大差の無いサイズの人型が映し出されていた。
見つめる瞳さえ染めてしまいそうな深い青に、金色の装飾が施された巨躯。背からのぞく巨龍の爪、あるいは魔鳥の嘴の様なパーツ。巨躯に見合わぬ細い胴に可動部分が多いとはいえぬ両の手足。
今は瞳を暗く闇に閉ざしたその、青き鋼の魔王の如き巨人の名は
「ヴァルシオン!?」
驚きを微塵も隠さずにアーウィンは呼んだ。ヴァルシオン、と。彼らの目の前に立つのは紛れもなく、昨年のオーブ戦にて連合艦隊に敗北の苦汁を嘗めさせた恐るべき悪魔の名前であった。
『鹵獲機』とモーガンは言ったが、まさかこのヴァルシオンが!?
そんなアーウィンの疑問を解き明かすように、耳にこびり付く不快な声が届いた。
「ヴァルシオンといっても量産型ですけどネ」
照明に照らし出されるヴァルシオンともう一機のMSらしい機体の足もとに、淡い水色のスーツを着こなした冷淡な印象を受ける男がいたのだ。
ゆっくりと近づいてくる人影に対し、モーガンが敬礼し、小声でアーウィンとグレースに囁いた。わずかに苦いものが混じる声音は、モーガンが眼前の男に良い印象を覚えていないことを告げている。
「ムルタ・アズラエル。ブルーコスモスの盟主だ」
「あのアズラエルですか」
耳に良く届く悪名を思い出し、アーウィンはグレースにしか判別できない程度に嫌悪の感情を顔に浮かばせた。
それも一瞬だけの事で、すぐさま鉄面皮を被り、自分達の目の前で足を止めたアズラエルに敬礼をする。
「ああ、そんな固くなさらず。初めまして、ムルタ・アズラエルです。シュバリエ大尉からは優秀な部下だと聞き及んでいますよ。アーウィン・ドースティン少尉、グレース・ウリジン少尉」
「はっ」
「肩の力を抜いて下さって構わないんですがねエ。……ま、いいでしょう。コレらがお二人にお任せしたい機体です。先ほど言いましたが、このヴァルシオンはあのビアン・ゾルダークの乗っていたヴァルシオンの量産型でしてネ。
まあ、それでも流石の戦闘能力で多大な犠牲と引き換えに一機ばかり鹵獲に成功したんですよ。もうデータ取りも終わりましたし機体の修復も終わったので、これは使わずに置くにはもったいないという事で今回ウリジン少尉にお預けします」
「はい〜」
アズラエルを前にしても調子を崩さぬグレースに、モーガンとアーウィンは改めて“コイツは大物かもしれん”と思った。
アズラエルの方も変に物怖じも構えもしないグレースを気に入ったのか、ふふ、と小さく含み笑いをこぼした。それからヴァルシオンの傍らにある機体に手を向けて説明を始めた。
大きく曲線を描いて膨らんだ両肩や太もも、背後に背負った円に勾玉を六つ装着したかなり特異な外見の機体だ。
「こちらがドースティン少尉の機体、ベルゲルミルです。試作一号機ですので、いささか信用性は心もとないですが、ま、性能は最高の部類に入ると自負していますので。それにガンバレルを扱える方用の装備もありますから、戦果の方を期待しますヨ?」
「はっ」
信用ならない試作機を回されるのはパイロットとしては歓迎せざるところだが、それだけ自分の力量を評価されているのだと考える事にして、アーウィンは表情を保つ事に成功した。
アーウィンの心中は知らず、アズラエルは薄く笑みを浮かべているだけであった。
――この二人はどこまであのシステムに耐えられますかネエ?
アズラエルはヴァルシオンを鹵獲機、ベルゲルミルを試作機と言ったが実際の所は違う。ヴァルシオンは正確には“ヴァルシオン改”であり、テンペスト・ホーカーの登場している量産型と同じ機体だ。
これはこのコズミック・イラの世界に転移してきたアードラー・コッホが死の間際に搭乗していたヴァルシオン改に多少の改修を施したものである。
かつてグルンガスト零式とゼンガー・ゾンボルトによって両断された機体は、そのコックピットにアードラーを乗せたままほとんど無傷の状態でこの世界に現れ、これまでの間連合軍のバックアップのもと機体の解析が行われていた。
実際には、アードラーがアズラエルに対する交渉札として秘匿し、反ブルーコスモス派の連合軍将兵に働きかけて修復していた。アズラエルにその存在が明らかにされたのは二度目のオーブ戦で、連合艦隊が完敗を喫した後の事だ。
さすがにアズラエルもオリジナルヴァルシオンに対抗できる存在を隠蔽していたことに烈火のごとく怒ったが、それがアズラエルが、純粋な自分の意思を保っていられた最後の時だった。
DC総帥の駆る超絶の化け物に対抗できる切り札があるとアズラエルを呼び出し、アギラと共謀して精神操作にかけ、それ以来周囲の者に怪しまれぬようゆっくりゆっくりと洗脳し続けた成果が今のアズラエルだ。
アードラーとアギラの言葉に思考を誘導され、それこそが自分の本当の望みだと錯覚し、幼少期に根付いたコンプレックスとトラウマを巧みに操作された操り人形なのだ。
そしてまた、ヴァルシオンと肩を並べるベルゲルミルはアードラーと双璧をなす狂科学者アギラ・セトメが死を共にした量産型ベルゲルミルだ。
自律金属細胞マシンセルによって機体もろとも侵食され、無尽蔵の再生能力を得た科学の魔女を葬るために、オウカ・ナギサの乗っていたラピエサージュの自爆装置ATAによって消滅したはずの機体は、
やはりアードラーとヴァルシオン同様にほぼ無傷のままこちらの世界に出現していた。
せめてもの救いは、マシンセルの機能を統括・制御していたコンピューター・メイガスとのリンクが断ち切られた事と、転移の影響かマシンセルの再生機能が完全に死んでいることだろう。
それでも、量産型ヒュッケバインMk−Uがマシンセルによって変貌し、異常なまでの高性能化を果たしたベルゲルミルは、例え量産型といえども純粋なC.E.MSたちを凌駕し、その頂点に君臨しうる機体だ。
アーウィンの技量があいまれば、ガンバレルダガーの頃とは比較にならない戦果をあげるであろう事は、想像に難くない。
そして、オリジナルヴァルシオンになく、ヴァルシオン改とベルゲルミルに備わった悪魔のマン・マシン・インターフェイスがあった。
その名を『ゲイム・システム』。パイロットを機体に合わせて強制的に調整し脳内麻薬の強制分泌や電気信号の外部入力などによって、人体の限界を超えた超反応やG耐性などを付加し、“パイロットを機体に合わせる”システムだ。
このシステムとニュータイプとして目覚めつつあるアーウィンとグレースの能力が加味されれば、オリジナルヴァルシオンとて苦戦――あるいは撃墜も必至の存在が誕生するのは間違いない。
――ま。あのシステムのテストで何人も廃人になっていますし、彼らも使い捨てですがね。
アズラエルの中で、すでにアーウィンとグレースはオルガら生体SPUと同じ、代わりの利く使い捨ての消耗品でしかなかった。
そんなアズラエルの思考を漠然と捉え、アーウィンとグレースは、顔には出さぬが言いようのない不快感と不安を覚えていた。この機体に乗ることで、自分達の命運が大きく奈落に向かって落ちて始めているのを、無意識に感じ取ったのだろう。
それを糊塗する様にアズラエルがパン! と両手を打ち合わせ言った。
「さあ、これだけの機体を与えられるんだ。存分に殺してくださいよ。空の化け物どもをね……?」
引き攣る様に吊り上がったアズラエルの口元は、人の皮を被った別の何かの笑みの様に邪悪だった。
ザフトの中継基地のひとつベルゼボを巡る戦いで、地球連合は投入したMSの四割を失い、また艦隊司令ジーベル・ミステル大佐をはじめとした高級士官の多くを失うなど、手痛い損害を受ける事になった。
対してザフトはベルゼボ司令の暗殺や、配備していたMSの二割を失うなど、連合に比べればまだマシとはいえ、こちらも無視できない被害を被っている。
だが、やはりもっとも大きな打撃を受けたのがDCであった事は否定できない。失った戦力の比率で言うなら、最も損害が軽微ではあったが、連合の襲撃時に基地司令と会談を行っていたビアン・ゾルダーク総帥が重傷を負ってしまったのだ。
死亡という最悪の事態こそ免れたものの、予断を許さぬ負傷を負ったビアン・ゾルダークの身柄は素早くプラント本国に移され、医療技術の粋を持って治療を受ける事となった。
今回のような事態に対するザフト側へのDCからの猛烈な糾弾は、同事件によって総帥共々軽傷を負ったロンド・ミナ・サハクDC副総帥を筆頭に、筆舌に尽くし難い苛烈さであった。
これを受けた評議会のメンバーの複数名が胃を痛める事となったのが、後世判明している。
ビアン・ゾルダーク総帥の負傷を伝えられたアメノミハシラ側の行動も迅速で、編成の終わっていたDC宇宙軍主力艦隊が即座に動いていた。
マイヤー・V・ブランシュタイン宇宙軍総司令や、ロレンツォ・ディ・モンテニャッコ一佐、ユーリア・ハインケル二佐のトロイエ隊が既にプラント本国の防衛の要のひとつ、ヤキン・ドゥーエへ向かっていたのだ。
プラント首都アプリリウス市の防衛用に設営されている浮きドックの一つに、ディバイン・クルセイダーズのフラグシップ“タマハガネ”の艦影があった。
プラントの周囲に浮かんでいる菱形の構造体は戦時下につき、各コロニーや親プラントの諸国家との貿易用に設けられた施設であり、ジャンク屋などからは島、出島などとも呼ばれている。
簡易な補給施設や軍艦用のドックにもなり、プラント本国や中継ステーション代り意味も兼ねて無数に建造されている。
先のベルゼボの戦闘から、無事プラント本国へとたどり着いたクライ・ウルブズの面々も、結成以来、初めて出す事となった重傷者の付き添いに一名の隊員が出向いている以外は、月の連合艦隊の動きに気を揉む日々を送っていた。
DC宇宙軍の主力艦隊が持ち込んだタマハガネ用の艦首モジュールの交換作業を、機体のコックピットの中からアウルとスティングがぼんやりと見下ろしていた。
丸々借り受けた菱形のドックの中で進められる交換作業の警備として駆り出されたのである。シンとビアンの負傷に、二人に強く依存しているステラが側を離れようとせずに病院までついていってしまい、いつもの四人組は半分ずつに分かれていた。
スティングとアウルらにとってもあの二人の負傷は相当にショックな出来事で、それぞれの命の保証がなされても、どうにも気を落ちつけずにいた所をアルベロに見咎められ、頭を冷やして来いと警備に振り分けられていた。
世界一派手なMSのコックピットで、タマハガネがMSの積載量を重視した“ムゲンシンボ”から、二連装Gインパクトキャノンを艦首両側面に装備した砲撃モジュールに交換する過程を見ていたスティングだったが、流石に飽きが来始めたのか、周囲の空間を見回す。
つられてナイトガーリオンに乗っていたアウルも周りを見回した。
「なんもねえじゃん」
「分かっているよ。ただおんなじ光景見ているよりは星でも眺めている方がマシだろ?」
「そお?」
「そういう事にしとけよ」
「なあ、二人とも、いつんなったら治るのかな?」
「そのうちだろ」
「そのうちって……何時だよ?」
「そのうちはそのうちだ。それに総帥はもう目を覚ましたんだろ? 立ったり歩いたりはまだ無理らしいけどよ」
どこかに心を置いてきてしまったように、ぼんやりとしたアウルの声の根底には、シンとビアンを失うことへの強い恐怖と不安が、ほんの少し顔を覗かせていた。
負けん気が強く、我の強いアウルが自分の弱音を晒す事は滅多にないが、それも仕方ねえな、とスティングは理解していた。自分だって、あの二人がいなくなることを考えたら、ろくでもない気分にしかならないのだから。
「くそ。連合の連中、全部おれがぶっ殺してやる。二人の仇はおれが取る。スティングやステラにだって譲らないからな!」
「勝手に殺すなよ。二人とも生きてるだろ。……それに、おれだってお前やステラに譲る気はねえぜ。あんなふざけた真似してくれた奴は、八つ裂きにしたって腹の虫が治まらないからな」
ぎりりと噛み締めた奥歯の擦れる音を聞きながら、スティングははるか彼方の月にいる連合軍を幻視した。
遠からずボアズ、ヤキン・ドゥーエ、そしてプラント本国へと攻め込んでくるであろう彼らをすべて殺し尽してやる――それほどまでに過熱した激情が、胸の裡で渦を巻いていた。
血の気を頭に上らせる二人を宥めるようなタイミングで、アルベロとジャン・キャリーから交代の時間だと告げる通信が入った。
ステラがヒュッケバインに搭乗した事で、空いたビルトシュバインに乗り換えたアルベロと、パーソナルカラーの白に塗装したヒュッケバインMk−Uが、間もなく視界の中に入ってくる。
ビルトシュバインにはサークルザンバーなどの固定武装の他に、シンがガームリオン・カスタム飛鳥に乗っていた折に使っていたシシオウブレードを修復したものと、
MSやAM、PTが携帯できるまでダウンサイジングした重力衝撃砲“グラビトンランチャー”が装備され、遠近両距離をこなし、統合性能ではヒュッケバインに匹敵する仕上がりになっている。
ぶつくさとまだなにか文句を言っているアウルに、おいと声をかけ、スティングは補給ドッグへと機首を巡らせた。攻めてくるならさっさとしろ、そんな半ば自暴自棄にも似た気分であった。
プラント本国のとある病院施設に、シンはいた。全身から原因不明の出血と脳神経系に異様な負荷がかかった状態で意識を失ったこの少年は、今もベッドの住人となったまま目を覚まさずにいる。
呼吸器や点滴、いくつものチューブが体を繋ぎ、血の気を失った肌は死人のように白い。多量の失血を始め、内臓諸器官にまで及んだ謎の負傷は、治療を担当した軍医や医師達に同じ言葉を吐かせた。
“生きている事自体が奇跡”“どうして死んでいないのかわからない”と。カルケリア・パルス・ティルゲムの暴走による思念の狂乱は、シンの肉体に超人的な能力を付加する事と引き換えに尋常ならざる負荷を与えていた。
ウォーダンやムラタ、ゼオルートらと対等に近い戦闘を行う事は今のシンの実力を考慮すれば不可能に極めて近い。その不可能を可能にした代価は、不可解な傷や症状となってシンに襲いかかっていた。
脈拍が二〇〇を超えたかと思えば次には0近くになり、心臓が停止した状態からの多量の失血。
体温が一〇度を下回りながらも機能そのものは健全、とあり得ない状態が一分、十分、一時間と時間間隔さえもランダムに次々と発症し、これまでの医学の常識を受け付けぬ容態だった。
幸いにして今は、意識不明の昏睡状態が続いているだけでありとりあえずの命を危険は去ったと判断されている。ただし、いつ目が覚めるかはまだわからない。
窓から差し込む陽光に照らされるシンの顔はより一層衰弱の相を強調され、脈拍があることを告げるピッピッという電子音が無かったら本当に死んでしまっているかのようだ。
人類が宇宙に進出してもこれといって変化のみられない病室の中、まっさらなシーツに顔をうずめていたステラが顔だけ起こして眠るシンの顔を見つめた。
異常な環境で育ったが故の無垢さに、ビアンに引き取られてからは太陽みたいな活力を輝かせていた顔は、今は暗く沈み、夕陽の沈みゆく黄昏時が似合いの表情だ。大粒の瞳は潤む事を忘れて乾いた視線を向けている。
涙は流し尽した。ステラはシンの生死のわからぬ状態を見てしまった時には、過剰な精神的負荷でその場で昏倒してしまった。
目を覚ました時に半狂乱になることが推測されたため、医務室に半ば拘束に近い形で眠らされ、ビアンがかろうじて意識を取り戻してから面会が許可された。
幸い、ビアンが目を覚まし、自分とシンの事は心配するなと宥めたおかげである程度情緒は安定していた。ミナやスティングらにシンの傍らにいる事を許されてから、ステラはずっとシンの眠るベッドから離れていない。
「約束、したのに」
思い出すのはかつてシンの妹マユと交わした、シンを守るという約束。それが、どうだ? 自分の目の前には傷つき倒れたシンの姿がある。今までシンがこうして意識を失いけがを負ってベッドの住人になったことは何度かあった。
でもそれまでと今度は違う。シンが意識を失うほどのけがをしても、今までは大丈夫、すぐに目を覚ますと漠然と信じる事が出来たのに、今度だけは違う。
本当に、本当にこのまま目を覚まさず、もう一生ステラと話をしたり、遊んだりしてくれなくなってしまうような強い不安が恐怖と共にあった。
いつもみたいに頭を撫でて欲しい。一緒に笑ってほしい。話を聞いてもらって、話を聞いてもらって……。ステラの傍で、シンの傍で、ずっとずっと、これからもそうして行きたい。
最初は、まるで血の色のような、ステラの最も恐ろしいものを連想させる色で苦手だったシンの瞳も、今は好きだった。シンの顔を覗き込んでいた理由のほとんどが、その赤い瞳に自分が映っているのを確かめるためだと、シンは知らないだろう。
シンとステラの二人っきりじゃなくていい。ビアンやミナや、スティングにアウル、マユも一緒にどこかに遊びに出かけたり、食事を共にしたり、お風呂に入ったり買い物に出かけたり、ただ一緒にいるだけでもいい。
ステラは、シンと、一緒にいたかった。なにより
――ステラ。
弾けるような笑顔と一緒に、優しく、陽だまりみたいに暖かく自分を呼ぶシン。
――ステラ。
どこか照れ臭そうに、それでも宝物のように自分の名前を呼ぶシンの声が聞きたかった。
「ねえ、シン。ステラ、いい子にしているから……みんなの言う事ちゃんと聞くから、眼を覚まして、ね? それで、それで目を覚ましたら……また、ステラって呼んでね? 私の名前、呼んでね?」
枯れ果てたはずの涙がまた溢れ出し、シーツに染みを作るのに構わず、ステラはそっとシンの頬に顔を寄せて口づけた。自分の唇に帰ってきた氷のような感触に、ステラはまた一つ大粒の涙を、今度はシンの顔に落とした。
シンの右目の端に落ちたステラの涙は、そのまま重力に引かれて流れ落ちた。
それは、まるでステラではなくシンが泣いているかの様な軌跡を描いて染みになった。
ステラは、また椅子に座りなおしてベッドに顔を埋めた。シンが起きるまでずっとそうしていたように、これからもずっとそうするのだろう。
シンとステラの二人しかいない、いや、目覚めぬシンをただ一人で待つステラだけの孤独な世界がそこにあった。
「そうか。シンは目覚めぬままか」
常に伴う気迫がはっきりとわかるほど削げ落ちた声に、声の主――ビアン・ゾルダークを見舞った二人の内の一人が首を縦に動かした。
上半身を起こしたビアンと、ロンド・ミナ・サハク、マイヤー・V・ブランシュタインが、病室の住人たちだ。ミナとマイヤーは意識を取り戻したビアンに、それぞれの立場上の報告と友人としての見舞いを兼ねて病室を訪ねていた。
病室の外をソキウスらとDCの警護兵で固め、事前にアポイントを取り付けたザフトの高官でも入室は困難なほど過剰に警戒している。もっとも、ザフトにはビアンがいまだ意識不明の重体と告げてあるから、わざわざ正式に訪れるような輩はおるまい。
病院着に着替えさせられたビアンは痛ましく胸や腹に包帯を巻き、顔色もいささか青ざめて衰弱しているようではあったが、この通り身を起して会話する程度には回復していた。
驚異的な回復力といっていいが、その実超人的な精神力で無理やり体を支えているのが実情だ。
「ステラもシンに付き添ったままだ。懐いている事は知っていたが、あそこまで依存しているとは、いささか見誤ったというほかない」
「仕方あるまい。ステラはシンの傍で一番よく笑う。それを微笑ましく思う者なら、二人をわざわざ離すような真似をする気になどなれんよ」
「親バカめ」
ビアンとステラをはじめとしたエクステンデッドの三人が、いわば擬似的な親子関係にある事は近しい者達には周知の事であるが、そうでないものの方が無論多い。
公私の区別が上手く付けられていないステラはとかくビアンに甘えたがり、二人の関係を知らぬ者達がそれを見た時は、うちの総帥ってロリコンだったのか、と言葉にできぬショックを受ける。
無論、実娘リューネ・ゾルダークに対して甘やかしていたビアンだ。自分を実の父親のように慕ってくるステラの事を可愛がりはすれども性的な目で見た事はない。
幸いにして、味方の時はエース程度の活躍で終わるくせに、敵になると一つの勢力を築き上げてしまう、ロリコン設定が暗黙の了解化している赤がお好きな総帥とは違い、そのテの性的志向は持ち合わせていなかった。
しかし、DCには以前にソキウスの女装姿を正式な軍服にしてくれ、ソキウスを弟に、とか飼われたいだの飼いたいなどの要求を上げてきた連中がいる。母体が旧オーブである以上、そういった兵が旧オーブ時代からいたという事であるが。
ともかく、お髭が素敵な壮年のビアンに、まだ十代半ばのステラが熟練の技術で性的に目覚め始める夢想に浸り、これはイケる! と腐った妄想に走る者もいて、ビアンのロリコン疑惑は概ね九九九:一の割合で信じられてる。信じているのが一の方だ。
なおそういった連中は逐次サハク家の姉の方が粛清しているので徐々に数を減らしている。よくできた妻の内助の功みたいなものだ。
自分とステラをそんな風に見ているものの存在など露とも知らぬビアンは、ミナの親バカ発言を否定せず、小さく笑った。ある程度自覚しているらしい。
「ふっ。……それで、連合の動きはどうなっている。マイヤー?」
金髪の偉丈夫は厳かに頷きつつ、内心邪魔をしたのかもしれんな……と自軍の総帥と副総帥のやり取りに溜息を吐いていた。
「お前の負傷を始め、こちらの被害も軽視できるものではないが、連合側の損害はさらに大きい。あれだけの艦とMSを失った以上、建て直すとなれば一、二ヶ月はかかる。
あるいはこちらから月に仕掛けて出鼻を挫く事も有用やもしれん。ザフトのいくらかは戦力を出すだろう。とりあえず月さえ沈黙させられれば、宇宙はザフトと我々の庭になる。そうなれば一部兵力を本土に戻して防衛を固める事も必要だろう」
「再建するならば、な」
ビアンの呟きに、マイヤーもミナも頷いて肯定した。今の連合軍ならば、失った分の戦力を再建する事なくザフト・DCに対して大規模な作戦を展開できるだろう。
となれば、ネオ・ヴァルシオンとグルンガスト飛鳥、下手をすればヒュッケバインも使えぬ状況で迎え撃たねばなるまい。
大掛かりな作業になるが、ヒュッケバインやグルンガスト飛鳥の生態認証を解除して別のパイロットに預ける事も視野に入れるべきか。
三人共に様々な策を巡らせるが、連合の動きは三人の思惑を超えて速かった。すでにジーベルの動かした艦隊とは比較にならぬ規模の部隊が動いていたのだ。
ザフト及びDCにもたらされたのは、月の連合艦隊のボアズ侵攻の知らせであった。
ボアズはヤキン・ドゥーエと並ぶプラントの守りの要だ。元は新星という名の極東連合の衛星であったのだが、これを戦争序盤にザフトが攻略して本国近海に移送後、改装して要塞としたものだ。
常時数百に及ぶMSを配し、数カ月という短期間で徹底的な要塞化や港湾施設、軍事工廠を備え、監視網も完備し、これまで連合の部隊を寄せ付けなかった難攻不落の要塞だ。
だが、連合もまたザフトの専売特許であったMSを配備した今、これまでと同じ結末を迎えるとは、誰も思ってはいなかった。
上部に突起が突き出たような帽子をした岩塊の中央に巨大なゲートを備えたボアズをぐるりと囲むよう連合の艦隊が展開している。
総数二〇〇〇に迫る圧倒的多数に、さしものナチュラル軽視者の多いザフト諸兵にも隠しきれぬ動揺が走り、それを糊塗する様に司令官達が指示を飛ばして本国に増援を要請する。
ボアズに配備されたMSは、増強された宇宙軍に回収された地上軍の部隊も加わり七〇〇を超す。これに防御側の有利を加え、MS戦闘の経験の一日の長を加味すれば、如何に連合軍の大物量といえども、ボアズの陥落を成し得るのが大難事であることは間違いない。
先手は展開した連合の艦隊が取った。知将ハルバートンが低軌道会戦で取った戦艦の数の有利を全く生かさず、艦隊戦を行わずにわざわざMSの接近を待ってからMAを出撃させるという、どこが知将なのか? という戦法はさすがに行われなかった。
ジーベルが行わなかった初手の衛星ミサイルの全方位攻撃に、圧倒的多数の艦艇からの宇宙の闇を照らしだす雨のごとき艦砲の対要塞ミサイルのやむ事の無い飽和攻撃だ。
この時のあまりに膨大な、本戦争はじまって以来の大物量からなる圧倒的な攻撃の凄まじさから、後に語られるところによると連合とザフトの双兵は、そのままボアズそのものを砕くつもりなのだと本気で信じたという。
衛星ミサイルと、アンチビーム爆雷で多少は減衰したビームの嵐が止み、今度はMS戦かと、ようやく自分達の得意な分野に持ち込めると奇妙な安堵をおぼえたザフトは、いよいよ反撃を加えるべくゲイツを主力としたMS部隊を出撃させた。
すでに旧式機であるジンやシグーの多くは後方に配置され、ロールアウトから日が経ち、実用データも揃ったゲイツがザフトの主力となっていた。
一部のエースやベテランたちはジンHM2型や、ジン・アサルトシュラウド、量産型のメディウス・ロクスなどに搭乗して、迫る連合のダガーLやストライクダガー隊と激突した。
また、予想した時期こそ早かったものの月の連合艦隊のボアズ侵攻そのものは予想されたものであり、これに対抗するための切り札もザフト側にはあった。
フリーダムとジャスティスの核動力機である。これに専用の装備であるミーティアを装備した部隊だ。
全長99.4メートルにも及ぶ強化武装だ。アーム部分には一二〇センチ高エネルギー収束火線砲二門を備え、後部推進ポッドの上部や左右には全七七門に及ぶ六〇センチ・エリナケウス艦対艦ミサイルを備え、
両側部には九三.七センチ高エネルギー収束火線砲、またアーム先端部はMA−X二〇〇ビームソードとなる。
ミーティア自体も核動力であり、フリーダムとジャスティスの動力とあいまって、戦場の様相を単機で変えることも可能な大量破壊兵器といって良い。
選りすぐりのエース達が搭乗した核動力機を、ミーティア装備の機体は専用の運用艦であるエターナル級と共に遊撃部隊として編成し、ミーティアを持たない他の機体は、それぞれの戦場に合わせて数をばらつかせて配備している。
連合側も蓄積したMSの運用データから配備当初に比べてMSの動きは格段に良かったものの、経験値と基礎的な能力において勝るザフトのMSが数の不利を良く抑えていた。
特に一対多を想定したフリーダムの五つの砲撃や、近接戦闘に特化し、部隊のど真ん中に切り込んでは次々とMSやMAを蹴散らすジャスティスら核動力機の戦闘能力は凄まじく、
強化人間やフルボーグらが乗ったXナンバーの機体が複で出かかって抑え込まなければならなかった。
MAさえ上回る加速力と機動性を最大に生かし、持てる火力を一斉に放っては無数の火球を生むミーティアや量産型であるヴェルヌは、
その速さを最大の防御にし、連合側の反撃を受ける前に即座に離脱し、また砲撃と回避・離脱というヒットアンドアウェイに徹して、撃墜されることなく戦果を刻んでいった。
全体的に見れば、ミーティアや核動力機の存在もあり、戦況はザフトがやや有利の状態へと移行しつつあった。
ザフトのMS部隊を突破した四機ダガーLが、ボアズからの対空砲火を潜り抜けて要塞へ貼りつこうとバーニアを吹かしていた。突入していた時点では十倍の数であったが、ゲイツをMS部隊の迎撃に歓迎され、たどり着いたのはこれっぽちっだった。
わずか四機のみではあったが、それでも要塞の対空砲火をつぶそうとビームライフルの銃口を向ける彼らを、三百六十度ありとあらゆる方向からのビームが貫き、瞬く間に撃墜させて見せた。
その爆発の光の中に、小さな物体が飛翔しているのが見える。それらはやがて一つところへと集まり、円形のバックパックへと接続された。フリーダムとジャスティスに続く核動力機プロヴィデンスの二号機だ。
パイロットはラウ・ル・クルーゼ、エルザム・V・ブランシュタインと並びトリプルエースと称えられる男、ラルフ・クオルドだ。隊長格を示す白のパイロットスーツに身を包み、先程撃墜したばかりの連合のMSに一瞥だけくれてから、自分の部下達に通信を繋げる。
「ジャイルズ、ハンス、ヴィーパー、機体に損傷はあるか?」
『全機損傷なし。継戦可能です』
「ふん。ナチュラル共め。MSを手にしただけでわれらに勝てるなどと思うなよ」
ラルフのプロヴィデンスの周囲に、二機ずつフリーダムとジャスティスが集合した。ラルフが任された核動力機部隊クオルド隊だ。他にも複数の部隊が結成され、数で劣る戦場のあちこちを飛び回っているはずだ。
流れるような金髪、色白の肌、端正な造りの顔立ちにはクルーゼとはまた違った冷淡な笑みが浮かんでいた。だがその冷淡さと傲岸な言葉にふさわしいだけの実力をこの男は備えている。
ザフトでも片手の指ほどしかいない高い空間認識能力の持ち主であり、遺伝子操作に依らぬ天賦の才とコーディネイターらなではの高い身体能力と高い学習能力により、極めて高い戦闘能力を持つ。
ザフト最強のMSパイロットの一人であることは紛れもない事実なのだ。
まもなくラルフの掛け声に従い、全四機の核動力部隊が散開した。
全体を見渡せばザフト有利な戦況も、一部では連合側が圧倒的優勢を見せていた。アズラエルの独断と横やりで半ば結成されたω特務艦隊である。
艦隊司令に就任したレフィーナ・エンフィールド中佐の乗艦しているゲヴェルを旗艦に、ナタル・バジルール少佐のドミニオン、イアン・リー少佐のエスフェルといったアークエンジェル級を中心に、一つの槍のように突き進み目の前を塞ぐザフトの部隊を蹴散らしていた。
合流した第十三独立部隊をはじめ、アズラエルの手まわしで一線級のパイロットと装備を擁し、さらにゲヴェルとドミニオンに至っては間違いなく連合最精鋭最強の部隊だったのだ。いかにザフトのベテランクラスが数を揃えても、これを防ぐのは不可能に等しい。
オルガ達のカラミティやレイダーもすべて核動力に換装され、WRXチームやガルムレイドを駆るヒューゴらに比べて遜色のない活躍を見せており、彼らの行く手を阻むのは実際なかった。
その分弾薬や精神的な消耗も激しかったが、自分たちの働き如何で戦争の終わりを速める事が出来るという確かな実感が、ω特務艦隊全員の士気を向上させていた。
自分が後押しした部隊の活躍を眺めて、アズラエルは一人悦に入っていた。鉄の箱の中に身を預け、体は特注のパイロットスーツで包んでいる。
ボアズ攻略に向けて出撃した艦隊の中央部で、一隻の輸送艦が曳航していた巨大コンテナが開き、中から巨大な機影が浮かび上がる。
それは形を見れば、MSと判断する事は出来た。だが、そのあまりの巨体に、居並ぶ連合艦のスタッフ達はMSと認識する事は出来なかった。全高百メートル余の巨体はもはや特機のレベルだろうし、実際特機として分類されている。
何の冗談か両肩と両膝に備え付けられた巨大な回転衝角『カラドボルグ』。胸部の巨大な砲口をはじめとし、全身のあらゆる箇所に仕込まれた無数の強力な火器の数々。
機体と火器の制御のために幾人ものソキウスの脳髄を用い、さらにはゲーザ・ハガナーという異世界からの死人さえ贄に捧げて誕生した地球連合最強最悪の破壊神。新たな創造ではなく、何も残らぬ無情なる破壊を生む悪虐の巨人。
その名をアズライガー。
デュエルアイを鈍く翡翠の色に輝かせ、ゆっくりとアズライガーは輸送艦から飛び上がった。あろうことかそのコックピットの中にはムルタ・アズラエルの姿がある。
いくら機体のコントロールのほとんどをゲーザとソキウス達の脳髄がこなすとはいえ、機動兵器の扱いに関しては素人のアズラエラルがいる事は、ブルーコスモスの盟主や国防産業連合理事という重責を担う立場からすれば狂気の沙汰だ。
だが、それは正気を持った人間に言うべきセリフであり、すでに狂気に陥ったアズラエルならば、このように戦場に立ち、憎むべきコーディネイターをこの手で蹂躙し、破壊し、殲滅することこそが当然、世の理、必定なのだ。
事前に施されたマインドコントロールの影響によって、脳内で過剰に分泌されるアドレナリンをはじめとした脳内麻薬や、投与された興奮作用のある各種の薬品が、既にアズラエルを殺戮の桃源郷へと運んでいた。
「さぁあ、皆殺しだっ!!」
与えられたおもちゃで遊ぶ子供のように純粋な、そして剥き出しの殺意が陽炎のようにアズライガーから立ち上っていた。
小型艦艇数隻分に匹敵する超弩級の推進力で一気に加速したアズライガーは、時折自軍のMSやMAと衝突しそうになりながら一気に最前線へと殴りこんだ。
途中、連合の新手と気づいたゲイツやジンHM2型などから銃撃が殺到するが、百メートルを超す巨体ながらミーティア以上の推力とテスラ・ドライブの搭載、ソキウス複数名による機体コントロールにより、アズライガーの運動性と機動性は並のMSの追従を許さない。
もっとも、回避の必要なしと判断したソキウスの判断により、Eフィールドを展開して道を塞ぐザフトのMSを轢いてゆく。現実の自動車事故を格段にスケールアップした悪夢じみた攻撃は、アズライガーが五機のMSを轢き壊したところで止まる。
ゆっくりと、握られていた五指が開き折り畳まれていた腰の砲身が展開し、接続していたガンバレルが切り離され、胸部や頭部に破滅の光が宿り始める。それらの光が一斉に解き放たれ、前方の虚空に展開するザフトの艦艇やMSに群がった。
遮光装置を通してなお目を焼くような眩い光の道が敷かれて行くのに遅れて、その道の先にあったあらゆるものが爆砕され粉砕され、無数のオレンジ色の光の玉に代わって連なった。
アズライガーに搭載されたローエングリン、スーパースキュラ、ツォーン、スプリットビームガン、ガンバレル、ターミナス・キャノンといった恐るべき火器の群れが一斉に地獄の砲火を浴びせたのだ。
今もなおモニターを埋め尽くす死を意味する光球を目の前にして、アズラエルは眼の端から涙さえ流して大笑いしていた。
「アハハハハハはハハhあはHAA!! 馬鹿なコーディネイター! 屑のコーディネイター!! お、お前ら、は、いき、生きてちゃいけないんだよオオ!!!」
あまりにも巨大な歓喜の念が、うまく言葉を語らせない。性的絶頂にも似た圧倒的な愉悦。胸の内を焦がす負の歓喜。全細胞が喜びに戦慄いている。
ぼくは、今! 何よりも望んだ力を手に入れた! あの目障りな化け物どもを一人たりとも残す事なく滅ぼし尽す、破壊の王のごとき力を!
どうだ!? さんざん下等なナチュラルだの野蛮な劣等種だなどと自分達を罵り、見下していた空の化け物どもが、抗う術もなく無残に! ゴミ屑のように!
「死んでるじゃないか!? あはあはAAはああhっはははっはあはあは!! ザマアミロォ!! みんなぁ、死んじゃえよ! クソッタレのコーディネイター!!」
核動力炉から供給されるエネルギーとダウンサイジングした艦艇用のエンジンから供給されるエネルギーを破壊へと変え、アズライガーは続けて第二波を放った。
先ほどの第一波で射程内にいたザフトの部隊はあらかた撃墜していたせいで、咲いた炎の花弁は少なかった。だが、それでもアズライガーのたった二度の攻撃で六隻の戦艦が沈み、七十を超すMSが撃墜されていた。
その中にはミーティアの量産型であるヴェルヌを装備したジャスティスとフリーダムが含まれていた。
撃墜した数もそうだが、恐るべきことにこの狙いなど全く付けていないようなアズライガーの一斉砲火の被害に、地球連合側のMSや艦艇が一切含まれていなかった事は瞠目に値しよう。
これはナチュラルの幸福を最優先するソキウス達の脳髄が使用されている事が大きい。アードラーとアギラも、アズライガーに搭乗したパイロットがゲイム・システムの影響で敵と味方の判別を付けず、
多大な被害をもたらす事を一応考慮して、気休め程度のつもりで脳髄にしたソキウス達の、ナチュラルに対する服従遺伝子の効果を安全弁代りにしていたのだ。
事前にシンマニフェルのサザーランドから周辺の連合艦にアズライガーから離れるよう指示が通達されていたことも大きい。とはいえ、そんな味方の事などこれっぽっちも思考の内に残していないアズラエルは、今だ目の前に残る不愉快な羽虫たちの掃討に移った。
吹き飛ばして捻り潰して撃ち抜いて踏み潰して粉微塵にして握り潰して、圧殺して射殺して惨殺して塵殺して滅殺して……
「綺麗サッパリ、いなくなぁれええええええ!!!!」
フライトユニットから全開になったスラスターとバーニアの噴射光が溢れ出し、アズライガーはミーティアにも匹敵する超加速でザフトの戦列の中に飛び込み、全身の武器という武器を休むことなく我武者羅に撃ちまくった。
アズライガーによる撃墜数が百を超えたのは、第二波の全砲撃を放ってからわずか三十秒後の事だった。
――つづく。
>吹き飛ばして捻り潰して撃ち抜いて踏み潰して粉微塵にして握り潰して、圧殺して射殺して惨殺して塵殺して滅殺して……
>「綺麗サッパリ、いなくなぁれええええええ!!!!」
「必中吶喊!」
GJですっ!!
総帥乙です
盟主王かっ飛んでるなーw
それにしても恐ろしいのは連合の圧倒的物量だね
戦力再建無しでボアズ叩き潰せるほどの戦力を即座に送り込んでるんだから怖いわ
やべぇ、この盟主王みてると
「馬鹿ヤロウ、ナタルーーーっ!!だーれを撃ってる!ふざけるな〜〜〜」
「こいつは殺さないと、ダメだ!!」
っていう展開が頭の中でぐるぐると
ついにボス機が出てきちまったな、GJです
しかし、シンも総帥も最終決戦までに特機に乗れるようになるんだろうか…?
はっ!?
まさか、このままプラント入院のまま種時代が終了するから
種死時代にシンがザフトにとか、そーゆーことなのか!?
総帥オツかれっす。やっぱなー、のせてあると思ったよゲイムシステム。
死にフラグ・小 ッて感じですな。生き残って欲しい。
死にフラグ・大 なのはザフトのラルフさん。あの説明、すっげー
テリーマン臭がしたぜっ!
保
保守
保志
総
三
太
朗
義
経
盛
岡
冷
麺
俺
様
参
上
過疎だな…
スパロボZが出れば少しは盛り上がるかな
保志総三太郎義経盛岡冷麺俺様参上
お盆が過ぎればマシになるさ
SS投下来ないかな…
スパロボZの内容が不本意なものだったら、シンを主人公にして新規参戦作品とOG加えた再構成物書こうと考えてる
Zはバルディオス、ゴッドシグマ、オーガスが分からないんだよなあ
レンタルでも見かけないからどうやって原作見ればいいのか分からないし
まあオーガスは時空震動弾だけ出すか、クロスゲートパラダイムシステムで代用して黒幕を「それも私だ」にするって手もあるが
193 :
通常の名無しさんの3倍:2008/08/15(金) 09:17:52 ID:ZqUPmYbE
シグマシーグマゴッドシグマ!
シグマシーグマゴッドシグマ!
とりあえず、ゴッドシグマはDMMで動画配信されてるぜ。
スパロボに出るわけだし、その内他のも配信されるんじゃないのかね?
後、バルディオスに関しては、
今は亡きソノラマ文庫から小説版が出てたはずだから(コバルトかアニメージュ文庫だったかもしれんが)、
古本屋か図書館で探して、そっちを参考にするという手もあるな。
YouTubeでグラビオン見れるかと思ったら英語のしかなかった
そういうのはちゃんとレンタルして見ような?
俺なんてガガガとフルメタ(無印、ふもっふ、TSR)全話ようつべで見れたぜw
グラヴィはこれまでレンタル無かったからな
スパロボのおかげで9/25からレンタル開始のようだが
>>193 バルディオスはコバルトじゃなかったかな
昔はアニメのノベライズというとソノラマかコバルトだった
グラヴィオンをCSでツヴァイの方から初めて見た時の俺の感想
「あの〜っ、OPにいる巨乳美尻の金髪のお姉さんはいつでるんですか?
同じ金髪でも垂れ乳垂れ尻のピザしかいないんですけど?」
>>190 スパロボZにガンソやグレンラガン参戦させた話とか書いてみたいが、ここだと未参戦の作品はNGなんだっけ
201 :
通常の名無しさんの3倍:2008/08/16(土) 10:20:06 ID:fXQsrQv5
オリジナルスパロボは可だが、
未だ出ていない作品に、更なる未登場作品を追加って、どんだけ難易度高いんだよ。
>>199 ヒデェ
でも確かにバリやうのまことのナイスバディキャラは画力ないやつが描くとただのピザになるよな
サンライズ作品のガンソはともかく
グレンは権利関係の配分によっては下手すると永久に参戦できんかもな
hosu
ちょっと質問。JとWでテッカマンブレードとかオーガンが参戦したけど、あいつらみたいに巨大ロボットとタメ張れるような
アニメ、マンガ作品ってどんなのがあるんだ?
スクライドとかはよく聞くが、他にもある?
アラレちゃん
聖闘士星矢
サムライトルーパー
天空戦記シュラト
ヨロイ物は大体巨大ロボ潰せるな
あと魔法少女系ならセラムンがかなり逝ってる設定
プリキュアやなのはさんは意外にMS相手だとダメダメだったり
天地無用系はアレ過ぎる
ボーグマンやメタルジャックはまだ検証ないのか
強殖装甲ガイバー
ゼオライマー原作者の代表作
テッカマンより強いと言われている
欠点は原作がいつまでたっても終わる気配を見せないこと
特撮なら山のようにいるんだがな
てつをとかてつをとかてつをとか
>>211 ガイバーは、既に巨大化までやらかしてるからな。
本調子ではないラスボスの全力攻撃が、月とほぼ同じサイズの小惑星を粉砕(破壊ではなく完全粉砕)してるし……。
後、史上最強の弟子ケンイチの師匠たちは素でMS破壊できそうな気がする。
ネギまの高レベル魔法使いたちも戦えるな。
なにしろ、主人公の因縁の敵はイージス艦の約二倍程度の攻撃能力の持ち主。
前大戦とやらのイメージ映像では、イージス艦の約1.9倍の攻撃能力を持つ巨神兵が闊歩していたし……。
惑星のさみだれの姫と魔法使いもいける。
特に魔法使いは惑星破壊レベル。
石川賢作品だと、虚無戦史系の話の強キャラは、大抵徒手空拳でもゴッドライディーンか、真聖ラーゼフォン級。イデオンも楽勝で破壊できます。
後は、夜刀の神使いの高レベル夜刀の神使い(日本刀で戦闘機を真っ二つ。自分の肉体のみで相転移現象を起こせます)とか……。
漫画のジャンルによれば、スパロボ登場レベルの人間は沢山いるぜ。
○番外
赫炎のインガノックの主人公、巡回医師のギーとポルシオン。
遅い、喚くなでどんな相手もフルボッコに出来そう。
「エリアル」はロボット物に分類されるが
作品中最強の存在は生身の「星壊し(スターブラスト)」セイバーハーゲン
ここまでドラゴンボールの話題がゼロ
セイバーはシヴァに勝てないから最強はシヴァだったんじゃなかったか
恐妻家だから勝てないってわけじゃなかったっぽいし
>>216 でもシヴァには生身で降下兵を倒すような「勢い」がないからなw
技量ではセイバーを上回ってるだろうし、総合的実力ももしかして上かもしれないけど
実績で言えば「生きた伝説」であるセイバーかと
まぁ自分より弱っちいダンナ婿に取るとも思えんしそれでいいかw
つーか、セイバーとシヴァじゃタイプが違う感じじゃあ無いか?
どうもセイバーは兵士、シヴァは指揮官タイプのユニットっぽいし……。
師匠の孫娘ってことは指導者層なのかもな、あの一族の中じゃ>シヴァ
>>217 ATX氏守備範囲広えw
まさかエリアルまで網羅してるとは
>>221 いやいや、エリアルの話題振って普通に通用するこのスレのほうがw
::| /ヽ
::| イヽ .ト、
::|. / |.| ヽ.
::|. / |.| ヽ
::|-〈 __ || `l_
::||ヾ||〈  ̄`i ||r‐'''''i| |
::|.|:::|| `--イ |ゝ-イ:|/
::|.ヾ/.::. | ./
::| ';:::::┌===┐./ 諸君誰か大事な人を忘れてないか?
::| _〉ヾ ヾ二ソ./
::| 。 ゝ::::::::`---´:ト。
::|:ヽ 。ヽ:::::::::::::::::ノ 。 `|:⌒`。
::|:::ヽ 。ヾ::::::/ 。 ノ:::i `。
::|:::::::| 。 |:::| 。 /:::::::|ヾ:::::::::)
::|::::::::| . 。 (●) 。 |:::::::::::|、 ::::〈
やべ、セブンさんのことを忘れていたぜ
個人的にはスケベイの3老人もいけるんじゃねっておもうんだがどうだ?
サラマンダーかなんかの召還する魔法じじいとかいたじゃん。
天本か……留学中に手遊びで覚えたって言ってたよな。
まあ、あの老人三人衆は、
新版に載ってた外伝だと戦前戦中、冒険小説を字で行く生活を送ってたらしいからな。
>>223 ああ、巨大ヒーローなのに徒手空拳で戦ってた番組前半のレオさんですね
光線技に頼りすぎて、デッカい七面鳥に逆に焼き鳥にされたどっかの宇宙警備隊長にも
見習ってほしいものだ
アニメだけどこの流れに乗るぜ。
獣神ライガーも入れてあげてください。
スポンサーがタカラさんなので本家スパロボ出演は(ry
出てなかった?ライガー
出てないっすよ。
ライバル敵キャラの魔竜王ドルガが結構好きだったなー。
変身するとモロ人外(つーか、そっちが本性?)な女幹部とマジでくっつくところとかさ。
しかも、まだ若いのに妙にしっとりとした恋愛しやがるし。
第30話『貫け、奴よりも速く』
「「「「「カンパ〜イ!」」」」」
大人数の歓喜を帯びた声とそれに続くグラスの衝突する音が一斉に響き渡る。音が響き渡ったのは本日貸し切りとなっているバルトフェルドの店、
そこにいる面々は、これ以上ないほどに疲れを見せながらも長きに渡った創造活動を終えて仕事をやり遂げたことによる喜びを顔から隠していない。
レイが主演をしていた特撮番組の撮影終わりの打ち上げがこじんまりと開始された。
間もなくねぎらいの言葉が店に溢れ出し、打ち上げはすぐに大きな盛り上がりを迎え始めるのだが、
ロケ中のアスランの襲撃やノイエDCの襲撃など順調に事が終わらないケースが多いレイ主演の特撮番組には、やはり今回もある意味では順調にアクシデントが起こる。
付近に設置されたスピーカーから周囲の人間にくまなく伝わるように巨大な音で警報音が鳴り響き始め、続いてノイエDCの襲来の告知、避難所への避難を促す案内が店の中にも聞こえてきた。
命あっての物種と、伊豆基地を見下ろす小高い山の上にあるバルトフェルドの店から泣く泣く避難を始める特撮番組のスタッフ達であったが、
彼らとは異なり、こっそりと人気のない方向へと独り走っていく男がいた。
もし触れたならば、その指の間から零れ落ちていきそうなほどにサラサラとした美しい金髪を向かい風になびかせつつ、全力で山道を駆け下りていくこの男の名はレイ・ザ・バレル。
図らずもアルフィミィの気まぐれとアインストの力によって、生まれながれに所有を強制されていた身体的欠陥を克服しながらも、その影響で過去の記憶をなくした
元ザフトのエースパイロットの1人であり、そしてこの世界においてアルフィミィから押し付けられたもう一つのペルゼイン・リヒカイトを駆る男である。
避難の混乱からドサクサ紛れで他の人間を撒いたレイは、見晴らしのいい所からその眼下に広がる町並みに目を向ける。
遠くから幾つもの爆発音が聞こえてきて、そこから幾つもの黒い煙の筋が空に向かって昇っていくのが見えた。
幾度も撮影の邪魔をし、いきなり襲撃を仕掛けてきて軍に関係のない人間まで危険にさらしかねない市街地への攻撃も行うノイエDCへの怒りがレイの中に込み上げて来る。
少なくとも以上のような妨害を加えてきたノイエDCには恨みもあるし、前回のように連邦軍が当てにならないこともある。そのため周りの人間が十分に安全なのかもわからない。
そして他方では、正体不明のものではるものの、単独でロボットとも戦える力を持っていることは事実である。
鼻から新鮮な空気を体内へと吸い入れ、それを数秒留めてから大きく息を吐いてレイは目を閉じる。そして呼吸を整え終えると同時に、三たび戦う決意を固めた。
小道具担当のスタッフに頼み込んで作ってもらった変身ベルトのレプリカを懐から取り出して腰に巻く。続けてベルトのバックルにある赤いボタンに左手を伸ばす。
電車が発車する時のような電子音が鳴り響き、続いて電子通貨貯蓄機能が付いた乗車カードの模造品をベルトのバックルへと近付けるとレイの体が黄色い光に包まれ始める。
「変身!!」
くどいようだが実際には変身するわけではないのだが、もっぱら精神を集中させるためのレイの掛け声とともに、彼を包み込む光はさらに大きくなっていく。
そしてその光が静かにふわりと浮き上がると、戦場の所在を確かめるかのように一瞬だけ動きを止め、一気に加速して戦場の方向へと向かっていった。
今回のノイエDCの攻撃は、ヒリュウ改を包囲するように八方へ部隊を分割し、時間差で攻撃を仕掛けるというものであった。
だがスレードゲルミル等これまでのノイエDCの攻撃部隊の一部がアルトアイゼンを個別に狙って来たことを踏まえて、ヒリュウ改の部隊は以下のように部隊を分けていた。
つまり、まず囮となるアルトアイゼンとそれをフォローする機体、直接にヒリュウ改に仕掛けてくる部隊を個別に迎撃する機体、
それにヒリュウ改の防衛に徹する機体に分かれて、ノイエDCとの戦闘を開始していたのである。
そしてシンの乗るビルトビルガーはその機動力を買われて、ヒリュウ改の南東に現れたゲシュペンストMK−Uと量産型ヒュッケバインMK−Uの混成部隊の迎撃にあたっていた。
高速で向かってくるビルトビルガーに向けて、まずゲシュペンストMK−Uから3基のスラッシュリッパーが放たれる。
ビルガーは素早く右に移動して1基目をかわし、そこに向かってきた2基目のスラッシュリッパーを、機体を上昇させて回避するとすぐに急降下して3基目から逃れ、水面ギリギリにまで降りていく。
そしてビルガーは攻撃を仕掛けてきたゲシュペンストの真下に潜り込むのと同時に携行しているグラビトンガンの銃口を真上に向け、引鉄を引いた。
紫の稲光を纏う黒色のエネルギー弾が銃口から飛び出し、その先にいたゲシュペンストへと向かっていく。
そのエネルギー弾は、咄嗟の攻撃に反応が間に合わなかったゲシュペンストの脚部に命中して機体のバランスを崩すと、
そこを狙った2発目のエネルギー弾が機体中央に直撃してゲシュペンストは爆発の中に散った。
これに対して反撃とばかりに上空のゲシュペンストらは一斉にメガビームライフルの銃口を海面付近のビルガーに向けて引鉄を引く。
「ビルガーの機動性を甘く見るなよ!」
海面スレスレにいたビルガーはテスラ・ドライブの出力を上昇させて水飛沫を上げながらビームの雨の隙間を縫うように移動して攻撃を回避する。
そして今度はゲシュペンストを率いていた量産型ヒュッケバインMK−Uの真下に潜り込み、ビルガーは急上昇を開始する。
「喰らえ!コールドメタルソード!」
同時に、シンは空いているビルガーの右腕でコールドメタルソードを引き抜き、握らせるとヒュッケバインのボディ中央付近に、下から突き上げる形でソードを突き刺した。
ビルガーは操者を失って動きを止めたヒュッケバインから素早く剣を引き抜くと、グラビトンガンでゲシュペンストらを牽制しつつさらに上空へと上昇していく。
ちょうど太陽を背にできるほどにまで上昇したあたりで、太陽光により一瞬だけビームによる攻撃が弱まると、シンはその隙を逃さずに相対的下方にいるゲシュペンストに向けて剣をぶん投げた。
投げつけられたコールドメタルソードは動きを鈍らせていたゲシュペンストの頭部へと突き刺さり、ゲシュペンストの動きを止める。
同時に別のゲシュペンストにグラビトンガンから放たれるエネルギー弾を見舞いながら、シンは突き刺さった剣を引き抜くべく、動きを止めたゲシュペンストへと向かっていった。
当然、残ったゲシュペンストは、ビルガーが剣を引き抜く隙を狙ってビームライフルの引鉄を引くのだが、
シンは剣を引き抜きつつ動きを止めたゲシュペンストの背後に回り、そのゲシュペンストを盾代わりにしてビームの攻撃をやり過ごす。
ビルガーは盾代わりとなったゲシュペンストの爆発から逃れると、友軍機に攻撃を命中させてしまい狼狽したのであろう、動きを鈍らせたゲシュペンストに銃口を向けてグラビトンライフルの引鉄を引いた。
一方、シンがゲシュペンストらの迎撃を行っている最中、後方で迎撃を掻い潜ってきた部隊との交戦を行っていたヒリュウ改には予期せぬ危険が襲いかかっていた。
ジャマーによりレーダー反応を消していたエキドナのラーズアングリフが率いるランドグリーズの大部隊が、突如海中から姿を現してヒリュウ改への砲撃を開始したのである。
一斉に放たれた夥しい数のミサイルがヒリュウ改へと襲い掛かり、みるみるうちに距離が詰まっていく。とっさにヒリュウ改もエネルギーフィールドを展開すると、
ミサイルはフィールドに遮られて艦体に命中する前に次々と爆発していく。だが遮られたミサイルにより生じた爆発と爆煙は、ヒリュウ改の周囲全体を覆い尽くしてその視界を奪ってしまった。
これにより、本来であれば第二波が来る前に反撃を開始すべきであるところなのだが、反撃に移るための指示に遅れが生じてしまい、
また、密集した出現したラーズアングリフらをMAP−Wを持つサイバスター、ヴァルシオーネはそれぞれが別の部隊との交戦中ですぐにヒリュウ改のもとへは戻って来れそうにない。
そして第二波のミサイルが再びヒリュウ改へと襲いかかってきた。
「クソっ!あいつらぁ!!」
コックピットに鳴り響く警報音でヒリュウ改への攻撃を知ったシンが怒りの視線を襲撃部隊に向けながら、歯を食いしばる。
だが、幸か不幸かヒリュウ改を襲う砲撃部隊の海中からの出現地点はビルガーの位置から比較的近くであり、現在のポイントから砲撃部隊の懐へ飛び込むことも不可能ではなかった。
そこでヒリュウ改への攻撃に専念している敵砲撃部隊の奇襲を仕掛けるべく、シンのビルガーはグラビトンガンの連結パーツへと手を伸ばす。
連射性を重視した短い銃身のグラビトンガンの先端に、アサルトマシンガンの代わりにビルガーに携行させている連結パーツを接続させることにより、
大型で取り回しのよくない通常のグラビトンランチャーに匹敵するほどの攻撃力を持つ連結型グラビトンランチャーを敵の増援部隊へと見舞うためである。
だがシンの目の前の敵は増援部隊だけではない。まだゲシュペンストMK−2らの部隊を殲滅し終えた訳ではないのである。
当然ビルガーが連結作業を完了するのをわざわざ待っていてくれるはずもなく、プラズマカッターを携えて1機のゲシュペンストがビルガーへと突っ込んで来た。
「クッ!邪魔を…」
シンはビルガーを後退させて距離を取ろうとするが、敵のゲシュペンストもそれにピッタリと追随してきて、なかなか距離を離すことができない。
そして必然的に回避行動を取り続けることを強制され、ビルガーは反撃をすることもままならない。
そんな中でヒリュウ改に目を向けると、今はガンドロがヒリュウ改の前に立ちはだかりGテリトリーを展開してなんとか敵増援砲撃部隊の攻撃をしのいでいた。
「邪魔をするなぁぁっ!!!」
シンは腹の底から怒鳴り声を捻り出し、ゲシュペンストを睨みつけた。そしてビルガーは連結パーツを上空高くに放り投げると、空いた手にコールドメタルソードを握り締める。
次いでコールドメタルソードでプラズマカッターを受け止めると、もう片方の手で持っていたグラビトンガンをゲシュペンストのボディに突きつけ、引鉄を引いた。
すぐさまビルガーは後ろに下がって、機体中央に直撃を受けて消え去ったゲシュペンストの爆発から逃れるのだが、さらにもう1機のゲシュペンストがそこに向かってきていた。
そのゲシュペンストは一定の距離を置いた上で3基のスラッシュリッパーを放つが、シンはそれを回避しながらビルガーのスピードを緩めない。
むしろシンはビルガーのスピードを上げながら、その機動性を活かしてみるみるうちにゲシュペンストとの距離を詰めていく。
その機動性の高さとスピードに十分に反応し切れなかったゲシュペンストとの距離を詰めたビルガーは、すれ違いざまにゲシュペンストのボディを右腕部のスタッグビートルクラッシャーで鷲掴みにした。
「スタッグビートル…クラッシャー!!!」
シンの声とほぼ同時に万力に潰されるようにして、ゲシュペンストのボディは真っ二つとなってクラッシャーの中からこぼれ落ちていった。
続けてビルガーはクラッシャーに引っ掛かっていた幾つかの破片を振り払うと、すぐにコールドメタルソードを収納して先ほど上空へと放り投げた連結パーツの落下地点へと向かう。
そこへさらに別のゲシュペンストが立ちはだかるが、相手に攻撃をさせる前に距離を詰めていたビルガーはその顔面を力任せに蹴りつけた。
ビルガーがスピードに乗っていた分だけ単なる蹴りであっても相当な威力が備わっており、ゲシュペンストの首が幾つかの破片を撒き散らしながら宙を舞う。
しかしシンもそれを眺めていることはなく、首なしとなったゲシュペンストを踏みつけて上空へとさらに飛翔していく。そして落下してきた連結パーツを手に取ると、手早く連結作業を完了させた。
すぐにエネルギーチャージが始まると同時に、連結に問題がないとの情報が機体のディスプレイに次々と表示されてくる。
システムオールグリーンを機体が示すと、すぐにシンは連結型グラビトンランチャーの銃口を、ヒリュウ改を襲う敵増援砲撃部隊の中央へと向ける。
そして照準のセットと補正が完了しシンはビルガーの安全装置を解除した。
「連結型グラビトンランチャーセット!喰らえ!グラビトンランチャー、ワイルドシュート!!」
コックピット内でシンがトリガーを引くのと同時にビルガーもランチャーの引鉄を引く。
ガンモードの時より1回りも2回りも大きな球状の重力エネルギーが銃身の先端で収束を開始し、黒色の重力球が帯びている紫の稲光が激しく輝くと、
その重力球が破裂して内部から一斉に重力エネルギーが一直線に溢れ出した。上空のビルガーから放たれたそのエネルギーは波のように増援砲撃部隊の何機ものランドグリーズを飲み込んでいき、
部隊中央とその周辺の敵を押し潰していく。
そのエネルギーの耐え切れずに次々とランドグリーズが爆発へと姿を変えていく中、運良くグラビトンランチャーを逃れた者達は当然のことながら混乱に陥る者が続出した。
突如脇腹を突かれたような不意打ち、しかも隊の何割かを一撃で撃破するような強大な攻撃を喰らえば、それは無理もないことであった。
だが冷静さを保ちつつ攻撃が来た方向に注意を向けた1機のランドグリーズは、攻撃をしてきた機体を確認することなく動きを止める。
右肩から左脇にかけてを冷たく一閃した刃により機体が真っ二となり、機体の上半身が滑り落ちたからである。
そしてすぐに爆発して姿を消したランドグリーズを背景にして獲物を探す1機の機体があった。野生の百舌ことビルトビルガー。
ビルガーはグラビトンランチャーを打ち込んですぐ、コールドメタルソードを両腕に構えてノイエDCの増援部隊に斬り込んで行ったのであった。
支援
「これ以上ヒリュウ改をやらせるかよ!!」
既に戦意が最高潮へと上り詰めつつあったシンに呼応するように、勢いよくビルガーが最も近くにいたランドグリーズに斬りかかる。
振り下ろされた剣を、シザーズナイフで受け止めたランドグリーズであったが、通常のパイロットが、ランドグリーズで高速戦闘が強みのビルトビルガーと接近戦を行うことは自殺行為に等しい。
ランドグリーズが次の行動を起こす前に、空いている左腕のスタッグビートルクラッシャーがランドグリーズのほぼ剥き出しのコックピットを大量の破片を撒き散らしながら叩き潰していた。
続けて今度はビルトビルガーの後方からショットガンを構えたランドグリーズが飛び出してきた。
コックピットに鳴り響く敵機接近を告げる警報音に反応したシンはビルガーの左のウイングを急展開させ、機体を急速に右方向へ平行移動させることで広範囲に散らばっていく散弾を回避する。
他方、多くの機体が密集する中で放たれた散弾は本来のターゲットに命中しなかったに留まることなく、周囲にいた友軍機に命中することとなってしまった。
これによりさらに浮き足立ってしまった砲撃部隊であったが、他方のシンにとってそれは好機以外のなにものでもない。
左右両ウイング及び機体各部推進器を調整して、右方向への平行移動からショットガンを放ったランドグリーズのいる方向への直線移動に素早く移行し、真っ直ぐに突っ込んで行く。
かつては愛機デスティニーとアロンダイトで行っていたように、前面にコールドメタルソードの切っ先を向けて敵機へと突撃していくビルガーは剣を根元まで敵機に突き刺すと、今度は力任せに左方向へと剣を振り抜いた。
そしてすぐにそこから離れて次のランドグリーズへと向かっていったのだが、ビルガーの横から1機の機体が真っ直ぐに向かってきた。
ほぼ全身を覆う厚い装甲、そこに施された見るものの目を奪うような真っ赤なカラーリング。そして背部に背負った巨大な砲塔。
シンは既に何度も戦ったことがあり、その度に激戦を繰り広げてきたノイエDCの指揮官機の1つ、ラーズアングリフがビルトビルガーへと襲い掛かって来た。
「またあの赤い戦車!今度はどいつだ!?」
シンはアクセルにユウキという、ラーズアングリフに乗る複数のパイロットとの交戦経験を持つ。そのため厄介な奴が出てきたと舌打ちをしながら、突き出されたナイフを剣で受け止める。
「ユウキ・ジェグナンか、それともゼオラといた奴か!?」
「残念ながらそのどちらでもない」
回線から聞き覚えのない女の声が聞こえて来るが、それに注意を向ける余裕はシンにはない。
ラーズアングリフを駆るエキドナは、シザーズナイフが受け止められるとすぐに脚部のローラーにより機体を後退させると同時に、
ビルガーからの反撃がなされる前にもう片方の腕に携えているリニアミサイルランチャーの引鉄を引く。
シンは敵の攻撃の早さに機体をいったん後退させ、なおも発射され向かってくるミサイルを機体を左右に旋回させて潜り抜けていく。
そして回避行動を取りつつも腰部にマウントさせていたグラビトンガンをビルガーに構えさせると反撃の引鉄を引いた。
だが相手のラーズアングリフも脚部ローラーを巧みに使って機体を左右に移動させてグラビトンガンから放たれたエネルギー弾をかわしていった。
「早い!けど…ビルガーのスピードはこんなもんじゃない!!」
降り注ぐミサイルを潜り抜けつつビルガーもグラビトンガンで反撃を行う。だがラーズアングリフはこれまでと同様に脚部ローラーによる高速移動で数発のエネルギー弾を難なく回避する。
そしてさらに放たれたビルガーの反撃の銃弾はラーズアングリフに命中することはなく、その足元付近へと着弾していく。
「弾速計算、軌道予測…命中率0%。どこを狙っている……何!?」
冷静にシンのビルガーの攻撃を計算して回避していたエキドナに焦りが生まれた。攻撃が命中した訳でも、機体トラブルでもないのに突然ラーズアングリフの姿勢制御に乱れが生じたのである。
ラーズアングリフの足元を見たエキドナは、いつの間にか周囲の路面に幾つもの大きな凹みが作られていること、そしてシンの狙いに気付いた。
シンは何の考えもなくただの反撃としてグラビトンガンによる攻撃を行っていたのではない。あえて攻撃を路面に向けて行い、地面に凹みを作り、
路面を踏みしめて高速移動を行うラーズアングリフがバランスを崩す機会を待っていたのである。
シンはこれまでラーズアングリフという機体とは2回の戦闘及び1回の共闘をしており、その経験があったからこそラーズアングリフの弱点を見出すことができたのだった。
「今だ!コールドメタルソード!!」
音声入力システムによりシンの声を認識すると、ビルトビルガーはコールドメタルソードを構える。
そしてシンはテスラ・ドライブの出力を上昇させながら背部のウイングを全展開し、ビルガーは姿勢を崩したラーズアングリフに突っ込んでいった。
ラーズアングリフもビルガーを近づけまいと、姿勢を崩しながらもシザーズナイフを繰り出すがその刃が百舌へと到達するよりも先に
ビルトビルガーの剣が振り下ろされ、煌いた冷たい鋼の刃がラーズアングリフの腕部を斬り落としていた。
その頃、囮になっていくつかのノイエDCの部隊と交戦していたアルトアイゼンの前に1機の特機が現れていた。
先端がエメラルド色に輝く頭部ブレードアンテナ、青と銀2色の装甲に両肘から鋭く伸びたブレード、そして何よりも見る者の目を引く「髭」のようなブレード。
対峙するキョウスケに見覚えはないが、先ほどヒリュウ改から転送されてきたデータだけは手元にある。
コードネーム「マスタッシュマン」というオペレーションSRWの中に現れた正体不明の特機ということだけはわかっているのだが、
その後に姿を消した正体不明の特機がなぜここに現れたのかはまったくわかっていない。
その理由をキョウスケが考えていると、アルトアイゼンへ通信が入ってきた。
「む…通信だと?敵からだ?」
「聞こえるか、ベーオウルフ…いやキョウスケ・ナンブ」
「…!」
「俺はアクセル…アクセル・アルマーと言う」
「アクセル…?」
聞き覚えのない声に、聞いたことのない名前。それに先日ヒリュウ改に攻撃を仕掛けてきたスレードゲルミルに乗っていたウォーダン・ユミルと同様に、
自分のことを「ベーオウルフ」と呼ぶ謎の男の存在に、キョウスケの不審感は雪ダルマ式に大きくなっていく。
「あらら?地球人?キョウスケのお知り合い?」
「いや、初めて聞く名だ」
「そうだろうな。だが、俺は貴様のことをよく知っている。…どれほど危険な男なのかもな」
「何…?」
「もしかして…DC戦争のときにキョウスケとやりあったことがあるとか?」
「いいや、違うな。貴様に直接の恨みがあるわけではない」
「ではお前は何者だ?どうして俺を知っていて…俺を狙う?」
「それを話す前に…一つ聞きたい。得体の知れん力が、突然湧き上がる感覚はあるか?」
「…言っている意味がわからん。人違いではないのか?」
「いや、いい。それに…それならまともに会話が出来るはずもない、こいつがな」
理解できないことばかりで混乱してしまいそうな状態のキョウスケとは対照的に、アクセルは「とりあえず」の満足と納得を得ていた。
この世界における「キョウスケ・ナンブ」が今は極めて近く限りなく遠い世界にいる忌むべき宿敵とは異なるのであれば、アクセルの心配ごとの半分は取り越し苦労であったに等しい。
それがわかれば後は目の前にいる存在が呪われた力を手に入れる前に倒すことで足りる。そしてソウルゲインの力を以ってすればそれはアクセルにとって決して困難なことではない。
「ちょっとちょっと!勝手に自己完結して満足しないでもらえる?」
「すまんな。…もう用は済んだ。キョウスケ・ナンブ…ゲシュペンストMK−Vもろともここで消えてもらおう」
「わお!会話になってないのはそっちでしょうに!」
「ウォーダン・ユミルと同じくお前もアルトをそう呼ぶか…俺にもわかるように説明して欲しいものだが?」
「長くなる。……それに、貴様が納得する説明にはならんだろう。さて、おしゃべりはここまでだ。『こちら側』の貴様に、“その時”が来ていないなら好都合。ここで憂いを断たせてもらう、これがな」
「『こちら側』…?『その時』…だと?おい、どういうことだ?」
「貴様が知る必要はない…いや、その方が幸せかも知れん。おれはもう、人間とは呼べん存在だった…」
「…わけのわからんことを。だが、敵だと言うなら容赦はしない」
「そうだ、それでいい。お互いに理解する必要などないのだからな。敗れた方が消える…それくらいわかりやすい方がいい、これがな」
「さあ、ソウルゲインよ…再び俺にその力を貸してくれ。ベーオウルフ…キョウスケ・ナンブ!『こちら側』の貴様とMK―Vの力…見せてみろッ!」
「いいだろう。ただし高くつくぞ…!」
「面白い…ソウルゲイン、貫け、奴よりも速く!」
アルトアイゼンを見据えたソウルゲインは真っ直ぐ一直線にアルトアイゼンへと向かってきた。これに対してアルトアイゼンもステークを構えてソウルゲインへと突っ込んでいく。
「踏み込みの速さなら負けん!」
背部スラスターから噴出す光が最大となったところでまずアルトアイゼンがリボルビングステークを突き出した。
旧式の杭打ち機と揶揄されながらも連邦には多大な戦果を、DCには多大なる損害をもたらしてきた鋼の杭がソウルゲインの胸部へと向かっていく。
「甘い!」
これに対してアクセルはソウルゲインを左方向へと飛び跳ねさせ、ステークの備わった右腕の軌道からソウルゲインを逸らさせた。
次に、攻撃をかわされて隙の出来たアルトアイゼンの横っ腹に向けて今度はソウルゲインの蹴りが繰り出されと、アルトアイゼンは両腕をクロスさせて攻撃を受け止める。
蹴りの勢いこそ殺すことができずに後方へと吹き飛ばされるアルトアイゼンであったが、姿勢制御を行いつつも左腕のマシンキャノンの照準をソウルゲインに向けて合わせた。
キョウスケとしても射撃は得意でないものの、相手を牽制して呼吸を乱し、自らが攻撃に移るタイミングを掴むためには四の五の言うことはできなかったのである。
他方のソウルゲインは周囲の建造物を利用してマシンキャノンから身を隠しつつ、徐々に徐々にアルトアイゼンとの間合いを詰めていく。
「チィッ!特機なのによく動く!」
射撃による牽制に見切りをつけ、キョウスケは見通しのいいところまでアルトアイゼンを後退させる。そして建物の陰からソウルゲインが飛び出してきたところを見計らい、再びステークを構えて突っ込んでいった。
「やはり結局は突撃してくるのか。その癖はこちらも同じのようだな!」
自分が予想した通りに攻撃を仕掛けてきたアルトアイゼンに向けてアクセルが言い放った。
目の前の敵が、ゲシュペンストMK−Vと己の倒すべき宿敵ベーオウルフ、
つまり、異様な力を携えて自分達の世界で立ちはだかり、最終的に彼らシャドウミラーが自分達のいた世界から逃れることを余儀なくさせた最大の原因となった忌むべき存在とは異なるのだということはわかっている。
理屈でわかっているからこそ、アクセルも度が過ぎるような無茶をしようとは思っていない。
だが、それはあくまで理屈でしかない。
理性や理屈とは対照的にアクセルの内にある闘争本能は、目の前にいるキョウスケ・ナンブのアルトアイゼンと、
異世界にいる彼が本当に倒すべき敵ベーオウルフのゲシュペンストMK−Vをさほど区別してはいない。
アクセルの闘争本能はアルトアイゼンを視界の内に入れれば入れるほど激しく、そしてより大きな闘気を供給し続けていく。
アクセルが拳を握り締める動作にDMLシステムが対応してソウルゲインも拳を握り締め、再びアクセルは愛機と共に目の前の敵へと突っ込んで行った。
試演
ソウルゲインは再び突き出されたステークに対して、その左腕をアルトアイゼンの右腕の内側に捻じ込んで弾き飛ばした。
続けてアクセルはガラ空きとなったボディに渾身の力を込めた鉄拳を叩き込む。キョウスケの全身を揺さぶる衝撃とともにアルトアイゼンが後方へと吹き飛ばされていくが、
キョウスケもさすがにタダでは済まさない。吹き飛ばされながらもアルトアイゼンはソウルゲインの正面を向く体勢を確保しながら、両肩の扉が展開を開始していた。
「この距離でこれだけのベアリング弾だ!もらったぞ!」
左右の鋼の扉から一斉に飛び出した一発一発が特注の弾丸は、アルトアイゼンと相対するソウルゲインに向けて襲いかかっていく。
しかしアクセルもこの攻撃を、宿敵に何度も煮え湯を飲まされたゲシュペンストMK−Vことアルトアイゼン必殺の攻撃を予想していた。
アルトアイゼンが吹き飛ばされ始めたのと同時に、ソウルゲインは後方へ飛びアルトアイゼンとの距離を取り始めていたのである。
そして後方へ飛びながら開いた両手を前方へ向け、青白く輝くエネルギーのチャージを開始する。
「行け、青龍鱗!」
中心へ青と白のエネルギーが渦巻きながら集まってゆき、アクセルの言葉とともに編み込まれた2色の光がスクエアクレイモアを飲み込んでいく。
結局アルトアイゼンとソウルゲイン、両機の攻撃が終わったときに双方に残っていたダメージはほとんどゼロに等しいものであった。
単純な威力だけで言えばアルトアイゼンの武装の中でも最強クラスのスクエアクレイモアの方が勝っている。
だがスクエアクレイモアは散弾を至近距離からばら撒くものであるがゆえに、相手との距離が開けば開くほど命中する弾丸の数は減少して破壊力も低くなるという弱点がある。
そして極めて近く限りなく遠い世界のキョウスケと戦ってきたアクセルは、当然クレイモアの弱点を熟知していた。
それ故に後方へ飛んでアルトアイゼンとの距離を開くのと同時に、向かってくるベアリング弾を青龍鱗で相殺し、さらに同時に青龍鱗の反動を利用してアルトアイゼンとより大きな距離を取ったのである。
「チッ!クレイモアを防がれるとは…!」
「フッ…操縦の癖は大して変わらんようだな、こいつが。それに機体はともかく…腕前は『向こう側』と比べればまだまだだな、ベーオウルフ」
(この男、俺との戦い…いや、アルトとの戦いに慣れている…?以前のにやりあったことはないと言っていたが…それにしては俺の動きを知りすぎている…)
攻防が一体となった対応で必殺の攻撃を防がれたキョウスケが内心で抱いた感想であった。
他方でアクセルとしては直に戦ってみて、やはり自分達のいた世界におけるキョウスケとは異なり、キョウスケが脅威的な力を持たないことは確信できたが、それで憂いがなくなったわけではない。
「だが、この後貴様がどうなるかはわからん。後顧の憂いを断つ為にもここで果ててもらうぞ!ソウルゲイン、リミット解除!!」
「損傷度…中破。そろそろ潮時か」
片腕を失いエキドナはラーズアングリフを後退させ始めた。ビルトビルガーから逃れるべくソウルゲインに通信を入れる余裕はないが、
撤退する旨だけ報告して他の機体へも順次撤退するよう指示を出す。
「そう簡単に逃げられると思ってるのか!」
だがエキドナ自身は現在もビルトビルガーとの戦闘の真っ最中であり、ビルガーの連続攻撃から逃れるだけで精一杯の状態にある。
次々と繰り出されるコールドメタルソードによる斬撃を何とかシザーズナイフで凌いではいるものの、片腕で防ぎ続けるのには限界があった。
「こっちはその機体とやるのは初めてじゃないんだ!」
なおも振り下ろした剣はまたも受け止められてしまったものの、シンはそのまま剣ごと機体を押し込める。
機体重量やパワーにおいては勝るラーズアングリフであるので、ビルガーも力任せに敵機を斬り捨てることはできないのだが、シンの狙いはそこにはない。
素早く左腕のスタッグビートルクラッシャーでラーズアングリフの残った片腕を掴み取ると、そのまま一気に握りつぶした。
「チッ!」
両腕を失ったラーズアングリフは肩部のミサイルをばら撒きながらなおも後退を続ける。
それで足を止められるようなシンとビルトビルガーではないのだが、直後に信じ難い光景がシンの目に入ってきた。
何かが叩きつけられた大きな音が戦場に響き渡り、周囲の注目が一斉にそこへ集まっていく。
そして視線の集まった先にあったのは、建造物に激しく叩きつけられて力なく尻餅をついたアルトアイゼンの姿であった。
「キョウスケ中尉!!」
シンもその光景に目を奪われてしまい、その隙をついてエキドナはここぞとばかりに残ったミサイルを片っ端からばら撒いて一気に戦場から離れていく。
これではさすがにシンとビルガーであってもラーズアングリフを追跡することはできなかったが、今はそのような状況ではないこともわかっている。
シンはビルトビルガーのウイングを改めて展開すると、一気に出力を上昇させてアルトアイゼンの元へと向かっていった。
一方、ソウルゲイン最大の必殺技「麒麟」を打ち込んたアクセルはゆっくりと、一歩一歩アルトアイゼンの元へと近付いていく。
「とっさに見切って直撃を避けたか…だがあと一撃で…!?」
そう言い終える前にソウルゲインの足元を鞭のようにしなる1条のビームがなぎ払った。
ソウルゲインはとっさにバックステップをしてそれをかわすが、さらにそこに連続して弾丸が打ち込まれ、ソウルゲインはそれを回避するためにアルトアイゼンから引き離されてしまう。
アクセルが攻撃の方向を見やると、そこにいたのは銃口の先端からわずかな煙を上げるオクスタンランチャーを手にした白騎士ヴァイスリッター。
規制くらったので続きはまた後日
乙。だが、スパロボ避難所の存在で待つ!
GJ!待ってましたよ。
今回、シン活躍出来てよかったなぁ…
次回投下でレイ乱入してきそうですが。
「はいは〜い、自己完結君…いい加減にしてよね。いつ、どこで、どうやってキョウスケを知ったのかくらいは教えてくれない?こっちで勝手に推理するから」
まるで男を追及する浮気調査でするような質問だな、と思えなくもなかったアクセルだったが、それよりも気になることがあったアクセルはそれを問いただすことにした。
「…さっきから割り込んできているが…貴様はベーオウルフの何だ?」
「…きゅ、急ねえ…なんかヘンに照れてきちゃったけど…パートナーってことでひとつ」
(奴に女のパートナーだと?確か『向こう側』では…)
あの世界のキョウスケと幾度も命の奪い合いをしてきた自分の記憶にはない、ベーオウルフのパートナーを名乗る存在にアクセルもいささか興味が湧いてきた。
「貴様、名前は?」
「へ?ああ、私はエクセレン…エクセレン・ブロウニングよ」
「な…に!?」
「?」
「ブロウニング…!ブロウニングだと!?」
「もう、何なのよ?急にキョウスケに訳の判らないこと言ったかと思ったら私の名前に超反応するなんて…」
その頃、エクセレンの後を追いキョウスケのフォローに入るべくソウルゲインへと向かっていたラミアは、どういうわけか内心で激しく焦りを感じていたのだが、
ラミアの心理的動揺と同じ程度の同様をアクセルもしていた。自分の相棒と同じファミリーネームを持つエクセレンの名前を聞き、その有り得ないような偶然に大きく心を乱していたのである。
(もしや…こいつがレモンの捜していた…?だがその人間がベーオウルフのパートナー…そんな偶然が起こりうるのか?)
「!?」
あまりに意外なところから得られた情報に、僅かに狼狽してしまったアクセルであったが、まるで彼の思考を現実に引き戻すためのように、警報音がさらなる敵機の接近をアクセルに告げる。
「まったく人形どもめ…足止めもできんとはな。ん?あの機体…」
アクセルの見た先にいたのは、機体のカラーリングこそ異なるものの、背部の大型ウイングに左腕の大鋏、宿敵ゲシュペンストMK−Vを連想させる1本角が特徴的な機体であり、
それと同時に彼が先日ラーズアングリフに乗っていたときに交戦したのと同型機と思しき機体であった。そしてその機体から通信機越しに聞いたことがある声が聞こえてくる。
「これ以上はやらせないぞ、マスタッシュマン!」
「ほう、色は違うがやはりこの前のパイロットか!」
「その声!ゼオラといた赤い奴の…!」
「言っておくがあの人形がどこにいるかなど俺は知らんぞ」
「ッ!そう言うアンタは人形にされてる人間を見てよく平気でいられるな!?」
「俺達がやっているのは戦争だ。ヒューマニズムや救済を説くなら教会にでも行け。俺がお前を送ってやる、ただしお前を遺体にしてということになるがな!」
「何!?」
「ベーオウルフとの決着、邪魔した罪は重いぞ!」
狙いをビルトビルガーに定めたのか、ソウルゲインはビルトビルガーに向かって突っ込んでくる。
シンはグラビトンガンを構えさせてソウルゲインを牽制すべく引鉄を引くが、ソウルゲインは最小限に左右への移動を行うことでほとんど速度を落とすことなく距離を詰めてきた。
「こいつ…!速い!!」
自分の知っている機体の中でも運動性能や機動性がかなり高い方だと判断したシンは、グラビトンガンを納めて、代わりにコールドメタルソードを引き抜かせる。
同時に一気にテスラ・ドライブの出力を上昇させて左右のウイングを展開させると、ビルガーはソウルゲインに真っ向から突っ込んでいく。
「はああぁぁぁっ!!」
ビルガーは、飛び道具による牽制のような小細工を一切せずに突っ込んでくるソウルゲインとの距離を一気に詰めると、なおも回避行動すら取らない敵機に対して、
その勢いをも活かして一気に剣を振り下ろす。だが次の瞬間にシンの目に入ったのは斬り落とされた敵の機体の一部ではなかった。
金属同士が思い切りぶつかり合う音が当たりに響き渡るが、ソウルゲインの握り締められた拳はコールドメタルソードを正面から受け止め、わずかな損傷すらしていない。
「剣が効かない!?」
「フ…ソウルゲインの近距離戦闘能力を舐めるなよ!」
「ならコイツでどうだ!」
剣ごと弾き飛ばされたビルガーは再びグラビトンガンを手に取り、ソウルゲインとの距離が広がる前に連続してトリガーを引くのだが、
ソウルゲインは左右に小刻みに移動して攻撃をかわしつつ、両腕を機体前で交差させて青と白2色のエネルギーを練り込み出す。
「もらった!!」
ソウルゲインを照準に納めたシンがグラビトンガンの引鉄を引き、銃口から放たれたエネルギーがソウルゲインに迫っていく。
「甘い!青龍鱗!!」
アルトアイゼンに放ったものと比べてやや小型でエネルギー量もさほど大きいものではなかったが、ソウルゲインの放った青と白のエネルギーは、
グラビトンガンから放たれた黒色のエネルギー弾を相殺して役目を終えて消えていった。
だが「役目」を果たしたことに変わりはない。自分の間合いにビルガーを捕らえたソウルゲインから鋼の拳が繰り出され、ビルトビルガーへと迫っていく。
それをなんとか剣でガードしたシンであったが、戦いの流れはアクセルが引き寄せつつあることを否定はできなかった。
シンが反撃に出るより先にソウルゲインが仕掛けてきた格闘戦は、ビルガーに防戦への専念を余儀なくさせる。
パワーや機体重量などを踏まえれば、繰り出される拳撃や蹴撃がまともに当たったときの大ダメージは必至である。
そのためシンはビルガーを後退させつつ、機体を上下左右に激しく動かして攻撃を掻い潜る。
ソウルゲインの繰り出す攻撃はスレードゲルミルと比べれば威力は小さいが、スピードはこっちの方が遥かに上であり、また、デストロイと戦ったときのように防ぎきることもできない。
ビルガーの顔面に向けて放たれた、轟音とともに風を切り裂く右ストレートを、機体を左にそらすことでギリギリ回避したシンは、目の前で伸びるソウルゲインの腕をクラッシャーで掴み取る。
規制防止
「!」
「もらった!!」
シンはクラッシャーで掴んだ腕部を潰そうとビルガーに一気に力を込めさせると、先ほど剣が通らなかった拳と異なり手応えがあり、徐々にではあるがヒビも入っていく。
そしてそのまま握りつぶしつつ、今度は敵を投げ飛ばそうとするが地力が違うのか、ビルガーは逆にソウルゲインに引っ張られてしまう。
「くっ!」
シンは咄嗟にクラッシャーを離してもう片方の腕から繰り出された拳を回避すると、ソウルゲインが引っ張ろうとした力をそのまま殺さずにいったん距離を置く。
「拳、肘以外ならいけるか!」
「行けい、玄武剛弾!」
「!?」
ソウルゲインが改めて拳を握り締めると、その手首付近のリングと肘先のブレードが回転を開始した。
そしてグルンガストのように拳を突き出すと先端の拳が発射され、回転を加えられて威力を高められた鉄拳がビルガーへと向かってくる。
シンは機体を上昇させて攻撃を回避するが、回転する拳は上空のビルガーを追って上昇してきた。
そこでさらに機体を上昇させつつ、ソウルゲインから距離を置いて一気に追跡してくる両拳を振り切って敵機を見ると、先程クラッシャーで握り潰し損ねたソウルゲインの腕の修復が進んでいる。
「クソ!再生するなんてこいつもアインストなのかよ!」
「残念ながらこれはソウルゲインが元々持っている力だ!原理はよくわからんがな」
そう言ってアクセルは再びソウルゲインとビルトビルガーの距離を詰めて行く。
「そろそろ決着をつけさせてもらうぞ!…クソッ、またか!?」
今度ソウルゲインに向かってきたのは4条の緑色に輝く矢。だがこれまでと違うのはアクセルがすぐに邪魔をした犯人の正体を突き止めることができたということである。
シンがアクセルの相手をしている間にエクセレンとキョウスケの回収を終えたラミアがシンの援護に駆けつけたのであった。
「ラミアさん!」
「W17か!さすがに嫌な邪魔をしてくれるな!だが貴様相手では手加減せんぞ!」
立ちはだかる相手は意思を持たぬはずの操り人形だが、実際に戦ってみたことのあるアクセルはその「人形」の実力の高さを最もよく知る人間の1人である。
理由の如何を問わず、それが自分の敵として立ちはだかるのであれば最早気持ちの余裕を確保したまま戦うことなど愚の骨頂に他ならない。
ラミアの乱入は一時的にソウルゲインの足を止めることはできたものの、同時にアクセルを本気にさせることになってしまった。
他方、アクセルがラミアに意識を持っていかれていた隙に体勢を整え直したシンは改めてビルガーをソウルゲインの元へと向かわせる。
そしてビルガーのフォローをするように、その後にラミアのアンジュルグもミラージュ・ソードを携えてソウルゲインへと向かっていく。
ビルガーは地表付近を高速で駆け抜けてゆき、ソウルゲインに向けてコールドメタルソードを振り抜いた。
「甘い!」
だがソウルゲインは後方の上空へ飛び上がってビルガーの斬撃を回避する。さらにそこにアンジュルグが追撃を仕掛けるが、これはアクセルも読んでいた。
ソウルゲインは飛び退いた先にあった建造物の頂上に足をかけると、さらに上空へと飛び上がる。
「いや甘いのはアンタだ!」
飛行能力のないソウルゲインであれば上空に飛び上がった時点で、空中戦が得意なビルトビルガーやアンジュルグの方が有利だとシンは踏んでいた。
しかしビルトビルガー、アンジュルグの上空を取ったのはシンの考えとは裏腹に、アクセルの思う通りのものであることを、シンはこの直後に知ることとなる。
「しまった!?アスカ様、防御を!」
「だから甘いと言ったんだ。リミット解除!行けい!!」
「え!?」
上空へ飛び上がりながらエネルギーの収束を既に開始していたソウルゲインは、その跳躍が頂点に達した時にはチャージを終えていた。
そしてソウルゲインの両腕の先で最大にまで高められたエネルギーは通常の青龍鱗発動時とは異なり、アクセルの言葉とともに弾け飛び、無数の散弾となって下方にいるシン達に襲いかかっていく。
ラミアに言われて防御姿勢を取ったシンであったが、ビルガーへと降り注ぐエネルギーの散弾はビルガーを大きく揺らし、地面へと叩きつけた。
青龍鱗命中の衝撃と地面に激突した時の衝撃とで小さからぬ肉体的ダメージを受けたシンは、体勢を整え直すべく辺りを見回すが、状況認識が完了する前に新たな衝撃がビルガーとシンを襲う。
その衝撃で大きくビルガーは吹き飛ばされるが、その犯人は激しい回転を続ける拳、ソウルゲインが放った玄武剛弾であった。
つまりソウルゲインが最初に放った青龍鱗は足止めと目くらましに過ぎず、エネルギーの散弾の中に本命の両拳を紛れ込ませた上で、
ビルガーやアンジュルグが青龍隣で動きを止めた所にその拳を叩き込んだというわけであった。
「く…そ……!」
今の攻撃のダメージで身動きが取れなくなったビルガーの中でシンがうめく。
「今フォローに…!」
「行かせはしないぞ、これがな」
「!」
このままではいい的でしかないシンのビルガーを援護すべく、救援に向かおうとしたラミアのアンジュルグの背後にソウルゲインが現れた。
機密回線越しに聞こえてきた上官の冷たい声に驚いたラミアが背後への対応をしようとするが、その前にソウルゲインの回し蹴りがアンジュルグのボディを直撃する。
「だから甘いと言ったろう?」
アクセルは戻ってきたソウルゲインの両拳の接続を確認しつつ、地面に横たわるビルトビルガー、アンジュルグを一瞥しながら言った。
次に先ほどアルトアイゼンを叩き付けた建造物の方に目を向けるが、既に宿敵は僚機によって回収された後らしく、建造物には凹みが残されているのみである。
「ビルトビルガーのパイロット、W17…この際、きちんと落とし前だけはつけてもらうぞ」
止めを刺すべくソウルゲインがビルトビルガーに向けて近付いていく。だが2度あることは3度ある。アクセルの中ではまた邪魔が入るのではないかという妙な胸騒ぎがしていた。
しかし、その胸騒ぎは邪魔が入るのではないか、という単純なものだけではなかった。
何か自分の全力を以ってしてもどうにかできない可能性がある危険なものが迫ってきているような、
自分のいた世界でゲシュペンストMK−Vが現れる前によく感じていた不安感がアクセルの心を徐々に埋め始めていた。その時であった。
「!?」
大きな音とともにすぐ傍の海中から何者かが飛び出してきた。
全身を返り血のような真紅の赤で染め、巨大な剣を片手に握った、頭から2本の鋭い角を生やした鬼のような顔を持つその機体は、
アインストの力を得て復活を遂げたレイ・ザ・バレルの力を媒介にして、アルフィミィから譲受けたペルゼイン・リヒカイトの力を具現化した、もう1つのペルゼイン・リヒカイトである。
アクセルは諜報部経由でクライマックスに拘る所属不明のアンノウンがいるという情報は得ていたし、アスラン・ザラから僅かながらに話も聞いていたので驚きはなかった。
とはいえ「驚き」はなかったものの、その姿を直に目にして、機体を通じてではあるが直接対峙して、先ほど感じていた不安感が気のせいではなかったことを確信して強い警戒心を抱き始めていた。
アクセルが感じていた感覚、それは彼が呪われた力を会得して彼らシャドウミラーを追い詰めた真の宿敵ベーオウルフとゲシュペンストMK−Vと対峙している時に感じていたものと同じであった。
気のせいであろうか、彼の愛機ソウルゲインもそれを伝えようとしているような感覚すらある。
だが同時にまた自分の前に邪魔者が立ちはだかったのか、という極めて不愉快な気分にもなっていた。
「俺!ようやく!参上!」
ペルゼイン・リヒカイトから恐るべきアインストの力を感じ取って気を引き締めるアクセルとは対照的に、
レイはやっと戦場に到達して自分達の(宴とこれまでの撮影の)邪魔をしたノイエDCと対峙できて急激に戦意を高めている最中であった。
普段は片腕だけのところだが、今回のレイはまず両腕を前後に旋回させて左右の腕で自分を指差し、普段よりも強く激しく左腕を突き出し、右腕を後ろへ伸ばしてポーズを取る。
「また邪魔が入ったか…いきなり現れて貴様は一体何者だ!」
「邪魔だぁ?テメェ、DCの奴だろうが!」
「だとしたら何だ?」
「いいか、そこの髭男爵!俺は最初から最後まで徹底的にクライマックスだ。その髭切り落として二次会の小道具にしてやるから覚悟しやがれ」
「クライマックス…そうか、貴様が噂の赤鬼か。まさかいきなり会えるとは思わなかったぞ」
「いいタイミングで出てやっただろう?おかげでこっちもテメェをぶっ倒してストレス発散できそうだぜ」
「そうか。だがこっちは最悪の気分だ」
またも邪魔をされたことによる強い不快感、そして宿敵と対峙したときに感じていた対峙する者全てを呑み込み消し去らんとするような圧迫感が混ざり合って
アクセルの気分は今まで味わったことがないほどに面白くないものとなっていた。
「へへ…そいつは悪かったな。だが悪いついでだ…行くぜ!いきなり俺の必殺技パート2!!」
「何!?」
ペルゼイン・リヒカイトが大剣を正面に構えると、ペルゼイン・リヒカイトとそれを操るレイの力が腹部の桃型のバックル、頭部の2本の角を通じて銀色の刀身へと集まっていった。
エネルギーが増大していくにつれて、銀色だった刃は徐々に機体や鍔のような赤色の輝きを帯びていき、刃が纏うメタリックレッドの輝きが刀身全体を被いつくす。
そしてペルゼイン・リヒカイトがより強く大剣を握り締めると、腰を捻りながら大剣を肩の前まで移動させ、さらなる重心の安定と踏ん張りを効かすべく僅かに腰を落とす。
「でりゃあぁぁっ!!」
レイの叫び声とともにペルゼイン・リヒカイトが真紅の大剣を振り上げそのまますぐに振り下ろすと、刀身が纏っていたエネルギーの刃が真っ直ぐにソウルゲインへと向かっていく。
だがアクセルもペルゼイン・リヒカイトの必殺技モーションを突っ立ったまま黙って見ていた訳ではなかった。
ペルゼイン・リヒカイトが必殺技モーションに入るとすぐに、ソウルゲインも左右の拳に青く輝くエネルギーを集め、その量と濃度を高め始めていたのである。
自らの動物的な勘とソウルゲイン自身が告げているかのような感覚にしたがってアクセルはソウルゲインのリミットを解除し、
ペルゼイン・リヒカイトの大剣から放たれたエネルギーの刃を見据えると、アクセルはソウルゲインの間合いに侵入した赤い斬撃を、最大速度で繰り出す青い拳撃で迎え撃つ。
「はああぁぁぁぁ!!!!」
ソウルゲインはその膨大な赤いエネルギーにジリジリと後ろへ押しやられつつも、青いエネルギーを纏う拳を連続して叩きつけていく。
そしてほんの僅かずつではあるものの、赤い斬撃の勢いが弱まっていくのを感じ取ったアクセルはソウルゲインの両手を近づけてそれぞれが纏うエネルギーを球状に押さえ込むと、
自らを斬り裂こうと向かってくるエネルギーの刃に一気に捻じ込んだ。
「行けい!白虎咬!」
髭の青鬼が放つ青い輝きと、呪われた力を振るう赤鬼が放った赤い輝きが互いにぶつかり合い、2色のエネルギーが居場所を失って周囲へ破壊を伴って漏れ出し始めた。
そして一瞬だけ静けさが戻ってすぐに合わさったエネルギーがはじけ飛んでソウルゲインとペルゼイン・リヒカイト双方を吹き飛ばした。
派手に倒れ込んだ両機であったが、まずは腕をつきながらゆっくりとソウルゲインが立ち上がり、
次いで大剣を地面に突き刺してそれにもたれながらペルゼイン・リヒカイトが立ち上がる。
「いきなり決め技か。最初からクライマックスだというのは嘘ではないようだな…!」
「やるじゃねえか…ハアハア…この髭野郎…!」
「そういう…お前もな…だがダラダラやっていたのではまたいつ邪魔が入るかわからん。何よりも貴様のその力…理由はわからんが野放しには出来ん。次で決めさせてもらう、これがな!」
極めて近く限りなく遠い世界のキョウスケが持っていた「呪われた力」と同質と思しき力を持つ相手と偶然にも対峙することになったアクセルは深く息を吸って呼吸を整える。
そして明確な根拠こそないものの、目の前の赤鬼を倒せと告げる本能に従って闘気を練り上げていった。
他方のレイもこれまで闘ったことのない強敵との遭遇に、記憶こそないものの戦士の本能に従って闘気を高めていく。
再びペルゼイン・リヒカイトが大剣を体の正面に構え、巨大な刀身に真紅のエネルギーを集中し始めると、
対峙するソウルゲインも両腕をクロスさせて両肘先端のブレードに青く輝くエネルギーを集中させ、鋭く延びたエネルギーの刃を形成させた。
規制防止2
「大サービスだ。とっておきの…俺の必殺技パート2ダァァァッシュ!」
「リミット解除!コード麒麟!これで極める!!」
先にエネルギーチャージを完了させたソウルゲインがまず第一歩を踏み出し、一気にペルゼイン・リヒカイトとの距離を詰めていく。
当初の両機の距離が半分ほどになったあたりで今度はペルゼイン・リヒカイトが大剣を振り上げると、一気にエネルギーを纏う刃を振り下ろした。
ソウルゲインへと近付いていく真紅の斬撃であったが、それがソウルゲインに命中する直前、アクセルは機体をやや左に傾けるとともに右肘のエネルギーブレードを突き出した。
続けてソウルゲインをやや前屈みにさせてなおも前進を続けると、エネルギーブレードから弾かれた真紅の斬撃は後方へと弾き飛ばされてしまった。
攻撃を弾かれてしまったペルゼイン・リヒカイトは大剣を再び振り上げるが、既にソウルゲインはペルゼインのすぐ傍にまで迫ってきていた。
とっさにレイは機体を右へと大きく飛び跳ねさせたのだが、ソウルゲインが振り下ろした左腕のエネルギーブレードはペルゼインの左腕をまるで豆腐を斬るかのようにあっさりと斬り落とす。
これに対して左腕を失ったペルゼイン・リヒカイトはやや体勢を崩して、よろけながらも大剣を振り下ろすが、それはソウルゲインにあっさりとかわされてしまった。
「出鱈目な攻撃なぞ当たらん!これでトドメだ!!」
片腕を奪い勢いに乗ったアクセルとソウルゲインはエネルギーを右のブレードへ集中させて最後の一撃を見舞うべくなおもペルゼイン・リヒカイトへ向かってくる。
だが絶体絶命のピンチと言っても過言でない状況の下に置かれているはずのレイは、ここで驚くほど冷静に事態に対処していた。
「ダッシュだと言ったはずだ。もう少し注意すべきだったな」
「何!?」
新西暦の世界に来てからのレイの口調とは明らかに異なる、静かでわずかに嫌味っぽい台詞が飛び出した。まるで、本来の記憶と人格が戻ったかのように。
そしてアクセルが上に目を向けると、レイの言葉を裏付けるように、数秒前に弾き飛ばされた斬撃が上空からソウルゲインに向かって急降下して来ているのが見えた。
左腕を失った直後にペルゼイン・リヒカイトが剣を振り下ろしたのは、その斬撃をソウルゲインに見舞うためではなく、飛ばした斬撃を操作するためのものだったのである。
迫ってくる斬撃の速度と距離、ソウルゲインのスピードとペルゼイン・リヒカイトとの間の距離、既に攻撃態勢に入ってしまっている自分の機体の状態から、
このまま攻撃を続行したのでは相手を貫くよりも先にソウルゲインが真っ二つにされると判断し、アクセルは現状の姿勢で可能な限りソウルゲインの上半身を捻らせる。
だが必殺のタイミングで降下してきていた斬撃をそれで完全回避することはできなかった。
首ごと斬り落とされるのは避けられたものの、トドメを刺すための右腕の肩から先が綺麗に斬り落とされてしまったのである。
「貴様、やってくれたじゃないか!」
「だから注意しろと言ったんだ。今の攻撃を凌いだことは驚いたがな」
追撃をもらう前に瞬時に後退の判断をしてアクセルは距離を取ったが、彼の戦意はまだ萎えてはいない。片腕を失ったのはレイもアクセルも同じである。
そして互いにまだ敵を倒すための武器がある以上、戦闘をやめる必要性は大きくない。
「決着を付けるか?まぁ結果はわかりきってるけどな」
「ああ。次で本当に最後にしてやる」
「悪いけど、そこまでよ」
「レモン!?」
「機体の無断持ち出しに無断出撃、命令違反…ヴィンデルがカンカンよ?」
まるで中断するタイミングが来るのがわかっていたかのように、数時間前に寝付かせたはずの相方から入ってきた通信にアクセルが驚きの声を上げた。
だが男の勝負に水を差されたアクセルの機嫌はあまりよろしいものではない。
「奴の小言は後で聞く!…あと一撃だ。引っ込んでいろ、レモン!」
「そうもいかないのよ、アクセル。今そこで頑張り過ぎてもらっちゃ困るの」
「チッ…ミッション・ハルパーの件か…だがこいつやベーオウルフ達がいなくとも…」
「ところがそうも行かなくなったの」
「どういうことだ?」
「インスペクターがこっちの予想よりも早く動いたのよ。もうハワイが彼らの手に落ちたわ」
「何…!?」
「だから、ヒリュウとハガネというカードが必要になったわけ……おわかり?」
「くっ…わかった」
「次の機会はすぐ来るわ。だから、お楽しみは後で…ね?」
「…今回はここまでだ、帰還する。貴様が力を得ていない…それがわかっただけでも来た甲斐はあった…また会うぞ、キョウスケ・ナンブ…呪われた力を得た男よ」
「てめえ、この野郎!俺を無視してんじゃねえぞ!」
露骨に放置されたことから、怒りのあまりレイはこの世界での素の口調に戻っていた。
「ああ、すまん。忘れていた」
「んだと!?てめぇ!」
「フッ、冗談だ。貴様もいずれ消してやるアカオニ。どういう訳かは知らんが、その力…妙な胸騒ぎがするのでな」
そう言ってアクセルはソウルゲインを後退させ、戦場からの離脱を開始した。
他方のレイも追撃をすることは不可能ではないと思っていたのだが、片腕を失うという今までにない損害を受けていたこともあって、
的確に今の状況を判断して離脱をすべきだと言っている冷静な自分の意見を採用することにして、ペルゼイン・リヒカイトを海中へと飛び込ませた。
そして今の戦いをビルガーのコックピットから見ていたシンはまたもや理性と本能の葛藤にさいなまれ、言葉を失っていた。
ペルゼイン・リヒカイトの細かい動きにやはり見覚えがあること、そして何よりも通信機から聞こえてきた、アクセルと会話していた聞き覚えのある声から、
「アカオニ」の正体がやはりレイなのだと声高に叫ぶ本能がある一方で、あのようなアンノウンに記憶を失った民間人に過ぎないレイが乗っているはずがないという理性がぶつかり合っていたのだった。
つづく
続き投下遅れて申し訳ないです、ただ気になることが1つだけ………
マクロスFの2基OPのシェリルのおっぱいはけしからんだろう…もう服からこぼれ落ちそうじゃないかw
OPそこしか見えねえwwやっぱり大きいおっぱいは正義だ…!
投下乙
今回も楽しませてもらいました
それとあとがきwww
オツです。やっぱりレイが美味しいところ持っていったか。
初期に比べて格段に戦闘描写が濃くなったなぁ、などとおもいます。
もうちょっと風景描写がほしいかな、とも思います。
次回も楽しみにしています。
GJです。やっぱレイが美味しいとこ持ってったか…
でも描写見るかぎりではシンの腕が劣ってるとかそういうことはなさそうだよね。
とりあえずレイが今回の自分の口調の変化をどう思うのか気になる。気づいてないでスルーされそうだが…
28話で溺れても助けてやらんぞという自分の台詞に反応してなかったか?
保守だぜ
GJだぜ
そして、シン……
まあ、アクセル相手じゃ相手が悪いか
00世界に第三次…とりあえず何出してもグラハムさんが興味持ちそうってのは確か
たとえボスボロットでも、合体ロボ出したらフラッグにもそう言う機能が必要か否か本気で考えそうでもあるし
バルキリーなんか出した日には…まあフラッグファイターの理想を形にしたらバルキリーだから仕方無いか
バルキリーに乗ったらハムが殿から姫になってしまうw
今度の電王3の新しいイマジンがソウルゲインに見える…
>>257 お疲れ様です。お待ちしておりました。書く毎に上手になっていてうらやましい限りです。
シンがレイに対して抱いた疑惑をぶつける時は来るのか、それともレイのほうから打ち明けるのか、楽しみです。
短いですが私も投下いたします。
ビアンSEED 第六十五話 ボアズ陥落前章
風も無い。光も無い。闇も無い。
踏みしめるべき大地も
頬を撫でて行く風も
潮の香りと押しては引いてゆく波のさざめく海も
時にうららかに時に容赦なく照りつける太陽の光も
交わすべき言葉も触れ合う指も見つめ合う瞳も無い。
世界中のあらゆる色の絵具をぶちまけて、気まぐれな子供が不規則な鼻歌を歌いながらかき混ぜているような空間だ。
誰もいないどこかで、シンはぼんやりとした意識のまま体を投げ打ち漂っていた。粘度の高い液体に包まれたように鈍重な思考は、九穴から血を流し、間断なく襲い来る苦痛を闇が遮ってくれたのが最後の記憶だとかすかに告げていた。
だが、それがどうしたというのだろう?
自分の生死も、その後の事も、ステラの事もスティングやアウル、タスクやレオナ、マユ達の事さえ思い浮かばぬシンにとっては、途切れた記憶も今の自分がどういった現状にあるのかさえどうでもよい。
いや、そもそも思考する事自体がすでに停止して久しい。この場所に時の流れというものがあるのかは不明だが、シンは確かに、ココに来てからゆっくりと何も考えず、何もしなくなっていた。
息を吸い吐く事も、誰かを想い胸を焦がす事も、怒りに歯を食いしばる事も、苦痛を捩じ伏せて折った膝を不屈の思いで伸ばす事も、あらゆる感情を抱く事さえ忘れて行った。
もう、自分とはなんなのか。自分とそれ以外を区別する境界さえ曖昧で、シンにとっては自分が『シン・アスカ』である事も、なかば忘れ果てた事であった。
地に落ちた一葉や生物の死骸が、長い時の中に降り積もった灰や塵といった堆積物に埋もれ、分厚い地層の中に包まれてその存在の痕跡を地上のすべてから忘れられ、消されるように。
だから、そんなシンの目の前に、いや周囲のすべてになにかが映し出されたのは、シンがそのまま自我を失い、精神的な死に至る事を由としない誰かがいる事を証明していた。
『それら』は白でも黒でもなく万色が入り混じり、絶えず流動し膨張し収縮し破裂し結露し、あたかも外宇宙の脅威にも似た人類の理解の範疇を超えたこの空間にもたらされた、シンの為の『記録』だ。
母の胎内にいた頃の記憶が蘇ってくるような安らぎに似た虚無の中で、シンの半ばまで下ろされた赤い瞳に、無数のソレが映し出された。
影のように薄い長方形のモニター状の画面が、数える事ができぬほど無数に折り重なりシンの周囲をぐるりと囲んでいる。一斉に灯された画面の映像のすべてがシンのふたつの瞳に映っていた。
シンの足下にある画面の映像も、背後にある画像も、頭上にある画像も、どう考えてもシンには見えぬ筈の画像も全てが映される。尋常ではない物理法則に支配される世界ではやはり相応しい現象ではあったろう。
シンの瞳は映像を映しはすれどもそれを見てはいない。だがソレに構わず映像は目まぐるしく動き出す。
――空から落ちた一筋の光に吹き飛ばされたマユの右手を前に慟哭し、泥と涙でぐしゃぐしゃにした顔で、黒煙たなびく蒼穹の空を仇の如く仰ぐ自分。
リリカルでロジカルを撃ち抜く熱血魔砲少女達と出会い、時に血の滲む過去と向かい合い、時に未来へ歩む決意を胸に秘める自分。
奪われた新型の機体を前に、今度こそ守るために得た力“衝撃”で対峙する自分。
埼玉県春日部市で、そこで出会った家族と人々達との交流の中、失った筈の家族の絆と平穏に身を浸す自分。
青き星へ落ち行く悲しき墓標を巡り、過去にとらわれ続け、今を生きる事が出来なくなってしまった者達と戦い、嫌っていたはずの男に手を貸す自分。
ニュータイプという妄執を打ち破った少年と少女と交流し、成長し挫折し、それでも前に進んでゆく自分。
死した人々への慰めの為に建てられた碑を前に、過去の過ちや悲劇から目を背け、花で綺麗に飾る事で過ぎ去ったはずの痛みを忘れさろうとしているようで、嫌悪の情を拭えぬ自分。
勇気ある警察の一員となり、生けるハーメルンシステムと化したラクス・クラインを逮捕する為に、心を持ったロボットである仲間達と立ち向かう自分。
なぜあんな所に? そう問うた男が力を得て自分の前に姿を現し、確かに認めざるを得ないその力を、なぜか受け入れられずことある毎に反発しつつも、心の底では徐々に『彼』を認めて行く自分。
かつて生命を宝と謳った勇者に敗れた悪と共に、宇宙海賊業に精を出し、妹マユと共にザフトやファントムペインと銃火を交える自分――
ココではないどこかで、今ではない何時かで紡がれる『シン・アスカ』という少年の人生を紡いだタペストリー。
決して交わらぬ筈の、限りなく近く極めて遠いあらゆる世界で描かれる、『シン・アスカ』という因果の絵物語。
無限に増え続ける交差する世界の映像が、声が、匂いが、心が、ぬくもりが、触れる手の感触が、想いがシン・アスカに届けられる。
何の為に? この少年を立ち上がらせる為? 安らぎを与え、傷を癒す為? それともこの『シン・アスカ』が得られなかった可能性を見せつけ、絶望させる為?
けれど、シンの瞳はガラス玉に変わってしまったようにソレらの運命を映すだけだった。
『シン・アスカ』という種子が芽吹いたいくつもの世界の『運命』を。
エターナルを中心に、アークエンジェルやスサノオ、クサナギ、その他ネルソン級やローラシア級などザフトや、地球連合で運用されている多種多様な艦艇がとある廃棄コロニーの港湾施設に集結していた。
ザフトの宇宙ステーション基地ベルゼボをはじめとした防衛網の援護と、地球連合の補給ルートを叩きに出動していたノバラノソノの艦隊だ。
今回の各地での戦闘の結果、数隻の艦艇とMS、人材を失いつつも、三十に届く艦船の数と百を超すMSを保持している事は、一武装組織としては極めて強力な戦力といえる。
作業用のポッドやミストラル、キメラといった旧式のMAがあちらこちらに散らばり、先程からぷかぷかと浮いているコロニーの残骸や、発電施設などをはじめとした資材をせわしなく運び回っていた。
アーチボルドの裏切りと前後する時期に本拠地としていたノバラノソノを解体し、それらの各パーツをジャンク屋ギルドをはじめとした複数のルートを経由して、またこの場所に集めて、ノバラノソノを再構築しているのだ。
場合に応じて分解・組み立てを行い、その所在と構造、規模を自由に組み替える事が可能というのがノバノラノソノの特徴の一つだ。
優先して組み立てられた生活スペースや工廠施設では、互いの生還を喜ぶスタッフ達の再開を祝う声や、破損したMSの修理の為に交わされる怒号がひっきりなしに飛んでいた。
今頃アーチボルドの情報でノバラノソノを強襲した連合の艦隊は、ただのデブリしか浮いていない宙域を必死に捜し回っているだろう。
いずれ内通者によって自分達が窮地に陥った場合を想定し、ダコスタをはじめとしたノバラノソノ建造に関わったクライン派の面々に、ラクスが多少無理を言って備えさせた機能のお陰だ。
ノバラノソノは、地球に存在する浮きマスドライバー同様に移動と分割が可能で、人工衛星の類がほぼ全滅し、NJが幅を利かせている戦時中に限れば、偶発的な事態や内部からの裏切り以外では発見不可能な移動拠点なのだ。
ちょうど真ん中で引きちぎられたような廃棄コロニーの外壁の内側に、隠れるようにして建設された急ごしらえの港の中で、ノラバラノソノ首脳陣が顔を突き合わせていた。
ラクス、バルトフェルド、マリュー、ムウ、キラ、アスラン、キサカ、ダイテツ、ショーン、カーウァイ、ウォーダン、それに傭兵部隊Xの代表という事でメリオルとカナードも同席している。
久方ぶりに顔を合わせた喜びを分かち合う間もなく、アーチボルドの裏切りや明確にラクス・クライン一党を敵として認識しているクルーゼと彼につき従う部隊の存在、今回の行動における被害などもろもろの情報が交換される。
特に、パトリック・ザラがラクス・クラインの活動を暗黙の内に認め、ザフト軍内部でも基本的にノバラノソノ軍への敵対姿勢は滅多な事では取られる事が無くなった昨今に、クルーゼ隊の明確な敵対行動に懸念を抱く者もいた。
普通に考えれば国家反逆罪で指名手配されているラクスらに対し、クルーゼの取った行動は至極まともなのだが、その彼らがアーチボルドと彼につき従った離反部隊とあたかも計ったように連携を取った事が黒いしこりになっていた。
そのアーチボルドはラクスがかねてから接触を持っていたブランシュタイン隊隊長エルザムと、その実弟ライディースの手によって討たれた。
だが、アーチボルドの裏切りという事態はアーチボルドがもともとクルーゼとつながりがあったのか? クルーゼの意向を受けてノバラノソノに身を置いていたのか?
という疑念につながり、ザフト内部にパトリックやシーゲルの目の届かぬところで暗躍する組織や個人の存在を危惧するには十分だった。
だが、彼らの一番の話題となったのは、カガリやプラントに残っているクライン派、マルキオ導師経由のジャンク屋ギルドからの補給物資と共に伝えられてきた地球連合のボアズ侵攻の情報だった。
この情報を知らされた時のラクスやダイテツらは、あまりに早すぎる連合の動きに、自分達の読みの甘さを認識していた。だが、それも無理からぬことではあった。
いずれボアズやヤキン・ドゥーエ侵攻に備えて各基地や宇宙ステーションを連合の宇宙艦隊が攻撃を重ねていたが、DCやノバラノソノ、ザフト宇宙軍の精鋭たちがその度に侵攻を跳ね返し、
それなりの損害を与えていたというのに、損失分を再建する間もなくボアズ侵攻を行えるだけの大戦力を維持していたのは脅威という他ない。
ニュートロン・ジャマーの投下によってライフラインが壊滅し、国家という型枠を維持する事が難しいほど治安の悪化やモラルの低下、国民の暴徒化が進んだ地球を、
今の形にまでまとめ上げた地球連合の各国の統治能力は、これまでの人類の歴史を振り返っても例がないほど優れたもので、特筆に値する。
だが、それでもプラントの独立運動に応じて失われた工業力や、原子力発電の喪失、エイプリルフール・クライシスに伴う社会の崩壊と生活水準の停滞、
億単位という人類史史上最大規模の数の死者は、そもそも地球連合にプラントとの戦争を行わせるだけの国力を奪うには十分すぎた。
それでもなお地球連合各国は、MSには遠く及ばないメビウスや、核動力が使えぬために、倉庫の奥で埃を被っていた旧式の艦艇を引っ張り出し、開戦初期で失われた有能な人材を、質の低い新人たちで補いつつ今日まで戦い抜いてきたのだ。
憎悪を糧にしてとはいえ、地球に住まう人々の底力はプラントのコーディネイターの想像をはるかに超えていたというべきだろう。その中に地球に住まうコーディネイターが含まれている事も、だが。
火を入れていないパイプを咥えていたダイテツがおもむろに口を開いた。ノバラノソノの組み立て状況は四割ほどだが、艦隊や搭載するMSへの補給は終わっている。ボアズへの援護に今すぐ出撃することは可能だった。
「それで、わしらはどう動く? ボアズで戦闘中の連合の背後でも突くか? それとも月からの補給を断つか?」
「しかしクルー達の疲労も溜まっています。補給こそ終わっていますが、今のまま戦場に出ても十分な働きができるかというと……」
控え目な意見はバルトフェルドの背後に立っているダコスタだった。クライン派・旧オーブ艦隊の台所事情と人員の疲労をよく知っている彼は、ボアズの堅牢さを考慮すれば、数日は動かず、こちらの人員の休息に充てても間に合うと判断しているのだろう。
円形のテーブルの中央に、今回の連合軍が投じた戦力や、それに対応するザフト側の戦況が3D画面で映し出されている。
画面をびっしりと埋め尽くす赤いマーカーが地球連合で、半分ほどの数の青いマーカーがザフトだ。
初手の衛星ミサイルや艦砲や大型ミサイルの飽和攻撃で、ボアズの要塞砲をはじめとした対空砲火の多くが破壊され、連合の第一波、第二波の大軍をMSと艦隊がよく抑えていた。
今のノバラノソノの戦力ならば戦況を動かす一手にはなり得ようが、これほどの大戦力が激突する戦場に介入する以上は、ただの火傷で済むはずもない。十中八九は軍事的な壊滅状況に陥るのが目に見えている。
自分達が動く事無くザフトがボアズを防衛してくれればそれに越したことはない。かといって苦境に立たされた同胞を見捨てる事は、心情的に辛い。
ノバラノソノ構成人員の内、三分の一はクライン派を中心としたザフト兵であり、残り三分の一は旧オーブ宇宙軍を中心としたアスハ派のオーブ兵だ。残る三分の一が傭兵や、連合などの脱走兵からなる。
ザフト兵のほとんどはラクスの意向を第一として考えているようだから、こういった全体の行動方針を決める場においてはラクスの発言が強い影響力を持つ。
オーブ派の代表は、本来カガリなのだが、彼女は今正統なオーブの後継者としてあちこちに働きかけていて滅多に顔を見せる事はないから、ダイテツとキサカが代理を務めている。
ダイテツは自分の本性が軍人である事をよく自覚していたし、キサカからしても自分がリーダーに向いた人間でない事は分かっていたので、あくまでもオーブ兵達のおおまかな意見を述べる代弁者に留まっている。
キラやアスラン、マリューなども基本的にラクスの行動方針に沿う旨である為、自然、ラクスに全員の注目が集まるのも仕方のない事といえた。
ラクスはラクスで、自分に寄せられる期待や注目に重圧を感じ、きりりと胃が痛むのを感じていた。
このままボアズでの戦闘を看過し、力を蓄えて自分達の力を最大限に発揮できる時を待つか。それとも自分達から出るであろう犠牲に目を瞑り、ボアズで戦う同胞たちを守る為に部隊を動かすか。
ラクスが口を開くまでの間、鋭い針で神経を突かれるような痛みを伴う沈黙が、しばらく続いた。
「あは、アハハハ、あっはははははは!!!」
シールドの二連装ビームクローを展開したゲイツが、アズライガーの全身に仕込まれた対空レーザー砲塔から降り注ぐ光の猛雨の中を果敢にも飛び込み、頭部や右腕を撃ち抜かれながらもアズライガーの巨体に肉薄する。
アズライガーに搭載したEフィールドも、至近距離からの攻撃には展開が行えないか、あるいは攻撃の威力を殺しきれずに通してしまう。
斬り掛かるというよりも体当たりに近いゲイツの機動は、EFの発生を許さなかった。
口の端からよだれを垂らし、目の前で自分が行った破壊劇にばかり目を向けているアズラエルはゲイツには気づかないが、彼をサポートするソキウス達の脳髄が接近する熱源を探知し、アズライガーの巨腕をゲイツに向けて突き出した。
ぐしゃりと装甲を曲げ、アズライガーの指がコクピットごとゲイツの胴体を貫いた。パイロットはすでに赤色に塗れた肉の塊となり、アズライガーの指先の砲口内部にへばりついていた。
ゲイツの背から突き抜けた指と合わせ、スプリットビームガンが放たれ、そのゲイツに続かんとしていた対要塞用のD装備タイプのジン一個小隊をまとめて蒸発させた。
障害の排除を確認した数人のソキウス達の脳髄は、それぞれが担当するガンバレルの操作へ切り替わった。メビウス・ゼロに搭載されていたガンバレルを数段上回る大火力のガンバレルは、一基ずつが並みのMSを上回る火力を誇る。
それらを戦闘用コーディネイターであるソキウスらがコントロールし、また複数のソキウスとゼ・バルマリィの技術によって強化されたアドバンスチルドレン、ゲーザ・ハガナーの知覚領域を組み合わせたアズライガーの中枢戦闘ユニットによって統括されてもいる。
それぞれの脳髄がX軸、Y軸、Z軸を担当し、擬似的ではあるが極めて高度な空間認識能力を有し、三百六十度あらゆる方向からの敵を把握し、知覚し、猛烈な火力で撃ち落としてゆく。
まさしく破壊と死の化身とかした非情なる――いや、非情とはそれでも尚“情”だ。“情”に非ざる“情”といえる。
だがアズライガーの、アズラエルのこれは違う。無情だ。かける情けなど無く、憎悪と殺意と狂執と破壊への欲求が地獄の化学反応を起こして分泌した麻薬が、アズラエルの思考をすべて支配していた。
びくん、びくんと性の悦楽郷に入ったように全身を跳ね上げながら、アズラエルは歓喜の涙を流し続けていた。
見ろよ見ろよ見ろよ見ろよ見ロヨ!!
こ、コーディネイター、ど、共が……ぼくの手であんなに簡単に、砂の城みたいに、ガラス細工みたいに、ゴミ屑みたいに、あははははは!? 壊れレREてるよ! 壊れているんだああ!
あははははははっはははははははっははははははははははははっは!!!!!!
「『どうしてぼくをコーディネイターにしてくれなかったの』? ああ、なんて愚かな事を……。こんな脆くて哀れで愚かでちっぽけなモノになりたかったなんて。ぼくはなんて愚かだったんだろう」
幼い頃、母親にぶつけた苛立ちと不満が、今は途方もなく愚かな事だったと理解できる。そうだ。なぜあんな自然の摂理に逆らった不自然な、人間モドキに生まれたいなどと思ったのだ。
あるがまま、自然のままに生を受けたナチュラルでも十分あいつらを絶滅させられるというのに……・。
アズライガーの右手に握られたゲイツが、フレームを歪めデリケートな内部の部品を装甲の隙間から零しながら、徐々に潰れて行く。圧搾するアズライガーの力はゆっくりゆっくりと、接触回線越しに聞こえる命乞いの声と共に強まる。
「だから、あの時のぼくの愚かさを償うために……」
ああ、遂にぐしゃりという音以外何ら例える事の出来ぬ有様でゲイツは握り潰され、周囲を旋回していた一機のジン・ハイマニューバーが僚友の死に怒り、無謀な突撃を仕掛けた。
27mm口径という、見ている方が悲しくなるようなちっぽけな鉛玉を撃ちながら、ジン・ハイマニューバーはアズライガーの左膝で唸りを上げていた超大型回転衝角カラドボルグに貫かれ、破壊の螺旋を描くドリルに巻き込まれて紙屑のように微塵に砕けた。
推進剤にでも引火したのか、カラドボルグがオレンジの炎に照らし出されるが、それはカラドボルグの装甲に一筋の傷も作る事はなく、なんの痛痒にもなりはしなかった。
握り潰したゲイツを放り捨てて、アズライガーの翡翠色の双眸が対峙するザフトのMSを睨み付けた。
アズラエルの被る顔の上半分を覆うゲイム・システム用のヘルメットの表面に走るラインが、禍々しく発光している。
「お前ら全員、この手で!」
アズラエルに応える様に、力強くアズライガーの右手が握り拳を造る。
「この、ぼくが!!」
再び展開されるターミナス・キャノン、ローエングリン、スーパースキュラをはじめとした超異常大火力の権化達の顎。その奥から零れる目を焼かんばかりの光は、即ち死と同義である。
「お前ら全員、根絶やしにしてやる!!!!」
三度のアズライガー・フル・バースト。濃密に張られたアンチビーム爆雷や、密集した状態でアズライガーと相対する事の愚かさをいち早く悟った、ザフト艦隊の艦長達はそれぞれ距離を置いて分散させていたが、それでも三隻が食われ、十四機のMSが落ちた。
これで十近い部隊が、アズライガー単機によって壊滅させられ、その部隊の隊員達は文字通り一欠けらも残らず消滅していた。
TEエンジンと複数の核動力エンジンや、艦艇用の動力を搭載したアズライガーの途方もない高火力が、それを許さなかったのだ。
目の前に鬱陶しく動き回るコーディネイター達が消え去る瞬間を目に焼き付けるのは恐ろしいほどの悦楽だ。
一瞬の閃光に飲まれておぞましい遺伝子改造の産物共の血肉が蒸発する様を想像すれば股ぐらが否応にもいきり勃つ。
恋人の名を叫び、母の名を呼び、子供の名を呟きながら消滅してゆく連中の断末魔の幻聴が聞こえる度に、アズラエルはあは、あは、と笑った。
なんという歓喜。
なんという快楽。
なんという爽快感。
なんという興奮。
なんという優越感。
これ以上在り得ぬほどに昂り、性的絶頂と混ざり合い、溶け合い、はるかに強く、やさしいまでに甘美な、破壊と殺戮の齎す狂喜狂気凶気兇気恐気!!!
初めてアズラエルはコーディネイターに愛しさを感じていた。
散華する命の輝きで自分を喜ばせるコーディネイター達を。
無残に無様に惨たらしく惨めに蹂躙されて自分を興奮させるコーディネイター達を。
――ああ、なんて愛オシイ。ナンテ愛ラシイノダ。キミタチハ、コーディネイターハ――
「さあ、さあさあさあさあさあさあさああさああああああ!!!!! ぼくの、ボクノ、僕の為にぃぃぃいいいいい、死ねよやああああああっっ!!!!」
青き清浄なる世界を取り戻すためにコーディネイターを滅ぼすのではなく、ただこの世のモノならざる甘美な悦楽郷に居続ける為に、ただそれだけの為にアズラエルは引き金を引き続けた。
ゲイム・システム、ヴァイクルから移植されたカルケリア・パルス・ティルゲム、施された様々な精神操作及び強化措置。
そして、なによりもムルタ・アズラエルの根幹に根ざした憎悪と嫉妬を始めとした、入り混じり腐食し醗酵した莫大な感情の坩堝が出会った時、アズラエルは、人の形をした人ではないナニカに変わっていた。
「あははははははははははははははははっははhっははははははははああああははhhっはあ!!」
アズラエルノ笑イ声ガけたけたト、アズライガーノコックピットヲ満タシタ。
アズライガーのはるか後方に、アークエンジェル級シンマニフェルの艦影があった。本作戦における旗艦を務め、艦長席にはブルーコスモス派軍部の重鎮サザーランド大佐の姿がある。
よもやブルーコスモスの盟主が乗っているとは露ほどにも思わぬサザーランドは、最前線で暴れ狂うアズライガーの途方もない戦闘能力に半ば身惚れ、そして恐怖していた。
自分達ナチュラルをあれほどまで苦しめたザフトの鉄巨人どもが、四、五倍近くの巨体を持つ地球生まれの大巨人に蹂躙されている。
子供と大人の喧嘩どころではない。いや喧嘩でもない。対峙する両者の力がああも圧倒的に開いていては、戦闘どころか喧嘩にさえなり得ない。
赤子の手を捻る、という言葉の意味をはるかに超えて、アズライガーはその存在そのものが破壊という現象の如く、ザフトの部隊を徹底的に蹂躙し続けている。
アームレストを震える手で握るサザーランドの後ろのオブザーバー席では、アードラー・コッホ特別技術顧問が、手元のコンソールに表示されるアズラエルのデータを満足に見下ろしていた。
傍らの妙齢の妖女アギラ・セトメも、同じ悪鬼羅刹の企みを持つ同胞としてか、アードラーの見つめるものに興味を示していた。
「どうじゃなアズラエル理事の調子は?」
「多少興奮状態じゃが許容範囲よ。それよりもソキウス共とあのゲーザとかいうテンザンンの馴れの果てと、ゲイム・システムの適合は予想以上に上手くいっておる。これならアズライガー単独でボアズを落とせたかもしれんのぉ」
流石にそれは言いすぎであろうとアギラは心中で罵ったが、自分も精神操作には手をかけた作品の能力に対しては信頼を置いており、単独では無理でも、アズライガー一機で一個艦隊くらいの戦力の代替わりはできるだろうと評価していた。
もっともこの二人は軍事的には専門家ではないので、あいまいな軍事知識と経験側からの推定でしか過ぎないから、あまり信用できる評価ではない。
どこか恍惚とした表情で、あらぬ彼方を見やるアードラーをつまらなそうに一瞥し、アギラはアズラエル以外の作品について話題を振り返る事にした。
あちらは、アズラエルに比べればほとんど手をつけていないようなものだが、もとの素材の能力が極めて高く、実験で示した数値もこちらの予想を上回るものだったはずだ。
「それで、あのオレンジ頭とピンクの巻髪のお嬢ちゃんの方はどうなのじゃ? あやつらの脳波を調べた時、妙な反応があったのでなあ、あまり弄くって欲しくはないのじゃ」
「安心せい。あの二人の機体に積んだゲイム・システムは簡易版じゃ。長時間の使用に耐えられるよう機体との融和性を抑えるようにしてある。
こっちの連中との研究でシステムの作用による発狂を抑える薬も開発したからの。モニターを見るにもうしばらくは持つじゃろう。
ひひ、しかし、いややはりわしの作品達は素晴らしい。このわしが世界を導けばエアロゲイターやインスペクター共がこの世界にこようとも一蹴してくれるわ。ひひひひひ」
狂気――あまりにも陳腐な、その言葉以外を思い浮かべる事の出来ぬアードラーの顔を、アギラは静かに見つめていた。
ザフトも、このアズライガーを落とさぬ事には、それこそ単機でボアズを攻略されかねぬ勢いに半分恐怖に塗れて暴風雨の如く戦力を集中させたが、アズライガー自身の戦闘能力と、破壊の化身を守護する二機の巨神が、ことごとくそれらを撥ね退けていた。
背から延びる、伝説に語られる禍鳥の嘴も似たパーツから同時にふた筋の白色の光線が、青と赤の螺旋を纏って放たれる度にジンやゲイツ、シグーといったMS達が貫かれ爆砕していた。
その強大な出力から連射はできないと思われた超絶の破壊の光の槍だったが、予想を上回る連射性能と、その巨人が右手に握っていた白銀の刃、そして巨体に似合わぬ高い機動性と防御フィールドが、放たれる殺意をすべて弾き飛ばしていた。
漆黒の闇になお鮮明に浮かび上がる深海の青の機体の威容を見よ。四つあるまん丸い満月のごときカメラアイが、黄金の輝きを無機質な殺意に変えていた。
全高57メートル、重量550トンを誇る究極のスーパーロボットの量産型『ヴァルシオン改』である。
オリジナルの保有していたメガグラビトンウェーブこそ持たぬが、クロスマッシャーや空間歪曲フィールド、ディバインアームなどの装備は同一で、並みのAMやPT、MSとは一線を画する存在である事はゆるぎない事実だ。
ビアンの留守を預かるテンペスト・ホーカーの駆るヴァルシオン改の他にこのC.E.に齎された二機目のヴァルシオン改。地球連合の手に渡ったそれを操るのはまだうら若い少女であった。
ゲイム・システム用のヘルメットを被り、全周囲モニターの映し出される敵機を補足するのと同時に、トリガーを引き、クロスマッシャーをほぼ百発百中の精度で撃ち続けている。
補足しそこねた敵機などが時折ヴァルシオン改の周囲を飛び回り、ビームや銃弾を浴びせかけるが、どれもヴァルシオン改の防御フィールドや、神業的な機動を前にして有効打とは成り得ていない。
アズライガーの周囲を飛び回り、近づく敵機を迎撃するのはヴァルシオン改だけではない。青い鎧を纏った魔王に比べれば、おおよそ三分の一ほどの、平均的なMSと変わらぬサイズの機体があった。
言うまでもなくアギラ・セトメの棺桶となったはずの量産型ベルゲルミルだ。右手のマシンナリーライフルがプラズマジェネレーターから供給されるエネルギーを弾丸に変え、パイロットの技量とあいまって、降りしきる雨のように弾幕を形成している。
DCの旗頭でもあるヴァルシオンと同じ姿をした化け物を相手にするよりは、とベルゲルミルに襲いかかるジンやシグーの姿もあったが、彼らがベルゲルミルに認識されるとほとんど間を置かずして爆散していた。
ベルゲルミルの背にある輪のようなフレームから飛び立った六つの勾玉――シックススレイブが、翡翠色の光を飛沫のように飛ばしながら、爆焔を切り裂いて虚空に飛び回る。
パイロットの操作によって高速回転し、遠隔操作型の打撃兵装となり、マシンナリーライフルの雷の弾丸と合わせ、アズライガーへの不可侵のフィールドを形成していた。
もっともアズライガー自体が途方もない推進力にモノを言わせて敵陣に突っ込むせいでどうしてもカバーしきれない範囲が出来てしまうのが、玉に瑕だ。
額に走る微弱な電流のような感覚と、ゲイム・システムによってヴァルシオン改に合わせて調整される肉体に、抑えきれぬ嫌悪感と今はまだ小さな苦痛を感じて、パイロットであるグレース・ウリジンは、眉間に皺を寄せた。
「ん〜〜〜」
「どうした、グレース?」
「えっと〜確かにこのヴァルシオン改もベルゲルミルも凄い機体だとは思います〜。ウィンも感じていると思うんですけど、この機体、なんだか良くないモノのような気がするんです」
「機体に搭載されている特殊なシステムが、おれ達に負担をかける事があるかもしれないと説明は受けただろう」
「そうですけど、もっと良くない事が起きるんじゃないかって気がするんです〜。それに私達のと同じシステムが積んであるっていうあの、アズライガーも、普通じゃない暴れっぷりですよ〜? システムのせいなんじゃないでしょうかぁ?」
「分かってはいるが……」
グレースの感じている不安はアーウィンも等しく感じているものだ。この機体やDC、ベルゲルミルやヴァルシオン改の詳細な説明を行ったアードラー達に感じている感覚。確かにこうして存在しているのに、まるでこの世のものではないかのような違和感。
それに取り込まれてしまうようで、アーウィンは自分らしからぬ弱気になっている事を自覚していた。
だが、このベルゲルミルやヴァルシオン改がザフトとの戦いの雌雄を決しうるかもしれぬほどに、極めて優れた力を持っているのも確かだ。少なくとも純粋に地球連合の技術で作られたMSでこの二機を上回る戦闘能力を持つ機体は存在していない。
目の前で暴れまわるアズライガーか、アーウィンやグレース達は知らぬ、完成したWRXくらいのものだろう。
「とにかく今はアズライガーの援護だ。ここまで多くの犠牲を払ってようやく来たんだ。この戦争、終わらせるぞ」
失った多くの戦友、NJの投下によって荒れ果てた社会、荒んでゆく人々の心、目の当たりにしてきた戦争の地獄を思い起こし、アーウィンはそれらを終わらせる為に、あえてベルゲルミルの存在を由とした。
万感を込め、苦汁を飲み込むアーウィンの心中を察したグレースも、一度だけ柔らかい笑みを浮かべてから、モニターを見つめ返した。
どんな力であろうとも、この凄惨悲惨な戦争を負わせる力となるのなら、手に取ることを躊躇う必要はないと、覚悟したのだろうか。
――続く。
短いですがここまで。投下するペースが落ちてしまって申し訳ないです。どうかご容赦を。
GJGJ。ペースが落ちた?そんなのは些細なことっス。月1でも大丈夫っスよ、こんなに濃いんですから。ご自愛下さいっス。
総帥…アンタッて人はぁぁぁぁぁぁ!!
いいぞ、もっとやれ
>空から落ちた一筋の光に吹き飛ばされたマユの右手を前に慟哭し、泥と涙でぐしゃぐしゃにした顔で、黒煙たなびく蒼穹の空を仇の如く仰ぐ自分…etc
いったいイクツのネタが。
本編、なのは、しんのすけ、WにX、さりげにとなりのダイノガイストまで!?
わかるの、わかりそうだけど読んだことないの、サパーリ想像つかないのまで色々ifが書かれててよかったです。
割と早いうちに、綺麗にまとめあげられたカミーユ編を想起されるのが見当たらなかったのが残念と言えば残念でしたが。
GJでした。
>勇気ある警察の一員となり、生けるハーメルンシステムと化したラクス・クラインを逮捕する為に、心を持ったロボットである仲間達と立ち向かう自分。
読みてぇ&書きてぇw
最後はビクティムを連れてCEに帰還するんですね
「シン、君をボスと呼んでいいか?」
それとももうどこかで書かれてるネタ?
総帥GJ!
>>277 総帥がダイノガイストを書いているスレで出た雑談のネタだったと思う。
他にも、何故か銭形刑事とルパン達まで居る世界とか、色々変なネタが出ていた。
>>278 >総帥がダイノガイストを書いているスレ
kwsk
「もし勇者シリーズがC.E.or00世界に来たら」スレ
ここで総帥は、隣のダイノガイストと言うダイノガイスト様とマユのラブコメディ(をい)を書いておられる。
ルナマリアやメイリンが誰とくっつこうがどうでもいいが
マユが誰かとラブコメディ状態になるのは許容しがたい自分がいる
こんな自分はロリコンなんだろうか……?
本編の回想見るとどっちかというとマユの方がブラコンじゃね?
まあシンもシスコンではあるだろうけど
つか6歳も年の離れた妹が目の前で腕だけになるようなグロ死したら、シスコンじゃなくても、いつまでも忘れられなくて当然だと思うけどな
マジにシスコン言うんだったら、ジュドーや天道にルルーシュぐらいのレベルでなくては
最近知ったんだけど、テッカマンアキのランサーとクリスタルって
エビルのものだったの?
だれかkwsk
「もしテッカマンエビルがCE世界に来たら」というSSを書きたいんだが、
もしランサーもクリスタルもないなら丸腰だし、変身もできないじゃないか!!
というわけでして
アキのランサーがエビルのものを削り出して作ったものなのは確かだが、クリスタルの方は初耳だ
つかどのみちエビルのクリスタルは、ブレードが月に行く時に使われてるから、最期のときには持っていないことになるけれど
テッカマンのランサーは、「両肩の光=物質変換機能によって生成した」物とプラモの組説に書いてある。
他の戦闘の際の物を回収したと強引に解釈できないことも、ないかな?
ブレードとブラスターとエビルの未開封キットが押し入れの中から……
>>287 んなもん「次元転移したら何故か持っていた」で問題無い
つかタイトルからして種踏み台、エビルTUEEE一辺倒になりそうな気配満々だな
291 :
通常の名無しさんの3倍:2008/08/29(金) 18:46:13 ID:yJUBa3fd
性能的にねぇ……
戦闘機クラスのスピードに核に耐えられる装甲に反物質砲でしょ?
オマケに人間サイズで、多分現用兵器用の誘導装置は役に立たない。
こんなんMSでどうせいっちゅうんよ。
スパロボW基準なら何とか…
ラムダ発動させたガウルンにランスさんが返り討ちされる世界だし
スパロボの新作PV、このスレの需要が高まりそうな内容だったな
ネタバレのとおりだったら、SSでやろうと考えてた展開をやられてることになる…
まあ筆の遅い俺が悪いんだがw
シンがせっちゃんをボコって攫うって話を聞いたな
延期フラグ立ったのかな(´・ω・`)
尼で早期に予約しなかったからあまり関係ないんだけど、金銭的に
>>295 気にするな、俺は気にしない。
いや真面目な話、大筋とか物語としての展開の流れが一緒だとしても、描写諸々で全く違う感じになるのは周知の事実だと思うんだ。
ほら、種死だってアニメとボンボン版とTHE EDGE比べると大筋一緒でも内容は別物といって差し支えないし。
私的にはTHE EDGEが一番好きだ。もちろんDesire含めて。
何かシン×せっちゃんが流行るのかな
でもオリキャラと版権キャラってあまり絡みネタ作られないよね
新なんてアヤがアムロに惚れてるという設定作ったのに完全スルーだしw
例外は助手×プロ、助手×ギュネイくらいかw
>>299 東方不敗が宇宙人が採用されてしまったら…。
関係ないけど第二次Gやってるけどおかしいなぁ、これ。
ブライトがザンネックの攻撃を50%でかわしやがる。
おまけに反撃の機銃がばんばんあたってザンネック涙眼で落ちてまう。
全滅プレイってこんなに難しかったけなぁ?
そのラーカイラム、ノイマンかXのシンゴが乗ってるだろwwww
Xのシンゴは、全く動かなくてもアベルのビット攻撃が当たらない程の神的ポジショニングの使い手だからなw
スパロボZではノイマンvsシンゴの操舵神対決が拝めるな……
今のスパロボには艦長以外も出れるのか
ウインキー時代は逆に艦長が出れない事あったろ
エイブとかカワッセとかw
操舵主とかが普通に出るようになったのってAのナデシコ参戦からだっけ?
Aとαどっちが古かったっけ?
αが多分最初だと思ってたんだが…
αはまだ母艦の複数パイロット導入してないよ
αシリーズでは外伝からだ
ダンバイン初登場の4次からだな
初登場はEX
フェラリオ搭乗システムがEXからか第四次からかは忘れた
>>312 そうだった、4次からはエルガイムだ(ファウ違い)。アムロ達は知ってたもんな。
ふと、総裁がよく感想のヨタ話を作品に取り込んでくれる事で
思ったことが。何話だか確認とれんのだけど、ソウキスがゴスロリ
着せられている事でもっといろんなコスさせろだのと腐ったオタ発言に
ミナが頭を悩ませていたシーンがあったけど。
アレって掲示板の発言を総裁が拾ったのかしら?
自分は30話あたりから読み始めたからその辺の流れ知らないのよね。
ほしゅ
>>314 う〜ん、正直自分も覚えてないです。一年近く前のことになるのかなあ……。
ただ初代スレのときから感想とか予想とかのネタを取り込もうという考えはありましたし、最初の頃にリョウトとリオで真龍虎王を出して、という要望があったのは覚えています。
明確な返事はその時はしませんでしたが、リョウト・リオも運命編で出演させる予定ですし、今のうちにいろいろ言っておけば後で実現するかもしれませんね。
つか真龍虎王って鰤楠用でしょ?
リョウトと五飛子が乗ってる媒体なんて今まであったっけ?
α時点じゃ4組は平等だったから楠鰤以外の場合も有り得た
氏のシンの最終登場機は、DCやらなにやらの技術を総結集して作られたデスティニーになっちゃったりしますか?と言ってみる。
てかスパロボ技術で運命を改造するならどんな感じになるだろうか。
アロンダイトが斬艦刀になる
光の翼が超絶進化
他はオミットw
パルマがT-linkナックルになるんじゃないか?
ビームブーメランがスラッシュブーメランになります
光の翼はそのままで良いだろ、常考……。
ディスティニーの光の翼ってな、スターゲイザーの奴とは違って光子ロケットなんだよ。
だから真面目に考えるとアルキメデスミラーの全光量や、
サテライトキャノンを凝縮したより多いエネルギーを持ってる筈なんだぜ!
ビアン総帥とエペソ司令の頭の中からDGG3号機のデータを引っ張って来て
飛鳥から一部の内蔵火器とブーストナックルをオミットする代わりに両腕と両足にプラズマコンバーター、
背中に大雷鳳の翼をつければ運命っぽいグルンガストが出来そう。
ここから小型高性能化をめざせば武装は違えどヒュッケバインベースの運命が・・・・・・ってのはさすがに無理があるかw
光の翼はゼロシフトだろ、中の人的に考えて
3が出たら使うよ!多分!
ってわけで早く3出しやがれコナミ野郎が!!
でなければグレンの分まで版権バンプレに売れ!!
328 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/05(金) 21:32:05 ID:Extg0vNk
Zの新PVの映像が気になる!
ア−クエンジェルが味方サイドにいなかったか?
アスランINジャスティスが味方サイドにいなかったか?
ミネルバが敵サイドにいなかったか?
最悪、原作どおりに話が進んでしまうのか?
それとも、選択次第でシンだけ味方のままでラクシズばんざいENDなのか!?
やめてくれぇぇぇぇえぇ!
ひょっとしたら、リアル系とスーパー系で違うのかもしれんね。
と思ったけど両方リアルじゃねーかってことに気づいて涙目orz
さああと10分でおっぱいOPだ
ほしゅ
最近のAV業界にはAM並にリオンシリーズが流行っている気がする
今日中に31話投下します
「インスペクターの大部隊、なおも本艦に向けて接近中です」
エターナルのブリッジに緊張感を帯びた報告が上がる。
その報告を受けた覇王は変らず険しい表情を浮かべてモニターに映ったエターナルとインスペクターの部隊の位置関係を示す図を睨みつけていた。
シャドウミラーが奪取に成功したシロガネと合流すべく地中深くに潜航していたアースクレイドルから出撃したラクシズ旗艦エターナルは、
インスペクターの支配勢力圏内に侵入しないような進路を取りながら南アメリカを抜けてハワイ付近を通過して極東地区へ向けて進軍中であった。
だがここでラクシズにとっては運の悪いことに、ノイエDCにも思いもよらぬスピードでハワイがインスペクターによって侵略されてしまい、
ハワイ・ヒッカム基地から発進したインスペクターの大部隊に追い回されるという結果になってしまったのである。
「いかがなさいますか、ラクス様?」
「このまま振り切ることは可能ですか?」
「敵戦力には戦艦もいます。逃げ切ることは難しいと思われます」
エターナルブリッジの艦長席よりも上に位置するCE世界に君臨せんとした覇王ことラクス・クラインは事実上の副官であるマーチン・ダコスタの報告を、険しい表情を浮かべたまま聞いていた。
逃げ切ることが難しいのであれば改修を終えたミーティアとともに少数精鋭の部隊を出撃させて相手の出鼻を挫き、その隙に一気に離脱するということも考えられるのであるが、
現在、ヴァイサーガ受領催告のため調整を終えた4人目のキラ・ヤマトとアスラン・ザラはその乗機とともにエターナルにはいない。
彼らに次いでラクシズの中で腕が立つヒルダ、ヘルベルト、マーズは北米での戦闘で死亡又は意識不明の重体で戦闘には使えない。
アースクレイドルのノイエDCやシャドウミラーから供与を受けた量産機はそれなりにあるものの、様式の違うコックピットや技術が用いられていることから
パイロット達の訓練はあまり進んでいないので、これも戦力と数えることは難しかった。
「ヴィンデル大佐が奪取に成功したというシロガネへの救援要請は?」
「もう要請済みです。ですがシロガネの位置からすると、敵に追いつかれる方が先になると思われます」
「ではシロガネよりも近くにいる友軍部隊は?」
「ここから一番近い所にいるのは……対インスペクターの特殊部隊オーバーレイブンズが訓練を行っているようです。ですが………」
主に伝えるのは気が進まない、ある種の気まずさを顔に浮かべたダコスタが言葉を詰まらせた。
視線が上方をさまよっており、彼が覇王への報告をすべきか迷っているというのは誰の目にも明らかであった。
「どうしました、ダコスタさん。ですが、何ですか?」
「記録によればオーバーレイブンズの隊長は『あの』ユウキ・ジェグナンです…」
見た相手を射殺すような強い視線でダコスタを貫く覇王の目にたじろいだダコスタが観念したかのように口を開いた。
そして、それを聞いた覇王は内心で舌打ちし、さらに表情を強張らせていく。
三人目のキラ・ヤマトが魔装機神サイバスターとマサキ・アンドーとの戦い死亡してしまい、戦力の大黒柱を失っていたラクシズの前に立ち塞がって残った戦力に大きな打撃を与えただけでなく、
不敬なる態度で覇王に対峙してエターナルをギリギリのところまで追い詰めたというのがラクシズにとってのユウキ・ジェグナンである。
覇王にとって、そして覇王を絶対的主とするラクシズにとっては、ギルバート・デュランダルやストライクフリーダムを撃破したサイバスターに並ぶような
忌むべき存在だというのが黙示のうちに形成された認識なのである。
当然ながら覇王は黙ったまま、救援を要請すべきかを迷っていた。
救援要請をすることは、自らに弓引いた者へ頭を下げることに他ならず、CE世界においてほぼ全てのコーディネーターから賛美されていた覇王にとっては屈辱以外の何者でもない。
だがキラ・ヤマトやアスラン・ザラといった戦力の柱を欠く今のエターナルの状況を考えれば、このままいけば覇王の軍勢を完全に壊滅に追い込みかねない。
怒りに目元を引きつらせ、堅く結んだ口の中できつく歯を喰いしばりながら覇王はこのジレンマと必死に戦っていた。
「い、インスペクター、進路を変更していきます!」
「どういうことですか?」
「インスペクター進行方向に戦艦クラスの熱源反応があります。おそらくそっちに狙いを定めたのではないかと」
インスペクターの進路変更は、再び覇王に自らを加護する天運の存在を確信させるものであった。
そして、やはり異世界においても自らが思ったように事象は進み、自らが屈辱にまみれるなどということはないのだ、そのような存在なのだと覇王は信じずにはいられなかった。
「そうですか…ですが可能な限り速やかに現空域からの離脱を。シロガネとの合流を急いでください」
安堵して大きく息を吐きながら、覇王は新たな指示を出す。口元を歪める、コーディネーター達を取り込む笑みを浮かべながら。
一方、北極圏へ向かうべく伊豆基地を発ったクロガネであったが、運の悪いことに、ハワイ付近を通過したエターナルを追ってきていたインスペクターの大部隊と遭遇してしまっていた。
「ええい、本当にしぶとい奴だね!」
接収した地球側の機動兵器を先導するインスペクターの指揮官機シルベルヴィントを操るインスペクター四天王の紅一点アギーハが毒づいた。
彼女らを足止めすべく単機でクロガネから出撃した黒いヒュッケバイン、ヒュッケバインMK−Vトロンベが予想以上の奮戦をしており、クロガネに現海域からの離脱を許してしまったからである。
だがレーツェルが駆るヒュッケバインMK−Vトロンベもインスペクターの物量攻撃に晒されて損傷が蓄積しており、急場凌ぎの調整も祟ってしまい、弾薬やエネルギーなども限界に近付いていた。
「まだ粘るのかい?あたいのダーリン並のスタミナだねぇ」
「くっ、トロンベが…!」
レーツェルの操縦への反応すら遅れてきたヒュッケバインMK−Vトロンベをインスペクターの尖兵となったガーリオンの部隊を包囲する。
八方からレールガンを向けられて身動きが取れないヒュッケバインMK−Vトロンベは、グラビトンライフルの銃口を1機のガーリオンに向けたままになってしまっていた。
「わかったかい?この間のはただのまぐれ。そんじょそこらの機体じゃ、あたいのシルベルヴィントのスピードにはついて来れないのさ」
レーツェルはシン達とともにテスラ研から脱出したときにアメリカでアギーハのシルベルヴィントと交戦していたのだが、その時はラクシズこと覇王の軍勢の介入もあって
少なからぬ損害を受けたシルベルヴィントの方が撤退することになったため、そのリベンジも兼ねてアギーハは普段以上の気合を以ってレーツェルとの戦いに臨んでいたのである。
「…」
「ま、よくやったと褒めてあげるよ。……じゃあ、死にな」
そう言ってアギーハがバイオロイド兵が操縦する機体に命令を発するが、バイオロイド兵達はその命令を遂行することはなかった。
各機の周辺空域から現れた大漁の光弾がレーツェルを包囲していたインスペクターの機体へ向かい、一斉に襲いかかり、ほとんど一瞬で全ての機体を破壊し尽してしまったからである。
そして、機体の残骸が大きな音を立てながら海へと落下していくのとは逆に、上昇していく爆煙の先にこの攻撃を仕掛けた真犯人がいた。
「な、何だい!?何が起きた!?」
「何!?」
上空から降りてくる黒い影を認識したアギーハ、レーツェルが上を見上げるとそこにいたのは、ゆっくりと機体各部のバーニアの出力を弱めて徐々に降下してくる、紫がかった青く分厚い装甲をした機体。
その機体の名前はグランゾン。旧DCが開発したとされているが詳細は不明であり、副総裁シュウ・シラカワが南極で異星人を攻撃するのに用いた機体でもあり、
結果的に地球と異星人との激しい戦いが始まるきっかけを作った張本人であるともいえる。
「あれは……!!」
「まさか…!?いや、このデータは!ま、間違いない!あいつは…グランゾン!!」
「やはり…ご存知ですか、私の機体を」
「シュウ・シラカワ…!あんたがそうなのかい!?」
「ええ、以後お見知りおきを」
「お久しぶりですね、エルザム少佐」
「シラカワ博士…なぜここに?」
ともにシュウ・シラカワとグランゾンの出現に驚きを隠しえないレーツェルとアギーハであったが、その意味合いには違いがある。
レーツェルにとっては強大な戦力を有している機体と何を目的として行動しているのか不明な人物が現れた位の意味がせいぜいであるが、インスペクターのアギーハにとってはそれどころではない。
彼女にとってのシュウ・シラカワとグランゾンは南極で突如インスペクターに攻撃を加え、地球の侵略計画に著しい障害をもたらした忌むべき相手なのである。
「理由はあなたと同じですよ」
「何?!」
「異星人に対する切り札の一つを失うのは私にとってもあまり望ましいことではないのです。それに…個人的に確かめたいこともありましてね」
「確かめたいことだと?」
「シュウ・シラカワ!ここであったが百年目って奴だ!その機体を渡してもらうよ!」
「フッ、その物言い…あなたも彼と同じですね」
「どういう意味だい?!」
「猪突猛進…相手をするだけ時間の無駄だということですよ」
シュウの脳裏に浮かんだのは言うまでもなく魔装機神サイバスターを駆って彼とグランゾンを追い回す、良く言えばその熱い心で風を熱風に変えていく男、
悪く言ってしまえばあまり物事を考えず勢いに任せて行動してばかりの煩わしい相手である。
「ふざけんじゃない!命が惜しければ、さっさとグランゾンをよこしな!」
「私の機体を手に入れて何をなさるつもりなのです?」
「答える必要なんてないよ!アンタは黙ってそいつをあたい達に引渡せばいいのさ!」
「…そうですか。しかし、今はまだ撒いた種の刈り取り時期ではないはず…どうやらあなた方は『違う』ようですね」
「何だって?!」
「ならばあなた方に用はありません。…もっともそちらの方はどうかわかりませんがね」
「そちら?一体誰のことだい!?」
今まで会話をしてきた3人以外の人物がここに存在するということを前提としたシュウの言葉にアギーハの表情が歪むが、
当然のことながらそれを全く気に留めることもなくシュウは誰もいない、何もない方向へと視線を向けている。
意図の読めない行動にレーツェルも何もない空間を意識を集中させていたのだが、それでもなお3者はそれ以後口を開かぬまましばらく沈黙したまま時間が過ぎていった。
「何もいないじゃない…か…?」
最初に痺れを切らしたアギーハが口を開いた途端に彼女も異変に気付いた。目の前の空間が歪んでいくのとともに、シルベルヴィントのコックピットの計器も異常を知らせ始める。
シルベルヴィント、そしてグランゾンが感知した重力震反応が増大していき、シュウが示した空間が一瞬だけ強く光ると、次の瞬間には発光した場所に1体の機動兵器と思しき物体が出現していた。
「それ」は黒い仮面を被ったような頭部、仮面の奥から鈍く輝く光を放つ赤い目、禍々しく広がり大きく背部を被う黒と薄茶色の翼を持ち、翼と同様に黒と薄茶色のボディをしている。
見ようによっては生物に見えなくもない、まるで地獄の奥底に巣食う悪魔のような姿をしている「それ」の特徴はそれだけではない。
科学的、物理的な法則を超えて、対峙するアギーハやレーツェルだけでなく、ほとんど常に気負いなどせず冷静にいるシュウですら、言葉では言い表せない、
胸の内がざわつくような嫌悪感を抱き始めていたのである。その原因は決して「それ」の外見を見た故のものではない。言うならば生物としての本能が「それ」を拒絶していた。
その機体の名前はディス・アストラナガン。
かつてシャドウミラーがいた世界とはまた異なる世界においてイングラム・プリスケンがその世界のSRX計画を通じて得た技術、サイバスターやオーラバトラーといった異世界の技術に
地球各地のスーパーロボットに使われていた技術とゼ・バルマリィ帝国の兵器技術を組み合わせて完成させた漆黒の天使アストラナガンは、異世界のリュウセイ・ダテらの協力を得て、
ユーゼス・ゴッツォを倒すことができた。だが後にまつろわぬ霊の王、霊帝ケイサル・エフェスに敗れたアストラナガンは残骸となりながらも、
1体の自我なき人形が乗るヴァルク・ベンを取り込み、ベルグバウとして復活する。
さらに、ディス・レヴのプロトタイプとアストラナガンのデータを基に作成されたパーツを組み込まれてベルグバウは生まれ変わった。
冥界に溢れる負の無限力を得たアストラナガン、それがこのディス・アストラナガンである。
「ば、馬鹿な、空間転移だって!?データにもないし、アンタは何者だい!?」
「私にも教えてもらえますか?見たところ、地球の機体ではないようですが」
「俺は…俺はクォヴレー・ゴードン………そう俺は…新たな因果律の番人だ」
第31話「新たな番人の再来」
ディス・アストラナガンとディス・レヴを制御できる唯1人の人間であり、イングラムの魂を取り込んで自我を形成し、
鋼の救世主達と共に戦う中で完全に確立させた自我を以って終には完全にイングラム・プリスケンを取り込んだのが、ここにいるクォヴレー・ゴードンである。
「…そうですか。ですがそうだとすれば貴方はオペレーションSRWの後にまた別の所へいかれたはずでは?」
「シュウ・シラカワ…それにグランゾンか」
クォヴレーの知識にあるグランゾンは、彼が取り込んだオリジネーターの記憶にあるグランゾンとは異なる存在だが、
それでも本気でアストラナガンとグランゾンが戦えば地球は滅びかねないことは確かであろうことから、クォヴレーも対応を考えざるを得ない。
万が一にもここでおかしな事態を引き起こしてはならないのだから、そのために言葉を慎重に選んで口を開く。
「俺は落とし物を捜している…ただそれだけのことだ」
「では今この世界に介入するつもりはない、ということですか?」
「ああ、今のところはな」
数多くの仲間と共に霊帝ケイサル・エフェスを屠り、イングラム・プリスケンの後を継いで新たな因果律の番人となった彼は、シュウの言うとおり今はここにいるべき人間ではない。
オペレーションSRWの最後の戦いで最後の審判者を屠り、オリジネーターの魂を解放するためにリュウセイとSRXに力を貸したクォヴレーは、
本来であればこの世界から立ち去っているはずだった。だが、シンやレイ、ラクシズの面々が不慮の事故で転移をしてしまったときの衝撃で、共にいくはずであったオリジネーター、
厳密に言えば辛うじて救出できたオリジネーターの魂ではなく、オリジネーターが駆っていたアストラナガンの残骸とはぐれてしまったクォヴレーは再びこの世界に、
アストラナガンを捜すべくやってきたのであった。
アストランガンはあまりに強大な力を持っており、さらに幾らかの自己再生能力すら有していることから、
最悪の場合には全ての世界のバランスを崩しかねず、因果律の番人としてそのような事態は防がねばならなかったのである。
規制防止
だがこの世界へと再びやってきてからアストラナガンの捜索は難航しており、今まではアストラナガンの反応を感知することはできないでいた。
クォヴレーがここにいるのは、久方ぶりに地中奥深くのアースクレイドルからシロガネと合流すべく地上へ出てきた、アストラナガンの残骸の仮住まいでるエターナルの中から
放たれる極々微弱は反応をキャッチできたからにすぎない。そのような弱い反応しか得られなかったからこそ、エターナルとは随分離れたこの場所にいるのである。
そしてクォヴレーにとってのもう1つの不幸は、アストラナガンを現在所持しているのは、別世界の人間とはいえ彼がいた世界ではともに戦っていたラクシズの面々だということであろう。
だがクォヴレーのいた世界のラクシズと、この世界へとやってきたラクシズには大きな違いがあった。
それはこの世界にいるラクシズの抑止力が、彼らの世界、つまりシンやレイがいた世界ではあまりに弱かったことである。
今現在この新西暦の世界にいるラクシズは、その圧倒的な武力によりギルバート・デュランダルを殺害してプラントを完全掌握して、その力で連合の打破すら可能とする力を持つに至った。
まさに、CE世界の覇王とその軍勢となる一歩手前にまで迫っていた。
だがクォヴレーのいた世界にはいくらラクシズが各所から強奪した最新鋭の機体や洗脳能力、スーパーコーディネーター他の高い戦闘能力を持ったコーディネーターを有していたとしても
それだけで地球とプラントを支配し、覇王となることはできなかったであろう。
何人ものニュータイプやその思いを力に変えることができるMS、人と獣だけでなく神すら超える超獣機神、人の進化を促す力ビムラーを力に変える戦国魔神とゲッター線の使い、
人の心を宿した魔神皇帝、5つの心を1つにして誕生する超電磁のスーパーロボットに勇気を無限の力に変える究極の破壊神等の強大なる抑止力があったクォヴレーの世界では、
覇王が世界を掌握しようとしても不可能であり、その世界の覇王もそのような野心すら持つことはできなかったし、彼女の影響力もCE世界などとは比べ物にならないほど小さかった。
「何をごちゃごちゃ言ってるんだい!!」
シュウとクォヴレーの間で交わされる会話の意味をまったく理解できなかった2人の人間のうちの1人、インスペクター四天王裏のリーダーことアギーハが
自分の存在をほぼ完全に無視して話を続けようとするシュウとクォヴレーに向かって襲いかかる。
シルベルヴィントは猛烈な勢いで突っ込んで来てディス・アストラナガンに高周波ブレードを振り下ろす。翼を羽ばたかせて後退して攻撃を回避させたクォヴレーであったが、
半ば怒りに身を任せているアギーハはなおも執拗にアストラナガンへと襲いかかる。連続して繰り出される斬撃を回避し続けるアストラナガンであったが、これを好機に動き出す男もいた。
シュウはアギーハの攻撃の手がアストラナガンへと向いている隙に、グランゾンを行動不能寸前のヒュッケバインMK−Vトロンベの元へと向かわせると、
そのままヒュッケバインを抱え込み、一気にスラスターの出力を上昇させて現在の戦闘区域からの離脱を開始する。
「!どこへ行くつもりだ、シュウ・シラカワ?」
「介入するつもりがないところを申し訳ないのですが、私はこちらの方と目的地まで同行しなければなりません。この場を任されてもらえませんか?」
「黒いヒュッケバイン…レーツェル・ファインシュメッカーか…だが…」
「だからいい加減あたいを無視して話を進めてるんじゃないよ!!」
意識をグランゾンの方へ向けていたためわずかに隙が出来たディス・アストラナガンを狙い、シルベルヴィントの腹部の展開を終えて照準を定め終えていた。
そしてアギーハが引鉄を引くと共に放たれた大出力のエネルギーがアストラナガンを捉え飲み込もうとする。
「くっ!」
だがクォヴレーもただ甘んじて攻撃を受けるはずもない。咄嗟に機体周辺にディフレクト・フィールドを展開すると、アストラナガンを飲み込まんとするビームを四方八方に弾き飛ばした。
とはいえアギーハはさらに追い撃ちをかけるべく再び機動させた高周波ブレードを左右交互に振り下ろしていく。
一撃目をディフレクト・フィールドで凌いだアストラナガンは、今の攻撃で後方へ弾き飛ばされたのを利用して
背部からアストラナガンの全長弱ほどもある棒状の物体にも見えるツイン・ラアムライフルを取り出すと、その銃身を盾代わりにして二撃目の斬撃を受け止めた。
「では、よろしくお願いしますよ」
「ま、待て!」
「こうなったらアンタをさっさと片付けて空間転移できるその機体をいただくよ!どうやらレアモノらしいからね」
これまで捜していたグランゾンに逃げられ、偶然出会ったスペースノア級戦艦を取り逃したアギーハはその穴埋めをどうすべきか考えていたが、
すぐに狙いをディス・アストラナガンに絞る。空間転移を可能とする装置の数が限られているというインスペクターの懐事情を考えればアストラナガンは十分すぎるほどの価値があるからである。
アギーハはニヤリと笑うと引き連れてきていたキラーホエールへ、ある指示を出した。
「!!」
すぐにキラーホエールから次々とバイオロイド兵の操縦する数十機にも及ぶリオンやガーリオン、バレリオンに戦闘機、
つまりインスペクターに鹵獲された地球側の機動兵器が飛び出してくると、それらは一斉にディス・アストラナガンへと向かっていく。
これに対してディス・アストラナガンは、それらの機体から放たれるレールガンの弾丸やビームのエネルギーをディフレクト・フィールドで弾き飛ばしながら機体を上昇させていくが、
コックピットの中にいるクォヴレーは表情を変えることはなかった。さらにアストラナガンは高度を上げていくが、それと同時に反撃に転じ始めている。
「エンゲージ…狙いはもうついている!」
ディス・アストラナガンはディフレクト・フィールドを発生させていた翼の一部と肩部の砲身を変形させて両肩の前へと展開させる。
「メス・アッシャー、マキシマム・シュート!」
そして両肩からせり出した2門の砲塔は、黒光りする輝きを帯びた黒色の弾丸とそれに率いられた金色に輝くエネルギーを吐き出した。
広範囲に及ぶ攻撃にインスペクターの部隊の機体は次々と飲み込まれていくが、その攻撃の通った後には飲み込まれた機体の破片や残骸すら残っていない。
飲み込んだ相手をまさにこの世界から姿を「消した」攻撃を散開して運良く回避した機体は、戦う人形であるバイオロイド兵が操縦するものであるが故に、
ディス・レヴによって死霊悪霊の怨念といった負の無限力を具現化した圧倒的な力を持つ攻撃を目の当たりにしてもなんら意に介することはしない。
ディス・アストラナガンを包囲するべく周囲に広がっていくリオンやガーリオンは徐々に展開を進めて、ディス・アストラナガンを囲んでいく。
対するディス・アストランガンがツイン・ラアムライフルを再び手に取ると、その先端に大きく首をもたげたゾル・オリハルコニウムの刃が形成させた。
「Z・Oサイズ…!」
そしてイングラムのアストランガンが持っていたZ・Oソードのゾル・オリハルコニウムをそのまま大鎌の刃へと変えたZ・Oサイズを手にしたディス・アストラナガンは
その死霊の大鎌を持ったまま、自分をも回転させて360°一回転しながら大鎌を振り抜いた。
振り抜かれた刃の通過点にいた、ディス・アストラナガンを包囲すべく散開したまま接近してきていた4機のガーリオンは、
刃が宙を舞った次の時にはその胴体を中心にして上下半身の2つに分断されてしまっていた。
他方で、鎌による災厄を逃れたリオンやガーリオンは刃の錆になるのを防ぐべく、今度は広く散開してディス・アストランガンとの距離を確保し始める
だがクォヴレーも攻撃の手を緩めたりはしない。戦いが始まってしまった以上やむを得ないが、本来しなければならないアストラナガンの捜索を少しでも早く行うためにも、
ここで戦っている場合ではない。そのために少しでも早く戦闘を終わらせようとクォヴレーは判断した。
ディス・アストラナガンから敵機が離れていったところを見計らってクォヴレーはわずかに上半身を屈めて背部から6基の黒い物体を射出する。
「捕捉は可能だ…!行け、ガン・スレイヴ!」
クォヴレーからの命令に反応して射出された物体に割れ目が入り、コの字のように折れ曲がる。続いて左右に蝙蝠の翼のようなウイングが瞬間的に生え揃い、
羽ばたきながら散らばってディス・アストラナガンに周囲に展開している機体へと襲いかかっていった。
それぞれがまるで意思を持っているかのようにそれぞれのターゲットに向かっていく個々のガン・スレイヴは生物のようにやわらかに動き回りながら光弾を吐き出していく。
胴体に光弾の直撃を受けたガーリオンは破片を撒き散らしながら海上への落下を始め、2基のスレイヴに光弾を連続して叩き込まれたバレリオンはその場で爆散してしまった。
次から次へと獲物を撃ち落して破壊を振り撒いていくガン・スレイヴを余所に、クォヴレーはZ・Oサイズを構えてシルベルヴィントへと斬りかかっていく。
「このっ!やってくれるじゃないか!!」
「俺もこのまま悠長に戦っている暇はない!手っ取り早く頭を潰す!」
ディス・アストランガンが大きく振り回して繰り出した大鎌を、当初はシルベルヴィントの持つインスペクター四天王一のスピードで回避しようとしたアギーハであったが、
ライトグリーンの粒子をウイングから噴き出して向かってくるディス・アストラナガンの想像以上のスピードを見て、回避行動が間に合わないと判断すると、
両腕のブレードでその斬撃を受け止めた。だが、勢いが乗った斬撃はインスペクター四天王の中では最も馬鹿力とは遠いシルベルヴィントを弾き飛ばし、
アギーハもコックピットの中で殺しきれなかった衝撃に襲われて歯を喰いしばる。そして弾き飛ばされつつも再びシルベルヴィント腹部に搭載されたフォトンビームの照準が狙いを定めた。
急速に発射したため本来よりも攻撃力は劣るものになってしまうが確実に相手の戦闘能力を削るために不可避のタイミングで放たれたフォトンビームは真っ直ぐにディス・アストラナガンへと迫っていく。
ディフレクト・フィールドの展開が間に合わないと判断したクォヴレーはとっさに手にしたZ・Oサイズでフォトンビームを受けるが、
ゾル・オリハルコニウムでできた刃であってもビームの勢いを殺しきることはできず、ディス・アストラナガンは後方へと弾き飛ばされてしまった。
「しめた!隙を見せたね!」
ディス・アストランガンが体勢を崩したタイミングを狙ってシルベルヴィントが切りかかっていくが、クォヴレーもツイン・ラアムライフルの銃身、つまり
Z・Oサイズの柄の部分で高周波ブレードを受け止める。だが攻撃を受け止めたとはいえ、勢いをつけて切りかかってきたシルベルヴィントにディス・アストランガンは押し込まれてゆき、
超高速で振動する刃がディス・アストラナガンの目の前にまで迫ってきた。
「くっ!だが…!」
ブレードに顔面を切り裂かれる前にとっさにがら空きとなっているシルベルヴィントの下半身に蹴りを叩き込んだディス・アストラナガンは、その勢いを利用していったん後退する。
その時、アギーハによる再攻撃が始まる前に、いわば雑兵掃除を終えていくつかのガン・スレイヴがクォヴレーの元へと戻ってき始めていた。
そしてガン・スレイヴ達は、今度はシルベルヴィントの周囲を不規則に飛び交いながら、破壊の光弾を異星からの侵略者に向けて吐き出し始める。
「このっ!ちょこまかと!」
シルベルヴィントは取り回しのいい飛び道具を持たないため、アギーハは機体を上下に、左右にせわしなく動かしてガン・スレイヴの攻撃を回避し続けるしかなかった。
そしてこの隙にクォヴレーとディス・アストラナガンは体勢を整えなおすとZ・Oサイズを構えてシルベルヴィントへと向かっていく。
しえん
「はああああぁぁぁ!!!」
そしてまるで野球のバッターがするかのように、ディス・アストラナガンは腰をいったん捻って大きく引いた冥神の大鎌を、捻っていたのとは逆方向へ横一文字に一気に振り抜いた。
対するシルベルヴィントは左右の高周波ブレードを突き出して渾身の力が込められた斬撃でなんとか上へ弾きとばすが、
今の凄まじい衝撃に耐え切れなかった左右のブレードは片方が粉々に砕け散って破片の集まりへと姿を変え、他方もブレードの先端がぐにゃりと曲がってしまう。
「ぐ…!クソっ、ブレードが…!」
アギーハが衝撃と武器が破壊されたという事実に顔を歪ませる一方で、斬撃を弾かれたディス・アストラナガンは既に次の攻撃モーションへと移行していた。
斬撃を上方へ弾かれたということは必然的に自らの胴体ががら空きになることを意味するが、その原因となるのはその腕が上方へ振り上げられてしまうということである。
だが、獲物を持った腕が上方へ振り上げられたということは、上方から下方へと放たれる、地球の重力すらも我が力と変えた斬撃を繰り出す姿勢が整うことも意味していた。
「切り裂け!」
「!」
黒と茶色に輝く禍々しいウイングから噴出すとは想像も出来ないような美しいエメラルド色に輝く粒子を放ちながら、冥神の大鎌はシルベルヴィントへと振り下ろされる。
本能のレベルでの反応でわずかに上半身を横へとそらしてコックピットごと真っ二つにされるのを防いだシルベルヴィントであったが、
その肩から先は斬撃により美しく切断された断面を晒しながら海上へと落下していく。
「そして打ち砕け!」
クォヴレーとディス・アストラナガンの目の前には、斬撃の致命傷を回避したものの次の反応をしきれていないシルベルヴィントの下半身がある。
そこへ向けて、クォヴレーはZ・Oサイズの柄の先端、つまりツイン・ラアムライフルの引鉄を引いて近距離からの散弾をぶち込んだ。
幾つかの小さい爆発を起こすシルベルヴィントの下半身は、コックピットのアギーハに今までにない物理的衝撃を与え、コックピット内には機体の異常を知らせる警報音がけたたましく鳴り始める。
「このあたいとシルベルヴィントがこうまで……!!」
アメリカ大陸でレーツェルやシン達と戦った時に、ストライクフリーダムの奇襲によって一気に追い込まれたときとは大きく異なり、今度は真正面からぶつかっておきながら
ここまで大きなダメージを受けたことはアギーハのプライドにどれほどの傷つけたかは想像に易い。だが、彼女も紛れもないインスペクター四天王の1人であり、引き際というものを知っている。
冷静になって、連れてきた機体は全滅で愛機も相当大きなダメージを負っているという状況を考えれば、どうしなければならないのかはすぐに判断できた。
「…どうした、まだやるつもりか?」
「今日はアンタに花を持たせてやるよ!だけどね!アタイ達に喧嘩を売った代償はいずれその命で償わせてやるよ!」
「…」
アギーハがそう言うと、シルベルヴィントはダメージの少ない背部の推進器の出力を一気に上昇させて、戦場からの離脱を始めた。
クォヴレーとしても、彼の目的はアストラナガンの残骸の捜索にあるため、これ以上の時間のロスは避けたいところであり、せっかく撤退してくれたシルベルヴィントを負うようなことはしなかった。
そして敵機が完全に姿を消すのを確認して、アストラナガンの反応を捜そうとする。
「…やはりもう反応はロストか。だが早く見つけなければ…アレが悪用されては…」
地中奥深くに潜伏していたラクシズ旗艦エターナルの中にあるアストラナガンの残骸が出した微弱な反応を、エターナルが地上へ出来てきた時に運良く掴むことができたクォヴレーであったが、
結局今回はそこに辿り着く前にアストラナガンの反応を見失ってしまうことになってしまった。
「…」
クォヴレーは深く息を吸って、コックピットのシートにもたれかかり、久々の激しい戦闘の疲れを薄めるように静かに目を閉じた。
そして数十分ほどした後に戦闘があった反応を掴んだ連邦軍の部隊がそこへ到着したときには、インスペクターの機体の残骸以外に何もいなかったし、発見できなかったことは言うまでもない。
所は変わってヒリュウ改の格納庫ではビルトビルガーの調整を終えたシンがビルガーの足元に置かれたコンテナに腰掛けて、水分補給のドリンクを口にしていた。
乾いた喉が潤っていくのを感じているシンであったが、自分の元へ近付いてくる足音が後ろから聞こえてくるのに気付いた。
後ろを振り向くと、そこにいたのはシンがこの新西暦の世界にやってきてシロガネにやってきてから共に戦ってきたキョウスケ・ナンブであった。
「シン、すまないが俺とブリーフィングルームまで来てくれるか?」
「?いいですけど、どうしたんですか?」
なんだか改まった様な喋り方をして歩いていくキョウスケの後に続きながらシンは首を傾げていた。
もうだいぶ慣れたヒリュウ改の艦内通路を歩いて到達したブリーフィングルームの扉が開かれると、既に中には何人か先客がいるのがわかる。
手元のコンピューターを操作しながら何かの作業をしているリョウトに、椅子に座って足を組みながらシロとクロを両肩に乗せて何かを待っているマサキ、
母なる大地の重力に引かれた巨大な母性の象徴をものともせずに背筋をまっすぐに伸ばして着席したまま静かに椅子に腰掛けているラミア、
落ち着きなくモニターの前を行ったり来たりしているブリットは扉が開いてキョウスケに連れられてシンが入ってくると一斉にそれぞれの視線を向けた。
「え…俺、なんかしましたっけ…?」
突然のことにドッキリしたシンが誰にというわけでもなく問うと、モニターの前まで移動したキョウスケが口を開く。
「先日のマスタッシュマンとの戦闘の時に現れたアンノウン、アカオニについてちょっとお前に聞きたいことがある」
ズバリ核心をついた問いに、これまでの戦闘記録などからコードネームアカオニことペルゼイン・リヒカイトのパイロットの正体に
幾分かの心当たりがあるシンの心拍数が急激に高まっていくが、対するキョウスケは口調、テンポともに変えることなく話を続ける。
「アカオニはお前がよく知っているというジャスティスとやらが襲撃してきたときに初めて現れて以来、これまで3度現れているが奴が初めて現れたときに一瞬だけ現した姿が
アインストの指揮官機と同じだったことから俺はアカオニがアインストと何らかの関係を持っているかもしれないと思っている」
「……それで俺とアインストがどう関係してくるんですか?」
外堀は既に埋められつつあることはなんとなくわかっていたシンであったが、まだアカオニことペルゼイン・リヒカイトが自分と結び付くところにまでは話は至っていない。
シンとしても自分の推測は外れて欲しいと願っていたし、今は新しい人生を精一杯歩んでいるかつての戦友に迷惑を掛けたくはない。
「この前、お前やブリット達が超機人の遺跡に行っている間、マサキがアカオニと接触したのは知ってるな?」
「はい、伊豆基地の周辺でノイエDCの部隊と戦闘していた、というのはマサキから聞きました」「音質には問題があるがその時の会話がいくつかサイバスターのボイスレコーダーに残っていた。それとこの前にマスタッシュマンとアカオニが戦っていた時の声も記録されていた」
「だからダメ元のつもりでヒリュウ改とハガネのデータベースに照合させたんだよ。そうしたら思いもよらないところでヒットしたんだ」
シンほどではないにせよ、やや思い詰めたような表情を浮かべたリョウトが手元のキーボードから手を離して話し始めた。
支援
支援したほうがいいかな〜
「実はね、前に艦内でリュウセイ君がここの大画面を使って自分のコレクション映像を見ていたときがあったんだけど、その映像の中の声だったんだよ」
「リュウセイの…………じゃあ俺が呼ばれたってことは…」
「そうだ、お前がこの前会いに行ったというレイ・ザ・バレルという男の声なのではないか、というのが俺達の辿り着いた結論だ」
「そんな…でもアイツは記憶喪失で俺のことだって覚えてないんですよ!?」
「ああ、それもわかっている。診断した医者も原因不明だが記憶喪失だと言っている。だが、アカオニが出現した時のレイ・ザ・バレルのアリバイは3回ともない。
いや、正確に言えば、アカオニが出現する直前に一時的に姿を消して、DCが消えるとひょっこり現れたそうだ」
シンの対応のたびに既に用意された回答を読み上げているようなキョウスケの表情もあまり晴れたものではない。
むしろキョウスケとしては、シンとはビルトシュバインに乗ってシロガネにやって来た頃から一緒に戦って来たのだし、これまで接してきて把握した人物像や
スレードゲルミルなどと戦ったときのシンの身を削った戦い方からイングラムなどとは違い、腹の中にイチモツを隠し持っているとは思っていないので、あまりシンを追い詰めたくはなかった。
だが、アカオニの正体を突き止めるためにシンから話を聞きだすためには、誰かがヒリュウ改の中で悪人にならざるを得ず、あえて汚れ役を買って出た、というのが実情だった。
「俺達はお前が敵だなんて思っちゃいない。だが俺達は軍人だ。アカオニやアインストのような得体の知れない連中の正体を不明のままにしとくわけにはいかん……心当たりはないか?」
そう言ったキョウスケの目を見たシンは、キョウスケとしても気分よく聞いているのではないということがよくわかった気がした。
だが、シンにはここで思い出したくないことを思い出した。それは、守ると約束したにもかかわらず結局は目の前で息を引き取って逝ったエクステンデット、ステラ・ルーシェとの思い出の欠片―
味方のザフト、プラントの医療技術が彼女を救えなかっただけでなく、彼女の体を技術研究に用いようとしたという判断がされたことがシンの心に一抹の不安を生じさせた。
そしてその不安はみるみるうちにシンの心の中に広がり、覆いつくしていく。目の前の仲間が信用できるとしても、その上の連邦軍がどのように判断するかはシンの知るところではないのである。
「…………………!?」
長い沈黙が場を支配していたが、それは艦内に鳴り響いた警報音により終わりを迎える。
警報音が鳴り止むのとほぼ時を同じくして、ブリーフィングルームにブリッジからの、慌しい声と信じ難い事実が告げられた。
「た、大変です。ヴァイスリッターがいきなり出撃しました!!」
そして、ほぼ同時刻、あの男の頭の中にアインストを率いる少女の声が響き、4度目の戦いに誘おうとしていた…
つづく
クォヴレー「さて読者のほとんどが忘れた頃に俺、参上だったな」
レイ「おいおい、そいつぁ俺の台詞だぜ〜」
シン「ってかアンタは一体誰なんだ!?」
クォヴレー「なあに、通りすがりの主人公だ」
レイ「ま、本当の主役は俺だけどな」
シン「おいwちょっと待てwww」
エクセレン「でもシン君はそろそろ本腰入れてキバっていかないとまずいんじゃないかしらん?ってことでブリット君、出番よ!歯磨きは終わってる!?
」ブリット「えぇぇぇぇ!?じ、じゃあここは俺がガブ………ってしちゃ駄目でしょうが!」
レイ「おいおい兄ちゃん、そんな堅いこと言うなよ」
エクセレン「じゃあ別のてこ入れをしないとねぇ…う〜ん、シン君にも大人の階段上らせてみるてのは?
ちょうどマ○ロス界のラッキースケベさんもボインと太腿にクラッときて阿修羅ならぬ童●を凌駕する存在になれたわけだし」
キラ「何?シンってまだだったの?」
シン「アンタだってそこら辺よくわからないじゃないかよ!?OPで青○リボンプレイしてやがったけど」
キラ「何言ってるだい、僕は一人目だよ?BPOに呼び出し喰らった主演男優に向かって失礼じゃないか」
シン「威張って言うことじゃないだろ!!」
レイ「ところで、肝心の相手はどうするつもりだ?」
エクセレン「そうねえ…ボインと太腿ならやっぱりラミアちゃんかしら」
キョウスケ「…お前達、そろそろいい加減にしないと18禁にされるぞ」
クォヴレー「では次回スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーションズデスティニー、第32話『その名はレイ・ザ・バレル』をよろしく頼む。…次の俺の出番はいつだろうか…」
GJ!
そろそろレイの正体がバレる時か……
しかしクヴォレーの登場で益々シンの影が(ry
やはりシンに新しい機体を…!
支援してくださった方々、ありがとうございます
8回くらいの投下で終わらせるはずが予想外に久保が動く動く…
とりあえず永遠の17歳のおっぱいが実は1番とは想定外でした
そして某リオンはパッケージが詐欺だろ………
久保ついにキター
今の状況だと間違い無くブッチギリで最強の機体だからなあ
積極的には関わらないみたいだが、それにしても使いどころ難しそう
久保キター!!
…シンの影がドンドン薄くなる
違うよ。これはシンが悪いんじゃないよ
スパロボオリ共が濃すぎるのがいけないんだよ…
シンはツッコミポジだからどんどん突っ込まないと自然に薄くなるw
銀魂並みにボケかますキャラがいないと苦しいかもな、シン八だけに
まあスパロボって、ただでさえ他のSSに比べてキャラ数が多くなるから難しいよな
公式のスパロボオリ主人公だって、大抵の場合は自分の関係するイベントの時以外は基本的に多くのキャラの1人になっちまうし
そーゆー意味じゃシンの影も薄くなるよな
基本的にこのSSだって連邦サイドはシン、民間?はレイ、
DCはユウとラクシズの視点が中心になるから相対的にシンの出番は減ってる
シンがメインで出張れるのはラクシズとスクール絡みくらいだしな
やっぱりシンがリオとだぶる!!!
強いけどいてもいなくても戦力というか話というか……流れを持っていけない
その姿が滅茶苦茶だぶるわ……
シンに幸あれ
……そういえば11氏の話でリオって出たっけ?
リョウトは所々でチラっと出てたの覚えてるんだが
α主人公の中でも特にキャラが弱いからな>ごひ子
リョウトもいまいち影が薄いがw
クスハは龍虎王とクスハ汁のおかげでキャラが立った感じでサトシは可もなく不可もなくか
ツンデレオナ、紅茶パピヨン、つぶしが効くタスクにエロに弱い鰤は
それなりにキャラが成立してると思う
リオはごひ本人よりごひの許婚に似てるよなw
まあスパロボではごひは正義厨の痛い子にされてるから仕方ないが
ズール様は正義だ!は永遠の名言だw
第32話『その名はレイ・ザ・バレル』
「また来たわね!あんまししつこいと、あちこち手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせるわよっ!」
突然頭の中に響いてきた声に導かれてきたこの場所で既にアインストと交戦を開始し、骨型アインストのクノッヘン、植物型のアインストのグリートを殲滅し終え、
超機人の遺跡でシン達が初めて遭遇した鎧型の新たなアインスト、ゲミュートとの戦闘を始めていたエクセレンの怒号が戦場に響き渡る。
だが怒声が向けられたのは、彼女が想像していたものとは異なった。
海中から飛び出してきた、黒い装飾線の入った真紅の外装で身を包み、頭部にドリルの如く天を衝く2本の角を生やした伝説上の生物「鬼」を思わせる面をつけた、
オリジナルのペルゼイン・リヒカイトとは異なる姿を選んだ、「アカオニ」との呼称で呼ばれているペルゼイン・リヒカイトであった。
「俺、参上!」
地面に着地すると、ペルゼイン・リヒカイトに乗ったこの男レイ・ザ・バレルは、
右腕に持った真っ赤な柄と鍔を備えた大剣を肩に掛け、左手を真っ直ぐ正面に伸ばすというお約束の登場ポーズを自分の乗機にとらせて決め台詞を叫んだ。
そして辺りをざっと見回して、一般人にもそれなりに有名なヴァイスリッターと、正体不明な鎧の形をした物体が戦闘をしているのを確認する。
「おいおい、そこの姉ちゃん。いきなり随分とハードじゃねえか。悪いがそんな激しいお仕置きは御免だぁ。その代わりといっちゃなんだが…」
レイが喋っているところに1体のアインストゲミュートが突っ込んでくるが、飛び上がってペルゼイン・リヒカイトに掴みかかる前に、ペルゼイン・リヒカイトは
右肩に担いでいた大剣ペルゼインスォードを、太陽光を反射して眩しく輝がせるのとほぼ同時に振り下ろして、アインストゲミュートを左右真っ二つに斬り捨てた。
「ここはいっちょ手ぇ貸してやるぜ?」
そして再び大剣を担ぎ上げた赤鬼が少しだけヴァイスリッターの方を向き、握った左腕の親指をピンと突き立てる。
「あらん、誰かと思ったら最近巷で有名な赤鬼ちゃんじゃなぁい。お姉さんったらドキドキしてきちゃったわん」
「悪いがサインなら後で頼むぜ。今日は呼び出しを喰らったから来ただけなんでな」
「呼び出し?下駄箱にラブレターでも入ってたのかしら?」
「まぁ呼び出しっつっても人の夢の中に出てきやがっただけだが、頭痛の置き土産まで残していきやがったんで来ちまったんだよ」
「ちょ、ちょい待った!それってもしかしてボソボソと喋ってる女の子みたいな声してなかった!?」
レイの言葉を聞いて、それまで冗談混じりでいつもの調子で喋っていたエクセレンの表情が一気に強張り、笑顔が消えた。
少女の声が頭の中に響いてくる、というのは自分やキョウスケがアインストの指揮官と思しきアルフィミィという名前の少女がエクセレンらに語りかけてくるときの状況とそっくりであり、
このアカオニを操縦する男が自分やキョウスケとも関係があるのかどうか、アインストとの関係も疑われている正体不明のアンノウンであったアカオニは
一体どのような関係をアインストと持っているのかについての推測が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していく。
「おお、よく知ってんじゃねえか。たいてい訳わかんねえことばっか言ってるから夢か幻聴かもしれんのかと思ってたが違うのか?」
「あの声が何なのかわかんないのは私も同じよ。その声に呼ばれてここに来たこともね。でも私達に何か用か興味があるのは確かでしょうね」
「じゃああいつらを片つければ出てくるかもしれないってことか?」
「ええ、私の予想があってれば、だけどね」
「面白れえ!その話、乗ったぜ!」
レイは勢い付けに開いた左手に右のこぶしを軽く叩きつけると、気合に満ちた両目で正体不明の怪物たちを睨みつける。
そして今度はズカズカと他のアインストゲミュートのいる方向へ歩いていきながら既に恒例となった口上を語り出した。
「人の頭の中で『時が来た』だの『目覚めろ』だの騒ぎやがるから来てみれば、正体不明の鎧の化け物やらここに来る途中でぶっ潰してきたホネホネ野郎に雑草野郎がウジャウジャいやがる。
おい、聞こえてるんだろ、いつもの嬢ちゃん!俺に前座はいらねえ、最初からクライマックスだ!わかったらさっさと出てきやがれ!!っつーわけで、行くぜ、行くぜ、行くぜええぇぇっ!!」
「あらあら、若いわねぇ。でもお姉さんを放っておくのは関心しないわよん」
大剣を振りかざしてアインストゲミュートに正面から突っ込んでいくペルゼイン・リヒカイトの後姿を眺めながら、
オクスタン・ランチャーを構えたヴァイスリッターはその照準をペルゼインの先にいる残り2体の鎧に合わせた。
エクセレンが引鉄を引くと、銃口から放たれたビームが地面を抉り飛ばしながらアインストゲミュートへ向かっていく。
対するアインストゲミュートは左方向へ移動して攻撃を回避しようとするが、迫り来るビームはゲミュートの付近でまるで鞭がしなるかのように曲がって軌道を変えてゲミュートに襲いかかった。
不意に真横からそのボディを切り裂くように過ぎていったビームはゲミュートのボディを焼き尽くすと、残った部分は力なく砂のような物体となって崩れ落ちていく。
さらに横へ曲がっていったビームはその近くにいた別のアインストゲミュートの脚部を焼き尽くすと支えを失った腰から上が地面に倒れ込んだ。
そしてそこへ大地を走り抜けていくペルゼイン・リヒカイトが迫っていく。
「うおりゃあっ!」
アインストゲミュートが体をばらしてペルゼイン・リヒカイトに攻撃を仕掛ける前に、既に斬撃の届く距離を詰めていたペルゼイン・リヒカイトは、
ゲミュートの頭上から大剣を振り下ろして肩口から胴体を斜めに一気に切り裂いた。
そして唯一残った頭部を真上から踏み潰すと、最後に残った1体に向けてペルゼイン・リヒカイトは突撃していく。
その残ったアインストゲミュートは突っ込んでくるペルゼイン・リヒカイトを確認すると、その体を頭、胴体、両手、両足に分離させてペルゼイン・リヒカイトの周囲への散開を開始した。
胴体が急浮上して振り抜かれたペルゼイン・リヒカイトの大剣は虚しく空を斬る。そしてそこに出来た隙を狙ってバラバラになった左右の両腕がペルゼイン・リヒカイトの顔面を殴りつけ、
中にいるレイにも衝撃が伝わりその顔を歪ませた。さらに続けて両足が左右からペルゼイン・リヒカイトを打ち付けて、残った胴体が猛スピードでペルゼイン・リヒカイトにブチかましをかけた。
さすがのペルゼイン・リヒカイトであってもこの連続攻撃はこたえたらしく、大剣を地面に突き刺してもたれかかるように少しよろけながら立ち上がる。
「ぐおっ!やってくれるじゃねえか、この…」
残ったゲミュートの頭部がペルゼイン・リヒカイトに向かってくると、立ち上がったペルゼイン・リヒカイトは胸を張って頭を後ろに引く。
「野郎があぁぁ!!」
そして向かってきたゲミュートの頭部に渾身の力を込めて頭突きを喰らわせた。その衝撃で正面が陥没した頭部は砕け散った破片を砂へと変えながら崩壊を始めるが、
残った胴体と両手足は力を失うことなく斬撃の届かない距離を保ちつつ浮遊しており、むしろ言葉なくペルゼイン・リヒカイトに殺気を向け続けていた。
それを見たレイは深く息を吸い、全身へと新鮮な酸素を供給し精神を集中させる。
戦いの中で自分が熱くなればなるほど、無意識のうちに冷静に状況を分析しようとしている自分がいることにレイは徐々に気付き始めていた。
言うなればもう1人の自分。その存在感は戦いの経験を積めば積むほど大きなものとなって来ている。そんな自分がどうすればいいのかを教えてくれる、レイはそんな感覚を味わっていた。
ペルゼイン・リヒカイトが静かに体の正面に大剣を構えると、自身の持つエネルギーを腹部桃型のバックル、頭部の2本の角から刃こぼれ1つなく銀色に輝く大剣の刀身に収束させていく。
「行くぞ、ひそかに温めていた…俺の必殺技パート5!…でりゃあっ!!!」
刀身に集まって来たエネルギーはメタリックレッドの輝きを放ちながら激しく迸り、ペルゼイン・リヒカイトが右から横一文字に大剣を振り抜くと、
刀身から放たれた真紅の斬撃は右から左へと、浮遊するアインストゲミュートの両足を薙ぎ払いながら切り裂く。
続いて左から右へと大剣が振り抜かれると、その動きに呼応して真紅の斬撃は左から右へゲミュートの両手を薙ぎ払い、こぼれゆく砂へと変えた。
そしてペルゼイン・リヒカイトが天高く掲げた大剣を真っ直ぐ振り下ろすと、それをトレースしたメタリックレッドに輝く斬撃は、
残っていたアインストゲミュートのボディを一刀両断して左右に分断されたボディは爆散して姿を消した。
「ふう、これで鎧はおしまいかしらね」
「エクセレン、無事か!?」
ヴァイスリッターの通信機から聞こえてきたキョウスケの声に、エクセレンが辺りを見回すと
遠くからこちらへ向かってくるアルトアイゼン、サイバスター、アンジュルグそしてビルトビルガーの姿が目に入る。
「あらら、みなさん遅い到着で」
「人が心配して追いかけてきたってのに……何だ、その言い草は!?」
「あ、あはは、だってもうあそこの赤鬼さんがみんなやっつけちゃったんだもん。みんな、おゲンコ?」
「ステークなら好きなだけくれてやるぞ」
「ん〜、ステークはベッドの上だけにして、ね」
「ったく、勝手に飛び出した上にこんな所でドンパチやってるなんて……何考えてんだよ?」
「……説得力ニャいわね」
「だニャ。どっちかって言うとそういうの、マサキの専売特許だもんニャ」
「っていうかそんなこと言ってる場合じゃないだろ!?だって…!」
エクセレンの、周りの人間を巻き込んだコントが本格化する前にシンがその流れを止めた。
もちろんそれはシンにとって極めて重大なことがまだはっきりとしていないため、つまり…
「そうだ、『アカオニ』には聞かなければならないことがある」
そう言って、キョウスケは視線を「アカオニ」と呼ばれる連邦軍にとっては謎の機体へと向け、外部スピーカーのスイッチを入れた。
「俺は連邦軍ヒリュウ改所属ATXチームのキョウスケ・ナンブだ。『アカオニ』、聞こえるか?」
「ああ、聞こえるぜ。俺に何か用か?」
「…」
あっさりと帰ってきた返答にキョウスケも一瞬言葉を失ってしまった。
「お前の目的は何だ?そしてお前は何者だ?どうしてそんな機体に乗って戦いに参加していた?」
「ああん!?いっぺんに色々聞くんじゃねえよ、偉そうに」
「…そうか、ならまず目的を教えてくれ」
「俺を呼んでるガキの声があったから、そいつに会いにきた。そんだけだ」
「ではお前は何者だ?所属と官、姓名を名乗れ」
「お断りだね。何でもかんでも答えると思ったら大間違いだぜ?そうだ、アレだ。黙秘って奴だ」
「ならこちらが教えてやろうか…お前は…くっ!」
「こ、この頭痛は…!」
キョウスケが正体を言い当てる前に、エクセレン、レイ、キョウスケに頭痛が走り、何かの悪寒が体を駆け巡った。
そして今まで誰も何もなかったところが一瞬輝くとともに、その光の中から20メートルを超える物体が姿を現す。だが、その姿はそこにいた誰しもが予想しえなかったものであった。
「!?」
「おいおい、また来たのかよ!?冗談じゃねえぞ!」
「新型のアインスト…でもあれは!?」
「お、おい! ありゃ何の冗談だ!?」
「ま、まさか…何でだよ!?」
「アルト……アイゼン……!」
(正解ですの)
「!」
姿を現したのは頭部の角に右腕にステーク、左腕にマシンキャノンを搭載しながらも、他のアインストと同様に生物のように動く物体であった。
言うまでもなく、その姿は見る者をしてゲシュペンストMK−Vの名で開発が進められて誕生したアルトアイゼンを連想させていた。
言葉が出なかったキョウスケに続いてレイ、ラミア、マサキ、シンが驚きの声を上げ、最後にゆっくりと答えを口にしたエクセレンの頭の中に聞き覚えのある声が響いてくる。
そしてシン達の前の空間がわずかに歪み、姿を現したのは当然ながら鬼の面を左右の肩付近に漂わせ、赤と白の空洞の体に、
細い刀身の長剣を持つアインストの指揮官機であるオリジナルのペルゼイン・リヒカイトであった。
「やっぱり……あなたね」
「……」
「何のつもりなの!? アルトアイゼンの偽物を作り出すなんて、どういう魂胆なの!?…え!?…はあ!?」
「エクセレン少尉!なにを言ってるんですか!?」
「え?シン君、あの子の声が聞こえなかったの!?」
「あの子!?少尉の独り言は聞こえてきましたけど、そんなの知りませんよ!」
シンにはエクセレンが1人で何かの受け答えをしているようにしか見えず、エクセレンやキョウスケ、レイには聞こえているアルフィミィの声が聞こえない。
ビルガーの近くに待機しているラミアは、前回記録できたアインスト・アルフィミィの音声が今回は聞き取れず、何かの機密通信の類を疑っているし、
マサキはエクセレンの言動が奇妙だと思いつつも、他の者がアルフィミィに意識を向けている中で1人、先ほど出現したアルトアイゼンそっくりのアインストであるアインストアイゼンの動きを警戒していた。
そしてアルフィミィとキョウスケ、エクセレンの会話が聞こえてくるレイは自分に話が及ぶのを今か今かと待っていた。
「もうっ! わけわかんないことばっか言わない!あなたと私、そしてキョウスケ……どういう関係だか知らないけど…あなたが倒さなければならない敵なら、容赦はしないわよ!」
「落ち着け、エクセレン!」
「キョウスケ!でも…」
「キョウスケ…ようやくまた会えましたの…」
「……!」
「あいつ、喋りやがったぞ!?」
「ああ!あの中に誰か乗ってることは間違いない!俺も超機人の遺跡で戦ったからな!」
「マジかよ!?」
「言ってることは半分意味不明だったが、はっきりと超機人を狙ってたから他のアインストと違ってそれなりに何かを考えてるはずだ!」
「しかも」
エクセレン、キョウスケ、そしてアルフィミィが話を続ける一方でオリジナルのペルゼイン・リヒカイトとは初遭遇のマサキは驚きの声を上げていた。
マサキの問いに答えたペルゼイン・リヒカイトを睨みつけているシンは相変わらず狙いのわからぬ相手に徐々に苛立ちを隠せなくなってきていた。
ラミアはとにかく冷静にデータを可能な限り集めて自分なりの状況分析を必死に行っている。
そしてアルフィミィの声は聞こえるのに1人蚊帳の外に置かれた状態になっていたレイは自分について話が及ぶのを静かに待っていた。
レイはまだ静かに待っていた。我慢して静かに待っていた。辛うじて我慢して待っていた。
本当であればすぐにでも口を挟みたいところだが、ここでムキになっても相手が自分の問いに答えるとは限らない、ともう1人の自分が判断したような気がしていたからである。
「キョウスケ……あなたはいったい何者なんですの?」
「それはこっちの台詞だ。何故、お前は龍虎王を狙った? あのアルトの偽物は何だ?」
「いいえ、偽物とは違いますの……。もっと異なる物…あなたのことが知りたくて……作ってみましたの…でも……殻だけでは……」
「殻……だと?」
「もっと……あなたのこと知りたいですの……。あなたが何なのか……」
「それはどういう意味だ?」
「私を乱す……それがあなた」
「何が言いたい?」
「あなた、何で私やキョウスケに拘るのよ?」
「……キョウスケ……一緒に来るですの……」
「え!?」
「一緒に……私と……」
「どこへだ?」
「新しい宇宙……。始まりの地を……捨てるために……」
「!?」
「……何を言っているのかわからんな。おれがお前の思う通りに動くと思っているのか?」
「はい……。動いてもらいますの……」
アルフィミィがそういうと、仏頂面でアルフィミィとオリジナルのペルゼイン・リヒカイトを睨みつけつつもまだ静かな口調で喋っていたキョウスケに異変が生じた。
必殺、俺の支援!
すいません規制くらいました
続きは明日投下します
>>366 ダメな奴だw
投下に気付いてもいなかった俺は、もっとダメだけど…
感想は明日の投下を待ってからだね
「何!? ぐうっ、頭が!」
「あ……ああ、これは……!?あ……あの子は……!?」
「く!き、機体が……動かん!」
「さあ、キョウスケ……」
「く……うっ……!」
「おいキョウスケ、どうした!?」
「キョウスケ中尉!エクセレン少尉!どうしたんですか!!」
頭の中に走ったノイズによって生じているとおぼしき苦痛に見舞われるキョウスケとエクセレンにペルゼイン・リヒカイトが徐々に近付いていく。
状況を確認しつつ、特殊な波長などを計測していたラミアは謎の波長を拾っただけでなく、それにより通信妨害までもが生じておりマサキやシンの声が伝わっていないのだと知った。
ペルゼイン・リヒカイトが近付いていくにもかかわらず未だにアルトアイゼンとヴァイスリッターは動こうとせず、ペルゼイン・リヒカイトの腕がアルトアイゼンに伸びていく。
そしてその手がアルトアイゼンに触れようとした、その時であった。
「てめえら、いい加減、俺を無視してんじゃねえ!!」
待たされる我慢の限界を超えたレイのペルゼイン・リヒカイトが、アルフィミィのペルゼイン・リヒカイトへと飛びかかり、その背中に思いっきり飛び蹴りを喰らわせた。
意識のほとんどをキョウスケ・エクセレンに向けていたため、両肩の鬼面も反応せず、背後から不意を完全に突かれた形となった
アルフィミィのペルゼイン・リヒカイトは顔面から地面に激突して倒れ込む。
「おい、嬢ちゃん!俺をここに呼んだ理由をさっさと説明しやがれ!」
「…邪魔をしないで欲しいですの!」
「ちぃっ!」
いきなりの攻撃にやや面食らい、半ば呆然としていたアルフィミィであったがすぐに戦意を回復させ、レイのペルゼイン・リヒカイトをにらめつける。
そしてゆっくりとオリジナルのペルゼイン・リヒカイトが立ち上がると、携えている刀のような細身の剣を素早く振り下ろした。
レイのペルゼインとは異なり、振り下ろされた剣先からは青白い透明感のある細身の斬撃が飛び出して行き、レイのペルゼイン・リヒカイトへと迫っていく。
レイはそれを大剣の刀身を盾代わりにして受け止めるが、足が踏ん張りきれずにペルゼイン・リヒカイトは転等してしまった。
「キョウスケ……さあ、私と……」
「ぐっ!!」
「!拒絶した……!?」
「……」
「何故……ですの?」
「お前の思うようには……動かんと言ったはずだ……!」
「どうしてですの……? あなたの身体は……私達の……」
「わけのわからないことを……!」
「キョウスケ中尉!大丈夫ですか!?」
まだ頭に残る鈍い痛みから、掌を頭にあてるキョウスケのアルトアイゼンのもとへビルガーが駆けつけた。
続けて素早くアルトアイゼンの両脇を抱えて持ち上げると、アルフィミィのペルゼイン・リヒカイトからアルトアイゼンを引き離す。
「す、すまんシン…何とかな」
「とにかく、あの赤い奴を倒すぞ!みんな、奴に攻撃を集中させろ!」
「マサキ!あいつも時間をかけると再生する、やるなら一気に畳み掛けるしかない!」
「わかったぜ!おい、そこの赤鬼、またちょっと手ぇ貸せ!」
「てめえに言われなくても貸してやらぁ!よくもあのガキ、泣かしてやるぜ!」
まず動いたのは、データを収集したいところであったがこの場はやむを得ないと判断したラミアのアンジュルグであった。
相手の足を止めるべく腕を突き出したアンジュルグは、エメラルドグリーンに輝く4条のエネルギーの矢、シャドウランサーをオリジナルのペルゼイン・リヒカイトに向けて放つ。
「キョウ……スケ……何故……ですの? 私は……あなたのことを……」
そう言って刀を手にしたオリジナルのペルゼイン・リヒカイトは両肩付近を音もなく漂う2つの巨大な鬼面を機体前面に広げてシャドウランサーを弾き飛ばす。
そして刀を両手で構えたオリジナルのペルゼイン・リヒカイトは、自分の最も近くにいたサイバスターに斬りかかって行った。
振り下ろされた刀はサイバスターの繰り出したディスカッターによって止められてしまうが、漂う鬼面の1つが横からサイバスターを叩きつけて吹き飛ばす。
「気を付けろマサキ!レッドオーガの面は、動きは遅いけど盾にも武器にもなる!」
「そ、それを早く言いがれ!」
今度はコールドメタルソードを構えたシンのビルトビルガー、ミラージュソードを構えたアンジュルグがペルゼイン・リヒカイトへ向けてそれぞれの剣を繰り出した。
アンジュルグの剣を残った鬼面が受け止め、ビルガーの剣をペルゼイン・リヒカイトの刀が受け止めるが、右腕のスタッグビートルクラッシャーはまだ攻撃を終えていない。
殴りつけるべくクラッシャーを突き出したビルガーに対して、ペルゼイン・リヒカイトは足を振り上げてビルガーを蹴り飛ばす。
続けてステークを構えたアルトアイゼンがペルゼイン・リヒカイトとの距離を詰めていき、
それを、オクスタンランチャーを実弾発射モードに切り替えたヴァイスリッターが追随しつつ、照準をペルゼイン・リヒカイトに合わせて引鉄を引いた。
なんとか刀で軌道をずらしてその身に突き刺さろうとするステークを凌いだペルゼイン・リヒカイトであったが、鬼面を戻す前に白騎士の槍から突き出された3発の弾丸がボディに直撃して機体を揺らす。
さらにそこへビルトビルガー、アンジュルグ、アルトアイゼンが追撃をかけるべくペルゼイン・リヒカイトに向かっていった。
ここにいるパイロットの中でも特にキョウスケやシン、ラミアはペルゼイン・リヒカイトとじかに戦ったことがあり、この機体の再生能力を知っている。
そのために、短期決戦で一気に戦いを終わらせるべく無意識のうちに突っ込みがちになっていて、それがここでは災いした。
鬼面を戻したオリジナルのペルゼイン・リヒカイトは一瞬だけ動きを止める。そしていつもは閉じられた口が開き、中から鋭い牙が姿を現すとその機体の全体から無数の光の矢を射出する。
「しまった!?」
やや後方にいたヴァイスリッターやサイバスター、レイのペルゼイン・リヒカイトは攻撃をかわすことができたが、かなり距離を詰めていた3機にはいくつもの光の矢が突き刺さっていた。
「キョウスケ!ラミアちゃん!シン君!」
「この…てめえっ!!!」
3機は、頑丈さが取り柄であるが故に致命傷ではなかったが、見た目にもダメージは軽くはない。
そこへ近付いていくオリジナルのペルゼイン・リヒカイトはもっとも近くで倒れているアルトアイゼンを一瞥して、すぐにアルフィミィにとっての邪魔者である他の2機のところへと歩いていく。
ディスカッターを構えてサイバスターがペルゼイン・リヒカイトに斬りかかって行くが、マサキの視線の先にいたのはオリジナルのペルゼイン・リヒカイトだけではなかった。
マサキのサイバスターよりも先にレイのペルゼイン・リヒカイトが大剣を構えてオリジナルのペルゼイン・リヒカイトに突撃していっていたのである。
「お前にシンはやらせん!」
「!?」
アカオニから聞こえてきた聞き覚えのある声、そして覚えのある呼ばれ方に、倒れ込むビルガーのコックピットの中のシンはハッとした。
この世界で記憶をなくしていたレイはシンのことを「小僧」又は「鼻垂れ小僧」と呼んでいた。にもかかわらず今は「シン」と呼んだのである。
それに、そもそも今日、初めて話をしたアカオニの操縦者に自分の名前を名乗ったことなどシンは一度もない。
「…レイ?」
「どこまで邪魔をするつもりですの…!レイ・ザ・バレル!」
「!!!」
レイのペルゼイン・リヒカイトが繰り出した斬撃を鬼面で受け止めたアルフィミィが珍しく強い口調で言った。
彼女の最重要目的はキョウスケとエクセレンを連れて行くことで、今日レイを呼んだのはまだ言ってはいないが、あくまでキョウスケたちの「ついで」であり、中身もレイの腕試しに過ぎない。
気まぐれの観察対象ということを加えても、所詮その程度の価値しか今のレイに対しては見出していないアルフィミィにとっては今のレイは不愉快そのものであった。
だがそのようなことはレイの知ったことではない。
ビルガーがライゴウエを喰らった次の瞬間には体が自然に動いていたし、レイが何かを考えるより先にビルトビルガーのパイロットの名前を呼んでいた。
どうしてそのような行動をしたのかという理由はわからない。気付けば体動き、言葉を発していたというのが正直なところであった。
レイにとっては、これまでは激しく燃え上がる炎と冷たく凍える氷の心の2つがあったところが、後者の氷の心が業火の如く燃え上がったという感覚である。
「おい、そこのカッコいいロボットのパイロット!俺が隙を作ってやるから一気にぶっ潰せ!」
鬼面に押し出され、後方へ大きく弾き飛ばされたペルゼイン・リヒカイトの中でレイがマサキに言った。
「わかったぜ!でも、そんなことてめえにできるのかよ!?」
「ったり前だ!俺のカッコいい必殺技、見せてやるからよく見とけ!」
そう言ってレイはペルゼイン・リヒカイトの体の正面に大剣ペルゼインスォードを構え、2本の角、桃型のバックルを通してその刀身へエネルギーを集中させていく。
レイとペルゼイン・リヒカイトの力が姿を変えたメタリックレッドの輝きが刀身を覆っていき、これまでレイに立ち塞がる敵を倒してきた必殺技の準備が完了する。
「さらにもういっちょ!」
そしてその言葉どおり、再びレイのペルゼイン・リヒカイトから真紅の大剣へとさらなるエネルギーが集まっていき、刃の大きさ、エネルギー、眩さを増したメタリックレッドの輝きが完成した。
だがほぼ正面から戦い合っていたアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトもそんな攻撃を黙って見過ごすはずもなく、刀を構えて向かっていきながら、鬼面をレイの元へと飛ばす。
「行くぜ!必殺、俺の必殺技…特別篇!」
大きく振り上げた大剣から上方へ放たれた斬撃は、向かってくるオリジナルのペルゼイン・リヒカイトへ向けて急降下していく。
だが2回のエネルギーチャージがアルフィミィに与えた時間は少なくなかった。アルフィミィのペルゼイン・リヒカイトへ向かっていった斬撃は、
レイのペルゼイン・リヒカイトへ向かっていくアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトの後ろを通り過ぎ、アルフィミィに内側に潜り込まれてしまう。
そして鬼面はレイのペルゼイン・リヒカイトの両肩に喰らい付いてその動きを止めると、
オリジナルペルゼイン・リヒカイトの最強技「マブイエグリ」の体勢を整えたアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトがその刀をレイのペルゼイン・リヒカイトに向けて突き出した。
「こんなことになってしまったのは残念ですの…」
「…フッ、特別篇だと言っただろうが!!」
レイが言い終えると、刀がレイを貫く前に地面が大きく揺れ出した。
そして斬撃の内側に潜り込まれて回避されて地面に突き刺さり姿を消した、メタリックレッドに輝く斬撃がアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトの足元の地面から突然飛び出してきた
「!?」
咄嗟に刀を横にして直撃こそ避けたものの、その刀を持った腕ごと斬撃は弾き飛ばし、オリジナルのペルゼイン・リヒカイトを空中へと突き上げながら、そのボディを削り取っていく。
そして鬼面から引き離されたアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトには既に次の攻撃が放たれていることに、彼女はまだ気付いていなかった。
「アァァァカシックバスタアァァァァァッ!」
「しまっ…!」
ディスカッターを突き刺した魔方陣から召喚した真っ赤に燃える不死鳥と融合して、
魔術と精霊と操者の力が合わさった超エネルギーを纏った蒼炎のフェニックスへ姿を変えたサイバスターがペルゼイン・リヒカイトへと襲いかかる。
先端の蒼い嘴がオリジナルのペルゼイン・リヒカイトに突き刺さり、そこからサイバスターの身に纏った炎が侵入していき、ペルゼイン・リヒカイトを蒼い炎が覆っていく。
「うおりゃあっ!!」
そして一瞬の輝きに続いてペルゼイン・リヒカイトを貫いた蒼炎の不死鳥はサイバスターへと姿を戻し、大きな爆発とともにペルゼイン・リヒカイトは地面に力なく落下した。
「やったか!?」
「…いや、まだ動いてやがる!」
マサキとレイが視線を向けた先では、ボロボロになったオリジナルのペルゼイン・リヒカイトがよろけて刀を支えにして辛うじて立ち上がろうとしていた。
「まさかここまでの力があったとは思いませんでしたの…今日はここまでに致しますの……」
「!」
「それに……今頃は……」
「今頃?どういうことだ?」
レイとマサキがアルフィミィと戦っている間になんとか態勢を整え直したキョウスケが問う。
「キョウスケ……あなたの周りにいる者達を……守護者……もう一つのルーツ……その力を……それらの存在を抹消すれば……あなたは……」
「何……!?」
「そしてレイ…あなたの力…あなたの心…興味が湧いてきましたの…近いうちに……また…必ず…」
そう言ってレイのペルゼイン・リヒカイトを押さえ込んでいた鬼面、残ったアインストアイゼンともどもアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトは歪んだ空間の中に姿を消した。
それを見て戦闘の終了を認識したそこにいる者すべてが大きく息を吐いて、自分の生を確認した。
そしてレイのペルゼイン・リヒカイトがいち早く立ち上がると、最初に飛び出してきた海へと歩いていく。
「待てアカオニ、いやレイ・ザ・バレル。悪いが、一緒に来てもらう」
「ちっ、正体バレちまったな…」
「ちょっと待ってください、キョウスケ中尉!俺に少し話をさせてください!」
私怨
シンがそこに強引に割り込むと、ビルガーのコックピットを開いてペルゼイン・リヒカイトの足元まで歩いていく。
それに答えようとしたのか、ペルゼイン・リヒカイトが淡いイエローの光に包まれ始め、その光が徐々に小さくなっていき、その光の中からシンがよく見慣れた姿が現れる。
「レイ…」
「久しぶりだな、小僧」
レイの下へとゆっくりと歩いていったシンは、1つ、2つ言葉を発し損ねた後に何かが決壊したかのように喋り出す。
予想をしていなくもなかったが、信じたくなかった、出来れば実現して欲しくなかった現実との直面に、シンの心は大きく揺れ始め、心拍数が高まっていく。
「どうしてお前があんなのに乗ってるんだよ、記憶を失くしてたんじゃなかったのかよ!?」
「記憶はまだ戻ってねえよ。本当だ」
「じゃああのロボットは何なんだよ…!」
「あれはさっきの訳のわかんねえお嬢ちゃんが俺の頭の中で話しかけてきたときに『出せる』ようになったんだ。ほら、ちょうどお前が俺に会いにきたろ?そんで戦闘が始まった後のことだ」
「!」
それはシンが忘れもしない、シンがレイに再会したついでに、2度と会いたくないアスラン・ザラとも会ってしまったときのことである。
「もしかしてあの時、俺を助けてくれたのか…?」
「…まあな。それにスタッフの連中もまだ近くにいたからな…」
少し照れて顔を赤らめ、左上の方へ視線を泳がせながらレイが答え、続けて口を開く。
「それにやっぱり俺はお前を知ってるらしいな。戦ってるとき、お前の動きを見ていてそう思った」
「レイ…」
「いいぜ、三食コーヒー付きで俺に危害を加えないってならお前らと行ってやる」
「え…いいのか?」
「ああ、それにお前らはあのお嬢ちゃんとか化け物どものこと、ちったぁ知ってるんだろ?」
「こちらとしても話せることと、そうでないことはあるがそれでもいいか?」
1人で話を進める結果となってしまっていたシンに代わって、そこにいる一番階級が上であるキョウスケが口を挟んだ。
「気に喰わなかったら勝手に出て行くだけだ。別にかまわねえよ」
「わかった。では…」
「キョウスケ中尉、大変でござんす」
レイを乗せていくべく、キョウスケがアルトアイゼンの腕を差し出したところに、ラミアがいつもの口調で報告を開始する。聞いた者をとても驚かせた報告を。
「伊豆基地がアインストの大軍に襲われているそうでございますです」
つづく
レイ「ついに姿を現したアインストの中ボスアインストレジセイアを、R−GUNと力をあわせたSRXが
撃退したのも束の間、今度はシロガネに乗ったシャドウミラーが攻め込んできやがった。
そして心動いたラミアの繰り糸がとうとう断ち切られる。次回『捕獲』!」
シン「いや全然予告になってないだろ!?」
レイ「あんまり予告でネタバレしすぎてもアレだろ?」
シン「つかレジセイアとかはどうしたんだよ!?」
レイ「招かれざる異邦人は主役不在のためオミットされました」
シン「ちょwww」
レイ「気にするな、俺は気にしてない」
シン「少しは気にしろよw」レイ「それにここでSRXに出てこられてみろ、どうなることか」
シン「どうなるんだよ?」
レイ「お前の影がますます薄くなる」
シン「たまにはオミットもいいよね、答えは聞かないけどorz」
GJ、お疲れでした。まあ、確かにゲーム本編と同じであるならば
SSにする必要もないですしなー。状況説明だけして
次に進めてもいいと思いますよ。
しかしそれにしてもここのリュウタロス……じゃねぇ、シンは
カゲ薄くなるなぁ。新しい機体手に入ったらスポットライト当たるかしら。
GJ
>>376 まあ、仕方がないんじゃねぇの。
だってさ、ライバルが紅茶だぜ?
悔しいけどサイバスターの技が主役っぽすぎて、
レイみたく出番が多くなくても必殺技一発でカッコ良すぎるw
シンは…ほら、きっともうすぐ…
この先、シンが目立つ方法…
万策尽きて大ピンチの時に、何処からともなく4機のソルグランディーヴァが飛来してデスティニーと炎皇合神!
汝、紅の牙となれ!ソルデスティニー!!
…ってのは?
アルフィミィに声掛けられたレイ
ラクシズに目つけられた紅茶
言わずもがなのキョウスケandマサキ
…シンの影が…やっぱりミラコロ主人公なのか…orz
まあ、しゃあないね
GJ
最初に比べて、サイバスターやソウルゲイン、スレードゲルミル、ペルゼインと、
派手で強い機体がわんさか出てきてるから目立ちにくいかもな
ラクシズが動きだすからこれからはそれなりに目立つでしょ
まあ待て
次はこのSSのメインヒロインのターンだろ?
だったらシンが中心になって活躍しないはずがない
・・・よね?
後はスクール関係か?
でも最初思ったより、ラトやアラドとあまり交流してないんだよな劇中では
本編に準拠する以上どうしてもルート分岐という壁があるからな。つか21話から分岐開始してた。
ハガネと一緒にアビアノ行けばスクールがメインになったのかもしれんが
乗り換えが影鏡関係っぽいし、最初からつるんでたATXチームはヒリュウと伊豆だからな。
ルート分岐とイベントをスパロボミュージアムで確認してきたがおおまかなイベントは
欧州ルート・・・ゴスロリオンとリクセント奪還、やさぐれスレイ、ビルガー登場、マシンナリーチルドレン登場
極東ルート・・・スレゲVS親分、龍虎王とアインスト、髭男、インスペクター
という感じ。個人的な意見を言えば、
欧州ルートの強みはスクール・チームTDを強化できる、ラクシズ絡めて機械子供出せる。
でも戦闘はやや地味になる可能性とアラドビルガーの登場のインパクトが弱くなる。
極東ルートの強みは派手な機体が出てきたり、影鏡絡み・ATX・α主人公組を強化できる。
でもスクールの絡みは弱くなるし、レイを出すのが決まってたならアインスト以外の別の方法とイベントが必要になるって感じだろうか。
鉄さんが最近来なくて寂しいのう。
つーかさ、誰が捕獲されるんだ?
>>375 GJ! だいぶ話も進んできましたね、敵味方双方で戦力も強化が進み、シンのビルガーもどこまで頑張れるかな。……粉微塵になったりしそうで怖いけれど。
個人的にはクォヴレーの介入がどこまで入るのか、またラクシズらと出会った時の反応は? クォヴレーの世界でのラクスたちはどうだったのか? そこら辺が気になってます。
なにはともあれGJなのです。
ヴァイサーガを運命っぽくするためにDGGのパーツと武装を使ってラピエサージュなマ改造とか言ってみる。
>総帥
説明文からすると久保はサルファ世界のラクシズしかしらないのでは?
いまさらながらにヴァイサーガを金ぴかに塗りたくったら
キバの皇帝フォームにそっくりになることに気づいた
ATX氏の久保さんは自分の知ってる共に成長したキラと変な方向に行ってしまったキラ准将の
ギャップに悩むらしいがw
11氏の久保さんはどうなんだろう
αナンバーズがラクシズの「抑止力」だと明言されてるあたりからすると
負債っぽいラクシズ見たら驚きはするだろうが
アストラナガンの使い方次第では対決もありうると思う
電波ポエムは変わらず言ってたからな>サルファラクス
逆シンスレで11氏が正統派ラクシズヘイト認定されてて不謹慎ながらワロタw
つかスパロボZのCMやジャンプの表紙裏にある種死の絵が和田な時点で
もうZに期待するのはやめたわ
>>394 笑っちゃうくらいスルーされてたけどなw
つかここで言うのもなんだが、正直ストフリカッコ悪くね?
あれならフリーダムのがずっとカッコイイと思う。基本グラとかサーベルのモーションとか。
>>397 大河原曰くフリーダムは最高の出来らしい
ストフリは金色関節と腹ビームがダサすぎる
それと、フリーダムよりもデブくなったのもマイナス
影鏡の目指す世界とラクシズのもたらす世界って実はかなりの部分で重なるような…
どちらにせよZは買う
出来が気に入ればマンセーするし、気に入らなければ再構成してSSの肥やしになってもらう
>>399 影鏡馬鹿にするな。
影鏡は「ずっと戦争状態なら社会が腐敗する暇もなくて兵士たちが無用とされなくなるんじゃね?」
ラクシズ(原作漫画版)「降りかかる火の粉は払う」
ラクシズ(一部媒体)「世界の情勢が悪いのは○○の仕業だ!」
>>401 スマソ、影鏡を叩くつもりなんか微塵もないんだ
ラクシズが好き勝手に暴れつづければ連中の思惑とは裏腹に世界中で争いが絶え間無く続くだろうから
結果的に影鏡の欲する「状態」にはなるんじゃなかろうかと言おうとしただけなんだわ
>>402 アクセルが修羅の暴れる世界を見て「これは俺たちの求めていた世界とは違う」と考えた
のと同じになるのでは?
まあアクセルとワカメが求めていた世界が同じだったかどうかもあるが
>>403 まあ世紀末覇者な世界ですからね>修羅世界
技術や社会が後退するってのはヴィンデルも望んで無いでしょ、「争い続ければ進歩も続く」って理由もあった訳だし
向こう側の世界は未だ断片的な情報しかないからな
今出てる情報だと、
・キョウスケがアインスト化
・エクセレンの代わりにレモンが存在している
・クライウルヴズはあちらでも連邦特殊部隊で、影鏡のクーデターは彼らによって潰された
・ラトゥーニはスクールで使い潰されて死亡
・SRX計画は頓挫?
・ブランシュタイン家はエルピス事件で全員死亡
・リュウセイは多分パイロットになってもいない
こんな感じだっけ?
ラミアがSRXはなんやかんやで完成したとか言ってなかったか?
ヴィンデルの望む理想の世界って、
どちらかと言えばGガンダムに近い気がする。
統御された戦争が永遠に続き、
ファイターたちは尊敬を受け互いに切磋琢磨し続ける。
>>406 バルマーより先に、インスペクターが来たのに何故かトロニウムもあったみたいだしな。
影鏡世界でトロニウムよこしてきたのはOG世界では滅亡すら
疑われてるバルマー本星勢力かもな
すいません。ちょっと短編ssを投下しようと思っているんですが、テッカマンって
ネタが通じる人いますか?
今はちょっと手直し中で、投下にはまだ時間がかかります。
無印かブレードかwktk
あ、クロスネタは宇宙の騎士テッカマンブレードです。
はい、スパロボで有名になっちゃったから投下先はここでいいかな、と。
ダメですか?
ちなみにコテの由来はもちろん
「いくら(中略)この至近距離からのボルテッカではひとたまりも……何ぃ!?」の人です
単体クロスなら○○が来たらの方がいいんじゃないかな?
>>412 スパロボオリジナルキャラとかスパロボ出演作品とかが、テッカマンと同じくらい出て来るならココでいいよ。
テッカマン単体ならクロス統合の方に行ってくれ。
じゃないとわざわざ個別スレで立ててる意味が無くなる。
該当スレがないならここでもいいと個人的には思うんだがなあ
スレごとの住人の質とか嗜好って明らかに違うし
ここもしょっちゅう投下あるわけじゃないし、
投下してもらって様子見してからでもいいような…
もうクロススレの方に投下したみたいよ
しかしランスさんのスパロボでの噛ませっぷりは異常
ブレードはおろか、ガウルンにボコボコにされ、劾にも敗北する
あまりに酷すぎるw
おいおい、ミヒロを忘れてもらっちゃ困るぜ?
ランスさんの伝説は出る度に更新されてく感じだよな
とりあえず読んだらレスしに行こうぜ
この流れの直後に質問するのも何だけど、スパロボ未参戦の作品や、これから先参戦する見込みが無さそうな作品を加えた、版権スパロボSSってのはスレ違いになるのかな?
一応、単体クロスではなくて、従来の参戦作品やOGも一緒だけれども、矢張り総合クロスの方が無難だろうか
>>420 種・種死・OOが参戦してればスレ違いじゃないと思うぞ
空気参戦だとマズいけどw
空気参戦って…11氏のシンがヤバイじゃないかw
待て、あのシンは一応主役だw
>>420 ウーム……以前に総帥がビアンSEED本編にダイノガイスト様を参戦させたいって言った旨を拒絶した前例があるからなあ……
別に総帥におもねるわけじゃないんだけど、これを認めると逆に、あの時に否定したのは何だったんだ、という不公平感が出てしまわないかと
いや、あれは総帥のが特殊というか特別なんだと思う。
総帥のは既に種やOG、さらには各版権スパロボからもキャラが出てるという超絶カオスで、
その上主役級のキャラが山のようにいる状況だったからね。
そこにダイノという超存在感あるキャラ混ぜたら、奇跡的にいい感じに保たれてるバランスが崩れてしまうのではないか、という懸念があったんだと思う。
まああの時点でもうだいぶ話が進んでたビアンSEEDに勇者ロボが出るのは不自然だから
最初からクロスオーバー前提なのはまた別だと思うが
427 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/17(水) 00:20:24 ID:LIz0+gGJ
いきなり話変わってすみませんが、11氏のSSではシンにアシュセイヴァーに乗って欲しいと思うのは私だけでしょうかね?
原作では条件満たさないと入手不可能ですがこれからのシャドウミラーやラクシズとの戦いを考えたらビルトビルガーでは少し無理があるのではと思いますし。
でも、入手に関してはどうしますかね?
原作を考えてラミアから引継ぎますかね?
>>427 せっかくヴァイサーガが用意されてるらしいのに何故にアシュセイヴァー…
そんな……ひどい……
>>427 シンがアシュセイバーだとそのカスタム機なラピ☆エサに乗るキラに対抗できるか不安になるなぁ
しかも赤鬼と関つながりでペルゼインからモモタロスを再現した11氏なら
赤いマントと石田つながりからシンが乗らなくなったヴァイサーガが
金ぴかエンペラーフォームにカスタマイズしちまう悪寒wwwwwww
いっそのこと、二機が合体してヴァイセイヴァーってのはどうよ
魔改造されたデスティニーじゃ、ダメですか…?
>>427 射撃寄り万能型であるアシュセイヴァーは、どっちかというとシンよりレイ向けだろう
砲撃端末装備してるし、少し癖が足りない感じというか
11氏の話だと何となくヴァイサーガっぽいんだが、やはりシンは運命に乗って欲しいなぁ
万能型にしようとして器用貧乏な感じに仕上がった運命を、マリオン博士やらイルムパパやらに弄らせた暴れ馬にして
ヴァイサーガをベースにして運命の要素を盛り込みまくるんじゃだめなのか?
ヴァイサーガに砲撃は似合わない気がする
光の翼も……こっちは演出次第か?
ヴァイサーガには吹堕の大好きな背負いモノがないからそれも難しいような…
つかナイトガンダム世代の俺は翼とかよりもマントの方が好きだw
こんにちわー。近況報告といいますか、今のところビアンSEED4割くらいかけました。週末ごろには投下できるかな、と思います。とりあえずボアズ戦を終わらせます。
ダイノガイスト参戦がだめだったのは、意見を聞かせて下さいとお願いした時から無理あるなあ、と思ってましたし、今思えばそうしなくて正解だったと思っています。その分別の場所で活躍しておりますし。
そしてなにやらヴァイサーガやアシュセイヴァー論議がされている様子。……ソードカラミティよろしくアロンダイトとかシシオウブレードを持たせてソードアシュセイヴァーにするとか?
ヴァイサーガは、個人的にはアスランの乗機にはあまりなって欲しくない所ですけれど。ちなみに私のほうでは運命編でゼオルートがヴァイサーガに乗り換えてガッツォーとガチンコする予定でったり。
>>436 OK総帥、一つ忠告だ。
「先の事はあまり語るべきでない」
サプライズを減らすのはベストチョイスとは言えないぜ?
ビアンSEED本気で楽しみにしていますので
無理をなさらず頑張って下さい
どうも427を書いた名無しです。
ヴァイサーガも改造とかしなくても十分強いので好きなのですが原作ではラミアしか乗れない機体でしたからね。
精神調整とかされてないシンには扱うことは不可能なのではと思ったりします。
って今の時点ではですが。
それとアシュセイヴァーは誰でも乗れる機体なのでその点を踏まえてシンにアシュセイヴァーに乗って欲しいと書いただけです。
でも、660氏の考えたソードアシュセイヴァーはいいかもしれませんね。
しかしシンが新たに乗ることになる機体がアシュセイヴァーでもヴァイサーガでもこれだけは確実だと思います。
1.レモンがキレる
2.その八つ当たりにアクセル達が巻き込まれる
3.それが原因でアクセル達の抹殺リストにシンの名前が入る
4.シンとラミアの仲が又一歩進展する
以上のことが起こりそうで怖いです。
そして、ビアンSEED私も楽しみです。
焦らずじっくり頑張って下さい。
ヴァイサーガじゃなくソウルゲインとアシュセイヴァーを二身合体すると
合体事故でドリルのついた別世界の特機になるようです。
>>438 むしろレモンは喜ぶんじゃないか?
このままだとヴァイサーガは凸が乗ることになってしまう訳で、そこから考えれば調整云々は問題ない筈。
でもってレモンと凸(というかラクス)は仲悪いってレベルじゃないから、
そんな奴等に引き渡すよりはラミアと仲がいい(と思われる)シンに譲渡した方がずっとマシだと考えると思う。
つかヴァイサーガって元々はアクセルも乗ってたよね。
現状OGではラミアしか乗れないけど、アクセルも乗せたいって考えてる人はけっこういるんじゃないだろうか。
地の文でさりげなくシンにも使えるような仕様になりつつあるからな>ヴァイサーガ
大穴で一人目キラと言ってみる
こうなれば、この運命を持ってくるしかないな
○カタログスペック
・ジェネレーター出力:4200kw
・スラスター総推力:180000?L
・センサー有効範囲:19800m
・全高:17,2m/重量:78t
・装甲材質:H−νチタン合金
○機体装備
・イーゲルンシュテルン×2
・MIN−L9高出力ビームライフル×1
・320mm収束/拡散陽電子砲『イツァム・ナー』×1
・陽電子リフレクタービット(バハムートシステム)『アンフェリオ』×4
・MA−M03ミレイドビームサーベル×2
・高電子分解マニュピレーター『ジュレイミ』×2
○解説
ザフトニューミレニアムシリーズの集大成として、戦争の早期終結を願うギルバート・デュランダル議長の指示の下、極秘裏に開発されていた「核エンジン」搭載の試作機。
そのため、その出力やパワーは既存のどの機体に対してもまさに桁外れと言えるスペックを有している。
その設計思想は、二年前のZGMF-X10A『フリーダム』とZGMF-X13A『プロヴィデンス』 の影響を強く受けたものである。
中でも特筆すべきは、ドラグーンシステムを改良して作られた『バハムートシステム』だろう。これによって機体に装備されたリフレクタービットを遠隔操作し、オールレンジの攻防両立を確立させた。
また本機体にはパイロット保護のための「リミッター」が装備されている。
このリミッターを解除した「フルアクティブ・モード」では、パイロットを無視した機動性を発揮し、更には核エンジンにより生み出される膨大な量のエネルギー粒子を刃として形成して、武器として転用することも可能になる。
実際問題、マシンセル隠者はどんくらい強いんだろうか
ビルガーよりは強そうだが元が種MSにすぎないから
ソウルゲインやスレゲ、ペルゼイン(モモタロス)には劣りそうだが
>>443 これまた懐かしいものを……
放送時に出回った嘘スペック運命か
448 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/18(木) 22:44:14 ID:nARQpZgq
>>445 確か、隠者のハイパーデュートリオンエンジンの核分裂エンジンをOG世界でお馴染みのプラズマジェネレーターに換装してPS装甲を外してマシンセルを注入したのがジャスティスゲルミル
マシンセルと量子コンピュータやデュートリオンシステムやPS装甲材フレームなどの相性にもよりますが
よくて、ラピエサージュ(キラ仕様)と同等と言ったところだと思います
いや、リフターの防御力とマシンセルの再生力を考えるとPTにとっては特機並に性質が悪いかもしれません
ラピ☆エサにはマシンセルはなかったはずじゃね?
俺よりも詳しく解説できてる人がいたwww
総帥が今週末あたりのようですので俺は来週の半ばすぎくらいをめどに投下します。
作者よりも詳しい設定の解説が出来る
まさにガンオタの鑑ですねw
>>450 お待ちしておりますよ
452 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/19(金) 19:58:16 ID:DZIvsAzX
448だった名無しです
って、メカ隠者の戦闘力に対する考察が抜けていたorz
メカ隠者自体は、コンセプト的にはアルトやビルガーに近いんですよね、先陣を切って防衛戦に穴を開けて和田(今はラピ☆エサ)の火力で穴を広げる
すっかり忘れていたけど隠者って(展開中でも内側から攻撃可能な)ビームシールドがあったよ
予想では、PTやAMサイズにおいて現時点では最強クラス…ビームシールドとリフターの御陰で固すぎる
更にビルガーの天敵…接近戦では全身のビーム刃でカウンターを喰らう確率が高く(ビクティムピークは自殺行為)、遠距離戦では防御に阻まれるか回避される、中距離戦では火力の差で押される
>11氏
マシンセルの自己進化能力によって、PS装甲材フレームのデータを利用して、装甲(マシンセル)がPS装甲の能力を持つなんて悪夢が起きないことを切に願います
そして、メイガス経由で他の『マ(シンセル)改造機』にフィードバック・アンド・自己進化の鬼コンボも起きないといいな(涙目)
……マシンセルって、(ウルズ曰く)地球環境回復にも使えるから、分子操作によるナンチャッテ錬金術ができそうで怖いです
ラクシズって、CEの技術をどれぐらいNDCに提供しているんでしょうかね
汎用型ドラグーンのデータがあれば、シックス・スレイブも強化される可能性もあると思います
テスラドライブ抜きでも巨大人型兵器(量産機レベルで!)を飛行可能な技術も使いようによっては厄介です
ビームシールドもミラージュコロイドも光波推進システム(デスティニーや和田の光の翼)も凄いと思うのですが
ラクスの事だから相手が隠者の解析で得たデータと殆ど変わらないデータしか渡していないんだろうな…考えてみるとビームシールド持ちのベルゲルミルでも十分脅威ですね
マシンセルってぶっちゃけDG細胞だよね?
つまりデビル隠者にデビル和田。果てにはエターナルからストフリヘッドがわらわらと……
でもさあ、種系のもっさりなドラグーンでさあ、普通のヤツじゃ対処しきれる気が
全然起きないぐらい早すぎるシックススレイブの参考になるとは思えない
保守
そろそろ総帥の投下タイムかな
残業なんか嫌いだーー!! というわけで(なにが?)遅ればせながら投下をさせていただきます。よろしくお願いします。
ビアンSEED 第六十六話 ボアズの陥落・静寂の転章
ボアズから送られてくる戦況を聞きながら、ヤキン・ドゥーエへ配属されたイザークらは、他の兵士らと共に苛立ちと不安を押し隠せぬ表情を浮かべていた。
プラント本国を守る防衛の要であるボアズが、そう簡単に落ちる筈はないと頭では分かっているが、理性による説得を受けても感情の方は容易には納得しようとしない。
ザフト最精鋭部隊の誉れも高いWRXチームの自分が、ただこうして見ているだけという現状に甘んじているのは、歯痒さばかりを増すばかりだ。
他の隊も、ベテランや隊長格、年長者達が不安に踊らされる新兵や同僚たちを励まし、自分に言い聞かせるように、ボアズの防衛部隊とコーディネイターの優越さを語り、地球連合の猛攻を撥ね退けるに違いないと囁いている。
地球連合がMSの開発に成功して以来、これまでの優勢が嘘のように地上の各戦線で敗退を喫してきたザフトだが、彼らの庭である宇宙でさえも同じ目に逢うつもりなど毛頭なかったし、そうはならぬという矜持もあった。
だが、現実に地球連合のボアズ侵攻が起きた時、誰もかれもが言い知れぬ不安を胸に抱き、明日を迎える事が出来なくなるという恐怖が、じわじわと染みの様に領土を広げていた。
ザフトのエリートであることを証明する赤服ではなく、WRXチームの制服に身を包んだイザークは、壁に背を預けながら、苛立ちを押し殺すように腕を組んで険しい表情を浮かべている。
銀の髪に彩られた顔立ちは、美男美女の多いコーディネイターの中でも目を引く華やかさを持っていたが、当人の烈火の如き気性と、今現在の不機嫌さとが如実に表れていて周りに近づこうとする者はいない。
チームメイトのルナマリアやシホは、多少の不安が時折顔を覗かせるが、それでもじっと新しく入ってくる戦況に耳を傾けている。
肩や腰回りを覗けば極めて面積の小さな黒いビキニという他ないDFCスーツの美少女二人の姿は否応にも周囲の人間の目を引いたが、ボアズの戦況が決して好ましいものではないとか分かると、自然と視線は剥がれていった。
年齢にそぐわぬ肉感的な凹凸の激しい輝かんばかりの肌を黒皮で締め上げ、子供と大人の合間の未成熟な肉が色香を纏うルナマリアも、雪のような肌に長く延ばされた髪の黒が映える清楚な魅力に妖しさの成分を混ぜたシホも、ボアズの戦況に固唾を飲んでいる。
イザーク同様に壁に背を預けたレイは常と変らぬ氷細工の少年のような無表情だが、流石に今回の連合の大規模な侵攻に緊張を感じているのだろう。熟練の達人の彫りあげた美仮面の如き秀麗な顔の眉間に寄せられた皺の数が、いつもよりわずかではあるが多い。
唯一、隊長であるヴィレッタ・バディムだけが普段と変わらぬ様子ではある。つい先ほどまで、R−1、R−2、R−3、R−GUN、R−SWORDの詳細な調整作業を一手に引き受けていたのに、疲労の影も無い。
肩を出した特徴的な制服に身を包み、腕を組んだまま冷たいとも取れる瞳で続々と伝えられるボアズの戦況を静観していた。
固く結ばれた色素の薄い、形の良い唇も、氷のレンズを嵌めているようにどこか冷たさを帯びる瞳も、動く事はない。
天井から投影されている立体映像に目をやりながら、ルナマリアが呟いた。ボアズめがけて猛威を振るいながら暴れ狂う地球連合の新型特機アズライガーの存在が確認され、その戦闘能力は話半分にしても凄さまじいの一言に尽きた。
「また新しい特機を出してくる何て、しかもDCのヴァルシオンの同型機もいるんでしょう? 鹵獲機かコピーかは知らないけど連合ってまだそんな余力を残してたの?」
「ザフトも、メディウス・ロクスやRシリーズ、ゲイツに核動力機の配備を進めていたけれど、やっぱり元の国力の差なのかしらね」
ルナマリアに答えたシホの言うとおり、ザフトも禁断の核の力を蘇らせるニュートロン・ジャマー・キャンセラーを搭載したフリーダムとジャスティス、専用の特別兵装であるミーティアとその量産型であるヴェルヌを開発し、配備を進めている。
エース級パイロットが乗らねば真価を発揮出来ぬ癖の強い核動力機だが、地上からの撤収部隊を数多く回収し、本国に残っていた精鋭達の数も十分であったから核動力機が余るような事態にはなっていない。
実際、核動力機部隊の戦闘能力は、アズライガーが出現するまでのボアズの戦闘をザフト優位に進めていたことが証明している。
だがアズライガーの投入とそれを守護する二機の機械巨神に加え、彼らとは反対の方角からボアズへ猛攻をかける連合の別動艦隊に押し込まれ、ボアズの防衛網は徐々に押されていた。
しゅっと小さな音がして、スライドした扉から淡い青色の美女が姿を見せた。歩くたびに揺れる豊満な胸元や、慎ましく窪んだ臍、付け根から大胆に露出し輝かんばかりに剥き出しの太ももを、わずかな黒布が覆うばかりの出で立ちである。
DFCスーツ着用者の三人目、アクア・ケントルムだ。先のベルゼボ戦にて、TEアブソーバー、サーベラスの調整の為一足早くプラント本国へ戻っていたが、今回再びWRXチームと行動を共にする事になっていた。
だがメディウス・ロクスとサーベラスの開発者であるエルデ・ミッテの行方が知れず、調整に今の今まで手間取っていたのだ。
シホ達の顔を見つけたアクアが、焦った表情で近づいてくる。彼女もボアズ侵攻の話を聞いて慌てて真偽のほどを確かめに来たのだろう。ルナマリアに開口一番問いかけた。
「ボアズは? 連合が攻めてきたって本当なの!?」
「はい。確認できているだけでもMSが二千、さらに月からの増援も相当数確認されているって」
「ボアズの常駐戦力の五倍近いじゃない!? 普段の倍くらいの数が詰めていたからまだいいけど、それだけの数をもう揃えて来たの」
「今はフリーダムやジャスティスが前面に出てなんとか抑えています。クオルド隊やブランシュタイン隊、ホーキンス隊、サトー隊とエース級が揃っていますし、まだ大丈夫だとは思いますけど」
「DCからの援軍は?」
「ヤキンに駐留しているのとは別の部隊が動いているみたいです。ただ、どれくらいの規模かはわからないですけど」
「……そう、間に合うといいわね」
宇宙に浮かぶ歪な岩の塊を彩るオレンジの火は、絶える事無く生まれては消えて行き、数千、数万の命が散華し続けている事を告げている。
地球連合、プラント、ディバインクルセイダーズの三勢力の命運を分かつ大宇宙の片隅で火ぶたを切って落とされた戦いは、地球連合の圧倒的優位へと移りつつあった。
地球連合艦隊本隊の先頭を突き進む超規格外殲滅兵器アズライガーと、その守護を任された異世界からの異分子であるヴァルシオン改と量産型ベルゲルミルは、阻む術なき暴風となって荒れ狂い、対峙するザフト諸兵を小枝の如く蹴散らし続けている。
アズライガーの投入によって乱れ切ったザフトの戦線に、圧倒的な数の優位を生かした地球連合艦隊の砲撃が五月雨のように突き刺さり、両者の間を光の糸が幾重にも結んでいる。
フリーダムとジャスティス、それに専用の装備であるミーティアとその量産型であるヴェルヌを投じる事で確保した序盤の優位は、すでにザフトにはなく、互いのジョーカーをぶつけあう事で戦局の変化を狙おうと部隊を動かし始めていた。
ザフトにとって不幸なのは、地球連合側にアズライガー・ヴァルシオン改・ベルゲルミルクラスの戦闘能力を有する部隊が、他にも存在したことだろう。
ωナンバーズ、ロンド・ベル、ダンディライオンで構成されるω特務艦隊だ。
地球連合製スーパーロボット・ガルムレイドや、WRX、ヴァイクルを筆頭に自覚なきままに異なる世界の技術を手に戦う彼らもまた、恐るべき鋼の旋風となってザフトに暴虐と破壊をもたらしている。
「バーニングブレイカァアーー!!」
全身から滾らせたターミナス・エナジーを炎のように揺らめかせ、紅の巨人ガルムレイドの拳が、ローラシア級の船腹にめり込み、莫大な量のTEを船体内部に流し込んで爆砕させた。
機体の堅牢さと高出力から、部隊の先陣を任されたガルムレイドとそのパイロットであるヒューゴ・メディオだ。黒いラバースーツ風の専用スーツに身を包み、周囲の状況を把握すべくコンソールに目を落とした。
クライ・ウルブズやWRXチームとの戦闘では今一つ戦果が振るわないガルムレイドであったが、その他の戦闘では特機として恥じぬ戦闘能力を発揮し、開発者のミタール・ザパトの意向もあって少数の量産型が配備されている。
ヒューゴのオリジナル・ガルムレイドにくらべて装備や機能の簡略化が図られが、TEエンジンも出力の安定したものに変わり、製造コストも比較的抑えられていた。
視界の片隅で量産型ガルムレイド部隊の活躍を映したヒューゴは、わずかに唇を緩めた。自分が開発当初から関わった機体の兄弟たちの活躍だ。喜びを覚えるのも無理はあるまい。
オルガのカラミティやジョージーのR−2パワードの激烈な火砲支援のほか、複数のアークエンジェル級の火力は、数で勝るザフトのMSや艦隊と互角以上の戦いを行っていた。
カイの率いるクラーケン小隊とスウェン、ミューディー、エミリオ、ダナらシャムスとオルガの形成するビームの雨の中を駆け抜けて、次々とジンやゲイツを射ち落とし、ω特務艦隊とその後方にいる連合艦隊の血路を開いていた。
個々の技量の高さに加えて搭乗する機体の頭一つ以上飛び抜けた性能もあって、核動力機を配備していなかったザフトの部隊は、ただ撃墜されるためだけに出撃してきたかのように数を減らしていた。
アズライガーという途方もない破壊に目を向け、虎の子の核動力機を集中させて対処した事が裏目に出ているのだ。
「前方のゲイツを薙ぎ払います。ゴッドフリート一番、二番照準!」
「新たにジン四、シグー二、来ます」
「イーゲルシュテルンで撃ち落とせ! 四番から七番、弾幕を張れ!!」
ゲヴェルの艦橋では間断なくレフィーナ艦長と副長テツヤの指示が飛んでいた。リーやナタルらと息の合った連携戦闘を行うアークエンジェル級三隻の姿はそれだけで勇壮な光景で、背後から続く連合の艦隊も士気を上げて続く。
「グレン、イングラム教官、突っ込みます!!」
「おっしゃあ、付き合うぜ、ムジカ! ジョージー援護頼む!」
「お任せを」
ムジカの赤いR−ウィングがミサイルとビームカービンとGリボルバーを乱射し、グレンのR−3パワードも小型艦艇波のサイズと推力に加えてメビウス以上の加速を生かし、マイクロミサイルをばら撒いて弾幕を形成して、三機のゲイツをまとめて吹き飛ばす。
イングラムが隊長を務める地球連合側のWRXチームだ。連合側のDFCスーツ着用者ジョージー・ジョージのR−2パワードの、TEランチャーの集束モードが先陣を突っ切る仲間へと群がるMSを牽制する。
収まる事を知らぬTEエンジンの大出力砲撃は、ついでとばかりに一隻のローラシア級の右舷を掠めて爆発を引き起こす。大小の爆発が無数に続き、轟沈こそする様子は見えぬが、ローラシア級の戦闘能力が奪われた事は確かだ。
鈍重な機体ながら、繊細な操縦技術で敵機の攻撃をかわし、ムジカとグレンに遅れてR−2パワードが続く。
宇宙に戦場が移ってからの数々の戦闘に加え、度重なるクライ・ウルブズという現地球圏最強戦力の一角との戦いで、今やルーキーであった筈のWRXチームのメンバーの戦闘技能は地球連合のトップレベルにある。
クォーターコーディネイター、ハーフコーディネイターであるグレン、ムジカ、さらに所謂ナチュラルの天才であるジョージーらの身体能力に、ベテランの領域の経験が加味されているのだ。
そんな彼らが乗るのは、地球連合の技術と因果の番人イングラム・プリスケンが齎した別世界のRシリーズのノウハウを持って生み出された、地球連合最強MSの一つWRXシリーズ。
彼らを敵にしなければならぬザフト兵士達からすれば、とことん運につき放された上に鋼の死神に魂狩の鎌を首元に突き付けられたようなものだ。
そんなこの世界の教え子たちの姿を見守るイングラムは、言葉静かにR−GUNパワードを操り、先行する三機のやや後方で援護に徹しながら追従していた。
量産型とはいえベルゲルミルにヴァルシオン改が投入され、さらにギリアムが手に入れたアズライガーのスペックが、データ通りに発揮されているのなら、恐るべきことにこのボアズはこの戦いで陥落するだろう。
かろうじて、WRXはイングラム・ヴィレッタ両方の側で完成するかどうかと言った所で、もう少し時間が欲しいのが本音だ。ギリアムがシュウ・シラカワから知らされたという邪神ヴォルクルスなる存在の事も大きな懸念材料となっている。
(絶える事無く招かれる異世界の死人達と機体、異世界の技術……。あまたの異物を受けながらこの世界は、CPSでかつて奴が作り上げたユートピアよりもはるかに安定している。……どうやら今までとは違う事情がありそうだな)
モニターの端で異世界の技術の産物であるガルムレイドや、イングラム自身が持ち込んだRシリーズの機体の戦いを認めて、イングラムはいまだ見つける事の出来ぬ、この世界で乱されている因果の大本に一瞬思いを馳せた。
ギリアムもイングラムもヴィレッタも見つける事が出来ずにいるこの世界の歪み。それがいかなる形で権限するかはわからぬが、それと対峙する時まで生き抜かねばなるまい。
それが、因果の番人の宿業だ。例え無限の世界に散らばったイングラム・プリスケンの欠片にすぎぬこの身であっても。
性質の悪い冗談のように次々と戦線が突破されて行く現実を前にして、ボアズの管制ルームに絶望が足音も高らかに迫る頃、地球連合側に傾いていた戦況がわずかに止まった。
構成されるMSがすべて核動力機で揃えられた精鋭クオルド隊が、アズライガーと接敵したのだ。隊長ラルフ・クオルドの駆るプロヴィデンスを筆頭にフリーダムとジャスティスを保有する破格の精鋭部隊である。
司令を筆頭に誰もが彼らに期待を寄せたのも無理はなかっただろう。管制ルームのオペレーターや司令官達が固唾を呑みこんで見守る中、ザフトの誇る核動力機が破壊の王へと戦いを挑んだ。
二機ずつフリーダムとジャスティスを従えたプロヴィデンスが、先程から暴虐の限りを尽くす盟主王に向かって背中のバックパックとスカートからドラグーンの子機を飛翔させる。
クオルド隊は、ザフトのトリプルエースの異名を誇るウルトラエース、ラルフ・クオルドを隊長とし、その下に四人のメンバーが在籍している。
戦前はただの塗装屋だったが、血のバレンタインを契機にザフトに入隊し、今では四十機のMAと十七機のMS、ドレイク級駆逐艦三隻撃沈のスコアを持つリオルデ・ジャイルズ。
すでに四十歳を超えるものの裕福だった両親によって最高級のコーディネイトを施され、人三倍負けず嫌いな性格もあいまってザフトでも上位十名に入る身体能力とMS操縦技術を維持し続けているジェット・ハンス。
貧困な宇宙港労働者の両親の間に生まれ、最低限のコーディネイトのみが施されただけにも関わらず、開戦初期から常に最前線で戦い続け、その戦果と頭から灰を被ったような髪の色から“灰被り姫”の二つ名で知られる女性エース、アリッサ・ウェンドラ。
動体視力や反応速度ではラルフと同等以上の数値を叩きだし、加速しているメビウスの機体に“着地”して、無反動砲や重機関銃を叩き込む戦法を得意とする若干十七歳の少年エース、ヴェルテス・ヴィーパー。
以上の四人にラルフを含めた五名で構成される。それぞれが専用の整備チームを持ち、核動力の配備前もシグーやジンハイマニューバーなどの、一部エースや指揮官用の高級機に乗って地球連合宇宙軍を嘲笑い続けた猛者たちだ。
クルーゼ隊が低軌道会戦で智将ハルバートンの第八艦隊を壊滅させるまでは、もっとも多く戦果をあげていた隊としてザフトと地球連合の双方に勇名を轟かせた超精鋭たちである。
「ジャイルズ、ハンス、あの特機の周りの機体を抑えろ! ヴィーパー、ウェンドラ、私達であのデカブツを叩く」
「了解!!」
ラルフの指示に従い、ジャイルズのフリーダムがベルゲルミルに、ハンスのジャスティスがヴァルシオン改へ、友軍の援護を受けながら向う。ラルフはウェンドラのフリーダムのハイマット・フルバーストに合わせてドラグーンに一斉射撃を命じた。
「行け、我が下僕達!」
両機合わせて四十を超すビームとレールガンの集中砲火の大半をかわし、残りも展開したEフィールドと両腕内部に仕込んだゲシュマイディッヒパンツァーで弾くアズライガー。
火力のみならず装甲及び防御機能までも、現在実現しうるあらゆる装備を搭載したその巨躯にダメージはない。
元々ドラグーンは個々の砲撃の威力が低い。二撃、三撃と複数回撃ち込まねばMSを撃破するのは難しい兵装だ。
アズライガーはもとからドラグーンの単発程度など通じぬ分厚い装甲を持ち、加えてEフィールドとゲシュマイディッヒパンツァーが、堅固な要塞に鉄壁の城壁を幾重にも築いている。
ドラグーンのみならずクスフィアスやバラエーナ、ルプス・ビームライフルも結果は同じで、Eフィールドとゲシュマイディッヒパンツァーの複合防御兵装の前になんの効果も見せていない。
「ちい、なんという防御だ。だが、攻撃に移る瞬間は解除する筈。その時を狙うぞ!」
「はっ!」
「おれが落としてやりますよ、ラルフ隊長!」
アズライガーが反撃に撃ったスプリットビームガンの雨をかわし、ラルフのプロヴィデンスをはじめとした三機の核動力機が散らばる。
確かにラルフの言うとおり、両手の指に仕込んだスプリットビームガンを放つ際にEフィールドなどは解除され、アズライガーの防御は装甲のみになる。そこを見逃さずビームライフルのトリガーを引いたのは、流石にザフトのエース達といえた。
三機のMSの放ったビームが全高百メートルを超すアズライガーへ熱烈に殺到した。脳髄となったソキウス達とゲーザが、ビームが放たれるよりも速く反応し、数千トンに及ぶ超重量の機体が、軽々と虚空を飛んだ後の空間をビームが薙いだ。
「なんてスピードッ」
アズライガーの見た目からは到底信じられない機動性に、普段は無駄口をたたかず淡々と戦闘をこなすウェンドラの唇から、驚きの声が零れた。
アズライガー中枢の戦闘ユニットゲーザ・ハガナーはドラグーンによってビームガンバレルが破壊される可能性が高いと判断して使用を中断し、十門のスプリットビームガンの弾幕を張る。指先とは言ってもMSの使うビームライフルが針の先に見える大口径だ。
核動力機に採用されているアンチ・ビーム・コーティングを施したシールドは、カラミティの持つ最大火力スキュラの直撃を数秒間受けても、表面が若干融解する程度のすぐれた耐久性を持つ。
だが、核動力に加えてTEエンジンから供給される莫大という言葉でも足りぬ出力を誇るアズライガーの武装が相手では、シールドごと機体を撃ち抜かれるのがオチだろう。一発の被弾も許されぬ過酷な戦いであった。
アズライガーは頭部にある計四門の短射程のビーム砲ツォーンと、全身に内蔵されたレーザー砲塔で三百六十度あらゆる方向から迫る敵機を迎撃する事が出き、胸部にあるスーパースキュラ三門によって正面からの接近も不可。
左右上方から迫る敵には、両腕に装備されたスプリットビームガンが、下方から迫る的には腰に装備された470mmターミナスキャノンが、戦艦の主砲も子供だましに思える火力で迎え撃つ。
ヴィーパーのジャスティスも特化した接近戦闘が挑めず、ファトゥムのフォルティスビームキャノンとビームライフルで何とかアズライガーの鉄壁の防御を崩そうと奔走していた。
絶え間なくドラグーンを操作して無数の光の雨を降らし、ウェンドラもかすかな隙を見つけてはバラエーナやクスフィアスを撃ち込んでいる。流石にハイマット・フルバーストを撃てるほどの余裕はなかった。
「あははは、なんだソレ? そんなのでぼくを倒せるわけがないじゃないか!!」
唇の端からよだれを垂らしながら、狂人そのものの顔つきで笑い続けていたアズラエルが、纏わりつく羽虫たちの苦労に甲高い笑い声を零して嘲蔑する。
濁りきった瞳の中に高速で飛びまわるクオルド隊各機を認め、アズラエルは両手の人差し指を添えたトリガーを引いた。
「来るぞ、各機回避しろ!」
眉間に走るかすかな雷が、眼前の魔神の殺意を意味するものと悟ったラルフがウェンドラとヴィーパーに警告を発した。
とある世界において、ムジカ・ファーエデン同様にニュータイプの素養を持ち、オーラバトラーからヘビーメタル、ウォーカーマシン、モビルスーツへの搭乗適性を持ち合わせ、天才と称されたエースの実力は、この世界においても同等のレベルを誇っていた。
自分達よりも常に一歩も二歩も先に危機を察知し、確実に回避するラルフの能力に絶大な信を置くヴィーパーとウェンドラは、即座にこの警告に反応して機体の機動をランダムな回避運動へと変える。
「消ぃいいええええぇぇろぉおおおおおおぉーーーー!!!」
アズライガーの体内で破裂するアズラエルの咆哮。死告天使の名を持つ狂人と破壊巨人はその名に相応しく、数千数万の死を一瞬で作り出す破壊を実行に移した。
強烈な光をともす胸部。左右前方に扇状に開かれる十の指。背から飛び立ち四方八方へ砲口を向ける十二基のビームガンバレル。
折りたたまれていた砲身を展開し、あらゆる場所に満ちるエネルギーを集束するターミナスキャノン。フライトユニットから延び、前方に角度が調整された陽電子破城槌ローエングリン。
218基に及ぶ小型ミサイルを満載したマイクロミサイルを収めたランチャーが、周囲の蹂躙すべき哀れなゴミ屑へと向けられる。
すでに百機を超すMSを物言わぬ残骸へと変えた悪夢の全力全壊の攻撃、アズライガー・フル・バーストだ。
ラルフが眩い光を視認した時、コックピットのモニターの中から、世界を滅ぼすかのごとく苛烈な光があふれだした。
脊髄を通って脳を埋め尽くす“死”の一文字。指先に至るまで満ちた死への確信を、かろうじて生存への欲求が振り払い、ラルフのプロヴィデンスは迫りくる閃光とミサイルの暴風雨の中を片時も止まる事無く動き続けた。
さながら台風の只中で舞い踊る枯葉の様に翻弄されるプロヴィデンス。ほんのわずかな、瞬きをする一瞬でさえ、鋼の愛機の操縦を過てばそれが生死を分かち、肉片の一つも残さずこの世から消滅するであろう。
「うおおおおおっ!!」
自分でもわけのわからぬ獣の咆哮の様な叫びをあげながら、ラルフはついに破滅の光の嵐を乗り切った。わずか数秒の間の出来事が、数時間にも数十時間にも感じられる。
アズライガーの放ったフル・バーストがもたらした疲労は、肉体的にも精神的にもかなりものだ。
ヴィーパーとウェンドラの安全を確かめるべく周囲に目をやれば、ウェンドラの乗っていたフリーダムは、左手と左足を吹き飛ばされ、断面から白いスパークを発しつつも、かろうじて機体の制御を維持している。
「ちい、ウェンドラ、後方に下がれ! その状態ではアレの相手をすることなど到底できん!」
「了解、です。隊長……ヴィーパーが……」
「っ、分かっている!」
ウェンドラが言わんとした事を、ラルフは苛立ちで満たした声で遮った。低く抑えた声ではあったが、その中に後悔と怒りの感情を聞きとる事はあまりにも容易い。ラルフの瞳は確かに映していたのだ。
アズライガーの放ったターミナスキャノンの光の奔流の中に飲み込まれ、跡形もなく消し飛ぶヴィーパーのジャスティスの姿を。クオルド隊結束以降、初のMSパイロットの戦死者であった。
失われた部下の命と、ヴィーパーが手にする筈だった未来の可能性を想い、ラルフは静かに怒りを燃やした。氷の彫像のように冷たさを帯びた顔に、確かな怒りの炎を揺らめかせ、ラルフはアズライガーと真正面から対峙する。
「ここで退く事はできん。一矢報わせてもらうぞ、怪物め!」
機体の周囲に無数の下僕を従えて、ラルフのプロヴィデンスがアズライガーめがけて突進する。アズライガーが備えた防御兵装によってこちらの攻撃が通じぬ事は理解している。
だが、先程ラルフの感じ取った殺意は、まるで子供の癇癪の様にでたらめな感情に満ちたものだった。理由は知らぬがあの機体のパイロットは、決してまともなパイロットではない。
こうしてラルフが引きつけている間は、こちらにだけ注目し、ボアズへの侵攻を止めるだろう。
鬱陶しい小蠅を追い払うかのように続けて連射される十条のスプリットビームガンの中を、散漫しそうになる集中力を束ねて回避し続け、ラルフはアズライガーのEフィールドが解除される一瞬を狙って反撃のビームを放つ。
なにも馬鹿正直に分厚い装甲を撃つ必要はない。いかにこの化け物といえども狙い所はある。そう、例えば、高出力のビームを放つ直前の砲口。
「狙いは外さん」
プロヴィデンスに向けられたアズライガーの右腕の先にある五つの指先に、光がともり始めるその一瞬、神経を研ぎ澄ましたラルフの瞳が射抜く。引かれるトリガー。
放たれたビームは確実にアズライガーの五指を撃ち抜き、たちまち右手首から先を爆発の中に飲み込んだ。
明確に与えられた初めてのダメージは、アズライガーのパイロットであるアズラエルだけでない、散散に痛めつけられたザフトの諸兵にとっても大きな衝撃をもたらした。
報いた一矢に油断する事無く、ラルフは凍てついた湖を通しているように冷徹な瞳で、動きを止めたアズライガーへ、ドラグーンで囲った光の檻を形成する。
「百を超す光の矢に撃ち抜かれるがいい!!」
ラルフの叫びと共にアズライガーへ次々と着弾するドラグーンのビーム。瞬く間にアズライガーの巨躯を埋め尽くし、破壊王の姿を光の牢獄へと閉じ込める。ドラグーンの充電が切れるまではいくらでも撃ちこんでくれる。
ラルフはドラグーンとプロヴィデンス両方の操縦の負担を堪えながら、いかなる脱出の前兆も見逃すまいと、光の中に捉えたアズライガーの姿を注視していた。
「何という装甲だ。連合の特機は化け物かっ」
無数のビームの直撃を受けるアズライガーに目立った損傷がない事が、ラルフの背筋に氷のように冷たい冷や汗を流させた。
PS装甲、TP装甲、ゲシュマイディッヒパンツァーと連合が開発した、防御系統の技術はザフトの先を行く先進的なものだったが、このアズライガーは既存のそれらを上回る技術が使われているのだろう。
それでも同箇所に無数に突き刺さるビームは、確かにアズライガーの装甲にダメージを蓄積させ、蟻の群れが山を削るような徒労感をラルフに与えながらも、徐々に効果を表そうとしていた。
そして、そのアズライガーに明確なダメージが表出する、数瞬前、アズライガーの操者ムルタ・アズラエルの精神もまた数度目の決壊を迎えていた。
絶対無敵の完全勝利の存在であるはずの、このぼくのおもちゃが。アズライガーが損傷を負った? あんな、遺伝子操作のバケモノ共の作ったMSなんかの攻撃で?
このぼくがアズライガーがムルタ・アズラエルがアズライガーがアズラエルがアズライガーがガガGaGAAgaが…………。
「お、おまえええええーーーーー!!!」
血走り赤く染まったかのようなアズラエルの濁った瞳を、さらに濁す憎悪憎悪憎悪憎悪! 嫉妬し憎悪し軽蔑し侮蔑し羨望したコーディネイターへ向けられるアズラエルの、積年の怨念。
「倍、返し、だあーーーーーーー!!!」
暴風の真っただ中の様に降り注ぐドラグーンのビームを、アズライガーの中心に球形に展開されたEフィールドがすべて弾いて見せた。同時に両腕部のゲシュマイディッヒパンツァーも最大出力で展開する。
「馬鹿な!?」
驚愕するラルフの叫びを切り裂き、その血肉を抉る為にアズラエルは猛烈な反撃をアズライガーに命じる。ぐっと突き出されたアズライガーの右膝で、唸りを上げて回転する超巨大なドリル!
「超巨大回転衝角カラドボルグ!! PS装甲展開!! 貫いて抉ってぶちまけロォオオ!!」
灰色のカラドボルグのドリル部分が通電によって相転移し、金色に輝く。ドリル内部に小型バッテリーを搭載しフェイズシフトする事によって無類の硬度を得る、コスト度外視の頭のネジの外れた武器だ。
しかもそれが、膝との接合部から巨大な炎を噴いて射出されるのだ。瞬時にマッハまで加速した巨大なドリルに、ラルフは呆然としていた自意識を引き戻してかろうじて回避に成功する。
プロヴィデンスを貫けなかったドリルは、そのまま回転数を上昇させながら飛び続け、はるか遠方にあったナスカ級のどてっ腹に直撃し、船体の上げる金切り声の断末魔を道連れに内部で爆発を起こす。
カラドボルグの直撃からきっかり二秒。ナスカ級の姿は無数に千切れ、捩じくれた残骸へと変わり果てていた。直撃したならば戦艦さえも問答無用で轟沈させる、たった四発の、しかし恐るべきドリル。
ラルフがコックピットの中に響くアラートに気づけば、すでに目前百メートルの位置にまで迫り、残る左膝の二十メートルはあろうかというドリルを回転させながら突っ込んでくるアズライガーの姿があった。
今度は射出せずに直接ドリル付きのひざ蹴りをプロヴィデンスに見舞い、スペースデブリに変えるつもりのようだ。
あんなものの直撃を受けたら、如何に核動力機のPS装甲といえども、供給される電力を上回る消費量でたちまちフェイズダウンして、猛烈な回転の中で万単位の破片に砕かれるだろう。
「冗談ではない!!」
機体に回避行動を取らせながら、先程のナスカ級の様子からドリル内部の爆発物を狙えば、と考え付いたラルフがアズライガーの左膝で大回転中のカラドボルグにドラグーンのビームを殺到させた。
四方八方から放たれたビームは、ラルフの精密な狙いに従ってアズライガーの左膝と両肩にある巨大ドリルへと突き刺さり、それぞれ回転するドリルの前に無数の飛沫に変えられて散った。
通常の装甲に比べビームに対し耐性を有するPS装甲が、超高速で回転する巨大な質量と化した時、それは生半可なビームなど問題にせぬ破壊の螺旋を描くのだ。
「おおあああああーーーー!!」
『ゲームオーバーだってのぉおお!!』
すでに自我の無い筈のゲーザと、凶気に塗れて堕ちて、朽ちたアズラエルの精神がカルケリア・パルス・ティルゲムと、ゲイムシステムによって悪魔の迎合を果たし、ソレは腐臭の如き怨嗟を吐きながら増殖していた。
一方、アズライガーとアズラエルの状態をモニタリングしていた、シンマニフェルのアードラーとアギラは、加速度的に上昇してゆくアズラエルの精神状態の壊滅に、しかしなんら焦った様子を見せてはいなかった。
試験管の中の、予測通りの結果を見つめる科学者の様に冷たい眼差しで、アードラーはアームレストに備え付けられたモニターを見つめている。同じものを見ているはずのアギラも様子は変わらない。
「損害を与えられた事を切っ掛けに一気に興奮状態が増したの。さっきまで射精寸前まで性的に昂った欲求を破壊衝動に変えて、今はあのザフトの機体に向けておる」
「ふむ、まあ予見できたことではあるの。鎮静剤でも投与するか?」
「なに、目の前のあれを壊すまでは保つじゃろ。それにアズラエルの頭の中身のバックアップも取ってある。親しいものは違和感を覚えるかもしれんが、それでも十分じゃよ。わしらの人形にはの。ところでヴァルシオン改とベルゲルミルの二人はどうじゃ?」
「こいつらはこいつらで優秀すぎて詰まらんわ。すでに邪魔してきた核動力機を沈黙寸前まで追い詰めておる。じゃが、確かテストで念動力に似た妙な力を持って負った筈じゃ。それの所為か予測値よりも精神と肉体の耐久性が高い。
今後もゲイムシステムのモルモットには最適じゃろうて。どうじゃ? 折を見てこの二人の精神を多少弄くってみるのも? なにか面白いデータが取れるかもしれん」
「よかろう。考えておくわい。さて、そろそろ決着がついたかの?」
自分達を得体の知れぬ、人の形をした別のナニカの様に見つめているサザーランド大佐の視線には気づかず、二人の悪魔は淡々と自分達の研究成果と今後の展望について語り合っていた。
「ぐううう!?」
かろうじて回避の間に合ったプロヴィデンスの左腕をかすめた超巨大なドリルに、フェイズシフトしている左腕をシールドごと粉砕され、その破壊の伝導に機体を吹き飛ばされながら、ラルフは奥歯を食い縛って耐えた。
二発目のカラドボルグが射出された事で、アズライガーの両膝から特徴的であったドリルが消えた。
コンマ五秒で機体の姿勢制御を取り戻し、常に視界の中に入れておいたアズライガーへ残るドラグーンの一斉砲火を加える。狙いはメインカメラのレンズやスラスター、バーニアなどの噴射口に先ほどと同じ大口径火器の砲門だ。
「馬鹿のぉぉおお」
『一つ覚えが通じるかってのおおお!!』
再び重なるゲーザとアズラエルの叫び。限りない憎悪と飽く事の無い侮蔑と共に吐かれた言葉は、信じ難い複雑な高速機動によって表現され、降り注ぐ、という表現を用いるしかないドラグーンのビーム・レインの半ばを無意味なものにする。
捕らえるにはあまりに容易いと見えるアズライガーの巨躯にかすりもせずに暗黒の宇宙に消えて行くビームの雨。
事ここに至り、アズラエルの狂気に触発されて覚醒したゲーザの闘争本能が、アズラエルにアドバンスド・チルドレンと称された機動兵器などの操縦に優れた適性を見せる異能の子らに匹敵する反射速度を与える。
常人の肉体では到底耐えられぬ殺人的なGを、何重にも備えられたGキャンセラーとヴァイクルから得たゼ・バルマリィ系技術における重力操作によって打ち消し、アズライガーは駆け抜ける間に七つのドラグーンを撃ち、握り潰し、蹴り飛ばして破壊する。
全速力で追いかけてくるアズライガーを引き離そうとプロヴィデンスを操るが、それよりもなお早いアズライガーは徐々にその距離を埋めていった。
やがて、わざと射程内に捉えながらも、獲物を精神的にいたぶろうと追いかけ回す事に飽きたゲーザ≒アズラエルの意識が、プロヴィデンスの破壊を決定した。
すでにドラグーンの無い相手、ビームガンバレルが落とされることも無いと判断し、十二基のビームガンバレル全てを起動し、複雑な回避行動を取っていたプロヴィデンスを包囲してみせる。
「くっ、私ともあろうものが、ここまでかっ!!」
「終わりだあ!」
『はっはあ、ぶっ壊れナア!?』
その瞬間、放たれた無数のビームが、ビームガンバレルを一機残らず貫き、さらにアズライガーに二十以上のミサイルが殺到した。なすすべなく全弾の直撃を受けながらも、無傷のアズライガーが、わずかに動きを止める。
九死に一生を得たラルフは、レーダーの反応から救い主が誰であるかを悟った。
「漆黒のジャスティス、エルザムか!!」
「遅れた分はこのトロンベと共に取り返すぞ、ラルフ」
配属されたヤキン・ドゥーエから、エターナル級二番艦ウィクトリアと共に全速力でボアズへと到達したブランシュタイン隊隊長エルザム=V=ブランシュタインと、その愛機ジャスティス・トロンベだ。
追加武装であるミーティアを装備し、マルチ・ロックオンを駆使してアズライガーのビームガンバレルを一度に狙撃し、破壊したのだ。わずかに遅れてエルザムの実弟ライディースの乗る、ミーティア装備のフリーダムの姿も確認できた。
「借り一つか」
「駆け付けたのは我々だけではない。DCの部隊もかろうじて間に合った」
「あれは……」
ウィクトリアやナスカ級といった高速艦艇と共に姿を見せているのは赤火の如き船体を持つ地球圏最強の戦艦スペースノア。
「噂のクライ・ウルブズか?」
「いや、クライ・ウルブズはヤキンだ。彼らはサイレント・ウルブズ。クライ・ウルブズにも劣らぬ群狼だ」
アズライガーへの警戒を維持しつつ、スペースノア級二番艦アカハガネへ目線を向けるラルフの視界に、いくつもの機影が光の尾を引きながら徐々にその姿を大きく露わにしていった。
その先頭を行く白銀の巨躯を持った、兵器と言うにはあまりに美麗な風騎士の主が、周囲の地球連合軍を威圧するかのように叫んでいた。
「死にたくねえ奴はかかってくるんじゃねえぞ! 今のおれは手加減出来ねえからな!」
ミラージュコロイドとステルスシェードによって隠蔽していた宇宙要塞アルテミスより、急遽出撃したサイレント・ウルブズと、風の魔装機神サイバスター、そしてその操者マサキ・アンドーである。
静かなる狼達が、ザフトを貪りつくさんとする人造の破壊神アズライガーへと、その顎を開きつつあった。
――続く。
今回ここまでです。おかしい。なぜアズライガーで三話も食ってしまったのだ……。もうヤキン戦に入っているはずだったのに。
それと
>>437さん、すいません。深く考えずにレスした私の短慮です。御不快な思いをさせてしまって申し訳ないです。こうなったからには書いた以上のことをして償いますです。
ではでは、私にもよくわからない中二機体と化したアズライガーですが、太く短く生きる子です。その時が来るまでお付き合いくださいませ。ありがとうございました。
GJ!
主役喰いのサイバスターキタwww
GJ!
アズライガー半端ねぇ……
サイバスター来たけど、ここでは決着つかないのかな?
ついたら今瀕死状態の彼の立場が……
ボアズ戦もいよいよクライマックスですね
アズライガーが短く太いならジェネシックが出てくるとかwww
俺は総帥の抱き合わせ程度に明日に投下します
待ってます
>>465 GJ
ついにアズライガーの活躍に終止符が打たれそうだ
だが、スパロボオリを仕留めるとは、さすが僕らの盟主王
そこに痺れる、憧れるー!
…まあ、サイレントウルブスにフルボッコにされるんだろうなぁ……
そして、僕らの総帥とラッキースケベは最終決戦までに復活するんだろうか…?
まあ、復活出来なくてもいいか
まだ無印時代だもんね。キラとラウがケリつけて、済し崩しに終わるって可能性もあるか
いや流石に最終戦まで寝たままは無いわw
某変身ヒーロー物アニメの寝太郎主人公だって、最終回直前にはしっかり目を覚ましたぞw
聖闘士星矢なんて雑誌連載時だと一年近く主人公気絶したままだったりしてるぞw
ナニを言う、世の中には最終話の一話前に死んでそのまま復活しなかった主人公だっているんだぞ!
>>473 誰?
番組中終始影が薄く
最終回までは何とか生き残ったけど、仲間二人と一緒に先頭切って特攻して真っ先に
倒され、オーラスを飾れなかった主人公はいたな
某新撰組もどきw
>>473 仮面ライダー龍騎の主人公、城戸真司。
最終話の一話前、子供を庇って背中を刺されて死ぬ。
すべてを飲み込んでずっと迷い続けていた真司が、
自分の持つ『ライダーとしての願い』を自覚したのは死の直前、
ソレを自力で叶えていた事を視聴者が知ったのは、その死後だった。
第32話「捕獲」
オリジナルのペルゼイン・リヒカイトとの戦闘後、ハガネ・ヒリュウ改へと連行されたレイ・ザ・バレルであったが、彼の取調べはほとんど行われておらず、
監視と移動区画の制限付きではあったがわりと快適にハガネでの軟禁生活を満喫していた。
取調べが行われなかったのは、先日伊豆基地をアインストの大軍が襲いかかり、身も蓋もない言い方をすれば事後処理に忙しくてそれどころではなかったのである。
他方、そんなレイに会いに行こうとしたシンであったが、彼の部屋の前にはどういうわけか行列ができており、近付くことができなかった。
新西暦の世界では一応芸能人的なポジションにいるレイのサインを求めるイケメンが大好きな女性陣に行く手を阻まれてしまったのである。
ちなみにその中にはリュウセイから見せられた映像ディスクの影響を受け、リュウセイ病の亜種のようなものに罹患した割とミーハーなSRXチームのアヤ・コバヤシの姿もあった。
結局シンは特に他にすることもないので、機体の調整をするために格納庫へ向かうことにしたのだが、格納庫の脇で腕を組み、下を向いて難しい顔をしているラミアを発見した。
「ラミアさん、何か考え事ですか?」
組んだ腕に持ち上げられた豊潤で甘い蜜を持っていそうな胸元の2つの超高級マスクメロンに行った視線を瞬時にラミアの顔へと移動させたシンがラミアの方へと近付いていく。
「い、いえ。別に特に何かを悩んでちゃってたりはしませんのよ?ホホホ…」
「そうですか?なんかだいぶ考え込んでるように見えたんですけど」
「そんなことありませんのよ。ところで先日連れてきたアスカ様のお知り合いの方の様子はどうでございますですか?」
「なんかファンの人に囲まれてサイン会してましたよ。………でもまあ俺はあいつが無事に生きてるってだけで十分ですけどね」
「え?それはどういう…?」
「ホントはもうレイは俺がこの世界に飛ばされる直前の戦いで死んだと思ってたんですよ。相手は前の大戦の『英雄』様とやらで、そいつはアメリカで俺達の前に出てきた。
ってことはレイは負けたってのと同じですからね。けど、あいつは生きてました。戦争なんてやってたらいつ死んじまうかもわからないのに…」
「確かラクス・クラインとやらが率いる『歌姫の騎士団』ことラクシズとギルバード・デュランダル議長の率いるザフトの決戦、でしたわね」
「ええ、もしも議長や俺達が勝ってれば戦争ってのは一応終わってたと思いますよ」
「人の自由というものは制限されるという代償つき、というものでござんすが」
「…少なくとも戦争で関係ない人たちが巻き込まれたり、無理矢理戦わされる人を見るのはもう嫌だったんですよ。
たぶん…俺みたいな人間をもう増やしたくなかったのかな…ってすいませんね、なんかわかったような口聞いて…」
普段の自分らしくないやや達観したようなことを言っていたことに気付いたシンは少し照れながら、照れ隠しでラミアから顔を背ける。
そしてその時、艦内に鳴り響いた警報音が第一種戦闘配置状態を告げた。
「ラミアさん、行きますよ!」
「了解したりします!」
胸の内で「このときが来たか」と呟きながらラミアは足を止めていた。造物主レモン・ブロウニングから出された命令はブリッジの占拠であり、アンジュルグのある格納庫とは方向が違う。
管理された戦争の継続により人類の進化・発展を目指すことがシャドウミラーの目的であり、これまでのラミアはこれに疑問も賛同もすることなく、ただ命令あるままに動いてきた。
アクセルからは人形と呼ばれたりすることもあったが、それすら気に留めることはなかったが、今のラミアは違っていた。
これまで一緒に戦ってきたATXチームの面々などを始めとするハガネ・ヒリュウ改のクルー達と接する中で徐々に、シャドウミラーの考え方に「疑問が生じる」という今までにない感覚が
芽生えただけでなく、シンが口にした戦争により失われるものの存在とその大きさがわかってきていたからである。
自分達が作ろうとした、戦争の続く世界に溢れることになるであろう人々の悲しさと、失われ行く命の存在がどれほど大きいものか、ラミアは少しずつ理解し始めていた。
第32話「捕獲」
オリジナルのペルゼイン・リヒカイトとの戦闘後、ハガネ・ヒリュウ改へと連行されたレイ・ザ・バレルであったが、彼の取調べはほとんど行われておらず、
監視と移動区画の制限付きではあったがわりと快適にハガネでの軟禁生活を満喫していた。
取調べが行われなかったのは、先日伊豆基地をアインストの大軍が襲いかかり、身も蓋もない言い方をすれば事後処理に忙しくてそれどころではなかったのである。
他方、そんなレイに会いに行こうとしたシンであったが、彼の部屋の前にはどういうわけか行列ができており、近付くことができなかった。
新西暦の世界では一応芸能人的なポジションにいるレイのサインを求めるイケメンが大好きな女性陣に行く手を阻まれてしまったのである。
ちなみにその中にはリュウセイから見せられた映像ディスクの影響を受け、リュウセイ病の亜種のようなものに罹患した割とミーハーなSRXチームのアヤ・コバヤシの姿もあった。
結局シンは特に他にすることもないので、機体の調整をするために格納庫へ向かうことにしたのだが、格納庫の脇で腕を組み、下を向いて難しい顔をしているラミアを発見した。
「ラミアさん、何か考え事ですか?」
組んだ腕に持ち上げられた豊潤で甘い蜜を持っていそうな胸元の2つの超高級マスクメロンに行った視線を瞬時にラミアの顔へと移動させたシンがラミアの方へと近付いていく。
「い、いえ。別に特に何かを悩んでちゃってたりはしませんのよ?ホホホ…」
「そうですか?なんかだいぶ考え込んでるように見えたんですけど」
「そんなことありませんのよ。ところで先日連れてきたアスカ様のお知り合いの方の様子はどうでございますですか?」
「なんかファンの人に囲まれてサイン会してましたよ。………でもまあ俺はあいつが無事に生きてるってだけで十分ですけどね」
「え?それはどういう…?」
「ホントはもうレイは俺がこの世界に飛ばされる直前の戦いで死んだと思ってたんですよ。相手は前の大戦の『英雄』様とやらで、そいつはアメリカで俺達の前に出てきた。
ってことはレイは負けたってのと同じですからね。けど、あいつは生きてました。戦争なんてやってたらいつ死んじまうかもわからないのに…」
「確かラクス・クラインとやらが率いる『歌姫の騎士団』ことラクシズとギルバード・デュランダル議長の率いるザフトの決戦、でしたわね」
「ええ、もしも議長や俺達が勝ってれば戦争ってのは一応終わってたと思いますよ」
「人の自由というものは制限されるという代償つき、というものでござんすが」
「…少なくとも戦争で関係ない人たちが巻き込まれたり、無理矢理戦わされる人を見るのはもう嫌だったんですよ。
たぶん…俺みたいな人間をもう増やしたくなかったのかな…ってすいませんね、なんかわかったような口聞いて…」
普段の自分らしくないやや達観したようなことを言っていたことに気付いたシンは少し照れながら、照れ隠しでラミアから顔を背ける。
そしてその時、艦内に鳴り響いた警報音が第一種戦闘配置状態を告げた。
「ラミアさん、行きますよ!」
「了解したりします!」
胸の内で「このときが来たか」と呟きながらラミアは足を止めていた。造物主レモン・ブロウニングから出された命令はブリッジの占拠であり、アンジュルグのある格納庫とは方向が違う。
管理された戦争の継続により人類の進化・発展を目指すことがシャドウミラーの目的であり、これまでのラミアはこれに疑問も賛同もすることなく、ただ命令あるままに動いてきた。
アクセルからは人形と呼ばれたりすることもあったが、それすら気に留めることはなかったが、今のラミアは違っていた。
これまで一緒に戦ってきたATXチームの面々などを始めとするハガネ・ヒリュウ改のクルー達と接する中で徐々に、シャドウミラーの考え方に「疑問が生じる」という今までにない感覚が
芽生えただけでなく、シンが口にした戦争により失われるものの存在とその大きさがわかってきていたからである。
自分達が作ろうとした、戦争の続く世界に溢れることになるであろう人々の悲しさと、失われ行く命の存在がどれほど大きいものか、ラミアは少しずつ理解し始めていた。
「あ、あのロボットは!?」
「この間、転移してきた特機……!!」
「ご苦労だった、W17」
「はっ……」
「W17!?そ、それは……ラミアさんのことか!?」
「そう……。それが私の本当の名称だ」
「本当の……名称!?」
「お前達は何者だ? シャドウミラー……それが組織の名前なのか?」
「そう。そして、私の名はヴィンデル・マウザー……シャドウミラーの指揮官だ」
「……」
「会えて光栄だ。連邦軍特殊鎮圧部隊ベーオウルブズ隊長……キョウスケ・ナンブ大尉」
「ちょっと、あんた達! ウチのラミアちゃんに何をしたの!?」
「何も。彼女は私達の仲間……わかりやすく言えば、スパイってわけ」
そう言ったレモンはエクセレンの乗るヴァイスリッターを見て、このような戦場での出会いになってしまったことを幾分か悲観的に思いつつ、ラミアのアンジュルグを見て小さな疑問を浮かべた。
ハガネのブリッジを制圧しろと言ったはずなのが、どういう訳かアンジュルグの自爆装置を使って艦の外からハガネやヒリュウ改を脅していたからである。
「では……返答を聞こうか、ダイテツ・ミナセ中佐。武装解除に応じるか、否か?」
「……」
「待て、話が違うぞ! 奴らの指揮権はワシが握ることになっておるはずだ!」
「お前は……ケネス少将か。司令部の制圧は成功したようだな」
「何だと?」
「せ、制圧!?」
「貴様……余計なことを言いおって!」
「うぬっ! すでに外堀は埋められていたと言うことか!スティール2より各機へ!その場で一時待機せよ!」
「賢明な判断だ」
「ヴィンデルと言ったな。お前達の目的は何だ?こんなまわりくどいやり方をしたからには、それなりの目的があるはずだ」
「我らの目的は一つ……理想の世界を創ることだ…永遠の闘争……絶えず争いが行われている世界……それが我々の理想の世界だ」
「ふざけんな!そんな世界のどこが理想だ!!」
「理想よ。戦争があるから、破壊があり……同時に新たな創造が始まる。戦争があったからこそ、発展した技術がどれほどあるか、考えたことがあって?」
小型化・高性能化したテスラ・ドライブ、ヒュッケバインを始めとするEOTを応用した人型機動兵器、トロニウムを動力源とするSRXという
異星人との戦争がなければ生み出されなかったであろう超技術の数々がレモンの口から飛び出してくる。
彼女が言う「戦争が生み出した技術の結晶」「人類の叡智」と呼ばれるものは、特にそれらを直に扱っているリュウセイやリョウト、アイビス、ツグミらにとっては
技術の生み出された目的とシャドウミラーの目的との関係を別としても、もはや異星人と戦う、または自分達の夢を実現するためには切り離すことのできない存在である。
しかし、ヴィンデルの言葉を、シャドウミラーの目的を絶対に許せない男が、正史とは異なり、その場にいた。
「ふざっけるなあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ふざけてなどいない。絶えることなき戦いこそが人類を新たなステージに進め、地球を守るための唯一の手段だ」
「じゃあアンタは戦わない人はそれでどうなると思ってるんだ!!」
争いに巻き込まれる、関係のない人間の犠牲。それが戦争で家族を失ったシン・アスカという戦士の原点であると同時に、最後までザフトに残ることを決定させた最大の要素である。
「彼らとて戦いで発展した技術の恩恵を受けることができるのだ。ならば彼らも本望だろう」
「俺の家族は戦争の流れ弾で殺された!しかも勝手に戦争を始めた奴らのせいで避難してる真っ最中に!」
「何事にも絶対というものはない。事故の確率をゼロに近付けることはできても、ゼロにすることはできん」
「じゃあアンタは訳も判らずに戦わされてる人だっているのを知ってるのか!?記憶を弄られて薬漬けにされてまで戦わされてる人間だっているんだぞ!」
シンの脳裏には今でもディオキアで出会った連合のエクステンデットステラ・ルーシェが事切れたときの映像が残っている。
戦いたいのか、戦いたくないのか。自分が何をしているのか。それらの意味もわからずに戦場に立たされていた彼女の最期は、
戦うべき相手も決まらずに気の向くまま自由に戦場への乱入を繰り返した者達の手にかかる、というものであった。
もしかしたらそのような最期こそが幾つもの都市を壊滅させ、多くの人間の命を奪った彼女への報いだったのかもしれない。
しかしそもそも連合・プラント間の争いが連合にブーステッドマン、エクステンデットと呼ばれる生体CPUを生み出したことは事実であり、
これ以上の争いや戦争の継続を拒否したシンにデュランダル側につく動機を与えたことも事実であった。
そして似たようなことはスクールやDCという場所で新西暦の世界で行われており、今やシンの戦う動機の1つになっている。
「例えそうであろうとも、異星人から地球を守るためならばやむを得ぬことだ。連中の手はもうこの地球に伸びてきているのだ、もはや一刻の猶予もならん」
「そんなこと、誰が決めたんだよ!?そんなことしなくたって俺達がインスペクターを倒せばいい!もう…もう俺みたいな悲しみはたくさんだ!!」
シャドウミラーが理想とする永遠の闘争は、それが必然的に無関係な人間にまで大きな影響を与えるという点において、シン・アスカの願うところとは対照的な位置付けがされうる。
無関係な人間の犠牲を、技術の発展・進歩と腐敗の防止といった人類の行く末を憂う上でのある種の必要悪だと割り切るのがシャドウミラーであり、
無関係な人間の犠牲を、を最も避けるべきものだと嫌悪し、それを少しでも、ほんの僅かでも減少ないし根絶させたいと願ったのがシン・アスカであった。
シンとラクシズがその目的と目的達成手段において決定的に相容れないのとはまた異なるベクトルで、シンとシャドウミラーもまた相容れないものといえよう。
「話にならん…最後通告だ、ダイテツ・ミナセ中佐。武装解除をしてもらう…さもなくば……死だ」
「…闘争が人類の発展を促す……確かに、あの男の言う通りだろう。だが、戦いによって生まれるものと失われるもの……それは等価値ではない!」
「……その通りだ」
「え?」
ラミアがダイテツを肯定したのとほぼ同時にアンジュルグがハガネから離れると、そこにいた面々が驚いて創ってしまったわずかな隙を突いてツヴァイザーゲイン、ヴァイスセイバーに取り付いた。
「む……!?」
「W17……あなた、何を?」
「ヴィンデル様、レモン様……」
「貴様、何の真似だ!?」
「ATA……ASH TO ASH、発動」
「あなた、まさか!?」
「我々は、この世界に来るべきではなかったのだ…今ならわかる。あの時、我々を否定した彼らの気持ちが!この世界は私のような作り物が介入できる所ではなかったのだ……!」
「!」
「ええい、所詮は人形! 貴様、狂っていたかッ!」
「学習したのだ……!」
「何故……何故なの、W17!? 最高傑作のあなたが!?」
「……出来が良すぎたのかも知れんな……!」
「やめなさい、W17ッ!!」
ラミアが造物主であるレモン・ブロウニングへのささやかな謝罪の念を思ったのを最期に、アンジュルグはツヴァイザーゲインとヴァイスセイバーに取り付いたまま
大爆発を起こして両機とともに爆煙の中へと姿を消した。細かなパーツや機体の破片がその中から海中へこぼれ落ちていくが、
煙が晴れていくのとともにアンジュルグに取り付かれていた2機が、ボロボロになって機体の各部でショートを起こしながらも姿を現す。
「チ……! システムXNが損傷したか!戦闘も不可能……!おのれ、人形風情がよくも……!」
「こっちも……駄目ね。システムXNのこともあるし、ここは撤退すべきでしょう」
「仕方あるまい……!リー中佐、ハッチを開けろ。帰艦する」
ヴィンデルの指示で開き始めたハッチの方向へツヴァイザーゲインは向かっていくが、同程度に損傷しているはずのヴァイスセイバーはアンジュルグが爆発したポイントにまだ留まっていた。
レモンが海上に浮かんでいるアンジュルグの残骸、しかもそのコックピットブロックと思しき物体を発見したのである。
「連れて行かせるかよ!」
自爆したアンジュルグのコックピットブロックと思しき物体をそっと掴んだヴァイスセイバーを見たシンは、ビルガーのウイングを一気に開いてその後を追う。
だが進行方向の先には、既に斬艦刀を戦闘時の状態にまで延ばして敵を迎え撃つ準備を整えている咆哮巨神スレードゲルミルの姿があった。
「ここを通すわけにはいかん!」
先陣を切って突っ込んでくるビルトビルガーに狙いを定めて、スレードゲルミルは振り上げた斬艦刀を一気に振り下ろすが、ビルトビルガーは機体を横に移動させて回避する。
「そんなデカい図体してビルガーのスピードに追いつけるかよ!!」
「ぬぅっ!」
スピードに乗ったビルガーは斬艦刀を振り下ろして隙が出来た状態のスレードゲルミルに攻撃を加えることもなく、
一気にその横を通り過ぎてみるみるうちにアンジュルグの脱出ポッドを回収したヴァイスセイバーとの距離を詰めていった。
アンジュルグの至近距離からの自爆に巻き込まれて、ツヴァイザーゲインもろとも半壊気味のヴァイスセイバーは本来のスピードを出し切ることができない。
そのために、スピード自慢のビルトビルガーの追跡を許すことになっていた。そしてヴァイスセイバーの近くにまで迫ったビルガーがコールドメタルソードを引き抜いた。
「切り裂け!コールドメタルソ…!?」
途中までシンが言い掛けたところで、その口が止まった。ビルガーのレーダーが新たな敵機とそれによる攻撃を察知してコックピットの主にそれを警報音で知らせる。
とっさにビルガーを後退させたシンの目には、シロガネから発進してきた見覚えと苦い記憶のある赤い機体の姿が映っていた。
その赤い機体は手にしたビームライフルからビームを放ってビルガーを牽制しつつ、ヴァイスセイバーの前に立ちはだかると、
ライフルの代わりに出力を強化したビームサーベルを構えてその切っ先をビルガーに向け、斬りかかってきた。
「シン!ようやく見つけたぞ!」
「またアンタか、アスラン!いつも嫌なタイミングで!」
シンとビルトビルガーの前に現れた赤い機体、それはもはや彼にとってはフリーダムに次ぐ嫌悪感の象徴ともいうべき、鶏冠のようなアンテナと紅のボディが特徴的なインフィニットジャスティスであった。
覇王がCE世界で手にしていた二振りの剣のうちの一振りであり、CE世界でのシンの愛機デスティニーを撃ち破った機体であり、
この新西暦の世界で得たマシンセルの力により復活と大幅なパワーアップを遂げて新生したインフィニットジャスティスは、ラクシズ本隊と合流して再び覇王の剣となっていた。
互いに振り下ろされたビームサーベルとコールドメタルソードが交差して鍔迫り合いが始まるが、今回は勢いをつけて斬撃を繰り出したビルガーがジャスティスをほんのわずかだが押していた。
「見損なったぞ、アスラン!永遠の闘争とやらがアンタ達の理想かよ!!」
「きっとあれは異星人との戦いが終わった後の話だ!その前にお前を…」
「もういい!アンタとはしゃべってるだけ時間の無駄だ!」
ビルガーに向けられたジャスティスのサーベルを、ビルガーはコールドメタルソードを振り抜いて弾き飛ばすと、ファトゥムの自動防御が発動する前に
至近距離から手の空いているスタッグビートルクラッシャーでジャスティスのボディを殴りつける。
「シン!」
機体を襲う衝撃をもろともせずにビルガーから目を離さないアスランであったが、今のシンの視界と思考の中にはアスラン・ザラの声も姿もほとんど入っていかなかった。
そしてインフィニットジャスティスを振り切ってシロガネとの距離を縮めていくビルトビルガーであったが、
その正面に幾つかの空中を浮遊しながらこちらへ向かってくる物体をシンはすぐに認識することになる。
直感で危険だと判断したシンは、思考が働くより先に本能でその物体からビルガーを遠ざけようとしたが、その物体はさらに数を増やしつつ、その幾つかがビルガーに向けてビームを放ち始める。
ビルガーは機体を上下左右に激しく移動させて囲うように迫ってくる飛行砲台とそこから放たれるビームをかわしていくのだが、徐々にシロガネから遠ざかることを余儀なくされてしまった。
「クソっ!まだ出てくるのかよ!」
毒づくシンの視界には新たにシロガネから出てくる「白い」機体が映っていた。大きな砲塔オーバーオクスタンランチャーを背部に背負い、
腕に備わった巨大な爪マグナムビーク、今現在ビルガーを追跡しているソリッドソードブレイカーを構えたその機体の名前はラピエサージュ。
その機体色はシロガネ滞在中に塗り替えられ、白を基調として機体各部が黒、青、赤に塗られている。シャドウミラーの持つアシュセイバーを基にして、
ATX計画や強奪したビルトファルケンのデータなどを踏まえ徹底的にカスタマイズされたこの機動兵器に乗るのは死亡した「3人目」の後を継ぐ形で目覚めた4人目のキラ・ヤマトである。
「キラ!」
「大丈夫だった、アスラン?」
ラピエサージュの射出したソリッドソードブレイカーにビルガーが追われている隙に近くへジャスティスが駆け寄っていく。
だが外部スピーカーを通して行われた彼らの会話の中に聞き流せない単語を見つけたシンは、敵の攻撃を潜り抜けながら今出撃してきたラピエサージュを厳しい目つきで睨み付けた。
「キラだと!?」
そして改めて目に入れた「白い」機体が、シンにあの機体を強制的に連想させるのに十分すぎるものである。
彼から両親を、妹を、ミネルバの同僚達を、守ると約束したエクステンデットの少女を奪ってなお、覇王の唱える自由と正義の名の下に破壊を撒き散らしていったフリーダムという機体を。
そしてシンは、キラ・ヤマトとストライクフリーダムがマサキのサイバスターにより討たれたことしか知らず、覇王の手により新たなキラ・ヤマトが稼動し始めたのだということを知らない。
そのため、どうして死んだはずの仇、キラ・ヤマトが生きているのかをシンは理解できないでいた。
だが目の前にフリーダムを連想させる機体がいること及びそのパイロットがアスランから「キラ」と呼ばれていたことは紛れもない事実であり、
かつてシンがインパルスの機体性能を活かしてフリーダムを落としたときも生きていたという前歴を持つのがフリーダムのパイロットキラ・ヤマトであることを思い出したシンはそこで考えることをやめた。
今はラミアの救出をするのが先決だが、キラ・ヤマトがまだ生きていたのなら倒せばいい、それだけのことだと判断したからである。
「あいつは助け出したい、力を貸してくれ」
「え、あの機体のパイロット、知り合いなの?」
「ああ、あいつはあのインパルスのパイロットなんだ!」
「え、それだったら…」
「あいつは議長に騙されてたんだ!正しいように聞こえる議長の言うことに丸め込まれて…!それで今度は連邦に騙されて…!だから今度こそ俺の手で助けてやらないと!」
「…わかったよ、アスラン。僕も力になる。いつまでも憎しみあってたって何も始まらないんだ」
シンは特に戦う意味を考えることなどなく、一面では正しいことを言っているかのように世界へ語りかけていたデュランダルの思うがままに利用されていたのだと思っているアスランは、
キラ・ヤマトがシン・アスカにしてきたことをほとんど知らず、またシンやレイが助けようとしたステラ・ルーシェについても彼らとは異なる認識を持っている。
デスティニープランに少なからぬ問題があるとしても、それでも戦いとは関係のない人間までもが巻き込まれる戦いがこれ以上続くことを拒絶しようとしたシン・アスカと、
そんなシンを知らないアスラン・ザラが理解しあうことができるわけもなく、どちらかが他方を力ずくで屈服させないかぎり両者の対立は終わらない。
そして、シンの家族を殺した2人目、ステラやミネルバクルーを殺した3人目ではない、4人目のキラ・ヤマトにとってはシンから寄せられる憎しみはお門違いともいえるのだが、
シンもキラもそんなことを知る由もなく、キラはアスランの言うがままに正しいように聞こえたシンの「救出」に力を貸すことに決めた。
「どけえぇぇぇぇ!!!」
ソリッドソードブレイカーの猛襲を潜り抜けながらコールドメタルソードを構えたビルトビルガーがラピエサージュへと斬りかかっていく。
ラピエサージュはそれをマグナムピークで受け止め、逆に動きを止めたビルガーにビームサーベルを構えたインフィニットジャスティスが横から斬りかかってきた。
剣がラピエサージュに止められておりビームサーベルを止める術を持たないビルガーは、マグナムピークを強引にはねのけって上空へ逃れるが、
今度は周辺で好機を窺っていたように漂っていたソリッドソードブレイカーが再びビルガーへと襲いかかってくる。
そこから何とか逃れて態勢を整えなおそうとするシンとビルガーであったが、その前にまたもインフィニットジャスティスがビルガーの下へと斬りかかってきた。
「くそっ!あいつらなんかに構ってる暇はないってのに!」
「シン!いい加減、俺と一緒に来い!どうして同じ世界から来た俺達が戦わなければならないんだ!?」
「何にもわかってないアンタなんかと!」
「わかってないのはお前だ!議長はもういないんだぞ!?」
「議長は関係ないだろ!それにフリーダムのパイロットと一緒だなんてアンタは何を見てきたんだよ!?」
両手に持ったサーベルでインフィニットジャスティスはビルトビルガーを押し込んでいく。
ジャスティスとの接近戦を避けようとすればラピエサージュの砲撃に動きを止められ、結局ジャスティスから逃れることができない。
遠距離戦を挑もうにも、相手にはジャスティスの自動防御があるし、ラピエサージュとジャスティスの2機を相手に射撃戦を倒すのには無理がある。
ラピエサージュを先に倒そうとしても、ソードブレイカーを全て掻い潜るのは至難の業だし、それをジャスティスが黙ってみていることはない。
接近戦も遠距離戦も封じられ、ビルガーは想像以上に苦戦を強いられることになっていた。
そしてこの苦戦の様をハガネの艦内から見ている者がいた。
「あのニワトリ野郎…!それに…この気分の悪さは何なんだよ…!」
取調べを受けていた部屋でシンのビルガーの戦闘の様子をモニター越しに眺めていたレイ・ザ・バレルである。
彼を知っているというシンの戦闘を見守っていたレイであったのだが、現在彼の頭の中にはノイズのような痛みが走っていた。
レイにペルゼイン・リヒカイトという戦う力を与えたアルフィミィの声が聞こえてくるときのものとは違う、何者かが近くに存在していることを警告するような痛みであった。
感じている存在感の主に対して、理由はわからないが、激しい嫌悪感と憎悪の感情が込み上げてくるのがレイにははっきりとわかっている。
そして顔見知りのシンが戦っている相手なら、DCか今、世間を賑わしている異星人であろうから、レイが戦う決意をするのに時間はかからなかった。
「変身!」
腰に巻いていた銀色のベルトの赤いボタンを押して、懐から電子通貨貯蓄機能が付属している乗車カードの模造品をベルトのバックルへと近づけると、
レイの体が黄色い光に包まれ、次の瞬間にはハガネの外壁をぶち破ってその光が飛び出していった。
他方、シンはソードブレイカーの攻撃を回避し続けていたが、やはりそこにインフィニットジャスティスが斬撃を仕掛けてくる。
全身刃物のようなインフィニットジャスティスとの接近戦はあまり好ましくなく、シンは距離を取ろうとするのだが、回避行動を取る先々に
次々とオーバーオクスタンランチャーの弾丸が襲いかかってくる。それはまるで回避行動先を計算済みであるかのような正確な射撃であった。
そしてまたもインフィニットジャスティスがサーベルで斬りかかってくるのをビルガーはコールドメタルソードで受け止める。
「そんなに一緒にきてほしいならあいつの首を持って来いよ!話はそれからだ!」
「キラは敵じゃない!どうしてそれがわからないんだ!?」
「あいつがやってきたことを忘れろとでも言うのか!?いい加減に間抜けたことを言ってるって気付けよ!」
「憎しみをいつまでも抱いて何になるんだ!?」
「その憎しみをばら撒いてるのは一体誰かわかってるのかよ!?」
「この…馬鹿野郎!」
「馬鹿はどっちだ、この大馬鹿野郎!」
ジャスティスのサーベルを受け止めているコールドメタルソードを無理矢理押し出してビルガーがジャスティスを突き飛ばし、続けてその左腕をスタッグビートルクラッシャーで掴み取る。
挟み込まれたジャスティスの腕にはミシミシと音を立てながら無数のヒビが入り始めるのだが、右腕のサーベルはコールドメタルソードに押さえ込まれており使えない。
空中で姿勢を維持するためには無闇にビームブレイドの付いた両足も使えないためアスランは左腕の損傷を覚悟した。
だが、ビルガーとジャスティスの2機が取っ組み合って動きを止めている隙に、ソリッドソードブレイカーが接近していることにまではシンは意識が回らなかった。
狙いを定めた飛行砲台から放たれたビームはスタッグビートルクラッシャーを貫くと、ビルガーとジャスティスの間で小さな爆発が起こる。
それがドラグーンの仕業だと気付いたシンとアスランであったが、ソードブレイカーに包囲されることを防ぐためにシンはビルガーをいったん後退させようとする。
放たれるビームから逃げ回りながらどんどんシロガネとの距離が離れていくことにはシンも気付いていたが、その飛行砲台はシンの目的地をわかっているかのように
ビルガーの進行方向には穴を作らず、他方で後方に逃げ道を残しているかのようにビルガーを包囲しようと動き回っていた。
だがわずかに一瞬だけ前方に包囲網の穴ができたことに気付いたシンはそこを突き抜けるべくビルガーの速度を一気に上昇させるが、それはキラ・ヤマトとアスラン・ザラの思う壺である。
「!?くそっ!」
シンが包囲網を突破するより先に、進行方向からジャスティスの背部に備わっている攻防一体となった飛行ユニットファトゥムがビルガーを狙ってまっすぐに突っ込んでくるのが見えた。
シンがビルガーの上半身を横に反らせたことで、ファトゥムの串刺しになることだけは避けられたが、猛スピードで突っ込んでくるファトゥムの片翼に機体を強く打ちつけてしまう。
そしてそれによりバランスを崩して動きを止めたビルガーに、辺りを漂っていたソードブレイカーが一斉に襲いかかっていった。
機体の各部へ体当たりを繰り返す飛行砲台はコックピットに連続して大きな衝撃を与え、機体のみならず中にいるシンにもダメージを蓄積させていく。
さらに後方からさきほど回避したファトゥムが戻ってきてビルガーに迫っていくが、それを告げる警報音になんとか対応してシンはビルガーを上方へと逃れてさせてファトゥムを回避するが、
逃れた先には既にその行動を予想していたラピエサージュが待ち受けていた。
左腕に備わった巨大な爪マグナム・ビークが突き出され、ビルガーはコールドメタルソードを盾代わりにしてそれを受け止めるが、その隙に脇から数機のソードブレイカーがビルガーを打ち付ける。
そしてラピエサージュはこの隙にコールドメタルソードをマグナム・ビークで弾き飛ばし、ビルガーのコックピット付近に蹴りを叩き込んだ。
「ぐあああああっ!」
その衝撃で地上へ落下し、基地の外れにある建造物の一つに叩きつけられたビルガーは力なく倒れ込んだまま動かなかった。今の攻撃と地上への激突時の衝撃で意識を失っていたのである。
動かないビルガーの姿を見たアスランはインフィニットジャスティスをビルガーの近くに降り立たせると、ジャスティスはビルガーの両肩へと手を伸ばす。
機体ごと連れ去るべくその両腕がビルガーを掴むが、その時、ジャスティスのコックピットに敵機の接近を告げる警報音が鳴り響いた。
「!上か!」
「俺…参上っ!」
光球状の姿でハガネから飛び出し、上空で赤鬼を連想させる魔人へと姿を変えたペルゼイン・リヒカイトは、真紅の大剣を振りかざしたまま地上へ真っ直ぐに急降下してくると、
インフィニットジャスティスに向けて落下エネルギーを加えた大剣を振り下ろす。刃がインフィニットジャスティスに触れる前に、攻撃を感知したファトゥムがその刃を受け止めるが、
ペルゼイン・リヒカイトはその反動を利用してうまく地上に降り立つと第二、第三の斬撃をファトゥムに見舞って表面を削り取っていった。
それを嫌ったアスランは、今度は左右のサーベルでペルゼイン・リヒカイトの斬撃を受け止めると、いったん後方へさがって距離を取る。
「レイ…!また俺の邪魔をするつもりか!?」
「久しぶりだな、ニワトリ野郎!また俺の前に出てくるとはいい度胸じゃねえか」
「そのふざけた喋り方をやめろ!俺は真剣に言っているんだ!」
「ああん!?俺は最初から最後までマジにクライマックスだ、この前も言っただろうが!」
「それがふざけてると言ってるんだ!」
報告でレイが記憶喪失らしいということは聞いていたアスランであったが、今の別人格のような喋り方が今のレイの普通の喋り方であることまでは知らず、苛立ちが強くなっていく。
サーベルを手に、インフィニットジャスティスはペルゼイン・リヒカイトに斬りかかって行くが、それはペルゼイン・リヒカイトの大剣に阻まれる。
続けて右足のビームブレイドを繰り出そうとするジャスティスであったが、それがペルゼイン・リヒカイトに到達する前に
零距離ノーモーションで繰り出された頭突きがジャスティスの頭部に見舞われ、さらに大剣を持っていない方の腕から繰り出された拳がジャスティスの顔面を殴りつける。
だが次ぎの瞬間、レイの頭の中に鋭い痛みが走り、白い光のようなものが見えた感覚を覚えたレイはペルゼイン・リヒカイトをジャスティスから後退させた。
すると、レイの視界に、今までペルゼイン・リヒカイトが居た場所に上空から幾つものビームが降り注いできたのが見えた。
レイが上空を見上げると、幾つもの飛行砲台を従わせた白い機体がこちらへその銃口を向けているのが見えたのと同時に、彼に奇妙な感覚を味合わせている犯人がその機体なのだと直感で理解した。
その白い機体、ラピエサージュはレイとペルゼイン・リヒカイトへの警戒を維持しながらジャスティスの下へと降り立つと、中にいるキラが口を開いた。
>>477に入るはずのもの
「ラミアさん!何してるんですか!早く!」
「!」
シンの声に思考を中断され、意識を現実世界へと戻したラミアは深く息を吸うと、力強く床を蹴って走り出す。
そして、出撃したシン達を待っていたのは、消息を絶っていたはずのシロガネであった。だが味方のはずのシロガネは思いもよらない機体を引き連れている。
斬艦刀を操る謎の特機スレードゲルミルやゲシュペンストやエルアインス、フュルギアなどのDCの量産機がシロガネから次々と飛び出してくる。
「お、おいおい! どうなってんだよ、こりゃあ!?」
「……どうやら、俺達ははめられたらしいな」
「くそっ、リーが連中が手引きしやがったのか!?」
「どのみち、ここで引き下がるわけにはいかん。……行くぞ!」
「動くな!…全機に告ぐ。直ちに武装解除してもらおう」
「ラ、ラミアさん!?」
突然ラミアの口から放たれた信じ難い台詞に、冷水を突然浴びせかけられたときのような戸惑いと驚き、焦りを隠しえないシン達であったが、
そんなシン達の事情をさほど気に留めることもなく武装解除を要求したラミアは言葉を続ける。
「強制はしない。だが、アンジュルグには自爆装置がある…ただの爆薬ではない。お前達はおろか、ハガネやヒリュウ改も撃沈できる」
「!」
「な、何ですって!?」
「ラ、ラミアさん、どうしたんですか!?何でそんなことを!?」
ハガネ・ヒリュウ改のクルー達の中でもラミアの行動に最も驚きを感じている人間の1人であるシンが問い掛ける。
ラミアの突然の裏切りに等しい行動はシンに、エンジェルダウン作戦でのフリーダム撃墜後のアスラン・ザラの脱走を嫌でも連想させるものではあったが、
その時とは違い今回のラミアには意に反する作戦の強制や艦内での決定的孤立などの脱走の兆候すらなかったことがさらにシンを狼狽させていた。
「それが私の任務だからだ」
「に、任務!?」
「繰り返す。直ちに武装解除せよ…抵抗する素振りを見せれば、その瞬間にアンジュルグを自爆させる」
「馬鹿言わないでくださいよ!そんなことをしたら、ラミアさんだって死んじゃうんですよ!?」
「死ぬことで任務が遂行できるならば、それでいい…お前達の心がけ次第では、全員無事で『シャドウミラー隊』の直属として活動することが出来る」
「シャドウ……ミラー!?」
聞いたことのない部隊の名が出てきたところでちょうどタイミングを伺っていたかのように、一瞬空間が歪むと、そこから1つの機体が姿を現す。
先日シン達の前に姿を現した、肘、肩、頭部から角を伸ばし、腹部にもう1つの顔を持つ特機ツヴァイザーゲイン。
まだこの機体に搭載された恐るべき本来の機能を知らぬシン達だが、ツヴァイザーゲインの放つ強烈なプレッシャー、または闘気とも呼べる不可視の圧迫感は確かにシン達に突き刺さっていた。
「アスラン、機体ごと持って行くのは無理だよ。僕が囮になるからコックピットからパイロットを」
「…すまない、キラ。でも気を付けてくれ、あの機体のパイロットは…」
「わかってる、レジェンドって機体のパイロットでしょ?大丈夫だよ、それにいざとなったらアレがあるし」
「ああ…そうだな。じゃあここは頼んだぞ!」
そう言ってアスランは再び動かぬビルガーのもとへと向かっていく。それを見たレイはジャスティスに向かっていこうとするが、その前にはラピエサージュが立ちはだかった。
「どきやがれ!てめえの相手は後でしてやる!」
「悪いけどアスランの邪魔はさせないよ?」
真紅の大剣ペルゼイン・スォードと巨大な爪マグナム・ビークがぶつかり合い、火花を散らす。それと同時にレイとキラ、2人を不快感と頭痛が襲い、双方が歯を喰いしばった。
「てめえは一体何モンだぁ!?気持ち悪ぃんだよ!」
「君は自分が何をしているのかわかっているのか!?」
「ダチ助けに行こうとしてんだよ!!」
「それなら僕も同じだよ!」
お互いがその獲物を振り抜いていったん構えなおすと第二撃を繰り出して再び火花を散らしての力比べが始まる。
互いの刃を押し付けあいながら、まずキラが収納させていたソリッドソードブレイカーを再び射出すると、レイも肩にある黒い突起を射出した。
地上でペルゼイン・リヒカイトとラピエサージュが刃をぶつけ合う一方で、上空ではそれぞれの意思を受けて飛び交う遠隔操作兵器がこちらも激しい火花を散らしながらぶつかり合いを始める。
「じゃあこの頭痛はやっぱてめえの仕業か、この野郎!」
「それは…君があの人の…!」
「あれ、それ、こればっかでてめえの言ってることはわかりずれえんだよ!」
「…君がラウ・ル・クルーゼのクローンだっていうのは君自身が言ってたんじゃないか!?だから僕と君は…!」
「!?…何…だと?俺が…クローン…?……………出鱈目なこと言ってんじゃねえっ!!!」
突然言われた途方もない言葉に精神を大きく揺らがされつつ、レイは大きく首を振る。
自分が別の人間のクローンだと聞かされれば、自分の存在そのものに大きな疑問が生じることは当然だが、普通であればすぐに信じるようなことはしない。
しかし原因不明の頭痛をもたらし、嫌悪感を伴いながらも存在を認識できてしまうような相手がいう言葉には得体の知れない説得力があるのも事実であった。
だが幸か不幸か、この時首を振ったレイの視界に、ビルガーのコックピットをこじ開けてその中から気を失ったシンを連れ出そうとするアスランの姿が映ったことが
自分の正体や素性はどうあれ今はシンを助けるのが先決だとレイに考えさせたのである。
再び戦いに意識を集中させたレイは、強引にペルゼイン・リヒカイトの大剣を振り抜いてマグナム・ビークを弾き飛ばすと、大剣を体の中心へと持って来る。
そして頭部の2本の角と桃型のベルトのバックルから放たれるエネルギーを刀身に纏わせながら、腰を落として静かに剣を構えた。
「行くぜ!必殺、俺の必殺技パート2!」
収束を終えたメタリックレッドに輝く斬撃が剣先から飛び出してラピエサージュへと向かっていく。
正面からの攻撃は容易くかわされてしまうが、ペルゼイン・リヒカイトが剣を振り上げるとその動きに呼応して
メタリックレッドの斬撃も空中へと軌道を変えると、上空のソリッドソードブレイカーへと襲いかかっていった。
「しまった!?」
レイの狙いを見誤ったキラはソードブレイカーを下がらせようとするが、ソードブレイカーの位置は、遠隔操作兵器同士がぶつかり合っていた場所であることはわかっており、
逃れようとするソードブレイカーは次々と輝く斬撃に切り裂かれて爆発へと姿を変えていく。
そして全部の飛行砲台を叩き落したペルゼイン・リヒカイトはもう一度剣を振り回して、斬撃をラピエサージュに向けて飛ばす。
狙いの露骨な攻撃が、最高のコーディネーターたるスーパーコーディネーターと同一のスペックを持つキラ・ヤマトを捕らえられるはずもなく、再びラピエサージュは攻撃を回避するのだが、
その眼前で幾つもの爆発が起こってキラの視界が覆い尽くされてしまった。斬撃が飛んでいく先にはペルゼイン・リヒカイトが自ら放った黒い突起があり、それが切り裂かれて爆発したのである。
爆煙が晴れたときにはキラの前にペルゼイン・リヒカイトの姿はなく、キラは辺りを見回すと、ペルゼイン・リヒカイトは剣を構えてジャスティスへ向かい斬りかかっていくところであった。
そしてシンを回収し終えたインフィニットジャスティスのアスランもペルゼイン・リヒカイトの接近に気付くと、この場から離脱するために急速に機体を上昇させる。
「逃がすかよ、ニワトリ野郎!!」
レイがそう言うとペルゼイン・リヒカイトは上半身を屈め、膝を大きく曲げて一気に大地を蹴って、大空へと飛び上がった。
「何!?」
予想外の跳躍にアスランが驚きの声を上げるが、このままシンを奪還されるわけにもいかず、ジャスティスのビームライフルを手に取らせてペルゼインに向けてビームを放つ。
だが跳躍したペルゼイン・リヒカイトは返り血で柄や鍔を赤く染めた大剣を正面に構えてビームを防ぎながらインフィニットジャスティスとの距離を詰めていく。
「レイ!まだ邪魔を…!行け、ファトゥム!!」
「今度もまた誰かを連れて逃げられるなどとは…思わないことだ!アスラン・ザラ!!」
「お前!その喋り方…!やはりふざけていたんじゃないか!」
マシンセルの力でパワーアップを遂げたジャスティスから射出された、飛行補助機能と攻撃防御機能が一体となったファトゥムがマシンセルの力で巨大化してペルゼイン・リヒカイトに向かっていくが、
対するレイはこの攻撃が来ると予想していた。より正確に言えば、ペルゼイン・リヒカイトを止められうるような攻撃はファトゥムによる足止めしかないであろうと、冷静に分析していたのである。
そして、ペルゼイン・リヒカイトは既にエネルギーの収束を終え、メタリックレッドに輝くエネルギーを纏わせた大剣を振り構えてファトゥムを迎え撃つ用意を完了させていた。
「お気に入りの…必殺、俺の必殺技、パート1!」
自分を貫くべく向かって来たファトゥムから伸びている、ミネルバすら容易く貫いた対艦ブレードに向けて、ペルゼイン・リヒカイトはメタリックレッドに輝くエネルギーを纏わせた大剣を振り下ろすと、
大剣の刃はそのエネルギーに耐えられなくなったブレードを消し炭にしながら破砕し、ファトゥムの先端から末端までを一気に斬り進んでいく。
ついにペルゼイン・リヒカイトが大剣を振り下ろしきると、ファトゥムは中央から真っ二つに分断されて断面から小さな爆発を起こし始めた。
さらにペルゼイン・リヒカイトは2つに分断されたファトゥムのうちの1つに足を掛けると、それを足場に再びインフィニットジャスティスに向けて跳躍する。
そして再びジャスティスに迫り、ペルゼイン・リヒカイトの大剣がインフィニットジャスティスを捉えようとしたときであった。
「ぐおっ!」
大剣を振り上げてがら空きになったペルゼイン・リヒカイトの背部に大きな衝撃が伝わる。さらに続けてもう一度衝撃がペルゼイン・リヒカイトとレイを襲うと、
ペルゼイン・リヒカイトは地球の重力に引かれて静かに地上への落下を始める。レイが攻撃の飛んで来た後方を睨みつけると、そこには銃口からまだ白い煙を上げている
オーバーオクスタンランチャーを手にこちらへ向かってくるラピエサージュの姿があった。
「ゲイムシステムとのリンク良好…敵行動予測完了。当たれえぇぇぇぇっ!!!!」
旧DCのアードラー・コッホが開発したゲイムシステムとの同調を始めたキラがオーバーオクスタンランチャーの照準を再びペルゼイン・リヒカイトに合わす。
ゲイムシステムが直接キラ・ヤマトに告げる敵の所在に銃口を向けてキラが引鉄を引くと、放たれた弾丸は落下中で思うように行動が取れないペルゼイン・リヒカイトに面白いように命中していく。
命中するたびに落下軌道を変えるペルゼイン・リヒカイトに面白いように弾丸が命中し、軌道が変わるたびにゲイムシステムが敵の居場所と合わせるべき照準をキラに告げる。
しかしゲイムシステムとのリンク係数が上昇してもキラの精神状態には何ら変わるところはなく、キラは淡々と敵への攻撃を継続していた。
ゲイムシステムはパイロットの戦闘能力を高める高性能なマンマシンインターフェースであるが、その分パイロットに与える負荷の大きさも凄まじいものがあり、
かつての教導隊に所属したテンペスト・ホーカーや念動力を持たないながらもリュウセイと互角の戦いを繰り広げたテンザン・ナカジマも、ゲイムシステムに耐え切ることはできなかったのである。
だが遺伝子レベルでコーディネーターの精神状態を侵す覇王の声を近くで聞き続け、そして連合から流出させたゆりかごと呼ばれる人格調整システムによる記憶の消去・捏造にも耐えうるほどの
高いスペックを生まれながらに持つスーパーコーディネーターと同一のスペックを持つ4人目はさすがというべきか、
彼にとって戦闘に関してのみ干渉を行うゲイムシステムの負荷は、負荷と呼ぶべきほど大きいものですらなかったのである。
他方のレイは、大剣を盾代わりにして防御をしていたが、それでも防ぎきれない攻撃に傷付いていく機体に気を配りながら何とかバランスを崩さずにペルゼイン・リヒカイトを地上へ着地させたが、
そこには既にマグナム・ビークを構えて向かってくるラピエサージュの姿があった。迎え撃つペルゼイン・リヒカイトも大剣を構えて一気にそれを振り抜く。
地力では勝るペルゼイン・リヒカイトの剣は、突き出されたマグナム・ビークを弾いて軌道を大きく逸らさせた。
だが、レイの次なる攻撃が来る前に、ラピエサージュは振り抜かれた大剣を握る腕を蹴り上げると、ペルゼインの腕から大剣がこぼれ落ちる。
そしてレイの意識が一瞬だけ落下した剣に向いた瞬間に、ラピエサージュは後退しながら素早くオーバーオクスタンランチャーへ手をかけると、
零距離からとはいかないまでも、近距離の銃口から放たれたエネルギーがペルゼイン・リヒカイトに向かって襲いかかっていった。
撃ち分けが可能なオーバーオクスタンランチャーのうちで、弾速と攻撃範囲の広さに重点をおいたEモードがペルゼイン・リヒカイトのボディに命中すると、
大きな爆発が起こってペルゼイン・リヒカイトがそこに呑み込まれる。そしてキラは自分の勝利を確信すると、機体を上昇させてアスランを追うべく戦場からの離脱を始めた。
一方でレイは爆煙の中から小さくなっていくラピエサージュの姿を見ながら、ゆっくりとペルゼイン・リヒカイトを立ち上がらせようとしていた。
近距離からの攻撃をほぼマトモに喰らって少なからぬダメージが機体に残っていることは否定できず、現に攻撃が着弾した胸部中央には上下左右に大きな亀裂が入っており、
そのダメージの幾分かはペルゼイン・リヒカイトと同調しているレイ自身にも及んでいる。
しかし、シンが連れ去られ、ハガネやヒリュウ改の部隊もスレードゲルミルをはじめとしたシャドウミラーの決死の足止めを受けており、
シンを助けに行けそうなのはレイのみ、という状況ではレイもそのままやられて倒れこんでいるわけにはいかなかった。
だが高い飛行能力を持つインフィニットジャスティスやラピエサージュに、それらの機体ほどの飛行能力を持たない今のペルゼイン・リヒカイトでは追いつくことはできないこともわかっていた。
「チクショウ!思うように飛べないとこれじゃあ追いつけねえ…………!」
シン救出のための対策を考えていたレイが言葉を詰まらせた。そして彼の視線の先には今、パイロットを失って力なく建造物にもたれかかっているビルトビルガーの姿がある。
「シン、お前のためだ。……悪く思うなよ?」
既に口調がザフト時代の頃と現在のものとが完全に混合してしまっていることを気にも止めず、ペルゼイン・リヒカイトは剣を拾ってビルガーの下へと歩いていく。
そして静かにビルガーに手を触れると、ペルゼイン・リヒカイトとビルトビルガーの姿が淡い光に包まれ始めた。
かつてペルゼイン・リヒカイトが水中戦闘能力を得るためにシーリオンを取り込んだ時のように、光の中でさらにビルトビルガーは発光を開始しながら徐々にその姿を小さいものを変えていく。
そして光の輝きが最高にまで高まると、両機を包んでいたサンライトイエローの光の珠は弾け飛び、その中からペルゼイン・リヒカイトが再び姿を現した。
だがその姿は今までのものとは異なっているところが幾つもある。
ビルトビルガーの機体各部にある増加装甲ジャケットアーマーは吸収・再構成された上で一点に、
ラピエサージュの攻撃により大きく傷付いた胸部を覆い、さらに強化するべく龍の頭部のような形でペルゼイン・リヒカイトの胸部に集約されて装甲を補い、増強させるために用いられており、
ビルガーの両翼は取り込まれて再構成される中でペルゼイン・リヒカイトの肩幅のサイズにまとめられて高い機動性と高速飛行能力をペルゼインに付加していた。
ペルゼイン・リヒカイトは両手を前後に回したり、足をぶらつかせて機体に異常がないことを確認すると、新たに獲得した翼を羽ばたかせ、
取り込んだテスラ・ドライブから粒子を撒き散らしながら大空へと飛び立っていった。
「待ってろよ、小僧おぉぉぉ!」
つづく
あれ?最初がダブってて、二番目が無い?
492 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/23(火) 19:00:34 ID:6BV1S1G2
さらばビルガー こんにちは紫色(と飛行能力)を得たモモゼイン
赤、青、紫ときた以上、やはり今度は黄色(と航宙能力)か…黄色の機体ってあったけ
そういえば、今のモモゼインはサイバスターみたいに推進剤いらずの推進能力をもっているのでしょうか
ああ、ヴァイサーガ´イベントの時間か
まあ、負けるんだろうなぁとは思っていたが…
しかし、やっぱり連れ去られるか…空気主人公からヒロインになってしまいそうだ
そして、さよなら、ビルガー
君はいい機体だったが、後継機に乗り換えの時期が来てしまったのだよ
>>492 八房の人が書いた斧装備のゲシュペンストカスタムの色が黄色ならいいんだよ!
(OGアンソロジー)
>>492 黄色っていうより金色じゃないかな?金太郎なキンタロスなんだし。
でも金色の機体なんていたっけ?宗雄が暁で転移してくるとか…?
つかキラ凸の組み合わせがタチが悪すぎだな
ファトゥムで守ってラピ☆エサが攻めるってかなり厄介だろ
>>494 ラミアと一緒に脱出の展開だけど、ラミアはレモンが御丁寧に機体まで付けて勝手に逃がしてくれるから、必然的にシンが救助される側ということに…
マクロス世界のラッキースケベにあやかってアスカ姫と呼ぼう
>>492 OGsの機体で黄色ければ良いんならテンザンの乗ってたリオン・タイプT、ヘビーバレリオン、ガーリオンカスタム、
2.5でフォリアの乗ってる量産型ゲシュペンストMk-IIなんかがあるよ。
村田リオンもだ
ヴィンデルの望む世界って聞くと・・・俺はR-TYPEが思いつく、バイドと終わりない戦いだし
あ、もしかして26世紀でバイドが暴走したのは真坂…
違うネタスマソ、アクセルって結構人気あるんだな…ラミアも悪くはないけど
しかし未だに曹ヒと同じ声に聞こえん
俺の歌(ry
アヤが腐女子化してる件w
さりげにハガネがいいダメージもらっている件について
506 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/23(火) 22:06:59 ID:K1SghKQa
>>498 ラミアにマスクメロンの補助つきお姫様だっこで救出されるシンw
ヴァイサーガでマシンセル隠者に勝てるのかな…?
>>507 ラミアとのコンビネーション
一方、悪セルと凸の息が合うわけがない
しまいには教導隊も来てくれるしな
アクセルとラミアの合体攻撃を毎回期待している俺
下手したらソウルゲインが隠者と殴り合いを始めかねないなw
>>507 ヴァイサーガがファイナルウェイクアップして、エンペラームーンブレイクをかまして勝つ
序盤はおっぱい描写に燃やしていた執念が中盤からは電王をスパロボの中で再現することに注がれてるなw
何故かヴァイサーガにはラミアが乗り
余った乙女天使型ロボットに乗るシンちゃん
アスカ姫wwwwwwwwwwwww
でも完全にレイ主役のシンヒロインじゃねーか。
この流れ打ち消せるのか?シンwwwwwwww
517 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/24(水) 09:33:20 ID:QXwGdaUZ
シンの新しい愛機
本命・ヴァイサーガ(ラクス歯軋り、レモン大喜び)
対抗馬・アシュセイヴァー
大穴・ラピエサージュ・オウカ機と同仕様(ハガネ合流後ゲイムシステム排除)
超大穴・ラーズアングリフ・レイヴン・ゴッドランス装備型
番外・ゲシュペンストMk-Uorエルアインス
番外編・アシュセイバー(ドラゴンガン装備型)
あり得ない・モモゼイン射撃形態メインパイロット
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『おれは種が気に入らなくてスーパー系主人公を
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 選んだと思ったらいつのまにかラクス教に入信していた』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 洗脳とか仲間割れだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
11氏はせっちゃんプレイオヌヌメ
X、キンゲ、ザブングルがラクソ教かよ…
すぐ誤解解けるとかいうてもなぁ orz
シンでキラ落としたいならせっちゃんで陵辱プレイ
新シャア板と皆とのおやくそくだよ!わすれないでね!
キラは最後にどちらでも落とせると聞いたが
アサキムさんとラクシズが手を組む展開マダー?
フラゲ組自重汁
アサキムって誰?
どうやら安心してZを買えそうだ、ありがとうテラーダ
>>528 せっちゃんをレイーポして言葉責めする人
御大将、ラクス軍に協力
どんだけテラダはラクシズ嫌いなんだwww
スクコマ2みたいな糞を作ったのと同一人物とは思えねえwwww
本気だ……寺田Pが本気だ……
いいぞもっとやれw
そして、ラクシズの野望をぶっ潰せ!
これは覇王w
オイオイ、11氏はいつの間にZのシナリオに参加してたんだw
>>535 ラクスが御大将を前にして本性表したかww
あれ、なんか俺のSS要らない子になりそうw
>>541 いんやいんや、思う存分やっておくれやすww
個人的にはラクソにスク○イド漫画版の蟷螂アルター女の要素ブチ込んでホスィですが
あるいはZの再構成SSでラクスをラスボスにしちまうってのもいいな
544 :
通常の名無しさんの3倍:2008/09/25(木) 14:33:44 ID:/QFJCDfa
>> 5 1 7
番外(笑)・シンはラミアに救出されて、ラミアの機体に共に乗って脱出(戦闘中にラッキースケベ発動フラグ)
誰もいない…
みんな今頃絶賛プレイ中か
インパルスの換装は面白いな
今回はEN切れしやすいからかなり重宝する
店行ったら8000円で売られてたんだぜ…流石にないわ…
>>544 >ラミアに救出されて、ラミアの機体に共に乗って脱出
「アスカ姫」への期待が増すばかりだなw
そーいや11氏SSでの「姫」の暫定的相棒の鰤も、OGではともかくαシリーズでは毎回クスハ「王子」に救出される
お姫様役だったなw
そんな姫だがZの溺れたステラ助けた後の会話が、
シンが上着きてないからアサキムばりにレイープかと思っちまったwwwwwww
>定着したらどうするw
つまり、ぜひ定着させろということですね
わかります
つかZの姫の使い勝手のよさは鬼畜並
しかもすぐ気力あがるから種割れが簡単ときたもんだ
、:::::::::`:::::: . ::::. ::::::::::/::::/,./:::/ 、 ,.-;:=弌:::::::|:::::::::::::ヽ `
..ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::/l/"//:::: ヾ´ ';::::ハ::::::::::::::',
\::::::::::::::::::::::/‐'´_;:ニ'" _,.= ―、 ∨ ヽ::::::::::::'、
_,.-‐'´::::::l::::::::::;イ rr'" /,.‐'" ̄ヾ', '、::::、:r、!
:::::::::::::::::::!::::::::::::::', ll // ヽ', ト、::ヾ',`
 ̄ ̄ 7::::!::::::/ヽ::::',ll l/ `、 f、',::::!` __,,..
/::::::';:::/::::::::ヽヾ'、 ヽ _,.-''"´`ヽ、', ',ノ}::::| ,,,,,,,,.......-‐''" /
/;:イ:::::::'´:::::::::::::::lヾ'、' 、 ヾ ヾ! Y:::l:l/ ∠__,,..‐''"7 /
-=´_::::::::::::::::::::\::ヽ、 `ヾ'、 '、 _,,.-シ /:::ハ! / / /
` 7::::::::::::::::{T‐r`、 ヾ', `ー=‐''",.- /!::l:} l ! / /
/:;:::ヘ::::::::ヽ', `,,.._ ヾ', ''´ / ';:ハ || / /
{/ . ヽ::::::::ヽニノヾーtヽ,,,,,,,,,....... -‐''´ ', ヽ ヽ ノ /
′ 7::::::;:-‐;:ィ:::\ :::'、 ヽヽr''´,. -'´
{/ __,.-ヘ::r、:ヽ :::::::ヽ l Y、`
「姫」はやめろーっ!
ラッキースケベや●的よりはいいじゃないか
Zでは逆ラッキースケベ発動してついうっかり腕を振ったエイナに玉打ちされちゃうシンが見たかったw
乱入してきたニート王子にゴッドシグマの闘志也がかなり笑えること言ってたwwww
「連邦とザフトの両方を叩き潰して世界の支配者にでもなる気かよ!」
ラクシズはその通りだからあまりに的確すぎて茶吹いたwwwwwwwwwwwwww
皆が姫姫言ってるもんだから、シンがお姫様っぽい着物着てリボン付けてるなを想像してしまったじゃないか。
刺客「今だ!」
パーン
SPA「危ない!」
SPB「ひっとらえろ!」
刺客「く…」
SPA「さぁ、何故ミナ様を狙った」
刺客「ふ、知れた事を…」
SPC「しかし残念だったな、貴様が殺したがっている相手はあそこじゃない。ここだ!」
刺客「な、何!お前はサハク!という事はあそこにいるのは…」
ステラ「シン、大丈夫?」
シン「うん、でも本当に狙われるとは…」
とミナの影武者役やらされてあだ名が姫に
>>559 身長が20センチぐらい違うw
どんだけ上げ底の靴履いてんだw
>560
アホ毛も身長に入ってんじゃね?ww
…誰か、
>>535の画像の内容教えてくれ気になって仕方ないんだ…
ラクスの隊長能力も完全に戦争を煽る系だからなあ。
隣接ユニットの攻撃力上げるとか……ラスボスの会話も男前過ぎてもうね……
え、
御大将に、
奇麗事言ったっててめぇのやってることは戦争煽ってるだけだろが、この戦争の歌姫が
と言うような内容の言葉を言われて、
黙れこの下郎、当の昔に覚悟は出来とるわい
と言うような内容の言葉を返すラクス。
そう言えば、スーパー系主人公ルートで花嫁強奪イベント見たけどさ、
現段階だとラクス教っぽくはならなさそうだな>スーパー系主人公
オーブの事を何も知らない癖にとかシンに言われた時に、
政治に結婚利用するのもソレを力づくでぶち壊す奴らのも全く理解できんと言ってるし。
リアルルートでやってるが、セツコとシンの会話がいまだにない……
つか、アムロの登場が格好良すぎ。
Zのヒロインはセッちゃんかと思ってたら
ヒーロー カミーユ
ヒロイン 姫
でした
セッちゃんはヒロインはヒロインでも被虐のヒロインでしたw
モモゼインの黄色候補で宇宙といえば、微妙なカラーリングだが
ヴァルシオンCFがあるじゃないか
あれ一応量産されているヤツの改修型だそうだが
ガルガウなんてどうよ
片腕落として吸収とか
>>566 別れる時のシンの独白が「カミーユ…みんな…」だしなw
1人だけ明らかに別格扱いw
確かにシンとカミーユが仲良くなるってのは、比較的良くある妄想だったけど、ここまでガチにするとは思わんかった
カミーユ「カミーユが女の名前で悪かったな!俺は男だよ!」
シン「アスカが女の名前で悪かったな!そっちは苗字だよ!」
そういやもう450超えちまったけど次スレとか立ち上げ無くていいのかね?
つか後10日ほどで三ヶ月じゃん
そろそろ次スレの季節だな
和田の登場にアレを被せるとはスタッフをマジ尊敬wwww
これじゃ和田のインパクト弱くなりすぎるだろwwwwwww
ガロードとレントンの為にゾラから始めた俺異端
武器フル改造の運命が鬼畜すぐるw
ゼラバイアがあのアヌメのウィンダムが如くアロンダイトのサビになるwwwwww
ホンコンシティの後にローエングリンゲートとか
「えーまだそんなトコなの?遅れてるー」って気になるよね
あと、プロキラスレの影響かカミーユのセリフが一々引っ掛かって素直に楽しめない
お前、いつからそんないい人になったんだよwと
劇場版ってそんな綺麗なカミーユなのか?
今回のスパロボは全体的に進み遅いねえ
やっぱ作品が多いからかな
>576
ちかくに似てるけどすぐ切れるシンがいるからだと思う
>>565 せっちゃんの肉体に痛みと恐怖が刻み込まれる所まで進めるんだ。
運命のデフォのBGMにヴィスティージを使うとはスタッフの方々分かってらっしゃるw
>>578 カミーユにとっちゃぁ聞き分けのいいカツみたいなポジションだもんな、シン
悪夢のときの凸が滑稽だったな
やる気ないなら帰れ!と凸フルボッコwwwwwww
対フリーダムの訓練に付き合ったりよく面倒見てやってるよな。
セツコルートだと彼女もシンの訓練に付き合って、カミーユと二人して、「フリーダムとは憎しみで戦っちゃ駄目」と諭したり、特にセツコとカミーユからはシンめっちゃ気遣われてる感じ。
悪夢のアスランは散々だよな。よりにもよってロジャーから「所詮父親と同じかね」
とか言われるなんてな……
けど、シンは何気に勝平とも一緒に強くなろうって約束してたようだし、仲間に恵まれてるな。
ラクシズが何食わぬ顔で味方になりやがった…
誰かラクシズ潰せるルート知らないか……
良くも悪くも精神年齢が歪だからなぁ、普段は(切れやすいが)年相応なんだけど
なんかのはずみで被災当時に戻っちまうからなぁ。
兄属性なのに弟属性が強く出てるとはこれいかに
>>585 そのルートはないけどラクシズの参戦をギリギリまで遅らせるルートはある。そっちだとレイとタリアとハマーンも仲間に出来るのでオススメ。
そりゃいいね
Ζならまだコロニー落としやってない「きれいなハマーン」だしw
>>587 できたら詳しく教えてくれ
色々調べてはみたがまだ黒のカリスマが暗躍しているらしく
情報があちこちで錯綜してるんだわ
シン「何だって急にビルマに…」
カミーユ「仕方ないだろ、そういう命令なんだから」
ガロード「ちょっと、あれ見てみろよ」
シン「あれは…セツコさん!?」
セツコ「…」(僧侶の格好をして竪琴を持っている)
シン「見えないと思ったら何だってあんなところに」
カミーユ「っていうかなんなんだよ、あの格好」
ガロード「セツコさん、何してるんだ。はやく元の服に着替えて戻って来いよ」
セツコ「………」(無言で首を振る)
シン「え?ちょ、何で何だよ!」
セツコ「…………」
ホロン
カミーユ「こ、この曲は…」
シン「………ほーたーるのひーかーりー」
ガロード「まーどぉーのゆーきー」
カミーユ「ふーみーよむつーきーひー」
三人「かーさーねーつーつー」
セツコ「………」←弾き終えて帰ろうとしている
ガロード「セツコさん!」
カミーユ「セツコさん!」
シン「セツコさん、一緒に戻ろう?」
セツコ「………」←無言で首を振る
ガロード「セツコさん!」
シン「………一ヶ月間待てって事なのか」
>>589 47話辺りでシンとルナが離脱せず残留するルート。すまんが一周目はどうやって行くのか不明。二周目からは選択肢で選べるとしか知らないんだ。
シン(俺のことを姫と呼ぶレスも黒のカリスマの仕業に違いない)
>>591 サンクス
ちなみに1週目でシンは残留してくれたんだが、まだマシな方らしいな
その後のインターミッションであの糞エンド再現されて苛立ったが
しかしスパロボZの運命は、普通にOG世界でも通用するな
宇宙怪獣ほどじゃないが、ゼラバイアやS−1星の連中と対等に戦える時点でヤバいし
自身の次元跳躍力によって、OG世界に飛ばされたシンとセツコが、同時にやってきたアサキム達と戦うとかの妄想が今から溢れるわ
「今度の異世界からの来訪者は黒髪のお姫様二人か」
つか連座シンだと、明らかに太極に至る資格があるなw
ラスト近くでのシンによるレイの説得が軽く泣けた
シンルナ離脱しちまったから二周目まで見れないぜちくしょう
>>594 何気に自由の時点で、核融合エンジンになってるからな
多次元世界になる前の時点で既に、あちらのCEはザンボットやグラヴィオンが存在する世界だし
ツィーネのカットインがブラチラにみえた
俺まだせっちゃんルートでニル初登場回だからぐろスタメンバー位しかまともにキャラ知らんけど
ツィーネはどうなん?
あのサフィーネの路線を継いでるって話だからせっちゃんやシンを躾たりしそうなんだけど……
俺も今20話で止まってるから分からん。
しかし、トビーに死亡フラグが出てるような気がする。題名からして不吉だ。
>>601 せっちゃん苛めまくりのおっぱい揺れまくりで、シンはヒーローしまくりなので期待汁
つーかシンがカミーユに先立ってクワトロに、
もしアンタが暴走するなら俺が止めてやります、とまで言ってたぞw
(ちなみにここらの会話にラクシズ一切絡まず)
流れを読まずに言うぞ!
フィールド上のSDちびバルゴラ3号機の頭部アンテナが
う さ 耳 に見えて仕方ないんだ…
せっちゃんウサ耳似合うだろうな〜
はっ!? チーh
あ、ごめん、1号機だった……
チーフにミンチにされてくる……orz
>>605「まずは君の頭にウサ耳カチューシャをはめ込む」
セっちゃん「助けて!誰か!誰かあぁぁぁっ!!」
セっちゃん「いやああああああっ!!」
>>605「ハハハハハ!そう、それだよ!まさに至高のコスプレだ!」
発売から早一週間か
職人さん方の進み具合はどんなもんかな
やっとビッグ軍団を滅し終わりましたよ
今クリア…疲れた
SSの糧になったのですかな?
左ルート(シンルナ自軍残留でレイを説得するルート)に行くためにやり直してたのでしょう
アレまだ条件確定してないですからねえ
左ルートは全くもって条件わからないからなぁ。
兆候として40話のホランドに対するタリアの返答、
42話のシンに関するアムロとシャアの会話の有無があるって話だけど。
左ルートは、アスラン脱走時にシンで撃墜せずとか聞いたような
そこの分岐は本当かどうかわからんけどアスラン脱走時にシンで撃墜したかどうかも関係するとか聞いたな
シンとセツコがCEで出会ったらって感じの小ネタを少々
「畜生……畜生……」
場末のバーのそれまた隅の席で、1人の負け犬が呻いていた。
「何でだよ……何で……」
その名はシン・アスカ。家族を失った悲しみと怒りをバネに、
ザフトのエースまで上り詰めた男だった。
だが、その軌跡は決して輝かしい物などでは無かった。
確かに先の戦争では比類無き戦果を挙げ、誰にも負けない程の成果も出していた。
だが、彼の守りたかった物はまるで守れなかった。
守ると約束した人、親友、仲間、上司……
誰も彼もが彼の目の前、もしくは預かり知らぬ場所で死んで行った。
それこそ、残った物はその身1つだけだ。
負けてしまった彼が知ったのは、勝てば官軍という言葉のみ。
周囲の全てが手の平を返したように彼や、彼の仲間だった者達を
槍玉に挙げ、最後の最後で美味しいところだけを掻っ攫って行った
連中、勝ち馬に乗った連中を歓声を以って迎えた。
その時ばかりは、レクイエムを命がけで破壊した事を本気で後悔したりもした。
だが、本当に後悔したのはその後だった。
平和の歌姫を最も脅かした敵という事も有り、死刑にされても
おかしくなかった彼は、よりにもよってその歌姫直々の恩赦により、
プラントからの放逐だけで許されたのだ。その寛大さに、プラント中の
人間が感動したのは言うまでもない。
正に生き恥を晒すとはこの事である。こんな事になる位なら他の仲間達のように
戦いの中で死んでいた方が遥かにマシだった。
今の彼は、何処にでもいるようなその日暮らしをしていくだけの男だった。
日銭を稼いで、自分の惨めさを忘れようと、飲んだくれる日々……
「あの……すいません」
自分が声をかけられている事にようやく気付き、顔を上げると、
目の前には、こう言っては悪いのだが……自分と同じような暗く濁り切った目をした女性がいた。
「相席、よろしいでしょうか?」
いつもだったら睨み付けて追い返す所ではあるが、何故か今日ばかりはそんな気分にはならなかった。
「……どうぞ」
暫くは2人とも、無言で酒を呷る時間が続いた。
「アンタみたいな人がこんな場所に来るなんて……世も末ってヤツだな」
長い黒髪に、整った表情。身体もそそる物を持っている。
少なくともこのような安酒場に1人で来るような女性には見えなかった。
「私が何処にいようが私の自由ですよ……」
喧騒に包まれたバーではあったが、彼らのいる一角だけは
どうにもならないぐらいの重苦しい雰囲気が漂っていた。
「冷えたビールさえあれば人生は楽しいなんて嘘ですね……
こんな物飲んでも頭が痛くなって、気持ち悪くなるだけです……」
「だったら何で飲むの止めないんだ?」
深入りしすぎじゃないか と思いつつもシンは言葉を止める事ができない。
そして女性は、少しずつだが、身の上を話し出した。
家族を戦争で失ってから連合軍に所属していた事、チームを組んでいた者達が自分を残して全滅した事。
その後も、裏切りに遭うなど、碌な目に遭わず、何も為せずに終戦を迎えた事……
「何なんでしょうね。私の人生って……肝心な時に何もできないで……奪われてばかりで……」
目の前の女性は自嘲するように笑うが、シンにとっては全く笑えない話だ。
彼女の人生と自分の人生がダブっているように思えてならないから。
「結局……力なんだよ。弱けりゃ奪われるだけだ」
「そんな事……無いなんて言えませんね」
どうしてそんな気分になったのかは判らない。だが、彼女の話を聞くだけじゃあフェアじゃない
とでも思ったのか、それともただ愚痴りたかっただけかは判らないが、シンも自分から話を切り出した。
話が終わった後、2人の周囲の空気は更に重くなっていた。
「何だか、私達って似た者同士な感じがしますね……他人の気がしません……」
「全くだよ。ここまで来るともう笑うしか無い」
力なく、だけど少しだけ笑う。怒りと悲しみに沈んでいた男と、悲しみと諦めに溺れていた女は、
久しぶりにそれ以外の感情が湧いてくるのを感じていた。
>>617 グググGJ!できればその続きを是非!
軽くネタばれされたような気がするが、GJとしか言いようがない。
いいぞ、もっとやれ。
できればINベッドまで頼むw
これは朝チュンの予感。
二人で心中しそうな勢いだなオイwww
二人で組んで、ジャンク屋家業とか……。
>>617 シンはともかく、セツコはこれでもまだ本編に比べれば遥かにマシというのが恐ろしい…
今回のライターのSっぷりは異常
レイ説得ルートでした11です
いつの間にアスカ姫なんてあだ名がwww
そして展開予想して下さった方の中にズバリ当てたニュータイプがいたwwwwwwwww
>>617の続きを勝手に妄想した
酒が進む→せっちゃんを部屋に送る→酔った勢い→朝チュン→なし崩し的に同棲?的な展開
やべ、人様のSSになのに朝チュンルートを文章化したくなったw
ズコズコバッコンしてるのも頼むゼエェェット!
>>628 エロパロ板に行けw
あっちでも大人気の組み合わせだから
>>629 詳しい話を聞かせてくれ
具体的に言えばどこで見れるのか
どのように人気なのか
>>630 エロパロ板のスパロボスレ
まだちゃんとしたSSは来てないけど、セツコの相方は誰がいいかって話題でシンがダントツ人気
クリアした人が増えれば、そのうちSSも増えてくるだろう
あそこは変な嵐がいるから投下はもう期待できないよ
んなーこたぁない。萌えな話題は出てる。
セツコがグリーンリバーにレイーポされた件
萌えな会話は出てるがありゃヒドいな…
つかZ欲しいなぁ
フラゲしとけば良かった…
636 :
通常の名無しさんの3倍:2008/10/03(金) 23:31:19 ID:xG88D+Cf
>>11氏
デスティニー(の残骸)ってどうなったんですか、確かデカトロンベに回収されたきりだと記憶しているんですが
>>634 それはせっちゃんの不幸の始まりに過ぎなかった件
シンの最終機体はクライマックスアカオニにしちゃえばいいんだよ。
デスティニー融合で!
シン(…フリーダムに続いてレイにまで主人公の座を取られるのか俺はOrz)
セッちゃん
「気を落とさないで」
つ ◎
シンとレイで古式ゆかしくバロムクロスさせればええやん
さすがに目の中でケンカしたりしないだろうから元ネタよりネタ的に弱くなるけど
友情ゲージが下がると合体できないんだなw
あと一人加えて、ハチュウ人類を滅ぼしたエネルギーを動力源にしたロボに搭乗すればいいのだ。
つまりシン・ゲッターに乗れと
・・・誰が死亡フラグの3機目に乗るんだ?
ルナマリア?w
クエルボか流星だろw
ところでZで初めてアクエリオン知ったんだがあれって一言でいえば
コウタの尻を狙うキョウスケがブリットをそそのかして最後に3Pする話ってことでFA?
Exactly(そのとおりでございます)
回収したデスティニーとアカオニを並べゲッター線を照射し進化を促す。
ってOGにゲッター線ないし!
マシンセルを使えばいいじゃん
??「ぶるあああああああああああああ!!」
WAKAMOTO自重wwwwwwwwwwwwww
セツコ左ルートがどう考えても
主人公:シン
ヒロイン:セツコ
…な件について
語りたいのか?
ならば存分に。
最近はすっかりアスカ姫だったからなんか逆にヒーローやってるのが新鮮だったわ
・・・アスカ姫・・・
セツコがシンを普段のちょっと気弱な顔じゃなくて、
嬉々とした満面の笑顔で女装させているのを想像してしまった・・・
そんなSTKの無防備なおっぱいを目の前にして
押し倒したり、胸に顔を埋めてみたりとするシンの逆襲
わざとやると失敗し、意図しないと良い目を見る
それがラッキースケベだ!
STK「シ、シン君、そんな大胆な…せ、責任は取ってね…」
シン「え゙…?」
バサッ
こうですか!?わかりません
ラッキースケベからラッキーセクースにレベルアップ?
アルト姫だってラッキースケベからラッキーセックルにクラスチェンジしたんだぜ?
え?
アルト姫は寸止めで焦らされてたんじゃなかったっけ?
ままごとみたいな生活に付き合ってはいたけどさ。
>>660 Fは途中から見そびれていたんだが、そんな事になってたのかwww
>>661 ジャケット着たままシェリルを抱きしめた後のシーンで
アルト姫がジャケットを脱いで肩にかけた状態で携帯をいじってる
シェリルの胸、太股、脇の布団一式、眠っているシェリルと来れば事後だろうw
>>662 シェリルの宿病発覚
→ランカが兄と逃避行
→マクロスクウォーター海賊化
→シェリルのためにアルトは移民船団に残留
→シェリルとアルトラヴラヴ同棲生活に……
と言う流れ……。
でも最後は、三角関係はまだまだ続きますエンドだった。
最終戦はマジで熱かったぜ。
とりあえず、あのメドレーのの編曲者は神!
アスカ姫、ステラ、ルナマリア、セツコで恋の四角関係マダー?
>>663 >シェリルの胸、太股、脇の布団一式、眠っているシェリル
こんな描写あったっけ?
アルトとシェリルが夕食している場面の後でそんなシーンがあった気もするんだが、
アレはシェリルが酒飲んでたからさっさと潰れて寝ちまってたんだと思ってたよ。
ヴァジュラ菌って体液から感染するんじゃないの?
シェリルとしちゃったら感染しないか?
これはランカとでも同様だな
マクロスクオーターが海賊になる回な
おまえらこのスレでまでSTKとか言うなw
体液感染を知ったらしいからゴムを使ったという説がある
そのゴムはミシェルの遺品だなんて説もあるがwwwww
体液感染なら、下手すりゃキスで感染するんじゃ……
口腔の粘膜も薄いからね
さて。
アスカ姫のラッキーキッスで感染は?
>>672 なのにあんなにディープに唇奪うなんてシェリル鬼畜w
Zの設定に絡みそうなのは小ネタと言えどもはまだ自重した方が良いんだよね?
>>674 相手がセツコの場合だと、感染どころかスフィアに命吸われる危険あるからな、死亡フラグ的な意味で
無限の可能性を持った多元世界の中には大尉さんが1号機に乗ったまま乙女って呼ばれる世界も存在したのだろうか?
もちろんあのままの性別と姿で。
シンがラッキーキッスで感染するもの
ステラと……薬物依存体質が感染
ルナマリアと……アホ毛が感染
セツコと……天舞宝輪喰らいました
ラミアと……マスクメロンが感染
最後は性転換…レモンに改造された?
>>680 尻がそまぶになるんですね、わかります。
女体化……真・アスカ姫ですね。
まぁ待て、姫がそのまま使えたとしたら固有スキルのラキスケはどうなる?
よもや男にやったら『痴女』なんてあだ名が…。
いや、しかしここは同性同士でキャッキャウフフな展開も…
>>684 最初からそれしか想定していませんが?
アーッはプロキラスレ以来伝統的に准将の管轄ですw
>>684 意図せずエロいセリフや格好等をして男共を悶絶させる>ラキスケ
いい目を見るんでなく、いい目を見させるわけです。
つまり、前かがみになったり鼻血を噴出す連中が大量発生か。
>女ラキスケ
熱いからと赤服の前を全開(ノーブラ+汗でシャツ透け)でMSデッキをうろついて、整備班に声掛けたり
戦闘が終わって上半身だけパイスー脱いで、タンクトップ+パッツンパッツンのパイスー下で寛いでたりとかするのか?
昔、シンがツンデレヒロインだったらってスレがあったよーな。
女ラキスケはセツコに感染させてだな
天使湯
アスカ「はぁ…、いいよなぁ」
ルナマリア「?」
ステラ「?」
アスカ「セツコさんだって…」
セツコ「?」
エウレカ「何心配してるの?アスカ」
アスカ「お前は…まぁ直にわかるさ。なぁ、メイリン」
メイリン「私はアスカよりあるもん!」
アイビス「!!」
ツグミ「どうしたの、アイビス?」
アイビス「今、何か仲間の意識が…」
スレイ「何をいっているんだ、お前は」
うん結構スレ違いだから流石に戻ろうな
>>690 さてと11氏と総帥氏は何時に投稿してくださるかなぁ…
あと14kじゃ投稿するにはきついんじゃないかな?
Z発売前に、シン主人公にしたZの再構成SS書こうとか言ってたが、
いざ蓋を開けてみれば予想を遥かに超えてシンが主人公してるもんだから、逆に何か満足してしまった
これはむしろ外伝とかを捏造した方がいいのかも知れん
>>693 リアル系でシン残留ルートに行くと、あれ?リアル系の主人公ってシン?
ってくらいの活躍っぷりだからなwww
>>693を期待して正座する日々がやってくるのか…。
バッドエンド後、セツコを支えるシンとか、シンの危機にもう一度戦うことを決意するセツコとか見てみたいな。
どーせ続編じゃチーム再結成エンドの後だろうし。
俺もスパロボやってるんだけどシン×セツコマジ萌えるな
シンの年上のお姉さんとの絡みって新しいというか新たな一面が見えたというか
独り身ED後のシンのせっちゃん看病日記っていうのを妄想したい…
勿論最後はちゃんと治ってメデタシメデタシね。
ルナマリアは一応年上……まあいいか。
スパロボZの続編が出るまでは、各々の好きなエンドで妄想し放題じゃね?
>>700 そうだっけ?
お姉さんなので同じ年なのにシンにもお姉さんぶってるというキャラかと思ってた
ラクスが完全に破凰化してラスボスになったZも見てみたいな
ジ・エーデルとかより百倍相応しいだろw
ラクスをラスボス化するならGガンの参加が望ましいな
デビルラクスでw
>>703 作品ラスボスだったら、デビルデスティニーとの2択
ガンダム系ラスボスだったら…色々候補はいるがとりあえず、
カテジナ(ゲームラスボスに助けられたとかで)との2択
…ゲームラスボスとしてだと、ガンダム系&バンプレオリキャラ以外
との会話イベントとか書くと、スレ違いになるのか?
デビルカテジナは新スパで期待したんだが
新スパではカテジナは小説版並に死ぬ間際に綺麗になったからな
(小説版同様もともとそんなにおかしくなってないが)
つーかカテジナの狂いっぷりを完全再現したスパロボって皆無のような
大抵ちょっと言動がおかしくなった強化人間レベル
>>705 カテジナの狂いっぷりを表現するなら、
ネネカ隊を完全再現&小隊長能力にクリティカル時即死(不屈鉄壁無効)辺りまでやらないとね
ロボゲ板にシンとセツコのスレが出来てますな。
突如としてスパロボ界に現れた不幸女STK…勢いがすげーなw
>>699 やべぇ何だこの破壊力w萌え死にするとはこの事かw
マリナのポジが食われたなw
>>699 せっちゃんもそうだが、ステラ可愛すぎるw
あと、ミーアのおしゃべりクッキングにワロタ
Zのおはじきイベント見たら、シンがデネブキャンディならぬアスカキャンディを作って配るネタが浮かんだ
>>708 だからSTK言うなw
>>710 みゃりなさまは不幸ではなく赤貧だから棲み分けはできてるw
総帥氏や11氏がセツコとか出す可能性ってあるかな?
11氏はオリジェネ2のifだからださんだろってか出せんだろ。
アクセルが悪セルじゃないし、ラウル兄弟の存在が示唆されてるから
OGSの方のOG2だろうな
まあ既に久保が参戦してるし、可能性が0ってことは無いかもね
つか仮にせっちゃん出ちまうと、シンはラミアと両手に花ってことに・・・ギギギ羨ましすぎる・・・
シンがそんな器用なこと出来る訳ないだろ、jk
あちらを立てればこちらが立たずを繰り返して、
最終決戦の前の会話でレイが「俺たち、ずっと友達だよな」と言いに来るんですよ
まあ、作者さんが出したいか否か、出したいならそう出来るか次第ですな。
正直な話、このまま一気にスパロボ最終話まで週一のペースで書き上げるか、シン×セツコを書くか迷っています。純愛ものか私が好きな作家さん風に陵辱もの……はヤダなあ、かくならやっぱり純愛ものか。書ける技量はないけれど。
いや、マジで。ちなみにセツコルートで一週目クリア。フォウ生存のステラ死亡、右ルートでレイも死亡デシタヨ。現在ランドルートでDX手に入れましたよというところです。三週目はセツコで左ルートでステラ生存目指します。
ではでは。おやすみなさい。
某所のシン×セツコSS投下後の反応からして、シン×セツコは今が旬。
書き続けている作品の事もあるでしょうからジレンマですかね。
>>721 無印編でキラ達の夢に出て来た久保ばりに、シンの夢に登場で顔見せ
種死編で本格登場というのはどうですか?
Zでもセツコ達がアーモリーワンに飛ばされたのが全ての始まりだったし
ようやくレイもステラも生存させて終了させる事ができた……
このためだけにZを延々とやっていたと言っても過言じゃないぐらいだ。
総帥のシンはちょうど『シン・アスカ』という種子が芽吹いたいくつもの世界の『運命』を見ているところですし
乙女なセツコならばシンとステラを励ましに来るのも不可能じゃない気がしますな。
蛇足ですが魔を断つ剣を出さないのは”丸いもの”の中に憎悪の空からやってきて持ち主の正しき怒りに応えて力を引き出すものがあるせいだったりしてw
726 :
通常の名無しさんの3倍:2008/10/10(金) 10:34:07 ID:L3DAD2XB
某所のシン×セツコSS投下後の反応からして、シン×セツコは今が旬。
某所ってどこでしょう?
スパロボ 世界
で検索すれば幸せになれるよ。