種・種死のキャラがX世界に来たら 風景画15枚目

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1GX1/144 ◆nru729E2n2
落ちてもまた立つガンダムX系のスレッド
このスレはXキャラと種キャラが出会ったらどうなるかを考えるスレです
新シャアでガンダムXについて語るならここでよろしく
現在、SS連載中+職人随時募集中
荒れ防止のため「sage」進行推奨
でも落ちそうになったら上げましょう
これ以上スレ落ちするのあれなので

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー
本編および外伝、他作品の叩きは厳禁
出来るだけ種キャラのみの話にならないように
ここがクロスオーバースレであることを考慮して下さい
スレ違いの話はほどほどに
本編と外伝、A.W.とC.E.両方のファンが楽しめるスレ作りに取り組みましょう

ガンダムクロスオーバーSS倉庫
http://arte.wikiwiki.jp/

X運命まとめサイト 
クロスデスティニー (作品展示・雑談掲示板・絵板他)
http://gx-destiny.x0.com/gx/top.htm

公式サイト
月は出ているか?−機動新世紀ガンダムX Web−
ttp://www.gundam-x.net/

旧シャア板X本スレ
機動新世紀ガンダムX−47
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/x3/1202549889/

まとめサイト GX-P 様
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/

GX-P 「ディスティニー in A.W.0015」(作者トリップ:◆nru729E2n2)
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/DinAW/DinAW.html#ss2a
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/DinAW/DinAW2.html#ss2b

GX-P 「機動新世紀ガンダムXアストレイ」(作者トリップ:◆XGuB22wfJM)
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/DinAW/hoshu.html#ho
2GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 21:49:11 ID:???
エスタルド編最終話を投下しようと思ってたらスレ落ちしてたし…
んじゃ、新スレ祝いにいろいろ迷いもありますが、
今回は2話まとめての投下です!!
(最終話+エスタルド編エピローグ)

ただどうなんかねぇ…エピローグは種キャラもXキャラも出ない
エスタルド市民の視点の話なんだが…
3GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 21:51:47 ID:???
第八十一話『覚悟はある、僕は戦う。』(前編)

「い、いけませんウイリス様!」
ウイリスの決断に一番大きく驚いたのは横にいた大臣のグラントであった。目を丸くし驚きの表情を浮かべたまま、
彼はウイリスの決断が今後彼にどんな災いをもたらすか矢継ぎ早に説明する。
「彼らはあなたを軍事裁判にかけ、戦争責任を追及するつもりです! そんな事になったら、ウイリス様のお命が…!!」
今回のウイリスの国外脱出計画の発案者であり、今までルクス同様ウイリスのそばでずっと働いてきたからすれば、
彼の自らを死地に追い込むような決断を許すわけには行かなかった。
「…僕が行きます!」
グラントの言葉を聞いてもなおウイリスは引こうとしなかった。
 ウイリスの中で、以前からずっと引っかかっていたものがあった。

『エスタルドの国家主席として本当にしなければならないことは何か?』

今までウイリスは、自分はそういう器ではないと考えていた。
父が死に、若くして国を受け継いだ彼にとって“国を任される”は大きな重荷であった。付き合う人間は年上の年配者ばかり、
曲者ぞろいの彼らとの仕事は毎日ただ忙しいばかりだ。

できることは少なく、至らない所ばかりの自分に一体何ができるというのだろう?

そんな疑問を抱えながらもウイリスはただただ毎日を過ごした。しかし、ガロードやシンと出会った事で、改めて
“自分にできることは何か”“やらなければならないことは何か”を考えた。国家主席は国の指導者。仕事は
国民の生活を豊かにし、そしてその全てを守ること。
ならば、答えは最初から決まっている。
「いけませんウイリス様!」
「はなせ、グラント!」
「いけません…!!」
「これは、命令だ…!!」
ウイリスの言葉にグラントは、力なく離れる。離れるグラントと入れ替わりにカガリがウイリスの正面に立った。
「お前、“命令”って言葉の使い方わかっているのか?」
「…わかっているつもりです。この言葉は、国家主席が、使うべき時に使うものです!」
「…そうだ、お前がそのつもりならそれで良い。」
2人は互いに目を離さず、しっかりと真剣に言葉を交わす。ウイリスの言葉を聞いたカガリは、どこか安心したような表情を浮かべた。


「一つお願いがあります。ガロードの乗るMSでガスタール軍に投降させてもらえませんか?」
『へ? 俺?』
突然の提案に、白羽の矢を立てられたガロードは表情を変えた。ダブルエックスと通信をつなぎ、ウイリスは理由を説明した。
「ガスタール軍の目的は僕だけですが、新連邦軍の目的はフリーデンの皆さんも入っています。ないと思いますけど、
僕が彼らに殺されて、皆さんに冤罪をかけられるような事態はできるなら避けたい。ダブルエックスなら、ガスタール軍も
新連邦軍も攻撃してこないと思うのですが…。」
『ガロード、お前が行け。』
『で、でもジャミル。』
『時間がない、急げ!』
ジャミルに急かされ、しぶしぶガロードは機体をフリーデンへと進めた。
4GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 21:55:20 ID:???
第八十一話『覚悟はある、僕は戦う。』(中編)

「ありがとう、ガロード。」
「は? いきなり何言ってるんだよ?」
 フリーデンからウイリスをコックピットに同乗させたガロードはゆっくりとダブルエックスを歩かせながら
ガスタール軍に向かってすすむ。既にガスタール軍にはウイリスの同乗が伝えられており、ガスタール軍の責任者が
一番手前に姿を現しているのが見えていた。
「君達の戦いぶりを見て、僕も戦わなきゃいけないって思ったんだ。」
「…俺は、ただ守りたかっただけだ。」
「僕も同じさ。」
「ウイリス…。」
「ジャミルさんが言ってた。『戦うのは私だけではない。この船のクルー全員が戦うべき時に戦う』って。
僕にはここで戦うことはできないけど、僕には僕の戦場がある。」
ガロードのように戦場を駆けることはできない。しかし、ウイリスは国家主席として1国の舵取りを任されている。
これはほかでもない、彼にしかできない戦いなのだ。
「…やれるのか?」
「覚悟はある、僕は戦う。僕のやり方、僕の戦場で、ね。」
「…そっか。」
 2人はそれ以後、言葉を交わすことなく静かに歩みをすすませたのだった。

『本日11時、エスタルド政府から新連邦政府政府に対しての降伏宣言が発表になりました。』
 談話室にいた面々は降伏宣言の中継を静かに見守っていた。彼らの表情は一様に暗く、今回の一件を各々重く受け止めている。
「これからどうなるのかしら? エスタルド。」
「降伏宣言を出した以上、新連邦政府の傘下に入ることは確実だろうな。」
「それだけで済めば良いけど…。」
トニヤの問いにシンゴとサラは自身で予想される範囲のことを口にする。
フリーデンのクルーとして生活した彼らにとって、政治のことはまったく未知の分野だ。
「まず新連邦から請求される賠償金の支払い、次に政府上層部の戦争裁判。
あとは、内政干渉による国の再構築が行われるだろうな。」
「で? 結局どうなるんだよ?」
カガリの説明にキッドは改めて答えを聞き返した。賠償金については見当がつくが、“戦争裁判”や“内政干渉”と
いった聞き覚えのない言葉のおかげで彼女の話の内容がいまいちピンと来ない。
キッドの言葉にがっかりした様子のカガリに代わって、アスランが彼の質問に答えた。
「簡単に言うなら、国のトップが総入れ替えになって、国そのものが新しく作り変えられるのさ。
新連邦に都合の良い様にな。」
「ふ~ん…。」
「でもよ、エスタルドって新連邦にとって本当に必要な国なのかよ? 
隣国のガスタールとはもめてるし、資源に恵まれているわけでもねぇし。」
「新連邦政府の目的はエスタルドの資源でも技術でもない。“傘下の国を一つ増やした”という事実が一番重要なのさ。」
ウイッツの疑問に今度はブラックのコーヒーを飲みながらテクスが答えた。
 新連邦政府は戦争で秩序のなくなった地球に新たな統一国家を作ろうとしている。
そのためには多くの国の参加が必要であり、土地の利害や人種、宗教といった問題は二の次になっているのだ。
「頭ごなしに従わせた所で、後々火種が残るだけだな。」
「それでもほしいのさ。」
頭の後ろに手を回して馬鹿馬鹿しいと感じるカガリにテクスも内心同意している。組織の中に火種を残しておいては、
後々分裂の原因となりかねない。だが、今はまだ大きな組織を組み立てる段階であり、
少しでも多くの国が参加しているという“既成事実”がほしいのである。
「組織体が大きいほど、その他の少数を取り込むことは容易になるからな。」
5GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 21:56:51 ID:???
第八十一話『覚悟はある、僕は戦う。』(後編)

 ガロードはフリーデンの甲板の上で、じっと横を過ぎていく岩々を見下ろしていた。
辛辣な表情を浮かべ、その手には悔しさを握りしている。
「エスタルド政府から、降伏が発表されたってさ。」
その横でシンはガロードとは反対側の岩々を眺めていた。柵に背を預け、こちらもつらそうな表情が浮かんでいる。
「そっか…。」
「…ああ、幸い国家主席に退任は行われなかったけど、これからが政治的にいろいろ大変なんだろうけどな。」
「俺は政治のことはわからねぇ。」
「俺もだ。」
互いに言葉を続ける事ができず、皆を乗せてすすむフリーデンのエンジン音がその場を支配した。
「…ノーザンベルにも、将軍にも、ウイリスにも、俺たち何かしてやれたのかな?」
「さぁ…? 最後なんか護衛対象だったウイリスに助けられた形だもんな。でも、ウイリスは国の指導者だ。
俺たちぐらいを守れないようじゃ、エスタルドに未来はないんじゃないかな?」
「今回の戦いは、俺たち新連邦に完敗だな。」
「…認めたくはないけどな。俺もいろいろあったし…。」
シンは見上げた空にある少女の顔を思い出す。彼は彼女の住む世界を壊し、彼女の父親を守れなかった。
守ることの難しさを嫌というほど感じさせる出来事であった。
「けど、一つだけ確かな事がある。」
「? なんだよ、確かなことって。」
シンの意味深な言葉にガロードは首をかしげる。シンは表情を変えず、空を見上げたまま続けた。
「守りたいと思って行動したからこそ、守る事ができたものもあるってことさ。」
6GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 22:09:47 ID:???
ここからは問題のエピローグ編です。
いろいろ感想をいただけるとありがたいです。
今後の展開として、こういった第三者の視点もあったほうがいいのか
確認したいので
7GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 22:11:53 ID:???
エスタルド編エピローグ『…もう、…甘えても良いよね…!』(前編)

 病院のベッドの上に1人の少女がいた。彼女の自慢のブロンドの長髪の上には包帯が巻かれており、ピンクの寝間着の下にも多くの傷を抱えている。
それまで有り余る元気で周りを振り回し、みなに好かれていた笑顔はなりを潜め、ただただ焦点の定まらない無の表情が彼女の顔を覆っていた。
 ベッドの横にある椅子に腰掛けていた少年も同じような表情を浮かべていた。彼女が受けた傷の大きさにどう言葉をかけて良いかわからず、
ただそばに居るだけしかできない。
「…エスタルド、新連邦に全面降伏したんだってね。」
「え? あ、ああ。ノーザンベルはもう国そのものがないし、ガスタールは先に新連邦の傘下に入っちゃったからね…。」
「結局、何のための戦いだったのかな? 15年前の戦争で滅茶苦茶になったのをようやく復興したって言うのに…。」

自分はなんでこんな怪我をしたのだろう

少女はそう思わずにいられなかった。
彼女はベルートでの戦闘の最中、崩れてきた瓦礫の下敷きになった。かろうじて一命を取り留めたものの、瓦礫に完全に押しつぶされていた
左手は戻る事がなかった。
 ベルートでの戦闘で逃げ損ねて命を落とした者も多い。そう考えれば左手を失っただけの彼女はまだ幸せかもしれない。しかし、
それは他人からの言葉であり、本人にとっては死ぬことよりもつらかった。
 死んだ人間が自らの死を自覚する事がないのに対して、ケガをした人間は自らのケガを自覚し、受けいれなければならない。
「今日はもう良いよ。ありがとう。」
「え? で、でも…!」
「帰って。」
少女は少年に顔を向けることなく、感情のない声でそう告げた。


「あ、あの、ちょっと良いですか?」
少年が病院の玄関を通ろうとすると、突然横から声がかかった。声のした方向に顔を向けると左肩からバッグをかけた少女が立っていた。
右手には紙切れを一枚持っている。
「誰かのお見舞いにこられたんですか?」
「…え、ええ。それが何か?」
「入院はまだまだ長引きそうですか?」
「…なんでそんな事を聞くんですか? あなたには」
「関係ないのはわかってます。私はただ、皆さんにこれを配っているだけです。」
ムッとした表情を浮かべた少年に対して、少女は持っていた紙切れを差し出す。差し出された手を無視するわけにもいかず、
少年はしぶしぶの紙切れを受け取った。
「私、病院のすぐ目の前にあるシルバー・ベルって喫茶店で働いてるんですけど、戦争終結キャンペーンでランチの割引券を配ってるんです。」
 少女の言葉どおり、その紙切れには“ランチ40%OFF!!”と書かれている。さらにその横にはまた別の言葉が記されていた。
「ランチコンサート?」
「はい。ランチといっしょに皆さんに音楽を届けてます。」
「あなたが、歌うんですか?」
「あ…、私はまだ練習中です。マスターがなかなか合格出してくれなくて…。」
右手でぽりぽりと頭をかきながら少女は目を泳がせた。
「歌、下手なんだ。」
「…そのようです。マスターは第七次対戦前からずっと音楽に携わって生活してましたから…。ギターもドラムもピアノも、
トランペットやバイオリンまで何でもできますし。」
既に40歳近くというマスターに許可をもらう事ができていないためまだ客の前で歌ったことがないと少女は恥ずかしそうに顔を背ける。
そのそむけた方向にある彼女の腕を見た瞬間、サジィは目を見開いた。
8GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 22:14:56 ID:???
エスタルド編エピローグ『…もう、…甘えても良いよね…!』(中編)
「キ、君…!?」
「あ! もう時間だ!! じゃ、これ2枚渡しますので、入院している人といっしょにきてくださいね!!」
そういって、少女は大急ぎでその場を後にする。残された少年は渡された2枚の割引券を持ったまま、
しばらくの間その場に立ち尽くしていた。


数日後、少年は少女を連れて店を訪れた。入院していた少女は少年の誘いを一度は断ったものの、
少年が何度も何度も諦めずに誘うおかげでとうとう折れてしまったのだ。
「感じのいい店ね、料理も美味しいし…。」
「君はここの所味気ない病院食ばかりだったから余計美味しく感じるんじゃない?」
「そうね…。」
目の前のかぼちゃのスープをかき混ぜながら少女は答える。しかし言葉とは裏腹に、
少女の表情は相変わらず無表情のままであった。
「…ねぇ。」
「ん? どうかしたの。」
「ここのお客さん、皆病院に入院している人ばかりじゃない?」
そう言われて、少年はまわりに気づかれない程度に他の客の姿を見渡した。
少女と同じように頭に包帯を巻いたままの老人、片腕をギブスで固めて三角巾で吊っている青年、
傍らに松葉杖を置いている中年の女性。少年たちを含め、客はけが人とその付き添いという組み合わせが
ほとんどである。
「ホントだ。」
「病院が目の前だからって、ここまで集まることはないと思うけど。」
2人が顔を見合わせていると、厨房の方からブロンドの長髪を後でまとめた30歳前後の男が姿を現した。
食事をとる客の前に立って姿勢を正すと、一礼し挨拶を始めた。
「え〜みなさま、本日はここシルバー・ベルへ来店いただき、ありがとうございます。ただ今より、
ランチタイムのコンサートを開始します。本日の歌い手は片翼の歌姫、サクラ・アルムタート。
演奏は私テリーと、友人のロックです。それじゃサクラ、挨拶を。」
ステージ上に促され、サクラと呼ばれた少女は段上に上がる。少年が先日割引券をもらったあの少女だ。
「皆さん、本日はご来店いただきありがとうございます。私は、今日初めてこの段上に立って皆さんに歌を披露します。
皆さんの心に響く歌をお届けするつもりですので、どうぞよろしく!」
そういってサクラは頭を下げる。客からいくつかの拍手が沸き起こる中、彼女は挨拶を続けた。
「いきなり暗い話題ですが、私は先日、父を失いました。」
瞬間、店の中が静まり返る。皆彼女の顔を見つめ哀れみの目を向けた。
「MSの戦闘に巻き込まれて、私をかばって死にました。だから私は父の分まで生きなきゃなりません。ここにいらっしゃる方で
先日のベルートでの戦闘で怪我をされた方もいらっしゃると思います。怪我をして体の一部を切断した人もいるかもしれません。」
その言葉を聞き、少年と少女は顔をこわばらせた。少女は左手をかばうように右腕と体の間に挟みこんでそれを隠す。
「つらい気持ちになりますよね? なんで自分が、って思いますよね? 私もそうでした。私は左腕を赤ちゃんの時になくしています。
父の遺品を整理してわかったことですけど、私の腕は一部の理不尽な人たちのせいでなくなりました。でも、なくなったものはもう元には戻りません。」
サクラはそこで一度間を置き、さらに言葉を続ける。ここから先は簡単にできることではないし、1人でできることでもない。
「皆さん、そのつらさを受け入れてください。素直に泣いて、悲しんで、それを周りの人と共有してください。お慈悲とかお情けとか、
そんなんじゃなくて、本当に皆さんを好いて、泣いてくれている人たちは、きっと、そう思っているはずです…。」
サクラの言葉が終わると、後ろに置かれたスピーカーから少しずつメロディーが流れ始める。鉄琴の軽く涼やかな音とギターの力強い前奏が終わると、
サクラは柔らかな声で歌い始めた。
9GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/06(日) 22:18:34 ID:???
エスタルド編エピローグ『…もう、…甘えても良いよね…!』(後編)

覚えてる ケンカしても
会っていたよね 賑わうカフェ 黙ったまま
どんな時も ここに居るよ
それが愛だって気づくに日が いつか来るから

君の頬に スッと流れ星
弱い所見せてくれた うれしかった…

がんばって がんばって がんばらなくても良いよ
ねぇ まっすぐで 勝手な 人だから
ほっといて ほっといて ほっとけないの君を
1人きりじゃ 生きていけない
だから気づいて 私はいる…

握りこぶしを そっと緩めて
やさしく手をつないでね…

歌いながらサクラは一粒の涙をこぼしていた。


コンサートが終わり、少年と少女は店を後にした。サクラと呼ばれた少女は最初に歌った
『がんばって がんばって』以外にも6曲ほどを歌い、客から拍手をもらっていた。
「…あの人、すごいね。」
「確かに歌うまかったよね。」
「そうじゃないの。あの人とっても前向きだよ…。」
病院からコンサート開始までの間無表情だった彼女の顔にわずかに表情がにじんでいる。
「…そんな顔しないでよ。」
「だって、私は皆に迷惑ばかりかけてるわ。」
「…そういう考え方が、僕にとっては一番迷惑だ。」
そう言うと少年は突然、彼女の右手を握った。少女は驚いて思わず少年に顔を向ける。
「さっきあの人も歌ってたじゃん。君が苦しいのはよくわかる。でもさ、だからって
その苦しみを1人で抱えないでよ。隠さないでよ。僕は君にとって信頼に足る存在じゃないの!?」
「べ、別にそう言う意味でいったんじゃ…。」
「じゃあさ、もっと僕を頼ってよ! 僕に君の苦しみを見せてよ!! 僕は、君のためなら泣けるからさ…!」
少女は少年の言葉を聞き、顔を下に向けた。少年の方から髪が邪魔で彼女の表情をうかがい知る事ができない。
彼は静かに返答を待った。
「…そうよね。もう新連邦が攻めてくることはないし、平和になったんだからもう良いよね。
…もう、…甘えても良いよね…!」
 穏やかな午後の光が静かに降り注ぐ中、少女の顔を覆っていた無表情の仮面がようやくはがれ、少年にすがるつくようにして大粒の涙を流した。

 エスタルドが新連邦に全面降伏したことで、国の上層部には大きな変化があった。側近であるルクスの解任により、
エスタルド政府は新たな一歩を踏み出す。彼の政治工作によって命を救われたウイリスたちは、今後国の繁栄のために
全ての力を注いでいくことだろう。
 新連邦に降伏したことで、国民はようやく戦いで何かを失うことから開放された。エスタルドが失ったものは確かに少なくはない。
しかし、多くのものを失ってもなお、輝くものが確かにそこにあった。
10通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 23:08:59 ID:YktdKJK3
乙!
11通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 00:59:00 ID:???
ルイスとさじが此所にも!サクラも良い仕事見付かって良かった。GJ
12通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 01:14:29 ID:???
GX氏更新乙

オリ展をきっちり本編に収束させて、かつ本編で描かれなかった部分を
想像する意味でもいいと思う>エピローグ編
無理して挟み込んでく必要は全然ないけど、氏のGX+デス種観が見られるのは
それはそれで面白い
13通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 16:28:46 ID:???
投下乙。でもスレは立ってたんだぜ

ttp://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1214820872/l50
14通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 21:01:41 ID:???
やると思った
でも投下乙です

エピローグはありかな
あのままだとサクラはちょっと「あー…」って幕切れになっちゃうし

しかし、カガリがマトモ過ぎてちょっと怖いぞ?
なんかこう、次辺りでガツンと叩き落とされるんじゃないかという悪寒が…
15通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 21:27:40 ID:???
てか保守以外の他の職人は出ていけって言ってないか、スレタイを見てみるに
16通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 22:25:17 ID:???
>>14
カガリまともかあ?何もしてないし何かできた訳でもないのに何でお前偉そうなんだよ状態だが
一人で暴走しなくなった分種世界にいた時よりはマシだがよ
17通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 00:59:26 ID:???
種世界の頃に比べれば、かなり…
ウイリスが覚悟決めた時になんか偉そうに文句つけるのがカガリ
さらに状況も違う例を引き合いにウイリスがやることを否定するのがカガリ
さらに言えば、DXを脅しに使ってそのまま脱出していくのがラクシズ
18通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 17:28:02 ID:???
>>覚悟はある、僕は戦う。
タイトルを見た時に嫌な予感がした。
でも、その予感を裏切ってくれてありがとう。GJ!

同じ台詞でも言うキャラによってここまで印象は違うとは……
19通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 01:18:04 ID:???
カガリの反応にちょっと違和感がw
これはカガリが成長した所為なのかな?

てっきりウズミの自爆やシンの「俺の家族は(ry」発言
を思い出すかと思ったのですけどね・・・。

もう少しウィリスとシンが絡んで欲しかったけど。
でも全体的に面白かったと思います。
20通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 19:10:28 ID:???
つか、エピローグ編で林原めぐみ殿の歌が使われている件

あ、なんかジャスって書いてあるトラックが
21通常の名無しさんの3倍:2008/07/15(火) 06:26:31 ID:???
ほしゅ
22通常の名無しさんの3倍:2008/07/16(水) 12:06:52 ID:???
保守
23通常の名無しさんの3倍:2008/07/17(木) 17:33:59 ID:???
ほしゅ
24通常の名無しさんの3倍:2008/07/18(金) 21:09:08 ID:???
376 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/07/18(金) 20:00:11 ID:uE3GgT5o0
受注資料概要 

・7/25売りのファミ通から新情報掲載(ファミ通優先) 
・主人公は4人でメカ共々シルエット。男女2人ずつっぽい感じだが… 
・オーブの建物にサテライトキャノンの銃口を構えるXの姿があった 
・特典はメイキングやスタッフ・声優のインタビューとかが入っているそうです。25万本上限 
・目標50万本、マクロスFやギアスR2等のバンナム枠でCM展開 
・攻略本は11月下旬解禁予定。
25通常の名無しさんの3倍:2008/07/20(日) 20:42:14 ID:???
       {ヽ: : : :/: {/:.:.:..:/:.:.:.:: 人:.::.::.:.:::..:.:.:<´ {:::..::.:.:.:.:.:.八
      ヽ、: :V: :/:.:.:.:.:.:,':./:..:.:./≧=ュ、::.:.:.::..:. ) ∨::.:.:.::.:::.:.:.:ヽ
      ヽ-`::l: :{.:.::.:.:.:.:.,':.:.:.:V ァア=モミ フ:.::,ノ,ゞ=≦ヽ、:..::.:.:.::.:..ヽ
       ヽ: :!: ヘ :.. ::.:.:.:.:.:..:{::::::::::::::::::::::(::.( }=f,ァ::::::、ハ::.:.:.:::.:.:.: ノ
        ヽ}: : :ヽ :.:{ .:::.:.:.:ト、:::::::::::::::. ノノ  {:::::::::::::::.: }::.:.:.:.:./
         〉: : : ヘ`t:.:..:.:...:ヾ`,‐--‐ "´   {ヾ:::::::::::: ノ::.:.:/
        /: : : : : : ∧ヽ、__,ィ´        ___  ` ‐ュ‐':.:/
          /: : : : : : : : : ::ヽ |:.:|     ,∠ _ __-{   ノ「丁     月は出ているか?
       {: : : {: : : ::i: : : : : :l:.:l       ̄  ,ィ'  |:.:|    
       ヽハ|、: : ::{: : : : : :i:.:i__  ヽ、     /: !   !:.:!
             ヽ _!ヾ: ハ ハ:.:{:::::` ‐-` =_'_ノ}::ノ  |:.:|
26通常の名無しさんの3倍:2008/07/20(日) 22:11:58 ID:???
ホーシューツクツクホーシューツクツクホーシューホーシュー
27通常の名無しさんの3倍:2008/07/21(月) 00:14:15 ID:???
保守ついで
ここに新たなGXのクロス作品が投下されてたぞ。

http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/x3/1205871030/l50
28通常の名無しさんの3倍:2008/07/21(月) 21:02:15 ID:???
バカップル、世界変われど、バカップル。
29通常の名無しさんの3倍:2008/07/22(火) 19:45:42 ID:???
あの二人を変えられる世界など無い。
30通常の名無しさんの3倍:2008/07/24(木) 07:55:00 ID:???
ほしゅ
31通常の名無しさんの3倍:2008/07/25(金) 01:11:21 ID:???
スパロボにXと種死が参戦するようだけど
なんか序盤には絡みそうにないみたいだね

面白そうなクロスがあるといいなぁ
32通常の名無しさんの3倍:2008/07/26(土) 02:11:23 ID:???
序盤と思われる画面写真で合流してたけどなぁ。
Zもいたから同じガンダム乗りとして、カミーユ、ガロード、シンで親睦を深めてもらいたい。
33通常の名無しさんの3倍:2008/07/26(土) 09:11:03 ID:???
もちろん拳で語り合うんだなw
34通常の名無しさんの3倍:2008/07/26(土) 19:50:02 ID:???
ガロードが負ける姿しか浮かばんぞ…>>拳で語り合うんだな

つか、エスタルド編全部詠んだ奴挙手
皆の感想を聞きたい

俺としては…ビミョーな所も有るがまあ面白かったと思う
35通常の名無しさんの3倍:2008/07/27(日) 00:27:06 ID:???


まあ、面白かったと思うよ?
オリキャラもなかなかいい味を出してたと思うし
ただ、原作なぞるならなぞるでもうちょい描写があっても良かったかな?
X世界に種キャラが来ているので、その辺りの心情をやって欲しかった気がする
36通常の名無しさんの3倍:2008/07/29(火) 08:06:32 ID:???
hosyu
37通常の名無しさんの3倍:2008/07/29(火) 12:41:01 ID:???
スパロボZのティファがどんな感じになっているか楽しみだ。
後、パーラはでてくるのだろうか?ここのスレではすっかり空気だからな……。
38通常の名無しさんの3倍:2008/07/29(火) 16:24:37 ID:???
パーラはGファルコン出る限り登場は確実だろうよ。
むしろランスローとかゲテモノ三馬鹿とかアベルのおっさんがちゃんと出るかが心配
39通常の名無しさんの3倍:2008/07/31(木) 08:46:21 ID:???
ほしゅ
40通常の名無しさんの3倍:2008/07/31(木) 19:03:03 ID:???
パーラは巨乳だよね
41GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/31(木) 22:06:30 ID:???
いまだPS2を持っていない私ですが、Zのために購入を考えてます.
んで、今回の話はシンは出ません! 何でって?
だって今回は敵側の話ですから!!

第八十三話『ワシの道はワシのものだ!』(前編)

「アベル・バウワーであります!」
アベルはそう言うと、目の前にいる2人の上官に対して敬礼をした。
彼は上層部からの命令で、ある作戦に参加する事が決定している。その作戦の指揮を取るのが、目の前にいるシャギア・フロストと
オルバ・フロストという2人の上官である。
「よろしく頼む、アベル中尉。」
「兄さん、この資料によると彼は…!」
「そう。彼は覚醒率5%未満のニュータイプだ。」
 驚きで目を丸くするオルバとは対照的に、シャギアはさも当然のように目の前にいる事実を語った。
 ニュータイプ、15年前の戦争で多くの戦士として投入され、その名に恥じない成果を上げた“新たな人類”として崇められた存在である。
現在ニュータイプとしての力を持つはいないというのが世間一般の通説であるが、新連邦政府は既に何人かの候補を確保していた。
 その中で、今最もニュータイプに近いといわれているのが、このアベル・バウワーである。
「もっとも、完全覚醒には至っていないがな。この機体も、今は宝の持ち腐れに過ぎん。」
「だが、研究所が認めているだけでもたいしたものだ。」
シャギアはアベルの愛機である“ラスヴェート”を見上げながら口を開く。
ラスヴェートは研究所が作った新連邦の持つ“ガンダム以外にフラッシュシステムを積んだ数少ない機体”なのだ。
「もっとも、フラッシュシステムと似たようなシステムを持った機体もいるようだがね。」
そう言いながら、シャギアはラスヴェートの横で整備が行われている灰色のMSに目を移した。全身灰色のその機体は、
背中に大きな円盤を装備しており、さらにそこから6枚の板と2本の円錐形の物体が装備されている。
「あれは、もしやビットか?」
「あそこで整備を続けているのが、あのレジェンドと呼ばれるMSのパイロット、レイ少尉です。」
オルバはアベルにレイの事を紹介すると、レイに声をかけ、アベルの前で自己紹介をさせる。レイは整備の邪魔になる肩にかかる
長い金髪を後頭部で結んだままの状態でアベルの前に立って、姿勢を正した。
「レイ・ザ・バレル少尉であります。アベル中尉のことは、いろいろと聞き及んでいます。」
「ほう? どう聞いているのかな?」
「一度戦場に出れば勝つまで引くことのない戦士、太平洋戦線では“鉄鬼”という仇名を取られていたかと。」
「新米共に背を向けるのは、ベテランの恥だからな。」
細いあごに手を当てながらアベルは当たり前のように答える。15年前の戦争で人口は激減し、さらにコロニー風邪等の
はやり病のおかげで平均寿命もかなり低下している。新連邦軍の中でもアベルは年長者であった。
「で、今回はこの4人でガンダムを倒しに行くのか?」
「いえ、奥にもう1機新型ドートレスの試作機を扱う者がいます。こちらも、まだ入って間もない若手です。」
「ふん…。」
 アベルは一番奥に置かれているドートレスの足元まで歩いていく。足元からそれを見上げると、
フェイスガードや両腕の装備などドートレスとは違う点がいくつか見て取れた。
 しかし、一番気になったのはドートレスタイプには装備されていない背中のバックパックあった。
横に二本伸びた翼は格納庫に保管するためか根元から下に向かって折りたたまれており、さらに左右斜め下に翼が伸びている。
いや、正確には下向きに取り付けられたメインスラスターの噴射口からその翼は伸びていた。
黒と赤を基調に塗装されたそれは、ダークグリーンを基調とした本体の塗装とは微妙にミスマッチな気がしてならないが、独特の
風格を醸し出している。
42GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/31(木) 22:08:15 ID:???
第八十三話『ワシの道はワシのものだ!』(中編)

「これは飛行用のバックパックか?」
「そうです。」
アベルの後ろから声がかかる。声の方向に顔を向けると二十歳前後の青年が作業着のまま近づいてきた。
青年は彼の横で立ち止まるとドートレスを見上げる。
「これは僕が設計したドートレス系統用バックパック“エール”です。」
「貴様がこれを設計したと?」
「…正確には、以前使っていた機体の物をドートレスように改修、改良したものです。」
「貴様の名は?」
「キラ・ヤマト、階級は曹長です。」
アベルはキラに向き直ると、まじまじと彼を見詰める。目にかかりそうなほど長い髪、華奢な体つきだけを見ると
とてもパイロットには見えないが、彼の指にはしっかりと操縦桿を握り続けているとできる胼胝がある。年齢は見た目では20歳前後、
それなりに戦場を潜り抜けてきたこと間違いない。
「貴様はなぜ新連邦に?」
「僕自身の目的を果たすためです。」
「目的とは?」
「世界を、変えることです。」
優男の顔から一転して表情が戦士のものに変わる。明確な目標を持ち、それを実現するためにはどんな苦難も乗り越える覚悟が
彼にはあるのだろう。
「新連邦の一兵卒が、世界を変えるというのか?」
「そのために、彼は力を得ようと今がんばっているんですよ。」
後からレイとフロスト兄弟が近づいてくる。全員がドートレス・ネオを見上げるなか、レイはさらに言葉を続けた。
「1人の人間の小さな力では世界を変えるという途方もないことはとてもできることではない。」
「それでも僕は、世界を変えたい。すべての人を苦しみから救ってあげたいんです。」
「そのためには多くの人間の協力が必要になる。」
「だから僕は、今檻を出てここにいます。」
キラはやる気に満ちた目でドートレス・ネオの先に更なる世界を見ていた。


 ヨーロッパのとある森の中に一軒の別荘があった。15年前の戦争でコロニー落としの被害を奇跡的に免れたそこは、
今もなお豊かな緑に覆われている。舞い上がった粉塵によって太陽のなくなった世界の中でも、北欧の木々たちは寒さに
適応した形で今日まで生きてきている。
そんな別荘のテラスで、1人の老人が静かに座椅子に腰掛けていた。齢60を超えて頭髪は全て抜け落ち、
年齢と苦労を重ねてきた老人の皮膚が昼時の静かな光を受けている。
「Mr.ブラッドマン、そろそろお薬の時間ですよ。」
「…うむ。」
新たに現れた男の声に新連邦の最高権力者、ブラッドマンは椅子から立ち上がった。地球連邦政府が崩壊した後、わずか15年で
新連邦政府が立ち上がったのはこのブラッドマンという男が動き回った結果であった。その激務のためか、彼の胴回りは既に90cmをこえ、
自身の健康に悪影響を起こしかねないレベルまで達している。
「薬を飲んだ後、泉まで散歩に行く。お前も付き合え。」
「私が、ですか?」
「そうだ、オマエがだ。ギルバート・デュランダルよ。」
薬と水の入ったグラスをトレイにのせ、デュランダルと呼ばれた長髪の男はブラッドマンの言葉に一度考え込むようなしぐさをした後、
同意の意味を込めてうなずいたのだった。
43GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/07/31(木) 22:11:01 ID:???
第八十三話『ワシの道はワシのものだ!』(後編)

 ブラッドマンは無言で林の中の道を歩く。その後を、3歩送れてデュランダルは続いた。互いに何か言葉を交わすわけでもなく、静かにすすんでいく。
「…デュランダル、お前はこの世界をどう思う?」
泉までの道のりも半ばを過ぎた頃、ブラッドマンはそうデュランダルに問うた。デュランダルは眉をひそめる。
「世界をどう思うとは、一体どういう意味でしょうか?」
「言葉の通りだ。今、世界は新連邦によって新たな秩序が生まれようとしている。この現状がお前にはどう映っているのかと、おもってな。」
「そうですねぇ…。」
 デュランダルは腕を組んで考えるしぐさをすると、わずかな間をおいてブラッドマンの質問に答えた。
「私は、良い方向にすすんでいると思います。新連邦政府が地球上の全てを自らの支配下に置く事ができれば、争いはなくなるでしょう。」
「支配、か。やはり、一般庶民からすればわしは単なる独裁者のようだな。」
 ブラッドマンは自嘲する。“支配”という言葉がデュランダルの口から出た事がブラッドマンにとっては予想通りであったし、
少し気に食わなかった。
「支配という言葉が、お嫌いですか。」
「そんなことは気にしておらん。しかし、独裁者として忌み嫌われることは好かん。」
「支配者と独裁者は符合するものではないと思いますが?」
「変わらんさ。どちらも民に自分のやり方を押し付けているという点ではな。」
自身の言葉を鼻で笑いながらブラッドマンは歩みを進める。デュランダルは速度を変えず後に続く。
「…Mr.ブラッドマン、ではなぜあなたはこうして新連邦政府の最高責任者になったのですか? 独裁者と忌み嫌われる事がわかっていて、なぜ?」
「ワシは、世界を変えたい。ただそれだけだ。」
「それが、夢半ばで終わるとしてもですか?」
「…夢半ばで終わるとは、一体どういう意味だ?」
デュランダルの言葉に、ブラッドマンは振り返って彼を睨みつける。年老いていてもブラッドマンは現役の政治家、眼光の鋭さには
凄みが有った。
「私は、運命というものを信じております。もしもその願いが半ばで潰える運命と決まっていたなら、あなたはどうしますか?」
「…わしは運命など信用せん。仮にそうであれば、ここまでくることすらできんかったはずだ。」
 くだらないとデュランダルの話を切り捨てると、ブラッドマンはまた泉へと歩みを進める。
しかしその一方で瞳の奥にはすさまじく激しい炎が燃えていた。
「運命なんぞ、ワシは自力でこじ開ける。ワシの道はワシのものだ!」
44通常の名無しさんの3倍:2008/07/31(木) 22:38:04 ID:???
GX氏更新乙

キラは檻でどんな教育を受けたんだろう、気になる所だ
ブラッドマンこんなにギラギラしたキャラだっけ、いやしてたな兄弟に野望を吐露する所とか
45通常の名無しさんの3倍:2008/07/31(木) 22:40:00 ID:???
ちょ、議長www
ってかブラッドマンがかっこいいと思ったの初めてだ、GJ!

でもアベルたんのファミリーネームは バウアー な罠
46通常の名無しさんの3倍:2008/07/31(木) 22:49:55 ID:???
GJ

ついに議長が登場したな
……しかし、このキラは本当にどうしたことか?
レイと一緒に再登場するとは思いませんでしたよ
あと、議長
そのタイミングで『夢半ばで終わる』とか、明らかに後ろからパァンする前振りっすよw
47通常の名無しさんの3倍:2008/08/01(金) 00:10:04 ID:???
GJこの面子で行くのか、アベルを後ろから撃つのは誰になるか
48通常の名無しさんの3倍:2008/08/01(金) 19:57:44 ID:???
GJ!!なんかワクワクしてきた!!
49通常の名無しさんの3倍:2008/08/01(金) 20:32:14 ID:???
GJ!!
アベルも気になるがキラとレイの直接対面が気になってしょうがない。
ここの時系列だとストフリとレジェンドの対決前だからキラはレイのこと知らないし。
アベルの代わりにレイに撃ち殺されそうだw
50通常の名無しさんの3倍:2008/08/01(金) 23:38:13 ID:???
しかしキラはともかくレイに議長まで…
このあと革命軍本隊やサテリコンにも転移組キャラ出るかわからんが
シンは自分以外の転移者をすべて敵に回す羽目になるのか…?
51通常の名無しさんの3倍:2008/08/01(金) 23:56:46 ID:???
……一応、カガリと凸はまだ味方陣営にいるのに…

まあ、元々原作的にシンは味方がほぼいないし
レイと議長、それにミネルバは味方につくかも知れんけど、
何ともなしに敵陣営からの寝返りじゃ本編の悪夢と変わらないじゃないですか?
52通常の名無しさんの3倍:2008/08/03(日) 22:19:41 ID:???
保守
53通常の名無しさんの3倍:2008/08/05(火) 07:37:17 ID:???
保守
54通常の名無しさんの3倍:2008/08/06(水) 08:37:46 ID:???
ほしゅ
55通常の名無しさんの3倍:2008/08/07(木) 08:13:13 ID:???
保守
56通常の名無しさんの3倍:2008/08/09(土) 08:38:00 ID:???
hosyu
57通常の名無しさんの3倍:2008/08/09(土) 12:30:04 ID:???
保守ばかりもなんなのでネタを振る。

本編終了後のガロティファが、運良く助かってシンとはぐれたマユを引き取るって話はどうだろう?
58通常の名無しさんの3倍:2008/08/09(土) 12:43:07 ID:???
保守
59通常の名無しさんの3倍:2008/08/09(土) 19:07:40 ID:???
年下のはずがお姉さんに見えるんですね、わか(ry
地下室はやめて〜
60通常の名無しさんの3倍:2008/08/09(土) 19:27:45 ID:???
CE71の時、マユって何歳だっけ?
61通常の名無しさんの3倍:2008/08/09(土) 21:46:41 ID:???
11歳とかじゃなかった?
なんでかオーブにいる二人が大怪我を負ってるマユを見つけて応急手当しながら
病院に担ぎ込んでそのまま面倒見続けるとかいう展開かな?
ガロードがMSに乗るような展開は俺には思いつかん
62通常の名無しさんの3倍:2008/08/09(土) 21:54:32 ID:???
ユンみたいにジャンク屋になるとか?

専用にカスタマイズしたレイスタを駆りつつジャンク屋稼業。
住居にしている施設or船に戻ると、ティファとマユがお出迎え。

ガロード「ただいまー」
ティファ「お帰りなさい、ガロード」

マユ「ちょっと〜、ガロードお兄ちゃんにティファお姉ちゃん! 帰ってくるなり人前で見詰め合っていちゃいちゃしないの!」
63通常の名無しさんの3倍:2008/08/10(日) 01:10:03 ID:???
>>62
何その気苦労の絶えない妹設定。

まあMSならGXDVかフリーデンVのメンバーごと転移してくれば問題ないかと……
64通常の名無しさんの3倍:2008/08/10(日) 19:42:06 ID:???
ガロードの強さ、狡猾さを身につけたマユたん。少し見てみたい。
65通常の名無しさんの3倍:2008/08/10(日) 21:10:24 ID:???
最終的にマユがX第1話冒頭のMSにライフル撃ち込むおばちゃんみたいになるんですね
66通常の名無しさんの3倍:2008/08/10(日) 23:11:10 ID:???
ガロード「いくぜ、マユ!」
マユ「うん!」

ガロード「でやあ!」
マユ「えーい!」

ガロード&マユの連携により、ならず者のMSを撃破。

ガロード「おーい。終わったぜ、ティファ!」
マユ「お姉ちゃーん!」
ティファ「ふたりとも、怪我はない?」
ガロード「へへっ、あったぼうよ」
マユ「マユとお兄ちゃんの手に掛かればMSの1機くらいどうってこのないわ」
ティファ「そう、良かった」

こんな感じかな?
67通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 08:49:40 ID:???
のちに『MS狩りのマユ』と名を広めていくことのなるのか……
まあガロティファのそばにいれば、健全かついい方向に逞しくなるだろうから心配はいらんが。

シンと再会したときが見ものだな。
68通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 18:01:55 ID:???
逞しく育ち過ぎて、再会時にシンの身長を抜いてるマユを想像した。
69通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 18:27:36 ID:???
ティファとガロードを誘拐犯かなにかと勘違いして殴りかかったが、
マユに逆に殴り飛ばされてへこむシンがみえます。
70通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 19:32:28 ID:???
なんかインパルス(デスティニーでもいいか)に乗ったシンがマユに狩られて衝撃の再会が浮かんだ。

シン「マ、マユ……なのか?」
マユ「え……シン、お兄ちゃん?」
シン「マユ!」
マユ「シンお兄ちゃん!」
シン「マユ! マユ! ホントにマユなんだな。良かった。生きてたんだ」
マユ「うん、うん。シンお兄ちゃんもよく……」
シン「それはそうと何でこんな……生身でMSに挑むなんて馬鹿なことを」
マユ「え? マユ、怪しいMSが勝手にここに入ってきたらいつもこうしてるけど?」
シン「は? いつもって……今まで何度も?」
マユ「うん」
シン「はは……凄いな、どこでこんな技術を……」
マユ「マユなんてまだまだ。ガロードお兄ちゃんだったら本当にもっと手際よく……」
シン「マユ!」
マユ「きゃ、な、何?」
シン「マ、マ、マユ、何言ってるんだ? マユにお兄ちゃんは1人だけだろ……」
マユ「え? ああ、もしかしてガロードお兄ちゃんのこと?」
シン「がろーど『お・兄・ちゃ・ん』!?」
マユ「うん! シンお兄ちゃんにガロードお兄ちゃん、あとティファお姉ちゃんがいて、今のマユには2人のお兄ちゃんと1人のお姉ちゃんがいるの!」
シン「は、はは……うああああああああああああああああーっ!」
71通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 19:37:50 ID:???
>シン「それはそうと何でこんな……生身でMSに挑むなんて馬鹿なことを」

狩られた奴の言う事かw
72通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 19:49:05 ID:???
>>71
まあきっとシンも動揺してたんだよ。
だってあの世界じゃMSを生身で撃破するなんて片手で数えるくらいしかいないわけだし。
73通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 22:40:37 ID:???
片手で数えられるくらいはいるって事かそれ?
74通常の名無しさんの3倍:2008/08/11(月) 22:47:09 ID:???
>>73
ウン・ノウとバリー・ホーか。
かたや日本刀でビームサーベルの柄やビールライフルを切り裂いたり、
かたや蹴り1つでMSの頭部カメラ破壊したり、対人バルカン食らってかすり傷だったり……

まあ流石にガロードみたいに閃光弾とワイヤーガンと拳銃だけMSを制圧した奴はいなかったが、この技術をマユが身に着けたとなると……。
75通常の名無しさんの3倍:2008/08/12(火) 12:30:42 ID:???
>>69
シン「あんたらぁぁぁぁぁーっ! よくも、よくもマユを!」
ガロード「は?」
ティファ「え?」

 めきっ!

シン「ぐああっ!」
マユ「ちょっとーマユのお兄ちゃんとお姉ちゃんになんてことをしようとしてるの! シンお兄ちゃん!」

76通常の名無しさんの3倍:2008/08/12(火) 16:07:12 ID:???
マユの、シャイニングフィンガー装備の超強力パワーアームで
後頭部をがっしりパルマられて悶絶するシンと、まさかこれが兄妹の再会の
一コマとはさすがに想像もつかずポカーンなガロティファという画像が…
77通常の名無しさんの3倍:2008/08/12(火) 16:24:31 ID:???
ルナ「えーと、シンってコーディネイターで、私たちと同じように訓練受けてたわよね?」
レイ「そのはずだが……」
ルナ「じゃあ、そのシンをあっさりのしちゃうあの妹さんとガロードって人は一体……」
レイ「俺に聞くな」
78通常の名無しさんの3倍:2008/08/12(火) 16:34:29 ID:???
マユは戦闘向きの因子を組み込んでコーディネートされてた、とか。
ガチ喧嘩で負けっぱだったガロードが軍人(シン)に勝てるとは到底思えんw
79通常の名無しさんの3倍:2008/08/12(火) 16:39:15 ID:???
たぶんガロードは搦め手でシンの動きを封じたんだよ、きっと。

どのみち兄貴の威厳ねーな、シン。
80通常の名無しさんの3倍:2008/08/12(火) 23:10:06 ID:???
自分よりもガロード&ティファを頼りにしているマユを見て茫然自失になったシンが浮かんだw
81通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 09:40:50 ID:???
マユ:これからはマユがお兄ちゃんを守ってあげる

シン:('A`)
82通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 10:21:45 ID:???
まあガロティファに育てられたとなれば、生活能力と生存能力がかなり上がるだろうからな。

ザフトってサバイバルとかに弱そうなイメージがあるし……。
83通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 10:53:09 ID:???
AWは軍事訓練どころか人生そのものがゲリラ戦みたいなもんだからな。
主役クラスに限らず住民のサバイバル能力は総じて高いだろう。
生き抜く為に求められる最低限のスペックだから目立たないだけで。
84通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 11:04:23 ID:???
問題は種から種死の間にマユがどれだけの成長を見せてくれるかか……

ガロディファも本編終了直後あたりで飛ばされたとしても17〜18歳になってるだろうから、それもそれで。
85通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 17:53:11 ID:???
17〜18歳のティファ……(*´Д`)ハァハァ
86通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 18:16:00 ID:???
容姿的には「?年後のガロード&ティファ」か?
下手すれば、結婚していてご懐妊している可能性もあるな。
87GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/13(水) 21:59:21 ID:???
なんか活気づいているところにネタ投下
前半はティファ満載です

第八十四話『ニュータイプも普通の人間と変わらない、か』(前編)

 いつもどおりの朝が来た。
見慣れた天井、見慣れた窓からの風景、見慣れた水張りのされた画用紙。ベッドから体を起こし、ティファは思わずため息を漏らした。
エスタルドを離れて既に一週間、フリーデンは木々の生い茂る森を掻き分けながら西へと進んでいる。ニュータイプを求めてさすらう
フリーデンの次なる目的地は、新連邦政府が管理する研究施設『ニュータイプ研究所』。ジャミルに研究所の場所を“感じて”くれと
いう願いを受け、彼女はこの3日ほどずっと探し続けていた。
だが今までできていた事それが、なぜかできないでいた。
「………。」
何か悪いものを食べたわけでもなく、どこかからだの調子が悪いわけでもない。普段とまったく変わらない生活サイクルに、
まったく変わらないフリーデンの環境。異常なところは何一つ見つける事ができない。
 だがその一方で、彼女は得体の知れない違和感を抱え続けていた。今までまったく感じたことのないこの感覚は、
ジャミルたちに救出される前にいた研究所での生活よりもある種恐ろしく感じられる。
 モルモットのように扱われて先が見えないあの黒く塗りつぶされたような感覚とは明らかに違う。自分の周りに
確かに色があるのだが、一箇所だけぽつんと空洞の開いたような、とても表現しづらく、だが一言で言い表すことのできる感覚。
「……ハァ…。」
そんな重たい気持ちの中、ティファの一日は始まった。


朝食の後、ティファはすでに1時間以上画用紙と向き合っている。“感じる”ために心を静め、自らを透明にする。
近いものは廊下を歩くサラの考えている次の仕事の内容を、遠く小さなものは山に生えている木々の間をかけるリスの目的を、
大きなものは冬眠前に大量に胃袋に物を詰めようとするクマの空腹感を“感じる”。
しかし今必要なのはニュータイプ研究所の位置を知るものを感じること。木でもいい、鳥でもいい。それを探し、
ティファはいろいろなものを自ら感じる。
しかし、どうしても彼女は集中できなかった。彼女が一番自分を見てほしい人物が、今自分を見てくれていない。
感じれば感じるほど、彼女の心の中は暗くなってゆく。
 彼女は思わず“感じる”ことをやめ、腰掛けていたベッドに横になった。心の中でぽっかりと空いたその穴に、
一体どのピースがはまるのか彼女が一番良く知っている。どうしたらその穴を生める事ができるかも知っている。
しかし、彼女にとって、それは10m以上離れた崖と崖の間を飛び越えるほど難しいことのように感じられた。
今までやった事の無いその行為で自分の中の何かが壊れそうで怖かった。
「………。」
重たい気持ちを抱えたままティファは徐々に眠りに落ちていく。彼女の目じりにはわずかに涙がにじんでいた。
88GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/13(水) 22:03:35 ID:???
第八十四話『ニュータイプも普通の人間と変わらない、か』(中編)

「ティファの力が低下している?」
「ジャミルさんがそう言ったんですか?」
 夜になり、暇をもてあましていたカガリとアスランは医務室のテクスの元を訪れていた。
サイフォンで淹れたコーヒーを渡しながらテクスはああ、と首を縦に振る。
「ジャミルはそう感じているらしい。確かに以前の彼女ならば今回のような案件はすぐに
片付けてしまっているだろう。今までこんなことはなかった。」
「原因は?」
「既に検討はついている。だが、これは彼女が解決しなければならない問題だ。
外野が口出しすることじゃない。」
自分のデスクに戻ってカルテの整理を続けるテクスはそれ以上彼女のことについてかたろうとしなかった。
医師としての守秘義務もあるのだろう。
「俺はこの艦に乗って初めて“ニュータイプ”あったけど、意外と普通の人間と多差ないですね。」
「ニュータイプといっても普通の人間さ。腹が減れば食事するし、病気にだってなる。ただ人と少し違っているだけだ。」


 医務室を出た二人は、夜風に当たるために甲板に出た。いくつかの薄い雲が月の姿を隠しながら静かに流れていく。
推進用のエンジンが完全に止まっているためか、森の中で鳴く虫達の声が二人の耳にもはっきりと聞こえた。
「ニュータイプも普通の人間と変わらない、か。」
「さっきのドクターの言葉が耳に残ったか?」
「ああ…。これは俺たちのことにも置き換えられるなと思ってな。」
 ニュータイプとオールドタイプ、ナチュラルとコーディネイター。似て非なる存在が一つの世界の中に生きている。
そこにある違いはニュータイプという“突然変異”か、コーディネイターという“人為的に創られた物”ということだ。
「コーディネイターも腹が減れば食事をするし、病気もする。病気に対して耐性があるといっても体力が落ちた状態ではそれも働かない。」
「まぁ、確かにな。」
「結局、この2つの存在は相容れない存在じゃない。理解しあうことができ、仲間にだってなれる。」
ガロードとティファが良い例である。2人はオールドタイプとニュータイプだが、互いに心を惹かれあっている。
また恋愛感情はなくても、フリーデンのクルーは皆彼女のことを信頼していることも事実だ。
「…アスラン、何かあったのか?」
「ちょっと考えてたのさ。お前との関係について、な。」
「私との関係だと?」
 アスランの言葉にカガリは眉をひそめる。アスランは言葉を選びながらゆっくりと話を続けた。
「今ここには、プラントもオーブも地球連合もない。俺たちは“ただの民間人”だ。」
「それがどうした?」
「ナチュラルとかコーディネイターだとかこだわる必要がないってことさ。」
 そう言って、アスランはそっとカガリの方に手を回した。
「お、おいアスラン!」
「もしかしたら、今この瞬間は夢かもしれない。でも、それでも俺はお前と同じ時間を共有できることがすごくうれしい。」
肩を並べて座る二人を月光が静かに照らす。月明かりの下で2人は見つめあった。
「ア、アスラン…。」
「……ダメだ!」
「…は?」
アスランは突然苦渋に満ちた顔を浮かべると、すぐに顔を背けて彼女の肩から手を離して甲板に横になった。
見詰め合っていた時の状態のまま固まるカガリに背を向けたまま、恥ずかしそうに口を開く。
「その、何だ。こういう状況で、何て言葉をかけたらいいか、わからなくなった。」
89GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/13(水) 22:06:22 ID:???
第八十四話『ニュータイプも普通の人間と変わらない、か』(後編)

それを聞いたカガリは開いた口がふさがらず、ただと水面に口を出す魚のようにパクパクと口を動かす。
しばらくして頭の回転がようやく追いついたのか、表情が苛立ちに満ちたものに変わった。
「あそこまで言って、あそこまで言ってそれかぁっ!!?」
「…すまん、俺なりの殺し文句がどうにも出てこなくてな…。」
「殺し文句って…。」
 カガリは彼のあまりの情けなさにがっくりと肩を落とす。だが最後の最後でお茶を濁した彼にあきれる反面、
今の自分達の関係はこの程度なのだろうとなんとなく納得している彼女がいた。
「まぁ良い。しばらく時間をやるから今度はきちんと私を殺せよ!」
「お前を殺すつもりはないが、努力する…。」
 そう互いに言葉を交わすと、なぜか笑いがこみ上げて来る。どんな気持ちでどんな風に考えているか、
わかってしまうからそれが可笑しくて、彼らは声を上げて笑った。


「どうだ?」
「外装はほとんどダメです。こりゃ手間かかりますよ…。」
キッドの言葉にレオパルドの状態を確認していたロココとナインはお手上げと両手を挙げた。
先日の戦闘でボロボロになったレオパルドは未だ修理の見通しが立っていない。普段は比較的損傷の
少ない機体なのだが、自らの感情を爆発させたロアビィのむちゃくちゃな使い方には強固な装甲を持つ
レオパルドですら耐える事ができなかった。ロアビィからの力の入った修理の要望にキッドも同じように
力の入った言葉を返したものの、中々簡単にはいきそうになかった。
「さてさて、どうしたもんかね…。」
「そういえばチーフ、ディスティニーの件なんですけど…。」
「ん? なんかあったのか?」
「いえ、シンのやつが最近機体の反応が少し落ちた気がするって言ってるんです。」
「エスタルドでの戦闘で、左のビームシールドは使用不能になってますしね。」
 2人はレオパルドとは反対側のMSデッキに固定されているディスティニーに視線を移す。
装甲に覆われた今の状態では中の状態をうかがい知ることはできないが、ディスティニーの
左手に装備されていたソリドゥス・フルゴールは外装しか残っていない。エスタルドでの
レジェンドとの戦闘で跡形もなくシールド発生装置を破壊されたおかげで、修復する事ができないのだ。
「…まぁ、仕方ないねぇよ。機体の反応速度はこれ以上どうにもできないレベルまで手を入れてしまってるし…。
まぁ、せめてもの“救済策”は既に打ってるけど。」
『…えぇッ!?』
ロココとナインはキッドの言葉に声をハモらせる。今まで普通に整備していただけなのに、
いつの間にそんなものを準備したのだろう。
「チ、チーフいつの間に!?」
「普段の仕事でいっぱいいっぱいなのに…!」
「俺はプロのメカマンだからな。仕事はいつも完璧+αだ!」
そう言って、キッドはディスティニーの救済策「SINシステム」の書かれた企画書を彼らに見せたのだった。
90通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 22:12:34 ID:???
おお、このスレがマユで活気付き出したところにナイスタイミング。
今後の展開に期待しつつGJ!
91通常の名無しさんの3倍:2008/08/13(水) 22:35:18 ID:???
GX氏更新乙

アスランさん相変わらずフラフラしすぎですよ
ディスティニー再パワーアップに期待が高まるな
92通常の名無しさんの3倍:2008/08/15(金) 20:17:50 ID:???
あれれ、お盆でみんな帰省中かな?

保守しつつ、
ガロティファ&マユをデストレイに出したらどんな感じになるだろうか。
93通常の名無しさんの3倍:2008/08/16(土) 01:14:08 ID:???
新作GJ、凸はいつアスランになれるのかwwらしいけど
>92
日本語でおk
94通常の名無しさんの3倍:2008/08/16(土) 18:51:23 ID:???
まだ一ヶ月も先か・・・
95通常の名無しさんの3倍:2008/08/17(日) 02:28:02 ID:???
アスラン、ヘタレ。。。
まあ、この二人らしいです
96通常の名無しさんの3倍:2008/08/17(日) 18:32:48 ID:???
GJ&乙です〜
だんだん元の機能が壊れていくデスティニーにジュドーのZZの影が見えるな〜
最終的には木星もとい、月じいさんと名乗ってる老いたシンがでるかw
97通常の名無しさんの3倍:2008/08/20(水) 12:23:04 ID:???
GX氏、投下お疲れ様です。
次回の展開およびデスティニーの新機能に期待を寄せつつ、スレ活性化を祈ってふと浮かんだネタを振ります。

>>86

マユ「ねえねえガロードお兄ちゃん。ティファお姉ちゃんとはいつ結婚するの?」
ガロード「いっ! け、結婚って、いきなり何言ってるんだよ、マユ……」
マユ「だってお兄ちゃんとお姉ちゃんが結婚したらマユも嬉しいし、ふたりの赤ちゃんだったらとっても可愛いだろうから抱っこしてみたいんだもん」
ガロード「だからってなあ……俺とティファは、まだ……」
マユ「だめぇ? お兄ちゃんはお姉ちゃんをお嫁さんにしたくないの?」
ガロード「っ! そんなことあるもんか! 俺はティファ以外の奴なんかと結婚したくなんざないぜ! ティファさえ良けりゃ、すぐにだって」
マユ「ふ〜〜ん。そうなんだ〜。そうなんだってさ、『ティファお姉ちゃん』?」
ガロード「……へ?」
ティファ「ガロード……」
ガロード「な、なな、ティ、ティファ!? ひょっとこしなくても、今の……聞いてたのか?」
ティファ「うん……」
マユ「えへへっ。じゃああとは、ふたりでごゆっくり〜」
ガロード「……えーと、ティファ……?」
ティファ「ガロード……」
ガロード「…………」
ティファ「…………」



マユ「よしと! これで一気にゴールインはないだろうけど、一歩前進よね。あとは誰も近付けさせないようにしなきゃ」

98通常の名無しさんの3倍:2008/08/20(水) 20:43:26 ID:???
何というできた妹
99通常の名無しさんの3倍:2008/08/20(水) 22:32:44 ID:???
見える、草葉の陰でカリスが泣いてる姿が見えるぞ!(対策に追われて)
100通常の名無しさんの3倍:2008/08/21(木) 01:26:21 ID:???
>>99

マユ「カリスお兄ちゃ〜ん」
カリス「ご苦労様です。マユ、首尾の方は?」
マユ「うん、ばっちりだよ!」
カリス「それは何より。では我々は次の行動に移るとしましょう。あんふたりを妨害する要素は全て排除せねばなりません」
マユ「は〜い」
101通常の名無しさんの3倍:2008/08/21(木) 17:11:24 ID:???
>>100
お前もきてたのか、カリス!
102通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 00:10:59 ID:???
あえて言おう、外部からの妨害の排除は必要ないと。



必要なのはッ! ガロードとティファのッ! 互いの心へとさらに踏み出すための勇気ッッ!!
103通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 00:23:26 ID:???
むしろ妨害が強くなればなるほどヤツラの絆は強靭さ増していく。
104通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 18:01:47 ID:???
それよりカリス×マユの方が気に掛かってしまう……

いや、実はカリスがロリコンだとかそういうのは抜きにして。
105通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 20:33:30 ID:???
そういや二次創作のマユは、年齢や立場が入れ替わってるタイプの話でもない限り
程度の差こそあれほぼシン一筋のブラコンというのが多いが、誰か別の男に惚れて
さらにシンの知るところとなったら…というのはあまり見た憶えがないな。
交際許可をめぐってカリス(本人にその気がない場合も込み)VSシンという異色カードも…?
106通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 21:01:42 ID:???
えっと…ダイノガイスト様は対象外でしょうか?
107通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 22:37:34 ID:???
ダイノガイスト様はどちらかというと保護者って感じだったよな。
カリスに懐いた場合はどうだろうな。
なんとなくガロティファにはお兄ちゃんお姉ちゃん付けなのに対して呼び捨てとか。

マユ「カリスー!」
カリス「うわっぷ! ちょっと、いきなり抱きつくのはやめなさい」
マユ「いいじゃんいいじゃん。ねえねえ、この町には評判のアイスクリーム屋さんがあるんだって。お仕事終わったらマユと一緒に行こ」
カリス「弱りましたね……」

ガロード「何だか、すっかり懐いちまったな」
ティファ「くすっ、ええ」
108通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 22:43:02 ID:???
たしかにカリスだとこんな感じかもw
種死本編キャラだとレイが一番近いものがあるかな?
109通常の名無しさんの3倍:2008/08/22(金) 22:59:25 ID:???
まあレイもカリスも持病持ちだからな。
幸が薄いって雰囲気は似ているかも。
レイはああなったが、カリスの方は自分の体と一生戦い続けなきゃならないだろうし……。

月に1度のシナップスシンドロームで苦しむカリスを看護する、ナースなマユが浮かんできた。
110通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 04:42:19 ID:pmkKen8H
Xみたいな糞と一緒にされるのは甚だ迷惑
111通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 22:09:40 ID:???
>>109
ネタができたので投下します。

ガロード「なあ、もう大丈夫なのか?」
カリス「……だいぶ落ち着いてきました。いつもいつもすいません、ガロード。今回は、こんなに早く来るとは思わなかったので……」
ガロード「いいってことよ。ここんところいろいろあって、それで疲れが溜まってたのもあるんじゃねぇのか? あとは俺たちに任せて、ゆっくり休めよな」
カリス「ありがとうございます……」
マユ「……ねえ、お兄ちゃん……」
ガロード「ん、どした?」
マユ「カリスの……さっきの、あれ……」
ガロード「あーそうか。マユはカリスのあれを見るの、初めてだったよな」
マユ「うん……」
カリス「ちょっとした持病なんです。マユには、心配をかけてしまいましたね」
マユ「持病……?」
ガロード「ごめんな。本当だったらマユにもちゃんと話とかなきゃならねぇことだったんだけどよ」
ティファ「ガロード、カリス」
ガロード「あ、ティファ」
ティファ「お粥を、持ってきました」
カリス「本当に、ティファにもいつも手間を掛けさせます」
マユ「お姉ちゃん……」
ティファ「どうしたの、マユ? ……ええ、わかったわ。溢さないように、気をつけて」
マユ「ありがとう……」
ガロード「じゃ、俺とティファは戻るな。マユ、もう何ともねぇと思うけど、何かあったらすぐ呼ぶんだぜ」
マユ「わかった。ここはまかせて、お兄ちゃん」
ガロード「おう、まかせたぜ。おいカリス、これ以上無理して、マユを心配させるんじゃねぇぞ」
カリス「わかっていますよ、それくらいは」
ティファ「ふふっ。マユ、しっかりね」
マユ「うん」
ガロード「じゃあまたあとでな」


112通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 22:12:43 ID:???
>>111の続き

マユ「…………」
カリス「…………」
マユ「……行っちゃったね」
カリス「ええ」
マユ「ねえ……カリス……」
カリス「何ですか?」
マユ「……お病気、治らないの?」
カリス「そうですね。この身体とは一生付き合っていくしかないでしょう」
マユ「……辛く、ないの?」
カリス「辛くない……なんていえば嘘になりますね。頭が割れて、身が引き裂かれるような痛み。あれは到底、いつになっても慣れるようなモノではありませんし」
マユ「……」
カリス「でも僕は、自分が不幸だと思ったことはないですよ。ガロードにティファ、それにマユがいてくれますからね」
マユ「そうなの?」
カリス「はい。あのふたりには感謝をしてもきりがありません。彼らが助けてくれたからこそ僕はここにいる。どんなに辛いことや苦しみを味わったとしても、生きているという素晴らしさをはっきりと実感することができるんです」
マユ「ふーん」
カリス「マユにはまだ、ちゃんと理解するには難しいことかもしれませんね」
マユ「ううん、そんなことないよ。マユは嬉しかったんだもん。ガロードお兄ちゃんとティファお姉ちゃんに助けてもらって、お母さんやお父さんは死んじゃったけど……でも、マユには新しいお兄ちゃんとお姉ちゃんができた。だから今のマユはとっても幸せなの!」
カリス「そうですか……マユは強いですね」
マユ「えへへっ」
カリス「ならば僕もマユに負けてられませんね。一刻も早く、現場に復帰しなければなりません」
マユ「うんうん、その意気その意気。でも、今は休んでなきゃ駄目。せっかくティファお姉ちゃんがお粥作ってくれたんだし。さ、食べて食べて。はい、あーん」
カリス「え……まさか、そうやって食べろと……」
マユ「うん。だって、時々お兄ちゃんとお姉ちゃん、こうやって食べ合いっこしてるんだもん。マユも一度してみたかったの」
カリス「あのふたりは……」
マユ「だから、はいあーん」
カリス「い、いえ、自分でできますから」
マユ「ダーメ! マユがしたいの」
カリス「いや、ですから……」
マユ「あーん」
カリス「うう……」



ガロード「あのふたり、上手くやってるかな?」
ティファ「きっと、大丈夫です。あのふたりなら、きっと……」
ガロード「そうだな。何だかんだ言って、カリスも満更じゃねぇみたいだし」
ティファ「ええ」
113通常の名無しさんの3倍:2008/08/23(土) 22:14:51 ID:???
終わりです。
もしマユがカリスの体のことを知ったらこんな感じかな、と思いました。
114通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 01:06:03 ID:???
カリス、このままだと見事に尻に敷かされそうだなw
115通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 13:31:07 ID:ozfpbNOu
いくら相手にされないからって
他のシリーズをエサにXを語るのはやめろよな
116通常の名無しさんの3倍:2008/08/24(日) 20:57:02 ID:???
age保守乙
117通常の名無しさんの3倍:2008/08/25(月) 21:14:17 ID:???
ほしゅ
118GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/28(木) 08:03:44 ID:???
うほ、こりゃ良ネタだ、負けてられんな。

第八十五話『勝つために、です』(前編)

「よし、これで整備終わり!」
 機体各部の自己診断プログラムを走らせて異常な数値を出した箇所の調整を終えたシンは、キーボードをしまって
コックピットから這い出した。
戦闘後の整備はキッド率いるメカマン軍団に任せているが、日常的な整備はある程度自分でこなさなければならない。
自分が命を預けるものである以上、これは当然のことだ。
「にしても、最近翼のスラスターの数値の変動が激しいなぁ…。いい加減ヘタってきてるのか?」
ここ3日は戦闘もなく穏やかな日々が続いており、機体の整備も大掛かりなことはやっていない。パーツの損耗率が高く
なれば短期間で状態が悪くなることがあるため、一度きちんとキッドに診てもらわなければならないだろう。
「さて、そろそろ寝るか…。ん? ガロードのやつ、まだ整備してる。」
 ディスティニーの格納部分の明かりを落とすと、真っ暗になるはずの格納庫でダブルエックスの格納部分の明かりが残った。
そちらに目を向けると、ガロードが1人黙々と左側頭部の頭部バルカンの配電箇所の整備を行っている。
「あいつ……。」
 半ばあきれながらも、シンはガロードの元へと向かう。今日は戦闘がなかったとはいえ既に時刻は日付が変わろうとしている。
がんばるなとは言わないが、やり過ぎもよくない。
「…こっちの回路は問題なしか。」
「あと何箇所見るんだ?」
「え?」
確認し終えた電子基盤を差し込み終えたガロードは後からの声に思わず振り向いた。シンは少し不機嫌そうな顔をしたまま言葉を続ける。
「俺も遅くまで残った方だけどさ、お前も程々な。明日寝不足で死なれたら、こっちが迷惑だ。」
「…不安なんだ。」
「は?」
「今世界は大きな変化の中にある。その中で俺に何ができるか、何をすれば良いのか、いろいろ考えてるとさ…。」
 新連邦政府は着実にその勢力を拡大し続けている。今一番地球上で力を持っているといっても過言ではないだろう。
今は大丈夫でも、明日の保障までできない。
「俺にできることはなんだろうって考えると、今は昔みたいに1人じゃないし、みんなのためになんかしなきゃと思う。
そう思ったら、体を動かしていないと落ち着かなくてよ。」
「ふ~ん…。」
「今できることをやらないで、あとで後悔したくないから。」
そういってガロードは体の向きを戻して整備に没頭する。シンはため息をつくと彼の横に座った。
「シン?」
「だったら、とっとと終わらせようぜ? あとどこをやるんだ?」
「べ、別に手伝わなくていいんだぜ? もう遅いんだし、こいつは俺の機体だし…。」
「俺は1人だけ残すなんて、ひどいことはやらない主義なんだ。」
「け、けど」
「仲間だろ? 手伝わせろよ」
 そういわれて、ガロードは口の端を上げて笑みを浮かべたのだった。

 しかし、格納庫の入り口から彼らを見上げる視線に気づくことはなかった。
119GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/28(木) 08:11:03 ID:???
第八十五話『勝つために、です』(中編)

 翌日、シンは危険を知らせる警報音に目を覚ました。時刻は既に朝の10時近くになっており、他のクルーはバタバタと駆け回っている。
「くそ、こんなことだったらやっぱ手伝うんじゃなかった!」
椅子にかけてあった上着をつかむとシンは大急ぎで格納庫に向かう。いつもならば朝食を食べ終えてゆっくりと仕事を始める時間帯であるが、
敵が迫っている以上どうこう言っている場合ではない。
 ブリッジのトニヤから艦の全てのクルーに状況が伝えられる。敵の数はMSが5機、うち2機は以前からフリーデンを追い掛け回している2機のガンダムだ。
『残りの3機は新型か?』
『知ったことかそんなこと! ゲテモノガンダムが出たってことは新連邦軍なのは間違いねぇ!!』
『艦から一定の距離を置いて戦う! 相手の数が多い、気を抜くな!』
「誰も気を抜ける状況じゃないだろう…! つかあんたが仕切るな!!」
ガロード、ウイッツ、アスランが機体を発進させるのを横目にみながシンは毒づきつつもディスティニーのコックピットに体を滑り込ませる。
機体の整備は昨日の段階で完了している。微調整の必要も無い。
「シン・アスカ! ディスティニー、行きます!!」
使い慣れた大剣クラウ・ソラスを背中にマウントすると、ディスティニーは青空の下に機体を躍らせた。


『奴らが出てきたよ、兄さん。』
『アベル中尉、今回はあなたの戦いだ。武運を期待する。』
『承知!!』
シャギアの言葉を受け、アベル・バウワーは前衛へと躍り出る。太平洋戦線で“鉄鬼”と名をはせた戦士は、
怯むことなく4機のガンダムへ向かっていった。
「大佐、我々は?」
『まずはアベル中尉を覚醒させることが目的だ。彼が覚醒したところで、全員で彼らを潰しにかかる。』
「もし覚醒しない場合は?」
『頃合を見て撤退する。』
「了解。……キラ・ヤマト…何だ、この違和感は…!?」
レイはキラの乗るドートレス・ネオに目を向けて呟いた。
彼の知るキラ・ヤマトという人物は戦場に割って入って自分の主義主張をだれかれかまわず押し付け通す人物だった。だが、今彼の横にいる
ドートレス・ネオからは一言も言葉が発されず、さらに空中に浮いている以外は何の動きも見せない。静か過ぎるのだ。
「一体、何があったというんだ…?」
 空中戦用バックパック“エール”を装備したドートレス・ネオはただレジェンドの横を並んで飛行している。パイロットのことを知っている
彼からすれば、横に無言で並ぶ彼が爆弾のように思えた。
『…大佐、前衛に出る許可を。』
それまでずっと沈黙を続けてきたキラは進言した。驚くレイとは対照的にどこかあざ笑うかのようにオルバは彼を制止する。
『キラ・ヤマト。前衛で戦いたい気持ちはわかるけど、今は自重してくれないかい?』
『オルバ大佐、今回の装備ではまともに援護はできません。前衛に出させてください。』
『何のために?』
『勝つために、です。』
オルバの問いにキラは言い切った。
今回、キラの乗るドートレス・ネオは肩アーマーにそれぞれマシンキャノンを2門ずつ装備している。くわえて標準装備の
ビームカッター兼ビームライフルである“ワイヤード・ビームライフル”、さらに実験として試作型ビームサーベル2本に、
これも試作型の実体剣2本を装備。現状の装備で後方からの援護をこなすことは難しい。
120GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/28(木) 08:15:00 ID:???
第八十五話『勝つために、です』(後編)

『オルバ、かまわん。』
『兄さん…!』
『事実、今回の装備は接近戦を意識してある。中尉を後方からではなく、前衛で援護してもらった方が適材適所だろう』
『ありがとうございます。』
『ただし、失敗は許されない。良いな?』
『了解。』
そう返事をした瞬間、ドートレス・ネオはラスヴェートに続いて4機のガンダムへ向かって吶喊した。


「目標視認、ターゲットは4機。」
キラはまるで機械の様に静かに状況を分析する。
 ラスヴェートは機動性を重視しているものの、ライフル1丁でこれまで数々の戦果を上げてきている。無理に援護をすれば
パイロットであるアベルのリズムを崩しかねない。
「ならば、僕は僕で敵を落とすのがベスト。」
そういってドートレス・ネオは両の腰に帯びていた実剣2本を両手に持った。ビームサーベルよりも少し幅の広いその真っ白な
両刃の剣は氷で作ったかのように脆く見える。
「行くぞ“ヤグルシ”、“アイムール”!」
だがそれらは、地中海に伝わる神話に名のある武器の銘を与えられている。片方は“追放”、もう片方は“撃退”という意味を持っていた。


「新型が突っ込んでくるか!!」
ドートレス・ネオが飛び出してきた姿を見たアスランは自分から距離を詰める。両手に実体剣を装備している所を見ると、
接近戦を挑むつもりでいるのだろう。
 彼の操るジャスティスは本来フリーダムとの連携を視野に作られた機体で、ジャスティスが前衛、フリーダムが後衛を担当するはずであった。
その関係上、接近戦の能力は非常に高い。
 ドートレス・ネオは双剣を両方とも左に構え、一気に距離を詰める。ジャスティスは盾を構え、右手にビームサーベルを抜き放った。
「その程度の攻撃で!!」
ビームシールドが展開されたシールドを突破することはビームサーベルでもできないことである。予測していた通り
シールドから双剣を受け止めた衝撃が伝わり、ジャスティスのコックピット内は揺れる。だが、アスランは
メインモニターに一瞬写った映像に驚き、思わず機体をドートレス・ネオから引き離す。
 コックピットを守る腹部の装甲が一瞬融解する時のように赤く染まり、ぐにゃりと変形する。あと1秒反応が遅かったら
ジャスティスは上半身と下半身が分離していただろう。
「何て奴だ…!!」
アスランは冷や汗を浮かべながら、ドートレス・ネオと睨みあった。
121通常の名無しさんの3倍:2008/08/28(木) 21:24:35 ID:???
おや?サルにひっかかったか?
122通常の名無しさんの3倍:2008/08/28(木) 21:34:24 ID:???
支援?
123通常の名無しさんの3倍:2008/08/28(木) 21:50:06 ID:???
前、中、後だから、これで投下終了してるんじゃない?

というわけで
アスランにとっての山場がキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
キラキラ病にかかるのか、それとも綺麗な凸になるのか
この作品でのアスランの真価が問われる一戦になりそうデスね?
……まあ、キラだと気付かない可能性もなくはないけど
124通常の名無しさんの3倍:2008/08/28(木) 22:09:33 ID:???
GX氏更新乙

キラというイレギュラーでVSアベルがどうなるか楽しみだな
125通常の名無しさんの3倍:2008/08/30(土) 18:58:07 ID:???
保守
126GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/30(土) 20:44:18 ID:???
>>125
保守どもノシ
ところで皆さん、今は夏休みです。夏休みといったら夏祭りです。
お盆の時期を過ぎましたが、こんなの作ってみました.

※本編とはまったく関係ありません。 死んだ奴も生きてます。

↓以下6回投下、明日後半投下予定
127GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/30(土) 20:48:41 ID:???
ディスティニー in AW特別編『夏祭り』
第一話『穏やかな営み』(前編)

 日登市種志町、ここは特に目立った産業があるわけでもなく、特産物があるわけでもないごくありふれた静かな街である。
そこには町長として日夜町民のためにいろいろとかんばっている青年だったり、その青年と昔付き合っていた女性が子供達の
世話をしたり、孤児院で育てられた個性の強い子供達が毎日ケンカに明け暮れたり、死んだはずの妹と再会して家の中が
妙に騒がしい少年やその友達や政治家の娘や息子や歌姫や何でもできちゃうけど何にもしない男の子など、いろいろな人たちが生活していた。
そんな中、種志町役場からとあるチラシが各家庭に配られた。
「種志町・X町合同夏祭り大会?」
 種志町に住むシン・アスカは目を瞬かせた。少し癖のある黒髪に真っ赤な瞳、細身ながら引き締まった体を持つ彼は朝食の
トーストをかじりつつチラシの内容に目を通していく。
「兄弟太鼓やビンゴ大会や盆踊りなどイベント目白押し、最後は花火1500発が夜空を彩る…。」
ふ〜ん、と彼は特に気に留める様子も無く彼は再びトーストをかじり、コーヒーを口に含んだ。
 X町は種志町の隣にある種志町とさほど規模の変わらない町である。ただこの町は、日の当たらない所でとある二つの団体が
勢力争いをしているので、多少治安に問題があった。とは言うものの、種志町も町長とシンの友人の政治家の娘が権力争いを
しているので、あまりどうこう言える立場ではないのだが。
「あー! ホントだー!!」
 シンがコーヒーを飲み終えた頃、妹のマユが机の端に置かれていたチラシを見つけて目を輝かせた。肩下まで伸びる髪を
二つに分けて結ぶ彼女は3年前に生き別れた彼の妹である。事故で死んだと聞いていたが、一体どうやって生還したかは不明のままだ。
「なんだよ、ホントって?」
「昨日キッドやカリス兄ちゃんが言ってたんだ。種志町とX町で夏祭りやるって!!」
 キッドとカリスとはX町に住んでいる彼女の友人で、メカオタクと時々奇声を上げる変わった2人である。カリスの
奇声については持病の発作だと一度説明を受けたが、一度発作が起こると手が着けられなくなるので、シンはあまり関わりたくなかった。
「へぇー。まぁ、俺にはどうでも良いことだけど…。」
「行こう! ねぇ行こう!! ていうか行くよね!? 連れて行ってくれるよね!!!?」
 マユはシンの袖を引っ張って必死にせがむ。この町でのイベントごとなどめったに無く、こうした機会を思い切り楽しみたい気持ちは
シンにもよくわかる。だが、今回あまり乗り気でないのはほかに理由があった。
「だって、あいつらが来るの目に見えてるし…。」
 彼が会いたくないのは彼のある友人だった。名前はガロード・ラン。明るく社交的で、真夏でも脱がない赤いジャンパーが
トレードマークの三枚目の男である。
「え、ガロードさんとケンカでもしたの?」
「いやあいつは、じゃなくてあの2人は、な。」
 ああ、と目の前の妹も納得する。あの2人とはガロードと彼の恋人ティファ・アディールのことだ。腰まで届く髪の長い
とても可愛い少女で、口数は少ないが、そこが逆に神秘的な美しさをかもし出させてさらに彼女を引き立てている。
三枚目のガロードと美少女のティファとではつりあわない気がしないでもないが、本人たちはまったく気にしていない。
 そう。彼らは、ラブラブなのだ。
「あの2人の間には入れないもんねぇ。」
「そういうわけさ、あきらめろ。」
128GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/30(土) 20:51:56 ID:???
第一話『穏やかな営み』(中編)

「良いじゃん! お祭りぐらいつきあってくれたって!!」
「朝から喚くなよ。キッドとかといっしょに行けばいいじゃんか。」
「えー。」

イイジャン!イイジャンスゲージャン! イイジャン!イイジャンスゲージャン!…

とその時シンの携帯に着信が入る。相手を確認すると、遊び仲間のルナマリアからである。
「もしもし?」
『あ、シン? 今晩暇?』
「もしかして祭りか?」
『あら、話が早いじゃない。いっしょにどう?』
「お前アスランほっといて良いのかよ?」
『もちろん本命は最後に電話よ!』
「俺はおまけかよ…。」

プルルルル…!

そんなやり取りをしていると、今度は家の固定電話が鳴った。マユは電話を受けて
相手を確認すると、彼女は電話中の彼に声をかけた。
「おにいちゃん、ステラから。」
「ああ、ちょっと待て。ワリィ、また後で電話する!」
 ステラとは孤児院で生活するポケポケ娘である。両親を目の前でなくし、心に傷を負った
彼女は心の成長が他人より遅い。彼女の心は彼と変わらない年齢でありながらマユよりも幼い。
ちょっと!! と抗議の声を上げるルナマリアを無視して電話を切る。急いで固定電話まで
行き受話器を耳に当てた。
「もしもし。」
『シン〜。お祭り行こ〜!』
こっちもかよ、と内心舌打ちをする。彼としては真夏の暑い夜に虫に刺されながら歩き回るのは
趣味ではない。せいぜい最後の花火を見る程度しか考えていなかった。
「ゴメン、ステラ。俺…。」
『行かないの?』
「花火だけなら…。」
『ステラシンと行く〜! 浴衣着て綿菓子とりんご飴とたこ焼きと焼きそば食べて盆踊り踊る〜〜!!』
泣きそうな声で彼女は電話越しにどこで覚えたのか出店の食べ物の名前を叫んだ。
一度彼女が川に落ちた所を助けてからと言う物、彼女は彼に懐いている。それは良いが、
今回は屋台での買い物に必要な金を集る気満々だ。バイトで貯めた金があるとは言え、
蓄えが多いわけではない。
 だがシンは既に断ることができない状況に追い込まれていた。彼女の泣き声を聞いて彼女の声の後でがたがたと音が鳴っているのだ。

スティングとアウルに気づかれたな。

 シンはがっくりと肩を落とした。彼女には対して毒があるわけでない。問題は彼女の周りにいる2人の兄貴分なのだ。
ここで断れば、後々闇討ちに会いかねない。
「わかった! いっしょに行こう!! 浴衣着ていろいろ食べて盆踊りおどろ!!」
129GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/30(土) 20:54:12 ID:???
第一話『穏やかな営み』(後編)

『…ホント? シンいっしょに行く?』
「いっしょに行く!」
『ウェ〜イ!!(嬉)』
そう答える以外、シンには選択肢がなかった。


夕刻、待ち合わせ場所の公園でシンは1人ベンチに座っていた。いっしょに来たマユは既に彼女の姉貴分である
パーラとキッドとカリスの4人で祭りに繰り出している。一人残された喧騒から少し離れたここで静かに夕焼けを眺めていた。
「おい坊主。」
ふと後から男の太い声がかかる。聞き覚えのある声にシンが振り向くと、ベンチの後に金髪で顔に二つの
大きな傷のある男が座り込んでいた。
「ネオさん? 何してるんですか?」
「フリーデン商店街と合同で出店だしてるからな。いろいろと仕事が多くてちょっと抜けてきた。」
「抜けてきたって…。」
「うるせぇな、ビールぐらい飲ませろ。こっちは朝からずっと仕事だってのに…。」
 愚痴をこぼしながらネオは缶ビールを一気に煽る。キンキンに冷えたビールのうまさにクゥーッ、と思わず笑みをこぼす。
「消防団も大変ですね…。」
「消防団じゃなくて、青、年、団だ! ほれ!」
「へ?」
突然、ネオはシンに茶封筒を差し出す。シンがそれを受け取るとネオは立ち上がった。
「ンじゃ、そろそろ本番と行きますか!」
「ちょ、ちょっとなんですかこの封筒は?」
「ステラと約束があるんだろ? なんかいろいろ買い食いする気満々だったから先手を打ったまでだ。」
シンが中身を確認すると、千円札が五枚ほど入っていた。この金額以上の買い物はしないだろうと踏んだ上での経費の先払いである。
「良いんですか?」
「残った金は返せよ。ちゃんと領収書もな。あ、あて先は『連合孤児院』で頼む。」
「ッて、孤児院の経費で落とす気ですか!?」
「当たり前だろう! 俺が自腹切るほどのことじゃない!」
ンじゃな、と手をふりながらネオは屋台の並ぶメインストリートへと消えていった。
 経費が5千円というのすこし少ない気もするが、それでも屋台の料理を全て食べたとしても十分あまる金額である。
孤児院の経費で落とすのはどうなのだろうと思いつつも、今回は赤字を覚悟していただけに、シンにとっては嬉しい誤算であった。
「シ〜ン〜!」
どこかのんびりとした声が聞こえた。声のほうを振り向くと、黒い浴衣を着たステラがパタパタと下駄を鳴らして走ってくる。
「おまたせ〜。…シン?」
目の前に来た黒地に赤や紫の朝顔が描かれた浴衣をまとう彼女の姿に、シンは一瞬見とれた。
はっきり言って、ステラは綺麗な顔をしている。孤児院では白のワンピース姿しか見たことがなかったため、
シンにはこういう見慣れない彼女に新鮮な感動があった。
「シン早く行く!! 金魚! 射的!!」
「え? あ、ああ。んじゃ行こうか。」
金魚すくいや射的までやるのかよ…、とあきれ半分、楽しみ半分で、シンは彼女と共に出店の立ち並ぶメインストリートへ向かった。
130GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/30(土) 20:58:08 ID:???
ディスティニー in AW特別編『夏祭り』
第二話『待ちわびた時間』(前編)

『あ。』
両側に立ち並ぶ出店が賑わう道の真ん中で、彼らはバッタリと顔をあわせた。
 ぼさぼさの頭にダブダブのジーンズ、さらに見間違えようのない赤いジャンパー。間違いなくあの
熱々カップルの片割れである。
「シン、お前も着てたのか。」
「ああ。こんなイベントごとって滅多にないからな。」
ガロードの問いにシンは答えながら肩をすくめる。しかし、その両手にはたこ焼きのパックやら焼きそばの
入ったパック、さらに焼き鳥やりんご飴等々、えらく大量の荷物を抱えていた。
「それは? お前が自分で買ったのか?」
「…俺がこんな後先考えない買い物をすると思うか?」
「シン〜! 次こっち〜!!」
喧騒の向こう側から諸悪の根源が彼を呼ぶ。子供の無邪気さは時として悪意のある行動よりもはるかに非情だ。
「…ああ、ステラとデートか。」
「万年結婚間近の熱々カップルのお前に言われたくないよ。…そういえばティファは?」
「ティファならそこ。」
ガロードの指差した先には長い髪を結い上げて白いうなじを露出させた彼女がいた。今日はいつものピンクの
シャツとスカートではなく、群青にいろいろな月齢の月が描かれている浴衣に身をつつんでいる。
真剣な表情で見つめる先には大量の水と小さな朱や黒の魚達。
「…そこ!」
 右手がひらめき金魚が宙に舞う。金魚は小さな放物線を描いて、彼女の左手が持つ水の入った容器に、
ポチャンと水しぶきを立てて落ちていった。
「ウヒョ〜!!Σ(>□<) マジで勘弁してくれ~!」
「ムウ! もうこれで9匹目よ!フゥ(―_―#) これ以上取られたら元手が取れなくなるわ。 そうなったら月に変わって」
「エー!Σ(;□;) お仕置きの相手は俺じゃなくてこの金魚だろ!!」
店の主であるネオはそんなやり取りをいっしょに切り盛りしているらしい女性と交わす。
ちなみに何で彼のことを“ムウ”と呼ぶかは不明だ。
「ま、ティファにかかればこの程度!」
「ヒデェ…。というか、わかるのと取れるのでは根本的に違うんじゃ…?」
 ガロードの言葉にそんな疑問を浮かべていると、いきなり右手を誰かにつかまれて引っ張られた。
バランスを崩しつつも彼は引っ張った主におとなしくついていく。
「ステラ…。今度は何をやるの?」
「シン遅い!! ステラあれほしい! 取って!!」
「あれって…扇子?」
右腕をがっちりつかんだ彼女が指差した先にはあまり見慣れないカタチの扇子があった。巷では見たことのない
タイプで、真ん中にはひし形のマークの中に『万象大乱』と書かれている。
「ルナ取れない! シン取って!」
「へ?」
彼女に言われて店の先に目を向けると、ルナマリアに妹のメイリン、さらにヴィーノにヨウランがいた。
ルナマリアはコルクの弾丸を詰めたライフルを持って目標に狙いを定めている。
「狙いは完璧よ!!」
そう言ってトリガーを引く。コルクの弾丸が銃口から吐き出され、目標に向かう。が。
「ハイ残念、これで9連続失敗だね〜!」
甚平姿のロン毛の男はそういって残念賞の飴玉を4人に配った。この射的をやったのはルナマリアだけだが、
取り巻き全員に飴玉を配っている。
131GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/30(土) 21:00:58 ID:???
第二話『待ちわびた時間』(中編)

「ドコガカンペキナンダヨ\( ̄□ ̄)/」
「イッカイモアタッテナイシ〜(  ̄Ω  ̄)〜」
「オネエチャンカッコワル( ̄v ̄)プッ」
飴玉を頬張りつつ、3人は容赦ない言葉をルナマリアにぶつける。彼女はがっくりとうな垂れた。
「ロアビィ、あんたすこしはおまけしてやれば?」
「そうは行かないな。今回は近くの中古おもちゃ販売店から中国の僻地まで世界各地津々浦々から
商品を集めてきたんだ、俺の苦労を3発300円で得ようなんてのがおろかなの。」
なんたってあの扇子は、と赤い髪のグラマーな女性と話す店員を横目に見ながらシンはルナマリアに声をかけた。
「既に900円の消費か…。」
「…シン、あんたいつからそこに?」
「最後の一発のとき。 お兄さん、俺もやる。」
なんであの子と一緒なのよ、と抗議の視線を無視し、シンはライフルを構えた。
1発目、2発目は外れる。だが3発目ははずさない。1発目で飛距離を確認、2発目で照準の確認。3発目が本番だ。
「…そこだ!!」
シンの中で何がはじけた。


ロアビィはがっくりと肩を落としていた。子供だと思って甘く見ていたのが、そもそもの要因だったのかもしれない。
「参った、完敗だ…!」
「あの子、やるわね。」
傍らにいたエニルは獲物を見つけてほくそえむ豹のような表情を浮かべた。
「まさか5個も一発でとっていくなんて。」


「〜〜〜♪」
扇子を片手にステラは上機嫌で中央広場に向かっていた。
これからカラオケ大会にビンゴ大会、さらに盆踊りが予定されており、道行く人々は皆そちらに
向かって脚を進めていた。
「サンキュなシン、俺これほしかったんだ!」
「しかしすげぇな、まさかの一発5ヒットだ。」
「あたしも新しい帽子ほしかったんだ〜。」
変なマークの入った大剣を振り回すヴィーノ、白い戦艦模型を脇に抱えて喜ぶヨウラン、
さらに白と青の小さな帽子を頭にのせるメイリンも表情が明るい。だが1人だけ、表情が暗い、
というか表情が見えない人がいた。
「ねぇシン。」
「ン?」
「なんで私は“これ”なの?」
コルクの弾は扇子に当たり、倒れた扇子が大剣に当たり、さらにその大剣が3つの物に当たった。
それが今ステラたちの持っている品々である。そして、ルナマリアがもらった商品は“謎の仮面”であった。
「ルナが一発で決めないのが悪いんだろ?」
「私の狙いはいつも完璧なのよ!!」
「はずしてばっかじゃん、テストの山はりだって一体何回当てた?」
「そんなのは良いの!! これかぶると視界が蒼くなるの! 蒼いのは嫌なの!! 蒼いのはイヤァァーッ!!」
時々ラララッと奇声を上げながら彼女は頭を振る。仮面が嫌ならばはずしておけば良いにもかかわらず、
『外しちゃいけない気がする』といって外そうとしなかった。
132GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/30(土) 21:03:54 ID:???
第二話『待ちわびた時間』(後編)

『本部よりお知らせします。本日カラオケ大会にエントリーを希望の方は、至急本部テントまで
お集りください。本部より…』

「カラオケ?」
本部からの放送にルナマリアは大きな仮面ごとスピーカーに頭を向けた。
「ああ、なんか今日やるんだっけ。」
「確かゲストはあの“ミゲルとハイネ”だろ? やたら奇抜な衣装で歌い踊る。」
「あれ? 確か名前変えて何とかレボリューションになったんじゃなかったっけ?」
 ヴィーノたちがカラオケ大会のゲストについて話をする一方で、さっきまで奇声を上げていた
ルナマリアは一転して静かになった。
「シン〜、ルナ変。」
「ルナ?」
 ステラとシンが彼女に向けると、彼女は肩を震わせている。シンには喜んでいるようにも見えたし、
やる気に満ち溢れている、“燃えている”ように見えた。
「カラオケ、蚊ら桶、可等御毛…。」
「ル、ルナ?」
「今なら勝てる!! この仮面をつけた状態なら勝てる気がする!!!」
 がばっと顔を上げて天を仰いだ彼女は、猛スピードで本部へ向かう。今回は浴衣でないことが幸いしたようだ。
浴衣で着ていたら走れないし、無理に走ったりすれば浴衣が肌蹴て彼女が恥ずかしい思いをするに違いない。
「ルナ、今日変。」
「確かに。…そういえばメイリン、アスランは?」
「アスランは今日カガリさんの護衛だって。お姉ちゃんそういわれて断られてた。」
「ンじゃ、これはなんだ?」
 シンは近くに有った祭りのポスターを指差した。そこにはこう書かれている。

カラオケ審査員
種志町長ギルバート・デュランダル氏
X町農業組合組合長Mr.ブラッドマン
同町産業組合組合長Mr.ザイデル
オーブ産業社長ウズミ氏ご令嬢カガリ・ユラ・アスハ
本日のゲストH.M.Revolution

「え? てことは…。」
「アスランは今日護衛でここに来ているってことか?」
「つか、なんか一波乱ありそうな人選だな…。」
中央広場はもう目の前であった。
133通常の名無しさんの3倍:2008/08/30(土) 22:38:42 ID:???
このスレもあそこの兄弟が出るのかな
134通常の名無しさんの3倍:2008/08/30(土) 22:48:09 ID:???
GX氏乙

金魚すくいにピンクの金魚はいないのか
135通常の名無しさんの3倍:2008/08/30(土) 23:03:35 ID:???
とりあえず万象大乱の扇子に吹いたのは俺だけでいい。
136通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 01:56:52 ID:???
GJ!
たまにはこういう雰囲気もいいなあ〜
137通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 02:23:19 ID:???
>>135 俺も吹いた とりあえずウッソを呼ぶべきか?
138通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 11:13:03 ID:???
つか、シンの落とした商品うち3つて
扇子⇒守護月天
大剣⇒クレイモア
白い戦艦⇒ナデシコ

全部桑島繋がりじゃないかと感じたのは俺だけ?
139通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 18:25:19 ID:???
GX氏GJ!!それにしても、ティファの着物の柄は月の満ち欠けのイラストか。なんかいいな。
140通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 22:35:25 ID:???
投下乙
こういう日常的なストーリーもたまにはいいな
続きも楽しみだな
141GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/31(日) 22:55:04 ID:???
後編三,四話投下

ディスティニー in AW特別編 夏祭りNo.3
第三話『夜空を彩る音色たち』(前編)

 中央ステージでのイベントが始まろうとしている頃、焼きソバ屋で鉄板の前に立ち続けていたウイッツはようやく休憩を取っていた。
祭り開始前から延々作り続けていたおかげか、両腕にほとんど力が入らない。
「くっそ〜、鍛え方がなりねぇな…。」
「仕方ないわよ。普段からこんなに長時間激しく働くことなかったし。」
白地にひまわり柄の浴衣を着たトニヤはそう言いながら彼の頬に冷えたジュースを引っ付けた。一瞬ジュースの冷たさに体を
振るわせたウイッツだったが、火照った体が程よく冷やされ心地良い。
「サンキュ。…しっかし、あれだ。」
「ン? どうかした?」
ウイッツはトニヤからジュースを受け取ると、頬をぽりぽりと掻きながら視線を泳がせる。ウイッツがこういうしぐさをする時は、
大抵何か言いづらいこと、特に柄にもないことを言う時が多い。
「ねぇ、なんなのよ、一体どうしたの!?」
「その、何だ…。お前が浴衣着た姿なんて早々見れるもんじゃねぇからさ。」
「だから、何よ!?」
「きれいだ、と思ってよ……。」
「あらあら、明日は雨かしらね? あんたの口からそんな言葉が出るなんて。」
「おい!」
「フフ…、ありがと。」
頬を赤らめつつも笑顔でお礼を言う彼女の姿は、誰が見ても本当にきれいなものであった。


 中央ステージには多くの人が集まっていた。客席として500脚のパイプ椅子が並んでいるがそれも全て埋まっている。
次の中央ステージイベントを皆待っていた。
「兄さん、僕等の出番だよ。」
「そうだな、弟よ。これも我ら兄弟の野望のため、われらの力で観客を魅了させるとしよう。」
赤地の法被に紫の“祭”の文字を背負うシャギアと、紫地の法被に赤の“祭”の文字を背負うオルバ。2人はねじり鉢巻を巻き、
足袋にさらしに褌というスタイルだ。ステージの中央には大きな和太鼓が置かれている。
『では次は、和太鼓の演奏です。演奏してくださるのは、シャギア・フロストさんとオルバ・フロストさんです。ではお二方、ステージでどうぞ!』
司会を務めるサラの声を聞き、二人は互いに視線を交わす。
「行くぞ、オルバよ。」
「了解、兄さん!」
スポットライトを受けながら二人は太鼓の両側に立つと、一度腹の底からはっ、と大きく声を出して気合を入れると、力強く太鼓を叩き始めた。

ドン! ドン! ドン! ドン、ドン、ドンドンドンドン…!

観客達はステージから響く和太鼓の繰り出す力強いリズムに聞き入る。オーケストラのような派手さはない。ジャズなどの遊び心もない。
和太鼓が持つものは“力強さ”のみ。しかし、練習に練習を重ねて形になったそれはその“力強さ”のみで聞く者の心をつかむ。
 迷いもよどみもないその響きに観客は聞き入っていた。
142GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/31(日) 22:59:14 ID:???
第三話『夜空を彩る音色たち』(中編)

 ステージで太鼓の演奏が続く一方、ステージ裏では別の問題が発生していた。
「また貴様か!! 農協の敷地に産廃を捨てたのは!!」
「一体何を言っているのだ!! お前達こそ、毎回畑から出る堆肥のあのにおいを何とかしろ!!」
農業組合の長であるブラッドマンと産業組合の長であるザイデルは、普段から顔をあわせればケンカばかりする犬猿の仲だ。
今日はこの後のカラオケ大会で審査員を務めるということでここに出てきたが、席も隣ということでまた口論となっている。
「あ、あのジャミルさんどうしましょう…?」
裏で手伝いに回っているアビーは困惑した様子で責任者のジャミルに通信機越しで指示を仰いだ。太鼓の演奏中は良いが、
演奏が終わればおそらく2人のケンカが観客達にも聞こえるだろう。
『二人の気を静めることはできないのか?』
「無理ですよ〜! あんな偉い方々が私みたいな下っ端の言うことなんて」

ドバキッ!!

「ひっ!?」
鈍い音に思わず彼女が振り返ると、そこには見事に互いの顎に拳をめり込ませた2人が白目をむいて立っていた。
「ジャミルさん、やっぱ無理です。というかドクターに連絡してください。二人けが人が出たって。」


『それでは続きまして、カラオケ大会のほうに移りたいと思います。なお、本日審査委員として参加予定だった
農業組合長Mr.ブラッドマンと産業組合長Mr.ザイデルの2人は所要のため欠席しております。ですので、今回は
青年団団長、この祭りの会場責任者のジャミルさんにお願いいたします。』
 サラのアナウンスのあと、ジャミルは席を立って観客に対して一礼をした。彼の左側には町長であるデュランダル、
右側にはカガリ、その皿に右側にはH.M.Revolutionのハイネ・ヴェステンウルフとミゲル・アイマンが座っている。
「フム、やはりこうなったか。」
「そもそも、あの2人を同時に出す計画に問題が有ったんじゃないか?」
 当然の結果と受け入れるデュランダルとカガリに挟まれ、ジャミルの表情は暗い。
その一方で、ハイネとミゲルはのんびりとしていた。
「さて、どんなやつ等が出てくるかね。」
「ま、俺たちほどのやつ等は早々で出てこないと思うけど。」
『それでは一番の方、名前と曲名をお願いします』


『一番、アスラン・ザラ! 曲名は“Secret 〜誰かのメッセージ〜”』
「ブッ!! あ、アスラン!?」
「うお! 汚ねぇ!」
シンは飲んでいた黒い炭酸ジュースを噴出し、ガロードはシンの口から出たそれを間一髪回避する。
最前列に陣取ったことが不幸中の幸いか、他に被害者は出ていない。
「ご、ごめん。あまりにも意外な人物が出てきたおかげでちょっとビックリして…。」
「確かにアスランさんが出るなんてねぇ…。あ、カガリさんすごい顔で睨んでる。」
メイリンの指摘の通り、ステージ上でバラードを歌うアスランにカガリは冷ややかな目線を送っている。
おそらく今回の参加は彼の独断で、彼女に何の話もしていないのだろう。
「まったく、恋人兼ボディーガードも大変だ。」
「あれ、でもカガリさんってオーブ産業重役のセイラン家のお坊ちゃんと婚約してなかったけ?」
そういやそうだな、とヴィーノとヨウランが話をしているうちにアスランの歌は終わった。
143GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/31(日) 23:04:32 ID:???
第三話『夜空を彩る音色たち』(後編)

観客から拍手が沸き起こる中、司会進行役のサラは段上のアスランにマイクを向けた。
『ありがとうございました。とてもお上手でしたけど、どのくらい練習されたんですか?』
『…秘密です。』
『ハ、ハァ…。それではどこで練習を』
『それも秘密です。』
『で、では今回優勝できる見込みは』
『それも、秘密です( ̄ロ ̄)v−~』
アスランは人差し指を立てて、観客に向かってにっこりと微笑んだ。
「いや、何もかも秘密ってどうなんだ?」
シンはあきれた様子で彼を見ていると、後の観客の叫び声が聞こえた。明らかに怒気が混じっている。
「ちゃんとコメントせんかぁぁぁぁぁいっ!!」
次の瞬間、Mのマークの入ったジュースのカップがまるでドリルのような回転をしながら飛来し、
アスランの顔に命中する。カップの中に残った氷を撒き散らしながら大の字に倒れるアスランに
顔を引きつらせつつ、サラはカップを投げつけたオレンジ色の髪のバンダナ少女に物を投げないよう注意を促した。
「ま、まさか今のは…!?」
「ま、幻のストレートと呼ばれている“ジャイロ・ボール”!?」
だが、一部の観客はバンダナ少女の投げたカップに愕然とした様子だった。

『6番 ルナマリア・ホーク! ヘミソフィア!!』

「あ、お姉ちゃん一番得意なやつを持ってきた。」
「え? あれルナの持ち歌っだけ?」
「うん、なんか白い巨人が出てくるやつの主題歌。最後は訳わかんない終わり方したけど。」
彼女の歌を聴きながらシンとメイリンはそんな会話を交わす。ちなみに横にいたステラはシンの肩に
体を預けて寝息を立てていた。寝言で“時にはもっと私らしく…”と歌っているが、
女の子が寝ているのを起こすのは野暮だと思うので起こさないでいる。
「なんか歌いやすいんだって。声が似てるとか言ってたけど。」
「ふ〜ん。」
「でも、足りない。皆、力が足りない。」
「何でも良いけど退屈だなこれ…。」
ティファの言葉に頷きつつ、残り半分以下となったカキ氷を食べながらガロードはぼやいた。
カラオケ大会は本物の歌手が歌うものではないため、やはり歌唱力やら何やらが足りていない者が多い。
「たしかにな、でもルナは…。」
「歌唱力とかよりもまずあの見た目がインパクトありすぎ。」
先ほどもらった仮面をつけたまま、ルナマリアは歌い続けている。歌そのものは他の参加者に比べると
うまい部類に入るが、それ以前にその見た目で彼女は観客から引かれていた。
144GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/31(日) 23:08:21 ID:???
第四話『最後の閃光』(前編)

 結局、カラオケ大会の結果は1位“ラクス・クラインの追っかけ”ミーア・キャンベル、2位“仮面の歌姫”ルナマリア・ホーク、
3位“謎多き紳士”アスラン・ザラとなった。
『みなさ~ん、応援本当にありがとー!!』
花束と記念の盾を受け取るその立ち姿はまさにラクス・クラインそのものである。
「納得いかないわ〜〜!! なんであんな追っかけが1位なのよ!! 」
 歌い終えてシンたちの元に戻ってきたルナマリアは負けたことがよほど悔しかったのか、途中の店で買ってきた
イカ焼きにかじりついている。メイリンが彼女をなだめている間に、シンはステラを起こし、ビンゴカードをわたした。
「さて、いよいよビンゴ大会だな。」
「何が当たるやら。」
ステージ上には数字を表示する大型の電光掲示板がセットされる。景品が近くの机にどんどん運び込まれていく中、
その中にあった品を見て、シンとガロードは目を見開いた。
『あ、あれは!! 』
1/100ガンダムダブルエックス(Gファルコン装備)とMGディスティニーガンダム、2人の目は他のCDや化粧品やら
その他のMGプラモデルには目もくれずそれらを見つめ続ける。
「シン」
「ガロード」
2人は視線を合わせると、がっちり握手を交わす。
『取れたときは交換だ!』
こうして、熾烈なビンゴ大会は幕を開けた。


『これから、ビンゴ大会を行う! 数字を決めるのは、この! 黄金の!!』
『イザークとディアッカが勤めていくので、よろしく!』
長くなると察したディアッカは間髪いれず台詞をカットして大会を進めていった。
とはいえ、イザークの妙に長い台詞を使うおかげで進行はすこしずつ遅れていった。

『次行くぞ!!  ひぃぃっさつ!! ゴッドフィンガァァァァッ!!』
『イザーク、いちいち叫ばなくて良いから…』
『31番!! どうだ、そろそろリーチの奴がいるはずだ!!』
『リーチだ!!』
イザークの言葉に答えるように3人が立ち上がった。既に番号は7回発表されている。ビンゴカードの配列が
よければ、ビンゴが出てもおかしくない。
1人はシン、1人は未だ法被姿のシャギア・フロスト、そしてもう1人は見慣れない赤いマフラーを巻いた小柄な少年である。
「ガロード悪いな。」
「かまうな。おれもすぐに追いつく!」

「兄さん…!」
「わかっている。ダブルエックスは誰にも渡さん!」

「俺がガンダムだ! ガンダムになるんだ!!」
145GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/31(日) 23:11:29 ID:???
第四話『最後の閃光』(中編)

三人が三人とも己の思いを胸に次の番号の発表を待つ。八回目の番号発表でガロードが、九回目の発表でルナマリアとマユ、
キッドがリーチを掛ける。
そして、十回目の発表でついに決着がついたのだった。
「俺が、ガンダムだ!!」
赤いマフラーを巻いた少年が、高々と手を掲げたのだった。


「まったく…。」
「…一度はホント冷や汗かいたな。」
 シンとガロードはそれぞれほしかったプラモデルの入った箱を袋に入れ、観客席を後にした。ビンゴ大会は続いているものの、
彼らはこれ以上そこにいる必要は無い。ちなみにティファとステラはビンゴカードを他の面子に渡して二人についてきている。
ほしいものがない以上、そこにいる意味がなかった。
 ちなみにマフラーの少年が手にしたのはMG”RX-78 ガンダム”であった。
「んじゃ、俺はステラ送ってくから。」
「え? でもこれから花火だろ?」
「…たく、すこしは察しろよ。」
「あ、あぁ…。そういうことか。」
「お前らがな、んじゃ!」
「おう。またな!」
ガロードとティファが同居する家は高台にあるため、家に戻れば何もさえぎる物の無いところでゆっくりと花火を見ることができる。
後は2人が勝手にいちゃいちゃすることだろう。
「さて、俺たちも花火の見えるところに移動しようか。」
「シン、疲れた。」
 そういってステラはしゃがみ込んだ。ステラは体力がないわけではないが、今回は普段よりもはしゃいだ性か、いつもよりも元気がない。
「…そっか、それじゃどこか休める場所を…。」
「おんぶ。」
座れる場所を探すシンに対して、ステラはシンが考えもしなかった選択肢を要求した。
「…え? お、おんぶ?」
「おんぶ。」
「俺が、ステラをおんぶ?」
「おんぶ。」
ステラはそれ以外に何も言わず、ただしゃがみこんでいる。シンはこの状態のステラは何を言っても聞かないことを承知していた。
だからこの場合の選択肢は一つしかない。
「…わかった。けど一つだけ約束してくれ。」
「約束?」
「俺も汗かいたからさ、すこし汗臭いかもしれないぞ。それを我慢してくれるなら。」
「我慢する、だからおんぶ。」
シンは息を深く生きを吐きつつ、彼女に背中を見せてしゃがみこんだ。
146GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/08/31(日) 23:14:55 ID:???
第四話『最後の閃光』(中編)

『こちら本部。こちら本部。花火班応答願います。』
「こちら花火班。そろそろかしら?」
『ハイ、あと3分25秒もすれば盆踊りも終わります。』
「わかったわ、後3分20秒ね。」
 アビーからの報告を受け、時計の秒針を見ながらタリアは準備していた花火班を集合させる。時間は刻一刻と迫っている。
悠長なことを言っていられない。
「皆、あと3分で花火開始よ! 最後の確認を急いで!!」
「花火筒全部固定完了済みです。」
「周辺の警備は?」
「既に道の封鎖は完了済み、40人が火の粉が降って火災になりそうなところに消火器を持って既にスタンバイをしています。」
「よし、アーサー!」
「は、はい!」
「祭りの最後を〆る大一番よ。失敗は許されないわ。」
「わ、わかっています!」
「頼むわよ、副長。」
「は、ハイ!!」
花火の点火役を受け持っているアーサーは大急ぎで最初に打ち上げる花火の元へ向かった。


 人気の少ない道をシンはステラを背負ってゆっくりとすすむ。花火の場所はわかっているので、どの辺りがよく見えるかは
既に把握済みである。
 背中に二つの丸いやわらかさを感じながらシンは脚を進めた。
「Zzzzz……。」
 彼の背中に体を預けている当の本人は、気持ちよさそうに寝息を立てている。それでも彼の首に回した腕はしっかりと
握られており、放す気配はなかった。
「シ〜ん〜…むにゃむにゃ……。」
「一体どんな夢を見ているんだか…。」
突然の電話で一体どうなるかと思ったが、今回の祭りをシンはこれはこれで楽しかったと感じている。ステラの浴衣も見れたし、
みなが楽しくのんびりとした時間を過ごすして普段見れない新たな一面を垣間見れた。
 
ボン! ボンボボンボン!!

 花火を見る予定の地点についたころ、ちょうど花火が上がった。赤や黄色や緑や青の炎が夜空に広がり、花のように夜空に散る。
「あ、花火…!」
ステラも目を覚まし、2人で花火を見あげる。夜空に咲いては散る一瞬の花は夜空に浮かぶ満月と共に夏の夜空を彩った。


「お待たせしました。さあ、お祭りに参りましょう!」
「ラクス、もう花火上がってるから」
「え!?」
着替えに手間取って今回の祭りに参加できなった人間が2人ほどいたが、それに気づいた人間は彼ら以外にいなかった。


おしまい!!
147通常の名無しさんの3倍:2008/08/31(日) 23:48:13 ID:???
ちょwドラまた自重wwwwww

乙っしたー
148通常の名無しさんの3倍:2008/09/01(月) 00:01:10 ID:???
せっちゃんもなwww
面白かったーw
149通常の名無しさんの3倍:2008/09/01(月) 00:06:58 ID:???
GX氏乙

兄弟の太鼓の師匠はきっとヒ○キさんだな
150通常の名無しさんの3倍:2008/09/01(月) 01:58:24 ID:???
やっぱこういうパロディな雰囲気もいいな〜。
もし気が向いたらまた書いてください。とても面白かったです。
151通常の名無しさんの3倍:2008/09/01(月) 19:16:13 ID:???
しっかしガロードって三枚目かね?二枚目って言うのは似合わないと思うけど
152通常の名無しさんの3倍:2008/09/01(月) 20:37:24 ID:???
黙ってると中性的に見えるときもあるからな〜。
これってなんて表現すれば良いのだろうか。
容姿端麗なやんちゃ坊主?
153 ◆mGmRyCfjPw :2008/09/01(月) 21:58:08 ID:???
パソコンを手離した事から、これまでスレの独占状態を避けるため携帯からの投稿は避けていました。
しかし、あれから地元のネカフェあちこち行きましたが全部公開PROXY規制で駄目でした。
つきましては許して頂けるなら続きは携帯から月刻み(パケ代の事もあるので)に投下していこうと思います。
次の投下がいつになるかは分かりませんが宜しくお願いします。
154通常の名無しさんの3倍:2008/09/01(月) 22:37:04 ID:???
待ってたー!!!
155通常の名無しさんの3倍:2008/09/03(水) 20:39:28 ID:???
保守
156通常の名無しさんの3倍:2008/09/05(金) 20:35:32 ID:???
うわー
シンたらステラの体についてるマシュマロ4つとも制覇してる…
157通常の名無しさんの3倍:2008/09/07(日) 00:37:51 ID:???
マユがキッドやパーラと絡んだらどんな感じになるだろうか?
158通常の名無しさんの3倍:2008/09/07(日) 22:36:25 ID:???
キッドは喧嘩友達、パーラは面倒見の良い姉御っぽいお姉ちゃんみたいな感じかな。
そういやAWでマユと同い年くらいの子ってキッドくらいしかいない?
159通常の名無しさんの3倍:2008/09/07(日) 23:02:10 ID:???
キッドが12歳で、あとウィッツの兄弟くらいかな。>マユと同年代

なぜだろう。
マユとキッドってかけらも恋愛に発展しなさそうだから不思議だ。
160通常の名無しさんの3倍:2008/09/07(日) 23:29:14 ID:???
メカマニアとブラコンだから恋愛方面にはかみ合いそうに見えないんだろ
161通常の名無しさんの3倍:2008/09/09(火) 21:26:35 ID:XDfAMSlU
携帯魔改造で変なフラグたったりとか。
マユってブラコンなのは公式なのか?
シスコン兄とうちの兄貴?ありえなーいwな妹でも良いと思うのだが。
162通常の名無しさんの3倍:2008/09/10(水) 20:23:57 ID:???
いかんせん情報が少ないからな。
Wクロススレのイカれたライダーウーマンなマユもいれば普通の妹キャラなマユもいる。
結局は半オリキャラにならざるをえない。
163通常の名無しさんの3倍:2008/09/11(木) 14:20:09 ID:???
でも逆を言えば、それだけマユには開拓の余地があるってことだよな。
不意に変態兄弟に懐いたマユが浮かんできた……
164通常の名無しさんの3倍:2008/09/11(木) 14:38:01 ID:???
個人情報の設定はともかくその描写がTVではほぼ皆無であり、
仕方なく二次創作ではその外見やデータから
真面目でクールそう⇒実はツンデレ、あるいは毒舌ツッコミ役化、などに
それぞれ発展していったアビーという例もあるな。
ことに変態兄弟と強力トリオを結成した阿部さんスレのときたら…
165通常の名無しさんの3倍:2008/09/12(金) 21:18:29 ID:???
ほしゅ
166通常の名無しさんの3倍:2008/09/13(土) 15:43:37 ID:???
保守
167通常の名無しさんの3倍:2008/09/14(日) 22:19:27 ID:???
保守!
168通常の名無しさんの3倍:2008/09/16(火) 00:32:03 ID:???
保守
169通常の名無しさんの3倍:2008/09/16(火) 00:57:43 ID:???
少年の不屈な純情に敬意を表して不屈に保守
170通常の名無しさんの3倍:2008/09/18(木) 12:40:04 ID:SvmWB7QM
さあ残り一週間だぜ保守アゲ
171通常の名無しさんの3倍:2008/09/20(土) 12:09:57 ID:???
保守
172通常の名無しさんの3倍:2008/09/21(日) 21:08:46 ID:???
ほしゅ
173GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/09/22(月) 16:21:39 ID:???
第八十六話『戦場では誤射や裏切りはよくあることだ!』

「さすがはアスラン、ってところかな…!」
キラは起動させたビームサーベルを停止させながらジャスティスを見つめる。虚をついたつもりだったが、起動させるタイミングが
悪かったために致命傷には至っていない。
「でも、これは思ったよりも効果的だ。」
試験的に装備したビームサーベルの効果にキラは満足げな表情を浮かべた。
 今回、ドートレス・ネオが装備しているビームサーベルは、それその物は量産型のドートレスで使われている普通のビームサーベルである。
それと違う点は、”格納状態”にあった。
 サイドアーマーに装備されるタイプのビームサーベルは”居合い”をイメージしてあるためか、ビームの噴射口が”後向きに”格納されている。
だが、キラのドートレス・ネオは噴射口が”前向きに” 取り付けられているのだ。
 敵MSが振り下ろすサーベルを受け止める防御動作などは、”横凪” の性質上、後ろ向きに取り付けたほうが防御範囲も広くなる。
しかし、キラはこう考えた。

敵の攻撃を防御するのではなく、敵の攻撃よりもこちらの攻撃を早く当てたほうが効率的

敵と対峙した状態で、いちいちサーベルを”振り回す” よりも、”突き刺した”方が早い。”突き刺す”為にはどのように格納したほうが良いだろうか。
至った結論がこれであった。
「双剣に意識がいっているおかげで簡単に倒せると思ったけど…。」
ヤグルシとアイムールもただ飾りとして持っているわけではないが、接近戦においておそらく一番これが命中する確率が高い。さらに、格納状態でも
起動できるようにしておけば、敵MSと肉薄した状態でも使用できると言う大きなメリットもあった。
「アスラン、君にはこいつは一回しか聞かないと思ってる。頼むからもう少し付き合って!!」
そう言いながらキラは操縦桿を操り、ジャスティスに再び接近戦を挑んだ。


「ガロード!!」
ひたすら前に出てくるラスヴェートと戦うダブルエックスに、ヴァサーゴとアシュタロン、さらにレジェンドからの砲撃が襲い掛かる。
ラスヴェートの攻撃の隙を狙おうにも、この援護のおかげでそれも容易にできない。ただでさえラスヴェートは強い。
この状態が続けばシンたちはジリジリと追い詰められていくのは目に見えていた。
『くそ、こいつらぁ!!』
「無理するな!」
攻撃をシールドで防ぐダブルエックスにラスヴェートは容赦なく攻撃を続ける。ビームライフルで援護を続けるものの、
ラスヴェートはダブルエックスから離れようとしない。
『シン!! 突っ込め!!』
「ウイッツさん!?」
『瞬間的な加速だけなら俺よりもお前の方が上だ!!』
「でも!」
『接近戦はディスティニーの十八番だろう!? 心配すんな、援護は任しとけ!!』
「…了解ッ!」
ウイッツを信じてシンは上を向く。ディスティニーに大剣を構えさせ、未だ防戦を続けるガロードに向かって叫んだ。
174GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/09/22(月) 16:23:46 ID:???
第八十六話『戦場では誤射や裏切りはよくあることだ!』(中編)

「ガロード! 左へよけろ!!」
ガロードからの返事の前に機体は上昇を開始する。瞬間的な加速、エアマスターのように高速移動を長時間維持することはできないが、
爆発力はディスティニーに軍配が上がる。チーターのようなディスティニー、狼のようなエアマスターと言った所だろう。
 ダブルエックスが左に機体をよけると、そのわずかな隙間をディスティニーの大剣が横凪に一閃する。突然の攻撃に一度距離をとった
ラスヴェートは、未だ剣を振ったままの状態で上昇を続けるディスティニーにライフルを向ける。だが、そうはさせないと体勢を立て直した
ダブルエックスが今度はラスヴェートに対して攻勢に出た。
『いつまでもやられてばっかじゃねぇぞ!!』
ラスヴェートはダブルエックスの攻撃を避けるべく、回避行動を続ける。
だが、その中で”後退”だけは決してしようとしなかった。

「このォォォッ!!」
 一方、上空へと舞い上がったディスティニーは後ろからの砲撃に徹していたフロスト兄弟とレイを攻めるべく、一気に距離を詰めにかかった。
 3対1では分が悪いことは承知しているが、それは相手も同じことだ。敵の眼前で戦うラスヴェートとディスティニー、孤立した互いの1機のうち、
どちらが先に倒れるかによって戦況は傾く。
「大丈夫、やれる!!」
 過去に苦い思いをさせられた相手を前に、シンはそう自分を言い聞かせた。


『オルバ。』
『了解。』
シャギアとオルバはそう言葉を交わすと、突然機体を反転させ輸送機の待機させている空域に向かい始めた。予想もしなった突然の行動に
レイは戸惑いの声を上げる。
「大佐!?」
『すまない、伝送系統の故障だ! 』
『すぐに戻るよ。』
「しかし! グウッ!! ?」
機体の衝撃にレイは言葉を切る。メインモニターに視線を戻すと、ディスティニーが既に目の前に迫っていた。
「…了解、この場は俺が引き受けます!!」
『悪いが頼む。』
『期待しているよ、レイ・ザ・バレル少尉。』
 レイが通信を切るのと左脚に格納されているビームジャベリンを引き抜くのはほぼ同時だった。本来は連結して使うものだが、
目の前にある大剣を受け止めるためにはたとえ片方だけでも使う必要があった。
「シン!」
『レイ!  今度は、あの時のようには行かないぞ!!』
 かつて肩を並べて切磋琢磨した2人が剣を交える。模擬戦では何度もあった光景だが、こうやって敵味方に分かれて本気で戦うのは2回目だ。
「悪いが、俺にはお前のように悠長に構えている暇はない!」
『俺が悠長に構えてるって言うのか!?』
「俺には、時間がないんだ!!」
 つばぜり合いを続けていたビームジャベリンでディスティニーを弾き飛ばすと、レジェンドはすぐさまドラグーンを展開する。
ビームスパイクを含め計10発のドラグーンがディスティニーに迫る。
175GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/09/22(月) 16:26:52 ID:???
第八十六話『戦場では誤射や裏切りはよくあることだ!』(後編)

シンにドラグーンを撃ち落された経験があるため、彼にどれぐらいこの攻撃が有効なのか図りかねる部分もあるが、
オールレンジ攻撃そのものが対処しづらいことに変わりはない。
そう考えるレイとは対照的に、シンはひそかに笑った。”笑顔”や”微笑み”といった類の笑いではない。
敵がこちらの予想通りに動いたことに対する”罠にはめることができた”時の笑みだ。
 ドラグーンは一斉にディスティニーめがけて砲撃を開始すると、ディスティニーは一目散に逃げ出す。
ドラグーンは追従し、後を見せるディスティニーに砲門を向けた。
「まだだ…、まだ……!」
後を追尾するドラグーンの砲門に気を配りつつ、前方にも意識を向ける。その先にはビームサーベルを抜いて
鍔迫り合いをするダブルエックスとラスヴェートの姿。
「ガロード! そいつをこっちに飛ばせ!!」
ドラグーンの砲門に光が点る。ガロードは彼が何をしようとしているかを察し、ダブルエックスがラスヴェートを蹴り飛ばす。
「今だ!」
 ドラグーンの砲門から光が放出される。その光が放出される寸前、ディスティニーはそれまで飛んでいた軌道を大きく外れた。
 人間がトリガーを引いていれば撃つ寸前で止めることができたであろうが、ドラグーンはコンピュータ制御、
そんな細かい制御をすることはできない。
 ビームスパイクを除いた全てのドラグーンからビームが放たれる。本来その先にいるはずの攻撃対象は既におらず、
そのさらに先にいたラスヴェートに砲撃が命中する。
『グオアッ!!』
予想外の攻撃にたまらずアベルも声を上げた。空中戦である以上、前後、上下、左右全ての方位からの攻撃の可能性を
考慮しているつもりだったが、突然の攻撃にはやはり驚いてしまう。
「中尉!!」
『問題ない、戦場では誤射や裏切りはよくあることだ!』
そう言いながら、アベルは恐怖を覚えていた。
 確かに今の攻撃は誤射だ。しかし、これは”狙った誤射”で、やろうと思えば何度でもおこる可能性のあるものだ。
『こんなことで、こんなことで私は!!』
 大声を出して自らを叱咤する。
 彼は自分自身を”特別な存在”として受け入れている。実際にニュータイプ研究所ではニュータイプとして認定されており、
普通の人間”オールドタイプ”とは違う存在だと感じている。
 だが、情報によれば今攻撃をしているフリーデンの中でニュータイプとしての能力を持っているのはティファ・アディールと
かつての戦争のエースだったジャミル・ニーとのみ。
 つまり、目の前で今戦っている相手はすべて”オールドタイプ”なのだ。
 特別な力を持つ自分が何の変哲もない人間に負けることなどあってはならない。
『私は、私は特別な人間なのだ!  負けはせん!!!』
 そう思うことで、彼はついに力を開花させた。
176通常の名無しさんの3倍:2008/09/23(火) 02:51:03 ID:???
GX氏更新乙

さあアベル本領発揮だな
にしてもキラは割り切ってるのか檻の中でも変わらない部分は変わらないのか
177通常の名無しさんの3倍:2008/09/23(火) 15:14:40 ID:???
GJです。
178通常の名無しさんの3倍:2008/09/23(火) 20:45:47 ID:???
アベルタイムきたー

ってか、キラがなんかストライク時代のキラみたいだな
このキラがラクスに会ったらどうなるかに興味ある
179通常の名無しさんの3倍:2008/09/27(土) 08:50:53 ID:???
ほしゅ
180通常の名無しさんの3倍:2008/09/29(月) 07:49:43 ID:???
hosyu
181通常の名無しさんの3倍:2008/10/01(水) 20:55:16 ID:???
hosyu
182通常の名無しさんの3倍:2008/10/02(木) 10:52:02 ID:???
スーパーロボット大戦の新作をやってるんだが、
種死キャラとXキャラのからみ少ないなあ
中盤なんだが、今のところ結婚式強奪をガロードたちが手伝ったくらいしかない
183通常の名無しさんの3倍:2008/10/02(木) 19:34:43 ID:???
まさかあれをガロード達が手伝うとはな…
軽く悪夢だったぜ。
184通常の名無しさんの3倍:2008/10/03(金) 18:27:42 ID:???
「ガロード達がCEに転移する」タイプのSSへのあてつけかと言いたくなるな。
185通常の名無しさんの3倍:2008/10/03(金) 19:14:11 ID:???
当てつけってw
個人の二次創作に必要以上のステータス付加すんなよ
このキャラはこう動いて当然、それ以外は異常って思考はちょっとヤバいぞ
186通常の名無しさんの3倍:2008/10/03(金) 21:50:17 ID:???
最近二次創作でしか種死に触れてないから、シンが不幸だってこと忘れそうになるぜwww
187通常の名無しさんの3倍:2008/10/03(金) 23:42:18 ID:???
エスタルドで指導者の義務というかノーブレスオブリージとかいうのを
目の当たりにした後のガロードだったら絶対に加担したりはしなかったんじゃないかと
言ってみたり
188通常の名無しさんの3倍:2008/10/04(土) 01:21:55 ID:???
家族で仲間が国の為にしたくない結婚を強いられてる。
なんて言われたら助けるのがガロードでは?
国についちゃ余り知識無いし。そんな年頃ど真ん中だぜ
その後の行動が滅茶苦茶なのは預り知らずだろ、ガロード
189通常の名無しさんの3倍:2008/10/04(土) 07:08:46 ID:???
だが、「オーブの平和のため」などと綺麗事は吐かない気がする。
「そんなこと知ったこっちゃない」という方向だとも思うが。
AAの理屈にも「ふーん」程度、とか。
190通常の名無しさんの3倍:2008/10/04(土) 10:27:45 ID:???
路銀が尽きた、でもティファを餓えさせたくない

ラクス一味のスカウト、契約金は前払いで

ガロード快諾

とかだったりしてなw
191通常の名無しさんの3倍:2008/10/04(土) 13:42:29 ID:???
実行してはみたけどカガリ猛反発(アレ?)
 ↓
改めて見渡すとやっぱこのフネの空気おかしくね?
 ↓
報酬日割りにして今日までの分以外は残してティファとカガリ連れて脱出

とかの方がしっくりくるかな?
192通常の名無しさんの3倍:2008/10/04(土) 17:29:24 ID:???
ここでどうでもいいかもしれない情報を君たちに提供しよう。

スパロボZでは、

乳 揺 れ は パ ー ラ > > > > エ ニ ル

ちょ、ま、皆無言で石ひろわな
193通常の名無しさんの3倍:2008/10/04(土) 20:19:11 ID:???
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm4760754

こうですね、わかります
194通常の名無しさんの3倍:2008/10/06(月) 20:59:48 ID:???
ほしゅ
195通常の名無しさんの3倍:2008/10/08(水) 02:22:15 ID:???
今度のスパロボ、エニルが地味にいい味出してるな
関わったよしみでキラに忠告したりとか、キラも結構真面目に受け止めて悩んだりしてるし

「誰も殺さずに平和にできるのなんて、神様だけだよ」
196通常の名無しさんの3倍:2008/10/10(金) 08:28:19 ID:???
hosyu
197通常の名無しさんの3倍:2008/10/12(日) 22:51:22 ID:???
保守
198通常の名無しさんの3倍:2008/10/15(水) 23:13:43 ID:???
不屈
199通常の名無しさんの3倍:2008/10/18(土) 01:52:17 ID:???
不屈
200GX1/144/9900>>:2008/10/18(土) 14:53:44 ID:???
スイマセン
PCのverうpに伴い、ネット回線を太くしました。
明日更新します・・・
201GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/10/18(土) 14:54:27 ID:???
>>200は私です・・・
んじゃ、また明日
202 ◆zjsvzYzJMk :2008/10/18(土) 15:51:12 ID:???
てすつ
203通常の名無しさんの3倍:2008/10/18(土) 21:54:12 ID:???
うひ、待ってます!
ついでに浮上
204通常の名無しさんの3倍:2008/10/18(土) 22:06:20 ID:???
過疎スレ埋め
205GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/10/19(日) 19:07:04 ID:???
ここのところ思うところ、
キラくん。私君のこと100%表現できないかもしれない

第八十七話『強敵ってわけか!』(前編)

 ティファは突然の”声”に頭を抱え込んだ。声といっても実際に聞こえる声ではない。ニュータイプのみが聞くことのできる
”感覚”といったほうが正しいかもしれない。
この”声”は誰もが持っているものだ。ただ発信することはできても、ほとんどの人間がそれを受信することができない。
自ら”声”に出して相手に伝えようとしなければ伝わらないものだ。
だが、ニュータイプである彼女はそれを”感覚”として感じることができる。だが、今回のこの”声”は異常なものだった。
ニュータイプの発する”声”は、カリスの時もルチルの時も感じたことがある。カリスは使命感の内に同胞を見つけた喜びを、
ルチルの時は戦いに対する嫌悪の中にジャミルへの思いを感じた。
だが今回はまったく異質だ。”敵意”、”破壊衝動”、”絶対的な力を得た喜び”、一番簡単に言い表すならば、それは”狂気”だった。
「……ッ!!」
彼女は思わず部屋を飛び出す。この狂気が向けられた先は、彼女を誰よりも大事に思ってくれている人物、そして彼女自身が
変わるきっかけをくれたかけがえのない人物だ。死んでほしくない。死なせたくない。
彼女は被弾して揺れる艦内を必死に走った。


一方、ラスヴェートに乗って戦場を駆けていたアベルは笑わずにはいられなかった。自分は覚醒し、”ニュータイプ”となった。
これは当初の目論見通りだが、それがここまで自分の世界を変えるとは思っていなかった。
「見える、見えるぞ!! まるで全ての機体に、自分自身が乗っているようだ!!!」
 ニュータイプとして覚醒した彼に呼応し、ラスヴェートに搭載されていたフラッシュシステムが起動する。Bit MS5機が
自らの機体の回りを飛び、まるで彼に従う僕のように忠実に動く。そして、それらから膨大な情報が彼に向けて送られてきた。
敵の位置、次の行動、呼吸、心拍数、精神状態。それらの情報を彼はパニックになることなく処理し、次々に自身の行動に
役立てていく。それが次々に成功することで彼はドンドンと高揚していった。
「これが、これがニュータイプの力か!!」
 自身のそれまでの戦い方がひどく陳腐に思えるほど、今の自分の戦い方は無駄がなく洗練されている。Bit MSから
送られてくる自分の動きはうっとりするほどの物だ。
 しかし、それは敵にとって強敵の出現を意味した。今まで一機で孤軍奮闘していた敵が、突然5倍に膨れ上がった。
それぞれの能力の高さ、さらに連携の取れた動き。どんなに統率の取れた部隊でもここまでの精度を出すことはできない。
「くそ! こいつら一体なんなんだ!?」
レイと交戦していたシンはBit MSの出現に大きく動揺した。最初は同型のMSが後から援軍に来たのかと思ったが、
それにしては部隊の技術が高い。
『シン下がれ! 敵はフラッシュシステムを使っている!!』
 ジャミルの乗るGXの援護を受け、シンはディスティニーを後退させる。ソリュゴス・ブルゴールが使えない
状態だったらとても攻撃を受け続けることはできなかっただろう。
「フラッシュシステムって、あのニュータイプの精神波を使って機動兵器を動かすあれですか!?」
『そうすると、本体は一体だけか!! 』
『でも本体ってどれだよ!!?』
 目の前に現れたニュータイプにさすがのウイッツとガロードも動揺を隠せない。シンも奥歯を噛み締めた。
「強敵ってわけか!」
6対4。数の上での優位性も失ったシンたちが劣勢に立たされるのは必至だった。
206GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/10/19(日) 19:09:34 ID:???
第八十七話『強敵ってわけか!』(中編)

「くそ、こいつ!!」
アスランの乗るジャスティスは、暴風のように攻め立てるドートレス・ネオと戦闘を続けていた。双剣にビームカッター、
さらには腰のビームサーベルと接近戦に特化したドートレス・ネオと、双身刀のシュペールラケルタに両脚の
グリフォンビームブレイド、さらにビームブーメランのシャイニングエッジにアンカーのグラップルスティンガーを
有するジャスティス。お互い一撃を見舞おうと一進一退の攻防が続く。
ジャスティスが盾に装備されたままのシャイニングエッジを横凪に振るうとドートレス・ネオは刃を紙一重でよける。
すぐさま双剣を上段から振り下ろして反撃に転じるが、今度はジャスティスがそれを右手にもった双身刀の
ビームサーベルで受け止める。
互いに両手はふさがった状態でジャスティスが右足のビームブレイドでドートレス・ネオの胴体を狙い、
それをドートレス・ネオは両の腰に装備されたビームサーベルでとめ、その状態を維持することなく互いにはじきあって距離をとる。
このように互いに攻撃を読みいあいながら既に12回仕切りなおしていた。
「こいつ、並みのパイロットじゃないな…!」
乱れた息を整えながらアスランは敵パイロットの技量を素直に認めた。ここまでこれほど接近戦で持った相手は他にいない。
オーブでシンと戦った時もこのような苦戦をしたことはなかった。
「…今のあいつとあの時のあいつを比べるのも失礼か。」
シンはこちら側に来てかなりの成長を遂げている。あれだけの大剣を振るうにも熟練が必要であり、なによりあれを使って1対多数を
やってのけていることには感心せざるえないことだ。
 そんな事を考えていると、突然ドートレス・ネオのパイロットがスピーカー越しに声をかけてきた。
『さすがだね、アスラン。』
「!? お前は俺を知っているのか!!?」
 アスランは相手が自分のことを知っていることに動揺しつつも、それを外に出さないように勤めた。動揺していることが
わかれば、付け入る隙を与えるだけだ。
『うん、小さい頃から一緒だったかなね。』
「なんだと?」
『いっしょに戦った仲間を忘れたとは言わせないよ。アスラン!』
両腕を交差させてドートレス・ネオが双剣を振るう。ジャスティスがそれを受け止めると、すぐさまメインモニターに通信画面が開かれた。
「キラ、本当にお前なのか!!」
『何度も言わせないでよ! 僕は、キラ・ヤマトだ!』
会いたかった親友を目の前に、アスランは驚きの表情を浮かべた。
確かに目の前にいる青年は彼の知るキラ・ヤマトである。だが、彼の知るキラ・ヤマトは新連邦のような独裁的な組織に
属することを好む人間ではない。なぜ彼が新連邦に身を寄せているのか、不思議でならなかった。
「答えろキラ! お前はなぜ新連邦にいる!?」
『世界を変えるために必要だからさ。』
「世界を変える、だと!?」
 突然出てきた大きな話に、アスランは疑問符を浮かべた。キラの言葉は続く。
『アスラン、僕は人を殺したよ。』
「なんだと!?」
『いっぱい、いっぱい殺した。そうしないと、檻の中から出ることができなかったから。』
そういいながら彼は目を伏せた。
207GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/10/19(日) 19:11:12 ID:???
第八十七話『強敵ってわけか!』(後編)

 円錐形の白いその建物は、遠くから見るとわずかに反り返っており、”牙”のように見えることから”牙の塔”と呼ばれていた。
正式名称ケルベロスの檻』、新連邦政府の最終更生所に送られた彼を待っていたのは、一点の滲みもないその白い塔であった。
 外装は白一色。汚れの一切を認めない徹底さが感じられたが、中に入った途端、彼は思わず口元を押させた。内装もその全てを
白で統一してあった。しかし、その建物の中のどこにいても、すさまじい血の匂いが感じられたのだ。


『そこは人を殺さなければ生きることができない世界だった。強くなくちゃ、生きられない世界に僕はいたんだよ。』
「お前はそんな目にあったというのに、なぜ新連邦にいられる!」
『今一番力を持った勢力が新連邦だからさ!』
ドートレス・ネオは刃が振るう。アスランは操縦桿を操って機体を大きく回避させた。
『でも新連邦は自分達の意に沿わない国に対して侵略行為を続けている。ぼくは、それを正す!』
右の双剣が横凪に一閃する。ジャスティスが回避した瞬間、残っていた左のビームカッターからビームを発射する。左肩に直撃を
受けながらアスランは叫んだ。
「お前は、新連邦を内側から変えるというのか!?」
『そう! だからアスラン僕のために死んで!!』
「なぜそうなる!? 新連邦が人々を苦しめていることを知って、なぜお前は新連邦軍で戦うんだ!!?」
『ぼくは、英雄になるんだ!』
アスランは、彼の言葉に迷いを感じることができなかった。
「言っていることが滅茶苦茶だぞ!? 新連邦を変えるために、なぜ新連邦の英雄になるんだ!!?」
『違うよアスラン、世界がおかしいんだ。一人殺せば人殺し、十人殺せば殺人鬼と呼ばれて非難の目にさらされる。でもね、
百億人殺したら、人は英雄になれるんだ!! かつての戦争で、あのジャミル・ニートがそう呼ばれたように!!』
キラの中で何かがはじける。キラはビームカッターと双剣を使った四刀流の構えを取った。
『ぼくはそれをかえる。百億人の命を奪った人間が英雄になれるような世界は絶対に間違ってるんだ!!』
「…俺はお前がどれほど苦しい思いをしたかわからない。俺にできることがあるなら力をかそう。だが、今のお前に俺は
協力する気になれない。なぜなら!!」
アスランの中で何かがはじけた。
「英雄は自らなるものじゃないからだ!! お前が多くの命の犠牲の上で英雄になるというなら、俺はお前を止める!!」
208通常の名無しさんの3倍:2008/10/19(日) 19:23:04 ID:???
支援
209通常の名無しさんの3倍:2008/10/19(日) 19:28:33 ID:???
おお久々にGJ

キラを完全に表現するのは人間やめる事になりかねないのでいいんじゃないっすか
福田になっちゃったら後面倒だと思いますよ
210通常の名無しさんの3倍:2008/10/19(日) 19:33:19 ID:???
GX氏更新乙

こっちのアベルはNT覚醒したか
キラさんはブラッドマンの思想をよく教育されたって感じなのかな
>強くなくちゃ、生きられない世界に僕はいたんだよ とか
エイユウエイユウ連呼する姿は
ダークサイドに堕ちた某エッ○スとかエ○ピス見てるようだ
211通常の名無しさんの3倍:2008/10/19(日) 20:19:43 ID:???
しかし最後の機体にヘイルストーム付いてきそうな施設に入れられてたんだな
212通常の名無しさんの3倍:2008/10/19(日) 20:55:39 ID:???
バカな! アスランが輝いて見えるだと!!! ってあーデコか。
てゆーかジャミルはコロニー落とし以前から旧連邦のトップエースとしてすでに英雄扱いじゃなかったっけ?
213通常の名無しさんの3倍:2008/10/21(火) 13:33:09 ID:???
トップエースとして既に英雄扱いだから、コロニー落とし以前から大勢殺してるんだろう?
ってか、キラがウザクのようなことを言い出したかと思えばさらに突き抜けたな

…凸がオセロのようにいきなりキラの思想に共感して寝返るかとドキドキしていたのは内緒だ
あー、でも、本編でも最初はマトモなことを言っていた気がするからなぁ
三回目辺りが危ないか?
214通常の名無しさんの3倍:2008/10/24(金) 08:19:18 ID:???
hosyu
215通常の名無しさんの3倍:2008/10/28(火) 17:58:25 ID:???
hosyu
216通常の名無しさんの3倍:2008/10/29(水) 00:20:19 ID:???
種、種死キャラじゃX世界で生きていくのも大変なんじゃ・・精神的に。
物売りのおばちゃんが子供背負いながらMS相手にライフルで応戦するような世界だぜ・・・
217議論スレにて1001変更案を相談中:2008/10/30(木) 13:27:20 ID:???
ナンディスカー この「ナイト・オブ・ラウンズ」に加盟しそうなキラきゅんは

まあそんなワケで支援
218議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/02(日) 21:28:11 ID:???
保守
219議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/06(木) 09:12:19 ID:???
保守
220議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/07(金) 01:11:31 ID:???
不屈
221議論スレにて1001変更案を相談中:2008/11/07(金) 23:56:10 ID:???
不屈をかけて浮上
222通常の名無しさんの3倍:2008/11/10(月) 22:13:45 ID:???
過ちは繰返さない!
223通常の名無しさんの3倍:2008/11/13(木) 06:53:40 ID:???
保守
224通常の名無しさんの3倍:2008/11/15(土) 17:52:39 ID:???
保守
225GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/11/17(月) 08:44:57 ID:???
体調崩して一週間下痢で転げ回ったり仕事でヒイヒイ言って
まともにかけませんでした。ほんと、今回のタイトル通りいっぱいいっぱいです。

第八十八話『こんな状況じゃ、やるっきゃないだろ!!』(前編)

ジャスティスのビームサーベルとドートレス・ネオの実剣は、その瞬間交わらなかった。互いに相手の刃を紙一重でかわし、
再び剣を構えてにらみ合う。
「アスラン、やっぱり君はぼくを」
『お楽しみの所悪いが、二人とも後退してくれ』
 戦いながら笑みを浮かべていたキラの顔は、シャギアからの通信で凍りついた。
『了解。』
「大佐! 一体どういうことですか!?」
上官からの命令を素直に聞いたレイとは対照的に、キラは声を荒げた。その様子に眉間にしわを寄せつつもシャギアは
冷静に話を続ける。
『最初のミーティングでも言ったはずだ。今回の任務はあくまでアベル中尉の覚醒が目的だ。それを達した以上、
我々がここに残る理由はない。』
「しかし!」
『宿敵を目の前にやる気になるのはかまわんが、これも任務だ。フリーデンと共に行動をしているならまた合間見えるときが来るさ。』
「…了解!」
 そういいながらキラは操縦桿を操り機体を反転させる。
『キラ!!』
「ゴメン、アスラン。お願いだから早くぼくを止めて、でないともっと多くの血が流れることになる。」
後退するドートレス・ネオを追ってこないジャスティスを横目にみながらキラはバーニアの推力を限界まであげたのだった。


『俺がやつをひきつける!』
「無茶言うな! 的になるだけだぞ!」
「でもそれしか方法がないんだ!! 頼んだぜ!」
そういってガロードはダブルエックスを上昇させる。それを追って敵のラスヴェートが次々に彼の周りを囲みながら上空へと上っていった。
『仕方がない! ウイッツは私とここで援護、シンはガロードを追え!』
「ジャミルさん!?」
『ディバイダーはいざという時の攻撃に役に立つ! だが盾は1枚よりも2枚有った方が良い! ディスティニーの
ビームシールドならそうそう破壊されることもあるまい!』
「わかりました、援護お願いします!」
うなずくとシンは高度を上げながら次第に周りを囲まれてゆくダブルエックスを追った。

「ガロード! 1人で無茶すんな!!」
『こんな状況じゃ、やるっきゃないだろ!!』
互いの死角をかばいながら2機にガンダムが空を舞う。その周りを獲物を狙うカラスの群れにようにラスヴェートは飛び回り、攻撃を続けた。
「だからって、この状況は不利すぎるって!」
『確かに、でも動かなきゃ始まんない!!』
 周りからの集中砲火をシールドに受けながら二人は声を上げた。6対4という数の有利があったとしても、結局そこに人が介在する以上、
”人”対”人”の戦いなのだ。『絶対』という言葉は存在しない。
下方からの砲撃が敵の1機を撃ち抜く。ウイッツとジャミル、さらに援護に加わったアスランの砲撃がわずかではあるが結果を残した。
226GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/11/17(月) 08:48:07 ID:???
第八十八話『こんな状況じゃ、やるっきゃないだろ!!』(中編)

「ガロード! あいつホントにニュータイプか!?」
『こんな時になに言ってんだ!?』
「ニュータイプは全てが見えるんだろ!? だったらなんで今の砲撃が”見えてなかったんだ”!?」
『ハァッ?』
「見えてたら、お前なら避けるだろっ! とッ!! 」
咄嗟に横凪に一閃したラスヴェートのビームサーベルを回避しながらシンはさらに続けた。
「ジャミルさんが乱入してきた時だってそうだ! あいつGXの砲撃に一度動きを止めている!!」
『じゃあ、予期せぬ出来事には対応できないわけか!』
「俺の考えが正しければな! たとえば!」
そういうとディスティニーは銃口をダブルエックスに向けた。
「左へ避けろ!!」
 ガロードはシンの考えを察し、言葉が終わる前に機体を左に移動させる。その後には背後から攻撃を仕掛けてきたラスヴェートが1機、
サーベルを構えている所を見ると接近戦に持ち込もうとしていたのだろう。
剣の届く範囲であれば、”構える”、”狙う”、”引き金を引く”という3アクションの銃に対して、剣は”突く”という1アクションのみで
十分に戦うことができる。敵を倒すために大上段に構えて振り下ろす必要は無い。急所に一撃を見舞うだけで勝利は確定する。
だが、それは剣の届く範囲の話だ。
ディスティニーは既に”構える”、”狙う”を終えて”引き金を引く”体勢に入っている。くわえてこちらは未だ間合いは遠く、
突進を続ける状態だ。どんなに優秀なパイロットでもこの状況を打破することは容易ではない。
容易ではない状況を、アベルはひっくり返した。
『舐めるな小僧ぉぉぉぉぉっ!!! 』
突進する1機とは別の4機全てがディスティニーに銃口を向け引き金を引く。確かにアベルには”全て”が見えていたわけではない。だがそれは、
戦いに関係ないものを、”見る必要がないもの”を見ていなかっただけに過ぎないのだ。明確な敵として存在するシンの思考から目を離すはずもなかった。
「ぐあぁぁっ!!?」
四方からの同時攻撃を受けたディスティニーはたまらず体勢を崩し一気に高度を下げていく。
『シン!? この野郎ぉっ!!』
『私の邪魔を! 』
高度を下げるディスティニーの盾になるために間に入ったダブルエックスに対して、ラスヴェートは攻撃の間を与えず接近する。
既にその左手にはビームサーベルが握られていた。
『するなぁぁっ!!!』
右から左に振るわれた光の剣は、それまでの戦闘で既にボロボロになっていたダブルエックスのディフェンスプレートを両断する。
そして次の瞬間、ダブルエックスは5機のMSが繰り出す激しい斬撃の嵐に飲まれていった。


 地面にビームが着弾した衝撃で、艦の甲板に到着した彼女は転倒した。
自室を出てから何度体を床や壁に打ち付けてきただろう。今の少女の体は痛くない場所を探すほうが難しかった。
しかし、それ以上に優先しなければならないことがあった。
「ガロードお願い…! 私を…!」
 痛みで立っているのがやっとの状態でティファは必死に敵本体の位置を探る。敵本体は5機のMSの1機のみ、
残りの4機は無人だ。敵から感じる意識は全て同じ色。どれが本物か、どれが偽物か、タイムリミットは刻一刻と迫る。
「私を見てっ!!」
 ガロードはティファのように”感じること”はできない。MSの集音性能が優れているとしても、上空から落下している
状態では下からの人間の声が聞こえるはずがない。
だがこのときティファにははっきりとわかった。ガロードは彼女を見ている。戦闘中に艦の甲板という危険な所に身を
さらしていることに驚いていることがはっきりとわかった。
227GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/11/17(月) 08:50:27 ID:???
第八十八話『こんな状況じゃ、やるっきゃないだろ!!』(後編)

彼女は無言で敵を指差す。そこには”本当の敵”がいる。回りを取り巻くのは全て無人機、彼は僕を従えて止めを刺すために
突撃してきていた。

…わかった!!

ガロードが声を上げるのを感じる。彼女は必死に願う。どうか、どうか生きてほしい。彼は私にとってとても、とても大切な人だから。
ダブルエックスは左手でビームソードを引き抜くと、アベルの乗るラスヴェートめがけて投げつけた。


「な、何ィィィっ!!?」
突然の出来事に、アベルは驚愕の表情を浮かべた。最後の一撃を見舞うために攻撃態勢に入ったラスヴェートは、いきなり
投げつけられたビームソードをよけることができなかった。
というよりも、それまでアベルの乗る機体を特定できなかった相手が、いきなり自分の居場所を特定したことが不思議でならなかった。
そんな呆然としている中、本体からの遠隔操作を失ったbitラスヴェートは次々に地上へと落下していく。
だが、それといっしょに落下していく物体があった。
『うあああぁあぁぁぁぁっ!!』
「ガロード!!」
ダブルエックスはラスヴェートのビームサーベルによる斬撃の嵐でバックパックにひどい損傷を受けている。自力での飛行は
不可能な状態だった。ディスティニーが必死に彼を助けようと手を伸ばすが、あとわずかに足りない。

もう少し!!  あと少しなのに!!!

歯がゆさがシンの中で激しく燃え上がる。ステラの時も、サクラの時もあとわずかのところで彼は彼女たちを救ってやることができなかった。
「ディスティニー!! 俺たちはもう失敗できないんだ!!! だから!!」
一定出力以上のブーストが5秒、条件は満たした。後はこの新設されたレバーを最後まで押し込むのみ。
「音速の一つや二つ!!! 超えて見せろぉぉぉぉぉっ!!!!」
シンはためらいなくレバーを押し込みキッドが新たに組み込んだ”SINシステム”の” S” 、
“スパイラル・ブースト”を起動させたのだった。
228通常の名無しさんの3倍:2008/11/17(月) 22:23:55 ID:???
GJそれとお大事に
229通常の名無しさんの3倍:2008/11/17(月) 22:25:29 ID:???
GX氏更新乙

SINってそういうことか、本当にゼロの領域へw
230通常の名無しさんの3倍:2008/11/21(金) 06:18:14 ID:???
hoshu
231通常の名無しさんの3倍:2008/11/21(金) 14:25:00 ID:???
保守
232通常の名無しさんの3倍:2008/11/24(月) 01:07:03 ID:???
集中
233通常の名無しさんの3倍:2008/11/25(火) 19:51:09 ID:???
hosyu
234通常の名無しさんの3倍:2008/11/26(水) 19:09:01 ID:???
不屈と集中かけて浮上
235通常の名無しさんの3倍:2008/11/27(木) 23:17:21 ID:???
保守
236通常の名無しさんの3倍:2008/11/28(金) 00:51:53 ID:???
保守
237GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/12/03(水) 18:24:24 ID:???
最後の文章をどうしようかすごく悩みました。
つうか、投下しつつもまだ迷ってたり・・・

第八十九話『変わらない物は無いな』(前編)

 実際には、音速を超えるほどの速度は出なかった。そもそも人型のままで音速を超えようとすれば機体の強度が持たない。
とはいえ、”スパイラル・ブースト”を起動させたディスティニーは自由落下するダブルエックスにものすごい勢いで接近した。
通常のブースト圧を一定時間溜め、再バーストさせる。現状のスペックのまま現状以上の機動性を確保するためにキッドが考え出したやり方である。
 しかし、ただ追いついただけではダブルエックスに乗るガロードを助けたことにはならない。むしろここからが重要だ。
 シンの中で何かがはじける。今までに何度も経験した激戦の時にのみ体感する研ぎ澄まされた感覚、その中でシンは慎重に操縦桿を操った。
体は急激なGと気圧の変化で今にも失神しそうな状態でありながら、彼は冷静にことを進める。機体を落下するダブルエックスの背面に回りこませ、
両脇をしっかりとつかむ。さらにそこからガロードに負担をかけないようにしながら、なおかつ地上との距離を測りつつ機体を引き上げる。
無残にも地上に落下して爆炎を上げるbitラスヴェートがまわりに煙の円陣を築く中、ダブルエックスとディスティニーはギリギリのところでそれを回避し、
地上に着地した。


 シンが気がついたときには、ことは全て終わっていた。窓の外からは上弦の月が彼の顔をのぞきこんでいる。最早見慣れた天井に見慣れたベッド、
彼はいつの間にか自室のベッドに寝かされていた。
「…あれ? 俺たしか…?」
ディスティニーでダブルエックスを救出した所までの記憶はあるが、それ以後のことを覚えていない。
 何があったのかわからないが、結局の所、彼が戦いで生き残ったこととフリーデンが無事だということは確信できた。

コンコン

 ドアがノックされ、テクスがあらわれた。
「どうだ調子は? コックピットハッチを開けたらお前さん気絶してたからな。」
そう言いながら彼は近くにおいてあった椅子に腰掛ける。時刻は8時を回ったところ、テクスがこの時間帯に艦内をうろついていることはまれだ。
「あの、なんで俺医務室に寝かされて無いんですか?」
「わけあって、医務室は今貸切中でな。」
「貸切?」
シンは頭に疑問符を浮かべる。テクスの話では、ティファが寝ていて、それにガロードが連れ添っているとのことだ。
「ああ、あの2人ですか。」
「まぁ、そういうことだ。」
「でも別に貸切にしなくても…」
「後は、彼らのプライベートの話だ。まぁ、お前さんも問題ないようだし、今日の私の仕事はここまでだな。」
「すいません。迷惑ばかり掛けて。」
「気にするな。私の仕事はこの艦のクルーの健康管理だ。」

コンコン

 テクストそんな会話をしていると、今度はアスランが彼の元を訪れてきた。彼からシンの部屋に来ることはフリーデンに乗ってからははじめてである。
238GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/12/03(水) 18:30:00 ID:???
第八十九話『変わらない物は無いな』(中編)

「シン、すこし話がしたい。」
「では、私はここで失礼するとしよう。」
すいませんと部屋をでるテクスに頭を下げながらアスランは彼を見送る。扉が閉められると、シンはすぐに話の本題に入った。
「で、何の話だよ。」
「今日の戦闘で、キラに会った。」
「あの黒いドートレスか。」
シンはジャスティスと交戦していたドートレス・ネオを思い出した。シンはドートレス・ネオとの交戦経験があり、
並みの腕のパイロットでないことは既に知っていた。
「ああ、あいつは世界を変えるらしい。」
「…また突拍子もないこと考えているな…。」
アスランの話にシンはげんなりとした表情を浮かべる。フォートセバーンでパイロットと話したこともあるが、正直キラ・ヤマトの考えは
彼の理解の範囲を超えている。あの未知の思考回路を理解するのは容易なことではない。
「あいつはあいつなりに考えての行動だろうから、俺はしばらく様子を見ようと思う。」
「そんなこと、俺に相談することじゃないだろ。アンタがそれで良いというなら、俺は文句を言うつもりはない。」
「そうか。…変わったな、お前。」
「へ?」
 アスランの口から出た思いがけない言葉にシンは目を丸くした。今まで”変わった”などといわれたことがない。
「”変わった”って、俺が?」
「ああ、少なくとも前のお前なら、自分の考えに賛同しないものを認めなかった。」
そういわれて、シンはすこし考え込んだ。
今までいろいろやことを経験してきたが、確かにアーモリー1の時にカガリを罵倒したこと、アスランに叩かれた時のこと、ステラを
ファントムペインに返したこと、フリーダムを撃墜した時のことなど、思えばいろんなことに反発してきた気がする。
「……。」
「図星か?」
「…以前は何も知らなかっただけさ。」
「そうか。やはり、変わらない物は無いな。」
アスランは穏やかに笑った。


 彼女が目を覚ましたのは上限の月が西の空に沈もうとしていた頃だった。空はまだ暗く、日の出までかなり時間があることを感じさせる。
 ティファは久しぶりに気持ちよく起きることができた。ここ数日は、目を覚ますたびに憂鬱な気分に襲われていたが、今日は違う。
理由はいたって簡単なことだ。
「ガロード…。」
彼女の左手は未だガロードの両手の中にあった。テクスが最後に見た状況と違う点はガロードが眠っていて、逆にティファが起きているという点だ。
「よかった。あなたが生きていてくれて。」
ティファはガロードを助けるために戦場へ向かい、彼を救った。しかし、彼女も彼に救われた。
今までガロードを直接助けたことは1度も無かった。助けてもらってばかりだった。
まったく何もしなかったわけではない。だがそれでも、やったことは微々たる物だ。

悲しい世界、思いでも悲しい

以前彼女はガロードにそう言った。今もその言葉を否定する気にはならない。だが、ガロードとの思い出はどれも輝いている。
その中には思い出したくない間違いもある。でもガロードとならそれを笑って話すこともできる気がした。
「ガロード……。」
これだけは自分でも否定しようの無い事実だ。私はガロードのことが好き、彼と共に生きていきたい。私がいるべき場所は
彼のそばなのだと確信してできる。
239GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/12/03(水) 18:31:37 ID:???
第八十九話『変わらない物は無いな』(後編)

 でも今はまだ面と向かって言う勇気がない。恥ずかしさが先にたってうまく言えない。
「………。」
握られた左手をティファはそっと握り返す。今はこの手に感じられるぬくもりすらもいとおしい。
一方ガロードはというと、口の端からよだれをたらして幸せそうに寝息を立てている。そんなガロードの顔を見て、
ティファは今までの彼女では絶対にしない大胆な行動に出たのだった。


「ふぁぁぁぁ…。結局ティファ起きなかったなぁ。」
朝日が昇り、艦内を静かに照らし始めた頃、ガロードは医務室を出て共用洗面所へと足を進めていた。戦闘が
完了してティファが医務室で起きるのを待っていたのだが、戦闘で疲れていたガロードはいつしか彼女の寝る
ベッドに体を預けていた。
「ん〜、ティファの状態はよくないんだろうなぁ…。よぉし、この際だ。俺もティファのそばで眠って良い夢見れたし!
顔洗ったら起きるまでずっとそばにいてやろ!」
そう決めて洗面所に入ると、先客が顔を洗っていた。
「おはよ、シン。よく眠れたか?」
「ああ、気絶するぐらいよく寝れたよ。」
厳密には気絶と睡眠は違うけどな、と冗談交じりで2人は言葉を交わす。互いによくある何気ない生活の中での1コマだ。
 ふと、シンはガロードがやけに上機嫌なことに気づいた。
「ガロード、お前なんか良いことあった?」
「ギク。」
「…あからさまなリアクションだな。」
「い、良い夢見れたけだよ。」
「良い夢ってどんな?」
シンの言葉にガロードはもじもじと恥ずかしそうに言葉を濁しつつも、彼が見た”良い夢”の内容を語り始めた。
「じ、実は、…夢の中でティファとデートして、ほっぺにキスされちゃって…。」
「……それ、ホントに夢か?」
「ゆ、夢に決まってるだろ!?」
「夢、ねぇ…。」
 朝からそんな惚気話を聞かされたシンはあきれつつ、彼の右頬に残されたわずかな跡のことを口にしなかったのだった。
240通常の名無しさんの3倍:2008/12/03(水) 20:20:09 ID:???
GJとしか言えない
241通常の名無しさんの3倍:2008/12/03(水) 20:37:23 ID:???
やばい!!ニヤニヤがとまらない!!とにかくGJ!!
242通常の名無しさんの3倍:2008/12/03(水) 20:41:54 ID:???
ティファ、やっぱり君はかわええな。GJ!
243通常の名無しさんの3倍:2008/12/03(水) 21:45:26 ID:???
バカップルGJwww
シンと凸も少しずつ成長してるようでなによりだ。
244通常の名無しさんの3倍:2008/12/03(水) 23:36:29 ID:???
GX氏更新乙

感情をコントロールできない奴が多すぎるのが種キャラの欠点だったけど
シンは経験が生きてるなー
245通常の名無しさんの3倍:2008/12/04(木) 09:16:30 ID:???
更新乙だよ、ほいでGJ
ウィッツ達はひやかすな、確実に
246通常の名無しさんの3倍:2008/12/04(木) 18:29:06 ID:???
ガロード顔洗うな! 洗ったら初めてのチューが!!

というのは置いておいて、今後に期待
つうかもうすぐ宇宙か
247通常の名無しさんの3倍:2008/12/08(月) 17:17:15 ID:???
ほしゅ
248通常の名無しさんの3倍:2008/12/09(火) 01:21:46 ID:???
ら〜びにゅ〜う〜
249通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 23:33:55 ID:K8SbzKfp
ほしゅあげ
250通常の名無しさんの3倍:2008/12/12(金) 19:54:09 ID:mYWttUiy
キラ×エニルだなスパロボZだと
251通常の名無しさんの3倍:2008/12/14(日) 02:56:36 ID:zBBGjPMB
ほしゅ
252通常の名無しさんの3倍:2008/12/15(月) 01:15:37 ID:wik7JC/m
ほしゅ
253通常の名無しさんの3倍:2008/12/16(火) 22:06:50 ID:???
保守
254通常の名無しさんの3倍:2008/12/19(金) 22:54:00 ID:???
保守
255通常の名無しさんの3倍:2008/12/23(火) 00:54:30 ID:???
ガン
256通常の名無しさんの3倍:2008/12/23(火) 22:24:38 ID:???
タンク
257通常の名無しさんの3倍:2008/12/26(金) 23:22:22 ID:???
ガン
258通常の名無しさんの3倍:2008/12/27(土) 00:55:20 ID:???
キャノン
259GX1/144 ◆nru729E2n2 :2008/12/27(土) 17:12:11 ID:???
スイマセン、
どうも年内の更新ムリポ

昨日仕事納めと思ったら今朝4時に会社から電話・・・
勘弁してくれ・・・

ホントスイマセンが、ニュータイプ研究所編は2009年より
お届けいたします。話の方向性はもう終盤まで決まってますんで
ドンだけ雑談されようが変える気はないので、今までの話の中での
感想、今後の展開予想等存分に話してください。



※このスレは今は私のSSが主となってますが、雑談される分にはいっこうにかまいませんし、
 どなたがネタを投下してもかましませんので。
260通常の名無しさんの3倍:2008/12/29(月) 19:35:03 ID:???
おk、良いお年を
261通常の名無しさんの3倍:2008/12/30(火) 12:06:04 ID:???
保守
262通常の名無しさんの3倍:2009/01/02(金) 08:25:52 ID:???
あけまして保守
263通常の名無しさんの3倍:2009/01/06(火) 08:03:54 ID:???
保守
264通常の名無しさんの3倍:2009/01/08(木) 13:37:27 ID:???
保守
265GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/01/09(金) 18:30:32 ID:???
新年あけまして、おめでとうございます。
ンじゃ早速、今年一発目の”ネタ”と言う名の落とし玉!!

第九十話『世界は新たな時代を迎えるのよ』(前編)

 ティファの導きによって、戦前からニュータイプの研究を行っている”ニュータイプ研究所”へフリーデンが進路を向けて3日が過ぎた。
予定では明日、明後日にも研究所に到着することができるだろう。ここ数日は戦闘もなく、穏やかな日が続いている。
 そんな中、シンは久々にパイロットスーツを取り出し、ヘルメットを磨いていた。
「お前、今までよくスーツ無しで戦えてたな。」
カガリは彼の部屋に置いてあった椅子に腰掛け、アスランは壁に背を預けている。最近は定位置も決まり、いつもの光景となっていた。
「身につける間が惜しいってのもあるけどな。最近はなくてもわりと平気だった。ただ、今後ディスティニーをフルに使うには
やっぱり必要だろうし。」
ラスヴェートとの戦闘中に気を失っててしまったシンは、それを恥じていた。もし万が一、今後こんなことがあれば命がいくつ有っても足りない。
「確かに着るにこしたことは無い。それでも気絶する時は気絶するし、ケガをする時はケガをする。」
そういいながらアスランも肩をすくめた。現に、ジャミルは先の大戦の最後にヘルメットのガラスがわれ、右目を額から頬にかけて大きく切っている。
内側から保護フィルムが張ってあっても、あれだけの怪我をするのだ。
「戦場にいる以上、弾は等しく当たるさ。それが兵士だろうと、大将だろうと、一般市民だろうと…。」
「戦場か…。私達はいつまでこうして戦場をさまようんだろうな。」
 カガリはポツリと、そんな言葉を漏らした。
 北米大陸でフリーデンに乗り込んで既に半年、ハゲ鷹の名を冠する”バルチャー”の一員となった彼らにとって、戦闘は日常茶飯事のことだ。
だが、戦闘が多いからといってそれを好きになることは彼女にはできない。脳裏に焼きついたつらい記憶は、そう簡単にぬぐえるものでもなかった。
「俺だって、できれば戦いたくはない。だが、こんな所で死ぬつもりもない。」
アスランはそうはっきりと言い切る。カガリは彼に顔を向けた。
「死んだらそこで終わりだ。何か結果を残すためにも生きていなくては始まらない。」
「その点はアンタに賛成だ。」
 磨き終えてピカピカになったヘルメットを見ながらシンも口を開く。フェイスガードに写る自身の瞳を見つめながらさらに言葉を続ける。
「俺たちは生きている。生きているからこそ戦うんだ。…それにニュータイプ研究所でも戦闘になるだろうし。」
ヘルメットをベッドの脇に置くと、そう言ってこれからのことに話題を変えた。
ニュータイプ研究所。その施設が一体ニュータイプのどんなことを研究しているかはわからないが、ティファを誘拐する可能性も今の所否定できない。
逆にニュータイプが非人道的な状況に置かれていた場合はこちらが攻撃をかけることになるのだ。
「ジャミルさんにとって、ニュータイプを保護することが戦いなんだな。…かつての英雄が自ら招いた悲劇に対しての罪滅ぼしといった所か。」
「でもティファの話では、ニュータイプ研究所にニュータイプはいないって言ってなかったか?」
アスランの発言にカガリは先日のティファの言葉を思い出し疑問符を浮かべる。彼女はニュータイプ研究所の場所を皆に示した時に
『私と同じ力をもった人はいない』と言っていた。無論本当にニュータイプがいない可能性もあるし、覚醒していないだけかもしれない。
こればかりは実際に行ってみないとなんともいえないところであった。
「んで、肝心のうちのニュータイプは?」
「今は行っても会えないって。なんたって、ダーリンとイチャついてる最中だよ。」
シンの問いにカガリはそう肩をすくめたのだった。
266GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/01/09(金) 18:33:12 ID:???
第九十話『世界は新たな時代を迎えるのよ』(中編)

「そうですか。被験体は全てカテゴリーFでしたか。」
「そういうこと。これでうちの被験体は0に戻ったわ…。」
 所長室でカロンは報告書の挟まれたバインダーを机の上に投げ出した。
ニュータイプ研究所のカロン・ラットはかけていたメガネを外し、静かにレンズを磨く。これは彼女の機嫌が
あまりよくない時にする癖だった。
 1時間前、以前この研究所の”被験体”だったシャギア・フロスト大佐がもたらした情報は、彼女にとっては
不愉快な現実だった。被験体4人はみな死亡、さらにフラッシュシステム対応MSラスヴェートはbitを含め全て大破。
失ったものは少なくない。
「結局、彼らはニュータイプとしての因子を持っていなかったということですな。」
「因子、ね。確かに多くのニュータイプを確保してデータを取れば、その因子とやらもわかるのでしょうね。」
「人の能力は全て遺伝子によって決まっていますから。」
彼女の前に立つ男、ギルバート・デュランダルは持論を展開した。
 普段なら彼は新連邦政府代表のブラッドマンの元にいるのだが、この研究所のことを知り、遠路はるばる
訪れている。背中の中ほどまである髪をなびかせながら歩く彼の姿には見る人をひきつけるまぶしさがあった。
「それでデュランダル博士。」
「カロン所長、私のことはギルで結構ですよ。私の名前はそういったほうが短くて済みますし。」
「…ではギル博士、あなたはニュータイプについて、どのような意見をお持ちで?」
「ニュータイプとは、人間が生まれてから死ぬまで本来ならば使わないはずの能力を使う”突然変異”と
いった所でしょうか。」
「代わり映えのしない意見ね。」
「たしかに。私もそう思います。ですが、これは事実ですから。」
デュランダルはそう自嘲気味に答える。ニュータイプの能力を研究しているといっても、実際はほとんどが未知の分野だ。
「わたしはね、ニュータイプを”戦争が生み出した新たな人類”だと考えているわ。」
「新たな人類、ですか…。」
「そう。全ての人類がニュータイプになった時、世界は新たな時代を迎えるのよ。」

この人は、ニュータイプに対して大きな妄想を描いている
いずれはそれに飲み込まれるだろうな…

デュランダルはニュータイプに対して熱く語る彼女を見ながら、内心ため息をついたのだった。
267GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/01/09(金) 18:35:56 ID:???
第九十話『世界は新たな時代を迎えるのよ』(後編)

「よし、これで手持ち式のライフルは不要になる。」
部屋の電気もつけないまま、キラはモニターに向かっていた。作業を始めてから既に8時間、
一度の休憩を挟まないまま、未だに作業は続いている。
「カリドゥスは動力と直接リンクさせて…。」
モニター上には彼の愛機であったストライクフリーダムの設計図が表示されており、彼は少しずつ
それを書き換えていく。カリドゥス、ビームシールド、2丁のライフルなど、既に変更項目は
20項目以上に及んでいた。
 そもそも、彼が愛機から離れたことには大きな理由があった。
 彼自身、今の戦い方ではこれからの戦いの中で生き残ることができないことを痛感していた。
彼の中でたてた”不殺”の誓いは所詮妄想でしかないことにも気づいた。
 戦えば人は傷つく。そんな当たり前のことから目をそむけていた。
「戦えば人は傷つく。それによってその人の人生に大きな傷を残すことになる。」
戦闘で負傷し、使い物にならなくなった人間は、その先どうやって生きていけば良いのだろうか。
手を失い、足を失い、また四肢はあっても視力を失い、五体ありながら神経を傷つけられて
全身麻痺になった人間は、どうやって生きるべきなのか。
キラが悩みぬいた末に、至った結論は”完殺”であった。
 そのために、彼は1から機体を見直した。足りないものを補い、弱すぎるものは強いものと取替え、
また自ら命を絶つ感触を覚えるために双剣を持った。
 一度距離を置いたのは更なる変更点を見つけるため、そして自らの技術をさらに向上させるためである。
「”ジャッジメントフリーダム”、これで僕は、世界の英雄になる…!」
“審判”に必要な新たな機体を少しずつ形作りながら、彼はなぜか悲しげな表情を浮かべたのだった。


「フゥ……。」
レジェンドの整備を終らせたレイはインスタントのコーヒーを口に含んで大きく息を吐いた。
口に残る妙な酸味を感じつつ、誰もいなくなった格納庫を見渡した。
 照明は既に落とされ、彼のいる休憩スペースのみが明るく光を受ける中、レジェンドと
ストライクフリーダムの2機が互いに向かい合った状態で立っている。何も知らない人が見たら腰を抜かすようない物々しい空気が格納庫を支配していた。
「やはり、お前もやつが嫌いか。」
返答が帰ってくるはずのない愛機にレイは言葉を投げる。彼には、レジェンドがフリーダムを心の底から嫌悪しているように感じられたのだ。
「…正直、俺もやつが嫌いだ。やつはラウを殺した。」
 ラウ・ル・クルーゼ、”あちら側”で世界を滅ぼそうとした”彼”であって”彼”ではない存在。その彼にトドメをさしたのがキラ・ヤマトだった。
「ギルが手を出すなといっていなければ、俺は既にやつを殺しているな…!」
 頭に一発、心臓に二発。それだけ打ち込めばいかにコーディネィターといえど死ぬだろう。しかしそれで彼は満足することができるだろうか。
彼自身確証を持てずにいる。
 彼はまだ気づいていないが、彼がキラ・ヤマトを殺しても殺したりないのにはまた別の理由があった。

彼は、ポーカーで言う所の”ジョーカー”だ
戦場でどんな役もこなすことができる存在。君やシン、アスランが”キング”、”クイーン”、”ジャック”であるならば、キラ・ヤマトは
”ジョーカー”の立ち位置がふさわしい。

デュランダルは以前、キラ・ヤマトのことをそう表現した。
レイには、その時のデュランダルの言葉が嫌に木霊して聞こえたのだった。
268通常の名無しさんの3倍:2009/01/09(金) 22:29:21 ID:???
GX氏、あけおめ更新乙

キラさんはあっちからこっちと極端に流れるねー
ギルはチェスの次はポーカーですか
269通常の名無しさんの3倍:2009/01/11(日) 16:48:15 ID:???
エースがいない…だと…っ?
これが何かの伏線になるのかなぁと思いつつ
このアスランはもしかして裏切らない綺麗なアスランなのかと不審がりつつ
そういやラクシズはどうしたんだろうなぁと首を傾げ
あけおめGJ
270通常の名無しさんの3倍:2009/01/11(日) 17:14:45 ID:???
なんか議長って研究員姿が様になるなぁw
271通常の名無しさんの3倍:2009/01/12(月) 22:09:35 ID:???
あけおめGJ〜
大きな妄想に飲まれてるのは議長も一緒だろうなぁ。遺伝子という名の。
遺伝子もNTも糞くらえって言いそうなガロードはエースとなるかな?
272通常の名無しさんの3倍:2009/01/12(月) 22:20:15 ID:???
種死的エース→ラクス
X的エース→ティファ

ハートだけどな
ハートのエースが出てこな〜い〜
273通常の名無しさんの3倍:2009/01/12(月) 22:44:22 ID:???
つーか遺伝子ってなんだ?じゃないか
274通常の名無しさんの3倍:2009/01/13(火) 10:59:09 ID:???
>種死的エース
ラクスは、テーブルをひっくり返すDQNだろ?
275通常の名無しさんの3倍:2009/01/13(火) 16:29:28 ID:???
エースはカガリたんだろ?
276通常の名無しさんの3倍:2009/01/14(水) 16:08:03 ID:???
バカ クイーン(ティファ)の力を借りて
エース(ガロード)がキングになるんだって

ッテこれはブレイドか
277通常の名無しさんの3倍:2009/01/14(水) 18:19:17 ID:???
ガンダムでトランプになぞらえるというと、
デスティニーアストレイのイレギュラーを思い出すな。
あっちだと、凡人であるジェスがジョーカー扱いだったが。
278通常の名無しさんの3倍:2009/01/14(水) 21:09:07 ID:???
>>276
つまり最後にはジョーカーになるんだなw
279通常の名無しさんの3倍:2009/01/14(水) 21:14:52 ID:???
現時点で議長にとってガロードは眼中にないだろうしな。
そういう意味では完全にイレギュラー的存在だろうね。
280通常の名無しさんの3倍:2009/01/16(金) 08:57:45 ID:???
保守
281通常の名無しさんの3倍:2009/01/18(日) 18:07:06 ID:???
ダブルエックスについてはいくつか功績(エスタルド編での基地破壊等々)があるから
目がいくかもしれんが、パイロットまで見てるとは思えません。

つうか、そもそも今ン所議長はブラッドマンとかを完全に見下してね?
282通常の名無しさんの3倍:2009/01/20(火) 17:24:36 ID:aJuwArRR
そもそも変態兄弟からも見下されてるし、新連邦政府関係者からもいい加減隠居しろと言われてそうだが
最も議長じゃ絶対できない新連邦再建をしたのがブラッドマン卿なわけだしね・・・
283通常の名無しさんの3倍:2009/01/22(木) 18:44:10 ID:???
保守
284通常の名無しさんの3倍:2009/01/23(金) 12:36:32 ID:???
保守
285通常の名無しさんの3倍:2009/01/25(日) 06:47:28 ID:???
保守
286GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/01/25(日) 18:33:52 ID:???
さてさて、コツコツと続き行きましょう
第九十一話『みんながみんな特別な存在なんじゃないか?』(前編)

 ニュータイプ研究所は、普段よりもかなりあわただしい空気に包まれていた。
3日前にシャギア・フロストからもたらされた”フリーデン来訪”の情報、そして彼らの確保に成功すれば被験体が手に入り、
研究がすすむようになるのだ。
 普段のようにのんびりと仕事をこなす研究員は1人もいない。
「まったく、今日はなんて忙しいんだ。」
「仕方ないですよ。今日はフリーデンの到着予定日なんですから。」
白髪の研究員とメガネをかけた恰幅の良い研究員が資料の詰まったダンボールを両手で抱えながら口を開く。今までの
研究データをファイルとディスクにまとめたのは良いが、かなりの量があった。
「もっとも、我々にはもう関係のないものになりますけどね。」
「ヘンリー。」
「わかってますよ、ニコラ様。」
ニコラと呼ばれた白髪の研究員の叱責にヘンリーは悪戯っぽく舌を出した。年齢は既に30代後半だが、こういうしぐさを
見ているととてもそうは見えない。
「我々の計画は”深く”、”静かに”進行中ですよ。」
「…当然だ。バーベナ作戦がもし上の連中にばれて新連邦にまで話が上がったら、我々は宇宙に戻ることはできんのだぞ!」
「魂になって戻るのは、私もゴメンですよ。」
ダンボールを所定の場所において次のものを取りに行きながらヘンリーは肩をすくめた。
ニコラは真剣な表情でその横を歩く。
「誰一人欠けることなく、我々は故国に帰るんだ。」
彼の仲間は既に次の準備に取り掛かっている。”バーベナ作戦”、それは遠い国の使者が故国に帰るための作戦の名だった。


「ニュータイプ研究所のものと思われるヘリが、こちらに近づいてきます。」
「着たか…。」
カロン所長から連絡があったとおり、きっかり5分でお迎えはフリーデンに到着した。格納庫に向かうために席を立ったジャミルは、
サラに声をかけた。
「サラ。」
「はい、キャプテン。」
「…頼んだぞ。」
「了解しました。」
 そう言ってジャミルはブリッジを後にする。残されたのはサラとトニヤとシンゴの3人だけだ。
「さてさて、どうなることやら。」
「あのおばさん絶対なんか企んでるわよ。女の勘がそう言ってる。」
それ当てになるのか? とシンゴがトニヤに変なものを見るような目で彼女を見る一方、
サラは各ガンダムパイロットに格納庫で待機するよう指示を出した。
 現状、何事もなくジャミルがこのブリッジに戻ってくる保障はどこにもない。ならば、
今やるべきことは”最悪”の場合を想定して”最善”を尽くすことだ。
 彼女はさらに周辺の地図をモニターに出して敵が潜伏していそうな所を探す。
「なになに〜? サラってば、キャプテンに声をかけてもらってやる気upってやつ?」
「え!? いや、その、そういうわけじゃ……。」
トニヤの発言に、サラは声を思わず声を裏返らせた。実際には当たり半分、はずれ半分といった所だが、一度隙を見せてしまってからでは
もう遅い。トニヤはさらに彼女を追及した。
287GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/01/25(日) 18:38:15 ID:???
第九十一話『みんながみんな特別な存在なんじゃないか?』(中編)

「だってさぁ、今までキャプテンがあんなふうに”頼んだぞ”って言ったことなかったじゃん? やっぱりなんか、進展とか
しちゃってたりしてるわけ?」
「そんなんじゃなくて!  私は以前のような失敗したくなくて、今最善を尽くしてるのよ。」
にじり寄ってくるトニヤから体を離しながら、サラははずれ半分の方の理由を口にした。
 ガロードがフリーデンのクルーになって間もない頃、彼女の判断ミスで艦を沈めかねない状態になったことがあった。
その時はどうにか周りのフォローのおかげで難を逃れたが、そんなラッキーは何度もあるはずがない。
「大丈夫よぉ、困った時はシンゴが何とかしてくれるから。」
「おう! 牢屋の看守から艦の操舵まで!! って、俺にもできることとできないことはあるって。」
「まぁ、あたしも彼も全部フォローしきれるわけじゃないけどさ。できるだけのことはやったげるから、あんまり自分を追い込まないでね。」
「…そうね、ありがと。」
トニヤの気持ちにサラは素直に感謝した。


 各機体のコックピットでの待機指示が出て30分、シンはずっと物思いにふけっていた。
「ニュータイプ研究所、か。」
今ジャミルがいるニュータイプ研究所、それは文字通りニュータイプを研究する施設だ。ニュータイプが新たな人類の姿として
崇められるようになってすでに幾年、この研究所は研究を続けている。
「最初のニュータイプはどんなやつだったんだろ…?」
“人類の新たな姿”として崇められるほどの存在である。とてつもない人物でなければ、そう呼ばれることはなかっただろう。
だがシンには、その姿が最初のコーディネイターであるジョージ・グレンと重なって見えた。
 彼は輝かしい功績と世界に変革を促した良い意味でも悪い意味でも歴史に名を残した人物だ。彼がいなければ今のシンや
アスランの姿はない。しかし、その一方で彼は世界に混乱と戦禍を広げたこともまた事実である。
「特殊な存在ってのは、いろいろな所に影響を及ぼすわけか…。」
“特別な存在”である人物はそう思っていなくても、彼らの周りにいる人間がいろいろな感情を抱く。それは憧れや尊敬で
ある場合もあるが、妬みや恨みといった場合もある。
その考えに至った時、シンはふと別の視点を見つけた。
「人が10人いたら、その10人全てが同じ人間のはずがない。」
10人の人間がいれば、1人1人が人とは違った一面を持っている。
 ガロードのように打たれ強い人間、ウイッツのように家族を大事にする人間、ロアビィのように自分のポリシーを通す人間、
ジャミルのように自ら贖罪を全うする人間、レイのように”誰か”のために命をかける人間、アスランのように”自身の正義”のために
悩みながら道を模索する人間、カガリのように顧みるものの少ない”国”のために身を投げる人間、サラのように慕う人の下で懸命に
尽くす人間、トニヤのようになんだかんだ言って周りの心配をしている人間、シンのように打たれ強くないくせに血をにじませながらも前にすすむ人間。
「”特別な力”なんてなくたって、みんながみんな特別な存在なんじゃないか?」
そう考えがまとまったその時、上空からの攻撃でフリーデンの艦体が揺れた。

『新連邦軍のものと思われるMS部隊が接近!! ガンダム各機、発進願います!!』
『ダブルエックス、出るぜ!』
『エアマスター、発進する!』
『レオパルド、いきますよ!』
『アスラン・ザラ、ジャスティス発進する!』
「シン・アスカ! ディスティニー行きます!!」
敵の接近に5機のガンダムが各々発進する。敵の数は全部で60機、1人につき12機のノルマだ。
288GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/01/25(日) 18:40:53 ID:???
第九十一話『みんながみんな特別な存在なんじゃないか?』(後編)

「にしても、久々に着ると窮屈だな、これ…!」
 そう言いながらシンはパイロットスーツに覆われた肩やひじをなでる。待機していた時からパイロットスーツを着ていたが、
ヘルメットをかぶって本格的に着込んでみると、以前に比べてスーツが小さく感じられる。体を締め付けて血液の流れを
コントロールする目的があることは承知しているが、以前はここまで窮屈ではなかった。
「動きに支障が出るほどではないけど、なんか落ち着かない!! 」
久々に着用したためか、以前に比べてシンの体が大きくなっているかはわからない。だがそんなことを考えている
余裕を与えてくれるほど敵もやさしくはない。シンは余計なことは全部頭の隅にどけて最初の1機に狙いを定めた。


「レイ少尉、ここの指揮は君に任せる。」
『大佐?』
「我々は、先にニュータイプ研究所の方に向かう。」
『…了解しました。御武運を。』
目の前のフリーデンに背を向け、ヴァサーゴとアシュタロンがニュータイプ研究所へ向かうのをレイは横目で見送った。
「ギルの話では、彼らはあの研究所の元被験体という話だが…。」
こまめに連絡を取っているデュランダルからの情報では、彼らは元々ニュータイプ研究所で被験体として研究所で生活をしていたらしい。
その後、カテゴリーF(フェイク)と断定され、連邦政府に引き取られている。
「あの人たちは、自分たちを育ててくれた恩人を撃つというのか? 」
レイには信じられないことだった。
レイ・ザ・バレルはクローン体であり、”オリジナルの彼”は別に存在する。だが、そんな彼に名前をつけ、ここまで育ててくれた人物がいた。
 ギルバート・デュランダル。彼が忠誠を誓う唯一の存在だ。
「俺は俺を育ててくれたギルに銃を向けることはできない。彼らはそれをするというのか?」
彼らにとって、あの研究所がどんな場所なのかはわからない。とはいっても、良い思い出も悪い思い出もあるはずだ。”敵”と割り切って
吹き飛ばすのは並大抵のことではない。
「一体、何がそんなに彼らを駆り立てるんだ?」
カテゴリーFと呼ばれる彼らの気持ちはレイにはわからない。
わかることは、たとえ”偽者”であっても、レイと同じように彼らの”存在”や”力”が一度は認められたということだけであった。
289通常の名無しさんの3倍:2009/01/26(月) 00:03:45 ID:???
GX氏乙

嵐の前のひとときだなー
にしてもシンさん悟りすぎ
290通常の名無しさんの3倍:2009/01/26(月) 02:18:59 ID:???
シンさんも色々あったからなぁ
これがレイ説得フラグであることを信じている
だけどその前にパイロットスーツキツイがイヤなフラグっぽいな…
291通常の名無しさんの3倍:2009/01/29(木) 10:20:09 ID:???
ほしゅ
292通常の名無しさんの3倍:2009/02/01(日) 00:57:56 ID:???
保守
293通常の名無しさんの3倍:2009/02/03(火) 21:16:26 ID:???
保守
294通常の名無しさんの3倍:2009/02/04(水) 21:39:26 ID:???
不屈をかけて浮上
295GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/02/04(水) 22:12:44 ID:???
第九十二話『真のニュータイプではない』(前編)

 彼らが初めて自分達の力を自覚したのは7歳の時だった。
チェスをやっている最中に、互いに次の手がわかってしまうのだ。定石云々を抜きにしても、あまりにも相手の考えがわかりすぎていた。

「馬鹿なマネはおよしなさい!!」
『馬鹿なマネ…。そうかもしれないね、兄さん。』
カロンがいるビルの最上階、彼らはその外側にいた。それぞれ紅と紫の不気味な鎧に身をつつみ、かつて自分達を切り捨てた憎むべき
存在を目の前にし、どす黒い感情がこみ上げてくるのをシャギアとオルバは確かに感じていた。


 戦後の混乱の中、大戦前に作られた地下施設の中でニュータイプ研究所は民間主導のもと再出発をはたした。研究機材や設備に
莫大な資金が使われる一方で、研究にもっとも必要な”研究素材”を集めることは困難を極めた。人員もなく、ニュータイプの
所在についても情報は無かった。
 だが、研究所を運営する”会社”側からすればなんとしてでも研究を進展させねばならない。そのために、彼らはあらゆる手を使った。
孤児院から孤児を受け入れ、病院から身寄りのない老若男女を引き取り、さらには何かしらの”力”を持った人物がいると言う
情報を手に入れた時は、本人に交渉して協力してもらうか、誘拐して強制的に協力させた。
 そういった幾人もの被験体の中に、彼らはいた。彼らの力は目立っていた。当然の結果だ。どれだけ多くの人間を集めた所で、特殊な力を
持った人間はそうそういるはずがない。だからこそ、その特殊な力を持っていた彼らは目立っていた。


『我々には力があった。』
『そう、普通の人間にはない力が。』
2人は嬉々として話を続ける。今までに飲んだ苦汁、経験した差別、味わった全てのつらい記憶が脳裏をよぎる。その原点に対して”罰”を
与えることができるのだ。
 彼らにとって、”至福の瞬間”と言っても過言ではない。


 フラッシュシステムとのリンク実験まで残ったのは、彼らだけだった。
ほかの何十人という被験体は”オールドタイプ”、”カテゴリーF”にそれぞれ分けられた。“オールドタイプ”は文字通り何の力もない
ただの人間。”カテゴリーF”は力はあるものの、フラッシュシステムに対応しない”不適格者”だ。
「ぼく達、ニュータイプなんだね。兄さん。」
「ああ、ぼく達は特別な存在なんだ。」
 子供だった彼らは、周りから向けられる神仏を見るような眼差しに”自分達は他の人間とは違う”と思っていた。”ニュータイプ”が
戦前の世界で”新たな人類の姿”としてあがめられていたことは、研究者達から耳に胼胝ができるほど聞かされている。
『それじゃ2人とも、最後のテストを始めるぞ。』
「わかりました。」
「よろしくお願いします。」
年齢のわりに早熟な彼らを見ながら研究者達は実験を開始した。
296GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/02/04(水) 22:15:53 ID:???
第九十二話『真のニュータイプではない』(中編)

『だが、貴様ら科学者は我々を認めなかった。”フラッシュシステムに対応しない”という、ただ”それだけ”の理由で!』
崩壊した戦後の世界のなかで、それまでの研究データはほとんど失われていた。本来”不適格者”としてかなり初期のテストで
はじかれるはずだった彼らが、最終試験まで残った原因はそれだったのかもしれない。だが、今更そんなことを話しても
どうなることでもなかった。
 目の前で”処刑宣告”をされていることに変わりはない。
「ハァ―――ッ!!  ハァ―――ッ!!  ハァ―――ッ!!」
あまりの出来事にカロンは目を見開いて浅く短いテンポで呼吸を繰り返す。恐怖のあまり体を動かすこともできず、ただただ
目の前にいる腹に黒いマグマを抱えた二人の姿にくぎづけになった。
『だから我々は決めたのだよ。』
『―――次の時代を、ぼく達のものにすると!』
ヴァサーゴの腹部が横に大きく割れ、中からヴァサーゴの武装の中でもっとも強力な”メガソニック砲”が姿を現す。
姿勢を制御するために広げられた黒く大きな翼、さらに長くのびた腕の先には無骨でギラギラと光る爪。この姿を
見て、誰もが同じ言葉を思い浮かべるだろう。
“悪魔”という言葉を。
『力を認められぬ者の怒り!!』
『その身をもって味わえ!!』
大きく開かれた悪魔の口から放たれた赤い光は、すぐにカロンを飲み込み彼女の姿を消し去ったのだった。


「でやァァァァッ!」
クラウ・ソラスがバリエントを一閃する。爆炎を残して消える敵を無視し、シンは次の敵を探した。
そのディスティニーの後で2機のバリエントが一発のビームに胴体を撃ち抜かれて爆発する。
ディスティニーの背後に迫ったバリエントを破壊したダブルエックスは、間髪入れずディスティニーに背中を合わせた。
『後方不注意、ってな!』
「サンキュ、助かった。」
互いにスピーカー越しで会話をする。シンもガロードも、これだけ敵が多いと通信をつないで顔を見る時間がない。
「くそ、ジャミルさんまだ戻ってこないのかよ!?」
『! あれは!?』
ダブルエックスの視線の先には煙が立ち昇っていた。今フリーデンが戦闘しているところからは遠くはなれており、
この場で起こっている戦闘とは別の戦いが行われていることは間違いない。
その時、ガロードは戦場を突っ切ってフリーデンへ向かう一台のヘリコプターを見つけた。
『ガロード!!』
『やっぱりジャミルか! フリーデンまで護衛するぜ!!』
「行けガロード! こっちは任せろ!!」
シンはそう言うと、先日初めて使用したスパイラル・ブーストに引き続き、”SINシステム”の”N”を発動させる。
エネルギーが集まるのは左手に埋め込まれた”ソリュゴス・ブルゴール”。新たな名前は
”Nautilus Wall(ノーチラス・ウォール)”、”未知なる壁”だ。
「こいつには、こういう使い方もできるんだ!」
展開されたその盾の大きさは、縦幅約30m、横幅約60mにも及ぶ。展開できる限界のサイズでシンは”未知なる壁”を広げた。
「薙ぎ払えぇッ!!」
ディスティニーはそれを展開面が縦になるように構え、右から左へ大きく振る。テニスのバックハンドのように
ディスティニーは軽々とそれを振るったが、サイズがラケットとは違いすぎる。1機になった敵を追い詰めようと突撃してきた
3機のバリエントは、はじかれたピンポン球のように錐揉みしながら地表へと落下していった。
「低出力広範囲防御から、高出力一点防御まで何でもってか。ッたく、とんでもないもの作るな。」
展開していたビームを収めると、キッドの奇抜な改造に感心しつつエネルギーゲージに目を向ける。このノーチラス・ウォールは
297GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/02/04(水) 22:17:37 ID:???
第九十二話『真のニュータイプではない』(後編)

シールドのサイズと防御力をある程度制御できるが、エネルギー消費量もけして少なくない。元々ソリュゴス・ブルゴール
そのものがエネルギーを食う武装だったことを考えると、今まで通り避けることを前提に戦うのが無難だろう。
「エネルギーは残り67%、まだやれる!!」
大剣を構えなおすと、ディスティニーは次の敵に的を絞った。


「ティファ・アディールの部屋はこの階の真ん中…!」
ニコラはジャミルをフリーデンに返すと、戦闘であわただしく動きまわるクルーの目に付かないように慎重にティファの
部屋を目指していた。彼らの”船”が出発するまであと1時間半。時間に余裕はない。
「すまないヘンリー、お前の思いに必ず報いて見せる!!」
さっきまでニュータイプ研究所で行動を共にしていたヘンリーは死んだ。かつて被験体であったシャギア・フロストと
オルバ・フロスト、彼らは研究所を離れてからずっと復讐をするチャンスを狙っていたのだ。ニコラは彼らのことを
カロンからたびたび”カテゴリーF”の代表として話をしてくれた。
だが“力を認められなかった恨み”の名の下に研究所は徹底的に破壊された。その中で彼は死んだ。それでもニコラは
進むしかなかった。賽はすでに投げられた。もう後戻りはできない。
正直な所、ニコラにはフロスト兄弟の考えが理解できなかった。彼らは自分達の世界に閉じこもってしまっている。
”認められなかった”原因をまわりにあると決め、それに対して抗議をしているのだ。しかも、やり方も限度もあったものではない。
「まったく、なんと器量の小さい。やはり、どんな力を持ったものでも、宇宙に上がらなければ真のニュータイプではない!」
だからこそ、彼女は宇宙へ上がるべきなのだ。ニコラはそう確信する。荒れ果てた秩序の無い世界では彼女の力を
正しく使うことはできない。できるはずが無いのだ。
「君の力は世界を変える力だ! だから君は宇宙に上がって、本当のニュータイプになるべきなんだ!!」
扉を勢いよく開く。部屋の中には1人の少女がベッドの上に座っていた。ひざ下まで届く長い髪、白い肌に美しい双眸。
写真で何度も見た”地上にいる唯一のニュータイプ”が確かにそこにいた。
「ジャミル・ニートは確かに返した。代わりに、貴方に私達と来てもらう!!」
そういいながら怯えるティファに詰め寄ると、彼は強引に彼女の腕を取ったのだった。
298通常の名無しさんの3倍:2009/02/05(木) 00:54:36 ID:???
GJ。ティイイイファアアアアアア!!!!と叫びたくなる引きですな。しかし、デスティニーがどんどんとんでもなくなるな。チート過ぎないか?
それともX勢がとんでも過ぎるのか?そこまで弄らないとシンの出番なくなるのか
299通常の名無しさんの3倍:2009/02/05(木) 20:23:04 ID:???
GX氏更新乙
シンがどっちにいくのかによって話が大きく変わるな
300通常の名無しさんの3倍:2009/02/07(土) 22:32:03 ID:???
GJ!
個人的にはほとんど語られてなかった地上サイドの話が見たいな。
宇宙は宇宙で面白そうだけど。
そういやガロードが亡命(一応)できたのって新連邦製のDXがあったからだっけ?
301通常の名無しさんの3倍:2009/02/07(土) 23:09:14 ID:???
GJ
まあ、宇宙に上がるならこれくらいの兵器が欲しい所ではあるね
というか凸がどっちに転ぶかいまだに不安で仕方ない訳だけど
覚悟を決めたキラさんとか姿を見せないラクシズとかのことを考えると
これでもなかなか大変そうではある
302通常の名無しさんの3倍:2009/02/08(日) 13:12:48 ID:???
こういうことを書くとあれかもしれんが、

ミネルバ一行マダー?
303通常の名無しさんの3倍:2009/02/14(土) 09:14:24 ID:???
hosyu
304通常の名無しさんの3倍:2009/02/15(日) 18:09:34 ID:???
保守。
305通常の名無しさんの3倍:2009/02/17(火) 17:09:15 ID:???
それにしてもGX氏以外の人達はもう戻って来ないんだろうな。保守。
306通常の名無しさんの3倍:2009/02/21(土) 00:23:27 ID:???
壊れ易い願いだけ 何故こんなにあるんだろ
夜明けに吹く風の色 街を優しく変える
307通常の名無しさんの3倍:2009/02/21(土) 23:01:37 ID:???
いつだって 本当は 探し続けていた
真直ぐに 見つめること 怖がっていた
308通常の名無しさんの3倍:2009/02/22(日) 18:46:55 ID:???
貴方がいるから 歩き出せる明日へ
309通常の名無しさんの3倍:2009/02/23(月) 23:38:19 ID:???
どんな時も恐れないで
同じ夢がある その輝きの中へ
310通常の名無しさんの3倍:2009/02/24(火) 18:57:37 ID:???
少しづつ近付いている
二度と迷わないで♪
311GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/02/25(水) 18:23:31 ID:???
歌が終わったドンピシャのタイミングで投下
ちなみにねらってませんよ?

第九十三話『四の五の言ってられる状況じゃない、か』(前編)

 フリーデンのMSハッチ付近で迎撃に当たっていたアスランは、不意に飛び出していったヘリに違和感を覚えた。先ほどジャミルが
ニュータイプ研究所から戦場を突っ切って戻ってきたが、ジャミルの話によればニュータイプ研究所は戦場と化しているはずだ。
今そこに戻った所で、なんになるというのだろうか。
「ブリッジ! 今ハッチからヘリが出て行ったが、許可は出したのか!?」
『ヘリが? いえ、こちらからはそんな指示は…』
ブリッジからの返答にアスランはさらに疑念を強くする。研究所の人間がジャミルを連れて戻ってきた。そしてそのすぐ後に
ヘリが再び飛び立っていった。しかも戦場の真ん中を突っ切って。安全に研究所に戻ることを考えるならば、戦闘が
終わってから出発する方が確実だ。何が何でも早く戻る必要があったのか、それとも早く脱出したかったのか。
 後者の場合、なんのために。彼が結論を出したのと、サラからの緊急連絡が入ったのはほぼ同時だった。
『みんな、ティファがさらわれたわ!!』
『なんだって!? じゃあさっきのヘリにティファが!!?』
 それを聞いたガロードは顔を青くした。彼は昨夜、彼女からある”不吉な予言”を聞かされていたのだ。

もう…、会えない気がして……

 ガロードだけでなく、ジャミルも他のフリーデンのクルーとも会えなくなると言っていた。ティファがこのことを話す時、
大粒の涙を流していたことは忘れることのできない光景だった。
「―――ティファァァァァァッ!!!!」
ガロードは思わず叫んだ。叫ばずにいられなかった。
今まで何度も彼女と離れ離れになったが、そのたびに彼女の元へ彼は舞い戻って着たのだ。この間のラスヴェート襲撃後、
彼らの距離は今まで以上に近くなっている。こんな所で、引き裂かれてたまるか。ティファは絶対に渡さない。
彼女を思う気持ちが、ガロードを動かした。
 ダブルエックスはヘリが飛び去った方向へ全速力で飛び出していく。迫る敵もフリーデンの護衛も放り出し、
連れ去られた愛しき少女の元へ急いだ。
「ガロード!!」
 シンはダブルエックスの背後に迫るバリエントを撃墜しながら叫んだ。今のガロードには周りがまったく見えていない。
彼の頭の中を締めているのは愛する少女のことだけだ。
「ジャミルさん! 俺ガロードを追います!」
『わかった、行け!』
ジャミルからの指示にシンはすぐに機体を加速させ、ガロードを追った。
312GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/02/25(水) 18:26:44 ID:???
第九十三話『四の五の言ってられる状況じゃない、か』(中編)

ヘリは目的地へ向けて岩壁の間を抜けながら進んでいる。操縦桿を操るニコラは先ほどから何度も腕時計に目をやっていた。
その表情に焦りが見える。
その横でティファは彼に刺すような眼差しを向けていた。
視線に気づいたのか、ニコラは頭をかきながら落ち着いた口調で話し始めた。
「君を無理やり連れてきたことは悪かったと思っている。」
「………。」
「だが君は、あそこにいるべき人間ではないんだ。」
「………。」
「君がいるべき場所へ、私は君を連れてく。」
「………どこへ、連れて行く気ですか?」
ティファが返した言葉に、ニコラは彼女に顔を向けて真剣な眼差しで言葉を返した。
「『宇宙』へ、だ。」


『ティファ…!!』
ヘリの追跡を始めて20分、ガロードの口から彼女の名前が出たのは既に数十回を超えていた。ヘリが向かった方向へ機体を
進めているが、未だその姿を発見できていない。ただただ時間ばかりが過ぎる現状に、彼は焦っていた。
「この周辺には旧連邦の軍事施設跡地がいくつかあるな…。ガロード、地図を転送するから、その印のついているところを
手分けしてさがそう。2人で同じ所を探しても無駄なだけだ。」
『あ、ああ。わかった。あ、シン!』
機体の進行方向を変えようとしたシンをガロードは呼び止めた。焦りと混乱のためか、声に力がない。
「どうした? 何か見つけたか?」
『いや、ティファの乗ってるヘリを見つけたらすぐに確保してくれ。俺の到着をまとうなんて考えるな。』
「で、でも彼女を助けるのはやっぱり」
『ティファが助かればそれで良い! 誰が助けたって助かったことに変わりはない…!』
「…四の五の言ってられる状況じゃない、か。わかった。」
 通信を切ってガロードと分かれると、シンは自分の担当する分で回る順番をざっと考えた。割り当てられた軍事施設跡地は
3箇所、全て航空機の離着陸用の滑走路がある。さらに、一箇所は『宇宙』へ上がるためのシャトル打ち上げ設備も整っている。
「宇宙へ上がることはないと思うけど…。万が一があるかもしれないからな。」
そういって、シンはその軍事施設跡地”プトレマイオス”へ進路を向けた。


「彼女に宇宙服を着せてやってくれ!」
目的地に着いたニコラは、女性スタッフにティファを預けると、すぐに自分の宇宙服に袖を通し始めた。これから彼らが向かう先は
地表から遠く離れた真空の中の暗黒の空。人類を生み育てた地球を外から見ることのできる世界だ。万全の準備をしておかなければ命に関わる。
「ソフィア、作業の進捗状況は?」
「シャトル発射は現在第23シークエンスまで完了します。」
「残り17シークエンスか…。」
 フリーデンからの追撃部隊の姿は確認していないが、悠長なことは言ってられない。ニコラは険しい表情を浮かべた。
 一方、ソフィアと呼ばれた女性はティファに宇宙服を差し出す。だが彼女はそれを着ようとはしない。予想していた反応に彼女は肩をすくめた。
「…まぁ、無理に連れて行かれようとしているんだから、仕方ないわよね。でも心配しないで、コロニーはあなたを歓迎するわ。」
「わたしはあなた達といっしょに行きません…!」
「私の知り合いは、旧連邦のやつらに幼い子供をひどい目に合わされたわ。新連邦だって同じ、彼らはあなたに一体何をしでかすか。」
「私には、”私のいるべき場所が”あります!」
313GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/02/25(水) 18:28:23 ID:???
第九十三話『四の五の言ってられる状況じゃない、か』(後編)

プシュッ!

 ソフィアに敵意のまなざしを向けるティファの首元に突然痛みが走る。目の前にいたソフィアの表情に驚きがうかぶ。
朦朧とする意識の中で振り返ると、簡易式の注射を持ったニコラが立っていた。
「ニコラ! 」
「時間がない、すぐシャトルに乗り込むぞ!! 」
「この子になんてことをするの!?」
「今は宇宙へ上がるのが先だ。追っ手が追いついてからでは遅いんだ!」
意識を失ったティファを抱きかかえながらニコラはソフィアに苛立ちの声をぶつける。時間は刻一刻とすすんでいるのだ。
もう多くは残っていない。
「宇宙へ上がればまた話せる。今は辛抱してくれ!!」
「―――ッ!」
肩までのボリュームのある髪をヘルメットの中に押し込みながら彼女は奥歯を噛み締めた。


岩壁の間を抜け、シンは旧連邦の軍事施設跡地”プトレマイオス”に到着した。一番目立つのは中央のドーム上の建物だ。
だが何より気になったのは、その施設の周りにいくつもあった真新しいタイヤ痕があることだ。あまりにも新しすぎる。
「いきなりビンゴ、か?」

ビビー!!  ビビー!!

コックピット内で警報音が鳴る。レーダーにはミサイルが4機接近と表示されていた。
「間違いない!」
 すぐにガロードに基地の場所を連絡するとシンは飛来するミサイル郡を一気に突っ切った。ミサイルは目標めがけて
飛んでいくものだが、その目標そのものが高速で移動すれば目標を見失う。目標を見失ったミサイルたちはそれぞれ
あさっての方向へ向かって飛び去っていった。
「施設の周りに飛行機らしいものはないとなると…、まさか、ホントに宇宙に上がる気か!?」
 シンは自分が一番確立の低いとした事態が起ころうとしていることに激しく動揺する。それと同時に、どうやって
ティファを助け出すべきが考えをめぐらせた。
「水際で止めれなかったらアウトじゃないか!?」

ドドドドドドドドッ!!!!

 機体を減速させて着陸しようとした瞬間、突然地鳴りが周囲を襲い始める。彼は直感した。シャトルが既に発射体制に
入っており、もうカウントダウンも止めることができないタイミングまで来ていることを。
「ええい! こうなったら!!」
 シンは減速させていたディスティニーを強引に垂直方向に加速させた。
 シャトルの最高速度は平均で時速25000km強、音速の2倍以上だ。だがそれも”最高速度”であり、発射してすぐの
速度は十分MSでも追いつける。
「相対速度合わせ! スパイラル・ブースト、オン!!」
上空に向かって飛び立っててゆくシャトルめがけて、シンは機体を加速させた。
314通常の名無しさんの3倍:2009/02/25(水) 23:56:41 ID:???
ソフィアって“あの”ソフィアか。
今後の展開に目が離せない。
GJ!
315通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 00:51:02 ID:???
歌保守してた者です。こんなタイミングってあるんですね。びっくりだ!それと、GJ。シンはシャトルに取り付いて宇宙か。
316通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 01:21:02 ID:???
GX氏更新乙

そういえば前は取り逃がしたんだったねシン
追っかけた訳じゃないけど
317通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 17:52:02 ID:???
つか、MSで大気圏突入(宇宙→地球)をやったやつは何人かいるけど、
MSで大気圏離脱(地球→宇宙)をやったやつはGガンぐらいなのでは・・・?
318通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 18:45:43 ID:???
>>317
追加ブースターを付けて大気圏離脱したやつならいくつかいるけど、ノンオプション&単独ではGガンくらいだと思う。
319通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 19:47:39 ID:???
>>317
風雲再起に乗ってたと思うが。

そういや、予選終了でロープの反動で香港に行った時は自力で宇宙まで飛び出してたような気もするな。
あれ?
320通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 23:27:21 ID:???
レインがさらわれて取り乱した結果あの出力に止どまったと考えてる。
Gガンの機体は気合の乗りが出力に直結するからな
321通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 23:29:36 ID:???
設定上はEx-Sは追加ブースター無しで離脱可能だったけど、
作中でやったわけでわ無いしなー

…V2はどうだったっけ?
322通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 23:34:33 ID:???
連投すまんが
∀もすごいぞ。大気圏離脱途中のウィルゲムの出力不足を補う為、ゴールドスモーと一緒にウィルゲムを押しながら重力圏を突破した
323通常の名無しさんの3倍:2009/02/26(木) 23:40:36 ID:???
>>321
Z系とVガンダム系はブースターなしでも一応出来るはず
324通常の名無しさんの3倍:2009/03/03(火) 20:45:18 ID:???
保守。
325通常の名無しさんの3倍:2009/03/04(水) 09:11:21 ID:???
>>323
Vってメイン推力コアファイターじゃねーかw
どんだけ出力あんだよwww
326通常の名無しさんの3倍:2009/03/06(金) 18:12:55 ID:???
>>323
いや、Z系もV系も突入だけだよ。
流石に無理な話だ。
327通常の名無しさんの3倍:2009/03/06(金) 21:59:41 ID:???
一応、突入はビームシールドが有ればいけるはず。
確かザンネックが離脱みたいなのしてなかったけ?
328通常の名無しさんの3倍:2009/03/06(金) 22:08:30 ID:???
ザンネックは最初から大気圏外にいた
329通常の名無しさんの3倍:2009/03/06(金) 22:25:32 ID:???
V2とセカンドVなら確実だとはおもうけど。

あれ推力バケモノだからなぁ。

つーか。超高度迎撃できてるし。ミノフスキークラフト採用しているから時間をかけて良いのなら多分ガンイージとかもできるんでないか?
やらないだけで
330通常の名無しさんの3倍:2009/03/08(日) 22:35:25 ID:???
保守
331GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/03/09(月) 18:43:41 ID:???
第九十四話『不死鳥は何度でもよみがえるって言うし』(前編)

 空中を2つの飛行物体が垂直に上昇していく。片方はブースターの衝撃で周辺に被害が出ないよう水蒸気を撒き散らしながら、
片方はそれに併走するように普通ではありえない速度で上へ上へと上昇する。
「今だ!」
スパイラル・ブーストの限界時間ギリギリでディスティニーはシャトルの補助ブースターに取り付いた。最高速度が音速を
超えるシャトルに追いつくことができたのは、シンがシャトルを打ち上げるうえで、どうしてもやらなければならないことを
知っていたからだった。
通常、シャトルは打ち上げ後一定時間が経過すると、エンジンの出力をある程度絞る必要がある。これは空気抵抗を考慮しての
行動だが、このタイミングでシャトルは等速度飛行を開始するのだ。
幸いなことに、ディスティニーのスパイラル・ブーストの最高速度はこのときの速度をわずかに上回っていた。
 ガシッと機体を補助ブースターへ固定すると、機体が完全に補助ブースターの後に隠れるように機体の体勢を立て直す。
しかし、このときシンは激しいGに襲われていた。
「グゥヌゥゥゥッ!!」
 率直に言って、MS単体での大気圏突入、離脱はかなり危険な行為である。専用装備のある戦艦ならまだしも、何の装備も
なしにそんな事をすれば大気との摩擦熱で燃え尽きてしまうのが関の山だ。
 さらに、MSのコックピットの向きにも問題があった。シャトルのコックピットは頭に血が通うように打ち上げ時には頭は
地表に近い位置に来るようになっている。だが、ディスティニーのコックピットはその逆向きだ。これにより一体何が起こるか。
一つは急加速時に症状が現れる一時的に目が見えなくなる”ブラックアウト”、さらには頭に血が上らず、酸欠状態になって
意識を失うことにつながる。
 シンも歯を食いしばって必死に薄れる意識をつなぎとめていたが、大気圏離脱にかかるわずか9分弱の間に彼は意図も簡単に
意識を失ってしまった。本人ががんばっても今回ばかりはどうにもならないことだった。


「ニコラ様、高度160kmへ到達、補助ブースターを切り離します。」
「わかった、やってくれ。」
ガコン、と船体を揺らし、宇宙に上がったシャトルは補助ブースターを切り離した。
本来ならば目的地であるクラウド9に向かうために200kmまで上昇しなければならないが、思いがけない珍客のために予定よりも
早く補助ブースターの燃料を使い切ってしまった。
「取り付いたMSに動きありません。」
「…まったく、打ち上げ時のシャトルに取り付くなんて、何て常識はずれなやつだ。」
 シャトルから遠ざかっていくディスティニーを窓越しに眺めながらニコラはあきれた様子で言葉を漏らす。一歩間違えれば
シャトルもろともチリと化していてもおかしくなかった。パイロットがどんな人間かは知らないが、彼の行動は
”勇敢”ではなく”無謀”だ。
「あの機体があの時の衝撃?」
「ああ。」
 シャトルのコックピットに入ってきたソフィアにニコラは頷いた。太陽光が当たっている部分しか色がわからないが、
深紅の翼ははっきりと見えた。
「また会えるかしら?」
「わからん。まだこの高度は地球の重力圏だ。最悪、変な角度で大気圏に突入して燃え尽きるだろう。」
「どうかしら。不死鳥は何度でもよみがえるって言うし。」
「赤い羽根だからフェニックスかい? 冗談じゃない。死者に失礼だが、何度もよみがえってもらっては困る。」
機体だけ回収しても良いが、このシャトルにMSを格納するシステムスペースはない。打ち上げ直後とはいえ、シャトルに
追いついた加速力には目を見張るものがあるのは事実だが、別段それ以上のものはなかった。
332GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/03/09(月) 18:45:16 ID:???
第九十四話『不死鳥は何度でもよみがえるって言うし』(中編)

「我々の目的は、あくまで祖国クラウド9への帰還と、ティファ・アディールを連れ帰ることだ。確かに+αはほしいが、
無理をする必要は無いさ。」
「そうね…。」
未だ動きを見せないディスティニーを眺めながら、ソフィアはどこか落胆したような表情を見せたのだった。


「艦長、大気圏を離脱したシャトルが補助ブースターを切り離しました。」
「妙ですね…。高度200kmまで上昇しなければならないはずですが…。」
「何かアクシデントがあったんでしょうね。船体の映像、出せる?」
「は、ハイ。モニターに出します。」
 第2種戦闘態勢のブリッジは最低限の明かりしかともされておらず、計器類の明かりとバックライト式のモニターだけが
明るく光っている。シルバーブロンドヘアーの女性オペレーターが操作パネルを操り、メインモニターに地上から上がってきた
ばかりのシャトルの映像を映し出されると、全員の視線がそこに集まった。
「これが、地上から脱出してきたクラウド9の諜報員たちが乗っている船か…。」
副長の男がそう呟くと、艦長席に座る金髪の女性は左の肘掛に頬杖をついた。
「あれは人員輸送用のシャトルね。打ち上げは2回に分けて行われるはずだから、次回は巡洋艦クラスが上がってくるわよ。」
「そしたら、今度の打ち上げで新連邦の兵器を持ち帰るということですか?」
「おそらくね。」
「…あの艦長、ちょっと映像を切り替えて良いでしょうか? 気になることがあるので。」
艦長と副長の話に割って入るのは失礼なこととは知りつつ、オペレーターは口を開いた。彼女は普段あまり意見をするようなことは
しないため、やはり何かあるのだろう。
「いいわよ。」
「ありがとうございます。シャトルが切り離した補助ブースターを最大望遠でモニターに出します。」
映像が切り替わり、徐々にシャトルから離れていく補助ブースターが映し出される。すると、艦長と副長はその映像に違和感を覚えた。
「艦長、あのブースターの形、すこし変じゃありませんか?」
「確かに。妙に突起物が多いわね。アビー、画像の解像度上げられる?」
「はい、やってみます。」
アビーはすぐに画象を解析し、鮮明な状態のものをメインモニターに映し出した。それを見た3人は思わず息を呑んだ。
「艦長!? 」
「落ち着きなさい! アーサー、パーラを呼び出して。」
「は、はい!」
 そこに映し出された物体は彼らのよく知るものであった。そして、その中には彼らのよく知る人物も搭乗しているはずだ。
それを確認すべく、彼らは動き出した。
333GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/03/09(月) 18:47:14 ID:???
第九十四話『不死鳥は何度でもよみがえるって言うし』(後編)

 シンが意識を取り戻した時には既にシャトルの姿はなかった。酸欠状態からどうにか回復したものの、いまだに頭の鈍痛は治まっていない。
それでも状況の確認をするために全ての計器の情報を読み取っていった。
「高度158km、周りは真空の暗黒空間、周辺の浮遊物は15年前の戦闘の残骸だろうけど、使えそうなものはなし。ついでに助けてくれる仲間もなし、
救難信号を受信してくれる可能性もほぼゼロ。機体の状態も不調。…まぁ、あんな無茶してよく持ったほうか。」
 状況はよくない。宇宙に無事上がったことは良いが、これから先の行動を立てようがなかった。
「まったく、孤立無援か…。」
機体の行動パターンを宇宙用のものに変更しながらシンは大きなため息を漏らした。地上で孤立無援ならばまだ生き残る術はあるが、
宇宙で孤立無援となると絶望するしかない。
「でも幸いにも、パイロットスーツはあるからある程度は船外活動も可能か。」
スーツの機密状態を確認すると、シンはコックピットハッチを開いて、真空の闇に頭を覗かせた。機体は地球に背を向けた状態で浮遊しており、
上には大気に邪魔されない満天の星空、下には漆黒の海に浮かぶ真っ青なサファイアのような地球。絶景の中での孤独、それは彼が
どれだけ小さく、どれだけ孤独かを改めて認識させた。
「そういや、ユニウス7落下の時もこのくらいの高度で作戦開始したんだよな。」
 その時は地球に落下していくユニウス7を止めるので必死だったが、それがなければこんなにも静かで、言葉にできない風景が広がっている。
「…感傷に浸ってる場合じゃないな。この状況をどうだかいするかを」

ビビーッ!!  ビビーッ!!

 現状の打開策をいくつか頭に描き始めた瞬間、ヘルメットの通信機を介して警報がなった。すぐにコックピットハッチを閉めてレーダーを確認する。
「接近する機影1! 所属識別は不明! 当たり前か!!」
 操縦桿を操り戦闘態勢を取ると、向かってくる機影をモニターに映し出させた。
「…戦闘機!? エアマスターみたいに可変するタイプとは違う!」
映し出された機影は赤を基調とした戦闘機だった。両翼にはビーム砲がそれぞれ1門ずつ、さらに機首のコックピット付近にバルカン砲が
2門備え付けられているのが見える。
「武装はそれ以外に見えないとなると、偵察?」
彼の頭にそんな言葉が浮かんだそのとき、戦闘機は両翼のビーム砲を発射した。


「艦長良いんですか!? 機体が動くのも確認できました、だったら」
「だからといって、中に乗ってるのが彼だとは限らないわ。モーションデータを採取してデータベースの下と照らし合わせて!」
艦長は副長に指示を出すと、黒と蒼の狭間で戦う2機の戦闘に目を戻した。機体は彼女が知っているものに間違いないが、中身まで
そうとは限らない。仮に本物だとしてもここで倒れるようであれば、今仲間として受けれるだけ無駄なのだ。
「シン、私達はあなたがいない間に数多くの戦闘を潜り抜けてきたわ。あなたがそれについてこれないようであれば、
私は決断をしなければならないのよね。」
艦長席に座る金髪の女性、タリア・グラディスはそういって戦闘の行方を見守った。
334通常の名無しさんの3倍:2009/03/09(月) 19:04:39 ID:???
GX氏更新乙
ミネルバはサテリコンか
しかし自分が体験した苦労を人のそれと客観的に置けないのは想像が足りないなグラディス艦長
335通常の名無しさんの3倍:2009/03/10(火) 17:42:49 ID:???
運命の魔改造と、シンの成長ぶりを見たらどうなるかな。
336通常の名無しさんの3倍:2009/03/10(火) 20:49:28 ID:???
まともなアスランが一番驚くかも知れん
337通常の名無しさんの3倍:2009/03/10(火) 22:43:46 ID:IN2BgDJE
とりあえずまとめとくと

キラ→新連邦
AA組、ラクス→北米の反新連邦勢力
ミネルバ隊→サテリコン
シン、カガリ→フリーデン


338通常の名無しさんの3倍:2009/03/11(水) 23:43:17 ID:???
追加
凸…ウィリスんとこ→フリーデン
339通常の名無しさんの3倍:2009/03/12(木) 16:51:13 ID:???
>>329
ミノフスキードライブが加速度を理論上無限に増大させられるのは
抵抗のない宇宙の話で重力下じゃそうはいかない
ミノフスキークラフトに至っちゃ論外、サイコガンダムで大気圏離脱する気かよwwww
340通常の名無しさんの3倍:2009/03/12(木) 20:29:49 ID:???
>>339
ガンイージ「一応うちらもクラフト装備してますよ。あんまり性能は高くないけど。」
341通常の名無しさんの3倍:2009/03/12(木) 20:32:41 ID:???
ホワイトベースは自力で大気圏離脱してるもんな。
ミノフスキークラフトのパワーだろ、あれ?
342通常の名無しさんの3倍:2009/03/12(木) 21:01:57 ID:???
アプサラスもコンセプトは大気圏から一気に降りてきて狙撃だし
343通常の名無しさんの3倍:2009/03/13(金) 10:16:24 ID:???
>>341
ミノフスキークラフトそのものはあくまで浮かせるだけ。
しかも電力喰いまくりだからMSに搭載できるジェネレーターじゃ限界がある。
344通常の名無しさんの3倍:2009/03/13(金) 18:20:33 ID:???
つかガンイージはミノフスキーフライトだろ、簡易の
Vのでさえ長距離飛行はできない、ましてや大気圏突破なんて
345通常の名無しさんの3倍:2009/03/13(金) 22:16:21 ID:???
というか現実の原潜でさえ燃料棒の交換は数年から数十年に一度でいいわけじゃない?
核融合炉積んでるMSが推進剤無くなって飛べなくなるってならともかく、
通常の運用で燃料なくなって融合炉止まるってほとんどないと思うんだよな
346通常の名無しさんの3倍:2009/03/13(金) 23:52:10 ID:???
そんなに不思議に思うなら質問スレで聞けば?
大気圏離脱できるMSも含めて
347通常の名無しさんの3倍:2009/03/14(土) 00:17:03 ID:???
>>345
おいおい、何のためにジェネレーター出力とか設定してあると思ってるんだ
348通常の名無しさんの3倍:2009/03/14(土) 01:12:38 ID:???
ジェネレータ出力とその出力継続できる時間は関係ないだろう
349通常の名無しさんの3倍:2009/03/15(日) 17:18:03 ID:???
移転保守
350通常の名無しさんの3倍:2009/03/16(月) 19:07:31 ID:???
つか、
Gガンは最終話近くでミサイルにしがみついて大気圏離脱してたような・・・?
むろん脇役の方々だが
351通常の名無しさんの3倍:2009/03/17(火) 01:21:17 ID:???
気合で何とでもなる世界の方々を引き合いに出さないでいただきたいw
352通常の名無しさんの3倍:2009/03/17(火) 07:10:05 ID:???
大気圏離脱用ブースターと考えれば普通じゃないか。
自力で脱出できるかって話とは別だろ。
353通常の名無しさんの3倍:2009/03/17(火) 12:03:48 ID:???
>>350
気合いと根性で物理的に出力から何から全てが強化される「それ、なんてスーパーロボ?」な設定持ちの
Gの世界の方々を引き合いに出さないでwwww
354通常の名無しさんの3倍:2009/03/23(月) 14:21:44 ID:???
続きを期待しつつ保守

XでもSEED系でもMS単独で大気圏離脱出来る機体はあるのだろうか?
思い付かなかった……
355通常の名無しさんの3倍:2009/03/24(火) 01:30:02 ID:???
機体軽いし、餌マスター+Gファルコンなら行けそうな気がする
356通常の名無しさんの3倍:2009/03/24(火) 13:21:29 ID:???
あれ合体時の推力上昇は重量の増加より低いぞ多分
357通常の名無しさんの3倍:2009/03/25(水) 02:11:15 ID:???
よく考えたら合体して離脱できるならエアマスターかGファルコン単体で離脱できるだろって話だな
358GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/03/25(水) 18:20:32 ID:???
宇宙ステーションではリアルに若田さんがお仕事中…
超がんばれ。んでシンよ、おまえもがんばれ
それと書いていて思ったけど、種死って、ホントミネルバスタッフ出てねー
メイリン後釜のアビーとか技術主任のマッドとか。かってに設定をねつ造しなきゃ
使い物になりませんでした…。

第九十五話『堅苦しい挨拶は抜きにしましょう』(前編)

『グラディス艦長、ホントに本気出しちゃって良いんだな?』
「相手は実弾を積んでるはずよ。出さなかったら、あなたが死ぬわ。」
『了解、死ぬのはゴメンだぜ!』
 通信を切ると、タリアはメインモニターに写るよく見知った機体を見た。機体の細部に変化が見られるが、基本的な姿かたちは変わっていない。
普段どおりのタリアに対して、副長のアーサーは心配そうな表情を浮かべている。
「不満そうね。」
「そりゃそうですよ! 良いんですか? パーラにあんな指示を出して!」
「言ったでしょう? ここで落ちるようなら戦力外よ。これからダリア作戦を止めるためには、パーラ1人くらいどうにかしてもらわないとね。」
 戦後15年、コロニー落としのおかげで環境が破壊されつくされた地上とは違い、宇宙コロニーは今も15年前と同じ姿をしていた。そこでは常に
新たなものが求められ、技術研究や開発もそこに含まれている。そして、かつてコロニーを破壊するために創られたサテライトキャノン以上の
兵器も既に存在していた。
“コロニーレーザー”、それがその名だ。
「地球に対しての直接攻撃。地上の環境はようやく落ち着き始めてたはずなのに…。」
「そうですよ。ザイデルはひどすぎます!」
アーサーの漏らした愚痴にアビーも同意する。
 宇宙革命軍の指導者ザイデル・ラッソは15年前からずっとその座に座り続けている。前回大戦時にコロニー落としの指示を出したのは他でも
ない彼なのだ。
「私はシンと同じ地球生まれのコーディネィターですから、地球が破壊されることについては納得いきません!!」
「たとえ地球生まれでなくても、この作戦は決行させるわけには行かないわ。」
タリアは表情を険しくさせた。もしダリア作戦が決行されれば、地球に及ぶ被害は直接的な破壊だけではすまない。よくてユニウス7の落下時程度、
最悪の場合15年前の再来になりかねない。
「無関係な人間を巻き込むようなことは、絶対に許されないことよ。」


 突如現れた戦闘機の最初の攻撃をディスティニーは無事回避することができた。無論それが当然のことなのだが、宇宙での戦闘は”こちら”に
来てからは初めてだ。地上から上がってきたばかりということもあり、妙な浮遊感にまだなじめていない。
「チッ! まだならしが終わってないのに!」
地上でも今のように前後左右、さらに上下から攻撃が来る状況での戦闘はこなしてきた。だが、地上では必ず”空”という上と”大地”という下があった。
しかし宇宙にはそういう概念がない。
天地無用の空間で、戦闘機は一回目の攻撃の後ディスティニーをすり抜けた後で機首を再びこちらに向けた。
「くッ! 早い!」
 ディスティニーは翼を広げ、迫る戦闘機から逃げる。だがMSと戦闘機では戦闘機の方が速い。徐々に2機の間隔は狭くなっていた。
「へん! このGファルコンから逃げられるもんか!!」
パーラと呼ばれた少女はさらに機体を加速させて一気に前にいるディスティニーとの差を詰める。トドメの一撃を放つためにトリガーに指を
かけたとき、突然ディスティニーがこちらに向かって突っ込んできた。
それまで背中を見せて追われていた敵MSが、上下さかさまの大の字になって正面を向いた状態でこちらに近づいてきたことにパーラも
思わず驚きの声を上げる。
「う、うわなんだぁっ!!?」
声を上げたのもつかの間、機体同士が衝突し衝撃がコックピットを揺らす。激しい揺れのおかげでパーラはシートに頭を叩きつけた。
359GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/03/25(水) 18:22:19 ID:???
第九十五話『堅苦しい挨拶は抜きにしましょう』(中編)

「―――痛ぅッ!! あのやろなんてこと」
『無茶したことは認める。けど生憎、こっちはあんまり時間をかけたくなかったからな。』
「へッ?」
通信をつないでいるわけでもないのにコックピット内で声が響く。ふと視線を上に上げると、ディスティニーの顔がそこにあった。
「な、な、なな…!?」
『悪いけど取り付かせてもらった。戦闘機は基本的に正面以外に攻撃できないからな、この位置を取ったらこっちの勝ちだ。
言っておくけど、この機体の頭部のバルカンを舐めるなよ?』
 ガンダムタイプ特有のカメラアイの外側に取り付けられた2門のバルカン。口径は大きくないが、この距離ではGファルコンの
キャノピーを貫通し、彼女の体を血だらけにすることは間違いない。
「あーもうわかったよ! 降参だ、こーさん! 艦長もそれでいいよな!!?」
『艦長?』
 パーラの言葉にシンは驚きと疑問の混じった表情を浮かべた。レーダーに目を向けるが、戦艦クラスの物体をキャッチして
いない。中継基地を介しての通信にしても、戦闘機が単機でこの宙域にいることはやはりおかしい。
『おいあんた、この近くに母艦があるのか?』
「ああ、あるぜ。もっとも、今はミラージュなんちゃらとか言う物で姿を消してるけどな。」
『ミ、ミラージュなんちゃらって、もしかして”ミラージュコロイド”か!?』
『その通りよ。』

ビビーッ! ビビーッ!

聞き覚えのある落ち着いた女性の低い声を聞いたそのとき、レーダーに大型の熱源が感知された。サイズは戦艦クラス。
さらにディスティニーのデータに該当機種があったため、コードネームが表示される。そのコードネームは”MINERVA”。
「み、ミネルバ!?」
距離にして1km前方、コックピットのメインモニターに映し出されたのは彼もよく知った黒い戦艦だった。弓矢の鏃のように
尖った先端、さらにその後方に見える4門の主ビーム砲”トリスタン”、シルエットシステム対応型特有のカタパルト。
見間違えるはずもなかった。
『久しぶりね、シン。』
通信をつないだ先に待っていたのは、分かれたときと変わらないブリッジクルーの面々、そして艦長のタリアだった。
「お、お久しぶりです! みんな無事なんですね!?」
『まぁね。堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。お互い顔を知っているわけだし。とりあえず、着艦してもらって良いかしら?』
「了解! というわけだ、とりあえず連れってて。」
『ハァ? 何言ってんだよ? 自分で行けばいいじゃんか?』
「さっき言ったろ? 時間がないって。実を言うとさ、無茶しすぎて機体のエネルギーほとんど空なんだよ。」
パーラの不満の声に耳をふさぎつつ、ようやく落ち着けることにシンは息をついた。
360GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/03/25(水) 18:23:58 ID:???
第九十五話『堅苦しい挨拶は抜きにしましょう』(後編)

機体をハンガーに固定すると、シンはコックピットハッチを開けて身を乗り出した。代わり映えのしない格納庫だが、フリーデンの
それとはやはり違う。
「シン!」
「よく生きてたなお前は!!」
 下からヴィーノやヨウランといった彼を知る面々が出迎えた。半年振りの面々だが、まったく変化した様子はない。
「みんな久しぶりだな!」
「久しぶりじゃねぇよコノヤロ!」
「こっちはお前がいなくて滅茶苦茶大変だったんだぜ!!」
 ヴィーノに首を絞められたりヨウランに髪をくしゃくしゃにいじられたりと手荒い歓迎を受ける中、シンは終始笑顔を浮かべている。
3人でじゃれあう彼らを見るクルー達の目には、その姿は以前に比べて丸くなったように感じられた。
「コラお前ら。シンは艦長に呼ばれてんだから、それぐらいにしておけ。」
 その様子をすぐ横で見ていた技術スタッフリーダーのマッドがやんわりと制す。久方ぶりの再会に水を差すようなことはしたくない
ようだが、上官からの命令であれば仕方がない。二人を引き剥がすと、マッドはシンに話しかけた。
「シン、艦長が呼んでるから、部屋に行ってくれ。機体の整備は俺たちがやっておくから。」
「お願いします。」
「任せとけ、俺たちだって伊達に半年腕を磨いたわけじゃないんだ!」
「どんな機体でも、完璧に整備してやるよ。」
技術チームに機体を預けるとシンはまっすぐに艦長室へと向った。


「シン・アスカです。」
『入りなさい。』
 自動ドアが開き部屋の中に入ると、以前と変わらない部屋で以前と同じようにタリアは自分の席に座っていた。そしてもう1人、
彼女の後ろで壁に背を預けた少女がいた。
「お前か、さっき無茶したのは!」
「その声、さっきの戦闘機のパイロットか!? 」
「彼女の名前はパーラ・シス。私達が今協力体制を取っている組織の一員よ。」
「組織、ですか?」
「ああ、あたしらは反政府勢力”サテリコン”だ。」
そこからは宇宙の現状が話題となった。15年間という時間の中で、復興に大半の時間を費やした地球とは違い、宇宙では既に
あらたな戦争の準備が進められていた。対地球攻撃用のコロニーレーザー、新型MSの開発、諜報員の潜入調査。
 宇宙革命軍は次の攻撃の機会を虎視眈々と狙っていた。
「…まったく、なんでどいつもこいつも戦争をしたがるんだ!?」
「そうね。下の惨状を見てきたあなたならそう言うと思ったわ。」
「でも間違わないでくれよ、戦争をやりたがってるのは一部の人間だ。あたしらスペースノイド全部が戦争をしたがってる
わけじゃない。」
「…そんなことはわかってる。戦争のおかげで、何の関係もない人が理不尽な扱いを受けることは絶対にあっちゃならない!
そのためなら、俺は戦いますよ!」
シンは決意に満ちた目でタリアの目を見たのだった。
361通常の名無しさんの3倍:2009/03/25(水) 21:10:05 ID:???
GX氏更新乙

ルナがミネルバにいない?
次回出てくるのかな
362通常の名無しさんの3倍:2009/03/27(金) 00:00:29 ID:???
投下乙、ルナは何処だ
363通常の名無しさんの3倍:2009/03/27(金) 00:17:04 ID:???
シン、レイに加えてルナまで居なかったミネルバがよく生き延びてこれたものだ……戦闘要員いないじゃないか
364通常の名無しさんの3倍:2009/03/29(日) 23:30:51 ID:???
保守アゲ
365通常の名無しさんの3倍:2009/03/30(月) 01:08:33 ID:???
>>362
書き手が採用するかどうかはともかくとして、自分にアイデアはある。
クルスクで開発されたガンダムX4号機のパイロットになるというもの。

X4・・・別名ヴァーティカル(縦)X1号機。その特徴はXに採用されていたフラッシュシステムと
超長距離精密照準システムを共に排した
設計にある。両者を排除した代わりに独特の手ブレ補正照準システムが採用されている。
手ブレ補正というと聞こえはいいが実際はまったくの別物。
パイロットには単なる機体本体の調整不足として誤魔化されているが実際は設計側が
NT以外のパイロットを信用していない、機動兵器本来のドックファイトに立ち戻った
照準システム。
目標との目測距離に応じて機体が勝手に射撃時の反動を再現して攻撃をくわえる
照準が特徴。敵に当てるのが目的ではなくて、弾が敵に当たることをあてこんだシステム。
このシステムは新連邦で主力兵装を退きつつある実体弾90mmマシンガンの効果的な
消費と消耗を見込んだ、ある意味陰謀的な虐殺システムである。
これにより計算された機銃掃射が可能になり、皮肉にも射撃が苦手であった
ルナ・マリアも戦果をあげることができたが・・・



うわ・・・ひっでえ
366通常の名無しさんの3倍:2009/03/30(月) 07:42:24 ID:???
手ブレって


全関節を固定すれば手ブレもなにもねーだろjk
367通常の名無しさんの3倍:2009/04/01(水) 14:56:45 ID:???
保守
368通常の名無しさんの3倍:2009/04/01(水) 15:36:08 ID:???
>>365-366
剛体術の応用で実体弾の質量を相対的に極限まで高めておいて、
カウンターで敵MSの胃をも破裂させるんですね、わかります。
369XSEED ◆mGmRyCfjPw :2009/04/03(金) 11:30:11 ID:???
取り敢えず生存報告。本編インド洋辺りにて執筆停止中。
3ヶ月以内に何とか出来れば。以上。
370通常の名無しさんの3倍:2009/04/03(金) 12:26:57 ID:???
俺はずっと待っていたあああああああ
371通常の名無しさんの3倍:2009/04/03(金) 12:32:25 ID:???
あれ・・・涙が
372通常の名無しさんの3倍:2009/04/03(金) 17:39:01 ID:???
ひょっとしてマグロ漁船の上ですか?
373通常の名無しさんの3倍:2009/04/06(月) 03:53:35 ID:???
>>372
いやあ、この前よう、漁をしててよう、大物だと思ったらよう、
なんかガンダムタイプのMSを引き上げちまってよう!

ってことですかい。
374通常の名無しさんの3倍:2009/04/06(月) 07:03:04 ID:???
まさか護送船団の護衛艦ですか
375通常の名無しさんの3倍:2009/04/07(火) 13:11:58 ID:???
XSEED読み直しましたー
とても面白かったですよ。本編でまだ触れられていないエイプリルフールクライシスがどんな扱いになるのか楽しみだったり
376通常の名無しさんの3倍:2009/04/11(土) 09:01:40 ID:???
保守
377Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw :2009/04/12(日) 01:56:42 ID:???
ソロモンよっ!!私は帰って来たぁっ!!(作品違う…)予定を切り上げることが出来ましたのでこれから投下します。
前回の投稿から一年以上の沈黙を破り、俺、参上!言っとくが俺は最初からクライマックスだぜ!!

第34話「死にたくなければついて来い!」

戦闘配備の発令は自室でまどろんでいたキラの耳にも鋭く刺す様に入って来た。
連日の過酷な戦闘のせいで身も心もかなり重くなっていたが、自分より遥かにきつい境遇にいるガロード達の事を思うと居ても立ってもいられなくなる。
彼は跳ね起きるように身を起こし、あちこちに散れていた服を着替えて部屋を飛び出す。
外は相変わらず騒然としており、士官達が大声を出しながら廊下を行き交っていた。
その中に未だ寝惚け眼をしているトールの姿を認めたキラは彼に話しかける。
「トール、ガロード達は ? 」
「自分達の機体整備やってたはずだから今はもう格納庫にいると思う。キラも急いだ方が良い。ところでフレイを見なかったか ? 今の時間になってもまだ部屋に戻ってきていないんだよ。」
キラには見当がついている。大方シミュレーターのある所だろう。
ガロードによる格納庫での叱責以来、フレイは無理矢理機体をうごかそうなどという暴挙に出る事は無くなりはしたものの、一層シミュレーターにかじり付く様になってしまった。
正直に言って何がフレイをそうまでさせているのか、さっぱり見当がつかなかった。争いとか殺し合いとかそんな物とははっきり言って無縁そうに見えたのに。何が彼女をそこまで駆り立てるのだろうか?
「多分シミュレーターの所じゃないかな?昨日ガロードに怒られていたから。」
「そうか。医務室で横になってるサイが不思議がってたぞ。戦場なんて所に突っ込むような奴じゃないのにって。」
フレイの中で何かが確実に変わりつつある。
しかし、今まで彼女の心の内奥という物にあまり関心を持つことの無かった周りの者達がそれに気づくのはもう少し先になりそうな雰囲気であった。
二人でそんなことを話していると、艦橋と格納庫への分かれ道に当たった。そこでトールはキラの両肩を掴み、彼にしてはひどく真面目な表情で言った。
「キラ。生きて帰って来いよ。必ずだぞ。俺達ブリッジのメンバーも頑張ってお前らの事サポートするからさ。だから絶対に生きて帰って来いよ!」
「うん。分かった。約束するよ。トールも早くブリッジに行きなよ。ナタルさん達に叱られるよ?」
その言葉にトールは違いないなというように苦笑し、「OK」と小さく言ってブリッジに向かった。彼を見送ってからキラは、まだしゃっきりしない足を懸命に動かして格納庫へと向かう。
トールは自分に生きて帰って来るようにと言ったが、それは戦闘が終わった時にアークエンジェルが必ず帰ってくる場所として存在しているという事である。
敵を屠り、且つ母艦も無事でなければ、幾ら戦っても心が休まる事は無いだろう。
昨日の戦いが良い例で、あわやアークエンジェル轟沈かという所の一歩手前にまで陥ってしまった。
一つの戦艦に対する攻撃にしては異様なまでに敵の数が多かったのは事実だが、今のキラにはそれが何となく言い訳がましく思えてならなかった。
何としでもこの艦を、そして皆を守らなければならない。そう考えているとあっという間にキラは格納庫に来ていた。
そしてそこに着くと同時にくぐもった音が響く。恐らく敵のミサイルか何かをイーゲルシュテルンか何かが撃墜したのだろう。
しかし、それに負けないほどの大声でカタパルトデッキではムウとマードックが言い争っていた。
「だから!とにかく飛べるようにしてくれるだけで良いんだよ!」
「それが無理だから言ってんでしょうが!」
どうやらスカイグラスパーの発進についてもめているらしい。ロッカーに入り急いでパイロットスーツに着替えたキラはストライクのコクピットに乗り込んだ。
主電源を着けると同時に、左隣のハンガーに置かれているブリッツ―ガロードから音声のみの通信が入る。
「よお、キラ。もうドンパチは始まっているみたいだけど、俺達ムウの兄ちゃんと同じでまだ出られねえみたいだな……敵さんがどっから攻撃を仕掛けているのかもまだ分かってねえのかな?」
「ブリッジの通信を開いてみよう。何か分かるかもしれないよ。」
そこで回線を開くと、ブリッジ内でのやり取りが滝のようにコクピット内に流れ込んできた。全員の声の調子から察するに空気としては大分殺伐としたものだった。
「砂丘の陰からの攻撃で発射位置特定出来ません!」
「総員第一戦闘配備!このまま打開案も無しにただここに居ても、相手にとって体の良い的になるだけだわ!機関始動!」
378Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw :2009/04/12(日) 01:58:25 ID:???
動くのか?!キラは驚きに目を見開いた。
確かに艦長の言う通りかもしれないが、昨日の戦闘のせいもあって普通に逃げるにしても機関はまだ本調子ではないはず。あまり無理をする事は出来ないのだが。
しかし、矢継ぎ早に続いたトノムラの報告に今度は二人揃って緊張した。
「五時の方向に敵影三!ザフト戦闘ヘリ、アジャイルと確認!」
「ミサイル接近!」
「機影ロスト!」
「照明弾散布!迎撃!」
ナタルの命令に重なるように、ミリアリアが「はい!」と短く返事をする。
そんな中、ガロードは割って入るようにしてブリッジに通信した。
「艦長さんよ。俺達だけでも出るわけにはいかねえのか?」
「フラガ少佐にもさっき通達したけど、もう少し現状で待機していて頂戴。こちらは未だ敵の位置も戦力も分かってないわ。
それに、そもそも発進命令も出ていないでしょ?準備も無しにのこのこ出て行ったらそれこそ蜂の巣になるわ。もう少しだから、お願いよ。」
あくまで慎重に行くというマリューにガロードは静かに頷いて応えた。
「分かったよ、艦長さん。ただ、危なくなったらいつでもいいから出してくれ。」
その言葉にマリューは静かに頷く。すると今度はブリッツの右側に居るベルティゴことカリスから通信があった。
「ラミアス艦長。僕としてはこの攻撃自体が怪しいと思っています。気になる事も幾つかありますし。」
「それは……どういうことかしら?」
「この艦が連戦続きで疲弊している事は相手側も確実に掴んでいるはずです。ですがそれを不意討ちの形で叩くにしても送り込む勢力が戦闘ヘリ三機ってあまりに少ないと思いませんか?
それに、送り込む事が出来るという事はこの近くに敵の母艦があるという事です。ひょっとしたら戦闘ヘリはただの斥候であって、本当はもっと大型で強力な部隊が僕達を叩きに出てくるんじゃないでしょうか?」
言われてみれば確かにそうとも言えなくは無い考えではある。こちらの手の内をある程度知られている今、敵は戦力を出し惜しみしている余裕はあまり無いはずである。
にも拘らず、そんな事をする理由とはいったい何なのだろうか?まさか只の様子見、戦力判断というだけなのだろうか?
それならそれで笑える話である。敵は恐らくもう十分と言えるほどのデータをこれまでの戦いで得ただろうから。では一体何の意図があって?
「なあ二人とも。案外深く考え込む必要は無いかもしれないぜ?俺達はこの艦を守りきるのが仕事なんだからよ。今度も皆で頑張ろうぜ!」
今更敵が何を考えているかなんて知った事ではないとばかりに、ガロードが飄々と、しかし気合を入れ直すように言った。その雰囲気にキラも、そしてカリスも思わず微笑んでしまう。
だがそんな空気はチャンドラからの報告によって簡単にかき消された。
「五時の方向に敵機五!TMF/A-802、ザフト軍モビルスーツ、バクゥと確認!」
バクゥと言えばつい先日戦ったばかりで、ガロードが狼と称していたモビルスーツである。
「おっ、こっちが大人しくしていたから焦れて本命出してきたみてぇだな!艦長さん!俺達を出してくれないか!?」
「分かったわ。では、ストライクはブリッツと共に敵モビルスーツの排除を。ベルティゴは敵戦闘ヘリを排除してください。ストライク、ブリッツ、ベルティゴ、発進準備!!」
その声と共にのろのろとした感じでハッチが開き、ガロード達の目の前に広大な砂漠が大写しになった。
そんな時、ガロードにキラから通信が入った。
「ガロード、ティファさんは?」
「ティファか?さっきまで居たんだけどよ、戦闘になるから居住区の方へ戻っていったんだ。俺の前じゃ元気そうだったけど、まだザフトの基地から脱出したときのショック引き摺ってんのかもしれねえ。」
その口調には若干の苦々しさがあった。あそこで起こった一連の出来事に関しては正直これっぽっちも思い出したくなかったからだ。
間も無くストライクに、エネルギー消費を考慮した上でのソードストライカーが装備される。発進の一番手はカリスだ。
「カリス・ノーティラス、ベルティゴ、発進します!!」
リニア・カタパルトは機体を勢い良く打ち出す。直ぐにベルティゴは照明弾を頼りにして戦闘ヘリに踊りかかっていった。
次に発進するのはガロードである。
「ガロード・ラン、ブリッツ、出るぜっ!!」
379Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw :2009/04/12(日) 01:59:41 ID:???
一瞬にしてブリッツはカタパルトから打ち出される。しかし操縦するガロードを待ち構えていたものは戦闘ヘリでなければバクゥでもなかった。
砂である。水の様に流れる細かな砂は忽ちにしてブリッツの足場を不安定にし、延いては蟻地獄の如く身動きが出来ないようにしていく。
「うわわっ!!何だこりゃぁっ!!」
ガロードは慌てて立ち上がろうとするが、砂に足を取られて簡単にバランスを崩す。このままではきちんと歩くこともままならない。機体は傾いでいく一方である。
スラスターを使えばどうにかなるかと考えて吹かしもしたが、あまり効果は無いらしく、あっという間に近くの砂丘へ無様に突っ込んだ。
後方を伺うとキラも砂に参っているらしく、沈み行く機体に悪戦苦闘している。
そこへ狙っていたかのように、カリスの攻撃を逃れた戦闘ヘリの一機がミサイルを放った。
爆煙と砂塵が着弾によって舞い上がり、ストライクは更に砂に埋もれていく。
そしてそこにバクゥが400ミリ径ミサイルを撃ち込み、もがくストライクを嘲笑うかのように易々とその場を離れていく。
キラは勿論、戦闘経験豊富なガロードも砂漠で戦闘なんてした事が無い。これほどまでに厄介なものだとは考えてもみなかった。
そこへいくと、敵の持つキャタピラは地形にうまく対応した機能といえる。状況は明らかにこちらが不利だ。このままでは何も手出しが出来ない内に全滅しかねない。
ガロードは攻撃によるショックに耐えながらブリッジに向けて緊急通信を入れる。
「ブリッジ!!こっちは砂のせいでうまく動けねえ!艦の上に乗せてくれねえか?バーニア吹かせばそこまでは何とか行けるからよ!!」
その言葉にマリューは黙ってしまう。大体、戦闘のプロにしたって砂漠での戦闘経験なぞそうそうあるものではない。注意深く考えればこうなる事は目に見えていたはずだ。無用心な作戦ミスにも程がある。
しかしガロードの提案に対しても、マリューは一瞬逡巡してしまう。艦にある砲だけでは小回りが利かないからこそ三人には出撃してもらったのだ。
ガロードの案を取ると自然に攻撃範囲が狭くなってしまうが、確実な攻撃が見込める分、砂の中でもがくだけの今よりはずっとマシだといえる。
ソード換装したストライク、ブリッツ共に近接戦用の機体なので、出来るだけ敵を近づけなくてはならないというリスクもあるが。
「艦長、ベルティゴは飛行出来るのである程度自由が利きますが……如何なされますか?」
急な作戦変更提示にナタルが、若干困惑したような表情でマリューを見つめる。
「パイロットの生命、及び確実な攻撃力確保を優先します。艦を旋回。このままの状態で戦わせても二機とも良い的になるだけだわ。
それからストライクとブリッツを艦載した後、スレッジハマーを装填!」
「了解!!」
トノムラがマリューからの要請に答え、ガロード達が戻って来るタイミングを見計らう。
これで不利な状況が少しでも好転してくれれば良いが……

『ガロード君!キラ君!艦の甲板上に戻って来なさい!形勢を立て直します!!』
「よし!それじゃあそうしますか!聞こえたか、キラ?!……」
ガロードは程近い所でバクゥを相手に戦っているストライクに向けて通信を入れる。
だが通信機からは、キーボードが信じられないほどの速さでカタカタと打たれる音と、キラの小難しい呟きしか返って来ない。
「接地圧が逃げるんなら合わせりゃ良いんだろ!逃げる圧力を想定し、摩擦係数は砂の粒状性をマイナス十五に設定……くそっ!まだ駄目なのか?!なら数値をマイナス二十に修正……ッ!!」
音声だけでは何をやっているのかよく分からない。ガロードはもう一度声をかけてみる。
「キラ!アークエンジェルに戻るぜ!ここはこのまま戦っていても……」
しかしやはり返事は無い。その代わりに、ストライクはシュベルトゲベールを振り上げると同時に、自分に向かってきたバクゥの一機に向かって思い切り飛び上がる。
それは、つい今しがたまで砂の中で無様にあがくしかなかった物とは明らかに違う機動性だった。
相手モビルスーツのその変わりように、さすがのバクゥも対処が遅れてしまったのかその大太刀を正面からまともに受けてしまう。
首筋から噴き出した電子系統のスパークが夜の砂漠の一部を煌々と照らし、次いで紅蓮色の爆発が勢いよく起きた。
一瞬何が起きたのか全く分からなかったガロードだったが、ともかくキラは敵機を一機撃墜したのだ。
だが敵機はまだあと四機残っている。また、自分から言い出した上でアークエンジェルから戻って来いと言われた以上それに従わねばならない。
決してキラの力を軽く見ているわけではないのだが、この状況における自分達の経験不足が目立つ中で四対一はこちらにとって分が悪すぎる。
380Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw :2009/04/12(日) 02:01:56 ID:???
そんな時に折悪しく、アークエンジェルに向かって、連なる砂丘の向こう側から何発ものミサイルが打ち込まれてきた。
だがアークエンジェルとてそれを黙って受けるはずも無い。大量の砂を巻き上げながらその巨体の向きを変えていく。
悲惨だったのは、脛の辺りまで砂の中に入ったために身動きが取れず、着弾と爆発の余波をもろに食らってしまったブリッツだった。
「どぅわ!!」
シートベルトでしっかり固定していたとはいえ、ガロードの体はコクピット内で大きくあちこちに揺さぶられ、意識もほんの一瞬ブラックアウトしかける。
ショックのせいでガンガンする頭を片手で抱えながら、ガロードはブリッツの姿勢を保持し、モニターをアークエンジェルのいる方向に向けた。
損傷の差が先程と殆ど変わらない事から、どうやらミサイルを避けるか撃ち落とすかしてやり過ごしたらしい。
しかし油断は出来ない。前方から更に弾数の多い第二波攻撃が接近する。ここからではブリッツのどんな武器も対処しきれないし、アークエンジェルにしても回避は間に合わないだろう。
歯噛みしながらその様子を見つめていると、ミサイル群は突然のビームの雨によって全弾が一気に撃ち落とされていく。
見るとベルティゴのビットが空中に浮遊していた。正に間一髪である。
「サンキュー、カリス!!おかげでみんな助かったぜ!」
「いえ……攻撃はまだ来るでしょう。……その前に、何とか相手のモビルスーツを全機沈黙させなければ……」
精神的にも身体的にも疲労のピークがかかってきていたのか、カリスはガロードからの言葉に荒い呼吸混じりで答える。
確かに……ストライクは今また一機のバクゥを切り倒したが、残りの三機は結構な手練れらしく潰すにはもう少し時間がかかるだろう。
戦闘ヘリが全機撃ち落とされた今、ベルティゴはアークエンジェルの守りに専念するが、それもビットシステムを使った事でカリスがあと何分もつかで大きく変わってくる。
唯一パワー等が残っているのがガロードであったが、身動きが取れにくくなっている今どうにもこうにも出来なかった。
やがて攻撃の対象をストライクから機体の自由が利かない相手に移したらしいバクゥが、真っ直ぐにブリッツの元へ猛進する。
すると、バクゥに向かってどこかから現れた数台のバギーが向こう見ずのように向かって行く。
「何だぁありゃ?また随分とちゃちな攻撃してるなあ……」
ガロードが戦闘を忘れて唖然としたのも無理は無い。バギーから繰り出されている攻撃は全て対モビルスーツ用の物ではないからだ。
それにガロードからしてみれば、そういった物で上手く攻撃するにはまったく的外れとも言える装甲の硬そうな所ばかりを搭乗者達は狙っていた。
それらがバクゥを翻弄している間、その内の一台がブリッツの近くに近付き、乗っている誰かがブリッツに向けてワイヤーを射出する。
どうやら射出したのは女性だったらしく、ブリッツの通信に涼やかでピンと張った印象のある特徴的な声が入って来た。
『そこのモビルスーツパイロット!死にたくなければ付いて来い!!』
それはガロードにとって幽かにどこかで聞き覚えのあるような声だったが、なかなか思い出すことが出来ない。
どうしようか迷っていると、突然モニター上に付近の物らしき地図が現れた。そしてある一点にあたる部分が赤くちかちかと光っている。『付いて来い』とはどうやらこの地点まで付いて来いという事なのか?
どうやらそれは正解だったらしく少女の声が続く。
『いいか?!点滅しているポイントにトラップがある!バクゥをそこまでおびき出すんだ!』
「わ……分かった!先導頼むぜ!」
取り敢えず相手もザフトと敵対する勢力である以上、こちらの味方である事は間違いなさそうだ。
それにこのままここにいても埒が開かない。そう判断したガロードは背中のバーニアを吹かし、指定されたポイントまで向かった。
すると、それに釣られたバクゥが三機ともブリッツの跡を追う。
暫く進むと自分のいる所を示す座標が、地図上のポイントとピタリ一致した。周辺の空に何も無い事からどうやらトラップというのはここ一帯の地面に仕掛けられた何かの事らしい。
そしてその場所を直ぐに嗅ぎつけたバクゥが、猛烈なスピードでブリッツに迫る。
ガロードはバクゥを引きつけるだけ引きつけた後、今度は体の各部にある全バーニアをフルパワーで稼動させた。
「うおおおおおっ!!上がれぇっ!!!」
381Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw :2009/04/12(日) 02:10:49 ID:???
ガロードの期待の応えるかのように、ブリッツはバクゥの攻撃を目と鼻の先で何とか避ける。
そして次の瞬間、ブリッツのいた所を中心にして半径200メートルほどの範囲が一気に陥没する。
打つ手も無く、空を掻きながら三機のバクゥは地の底に吸い込まれていき、次いでそれらは周囲を揺るがす大音響と紅蓮の炎に包まれていった。
バギーの少女が言った罠……それはとは廃坑で出来た空洞に相手を落とし、そこに溜められていたガス系統の可燃物で吹っ飛ばす……という物だった。
「うひょおー。見事にはまってくれたなあ!しっかし……あいつら一体何なんだ?」
最後の罠に関しては上出来とも言えるが、それ以外がガロードから見ればあまりにもお粗末過ぎる。
それに……あのどこか聞き覚えのある声。一体誰だったか。
モニターに映る僅かに白みかけてきた東の空を見つめながら、ガロードは皆がその近くに集まるのを待つ事になった。

以上で投下終了です!
文体が変わった?と思われる方もいらっしゃいますが、あまり変えたような気はしていません。安い文章体に思われないよう地の文は多めのままであるかと。
今回は戦闘がメインでしたが今までの物に比べて少し短めにしました。
嗚呼、それにしても何れはX運命の方の様に自身のサイトを持ってそこで公開していきたいものですなぁ。
この作品もゆくゆくはXSEED、XSEEDDestiny、そして…
それではみなさん!また会いましょう!
382通常の名無しさんの3倍:2009/04/12(日) 05:58:01 ID:???
乙〜
待ってましたよ
383通常の名無しさんの3倍:2009/04/12(日) 07:07:06 ID:???
シンのような切れやすいガキに政治家なんて無理だろ(笑)
384通常の名無しさんの3倍:2009/04/12(日) 09:45:37 ID:???
>>381

絵柄が変わるように文体も変わるのはしゃーない
385通常の名無しさんの3倍:2009/04/12(日) 10:33:21 ID:???
>>381
>そして…
まさか00?
これは期待せざをえない
386通常の名無しさんの3倍:2009/04/12(日) 20:37:55 ID:???
GJ!!待ってました!!
387通常の名無しさんの3倍:2009/04/13(月) 01:01:22 ID:???
待ってたぜ、GJ
388GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/04/15(水) 12:42:52 ID:???
>>377-381GJ!! 最近ほかの職人さんの作品読んでなかったら
すんげー楽しかったです。
んで、私ものネタの投下!

第九十六話『何も考えずに突っ込みますよ』(前編)

 外の音に彼女は閉じていたまぶたをすこしだけ開いた。
 着慣れたパイロットスーツに身を包み、彼女は既に1月以上無音のその席に座り続けている。確かに最初の一週間は彼女が
その席に座る意味があった。だが、その後はそこに座る必要はない。それでも彼女はそこに座り続けている。それは、
彼女自身の自らに課した決まりであった。

あいつが帰ってくるまで、この艦は私が守る

そう心に誓ってから既に3ヶ月。2ヶ月と1週間の間彼女は1人でその艦を守ってきた。無論、艦にも武装があるので彼女が艦を守る全てを
こなしたわけではないが、対MS戦闘に関しては彼女がほぼ1人でこなしてきたことに変わりはない。
 コロニーは15年前の戦争でさしたる損害もなくその姿を今に残している。だからといって、その全てがそのままというわけではない。
地球同様、コロニー以外で生活し、生計を立てる者達も存在し、秩序のない世界が広がっていたのは宇宙も同じだった。
 漂う再利用可能なパーツをあつめる良識のある”ジャンク屋”。艦船やMSの修理・改造を非合法に行う”改造屋”。そして
”イエーガー”と呼ばれる海賊行為を繰り返す武装集団もいた。
「またイエーガーが出たわけじゃなさそうね…。」
 外からの音からは戦闘時独特の緊張感が感じられない。戦闘でないと確信すると、彼女は開いた目蓋を再び閉ざす。
 “彼”が帰ってくる日を待ちながら、ルナマリア・ホークは静かに夢の中へと落ちていった。


「シン。帰ってきて早々悪いんだけど、一つ仕事を頼まれてくれないかしら?」
「仕事、ですか?」
 今の状況を一通り話し終えたタリアは、そういって話を切り出した。シンは普段と違う彼女の言葉に眉をひそめる。
「俺はまだ宇宙に上がったばかりで、戦闘とかはできませんよ? それに機体も整備中ですし…。」
「これから頼むことは戦闘じゃないわ。単刀直入に言うならば、ある人の”心のケア”よ。」
「こ、心のケア?」
彼が想像もしなかった仕事内容にシンはさらに表情を曇らせた。だがこの言葉に表情を変えたのはタリアの後で壁に背を
預けていたパーラだった。
「艦長、こんなのに任せて大丈夫なのかよ?」
「…アンタ。初対面で”こんなの”はないだろう、”こんなの”は?」
「よく言うよ、宇宙に上がるシャトルにしがみついてたくせに。あたしらが見つけてなかったら、今頃大気圏に再突入して
消し炭になってんだぞ?」
パーラの口から出てきたこの言葉にシンは返す言葉がない。地上から宇宙に上がったものの、それ以後のプランなどまったく
なかった以上、無茶をしたことに変わりはないのだ。
「大体、もう1月以上コックピットにいるんだ。正直生きてるかどうかも怪しいと思うけど?」
「パーラ、悪いけど席をはずしてもらえないかしら?」
「…わかった。」
パーラは浮かせていたヘルメットを引き寄せると、足早に部屋を後にする。部屋から出る間際、彼女がした舌打ちにシンは
気分を悪くした。
「感じ悪いですね。」
「しかたないわよ。彼女にも今言ったことを頼んだんだけど、彼女では無理だったんだから。」
 タリアは困った様子で肩をすくめた。
389GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/04/15(水) 12:48:44 ID:???
第九十六話『何も考えずに突っ込みますよ』(中編)

「…なんであの人にはできなかったんですか?」
「それは”女”だったから、かしら?」
「お、”女”ですか?」
意味深な回答をするタリアにシンはすこしたじろいだ。彼の内心を知ってかしらずか彼女は話を続けた。
「彼女には今回の相手との共通項があるの。一つが”パイロット”であること、もう一つが”女”であること。」
「…相手はルナですか?」
「察しが良いわね。」
「それだけヒントを出されれば。それで、今あいつどうしてるんですか?」
「彼女は、今第一種戦闘態勢中よ。」
タリアの言葉にシンは目を丸くした。第一種戦闘態勢ならば、艦長はブリッジの席で艦の指揮を取らなければならない。
にもかかわらず、目の前に艦長はいる。
「ル、ルナが第一種戦闘態勢ってどういうことですか!?」
「今はそんな危険度の高い状態じゃないわ。でも彼女は常にその状態を維持しているの。」
「な、なんでそんな事を…。」
「艦を守るためよ。サテリコンと合流するまで、この艦の戦力はインパルス1機のみ、常に気を張った状態だったのよ。」
 タリアは”イエーガー”と呼ばれる者達について語り始めた。彼らは地球にいたMSたちとさして変わらない存在だ。
そして、地上でシンが味わったように機体もパイロットも技術的な大きな差があった。それに対抗するために、ミネルバは
ミラージュコロイドで擬装し、MSの改良、そしてパイロットのスキルアップが図った。
「とは言うものの、言うは安く行うは難し。機体強化もスキルアップも容易じゃなかったわ。」
機体をドッキングした状態で固定し、フォース、ソード、ブラストルの性能を併せ持った”キメラシルエット”の開発、
さらにレジェンドの余剰パーツを使ってドラグーンは使えないまでも全方位に攻撃を行うことができる砲台を持った
”レジェンドシルエット” の開発、現状の資材でできる範囲のことは全てやった。
「サテリコンに保護された時にはパイロットもメカニックもみんなボロボロの状態だったわ。その中でも特にひどかったのが…。」
「2ヶ月近くの間、1人でこの艦を守ってたあいつなんですね。」
艦長室が沈黙に包まれる。シンは視線を落としており、タリアからはどんな表情を浮かべているか見ることができなかった。
「あの子はよくやったわ。だからといって、今の状態が賞賛されるものではないのよ。」
「わかります。有事の際に仕事をするのがパイロットですから。」
パイロットは”有事”に仕事をする。では、有事ではない今仕事をしようとしている彼女はパイロットして失格かといえば、
そうでもない。
 結局の所、彼女は不安なのだ。自分が休んでいる所に敵が襲ってきた時、出撃が1分遅れてしまった時、前の戦いでの
損傷箇所の修理中に敵が襲ってきた時、ミネルバのクルーを傷つけてしまうかもしれない。”自分が不甲斐ないばかりに
周りのみんなに迷惑を掛けたくない”と一身に思うがために、彼女は自分を追い詰めている。
「私はあの子があんなにも思いつめていたなんて思っても見なかったわ。」
「…俺から見ても、ルナは思いつめるようなタイプじゃないと思います。でも、あいつはあいつでなんかプライド持ってますから…。」
「それはパイロットとしての? それとも、ルナマリア・ホークとしての?」
「この艦に配属された”兵士”としての、ですよ。」
 そう言ってシンは立ち上がり、タリアに背を向けた。
390GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/04/15(水) 12:51:01 ID:???
第九十六話『何も考えずに突っ込みますよ』(後編)


「どこに行く気?」
「ルナのところです。」
「行って、どうするつもりなの?」
「…わかりません。」
彼の言葉には力が感じられない。本当にどうするか考えがないように感じられる。しかしその一方で、”弱さ”も感じられなかった。
「どうするかも考えずに行く気? あなたはまたそうやって失敗するつもりなの?」
「…俺も地上でいろいろありました。」
 静かにまぶたを閉じると白い雪原が目に浮かぶ。灰色の厚い雲に覆われたその先にはその周辺で栄えた唯一の町がみえた。
「俺の地上の仲間に、馬鹿が1人います。好きな子のためならどんな苦難も乗り越えるだけの根性を持ったやつが。でもそいつの
行動のほとんどは計画的なものじゃありません。」
 彼は捕まった少女を助けるために単身町に潜入し、そして彼女を助け出した。さらに、敵だった少年と心を通わせ、彼を
15年前の亡霊の呪縛から解放させた。その時の彼の行動には計画的な部分はない。だが彼はそれらをなしとげた。
 計画することは確かに何かを成し遂げるための手段だ。それによって確実に効率よくすすんでいくことができるだろう。
 だがそれ以上に何かを成し遂げるために必要なものは、どんな苦難も吹き飛ばすほどの熱い”思い”なのだ。
「綿密に計画した方が確実なのは重々承知しています。でも今回は、俺は何も考えずに突っ込みますよ。」
「…そう。」
タリアは彼をあえて止めようとはしなかった。彼のやり方が乱暴だとは思う。勝算は多くはないだろう。だが、それが成功した
時の見返りも確かに大きい。
「自分でも乱暴なやり方だとは思いますよ。でも俺は、このやり方しか思いつきませんでした。」
 そう言ってシンは部屋を後にする。残されたタリアは背もたれに体を預け、天井を仰いだ。
「”何も考えずに突っ込む”といっていながら、いろいろと考えてるようね。」
タリアはシンのやり方の全てを認めているわけではない。もっとじっくりと考えればよりよい打開策が浮かぶかもしれない。
しかしそれも可能性の話でしかないのだ。
「以前はあんなに深慮深く考えるような子じゃなかったのに…。まったく、いつの間にあんなふうになったのかしら。」
 以前の彼は、何もかも切り裂く”鋭すぎる刃”だった。だが今は明らかに違う。切りたいものとそうでないものを区別し、
さらにその切る深さや角度などをほとんど無意識のうちに判断し、最良の結果を残そうとしている。
 部屋を出るシンの背中が、前よりも大きく感じられたのは錯覚ではないと彼女は確信した。
391通常の名無しさんの3倍:2009/04/16(木) 04:56:30 ID:???
うお、きてた
392通常の名無しさんの3倍:2009/04/16(木) 11:33:18 ID:???

アナザー系で作品きてるのここだけだし頑張ってほしい
393通常の名無しさんの3倍:2009/04/16(木) 14:13:11 ID:???
>>390
GJ
しかしラクシズは相変わらず空気か
394通常の名無しさんの3倍:2009/04/16(木) 18:29:55 ID:???
GJ!
やはり作者はゾイド好きなのか?
イエーガーと聞くとどうしても蒼いのが……
まあ宇宙版ヴァルチャーを「狩人」と呼ぶのは当てはまってるかな。
395通常の名無しさんの3倍:2009/04/16(木) 21:26:20 ID:???
ルナがZZ初期のファみたいな状況下に置かれているな。
396通常の名無しさんの3倍:2009/04/16(木) 21:27:53 ID:???
GX氏更新乙

ミネルバクルーがこんだけ頑張っても、生き延びられたのは
革命軍がサテリコン掃討に本気出してないからっていう
397通常の名無しさんの3倍:2009/04/18(土) 11:38:15 ID:???
つかこの時期はコロニーレーザーの準備の真っ最中じゃないの?
サテリコンつぶしはともかく、フリーのMS乗りの掃討なんぞ
ザイデルの頭にあると思えないけど
398通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 00:08:23 ID:???
戦艦でありながら流しの海賊風情にフルボッコwさすがCEレベル
399通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 09:14:02 ID:???
まあ、CEのMS戦闘の歴史は所詮数年。あらゆる面で差があるのは仕方が無い。
例え科学技術が互角だとしても、分が悪いのは確かだろうね。
400通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 20:20:02 ID:???
このSSが始ったのが相当前だから忘れてる人いるかも知れないが、
最初はシンですらそのへんの雑魚ヴァルチャーに満足に射撃当てられなかったんだぜ
まあ種死アンチ全盛のときに始ったSSだから仕方無いのだが
401通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 20:42:45 ID:???
でも、積み重ねられた年月の差はやはりでかいと思う。
402通常の名無しさんの3倍:2009/04/21(火) 16:25:10 ID:???
流れぶった切ってこんなことを言ってみる

A ティファ
B サラ
C メイリン
D パーラ、ルナマリア
E トニヤ エニル

さて、これが何を意味するかわかる奴は言ってみよう
きっとどっかから青白い光が飛んできて君を消し飛ばしてくれるぞ!!
403Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw :2009/04/21(火) 16:25:15 ID:???
皆さんこんにちは。作者です。とあるSSサイトを見ていてふと思ったのですが、投下量は前回と同じワード6枚くらいで良いでしょうか?
それとも一話ごとの展開をさくさく進めるために倍くらいにした方が良いでしょうか?
404通常の名無しさんの3倍:2009/04/21(火) 17:50:53 ID:???
どうやら同じスレを見ているらしい
405通常の名無しさんの3倍:2009/04/21(火) 18:23:45 ID:???
>>403
これまで通りでいいんじゃないですか。
あんまり投下期間に間が空くとwktk通り過ぎちゃうし。
406通常の名無しさんの3倍:2009/04/21(火) 18:24:07 ID:???
倍にして貴方がパンクして投下が止まる事を考えればそのままで
407通常の名無しさんの3倍:2009/04/21(火) 19:37:19 ID:???
>>403
自分も>>405に同意見です
マッタリいきましょう。
408通常の名無しさんの3倍:2009/04/21(火) 19:47:23 ID:???
ここは今も投下職人が二人もいて何気に凄いな。
同じアナザーのWは機能してないしGはスレまでなくなってるし。
職人さん、これからも頑張ってください。
409GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/04/23(木) 13:58:59 ID:???
>>403
私は一回に出す量をきちんと決めてれば問題ないと思いますよ。
私の場合は一回に前編、中編、後編の3回ですが。

第九十七話『そういうノリも、嫌いじゃねぇ』(前編)

「ルナのバカ…、自分が倒れたら元も子もないじゃないか。」
 シンはルナマリアのがんばろうと思う気持ちを賞賛する一方で、自分の体のことを顧みない姿に苛立ちを覚えていた。艦を守るために
必死になっているのは納得できる。しかし、自分が疲弊して肝心な時に艦を守れなくなってしまっては本末転倒だ。
 彼女に会うためにシンが格納庫へ降りるためのエレベーターの前に立つと、後ろから声がかかった。声をした方向に振り向くと、
ブリッジオペレーターのアビーがなにやら包みを抱えてやってくる。
「お久しぶりですね。といっても、戦闘の時以外に話す機会ありませんでしたけど。」
「ああ。アン、じゃなくて。君がメイリンの代わりに入ってそんなに時間もたってないしな。」
アビーは後からミネルバに配属になったため、他のクルーよりも話す機会がなかった。といっても、彼女もあまりおしゃべりなタイプでは
ないので会話をしても長く続かないことが多い。
「で、何か用? 」
「はい、これをシンさんに。こっちに来た時にシンさんやレイさんとははぐれてしまいましたので、MIA扱いになって一度部屋の備品を
整理させてもらってます。」
「じゃあこれはそのときの?」
「一部です。ただ、”ザフトの兵士”にとっては重要なものですよ。」
そう言って彼女が差し出したのは、”こちら側”に来てから一度も袖を通したことのなかった彼の赤い軍服だった。受け取って広げてみると、
滲み一つなくきちんとクリーニングされている。
「そうだよな、俺これを着てたんだよな…。」
「勝手に過去形にしないで下さい。今でも着る資格はありますよ。」
「どうだろ? 地上でいろいろへこむようなことばっかりだったからさ、正直な所エースだのエリートだの言われてもピンとこないよ。」
 地上での苦い経験が脳裏によぎり、彼は思わず苦笑いを浮かべる。そんなシンに、アビーはやさしく言葉をかけた。
「シンさんと同じように赤を着てた先輩が言ってました。この軍服は”決意の証”だって。」
「決意の、証?」
「はい。何かを守ろうとする熱い気持ち、どんな状況でも自分の望む未来をつかむために纏う”決意の証”だって。確かにエースやエリートが
赤を着ていることは事実です。でもその先輩が言うには、ザフトで最初に赤を着た人はそう言ってたらしいですよ。」
「”決意の証”か…。この軍服にそんな意味があったなんて知らなかったな。」
「実際にデザインした時にあったかどうかはわかりません。でもそんな風な意味があったほうが良いと思いませんか?」
 彼女の話を聞いて、シンは改めに自分の両手の中にある軍服に目を向けた。
 軍とは何か? そんなことも士官学校時代に勉強したこともあったような気もするが、今ではそれもまったく思い出せない。合法的に人殺しの
やり方を教える学校、人の命を奪うためにその術を磨く集団。普段の生活の中ではまったく必要でないそれを学ぶ彼らは一部の人たちからは
軽蔑の眼差しを受けることもあった。
 シンが軍に入ったのは力がないのが悔しかったからだ。そして軍に入って彼は”力”を得ることができた。そしてシンはそこで一度立ち止まった。

”力を得て、何をするのか”

そんな事考えたことも無かった。”力を得ること”が目的だった彼にとって、その”使い道”が明確になっていなかったのだ。
 しかしそれも過去の話、今の彼には力の明確な”使い道”が有った。
「”決意の証”か。そういうのも、悪くない。」
そう笑いながら、シンは軍服を握る手に力を込めるのだった。
410GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/04/23(木) 14:00:52 ID:???
第九十七話『そういうノリも、嫌いじゃねぇ』(中編)

 艦内に響く警報音に目を覚ましたルナマリアはすぐに機体のシステムを立ち上げ出撃準備に入る。立ち上がったばかりで
処理が遅い操作パネルを叩きブリッジに通信をつないだ。
「ブリッジ! 一体何があったの!?」
『イエーガーと思しき部隊がこちらに接近中だ! 数はMSが20、戦艦が1!』
 アーサーからの状況連絡を聞きながらルナは最早彼女の愛機となったインパルスの出撃準備を続ける。装備はキメラ
シルエットに換装済み、出撃の許可さえ出ればいつでも発進できる。
「先行して敵を叩くわ。」
『ま、待て! 他のパイロットはまだ』
「だから、先に出て時間を稼ぐのよ!!」
 彼女はそう言って通信を一方的に切る。アーサーは頭を抱え舌打ちをしつつもインパルスの発進シークエンスを続けさせた。
 ルナが発進して1分後、パイロットスーツに身をつつんだシンが格納庫に出てきた。未だ整備の最中なのか、
ディスティニーの左腕に数名のメカニックがついている。
「マッドさん! ディスティニーは!?」
「後10分時間をくれ!  左のビームシールド発生装置の調整が」
「それ使わないからそのままで良い!! それよりも早く発進できるようにして!!」
「しかし!」
「全部よければ良いだけの話です! 」
「…わかった、後5分だ!」
「お願いします!」
コックピットに入るとすぐにシステムを起動させていく。整備途中だったためか、機体の状況は決して良くないが、パイロットの
腕でどうにかできるレベルだ。
『おいお前、そんな状態の機体でだいじょうぶなのかよ?』
左手のソリュゴス・フルゴールの整備が終わるのを待つ間にGファルコンは発進準備を整えたらしく、赤い戦闘機がカタパルトへ
移動していく。そんな中、パイロットのパーラから通信が入ってきた。
「心配してくれるのか?」
『足手まといが出てきて、余計な手間がかかるのが嫌なんだよ。』
「それなら問題ない。足手まといにはならないし、なるつもりもない。」
『あっそ…。』
「それよりも、ルナのフォローを頼む。さっきのアンタの話じゃ、とてもまともに戦える状態じゃない。」
『言われるまでもねぇよ。あたしを誰だと思ってんだ?』
「俺はあんたの腕を知らない。アンタだって、俺の腕を知らない。初対面のアンタにこんなこと頼みたくけど、今回は敵も多い。頼む。」
『だからわかったって…。つか、お前はあいつのなんなんだ?』
「今はまだなんていって良いかわからない。…あえて言うなら、”相棒”だ。」
『…変なやつ。でもそういうノリも、嫌いじゃねぇ。』
 機体が発進体勢に入ると、パーラは通信を切って暗黒の宇宙へ翼を広げた。それと同時に、左腕の整備をしていたマッドから
準備OKの連絡が入る。
「さて、行くか!」
改めて気合を入れなおし、シンはエンジンの出力レバーを一気にMAXまで押し込んだ。
411GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/04/23(木) 14:03:35 ID:???
第九十七話『そういうノリも、嫌いじゃねぇ』(後編)

「敵はジェニスタイプが17、オクトエイプタイプが2、セプテムタイプが1。どれも改造されてる!」
フォースカラーのVPS装甲をまとったインパルスの中で、ルナマリアは静かに敵の戦力を分析していた。数だけを見ると圧倒的に
不利な状況だが、やらなければやられるだけだ。
「さて、冷静なのもここまで!」
 敵部隊の中心を一気に突っ切ると、機体を半回転させて敵の方向に向ける。
「まずはこいつで!」
 コックピット内に新設された左側のレバーを倒し、ロックオンカーソルを正面のスクリーン上に出現させる。初弾は元々
ブラストルシルエットに取り付けられていた大砲”ケルベロス”だ。
「こいつの威力は半端じゃないわよ!!」
キメラユニットはフォース用のメインスラスターにブラストルのケルベロスとソードのエクスカリバーをそれぞれ追加し、
バッテリーのエネルギー蓄積量を1.7倍まで増加させた装備である。
つぎはぎして創られたそれはとても使いやすいようには見えない。しかし、状況に応じた戦いも援護があってこそ
成り立つものだ。単機では敵がどこにいようとその距離で戦わなければならない。
「まずはこれで流れをつかむ!」
ルナマリアは一番端にいたジェニスに狙いを絞った。


 ミネルバを襲ったイエーガーはその宙域を縄張りとしている”アルター”というチームだった。チームのサイズとしては
中の上程度、その強さは革命軍の1個中隊クラスに引けをとらない。
「ほう、敵もなかなかのビーム兵器を持っているじゃないか。しかし!」
セプテムタイプに乗るリーダーは唇の端を上げて笑うと、左腕と一体化した筒状の装備をインパルスに向けた。その筒は
彼の機体の全長とほぼ同等の長さを持ち、なおかつ先端には回転衝角が取り付けられている。
「たとえどんな機体であっても、旧連邦の重装備型ガンダムの左腕を改良して作ったこのビックキャノン・ドリルの敵ではなぁい!!」
 先端のドリルが六つに割れゆっくりと放射状に展開していくと、中からは大口径のビーム砲が姿を現す。他のジェニスに攻撃を
仕掛けるインパルスに向けてリーダーは攻撃を開始した。
 一発目のビームをインパルスが回避すると、間髪いれず2発目3発目を放つ。ルナマリアが機体を操りそれを確実に交わす最中、
他のジェニスやオクトエイプがインパルスの動きを封じるべく鹵獲用のワイヤーを放ってきた。一本が脚を捉えた後は簡単だった。
腕に、胴体に、肩に、頭部に、次々にワイヤーが絡んでインパルスの動きを封じた。
「しまった!」
『おいパイロット。お前はここでコックピットごとこのビックキャノン・ドリルでぶち抜かれるのと、俺に忠誠を誓って機体を
明け渡すのどっちが良い!?』
身動きが取れなくなったインパルスにセプテムが取り付くと、機体の振動を通して直接声が届く。中年くらいの男の声だろうか。
どこか自分に酔っているようなそのしゃべり方にルナマリアは嫌悪感をむき出しにした。
「冗談でしょ!? 何であたしがあんたなんかに!! あんまり人のこと舐めるんじゃないわよ!!」
『ほう、パイロットは女か。ならコックピットハッチだけぶち抜いて、機体ごと連れ帰るか。そして、貴様にはこの俺の自慢のビックマ』
突然の衝撃がリーダーの言葉を止めたのは、そのすぐ後だった。
412通常の名無しさんの3倍:2009/04/23(木) 18:47:53 ID:???
支援?
413通常の名無しさんの3倍:2009/04/23(木) 20:18:12 ID:???
GX氏更新乙

回転衝角で青のイン○ルス思い出したw
414通常の名無しさんの3倍:2009/04/25(土) 19:01:31 ID:???
ちょい疑問、インパって見た目ガンダムだよな。すげぇお宝じゃね?反応が薄い気が
415通常の名無しさんの3倍:2009/04/27(月) 06:39:32 ID:???
保守
416通常の名無しさんの3倍:2009/05/01(金) 00:41:56 ID:???
保守
417通常の名無しさんの3倍:2009/05/02(土) 18:53:00 ID:???
保守
418GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/03(日) 17:17:53 ID:???
世間はGWですが、私は相変わらずの休日です・・・

第九十八話『真打は遅れて登場するもんさ』(前編)

パーラがルナマリアを発見したのはインパルスが四肢を鹵獲用のワイヤーで絡め取られた時だった。戦闘が始まってさして時間が
たたないうちに危機に陥ったルナマリアを見た彼女は顔をしかめて舌打ちをした。
「毎度毎度、世話のかかるやつだな!」
 そう言いながら彼女は操縦桿を操り、機体の進行方向をすこしだけ変更させる。狙う位置はインパルスの正面、つまり今
セプテムのカスタムタイプがいる位置だ。
「邪魔だ!」
 彼女がトリガーを引くと同時に両翼に取り付けられた2門の拡散ビーム砲からビームが打ち出される。1発はセプテムに命中し、
もう1発はインパルスの左腕を拘束しているワイヤーを断ち切る。さらに備え付けられているMS回収用の大型アームを
機体後部からだしてセプテムの前を通り過ぎると同時にインパルスを回収した。
「チッ! 余計なのがついてるからスピードがあがらねぇ!!」
インパルスを回収したものの、未だ6本のワイヤーが絡まったままだ。さらにそれを持っていたジェニス6機もいっしょに
引きずっている状態なので、スピードは上がるどころか彼らの逆噴射によって落ちはじめていた。
「こいつらぁッ!!」
『パーラ! あたしが迎撃するから機体を放して!』
「で、でも」
『でももテロもない! Gファルコンじゃ後の敵に攻撃できないでしょ!!』
「…わかった、あたしが戻るまでやられんなよ!」
 一度通り過ぎてから方向転換をして元の位置に戻ってくるまで約5秒。時間だけ見ればたいしたものではないが、戦場では
何が起こるかわからない。まばたきを一回する間すら惜しい時もある。パーラはルナマリアの無事を祈りつつアームから
インパルスを放す。インパルスはそれを待っていたかのように機体を反転させ、ワイヤーを持っているジェニス部隊に特攻する。
「やられるなんて、これっぽっちも考えてないわ!」
そう言いながらインパルスの左手にソードシルエットのシンボルとも言うべき大剣”エクスカリバー”を装備させると、
体に巻きついている6本のワイヤー全てを一度に断ち切った。
「言っとくけど!」
さらに自由になった右手にブラストルシルエットのビームジャベリン”デファイアント”を装備し、ジェニス2機の間をすり抜けると
同時に左右のそれぞれの武器で胴をなぎ払う。
「”赤”は伊達じゃないのよ!」
そして左のエクスカリバーを背中にしまいこみ、すり抜けたジェニス部隊のほうに振り向きながら左のサイドアーマーに納められている
対装甲用ナイフ”フォールディングレイザー”を投げつけ、こちらにメインカメラを向けたばかりのジェニスの頭部を貫いた。
「これで3機!」
メインカメラを潰されたジェニスに駄目押しのビームを数発見舞うと、ルナマリアは先ほどのリーダー機を目指して一目散に飛び出した。
「あ、あのバカまた勝手に突っ走る!?」
戻ってきたパーラは残りの3機のジェニスを撃墜するとすぐさまインパルスのあとを追う。機動性は圧倒的にGファルコンに分があるため、
わずか数秒でインパルスに併走した。
『コラー! 1人で突っ走るなって言ってるだろー!』
「…あと14機! …あと14機倒さなきゃ!」
『人の話を聞け!』
ルナマリアはパーラの言葉に返答せず敵部隊へ突っ込んでいく。それを見たパーラはがっくりとうなだれた。
「…やっぱあたし。今回は貧乏くじ引いたな、こりゃ。」
サテリコンからミネルバに乗り込んだのはわずか数名、パイロットは彼女のみだ。自分の運のなさにため息をつきつつ、機体を
加速させてインパルの後を追った。
419GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/03(日) 17:20:02 ID:???
第九十八話『真打は遅れて登場するもんさ』(中編)

「ガンダムめぇ!!」
ガンダムとその支援機と戦うことになったイエーガーチーム”アルター”は、数の上では20対2と有利なはずであった。
しかし蓋を開けてみれば既に6機撃墜されている。リーダーは顔をゆがませて奥歯を力一杯噛み締めていた。
「俺の、このコリー・マックス様のビックキャノン・ドリルを交わした挙句、仲間を6機も…! 許さん!!」
 怒りに満ちた瞳がインパルスを見つめていると、インパルスがこちらに向かって突っ込んでくる。敵はコリー機に
的を絞ったらしく、他の敵には目もくれない。
「来るか、望むところだ!!」
コリーは機体の左腕の回転衝角を起動させると、こちらに向かって突っ込んでくるインパスに向かって加速した。


「こいつが! こいつが!!」
 ルナマリアを乗せたインパルスは隊長機と思しき機体に突進していく。左手に先ほど抜いたデファイアントを装備し、
右手には腰にマウントしていたビームライフルを持っている。
「これ以上、絶対にやらせる物ですか!!」
ライフルで牽制しつつ、対峙した隊長機にデファイアントを突き出す。ルナマリアにはそれがセプテムの左腕を貫いた
ように見えた。しかし、実際は違った。
「甘ぁぁぁい!!」
左腕の回転衝角からの振動を感じながらコリーは嬉々の叫びを上げる。この回転衝角は先端がビームコーティングされており、
デファイアント先端のビームエッジを完全にはじいていたのだ。
「こいつは太いんだよ! 硬いんだよ! 暴れっぱなしなんだよぉ!!」
さらにコリーは回転衝角の回転数を上げ、一気にデファイアント本体の破壊にかかる。
異変に気づいたルナマリアが一端距離を置こうと後に下がるが、それ以上にコリー機が前進して距離はさらに詰まる。
「し、しまった!?」
「その首、もらった!!」
 デファイアント本体を弾き飛ばし、ほとんど距離のない状態でコリーはビックキャノン・ドリルの先端を開放して中の
大口径ビーム砲を準備する。狙う先は当然、ルナマリアの乗るインパルス。ビームが発射されるまでのコンマ以下のわずかな間、
銃口を向けられた側のルナマリアにできたのは機体をわずかに右にずらすことだけだった。
 着弾した衝撃がコックピットを激しく揺らす。ビームが命中した左肩は完全に破壊され、それから下の部分はインパルスと
反対方向に弾き飛ばされた。かろうじて致命傷を避けたものの、コリーは再度ビックキャノン・ドリルの銃口をインパルスに向けた。
「あの距離でよく胴体への直撃をかわした。しかしこれで、最後だ!」
 着弾の衝撃で未だ視界がゆがむルナマリアにもその姿ははっきりと見えた。先ほどは咄嗟に体が動いた。しかし今度はそうも行かない。

…ああ。結局私は、ここまでなんだな…。

銃口に光が灯るのがおぼろげに見える。最後まで自分の誓いを貫くと決めたときからいろいろとがんばり続けたが、終わりは
彼女が思っていたよりもかなり早く訪れた。まぁ自分でもがんばった方だろうと自画自賛しながら、彼女は体の力を抜いた。
『ルナァァァァァァッ!!』
眼前の銃口が火を噴くのが見える。しかし、その次の瞬間それは何かにかき消された。そして、同時に聞き覚えのある声が聞こえた。
420GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/03(日) 17:22:31 ID:???
第九十八話『真打は遅れて登場するもんさ』(後編)

「ルナァァァァァァッ!!」
 ディスティニーは攻撃を受けて吹き飛んだインパルスの左腕をつかむと、シールドを剥ぎ取ってセプテム側にビームコーティングされた方が
向くようにして投げ放つ。シールドは寸前のところでインパルスを攻撃から守り、再びあさっての方向へはじけ飛んだ。
「こいつ! ルナにッ!!」
背中にマウントされていた大剣”クラウ・ソラス”を両手に持つと、ディスティニーはそれまでのスピードにさらに加速し接近した。
「触るなぁぁぁぁぁっ!!!」
コリー機のビックキャノン・ドリルを上段から一閃し、まるで丸太を切るように切断すると、さらに返す刃でセプテムの胴を凪いだ。
 眼前でMSが1機爆砕する中、シンはインパルスに通信をつないだ。
「ルナ、ルナ! おいルナ!? 大丈夫か!? 返事しろ!!」
『…へ?』
完全に諦めていたルナマリアは未だ自分が生きていることをようやく認識する。そして目の前のスクリーンに見知った男の顔が浮かんでいることに気づいた。
『し、シン? ホントにシンなの!?』
「ああ、遅れて悪かったな。」
『…ホントサイテー、女を待たせるなんて。』
「真打は遅れて登場するもんさ。ッて、冗談を言ってる場合じゃないな。俺が前に出るから、援護頼む!」
「…オッケー、休んだ分しっかり働きなさいよ!」
 シンとルナマリア、さらにパーラの活躍により、戦闘が終了したのはそのすぐ後のことだった。


 ミネルバは再びミラージュコロイドを散布して隠密行動に入っていた。戦闘が終わり、自室に戻ったシンはMIA扱いで一時回収された私物の整理に当たっている。
「えっと、これはこっちで、これは…。」
あれこれと備品を整理していると、部屋の入り口からルナマリアが顔を覗かせた。ここ何日も袖を通していなかったいつものスカートに赤い
ザフトの軍服。彼女の姿は以前と変わっていない。いや、すこし頬がこけたように感じられる。
「ルナ? どうした?」
「いつ戻ってきたのよ…?」
「今から4時間前、かな?」
時計を横目に見てそう返答すると、彼女は彼の正面に立った。表情は怒りやら喜びやら感情が入り混じっているよう見える。
「まったく、心配ばかりかけて!」
「悪かったな。…ホラ、使いたかったら使え。」
 そう言ってシンが自分の肩を叩くと彼女はそこに顔をうずめる。それからしばらくの間、彼の肩の上で嗚咽の声が発せられ続けたのだった。
421通常の名無しさんの3倍:2009/05/03(日) 22:13:26 ID:???
使いたかったら使え。か…良い男になったもんだw
422通常の名無しさんの3倍:2009/05/05(火) 01:17:09 ID:???
GX氏更新乙

危なっかしいな、シンいなかったマジヤベエ
さて一息付いたら救助が待ってるが、もう1,2エピソードくらいあるか
423通常の名無しさんの3倍:2009/05/05(火) 11:00:10 ID:???
確かにシンとは思えないなw

そろそろラクシズが出て来るような気がするなー
地球に残して来た面々のことも気になるし…というか、ここの凸は本当に裏切らないのか不安で仕方ない
議長やレイも地球でなんかやってるわけだけど、タリアとかはそれについて知ってんのかな?
424通常の名無しさんの3倍:2009/05/06(水) 00:18:28 ID:???
シンが報告しないと知らないんじゃねえか?
425GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/08(金) 18:14:22 ID:???
本編もとりあえず一息ついたところで、GW特別企画を書いてみました。
世界感は去年の夏祭り編と同じです。
それでは行ってみよう!

ディスティニー in AW 特別編 温泉
第一話『平穏を乱す者達』(前編)

 日登市種志町、ここは特に目立った産業があるわけでもなく、特産物があるわけでもないごくありふれた静かな街である。
そこには町長として日夜町民のためにいろいろとかんばっている青年だったり、その青年と昔付き合っていた女性が子供達の
世話をしたり、孤児院で育てられた個性の強い子供達が毎日ケンカに明け暮れたり、死んだはずの妹と再会して家の中が妙に
騒がしい少年やその友達や政治家の娘や息子や歌姫や何でもできちゃうけど何にもしない男の子など、いろいろな人たちが
生活していた。

『…それでは次のニュースです。』
昼食も終わり、シンは食後のコーヒーを飲みながらリビングでくつろいでた。テーブルの反対側には彼と同じように妹の
マユがテレビを見ている。休みの日はいつもこのような形で彼らは過ごしている。
「暇だね。」
「…そうだな。」
 2人は同じ感想を漏らす。新聞も読み終わり、テレビもろくな番組をやっていない今、彼らはものすごく暇をもてあましていた。
「毎日ドタバタやるのは嫌だけど、こう暇だとやっぱり刺激がほしくなるね。」
「…そうだな。」
テレビを流れる映像を眺めながらシンは適当な相槌を打つ。彼にとって、今はわりと幸せな時間なのだ。家の外に
出ればうるさいやつらと出会って、ゆっくりできない。
『それでは本日最後の映像は、先日ロスト・グラウンド村に現れた移動温泉”ソレスタルビーイング”の映像です。』
 キャスターと変わって映し出されたのは巨大な戦艦の映像だった。それが地面におりたつと、いそいそと中からスタッフが
出てきて温泉営業の準備を始めえう。
「ソレスタルビーイング?」
「最近、各地を回って温泉を提供しているらしい。ロスト・グラウンド村は開発が遅れてるから、あーいうのが来るとそれだけで
人がいっぱいだろうな。」
 テレビには男湯でゆっくりと体を温める額に傷を持った青年や背中を洗う片目をつぶった赤髪の青年が映し出される。そのもう
一つ横にいた茶髪のオールバックの男性がリポーターから向けられたマイクににこやかに答える。
『湯加減いかがですか?』
『いや〜、最高ですね! 先日まで文化的な生活を送ってましたが、こういった温泉は文化的な生活の中にはない”癒し”が
ありますよ。しかしあれですね、やっぱり温泉は混浴に限りますよ。今入っているのは混浴ではありませんが、ここには
混浴もあります。そしてやはり混浴には女性といっしょに入るべきなわけで、さらに言うならば自分が好意を抱いている
女性を呼んで、そしてその女性を自分に振り向かせるためには何より速さ、速』
男が徐々にペースを上げて話し続ける中、映像は再度スタジオのものに切り替わり、最後のキャスターの挨拶と共にワイドショーは終了した。
「ソレスタルブーイング、この町にも来ないかな?」
「ソレスタル”ビ”ーイングだろ。誰にブーイングするつもりだ。」
そんな話をしていると、ふと窓の外が暗くなる。不審に思った二人は窓を開けて空を見上げた。そこには先ほどテレビで
見た戦艦がゆっくりと家の上を通過していく。二人はあんぐりと大きな口をあけてそれを見送った。
「お兄ちゃん、あれって…。」
「噂をすればなんとやら、ってやつだな。」
「…行く?」
「…行かないわけには、行かないな。」
2人は大急ぎで銭湯に行く際に必要なものをまとめると、家をでてソレスタルビーイングの戦艦”プトレマイオス”を追った。
426GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/08(金) 18:16:54 ID:???
ディスティニー in AW 特別編 温泉
第一話『平穏を乱す者達』(中編)

「イアン、各温泉の状態は?」
「営業開始の14時から10時間、今日の日付が変わるまで動かしっぱなしにして問題はないはずだ。」
紺色の着物を着た女将スメラギが整備を担当するイアンからの報告にうなずく。さらにそれぞれの温泉に待機しているスタッフに
通信をつなぐと、彼女は真剣な表情を浮かべた。
「各マイスター。聞いての通り、後はあなた達次第よ。接客はミッションプラン通りにお願い。」
『了解。』
『了解しました。マリーといっしょにがんばります。』
『オーケー、んじゃおっぱじめるとするかね。』
『了解した。』
通信モニターにはメガネをかけた男と長髪で切れ目の男、さらに西洋系の茶髪の男に中東の血の混じったまだわずかに幼さの
残る男が映っている。彼らはこの移動温泉”ソレスタルビーイング”が誇る4つの温泉を管理する”温泉マイスター”だ。
 女将は通信を切ると、彼女の後ろに控えていた3人の女性スタッフに向き直ると、先ほどとは打って変わって笑顔を見せた。
「さて、私達もがんばらないとね。うちの売りは全泉かけ流しのGN温泉だけど、受付の私達がしゃんとしないと、お客さんは
着てくれないわ。」
「はいですぅっ!」
左端にいたミレーナは元気よく返事をし、真ん中にいたフェルトも右端にいたアニューも大きくうなずく。女将に言われずとも、
そのことは彼女達も百も承知なのだ。
「それでスメラギさん。この町のお客様の情報はないのですか?」
「ワン・リュウミンからの情報だと、この辺り一体の住人は比較的若いそうよ。産業も目立ったものはなし、通常の若者対応で問題ないわ。」
「こ、この間のような人はでませんよね?」
 アニューの言葉にフェルトもスメラギも渋面する。先日訪れたロスト・グラウンド村で起こった珍事が彼女らの脳裏に浮かぶ。
「さ、さすがにあれはないかと…。」
「…さすがにあれは規格外だと思うわ。」
先日の事件、端的に言えば女湯に男が侵入し、他の客に不快感を与えたというものだ。しかもその手口がものすごく大胆なものだった。
「あの男の人、すっごい脚速かったですぅ。」
「まさかタオル一枚で女湯に乱入するなんて考えても見ませんでしたよ。」
「『俺の速さは誰にも止められないぜぇ!! ミノリさ〜ん!!』とか言ってましたよね。」
「まぁ、あの後特殊部隊の隊長さんが犯人捕まえたらしいし。大丈夫でしょう。一様、覗きとか盗撮とかが無いよう、ラッセを警備に
まわしたわ。」
そうこう言っているうちに営業開始の時間が迫ってくる。4人はそれぞれ自分の持ち場に着いた。


 シンとマユがプトレマイオスに着いた時には既に数名の客がカウンターで料金の支払いを済ませて奥へと向かっていた。ソレスタル
ビーイングが到着する直前にニュースで映像が流れたこともあってか、何の事前情報もなかったわりには人が集まっている。
「お兄ちゃん、こっちに温泉の紹介がしてあるよ。」
マユが指差した壁の掲示板を見ると、移動温泉ソレスタルビーイングにある4つの温泉についてそれぞれ特徴が書かれていた。
427GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/08(金) 18:20:11 ID:???
ディスティニー in AW 特別編 温泉
第一話『平穏を乱す者達』(後編)

ソレスタルビーイングが誇るGN温泉の特徴
@全泉かけ流し
“GNドライブ”と呼ばれる特殊なシステムを使っているため無限にお湯が出る
A効能
疲労回復、健康増進。その他それぞれの湯で多少の効能差あり

華の湯:GNドライブを二基つかった”ツインドライブシステム”を採用。広さは他の温泉の2倍。心を通わせることができ、
    人によっては何かが変わる場合あり

海の湯:混浴、温泉マイスター直々のマッサージサービス付

紅葉の湯:美肌の湯、また肩こり等を取るのに役立つ打たせ湯あり

氷原の湯:新陳代謝が活発になり、ダイエット効果あり。さらに、滅多に見られないが氷原の湯には幻の湯が存在する。


「…なんかすごそうだね。」
「…突っ込みたい所はいっぱいあるけどな。」
書かれているないように少しばかり不安を覚えながら2人はカウンターに向かった。
「いらっしゃいです! つかぬ事を聞きますが、二人は恋人なのですか!?」
前の客の応対をしていた受付の女性スタッフのうちの1人がいきなり彼らに質問をぶつける。男の方が変な声を上げて
あたふたと答えようとする中、女性の方が先にはっきりと答えた。
「はい。私はずっと彼の側にいます。」
「お、俺だってずっと側にいるって!」
「わ〜い! 乙女の勘が当たったですぅ!! しかもとってもラブラブですぅ!!」
「ミレーナ、お客さんにそんなこと聞いちゃ失礼でしょ。」
はしゃぐ女性スタッフをしり目にシンが質問された側のカップルに目を向けると、そこには彼のよく知った二人が立っていた。
「ガロード! ティファ!」
トレードマークの赤いジャンパーと長い黒髪とピンクのスカート。いつもの格好にいつもの組み合わせだ。違うのは
入浴道具一式をそれぞれ持っているくらいである。
「お、シンたちも着たんだ。」
「そりゃ地元にこんなのが来ればな。んでどこに入るんだ?」
シンがそう質問するとガロードはそうだなぁと思案を始める。するとティファが彼の袖を引っ張り、普段はあまり
意見を言わない彼女が自分から意見を出してきた。
「私は、ガロードといっしょに温泉に入りたい…。」
「そっか。…っていィィィいっ!? ティ、ティファそれってもしかして…?」
彼女は顔を下げて表情を隠しながらわずかにうなずく。おそらく今の彼女の顔は湯気が出るほど真っ赤になっているだろう。
「…あー、何でも良いから早くして…。」
「目の前でやられるとホントご馳走様だよね。」
目の前での恋愛劇にシンとマユはおろか、フェルトとミレーナすら言葉を失ったのだった。
428通常の名無しさんの3倍:2009/05/09(土) 19:01:09 ID:???
GX氏更新乙

リューナイト特別編的なイメージで脳内再生した
429通常の名無しさんの3倍:2009/05/10(日) 00:48:32 ID:???
続きに期待
俺はCDドラマの乗りかな
430GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/12(火) 16:13:46 ID:???
ディスティニー in AW 特別編 温泉編
第二話『警察行くか?』(前編)

無精ひげを生やした男は背中に背負っていたナップザックから双眼鏡を取り出し、自分の両目にあてた。その視線の先にあるのは
巨大な戦艦、通称”プトレマイオス”だ。
「さて、クライアントご希望のGNドライブはッと…。」
男は5階建てビルの屋上からプトレマイオス全体をじっくりと観察する。風になびくろくに手入れをしていないぼさぼさの赤髪が
浮浪者を思わせるが、彼の目は得物を狙うハイエナのようにギラギラと光を放っていた。
「外から見るだけじゃ、一体どこに何があるやら…。」
艦の入り口が正面にあるのは既にわかっているが、クライアントが所望したGNドライブとやらがどこにあるのか。上から見た
限りでは皆目見当がつかない。事前にクライアントから渡されたわずかな情報を元に彼は捜索を続ける。
「え〜と、GNドライブってのは湯の発生装置って話だったから…、どこか湯気が出てるとこは…。」
双眼鏡で戦艦の全体を確認した所、湯気の出ている箇所は全部で3箇所。GNドライブは全部で5個あるはずだが、別にどれを
回収しろと指定を受けていない。つまりどのGNドライブを持ってきても問題ないのだ。
「ったく、自前で作った擬似GNドライブじゃ満足できないからってよくやるよ。まぁ、傭兵の俺としちゃそんなことは
どうでも良いんだが。」
男の名前はアリー・アル・サージェス。傭兵を気取っているが、実際はどんな仕事でもこなすフリーターだ。過去の仕事は
多岐にわたり、時には警備員、時には誘拐犯、さらには神父をこなしながら戦闘員の教育をしたこともあった。
「さて、後は近づいてから調べるとするかね…。」
そう言って腰につけていたウエストポーチからワイヤーガンを取り出すと、目の前なる巨大な的に狙いを絞った。


「兄さん。」
「どうしたオルバよ。」
「これってさ、覗きだよね。」
「………。」
普段はどんなことにも動じないシャギアだが、このときばかりは閉口するしかなかった。
今彼らはプトレマイオスの上部でファイバースコープの準備をしている。ファイバースコープとは、光ファイバー
ケーブルを使った遠隔式カメラのことだ。使用用途として有名なものは人の臓器の状態を確認するために使う
胃カメラなどがある。
しかし、今回のフロスト兄弟のファイバースコープの使用用途はまったく違った。
「仕方あるまい。ロード・ジブリール氏とギルバート・デュランダル氏、さらにザイデル・ラッソに
ブラットマン卿からの依頼なのだから。」
カメラとモニターの接続部分をいじりながらどこか諦めたようにシャギアは愚痴をこぼす。今回の
仕事は彼らの本意ではない。しかし、現状の懐具合と今後の世界制覇に向けてもパイプ役を作る必要はある。
「依頼内容は”美女の裸体の映像を撮ってこい”だっけ。」
「ああ、しかもデュランダル氏はタリア・グラディスとという特定の女性のものだ。」
「というか、偉い人たちは金や権力に物を言わせてやれば良いんじゃないかと思うんだけど?」
「ザイデル・ラッソ曰く、”のぞきは別腹”らしい。」
現状の不満をぶちまけながら2人の作業は続く。しばらくすると、4つある温泉の全てにか向かってのびる
ファイバースコープの配置が完了した。
「3箇所が露天で1箇所が屋内。中途半端なことしないで、全部露天にすればよかったのに。」
「店側にも何か考えがあるのだろう。さて、客が入ってきたぞ。」
シャギアの言葉どおり、4つあるカメラの一つに2人の客が映し出される。2人は客の顔を確認した瞬間
、思わずモニターの電源を落とした。
「……兄さん。」
「…言うな。何も、何も言うな。」
客が入ってきたのは海の湯(※混浴可)、客は彼らのよく知るカップルだった。
431GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/12(火) 16:16:01 ID:???
ディスティニー in AW 特別編 温泉編
第二話『警察行くか?』(中編)

「驚いたな、先客がいたとは。」
アリーがそこに到着した時、既に彼らはそこにいた。彼らの前にはモニターが4つ、さらにそこから伸びる何かのケーブル。
誰が見ても妖しいと思うだろう。
「…兄さん、お客さんだよ。」
「む、”黒い稲妻”か。」
「へん、よしてくれ。昔の仇名だ。」
アリーは彼らの横に腰を下ろすと、モニターに映し出されている映像に目を向けた。
「なるほど。それぞれの湯、しかも女湯の映像かい。お宅ら、良い趣味してるね。」
「妻子持ちで同じようなことをやりに来たあなたに言われたくはないな。」
「おいおい、俺は妻子なんていないぞ? 俺様と結婚できるのはせ」
「”みさ×”…。」
オルバのつぶやきにアリーはビクッと体を震わせる。顔はポーカーフェイスをしているつもりなのだが、引きつっているのが
はっきりとわかった。
「な、何だよその”みさ×”ってのは?」
「あれ、おかしいな。知ってると思ったんだけど…。」
「オルバよ、”し○のす○”や”ひま△り”といった名前の方が世間ではしられているぞ。」
「わー! 和ー! ワー!! WAー!!!」
アリーは2人の口をふさぎにかかる。両わきに彼らの顔を抱えて口をふさぐ彼の表情には明らかに焦りがある。彼は動揺して
いるのは間違いなかった。
「わ、わかった。何でも言うとおりにするから!」
「じゃ、それはまたの機会ということで。」
「今は仕事に集中しよう。」
怪しげなアイコンタクトをする2人に内心歯軋りするが、この状況を打破する術が思いつかないアリーだった。


 一方その頃、シンは華の湯でGNを満喫していた。
「ハァァァァ………。」
湯加減も熱すぎず、ぬるすぎず。彼にとってちょうど良いお湯である。
「温泉なんて久しぶりだからなぁ…。」
華の湯は露天風呂になっており、上を見上げれば真っ青な空が、半円を二つ横に並べた湯船の外は一面にいろいろな花が
描かれている。”華”の湯というだけあって、そのグラデーションは見事なものだ。
「えーと、この温泉の効能は…。」
受付の横に掲示してあった掲示板の内容を思い出す。広さが2倍というのはおそらく他の温泉はこの半円の湯船が一つ
しかついていないのだろう。
「でも” 心を通わせることができ、人によっては何かが変わる場合あり”って一体何のことやら…?」
432GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/12(火) 16:17:41 ID:???
ディスティニー in AW 特別編 温泉編
第二話『警察行くか?』(中編)

くっ! やっぱりウエストの細さはお姉ちゃんにかなわない…!
パーラって、私より胸大きくないかしら…?
スタイルの良さに関しては完全にトニヤに負けてるな…
バランスではサラがベストよねぇ… 私はバストが大きすぎて…
メイリンさんみたいにもう少し身長が低かったら私も可愛く見えるのかしら…?

「ん?」
ふと声が聞こえたのでその方向に顔を向けてみるが、そこには男湯と女湯を隔てる壁しかない。今華の湯は彼以外には
誰も入っていないため、声が聞こえるはずがなかった。
「男湯と女湯は…完全に壁で仕切ってあるよな…?」
女湯の声が聞こえたのだろうと先ほどの壁の上のほうまで視線を移していくものの、壁で完全に遮断されていてる。
よほどの声でなければ聞こえてこないだろう。
「なんなんだ一体?」
シンは訳がわからず首をかしげた。


「氷原の湯に客が5人入ってきたよ、兄さん。」
「確認した。メイリン・ホーク、ルナマリア・ホーク、パーラ・シス、トニヤ・マーム、サラ・タイレルか。」
「つかお前ら、脱衣所にまでカメラ仕掛けてたのか…。」
目の前の兄弟の用意周到さにある意味感心しながらアリーはモニターに目を移す。しかし、4つあるカメラのどれにも
脱衣所の映像は映されていない。
「おい、どれで見るんだ? 氷原の湯ってぇのは?」
「脱衣所はマイクだけだ。」
「ハァッ? なんでマイクだけ?」
「ブラットマン卿からの希望だ。”女性が衣服を脱ぐ音を聞きたい”と。」
 アリーは開いた口がふさがらなかった。ここまで来ると常軌を逸しているといって良い。
「おいおいおいおい…。どこまでねじが飛んだやつらが集まってんだよ……!」
「まぁまぁ。僕達はただクライアントからの希望通りに」
「その希望内容がおかしいって言ってんだ!! 大体おかしいだろ!? なんで町を牛耳ってるドン共がそんなこと
してるんだよ!! 女を侍らせたかったら自分達の金とか権力とか無慈悲さとか強引さとかでどうにかすりゃ
良いじゃねぇか!!!」
「うむ。至極もっともな意見だ。」
「でも、忘れちゃいけない。」
 アリーが声を荒げる中、フロスト兄弟は事も無げにはなしを続ける。それまで大声を上げていた彼だったが、
2人のあまりに自信に満ちた表情にたじろいだ。
「な、なんだよ。」
「君のクライアントだって、おんなじことを頼んだのだろう!?」
「煤i゜ロ゜;)っ!! バ、バカ言うな!! おれは」
「俺は、何だ?」
『…?』
それまで聞かなかった4人目の声に彼らは顔を声の主に向ける。そこには黒い短髪の男と、丸い球体のついた
ロボットが3人を囲むようにならんだ並んでいた。
「とりあえずあんたら、警察行くか?」
三人は一目散に逃げ出したのだった。
433通常の名無しさんの3倍:2009/05/12(火) 19:40:43 ID:???
支援?
434通常の名無しさんの3倍:2009/05/13(水) 00:22:05 ID:???
後編が中編になってますよ
435通常の名無しさんの3倍:2009/05/13(水) 21:09:40 ID:???
GX氏更新乙

エライ人のかんがえることはわかんないや
436GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/18(月) 16:11:31 ID:???
ゴールデンウィークは終わったが話が終わってなかったので投下
それと訂正:温泉編の第2話だけタイトルが違います。
急いでて忘れてました・・・ ホントは『暗躍するも達』だったんすが・・・
ま、そんなことはおいといて第3話お楽しみください

温泉編 第三話『進化を求める者たち』(前編)

「何だ? 一体何が起こってるんだ。」
「艦の上で盗撮していたやつらを見つけたそうだ。」
疑問に対する答えを返したのは見知らぬ男だった。癖の強い黒髪に浅黒い肌、今までに彼がであったことのないタイプの顔立ちである。
「アンタは?」
「刹那・F・セイエイ。この華の湯の管理を任されている。」
「へぇ…。」
年齢は二十歳前後だろうか。少なくとも自分よりは年上だろうとシンは感じた。
「この湯に入っているとな、なぜだかわからないが回りの”声”が聞こえることがある。」
「回りの、”声”?」
刹那の言葉にシンは疑問符を浮かべる。話の内容がよくわからない様子でいるシンの顔を見ながら刹那は話を続けた。
「GNドライブはただの無限温泉発生機ではないと言う事だ。」
「いや、無限温泉発生機でも十分只者じゃないって。」
どこからどうやって湯泉を出すというのか。物理的な法則を完全に無視したそれを、ありふれたもののように話す刹那に思わずシンは
突っ込む。
 しかしその声を無視して刹那は何もない虚空に目をやった。
「…また声が聞こえてきた。」
「……俺もう上がります…。」
「待て、女達の話を聞きたくないのか!?」
「俺はそんなのを聞くためにきたわけじゃないし。」
 立ち上がって湯船から出ようとするシンを刹那は強引に引き止める。しかしシンはそれを意に介す様子もなく、風呂場を後にした。


一方その頃、華の湯の女湯では女性3人による会議が行われていた。
「で、カガリさんはこの湯の効果を”胸が大きくなること”だと?」
「ああ。だって” 人によっては何かが変わる”って書いてあったが、風呂に入ったからといって心が変わるわけじゃないしな。」
「私達としてはそれで権力闘争がなくなるのならそれでかまいませんけど…。”人は変わるもの”といっても、そんなに簡単に
変わるものではありませんわ。」
マユ、カガリ、ラクスは広い風呂にいながら一箇所に集まって話を続ける。それぞれ湯船の湯に髪がつからないように髪を上げているため、
三者三様に普段とは違う色気があった。
「なるほど。」
「まぁ、胸がでかくなるといってもそんなに大きくなるわけないけどな。」
「…カガリさん。たとえ1cm、2cmの話でも、胸が小さい私にとっては死活問題でしてよ。」
「そ、そそそうだったな…。」
ラクスは笑顔で話をしていたが、その後に一瞬かなりの怒気を感じた。カガリもマユも顔を引きつらせながら何度も頭を立てに振った。
「私としてはマユさんがうらやましいですわ。」
「え? 私はそんなうらやまれるようなことは…。」
「私がうらやましいのはマユさんがまだ成長の余地が残されているということです。私なんて…。」
先ほどとは打って変わって視線を下げるラクスにカガリとマユは思わずアイコンタクトを交わす。
437GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/18(月) 16:13:54 ID:???
温泉編 第三話『進化を求める者たち』(中編)

マユやばいぞ!
やばいですよね、これ!?

去年の夏祭りでゲストにも呼ばれず、なおかつカラオケ大会で優勝したあのミーア(巨乳)の件もあって、こと”胸”の
話では彼女はかなりデリケートになっている。このままではいろいろな方面に無茶な要求を出しかねない。
「ら、ラクス!毎日牛乳を飲むんだ!」
「あ、それ聞いたことあります! 毎日牛乳を飲むと胸が大きくなるって噂!!」
女性の間では”牛乳を飲んでいれば胸が大きくなる”という噂がささやかれている。その実際には医学的な根拠はないが、
その噂を実践する人間も少なからずいる。
「カガリさん。」
「な、なんだよ?」
「知ってますかカガリさん? それは医学的な根拠まったくないんですよ。さらに言うなら…。」
「さ、さらに言うなら…?」
ラクスの顔があがる。そこには”諦め”と”失望”と”軽蔑”が浮かんでいた。
「…私はそれを実践した人物を知ってます。」
「え、実践したやつを知っているのか?」
「はい。その結果、見事に玉砕したことも。」
「ぎょ、玉砕って…。」
サーと二人の顔が青くなる。さながら眠れる龍の逆鱗に触れたような感覚だ。
「才色兼備なその人は自分の唯一の欠点が”胸”だといっていましたわ。…確か仇名は”盗賊殺し”だとか”ドラマタ”だとか
”生きとし生きるものの天敵”だとか”触覚でハエを捕食する”だとか…。」
「な、なんか最後の方は人間じゃなくなってませんか?」
「私に聞くな!」
徐々にラクスの言葉にオーラのようなものがまとわりついていくのを感じながら2人は右往左往していると、不意に浴場の入り口が
ガラっと開いた。
「うぇ〜い! おんせ〜ん!」
「ステラさん、最初に体をお湯で流さないといけませんよ。」
「は〜い!」
のんびりとした子供のような無邪気な声と落ち着いた大人の声、親子連れだろうかと目を向けると、金のショートヘアーの少女と
長い黒髪をまとめた女性がいた。
「あ、ステラ!」
「マユ〜! いっしょにおんせん〜!」
一度体を湯で流したステラは湯船につかるマユたちの元へやってくると、マユの後から抱きついた。
「マユぽかぽか〜…。」
「ちょ、やめてよ。って、変な所触らないで!」
2人がじゃれ合う中、もう一人の黒髪の女性が彼女達の元へやってくると、ゆっくりと湯船に体を沈めた。
「すいません、ほとんど貸切状態のところをお邪魔してしまって…。確かあなたはオーブ産業の…」
「カガリだ、風呂に使っている最中まで肩書きを持ち出す気はない。そうだろう? 株式会社アザディスタン石油の女社長、
マリナ・イスマイール殿。」
「倒産寸前だった会社をようやく立て直したばかりですけど、ね。」
そう言いながら女社長と呼ばれた女性は穏やかに笑みをうかべた。
438GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/05/18(月) 16:16:51 ID:???
温泉編 第三話『進化を求める者たち』(後編)
 潟Aザディスタン石油。最近のエコブームや脱石油の風潮の中を必死にやりくりしている石油関連の会社である。国内超大手の
○菱や出○に比べると資本も少ないため、この不況のご時世をやっていくのはかなりきついのだという。
風の噂で聞いた話しでは国からの援助を得るためにあれこれ手を尽くしているということだった。
「国からの援助を得るための交渉がどうにかまとまって一息つきたいと思いまして。」
「そうか、いろいろと苦労しているんだな。」
会社内が荒れ放題でしたからね、とつらかったことを思い出したのかなみだ目になりながら2人は話を続ける。
そんな中、1人残されたラクスはおのおのの体のある部分を注視し続けていた。
「…? ラクスどこ見てる?」
その視線にいち早く気づいたのはステラだった。
「い、いえちょっと…。」
ラクスが思わず視線を泳がす中、ステラは視線の先にあったものについてそれぞれ感想を漏らした。
「マリナ、おッきい。」
「ス、ステラ? いきなり何を?」
「マユ、ちっちゃい。」
「ちょ、ちょっと…!」
「ステラ、普通。」
そういいながら視線を向けたのは彼女自身の胸だった。
「カガリ、…ステラよりちょっとおッきい。」
「ス、ステラそれ以上は」
「ラクス、ちっちゃい。」
『………。』
一瞬みなの顔が固まる。

Σ(゜□゜;;;) (゜□゜;;;)イッチャッターーーーー!!!

マユとカガリの心の声がハモったのは言うまでもなかった。


「気持ちよかったな、ティファ。」
「ええ。」
先に華の湯からでて水分を補給していたシンの目の前にガロードとティファがニコニコしながら現れた。いつも幸せいっぱいの
二人だが、今はさらに磨きがかかっている。
「どうだった? 混浴は?」
「…幸せいっぱい。」
「それはいつものことだろ ( ゜ロ ゜)つビシ」
「それに、マッサージがホントうまくてさ。」
二人の話ではマッサージ師は若いながらもかなりの技術を持っているとのことだ。今度またやってもらおうと二人はうれしそうに語る。
「…にしても、マユ遅いな…。」
スポーツドリンクのボトルを口に運びながらシンがぼやく中、マユやその他華の湯の女湯にいた面々がげっそりとした表情で
出てきたのはそれから3時間後のことだった。

マユ「今度からラクスさんとはいっしょにお風呂入らない!!」
マリナ「マユさん。人の乳房は医学的には8種類あって、さらに個人差も」
カガリ「騒動が終わった後にそんな講釈を述べたところでもう…。」
ステラ「ラクスナイチチー? 」
三人「Σ(゜□゜;;;) (゜□゜;;;) (゜□゜;;;)モウイワナイデーーーーー!!!」
チャンチャン♡
439通常の名無しさんの3倍:2009/05/18(月) 17:08:03 ID:???
世界が終わる音がした
440通常の名無しさんの3倍:2009/05/19(火) 07:03:47 ID:???
441通常の名無しさんの3倍:2009/05/19(火) 20:12:17 ID:???
GX氏の97話がまとめサイトで抜けているようだけど
GX-Pの管理人の方、見落としているのかな

442 ◆AWGx990A9U :2009/05/19(火) 20:27:18 ID:???
>441
うpったつもりになってた…報告THX!
443通常の名無しさんの3倍:2009/05/19(火) 20:43:13 ID:???
ガロティファの混浴描写はどうした!?
僕の気持ちを裏切ったな!w
444通常の名無しさんの3倍:2009/05/19(火) 22:43:50 ID:???
GX氏更新乙

シンさんは賢者モード入りすぎですよ
445通常の名無しさんの3倍:2009/05/24(日) 21:08:43 ID:???
保守
446通常の名無しさんの3倍:2009/05/26(火) 01:25:15 ID:???
>シンさんは賢者モード入りすぎですよ
もはや仙人の域かも知れぬ・・・
447通常の名無しさんの3倍:2009/05/27(水) 01:22:19 ID:???
枯れてるね
448通常の名無しさんの3倍:2009/05/29(金) 23:53:08 ID:???
保守
449通常の名無しさんの3倍:2009/05/30(土) 15:09:04 ID:???
むしろ刹那が女どもの話を聞かないのかなんて言ったことに
びっくりだ
450通常の名無しさんの3倍:2009/05/31(日) 00:41:10 ID:???
マリナが入ろうとしてたからだ
451通常の名無しさんの3倍:2009/06/02(火) 20:46:14 ID:???
保守
452通常の名無しさんの3倍:2009/06/05(金) 23:40:12 ID:???
保守
453通常の名無しさんの3倍:2009/06/06(土) 11:32:58 ID:???
保守
454通常の名無しさんの3倍:2009/06/06(土) 17:31:03 ID:???
誰もスク〇イドとかみさ×とかのネタにはつっこまないのか?
455通常の名無しさんの3倍:2009/06/11(木) 18:06:58 ID:???
保守
456GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/06/11(木) 19:54:22 ID:???
温泉編はまぁ、そのうちまたやりましょう。(やり損ねたも有るし)
それはともかく、ずいぶんと間が空いてしまいましたが本編続きをどうぞ

第九十九話『”仕方がない”ではすみません』(前編)

 かつて、戦争があった。
 一つのコロニーの独立運動に端を発した紛争が、地球全土を巻き込む全面戦争となったのだ。
戦争がこう着状態になって八ヶ月、宇宙革命軍は”コロニー落とし”を切り札に地球軍に降伏を勧告する。しかし地球軍は
それに応じようとせず、極秘に開発していた決戦兵器”ガンダム”を戦線に投入して徹底抗戦を選んだ。
 その結果、戦争は勝ちも負けもない悲惨な結末を迎えることとなった。しかし、その悲惨な結末の中でも戦い続けた二人の
戦士がいた。白いMSガンダムXで漆黒の宇宙を駆る地球連邦軍ニュータイプ兵士”ジャミル・ニート”、そしてもう1人は
紫紺のMAフェブラルで彼と激戦を繰り広げた宇宙革命軍ニュータイプ兵士”ランスロー・ダウエル”である。
 宇宙革命軍が強行したコロニー落としによって人類が生まれ育った地球が破壊される中、彼らはそれを気にも留めず戦い続け、
互いの安否もわからない状態のまま戦闘は”相打ち”という形で決着したのだった。


「地球から第一陣の同志達が帰還したか…。」
一日の職務を終えたランスローは上着をクローゼットにしまいながらポツリと呟いた。
 今日はその話題で軍も議会も持ちきりだ。地上の状況を調べるために祖国を離れて10年、コロニー落としでボロボロになった
地球と違い、コロニーはほぼ無傷で終戦を迎えている。それから15年。戦後の混乱が多少あったものの、彼らは着々と地球への
帰還の準備を進めていた。そして、調査隊の第一陣が無事にコロニー本国”クラウド9”へと帰還を果たした。彼らのもたらす
情報が今後の世界の方向性を大きく左右することとなるだろう。
クローゼットの扉を閉めると、彼はテラスに出て外の風景を見渡した。時間は夜の9時、周りのビルなどの明かりはぽつぽつと
ともっている程度で、車が走る音も聞こえない。夜は確実に深まっていた。
「いよいよ地球への帰還が始まるのだな…。」
 地球、宇宙から見るその姿はまさに”蒼く輝く宝石”といって過言ではない。前大戦時に一度だけ地球降下作戦に参加したことが
あったが結果は失敗、彼は生まれてからずっと母なる大地を踏んだことがなかった。
「ジャミル・ニート…。」
大地を踏んだことがない彼にとって、唯一のつながりといえるものが彼の好敵手ジャミル・ニートだ。直接の面識はない。また
どんな容姿なのか、どんな声なのかも知らない。彼のことで知っているのはサテライトシステムを搭載した”ガンダム”の
パイロットであり、ニュータイプであることだけだった。
「地球連邦政府が再建したという話もある。また、戦場で会うことになるかもしれんな。」
 終戦直後こそ彼に対して怨み辛みを募らせたが、今となっては不思議とそういった類の気持ちは浮かんでこない。15年という
月日の中で彼がそれを忘れたのか、それとも彼自身が大人になったのか、彼にとってはどうでも良いことであった。
 今ある気持ちは”彼に逢いたい”、”彼と話をしたい”という、まるで久しくあっていない親友との再会を切望するようなものだった。
「…かつての宿敵との再会を切望するとは、私も変わったものだ。」
4日後からは軍に新たに配属された新兵の教育任務を行うことになっている。前のように最前線で戦うこともあるが、回数は明らかに減った。
自身の内面と置かれた環境の変化を感じながら彼は部屋に戻ったのだった。
457GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/06/11(木) 19:57:04 ID:???
第九十九話『”仕方がない”ではすみません』(中編)

「さて、と。」
新連邦の技術力についての報告書を上長に提出し終えたソフィアは大きく伸びをした。シャトルに乗って丸3日、さらに報告書の作成に
2日。計5日間彼女はずっと座ったままでろくに体を動かすことができなかった。さらに、今回地球から帰還した面々はコロニーに入る
際に血液検査などを実施され、結果がでるまではろくに外出することもできなかったのだ。
「まったく、病原菌じゃあるまいし…。」
 確かにコロニー風邪などの伝染病で命を落とした同志もいた。コロニーという閉鎖空間で空気感染するような伝染病が蔓延する
ようなことが発生した場合はもう逃げ場所がない。
それはわかる、わかるが今回のこの鼻つまみ者扱いはいささか憤りを感じるものがあった。
「水際対策が大事とはいっても、結局感染する時は感染するのよね…。」
どんなに水際で菌の進入を防ごうとしても、顕微鏡などの機材を使わなければ見ることのできないものを駆除することは至難の業だ。
「まぁ終わったことだから、もう良いけど…。」
 そう愚痴をこぼしながら彼女は廊下を歩く。10年前彼女の日常だった世界は、今ではずいぶんと違って見えた。
「この廊下ってこんなに長かったかしら…?」
地上で潜伏していた研究施設は今いる建物よりも小さかったため、廊下が長く感じられる。シャトルで宇宙に上がりコロニーに戻って
きたというのに、地上にいた頃の感覚が未だに抜け切れないでいた。
「…あ、私は元々地上人、か。」
昔を思い出してソフィアは暗い表情を浮かべる。地上で、旧連邦政府が彼女にした仕打ちは今なお忘れることのできないものだった。
それは彼女の夫に成るはずだった人物にも、そして当時彼女のおなかにいた新たなら命にも被害をもたらした。
「15年か…。」
歩みを止めて窓から上を見上げるとそこには10年前とさして変わらないコロニーの風景がある。世界にとってはとるにたりない
時間かもしれないが、彼女にとっては大きな時間だった。


「ランスロー大佐、地上から戻ってきた同志たちの提出した資料をお読みになられますか?」
その質問に彼がうなずいてから10分、手のひらから口元まで積まれた紙の資料を持って女性の兵士が入ってきた。
「技術研究班、班長のソフィア・アディールです。資料をお持ちしました。」
「ご苦労。しかし、その量の資料にすべて目を通すのは中々骨の折れる作業だな…。」
彼女が持ってきた資料の量に驚きながらランスローは彼女が持ってきた資料を机の上に並べる。彼のデスクはそれほど大きな
ものではないため、3つに分けられた紙の山でデスクの3分の1が埋まってしまった。
「…最初に見たい資料の内容を言うべきだったな。」
「今回持ってきた資料は新連邦の軍備関係のみですが…?」
「…ふむ。」
そう言って彼は自分の椅子に座ると資料に目を通し始める。資料にはバリエントやガディールといった新型の情報が細かく
記載されており、新連邦政府の技術力がどれほどのものか読み取ることができる。
「ガンダムの資料はないのかね?」
「ガンダムについては、大戦時に大佐が大破させたサテライトシステムを搭載した新型ガンダムの試作機が製造されたよう
ですが、それについての資料は今回持ち帰ることはできませんでした。」
「なぜだ?」
ランスローは眉をひそめる。新連邦政府内に入り込んでいろいろな情報をあつめてきたはずなのに、なぜガンダムについての
情報がないのか。全体戦時に2度引き分けた経験のある彼にとっては”ガンダム”の情報は重要度が高いものであった。
「実は、太平洋のゾンダーエプタで製造されていた試作機はバルチャーに奪われてしまったのです。」
「バルチャー?」
「こちらで言う所のイエーガーと思っていただければわかりやすいかと。」
 その言葉を聞いたランスローの表情に落胆の色が浮かぶ。結局、新型のガンダムはハイエナ共に奪われてしまったというのだ。
新連邦が管理する研究施設の警備の甘さはかなりのものということになる。
458GX1/144 ◆nru729E2n2 :2009/06/11(木) 19:58:38 ID:???
第九十九話『”仕方がない”ではすみません』(後編)

「装備がよくても、使う人間がうまく扱えなくては元も子もないな。」
「同感です。」
ソフィアの言葉に溜息をすると、ランスローは積まれていた資料を机に置いた。ガンダムについての情報がないのでは読む価値がない。
「15年ぶりにサテライトシステムの起動を、しかもこの短期間で6度も確認したというのに…。」
 15年前の戦争時に偵察衛星のほとんどが機能停止していたが、当時革命軍が使用していた衛星網は完全に修復されている。たとえ
クラウド9が地球を挟んで月の反対側に位置するとしても、月からのマイクロウェーブは確認できた。
「マイクロウェーブ、ですか。」
「そうだ。前大戦を終結へと導いた大砲だ。」
 忌々しい過去を話しているはずなのに、ランスローの表情は明るい。ソフィアにはどこかこの状況を楽しんでいるように感じられる。
「前大戦時、大佐の機体はガンダムに破壊されたのでは? 」
「こちらもかなりの損傷を与えた。引き分けだ。」
「…そうですか。」
ランスローとは対照的に、ソフィアの表情は暗かった。
 マイクロウェーブ、彼女にとってそれはつらい過去と切っても切れない関係にあるものである。当時知人の娘が悲惨な目にあったことは
今でも忘れることができない。彼女達が心血を注いで作り上げたものを旧連邦は無理やり奪い取り、それを兵器として転用した。
 直接的な被害を彼女が受けたわけではない。しかし、彼女の幸せを粉々に破壊したことには変わりなかった。
「大佐にとって、”親”とは何ですか?」
「ずいぶんと、唐突な質問だな?」
「申し訳ありません。この所この事ばかり考えていたものですから…。」
そう言って彼女は顔を下げて表情を隠す。前髪と横からたれた長い髪に隠されて彼女の表情を読み取ることはできなかったが、ランスローは
彼なりの答えで答えた。
「親とは、尊敬すべき存在だろうと私は思う。子に命を与え、体を与え、さらに知識と経験と心を与える存在だ。」
「私は、子に命と体を与えることしかできませんでした…!」
「…そういう時代だった。仕方がないことだ。」
「”仕方がない”ではすみません!」
「……そうか。」
彼女の過去に一体何があったのか、それを知らない彼はただ頷くしかなかった。
459通常の名無しさんの3倍:2009/06/11(木) 22:41:14 ID:???
まさかの母親登場!どうなるティファ!!
460通常の名無しさんの3倍:2009/06/12(金) 23:21:49 ID:???
ティファ母か?原作じゃ一切触れられていないティファの過去、肉親登場か
これは期待せざるを得ない!
ガロード、2重の意味でがんばれ!
461通常の名無しさんの3倍:2009/06/13(土) 00:46:36 ID:???
GX氏更新乙

これはなかなか、切り込んできたなあ
462通常の名無しさんの3倍:2009/06/14(日) 16:25:28 ID:???

親子が会った時の会話に期待
463通常の名無しさんの3倍:2009/06/18(木) 00:59:41 ID:???
GJ、そして保守
464通常の名無しさんの3倍:2009/06/22(月) 01:16:37 ID:???
保守
465通常の名無しさんの3倍:2009/06/26(金) 11:46:10 ID:???
保守
466GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/06/30(火) 18:42:35 ID:???
祝100話! つうかとうとう大台に乗っちゃった・・・


第百話『”正面突破”が性分でね』(前編)

ガシャ!

 ガロードは戦艦の武器庫から頂戴したマシンガンにマガジンをセットした。宇宙服の中にはGコン、その他コックピット内でしばらくの間
生活するための非常食などは既に準備済み。後は行動を起こすだけだった。
 彼は今、地上から遠くはなれた宇宙にいた。ティファを宇宙革命軍の工作員達にさらわれて2日、彼はコロニーに帰還する第2陣の工作員達と
いっしょに宇宙へ上がった。無論、彼らも彼の同行をすぐには認めようとはしなかったが、新連邦が開発した最新鋭の”ガンダム”を手土産に
することで乗船を許されたのだった。
 宇宙に上がってすぐ、彼は戦艦のブリッジに出て地球を見下ろすことができた。戦後生まれの地上の人間としてはティファに続いて2人目。
その絶景に心を奪われながらも、着実に目的遂行のための準備を進める。彼の目的はあくまでティファを取り返すこと、工作員達が語る
ニュータイプについての話が気にならないわけでもなかったが、そんな話は今の彼にとってはどうでも良いことでしかなかった。
「まずはブリッジを制圧してクラウド9への行路データを手に入れる。んでもってそのまま艦を脱出、クラウド9まで一直線、と。」
 シャトルの中で3日間考えた計画は実にシンプルなものだ。シンプルではあるが、宇宙での活動経験が皆無であるガロードにとって不安は
尽きない。それに仕掛けるタイミングもタイミングであるために追跡部隊が現れることは確実だ。戦闘になることも大いに予想できた。
「ここは月の反対側、マイクロウェーブで脅すことも無理だもんな…。」
 クラウド9などのコロニー郡は、重力との兼ね合いもあって月とは地球を挟んで反対の位置に存在した。戦前はそれ以外にも多数の
コロニー群があったのだが、コロニー落としに使用されて地球に落下。またはコロニーごと爆破、さらにコロニー内に毒ガスを蔓延させるなど
してその多くが人の住めないものとなってしまっている。
「教えてもらった予備知識は置いておくとして、…行くか!」
今はほとんどのスタッフが自分の持ち場についており通路に人影もない。ガロードはブリッジを制圧すべく静かに行動を開始した。


ブリッジの制圧はいとも簡単に成功した。艦のクルー達がまったく抵抗しなかったわけではない。ガロードが抵抗できないように手を打っていたのだ。
「貴様…! やはり新連邦のスパイだったんだな!?」
こめかみに銃口を突きつけられた状態の艦長は苦虫を噛み潰したように顔をゆがませる。当然といえば当然の反応だった。10年かけて作戦を練って、
地球から多くの情報を持って帰還したというのに、最後の最後でこのような子供に良いようにあしらわれているのだ。
 彼よりもずっと年上の艦長としては悔しくて仕方がなかった。
「悪いねおっさん。俺としてはダブルエックスをあんたらに渡してもかまわないと思ってんだけど、俺の行きたいところに行かないって言うんなら
まだ渡すわけには行かないんだ。」
「クラウド9へ行って何をするつもりだ!? このスパイ風情が!!」
声を荒げる艦長に対して、ガロードは何食わぬ顔で言葉を返す。その視線の先には艦長が見ていない何かを見ていた。
「俺は新連邦のスパイじゃないぜ? ダブルエックスだって新連邦から奪ったもんだし。」
「な、なんだと!?」
「向かってくる障害は全部乗り越える。”正面突破”が性分でね。」
MS格納庫に着くと、ガロードは乱暴に艦長を振り払う。既に異変に気づいたメカニックスタッフ達がマシンガンを構えていたが、それを撃たせる間も
なくガロードはダブルエックスのコックピットにもぐりこんだ。
『あんたらには感謝してるぜ? 艦長さんよ! んじゃね!!』
外部スピーカー越しにクラウド7まで連れてきてくれた彼らに礼を言うと、ガロードはダブルエックスを発進させた。
467GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/06/30(火) 18:45:46 ID:???
第百話『”正面突破”が性分でね』(中編)

 あと少しでクラウド7へ到着する位置まで来ていたランスローの指揮する艦隊は、”ガンダム脱走”の知らせにすぐさま行動を開始した。
元々地球から亡命してきたガンダムを受け取るためにクラウド7へ来たのだ。仕事の内容が”受け取り”から”捕獲”に変わったことに
末端の兵士達は同様を隠しきれない様子であったが、ランスローは平静を保っていた。
「うろたえるな! たとえ新連邦の最新鋭のガンダムであっても、1機では何もできん!」
「し、しかし大佐。15年前、コロニー落とし作戦でコロニーを破壊したガンダムですよ!?」
「コロニーを破壊したのはサテライトシステムを搭載している白いやつだけだ! 他の可変型や重装備型はそんな驚異的な火力は
持っていない!」
 革命軍にとって、”ガンダム”は15年前の戦争でそのすごさを見せ付けられた存在である。その結果、ガンダムの性能には
尾ひれがついてしまい実際にどの程度の性能であるかは実際に戦ったものにしかわからないのである。
「実際に戦った私が言うのだ。おびえる必要は無い! それよりもMS隊発進準備、最悪コロニー内で戦うことになるぞ!!」
コロニーは壁一つを挟んで生と死が共存する世界である。その壁を破壊するということは”生”の空間が”死”の空間に侵食されることを
意味する。全て侵食されてしまうまでそんなに長い時間を必要とはしない。
もしコロニーの壁に穴があいてしまったら、コロニーの住民達の命が危険にさらされることになる。それだけは避けなければならない。
「大佐! 地球より脱出した同志達から通信です!」
「つなげ!」
 ランスローからの指示に通信士はすぐに戦艦からの通信をつなぐ。ブリッジ前面にあるモニターに宇宙服を来た同志達の姿が映し出された。
『大佐申し訳ありません! 我々の不注意でガンダムに脱走されてしまいました!』
「今ガンダムの位置は?」
『駐留軍が出て捕獲にでていますから、もしそちらから戦闘の光が確認できないのであればおそらくコロニー内に…。』
「厄介な…!」
危惧していた事態が現実のものとなっていた。コロニー内での戦闘、今回地球から宇宙に上がってきたガンダムのパイロットはその危険性を
承知しているのだろうか。地球でしか生活をしたことのない人間から見ればあまりに脆弱と言わざる終えないコロニーにいるガンダムに
ランスローは別の意味で恐怖を覚えた。


「こ、これは…?」
駐留軍に追い立てられたダブルエックスがついたのはコロニーの居住ブロックだった。窓と住宅地がそれぞれ交互に3組が並んで円を作っており、
天地が狂いそうな空間がそこに広がっている。
「こんな所に人が住んでいるって言うのか…?」
はじめているガロードにはその風景は異様なものにしか見えなかった。確かに窓から光が入るので朝と夜の区別もある。円柱型のコロニーが
回転することで遠心力を生み出し、擬似的に重力を作っていることもわかる。しかし、それまでまっすぐな地平線や水平線しか見たことの
なかった彼にとって、たった直径数キロの円柱の中に人が住んでいること事態が信じられない。
 だがそんなことに驚いている暇はない。後から敵の攻撃を受け、ダブルエックスは一気に壁に向かって降下していく。
「ええいっ!!」
徐々に壁との距離を詰めていくダブルエックスを操作しながらガロードは舌打ちをした。彼からすれば初めてのことばかりだ。状況の変化が
激しすぎてイライラが募る。
 後から迫るジェニスに対してダブルエックスは引き金を絞る。放たれたビームはジェニスの頭部を撃ち抜き、バランスを失ったジェニスは
コロニーの壁に激突し、爆砕した。
すると、状況は再び変化した。
468GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/06/30(火) 18:47:29 ID:???
第百話『”正面突破”が性分でね』(後編)

「な、何だ!!?」
ジェニスがコロニーの壁に激突、爆砕したことでコロニーの壁に穴があいたのである。直径約30m、その大きな穴から漏れ出す
空気の量は相当なものだ。
「わわ、わあぁぁぁっ!!」
地上ではそうそう出会うことのない強烈な風にダブルエックスは流され、コロニーの外に放り出される。操縦桿を操って
どうにか機体を安定させると、ガロードは大きくため息をついた。
「外にでちまった…。でも、一難去ってまた一難か…!」
 確かにコロニーの外に出ることはできた。しかし今度は、目の前にいる戦艦3隻を含む敵戦力と対峙することとなって
しまったのである。
「ティファへの道は、長くけわしいってか…? まるで俺の気持ちを試されているような気分だぜ!」
続々とセプテムが出撃してくる中、ガロードは戦闘を開始する。
ガロードは宇宙での戦闘は初めてである。重力下での戦闘と無重力下での戦闘は機体の制御が違うため、今までと違って
思うように機体を操ることができないことに彼は戸惑った。
「くゥゥゥゥっ!」
セプテムからの攻撃を回避はできるが、彼の思う通りには動かない。ダブルエックスの脚部のスラスター、さらに肩、
胸部、背中の羽、最後には顔のひげのウラにある廃熱用のファンまで使って機体の操作を試みる。
「このずっと落ちてるような感じ、何とかなんないのかよ!?」
思い通りに動かない機体を必死に操りながらセプテムを1機、また1機と撃墜していく。6機目を撃墜したあたりから、
ガロードはようやく地上での戦いと宇宙での戦いにおける操縦の”違い”を自覚し始めた。
「ここで、こうやって!!」
口に出しながらしっかりとその”違い”を意識しながら操縦を続ける。機体の動きは見る見る変化し、ようやく8割まで
機体を自由に扱えるようになった。
 通常、MSの操作を覚えるにはかなり長い時間を必要とする。戦闘が始まってものの10数分でそれをできるようになることはまずない。
地上で戦ってきたとはいえ、驚異的なスピードでガロードは宇宙での戦い方を覚えていった。
「ようやくなれてきたぜ…。今度はさっきまでのようには行かないぞ!!」
 そう言って気合を入れなおすと、ガロードはそれまで劣勢だった敵セプテム部隊に対して攻勢に出たのだった。
469通常の名無しさんの3倍:2009/06/30(火) 21:56:52 ID:???
100話おめ
470通常の名無しさんの3倍:2009/06/30(火) 22:05:54 ID:???
GX氏100話乙

次回はガロードフルボッコのターンか
471通常の名無しさんの3倍:2009/06/30(火) 23:08:26 ID:???
とうとう100話か、長いこと乙
コンゴトモヨロシク
472通常の名無しさんの3倍:2009/07/03(金) 00:23:52 ID:???
保守が振る如く
473通常の名無しさんの3倍:2009/07/03(金) 16:05:15 ID:???

474通常の名無しさんの3倍:2009/07/03(金) 21:05:54 ID:???
なにしろ、この板における種死SS創成期の頃からやってる作品だからねえ
これと0083クロス、それにX運命が種死SSブームの火付け役と言っても過言じゃない
475通常の名無しさんの3倍:2009/07/04(土) 07:00:39 ID:???
このスレからの参加なんだけど乙を送らせてくれ
476通常の名無しさんの3倍:2009/07/06(月) 12:55:27 ID:???
100話か…
思えば遠くまで来たものよ…GJ
477通常の名無しさんの3倍:2009/07/09(木) 23:58:41 ID:???
この先 どこまで行くのやら〜
478通常の名無しさんの3倍:2009/07/13(月) 14:54:42 ID:???
まぁ某ラジオ番組は近々放送回数900回になるらしいし・・・
100と言わず200,300、とがんばってほしい
479通常の名無しさんの3倍:2009/07/15(水) 19:13:01 ID:F2g0nSKx
->474
0083クロスってどこで読めるんですか?
480通常の名無しさんの3倍:2009/07/15(水) 19:23:31 ID:???
>>479
荒らされて潰された。
まとめサイトにならあるんじゃない?

481通常の名無しさんの3倍:2009/07/15(水) 21:58:34 ID:???
いや、まだあるよ
まとめサイトにリンクされている
482通常の名無しさんの3倍:2009/07/15(水) 22:53:29 ID:???
まだあるっていうか、とっくの昔に完結してるな
483GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/07/20(月) 19:30:22 ID:???
まぁ・・・うちがマイペースなだけです

第百一話『”あいつ”しかいない』(前編)

「クラウド7で戦闘ですか!?」
自室で休んでいたシンの元に飛び込んできたのはそういう内容の連絡だった。
地球帰還部隊の第2陣が、目的地をクラウド9からクラウド7へ変更したことに疑問を持ったサテリコンは、隠密行動ができる
ミネルバを状況確認のために出撃させた。本来はそのまま乗組員数名がコロニー内に侵入し情報を集めるはずだったが、
その前に事態が動き始めたのだ。
『ええ、それで一度あなたに映像を見てもらいたいの。』
「俺が、ですか?」
『あなたも地上から宇宙へ上がってきた人間でしょう。それに、傍受した通信の内容ではどうも”ガンダム”が
脱走したらしいの。』
「”ガンダム”が?」
“ガンダム”、”こちらの世界”で”最強”の異名を持つMSはシンの知る限り6機存在する。そのどれが宇宙へ
上がって来たというのか。
「グラディス艦長、俺出撃します。」
『ちょ、ちょっと待ちなさい! そんないきなり』
「わかりますよ。」
心当たりはある。無論彼以外の人物が来る可能性はあるが、それはほんのわずかなだ。その人物はある女性の
ためならば自らの命も顧みず、後先考えない行動をとるのだ。
「こんな馬鹿げたことをするのは、”あいつ”しかいない。」
ブリッジからの通信を一方的に切った彼は、一目散に格納庫に向かったのだった。


「こ、これはどういうことだ!?」
ランスローは驚きのあまり開いた口がふさがらなかった。先ほどまで目の前にいるガンダムは先ほどまで
満足に動くことができなった。しかし今は砲撃を軽やかにかわし、そのまま攻撃を加えて革命軍の兵士たちを
撃墜していく。先ほどまでの動きとは天と地ほどの差があった。
新人パイロットの教育に何度か携わったことがあるから言えることだが、このような著しい上達はまず
ありえない。
「たったあれだけで、宇宙戦闘の技術を身につけたというのか!?」
ニュータイプは死の恐怖によって覚醒するという説がある。今のランスローに”感じる”ことはできないが、
少なくともニュータイプではないだろう。
「ならば、パイロットの腕を素直に認めねばならんな…!」
地上にいたパイロットの中で、ランスローがその技量を認めた人物は1人しかいない。15年の時を経て、
いま眼の前に”2人目”が現れた。
「クラウダでるぞ!!」
ガンダムは包囲網を抜けてクラウド9への進路を取っている。ランスローはそれを阻むべく、動き始めた。
484GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/07/20(月) 19:32:50 ID:???
第百一話『”あいつ”しかいない』(中編)

 一方、宇宙戦闘にようやく慣れ始めたガロードは新たに2機のセプテムを撃破していた。
「これ以上あんたらに付き合っている暇はない!」
そう言うとスロットルレバーを一気に押し込み、背中のバーニアの出力を一気にMAXまで上昇させる。機体はあっという間に
トップスピードに達し、後方から迫るセプテムを引き離していく。
「じゃあねぇっ!!」
クラウド9までの道のりを考えると、これ以上機体のエネルギーを無駄にするわけには行かない。彼の目的はあくまで
革命軍に連れ去られたティファを助け出すことで、眼の前にいる革命軍を全機撃墜することではないのだ。
「ティファ…、今行くからなっ!」
 眼の前にどれだけの壁が立ちはだかろうともガロードは引く気はなかった。全てはティファのため、命をかけたいと
思う少女のために。
 しかし、今回の壁は今までにないほど分厚く、強大なものだった。
 1機のMSがダブルエックスの進路をふさぐ。突然現れた見たことのないMSにガロードは目を見開いた。
「な、何だこいつは!?」
あらわれたのは白いMS。頭部の形状はジェニスやセプテムに見られるモノアイ式の宇宙革命軍独特の形をしている。
しかし体は、特に四肢は今までの革命軍のMSとは明らかに違った。
まず目を引くのはその太さ、両腕の太さはDXの太ももより太く、両脚はダブルエックスの胴回りよりも太い。既に
ジェニスなどで機体の駆動システムの小型化は完了している革命軍が、これほどまでに四肢の太い機体を開発する理由は
ないはずである。
 不意に右腕が上がりダブルエックスを殴りつける。突然現れた新たなMSに驚いていたガロードはそれをもろに受けて
しまう。さらに攻勢に出ようとするその機体にガロードは覚悟を決めて攻撃の態勢をとった。


「…弱くはない。」
 ランスローは操縦桿を操りながら感想をもらした。機体も15年前に戦ったGXに比べてほぼ全ての面で性能が向上している。
パイロットの技術も十分一流で通用するレベルだ。
「しかしまだ青い!」
 機体の反応か、それともパイロットの反応か。いずれにしろランスローが動くよりもダブルエックスは1テンポ動き出す
タイミングが遅いのだ。
 もしこれがランスローであればギリギリのところで回避できる攻撃だが、それをダブルエックスは薄皮1枚を犠牲に
しながら回避している。
「それでは機体が持たんぞ! 次!」
攻撃の手を緩めればこちらも一撃をもらいかねない。そう感じながらランスローは攻撃を続ける。
 ビームの一撃がライフルをかすめる。機体に比べて装甲の薄いライフルは、たとえ直撃しなかったとしても十分な効果を
あげることができる。
「手ごたえあり!!」
思ったとおりダブルエックスは攻撃をライフル主体からバルカン主体に切り替え、背を向けて一気にこの場から離脱を図った。
「全機、ガンダムを確保せよ! ライフルは使わず、バルカンでコックピットを狙え!!」
パイロットに興味がないわけではないが、今の目的はあくまで”ガンダム”という機体の確保だ。相手もそれはわかっているのだろう。
でなければパイロットという危険か仕事をやったりはしない。
 自身が従えたセプテム10機のバルカン砲計20門がダブルエックスを狙い撃つ。今でこそビーム兵器にお株を奪われてしまったが、
元々はMSの武装の中では主力武器のひとつである。旧式でジェネレーター出力が小さな機体は今でもなお携帯型のマシンガンや
ガトリング砲を装備しているくらいだ。
485GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/07/20(月) 19:34:52 ID:???
第百一話『”あいつ”しかいない』(後編)

確かに1発1発の威力はビーム兵器とは比べ物にならないほど小さい。しかし、塵も積もれば山となるということわざもあるとおり、
それが積み重なれば十分に威力を発揮する。今となってはほとんど使われていないが、マシンガンからビームライフルへの移行期には
銃本体を持つ腕に独特の緩みや補正を持たせて効率的に弾を消費しながら敵を殲滅するシステムも存在した。
 そのシステムは大量に弾を消費すると共に、一定の範囲内の敵を残酷なまでに駆逐する。今ダブルエックスの置かれている状況は
それに酷似していた。
ルナ・チタニウム製の装甲が徐々に変形していく。一発当たった程度では変形しないその強固な装甲が、絶え間なく続く激しい砲撃に
金属疲労を起こし耐えられなくなってきているのだ。
ダブルエックスの包囲網は前後左右、さらに上下に展開し、シールドで一方向を防御しただけでは防ぎきれない。程なくして、
ダブルエックスは完全に沈黙した。
「よし、回収するぞ。」
バチバチと火花を散らしながらダブルエックスはその場で動かない。20門の砲門から実弾延べ4000発を受けたのだ。並みのMSならば
半分も受け切ることができないだろう。15年前もそうだったが、ガンダムの頑丈さは本当にたいした物である。
しかし、回収作業に入ろうとしたそのとき、再びダブルエックスはクラウド9へ向けて動き始めた。速度は先ほどとほぼ変わっていない。
あれだけの攻撃を受けたにもかかわらず未だにまともに動くことができるその頑丈さに感心しつつ、ランスローは舌打ちをする。
「まだ動けるのか!?」

こうなったら直接攻撃をして止めるしかないか…!

できるだけ損傷の少ない状態で機体を回収したかったが、ここまで攻撃を加えてなお動けるというのであれば、撃墜ギリギリまで
追い込むしかない。
「許せ、ガンダムのパイロット…!」
 クラウダはライフルを腰にがっちりと固定すると、照準を絞った。変な所に命中すれば撃墜しかねない。狙うは一点のみ。
 ロックオンカーソルがダブルエックスのバックパックを中央に捉える。もう逃げることはかなわない。
「今度こそ、最後だ!!」
引き金を引く。予定通り機体の右人差し指が稼動し、予定通りビームがライフルから吐き出される。さらにロックオンした箇所に
向かって正確にビームが軌跡を描く。
 ランスローが事は終わったと安心した瞬間、クラウダが撃ったビームが別方向から突然飛んできたビームによって相殺された。
さすがのランスローも一体何が起こったのかわからず、顔をこわばらせる。
「な…? 一体どこから!?」
 ビームは間髪入れずセプテム部隊を襲う。1機、また1機撃墜される中、ビームの飛んできた方向から驚くべきものが現れた。
「ガ、ガンダムだと!?」
深紅の翼に、青いボディ、さらに瞳から頬にかけてのびるまるで血涙のような独特のフェイスデザイン。ランスローが見たどの
ガンダムタイプとも違うガンダムが今彼の目の前に現れたのだ。
「な、何だ…? やつはいったいなんなんだ!!?」
新たに現れたガンダムはクラウド9へ向かうダブルエックスを回収すると単機ではとても出すことのできない速度で逃げ去っていく。
セプテム部隊が追撃をする中、赤い羽根のガンダムは現れてからものの数秒で彼の前から姿を消したのだった。
486通常の名無しさんの3倍:2009/07/20(月) 19:37:21 ID:???
あれはGファルコン!…あ、あれ?
487通常の名無しさんの3倍:2009/07/20(月) 21:49:09 ID:???
GX氏更新乙
すっごいカード入手の機会にグラディス艦長どうする?
488通常の名無しさんの3倍:2009/07/20(月) 22:43:48 ID:???
>>486
つまり運命がDXと合体するってことですね
489通常の名無しさんの3倍:2009/07/20(月) 22:55:39 ID:???
自らその姿を晒そう・・・!
デスティニーガンダム!

DXの背中に運命がへばりついているんだな?
490通常の名無しさんの3倍:2009/07/21(火) 17:11:12 ID:???
>>488
アッー!
491通常の名無しさんの3倍:2009/07/21(火) 19:08:04 ID:???
これがDXデスティニーだ!
492通常の名無しさんの3倍:2009/07/21(火) 19:19:01 ID:???
つか、地味にマシンガンのネタって
>>365じゃないか・・・?
493通常の名無しさんの3倍:2009/07/21(火) 23:28:42 ID:???
GJ、手ブレ補正がw上手い
494通常の名無しさんの3倍:2009/07/24(金) 16:03:01 ID:???
GジェネのOPでシンがツインサテライトを正面から受けていた件
495通常の名無しさんの3倍:2009/07/24(金) 20:53:44 ID:???
DX、何よりガロードの凄さを知ったミネルバのみんなの反応が少し楽しみだ。
コーディネーターはナチュラルよりも進化した存在、なんて幻想だということを
体現してるからな。まあ多少は味わっているだろうけど、改めて思い知ることに
なるだろう。
496通常の名無しさんの3倍:2009/07/25(土) 20:48:52 ID:Bl8KxPfX
>>494
俺も見たw
アレは正直無茶すぎる・・・というかサテライトキャノンの威力舐めすぎだろ・・・スタッフ・・・
あんなことしたら相殺するどころか一方的にシンが消滅するw
497通常の名無しさんの3倍:2009/07/25(土) 22:39:00 ID:???
ゲームのパルマはGジェネPの頃からダークネスフィンガーとタメ張ったりして演出面で優遇されてるからな
今回のフィニッシュの演出もモロにヒートエンドだし
498通常の名無しさんの3倍:2009/07/25(土) 22:52:29 ID:???
はいはい、サテライトキャノンを受けられるパルマを破壊した隠者のサーベルが最強最強(棒読み)
499通常の名無しさんの3倍:2009/07/26(日) 06:56:37 ID:???
>>498っ…
すっかり洗脳されちまって…
500通常の名無しさんの3倍:2009/07/26(日) 08:43:41 ID:???
たかがゲームの描写くらいでムキるなよ
ただでさえUCだけでも40年以上の技術格差がある機体が一同に会してマトモにぶつかり合う作品なんだから
501GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/07/28(火) 18:56:53 ID:???
Gジェネの発売が待ち遠しい・・・と言いつつネタ投下
良いじゃないですか。パルマもツインサテライトも格好良いからALL OK!!で

第百二話『因果なものだ…』(前編)
 報告を終えたランスローは先日ソフィアに持ってきてもらった新連邦軍の軍備に関する資料を見直し始めた。理由は単純明快、
ガンダムの情報がほしかったからである。
「…やはり、あの赤翼のガンダムの情報もないか…。」
見終わった資料の束を片付けながら彼は顔をしかめる。新連邦が開発したガンダムは1機のみ、しかし彼が見た新たなガンダムは
2機、これは一体どういうことか。明確な答えが出ない状況にイライラが募った。
「…失礼します。第2陣の同氏達が提出した報告書があがってきましたので、持ってまいりました。」
 部屋に持ってこられた資料は計7.5束、それぞれ一般的な電話帳2冊を束ねたほどの分厚い束が彼の元に届けられる。第1陣の
報告書を持ってこられたときは顔を曇らせたが、今回はそうではなかった。少しでも情報がほしいのだ。
「ご苦労、そこに置いておいてくれ。まだ第1陣の報告書を全部見終わっていないのでな。」
士官たちをねぎらった後、ランスローは黙々と報告書を読み続けた。その目には最早ガンダム以外に映っているものはなかった。
「まったく、因果なものだ…。」
 ガンダム、15年前にそのつながりは切れたはずだったのに、今彼はこうしてガンダムの情報を欲している。あの時の宿敵、
15年前自らの限界まで力を出して戦ったあの相手にもう一度会いたい。”恋焦がれる”とはこういう心境なのではないかとふと
彼は思った。
「…これでは、15年前とまったく変わらないな……。」
 15年前、初めての遭遇からGXの攻略法を研究した時期もあった。今やっていることはそれとなんら変わらない。齢を重ね大人に
なったはずの自分が、以前の自分に戻っていることに気づき、彼は苦笑した。
 とそのとき、ドアをノックする音が聞こえた。音に気づいたランスローが入室を許可すると、先日話をしたあの女性技術士官が
入ってきた。
「ソフィア・アディール、入ります。」
「ご苦労。早速だが、これを見てもらいたい。」
 肩までのまっすぐな黒髪を首の後ろで小さくまとめたソフィアはランスローから2枚の写真を手渡される。そこに写っていたのは
2機のMSであった。
「これは…、ガンダム!?」
「そうだ。そちらの黒い機体が、新連邦が開発した最新鋭のガンダム、通称”ガンダムダブルエックス”だ。」
「これがバルチャーに奪われた機体ですか。」
「戦績は報告書に載っている。実際に戦ってみても十分強かった。」
「後一歩の所まで追い詰めたと聞いていますが…?」
 何かしら事件が起こったという情報は水滴が落ちた水面に広がる波紋のように一気に広がっていく。まだ1日しか経っていないと
いうのに戦闘の経過や結果がすでに広まっていた。
「耳が早いな。」
「今回のような珍事はめったにありませんから。」
確かにそうだとランスローもうなずく。任務完了を目前にして捕獲した獲物に逃げられる。これでは宇宙革命軍の最高責任者である
ザイデルの顔に靴を投げるようなものだ。
「私が総統の顔に泥を塗ったのは間違いないな。しかし、今回はさらに珍客がいた。」
「それが、この赤い羽根のガンダム…。」
 そう呟きながらソフィアは写真をじっと見つめる。白い四肢に青い胴体、さらに深紅の翼。胴体や四肢には見覚えがなかったが、
翼には見覚えがあった。
「この機体…。」
「第一陣のシャトルに取り付いた機体、か?」
ランスローの発言に思わず彼女は顔をこわばらせる。予想通りの反応にさして驚いた様子もなくランスローは話を続けた。
「ニコラから聞いた。宇宙へ上がる際、赤い羽根のMSに追われたとな。まぁ、シャトルに取り付くほどの速度を出すとは、
思っても見なかったがね。」
 眼の前で加速された時はランスローも自分の目を疑った。あんな速度が今の技術で出せるのか、今でも不思議で仕方がない。
502GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/07/28(火) 18:59:09 ID:???
第百二話『因果なものだ…』(中編)

「となると、2機とも新連邦軍の新型と考えるのが妥当か。」
「し、しかし新連邦が開発したガンダムはこの」
「ダブルエックスだけではない様だぞ。」
そう言ってソフィアの言葉をさえぎり、彼女に報告書のあるページを見せた。そこにはこう書かれていた。

巡洋艦打ち上げ時に新連邦軍と一時交戦。その際、4機のガンダムタイプのMSを確認。

「よ、4機!?」
「どうやら、新連邦政府は15年前の作った以外の系譜を持っているらしい。1機は可変方、1機は特殊型、そして残りの2機は
フラッシュシステムを搭載しているらしい。」
ランスローの言葉を聞いたソフィアは報告書に目を走らせる。確かにそこにはフラッシュシステムを搭載したと思しきMSの
情報が書かれていた。1機は灰色のドーム状のバックパックを持つ機体。そしてもう1機は全身をほぼ黒で統一した4枚の翼を
持つガンダムだ。
「そ、そんな…!? 新連邦にニュータイプが…?」
「信じられないかもしれないが、これが現実だ。」
驚きのあまり、ソフィアはランスローに言葉を返すことができなかった。


「ガロードの奴、無茶しすぎなんだよ…!」
医務室で治療を受けているガロードを心配し、シンは医務室のドアのところで待っていた。ダブルエックスから運び出されたガロードは
機体同様ボロボロの状態だった。左腕には深い切り傷、さらにコックピット内の空気も悪かったために軽い一酸化中毒になっていた。
「まったく、あの子悪運が強いわよね…。」
 シンの傍らにいたルナマリアはあきれた様子でそこにいた。ガロードに対して特別な興味を持ったわけではないが、やはり眼の前で
人に死なれると良い気分はしない。
「なんだよ、悪運が強いって?」
「だってそうじゃない? あのままだったら楽に死ねたかもしれないじゃない? 私は生殺しにされるくらいなら、いっそ楽にしてもらいたいわ。」
「…あいつは簡単には死なないさ。」
そう言ってシンは苦笑した。ガロードの死、それそのものが想像できない。ガロードの場合、ティファが側にいないのならばたとえ
一度死んでも三途の川を泳いで戻ってくるくらいの根性はあるだろう。
「あいつは馬鹿だからな。」
「…それ、どういう馬鹿?」
「あきれるくらいの馬鹿。」
シンの言葉にルナマリアは疑問符を浮かべる。”馬鹿”という言葉で卑下していながら、それを語る表情はとても明るい。”馬鹿”という言葉にも
いろいろな意味があるが、今回の”馬鹿”の意味は彼女には図りかねるものがあった。
「……まぁなんにしても、今まで私が会ったことのないタイプの人間って訳ね。」
「この艦にも”あっち側”にもいなかったタイプの人間さ。大切な人のために自分のことなんか全部放り投げて行くような奴だぞ?」
 その分周りに迷惑を掛けるけど、そう心の中で付け足しながらシンはガロードについて語る。楽しそうに彼のことを語るシンに対し、ルナマリアは
拗ねたような表情を浮かべた。
503GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/07/28(火) 19:00:48 ID:???
第百二話『因果なものだ…』(後編)

「…つまんない。」
「は?」
「つまんないよ。だってシン、私のことぜんぜん見てくれなんじゃん! ミネルバに戻ってきて、サテリコンで戦うからって
機体の整備とかがあるのはわかる。けど、それにしたって久々会ったんだから、もう少し会う時間を作っても良いんじゃない!?」
 そう言って彼女はシンに詰め寄った。
彼のいない間、彼女は必死にミネルバを守ってきた。それに対しての報酬があっても良いんじゃないか。あれだけ苦しい日々を、
あれだけつらい日々を過ごしてきたのだ。これくらい甘えても神様は許してくれる。彼女はそう思った。
「ルナ…。」
 眼前に迫るルナに対し、シンは圧倒される。彼女は本気だ。しかしそれと同時に、彼女が今どれほど危うい状態なのかを
改めて感じた。
女性が男性に対して甘えるしぐさをするのは間々あることだ。シンもその行動を否定する気はないし、彼女から頼られていることを
考えると悪い気分にはならない。しかし彼女はパイロットであり、戦士だ。戦場では他力本願は命取りになる。
「こりゃ、責任重大だ…。」
「シン、私はあなたの分までこの艦を守ったのよ。だから…」
「ストップ。」
そう言ってシンはルナマリアの言葉をさえぎった。目線を外し、眉間にしわを寄せて困り果てた様子の彼にルナマリアは容赦ない
言葉をぶつける。
「なによ、結局私のことなんてどうでも良いわけ!?」
「そうじゃないって! たださ、もう少し落ち着いてからそういう話しないか?」
「今十分落ち着いてるじゃない!!」
どんどんと声のトーンが上がる彼女に対し、シンはなだめるようにやんわりと言葉を返す。しかし、シンもそんなに我慢強い人間ではない。
次第に両方ともけんか腰になっていった。
「だから、こんな廊下のど真ん中で声を出して話す話題じゃないだろうって言ってんだ!!」
「アンタが私のことを見ないのが悪いんじゃない!? それとも何? レクイエムを攻撃する時に私を守るって言ったのは嘘だったわけ!!?」
「そうじゃなくて、俺はお前に対してのお礼というかお詫びというか、いろいろ考えてんだよ!! まだ決まってないけど!」
「まだ”決まってない”? まだ”考えてなかった”の間違いでしょ!!?」
「ハァ!? おまえ俺が必死に元気付けて今の状態に回復したって言うのになんて言い方だよ!?」
「元気付けた!? 一回肩借りて泣いただけじゃない!!」
「なにをっ!!」
「なによっ!!」
彼らのケンカはそれからしばらくの間続いた。
「…これはケンカするほど仲が良いって奴?か」
「多分、痴話ゲンカだと思います。」
シンとルナマリアがいる廊下のすぐ側の曲がり角のところでパーラとアビーはこの様子をじっと見守りつつ、静かに深くため息を
ついたのだった。
504通常の名無しさんの3倍:2009/07/29(水) 22:53:00 ID:???
GX氏更新乙

ルナマリアさん餓えてたんだな色々
505通常の名無しさんの3倍:2009/08/05(水) 12:04:47 ID:???
保守
506GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/08/08(土) 14:23:51 ID:???
Gジェネウォーズやってみました。
2日でデスティニーガンダムを生産登録できました

百三話『あの子を連れ戻しに来た』(前編)

 ティファがクラウド9へ連れ去られて1週間が過ぎた。その間に工作員の第2陣が戻ってきたことを彼女は知っている。また、
その中に地球から上がってきた彼女のよく知る少年が乗っていたことも知っていた。そして、その少年が今クラウド9とは
別の場所にいることも。
「ガロード…。」
 彼女にあてがわれた部屋で何度この名前を呟いたことだろう。たった1週間、時間にして168時間会っていないだけだ。
しかしそれでも、彼女の表情には陰りがあった。
「…食事、置いておくわね。」
今日もティファはベランダに出て外を眺めている。いや、外というよりももっと別の何かを見ているといったほうが
良いかもしれない。毎回食事を運ぶソフィアはそう感じた。
「残さず食べてね。」
「…はい。」
 彼女達の会話はいつもこの程度のものだった。ソフィアは彼女ともっといろいろなことを話したいのだが、中々一歩を
踏み出せないでいる。扉を閉めて配膳用のカーゴを押しながら彼女は大きくため息をついた。
「何やってんだろ、アタシ…。これじゃただの召使じゃない…。」
 他人から見て今の二人の関係は”お客様”と”お世話係”にしか見えないだろう。この件が進展しないのは自分の
せいだなと自重しながらカーゴを配膳室へ戻すと、彼女は自分の部屋へと足を向けた。
「関係は、相変わらずのようだな。」
「…大きなお世話です。」
 途中でニコラが後から現れて声をかけてきた。その内容が内容だけに、彼女は露骨に不機嫌な表情を浮かべた。
「まぁ、物事はそううまく運ぶものではない。じっくり時間をかけていけば…。」
「じっくり時間をかければ? そんな悠長なことを言っていて良いんですか?」
 ニコラの言葉に彼女はとげのある言葉で反論する。いつになく反応がきつい彼女に戸惑いつつもニコラは穏やかに
言葉を返した。
「何か問題でもあるのか?」
「ランスロー大佐が取り逃がしたガンダム、そしてその時に現れたもう1機のガンダム。この2機の関係は
わかりませんが、目的はおそらく彼女です。」
「彼女を助けるために単身宇宙へ上がったと言うのかい?」
 さすがにそれはないだろうとニコラは否定したが、ソフィアは違った。
「ニコラさんは大佐がガンダムを取り逃がした際に現れたガンダムがどんな形をしていたかご存知ですか?」
「いや。そういう情報だけで、実際にどんな機体だったかまでは…。」
「私達第一陣が戻る際にシャトルに取り付いたMS、覚えてます?」
ニコラも補助ブースターにしがみついたままの”あのMS”を直接見ている。ニコラも頭の中で線がつながったらしく、
表情がまじめなものに変わった。
「まさか…。」
「おそらくそのまさかですよ。大佐の話では逃げる際にいきなりスピードが上がったそうですから。」
「それで、シャトルに追いついたと?」
「多分。」
ソフィアの話はあくまで仮説であり、それを裏付ける証拠はない。しかしそれを承知の上で彼女はさらに続けた。
「彼らは、あの子を連れ戻しに来た。そんな気がするんです。」
507GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/08/08(土) 14:26:21 ID:???
百三話『あの子を連れ戻しに来た』(中編)

 治療の終わったガロードは未だ目を覚まさなかった。死に至るような外傷もなく、また病気にかかったわけでもない。ただ今回の
ケガの程度が今までに経験したものに比べてひどかっただけだ。既に三日、眠り続けている。
「ガロードの奴まだ起きないのか?」
「ドクターの話じゃ、いつ目が覚めてもおかしくないって言ってたけど…。」
パーラとシンは並んでガロードにあてがわれた部屋へ向かっていた。いつもならばシンの横にはルナマリアがいるのだが、先日の
痴話げんか以来彼らは口を聞いていない。
「つかシン、とっとと謝っちゃったほうがよくないか?」
「俺は謝りに行ってるよ。ルナが取り合ってくれないだけだ。」
「…ハァ、そりゃ大変なこって…。」
「ルナはああ見えて気難しい所あるからさ。ま、こっちが心配かけたんだから向こうが許すまで謝りにいくさ。」
パーラは彼の置かれた状況に内心同情しながら横を歩くと、程なくして目的のガロードの部屋へと到着した。
「さて、今日も起きないのかね…?」
「眠り姫じゃあるまいし、そんなわけないって。」

『キャァァァァッ!!』
パシィィィンッ!!

突然の悲鳴とその後の音にシンとパーラは顔を見合わせた。音のしたのは目の前のドアの向こう側から、つまりガロードの部屋の
中からだ。
「ガロード!!」
「一体何があった!?」
スライド式のドアを開けると左頬に手形をつけたガロードが飛ばされてくる。無重力の中では勢いが衰えることがないため、
飛んできた彼はそのままの勢いでパーラの胸に顔から突っ込んでいった。しかしそれでも勢いをなくならず、二人は廊下の向かい側の
壁に叩きつけられる。
 背中から壁に叩きつけられ、正面から胸部に突撃を受けたパーラは痛みに顔をゆがませて体を丸めた。一方ガロードも顔を押さえて
もがくように足をばたつかせている。
「い、一体何がどうなって…?」
「こいつがいきなり抱きついてきたのよ!!」
1人取り残されたシンの疑問に答えたのは部屋から出てきたルナマリアだった。先ほどの悲鳴を聞いただけで彼女だとわかったが、
一体何があったのかは見当もつかない。眉間にしわを寄せて怒り心頭の彼女は話を続ける。
「その子の様子を見に着たらなんか苦しそうな表情をしてたのよ。んで、私が顔を近づけたところにガバッと!」
「…抱きつかれたわけだ。」
「胸に顔をうずめてきたのよ!!」
「アー…。」
 どういった状況なのか理解できたシンは思わず左手で目を覆った。
 おそらくガロードはティファの夢でも見ていたのだろう。連れ去られた彼女が眼の前に現れて思わず抱きついた。そして、
その抱きついた相手がルナマリアだったのだ。
「んで、思わず力いっぱい引っ叩いたわけだ。」
「そりゃそうよ! 人の胸に気安く触って!!」
 確かに気安く触って良いものじゃないなと納得しつつ、シンはガロードに目を向ける。ルナマリアによってつけられた
左頬の赤みはいまだに取れていないが、体は問題なく動くようだ。所々包帯を巻いているが、五体満足には違いない。
「ったく、ローレライの海でティファに抱きついた時といいルナに抱きついたことといいパーラの胸に突っ込んだことといい、
ラッキースケベというかなんと言うか…。」
「…好きでやったわけじゃないって…。て、シン!?」
 どうにか痛みが落ち着いたのか顔を覆っていた手をどけると、目の間にいたシンに驚きの表情を浮かべた。
508GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/08/08(土) 14:28:44 ID:???
百三話『あの子を連れ戻しに来た』(後編)

「シン、お前なんでこんな所に!?」
「あ、そういや宇宙に上がるときに挨拶する暇なかったもんな…。まぁ事情は後で説明するから、その前に。」
そう言ってシンはガロードを自分の背中側にいる二人に押し出す。そこには腕を組んで彼を睨みつけるルナマリアと、ようやく痛みが
治まって立てるようになったパーラが彼に向かって険悪な視線を送っていた。
「謝れ、”気安く胸触ってごめんなさい”って」
「ゴ、ゴメンナサイ…。」
 二人の刺す様な視線に思わずガロードは頭を下げたのだった。


「そっか、それで…。」
「まぁ、そういうことだ。」
 互いに現状を話したガロードとシンは格納庫に向かっていた。二人の後ろにはパーラとルナマリアもいっしょにいる。
「でもさ、お前も無茶するよな。好きな子の為に単身宇宙に上がるなんて。」
パーラはガロードが宇宙に上がってきた理由を聞いて目を丸くした。横にいるルナマリアも同じように驚きを隠せない。
「そうか?」
「確かに普通はやらないな。」
「やらない。」
「やらないわね。やってもらったらそれはそれでうれしいけど。」
 さも当然のように話すガロードに対して、シンもパーラもルナマリアも首を横に振った。
「そっか、俺の意見って少数意見なんだ…。」
「その行動力には感心するけどな。」
そう話をしていると程なくして格納庫へ到着する。パーラがガロードの手を引いて整備班の班長の下へ向かう一方、
シンとルナマリアは入り口付近で足を止めた。
「…ねぇ、シン。」
「ん?」
「私もしさらわれたら…。」
「そもそもルナをさらう奴なんて来ないよ。」
「ちょ、ちょっとそれひどすぎない?」
「なんで? 別にルナがさらわれないとは言ってないぜ?」
「え?」
 シンの言葉の意味をどう取っていいかわからなかったルナマリアは顔をしかめる。それに気づいたシンは明後日の
方向を向いて話を続けた。
「ル、ルナは自分で身を守れるだろ? ティファみたいにか弱くないし。」
「…そーいう意味か。」
「ま、万が一でもそんなことはありえないさ。」
俺が守るから、と彼は最後にこっそり言葉を付け足したのだった。
509通常の名無しさんの3倍:2009/08/09(日) 20:11:33 ID:???
GX氏更新乙

この後例の展開に移るのか、それとも宇宙編の幅が広がるか期待が膨らむな
510通常の名無しさんの3倍:2009/08/09(日) 22:58:06 ID:???
乙、そしてGJ
もどかしいよ…もう一人のアディールさん
511通常の名無しさんの3倍:2009/08/14(金) 12:36:28 ID:???
保守
512通常の名無しさんの3倍:2009/08/18(火) 16:44:01 ID:???
GX乙。
513通常の名無しさんの3倍:2009/08/20(木) 16:36:56 ID:???
保守
514通常の名無しさんの3倍:2009/08/27(木) 21:04:54 ID:???
保守
515GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/08/29(土) 12:15:31 ID:???
申し訳有りません、会社で配置転換にあって
ショックで書くことができませんでした・・・
今日から夜勤です・・・ 贅沢いってられんけど

第百四話『まどろんでる暇はなさそうね…!』(前編)

 宇宙は漆黒そのものだ。その中で星々が輝きを放たなければそこになにがあるかわからず、触れるまで何も見つけることができない。
 地球は太陽系で3番目に太陽に近い距離にあり、地球上の生物が生活するうえで必要な光が十分に届く範囲に存在する。そして、それは
人間が地球を離れて宇宙に住むようになってからも変わっていない。しかしそんな中で、人間達は自ら光を生み出すことに成功した。
しかしそれは太陽の光とは比べ物にならないほど小さく、かすかなものである。
 そのかすかな光を見つけたのは小惑星群の多いエリアを巡回していた宇宙革命軍の戦艦だった。本来宇宙のゴミたる小惑星は太陽から
光が当たらぬ限り光を受けることはない。しかし、その小惑星は違った。
 赤、緑、黄色といった色の光がそこかしこで点滅している。太陽の光に照らされたからといって小惑星がそんな色の光を放つはずことは
ない。まして、光の当たらない裏側ではなおさらだ。
 その小惑星は回りに点在するいくつもの小惑星に比べてかなりの大きさがある。抵抗組織が基地にするに足る大きさだろう。
 このことはすぐに宇宙革命軍本部へ伝えられた。彼らが後にとる行動はいたって簡単なものだ。”病原菌の巣は潰す”、それだけであった。


「ウヒョーッ! やっと直ったー!!」
先日の戦闘でボロボロになったダブルエックスの修復作業が終わったという連絡があったのは今朝のことだった。ミネルバに保護された
時には全身穴だらけになっていた装甲はすべてきれいに整形されなされており、今の姿を見たら誰も蜂の巣になったなどとは思わないだろう。
「これでようやく、ティファを助けに行けるっ〜〜♪」
機体に飛びついてほお擦りする彼を見ながら整備班の面々は満足げな表情を浮かべた。
「どうやら、ご満足いただけたようで。」
「そりゃアンだけ苦労したんだ。満足してくれなきゃ困るよ。」
大きく息を吐くヴィーノも肩をすくめるヨウラン、他の機体の整備もいっしょにやっていたため整備班の仕事量は普段の3割り増しだった。
今回の仕事量は今まで例がない。
「コラ二人とも、まだ他の仕事は残ってんだからな。優先順位の低い奴を後回しにしてたぶん、これからはそれをきっちり片付けてもらうぞ。」
「ゲ……。班長そりゃないですよ!」
「俺たちここんとこオフが全然無いじゃないですか。」
「今までが生ぬるかっただけだ。」
マッドは二人の言い分を一蹴し、仕事に戻るよう指示を出す。その様子を見ていたシンとルナマリアは苦笑いを浮かべた。
「あ~あ、また怒られてる。」
「メカニックは普段の仕事が大事じゃない。当然よ。」
「俺たちは、有事の際に命がけか。ま、戦艦に乗っている以上いつでも命がけなんだろうけど。」
「有事が起こらなければ良いのに…。」
 ルナマリアの口から出た言葉にシンも神妙な表情を浮かべた。
 有事の無い世界、つまり戦争の無い世界が確かに一番望ましいだろう。戦争で家族を喪ったシンはそれを痛いほど知っている。ガロードのいた
地球でも、パーラのいた宇宙でも多くの人達が戦争の中で命を落として行った。
“人が人の命を奪う”世界は間違っていると思う。しかしその一方で、彼は別の意見を持っていた。
「ルナの言うとおり有事なんて起きない方が良い。けど、有事は結局人間同士の意見の不一致が原因だろ? だから、おそらくずっとなくならないと思う。」
シンはそれを言葉にすることがつらかった。”戦争の無い世界”を自ら望みながら、それが所詮夢物語なのだと認めてしまった。それが悔しくもあり、哀しかった。
516GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/08/29(土) 12:16:55 ID:???
第百四話『まどろんでる暇はなさそうね…!』(中編)

「人が進化の中で手に入れたものが、こんなカタチで仇になるなんてね…。あ〜あ、いっそ鳥に生まれればよかったかなぁ。」
「それも違うよ。」
「へ?」
シンは彼女の意見を再度否定する。2度も意見を否定された彼女は不機嫌そうに顔をしかめた。
「何よ、私の意見が聞けないの?」
「そうじゃないって。犬も猫も、鳥も魚も、植物だって、結局戦ってるんだ。ただ戦っている内容が違うさ。」
 人間以外の生き物は”生きるために他を押しのける”だけだが、人間は”相手を滅ぼす”。民族、文化、宗教など、”自身の信じるもの
以外を認めない”と考えるところが人間にはあった。
「主義主張が違うから相手を認めないなんて、人間だけだから。」
「それ以前に動物や植物に主義主張を語る頭があるのかしら?」
「さぁね、それは当の本人達に聞かなきゃわからないよ。」
シンは肩をすくめる。実際、動物や植物の気持ちなど自分達に判るはずが無いのだ。それに考えをめぐらせた所で、結局は堂々巡りに
しかならないだろう。
 先ほどまでダブルエックスに頬擦りをしていたガロードはパーラから受け取ったノーマルスーツを見て笑っている。
渡したパーラも笑顔だ。
「あんなふうに誰もがわかりあえたらきっと幸せなんだろうけどな。」
「そうね。あの二人みたいに単純なら…。」
「…ルナ、今さりげなくひどいこと言ったな。」
「褒めてるのよ。」
 2人は互いの言葉に思わず苦笑する。戦争を回避する手段。それは実に簡単で、とても難しいことだ。
「ガロードみたいにみんながバカ丸出しだったらそれもそれで困る。けど…。」
「けど?」
「そのまっすぐな所は見習わなくちゃな。」
 戦いの中で生きている彼らにとって、その瞬間はとても穏やかな時間だった。しかし、それは突如終わりを迎えた。
 
ドォオォォンンッ!!

突然の衝撃と轟音に二人の表情は一変して戦士の顔となる。
「敵襲か!?」
「まどろんでる暇はなさそうね…!」
 ついさっきまで談笑していた二人、その穏やかなひと時を惜しむ気持ちを押し殺しながら二人は出撃すべく準備に入った。
517GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/08/29(土) 12:18:35 ID:???
第百四話『まどろんでる暇はなさそうね…!』(後編)

「司令、とうとうここも発見されたようですね。」
『仕方ないさ、いずれは見つかると思っていた。…よそ者のあなた方を巻き込んでしまったことはすまないと思っている。』
「勘違いをなさらないで下さい。」
『何?』
「私達は巻き込まれたからといって後悔はしません。今は生き残ることだけを考えましょう。」
『…そうだな。今は眼の前の問題を片付けるとしよう。健闘を祈る!』
「ありがとうございます。」
サテリコン総司令マフティーに敬礼で答えるとタリアは帽子をかぶりなおした。司令部からの連絡では敵は巡洋艦クラスが7隻、
搭載MSは少なくともその3倍はあると見て良いだろう。気を抜いていてはまず生き残ることのできる戦いではない。
「乗組員各位に通達! 本艦はこれより第一種警戒態勢に移行する。アーサー、本艦はアロアナが出港後に発進、シンとルナマリアは
先行して敵を食い止めさせて。」
「了解!」
ブリッジを遮蔽し艦内は戦闘時特有の緊迫した空気に包まれていく。今までいくつもの死線を潜り抜けてきたとはいえ、それが次に
つながるとは限らない。まったく同じものを創ることができないようにまったく同じ事象も存在しない。タリアは正面のメインスクリーンに
映し出された映像を見ながらどう戦うかを必死に考えていた。


『シン! ダブルエックスはまだ伝送系統の最終チェックが済んでいないんでな、悪いがすこし時間を稼いでくれ!』
「具体的にどれぐらいですか?」
『7、いや5分で良い!』
「了解!」
 小惑星内に創ったサテリコンの基地が5分で陥落することは無いと思うが、万が一ということもある。マッドからの連絡を聞き、
コックピットで出撃前のシステムチェックをしながらシンは軽く息を吐いて気合を入れなおした。
「ルナ、聞いての通りだ。」
『オーケー。ま、切り込み隊長ってことでしっかりやりましょ。』
司令部からの情報では革命軍は新型のMSを投入してきているという話だ。楽観できる状況ではない。しかし、
変に緊張する必要も無いだろう。まずはいつもどおりにやることが重要だ。
「死ぬなよ。」
『誰に言ってんのよ。私も赤よ。』
「ここじゃ赤も緑も関係ない。みんな同じ、生きている人間だ。」
『グ…、それを言われちゃ何も返せないじゃないの。』
 ルナマリアからの不満の声を右から左に聞き流しながらシンはチェックを完了させると、機体がカタパルトへ
移動を開始する。機体がわずかに振動するのをコックピットで感じながら緊張を高めていく。
 革命軍はサテリコンの拠点を潰す気なのは間違いない。となると、やることは一つだ。
「もうこれ以上、俺は大事な人達を喪うわけには行かない。」
地上では多くのものを失った。得たものがあるのも事実だが、だからと言って喪って良いわけではない。
「シン・アスカ、ディスティニー、行きます!」
“絶対に守る”という決意を胸にディスティニーは漆黒の宇宙へと翼を広げたのだった。
518通常の名無しさんの3倍:2009/08/30(日) 20:29:16 ID:???
乙、仕事頑張って下さい。もちろんSSも。
519通常の名無しさんの3倍:2009/08/31(月) 01:21:40 ID:???
投下あった!楽しみにしてるのでご自分のペースでのんびりお願いしますね。
520通常の名無しさんの3倍:2009/08/31(月) 11:12:33 ID:???
遅ればせて投下乙。
521通常の名無しさんの3倍:2009/08/31(月) 20:18:57 ID:???
GX氏更新乙

以前のこともあるし、体には気を付けて頑張って下さい
522通常の名無しさんの3倍:2009/09/04(金) 00:02:17 ID:???
投下乙、GJ
頑張り過ぎないようにな、心身ともに
523通常の名無しさんの3倍:2009/09/10(木) 18:52:10 ID:???
投下乙。
体にお気を付けて。そして保守
524通常の名無しさんの3倍:2009/09/12(土) 17:53:54 ID:???
保守
525通常の名無しさんの3倍:2009/09/13(日) 21:44:15 ID:???
保守は一刻を争う
526GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/09/15(火) 15:19:07 ID:???
518>>525
保守ありがとうございます。ンじゃ今回も張り切っていこう

第百五話『あたしらチームだろ?』(前編)

『ちょ、ちょっとこの数半端じゃないわよ…!?』
「革命軍がそれだけ今回の作戦を重要視してるってことだろうな。」
ミネルバの発進に先行した形で宇宙に出たシンとルナマリアは宇宙革命軍の物量に言葉を失った。
 宇宙革命軍の戦艦から次々とMSが発進する。ざっと数えてその数40機以上、サテリコンの主力艦アロアナから数機のMSが出撃し
防衛に当たっているがとても守りきれるものではない。
『あの白いの、新型の”クラウダ”ね。』
「全部新型でそろえるなんて、今回の部隊は金が掛かってる。」
シンは軽い口調で話しているが、表情は真剣だ。物量では圧倒的に不利、さらにこちらは”拠点”という大きな足かせを
持っている。こちらが援護をもらえるのはありがたいことではあるが、それ以上に敵にとっては大きな的なのだ。
「…ルナ。」
『わかってる。切り込んで奴らの陣形を崩すんでしょ?』
「一騎当千とまで言わないけど、まずは敵の戦意をそぐ!」
『OK、しっかり働いてらっしゃい。』
ディスティニーは加速する一方、ルナマリアの乗るインパルスは減速しその場で静止した。今回の装備は砲撃戦用の
”ブラスト”、長距離からの砲撃や敵を追い込むミサイルが主力の装備だ。
「まったく、結局突撃君は変わってないじゃない。」
 地球で機体の改造を受けたといっても、対艦刀はそのまま使い続けている。大振りで彼女からすれば使いづらい所も
あるのだが、彼はそれを振り回し戦果を上げてきた。
「それじゃ、まずは挨拶代わりの一発を…!」
 対して彼女はザク時代からオルトロスなどの大砲を使っている。これもまた癖の強い武装ではあるが、少なくとも
彼女にとっては使いやすかった。
「いっけェェッ!」
丸と十字のロックオンカーソルが重なり機体が敵を捉えたことを電子音で知らせる。ルナマリアは間髪いれずトリガーを引いた。


 シンとルナマリアが基地の外で戦い始めたころ、ガロードはようやくノーマルスーツを着て格納庫に現れた。マッドは彼らを
見つけると大声で現状を伝える。
「機体の最終調整は終わってる! 存分にやってくれ!!」
「わかった! あんたも早くノーマルスーツを!」
「ああ! ダブルエックスが出るぞ! 全員退避だ!」
 整備班のクルーが一斉に引き上げていく中、ガロードはいつものようにGコンをグリップスイッチに叩きつけてシステムを
起動させる。既に外では戦闘が始まっている。悠長に時間を費やしている場合じゃない。
「アビー! ダブルエックス発進準備OKだ! ゲートを開けてくれ!!」
『了解、ダブルエックス発進シ−クエンスに移行します。』
 通信機越しにブリッジに連絡を入れると、それまで肩部を固定していたアームが機体を持ち上げ、ダブルエックスを
発進ゲートまで運んでいく。フリーデンとは違うオートメーションシステムにガロードは目を丸くした。
「ひぇ~、なんかスッゲーなコリャ…。」
ダブルエックスの足を固定し戦艦側の発進準備が整うと、ゲート上側にある発進用の状態表示ランプが赤から緑へと変化する。
そこから先は今までと同じだ。
『ダブルエックス発進、どうぞ!!』
「了解! ガンダムダブルエックス、出るぜぇ!!」
さっき機体を起動させるために叩きつけるようにして取り付けたGコンを今度は目いっぱい前に押し込む。正面スクリーン左下に
あるバーニアの推力ゲージが上昇すると機体は瞬く間に宇宙へと飛び出していった。
527GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/09/15(火) 15:22:26 ID:???
第百五話『あたしらチームだろ?』(中編)

『パーラ! 例の物は準備済みだからな!』
「ホントに大丈夫なのかよ?」
『シミュレーションじゃ問題なく行った。後はお前次第だよ。』
「人任せのシステムってどうなんだよ!」
ヴィーノとヨウランからの言葉にパーラは頼りないなと頭を抱えながら彼女は発進準備を進める。戦闘機はMSのように小回りがきかないため、
今回はミネルバが完全に出港してからの発進となる。ミネルバは既に小惑星のゲートからその体のほとんどを出しており、Gファルコンの
発進まではもうあとわずかだ。
『それから掛け声忘れるなよ!』
「掛け声?」
『そーだよ。”レッツ〜”とか”チェンジ〜”とか”ゴー〜”とか』
「するかんなモン!」
 パーラは強引に格納庫との通信を着ると、本来コアスプレンダー発進用のゲートから機体を宇宙に躍らせたのだった。


「こいつら、並みの装甲じゃない!!」
頭部バルカンで牽制をしながらシンは舌打ちをした。
 革命軍の新型”クラウダ”。ジェニスやセプテムなどを髣髴とさせる革命軍独特の形状をしたその白い機体は、今までに戦ったどの
量産機よりも強いと思う。何より信じられないのはビームの直撃を受けても平然と攻撃を続けてくるという点だ。
「多重構造の装甲に、さらに着弾点を炸裂させてダメージを逃がす反応装甲か!? よくあんなの量産できたな!!」
かなり前のそういう装甲が存在していたということは士官学校時代に聞いたことがあったが、それを量産するには莫大なコストが
かかるため結局実用化されずに終わったという。しかし、現実に敵はそれを装備し、ビームをものともせず攻撃を続けてくる。
「けどいくら装甲が硬くたって!」
 シンはクラウダの動きに集中し、ライフルの狙いを定める。既にライフルでの攻撃が効力を発揮しないことは確認済みだ。しかし、
それは着弾点が装甲上にある場合の話である。
フリーデンに乗ってからずっと継続してきたキッド特性の対ビット用シミュレータでの訓練を思い出し、シンは弾道のイメージを敵機に重ねる。
装甲は硬いのはよくわかった。ならば、装甲の無いところを狙えばいい。
528GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/09/15(火) 15:26:18 ID:???
第百五話『あたしらチームだろ?』(後編)

「今だ!!」
狙う箇所は3箇所、両肩の関節部分か、もしくは頭部のメインカメラ。肩の間接部分は狙っても肩のアーマーに阻まれかねないと
判断したシンは狙いをメインカメラに限定した。
トリガーを3回連続で押すと、それにしたがってディスティニーの右手が3回ライフルのトリガーを引く。さらにそこから3発
ビームが吐き出された。
 シミュレータで相手にしていたビットはもっと的が小さく動きが早かった。それに比べれば今回の相手はずっと狙いやすい。
放たれたビームはメインカメラ付近のほぼ同じ位置に着弾し、1発が頭部から胴体を抜け股下まで貫通する。
 爆砕するクラウダに背を向けてシンは次の敵を探した。
「今までいろんなことをやってきたんだ、そう簡単にやられるかよ。」
 自身の技量を誇示するつもりは無いが、少なくとも今まで戦ってきた敵の数は数え切れない。その死線を生き抜いてきた
ことが彼の自信につながっていた。
『シン、ぼさっとしてないで次!』
 ルナマリアからの通信にシンがインパルスの方にカメラを向けると、ブラストインパルスはケルベロスを使って敵を一撃で
撃墜していた。どうやらクラウダの装甲はケルベロスクラスの出力のビーム砲には耐え切れないようである。
『シン! 正面のバーニアを狙え! それなら一撃で落とせる!!』
今度はガロードから通信が入る。彼も最初はクラウダの装甲に戸惑ったようだが、すでに対抗策を見つけていた。
「了解! つくづく頼りになるな!」
『あたしらチームだろ? 頼りにしないでどうすんだ!?』
ガロードとの通信にパーラが割って入ってくる。彼女もミサイルと拡散ビーム砲を駆使してクラウダを撃破していた。
それぞれがそれぞれのやり方で突破口を開く、一人で戦っていた時に比べると格段に戦いやすく、頼もしい限りだ。
「よし、んじゃ次行くぞ!」
『OK!』
『わかった!』
『了解!』
ルナマリアが、ガロードが、パーラが三者三様の返事をして再び戦場を駆けた。
529通常の名無しさんの3倍:2009/09/15(火) 16:26:53 ID:???
乙!!この調子で頑張ってください。
530通常の名無しさんの3倍:2009/09/15(火) 17:38:05 ID:???
投下乙、GJ
いつでも保守するぜ
531通常の名無しさんの3倍:2009/09/15(火) 20:29:50 ID:???
GX氏更新乙

さー戦力増強ではあるが、どうなる?
532通常の名無しさんの3倍:2009/09/16(水) 00:33:45 ID:???
GJでした。

やっぱクラウダは地味に強力だよなぁ。
533通常の名無しさんの3倍:2009/09/16(水) 07:20:08 ID:???
乙です
掛け声w
534通常の名無しさんの3倍:2009/09/23(水) 19:01:46 ID:???
ほしゅ
535通常の名無しさんの3倍:2009/09/25(金) 22:50:48 ID:???
保守
536GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/09/28(月) 08:10:12 ID:???
みなさん 感想ありがとうございます。
最近はこの感想が励みです

第百六話『こいつはエースだ』(前編)

「ガンダムはどこだ!?」
サテリコンを叩くために彼らの基地を攻撃した宇宙革命軍の中にランスローの姿があった。専用のクラウダを駆り戦場を駆ける中、
彼が探しているのはダブルエックスの姿だ。

あなたはジャミルに似ている

地上から宇宙へ連れてこられた少女に彼はそう言われた。そのとき彼が驚愕の表情を浮かべたのは言うまでも無い。まさか見ず
知らずの少女からその名前が出るとは思っても見ないことだった。当然彼はジャミルについて少女にいろいろな質問をしたが、
彼女から帰ってきた明確な答えは一つだけだった。

ガロードに会えばわかります

 ガロード・ラン、新連邦軍の新型ガンダム”ダブルエックス”のパイロット。地球帰還部隊の第2陣で宇宙に上がり、そのまま逃走。
現在サテリコンに保護されていると思われる少年だ。
 第2陣の同氏達の報告書に目を通したが、彼についての記述を見る限り彼自体の重要度が高いとは言えない。ダブルエックスの
パイロットという点を除けば、ただの子供だ。それでも彼女は彼の名前を挙げた。それだけ彼がジャミル・ニートの重要な情報を
持っているということなのだろう。
「あちらか?」
 新たな戦闘の光を視認すると、ランスローは機体をそちらに向ける。戦況はこちらが有利だ、悠長に時間を費やしていては
見つかるものも見つからない。ランスローは戦場を駆け続けた。


「くそ、こいつらこんな所まで!」
4機目のクラウダを撃墜したシンは革命軍の進軍する速度が速いことに焦りを感じていた。状況は明らかにこちらが不利だ。
つい数分前にはサテリコンの主力艦アロアナが轟沈したという連絡も入っている。勝敗は既に決しているといっても良いかもしれない。
 だからといって、それを素直に受けいれるほど彼らは物分りがよいわけではなかった。
「これ以上、お前たちの進軍を許すわけには!」
 ディスティニーは大剣クラウ・ソラスを抜き放つと、眼前に迫るクラウダに斬りかかった。クラウダの装甲がビームの威力を弱めることは
先刻承知している。ならば、ビームライフルで頭部を攻撃した時と同様にその装甲に覆われていない箇所を狙えば良いだけの話だ。
 ディスティニーの一閃はクラウダの右腕と胴体を切り離し、続けざまに胴体真ん中にあるバーニアを貫く。バチバチと全身の配線や回路から
火花を散らして動きを止める敵機に目もくれず、シンは次の目標を探した。
 そんな中、彼の目に止まったのは単機で戦場を行く敵機だった。その黄色いクラウダはこちらの軍勢に攻撃をするわけでもなく何かを探すような
動きをしながらひたすら飛び回っている。機体の色が他と違うのは腕の立つものの証と判断したシンは、次のターゲットにこのクラウダを選んだ。
「このッ!!」
牽制にビームライフルを発射すると、黄色のクラウダはこちらに気づいたのか急反転しこちらに向かってくる。
「来るか、なら!」
ライフルを構え正面から迫るクラウダに対してディスティニーは再び大太刀を構えて切っ先をそちらに向けた。剣撃にはいろいろな言い回しがあるが、
大本は2つしか存在しない。”斬る”か”突く”か。切っ先を敵に向けた時点でやることは決まっていた。
537GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/09/28(月) 08:13:49 ID:???
第百六話『こいつはエースだ』(中編)

「もらった!!」
ディスティニーは一気に加速する。敵もかなりの速度でこちらに迫っており、回避が間に合うタイミングでもない。シンは内心勝利を
確信した。大剣が貫く寸前にクラウダが動きを見せるまでは。
「え?」
異変に気づいたのはクラウ・ソラスがクラウダを貫く寸前だった。本来なら切っ先の延長線上にいなければならないクラウダがその
延長線上からずれている。ディスティニーはシンが思い描いた軌跡をきちんとすすんでいる。となるとおのずと答えが導き出された。
 ゾクッと背筋に寒気が走る。その瞬間、頭で考えるよりも先に体が反応していた。
咄嗟にクラウ・ソラスのグリップに添えられていた左腕で機体頭部をカバーする。ソリュゴス・フルゴールを展開する暇も無かった。
構え終わった時には既にクラウダの左腕が伸びていた。

ドン!!

 機体が突然後に向かって縦の回転を始める。頭部に攻撃を受けたことで、足は勢いそのままに、頭部は後方へ吹き飛んだのだ。
クラウダのプロレス並みのラリアットを受けてバランスを崩したディスティニーを押さえつけながらシンはうなった。
「こいつ…!」
 今回相手にしたクラウダの中でも別格と言って良い。あのタイミングであのようなことをされたら、回避できる人間はほとんど
いないのではないだろうか。シンは素直に相手の技量を認めた。
「だからって、負けるわけには!」
シンはクラウ・ソラスを構えなおすと、その場で思いついた攻撃方法で再び攻撃に移った。


「やるなガンダム!」
しとめたと思った攻撃だったが、寸前のところで防御された。攻撃の方法もタイミングもイメージ通りだったにも関わらず
ランスローは赤羽のガンダムをしとめそこねた。あそこでよく反応したものだと感心する。
「ヤツからあの白い羽のガンダムの居場所を聞くつもりだったが…。そのガンダムの力、すこし見せてもらおう!」
最初に遭遇した時はダブルエックスを回収して逃げられた。機動性は一級品と踏んでいたが、パイロットの腕も中々のものだ。
「しかし、まだ青い!」
 攻撃のやり方が素直すぎる。赤羽のガンダムの第一印象はそれだった。射撃にしても接近戦にしても”誘い”が無く、一撃で
しとめるつもりで攻撃を仕掛けている。確かに狙いは正確だしそのほうが1対多数の戦いにおいては長い時間戦える上、
勝機を見出すことができるであろう。
だがエースパイロット同士の戦いではそうは行かない。互いの腹を探り合い、駆け引きの中で勝利を引き寄せなければならないのだ。
 赤羽のガンダムは再び大剣を構えて吶喊してくる。一度破られた攻撃をなお仕掛けているとなると、よほどそれに自信があるのか、
それとも何か策があるのか。
「触れれば骨ごともっていかれかねないその大剣、しかし当たらなければ無用の長物!」
ランスローは先ほどと同じようにガンダムに向かって加速する。やることは先ほどとさして変わりは無い。ただ先ほどは頭部めがけて
ラリアットを仕掛けたが、今度は背中のビームカッターだ。触れれば防御ごと首をはねるつもりだ。
「同じ手は二度と食わないか、それとも…!」
538GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/09/28(月) 08:17:29 ID:???
第百六話『こいつはエースだ』(後編)

 接触まで後3秒、クラウダはビームカッターを展開し機体を90度ひねってガンダムを切り裂くよう準備を整える。お互い
よける気は無いらしく、まるで猪のようにまっすぐに突っ込んでいく。
 後2秒、ガンダム側が動きを見せる。それまで正面に向けられていた切っ先がいきなり上に向けられる。当然、刃は正面に向く。
 後1秒、さらにガンダムはこちらとは反対方向に機体を90度ひねって互いに背中合わせの状態になる。クラウダのビームカッターは
背中の接合部で多少の回転はするものの、この状態で背面にいる敵に攻撃をすることはきわめて困難だ。さらに、ガンダムの大剣は
まっすぐにこちらを捉える向きにあった。

ザンッ!!

大剣がクラウダの左側の翼をほとんど根元から切断したのは次の瞬間だった。


「くそッ! 浅かった!」
機体の急制動で発生した異常なGに歯を食いしばって耐えながらシンはうなった。彼のイメージではクラウダの翼と左腕も切断する
つもりだったのだが、残念ながら左腕を持っていくことはできなかった。
「何て奴だよ…!!」
接触する1秒前に機体の向きを変えて斬撃を繰り出したというのに、それにあわせて一瞬スラスターを吹かせて機体の進む軌道を
変化させた。こんなギリギリの戦いは今まで体験したことが無い。
「間違いない、こいつはエースだ。」
 神経がちりちりと焼きつくような感覚が彼を襲う。眼の前の敵が次にどう動くが、体は自然と臨戦態勢をとって脳からの司令を待つ。
 それはランスローも同じだった。ジャミルと戦って以来久しく味わっていないこの感覚、心臓の動悸がやけに大きく感じられる。
「…素質は十分だな。度胸もある。間違いなく次世代のエースになる。」
 攻撃の素直さから考えてパイロットはまだ若い。彼がジャミルと戦場で戦っていた頃の年齢かもしれない。
 そんな事を考えていたそのとき、別方向からビームが飛来する。それをかわしランスローが飛来した方向に目を向けた瞬間、
彼は大きく目を見開いた。
「見つけたぞガンダム!!」
 シンとランスローが対峙する中、シンの援護のために攻撃してきたのはガロードのダブルエックスであった。
539通常の名無しさんの3倍:2009/09/28(月) 10:57:53 ID:???
朝早くから乙でござる。
540通常の名無しさんの3倍:2009/09/28(月) 21:11:12 ID:???
GX氏更新乙

濃密な戦闘でイメージが湧くなあ
541通常の名無しさんの3倍:2009/09/29(火) 00:23:48 ID:???
投下乙、そして格好いい戦闘描写、GJっす
542通常の名無しさんの3倍:2009/10/03(土) 21:15:00 ID:???
十月初保守
543通常の名無しさんの3倍:2009/10/08(木) 00:23:05 ID:???
投下GJです、面白かった
久しぶりに来たけど、ずっと書き続けててくれたことに
すごく感動してるw
これからも楽しみにしてるので無理しないで頑張ってくださいね
544通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 23:07:19 ID:???
保守は出ているか!
545通常の名無しさんの3倍:2009/10/15(木) 11:09:07 ID:???
浮上
546通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 01:13:34 ID:???
GX1/144 ◆eX54sTGfHE氏のを最初から見るにはどうすればいい?まとめサイトは?
547通常の名無しさんの3倍:2009/10/16(金) 06:52:11 ID:???
>>546
クロスオーバー倉庫じゃなくて>>1のまとめサイト、GX-Pにある。
548通常の名無しさんの3倍:2009/10/19(月) 04:33:57 ID:???
保守
549通常の名無しさんの3倍:2009/10/19(月) 23:00:59 ID:???
宇宙革命軍のダリア作戦のコロニーレーザーをDXのサテライトキャノンで破壊した後にガロードのDXとパーラのGファルコンは地球に向かうとして、
シンのディスティニーは宇宙のミネルバに残るの?
それともミネルバごと地球へ大気圏突入するの?
それだと新連邦軍宇宙艦隊のフロスト兄弟に捕捉されて、
ミネルバは勝てそうにない戦闘になりそうだし、
DXとGファルコンだけで地球に向かうとと「希望の火は消さない」通りに展開するな。
550通常の名無しさんの3倍:2009/10/20(火) 13:40:48 ID:???
>>549
ヒント:ミラコロ

     ミネルバ(キャッキャッウフフ)
      →     ○地球

    :
   兄弟

オルバ「来ないね兄さん」
シャギア「ああ」
551通常の名無しさんの3倍:2009/10/20(火) 15:53:46 ID:???
>>550
新連邦艦隊がミラコロでスルーされたら次の展開が読めないよw
地球に行ったミネルバは何処へ向かうのでしょうか?
552通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 09:38:03 ID:???
原作じゃ戦艦なんてもの無かったからなぁ・・・
順当に行ったら戦艦でフリーデンクルーの救出だろうけど
そしたらぶっちゃけフリーデンU必要なくなるし
553通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 10:31:25 ID:???
最近完全にスルーされてるが
地上にはAAとエターナルもいるんでこのままだと
戦力バランスが主人公側に傾き過ぎてしまうな。
ただ革命軍も新連邦も話の構成上これ以上戦力増強するのは
難しいしやるとすればAAかミネルバのどっちかを使用不可にするか
AAとエターナルを使えなくするかじゃないかなあ?
まあ素人の下馬予想なんでいい意味で裏切られるとありがたいんだけど。
554通常の名無しさんの3倍:2009/10/22(木) 08:05:46 ID:???
戦力はどうかなぁ・・・
革命軍と新連邦のドツキ合いの真っ直中に割ってはいって
なおかつ変態兄弟の相手だろ?

実際には新連邦全軍+革命軍全軍+変態兄弟を相手にするわけじゃん
戦艦がMAX4隻(フリーデンU、AA、永遠、ミネルバ)としても
すくないんじゃないか?
それにキラ・ヤマトなんつー不確定要素もあるし
555GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/10/22(木) 14:31:07 ID:???
いろいろ予想が飛び交っておりますが、
とりあえず投下。

第百七話『本当の恐ろしさはこんなもんじゃない』(前編)

 ダブルエックスを見つけたランスローが次に目を向けたものは革命軍の味方の進軍状況だった。ダブルエックスを見つけたのは良いが、
眼の前に敵がいては話をすることもままならない。まずはディスティニーを止めることが必要だ。
「こちらランスロー、ガレムソン小隊聞こえるか!?」
「こちらガレムソン小隊、大佐殿が一体何のようですかい?」
「お前達は赤羽のガンダムを抑えろ。 私は白羽を倒す!」
「…手柄をもらって良いんで?」
「戦果を期待する、やって見せろ。」
「フン、了解。」
 隊長のガレムソンは不満げな返事を返して通信を切る。彼は肩書きこそ中佐と言うものを持っているが、実際の所彼自身が上げた
戦果は少ない。昇進につながった功績のそのほとんどが他人のそれに便乗したか、あるいは漁夫の利を得たり、手柄を奪ったり
したものばかりだ。下の階級から地道に実績を積んできた者が彼の下について後、左遷されたという話は多々ある。その後彼が
昇進したという話もまた同じであった。
「そんなことより今は!」
彼がどうやって今の地位に上り詰めたかなど今はどうでも良いことだ。それよりも彼には優先すべき事柄がある。ランスローは3機の
クラウダがディスティニーに攻撃を始めたことを確認するとダブルエックスに向かって攻撃を開始した。


 正面から迫るクラウダを見たガロードは険しい表情を浮かべた。あのクラウダは間違いなくガロードが一度ボロボロに敗北した
”あの”クラウダだ。
「こいつ…!」
あの瞬間が脳裏によぎる。技術も、知略も、どちらをとっても一級品だ。余力を残して戦えば必ず負ける。そう確信したガロードは
有無をいわずに攻撃を開始した。
だがここでも彼はランスローの技量の高さを見せつけられることとなった。
 ダブルエックスが発射したビームはワンテンポ遅れて発射されたクラウダのビームとぶつかり、あたりに衝撃波を撒き散らしたのだ。
通常、銃撃戦の中で兆弾を重ねて弾丸と弾丸が偶然ぶつかることは有っても、発射された直後の弾丸を撃ち落すなどということは
ほぼ不可能だ。だがランスローはそれをやってのけた。
「うわあぁぁっ!!」
突然襲ってきたそれに翻弄されダブルエックスは背中を小惑星に打ちつける。コックピットのシートでは吸収し切れなかった衝撃を
もろに受け、ガロードの操縦に隙が生じダブルエックスの動きが止まった。ランスローはそのスキを逃がさず、ダブルエックスに組み付いた。
「よし、後は回線を…。」
彼の目的はあくまでガロードと話をすることだ。このときの彼はダブルエックスの”鹵獲”など頭に浮かばなかった。強制的に通信回線を開き、
彼はガロードと対面する。パイロットスーツに身をつつんでいるが、求めていた相手はまだまだ子供だった。
「貴様がガロード・ランか…。」
静かな声でランスローは彼に呼びかけた。
556GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/10/22(木) 14:44:41 ID:???
第百七話『本当の恐ろしさはこんなもんじゃない』(中編)

「ガロード!」
シンは小惑星に押し付けられたダブルエックスの救援に向かうために敵の包囲網を突破しようと試みていたが、3機のクラウダは
中々それを許してはくれなかった。2機が前衛で1機が後衛、というよりも高みの見物に入っているといったほうが正確かもしれない。
 後衛からの援護はほとんど無く、前方の2機のみが戦っている。
『お前らしっかりやれよ! ガンダムを倒せば2階級特進だ!!』
『カストル! 同時攻撃を仕掛けるぞ』
『了解、ポルックス!!』
カストル機とポルックス機のコンビネーションは隙が無く、こちらに反撃の機会を中々与えてくれない。革命軍の中でも屈指の
コンビネーションを誇る彼らは別名”双子座(ジェミニ)”と呼ばれていた。
「何て連携だ…、だったら!!」
シンは反撃の糸口をつかむために賭けに出ることにした。まずは敵の頭数を減らすことが先決だ。そのために弱い敵を確実に倒す。
「この2機の連携は必ず左右に展開するのが基本だ、どのコンビネーションでもそれは変わらない!」
2機は必ずディスティニーの左右に展開し片方が射撃、もう片方がビームカッターなどの近接戦闘を仕掛けている。なぜそんな
展開の仕方をしているかはわからないが、基本の形がそうなっていることをシンは利用することにした。
「いけ!!」
ディスティニーはライフルをしまって両肩のフラッシュエッジ2をブーメラン状態でそれぞれ投げはなつ。それぞれがカストル機と
ポルックス機をめがけて飛んでいくが、それらはやすやすと回避された。だが放たれた2基のフラッシュエッジ2はさらにその奥に
いたガレムゾン機の右肩と左わき腹に命中した。
「な、何だ!?」
予想外の攻撃を受けたガレムゾンは驚きてあたふたと計器類に目をむける。今まで機体を損傷させたことが無い彼には今回のような経験は一度もない。
『隊長!!』
前衛の2人は通信機から聞こえた普段とは明らかに違うガレムゾンの声に思わずそちらに注意を向ける。シンはその一瞬の隙を見逃さない。
「”イグニッション”機動!」
 機体が音声を認識し、”SINシステム”の”I”、”イグニッションモード”を起動させる。このシステムはSの”スパイラル・ブースト”、
Nの”ノーティラス・ウォール”などの一部の機能の強化とは違い、機体の全ての機能をほんのすこしの時間上昇させるものだ。消費エネルギーの
関係で稼働時間は最大300秒、機体の性能上昇率は+20%。今回は3秒で十分だった。
 システム起動時はディスティニーの瞳が緑から赤に変わる。その禍々しい瞳のディスティニーは一瞬にして2機のクラウダの間をすり抜け
右の手のひらをガレムソンの乗るクラウダの胴体に押し付ける。
「終わりだ!」
パルマ・フィオキーナは容赦なくコックピットを打ち抜いたのだった。


「艦長、敵艦隊より大型ミサイル接近! 数60、標的は基地にしている小惑星です!!」
アビーからの連絡にタリアは思わず大きく舌打ちをする。敵の目的は明らかにサテリコンの”殲滅”だ。1機たりとも逃がすつもりは無いのだろう。
「全機に通達、現時刻を持って我々は小惑星を放棄、この宙域を離脱する!」
「艦長!? それでは!!」
「悔しいけど、戦力差が有りすぎるわ。シンとルナ、ガロードとパーラに急いで戻るように伝えて。私の予想が正しければ、おそらく小惑星は
跡形も無く吹き飛ばされるわ。」
アーサーはタリアの言葉に青ざめる。小惑星を吹き飛ばすほどの火力を人間相手に使うなど正気の沙汰ではない。
「アーサー急いで!」
「は、はいィッ!!」
艦を180度回頭する指示を出しながらタリアは負け戦になった悔しさを肘掛に叩きつけたのだった。
557GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/10/22(木) 14:46:22 ID:???
第百七話『本当の恐ろしさはこんなもんじゃない』(後編)

ミサイルが命中した箇所を基点に小惑星にひびが入っていく。その速度は小惑星が直径5キロという大きさを考えるとものの数分で
粉々になることがたやすく予想できるほど驚異的な早さだった。
「や、やばい…!」
ディスティニーが戦っていた宙域のすぐ側にミサイルが着弾して青い炎を上げる。悪寒が走ったのは言うまでも無かった。
「ルナ、ガロード、パーラ! 急いで離脱だ! このままじゃ巻き込まれるぞ!!」
『バーニアが点火しないんだ!』
ガロードから帰ってきた返答にシンは青ざめる。シンのいる位置からはダブルエックスを救出するのは困難だ。こんな所でも運命の
選択をしなくてはならないことにシンは叫びたくなる。
『ガロードはアタシが何とかする! 二人共早く脱出を!!』
 そう言うなりGファルコンはダブルエックスの元へ向かう。どうするつもりなのか知らないが、今は彼女の言うことを信じて急いで
小惑星から離れていく。
「ルナ急げ!」
『わかってるわよ!』
出力レバーをMAXまで上げながらシンは後に続くルナマリアに声をかける。
そしてそのときインパルスの後から飛び込んできた光景はGファルコンがダブルエックスと合体して一目散に宙域を離脱する姿だった。
このところGファルコンをいじっていたのは見ていたが、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。
『元々支援機なんだから良いんじゃない?』
ルナマリアはそんな事を口にしたが、シンはそれ以上に二人が無事脱出できたことに安堵したのだった。

先に宙域を離脱したミネルバから合流ポイントと時刻が送られてくると、彼らは指定のポイントへと向かった。ダブルエックスと
合体したGファルコンとインパルスとディスティニーが併走する中、パーラが普段とは打って変わって弱々しい声でみなに呼びかけた。
『みんな、よく見とけ。』
『パ、パーラ…?』
『革命軍の、本当の恐ろしさはこんなもんじゃない…。』
彼らが離れていく小惑星は今や完全に光に包まれ原型をとどめていない。そこに生活していた多くの命を包んだまま、死の光は徐々に
小さくなっていく。そこに残るのは何も無い真っ暗な宇宙だけだ。
「パーラ…?」
『…にしてもダセェよな。また故郷が消えちまうなんてさ!』
 彼女の”家”とも言うべき場所はなくなった。その悲しさを感じさせないために彼女が調子よく話そうとすればするほど、ほかのものは
彼女の悲しみを感じてしまうのだった。
558通常の名無しさんの3倍:2009/10/22(木) 15:27:47 ID:???
投下乙、そしてGJです
このシーンは何度見ても切ないな…
559通常の名無しさんの3倍:2009/10/22(木) 21:57:18 ID:???
GX氏更新乙

タリアちょっと読めすぎかなーここのサテリコンが優秀なんだろうが
560通常の名無しさんの3倍:2009/10/22(木) 22:16:19 ID:???
投下乙〜♪


贔屓目に解釈するとこうかな
タリアが予想出来たのは殲滅戦が日頃から行われた種世界の人間だから、まさかナチュラル同士でやるとは予想外だったが
といった所じゃないかな
561通常の名無しさんの3倍:2009/10/29(木) 15:17:01 ID:???
ここはのんびりしとるなぁ・・・
まぁ下手ににぎわって収集がつかなくなるよりは良いけど
つか、今までGX氏の作品でMADとか作った奴っていないのかね
562GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/11/02(月) 13:08:20 ID:???
第百八話を読むに当たっての注意

本日、第百八話の投下を投下を行いますが、一点注意事項があります。
今後の話の展開を考え、一部以前使ったオリジナルで作った設定を使うことにしました。
まだ本シリーズの六十五話〜七十三話をお読みでない方は、一度そちらを
お読みになってから第百八話をお読みください。
563GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/11/02(月) 13:10:55 ID:???
第百八話『何とかするしかないわよ』(前編)

サテリコンという拠点を失ったミネルバ一行は、衛星軌道上に残されていた無人中継ステーションに身を寄せることとなった。
ステーションの周りには多くのMSや戦艦の残骸が浮遊しており、そこだけ時間が15年間一切動いていないように感じられる。
『あたっしは〜宇宙の〜運び屋さ〜。』
 ルナマリアはどこか調子はずれの鼻歌を歌いながらコアスプレンダーの操縦桿を操っていた。現在ヴィーノたち整備班の
面々が中継ステーション内部へ入り、使えそうなパーツや食料などを探し回っている。シンとガロードは周辺の警備、彼女と
パーラはそれぞれコアスプレンダーとGファルコンのAパーツで輸送業務を行っていた。
ステーションへドッキングして直接物資の輸送ができればよかったのだが、ミネルバの物資搬入口とステーションのそれは
規格が違ってドッキングできなかったため、急遽今のような形を取ることとなった。
『おいルナ、その変な歌何とかなんないのかよ…?』
『あ、耳障りだった?』
『そーじゃなくて、おまえ回線オープンで鼻歌垂れ流しになってるぞ。』
『え?』
 ヴィーノとパーラからの指摘に彼女が通信パネルに目を向けると、全回線がONになっていた。この状態ではミネルバの
ブリッジにも、ヴィーノたちステーション内捜索班にも、そしてシンとガロードの警備班にも通信がつながってしまう。
 大慌てで通信回線を切っていく様子を聞きながらブリッジのタリアは穏やかな笑みを浮かべていた。
「…緊張感が無いですね。」
「張り詰めすぎて過剰に反応するよりはマシよ。」
「そういうものですか?」
「そういうものよ。 アビー、現在の物資の回収状況は?」
アーサーの疑問にそう答えながらタリアは通信機越しに物資の搬入状況を確認していたアビーに声をかける。手元の
バインダーに搬入した物資名を次々と書き込みながら彼女はタリアからの質問に答えた。
「とりあえず水と食料は2週間分程度確保できています。艦の燃料は現在ステーションの予備のタンクから補給中、
後武器、弾薬は皆無です。」
 15年間誰の目にも止まらず放置されていたこと事態奇跡に近いと感じながらタリアは艦長席にため息を漏らす。
これでしばらくの間はどうにか生き延びることができるだろう。だが問題はそれだけではない。
「あとは、どうやってあのデカ物を破壊するか…ね。」
現在艦首の向いているはるか先にはコロニーレーザーがある。直径20km、全長約300kmの宇宙革命軍の切り札は
現在地球に対して攻撃をすべく着々と準備を進めていた。
「艦長はあれをどうやって破壊されるおつもりなんですか?」
「…タンホイザーじゃ、せいぜい大砲に水鉄砲でしょうね。」
「じゃあやはり…?」
「攻撃の実働は、彼以外にいないでしょうね。」
 周辺警備に当たっているダブルエックスを見ながら彼女はそういった。事実それ以上に強力な武器は
この艦には存在しない。
「でもエネルギーの問題が…。」
「何とかするしかないわよ。」
「艦長…。」
「これは我々にしかできないわ。…そう、あのユニウス7の破砕作業のようにね。」
あの時の光景がタリアの脳裏によぎったのは言うまでも無い。あの時のような中途半端な成功は許されない。
今回の任務は100%の成功率が求められるのだった。
564GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/11/02(月) 13:14:23 ID:???
第百八話『何とかするしかないわよ』(中編)

「ディスティニーより定時連絡、現状こちらの警備宙域にはMSの反応なし。この間の激戦と違って静かな物です。」
『了解、そのまま警備を継続してください。』
「了解。」
 定時連絡を済ませたシンは退屈で出てきたあくびをかみ殺しながらぼんやりとモニターに写る星々を眺めていた。眼下には真っ青な地球、
その周りには真っ黒な宇宙が広がっている。地球の美しさは他に形容のできないすばらしいものだが、どんなものでも飽きが来てしまうものだ。
 逆に星の輝きに目を向けると、それらは地上で見るものとはまったく別物の冷たい光を放っている。地上では大気によって光はゆがみ、
また空気中のゴミの具合で見え方が変わるが、宇宙空間にはそういった光を妨げるものが無い。よって、星の輝きはそのままの形でシンたちに届いていた。
 彼はなにを思ったか、現在の位置から見える星域図をモニターに出した。あちら側とこちら側でも星の位置関係には違いは無いらしく、
モニター上には100%一致した星域図が表示される。
「あれがスピカ、あれがレグルス…。」
多くの星にはそれぞれ名前が付けられている。それらは学術的な意味を込められたものもあれば大昔に先人達が名づけた物もあった。なんにせよ今となっては
その名前の由来を知ることはできない。
「んであっちがホーマルハウト…か。」
その星の名前を呟いた途端、彼の脳裏に1人の少女の姿が浮かぶ。ディスティニーに乗っていっしょに星を眺め、その後大怪我をさせて
さらに父親を守ってやることができなかった”あの少女”だ。
「今何してるのかな…、サクラの奴。」
彼女とは最後に扉越しに話して以来ずっと会っていない。少なくとも今宇宙にいる彼が彼女に会うことは不可能だろう。
「ダイキさん、アンタはコロニー撃滅用のサテライトシステムの前身を造った。けど革命軍もコロニーレーザーなんてとんでもない物を
持ち出したよ。結局アンタがシステムを造ろうが造るまいが、世界は今のカタチになっていたのかもしれない…。」
宇宙はとても静かだ。だが人々は自身の権力を振り回し、偏見に満ちた思想を撒き散らしてまたこの静寂を壊そうとしている。当人達が殴りあう分には
勝手にやっていれば良いが、関係ない人々を巻き込んで15年前のような状態にすることは絶対に許されない。いやシンには許せなかった。
「結局、戦争で迷惑被るのは本人じゃなくて周りの人間なんだよな…。」

ビビー!  ビビー!

人間のおろかさに1人むなしさを感じていると、アラーム音が着信を知らせる。スイッチを入れてモニターに映像を出すと、そこにはヴィーノと
ヨウランが顔を覗かせた。
『シン、警備中悪いけど知恵かしてくれ。』
「? 何かあったのか?」
『俺とヴィーノは今メインコントロールルームにいる。システムを復仇させようとしてるんだが…。』
『システムにロックが掛かってて解除できないんだ。』
 ステーションの生命維持装置は働いているのだが、真の姿にするためのメインシステムが未だ機能していない。それを起動させるためのシステムに
彼らはアクセスしようとしているのだ。
565GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/11/02(月) 13:17:15 ID:???
第百八話『何とかするしかないわよ』(後編)

「んで、なんで俺に知恵を借りる必要があるんだよ。 プログラムの解除ならお前達の仕事だろ?」
『パスワードを聞いてきてるんだ。』
『これがわかったら解析とか面倒なことは必要ないからな。』
「パスワード、って言っても…」
『ずいぶん昔のシステムらしくてな、ご丁寧にヒントまでついてた。”大樹が好きな花は”ってな。』
ヴィーノはモニターに出たメッセージを読み上げる。花の名前を聞いていることはわかったが、このヒントが彼に何を
言わせたいのか理解しかねる所があった。
「花? そんなの適当に思いつくのを」
『ヨウランといろいろ意見出して入れてみたよ。全部外れたけど。』
「二人のボキャブラリーが少ないだけだろそれ…。」
ヴィーノ達がムッと怒った表情を浮かべる一方、シンは花の名前をいろいろと考えてみた。
チューリップ、バラ、向日葵、パンジー、椿、レンゲ、極一般的に知られているものから、図鑑でしか見たことの
無いようなものまでいろいろなものが浮かぶ。
「でも花の前に書かれてる”大樹”ってのが気になるな。」
『そうか?』
『俺たちは気にしなかったけど。』
大樹、タイジュ、大きい木…。 木に咲く花もいろいろとある。これでは内容を絞りようが無い。シンが頭を
ひねっていると、不意にある男の顔が浮かぶ。その男はもういない。しかし、あるシステムの開発に深く関わった人物だ。
「サクラ…。」
『は? 桜ならもう入れたぜ?』
「ローマ字読みで”SAKURA”って入れてみてくれ。」
モニターに映る二人は顔を見合せて操作パネルのキーボードを叩き、最後にEnterキーを押した。

ゴゥン!

 その次の瞬間、ステーションが大きな音を立てて動き始めた。
『な、何だ!?』
『ま、まさか当たりかよ!?』
「ステーションの外からだと、ステーションの変化がよくわかるぜ。」
シンの眼の前でステーションはみるみる姿を変えていく。
ステーションの上部に取り付けられていた2本の棒状の物体がそれぞれ左右に90度回転し、さらにその先端部を
伸ばしていく。すると、今度は放射状に取り付けられたパネルが展開され、開ききった鋼鉄製の板がそれぞれの
隙間を埋めるように左右にさらに展開した。
「これはアンテナ?」
ステーションの上部にあった棒が、2本のアンテナへと変化を遂げる。そして、先ほどヴィーノとヨウランが
パスワードを入力した画面には『Orbit-Satellite-relay-Station-proto(オ−ビット衛星中継点 試験型)』と表示されていた。
「ダイキさんがらみってなると、これは勝機が見えたかもしれないな…!」
シンは小さく笑うと、ミネルバに通信をつないだのだった。
566通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 09:50:31 ID:???
サテライトキャノンの中継システム衛星か?
567通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 18:25:01 ID:???
しかしなぜに火の玉?
568通常の名無しさんの3倍:2009/11/03(火) 22:20:54 ID:???
GX氏更新乙

ティファ救出は別ルートっぽいな、そしてなんというムンベイ
569通常の名無しさんの3倍:2009/11/05(木) 14:23:54 ID:???
GX氏GJ!
これでもしマイクロウェーブの中継点とかだったら物騒かも

あと、ゾイドなついw
570通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 01:05:49 ID:???
保守
571GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/11/17(火) 08:35:08 ID:???
ゾイドはよく見てました。
まぁいっちゃなんですが、インパルスなんてまんまライ○ー○な訳で
そういう絡みで出してみました。

第百九話『あなたの母親よ』(前編)

シン達ミネルバ一行がコロニーレーザー破壊作戦の準備を着々と進めていた頃、ティファはクラウド9での生活を続けていた。
彼女がコロニーでの生活を始めた頃に比べて彼女に興味を示す者も増え、彼女の周りはわずかだが賑わいを見せていた。
しかし、彼らの興味関心の対象は”力のあるニュータイプ”であり”ティファ・アディール”という少女ではなかった。
「彼女も大変ですね。」
「力を持つニュータイプはコロニーにはいない。それだけ彼女の存在が貴重だということさ。」
 庭を散策する彼女を遠目に見ながらソフィアはニコラに正直な感想を漏らした。彼女の存在が特殊であることはわかる。
しかしだからといって私的な時間を周りの人間の好奇心で邪魔されるのも良い気分はしないだろう。
「しかも今度のコロニーレーザーでの地球攻撃作戦に総統閣下は彼女を連れて行くつもりなのでしょう?」
「彼女に自己批判を求めるそうだ。」
 結局宇宙も地球も変わらないんだな、とソフィアは大きく落胆する。彼女は元々地球で育ち、地球で生活をしていた。
しかしある事件により彼女宇宙での生活を決意する。それがその後の彼女の運命を大きく変える事となった。
「…それで、彼女に例の事はまだ話していないのかい?」
「………はい。」
 “例の事”になると彼女は途端に渋い表情を浮かべる。それを見たニコラも同じように渋い表情を浮かべた。
「…まぁ、気持ちはわからなくも無い。けどいつまでもそうやって尻ごみをしていては、事態は進展しないぞ。」
「わかっています、わかっていますけど。…怖いんです。」
そう言ってソフィアは左手で髪をかきむしる。黒のストレートヘヤーが歪んでそれまで整っていた彼女の頭に波を作ると
彼女はか細い声で呟いた。
「あの子の事を調べれば調べるほど、あの子がどれだけつらい思いをしてきたかが見えてしまう。そして、それを助けるべき
立場にあるはずの私は結局何もしてやることができなかった。非難されても仕方ないことは重々承知しています。けどあの子に
拒絶されることが……!」
 嗚咽交じりの声で言葉を搾り出すソフィア。苦しむ彼女にどう言葉をかければよいかニコラにはわからなかった。


 その日の夜、ソフィアはティファの部屋のドアの前に立っていた。時刻は既に9時を回っており、彼女の夕食も済んでいる。
いつもならば彼女もすでに自室に戻っている時間なのだが、今日は違った。
「…作戦開始まであと1週間。明後日には彼女は総統と出発だから…。」
今夜を逃すと彼女としばらくの間会うことができない。ソフィアなりに散々悩みに悩んだ結果、今彼女の持っている”秘密”を
打ち明けることにしたのだ。
「……や、やっぱり事を目の前にすると緊張するわね…。」
いざ彼女の部屋に来た途端、それまでの勢いは消沈する。彼女の”秘密”はティファにとっても彼女にとっても大きな事柄だ。
お茶のついでに話すような気軽なものではない。ドアノブに伸ばした彼女の手は震えていた。
とその時、彼女の眼の前の扉がいきなり開く。無論彼女は、扉はおろかドアノブにすら触っていない。開けたのはドアの反対側にいた
部屋の主だ。
「お待ちしていました。」
「ま、待ってた…??」
突然の出来事にたじろぐソフィアとは対照的にティファは静かな声で彼女を部屋に入るように促す。ぐちゃぐちゃになった思考がまとまり、
ようやく何が起こったのかを認識すると、思わず眉間にしわを寄せた。
「あなたまさか…。」
「今朝夢を見ました。」
 それは彼女が夜ここに来るという夢だと彼女は言う。それがニュータイプの持つ力なのだとソフィアは知っている。
572GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/11/17(火) 08:37:58 ID:???
第百九話『あなたの母親よ』(中編)

「…そう、それがあなたの力。あなたの苦しみの元凶なのね。」
「はい。確かにいろいろつらいことや悲しいこともありました。でも今は違います。」
 ソフィアはティファに比べて頭半分ほど背が高い。そのティファは思いのこもった瞳で彼女を見上げた。
「強いのね。一体何があなたをそこまで強くしたの?」
「皆です。私を思ってくれる人全てが、私を強くしてくれました。」
 研究所でモルモットのように扱われるような世界から解放され、彼女が彼女としていられる所でいろいろな経験を重ねてきた。
喜怒哀楽を知ったのは本当に最近のことだ。
 だがそれで、彼女はようやく”彼女”になれた。
「…そっか。私がいなくても、あなたはちゃんと生きてこれたのね。」
「? どういう意味ですか?」
「私の名前はソフィア・アディール。そして、あなたの母親よ。」
 ティファの顔が強張るのが彼女にははっきりと見えた。ソフィアは話を続ける。今の彼女はもう一人の人間であり、事の
始まりから終わりまできちんと話すべきだと感じた。いや、親として話す”義務”あった。
「15年前私はあなたを生んだ。その直後に私とあなたと旦那はコロニーへあがったの。とある事件がきっかけでね。」
「…事件?」
「知り合いが旧連邦政府に家族を殺されたの。それから逃げるためにね。でも革命軍のコロニー落とし作戦の最中家族は散り散りなって…。」
 思い出すだけで肉を引き裂くような痛みを伴う過去のことを口にし、彼女は顔をゆがめる。それでも話しは続く。
「私が地球へ降りたのは旦那とあなたを探すためだった。それであなたを無理して連れてきたの。」
「…そうだったんですか。」
 ティファは視線をそらしどうしたらいいかわからない様子だった。無理もないと彼女は思う。それまで一度も顔を見たことが無い”母親”が
現れたのだ。自分だったらどんな言葉をかけるだろうか。きっと今の彼女と同じで言葉が出てこないに違いない。
「確かにニュータイプの確保が任務ではあったんだけど、それは私にとってはどうでも良いことだった。ただあなたと旦那がいればそれで
よかったから。失望した?」
「え?」
「こんな私が母親で、失望した?」
強めの口調でソフィアはティファに問う。しかし口調とは裏腹に彼女の表情はおびえた様子だった。
「私はあなたに母親らしいことは何一つしてあげることができなかった。そんな私を、あなたは親と認めることができる?」
「よくわかりません。でも…。」
「でも?」
歯切れの悪いティファの言葉に彼女は気を揉んだ。できることなら斬るならばっさり切られたい。中途半端に残されてやきもきする方が
今の彼女にはつらかった。
「私は…、私はよかったと思います。この世界に生まれて、今生きることができて。」
「あなた…。」
「あなたは私を、15年間探し続けてくれた。それは本物だとキャッ!」
言葉が終わらないうちにソフィアはティファを抱きしめた。15年前その両腕に抱えることができるほど小さかった赤ん坊が大きくなって今腕の中にいる。
「あ、あの…。」
「ごめんなさい、すこしこのままでいさせて。」
そう言って彼女はいっそう強く抱きしめた。
573GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/11/17(火) 08:39:59 ID:???
第百九話『あなたの母親よ』(後編)

 親としてなにもできなかった自分が彼女を抱きしめる資格は無いのかもしれない。しかしそれでも抱きしめずにはいられなかった。
目じりからツーっと涙が落ちる。それはまるで、15年間溶けることが無かった氷が一気にとけてあふれ出したかのようであった。
「あ、あの、私もお願いが有るんですけど…。」
ひとしきりソフィアがティファを抱きしめた後、ティファはソフィアの耳元で話しかける。ソフィアは指で目じりの涙を拭うと
彼女の言葉を待った。


ソフィアは一時がなんともいとおしく感じられた。左を向けばティファが穏やかな寝息を立てている。彼女の申し入れ、
それは”いっしょに眠って、いっしょに朝を迎えたい”というものだった。大き目のシングルベッドは二人が横になるには
すこし狭いが、細身の女性二人ならば十分寝られる広さだ。
 わが娘の寝顔をみながら彼女はふと浮かんだ唄を口ずさんだ

二人が見つけた灯火に思い出を描こう
悲しい未来が来ないように
いつの日も微笑んで

どれくらいいっしょにいたのかな
幸せのメロディーが聞こえるね

響きあう奇跡の中で
二人は巡り会えたから
限りない愛しさを届けたい
永遠の空へ 高鳴る海へ
愛するあなたへ…


母性のこもった”Your song”が二人しかいない部屋の中で静かに響いた。
574通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 14:18:00 ID:???
いい話だな。
(;。;)
575通常の名無しさんの3倍:2009/11/17(火) 21:07:52 ID:???
GX氏更新乙

駆け足入ってたから尺少なかったニコラの心境変化も補足できるのはうまいな
576通常の名無しさんの3倍:2009/11/18(水) 22:28:52 ID:???
この親子ガロードが救出に来たときにまた別れが待っているのか?
それとも…?続きが気になるわぁ
577通常の名無しさんの3倍:2009/11/19(木) 19:13:42 ID:???
更新乙です

あっ!GX氏の後ろにカスラックが 
578通常の名無しさんの3倍:2009/11/29(日) 00:49:30 ID:???
保守
579通常の名無しさんの3倍:2009/12/05(土) 04:43:08 ID:???
なんか母に死亡フラグが立ってる気がしてならない。
コロニー側トップの地球産のNTなんて無かったことにするよ!から逃がす為とか
580通常の名無しさんの3倍:2009/12/09(水) 21:32:53 ID:???
保守アゲ!!!!
581通常の名無しさんの3倍:2009/12/13(日) 21:38:47 ID:???
更に保守
582GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/12/15(火) 14:51:37 ID:???
申し訳有りませんm(_ _)m
プライベートな用件でもうしばらく
投下が先になります・・・。

せめてクリスマスにはと画策中・・・
583通常の名無しさんの3倍:2009/12/15(火) 20:25:16 ID:???
気長に待っています。無理はしないで下さい。
584通常の名無しさんの3倍:2009/12/18(金) 21:54:11 ID:???
落ち着いて一本いこう。まだあわてるような時間じゃない
585通常の名無しさんの3倍:2009/12/20(日) 10:51:44 ID:???
>>GX氏
ゆっくり待ちますよ。‘更新は半年に一回ぐらい’が半ば当然のこの二次創作ワールド。
そんなにあわてることは無いです。あれこれ熟考して質の良い物語が出来た方が良いですよ。

まあ、もう一人のヤローは簡単に住人との約束破りやがったので弁解したくもありませんが。
586GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/12/25(金) 02:10:20 ID:???
ミッドナイトにこんにちわ
サンタさんからのプレゼントだぜ

第百十話『オペレーション”ムーン・フレア”』(前編)

「俺、ここに立つようなガラじゃないんだけど…。」
「文句言わないの。アンタフェイスでしょ。」
ブリーフィングルームに集まった面々の前でシンは頭をかきながらディスプレイの横に立った。これから始まる”作戦”の説明と
最終確認を行うためだ。説明を受ける側の席にはガロード、パーラ、そしてルナマリアと整備班のマッドとヨウランが座っている。
「んじゃ、これから今回やる作戦の概要を」
「ハイしつもーん!」
シンの出鼻をくじくようにパーラが元気な声と共に手を上げる。調子を崩された彼はしぶしぶ彼女に向き直った。
「パーラ、質問って何?」
「作戦の名前決めないのかなぁーって思ってさ。ほら、今回の作戦はかなり大規模だろ?」
作戦の大まかな内容は既にこの場にいる全員が把握している。”宇宙革命軍のコロニーレーザーをサテライトキャノンで破壊する”
ただそれだけだ。しかしそれが難題だった。
「…たしかに、サテライトキャノンは月からのエネルギー供給が無きゃ撃てない。んで、今回はこの中継衛星を使ってここで受けた
マイクロウェーブを中継してダブルエックスまで届ける。そしてダブルエックスがコロニーレーザーを破壊する。言うのは簡単だけど、
実際にはとんでもないことだもんな。」
「というかさ、距離だけ見たら作戦実施範囲って全長60万kmぐらいになるんじゃない?」
ルナマリアの言葉に皆顔を引きつらせる。事実、コロニーレーザーと月は地球を挟んで反対の位置に存在する。月から地球までの距離が
約30万km、直線距離で結んだらそれぐらいの距離になるだろう。月から地球を挟んで反対の位置までの作戦などまさにSF映画の世界だ。
「まぁ、作戦の内容は今ガロードが言った通りだ。作戦内容は最後に決めるとして、マッドさん、作業の進捗状況はどうなっています?」
シンは話の方向を戻すため、スタッフ総出で必死に働いている整備班の班長に話を振る。今集まっている面子の中で最年長の彼は一度
咳払いをすると話を始めた。
「ダブルエックス及びGファルコンの整備と超長距離移動の準備は終わっている。後はパイロットが乗って発進するだけだ。問題は衛星の
ほうだな。ヨウラン、説明頼む。」
「はい。」
ヴィーノと共に衛星側の準備に当たっているヨウランは手元のバインダーに目を落としながら現状の報告をはじめる。マイクロウェーブの
受信部、及び送信部の整備は既に終わっており今回の作戦には十分に耐えられるであろう事、しかし衛星自体が長年太陽風や宇宙線によって
かなり損傷しているため耐えられるか不明な事、またダブルエックスの位置を正確に把握するための通信用の中継衛星の準備やそのシステムの
開発が9割方終わっている事など、すさまじい量の仕事をこなしていることが伺える内容だった。
「お前、よくそれだけ仕事して倒れないな。」
パーラの率直な感想にヨウランはフッと笑う。
「俺たちだってプロだ。ぶっ倒れるのは仕事が終わった後、ってな。」
まだまだ若輩者ではあるが、それでも仕事は真剣にこなしている。ラクス・クラインに現を抜かした時とは明らかに表情が違った。
「それで、ミネルバからの遠隔操作システムの方は?」
「それも終わっている。まぁ、インターフェースボードとケーブルをつないだだけの単純なものだが、そっちの方がロスも少ないし今回のような
短期決戦なら十分だろう。」
 作戦の大まかな進捗状況は把握することができた。後は、動くのみだ。
「ガロードとパーラは12時間後に発進。2日後に目的地に到着後こちらからのマイクロウェーブの発進を待つように。以上解散!」
「シン、まだ作戦名決めてないでしょ?」
きっちりと〆たつもりであったが、最後の最後でルナマリアからの突ッ込みを受けたシンであった。
587GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/12/25(金) 02:12:48 ID:???
第百十話『オペレーション”ムーン・フレア”』(中編)

 機体の整備が終わったガロードは宇宙服を着たまま艦の後ろ側にある展望スペースに来ていた。眼前には真っ黒な宇宙と真っ青な
地球が見えている。何度見てもこの風景は飽きない。絶景とはこういうものを言うのだろう。見る人を圧倒し、言葉をなくさせる。
「ここにいたのか。」
ドアから顔を覗かせたのはシンだった。先ほどと同様赤い上着を身につけた彼はどこか異国の人物のように見える。
「もう寝ないと不味いだろ?」
「ああ、でも寝付けなくてさ。」
「そっか…。」
そう言ってシンは彼の横に並んで眼下の地球を眺めた。その青い惑星には幾万もの命が息づいている。そこには当然見知った顔もいた。
「皆どうしてるかな…。」
「…フリーデンの皆か?」
「ああ。」
ガロードとシンがいたバルチャー艦フリーデン。シンはニュータイプ研究所で別れて以来あっていない。皆が皆一流の者たちなので
そうそう死ぬことは無いであろうが、やはり顔を見ないと心配になってくる。
「艦は既にないし、MSもボロボロ。あれじゃ新連邦につかまるのがオチだろうなぁ。」
「お前は皆の犠牲の上に立ってるんだな。ティファの救出、是が非でもやらなきゃいけないわけだ。…そんなお前に新情報だ。」
「? シン情報?」
「シンは”新しい”な。ティファが今回の作戦に同行させられるらしい。」
彼の話した内容にガロードは驚きの表情を浮かべる。宇宙革命軍の総統ザイデル・ラッソはティファを連れてクラウド9を出港したというのだ。
「まさに鴨が葱背負ってやってくるって奴さ。コロニーレーザーを盾にすればおそらく彼女は解放される。」
「そっか…! いけるぞ!!」
「んで、お前にもう一ついっておくことがあるんだけど。」
「? 何だよ改まって。」
「お前はティファを救出後、パーラといっしょにそのまま地球へ降りてくれ。」
ガロードは一瞬彼が何を言っているかわからなかった。数秒の間をおいて驚きと疑問の混じった言葉を返す。
「…へ?」
「だから、救出したらそのまま地球に下りろって言ってるんだ。」
「た、確かに大気圏突入能力があるってのはパーラから聞いたけど、それよりもこの艦で降りた方が」
「目立ちすぎる。それに、革命軍がコロニーレーザー破壊後に出してくる捜索隊の陽動もしなきゃならない。」
確かにMS単機で大気圏突入をすることはリスクが大きいのはわかる。しかし合流までの時間がかかりすぎる点を考えると彼らだけで
地球に降りた方が早いし安全だ。それに艦で降りた場合、今度は地上の新連邦軍に見つかりかねない。宇宙も敵だらけ、地上も敵だらけ。
ならば、殿は残すべきだろうというのがシンがタリアと話し合った末の結論だった。
「でも大丈夫なのか? この艦だってそんなに物資の余裕は…。」
「もちろん俺たちも頃合を見て地上に降りるさ。」
そう言ってシンは親指を立てた。
588GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2009/12/25(金) 02:15:16 ID:???
第百十話『オペレーション”ムーン・フレア”』(後編)

「後から撃たせる様なまねは絶対させない。だから安心して皆の下に戻ってやれ。」
「シン…。」
「そんなさびしいそうな顔するなよ。今生の別れじゃないんだ。生きていればまた必ず会えるさ。」
「…なんか今の台詞を聞いてると、最初に会った頃とは別人みたいだ。」
「べ、別人は無いだろ!?」
「そうそう、そうやって突っかかってくるのがシンらしい。」
ガロードがしてやったりの笑顔を浮かべると、シンも一度はがっくりと肩を落としたがまた笑顔を見せたのだった。


 出発の時が訪れた。2日間の超長距離移動を行うガロードとパーラが目的地へと艦をでる。
「二人とも、時間は既にあわせ終わったわね?」
『こっちは大丈夫だぜ。』
『右に同じだ、いつでもいける。』
ノーマルスーツに身をつつみモニター越しに話すガロードとパーラに気負いは感じられない。あくまでいつもどおりの彼らだ。
ミネルバのブリッジでその様子を見守るタリア達の表情も穏やかなもので、彼らだけで行かせる事に特別な心配をしている様子はない。
もとより彼らも一人前のパイロットだ、そういう心配をするほうが失礼だろう。
「時間に遅れるなよ。」
『そっちこそ、失敗したら承知しないからな。』
「では、後は打ち合わせ通りにね。」
『了解!』
『了解!』
ダブルエックスとGファルコンはミネルバから発進するとすぐさま合体し目的地を目指す。ここから先彼らは完全な単独行動だ。
「艦長、俺たちも準備に戻りましょう。」
「そうね、各員に連絡。オペレーション”ムーン・フレア”、今回の作戦は、絶対に完遂するわよ。」
“月の炎”と名づけられた作戦は着々と進行している。その結果が明らかになるのは後1日と12時間後、そのとき宇宙の暗黒を切り裂く
白銀の炎が放たれることになるのだ。
飛び去っていくガロードたちを見ながらシンは心の中で”がんばれ”と呟いたのだった。
589通常の名無しさんの3倍:2009/12/25(金) 21:08:17 ID:???
GX氏クリスマス更新乙

基本ラインは外さずミネルバ組で何か新展開か
590通常の名無しさんの3倍:2009/12/26(土) 20:45:46 ID:???
GJ!!ツインサテライトキャノン三連射がついに見られるのか。
591通常の名無しさんの3倍:2009/12/27(日) 02:06:03 ID:???
やっふーGXサンタさんがきたよう!
作戦後は宇宙ミネルバ珍道中編か?
592通常の名無しさんの3倍:2009/12/27(日) 22:49:12 ID:???
ごめんよ、サンタなんていないと思ってて
俺たちのサンタさんはこんなところにいたんだ…

しかしやっぱりサテライトキャノンは恐ろしいな
目に見えるだけ月光蝶よりも恐ろしい
593通常の名無しさんの3倍:2010/01/09(土) 03:39:57 ID:???
保守
594通常の名無しさんの3倍:2010/01/15(金) 01:06:32 ID:???
( 0w0)
595Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw :2010/01/22(金) 13:52:03 ID:???
生存報告。あの〜wikiにある話なんですが、二話を一話に纏めるってありなんでしょうか?
読み直してみたら、@いちいち改行が多いA一話ごとの内容が薄い、ので。
596通常の名無しさんの3倍:2010/01/22(金) 16:11:36 ID:???
何を今更
597通常の名無しさんの3倍:2010/01/27(水) 16:12:02 ID:IjspZtNZ
生存報告乙
全然ありだと思いますよ
598通常の名無しさんの3倍:2010/01/28(木) 23:39:29 ID:???
>>595
氏の作品好きだから期待して待ってますよ続き。
599通常の名無しさんの3倍:2010/01/29(金) 02:20:32 ID:???
>>595
自分でされますか?

やり方指定して下されば出来ますが。
600通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 13:08:53 ID:???
hosyu
601GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/02/06(土) 11:10:13 ID:???
スイマセン、なんかずいぶん間が空いちゃいました・・・

第百十一話『ただ撃ち貫くのみ…!』(前編)

 Gファルコンとのドッキングを解除してから3時間半、ダブルエックスはたまに現れる進路上の障害物をよけながらほぼまっすぐに
宇宙空間を進んでいた。コロニーレーザーを狙撃するポイントはもう目の前だ。
「こちらダブルエックス、ミネルバ聞こえるか?」
『ザザ…、こちらミネルバ。通信に多少ノイズが入っていますが、通信可能です。』
「了解、こっちは後10分で目的ポイントに到着予定。作戦開始時刻には間に合いそうだぜ。」
『了解。ザ…着後は照準用レーザーの到着を待ってください。』
「わかった、外すなよ。」
雑音交じりの通信を終えると、ガロードはヘルメットを外して携帯していた水の入ったボトルに口をつける。移動だけで11時間、
さらに敵は周りのイエーガーやらに気を配りながらの移動は彼が思っていたよりもきついものだった。
「ま、それでも仕事をこなすのに支障を出すような物じゃないけど。」
 今彼の言葉に相槌を打ったり返事を返したりする者はいない。途中まで一緒だったパーラは今コロニーレーザーの射線上を
飛行中のはずだ。マイクロウェーブの照準用レーザーシステムを流用した超長距離レーザー照準機の発信装置をコロニーレーザーに
打ち込み、約28万km離れた狙撃ポイントからコロニーレーザーを打ち抜く。歴史上、これだけ距離のある狙撃を成功させたものは
おそらくいないだろう。
「後は、ただ撃ち貫くのみ…!」
目的ポイントに到着すると、ガロードは機体を半回転させてミネルバのいるはずの方向を向く。この作戦は彼だけでは成功してない。
第一段階はミネルバのクルーにがんばってもらわなければならないのだ。
 虚空で1人きりだが、決して迷子ではない。視線のはるか先には頼もしい仲間たちが確かにいる。彼の心は思いのほか静かだった。


ガロードの心が静かである一方、中継衛星に残って作業を続けているミネルバクルーはあわただしく動き回っていた。
『作戦開始時刻まで時間が無い! 最終チェック急げ!』
『受信アンテナの整備は完了!』
『いらない備品は早く片付けとけ!!』
『レーザー発信システムは現状どうなってる!?』
通信機越しに聞こえてくる整備班の喧騒とは縁が無いのはパイロットのシンとルナマリアだけだ。
「今回って、あたし達出番無し?」
「俺達が出なきゃならないような事態は、正直起きてほしくないな…。」
今彼らはブリーフィングルームでパイロットスーツに身をつつんだ状態で待機している。コンディション・レッドが発令されない限りは
機体に乗ることは無い。モニターとスピーカーから送られてくるさまざまな情報が行きかうのを蚊帳の外で見ているような状態だった。
「どうして?」
「俺たちの出番は、要するに戦闘だろ? ミネルバは衛星の制御で動けない、ダブルエックスとGファルコンもいない。MS2機でこれだけの
ものを防衛しろって言われたら、かなりきつい。」
「まぁ、確かね…。」
「それに…。」
「それに?」
途中で言葉を止めたシンにルナマリアはその先を話すように促す。下を見てどこか言いづらそうな様子ではあったが、シンは顔を上げて言葉を続けた。
「今回の作戦はある人にとっての”ケジメ”なんだ。」
「”ケジメ”?」
「ああ、理由はどうあれ、サテライトシステムの基本システムを作った人のな。そのために人がいっぱい死んだ、これが失敗すればもっと多くの人が死ぬ。」
「だから絶対に失敗は許されないってわけ?」
「そういうこと。」
602GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/02/06(土) 11:13:49 ID:???
第百十一話『ただ撃ち貫くのみ…!』(中編)

「艦長、時間です。」
「わかったわ、コンディション・レッド発令! ブリッジ遮蔽、これよりオペレーション”ムーンフレア”を開始する!」
アーサーの言葉にうなずくとタリアは引き締まった表情で作戦開始を告げた。オペレーション”ムーンフレア”。フェイズ1から
フェイズ3まであるこの作戦は地球に住む全ての者達の命運がかかっている。絶対に失敗は許されない。
「照準用レーザー照射開始!」
「照準用レーザー照射開始します。ガロードさん、レーザーの到達を確認してください。」
この作戦の課題は2つ、ダブルエックスにうまくマイクロウェーブを送ることができるかと、サテライトキャノンを当てることが
できるかどうかだ。どちらも超遠距離でわずかな誤差でも許されない。
『レーザー確認、誤差修正なし! ドンピシャだ!!』
「了解。」
「月面送電施設より4.03秒後にマイクロウェーブ、来ます!」
アビーがガロードからの修正不要の連絡を受けると同時に、アーサーはマイクロウェーブ照射までの時間が伝える。すでに
中継衛星の受信アンテナには月面からの照準用レーザーがわずかな誤差も無く到達していた。ミネルバの整備班が必死に
なってやったことを無人でやっていると言うのだから、彼らからすれば信じられない話だ。
「人の手が介在していないからこそ正確なのかね…?」
『マイクロウェーブ到達を確認! ヨウラン!! システムの状況報告!!』
「りょ、了解! マイクロウェーブのエネルギー変換率98.9%、各区画エラー発生無し! 発信、いけます!」
マッドからの声にヴィーノはモニターに目を戻す。衛星の各ブロックのエラーを表示するモニターには異常を意味する赤いランプは
一つもない。今は順調に作動している。マイクロウェーブ受信アンテナの温度上昇と姿勢制御用のバーニアの温度上昇が予定の1.2倍ほどに
なっているが十分許容範囲内だ。
『艦長、こっちはいつでもOKだ!!』
「マイクロウェーブ照射!!」
「ガロードさん! 行きますよ!!」
『了解! 頼んだぜ皆!!』
タリアの指示にアビーはスイッチを押す。瞬間、衛星から放たれたマイクロウェーブは真っ黒な宇宙を切り裂くように進み、ダブルエックスへと
向かう。それからわずか5秒でその光の線は消え、あたりは再び漆黒の闇に包まれる。
『マイクロウェーブ照射終了! ヴィーノ! すぐに外に出て状況確認だ!!』
『了解! …人使いが荒いなぁもう…。』
『何か言ったか!?』
『いえ! 何も言ってません!!』
『グダグダ文句を言うのは仕事を片付けた後だ!! さっさとやれよ!!』
『は、はい!!』
後2回同じことをしなければならない。ベストの状態でマイクロウェーブを照射できるのは最初の一回だけで、後は何がどうなるか予測がつかない。
今回の作戦は全員が最善を尽くして”成功するかどうか”の綱渡りだ。ヴィーノは気を引き締めなおし、エアロックを解除して外へと飛び出した。
603GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/02/06(土) 11:16:09 ID:???
第百十一話『ただ撃ち貫くのみ…!』(後編)

「3、2、1、0!」
マイクロウェーブの到達した時にいつも聞く機体のを揺らす轟音がコックピットを支配する。Gコンに表示されたエネルギー充填率の
ゲージが徐々にMINからMAXへと上昇していく。充填が終わるのを待つ一方、ガロードは大きく深呼吸を繰り返していた。
「この一撃はみんなの想いがつまってるんだ。外すわけにはいかない…!」
作業の様子はずっと見ていた。ミネルバのクルーがどれだけがんばったかは言うまでも無い。この作戦の一番の功労者は間違いなく彼らだ。

ビビー! ビビー!

意識を集中させている最中に電子音が鳴ると、正面のメインモニターにパーラからのメッセージが映し出された。

コロニーレーザーに照準発信機を打ち込むことに成功した。
貫通式はいつでもいけるぜ。
サテリコンの亡霊 パーラ

あちらも首尾よく行った様だ。全ての準備は整った。と、今度はミネルバから伝聞が届く。

こちらは次弾の準備に入る。貴殿の活躍を期待する。
闇夜の鵬 ミネルバ

ミネルバは残る2回のための準備に大忙しのはずだ。後方のことは彼らに任せ、ガロードは自分の仕事に集中する。
マイクロウェーブが途切れ、エネルギーゲージもMAXを表示している。機体をコロニーレーザーのある方向へ向けると、レーザー照準機からの
レーザーを検知してメインモニターには上下左右の修正が必要な角度が表示される。
上に0.0004度、左に0.00031度。0.0001度違うとおよそ30kmの誤差が生じる。発射の衝撃で照準がぶれないよう制御しながら、ガロードはついに
引き金を引いたのだった。
604通常の名無しさんの3倍:2010/02/06(土) 19:46:44 ID:???
GX氏更新乙

ガロード宛の電文も二つ名ありなのなw
605通常の名無しさんの3倍:2010/02/07(日) 18:47:46 ID:???
GJ!!ほんと、このときのガロードの射撃はまさに神業だったなあ。
606通常の名無しさんの3倍:2010/02/12(金) 17:24:41 ID:???
個人的な感想として
本編よりミネルバ整備班(マッド、ヴィーノ、ヨウラン)
仕事してないか? 

ごめん、失言だった。「仕事をしている描写が多くないか?」だった
607通常の名無しさんの3倍:2010/02/12(金) 18:48:16 ID:???
>>606
しかたないよ。嫁が整備班なんて男くさいとこ出すよりキラきゅん出したほうがいいもんってひとなんだから
608通常の名無しさんの3倍:2010/02/14(日) 06:39:30 ID:???
609通常の名無しさんの3倍:2010/02/14(日) 11:16:12 ID:???
>>607
グダグダ言っている嫁は海に叩き込むぞ!!
610通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 09:38:41 ID:???
>>608
GJ!
ところで逆はないの?
運命ガンダムをGX風にとか。
611608:2010/02/15(月) 15:00:11 ID:???
>>610
無い。けどどんなのになるか想像はつく。一回り大きい感じのデザインになる。

というのもX系のガンダムはXとエアマスターを除けば重MS風のデザイン。
対して種系は重MS系のガンダムが少ない。せいぜいプロヴィデンス系くらいか?
つまりX系を種風にするならXとエアマスターを除けば軽MS風に調整し直すことに
なるだろうし、種系をX系にというならその逆の結果になるというわけだ。

DXと自由が似ているという説はドムとドライセンが似ていると言うのと
同じくらい的外れな意見だと思う。
612通常の名無しさんの3倍:2010/02/15(月) 20:44:40 ID:???
>>611
なるほど。
すると、GX1/144 ◆eX54sTGfHE氏の運命も相次ぐ魔改造でX世界的になっているだろうから、
ヴィジュアル的には重MS的になっているという訳か。
613通常の名無しさんの3倍:2010/02/16(火) 00:14:11 ID:VTzzszqP
>>812
そうとも限らない。劇中のガンダムは重MS風のが多かったが、
MSV的な存在であるGB−9700ベルフェゴールはスマートなデザインだし、
ほとんどの新連邦MSはスマートだ。
614通常の名無しさんの3倍:2010/02/20(土) 20:32:24 ID:???
保守
615GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/02/26(金) 18:33:11 ID:???
みなさんお久しぶりです
リアルで体調を崩し、一週間休職なんつー状態になっていました。

第百十二話『それ以外に手がありません』(前編)

「コロニーレーザー正常に稼動、エネルギー充填率70.2%。」
「発射まで後5分。」
宇宙革命軍旗艦”ガーベラ”のブリッジでザイデル・ラッソはコロニーレーザーの発射の瞬間を今か今かと待っていた。この一撃で
宣戦布告とし、新連邦との戦争を開始する。
 普通の戦争であればまず宣戦布告をし、その後に戦闘を行うが、今回の作戦は自分達スペースノイドが母なる地球に帰還するための
聖戦だ。それを邪魔するものは容赦なく排除する。
あと少しで事を成すことができるという喜びに身を震わせる一方で、もう一つ目障りなものがあった。それは彼のすぐ後ろの席に
座らされている”地上生まれのニュータイプ”である。
「ティファ・アディールよ、我々のこの力は君の目にはどう映るかね?」
「………。」
ティファはブリッジに連れられてから一度も言葉を発していなかった。発言の機会を許されていない以上、言葉を発することは
ザイデルの機嫌を損ねかねない行為だとわかっていたからだ。
 ザイデルから質問を受け、彼女ははじめて言葉を発した。
「この力を使うことをやめていただけないのですね。」
「やめる? やめる必要など無いだろう? これは我々スペースノイドにとっては必要なことなのだ。」
「でも、この力はまた大きな争いを生みます。そして、また多くの憎しみと悲しみが生まれる。」
「新連邦は自分達の私欲のために地上を支配した。我々は母なる大地をおろかな奴らから開放しなければならないのだ!」
彼女は言葉にしなかったが、悲しかった。
地上の人間も宇宙の人間もなんら変わりの無い存在だと思っている。それは地上でガロードやジャミル達といっしょに過ごして感じ、
宇宙でソフィアやランスロー達といっしょに過ごして感じたことだ。
だが良い人達がいるように、地上にも宇宙にも悪意や偏った考え方で争いをしようとする人達もいる。しかしそれもごく一部でしかない。
そしてそういう人達も、周りを見れば守りたい仲間や恋人がいるのだ。
地球は、宇宙は、世界は誰のものでもない。だからこんな過ちは繰り返してはならない。
「ガロード…。」
目を閉じて彼女は宇宙のどこかにいるはずの少年を思う。
彼ならばザイデルのやっていることをどう思うだろう。善行か、悪行か。多くの人達の命を平気で奪うこの行為を、彼なら”過ち”として
止めに来るに違いない。絶対にそうだという確信が彼女にはあった。
そして、彼女はまぶたの裏に光を感じた。
「こ、高熱源体急速接近!!!」
通信士が悲鳴に近い声で叫んだのはその次の瞬間だった。
 今彼らの前には上弦の三日月形の地球が見えている。その地球の中心から青白い光がものすごい勢いでコロニーレーザーに向かって迫ってきた。
光は直径20kmのコロニーレーザーのわずか100m外側を通過していった。幸いコロニーレーザーそのものへの被害はたいしたことは無く、
周囲に展開してあった太陽電池パネルの約1割を破壊したにとどまっている。しかし、ザイデルたち革命軍の兵士達の戦意をそぐには十分なものだった。
 彼らは知っているのだ、今の光が一体なんなのか。今自分達がどのような状況に置かれているのかを。
616GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/02/26(金) 18:35:25 ID:???
第百十二話『それ以外に手がありません』(中編)

 ランスローは自艦のブリッジでその様子を目撃し静かに口を開いた。
「サテライトシステム、だな。」
「た、大佐! ガンダムはこの間のサテリコン掃討作戦で既に死んだはずではないのですか!?」
「私も死体を確認したわけではないのでな、生きていたのだろう。まったく、タフな奴らだ。」
「感心している場合ですか!」
ブリッジクルー達が動揺する一方で、彼は彼方にいる少年が次にどういう行動をとるか期待していた。

おかしな話だ。敵の行動に期待をするとは。

そう思いながらランスローは次に彼らがどういう行動をとるか見守った。


「さて伝聞は送った。後はあちらさんの回答待ちか…。」
Gファルコンのコックピットシートの上でパーラは背伸びをした。長時間同じ姿勢だったために血液のめぐりが悪くなっている。
あまり広くないコックピット内で体のいたるところを動かして全身に血をめぐらせた。
「そういえばそろそろ2発目が来る頃だけど…?」
コロニーレーザー狙撃作戦は都合3回のサテライトキャノンの発射を行うことになっている。1発目と2発目はそう間をおかずに
撃つことになっており、インターバルも10分程度の予定だ。
「しかし、照準を完全にマニュアルでやるなんて、無茶するよなぁ…。」
的の目の前にして言うことではないが、パーラはつくづくそう思った。今のご時世機体の射撃制御はオートで機会側が勝手にやってしまう。
 人の手が介在すればするほど、その精度は確実に落ちる。
はずなのだが。
彼方から迫ってきた2回目の攻撃はわずか数十m単位でコロニー側に接近していた。
「…こんな遠距離なのに微妙に射線をずらしてやがる…! 意外と芸が細かいや。」
狙撃角度が0.0001度ずれれば、こちらの着弾点は30kmずれる。これをわずか数十mで抑えるのは神業に等しい。
パーラは驚き半分感心半分でダブルエックスのいる方向に目を向けたのだった。


 ガロードとパーラがそれぞれ自分達の仕事を続ける一方、衛星を制御するミネルバはトラブルが発生していた。
『班長〜、衛星下部の3番スラスター完全にオシャカですよ。』
「衛星自体もで全体構造にひずみが発生しています。後1セット持つかどうか…。」
「う〜む…。」
15年前に造られた衛星、それを簡単な整備しかしていない状態で使っているのだ。むしろマイクロウェーブの受信と送信あわせて
計2セットの衝撃に耐えられたこと事態すごいことである。
 しかし、今回は後1セットその衝撃に耐えてもらわなければならない。
617GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/02/26(金) 18:37:02 ID:???
第百十二話『それ以外に手がありません』(後編)

「艦長、プランBの許可を。」
『あなた正気なの?』
「それ以外に手がありません。時間をかけて整備できるのであれば私もメカニックとして整備したいですが、そうもいってられない状況です。」
『…仕方ないか、わかったわ。』
「ありがとうございます!」
マッドは敬礼をして通信を切ると、今度はコンディションレッド発動で自機待機しているシンとルナマリアに通信をつないだ。
「シン、ルナマリア。すぐに出撃してくれ。」
『マッドさん、さっきのブリッジとの話聞いてましたけど、プランBってなんですか?』
「俺と艦長で話をしてたんだよ。状況が悪い方に流れた場合に備えてな。」
『” 状況が悪い方に流れた”ってどういうことよ?』
シンもルナマリアも疑問符を浮かべたままモニター越しにマッドを見つめる。それもそのはずだ。そもそも今回は出撃の予定など無かった。
それがいきなり、しかも整備班の班長であるマッドの進言でだ。通常ではありえない話の流れである。
「いいか、時間が無いから一回しか説明しないぞ。」
『…わかりました。』
『りょーかい、んで?』
シンは腑に落ちない様子で、ルナマリアはなんとなく予想がついたようでマッドからの話を聞いた。
「お前達がMSで出て、壊れた姿勢制御スラスターの代わりをするんだよ。」
『え?』
『ちょっと、本気で言ってるの!?』
 2人は目を丸くした。姿勢制御スラスターが破損したことは既に外で確認作業をしてるヴィーノからの通信で知っている。しかし、衛星クラスの
大きさの物体を果たしてMSの推力で姿勢制御できるものなのか。
「今からバイナリコードと入力する数値を送る。お前達は所定の場所に着いたらシステムを開いて直接そのコードを打ち込むんだ。」
『ちょ、ちょっと待ってよ! 私達そんなの』
「できないなんて言わせないぞ? お前達は仮にも赤だ。士官学校時代プログラムの授業も実習も何度もやったはずだ。」
『で、でも』
『それで、衛星の姿勢制御はできるんですね?』
『ちょっとシン!? あんたまで何言ってるのよ!?』
 マッドの話の内容を聞いたルナマリアとシンの反応はぜんぜん違うものだった。
 本来、OSなどのシステムはただそのシステムを使う者はその内部システムのプログラムまでいじることはしない。しかし今回はその内部システムの
数値を直接変更して使うのだ。
 今回プログラムを変えてマッドを使用としていることをたとえるならば、”1の力に対して10の力で返すシステム”を”1の力に対して1の力で返す
システム”にしようとしているのである。
「姿勢制御なんて微妙な操作は今の機体制御プログラムじゃ無理だ。それぐらいしないとできないんだよ。」
『そんな無茶苦茶な!』
『無茶でもチャチャでも何でも良い。』
 いまだに反論するルナマリアとは対照的にシンは機体の発進準備を始める。
「ガロードたちもがんばってるんだ。できるかどうかは問題じゃない。やるんだ!」
可能性は0ではない。0で無いからこそ、シンはそこに懸ける事にしたのだった。
618通常の名無しさんの3倍:2010/02/26(金) 22:26:09 ID:???
GXさん乙!
619通常の名無しさんの3倍:2010/02/26(金) 23:37:47 ID:???
わずかな可能性に賭ける。こういう展開、王道でいいですね。
620通常の名無しさんの3倍:2010/02/27(土) 00:39:39 ID:???
GX氏更新乙

最近暖かくなってきたなーと思ったら、おだいじに
621通常の名無しさんの3倍:2010/02/27(土) 01:35:26 ID:???
622通常の名無しさんの3倍:2010/03/06(土) 13:26:10 ID:???
保守
623通常の名無しさんの3倍:2010/03/09(火) 01:34:55 ID:???
保守
624通常の名無しさんの3倍:2010/03/12(金) 17:32:30 ID:???
保守
625通常の名無しさんの3倍:2010/03/15(月) 00:49:58 ID:???
とりあえず保守
626通常の名無しさんの3倍:2010/03/18(木) 00:12:53 ID:???
627通常の名無しさんの3倍:2010/03/18(木) 02:00:58 ID:???
>>626
天才バカボンの「○が無い世界」のGX?
あの世界はパパがハナクソ丸めたら○が発生してしまって世界が崩壊したんだっけw
628627:2010/03/19(金) 23:38:42 ID:???
>>
629627:2010/03/19(金) 23:40:04 ID:???
>>627
DOMEのbitの母機として設計した機体。
630通常の名無しさんの3倍:2010/03/20(土) 23:51:33 ID:???
見れない・・・orz
631通常の名無しさんの3倍:2010/03/21(日) 02:10:45 ID:???
>>630
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up435740.gif
はい、再うp。ついでにAW世界の運命も想像で描いてみた

ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up435741.gif
632通常の名無しさんの3倍:2010/03/21(日) 22:14:57 ID:???
見れました!ありがとうございます
633通常の名無しさんの3倍:2010/03/23(火) 12:10:28 ID:???
結末予想
1:種キャラ帰還END
2:種キャラ残留END
3:人によって帰れたり、帰れなかったりするEND
4:一つの太陽をはさむ二つの地球!?世界融合END
634通常の名無しさんの3倍:2010/03/25(木) 02:08:11 ID:???
5:世界自体の持つ修正力が働いて最終的に強制送還END

転移テーマSFでのお約束パターンの一つではあるんだが、ガンクロSSだと
阿部さん第三部のフロスト兄弟くらいしか例がないんだよな…
阿部さん自身はいい男だから別格として。
635通常の名無しさんの3倍:2010/03/25(木) 06:44:34 ID:???
6.虚無る
636通常の名無しさんの3倍:2010/03/28(日) 00:40:00 ID:???
>>635
>6.虚無る
シンが某公爵令嬢に召喚されて終わるとかw
637通常の名無しさんの3倍:2010/03/28(日) 03:16:39 ID:???
7 虚淵る
638通常の名無しさんの3倍:2010/03/28(日) 04:51:58 ID:???
8。Xキャラが一部つれて帰還END とかもありかと
639通常の名無しさんの3倍:2010/03/28(日) 08:36:28 ID:???
>>638
スゥェン「持ってっちまった。みんな持ってちまった」
セレーネ「残してくれたのかもしれないわ」
640通常の名無しさんの3倍:2010/03/28(日) 12:56:58 ID:???
9.世界に勝ち残れるのは一つの世界のみ……ガンダム大戦勃発、続きは劇場版へ
641638:2010/03/29(月) 02:09:41 ID:???
>>639

間違えた。Xキャラ を 一部連れて と言いたかった。
642通常の名無しさんの3倍:2010/04/01(木) 18:11:19 ID:???
保守
643GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/01(木) 20:49:45 ID:???
10.作者が逃げて永遠に終わらない

これだけはないようにがんばります

第百十三話『確かに受け取った』(前編)

『オーライ、オーライ、は〜いストップ!』
ヴィーノの持つ赤い誘導灯に従いながらインパルスはゆっくりと衛星に取り付いた。位置は衛星下部、つい先ほどまで姿勢制御用の
3番スラスターがあった場所だ。エネルギーの供給を断ち、なおかつビームサーベルでスラスターそのものを根元から切断された
そこは衛星内部の無人の空間が広がっていた。
『よし、衛星本体のフレームがある位置に手が置けた。噴射と同時に機体が衛星内部にめり込むなんて悲惨なことは起こらないはずだ。』
「はー…、こういう神経使う作業って苦手なのよね…。」
 状況確認を終えたヴィーノの言葉に機体を操るルナマリアは取り敢えず無事に作業が終わったと安堵のため息を漏らす。しかし、
すぐにミネルバからヴィーノ以上に細かい状況確認をしているヨウランから指示が飛ぶ。
『ルナ、取り付き角度がおかしい。フォースシルエットの噴射角を右へ0.25度、上へ0.3度調節してくれ。』
「え〜!?」
『なんだったら、もう一度取り付き直すか? 1回で決める自信が有るなら、だけど?』
「…もう、わかったわよ。そんな意地悪な言い方しないでよね」
 既に4回取り付き直しをやっている彼女はしぶしぶヨウランからの要求に応じる。インパルスの取り付き作業が始まってかれこれ30分、
既にサテライトキャノンの2発目が放たれてから1時間が経過していた。
『おし、OKだ。後は今の姿勢のままで指示があるまで待機してくれ。』
「ハァ、やっと終わった…。」
 ようやく取り付き作業が終わりルナマリアは大きく脱力する。作業内容自体はたいした作業ではないが、今回は通常では考えられない
ほど繊細さが要求された。今までこなしてきた作戦の中でも別格であった。
 先作業を終えていたシンは、一通りの作業が無事に終わったことに安堵の表情を浮かべる。
「とりあえずは、これで舞台は整った。あとは…。」
だがすぐに引き締まった元の表情に戻った。今ようやく”準備”が終わった、本番はこれからだ。
「”ハートのA”が戻るのを待つだけだな。」

ビビー!  ビビー!

シンが気を引き締めなおしていると、ミネルバのブリッジから作戦に関係するクルーに通信がつながる。現時点でブリッジから通信が
つながる場合は三つ。パーラが無事コードネーム”ハートのA”ことティファを無事確保したか、あるいは確保できなかったか。
もう一つは、艦に接近する敵機を発見したか。
 敵機が接近してきているならば既にディスティニーやインパルスのレーダーでも検知できる。となると考えられるのは残りの二つ。
『ダブルエックスより入電、『Gファルコンが”ハートのA”を無事確保、最後の仕上げに”切り札”を使う』とのことです。』
『皆聞いた通りよ。最後まで気を抜かず、がんばって頂戴。』
 ティファは無事確保できた。後はサテライトキャノンでコロニーレーザーを破壊するだけだ。
「さて、んじゃ今回の見せ場、がんばるか!」
上げていたヘルメットのシールドを下ろし、シンはしっかりと操縦幹を握った。
644GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/01(木) 20:52:04 ID:???
第百十三話『確かに受け取った』(中編)

一方ブリッジではアーサーとアビーが次々とサテライトキャノン発射のためのシークエンスを進めていく。
「ダブルエックスよりサテライトシステム起動信号発信を確認。」
「衛星送信部より照準用レーザー発信を開始。ガロードさん、誤差の確認をお願いします。」
「月面送電施設とのコンタクトを確認。送電施設より中継衛星へ照準用レーザー発信が開始しました。」
「衛星からダブルエックスへの照準用レーザーの誤差修正無し。衛星側マイクロウェーブ発信準備完了!」
「月面より4.03秒後にマイクロウェーブ、来ます!」
「シン、ルナ!」
ミネルバでできうる限りの準備はした。後は無事成功することを祈る。いや、成功させることだ。タリアはメインディスプレイに映る
2人のパイロットを真剣な表情で見つめた。同様に真剣な表情でシンもルナマリアも返事をした。
『了解!』
『了解!』
「カウントダウン開始!」
アーサーの声と同時に送電施設からエネルギーが放たれた。
月面からのびる照準用レーザーの光の中をひときわ強い光を放ち徐々にこちらに近づいてくる。これがサテライトシステム用の
エネルギーを含んだマイクロウェーブだ。
「3!」
真っ暗な宇宙空間でマイクロウェーブの強い光は太陽、月、地球の次に輝いてみる。シンにもルナマリアにもそれはわかった。
「2!!」
タリアは肘掛に置いた手をぐっと握り締める。アビーは今の衛星の座標やエネルギー伝導率や姿勢制御の状況、ダブルエックスとの
位置関係などさまざまなデータを読み取ってギリギリまで修正が必要な箇所が無いか探す。
「1!!!」
「ルナ!!」
『わかってる! ブースト・オン!』
マイクロウェーブが衛星に到達する寸前の刹那の瞬間、ディスティニーとインパルスは姿勢制御スラスターの代わりとなるべく
バーニアの出力を一気に全開まで上げる。すぐさま加速の衝撃が来るかと思いきや、機体には何の衝撃も伝わってこなかった。
マイクロウェーブ到達の衝撃と加速の衝撃とが相殺しあい、ほぼ完全に衝撃がなくなったのである。アビーの見るモニター上でも
中継衛星の姿勢はずれていない。
「マイクロウェーブ到達!!」
「エネルギー充填率上昇開始、32、59、89、100!!」
「マイクロウェーブ発信!!」
「ガロードさん!!」
『よっしゃぁっ!』
 アーサーがスイッチを押すと送信用アンテナから照準用レーザーを伝ってマイクロウェーブが放たれる。向かう先ははるか彼方の
ダブルエックス。衛星はマイクロウェーブ発信の衝撃でいたるところに亀裂が生じ、火花が散り始める。次弾はない。
「頼んだぜ、ガロード!!」
彼方にいる仲間にシンは叫んだ。
645GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/01(木) 20:54:31 ID:???
第百十三話『確かに受け取った』(後編)

「皆の思い、確かに受け取った!」
ダブルエックスの中でエネルギーの充填が完了するまでのわずかな間、ガロードの脳裏にはミネルバのクルーの顔が浮かぶ。
彼らがどれほどがんばったかは彼も横で見てきた。この一発は外せない。
 充填が完了し、機体をコロニーレーザーの方向へ向ける。目標であるコロニーレーザーに取り付けられたレーザー照準機の
値は全て0になっている。寸分の狂いも無い。

…違う! この向きじゃ当たらない!!

 ガロードは直感でそう感じた。この発射角では初弾よりも大きく外れてしまう。何かが機体を揺らしている。余計な動きがある。
 何度も息を吐きながらガロードはあれこれと考えをめぐらせいると、その”余計な動き”がなんなのかようやく見当がついた。
「ハァ…。」
大きく息を吐き、息を止める。原因か彼の”呼吸”だ。質量が違うのだから揺れは微々たる物だ。だが、今回の狙撃はそれすらも邪魔なのだ。

いけ!!

右手に握られたGコンのトリガーを引く。機体の上部から伝わってくる強い揺れに思わず身を硬くする。衝撃が過ぎ去り、
メインディスプレイに最大望遠ではるか彼方のコロニーレーザーを見る。
「…やった。」
 そこには破壊されたコロニーレーザーという大輪の花が咲いていた。
「うそつきで悪かったな。革命軍のおっさんよ。」


「艦長、Gファルコンのパーラさんから伝聞と写真が送られてきました。」
「読んで。写真はメインモニターに。」
「了解。」
衛星とミネルバをつないでいたインターフェースケーブルは既に除去され、今はミネルバの出港準備が着々と進んでいる。
中継衛星はかろうじて自爆は免れたものの、全てのエネルギーを使い切ってしまったためか、あるいは自身の役目が完全に
終わったことを自覚してか、最早動くことは無かった。
「”無事に合流できた。ついでにその場面の写真を取ったから送る。”だそうですけど…。」
「あら、良いんじゃない。こういう写真も。」
メインモニターに写されたその写真を見るタリアの顔は実に穏やかなものだった。
「シンにもこの写真を転送してあげなさい。喜ぶわ、きっと。」
「はい。」
アビーもにこやかに、アーサーも満足げな表情を浮かべる。
彼らが見たその写真は、地球を背景にようやく再開した男と女が喜びの抱擁をかわしていたのだった。
646通常の名無しさんの3倍:2010/04/01(木) 21:25:30 ID:???
>GX1/144氏
GJ!GJ!!GJ!!!
やっぱティファ奪還にはアレを外すワケには行かないですよねぇw
さて、本編ではこの後、機体を改修した変態兄弟の待伏せ…果たしてどうなるコトやら。
647通常の名無しさんの3倍:2010/04/01(木) 23:14:37 ID:???
ガロード達と別行動になるミネルバの動向が気になるところだな。
地球に降下するか、宇宙にとどまるか・・・?
648通常の名無しさんの3倍:2010/04/01(木) 23:53:43 ID:???
ティファ奪還&コロニーレーザー破壊の直接のくだりはほぼTVと同じとして、
ミネルバ側のリアクション中心というのも粋なものですな、GJ!
649通常の名無しさんの3倍:2010/04/08(木) 22:57:31 ID:???
規制で遅れたけどGX氏更新乙

お迎えメンバー次第でまたひと波乱あるかな
650通常の名無しさんの3倍:2010/04/11(日) 01:18:32 ID:???
外伝作品の魅力の一つはオリジナルMS。

レジェンドシルエットのインパルスってどんな感じになるか想像してみたが
きっとフォビドゥンガンダムみたくドラグーンユニットを
かぶっている感じの機体になるんだろうなと
651GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/12(月) 08:06:36 ID:???
アクセス規制で更新が送れました・・・。
3日前には完成してたのに

第百十四話『家族の絆とは、”想い”だ』(前編)

『ブリッジより全クルーへ。本艦は2時間後にこの宙域を離脱します。コンディション・イエロー発令。パイロットは
ブリーフィングルームで待機してください。繰り返します…』
艦内アナウンスを聞きながらシンはブリーフィングルームの窓の向こうに映る徐々に高度を下げていく中継衛星を見つめていた。
既に動力は完全に停止し一切の動きを見せない。流用できるパーツや水、食料などは全てミネルバに運び込まれており、
内部には何も残っていなかった。
「………。」
衛星を見るシンの表情は悲しげだ。立派に役目を果たしたはずなのに、もう何もやる事は無いはずなのに。何か遣り残したことが
あるような、そんな名残惜しさが感じられた。
「なんか、あんたにしては珍しく黄昏てるわね。」
 パイロットスーツに身をつつみヘルメットを小脇に抱えたルナマリアがブリーフィングルームへ入ってくるなりそうシンに
言葉をぶつけた。それを聞いたシンは彼女の方に顔を向けたが、すぐにまた眼前の衛星へと目を戻す。
「…ああ、いろいろ思うところがあってさ。」
「思うところ、ねぇ…。」
彼女は彼の横に立って彼と同じように眼前の巨大な物体に目を向ける。太陽光の当たる一部の部分はその表面の凹凸まできちんと
わかるが、陰になっている部分は逆にぜんぜんわからない。彼女にとってただの金属の塊に過ぎないそれが、彼には一体どう
見えているのか彼女には理解なかった。
「…この衛星さ。」
「ん?」
「この衛星。残っていたデータでわかったんだけど、戦前に民間レベルで研究されていたマイクロウェーブ送電システムの
試作中継衛星だったらしい。」
「民間レベルでそんな研究してたの?」
「人口が100億にもなれば地上で生産する電力だけじゃ足りなかったんだろうな。でもそのプロジェクトは旧連邦に強制的に
接収された。」
シンの脳裏に地上で会った2人の人物の顔が浮かぶ。1人は今も生きているが、もう1人は既にこの世にいない。直接的に
そのことに関わったシンは彼らの顔を思い出しながらただ事実を口にしていく。
「そのプロジェクトの主任は娘さんを拉致されて無理やり協力させられたんだ。」
「ひどい話ね。」
「戦争中の軍の横暴なんてどこも変わらないさ。」
肩をすくめるシンにルナマリアも同意する。戦争は国家間のケンカだ。ケンカは勝って終わらなければならない、そのためなら
なんだってやる。そういう光景を彼らはいくつも目にしてきた。
「んで、この衛星も旧連邦が接収。中継衛星としての機能を備えつつ、場合によっては今回みたいな使い方ができるように改造されてしまったって訳さ。」
「そっか…。そういえばこの衛星の名前は?」
「さあ? 元々中継衛星の頭数には入っていない旧式のタイプだったみたいだし。資料にもなかったぞ。」
「なんかせつないね。本当はみんなの生活のために使われるはずだったのに…。」
「変わりに、俺たちが使わせてもらったけどな。」
その言葉だけは自信があるのか、シンははっきりと口にした。
「…まぁ、大概の人が今回のことを聞いたらそう判断するでしょうね。」
衛星から目を離し、眼前に広がる青い地球を見ながらルナマリアは呟く。
今回のオペレーション”ムーン・フレア”は地球に住む人達を守ったことは間違いない。少なくともあのままコロニーレーザーを
地球に打ち込んで再び戦争をするような事態はなんとしても避けなければならなかった。そのために使われたとなればきっと造った
本人達も本望だろう。
652GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/12(月) 08:10:52 ID:???
第百十四話『家族の絆とは、”想い”だ』(中編)

「後もう少しで自壊して流星になっちゃうんだよねぇ…。」
「あれだけボロボロになったんだ。終わりぐらい、華々しくきれいに散らせてやろう。」
「…そうね。」
ルナマリアは静かに返事をすると、ガラスの向こうに広がる真っ青な地球に目を向けた。シンが一体この衛星にどんな思いを
向けているかは彼女にはわからない。しかし、彼の中で”何か変わるきっかけ”なったのは間違いなかった。
「これで、よかったんだよな? ダイキさん…。」
シンは今はこの世にいない男のことを思いながらその名を口にした。


「全クルーに通達、これより本艦はコロニー群とは地球を挟んで反対側に位置する”月”へ向かう。道中はミラージュコロイドを
展開して移動するが、戦闘が無いとは言いきれない。各員、その旨を肝に銘じて行動するように。」
 タリアはマイクを切ると、ブリッジクルーのアーサー、アビー、マリク、チェン、バートの5人が彼女に顔を向けた。タリアは
それに答えるように大きな声で号令をかけた。
「ミネルバ発進!!」
ミネルバのメインスラスター5基がうなりを上げ艦は漆黒の空をまだ地球に隠れてみることのできない月へと発進したのだった。


急遽編成された宇宙革命軍のガンダム捜索隊は、結局何の成果も得られないまま本国クラウド9へと帰還することとなった。
革命軍の総力を結集したダリア作戦がミネルバ一行のオペレーション”ムーン・フレア”によって封殺されて丸3日、
ザイデルはずっと悔しさに顔をゆがめたままであった。
「総統閣下、ずっとご機嫌斜めなのですか?」
「仕方あるまい。ダリア作戦を年端も行かない子供に邪魔された挙句、コロニーレーザーは全壊。我々としてはあまりも痛すぎる損害だ。」
 作戦から帰還したランスローをニコラとソフィアが出迎えた。ガンダム討伐隊の隊長としての任を任されたものの結果は収穫無し、
ただでさえ頭に血が上っていたザイデルはさらに顔を真っ赤にして叱責を2時間近く続けたという。
「実を言うと、私はあの方が苦手でね。」
「…私もです。」
「2時間も怒られる事って滅多に有りませんよ。普通は怒ってる方が疲れてやめちゃいますし。」
 疲れのにじんだ表情のランスローがもらした愚痴に二人も苦笑する。いかにレーダーを駆使しても、人員を割いたとしても、宇宙に広がる
幾万のゴミの中からたった3人の少年少女を見つけるというのは大変なことなのだ。
 宇宙のゴミは人類が初めて宇宙に進出してからのものから先日のコロニーレーザーの破片までさまざまだ。そんな中から特定のものを探すのは
無理としか言いようがない。
「まったく、ジャミルの子供達はとんでもないことをしてくれたよ。…おっと、1人は君の子供だったな。まったくたいしたものだ。」
「私の子供ですよ? 男を見る目は確かです。」
肩をすくめるランスローとは反対にソフィアは胸を張った。自身の子供が好きになった男はとんでもない度胸を持った人物だった。我がことのように
自慢する彼女にランスローもニコラも笑顔を浮かべた。
 しかし、ソフィアはスッと表情を暗くする。
「…でも、私は彼女にまた一つ秘密を作ってしまいました。」
「? 秘密?」
「どういうことだ?」
様子が一変した彼女に二人が戸惑っていると、彼女は二人の前に大き目の茶封筒を差し出す。それを受け取ったランスローは、中に入っていた数枚の紙に目を落とした。
「これは?」
「問題の秘密についてです。」
中の紙には写真付きでなにかの検査結果が載せられているようだった。専門的な事柄がわからない2人はそれらを斜め読みしながら次の資料へ進んでいく。
そして、その資料の最後の言葉に目を疑った。
653GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/12(月) 08:13:00 ID:???
第百十四話『家族の絆とは、”想い”だ』(後編)

「…それはDNAの鑑定結果です。鑑定する項目は1点、ソフィア・アディールとティファ・アディールが親子であるかどうか。
その結果が、それです。」
「では君達は?」
「親子では無いというのか!?」
「少なくとも、血縁ではないようですね。」
ソフィア自身も残念そうに頭を振った。
 技術レベルの停滞のあった地球とは違い、コロニーは軍事技術でも医療技術でも進歩を遂げている。つまり、その判定が
”間違い”である可能性はほぼ皆無だ。
「彼女が出発してすぐ、彼女の部屋にあったヘアーブラシから髪の毛をとって、解析に回したんです…。」
「君は、こういう結果になることを予想していたのか?」
「半々、ですかね。戦後の地球は戸籍なんてあってないような物でしたし…。名前にしたって、ファミリーネーム(苗字)は
どこまで当てになるか…。」
彼女の言葉に2人は沈黙する。ようやくめぐり合えたはずの親子が実は親子ではなかった。本当の子供は未だ生死が不明、
となると彼女自身のショックはとてつもなく大きなものだろう。
くわえて、自身の母親だと宣言した女性は実は母親ではなかったと言う事をもしティファが聞いたらどんな反応をするか。
誰がどう考えても、プラスの反応が返ってくるとは考えにくい。
「なら、君がやるべきことは決まっている。」
「え?」
しばらく考えをめぐらせていたランスローはソフィアにそう言った。その言葉にソフィアは眉をひそめる。
「私がやるべきことと、言いますと?」
「まずは、”伝えるか”、”伝えないか”。そして、伝えるならばその後”彼女を拒絶するか”、”血縁ではないが
子供として受け入れるか”。選択肢はこんな所だろう。」
「”伝えない”と言う選択肢はもありだというのですか!?」
「ウソもつき続ければ真実だ。相手がその事実を知らない限りはウソにはならんさ。相手がそれを受け入れる器量が
無いならそういう選択肢もある。それと…。」
戸惑いの声を上げるニコラに対してさらりとランスローは返答した。
どの選択肢をとるにしてもそれ相応の覚悟が必要なことはわかっている。あくまで他人事だからこういうドライに
聞こえる選択肢を言うことができるのだとランスローは内心思いつつさらに言葉を続けた。
「たとえ血がつながっていても、家族とは言えない場合もある。その逆もまた然り。”家族”を決めるのは血ではない。
家族の絆とは、”想い”だ。」
ランスローは表情を変えず、まっすぐに彼女を見つめながらそう告げたのだった。
654通常の名無しさんの3倍:2010/04/12(月) 21:24:04 ID:???
GXさん、乙です。
そうか、ミネルバ一行は月か。
655通常の名無しさんの3倍:2010/04/12(月) 22:43:45 ID:???
乙。さすがランスロー、あの外見で実はジャミルより年上なのは伊達じゃない。
656通常の名無しさんの3倍:2010/04/12(月) 23:12:27 ID:???
GX氏更新乙

しょうがないけどニコラ出番取られたー
657通常の名無しさんの3倍:2010/04/14(水) 23:56:47 ID:???
原作には無かったけどランスロー専用の新型機なんて登場するのかな〜。
新連邦がFシステムに対応したパイロットの新型ガンダムを戦線に投入しているという(誤)情報が
伝わっているのだから・・・。
658通常の名無しさんの3倍:2010/04/17(土) 23:32:22 ID:???
HGAW 1/144 GX-9900 発売記念保守
659通常の名無しさんの3倍:2010/04/17(土) 23:59:03 ID:???
北米反政府組織とは何だったのか・・・?
1・最初は単なる武装流民陸賊。武力で奪い、富を得て物欲望を満たす野蛮人ども。
2・戦前の技術遺産を売り込むバルチャーやMS乗り。その恩恵で次第に各個の都市や集落は工業力や生産力をつけていく。
3・バルチャーやMS乗りは自分達の技量を各地の都市に自分を都市防衛力として売り込安定した収入を得るようになる。
4・都市と提携するMS乗り。契約する都市はバルチャーの引退者の引き取りや代替者の提供を行う。
5.新連邦への都市同盟として緩やかな結束の形成が同盟に・・・。

種inXの世界だと結構素直にAAや永遠どころかいろんなモノがが受け入れられる余地はあるよな。
660通常の名無しさんの3倍:2010/04/20(火) 23:17:21 ID:???
保守
661GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/22(木) 08:04:44 ID:???
AA、永遠、そんなのもいましたねぇ・・・
でも先にこいつを出さないと。名前は学生時代に友人達と
はなしていたネタです。”種劇場版の副タイトルはこれだ”ってね。実に1年半ぶりの登場です

第百十五話『ジャッジメントフリーダム、行きます!!』(前編)

 見上げれば空気によって光が遮断されることの無い満天の星空、見下ろせば真っ黒な宇宙に浮かぶ真っ青な星。無事合流を果たした
ガロードとティファとパーラは今地上に住んでいる者達がほとんど見たことの無いような絶景の中を静かに進んでいた。
 眼下に広がる地球はただただ青く美しい。だが地表では新連邦軍とそれに反対する勢力が未だに血で血を洗うような激しい戦闘を
繰り広げているだろう。はるか上空から見下ろすだけではわからない。
『んで、地上の目的地はとりあえず新連邦軍の第8宇宙基地周辺で良いんだな?』
「ああ、フリーデンの皆と別れたのがそこだ。フリーデンが敵の旗艦に吶喊かけちゃったからもう艦は見る影もないはずだけど、
まずはそこから皆の足取りをつかもうと思ってる。」
『了解。さてさて、地球とはいかなる所なのやら…。』
 Gファルコンとダブルエックスは合体して飛行形態のまま大気圏突入ポイントを目指していた。MS1機と支援機1機、行軍にはあまりにも
さびしい。中の3人に聞こえるのは機体の動力部の稼動音と互いにかわす音声だけしかない。
「でもパーラ、ホントにこれで地球に帰れるのか?」
『スペック上はな。でもアタシもこういうの初めてだから、どうなるかわからないぜ?』
「…冗談よしてくれよ。」
『何だ? ティファと心中するのは嫌か?』
「だ、だからそう事じゃなくて…!」
「ふふふ…。」
 ガロードの反応に思わずティファが笑みを浮かべる。こういう彼の反応を見るのも実に久しい。フリーデンでの生活の中ではごく
当たり前だったものが、一度離れてみると本当にかけがえの無いものだと実感した。
「やっと帰れるのね…。」
「ああ、やっと帰れるんだ。」
 彼女の言葉にガロードもうなずく。フリーデンから離れたことはガロードも同じだ。ティファのために宇宙まで上がってきたが、
なれない環境にかなりのエネルギーを費やしてきた。地球と言う彼のホームグラウンドに戻れることは大きな安心材料であることに違いは無い。
『よし、大気圏突入予定ポイントまで後15分、乗客の皆様はシートベルトを』
「ッ! 危ない!!」

ビビー!! ビビー!!

パーラの旅客機のアナウンスを真似た台詞の最中、突然ティファが叫ぶ。と同時にレーダーがエネルギー反応の感知をアラームで伝えてきた。咄嗟にパーラが
操縦桿を操り機体の方向を変えると、ほんの一瞬前にいたその場所をビームが飛び去っていった。
『何だ!?』
正面には地球の輪郭からゆっくりと太陽が顔を覗かせ始めている。既に半分ぐらいがその姿を現しただろうか、ようやくガロードたちは攻撃を仕掛けてきた
”敵”の姿を見つけることができた。逆光補正が施されたメインディスプレイに映るのは30あまりの宇宙艦と100あまりのMS、そしてその先頭に立つ4機のMSだ。
662GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/22(木) 08:07:32 ID:???
第百十五話『ジャッジメントフリーダム、行きます!!』(中編)

 1体目は赤色の腕の長い機体、2体目は紫色で大きなハサミを持つ機体、3体目は地上でラスヴェートと戦った時にいた灰色の
円形のバックパックの機体、そして4機目は8枚の羽を持つ黒い機体。そしてそのどれもがガンダムタイプだった。
『ガロード、こいつらは…!?』
「新…連邦軍だ……!」
 ガロードは現状の危険さに思わず顔をゆがめた。横の座るティファも顔をこわばらせている。戦力差はほぼ絶望的。
サテライトシステムも使えず、たった2機であの数を相手にするのはあまりにも無謀な行為だと言うことは言うまでも無い。
 だがそれでも、そこから状況を打開しようとするのがガロード・ランと言う男だ。
「パーラ! ドッキングアウトだ!!」
『わ、わかった!』
合体を解除すると、ダブルエックスとGファルコンは新連邦宇宙軍に攻撃を仕掛けたのだった。


『兄さん、奴らが向かってくるよ。』
『キラ・ヤマト、今回は貴様が改良を加えた新型の初陣だ。しっかり働いて見せろ。』
「…目的は彼らの確保、でしたね。」
久しぶりの無重力に体が違和感を訴えているものの、体調は問題ない。機体の状態も目標としていた数値、能力を発揮できる
までに仕上がっている。単機で2機、できるはずだ。
『そうだ、私個人としてはやつらをこの場で大気圏に突き落として燃え尽きるさまを見たいところだが、生憎とブラッドマン卿が
彼らに興味を示している。できることなら機体の損傷も少ない方が良いな。』
「了解、やってみます。」
新連邦のパイロットスーツに身をつつみ、青いシールドの奥には依然と同じ茶髪の前髪と紫色の双眸が見える。しかし、かつて
白くきれいだった機体は黒系統の色に変わり、彼自身の変化を感じさせる。
「ガンダムダブルエックス。新連邦軍新型ガンダムの試作機、武装はライフル1、サーベル2、バルカン2、マシンキャノン4、シールド1、
サテライトキャノン2。現状月はないためサテライトキャノンは除外…。」
既に登録しておいたダブルエックスのデータを読みながらキラは静かに作戦を練る。支援機の武装は未知数だが、少なくともそれほど
強力な武装があるとは思えない。ならば、こちらを先に捉えることが得策だろう。
「”ドラグーンワイヤー”スタンバイ、ドラグーン反応値確認、正常。ワイヤードビームライフル及びビームシールド、正常。
腰部ビームサーベル”トールハンマー”、正常。実体剣”エッケザックス”、” ナーゲルリング”装備。」
既にどう勝つかのイメージは出来上がっている。使用する武装を確認しつつも彼は無表情のままだった。
「全武装正常、目標との相対距離確認…。レンジ内に入ったら攻撃を開始する。」
手元の操作パネルをチェックモードから通常操縦モードに戻すと、キラは出力レバーをつかんだ。
「キラ・ヤマト、”ジャッジメントフリーダム”行きます!!」
“断罪”の名を冠したガンダムが、ガロードたちを確保すべく行動を開始した。
663GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/04/22(木) 08:10:46 ID:???
第百十五話『ジャッジメントフリーダム、行きます!!』(後編)

「ガロード気をつけて、あの人、前と感じが違う。」
「あいつ、もしかしてローレライの海で新連邦といっしょになって襲ってきた奴か!?」
4機のガンダムのうち真っ黒な1機だけがこちらに向かってくる。後に控えるシャギアとオルバが一体何を考えているかわからない以上、
下手な手は打てない。
「あの時はシンがあいつの相手してたっけな!」
 そう言いつつダブルエックスはライフルを構えてトリガーを引く。1発、2発と連続してビームを放つが、それを意に返す様子もなく
フリーダムはあっという間に距離をつめてきた。
「こ、こいつ!」
「パイロットスキル、射撃は”A−”!」
キラはダブルエックスの射撃を見てそう判定した。もしこれが新型量産機のドートレス・ネオだったら、新連邦軍の一流のパイロットだったら
一撃で撃破されていたに違いない。それだけ攻撃はきわどく、正確な狙いだ。
 ガロードの射撃が下手なのではない。それにあわせて速度を緩めないまま動いて弾幕を掻い潜るキラが”異常“なのだ。普通の神経ではまず
同等のことをすることはできないだろう。
「まずは弾幕を無くす!」
もうダブルエックスのライフルの銃口は眼の前だ。銃口内には次弾用のエネルギーが既に集められており、次の瞬間にはビームが発射される。
予想通りビームは一瞬前までフリーダムの顔があった位置を正確に直進して行った。しかしその場所にフリーダムの顔はない。
「ウ、ウソだろ!?」
ガロードはフリーダムのでたらめな動きに思わず目を丸くした。あろうことか、フリーダムはその場で機体を後へ半回転させてビームをよけたのだ。
さらに、その勢いのままサッカーのオーバーヘッドキックの要領で左足をつかってダブルエックスのライフルのグリップを蹴り上げライフルを弾き飛ばすと、
すぐさま両手の双剣が同時にダブルエックスを襲う。
「くッ!?」
ガロードは顔をゆがめつつも冷静に機体を操作し左腕のシールドでそれを受け止め、逆手で右のビームサーベルを装備して横凪に一閃する。フリーダムはそれを
よけるために後方に下がり、一端距離をとった。
「防御技能”B+”、”状況判断A+”。サテライトシステムが使えないと普通のMSと変わらないが、機体を熟知した上で今の攻防を打開した…。総合判定”A”、一流だ。」
彼の表情はまるで仮面をかぶったように顔の肉は動かない。口に出す言葉も淡々としており、以前の彼を知る人間ならば一体何があったのかと心配するに違いない。
 言うなれば、今の彼は”機械”のようにしか見えなかった。
「後方より支援機接近、潮時か…。」
 後からGファルコンが迫っていることを確認すると、キラは翼を展開して8基のドラグーンを一斉に解き放ちターゲットをGファルコンに設定した。
「ドラグーンワイヤー発射!」
 ドラグーンワイヤーはモノフィラメントワイヤーカッターを基に作られている。通電させれば触れれば肉を切り、くくれば骨を絶つということもできる。
しかし今回はそんなことはしない。あくまで中のパイロットを気絶させることが目的だ。8基のドラグーンから放たれたワイヤーは機体に絡んで急制動をかける。
Gファルコンは一気に失速し、ほとんどその場に停止した状態になってしまった。
『な、何だよこれ!?』
はじめてみる武器にパーラは戸惑う。キラは鳥を絡め取ったことを確認すると、ダブルエックスに通信をつないだ。
「まだやるかい?」
『…何!?』
「その気になればこの場でこの戦闘機をばらばらにできる。もちろん、中のパイロットもろともね。」
『……くそッ!』
ガロードは仕方なく、右手のビームサーベルを手放したのだった。
664通常の名無しさんの3倍:2010/04/22(木) 22:06:54 ID:???
乙!!キラはもともとラクスの言うとおりに動く機械、というのは禁句かな?
665通常の名無しさんの3倍:2010/04/22(木) 22:19:56 ID:???
GX氏更新乙

キラさんはほんと環境に影響されすぎ、それがダメなんだって気が付かないとな
666通常の名無しさんの3倍:2010/04/22(木) 22:44:22 ID:???
キラはラクスだけに服従するもんだと思っていたが・・・。
667通常の名無しさんの3倍:2010/04/23(金) 01:11:11 ID:???
依存する対象が変わるだけでこうも変わるか、自我がないとは本当だな
668通常の名無しさんの3倍:2010/04/24(土) 12:03:29 ID:???
ジャジメントフリーダムか。

ストライクに対するストライクノワールみたく、フリーダムノワールみたいな外観だろうか。
669通常の名無しさんの3倍:2010/04/25(日) 09:55:15 ID:???
ただでさえ『ラクス=正義』の考えに染まりきってるキラがこんな風になるわけがない。
670通常の名無しさんの3倍:2010/04/25(日) 11:12:15 ID:???
>>666
>>669
けどこっちの世界にラクスが来ている事をキラは知らないわけでしょ。
671通常の名無しさんの3倍:2010/04/25(日) 11:32:26 ID:???
>>666・667・669・670
この物語のキラは変体兄弟に捕まって
特殊な訓練更生施設にぶち込まれて完全にやばい方向に
強化されたのが過去の掲載分に記されているんだが。
その辺の部分は読んでないのか?
672通常の名無しさんの3倍:2010/04/25(日) 22:16:47 ID:???
>>671
それでも変わらない(成長しない)のがキラだろ
673通常の名無しさんの3倍:2010/04/25(日) 23:15:37 ID:???
スパコと言っても、キラは体力等でカガリにも負けるへたれだし。
現実にあるその手の軍の収容所などは、本当に地獄としか言いようの無いことを囚人
にやらせるらしいから。
所詮ぬるま湯につかったことしかないキラなんて、AWの地獄を生き抜いてきた猛者
たちに抗えるわけは無かったということじゃない?
674通常の名無しさんの3倍:2010/04/28(水) 10:06:27 ID:???
どーだろな、
案外最後にどんでん返しなんて・・・

まぁ今後に期待か
675通常の名無しさんの3倍:2010/04/28(水) 23:40:03 ID:???
キラの騙され上手なところは結局無印初期の頃から変わってない。
676通常の名無しさんの3倍:2010/05/03(月) 05:34:37 ID:???
一旦ラクスに洗脳されたキラはもう騙されねえって。
677通常の名無しさんの3倍:2010/05/03(月) 12:13:19 ID:???
お前いいかげんくどいんだよ、
目障りだから死ぬまでTV版だけ見てろ
678通常の名無しさんの3倍:2010/05/03(月) 18:13:29 ID:???
TV番よく見てストーリー考えろよ
マジ単純すぎ、つまらん
679通常の名無しさんの3倍:2010/05/03(月) 21:18:11 ID:???
洗脳という手段に頼るカルトは実は客観的情報に弱い一面を持っている。
だからカルトはいかに信者に都合のよい情報運を取り入れる色眼鏡をかけるか
ということに腐心する。キラといえどもその例外ではなかろう。
680通常の名無しさんの3倍:2010/05/03(月) 23:16:40 ID:???
>>678
ラクシズだけ無双無敵、というこれ以上単純なもののないTV種死どおりに
行かないとファビョって荒らしに来るゴキブリが臭い口開くな。
身のほどわきまえろ下衆。
681GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/05/06(木) 08:40:50 ID:???
う〜ん・・・ ここまでいろいろ話になるとは思ってなかった。
でもいまさら書いたことを修正なんてできないんだよねぇ・・・
申し訳ないがこのまま行かせて頂きます

第百十六話『皆は”俺の仲間”だからな』(前編)

「貴様達はここでおとなしくしていろ。」
 ガロードとティファとパーラは新連邦軍に衛星軌道上で捕らえられると、手錠をかけられ戦艦アオヤギの一室に押し込められた。
入り口には警備兵が2人、扉は電子鍵がかけられており逃げようにも逃げられない。
「おいガロード、これからどうするんだよ?」
未だ無重力化にある彼らはノーマルスーツを着たままだ。ガロードは天井に、ティファは備え付けられたベッドに、パーラは入り口の
正面の壁にもたれかかっている。パーラは現状の打開策を見出すことができず、ガロードを見る。
 ガロードはパーラと対照的に楽観的な見方をしていた。
「ま、なんとかなるだろ。」
「オイオイ…。あたしら地球に下りるためにここにいるんだろ? だったらこんな所抜け出してとっとと地球に降りようぜ。」
「…新連邦はおそらくコロニーレーザーを攻撃するために宇宙に上がった。」
パーラが声を荒げて脱出を急かす一方、彼は冷静に状況を分析する。何も考えずに走ることも必要だが、それも時と場合による。
「でも俺たちが先に破壊してしまった。だったら、新連邦軍が宇宙にいる理由はない。」
「また地球に降りる可能性があるってのか?」
「可能性はゼロじゃないと思う。それにさっき、シャギア・フロストは”俺たちに会いたがっている奴がいる”って言ってた。
こんな戦艦の一室に押し込むってことは、おそらくこの艦隊にそいつはいないってことだろ?」
「…ッ! 誰か来ます。」
ティファが2人の会話をさえぎる。3人が身構えるのと扉のロックが解除されるのはほぼ同時だった。プシュッと言うエアロック独特の
開閉音と共に開いた扉の向こうから、1人の男が部屋の中に入って来る。新連邦の軍服に身をつつんだ人物は年齢的にはガロードたちと
さほど変わらない。肩にかかる長さはあるだろう金髪を後でまとめ、まるで彫像のように整った顔のその男は手に持っていた3つの
ボトルを3人に投げわたした。
「今から30分以内にその中身を全部飲み干しておけ。」
「…一体何のマネだ?」
それを受け取りつつガロードはいぶかしげに男に尋ねた。細身で身のこなしに無駄なものが感じられない。ガロードの持つ野生の嗅覚は
彼が只者ではないことを感じ取っていた。
「これから1時間半後、この艦は地球へ降下する。」
「なんだって?」
「お前たちを新連邦軍最高司令官ブラッドマン卿の下へ連れて行く。」
男は事も無げにそう告げた。
それを聞いたガロードはなるほどと納得する。ブラッドマンの目的は単純だ。彼が会いたいのは彼らではなくティファ・アディールただ1人。
他の人間はおまけでしかない。
「ガロード・ラン、ティファ・アディール、他1名をヨーロッパにある司令部本部に移送する。これが本部からの通達だ。」
「アタシは他1名かよ!」
「君のデータは我々新連邦軍のデータベースにないのでな。」
「このキザ男ォッ…!」
男の歯に衣着せぬ物言いにパーラは頭に血を上らせる一方、ガロードとティファは静かな表情だった。普通の兵士達だったこうやって話をすることは無い。
おそらく”何か”ある。
「んで、俺たちに何か用? 俺は、アンタがただ水を渡しに来ただけには見えないんだけど?」
「………。」
男は無言でガロードを見つめるが、表情が先ほどよりわずかにけわしくなった。真意に気づかれたからか、はたまた彼の言葉遣いが気に食わなかったのか。
ガロードにはわからなかったが、それはわかる必要の無いことだった。
682GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/05/06(木) 08:42:56 ID:???
第百十六話『皆は”俺の仲間”だからな』(中編)

「ガロード・ラン、ティファ・アディール。お前達はかつてフリーデンのクルーだった。そのことで個人的に尋ねたいことがある。」
表情を戻して男は言葉を切り出す。男の眉間からしわが消えたものの、表情は真剣だ。何か策を弄しているようには見えない。ガロードは
ティファに目をむけ、彼女がうなずくのを確認すると床に下りて彼と正面から対峙した。
「んじゃその前に、あんたの名前を教えてくれよ。それからもう1点。アンタの質問に1つ答えるに当たって俺たちの質問にも1つ答えてくれ。
それが条件だ。」
「…よかろう。お前達が脱走に必要な情報以外であれば、質問に答えてやる。」
男は、レイ・ザ・バレルはそう言ってうなずいた。


「シン・アスカはどこにいる?」
それがレイの質問だった。ガロード達が目を丸くしたことは言うまでもない。このレイ・ザ・バレルと言う男はガロードたちにとっては
”敵側”の人間だ。にもかかわらず、なぜ彼がシンの名前を知っているのか。
「お前達と知り合う前は、あいつは俺たちの仲間だった。付き合いは、お前達よりもずっと長い。」
返答を聞いてガロードの頭の中でいくつかの符号が結ばれてゆく。

シンの仲間=レイ
シンの仲間=ミネルバのクルー
レイ=ミネルバのクルー?

「あのさ、あんたのほかの仲間に”ルナマリア”だの”ヴィーノ”だの”タリア”だのって名前の人っていないか?」
「シンから聞いたのか?」
「あたしらは実際に会ったぜ。」
ガロードの口から出た名前とパーラの発言にレイ再び眉間にしわを寄せた。その反応を見た3人は彼が元ミネルバのクルーであったことを確信した。
「彼らは、今どこに?」
「さあね、あたしらは降下する前に別れたし。あ、シンもいっしょにミネルバにいるぜ。」
肩をすくめるパーラにレイはわずかに気を落としたのか表情を暗くする。それでも彼の顔が醜くゆがまないことにガロードは感心しつつ、
レイの次の言葉を待った。
「…俺の知りたい情報は手に入った。今度は、お前達が俺に質問する番だ。」
「わかった。んじゃ教えてくれ。ジャミルたちは今どこにいる?」
ガロードにとって目下一番の心配事は彼のために無茶をしたフリーデンのクルー達の安否だった。ガロードが最後に見た彼らの姿は彼を送り出すために
全力で防衛線を張る彼らの姿、その後どうなったかを彼は知らない。
「彼らもお前達と同様、我々の管理下にある。」
「要するに、捕まってるわけか。」
「言っておくが、ゾンダーエプタ島のように逃げられはせんぞ。彼らは既に母艦を失っているからな。」
「フリーデンはフリーデンだ。艦があろうが無かろうが逃げる時は逃げるさ。これは断言できる。」
自信に満ちた表情でガロードはそう言いきった。
683GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/05/06(木) 08:45:26 ID:???
第百十六話『皆は”俺の仲間”だからな』(後編)

 今までに何度もケンカもしたし仲直りもしてきた。一つの戦艦の中で大勢の人間が共同生活をするのだ。そういったことが
起こらないほうがおかしい。むしろ、そうやって本気でぶつかって本気で返ってくる関係こそが、真の”仲間”なのだ。
 ガロードは不敵に笑う。
「言っとくけど、うちの結束を甘く見てると痛い目見るぞ?」
「…お前の自信には根拠がない。そんなものをちらつかされても恐れも何も感じん。」
 そういうとレイは、話は終わったとばかりにガロードたちに背を向ける。その背中にガロードは強気に言った。
「根拠ならあるさ。」
レイの動きが止まる。ガロードたちには見えていないが表情は変えない。
「皆は”俺の仲間”だからな。」
ガロードの言葉にレイは返答をしなかった。


「…報告は以上です。」
『すまないな、レイ。君はいつも苦労ばかりかけて…。』
「いえ、今回宇宙へあがったことは無駄ではありませんでした。」
 艦内に与えられた自室でモニター越しにレイはデュランダルに報告を行った。ダブルエックスを駆るガロード・ランと
ニュータイプの少女ティファ・アディール、さらに宇宙での協力者パーラ・シスについて報告する内容はそれなりに多い。
わずかな雑談を交えながら彼らの通信は20分近く行われていた。
『しかしミネルバまで…。』
「私も驚きました。ガロード・ラン達がコロニーレーザーの破壊を成功したことも、彼らが協力したおかげのようです。」
『それは当然だろう。君とて知っているはずだ。彼らがどれだけ優秀かを、な。』
「………。」
レイは無言でうなずいた。元々彼もそこにいたのだ。彼らのことを知らないはずがない。先ほどのガロード達の話では
ミネルバは一隻丸々”こちら側”に来ている。シン、キラ、アスラン、カガリ、そしてレイにミネルバ。ずいぶんと多くが来ている。
 そんな事を考えていると、デュランダルは一度目をとじた。
『まぁ、今は彼らの無事を祈るしかあるまい。そういえば、キラ・ヤマトは現在どうしているかね?』
「は、彼は…。」
デュランダルからの質問に彼は丁寧に答えていく。その中に、”彼に向けられた”質問は最後まで一つもなかった。
684通常の名無しさんの3倍:2010/05/07(金) 22:45:49 ID:???
GX氏更新乙
読者の声に応えるのもアリだけど大抵グダグダの元だし、気にしないで思うまま書いていいんじゃないすか

捕まった後だからかガロードさん冷静に受け止めたな
デュランダルさんは酷薄ぎみ?プランで頭一杯か
685通常の名無しさんの3倍:2010/05/07(金) 23:26:23 ID:???
乙。ここまで続いてきたということは、この作品はそれだけ支持されてるという
ことです。自分を信じて頑張ってください。
686通常の名無しさんの3倍:2010/05/08(土) 01:06:49 ID:???
まして最近言い掛かりつけてきたのは、とにかくキラの悪役扱いが気に食わなくて
そういうのがある度に妨害に湧いて出る札付きの荒らしだしね。
もっともらしく何ぬかそうがホンネはそれなんだから配慮なんかする必要ないよ。
まあいい果物には害虫が寄ってくるのと同じで、ある意味面白い改変物の
バロメーターと言えなくもないけど。
687通常の名無しさんの3倍:2010/05/08(土) 11:55:36 ID:???
新話乙。
今回の新連邦宇宙艦隊の指揮は議長だろうな。
議長の事だから既に新連邦内部に自分の軍閥を作っているかも。

こっちの世界に来ているのは今回話に上った人たちと北米のラクス達だが
よくよく考えると今後増えるかもな。現に既に登場しているキャラでも
来た時期についてはバラつきがある。カガリなんて初登場時は飛ばされて
ほんの2〜3日しか経っていなかったはずだが、AA連中はひょっとしたら
一ヶ月はいるんじゃないかと思うくらい馴染んでいた。
今後リアルタイムでこっちに来る人がいてもおかしくないというわけだ。
688通常の名無しさんの3倍:2010/05/08(土) 21:05:06 ID:???
イザークとディアッカはどうしてるんだろ?TVのラストでこの2人には絶望させられた
ので、AWに来たらどうなるか、いろんな意味で気になる。
まあAWに生きる人たちの逞しさを体験したら、かつて自分たちがナチュラルに抱いていた差別
意識がいかに根拠の無いものだったか、改めて思い知るのは確実だろうが。
689通常の名無しさんの3倍:2010/05/08(土) 21:23:24 ID:???
>>688
別の意味でナチュラルを見直す連中もいるかもしれないな。
ザイデルを見て
「こんなに地球にダメージを与えていた指導者がいたのか!すげえ!!」
とか。
690通常の名無しさんの3倍:2010/05/09(日) 02:11:57 ID:j2KIZCkC
ザイデルさんは99億人殺した人ですからな・・・一個人で殺した人数としてはガンダム最多か、いや黒歴史時代の∀パイロットかも知れん
691通常の名無しさんの3倍:2010/05/15(土) 07:47:18 ID:???
保守。
692通常の名無しさんの3倍:2010/05/17(月) 15:38:53 ID:???
保守
693GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/05/20(木) 08:59:16 ID:???
こっそり更新・・・ そういやこいつらも相当久しぶりだったりする
調べたら最後に出したのが4年前だった

第百十七話『今度は僕たちのターンです』(前編)

 森の中を大型の荷物を積んだトレーラーが4台、土煙を上げながら森を分断するようにのびる道を進んでいた。時刻は夜の9時、
ドライバーの中年の男も眠そうにあくびを噛み潰している。
「先輩、そんな不真面目そうな態度取ってると怒られますよ?」
横で車窓の向こうに広がる鬱蒼とした森を眺めていた後輩の男は先輩が眠そうにしている姿を見て苦笑する。その態度に男は
ムッと表情を変えた。
「あのな、こちとらかれこれ5時間以上運転続けてんだぞ!? 飯も無し、小便もいけず、おまけに後輩のお前は大型免許持って
無くて運転できませんだぁ!?」
「ま、まぁそれに関しては平謝りするしかないんですが…。」
先輩の強い口調に圧されて後輩は助手席の横にあるドアの方へと逃げてゆく。運転中の先輩はアクセルやハンドルから手を
放すことができず、しぶしぶ引き下がった。
「ったく、たのむから今度の免許の試験通ってくれよ。ただでさえ人手不足なんだからな。」
「わかってますって。この間仕事が無い惨めな奴らがいましたからね。なんていってましたっけ? 赤い…ん?」
後輩が前方に目を向けた瞬間、一瞬何かが光を放った。それに気づいた後輩は表情を変える。
「? どした?」
「いや、なんかあそこ光ってません…?」
「んん〜〜〜?」
正面を指差す後輩をみて先輩はヘッドライトを下向きから前向きに変える。これで視野が下向きに比べて倍以上は確保される。
そして、その先に4つの物体が浮かび上がった。それぞれ一対なのか、白と赤、そしてもう一つはオレンジと黄色の物体だ。
それらはさらに上に向かってのびており、2人はそれを見上げる。
「ちょっと先輩…。」
「…なんだ?」
「あれってもしかして…?」
後輩は顔を引きつらせ、先輩は表情が固まり一筋の冷や汗を流す。踏んでいたアクセルから力が抜け、徐々にトレーラーの
速度が落ちてゆく。後輩は先ほど光ったものを見つけ出し指差した。その指が震えていたことは言うまでも無い。黄色の2つ光、
青の2つの光。さらにその下には恐らくMSを関わる人間ならば恐らく知らないものはいない独特の頭部があった。
「ガ…!」
「ガンダムだぁぁぁぁっ!!」


「まったく、俺たちただ立ってただけじゃないか…。」
『いいんじゃない? 楽させてもらったわけだし。』
トレーラーを置いて逃げていったドライバーたちの様子を眺めながらネオ・ノアロークは複雑な表情を浮かべていた。紫色の
パイロットスーツに身をつつんでいるものの、頭の後ろで手を組んでまるでやる気が感じられない。何しろ戦闘があることを
予想して今回MSを準備してきたのだ。まさか護衛もつけず夜道を走って、さらに一目散に逃げていくなどとは思いもしなかった。
自分達の安全しか考えてない彼らにはあきれるばかりである。顔の眉間と鼻の真ん中付近を真横に切って交わる傷が無ければ
精悍でハンサムな顔立ちだが、それも今は沈んでいた。
「せっかく新しい専用機で来たってのに…。アスハのお嬢ちゃんのお下がりだけど。」
『俺のムラサメも有ったんだが?』
通信機の向こう側でそう言うのは専用カラーのオレンジ色のパイロットスーツに身をつつんだ男だ。名前は
アンドリュー・バルドフェルド、”あちら側”では”砂漠の虎”の異名で知られるアフリカ戦線のエースである。当時四速歩行型の
MSラゴゥに乗っていたこともあってか、今は四速歩行形態に変形可能な専用カラーのガイアガンダムに搭乗している。ガイアガンダムは
”大地”の名を冠するとおり長距離の飛行はできないが、それを補って余りある機動性を持っている。前の大戦時におったケガで左目は
用を成さなくなっているが、パイロットの腕は未だ衰えていない。
694GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/05/20(木) 09:01:45 ID:???
第百十七話『今度は僕たちのターンです』(中編)

「ムラサメ隊のお株を奪うのも不味いだろ?」
対してネオは白いガンダムタイプのMSに乗っている。形式番号MBF-02、機体名”ストライク・ルージュ”。キラが
大気圏離脱用ブースターをつけて宇宙に上がった際に壊れたそれを修復したものである。彼らの中では”ストライク”は
名高い機体であるが、バルチャーやMSのりたちには”ガンダム”という名で恐れられていた。元々赤だったPS装甲は
白と青の当時のストライクのカラーに変更され、今は文字道理”ストライク”となっていた。
『それよりもアンタ、良いのかい? 代表のこと”お嬢ちゃん”なんて気安い言い方して?』
「こっちにはオーブもプラントも地球軍も無いだろ? それにあの嬢ちゃんだって、そんな事を気にするような柄じゃないって。」
そう言って口を陽気に笑う姿は間違いなく”あの男”なのだが、バルドフェルドはあえてそれを口にしようとはしなかった。
「さて、これどうするかね。」
『こいつらはこのままトレーラーで輸送するしかあるまい。移動しながら整備はするとして、戦艦で運ぶよりは危険が
付きまとうだろうから護衛は必要だろうな。』
「なら作戦通りってことか。軍曹さんそっちはどうだい?」
『機体の識別は確認できた。後はぼちぼち修理しながら行くさ。どの機体も損傷がひどいから、応急修理で丸1日って所ですぜ。』
ストライクとガイアの後に距離を置いて待機していたジープがトレーラーに横付けされると、戦艦整備班のマードック軍曹が降りて
各機体の状況を確認する。何が何でも整備しなければ戦えないほどではないものの、今のまま戦場に出ても役不足だ。
 ひどく癖のある髪の毛が寒風に揺れる中、彼は両腕の袖を捲り上げた。
「よし、んじゃ4機同時に整備開始だ!」
 他の面子に指示を出しながら彼はトレーラーの荷台にもぐりこんで行った。


『こちら鷹と虎と小人隊、雪の精霊と天使隊聞こえるか?』
「こちら雪の精霊と天使隊、何か状況に変化はありましたか?」
『ああ、無事にプレゼントを届けてもらった。後はこっちが持っていくだけだ。』
「了解、道中無理しないで下さいね。」
『OK、まぁぼちぼち行くさ。そっちも気をつけてな。』
 通信が切られ、モニターから映像が切れるのを確認するとミリアリアはシートの背もたれに背中を預けた。最初に立てた作戦の第1段階は
無事クリアした。次が本番だ。
「ラミアス艦長、聞いての通り少佐たちうまく行ったそうです。」
「わかったわ。それからミリアリアさん、あの人は”少佐”じゃなくて”一佐”よ。」
「あ…。す、すいません。」
 思わず”少佐”という名が口から出たことに彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべた。マリューは何もいわないが、彼女と”あの男”は
それなりの関係だった。そのことはミリアリアも知っている。
「でもあの声、あの性格、あの容姿、どれをとっても少佐ですよね。」
「本人が認めない以上、彼は彼ではないわ。今はそういうことにしましょう。」
マリューは笑顔で話題を終わらせる。彼女自身、その話題にはあまり触れたくは無かったのかもしれない。
「それで、彼らの乗る列車の位置は特定できた?」
「あ、はい。モニターに出します。」
 ミリアリアはすぐに操作パネルを叩いて正面のメインモニターに地図を表示させた。地図はユーラシア大陸北東部、ロシア、モンゴル、
さらに北アメリカ大陸の西端であるアラスカまで映っている。その中に赤、青、白の3つの点が点滅していた。
695GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/05/20(木) 09:04:08 ID:???
第百十七話『今度は僕たちのターンです』(後編)

「現在彼らの乗る列車は赤の点で示すとおりロシア北部を東へ向かって移動しています。青がバルドフェルド隊長たちのいる所で
白が私達のいる地点です。」
赤の点と青の点が合流するまで約1日、さらに白の点が合流するのも約1日。ほぼ同時に目標を捕らえる予定だ。
「問題は、彼らがどのあたりまで進むかってことね…。」
彼らが持っている情報では新連邦による彼らの銃殺は確定しており、人里はなれた地点まで彼らは移送されることになっている。
それ以上の情報は今の所入ってきておらず、どの地点が目標なのかも定かではない。
「戦前の鉄道の路線図なんて当てになりませんし、どうします?」
操舵を担当するノイマンは細い目をさらに細めて艦長に向ける。今までに何度も激戦を潜り抜けてきたとはいえ、目的地の見えない
航行は彼も良い気分はしない。
「とにかく、今は列車の向かう先に行くしかないわ。こんな僻地ですもの、針路変更なんて早々するはずが無いはずよ。」
そう言ってマリューは姿勢を正し、改めて指示を出す。艦長職について3年、自分でもようやく板についてきた感じがしていた。
「本艦は予定通り、ロシア北東部シベリア地方へ向かいます。各員警戒を怠らないように。」
『了解!!』
ノイマンが、チャンドラが、ミリアリアが返事をし、浮沈艦と呼ばれた強襲機動特装艦”アークエンジェル”は目的地へ向かうのだった。


 アークエンジェルの格納庫は閑散としていた。本来あるべき機体は全て出撃中のため、整備をする者達もいない。そんな中、一番奥の
格納スペースに1機だけMSがあった。白亜の装甲、丸みを帯びた優雅さすら感じられる独特の造形。ストライクやガイアましてアカツキなどとは
まったく違うラインを持つ機体だ。
「さて、そろそろですね。」
コックピットの中で少年はモニター画面に映し出された時計を確認する。作戦の第2段階開始予定時刻まで後20分、そろそろ目標を捕らえても
良いはずだ。

ビビー!! ビビー!!

そう思った矢先にブリッジから通信が入る。内容は彼が考えた通りのものだった。目標を確認、直ちに発進せよ。彼は操縦桿を握ると、一度深呼吸をした。
「さぁ、今度は僕たちのターンです。」
彼の名はカリス・ノーティラス。フリーデンの皆に救われた、重たい十字架を背負った少年である。
696通常の名無しさんの3倍:2010/05/21(金) 10:06:41 ID:???
乙です。
ここでまさかの虎ガイアとストライクとは。
697通常の名無しさんの3倍:2010/05/21(金) 23:17:37 ID:???
乙。しかしまさか、カリスがやつらと一緒に。まあ考えられない展開でもなかったか。
698通常の名無しさんの3倍:2010/05/21(金) 23:21:08 ID:???
GX氏更新乙

北米に潜んでたもんなあー次の戦争は一段とカオスになりそうだ
699通常の名無しさんの3倍:2010/05/22(土) 00:45:53 ID:???
まあデュランダルがブラッドマン側についてるカウンターとして
AAが反新連邦サイドというのも言われてみればアリかもしれない。
ただTV版だとカリスは北米の反新連邦組織を全面的に信頼してる訳でもないと
触れられてもいたものの尺の関係で掘り下げられる事もなかったが
キラクス抜きの?AA組がAWでどういう心構えでいるのかは興味深いな。
700通常の名無しさんの3倍:2010/05/22(土) 03:42:17 ID:???
北米反政府の連中のまとまりの無さwはラクスをも呆れさせるほどの程度の低さかもしれないと思う反面
原作と違い大局に影響を及ぼす姿もまた見てみたい。
701通常の名無しさんの3倍:2010/05/22(土) 12:34:38 ID:???
最初の頃ウィッツ、ロアビィの休暇話で一度ロアビィがラクス(虎付)と接触後戦闘に
なったことがある。
その時にロアビィの”素敵な女性センサー”が警報を鳴らしたとのこと。
カリス「今の(ピンクに汚染した)組織は信頼できません。」ではないかと
702通常の名無しさんの3倍:2010/05/27(木) 16:13:41 ID:???
保守
703通常の名無しさんの3倍:2010/05/30(日) 02:20:35 ID:???
>>701
あの時のロアビーセンサーの正体は
「治世の能臣、乱世の奸雄」
くらいの意味だったかもしれんがな。
704通常の名無しさんの3倍:2010/05/30(日) 15:00:56 ID:???
>治世の能臣
ありえん。
705通常の名無しさんの3倍:2010/06/04(金) 02:46:26 ID:???
保守
706GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/06/07(月) 16:03:52 ID:???
ダメだ・・・ やっぱり夜勤の間は書く気にならなかった・・・。

第百十八話『皆といっしょにいたいと思う』(前編)

 外は一面銀世界だった。もうもうと黒い煙を吐きながら進む機関車は雪原を両側に見ながら西へと進む。貨物車の中に押し込められた
フリーデンのクルー達は、壁や床の隙間から吹き込んでくる寒風に耐えながら皆体を寄せ合って互いに暖めあっていた。
 ガロードを宇宙へ上げるべく新連邦の要塞に艦を特攻させ、文字通り身を挺して彼らは仕事を果たした。しかし代償に新連邦軍に捕まり
MSを没収され、シベリアの強制収容施設へと送られると聞かされている。極寒の地での生活は考えただけでも身震いがした。
「後どれくらいこうして移動するんだろうな…。」
床に腰を下ろし両手をこすり合わせて暖を取るカガリの表情は暗い。新連邦の考えることである。とんでもない労働条件の中に放り出される
ことは目に見えていた。
「カガリ、大丈夫だ…。」
そう言ってアスランは自分が着ていた上着を彼女の肩にかける。彼女を勇気付けようと笑顔を浮かべているが、先にある不安の色は隠せなかった。
「アスラン…。」
「何も心配する必要は無いさ。きっとガロードやシンが、ハ、ハ、ハァクシュンッ!!」
彼女に上着をかけたおかげで寒くなったのか、アスランは大きなくしゃみをする。カガリに唾や鼻水をかけまいと顔の向きを変えたものの、
その先にはキッドがいた。
「うわ汚ったねー!」
「グスッ… あ、すまない。狙ってやったわけでは…。」
「確信犯であれだけやれたらたいしたもんだよ、アンタ。」
「まったくだぜ。」
壁に背を預けていたロアビィとウイッツはその光景を見て苦笑する。彼が確信犯ではないのはわかっている。ただ先ほどの彼は傍から見ると
”かっこつけようとして失敗した三枚目”にしか見えなかったのだ。トニヤもケラケラと笑う。
「あ〜あ、完全に失敗しちゃったね。」
「いや、だからそもそも狙っていないわけで…。」
「あら、あなた彼女のハートを狙ってたんじゃなかったの?」
「あ、それは狙って…て、一体何を言わせるんですか!?」
あたふたと言葉を返そうとするアスランに今度はエニルも絡む。四方八方から話のネタにされたアスランはどうしたものかと赤面し、それを
見ていたほかのクルーは突然の喜劇に笑い声を上げた。
「皆のん気ですね。これからどうなるかわからないというのに…。」
「…変に緊張しているよりはマシだ。」
新連邦の兵士達に暴行を受け、痛みで体を動かすことができないジャミルは傍らに寄り添うサラに静かに言った。先の見えない状況は変わらない。
しかしだからと言ってその状況におびえていてはそれを打破することはできない。
 彼らがまったくの能天気でないことは今までいっしょに生活してきた仲だ。ジャミルもよく知っていた。
「キャプテンはこの状況を打破できると考えてらっしゃるのですか?」
「我々だけでは、恐らく無理だろうな。」
サラの問いにジャミルはあっさりとNOと答える。彼女もその回答を予測していたのか、表情は変わらない。ジャミルの話は続く。
「だが、我々が助かる確率は0ではない。」
「確率論から行けばそうですが…。」
「そうやって0ではないことを理由に無茶をして、成功率の低いことを成し遂げてきた奴を私達は知っている。」
ジャミルとサラの脳裏には同じ顔が浮かぶ。彼らが知る限り一番無茶をやり、そしてそれ相応の成功を収めた少年。彼らが身を挺して守りぬいたあの少年だ。
「間に合うのでしょうか?」
「間に合わないならそのときはそのときだ。私はあいつがもどってくることを信じているからここに残った。それに…。」
「それに?」
「…それに私は最後の瞬間まで、皆といっしょにいたいと思う。」
年甲斐も無い台詞だと自分を笑いながらも、ジャミルの顔は満足げだった。
707GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/06/07(月) 16:06:17 ID:???
第百十八話『皆といっしょにいたいと思う』(中編)

 眼下の雪原を走る機関車の姿は既にアークエンジェルに捕らえられていた。客車が2台、貨物車が5台。新連邦の通信を傍受した際には
彼らは貨物車に乗っているということだった。
『カリス君、バルドフェルド隊長とネオ一佐もこちらのレーダーで捕らえたわ。もう間もなく合流できるはずよ。彼らの救出作業は
作戦通りお願いね。』
「わかりました。ぼくも彼らに恩のある身です。絶対に助けて見せますよ。」
発進ゲートへ移動するベルティゴのコックピットの中でカリスは宣言する。彼らは彼にとってかけがえの無い存在なのだ。何が何でも
助ける。革命軍の亡霊に心を消されそうになった彼を命がけで助けてくれた彼らを。カリスの決意は固い。
『発進位置に固定確認! カタパルトオンライン、ベルティゴ発進どうぞ!』
「カリス・ノーティラス、ベルティゴ。行きます!!」
アークエンジェルの発進口から白い精霊が飛びだす。かつての氷の刃のような鋭さをそのままに、新たな熱いものをその胸に秘めて。


キキィィィィィイィィッ!

それまでガタゴト車体を揺らしていた車輪が突然、それまで聞かなかった金属同士がこすれあう甲高い音をあげる。鳴り響いたその音に
ジャミルたちの表情が険しくなった。
「な、何だ?」
「…スピードが落ちてる?」
カガリとアスランは怪訝そうに眉をひそめる。貨物車の隙間から見える風景が過ぎていく速度が徐々に落ちていることを確認すると、
アスランの表情は険しさを増した。
「ロアビィさん、そちらの壁の隙間からなにか見えますか?」
「ん〜。いや、こっちは雪原しか見えないね。駅のホームも出迎えの来賓もぜんぜんだ。」
「…こっちは地面に人が入れそうな溝が掘ってあるのが見えますよ。」
「オイオイまさか…!」
ロアビィとは反対側の隙間を覗くアスランの”人が入れそうな溝”という言葉にウイッツは自分の目で確認すべく壁の隙間を覗き込み、
息を呑んだ。たしかにそこには幅3m弱、長さ200m近くにわたって溝が掘られている。
 こんな雪原のど真ん中で、何のためにこんな溝が必要だというのか。農作物を育てるために掘られた用水路でないことは誰の目にも明らかだった。
「全員両手を挙げて降りろ! 降りたらそこの溝の前に一列で並べ!!」
機関車が完全に止まると、新連邦の兵士達がマシンガンを持って貨物車の扉を開けた。隙間風と同じ気温の空気が車内には入り込み、
みなの吐息が一斉に白くなる。
「おい、これってやっぱ…?」
「”終着駅”ってやつ?」
ウイッツとロアビィは同じように落胆の表情で車両から降りる。アスランとカガリは兵士を睨みつけながら、ふらつくジャミルとそれを支えるサラは
無表情のままだ。他のクルー達は一様に泣きそうな表情で列車から降りていった。
「あ〜あ、アタシの人生ここまでか…。」
「まだ諦めたらダメよ。」
トニヤの弱音にサラは叱咤する。しかしその叱咤は、本当は彼女自身に向けられたものだったのかの知れない。声にいつもの張りがなかった。
 背後で兵士達が並んで号令がかかる。最後の瞬間はもう眼の前だ。
「せめて、最後は痛くないようにお願い…。」
銃殺の場合、一発目で絶命するものもいれば数十発当たっても絶命しない者もいるらしい。どうせ死ぬなら苦しまずに死にたい。死ぬ側からすれば
当然の考えだろう。
 しかし、今回はその考えを捨てざる得なくなった。突然上空から白いMSが飛来したのだ。
708GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/06/07(月) 16:08:09 ID:???
第百十八話『皆といっしょにいたいと思う』(後編)

丸みを帯びた独特の形状、宇宙革命軍特有の横へ伸びる太い髭に上へまっすぐ伸びた鶏冠のようなアンテナ。窮地のジャミルたちに
その姿はまさに白騎士のように映った。
 地上に着陸したベルティゴはフルオートで肩部のマシンキャノンを連射して新連邦の兵士達を土煙で覆い隠す。それを見た
ジャミルたちは一斉に攻勢に転じた。ロアビィとエニルは兵士に体当たりしてマシンガンを奪い取り、ウイッツにいたっては
勢いのついた飛び蹴りを見舞った。
「見たか俺のクリムゾンスマッシュ!」
「んなことは良いから、早く武器取れよ!!」
ウイッツが気絶した兵士から武器を奪い取る間にも、他の者達は銃撃戦を繰り広げている。当初死体となって埋まるはずだった溝は
塹壕と化し、静かだった雪原は戦場と化したのだった。


「こちら虎と鷹と小人隊! アークエンジェル聞こえるか?」
『こちらアークエンジェル! ベルティゴの乱入で貨物車周辺では銃撃戦が始まってます。』
「了解。それから、そっちのレーダーでも捉えてると思うが、追手が着てるぞ。」
『こちらは既に艦載機がありません。ネオ一佐は艦防衛のため大至急こちらに戻ってください。』
『了解、あんたらも落とされるなよ!』
バルドフェルドとネオはMSのトレーラーの前後を固めて既にカリスが攻勢をかけた地点へと向かっている。ものの数分で到着だろう。
目標をカメラで捕らえた彼らの顔には真剣なものへと変わった。
「今の所敵さんはMSを出していない。あんたはさっさとアークエンジェルへ行け!」
『んじゃ、ここは頼んだぜ!』
ネオは手馴れた様子で出力レバーをMAXにすると、上空にいる母艦へと機体を向けたのだった。
709通常の名無しさんの3倍:2010/06/08(火) 09:50:56 ID:???
乙です。
それにしてもアスラン、裏切らないんだなw
710通常の名無しさんの3倍:2010/06/08(火) 21:24:32 ID:???
こちらのアスランはなんだかんだで好感が持てるな。今のところは、だけど
711通常の名無しさんの3倍:2010/06/10(木) 07:48:26 ID:???
Gj
712通常の名無しさんの3倍:2010/06/12(土) 00:06:26 ID:???
いつラクスが本性表わすのか楽しみだ
713通常の名無しさんの3倍:2010/06/14(月) 09:55:31 ID:???
つか、反抗勢力のおえらい方がどこの馬の骨ともわからない
小娘(ラクス)の言うことなんて聞くのかね

ラクスの場合、プラントと地球での絶大な知名度と人気が
なかったら本編のようなことはできないと思うのだが
714通常の名無しさんの3倍:2010/06/16(水) 16:10:24 ID:???
ラクスに地球での人気なんかありませんよ
プラント限定です、知名度も人気も
水樹菜々みたいに一般人からしたら( ゚Д゚)ポカーンです
715通常の名無しさんの3倍:2010/06/16(水) 16:26:28 ID:???
水樹は最近一般にも認知されてきてるだろ
716通常の名無しさんの3倍:2010/06/16(水) 17:47:35 ID:???
>>714
"水樹奈々"の間違いですね。
717通常の名無しさんの3倍:2010/06/17(木) 23:18:06 ID:???
食わず嫌いに出てたなw
718通常の名無しさんの3倍:2010/06/18(金) 15:44:01 ID:???
水樹がどうのこうのはどうでもいいが…
とりあえず保守
719通常の名無しさんの3倍:2010/06/22(火) 17:59:14 ID:???
テクス(36)
ランスロー(34)
マードック(33)
議長、バルトフェルド(32)
ジブリール(31)
ジャミル、ネオ(30)
タリア(29)

顔だけだったらテクスかマードックが最年長だと思ってしまうだろうな。
でもってランスローかタリアが最年少だと・・・
720GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/06/25(金) 15:42:51 ID:???
こっそり投下

第百十九話『奴らもプロだ!』(前編)

「後方より新連邦軍の大型輸送艦が接近! 数4!」
 レーダーに映し出された機影を確認しながら右耳に取り付けたインカムに向かってミリアリアは声を出す。それを聞いたマリューは表情を
引き締めブリッジクルーに呼びかけた。
「本艦はこれより戦闘体勢に入る! 皆、気を抜かずにがんばって頂戴!」
『了解!』
 全員がその声に大きな声で返事を返した。
 今アークエンジェルにはMSが搭載されていない。ネオの乗るストライクが戻るまでは輸送艦からの攻撃とMSからの攻撃に単艦で対応しなければ
ならないのだ。
 敵の輸送艦からは次々とバリエントが発進し半数が地上のフリーデンの面々へ、残りの半分が艦へ向かってきている。その数24機、最新鋭の
機体をこれだけの数そろえることができる点はさすが新連邦と感心する。
『こちら格納庫! 一佐のストライクがたった今戻ってきた! エネルギーの充電に10分くれ!』
 整備班からの連絡にマリューは思わず顔をしかめる。アークエンジェルは”こちら側”でも類を見ない特殊な戦艦であり、それ相応の装備を
整えている。MSを1機や2機相手にすることは難しいことではない。しかし、10分間、しかも武装が少ない後方からの攻撃をどう凌ぐか、簡単に
答えが出せる状況ではなかった。
「ヘルダートスタンバイ! 後方から来る敵をロックオンしたら順次攻撃を開始して! 機関最大、艦首を敵艦の方に向けて! いくらラミネート装甲が
あっても、エンジンに直接攻撃を受けたらひとたまりも無いわ!」
 マリューは次々に現状を切り抜けるための策を打ち出していく。28歳の若さで艦長席に座る彼女は、そこに座るに足る激戦を何度も経験してきたのだ。
”不沈艦”の名は伊達でないという自負と共に、彼女は戦いに集中した。


「3人とも準備はいいか!?」
『エアマスターいけるぜ!』
『レオパルドも問題なし、きっちり整備してあって助かるね。』
『ジャスティス、いけます!』
 カリスの乱入で難を逃れたジャミルたちは、地平線の向こう側から運ばれてきたプレゼントに驚き、そして歓喜した。オレンジ色のMAと白いガンダムが
運んできたそれはGX、エアマスター、レオパルド、ジャスティスという彼らが元々所有していたMSだったのだ。上空から迫る敵機を目にし、各々自分達の機体に
乗り込んでいった。
『うちの整備班の仕事を気に入っていただいて何よりだ。』
「あなた方は?」
『俺の名前はアンドリュー・バルドフェルド。仇名は”砂漠の虎”だ。そっちのロン毛の兄さんは俺の面を知ってるだろ?』
「ああ、アメリカで2回ほど面を合わせたことがあったっけね。」
 モニター越しに名乗る男の姿はウイッツやロアビィには異様なものだった。彼らバルチャーは、そのほとんどがパイロットスーツ等を着用せず機体に乗っている。
しかし、このバルドフェルドという男は自前のデザインなのか、黄色のパイロットスーツを身にまとっていた。
『カリスとはそのアメリカで知り合った仲でね。命の恩人を助けたいという熱意に感動し、助太刀したって訳さ。』
「感謝する。」
『アンタ、隻眼で戦えるのかよ?』
 ジャミルが感謝の言葉をかける一方、ウイッツはバルドフェルドの左目の傷に気づき、気遣うようにたずねる。バルドフェルドは彼の言葉に肩をすくめる。
721GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/06/25(金) 15:45:41 ID:???
第百十九話『奴らもプロだ!』(中編)

『やれやれ、MSは隻眼じゃ勤まらないものかな? この傷はもう2年以上前のものだ。日常生活は不自由しないし、戦闘でも支障ないさ。
地上は俺とそっちの赤いガンダムに任せて、あんたらはうちの母艦の援護を頼む。』
『母艦? アンタの母艦ってまさか…!』
 ロアビィは目を丸くする。辺りを見回すが、それらしい機影はどこにも見当たらない。レーダーを確認すると、上空に大きな機影が
5つ確認できる。新連邦軍の大型輸送艦が4、アンノウンが1。しかし、レオパルドのデータベースには過去の遭遇記録があった。
『うちの戦艦は強襲機動特装艦って言う部類らしくてね。上空にいる奴がそうだ。データを送っておくから。登録しておいてくれ。』
 ジャミルは送られてきたデータに目を通しつつ、こちらに近づいてくるバリエントの数を確認する。その数20機。彼らからすれば
それほど多いとは言わないが油断ならない数だ。
「敵の数が多い、私とウイッツとアスランはカリスといっしょに上空で敵を迎え撃つ。」
『了解。』
『わかりました。』
 同意すると同時に3機はすぐに上空へ向かって機体を発進させる。何しろ上空は24機のMSに4機の母艦を相手にするのだ。戦艦一隻と
MS1機ではさすがに荷が重い。
「さて、こちらも行くか。」
『オーライ。虎型MAと動く火薬庫、派手にぶちかましてやろうじゃないの。』
「なるほど、火薬庫とは言ったもんだ。だが、ガイアはMAじゃなくてね。」
 軽い口調の2人に向かってジャミルたち3人の防衛網を抜けてきたバリエントが1機迫る。ガイアはそれに向かって大きく跳躍すると、
背中のグリフォン2ビームブレイドを展開して胴体を横一線に切断する。さらにその勢いのまま機体を変形させ、オレンジ色の
ガンダムへと形を変えて着地した。
「どうだい? 隻眼でも十分戦えるだろ?」
『俺はアンタがMS操縦できて、機体がガンダムだったことのほうが驚きだよ。』
 背中に装備されていたツインビームシリンダーを両腕に装備させながらロアビィは軽く笑った。


 一方その頃、上空で奮戦を続けるアークエンジェルの格納庫ではネオの乗るストライクが補給を終え、発進準備に入っていた。
『ブリッジ! 補給が終わったから出るぞ!』
 ネオはエールストライカーパックを装備したストライの中で最後のチェックを行いつつ、ブリッジに短く連絡を入れる。既に戦闘が
始まっているのだ。ぼやぼやしていては艦が撃墜されてしまう。そうならないためにもできるだけ早く出撃する必要があった。
「わかったわ。でも、これだけは守ってちょうだい。」
 通信機のスイッチを切ろうとしたネオは伸ばした指を止め、再びモニターに向き直る。マリューは真剣な表情だ。よほど重要なことなのだろう。
ネオも姿勢を正し真剣な表情に戻った。
『必ず、生きて帰ってくること。目の前で仲間が死ぬのはもうたくさんですから。』
 彼女の言葉は彼に向けられたものなのか、それとも”彼”に向けられたものなのかは定かではない。彼女の真意をブリッジのクルーも測りかねた。
『…了解。』
 モニターから彼の顔が消え、ブリッジは一時静寂に包まれる。

ドドォォン!!

 その静寂を破ったのは新連邦の大型輸送機から発射されたミサイルであった。艦の主翼に命中し、艦体を大きく揺らす。
722GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/06/25(金) 15:47:01 ID:???
第百十九話『奴らもプロだ!』(後編)

「敵も待ってくれないようね。」
「艦長! バリアント、及びゴットフリート射線取れました!!」
チャンドラから待ちに待った連絡が入る。艦首はほぼ180度回転し、前方にはMS群と敵艦4隻が確かにその姿を見せていた。
「下方よりMS接近! ベルティゴとジャスティス、さらにGX、エアマスターです!」
「ゴットフリート照準!! 彼らに当たらないように注意して! 発射後にストライク発進、目標敵戦艦!」
 アークエンジェルの全部にある2つのMS発射口のすぐ真上にある高エネルギー収束火線砲”ゴットフリート”、この艦が
一番主力として使えるビーム兵器だ。敵艦は既に有効射程内に入っていた。
「ゥテェェェーーッ」
マリューは叫びなれた発射の合図と共に、4本の火線が敵艦の一隻を打ち抜いたのだった。


『オイオイ、何て火力だよ。』
『フリーデンの主砲とは、比べ物にならない威力だな。』
 道をふさぐバリアントを撃墜しながらウイッツとジャミルは驚きの声を上げた。フリーデンの主砲は敵艦の装甲版を
打ち抜くことはできても、貫通することはまずありえない。しかもあれはビーム兵装だ。技術力だけ見たら明らかに過ぎた代物である。
『ぼくも初めて見たときは驚きましたよ。』
ジャミルたちといっしょにアークエンジェルの援護に向かうカリスも同意する。あの火力に匹敵する武装があるとしたら、彼らの知る
限りヴァサーゴのメガソニック砲などと同程度の出力になるかもしれない。しかし、彼らはそれ以上に強力な兵器を知っている。
「アークエンジェルの火器は強力です。あれに当たったらMSはひとたまりもありません。」
『同感だ。』
『けど、当たらなけりゃどうってことねぇ!!』
 言うが早いか、エアマスターは一気に加速し、まだ攻撃を受けていない一隻のエンジン部を目指して飛び出した。それにベルティゴも続く。
「ウイッツさん!?」
『アスラン、あちらの艦は2人に任せて、我々は別の一隻を狙うぞ!』
「しかし!?」
『問題ない、奴らもプロだ!』
 ジャミルの言葉にアスランは納得し、機体をGXに追従させ、対空砲火を続ける一隻に向けた。
723通常の名無しさんの3倍:2010/06/25(金) 19:56:34 ID:???
新作来てた〜っ!!
W杯の興奮が覚めない内に最高のプレゼントだぜ、ヒィャッハァっ!!



しかし、フリーデン組とアークエンジェル組が合流しちまって、キラがどう動くのか、気になるわぁ。
ソレ以上にヅラが危ないか。
724通常の名無しさんの3倍:2010/06/26(土) 21:44:03 ID:???
いつもいつも新作お疲れ様です
フリーデンとアークエンジェルついに合流ですか
今後の展開が楽しみですなぁ
725通常の名無しさんの3倍:2010/07/02(金) 20:27:12 ID:???
保守
726GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/07/08(木) 10:33:22 ID:???
前半は完全にストライクの独壇場と化してしまった…

第百二十話『今までとは違うんだよ!』(前編)

 ネオの操るストライクはアークエンジェルの前面にある左右二つの発進口の右側の発進口から機体を空へと躍らせた。眼前には
ゴットフリートの直撃を受けてもうもうと煙を噴出す新連邦軍の黒いエイのようなかたちをした輸送艦。さらに輸送機から
発進してきたバリエントが3機、チームを組んでこちらへ向かってきていた。
「着たか!」
 接近してくる敵機に彼は鋭い眼差しを向ける。数ではあちら側が有利だ。しかし、ネオも”こちら側”に着てからというもの、
いろいろな敵との戦闘を重ねてきた。無論その中には新連邦軍の最新鋭機であるバリエントやガディールも含まれている。
「俺だって、今までとは違うんだよ!」
 ライフルを扱う右のトリガーを3回引く。機体はコックピットから送られてきたその指示にしたがい銃口をバリエントに向け、
ビームを3発発射した。しかし、それをバリエント3機は難なくかわすと、上、右、左とストライクを囲むように散開した。
「チィッ!」
 一発でも当たってくれたら御の字なのだが、現実はそんなに甘くは無い。そしてそれはネオも承知済みのことだ。すぐに操縦桿を操り、
左側に展開した1機に対して左手でエールストライカーパックに備え付けられているビームサーベルを引き抜き、すれ違いざまに袈裟掛けに
切り捨てる。
 破壊したバリエントを気に止めている暇は無い。上と右へ逃げたバリエントがビームライフルと腕に内蔵されているミサイル2発を発射して
ストライクへ攻勢をかける。ビームライフルは手持ちのシールドで防げるが、ミサイルが当たれば最悪シールドを破壊しかねない。
「何の!!」
 ネオはメインスラスターの推力を一気に落とし、仰向けの状態で機体を急降下させる。ビームの弾速はミサイルのそれよりも速い。そのため
ミサイルを置き去りにしてビームは上空から一直線にストライクに迫った。ストライクは確実にシールドで防ぐと、すぐに頭部のバルカンで
後から迫るミサイルを迎撃する。降下する機体は大きく振動し中々照準が定まらなかったものの、逆にそれが功を奏してか2発のミサイルは
ほぼ同じタイミングでストライクに届かないまま爆発した。
「もらった!」
 煙で視界が遮られて敵が見えなくなったこと途端、ネオは煙に向かってビームライフルを乱射する。その向こうには当然こちらに攻撃を
仕掛けてきたバリエントがいるはずだ。煙の向こうでもう一つ爆発が起こる。一発が敵に命中したのである。
しかし、最後の1機が爆煙を左に回避してストライクに向かってきた。右手にライフル、左手にはサーベル。玉砕覚悟なのか、かなりの速度で接近してくる。
「これで、終わりだ!!」
 落下姿勢そのままでストライクは両手でビームライフルを構えると、接近するバリエントのコックピットを容赦なく打ち抜き、空中に広がった爆炎を
掻き分けて再び上空へ機体を向けた。
727GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/07/08(木) 10:35:00 ID:???
第百二十話『今までとは違うんだよ!』(中編)

 戦闘が始まって1時間、結果はジャミルたちの勝利で終わった。上空での戦闘を見守っていたフリーデンのクルー達は
お互いに抱き合って助かった喜びを噛み締める。そんな中、カガリは空から降下してくるアークエンジェルを見上げていた。
「アークエンジェル、か…。」
 この艦には一体どれだけ世話になっただろうか。ふとそんな考えが頭をよぎる。それと同時に艦に乗っていっしょに
過ごした時間が思い出された。艦載機も同じものならば、恐らく彼女の知っている者たちも多く乗っていることだろう。
「? カガリ、どうしたの?」
 初めて見る形の戦艦に目を奪われていたトニヤがカガリの様子に気づき、近づいてきた。カガリは頭を振るとトニヤに視線を移す。
「いや、とにかく助かったなと思ってな。」
「そうねー♪ ホント助かっちゃった。カリスの登場なんてナイスタイミングだったもん。あれがホントの”ホワイトナイト”?」
「でもあの艦、一体どこで作られたのかしら?」
喜びいっぱいのトニヤとは対照的にサラは怪訝そうな表情を浮かべた。
「こう言ってはなんだけど、バルチャー艦であんな艦があるなんて聞いたことが無いわ。新型艦を作るにしても、資材を
集めるのは並大抵の仕事じゃないし…。」
「それってもしかして、実は”新連邦側”って事?」
「カリスが協力してくれているからそれは無いと思うけど…。」
「心配ない、彼らは味方だ。絶対にな。」
 カガリはアークエンジェルに視線を戻し自信を持ってそういった。サラとトニヤは彼女のその自信がどこから出てくるのかわからず、
思わず顔を見合わせたのだった。


「アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。今回は大変でしたね。」
「あなた方のおかげで窮地を脱することができた。他のクルーも感謝している。」
マリューとジャミルは話しながら握手を交わした。
フリーデンのクルー全員を収容したアークエンジェルは西へ進んでいた。ブリッジには操舵士のノイマンと通信担当のミリアリア、さらに
ネオとバルドフェルドが顔をそろえている。対してフリーデン側はジャミルにカガリとアスラン、そしてテクスがいた。
「あなた方の救出を最初に訴えたのはカリス君です。その言葉は彼に言ってあげてください。」
「ああ、そうさせてもらおう。」
「しかし、まさかアスランとカガリ嬢までいるとはね。」
 手を頭の後ろに回してネオはぼやく。ここにいる人間は全員”事情”を知っている。表情は途端に暗くなった。
「オ、オイオイ…。俺はそんなつもりで言ったんじゃないぞ?」
「わかっていますよ、ネオ一佐。ただ、ちょっとどうしたものかと考えていただけです。」
 気まずそうな表情を浮かべるネオにアスランは言葉を返す。だがその後が続かなかった。
「まったく、まさかこれだけの人数がそろうとはな。」
「まだ増えるかもしれませんよ?」
カガリにそう言ってマリューはミリアリアの方を向く。彼女はうなずき、正面のメインモニターに映像を出した。
728GX1/144 ◆eX54sTGfHE :2010/07/08(木) 10:36:30 ID:???
第百二十話『今までとは違うんだよ!』(後編)

「これは?」
「3日前、北アメリカ大陸にある天文台が捉えた映像です。」
そこには、衛星の横に横付けされた黒い物体と、何かアンテナ2基がレーザーを発しているように見えた。
「サテライトシステムか…? しかし、中継衛星は全て戦時中に破壊されたはず…。」
「詳細は不明ですが、この映像が確認された後、新連邦軍の通信ではコロニーレーザーが破壊されたという情報が流れました。」
 ジャミルたちフリーデンの面々はミリアリアの台詞に顔を見合わせる。”対コロニー撃滅用兵器”を搭載している機体は
ガロードのダブルエックスとジャミルのGXだけだ。しかもGXはサテライトキャノンを使うことはできない。ならば出る結論は一つしかなかった。
「あれはガロードの仕業ということか。」
「”無茶はしても無理はしない”なんていっていた時期が懐かしいな。まさかそこまで派手なことをやるとは。」
 テクスはここ数日手入れしていなかった顎の無精ひげをいじりながら感心する。彼の行動力は今更言うまでも無いが、ここに来てそれに
磨きがかかっている。もうジャミルたち大人には良い意味で”規格外”に思えた。
「彼の行動力もさるべきですが、我々はこの映像に映っているこの黒い物体のほうが気になりました。」
 メインディスプレイの画像が見る見るうちに解像度を上げていく。光の帯は徐々に細く、輪郭のぼやけていた黒い物体はより鮮明に浮かび上がってくる。
「これが解像度MAXです。」
そこには黒い戦艦が1隻、ケーブルで衛星とつながっている姿が写っている。それを見たカガリは表情を変えた。
「まさかこの黒い戦艦っは…!?」
「そうよカガリさん。あれは”ミネルバ”よ。」
 浮かび上がったシルエットは主翼を広げたミネルバだった。アークエンジェルの面々にとってはまさに”ライバル”のような存在で、忘れようにも
忘れられない艦である。
「この艦は?」
「”向こう側”でわれわれの敵だった艦さ。艦の武装も、艦載機の性能も、この艦に引けを取らん。一度はこっちが沈められかけたしな。」
バルドフェルドは肩をすくめる。事実、アークエンジェルがオーブを旅立ってからまともに損害を与えられたのはこの艦だけだ。
「…ミネルバ、か。あの坊主もまだいるのかね…。」
「あの坊主?」
「俺も、あの艦とはいろいろ因縁があるのさ。」
腕を組んで壁に背中を預けながらネオは複雑な表情を浮かべる。
 “あの坊主”との約束を果たせなかった自分が、もしもう一度彼に会うことになったら、自分はちゃんと彼の顔を見る自信があるだろうか。いくら
命令だったとはいえ、あんなことをした自分が…。
 ネオが物思いにふける姿を尻目に、マリューはジャミルたちに改めて向き直った。
「まずは、今後のことを考えましょう。本艦はこれより、宇宙からもどってきたガロード・ラン、及びティファ・アディールの救出作戦を行うつもりです。
申し訳ありませんが、協力を願えますか?」
「彼らは私の大切な部下だ。彼らを助けるというのであれば、喜んで協力しよう。」
ジャミルの言葉にマリューはにっこりと微笑むと、ノイマンに艦の進行速度を上げるように指示を出した。 
729通常の名無しさんの3倍:2010/07/08(木) 12:57:57 ID:???
乙!
730通常の名無しさんの3倍:2010/07/09(金) 23:46:20 ID:???
投下乙です
フリーデンUの出番はなしかな?かな?
731名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 22:47:36 ID:???
>>730
もし戦艦の技術の総合がCE>AWでもまるで無いというわけでもないかも。
耐久力の平均ではAWの方がCEより上だと思う。
革命軍でもサテリコンのヴァローナ撃沈には結構時間かかってるし。
732通常の名無しさんの3倍:2010/07/13(火) 22:25:48 ID:???
乙!!こちらのラクシズは綺麗な方だと思いたいが。でなけりゃ一緒にいるカリスの立場が・・・
733通常の名無しさんの3倍:2010/07/15(木) 13:44:19 ID:???
XにWからの流用が多かった件について
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up453124.gif
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up453125.gif
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up453126.gif
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up453127.gif

参考文献
新機動戦記ガンダムW公式MSカタログ(コミックボンボンスペシャル 講談社)
新機動戦記ガンダムWデータコレクション(メディアワークス)
機動新世紀ガンダムX公式MSカタログ(コミックボンボンスペシャル 講談社)
734通常の名無しさんの3倍:2010/07/16(金) 21:10:31 ID:???
まさか、AWの世界というのは・・・MSの無くならなかったACなのか!?
735通常の名無しさんの3倍:2010/07/16(金) 21:15:21 ID:???
「隠す気なし」のリーオーさんに吹いたw
736通常の名無しさんの3倍:2010/07/19(月) 18:28:38 ID:???
>>733
ここまで似ていると逆に面白いな。
まあ、W→Xの間にチョイメカをデザインする暇もなかったって言う証拠かもしれないけれど。
放送当時に両方視て気付いた人は、果たしてどれほどいたのだろうか……。
737通常の名無しさんの3倍:2010/07/19(月) 23:04:23 ID:???
>>733 >>736
'95-'96年にかけての時期高松監督が多忙だったのが原因と考えられる。
『勇者シリーズ』と並行して『GW』でピンチヒッター。
その直後に『GX』だったからメカ等の小道具流用はやむを得ない状況だったんだろうな。
738通常の名無しさんの3倍:2010/07/23(金) 21:11:30 ID:???
保守
739通常の名無しさんの3倍:2010/07/25(日) 00:23:46 ID:???
保守がかてらにネタ振り。

もしトールを乗せたスカイグラスパーがAWに不時着して、フリーデンに拾われたら……
740通常の名無しさんの3倍:2010/07/25(日) 01:15:27 ID:???
・・・乗ってるのは首から下だけか?


冗談はさておき、トールごときに何が出来る?
その場の空気で志願してしまったような奴が、守るべき恋人も友人もいない世界で何を成す?
いいとこ、フリーデンの雑用係だろう・・・
741通常の名無しさんの3倍:2010/07/25(日) 02:15:04 ID:???
やっぱ、AWに普通に適応でそうなのはアストレイの連中かな?
742通常の名無しさんの3倍:2010/07/27(火) 19:47:52 ID:UHqEHW7H
必死だなX厨
HGの出来も悪くBDで出してもらえず今更出たDVDBOXwww
NDK?
743通常の名無しさんの3倍:2010/07/29(木) 01:32:56 ID:???
保守
744通常の名無しさんの3倍:2010/07/29(木) 15:18:34 ID:???
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up456252.gif

別のスレから。「純正インパルス」と「GX→インパルス」
ミネルバクルーがインパルスの予備部品をXの世界で作ったらこんな感じに
なるのだろうな。
745通常の名無しさんの3倍:2010/07/31(土) 20:48:01 ID:???
hoshu
746通常の名無しさんの3倍:2010/08/02(月) 20:33:38 ID:???
保守
747通常の名無しさんの3倍:2010/08/04(水) 20:16:26 ID:???
>>740
C.E,の普通の少年(兵器に乗った経験あり)ということで、
ガロードとの対比も込みでのチョイスなんだろうが、
他の主人公と比べると凡人扱いされるけどガロードはオカルトじみた超能力とかの超人的能力を持ってないだけで、
普通のエースとしては十分すぎる資質を備えてるからな…

ただ、被撃墜時の状況(経験、乗機その他)を考慮に入れるとトールはただ不運だっただけで、
資質はガロードに迫るほどのものを持っていた、という風に描くのも二次創作としては許容できる範囲かも試練。
748通常の名無しさんの3倍:2010/08/04(水) 21:21:43 ID:???
>>747
確かにそうかもしれん。
AWのメカの方がCEのメカよりも相性がよくバリエントやガディールを
使いこなして大活躍という可能性もあるし。
749通常の名無しさんの3倍:2010/08/04(水) 21:43:01 ID:???
そして再び時空を越え、CEに舞い戻る
アラスカ沖で轟沈寸前のAAを救う為に
機体はGXDV!
750通常の名無しさんの3倍:2010/08/04(水) 21:55:37 ID:08AlQKrE
つまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらん
つまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらん
つまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらん
751鬼良夜魔十:2010/08/04(水) 22:19:20 ID:08AlQKrE
糞スレ
752通常の名無しさんの3倍:2010/08/05(木) 00:01:30 ID:???
>>749
そういやマイクロウェーブ受信機能があるGXなら、
サイクロプスの効果範囲のど真ん中でも無傷で済む可能性があるのか。
そうなると仲間を逃がすために効果範囲の拡大を防ぐべく単機で中枢に突っ込むことになるのか?
753通常の名無しさんの3倍:2010/08/05(木) 00:06:04 ID:???
というかXの量産型のドートレスですらマイクロウェーブで
パイロット爆発てのはなかったぞ
754通常の名無しさんの3倍:2010/08/05(木) 04:54:41 ID:???
まあフラッシュシステムがあるAW世界ならマイクロウェーブ対策は基本だろうな
755通常の名無しさんの3倍:2010/08/08(日) 21:32:36 ID:???
保守
756通常の名無しさんの3倍:2010/08/10(火) 19:30:14 ID:???
保守
757通常の名無しさんの3倍:2010/08/13(金) 16:50:24 ID:???
保守
758通常の名無しさんの3倍:2010/08/15(日) 14:05:19 ID:???
保守
759通常の名無しさんの3倍:2010/08/19(木) 01:26:08 ID:???
保守
760通常の名無しさんの3倍:2010/08/25(水) 00:11:08 ID:???
規制解除?
761GX1/144 ◆eX54sTGfHE
ずっと人大杉で書き込めなかった・・・
まったく、2月弱ぶりの更新とは何とも・・・

第百二十一話『得体の知れないものは信用しない』(前編)

 ジャミル達が救出される約18時間前、ガロードは新連邦本部の廊下をフロスト兄弟に両脇を固められ歩いていた。左手に見える窓からは
雪をかぶった山脈が見え、そのふもとには広大な針葉樹の森林が広がっている。ガロードが元々住んでいた北アメリカ大陸では見ることの
できなかった豊かな自然の姿がそこにあった。
 彼と同じ速度で歩くフロスト兄弟は武装をしていない。その気になれば逃げることも可能だろうが、ガロードは動かなかった。現状、
ティファは別室に隔離され、パーラにいたっては基地のどこかに捕らわれている。1人で逃げることなど、彼の中には選択肢として存在しなかった。
「ガロード・ラン、これから君が対面する人物は新連邦の最高責任者だ。粗相の無いようにな。」
「…そんなにすごいやつなのか?」
 シャギアの言葉にガロードは静かに質問する。ブラッドマン卿の名前は以前から知っていた。新連邦政府樹立、エスタルドの解体など、
彼の指揮の元で世界は大きく動いてきた。
「一般人では会うことのできないような人物さ。あの方は、いまや地球の”王”なのだからね。」
 オルバは面白そうに、そしてガロードをあざ笑うように笑みを浮かべる。彼がいかに無力で、小さな存在であるかを認識させるかのようなその口ぶりに、
ガロードは今更反応する気にもならなかった。最優先課題はここをどう脱出し、ジャミルたちと合流するかだ。
しかし今はまだそれを実行に移すべき時ではない。笑みを浮かべたままのオルバを無視しながらガロードは廊下を歩き続けた。
程なくして目的地へと到着する。木でできた両開きの重厚なドアの向こうに新連邦軍の最高司令官がいる、そう考えるとガロードも少しばかり緊張した。
「ガロード・ランを連れて参りました。」
『入れ。』
 聞こえてきた声は低く、すこし掠れていた。年齢は60歳前後だろうか、ジャミルやテクスに比べてかなり年上であることはすぐに見当がついた。
 扉の向こう側に待っていたのは中世貴族が皆で食事を取るために使っていたと思われる装飾の施された長机と、ガロードと反対方向に
座る一人の老人、さらにその傍らに立つ髪の長い男だった。老人の後には大きな窓があり、そこから差し込む光がまるで後光のように映り、
ある種神々しささえ感じられた。まるい頭には髪は生えておらず、鼻の頭には大きな黒子が1つ。体形は樽のようにウエストが広がっており、
一体何を食べたらそんな風な体形に慣れるのか不思議なくらいだ。
「かけたまえ。」
小さくもぎらついた両眼がガロードを目の前の席へと促す。ガロードはそれに従い席に着いた。
「まずは、礼を言わねばなるまいな。革命軍の奇襲作戦を察知して宇宙軍を向かわせたのだが、君達が先にコロニーレーザーを破壊してくれたのだからな。」
「…俺はあんた達のためにやったんじゃない。人がいっぱい死ぬのがいやだからああしたんだ。」
穏やかに話すブラッドマンとは対照的にガロードの声には嫌悪感が混じっていた。
 フリーデンは彼らと敵対していた。ローレライの海の件もエスタルドの件も、彼らが事を起こさなければあんな結果になることもなかったのだ。
 ブラッドマンは彼の心中を気にする様子も無く、穏やかな声で話を続ける。
「それは我々も同じだ。我々は常に”自由”を守るために戦ってきた。最初に攻めてきたのは革命軍だ。諸悪の根源は、常に宇宙にある。」
「でもあんた達だって、地球統一の名目でいろんなところで戦いを起こしたじゃないか?」
「大きな秩序を構築するためには、ほかに方法がなかった。それとも君は、常に小国に正義があるというのかね?」