もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら17

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28098 ◆TSElPlu4zM
「……まあ、敵の数が多いだけでいつも通りだな。さっき話した通り、航空戦力は俺が先行して敵を叩く。キラはギリギリまで出撃を待て」
「でも、数が多いんですよ。本当に大丈夫なんですか?」
「場合によっては、お前に出てくるモビルスーツ全部の相手をしてもらわなきゃならないんだ。余計な敵は俺とアムロに任せておけ」
「分かりました」

 こんな状況にありながら余裕を見せるムウに、キラは少しだけ笑って頷いた。
 どうしてキラ笑ったのか――。本来なら笑ってられない空気を、ムウが少しでも吹き飛ばそうとしているのが分かったからだ。
 いつもの戦闘と違い、今回は余りにも数が多過ぎる。数だけなら低軌道会戦の方が遙かに多いが、あの時のように味方がいる訳ではない。レジスタンスの協力があっても微々たる物で、孤立無援と言って言い。
 そんな状況だけに、自分も前を出るべきではと思っていたアムロは目線だけをムウへと向ける。

「ムウ。前を二機で支えるのは無理がある。俺も前に出た方が突破はしやすいだろう」
「いや。アムロはアークエンジェルを守ってくれ。でないと俺達の帰る場所が無くなりそうだからな。勿論、支援も当てにしてるぜ」
「……了解した。俺は支援と接近する敵機を落とす。やられるなよ」
「ああ。こんな所でやられるつもりは無いさ」

 アムロの言葉にムウは頷くと、軽く笑ってから真剣な表情に戻した。
 四人が扉の前に立つと、空気が抜ける音と共に隔てていた板が横にスライドし、パイロット達は格納庫に足を踏み入れた。
 整備兵が忙しなく動く中、ムウはトールへと振り返った。

「トール、お前は留守番だ。それからさっき言った通り、二号機も使わせてもらう。ただ、いざって時には、その時ある機体で出てもらう。準備と覚悟だけはしておいてくれ」
「……分かりました」
「命令が無い限り出るなよ」
「分かってます」

 念押しするように言い聞かせるムウは、トールが力強く頷くと、「よし」と言って、背を向けた。

「んじゃ、お先に!」

 ムウは背中越しに片手を挙げて、スカイグラスパー一号機へと乗り込んで行く。

「キラはカタパルトデッキで待機だ」
「了解!」

 続くようにアムロがνガンダムへと向かいながら指示を出すと、キラは頷いてストライクへと向かう。

「キラ! やられるなよ!」
「うん! 分かってる!」

 ストライクへ向かう友人の背中にトールが声を掛けると、キラは振り返って笑顔で答えた。
 スカイグラスパーとアグニを抱えたνガンダムがカタパルトデッキに消えると、ストライクが後を追う。そして、エアロックが閉じられた。
 トールはパイロットルームに戻るか悩んだが、すぐにスカイグラスパー二号機の元へと向かい、機体の側にあった小型コンテナに腰を下ろした。

「……俺がもっと上手かったらな。……命令だし、仕方ないか」

 ヘルメットを抱えたトールは愛機を見上げながら呟く。
 戦闘開始までの十数分間を、乗組員達は無事を祈り、息を飲んで待ち続けた――。