種死のシンとエヴァのアスカを入れ替えたら 弐 (8)
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_, -‐ '"  ̄``` ー- 、
/´ `ヽ、
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r¬‐'´ L._}‐ '´ _ _ _ /´ ! _, - ヽ |
L __ く _, -‐  ̄  ̄_フj |'´ _ 〉 ハ
└<_) `丶、 ヽ、_/ / |-‐'´  ̄ j ``ヾ/
/ `ー(_ _, - ‐― - .._∠ -‐-< ̄`丶、 | / /
L_ `7´ r‐--,-‐'´ `i `ー-、_| ノ^ヽ j′
/  ̄` ー- ._ `丶、_>'´ l  ̄`ー'⌒\ヽy'|
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/ | _/ ノ / ! / ,ri r'´ l i | !
. / i | / └'| } j / | ! | i j |
/ l |/ / | `'>' L.} | ヽ ,! j|
/ | / / | 〈 j、 } / / !
乙。
>>1 あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ。胸を張っていいわ。
また落ちたのかっ!?
7 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/12(火) 01:11:52 ID:kJ5TDf1V
スレを活性化するプロジェクト、オマイラ考えろ
スレは死なないわ。私が護るもの。
――“砂漠の虎”『アンドリュー(アンディ)・バルドフェルド』――
目の前の隻眼の男が、あの…。アスカは一度喉を鳴らす。
プラントの『バルドフェルド家』の4男坊―。
確かにザフト軍の最高意思決定機関は、評議会であり議長である。
が、その意を受け実際に軍を動かすのは、“ザフト軍幕僚会議”である。
歴代の12名の幕僚長官の内、半数はバルドフェルド家からの出自である。
プラント創設の時から、プラントの防衛・取締り・MS開発を一手に引き受けてきた名門中の名門なのである。
もちろん彼の兄弟達も各々要職についている。その中でも彼は色褪せることなく輝いていた。
5才の幼少時、当時のプラント管理長官(現在の最高議長)の前で、アムンゼンコロニー理論を諳じてみせたそうだ。
周囲からは『神童』ともて囃され、その将来を嘱望されていた。
更に彼はその自分の才に溺れることなく、武を戦術を帝王学を学び、伸ばしていった。
しかしその途出した才能を兄弟達に疎まれ、“血バレ”に対する地球報復作戦を口実に地球に飛ばされた、と聞く。
彼の戦術は一言で言うなら『大胆、かつ緻密』。
相対する敵軍の急所を確実に突く眼力と確実に仕留める牙(部隊)。その非情なまでのチカラを見、
スカンジナビア王国軍は、狙われたら助からない、と言う意味で、彼を『砂漠の虎』と呼び恐れたらしい。
前大戦では右余曲折を経て、プラントから戦艦“エターナル”を奪取し、ラクスの乗艦の艦長を務めた。
――このことは戦後処理の議事録からは抹消されているが。
===ガガガガガ…ッ!!===
「ひゃっ!?」
唐突に暗闇からのマシンガンの弾着が、アスカ達が隠れている壁を削る。
アスカ達も応戦する。アンディの撃った弾が通路を走る賊のマシンガンを弾き飛ばす。
「ええいっ」
アスカが間発入れず飛び出し、賊の胸に2発の銃弾を撃ち込む!
賊はヨロヨロと二歩、三歩進むと、腰のアーミーナイフを抜く。
刹那、アンディの銃が火を吹き、賊の眉間を撃ち抜く。
賊はナイフを持ち上げた恰好のまま静かに崩れ落ちた。
「君は軍属なのか?」
アスカの女性らしからぬ銃の扱いを見、アンディが言う。
「ま、ね。ザフト宇宙軍『ミネルバ』所属、惣流・アスカ・ラングレーよ」
アスカは弾倉を抜き、新しいのを差し換える。手が震え、少し手間取る。
「ほう。昨日入港したアイツかい。だが君は気づいてるのか? 奴らも“ザフト”なんだぞ?」
アンディは親指で先ほど倒れた賊を指差す。
「分かってるわよっ、そんな事!!」
自分でも思わなかったほどの大声で怒鳴ってしまった。
「……」
「は…。奴らの使っている銃。あの音は“ZAD-22Aサブマシンガン”のよ。主にザフトの特殊部隊で採用されてるヤツ。
それに奴らのあの動き、ナチュラルのものじゃ無いわ。コーディネーター、しかも訓練された人間のものよ…クッ」
また向こうの通路から無数の銃弾が撃ち込まれてくる。応戦しながらアンディが答える。
「同族殺しは銃殺刑だぞっ。はぐれ者のボクはともかく、君は名乗り出れば保護して…」
「却下! もうヤッちゃった後で言わないでよ! それに問答無用で襲ってくるヤツらが聞くと思うっ? えいこのぉっ」
「根気よく説得すればあるいは…」
アスカは頭を抱える。
「ええい! なんでこの屋敷には、こんなうすらボケでノー天気な男ばっかしかいないのっ!?
砂漠の虎も平和ボケで牙が抜けて、チャウチャウにでも成り下がったのかしらぁっ!」
「あ〜…、チャウチャウは“犬”なんだがね」
「あーもうっ!! 今そんな話してるバアイじゃないでしょっ、バカ虎っ、アホ虎っ。バターにするわよ!」
…一言断っておくが、銃撃戦の最中の会話である。
「(自分で話を振ったんだろうに)――確かに。奴らは部隊を分けているっ。ここはボクが抑えるから君は…」
アスカは瞬時にアンディの意図を察する。
「オーケー! 先に行くわよっ。…死ぬんじゃないわよ!」
「お互いにな!」
頷きあい、アスカは振り向かず駆ける。後ろ姿を見送りバルドフェルドはクスリと笑う。
「無理しちゃって、まぁ」
銃倉を取り替えてる時のアスカの手の震えを、アンディは見逃さなかった。
いくら軍にいるからと言っても、生身同士で銃を撃ち合うことなど滅多に無い。
会話で誤魔化そうとするアスカをアンディは初々しい、と思った。
「…だが、ねぇ」
アンディは一度、銃のグリップを握り直す。
「でも、慣れなければ戦士として生きていけないぞっ! …ウオオオォォッ!!」
しなやかな猛獣の放吼と共に、アンディは敵の只中に飛び出していく。
…TORA! TORA! TORA!!.. 続く
12 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/14(木) 22:59:26 ID:1kQz05+n
俺、今度の戦いが終わったら兵役が終わるんだ。
だからバレンタインはアスカと過ごすんだよ! へへ♪
この指輪、アスカに似合うと思わないか?
おっと、もう第2次警戒ラインかよ。
んじゃ、ちょっくら行って来るわ!
『・・なっ!? あ、アレは“フリーダ・・ッ』
ザーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・
保守
16 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/17(日) 13:43:10 ID:QW/s1odI
過去ばかりを見て未来を全然見ないのがヲマイラ
そう、過去にすがって未来を直視しようとしないのがオマイラ
ところどころで大災害でもあったかのような被害状況の中、まだ火災が発生しているアーモリーワン市街――
その中の半壊したビルに埋もれた両腕と頭を切り落とされた状態のインパルス。
シンはそのコックピットの中からサブモニターで他の強奪された3機と共に飛んでいく、この状況を作り出した
張本人であるあの赤い機体の後ろ姿をにらみつけていた。
「チクショウ! あの野郎、絶対に……」
『許さない』
晴れの初陣に大きなケチをつけて彼のプライドをずたずたにしたセイバーにリベンジを誓うシン。
実際はセイバーのパイロットは“野郎”ではなく、赤毛で華奢な少女なのだが……。
「ミネルバ! チェストフライヤー、レッグフライヤー、それとフォースシルエットを!」
原形をとどめていないチェストフライヤーと被害が軽微なレッグフライヤーを同時に強制排除させた勢いで
がれきの中から奪取することに成功したシンはミネルバブリッジへ怒鳴りつけるような勢いで通信を入れた。
「え? え? え?」
そんなシンの要請にシンと養成学校の同期でミネルバのブリッジオペレータのメイリン・ホークはパニクりながら
振り向いてタリア・グラディス艦長へ自信なさげに指示を仰いだ。
「いいわ、許可します。メイリン、射出して!」
タリア艦長はメイリンにそう命令すると彼女もブリッジ後方の席に座っているギルバート・デュランダル議長の方へ
と振り向き、了承を得る。
「議長、なんにせよ今はもう機密も何もありませんでしょ?」
「……ああ、そのようだな」
そういって議長はうなずき、彼女の命令に了承を与えた。
脱出のため、あらかじめ爆薬を仕掛けておいた壁面を目指すセイバー、カオス、アビス、ガイアの4機。
アスカの眼下に彼女らによって無惨に破壊された町並みが見える。
――みんな、ごめんね。
アスカは殺されたり怪我をしたこのコロニーの人たち、民間人に心の中で詫びた。
それは偽善だということも、なんの贖罪にもならないことも、そしてこれからも彼女はそういう人達を作り出して
いくのだろうということも、理屈の上ではわかっているものの彼女はどうしても詫びずにはいられなかった。
そんな行為自体が普段の彼女を知るものからは考えられないことではあったが。
おそらくこの4機を強奪するときに彼女があの光景みてしまったからだろう。
ステラが……、スティングが……、アウルが……ザフト兵士を機械的に、いやアウルに至っては喜々として殺し
を楽しんでいたようにも見えた、血なまぐさいあの光景を。
そしてその血だらけの倉庫を背に返り血を浴び、冷たい目をしたステラとスティングはアスカにいった。
「これが私のお仕事だから……。こうするとネオ、私をほめてくれるから……」
「これが俺たちファントムペインの姿だ。俺たちにはこの生き方しかできない。
もしお前がこれについてこられないというのなら早々にガーティルーを下りてくれ」
――これが戦争ってこと? ここで生きてくにはこれを受け入れろってこと?
そしてアスカはセイバーに乗ることを選んだ。……そう、人殺しの道を。
――アンタはそういたいわけ、ネオ・ロアノーク! 上等よ! やってやろうじゃないの!
「まったくあの変態仮面! とっとと地獄に堕ちりゃいいんだわ」
――ステラ達になんてことさせるのよ!
ついてくる黒い機体を後部モニターで確認してからアスカは一言、彼らの上司に呪詛の言葉を投げつけた。
……以上です。
20 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/19(火) 23:23:42 ID:nDIeQ2gJ
GJ!!
保守と言わず続きキボン。
アススト氏はそろそろ蒼い翼の復活か・・
乗るのはキラか、アスカか。はたまた意表をついた凸助か。
お二人とも頑張れ! シンエヴァ(仮)も早く帰ってこーい。
スレ活性化は映画次第でしょ。
このスレはまったりでもいいんじゃなーい!!
21 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/19(火) 23:29:10 ID:fs8mu3UT
負けてられないのよ!dat落ちなんかにぃぃぃぃ.
23 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 00:52:00 ID:YK6riMnO
あーもー! どーしてdatって、落ちてばっかなのかしらぁあっ!?
とてもキモい
保守
い
27 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/27(水) 16:04:58 ID:xMp7jq7g
や
ん
アゲ
★
捕手
ほ
住人はいるのか?
>>33 住人か、どうかはともかくいます。
まあ、書くことに迷っているわけで……
保守
まず書くことですわ。…と、ボクの彼女が言ってるよ。
ほ
そもそも初代→2スレ目に移行するとき、立てたヤシがスレタイ変えたのが原因だった
あの埋め荒しが痛かったな。
あれで少ない住人が更に減った。新劇場の続報が無いのも輪をかけている。
アスストさんやアスシスさんの帰りを待っているのだが。
「ふえぇん…、ラクスお姉ちゃぁん…グス」
うす暗い廊下に、少年がうずくまり泣いている。栗色の髪で数時間前はアスカの膝の上で笑っていた男の子だった。
そのそばには、肩から銃を下げ暗視ゴーグルを掛けた男が二人、立っていた。
男の一人がインカムのスイッチを入れ、話す。
「ピ…こちら“ラスカル”。目標からはぐれたと思われる、この施設の少年を発見。対処を求む」
返答はすぐに返ってきた。
『ガ…目標の痕跡を残してはならない。速やかに排除せよ。繰り返す。速やかに排除せよ』
「……」
男はインカムのスイッチを切るとひとつため息をつく。そして腰の拳銃を抜くと、少年の額にその銃口を押し当てた。
「悪く思うな、少年」
それだけ言い、静かに引金に掛けられた人差し指が動く。そして…銃声が響いた。
「がはっ!!」「なにっ!?」
傍らにいたもう一人の男が、叫びとともに崩れる。自分はまだ撃ってはいない。なら…。
「どうりやああああああぁぁぁぁーーっっっ!!!」
静寂を破る雄叫びをあげ、暗闇から銃を撃ちながら駆けてくるのは、紅い髪の女性…アスカだった!
気づいた工作員の男は慌てて下げていた銃を構えるが…。
「遅いっ」
アスカはグイともうひとつ姿勢を落とし、その反動で地を蹴る。腰を捻り工作員の男の顎を蹴り上げた!
アスカは彼の唯一の死角、暗視ゴーグルの影から放った。男には一瞬アスカが消えて見えただろう。
「ガッ!?」
勢いを殺せず、男は廊下の壁に叩きつけられる。
「グ…くそ、な…っ?」
工作員の男が頭を振りゴーグルの奥の眼を開けた時、アスカの銃はすでに男の顎に押し付けられていた。
「…悪く思わないでね」
アスカはまるで愛でも囁くかのように男の耳に口を寄せ…。
そして乾いた音、鈍い音が同時にした。
男は壁に背を預けたまま、力なくその場に崩れ落ちる。
「ヒク…あ、アスカお姉ちゃんっ」
アスカは荒い息のまま少年に背を向け、何度も袖で顔を拭う。肩も激しく上下していた。
「 ? アスカお姉ちゃん? ……。…泣いてるの?」
少年の眼にアスカはそう見えた。
背を向けていて判らないが、たぶん今、アスカの顔は赤いだろう。
そんな状況ではないのは判ってはいたが、アスランとアンディは、なぜか暖かい気持ちになっていた。
…TIGER RING IN?..(虎も参戦?(いろんなイミで))――続く――
41と42の間
アスカの肩が一瞬揺れる。アスカは一度大きく息を吸うと、少年に向き合う。その顔はいつものアスカだ。
「…泣いてないわよ。大丈夫? 怪我は、無いわね?」
差し出した手を少年が取る。
「うん。…ねぇ、あのおじちゃん…」
「見ちゃ駄目!!」
振り返ろうとした少年を、アスカが一喝する。思いもかけないアスカの怒声に少年の肩が揺れる。
「…ごめん。怒ってるわけじゃないの。ただ、今はまず…」
どう言おうかアスカが迷っていると。
「アスカ!?」
名を呼ばれアスカが顔を上げる。
「アスラン」「アスラン兄ちゃん!」
少年を見、アスランが安堵の表情を浮かべる。銃撃戦の音を聞き急いで駆けつけたらしい。
「ふたりとも、大丈夫か? シェルターはこっち…、っ! アスカっ!?、おまえ、怪我したのかっ?」
アスカの右手の袖にはベッタリと赤く濡れていた。
「大丈夫。アタシのじゃないわ。悪いわね、あんたのジャケット、汚しちゃった」
アスカはアスランの正面に行き、右手を持ち上げてみせる。
ほぅ…。アスランが息を吐く。
「よかった…。そんなこと気にするな」
「ん」
アスランの優しい言葉を聞き、アスカの張りつめていた何かがほどけそうになる。だが…
「…泣いているのか? アスカ」
アスカの顔を覗こうとする。
「…なっ!? (カアァ)んなわけないでしょっ!」
アスカがアスランの頬を張り倒す。
「な…ならいいんだが」
頬を押さえ、今度はアスランが泣きそうになる。そうだ。アスカはこういうヤツだった。
そこへ違う方向からまた声がかかる。
「よう、また逢えたな。お嬢さん」
もうひとつ向こうの通路から、見知った人物が駆けてくる。
「バルドフェルドさん」「バカ虎? 生きてたのぉ?」
アスランとアスカが同時に言う。
「おいおい、酷いこと言うねぇ、…ツッ!」
アンディが左肩を抑える。
「――!?」「バルドフェルドさん!? 撃たれたんですかっ?」
アスランの顔を見、アンディは苦笑いする。
「な、なぁに、少し掠めただけさ。大したことは…お?」
「……」
アスカはナイフで窓のカーテンを割くと、手早くアンディの傷口に巻く。そして端を結ぶと、
「ふん。ホント大したことないわねっ。唾つけときゃ治るわよ」
そう言うとクルリと背を向け、少年の手を取りシェルターへ歩きだす。
アスランとアンディは目をパチクリさせる。そして、同時にプッと笑う。
「……」「…そりゃどーも」
44 :
アス・スト:2008/03/13(木) 20:17:06 ID:???
保守
保守よりネタをふれ
アススト氏、GJ!
次回は蘇る翼の回だな。楽しみにしとります♪
GJ!!
続きが待ち遠しいです
ATフィールド全開!
4機のザフト最新鋭MSの強奪に成功した、アスカ、スティング、アウル、ステラ。
彼らはアーモリーワンからの脱出のため、セイバー、カオス、アビス、ガイアで事前に爆薬を仕掛けておいた
壁面へと向かっていた。
その背後から赤ザクと白ザクの2機が砲撃しながら接近してくる。
「何よ、そのおめでたい色の組み合わせは?!」
果たしてこの世界でも、プラントでも紅白はめでたいのだろうか?
赤い方からの文字通り的外れの威嚇射撃(実は赤いのは狙う気満々だったらしいのだが)とその紅白のカラーの
組み合わせにアスカは呆れていた。
「アンタ、赤い機体なんて、アタシのパクリ? このヘルメット頭は?」
――強奪してパクってきたのは俺達だろう? アスカ=ラングレー。
通信機越しに聞こえてきたアスカのその言葉にスティングはどうしてもつっこみをいれたくてしょうがなかった。
アスカは軽く赤い方へ威嚇射撃を試みる。
あれくらい簡単によけるだろうと思って撃ったビームがかすったらしく煙を吐いて落ちていく。
「……あらら、落ちてく……。赤いのバイバイ」
ガイアのコックピットの中でステラが戦線離脱していく赤いヘルメット姿のMSへ小さく手を振る。
「どうして、赤いくせにドジるのよ! これじゃあ白い方がましに見えるじゃない!
優秀なのは当然、白よりも赤でしょ、赤!! おんなじ赤として情けないわね!」
敵を落としたはずなのに墜ちていく敵に文句を言うアスカ。
「仕方ない、アンタの恥はアタシがすすいであげるわ」
――だから、あいつは敵だろうが! そして墜としたのはお前だろうが!
また突っ込みたくて仕方がないスティング。
――ほっとけない馬鹿野郎だな。この女は……。
白いヤツの後方からトリコロールカラーのガンダムヘッドが急接近してくる。
「スティング、アウル、ステラは後ろの新しいのを牽制して!
アタシはこの白いのを赤のプライドにかけて落とすから!」
「だから僕に指示するなっていっただろ! 馬鹿女!」
「アウル、アンタ、い・ま、な・ん・て・いっ・た?! また、腕を絞り上げられたいの?」
「な、なんでもねぇよ! だからなんでもないって! なんでもございませんですだよ!」
アウルは以前、アスカに盛大に文句を言いその直後の模擬戦でボコボコにされた上、彼がその時“馬鹿女”と
いったのを聞かれてコックピットから引きずり出された後に関節を決められて恥をかかされたのを思い出した。
その上に関節を決めたまま、アスカが意識しないうちにアウルのブロックワードを使ったため、アスカという
存在が彼のトラウマとして深層意識に刻まれてしまったらしい。
仕方なくインパルスに牽制攻撃をかけるアウル。
――覚えてろよ、馬鹿女! 絶対に後でボコボコにしてやる!
アウルに続いてインパルスを牽制するスティングとステラ。
――アウルが従ってるんなら、ま、いいか。早いこと戻るためにはその方がよさそうだしな。
――早く帰って、ネオに褒めてもらって頭ナデナデされたいな……。
「そいや〜〜!」
アスカはビームサーベルを引き抜き、白いヘルメット頭のMSに突貫をかけた。
……以上です。
保守
アゲ
19時間ぶりだな
ああ・・・まちがいない。保守だ
保守
保守
ほ
保守
ほ
保守
保守
age
64 :
0号対4号セット:2008/03/26(水) 11:25:46 ID:sExzB1qU
芯は良かれまくるな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
まとめサイトが機能していない件に関して
>>65 前スレ?あたりで入院するって書き込みがあったとオモ
★
保守
保守
皆様夜分恐れ入ります。本当にご無沙汰しております。
アスカ姉妹の話を書かせていただいているずいぶん前のスレの569です。
では今回は6レス分ほど投下させていただきます。
以上よろしくお願いいたします。
ガーティ・ルーブリッジでもミネルバから発見されたことを察知されていた。
「やはり来ましたか」
オペレータからの報告を聞いてリー艦長がネオの隣で感想を述べた。
「ああ。まっ、ザフトもそう寝ぼけてはいないということだ。ここで一気に叩くぞ!
総員戦闘配備。パイロットはブリーフィングルームへ!」
ボギーワン捕捉の報を受けてミネルバブリッジの中にはあわただしい動きがあった。
「むこうもよもやデブリの中に入ろうとはしないでしょうけど。危険な宙域での先頭になるわ。操艦頼むわよ」
「ハイッ!」
操舵担当のマリクが気合いの入った返事を返した。
――デブリの側を通って、それに紛れて逃げるつもりだったのかもしれないけどそれが仇になったわね。
ここが絶好の機会とタリアはギャンブルにでた。
――ここで叩かないと逃げられるわ、なら……。
「全MSを先行させて一気に叩きます。終わってるわね?」
「はい!」
メイリンも操舵担当に当てられたように元気に答えを返す。
「目標まで6500」の声に緊張が高まるミネルバブリッジ。
ザフト軍艦の機密であるはずのそこへギルバート・デュランダル議長が二人の招かれざる客を従えて現れた。
「議長……」
「いいかな? 艦長。私はオーブの方々にもブリッジに入っていただきたいと思うのだが」
「ぇ! ぁ……、いえ、それは……」
タリアは彼の意図を図りかねていた。
「君も知っての通り、代表は先の大戦で艦の指揮も執り、数多くの戦闘を経験されてきた方だ。
そうした視点からこの艦(ふね)の戦いを見ていただこうと思ってね」
さっきの格納庫での一件と言い、今度のことといい、何かをたくらんでいることは確かだ。
「解りました。議長がそうお望みなのでしたら」
――勝手にするといいわ、ギル。私は目の前のあれを追いかけるので手一杯だから。
「ありがとう、タリア」
――よもや私を不利にするようなことは考えてはいないでしょうね?
少なくともこれで全く失敗は許されなくなった、とタリアは感じていた。
「目標まで6000」
――とにもかくにもまずは目の前のあれに集中しましょう。
「ブリッジ遮蔽! 対艦対モビルスーツ戦闘用意!」
ガーティ・ルーのロッカールームでは今から出撃するMSパイロット達がノーマルスーツへ着替えを行っていた。
「ステラ、またゼロと別々。つまんない」
コードゼロと一緒に着替えていたステラがゼロを目の前にしてむくれていた。
「大事なお仕事だから、頑張ろう? ステラなら出来るよね?」
先に着替え終わっていたSinがステラの頭をなでて駄々っ子に言い聞かせるようにしていた。
「その方がゼロも喜ぶし、僕もうれしいよ」
「ゼロもステラ頑張ると喜ぶ?」
コードゼロはニコニコと彼女に問いかけるステラへ肯定の意味を込めて薄く微笑みかけ軽く首をかしげる。
「じゃあ、ステラお仕事ガンバるね! Sinとゼロのために!」
両のこぶしを胸の当たりで握り締め、ステラは明るくそう答えた。
ガーティ・ルーブリッジでは先行するMSを射出し終えると作戦開始のための指示を出した。
「アンカー撃て! 同時に機関停止。デコイ発射! タイミングを誤るなよ」
ミネルバブリッジではMS部隊を発進させるべく、メイリンが発進シークエンスをオペレーションしていた。
――マニュアル通りだからね、メイリン。
初めての実戦での発進シークエンス指示に緊張して顔がこわばるメイリンは心の中で自分を鼓舞していた。
――練習はさんざっぱらやったもん、ソウリューさんにも付き合ってもらって。
「ルナマリア・ホーク、ザクウォーリア発進スタンバイ。
全システムオンライン。発進シークエンスを開始します」
――頑張れ、私。……そして頑張れお姉ちゃん。
「インパルス発進スタンバイ。モジュールはブラストをセット。
シルエットハンガー3号を開放します。プラットホームのセットを完了。
中央カタパルトオンライン。気密シャッターを閉鎖します。
コアスプレイダー全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。
ハッチ開放。射出システムのエンゲージを確認」
――ちゃんと出来てるよね、ソウリューさん。
てきぱきと指示をこなすメイリン。
「目標、針路そのまま、距離4700」
ブリッジクルーからの声で想定どおりなのを確認したタリアはMSの発進指示を出した。
「ザク、インパルス発進!」
「ガナーザクウォーリア、カタパルトエンゲージ」
――お姉ちゃん、無理しないでね。
メイリン心の中で姉の無事を祈った。
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」
――今度こそ、雪辱戦よ! 赤の誇りにかけて!!
ルナマリアは緒戦の恥を雪ぐべく、勢い込んで修理の終わった愛機を発進させた。
――アタシにだって意地も腕もあるのよ!
「ボギーワンか。本当の名前は何というのだろうね。あの艦(ふね)の」
「はあ?」
デュランダル議長の突然の独り言のような問いにそれまでブリッジの状況へと目を向けていたアスランは思わず
議長の方へ振り向いた。
「続いてインパルス、どうぞ」
てきぱきとした指示にコアスプレンダーの中で感心するアスカ。
「了解。……メイリン、やるじゃん。上等よ。頑張ったもんね」
ニパッと笑うモニターの中のアスカに一瞬、笑みを浮かべてそれに応えるメイリン。
「ソウリュー・アスカ、コアスプレイダー、出るわよ!」
アスカはメイリンのオペレーションの下、愛機を発進させた。
「名はその存在を示すものだ。ならばもし、それが偽りだったとしたら……。
それが偽りだとしたら、それはその存在そのものも偽り、ということになるのかな?
アレックス、いや、アスラン・ザラ君」
「……」
やはりバレていたようだ。
しかし、このタイミングでの暴露に、ミスって彼の名前を漏らしたカガリへ心の中で毒づくのを忘れるほどの
衝撃を受けるアスラン。
そして初めて聞いて驚くミネルバブリッジクルー。
メイリンも最後に発進させた旧式ゲイツのパイロットが発進間際に何かキザなことを言ったのも、顔と名前すら
忘れるほど、大きな衝撃を覚えていた。
ボギーワンへと接近すべくデブリの中を注意深く進むミネルバのMS部。
「おい、あれって言い過ぎじゃなかったんじゃないかね?」
ディアッカはアスカへ通信を開く。
作戦行動中の今、隊長のレイがMS間の通信封鎖を命令していないとはいえ通信してよい状況とはいえなかった。
しかし彼は自分達の動きも既にディアッカ達がここまで迫っていることもはとっくにボギーワンから筒抜けに
なっているという自分の感を信じていた。
――俺たちを待ち伏せてるだけならいいんだけどな……。
「なに、ドアップ、あんたまさかオーブ代表の肩を持つの?」
不注意なのか彼女もディアッカと同じ考えだったのか、当たり前のようにアスカは答えを返した。
当然、彼の問がカガリへの言葉についてであることも承知していた。
あれだけ大声を出していたのだからあのとき格納庫にいた者は皆聞こえていてもおかしくはない。
だからゲイツの整備のためにいた彼がきいていてもなにもおかしいことはない。
ただ彼はアスランとカガリを見かけて彼らから見えないところへ移動してはいたのだが。
「そこまでは言わんけどね。……それから俺の名前、なんどもいうけどディアッカね」
――まあ、今のカガリの周りにはたぶん正面切ってあそこまで叩いてくれる奴はいないんだろうからな。
ディアッカは肩をすぼめて片頬で笑った。
――そういう意味ではとてもいい薬だったとは思うけどね、今の“お姫様”には。
まだ平穏すぎるデブリの中を進む彼ら。
「デブリ戦、あんまり得意じゃないのよね」
緊張に耐え兼ねて誰とはなしに通信をいれて呟くルナマリア。
モニターの中のルナマリアの表情は一目で見てわかるほど青くこわばっていた。
ルナマリアは緒戦では出会い頭に撃たれて撤退したため実質的な戦闘はこれが初めて。
前は何もできずに撃墜されかかり、今度は……“初めての戦闘”を前に緊張を隠せなかった。
――こりゃまずいかもね。
アスカはルナマリアに話しかけることにした。
「ルナ、一つ、いいえ、二つ聞いていい?」
「何よ」
「あんた、デブリ戦が得意じゃないっていったけど格闘戦以外で得意な戦闘なんてあったっけ?」
「うっ!」
「それからさ、あんたの長距離射撃より宝くじの特賞の方が当たる確率高いって言われてるのになんであんたが
好きこのんでガナー装備なんかしてるのよ」
「ウゲッ!!」
「そういえば、自発火さん、あんた支援戦闘得意じゃなかったっけ」
「昔、な。……それに何度も言うけど俺の名前、ディアッカだぜ」
「ルナに極意でも教えて上げてくれないかしら」
「そんなのないね。センスを磨くか……」
「あら、ルナには無理ね」
「ウギャッ!!!」
「さもなけりゃあ当たるところまで接近するか」
「じゃあゼロ距離射撃で決定ね♪」
「グホォ!!!! ……ソウリュー、ア、ン、タ、ね!」
「ソウリュー、それくらいにしておいてやれや。ルナだっけ、もう彼女も肩の力抜けただろう」
「地雷也、あんた……」
「だから、ディアッカだってば。なんだ、バラされたらまずかったか?」
素直でないアスカの様子を見てニヤニヤと笑みを浮かべるディアッカ。
「べ、別にルナのために気を遣った訳じゃないんだからね。あんまりヒマだから相手をしてやっただけよ」
モニター越しに真っ赤になって言い訳をしているアスカを見てくすくすと笑うディアッカ、ショーン、ゲイル。
「敵艦に変化は?」
ブリッジの後方で起こっている衝撃的な事実を無視するかのように副長のアーサーは改めてクルーにボギーワンの
状況を確認する。
「ありません。針路、速度そのまま」
アーサーは自分の仕事に徹するべくクルーに指示を出した。
「よし。ランチャーワン、ランチャーシックス、1番から4番、ディスパール装填。シリウス、トリスタン起動。
今度こそ仕留めるぞ!」
アーサーが無視しようと努力しているそのブリッジの後方ではその素性を暴露されたアスラン=ザラが沈黙を
守っていた。
「……はあ……」
重苦しい雰囲気の中、ため息をつくタリア。
――何を狙っているのかしらこのチェシャ猫している古狸さんは……。
タリアの中にはデュランダル議長に後で問い詰めなければいけない事柄がまた一つ付け加わったようだ。
「議長! それは……」
カガリはアスランに代わり弁明を行おうと口を開いた。
そのカガリの言葉をデュランダル議長がチェシャ猫な微笑みを浮かべながら言葉で遮った。
「御心配には及びませんよ、アスハ代表。
私は何も彼を咎めようと言うのじゃない。全ては私も承知済みです。
カナーバ前議長が彼等に執った措置のこともね。
ただ、どうせ話すなら、本当の君と話しがしたいのだよ、アスラン君」
微笑みすら見せるデュランダル議長信じがたいという顔をするアスラン。
「それだけのことだ」
また、ミネルバのブリッジに戦闘とは別の緊張感がピンと張られたようだった。
その別物の緊張感を戦闘のそれへ変えるようにミネルバブリッジクルーが報告した。
「ソウリューのインパルス、ボギーワンまで1400」
「未だ針路も変えないのか?どういうことだ?」
さすがのアーサーも今まで養成学校やその他で教わった数々の知識や経験則からこれはおかしいと気がついた。
――不味いぞ、これは……。しかし、何が……。
ブリッジクルーの誰かが思わず口走る。
「何か作戦でも!?」
――?! まさか!
ふと思い当たったことを口にしようとするアーサー。
「デっ……」
「デコイだ!」
アーサーが言うよりはやくアスランが叫ぶ。
「……」
――やはり、罠だったの? まさかね……。
アスランの声に唖然として振り返るタリア。
――でもオブザーバーに指摘されるまでその可能性に気がつかなかったなんてね……。
事が事だけにタリアは自嘲の笑いすら浮かべることは出来なかった。
――いずれにせよ、ボギーワンにまんまとはめられた可能性があるわけだ。その場合、不味いわね。
ここにいたりタリアはMSを全機出してしまったという自分の作戦ミスを認めざるを得ないようだった。
しかし思わず声を上げて指摘してしまった当のアスランも自分の出すぎた発言にそれ以上は口を閉ざしていた。
それでもなおもまだしばらくなんの妨害もない、平穏すぎるデブリの中を進むミネルバMS隊。
依然、それらしい艦影はまだ肉眼では確認できない。
「おいおいおい、しっかし、さすがにこれはまずいんじゃないのぉこれぇ……」
つぶやくディアッカ。
「自爆屋、あんたもやっぱりそう思う?
……レイ、ルナマリア、ショーン、ゲイル、それと自爆屋、やっぱり戻るわよ!」
そういって機首を返して戻ろうとするアスカ。
「だからディアッカだ!」
――自爆が商売ならそれはアスランの方だろ!
ディアッカは心の中で勝手な突っ込みを入れながらもアスカに従うつもりでいた。
――まさかミネルバで自爆はしないだろうがな。
『こんな状況なら自爆するしかないじゃないか!!』
ミネルバが窮地に陥る中、ミネルバブリッジでそう叫びながら周囲の妨害をものともせずに自爆スイッチを押す
アスランの姿がふと彼の脳裏をかすめた。
――そりゃないか……まさかしないよな……しないといいんだがな……う〜ん、ま、ちょっと覚悟はしとくか。
「命令違反だぞ、ソウリュー=アスカ」
一応このMS部隊の隊長を務めるレイがアスカに注意をした。
「当然じゃない、ミネルバに戻るのよ。こんな見え透いた罠、引っ掛かってどうするのよ」
「だからさっきはフォースシルエットでの出撃を申請したのか。なるほどね」
作戦前のブリーフィングでアスカがフォースを執拗に申請していたのを思い出し、妙に感心しているアーサー。
そんなアーサーをにらみつけるタリア。
――何よ、あなたたちも私が無能だって言うの? アーサーとソウリューは。
機首をミネルバに向けるインパルス、そしてオールドゲイツ。
「何考えているの? あなた達のしていることはれっきとした命令違反よ」
「でもミネルバが落ちるよりはましでしょ。
この先あたし達がいってもいるのはボギーワンじゃなくて、空振り食らわされるか……
よくてあの連中に待ち伏せ食らって足止めされるだけでしょ。で、その間にミネルバがドカン。
それどころか、前方のは何かのごまかしで、実はボギーワンはとっくにミネルバの後ろを取ってたりしてね」
ぎょっとして思わず振り向くアーサー。
まさかブリッジで振り向いてもミネルバの後方が見えるはずはないのだが。
「馬鹿なこと言わないでよ。
作戦終了後、覚悟しておきなさい、ソウリュー=アスカ、ディアッカ=エルスマン」
もし、ソウリュー達の前方に待っているのが罠であるならばすぐに戻るのが最善の策なのだが、オブザーバーと
部下にほぼ同時に指摘されてバカにされたような気分になりやや意固地になるタリア。
「んなの、こっちは慣れっこなんでね」
タリアのその言葉に、うそぶくようにそう答えるディアッカ。
「メイリン、オーブ代表の随員に回線を回せる?」
タリアの言葉を無視して勝手にメイリンに指示を出すアスカ。
「ソウリュー!?」
「あ、今、彼はブリッジにおられます」
「メイリン?!」
メイリンの不用意な発言を聞きつけてタリアは彼女をひとにらみした。
「あ? えっと……すみません!」
タリアににらまれて小さくなるメイリン。
「そう。丁度いいわね、じゃあ、このままでも聞こえるわね。
アレックス? アスラン=ザラ? ……呼び方なんてそんなのどうでもいいけど、あんたにお願いがあるの」
「え?」
――呼び方なんてどうでもいいのか? 俺がアレックスでもアスランでも……。
アスカのその言葉にアスランは愕然となる。
しかし、それとは対照的にデュランダル議長はほんの少しだけ険しい表情になったようにも見えた。
「MS戦になったらあたし達が戻って来るまであんたがミネルバを守ってくれない?
今のあんたの立場じゃあ、そんなことお願いできるもんじゃないってことは十分わかってるけど、でも、
ザク1機であいつらを相手に一歩も引かなかった腕を見込んでお願いしたいの。
あんたならできると思うから……それに今、頼めるのはあんたしかいないのよ!」
「ソウリュー、何を言っているの! 命令違反の上に越権行為まで」
迷いのためか気弱になっていたタリアはアスカを遮るのが遅くなり、彼女に用件のすべてを言われてしまう。
すべてを言い終えたアスカはタリアの叱声を無視して、最後に一言付け加えてから通信を切った。
「お願い!」
「じゃ、そういうこった、頼むわアスラン」
そう付け足して同じく通信を切るディアッカ。
ふたりはミネルバへ帰投するコースをとった。
アスカの言葉を聞いて、周囲のデブリに敵が潜んでいる前提でレーダーでの索敵を行うショーンとゲイル。
――その可能性は十分あるな。つーか俺が相手さんだったらそうするな。
――あのお嬢ちゃん、言い方に険はあるがなんか妙に実戦慣れしていて勘のいいところがあるからな。
アスカ達がミネルバへ戻るのならば、なおのこと、二人が追撃されないようにここで待ち伏せている連中を
引きつけておかなければならないとも二人は考えていた。
敵の目的は自分たちを引き離しておいて母艦であるミネルバを落とすことなのだろうから。
だとしたらあの2機が戻ればそれで十分敵の目的を崩すことになるわけだ。
インパルスとゲイツの後ろ姿に二人は心の中で声をかけた。
――ミネルバの方は任せたぜ、二人とも。
「私たちはどうするの? レイ」
アスカ達の通信を聞き、自分の行動に迷っていたルナマリアはミネルバへ戻っていくアスカ達の後ろ姿と先を行く
レイの白いザクの後ろ姿を交互に見ながら“隊長”のレイへ通信を入れた。
「当初の作戦の通りだ。俺たちはボギーワンを叩く。
艦長から、命令に変更がなければそれまで通りに動く、当然のことだろう」
戸惑いが感じられるルナマリアの問いにレイは全く感情を感じられない声色で返答した。
「でも、この先にボギーワンはいないって、ソウリューが……」
「それを判断するのは俺たちじゃない、ブリッジだ。
ましてやソウリュー=アスカは命令違反と越権行為を犯している。
そのような相手の言葉の通りに動く訳にはいかないことぐらいわかるだろう。
俺たちは作戦通りに言われた任務をただこなしていればそれでいい」
そんなレイの答えにルナマリアは唇を噛んだ。
レイの言っていることはよくわかる。
おそらく軍人としてはソウリューよりもレイのいうことのほうが正しいことくらいわかる。
しかし……、みすみす罠に飛び込むのもごめんだ。
でもあたし達が引きつけられている間にメイリンや仲間のいるミネルバが落ちるのはもっとイヤだ……
あそこにはみんなが、仲間がいるのよ!
モニターに映る能面のような表情のレイにこれからの行動を考え直してもらうかどうかルナマリアは悩んでいた。
「どう、しよう……」
以上です。
GJ!!
みんなあげちゃう><!
おヒサ〜、GJ!!
GJ
よくやったな、シンジ
GJ!!
GJ!!
さて、帰ってくるまで留守電だ。
保守
87 :
通常の名無しさんの3倍:2008/04/03(木) 02:00:48 ID:pBTW8BLI
いつまでやってんだ
☆
皆様、本当にお久しぶりです。
>>34でなおかつ「シンエヴァもどき」を書かせていただいている者です。
春の特大付録というわけではありませんが「見知らぬ天井」の前「シト、襲来」の拡大版を作ってみましたので
投下させていただきます。
実はまだ、いろいろと悩んではいるのですが……
ではまずは全体12レスほどの予定のうち、前半6レス分ほどでありますがよろしくお願いします。
時に、西暦2015年……
セカンドインパクトにより海の底に沈んだかつての首都、東京の間を静かに進む大きく異形の存在があった。
第三新東京市の昼下がりの街中――
降り注ぐような蝉時雨もなく、時折わき上がる鳥の羽音と遠く聞こえる花火にも似た破裂音だけが街中に響く。
セカンドインパクトという世界規模の大災害を経験し、奇跡のような復興を果たし、人々の賑わいも増えてきた
この街で主役と闊歩しているべきはずの市民達の影がこのとき、まったく見あたらなかった。
「本日、12:30、東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。
住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難してください……」
街中にそこかしこに備えられたスピーカーから繰り返し響き渡る非常事態を伝える放送の声。
そんな中、分厚い封筒のような荷物の入った買い物かごに“マユ専用初号機”と大書されたママチャリに乗り、
汗水漬くになって無人の街中を走り回る麦わら帽子に淡いピンクのサマードレスを着た一人のおさげ髪の少女。
「まいっちゃったな〜。まさか、よりによってこんな時に見失っちゃうなんてねぇ」
ママチャリを止めて、麦わら帽子を取り、滝のように流れる汗もそのままに彼女はお下げ髪の頭をポリポリと
かき、眉間にしわを寄せながら辺りを見回し、そして携帯GPSの液晶に映るノイズを眺めて舌打ちした。
(早いとこ見つけて待避しないとお兄ちゃんのバーベキューが出来上っちゃう)
彼女は自分のことは棚に上げて待ち合わせしていた“お兄ちゃん”のことを心配していた。
(しかたない、自分で探すかな。ここからそんなに遠くないところにいるのは確かだし)
ふと確信に近い何かを感じつつ“お兄ちゃん”がいるかも知れない方向へとママチャリをこぎ始めた。
『……特別非常事態宣言発令のため、現在すべての通常回線は不通となっております』
彼、“碇シン”は無機質なメッセージ音を繰り返す公衆電話の受話器を元の位置に戻しカードを胸のポケットに
しまうと、焼け付くような快晴の空を仰いぎ見てため息をついた。
「だめかぁ。この状況じゃあ、待ち合わせは無理か……。しゃーねえな、どっか適当なシェルター探して行くか」
そうつぶやく彼のりりしい顔立ちからはかすかにあきらめの表情が伺えた。
彼は鞄の中の封書から2枚の写真をおもむろに取り出し、その1枚を優しげな表情で微笑みを浮かべ眺める。
「マユ……、大きくなったよな……。俺と一つ違いのはずだから13歳か……」
その1枚目にはセーラー服姿のお下げ髪の少女がカメラ目線で微笑み、両手でVサインを作っていた。
写真には添えて“お兄ちゃん、絶対にきてね”と書かれた可愛らしい丸っこい手書き文字と大きなハートマーク。
そして彼は次に取り出した2枚目の写真を穴が開くほど真剣に見つめる。
そこには1枚目に写っていたお下げ髪の少女のスクール水着姿、それもお尻の辺りの水着の乱れを直そうと腰を
やや引き気味にして少し前屈みになった見えそで見えない慎ましすぎる胸元の見える、隠し撮りらしきものが……。
「……部分的にまったく大きくなっていないところもあるが……ま、それはそれで……」
そのときの彼は先ほどの端正な顔つきからは想像もつかない、人の顔とはよくもそこまでだらしなく崩すことが
出来るのかというぐらいに鼻の下を伸ばしにやけた表情を作っていた。
そんなリビドーにまみれた世界にいた少年がふと冷たい視線を感じ、遙か前方の交差点に目をこらした。
……交差点の真ん中に立つ誰かの姿が。
彼がその姿を確認するため目をこらそうとしたとき、突然、間近起きたたくさんの鳥の羽音に気を取られる。
そして再び交差点の方に目をやると、そこには誰も立ってはいなかった。
「ん? 見間違いか、ま、いいや」
彼は遠くから聞こえる妙な物音に違和感を感じつつも、ここから一番近いシェルターを探すべく辺りを見回した。
シンは大きくなっていく妙な物音が気にかかり、音のする方向、前方の山の方を見上げる。
「すげえ、UN重戦闘ヘリじゃん、なんでこんなところに……」
そのUN重戦闘ヘリ達に導かれるように山間から現れてきたのは、なんと自分の側に立つビルと高さがほとんど
変わらないような、どでかい二足歩行の、しかし人とも姿の違う異形のバケモノ。
「な、なんだよ、あれ……」
その現実離れした光景に度肝を抜かれた彼は立ちつくし、呆然と見上げるしかすべを知らなかった。
第3新東京市、地下ジオフロント内 ネルフ本部第一指揮所――
ピンと張り詰めた緊張感の中、各オペレータがテキパキと彼らにとって初めてのその状況への対応を行っていた。
「正体不明の移動物体は依然本所に対し進行中」「目標を映像で確認。主モニターに廻します」
彼らの前面に広がる巨大なモニターに映し出され、さらにこちらへとゆっくりと進んでくるその巨大な異形の姿。
「15年ぶりだな」
指揮所の最上部にロマンスグレーで知性を感じさせる雰囲気の年かさの男性がピンと背筋を伸ばし立っていた。
その彼が大モニターに大写しにされた巨大な姿に目を細め、呟いた。
その呟いた男性のすぐ前の席に座るサングラスに表情を隠した中年がその呟きに答えるように断言する。
「……ああ、間違いない、“使徒”だ」
――シト、襲来
「目標に全弾命中!……ぐわあっ!」
命中を確認したヘリのパイロットはその直後、その使徒によりコックピットごとたたきつぶされた。
戦闘ヘリからの攻撃に何の痛痒も感じていないかのように立つその“使徒”は周りのうざい連中をこともなげに
文字通り次々とたたき落としていった。
吹き飛んだ残骸がシンの近くまで飛んでくる。
思わず顔を背けたシンは何かに突き飛ばされて、彼はすぐ近くのビルの影につんのめった。
したたか腰をうったシンはおそるおそるゆっくりと目を開けた。
「ごめんね♪ お・待・た・せ!」
そこにはママチャリにまたがって汗で張り付いたピンクのサマードレスを着た天使が微笑んでいた。
そのときシンは彼女に見ほれながらそんなことをぼんやりと思っていた。
(やっぱり、胸、ないな……、でパンツもピンクか……)
13歳なのに、そんなドレス着ているのに、ブラはつけてなくてもよいのだろうか?
(……まあ、今は好都合だが、どっかにカメラはないもんかな)
死ぬかも知れないこの場に及んで彼はそんなことも思った。
「目標は依然健在。現在も第3新東京市に向かい、侵攻中」
「航空隊の戦力では足止めできません!」
ネルフ指揮所最上部で先ほど会話を交わしていた二人の前で新国連軍の制服を着た偉いさん達3人が口々に叫ぶ。
「総力戦だ! 厚木と入間も全部挙げろ!」「出し惜しみは無しだ! なんとしても目標を潰せ!」
指揮官達のその声に呼応するかのごとく装備された火器の全てを浴びせる新国連軍の戦闘部隊。
「なぜだ! 直撃のはずだ!」
しかし全ての攻撃は何かに遮られているようで異形の使徒はかすり傷一つ負わずに戦闘部隊を無造作に屠っていく。
「戦車大隊は壊滅、誘導兵器も砲爆撃もまるで効果なしか」
「ダメだ! この程度の火力では埒があかん!」
そんなあわてふためく様を前にしてロマンスグレーの男、ネルフ副司令冬月コウゾウとサングラスの男、ネルフ
司令、碇ゲンドウは他人事のように会話を交わす。
「やはり、A.T.フィールドか?」
「ああ、使徒に対して、通常兵器では役に立たんよ」
「分かりました、予定通り発動いたします」
コンソール上にあった電話によりどこかからの連絡を受けて、それに答える新国連軍指揮官の一人。
使徒と新国連軍の戦闘からだいぶ離れた山沿いの道路の上。乗り捨てられたたコンテナトラックの影に自転車を
止め、開けられた中身が自転車だらけのコンテナの縁に座りゼーハーと肩で息をしているシン。
「ちょっ、ま、まさか、N2地雷を使うのぉ〜??!!」
その隣でマユは目をこらし新国連軍の戦闘を見つめていた。彼らが後退したのをみてマユは驚きの声を上げた。
「隠れて!!」
「おい、何だよ!」
慌てて自転車から荷物を取り出し、むんずとばかりにシンを引っ張り込みトラックの陰に隠れるマユ。
マユに促されて伏せたトラックの陰で思わず目を閉じたシンは目映く熱い光と大きな爆音にその身が包まれて
いくのを感じていた。
「やった!」
大モニターに映る閃光と爆煙を目の当たりにしてネルフ本部の指揮所で歓声を上げる新国連軍指揮官達。
「残念ながら、君たちの出番はなかったようだな」
指揮官の一人がゲンドウ達へと振り返り、自慢げに言葉をかけた。
「衝撃波、来ます」
オペレータの声と共にノイズに包まれホワイトアウトする大モニターや各種センサー達。
「大丈夫だった?」
シンが目を開き、辺りを見回してみると彼らが隠れていた辺り以外、周りは全て瓦礫と砂の世界と化していた。
ふと、彼がトラックの影から出てみるとトラックの爆風を浴びた側はグンニャリと溶けかかっていた。
「ああ、口ん中がシャリシャリする。それと体があちこち痛いかな……しかし、ラッキーだったな」
(しかし、よく、このトラックが吹き飛ばされなかったな)
二人の周り以外はそれまでの姿をとどめているところは見えない、ただの荒れ地と化していた。
「痛いってことはまだ元気ってこと。大丈夫だよね。……でさ、お兄ちゃん、運転免許とか持ってないよね」
半分熔けたトラックを運転させる気なのだろうか。シンは少しこめかみに痛みを感じた。
「持ってるわけないだろ、14歳だぞ」
「あ、そっか。それもそうだね。あはははは」
改めて顔を見つめ合うシンとマユ。そして何となく顔を赤らめる二人。
さっきは慌てていてろくろく大した挨拶も交わしていないことにシンは今頃になって気がついた。
「……ところでさ、えっと、久しぶりだな、えっと……」
「マユでいいよ。ほんと、久しぶりだね、お兄ちゃん」
「ああ、久しぶり、マユ」
「ウン!」
あの写真と同じマユの満面の笑みが今シンの目の前にある。このとき初めて彼はマユと会えたことを実感していた。
一刻も早く作戦を終了させて忌々しいネルフを引き上げたい新国連軍司令官の一人がオペレータに状況を確認する。
「その後の目標は?」
「電波障害のため、確認できません」
依然として彼らの目の前に見える大モニターやその他のモニターにはノイズしか写っていない。
「あの爆発だ。ケリはついてる」
状況確認を促したとは別の指揮官はN2地雷で当然片がついていないはずがないと高をくくっている。
「センサー回復します」
吉報を信じて疑わない3人の指揮官。
「爆心地に、エネルギー反応!」
「なんだとぉっ!」
指揮官はオペレーターからつあえられたあり得ない報告に怒声をあげる。
「映像、回復します」
というオペレータの声に呼応するようにモニター上の砂嵐が収まり次第にクリアになっていく映像。
「おお……」「なんてことだ……」「われわれの切り札が……」
そこに映っていたのはダメージを負ってはいるがN2地雷が作った紅蓮の炎の中に仁王立ちする使徒の姿だった。
「化け物め!」
指揮官の一人がもらした呟きが今の彼らの気持ちを代弁していた。
「うん、うん、だいじょぶ、だいじょぶ。“お兄ちゃん”は最優先で保護してる。
だから、直通のトレインを用意しといてね。
あ、すぐ回せるやつだったらカートレインでもなんでもいいから。
……そう、迎えにいくって私が言い出したんだから。それはちゃんと責任は持つよ。じゃあね」
さっきまでマユが乗っていたのとは違う自転車で二人は舗装された広い道路を進む。
なぜか、前の買い物かごにはぼろぼろにはなってはいたがあの封筒らしきものがのぞいている。
シンが運転する微妙にきしむ音がする自転車の後ろでマユが少しトーンの低い声で誰かと携帯で話をしていた。
『電話の相手は親父か?』
シンはたった一言、マユに訊くことができなかった。
これから父親のいる場所に行くというのに。
これまで自分をほったらかしにしていた父親に対してすねているだけだったのかも知れない。
実はマユの電話の相手はゲンドウではなく、それを質問しても彼にとっては何も問題はなかったのではあるが。
「しっかしもうサイッテー。お気にの自転車、ぼろぼろになっちゃったよ。大好きだったのに」
マユはどこかへの連絡を終えると携帯電話をポーチの中へしまい、シンの背にしがみつきながら今度はさっきとは
一転して少しテンション高めの声でぶつぶつと文句をたれる。
麦藁帽子もどこかへ飛ばされ、髪はぼさぼさ、辛うじてお下げになっている程度。
そしてワンピースはところどころほつれ、砂と汗で汚れ体にペットリと張り付いていた。
「おまけにお兄ちゃんに会うからって着てきた一張羅の服まで台無しだ。せっかく気合入れてきたのに!」
シンの背中にピトッとしがみつくマユ。彼の背中にポチッとある種の自己主張をする感触が二つ……。
「おい、マユ、……あの〜、マユさ〜ん」
「ん? なに? ここは一本道だから大丈夫だよ」
シンは背中に張り付いてそこはかとなく主張している何かをごまかすためにマユに話しかけた。
(ブラをしてないのか?)
「そうじゃなくてさ、いいのかよ? こんなことしてさ……」
「ああ、いいのいいの。
今は非常時だし、足がなくちゃしょうがないでしょ?
それにあたし、こう見えても国際公務員だしね。非常時の接収だから、万事オッケー、オッケーっすよ!」
あのトラックの中からちゃんと動きそうな自転車を“接収”して二人は二人乗りで目的地へ向かっていた。
「……説得力に欠ける言い訳だな……」
(だいたい13歳で国際公務員かよ、なんの冗談だよ)
「な・ん・か・いっ・た?!」
地獄の底からわき上がってくるようなマユの声。
「べっつに〜」
シンはマユの口調に何かいいようのないプレッシャーを感じて思わずごまかして口をつぐんだ。
ネルフ作戦指揮所の大型モニターにはN2爆雷ですら決定打とならなかった使徒が徐々に修復されるさまが
映し出されていた。
「予想通り、自己修復中か」
そんな使徒の姿を見て冬月があきれたような感想を述べる。
「そうでなければ単独兵器として役に立たんよ」
他人事のように無造作にそれに答えるゲンドウ。
「ホゥ、たいしたものだ。機能増幅まで可能なのか」
二人はこの状況を楽しんでいる風にさえ見える。
「おまけに知恵もついたようだ」
使徒の目が光り、突然スクリーンが砂嵐に変わる。カメラが破壊されたようだ。
「再進攻は、時間の問題だな」
ただ単に使徒に対して無力な新国連軍を笑っていただけだったのかも知れないが。
シンとマユの二人は彼らしか乗客の居ない列車に乗り、地下へと進む。
ちゃっかり“接収”した自転車が通路に倒されていた。
マユと差し向かいで座ったシンは彼女からこれから向かう場所についての話を聞いていた。
「特務機関ネルフ?」
「そう。国連直属の非公開組織」
「親父のところか……」
「まっね〜。そういえばお父さんの仕事、知ってる?」
「人類を守る、大事な仕事だって先生からは聞いたけど、……本当かよ」
(正義の味方かよ?)
シンは、全身赤いタイツのような服を着てフルフェイスのヘルメットのようなものをかぶって巨大ロボットに乗り、
『大団円ネルフ斬り!』とか必殺技を大声で叫んでいたり、赤いメガネのような物を装着して返信して巨大化し、
『ジョワッ!』とか妙なかけ声を出しながらあんなのと戦うゲンドウを想像してどんよりと暗い気持ちになった。
「うん。それ、嘘じゃないよ」
シンの想像の内容に微妙な間違いはあったが。
そう、これから妙な服を着て巨大な兵器に乗ってあんなのと戦う羽目になるのはシンの方なのだから。
必殺技を叫ぶかどうかは別として……。
そのゲンドウのいるネルフの作戦指揮所では、万策尽きた新国連軍の司令官達が退場するところであった。
「今から本作戦の指揮権は君に移った。お手並みを見せてもらおう」
「了解です」
彼らにいやみったらしく深々と頭を下げるゲンドウ。そのような態度は彼のキャラクターではないが。
「碇君、われわれの所有兵器では目標に対し有効な手段がないことは認めよう」
「だが、君なら勝てるのかね?」
古来、虚勢だけで負けて退散する連中はなぜ似たような言葉を口にしてから退場するのだろうか?
第一、ゲンドウ達が勝てなかったときに有効な代案が彼らにはあるのか?
「そのためのネルフです」
ゲンドウは退場していく敗者達にいわずもがなの台詞を贈る。
「期待しているよ」
こちらもいわずもがなの台詞を吐いて敗者は舞台から退場していった。
そしてオペレータ達から、使徒に依然変化はなく、そして現在、迎撃システムのほとんどが用をなさない状況で
あるいう報告がゲンドウ達の元へ告げられた。
「国連軍もお手上げか。どうするんだ?」
ネルフにしてもさほど選択肢があるわけではないことは二人ともわかっていた。
「初号機を起動させる」
ゲンドウは表情を変えることなくこともなげに言ってのけた。
「初号機をか? パイロットがいないぞ」
現在、手元にいる適格者はレイ・ザ・バレルただ一人。しかし彼は負傷中だ。
「問題ない、もう一人の予備が届く」
その頃、シンとマユは父親の元へと向かう貸し切り状態の列車の中でまだ会話を続けていた。
「これから親父のところへ行くのか?」
シンは言わずもがなのことを訊いた。
「そうだよ。3年ぶりだっけ?」
マユは小首をかしげ、『いってなかったけ?』という疑問の表情と『久しぶりだよね、懐かしい?』という表情を
まぜた微笑みのようなものを浮かべてシンに答えを返した。
(親父……)
彼の胸に去来した思いはどちらでもなかったのだが。
「あ、そうだ、手紙にIDカード入ってなかった?」
マユのその言葉にシンは財布の中からカード状の物を出してみせた。
「ああ、これだろ?」
「そうそう。えっと、あと、これ読んどいてね」
マユはそういいながらがさがさと紙袋の中からファイルを取りだしてシンに渡した。
「ネルフ? 親父の仕事……何かするのか? 俺が?」
シンは渡されたファイルの表紙の文字眺めてそういった。
「うん、まあね……。でも、まあ、お兄ちゃんがいやだったら別に……」
マユは曖昧に笑いながらシンに答えた。
「そうだよな……、用もないのに手紙をくれてマユが俺を呼ぶわけないよな。でもあんな写真……」
(それもあんな写真まで送ってきて。お兄ちゃんは嬉しかったけどな……)
「え?! あれぇ? 手紙出したのお父さんだよ? どうして私からだと思ったの? それに写真って?」
まじまじとシンの顔をのぞき込むマユ。
「あ、ああ、そうだったっけ、いやなんでもない」
不思議そうにまじまじと見つめられたマユの視線から思わず目をそらすシン。
彼はゲンドウにはめられたと思うと半面、同封されていた写真のことを思い、碇ゲンドウという人物が、
正真正銘、自分の父親であることをまざまざと自覚させられた。
(親父、アンタって人は〜! ……しかし、グッジョブ!! けどちょっとまずい状況かもな……)
「凄げぇ! ほんとにジオフロントだ!」
シンはとにかく手紙の件は誤魔化したい一心で、ちょうど窓の外に見えたジオフロントを大げさに驚いてみせた。
「そう、これが私たちの秘密基地、ネルフ本部。世界再建の要、人類の砦となるところだよ」
マユも窓の外を眺めて自慢げにそう語った。
シンは写真の件をうまくごまかせたことにほっとしつつ、だが眼下に見える壮観なジオフロントの眺めに本当に
心を奪われていることも事実だった。
ジオフロントへの直通電車を降りた二人は迷路のようなネルフの通路をマユの先導で歩く。
「おっかしいな〜、確か、この道でいいはずなんだけどなぁ……」
そういってマユは『どっこいしょ』というババ臭いかけ声と共に通路を横切っている大きなパイプをまたいだ。
シンは周囲に見えるモニターカメラに自分が映るであろうというなけなしの理性か、それともさっきちらっと
見えたことで我慢したのかはわからないが思わずその後ろでかがんでみたくなるという気持ちをなんとか我慢した。
「これだからここじゃあ、可愛い格好出来ないんだよな」
彼女は何かをごまかすようにぶつぶつと口の中で文句をこぼしていた。
「しっかし、リツコさん、どこいっちゃったのかな。……ごめんね、まだ慣れてなくて」
そういいながらマユはあの列車を降りてから何度目かのうれしそうな照れ笑いの表情(冷や汗付き)をシンへ向けた。
「さっき通ったぜ、ここ」
そういってシンはあの列車を降りてから何度目かのあきれ顔をマユに向けた。
「でも大丈夫だよ、なんとかなるよ。へっへ〜、システムっていうものは利用するためにあるんだもんねぇ♪」
マユは今見つけたばかりのインターホンを指さしてとても自慢げに笑った。
「ほんとかよ。だったら早いことそうしろよ。今までさんざっぱら……」
「お兄ちゃん、なんか言った?」
「いや、何でもございませんです。申し訳ありません」
マユにかまぼこのような半眼でにらまれたシンは即座に謝った。
「技術局第一課E計画担当の赤木リツコ博士、赤木リツコ博士、至急作戦部第一課碇マユ一尉までご連絡ください」
水中に半ば没しているエヴァ初号機のメンテナンスを一通り終えたリツコに自分を呼び出すアナウンスが聞こえる。
「あきれた。また迷ったのね」
(方向音痴気味なのはまるで変わっていないわね。それともわざと? まさかね……)
彼女は酸素ボンベなどの装備を外すとその水着の上に白衣を羽織り、マユ達を迎えに行くべく更衣室へと向かった。
とりあえずは以上です。
GJ!
GJ!!
書くなら早くしろ、でなければ帰れ
GJ!!
続き待ってます
皆様、今日は。
「シンエヴァもどき」を書かせていただいている者です。
間が少し開いてしまって済みません。
先日、全体12レスほどの予定のうち、前半6レス分を投下させていただきましたが、今回その続きで後半の
6レス分を投下させていただきます。
ではよろしくお願いします。
「あ、リツコさん……」
マユは通路の先で仁王立ちになっている白衣を着た金髪の女性を見て、そう声を掛けた。
「何やってたの、碇一尉、人手もなければ、時間もないのよ」
眉をハの字に曲げ、いかにもあきれたと言う風でマユをとがめるリツコさん。
「ごめんなさい!」
マユは思わず両手を合わせて頭を下げて謝った。
「……例の男の子、あなたの“お兄ちゃん”ね。そしてマルドゥックの報告書にあったサードチルドレン」
リツコはマユの隣に立っている少年を上から下まで眺めるとマユへ微笑みかけた。
「うん、そ、そうだね、……碇シン、今年で14歳の、マユのお兄ちゃんだよ」
マユは複雑そうな表情でシンをリツコに紹介した。
「よろしくね」
リツコは手を差し出し微笑んで右手を差し出し握手を促す。
「あ、はい」
リツコのマユにはない大人の魅力にあてられて思わずにやけた表情を作り右手を差し出すシン。
「これまたお父さんにそっくりでしょ。スケベで、ええ格好しいで、ちょっとかわいいとことか」
にやけたシンをジト目で見ながらそれまでの何かもやもやとしたモノをごまかすようにマユは紹介を続けた。
「笑えねえ冗談だぞ、それ……」
「だから冗談じゃないよ、ほんとだよ」
「では後を頼む」
ゲンドウは指揮所の最上部に冬月一人を残し、囲われていない、そして申し訳程度の広さで一人しか乗れない、
凝ったギミックではあるが危険きわまりないエレベータに乗りどこかへ消えた。
「3年ぶりの対面か……」
今の冬月にはそんな感慨に浸る暇もなく、オペレータから使徒が移動を始めたという報告を受け命令を下す。
「よし、総員第一種戦闘配置!」
冬月副指令の命令を受け、ネルフ本部全館にアナウンスが流れた。
「繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地迎撃戦用意」
どこか通路を歩いていたマユ達にもそのアナウンスは聞こえていた。
「だって」
「これは一大事ね」
二人の会話からはあまり『一大事』と言う雰囲気は感じられなかったが。
「で、初号機はどうなの? 」
「B型装備のまま、現在冷却中」
「それほんとに動くの? まだちゃんと動いたことなかったよね?」
(出来れば動いて欲しくない気もするけど。……でもちゃんと動くんだよね)
「起動確率は0.000000001%。オーナインシステムとは、よく言ったものだわ」
「まあ、ゼロじゃないから、動かないってことにはならないけど……システムとしては不出来だよね」
「そうよ。ゼロではなくってよ」
「数字の上ではそうなんだけどね。でもどの道動きませんでした、ではもう済まされない状況ではあるよね」
シンは何か訳のわからない会話をしている女性陣二人の後ろを、先ほどマユから渡されたファイルを読みながら
どこか知らない通路を歩いていた。
「あの、真っ暗だぜ」
シンはファイルが読みにくいほどの薄暗いところで二人が立ち止まったので顔を上げて前にいるマユに声をかける。
いつの間にかシンは薄暗い橋のような場所に立っていた。
前にいた二人が見つめているものに彼も目を向けた。
「顔……巨大ロボット!?」
シンは驚いて手元にあるファイルをひっくくり、その“巨大ロボット”についての資料を探す。
(あの親父、本当に巨大ロボットに乗るつもりかよ!)
フルフェイスのヘルメットに全身タイツ姿の父親が現実化されるのか、シンはちょっとだけ気が遠くなった。
「探しても、載ってないわよ」
ファイルをめくっているシンにリツコは当たり前のことのようにサラリと言ってのけた。
「えっ?!」
「人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏で行われた」
(こんだけでかいモノを極秘で? 普通あり得んだろう。てか犯罪の臭いがするぜ……)
シンはデカ物を前に至極当たり前の感想を抱いた。
「われわれ人類、最後の切り札よ」
「これも、親父の仕事か?」
その人相の悪そうな巨大な顔を見上げてシンはつぶやいた。
「そうだ」
シンはその凶悪な顔の向こうにあるガラス張りの部屋からそんな風に自分に答える声が聞こえた。
「久しぶりだな」
その部屋に立っていた人影がまた口を開いた。
「親父……」
まさしくそれはシンの父、碇ゲンドウその人であった。
「フン、出撃だ」
「出撃? 零号機は凍結中だよね?! まさか、初号機を使うつもり?!」
マユはゲンドウに向けてそう訴えた。
「ほかに道はないわ」
その答えは彼女のすぐ横に立つリツコから返ってきた。
「だって、レイはまだ動かせないんでしょう? パイロットがいないよ。……まさか……やっぱり」
「そう、さっき届いたわ」
ゲンドウとリツコの視線の先には、……シンの姿があった。
「ほんとに?」
少しおびえた表情を作るマユ。
全く話が見えていないシンに対してリツコが話しかける。
「碇シン君」
「え?」
「あなたが乗るのよ」
「え? ええっ〜〜??!!」
シンはまさかそれだけはあり得ないだろうと思っていたことを言われて驚きの声を上げた。
「でも、レイ・ザ・バレルだって、エヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったってたはずだよ!?
今来たばかりのお兄ちゃんにはとても無理だよ」
(いいえ、マユ、あなた自身には、あなただけはよくわかっているはずだよ。
シンがエヴァ初号機と、いいえ、あの初号機ならすぐにでもシンクロが可能だということは。
そして今も初号機に乗せるためにシンを連れてきたことも)
マユの頭の中で別の自分が彼女が冷徹な事実を語りかけてくる。
「座っていればいいわ。それ以上は望みません」
「でも……、だって……」
「今は使徒撃退が最優先事項です。
そのためには誰であれ、エヴァとわずかでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか、方法はないわ」
「分かっているはずよ、碇一尉。……それじゃあ、あなたが乗る?」
リツコはわかっていてマユには出来るはずもないことを訊いた。
「それは……」
「親父、……なんで俺を呼んだ?」
そんな会話をしている二人を脇に見ながらシンはゲンドウを見上げてにらみつけていた。
「おまえの考えている通りだ」
「じゃあ、俺がマユをお持ち帰りしていいってことなんだな?」
「はあ?」
妙なことを言い出したシンへ振り向くマユ。
「……馬鹿め」
(何を言い出すんだ、このバカ息子め! 自分のへそ噛んで死ね! こんな馬鹿野郎の親の顔が見たいわ!)
静かにそう呟いたゲンドウは心の中では馬鹿シンに向かって怒鳴りまくっていた。
「え?」
「馬鹿め、といっている。貴様には失望した。そんなことでお前なんぞ呼ぶか!」
「そっか……じゃあ、やっぱこれに乗ってさっきのと戦えって言うのかよ? そのためだけに俺を呼んだのかよ!」
「そうだ」
(でなければ妹のスク水姿でほいほいと出てくるような奴など……)
淡々とシンに言葉をかけながら、誰がそれを画策したのかは棚に上げて心の中では罵倒し続けるゲンドウ。
二人とも無駄に熱いところはやはり親子か。
「やだね、そんなの、何を今更なんだよ、親父は俺がいらないんじゃなかったのかよ?」
「必要だから呼んだまでだ」
(シンの奴、遅い反抗期か? こいつ、俺に『俺の胸に飛び込め』とでもいって欲しいのか?)
分からず屋で遅い反抗期の息子に苦悩する無神経な父親。
「なぜ、俺なんだ?」
「ほかの人間には無理だからなあ」
(言ったら乗るのか? 乗らないだろうな、この馬鹿息子は)
「俺だって無理だぜ、そんなの……見たことも聞いたこともないのに、できるわけないだろう!」
「説明を受けろ」
(乗れば動くはずだ、心配するなよ、シン。あれはちゃんと動いてくれるはずだ)
「そんな、急にできっこないだろう……こんなの乗れるわけないぜ!」
「シン、お前はやる前から出来ないと決めつけるのか……。乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!」
(そんな後ろ向きな奴に、育てた覚えはない! ……教育方針を間違えたのか、俺は……)
表向き、無表情を取り繕っている父親の胸の内に子育ての苦悩は広がっていく。
上からたたきつけるような地響きが起こり、格納庫全体が揺れる。
「奴め、ここに気付いたか」
それが地上にいる使徒による攻撃であるとゲンドウ達は気がついていた。
「シン君、時間がないわ!」
ここが破壊されるのも時間の問題だと考えたリツコはシンに決断を促す。
「乗るの?」
マユは上目遣いに不安げな視線をシンへと向けた。
「いやだね、せっかく来たのに……せっかくマユにも会えたのに、こんなのないぜ!」
「碇シン君、あなたは何のためにここに来たの? ここで逃げるつもり? 父親からも、そして自分から」
シンに追い打ちを掛けるような言葉をかけるリツコ。
「そんなもんかよ……でも、できるわけないだろう!!」
父親の言葉と周囲からのプレッシャーに逆ギレ状態の息子が一人。
父親は息子の様子に心の中でため息をつき、モニターに映る指揮所の冬月へと指示を出した。
「冬月、レイを起こしてくれ」
「使えるかね?」
今のレイは重傷でとてもではないがエヴァの操縦など出来る体ではない、それは二人とも知っているはずだった。
「死んでいるわけではない」
(我々はまだ生きている。だからやるべきことはやる。ラウ、俺は諦めんぞ)
「分かった……」
冬月はゲンドウの言葉を文字通り受け取り、レイと共に基地内へ避難中だった医師達へと指示を出すことにした。
「レイ……」
ゲンドウはモニターを切り替え、レイへ言葉を掛ける。
「はい」
ゲンドウの呼びかけに抑揚の少ない少年の声が帰ってきた。
「予備が使えなくなった。もう一度だ」
「はい」
「初号機のシステムをレイに書き直して、再起動!」
ゲンドウの声を聞き、リツコは周囲にエヴァ初号機の再起動の指示を出した。
「了解。現作業中断。再起動に入ります」
(やっぱ、それが妥当だろう、来たばっかりの俺よりは、誰だか知らんが……)
リツコの声で急に騒がしくなってきた格納庫の中でシンは、彼を忘れたかのようにせわしく動く周囲の人々を
漫然と目で追いながら、そのままエヴァ初号機の前で立ちつくしていた。
ほどなく左腕にギブスをつけた包帯姿の長い金髪の少年がストレッチャーに乗せられて運ばれてきた。
ストレッチャーがシンの側へさしかかった時、使徒の攻撃により天井都市の一部が崩れ、本部に落下した。
その余波で格納庫にも瓦礫がぶち当たり、ちょうどシンがいるエヴァ初号機の目の前の“橋”の上に大きな瓦礫が……。
「危ない!」
思わず叫ぶマユ。
「うわぁっ!」
シンは落下してきた巨大な瓦礫に思わず顔を背け、尻餅をつき、その自分への激突を覚悟していた。
耳元で何かが砕ける音がした以外は何も起こらず、そして彼を押しつぶすはずの岩も降ってくる気配もなかった。
(どう、したんだよ……。俺、助かったのか?)
「エヴァが動いた! どういうことだ!?」「右腕の拘束具を引きちぎっています!」
おそるおそる見上げたシンの頭上にはエヴァの腕がにょきりと伸びていた。その光景を見て愕然とするリツコ。
「まさか、ありえないわ! エントリープラグも挿入していないのよ。動くはずないわ!」
(やっぱりシンを守ったんだよね。……でもあなたはそれでいいの? シンがあなたに乗って戦うことになるんだよ)
マユはシンが無傷だったことに安堵しつつ、心の中でエヴァ初号機にそう語りかけていた。
(済まんなユイ。シンを守ってもらって……これからも頼む。俺はこれからもっとひどいことをシンにするから)
不器用な父親は心の中でエヴァ初号の中の妻に感謝の言葉を投げた。
「しかし、インターフェースも無しに反応している……というより守ったの? 彼を……」
エヴァ初号機が腕を伸ばした瞬間を目の当たりにしていたリツコは思わずそう呟いていた。
(だったら、行けるわ!)
このとき、リツコはエヴァ初号機の起動が成功するだろうことを予感できた。
瓦礫がシンのいる辺りに落ちてきた震動で少年はストレッチャーから放り出されて地べたにたたきつけられる。
思わず彼に駆け寄り抱き起こすシン。シンの手に血がつき、思わず手を引き、彼を起こすのをやめそうになる。
「大丈夫か、あんた」
その包帯姿で血まみれの少年にシンはそう言葉を掛けた。
声を掛けられた少年は薄目を開けてシンに答える。
「心配ない。俺は気にしていない」
「気にしていないってあんた、すげえ痛いんじゃないか、血がたくさん出てるぞ。それもドクドクとさ……」
シンは徐々に包帯ににじみ出てくる赤いシミのような血をみて彼にそれを指摘した。
「そう、か。なら正直困ります」
「まあ、あんたも大変だな、ま、がんばれよ」
なるべく自分に血がつかないように気をつけながら少年に肩を貸して初号機まで連れて行こうとするシン。
彼の頭の中には自分があれに乗るという選択肢は存在していなかった。
シンとレイの様子を上から眺めていたゲンドウは初号機の全く乗る気を見せないシンに焦りを感じていた。
(おかしい、傷ついたレイの姿に同情してシンが初号機に乗ると言い出すと思ったのだが……よし!)
「お前が乗らないのならレイの代わりにマユを初号機に乗せるぞ、シン!」
「ええ〜〜?! 聞いてないよ〜〜! 無理だよ!」
「なんでそれを俺に勝ち誇ったように宣言する?」
「今、決めた。どうだシン?」
勝利を確信したゲンドウは追い打ちを掛けるようになぜか懐に隠し持っていた何かをちらりとシンの方に見せた。
(なんなのよ〜〜?!)
ゲンドウがシンに何を見せたかわからないがマユの背筋に急にゾクリとした寒気が走った。
シンはそれまでの怒りの表情から鼻の下の伸びきっただらしなくニヘラっと崩れた表情へと一転した。
(すげえ、マユの寝顔、マユのブルマー姿、マユのバスタオル1枚……ジュルリ)
シンの鍛え上げられた目がゲンドウがちらりと見せたピンナップをすべて認識することに成功していた。
「あんたって人は〜〜〜!!!!」
冬月には一瞬モニターカメラに映ったそれについておおよそ見当がついたため、一つ深く長いため息をついた。
(碇、貴様、それ犯罪だろう……ときどき貴様という人間がわからなくなる時があるぞ)
「わかったよ、乗るよ、乗ればいいんだろ? その代わりそいつと交換だ!」
「考えてやらんでもない」
「碇、お前、鬼だな」
モニターの先にいるゲンドウへとぼやく冬月。
彼は今までの長いつきあいでゲンドウがそんな曖昧な答えで約束を履行するはずがないことは重々承知していた。
「ああ、問題ない。計画通りだ」
(秘蔵の品々を貴様ごときにやるわけないだろう、バカめが)
そして自らの欲望という名の信念のため、意を決してエヴァ初号機に乗り込むシン。
それを指揮所に上がり見守る、マユやリツコ、そしてゲンドウ達。
「ん? な、何だよ、これ……」
乗り込み、ハッチが閉められると同時にLCLがエントリープラグ内に流し込まれる。
「親父! 図ったな! 俺に写真をやりたくないばっかりに溺死させるつもりだな」
スピーカー越しに聞くシンの声にニヤソと笑うゲンドウ。
(んなわけないだろう、やる気もない写真のためにそんなこと)
「お兄ちゃん、しっかりして、大丈夫だから! 頑張って!」
マユの声を聞いて力がわいてくる(特に下のごく一部も)シン!!
「……立ってるわね」
それはもう、彼の正面とは別の場所から写されたとあるモニターカメラにはそれとはっきりとわかるほどに。
「……不潔です」
ショートカットのオペレータの少女、伊吹マヤがそれを見てポツリと呟いた。
「……どうしてよ、バカ兄貴」
「シン君、大丈夫よ。肺がLCLで満たされれば直接血液に酸素を取り込んでくれます。すぐに慣れるわ」
(うえっ、気持ち悪い……)
(こんなションベン色の液体、飲めるわけないだろう!!)
両手で口と鼻を押さえ、無理にでもLCLを飲み込もうとしないシン。
「我慢してよ! 男の子でしょう!」
マユはそんなシンの光景を見て叱咤激励した。
「まあ、彼が男の子だってことはさっき十分によくわかったけど……」
そのマユの隣でうそぶくリツコ。
「……おばさん」
リツコのうそぶいた言葉を聞いてマユはポツリと呟いた。
「え?!」
「なんでもありません、赤木リツコ博士」
「マユと……ガボガボ……するまでは死ねるかよ〜〜!!」
エントリープラグの中で叫ぶシンの声が指揮所全体に大音量で響き渡った。
「マユ、あなたも大変ね」
「すみません、ドスケベでお馬鹿な兄貴で」
叫んだ拍子にLCLを飲み込むシン。そして次第に肺に取り込まれて、呼吸が可能になっていく。
(もしかして、俺って天才?! それとも不死身のヒーロー?!)
次第に意識がしっかりしてくるシン。
エントリープラグがLCLで満たされ、搭乗者がそれを受け入れたのを合図にでもしたかのようにエヴァ初号機に
主電源が接続された。
「主電源接続!」
そのオペレータの声を皮切りに次々と各オペレータが状況を口にした。そして……
「双方向回線開きます。シンクロ率、41.3%」
これまで見たことがないシンクロ率をエヴァに初めて乗った少年がたたき出した。
その事実にリツコは愕然とし、そして同時に如何にも嬉しそうな声を上げた。
「すごいわね」
「ハーモニクス、すべて正常値。暴走、ありません」
オペレータのその報告でリツコの中の予感が確信に変わった。
「いけるわ」
「発進、準備!」
マユのその声に発信準備が行われる。
「発進準備!」「第一ロックボルト外せ!」「解除確認、アンビリカルブリッジ、移動開始」
「第二ロックボルト外せ!」「第一拘束具除去。同じく、第二拘束具を除去」
「1番から15番までの安全装置を解除」「内部電源、充電完了」「外部電源用コンセント、異常無し」
「了解、エヴァ初号機、射出口へ。……進路クリアー、オールグリーン!」
「発進準備完了!」
「了解」
オペレータ達の言葉に発信準備が出来たことを確認したマユはエヴァの発信前に一度だけ指揮所の最上段にいる
父、碇ゲンドウ総司令の方へと振り向いた。
「いいだよね? ……かまわないんですね、碇司令」
「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、われわれに未来はない」
「碇、本当にこれでいいんだな?」
冬月もゲンドウの背中に問いかけたが、先程シンの叫びで眉がヒクリと動いた以外彼はずっと無表情を貫いていた。
「発進!」
マユはある決意を込めた自分の命令で射出されていくエヴァ初号機の光景を思い詰めたような視線で見つめながら、
心の中でシンの無事を祈っていた。
(お兄ちゃん、死なないでよ……絶対に)
以上です。
ちなみに“書くこと”について“悩み”についてですが、吹っ切れたような吹っ切れていないような……。
まあ、なんとかなるでしょう、ということで今後ともよろしくお願いいたします。
GJ!!
>>108 SS職人の端くれとして自分からもひとこと言わせてもらおう。
SSは『書く』ものでは無い。『描く』ものである。…と。
キミの精神(なか)の世界を、風景を、人物を文章で『描く』のだ!!
…ただ気をつけないと、スッポンポン見られる以上に恥ずかしいことがあるがなっ。
GJ!! さらに精進してください。
GJ!!
2次創作とは原作のキャラクターをエロくすることなんですね?
よく解ります。
アスカ「だいたいアタシは元々セクシーな大人の魅力にあふれてるし、シンはパルマとかっていう必殺技を持つエロ猿じゃない?
これ以上どうやってエロくするのよ」
シン「誰がエロ猿だって?!!」
アスカ「アンタよ!」
ゲンドウ「フッ(ニヤソ)」
保守
「アスランッ、アスカさん、こっちだよっ。早く!」
「キラッ」
シェルターの入口ではキラが待っていた。アスカ達は後方に注意しながらシェルターへ飛び込む。
シェルターの中には既に子供達と妙齢の女性と若い女性、そしてラクスがいた。
「お怪我はございませんか? 皆さん」
少し青褪めた表情でラクスが手を差し延べる。
「(ゼイゼイ)…えーまーね」
一番近くにいたアスカが仏頂面で答える。
アスカの呼吸(いき)が荒い。膝に手を当て酸素を求める。
同じザフトとは言え、向こうはコーディネーター。アスカはナチュラル。
同等の立ち回りなら基本性能の差は歴然だ。
アスカの表情に頓着せずラクスは片手を顎にやる。
「しかし…あの方達の目的はなんなのでしょう? ただの泥棒さんにしてはかなり乱暴だと、私は思うのですが…」
その言葉にアスカは、アスランは、アンディは、眼を剥きラクスを見る。シェルターの端末を操作していたキラも思わず手を停める。
ラクスの後ろにいる女性、…歳の頃は20代中頃だろうか? も、頭を押さえる。
「「「…………」」」
「 ? …あ、あの私、なにか変な事、申しましたでしょうか?」
ハアァー……。その場にいた子供達以外のすべての人物がため息をつく。
ここまでする以上、理由はともかく奴等の目的など明白だ。なのに、その目的であろう当人がこれでは。
疲れた表情で床にへたりこんだアスカが、一応確認を取る。
「アンタ、それマジで言ってる?」
ラクスは首を横にかしげる。
「…なにを、でしょうか? 」
2度目の沈黙&ため息。ピッピッと、ひとりキラだけは端末操作を再開する。
皆の反応にラクスが少し慌てる。
「えと…で、でも大丈夫ですわ。こうなったら私も闘いますものっ!」
そう言いラクスは鼻息も荒くその華奢な拳を握る。
「(ハアァ)…で? アンタ、その右手のフライパンで、なにをする気なの?
い・い・か・ら・っ、アンタはおとなしく…」
『ミトメタクナイッ、ミトメタクナ〜イ!』
突然ラクスの肩にいたピンクハロが跳ねる。
「っ!!?」
思わず上げたアスカの視線の先…シェルターの換気口の格子から、鉄の棒のようなものが出ている。
首を巡らすと反対の通気口からも…あれは…銃身っ? ……狙撃者(スナイパー)!!?
狙う先には、ラクス!!(誰も気付いてないの!?)
「ラクゥスッ!!」「はい? キャッ!?」
思うより早く、アスカはラクスを突き飛ばす。刹那、たった今までラクスが立っていた側の壁が弾ける!
アスカの紅い髪の一筋が千切れ、宙を舞う。
「っ!?」
アスラン達が振り返るが…。
「くうっ!」
体勢を崩しながらもアスカは床を転がり、狙撃者いる排気口に向かい拳銃を2発撃つ!
「ガッ!?」
排気口の向こうでラクスを狙撃した男の絶命の声がした。
(あっちも…駄目っ! 間に合わない!)
反対側の排気口の銃身がピタとラクスに定まる。アスカはラクスを庇おうと床を蹴り跳ぶが…距離があり過ぎる!
まるでスローモーションだった。銃身から放たれた鉛色の凶弾は、ラクスの銀の髪飾り目掛け、一直線に突き進み…。
アスカはギュッと眼を閉じ…っ!?
===ギイィンッ!!! カッ、キィンッ!===
耳障りな音がシェルター内に響く。その不思議な残響が尾を引き消えた時…。
「ば、か…な。ガフッ」
アスカはそっと眼を開けた。アンディが、アスランが、そして女性が構えた拳銃の向こう。
格子の向こうのもう一人の狙撃者も、それだけ言い、…絶命した。
「……。――アスラン。お前が撃ったのか?」
拳銃を構えた格好のまま、アンディが問う。
「…いえ、マリューさんじゃ」
「違うわ。あの子(アスカ)があんな体勢で撃てるわけないし、…キラ君は今、銃を持っていないし」
三人はギギギとラクスの方に振り返る。
「あ…その…」
ラクスは怪我ひとつしていなかった。それはいい。だが…その右手に握られたフライパンは、一部がへこんでいた。
「跳弾…で、か?」「フライパンで? 嘘だろ…」「有り得ないわ」『ナンデヤネンッ』
三人+1は各々の感想を漏らし、目をテンにする(ハロはもとから)。
そう、ラクスを狙った銃弾は、運良く(?)ラクスの持っていたフライパンに当たり、
そしてその弾は跳弾となり、狙撃した者自身に命中したのだ!!
「大丈夫かい? ラクス」
そう言い、やっとキラは扉を閉めロックボタンを押し、そしてラクスの側に駆け寄る。
外部端末が壁に吸い込まれ、ニ重の防御壁が壁の凹凸を埋める。
「私は大丈夫ですわ、キラ」
キラに手を取ってもらいラクスが立ち上がる。表情も軟らかい。
(……。見間違い、よねぇ)
地面に這いつくばった体勢のままラクスを見上げ、アスカは思う。
そう。見間違いのはずだ。間に合わないと眼を閉じる直前、アスカが見たものは。
まさかラクスが、フライパンを振りかざして、銃弾を打ち返したように見えた、…なんて。
ラクスが足元のアスカを見、いたずらをみつかった子供のように舌をチロと出す。
「困りましたわ。これではスクランブルエッグが作れません」
そう言いフライパンを見て微笑むラクスが、なぜかアスカは恐かった。
(……(ゾク)。…見間違い、よね?)
「(ドンッ)えぇいっ、仕損じるとはっ!」
数刻の差で工作員の隊長らしき男がシェルターの前で扉を叩く。
こちら側からこの重厚な扉を開ける術が無い。
「――“アッシュ”を出せっ。こうなったらやむを得ん。今ここでなんとしてもラクス=クラインの命、貰わねばならんのだ!!」
・・an empress in dication...?(女帝の片鱗?) …続く
アゲ
おぉ、ひさびっさ〜じゃん。アススト氏GJっす!!
しかし…アスカよ、何故そこでラクソを庇う!?
てか庇う必要もねーし。銃弾打ち返すなんて、もはや人間じゃねーだろ?
続きを待っています。
ついでに浮上するよ〜。
保守
アススト氏、いつもながらGJです。
職人さん達は新人スレかIFスレに移行したほうがいいんじゃね?
こんな過疎スレで少人数相手に書くより大人数に見てもらい批評してもらうほうが
職人さんの為だと思うが。
アスシスさん、シンエヴァさん、アススト氏、いつも楽しく読ませてもらっています。
(↑↑現在はこの御三方でオケ?)
頑張ってくださいね。
『シン、心の向こうに』サンも忘れないで…
『二人のアスカ』さんもいるお。
まぁ何処で書くにしろ賑わってくれれば良いよね。
あっちも必ず感想がもらえるって訳でもないし
どっちにしろ、見てくれる読者ありきだよ。どのスレも
アゲ
★
保守
☆
>>124 証拠はありませんがあれを書いている本人です。
いや、あれは保守代わりではじめたものですので……。
ちゃんと書こうかどうしようかは考えているところではあります。
「キラ、バルドフェルド隊長、アスラン、マリューさん。狙われたのは“私”なのですね?」
そう言いラクスは眼を閉じ、自分の胸に手を当てる。
(今ごろ気付きやがった。このアマッ!?)
そう思ったのは自分だけではないとアスカは確信している。
律儀にアンディは返事を返す。
「…あー、まぁ。たぶん、おそらく」
「……」
それを聞き、ラクスは唇を噛む。
「でも、ま、これで彼らがおとなしく引き上げてくれればいいんだが…うおっ!?」
轟音と共に壁が、いや建物自体が激しく揺れる。アンディの言葉は遮られ壁に手をつく。
「ガス管でも爆発したのっ? いいえ、これって爆撃音!!」
アスカが叫ぶ。天井からパラパラと砂埃が落ちる。続けて2度3度と建物が揺れる。
「く…っ。奴らモビルスーツまで持ってきているのか!?」
アスランも叫ぶ。まさか本当にラクス一人を殺す為にここまでするとは。奴らの決意がそこに見て取れる。
「おそらく、な。何が何機いるのかは判らんが、火力のありったけで狙われたら、ここも長くはもたんぞ!?」
アンディが慌てて奥へ続く扉を開ける。
「あーもーっ。モビルスーツ相手にこんなトコ隠れてても意味ないでしょっ! どうすんのよ、バカ虎!
せめてこの屋敷の地下にモビルスーツを隠してあるぐらい言いなさいよぉ!」
アスカが思わず吠える。アスカはモビルスーツパイロットである。なのに抵抗もできずにこのままなんてっ。モビルスーツさえあれば!
「…………。――ある」
アンディがつぶやく。
「なら、せめて秘密の地下道でもっ…。……。――は?」
アスカが聞き間違いかとアンディの顔を見る。が、アンディの眼はまっすぐアスカを見返していた。
「『ある』、と言ったんだ。――ラクス」
アンディが唐突に声をかける。
「っ!?」
とたんにラクスの顔色が変わる。
「――“鍵”は持っているな?」
「…あ」
ラクスは両手の中のハロをギュッと握る。
「“扉”を開ける。仕方なかろう。それとも今ここで皆、大人しく死んでやった方がいいと思うか?」
「いえっ、…それはっ。でも…」
その声は先ほどまでとはうってかわり、歯切れも悪ければ、チカラも無い。
「ラクス?」
「……キラ」
キラが不思議そうにいつもと違うラクスの顔を覗く。青ざめたその表情には、不安、心配、様々な感情が見てとれる。
それらの感情はすべて自分の為だと、キラにも感じとれている。だがなぜ?
「…!? まさかっ!?」
キラが背後を振り返る。そこにはアンディが言う大きな“扉”が確かにある。そしてモビルスーツがあるらしい。
ならばそのモビルスーツとは…。
キラは一度眼を閉じる。その数刻、キラは何を思ったのだろう?
やがてキラは静かに眼を開け、ラクスに微笑む。
「…貸して」
「え」
「なら僕が、開けるから」
「いえ、でもこれはっ!」
ラクスが慌ててハロを背に廻す。
「大丈夫。僕は…大丈夫だから。ラクス」
そう言うキラの顔は決意に満ちていた。
「キラ…」
今までのとぼけた表情では無いキラの顔を見、逆にラクスは涙を浮かべる。
それはラクスが思う幸せな時間(とき)の終わり。できれば永遠に続けばいいと思っていたこの生活のピリオド。
ラクスだって本当は判っていた。だから準備もしていたし、覚悟も出来ていたはずだった。
だが、実際にその時が来ると…。ラクスはイヤイヤと首を振る。
「このまま君たちのことすら護れずに…。そんな事になる方がずっと…辛い」
そう。“アレ”に乗ればまた…。『パーサーカー』と呼んだのはバルドフェルドだ。だが、しかし今はそれしか無い。
「キラッ」
ラクスの眼に浮かぶ涙がひとつ、落ちる。
「…だから。鍵を貸して」
「…キラ」
「…ラクス」
見つめ合う二つの瞳と瞳。
「キラ☆」「ラクス♪」
複雑な表情のアスラン。かつての戦いを思い、そっと鼻をすするマリュー。目を閉じるアンディ。
それぞれが、それぞれの思いに耽る。その時。
『ハ、ハ〜〜〜、ロォ〜〜〜ッ??』
そこに場違いなハロのかん高い声が響く。皆が見れば、アスカがラクスのハロを逆さにして振っているところだった。
そしてチャリン、チャリンと落ちる2つの鍵。
「これね。悪いんだけど。今、ンなことやってる場合? アタシは死にたくないの。邪魔だからソコ退いてくれる?」
「「「あ…」」」
アスカはラクスにハロを渡し、もうひとつの鍵をアスランに投げてよこす。
『アカンデェ…、ハロヘロホロ…』
「ホォラ、アスラン。ボサッとしてんじゃないっ。さっさとキーボックスにそれ突っ込む!」
「あ、ああ」
指差され、慌ててアスランは扉に駆け寄る。
「いい? 3、2、1っ」
アスカの声に合わせ、アスカとアスランは同時にキーを回す。ゴゴゴ…という鈍い音と共に、大扉が開いてゆく。
===カッ、カッ、カッ===
やがて扉が開ききり、オイルの匂いと暗闇に包まれていた空間にライトが灯る。
そこに浮かび上がるシルエットは…。
「っ!!」
見上げるアスカが奥歯ギリと鳴る。
(やはりまだ存在(あった)のね)
…Return to the“Blue”.. 続く
134 :
アス・スト:2008/04/20(日) 01:36:04 ID:???
お久しぶりです。アスカ・ストライク! 投下します。
やっと“アレ”が復活(?)なんですかね?
しかし、いつまで続くんですかね? このお話…orz
確かにたくさんの方に見てもらいたい、感想を聞いてみたい、とかは思います。
が、落ちても落ちてもスレッドを立ててくれる方や、そっと見守ってくれる方がいる以上、おいそれと移動はできません。
それに件のスレに移動しても途中から投下したら「 ? 何これ? シンはどこにいった?」
とかなりそうですし。
『シン・エヴァさん』とか『二人のアスカさん』とか微妙な立場になりそうだし…。
自分的には一人でも見てくれてる人がいる以上、こっちで…とは思いますが。
他の職人様の意見はどうなのでしょう? 一番いいのはここにいっぱい人が来てくれるようになればいいのですが。
たくさんの方を惹き付けることが出来る筆力が自分にあればよいのですが…スイマセン。
それかage進行でしばらくやってみますか?
>>134 頑張ってください。
落ちても落ちても何度でもスレッドを立てます。
>>134 いつもROMばっかで申し訳ないが、俺もスレぐらいは立てられるんでこれからもガンバって下さいませませ
他スレで見かけただけで裏取ってない話だが3ヶ月たつと1000行かなくても落ちるとかなんとかorz
まったりスレには厳しい環境に
>>108のシンエヴァもどきを書かせて頂いているものです。
まだ、次が7割程度しか書けていませんのでまだ投下できませんが……。
>>134 アス・ストさま、相変わらずのGJです。
おっしゃるとおりというか、なんというか私はこのスレのあだ花なので……。
ここがなくなれば消えるのがよいのかも知れない、くらいに思っています。
しかし、今はとにかくここがある限り、この話を最後まで書かせて頂きたい、と思っております。
他スレでも言われているが職人は基本、『感想乞食』なのだよ。
GJだけでもいいのだが、これからどうなって欲しいとか、あの人は出てくるのかとか、
そういった意見も欲しがる、悲しい生き物なのだよ、職人てのわ。
良いお話作りは、まず良い読み手がいてしかりなんだよな。
アス・スト氏GJ! 氏が書く世界は上手いこと、SEED世界を壊さず、かつエヴァ要素を盛り込んでいるトコなんだよな。
なによりアスカがちゃんとアスカしてるのが嬉しい。
キャラクター乖離しているSSが多いなか、上手く世界に馴染んでいる。
これからの精進に期待している。
アス・スト氏GJ
話の内容として違和感あってしかるべきなのに特にキャラに違和感が少ないのは138氏に同意。
このスレの中にあっては特に他の二氏と比較するとそういう印象が強くなってしまう。
(「二人のアスカ」氏はまだ様子見だがこちらも微妙)
いや、シリアスだろーがエロだろーがパロだろーがなんだっていいのだが、大切なのは『アスカがいるとこーなる』だろ?
見てるオマイラが想像しているアスカ。十人いれば十人のアスカがいるってこった。
「俺のアスカは、んなコトしねーよ!」ってのが『違和感』だからな。
だから一概には言えんのでは?
クロスオーバーSSで一番困るのは「この話、別に“アスカ(シン)”じゃなくてもいいんじゃね?」だと俺は思う。
そこらへん考えると、このスレの職人さんはそれぞれの味があると思う。
あとは口に合うかどうか。
>>133 流石アスカだ。二重同時キーの構造を一瞬で見破るとは…
ところで、二重同時キーって、同じ所に二つキーを用意しておくもんなのか?
普通は別々だろ?
普通は…
いいんだよ、ラクス様は“普通”というものを超越していらっしゃるのだから。
ラクス様に“普通”を要求するのかっ、オマイラ!?
バチ当たるぞ。
146 :
通常の名無しさんの3倍:2008/04/22(火) 01:27:53 ID:mDe27/bR
預けるに足る人物がいなかったんだろ?
キラはボーッとしてどっかに落としそうだし、虎はどこに保管してたか忘れそうだし、
魔乳はどれが正しいキーなのか区別がつかなそうだし。
ラクスが一番安心出来るのは、いつもそばにいてICで間違えることのないハロである。と脳内補完しとけ。
そういえばNERVのM.A.G.I.も二重同時キーでしたな。
ああ、そうか、普通を超越したラクス様が隠したキーをあのアスカ様が見破ったというわけか。
納得納得
つヒント
オーブの島はいたる所がサンダーバードの基地のようなもの
↓
そうしたのはウズミとアスカの父
↓
アスカは父の研究所によく通っていた
↓
答え アスカがこーゆー仕組みを知ってても不思議ではない
アスカの過去話にそんなくだりが書いてあったような
保守
>>149 しかし、ウズミだったら武装した「サンダーバード」とか作りそうな気はする。
>>151 暁―アカツキ―を造ったことを考えてもその気マンマンですね。
その昔「装甲救助部隊レストル」というアニメがあってだな(ry
「だがっ、大き過ぎるチカラはまた争いを呼ぶっ!」
と、どっかの国の元首様がおっしゃってます。
…誰だったっけ?
保守
保守
アゲ
☆
>>154 あんまり書くとスレ違いだけど……
まさかアークエンジェルやフリーダムを隠し持っていて、ムラサメや防衛に必要とは思えない大型空母を保有している国の元首ではないでしょう。
その件についてはアス・シスさんのところのアスカがどこかの代表に対してボロボロに言っていたような気がした。
シン「さすがツンデレ事はアスカのお家芸だな!」
アスカ「アンタもアスカでしょ!?」
カガリ「・・・さすがボケとツッコミはWアスカのお家芸だな」
キラ「あのカガリが1本とった!?」
保守
>>160 アスラン「君たちのボケとつっこみは未来を殺す!」
アスカ「訳わかんないこといってんじゃないわよ。冗談は広いおでこだけにして欲しいわね」
シン「隊長殿のお言葉は難しすぎてわかりませんね」
アスラン「キラ〜〜〜!!」
保守
アゲ
保守
突然で申し訳ありません。諸々の事由でまとめサイトを管理できません。
各職人さま、及び過去スレを持っている方で、管理してもいいよ。という方は…、
まとめサイトに行き、一番下の管理人室をクリックし、パスワード『3220』入力から入ってください。
たぶん携帯からでもOKのはずです。勝手ですが何卒宜しくお願いいたします。
最後に各職人さま、及び見ているすべての方の幸せをお祈りいたします。
まとめサイト管理人 ☆星になったナオ☆
――“ZGMF-X10A『フリーダム』”――
アスカの眼前に、それは雄々しく、そして静かに佇んでいた。
連合軍が開発した4機の“G兵器”。それらを参考にし、ザフトが開発したモビルスーツ。
その機体の主たる特徴は、ニュートロンジャマーキャンセラーを搭載したことによる核動力エンジン。
これにより従来機とは比べものにならない稼動時間、高スラスター及び大火力火器の通常使用を可能にし、
単機でも戦闘作戦行動が執れる高性能モビルスーツ。
そしてパイロットはスーパーコーディネーター“キラ・ヤマト”。
先の大戦ではザフト宇宙軍、地球連合軍双方から“悪魔”とさえ呼ばれた…『蒼き翼』。
アスカはフリーダムの顔を見上げる。光灯らぬツインアイは、まるで眼を閉じ、静かに眠っているように見えた。
「…………」
そして。このフリーダムが“あの”フリーダムなら。機体コントロールに使用されているOSは、たぶん…。
(だけど今はっ)
アスカはフリーダムのコックピットに向かい駆け出す。
「……あ」
キラがなにか言おうとしたが、アスカは構わずハッチを跳ねあげシートに座る。
「モビルスーツがあればこっちのもんよ! 見てなさいよっ。アタシは受けた屈辱は万倍にして返す主義なんだからっ!」
サブコンソールのスイッチを入れ、メインパネルに次々と明かりが灯る。
やはりザフト製だけあって、基本的なプログラム立ち上げは従来機と変わらない。
「――ニューラルエンゲージ、確認。パラメーター、オレスグリーン。リンク係数全て正常値…」
メインパネルに映し出された“G.U.N.D.A.M”の文字が問題なく切り替わっていく。
アスカが最後にメインエンジンに火を入れようと赤いボタンに指を置いた時、
(……………………)
「…え? なに?」
――“声”が聴こえた、気がした。
とたん、今まで正常に点いていたディスプレイが一斉に落ちる。サブエンジンの振動も止まる。
「な、なによコレぇっ。壊れてんじゃないのぉっ!!?」
急いでいるとはいえ、起動手順に間違いはなかったはずだ。試しにいろんなパネルスイッチを押してみるが、一切の反応がない。
「なによ、このオンボロ! 役立たないじゃな…」
サイドレバーに拳を叩きつけようとしたアスカの腕を、いつの間に来たのか、横からキラが抑える。
「なっ、なによぉ!」
振りほどこうとするアスカだが、思いのほかその握力は強い。キラがアスカに微笑む。
「…どいて」
「え?」
キラがフリーダムの顔を見上げる。その表情は懐かしむように愛しげで…。
「“彼女”は、僕じゃないと駄目だから」
「はぁっ? アンタよりアタシの方がモビルスっ…クッ!!」
爆音と共に、また建物が激しく揺れる。子供達が悲鳴を上げる。アスカは一瞬躊躇ったが、今は…。
「――っ。ええぃっ。ならボサッとしてないで、さっさと替わんなさいよっ、まったく!」
アスカはコックピットから飛び降りキラに言い放つ。
「けどいいっ? 少しでもダッサい動きするようなら、すぐさまコックピットから引きずり降ろすからねっ!」
アスラン同様、2年のブランクがあるキラだ。しかもいまだ療養中である彼にモビルスーツの操縦は…。
アスカが見ても今だキラの言動は不安定だと思う。いちおうは心配しているのだ。
アスカはキラや彼の周りの今後まで思い言うのだが、あいにくアスカは“男を立てる”と言う言葉は知らない。
というより、人に頼ることを極端に嫌う。だからどうしても辛辣な物言いとなる。
「見せてもらおうじゃない? スーパーコーディネーター様の華麗な戦いぶりを!」
キラは苦笑いをし、コクリと頷く。そしてアスカに代わりコックピットに座る。
「……アスランも苦労するね」
「だぁから、勘違いするんじゃないって言ってんでしょーがっ!」
「どうなんだろうね。――ゲートの外に。ラクスと子供たちを頼むよ、アスカさん」
「今回だけよ。アタシのツケは高いんだからねっ」
ラクスやアスランの元へ戻ったアスカがそれだけ言うと、ゲートの大扉は静かに閉められた。
フリーダムのコックピット内でキラは息をひとつ吐き出す。そして、
「――ニューラルエンゲージ、確認。パラメーター、オールグリーン。リンク係数全て正常値…」
アスカの手順に輪を駆けたスピードでキラは起動プログラムを立ち上げていく。
まさに神速。一通りの手順をクリアし、キラの手がピタと止まる。
そしてアスカが気付かなかった、パネル下の目立たない黒いスイッチを見やる。
キラの人差し指がボタンの手前で止まり、引っ込み、躊躇いの間を置き…そしてスイッチを押す。
「S.B.T.用OS “M.A.G.I.System”…起動」
とたん、ブン…と羽音に似た音とともに、コックピットが淡い光に包まれる。
(…………)
「――…ああ、久しぶりだね。逢いたかったよ」
キラの視線が一点に止まり、語りかける。だが、誰に?
(…………)
キラが笑う。
「――違うよ、彼女はそんなのじゃない。アスランの友達らしいよ。怒らないで」
(…………。……)
「うん。外にザフトの機動部隊がいるんだ。みんなを護りたいんだ。キミのチカラを貸して欲しい」
(…………。………………)
「――ありがとう。判っている。愛しているよ。 フリーダム起動っ! さぁ行こう、“フレイ”!!」
――今、2年という刻(とき)を越え、蒼き翼の双眼に再び灯がともる……。
…I am you. You are main.. 続く
170 :
アス・スト:2008/05/05(月) 03:43:09 ID:???
子供の日プレゼンツ、お久しぶりです。アスカ・ストライク! お届けです。
当初、アスカを乗せて中の人と口喧嘩しながら暴れさせよう、とか考えてましたが…、
絶対この二人(?)気が合わないだろな、とか思い断念しました。キャラもなんか被ってるし。
まとめサイトに今までの分、落としときたいのですが、埋め荒しにあった時の分、保存しそこねたんですよねー。
どなたか持ってませんかね。
さてこの先どうなることやら。 自分にも分かりませんが、よろしくお願いしますm(__)m
>>170 とりあえず、前スレのがあったんで投下しておきます。
41 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2007/12/25(火) 05:07:07 ID:???
アスランはベッドルームのドアを開けると、ジャケットとシャツを脱ぎ、花の飾られたテーブルの椅子に掛けた。
(早いほうがいい。明日、カガリに言おう。『プラントに行かせてほしい』、と)
窓の外を見る。先程まで白々と輝いていた月が今は雲間に隠れてしまっていた。
大きく息を吐くと、アスランは少し大きめのベッドに横になる。今日は少し疲れた。
だが心地よい疲れ。アスカやキラにラクス。それに子供達。鬱々していた気分が今日は少しだけ晴れた。
今日あったことをひとしきり思い出しクスリと笑い、アスランは眼を閉じる。
(さて、寝るか。明日は…、…?)
===ポヨン♪===
体勢を直したアスランの右手に、温かく柔らかい感触。
(? ? なんだ? )
暗くてよく判らない。アスランはもう一度右手で感触を確かめる。
サワサワ。柔らかい。そして温かい。これはまるで人の…、しかも女性の…。そんな考えを巡らせている時。
「…あ、んふ…」
アスランが右手で触っているモノが寝返りをうつ。
42 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2007/12/25(火) 05:11:07 ID:???
「っ!? アス…〜〜〜〜〜っ!?!?」
アスランは叫びそうになった自分の口を慌てて左手で押さえる。
(なっ、なな、なんでアスカが…、てか下着だけっ!?)
そうアスランの隣りには、しどけない格好で寝息をたてているアスカがいたのだ!
(ま、マズい!)
しかもアスランの右手が触れているのは、薄い布地で包まれただけのアスカの、胸の上…。
(う、動けない…)
今この右手を動かすわけにはいかない。動かせない。動かした瞬間アスカが目を醒ましそうで…。
眼を醒ましたら最後、どのようなことになるかは想像に難しくは無い。明日の朝日は多分拝めない。
アスランの心臓のビートが跳ね上がる。呼吸も下手にできない。イヤな汗がダラダラ流れる。
時計の秒針がきっかり5周した。
(やばい、腕がもう…)
アスランの右手の筋肉が細かに揺れだす。その振動がアスカに伝わってしまいそうで、さらに右手にチカラが入る。
そしてこの不安定な体勢…。
(と、取りあえずこの右手をなんとか…)
アスランが自分の体勢を崩さないように、アスカの胸から手を離そうとした時…。
43 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2007/12/25(火) 05:13:37 ID:???
「…い、や…」
なんと眠っているはずのアスカが、アスランの手を取り、自分の胸に押し付ける!
「んなっ?」
その行為にさらにアスランは混乱する。
(アスカ? 起きてるのか? はっ? ま、まさか…俺を誘っているのか?
だって俺のベッドに、しかも、し、下着姿でなんて、そうとしか…。い、いやだが俺にはカガリが。
しかも彼女とカガリは幼馴染みで…。だが最近カガリは忙しくてなかなか…。
結局プラントに行ってる間もソレどころじゃなかったし。だが俺は…。でも。でもいいのかアスラン?
女の子がここまでしてるのに、何もしないのはかえって失礼なんじゃないのか? でも、後で厄介なことに…、
え? 身体が勝手に…あぁ俺は何をぉ!!?)
右の掌の柔らかな感触。その下のアスカの息遣い。再び顔を出した月明りに照らされ、アスランの眼に写る無防備な肢体…。
(ゴクッ)
それらがアスランの理性を奪っていく。このようなお膳立てをしたのは、キラやラクスなのは容易に想像がつくのだが…。
44 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2007/12/25(火) 05:14:02 ID:???
ラクスの“愛人さん♪”の言葉が脳裏をよぎる。
(アスカもそれを承知の上で? な、ならこれはお互いの合意の上での行為と言うワケで…)
言い訳。だか、アスランは胸の高鳴りを押さえきれず、そっとアスカの顔を覗きこみ、唇をよせる。
…世の男性諸氏はこのようなシュチュエーションに自分がなったとき、このアスランの行動を非難出来るのであろうか?
答は“否”であろう。あぁ、哀しきは男の性(サガ)。女性の思わせぶりな行動は時に男を狂わせる。
いや、アスカはただ単に寝ぼけているだけなのだが!
アスランとアスカの唇がまさに触れようとした時…。
「…ン…ジ」
アスカの唇が何事かを紡ぐ。
「…?」
アスランは半ば閉じていた己が眼を開く。
一拍の間を置いて、アスカの唇が再び動く。そして閉じられているその眼から涙がこぼれる。
「…ジ…シンジ、逃げてよっ! やだよぉっ、シンジィ!!」
そう叫ぶと、アスカはパチリとその両の眼を開けた。
…Cring Lonly sorjar..==哀・性(戦?)士==
君は刻(とき、主にアスラン)の涙を見る…
65 名前:通常の名無しさんの3倍 投稿日:2008/01/05(土) 01:37:47 ID:???
夢を見ていた…、ような気がする。けど眼を開けた瞬間、どんな夢だったのか忘れてしまっていた。
ただ、哀しさ、寂しさが胸の中に残っていた。あぁ、そんな夢だったんだろうな、と思う。
……。
………。
…………。…んで。
まぁアタシの夢のことは、それはそれで取りあえず良しとして。
…………。
アタシはもう一度まばたきをする。ラクスさんからアタシ用に案内された部屋。用意されていたベッド。
当然アタシはそこで寝ていたのだが、なのになぜ“この人”が眼の前にいる?
「あは、は。や…やぁ♪」
超至近距離。アタシの鼻先5cmに、間違いない。アスラン=ザラがそこにはいる。
胸に違和感。視線を落とすと彼の右手がアタシの膨らみの上に置かれていた。
着ていたワンピースは皺をつけるワケにはいかず、脱いだ。今のアタシの肌を覆っているのは下着だけ…。
もう一度アタシは視線をアスランに戻す。
「あ、あああのなアスカ。こ、ここコレはだな…」
彼の顔にダラダラといく筋も伝う汗、汗。
【 ア ス カ 覚 醒 ! !】
「キャ…ウプゥッ!?」
アタシの発しようとした叫び声はかき消された。アスランの左の掌によって。
「まて取りあえず落ち着こうアスカまずは俺の話を聞こうな聞いてくれっけして叫んだり暴れたりしないでくれ
アスカけして俺は妙な気持ちを起こしたワケじゃなくてだなっ、い、いや全く無かったと言えば嘘になるが!
君の姿を見れば大抵の男はどうにかなる、いろんな意味で!って何を言っている俺は!?
と、とにかく俺はただキラに案内されてベッドで寝ようとしただけなんだっ、そうしたら隣に君がいてっ
しかも下着姿でついその白い下着に眼がいってへぇ結構アスカ胸あるんだなとか、いやよく見たワケじゃないんだがっ…」
…果たしてアスランは息継ぎ無しでどこまでいけるのか? 思い付く限りの言い訳を並び立てる。言い訳にもなっていないが。
当然アスカも聞いているどころでは、無い。
66 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2008/01/05(土) 01:42:17 ID:???
(なっ、なんでアスランがアタシのベッドに、しかもこんな夜更けにっ? ま、まさかえと…よ“夜這い”ってヤツ?
あのアスランが? アタシに? そんなまさかでもこのアスランの真剣な眼…
…てアタシ、下着姿のままじゃない! や、ヤダ、今日アタシお風呂入ってないから匂いが…じゃなくて!
まさかこんなことになるとは思ってなかったから下着も可愛くない普通のだし…でもなくて! ナニ言ってんのアタシは…
ま、まさかアスラン、昼間のラクスのセリフ、間に受けてそれで? ちょっとマジー!? アスランだからってあんたダイタン過ぎっ。
で、でもアスランがアタシのことそんな風に思ってたなんて。でもイキナリこんな…。アタシにもココロの準備ってのが…。
て、なに考えてんのよアタシ! バカバカバカァ!! てかアスラン、手ぇ! いい加減苦しいんですけどぉっ!!)
「…というワケなんだ!だから俺は別に…(ハァハァ)」
「んむーっ! くr…ひぃ、アフラn…(ハァハァ)」
「あ? あぁす、すまない! すぐ離すけど叫び声だけは上げないでくれ」
「む゛ーっ!(コクコクコク)」
顔を真っ赤にし首をふるアスカの様子を見、そう言い含めアスランはゆっくりアスカの口から手を離す。
「…………(ハァハァ)」
「…………(ハァハァ)」
67 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2008/01/05(土) 01:42:57 ID:???
アスランは一気に喋り過ぎて、アスカはその間口を押さえられ呼吸が出来ず、お互い息を切らし、心臓は早鐘を打つ。
しばし無言の時が過ぎる。やがてどちらからともなく視線が合う。
「ア、アスランあんた…」「アスカ、君は…」
同時に喋る二人。思ってたより近いお互いの顔。視線を合わせたまま、また二人は黙る。
トクトクトク。別の意味でまた二人の鼓動が高鳴りだす。まだ荒い呼吸と上気したお互いの肌。
そしてなにより裸に近い二人の格好…。
コクッ。アスランの喉が一度動く。決意のまなざしと共にアスランが動く。アスランの顔がさらにアスカに近付く。
「ア…アスカ」
「ア、アスラ…」
突然のことにどうすることも出来ず、アスカはギュッと眼を閉じる。その時…。
===…パリンッ!===
階下で、ガラスの割れる音が二人の耳に響く!
…Farst“Love”Contact..(接近、遭遇、でもそれだけ♪ by作者は意地悪)
79 名前:アスカ・ストライク!! 投稿日:2008/01/14(月) 00:13:38 ID:???
「な、なんの音っ!?」
「ガラスが割れる音? なんだっ?」
二人は音のした方に意識を向ける。軍人である、あった二人である。自然、危険を察知する能力には長けている。
===パンッ! パリンッ===
さらに渇いた銃声らしき音、そして窓ガラスの割れる音。
アスカ、アスラン、二人の顔に緊張が帯びる。
===…デェ! アカンデェ! キケンッ、キケン!===
廊下のドアの向こうからなにかが跳ねる音と機械音声が聞こえる。
「!! あれはラクスのハロの声っ。なんだっ? アスカ!?」
アスカは素早くベッドから飛び降りる。
「ち、ちょっとアスラン! あっち向いてなさい! ぜぅぇーーーたいっ! こっち見るんじゃないわよ!!」
「は? うわっ、はいっ!」
アスカは壁に掛けていたワンピースを掴み、はや身支度を整えだす。
アスランも慌ててベッドから下りアスカとは反対側でズボンを履く。
ジャケットから拳銃を取り出すとドアの側で身構え、耳を澄ます。やがて…。
(コンコン)『アスラン。アスランっ、いいかい?』
ドアの向こうで見知った声が聞こえる。
「キラか? ちょっと待ってくれ。…いいぞ」
アスランはチラとアスカを見る。アスカは背中のファスナーを上げているところだった。確認をしドアを開ける。
「アスラン」
いつものとぼけた顔のキラでは無かった。眉根を寄せ右手にはやはり銃が握られている。
「キラ。…なにかあったのか?」
部屋の明かりを点けようとスイッチに伸ばしたアスランの右手を掴み、キラは顔を横に振る。
「ダメだアスラン。…判らない。けどこれはきっと…」
そう言い、ポケットからもうひとつ拳銃を取り出し、アスランに投げて寄越す。
「アスラン。庭の向こう。林の奥にお客さんがいるわよ。…たぶん10以上」
服装を整え、襟の中の髪を両手で外に出したアスカは、そっと窓に寄り添い外の様子を伺う。
「判るのか?」
アスランが振り返る。
「…たぶん、ね。深夜のパーティーに来たってカンジじゃないのは確かみたいだけど」
アスカの声にも緊張が帯びる。泥棒ならそんな人数で活動するはずもない。
邸内からも銃が放たれ火線が林に向かって走る。
80 名前:アスカ・ストライク!! 投稿日:2008/01/14(月) 00:15:49 ID:???
「……。っ!? まさかヤツらの狙いはっ!」
アスランの声にキラはうなずく。
「…たぶん」
「…チィッ。キラ! ラクスと子供達をシェルターにっ。俺とアスカはヤツ等を食い止める! アスカ!」
アスカは頷き、アスランの側に駆け寄る。
「事情がまったく判んないんだけど。なんとなく想像はつくわ。正直あたしには関係ないんだけど、
放っとける状況でもないようだし。アンタは早く…」
アスカはキラを促し行かせようとしたのだが。
「あっちはバルドフェルドさんとマリューさんがもう行ってくれている。…ボクは、戦う」
キラはふたりに決意のまなざしを向ける。
「キラっ。だがお前は…っ」
「ラクスはボクが守る。その為にボクは生きている」
「しかしっ。お前はっ」
「あぁもう! 言い争ってる場合じゃないでしょ!! んでっ!!(スチャ)」
アスカはポーチから白兵戦用のナイフを取り出しキラの鼻っ先に突き付ける。
「…ことが終わったらキッチリ! アタシとアスランをハメようとしたことのケジメ、つけてもらうから♪(ニコ)」
「それはラクスが…。あ、はは。その笑顔、ち、ちょっと怖いんじゃない?」
降参のポーズで苦笑いするキラ。アスランもキラに詰め寄る。
「そ、そうだぞキラッ! 人を陥れるなんてそれは人間として最低の行為で…」
「アスランッ。アンタにそれ言う資格無し! アンタはアンタでゆっくり説明してもらうから!」
「…ハイ」
「取りあえず下に行くわよ! …クシュンッ!」「アスカ? ほらこれ着てろ。それと、コレ」
そう言いアスランはアスカにジャケットを渡す。そして、自分の銃を。
「……。…う、ん」
少しためらいアスカは受け取る。銃は正直苦手だが仕方ない。
「弾丸(たま)は左の内ポケットだ。いいな?」
アスカは静かに頷く。
「よしっ、行くぞ!」
アスランはそれぞれの装備を確認すると頷き、そして階下へ続く廊下へ駆け出した…。
…あ、続く..
91 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2008/01/29(火) 01:31:50 ID:???
「アスカッ、伏せろ!」
「ヒャアッ!?」
激しい機関銃の音と共に、窓下に滑り込んだアスカの上に、砕かれたガラスが降り注ぐ。
アスランとキラはそれぞれ窓に寄り添い、外に向けて拳銃で牽制をする。
「あーもうっ。 動きにくいったら!」
そう言うとアスカは、おもむろにナイフを取り出すと、自分のワンピースのスカートを、膝上の高さで切り裂く。
裂過音と共にロングのスカートは一気にミニになる。少なくとも走っていて足に絡まる心配はなくなった。
「――これでよしっ。アスランっ、あんた気づいてる!?」
「なにをだ!?」
振り返らずアスランは撃ちながら答える。問答している場合ではない。アスカは簡潔に言う。
「ヤツらのマシンガンの音っ!!」
「――? …っ!!」
アスランの顔色が変わる。
「キラっ! ラクス達が心配だっ。急いで合流するぞ! アスカもっ」
キラがうなずく。
「おっけっ! アタシが牽制するからアンタ達は早く行きなさい!!」
もし『敵』がアスカ達の予想通りなら、少人数ではラクスや子供達を護りきれない。
「しかしっ」
アスカはズカズカとアスランのそばに行き、首根っこを掴みあげる。
「ええいっ。今一番にしなきゃいけないことは何っ?」
「っ! ――わかった。先に行くぞっ」
「(コク)アイン…ツヴァィ……GO!!」
アスカの合図でキラとアスランは駆け出す。アスカも移動をしながら、窓の外に向け拳銃の引金を何度も引く。
===ガシャーーンッ===
アスカ達が来た方向、南東の窓ガラスが割れた音がする。続いて複数の人の気配。
とうとう屋敷に侵入されたようだ。
「…チッ」
アスカは持っていたアシッドスプレー(催涙缶)をそちらの方向に転がし、そしてそれを拳銃で撃ち抜く。
煙が一気に吹き出し、廊下に拡がるのを確認してアスカは、姿勢を低くしアスラン達が消えた方角へ、駆け出した。
目眩ましくらいにはなるだろう。気休め程度だが。
92 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2008/01/29(火) 01:39:23 ID:???
廊下の曲がり角。アスカの足がピタと止まる。アスカは前方に息を潜め佇む気配を感じていた。
(姿を見せてさえいないのにこのプレッシャー…。何者?)
静かなのに背筋を凍らせるような殺意。まるで林に身を潜め獲物を狙う虎のような…。
アスカは壁に背を預け拳銃を握り直すと、静かに曲がり角へ近付く。
(――ひゅっ!!)
アスカは呼気を一度溜めると、一気に角から飛び出し拳銃を構える!
「っ!(スチャ)」
「…っ(カチャ)」
アスカは下から。向こうはアスカを見下ろすカタチで、お互いの額に銃口を突きつける!
「くっ…」
「……」
互いの動きが止まる。いや動けない。アスカがその人差し指を動かそうとすれば、目の前の人物は、即座に引金を弾くだろう。
アスカもまたそのつもりだ。
刹那の膠着状態。だがその二人を、雲間からまた顔を出した月明かりが照らす。
「――ほう。侵入者にしてはなかなかチャーミングなお嬢さんだねぇ」
男はそう言い、その身から発していた殺気を消し、銃を下ろす。
月明かりに照らされたその顔は隻眼。獰猛な野生動物を思わせるその髪。黄色がベースの服装。
なかなかにシブい顔と声。ワイルドな大人の男性という感じだ。けしてアスカの嫌いタイプではないが…。
だがアスカは隻眼の男を睨め付け、構えを解かない。先ほどの殺気は普通の人のものでは、無い。
男は両手を小さく上げ降参のポーズを取る。
「おいおい。―あぁ、そうか。初めまして、フロイライン(お嬢様)。“アンドリュー・バルドフェルド”だ」
男は苦笑いしながら自己紹介をする。
その自己紹介を聞き、今度こそアスカは驚く。
「っ!!? …――『砂漠の虎』っ?」
アスカのその声に、男はニッと笑ってみせる。
…Do you like tiri or yogulet?..続く
以上。これ以降のを発見次第張ります。
次のお話も楽しみの待ってます。GJでした。
即効で発見したので、さらに投下。
28 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2007/11/24(土) 19:37:09 ID:???
=カチャリ===
ラクスは南側のテラスに沿った廊下の角部屋のドアを開ける。
「アスカさんの寝室はこちらにご用意いたしましたわ。
急でしたので何もない部屋ですが、今晩はこちらの客間でおやすみくださいな」
そう言われ、アスカは部屋を覗きこむ。
部屋の中央には小さいが重厚な造りのテーブルと椅子。花瓶には花が活けられ良い香りが部屋に満ちている。
そして窓の側には大きめのベッドが置かれている。簡素だが、きちんと掃除が行き届いている部屋だった。
ミネルバの下級士官用の2人部屋に比べてもかなり広い。アスカは満足気にうなずく。
「ベッドと毛布が一枚あれば御の字よ。贅沢は言わないわ」
「明日は朝食の支度が出来ましたら呼びに参りますわ。それまで『ごゆっくり』おやすみくださいな。う・ふ・ふ♪」
ラクスは含みのある笑顔でドアを閉める。
「 ? 」
アスカは嫌な予感がしたが、相手はあの“ラクス・クライン”だ。下手な詮索は自分の身を滅ぼしかねない。
アスカはあえて気にしないようにし、壁のハンガーを手に取る。ワンピースのまま寝るわけにもいくまい。
「ん…と」
アスカは、背中に手をやり、ワンピースのジッパーを下ろした…。
「アスラン、君の寝室はこっちだよ」
「あ? ああ、すまない」
夜空に輝く北極星を眺めていたアスランに、キラは角部屋を指差し微笑む。
キラがアスランの隣へ来て、同じように宇宙(そら)を見上げる。
「…カガリ、大丈夫かな?」
「ん?」
「また、地球とプラントは戦争をするのかな。さっきテレビで、ユニウスセブンを墜とそうとしたのはコーディネーターだって…。
ラウ・ル・クルーゼが言ったように、僕達がしたことは、無駄なことだったのかな?」
「キラ…」
29 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2007/11/24(土) 19:39:45 ID:???
「アスラン、君の寝室はこっちだよ」
「あ? ああ、すまない」
夜空に輝く北極星を眺めていたアスランに、キラは角部屋を指差し微笑む。
キラがアスランの隣へ来て、同じように宇宙(そら)を見上げる。
「…カガリ、大丈夫かな?」
「ん?」
「また、地球とプラントは戦争をするのかな。さっきテレビで、ユニウスセブンを墜とそうとしたのはコーディネーターだって…。
ラウ・ル・クルーゼが言ったように、僕達がしたことは、無駄なことだったのかな?」
「キラ…」
『母上ーっ!!』『まだ調整が終わってないのよっ、仕方ないでしょ!?』『最近難しいお顔をしてばかりなのですね』
『お前は裏切り者のコーディネーターだ!』『痛いっ、痛いぃ!』『パパを、パパを返してよおぉーっ!』『母さん…僕のピアノ…』
『キラッ、今のうちに…!?』『MIAだ』『ありがとう、おにいちゃん』『キィラアァー!』『アァスラァーン!』
『でも“ガンダム”のほうが強そうですわね』『殺したから殺されてっ、それでホントに最後は平和になるのかよっ!?』
『これは俺個人の介入だ』『2度もぶった! 親父にも…』『いやったあぁぁっ!』『撃・滅!』『なんでトールが死んで…』
『わたしの想いが貴方を護るから』『だから“人”は滅ぶ!』『俺が“ガンダム”だ』『生きるほうが戦いだ!』
『知れば誰もが望むだろう! 君のように…』『やっぱ俺って不可能を可能に』『撃てぇー! マリューラミアス!!』
30 名前:アスカ・ストライク!! ◆w43rHqzb0U 投稿日:2007/11/24(土) 19:42:51 ID:???
…様々な人が、言葉が、アスランとキラの脳裏を通り過ぎる。夜風がふたりの髪を揺らす。慰めるかのごとく。優しく…。
「あんな思いはもうしたくない。させたくない。誰にも」
「アスラン…」
「その為にカガリだって頑張っている。だから俺も、俺に出来ることをやるつもりだ」
決意のまなざしにもはや曇りは無かった。
「そうだね、アスラン。僕等は僕等に出来ることをするしかないんだ」
「ああ」
アスランとキラは笑いあい、ガシッとお互いの腕を交差させる。
「さしあさって今するべきことは…明日に備え“寝る”ことだ!」
「へ? ああいや確かにそれはそうだが…」
キラの言葉にアスランは肩透かしをくらう。
「じゃ僕はもう寝るから。君の部屋はそこ。ベッドルームは奥のもうひとつの部屋だから間違えないでね」
「あ? ああ、わかった」
「おやすみ、アスラン。ゆっくり“楽しんで”ね♪」
そう言ってキラは玄関へと消えて行く。
「…へんなやつだな。それを言うなら『ゆっくり“やすんで”ね』だろうに」
やはりまだキラは完全には復調していないのだろうか?
アスランはやれやれと首を振り、そして自室のドアを開けた…。
…long long night...続く
以上、”種死のシンとエヴァのアスカを入れ替えたら 弐 再々”で発見したレスでした。
これより前なのは、なんと初代スレでした…。
ログをあさってると投下される前に埋まったり、落ちたりしてるのね…。
初代スレのログがほしい場合は、即座に投下します。
ではまた…。
今日はじめてここを見たんだが面白いな。
アスカ・ストライクさん?は文章少しアレだが、勢いで読んでしまうな。
最初から読んでみたいがテンプレのまとめサイトに行けばいいのか?
これから応援して行きたいと思います。
でも、ああ見えてアスカって他人への依存心って大きくね?
183 :
アス・スト:2008/05/05(月) 16:16:21 ID:???
おぉ、サンクス♪です。そいやこんなん書きましたわ。しかしあらためて見直してみると…、
もう一回書いてみな、って言われても多分無理ですな。勢いで書く、が基本ですから。
感謝感謝♪です。
あとは自分がまとめに落とせるかどうか、だね。
>>182 依存心が強いくせにそれを無理に否定したが為のシンクロ率低下(原作)ですね。
受け入れてしまえば戦自壊滅させる程の腕前。戦闘力は一番高いはずですから。
なにはともあれ。皆さんいつも見てくれてありがとうございます。アスシスさんやシンエヴァさん共々頑張っていきます。
よろしくお願いいたしますm(__)m
>>181 初代スレ以来見れてなかったんで感謝!
アムロと刹那も登場していたとは驚きですな
さりげない小ネタが入っているのもアス・スト氏の特徴。
あれ?
圧縮起きたのか?よく無事だったなこのスレ
>>187 アス・ストさん宛の過去ログのおかげか、
はたまた185,186氏の書き込みのおかげか、
はたまたアスカが「圧縮なんかに負けるわけにはいかないのよ!」とでも強く思っていたからか、
とりあえずセーフ?
保守
☆