トールが足早に格納庫を後にすると、ムウがアムロに質問をして来た。
「なあ、アムロ。ストライクはどうだった?」
「ああ。あえて言うならガンダムに近い機体だったな」
「νガンダムか?」
「いや、RX-七八だ。旧式ではあるが機体特性、操縦系も良く似ていた」
νガンダムを指差しながらムウが聞き返すと、アムロは首を軽く振って見せた。
アムロから一年戦争当時の事を少なからず聞いていたキラは、ストライクを見上げながらムウに言う。
「一年戦争当時にアムロさんが使っていた機体ですよ。……やっぱり似てるんだ」
「へえ。……なあ、アムロ。いずれ俺もモビルスーツに乗る事になると思う。それまでに慣れておきたい。どうにかならないかな?」
RX-七八の事でキラの言葉に頷いて見せたムウは、アムロに顔を向けると何時に無く真剣な表情で頼み込んで来た。
昨日の操縦テストの結果を考えれば、安易に首を縦に振る訳にも行かず、アムロは渋い顔を見せる。
「……そう言われてもな」
「昨日の事で今はストライクを動かせないのは分かってるんだ。だけどな、アムロの動きを見てたらやっぱりモビルスーツを動かせる様になるべきだと思ってさ。……それに死にたくないからな」
「……やはり訓練をして、慣れる以外は無いだろう」
「そっか……。やっぱりすぐには無理だよな」
アムロは少しばかり考え込むと、当たり前の答えを導き出し、ムウはガックリと肩を落としてストライクを見上げた。
そのムウと入れ代わる様に、今度はキラが質問をして来た。
「そう言えば、データだけは見せてもらいましたけど、実際、νガンダムとストライクの操縦系はどのくらい違う物なんですか?」
「全然と言う訳では無いが、オート制御が利いてるからな。前にも言ったが、サイコフレームの使用は無理としても、普通にならキラやムウも動かす事は出来るはずだぞ」
「そうなんだ……。機会があればですけれど、動かしてみても良いですか?」
「ああ。ただし機体に負担が掛からない程度に――」
聞き返して来たキラに、アムロ頷いて言葉を続けようとすると、突然、ムウが大声を上げる。
「――それだ! それだよ、それ!」
「……どうしたムウ?」
「アムロ、νガンダムをシミュレーターとして使わせてくれないか? なあ、頼む!」
意味も分からずアムロが驚きながら聞き返すと、ムウはアムロの肩に両手を掛けて、物凄い迫力で顔を近付けて来た。
当然であるが、アムロは突然の事に思わず仰け反った。
それを見ていたキラが、少し引き気味になりながらも、ムウの言う事を察してその真意を聞き返した。
「えっと……もしかして、νガンダムで操縦を慣らして、ステップアップして行くって事ですか?」
「ああ……、悪いアムロ。要は慣れなんだろう。簡単な奴から始めれば確実だろ? アムロ、無理を承知で頼む。νガンダムを使わせてくれ!」
キラが入った事で、ムウは冷静になったのか近付けていた顔と両手を離すと、拝み倒す勢いでアムロに頼み込んで来た。
ハンガーに収まるνガンダムを一度だけ見上げ、アムロはその願いに頷いて見せたのだった。