種死のシンとエヴァのアスカを入れ替えたら 弐 (7)
あにおたはしねよ まじで
>>1乙!
こうなりゃ根比べだな。職人諸氏は今のうちに書き貯めておいてもらう、と言うことで。
負けるな、>>1
4 :
通常の名無しさんの3倍:2007/12/08(土) 18:32:01 ID:iiRsWqXE
まだあんのか
で、
保守
保守
保守
>>1乙!
職人さんは様子見か?
ネタ振るか。 さてそれぞれの世界でWアスカと誰をカップリングさせたい?
シン⇒ 本命:レイ 対抗:ミサト(もどきさんのならマユ) 大穴:いいんちょ 枠外:リツコ
マヤは俺のモノ
アスカ⇒本命:アスラン(シスターズさんならアウル?) 対抗:キラ 大穴:虎 枠外:レイ・ザ・バレル
で、ステラは俺のモノ。
シンはレイとでしょ
保守
>>11 どっちの『レイ』なのかが問題だ。アヤナミなのかバレルなのか。
いまふと思ったのだが…エヴァって『ほぼ』人間と生態組織が一緒だったよな?
と言うことは、零号機と弐号機による「アッー!!」なコトも可能なのか!?
>>13 もどきバージョンでバレル一択。
でも痛覚とか感覚もフィードバックされるはずですから、まあ、そういうことではないでしょうか。
職人諸氏はこのスレがあることに気付いているのだろうか?
保守
また鯖がかわったんか
圧縮条件がわからんので念のため保守
20 :
19:2007/12/16(日) 21:09:16 ID:???
やべ、本当かどうか知らないが400→300って書いてあるぜ
落ちる姿が目に浮かぶ・・・orz
こんばんは。
以前、シンエヴァもどきな話を投下させていただいたものです。
以前「レイ、心の向こう側」の前半部分を4レス分ほど投下させていただきましたが、すぐに落ちてしまったようなので
今回は前回投下した4レス含め全8レス分を保守代わりに投下させていただきます。
すみません、前回投下した4レスについても一部“てにをは”や誤字を修正致しました。
ではよろしくお願いいたします。
――ネルフ本部・第2地下実験場 22日前
「起動開始」
ゲンドウの声が実験場前のオペレーションルームに響く。
リツコが、マヤが他のオペレーター達が冷静にテストの現状を伝える声が交互に続く。
ゲンドウの視線の先、特殊硬化ガラスの向こう側には相対する壁に固定されたエヴァ零号機の姿が見える。
起動テストの第1ステージから第2ステージまで問題なくクリアしていくレイの零号機。
“絶対境界線”までのカウントダウンが始まる。そしてその数字がゼロに近づいたそのとき……
オペレーションルーム内にシステム異常を示す警報が鳴り響いた。
「パルス逆流!!」「第3ステージに異常発生!」
「コンタクト停止。6番までの回路を開いて」
リツコが急いで正常終了させるための措置を指示する。
「ダメです! 信号が届きません!!」
ガラスの向こうの零号機は固定されていたボルトやケーブルを引きちぎりもだえ苦しむような動作を取り始める。
「零号機、制御不能!」
「実験中止、電源を落とせ」
少し声に焦りの色を感じさせつつ、実験中止を告げるゲンドウ。
(こんなところで、またアイツを、……ラウを失う訳にいかんのだ!)
リツコは緊急停止用のレバーを引くとアンビリカルケーブルが強制分離した。
「零号機予備電源に切り替わりました!」「完全停止まであと35秒」「自動制御システム、未だ始動せず」
苦しみから逃れようとするかのごとく零号機は特殊効果ガラスを殴り続ける。
枠ごとひしゃげ、次第にモニター室にガラスの破片が飛び散り始める。
「危険です、下がってください」
しかしゲンドウはガラスの破片が飛んでくる中、苦しみ続ける零号機をそのままの姿勢で微動だにせず見つめていた。
「自動制御システム、始動を断念」「オートイジェクション作動します」
エントリープラグが射出される。
「いかん!」
ゲンドウの表情に動揺の色が浮かぶ。
「特殊ベークライト、急いで」
リツコの指示する声が飛ぶ。
勢いよく射出されたエントリープラグが天井に、壁にぶつかり地上へ落下、激突する。
「レイ!」
床に激突したエントリープラグをみたゲンドウは勢いよくオペレーションルームを飛び出す。
硬化ベークライトにより固められながら活動限界を超え完全に停止する零号機。
ゲンドウは落ちたエントリープラグへ駆け寄り、加熱したアンビリカルケーブルの解放レバーを握る。
あまりの熱さに思わず手を離してしまう。
眼鏡が落ちたのもかまわず、再び解放レバーを握り、手から焦げるにおいがするのもかまわず開くゲンドウ。
ゲンドウのいつもの冷静な態度に似合わない行動ををオペレーションルームから唖然として見つめるリツコ。
「レイ、大丈夫か?! レイ?!」
エントリープラグのシートに座ったまま、ゲンドウの方へ頭を動かし黙ってうなずくレイ。
「そうか……」
ホッとした表情をみせるゲンドウ。
零号機のエントリープラグから流れ出たLCLの上に漂い、熱のため、レンズがひび割れるゲンドウの眼鏡。
――第伍話 レイ、心の向こう側
「レイ=ザ=バレル、14歳。マルドゥック機関により選ばれた最初の被験者、ファーストチルドレン」
22日前の惨状が残る第2地下実験場では今日も零号機の硬化ベークライトの除去作業を行われていた。
「エヴァンゲリオン試作零号機専属操縦士。過去の経歴は白紙、全て抹消済み」
リツコは記憶しているレイのパーソナルデータをマユに語る。
「で、前の実験の事故原因は何だったのぉ?」
「未だに原因不明。ただし推定では操縦者の精神的不安定が第一原因と考えられるわ」
「精神的に不安定? あのレイ君が?」
「ええ、彼にしては信じられないくらい乱れているわ」
「へえ、何があったのかな?」
「……でも、まさか」
「なんか心当たりでもあるの?」
「いえ、……そんなことあり得ないわ」
初号機が使徒を倒した山のふもとの辺り。
そこに使徒の破片を回収するネルフ職員達の姿があった。
その現場で使途の遺体の周りの組まれた足場を見上げるシン。
「これが俺たちの敵なのか」
そこへ大きすぎるヘルメットを背中に垂らしダブダブのつなぎの下だけはき、厚手の黒いTシャツを着たマユが
歩きにくそうにひょこひょこ、ずるずるとシンに近づいてきた。
「なるほどね、コア以外はほとんど原形をとどめている。理想的なサンプルね。ありがたいわ」
足場の上で熱心に使徒を見ながらメモをとるリツコ。
(リツコさ~ん、そんなミニスカで足場の上にいると下から見えますよ。
くそ~、しかし白衣が邪魔だ!)
そんなことを考えながら下からリツコの方を見上げて少し鼻の下を伸ばしているシン。
彼は突然の足の甲を襲った痛みに思わず飛び上がった。
「いてっ! あ、なんだよマユ!」
「あ、ごめん。このかっこ、歩きにくくてぇ。
でもお兄ちゃんも何かに気をとられて上見てなければ踏まれなかったかもね」
「なんだと!」
「なによぉ! さっきのお兄ちゃん、鼻の下伸ばして間抜け面してたもん」
「何が間抜け面だ!」
「……何やってんのよ、あの子達は」
怒鳴り合いを始めた二人に気が付いたリツコは足場の上からその光景をあきれ顔で眺めていた。
足場から降りたリツコは仮設の研究室までまだいがみ合っていた二人を引っ張っていった。
そして二人にお茶を振る舞い、とりあえず鉾を収めさせる。
「で、何かわかったんですか?」
話はようやく使徒へと移り、シンはリツコに調査結果について質問をした。
『601』と表示されたディスプレイをリツコは指し示す。
「なんですか、これ」
「解析不能を示すコードナンバーだよね? おバカにはわかんないだろうけど」
そういってマユはシンに向かってあっかんべーとばかりに舌を出す。
「なんだよ、おバカとは。バカって言う方がバカなんだぞ!
……ようはさっぱりわからないってことですか」
「そう。使徒は粒子と波、両方の性質を備えた、光のような物で構成されているのよ」
「でも、動力とかはあるんでしょう? 何で動いてるんですか?」
「らしきものはあるんだけど、でもまだその作動原理がさっぱりなのよ」
リツコはシンの質問にやや困った表情を浮かべて答えた。
「う~ん、科学にはまだまだ未知の領域が無限に広がっているんだねぇ」
リツコの言葉にマユは如何にも感心したような声を上げる。
「あなたにその言葉を言われるのはちょっと」
マユのその言葉を聞いたリツコは眉間にしわを寄せ、少し奇妙な表情を浮かべた。
(今朝、絶対領域なら、広がっていたんだけど)
シンはマユが今朝、ミニスカ黒ニーソ姿だったのを思い出していた。
「あ、ごめんなさい」
マユも複雑な表情を浮かべて素直にリツコに謝った。
「どうしたんですか?」
「いえ、なんでもないわ。……尊敬していた研究者の言葉だったのよ、それ」
「そうですか。ところでその研究者はどなたなんですか」
「……なくなったわ」
リツコは奇妙な表情に暗い影を付け加えてそうつぶやいた。
「うん、そうだったね……」
「そうなんですか」
「……まあ、それはともかく、とかくこの世は謎だらけよ。例えばほら、この使徒独自の固有波形パターン」
「ん、なに?」
リツコが指し示すディスプレイをのぞき込むマユ。
「これって!」
「どうしたんだよ」
シンは仲間外れにされたようで少しおもしろくない。
「そう、構成素材に違いは有っても信号の配置と座標は人間の遺伝子と酷似しているわ。99.89%ね」
「99.89%かぁ……」
「改めて私達の知恵の浅はかさって物を思い知らしてくれるわ」
リツコはそういってから敗残者のような深いため息をひとつついた。
シンは仮設研究室の前をゲンドウと冬月が研究員らしき人物と通り過ぎるのを見かけた。
マユ達二人の会話そっちのけでゲンドウ達3人が使徒のコアの残骸を前に何か話している姿をじっと眺めていた。
「どしたの、お兄ちゃん?」
マユは研究室の外を眺めているシンに不思議がり、小首をかしげる。
「アッ、いや~、別になんでもないぞ」
シンは慌ててマユ達の方に振り向きブンブンと両手を振り、無理矢理否定する。
「あのねぇ、そんな顔して『別に』って言われても。気にかけてよ、心配してよって言ってるみたいなもんだよ?」
シンは仕方なく思い切ってその理由をマユに打ち明けた。
「あのさ、親父、手に火傷してるみたいなんだけどさ……」
『火傷?』と聞き返し、マユはきょとんとした表情を見せた。
「ああ、どうしたのかなぁ、って思ってさ」
「火傷、ねぇ。……リツコさん、お父さんの火傷の訳って知ってる?」
マユはリツコの方を見上げる。
「ええ。シンちゃんがまだここに来る前起動実験中に零号機暴走して、聞いてるでしょ?」
「ああ」
「だから、その呼び方、やめてよ。そう呼んでいいのは私だけ!」
眉間をハの字にして不機嫌そうな顔になるマユ。
「その時パイロットが中に閉じ込められたの」
リツコはマユの抗議を無視して話を続ける。
「パイロットってレイですよね」
「ええ。碇指令が彼を助け出したの。加熱したハッチを無理やりこじ開けてね」
「親父が?」
「手のひらの火傷はその時のものよ」
(他人を助けた? 加熱したハッチを火傷するのもかまわず無理矢理? ウソだろ?)
彼が思っているゲンドウとは大違いのそんな姿をシンはまるで想像することはできなかった。
強すぎる日差しが照りつける第3新東京市立第壱中学校校庭。
そこでは体育の授業が行われていて一部の男子達がバスケを適当に流している。
そして一方ではディアッカとシンと同じ目的を持つ男子クラスメートの有志達がグラウンドの隅で自主的な休憩に
いそしんでいた。
彼らの視線の先にあるのはクラスメートの女子が水泳の授業中のプール。
そこからは競泳の真っ最中で泳ぐ水音とクラスメイト達の泳ぎを応援する黄色い歓声が聞こえている。
「しかし、最近の女子はスタイルいいよな~」
ディアッカ達はニヤニヤしながらプールの方を見つめている。
「なんかディアッカ達って目つきヤラシー!」
プールサイドの金網の向こう側から女子の非難の声が上がる。
「おいおい、愛に満ちあふれた視線を浴びせているのによお。悲しいよな、な、シン!」
ディアッカはプールの方へ熱い視線を向けたまま、いかにも楽しげな声でシンに話しかける。
「あ、ああ」
(う~ん、マユのスクール水着の写真、よかったよな。
そういえばあのエロ親父、あのとき約束した写真、いつになったらくれるんだよ!)
「いや~、シホちゃんもスタイルいいし、イザークにはもったいない!!」
(まあ、ミリィはアクセントに乏しいスタイルなんだよな。ま、スタイルだけで価値が決まる訳じゃないが)
「イザークと委員長がどうしたんだよ」
「いや、シホちゃん、イザークに……」
「ディアッカ、ナニ見ているのよ!!」
ニヤけて女子達を見つめているディアッカ達にミリアリアが怒りに満ちた視線を向ける。
「え、いや、ミリィ様! 何でもございませんでありますです!! ハイ!!」
ディアッカは慌てて正座。シン達もつられて慌てて正座。そして皆、急いでコートの方へ視線を変えた。
そのコートの中ではほとんどの生徒がだれて適当に動いている中、二人だけが積極的にボールを追いかけている。
銀髪の一人は奇声と大声を上げながら熱く、金髪の一人は黙々ときまじめそうに。
「イザークの奴、よく続くよな」
ディアッカはミリアリアが見ていないのを確認するとだらけた姿勢に戻り、さめた視線でグラウンドを眺めた。
「レイもな」
「まあ、レイもイザークも基本的にまじめだからね」
「まじめ、ね。しかしレイのヤツ、どうしていつも一人なんだろう」
「ハァ?」
ディアッカはシンの方を向き如何にも意外そうな顔をした。
「まぁそう言えば一年の時転校してきてからずっと友達いないよなぁ。ま、なんとなく近寄りがたいんだよな」
「近寄りがたい、か」
「実は性格悪かったりしてな。けどお前らエヴァのパイロット同士だろ、シンの方が良く知ってんじゃないのか?」
「いや、殆ど口、聞かないから」
コートの上でドリブルをしながらレイの後ろで束ねた長い金髪が揺れる。
(そういえば、レイのあれってポニテ? マユもポニテにしてくれないかな。あいつ、お下げばっかりだしな)
「そうなのか」
「ああ」
「しっかし、俺が言うこっちゃないのかも知れんが、でも、シンにとってレイって少なくとも仲間だろ。
同じエヴァに乗る、さ。少しはコミュニケーションとった方がよくないか?」
「そうか? ……仲間、か」
そうつぶやきながらシンは眼の前できまじめに動くレイを見つめる。
「だろ?」
「……かもね」
「だぜ」
ディアッカはシンの方を見て目だけで薄く笑った。
ネルフのエヴァ格納庫ではシンクロテストの完了したシンは初号機のエントリープラグ中で正面に立っている
零号機の、そのエントリープラグの前で何かを操作しているらしいレイをぼけっと眺めていた。
(レイ=ザ=バレル、か。……コミュニケーションとるっていったってどうすりゃいいんだよ)
レイを眺めているシンの目の前で零号機の前をゲンドウが通る。
(親父?)
ゲンドウを見つけたレイは主人を見つけた子犬のようにぱたぱたと駆けつけてさもうれしそうにゲンドウに何かを
話し始める。ゲンドウもそんなレイに眩しそうな表情で何か相づちをうっているように見える。
普段のくそまじめな仏頂面のレイとしかめっ面の寡黙なゲンドウしか知らなかったシンにとって二人のその光景は
あたかも非日常な出来事にしか見えなかった。
「なんなんだよ、おい……」
その晩のマユとシンのマンションのダイニングにシンとマユ、そしてリツコが夕飯をとろうとしていた。
『何よこれ?』と目の前に出されたカレーのような妙なモノについて質問をするリツコ。
「カレーだぜ。見ればわかるだろう?」
憮然とした表情のシン。彼はシンクロテスト後からずっと不機嫌そうな雰囲気が続いていたようだ。
いずれにせよ、3人の前にはカレーとご飯のもらえた皿とスプーンしかなかった。
しかも、リツコの座っている辺りからゴミ箱に3つ分のレトルトパックのカレーの袋が入っているの見えていた。
「なんかインスタントな食事ねぇ」
リツコは奇妙な表情を作り感想を述べた。
(意外よね。マユ、料理得意で家事とか好きだし、シン君の面倒なら喜んでみるかと思っていたけど)
「あ、あの、今日はシンちゃんの当番だから。お呼ばれされといてあんまり文句をいわないでくださいよね」
(ほんとは私もこれには大いに文句をいいたいんだけどね)などと思いながらもマユはそれを口にはしなかった。
「……今度呼ぶときはマユが当番の時にしていただけるかしら?」
「悪かったな、俺の当番の時で……」
また大いにふてくされるシン。
『リツコさんとはいえ、お客さんが来ているんから』とマユが言い出し今日は夕飯当番じゃない彼女が冷蔵庫に
あった材料であり合わせのおかずを造り、リツコも比較的まともな夕飯にありつくことが出来た。
「シン君、もう少し料理とか家事を覚えなさい。今の世の中、男でも家事が出来ないと苦労するわよ」
家事という点では大いに疑問が残るリツコが自分のことは棚に上げてしたり顔でビール片手にシンに説教をする。
「もう慣れたよ」
シンは、味噌汁をすすりながらそう答える。
「私は出来る限り家のことしたいんだけどね。私、働いてて普段はお兄ちゃんより帰りが遅いこと多いから。
それに家事を交替でやるって二人で約束したからね。……お兄ちゃん、もう1本お願いね」
マユは彼女より冷蔵庫のそばにいるシンに空になったノンアルコールビールの缶を振って見せる。
「しかし、ノンアルコールだからっていってもそんなに飲んで問題ないのかよ?」
シンはそういいながらもノンアルコールビールを一缶取り出すために冷蔵庫のほうへ振り向く。
シンが後ろを向いている間にリツコの前におかれたビールにマユはそ~っと手を伸ばす。
しかし手にする前にリツコに遠ざけられ、こちらを向いたシンにペシリと伸ばした手をひっぱたかれた。
「マユ、なにやってんだよ!」
「いや~、似てるから間違えちゃったよ。失敗、失敗」
ひっぱたかれた手を振るマユ。
「ウソつけ! 全然違うだろ!」
「あははははは……」
「どっちにしろ飲み過ぎるのは問題だろ?」
「だってこっちはノンアルコールだよ?」
そういいながらマユは目の前に置かれたノンアルコールビールを手に取り、プシュッと音を立てて開けた。
「にしたって最近多くないか?」
「社会人はいろいろとストレスが溜まるんだよ」
さもおいしそうにごくごくと飲むマユ。
「悪かったな、学生で」
「シン君、こんな親父している妹はほっといていっそ一人暮らしとかしてみたら?」
リツコはあきれてまた苦笑していた。
「今からじゃ手続き面倒だよ。お兄ちゃん、本チャンのセキュリティカード貰ったばっかりなんだもん」
マユはリツコの提案にむくれてまじめに答える。
「あっ、忘れるとこだったわ。シン君に頼みがあるの」
リツコは本当に思い出しただけのか、それとも話題を変えたかっただけなのかわからないがシンに用事を頼む。
『何ですか?』といいつつもシンは心の中ではとんでもないことを祈り、リツコの話を聞く。
「レイ=ザ=バレルの更新カードを渡しそびれたままになってて、悪いんだけど本部に行く前に彼のところに
届けてもらえないかしら?」
リツコは引き寄せた彼女の鞄の中からネルフのIDカードを取り出しシンに手渡した。
リツコに生返事を返してシンはIDカードのレイの写真をまじまじと見つめる。
「どうしちゃったの、お兄ちゃん。レイの写真をジーっと見ちゃったりして?」
マユはそんなシンを小首をかしげてのぞき込む。
「別になんでもないぞ」
「ひょっとしてお兄ちゃん、そっちのけもあるとかじゃないでしょうね?」
マユがにやにやと笑いながらシンにつっこむ。
「違う!! 第一“も”ってのはなんだよ、“も”ってのは!」
「幼女趣味、シスコン、のぞき魔等々。ネルフ内では最近、有名な話よ。蛙の子は蛙って」
しれっとした顔でリツコが解説をする。
(親父と同類にされてるのが無茶苦茶むかつくが、なんだよ、親父のやつ、レイに気があるってことか?)
「最初のはちょっと私、頭にくるんですけど。決して私は幼女ではないつもりなので……。
……まあ、ネルフのメンバー自体、能力はあるけど素性や素行に問題ありって人が多いんだけどね」
奇妙な笑みを浮かべながらマユがそう付け加えた。
「そう、なのか?」
「私なんかその最たるもんだよ。大学出てるったって13歳の美少女であんなおっきな機関の部長さんだからね。
それも総司令の縁故でね。外の風当たり、いいわけないでしょ」
そういってマユは少し眉をハの字にし、少し目を細めた表情で飲み干したアルミ缶をクシャッとつぶした。
シンはそんなたいしたことをしていないはずのマユがいつもと違ってちょっと恐ろしく見えた。
「まあ、どっちにしろレイの家に行くオヒシャルな口実が出来てチャンスだよね~?」
マユはコロッと表情を変えてニヨニヨとシンに笑いかける。
(冗談にならなくなっても知らないわよ。ま、そうなってもそれはそれでおもしろいんだけど)
リツコは二人の会話を聞きながら彼らにとって不穏なことを胸の内で考えていた。
「兄貴をからかうんじゃない!」
「アハハ、直ぐムキになっちゃって、お兄ちゃんってからかい甲斐があるんだから」
「マユと同じね」
リツコはしれっとマユの言葉につっこみを入れる。
「うぐぅ……」
「いや、俺はただ同じエヴァのパイロットなのにレイのこと良く分からなくってさ……」
へこんでいるマユを放置してシンは話題を戻した。
「いい子よ、とても。あなたのお父さんに似てとても不器用だけど」
リツコはシンの呟きのようなそれに答えを返した。
「不器用って何がですか?」
意外そうな表情でシンはリツコに問いを返す。
「生きることが」
(親父が不器用? ドスケベとか盗撮マニアとか幼女趣味とかじゃなくて?)
翌日、シンはリツコからもらった住所とマユに書いてもらった地図を頼りにレイの家を訪ねた。
マユの書いた地図にも『すっごくぼろいマンション』とはたしかに書いてはあったが目の前に建っているそれは
どう見ても人が住んでいるとは思えない寂れて廃棄されたマンションにしか見えなかった。
思わずシンは地図と住所、そして目の前に立っている廃墟とを見直してしまう。
(本当にここでいいのかよ。第一ここ、人が住んでなさそうだけど)
しぶしぶ念のため、階段を上がり、住所にある番号の部屋の前までいってみた。
なるほど、そこだけ少し新しめの表札には彼の名前が記されていた。
シンはとりあえずインターホンを押してみる。
インターホンを何度か押してみてもスカスカとして鳴っている音も気配もしない。
「あの~、ごめんください……」
2,3度ノックをしてからノブに手をかける。……鍵はかかっていない。
「ごめんください。碇だけど……レイ、入るぞ?」
おずおずと扉を開けると古い割には床は結構きれいに掃除されていた。
下駄箱の上に郵便物がやたらと整然と積み重ねられていたが読まれている気配はない。
シンは靴を脱ごうと足元を見ると下駄箱の下の空間に一足だけ靴のかかとが見えていた。運動靴らしい。
(やっぱり、レイがここに住んでいるのか?)
「おじゃましま~す」
玄関を抜けるとそこには無機質な鉄パイプのベッドとゴミ箱、そして壊れかけた棚が一つ。
ベッドの上はきれいにベッドメイキングされていてゴミ箱には何も入っていない。
壊れかけてはいるがほこり一つない棚の上には赤く染まっているがきれいに丸められた包帯が2つと本が2冊。
そしてメガネケースに入ったレンズにひびの入っためがねが一つ。
「レイのかな?」
シンはなんとなく、そのひび割れたメガネをかけてみた。
(レイって実は目が悪かったのか? ……え?!)
物音に振り返ったシンはそこにいたレイと目があった。
レイは今までシャワーを浴びていたらしく、その色白の体からは湯気が立っていた。
そして頭にかけていたタオル以外は全く何も身にはまとっていない。
シンは見てしまった。レイの象徴的な尋常ではないモノがムクリとスタンドアップしてそそり立っていく光景を。
「いや、あの……」
レイのあられもない姿にシンは何故か胸の鼓動が高まることを押さえられなかった。
「俺は別に……」
少しきつい視線をシンに浴びせたまま、レイはシャワーを浴びていたためなのか、別の理由からなのか少し頬を
赤らめてシンへ詰め寄った。
「ぐっ……うわっ」
揉み合いそして倒れ込むシンとレイ。シンが上になったまま、しばらく時間だけが過ぎて行く。
シンには自分自身の高まる鼓動と彼の股の辺りにぶつかっている何かの感触。
そしてレイの温もりと呼吸をする音だけが感じられていた。
(……なんなんだよ、これは。……俺は断じてそのけはない、ないはずなんだ!)
「どいてくれないか?」
その静寂の時を破ったのはレイの方だった。
「あっ! あの……、すまん」
シンはあわてて飛び起きてレイの上から体をどけた。
「なんだ?」
「いいや……俺は……その……」
立ち上がったレイは落ちていためがねを拾うと如何にも大切そうに棚の上に戻した。
「だから俺は、たっ、頼まれて……つまり……何だっけ、……カード、ああ、そうだ、カード新しくなったから
届けてくれって……だから別に」
早口に、そしてしどろもどろになりながらシンはレイに対して言い訳をまくし立てる。
レイはシンの“言い訳”を聞いているのか、聞いていないのか、体を拭き終わると黙々と着替えを始める。
「リツコさんが渡すの忘れたからって……ホントだぜ、それでチャイム鳴らしても誰も出ないし……でも、
鍵は開いてたんだ……その……」
レイはシンの話を無視しているかのように何も答えず、着替えが終わるとそのまま出かけてしまう。
仕方なくシンは慌てて彼の後をついてレイの部屋を後にした。
二人で歩く道すがら全く話す機会を作れずにいたシン。
結局ジオフロントのゲートまで二人は全く話すことなく黙って歩いてきてしまった。
ジオフロントへのゲートでレイはIDカードを通すがエラーで通過することは出来なかった。
「すまん、だから、これレイの新しいやつ。リツコさんに頼まれて」
レイは黙って受け取るとそのカードでゲートを通り抜けた。
ジオフロントの下層へ向かうエスカレーターの上にいるレイとシン。
「さっきはすまん」
シンは前を行くレイに話のきっかけとしてマンションでのことを謝ってみた。
「何がだ?」
シンは返す言葉を失ってしまった。
(まあ、男同士だし、そこら辺はお構いなしってことか)
「……あ、そうだ、今日これから再起動の実験だったな。今度は上手くいくといいな」
彼はそれでも頑張ってレイに話しかけてみる。
「……おい、レイは怖くないのかよ? またあの零号機に乗るのが」
(これなら話が続くだろう)
「何故だ?」
案の定、レイが話題に食いついてくれたのでシンは喜んで話を続ける。
「前の実験で大怪我したんだって聞いたから平気なのかなって思ってさ」
「お前、碇司令の息子だろう?」
レイは背を向けたまま、シンに話しかける。
「ああ、そうさ。残念ながらね」
シンは如何にも吐き捨てるように答えた。
「信じる事が出来ないのか? 自分の父親の仕事が」
レイは肩越しに横顔でシンに言葉を続けた。
「当たり前だろう、あんな親父なんて!」
不意にシンの方に向き直ると、レイは……
「……ッ……あの……」
シンの左の頬に一発拳を入れていた。
「なっ! ……」
尻餅をついたシンは起き上がり『何をする』といおうとしてレイをにらみつけようとした
しかし普段の無表情とは打って変わったものすごい怒りの表情見せるレイにシンは何も言うことが出来なかった。
「レイ、聞こえるか?」
これから再起動実験を行う零号機のエントリープラグの中にいるレイにゲンドウの声が響く。
「ハイ」
(今度こそ起動させて見せる。そして碇司令に僕を認めてもらうんだ)
レイは右の操縦桿の辺りに一瞬いとおしげな視線を投げると強い意志をその目と口元に表して正面を見据えた。
右の操縦桿に引っ掻けたレンズにひびが入った眼鏡がかすかに揺れた。
「これより零号機の再起動実験を行う。第一次接続開始」
オペレーションルーム内にゲンドウの声が響いた。
実験場が見える通路の小窓から零号機の姿を見つめるシンとマユ。
シンはエントリープラグにいるであろうレイのことを考え、少々複雑な心境で目の前の零号機を見つめていた。
「主電源コンタクト」
オペレーションルーム内にリツコの声が響く。
「稼動電圧臨界点を突破」
今回は前回以上に問題なくフェーズが進む。
「フォーマットフェーズ2に移行」
フェーズ2以降もエヴァ零号機の起動試験は粛々と進んで行く。
「零号機起動しました」
マヤのその声にオペレーションルーム内に安堵の空気が流れる。
「了解、引き続き連動試験に入ります」
そのとき、指揮所からの連絡を冬月が受け、ゲンドウに知らせる。
「碇、未確認飛行物体が接近中だ。恐らく第五の使徒だな」
ゲンドウが総員にテストの中断と第一種警戒態勢への移行を告げる。
「零号機はこのまま使わないのか?」
実験場から移動させなければいけないとはいえ、今、既に起動しているのだからいくつかの手間は省けるはず、
準備できている零号機を出動させた方が早く迎撃出るのでは、冬月は胸の内で算段したのだが。
「まだ戦闘には耐えん。初号機は?」
「380秒で準備できます」
ゲンドウの問いにリツコが間髪いれずに答えを返す。
「出撃だ」
「行くよ、お兄ちゃん!」
「オウ!!」
指揮所からの連絡に二人はゲンドウから出撃命令が出る前に行動を起こした。
マユは指揮所へ、シンは初号機に乗るため、スーツに着替えるため、更衣室へ走る。
機体はともかく、彼が本当に380秒で発進準備出来るかどうかは別として。
エヴァ初号機の発信準備の経過を告げる声と、使徒接近の状況を伝える声が交互に流れる。
「目標は芦ノ湖上空へ侵入」
「エヴァ初号機発進準備良し」
「発進!」
指揮所に立つマユが初号機発進の指示を出す。
しかし、使徒の内部に高エネルギー反応が増大していることを青葉から告げられマユの顔色が変わる。!
「え!?」
「円周部を加速、収束していきます」
「まさか!?」
いつのまにか指揮所に戻っていたリツコがつぶやく。
「駄目ーッ! お兄ちゃん避けてーッ!!」
きれいに舗装された道路が幾重にも開き、地下からエヴァ初号機が現れる。
「えっ?」
使徒が放った光の刃が使徒と地上に現れた初号機との間にあったビルを貫き、そのまま初号機へと突き刺さる。
「アアアアァァァァッッッッ、グアアアァァァァ!!!」
数限りなく泡立つLCLに満ちたエントリープラグの中で胸を貫かれるような痛みにもだえ叫ぶシン。
エヴァ初号機の胸部装甲が目映い光とともに次第に融解し始める。
「シン!!」
指揮所にいるみんなにそんなマユの悲痛な叫びが聞こえた。
保守
もどきさん、おかえり〜アンド乙!
さてこの後どうなるのやら。楽しみにしております。
他の職人さんも早く帰ってきてね。
保守
劇場版新エヴァその2は、いつ頃の予定なんだ?
アスカ出るんだろ?
保守
>>34 ・公開スケジュール(予定)
前編 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 平成19年9月1日公開 98分
中編 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 平成20年 90分
後編+完結編 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:急/? 未定 45分×2
初春だか新春だか言ってた時期もあったな・・・(遠い目
保守
保守
おまいら、メリクリ!
メリクリ♪ クリスマス投下!
アスランはベッドルームのドアを開けると、ジャケットとシャツを脱ぎ、花の飾られたテーブルの椅子に掛けた。
(早いほうがいい。明日、カガリに言おう。『プラントに行かせてほしい』、と)
窓の外を見る。先程まで白々と輝いていた月が今は雲間に隠れてしまっていた。
大きく息を吐くと、アスランは少し大きめのベッドに横になる。今日は少し疲れた。
だが心地よい疲れ。アスカやキラにラクス。それに子供達。鬱々していた気分が今日は少しだけ晴れた。
今日あったことをひとしきり思い出しクスリと笑い、アスランは眼を閉じる。
(さて、寝るか。明日は…、…?)
===ポヨン♪===
体勢を直したアスランの右手に、温かく柔らかい感触。
(? ? なんだ? )
暗くてよく判らない。アスランはもう一度右手で感触を確かめる。
サワサワ。柔らかい。そして温かい。これはまるで人の…、しかも女性の…。そんな考えを巡らせている時。
「…あ、んふ…」
アスランが右手で触っているモノが寝返りをうつ。
「っ!? アス…〜〜〜〜〜っ!?!?」
アスランは叫びそうになった自分の口を慌てて左手で押さえる。
(なっ、なな、なんでアスカが…、てか下着だけっ!?)
そうアスランの隣りには、しどけない格好で寝息をたてているアスカがいたのだ!
(ま、マズい!)
しかもアスランの右手が触れているのは、薄い布地で包まれただけのアスカの、胸の上…。
(う、動けない…)
今この右手を動かすわけにはいかない。動かせない。動かした瞬間アスカが目を醒ましそうで…。
眼を醒ましたら最後、どのようなことになるかは想像に難しくは無い。明日の朝日は多分拝めない。
アスランの心臓のビートが跳ね上がる。呼吸も下手にできない。イヤな汗がダラダラ流れる。
時計の秒針がきっかり5周した。
(やばい、腕がもう…)
アスランの右手の筋肉が細かに揺れだす。その振動がアスカに伝わってしまいそうで、さらに右手にチカラが入る。
そしてこの不安定な体勢…。
(と、取りあえずこの右手をなんとか…)
アスランが自分の体勢を崩さないように、アスカの胸から手を離そうとした時…。
「…い、や…」
なんと眠っているはずのアスカが、アスランの手を取り、自分の胸に押し付ける!
「んなっ?」
その行為にさらにアスランは混乱する。
(アスカ? 起きてるのか? はっ? ま、まさか…俺を誘っているのか?
だって俺のベッドに、しかも、し、下着姿でなんて、そうとしか…。い、いやだが俺にはカガリが。
しかも彼女とカガリは幼馴染みで…。だが最近カガリは忙しくてなかなか…。
結局プラントに行ってる間もソレどころじゃなかったし。だが俺は…。でも。でもいいのかアスラン?
女の子がここまでしてるのに、何もしないのはかえって失礼なんじゃないのか? でも、後で厄介なことに…、
え? 身体が勝手に…あぁ俺は何をぉ!!?)
右の掌の柔らかな感触。その下のアスカの息遣い。再び顔を出した月明りに照らされ、アスランの眼に写る無防備な肢体…。
(ゴクッ)
それらがアスランの理性を奪っていく。このようなお膳立てをしたのは、キラやラクスなのは容易に想像がつくのだが…。
ラクスの“愛人さん♪”の言葉が脳裏をよぎる。
(アスカもそれを承知の上で? な、ならこれはお互いの合意の上での行為と言うワケで…)
言い訳。だか、アスランは胸の高鳴りを押さえきれず、そっとアスカの顔を覗きこみ、唇をよせる。
…世の男性諸氏はこのようなシュチュエーションに自分がなったとき、このアスランの行動を非難出来るのであろうか?
答は“否”であろう。あぁ、哀しきは男の性(サガ)。女性の思わせぶりな行動は時に男を狂わせる。
いや、アスカはただ単に寝ぼけているだけなのだが!
アスランとアスカの唇がまさに触れようとした時…。
「…ン…ジ」
アスカの唇が何事かを紡ぐ。
「…?」
アスランは半ば閉じていた己が眼を開く。
一拍の間を置いて、アスカの唇が再び動く。そして閉じられているその眼から涙がこぼれる。
「…ジ…シンジ、逃げてよっ! やだよぉっ、シンジィ!!」
そう叫ぶと、アスカはパチリとその両の眼を開けた。
…Cring Lonly sorjar..==哀・性(戦?)士==
君は刻(とき、主にアスラン)の涙を見る…
45 :
アス・スト:2007/12/25(火) 05:27:23 ID:???
さて。前回までを覚えている人はいるんだろうか?
まとめに早くUPしなきゃ、と思ってるのにスレが立て続けに落ちたせいでログが見つからず…。
ご迷惑かけてます。クリスマスプレゼントと思って見てください。
シュチュエーション…ってなんだよ。“シチュエーション”だろうに…orz
誤字・脱字はいまだ健在です。このスレはまったり続かせたいですね♪
アス・スト様お久しぶりです。そしてGJ!
メリクリオツ
保守
GJ! まとめサイト更新まだかな……
50
保守
皆様あけましておめでとうございます。
今年はこのスレがまったりと続いていくといいですね。
あけおめ!
皆様あけましておめでとうございます。そしてこんにちは。本当にお久しぶりです。
>>45 アス・スト様おひさし、そしてGJ。
アスカ姉妹の話を書かせていただいているずいぶん前のスレの569です。
では今回は5レス分ほど投下させていただきます。
以上よろしくお願いいたします。
アーモリーワンからさほど離れていない宙域。
そこでガーティルーのMS3機とザフトのMS3機による巴戦がまだ繰り広げられていた。
エグザスが白いザクにリニアガンで一撃離脱をかけながら間髪入れずに有線ガンバレルで死角から攻撃を仕掛ける。
白いザクはエグザスからの攻撃を全てよけきりエグザス本体へビーム突撃砲で食らわせる。
「だからなんでこいつは俺の攻撃がわかるんだよ!」
ネオは“白い坊主君”に有線ドラグーンによる死角からの攻撃を尽く読まれ、避けられ、さすがにじれて来ている。
これらの攻撃が効かなければ隕石帯の中では小回りの効かないMAに乗った彼の方が不利に思えて来る。
――焦りは禁物。そんなことは十分わかっちゃいる、わかっちゃいるんだが……。
それ以上に今相対しているMSに感じている何かに不快感を隠し切れなかった。
――この感覚。まさかな。あいつは、あのとき死んだはずだ。しかし……
かつて戦ったことのある自分自身の陰の部分とも言える存在を思い出し、不快さが増すネオ。
――冗談じゃない!
ネオは脳裏に浮かんだ仮面をつけ皮肉な笑みを浮かべた死神のようなその存在を振り払い、今、対峙している
白いMSへと意識を集中させるべくモニターごしにそいつをにらみつけた。
一方、そのエグザスと対峙しているレイにしても不思議とそのMAの動きが読めるとはいえ、攻撃を避けるのが
精一杯の状態だった。
ラウから感じた感覚に似てはいるがそれとは反対に不快感すら感じさせるプレッシャーに戸惑いを感じていた。
――まさか、僕と同じ存在? だとしても、……だからこそ引く訳には行かない! ギルのために!
不利とは言えないまでも有利とはいいがたいこの状況。
その中でなんとか目の前の不快な何かを感じさせているMAを落とすべくレイは操縦桿を握り直した。
機動性、パワー両方で勝るストライクEが接近戦を仕掛けるがゲイツはそれにつきあわずに一定の距離を取り、
ビームライフルで威嚇する。
距離を取られたストライクEはビームライフルとリニアガンで牽制して動きを止め、また接近戦を仕掛ける。
「まさか、こいつが接近戦用だってわかっているってことかな」
呼び込んでも接近戦に付き合おうとしないゲイツに半ばあきれん半ば感心しているSin。
「それとも接近戦に自信がないのか。……じゃないよね、時間稼ぎのつもりかな」
MSの慣らし運転も兼ねているSinは無理をしてゲイツを落とす気はさらさらない。
懐に入ってこないそのゲイツを鼻で笑いつつ、楽しげにつぶやいた。
「もう少し僕を楽しませて欲しいな。第一僕が本気になったら君なんかすぐに落としちゃうからね」
ディアッカは黒いストライクに立て続けに詰め碁のような攻撃を繰り返され、それからかろうじてよけている。
いつ撃墜されてもおかしくない状況でわざとすかされているような感じがしないでもない。
――手のひらの上で転がされている虫けらの気分っていうのはこんな感じなんだろうな。
さもなくば老練な上官から演習でいじめを受けている新兵の気分か。
そろそろエネルギーも危険域に入り、ほどなくガス欠で動けなくなりそうだ。
――正直ツライぜ、まったく。
彼は全く思い通りに動いてくれない相棒を操りながらとにかく目の前の攻撃をしのぐ、ただそれだけだった。
「あ〜〜むかつく、むかつく、むかつく、むかつく、むかつく、むかつく、むかつく、むかつく、むかつく!!」
離れれば手数でストライクの方が勝り、近づいても耐艦刀でいい勝負をされる。
おそらくパワー、機動性共に性能としてはトータルで勝っているはずのインパルスがストライクに圧倒されている。
掴み所がない白いMSにストレスがたまる一方のアスカ。それでなくても彼女はここを早いところ片付けたいのだ。
にらんでMSが落とせるのなら、アスカは既に何度もこの白いMSを落としていることだろう。
さっきアビスと戦っていた時に感じていた充実感とは全く違う不快感を目の前の白いMSに感じていた。
――これじゃ、まるでファーストとやり合ってるみたいじゃないの!
なんなくまた、目の前の敵にかつての僚友にしてうざい人形のようなライバルを思い出してしまうアスカ。
「あんたはいったいなんなのよ!!」
――――ガーティ・ルーブリッジ
強奪した3機を収容し、作戦の目的は達成した。
そしてアーモリーワン周辺の敵も一応はなんとか抑えきれていた。
3機を追撃して来たというMSもネオ達が迎撃して事なきを得ている。
これで一息つけたと感じていたリー艦長の元へアーモリーワンから新たな戦艦が出て来たという報告が入る。
――今が逃げ時だな。見誤ると沈む。
リー艦長はここが潮時と見てブリッジクルーに撤退の指示を出した。
「ネオ隊長達に帰還信号を。3機を収容後、この宙域を全速で離脱する」
ネオ達はガーティ・ルーから撤退信号があがったのを確認した。
「Sin、コードゼロ、撤退信号だ。名残惜しいだろうが我が家へ戻るぞ。俺がしんがりをやるから急いで帰還しろ」
「了解」
「わかりました。……でも大丈夫ですか?」
「Sin、この中で俺の機体が一番、足が速いんだ。心配するな」
3人とも各々の相手に一撃牽制して距離を取る。
期せずしてボギーワンから撤退信号があがったとほぼ同じころ、ミネルバからも撤退信号があげられた。
『アスカさん、レイ、ミネルバへ帰還してください』
ミネルバ所属の二人にメイリンから帰還要請の連絡が入る。
「了解した」
「何よ、メイリン、あんた、このあたしに追撃をあきらめて、しっぽを巻いて帰ってこいっていうわけ?」
『えっと……』
アスカの剣幕に押されて口ごもるメイリン。
『何をバカなこと言ってるのよ、ソウリュー=アスカ。MSを強奪した母艦は今もミネルバが追撃しています。
追撃するなっていってるんじゃなくて、このままあなた方が追撃するのは限界だっていっているのよ』
アスカとメイリンのやりとりにタリアが割り込んだ。
『このまま追いかけてエネルギー切れ起こしたらあなたごとインパルスまで捕獲されてしまうわ』
インパルスもザクもエネルギーが危険域に入っている。
アスカ達にこれ以上の追撃は難しい、彼女も頭ではわかってはいたのだが彼女のプライドがそれを許さなかった。
「はいはい、わかりましたよ、艦長さま」
アスカ達ははMAを殿にしてアンノウン3機が撤退するのを警戒しつつもその場で見届ける。
連中が射程距離から離れたのを確認すると彼女はそれまでいっしょに戦っていたゲイツへ通信をいれた。
「名前、度悪化だっけ、あたし達はミネルバへ戻るけどあんたはこれからどうするつもり?」
「いいや、ディアッカだ。……こっちも頃合いだし、アーモリーワンへ戻る、といいたいところだが、そろそろ
ガス欠なんでね。
すまんがこんなとこで救難信号あげて助けを待つのもなんだから、できればどっか適当なところまで誘導頼む」
彼が原隊へ戻れば命令違反を盾にまた何か制裁を加えられるだろう。
それは分かっていたのだがだからといってまがいなりにも軍隊に所属している彼が戻らない訳にも行かなかった。
たぶんこのまましっぽを巻いて逃げるのも癪だ、という彼のなけなしのプライドがそうさせていたのだろうが。
「じゃあ、あたしがミネルバへ連れてってあげる。アンタ、感謝してよね」
「いや、別にそこまでしてくれなくても……」
適当なところで待ってれば、と言葉をつなぐ前にモニターの気の強そうな少女の顔がずいっと大写しになる。
「か・ん・しゃ・し・な・さ・い!」
「へいへい。感謝感謝、感激の極みです、心優しいお姫様」
モニターに映る気の強そうな女性の一言でなけなしのプライドが簡単にポッキリと折れる小心者?のディアッカ。
「よろしい♪」
モニター越しにニンマリした満面の笑顔をディアッカへ見せるザフトレッドの少女。
――俺って押しの強い女の子には逆らえないのかね?
ディアッカは少女の満面の笑みに困ったような苦笑の表情を返した。
次々と至極当たり前のようにきれいに滑り込み、ガーティ・ルーのカタパルトデッキへ帰還するネオ達3人。
いくらかシールドに傷を負ってはいるが今まで戦闘してきたにしては比較的きれいな外装を3機共保っている。
最初に滑り込んできた白いストライクから、白いパイロットスーツの華奢なパイロットが降りてきた。
その均整が取れ、主張すべきところは主張している身体のラインからそのパイロットが女性であることが伺えた。
細身の白を基調としたパイロットスーツ姿。
ヘルメットを取るとそこにはブルーブロンドのショートカットと赤みがかった瞳を持つ少女が現れた。
彼女はせわしく周囲に指示をがなりたてている中年のそばへすたすたと歩み寄ると不意にペコリと頭を下げた。
「整備班長、謝罪をしたい」
整備班長と呼ばれた中年男性は少女に気が付き、彼女の方へと振り向いた。
「おう? なんだ、ゼロお嬢ちゃん」
「緊急出撃のため、強制的にAIをシステムから切り離してしまった。出来れば復旧を頼みたい」
彼女はやや無機質だが澄んだ声で言葉を続けた。
「わかってるよ。バックアップも取ってあるし、たいした手間じゃない。すぐに復旧させるから気に病むな」
「お願いする」
「いいってことよ。だから、はやいとこ、あんたのお姫様のところへいってやりな。
ああ、それと……」
今にも駆け出しそうな少女にあわてて言葉を付け足す班長。
「まだ確実な情報じゃないんで伝えるのが遅くなったが……なんでもめぼしいAIが見つかったらしい。
入手はまだ当分先みたいだがな。入手次第テストしたいとこだよな」
「期待している。いつもすまない」
またペコリと頭を下げ、“コードゼロ”は格納庫を後にしてぱたぱたと走り去っていった。
班長はそんなコードゼロの後ろ姿を見送り、そして周囲の整備班へまた“がなり立てる”仕事へと戻った。
ぼんやりとした照明の下、3つの“ゆりかご”が据えられた部屋。
その側で何かモニターを見ながら操作している青年の椅子に手をかけ、ゆりかごの方を見つめるネオ。
そして部屋の入り口付近に佇み、ゆりかごの中をじっと見つめるコードゼロ。
今の彼女は白を主体としたパイロットスーツから青を主体とした地味でノーマルな連合軍軍服に着替えていた。
ネオは目の前で機器を操作しているオペレータの青年に話しかけた。
「どうだい、彼らの様子は」
「ごらんの通り、3人とも順調です。これなら今回の調整は短めで済みそうです」
「しかし、まだ、あいつらにこれが必要なのか」
「そうですね、最終的には調整そのものを必要としなくなるようにしたいとは考えているのですが……
調整された副作用と彼らのメンタルとのバランスがとれず、まだいろいろと不安定なので。」
「因果なものだ」
「まあ、我々の作戦中にあそこが廃棄されてしまうのが非常に残念です。まだ使える資料もあったのですが」
「もしかして君も人の体をいじるのを喜んでする方の人間かい?」
「いえ、研究者としての立場として百パーセントそうではないとはいえませんが、それよりもあそこの研究が
もう少しこちらで入手出来れば彼女たちに対するケアももう少しやり安かったのですが。
第一、エクステンデッドや生体CPUの研究を継続したいのだったらここへは来ていませんよ」
「ああ、そうだったな。すまん」
「いえ、誤解を招くような発言をしたのは僕の方ですから。
それにこれはごく一部とは言えこの研究にかかわった者の義務です」
「こいつらをよろしく頼む」
「分かりました」
ネオはブリッジに戻るためにその部屋を後にする。
部屋を出る際にネオは入り口付近に立っていたコードゼロの肩をポンとたたき、一声かけた。
「ゼロ、すまん、もう少し待っててくれ」
ゼロは出て行ったネオの背中にむけて肯定の意味をこめてコクリとひとつ頭を下げた。
ミネルバのMSカタパルトでは事前に連絡が来ていたため、艦載機ではないゲイツに優先して着艦許可が出る。
残りわずかなエネルギーを使い、ミネルバへすっと着艦するゲイツ。
無数の傷がついたシールドをつけたゲイツが自力で誘導されメンテナンスのためにハンガーに固定される。
その後から順次転がり込むように着艦してネットにぶつかりなんとか着陸する白いザクとインパルス。
着艦したザク、インパルスがおのおの、クレーンの補助を借りてハンガーに固定される。
2機とも戦闘時の、そして今の着艦時に受けた被害が表面にはいくつもの傷となって現れていた。
先にMSから降りていたディアッカはあの新型から降りてきた女性パイロットに気がついて声をかけた。
「サンキュ! ミネルバまで誘導してくれて……」
「あ、あんた、努力家だっけ、ごめん、先、急いでるから後で!」
その少女はディアッカには一瞥くれ、それだけ言葉をかけるとそそくさと格納庫を後にした。
「おいおい……」
『だから俺の名前はディアッカ、のはずなんだけどさぁ』
等という暇もなく彼は彼女の後ろ姿とキュッと締まったお尻を見送った。
振り向くと、頭にケチャップを一部かけたような髪型の若い整備士が彼をニヤニヤとした表情で見つめていた。
「おっさん、着任早々、ソウリューにふられたね」
ケチャップ頭の少年がドリンクを投げてよこす。
「ありがとよ。……でも俺、あんたにおっさんって言われるような歳じゃないんだけどな」
「いや、ごめん。老けて見えてたし、ソウリューを見る目つきがおっさんだったから、てっきりね」
「あのな……」
ふと2年前にアークエンジェルにいたムウという名のちょいとスケベだが気のいいおっさんのことを思い出した。
『おっさんじゃない!』
――いや、あんた、今の俺と違って十分おっさんだったから……。
ディアッカは今は亡き思い出の中のムウと心でそんなやりとりをしつつ、目の前のケチャップ頭のくそガキを軽く
にらみつける。
さっきまで白と黒のストライクと戦っていたから余計に彼のことを思い出したのかも知れない。
――どっちかっていうと動きはキラに近かったがな。
「まあ、どっちにしろあいつはやめといた方がいいと思うけど……」
ディアッカが睨んでいることに気がつかずにやや偉そうに話を続けるケチャップ頭。
「へえ」
――そういや彼女、名前、ソウリューっていうのか。
とりあえず彼女の名前もわかったので適当に相づちをうってそいつに勝手にしゃべらせておくディアッカ。
「養成学校主席のエリートでザフトレッドなんだけどさ、あいつ、お高くとまってるからね」
――態度がちょいと偉そうではあったがそれほどお高くとまっているってほどじゃなかったがね。
『前に俺が声かけてもバカにしたような態度でさ』とうだうだと愚痴を並べる。
――そっか、お姫様はバカ相手にはしたくないタイプかね。
「ミネルバで狙うんならオペレーターのメイリンちゃんの方が数百倍いいと思うぜ」
『まあもう少しで俺がいい感じになるからアンタは今からじゃ無駄だけど』と自慢げに言葉を付け足した。
――いや、特にそんなこと今のところは何も考えてないから。スケベは否定しないが軟派じゃないんでね。
軟派なケチャップマンの話はまだ続くらしい。
「こらヴィーノ、てめえ、この忙しいときにこんなとこでなに油を売ってやがる!!」
ゲイツのそばから現れた中年の整備士がそんな自慢げに話をするケチャップ整備士を見とがめ、彼らの元へと
近づいてきた。
「やべ、じゃあな、おっさん!」
ケチャップ坊主は慌ててその場をそそくさと立ち去っていった。
「だから、俺、おっさんじゃないって!」
ディアッカは立ち去っていく彼の背中にそんな声をかけたがどうも聞いてはいないようだ。
そんな彼の元へさっき怒鳴っていたおっさん整備士が近づいてきた。
「おい、あんた、たしかこれのパイロットだったよな」
ディアッカが乗っていたゲイツをあごで示す中年整備士。
「ああそうだが、えっと……」
「エイブスだ。ここで整備班長をしている」
「そうか。まあ、今これの面倒見てもらえるってことかな。よろしく頼みます班長」
「ああ。正式には後で上から話が来ると思うが、なんでもしばらくあいつの面倒を見るように言われた。
連中を追いかけている間はあんたもここにいることになるんじゃないかな。
で、まだチラッとしか見ていないんだが、なあ、あのゲイツのことだが……」
「ああ、使い方が荒くてすまん……」
「そうじゃない。あれを今まで整備してたのは誰なんだ」
「え、いやぁ、あはははは……いやあ、結構今回ハードだったからそれで狂ったんじゃないかな」
ディアッカはまずい話になりそうなのでとりあえずどうごまかそうか考えあぐねていた。
「さしずめどっかの整備班がしたいい加減な仕事をあんたが所々やり直したんだろうよ。図星だろう?」
「あはははは」
『やっぱりちょっと見ただけでわかるもんかね』とディアッカは感心したが少しまずい方向に話が進みそうで
少し気が気ではなかった。
「あんた、所属は?」
「アーモリーワン第3守備隊だけど」
「たしかマイヤーのところだったかな。……あの野郎!」
「いや、連中もいろいろあったんだろうから内緒にしておいてくれよ」
「それとこれとは別だと思うがな。
ま、あんたがいいんならそれでもいいが……、しかしあの機体でよく生き残れたもんだ。
出力も規定値ぎりぎりまで落として機体バランスもいい加減。……いや、わざと崩してやがるな、あれは。
それをOSの書き換えでバランスをとって……
それにしてもあれでちゃんと生き残るんだから大した腕だな」
「まあ、なんでも使えるようにすんのも現場の力量だからさ」
「……そうか、あいつらアークエンジェルとエターナルにはずいぶんと痛い目を見たからか。
ったく、肝っ玉小さい奴らだ」
ごまかすまでもなかったようだ。
「いや、俺があそこにいたのは事実だしさ」
「それとこれとは別だ。自分の仕事にプライドを持っていればあんなまねは出来ないはずだ。
それに今は戦時だ、バカどもの小さな復讐心満足させるために貴重な機材でデスマーチさせてる暇もない。
あのゲイツは俺たちのプライドにかけても一級品に整備してやる。
ただしここにはパーツが後期R型のものしかないんで部品はRに合わせることになると思うがそこんとこは
了承しといてくれ」
「別にかまわんよ。具体的にはアレスターを外すとかスラスターを変更するとかか?」
「まあ、そんなとこだ。ただし消耗具合にもよるからなんともいえんがな、今回はおそらくどっちもなさそうだ。
まずは全体的に整備をし直して出力を戻さないと使いようがなかろうがな」
「……サンキュ、 期待して待ってるよ」
「ああ、こっちでも変更はするがOSは後でちゃんと調整しておいてくれ」
「オッケィ」
「それからなぁ、一言いっとくが……」
「え?」
「お前さん、自分を別に卑下することはないと思うぜ。あの時、お前さんは自分なりの信条で動いたんだろ?
で結局、お前さん自身の意志でザフトに戻ってきた。そしてちゃんとペナルティも受けたらしいじゃないか。
だから今は胸張っててもいいんじゃないか」
「……ありがとう」
少しだけ目頭が熱くなったディアッカは目の前の男に素直に頭を下げた。
今回は以上です。
今年もこのスレがまったりと続くといいですね。
相変わらず遅筆ですが何卒よろしくお願いいたします。
最新話GJ! そしておかえり
あけおめ!
職人さんも帰ってきたし、今年はよい年になりそうだ!!
…が、ふと気付く。今年は俺、“大殺界”だったぁ!(泣)
久し振りだね♪ グッジョブ!!
夢を見ていた…、ような気がする。けど眼を開けた瞬間、どんな夢だったのか忘れてしまっていた。
ただ、哀しさ、寂しさが胸の中に残っていた。あぁ、そんな夢だったんだろうな、と思う。
……。
………。
…………。…んで。
まぁアタシの夢のことは、それはそれで取りあえず良しとして。
…………。
アタシはもう一度まばたきをする。ラクスさんからアタシ用に案内された部屋。用意されていたベッド。
当然アタシはそこで寝ていたのだが、なのになぜ“この人”が眼の前にいる?
「あは、は。や…やぁ♪」
超至近距離。アタシの鼻先5cmに、間違いない。アスラン=ザラがそこにはいる。
胸に違和感。視線を落とすと彼の右手がアタシの膨らみの上に置かれていた。
着ていたワンピースは皺をつけるワケにはいかず、脱いだ。今のアタシの肌を覆っているのは下着だけ…。
もう一度アタシは視線をアスランに戻す。
「あ、あああのなアスカ。こ、ここコレはだな…」
彼の顔にダラダラといく筋も伝う汗、汗。
【 ア ス カ 覚 醒 ! !】
「キャ…ウプゥッ!?」
アタシの発しようとした叫び声はかき消された。アスランの左の掌によって。
「まて取りあえず落ち着こうアスカまずは俺の話を聞こうな聞いてくれっけして叫んだり暴れたりしないでくれ
アスカけして俺は妙な気持ちを起こしたワケじゃなくてだなっ、い、いや全く無かったと言えば嘘になるが!
君の姿を見れば大抵の男はどうにかなる、いろんな意味で!って何を言っている俺は!?
と、とにかく俺はただキラに案内されてベッドで寝ようとしただけなんだっ、そうしたら隣に君がいてっ
しかも下着姿でついその白い下着に眼がいってへぇ結構アスカ胸あるんだなとか、いやよく見たワケじゃないんだがっ…」
…果たしてアスランは息継ぎ無しでどこまでいけるのか? 思い付く限りの言い訳を並び立てる。言い訳にもなっていないが。
当然アスカも聞いているどころでは、無い。
(なっ、なんでアスランがアタシのベッドに、しかもこんな夜更けにっ? ま、まさかえと…よ“夜這い”ってヤツ?
あのアスランが? アタシに? そんなまさかでもこのアスランの真剣な眼…
…てアタシ、下着姿のままじゃない! や、ヤダ、今日アタシお風呂入ってないから匂いが…じゃなくて!
まさかこんなことになるとは思ってなかったから下着も可愛くない普通のだし…でもなくて! ナニ言ってんのアタシは…
ま、まさかアスラン、昼間のラクスのセリフ、間に受けてそれで? ちょっとマジー!? アスランだからってあんたダイタン過ぎっ。
で、でもアスランがアタシのことそんな風に思ってたなんて。でもイキナリこんな…。アタシにもココロの準備ってのが…。
て、なに考えてんのよアタシ! バカバカバカァ!! てかアスラン、手ぇ! いい加減苦しいんですけどぉっ!!)
「…というワケなんだ!だから俺は別に…(ハァハァ)」
「んむーっ! くr…ひぃ、アフラn…(ハァハァ)」
「あ? あぁす、すまない! すぐ離すけど叫び声だけは上げないでくれ」
「む゛ーっ!(コクコクコク)」
顔を真っ赤にし首をふるアスカの様子を見、そう言い含めアスランはゆっくりアスカの口から手を離す。
「…………(ハァハァ)」
「…………(ハァハァ)」
アスランは一気に喋り過ぎて、アスカはその間口を押さえられ呼吸が出来ず、お互い息を切らし、心臓は早鐘を打つ。
しばし無言の時が過ぎる。やがてどちらからともなく視線が合う。
「ア、アスランあんた…」「アスカ、君は…」
同時に喋る二人。思ってたより近いお互いの顔。視線を合わせたまま、また二人は黙る。
トクトクトク。別の意味でまた二人の鼓動が高鳴りだす。まだ荒い呼吸と上気したお互いの肌。
そしてなにより裸に近い二人の格好…。
コクッ。アスランの喉が一度動く。決意のまなざしと共にアスランが動く。アスランの顔がさらにアスカに近付く。
「ア…アスカ」
「ア、アスラ…」
突然のことにどうすることも出来ず、アスカはギュッと眼を閉じる。その時…。
===…パリンッ!===
階下で、ガラスの割れる音が二人の耳に響く!
…Farst“Love”Contact..(接近、遭遇、でもそれだけ♪ by作者は意地悪)
68 :
アス・スト…:2008/01/05(土) 02:25:31 ID:???
なんなんだ? いったい…。どっかの少女マンガかよ!? これ。
アスカならここは『ウキーッ!』ってなって、アスラン『バキーン!』になって、
そしてキラとラクスが『失敗だったじゃない?』って。ついでにキラ達も『チュドーン!』って…。
あぁなんか自分もヘンになってるぅ! 新年早々なのにぃ!! ラブコメか? 学園バラエティか? 答えてくれ、アスカー!
…すいません。取り乱しました。みなさん、シンエヴァ(仮)さん、アスシスさん、明けましておめでとうございます。
いやしかし、なんでこーなる? 当初の予定はさっき書いたとおりだったハズ。どこで間違ったんだ?
最後の最後で邪魔…とゆーかガラス音がしてくれたのが救いか。てか、それも無視してコトをしようとしたら、作者権限でアスランぬっコロス!!
……。…はあぁ〜=3 こうなればキラに頑張ってもらうしか…てか、頑張れ。 それかバレルに期待する。
予定を早めてシンジを動かすか…? てかね、何度か言ったケド、自分描き始めたきっかけは
『ア ス カ × ス テ ラ』なんですよ!!(号泣)
凸もスーディもピンクも“オマケ”だったんですよ!? なのに肝心のステラが…、うぅ、ドコにいるんだステラぁ!
すいません。情緒不安定です。改めまして。本年もよろしくお願いいたします♪
どしたんすか? スランプ? えらく文体が乱れてますが。
いや悪くはないと思いますが。がんがれ!
正月の酒がまだ残ってんだろ
旧暦ならまだ年末
シンの力の源はキラ憎しな部分が大きそう。
でもエヴァは中の人の性能とかあんまり関係なさそうだから平気かな。
でも弐号機とシンクロさせるため、コアに妹ダイブさせてましたなんてのがバレたりしたら大変かも。
アスカの方は…
議長が「君には期待している」とか「ネビュラ褒章をあげよう」とか
「君専用の機体を用意した」とか持ち上げたりするだろうし、
アスラン脱走で繰り上げとはいえザフトのエースになるから多分充実した生活するんじゃなかろうか。
ちょいコーディネーター入ってるし。
補正キラに連敗して腐ったりしなければ。
たぶん
>>72は『シン、心のむこうに』さんを知らないんだろな。
>>74 詳しくはまとめサイト参照。更新がまだだが。
弐号機になんだかんだでシンが乗るようになります。シンエヴァもどき(仮)もよろしく。
シン、心のむこうにサン。その正体は…。お話マダーチンチン。
なんだか破のアスカの扱いの噂がやたら流れてるけど…
なぜアスカと名のつくキャラは報われないんだ
78 :
通常の名無しさんの3倍:2008/01/13(日) 22:02:29 ID:yIQTSqCd
「な、なんの音っ!?」
「ガラスが割れる音? なんだっ?」
二人は音のした方に意識を向ける。軍人である、あった二人である。自然、危険を察知する能力には長けている。
===パンッ! パリンッ===
さらに渇いた銃声らしき音、そして窓ガラスの割れる音。
アスカ、アスラン、二人の顔に緊張が帯びる。
===…デェ! アカンデェ! キケンッ、キケン!===
廊下のドアの向こうからなにかが跳ねる音と機械音声が聞こえる。
「!! あれはラクスのハロの声っ。なんだっ? アスカ!?」
アスカは素早くベッドから飛び降りる。
「ち、ちょっとアスラン! あっち向いてなさい! ぜぅぇーーーたいっ! こっち見るんじゃないわよ!!」
「は? うわっ、はいっ!」
アスカは壁に掛けていたワンピースを掴み、はや身支度を整えだす。
アスランも慌ててベッドから下りアスカとは反対側でズボンを履く。
ジャケットから拳銃を取り出すとドアの側で身構え、耳を澄ます。やがて…。
(コンコン)『アスラン。アスランっ、いいかい?』
ドアの向こうで見知った声が聞こえる。
「キラか? ちょっと待ってくれ。…いいぞ」
アスランはチラとアスカを見る。アスカは背中のファスナーを上げているところだった。確認をしドアを開ける。
「アスラン」
いつものとぼけた顔のキラでは無かった。眉根を寄せ右手にはやはり銃が握られている。
「キラ。…なにかあったのか?」
部屋の明かりを点けようとスイッチに伸ばしたアスランの右手を掴み、キラは顔を横に振る。
「ダメだアスラン。…判らない。けどこれはきっと…」
そう言い、ポケットからもうひとつ拳銃を取り出し、アスランに投げて寄越す。
「アスラン。庭の向こう。林の奥にお客さんがいるわよ。…たぶん10以上」
服装を整え、襟の中の髪を両手で外に出したアスカは、そっと窓に寄り添い外の様子を伺う。
「判るのか?」
アスランが振り返る。
「…たぶん、ね。深夜のパーティーに来たってカンジじゃないのは確かみたいだけど」
アスカの声にも緊張が帯びる。泥棒ならそんな人数で活動するはずもない。
邸内からも銃が放たれ火線が林に向かって走る。
「……。っ!? まさかヤツらの狙いはっ!」
アスランの声にキラはうなずく。
「…たぶん」
「…チィッ。キラ! ラクスと子供達をシェルターにっ。俺とアスカはヤツ等を食い止める! アスカ!」
アスカは頷き、アスランの側に駆け寄る。
「事情がまったく判んないんだけど。なんとなく想像はつくわ。正直あたしには関係ないんだけど、
放っとける状況でもないようだし。アンタは早く…」
アスカはキラを促し行かせようとしたのだが。
「あっちはバルドフェルドさんとマリューさんがもう行ってくれている。…ボクは、戦う」
キラはふたりに決意のまなざしを向ける。
「キラっ。だがお前は…っ」
「ラクスはボクが守る。その為にボクは生きている」
「しかしっ。お前はっ」
「あぁもう! 言い争ってる場合じゃないでしょ!! んでっ!!(スチャ)」
アスカはポーチから白兵戦用のナイフを取り出しキラの鼻っ先に突き付ける。
「…ことが終わったらキッチリ! アタシとアスランをハメようとしたことのケジメ、つけてもらうから♪(ニコ)」
「それはラクスが…。あ、はは。その笑顔、ち、ちょっと怖いんじゃない?」
降参のポーズで苦笑いするキラ。アスランもキラに詰め寄る。
「そ、そうだぞキラッ! 人を陥れるなんてそれは人間として最低の行為で…」
「アスランッ。アンタにそれ言う資格無し! アンタはアンタでゆっくり説明してもらうから!」
「…ハイ」
「取りあえず下に行くわよ! …クシュンッ!」「アスカ? ほらこれ着てろ。それと、コレ」
そう言いアスランはアスカにジャケットを渡す。そして、自分の銃を。
「……。…う、ん」
少しためらいアスカは受け取る。銃は正直苦手だが仕方ない。
「弾丸(たま)は左の内ポケットだ。いいな?」
アスカは静かに頷く。
「よしっ、行くぞ!」
アスランはそれぞれの装備を確認すると頷き、そして階下へ続く廊下へ駆け出した…。
…あ、続く..
>>79 乙です
そういえばもどき氏はシンをアスカでなくてシンジと入れ替えてるけど、そうするとアスカはそのまま出てくるんだろうか?
それはそれでWアスカでおもしろくなりそうw
>>80 「アンタにそれ言う資格無し!!」
確かにwwww
職人、乙!!
映画情報がくればまたスレ活性化するかな?
「Wアスカ」と聞いてふとこんなシーンが思い浮かびました。
85 :
二人のアスカ:2008/01/20(日) 04:00:53 ID:???
「まったく、あんたはいったいなんなんだ!」
目の前のMSの剣圧に圧されるシンのソードインパルス。
奪取されたMSを奪回するため、同じセカンドシリーズのインパルスで出撃したシン・アスカは強奪犯が操る
そのMSの攻撃に今、圧倒されていた。
インパルスの連結された耐艦刀がビームサーベルを受けるたびに激しくスパークが何度も散った。
あるべき“時”と違っていたのはそのとき、アーモリーワンにセカンドステージシリーズのGが5機いたこと。
あのときは間に合わなかったはずのその機体の開発が間に合ってしまったから。
そしてそのとき、アーモリーワンに潜入した強奪の実行犯が3人ではなく4人いたこと。
その4人目はこの世界にいるべきはずでなかった少女。
その赤いMSの両手にビームサーベルを持たせて目の前のソードインパルスへしゃにむに接近戦を仕掛ける。
「こんなところで!」
赤いMS、セイバーのコックピットで彼女が叫ぶ。
「アンタなんかに!」
赤毛のロングヘア、そしてその華奢な体にレモン色のワンピースをまとい……
「このアスカ様は!」
惣流・アスカ・ラングレーは……
「負けてなんかいらんないのよ!」
この異世界でステラ達と共に強奪したMSを操り、アーモリーワンでシン・アスカの操るインパルスと戦っていた。
二刀流のビームサーベルでの連続攻撃でソードインパルスを圧倒するアスカ。
シンがアスカの剣圧に耐えきれず思わずオーバーアクションで引いた時にアスカは振り上げたインパルスの左腕を
地刷りに切り上げてひじからバッサリと叩ききった
「何だと?!」
切断された左腕に引きずられて耐艦刀を持つインパルスの体勢が大きく崩れる。
「やりぃ!」
アスカはその隙を逃さずに大きく踏み込み、残る右腕も肩から切り落とす。
間髪入れず、頭部を落とし、棒立ちのインパルスを瓦礫の中へ思い切り蹴り飛ばした。
アスカはガイア達が相手にしていたMSへビームライフルで威嚇射撃を食らわして退かせると3人に通信を入れた。
「ステラ、スティング、アウル、母艦までもどるわよ!!」
「アスカ、テメエ、偉そうに僕に指示するんじゃない!」
アスカの高飛車な物言いにアウルがアビスのコックピットでむくれて怒鳴る。
「すぐにこいつ倒してから帰る」
アスカの言葉に聞く耳を持たないステラ。
「だったら、アウル、あんた、まだたった一人でここに残ってるつもり?」
「なんだよ!」
「アウル、アスカの言うとおり潮時だ、撤収するぞ! ステラもだ」
スティングが横からアスカの指示に同意し、二人をたしなめる。
アスカは続けてステラにも呼びかけた。
「ネオがそれ乗ってあんたが戻るの待ってるんだからわがままいわない!」
「ネオ、ステラが帰るの待ってる?」
「ああ、そうよ!」
――相変わらず、この子はあのダメ人間が好きなのね。
ステラにはわからないようにふっと笑うアスカ。
「じゃあ、ステラ帰る」
アスカは無様に瓦礫に倒れているインパルスを一瞥し、セイバーのコックピットでつぶやいた。
「じゃあね、赤いMSさん。このアタシと戦いたかったら今度はもう少し強くなってからアタシの前に現れる事ね」
彼女の独り言がインパルスの中にいるシンに聞こえるわけはないのだが。
これは『惣流・アスカ・ラングレーが種死世界に来た…』―ゲフゲフ
いやいやGJ! っす。新職人ここに誕生か。
ちゅコトはアスカは連合か…。やっぱりアスカは赤のセイバーが似合うな。
ただ惜しむらくは機体を象徴する武器が無いとこだな。出来ればエヴァ(量)の対艦刀持たせたいな。
飛行形態の時に邪魔になる? ならヒモでも付けてぶら下げとこう。
更なる続きを楽しみにしています♪
申し訳ありません。まとめサイト管理人『星ナオ』です。体調不良で再入院中で更新ができません。
どなたか過去ログをお持ちでパソコンする時間がある方、Wアスカが好きな方、
管理人をお願い出来ないでしょうか?
ご迷惑をおかけします。管理人立候補宣言を戴けたら、管理パスワードを公開します。
よろしくお願いいたしますm(__)m
誰かやってやれ。俺は携帯だから無理ポ。
一連の埋め荒しで住人いなくなったからなぁ…
90 :
通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 19:53:01 ID:Wqvk/boP
試しにageてみる
「アスカッ、伏せろ!」
「ヒャアッ!?」
激しい機関銃の音と共に、窓下に滑り込んだアスカの上に、砕かれたガラスが降り注ぐ。
アスランとキラはそれぞれ窓に寄り添い、外に向けて拳銃で牽制をする。
「あーもうっ。 動きにくいったら!」
そう言うとアスカは、おもむろにナイフを取り出すと、自分のワンピースのスカートを、膝上の高さで切り裂く。
裂過音と共にロングのスカートは一気にミニになる。少なくとも走っていて足に絡まる心配はなくなった。
「――これでよしっ。アスランっ、あんた気づいてる!?」
「なにをだ!?」
振り返らずアスランは撃ちながら答える。問答している場合ではない。アスカは簡潔に言う。
「ヤツらのマシンガンの音っ!!」
「――? …っ!!」
アスランの顔色が変わる。
「キラっ! ラクス達が心配だっ。急いで合流するぞ! アスカもっ」
キラがうなずく。
「おっけっ! アタシが牽制するからアンタ達は早く行きなさい!!」
もし『敵』がアスカ達の予想通りなら、少人数ではラクスや子供達を護りきれない。
「しかしっ」
アスカはズカズカとアスランのそばに行き、首根っこを掴みあげる。
「ええいっ。今一番にしなきゃいけないことは何っ?」
「っ! ――わかった。先に行くぞっ」
「(コク)アイン…ツヴァィ……GO!!」
アスカの合図でキラとアスランは駆け出す。アスカも移動をしながら、窓の外に向け拳銃の引金を何度も引く。
===ガシャーーンッ===
アスカ達が来た方向、南東の窓ガラスが割れた音がする。続いて複数の人の気配。
とうとう屋敷に侵入されたようだ。
「…チッ」
アスカは持っていたアシッドスプレー(催涙缶)をそちらの方向に転がし、そしてそれを拳銃で撃ち抜く。
煙が一気に吹き出し、廊下に拡がるのを確認してアスカは、姿勢を低くしアスラン達が消えた方角へ、駆け出した。
目眩ましくらいにはなるだろう。気休め程度だが。
廊下の曲がり角。アスカの足がピタと止まる。アスカは前方に息を潜め佇む気配を感じていた。
(姿を見せてさえいないのにこのプレッシャー…。何者?)
静かなのに背筋を凍らせるような殺意。まるで林に身を潜め獲物を狙う虎のような…。
アスカは壁に背を預け拳銃を握り直すと、静かに曲がり角へ近付く。
(――ひゅっ!!)
アスカは呼気を一度溜めると、一気に角から飛び出し拳銃を構える!
「っ!(スチャ)」
「…っ(カチャ)」
アスカは下から。向こうはアスカを見下ろすカタチで、お互いの額に銃口を突きつける!
「くっ…」
「……」
互いの動きが止まる。いや動けない。アスカがその人差し指を動かそうとすれば、目の前の人物は、即座に引金を弾くだろう。
アスカもまたそのつもりだ。
刹那の膠着状態。だがその二人を、雲間からまた顔を出した月明かりが照らす。
「――ほう。侵入者にしてはなかなかチャーミングなお嬢さんだねぇ」
男はそう言い、その身から発していた殺気を消し、銃を下ろす。
月明かりに照らされたその顔は隻眼。獰猛な野生動物を思わせるその髪。黄色がベースの服装。
なかなかにシブい顔と声。ワイルドな大人の男性という感じだ。けしてアスカの嫌いタイプではないが…。
だがアスカは隻眼の男を睨め付け、構えを解かない。先ほどの殺気は普通の人のものでは、無い。
男は両手を小さく上げ降参のポーズを取る。
「おいおい。―あぁ、そうか。初めまして、フロイライン(お嬢様)。“アンドリュー・バルドフェルド”だ」
男は苦笑いしながら自己紹介をする。
その自己紹介を聞き、今度こそアスカは驚く。
「っ!!? …――『砂漠の虎』っ?」
アスカのその声に、男はニッと笑ってみせる。
…Do you like tiri or yogulet?..続く
保守
保守
さて、どうしたものか。
保守
夜分恐れ入ります。本当にご無沙汰しております。
>>92 アススト様おひさしぶりです、そしてGJ。
アスカ姉妹の話を書かせていただいているずいぶん前のスレの569です。
>>87 星ナオ様、お体、ご自愛ください、お大事に。くらいしかいえませんが。
では今回は8レス分ほど投下させていただきます。
以上よろしくお願いいたします。
アスカはアーモリーワン周辺からの帰投後、彼女の部屋に一人でいるはずのマユのことがと非常に心配だったので
とっととパイロットスーツから制服に着替え、彼女が居るはずのアスカの部屋へと急いだ。
彼女が部屋へと急ぐ途中、ミネルバ全体を揺るがすような大きな衝撃を受けて艦が大きく揺れた。
アスカは無様に壁に叩きつけられたが何かに対して「最っ低ね!」と1回だけ盛大に毒づいただけで自分の身体の
ことなどお構いなしに固定されていなかった様々な機材が漂う通路を通り彼女の部屋へと進む。
「ただいま〜、マユ!」
そして部屋に着くとアスカは彼女の部屋のドアを開けるなり、マユの姿を探した。
『マユ 一人で大丈夫だった』
そう聞く前にマユと一緒にいるアビーを見つけてとりあえずほっと胸をなでおろしたした。
アスカのベッドに座っているアビーに抱きついていたマユは部屋に入ってきたアスカの声に気が付き、頭を上げて
涙で潤んだ目でドアの方を見つめる。
待ちに待っていた姉の姿を認めるとパっと泣き笑いの表情を浮かべて文字通り彼女の胸へと飛び込んでいった。
「お帰りなさい、お姉ちゃん!」
「いったでしょう? あたしはちゃんと戻ってくるって」
アスカはマユをその胸で受けて止めて彼女に笑いかけた。
「ウン!」
マユはアスカの胸に顔をうずめたまま、声だけでアスカに答えた。
アスカはマユを抱き締めたままの格好で、アスカ達を見てほほ笑んでいるアビーに声をかけた。
「ありがとう、アビー。まさか戦闘中、ずっとマユのこと見ていてくれたの?」
「いいえ、そういうわけでは」
苦笑しながらアビーは今まで座っていたアスカのベッドから自分のベッドへ座り直した。
「あの時は式典会場にいたんですけど。
でも非番で担当じゃないけど何かあったらダメコンでもやらなくちゃと思って……
戦闘中になんとかミネルバまで戻ってきてとりあえず部屋に戻ったきたんです。
そしたら驚きましたよ、誰もいないはずの部屋でマユちゃんが布団かぶって一人で震えてたんですから」
やや落ち着いてきた様子のマユを連れて自分のベッドへ座るアスカ。
マユはアスカのひざの上にチョコンと横座りして、またアスカへとベッタリと抱き着いてしまった。
「この子と二人でここにいたら招集かかっちゃってね。
どっかシェルターへ避難するよりもここの方が安全でしょ?」
「まあ、そうですけど……。でもこれからどうするつもりですか?」
「まずはマユのこと、報告しとかないとね」
「それは当然ですよ。……で、それからどうしますか?」
「まあ、どっかで補給でも受けるときじゃないと降ろせそうもないんだろうけどね〜……。はあ……」
ミネルバはこのままボギーワンを追跡するということだ。
だからどこかへ寄港するのは少し先のことになるだろう。
そうなればどっちにしろ、しばらくマユはミネルバに居なければならない。
そのためにどうすべきかと、アビーはそのことをいっているのだろう。
身寄りもなく不安定になっているマユを一人でどこかの部屋に置いておくのも彼女にいいとも思えない。
だからといってもまさか、このまま民間人のマユを彼女の部屋に置いておくわけにもいかないだろう。
それはともかくまずはマユをミネルバに乗せていたことをグラディス艦長にはこってりと絞られることだろうが。
――年の功なんていっちゃったし、さっきもいらんこといっちゃったしね。マジヤバイわよ〜……。
怒髪天を衝き、青筋を立てて怒る悪夢にでも出てきそうなタリアの顔がアスカの脳裏をよぎった。
――あ〜あ、どうやって説明しよう……。
彼女はこれからのことを考え、ちょっとこめかみと背筋に冷たい汗を感じてしまった。
「イヤ!」
黙って抱きついていたマユがアスカの胸に顔を寄せたまま急に声を上げた。
「え?」
「お姉ちゃんとずっといるもん!」
アスカのため息がマユをどうやって降ろそうかと考えているものと勘違いしたマユはアスカの胸に顔を埋めたまま、
いやいやというように顔を左右に振った。
「でも、このまま民間人のマユがアタシといっしょにずっと軍艦に乗っているわけにはいかないのよ?」
「それでもお姉ちゃんとずっと一緒にいるもん!!」
「あのね〜、マユ……」
「それでもお姉ちゃんと一緒にいるんだもん!!!」
「だってね、マユ……」
「どうしても、いるの!」
アスカはマユの駄々に少しもてあましてしまいやれやれとばかりにため息をつく。
そんなアスカにアビーはにこやかに助け船を出した。
「まあ、私もマユちゃんがここにいることを知ってもまだ何も報告していません。
ですから、この件については私も共犯です……まずは二人で艦長に絞られましょう?
その後で、マユちゃんのことはお願いしてみれば、何かよい手があるかもしれません」
「ありがとう、アビー!」
「いいえ、本当のことですし。それにマユちゃんにはいつも手作りのお菓子を戴いてますからそのお礼です」
「どうしたの?」
マユは自分の名前を出して明るそうに話している二人に何かを感じておそるおそる顔を上げてアスカに質問した。
「アビーがあたしといっしょにマユがここにいられるかどうか頼んでくれるんですって」
「アビーさん、ありがとう!」
彼女はアスカの膝の上でアビーへ振り向き、ぺこりと頭を下げた。
「どういたしまして」
「まあ、それよりも問題なのはマユが何故ここにいるのかをタリア艦長にどう伝えるかよね」
「まあ、まずはそれが問題ですよね。本当は正直に言うのが一番いいんでしょうが……」
そうはいっても普段からマユをミネルバに乗せていたことを白状するのも大いに気が引ける。
その点に関しては二人ともまごうことなく共犯者である。
「ま、なんとかなる、でしょ? でもまずは連絡しないことには始まらないわね」
マユのことをタリアに報告するためにアスカはマユを膝の上から降ろし、渋々ブリッジに連絡を入れる。
「あ、ソウリューさん、どうしたんですか?」
モニターに映るメイリンは少し緊張しているようにも疲れているようにも見える。
彼女にとって初めての、それも試験艦に配属されてまさかあるとは考えても居なかった想定外の実戦である。
「タリア艦長は今、そっちにいる?」
「いいえ、ちょっと前に議長といっしょにブリッジを出られましたが、なんですか?」
「じゃあ、いいわ」
急いでブチンと通信を切ろうとするアスカを制してメイリンが慌てて言葉をつないだ。
「あ、早く格納庫へいってインパルスの整備を手伝った方がいいですよ。
艦長、ずいぶんとごきげん斜めのようですから」
「あちゃ〜、やっぱり、あれはまずかったかしらね」
アスカが『年の功』発言をいっているのだろうとメイリンはわかっているが……
「たぶん、それだけじゃないとは思いますけど……」
議長が今ここに居るだけでも頭が痛いのに、オーブの代表やら、未確認の敵やら頭痛の種には事欠かない。
――私がタリア艦長の立場だったらいやになって全部放りだしているかも知れない。
この状況から逃げ出したくなっていたメイリンはタリア艦長に対して大いに同情していた。
「けどもっとご機嫌斜めになりそうなことを報告しなきゃなんないのよね」
そんなメイリンに対してモニター越しにさらりと爆弾発言をかますアスカ。
「今度はなんですか?」
――またどこかでなにかいつものように暴言をかましたのかな……
アスカが体をずらし、何かをフレームの外から引き寄せるとその何かをぐいっとモニターが映る位置に抱き上げた。
そしてメイリンのモニターにはマユの姿が写し出される。
「え? ええ〜??!!」
メイリンのその大声ににブリッジのみんながいっせいに振り向く。
「え? どうしたのメイリン」
彼女のその不審な声に が声をかける。
「べ、別になんでもありまひぇん。えへへ……」
おもっきり不審な挙動でごまかすメイリン。
「てへへ、メイリンお姉ちゃん、こんにちわ〜」
「でも、マユちゃん! なんで?!」
小声でアスカとマユに聞き返すメイリン。
『いつものように内緒でミネルバに二人でいたらあの騒ぎがあってさ』とアスカがその問いに答えを返す
「ああ、それは困っちゃいましたね」
アスカの部屋でよくマユと遊んでいる彼女はそれでおおよその事情を察した。
――あれ? そういえば……。
メイリンの頭に妙案がひらめいく。
「……あ、そういえば艦内に緊急避難してきた民間人も少しはいましたからその人達と一緒だったことにすれば
大丈夫なんじゃないですか? ミネルバへの避難誘導者のリストにマユちゃんのこと足しておきますね」
「ほんと?! ラッキーじゃないの! メイリン、ありがとう!
あ、誘導してきたのはアビーって事にしておいてくれない?」
「え、それはかまいませんが……」
「アビーが部屋で面倒見ていてくれたから」
そのほうがここにいることが自然に見えるし、避難民を見ていたことにすればアビーがもしかりにこの件から
任務放棄とかいわれることもないだろう。
「いえ、私、マユちゃんのファンですから」
――ソウリューさんも嫌いではないもん。しょうがないよね。
微苦笑した表情を浮かべるメイリン。
「では、アビーにマユちゃんを食堂へ連れて行ってくれるようにお願いして頂けませんか?
アビーがマユちゃんの対応したようにするには彼女が連れていった方が自然に見えるでしょうから。
避難場所を食堂にしておきます。後でアビーか私が避難民のリストのメンテをすればマユちゃんについては
特に問題なく出来るんじゃないでしょうか?」
「ありがとね、メイリン!!」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「メイリンがね、マユがここにいてもおかしくない理由を見つけてくれたのよ」
「メイリンお姉ちゃん、ありがとう! あとでお菓子作ったらメイリンお姉ちゃんにあげるね!」
「ごちそうさま」
笑顔でマユにお礼を返すメイリン。
彼女はマユ達と話していて何となくこれまでのせっぱ詰まった感じが抜けていった。
後はマユの部屋についてだがそれもまたメイリンかアビーに一肌脱いでもらうことになるかもしれないな、と
漠然とアスカは考えていた。
――じゃあ 忠告をしてくれたメイリンの顔を立てるためにインパルスの整備の手伝いでもいくかしらね。
また、膝の上に乗っかってきたマユを降ろすとグッと背伸びをして立ち上がった。
「さてと、じゃあ、お姉ちゃんはお仕事に行ってきますかね〜」
「また出撃?」
「違うわよ。聞いてたでしょ? インパルスっていうお姉ちゃんが乗ってるMSの整備の手伝い。
それからその後に艦長を捕まえてマユのことお願いしに行くのよ」
「マユもいっしょに行って良い?」
「ダ〜メ、マユはね、まずアビーさんと食堂へいくの。そこでいい子にしてたら後で迎えに行くからね」
「きっとだよ」
「大丈夫よ」
アスカは笑顔で心配顔のマユのおでこをひとつつついた。
アスカはアビーに連れられたマユを食堂へ送ってからその足でインパルスの整備のためにMS格納庫へと向かった。
彼女はインパルスの操縦の微調整を終えると特に手伝えることもなく、手持ちぶさたになってしまった。
インパルスから降りて、そのコックピットの前でドリンクを口にしてぼんやりとしていたアスカ。
彼女の視界にアーモリーワンで意図せざる状況ではあったがコンビを組んで戦ったあのザクの姿が映った。
――あのザク、あの時、あれに乗っていたのって、ほんとに……。
「あのザクのこと、そんなに気になる?」
そんなザクを見つめて物思いに耽るようにしていたアスカにルナマリアがフラリと近づいてきて声をかけた。
「べっつに〜」
アスカもまったく気にならないといえば嘘になるがルナマリアの言いぐさがなんとなく気に入らなかったので
そんな風に答えを返した。
「へへ〜ん、教えてあげようか?」
アスカのそんな物言いに慣れているルナマリアは気にすることなく自慢げにそしてもったいぶって言葉を続けた。
「だから別にいいわよ。たださ、同じザクなのに動きが違ったな〜って思ってね」
「どういう意味よ!」
「あんたと最近、模擬戦で対戦したときの動きと比べてね……
あのアスラン=ザラが乗ったザクとじゃあおんなじザクなのにずいぶんと動きが違ったなって思ってさ」
ルナマリアと同じザクで模擬戦を行ったときは取り回しの良い、高出力なところが売りのMSに思えた。
ルナマリアが接近戦を得意としていたこともありザクはそこそこ接近戦でもまあ使えるのかなといった程度の
印象だったのだが。
ところがあのアスラン=ザラが乗ったザクの接近戦での動きはルナマリアのそれを遙かに上回っていた。
ルナマリアが乗っていたのとは全く別のMSじゃないかとおもえるような動きだった。
アスラン=ザラ……
彼はヤキン・ドゥーエで前大戦を終わらせた英雄の一人、そしてMSのエースパイロット、
先の大戦で死亡したザフトの指導者の息子としても名前が知られているが。
「な〜んだ、知ってたんだ。つまんない」
『言い方はちょっとむかついたけどね』とルナマリアはややふくれっ面で付け加えた。
「怪我人の治療の為にミネルバに降りてきたんでしょ」
アスカはルナマリアに続けてとどめを刺すようにもう一ついいそうな情報を暴露した。
「へ〜、そこまで知ってるんだ」
「だってあたしがそうしたらどうかっていったんだもん」
「あえぇ〜〜〜!」
アスカの意外な発言にのけぞるルナマリア。
「じゃあ怪我人が、あのオーブのアスハ代表だってことも?」
――オーブのアスハ?何それ?
「ま、まあね」
――オーブのね。あいつのためにここを紹介したなんてな〜んかむかつくぅ。
インパルスの調整が終わったアスカ。
ザクの整備に飽きたのかなんなのか、まだ、手をつける状態じゃなかったのか、わからないが。
おそらく彼女が知らないであろうあのザクの事を自慢したかっただけだったのかよくわからない。
そのアスカの元へ近づいてきたルナマリア。
そのルナマリアの与太話の中で、その口から出て来たのはアスカにとってあまり耳にしたくない単語だった。
オーブ、それはマユの生まれ故郷で両親や兄、彼女の親しい人達を失った場所――――
アスハ、それは彼女の妹、マユの家族を奪う原因を作った人物の姓――――
アスカは養成学校に入ってから彼女が現れたあの時のオーブについていろいろと情報を集めてみた。
なぜ、あの時に彼女が現れたのか、なぜ現れなければならなかったのか、わかるかも知れないと思ったから。
そしてわかったことはあの時のオーブという国のあり方との為政者の身勝手さ。
自分の理念のために国民を犠牲に、置き去りに、見殺しにしたこと。
アスカは調べれば調べるほど腹が立ってしょうがなかった。
そんな連中が、マユの家族を……
彼女たちだけではなくそんなオーブに嫌気をさしてプラントへ上がってきたコーディネーター達が多数いた
ことも調べているうちに知った。
――はっきりいって無茶苦茶気に入らないわね。
知らなかったこととはいえ、そんな人物を助けてしまった自分に腹が立ってしょうがなかった。
八つ当たりとばかりに思いっきりインパルスの機体を2〜3発蹴飛ばすアスカ。
「ソウリュー、なにやってんのよ?」
「MSって調子悪いときにこうやって蹴飛ばすと、よくなることあるのよ?」
アスカは自分の八つ当たりをごまかすためにその場で思いついたホラを吹いた。
「……ほんと?」
養成学校主席のしたり顔で話す意外な内容の話に奇跡のザフトレッドは恐る恐る聞き返した。
少なくとも学科ではアスカは文句なくぶっちぎりのトップだったのだ。
彼女が言うことだから本当なのだろうとルナマリアは信じがたい話ではあるがちょっと信用しそうになった。
「例えば起動しないときはメインコンソールの右斜め45度の角度で何かで殴るとか。
あ、ルナの場合は素手でいけると思うけど……」
「ど、どういう意味よ!」
「当然、言葉の通りよ!
あのフリーダムとかジャスティスとかはバールのような何かがコックピットに常備されていたらしいわよ。
これ、トリビアに出るらしいから」
「そ、そうなんだ……」
感心した表情のルナ。なんとアスカのその話を信用してしまったようだった。
――あんた、こんなバカバカしい与太話を信じるんかい!
自分で言った癖に心の中でルナマリアに無慈悲なつっこみを入れるアスカ。
「さあさ、あんたは仕事に戻った、戻った。さぼってるとまた班長に怒鳴られるわよ」
パンパンと手をたたきアスカはルナマリアに与太話のお開きを宣言した。
「そして周りはきっと陰でこう言うんでしょ」
ルナマリアは眉間にしわを寄せて頭を振った。
「「あいつらザフトレッドの癖にって。やっぱりあの代の“赤”はできが悪いってね」」
彼女らはそんな言葉をハモった後、盛大にため息をついた。
ルナマリアが自分のザクの元へ戻っていくとアスカはとっくに空になっていたドリンクを近くのダストシュートへ
と放り込みにいった。
本当は所定の場所へ戻すように言われていたような気がしたがアスカはそんな指示は忘れたふりをして無視する。
「……あのたった3機の新型MSのために貴国が被ったあの被害のことは?!」
アスカはふとMSデッキの上の方で誰か女性が大声で話しているに気が付き、そちらへと目を移した。
そこにはデュランダル議長とアスハ代表が向き合い、何か議論でもしている様子だった。
「……あいつ」
偉そうに叫んでいるアスハ代表を視線で殺せるならとっくに惨殺しているような力を込めてにらみつけた。
「そもそもなぜ必要なのだ?! そんなものが今更!」
何かを答えるデュランダル議長。
しかし、議長が何を答えたかはアスカのあたりではまるで聞こえなかった。
「我々は誓ったはずだ! もう悲劇は繰り返さないと! 互いに手を取って歩む道を選ぶと!!」
「アンタ、自分のことは棚に上げて、何偉そうなこといってんのよ!」
そんな自信たっぷりに叫ぶカガリの姿に我慢できなくなったアスカは思わずカガリに向かって怒鳴っていた。
「なに?」
突然の声にその声のする方へ振り向くカガリ達。
――この声、たしか、……彼女があの新型機のパイロットなのか?
カガリに同行してデュランダル議長達と共にMSデッキまで来ていたアスランは聞き覚えがある声に驚いた。
「その偉そうなこといってるアンタのオーブで2年前に何が起こったのか、そしてアンタ達が何をしたのか、
それを忘れたっていう訳?!」
「ソウリュー!?」
デュランダル議長の護衛として彼の隣にいたレイはアスカの暴言を止めるためあわてて飛んでいこうとする。
するとデュランダル議長は他の者にはわからぬようにレイを目でそっと押し止どめた。
「あの時アンタ達は傷ついたり住むところを焼かれたりして途方に暮れていたみんなを戦場で見捨てておいて、
自分とそのお仲間だけで 早々に宇宙へ逃げ出したくせに。
だいたい、オーブの国民にとっての、その悲劇を作ったのはアンタ達の方でしょうが!!
主要な施設を自爆させて、そしてあっさり宇宙に逃げ出したっていうアンタに何がいえるっていうのよ!!」
「いや、そうじゃない、……あれは、お父様の、オーブの理念を……」
――その理念を体現するためにオーブ、そしてオーブ代表たる私がいるはずなんだ。
こちらへ向かって叫んでいるザフトレッドの女性に必死に弁解をしようとするカガリ。
――国の理念さえしっかりしていれば国民は皆ついて来てくれる。ババ達もそういって私を支えてくれている。
「いっくら大層な理念があったって、その国に住む人間がいなければ国なんて成り立つわけないでしょう!
アンタ、そんなこともわからないわけ? バッカじゃないの!
これだから頭でっかちで世間知らずのお姫様はダメなのよ!」
「私は姫などでは……」
――私は決して深窓で育ったお姫様ではない! 戦闘にも出た! 皆と共に死線も越えた!
「そうね、そんな呼び方なんてどーでもいいわね。
だいたいそんなに力を否定したいのなら、自分たちが真っ先にアークエンジェルとかフリーダムとかアストレイ
とか放棄するのが筋じゃないのよ。なんでそうしないの?
力を否定するのならばアンタらが力を放棄してから語りなさいよ!
刃物を振りかざしながら相手に刃物を捨てろっていうのはただの脅迫でしょう?
アンタが言ってんのはそれと同じよ!」
アスカの鬼気迫る態度と語気に周囲は飲まれてしまい、皆、彼女達の会話? を聞いている他はなかった。
――しかし、本当に止めなくていいのかな?
アスカとカガリのやりとりを聞いて、また、ふとデュランダルの方に視線を向けるレイ。
ちらりと視線があったデュランダルの目はレイにしかわからない程度に笑っていた。
――ギルが止めなくていい、というのならば、この場合はそれが絶対に正しいんだ。
レイはただ、デュランダル議長が何かを指示したらすぐに行動に移せるようにだけ気を配るように彼の挙措に
気を配ることにした。
タリアもアスカを止めるべくレイに声を掛けようとしたがそれもデュランダルが目で制してしまった。
――ギル、あなた、何を考えているの?
ザフトに所属するものがオーブの代表をあそこまで罵倒してしまっては外交問題にもされなくはない。
タリアにはこの状況で彼女にわかる笑みの表情さえ浮かべているデュランダルザフト最高評議会議長の意図する
ところがさっぱりわからなかった。
今もアークエンジェル、エターナルがオーブの息のかかったところに隠匿されている可能性が非常に高いことは
公然の事実ともいえる。
実際はオーブの一部の軍人・首脳陣を除いた世界の“みんながよく知っているが誰も言わない”当たり前の
確実性の高いとされている噂なのだが。
そして現在アストレイ、ムラサメなどのMSを多数持ち、大型空母を保有し、アマノミハシラという宇宙での
軍事拠点すらを有するオーブという国ははその国の規模からすればあきらかに一大軍事国家の部類に入る。
ただし、軍部に奉戴されているアスハ家当主の彼女には軍縮や現状維持を言い出すことは不可能な話だろう。
無自覚で無邪気なカガリにはそれすらわかっていないのかも知れないが。
そんな軍拡を行っている国家の元首が他国へ行き、理念だけで一方的な軍縮を相手に迫る。
それが政治といってしまえばそれまでだが、普通はそんな茶番はばかばかしくて聞いていられないであろう。
――なぜ、ザフトがフリーダムのことを知っている! 第一あれはキラとラクスにとって必要なものだ!
カガリはこのザフト軍人がオーブ内のトップシークレットを“知っている”ことに驚愕していた。
「だから、強すぎる力と……」
――今のザフトが持つ力は、戦争を呼ぶ“強すぎる力”だ! だから今回のようなことが起こったんだ!
自分が間違っていないと信じているカガリはなおもそのぶしつけなザフトレッドに反論を試みようとした。
「その“強すぎる”って基準、誰が決めたのよ?」
しかしアスカはカガリにその言葉を最後までいわせることなく言葉を続けた。
「見て、わかるだろう。あそこで……」
「ふ〜ん、どうせそれもあんたの勝手な価値判断、価値基準なんでしょうけどさ。
島国1つとコロニー1つで構成されているオーブと結構な数のコロニーで構成されているプラントとを
まさか同じ尺度で語っているなんてことないわよね?
まあ、あんたの頭の中には守るべき国民の数とか国土の広さなんて勘定に入ってないんだろうけどね!」
「いや、しかし……とにかく強すぎる力は戦争を呼ぶ!」
カガリは自分の信念が試されているようで、まだ、この軍人の言葉に反論しようと試みてみた。
「だとしたら連合から戦争を仕掛けられた2年前のオーブは強すぎる力を持っていたわけよね?
でも今のオーブはそれよりも弱い力、戦争を呼ばない程度の力しかもっていない。そういいたい訳ね?」
アスランからみても、なるほど、このソウリューという名の少女がいうことは言い方はともかくカガリよりは
理屈が通っているようにも思える。
――しかし、これは明らかにやり過ぎだ。まるでカガリがつるし上げにあっているようだ。
なぜ、こんなことが今、ここでまかり通っているのか、と彼はアスカを止める立場にあるはずのタリア艦長と
デュランダル議長の方を見た。
彼がそこに見たのはこわばった顔の艦長と彼女とは対照的に余裕の表情すら伺える議長が立っていた。
――議長? 笑っているのか? まさかこの状況を喜んでいる? いやそんなことはないはずだが……
「いや、そこまでは……」
過激なまでにたたみかけるアスカに自信を失いかけ、及び腰になっていくカガリ。
「いってるでしょうが! で、連合もザフトも周囲の国もすべてオーブは戦争を呼ぶような力を持っていない、
そう思ってくれていると。力を持っているがそれは身を守るためだけの力だと」
「そうだ、だ、だからこそみんなと手を取り合い、そして共に歩もうと……」
「あ、そう。 じゃあ、よその国へ侵略する気がないんだったら空母なんかいらないんじゃない?
航続距離の長い可変MSなんていらないんじゃない?
条約違反の核搭載のMSなんて隠し持っている必要はないんじゃないの?」
「いや、それは……」
――そうなのか? 私が言っていることは矛盾していることなのか? 独善的で間違っていることなのか?
両の拳を思わず強く握りしめ、自らの意志を奮い立たせようとするカガリ。
――いや、そんなことがあるはずない、のだが……
その時、MSデッキ内にコンディションレッドのアラートが鳴り響く。
ボギーワンの捕捉とコンディションレッドの発令、そしてパイロットの搭乗機での待機という内容の指示が
メイリンの声で艦内全てに流れた。
MSデッキ内にはこれまでとは違う緊張が走り、止まっていた時が急に流れ出したように整備班やパイロットは
みな、各々動き始める。
アスカは一度、カガリをにらみつけると彼女も出撃準備のためにその場を離れた。
「申し訳ありませんでした、議長。この処分は必ず」
そういってレイも搭乗機で待機するため、アスカの後を追いかけるようにデュランダル達の元を離れた。
「本当に申し訳ない、姫」
呆然とアスカの後ろ姿を眺めていたカガリにデュランダル議長は声を掛けた。
「え?」
「彼女、オーブからの移住者なので、よもやあんなことを言うとは思いもしなかったのですが…」
そう、今はこの一言を付け加えておけばよい。
ソウリュー=アスカといったかな、あのオーブからの移住者、いい仕事をしてくれた。
処分どころか褒めてやりたいくらいだよ。
これを彼女がオーブからの移住者の総意と取ってくれればよいのだがな。
そうすれば技術者の返還などという問題は彼女から切り出せなくなるだろう。
デュランダルはもう少し時間をかけて料理しようとしていた問題が早々に決着つきそうなので次の段階の一手へ
移ろうかと考えていた。
あれがザフトにいるオーブからの移住者の気持ちなのか?
オーブの国民だったものがあんなことを考えているのか!
あれがザフトに拉致されてオーブに帰れなくなったもの達なのか?
彼らが望んでここにいたいというのなら私がここへ来たのは無駄ということか……。
ばかげたことをしたものだ。
ユウナ達を誤魔化してまで、ここまで来たというのに……
そして2年前のお父様のことを無駄だったというオーブの国民だった者がここにいる……。
デュランダルの言葉にカガリはまた呆然とするのだった。
以上です。
お休みなさい。
GJ。
さすがはアスカだな。
脳みそが足らないカガリにわかるように、
びしばしと切り捨てる言い方だな。
だが、それを利用して政治的手腕を発揮してるのが、
デュランダルか…。
普通に政治が分かってる人間でも苦労しそうなのがよくわかるわ。
だが、無駄でもいいからこれで少しは学んでほしいよ、カガリ。
……もっとも、負債の呪いは相当な展開を経験させないと、
乗り越えられないからなぁ…。
アスカもデュランダルとのやり取りがこの先あるだろうし、
どう展開させていくのやら…。