ガンダムSEED 逆襲のシン・アスカ EPISODE XV
49 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:00:38 ID:???
国外追放、と言うのか。C.E73戦後、シンは復隊を許されたものの冷遇され、なし崩し的にプラントを追われた。元から風当たりは強かった。
向けられる眼差しも。何せ、自分は『デュランダルの私兵』だったのだから。当時最新鋭にして、ザフトの象徴となるはずだったMS、デスティニーを
与えられ、デュランダルとの接触も多かったシンを、新しいザフトはそう評価した。彼の力と人柄を汲み取った上で、供に戦う同志として迎え入れた
ラクス・クラインにも、シンに対する迫害を止めることは出来なかった。むしろ、ラクスというカリスマを取り巻く熱狂的支持者が、シンを危険分子
として排除しようとしていたのだから、彼女が何をしようと無駄だったのだ。シンは一人、恋人だった少女、ルナマリア・ホークとも縁を切って、地球に落ち延びた。
本当は、彼女とは一緒にいたかった。いて、欲しかった。けれど、想えば想うほど、彼女を隣には置いてはおけなかった。
「それが今じゃ、あれだけ憎んでいたオーブに、か」
監視が付いていることには最初から気付いていた。今、同居している女性がそれだ。娼婦だった。喰ってやった。それからも関係は続いている。
演じている恋人は甘く心地良く、毒だった。見られていても関係ない。自分はもう、何もすることができないのだから。二年前に起こった反乱を
知った時、眠っていた何かが、ほんの少しだけ動いた。だが、その後のプラント市民達の動きを知るや、それはそれまでよりもさらに深く沈んでしまった。
彼らは受け入れた。反乱を起こした、アスラン・ザラ達を。戦うことが怖かった。というよりも、一般市民にとってはどうでもいいことだったらしい。
彼らの生活は、変わることもなく続いている。人々がこれまでどおりなのに、何をカッコつけて立ち上がろうとしている?シンはその日、久方ぶりに享楽に酔った。
もう、いくら怪しんだところで、何も出てきはしない。いい加減、気付けというものだ。もっとも、それまでこの与えられた関係が続くのなら、それはそれで構わない。
飢えだけは、あの吸血鬼の吸血欲のように絶え間なく続いているのだから。
50 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:02:55 ID:???
ふと、シンは振り向いた。
「ん?」
何となく、何か違和感のようなものを感じたから。特に意味は無かった。誰か、知っている人の気配を感じた気がした。
自分が歩いてきた道に、一人の少女が立っていた。
「……」
ぽつんと。そんな表現がしっくりくる。彼女は“一人”だった。そこだけ切り離されて、周りの景色とは決して溶け込まない。
いや、溶け込めない。
日差しにやられ、誰も彼もが肌を焦がしているというのに、その少女だけが、白かった。
麦藁帽になびく白い髪。新雪のように白い肌。赤いワンピースだけが際立って、シンの眼に焼きついた。
きっと、ここからでは陰に隠れて見えない瞳も、赤いのだろう。シンは何故だかそう思った。それは半ば確信だったけれども。
「あっ……」
口が独りでに開いて、何かを紡ごうとする。
それより先。黄金の輝きが街の中心を貫いた。
街は一瞬で災厄の真っ只中に。ビームに貫かれたビルが次々と倒壊していく。街を襲う突風と粉塵。着陸した一機のMSの噴射が、熱と風を巻き上げ、下界を削る。
巨大なスクリーンを中心に、オーブ軍服に身を包んだ男達がそれぞれに割り振られた座席に腰を下ろしていた。胸の階級証を見ると、全員が佐官以上だということが分かる。
『敵MS、市街地に侵入』
感情を感じさせない、機械的な音声がスピーカーを通して響く。分かりきっていた報告に、それでも一人の佐官がいきり立った。
「我が方の軍は、一体何をしていたのだ!」
「落ち着け。敵の狙いは明らかにモルゲンレーテだ。予期せぬ事態ではあるが、最悪の事態は回避された」
「さよう。これは幸いだよ。所詮、今のプラントと反乱軍は、海賊の成り上がりに過ぎぬさ。抗議に意味は無。こちらで勝手に処理させて頂こう」
「……多少の犠牲は付き物、か」
それぞれの打算で、現在の状況を噛み砕こうとする上層部。市民の生命を軽視した、国民を護る立場にあるべき本来の姿勢とは大きく違うが、これも彼らの常套手段。
オーブの国防は、民を護る為のものではなく、『国』を護るためのものなのだから。
「あの、なんと言ったか……ゲルググか。あの一機や二機、我が方のヤマトで十分に対応できるよ。核など、近いうちに過去の産物に成り果てる。もうエクス・ドライブの時代は近い」
自軍の優位を疑わない彼らはしかし、自分達の保有する兵器が如何なる問題を抱えているかも知らなかった。
51 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:17:59 ID:???
規制に引っ掛かりましたorz
52 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:19:37 ID:???
『命令は撃退だ。しかし、核搭載機を市内で破壊するわけにはいかん。四肢の破壊。なんにしろ、動力は避けろ』
「自爆の危険性は?」
『……海上に誘い出して対応する』
「……了解」
シンの目の前で、一機のムラサメ三式が戦闘機を模したMA形態からMSへとその姿を変えた。着地と同時、腰のウエポンラックに収納されたビームサーベルを抜き、すぐさま刃を展開。
車道を滑るようにゲルググへ肉薄する。ムラサメ三式が黄金に輝く刃を振り下ろす僅か前、ゲルググは腰を沈めると前面に配置された推進器を吹かして一気に後退。その一太刀を
危なげなくかわしてみせた。今度はゲルググが攻撃に転ずる。右手に構えたライフルを腰にマウントすると、左腕に固定したラグビーボールを平面にカットしたような大型シールドから
サーベルを取り出して摺り足の姿勢でムラサメ三式との距離を縮めて斬りかかった。振り下ろしの体勢に入った瞬間に、ビーム刃が形成された。シンはその様子を見つめて、
「負ける」
一言だけ残して走り去った。
あれだけ続いていた人の川も、もう抜けていた。
シンの呟きは予言だったのか。数回かわされた攻防を制したのは、ゲルググだった。コクピットを一突きされたムラサメ三式は、力無く倒壊したビルに沈んでいた。
ゲルググは、ゆっくりとその巨体を動かす。隆起に富んだグラマラスなボディを包む光沢の青に、飛来する後続の敵機を映しながら。
「ちぃっ!化け物が!」
ムラサメ三式のパイロットは、ゲルググを前にして驚愕に震えていた。操縦桿を握る手が震える。パイロットとしての矜持が、自信が、脆くも崩れていく。
白兵戦を得意とする一機が先行して勢いを殺し、空中からの牽制で、海上へと案内する。そのはずだった。実際はどうだ。先制攻撃を仕掛けたムラサメ三式は容易く倒され、
あっさりと一個小隊が片付けられてしまった。
「こんなことが……」
失意の声を溢した時、彼は真下から飛び込んできたゲルググの一刀に、真っ二つに断ち切られた。
その後ろで、戦闘に参加すらせず、ただ浮いているだけだった一機のMSが戦闘から逃れるように降下を始めた。
そのMSのパイロットは、オーブ軍の中でも精鋭と呼べる逸材であった。あのメサイア戦をも戦い抜いた彼は、
自分のパイロットとしての実力に、確かな自信があった。
そんな彼が、たった一機のMSすら制することが出来ていなかった。
「一体、なにが!?」
彼の悲鳴に、答える者はいなかった。街の一角に新たに備えられたかのような空き地。先程までの戦闘で作られたそこに、MSは着陸した。
機体の自由は利かないが、外の光景だけは入ってくる。
そこで彼が見たものは、白の少女と、一人の青年の姿だった。
53 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:20:54 ID:???
燻る炎の中を行くシンは、引き寄せられるようにそこへたどり着いた。原型を留めていないMSの残骸―ゲルググに一蹴されたムラサメ三式の、
許しを請う様に天に突き出された掌。
白い少女は、そこに腰掛けていた。
「君か」
「……」
シンの問いに、少女は答えない。麦藁帽が作る陰で、表情も読めない。
感情を感じさせない少女に、シンは薄ら寒いものを感じた。
一分ほど、シンが少女を一方的に見つめていただろうか。ふと、シンが気を逸らすと、
「あなたは」
少女が口を開いた。
「!?」
驚き、少女を凝視するシン。戸惑いと、期待。期待?自分は、この少女に何を期待するというのだろうか。
「あなたはまだ、生きている?」
その問いに、どのような意味が込められていたというのだろう。少女の背後。彼女を守護するかのように、一機のMSが降り立った。
シンはそのMSを、静かに見上げた。
灰色の、MS。直線で構成された、連合のダガータイプMSを髣髴とさせるフォルム。シンはしかし、このMSにかつての愛機達に感じた愛着のようなものを感じた。
それは暖かな感触。苦難を供にした彼らに抱いた想いとは、同じようで違うその感覚を、シンは持て余した。
「(いや、まったく違うはずだ。ならこいつは……)」
戸惑うシンに、少女は言う。
「生きているのなら、戦って」
『オーブ、オノゴロ島市内にて、所属不明機とオーブ軍MS隊の交戦を確認』
「やってくれるぜ。にしても地球最強さんは、新型MSの一機も持て余すのかい!?」
『おおかた、エクス・ドライブの不備でしょう。“粗悪品”しか保有していないオーブじゃあ、あの奇跡も、ただの物言わぬ動力扱いなのよ。
こちらとしては、予想通り、と言ったところかしらね』
「……まったくもって、救えんね」
『エド。私達は任務を果たすだけよ。これからあの国がどんな運命を辿ろうと、関係ないわ』
54 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:23:32 ID:???
機体が、鳴く。そんな表現が自然か。シンは今まで感じたことの無い感覚を乗り込んだMSから感じた。
搭乗したパイロットは締め出した。後は動かすだけ。
「この感覚は、何なんだ?」
このMSは生きている。シンはそう思った。この唸りは、生物の鼓動に近い。
ドクン。機体の中心に火が付いた。
ドクン。ゴーグルの中に光が奔る。
ドクン。何かのギアが、一気にかち合っていく。MSの中で。シンの中で。
そして立ち上がるは灰色の翼。
その名はジム。
「上手く……いってくれよ」
陽光と爆煙を等しく受けて、そのゴーグルに崩壊する街並みを映した巨人は、躊躇い無くゲルググへと踊りかかっていった。
不思議と、あの少女への違和感は消えていた。
次回 第二話 『染まる日々』
55 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:26:52 ID:???
第一話はここまでです。
用語とか色々、なんだかおかしなものが出たりしましたが、本編にて段々と説明していきます。
プロローグではシンが出ず、一話ではアスランとキラが出ないという謎仕様。ちょっと反省してます。
シンの立場なんかは、今までの先人さん達のシン・アスカ像とは違うものを提示したかったのでこんなのに。
それではまた、第二話で。
GJ!……生きているような鼓動?光るゴーグル?ジム?
両手から星を断ち割るビームを吐き出したり、竜巻みたいな光で超広範囲を
殲滅するでかいキャノンをぶっ放したりするんでしょうか?
>>40 「争いのない、理不尽に人が死なない世界」
そんなものは、幻想の中にしか存在しないことを教えられた。
全て失くした。
信じた理想は砕かれ、運命を切り開く剣をくれた人と未来を託された親友は死に、
眼前にあるのは戦火の爪痕と、勝利を誇る敵。
憎むべき仇が勝者の世界など認めない。
あいつらが世界の守り手になるのなら……壊してやる! 世界を!!
……なんてことを妄想していた時期もありました
読むのはこれから、その前に何はさておき保守しとかないと…
気になったんだがスレタイのローマ数字の3って皆さん普通に見られますか?
俺はPcでもケータイでも見えるよ保守
オレもローマ数字は問題ないな
しかしGJ!
GM!量産期燃えの俺にはたまらない!!
しかも『切り裂きエド』と『白鯨ジェーン』ですか!?
MSVの連合トップレベルエースの2枚看板!?!?
これは全力で待つしかないな!全裸ネクタイで
ここにおけるジムはザクヲ等と同じ方法論の、ただし核か未知の動力の機体って事?
それともUCから流れてきた…なんて辺りはおいおい語られるだろうとしてとりあえず、
既存のジム系の中で一番イメージが近いと言えそうなのはどれになりますか?
63 :
C.E78:2007/12/01(土) 13:04:26 ID:???
>>62 強いていえばジムカスタムやクゥエルですかね。
一応、ダガーの最新機種ということなので、+αダガー&ウィンダムと言った感じです。
シンの乗る機体は微妙にスターゲイザー入ってたりしますが、後に出てくる量産機は
前述のイメージですね。
やっぱクゥエルか・・・流石に素GMにゃ親近感は沸かんわなw
MG版ならまだしもアニメ・HGUC版ではさすがにねえ。
保守
>>63 ブルーディスティニー1号機じゃないの!?
青運命一号は性能的には陸GMと同じだろ?
クゥエルの方が性能高いぞ
まぁクゥエルは低重力地や無重力で性能を発揮できるように調整されてるから
地球上で戦うと負ける可能性もあるがなw
青運命がヤヴァイのはEXAMの先読みとパイロットを無視した機動なんだけどな
青運命一号機は、ジム頭以外はほぼ陸ガンを大幅に改修した機体じゃね?
ブルーディスティニー1号機は頭部だけ陸GM+EXAMシステムで機体は陸戦型ガンダムを強化したもの
いわば、CEで言えば
ストライクエンハンスドタイプにEXAMの乗ったダガー頭くっつけたようなもんだろ
ブルーデスティニーの一号機は
>>67 BD一号機じゃないの?って……作者その人のコメントに何を。
まあもっとも過去のSSの影響で、逆襲シンの専用機といえば
乗員の安全何それ美味しいの?な殺人ピーキー機と相場が決まっちゃってるのも事実だけどね。
>>72 BD一号機じゃなくてちょっとガッカリという意味のコメントです
というか真っ先に思いついたのがブルーディスティニーなんだ
>>73 あいやこっちも言い方が悪かった、申し訳ない。
意外とイデ〇ン並にでかかったりしないよなぁ
イデオンと種死のクロスが読みたいと申すか
…即効でイデ発動しそうだw
77 :
C.E78:2007/12/01(土) 20:55:36 ID:???
明言させてもらいますと。
イデは発動しないし、大きくもありませんorz
何だか期待を壊すようで悪いのですが^^;
ジムについてですが、皆様の妄想で補完なさってください。
描いてみたのですが、まあ微妙でしたので。
可変翼付けたジムを、それぞれ想像なさってください。
デスティニージムを想像してしまった。
ジェットストライカー付けたダガーLを(ry
スローターダガーの頭だけジムクゥエルに…あるいはクゥエルにエールストライカーを
ジムディン………いやなんでもない
ちょっとゴツくしたジムカスタムにストライカーパックの接続機構がついた感じで想像してた
もちろん今はジェットストライカーなw
ジェットストライカーって1/144キットで再現されてたかな。
MIAのネオンダムに付いてたのは憶えてるんだが…
保守
就寝前の保守
良くぞ生き残った、我が精鋭達よ!
風雲ラクス城
88 :
76:2007/12/02(日) 08:29:10 ID:???
保守代わりにスレ違いを承知で投下
(ここから先は故塩沢さんの声でお読みください)
ソロシップのクルーはイデオンとソロシップの破壊を決断するが
それを好機とイデオン奪取を企てるバッフクラン
だが彼らの目の前で忽然とイデオンとソロシップは消え去り、世界の運命がほんの少しだけ変化する
そしてイデがたどり着いたのは怒りと憎しみ、欺瞞に包まれた世界
イデが吼え、ビッグバンの再来の様に輝いた!!
伝説巨神イデオン VS SEED 最終回 「素晴らしき世界」
スペェース・ラナウェイ!!
89 :
C.E78:2007/12/02(日) 10:23:35 ID:???
おはようございます。
報告なのですが、SSの投下は一週間に一回。土曜日とさせていただきます。
ストックが10話とかあればばんばんいけるんですが、5話までしかないので、
期間を長く取って投下速度を安定させたいので。
すいませんが、ご了承ください。
>>89 マターリとよろしくお願いします。
もし、次回投下時にこのスレが落ちていて、
次スレがなかったらIF系SSの統合スレを探してみてください。
(異常事態下なので、統合スレが先になくなってる可能性もありますけどw)
当然ですが、統合に投下するか、新スレ立てて投下するかの判断は作者の人の任意です。
と書いてみたが、ここはアフターなんで、IFスレ(○○を××というスレタイだ)の範疇じゃないような気もする。
まあ、SSスレは他にもいくつかあるんで、
新スレ立てる
どれかに合流
どっちでもおk
そう簡単にスレ落ちないだろうから杞憂だし。
もしシンが種死の後に主役になったら、ってことで立派にifモノですよ、とこじつけてみる。
じゃ、じゃあシンは種死では主役じゃ無かったって言うのかコンチクショウ!!!
と、言ってもいいかい・・・・?
>>93 うん、なんだろうこの気持ち
なんか心にきたよ
シンが種死の後に(また)主役になったら
と、心の中で修正すればいいじゃない。
土日過ぎかけても油断禁物保守
保守
保守