ガンダムSEED 逆襲のシン・アスカ EPISODE XV
前スレがいきなり落ちていてびびった
シンラスボススレも落ちちゃってるしな…
新作求む
逆襲(笑)
前スレが落ちてたんで立て直しました。
てか半日で落ちるって・・・orz
ふがふが(ほしゅ)
>>1乙
ここは落ちてもすぐ立て直してくれる人がいるからいいね
帰宅後、見てみたら落ちててびっくりしましたorz
プロローグ&第一話、明日の早朝から投下出来そうです。
ここの形式で10,000文字って多いんですかね?
>>1乙
>>4 自分の取得済みログによると、前スレの最終書き込みは今朝の8時49分だぜ。
別のスレでは10時36分の書き込みなのに、落ちてたりと、恐ろしい事態が進行中のようだ。
前スレのスピンオフで思い出したが、
少し前にSCA版航海日誌があるとかないとかが微妙に話題になってたな
>>7 10,000文字だと10レス以上行っちゃうから確実に連投規制ひっかかるな
キリがいいなら、プロローグと1話で一度区切った方がいいかも
>>10 なるほど。分かりました。それではちょっと区切ってみますね。
遅れましたが、
>>1乙です(汗。
このスレを立ててくれる人に感謝を……。
うお、寝過ごしたorz
それではプロローグ投下しますね。
翼折られ、剣砕かれて月に沈むは“運命”を背負いし魔人。
今はもう動けない。ただ静かに刻の流れに乗って、月の風に身を削る。
その瞳に宿っていたであろう輝きは、今は無く。空虚な眼差しだけを宇宙に向ける。
―その翼は何のために?
標された運命を次の時代へ繋げるために。
―その剣は何のために?
立ちはだかる敵を裂き、次への扉を切り拓くために。
今はもう全て亡くなった。
抱かされた理想も。
それを護る為の力も。
抜け殻の鎧の手甲に、力が満ちることはもう無い。
それでも……
―敗北の先。水の星へと帰っていった主の無事を、麗しいこの月より信じて眠ろう。
翼閉じ、深遠に消えたのは運命の子。世界の流れに取り残され、今も眠る。
それでも何れ目覚める日は来るだろう。かつての主。炎の瞳を持つ少年とともに。
C.E76。C.E74に発足されたプラント現政権は事実上、消滅した。
突如としてラクス・クライン政権に反旗を翻したのはリ・ザフトを名乗る武装集団。
当時のザフト軍主力機、ザク・ウォーリアーを上回る性能を持ったMS―ゲルググによる
奇襲戦法によって、開戦間もない混乱期の間に、ザフト宇宙軍の主だった拠点を次々と陥落していった。
中には投降し、正規軍に牙を剥く部隊も現れる始末。そこまで両者の力の差ははっきりとしていた。
これに対し、プラント―ザフトはキラ・ヤマトの駆る当代最強のMS、ストライクフリーダムを中心とした
作戦を展開。圧倒的火力に物を言わせ、一気にリ・ザフトとの総力戦に望んだのだった。
この時、ザフト軍旗艦エターナルには、プラント最強評議会議長、ラクス・クラインの姿があった。
ザフト軍の士気は、歌姫の加護もあって、最高潮に達しており、数で勝るザフト軍は徐々にその勢いをもって
リ・ザフトを圧していった。ザフト軍は、己の勝利を確信した。これまで負け続けでも、ここで勝てばひっくり返せる。
だがその時、リ・ザフトの首領――紅い騎士が現れた。
『アスラン・ザラ。ナイトジャスティス、出る』
そのMSを見た者は、己が目に映ったそれを信じることが出来なかった。
かつて、歌姫と共に巨悪と戦ったとされる英雄、アスラン・ザラが、
その“巨悪”となって世界の前に起っていた。
『親愛なるリ・ザフトの諸君。恐れるな、正義は我らと共にある』
彼は常に“正義”を掲げて戦う。平和を共に享受するべく戦った同志達の前に敵となって尚、彼は己の正義を振りかざした。
『軟弱なる現プラント政権を打倒し、コーディネイターによる世界の真の統治を目指し決起した我々を、
止め得る者は何処にもいない』
アスランを思想で止められる者はいなかった。一度起こった動揺は止められない。
ザフト軍は英雄の裏切りによって進軍速度を落とし、アスランの宣言に力を取り戻した
リ・ザフトはそんな弱小なる自分達の古巣を駆逐していった。
『さぁ供に往かん!真の正義を胸に抱きし同胞達よ!』
宇宙を翔ける赤と青の光。螺旋を描くように舞い、時折り交じり合っては傷付け合う。
『アスランっ!』
「キラァ!」
キラ・ヤマト―ストライクフリーダム―とアスラン・ザラ―ナイトジャスティス―は、
鍔迫り合ったまま円筒型コロニーの内部へと突入していく。かつて、連合軍が開発した戦略兵器、
レクイエムの根幹を成していた巨大ビーム偏向筒。戦後、解体されたはずのそれは、確かに今、存在した。
『こんなものを持ち出して、今更何をしようっていうんだ!』
「お前に、話す必要もないだろう!」
戦闘宙域の遥か外に控えるリ・ザフトの旗艦、グレズヘルムが誇る主砲こそ、レクイエムに代わる粛清の砲火。
その名はオーディン。
『あんなもの、絶対に撃たせはしない!』
正規ザフト軍の最優先目標。それはアスラン・ザラではなく、あくまで旗艦の撃沈と、ビーム偏向筒の破壊だった。
しかし、オーディン破壊に向かった主力部隊はリ・ザフト決死の防戦に攻めあぐね、偏向筒破壊に回った部隊はキラを
残して全滅させられていた。
恐るべきはリ・ザフトの首領たるアスラン・ザラの駆るナイトジャスティスの勢力。キラのストライクフリーダムを
もってして、満足に渡り合うことが出来ずにいた。今の拮抗状態は、スーパーコーディネイターであるキラの驚異の
適応能力が有効に利いているに過ぎない。
アスランはキラの叫びを意に介した様子も無く、それどころか鼻で哂ってみせた。
「オーディンどころか、この偏向筒すら落とせなかったお前達に、何が出来る!」
身体を押し込み、強引に鍔迫り合いを解かせるナイトジャスティス。頭突いて怯ませ、切り払い。
キラとストライクフリーダムのコンビネーションですら、かわしきれずにつま先を焦がされる。
『うっ!』
「甘い!」
ナイトジャスティスの猛攻の前に臆したキラに、アスランは追撃の手を緩めはしない。
背部のリフターを分離させ、ストライクフリーダムに向かって突貫させた。戦闘機を
極力薄くしたようなフォルムのリフターが淡い緑光に包まれていく。
起源をユーラシア連邦の光波防御体に持つその力は、かつて聖者を貫いたとされる槍と、その担い手の名――
『うわぁっ!』
ロンギヌスが、ストライクフリーダムの下半身を粉砕した。
・
・
・
目覚めて最初に目に入ったのは自分の血だった。どうやら額を切ったらしく、無重力に浮かぶ赤い粒が、バイザーの中をたゆっていた。
「ぼく、は……」
負けたのか。動かそうにも、愛機たるストライクフリーダムはぴくりとも動かなかった。供給が止まったVPS装甲も色を失っていて、
燃え尽きた灰のよう。
キラ・ヤマトの敗北。それは遠回しに、ザフト軍そのものの敗北を告げていた。
―ザフト軍旗艦、エターナル撃沈。プラント最高評議会議長ラクス・クライン死亡。その報が本国に届いたとともに、
評議会はリ・ザフトの息の掛かった議員を中心として制圧された。
彼らは、パトリック・ザラを信奉する過激派だった。
CE.76。平和の歌姫が約束した永遠の平和は脆くも破られ、世界は再び混迷の中へと飛び込んでいくことになる。
それでもまだ、一人の青年の瞼は閉じられたまま。それが開かれる日は……
C.E76。プラントに宣戦布告したリ・ザフトはその武力をもって当時の政権を撲滅。評議会を掌握し、新政権を打ち出した。
コーディネイターを新人類とし、ナチュラルを“旧”人類と定めた彼ら新生ザフトの方針はかつてのパトリック・ザラ政権を
髣髴とさせた。
C.E76末。旧ザフト軍の残党はネオザフトを名乗り、現政権に宣戦布告。プラント最高評議会議長、エザリア・ジュールは
すぐさま軍を動かし、これに対抗。
誰もが疑わなかった、数で勝るザフト軍の勝利。しかし、その予想は大きく裏切られることになる。
ネオザフト最強の剣。クライン派が抱える秘密組織、ターミナルの遺した遺産。キラ・ヤマトの新たなMS。
その名は、『エクセリオン』。
「……」
エクセリオンの象徴である、十枚の光の翼が、リ・ザフト軍のゲルググを切り裂いてゆく。全身を刺々しい鎧で覆われたかつてのストライクフリーダムは、
しかし以前の美しさを失っていた。今そこに在るのは、怒りと復讐に燃える男の爛れた心が表となった、悪鬼の拳。純白のボディが対照的で。しかしそれでも
負の情念は隠せていなかった。
「……」
キラは外部から響く敵兵達の悲鳴を一身に受けて戦う。ほんの少し前までは同胞だった。そんなことは関係ない。なぜなら、彼らは裏切ったのだから。
自分を。
ラクス・クラインを。
平和の為だけに戦った彼女が、何故に“正義”に裁かれなければならなかった?
自分だけならばよかった。同胞が、彼女を裏切ったことが絶対に許せなかった。
「……」
違う。間違っている。間違っているのはその“正義”だ。親友だったはずの男が掲げた正義こそ、歪んだ“悪”だ。ならばその“悪”は本当の“正義”に
よって討たれねばならない。
それが出来るのは、自分だけだ。自分と、その剣であるエクセリオンだけだ。
「……誰にも、邪魔はさせない」
両腰に携えたビームサーベルの柄に手を伸ばす。僅かな間だが攻撃の手を緩めたエクセリオンに、三機のゲルググが殺到した。三方向からの同時攻撃。
放たれた三つのビーム。直撃コースのそれを、キラは避けようともしなった。
否。避ける必要など無い。キラは敵の攻撃の先を読み、その軌道を斬っていた。切り払われる三つの光。ゲルググのパイロット達は今起こったことが信じられなかった。
「僕の邪魔は、させない」
刹那、エクセリオンの全身が白く輝いた。
ほんの少し前までは同胞だった。けれどもう違う。謝れば、許してあげたかもしれない。でも、もう許すことも出来ない。彼らは皆、もう死んでしまったのだから。
こうして今も、宇宙の塵になって漂っている。エクセリオンの眼前を浮かぶ何かを、キラは器用にエクセリオンのマニュピレーターを操作して掴んだ。
「ふふふ……はははっ!」
ほら、君達が間違ったからこうなった。間違いを犯したら、罰が必要だよね。僕は正しいから、君達を罰するよ?
『僕が、君達を正してあげるよ!』
エクセリオンの――キラ・ヤマトの叫びが、虚しく響いた。
C.E76末。かつての英雄は叛徒の長となった。もう交わることの無いだろう道に進んだ友を妬んで。
こうして宇宙に生きる新人類は、同胞殺しの戦いに身を投じることとなった。しかし、この戦いが彼らの間だけで終わるはずも無い。アスラン・ザラが旧人類と断じたナチュラル達の生きる母なる星、地球。大地から宇宙を見上げる者達も、迫る脅威に立ち上がろうとしていた。
一つの種として、外敵を排除しようとする本能。
一人の人として、譲れないものを護り抜こうとする意志。
いつか夢見た栄華を、未だ求める者の策謀。
全てを取り込み、世界は何れ来る終末まで胎動を続ける。
C.E78。人々はまだ、戦い続けていた。
機動戦士 GUNDAM SEED ―C.E78―
『何時か還る紅花』
〜第一話 『接触』に続く〜
プロローグはここまでです。
いや、感覚がわからない。投下中にもころころと行間変わってます。
プロローグにはシンが出ないから、第一話と同時投下したかったのですが。
それでは第一話でまた。
GJ!!
まだシンが出て来ないが月に運命がいるのが良いね。
文章も丁寧で読みやすい。
ザラの道を行くとはアスラン、何があったんだ。
新作投下乙!
乙。
凸は、ラクスに流されてザフト裏切ったり、デュランダルに着いてザフトいったりまた裏切ったりしてたけど、
こんどはザラ派の残党の御輿か。
ま、アスランじゃ仕方ないな。
……逆襲対象はアスランっすか? シンが出てくる第1話に期待。
新作キタ!
第1話待ってます
プロローグなのに感想を下さった皆さんありがとうございます。
第一話は明日にでも……と行きたいですが、私生活の兼ね合いがありますのでorz
出来ればやはり早朝から、になるとおもいます。
投下は職人さんのペースでいいと思いますよ。あとできればコテ付けお願いします。
それにしてもシンはどうなるのか・・・キラと共闘かアスランと共闘か・・・それとも第3勢力か
私はシンが第3勢力を作って三国志的展開になると思うんだが……
アスラン超変貌の原因って、カガリがナチュラル(withブルコス?)に暗殺されて
ナチュラルに絶望しちゃったとかか?
アスランって絶望するほど他人(ナチュでもコーディでもいいけど)に何か期待したことってあったっけ?
基本的に誰かを見込んではすぐに見限ってる(見限られることもあり)気がするんだが。
最後にメイリンとくっついたアスランだから、今更カガリが死んでも絶望とかしないよなぁ。
GJ!
楽しみに待ってます!!
>>31 最後にルナとくっついたシンだからステラが殺された恨みなんか忘れてると?
>>33 シンとアスランはメンタリティが違うからなぁ。
シンは家族の恨みで何年も頑張れた奴だし、アスランは自分で父親殺せる男だし。
ただ、原作のシンだと、ステラの恨みどころか他にも色々と忘れ果ててキラに屈服してたが。
それは見なかったことにしてる。
見なかったことにするなら本編語りなんて薮蛇だから最初から止めたほうがいいよ
36 :
第一スレより:2007/11/30(金) 21:19:40 ID:???
劇場版ガンダムSEED 逆襲のシン・アスカ
1 :通常の名無しさんの3倍 [sage] :2007/01/08(月) 22:34:12 ID:???
ネオ・ロゴス(仮)を率いるシンがラクス教に宣戦布告
まあ、元がそんなスレです
別にどうでも良いよ
ファイナルプラスを無かった事にするっていうのは簡単だが、なぜあのシンが
ラクシズを受け入れて彼らの下に所属したのか?と考えるのは意味があるとおもう。
負債補正、とかじゃなくて。
というのも、この前完結したSSではそれが書かれてたから。要するにあのシンは、
平和にするんなら誰でも何でも良いと思って、最強の彼らに期待した。別にそれが
唯一の答えとは思わないが、何かしら説明があったら面白いと思う。
>>38 実は面従腹背で、受け入れたフリしてラクシズ崩壊を目指すとか
慰霊碑を後にして、ルナと2人きりの時に
「ルナ…俺はラクシズをぶっ壊す!」
と決意表明とか
>>38 シンにとっては、「争いのない、理不尽に人が死なない世界」こそが求めるものなんだと思う。
だからたとえ最大の敵だったとしても、その世界を作り上げることができるならそれでいい、みたいな感じ。
それと、メサイア戦で全て失くしたのも大きいんじゃないかと。
ルナは生きてるとはいえ、信じた理想を完全な砕かれて、未来を託してくれた親友も死に、眼前にあるのは戦火の爪痕だけ。
その中で、まだ理想を実現する道があるというのがある種の安堵になり、涙を流したのではないかと思う。
多少無理があるかもしれないけど、俺はこう考えてる。
新作が来てると聞いてぶっとんで来ますた
GJ!
次回の第一話にwktk
1スレ目1の大予言か
それともGSCI氏の茶目っ気か。
まあ偶然だろうけど
>>29 アスランは福田の戯言信じるなら、種死終盤でもキラ達に懐疑的で何が正しいのかよく分からん状態だったとか
後、アスランは最後までナチュラル見下してたはず
ハイネに「俺達は馬鹿なナチュラルとは違うだろ?」とか言われて笑ってたぐらいだし(ちなみにシンやルナ達は笑っていない)
なんだかんだ言ってザラパパの子供だし、ナチュに母親殺されてるしな
AA乗ってもたいしてナチュと話してなかったうえすぐ永遠に移ったし・・・
カガリにも上から目線だったような(保護者面?)
ちゅうかアスランは誰に対しても上から目線だったと思うけどな
なんていうか基本自分の意見が通って当たり前と思ってるというか
46 :
C.E78:2007/12/01(土) 06:53:27 ID:???
さて、それでは投下します。
47 :
C.E78:2007/12/01(土) 06:55:25 ID:???
「一緒に戦おう」
あぁそうか。俺は甘えたかったんだ。殺し合った人達が、俺を受け入れてくれた。
それに、縋りたかった。
戦おうじゃないか、一緒に。俺がするべきことは今も変わらないはずだから。場所なんて関係ない。これからも俺は、戦っていけるのなら……。
でも……世界は何時だって、俺に冷たい風を運んでくる。
C.E78。彼はまだ、深い眠りの中にいる。
機動戦士 GUNDAM SEED ―C.E78―
『何時か還る紅花』
〜第一話 接触〜
オーブ連合首長国。大小様々な島からなる、技術立国である。もっとも、その繁栄を支えるのは技術と言っても軍需。
最新のMS開発技術によるものではあるが。
C.E78において、オーブは“地球でもっとも強い”軍隊を保有することでその名を馳せていた。
鼓膜を病的なまでに苛む騒音が、今日も港に響く。本土防衛用MS、『ヤマト』の誇るオーブ最新技術の塊、
エクスドライブの“安定しない”駆動音だった。元々、エクスドライブの『エクス』は『X』。すなわち
『未知』を示す意味で使われていた。何が未知なのかは分からないが、内部でもその『未知』を知るものはごく
僅かだったそうだ。なんでも、ある組織からの贈り物、だったらしい。実しやかに囁かれているが、真偽の程は定かではない。
核分裂炉に匹敵する出力をたたき出すモンスター。しかし、その代償なのかなんなのか、この怪物の唸り声は猛獣のそれであった。要するに、
「……うるさいんだよ。相変わらずだな、あの新型さんのぎゃあぎゃあ声は」
48 :
C.E78:2007/12/01(土) 06:56:57 ID:???
その男は埠頭にぽつりと立って、釣りを楽しんでいた。先程まで、入れ食いと言っていい盛況ぶりだったというのに、あの迷惑MSの群れが飛び去っていってから
ぴくりとも竿は動いてくれなくなった。
最悪だ。小市民の束の間の休息を奪って、何がそんなに楽しいんだ。
「今日はもう駄目か、な」
男は名残惜しそうに、リールを回し始めた。僅かに残った餌を、海に放ってやる。オキアミだが、まあご馳走だろう。この海の魚は、基本餌に飢えていた。
「明日もよろしくな」
魚は友達。あ、でも明日は雨だったな。男、シン・アスカは薄ら笑いを浮かべて大海原と向き合う戦場を去った。
帰りに雑貨屋に寄って、生活必需品を幾らか補給しておく。同居人が切り詰めてくれているお陰で、生活に苦はないが、これくらいのことは
手伝ってやりたかった。まったく。人も変われば変わるものだとシンは思った。
「今日は一段と暑いな」
空いている右腕で、額の汗を拭う。柄のない白いシャツと、紺のジャージという、飾り気も何もない格好。もっとも、暑さをやり過ごせるはずもない。
暑いものは暑かった。こんがり焼けた肌に熱がこもっていけない。
ふと、歩道の遥か先を見やった。
「逃げ水、か」
蜃気楼の一種。追えばそれだけ向こう岸へと逃げていく湖。渇きに喘ぐ人々は、そうと知っても追いかけるのか。
「……馬鹿らしい」
柄にも無く感傷的になっていたらしい。似合わないその装飾を、頭を振って捨てた。
「さっさと帰るか」
今は冷房が恋しかった。シンは買い込んでいたはずのビールが切れていないことを祈った。
49 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:00:38 ID:???
国外追放、と言うのか。C.E73戦後、シンは復隊を許されたものの冷遇され、なし崩し的にプラントを追われた。元から風当たりは強かった。
向けられる眼差しも。何せ、自分は『デュランダルの私兵』だったのだから。当時最新鋭にして、ザフトの象徴となるはずだったMS、デスティニーを
与えられ、デュランダルとの接触も多かったシンを、新しいザフトはそう評価した。彼の力と人柄を汲み取った上で、供に戦う同志として迎え入れた
ラクス・クラインにも、シンに対する迫害を止めることは出来なかった。むしろ、ラクスというカリスマを取り巻く熱狂的支持者が、シンを危険分子
として排除しようとしていたのだから、彼女が何をしようと無駄だったのだ。シンは一人、恋人だった少女、ルナマリア・ホークとも縁を切って、地球に落ち延びた。
本当は、彼女とは一緒にいたかった。いて、欲しかった。けれど、想えば想うほど、彼女を隣には置いてはおけなかった。
「それが今じゃ、あれだけ憎んでいたオーブに、か」
監視が付いていることには最初から気付いていた。今、同居している女性がそれだ。娼婦だった。喰ってやった。それからも関係は続いている。
演じている恋人は甘く心地良く、毒だった。見られていても関係ない。自分はもう、何もすることができないのだから。二年前に起こった反乱を
知った時、眠っていた何かが、ほんの少しだけ動いた。だが、その後のプラント市民達の動きを知るや、それはそれまでよりもさらに深く沈んでしまった。
彼らは受け入れた。反乱を起こした、アスラン・ザラ達を。戦うことが怖かった。というよりも、一般市民にとってはどうでもいいことだったらしい。
彼らの生活は、変わることもなく続いている。人々がこれまでどおりなのに、何をカッコつけて立ち上がろうとしている?シンはその日、久方ぶりに享楽に酔った。
もう、いくら怪しんだところで、何も出てきはしない。いい加減、気付けというものだ。もっとも、それまでこの与えられた関係が続くのなら、それはそれで構わない。
飢えだけは、あの吸血鬼の吸血欲のように絶え間なく続いているのだから。
50 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:02:55 ID:???
ふと、シンは振り向いた。
「ん?」
何となく、何か違和感のようなものを感じたから。特に意味は無かった。誰か、知っている人の気配を感じた気がした。
自分が歩いてきた道に、一人の少女が立っていた。
「……」
ぽつんと。そんな表現がしっくりくる。彼女は“一人”だった。そこだけ切り離されて、周りの景色とは決して溶け込まない。
いや、溶け込めない。
日差しにやられ、誰も彼もが肌を焦がしているというのに、その少女だけが、白かった。
麦藁帽になびく白い髪。新雪のように白い肌。赤いワンピースだけが際立って、シンの眼に焼きついた。
きっと、ここからでは陰に隠れて見えない瞳も、赤いのだろう。シンは何故だかそう思った。それは半ば確信だったけれども。
「あっ……」
口が独りでに開いて、何かを紡ごうとする。
それより先。黄金の輝きが街の中心を貫いた。
街は一瞬で災厄の真っ只中に。ビームに貫かれたビルが次々と倒壊していく。街を襲う突風と粉塵。着陸した一機のMSの噴射が、熱と風を巻き上げ、下界を削る。
巨大なスクリーンを中心に、オーブ軍服に身を包んだ男達がそれぞれに割り振られた座席に腰を下ろしていた。胸の階級証を見ると、全員が佐官以上だということが分かる。
『敵MS、市街地に侵入』
感情を感じさせない、機械的な音声がスピーカーを通して響く。分かりきっていた報告に、それでも一人の佐官がいきり立った。
「我が方の軍は、一体何をしていたのだ!」
「落ち着け。敵の狙いは明らかにモルゲンレーテだ。予期せぬ事態ではあるが、最悪の事態は回避された」
「さよう。これは幸いだよ。所詮、今のプラントと反乱軍は、海賊の成り上がりに過ぎぬさ。抗議に意味は無。こちらで勝手に処理させて頂こう」
「……多少の犠牲は付き物、か」
それぞれの打算で、現在の状況を噛み砕こうとする上層部。市民の生命を軽視した、国民を護る立場にあるべき本来の姿勢とは大きく違うが、これも彼らの常套手段。
オーブの国防は、民を護る為のものではなく、『国』を護るためのものなのだから。
「あの、なんと言ったか……ゲルググか。あの一機や二機、我が方のヤマトで十分に対応できるよ。核など、近いうちに過去の産物に成り果てる。もうエクス・ドライブの時代は近い」
自軍の優位を疑わない彼らはしかし、自分達の保有する兵器が如何なる問題を抱えているかも知らなかった。
51 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:17:59 ID:???
規制に引っ掛かりましたorz
52 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:19:37 ID:???
『命令は撃退だ。しかし、核搭載機を市内で破壊するわけにはいかん。四肢の破壊。なんにしろ、動力は避けろ』
「自爆の危険性は?」
『……海上に誘い出して対応する』
「……了解」
シンの目の前で、一機のムラサメ三式が戦闘機を模したMA形態からMSへとその姿を変えた。着地と同時、腰のウエポンラックに収納されたビームサーベルを抜き、すぐさま刃を展開。
車道を滑るようにゲルググへ肉薄する。ムラサメ三式が黄金に輝く刃を振り下ろす僅か前、ゲルググは腰を沈めると前面に配置された推進器を吹かして一気に後退。その一太刀を
危なげなくかわしてみせた。今度はゲルググが攻撃に転ずる。右手に構えたライフルを腰にマウントすると、左腕に固定したラグビーボールを平面にカットしたような大型シールドから
サーベルを取り出して摺り足の姿勢でムラサメ三式との距離を縮めて斬りかかった。振り下ろしの体勢に入った瞬間に、ビーム刃が形成された。シンはその様子を見つめて、
「負ける」
一言だけ残して走り去った。
あれだけ続いていた人の川も、もう抜けていた。
シンの呟きは予言だったのか。数回かわされた攻防を制したのは、ゲルググだった。コクピットを一突きされたムラサメ三式は、力無く倒壊したビルに沈んでいた。
ゲルググは、ゆっくりとその巨体を動かす。隆起に富んだグラマラスなボディを包む光沢の青に、飛来する後続の敵機を映しながら。
「ちぃっ!化け物が!」
ムラサメ三式のパイロットは、ゲルググを前にして驚愕に震えていた。操縦桿を握る手が震える。パイロットとしての矜持が、自信が、脆くも崩れていく。
白兵戦を得意とする一機が先行して勢いを殺し、空中からの牽制で、海上へと案内する。そのはずだった。実際はどうだ。先制攻撃を仕掛けたムラサメ三式は容易く倒され、
あっさりと一個小隊が片付けられてしまった。
「こんなことが……」
失意の声を溢した時、彼は真下から飛び込んできたゲルググの一刀に、真っ二つに断ち切られた。
その後ろで、戦闘に参加すらせず、ただ浮いているだけだった一機のMSが戦闘から逃れるように降下を始めた。
そのMSのパイロットは、オーブ軍の中でも精鋭と呼べる逸材であった。あのメサイア戦をも戦い抜いた彼は、
自分のパイロットとしての実力に、確かな自信があった。
そんな彼が、たった一機のMSすら制することが出来ていなかった。
「一体、なにが!?」
彼の悲鳴に、答える者はいなかった。街の一角に新たに備えられたかのような空き地。先程までの戦闘で作られたそこに、MSは着陸した。
機体の自由は利かないが、外の光景だけは入ってくる。
そこで彼が見たものは、白の少女と、一人の青年の姿だった。
53 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:20:54 ID:???
燻る炎の中を行くシンは、引き寄せられるようにそこへたどり着いた。原型を留めていないMSの残骸―ゲルググに一蹴されたムラサメ三式の、
許しを請う様に天に突き出された掌。
白い少女は、そこに腰掛けていた。
「君か」
「……」
シンの問いに、少女は答えない。麦藁帽が作る陰で、表情も読めない。
感情を感じさせない少女に、シンは薄ら寒いものを感じた。
一分ほど、シンが少女を一方的に見つめていただろうか。ふと、シンが気を逸らすと、
「あなたは」
少女が口を開いた。
「!?」
驚き、少女を凝視するシン。戸惑いと、期待。期待?自分は、この少女に何を期待するというのだろうか。
「あなたはまだ、生きている?」
その問いに、どのような意味が込められていたというのだろう。少女の背後。彼女を守護するかのように、一機のMSが降り立った。
シンはそのMSを、静かに見上げた。
灰色の、MS。直線で構成された、連合のダガータイプMSを髣髴とさせるフォルム。シンはしかし、このMSにかつての愛機達に感じた愛着のようなものを感じた。
それは暖かな感触。苦難を供にした彼らに抱いた想いとは、同じようで違うその感覚を、シンは持て余した。
「(いや、まったく違うはずだ。ならこいつは……)」
戸惑うシンに、少女は言う。
「生きているのなら、戦って」
『オーブ、オノゴロ島市内にて、所属不明機とオーブ軍MS隊の交戦を確認』
「やってくれるぜ。にしても地球最強さんは、新型MSの一機も持て余すのかい!?」
『おおかた、エクス・ドライブの不備でしょう。“粗悪品”しか保有していないオーブじゃあ、あの奇跡も、ただの物言わぬ動力扱いなのよ。
こちらとしては、予想通り、と言ったところかしらね』
「……まったくもって、救えんね」
『エド。私達は任務を果たすだけよ。これからあの国がどんな運命を辿ろうと、関係ないわ』
54 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:23:32 ID:???
機体が、鳴く。そんな表現が自然か。シンは今まで感じたことの無い感覚を乗り込んだMSから感じた。
搭乗したパイロットは締め出した。後は動かすだけ。
「この感覚は、何なんだ?」
このMSは生きている。シンはそう思った。この唸りは、生物の鼓動に近い。
ドクン。機体の中心に火が付いた。
ドクン。ゴーグルの中に光が奔る。
ドクン。何かのギアが、一気にかち合っていく。MSの中で。シンの中で。
そして立ち上がるは灰色の翼。
その名はジム。
「上手く……いってくれよ」
陽光と爆煙を等しく受けて、そのゴーグルに崩壊する街並みを映した巨人は、躊躇い無くゲルググへと踊りかかっていった。
不思議と、あの少女への違和感は消えていた。
次回 第二話 『染まる日々』
55 :
C.E78:2007/12/01(土) 07:26:52 ID:???
第一話はここまでです。
用語とか色々、なんだかおかしなものが出たりしましたが、本編にて段々と説明していきます。
プロローグではシンが出ず、一話ではアスランとキラが出ないという謎仕様。ちょっと反省してます。
シンの立場なんかは、今までの先人さん達のシン・アスカ像とは違うものを提示したかったのでこんなのに。
それではまた、第二話で。
GJ!……生きているような鼓動?光るゴーグル?ジム?
両手から星を断ち割るビームを吐き出したり、竜巻みたいな光で超広範囲を
殲滅するでかいキャノンをぶっ放したりするんでしょうか?
>>40 「争いのない、理不尽に人が死なない世界」
そんなものは、幻想の中にしか存在しないことを教えられた。
全て失くした。
信じた理想は砕かれ、運命を切り開く剣をくれた人と未来を託された親友は死に、
眼前にあるのは戦火の爪痕と、勝利を誇る敵。
憎むべき仇が勝者の世界など認めない。
あいつらが世界の守り手になるのなら……壊してやる! 世界を!!
……なんてことを妄想していた時期もありました
読むのはこれから、その前に何はさておき保守しとかないと…
気になったんだがスレタイのローマ数字の3って皆さん普通に見られますか?
俺はPcでもケータイでも見えるよ保守
オレもローマ数字は問題ないな
しかしGJ!
GM!量産期燃えの俺にはたまらない!!
しかも『切り裂きエド』と『白鯨ジェーン』ですか!?
MSVの連合トップレベルエースの2枚看板!?!?
これは全力で待つしかないな!全裸ネクタイで
ここにおけるジムはザクヲ等と同じ方法論の、ただし核か未知の動力の機体って事?
それともUCから流れてきた…なんて辺りはおいおい語られるだろうとしてとりあえず、
既存のジム系の中で一番イメージが近いと言えそうなのはどれになりますか?
63 :
C.E78:2007/12/01(土) 13:04:26 ID:???
>>62 強いていえばジムカスタムやクゥエルですかね。
一応、ダガーの最新機種ということなので、+αダガー&ウィンダムと言った感じです。
シンの乗る機体は微妙にスターゲイザー入ってたりしますが、後に出てくる量産機は
前述のイメージですね。
やっぱクゥエルか・・・流石に素GMにゃ親近感は沸かんわなw
MG版ならまだしもアニメ・HGUC版ではさすがにねえ。
保守
>>63 ブルーディスティニー1号機じゃないの!?
青運命一号は性能的には陸GMと同じだろ?
クゥエルの方が性能高いぞ
まぁクゥエルは低重力地や無重力で性能を発揮できるように調整されてるから
地球上で戦うと負ける可能性もあるがなw
青運命がヤヴァイのはEXAMの先読みとパイロットを無視した機動なんだけどな
青運命一号機は、ジム頭以外はほぼ陸ガンを大幅に改修した機体じゃね?
ブルーディスティニー1号機は頭部だけ陸GM+EXAMシステムで機体は陸戦型ガンダムを強化したもの
いわば、CEで言えば
ストライクエンハンスドタイプにEXAMの乗ったダガー頭くっつけたようなもんだろ
ブルーデスティニーの一号機は
>>67 BD一号機じゃないの?って……作者その人のコメントに何を。
まあもっとも過去のSSの影響で、逆襲シンの専用機といえば
乗員の安全何それ美味しいの?な殺人ピーキー機と相場が決まっちゃってるのも事実だけどね。
>>72 BD一号機じゃなくてちょっとガッカリという意味のコメントです
というか真っ先に思いついたのがブルーディスティニーなんだ
>>73 あいやこっちも言い方が悪かった、申し訳ない。
意外とイデ〇ン並にでかかったりしないよなぁ
イデオンと種死のクロスが読みたいと申すか
…即効でイデ発動しそうだw
77 :
C.E78:2007/12/01(土) 20:55:36 ID:???
明言させてもらいますと。
イデは発動しないし、大きくもありませんorz
何だか期待を壊すようで悪いのですが^^;
ジムについてですが、皆様の妄想で補完なさってください。
描いてみたのですが、まあ微妙でしたので。
可変翼付けたジムを、それぞれ想像なさってください。
デスティニージムを想像してしまった。
ジェットストライカー付けたダガーLを(ry
スローターダガーの頭だけジムクゥエルに…あるいはクゥエルにエールストライカーを
ジムディン………いやなんでもない
ちょっとゴツくしたジムカスタムにストライカーパックの接続機構がついた感じで想像してた
もちろん今はジェットストライカーなw
ジェットストライカーって1/144キットで再現されてたかな。
MIAのネオンダムに付いてたのは憶えてるんだが…
保守
就寝前の保守
良くぞ生き残った、我が精鋭達よ!
風雲ラクス城
88 :
76:2007/12/02(日) 08:29:10 ID:???
保守代わりにスレ違いを承知で投下
(ここから先は故塩沢さんの声でお読みください)
ソロシップのクルーはイデオンとソロシップの破壊を決断するが
それを好機とイデオン奪取を企てるバッフクラン
だが彼らの目の前で忽然とイデオンとソロシップは消え去り、世界の運命がほんの少しだけ変化する
そしてイデがたどり着いたのは怒りと憎しみ、欺瞞に包まれた世界
イデが吼え、ビッグバンの再来の様に輝いた!!
伝説巨神イデオン VS SEED 最終回 「素晴らしき世界」
スペェース・ラナウェイ!!
89 :
C.E78:2007/12/02(日) 10:23:35 ID:???
おはようございます。
報告なのですが、SSの投下は一週間に一回。土曜日とさせていただきます。
ストックが10話とかあればばんばんいけるんですが、5話までしかないので、
期間を長く取って投下速度を安定させたいので。
すいませんが、ご了承ください。
>>89 マターリとよろしくお願いします。
もし、次回投下時にこのスレが落ちていて、
次スレがなかったらIF系SSの統合スレを探してみてください。
(異常事態下なので、統合スレが先になくなってる可能性もありますけどw)
当然ですが、統合に投下するか、新スレ立てて投下するかの判断は作者の人の任意です。
と書いてみたが、ここはアフターなんで、IFスレ(○○を××というスレタイだ)の範疇じゃないような気もする。
まあ、SSスレは他にもいくつかあるんで、
新スレ立てる
どれかに合流
どっちでもおk
そう簡単にスレ落ちないだろうから杞憂だし。
もしシンが種死の後に主役になったら、ってことで立派にifモノですよ、とこじつけてみる。
じゃ、じゃあシンは種死では主役じゃ無かったって言うのかコンチクショウ!!!
と、言ってもいいかい・・・・?
>>93 うん、なんだろうこの気持ち
なんか心にきたよ
シンが種死の後に(また)主役になったら
と、心の中で修正すればいいじゃない。
土日過ぎかけても油断禁物保守
保守
保守