テイルズの世界にシンが行ったらLv5

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20通常の名無しさんの3倍:2007/11/09(金) 21:41:14 ID:???
ラクシズ虐殺まだですか?
21通常の名無しさんの3倍:2007/11/09(金) 21:45:48 ID:???
悪意がうざい
22通常の名無しさんの3倍:2007/11/09(金) 21:52:16 ID:???
なんか空白が多いけど何かあったか?
それはそうと作者GJ

大詰めを迎えていますねぇ……
23通常の名無しさんの3倍:2007/11/09(金) 21:55:42 ID:???
>>21
つか、煽ってんの?オマエ
24通常の名無しさんの3倍:2007/11/09(金) 22:50:09 ID:???
虐殺虐殺うぜーよ
牙の抜けた虚空なんかよりエデンの(ry
25通常の名無しさんの3倍:2007/11/10(土) 00:18:12 ID:???
GJ
次もよろしく
26通常の名無しさんの三倍:2007/11/10(土) 13:13:36 ID:PWJnOY5r
ついに最終回が近くなってきた
シンがどうなるか楽しみだぜ

虐殺したいなら自分で書こうな?
27通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 00:42:41 ID:???
いよいよだな

作者ガンバ
28通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 02:10:41 ID:CXHwowI1
どうせまた”ステラ!!!!!!!!!!!!!!!!!!”だろ
29通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 16:00:06 ID:???
>>28
いや、どうせいつものパターンで謎の力でやって来たラクシズ様御一行様を地獄にご招待するんだよ。
この作者にはそれしか能がないからネ。
30通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 21:10:12 ID:???
なるほど。空気読まずに虐殺!虐殺!フヒヒヒwwww
とかやってる奴と同じという事か。
31通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 21:51:59 ID:???
虐殺厨は単に作者に期待してるだけだろ
つか、煽ってんの?オマエ
32通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 01:14:45 ID:???
スルー検定実地中
33通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 18:32:27 ID:???
ところで、どうしても「大爆掌」が「大爆笑」に脳内変換されてしまうのはどうしたらいいんだぜ?
34通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 20:49:21 ID:???
>>33
俺の中では喰らった奴の顔がドドリアさんになってるんだが…
35通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 21:05:05 ID:???
ラクシズ虐殺まだですか?待ち遠しくて仕方無いんだが。
早くしてくれよな。
36 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:15:05 ID:???
大爆掌ですか。仕方ないですよ。
元ネタは>>34さんの言っているのと同じものですから。
14話にこういうくだりがあります。

大爆掌は炎による攻撃と同時に、神経刺激によって痛覚を刺激し、水分を集中させ、発熱させる作用を持っている。
水分が集中して発熱すれば炎症になるわけだ。
一時的とはいえ、戦闘能力を低下させることができる。
別に打撲も内出血も起こさない。攻撃のためというより、弱体化が目的の技なのだ。

この「打撲も内出血も」という部分なんですよね、元ネタのヒント。
元ネタでは大爆笑コールを食らってきれた主人公がぶちかましたギャグ技ですし。
ああ、こういう元ネタ不明な話を何度書いてきたんだ俺。
今回書いたDCネタもやり過ぎたし……。

というわけで投下いたします。
37 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:16:09 ID:???
37 悲しき戦い、決意の戦い

シンはアロンダイトの柄に手をかけたが、磁力でも働いているかのように鞘から剣が抜けない。
「くっ!」
眼の前ではステラがどこからかサーベル──シンの作り出すサーベルと同様刀身にvajraの銘がある──二振りを出現させ、シンに向かって突撃している。
やけに足が速い。気付いたときにはもう逃げられない間合いだ。
「ぐあっ!」
慌ててフォース形態をとり、バックステップを踏んだが遅かった。袈裟懸けに斬られ、血が飛び散る。
怪我そのものは軽いが、このままではまずい。
「シン、何やってんの! あんたとあろう者が先手取られてどうすんの!」
どこからか聞こえるハロルドの声で、シンはアロンダイトを抜き放ち、さらに繰り出された攻撃を受け止める。
「ハロルド、どこにいる!?」
いつの間にか仲間達の姿が消えていた。慌てて周囲を見回すが、どこにも見当たらない。
「例の部屋に押し込められちゃった。リアラは多分この部屋の入り口よ。あんたが勝たなきゃ、あたしたちは出られないみたいね!」
勝つ、ということはこのステラを斃すということだ。しかし、今のシンにはそれができるかどうかわからない。
そんなことを考えている間に、声も発せずに斬撃を繰り出した。慌ててアロンダイトで受け止める。
「ステラを殺すようなことはしたくない……けど、このまま皆を閉じ込めたままにもできない、それに神のたまごが衝突する! やるしか、ない!」
アロンダイトが闇に包まれ、刃渡り2メートルの黒い大剣へと変化した。赤い軍服が黒くなる。破れたマントが背に出現し、血光を放った。
「うおおおおおっ!」
大剣と化したアロンダイトを肩に担ぐようにして接近し、ロングソードを振るうのと同じ角速度でステラに襲いかかる。しかし、ステラは俊敏さを生かして離れてしまった。
「速い!」
さらにステラは離れた位置から突きを放ち、風の槍を発生させた。シンの持つ穿風牙と同じものだ。
慌てて闇の膜を作って攻撃を弾いたが、その間に間合いを詰められ、恐ろしく速いサーベルが接近する。
「ここは……!」
何とかアロンダイトで弾き、飛翔能力を用いて舞い上がる。さすがに上空は安全圏のはずだ。
「ここから詠唱で……なんだと!」
エクセキューションの詠唱をしかけたが、それはできそうになかった。
ステラは一言も言葉を発することはなかった。しかし、彼女の体が闇に包まれ、飲み込まれていく。
その闇は巨大な円盤を背負った巨人へと姿を変える。シンがフォース、ソード、ブラスト、デスティニーと切り替えられるのと同様に、ステラも形態変更が行えるようだ。
先程までの俊敏な形態はおそらくはガイアであろう。そして、この巨人は間違いなくデストロイだ。
「また、あれを繰り返すのか! どこまでもふざけた真似を……!」
彼の激しい怒りの矛先は、当然の如くエルレインへと向けられる。
このステラを作り出したのはエルレインに間違いない。フォルトゥナはあくまでエルレインとリアラ、そしてシンに人々を幸せにする方法を探らせているだけだ。
つまり、フォルトゥナが加担しているわけではない。
その上、明らかに声や人格をコピーできていない。戦闘能力と容姿だけだ。自分の記憶から作り出された、自分を苦しめて破滅させるための存在。目の前にいるのはステラではない。
「絶対に……討つ!」
アロンダイトを構え、暗黒の巨人に向かっていく。しかし、巨人の胸部から激しい闇が放出された。
38 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:18:25 ID:???
「うわああっ!」
血光を放出しながら間一髪というところで闇をかわし、アロンダイトを収めて双地輪を放った。地面すれすれを回転しながら巨人へと向かっていく。
その瞬間、巨人の姿が消えた。再びステラの姿が現れ、二振りのサーベルで小太刀を弾いてしまった。
「これは厄介だぞ……!」
モビルスーツとして戦ったガイアは俊敏性に優れているが、破壊力は必要最小限だった。それ対してデストロイは凄まじい破壊力と圧倒的防御力の代償に、ほぼ動けない的だった。
しかし、このステラはこの二つの形態を切り替えながら戦える。
うまく切り替えてけば俊敏性と破壊力を兼ね備えた、恐ろしい戦闘能力を有することになる。
「俺も同じようなもんだけど、ここまで性能特化されるとな……!」
已む無くシンは着地し、アロンダイトを手にして大剣へと変化させた。そこを狙ってステラが向かってくる。
「そう何度もやられるか!」
デスティニー形態は一種のトラップだ。小回りの利くフォース形態に入れ替え、ステラの繰り出すサーベルをロングソード形態のアロンダイトとサーベルで弾く。
「このっ!」
ジューダスから教えられた「手前に引く」動作を忘れずに斬りかかる。しかし、ステラのサーベルがそれを阻んだ。
一言も発さずに襲いかかってくるあたりが、あまりにも機械的だ。シンにはそれが、ステラへの冒涜だと感じた。
「もういい加減……!」
大きく振りかぶり、火炎を纏ったロングソードを叩き付けようとするが、あっさり回避された。
「速過ぎて攻撃できない! となると、身を食らわすしかないのか!」
再びシンはデスティニー形態をとり、ふわりと舞い上がる。先程と同様、ステラが闇に包まれてデストロイ形態へと姿を変えた。
さらに、背中の円盤が頭と肩を覆い隠し、腰から下が半回転する。デストロイの装脚要塞形態だ。円盤上部に突き出した4つの砲身から、強烈な高熱線が放たれる。
「このおおおおおっ!」
今度は避けずに闇の膜を発生させ、熱線を受け流した。しかし、背後から5つの風の槍が放たれる。
こればかりは避け切れなかった。背中にクリーンヒットし、空中で体勢が崩れる。
「ぐっ……!」
忘れていた。デストロイは自身の腕を分離して機動兵装として使用できるのだ。その能力まで再現するとは、エルレインも厄介な真似をする。
シンはアロンダイトを構えなおし、怒りを血光の翼へと変えてデストロイと化したステラへ向かっていく。その瞬間、それは訪れた。
「うっ……ぐああああああああああああ!」
願望の声だ。爆発的に脳内に広がり、剣を振るう力すら失われる。さらに追い撃ちをかけるように円盤から何かが打ち上げられるように放たれ、シンに向かってくる。
それがシンの手前で炸裂し、大量の石飛礫がまるで榴弾のようにばら撒かれた。
「……っあっ!」
シンは砕けたアスファルトの上に叩き付けられた。体が動かない。装脚要塞が自分を踏み潰そうと、地響きを立てながら接近している。
「…………。」
ただでさえステラの姿をした殺人マシンを相手に戦わねばならないというのに、この声が耳障りだ。
何もできない、自分だけ何故不幸なのか、苦痛はいらない、助けてくれ。
シンの脳髄の奥で暴れ続けるこの声に、シンは段々と怒りを募らせた。
「ふざけるなああああああああああああ!」
彼は足に力を込めて立ち上がり、大剣を構えた。
「誰だって苦しい思いをしている。どんな生活環境でも、苦痛のない人生なんてありえない!」
39 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:19:35 ID:???
彼の場合、異常なほど苦痛が多いが、しかし、充実した生活を今は送れている。結局はどれだけ前向きに生きられるかだ。
自分の身の不幸を嘆いても、その不幸が帳消しになるわけではない。それを理解したとしても、そういうことができない人間が多いのも、また確かではある。
だが、そのために楽な方向に逃げては何も始まらない。失敗を恐れていては成功もまたありえないのと同じだ。
目を見開き、耳を塞がず、前に突き進む。それこそが幸せへの過程であり、また、その過程そのものが幸せともいえる。
それが、シンがカイルたちから学んだ幸福論だった。
「自分のないもの嘆くな! 失ったものから得るものだってある! そいつを活用する道、選ぶってこと、いい加減に気付けえええええええええ!」
シンにもないものはいくらでもある。ハロルドのような閃き、ナナリーのような気丈さ、ジューダスのような思慮深さ、ロニのような信頼感を放つ雰囲気、リアラのような一途さ、カイルのような明るさ。
そして、失った家族やステラ、元の世界。どれもこれも手に入らないものであり、欲しいものでもある。
だが、なくていいのだ。なくてもかけがえのない仲間がいる。前向きに生きる気力を与えてくれた、協力し合うことの喜びを与えてくれた仲間が。これ以上の幸せはない。
だから、彼は願望の声の主たちに叫んだのだ。眼が見えなくても聴覚や嗅覚が強化されると聞いたことがある。それを生かす方法もある。
何もないと嘆いても、嘆くことができるのなら最後まで残されるものがある。それは命だ。命があるだけでも幸せなはずだ。
生きる者にしかない幸せを忘れ、嘆いた挙句に自らの命を絶つ者もいる。今のシンならはっきり思うだろう。折角のチャンスを投げ出すなんて、と。
自分が思ったこと、感じたことはいずれ仲間達が世界の人々に教えてくれるはずだ。そして、今自分にできることは破滅を食い止めるということである。
「俺は勝つ! 全てにおいて!」
願望の声が完全に沈黙した。装脚要塞の左足がシンを踏み潰そうとしたが、彼はそれを閃翔牙をカウンターとして放ち、押し返した。
「はああああああああっ!」
続けて閃翔旋刃を炸裂させ、装脚要塞の左足を破壊する。同時にステラの周囲を取り巻く闇が掻き消えた。
ひらりと着地したステラに、シンは猛然と大剣を振りかざした。さすがに着地前なら避けようがない。ステラは崩壊寸前のビルの壁に叩き付けられた。
しかし、それでもステラは立ち上がった。より憎しみを込めた瞳でシンを射抜く。
「お前はステラじゃない……ただの人形だ! ……俺の前から……消えてしまえ!」
彼は全身の力を込めて穿風牙を放つ。ステラはそれを避けながら猛スピードで接近し、サーベルを振りかぶってシンに斬りつけた。
再びシンの体から赤い血が尾を引いて飛び散る。さらに、彼女はガイアの四足歩行を真似るようにサーベルを捨てて5本の指を地面につけた。
そのまま地球軍制服を切り取って露出させた肩から、地属性エネルギーによって作り出された刃を出力した。一気に四足歩行体勢から疾走してシンを切り払いにかかる。
「うぐああああああああああっ!」
体を捻ってかわそうとしたが、右の脇腹を切り裂かれた。新たな傷口が生まれ、さらに血が流れる。
しかし、ステラの攻撃をそれに留まらない。今の攻撃で背後に回りこんだステラはサーベルを手元に戻し、すれ違いざまに背中を斬りつける。
さらに、振り返る勢いをつけてサーベルを一閃させ、シンを斬る。避け損ね、顔を横切るような形で目の下に大きな傷ができた。
それに続けてムーンサルトキックを顎に食らい、彼は仰け反る。止めにとサーベルがエックス字に、胸部に炸裂した。
「がはっ……!」
シンが倒れたことを確認すると、ステラは再び暗黒の巨人と化し、口吻部から青い火炎を放った。
しかし、今まで身動きすらできていないと思われたシンが、血光を放ってそれを回避する。
「負けるか! 死んでたまるか!」
上空へと舞い上がりながら、彼はポケットに詰め込んだグミのうち、黄色いレモングミを口に含んだ。
怪我を負ったときに効果があるアップルグミの強化版だ。これで少しは持つだろう。
「はあああああっ!」
シンのSEEDが覚醒し、血光の翼を拡大しながら猛加速する。残像が揺らめき、シンの正確な位置がわからなくなった。
暗黒の巨人が装脚要塞と化し、円盤の縁から風の槍を全方位に放つ。だが、所詮は盲撃ちに過ぎない。シンにはかすりもしなかった。
40 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:21:32 ID:???
彼は形態解除する暇をも与えなかった。円盤の真上から全力で斬りかかる。
「ふっ、はっ、せいっ!」
強い衝撃を受け、暗黒の巨人の姿が掻き消える。核となったステラにシンは追い撃ちをかけた。
「閃翔牙! こいつを食らえ!」
再び腰だめに大剣を構え、飛翔力に任せて突撃する。彼女の体がアスファルトに叩きつけられてバウンドした。それでも彼は自分を止めなかった。
あれはステラではない。ただの戦闘マシンだ。
そう思わなければ、攻撃の手を緩めてしまいそうだったからだ。
バウンドして浮いたステラに、さらに回転の勢いをつけた一撃、閃翔旋刃を叩きつけて弾き飛ばした。
「まだだっ! 獄炎掌鎗撃!」
左手から炎を放ちながら突撃し、ステラを押していく。さらに、その間に右手の剣を収め、右の掌に闇を溜めていく。
強い衝撃をもたらす右手の闇を叩き付けた。ステラの体がきりきり舞う。シンの目から雫が零れた。
だが、彼は容赦なく秘奥義を発動させた。
「闇に堕ちて光を消し去る!」
両手に闇を纏い、下から潜り込むように拳の連撃を20発叩き込む。続けて右回し蹴り、左踵回し蹴りを炸裂させ、それに連繋してステラがシンにしたようにムーンサルトキックを放った。
「黒拳! 護闇掌!」
宙返りをしながら両方の掌をステラに向け、浮いたまま生命力を根こそぎ奪い去る闇をその掌から放つ。
ステラの姿が崩れ、砂へと姿を変えていく。シンの赤い瞳から、一際大粒の涙が零れた。
「ステラ……。また死なせるような真似をして……ごめん……!」
両方の目から涙を流す様は、かつての乗機、デスティニーの血涙を流す顔立ちによく似ていた。涙と一緒に、目の下に作られた傷の血が洗い流されたせいだ。
ステラの消滅と同時に、荒れ果てたベルリンが掻き消え、代わりにデリスエンブレムの間へと変わっていく。これで神のたまごとなるレンズまでの道は開けたはずだ。
「シン、苦しい戦いをさせちゃったな。俺、何もできなくて……。」
カイルが駆け寄ってくる。心配させまいと、彼は涙を拭って充血した瞳をカイルに向けた。
「大丈夫だ。所詮、あれはステラの姿をしただけのマシンだ。だから……大丈夫。」
そのシンの背後に近寄ったのは。
「裁きのとき来たれり……。」
「あー! いやー!」
シンは頭を抱えて叫び、振り返る。そこには声の主、ハロルドが立っていた。
「あんたね、死んだ昔の女が出てきて錯乱しない男なんかいないわよ。それなのに、あんたはそんな態度して。」
「……。」
「あんたはほんとは優しい男なんだから。全力で泣いてなさいよ。わざわざ冷血人間装う必要なんかないわ。」
口調は厳しいが、ハロルドの真意がシンには伝わった。本当に辛いときは泣いていてもいいのだ、と。
「ハロルド……すま……ない…………。急がなきゃ……いけないのに……ぐ……う……。」
左手で目を覆い、涙が吹き零れないように押さえつけていたが、指の隙間から塩分を含んだ暖かいものが零れていく。
それはシンの弱さではなく、心の温かさそのものだった。誰も傷つけたくない、大事なものを守りたい。
そのために、エルレインが作り出したステラの人形と戦い、また心を痛める。
シンが傷つくことを、仲間の誰もが望まない。彼を傷つけたエルレインはやはり許せない。
仲間の6人はそう思った。
41 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:23:13 ID:???
シンが何とか落ち着いてから、7人は奥へと足を踏み入れる。
神のたまご中核部は何故か水のある洞穴のような雰囲気をたたえていた。そして、その奥には巨大レンズがある。
「あそこにエルレインが……。」
「いよいよ、神様と直接対決ってわけね。」
「ここまで……長かったね。」
長い旅だった。しかし、忘れてはならない。これで終わりではないのだ。
「だが、まだ終わっていない。ここで負けてしまっては元も子もない。」
「縁起でもないこと言うなよ! 俺たちは絶対に勝つ! そうだろ、カイル。」
「勿論! 俺たちは勝つ! そして、全てを終わらせる!」
「そう、これで最後だ。やつらがどんな手を使ってくるかわからん。準備だけはしっかりしておけ。」
ロニはやや呆れたように言う。この状況でいつも通りというのが、信じられないからだ。
「やれやれ、最後の最後までクールって言うか、冷めてるっていうか。」
「お前達が無鉄砲すぎるだけだ。」
「はいはい、そこまで。全く、最後までこんな調子かい。」
「いいんじゃない? 変に緊張するよりよっぽどマシよ。」
確かにそうだろう。それがこの7人の強みなのかもしれない。
「はっはっはっ、ちがいねえ。それじゃあ、行くとしますか!」
「ああ、やってやろうじゃないか!」
「あたしの頭脳が神をも超えることを証明して見せるわ!」
「やつらに思い知らせてやろう。人の力というものを!」
「行きましょう、カイル。」
「ああ、行こう、皆!」
レンズの近くにエルレインは佇んでいた。このレンズはかなり奇妙な形をしている。
細長いたまごのような形のレンズの両端に、巨大な球体状のレンズが接続しているようだ。その球体状レンズの大部分が埋まっているらしく、表面の一部しか見えない。
ただ、この埋まっているレンズこそが外から見えた二つの赤い発光体であることが、シンにはわかった。
エルレインはゆっくりと振り返りながら口を開いた。
「何故ここに……お前達に神は殺せはしないというのに。」
「見縊るんじゃないよ! 勿論戦うためにここに来たんだ! あたしたち自身の意志で!」
「それがどのような結果をもたらすのか、わかっているというのに……?」
このエルレインの口調からは、本当に善悪が感じられない。純粋な思いだけが宿っているようにシンには感じられた。リアラのような感情すら抱かぬ、それこそ目的を達するだけの機械のように彼には感じられた。
「覚悟は……できている!」
「エルレイン、私達は人々の救済という同じ使命を背負った存在……けれど、彼らと過ごした日々の中で私は知ったの。人は救いなど必要としないということを。遥か先にある幸せを信じて、苦しみや悲しみを乗り越えてゆける強さを持っているということを。」
「お前は何もわかっていない……人は脆く儚い存在。自らの手で苦しみを生み出しながら、それを消すことすらできない。だからこそ、神によって守られ、神によって生かされ、そして神によって救われるべきなのだ。」
「へっ、冗談じゃねえ! 俺たちがほしいのはまやかしの幸せじゃない! たとえ小さくても、本物がほしいんだ!」
「何が幸せで何が不幸せか、それを決めるのはあたしたちでしょ。神様なんかお呼びじゃないっての。」
苦しみを嘆く者もいれば、それを跳ね返すべき壁だとして挑戦する者もいる。確かに、生死に関わるような苦しみならば、嘆く者の救済は必要だろう。
しかし、嘆かぬ者への救済は、挑戦の機会を奪うことになる。それは、その人間に対して不幸を提供していることになる。
42 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:25:42 ID:???
これらのことは、全て現実で処理すべきものだ。神の力によってまやかしを与えるなど、言語道断なのだ。
「確かに生きることは苦しいさ。でも、だからこそその中の幸せを見つけることができるんだ!」
「幸せとは誰かの手で与えられるものではない! 自らの手で掴んでこそ価値があるんだ!」
「神の救いこそが真の救い……それがわからぬとは……。神はもうすぐ降臨する。そう、完全な形で完全な救いを人々にもたらす……。」
激しい怒りを心に宿しながらシンはエルレインに向けて言葉の矢を放つ。
「お前の思い込んだ幸せ、お前の思い描く幸せを、他人に対して押し付ける。そいつはな、この世界そのものに対する冒涜なんだよ!」
この世には書く権利と読む権利がある。読む側の中には書かれた物が気に入らないからと、自らの読まない権利を行使せず、書く権利を侵害する者もいる。
公共のもので、本当に害を為すものならば止めねばならない。しかし、本なら手に取らなければいい。誰かに読ませたくないなら、知人に伝える程度で留めればいい。それをしない人間が多いのだ。
エルレインも同じだ。世界という「他人」が自然な形になるように書いたシナリオが、そして世界そのものが気に入らないからと、世界を破壊しかねない方法で歴史の内容を書き換えてしまった。
そして、それを妨害されたからと天体を落とす。これ以上ないほどの愚かさだ。
シンの言葉が聞こえないように、エルレインは陶然と語る。
「それを邪魔するというのなら……私の手で神の下に還してやろう。それが……私がお前達に与えられる唯一の救い。」
「救いと言わずにはっきり消すと言ったらどうだ。邪魔者だ、殺してやる、とな。お前はそういう存在だ。ここまでずっと平行線、そして世界に破滅をもたらそうとする。俺は遠慮せずに言うぜ! 俺たちはお前を消し去ってやる!」
シンは腰のアロンダイトを抜き放ち、大剣に変化させて血光を放ちながらエルレインへと向かっていく。
エルレインは虹色に輝く両刃剣を出現させ、シンの攻撃を受け止めた。
「私の救いこそが唯一絶対の……。」
「やかましい! ハロルドが言っただろ、幸せなんて千差万別だ! お前が勝手に設定するな!」
シンの思いの強さがそのまま剣へと伝わり、エルレインの体が泳ぐ。そこを狙い、彼は左手を突き出した。
「大爆掌!」
左手に生み出された爆風がエルレインを突き飛ばす。しかし、炎症を起こすはずだというのに全く効果がない。何かで防がれたらしい。
「愚かな……。」
床を滑るようにエルレインが接近し、両刃剣で薙ぎ払いにかかる。それを大剣で受け止めた。
「お前はレンズの力を集めて自分を強化したんだろうがな、俺たちはここまで苦難の連続を自分の手で乗り越えてきたんだ。その俺たちがお前に負けるかあああああっ!」
エルレインの攻撃を再び弾いたシンは一度バックステップを踏んで離れる。代わってカイルがエルレインに立ち向かう。
「俺たちは負けない。お前の救いは人間を駄目にする。俺たちは俺たちの力で歩いていく。」
ピュアブライトの一撃をエルレインは再び両刃剣で受け止めたが、まったく余裕はない。
「お前たちでは歩いてはいけない。神の救いあってこそ全ての人々が救われるのだ……。」
「勝手に決め付けるんじゃない! 俺たちはそうやって歩いてきた人たちの姿をずっと見てきた。お前はそれから目を背けてあるはずがないと思い込んできたんだ! お前の目の前にあるものが全てじゃない!」
カイルはさらに爆炎剣を使い、エルレインの体勢を崩させて後退する。入れ替わりにロニが突撃してくる。
「誰だってな、全部を見られやしねえ。俺たちだって極一部しか見てねえよ! けどな、自力でやってける人間がいれば周りに火をつける事だってできるんだよ。カイルがそうだ。俺たちをここまで引っ張ってきたのはあいつがいたからだ! あいつの思いを邪魔させねえ!」
「お前たちだからこそ共鳴できたのだ……大半の人間はそれを実行することはできない……。」
「やかましい! お前が見てる『大半の人間』とやらはお前が堕落させた人間だ! それを理解せずに語るな、エルレイン!」
狂戦士のハルバードを振るい、虹色に輝く剣を弾き、重い一撃をエルレインに直接叩き込んだ。エルレインは攻撃を受けて仰け反りはしたが、傷一つついていない。
「ロニ、代われ!」
今度はジューダスだ。シャルティエ・フェイクを素早く繰り出し、エルレインに反撃の暇を与えず攻撃し続ける。
43 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:26:57 ID:???
だが、それすら通じていないらしい。エルレインはジューダスの斬撃を受け止めた。そのまま鍔迫り合いになる。
「リオン・マグナス……まだ私に逆らうのか……私の手で蘇ったというのに……。」
「お前に恩を感じはしない。僕はあのまま死していても問題なかった。僕を蘇らせたのはお前の目的を遂行させるためだろうが、そうはいかない!」
「どこまでも恩知らずの裏切り者だな……。」
「僕はお前に一つだけ感謝していることがある。それはカイルたちと出会えたことだ。そして、その礼はこれだ! 月閃光! 散れ! 食らえ、魔人滅殺闇!」
シャルティエ・フェイクの斬り上げと共に発生した三日月、短剣の振り下ろしによって生み出される闇の三日月、さらに斬りつけと同時に滅殺する闇により、エルレインにダメージを与えていく。
与えたはずだった。しかし、全くと言っていいほど効果がない。シンは少々離れた位置で首を捻る。
「どういうことだ……? リアラ、ハロルド!」
「了解!」
「ラジャ!」
二人とも既に詠唱待機状態だった。二人とも同じ晶術を解放する。
「氷結は終焉、せめて刹那にて砕けよ! インブレイスエンド!」
巨大な氷塊がエルレインを押し潰そうと頭上に2つ出現する。しかし、この攻撃もエルレインの旋回する両刃剣によって破壊された。
「晶術もこのざまか……こうなったら止むを得ない! 神のたまごのエネルギーを使って神のたまごの運動を停止させる! そうすれば落着による神の降臨だけは防げる!」
シンは神のたまごの核であるレンズの近くに舞い降り、左手をかざして力を解放する。これだけのエネルギーの裏付けがあれば、いかに解放できる力の弱いシンであっても止められるはずだ。
「うおおおおおおっ!」
ブレーキがかかり、進行方向へと体が流れる。しかし、シンはそれでもやめはしない。
「シン・アスカ……どこまでも邪魔を……。」
レンズに集中しているシンに、エルレインが晶術を放とうと構える。しかし、それがシンの目的だった。
「今だナナリー!」
シンに向かって晶術を使おうとするとき、詠唱に意識を向けなくてはならない。一瞬であっても、それは大きな隙を生み出す。シンはその隙を狙っていたのだ。
「はいよ!」
メテオストライクから放たれた矢が、エルレインの右の袖を刺し貫き、構えていた手があらぬ方向へと向けられる。エルレインの狙いは逸れ、全く関係ない方向にトリニティスパークが放たれた。
「待ってたぜ、この瞬間を!」
作業を中断しながら素早くシンは向き直り、大剣を構えて突撃する。閃翔牙だ。さらに閃翔旋刃による回転力をつけた一撃を叩き込んだ。今度ばかりはダメージを受けたらしい。
「この機を逃すな! 行くぞ、翔牙月影刃!」
閃翔牙と同じように突撃し、続けて剣を振り上げ、闇の三日月を伴いながら大上段から振り下ろした。
「おのれ……!」
シンの攻撃を切欠に、仲間たちの一斉攻撃が始まった。逃げ道などありはしない。多くの時間を費やして作り上げた信頼関係に勝るものなどない。
「蒼破刃! 逃がすか! 牙連蒼破刃!」
「続きは俺だ! 雷神招! どぅりゃっ! 空破特攻弾!」
「幻影刃! ここだ! 千裂虚光閃! はっ! はっはっはっ!」
ふら付くエルレインに、止めの一撃にとシンはアロンダイトを構えた。
「食らえ、穿風牙! ぶっ壊れろ!」
突きと共に放たれた風の槍がエルレインに命中し、さらに仲間が散開したところでカマイタチを伴う暴風を放った。
これでエルレインは斃せた。そのはずだった。しかし。
「まだ終わらない……ディバインセイバー!」
身動きが取れないシンに向けて、強大な破壊力を持つ電撃が放たれた。囲い込むような電撃により、逃げ場がない。
44 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:28:00 ID:???
だが、その窮地を救ったのはシンを大事に思う人物だった。
「裁きの時来たれり、還れ虚無の彼方! エクセキューション!」
あろうことか、ハロルドはシンに向けてこの晶術を放った。だが、これが正解だった。
光の力と闇の力がぶつかり合い、共に虚空へと果てた。言うなれば対の属性を用いて中和したのだ。
「ハロルド、助かった! しつこいぞ、エルレイン!」
シンはフルブーストを用いて血光の翼を拡大させてエルレインへと向かう。しかし、エルレインまで後5メートルというところで体が硬直した。
全身に冷える感覚がある。よく見ると、エルレインの足元に魔法陣が描かれている。フィールドオブエフェクト、つまり魔法陣を使った術の一つだ。
「しまった……!」
全身に霜がついていく。これではいずれ氷漬けになるかもしれない。
こうなったらどうにもならない。彼は力の限り叫ぶ。
「ハロルド! リアラ! 俺ごとエンシェントノヴァをエルレインに叩き込め! カイルたちも詠唱だ!」
「そんなことしたらあんたまで吹っ飛ぶわよ!」
「俺を信じろ! やり遂げるまで……死には……しない…………!」
氷が徐々に迫ってくる。この魔法陣を消し去るにはエルレイン自体にダメージを与えるほか方法はない。
「くっ……!」
眼前ではエルレインが、凍りゆくシンを叩き割ろうと迫っている。全く抵抗できないシンにはどうしようもない。
急ぎ二人は詠唱する。方法がない。シンを信じることしかできない。
「間に合って! 古より伝わりし浄化の炎よ……落ちよ! エンシェントノヴァ!」
リアラの詠唱が完了する。シンとエルレインの中間地点にそれは炸裂した。
彼の火属性に対する耐性の強さが幸いし、シンの体が後方へと弾き飛ばされただけですんだ。しかし、エルレインには決定打を与えられていない。
「もう一発! 古より伝わりし浄化の炎よ……消えろ! エンシェントノヴァ!」
今度は直撃弾だった。エルレインの体が吹き飛ばされ、神のたまごの核となるレンズに叩き付けられる。
エルレインは最後の力を振り絞り、究極の術を発動させた。
「お前たちに救いを……インディグネイト・ジャッジメント……!」
ウジャド眼の浮き彫りがなされた刃根元を持つ剣が落下し、凄まじい衝撃波を放つ。7人はまとめて弾き飛ばされ、倒れ込んだ。
しかし、その中でカイルとシンが力強く立ち上がった。
「負けられるかあああああ!」
二人は同じように叫び、エルレインへと向かっていく。既に氷結の魔法陣は消えうせていた。遠慮なく接近戦を挑める。
「行くぞ、カイル! 俺の翼の後ろからついて来てくれ!」
「わかった!」
シンの血光の翼が再び拡大し、シンの輪郭がぼやけて多重の残像を生み出す。
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
上下左右に進路をずらしながらエルレインに接近する。トリニティスパークを用いても、全くシンには命中しなかった。
「効くかあああああああああああああああ!」
猛然とシンがエルレインに上から斬りかかろうと構えた。それを受け止めるべく、エルレインは両刃剣を高い位置へと掲げる。
しかし、それがシンの狙いだった。シンは攻撃せずに上へと舞い上がった。エルレインがいぶかしむ間も与えず、カイルの後ろからナナリーがメテオストライクから矢を放っていた。
そうなのだ。以前にバルバトスに仕掛けたように、彼は味方の体勢を立て直す姿をエルレインに見せないようにし、全員で攻撃を仕掛けるための間を作っていたのだ。
45 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:29:09 ID:???
「見えるもの、聞こえるものしか信じなかったお前の負けだ、エルレイン!」
ナナリーの矢がエルレインの肩を撃ち抜いた。続けてリアラの上級晶術が炸裂する。
「古より伝わりし浄化の炎よ……落ちよ! エンシェントノヴァ!」
火柱がエルレインに直撃する。さらに、リアラは具現結晶へと繋ぐ。
「我が呼びかけに応えよ! 我が力、解放せよ! 灼熱と、業火の意志よ、焼き尽くせ!」
全身に鎧を纏った火の精霊、フランブレイブが姿を現し、獄炎を放って全てを焼き払う。止めにとエンシェントノヴァ以上の爆風を叩き込んだ。
だが、まだ油断はできない。火が収まるのもそこそこに、カイルは飛び出していた。
「これで終わりだエルレイン! 屠龍連撃破!」
斬撃と斬り上げを連続して炸裂させ、エルレインにかかるダメージを増やしていく。そして。
「見切った! でりゃ! でりゃ! とどめだ!」
斬り上げと共に衝撃波を発生させて薙ぎ払い、同じように衝撃波を纏う突き3発を放つ。
「蒼龍! 滅牙斬!」
そして、高く跳躍のエネルギーを溜め込み、振り下ろしと共に青白いエネルギーでエルレインの止めを刺した。
「神を……越えるというのか……。」
エルレインは光の粒子と化し、そして拡散して消えた。
「よし、まずは第一段階が終わったな。今はフォルトゥナが現れるまでの間にブレーキをかけないと!」
万が一エルレインを消し去ったことによってフォルトゥナが暴走した場合、神のたまごの衝突を防げなくなる。少しでも減速しておく必要があるのだ。
「止まれえええええええええええっ!」
シンが左手を巨大レンズにかざし、意識をガントレットの結晶体に集中させる。
強い衝撃が7人を襲う。激しい慣性の力に揺さぶられ、カイルなど壁面に叩き付けられたほどだ。
「ぐううううう……止まれ……止まれえええええええええええええ!」
揺れが収まった。ブレーキによる慣性力も緩やかになった。
「どうやら停止したようだな。」
「うん、停止してる。これで衝突の危険はとりあえずは回避できたみたいね。シン、あんたは偉い。」
「燃費の悪い俺だからな、とりあえずは止めることはできたってところだけど。」
しかし、これで全てではない。眼の前に光が現れたのを見て、7人は一斉に武器を構えた。
46 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:30:57 ID:???
TIPS
 技
 黒拳護闇掌:コッケンゴエンショウ 闇→物理→闇
47 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/12(月) 21:33:22 ID:???
ここまでです。
次は原作におけるラスボス戦。
実は……まだその先があります。

それから、>>36の発言の訂正。

×今回書いたDCネタもやり過ぎたし……。
○前回書いたDCネタもやり過ぎたし……。

コメントすらミスするなんて……。
48通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 21:36:01 ID:???
>>47
その先って言うのは勿論ラクシズ虐殺ですよね!早くラクシズ虐殺して下さい!
お願いします!
49通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 22:02:10 ID:???
GJ
あと2話ぐらいかな
次回もよろしく
50通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 22:31:16 ID:???
GJ。その後ってことは、歴史修正後の世界かな?
51通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 22:50:22 ID:???
ナナリー(幼)に対してフラグを立てるアレか
52通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 22:57:48 ID:???
そういえばエピローグじゃどんな立ち位置になるんだ
仮面は行方不明だしハロルドは過去の人だし

まぁそれはどうなるか
期待してるよ
53通常の名無しさんの3倍:2007/11/13(火) 00:51:36 ID:???
仮面は確か「仮面という人物はどの時間にも存在しない、消滅するか以下略」だったから
それと同じじゃないか
54通常の名無しさんの3倍:2007/11/13(火) 08:12:19 ID:???
GJ!!
最後へ向けてラストスパートですね。
次回も期待して待ってます。
55通常の名無しさんの3倍:2007/11/15(木) 20:11:36 ID:???
保守
56 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:29:06 ID:???
では、投下いたします。
タイトルは「運命の輪の中で」。ラスボス戦闘曲「wheel of fortune」からです。
57 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:30:37 ID:???
38 運命の輪の中で

7人の前に現れた光は人の姿へと変わっていく。光が収束し、その中から現れたのはカルビオラで一度だけ目にしたことのあるフォルトゥナだった。
「我が聖女リアラ。そして、シン・アスカ。残念ながらエルレインの目指した方法では全ての人々を幸せに導くことはできませんでした。今度はあなた達の番です。さあ、私にあなたたちの答えを聞かせてもらいましょう。」
エルレインとリアラを生み出し、シンを呼び出した存在、フォルトゥナ。彼女の好意に悪意はあるまい。エルレインですら悪意が感じられなかった。
しかも、フォルトゥナは人々の願望の思念の集合体である。人の願いが凝集した存在である以上、どんな形であれ楽になればそれでいいのだ。
しかし、それは人を堕落させる。堕落しては苦痛はなくとも幸せもあるまい。シンはそう思い、口を開く。
「まずはこのグノーシスを元の軌道に戻してほしい。できるか、フォルトゥナ。一応停止させたけど、そのうち、俺たちがいた惑星に命中するかもしれないからな。そうなったら救いも何もない。」
「いいでしょう、あなたの望むままに。」
フォルトゥナが力を解放し、グノーシスを本来の小惑星帯へと転移させた。さすが神、としか言いようがない。
「他にすべきことは? さあ、あなたたち二人は結論を出したのでしょう?」
「ああ、出した。俺やあんたがすべきことは、もう何もないんだ。」
「どういう……ことですか?」
「人の歴史は神によって守られる必要はないってことだよ。消えろとまでは言わない。どこかで見守ってくれればいい。それに、手出しは無用だ。何とか人は人としてやっていけるってことがわかったからな。」
フォルトゥナの存在まで否定することは、シンにはできなかった。フォルトゥナは人が幸せになりたいという願いから生まれた存在だ。彼女を否定することは誰もが持つその思いを否定することになる。
自分にもそういう部分はある。故にできなかったのだ。
しかし、フォルトゥナにしてみれば、することがないということ自体が存在否定として捉えられてしまう。彼女の立場からすれば、人に対して何らかの形で力を行使することが存在意義である。
そこまではシンにはわからなかったのだ。フォルトゥナはリアラへと視線を移す。
「……リアラ。あなたの結論はどうです?」
「私もシンと同じ意見です。私はカイルたちと一緒にここまで旅を続けてきました。その中でわかったんです。人は神がいなくても自分の力で未来を切り開いていける強さを持っているということを。」
「なんという……。あなたたち二人は人の手に全てを委ねるというのですか? それはあなたたちの存在を否定することになるのですよ?」
嘆くように語るフォルトゥナに、シンは感情を抑えて言う。
「俺たちが存在した意味はあった。俺は多くの仲間や強い意志を持つ人々に出会えた。そして、それをあんたに伝えることができた。神の力がなくても人は生きられると。それに、俺たちのことを思ってくれる人間にも出会えた。これ以上何が必要なんだ?」
続けてリアラも口を開いた。
「私たちが感じたこと、フォルトゥナにもわかってほしいの。人間がそれだけ素晴らしい存在だということを。」
しかし、フォルトゥナには二人の行動が自分への反乱だと捉えられたらしい。そして、人間全てに対しても絶望を抱いた。
「何故です!? 何故人の思いから生まれた私を他ならぬ人であるあなたたちが否定するのです!」
「待て、フォルトゥナ! 俺はあんたの存在まで否定してない! ただ存在することに理由なんかないはずだ!」
だが、シンの言葉が聞こえていないらしい。床が揺れた。グノーシスが再び加速して移動を始める。
「これは……まさか僕たちの惑星に向かって……!?」
「せっかく止めたって言うのにまた天体衝突の危機かよ!」
慌てる保護者コンビに応えるように、フォルトゥナは淡々と言った。
「安心なさい、この歴史は間違っていたのです。それが一度消え去って新たな歴史が始まるだけ……。1000年前にあなたたちの惑星に彗星が落ちた時に新たな歴史が始まったように。」
58 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:32:46 ID:???
こうなったら是非もない。カイルは決然と叫ぶ。
「ふざけるな! 歴史はそんなに軽いものじゃない! 多くの人が生きて積み重ねてきた証が歴史だ! それを間違いの一言で済まされてたまるもんか! 俺は迷わない! 皆、フォルトゥナを斃そう!」
「俺たちは勝つ! 全ての支配から人を解き放つ!」
シンは血光の翼を放ち、全力でフォルトゥナに斬りかかる。フォルトゥナはそれを左腕で受け止めた。
「私が呼び出したというのに……お前は逆らうばかりか私に刃を向けるのですか!?」
「俺たちが出した結論が気に食わないからと、歴史を消し去るようなことをするからだ! 二度と同じことはさせない。そのために討つ!」
「私は私の力を行使することを前提に調べよと言ったのです。だというのに……。」
「その前提を覆した方がいいと、俺たちは結論を出した。あんたが力を行使するせいで人が苦しむ様も見てきた。俺はあんたの存在まで否定はしたくない。けどな、こうまでするなら存在否定せざるを得なくなるんだよ!」
人に絶望したからと、天体衝突を引き起こすのではエルレインと何の変わりもない。神といっても、結局は世界に追従すべき存在なのだ。その範囲を超え、歴史や人の存亡にまで手を伸ばす。
それは許されざる行為であり、断罪すべきものだ。
「あんたに作られた俺が、あんたを討つ! それだけだ!」
全力を振り絞り、彼はフォルトゥナを薙ぎ払う。フォルトゥナが弾かれ、さらに追撃を加える。
「大爆掌! 爆撃炎斬!」
左手でフォルトゥナに掴みかかって爆風を直撃させ、掴んだまま火を纏った大剣を叩き付けた。さらに技を繋ごうとシンは構える。しかし。
「食らえ! 翔牙月影……ぐはっ!」
大剣を構えて突撃しようとしたシンに、フォルトゥナは右腕を軽く振った。たったそれだけでシンの体が宙を舞い、弾き飛ばされる。
「くっ……気をつけるんだ皆! フォルトゥナの力はただごとじゃないぞ! 多分、結界みたいなものがあるんだ!」
シンは最後に奥義を放つときに違和感を覚えていた。何かエネルギーが拡散していくような感じだ。どう考えても結界があるとしか思えない。
「神を相手にしてるんだ、そのくらいの無茶は承知の上だ! いくぜ、どぅりゃあ!」
今度はロニがフォルトゥナに一撃を叩き込んだ。その重い一撃がフォルトゥナに命中したその瞬間に、ロニがシンと同じように弾かれる。
「これは……何なんだ!?」
「どけ!」
ジューダスがロニに代わって突撃する。ジューダスは真正面からではなく、フォルトゥナのやや左前から斬り込む。
「はっ、はっ、はっ! 幻影刃! そこだ!」
斬りつけとすり抜け、さらに戻りながら刺突を放つ。さらに戻った地点から奥義を放とうと身構えた。
「粉塵裂……うはっ!」
だが、二人と同じように左手で薙ぎ払われた。奥義を出す間もなく攻撃を受けてしまう。
「奥義から先が出せない! ナナリー!」
「わかってる! 牙連閃! まだまだ! 龍炎閃!」
ナナリーのメテオストライクから連射された矢は、フォルトゥナに届く前に放たれた火炎弾によって撃ち落された。さらに、龍の頭部のような炎も右手で払われてしまう。
「さすがに神とはよく言ったものだ。ダメージがまるで与えられない!」
ダメージを与えられないのでは斃すことはできない。
しかも、属性攻撃に対する耐性もかなりのものだろう、とシンは見当をつける。
「だったら直接斬る! 技に頼っていられるか!」
一般的な晶術によるダメージも当てにならない以上はどうしようもない。前衛4人が一斉に斬りかかりに行く。しかし、フォルトゥナが放った火炎弾で全員弾き飛ばされた。
「何て奴だ……攻撃というものを全く寄せ付けないとは……!」
「どうするよ、シン。俺たちじゃ勝てねえのかよ!?」
59 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:33:47 ID:???
しかし、シンは少々残酷な笑みを見せた。何かを待っていたらしい。
「そろそろ時間だな。ハロルド、頼む!」
神のような桁外れの敵にはこれしかないだろうと、ハロルドはある禁術を詠唱していた。究極の無属性晶術、クレイジーコメットだ。
「準備オッケー! クレイジーコメット!」
クレイジーコメットは回復晶術の「如何なる状況の傷をも生命力を活性化させることにより回復する」機構を攻撃に転用したものだ。
つまり、使い手の生命力を活性化し、それを増幅して攻撃力へと変化させている。生命力そのものには属性が存在しないため、属性耐性を持つ敵には最大威力を発揮する。
ただし、詠唱から発動までには時間がかかるため、通常は前衛の支援なしには使用できない。
「あれに巻き込まれたらまずい! 皆は下がってるんだ! 俺は詠唱支援に回る!」
シンのものに限らず、使い手は晶術にある力を込めることができる。その力とは、与えたダメージを吸収したり、精神力を消費してスタミナを回復したり、逆にスタミナを消費して精神力を回復したりと、多種多様だ。
晶術を介して自分や味方の体調をコントロールできる、ということだ。
彼の場合、自分の生命力や精神力を味方に分け与えたりもできる。所謂自己犠牲型というもので、シンの性格をそのまま表している。
ハロルドの禁術、クレイジーコメットは連続晶術の入り口に過ぎない。凄まじい破壊力の代償として支払われる精神力が持たないのが当たり前なのだ。そこで、シンは自分の精神力を提供しようとしているのだ。
「行くぞ、ネガティブゲイト! 俺の力を使ってくれ、ハロルド!」
歪んだ暗黒の空間の出現とともにシンの精神力が体外へと放出され、味方全員に流れ込む。ハロルドの精神力が注ぎ足され、連続する禁術の発動を阻害する壁が全て取り払われた。
「あーりー。さらにっ、トゥインクルスター!」
目くるめく生命の光が放たれ、フォルトゥナのダメージを広げていく。だが、禁術はこれで終わりではない。
「さらにっ、ミックスマスター!」
凄まじい生命の光が放たれ、陽光を見つめた時に見える楕円形のようなものが連続してフォルトゥナを襲う。さすがに禁術は伊達ではない。そして、禁術最終段階が放たれた。
「さらにっ、プリンセスオブマーメイド!」
青白く渦を巻いた光がフォルトゥナを飲み込み、完膚なきまでに叩きのめす。神やそれに準じる者を除けば、ハロルドのみが使える最強の晶術だ。この攻撃でフォルトゥナを守っていた結界が破壊される。
「今がチャンスだ、タイミングを逃すな!」
シンがフルブーストを使い、一気に間合いを詰める。残像を駆使し、フォルトゥナに狙いをつけさせない。
「ふっ、はっ、せいっ!」
今度は衝撃が吸収されるような感覚はない。確実に命中している。しかし、精神力を削ったために技へと繋げない。已む無くカイルと交代する。
「すまない!」
「さっき回復に力を使ったんだ、仕方ないって! はっ、てっ、てっ!」
しかも、血光の翼を拡大し残像を生み出すフルブーストも使用している。怒りの感情を極限まで高めて翼に変えるのだから、スタミナも精神力も消費する。
その上、精神力の回復が遅い体質である以上はどうしようもない。今はカイルの攻撃が途切れそうになった瞬間を狙って、フォルトゥナに斬りこむくらいしかできないだろう。
「爆炎剣! 燃えろ! 牙連蒼破刃!」
カイルが足元から吹き上げる火と火炎を纏った一撃、さらに連撃に加えて飛ぶ斬撃を叩き込む。そこに逃がしはしないと、シンが大剣を振るってダメージを与えていく。
「こんのおおおおおっ!」
シンの重い一撃がフォルトゥナに直撃し、床を滑るように後退させられる。しかし。
「無駄です……。」
フォルトゥナの背に白い翼が生じた。ふわりと浮き上がり、エネルギー弾がシンに向けて放たれる。だが、彼は極めて冷静に対処する。
「守れえええ!」
闇の膜が形成され、盾となって攻撃を防ぐ。さらに、シンも空中へと舞い上がり、フォルトゥナに向かっていく。
敵が空中にいるとなれば、同じように飛べる者でなくてはまともに攻撃できまい。しかも、単に空中から武器を振るって攻撃するならともかく、主体となる攻撃がエネルギー弾ではどうにもならない。
「はああああああっ!」
足場がないために破壊力が減殺されている。決定的なダメージを与えられない。
「くっ……!」
こうなったらフォルトゥナの動きを封じつつ、味方の晶術に頼らざるを得ない。攻撃し続けるしかない。
「俺が抑えられるのにも限界がある! ナナリーは援護射撃! 皆は晶術を頼む!」
しかし、攻撃の手が緩んだその隙に、フォルトゥナは素早く詠唱を完了させた。
「インブレイスエンド!」
60 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:35:12 ID:???
シンの頭上に巨大なシャンデリアのような氷塊が出現し、彼を押し潰さんがために落下する。
シンは避けようとはせずに、あえて破壊する手段に出た。
「ちっ、穿風牙! ぶっ壊れろ!」
巨大な氷塊は風の槍と荒れ狂うカマイタチに切り刻まれた。妖しい輝きを放ちながら八方へと氷の破片が飛び散る。
次はフォルトゥナに攻撃を仕掛けなくてはならない。彼は視線を彷徨わせてフォルトゥナの姿を探した。
だが、フォルトゥナがシンの視界に入った瞬間、彼は目を見開いた。
「何であんなところに!」
フォルトゥナはいつの間にかハロルドの前に現れていた。ハロルドは詠唱中らしく、身動きが取れない。
「詠唱中くらい守んなさいよ!」
自分を慰めてくれたハロルド。自分に愛情を抱いてくれたハロルド。そのハロルドを傷つけさせるわけにはいかない。たとえ自分を作り出した存在であってもだ。
「フォルトゥナ! それだけは絶対に許さない! うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
フルブースト起動と同時に閃翔牙を繰り出し、フォルトゥナを突き飛ばす。さらに、シンのSEEDが覚醒する。
「逃がさない……! ふっ、はっ、せいっ!」
残像がシンの怒りの表情を増幅するかのように揺らめき、シンの動きとアロンダイトの太刀筋が読めなくなる。フォルトゥナはなす術もなくシンの三連撃を受けた。
「まだまだ! 大爆掌! 爆撃炎斬!」
左の掌が赤く輝き、フォルトゥナの右肩に接触した。炎症を引き起こす爆発が発生し、フォルトゥナを弾き飛ばす。シンは追撃に超高熱を発する剣を振り下ろしてダメージを増やす。
「今度は食らえ! 翔牙月影刃!」
再び巨大な剣を構えて突撃し、そのまま剣を振り上げて闇の三日月を生み出しながら振り下ろした。そして。
「夢幻の世界に惑いて滅びろ! 八方! 幻月牙!」
8つのシンの幻がフォルトゥナを取り囲み、一斉に大剣を振り下ろして闇の三日月でダメージを与える。
その瞬間に幻が全て消え去り、フォルトゥナの真上に移動したシンが剣を構えて落下の勢いを加えた突きをフォルトゥナの脳天に炸裂させた。
「まだまだ! はっ、はっ! 扇氷閃!」
シンの秘奥義を受けてふらつくフォルトゥナに、さらにナナリーが追い撃ちをかける。メテオストライクから放たれた矢がフォルトゥナの翼に刺さり、氷の矢が弧を描いて命中する。
しかし、彼らの攻撃はまだ続く。ハロルドの詠唱が完了した。
「裁きの時来たれり、還れ虚無の彼方! エクセキューション!」
暗黒の魔法陣が出現し、闇の力がフォルトゥナの力をそぎ落としていく。ついにフォルトゥナの翼が散り、着地した。
だが、この程度では斃れない。人の思念の集合体とはいえ、神であることに変わりはないのだ。
「エンシェントノヴァ!」
この攻撃からは逃れられなかった。7人全員が爆風で吹き飛ばされた。
「くっ……さすがに甘くない……。」
飛行能力は奪い去ったが、まだ力を隠し持っているはずだ。油断できない。シンは疲れた自分の体に鞭打ち、フォルトゥナに向かっていく。
「はああああっ!」
だが、巨大な剣がその動きを止めた。フォルトゥナはかざした左手でその攻撃を受け止めたのだ。
「なっ……!」
「これ以上は時間の無駄です。ラストヴァニッシャー!」
陰と陽のエネルギーの塊が7人の両脇に出現し、それが激突する。凄まじいエネルギーが放たれ、7人全員を襲った。
「が……ぐああああああっ!」
61 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:36:32 ID:???
このラストヴァニッシャーでは命こそ奪われることはないが、死ぬ寸前まで追い込まれる。このまま晶術の詠唱でもされたら一巻の終わりだ。
「……絶対に俺が全てを守りきってみせる! 誰もあんたに殺させない。殺されて……たまるものかああああああああああああ!」
一撃でも受けたらおしまいだというのに、あろうことかシンは血光を放ちながらフォルトゥナに向かっていく。
「でやああああああっ!」
渾身の一撃がフォルトゥナに命中し、彼女の体が宙を舞って弾き飛ばされた。荒い息遣いの中、シンはさらに向かっていく。
「絶対に……俺が……斃す!」
フルブーストを使う余裕などなかった。普段と変わらぬ血光を放ちながらではあったが、それでもフォルトゥナにとっては信じがたい光景だった。
半殺しにすれば諦めるだろうと思っていた。次の一撃が掠りでもすれば終わりだというのに。
「何故お前はそこまで戦えるのです!?」
「俺が人間の心を持っているからだ!」
シンの性格における最大の特徴は、折れない心だ。そして、それは人間だからこそ持てるものなのだ。
本能に支配されている野生動物は自らの生命を保存するために、圧倒的に力の差がある敵には立ち向かうことはない。不屈の闘志を持てるのは理性を備えることができた人間だからこそだ。
「あんたは人間の思念から生まれたんだろうが、その人間のことを理解せずに救いを実行しようとした。それが全ての失敗の原点なんだよ!」
シンの紅の瞳が炎のように燃え上がる。黒い大剣が再びフォルトゥナを弾き飛ばした。
「あんた無茶しすぎよ! キュアー!」
ハロルドの回復晶術の詠唱が完了し、シンの体力が戻ってくる。怪我の大部分も消えた。
「リザレクション!」
リアラのリザレクションも発動し、全員の治療が完了する。ここからが本番だ。
「人の手に人の歴史を取り戻すんだ!」
疲労したシンに代わってカイルがフォルトゥナに向かっていき、ピュアブライトを振り下ろした。いかに神とはいえ、消耗しているのだ。強化されたピュアブライトの一撃を食い止めることはできなかった。
「うっ……。」
「まだだ! 閃光衝! そこだ!」
突き上げと同時に放たれる光でダメージを広げ、フォルトゥナの抵抗力を奪っていく。そこにロニが突撃してくる。
「代われカイル! どぅりゃあ! 双打鐘! ふっ、はぁっ! 割破爆走撃!」
裏拳からハルバードで斬りかかり、さらに跳び蹴りを炸裂させた。続けて斧の部分でフォルトゥナを引っ掛けて引き寄せ、全力で体当たりを仕掛けた。パワータイプのロニの攻撃を防ぎきれず、再び吹き飛ばされた。
「どけ! はっ、はっ、はっ! 双連撃! まだだ! 散れ、魔人滅殺闇!」
ロニの横を素早くジューダスが駆け抜け、目にも止まらぬスピードで斬りつけていく。与えられるダメージこそ少ないが、確実にフォルトゥナの体力を消耗させている。
ジューダスが闇を使ってフォルトゥナを浮かせたところを狙い、今度はリアラの詠唱が完了した。
「恐怖と共に消えよ、哭け! 極限の嵐! フィアフルストーム!」
恐慌を呼ぶ空気の渦が生み出され、フォルトゥナの体がきりきり舞う。だが、それだけで済まさなかった。
「我が呼びかけに答えよ! 舞い降りし疾風の皇子よ、我に仇なす、意志を切り裂かん!」
風の精シルフィスティアを召喚し、さらに複雑に渦巻く風の刃でフォルトゥナを切り刻む。
しかし、それでも完全に斃すことはできなかったらしい。エネルギー弾が散弾となってばら撒かれ、前衛3人を弾き飛ばした。
「愚かな……神である私に勝てるわけがない……。」
「驕りだぞそれは!」
間髪入れず、散弾に巻き込まれなかったシンの斬撃が炸裂し、フォルトゥナは大きく仰け反る。さらに、無事だった後衛のハロルドの詠唱が完了した。
「聖なる意志よ、我が仇なす敵を討て! ディバインセイバー!」
62 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:37:32 ID:???
フォルトゥナを包囲するように電撃が発生し、包囲を狭めて追い詰める。もう防ぐことはできなかった。
ハロルドは追撃にと具現結晶を使った。
「具現せよ精霊の結晶! ソルブライト! 至高の意志よ、我らに力を! 願わくば、浄化の光、彼らを救わん!」
白と金の鎧を纏った戦乙女が現れ、追尾する光が炸裂する。さらに、津波のように溢れかえる光がフォルトゥナを飲み込み、凄まじい破壊力を生み出した。
「っ……あなたたちは自分の行動が何をもたらすかわかっているのでしょうね? わかるなら……。」
「何を寝言を言っているんだフォルトゥナ! 俺たちの行動の結果はな、あんたの支配から人間を解き放てるってことさ! そして世界は世界本来の秩序で動く。もう神は必要ない!」
シンの全力の斬撃が炸裂し、フォルトゥナが弾かれた。しかし、それで終わるような相手ではない。
「ま……まだ……インディグネイトジャッジメント!」
ウジャド眼の浮き彫りがなされた刃根元を持つ剣が落下してくる。エルレインも使用した最強の術、インディグネイトジャッジメントだ。しかし。
「何度も同じ技が通じると思うな! 穿風牙! ぶっ壊れろ!」
風の槍と荒れ狂うカマイタチが落下中の剣を破壊し、完全にインディグネイトジャッジメントを止めて見せた。
「な……!」
「今だカイル! 止めを刺せ!」
インディグネイトジャッジメントを止められて驚いているフォルトゥナに強襲をかけるべく、カイルが突撃する。
「はっ、てっ、てっ! 岩斬滅砕陣!」
ピュアブライトが床に振り下ろされ、凄まじい量の岩の破片がフォルトゥナに襲いかかる。
そして、カイルの持つ最強の秘奥義が発動した。
「飛翔せよ、疾空の刃! 奥義! 翔王! 絶憐衝!」
2回斬りつけ、床を滑ってすれ違いざまに切り裂き、さらに同じように背後から斬りつける。
そして、ジャンプと同時にフォルトゥナを強烈な気迫のエネルギーで浮かせ、背からオレンジ色のシンが作り出すのと似たような翼を放ちながら急降下してフォルトゥナに止めを刺した。
憐みを絶つ、とはよく言ったものだ。この激しい攻撃に、ついに神は屈した。
「消える……消えると……言うのかああああぁぁぁぁああああ…………。」
人の欲望から生み出された神、フォルトゥナはその姿を散らし、光の粒子へと昇華して虚空へと果てた。
これでフォルトゥナの大部分は討ち取った。放っておけばレンズに宿る残る部分も消滅するだろう。しかし、完全に神による歴史の干渉を消し去るためにはレンズの破壊が必須条件だ。
さらに、放置すればリアラは消滅するフォルトゥナに捕らわれたまま完全に消え去ってしまう。
彼女を解放しなくてはならなかった。
「カイル、最後の仕事だ。カイルにしかできないことだ、頼む。」
シンに促され、カイルはピュアブライトを構えながらレンズに近づいていく。
「これを砕けば全てが……。」
しかし、カイルはレンズに向かったまま動けなかった。
「……カイル?」
リアラの呼びかけに応えるように、カイルは声を絞り出すように言葉を紡いだ。
「できるわけないだろ。いくら世界を救うためだからって、リアラやシンを殺すようなこと……俺が……この……俺が……。」
リアラは悲しみと迷いにゆれるカイルの背に抱きついた。その暖かさをいとおしむように、そして、カイルを慰めるように。
「お願いだリアラ、一言でいい、たった一言、消えたくないって言ってくれ。消えたくないって……頼む、言ってくれ、リアラ!」
そうすればレンズを砕くのを思い留まれる。そして、リアラと共にいることができる。最後の最後まで決断に迷う。
シンはカイルに心が弱いと責めることはできなかった。二人の結びつきの強さはよく知っている。失いたくない思いも理解できる。だが、それは許されない迷いだった。
63 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:38:56 ID:???
「……カイル、私、消えていくことは怖くないの。本当に怖いのはこのまま神の一部として消滅すること……でも、あなたがレンズを砕いて私を解放してくれれば、今度生まれたときには同じ人間としてあなたと出会えるかもしれない……だから……。」
カイルは耐えられなくなり、シンの方を向いた。
「シン、シンもか!? シンも消えたっていいのか!?」
しかし、シンはあえて笑顔で返事をする。
「俺は十分に楽しませてもらったし、生きる意味も見出せた。こんなに素晴らしい人間がいるってわかっただけで満足してる。……カイル。俺がそのレンズを砕いても構わない。けどな、それをしたらカイルが自分でレンズを砕くよりももっと後悔することになる。」
「シン……。」
「カイルには後悔の少ない選択肢を選んでほしい。そして、それが自分の手でレンズを砕くことだ。わかるよな。」
「……うん。」
シンはリアラと目配せをし、二人同時にほぼ同じ言葉を発した。それがカイルの背を押すことになるだろうと思いながら。
「レンズを砕いて、カイル!」
「レンズを砕くんだ、カイル!」
「くっ……うああああああああああ!」
ピュアブライトから斬撃が放たれ、グノーシスの核となるレンズの最も脆い部位、接合部中央に命中した。
神の眼ほどのエネルギー密度はない。しかも、シンがグノーシスの運動を停止させるためにエネルギーを使っていた。故に、この攻撃で簡単に破損した。
罅割れが広がり、レンズが砕ける。レンズが内包したエネルギーが籠の外、宇宙空間へと流れ出した。シンはレンズのエネルギーでカイルたちに影響が出ないようにと、結晶体から闇の膜を作り出して防ぎきった。

静寂の後、剣が落ちる乾いた音がして、さらに誰かが倒れこむような音がした。カイルだった。
先ほどまでカイルの背に存在していた暖かな温もりと、柔らかな重みは消え失せていた。それはリアラが消え去ったことを意味していた。
「…………っぐ……ぅ……。」
拳を握り締め、必死に悲しみに耐えている。愛する者を自らの手で殺したも同然なのだ。悲しくないわけがなかった。
カイルを非難する声と共に、淡い紅の光の塊がカイルの頭上に現れていた。フォルトゥナの最後の思念だった。
「苦しいか、辛いか、悲しいか? 神がいればこそ人はその苦しみから救ってもらえるのだ。だが、お前達は神を殺した。もう二度とお前達に安らぎはない。愛と繁栄に満ちた未来は訪れないのだ。」
「違う……。」
カイルの声は弱弱しかった。しかし、意志だけははっきりしていた。
「神の導きを失ったお前達に未来はない。」
「違う……。」
「今ならまだ間に合う。神に願え。神を求めるのだ。神こそが全てを癒す。大罪人のお前の苦しみですら。お前達人間の願いのはず。」
「違う……この俺の胸の痛みも苦しみも、全部俺のものだ。神になんて癒せない。癒されて……たまるもんか!」
フォルトゥナの誘惑をカイルは撥ね退けた。自らの意志で、自らの力で歩んでいくと決めたのだ。それは長い間考え、仲間達と接し、出した結論だった。
覆してはならない。そして、神の救いを否定すると誓ったのだ。彼の悲しみは忘れてはならないものであり、後々まで生かしていくべきものなのだ。
癒すとは忘れ去るということだ。そして、リアラのことも、仲間達と接したこともだ。そんなものはカイルが本当に望むものではない。
カイルは足に力を込めて立ち上がった。
「だから、全てを委ねられる神なんていちゃいけないんだ。俺たちの未来はお前に作ってもらうものじゃない。俺たちの未来はここにある。ここから始まる!」
フォルトゥナの残留思念が力を失い、光が弱まっていく。
「消えろ!」
カイルが振り払うように叫ぶと同時に、残留思念が完全に弾けて消えた。代わって、別の残留思念が姿を現す。
フォルトゥナから解放されたリアラだった。シンの秘奥義で作り出される幻のように儚く、透けて見えた。
64 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:40:52 ID:???
「そう、未来への時の糸は人の手によって紡がれるもの……。だからこそ無限の可能性が生まれるの……。」
彼女の声はどこか遠くから響くような声だった。消えていく彼女は脳に直接声を送り込んでいるのだった。
「リアラ! 俺は……俺は……!」
悲しみに満ちた瞳がリアラの残留思念へと向けられる。幻のようなリアラはそっとカイルの頬を撫でながら言う。
「だから、信じてる。あなたの作る未来を。あなたと出会う未来を信じて……いるから……だから……私……!」
リアラの表情は悲しげな笑みを浮かべたものだったが、その目から涙が零れる。
「リアラ!」
思わずカイルはリアラを抱き締めようとするが、彼女に実体はなく、その腕は虚しく通過してしまった。
「ありがとうカイル。あなたと出会えて……本当によかっ」
全てを言うことが出来なかった。リアラの姿が消え去り、残されたのは闇だけだった。
「……リアラ……。」
その一部始終をシンは見ていた。そのシンの体も少しずつ失われていく。幻が消えていくように足から順に薄れているようだ。
「俺もここで消えるか……。中途半端な存在だけに、消え方も中途半端だな、俺は……。」
怖くはなかった。自分はシン・アスカのコピーなのだ。リアラのように分身のようなものではない。リアラのようにフォルトゥナに取り込まれて消滅することはない。
「シン、シンまで消えていくなんて……俺……。」
「大丈夫だよ、カイルなら。俺がいなくなっても何とかやってけるさ。それに、リアラと一緒に願ったんだろ。もう一度会うって。リアラを信じてやれよ。相思相愛、なんだろ?」
「けど、俺、ずっとシンに助けてもらってばっかりで何もできなくて、それに、こんなことになるなんて……。」
「いいんだよ。俺の方こそ色々助けてもらったし、何より俺から孤独を奪って仲間の暖かさをくれたんだ。十分すぎるくらいカイルから受け取ってる。」
体の大半が消滅している。話せる時間ももう残り少ない。
「俺、本当に皆といられて嬉しかった。感謝してるよ。リアラは勿論、カイル、ロニ、ジューダス、ナナリー、それに……。」
彼はハロルドに目を向けた。
「俺は皆が大好きだ。皆が幸せになれるように願ってるよ。」
そのシンに、ハロルドが声を嗄らさんばかりに叫ぶ。
「シン! あんた絶対に戻ってきなさい! 別にあたしの時代に戻ってこなくたっていいわ! どの時代にいようとあたしがあんたを見つけ出して捕まえてやるんだから! リアラに便乗してでも戻ってきなさい!」
シンの顔が緩み、そして彼の左の頬を雫が伝っていく。
「そうだな、わかった。約束するよ。必ず戻ってくる。この世界に。この世界は暖かくて優しいから。だから、それまでのお別れだ。」
「シン!」
「じゃあ、また会おう、皆……!」
最後まで残っていた顔の輪郭が薄れて消えていく。彼の意識も薄れていき、そして拡散する。
人の未来を信じた聖女、リアラと、仲間達を守ろうとした英雄、シン・アスカの消滅という犠牲を払い、歴史を巡る戦いは幕を閉じた。
65 ◆dCLBhY7WZQ :2007/11/16(金) 16:44:10 ID:???
ここまでです。
次は最後のストーリー。そして、その後にエピローグが入ります。
つまり、残り2話。もうそろそろ終わりが近づいていますが、あと少しです。お付き合いください。
66通常の名無しさんの3倍:2007/11/16(金) 16:45:56 ID:???
リアルタイムGJ

シンのその後が気にかかりますが、良き終わりを期待しております
67通常の名無しさんの3倍:2007/11/16(金) 20:13:51 ID:???
GJ!!

wktkして待ってるぜ!!
68通常の名無しさんの3倍:2007/11/16(金) 20:17:16 ID:???
GJ!!
思わず泣いてしまった俺ガイル・・・。
くそっ!あんたの才能には脱帽だぜ!!
あと残り2回か・・・でも最後までキチンと見届けるぜ!!
69通常の名無しさんの3倍
GJ
期待して待ってる。