【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】9

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1通常の名無しさんの3倍
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです。
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長、雑談所「所長」にも感謝の乙! をお願いします。

荒れ防止のため「sage」進行推奨。
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
容量が430KBを越えたのに気付いたらスレ立て、告知をお願いします。
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう。

前スレ
【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】8
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1190903643/

まとめサイト
ttp://pksp.jp/10sig1co/
雑談所
ttp://pksp.jp/rookiechat/
2通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 20:52:48 ID:???
2げっと
3通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 20:56:01 ID:???
〜このスレについて〜

Q1
新人ですが本当に投下して大丈夫ですか?
A1
ようこそ、お待ちしていました。全く問題ありません。
但しアドバイス、批評、感想のレスが付いた場合、最初は辛目の評価が多いです。

Q2
△△と種、種死のクロスなんだけど投下してもいい?
A2
ノンジャンルスレなので大丈夫です。ただしクロス元を知らない読者が居る事も理解してください。

Q3
00(ダブルオー)のSSなんだけど投下してもいい?
A3
新シャアである限りガンダム関連であれば基本的には大丈夫なはずです。(H19.9現在)

捕捉
エログロ系、801系などについては節度を持った創作をお願いします。
どうしても18禁になる場合はそれ系の板へどうぞ。新シャアではそもそも板違いです。

Q4
××スレがあるんだけれど、此処に移転して投下してもいい?
A4
基本的に職人さんの自由ですが、移転元のスレに筋を通す事をお勧めしておきます。
理由無き移籍は此処に限らず荒れる元です。

Q5
△△スレが出来たんで、其処に移転して投下してもいい?
A5
基本的に職人さんの自由ですが、此処と移転先のスレへの挨拶は忘れずに。
4通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 20:56:17 ID:???
Q6
○○さんの作品をまとめて読みたい
A6
まとめサイトへどうぞ。気に入った作品にはレビューを付けると喜ばれます

Q7
○○さんのSSは、××スレの範囲なんじゃない?
△△氏はどう見ても新人じゃねぇじゃん。
A7
事情があって新人スレに投下している場合もあります。

Q8
○○さんの作品が気に入らない。
A8
スルー汁。

Q9
読者(作者)と雑談したい。意見を聞きたい。
A9
雑談所へどうぞ。

捕捉
名前欄のトリップの文字列が有効なのは、したらば等一部例外はありますが基本的に2ch内部のみです。
なので雑談所では名前欄のトリップは当然無効です。既に何名かトリップ文字列がバレています。
特に職人さんが雑談所に書き込む際には十分ご注意を。
5通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 20:56:35 ID:???
〜投稿の時に〜

Q10
SS出来たんだけど、投下するのにどうしたら良いの?
A10
タイトルを書き、作者の名前と必要ならトリップ、長編であれば第何話であるのかを書いた上で投下してください。
分割して投稿する場合は名前欄か本文の最初に1/5、2/5、3/5……
等と番号を振ると読者としては読みやすいです。

捕捉:SS本文以外は必須ではありませんが、タイトル、作者名位は入れた方が良いです。

Q11
投稿制限を受けました(字数、改行)
A11
新シャア板では四十八行、全角二千文字強が限界です。
本文を圧縮、もしくは分割したうえで投稿して下さい。
またレスアンカー(>>1)個数にも制限があるそうですが普通は知らなくとも困らないでしょう。

Q12
投稿制限を受けました(連投)
A12
新シャア板の場合連続投稿は十回が限度です。
時間の経過か誰かの支援(書き込み)を待ってください。

Q13
投稿制限を受けました(時間)
A13
投稿の間隔は新シャア板の場合最低一分(六十秒)以上あかなくてはなりません。

Q14
今回のSSにはこんな舞台設定(の予定)なので、先に設定資料を投下した方が良いよね?
今回のSSにはこんな人物が登場する(予定)なので、人物設定も投下した方が良いよね?
今回のSSはこんな作品とクロスしているのですが、知らない人多そうだし先に説明した方が良いよね?
A14
設定資料、人物紹介、クロス元の作品紹介は出来うる限り作品中で描写した方が良いです。

捕捉
話が長くなったので、登場人物を整理して紹介します。
あるいは此処の説明を入れると話のテンポが悪くなるのでしませんでしたが実は――。
という場合なら読者に受け入れられる場合もありますが、設定のみを強調するのは読者から見ると好ましくない。
と言う事実は頭に入れておきましょう。
どうしてもという場合は、人物紹介や設定披露の為に短編を一つ書いてしまうと言う手もあります。
”読み物”として面白ければ良い、と言う事ですね。
6通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 20:56:53 ID:???
〜書く時に〜

Q15
改行で注意されたんだけど、どういう事?
A15
大体四十文字強から五十文字弱が改行の目安だと言われる事が多いです。
一般的にその程度の文字数で単語が切れない様に改行すると読みやすいです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
↑が全角四十文字、↓が全角五十文字です。読者の閲覧環境にもよります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あくまで読者が読みやすい環境の為、ではあるのですが
閲覧環境が様々ですので作者の意図しない改行などを防ぐ意味合いもあります。

また基本横書きである為、適宜空白行を入れた方が読みやすくて良いとも言われます。

以上はインターネットブラウザ等で閲覧する事を考慮した話です。
改行、空白行等は文章の根幹でもあります。自らの表現を追求する事も勿論”アリ”でしょうが
『読者』はインターネットブラウザ等で見ている事実はお忘れ無く。読者あっての作者、です。

Q16
長い沈黙は「…………………」で表せるよな?
「―――――――――!!!」とかでスピード感を出したい。
空白行を十行位入れて、言葉に出来ない感情を表現したい。
A16
三点リーダー『…』とダッシュ『―』は、基本的に偶数個ずつ使います。 『……』、『――』という感じです。
感嘆符「!」と疑問符「?」の後は一文字空白を入れます。こんな! 感じ? になります。
そして記号や………………!! 
空白行というものは――――――!!!





とまぁ、この様に思う程には強調効果が無いので使い方には注意しましょう。

Q17
じゃあ、何度も何度も何度も何度も何度も何度も言葉を繰り返せば凄く強調した感じになる?
A17
同じ言葉を繰り返す事は、必ずしも意味や意見を強調しません。
単独の表現を反復する事は語意や文意を強めないからです。
言い換えれば、単調な描写はそれを反芻する読者の印象には残りにくいです。
簡単に言えば読み飛ばされる可能性が高いと言う事です。勿論使っていけない決まりがある訳では無いですが。
7通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 20:57:11 ID:???
Q18
第○話、って書くとダサいと思う。
A18
別に「PHASE−01」でも「第二地獄トロメア」でも「魔カルテ3」でも「同情できない四面楚歌」でも、
読者が分かれば問題ありません。でも逆に言うとどれだけ凝っても「第○話」としか認識されてません。
ただし長編では、読み手が混乱しない様に必要な情報でもあります。
サブタイトルも同様ですが作者によってはそれ自体が作品の一部でもあるでしょう。
いずれ表現は自由だと言うことではあります。

Q19
感想、批評を書きたいんだけどオレが書いても良いの?
A19
むしろ積極的に思った事を1行でも書いて下さい。専門的である必要はないんです。
むろん専門的に書きたいならそれも勿論OKです。

Q20
上手い文章を書くコツは? 教えて! エロイ人!!
A20
上手い人かエロイ人に聞いてください。


===========================

テンプレは以上。以降投下待ちに入ります。
8生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/10/26(金) 21:50:43 ID:???
第三話 傷付いた少年と少女のポルカ3

 手の平には包帯が丁寧に巻いてある。微かに痛みはするものの、特に支障は無かった。
「あの少年の負った傷に比べたら、こんな傷……」
 カガリの傷は所詮は切り傷で、そんなものは舐めていれば直に治る。しかし、シンの
負った傷は心の傷。下手をすれば死に至る可能性があるだろう。
 カガリはシンの瞳を思い出していた。煌々と赤く輝き他者を圧倒する程の毒を含んで
いると云うのに、刹那儚く消え入りそうな陰りを宿している。肌の色は空に浮かぶ雲の
ように白く頼りなかったが、一度触れると燃え上がる炎の如き熱を帯びていた。
 歪でアンバランスなのだ。
 見た目と内面が乖離していてギャップに驚かされたし、当の本人は自分の放つ甘い蜜――毒に
気付いてはいないだろう。
 だからこそカガリはシンに興味を覚えたのだ。
 自身の婚約者であるユウナ・ロマ・セイランには無い物を、シンは無自覚に持っている。
 カガリは目を閉じた。漆黒の闇の中に静寂が漂う。カガリの好きな世界だ。
 ユウナが持っていないのはきっと自分の持っている闇と向き合う勇気なのだろう。
 カガリはユウナのその一点が苦手だった。光の中を生きるのは構わないが、
自分の影に気付かないとは最悪だ。光が強ければ強いほど影は濃くなると云うのに。
 対してシンはどうか。心の傷を見据える事で自分自身の闇と向き合っているのではないか?
 不意にカガリの唇が妖しく歪んだ。舌なめずりする様は女豹のように貴高かった。
 傷を乗り越えた時こそ、シンは私の生涯の伴侶に相応しい存在となるだろう。
 トダカに任せておけば間違いは無いだろう。あれは愚直なまでに生粋の軍人だ。
かならずや期待に応えてくれるだろう。
 カガリは目を開けると目を細めて宙を睨んだ。その瞳は眩い黄金の光を宿して
いたが、カガリの本性を示すかのように微かな愁いと密やかな陰を内包していた。

――シン・アスカ。面白い奴だ。
9通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 01:18:33 ID:???
>>情熱
 投下乙です。
 トダカがシンに惚れる耽美ssかと思っていたら。カガリがシンを育てていただく
逆光源氏なssだったのですね。予想外の展開にびっくりです。
 久しぶりの投下でも、比喩や心情描写に込められた絶妙な妖しさが健在でした。

 続きをお待ちしております。


>>前スレ319 ある一兵士の話
 投下乙です。先ずはテンプレを。
 投下した背景は、適当に書く理由とは全然ならず、関係無いので其処だけはご留意を。
具体的には、作品とそれ以外は分けた方が無難です。
10通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 07:52:35 ID:???
『星降る空、地の光』

 丘の小屋まで歩いていく。
 家の仕事を手伝い終わった黄昏時。
 風が入らないように枯れ草を隙間につめこんだ、小さな古い小屋。そこでいつも先生が
待っている。
 先生は村の外れに一人で住み、こけた頬に骨張った手足、いつも不思議なことばかり
しゃべって、まるで山の精みたいだった。力仕事はできない人だったけど、文字と計算が
できるから、村の子供に教えたり、市場の計算を手伝って生きていた。
 窓から暖かい西日が部屋に差し込む。薪のストーブで音をたてる薬缶。机に陶製の
コップが二つ。先生は木箱に座り、ぼろぼろの聖書をめくる。ずっと前、街から来た神父に
協力した謝礼でもらったと聞いた。授業の最後に、よく聖書の物語を聞かせてくれた。
「いわく、人はパンのみにて生きるにあらず……おもしろい言葉だ。君はどう思う」
 僕は少し悩み、正直に答えた。
「パンだけでいいから、腹いっぱいに食べたいな」
 軽石のようなパン。味の感じられないコカ茶。凍らせた乾燥芋。肉を口にしたのは
いつだったか、遠い日のことでおぼえていない。
「パンがなければケーキを食べればいいんだよ」
 そういって先生は何がおかしいのか小さく笑った。僕は文句をいう。
「ケーキなんてクリスマスにしか食べられないよ」
 街から来た神父が配ってくれるケーキは、一口で食べられるほど小さくて、とても
腹いっぱいにはならない。けれど、甘くて柔らかかった。断面のスポンジは黄色っぽく、
クリームは真っ白で、上に乗った綿菓子は柑橘の香りがした。
「ケーキが食べられなくても、僕や君は野山を行き、澄み切った朝露を集めて飲むことが
できる。これはとても大事なことだよ」
 そして先生は机の陶器を取り、水をすすった。
「なぜならば、自由に外を歩けて、生きているということだからね」
 僕も手元を見下ろす。端の欠けた陶器になみなみと水が入れられ、しなびた葉っぱが
一枚浮かべてある。水は湯冷ましで、朝露なんかじゃもちろんない。
 だけど、ゆらゆらゆれる葉っぱの動きが不思議と楽しくて、僕はしばらく手の中の水を
見つめていた。
11通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 07:55:15 ID:???
 野山に鐘が鳴り響く。
 遠く空から轟音が降ってくる。
 サーカス一座がやってくる季節みたいに村は大騒ぎだった。
 見上げた星空に無数の白煙を引いて花火が飛ぶ。ロケットは村の畑で爆発し、赤い
大きな火球を作り出した。花火がミサイルだと僕にもわかった。
 監視の人たちは自動車を集め、どこかに逃げ出していた。村の人たちは歩いて丘に
のぼり、団子になって村を見ていた。
 僕も丘の木で一番太い枝にまたがり、燃える畑を見つめていた。先生が木に登るよう
にいったんだ。
「最も高いところで見よう。そしてこの光景を頭に焼きつけよう。世界が変わるかもしれない、
記念すべき瞬間を見た記憶は、きっと君の財産になる」
 先生はラジオを聞いて、監視の人達より先に村のみんなへ逃げるように教えていた。
ゴミから作ったラジオなんてと、みんなは真面目にとりあわなかったけど、すぐ先生の正しさが
証明された。
「証明されないほうが良かったかもしれないけどね」
 畑だけじゃなく、住んでいる家も監視の詰め所も、みんなみんな燃えていく。こんなに夜が
明るいのは初めてだけど、父さんも母さんも暗い顔をしている。友達も、教会からもらった
人形や服が焼けてしまうのを心配している。
 木に寄りかかった先生がつぶやいた。
「革命の歴史については教えたね」
「……忘れちゃった」
「フランス革命も最初は暴動だった。革命が形をなすまでには失敗も反動もあった。人が一人で
歩きはじめる時、最初はてさぐりなんだ。だけどいつかは自分の足で歩けるようになる。今日
この爆撃がなければ明日の食べ物はえられたかもしれないけど、作物を安く買いたたかれる
生活が続いていいはずがない。作物が遠くで人の心をむしばんでいるのを無視し続けていい
はずがない」
 周りに目をやると、肩をよせあって途方にくれる人ばかりだった。木にもたれている先生
しか自分の足で立っていないように見えた。
「この破壊におびえるか、利用してやるか、それを選ぶのは私たちだ。君にはあの景色が
何に見えるかい」
 白い煙が炎で橙色に輝き、クリスマスの綿菓子みたいだった。
 甘くて、一口で消えてしまいそうに小さなケーキ。
12通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 07:57:52 ID:???
 夜が明けてすぐ、黒焦げの村に監視の人たちが戻ってきた。
 みんなに命令して監視小屋を立てさせる。
 みんな口を閉じて作業する。畑をたがやして、灰と土を混ぜあわせて種をまく。
 日が沈みかけ、いつものように僕は丘にのぼった。
 小屋に入ると先生はいなかった。きっと監視の人達とこれからを話しあっているんだろう。
 椅子に座っていると、すきま風が冷たい。
 待っているあいだ、棚に置いてある聖書を読むことにする。いつか先生がいっていた。大昔の
侵略者が、王に聖書を差し出した。王は異なる神を理解できず、聖書を捨てた。それを予想
していた侵略者は計画通りに王を攻撃し、捕虜にし、処刑した。そうして王を殺した侵略の道具が、
今は人を助ける道しるべになっている。
 聖書を読みすすめていくと、ぼろぼろの紙の端に、ミミズがはったような線があった。先生の
書いた文字らしかった。
 急いで書いたのか、とても読みにくかったけど、本棚にある辞書を広げてがんばった。
「きっと彼らはすぐに戻ってくるだろう。しかし逃げ出したことで、村のみんなから軽く見られる。
権威を失ったんだ。ふたたび強さを示さなければならない。しかし昨日に村を焼いた兵器、
ガンダムに反撃するような力は彼らにない。代わりに求めるのは生け贄の羊だ。畑を元どおり
にするには働き手がたくさんいるから、大人は大丈夫。子供もいずれ働き手に育つ」
 書かれていた文章の半分も理解できないまま、僕は小屋を飛び出た。そのまま夜の丘を
かけおりる。
「この村で力仕事ができないのは私だけだ。しかも私はラジオを聞いて、誰よりも先に空爆を
知った。そしてみんなに伝えた。逃げる時に彼らは私を裏切り者の内通者とののしったよ。
私の近くにいた君も危ない。だから、ここでじっとしているんだ」
 ……わからないよ、先生。
「先生を殺したのはミサイルじゃない。あの空高く飛んでいた兵器じゃない。わかるね。
まだ、君一人の力では何もできない。その時まで学び、力をたくわえるんだ。わかるね」
 村の真ん中に赤い炎。あの日のように煙が天まで昇っている。だけど丘には誰もいない。
みんな遠巻きに炎の中心をながめている。火であぶられてこげていく。
 暗い坂に足をすべらせる。あおむけに転ぶ。痛みに涙がにじむ。
 先生が光になって消えていく。
 見上げた空は、一面の星。

 (おわり)
13通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 07:59:57 ID:???
一度完結したのに投下場所が思いつかないのでこのスレに。
今日の放映でフォローがあるかもしれないが、思うところあってこういう方向性のも書いてみたくなった。じゃ。
14通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 16:22:44 ID:???
OOをこの前見逃したから話が分からないけれど、
投下乙!
15激動CE維新 ◆BZrd3B1Wik :2007/10/27(土) 17:19:04 ID:???
  序
現在マット界は新興団体00プロレスの台頭により変革の時を迎えている。
歴史は幾度とも繰り返されるという事は本著を読んでいる方々もご存じであると思う。
UCプロレスの勃興以来、繰り返されてきた歴史が今また繰り返されようとしている。
破壊、創造、破壊。人類が繰り返して来た歴史と同じ事がマット界にも言える。
連合派、プラント派の抗争、オーブ派の台頭と没落、第四の派閥“ラクシズ派”による再興と枚挙に暇がない。

本著ではCEプロレスのもたらした変革とその意義を読み取っていこうと思う。
良識のあるファンには酷評され、黙殺されたCEプロレスではあるが、
様々な団体を作り出したエネルギッシュなバイタリティーを持った団体であった事を知って貰えれば、幸いである。
ターザン・福田
16激動CE維新 ◆BZrd3B1Wik :2007/10/27(土) 17:20:29 ID:???
CEプロレスの全盛期、ある関係者がコメントした言葉、
「これはプロレス・ブームじゃありません。CEプロレス・ブームなんです!」
は有名である。
その言葉の裏には、時代の流れに乗ってしまった人間が持ってしまう傲慢さが隠されている。
その言葉の通りであったという事は否めない。
しかし、空虚なブームに乗ってしまった人間のある種の勘違いから生まれ出た言葉であるとしたらどうだろうか。
私はある意味憐憫の感情を抱いてしまう。
現在のCEプロレスの凋落を考えると、その思いが強くなってしまうのは私だけではない筈だ。
当時のエース格であったサイ・アーガイルは当時の事をこう振り返っている。
「ああ、あの時までは皆調子に乗ってたよ。俺を含めてね。でも、唯一人冷静に状況を分析してた奴がいたのさ。そいつが誰かって?
キラ・ヤマトだよ。悔しいけど、あの時にアクションを起こしたのはアイツだけだったしね。
まあ、当時は俺も良く回りが見えなかったらキラに対しては良い感情を持ってなかったよ。でも今じゃ感謝してるよ。蟠りは今でも残ってるけどね」サイが言っている“あの時”とは、ご存じの通りの「やめてよね事件」の事である。
事件については様々な憶測や情報が飛び交っていたが、時が過ぎた今分析すると、キラ・ヤマトによるCEプロレスの革命である。
その後キラが維新戦士と呼ばれる事になる事とは無関係ではない。

今更ではあるが「やめてよね事件」の詳細を説明すると、CEプロレスのアフリカ巡業のとある会場(多数の関係者に与えるであろう影響を鑑みて詳しい場所は伏せる)
で行われたセミファイナルマッチ三十分一本勝負“サイ・アーガイルVSキラ・ヤマト”でキラが突然サイにシュートを仕掛けた事である。
幸運な事に筆者はリングサイドで見る事が出来たのだが、あの異様な空気は筆舌にしがたい。
華麗で派手な空中殺法を主体としていた筈のキラが、サイを捕らえてサブミッション(確かチキン・ウイング・アームロックだったと記憶している)
にきって落としたのだ。
ロープエスケープをしても離さずに極め続け、レフェリーであったアーノルド・ノイマンが割って入ってブレイクした。
17激動CE維新 ◆BZrd3B1Wik :2007/10/27(土) 17:22:03 ID:???
その後サイがリング外に降りて間を取りつつセコンドにいたコジロー・マードックに対して
「やっちゃって良いですかコジローさん」
と言い放ったのは鮮明に記憶している。
筆者はすわ、遺恨勃発か!? などと考えていたが、事態はそんな軽い物ではなかった。
キラはリング外に飛び下りると観客席に乱入し、椅子を持ち出してサイを殴打し始めた。
この一連の異様な流れにノイマンはキラを制止する為に割って入ったのだが、キラはレフェリーに手を上げると言う蛮行に走り、
逆上したノイマンに危険な角度のバック・ドロップの前に沈んだと言うのが事件の真相だ。
キラがサイを捕らえた時に
「やめてよね」
と言い放った事から「やめてよね事件」と呼ばれる事となった。

この事件の直後にキラにインタビューをしたのだが、その言葉はCEプロレスという会社に対する不満をブチ上げる物だった。
「はっきり言って、今の会社じゃダメだよね。毎日毎日似た様なマッチメークでマンネリ化してる。
そんな事じゃファンだってすぐに飽きるよ。ターザンさんだってそう思うでしょう?
皆危機感がないんだよ! いつまでも胡座をかいてお殿様してたらこんな会社直ぐに潰れるよ。いや、僕が潰すよ」筆者は当時キラの事を評価していなかったが、キラ言葉に秘められた熱いフレッシュなエネルギーにいたく感動した。
しかし、CEプロレスという会社はこの事件ですら商売の種として考えていなかったのだ。
18激動CE維新 ◆BZrd3B1Wik :2007/10/27(土) 17:24:07 ID:???
投下終了。
19通常の名無しさんの3倍:2007/10/27(土) 17:35:04 ID:???
なんだこのプロレスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
投下乙wwwwwwwwwwwwww
20新人 ◆T3aqF.CV6I :2007/10/28(日) 00:11:37 ID:???
 息抜きに外に出ようとして、俺は大量のハロに躓いて階段を派手に転がった。
 痛い。
当たり前を満喫する

 庭に建て付けたベンチに腰を下ろし、人工の空を見上げながら俺は何度目かのため息をついた。
 視線を空から二人の子供とハロに移す。二人ともハロと戯れている。子供らしくて大変微笑ましい。
「お茶でも淹れる? 仕事、息詰まっているんでしょう?」
 向かいの席に座っていた妻の姿を軽く見やり、手を振ってその申し出に応える。
 妻の髪がゆるやかな風に流されて漂う。妻は軽く微笑を浮かべ、髪を押さえつけながら家の中に入っていった。
 それを見届け、再び子供たちが遊んでいる様子を眺める。
「望んでいたことなんだけどな」
 一人呟き、新世代型のハロについて纏めた報告書を読み直す。
 自律AIをどこまで人に近づけるか、
 またそれによってどのような利益が得られるか、伸縮性のある手足をハロに付けた際のデータは……
 自分は口下手だが、こういう時になるとやたらとごたくを並べてしまう。気をつけねば。
 その時、懐かしい曲が流れてきた。街からだろう。
 なんの曲だったか思い出せない。確か……うーん、思い出せない。気が滅入るな。

 思いつつ、再び空を見上げる。
 戦争が終わってからは総てが新鮮だった。この空もだ。
 それが1ヶ月、半年、一年と経つに連れて、当たり前になってくる。
 当たり前が飽きに変わるのにはそう掛からなかった。
 戦って、戦って、戦ってやっと掴んだ平穏に飽きている自分に嫌気がさしたのも何回目だろうか。
 暫くそうしていると、聴きなれた怒鳴り声が耳に入ってきた。
「まーたぼーっとしてる!」
「え? あ、ああ、すまない」
 コーヒーカップを両手に持った妻が目の前で頬を膨らませながら立っていた。こうやって怒鳴られるのも日々
の日課なようなもの。いつも謝ると膨れっ面が笑顔に変わるのも当たり前、だったのだが今回は違った。
「なーんだか。夫婦生活に飽き飽きしてるみたいですね」
 膨れっ面のまま、妻が言った。慌てて手を振ると違うということを示してみせる。
 しかし、依然顔は膨れっ面のままだ。
「どーですかねー。実はお姫様に未練たらたらだったり」
「いや、それは、違う、って言うか俺と彼女はそんな仲じゃ……」
 びしぃっ。妻の細い人差し指が俺の口に当てられた。言い訳無用のサインだ。
21新人 ◆T3aqF.CV6I :2007/10/28(日) 00:14:12 ID:???
「まったく、よくそんなのんびりできますね。今日はあのお二人が来る日ですよ?」
 はぁ、とため息をつきながら言う妻。
 っ、あの二人って……片や一国の元代表、片やザフトの元エースのあの二人か。
「またニヤニヤしながらやれよろしくやってるだのなんだのと……」
「うー今からでもどこかに出掛けようかな」
 無言の静寂、それが無理で無駄で無意味なことだと、俺達が一番理解していたからだ。
 やわらかい風がふく。
「……私は毎日が楽しくて仕方ありませんよ。あなたと、あの子らと一緒の風を受けるのが」
「……そうか」
「ええ。明後日にはお姉ちゃんたちも来ますから、ぼーっとする暇すらないんです。要は考え方次第ってこと。
 当たり前の生活を満喫しましょうよ」
 そう言って、妻は締めくくった。当たり前の生活を満喫、か。
 もう一度空を見上げる。先ほどとは形の違う雲が先ほどとは違う速度の風に流されている。
 考えようによってはなかなか、面白いかなと思う。
「あ。はいはいコーヒー」
「あ、すまない」
 言いつつ、差し出されたコーヒーカップを受け取り口に付ける。
 そこまで苦くもなければ甘くもなく、胃に優しいミルクコーヒーを舌で味わいながら、こういうのも悪くない、
と思った。
 そんな静かで穏やかな一時を満喫しつつ、それを壊す者は大体予想がついていた。諦めとも言う。
「久し振りアスラン。朝なのにここだけなんだか熱いね。空調がおかしいのかな」
「あらあら、ではプラントの空調管制局に問い合わせなければなりませんね」
「……キラ、ラクス……性格悪くなったな」

 あー締まりが悪い。ともかく、平穏かつ冷や汗だらだらな人生を俺は満喫していた。
 兵士として戦って、戦士として戦い抜いた俺は、この悠久の平穏を、あるいは束の間の平穏を、満喫していた。
22新人 ◆T3aqF.CV6I :2007/10/28(日) 00:24:13 ID:???
文化祭が終わったのでとりあえず投下。
当初は血のバレ直前のレノアの心境だったのに何故ここまで……ってか自分短編投下し過ぎか。控えよう。ネタも尽きたし。
……あんま勢いないなぁ……orz

本編は目の上のたんこぶたる文化祭が終わったので本格始動。
どうでもいいですが投下に苦労しました。
いままではc-auなんたらとかいうURL経由だったのですがエラーで投下に五失敗。
いまはべっかんことかいうのを用いてます。
ではでは……
23通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 08:37:01 ID:???
>>新人
投下乙。

色々と突込み所が満載だな。
まずは体言止め。使うなとは言わないが、効果的に使うべきだな。
体言止めは下手に使うとチープだ。

地の文が一人称なのは構わないが、心情の吐露が文章の流れを阻害している。
文章の流れは滑らかにした方が良い。

内容のテーマが解りにくいのも気にかかる。
これではやまなしおちなしいみなし、だ。
俺の読解力不足が原因なのかも知れんがね。

後は最後の一文が鮪のブツ切りになっている。
句読点のつけ方は気をつけよう。

更なる精進を期待する。
24通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 09:01:29 ID:???
>>21

まずはちょっとした指摘から行きます。
何故「やわらかい風がふく」にしたのかしら?漢字を開いた意味がないように思えるわ。
先ほど先ほどって連発しないで貰えて?繰り返す意味が無いようだわね。
第一「先程」って漢字で書けるでしょう?間違いを繰り返されても……ねえ?
学校で習わなかった?気温は「熱い」のではなく「暑い」なのよねえ。御存知?
簡単なミスを繰り返すと作品の完成度を下げてしまうわ。気を付けてネ?
ミルクコーヒーねえ。カフェオレとかカフェラテにした方が素敵だと思うけれど、
まあアスランが飲むのならミルクコーヒーでも良いのかもネ。

短編は出たとこ勝負。描写を多用して舞台背景を説明したりするのが必要になって来るの。
それなのに貴方は序盤で内容の無いような台詞と体言止め。掴みが苦手なようね。

後、私は一国の元代表とザフトの元エースの言葉から来客はカガリとアスランかなって思ったの。
読み進めて行くと妻の「お姉ちゃん」との台詞から妻はメイリンだと思ったわ。
すると、旦那は誰?って話になるわ。
最後まで読み進めて旦那はアスランで来客がキラとラクスだって解ったのだけれど……
短編で人物を混乱させる理由が思い付かないわ。貴方は読者を混乱させたいの?
それとも私釣られた?お主、なかなかやるわネェ。

誉めたいのは情景描写を取り入れている事かな。ただ、直後の台詞で風云々と
ダブらせちゃうのは如何なものかと思うのよ。画竜点睛を欠いてるわ。

ここの台詞はもうちょっとさらりと書いて欲しかったな。

ともあれ投下乙だわ。貴方は若人なんですもの、沢山書いて経験を積む事をお薦めするわ。
色々とお勉強なさいね。光陰矢の如しよ。お励みなさいな。

そうそう、「っ、」てどう読むの?教えて欲しいわ。よろしくネ。
25通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 10:44:07 ID:???
>>13

素敵なSSだと思ったわ。
このSSは少年視点だから難しい漢字を開いているのだと思うのだけれど、それが
上手い具合に嵌っていると思うの。こういう細かい手法が短編には必須なのよねえ。

所々気になる点は幾つかあるけれど、一番はラストかしら。体言止めでは今までの
展開を受け止め切れていないように思うえるわ。もうちょっと工夫して欲しいかナ。
もうちょっと少年の心境に寄り添ってからラストに繋げたりとか、少年の独白を
挿入してみたりとかやりようはあるわね。
なんでこういう事を言うのか疑問かしら?それは私の趣味なのよねえ。
少年が涙を流したのが痛みだけだとあっさりし過ぎていると思うのよ。
少年の喪失感を含めて欲しかったのよ。その方がより悲劇的になると思うけれど、如何かしらね。

まあ、人の趣向は十人十色。他の人の方が批評が上手いとは思うから、そちらを参考にしてネ。
26通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 11:06:10 ID:???
>>8

余り言う事が無いわねえ。しっかりと書けているし、描写のバランスも悪く無いわ。
言葉選びが個性的よね。勢いが良すぎてカガリのキャラが崩れているのは御愛嬌かしら?
キャラの受け止め方は人それぞれだから構わないけどネ。

継続的に投下なさいね。でないと新人スレでは簡単に忘れ去られてしまうわ。
頑張って!
27通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 11:41:38 ID:???
>>18

貴方に言うべき事は一つね。
ターザン福田とあるけれど、ゴング金沢色が強いわよ。

筆が走り過ぎたようね。
28機動戦史ガンダムSEED 34話 1/10:2007/10/28(日) 21:01:35 ID:???
 
 ことの始めは、地球圏〜太陽系辺境宙域へと続く、オーブ統治下にある地球圏進行
ルートである<回廊>宙域航路の中継点に位置する衛星拠点基地”ロコウ”で反乱不
平氏族の残党による占領事件が勃発したことに端を発した。

 無論のこと、この反乱の報告は諜報部から迅速に本国代表府であるホワイト・ヒル
へと届けられた。深夜にその報告を受けとった首席補佐官でありオーブ軍総司令官
であるサイ・アーガイルは、その場でアスハ代表へ報告書を作成すると、首席補佐官
権限を使用し、法による所定手続きを迅速に済ませる。そして、その場で総合作戦幕僚
会議を開くと、その宙域にある拠点衛星基地”ロコウ”奪還の為に精鋭の機動艦隊の派
遣を決定した。

 軍内部では艦隊派遣に対して、一部の将校の間では大袈裟ではないか?など反乱
氏族軍に対して些か同情の声が上がっていた。艦隊を派遣するということは、大掛かり
な討伐を意味するからである。
 最近まで『統一戦役』と呼ばれた大規模な内戦い大部分の不平士族と反乱分子はあら
かた討たれ、軍内部でも粛清の嵐が一段落した矢先のことであるからだ。

 だが、それは極一部の将校の間だけであって大部分の将兵にとっては代表府の決定
に異議は唱えず、命令に従うのだった。

 兵士が代表府の命に従うのは、全て法に従って下された正式な命令であるからだ。
 
 近代の軍隊は政府の方針に忠実に従うべき存在である。前時代のように、一部の人間
の夢想じみた”理想”とやらや思いつきだけで、区々の防衛戦術指揮に対して一々、政治
家の判断を仰ぐような愚かな士官や戦術的常識を無視して戦力を小出しにして全滅した
挙句、空母で特攻をかけるというような、非常識の上に自己欺瞞の挙句に玉砕させる愚か
な指揮官の命令で動く軍隊は、現在のオーブには存在しない。

 更に問題となった事は、反乱軍の要求が要するに旧ウズミ政権時における氏族による
氏族連合制度と特権の復活であったことである。
 
 無論、そんな要求など笑止の限りであり、認める事などできない。早々に軍隊を派遣
して鎮圧するのがセオリーであろう、しかし連中もまたテロリストのセオリー通りに”ロコ
ウ”に駐在する一般職員とその家族を人質に取って交渉を始めたのだ。
29機動戦史ガンダムSEED 34話 2/10:2007/10/28(日) 21:08:41 ID:???

 しかも、諜報部の調べではこともあろうことか『地球連合強国』であるユーラシア連邦
方面軍の辺境艦隊の首脳部と直接交渉し、弾薬武器の供給まで受けようとしていたのが
判明した。この事が事態に急を要するものとなったのだ。

 このままでは最悪の展開になる。現在のところ、事件そのものは国際法上の形の上と
しては、オーブ国内の内乱と認定されるのだが、テロリスト連中が第三国からの軍事援
助を受け入れてしまったら、その時点でユーラシア連邦の辺境艦隊が国際上の制約が
解き放たれ直接干渉してくる恐れがある。

 こと此処に至って、サイ・アーガイルは自身が艦隊を率いて出撃することを決断する。
反乱を短期間の内に鎮圧し、対外諸勢力の干渉を最小限に留めなければならない。下
手をしたらユーラシアの辺境方面軍との正面衝突を考慮しなければならない……。
 
 それらの不安定要素を考慮しながら深く思案し、短い時間内で決断するとサイ・アーガ
イルは素早く自分が指揮する機動艦隊を編成し、その日の内に出撃することとなる……。


 長編歴史スペクタル<太陽系興亡戦史>より第二巻から抜粋

 ※史実ではサイ・アーガイルがオーブ軍総司令官や最高司令官であった事実は無い。
オーブ軍は、名目上とはいえ総司令官はあくまで代表府の長であるカガリ・ユラ・ア
スハであり、その下の総合作戦本部と参謀本部によって運営されていた。
 
 彼が実際に着いた軍の最高職は、独立機動艦隊総司令である。だが政府では代表首長職
を除き、最高地位である”首席補佐官”であり、実戦部隊指揮官を兼ねる変則的な地位に
居たのは紛れも無く事実であり、史実で立証されている。


=========================
 
 
 オーブ連合首長国<ホワイト・ヒル>――代表府執務室――

 サイ・アーガイルの顔を見ながら、カガリは疑問を当の本人へと投げかける。

 「貴方が出撃するって……一体、どういうことなの?」
  
 カガリは自分の声に困惑が混じっているのを意識はしたが、実際に声が高くなることを抑
える事はできなかった。困惑もあるが、同時に不安感の方が大きい。
 
 この時期にサイ・アーガイルが代表府を不在となることにどれだけの混乱が生じるか、カガ
リは彼ほどの人物がこの程度の認識を理解していないはずはないではないか?という疑問に
も思い当たった。
 
30機動戦史ガンダムSEED 34話 3/10:2007/10/28(日) 21:15:52 ID:???

 それを承知しているのか、サイ・アーガイル本人はというと自分の動揺など知ってか
知らずか淡々と報告を続けようとする。

 一瞬だけカガリは、ムカッときたがそこはそこ。長い付き合いである。

 「説明して」 

 「はい。では仰せのままに……」

 サイ・アーガイルは一礼すると、すらすらと話し出した。

 「――地球圏と太陽系外延結ぶ中継ルートの一つにある、拠点衛星基地”ロコウ”が
国内の不平氏族を中心とした反乱軍によって占拠されました」

 「反乱……”ロコウ”……?」
  
 感情がこもらないサイ・アーガイルの冷徹な一言は、投石となってカガリへと大きな波紋
を投げかけた。カガリは、報告の意外な展開にとっさにその基地の所在が何処にあるかが
分からなかった。実際に彼女の関心の一点はこの時期に彼が、本国から離れる理由へと
尽きていたからだ。

 この時期に代表府の中核ともいうべき首席補佐官の不在は政務に多大な滞りを生じかね
ない。というよりも彼のような異端の人材以外に現在の代表府を切り回せる存在が居ないの
だというのが正しい――。他のスタッフも不在の上で、サイ抜きで自分だけが代表府に残って
いても看板の案山子がいるだけであって、仕方ないのだ。

 困惑するその彼女を横目にサイ・アーガイルは、空中に手を伸ばしてもの慣れた手つきで
”三次元立体投影宙図”を操作し始めた。

 三次元立体投影宙図”はその名の通り、航宙可能宙域を視覚的に立体化させ、空中に投
影する技術である。主に宙域戦闘に於ける作戦行動の説明をする時に人間の視覚から見て
最も目に入りやすい図面を構成が可能な為に、現在は各国の宇宙軍では多岐に渡って使用
され重宝されている。

 「代表――。これをご覧下さい」
 
 サイが展開した宙域図は、小規模の小惑星帯を改造した拠点衛星基地”ロコウ”を中心にして
、網目のようにの細かく公式航宙行路が張り巡らされた回廊宙域図面である。地球から月、
そしてラグランジュポイントを経て”ロコウ”へと続く地球圏から太陽系外縁航路へと続く”回廊”
中央宙域へと航路は広がっている。

 この辺りの詳細なデータは、D.S.S.D――”深宇宙探査開発機構”によって入念に調査された
この貴重な情報は、オーブのみの独占状態となっていた。
 
31機動戦史ガンダムSEED 34話 4/10:2007/10/28(日) 21:24:12 ID:???

 D.S.S.D――”深宇宙探査開発機構”とは従来は、火星軌道以遠領域の探査および
開発を目的に設立された機関であった。当初は地球連合、プラント、非同盟中立国家
群が共同で設立に参画した国際組織でその設立目的は「フロンティアの前進」であり、
あらゆる国家・体制・宗教・民族を超越し人類という「種(SEED)」をより遠くの宇宙に送り
出すことを基本理念としていた。だが、メサイア戦役で地球連合軍の攻撃を受けて多大
の被害が出たことと、激動の時代背景の中で、その理念は現在では完全に形骸化した。
各所勢力からの資金援助打ち切りも相次ぎ、資金繰りが困難となり組織として自立する
ことすら困難となっていたところ、近年オーブからの多額の”援助出資”よって辛うじて組
織としての体裁は整えられ、そして代わりに完全にオーブ代表府『ホワイト・ヒル』を構成
する組織の一部門としての機関となった。
 
 カガリもようやく、ここまでの説明で頭の回転が追いつき理解し納得し始めた。
 
 この宙域は近年、太陽系外延部から地球圏中枢部へと続く”回廊”がD.S.S.Dとオーブ
宇宙軍によって発見され、オーブが”回廊”の通行の行き来を独占的に抑える為の仮の拠
点基地として”ロコウ”が建設されたのだ。各勢力から抗議が来たが、適切通行税を支払う
ことによって回廊周辺の航路の安全をオーブ宇宙軍が管轄する事によって、宇宙海賊に
よる略奪行為が激減したことによって国際上暗黙の了解を得る事ができたのだった。

 ――こんな簡単な事も咄嗟に思い出せないとは……。自分は彼が不在になる事に
余程、動揺していたのだろうか?カガリはサイ・アーガイルの顔を恨めしそう見上げた。

 「……ロコウ基地は、こうして見ると防衛基地というよりもむしろ中継拠点よね?」 

 カガリは、冷静さを装い、何気なくその点を指摘した。

 「――はい。ご指摘の通り、ロコウは軍駐屯地としては仮のものです。現在、回廊宙域
の防御に”第二次軍備拡張計画”の要ともいうべき宇宙要塞<ヘリオポリスU>を建造
中です。これが完成した暁には、駐留艦隊の常備によって<回廊>周辺の防御が破格
的に上昇しますよ」

 サイ・アーガイルは建設中の宇宙要塞<ヘリオポリスU>の三次元立体図を投影した。
<ヘリオポリスU>は戦闘要塞の機能と駐留艦隊常備の機能を備えた戦闘型コロニー
タイプの要塞である。かつて存在した<ヘリオポリス>を因んで番目の意味で命名されたのだ。

 建設中の宇宙要塞<へリオポリスU>が完成すればそこを最終防衛ラインの位置とし
て形成が可能となる。駐留艦隊も本格的に配備でき、独自の作戦行動をとることも可能
となるのだ。
32機動戦史ガンダムSEED 34話 5/10:2007/10/28(日) 21:33:33 ID:???
 
 <ヘリオポリスU>の立体図を仕舞うと、再びサイ・アーガイルは空中に投影した宙図
を操作しながら、ロコウ基地の周辺宙域の防御衛星の配置から、航路周辺上の探知衛星
、資源採掘用拠点、更には周辺小惑星帯や基地中継用衛星等、詳細な図面の表示をカガリ
に示しつつ、現場の戦況についての精確な報告を続ける。
 
 この報告のなかで、もともと、総合作戦本部も参謀本部も”ロコウ”を重要拠点の基地とす
るつもりはなく、むしろ周辺にある防御衛星や補給衛星を中心とした遊撃艦隊による巡回を是
としていたことをカガリは、改めてサイ・アーガイルの口から聴くことになる。
 
 ”ロコウ基地”はあくまで中継用補給基地としての意味合いが強く、戦略的拠点基地として
の価値はそれほど高くはないが、現在のところ<回廊>から太陽系外延部への通行用の補
給ステーションを設置していない為に戦術的意味から見たら、現在此処を占拠される事は、
大きな意味をもつのだ。

 カガリはそのことを念頭におきながら、各宙域名や衛星名等を一つ一つ確認し、艦隊の巡
回路とそれぞれの拠点の詳細な規模や軍配備の報告を順番に頷きながら、カガリは熱心に
聞き入った。時を忘れてサイ・アーガイルからの膨大で精確な報告を全て聞き終えると彼女は
首を縦に大きく上下し、首肯した。

 「――うん。よくわかったわ」

 反乱が発生した<回廊>宙域における情勢や敵軍規模等、そしてこれからの展開を含めた、
まるでその場に居合わせたような詳細で精確な報告はカガリを十分に満足させた。 
 
 「――恐れ入ります」

 「この短い時間で、よくここまで反乱軍の詳細な情報が手に入ったわね」

 「軍諜報部の手柄……というより、こちらは”マクグリフ女史”のお手柄です」

 「セレーネが……?」
 
 「そうです。諜報部より先に、私んとこに”マクグリフ女史”からの超光速の秘匿連絡が入りまし
てね――。ちなみに、諜報部の報告がその後だったりするんですよ」

 超高速暗号通信で、補佐官用執務室にいたサイ・アーガイルの元に連絡が届いたのは深夜のこ
とであった。彼自身にダイレクトに通信が行くのは限られた回線であり、しかも彼自身が信用のおけ
る人物のみであった。
 
33機動戦史ガンダムSEED 34話 6/10:2007/10/28(日) 21:36:39 ID:???
 
 そのサイ・アーガイルが珍しく相手を嬉しそうに誉めるの聞きながら、カガリは自
分にとって数少ない同格の女友達であり、D.S.S.Dの最高責任者の顔を思い出し
ていた。

 セレーネ・マクグリフは、かつては、D.S.S.Dの技術開発センター「GSX-401FW
スターゲイザー計画」開発技術陣の1人であり、現在ではD.S.S.D最高責任者でも
ある。サイが唱えた、新時代の航宙戦闘についても高い理解力を示し、『統一戦役』
では、彼の下で作戦参謀も務めた実績があるオーブでも数少ない才媛なのだ。

 そのことがあって彼女は、当然代表府の最高幹部の一人として迎え入れられようと
したが、セレーネ自身の意向もあって幹部職を固辞して、現在は本人の最優先希望
でもあるD.S.S.Dの最高責任者の地位に付いていた。
 
 D.S.S.D自体は、現在オーブの一機関に過ぎないが、ほぼ独立機関としての体裁
が保たれている。それは、旧D.S.S.Dスタッフの意向もあるが、代表府としても、D.S.
S.Dが提供してくれた宇宙開発事業の膨大な研究成果を無視することはできなか
った。その為に代表府としては”国益を優先”するという一点を除けば、D.S.S.Dの活
動方針に一切の口を出さないという、言わば、”金を出すが口は出さない”という方針
の下でかの組織の理念を容認していた。

 セレーネが”ボス”を務めているだけもあって、代表府の方針の思案との合致の結果
毎年、莫大な資金がD.S.S.Dに注がれている。

 これは代表府の最高責任者であるカガリも承認していることであり、首席補佐官のサ
イ・アーガイルに至っては、国家収益を宇宙に求めるという国是もあって積極的に宇宙
開発事業を推進していたのだ。

 それはさて置き、ここまでくればさすがにカガリもサイとの付き合いが長いこともあって、
薄々と彼の思案を把握してきた。

 ロコウ基地周辺に展開する反乱軍の勢力規模はかなりのもので、統一戦役で敗れて
敗残した戦力の殆どが集結していた。散り散りになってゲリラとなって小規模な反乱を
繰り返すよりも、ここで集結した敵反乱兵力を一気に殲滅した方が将来的にみても有利
である、と言いたいのだろうか?それとも反乱勢力との妥協点を見出すべきなのだろうか?
34機動戦史ガンダムSEED 34話 7/10:2007/10/28(日) 21:44:18 ID:???
 
 そうして、改めてカガリは思う。これで何度目になるのだろうか?と。
 
 この国を中央集権体制へと生まれ変わらせることが、ここまで大変な事だとは、
当初、自分はとても考えられないことであったのだ。

 自分の思案が甘く、幼かったのだと、ばっさり切ることも可能なのだが、ラクスの
傀儡だった当時のオーブをみれば無理ないことであったといえよう。オーブは国とし
ての体制がまるで成しておらず、有力氏族による首長達の合議制で政治の真似事
をしていたに過ぎないこの国は、とても近大国家としての体裁が整っていなかった
のだ。

 前半は義父の愚かさで国は滅び、後半はセイラン家によるロゴスとの政治的取引
で辛うじて命脈を保っていたところを、自分はラクス・クラインという爆弾を抱え込んで
、台無しにしてしまった。
 
 だが、それは今やもういい。何とか自分は、崖っプチから引き返すことは出来たのだ
からと、チラリとサイの方へと視線を向けた。
 
 国内改革の立役者でありながら、彼の、サイ・アーガイルの人望は極めて低い。それ
は幾つか理由があるのだが、要は自分が不甲斐ない為に彼は自分のヘマの泥を被っ
ているのだ。感謝という言葉ではとても足りない。今の自分には彼を報いる事などとて
もできない……。だが、今はその彼の力がなければオーブは本当に滅んでしまうのだ。
 
 そして、幾つかの大規模な戦いと内乱を経てやっとオーブは安定へと向っていた矢先
になって、またこれなのだ……。気が短い自分としては、いい加減ウンザリとしてくる。
 
 ――国家の中央集権体制と軍事力増強の要である”第二次軍備拡張計画推進案”。

 サイ・アーガイルが推進している、これらのプロジェクトは、結果として旧体制下で味方だ
った人物の多くが反対派へと回ったが、その反対を抑え、多くの犠牲を積み重ねて成立した
のが現政権なのである。今更、後になど引けない。
 
 後悔など死ぬ直前になってからすればいいのだ。そして、何よりも先ずこの道を選んだ
時点で安っぽい理想論など捨てて、既に現実を直視する覚悟は出来ていたはずだ――。

 そう思いながら宙図へと再び目を戻してみる。無数の星の光点で散りばめられた宙図に
は、赤い光点で重要拠点や補給衛星や防御衛星、小惑星基地などが表記されていた。
 
 ――何気なく、それらを眺めているうちにカガリは、ある矛盾と不合理さに気がついた。
 
35機動戦史ガンダムSEED 34話 8/10:2007/10/28(日) 21:51:41 ID:???

 ――それは以前の彼女が見たら、とうてい把握できず理解が及ばなかったであろう。
確かに少しでも宇宙戦闘の於ける戦略視点がある人間ならば気がつかないはずは、
無いが、カガリ自身、戦略戦術はド素人とはいえないが、アマチュアより多少マシといっ
た程度だろう。だが、以前の彼女ならばまったく気が付かないことだったのだ。
 
 ふと、カガリは空中に投影された宙図へと手を伸ばし、人差し指で”ロコウ基地”の
位置を指し示した。

 「……?この宙域図だけど……えっと、この”ロコウ”が占拠されたのよね?」 

カガリは宙図にある”ロコウ”の位置から指を斜め右上方向へと向け、ある一点で
ピタリと指を止めた。指し示した赤い光点には防御衛星の図印がついている。

 「――ここだけど……?」

 サイ・アーガイルはカガリが示した宙域図の位置を確認し、ほう、と感心したよう
に声を上げた。その宙域には、ロコウの防御の要でもある防衛衛星<G-Z>が設
置れているのだ。

 その宙域に防御衛星が設置されているのは戦略上の重要な理由が存在する。この
辺り一帯は艦艇航行を妨げる障害物が無く、いわば空域とも言うべき場所で防御に
死角が生じやすい。

 ここに防御衛星を設置するのは、宙間戦闘上で欠くべからざる戦術の常識となろう。

 この辺り一帯を押さえることによって”ロコウ”の防御死角をカバーできるのだ。逆
にいえばこの宙域を押さえれば、”ロコウ”を攻めるのも守るのも思いのままなので
ある。これは戦術的にいえば常識であり、セオリー通りであろう。

 カガリはサイ・アーガイルの方へと疑問の視線を投げかける。その視線の意味を
正確に理解し受け止めながらサイ・アーガイルは嬉しそうにカガリの理解度に賞賛
の視線を向ける。ここのポイントを理解してくれるのは正直、話が早くて助かるのだ。

 ――この茶番劇の説明も容易となろう。
36機動戦史ガンダムSEED 34話 9/10:2007/10/28(日) 21:57:14 ID:???

 実際に防衛衛星G-Zは現在、総合作戦本部の命令で軌道から大きく天頂方向へと
位置をずらし、別のポイントへと移動させられていた。
 
 防御衛星が設置に容易であるのは、このように独自に移動できる機動力が備わって
いるからである。むろん、戦闘巡航のスピードは出るはずも無くあくまで、最低限の通常
移動に限るという前提がある。
 
 勿論、この宙域のポイントに防御衛星を設置するのは戦略上の観点においてまこと
に正しく、防御衛星設置を承認した参謀本部の総責任者であるキサカ本部長の戦略眼
は確かであるのだ。
 逆に此処以外の場所に置くような者がいるならば、阿呆としか言いようが無いだろう。
その防御衛星が、その定位置から外れ、今や別の場所へと移動していたりするのだった。

 カガリはその事を直感で理解すると、即座にサイにその疑問を投げかけた。自分が理解に
及ぶ範囲での拙い宇宙戦闘の防御理論の観念からみても、どうみてもおかしいのだ。

 ”どうやって<回廊>から”ロコウ基地”へと敵は容易に侵入できたのだろうか?”

 「――これって、どう考えてもおかしいわよ」

 それは、至極もっともなことであった。何故、完璧な防御を固めていた”ロコウ基地”
周辺がこんなに容易に敵側の手に落ちたのかと?本来なら回廊宙域一帯を抑えられる
前に、こちらも行動も可動だったはすなのに、だ。

 「お見事。その洞察力は賞賛に値しますね――」

 「……え?」

 「代表には、名探偵の素質がありますよ――さて、では事件の真犯人は如何に?」

 「はい?」

 カガリは、その全く答えになっていない彼の回答に戸惑い、それを横目にサイ・アーガイルは
というと、拍手の真似ごとをしながら、嬉しそうに”三次元立体投影宙図”を操作してゆく。
37機動戦史ガンダムSEED 34話 10/10:2007/10/28(日) 21:59:14 ID:???
 
 しばらくして、今まで投影されていた宙図に新たな宙図が重なるように映し出された。
”ロコウ基地”と回廊宙域図面はそのままなのだが、防御衛星の配置から重要航路の
探知衛星の位置が、ガラリと一変したのだ。

 「……なんなの、これ?」

 これを見たカガリはさすがに驚いた。最初に映し出された隙の無い防御で固められた
回廊宙域図から、どう見ても防御に穴だらけの回廊宙域図へとシフトしたのだ。

 「……人は見たいものを見たがり、信じたいものを信じたがるものでしてね――」

 その辛辣な響きにはある種、嘲笑が含まれていた。無差別に餌に飛びついた獲物を
みて罠を仕掛けた猟師のように。人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけでは
ない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見えていないのだ。

 一瞬、頭に何かが閃めいた。本当にそれは彼女の直感だった。

 「……隙をみせた?」

 愕然とカガリがその言葉を口にした瞬間、サイ・アーガイルは物騒な笑みを浮かべていた。
彼は酷く酷薄な笑みを浮かべながらも、優しく呟く。 

 「――こちらの思案通りに、上手い具合にわざわざ一箇所に集まってくれたんです」

 連中が<回廊>を自らの墓標にしたいというならば、その願いを叶えてやりましょう――。
宙図を両手で抱くようにしてサイ・アーガイルは、カガリに宣言する。

 「――国内の大掃除は、これで終わりにしましょう」



>>続く 


38在処 ◆Enzk51yrhM :2007/10/28(日) 23:13:32 ID:???
本当に大事なのは力ある意思だ。
力だけがあったとしても無意味。
意思だけがあったとしても無意味。
壊滅寸前のヘブンスベースを見ればそれが一目瞭然だ。
共に戦っていた奴等は既にいない。俺だけが一人気を吐いている。
しかし、気を吐いた処でどうなる訳でもない。
体勢はもう決っている。悔しいけれど俺達の負けだ。
「――これ以上の抵抗は無意味だ。速やかに武装を解除せよ」
ノイズ混じりの音声が入る。確かにそうだろう。全ては無意味だ。でもな、俺は――
「ファントム・ペインの最後の一人……スティング・オークレーだ! 俺を、俺達を舐めるんじゃねぇっ!」

“機動戦士ガンダムSEED DESTINY another 〜only lonely holy ghost〜
PHASE-1 彷徨える亡霊

落としても落としても敵は湧いて出て来る。もうそろそろ刀は折れ矢も尽きるだろう。
そうなれば敵は俺に群がって来る筈だ。そうなれば全てが終わる。
だけどな、まだまだ心の刃は折れちゃいない。最後の最後まで戦い続ける。
一機、また一機と落としていくが、包囲の輪はジリジリと迫ってくる。
気に入らねえ。こんな雑魚共に苦戦している俺が気に入らねえ。
衝撃が俺を襲う。背後から撃たれたようだ。アラートが不愉快なまでに鳴り響く。
「しゃらくせえっ! 雑魚共にやられる俺じゃねえっ!」
叫びながら機体を旋回させ、背後の敵を薙払う様にビームを放つ。
爆発が一つ、二つと起こり包囲の輪が歪む。
しかし、背後から次々に攻撃が続けられて激しい衝撃が俺を襲う。
口の中を切ったのか生臭い血の味が広がる。
そして、モニターを始めとする計器類が沈黙していく。
「畜生……俺に負けは許されねえんだよ……俺は!俺はなあっ!」
叫んでも相棒は反応しない。沈黙したまま動かない。
「動いてくれよ……俺を一人にするんじゃねぇっ! 俺をおいて逝くなぁっ!」
暗闇に包まれたコクピットの中、半狂乱になって気が触れた様に叫びながらモニターを殴りつける。
痛みなんか気にせずに、拳に血が滲むのも気にせずに殴り続ける。
しかし、何一つ反応がない。更に衝撃が激しくなる。もう、これまでだ。
「スティング、諦めちゃ……ダメ」
「こんなのスティングらしくないじゃん。諦めるなんてらしくないよ!」
知らない誰かの声が聞こえる。知らない奴等、金髪の女と水色の髪の男の姿が浮かび上がる。
――そして、俺は白い闇に包まれた――
39在処 ◆Enzk51yrhM :2007/10/28(日) 23:14:50 ID:???
初めまして。2ちゃんねるには投下をするのは初めてですが、宜しくお願いします。
40通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 23:55:17 ID:???
>>戦史
 投下乙です。
 随所に種への揶揄と、某スペースオペラのパロディが見られますね。
種っぽくないSFギミックも、戦史さんの味だと考えれば個性的です。
"回廊"のイメージがいまいち湧きませんが、地球圏から通り易い軌道、で
考えていいんでしょうか?
 セレーネといいカトー教授といい、種死後のキャラクターだけでシナリオを作れるのは
上手いと思いました。
 続きをお待ちしております。

>>在処
 初投下乙です。
 一回目で、シナリオの評価は出来ませんが、完全ピンチの状態から
「白い闇に包まれた」は世界転移か時間逆行の前触れですかね。

 適当なところで〜〜する。 と 〜〜した。 を使い分けた方が、
状況の移り変わりが分かりやすくてベターだと思います。

 固有名詞以外で、同じ意味の言葉が続く時はなるべく言い換えた方がベターです。

 続きをお待ちしております。

41通常の名無しさんの3倍:2007/10/29(月) 12:19:50 ID:???
該当スレがあるのでそちらに投下するように
スティング主人公でオリジナルの話作ろうぜ 第五話
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1174294366/
42通常の名無しさんの3倍:2007/10/29(月) 12:51:04 ID:???
>>41
誘導厨乙
残念だが新人である以上スレチではない
43通常の名無しさんの3倍:2007/10/29(月) 19:25:13 ID:???
該当スレがあるならそっちに投下するべきだろ。
44通常の名無しさんの3倍:2007/10/29(月) 19:29:10 ID:???
>41,43
テンプレをどうぞ
45通常の名無しさんの3倍:2007/10/29(月) 20:50:50 ID:???
何処も大変だな
まぁ乙

新人スレにもスカウトが来るか・・・
46通常の名無しさんの3倍:2007/10/29(月) 22:44:44 ID:???
絵師テンプレート暫定版

新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を!
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長、雑談所「所長」にも感謝の乙! をお願いします。

→また、イラストを描いてみたい絵師の卵の方や造形職人も歓迎します。
→投下宣言の上雑談所『職人のチラ裏スレ』までどうぞ。

・「sage」進行でおねがいします。
→・SS作者及びイラスト制作者には敬意を忘れずに。煽り荒らしはスルー。
・本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁 。
・スレ違いの雑談はほどほどに
・本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう



新人絵師だけどどうすればいいの?


本スレでこれから投下しマース宣言

雑談所に投下(若しくはURL貼り付け)

本スレ、雑談所で作品を肴に一杯

こんな流れでお願いします
47週刊新人スレ:2007/10/29(月) 22:45:57 ID:???
目次(1/2)

 元凶は天上人を名乗る武装組織だった。それが元で優秀な売人の彼も手元に売るものが無くなり……。
hate and war
>>312

 ただのパイロット、ただの父親、ただの夫。その男は否応なしに時代の波に巻きこまれ、そして。
ある一兵士の話
>>319

 鏡はシャワールームで彼女の姿を映し出す。だが本当の彼女を映す鏡など有りはしなかった……。
煉獄のディアーナ
>>323

ザク・ファントムVSカオス。あまりのレベルの違いに何も出来ないデイルの見守る中、レイは押し込まれていく
SEED『†』
>>330-335

 手に巻かれた包帯。それを見ながら考えるのは、傷の事。自身のではなく少年の心を抉った傷は……。
生きる為の情熱としての復讐
>>8

丘の小さな古い小屋。力仕事の出来ない『先生』はみんなに勉強を教え、聖書の物語を聞かせてくれた……。
『星降る空、地の光』
>>10-12

 「これはプロレス・ブームじゃありません。CEプロレス・ブームなんです!」激動のマットを駆け抜けろ、キラ!
激動CE維新
>>15-17

 静かな人工の空、ハロと遊ぶ子供達、当たり前の風景。そして『当たり前』に慣れて居ない彼……。
無題
>>20-21

氏族の特権復活を掲げるテロリストに占拠された拠点衛星基地ロコウ。サイは自らの出撃を決意する。
機動戦史ガンダムSEED 
>>28-37


 倒してもわき出る敵、つきる武器。圧倒的不利の中一人気を吐き戦う彼だが。そして遂に……!
機動戦士ガンダムSEED DESTINY another 〜only lonely holy ghost〜
>>38
48週刊新人スレ:2007/10/29(月) 22:47:03 ID:???
目次(2/2)

 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】>>1-6
絵師テンプレート【暫定版】>>46


各単行本も好評公開中
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お知らせ
・※印は前スレ【8】のレス番です

・投下作品とのリンクを問わず絵師の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。これくらいのさじ加減で一つ。 素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。

・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点でアナウンスの上お願いします。

編集後記
あまり知られて居ない事ながら実は短編ブーム、投下数以外でも当方を直撃している。
簡単に言えば、ネタバレしないで煽りを書くのが難しい。と言う事なのだが。
特に某女史の場合はエロだったり序盤にオチが隠してあったり。もうなんて言うかさ、人が悪いというか……。
――さて、今日も泣きながら精進精進っと。
49通常の名無しさんの3倍:2007/10/30(火) 13:41:25 ID:???
>>編集長
 GJ! 乙です!
50在処 ◆Enzk51yrhM :2007/10/30(火) 21:14:48 ID:???
PHASE-1-2

全身がむず痒い。まるで幾百の虫が体中を這い回っているみたいだ。
不快感が澱のように俺を包み込んでいる感覚を覚える。
しかし、指一本動かす事が出来ない。辛うじて僅かに首を動かせる事ぐらいが出来る。
ゆっくりと目を開くと、柔らかい光が痛みを伴なって俺の瞳を刺し貫く。明るさに目が慣れていないのだろう。
全身を覆う疼痛と突き刺さるような瞳の痛みはまるで拷問だ。
意識と肉体が切り離されたみたいに体をまともに動かす事が出来ない。

「目が覚めたかね?」
誰かが俺に声を掛けた。
だけどそんな事は知った事じゃない。
今の俺には襲い来る責め苦に耐える事が精一杯だ。
「フン、だんまりかね。まあ良い。」
不快感を露したに舌打ちが聞こえる。
「私には息子がいた。そうだな、お前位の歳だ。真面目な子だったよ。でも……ブルーコスモスのテロに巻き込まれて死んだ」
独り言にしては大きい声が聞こえる。多分、俺に向かって話しているのだろう。
「お前らがコーディネーターを殺すのは別に構わない。私だってナチュラルだ。コーディネーターに恨み言の一つも言ってやりたいからな。」
くだらない話を俺にする意味なんてあるのだろうか。
「私の息子は死んだ。でも、なんでお前みたいな奴がいきてるんだ?」
淡々と続く声に俺対する憎悪が加わって来た。
明るさに目が慣れ始め、徐々に体を動かせるようになって来た。
「そんな事俺が知るかよ。お前のガキは日頃の行いに問題があったんじゃないか?」
俺は掠れた声で言葉を投げ付けた。
「俺が憎いんだったら今がチャンスだぜ? さっさとやれよ。今だったら……いや今じゃなきゃ俺はやれないぜ?」
「私には無抵抗な人間をいたぶる趣味はない。そして、私の息子は優しかった。
……それに私は医者だ。目の前に助けるべき命があるならば、どんな命でも助ける」
声は穏やかなものへと変わって行った。首を動かして声の主の方に振り替えると、白衣の男が暗い瞳でじっと俺を見つめている。
「此所は何処だ?」
「ラボだ。……ロゴスのな」
「へぇ。ファントムペインのか?」
「それは違うな。此所の主はロード・ジブリールではない。此所の主は……前ブルーコスモス代表、ムルタ・アズラエルだ」
この男は何を言っているんだ?ムルタ・アズラエルは死んだ筈だ。まさか……。

to be continued
51通常の名無しさんの3倍:2007/10/31(水) 20:30:37 ID:???
>>50
解らない奴だな。
該当スレがあるんだからそっちに投下しろや。

スティング主人公でオリジナルの話作ろうぜ 第五話
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1174294366/
52通常の名無しさんの3倍:2007/10/31(水) 20:32:38 ID:???
>>50
投下乙。
ロゴスのラボじゃあ、あんまり助かったって感じがしないけどこれから如何なるんかいな。
続き待ちだね。

>>51
テンプレ嫁。
53通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 09:11:46 ID:???
>>52
誘導厨はスルーしようぜ。荒れる元だ
54通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 15:25:39 ID:???
                          ,.}{.、
                         ,.:'ナホヤ:、
                       /´ ̄  ̄`:ヽ.
    j|                    /        :.\                j|
.   f .`i               /           :::::.`i               f .`i
   _}Ii.I{                |    _________..:::::::::::|                ,}I!I:{
   下了   ,人        ノ:い,.:ォ''緜;;絲;;絲;;綿`ぇy'.八.          人.   下了 
    | :|    }I i{     |i  / _;:Yf,,.-−―――−- ,iY_.::ヽ. ,l|.     }i I{   | :|
    ! ::!.   |:|    .iHh lれ|∩l|:┌三三三三三┐:|l∩|iう:l frti.    ! :|   | . ::|
   {-‐-}   |::!     l ̄├三三||: | |';';';';';_;;_';';';';';| | :||三三┤ ̄:i   |.:l   .{-‐-}
.    |  ::l   {‐ }     lr‐i | |f⌒i l|: | l';':'父乂父、';l | :|lf⌒i | | r‐i:|     {‐::}   .! :::l
   |  :::|.  | :l     || |.| l|  .l:||: | |i'乂:ri‐i:i:乂'i| | :|||  .l:l | l l:l    i :|   |  :::|
.  ├−┤  j,.. :!    .l ニ. ! !;:三:;l|: | ll;王;lエエl;王;ll | :|l;:三 :! !. ニ.:l    j :!.  ├:‐::┤
  |   ::|   | ::!     .|r‐i | lf⌒i ||: | |l:干:ri‐i:i:干:l| | :||f⌒i l | r‐i:|     | :|  |  .:::|
  _|   :::|_.l ..;:| __,l|__l | ||_.l:l|, ニ;l;王;lエエl;王;l;ニ ;|l|_.l:| | |__|:!__,l .;;r!';ミ;ヾ;'ゝヾ|_


                   マータハージマタカ
                 (7世紀前半 インド南西部)
55tear's in heaven ◆6Pgs2aAa4k :2007/11/01(木) 21:54:33 ID:???
“雪”

 雪を見るとあの子の事を思い出す。
 白くて汚れのない雪はまるで彼女のようだ。
 手に触れたら融けて消えてしまいそうな儚い運命が彼女の記憶と同調する。
 彼女は俺の腕の中でゆっくりと冷たくなっていった。その冷たさは雪の冷たさそのものだ。
 冷たさは俺の心の奥に深くに刺さったままの棘だ。
 傷は幾年時が流れても癒される事は無く、時折思い出したように重く鈍く痛む。
 何処も傷ついてはいないのに、感じる痛みが確かに俺の中に存在する。
 目には見えない幻のような痛みは俺と彼女の間に残された最後の絆だ。
 だけど、その絆を手繰り寄せても、彼女の死という変える事が出来ない運命しか近付いてはこない。
 彼女がこの世界にはいないという事が、常に俺の心を抉っている。
 本当に守りたかったものは乾いた砂のように手から零れ落ちていく。
 どんなに渇望しても、望みは叶う事はない。
 その事実が俺の世界を歪ませている。
 雪が冷たく無情に降っている。下から見ると薄汚れた灰色だけど、地面に降りると無垢な白だ。
 どんなに降り積もろうとも、必ず融けて消えてなくなる。
 俺の中に存在する彼女の記憶もいつか消えてなくなってしまうのだろうか、などと思ってしまう。
 どんなに重い想いであろうと、年月が過ぎれば次第に軽くなって消えてしまうかも知れない。
 人の心は移ろいやすく、人の想いは薄れやすい。
 でも、どんなに時間が流れようとも消えない想いがある筈だ。

 外に出て、空から舞い降りて来る雪を掌でそっと優しく受け止める。
 あの時と同じ悲しい冷たさを感じた。そして、儚く消えていった。

 涙溢れて頬を濡らしていく。雪の冷たさと儚さが俺の心を凍てつかせていく。
 瞳を閉じると彼女の顔が浮かび上がる。でも、彼女は俺に微笑んではくれない。
 彼女の口が動いている。何を言っているのだろうか。
 同じように口を動かしてみた。
 ――笑って――
 彼女は俺に泣き顔では笑顔を、と言っている。俺は精一杯の笑顔を作ってみた。
 彼女はいつかのように俺に微笑んでくれた。
 彼女が望むのなら俺は心が痛む度に笑おう。
 彼女の微笑みの為に。

56通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 22:24:17 ID:???
池沼ステラ厨乙w
57通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 22:43:42 ID:???
>>56
(;^ω^)
58通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 23:03:12 ID:???
>>在処
 投下乙です。
 実は生きていたアズラエルの動向が気になる所ですね。
 短いので、最後の締めはもう少しひきつける形で終わらせるのが良いと思います。
 続きをお待ちしております。

>>tear's in heaven
 投下乙です。
 ステラを思うシンの心情を丁寧に書いてあると思いました。
 ただ、最後 >>彼女は俺に泣き顔では笑顔を、
 「泣き顔ではなく笑顔を〜」か「彼女は泣き顔で、俺に笑顔を〜」かで
少し雰囲気が変わってくると思います。惜しいところで脱字があると感じました。

 このシリーズに限らず、続きをお待ちしております。
59通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 23:46:49 ID:???
>>55
投下乙です。
悪くないと思います。

が、嫌な言い方ですがヤマ無しオチ無しの「モノローグ」的すぎな気が。
前後に何か情景でも挟んでみると良いかもですね。
構成は凄く良いので足りない部分を見つけられると良いですね。

次回も期待して待ってます(^^
60通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 20:20:26 ID:???
戦闘描写ができないクズ職人には消えて欲しい。
具体的には>>55とかね。
61通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 20:30:12 ID:???
>>60
よう、俺。
やっぱりガンダム系SSにリアルな戦闘描写は必須だよな。
62通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 20:36:14 ID:???
ついでにまともな文章が書けない職人にも消えて欲しいぜ。
>>50なんてイラネ
63通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 20:44:38 ID:???
一人三役とは、騙るスレの住人は器用だなぁw
64通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 21:03:21 ID:???
>>62
住人の総意が伝わればクズ職人どもは自ら身を引くだろ。
>>63
クズ職人乙。このクズっぷりは戦史か?
65通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 21:08:43 ID:???
>>64
常識で考えると†だろ。
66通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 21:20:08 ID:???
>>63-65
頼む。
このスレを壊さないでくれ。
どうか、ここは引き取っていただきたい。
67通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 21:59:30 ID:???
>>66
作者乙。
68通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 23:46:40 ID:???
60=61=62=63=64=65=66=67
69通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 07:07:16 ID:???
糞みたいなご高説を垂れる馬鹿は死ねよw
つか正直にここ潰したいだけだって言えば?
70通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 08:17:26 ID:???
>>69
ハァ?お前みたいな犬の糞は騙ろうスレに帰れよ
住人の総意はクズ職人の排除に纏まっているんだ
部外者なんておよびじゃねーよwww
71通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 10:42:33 ID:???
60=61=62=63=64=65=66=67=68=69=70
72通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 11:52:19 ID:???
>>住人の総意はクズ職人の排除に纏まっているんだ
不特定多数の出入りする匿名掲示板のスレに総意なんて物があるかどうかを確かめるのは不可能。
お前の様なマントヒヒ程度の知能しか無いヒトモドキには理解不可能だろうが。
73通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 19:17:59 ID:???
投下待ち
74通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 19:38:16 ID:???
リアリティのある戦闘描写の出来ない職人はいらないと思う。
75通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 22:03:37 ID:???
ロボットがピコピコ光線銃を撃ち合う戦闘にリアリティってwww
76通常の名無しさんの3倍:2007/11/03(土) 22:33:58 ID:???
>>75
人間ワープとスーパー光線銃思い出しちまったジャマイカw
77通常の名無しさんの3倍:2007/11/04(日) 02:20:25 ID:???
ここってオリジナル(自作小説の設定流用)ガンダムってありなの?
78通常の名無しさんの3倍:2007/11/04(日) 02:26:24 ID:???
「ガンダム」でさえあれば
79通常の名無しさんの3倍:2007/11/04(日) 03:16:05 ID:???
>>77
何かの作品の世界観やキャラクターが関わっていれば可能(CE世界やキラ・ヤマトなどが出ているなど)
キャラもオリジナル、世界もオリジナルだと旧・新の区別が着かないのでそもそも板として扱いが解らないから
創作系の別板を探した方が良いと思われる。
80通常の名無しさんの3倍:2007/11/04(日) 03:26:25 ID:???
>>77
オリジナル設定をやろうとすると
・既存世界(西暦かCE)の技術発展世界でそうなった
・オリジナル世界とのクロスオーバー
どっちかしかないと思う
既に設定があるなら後者が書きやすいと思うけど、問題は受け入れられるかどうか微妙
個人的には面白いと思うけどね
81通常の名無しさんの3倍:2007/11/04(日) 03:38:24 ID:???
>>78-80
返答ありがとうございます
ちょっと>>80の後者で試してみます
82通常の名無しさんの3倍:2007/11/04(日) 13:04:02 ID:???
メストや所長は殆どオリジナルじゃね?
83週刊新人スレ:2007/11/05(月) 19:53:03 ID:???
目次

 何故か助かった彼を医者が治療している。彼が担ぎ込まれた施設、そこは……。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY another 〜only lonely holy ghost〜
>>50

 どうしても書きたいならばこちらへのアンカーだけにしましょう。スレ環境の整備にご協力の程を。
失われた世界の名所旧跡シリーズ 『マータハージマタカの寺院(復元図)』
>>54

 手に触れただけで融けて消えてしまう雪。雪を見る度に融けて消え失せた少女の運命を思う彼の思いは。
tear's in heaven
>>55

 コラム『朝まで一人討論会・SS職人のあり方を問う!!』
>>60-72,74-76

 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】>>1-6
絵師テンプレート【暫定版】>>46


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お気軽にttp://pksp.jp/rookiechat/までどうぞ

お知らせ
・投下作品とのリンクを問わず絵師の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。これくらいのさじ加減で一つ。
素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。

・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。

編集後記
世は全て事も無し。良きかな良きかな。
まぁ、過疎スレを中心にボコボコ堕ちていっていますので心の故郷は保守しておきましょう。
すでに新シャアの故郷は此処しか無くなってしまったものからの忠告でした。 。・゚・(つД`)・゚・。
84通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:06:28 ID:???
>>83
一人討論会のレスの内、一つは俺
荒らし扱いされるのは心外
つか、煽ってんの?オマエ
85通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:12:55 ID:???
>>84
多分>>66の人だと仮定してカキコするけど
編集長は荒らしにレスする人も荒らしと一緒ですよ。スルーしましょう
って言いたいのだと思う。今回はわざわざ>>54にもアンカー打ってるし
過去にもこのパターンで荒れたしね
86通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:13:02 ID:???
編集乙ですが、荒らしを呼び込むような挑発行為は避けるべきかと・・・
87通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:37:29 ID:???
>>84
わざわざ自分が荒らしだと名乗るなんて、大層律儀な方ですね。
編集長のユーモアを理解出来ないなんて本当に可哀想ですことね。
あなた、御自身でこのスレにふさわしくない書き込みをしたのだと言う自覚はあって?
ヲチスレに引きこもっていた方が宜しくてよ。
目障りだからさっさと消えていただけない?
88通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:42:04 ID:???
無能編集長晒しage
89通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:44:19 ID:???
変酋長のユーモア溢れる書き込みのおかげで

ま た 荒 れ て き ま し た
90通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:46:34 ID:???
>>89
まだそんなに荒れていないと思う。
91通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:49:36 ID:???
取りあえずオチスレ住人はカエレ
92通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:53:26 ID:???
>>54
はい、 糸冬 了
93通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:54:05 ID:???
編集長GJ!誰がなんと言おうが俺はふいたw
94通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:56:13 ID:???
>>93
コレがいわゆる一人討論会なんですね、偏執長^^
95通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 22:59:01 ID:???
つか、煽ってんの?オマエ
96通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:00:19 ID:???
>>93はひまじんです。
97通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:01:07 ID:???
忙しい奴はこんなスレ見ないw
98通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:02:01 ID:???
三●目はここと騙ーるを紛争状態に持ち込みたいってのがよっくわかりますね
99通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:02:14 ID:???
ひまじんを知らないとはモグリだなぁ
100河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:03:10 ID:???
※空気読まずに投下します。
 今回17レス分になります。
 8レス目を投下した時点で30分程空けますので、支援をいれていただけると助かります。
------

「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜

第11話 「黎明 −いじ−」(後編)
(1/17)

 同日、一五:五〇。
 ルナマリアは岸壁近くに座って海を見ていた。
 火照った身体に少し冷たい風が心地好い。
 しかし、身体の熱は冷めても、胸の中の興奮は納まる気配を見せないどころか泉の如くに
湧き上がってくる。
──あたし、やれた。やれたんだわ。
 彼女の座っている場所からは見えなかったが、崖下には先刻彼女が撃ち抜いた的が流れ着いていた。
 数週間後には自然分解され影も形もなくなってしまうであろうそれは、まだしばらくは中心に穴を
開けたまま、波間を漂うことだろう。

 ふと、ルナマリアの耳が男たちのくぐもった歓声を捉えた。
 そしてそのすぐ後に続く、
「馬鹿野郎。本当に大変なのはこれからだ。喜ぶのは後にしてさっさと準備しろ!」
 と、こちらは明瞭な怒声も。
「さて、休憩も終わりね」
 立ち上がり、アークエンジェルの方を振り返ったルナマリアだったが、そこに男たちの姿はなかった。


 時を遡って、同日、九:二五。
 カガリはストライクルージュのコックピットにいた。
 二年振りに座ったシートの上で軽く身体を動かして、緊張で強張った筋肉をほぐす。
 すると、キラから通信が入った。
『カガリ、準備はいい?』
「ああ、オッケーだ」
 返す声が少々裏返った。カガリは小さく深呼吸をする。
 戦闘に出るわけじゃない。
 それは分かっていても、胸の鼓動は普段の二割り増しで脈打っている。

『じゃあルージュを外に出そうか。最初はゆっくりね』
「わかってる」
 カガリは目を閉じてもう一度大きく息を吸う。
 それをゆっくりと吐き出して、カガリは目を開けた。
 その瞳にもう弱気な色はない。
「カガリ・ユラ・アスハ。ストライクルージュ、行くぞ」
 その声と共に、ルージュもまたパイロットと同じ金茶の瞳を輝かせた。
101河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:04:38 ID:???
(2/17)

 同日、九:五〇。
『シン、もう少し右。あと五〇センチ』
「りょーかいぃ」
 通信機から聞こえたヨウランの声に気の抜けた返事を返しながらも、シンは慎重に暗灰色のままの
インパルスの腕を動かした。
 今、その掌にはヨウランが乗っている。
 その場所は当然人が乗ることを前提に作られてはいない。
 一応命綱はつけている筈だが、シンが操作ミスをすればどんな事故に繋がるか分からない。

 ヨウランの指示した場所へ掌を動かすと、ヨウランは目の前のウィンドウをブルーシートで覆った。
 素早いながらも隅の方までしっかり確認していく丁寧な作業を、シンは感心しながら見ていた。
 もし自分が同じ事をやれと言われたら、同じ時間で半分もこなせないだろう。

『アスランさん、左下へお願いします』
『了解』
 開きっ放しの通信回線からヴィーノの緊張した声とアスランの無愛想な返事が聞こえてきた。
 左舷甲板上にいるシンからは艦後方にいるセイバーの姿は殆ど見えない。
 例え機体が見えたとしてもパイロットの姿が見えるわけではないが、シンは一つだけ確信している。
 アスランは今、すこぶる機嫌が悪い。
 シンは今のアスランと組まされているヴィーノの不運さに心の中で手を合わせた。

『よし。ここは終了。次は……上に二メートル、左に三メートル。シン、よろしく』
 通信機からヨウランの声が聞こえた。
「上二メートル、左三メートル、了解。ヨウラン、風に気をつけろよ」
『了解っ』
 シンは彼の指示した場所へ掌を動かした。
『サンキュ。おっ、あっちも作業開始らしいぞ。シン』
 ヨウランの言葉に視線を移したシンは目にしたものに瞠目し、思わず機体をそちらに向けてしまった。
 だが、幸い機体の動作ロックがされていたために、インパルスはピクリとも動かなかった。
 もしも動いてしまっていたら大惨事になるところだった。シンは大きく息を吐いて自分の迂闊さを
反省すると同時に、用心に安堵した。

 シンは再度視線を背後のレイたちに戻した。
──エクスカリバー?
 レイのザクファントムが手にしているのはまさしくソードシルエットの対艦刀エクスカリバーである。
『よぉし、レイ。まずはマーキングの内側、五〇センチの所へやってみてくれ』
『了解しました』
 通信機からはバルトフェルドとレイの声が聞こえる。
 ザクはエクスカリバーを持ち上げると、地面に垂直に突き刺した。
── !!
 エクスカリバーの剣先から三分の一辺りまで地に沈んでいる。深さは五、六メートルだろう。
 ザクはそのまま横へ十数メートル移動し、エクスカリバーを引き抜く。
102河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:05:51 ID:???
(3/17)

『オッケー。流石だな』
『……ありがとうございます』
 地面に描かれた巨大な長方形のマーキングの内側に一本、エクスカリバーの通った跡の黒い線が
加わった。
『そのまま少し掘ってみてくれ』
『了解しました』
 ザクは再度エクスカリバーを地に刺した。黒い線に対して垂直方向だ。
 それを一旦抜くと、今刺したところへ向かって斜めに突き刺す。
 ザクは今度はそれを引き抜くのではなく、真上に持ち上げた。
 エクスカリバーの細い刀身の上に土が小山になって乗っている。

『土の具合が分からないからな。最初は少し小さめに掘るぞ』
 バルトフェルドの台詞にシンはようやく状況を理解した。
 つまりエクスカリバーはスコップ代わりに使われているのだ。
──俺のエクスカリバァ〜。
 確かに実剣であるエクスカリバーの方が、ビームサーベルよりは掘削作業に向いている。
 というよりも実体を持たないビームサーベルで掘削はできない。
 更にエクスカリバーならレーザーを発生させる事で側面の土を焼き固めることも可能だろう。
 それは理解できるが、やはり情けなくなる。
『シン、次行くぞ。左へ三メートル。よろしく』
「……了解……」
 ヨウランの要請にシンは力なく答えた。

 ヨウランの指示した場所へ掌を動かしてから、シンは頭を振ってエクスカリバーのことをひとまず
忘れる。
──そうさ。後でヨウランたちにちゃんと整備してもらうさ。……して、もらえるよな?
 たっぷりと未練を残しつつ、シンは図面をチェックした。
 残るポイントは六箇所。次のポイントは今の場所から更に三メートルほど左になる。
 インパルスのバランスを考えれば、機体をもう少し左へ寄せた方が良いだろう。
 そう判断してシンは足場を確認する。
 その視界にちょうどMSデッキから出てきたルージュの背中が入ってきた。

 ルージュはデッキから数メートル離れると垂直に屈んだ。
 数秒後もう一度立ち上がるとその場にはドラム缶が四つ、三角錐の形に置かれている。
──へえ。上手くなったじゃん。
 作業を開始した二〇分ほど前は、見ているほうがイライラするほどおっかなびっくりとした
動きだったのが滑らかな動作になっている。
 ルーキーながらもヤキン・ドゥーエ戦の経験者というのは伊達ではなかったらしい。
 だが、振り向いたルージュを見て、シンは思わず目を逸らした。
 その肩にある獅子の紋章から、目を逸らした。
103河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:06:59 ID:???
(4/17)

 もう一度少し時を遡り、同日、九:〇五。
 シンの頭の中は真っ白になっていた。
──穴掘りとペンキ塗り……?
 何を言われたのか理解がまったくできない。
 そっと隣のレイを見ると、レイもまた軽く眉根を寄せた困惑の表情だった。
 それはバルトフェルドの話を理解しえなかったからなのか、それとも理解した上で穴掘りとペンキ
塗りのどちらを選んだら良いかを思案しているのか、シンには分からない。

「なんだ。希望はなしか? じゃあこっちで決めるぞ」
 しんと静まったブリーフィング・ルームの中にバルトフェルドの声が響く。
「穴掘りの方は、俺とレイ・ザ・バレル。ペンキ塗りは残り四人。
 ペンキ塗り班は二班に分けて、アスラン・ザラとシン・アスカが右舷側。キラとカガリが左舷側を
担当。
 また作業前にアスラン・シン組はマスキングを手伝うこと。作業ポイントは指示書を見てくれ。
 キラ・カガリ組は機材搬出だ。カガリはその作業中に勘を取り戻しておけ。
 以上だが、何か質問は?」

 淀みなく一気に言い切ったところをみると、事前に考えていたものらしい。
 シンは自分が右舷のペンキ塗り班なのは理解したが、そもそもどこにペンキを塗るのかが分からない。
「右舷」と言うからにはどちらかの艦──おそらくはアークエンジェルだろう──なのだろうが、
具体的なイメージが湧いてこない。
 戦闘か何かで傷ついた艦の修復を手伝え、という事なのだろうか?
 しかし、シンはふとあることに気がついた。
──あの女が「パイロット」として参加……ってことは、ペンキ塗りってMS使ってやるのか!?
 ペンキ塗りにMSを使うのならば、多分穴掘りもMSを使うのだろう。
 シンの頭の中にMSがスコップを使って穴掘りをし、刷毛でペンキを塗っている図が浮かび上がる。
 しかし、そんな巨大なスコップや刷毛が用意されているとも思えない。
── って問題はそこじゃないだろ、俺!

 疑問は山積しているが、何をどう質問したらよいのか迷っているうちにキラが先に手を挙げた。
「あの……Bユニット実装を含めたアークエンジェルの偽装作業と、穴掘り・ペンキ塗りの関係が
よく……?」
「ん? ああ、そうか」
 バルトフェルドが如何にも面倒そうに頭をかいた。
104河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:08:11 ID:???
(5/17)

「時間がないので、簡単に説明する。
 アークエンジェルの偽装の要となるものが二機のBユニットなんだが、実装箇所はアークエンジェルの
中央底部、両翼の付け根辺りになる。
 これを行うためにはアークエンジェルを持ち上げなければならないわけだが、設備のないここでは
それは不可能だ。
 無論、艦を作業終了まで固定位置で浮上させておくなど論外だな。
 かと言ってザフト軍基地等、設備のある場所へ移動することもできない。偽装前の状態を人目に
晒してちゃ偽装する意味がなくなるからな。
 ではどうするか?
 アークエンジェルはそのままで実装可能な隙間を艦の下に作ればいい。──これが『穴掘り』だ。
『ペンキ塗り』の方はもっと簡単だな。
 アークエンジェルは目立つ。だから色を変えちまおう、と、そういう訳だ」

 バルトフェルドの説明に、シンはようやく事態を少しは把握した。が、同時に首を捻る。
──色変えたからって……索敵は視認でするわけじゃないんだし。意味があるのか?
 そのシンの疑問が聞こえたかのようにバルトフェルドは言葉を続けた。
「偽装、およびBユニットに関しての説明は、この作業が終了したらいくらでもしてやる。
 キラとアスランは少々設計に携わったから、手を止めなければ作業中に聞いてもかまわん。
 だが、今はとにかく時間がない。
 地球軍の展開状況が思っていたより早いらしい。
 日のあるうちに試運転までは行えない場合、最悪ミネルバのみで先行してもらわなければならなく
なる。
 作業状況によっては、キラ達にはBユニットの方へ行ってもらわなくちゃならないかもしれん。
 だからとにかく、迅速、丁寧に、というわけだ。
 他に質問は?」

「今回の班編成の根拠は?」
 アスランが硬い声で問いかけた。
──どうせ俺と組むのが不満ってことだろ。
 アスランの問いをそう解釈して、シンは内心で不貞腐れる。
── って、何で俺、んなことでイラついてんだよっ。
 シンは自分の考えを振り払うように大きく頭を振った。
 すると、その拍子にレイの後ろでひどく怪訝そうな表情でシンを見ているルナマリアと目が合った。
 途端、シンは平静を装って視線をバルトフェルドへと戻す。

「根拠か?
 整備班から『ペンキ塗りはできるだけPS装甲機にやらせろ』と要望が来てるからだ。
 何でもその方がその後の整備がダントツに楽なんだそうだ。
 それ以外は適当だな」
 バルトフェルドの答えを聞いてもアスランの表情は変わらず、アスランがそれで納得したのか
シンには窺い知れなかった。
105通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:08:42 ID:???
空気読めない職人晒しage
106河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:09:19 ID:???
(6/17)

「さて。もう質問がなければ作業に入ってもらう。
 万一の敵襲に備えて、全員パイロットスーツを着用のこと。
 アスラン・シン組、マスキングはミネルバの作業員が指示するとのことなのでそれに従え。
 キラ・カガリ組はアークエンジェルの方で聞け。
 ルナマリア、シミュレーションマシンはアークエンジェルに準備済みだそうだ。
 レイとは先に打ち合わせておきたいので少し残ってくれ」

 またしても一気に言い切ってからバルトフェルドはアーサーの方に視線を向けた。
 アーサーは瞬間ギョッとした顔を見せて、慌てて二、三度頭(かぶり)を振る。

「では、解散」
 バルトフェルドの号令で全員が席を立つ。
 シンの視界の端にすぐにブリーフィング・ルームを出て行くアスランの姿が映った。
──とうとう一言も話さなかったな。
 いくら急いでいるから、と言っても、ただの一言の会話もないのはやはりおかしいとシンは思う。
 だが、横目で見るキラとカガリの方は特にそれを気にしている様な雰囲気はない。
――俺の気のせい……なんだろうな、多分。
 考えてみれば昨夜から今朝にかけて時間はいくらでもあった。
 一晩を語り明かした、ということも十分にあり得る。

「シン、何、ぼーっとしてるの。行くわよ」
 ルナマリアに声をかけられて、シンは急いで彼女の後を追って部屋の外へ出た。
 ロッカーまでを並んで歩きながらシンはルナマリアに尋ねた。
「ルナはさ、今日の作業に何で参加しないのさ?」
 それを聞いたルナマリアの表情がみるみる咎めるようなものに変わるのを見て、シンは急いで
付け加える。
「はい、そーです。最初のほう、全然話を聞いていなかったので分かりません。教えてください」
 ルナマリアは軽く目を瞠った。
 しかしすぐに、呆れた、といった様子で溜め息をつく。
「あのねぇ……。ま、いいわ。教えてあげる」

「シン、昨日のアークエンジェルのMSデッキを覚えてる?」
 ルナマリアの問い掛けにシンは自分の顔色が変わるのを感じた。
 忘れる筈がない。あの機体を目にした瞬間の──目の前が赤黒く彩られるような怒りを。
 ルナマリアは、そんなシンの変化に気づかぬように言葉を続ける。
「あそこには、MSが四機あったでしょ。キラ・ヤマトの『フリーダム』、アスハ代表の
『ルージュ』、バルトフェルドさん専用の『ムラサメ』。それに『ムラサメ』がもう一機。
 そのムラサメ、今はパイロットもいなくて、予備機扱いなんだって。
 でね。あたし前々からちょっと考えてたんだけど。
 あたしのザクって飛べないのよっ!」
 最後の一言でいきなりテンションの上がったルナマリアを、シンは目を丸くして凝視した。
107河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:10:25 ID:???
(7/17)

「地球に降りて以来ガルナハン以外では、あたしもレイも殆ど可動砲台扱い。
 陸地でならグゥルを用意してもらえることもあるけど、万一の損傷を考えて、水上では許可して
もらえない。
 そりゃあ艦を守るのも重要だけど、それってやっぱり情けないじゃない。
 あたしも赤なのよ。
 そう思わない!?」
 シンはルナマリアの剣幕に思わず頷きそうになったが、慌てて首を横に振る。
「いや、俺はルナ達が艦を」
「だからあたし艦長に頼んでみたの。あたしをムラサメに乗せてください。飛べる機体を余らせて
おくの、勿体無いですって」
 ルナマリアはシンの言葉を遮って、更に続ける。
 シンに話しかけながら、シンの存在を忘れているようだ。
「駄目元のつもりだったんだけどね。出ちゃったのよ、許可が!
 うちの艦長からもアークエンジェルのラミアス艦長からも!
 あたし、あたし、飛べるのよっ!!」
 胸の前で両手を組みキラキラした瞳で斜め上方を見るルナマリアをシンはただ呆然と見つめる。
──えーっと。昔、マユが見ていた漫画にこういうシーンがあったような……。

「で、それ用のシミュレーションマシンをアークエンジェルに用意してもらった、とそういう訳なのよ。
……ちょっと、シン、聞いてる!?」
 いきなり素に戻りこちらを睨めつけるルナマリアにシンは愕然となった。
 さきほどのルナマリアは、幻覚か何かだったのだろうか?
 そうとしか思えないほどの豹変振りである。

「シ、シミュレーションマシンならミネルバにもあるじゃないか。なんでわざわざアークエンジェルに?」
 ルナマリアの視線を避けつつ、シンは会話の中の単語をなんとか拾い出して話を続ける。
「何でって、ムラサメはナチュラル用のOS搭載だからに決まってるじゃない」
 なるほど、とシンは納得した。
 しかし。
 当たり前の事を聞くな。ルナマリアの目はそう言っていた。

 シンはふと思いついたことを口に出した。
「じゃあさ、あの副長──バルトフェルドさんだっけ、あの人の機体のOSは? あの人は
コーディネイターなんだろ? 機体が同じなんだから同じの乗せればいいじゃん」
 シンの言葉に、突然ルナマリアが立ち止まった。
 しばらく目を丸くしてシンを見ていたかと思うと、今度はけらけらと笑い出す。
「?」
 シンは状況が見えず、唖然としてルナマリアを凝視した。
 ルナマリアはひとしきり笑った後、呼吸を整えながら言った。
「実はね、あたしもまるっと同じこと思ったのよ。シミュレーションマシンの事も全部」
 しかしその後、まるで見えないスイッチを切り替えたかのように真剣な面差しで
「……ヤダわ。あたし、シンと思考パターンが同じってこと?」
「…………悪かったな」
 シンは憮然と返した。
108河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:11:34 ID:???
(8/17)

「ま、いいわ、うん。結論から言っちゃうとね。バルトフェルドさんの機体は、彼に合わせて
ものすごい調整がされてるから駄目なんだって。
 彼、片手と片足が義手義足なんですって。知ってた?」
「えっ!?」
 問われてシンは驚愕に言葉を失った。
 バルトフェルドと間近で顔を合わせたのはさっきが初めてだ。
 しかし、今日も昨日見た映像でも、彼の動きに違和感など欠片も感じなかった。
「やっぱり知らなかった? あたしも言われるまで全然気づかなかったのよね。
 このミーティングの前に聞いたから今も気をつけて見ていたんだけど、それでもどっちが義手で
義足なのか、全然分からないの」
 シンの様子からシンがその事実を知らなかったことを悟ったらしく、ルナマリアは言葉を続けた。
「うち(ザフト)のOSを乗せようにも今日は人手が足りなくて調整ができないから駄目って。
 結局、あたしがムラサメを諦めるか、あたしがムラサメに合わせるかの二者選択しかないのよ。
 だったら、後者を採るしかないじゃない?」
 そう言いながら再び歩を進めるルナマリアにシンは急ぎ付き従った。
 だが、ルナマリアは数歩でまたピタリと足を止めた。
「と、いう訳で説明終わり。──どこまでついてくるつもり?」
「あ?」
 シンが慌てて確認すると、そこは女性用ロッカールームの前だった。
「じゃね」
 と軽やかに手を振って、ルナマリアは扉の中へ消えた。
109 ◆6Pgs2aAa4k :2007/11/05(月) 23:14:34 ID:???
C
110通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:15:00 ID:???
支援
111通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:16:14 ID:???
つか、煽ってんの?オマエ
112通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:18:52 ID:???
空気読める住人晒しage
113 ◆Q/9haBmLcc :2007/11/05(月) 23:22:52 ID:???
支援する
114河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:28:03 ID:???
※ご支援ありがとうございました。再投下、行きます。
------
(9/17)

 同日、一四:一五。
 なんとか時間までにペンキ塗りの作業を終え、Bユニット実装の為の機材を穴の中へ下ろし終わって
ミネルバへ戻ったシンをヨウランがげんなりとした顔で迎えた。
「……シン。お前、もうちょっと丁寧に扱えよ……」
「何が?」
 シンにはヨウランの台詞が理解できない。
 作業中どこかへぶつけた記憶もないし、機材の運搬もできうる限り慎重に行ったと思っている。
「何がってインパルス、ペンキだらけじゃないか!」
 強い口調のヨウランに驚いて、シンはインパルスを見上げた。
 いつも通りの暗灰色の機体に目立った汚れはない。
 ペンキ塗りはミネルバ作業三班特製の『MS仕様巨大ペンキ噴射器』を使用しての作業だったので、
どこかへボタボタとペンキを垂らしたということもない筈だ。
「……上へ行ってPS装甲のスイッチ、入れてみな」
 ヨウランがコックピットを指差して言った。
 思わず反論しかけたシンだったが、ヨウランの異様に据わっている目にしぶしぶ従う。

 言われた通りにPS装甲のスイッチを入れてハッチから顔を出したシンは、思わず息を呑んだ。
 通電したインパルスの白い装甲が全体的に薄っすらと青く染まっている。
「…………」
 シンは無言でコックピットへ戻り、装甲のスイッチを切ってからラダーで降りる。
「何か言うことは?」
 地に足をつけたシンに、ヨウランが問う。
「えーっと……」
「うわっ、何でこんなに青いんだよぉ!」
 シンが視線を泳がせていると、後ろから悲鳴に似た叫び声が聞こえた。
 振り向くとヴィーノが口をぽかんと開けたままインパルスを見上げている。
「何でこの状態で分かるんだよ……?」
 シンの口から疑問が漏れる。
 整備クルーのヨウラン達には及ばないが、シンだとてインパルスのパイロットとして毎日機体を
目にしている。
 しかもペンキが付いたと言っても、鋼色の機体に青いペンキが微量、霧状に付着した状態だ。
 こうして装甲の通電を切ってしまうとシンには普段と変わらないようにしか見えない。
 だがしかし。
「何でこれで分かんないんだよっ!!」
「隣のセイバーと比べてみろよっ!」
 二人はシンの言葉に今にも噛みつかんばかりに反論する。
115河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:29:40 ID:???
(10/17)

「でも、ほら、あいつのよりはマシじゃん」
 シンは二人の剣幕にたじろぎながら、思いついたままを口にした。
「あいつって、アスハ代表のルージュ?」
 ヴィーノの問いにシンは首肯した。
 カガリは作業途中に操作を誤り、左脚下部──人間で言うと脛の辺りにペンキをべったりとつけて
しまったのだ。
 だがシンの思惑はヨウランの一言であっさりと外された。
「馬鹿。あっちの方が全然マシだよ」
「何で?」
「べったりだろうが薄っすらだろうが、落とす作業はそんなに変わんないの。
 で、あっちは脚半分。インパルスは機体の前面全体。インパルスの方が十倍も大変だよっ!」
 ヨウランが彼にしては珍しく語気を荒げている。
「インパルスの整備さえ終わればあっちの作業に合流させてもらえるってのに、これじゃ終わんないよぉ」
 対してヴィーノは半泣きだ。
「あっちの作業って、Bユニットとかいうヤツのことか?」
 シンが先ほど機材を運んだ時にちらと見た感じでは、エイブス主任をはじめ、ミネルバ整備士でも
主だった者がほぼ全員揃っていた。
 しかし、重要なものなのだ、という以外の事はシンには分からない。
「そうだよ。昨日図面をちょっと見せてもらっただけだけどさ、すっげぇんだよ。それがさ」
「ヴィーノ!」
 子供のように目を輝かせて説明しようとするヴィーノをヨウランが止めた。
「話は後にして、さっさとこっち終わらせちゃおうぜ」
「あ、うん」
 二人はバタバタと慌しく何やら準備を始める。

「あのさ。ちょっとペンキがついてるくらい、俺、気にしないぜ」
 故意にしたことではないが、シンは罪悪感に駆られて二人に声をかけた。
 実際、少々のペンキなどシンはまったく気にならないのだ。先ほどはちょっと驚いたが、そのうち
見慣れたら何と言うこともないだろう。
 シンにはよく分からないが、二人が外での作業をそれほど楽しみにしているのならこのままでも
構わない。
 シンは本気でそう思っていた。
 ところが。
「こんな状態のインパルス、放って行ったらエイブス主任に大目玉だ!」
「それどころか『もう一回やり直して来い』ってアカデミーに戻されるよっ!!」
 最早二人はシンに視線すら向けずに、それだけを怒鳴り返してきた。
「だったらせめて俺にできること、何か手伝うよ」
 口を開くたびに二人の機嫌が悪くなる。そう思いながら、シンは二人に手伝いを申し出る。
「「当たり前だろっ!!」」
 ヨウランとヴィーノは、怒りに燃える目でシンの申請を受け入れた。

 二人の指示に従いながら、シンは考えていた。
──まだエクスカリバーの整備も残ってるって……どう言ったらいいんだ?
116河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/05(月) 23:30:55 ID:???
(11/17)

 同日、一五:二五。
 ミネルバから持ち出した二十枚以上はあった筈の射撃訓練用の的は、残り三枚になっていた。
──これで最後。ビシッと決めるわよ。ルナマリア!
 自分自身を鼓舞してルナマリアは岸壁から『ムラサメ』飛び立たせる。


──数時間前。シミュレーションマシンに入ってから二時間ほど経った頃。
 ルナマリアは焦っていた。
 コーディネイターより反射神経の劣ったナチュラルがコーディネイターと同等のスピードを出す
ために設計・調整されたOSは、操作の大半をサポートしている。
 簡単に言えば、動作がパターン化されているのだ。
 その為、ルナマリアは動作の全てに微妙な違和感を感じていた。
 例えば、ビールサーベルを振るう時。あるいは、加速状態からの停止時。
 ルナマリアが意図した動きとはほんのわずかだがズレが生じる。
 わずかではあっても、それはストレスとしてルナマリアの中に蓄積され続けていた。
 また、タイムリミットは今日一日という状況がそれを加速させる。
 確かにシミュレーションマシンの難易度は高めに設定してあった。
 だが決してありえないレベルではない。実際、オーブ沖ではその「ありえない」数の敵に
包囲されたのだから。
 しかし、マシンの連続使用という疲労も相まって、ムラサメが仮想敵機に撃墜されるまでの時間は
回を増す毎に短縮させられていた。
 ルナマリアの精神的な疲労は既に限界に達していた。
 今、彼女を動かしているのは、ムラサメへの機乗を言い出したのが自身であることと、ザフト
レッドであるという意地のみだった。

 しかし、それも間もなく尽きようとしている。
──もう、ダメ、かも……。やっぱり、無謀だった……?
 敵機にビームライフルを向けながら、ルナマリアはそう考えていた。
 それは彼女自身は気づいていないが、アカデミーに入って以来初めて吐いた弱音だった。
 宇宙での数度にわたる実在の敵との戦い。シミュレーションとは違い、負ければ命を失う戦い。
 その時ですら感じなかった限界点が、今、ルナマリアには見えていた。
 息が上がる。
 視界も狭まっている。
 精神的な疲労は、普段では考えられない程急激に体力をも失わせていた。

 ビーッ、ビーッ。
 突然、敵機の接近を知らせるアラートが響いた。
──どこ? どこから来るの!?
 ルナマリアは慌てて敵機を探した。
──いた。左! ダメ、間に合わないっ!!
 見つけた時には、敵機は目前に迫っていた。
 ムラサメの武器は右手に持ったビームライフルのみ。
 ただでさえ苦手な射撃。
 左から来る敵に向けて、照準を合わせ、トリガーを引く。
 たったそれだけの猶予が今の彼女にはない。
 夢中で動くことしかできない。
117通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:36:24 ID:???
支援
118通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:39:06 ID:???
全く空気読めない職人晒しage
119通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:39:52 ID:???
河弥氏から伝言。
「投下し過ぎと怒られました。日が変わるまで投下を中断します」
とのことだそうです。
120通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:40:01 ID:???
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ここまで一人討論会
121通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:44:50 ID:???
さるに引っ掛かったかな
122通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 23:46:10 ID:???
みたいだね
123河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/06(火) 00:01:49 ID:???
(12/17)

 モニターに爆炎が映った。
──やられちゃった……。
 ルナマリアはがっくりと肩を落とした。
 だが、ふと気づいた。
 撃墜されたことを示すメッセージがモニターに出ていない。
──あれ? 何で?
 訝しく思うルナマリアの耳に、再びアラートが聞こえた。
──え? まだ終わってない?
 今度の敵は背後下方から迫って来ていた。
──今度こそ間に合わないっ!
 そう思った瞬間、爆炎が上がった。
 その時、ルナマリアの目ははっきりと自機から発射されたビームとそれを受けて爆散した敵機を
映していた。

──間に……合った……?
 理由を考える暇もなく、更にアラートが響く。
 次の敵機は二機。
 ルナマリアは混乱したまま、ただ反射的に動いていた。
 そして爆散する敵機。
 右から、左から。
 上からも、下からも。
 次々と襲い来る仮想敵機をルナマリアの駆るムラサメは撃墜する。
 気がつけば。
 シミュレーションマシンは彼女の勝利を讃えていた。

──え? 何? 今、何があったの?
 心臓が激しく脈打っている。
 レバーからゆっくりと手を離す。
 手足も小刻みに震えている。
 ルナマリアは目を閉じ気持ちを落ち着かせながら、今の出来事を反芻した。
 銃口を──場合によっては機体をも──敵機に向けて、照準を合わせ、トリガーを引く。
 普段通りの動きだ。
 しかし今のシミュレーションでの記録は、愛機でのそれより遥かに良い。
──そう。何かもう気持ちいいくらいビシバシ墜とせて……。
 ルナマリアはゆっくりと瞠目した。
──気持ちいい?
 何時の間にか先刻まであれほど感じていた違和感を感じなくなっていたことに気づく。
 その理由を考え──思い至った。
 今のシミュレーションでの間、ストレスなど感じている暇(いとま)がなかったのも確かだが、
それ以前に機体や銃身の細かな制御をしていなかったことに。
 ルナマリアのストレス。
 それは、OSの為に機体が彼女の期待するそれよりも微妙にずれた動きをすることに起因していた。
 だが、今のように無我夢中で──言い換えれば大雑把に動かしていれば、少々のズレなど気にならない。
 気にならないから、ストレスにもならない。──多分そういうことなのだろう。
──もう少し、試してみようかな。
 ルナマリアは自身の立てた仮説を証明するべく、再びシミュレーションを開始した。
124河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/06(火) 00:03:05 ID:???
(13/17)

 ルナマリアの乗った『ムラサメ』は、岸壁から数百メートル離れた空中で停止した。
 足元の海面にはムラサメが持っているのと同じ的が数枚浮かんでいる。
 そのどれもが撃ち抜かれてはいたが、中央に穴が空いたものは少ない。


──更に何時間ものシミュレーション結果、ルナマリアは一つの結論に達していた。
 ルナマリアのムラサメは、ビームライフル等を使用した中・長距離戦に向いている、と。
 ルナマリアがコーディネイターであることが、ムラサメとの間に良い結果をもたらしていた。
 ナチュラルよりも遥かに鋭い反射神経と運動神経が機体の動作速度を上げ、照準を合わせてからの
OSのサポートがその精度を増すという相乗効果により、結果的に命中率は約一五パーセント
上がったのだ。
 ただし、接近戦では逆になった。
 度重なるシミュレーションで大分慣れたとは言え、OSによるコンマ数秒のロスがやはりルナマリアの
ストレスに、そして、敵機の攻撃を避ける上での致命的な遅れとなってしまった為だ。
──つまり、ムラサメの高速移動で乱戦を避けて、ライフルで攻撃ってパターンなら有効って訳よね。
 ルナマリアはそう確信した。


「せーのっ!」
 掛け声とともに器用に三枚の的を放り投げた。
 的はそれぞれ別の角度で空(くう)に上がり、やがて落ちてくる。
 ムラサメがビームライフルを発射した。
 光条は三本。別の方角を向いている。
 光の矢は各々別の的に当たり、貫き、やがて消えた。
 的は貫かれた一瞬だけ落下を止め、海へと落ちた。
 ルナマリアはカメラをズームして三枚の的を確認する。
 その顔が会心の笑みで輝いた。
125河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/06(火) 00:04:10 ID:???
(14/17)

「メインエンジン点火」
 ブリッジに女声が響く。
 そこにはその女と二人の男しかいなかった。
 いつも彼女の傍にいる男と、国家元首の少女は今は乗艦していない。
 女が再び声を発した。
「アー……」
 が、すぐに音は途切れる。
 男二人がちらりと女に視線を向けた。
 女は頬を軽く染めて「……こほん」と咳払いをする。

 女は軽く居住まいを正し、口を開けた。
「ダブル・アルファ、発進っ!」
 マリューの号令と共に、アークエンジェルがゆっくりとほぼ垂直に上昇する。
 否。それはもうアークエンジェルではなかった。白亜の大天使は、その姿と共に名を変えた。
 艦体のシルエットこそ同じだが、色は紺碧。
 宇宙(そら)だけでなく、深海をも駆け抜ける──ダブル・アルファと。
 そして、ダブル・アルファとアークエンジェルとの決定的な相違となるシステムの試験が今、
行われようとしていた。

 ダブル・アルファは岸壁を離れ、海上に移動した。
 高度は十メートルを切っている。水面ギリギリである。
「水深は?」
「およそ四十メートル。付近の海底に岩礁なし。万一墜落しても艦底部への損傷はないと思われます」
 チャンドラ二世の報告にマリューは頷いた。
「分かったわ。──それでは慣性状態へ移行。メインエンジン出力、五十パーセントへダウン」
 マリューの指示に従い、ノイマンがエンジンの出力を下げる。
 マリューは全身に緊張を感じていた。
 マードックからもミネルバのエイブス主任からも太鼓判を押されているとは言え、何が起こるか
わからないのが、試験というものだ。
 しかも、ぶっつけ本番に近い実装備での試験。「失敗しました、ごめんなさい」ではすまない
状況なのもプレッシャーに拍車をかける。
「三十秒後にFモード発動。残り十秒からカウントダウンよろしく。総員、ショックに備えて」
 最後の一言は、MSデッキ付近で待機している整備員に向けて発せられた言葉だ。
「了解」
 ノイマンが応えた。彼もまた何時になく緊張の面持ちだ
「…………二十秒」
 ピンと張り詰めた空気のブリッジに、ただノイマンの声だけが響く。

「…………十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、Fモード発動!」
 カウントゼロとともに、ダブル・アルファが一度ガクンと大きく揺れた。その後もガクガクと
不規則に揺れている。
 マリューは艦長席の手すりに掴まって身体を支えた。
「状況は!?」
「艦に損傷なし」
「高度は維持しています。十秒ください。姿勢を安定させますっ」
 チャンドラ二世とノイマンから相次いで報告が上がる。
126河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/06(火) 00:05:14 ID:???
(15/17)

──十秒で足りるの?
 そう思ったマリューだったが、口には出さない。
 突貫で後付けたBユニットに状況チェック用モニターなど存在しない。
 制御の全てはノイマンの腕と勘に頼らなければならない。
 そして、ノイマンもチャンドラ二世も信頼に足るクルーだ。
 マリューはただ息を潜め、その時を待った。

 果たして、五秒後には揺れが小刻みに変わり、八秒後には完全に治まった。
 マリューが息をつくのと同時に、ノイマンもまた大きく息を吐き出した。
 一瞬、二人の視線が交差した。
 頬を緩めかけたマリューだったが、逆に気を引き締めた。
 まだシステムの起動に成功しただけだ。試験は続いている。

「二番および五番噴射口閉鎖。メインエンジン出力、徐々に二十パーセントまでダウン。高度に注意して」
「了解」
 アークエンジェル級の場合、エンジン出力が三十パーセントを切ると地球上では高度の維持ができない。
 その不足分をBユニットが補う筈であるが、もし出力が足りなければ落水する。
 エンジン出力と高度を告げるノイマンの声が数秒毎に発せられる。
 やがて、エンジン出力が三十パーセントを切り、二十パーセントに達した。
 高度は維持されている。
 Bユニットは、立派に役目を果たしていた。

「Bユニット付近の外装温度確認」
「外装温度、許容限度の七十五パーセント。充分いけます」
「調子、いいわね」
 マリューの口許に初めて微かな笑みが浮かんだ。
 メインエンジンの出力を落としても、Bユニット──MS用ブースターの出力を外部制御できる
よう改造したもの──がその代替になりうる事は確認ができた。
 しかし、それだけではこの試験の意味はない。
 それが役立つかどうかはこれから実施する実験の結果にかかっている。

「ダブル・アルファ、垂直上昇、百メートル」
「了解、垂直上昇、百メートル」
 メインモニターに映る景色が少しずつ動く。
 水平線がモニターの下端に僅かに残り、画面の殆どが空と雲で埋められた。
「目標点に到達しました」
「姿勢制御、安定しています」
 相次いで入る報告に、マリューはふうと息を吐き出した。呼吸すら忘れる程に緊張していた事に
気づき、内心で苦笑する。

「楕円軌道で周回。前進微速」
 景色が先ほどとは違う方向に動くのを確認してから、マリューはミネルバに回線を繋げた。
「グラディス艦長、熱紋照合お願いします」
『了解しました。バート、ダブル・アルファの熱紋照合』
『了解、熱紋照合開始します』
 ミネルバの方でブリッジ全体をオンにしたらしく、タリア以外の声も回線から流れてきた。
127河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/06(火) 00:06:20 ID:???
(16/17)

 ……五秒、……十秒。
 結果が出るまで最長で二十秒程度。
 それが何倍にも感じられた。
 ブリッジ内の空気がピンと張り詰めている。
『結果出ました。アンノウンです!』
 ミネルバの索敵担当員の声が聞こえた。
 一呼吸分、静寂がその場を支配する。
 それを打ち破ったのは、スピーカーから聞こえた整備員たちの歓声だった。
 マリュー達三人も視線で乾杯をする。

「転回後、メインエンジン出力を五パーセントアップ。前進中速」
「了解。前進中速」
「外装温度、許容限度の八十二パーセント」
 体感速度の安定を確認してからマリューは再びタリアを呼んだ。
「グラディス艦長」
『もう始めてるわ。あと十秒』
 タリアからは直ぐに返答が来た。
 マリューは先ほどよりも少しだけ落ち着いた気持ちで回答を待った。
『結果出ました。やはりアンノウンですっ!』


 Fシステム──Fake(フェイク:偽者)システムとは、アークエンジェルを偽装する為のシステムである。
 二機のMS用ブースター(通称Bユニット)を外部に実装・稼働し、メインエンジン出力を低下させる
ことにより熱量分布を変更、熱紋照合において「アークエンジェルではない」と認識させることを
目的としている。
 通常の艦では、MSを大気圏外へ離脱させるために使用するブースターの熱量に装甲が耐え切れない
(熱量を耐えられる処まで低下させると熱紋照合ではじかれる)。
 しかしこれはアークエンジェルが特殊なラミネート装甲装備の艦である為に出来得た事であった。

 実際の処、この偽装は対地球連合軍を主とするものではない。
 ミネルバを通じて、アークエンジェルを「議長直属極秘特務艦ダブルアルファ」と認識させることで、
今後ザフト軍設備の利用に融通を利かせるためのものであり、何よりもオーブ軍からアークエンジェル、
そして、カガリを隠蔽する事が主目的であった。

 一見、大きなメリット持つこのシステムであるが、デメリットもまた大きい。
 まず、Bユニットの稼働限界が約十五分程度しかない。
 これは元々がMS用ブースターである為にエネルギー搭載量が少ない事、そして外部実装の為、
エネルギーの再充填が容易ではない事がその要因である。
 また水中での使用も不可能だ。
 更に戦闘中に破損した場合の艦への被害を考慮し、実装箇所を最も被弾可能性の少ない艦底と
した為に平地への着艦もできない。
 故に、Bユニット自体のメンテナンスさえも困難となっている。
128河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/06(火) 00:07:27 ID:???
(17/17)

「これでFシステムの稼動試験を終了します。
 メインエンジン出力を四十パーセントに上昇、Fシステム停止。
 海岸まで戻ったら高度二十メートルで三十分待機の後、着水。
 MS隊のみんなもご苦労様。ミネルバで明日の作戦についてのブリーフィングを済ませたら
帰投してください」

 万一に備えて待機していたMSのパイロット達にそう告げて、マリューは背もたれに身体を預けた。
 ほんの十分ほどの試験飛行だったが、疲労感は初めてこの席に座った日に匹敵している。
 ふと、頭の中に声が聞こえた。
 懐かしい声。飄々とした口調。
──だから言ったろ? 心配ない、俺が守ってやるって。
 マリューはそっと目を閉じた。
 しかし、その唇には何も触れない。
 マリューの頬を光るものが一粒だけ零れて落ちた。
129河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/11/06(火) 00:09:08 ID:???
今回(第11話後編)では色々と設定をぶち上げましたが、大嘘です。

ナチュ用OSをコーディが使った時の反応とか、MS用ブースターがAA級の補助エンジンになり得るのかとか、
ブースターの稼働時間やエネルギー供給とか、そもそもAAの艦底にブースターを設置できるのかとか。
艦影が一致してて熱量分布が違っていたら、アンノウン認識になるのかも不明です。

何かもう色々ごめんなさい。


また投下の際に不手際が重なりまして申し訳ありませんでした。
ご支援・ご伝言いただきまして、心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
130通常の名無しさんの3倍:2007/11/06(火) 00:15:40 ID:???
投下乙です。
伝言は読者というか同業者の義務みたいなものですのでお気になさらずに。
携帯だから伝えるのも遅くなってしまいましたし……
ともかくGJ!
131通常の名無しさんの3倍:2007/11/06(火) 23:52:09 ID:???
GJ!
132通常の名無しさんの3倍:2007/11/07(水) 17:57:39 ID:???
編集長も故郷がここしかなくなったのか
俺もここしか故郷がないぜ
そして河弥氏GJ!
133通常の名無しさんの3倍:2007/11/08(木) 22:55:09 ID:???
>>編集長
毎度乙
チラ裏へのカキコの決断、タイミングはお見事
そしてそれを受けたカキコの潔さもお見事

客層が変わってきているのはチャットに出ている以上あんたもわかっているはず
スレを思う気持ちが一緒なだけに、言葉選びはなおさら慎重にな
めげずに次回投下する事を待つ


>>彼女
投下乙
長いながら一気に読まされた
氏の文章も決してスピード感や躍動感に溢れると言った形容で語る文章
ではないと思うが冗長さを感じさせない
ペンキと穴掘りもキチンと回収した上で話にもバッチリ絡む。お見事

設定云々との事だがそんな感じで良いのでないかと思う
どうしても気にするのならば
『アークエンジェル級と思われる艦船』
とか
『アークエンジェル級によく似たアンノウン』
と言った表現にしてみるとか
あるいはブリッジにでもハリボテを被せてみるとか……

以上はアークエンジェル級のネームシップである事さえ分からなければいい
と言う前提ならば、だけれども

134SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/10(土) 18:06:56 ID:???
1/

 雲ひとつ無い星の夜、空に歪なつちくれ一つ。
 きらめく星の中にはプラントという大陸があり、数千万の人間が根付き暮らして居ることを、
多くの人が知って居る。知っていてなお、夜空は数多くの幻想と神話を抱く天蓋だ。

 少女の恋心を、少年の冒険心を、人の眠りを受け止める夜空に今、巨大な異形が鎮座していた。
 避難を呼びかけるサイレンをよそに、ソレ目にしてしまった人々はシェルターへの足を止め、
ゆがんだ星を見上げる。そして悟る、アレが落ちてきたならば全てが無駄だと。
 かつては只の小惑星であり、ヒトの住む大陸と生まれ変わっただれかの故郷。
そして希望の象徴となった後、炎に焼かれて数多の絶望を産んだ悲劇の舞台。

 今や恐怖の源泉と成り果てし、凍りついた大地の名をユニウス7という。


 ――オーブ オノロゴ島空軍基地

 夜の闇を思わせる黒の塗装を施された戦闘機の下で、耐Gスーツを着込んだ人影が
積み上げられた情報端末に埋もれている。

 周りが若くても二十代の後半という状況だから、十代の彼は少年と言ってよいだろう。
 機体と同じ色の黒瞳は流れ去る文字を追い、荒れた手指は休む事無くコンソールを滑る。
口にはメモリを咥えているが、小指の先ほどの筐体に前歯の型がついていた。

 黒い戦闘機――可変モビルスーツ"ムラサメ"――の横たわる滑走路には、十二の同型機が
整然と並んでいた。各機に専属の整備員が取り付き、一抱えもある電力コードを接続している。

 画面を睨む少年の元に、同型のスーツを纏った人影が近づいてきた。
首元に一尉の階級を表す襟章が光っている。
「ヤマト三尉、孤島のお嬢ちゃんに別れの挨拶は要らないのかい?」
 滑走路を照らす明かりに、銀のスケットルが鈍く光る。酒瓶片手にパイロットスーツの
襟首をはミゾグチ一尉は、搭のような端末に肘をついていた。

「……シェルターに入るように、さっきメールを送りましたよ」
「メモリを咥えたまま、良く喋れるもんだな、感心するぜ三尉」
 振り返る事も無く少年――キラ=ヤマト三尉がそっけなく答えると。
ミゾグチは「もったいねえ」と一言、天を仰いで嘆息した。
「無事に帰ってきたら結婚しようぜ――なあんて話に持っていかないのかい?」
「猛烈に死の予感がする話ですね」
 "またやって来た"ミゾグチ、オーブ空軍一尉にとっては、気にするほどの事でも
ないのだろうが。ただでさえ人より余分に死線を潜ってきたキラだ、余計な台詞を
口にしないで済めば越した事は無い。
135SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/10(土) 18:08:53 ID:???
2/

「俺はしっかり、マヤちゃんとデートの約束を取り付けてきたぜ」
 自慢気に話すミゾグチに目もくれず、キラはプログラムの調整を続けた。
 ――マヤちゃんって……一体いくつのおばさんとデートするつもりなんだか。
「――14才」
「犯罪じゃないですか!」
 思わず口を開いてしまった。
 14才……じゅうよんさいと、心中で音声化してみる。口蓋に触れた舌が「じゅう」の
音を出した後、「さい」で歯茎に触れるまでの間隙に背徳的な不条理を感じた。
「ろく」や「なな」なら、舌はもう一度口蓋に触れる!

 ――というかあのときのフレイよりも若い!?
「何を思い出してるんだ? 三尉」
「な――なんでもありません! ミゾグチさん……本当に?」
「うん、十四歳」
 プラントでも未成年扱いの年齢……由々しき事態である。

 もう一度じゅうよんさいと呟く。たかが一単語なれどその重みは果てしない。
「ヤマト三尉? 指が滑ってるぜえ」
 分かってるなら、動揺するような事を言わないで欲しい。バックスペースキーを使うのは
はたして何ヶ月ぶりか、破竹の勢いで前進を続けてきたカーソルが後退する。

「おいおい、心配するなって。トオミ先生の娘さんだよ」
 息の詰まったキラへ、ミゾグチが種明かしをする。
「北のシェルターまで送り迎えを頼まれたのさ。先生はこの後、忙しくなるだろうからな」
「トオミ先生?」
 キラ自身は世話になった事こそないものの、パイロット内で話題に上る事の多い女医さんだ。
海岸に近い空軍基地のシェルターは、津波の発生が予想される今回は使用されないので
ミゾグチに頼んだのだろう。この作戦に参加するミゾグチは逆にその後時間が空く。

「うらやましくて動揺したか?」
「オーブ空軍のスキャンダルと将来を心配したんです!」
「ま……任務が無事に終わったら、好きなだけ心配してくれや」

 ――そう言う事か。ミゾグチの真意に気付き、一気に緊張感を失くす。
136SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/10(土) 18:09:56 ID:???
3/

 メモリをスロットに差込み、機体に検査プログラムを走らせてようやく手が止まる。
浮かぶタイムバーを横目にミゾグチへ振り向いたキラは、右手のスケットルに目を留めた。
「またお酒を……」
 ――此処で飲んでいいと思ってるんですか?
 注意すべきだ、注意すべきところだが――
「――僕にも下さい」
「お……!」
 思わず口をついた台詞に、ミゾグチが目を丸くする。スケットルを左右に振って
中身がまだ入っていると示した。小さく水音を立てた小瓶を、心底楽しそうに
目の高さまで掲げる。
「新米にして坊主なる若造、キラ=ヤマト三尉の初陣に……」
 唇の端を吊り上げながら小瓶をあおり、キラに投げ渡す。
 本当は初陣でも何でもないが、酒瓶を黙って受け取ると乾杯の文句を考えた。
ミゾグチも分かって言っているのだ。

「誇るべき蔵荒らし、"またやってきた"鷹の再来に……」
 適当に言葉を連ねて杯がわりの小瓶を掲げた。オーブ空軍「再来の鷹」のジンクスに
あやかる事ができるなら、酒の一口くらいは安い物だと思う。

「だんだん作法ってのが分かって来たじゃないか、ヤマト三尉」
 片手に収まるスケットルから一口含む。臓腑を焼くアルコールの刺激を
覚悟していたキラは、喉を通り抜ける清涼感に眉を寄せた。
「これって水……ですね」
 喉を潤してようやく、自分が乾いていたことに気付く。ミゾグチは悪戯に成功した
子供のような顔で、キラの投げ返したスケットルを受け取った。

 酒瓶から、アルコールの染み付いているような香りはなかった。ミゾグチが本当に
酒を飲んでいたのか、キラはそれすらも気にした事が無かったらしい。

 狭苦しいコクピットの前席にもぐりこむ寸前、三尉もまだまだだと笑うミゾグチの声が聞こえた。
ひょっとしたらキラよりも若々しく見えるその笑顔が、照明の逆光に掠む。
「ま、緊張は解けたかな」
 タイムバーが右端にたどり着き、安っぽい電子音が機体検査の終了を告げた。
突貫工事で複座に改良したムラサメを保証するのは、その音だけだ。
 口では笑いながらため息をひとつ、ミゾグチに続いて後席に収まる。自動で傾斜を変える
シートに腰を落ち着け、ようやくキラは正面モニター横の起動ロックを解除した。
137SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/10(土) 18:11:34 ID:???
4/

 遠巻きに様子を見ていた整備員達が機体に群がり、端末を外してゆく。十人が半日かける
テストを一時間で終わらせた青いパイロットスーツへ、奇異の目線が突き刺さった。

 その視線を無視できるまでに、二年掛かっていた。 

 ムラサメに火が入ったのを見て、周囲の整備員が十二期のムラサメが並ぶ滑走路で
進路を確保しようと機器を動かす。
「動かす必要、ないですよ……むしろじっとしていて下さい」
 拡声器で制したキラは、ムラサメのOSを起動、中央画面に馴染みのOSロゴが
浮かび上がった後、新たな単語の羅列がスライドしてくる。

MULtiform
ASsault
Armed
Maneuverable
Equipment

 多形態強襲機動兵装。
 そのイニシャルを取り、古典の銘刀「村雨」と名付けられたオーブの最新鋭MSが
戦闘機形態からゆっくりと身を起こして二足の巨人へと変わった。

 双発のプラズマジェットエンジンは、そのまま二脚と化して地面を踏みしめる。
熱塑性樹脂で固められた滑走路はムラサメの細い踵と幅の広い反発場を受け止め、
人型モビルスーツは飛行体としての姿を捨てて歩き始めた。

「おい三尉よ……少しサービスしようぜ。懸命に作業を果たした
メカニック一同に向かって、敬礼!」
「了解です……」
 ムラサメが振り返り、マニュピレイターの指先まで伸ばした一分の隙も無い敬礼を送ると、
周囲から歓声が弾けて機体の二次装甲に跳ねる。黒塗りのムラサメは混雑した機材の間を跨いで
すり抜け再変形、各所から飛び出したランディングギヤで静止した。

 一息、整える。
 ムラサメの前方に、滑走路とその中央の基準線が長く伸びていた。
「進路オールクリア……と。何時でもいけるぜ、三尉」
「了解しました、一尉」
138SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/10(土) 18:12:38 ID:???
5/6

 果ての無い星空の中央にユニウス7が映る。先刻よりも大きい影に、とてつもない
悪意と絶望を感じた。今から自分は、その大陸を防ぎ、止めるため宇宙に上がる。

 ――間に合うか?
(間に合わぬさ……人は何時でも遅すぎる)
 幻聴――滑走路の先を見据えると、仮面の男が其処にいた。銀色に覆われた両眼が
ムラサメの装甲を通してキラを射抜き、露な唇を吊り上げる。
(あの敵意の塊を、ヒトは見えぬふりをして過ごしてきた。やがてめしいた世界の影で、
ヒトの業はああまでも巨大になったのだ。そして滅びがくる!)
 ――それが世界の本質じゃない。それが人の全てではない!
(果てを目指す人の業ゆえに生み出された君が、なおも目を閉ざすのか)
 仮面の幻影がキラの平衡感を失わせる。皮膚の存在があやふやになり、彼我の意識が、
自分の呼吸音すら遠くなった。
 ――それでも!

「どうした、三尉」
 ミゾグチが掛けて来た声が、辛うじてキラを現実に繋ぎとめた。
 何でもない……喉からたったそれだけの言葉を搾り出す。
「何でも無いって事は、何かあるって事だよな?」
「何でも……ありません。行きましょう、一尉」
 ためらいがちのごまかしは、上官に何を気付かせるだろうか。
「なあ、キラ……お前さん本当は宇宙が怖いんだろう?」
「……」唐突に図星を突かれて言葉に詰まる。ムラサメの機首が向く先で、仮面の男は
歪んだ笑みを浮かべてキラを待ち構えて居るようにも見える。

 この男はもう、世界の何処にも存在しない……何度自分に言い聞かせても、
その男から目を離せない。
「なあ、三尉よ。手前の家を見失いさえ為なけりゃあ、飛んでいく場所が
恐くてもいいのさ。どんなに空が好きなパイロットでも何時かは陸に帰るもんだ」 
 スロットルレバーに手を掛けたきり動けないキラに、ミゾグチは意外なほど
穏やかに語りかけてきた。
「恐くてもいいんだよ、三尉」
「はい……今はあのユニウス7を何とかしなければ」

139SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/10(土) 18:15:05 ID:???
6/6

 この男は、自分の罪の幻影に過ぎない――そう唱えてキラはスロットルを開いた。
体をシートに押さえつる加速Gがキラと現実を繋ぐ。幻視の中で滑走路にそびえ立つ
仮面の男が近づき、呪うような嘲りの言葉をキラに向けた。
(また私を殺すのか……)
 ――貴方を殺す事なんか、一度きりで充分だ。

 魂が存在するのなら、戦火の中に消えた彼らはキラを許す事もあるだろうか?
分からない……分からないが、一度でも魂の感触を覚えてしまえば、キラは彼らに
許しを求めてしまう。それは救いとなるか? 否。
 弱い自分は失われた命への謝罪だけで、残りの全てを終えてしまうだろう。
 命によって罪を償えと、死者たちにいわれれば、ためらい無く命を絶つ。

 だが、生きる事こそが戦いだと言った家族が居る。死ぬなと言った友が居る。
生きろといった少女が居る。

(死者が……死そのものが怖いだけだろう!)
 ――それは恐くても良いらしい。

 仮面の男ではないもう一人、キラに残った少女の幻影は、キラを護ると言ったのだ。
 だから贖罪は、生きる人と未来の為にすると、誓った。
(それは欺瞞だ、偽善だよ……結局そんなものに乗る君は、殺す事しか出来ない!)
「分かってるさ、それでも――」

 戦うのならば、今とこれからの世界の為に。
 死ぬのならば、今をこれから生きる人たちのために。

(君は間に合わぬさ……)
 ――それでも、護りたい世界があるんだ。
 還る場所の無い男の幻影と冷笑を突き抜けて、ムラサメは離陸を遂げた。
 機首を上げて、上昇に移る……宇宙へ。
140SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/10(土) 18:17:15 ID:???
以上、投下しゅーりょー。
ではまた今度。
141通常の名無しさんの3倍:2007/11/10(土) 21:58:57 ID:???
†氏投下乙!
ひさびさ登場のミゾグチさんの活躍を願いつつGJ!
142通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 01:19:27 ID:???
河弥氏、†氏投下乙です。
ルナINムラサメにキラINムラサメ……ムラサメ祭りですな!
両方の活躍を期待!
両氏ともGJでした。
143通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 07:22:57 ID:???
GJ!
144attitude ◆Q/9haBmLcc :2007/11/11(日) 15:42:55 ID:???

 鈍い頭痛によってシンは浅いまどろみから現実へと引き戻された。
 昨晩、酒を飲み過ぎたせいで二日酔いになってしまったからだ。
 ぼんやりとした思考で昨日の事を反芻してみるが、キラをハイヤーに押し込んでからの記憶がスッポリと抜け落ちている。
 どうやって帰宅したのか定かではないし、何故薬局のカエルのマスコットと同衾しているのかも解らない。
 解る事は酒に飲まれて泥酔し、醜態を晒したであろうという事のみだ。
 酒は百薬の長とはよく言ったものだ。今のシンには百毒の長という言葉の方が似合う。
 酒で栄えた事例もあれば、酒で滅んだ事例もあるのだ。
 過ぎたる物は身を滅ぼすという事は真実であるという事を歴史が証明しているが、悲しい事に人類はそれを認識出来る程成熟はしていない。
 それは悲しい事ではあるが、喉元を過ぎれば熱さを忘れてしまうという事は有史以来の人類の原始的な習性でもある。
 人が神の領域とも言える遺伝子調整に足を踏み入れた現在にいたるまで、その習性は変わってはいない。
 勿論、シンもその習性を失ってはいない。
 つい気分を弛緩させてしまって深酒をしてしまった事もそうだし、かつて過ぎたる力を望み、
守るべきものや守りたかったものを守り切れずに全て失ってしまった事もある。

「つか、煽ってんの?オマエ」
 冴え切らない頭脳で様々な事を考えるシンはカエルのマスコットを見るが、
その無邪気な笑顔が何一つ汚れていない様に見えて腹立たしいので拳骨を食らわせる。
 しかし、カエルは何の反応も示す事はない。
 カエルはただの人形であり、反応する事などはありえないのだが、
つい何かを期待してしまったシンは自分ながらに馬鹿だな、と考える。
 夕べの酒がまだ抜けきっていないのだろうと自分で納得をし、簡単に身仕度を始める。
 シャワーを浴びて汗を流し、着替えて身嗜みを整えるだけだからあまり手間取らない筈なのだが、今日はゆっくりと手間をかける。
 昨日の話、アスランの討伐の話を聞いた時から、自分は生きては帰る事が出来ないかも知れないという事が頭の中にある。
 アスランは強い。シンはかつてその事が紛れもない事実であるという事を心身に刻まれたのだ。
145attitude ◆Q/9haBmLcc :2007/11/11(日) 15:50:55 ID:???
 しかし、シンは傷付いたから強くなるという事も知っている。
 自分はアスランの様に全てを投げ捨てて逃げ出す事をしなかったという自負もある。
 かつてならばともかくとして、今現在の力関係はどうなっているのかは分からない。 しかし、少なくともアスラン以上の努力はしてきたという自信はある。
 才能の絶対量はアスランに及ばなくても、足りない物は全て努力で補ってきたのだ。

 何にせよ、ゆっくりと身支度をする事で逸る闘志と湧き出る恐怖心を押さえ心静かにする事ぐらい出来なければ、
闘争の持つ激しい狂気によって軍人である前に狂人と成り果てるだろう。
 精神的にタフでなければまともな軍人にはなれない。それはシンがキラの下についてから学んだ数少ない教訓の一つだ。

 様々な想いが巡るが、シンは二度とはこの自宅に戻って来れないかも知れないという事も有り得ると考える。
 可能正論を論じても仕方がない事ではあるのだが、軍人の運命は幸福なものであるとは限らないのだ。

 だからこそ、最後に味わうかも知れない日常の空気を満喫する為に身支度をゆっくりしている事をシンは否定する事が出来ないのだ。

 巡る重い想いが手枷足枷となってシンの行動をゆったりとした物にさせているのだろう。

  to be continued
146通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 15:54:56 ID:???
to be late第三話“last daily life”投下完了。
147通常の名無しさんの3倍:2007/11/12(月) 18:16:21 ID:???
すっかり名言ですねw
GJです
148通常の名無しさんの3倍:2007/11/13(火) 00:11:20 ID:???
>>attitude 
 投下乙です。
 前回は渋いバーでのシーンだったのに、今回はカエルとベッドインした呑んだくれの
話になってましたね。いきなりの「つか、煽ってんの?」に吹きました。

 描写は緻密で硬派に感じます。乙でした。
149週刊新人スレ:2007/11/13(火) 23:11:04 ID:???
目次

 ペンキ塗りと穴掘りの作業にいそしむ隊員達が見たものは……! 大人気の『彼女……』を一挙17レスの大特集!!
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
>>100-104,106-108,114-116,123-128

 一人黙々とムラサメを整備するキラとからかうミゾグチ。普通に振る舞う彼らの頭上には巨大な墓標が迫っていた。
SEED『†』 
>>134-139

 前夜飲み過ぎたシンは二日酔いの頭痛と共に目を覚ます。その彼のベッドに同衾するものは……。
to be late
>>144-145

 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】>>1-6
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お知らせ
・投下作品とのリンクを問わず絵師の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。これくらいのさじ加減で一つ。
素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。

・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。

お詫び
先週分に置いて一部に不適切な表現があり、スレ住人の皆様にはご迷惑をおかけ致しました。
此処に謹んでお詫びを申し上げます
150通常の名無しさんの3倍:2007/11/13(火) 23:16:23 ID:???
>>編集長
乙です。まとめ管理人さんや雑談所所長もついでに乙!
151通常の名無しさんの3倍:2007/11/15(木) 00:49:29 ID:???
いろいろ危険なのだそうですので保守しておきましょう

つー事で 保守
152SEED『†』 第十三話  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/15(木) 20:47:31 ID:???
1/

 ザクファントム――シグナルロスト。

 飛び出ようとしたインパルスの眼前に、ビームの輝きを放つトマホークが突き立った。
「止めるなよ――ルナ!」
『止めるに決まってるでしょうが』
 互いに何をしようとしたのか、との問いは無い。
「レイが危ないんだよ!」
『そんな事、今更ね――』
 仲間に向けて声を荒げるシンの焦りに、ルナマリアから苛立ちの感触は無い。
『私達ははなから十分、十二分に危ないところに居るでしょう?』
 シンがレイの方に駆けつけたくなるのは当然で、ならばそれを止めるのも当然だと
思っているのか。モニターの中のルナマリアは、画面のシンを見てすらいない。
 
『敵を前に、味方を後ろに、諦めを魅せるとは何事かッ――!』
 宙域に、大迫力の怒声が電波に乗って響き渡る。
『ヴォルテールのイザーク隊長よ、ヤキンを生き抜いたパイロットだわ。
救援が入ったのなら、レイはまだ生きてるって事よ。向こうに任せましょう』
「相手はカオスだぞ、ルナだってインパルスとの戦闘記録を見ただろ!? 
イザーク隊長だって勝てるかどうか――!」
 レイの相手――MSカオスの性能も、そのポテンシャルを十全に引き出す
パイロットの技量も、シンは嫌と言うほど思い知らされている。
『インパルスが負けたから、イザーク=ジュールとザクでも危ないって言いたいの?
それこそ、ドカタのあんたが飛び込んだって秒殺確実よね』

 インパルスが背負う、ふざけた外見のシルエットについて言われては、
流石にシンも黙るしかなかった。
 機器の詰める余裕が無いフォースにハードポイントを増設、数多の追加工具を
無理やりに括りつけたシルエットは、整備班から"ベンケイ"と渾名を付けられていた。
 ルーツ故に名前の由来が分かるシンは、ネーミングと実態のギャップに複雑だ。
『作戦はカオスの撃破じゃないわ。インパルスに抜けられるとスケジュールがつらくなる。
名前はふざけてるけど、そのシルエットは結構良い仕事してるから……』
 事実、作業用インパルスはいささかイレギュラーなシルエットを背負いながらも、
付属のドリルと杭打ち機でそれなりの作業効率を挙げていた。
153SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/15(木) 20:48:44 ID:???
2/

 彼女は作業だけに集中している。安否も定かではないレイのことも気にせずに。
それが尚更のこと、シンの心中を騒がす焦燥に火をつけた。
「レイが危ないっていうのに、随分と落ち着いてられるよな、ルナ!」
『そう? ……落ち着いて見えるって言うんだったら、私の演技力も対したものだわ』
「ルナ……!」
 ルナマリアの方が正しいと理解は出来る……レイの危機を見過ごす事に納得が出来ない。
 理性と感情の間で指先が軋み、張り上げた声が言葉に詰まった。

 冷静に任務をこなそうとしているルナマリアに、これ以上何を期待している。
ルナマリアが一緒に慌ててくれればそれで満足か? 甘ったるい感傷ではなく、
危局にあるレイの為に、今この瞬間にできる事は一体何だ?

 シンが動きを止める間も淡々とザクを操作していたルナマリアは、ザクの二抱えもある
隕石破砕機をユニウス7の凍った大地に突き立て、固定していた。

 戦況モニターでは、カオスとスカーフェイスのザクファントムが目まぐるしく
動く様子が抽象化されたデータの向こうに見て取れる。
 その動きはほぼ互角、あるいはザクファントム有利。
 ――いや、違う。相手は一機じゃない!
 ザクファントムが相手取って居るのはカオスだけではない。ガーディ=ルーから
発進してきた新型がカオスの戦列に肩を並べ、それらをまとめて相手にして居るのだ。
「凄い……これがヤキンを生き残ったパイロットの力――」

『シン、お願いよ……向こうに見とれて動きを止めないで』
 円形のプラント表面である。そびえ立つ中央エレベーターの残骸をはさんだ対角上には、
もう一基のメテオブレイカーが既に設置を終えている。

 そびえ立つメテオブレイカーはルナマリアの配下に置かれ、同期する対岸の一基と共に
起動を待っているが、ヴォルテール隊のパイロットと交信するその声がシンには遠すぎる。
 ザクの巨大な指で、十センチ角の起動スイッチを押し込む仕草もよどみなく、
それをただ見ていたシンに向かって『どきなさい』とルナマリアの声が届いた。
 ユニウス7の地中深くに向けて掘削し、内部で爆発を連動させて全体を砕くメテオブレイカー、
その最初の一撃がザクとインパルスの下で炸裂し、インパルスの股を割る様に亀裂が入った。
『だからどきなさい、って言ったのに』
「急にやるなよ」
154SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/15(木) 20:49:54 ID:???
3/

 シンの文句も無視してルナマリアは続ける。
『ねえ、シン。あんた一瞬でも、レイがミネルバに逃げ帰ると思った?』
 口調は質問だったが、その言葉は確認だった。そんな事を思うはずも無い。
『そりゃあそうよね、じゃあ逆は?』
「逆――?」
『レイは、シンが此処で作業を続けてくれると信じて居るからこそ、
向こうで時間を稼いでくれてるのよ? たった一秒でも、十秒でも――』
 カオスの接近に気付かなければ、作業中の無防備なゲイツなど的でしかない。
性急に先手をうって仕掛けたレイの意図は、時間稼ぎと作業中の隊への警告だ。

 ルナマリアの声音が、半オクターブだけ上がった。
『――ユニウス7はここなの。私達の立ってる、このどでかい塊が地球に落ちていく、
ソレを止める為のここが最前線なの! あんたがむざむざと前線を離れて、そうして
レイを裏切るつもりなの?』
「……それは!」
『レイが一分稼いでそれで死ぬなら、あたしはその分ザクでできる作業をやり遂げるわ。
新型は伊達じゃない……ザクなら、大気圏に突入しながらでも作業できるもの。その後で
生き残る事ができるなら、レイの事も心配する。……嫌いになってもいいわよ、シン』
「いや……俺の方こそ悪かった」
 危険や死などあまりにも当然だという覚悟に少し気圧されて、言葉尻がすぼむ。
『あたしは謝らないわよ』
 返る言葉はそっけない。
『……シンのそういう所、友達としては結構好きだけど、赤を着るならもっと冷静にね。
友達ごっこになってしまったら、かえって安っぽくなるから』
 どうしてそんな自分がザフトレッドを、しかも新鋭機のパイロットなどをして居るのだろう。
 他に誰も居ないコクピットで、シンは他ならぬインパルスに聞いて見た。

「待てよルナ……俺達が此処で、レイとデイルがカオスに張り付いたなら、
ミネルバが丸裸じゃないか! 今度は止めるなよ……!」
『止めるに決まってるでしょうが――!』
 鈍い衝撃音をコクピット内に響かせて、トマホークの柄がインパルスに直撃した。
 ――まさか、ビーム刃出してる!?
 当たったのがエッジ部分だったならなら即死決定だ。
155SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/15(木) 20:51:02 ID:???
4/

「あぶねえ、殺す気かよルナ! これ以上止めるって言うなら……」
 ――止めるというなら、なんだ。
 MSに乗って、チームメイトに向かい何を言うのか――何をするのか。
 危地のレイを救いに行けないから、危局のミネルバを守りに行こうとしている?
レイの信頼と、地球に住んでいる無辜の人々を置き去りにして我を通す事が、
ザフトに入ってまで手に入れた力の発露なのか。

『ストップ! それ以上言っちゃったら、少し後戻りがしにくくなるわよ。
あんたが私と本気でやり合いたいって言うんだったら、後で幾らでも相手してあげる』
 込めた力の向ける先も分からず、澱の様に固まったシンにルナマリアの声が届く。
寸前にため息の音が聞えたのは、きっと聞き違いではなかっただろう。
『でもその前に、落ち着いてミネルバのほうをよく見なさいよ』
 ザクが余った片腕でミネルバの浮かぶ宙域を指し示すと、其処を向いたシンの眼中に
戦闘機とも付かない特異なシルエットの機体が飛び込んできた。

「なんだあのモビルスーツ……違う、あれはMA?」
 言いながら心中で胸をなでおろす。気配がルナマリアに伝わっていないように。
 危なかった――何か、決定的な事を言ってしまう所だった。何を言おうとしていたのか、
それすらが曖昧になるほどの焦りを、シンは霧消させてインパルスを操った。

『あーあ、後で私もアレックスさんに謝らないと……アスハ代表が此処まで出てくる人だとは、
少しも思わなかったからちょっと失礼な事言っちゃった』
 ルナマリアの"鷹の目"は、シンに見えないもう一つの機影を捉えていた。
編隊を組んでミネルバに向かう三機のMAに、真紅のMSが追随している。

「赤いインパルス……じゃない。似てるけど違う?」
『あんた、オーブ出身なのに知らないの? 肩のマーク』
 言われてようやくモニター表示を抽象からリアルに切り替え、MSを拡大する。
ふらふらと不恰好に、それでも何一つ揺らぐことなく堂々と飛ぶ機体の肩、
其処にあったのは、地球に居た頃に何度も何度も見慣れてしまった――
「――ライオン……」思わず声が漏れた。
『多分、原形はストライク=ルージュって奴ね。連合機体のデッドコピーが
旗機だと決まりが悪いから、外観をM1風に少し変えてある見たいだけど』
156SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/15(木) 20:52:20 ID:???
5/5
 コントロールスティックでモニターの"ルージュ"をポイント……拡大。
何度ズームしても其処に映るのは間違いの無く、オーブの獅子だ。
「そんな、どうして……」声が漏れる。
『本気で言ってるの? オーブは地球に在るんだから当たり前でしょうに』
「アレックスさんは……?」
『多分、オーブの新型――ムラサメだったかな――の中でしょう』
 そう、アレックス=ディノには期待していたのだ。だからこそ余計、
アスハの存在に言語化が出来ない疑問がある。
『"ルージュ"が出てきたのは宣伝半分でしょうけれどね』
 ルナマリアの言葉に納得が行く。母国の危機に身を呈して立ち上がったとなれば、
政治的につらい立場の代表がやる人気取りとしては最適だろう。

『ねえシン、悔しいの?』
「……何がだよ?」
『出番……ミネルバを救うヒーローになり損ねて』
「そんなのじゃない……ぜんぜん違うよ」
 そこまで子供じゃあない。
『じゃあ、嬉しいの? 嫌っていたオーブの代表が、案外と仕事をしてるから』
「それも……違う」
 オーブの……アスハが嫌いだから悪者にしたいのだろうか、自分は。
 どうしてこんな時に、ルナマリアは優しい声を出すのか。マユが生きていたなら、
こんな声になったのかな、とちょっとだけ失礼な妄想をする。
 右手が胸元を探っていた。いつも其処に入れている妹の携帯電話。冷たい筐体に
残されていた温もりを、待ち受け画面に残る笑顔を、どうして今のように守っては
くれなかったのか。確かめたい答えが宇宙にあるとすれば、伸ばした手をスーツで
よろっていなければ、掴んだその手を真空が傷つける。
 
『さあ、いい加減次に行くわよ。これ以上何処から何が出てくるか分からないもの』
 僚機のザクから入電、固定作業の進捗が遅いメテオブレイカーがモニターに出力され、
最も作業のはかどっていない一基にポインタが照準された。
「工業ブロック……地面が補強されてるから掘り難いのか?」
 それは確かに、シンのインパルスが背負うシルエットの出番だった。
『いざとなったら、私とあんたで大気圏に飛び込みながらでもこれを壊すんだからね、
尻尾巻いて逃げたら、そのときこそ一生軽蔑するわよ』
「まかせろよ」と一言。最後に戦況モニターを覗く。一瞬だけ、辛うじて彼方の
ザクファントムとデータリンクが再建され、レイの生存が確認できた。
 直後に宙域をビーム兵器乱用による電磁パルスが覆ってデータリンクは途絶えたが、
それは確かにレイ=ザ=バレルとデイル=ホッパーの生存を知らせてくれた。
「レイ……」
 ――死ぬなよ。
 言葉にはしない。それゆえに気持ちだけは伝わったと信じ、シンは自分の戦場に戻った。
157SEED『†』  ◆Ry0/KnGnbg :2007/11/15(木) 20:54:00 ID:???
短いというか場面の動かないところですいませんが、
以上、投下しゅーりょー。
では、また今度。
158通常の名無しさんの3倍:2007/11/15(木) 20:57:05 ID:???
GJ!ダガーのルナはいい姐御
159通常の名無しさんの3倍:2007/11/16(金) 01:24:40 ID:???
乙!
本編のシンとアスハのエピソードが放りっぱなしだったから
補完があるとすごくうれしい。ルナもあいかわらずいい女だね。
GJ です。
160真言 ◆6Pgs2aAa4k :2007/11/16(金) 23:13:38 ID:???
hate and war
“perhaps,it's all right”

 その日、空は青かった。でも、一握りの人間はその日が晴れない事を知っていた。

 四月馬鹿とはよく言ったもので、俺が言った世界は未曾有の混乱に見舞われるという嘘は本当になってしまった。
 俺の責任ではないとは思うのだけれども、なんだか釈然としないものがある。
 なんにせよ、プラントのコーディネーターどもが落としたニュートロン・ジャマーとやらのせいで世界が閉じてしまったのは事実だ。

 俺が住んでいた所はどうしようもない程の田舎だったから、正確な情報が伝わってくる事はなかった。

 でも、どこからともなく混乱の原因がコーディネーターの仕業だと言う事が伝わって来て、コーディネーター達が次々に血祭りにあげられていった。
 男達はよってたかられて血達磨に、女達は見るも無残に犯された。
 子供達だって例外じゃない。器量が良いのは男女問わずに欲望の対象、器量が悪いのは暴力の対象になった。
 ガキだった俺もその中の一人で、あまり口にはしたくない仕打ちを受けた。
 今思い出しても吐気がする。
 それでも、どうにかこうにか生き延びる事が出来た俺はまだ幸せな方だ。
 死んだ奴等は犬の餌にされてしまったのだから。
 俺以外の家族全員が犬の餌になってしまったと言えども、五体満足で生きているって事は素晴らしい事だ。
 考える頭もあれば、動かせる手足もある
 全てを失っても命だけは手放しては駄目だ。命は大事に扱えば末長く一生使える優れものだ。

 そして今、空から沢山の流れ星が降って来ている。
 どうせプラントのコーディネーターどもが悪さをしたんだろう。
 懲りるという事を知らないあいつらはそろそろお終いだろう。
 燃えないゴミの日に袋でふん縛って出してやりたいものだ。いや、燃えるゴミの日の方がいいだろうか。

 しかし、どうしたものか。またあんな目にあわされるのは御免だし、惨めな思いをするのは一度きりで充分だ。
 仕方ない。気が進まないけれども先手必勝という言葉がある。
 あいつら……ナチュラルどもを犬の餌にしてやろう。
 見知った顔がいるけれど、その分やりやすい。粗大ゴミを出すような感覚でやれば大丈夫だろう。

 きっと大丈夫だ。
161真言 ◆6Pgs2aAa4k
投下終了。
相変わらず自分の血迷いっぷりに笑ってしまいます。
思う所があったのですがコテつけました。