アムロの視線は接近するバクゥ、スカイグラスパーではなく、後方に控えるザウートへと向けられた。
遠距離からの狙撃とは言え、やはり脅威である事には変わりは無いのだ。
――あの接近するバクゥは、アンドリュー・バルドフェルドか!
バクゥから放たれる気配から、相手がバルドフェルドである事をアムロは感じ取っていた。
そしてもう一つ。スカイグラスパーから無邪気さ感じさせる闘争心が、自分へと向けている事に気付く。
「キラ、近付く二機は俺が相手をする。後ろのタンクもどきを優先しろ」
「分かりました!」
二機の相手は自分がするべきだと判断したアムロは、キラに新たな指示を飛ばすと、スカイグラスパー一号機は後方のウザートへと向かって行く。
その時、ストライクのコックピットに警告音が響いた。
「後ろからか!?」
一瞬、目を向けて確かめると、それがアルファ〇二が撃墜し損ねたバクゥだと理解する。アムロはスラスターを噴かして引き離しに掛かった。
「……差し詰め、前虎後狼と言った所か」
アムロはストライクを操りつつも、三機の動きに注意を払いながらそう呟いた。
それとほぼ同時に、コックピットにバルドフェルドの声が大きく響く。
『心置きなくやらせてもらうぞ! アムロ・レイ!』
「望む所だ! アンドリュー・バルドフェルド!」
元より承知のアムロは、砂漠の虎との勝負に出る。
後方のバクゥを置き去りにしたストライクは砂を蹴り、バルドフェルドの駆るバクゥへと向かって行く。
この時、演習開始から約一六〇秒が経過していた。