6 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/07(日) 17:14:01 ID:fl7H9EHn
さすが新スレ立ては
>>1のお家芸だな!!
乙&GJ!!
乙です〜
前にシンVSウォーダンやる言いましたが、もう少し(1,2話くらい)後になりそうです。ごめんなさい。
唐突ですがここでルート分岐です。
第三十話 A『ほかの誰でもない私』 B『真の大地より』
ABで別々のキャラが出て、DC側につくか否かが変わります。誰が出るかはタイトルから判断してね!
10月9日の23時までで選んだ方の多かった方を選びます。ではでは、改めて新スレ立て乙でした!
B!B!
殿下か陛下か師範か戦闘機乗りかー!?
Aかなぁ……
あまり深く考えずになんとなく
Aに1票〜ラミアだったらいいな〜と思いつつ・・・・
AはナデシコでBは魔装機神か? と思ったんだが、ひょっとして違う?
なんにせよシュウとの絡みはもうイイや、って感じでAキボン。
スパロボキャラが来たらだが、ナデシコはないのじゃないかな。
一応今まで出てるのはバンプレオリジナルキャラたちだし、たしかに一部とんでもないとこの人たちもいるけど
>>12 いや、ナデシコのエンディングかな、と思ったんで。
違うとするとAは何だろ。
くそっ!攻略本は!?
ちぃ!!無い!!
あえてBにしとこう。
ゲーマーなら隠された選択肢のCを選ぶぜ!
17 :
アクセル・アルマー:2007/10/09(火) 09:25:07 ID:AZzbmEIK
……Aはもしかして、インパクトに出てきた機体から出れない美少女?
>>17 アルフィミィ?
だとするとCEのアルフィミィでなければ機体ごと飛ばされてないと死んじゃわね?
OGsではまだクリアしてないからどうなるか知らんけど。
まぁ何が出てくるか分からないところに期待ってことでAルートだな。
Bで。
ロリとかマジイラネ
Bで出てくるのはプレシアだったりしてな。
Bで
>>20 し、死んでないから!
ある意味レギュラーの三人以外死んでるとも言えるけど。
そうだよ、出てくるとしてもマドック爺さんでミナ様以下DCの女性陣にセクハラ行為連発だよ。
んじゃAだ。
セクハラだと!?ならBしかないじゃないかwww
Bだな。マドック爺さんなら期待は裏切らないはず!
あれ、でもマドック爺さんって戦死じゃなくて、老衰による病気併発で死んだんじゃなかったっけ?
戦死者以外まで来ちまったら、CEが死人で溢れちまうぞ
だがステラとかルナとかミナ様のまだ見ぬCE産おっぱいのためなら来そうな気がしないでもない。
マドックのエロに期待、ということでB
なんだかよく分からんが未知の美少女を期待してAだ!
ロリコン派とノーマルの代理戦争になっとるw
(<、,,> ":::::::::::::::::::::::::::: 、
〜〈/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::)
〃:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::<、 め ロ こ
~そ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,) ! リ の
、_ ,, /::::::::::::::::::::::::、,ゝ===く:::::::,:::::ヽ コ
`V::::::::::::::::::::、_γ `ヾ,_ < ン
l::::::::::::::::::::::く( r,J三;ヾ )> く,
〜v,ん:::::::::::::::´:::::::=; {三●;= } ,=ニ `/l/!/⌒Y
l:::::::::::::::::::::::::::::ゝ≡三=イ ´::::゙:::::::::::::::::::::::::::::::
、m,.. ,ゞ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
´ " ~ ヘ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
俺?もちろんミィっぽいAルートッスよ?www
ミナ様の裸体描写再登場を願いB
Aはラミア、Bはイブン婆さんかもしれないじゃないか!
ってことでA。
集計終了! Bの方が多いですね。ということで第三十話は『真の大地より』です〜。
誰が出るかはお楽しみで。ご意見ありがとうございました。
36 :
93:2007/10/09(火) 23:48:36 ID:???
鉄《クロガネ》SEED 2−2「巨人と太刀と亡霊と」・1
ユニウスセブン地表では未だ激しい攻防戦が繰り広げられていた。
テロリストの駆るジンハイマニューバ2型に対しザフトの隕石破砕部隊は全機最新鋭機のザクウォーリアである。
しかし、二年前の会戦以来、数多くのエースと呼ばれたパイロット達は様々な形で戦場から離れていってしまっている。
いくら機体が最新鋭でも操るパイロットが格下ならば恐るに足りず。数々の死線を駆け抜けてきた彼らにとっては当に素人同然の如き相手であった。
しかし物事に例外は付き物である。トウゴウの相手にした水色のカラーリングのザクは先程まで相手にした三下辺りとはまるで異なるレベルの相手である。
既にこの部隊によりかなりの損害が出ていた。
両手に構えたポールアックスは此方の隙を突いては重い一撃を乗せて襲い掛かる。しかし、このザクばかりに気を取られると高高度で待機している砲撃機に喰われてしまう、
中々やる……嘗て自分が敗北を喫した連合の「ストライク」のパイロットに勝るとも劣らない技量の持ち主達である。
久しぶりに高揚感を感じるトウゴウ、生粋のMS乗りとして久々に楽しめる相手になりそうだ!!
ハイマニューバは太刀を上段にかまえ、相手の出方を窺う。
と、その時味方から通信が飛び込んできた。
「やられたぞ、そいつらは陽動だ!! 本命は逆方面だ!!」
報告を聞き、自分の浅はかさを呪った……冷静に考えれば有りうることだった。感情の高ぶりが
「……散々暴れまわったのはこのためだったということか」
首筋に嫌な汗が落ちる。
まずい、今此処を明け渡せば再び破砕作業を再開させるだろう。だからといって此方を手薄にするわけにもいかない。少なくとも『今は』……アレを起動させるまでは
蒼いザクがモノアイを発光させる。それは策に嵌った自分たちに対する嘲笑のように感じられた。どうやら無傷で此処を去るわけにはいかなそうだ。
巨大な円盤状のユニウスセブンに向かって漆黒の宇宙を四機の流星が流れていく。
テロリストのMSが少なからず迎撃にでるが四つの流星は目もくれずに一直線にユニウスに突き進んでいる。
先程まで暴れ回っていたポールアックスを持ったザクの部隊の対処のため、戦力をそちらに分散していた事が対応を遅らせてしまっていた。
実際に間に合った機体は十機にも満たないであろう。
「敵の数が少ない。陽動、成功したみたいだな」
流星の先頭……高機動用装備の「フォースシルエット」に換装したインパルスは立ち塞がる最低限の敵機を切り捨てながら作戦の第一段階が成功したことを悟った。
真正面から向かって来るハイマニューバの斬撃をローリングでかわすと、そのままコーティングモードの斬艦刀を相手の胴体に潜りこませ、一気に振り抜く。
金属粒子を纏った刀身は、インパルスのパワーと相対速度が追加した斬撃は容易くMSを真っ二つにした。
敵は現時点での最大脅威をシンと認識したようだ。距離を取ってビームライフルで仕留めるつもりのようだ。
「レイ!!」
「任せろ!!」
インパルスを狙っていたハイマニューバはインパルスの後方からの閃光に貫かれた。
「まだ作戦の第一段階に過ぎない。気を緩めるなよ、シン」
四機は速度を緩める事無く一直線に突き進んでいく
立ち塞がる敵はインパルスが切り崩し後に随伴するレイのザクがシンの崩した敵の隊列をさらに容赦なく打ち落としつつ、遠距離からインパルスを狙う敵機をロングライフルで正確に狙撃する。
撃ち零れた敵は、後続のルナマリアの砲撃で跡形も無く掃討する。
支援
ん?規制かなんかかな?
39 :
93:2007/10/10(水) 00:10:59 ID:???
高速での強襲・一転突破を目的としたミネルバ隊の基本戦術である。
「それにしても、アレックスさんが破砕作業に参加するなんて」
最後尾に位置するザクは、アレックス機である。作戦開始直前、自ら参加を申し出て来たのだ。
艦を任されているタリアは他国の人間をザフトのMSに乗せることに対してあまり良い感情を持たなかったが。デュランダルの説得と、人手は多いほうが良い、
という教導隊の半ば強引といえる機体の用意によりアレックスが参加したわけである。
「ザフト製のMSに乗るのは初めてじゃないからな……こう見えて、士官学校でも結構な成績だったんだがな」
「アレックスさんってザフトにいたんですか!!」
「前大戦終戦と同時に退役したがな」
「アレックスさん、ルナマリア、無駄口は其処までだ。ポイントに着地するぞ」
ユニウスのほぼ中央、すり鉢上になった廃墟の中央に四機は着地した。所々にかつての賑わいを思わせる高速道路やオフィス街の成れの果てが見える……
レーダーに付近の機影は見当たらない。どうやら作戦の第一段階は成功のようだ。
「よし、現在の破砕状態は、全体の約50パーセント程。残り時間で残りのメテオブレイカーを設置するためには此処を中心とした一帯を制圧して……」
『そこまでだ』
全周波数から通信が聞こえてきた。見ると、すり鉢上の大地のへりの部分にずらりとハイマニューバが囲んでいる。その数は二十を下らない。しかし、先程までレーダーは周囲一帯に何者も感知していなかった。
「うそ!!レーダーには何も映ってないわよ!?」
「ミラージュコロイドか!?」
突如として現れた大部隊に驚きを隠せない彼らを、今度は振動が襲った。
「な、なんだ!?」
「メテオブレイカーの爆発?」
「それにしては時間が早すぎる。これは一体!?」
突如響き渡る地響き。地響きは何かがこちらに近付いて来るような一定のリズムで刻強くなっていく。
と、シン達を目下にテロリストの包囲網を形成するMSの一部が間を明けた。
いよいよ近付いてきた『それ』は……
「なっ!!」
「な、なによ、これ……」
「あり得ん、現在の科学力でこのような……ナンセンスだ!!」
普段あまり感情を表さないレイが驚愕の表情を見せるほど、『それ』はありえないものだった。
其処に立っているのは、全長50メートルは下らないとされる巨大な人型ロボットだった。
金色に輝く胸部の星型、ジェット機のエンジンの様な肩、そしてこちらを睨み付けるような顔。
まるでアニメのヒーローが駆るロボットが現実に飛び出てきた様な容姿である。
書きながら投下?
41 :
93:2007/10/10(水) 00:12:47 ID:???
『なるほど。腑抜けたザフトの兵士にも、多少は出来る者が居るということか……』
全周波数でステレオボイスが響き渡る。どうやらあの巨大ロボットのパイロットらしい。
「アンタがテロリストのリーダーか!!」
その巨躯に臆することなくシンが問いただす。この絶望的な状況で冷静さを失わないのは訓練の賜物か、畏怖や焦りの表情はかけらも見えない。
シンの言葉に、声の主は苦笑とも冷笑とも取れる笑い声と共に答えた。
「テロリスト……確かにそうだな。しかし、三年前の悲劇を忘れ、敵といわれた物を殺し、
撃てと言われた者を撃つ事に何の疑問も持ったことのない貴様らよりは真っ当な生き方な気がするな」
「それが軍人だ、そんなことを貴様に言われる筋合いは無い」
「その結果が前大戦で起きたヤキンデューエの戦いだとしても、貴様はそう言えるのか?」
「何だと!!」
レイのザクを見下しながら、巨人は天を仰ぐ様に手を掲げた。
「狂っているのだ!!この世界は!!同じ顔、同じ形をしたものでさえ、敵と言われれば何の疑問を挟む事無く殺すことの出来るこの世界の人間は!!
故に、我々は!!……我々『シャドウミラー』は全世界の戦争の制御を行なうのだ!!」
「シャドウ……ミラー!?」
「戦争の、制御だと!?」
「ユニウスセブンは、そのためのデモンストレーションということか……
ふざけるな!!武力による戦争の制御だと!?不可能だ!!そんなことは新しい戦争の火種になるだけだということが何故判らない!!」
各々があっけに取られるなか最初に反論したのはアレックスであった。普段の穏やかな表情からは想像も付かない激情である。
しかし、対する巨人はそれに臆する事無く、ただその鬼神の如き顔をアレックスのザクに向けただけであった。
「この状況下でも我らに牙を向けるか。だがこの戦力差と、この『グルンガスト弐式』を前にして貴様等の命運は絶たれたも同然。それでもなお抗うか……」
辺りを囲んでいたジンが一斉にライフルを向ける。万事休す、絶体絶命とはまさにこのことか?
それでもなおインパルスはブレードを構え、真っ向から包囲するMSに切っ先を向けた。いや、インパルスだけではない。
レイやルナマリア、アレックスのザクもそれぞれの死角をカバーし合う様に得物を向ける。
「無理だろうがなんだろうが、俺が叩き斬ってやる!!俺たちは諦めたりしない!!これ以上誰かを失ったり、誰かが悲しむ姿なんて見たくない!!」
シンの啖呵と共にインパルスが斬艦刀を振りスラスターを全開にし一気に飛び出そうとしたその時!!
『その心意気や良し!!だが、貴様の死に場所は、此処ではないぞ!!』
42 :
93:2007/10/10(水) 00:13:57 ID:???
辺り一面に低いどすの利いた声が響き渡る。その直後、クレーター一帯を再び地響きが襲う。今回はテロリストも予期していなかったらしく、彼等も隊列を崩さずに居るのが精一杯のようだ。
振動は確実に大きくなり。ついにはクレーターの外周に残った廃墟が次々に崩壊していくまでになった。
「振動元特定、此処の真下だ!!」
「飛ぶぞ!!」
四機が上空に飛び上がった直後、クレーターの中心地が陥没し地中から巨大な……
「「「「ドリルぅ!?!?!?!?」」」」
直径70メートルはあるかと思われる巨大なドリルが突き出てきた。突如現れたドリルは高速で回転しつつそのまま上空へと突き上がり、その後から黒と赤、そして金色に染められた巨大な船体が現れた。
全長は300〜400程であろうか?細長の外殻構造はこの世界のどの艦船にもあてはならないデザインである。
「こ、これは……一体」
「シン・アスカよ!!」
呼びかけの反応があった場所……艦橋らしき構造物の頂上には、三機のMSが立っていた。そのMSの一機にはシンの斬艦刀に酷似した。これもまた巨大なブレードを背に背負っている。その光景に包囲していたジンの部隊も呆然とそれを見上げている。
「貴様等は一体……」
弐式のパイロットが思わず呟いた。
「我らは……『特殊戦技教導隊』」
真下の戦艦と同じカラーリングの四足獣形態のガイアが吼え
「道理をもってして無理を通し!!」
緑色に染められたMSが腕を組み
「打と意地をもって、貴様等を撃ち滅ばすものなり!!」
鋼色のザクが大剣を構える
「「「いざ!!」」」
つづく
43 :
93:2007/10/10(水) 00:26:10 ID:???
やっとこさ教導隊こと親分軍団登場!!
約一名足りないのは次回で
暗い通路を一人の男が真っ直ぐに歩いてゆく……照明も非常灯すらもない道を
男は臆することも無く進んでゆく……
「あの時、あと一瞬でも早く引き金を引ければこのような事態にはならなかったのかもしれん」
男は誰にとも無く呟きながら通路の先を見据える。やがて通路が終わりに差し掛かり出口が見えてきた。
そう、全てはあの場所でケリを付けられなかった俺の責任!!ならばこそ、
決着は自分の手でつける!!
その場所は唯の広い格納庫だった……何も無い、唯の広いスペースといえばそれまでの場所。
男はその中央に立つと、右手を上げる
そう……ならばこそ決着は俺の手で……
コール!!
XNガイスト!!
ちょ!?
アポロン総統ソレ使ったらやばいって!!
にしても親分のザクか…想像出来んな
総統、早まっちゃダメだよGJ。リメイクしないかな、ヒーロー戦記……。
引き金云々いうから、キョウスケに止めを刺せなかったアクセルかと思いきや、ですね。
カイが乗っているのはやっぱりザク? しかし敵側にスーパーロボットとなると、MSでは厳しいですね。
負けるな親分、立ち向かえシン!
この世界もフラスコなのかw
ギリちゃん居るところフラスコになる
というかスパロボに連なる世界は全て実験室のフラスコでは・・・?
ギリちゃん印の実験フラスコ大バザールってか
ギブアップせい!
正直な話、コールシステム使えるだけでも大反則だよな。
生身でもESP能力とか持ってる総統がゲリラ活動なんぞやり始めたら
誰にも止められねェwwwwwww
まとめで11氏の第1話を読んでみてクォヴレーも巻き込まれたということは、クォヴレーの登場もあるのだろうか
大破したデスティニーがディスティニーになるんでね?
Dis-tinyか。
ti・ny [tini]
━━ a. ごく小さな.
>>56 Dis-tiny=ごく小さくないですよ?
こうですか、分かり(ry
つまりかなりデカイんだな?
ビアンSEED 第30話 真の大地より 前編
「私のR−GUNとルナマリアのR−2は、MSとは違う新たな機動兵器TEアブソーバーにカテゴリーされます。TEアブソーバーの動力源であるTEエンジンは、端的に言えばこれまで未知のものだったターミナス・エナジーを用いた半永久機関です」
イザーク達はプラント本国に戻り、NJC搭載機とは別に極秘に開発されていたRシリーズについてのレクチャーを受けていた。もともとエネルギー関係の研究者でもあり、Rシリーズの開発に携わっていたシホとヴィレッタが講師役だ。
タイトスカートから伸びるすらりとした脚線美が眩いまでに美しいヴィレッタは、優雅に足を組み、Rシリーズのデータが移るディスプレイを背にして、イザークとレイ、ルナマリアを見ていた。
身に着けているのはザフトの赤服に下半身はタイトスカートに黒のストッキングだ。
今はシホがディスプレイを背に三人詳細な説明を行っている。
バディム隊ならぬWRXチームはMSパイロット全員が赤服というエリート隊であると同時に、プラント最高評議会議長パトリック・ザラ直属の特務隊でもあり、他の隊には見られない特別待遇を受けていた。
ザフト管轄下にあるあらゆる施設、物資の優先的使用・徴発などなど。その一つが、今回彼らに受領された新型の機動兵器達であり、今はそのスペックの説明の最中というわけだ。
ちなみにチーム内の序列は隊長であるヴィレッタに次ぎ、イザーク、シホと来てルナマリアとレイが同列となる。
なお、赤服――ザフトレッドはアカデミーの成績優秀者である事を示すのであって、緑服がおしなべて階級が低いというわけではない。緑服でも隊長クラスを務める事もある。
「TEアブソーバーは、重力、電磁力、強い相互作用、弱い相互作用の4つ以外に存在が予言されていたターミナス・エナジーを用いたもので、どこにでも存在している力を動力源にしています」
「では、R−GUNとR−2は無限に活動が可能という事ですか?」
黙ってシホのレクチャーに耳を傾けていたレイが、挙手をして質問した。核動力も無限動力だなんだの言われているが、そんなわけはないのはザフトでの誰とても理解している。
だが、このTEエンジンはどこにでも存在するエネルギーを利用するという話が事実であるならば、確かに半永久的に稼働が可能だろう。それは文明を支えるために不可欠なエネルギー問題にも光明を射す可能性を持った、軍事に限らず重大な発見だ。
「理屈の上ではそうなります。実際には出力が不安定で繊細な調整が必要ですし、今は補助にバッテリーを使っています。
目下、実戦に投入されているTEエンジンはR−GUNとR−2の二基だけです。それにTEエンジンの調整はかなり繊細な作業です。なのでルナマリアにはこれからTEエンジンの出力調整の訓練を重点的に受けてもらいます」
「それはいいけど……何なんですか、この格好!!!」
それまで黙っていたルナマリアが絶叫にも似た叫び声を上げて、がたんと椅子を鳴らして立ち上がる。腕を組んで目をつぶっていたイザークが、ルナマリアを片目だけ開いてその姿を見つめて頬を赤らめた。
レイは我関せずとディスプレイを見つめ続けていた。
頬を赤らめて頭から湯気が出ていそうなほど沸騰した顔で、プルプルと握った拳を震わせてシホとヴィレッタを睨んだ。
そのルナマリアの様子に、ふっと小さく笑いシホはどこか悟ったような顔になった。その眼はどこか遠い所を見ていた。ヴィレッタは少し不憫そうにそんなシホを見ていた。
目で目に焼きつきそうだ。
白い肌に黒い生地がめりこみ、肌理の細かい雪肌に食い込む様は、はっきり言ってしまえばSMプレイなどで着用されるボンテージの一種と大抵の大人は判断するだろう。
ルナマリアは、つつましく窪んだおへそや上半身と下半身をつなぐには心細いほどにきゅっとくびれた腰に、若さ故の肌の張りと女の脂が乗り始めた太もも、豊かな乳房の上半分を大胆に露出させ首にはスカーフを模したベルトを巻いていた。
一応、肩と腰に赤を基調にしたジャケットが着いているから、後ろから見る分にはあまり露出は過剰ではないのだが、正面から見る分にはどう見ても露出過剰な水着である。軍に入って着る羽目になるとは誰も思わないに違いない格好だ。
実際、それを着せられたルナマリアは羞恥心に塗れて頬を赤くしてシホに抗議している。
まだ15歳と少女の域を出ぬ年齢ながらたわわに実った乳房に大人と少女の中間の張りと肉を乗せた尻やお腹を大胆に晒し、グラビアの表紙を飾ってもおかしくない色気を自然と振り撒いている。
そしてその水着スーツを着ているのはルナマリアだけでなくシホもだった。
「これはDFC(ダイレクト・フィーリング・コントロール)スーツ。TEエンジンの調整に欠かせないものですよ。そんなに嫌がらないでください」
「し、シホさんは恥ずかしくないんですか、これ!? どう見たって水着ですよ! いいい、いくらなんでもこれはないんじゃないですか!」
「ふふふ、ダイジョウデスヨ。ソノウチマワリノメモキニナラナクナリマスヨ?」
「シホさん」
シホは生気の抜けた死んだ魚の目をしていた。思わずその屍の如き姿にルナマリアも息を呑む。これがDFCスーツを着るものの末路か。遂には羞恥心まで無くすのだろうか。
(……シホも最初は泣いて嫌がったものね)
と同情しつつも救いの手は出さなかったヴィレッタが、心中で呟いた。シホとルナマリアの、DFCスーツが抑えつけている胸の白い乳房がむっちりと零れ落ちそうな姿に、イザークは少年らしい反応で頬を赤く染めて目を逸らし、対してレイは無関心らしい。
「で、でもこんな恰好で機体の操縦もしなければいけない何でおかしくないですか!? こ、こんなスーツで操縦しないといけないなんて初耳ですよ!? わ、私露出狂じゃありません!」
「……私だって、私だって、こ、こんな、こんな格好したくなんてしたくなかったです! なんでこんな胸もお腹も足も出さなきゃいけないんですか!?
機体に乗る間だけじゃなくて降りた後もこの格好のままでいないといけないし……。うう、お嫁にいけないしお婿さんも貰えません」
しくしくとその場で膝を抱えてうずくまり泣き出しそうになっているシホに、流石にルナマリアも何も言えなかった。
シホさんは性格が生真面目な分、こんな軍がするにはとてもまともとは思えぬものを着せられて、軍人としての責任感と一人の少女としての感性が葛藤し、摩耗してしまったのだ。
そう思い到り、ああ、この人も苦労しているだな、と心から思った。自分もそうなるのだろうな、とも。
立ちあがったままのルナマリアの肩に、レイの本当に男かと疑いたくなるような、細く長い指を持った手が置かれた。優しい手付きだった。この少年なりに自分を慰めるつもりなのかと、少し驚きながら淡く期待した。
「気にするな。おれは気にしない」
「私が気にするのよ!!」
期待するだけ無駄だった。この野郎、天然か!?
「そのスーツなりに長所もあるのよ?」
息巻くルナマリアを宥めすかすように声をかけたのはヴィレッタである。疑わしさを渦巻かせた視線を向けるルナマリアに対して、至極真面目にこう言った。
「着たままでお風呂に入れるから手間がかからないわ」
「……」
この人も天然なのか……。シホに目を向けると、シホは小さく横に首を振った。諦めてくださいと、その仕草が伝えている。
ルナマリアはこのチームでやっていけるのか果てしなく不安になった。
せめてシホとイザークがまともなのと、全員実力はあるのが救いだろうか。いや、実力があるからこそ余計に救いがないのかもしれない。ルナマリア・ホーク、自分の将来が不安な少女だった。
支援
ザフトの若者たちが微妙に羞恥心と闘っている頃、宇宙に上がり無重力戦闘の訓練などを積み重ねていたシン達は、何時も通りアメノミハシラ周辺宙域の警戒シフトに着き、時折姿を見せる連合の部隊などと小競り合いを重ねていた。
ビクトリアやカオシュン、再建したパナマのマスドライバーを使い、連合が月基地を中心に宇宙の戦力の再編成・増強を行っている事が耳に入って久しく、ザフト・DCでも新型機動兵器や戦艦の建造、部隊の編成に慌ただしく追われている。
ザフトではエースやベテランを中心に次期主力量産機であるゲイツとメディウス・ロクスの配備、NJC搭載機であるフリーダム、ジャスティスと母艦であるエターナル級の量産・建造、機種転換訓練などが盛んに行われている。
地上から回収した兵士達の扱いもあり、やはり今すぐに軍事行動に移れる時期ではなかった。
DCでも各MSの核融合ジェネレーターへの動力変更やオクスタンライフルなどを始めとした新型兵装の配備、簡易生産機であるリオンやストライクダガーやジンなどの人工知能搭載機の配備が進められている。
ジガンシリーズは生憎と一号機からして破損してしまったが、モルゲンレーテ本社とアメノミハシラのファクトリーそれぞれでビアン自ら設計した機体や、AI1、
エペソ・ジュデッカ・ゴッツォのもたらした各種データを参考にした超高性能機が、日の目を見るのを今か今かと待っている。
使われている技術や資材などの問題から、それらがロールアウトするのは随分先の話とされてはいるのが現実だけれども。
そういった開発関係の問題もあり、いまだビアン・ゾルダークや副総帥ロンド・ミナ・サハクといった重鎮とその乗機はDC本土に残されている。
だが虎の子であるスペースノア級を預ける特殊任務部隊クライ・ウルブズが宇宙に上がり、アメノミハシラに配備されているヴァルシオン改・タイプCFや、
完成したCE製ヴァルシオン・ギナ――通称“ギナシオン”などの戦力の集め方からすれば、やはりDCも宇宙が決戦の舞台となることを見越して準備を整えていた。
アメノミハシラ周辺の警戒シフトをこなし、都合数十度目になる実戦を終えて、第三種戦闘配置に付いたタマハガネに、レーザー通信が繋げられた。他に艦を伴わぬ単艦での行動中だ。
通常DCは二隻か三隻で行動を組む事が多いが、タマハガネの場合その戦闘能力を見込まれて単独での行動が多い。元より、他の部隊では達成困難な任務をこなすことを前提としている分、他の部隊の兵士や指揮官クラスからも特別視される事が多い。
今回の通信の内容は、これまでに従事した作戦から考えれば、比較的安易そうなものだった。
エペソに呼び出され、ブリーフィングルームに集ったシン達を前に、今回の指令が伝えられる。
「暗礁宙域の調査ですか?」
疑問の声を挙げたのはスティングだ。エペソは気品漂う仕草で首肯して言葉を続ける。壁に掛けられた3Dホログラフの画面が切り替わり、プラントで採用されている砂時計型のコロニーとは異なる円筒形の密閉型コロニーが映し出される。
採光・太陽電力を取り込む為のミラーがいくつか破損して周囲に漂っていた。
「そうだ。60年代に廃棄されたコロニー群の一つで連合のモノと思しい戦闘が確認された。相手の所属は不明だが、アメノミハシラまでの距離も考えれば見逃すわけには行かぬ。
何度か戦闘が行われているようだが、連合と戦っている者達の情報がない。海賊かもしれぬし、ジャンク屋か、あるいは傭兵か。
いずれにせよコロニーに何者かが居座り、無視できぬ戦力を保有しているのは確か。そこで我らに調査するよう命令が来たのだ」
「ほんとの理由は単純に一番近いからだってよ。ここ最近ザコキャラとばっか戦ってるからな。ちっとはマシなイベントが起きる頃か」
ぼりぼりと音を立ててスナック菓子を齧りながらのテンザンだ。エペソが厳しい視線で一瞥するが、意に介した様子はない。この二人、性格上の問題もあってかどうにも折り合いが悪い。
「仮に、敵対行動を取って来た時にはどうするのです?」
これはユウキ・ジェグナンだ。ラーズアングリフとランドグリーズの改修の目処が付き、件のグランゾンとの戦い以降再びクライ・ウルブズに合流している。
「その時はこちらも応じる覚悟を持て。少なくともこちらから火の粉を掛けるような真似はせぬよう、司令部からは通達されている。銃を手に取る前に言葉を尽くせ、といった所であろう」
「でも、一体だれが戦っているんだろうね? 傭兵とかの凄腕だったらやっぱりサーペント・テール?」
「プロトタイプのアストレイ使っているジャンク屋も結構強いんだろう。そいつらかもね」
ユウの傍らで、ついこの間まで民間人だったカーラが、後ろの席のアウルと小言を交わす。ちょうどカーラの弟がアウルやシン達と同じ位らしく、カーラはよく話しかけたり、面倒を見ていた。
「どちらにせよ、行けば分かる話だ。連日の戦闘で疲れもあろうが、各員第二種戦闘配置で待機せよ。場合によっては戦闘もあり得る事を肝に銘じておけ」
聞く者を粛然とさせるようなエペソの声に、シンは自然と緊張を強いられた。
第三戦速で航行するタマハガネが、コロニー群での戦闘が行われているのを捕捉したのはブリーフィングルームを出て、搭乗機で待機するよう指示が出てから間もない間の事だった。
既に愛機であるガームリオン・カスタム飛鳥に搭乗して待機していたシンの目の前で、全天周囲モニターにアルベロの顔が映り、艦橋からの報告をシンにも伝える。
『片方は連合のMSだ。だが、おそらくコロニー側の使用する兵器はザフト、連合、そしておれ達DCの物でもないようだ』
「該当するデータがない? 未知の兵器って事ですか?」
『……そうなるな。こちらから仕掛けるような真似は慎めよ、シン?』
「そんな事はしませんよ! あ、でも本当に向こうから何かして来た時は?」
『撃墜も止む無しだな。ただコロニーに居住している者達がいるらしい。おそらくはその居住者たちの戦力なのだろう。ならば話す余地はあるというのが司令部の考えだ』
「だといいけど」
本当に、連合と闘っているのは誰なのだろうかと、シンが首をかしげようとした時に、オペレーターから発進を促された。
『ガームリオン・カスタム飛鳥、発進どうぞ!』
前方のハッチが開いて、機体のカメラがとらえた宝石を散らばらせた闇色のビロードにも似た宇宙と、時折灯るオレンジがかった白い光がシンの目に映る。
発信の用意が整った事を示すランプが灯った。
「シン・アスカ、ガームリオン・カスタム飛鳥、行きます!」
タマハガネの前方では、五隻の連合の戦艦と二十五機ほどのストライクダガーが展開し、コロニーから現れた機動兵器と交戦しているようだった。
タマハガネに命令が来る以前から、なんどか交戦していたらしく、コロニー側の戦力が侮れない事を悟った連合側が本腰を挙げた所に、シン達は出くわしたのだ。
スロットルレバーを押しだしながら、シンは飛鳥のカメラが捉えたストライクダガー以外の機体に注目を寄せていた。
「なんだ、スーパーロボットタイプ?」
周囲を囲み、ビームライフルを浴びせかけるストライクダガー達を相手にしているのは二機の大型の機動兵器とプロトタイプのジンだ。
一つは飛鳥の倍――おおよそ五十メートルほどの、白を基調とした機体を緑の装甲で縁取り、肩には緑色の玉をはめ込んだ、フィンに似たものを幾つも連ねている。サイズこそ倍近いが、頭部の形状はGタイプ、俗に言うガンダムタイプに酷似している。
少し前ならこの手のデザインの機体は連合製かと疑われる所だが、今ではザフトやオーブ、DCでも似たような機体が造られているから、一概に連合のものとは言い切れない。
あちこちが破損しているようで、その破損した箇所を体裁を整えた程度の装甲を継ぎはぎにする様な形で補っているようだ。ほとんど破損した状態で戦っているようなものだ。
サイズに見合った巨大な緑色の光刃が伸びるハイメガサーベルを片手に、圧倒的な出力のサーベルでシールドごとストライクダガーを両断するその姿は、本来の姿であったならどれだけの力を発揮するのかと、シンの背筋にうすら寒いものを奔らせた。
巨躯と破損状況には釣り合わぬ機動性・運動性、それを見事に乗りこなすパイロットの腕前も並ではないようだ。
傷つきながらも、勇壮にストライクダガーと戦う機体――デュラクシールと共に漆黒の宇宙で、背後のコロニーを守るようにして闘っているのは、いくつもの鋭角の白い装甲を重ね合わせ、
機体の斜め後方に伸びた四つの翼のような白い装甲と機体中央や両脇の金色の装甲が目立つ機体だ。
おそらく頭部と思われる個所にはカメラアイと赤い突起がある。
少なくとも人型の機動兵器ではないが、かといってMAとも違う。
サイズはデュラクシールよりさらに大きく、70メートルに届く巨躯だ。こちらもデュラクシール同様に機体のあちらこちらが破損しており、動きに精彩を欠いている。
名前をヴァイクル。かつて地球側ではグリフォンと呼ばれていた異なる星からの侵略者である。
ヴァイクルは機体の周囲に中心に空洞の空いた白い十字の様なものをいくつも浮かべ、その中心から青白いビームの矢じりの様なものを発生させてストライクダガーと闘っている。
現在ザフトでようやく実用化した量子通信による誘導兵器“ドラグーン”系列の技術に類似したものか。
ある種この二機よりも目立つのは、この中で最も戦力はならない筈のプロトタイプのジンだった。CE60年代後半から配備されたジンのプロトタイプであり、練習用として用いられる事の多いCE最古のMSである。
ジンの特徴である頭部のとさか状のセンサー類や、ショルダーアーマーなど装甲の一部がオミットされ、スラスター推力なども低下している。
ジン同様かなりの数が民間にも出回っている機体だが、その分戦闘に用いるには心もとない性能でしかない。だが、このPTジンが動くたび、手に持った重斬刀がストライクダガーの腕を斬り、サーベルやライフルを斬り戦闘能力を奪って行く。
機体こそ最弱だが、パイロットという点では紛れもなくこのPTジンの乗り手こそが最強だろう。
シン達が駆け付ける頃には、八倍以上の戦力を持っていた連合の部隊は壊滅し、残された母艦も何隻かは背を向けて逃げ出していたが、ネルソン級二隻をジャン・キャリーとアルベロ、タマハガネが抑え、投降を呼びかけていた。
少なくとも共通の敵として戦えただろう連合の部隊が無力化した事で、コロニー側の戦力であるデュラクシールとヴァイクル、PTジンとの間に奇妙な沈黙が生まれる。
シンも、仮に戦うとなったら手傷を負っていても油断できぬ強敵になる事を察知し、操縦桿を握る腕に力を込めた。
それにしてもPTジンはともかく、あのガンダムタイプと巨大な白い奴はどこの誰が造ったものだろうか。ガンダムタイプはまあ、なんとなく有り得るだろうかという気にはなるのだが、MAとも違うあの白い奴は本当にどこのものだか見当もつかない。
そういう意味ではDCが造ったものではないのかと、他の勢力は考えるかもしれないが、DCに身を置くシンとしてはあの兵器は微妙に、DCの機動兵器のコンセプトとは違うものだと感じていた。
分りやすく言うと、ビアンの趣味とは違うかな? という程度だが。
「……いや、敵メカならありか?」
ヴァルシオンのデザインからして主人公側の乗るような正統派に機体よりも、ああいう凶暴なデザインの機体の方が得意なのかも知れない。
残念ながら、シンは新西暦世界でビアンが設計を行ったダブルGシリーズを知っていればまた違った考えに至っただろうが、シンが知っているのはヴァルシオンとミナシオーネ、それにフェアリオンだけなのだ。
デュラクシールがリーダー格なのか他の二機がその左右を固め、シン達と対峙する。痛いほどに張りつめた緊張が満ちる。
こちら側の戦力も先程の連合部隊とは比較にならない精鋭だが、目の前の連中も手傷を負いながらも並の部隊等歯牙にもかけぬ力を持っているのは分かる。いざ戦うとなれば、タダでは済まないだろう。
おもむろに、アルベロのガームリオン・カスタムが全周波の回線を開いた。機体に握らせたオクスタンライフルの銃口は下を向いている。
「こちらはDC親衛隊ラストバタリオン所属特殊任務部隊クライ・ウルブズ、アルベロ・エストだ。貴官らの所属と姓名を告げられたし。こちらに戦闘の意思はない。繰り返す、こちらに戦闘の意思はない」
あくまでシン達に戦闘の意思はないと繰り返すアルベロに、返答がされたのはまもなくだった。
アルベロのコックピットに、デュラクシールのパイロットであろう青年の顔が映し出された。
まだ若い、二十代の青年である。混じり気の無い翡翠を神の腕を与えられた職人が加工したような波打った髪に、彫りが深く眼鼻の顔立ちからは嫌味にならぬ程度に気品が匂いたっている。どこかの国の王族と言われても素直に納得できるだけの高貴さだ。
今はアルベロを前に典雅な顔を厳しく引き締めている。
「私はフェイルロード=グラン=ビルセイア。所属は……強いて言えば、あのコロニーの人々に力を貸している、という所か。貴方方の目的を聞きたい。あのコロニーの人々は戦乱をさけて寄り集まった難民だ。彼ら自身に何か戦う力があるわけではない」
宇宙と地上を問わず、ナチュラル・コーディネイターの難民は深刻な問題となっている。特にNJでエネルギー不足となり、ザフトのオペレーション・ウロボロスによってほぼ地球全土が戦場になった現在、
国を焼かれ家を追われた人々が戦火に襲われていない残り僅かな場所を目指して放浪している。
特に中立を謳って戦火を免れていたスカンジナビア王国や、国力に優れる大西洋連邦、また地熱発電によってエネルギー不足の問題を免れていたオーブなどに難民は集中し、治安の悪化や、難民への支援政策などの負担を強いている。
オーブを軍事クーデターで掌握したDCにもこの問題は残されており、北アフリカ共同体や太平洋連邦との外交ルートこそ確立したものの、もともと食糧や資源のほとんどを輸入に頼る国家であるため、国民を食べさせるだけでも精一杯に近い。
それでさえ、昨今は食糧事情の悪化などあり、難民に対する国民の感情の悪化もあって、連合との戦争以外にもDC上層部の頭を悩ませている。
地上に比べ宇宙はマシと言える状況だが、このコロニーの様に廃棄されたコロニーや宇宙ステーションなどに住み着いて海賊行為やテロルに走る者達もいる。
連合は、このコロニーに辿り着いた人々がそうなる事を嫌って戦力を派遣したのか? にしては生産が軌道に乗ったとはいえ貴重なMSや艦船を用いるとは到底思えない。
脱走兵でも匿っているのか……?
そんな疑問がアルベロの頭の中で渦巻く。
「我々の目的はこの宙域で行われている戦闘行為の調査だ。君らと連合の戦闘のようだったがな。結果としてはその機動兵器の存在を確認するにいたったが……」
デュラクシールとヴァイクル。この二つの未知の兵器に対する警戒を、徐々に露にするアルベロ。警戒の意志を見せるアルベロにフェイルも顔に浮かべる緊張の色を濃いものに変える。
クライ・ウルブズの戦力ならば、手負いのデュラクシールとヴァイクル、PTジンを撃破するのは少し難しいという程度かもしれない。
とはいえ無理に機体を回収するといった指令は来ていないし(司令部が機体の存在を知らなかったからだが)、アルベロやエペソら現場にもそういった判断をするつもりはないが……。
「フェイル」
「ん? ……分かった。アルベロ殿、コロニーの代表が話をしたいそうだ。そちらの代表に来て頂きたい」
デュラクシールにヴァイクルから三十代頃らしい女性の声が響き、コロニーからの連絡の内容を告げた。
アルベロは了解の旨を告げ、シン達にそのまま待機し周辺の警戒を命じてからタマハガネのエペソに通信を繋げた。アルベロとフェイルの会話は聞いていたはずだ。
「エペソ艦長、こちらからは誰を出す」
「ふむ。……余と貴公、それに一応護衛をつけておけばよかろう」
「艦長もか?」
「気になる事があってな」
デュラクシール達に先導される形でコロニーの港湾施設にエペソを乗せたシャトルとアルベロのガームリオン・カスタムが入港し、コロニーに降り立ったエペソとアルベロは兵を連れ、フェイルに案内される形でコロニーの中へと足を進めた。
外から見る限り大して破損はしていないようだったが、中の方は手入れが行き届き廃棄された状態からよくここまで直せたものだと感心する。
内部は街並みやビルなどよりも緑溢れる光景が広がり、エペソ達の眼に映った。仰ぎみれば同じ大地が上にくるという円筒形のコロニーならではの光景と人工の光量に前を細めながら、エペソは周囲の梢やテントからこちらを伺う視線を感じ取っていた。
「招かれざる客、か」
「分かっていた事だ」
作業用のプチ・モビやミストラルといった作業用のポッドも見え、あちこちに積み上げられた資材やコンテナの数の多さが、二人の注意をわずかに引いた。やはりこのコロニーには何かあると。
やがて、二階建ての、元は病院か何かだったらしい清潔な白い建物に案内され、そこで院長室か何かだったらしい一室でこのコロニーの代表だという女性が待っていた。
茶色の髪をアップにまとめた三十代頃の女性だ。切れ者の市長と言われればしっくりくる風貌をしており、口元のほくろと切れ長の紫の瞳が印象的だ。
フェイルも同席しており女性の傍らに立った。兵達を室外に下がらせ、女性の勧めに従って革張りのソファに腰を下ろした。
支援
「初めまして、私はマイオンヌ・レクマンティー。このコロニー『KCG』の代表のようなものをさせてもらっています。貴方方DCのお話はずいぶんと耳に入っております」
「ミス・レクマンティー、我々はこのコロニーで行われている行為そのものに干渉するつもりはない。それが我々や同盟国であるザフトにとって害を成さぬものであるならばな。単刀直入に聞こう。……連合がこのコロニーに執着する理由は何だ?」
多分に高圧的なエペソの物言いだったが、レクマンティーは気分を害した様子はなく小さく息を吸ってから凛然と胸を張った。フェイルは口を閉ざし成り行きを見守るつもりのようだ。
「怖い方。地球圏の軍事政権による統一を目指す方は皆そのような目をなさるのかしら?」
「交渉をする為に来たのではないのでな。ザフトと連合の戦争も戦いの場を移しこの宇宙も鬨の声で騒がしくなるのも遠い日の事ではない。その時の為にもあまり余計な事をする余裕はないのだ」
「……私どもはただ戦火を逃れてこのコロニーに辿り着いただけ。静かに暮らす事をお許しくださらないのですか?」
「さて、それにしては貴公らの持つ戦力はいささか過剰であり、不可解。それが連合にいらぬ疑惑を抱かせたのであろう。……さて、このような話を御存じかな? かつて連合が廃棄した核兵器が行方をくらます事件が起きた。
その核兵器は、とあるコロニーに集った者達が密かに回収し、ある目的の為に利用した。その目的が何か、貴公らなら分るのではないかな?」
「さあ? 私達にはなんとも」
「コロニーを惑星間航行の宇宙船に改造し、その動力として用いたのだ。当然核兵器の行方を追っていた連合の艦隊と一戦交えたが、協力していたジャンク屋や傭兵によって事なきを得て、今は地球圏を脱出したそうだ。
争いのやまぬ地球圏を見捨て、かつてジョージ・グレンが持ち帰った宇宙クジラの化石が見つかった木星を目指しているのだという。
連合がこのコロニーに拘るのは、あの機動兵器もあろうが、その事があったからではないかな? おそらくこのコロニーにある核兵器。その回収が彼らの真の狙いと、余は見ているが?」
レクマンティーは曖昧な笑みを浮かべて、さあ? と小さく首を横に振る。演技であるなら大した役者と言うべき所作のさりげなさだ。どこにも演技臭さがない。
「では、少し話を変えるとしよう。我々DCは民間の者たちに危害を加える事、また無闇に罪なき民に害を加える者達を見逃す事を良しとせぬ。ひとえに、我らが私利私欲を持って地球圏の統一を目指しているわけではない事を分かりやすく示す為だ」
「ですが、末端の兵士に至るまでその思想が行き渡るわけでもないでしょう? 古今、国家の掲げる理想を我欲の為に振りかざす兵士や軍人が絶えた事はないのですから」
「であろうな。だが、少なくとも余らはビアン・ゾルダークの思想に異を唱える気も無く、意味を履き違えるつもりもない。
故に、我らはこのコロニーの人々がこの星を捨てると言うのなら、それを阻む理由はない。だが、連合が貴公らが持っているかも知れぬ核兵器を手にするのも看過は出来ぬ」
「連合の手に入る前に貴方方に引き渡せと? 有りもしないモノをですか?」
「そうであるなら、事は簡単だがな。エペソ・ジュデッカ・ゴッツォの権限において、貴公らがこの星より離れるその時まで我らが守護の任に着く、と言ったなら?」
エペソの隣のアルベロとフェイル、レクマンティーも同時に不可解な表情を浮かべた。アルベロはエペソの独断とも言える言葉に、後者はそれを口実にこのコロニーを制圧する気なのではないかと疑った為に。
「それも、私どもが地球からの離脱を考えているならという前提のお話です。それに、私共は軍というものを信じる事は……」
「それも良い。いずれにせよ、余の判断である程度の行動は許されている。それに巧妙に隠蔽してあったがロケットノズルの一部をこちらの艦で確認した。この星を捨てるのも、もう間もなくなのであろう?
こちらから貴公らに手出しはせぬ用厳命されているし、もし貴公らの仲間の中でこの星に残ることを希望する者がいるのなら、余の権限でDCに引き取っても構わぬ。それ位の度量はある組織なのでな。貴公らの賢明な判断を望むぞ」
エペソの発言は最初からこのコロニーが改造されている事を看破したうえで話を進めていたという事か。
レクマンティーとフェイルが一瞬視線を交わしあった。その間にいくつもの意思が交差し、エペソの言葉に対する評価を交わしあったのだろう。微笑を取り払い、レクマンティーがおもむろに口を開いた。
「少しお時間をいただけますか?」
「……そうだな。色よい返事を期待しておく」
支援
レクマンティーと別れ、港湾施設のシャトルに戻る道筋で、エペソは鎮座する無人のヴァイクルを見上げた。
「やはり、ゼ=バルマリイの兵器ヴァイクルに相違ない。本星の物かそれとも派遣艦隊のものか? 余の他に帝国の者が来ているかもしれぬという事か」
ヴァイクルは無人での使用も多いが、戦闘指揮官クラスの使用の例もある。帝国内において高位の士帥の地位にあったエペソほどではないにせよ、それなりの地位のものがこのコロニーに居るのかもしれない。
「シンの飛鳥に積んだカルケリア・パルス・ティルゲム(念動力増幅装置)と反応するかも知れぬ。我らのいる間にもう一度戦闘でも起きれば確認できるかも知れぬが……」
シンの飛鳥にはカルケリア・パルス・ティルゲムほか、MFゴッドガンダムのデータからデッドコピーした、搭乗者の生命エネルギーの一種である“気”を機体の武装として運用する為の増幅・転換装置エネルギーマルチプライヤーなどの新機軸の装備が試験的に搭載されている。
パイロットであるシンは知らぬ事ではあるが、こういった謎めいた代物はパイロットには内緒にしておくのが決まりであるという、ビアンの意向の為だ。
ヴァイクルから目を離し、我ながら物騒な事を口にするものだと、苦笑してシャトルに乗り込んだエペソだが、まさか本当にその通りになるとは思いもしなかっただろう。
「艦長、レーダーに反応あり! 大型の熱源が接近してきます。反応から戦艦クラス、数は六」
「先ほど撤退した部隊か? にしては早過ぎる。近くの友軍を搔き集めたのか。まあ良い。コロニー側に警告を出せ。総員第一種戦闘配置、MS隊は火急迎撃に移れ、タマハガネ全火器管制を解除。コロニーに被害を出すような真似は避けるように」
報告を受けたシン達も、周囲に浮かぶデブリを避けつつ連合の戦艦から発進するMSの迎撃に向かっていた。
「暗礁宙域ってだけにデブリが多いな。こう障害物が多いとシシオウブレードが振りにくいったらありゃしない」
愚痴をこぼしつつ、はるか遠方に望む連合製MS達――いい加減見慣れてきたストライクダガーの中に、二機だけ見慣れない機体があった。
「Gタイプと、あれはガーリオン!? かなり改造されているみたいだけど、ユーリア二佐のガーリオン以外にあったのか?」
シンが発見したのはユーラシア連邦が開発したオリジナルMSハイペリオンと、かなりのカスタマイズが加えられたガーリオン・カスタム無明であった。
ハイペリオンは機体背部に背負ったオルファントリーという強力なビームキャノンや、エネルギーの消耗を抑える為にパワーセルを採用したビームマシンガンなどの武装を持つ。
他にも機体各所に搭載された機動兵器サイズの光波防御帯アルミューレ・リュミエールを特徴とする高性能機だ。
現在は試作機が三機造られたに留まるが、戦果次第では今後ユーラシア連邦の主力機として名を馳せる可能性を持っている。
そして無明は、新西暦世界においてDC側、後には地球連邦でも使用された高性能機ガーリオンを、接近戦それも剣撃戦闘に特化する形で装甲やブースターを増設したもので、左脇に下げたシシオウブレードを主に用いた戦闘を行う。
機体サイズこそパーソナルトルーパーやアーマードモジュールと大差ないが、パイロットの腕前次第では特機――スーパーロボットと真っ向から切り結ぶ事の出来る凄まじい機体でもあった。
いうなれば新西暦世界における飛鳥であり、飛鳥はCE世界における無明と言い換える事も出来るだろう。同じコンセプトと思しい機体に、同じシシオウブレードらしい装備。シンの闘争心に火を着けるには十分だった。
「ステラ、スティング、あのガーリオンはおれが抑える。二人はあのGタイプを!」
「シン、一人で突っ走るな! 数じゃこっちのが少ないのは……」
「毎度の事だろう? それにあのコロニーのロボットも出てくれば、スティングたちならどうって事無いさ!」
「こら、待てシン!」
スティングのガームリオン・カスタムを置き去りにして、シシオウブレードの柄に手を掛けた飛鳥は無明めがけてまっすぐに飛んだ。
「……ほう? ビアン総帥がいるから、ひょっとしたらとは思ったが、おれの無明と似たような機体がいるとはな。カナード、奴はおれがもらう。他の連中はお前の好きにしろ」
「傭兵がおれに指図するな! ふん、無能共の尻拭いをさせられるのは腹立たしいが、歯応えのありそうな連中がいたものだな」
無明のコックピットで、黒髪と鬚、左眼に縦に走る傷が特徴の東洋系であろう壮年の男ムラタが、ハイペリオンのパイロットであり、ユーラシア連邦特務部隊Xに所属する若き兵士カナード・パルスに釘を刺した。
支援
支援
ちょうど無明のモニターでもこちらに向かって突撃してくる飛鳥の機影を捉えた所だった。ガーリオン・カスタムに乗っている事から分かるように、やはりこの男もまた新西暦において死亡した筈の死人である。
新西暦世界でロレンツォ・ディ・モンテニャッコと共にシャトル打ち上げ基地を制圧し、ブルックリン・ラックフィールドの乗るグルンガスト弐式と死闘を演じた果てに、零距離からのブーストナックルを受けて死亡している。
元々新西暦世界でも傭兵として生き、戦闘狂というよりも殺人剣の道を行く剣鬼と化していたムラタにとっては、この憎悪に満ちた戦争の続くCE世界はその剣の道を模索するに都合の良い世界でもあった。
なぜ己が生きているのかを訝しむよりも、今一度剣を磨く事が出来る事実がムラタにとってはなにより重大であり、生きる目的そのものだ。
「近頃剣が錆つくような相手ばかりだったのでな。少しは楽しませてもらおう」
大気のある地球であったなら、無明が手にしたシシオウブレードの冷たい鞘鳴りの音が静かに零れ落ちただろう。抜けば触れる風さえも切り裂く悪鬼羅刹の殺人剣。人血機油にまみれて禍々しく輝く刃。
同じ獅子王の名を冠しながら、シンとムラタの持つ刃はまったくの別物だった。
意気揚々と飛鳥に向かい柄に手を掛けるムラタを一瞥してから、カナードもまた自分の戦うべきを見定めるべく前方に展開するDCのMSを見渡した。
カナード自身もクライ・ウルブズのパイロット達同様まだ16,7の少年だ。特に手入れはしていないが、光沢のある黒髪を長く伸ばし、MSなどに搭乗するときは布で纏めてからヘルメットを被っている。
一見すると線の細い端正な顔立ちの少年だが、その実訓練されたコーディネイターを上回る身体能力に苛烈かつ敵に対して容赦の無い好戦的な性格をしている。元はコロニー・メンデルで行われていたとある研究の生み出した存在である。
戦闘用コーディネイターではないが、コーディネイターとして高いレベルで能力を与えられ(彼を生んだ者たちは満足しなかったが)、後天的努力により極めて高い戦闘能力を有している。
その能力に目をつけたユーラシア連邦に捕縛され、今はプラントとの戦争の後に来るであろう大西洋連邦との戦いに備える為に創設された特務部隊Xに所属している。
最もXの現在の任務は“スーパーコーディネイター”キラ・ヤマトの身柄の確保と、司令であるガルシアの独断で、ザフトの開発した核動力MSの持つNJCの確保だ。
なおスーパーコーディネイターの定義は、人工子宮を用いる事で母体という不安定な要素を排除して、遺伝子操作が完全に行われたコーディネイターとする者と、コーディネイターとして最高の能力を与えられた者という異なる説がある。
キラ本人を見る限り、素の身体能力ではカガリにも負ける腕力やモヤシな体力を考慮すれば、前者がスーパーコーディネイターなのだろう、多分。
カナードはそのスーパーコーディネイターの失敗作として烙印を押された存在なのだ。
それが今こうして辺鄙な所にあるコロニーを襲撃しているのは、ガルシアがコロニー側の持つ未知の機動兵器に興味を示し、より高い地位に着く為の材料とならないかと欲を出したためだ。
ガルシア司令はもともと艦長職にあり、要塞の指令を務めている現状に満足しておらず、現場への復帰を強く望んでいる。その為には手段を選ばない冷徹な人物だ。多少人格と能力に穴があるけれども。
そして先程敗走したばかりの艦隊に加えガルシアの権限で動かしたアルテミス要塞の艦隊と、Xの母艦オルテギュア、そしてハイペリオンとカナードの出番となったのである。
「まあいい。おれとハイペリオンに敵などいない。貴様らすべておれとハイペリオンの前に敗れるがいい!」
カナードの繊細そうで端正な顔つきに合わぬ剥き出しの闘争本能に突き動かされるように、ハイペリオンもまた、ステラとスティングに向かい襲いかかった。
「ステラ、来るぞ!」
「ん!」
ハイペリオンの構えたサブマシンガンが、パワーセルを排莢しながら点ではなく面で制するエネルギーの弾丸をばら撒く。粗雑な狙いに見えてその実正確な狙いの付けられた射撃だ。
機体を捻りデブリとの衝突を避けながらスティングのガームリオン・カスタムのオクスタンライフルの銃口から反撃の光の槍が次々と放たれる。
両機の間を結ぶ光が乱舞し、アーマリオンの高い推力を活かして、ステラはスティングに援護されて一気にハイペリオンの懐まで飛び込んだ。
させじとカナードはビームサブマシンガンの狙いをアーマリオンにつけるが、展開されたEフィールドに弾丸の尽くが弾かれ、小さく舌打ちを零す。
加えてアーマリオンの腕部から放たれるスプリットビームとオクスタンライフルのEモードの連射に、常に危機感を刺激させられる。
「ふん、雑魚ではないようだな!」
「うええい!」
スプリットビームの出力を調整しロシュセイバーに変えて、アーマリオンがハイペリオンに斬りかかる。並大抵のパイロットでは反応できずに両断される踏み込みの速さと、思い切りの良さだ。
だがカナードとて超一級のパイロット。ハイペリオンの上半身をスウェーさせるようにのけぞらせて回避し、銃身に仕込んであるビームナイフで切り返し、ステラはこれをビームコーティングを施した機体の装甲に任せてそのまま受け、両肩のスクウェア・クラスターを射出する。
「!」
既存のMSにはない独自に武装に、一瞬カナードの反応が遅れ、目の前に広がる無数のチタン刃の雨がハイペリオンに襲い掛かった。PS装甲でもTP装甲でもない、通常にMSで使われている装甲だ。スクウェア・クラスターの直撃を受ければボロ屑に変わる。
「なに? これ!」
ステラの目の前で無数のチタン刃が薄緑に輝く光の三角形に防がれていた。それは何も持っていなかった筈のハイペリオンの左手の四角垂のようなパーツから展開されていた。
「Eフィールドのシールドか?」
スティングも初めて見るハイペリオンの装備に多少驚きながらも、左手の身に展開しているならば通常のシールドとカバーできる範囲は変わりはしないと判断した。
「ステラ挟みこむぞ!」
「うん」
近距離まで迫っていた状態から後方に反転し、ステラもスティングの意図を理解してハイペリオンの前方に位置したまま注意を引くべくスプリットビームを撃ち続け、ハイペリオンの持つモノフェイズ光波シールドがどれほどの効果を持つのかを試す。
「挟み撃ちか! 小賢しい手でこのハイペリオンのアルミューレ・リュミエールを破れると思うな!」
「なに!? 全方位に展開できるのか」
アーマリオンのスプリットビームとガームリオン・カスタムのオクスタンライフルWモードの同時攻撃を受けたハイペリオンの周囲を、機体各所からワイヤーの先に取り付けられた三角形のパーツから発生した多角形のアルミューレ・リュミエールが覆っている。
その光の壁がスティングとステラの連系攻撃を防ぎきっていた。
「はははは! 貴様らなどにこの光の盾を破れるか!」
ハイペリオンのコックピットでアルミューレ・リュミエールの展開可能時間のカウントが始まる。エネルギー消費の問題からアルミューレ・リュミエールの全面展開は最大五分間のみ。
それを常に意識にとどめながら、カナードはその光の盾に囲まれたままオルファントリーとBSMを連続して放つ。共にパワーセル式ゆえに本体の電力は消耗しない。
「こいつ、中からは自由に撃てるのか!」
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろぉぉおお!!」
狂気さえ垣間見える凶相を浮かべ、消えろと連呼し続けるカナード。厄介なのは激昂したかの様な精神状態でさえその照準にいささかの支障をきたさず、むしろその制度が増している事だろう。
「ちい、こいつ!?」
「!」
飛来する無数の光の雨の如き弾幕を交わしながら、スティングとステラも果敢に反撃に映るが、アルミューレ・リュミエールは一つの例外も許さずに全ての攻撃を遮断してしまう。
「だが、あんな強力な装備を長時間展開できる筈がない。ステラ、持久戦で行くぞ。無茶な事はするなよ!」
「分かった。突撃したりしない」
「本当かよ?」
やや不安なスティングだった。
一方でカナードも、ステラとスティングの猛攻を防ぎながら、ある一つの事に気付いていた。アルミューレ・リュミエールで防ぐ事は出来てはいるが、今相手にしている機体の装備の出力が桁違いに高いのだ。
対ビームコーティングを施したシールドでも真っ向から受ければ融解してもおかしくはないほどだ。そんな強力な装備をMSに搭載されたバッテリーでああもエネルギー系の兵装を連射し、出力を維持できるだろうか。
「まさか、貴様らの機体……核動力機か? DCの機体の高性能を支える理由とかいう噂はあったが、もし本当だとするなら面白い。核の無限エネルギーを手にすれば、ハイペリオンは無敵だ! はははははは!!」
無限稼働など出来るわけもないが、実際アーマリオンとガームリオン・カスタムの核融合ジェネレーターを転用出来ればアルミューレ・リュミエールの展開可能時間は大幅に増すだろう。
「貴様らの機体が核動力で動いているというのなら、おれとハイペリオンの力にしてやる! キラ・ヤマトを倒し、おれが失敗作などではない事を証明するためになあ!」
支援
カナードの凶悪な叫びがハイペリオンのコックピットの木霊する一方で、対峙したシンの飛鳥とムラタの無明は静寂の只中にあった。無論元々宇宙は静寂の世界であるが、この二人の場合、言いしれぬ緊張――いや言葉にできぬ何かが張り詰めていた。
よもや人型の機動兵器がモノをいう時代で、旧時代的な“死合い”の様相を呈するとは。シンは無言。ムラタもまた固く結んだ口元は不動。
この二人と二機の周囲では時の流れも緩慢になっていたかもしれない。両者から滾る戦闘の気に当てられ、恐怖するが為に。
無明は腰を落とし、左親指でわずかに獅子王の太刀の鯉口を切る。
飛鳥は冷たく輝く獅子王の刃を抜き放ち、構えは右蜻蛉。
無音の世界で、暗黒の背景にスラスターの光が瞬いた。無明と飛鳥の両肩の増設ブースターが展開し、推力を最大限にする。
踏み込みではない。だが、それは至高の一刀、最高の一振りの為の“一歩”。
「きえええええい!!」
「おおおお!!」
シンとムラタの喉の奥から、そのまま肺が裂けそうなほどの気迫が炸裂する。びりびりとヘルメットの強化ガラスが震える。
虚空に閃いたは銀に輝く二筋の弧月。弧月が切り裂いたは鋼の人体。互いの脇を駆け抜け、無明と飛鳥が動きを止める。
鞘から獅子王の刃を抜き放ち、右斜め上に切っ先を掲げた無明。
右蜻蛉から獅子王の太刀を縦一文字に振り抜き、切っ先を下げた飛鳥。
何事も無かったとでも言うように両機は動きを止める。見る者がいたならば呼吸さえも忘れる刹那の死闘。戦いであるならば、勝者と敗者が生まれる。勝者とは飛鳥か無明か?
やがて、よく似た姿形の両機の片方のシルエットが徐々に崩れ、鏡の如く研ぎすさまれた様な断面を晒し……。
後編に続く。
というわけで、Bルートです。余計なのもいますけれどね! Aルートでは予想された方も多かったっぽいアルフィミィとレビ・トーラー戦爵様が登場予定でした〜。
デスティニーまで話し続けられるといいなあ、と思っているので今でなくても後で出る予定の人たちはそこそこいます。
ムラタのおっちゃんは漫画版ではやや戦闘狂のケがある凄腕の傭兵、というくらいなのでOGsの性格を若干取り入れています。
では、次回でまたお会いしませう。ご助言・指摘などお待ちしております。
GJ!!!ニャンコ先生(違う!!)が散ったので用心棒の村田氏も散ってこっちに来たのか……。
なるほど、Tリンクシステムだけじゃなくてゴッドガンダムのアレもあればシンの感情で力になるわな〜。
それとルナマリア&シホ、南無〜。
GJ!
EXやってないからデュラクシールは分かんないけど、とにかく燃え萌えだ!
……マイオンヌは魔人国から?
GJっすー
フェイル王子が来るなら超魔装機の製作者たる妹も来て欲しかったなあ、個人的に
つーか、このスレでハイペリオンって言われるとあっちを先に思い出すよね
フェイルは病大丈夫なのかな?
ヴァイクルの中身が誰なのか気になるぜ!
そしてムラタktkr!!
OGs分入ってると、今のシンでは厳しい相手かな
何せゼンガーですら勝てない程だし
ヴァイクルの中身…汚いゲーザか本田かシャピロのどれかだな
そこで意表をついて新リュウセイですよ
>>78 オレも最初そっちだとw
>>79 wikiでしかEX知らない身としてはヴァイクルの中身はテューディあたりかと思ったんだが。
>ヴァイクルから三十代頃らしい女性の声が響き
やっぱバルマーの人間なのかな?
GJです。
デュラクシールキタwww
>>82 ヴァイクルの中身は…アタッドことジェニファーでしょ
アタッドあたりか?
地球人としての記憶が戻ってるとか
アタッドかねぇ……あー、いかん。
フェイルとアタッド、レビとアルフィミィを秤にかけると後者に傾いてしまうダメな俺が居る。
そして無明と飛鳥、どっちが勝ったのやら……シン敗北で再戦フラグ立ちそうな気もするが。
GJ!
デュラクシールか〜強かった記憶はあるのにヴァルシオンやグランゾンと比べてヤバイ気がしないのはなんでだぜ?
フェイル殿下か、コーディネーターなんざ屁でも無ぇ御方がまた現れやがった。
ルナマリア、シホ頑張れ!新しい境地を切り開くんだ!
隊長〜何気にGJなんだぜ!
ヒント:デュラクシールはビーム兵器が多かった。
あとは火力、かなぁ。
デュラクシールはヴァルシオンやグランゾンに比べると、魔装機なのにガンダム顔という以外あまり特徴が無いからな
あとフェイルって魔力はともかく、パイロットとしての腕ってどんなもんだったっけ
>>85 安心しろ、俺も同じだw
まあ作者曰くまだ先は長そうだし、いずれ登場するだろう、多分
むしろ政治的にがむばつて欲しいが、率いる民もおらんし難しいか。
>>88 具体的な数値なんてもう覚えてないからなぁ。
>>90 むしろ余命がどんくらいあんのかが怖い。
確かボロボロだったはずだよな。
フェイルのデータEXだと命中は全キャラの中でトップで射撃も5本の指に入ったはず
他のはスーパー系にしては高いってくらいだったかな
そういえばお供のおっちゃんは来てないのかな?ビームの効かないあのおっちゃんはうざかった記憶がある。
魔装機神だと遠隔操作機動端末なMAP兵器、タオーステイル持ちだったけどこれではどうなってるかな?
もしあったら天帝と機動端末合戦が展開出来るが。
カルケリア・パルス・ティルゲムが飛鳥に搭載されてるのか。
バルマーのだとT-LINKシステムと違ってブレーカーないみたいだけど追加されてるのかな?
乙&GJ!
あのスーツを着たシホとルナマリアか、、、これは合流一波乱有りそうな気がするのは気のせいか?
あとレビ&アルフィミィルートも捨て難かったよなぁ
この二人来たらシンとスティングが兄気だして奔走しそうだが…あれ、アルフィミィってペルゼインからでれなかった様な?
アルフィミィはともかく戦爵様はスピリッツだったのかな?
マイでは無くてレビなところに拘りを感じる
つかスピリッツ以外のレビ様だったら涙が出てくるわ
スピリッツってやった事無いんだが、αシリーズやOGのレビとどう違うの?
ところでフェイル達より強いPTジンのパイロットって……もしや蘊奥か?
αのレビ:拉致られて洗脳、ラスボスクラスじゃないから説得で味方になれる
OGのレビ:拉致られて洗脳、ラスボスクラスなので説得イベントなし、せぷたんによって中途半端に再生、後マイとして仲間に
スピリッツのレビ:バルマーが未来で地球を占領したため未来からきて戦力になりそうな人を探していた…と思わされていて実は裏でバルマー(速水ゴッツォ)が操っていた
αとOGは基本的には同じ
スピリッツは未来人
どの道可哀想な子です(´;ω;`)
>>101 武器も剣一本だし、ありうるかも。
「まっすぐな振り」や「活人剣」をシンにも教授するのかも?
>>103 なるほど、今回の対決では後れをとったけど特訓を受けて雪辱を期すのか。
って、あんまり展開予想するのもアレかな?
ところでカーウァイは改造された体で現れたわけだが、
脳を取られたシュメル師範は出るとしたら生身で出るのだろうか、それともガッツォー(&ゼツ)ごと来るのか?
シュメルはルートによって扱いが異なるからな
脳取られない場合もある
つか脳取られてない時はそもそも死んでなかったか
基本死んだ人間が出るわけだからいいんじゃね?
>>102 こっちのレビもやっぱ誰かに洗脳されてんのかしら
そー言えば、例の彼はこっちに来る条件を十分に満たしてましたね
第6話「人の業」
DC残党軍のユウキが率いる部隊にビルトファルケンを強奪された特殊戦技教導隊を回収したシロガネは
補給と修理のためにいったんハワイのヒッカム基地に寄港していた。
機体の整備を終えたシンは一息つくべくブリットとともにブリーフィングルームに入っていく。
するとそこでは、シロガネ艦長であるリーに報告を終えた現教導隊の3人がおり、
カイ及びライが重苦しい表情を浮かべながらラトゥーニの話に耳を傾けていた。
隊長のカイが強奪されたファルケンに搭乗していたラトゥーニから強奪部隊に関する聴取を行なっていたのである。
「では強奪犯のDC残党の中にかつてのスクールのメンバーがいたというのか?」
「はい…アラド、そしてゼオラ…」
驚きの表情を隠さないカイに対して、ラトゥーニは一見何の驚きもないような表情で応える。
だがそれは予想できていたパターンの1つ。
生きているということだけで最悪の結末でこそなかったが、かつての仲間が敵の中にいた、その仲間が自分に向けて発砲した、
これらの事実がラトゥーニの心に重くのしかかる。信じたくない現実が彼女を覆っていた。
一方でブリーフィングルームの端っこに腰掛けていた異世界からの来訪者であるシンには
彼らの話の内容が当然ながらイマイチ理解できない。
「なあブリット、スクールってのは何なんだ?」
「あ、そうか。お前は知らないよな。スクールというのは…」
「それについては俺が説明してやってもいいが、お前がビルトシュバインのパイロットか?」
部屋の中心にいたヒゲの男がシンに話しかけてきた。伸びた背筋にやや低い声、広い肩幅に漂う大人の貫禄。
いかにも軍人、といった感じがする男である。
どうしてかつての自分の周りにはこのような典型的な軍人風な人間が1人もいなかったのか。
シンのいた部隊が新型艦であるミネルバで、議長であるデュランダルの息のかかった部隊だという特殊な事情はあるが、
仮にも一国の軍隊としての位置付けをされるべきザフトにいたシンの周りにはまことに奇妙なことに軍人っぽい軍人が1人もいなかった。
シンは実に今更ながらではあるが、そのことが不思議に思えた。
「はい。シン・アスカです。ビルトシュバインのデータ集めのためにシロガネに来たマオ社のテストパイロットです」
「特殊戦技教導隊隊長のカイ・キタムラだ。よろしく頼む。ブリット、久しぶりだな」
「はい。お元気そうで何よりです。またこんな形での再会になってしまいましたが…」
「ああ、例の事件以来だな。お前も元気そうで何よりだ」
カイ・キタムラ。どこかで聞き覚えのある名前だな、と思いながらシンは自分の記憶を遡る。
やがてその名前がエルザムやゼンガーから聞かされたことのある名前だということを思い出す。
それを思い出すと、さきほど見た戦闘記録−旧式機である量産型ゲシュペンストmkUでユウのガーリオンと互角以上に渡り合った記録―の奮戦振りも納得がいった。
「ライディース・F・ブランシュタイン少尉だ。よろしく頼む」
「シン・アスカです。よろしくお願いします」
(ブランシュタイン…そうか、この人がエルザムさんの…確かにどことなく似ているな)
「スクールの説明だったな。スクールというのは…」
「カイ少佐、スクールについては私が説明します」
カイを遮ったのは先ほどまで事情を説明していたまだ顔に幼さが十分に残っている少女であった。
(こんな子がどうして戦艦に?いや、メイリンもあのくらいだったか)
スパイ容疑のかかったアスラン・ザラの脱走の手助けをしてザフトを裏切った上にミネルバの前に立ち塞がった
かつての仲間の1人をシンは思い出すが、それをラトゥーニが知る由もない。
そして彼女は語り始めた。彼女自身が味わってきた数々の非道な所業の数々も含めて…
「…以上が私の知っているスクールについての全てです」
「クソ!!!」
シンが拳を壁に叩き付ける。彼の中に渦巻いているのは怒りであった。
スクールで行なわれてきた非人道的な実験等に対する、たいていの人間にある正義感から来る怒り、
自分達の世界で出会ったエクステンデットと呼ばれた少女を救えなかった自分の非力さを思い出しての怒り、
その少女の敵を討つことすら出来ずにオーブで敗れ去った挙句、異世界に飛ばされた無力な自分への怒り、
そして世界を跨ぎ、2つの世界で何の関連もないのに同じような所業を行なう者達への怒りがシンの心の中で渦巻いていた。
「どいつもこいつも…そんなに戦争がしたいのかよ!?」
1人、誰に対してでもなくそう吐き捨ててシンは部屋を後にした。
「シン…」
シンの肩に手を伸ばして止めようとしたが断念したブリットが呟いた。
「ブリット、彼がマオ社のテストパイロットだということ以外に何か知っているか?」
今まで沈黙を保っていたライディース・F・ブランシュタインが腕を組みながら口を開いた。
その視線は兄であるエルザムと同様に鋭く、シンの言動から何かを読取っていた。
「いえ、自分は…何か気になることが?」
「いや確たる根拠がある訳ではないからなんとも言えんが…」
「構わん、言ってみろライ」
「何というか彼の怒りはスクールで行なわれていたことに対するものだけではないような気がする。
まるで似たような経験をしてきたか、体験もしくは機関を知っているかのような…それを軍需産業とはいえ
マオ社のテストパイロットという民間人である彼が知っているとは考え難い。それに…」
「何だ、まだあるのか?」
「はい。彼がビルトシュバインに乗っている理由です」
「それは俺とギリアムが提出したゲシュペンスト強化プランの一環だと聞いたが?」
「そうだとしたらゲシュペンストに乗った方がいいでしょう。
ビルトシュバインがゲシュペンストの系列機だとしても量産機ではありません。ブリット、彼の腕はどのくらいかわかるか?」
「はい。彼のパイロットとしての能力は自分と比べても遜色のないものだと思います」
「ならばなお更だな。ATXチームに遅れを取らずに機体を扱えるような腕のパイロットならばマオ社では他の機体、
まだロールアウトこそしていませんがビルトビルガーを始めとしてパイロットが決まっていない新型機はいくつもあります。
それにヴィレッタ隊長が乗っていたビルトシュバインに突然、民間のテストパイロットが搭乗するというのは…」
量産機と言い切られたゲシュペンストをこよなく愛するカイも、やや複雑そうな顔を浮かべながらライに続く。
「む…確かによく考えてみればゲシュペンストの系列機のテストならば俺達、現役の軍人がやればいいしな。
わざわざ民間のテストパイロットにさせなくても喜んで強化プランに参加する軍人は多いはずだ。
民間のテストパイロットがしかもビルトシュバインに乗っている、というのも不自然と言えば不自然だな」
「でも…悪い人じゃないと…思う」
意を決したようにラトゥーニが言った。
「そうだな。俺もいろんな奴を見てきたが、どうにも人を騙したり裏切ったりするのが得意なタイプとは思えん」
「同感です。どちらかというと、どこぞのロボットバカに近いタイプのような気がします」
「そ、そうですよ!自分はあいつと一緒に戦ってきましたが背中を預けられる人間だと思います」
(とすると、ますますわからんな…一体何者なんだ?)
怒りに身を任せてブリーフィングルームを飛び出したシンであったが、特に行くべき所もない彼の足は格納庫へと向かっていた。
自分に出来ることは戦って誰かを守ることだけなのだということをシンは無意識のうちに自覚していたのである。
そして格納庫に到着するも、彼の意識はまだその内面に向けられており、視線の先にはない。
(こっちの世界でもステラみたいな子が…くそ!どうしてあんな酷いことができるんだ!?)
「やはり機密通信装置は使えんか…どうしたものか」
格納庫の隅にいたラミアが苦々しい表情をしながらも、
正常な機能を既に失った機械を無駄とわかりながらも操作し続けている。
だが、それにより生じた小さな音が、自分のトラウマの1つを思い出していたシンの耳に入ってしまう。
(なんか音がしたな…誰かいるのかな?)
音がした方向に人の気配を感じ、シンはその方向へと向かった。
蒸し蒸しする薄暗い格納庫の隅では、自分の背丈よりも高い幾つものコンテナが積みあがっており、視界はあまりよくない。
一歩、二歩、先へ進んでいく。自分の所属する艦とはいえ油断はならない。
集中力は自然と高まり、喉にわずかばかりの乾きが生じる。高い湿度は汗を生み、シンの衣服を濡らし始めていた。
その時、無音の背後に気配を感じたシンは、咄嗟に懐に忍ばせていたナイフを突如現れた気配の主へ向けた。
ナイフを向けられた気配の主は動きを停止し、シンの目がやがて薄暗さに慣れてきた。
まるで戦場で流される血のような色をしたその瞳に映るのは、人類の半分近くを魅了してやまない、
男の夢とロマンが余すところなく詰め込まれたマスクメロンである。
「ラミアさん!?こんなところで何をやってるんです?」
「そ、それは…」
まずいところを聞かれた。まさか本当のことを言うわけにはいかないし、かといってこんな格納庫の片隅で特にすることなどない。
(しまった…!だがここで始末する訳には…)
ラミアは造物主から与えられた性能をフルに使ってその場から逃れる術を模索する。
「そ、その…軍艦なんて乗られる機会なんてそんな滅多にございませんでございましょう?
ちょっと探検なんてものをしちまおうだなんて思っちまいやがったのですわ。アスカ様はどうしやがったんですか?」
「ははは、やっぱラミアさん敬語が変ですよ。俺は人の気配がしたから気になっただけです。何か面白いものは見つかりましたか?」
「そ、それは…」
少しだけ意地悪そうなシンの質問に再びラミアが言葉に詰まってしまう。
(まずいな…なんとかして話の話題を逸らさねば…)
「ところでアスカ様はどうしてDCの残党と交戦したときにあんなことを?」
「あんなこと?」
「ブルックリン様とガーリオンのパイロットの通信に乱入しくさったことです。
私たちは軍人でこそありませんが、上の指示で戦えと言われれば戦わなければなりませんし、
戦争が広がればマオ社も利益が増加すると思ったりするんですけど」
戦争が広がり軍需産業の利益が増加する、シンのいた世界にも同じ構図があった。
憎き仇と裏切り者に邪魔をされ、鎮魂歌の名を冠した大量破壊兵器による戦争に関係のない数多くの民間人の犠牲の末に、
ロゴスと呼ばれた軍需産業複合体の首領ロード・ジブリールを討ったのは他ならないシン達である。
「戦争が始まれば軍人だけじゃないでしょ、関係のない人達が必ず巻き込まれる。それが嫌なだけです」
「そ、そうでございますか。でもあまり艦長さんのご機嫌を損ねない方がよろしいかもしれなかったりですよ、はい。
では私はアンジュルグの調整がまだ残っておりますので…」
(解せんな。パイロットをしている人間の台詞とは思えん。
確かに民間人にも犠牲がでるだろうが、その上で得られるものもあることくらいわかるだろうに…)
その場を気まずそうにしながらも急いでラミアはシンから離れていく。
戦争と混沌の中でこそ人類の発展はある、という信条の下に作られた人間である彼女には
シンの考え方が理解しがたかった。
しかし、理由こそ不明だが悪い気はしない、造物主にインプットされた彼女の価値観、思考回路のには少しづつではあるが変化が生まれてきていた。
そしてそのやりとりをやや離れたところから見ていた人物が他に約2名。
「あらキョウスケ、私たちハガネにうつるって決まったっていうのにブスっとしちゃってどうしたの?」
「…エクセレン、お前はシンの動きを見てなんとも思わんのか?」
「動き?」
「前から気にはなっていたんだが、やはりあいつの動きはどうも軍人臭いし、民間のパイロットにしては娑婆っ気がない気がする。
だが奴の経歴に軍にいた、という記録はない。ラミアともども胡散臭い連中を引き取らされたらしいな」
「上司にも部下にも恵まれないってやつかしら?」
「茶化すな。ハガネに移ればダイテツ艦長達の手助けも得られるかもしれん。しばらくは様子見だ」
数時間後、ヒッカム基地に到着したハガネにATXチーム、教導隊は移ることとなり、戦場は極東へと移っていく。
伊豆基地へと到着する直前、同基地を襲撃したユウキ率いるDC残党を撃退した
リュウセイ・ダテ、イルムガルド・カザハラをハガネは加えることとなり、混乱は一層深みを増していくのであった。つづく
GJ!
だがそのマスクメロンにはナイフ入れようとしちゃ駄目だwww
まず真っ先にマスクメロンwwwwwww
何故だ……マスクメロンのと言う表現を見た途端脳内BGMが某ベリーメロンに変わったorz
それは兎も角GJでした!
天才兄弟の親父さんの乗艦って5隻の砲艦くっついてるから
やろうと思えばチャーグル・イミスドンを再現できなくもないのう
119 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 16:41:57 ID:xNa+J/yv
GJ!! シン×マスクメロン(本番込み)ならなおのこと望ましい。
シンのラッキースケベ属性とラミアの一般常識不完全属性考えると
本番スレスレまではありえそうだな
「ア、アンタは一体?」
「私の正体を知ってしまいましたね(ここでこの少年を消せば騒ぎになる、ならばレモン様に教わった
手段で……)それでは……」
「ちょっ、アンタ何服脱いで、うおっ」
「口止め料でございますです」
という感じであくまでもギャグ扱いでw
エロパロ見たいなら該当板いけ、としか言いようがない。
11氏の話題はおっぱいばっかりだなwww
そういえばラクシズも出るらしいがまだかな?
今のところOG原作に忠実で、話にあまり大きな動きやアレンジが無いからな
シンの乗機もビルトシュバインという渋いというか地味な仕様だし
これから、おっぱい以外にどう特色つけていくかが見所
ビアンSEED 第31話 真の大地より 後編
音は無く、流れた光と切り裂いた鋼の刃だけが勝者と敗者を知っていた。
流れる水を断つ様に、何の抵抗も無かったかの如く獅子王の太刀は飛鳥の胴から入り、左肘を切り裂いて抜けた。
機体の差か、操者の技量の差か、わずかに無明の銀刃が飛鳥を切り裂きその分飛鳥の振るう獅子王の刃は浅く無明の顔と胴に縦一文字の斬痕を刻むに終わった。奇しくも、ムラタと同じ左目に当たる部分を斬って。
「がっ、く、くそ!?」
「まだ粗雑な所もあるが、良い剣だ。師に恵まれたと見える」
シシオウブレードをしっかと握っているため、肘から斬り落とされても飛鳥の左腕はまだシシオウブレードの柄を握っていた。紫電の火花を散らしながら、背後を振り返り、刀身にこびりついた機油を払う無明を飛鳥のカメラアイとシンの赤い瞳が睨んだ。
振りきった太刀を右下段に構え直し、無明は静止。寸分の隙も逃さぬ必殺の刃を虎視眈々と構えている。自分の力量の上を行く相手と理解したシンには、そう感じ取れた。
「……まっすぐな振りだ。ロウや蘊奥を思い出させる奴だな」
かつてシシオウブレードを手に入れる為に師と仰いだムラタに、あくまで活人剣を問い聞かせたリシュウ・トウゴウ。
良くも悪くも純粋で、己れの信念を貫き、眩いまでに曇りなき素直な太刀を振っていたジャンク屋ロウ・ギュール。
ロウに自らの技を伝授し、彼の中に自分が伝えられた技を残し、死してなお後世の者たちの中で活きる道を見つけた蘊奥。
ただ殺人刀の道の中にこそ剣の道の光明を求めるムラタと相容れず、故に互いの輝きと暗さが濃くはっきりと理解できたあちらとこちらの剣客達。
新西暦の世界でははっきりと活人剣に決別を呈していたムラタも、死した後にCEの世界で出会った剣士たちとその生き方、信念に感ずる所があり、前の世界で情動に流されてなおムラタを打ち破ったヒュッケバインMk−Uのパイロットの事も思い出していた。
技量では自らが圧倒的に上。相手の機体は特機であるグルンガスト弐式。それでもムラタの刃は弐式の右腕を斬り落とし、次の太刀で決着は着く筈だった。だが、実際はどうか?
計都瞬獄剣を取り落とし、反撃の術はないかと思われた弐式はあろうことかその歯でシシオウブレードを噛み止めて砕き、零距離からのブーストナックルで無明を撃破して見せた。
火事場の馬鹿力というならまさしくそうだろう。ではなぜそんなものを発揮したのか? ヒュッケバインMk−Uに乗っていた時も弐式に乗っていた時も相手のパイロットが情動に流されていたのは手に取るように分かった。
感情に流されず揺らがぬ刃の方が敵とするなら手強かっただろう。だが、それでもムラタは敗れた。
自分の為では無く他人の為に振われた力と、その意志にだ。
ただ斬る。何の為に、何を成す為にではなく、信義も無く正義も無く剣の道を極めんが為人らしい生活の一切を捨てた筈の自分が、人間らしい感情に流されていた相手に負けたのだ。
剣の道とは、強さとは、何かを捨ててえるのではなく、迷いもしがらみも未練も、世俗の何もかもを抱えたままでなければ得られぬものなのか?
彼らの存在はムラタの中に新たな迷いを芽吹かせ、同時に模索すべき道を今一度振り返るべきではないかという考えを与えていた。
斬らずに剣の道を見出す事叶わず。されとてもただ斬るのみが剣の道に非ず。人を斬り、命を奪い血を啜るが求める道か。斬ってなお人を活かすが求めるべき道か。あるいは、その両方を極めてこそ真に剣の道は極るものなのか……。
ムラタの中の迷いが、シンの振う太刀を眩しく映していた。
ムラタの両眼が飛鳥の右肩に書かれた『飛鳥』の二文字を読み取り、機体の名前を覚える。
「……もう少し付き合ってもらうぞ、飛鳥のパイロット!」
「来るのか!?」
水面の上も歩けそうなほどに軽快な足さばき――というのも宇宙ではおかしな話ではあるが、無明は流れる川の様に淀みなく、飛鳥の懐にまで迫っていた。
――速い!? というより上手い! 要するに強い!!
驚愕がシンの思考を半分埋め尽くし、迎撃の意思が残りの半分を埋めた。
シンの闘志が不屈である事を表すかの様に、いまだにシシオウブレードの柄を握る飛鳥の左手ごと、シンが直感を頼りに新たな一刀を振りかぶった。
途端、機体越しにもコックピットに伝わる衝撃。
下手に目に頼らず、実戦と訓練、カルケリア・パルス・ティルゲムで増幅されイザヨイに鍛えられた“念”の力が、シンの命を救った。
片手で振った刃は飛鳥の首へ吸い込まれるように伸びた無明のシシオウブレードを弾き、一瞬だけ火花を散らして、機体ごと後方に弾かれた。
細かく短いスラスター制御で機体のバランスを保ち、迫る無明の左胴へ横一文字の斬撃を放つ。それを、無明の左手が逆手に抜き放ったアーマーシュナイダーを鍛え直したらしい小太刀が受けていた。
「悪くはないがな!」
「くっ、並のコーディネイター所じゃないぞ!」
飛鳥の一撃を受けたことで一瞬だけ動きを止めた無明だが、即座に右腕を引き絞り、刺突の構えに変え、シシオウブレードの切っ先は飛鳥の首へ向けられる。
受けるか――こちらの刃は既に抜き放った後。間に合わない。
ならば避けるか?――否。それを許すほど生ぬるい相手ならば初太刀で斬り捨てている。
イザヨイと生身で対峙した時の感覚に似ている。自分の勝利の可能性が限りなく小さいと分る諦めに似た感覚。
「だからって、負けられるもんか!」
「ぬっ!?」
シンの思考の中で何かが弾けたような感覚が巻き起こる。風に乗って大地に舞い落ちた種子が、ようやく芽吹いたようなそんな感覚。思考の全てがクリアになる。自分に迫る切っ先にどう対処すべきか。
五感の全てが鋭敏になり、直感が研ぎ澄まされた刃にも似て全方位の情報を脳に送りこむ。宇宙という無限にも等しい空間の只中で、シンの感覚は純度を高めていた。
スロットルレバーを押しこみ、飛鳥の全スラスター出力を最大値に引き上げ、ペダルを踏み込むのとほぼ同時に機体全面にマニュアルで展開面を調整したブレイクフィールドを形成する。
いわば零距離ソニックブレイカーと言った所か。
コンマ何秒ところではない、無明の刃が放たれる何十、何百分の一秒の世界ですべてやってのけた。飛鳥と無明のわずか数メートルの空隙に展開されたブレイクフィールドが、片手突きの構えにあった無明をほとんど零距離から弾き、飛鳥と無明の距離が一気に開く。
「ちい、零距離とは相性が悪いのかも知れんな」
死因が零距離からの一撃だった事への皮肉を自分で言い、ムラタは揺れるコックピットの中で飛鳥を見据えた。機械では感じ取れない生身の迫力が、飛鳥の機体から陽炎の様に立ち昇って見える。
なにかスイッチでも入ったのか、先程までとはまた違った雰囲気を滲ませる飛鳥に、ムラタの口元が楽しげに吊り上がった。子供が見たら引き付けを起こしそうな、熊の様な獣じみた笑みだった。
その癖、不思議な純粋さが覗いている。剣士としての性か、強いものを前に沸き立つ歓喜と興奮を抑えられようか。
「面白い。殺人刀、活人剣と悩み迷う以前に、やはり強者との“死合い”は心躍るわ!」
思えば、それが剣を手に取った始まりだったろうか。幼い日に振った竹刀の重さ。少しずつ、しかし確かに自分が強くなる実感は、喜びと同義だった。それが人を斬り、機体の油に塗れて道を模索するようになったのは何時からか。
ムラタは、かつての純粋な剣を振るう喜びに似たものを抱いていた。人を斬る事による自らの力の証明では無く、技量を競い合い高め合える事への喜びを。
無明が改めてシシオウブレードを大上段に構え直した。振り下ろされれば仮にPS装甲でさえも切り裂けるのではないかと戦慄が走るほどの剛にして鋭く速き一刀。
シンは鮮明に周囲の状況を把握できる今の自分に、多少驚いてはいたが、全神経はやはり眼前の無明への集中を要求し、意識は自然とそちらに向けられる。
かつて、オノゴロ島での防衛戦でも同じ感覚になった。ステラが撃墜されたと誤認してしまった時だ。あれは、紛れもなく純粋な怒りの果てにこの感覚になった。
なら、今は何だろう? 負けられないという気持ち。相手の技量への賞賛。劣る自分の不甲斐無さへの怒り。生への渇望。死への恐怖。
ありとあらゆる感情が混然となっている気がする。今は、怒りだけではない様々な感情がある。考えるよりも早く体が何をすべきか知っている――思考と肉体の動作はタイム・ラグ無く動いていた。
シシオウブレードを右手のみで握り直し、切っ先を前方下段に下げた。無明との間にシシオウブレードを挟む構えだ。
喉がひりつくように乾いている気がする。心臓の動悸が耳に痛い。呼吸は静かだ。まるで何も動いていないような錯覚にとらわれる程にシンの精神が研ぎ澄まされる。そのシンの状態を確認し、飛鳥に搭載されたシステムがわずかに動いた。
『シン・アスカノ念動力レベル3カラ4ヘ移行。カルケリア・パルス・ティルゲム第一リミッター“カイーナ”解除』
ブウゥンと低く唸るような駆動音が飛鳥の内部で響き、緑色のカメラアイの光が、一瞬だけシンの瞳と同じ赤い色に変わる。
「行くぞ!!」
シンの咆哮が届いたわけもないのに、ムラタは確かにその声に応えた。
「来い!!」
戦闘シーンの台詞はどんなんだろう、シンって
「この一撃受けてみるか!? サークルザンバー! 往くぞ!!」
ほんの数分前に交えた太刀を上回る気迫、苛烈さ、鋭さを纏い二振りの獅子王の太刀は今一度宇宙に交差する剣の軌跡を描いて閃いた。
飛鳥のシシオウブレードは、互いにフルブーストによって迫る無明の機体の胴下部へと向かい掬いあげるように跳ね上がった。そのまま行けば下腹から喉までを斬り裂く弧を描く。
これを受けるかかわすか。下方から神速で跳ね上がったシシオウブレードをモニターで捉え、ムラタは思考よりも早く肉体が動くのを感じ、すべてをそれに委ねた。ここまで自分のわがままに付いて来た肉体だ。ただ信ずるのみ。
「ぬおおおお!!」
飛鳥のシシオウブレードが無明の赤銅色の装甲へ薄紙を斬り裂く名刀の切れ味で入り込んだ。そのまま停滞する事無く機体内部構造を二つに斬り、鮮やかなまでの断面を残して刃が遂に抜ける。
蒼と紫と緋色の火花と電気の燐粉を零して切り裂かれた無明のパーツが暗黒に舞った。シンの飛鳥同様に斬り落とされたその左腕が。
「かわされ……!?」
「甘いわ! チェストオオ!!」
無明は片手一刀。されどその気迫の凄まじさは斬り飛ばされたはずの左腕がそこにあるかと錯覚するほどに凄まじく、シンの視界を埋めた。
胸に湧いたのは、ここで終わるのかという死への恐怖と、不思議な事にムラタの技量への感嘆の思いだった。
飛鳥の装甲表面を銀の軌跡が横断した。
「!!」
「……ふっ」
今度こそは、と覚悟を決めたシンの予想に反し、無明のシシオウブレードは飛鳥の右腕を付け根から斬り飛ばすにとどまっていた。
「何を!? 情けをかけるつもりか!」
「戯けた事をぬかすな小僧が。情けを侮辱と感じるなど、いっぱしの剣士を気取り追って。思いの他強かった貴様の気迫と一刀に打ち込みを流されたのよ」
情けを掛けられたのかと瞬時にそれまでの凪の様だった精神が、湯沸かし機に変わったシンが激昂してオープンチャンネルでムラタに怒鳴りこんだ。
ムラタは飛鳥のパイロットの幼い顔立ちと負けん気の強そうな声に、いささか驚きながらも、こんな戦乱の時代なら珍しくはないかと気を取り直す。
元々ムラタのいた新西暦の世界とて14,5の少年少女を戦場に駆り立てる部隊はいたし、機動兵器のパイロットとして養成する機関もあったのだ。戦争をする様な世界はどこもやる事はそう変わらぬという事の表れだろう。
「それに、貴様より楽しめそうな相手が来たのでな」
「え?」
唇に着いた血でも舐め取るような仕草で唇を舌で濡らし、無明は右手に握ったシシオウブレードを、いつのまにか接近し二人の戦いを見守っていたPTジンに向けた。コロニーKCG所属のあの腕の立つPTジンだ。
PTジンは手に握っていた重斬刀を自然体で構え、だらりと下げている。
戦場の空気を肌で感じる戦士としての本能が、シンにこのジンのパイロットが並ではない事を告げていた。機体越しにも感じ取れる雰囲気はむしろ穏やかで、他者を傷つける事など知らぬように思える。
だが、その奥深い所に鋭い刃を隠し持っているのだと、頭の中で自分と同じ声が警鐘を鳴らしていた。
「ふふん。この小僧もなかなかの使い手だったが、貴様は更にその上を行くだろうな?」
「いやいや、貴方が剣を引いてくださるなら、私も剣を引きますよ?」
ムラタの声にこたえたのは、丁寧な物言いの穏やかそうな男の声だった。若くはないが、そう年を取っているようでもなさそうだ。温厚な性格が聞き取れる声だったが、ムラタの感じ取った気配はそれだけではない。
ゼンガー・ゾンボルトやリシュウ・トウゴウに負けず劣らぬ凄腕の剣士。
「おれが引けば貴様も引くと言うのなら、尚更引くわけには行かぬわ。藪蛇だったな」
「その様でしたね。しかし、貴方の機体は片腕です。それでは本来の力を発揮できないのではないですか?」
「要らぬ世話よ。貴様のそのジンとこの無明の性能の差を考えればまだ足りぬわ。どうあっても死合ってもらうぞ。だが、その前に尚を聞いておくか、おれはムラタ。人機斬をもって剣の道の光明を求る外道よ」
「言葉ほどには道を外れておられぬように見受けましたが……。とはいえ、名乗っていただいた以上、こちらも返さねば礼儀に外れてしまいますからね。ゼオルート=ザン=ゼノサキス。以後お見知り置きを」
「ゼオルート=ザン=ゼノサキス。その名前、冥府の底まで覚え置くぞ。……では、いざ!」
ムラタの無明が片手に握り直したシシオウブレードを右後方に置く。左半身を前面に出し、右手に握った刀身を機体で隠している。ゼオルートと名乗った男の駆るPTジンは、重斬刀の柄に左手を添えていた。柄尻を鋼の五指が包む。
シンは呼吸も怒りも忘れて、目の前の剣豪達の対峙に見入っていた。この少年も既に剣士としての性と戦士としての血を持ちつつあった。
無明の両肩のスラスターが火を噴いた。PTジンはほんの一瞬だけバックパックのスラスターを動かした。
ムラタは、片腕になったことで変わった機体の重量バランスをOSが立て直すのを待たず、生身の感覚に任せて無明を奔らせる。
火花が散る。散る。散る。散る。
両機の中間の暗黒に鮮やかな火花が咲き誇り、一瞬の輝きだけを残して無数に生まれて消えてゆく。
PTジンの胴、首、四肢の付け根に向かい流星の様に放たれる斬撃を重さで斬る重斬刀はあらかじめ太刀筋を予測していたかの如く受け、返す刃も等しく無明の五体にたった一つの刃とは思えぬほどに多種多様の斬撃へと変わり襲いかかっていた。
実体の無い風を捉える事が出来ないように、シシオウブレードはPTジンの機体を掠める事はなく、返礼として煌く重斬刀は全てを薙ぎ払う暴風の様に容赦なく、あるいは疾風の如く無明へと向かい振われた。
機体の性能差は覆す事が不可能な程に無明に分がある。飛鳥との戦闘によって機体関節部などへの負荷、左腕の損失と悪条件は重なっているが、それでもやはりPTジンとでは埋めえぬ差があった。
それをカバーしているのはゼオルートの技量であったが、それでもムラタの技量もまた達人・名人の域にある。互いに卓越した技量の持ち主故に機体性能をカタログスペック以上に引き出し、持てる技量のすべてで剣を振るう。
「ぬええいいいりゃあああ!」
「っ!」
対峙する者全てを斬り捨てるとばかりに猛るムラタ。対してゼオルートは戦いを始める前と変わらぬ静謐な威圧感とでも言うべきものを纏ったままムラタの連撃と渡り合い続けていた。
「……」
シンは、その戦いをただ見守るだけだった。自分の立ち入る余地の無い高次元の戦いだと、理解させられたのだ。
ただ、悔しいと、心から思った。
いつか、あの戦いの世界へと辿り着いてみせる。悔しさに歯を固く食い縛り、操縦桿を握りしめながら、シンは両腕を失った飛鳥の中で二人の戦いを見続けるしかなかった。
「ぬん!」
シシオウブレードが遂にPTジンを捕らえ。左肩から胴体上部を裂いて内部構造が露出する。
「機体の性能の差が悔やまれるな。そのようなジンでなければ、貴様との死合いもより有意義なものであったろうに」
本心らしいムラタの言葉に、ゼオルートはPTジンのコックピットで薄く笑みを浮かべた。
「貴方にとってはそうかもしれませんね。ですが私は私の仕事を終えたので、それほど気にしていませんよ」
「何?」
ゼオルートの言葉が意味する所をムラタよりも早くシンが悟った。コロニーの片端で核爆発と思しき反応が起き、クライ・ウルブズとユーラシア連邦の部隊の目の前で、全長三十キロメートルを越す巨大質量が徐々に加速し始めたのだ。
タマハガネの付近で、近づいてくるストライクダガーにミサイル・砲弾の雨を浴びせかけていたラーズアングリフ改とランドグリーズ改のコックピットの中で、ユウとカーラもその様子を見ていた。
Fソリッドカノンのトリガーを引き絞る指を止め、思わずユウはそのある種壮大な発想のもとに行われた行動に目を見張っていた。
「コロニーそのものを宇宙船に改造したのか……。非常識な。いや、だが自給の出来る宇宙船を手っ取り早く作るためにはむしろ合理的か? いや、だが」
「うわ、すごいすごい! コロニーが動いたよ、ユウ。どんどん加速している。どこまで行くんだろうね? あそこに居る人達が安心して暮らせる世界が、この宇宙のどこかにあるといいけど」
「……そんな世界がっても、他の人間からは自分達の星から逃げた、と言われるかも知れんぞ?」
「そうかもね。でも地球を出て行ったていうのは確かだけどさ、いつかは親の所から子供は巣立つよ。多分、人間もその内地球っていうお母さんの所から巣立つんじゃないかな? あの人達はそれが他の人たちより早かっただけかも」
「……お前にしてはまともな意見だな」
「ひっどいユウ〜。私の事どう思ってるの。あ、でもでも、それだけ私の事注目しているのかな〜?」
(耐えろ、ユウキ・ジェグナン。ここでこいつを調子に乗せればペースを乱される。あの時もあの時もあの時も……ついうっかりと口を滑らせたためにこいつに言いくるめられてしまったではないか)
「! カーラ、二時方向に熱源! 撃ち落とせ!!」
「え!? あ、うん……って、あれ戦艦の残骸だよ! 聞いてるユウ、ユウってば!」
「狙いは外さん」
「あーー、無視してる! なに、嘘ついたの? ふーん、ユウはそういう趣味があるんだ。パートナーを放っておいて焦らすのが趣味なんだあ。へーふーんほー? みんなに言い振らそー」
「耐えろ耐えろ耐えろ。何も聞こえてない。聞こえていないのだ」
とっくにペースを崩されてはいたが、それでもユウはFソリッドカノンや腰部に追加で装備した160mmビームキャノンの狙いは決して外さなかった。
カーラもそんなパートナーの様子をはやしたてつつも、きっかりリニアミサイルランチャーでストライクダガーを牽制し
「行っけえ、ステルスブーメラン!」
光学迷彩によって視覚による近くが困難になるステルスブーメランを投擲し、ストライクダガーを胴から両断した。パイロット歴はまだシンと並んで浅いながらも、天性のセンスとそれ以外の要因でもあるのか、カーラもすでにエースクラスの腕前を持っていた。
前述した飛鳥に搭載されているカルケリア・パルス・ティルゲムに段階的にリミッターを設けたモノがDCのパイロットの内数名の機体に搭載されている。
ユウとカーラのラーズアングリフ改とランドグリーズ改。それにタスクとレオナにも念動力と呼ばれる特異な素養が認められ、その増幅装置でもあるカルケリア・パルス・ティルゲムが装備され、各自の覚醒レベルに合わせてシステムが起動する仕組みになっている。
これらの装備と機体の高性能、搭乗者の力量も相まりクライ・ウルブズの戦闘能力は目を見張るレベルで纏まっていた。
コロニーが動き出す様子をタマハガネの艦橋で見ていたエペソが、レクマンティーの顔を思い浮かべてしてやられたといったように微苦笑していた。
「なるほどな。体のいい時間稼ぎに使われた形か。完成間近とは思っていたが、既に完成していた、か。……連合艦隊の動きはどうか?」
「あ、はい。MS隊、各艦艇撤退しつつあります。コロニーを追う様子はありません」
「こちらが与えた被害もあるにせよ、追う利は無しと見て取ったか。MS各機に、修理の必要な機体以外はそのまま第二種警戒態勢を取るよう通達。周囲の警戒を怠るな」
「というわけで、KCGは無事出発出来たので、私の役目はここまで、という事です」
「ふん。あくまでおれの足止めが狙いと言う事か」
「ええ。貴方と、あの光の盾を持った機体が一番手強い相手の様でしたので、余計な犠牲を防ぐために私が相手をさせていただきました」
これではたしてムラタが剣を引くか、ゼオルートにも確信はなかったが、今は目的を果たせた事の達成感をわずかばかり噛み締めたい気分だった。こちらに来てから初めての強敵との戦いに、久しぶりに神経が緊張を強いられていた。
ムラタがどう出るか、シンもまた固唾をのみ込んで待った。
「どうにも興が醒めたわ。違約金を払う気にもなれぬしな。ゼオルート=ザン=ゼノサキス。この勝負預けるぞ」
「ええ。そうして頂けると助かりますよ」
「剣鬼の如き腕前の癖に腰の低い奴め。まあいい。決着を着ける日を楽しみにさせてもらう」
鞘に刃を納め、母艦へ帰役しようとする無明の背を見つめ、シンは今一度敗北の悔しさを胸に焼き付けた。
――おれは名前を覚える価値も無いというのか!?
「……おい、小僧」
そんなシンは、ふと思い出したようにムラタは呼んだ。好感情など持てるはずもないシンはぶっきらぼうに答えた。ここら辺は生来の負けず嫌いの性格と幼さがさせた反応だ。
「なんだよ」
「貴様、名は何と言う?」
「! ……シン、シン・アスカだ!」
「シンか。貴様筋は良い。鍛錬を怠るなよ、腕を上げたらまた斬ってくれるわ」
「馬鹿にするな! 今度戦う時は絶対に負けるもんか!」
「くくっ、青い小僧よな。その分伸びるかもしれぬがな」
愉快そうに含み笑い、無明は一筋の彗星になってゼオルートとシンを置き去りにして去っていった。ステラとスティングと死闘を繰り広げていたカナードのハイペリオンも、アルミューレ・リュミエールの稼働限界が来た事で形勢の不利を判断して後退している。
そろそろと溜めこんでいた息を吐き出し、シンは飛鳥の傍らに来たPTジンに連絡を繋いだ。
「あの、助けてくれてありがとうございました」
「いえ、私が勝手にした事ですから気にしなくていいですよ」
答える声と一緒にゼオルートの顔が、飛鳥のモニターに映った。金髪の、柔和な表情の似合う三十代の男性だ。鼻の上にちょこんと乗ったメガネが妙な愛嬌を醸し出していた。イザヨイに似た雰囲気に、思わずシンの強張っていた神経もほぐれた。
浮かべている穏やかな笑みとあいまって先程までの高次元の剣戟戦闘を繰り広げた人物とは信じ難い。
「でも、いいんですか? コロニー行っちゃいましたよ」
「ええ、それは構いませんよ。元々私と殿下……ではなくてフェイルロード達はたまたま寄った客人でしたからね。置いて行かれると言うよりも彼らの旅立ちを見送ると言った方が正しいのです」
言われてみて確認してみると、確かにあの巨大な二機の兵器はその場に留まっている。他にも一機の小型シャトルがあり、コロニー側に地球圏に残ることを希望した者もいたらしい。
「すいませんが、着艦させてもらっても構いませんか? お礼と言っては何ですが、貴方の機体は私が曳航しましょう」
「あ、えっと、分かりました。隊長と艦長にはおれから連絡します」
「よろしくお願いします」
丁寧にPTジンでお辞儀するという真似をやってのけたゼオルートのPTジンに続き、シンの飛鳥の惨状に気付いたスティングやステラ達も近づいて来た。シシオウブレードを握ったまま斬り飛ばされた右腕は、ジャン・キャリーが回収してくれた様だ。
シャトルとデュラクシール、ヴァイクルもタマハガネに着艦を希望し、エペソが簡単にそれを了承した為、これといっていざこざが起きる事も無く機体の回収は無事終えられた。
もともとフェイル達はKCGが出立したなら、別行動を取る予定であったらしいが、今回はたまたまクライ・ウルブズが来た事もあり、便乗する形で同行を求める事を話し合って決めていたそうだ。
斬り飛ばされた両腕とシシオウブレードも無事回収し、タマハガネの格納庫に戻ったシンは、ゼオルートに改めて礼を告げ、格納庫の片隅でメンテナンスベッドに固定されているデュラクシールとヴァイクルに目を向けた。
スペースノア級はもともと対異星人戦闘を考慮した超高性能戦闘母艦であると同時に、他星系への脱出用の移民船という反対の目的を有する戦艦だ。搭載できる機動兵器の数、人員は可能な限り多く取られている。
現在CEで建造したタマハガネとアカハガネ共にスーパーロボットの搭載も考慮して建造されている為に、艦首モジュール他船体部分の格納庫もかなり巨大なものになっているから、五十メートル、七十メートル級のデュラクシールとヴァイクルも無事に搭載する事が出来た。
ワイヤーに足を掛けてデュラクシールとヴァイクルから降り立つ人影に気づき、シンはその人物をまじまじと見た。
典雅な顔立ちにゆるくウェーブしたエメラルドの様に輝く髪のフェイルロードと、三十代半ばくらいの女性だ。東洋系の血が入っている顔立ちをしており、美女と呼んで差支えはないだろう。
「男性がフェイルロード=グラン=ビルセイア、女性がジェニファー・フォンダと言います。まあ、傭兵みたいなものと思ってください」
シンの後ろから、フェイル達の所に向かうついでにゼオルートが彼らの名前を教えてくれた。にしても傭兵が持つにしては明らかに怪しい、強力すぎる兵器だ。
最もその強力な兵器がなぜあれほど破損しているのか、という疑問もあるが、これまでの交戦によるものと言われればそれまでだ。そこらへんは艦長や隊長が聞きだすだろうと、シンはあまり深く考えない事にした。
それよりも、完膚なきまでに敗北したムラタに対する雪辱を晴らす思いが強かった。幸い、シン自身が怪我を負う事はなかったが、引き換えに飛鳥は両腕を落とされた無残な姿を晒している。
ムラタの気分しだいで命を失うような状況にまで追い込まれてしまったのだ。ステラがいの一番に、次いでステラ達もシンが怪我をしないか心配して声をかけてくるが、心ここにないシンはああ、とか大丈夫と虚ろに答えるきりだった。
声ばかりは虚ろだが、その胸で燃えるのは良くも悪くも純粋な負けず嫌いの性格ゆえの悔しさだ。要するに、シン・アスカという少年はどうあがいても変わらない根っこの所で、負けず嫌いなのだ。
おもむろにシンは思い切り両手で頬を張り、気合いを入れた。
「うおおっし!! 次は絶対に勝あああつ!!!」
「???」
周りのステラや整備員達が、わけが分からないという顔でそんなシンを見ていた。一人、熱血スポ根をやっているシンは、そんな空気に気付いてはいなかった。ま、そこが彼のいい所だろう。
KCGから離れた人々は一時DCの保護下に置かれ、その後各人で進む道を選ぶまで見を寄せる事になり、傭兵と言う体裁のフェイルとゼオルート、ジェニファーはエペソ直々に呼び出されて艦長室に集められていた。
フェイルやゼオルートには気負った様子がないが、一人ジェニファーだけがエペソの顔を見た瞬間から顔を青褪めさせていた。その様子にはフェイル達も訝しげな顔をしていたが、機先を制したのはエペソであった。
「ジェニファー・フォンダ。イングラム・プリスケンがバルマーに連れ去った地球人だったな? 確か、アタッド・シャムランという名に変えられたと記憶している」
「……! やはり、バルマー星の」
「ジェニファー? エペソ一佐、貴方とジェニファーは?」
涼やかな目元を吊り上げ、厳しい目線で睨むフェイルにエペソは大した事ではないと言うように口を開いた。
「余も貴公らと同じ境遇と言う事だ。貴公らも元の世界で死を迎え、目を覚ました時にあはこのコズミック・イラの世界に居たのであろう?」
「貴方も死人ですか」
合点が行ったとゼオルートも頷きながらエペソの言葉を聞いていた。確かに、ゼオルートとフェイルロードは共に死人だ。地球内部の空洞の異空間に存在するラ・ギアス――真の世界、真の大地という意味の世界にあるラングラン王国。
そこで二人は生まれ、そして死んだ。
ゼオルートは剣皇の通り名で知られるラ・ギアス屈指の剣士であり、ラングランの王都が反逆の徒に襲撃された際に、一矢報いる代わりに命を落とした。
幼い娘と養子とした少年を残したまま逝く事に、心残りがないか、聞かれればないとは言い切れなかったが、それでも息子の成長を信じる事は出来た。故に心残りはないと思い目を開けてみれば、コズミック・イラの世界だったというわけである。
フェイルはゼオルートが仕えていたラングラン王国の第一王子であり、隣国との戦争に陥り、一時壊滅状態にまで追い込められた王国を建て直し、その後ラングラン王国が誇る魔装機神と地上から召喚された有志達により見事侵略を退けた後、
デュラクシールという強大な力を手にした。
フェイルの妹セニアが地上の機動兵器を参考に造り上げたデュラクシールの力は凄まじく、その力はフェイルを惑わし彼に野心を芽吹かせる事になってしまった。ラングラン王国の再建に留まらず、フェイルはラ・ギアスの武力による統一を目指したのだ。
結局はそれを良しとせぬ風の魔装機神サイバスターの操者マサキ・アンドーとその仲間である、地上から召喚された人々によってフェイルは討たれた。
己れを止めてくれたマサキ達への感謝とマサキならば、あらゆる権力・しがらみに縛られずに、ラ・ギアスだけではなく世界の平穏を守る魔装機神の操者としての使命を果たしてくれると確信し、死んだのだ。
自分が死んだ後の世界を託せる者達との戦いの果てに辿り着いたのが、また戦乱のある世界であったのはいささか皮肉ではあった。元々フェイルの体は、ラングラン王国の王位継承の儀式をクリアするために無理な修行と投薬などによって酷使され、限界が近い。
マサキ達と闘った時でさえ既に長く持って半年程度しか時間は残されていなかった。今も、こうしてエペソの前に居る間にも尋常ではない痛みに苛まれている。それを表に出さないのは、ひとえに人並ならぬフェイルの精神力の賜物だ。
CE世界の医療技術でもフェイルの体を完治させる事は出来なかったが、多少なりとも身体への負担を減らし、通常生活を送る程度には問題ない程度に体は動く。それでも、フェイルの命は一年も保たないだろう。
死亡した時期は異なるが、生を受けた世界を同じくする者達は惹かれ合うのか、ゼオルートとフェイルはほとんど同じ時期にこちらの世界に現れ、たまたまKCGの人々の世話になっていたのだ。
なおゼオルートがPTジンを操縦できたのは彼自身の常人の域を超えた身体能力とKCGにいたコーディネイターのコンピュータープログラマーに頼んで調整してもらったOSのお陰だ。
ジェニファーはエペソの言通り地球の人間であり、ビアン達と同じ新西暦世界の人間だ。ただし、エペソとビアンの世界が違うように、厳密にいえばエペソが情報として知っているジェニファーと今目の前に居るジェニファーは別の人間だ。実にややこしい。
ジェニファーは新西暦世界で地球を統治する地球連邦の特脳研と呼ばれる研究機関の被検体であった。ユウやレオナ達がその片鱗を指し示す念動力の持ち主であり、その能力に目を着けたバルマー側のスパイが事故に見せかけて拉致し、記憶を操作し洗脳した。
その洗脳されたジェニファーが、エペソが名を挙げたアダット・シャムランであり、ビアン側の新西暦世界において死亡した女性だった。
その死の寸前に自らが地球人であった事を思い出したジェニファーは、ぼろぼろのヴァイクルと共に宇宙の闇を漂い、そこをとあるジャンク屋に助けられた。
アタッドを名乗っていた頃の記憶に苦しむジェニファーは、戦いから離れる事を望み、戦乱の続く地球からの脱出を計画していたKCGに辿り着き、KCGを狙って襲い来る連合の部隊と、戦うのはこれが最後と覚悟をきめて闘っていたのだ。
そのKCGも既に地球圏を離れる為の旅に出てしまった。本来ならジェニファーのその度に同行するはずだったが、すぐ傍に迫っていた戦火に意を決し、KCGを守る為にヴァイクルで出撃した。
しかし、まさか、その決意の果てに自らをさらったバルマーの人間がいるとは。ジェニファーにとっては逃れた筈の悪夢が再び目の前に現れた様なものだった。
ジェニファーの様子からバルマーで行われたであろう処置を考え、無理もないとエペソは嘆息した。
レビ・トーラーと名付けられた少女もそうだったが、念動力者の調整を行ったエツィーラ・トーラーは、かつては敬虔な神官であったが、今では廃頽的な快楽主義者に変わっている。そんなエツィーラが拉致された地球人をどう扱ったか……。
それがどのようなものかはあまり想像しても楽しいものではない。エペソ自身もバルマーの臣民を第一とする強固な選民思想の主ではあるが、武人的な性格として調整されている為、度を外れて人倫を踏み躙る真似には賛同しかねるのだ。
「安心するがよい。この宇宙にバルマーの人間は今の所余しかおらぬ。そして余は貴公に危害を加える気はない。そう簡単に信じる事は出来ぬであろうが。故にフェイルロード、ゼオルート、貴公らもそのように顔を厳しいものにするでない」
「失礼。どうにもジェニファーの様子が気にかかったものですから」
「大丈夫か? ジェニファー」
「……ええ。大丈夫よ、フェイル、ゼオルート」
「さて早速だが、そこなジェニファーはともかく貴公らの素姓について聞かせてもらおうか。この世界を訪れた死人達はすべからく元の世界を同じくしているわけではない。
数多の可能性の世界から、何を要因としてかは分からぬが死人が集っている。要らぬ闘いやいざこざを回避するためにも情報はあるに越した事はないのだ」
支援!
しえん
規制されちゃったかな……
エペソがまずは言い出したものとしての誠意の見せ方としてか、彼のいた新西暦世界について語った。DC、ゼ・バルマリイ帝国、メルトランディ、ゼントラーディ、STMC、ミケーネ帝国や恐竜帝国を始めとする地下勢力。
更にはガンエデンと呼ばれる太古の惑星防衛システム、別の銀河を納めるバッフクラン、異世界バイストン=ウェル、異次元からの侵略者ムゲ・ゾルバトス帝国、バロータ星系から復活したプロトデビルン――。
その中でフェイルとゼオルートが反応したのは、風の魔装機神サイバスターと、グランゾンの開発者にしてパイロットでもあるシュウ・シラカワだった。
「そうか……。世界は違ってもマサキは魔装機神の操者としての使命を果たしたのか。しかしクリストフ、いやシュウ・シラカワと呼ぶべきか――彼もこの世界に居るのか」
エペソの世界においても世界の為に戦ったマサキとサイバスターの話は、フェイルとゼオルートにとって例え、彼らの知るマサキではないにせよ誇らしい事だった。
フェイルにとってマサキは気心の知れた戦友であり、仲間であり、そして誰よりも信ずる男だ。ゼオルートにとっても、マサキはラ・ギアスに召喚されたばかりの頃からの付き合いであり、また自慢できる養子でもあった。
だが、マサキの次に出てきた名前にフェイルとゼオルートは揃って険しい表情を顔に乗せた。かつてラングランの王都でゼオルートが対峙し命と引き換えにして撃退したのがシュウであり、フェイルにとっては従兄弟に当たる人物なのだ。
シュウ・シラカワというのはプライベート・ネームであり、本来の名はクリストフという。もっともシュウ自身地上人である母と同じ地上の名であるシュウ・シラカワを気に入っている。
かつてラ・ギアスを滅ぼすと予言された魔神。その復活に関わるのがシュウであると、彼らは知っていた。そのシュウがこの世界に。二人の胸に不安の暗雲が立ち込めても無理はない。
「ビアンの話を聞く限りは、決して危険なだけの人物ではないという事だがな。記憶を失っているというのも気に掛かる。余の世界においては既に死亡している人物だが、貴公らの世界では生きているというし……」
「クリストフは自らを邪神の使徒だと語った。この世界のクリストフが私の知る彼と同じ人物かどうかは分からないが、警戒すべき相手である事には変わらないだろう。少なくともクリストフの真意が分かるまでは」
「であろうな。さて、貴公らはこれよりどうするつもりなのだ? このまま船を去ると言うなら弾薬の補給位はしても構わぬし、KCGを降りた者達と行動を共にすると言うならアメノミハシラまで同道するがよい」
エペソの言葉に三人は互いに目線を交わし合い、事前に話し合っていた通りに話を進める事にした。
「いや、私達はこのまま貴方方に協力する」
「ほう? 何故に」
「ディバイン・クルセイダーズの掲げる、地球圏の武力統一による軍事国家の樹立。しかし、その真の目的はそれではない。地球圏に対しコーディネイター、ナチュラルを問わぬ脅威となる事。そしてそれが意味する所は……」
「ふっ、もっともこの世界の外宇宙に脅威があればそれに立ち向かう為の軍事国家としての役割こそが重要となろうがな」
「……だが、今の真意は世界に対し痛みを強いる試練となる事。それがDC総帥ビアン・ゾルダークの理念であると言うなら、私もその痛みとなろう。かつて私もまた力に溺れて道を誤った。DCがそうならぬよう内から見守らせもらおう」
ぎしっと背もたれに体重を預けてエペソはフェイルとゼオルートを見た。二人の眼には強い意志の光がある。本来の自分達の世界とは異なる世界に対し、彼らが追うべき責務など無いだろうに。
「我らDCを監視する存在となるつもりか……分かった。貴公らの心構えは余からビアンに伝えるとしよう。余もまたこの地球の人間達に問いを投げかけている者。貴公らの考えには興味がある」
「ところでエペソ艦長。ジェニファーの事だが……」
「分かっている。彼女を戦わせるなというのであろう? それはビアンも望むまいよ。ジェニファー・フォンダ。汝はアメノミハシラでこの艦を降りるがよい。
他国に行くもよし。DCの庇護を受けるもよし。どちらにせよ、もはや戦いの場に出る必要はない」
エペソに面と向かれて言われたジェニファーは、その言葉を一から十まで信じる事は出来ないようだったが、それでも安堵の色を浮かべる位はした。もともと民間の被検体であり、戦争を好むような女性ではないのだろう。
こうして、フェイルロードとゼオルートは獅子身中の虫にも似た形でDCに協力する事になり、ジェニファーはこの世界でようやく戦いの枷から離れる事が許されたのだった。
支援?
「時に、あのコロニー、KCGとは何の略なのだ?」
エペソの素朴な疑問に、ゼオルートが答えた。
「キング・クリムゾン・グローリーですよ」
フェイルロード=グラン=ビルセイアが仲間になりました。
ゼオルート=ザン=ゼノサキスが仲間になりました。
ジェニファー・フォンダがNPCキャラとして同行します。
デュラクシール(半壊)を手に入れました。
ヴァイクル(半壊)を手に入れました。
PTジン・ゼオルート専用機を手に入れました。
ここまでです。なんだかいろいろと期待を悪い方向で裏切ってしまったような気がして申し訳ないです。
レクマンティーは魔神国から名前を拝借しました。名前って、考えるの難しいですね。もう出さないと言っておきながらいきなりの小ネタ、書いてから気づきました。
思いっきり嘘ついてんじゃん、自分。ほんとにすいません。
そしてマスクメロンGJ! メロンの呪縛からは逃れられないなあ、シン。若いし仕方ないかな?
キョウスケには疑われてるけど、それに気づくほど繊細な神経はしてないかな? ユウ以外にもライバルキャラが出てくるのか楽しみですね!
139 :
126:2007/10/18(木) 00:44:19 ID:???
なんと言うミス、吊ってくる
GJ!
ヴァイクルには誰が……ってエペソなのか、ひょっとしてw
乙
ゼオルートだったのかー
考えてみれば原作だと蘊奥はこの時点でもう死んでるはずだもんな
まあ既に歴史が変わってるから蘊奥も生きてる可能性は十分あるっちゃあるが
つかよく読み返してみたら既に死んでるとはっきり書いてあったか…
それはともかく、飛鳥が腕斬られてもなおシシオウブレード握ってるところで、シグルイを思い出した
>ビアンSEED
ムラタも何か成長しているな
ウォーダンの前座とばかり思っていたが、これは手強そうだ
そしてそのムラタとPTジンで戦えるゼオルート強す
少なくとも無印時代なら乗り換え要らないぐらいだなこれは
デスティニー時代になると流石にキツそうだが、その場合ギオラストっぽい機体になるんだろうか
>マスクメロン
ミーアの乳にすら全く興味を示さなかったシンをして、ここまで虜にするとは恐るべき魔性の果実・・・!
GJ!
フェイルは健康体じゃないのか、デュラクシールはいったい誰が乗り継ぐんだろ?
プロトジンはゼオルートだったか!相変わらず良い人オーラ出まくりなんだろうな〜。
シン、念動力レベル4に達したか
このペースだと種死時代頃には9に達しそうだな
そしてリミッターの名前w
GJでした!
そうか、爺さん死んでたか〜。
でも、やっぱりムラタと面識はあったか。
数少ない剣士同士、惹かれあうという事だろうか…。
今のシンなら既にキラアスには余裕で勝てそうだな
アスランは声的にベルゲルミル化したジャスティスに乗ってきます
イージス自爆→サイボーグ化→グレイターキンU
>>149 凸がメギボス化する訳か、ビアンSEED氏の凸なら大丈夫かな?
そういえば、ゲストやインスペクターの連中も来る可能性あるんだな。
イージス自爆→サイボーグ化→グレイターキンU→ナノマシンに取り込まれる
>>147 そりゃ将来的にウォーダンに挑もうという男が、今のキラ凸に勝てないようじゃ話にならんでしょ
キラと凸はラクスに呆れられてたからなぁ……
まずはククルとナギサ姉さんの二人の壁に挑むのはどうだろうか。
>>153 さすがにククル姐さんはまだ駄目だろ?あのゼンガーとガチにやれる人なんて?
マガルガが無けりゃまた別だが。今、飛鳥で挑んだりしてみろ?黄泉路を惑う事になるぞ。
まずは、カーウェイかオウカ姉さん或いはキラ凸コンビ、に挑んで一人で勝ってからでしょ。
>>154 カーウェイはカーウェイで高い壁だろ。
戦技教導隊の元締めだった男だぜ?
どうして誰もカーウァイだって突っ込まないんだ!
157 :
154:2007/10/18(木) 23:09:56 ID:???
>>155 しまったそうだったしかも乗ってのがただのゲシュペンストじゃないんだったorz
既にウォーダン・ククル>カーウェイ>>越えられない壁>>シン>>>キラ凸
って感じだと見てる
現段階で飛鳥と自由正義の機体性能の差が無いように見えるし
話を面白くするならキラ凸にも大幅なテコ入れが必要、か
凸は正統派の機体に拘らなくていいところが自由度高いと思う
アイツは間違い無くゲテモノ機体の方が輝く
>>159 これだけ多士済々だと乗り越える壁にも事欠かないから不要じゃねーのw
原作と違って何の因縁もないんだから
第7話「SEEDを持つ者達の行方」
新型機ランドグリーズを駆るユウキが率いたDC残党部隊を撃退したイルムガルド・カザハラ、リュウセイ・ダテ、ヴィレッタ・プリスケンは
レイカーの命によりヴィレッタを除いてシンを含めたATXチーム、新生教導隊を乗せたハガネに配属されることとなった。
そのため現在彼らの機体はハガネに搬入されることとなり、シン達はその搬入現場に居合わせていた。
「あれが…特機か…」
紅い瞳に映っているのは、キャリアーに乗せられてハガネに搬入されている全体が青と黄色のカラーリングを持ち
搬入作業で騒がしい声が格納庫内に響き渡る中でも一際力強い存在感を示し続けている、
超闘志との異名をとる特機、テスラライヒ研究所所長ジョナサン・カザハラが作り出したグルンガストである。
星型の頭部や背部に必殺技用の剣を備え、戦車と飛行機に変形する、というロボットアニメに出てくる
スーパーロボットをそのまま本物のロボットとして作ってしまったような機体で、
シンも童心に帰って目の前にそびえ立つスーパーロボットに心を奪われていたが、
同時にその巨体は彼の心にしまわれた機体のことを思い出させてしまっていた。
デストロイガンダム。連合軍製の可変型の機体でザフト軍を幾度となく苦しめただけでなく、
自分が守ると約束した少女、ステラ・ルーシェがその真意に反して搭乗することを強いられていた機体である。
(もしこいつがあればステラを助けられたかもな…いや、やめよう)
「特機を見るのは初めてか?」
聞きなれない声がした方向に目をやると、青く長い髪を背中のあたりまで伸ばした男が笑みを浮かべながら近付いてきていた。
ちなみにイルムの言うとおりシンが特機、つまりスーパーロボットを見るのはアンジュルグを除けば初めてである。
運悪くゼンガーの零式はシンが意識を取り戻す直前にテスラ研に送られてしまっていたのであった。
「お前さん、シン・アスカだろ。ビルトシュバインの」
「は、はあ…あなたは?」
「俺はイルムガルド・カザハラ。あのグルンガストのパイロットだ。またハガネに世話になることになったんでよろしくな」
「はい、よろしくお願いします、イルム中尉」
「どうだい、特機を見た感想は?」
「こう…なんかすごそうって感じです」
「ハハハ!確かに威圧感はあるからな。グルンと回ってガスッと変形ってのはダテじゃない」
「ガスッと変形って…ところであの人もハガネに来るっていう人ですか?」
シンが指さした先にはアンジュルグの脚部にしがみつき、
凄まじい頬擦りをしながら恍惚とした顔をしている1人の男がいた。
イルムはその男を見ると掌で顔を覆い、大きなため息をつく。
そしてその男は自分に視線が集まっていることに気付くとイルムにむけて大声をあげて話しかけてきた。
「悪りいイルム中尉、こいつとのツーショット写真撮ってくれよ!」
「相変わらず守備範囲広いな、あいつ…」
イルムは呟くように言うとアンジュルグに全身を絡みつかせている男の方へ行き、
その男をアンジュルグから引き剥がしてシンの下に連れてきた。
「シン、紹介する。こいつはアルブレードのパイロットで、本来はライと同じSRXチームのリュウセイ・ダテだ」
「ビルトシュバインのテストしてるんだって?ライから聞いてるぜ。リュウセイ・ダテだ、よろしく!」
「シン・アスカです。これからよろしくお願いします、リュウセイ少尉」
「リュウセイでいいぜ。年も近いみたいだしな」
「じ、じゃあ、よろしく、リュウセイ」
「ところでシン、お前さんマオ・インダストリーのテストパイロットだろ。リンは元気にしてたか?」
「リン?」
イルムの問いにシンの言葉が詰まった。それと同時にイルムの目つきが一瞬鋭く輝いた。
「あぁ、知らんならいいぜ。すまんな」
「いえ、こっちこそすいません」
「それよりあのアンジュルグって機体のパイロットって誰かわかるか?なんとしてもあれと並んでツーショット写真か撮りたいんだよ。
できれば背中の羽を広げさせて手の上に乗って『降臨、満を持して…』って…」
「はいはい、残念ながらありゃイスルギの機体らしいから多分難しいぜ」
「そこを何とかなら…ねえよな、やっぱし」
シンとイルムの顔を交互に見た後にトホホ、と言うような顔をしてリュウセイが肩をがっくりと落とす。
「元気出してくれよ、一応ラミアさんに答えは聞いてみるからさ」
「そういやそのラミアって子はどんな子なんだ?」
不要なまでに目つきをギラギラさせたイルムがシンに問い詰める。
さきほどまでのリュウセイと同じようにイルムのテンションが急上昇していくのがわかった。
シンはシンでラミアのことをどう説明しようか考えているが、どうしても頭に浮かぶのはその胸部にたわわに実り、
極上の甘い蜜を蓄えていそうな2つのマスクメロンばかりであったのでなかなか説明の言葉が出てこない。
「えっと…言葉遣いが特徴的なお嬢様みたいな人ですかね?」
「ほほ〜う、いいとこの令嬢タイプか。なかなか嫌いじゃないタイプだぜ」
「あらんイルム中尉にリュウセイ君、おっ久〜」
対称的なテンションのイルムとリュウセイ、そしてシンがいる中にエクセレンが乱入してきて、
「ちょっと聞いてくださいよイルム中尉。ブリットくんったら…」
別れ際にハグやキスの1つもできなかったブリットに関する大人の会話を始めた。
リュウセイはその会話に耳を傾けることなく落ち込んだままであったが、シンは無意識のうちにその大人の会話に耳を傾ける。
そしてエクセレンの口から語られたブリットの不甲斐なさを知り、
(勝った!)
と内心で密かに思ったのだった。
「何!?追撃部隊が連絡を絶っただと!!!!!?」
ラングレー基地司令室にタコヘッドことケネスの怒声が響き渡る。
彼の怒りの理由は、少し前から連邦軍とDC残党とが交戦する場に
どこからともなく現れて戦闘に介入する所属不明の部隊の存在が確認されたことから始まる。
その部隊は現れては両軍に戦闘の即時停止を要求し、それが通らないとなると両軍に襲い掛かる行為を繰り返していたため、
ケネスはその部隊の調査及び場合によっては殲滅も含めていくつもの部隊を派遣していた。
その中にはこれ以上の失態を防ぐために、ようやく数が揃い始めた最新型の量産機である
量産型ヒュッケバインMK−Uの部隊も数多く含まれており、
彼は、当然ヒュッケバインMK−U達が無事に帰還するものだと思っていたのだが、
結果としてその思惑は大きく外れてしまった。
「くそ!こんなことならあの厄介者どもを残しておくんだったわ!」
悪態をついてケネスは葉巻をくわえる。ヴァルシオンCF強奪、量産型ヒュッケバインMK−U強奪、
それに続いて謎の部隊による多数の最新型量産機の損失。自分の管轄区域内で発生するトラブルの数々は、
まるで次から次へと災難がその輝かしい頭部を目掛けて降って来るようであった。
だがそれでもなお、ケネスはさらなる追撃部隊の派遣を即座に決定した。
これ以上、失態を重ねるわけにはいかないだけではない。たかだか戦艦一隻が率いる部隊を仕留め切れなかったとあれば
司令官としてのプライドが自分を許さない。
しかし、相手が悪かった。それがケネスの不幸だった。
「戦闘を停止してください!僕達はいつまでも戦っていてはいけないんです!」
アメリカのとある平原。
薄紅色というよりはピンク色に染め上げられて嫌が応にも目を引く戦艦が連邦軍とDC残党軍の部隊が戦うフィールドに乱入してきていた。
そしてその戦艦から出撃して行く幾つもの機影。
それらの先頭にいる黄金に輝く関節を持ったPTともAMとも言えない機体のパイロットが呼びかけていた。
戦艦の名はエターナル。
異世界においては救世主だと一部の人間達から崇め奉られてきたとある女の本拠地であり、
その女の目的を達成するための、剣と言う名の戦力が蓄えられていた軍事的にも重要な戦艦である。
そしてその女の名はラクス・クライン。
彼女は異世界においてコーディネーターと呼ばれた者達からは歌姫と呼ばれつつも、
それと同時に決断力と敵対者認定能力、現職の軍人すら寝返らせるほどの凄まじい影響力、
戦況の悪化に備えて新型機の強奪等を指示するなどの極めて高い先見性と具体的実行力を持ち、
世界の主となるべく幼少から教育を受けてきた、まさに乱世の覇王の卵である。
もし彼女たちが新西暦の世界に飛ばされてこなければ卵はそのまま孵化し、
世界の全てをその手に掴んだ新たな覇王が異世界に生まれていたことはほぼ確実であった。
一方、エターナルから出撃した機体はPTやAM、つまり新西暦の機体ではない。
それはMSと呼ばれるものでZGMF―X20Aストライクフリーダムという。
ストライクフリーダムは、異世界においてはそれを開発したクライン派から聖剣という扱いを受けている。
そのパイロットは人類の夢と業、最高のコーディネーターをつくるための計画の研究成果であり、異世界においては
まさに英雄と呼ばれるに相応しいほどの数の敵を屠ってきた男であった。
名前をキラ・ヤマトという。彼のパイロットとしての能力の高さは、敵対した機体のコックピットを狙わず、
機体の頭部や四肢のみを破壊して戦闘継続能力を奪うことを可能にしていることからも明らかである。
自分の攻撃により直接的に相手の命を奪うことなく勝利を続けてきたことが、
彼とストライクフリーダムが異世界において聖剣伝説と謳われたゆえんだった。
「怯むな!敵は1機だぞ、撃ち落せ!」
残存している量産型ヒュッケバインMK−Uの小隊が一斉にフォトンライフルの引鉄を引く。
ストライクフリーダムはそれを軽々と回避してヒュッケバインMK−Uに迫る。
急速な敵機の接近にヒュッケバインらは散開しようとするも、ビームサーベルを引き抜いてストライクフリーダムの方が早かった。
すれ違いざまに1機の頭部及び両腕が切り落とされるとヒュッケバインはバランスを失い落下していく。
既に、同様に戦闘能力を奪われたリオンやバレリオン、量産型ヒュッケバインが何機も大地に横たわっており、
撃墜されたヒュッケバインもそこに加わる。
運良くパイロットが脱出して動かなかった機体、パイロットが乗ったまま機体ごと地面に叩きつけられたため動かなくなった機体、
どちらもまだ使えそうな機体は、先頭の隙を見てクライン派と呼ばれていた者達によりパイロットを含めて回収されていく。
もともとストライクフリーダムは対多数戦を念頭に置いて作られた機体である。
パイロットであるスーパーコーディネーターのキラ・ヤマトはその与えられた能力により
ストライクフリーダムに搭載された火気をフルに活用して新西暦の世界でも数多くの機体を撃ち落していた。
「各機!固まれば奴らの思う壺だ!取り囲んで一気に落とせ!」
部隊を指揮する量産型ヒュッケバインMK−Uから残ったヒュッケバイン、リオン、バレリオンに指示が飛んだ。
指示に従い何機かが撃ち落されながらもストライクフリーダムの周囲を残った連邦軍の部隊が取り囲む。
その光景を見た指揮官は勝利を確信したが、それは一瞬で誤りであることを知ることとなる。
ストライクフリーダムの翼から青いパーツがパージされて、それぞれのパーツが意思を持っているように動き出す。
そのパーツはただのパーツではない。一つ一つが小型の砲台なのである。
ストライクフリーダムは一定時間内であれば大気圏内でも使用できるように改造されたドラグーンを展開すると、
次の瞬間にはストライクフリーダムを取り囲んでいた機体は小さく青い死神たちにより撃ち落されていたのだった。
追撃部隊の全滅を確認するとキラはエターナルへと通信をつなぐ。
「終わったよ、ラクス」
「ご苦労様でした、こちらの方でも確認いたしましたわ。戻ってきてください」
「…ねえ、僕達はいつまでこんなことをすればいいの?」
「この世界では現在、異星人の侵略と戦いの準備がされているようです。私達にも何かできることがあるはずなのです。
それを見つけるまでもう少し辛抱してください。連邦とDCとの戦争を今はこれ以上拡げるわけにはいかないのですから」
「うん…でも僕達が戦場に入っていって意味があるのかな…?」
キラの一言が発せられた次の瞬間、ピンク色の眉毛がピクリと動いた。
「あなたは疲れているのですわ。早く戻ってきて休んでください。どちらかの増援が来ないとも限りません」
そう言ってラクスは通信を切ると、ブリッジの席から立ち上がった。
そして後の指揮をバルトフェルドとダコスタに任せるとそのままブリッジを出て自室へと向かう。
幾重にも厳重にセキュリティーを通り抜けて彼女は自室に戻り、扉が閉まるとポツリと呟いた。
「『次』の準備が必要かもしれませんわね…」
一方、今は地中深くにもぐっている大地のゆりかご、アースクレイドルのさらに奥にある研究スペースでは1人の男が目を覚ました。
男は用意されている衣服を身に纏いながらやや薄くなりつつある毛髪を気にしつつ、自分が今まで眠っていたカプセルがある部屋の扉を開いた。
「目覚めたようじゃの、アスラン・ザラ」
「はい。おはようございます、アギラ様」 つづく
乙。
やっぱりラクシズも来てたのかw
凸がのっけからラクシズ以外に洗脳されて登場ってのは新しいが、
キラのスペアいそうな辺りが微妙、っつーか最近多いネタだ……
投下乙。
だが和田の開発はザフトだ
ラクシズは強奪してドラと悪趣味極まる金色間接にしただけだったりするんだZe!
乙。
レイも早く来ないとだな、という気分になってきたんだぜ?
乙っす
レイは来ないんじゃないか?テロメア的に。
所々が電王なのは仕様ですか?
機体性能で明らかに上回るはずの新西暦の大軍相手をこれだけ圧倒したり、地上なのにスパドラが自在に使えてるから、
既に新西暦の技術使った改造がなされているんだろうなストフリ
ラクシズまで来てるのか……
ストフリは新西暦技術で改造済みっぽいな、そのままだとエネルギー出力違いすぎるし重量面でもだいぶ軽くなってそうだ。
こいつらのバックは誰なんだ?いくらこいつらでもスポンサーついてないと資金などの問題から行動できないだろうし
オリジェネ世界でここまでの差を付けるにはかなり圧倒的な技術が必要だな。
そこはバランスなんじゃないか?
>>174 撃墜したのを回収とかあったから資金はそれらを売っぱらったんだよ
それにしてもパイロットごと回収とはね性質悪いな。
アスランはアギラに洗脳済みか、隠者に乗ってくるかそれとも別の機体なのかな?
ジャスゲルミルか……トンでもないゲテモノ機体になりそうでwktk
もう少しで第八話完成なんだがまた紅茶が目立ってるYO…
そう言えば、ヴィレッタの苗字がプリスケンなんですよね。
深い意味があるのか、と気になっていたり。とにかく八話目全力でお待ちしております!
第8話「異形の者たちとの遭遇」
シン達を乗せたハガネが日本の伊豆基地に到着してからしばらくした頃、
ユウ達はアーチボルドじきじきの指揮により中国大陸の古代遺跡へとやって来ていた。
先祖の代の因縁と非常識にしか聞こえはしない言い伝えに基づくものではあったが、
既にDCの部隊は遺跡の包囲を完了しようとしている。発掘スタッフ達に困惑と衝撃が走り、混乱が場を支配する。
「今というタイミングで確認する必要はなかったのでは?」
まだ発掘もされていないし、それにこれでは民間人も巻き込みかねない、との言葉が
続いて出て来そうになるのをなんとかこらえてユウが問いを発した。
「見つかってからでは遅いんです。動き出す前の超機人を押さえないと、面倒なんですよ」
指揮官の返答は遺跡の埋蔵物にしか興味がない、目の前にいる民間人は眼中にないということを言っていた。
「……ねえ、ユウ。何か変な感じがしない?」
「どんな?」
「何か寒気みたいなの。地面の下から漂ってきてない?」
(言われてみれば…)
たしかに意識の一部がカーラの言うとおり地面の下に引き寄せられている、そんな感覚を覚えていることは否定できない。
だがそれを根拠付ける科学的な根拠がない以上、信用できないというのがユウの性分である。
そしてその生真面目さ故に押しかけパートナーともいうべき相棒に振り回されてきたのも事実であった。
「もしかしてチョーキジンってやつのせいかな?」
「関連性があるとは思えん。それに俺はまだ超機人の存在を信じちゃいない」
「ユウはこの手の話、苦手だもんね」
「非常識だからな」
非常識。色々と伝わってくる話を否定するためにユウがこよなく愛する理由付けであった。
「…では敵の追撃隊が現れる前に仕事を済ませましょうか?」
「仕事?」
(ようやく口を開いたか)
さきほどまで一言も発することなく待機していたエキドナにユウの意識が向いた。
素性が知れない女。エキドナに対してユウが抱いている感想である。先日もエキドナが伊豆基地の情報収集に赴いた際に
2、3、言葉を交わしたが会話をしていて、根拠こそないが何か大きな違和感を感じていたからだ。
たしかにDCには目の前の元英国貴族の末裔だという上司にように元々素性が怪しげな者が少なくない。
しかし目の前にいるこのエキドナという女から感じる違和感はそのような怪しさとは異質のものであり、
どことなくではあるが人工的というか無機質といった感じを胸だけではなく全体から受けるものであった。
例えるならゼオラ、エキドナともに素性が知れず、やや非常識なサイズの胸をしているものの、
ゼオラの胸が産地不明ながらも天然栽培により身がパンパンに詰まった大型のグレープフルーツであるとするならば
エキドナは同じように産地不明だが味覚・形を理想のものとすべく徹底的な管理の下に育てられた小型のスイカであろうか。
とはいえ今は任務中であり急いでユウは意識を目の前に戻す。
「まさか超機人とあたし達で発掘すんの!?」
「そうですよ、なんのためにここまで来たと思ってるんです?爆薬を使って一気に土砂を吹き飛ばしますよ」
「遺跡ごとですか?」
「ええ、必要なのは超機人だけですし、あれはそう簡単に壊れるものではありませんからね」
「発掘現場にいる人間は?」
「ああ、気にする必要はありませんよ」
「了解」
「ちょっと待ちなよ!相手は民間人だよ!?」
「何をいまさら。僕達は戦争をやってるんですよ?」
「でも相手は非武装なのに!」
「関係ありませんね」
「少佐、ここは彼らに退去勧告を出せば済むことだと思います。間もなく現れる敵を迎撃するためにも弾薬は節約するべきでは?」
発砲モーションに移ろうとするガーリオンを見てユウが口を挟んだ。
ブリットやシンとの問答の影響を受けたとは考えたくはなかったが、無関係な人間を巻き込みたくなかったのは確かだった。
ユウも元々卑怯な手や無関係な人間を巻き込むような手段を強く嫌悪するタイプの人間だったからである。
しかしアーチボルドのようなタイプの人間に情に訴えるなどの非理論的な進言が通ることはまずない、あくまでも理論的に、
相手に合理的な反論を許さぬような進言をしなければならなかった。
「なるほど。ユウキ君、君は無駄な血を流したくないと?」
「少なくとも、今という状況では」
「そうですか。でも僕は無駄な血を流すのが好きなんですよ。特に民間人のね」
アーチボルドの陰湿な笑みとともにガーリオンが携行火器を、退避行動中のスタッフらであふれる遺跡に打ち込んだ。
大きな爆発音が現場に響き渡った。
そして慌てふためく者、爆発に巻き込まれ倒れ込む者、それでもなお冷静に退避せんとする者らを見た
アーチボルドの笑みはさらに大きくなり、そして笑いがあふれ出した。
「ふふふふ………はははは」
「!?」
「あ〜っははははははは!!この感覚たまりませんねぇぇぇ!!格別、格別です!無抵抗の人間を相手にするのは!あはははは!
いやまったく!昔を思い出しますよ!」
「くっ!」
力なき者、無抵抗の者、自分よりも圧倒的に弱い者に加えられる、圧倒的な力の差を示した上で加えられる暴力にアーチボルドは酔いしれる。
他方でエアロゲイターの無差別攻撃により弟を失ったカーラは当時の記憶を思い出さざるをえなくなり、その気持ちを抑えるべく歯を食いしばる。
「あァ、これは失敬。僕としたことが、つい興奮してしまいました。それに、君の過去を思い出させてしまったようですねぇ。
カーラ君、どうですか?君も狩りを楽しまれては?」
「じょ、冗談じゃないよ!!」
「まあいいでしょう。無駄強いしません。予想以上に早く追っ手が来たことですしね」
「!ハガネ…!もう追いついてきた!?」
さらなる凶行が行なわれる直前、ハガネが戦闘区域へと突入してきた。
それと同時にパーソナルとルーパー各機及びグルンガスト、アンジュルグがハガネから飛び出していく。
ブリットのヒュッケバインMK−Uに続きシンのビルトシュバインも出撃を完了してDC残党軍を睨みつけた。
無抵抗の民間人をも巻き込む攻撃はシンにベルリンなどの都市を焼き払った連合を思い出させるに十分であったのだ。
「ねえキョウスケ。何なのここ?」
「LTR機構の発掘現場だ。説明を聞いていなかったのか?」
「そうじゃなくって何か変な感じがしない?」
「変だと?」
「うん」
「特に何も感じないがな。リュウセイ、お前はどうだ?」
「ああ。足の下から冷気みたいなものを感じる。地下に何かあるのか?」
「言われてみれば空気が妙によどんでいるような…」
「ん〜そういう感じ方とは違うんだけど」
ブリットから、リュウセイとブリットには念動力という特殊な一種の感応能力があることを聞いていたシンは
遺跡から漂ってくる気配というものに自分は無関係だなと感じていた。
しかし念動力がなければ使えない機体・兵装があるとの話もあったことから、シンにはドラグーンの使用に必要とされてきた
空間認識能力のようなものだという程度にしか思っていなかったのであるが。
「ほう、あれはSRX計画のR−2…ならパイロットはブランシュタイン家の次男、ライディース…ふふ、因縁ですね」
ユウは新たに溢れてきたアーチボルドの邪悪な笑みに気付くも、R−2とアーチボルドの関係について問おうとはしなかった。
(あのヒュッケバイン…そしてビルトシュバイン…ならばあいつらか)
メキシコ高原、ハワイと自分の前に立ちはだかり奇麗事をぶつけてきたシンやブリットをユウは忘れてはいない。
もし自分が今までのようにガーリオンに乗っていたならば、躊躇なしに民間人を巻き込んだアーチボルドの下にいる自分に対して、
彼らはその信念を口に出した上でぶつけてきたであろう。
そしてそれに対して割り切った反論をできる自信はなく、自分がこの戦場にいると彼らに認識されずに済むことに
わずかながら安心すると同時に、安心する自分への怒りもまたこみ上げてきていた。
「では僕達は遺跡の発掘に専念しますから他の皆さんは…」
そうアーチボルドが言いかけたときであった。
「!?」
エクセレンが何かを感じ取った。それと時を同じくしてラミアの脳裏にはとある技術のことが浮かぶ。
「これは空間転移だ!警戒しろ!」
ラミアの口から発せられた言葉にL5戦役を潜り抜けてきたパイロット達はエアロゲイターの出現方法を思い出し、招かれざる客の登場を警戒する。
そして遺跡の周りに次々と見慣れぬものが現れ始めたのだった。
「あ、あれは…」
現れたのは一言で現せば骨と草。それがそびえ立ちながらも呼吸するかのように動いている。
骨のような物体は、2足歩行の動物の骨に黄色の爪と角、赤い球状の目を持ち、
草のような物体は、中が空洞のようになった生物の胴体のいたるところから蔦が伸びている。
それらの動きはロボットのような無機質的なものではなく、まるで生き物のようであった。
目の前で起こっている自分の理解を遥かに超えたところで起きている事態にシンも驚きを隠せない。
「何なんだ、こいつらは!?これがエアロゲイターなのか?」
「いいえ。あのアンノウンはエアロゲイターの機体とは違う。機体の構造や仕様に共通点がない」
誰に対して言ったのでもない問いにラトゥーニが冷静に答える。そして、
「まるで特撮物に出てくる怪獣みたいだぜ」
「まるで特撮物に出てくる怪獣みたいじゃないか!?」
シンとリュウセイの言葉がハモった。
だがそんなやり取りはアンノウンには関係なく、アンノウンは遺跡の方を向いて攻撃を開始する。
「各機、アンノウンを撃破して遺跡を死守しろ!」
カイの指示が飛び、ハガネの各機が戦闘を開始した。
「じゃ、皆さん。ここは撤退しますよ」
「……いいのですか?」
「超機人はそう簡単に壊れはしません。あとで発掘したところをいただくとします」
「了解です」
レールガンで骨のアンノウン、アインストクノッヘンを撃ち抜き、下がったメガネを直すアーチボルド、
目の前で起きている非常識極まりない事態の理解を放棄し、民間人が残っている遺跡を攻撃しようとする
アインストグリートの集団をマトリクスミサイルとリニアカノンで殲滅し終えたユウの両者は
目の前で起こっている事態に関して論ずることなく淡々と言葉を交わした。2人とも今は議論をしても何も始まらないことを認識しているからである。
「カーラ、エキドナ、アンノウンに向けてミサイル発射。その後、撤退するぞ。遺跡は絶対巻き込むなよ」
「わかったよ!」
「了解」
ランドグリーズ3機が一斉に残りのマトリクスミサイル、ファランクスミサイルを
アインストに向けて放ち、アーチボルドのガーリオンに続いて戦場を後にした。
「お前達は一体何なんだあぁぁぁぁ!?」
そう言いながらも答えは聞いてない。何者であろうとも避難が完了していない遺跡を攻撃するアインストを放置するわけにはいかなかったからだ。
シンは、上から振り下ろされるエレガントアルムを、機体を左に飛ばして回避しするとサークルザンバーを起動させた。
そして、続いて伸びてきた蔦ごとザンバーでグリートを横一文字に切り裂いた。
だがまだ切り離された上下半身は動きを止めていない。
「はあぁぁぁ!!」
次こそ息の根を止めるべくシンはビルトシュバインのザンバーをグリートの頭部から下半身に向けて振り下した。
蔦を除けば上下左右に4分割されたグリートはようやく動きを止めて崩れ落ちる。
しかし息つく暇もなく機体がアラートを鳴らし、警戒を促した。
後ろを振り向くと3体のクノッヘンがビルトシュバインに飛びかかろうとしている。
ビルトシュバインは1体から放たれた黄色い爪をくぐりぬけ、今度は正面から斬りかかった。
そのまますれ違いざまにザンバーを振り上げてクノッヘンの右腕と頭部を切り落とす。
「くそ!仕留め損ねた!?」
だがシンが振り返ると残った体はすでにワイヤーによって巻き取られていた。
そしてワイヤーの先にあるチャクラムが容赦なくクノッヘンの残った体を切り刻む。
「ニの太刀に頼るな!」
「ブリットか?助かった!だがあと2匹…」
「いやもう零だ」
遠く離れた場所から発射された二条の高エネルギーが2体のクノッヘンを呑み込んでいた。
シンはその隙にいったんヒュッケバインMK−Uと合流し次の敵を探す。
「今のは?」
「R−2のハイゾルランチャーだ。射撃精度はラミアさんのアンジュルグにも劣らない」
「そうじゃなくて二の太刀って…」
エルザムらの下にいた頃、リハビリと訓練を兼ねてゼンガーに剣術の指導を受けていたときに言われたことをシンは思い出していた。
「俺の師匠の教えだ。分かりやすく言えば次の太刀があると思わず、その一撃で仕留めろ、ということだ」
「…知ってるよ」
「そうなのか?」
「ああ」
シンはわずかに笑みを浮かべた。同じ人間から教えてもらったんだからな、と言いそうになってしまったのだ。
その頃、最後の1体となったクノッヘンの胸部をリボルビングステークが貫き、その活動を止めていた。
「アサルト1より各機へ。アンノウンの殲滅が完了した。民間人の安全を確保しつつ帰還してくれ」
「了解。アサルト5、これより帰艦します」
ブリットの問いにそっけなく答えてシンはビルトシュバインをハガネに向けた。
自分の素性やエルザムの下にいたことはトップシークレットなのだから。
「体の調子はどうじゃな?アスラン・ザラ」
「はい。アギラ様のおかげで良好です」
「そうか、では近くに命令を出す。それまで待機しておれ」
「了解しました」
大地の奥底のアースクレイドルのさらに奥、アギラ・セトメの研究スペースをアスラン・ザラが歩いていく。
その後ろ姿を見るアギラの口は、アーチボルドが浮かべていた快楽による笑みとは異なる、研究者としての興味が全面に出た笑みを浮かべていた。
例えるのであれば新しい玩具を手に入れた子供のような笑みであろうか。
「調整は完了したようだな」
「なんじゃ、用があるのならノックくらいせんか」
振り向きもせずにアギラは声の主に答えた。だが爬虫類のような顔をした声の主はアギラのクレームを意に介さず言葉を続ける。
「フッフッフ、そう言うな。あれを拾ってきて貴様にくれてやったのは私だぞ」
「よく言うわ。わしが奴を研究した成果はしっかりと聞いてくるくせに」
「ふん。『面白い、面白い』といいながら年甲斐もなく張り切って研究した成果だったな」
「人間の精神的な揺らぎが実力以上の力も実力以下の力も出す、というワシの持論を体現したような奴じゃったからな」
「一定の条件の下でしか力を発揮しきれない、というやつか?」
「そうじゃ。あやつはある条件を充たさない限り全ての力を出し切れん。じゃがこれはなかなか便利なものでな。
万が一、人形が自分に牙を向いたときには安全に裏切り者を処分できるんじゃよ。
アードラーの奴もこの枷をかけておればくたばらずにすんだかもしれんのう」
「あのジジイがどうなろうが知ったことか。とはいえ、そうだとすればあのアスランとやらはその条件を満たした状態にしてあるのか?」
「いや、その条件が大体何なのかはわかったがそれをわしが充たすことはできん。
だから条件が充たされている、という暗示を掛けておいた。割とこまめな調整は必要じゃがコストはそんなにかからん。
それに遺伝子レベルでの調整もされておって色々と弄くり甲斐があったわ。ヒッヒッヒ…」
「ゲイムシステムも完成間近だしな」
「一番面白いのはあやつが別の世界とやらから来たということじゃよ。そこには奴を枷で縛った奴がいるはずじゃ。
なんともいい趣味とセンスをしておるよ。是非そやつに会ってみたいのう。話が合いそうじゃ、ヒィッヒッヒッヒヒ…」
デスティニーの自爆に巻き込まれたアスラン・ザラが新西暦の世界に来たのはシンがこちらの世界にやってくるずっと前、
アードラー・コッホとヴァルシオン改が敗れ去り、アースクレイドルがいったん地中に潜る直前であった。
たまたまクレイドルにボロボロになったインフィニットジャスティスごと収容されたアスランは
ソフィア・ネートと異なりまだ冷凍睡眠に入っていなかったイーグレット・フェフのもとに運び込まれた。
だがマシンナリーチルドレンとマシンセルの研究をするイーグレットも、生身の人間の研究に関してはそこまで長じているわけではない。
そこで彼はアスランを特脳研にいたことのあるアギラに引渡したのであった。
「シャドウミラーといい、あのアスランとか言う奴といい、何かが起きる前触れかもしれんな。
早くマシンナリーチルドレンを完成させねばな」
イーグレットにはすでに何かが起こり始めている、そんな予感がしていた。
一方、いったん伊豆に戻ったハガネは次のDCの攻撃に備えることとなり、
間もなく入ったDC残党の出現の報を受けてそこへ向かうのだった。
今回は以上です。
>>184 すいません、そこはあまり考えてませんでした
まだ地味展開は続きますがよろしくお願いします
マシンセルで魔改造された隠者wktk
しかしビアン氏といい、この人といい、このスレの職人はおっぱいに拘り過ぎであるw
メタルギアとクロスってできないかな?
だれかやってくれ
>>193 該当スレが有ったろ?そっちでやろうな?
11氏のSS読んで思ったが、シンと鰤のキャラや立ち位置が被り過ぎてるような気がする
この二人が仲良い描写は好きなんだが、紅茶と対決する時になると双方のキャラが逆に薄くなるような
ここから先、上手く差別化できるかどうかが気になる
俺は逆に似たような立ち位置に、シンとブリットが居る方がいいと思うけどな
というのも、OGだとブリットが色んなイベントに無意味にしゃしゃり出すぎだから
なのでシンが加わると、ブリットの過剰すぎる出番を削減することができる
ブリットにはクスハや龍虎関係に専念してもらって、シンはラミア関連とかそれ以外のイベント担当すれば丁度良さげ
あとユウとの反発の仕方もやや違うからな
ブリットとユウはまさに好対照の反発
シンは性質的にブリットに近いが、経験してきたことはむしろユウに近い
確かに「人間が残る」とか元々はAでシローが言った台詞だからなあ
正直ブリットが言う台詞としては違和感がある
女の為に暴走した点では同じだけど、単に先走って命令違反の挙句返り討ちにされるだけのブリットと、
銃殺寸前まで行ったシンとじゃ後者の方がより相応しい
ブリットの調整にシンを使う、か……
おお!種キャラが……他作品に頼りっきりだった種キャラが初めて必要とされている!
根っこの部分では似通ってるシン、ブリット、紅茶の微妙な違いを
示していくってのも悪くはないような気がする。
ニートや凸を人外のライバルとするなら、正統派のライバルが紅茶ってことかな?
201 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/21(日) 23:15:22 ID:5af0ftH8
やはりシンは胸に関しては幸運EXのラッキースケベだ。
鰤がクスハや超機人にかかりっぱなしにすることであの
“マスクメロン”
を独り占めだぜ?
凸、キラたちと会ったら洗脳解けそうな気がするのは気の所為か?
( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!
203 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/22(月) 00:22:36 ID:/T9R+8Aa
脳内でピスタチオが割れる奴とサイコドライバーはどっちが強い?
コンスタントに限界を出せるのなら種餅
突発的パワー増加による短期決戦ならサイコドライバー
あれ?逆か?
これまでの直接対決をみるかぎり、
カイ>越えられないダンディーの壁>ベーオウルフ≧紅茶>シン、な感じ
そう言えばヒゲダンディの量産型ゲシュが量産型ゲシュペンスト(改)に変るんだっけ…
変なマ改造されてなきゃ良いが……
>>205 つか文中で鰤と互角ぐらいって言われてるじゃん
>>203 一つ言っておくが、サイコドライバーって元々の予定ではバビルがその一人になる予定だったんだぞ
パイロットとしての技量とか、そんな些末なレベルの話じゃない
ライジングダンディのゲシュが変わるんじゃなくて、
アポロンのゲシュがRVになるだけだよ>ゲシュ強化計画
>>209 なんの雑誌か忘れたがOG外伝の記事で小さく出てたカイinゲシュの所にゲシュ(改と書かれてたのさ
>>210 そうなんか…サンクス
でも手っ取り早くゲシュMK2Sをマ改造すりゃいいのに
ヅラはしばらくDCなんだろうけど、紅茶やゼオラ、アーチボルトとどんな絡みをすんだろ?
OGでフォルカ熱が再燃したんで、ホコリ被ったワンダースワン引っ張り出して久々にC3をプレイしてみた
やっぱ修羅の話は熱いな
外伝が出たら、CEで死亡して修羅に転生したシンとかやってみたい
>>208 なんか人間サイズにスケールダウンした神様みたいだな
>>214 たしか神そのものって設定だったよーな
最初の設定だと最古ダイバーはビッグファイアだったと聞いた
まあ流石にまったがかかったんだけどな
>>215 神そのものって反則だろそれ
遺伝子操作じゃ勝てる要素が見つからないよな
色々とアリガトー
ビアンSEED32話 人生楽ありゃ苦もあるさ
旧オーブ本島ヤラファス島。かつての、そして今も政治の中心地として機能し、DC総帥ビアン・ゾルダークを始め、旧五大氏族等の集中するオノゴロ島以上に価値の高い島だ。
旧オーブ本国の防衛はオノゴロ島の戦力が引き受けているが、それでも戦争の只中にある情勢からか、時折パワードスーツやエムリオンなどの姿が見受けられる。
六月の末に行われた連合との大規模戦闘から既に三か月が経ち、暦は十月の始まりに差し掛かっていた。
赤道直下である事と、二十世紀末から問題視されていた温暖化現象により、一年を通して過剰に温暖な気候のオーブでは、この季節になっても国民の格好は涼しげだ。
戦火を免れたヤラファス島にある小さな公園では、降り注ぐ黄金の陽光に噴水の水飛沫が煌き、宝石の飛沫が散っているかの様に美しい。青々と茂った枝は頬を撫でてゆく緩やかな風にさわさわと音を奏で、この国が戦争の只中にあるとは信じられぬ光景だ。
キャンパスを抱えた画家が、陽気と公園で遊ぶ人々の笑い声に誘われて一枚絵画をものす気分になれば、その題名には『平和』や『日常』の言葉が使われるだろう。
良く弾むボールを追いかける少年達。ベンチに腰かけて他愛無いおしゃべりに興ずる恋人たち。ベビーカーに乗せた我が子を愛しげに見つめる両親。飼い犬を始めとしたペット達と戯れる孫を見つめる祖父母……。
およそ銃器の硝煙の匂いやビームが焦がしたイオン臭、焼け焦げばらばらに爆散した肉片や死にきれず呻き声を挙げる人間達が今も生まれている世界とは信じ難い。
これを守るために戦争に身を投じる者達も多いだろう。そんな、平穏の絵画に紛れた異物が、一つ二つと数え、三つあった。
白く塗られたベンチと二メートル近くまで水を噴き上げている噴水のある公園の一角に、それはあった。旧日本国の委任統治領――ようは植民地であった歴史から未だオーブでは日本語が準公用語として認定されている。
その日本語で言うひらがなで『たこ』、漢字で『焼き』と赤い生地に黒字で書いてあった。四角形に組んだパイプにガスコンロと簾や派手に染めた布を飾り、ねじった鉢巻きを巻いた、デフォルメされたタコが子供の好きそうなけばけばしい色で描かれている。
日本特有の食文化の一つ『たこ焼き屋』だ。小麦粉の焼けるじゅーじゅーと言う音と、鰹節やソースの香ばしい匂いが風に乗って公園を流れ、道行く人やベンチに腰を下ろす人達の食欲をそそる。
たこ焼きを竹の皮を模したパックに詰めて店の前に置き、ひと箱八個入りの三〇〇アースダラーで販売しているようだ。
分厚い鉄板にいくつもの丸い半球の窪みを穿ったたこ焼き用の鉄板には、上質の脂が専用の刷毛で塗られてよく熱を通し、注がれる水と特性の出汁で溶いた小麦粉と刻んだネギや大きくぶつ切りにしたたこが放り込まれてゆく。
先端の鋭い銀色の錐で、程よく火が通り焼けたたこ焼きを、店の主がくるりくるりと手品の様にひっくり返し、ひょいひょいっとパックに詰め、締めに淀みない手さばきで刷毛でソースを塗って行き器用に指でつまんだ青海苔と鰹節をまぶして行く。
店の主は、逞しい筋肉の筋が白い安物のシャツ越しにもくっきりと浮き上がる男で、頭には一本の頭髪も無い。鋭い刃物で削いだようにこけた頬に反してがっしりとした顔の骨格が目立ち、眉が無く鋭い目つきがあらわな両目と言い、かなりの強面だ。
一度火がつけば簡単には収まりそうになく、また火が着くのも至って簡単そうだ。初見ではこの風貌を怖がられて客商売など出来そうにもない。
だが、それでも店はそこそこに繁盛しているらしく、積み重ねられたたこ焼きは時間と共に減って行き、その度に主は新たなたこ焼きを顔色一つ変えずに焼いてゆく。
ちょうど、十歳位の男の子と、六歳位の女の子が手をつないでたこ焼きを買いにきた。買い慣れているのか、主の強面の顔にもひるむ様子はない。
男の子はよく弾む元気な声で言った。
「おじさん、ひとつちょうだい!」
「む? 妹の分はいらんのか」
兄の手をつなぐ女の子はもじもじとしながら主の目線を受けていた。男の子は少し声の調子を落として理由を告げた。
「お小遣い使ってお金がないから……」
「そうか。それでは仕方がないな」
うつむく兄妹二人を尻目に、店の主はひょいひょいと焼きたてのたこ焼きをパックに詰めて、爪楊枝を二本添えた。
三百アースダラーを男の子の小さな手から受け取り、たこ焼きを落とさぬように気遣う男の子の様子に、心なし横一文字に引き締められた唇はほころんだようだった。
「あれ、おじさん。たこ焼きの数が多いよ? 1、2、……16個もある」
これでは二つ分の量だ。
目を丸くしている兄妹にそっぽを向けて、主は乱暴に言った。
「ふん! たこ焼きの数を決めるのは店の主であるおれの一存だ。16個入っていたならそれで一つなのだ。文句でもあるのか?」
「ううん! ありがとう」
「ありがとう」
それまで口を閉ざしていた女の子も、喜ぶお兄ちゃんの笑顔につられてちょこんと主に頭を下げた。肩口で切りそろえられた茶色の髪が上下に動く様は見ていて微笑ましい。
倍の量のたこ焼きが入ったパックを大事そうに持って、二人は公園の入り口で待っている両親の所へと歩き出した。その背に、店主の声が重なる。
「熱いからな、注意して食えよ! お前達野蛮な地球人と言ってもまだ子供、火傷しても知らんぞ!」
「あははは、おじさんだってちきゅーじんなのに変なの」
店主の言葉に、軽やかな笑い声が答えた。やがて四つの影が見えなくなるまで見送っていた店主はぽつりと呟いた。
「地球人か。……生憎とおれはお前達下等な地球人とは違うのだ」
その声は、言葉を裏切る色を刷いていた。少なくとも言葉ほどに下等とは思っていないと。
昼の少し前ごろから開いていた店は、夕暮れに沈む街並みに子供や親子連れの落す影が家路に着く頃になると片づけをはじめ、ガスの火は落とされ、主は今日も売れ残りが出なかった事にいささかの誇りを抱いていた。
視線を落とし、鉄板の掃除に取り掛かろうとしていた主は、近づく人の気配に気づき、ぶっきらぼうに言った。
「今日は店じまいだ。食いたければ明日来るのだな」
言葉の調子も台詞も客商売には向いていない。しかも改める気がこれっぽっちも見えないのがはっきりと分かる声だ。
「お客じゃないよ。ちょいと様子を見に来たのさ、ヴィガジ」
ヴィガジと呼ばれた主は、むっと片方の眉(毛はない)を吊り上げて顔をあげ、声の主とその傍らに立つ大きな人影を見た。
二十代後半か三十路に入るか入らないかという程度の女性と、ヴィガジ同様に禿頭に逞しい体つきの巨漢の二人組だ。
女性は青い髪を肩に掛かる少し上の辺りで切りそろえ、額にアクセサリーなのか水晶のような菱型のモノを飾っていた。
やや険が強く吊り上がった眼からは気の強さが見て取れる。言いよってくる男には困らぬ程度に美人だが、意に沿わぬ男であったなら口説き文句が出た瞬間に一発お見舞いしそうだ。しかも平手では無く握り拳を鳩尾か顎先に叩き込むだろう。
巨漢は、ヴィガジよりも一回り大きな筋肉の鎧を纏い、骨太の印象が強く肩幅も広い。首も腕も腰も太腿も太い。特に足など華奢な女性の胴ほどもありそうだ。
ひどく落ち着いた雰囲気とこの体つき、この男が傍らに居れば世界一の美女が裸で治安最悪のスラムを一日中練り歩いても声をかける命知らずな男はおるまい。
ヴィガジはふん、と一つ鼻を鳴らして客人を迎えた。
「アギーハにシカログか。何の用だ?」
女がアギーハで、傍らの巨漢がシカログという。喫茶店『愛の巣』の店長とオーナーだ。寡黙なシカログがカウンターに着いてコーヒーを煎り、客を客とも思わぬアギーハの勝気な態度がそれぞれ固定客を作ってそれなりに繁盛している。
「何の用だ、は御挨拶だね? ちょっと近くまで寄ったもんだから顔を見に来てやったってのにさ」
「おれが頼んだわけではない」
「なにさ、その言い草。人の好意を無駄にするもんじゃないよ」
「…………」
「シカログまで同じ事を言うな! まあいい。どうせ店じまいだからな、茶くらいなら奢ってやろう」
「あ、たこ焼きもね。ダーリンとあたいの分」
「おれは今片づけようとしているのだがな? 見えんのか」
「だから、片付け終える前に焼きなよ」
「…………」
「……金は払えよ」
結局ヴィガジが折れた。
仕方なく片づけようとしていた機材を並べ直し、クーラーボックスの中の食材を引っ張り出し手早く用意を整えておく。その間にアギーハに小銭を渡して近くの自販機で好きなモノを買って来いと告げた。
「何だい、茶位なら奢ってやるって、自販機かい? ちゃっちいねえ。器が知れるね」
「金は出してやるのだ! 文句は言うな」
「はいはい。そんな大声を出さなくても聞こえるよ。男は必要以上に喋らない方が渋くて味があるんだよ。それじゃあんた女に縁がないまま一生を終えるよ。ね? ダーリン」
「…………」
(貴様らのノロケなぞ犬にでも食われてしまえ!)
こめかみに青筋を浮かべ、ヴィガジは鉄板に油を引いた。
ヴィガジのたこ焼き屋の前のベンチにアギーハとシカログは密着して腰掛け、缶ジュースを口にしていた。
「しかし、あれだね。あんたの手つきも慣れてきたもんだね。最初はあんたがそれ作ってるのを見た時は二重の意味で笑ったもんだけど」
「……二重の意味とは何だ?」
「そりゃあ……ねえ?」
とアギーハは遠慮しているようで全く遠慮していない目線をじろじろとヴィガジのつるっとした頭頂に向け、かるく吹いた。
「だってその頭でたこ焼きって……ぷ」
「笑うな!! これは禿げているのではない! 剃っているのだ! 第一、髪型はシカログとて同じだろうが!!」
「あたいのダーリンとあんたを同列に扱うんじゃないよ! あんたとダーリンじゃカテゴリーは同じでも格が違うってもんさ!」
「何がどう違うというのだ!!」
「あんたがミドリガエルならダーリンはトノサマガエルさ! あんたがドロイカならダーリンはドルーキン! あんたがメギロートならダーリンはヘルモーズ! あんたがバイオロイド兵ならダーリンはゾヴォーグの戦闘指揮官位の違いだよ! ふん!」
立て板に水を流したようなけたたましいアギーハの口上に、首から上をあっという間に真っ赤にしてヴィガジは何とか反論しようと脳みそをフル回転させるがあまりにも怒りの感情が強すぎる為に言葉にならない。
「こ、ここここの……!」
「なんだい、今度は頭のてっぺんまで赤くして、そんなにたこ焼き売るのが好きならペンキで全身赤くして口尖らして墨でも吹いたらどうだい? さぞや受けるだろうさ! タコがたこ焼き売ってるってね!!」
「おおお、お前は、今日と言う今日は!!」
「なんだい、やるってのかい!」
売り言葉に買い言葉のオンパレードは両者の激昂しやすい性格とあいまって互いに油、というかニトログリセリンを注ぎ合いあっという間に爆発までのカウントダウンを始めていた。
幸いにして、そのニトロの暴発を防ぎうる人物がいた。ぬっと立ちあがったシカログがアギーハの肩に優しく手を置いて制止し、一方で飛びかからんとしていたヴィガジの顔面をぐわっと掴み止めてそのまま吊上げたのである。
「ぐおお!? し、シカログ止めるな!? というか離せ! ほ、骨が、骨が軋む!?」
ジタバタと両足を動かし、ヴィガジは自分の顔面を捉えるシカログの両腕を何とか搬送と奮闘するも、石でできているかの様に頑健なシカログの腕はぴくりともしない。
シカログの視線は顔を挙げたアギーハのそれと絡みあい、互いの意思を伝え合う。
「…………」
「しか、ログ、ミシミシと何かおれの骨が……」
「ダーリン……。分ったよ」
「……ぬ、おお。ひ、光が見え……」
「悪かったよ。ヴィガジ、あたいが言い過ぎた」
頭部にシカログの指がくっきりとめり込んでいるヴィガジは、シカログの言葉で反省したらしいアギーハの謝罪の言葉を聞く事は出来なかった。だらりと下がった腕と地面を離れた足が時折痙攣している。
流石にやり過ぎたと思ったのか、シカログが即座に手を離し、地面に崩れ落ちたヴィガジはその衝撃で目を覚ましたのか脂汗を掻きながら腕を着いて上半身を起こした。
「ちょっと聞いているのかいヴィガジ! 折角人が殊勝な態度を取ってみれば!」
「お、おれを責めるのか!? 危うく死にかけたのだぞ!」
「はん! その位でおっ死ぬようならゾヴォーグの戦闘指揮官になれたのはまぐれだね」
「貴様、アギーハ! 先程から黙っておれば好き放題言いおって! いい加減に」
「…………」
流石にこのループでは話が進まないと思ったのか、シカログが二人の間に割り込み、落ち着くように彼自身淡々とした口調で話した。沈黙の様に聞こえる、というか読めるが彼の会話は『……』以外基本的にあり得ないのだから仕方ない。
アギーハとヴィガジもこの口論の繰り返しである事に気付き、互いに不完全燃焼気味ではあるが、一応口を閉ざして気分を落ち着ける。
ヴィガジのたこ焼きの残りをひょいひょいと口に放り込み、ずっと手に握っていた缶ジュースの中身を煽って、アギーハはようやく気分を落ち着けた。
「ふう。まあ、あんな話をしに来たわけじゃないからね。本題に入ろうか」
「最初からそうしていればよかったのだ」
「何か言ったかい? ヴィガジ」
「いや、空耳だろう」
ぎろりという言葉が背後に出ていそうなアギーハの視線から顔を逸らし、ヴィガジは素知らぬ顔で高い空を見上げた。水平線にゆっくりと降りはじめた太陽が橙色と緋色の混った色で空を染めつつあった。
ヴィガジの視界の端から端を、暮れなずむ夕日の色に照らされた雲がゆっくりと流れてゆく。
「まあ、いいけどね。ここん所DCとザフト、連合の連中の動きがキナ臭くなってきただろう? でっかい戦いはこれからは宇宙でやるんだろうけどさ、文明監察官としてはこのまま現状調査の続行でいいのかってね」
「ウェンドロ様のお姿も無く、我々の拠点も無い現状では武力介入は厳しい事だな」
「あんたの言う通りさ。あたいのシルベルヴィントにダーリンのドルーキン、あんたのガルガウだってありゃしない。悔しいけどネビーイームとムーンクレイドルで地球人の連中にやられちまって以来だろ?」
「まあ、そうだがな」
かつて彼らの騎乗した強力な機動兵器達の名を挙げられるに従い、なぜかヴィガジは気まずそうに顔をしかめる。隠し事でもしているかような様子だ。
歯切れの悪いヴィガジの返答に、アギーハは形の良い眉を寄せるが、気にせず話を続けた。
「まったく、ゾヴォーグの文明監察官が雁首そろえて何もできないなんて笑い話にもなりゃしない。ヴィガジ、あんた屋台を置いている倉庫にガルガウを隠してある、位言わないのかい?」
「それは貴様らとて同じだろう。店の地下にシルベルヴィントとドルーキンを置いてはいないのか? それらとガルガウがあればこの世界程度の機動兵器ならば百や二百造作も無くひねりつぶせる」
「…………」
「そうよねえ、ダーリン。機体があったにせよ、補給の当てを付けなきゃ行動のしようも無いのよね。他に戦力も無いし。バイオロイド共の製造データでもあれば別だけどさ。
実質戦力は手元にないし、日々の生活でも厳しいってもんだよ。最近は戦争の影響で良い豆が入ってこないし、食料品や嗜好品なんかはその内配給制になるんじゃないのかい?」
「おれの知った事か、と言いたい所だがな。小麦粉は買い溜めして置いた奴があるからいいが、切れれば次からは質を落とさねばなるまい。味が落ちてしまっては折角着いた客が離れてしまうわ! まったく地球人というものはどこの世界でも野蛮な事だ」
「ウチも商売が折角軌道に乗ってきたってのに。ダーリンが淹れてくれるコーヒーなんか看板商品になっているくらいなのに、良い豆が入ってこないんじゃねえ」
「…………」
「え? 商品の質の低下は腕で補うって? やっぱりダーリンは言う事がヴィガジとは違うね。流石はあたいのシカログだよ」
けっきょくお前らはおれの前でいちゃつきたいだけなのか、と言いたくなるのを堪え、ヴィガジは大きく溜息をついた。
口ほどにアギーハがゾヴォークとしての任務を重要視していないように思えたからだ。まあ、最近の流通している食料品やら生活用品やらの状況が先に頭に浮かぶのはヴィガジも同じなのであまり強くは言えないのだけれども。
この三人ははっきりと言ってしまえば地球人ではない。ビアンやマイヤー、バンと同じ新西暦世界からやってきた死人である。
彼らはビアンの死後地球に武力介入を本格的に始めたゾヴォークという、星間国家の派遣した監査官達だ。
ヴィガジが名を挙げたウェンドロと言う少年を総司令に置き、ヴィガジ、アギーハ、シカログ。それに今はここに居ないメキボスを加えてわずか五人とバイオロイドという人造の兵士で地球への干渉を行い、一時期は成宙権と北米などを中心に地球の大部分を制圧して見せた。
だが、そんな彼等もビアンとマイヤーを打ち破ったヒリュウ・ハガネ隊の奮戦により敗色を濃いものへと変え、遂には打ち破られた事でこうして今CE世界に来ている。機体を失い、今はこうしてまあ、たこ焼きを焼いたり喫茶店を経営したりしているのだが。
生前(?)を顧みればいささか情けない現状だろう。まあ、ヴィガジの様に妙に馴染んでいたりするから案外天職なのかも知れないけれど。
ヴィガジはしみじみと嘆息した。月に建造された人工冬眠施設での戦いから目覚めてみれば歴史が大いに異なる『地球』ときたものだ。空間転移ならばゾヴォークでも確立された技術ではあるが、あいにくと次元転移となればまったくもってどうしようもない。
第一ヴィガジはマシンに乗って敵対文明や監査対象を蹴散らす事の方が得意で、あれこれと知略を練るのは総司令官であるウェンドロまかせだったのだ。まさか、このまま一生たこ焼きを焼いて生きるわけにもゆくまい。
アギーハとシカログはなんだか楽しんでいるようだが……。ヴィガジは改めて溜息を着いて空を見上げた。目に痛いほどに鮮やかな緋色の空だった。その美しさがヴィガジの心をかき乱す。
少し、この生活を長く続け過ぎたかも知れない、と。
場所は飛んでコロニー・メンデル。ラクス率いるクライン派の艦隊を吸収し勢力を増したオーブ艦隊は、マルキオの仲介によるジャンク屋の協力などもあって小規模な生産施設を有するまでに至った。
現在は、プラントの通商破壊を行っている連合部隊への襲撃、定期的に巡回している連合艦隊との戦闘などが主な行動である。
地球連合VSザフト・DCの戦力比をそうそう覆せるほどの戦力はないが、プラントの市民への食糧供給の命綱である通商航路を守る事に声を大にして反対する声は上げられなかった。
ちなみに、そのさいに可能な限り連合製MSは修理用パーツないしは使用できるように損傷の少ないようにし、自軍の戦力として再利用している。こう言う地道な作業が、何時か実を結ぶのだ。
アラスカ以来不殺を貫くキラのみならず、アスラン、ディアッカ、ニコル、ムウ、ウォーダン、カーウァイ、ククル、オウカといったエースクラス達も自分達の台所事情を知っている為可能な限りこれを遵守した。
ウォーダンの場合スレードゲルミルの戦闘能力と機体サイズが大きすぎるため面倒な注文ではあったが、彼の卓越した技量ならば不可能な話では無かった。
大きく戦況が動くまでひたすら雌伏の時を過ごす事は彼らにとって少なくない重圧と不安を与えていたが、それでも行動を移して三カ月程度しか経過していないから、そうそうクルー達同士でいざこざが起きていないのがまだ救いだろう。
そんな中、キラは……
「は、はあっ、……し、死ぬ……」
「どうした? まだ、三セット、残って……いるぞ」
格納庫の片隅に設けられたシミュレーターで、奇人変人超人の巣窟であった特殊戦技教導隊の総元締めであるカーウァイに徹底的に扱かれていた。
もともと軍人として屈強に鍛え抜かれていたカーウァイが、異星人の技術によってサイボーグとして強化されているのだ。いかにスーパーコーディネイターといえども身体能力で勝ち目はない。
シミュレーターではジンやストライクダガー、M1といった特にこれと言って目を見張る所の無い『特徴の無いのが特徴』なMSを主に使用している。これは機体の性能に戦闘能力を大きく依存するキラのパイロット特性を考慮した為だ。
キラの場合、機動兵器の操縦に関するレクチャーなどマニュアルと開発関係者であるマリューや整備のマードックから聞いた話くらいで残りはすべて実戦で学んだ事と尋常では無い反応速度や強烈なGにも耐える強靭な肉体辺りがパイロットとしての特徴だ。
反応速度に関しては実質オーブ艦隊において最速を誇る超人レベルの化け物だが、実戦経験にのみ突出した歪な経験が、キラにMS戦闘における基礎的な技術を築く余裕を与えず、戦闘能力を機体に依存するという癖を植え付けてしまった。
パーソナルトルーパーとモビルスーツとでは運用法も厳密には異なるにせよ、人型機動兵器である事は変わらないだろうから、経験値においてはカーウァイに勝るものはこの陣営にはいない。
最も基本的な行動パターンの組み立てを行った特殊戦技教導隊出身にして、どこまでも基本に忠実なカーウァイは、基礎をほとんど実戦でしか学んでいない異端な存在であるキラに、操縦技術の骨格となる者を学ばせるために最も適した人材だった。
元々モヤシであったキラだ。サイボーグ化した事により人間の限界を超えた耐久性と体力を誇るカーウァイの、百機抜きのシミュレーション訓練に今にも死にそうになって、シミュレーターの椅子でへばっていた。
これはMAのパイロットとしては超一級だが、MSパイロットとしてはアマチュアのムウ、アサギ、ジュリ、マユラ達を始めとしたオーブ系のパイロット達も同じで、並べられたシミュレーターの中で魂を口からはみ出している。
「た、大佐。す、少し休憩を……」
「……五分、休憩、だ。エルザムや、ゼンガーなら、この程度どうと言う事も無かったが……」
比べる相手が悪いというべきだろう。
いわばMSパイロットのアマチュア組はカーウァイが一挙に引き受け、ザフト系の多少なりとも経験のある連中は、あらゆる能力が高い次元で整ったオウカと、DCが繰り出してくるであろうスーパーロボットとの戦闘を想定し、ウォーダンとククルが相手をしている。
オウカはともかく、後者二人――ウォーダンとククルの相手をする際には実機を用いるため、訓練を終えた後のパイロット達は、何年分かの寿命が縮まった思いをするのだった。
ナチュラル達は主に戦闘経験と能力の不足という問題があり、反面ザフト系というよりはコーディネイターのパイロットの特徴的短所として言われるのが、連携行動の軽視と個人の単独行動の多発傾向である。
努力さえすれば高い能力を発揮することを約束された彼らコーディネイターは、密に連携などの訓練を行わずともある程度のレベルで連携を取る事が出来、また戦争初戦での物量に勝る連合への圧倒的な勝利の美酒に酔ってしまった事もあり、
MS運用に関して一日の長がありながら、さまざまパターンを構築できずにいる。
MAと連合の油断を相手にしての勝利が、明晰な筈のコーディネイターの頭脳を傲慢と驕りで鈍らせてしまったためだ。
互いにMSという兵器を手にした今、国家・軍事組織として歴史と豊富な人的資材という骨太な骨格を有する地球各国は有効な運用法を構築し、ザフトのMSを苦しめる事だろう。
こういった連携などの運用にはカーウァイ含めウォーダンも講師として活躍している。つまるところメンデルではコーディネイターだろうがナチュラルだろうがMSに乗る以上は基本的に毎日死の一歩手前というわけである。
実戦に勝る訓練なしという言葉があるが、メンデルでは訓練は実戦と限りなく等しい言葉のようだった。
カーウァイとの百番勝負を五十一番でリタイアしたキラは自室のベッドに倒れ込むやあっという間に睡魔の腕に抱かれた。オーブに残っている両親の事、双子の姉弟だというカガリとの事、これからの事。
考える事はいくらでもあるのに、疲れ切った肉体はなによりも睡眠を優先させ、キラから考える力を奪っている。アスランやムウ、ニコル達も基本的に同じで、パイロット連中で元気なのはカーウァイやウォーダン、ククルにオウカ位だ。
カガリは時折メンデルにも顔を出すが、今も精力的に宇宙を飛び回って協力者たちを見つけるのに奔走しており、モニター越しにも見るその顔はやつれているようにも見えたが、眼は眩しいほどに輝き、彼女が今大きな成長期に居るのがキラにも見て取れた。
連絡を入れると必ずアスランと二人きりで話しているのは、ま、カガリも女性という事だろう。応じるアスランも毎度ドギマギしているのがキラにはおかしくて仕方ない。いい加減慣れても良さそうなものだが。
親友は、女性の扱いが苦手なようだ。カガリを女性らしいとは評価し難いが。
「そういえば、フレイはどうしたのかな……」
赤い髪の少女の顔がキラの脳裏をかすめた。その顔は、いつも悲しそうだった。笑顔を思い浮かべる事もある。けれどその笑顔はすぐに、父親を失った時のあの涙をこぼす顔に取って代わられる。
フレイ・アルスター。父を失い、コーディネイターを憎んで同じコーディネイターであるキラに殺させようとした哀しい少女。戦いに傷ついたキラの心を偽りの笑顔と言葉で癒し、互いの傷をなめ合っていた二人。
けれど、いつしかキラはその関係の歪みに気付き、フレイもまたいつしか優しくあり続けるキラに惹かれていった――。
フレイとはオーブでアスランと相討ちになって以来会っていない。マリューやムウの話ではアラスカでナタルと配属は異なるが、アークエンジェルを降りたという。フレイはもともと大西洋連邦の高官の息女だ。
戦火を避けるために中立のオーブの持つコロニー・ヘリオポリスに身を寄せていたが、蔑ろにされる事はないだろう。頭ではそう思い、納得させようとするが心がそれでは静まらない。
キラにとってフレイは様々な意味で、忘れてはならない少女なのだから。
「フレ、イ……」
眠りの暗黒に落ちる寸前、一度だけフレイの名を呼んだ。瞼の裏に浮かんだ彼女の顔は、やはり悲しげだった。
しかし眠りの暗黒は、優しく穏やかな白い光にとって変わられた。キラはまるで水中の中に浮かんでいるような浮遊感の中で、穏やかな気持ちのままゆっくりと瞼を開いた。なぜか、不安や焦りといった感情は胸には湧かない。
(キラ、キラ……)
「誰? 僕を呼んでいるの」
静かな声がキラを呼んだ。キラとそう変わらない少年の声だった。風の無い湖面のように静かな声だった。けれどその水底に暖かい情を感じる事がキラには出来た。
「君は、僕を知っているの? 僕も……君を知っている?」
声の主が目の前に立つ気配を感じた。キラの視界の先に銀色の髪をした少年らしい人影が映る。なぜか、口元から額に至るまでは漆黒の影に覆われて窺い知る事は出来ない。
人影は淡く微笑したようだった。いつかどこかで――そんな気持ちがキラの胸に新たに湧き起る。そう、自分はこの少年を知っているのだと。
(絆、というものかな)
「絆?」
(お前ではないお前とおれと仲間達の間に結ばれた絆は因果の壁をも超えるのかもしれないな)
「君は、何を……?」
(……キラ、今お前達の世界にはあるべきではない異物が無数に存在している。だがそれ自体はさしたる問題ではないのだ。なぜならそれもまた多種多様な分岐こそが、生命の進化である様に、世界そのものもまた自身の変革を望んでいるからだ)
少年はキラが理解していない事を悟りながら、それでも言葉を続けて行く。分からなくてもいい。こうして話すという行為にこそ意味があるのだろう。
(おれがお前達の世界に飛ぶにはまだ因子が足りない。だがタイムダイバーの辿る時空を超える因果の糸は既に絡みあい、いずれ見える日は来るだろう。その時までお前達の力で世界を守ってくれ。おれもいずれ行く)
「世界を守る。……それは言われるまでもないけれど、でも君が言っているのはナチュラルとコーディネイターの争いだけじゃないんだね?」
(そうだ。だが、今世界に起きている争乱を止めるのは世界に属するお前達でなければならない。今だ飛ぶ事の出来ないおれにはこれ位しかできないが……受け取れ)
「!? これは」
少年が差し伸べた手をおそるおそるキラは握った。細く長い、男のものとは思えぬ華奢な指だった。そしてその指と触れあった瞬間、キラの脳裏、いや魂に流れ込むモノがあった。
それは、ストライクを駆って映画に出てくるモンスターの様な機械と戦う自分。万里の長城ほどもある巨大な龍に見知らぬロボット達と挑む自分。宇宙の暗黒を覆い尽くす億を超える破滅に挑む自分。
世界の破滅を願い、哄笑する男にフリーダムを駆って挑む自分。一万二千年の未来でまつろわぬ悪霊を纏い宇宙の全ての支配を望む霊なる帝王との戦いに、宇宙の希望と生命を背負い、仲間と共に挑む自分。
「――君は、君は、クォヴ……」
(キラ、目覚めた時お前はこの記憶を忘れるだろう。だが、それでもおれ達は仲間だ。それだけは絶対に忘れない。お前達が忘れていても、おれの魂は覚え続ける。たとえおれという存在が消え去っても。
ゼオラやアラド、そしてαナンバーズの仲間であるお前達がおれを“人間”にしてくれたのだから)
少年は背後から差し込む光を振り返り、動けぬキラを尻目に光の中へと消えていった。最後に、はっきりと口元に浮かべた微笑みをキラに残して。
キラを始めとしたオーブ艦隊の主だったパイロット達が不可思議な夢を見ていた頃、警戒ラインのシフトを担当していたオウカは、予期せぬ敵と戦う羽目に陥っていた。
メンデルへのルートは巧妙に隠してはいるが、位置からしてメンデルの位置が割れるのはそう遠い話ではないだろう。
問題は、すでに交戦に入ってから十分。とっくに敵が友軍に連絡を入れている事だろう。今さら撃墜しても手遅れだという事だ。そして、出会った敵の戦闘能力の高さにも、オウカは手をこまねいていた。
オウカのパイロットとしての能力と、CE技術による大改修を受けているとはいえラピエサージュの組み合わせはキラとフリーダムの組み合わせ以上に脅威的と言っていい。そのオウカが苦戦していた。
デブリの多く浮かぶ地帯で、残留するNジャマーとの影響もあいまってレーダーは碌に役に立たない。オーブ軍のパイロットスーツに身を包んだオウカは、出会った敵の姿に凛々しい瞳を細めた。
「フリーダム! 既に量産体制に入ったのですね」
そう、オウカと互いに予期せぬ交戦に入ったのはキラの愛機フリーダムであった。もともとザフトの開発した機体だ。量産されていてもおかしくはないが、まさかそれとこうして勝ち合うとは。
希少な核動力機だ。その動力の秘密と秘密がもたらす高い戦闘能力をいたずらに連合側に知られたくない為にこうして、連合の手が薄い宙域を選んだのだろうが……
「お互いに不運という事かしら?」
EモードのO.Oランチャーから放たれた光の矢は、岩塊を消し飛ばしながらフリーダムに迫る。プラズマジェネレーターの生むエネルギーはフリーダム・ジャスティスに使用される核分裂炉をはるかに上回る。
現行の技術で施された対ビームコーティングなど無力に等しい。フリーダムは青い六枚の翼を広げ、オウカの一撃を回避し腰のクスフィアスレールガンでラピエサージュの前方にあった岩塊を砕き、砕けた岩が雨あられと漆黒の装甲に降り注ぐ。
間接的な攻撃を回避し、オウカは左手の四連マシンキャノンで牽制の弾幕を張った。元々は五連装だったが、砲門の数が多いと射撃の際のブレが大きくなり装弾数も少なくなる為、一つ砲身を減らしている。
フリーダムのPS装甲ならば受けても問題の無い攻撃だが、フリーダムのパイロットはそれを嫌って機体を捩じるだけで回避し、ルプスビームライフルを立て続けにはなって返礼とする。
ビームライフルといえども、320mm超高速インパルス砲“アグニ”に匹敵する破壊力だ。CE製のMSとしては桁外れの火力だ。ラピエサージュの近くを掠めてゆく光を横目に、オウカは早く決着をつけねば、とわずかに豊かな胸の内を焦がした。
「機体の性能ならラピエサージュの方が上。私が機体の性能を引き出せれば!」
一方でフリーダムのパイロットも、ラピエサージュの戦闘能力の高さとパイロットの腕前に舌を巻く思いだった。機動兵器での戦闘にかなり長けている。幼い頃から相当の、いや尋常ではない訓練を受けているのだろう。
「報告にあったオーブを脱出した艦隊の兵器か。DC製――ビアン・ゾルダーク博士が造られたのならば、あれだけの性能も納得が行くが……。だが、ここで落ちるわけには行かない。おれと出会った不幸を呪うがいい!!」
フリーダムのパイロット、ライディース・V・ブランシュタインは、オウカ・ナギサの駆るラピエサージュへ五色の砲撃を浴びせかけた。
キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、ラクス・クライン、カガリ・ユラ・アスハ、ムウ・ラ・フラガ、イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、アサギ・コードウェル、ジュリ・ウー・ニェン、マユラ・ラバッツに
第三次スーパーロボット大戦αでの戦闘経験がちょっぴり与えられました。
……空気読めてなかった、かな? 31.5話の予定だったけど字数多かったので、32話になりますた。
サイコドライバーは神に近い力をもった汎超能力者、でしたっけ? シンは、そこまでいかない方がシンらしいかなあ。
今回はここまでです。では、また次回で。ジャスゲルミルはきっといいものだ!
まさか、こんな時間にリアルタイムで来るとは
何やってんだ元四天王w
そして久保の台詞に目から汗出て来たわ…GJでした!
GJ!
久保キター!と同時にシン好きな俺涙目w
久保も好きだからシンとの絡みを見てみたいZE!
まぁ、絶望的だろうけどorz
気になったんだけど
ビアンSEED氏のシンは種割れじゃなくて念動力持ちなのか?
GJです!!
ヴィガジにたこ焼き屋台をやらせるなんて発想力に俺が泣いた…
他の人からもリクあるようなのでジャスゲルミルは出そうと思います。お楽しみに。
あと皆さんに聞きたいんですが、既に指摘された所でもありますように、
OG2のブリットの出番の多さには議論があります。
一応、拙著においてパピヨンが基本的にシンやブリットのライバルポジションにいるんですが、
パピヨンの出番は多すぎますか?
パピヨンはライバルとしてシンやブリットとぶつけられる上に、
DCの一員としても使えるので書き手としてはありがたいんだけど…
GJっす、久保が出てきましたか、しかしインスペクターでしたっけ?違和感ね〜屋台とか
喫茶店とかマジで天職じゃなかろうか。
サイコドライバーは確か最終的には因果律すら操作できるようになるらしいですからね、
マジで神の領域、でもサイバスターのラプラスデモン・コンピューターもそんな感じだった様な
・・・うろ覚えですが。
230 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/22(月) 05:21:17 ID:pBznXlLi
ビアンSEED氏グッジョブです!
ここで空気を読まずに俺が一言
シカログのマスター姿が某漫画の海坊主で連想されたのは俺だけで良い
ぐは、ageちまった…
ちょっとアギーハ姐さん口説いてアイアンクロー食らって来る
ノシ
ビアン氏乙。そして何やってんだ四天王。
ついでに久保が来なければいけない程の何かも待ってるのか。今のところヴォルクルス出るかもしれないからか。
そしてこのライディースはどちらの世界の住人なのか。
マイアーの名前は表に出て居ないっけ……出てたら何かリアクション有りそうな気もするんだけど。
次回を待つしかないか。
>>11氏
紅茶の出番が多い?
逆に考えるんだ、「ブリットに加えてシンまで好敵手ポジに来るから必然的に出番が増える」
そう考えるんだ。
たこ焼き屋やってるヴィガジで、ろくブルの赤城思い出したw
ビアン氏GJ
それにしてもライがいるのか。
エルピス事件が起きてないだろうから名前がFじゃなくてVのままっぽいし、たぶんこちら側の人だろうけど
クォヴレーの干渉で少しは大天使永遠組がまともになればいいけど
一つ豆知識を言っておくと、カイ少佐の中の人は種死ではモブキャラとしてレギュラー出演者だったからな。
>>227 念動力持ちっていうか、ビアンSEEDの世界観だと、念は先天性のものではなく修行次第で誰でも体得できるもの(微妙に菊地分入ってるから)
まあどこまで体得できるかはやはり才能になるだろうが
種割れは普通に持ってる
>>234 シャドウミラーの側の世界のライかもしれないぜ。
あちら側はアインストキョウスケが大暴れしてたみたいだし。
>>223を見て思ったが、サルファの記憶ってことは
ゲンドウやルアフ、ケイサルにことごとく論破された記憶もあるんだよな?
かえって余計にヘタレるような…
>>238 「強敵」に立ち向かって「玉砕」した記憶は糧になるよ
つたなくとも自分の頭で考えた言葉を紡いだんだから
少なくとも電波に操られるだけよりはw
スパロボのキラはどれも性格が異なるが、序列で表すと
Jキラ>>(熱血の壁)>>Wキラ>>サルファキラ
なんか
サルファキラ>>>(操り人形の壁)>>>スクコマキラになりそうな予感
そりゃ今までスパロボに出たキラは全部無印だぜ
完全に手遅れな種死キラを修正するなんて余程の原作無視やらかさなきゃ不可能
11氏のキラの末路はどうなるかな?
つかスクコマのキラは、ゲーム本編前の戦争でダンナーの擬態獣と渡り合えた数少ないロボット乗りで英雄の一人って扱い
パッケージにも運命を差し置いてストフリが出てる時点で、明らかに原作通りのラクシズマンセーする気満々でしょ
期待できる要素が全く無い
まぁ所詮スクコマwだからいいじゃないか
とうの昔に見捨てられたはずのタイトルを、種死の実験の為に復活させるなんてバンプレもやるもんだ
一緒に犠牲になったマクロスゼロとゴーダンナーには気の毒だけど
>>246 種死うんぬんを抜きにしても斜め上だよな新スクコマは
何かシステム改善を謳ってるけど、そもそもスクコマの方向性自体がスパロボファンの
期待している方向と違うんだから、システム改善なんてその食い違いに対して何の効果
もないだろう
まあ新規ファン層の開拓狙ってるのかもしれんが
これでバンプレも、「スパロボの需要者」が種死をどう認識してるかを身を以て知るだろ
新スクコマはOG3に出すオリジナルの先行公開だろ?
>万里の長城(ry
真〜よりも先にマグマ獣ダークロンを思い浮かべた自分を恥じたいです
>>247 実はコンパチゲーのバトルコマンダー層を狙ってたりしてw
いや、俺がそうなんだけど。
スクコマも発表時期が違ったら…
ACE3の直後にあのムービーは無いよ…
ロボットアニメのリアルタイムバトルという点ではACEの足元にも及ばないからな
ACEにはない戦術要素があるとはいっても、リアルタイムで急かされてちゃそれを楽しむことができん
もちろん実際の戦争での戦闘指揮は瞬時の判断が要求されるけど、ゲームにそれを求めてもな
>>253 戦争シミュレーションは所詮戦争ごっこだからな
実際の戦争みたいに時間の制約つけられちゃたまらん
資金や戦力の不足なら腕の見せ所になるけど
流れブッタ切るが、ビアンSEEDだとバリーってどうしてるんだろ
原作だと、無印時代はクサナギに搭乗してヤキン戦でジャン・キャリーと一緒に戦っていたが
あの桃色汚物の欲望のためなんぞに戦闘指揮させられるなんて真っ平ごめんこうむる>スクコマ2
>>250 それがこっちにも来るなら龍虎雀武王と共に命を削りながら戦い抜いて崖崩れに消えたあの漢をですね……
>>255 一足先に武者修行かオーブの防衛隊辺りじゃね?
>>255 デストレイ繋がりで、バンと一緒に南米戦線で戦ってると予想
259 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/22(月) 20:40:52 ID:Pk4Kui5W
>>258 バンが戦ってる場所はアフリカだぞ
まあ南米の方でも連合への反抗作戦の兆しがあるみたいな事は書いてあったが
とりあえずバリーが大雷凰とか乗ったらフォルカでもヤバいと思う
α外伝の親分ってルートによっては死ぬよね…………?
確かに死ぬけど、スレードはもうウォーダンが乗ってるからなー
スレードゲルミル対スレードゲルミル? 怪獣大決戦に近いものがあるような、恐ろしい……。
最近スパロボ系のスレを読んでいて、グルンガストの合体機であるっぽいゴルンガストに何というか、魂が震えましたよ。絵しか見てないから前後の流れ分からないんですけど。
許可もらえたら出したいくらいです。
落ち着け、落ち着くんだ660氏。
α、α外伝、第2次αしか知らない俺に教えてくれ
アストラナガンって今どうなってる?
復活すれば最上級の機体だと思うんだけど
>>265 アストラナガンは幾多の平行世界に置いてもたったの一機しか存在しない事になっている、
そしてサルファにおいてアストラナガンとパルマーの起動兵器と融合、ベルグバウとなってしまう
その後、パルマーでディス、レヴを搭載、改造されディス・アストラナガンになり、クヴォレー・
ゴードンの愛機になる、よって復活はありえない。
じゃあOGのアニメ冒頭のアストラナガンVSディス・アストラナガンの戦いはどう説明するんだ?
1機しかいない、ってのはすぐ覆る気が…
アレはただのファンサービスだろう。
ありえない邂逅だからこそ因果的にヤバイので、両方が必死になって相手を消そうとしてたと見る事も出来るが。
>>266 なるほどアリガトー
ベルグバウとやらが気になるので第3次αを買ってみるよ
しかし何故そんなややこしい設定にしたんだろうか
最新技術で動くアストラナガンを見たかったぜ
>>267 平行世界はそれぞれ相対的に時間が流れてるが
アストラナガンを基準として計った絶対時間軸がずれてる可能性がある
アストラナガンに乗ってたのはまだ枷から外れてないイングラム
ディスの方は既に枷から開放されたイングラムと融合した久保だからな
>>267 あれは精神世界なんじゃね?裸だったし。
流れを読まんですまんがWのスーパー系はそんなに弱いのか?
ブレードやアーバレストとかならともかくM9や種のMS、ナデシコ勢にも圧倒されるほど?
・・・いや、Wのアンソロみてたら、そんな描写だったんで気になったんだが。
次回作では復権していてほしいものだ・・・
弱くは無い
ただMSとM9とエステバリスはともかく黒百合・ミーティアなら圧倒できる
まぁガオガイガーはそんなの関係なく強いがな
>>274 改造の仕方によってはWガンダム最終ステージで魔人皇帝が偉い勢いで大量のサーペントおとすけどなwwww
>>275 俺はお気に入りの倍率関係でゲッター使ってた。
トマホークブーメランで十分落ちてくれるぜw
Wはうちのはカイザーと真ゲッターが主力になってたな。
特に真ゲッター1はBPを技量のみあげまくってたからMSとか並に避けまくる機体になってた。
カイザーはカイザーで射程延ばせば5000近い武器が射程1〜5で無制限に使えたし
きっちり手入れ(装甲or運動性+武器+必要ならEN、後は適切なパーツ装備)すれば、
普通に強いのが最近のスパロボだからな。
ヴァルストークファミリーは種世界に馴染みすぎてるから困る
ヴァルストークファミリーはなぁ……長男に至ってはあの劾にすらいじられた人物だから
そりゃあ邪気眼やっちゃったしなぁ……
WのヴァルストークファミリーはDのツンデレキラージョッシュと同じくらい見本にしたいくらいの良いクロス主人公だからな
ヴァルストークファミリーと種死のクロスで、前大戦時にキラ達と一緒に戦ったという事を信じてもらうために戦闘記録提出したら、魔神皇帝や真ゲッターのあまりの厨性能に唖然とするプラントを想像して吹いた
親父も宇宙創生突破しちゃうし、姉ちゃんは弟の邪気眼に赤飯炊くし
オーブはブラスターボルテッカとラダムVSイバリューダで完全壊滅だし
実にネタ溢れる作品でした
クロスオーバー倉庫がまた荒らされてる
トップから各作品へのリンクがウィルス入りのページに飛ばされる
>>283 もしお前がやってなかったら貧乏くじ引いたな
こういうのは言ったやつが疑われるんだ
ま、どーせお前がやったんだろうけどなwww
>>283 で?同じ文章書き込んだのはここで何ヶ所目だ、坊や?
反応もどこも全く一緒だし、マッチポンプじゃねーかとか疑う。
43 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2007/10/24(水) 16:59:00 ID:???
真相はどうあれ荒らしを報告しようとするのが間違い 報告する=荒らし
これ2ちゃんの法則
以後この話題はスルーで↓
シャドウミラーの世界のライって、エルピスの事件で死んだんだっけ? それともヒュッケバインの暴走の所為?
たしかテロで死んだはず。
……兄貴も一緒に死んだんだっけ?
ブランシュタイン家は全滅だったろ思う
エルザムとマイヤーは死亡って話はあったと思うけどライ死亡はいってなかったような気が
向こう側のメンバーに関してはほとんどのメンバーがどうなってるか謎のままじゃないか?
明確に死亡はあとはゼンガーくらいで
そうだったっけ。
よく覚えてないな。
いまだによくわからんのだが魚男はゼンガーのクローンなんか?
クローンじゃなくてアンドロイド
戦闘用頭脳としてゼンガーの記憶をコピーしている
クローンってかゼンガーを基にした人造人間(OGs)設定
もとはメイガスを守る為に洗脳その他の改造を受け入れたゼンガーの偽名(α外伝)
って感じだったと思う
>297
α外伝は違うな。
そもそもウォーダンという名前が出たのがOG2(GBA版)だし。
設定自体は>296の言ってる通りのはず。
> 魚男はゼンガーの
ゼンガー顔のシーマン浮かんだwww
スレゲと混同したんかな?
影鏡初登場のAでは彼らの世界でアムロが戦死してたり(元ネタはトミノ小説版だが)したから
OG世界の影鏡のいた世界でもエース級パイロットの戦死は多そうだな
α外伝世界、ニルファ世界、OG世界がごっちゃになってる人はけっこういるよな。
まあα外伝からニルファの流れはややこしい
恐竜帝国とか二度も滅ぼさんといかんしなあ
304 :
296:2007/10/24(水) 23:09:54 ID:???
サンクス。魚男の割れた仮面の中から見えるツラと髪の色が親分と同じだったからどうなんかなと。
>>304 難しい話になるが人一人の記憶を複製しても体の記憶に脳の記憶が引っ張られて発狂するってことがあるから
外見もオリジナルとほぼいっしょに作られてあるんじゃないかと
哲学的な奴で生身から人造の体に記憶を写した時生身の体にあったものが人造の体に無いと記憶が「この体はおかしい!」ってなって
拒絶反応が起きて発狂するらしい
微妙にスレチか
>>305 そもそもそんなことが実際に起こるかどうかわからん。
>体の記憶に脳の記憶が引っ張られて発狂
>>305 魂の行方、いずこにありや、か 攻殻のゴーストをコピーするとかのアレ?
第9話「重なる過去と未来の行方」
先行していた部隊からの連絡を受けたハガネはDC残党軍と先行部隊との交戦地点に到着していた。
そこから出撃した各機のパイロット達は敵部隊の構成を見ると、敵部隊が今まで幾度も刃を交えてきたユウ達のものであることを認識する。
「わお、いつもの囮ちゃんたちじゃない?」
「だが今度は逃がしゃしねえぜ!」
「もしかしてあの部隊には…!?」
敵はビルトファルケンを奪われた戦場にて再会したかつての仲間である
ゼオラがいた部隊であることに気付いたラトゥーニがぽつりと呟いた。
「またあいつらか!?」
敵部隊後方にいるランドグリーズ3機を確認し、メキシコ、ハワイと戦ってきた敵部隊が
今はこの人型の戦車のような機体を使っているということを先日知ったシンが吐き捨て、それにブリットが応えた。
「シン!ここで奴らとの決着をつけるぞ!」
「わかってる!新型だろうが何だろうが関係ない!」
「アサルト1から3,5へ。今からハガネが30秒間の援護射撃を行なう。
まずはそこに俺達とイルム中尉で突っ込むぞ、準備はいいな?」
「アサルト3、了解です!」
「アサルト5、了解!」
キョウスケからの指示が飛び、その直後にハガネの機関砲、ミサイル、連装副砲が敵の部隊へ放たれ始めた。
「くっ!こっちには来ないと思ってたのに!
けどこうなったら仕方がないわ!オウカ姉様がいなくても私があの子を助けてみせる!」
その頃、ラトゥーニと同時にゼオラも敵がハガネであることからかつての仲間であるラトゥーニがいるであろうことを確信し息をまく。
だが、そんなゼオラの焦る気持ちを知ってか知らずか、隊長であるユウは自分達の部隊が殿、つまり囮であることを忘れていない。
撤退戦であるならば無理して敵部隊を撃破する必要はない。
いかにして自分の部下に生じる犠牲を少なくするか、ユウはそれを念頭に置いた指示を出す。
「カルチェラタン1より各機へ。しばらくの間、敵をここで足止めする。
フォワードは敵を牽制。バックスは現在の位置を極力キープし敵をひきつけろ。撤退の手順は伊豆のときと同じだ。無駄死にをするなよ」
「「「「「「「「了解!」」」」」」」」
ハガネの威嚇射撃をなんとか掻い潜りながらもユウの部下達が一斉に返答を行なった。
しかし煙に包まれながらも敵に牽制砲撃をするフュルギアに向けて、連邦軍でも随一、ハガネ自慢の突撃部隊が爆煙の中から現れる。
「な、何だと!?うわああぁぁ……」
爆煙の中から突如として現れた突撃部隊に驚き、フュルギアは動きを止めてしまうが、
次の瞬間にはその機体にアルトアイゼンのヒートホーンが突き刺さっていた。
さらに、隣にいたフュルギアはいきなり味方機が撃墜されて動揺している隙にビルトシュバインのビームソードに貫かれる。
残りのフュルギア達は距離を詰められたことを知るとミサイルをばら撒きながら後退を始めた。
「ブーストナッコォ!!」
ミサイルが上げた爆煙を吹き飛ばしながら、巨大な拳が後退を始めたフュルギアの1機に迫っていく。
鋼鉄の拳はフュルギアのコックピットを叩き潰すとそのまま機体を押し込んでゆき、
巨大な岩に叩きつけられた機体は大きな音を立てて爆発した。
標的を破壊した拳はロケット噴射で減速しながらその主の下へ戻っていき、ガシンという音を立てて主は装着を完了する。
グルンガストは、接続を確かめるように指を細かく動かしながら、空いた片方の手で別のフュルギアのリニアカノンの1門を掴み、
その機体を一度上へ持ち上げて、そのまま地面に叩きつけた。
グルンガストの横をヒュッケバインMK−Uが通り過ぎ、それをグルンガストが追っていく。
「こういうときは頼りになるな、ブリット」
「いえ、敵のかすかな念を感じ取ろうとしただけです」
「はぁ〜い、お待たせ〜♪お姉さんとドキモグ叩き大会の時間よん」
残り2機は運良く突撃部隊の怒涛の近距離攻撃から距離を置くことに成功していたが、それはエクセレンの思う壺。
機体をくねらせながらオクスタンランチャーを振り回して狙いを定めた白騎士の槍から放たれたビームが1機を薙ぎ、
さらに鞭のようにしなるエネルギーが伸びていき、最後の1機を呑み込んだ。
だが短時間で6機の反応が消えたことに対してDC残党軍も何も手を打たないというわけではない。
「カルチェラタン1より各機へ!フォワードが全滅した!バックスは距離を置き、弾幕を張りつつ後退を急げ!
距離を確保した機体は可能ならば狙撃してくるホワイトエンジェルと白騎士を狙え。白騎士を旧式の改造機だと侮るなよ!
カルチェラタン2、7は俺とバックスの援護!リニアカノンで撃ち落すぞ!」
ユウが部隊を立て直すべく指示を飛ばし、DC軍各機に統率された動きが戻ってきた。
ランドグリーズ3機は、戦場の中心に近付きながら狙撃ポイントを確保して援護射撃を開始する。
そしてそれらの動きを空中から注視していた機体があった。
「……解析終了。間違いない、あの機体にゼオラが…」
「あの動き、ラトね!?」
ラトゥーニの乗る量産型ヒュッケバインが1機のランドグリーズに狙いをつけると、前線へ向かっていく。
その空中から接近してくるヴァイスリッター、アンジュルグを狙撃すべく空中に意識を向けていたゼオラも、
接近してくる量産型ヒュッケバインMK−Uの姿を確認し、その動きが見知ったものであることに気付いた。
いてもたってもいられずゼオラは狙撃を中止して、ラトゥーニの下へと向かっていった。
「カルチェラタン7!不用意に動くな!」
「でもあの機体にはラトが!!」
「ラト?何のことだ?」
「あれには私やアラドの仲間が乗っているんです!」
「何…!?」
「仲間ってどういうことなの!?」
「すみません、今は説明している時間がありません!ラト、聞こえる!?私よ、ゼオラよ!」
「!」
「今ならまだ間に合うわ!私達の所へ戻ってきて!アラドやオウカ姉様もあなたを待っているわ!」
「オウカ……姉様が……?」
「オウカだと!?」
通常周波数の通信が戦場を駆け巡り、それぞれのパイロットに驚き、焦りが生まれた。
「お、おい!どういうことなんだ!?」
「もしかしてあの子…スクール出身じゃない!?」
「…考えられるな」
「だ、だったらラトゥーニの昔の知り合いが敵の中にいるってのかよ!?」
「…ああ」
「まさかライ、そのことを知ってたのか?!」
「そうだ」
「てめえ、何で今までそれを黙ってたんだ!?」
「俺の命令だ、リュウセイ。ラトゥーニに余計な嫌疑をかけたくなかったんでな」
「!」
「ラト!聞こえているんでしょ!?」
「ゼオラ、私は…」
ゼオラの張りのある声が通信モニター越しに量産型ヒュッケバインMK−Uのコックピットに響き渡る。
だがゼオラの言葉はラトゥーニを説き伏せることはできなかった。
ラトゥーニの心は動かない。彼女は決意していたのである。かつての仲間達を必ずその手で救い出すのだと。
「いったん下がるんだ、ラトゥーニ!」
「ううん、私、決めたの。あの子やアラドをスクールの呪縛から解くって」
「!」
「ジャーダやガーネットがそうしたように、お前もあの子を助けたいってのか?」
「うん」
(敵を助けるだと?何を馬鹿な)
「んじゃま、私たちでラトちゃんを手伝ってあげるってことでオーケイ?」
「エクセ姉様、任務遂行のためには…全機を撃墜したりするべきではございませんですか?」
「撃ち落すばかりが能じゃないってことよ」
「それでは命令違反になっちゃうですでしょう?」
「…敵の新型機を奪えればこっちのプラスになりますし、敵の情報も聞き出せるかもしれませんよ」
それまでラトゥーニの言葉に耳を傾けて沈黙を保っていたシンが口を開いた。
「そうそう♪わかってるじゃないシン君。そういうとこは臨機応変に。ロボットじゃないんだから、雰囲気読まないとね」
(それで兵士が務まるものか。…ロボットそれの何が悪い?任務を遂行できない兵士に存在価値などない…
だが私はその価値のないことをやろうとしている…そのことに嫌悪感を抱かなくなっている…くっ!やはり異常は言語機能だけではないというのか!?)
「カイ少佐…」
「ああ、シンの言うとおり新型機の件もある。ラトゥーニ、この機会を逃すなよ」
「はい」
「よし、ラトゥーニ機の近くにいる者は彼女を援護!他の者は敵機を牽制しろ!」
ハガネのPT、SR各機が一斉に動きを開始する中、シンがラトゥーニに通信を繋いだ。
「俺達が全力で他の奴らを蹴散らしてやる。助けられる仲間がいるんだ、絶対に仲間を助け出せ!」
「う、うん。ありがとう…」
普段あまりシンと話すことのないラトゥーニは思わぬ励ましにキョトンとしてしまったが、励ましを送り終えたシンはそんな彼女の表情には目もくれない。
ラトゥーニのことをよく思っていないとか、そういうわけではないのだが、その真紅の瞳には今はDC残党軍しか映っていなかった。
そのままシンはビルトシュバインを駆り、雨のように降り注ぐレールガンの真っ直ぐにバレリオン部隊に向けて突撃していく。
シンはかつての自分をラトゥーニに重ねていたのである。守る、と約束しながら彼はその相手を守りきることができなかった。
しかもその相手を彼から奪ったのは、かつて彼から家族の命を奪い去った憎き仇。
守りきることができなかった家族、女性。
失った、奪われたときの悲しみ、無力感、苦しみを歳不相応にシンは知っていた。
「ユウ!向こうはゼオラを狙うつもりだよ!」
「わかっている。後退しろ、カルチェラタン7」
「ラト、こっちへ来て!一緒に姉様たちのところへ帰るのよ!」
「聞こえてない……!?どうしたの、あの子?」
「やむを得ん。カーラ、お前はホエール2を呼び出せ。予定より早いが引き上げるぞ」
「分かったよ」
「俺はゼオラのフォローに行く。バックスのバレリオンを頼むぞ、皆こんなところで死なせるのは惜しい」
「うん、ユウも無理はしないでね」
「フッ…誰に言っているつもりだ?」
ユウのランドグリーズがショットガンを携えてゼオラの機体の後を追って戦場の中心へ向かっていった。
その背中をカーラは心配そうに見ていたが、ユウを止めることはできなかった。
カーラも家族を失ったときの悲しみを知っている。だから部下や仲間達を失いたくはなかった。
だから仲間を助けに行くユウを止めることはできなかったのだ。
312 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/25(木) 11:00:15 ID:CCadQ25H
私怨
シンは、ラトゥーニの邪魔をする機体を排除すべく、ゼオラのランドグリーズの壁となっているバレリオンに向かっていきながら、
ビルトシュバインの新たな力を起動させることを決意した。
「テスラドライブ起動!」
シンの掛け声とともに、ビルトシュバインの背部に付けられた空中浮遊ユニットであるテスラドライブに光が灯り、機体の高度が徐々に上がり始める。
ハガネが伊豆基地に到着した際に、ビルトシュバインにはマオ・インダストリーの頼みを受けたレイカーの手配によりテスラドライブの備え付け作業が行なわれていた。
カイ・キタムラにより提案されたゲシュペンスト強化計画の一環として、既存の機体へのテスラドライブ付設のための試行錯誤が既に開始されていたのだが、
乗り手不在となっていたビルトシュバインはゲシュペンスト系列の機体であることから、そのテスト機として選ばれており、
ようやく完成した付設用テスラドライブユニットの試作型が今、起動したのである。
「シュミレーションしかやってないけど、そんなのデスティニーだって同じだ!行くぞビルトシュバイン!!」
シンはレバーを引き、出力を一気に引き上げる。それによりビルトシュバインの機体は急上昇してバレリオンへと肉薄した。
「バ、バカな!あの機体は空を…うわあああぁ」
言い終える前にサークルザンバーが1機のバレリオン頭部の砲身を切り落とした。
ビルトシュバインはそれに満足せず、バランスを崩して落下していくバレリオンを踏みつけて加速し、次のバレリオンに斬りかかる。
それを迎え撃つべくバレリオンからミサイルが放たれるも、シンは機体をロールさせてそれを回避し、ザンバーを横一文字に振り抜いた。
「ビルトシュバインめ…翼を手に入れたか!」
バックスのバレリオンが次々とビルトシュバインやアルトアイゼン、グルンガストに斬り捨てられていくのをみて
ユウが苦虫を潰したような表情を浮かべた。誤算であったのである。
ビルトシュバインが滞空能力を備えていたことが。シンが空中戦に想像以上に慣れていたことが。
とはいえ、今の彼にはバレリオンのフォローに回る余裕はない。
頭の中を何かに締め付けられるような感覚を覚え、その感覚の先に目を向けるとそこにはやはりブリットのヒュッケバインMK−Uがいた。
「チャクラムシューター、GO!」
ヒュッケバインMK−Uから放たれた、ワイヤーを付けた戦輪がランドグリーズに迫ってくる。
しかしランドグリーズは手にしているショットガンを構えると、向かってくる戦輪を撃ち落とした。
「お前達、ゼオラをどうするつもりだ?」
「事情を知らないのか!あの子は自分の意思と関係なく戦わされているんだぞ!」
「だから、助けるというのか?」
「ああ、そうだ!」
距離をとったヒュッケバインMK−UはGインパクトキャノンを機体に接続させてランドグリーズに向ける。
同様にユウも肩部リニアカノンを構えてヒュッケバインMK−Uに向けると、2人はほぼ同時に引鉄を引いた。
両者の攻撃は正面からぶつかり、大きな爆発が起こって両機の視界が塞がれてしまう。
「世迷言を……戦場にいる全ての者が自ら好んで戦っているわけではあるまい」
「何だと!?」
「彼女には彼女の事情や戦う理由がある…それに干渉する権利がお前達にあるのか?」
「俺にはなくてもラトゥーニにはある!あの子は自分の仲間をずっと探していたんだ!」
「だからと言って、本当にそうだという保障などない!」
思わずブリットが口を閉ざす。だが沈黙は長くは続かなかった。
ランドグリーズのコックピット内にシンの怒鳴り声が響き渡る。
「知ったふうなことを言うなああああ!!」
「何だと!?」
「あんたは、戦いたくもないのに戦わされる子がいるんだってことを知ってるのか!?
都合の悪い記憶は消されて、頭をいじくられる人間がいるって知ってるのか!」
シンの脳裏に蘇る、ミネルバの医務室で全身を拘束されながらも暴れ続けるステラの姿。
ベルトで縛られて拘束された彼女の手からは、もがき暴れたために血が流れ落ち、自殺防止のために口にタオルを押し付けられていた。
幾晩も枕元で彼女が目を覚ますのを待ち、意識が、記憶が戻るのを待っていた。
やっと記憶が戻っても、彼女には輩出された研究機関やしかるべき設備がないと自分の命を保つことすらできないという枷が付けられていた。
そんな子をこれ以上増やしてなるものか、この信念が彼を強く突き動かす。
しかし、それで「はい、そうですか」と納得するユウではない。
「ゼオラがそうだと言いたいのか!?だが貴様の言うことが一般論として正しくともゼオラがそうだという証拠がどこにある!?
かつてはあのヒュッケバインのパイロット仲間だったのかもしれないが、今は俺の部下だ。
そうならば俺は部下を守らなければならん!!」
ブリットのヒュッケバインを他のバレリオンに任せ、ユウは狙いをビルトシュバインに絞る。
ビルトシュバインは高度を下げながらランドグリーズへと迫っていくが、
それに対してユウは両肩に備えられたマトリクスミサイルを、機体を後退させながら発射した。
ミサイルはビルトシュバインに向かいながらも、その中からいくつもの小さなミサイルが姿を現してシンに襲い掛かる。
シンは機体の高度を一気に下げて態勢を整えなおし、携行しているメガビームライフルの引鉄を引く。
数銃のミサイルの中から障害となるミサイルだけを撃ち落しつつ、サークルザンバーを起動させたビルトシュバインがランドグリーズに斬りかかった。
「そうそう何度も貴様の斬撃を受けるわけにはいかん!」
シンとは幾度となく戦場で相見えてきたユウは、その有する念動力と併せることによりシンの斬撃パターンを見切りつつあった。
ビルトシュバインの斬撃を、機体を後ろに下がらせて回避すると同時に、ショットガンのトリガーを引く。
散弾はザンバーを展開するビルトシュバインの左腕に降り注ぎ、幾つかの弾が左腕を撃ち抜いた。
するとビルトシュバイン左腕部のビーム刃が消え去り、次の散弾がビルトシュバインに向けて放たれる。
しかしそれをシンはなんとか回避し、右腕にビームソードを握らせた。続いて、連続してビームソードで斬りかかるのだが、
ランドグリーズはその間合いの外ギリギリの位置をキープしながらもビルトシュバインから狙いを外さない。
ユウは振り下ろされたビームソードを、機体を横にすべらせてかわし、近距離からファランクスミサイル、マトリクスミサイルを発射した。
「貴様は確かに強い…だが捉えたぞ!完全にな…さあ己の運命を受け入れろ!!!」
運命。かつての愛機と同じ言葉がシンの心に突き刺さる。そして無力感と絶望が再び蘇ってきた。
オーブで一度は倒したはずの憎き仇であるフリーダムに馬鹿にされたように撃退され、
さらに、真の力を解放した、口先だけだった裏切り者の元上司に切り伏せられた。
レクイエム攻防戦でも結局、裏切り者を倒すことはできなかった。
もしもあのままこの世界に飛ばされることがなかったのならば、
そのまま憎むべき仇と裏切り者に屈服させられるなどという哀れで惨めな末路が己の運命だったのか。
飛ばされたこの世界で自分と同じような思いで戦おうとしている者を手助けすることすらできないのであろうか。
「冗談じゃない!俺は……俺は………俺は今度こそ自分の運命を切り開いてみせる!!」
シンの脳裏に種子が弾けるようなイメージが走り、意識がクリアになってくる。
CEと呼ばれた世界で幾度となく彼を救ってきた秘められた力が、新西暦の世界で初めて発動した。
上空から降り注ぐミサイルめがけて腰にマウントしていたメガビームライフルを投げつけ、予備のビームソードもライフルめがけて投げつける。
高エネルギーに貫かれたライフルはミサイルが命中する直前に大きな音を立てて爆発し、ミサイル群がその爆発に巻き込まれていく。
「何だと!?」
常に冷静でいることを心がけるユウに驚きが生まれる。しかし今のシンには目の前に立ち塞がるユウを倒すことしか頭にはない。
さきほどまでの猪突猛進ともいえる剣劇モーションとはうって変わって、
自分がかわしにくいコースにピンポイントに狙いを定めたかのように、ビルトシュバインのビームソードが振り下ろされる。
「こいつ…本当に別人か!?だが…!」
今まで一定の間合いを取りながらショットガンで狙ってきたところを、ユウはビームソードをかわして一気に距離を詰める。
ショットガンの砲身がビルトシュバインのコックピット付近を捉え、ユウはトリガーを手にかけた。
だが次の瞬間、シンはザンバーを失って動きが鈍くなった左腕を砲身に突っ込んだ。
左腕部とショットガンの爆発がランドグリーズとビルトシュバインとをいったん遠ざけたが、
手持ちの火気を失ったランドグリーズと違い、左腕部を失いはしたがビルトシュバインの手にはビームソードが残っている。
ビルトシュバインはテスラドライブを全開にして上空に飛び上がってランドグリーズに迫り、それをユウは撃ち落そうとする。
しかしランドグリーズの残りの武装では今のビルトシュバインを捉えることはできなかった。
ビルトシュバインは上空に飛び上がったままランドグリーズの真上を通り過ぎたのである。
「しまった!?」
ランドグリーズは火力を重視した本来は支援用の機体である。
ラトゥーニを助けるべくそのような機体で前線に突っ込んでいったゼオラを救出すべく、ユウは自らも前線に突っ込んでいったのだが、
ランドグリーズは本来支援用である機体である故に前面に対して攻撃を加える兵装が充実しているものの、
手持ちの火気なくしては自機のほぼ真上や後方からの攻撃に備えた武装や防御システムはない。
シンは真上から後方にかけてならばファランクスミサイル、マトリクスミサイル、リニアカノンの攻撃が届かないことを見抜き、上空に飛んだのであった。そしてそのまま地上めがけてビームソードを振り下ろす。
虚を突かれたユウはなんとか機体をひねってコックピットへの直撃を回避したが右腕をまるごと切り落とされてしまう。
爆発する右腕に目もくれずビルトシュバインとの距離を取ろうとるべく、まずは残ったファランクスミサイルを放つが、
シンはそれに対してビームソードを前面に向け、機体を低くかがめさせると、そのまま正面から突撃をしかける。
ミサイルの雨を掻い潜り、背後の地面に次々と着弾していくミサイルの爆発により生じた爆風を背に受けながらビルトシュバインがランドグリーズに迫る。
もはやビルトシュバインの前に立ち塞がるものはなにもない、そうシンは確信していた。
だが、ビームソードが正確にランドグリーズのコックピットめがけて進んでくるのを見たユウは最後のマトリクスミサイルを至近距離から発射した。
シンはとっさに構えていたビームソードを上へ振り抜いてマトリクスミサイル、そして左肩部のリニアカノンの砲身を切り裂くも、
マトリクスミサイルの爆発により再びランドグリーズとビルトシュバインは大きく吹き飛ばされてしまった。
吹き飛ばされたランドグリーズの下にもう1機のランドグリーズが駆け寄り、カーラが心配そうな声を上げる。
「くっ!ダメージを受けすぎたか!?」
「ユウ、大丈夫!?」
「俺のことはいい!それよりホエール2は!?」
「もうそこまで来てるよ!」
「隊長!!」
「カルチェラタン7、動きを止めるな!」
隊長機であるユウのランドグリーズの大きな損傷にゼオラも驚きを隠しえず、動きが鈍くなってしまう。
それを見たラトゥーニは一気にランドグリーズに迫るも、それとほぼ同時に戦闘海域にキラーホエールが浮上してくる。
そしてキラーホエールからはアラドのリオンが飛び出してきた。
支援
「ゼオラ!」
「アラド!?あなた、どうして!?」
「機体を行動不能にするわ、ゼオラ」
「!!」
「させるかあ!!!!」
「動かないでゼオラ」
「ゼオラ、お前は俺が守る!うああああぁぁ!」
「アラド!」
「え!?」
機体の動きを止めるべく量産型ヒュッケバインMK−Uから放たれたバルカンがリオンを撃ち抜いた。
すぐには爆発しなかったがリオンの動きは鈍く、それを見たゼオラはパニックになりながらもリオンに通信を入れる。
「アラド!アラドッ!返事をして!!」
「ぶ、無事か?ゼオラ…」
「アラド、あなた…!どうして!?」
「だ……だから前にも言ったろ?約束は…守るってな。け、けど今回は当たり所が悪かった……みてえだ」
リオンの機体の各部に小さい爆発が連続して起こる。
「!」
「ま、まさか…」
「へ、へへ…バルカンでやられちまうなんて…」
「早く!早く脱出してぇ!!」
「俺らしいって言うか…何て…言うか…」
アラドが言葉を言い切る前に、リオンは爆発して通信は途絶えた。
「!!」
「ア、アラドォォォォッ!!!」
「あ、あの子、脱出できなかったの……!?」
「アレでは……くっ!」
「あ、ああ……そ、そんな…アラド!アラドォォォッ!嫌ぁぁぁぁっ!!」
「ホエール2、撤退支援を!」
「了解!VLS全展開!」
「ゼオラ!撤退するぞ!」
「嫌!嫌ぁぁ!アラドが、アラドがっ!!」
「状況を判断しろ!お前もここで死ぬつもりか!?」
「…!!」
「…行くよ、ゼオラ」
「は、はい」
支援
突然の出来事に動きを止めてしまっていたハガネの各機を残してDC残党群が撤収していく。
ミサイルの爆発により受けた衝撃で機体が思うように動かなくなってしまっていたためシンはそれを追うことができなかったが、
彼はステラの最後―背後から迫ってきていたフリーダムから自らを守ろうとして討たれた女性を思い出さざるを得なかった。
「俺は…ちくしょう!!!」
怒りに任せた拳がビルトシュバインのコックピットの壁に叩きつけられる。
その痛みを感じつつ、シンは外に目をやると先ほどのリオンのものとおぼしきコックピットブロックが付近に転がっているのを見つけた。
「もしかしてあのパイロット…!」
面識があるわけでもないが、仲間をかばおうとしたパイロットを放ってはおけず、シンはそれを回収してハガネに帰艦したのだった。
今回は以上です。だめだぁ、シンを動かすとそれだけ紅茶が動いてしまう…
とはいえ、たぶんこれ以降はシナリオ上、そんなに紅茶の出番があるわけではないので許して…
この後は桜花幻影、アルフィミィ、シナリオ分岐でインスペクターだから
これまでほど紅茶は出てこないはず・・・分岐の中で1回とDC内部の話で少しくらいかと。
あとホワイトエンジェル、というのはDC残党が勝手につけたアンジュルグのコードネームです。
GJです!
ビルトが空飛んだ。紅茶との戦闘がブリットより多くなってるなぁ
でも、この世界って空中戦できるPTって少ないからそこら辺をこなせることにキョウスケ辺りが疑問に思いそうだ。
とんだ!シュバインがとんだ!!
シンが初の種割れか……なんかブリットよりライバルしているな。(まあ冷静な紅茶とぶち切れなシンだし)
真逆猪が飛ぶとは……!?
高度上げてからの急降下でライダーキックを期待したのは俺だけじゃない筈だ
所で主武装のザンバーを始め色々壊れちまったな
これは良いマ改造プラグ
鰤と紅茶のリレーションはライバル2だが、今回のシンと紅茶はそれを上回るライバル3ぐらい行ってそうな印象w
>>324 実はビルトシュバインは元々限られた時間なら空中戦闘ができるという設定がある。
シュバインてワンオフだっけか
左腕のパーツ無しで当然マ改造だーね
( ゚∀゚)o彡°マ改造!マ改造!
在庫ありそうなブレードトンファー持ってくるとかアーマリオンと同じ腕にしてみるとかいくらでも妄想できるけど
右腕にプラズマステーク、左腕にマシンキャノンorガトリングガンのアルト風
両腕にプラズマステークつけた近接特化型などなど量産機のパーツだけでもいろいろできるね
数日前に書いた量産ゲシュ改、電穂で簡単な紹介載ってたんだが
両手ジェットマグナム付けるのは良い。
テスラドライブを組み込むのも良い。
ただ全体的にデザイン変わってるから量産型故の泥臭さが薄れててなんか悲しくなっちまったぜ……
アーマリオンじゃないが、足にプラズマステークつけて超電子ドリルキーック!!
そう思っていた時期がありました。
つ股間にシシオウブレード
プランAは自重しやがれwwwwww
そのうちビームハンマーが出来るであろう世界だ
ビームスタッグビートルクラッシャーだな
今後の執筆の参考のために皆さんに聞きたいんですが、
一般論として読んでるときにどんな部分が楽しかったり燃えたりしますか?
戦闘シーン、オリジナル機体・武装、
スパロボキャラとの絡み(性的な意味でなく)、小ネタ(ギャグ、声ネタ含む)などなどあるとは思うんですが・・
全部と言いたい所だがキャラクターの絡み、交流だな
これが無いとクロスさせてる意味が無い様に思える
魔改造に決まってる、股間にGインパクトステークとか
やっぱり、本来出会うことの無かった連中の絡みと、其れゆえの変化かな。
お前らが逆シンと阿部さんの読破はデフォルトだということはわかったw
まあシュバインって、サークルザンバー以外の特徴が無くて、逆にプレイヤーの自由度に任せるところが大きい機体だからなー
ある意味、魔改造するにはもってこいの機体ということか
クロスによってできる本来ありえないキャラクター同士の絡み、交流、バトルかな
341 :
93:2007/10/26(金) 10:39:35 ID:???
その世界の技術との合体による俺メカとか…
マ改造フラグか!!
シュバインをマ改造するなら両手にごっついザンバーとか
両手両足にザンバーとか夢広がるね
343 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 20:20:21 ID:cF3mZgFa
いや、ディステニー的には両手にパルマ背中に光の翼だろう。
間合いが読めないパルマに高速飛行の光の翼。
パルマはゲシュのジェットマグナムに通じるし、光の翼は飛行用オプションパックの話が出てる。
中距離カバーのザンパーと、持ち替え可能な射撃へ異相を考えれば、非常にバランスが良い機体になる気がするぜ。
元々シンはオールラウンダーだしな。
水差して悪いがあんまり魔改造しすぎたら厨臭くならないかな…
>>344 スパロボとのクロススレでそれはさすがに今更過ぎやしないか?
>>339 うちのはショットガンとGランチャー装備してアルトとのコンビで突貫してたんだぜ
ポイント結構高いし、ザンバーは近接格闘だしで相性良かったから…
>>342 他にあまり類を見ない武装をつけてこそのマ改造!
ふと思ったんだが、
種割れシンとランドグリーズで互角に近距離戦闘した紅茶って実はすごくね?
そりゃ伊達や酔狂で念動力持ちじゃないからな
まあ、仮にも主人公だしな。
もう大昔の話だが、ウチの紅茶は、竜王破山剣逆鱗断でブイブイ言わせてたよ。
一週目で紅茶初登場のとき、
集中かけた鰤とエクセレンの攻撃の命中率と紅茶の攻撃の命中率の違いに絶望と恐怖を感じた
龍虎王なタスクは犬夜叉そのもの…
なんでα外伝には主人公が出なかったんだろう
αからあまり間が無かったからな確か
ユーザーによって使ったキャラが違うのに、いきなり8人とか出したら話が破綻する
その後、ニルファ出すまでのサーチの結果、8人の中で一番人気だったクスハと、そのオマケとしてブリットが選ばれたんだろう
αの段階で漫画版の主人公がクスハだったけどな
鰤はクスハのおまけで出てるだけだからなぁ……
αシリーズにはクスハコンビしか出れなかったけど、OGシリーズで全員出てからまあいいかなと思ってる
8人の中でOGsになっても専用orパートナーと同じBGMを貰えなかったタスクに合掌
他のF主人公はいつ出るんだよ〜
今まで登場したキャラで一番被弾してるのも紅茶な気が…
強いのか弱いのかわからんなww
コウチャッチャー
もともとランドグリーズ自体が避ける機体じゃないからな。
むしろあの程度で済んでいるのが凄いというべきか。
ほす
今が原作で言うところの「約束は炎に消えて」だから次でアイビス登場〜宇宙へ、ぐらいかな?
363 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 22:01:33 ID:2P/FNSlI
つーか鋼VS永遠はやるのか?
やるとしたら、桜花幻影かな? ゲシュの足を撃ち抜いたり………
ノイマン抜きのCE戦艦とスペースノア級の戦いなんて茶番もいいとこだろ
でもストフリが強化されてるなら、AAや永遠にも何らかの魔改造施されてる可能性あるなあ
第1話見るとAAは来てなさげじゃないかな?
シンは真央社のパイロットって肩書きだし、
凸がアースクレイドルにいるから分岐は地上ルートかな
ゼオラ専用ブルンバストマダー?
そういや11氏によるとサイバスター登場から少しは派手になる
とのことらしいが、何かあるんかねぇ
ビアンSEED 第33話 もう一つのWRX
『自由』の名を与えられた鋼の巨人が放った五色の光は、その進む先にあるモノを全て砕き、穿ち、ラピエサージュを光の中に捉えたかと思われた。
「この程度ならば!」
「あれを回避するのか」
機体の四肢の重心移動と何十分の一秒の世界の機体コントロールで、降り注ぐ光の合間を搔い潜り、機体背部にウィングに内蔵したプラズマ集束砲、O.Oランチャーで即座に反撃する。
シールドで受けても防御しきれぬ事を、エネルギー量から察知したライディースは、即座に機体に動きを反映させる。ほんの一瞬前までフリーダムが存在していた空間を、膨大なエネルギーが駆け抜けた。
ライディースのフリーダムは、キラが奪取した試作機的な機体よりも、マルチ・ロックオン・システムの精度や、機体の信頼性が増していて、総合的な性能において若干上回る。
他方でオウカの駆るラピエサージュも、イーゲルシュテルンや腰部のレールガンの他、ウィングスラスター内部にプラズマ集束砲の内臓など、折を見て改修が進められている。
機体性能ではオウカ、パイロットとしての技量ではほぼ同格と見てよいだろう。ただ、オーブ艦隊に合流して以降、オウカの精神状態は決して良いものではない。元々記憶喪失の身でありながら、機動兵器の扱いに長けた自分への不安と恐怖がある。
既に何度か実戦に身を晒しても、その暗い思いはオウカの胸により深く暗く蟠っていた。
「フリーダムのテストが、こんな事になるとはな。あの機体、可能ならば捕らえたいがそう上手くはいかないか!」
ライディースの言葉など知るわけもなく、オウカはラピエサージュ手首内側に収納されているメガ・プラズマカッターを抜き放ち、爆発的な推進力を活かし、スラスターの光が描く軌跡はフリーダムへと続く。
CE世界のビームサーベルは技術的な問題から切り結ぶ事が出来ない。ラピエサージュの抜き放った光の刃はその名の通りプラズマだが、そんな事を知らぬライディースからすれば、同じくサーベルを抜き放って切り結ぶわけにもいかない。
第一フリーダムは砲撃戦に特化した機体なのであって、接近戦は兄弟機であるジャスティスの得意とする間合いだ。
必然的に、フリーダムはラピエサージュを近づかせまいと全身に搭載された火器を連続して撃ち、ラピエサージュはそれをかいくぐらなければならなくなる。
ラピエサージュの傍らを過ぎ去ってゆく砲撃の一つ一つが、背筋が寒くなるほど正確なフリーダムのパイロットに舌を巻きながらも、オウカも強化された肉体と培った操縦技術を十二分に発揮して、並のパイロットでは即座に星屑に変わってゆくしかない砲撃の雨をかわし続ける。
フリーダムとの遭遇からおおよそこの形が続いている。キラとのシミュレーションや訓練で、フリーダムが接近戦を苦手としている事をあらかじめ知っていて、ドッグファイトに持ち込もうとするオウカ。
自らの機体の弱点を知っているために、それをさせじとするライディース。互いに決め手を欠いたままの状態が続いている。だが、やはりオウカの方が不利と言えるだろう。いくらフリーダムが核動力機であるとはいえ、近くに母艦が存在しているはずだ。
ラピエサージュとの遭遇の報が入り、ザフトの友軍が出撃しているかもしれない。
「接近する熱源? 時間をかけ過ぎてしまったようね」
「ウィクトリアか」
一進一退の攻防を繰り広げる二人が、それぞれ接近する熱源に気付いた。NJCがある分、フリーダムの方がレーダーの精度が良い。
エターナル級二番艦ウィクトリア。勝利の女神ニケーのローマ名を与えられたエターナル級は、一番艦の淡い紅色とは違い、星の無い夜空の様な青みを帯びた漆黒に染められている。
ところどころに赤や金の色が混じってはいるが、その船体の大部分は黒である。
既にウィクトリアが搭載したMSの発進体勢に入っている事を見て取ったオウカは、即座に黒色ガスを封入したスモークグレネードとDC謹製のジャマーを起動させて宙域からの離脱を図る。
ここで一戦交えてしまった以上、メンデルに潜伏している事はすぐに知られるだろう。
ただ、エターナルの脱出の際にフリーダムが援護に駆け付けた事から、ザフト側でもフリーダム及びオーブ艦隊とエターナルが内通していた、という可能性も検討している分、戦力を再編成するだろうから、その分の時間は残されている。
いずれにせよ、オウカは一刻も早く情報を伝えてメンデルを離れる用意をさせるべきだろう。
「問題は、それを許してくれる相手かどうか!」
「離脱する気か、そうは……」
『待て、ライディース。深追いはしなくていい。ウィクトリアに着艦せよ』
背を向け黒色ガスの中に消えるラピエサージュを追おうとするライディースを、落ち着きはらった男性の声がとどめた。激する所など無いのではと思えるほどに静さは雲の無い星空に、さんさんと輝く月の静けさに似た響きであった。
「兄さ……エルザム隊長、しかし」
『命令だ。ライディース』
「……了解、フリーダムこれより着艦します」
渋々といった調子は隠せないが、ライディースは兄さんと呼びかけた相手の言葉に従い、もう見えなくなったラピエサージュとそのパイロットの姿を求めるようにガスの向こうを見つめてから、ウィクトリアの格納庫へと、フリーダムを動かした。
ハンガーにフリーダムを預け、パイロットスーツから軍服に着替えたライディースは、そのまま隊長であり、同時に実の兄でもあるエルザム=V=ブランシュタインの部屋へと足を運んだ。
今回のテストと思わぬ戦闘で得られたデータに関してのレポートを、パイロット側からも提出しなければならないが、とりあえずは後回しだ。
ドアの前で姓名を告げ、エルザムの許可の声と共に入室する。部屋の中には、エルザムの他ウィクトリア艦長のタリア・グラディス、副長のアーサー・トラインがいた。
エルザムは、隊長格の証明でもある白服を身につけ、ゆるく波打った金色の髪を長く伸ばした二十代後半か、三十前後の青年だ。
古代ギリシア彫刻の達人が手ずから彫りあげたような、絶妙なバランスの上に成り立つ眼鼻顔立ちに、どんなに気性の荒い者も思わず身が締まる思いをしそうな威厳を併せ持っている。
おとぎの国の王子がそのまま飛び出て来たような美貌と万の兵を率いる将軍の威厳を併せ持っている。
すらりと伸びた足に、コロッセオで闘士として戦いの場に立っても違和感の無い過度に肉の付いていない体つき。穏やかながらも自信と誇りに満ちた輝きを収めた瞳といい、その場に佇んでいるだけで絵になってしまう。
弟であるライディースも負けず劣らず典雅さを湛えた顔立ちだ。十歳ほど年の離れた兄弟だが、冷静な雰囲気という点では共通するものの年の差もあってかライディースの方が若干感情を表に出す。
それでも他者から見れば、一見ライディースは冷たく感じるほどに沈着冷静だ。
兄エルザムとは違い、ストレートの金髪を肩に掛かる少し手前ほどで切り、名人の筆が描いたような柳眉と、高く伸びた鼻筋に今はきつく引き締められた口もとの組み合わせは、生涯女性との関わりから離れる事は出来そうにない事を暗示している。
同席しているタリアとアーサーは共に黒服を身に着けている。タリアがエルザムとほぼ同年代の女性軍人で、茶褐色の髪の両側が前方に向かって纏まって突き出ているというやや変わった髪形をしている。はっきりとした瞳に母性を残しつつ厳しさを湛えた顔立ちだ。
副長を務めるアーサー・トラインは、灰に近い色の髪でどこか人の良さそうな雰囲気の青年だ。良くも悪くも軍人に向いているとは見えないが、どこまでも善人そうで、大抵の人間に好感を持たれるだろう。
「さて、まずはフリーダムのテスト御苦労だった。ライディース」
「いえ……」
「先ほど交戦していたMSだが、あれはDCの蜂起の際オーブを脱出したアスハ派の艦隊が所有しているモノと同一である可能性が高いという報告が上がった。連合との戦闘でその姿が確認されていたようだ」
「オーブの機体となれば、DC製かしら?」
タリアの言葉は疑問を口にするというよりは確認作業の様なものだった。現状、連合やザフトでも製造できそうにないテクノロジーを用いられた兵器はDC製ではないかと考えるのが通例になりつつある。
エルザムはタリアの言葉を首肯しながら言葉を続ける。
「グラディス艦長の言葉通りだろう。すでにエターナルがアスハ派のオーブ艦隊と行動を共にしている姿は確認されている。もっとも、我々ザフトにとって有益な行動をしている姿だが」
「ですが、エターナルとフリーダム、ジャスティスの一号機強奪を考えれば、彼らは」
「ふっ、分かっている。トライン副長。ラクス・クライン嬢の事も考えればそうそう口に出来る話題でもない事は分っているがな」
「とりあえず、一度本国に指示を仰ぐべきでしょう。エルザム隊長、ウィクトリアの進路の予定を変更し、一度基地へ戻るのが良いかと思いますけれど?」
「グラディス艦長の判断に任せる。持ち場に戻ってくれたまえ。ライディースは少し話があるので、しばらくここに残りたまえ」
ライディースを残し、タリアとアーサーはブリッジに戻る為、エルザムの部屋を出た。
タリアとアーサーは、エターナル級二番艦の就航に際し、量産に入ったフリーダム、ジャスティスを配備されたパトリック・ザラ直下の特務隊に、それぞれ艦長、副長としての任を命じられた。
互いにそれまでは顔を合わせた事も無かったが、お互いの責務を果たす上でも、助けあう事が重要だと考える程度には関係を築いていた。意志の強いタリアに、若干優柔不断なアーサーが振り回される、というパターンが大半だが。
「艦長、このままだと自分達がエターナル討伐の任に着くのでしょうか?」
「少なくともこちらにはエターナルと共に運用する予定だったフリーダム、ジャスティスと同等以上の戦力はあるわね。核動力機には核動力機と考えてもおかしくはないけれど、個人的には少しもったいない使い方という気もするわ」
「でで、ですが、相手はあのラクス・クラインとストライクを討ったアスラン・ザラですよ!? それに、あのスレードゲルミルとかいう機体も」
「もし戦わなければならないというのなら、確かにぞっとしない相手だけれど。スーパーロボットなら、こっちにも戦えそうな味方がいるでしょう? いずれ戦う相手かもしれないけれどね」
どこか含むようなタリアの物言いに、しばらくアーサーは何を言っているのか見当がつかず、首を捻っていたが、ようやく何を言いたいのか思い至り、あっと声を上げる。
ここら辺のリアクションの大きさは、アークエンジェル級三番艦ゲヴェルの副長テツヤ・オノデラと似ている。
「ああ、ひょっとして、DCですか!? 確かに協力してくれれば!」
「ええ、あそこにも似たようなのがいるでしょう? ヴァルシオンていう怖いのがね。アレ以外にもいろいろと造っていそうでしょ?」
「た、確かに。いや〜手を貸してくれるといいんですけどねえ」
「まだ、私達に任務が下ったわけでもないんだし、考えても仕方の無い事よ?」
「はあ」
いささか頼りない副長の返答と能天気さに、タリアは内心溜息をつきたくなったが堪えた。この男はこれでスイッチが入ると別人のように有能さを発揮する事は、既に知っていたからだ。
それにしても
「エルザム隊長と言い、能力はあるけど一癖も二癖もあるのがそろっているわよね、この部隊。エルザム隊長も、アレがなければね」
艦橋に戻ったタリアの指示に従って、ウィクトリアは進路を変えて星の海を進んだ。エターナル級二番艦ウィクトリア、だが、知る者はこう呼ぶ。隊長であるエルザムの着けた愛称に従いトロンベと。
エルザム=V=ブランシュタインを隊長とするこの隊は通常ならブランシュタイン隊と呼ばれるべきなのだが、誰もその名では呼ばなかった。母艦と隊長であるエルザムの趣味嗜好に合わせ、トロンベ隊と呼ばれているのだ。
なんとかならないかしら、とタリアにそんな事を思われているとは流石に分かるわけもなく、エルザムとライディースは兄弟水入らずで椅子に腰かけて向きあっていた。
エルザム手ずから淹れた紅茶(パックに詰め、ストローで飲む)には手を着けず、ライディースは兄の顔を真正面から見つめていた。
この二人、ブランシュタインの名から察せるようにDC宇宙軍総司令マイヤーの子息である。ただし、新西暦以外の世界の死人も集うこの世界、必ずしも本当に関係のある三人とは言えない。
たとえば、エペソとビアンのそれぞれの世界には共通する事項も多いが、この二人は同じ世界の存在ではないように、エルザムとライディース、マイヤーが親子である事は同じでも、同じ世界の三人とは限らないからだ。
エルザム、ライディースは共に新西暦世界のコロニー統合軍のエースパイロットであり、軍人の名門ブランシュタイン家の子息として、血統・実力の両方から名の知られた人物だ。
しかし彼らの生きていた世界において、密閉された建造物であるコロニーに毒ガスを散布するという残虐極まるテロ行為によって死亡してしまった。
その際にブランシュタインの血族――マイヤー、エルザム、エルザムの妻カトライア、ライディースもまた命を奪われたのだ。
だが毒ガスのもたらす苦痛が不意に消えた事に気付き、目を見開いた彼らがいたのは新西暦のコロニーでは無く、CE世界だったのである。
その時に、なぜか父マイヤーの姿だけが無く、エルザムらは事態の収拾を図り情報を集めるうちに自分達が生まれ育ち、そして死んだ世界に存在していない事を知った。
軍人の家系に生まれた彼らはそれ以外にも遺伝子調整を受けているという出自もあり、プラントに難民という形で庇護を求めて、今はこうしてパイロットとして籍を置いている。 エルザムとカトライアは、料理人として生きてゆく事も十分に可能だったが。
コロニー統合軍のトップエース・エルザムと天才と称されたライディースの二人はメキメキと頭角を現し、高潔で公正な人格、機動兵器の操縦以外の軍事面でも才覚を見せ、今はこうしてエターナル級と核動力機を預けられるまでになっている。
「エルザム隊長」
「ふっ、二人の時は兄さんで構わん。聞きたい事は、なぜあの機体を見逃したのか、か?」
「……」
「オーブ艦隊と合流したエターナルの戦力が未知数であり、下手に深追いしていたずらに戦力を消耗する愚を避けるためだ。それに、すでにヤキンドゥーエの方で航路を解析し、彼らがメンデルに潜伏している可能性が高いという報告があったからだ」
「無理をする必要などないと?」
「そういう事だ。あまり睨むな、ライ。お前のフリーダムも細かい調整が今少し必要だ」
「分かったよ、兄さん。……所で、DCの事だが」
それまで手に持っていたパックを置き、エルザムは微笑を湛えていた顔を引き締める。
「うむ。ビアン博士が我々の知る人物と全く同じ人物かは確認のしようがないが、宇宙軍の総司令がマイヤー=V=ブランシュタインであることは分かった」
「父さん、か。やはりあの時の事故で死んだという事なのだろうか? だが、それならなぜおれや兄さん、義姉上とは別々に」
「あるいは、我々とは関係の無い父上か、それともこの世界の父上か。どちらにせよ直接会いでもしない限りは、そうそう分かる事ではないな。
だが、私達の知るマイヤー=V=ブランシュタインならば、大義なき戦いに身を投じるような人物ではない。私利私欲で戦うような人間でもない」
「ああ、父さんがDCに力を貸すのは地球圏の統一ばかりが理由ではないと思う。おれ達の父は、そういう人だ」
「だが、今はこうしてザフトに身を置いている以上我々はプラントの為に戦う。たとえ父上やビアン博士の掲げる大義と正義こそが正しく思えても、一度銃を預けた軍を裏切るような真似はそうそう許されるものではない」
「そう、だな。それにしてもプラントの独立を求める運動はコロニーの独立運動にも似ていたが、コーディネイターにナチュラルの問題は根が深すぎる。おれや兄さんも遺伝子調整は受けているが、この世界の争いは、新西暦ではとても考えられないほど酷いものだな」
それはエルザムにとっても不安材料の様なものだった。CEだけでなく新西暦でもコロニー居住者を始めとして遺伝子調整を受けた者はいるが、CE世界の様なナチュラルとコーディネイターと人類を区別するほどにひどい争いは起きていないし、差別もない。
新西暦の世界において、コロニーの壁の外は、放射線を始めとする人体に有害な物質が渦巻き、極低温と大気の無い空間が広がるコロニー居住者は、その過酷な生活環境に適応するようある程度遺伝子調整を受けている。
それは生活環境を考えればごく当然の事として多くの人々には受け止められているから、そうそう遺伝子調整を問題視される事はない。かといって過度な遺伝子調整に対する論理的な忌避感や差別が全くないわけではない。
ただ、このCE世界の様に子供の容姿や能力、適正までも遺伝子調整によってすべて親が決める事が出来てしまい、またそうしてしまう親が多くを占めるこの世界の遺伝子調整は、二人には受け入れ難いものに思えた。
いわば宇宙での生活に適する最低限の遺伝子調整のみを施されたエルザムやライディースからすれば、人間を構成する肉体的な要素の多くを人為的に操作する事を禁忌としない社会に違和感を覚えるのも無理はない事だった。
ましてやコーディネイターとナチュラルの互いの蔑視と劣等感、優越性、憎悪、不理解で起きたこの世界の争いは、核ミサイルとニュートロンジャマーという互いにひいてはいけない引き金を引いた事で、どちらにも大義を見出すのは難しい。
この世界はどちらも過ちを犯し過ぎているのだ。
「今ここで言っても栓なきことではあるが、な。とにかく、今は次の戦いまで体を休めておくといい」
「そうするよ。そういえば義姉上にはちゃんと連絡を取っているのか、兄さん?」
「ふっ、問題ない」
「なら良いが」
複雑な感情が渦巻く表情で少し俯きながら、ライディースはエルザムの部屋を後にした。一人残されたエルザムは、プラントの首都アプリリウスでエルザムとライディースの帰りを待っている愛しい妻の顔を思い浮かべた。
「こちらでも元の世界出でもカトライアには済まない事をしているとは分かってはいるのだがな」
ブランシュタインの長子として、新西暦で任務に忙殺され、この世界でも軍人として戦場を飛び回る生活をし、家で待つカトライアに寂しい思いをさせてしまっている事は、確かにエルザムにとって胸に痛みを覚える事だった。
振り上げたストライクダガーのビームサーベルをジンの重斬刀が受け止め、焼き切られるわずかな時間を活かして、握った拳をストライクダガーのコックピットへと叩きつける。
瞬間の判断でジンの拳が描く軌道からほんの一歩だけストライクダガーが下がり、空振りに終わった拳をねじり上げ、ストライクダガーはジンの左腕の関節の破壊を狙う。
MSの操縦をわずかなりとも齧った者ならば、信じ難い思いをするに違いないストライクダガーのパイロットの反応速度と操縦の早業だ。
構造上、捩られた左腕の動きに従い機体が宙を浮き、地面に叩きつけられる寸前にスラスターが火を噴きジンの機体が浮き上がる。
並のパイロットではGの負荷に耐えきれず失神する無理な軌道で機体を回転させ、捩られた腕を戻し、反撃とばかりにもう一度拳を握った。頭部へ向かい放たれるそれを防ぐべくストライクダガーが左腕を掲げる。
その寸前、わずかな隙間を置いてジンの拳はピタリと止まる。拳を繰り出すと同時に放たれていたジンの左足がストライクダガーの頭部を襲い、完璧と思われたその蹴りをストライクダガーの残る右腕がガードしていた。
「相変わらずの、反応だ。だが……素直すぎるな」
「!?」
ガードされた左足のスラスターが点火し、ガードした腕ごと蹴り飛ばされたストライクダガーの機体が傾ぎ、その反対側から叩きつけられたジンの右拳に頭部を完全に叩き潰された。
「……はあ、また負けた」
シミュレーターの中で、キラは大きく溜息を吐いた。あまりにも速いキラの反応速度は超人のレベルだが、反応の仕方が素直すぎて、熟練のパイロット達にとっては慣れれば予測のしやすい相手だった。
もっとも並のエースクラスならば十分に余裕を持って戦える戦闘能力をキラは有しており、単純なパラメーターでキラを上回るパイロットなどCE世界ではまずいない。
「そう、落ち込む事はない。見違えるほどに腕を、上げた。何か……あったか? たった一晩で随分と、変わったが?」
たどたどしい、機械の補正が加えられたカーウァイの声に、キラは俯いていた顔をあげて、その顔のほとんどが冷たい金属で覆われたカーウァイの顔を見上げた。
素性についてはまったく謎の人物だが、寡黙ながら面倒見がよく的確な指導から、最近ではパイロット連中からの信頼は厚い。
カーウァイの言葉に、少しの間キラは何かを考えるように細い顎に指を添えた。
「僕にも理由は分りません。……でも」
「でも?」
「なにか、夢を見たような気がします。とても、とても大切な夢。どんな夢だったかは忘れてしまったけど、夢を見たことだけは決して忘れない。そんな不思議な夢です。何でか分かんないけど、哀しい夢でした」
「夢、か。なにかの予兆、かも、しれんな。そう言えば……ラクスやアスランも似たような事を言っていたな」
「アスラン達も……」
何故か、不思議に感じる気持ちはなかった。アスラン達も同じ夢を見たと言われ、それを素直に信じる事が出来る自分に、キラは気付いていた。
(とても、とても大切な事を僕は忘れている。どうしてなんだろう? こんな気持ちになるのは……。懐かしい、なのに哀しいのは)
キラとカーウァイが日課となったシミュレーターでの特訓に一息を着いている頃、あちこちのコロニーを飛びまわっているはずのカガリが、アスランの私室に居た。
徐々にオーブ政権の発足に目処がつき、余裕を見ては時折こうしてメンデルに直接足を運んでいる。今回は旧アスハ派の兵士と駆けずり回って用意した補給を届けるついででもあった。
疲れが浮かんでいるのが普通の状態になりつつあるカガリは、ほとんどする事の無かった化粧で顔色を誤魔化していたが、今はそれを拭って素の顔を晒していた。
自己主張の強い、まっすぐな光を宿した瞳は、政治の世界の洗礼を受けてもまだその輝きを維持していた。
軍から離れはしたが、プラントを守るという決意は変わらぬことを示す為か、モルゲンレーテの服では無く赤服を纏ったアスランは直接カガリを目の前にした喜びに、少し目元の筋肉を緩めていた。
「なんだ、その、ここでの暮らしはもう慣れたか?」
ベッドに腰掛けたアスランに勧められ、カガリはいつもと同じ椅子に座った。そうしてから、何を言っていいのかいつも迷うカガリにアスランは微笑を浮かべて返した。
「もともと宇宙の育ちだからな。地球育ちのカガリや、オーブの人達よりはずっとましだよ」
「そうか、そりゃまあ、そうだろうけど。えっと、ちゃんと食べているか? 碌に補給もできずに悪いと思っているんだが」
「大丈夫だ。アークエンジェルとクサナギに積んだ荷物はかなりの量だし、ラクスの仲間が補給をつけてくれているから。カガリこそ、随分と疲れているな。前よりも忙しくなっているんじゃないのか?」
「弱音は言ってられないさ。私が望んでいる事は分不相応な事なんだから、それを実現するためには無理もしなくちゃならない!
「だからといって、あまり根を詰めるなよ。カガリはまっ直ぐすぎるからな。見ていて危なっかしい」
「それは私の台詞だ。お前を救助した時にもそう言ったぞ!」
「そうだったか?」
「そうだ!」
からかうアスランの調子に気付かず、カガリは素直すぎる反応でずいと詰め寄る。思った通りの反応に、アスランは口元を淡く綻ばせた。ここまでまっすぐな感性の持ち主を、アスランは他に知らない。
「そう言えば、お父さんとは話せたんだよな?」
「……ああ。取り敢えず最悪の予想は外れていたよ。親子ならと肉親の情を当て込んだのは、甘い見通しだったかもしれないが、それでも話はしてくれた」
「そっか。でも、それならここに戻ってこなくてもあのままザフトに行けば……」
「いいんだ。いいんだよ、カガリ」
どこか悟ったように、アスランはゆるゆると首を振り、子供を諭すようにカガリに話しかけた。カガリも、そんなアスランの様子を察してか開きかけていた唇を閉ざした。
「父上には父上の道がある。同じようにおれにはおれの、カガリにはカガリの、キラにはキラの道がある。歩む道が違っても、その道を歩む意志が同じだという事は分ったんだ。目指している結末は少し違うが、今はまだそれでいい。
そして、いつか歩み寄れない道を歩いていたら、その時はまた話し合うよ。たとえ分りあえなくても、何度も、何度でも。分りあえないからと引き金を引いたのでは、同じ過ちの繰り返しだからな」
「そうか。やっぱり、お前はプラントに戻ってよかったみたいだな。前より少し頼もしくなった」
「そうか? だといいが、それだと前は少し頼りなかったっていう事にならないか?」
「ああ」
「……即断しすぎだろう? これでも赤服なんだけどな」
「実力と頼りになりそうかなりそうにないか、ってのは別さ。お前はなんだかんだで優柔不断だからな。他人の意見に流されないようにしろよ。世の中、とんでもない狸がいるものだぞ?」
「おれは軍人だから詳しい事は解らないが、やはり政治の道は大変なんだな」
「まあ、それなりにな。最近までは教師無しでやっていたが、ラクスにちょっとしたコツを教わっているよ」
「ラクスに?」
意外な名前にアスランは驚きを隠さなかった。確かにラクスはシーゲルに、平和の歌姫と言うプロパガンダとして担がれている節はあったが、彼女自身が政治の道に通じているとはいささか信じ難い。
とはいえ、ラクスが今こうして新型戦艦やザフト軍の兵士達を率いて行動を起こす事も信じられなかったのが自分だ。婚約者と言う肩書はあっても、結局肩書以上の関係には踏み込めずにいたのだから、驚く資格はあまりないかもしれない。
「ああ。どんなに血管がブチ切れそうになっても笑顔を浮かべ続けるコツとか、右から左に聞き流した話を一秒で思い出すコツとか、笑顔を浮かべたまま眠る方法とか、十分の睡眠で八時間分の効果を上げる自律神経の操作方法とか、
プラント創世期から伝わる宇宙呪いのかけ方とかな」
「……ラクスは何を教えているんだ」
ラクスの事が理解できないと、心の底から思ったアスランだった。
そんなメンデルの日々も、オウカがフリーダムとの遭遇をメンデルに居るラクス達に報告し、メンデルに駐留していたオーブ艦隊はハチの巣をつついたような慌ただしさに見舞われた。
スレードゲルミルとマガルガで模擬戦を行っていたウォーダンとククル、MSの戦術パターンやフォーメーションを不眠不休で組んでいたカーウァイらも、ラピエサージュの帰還と共に、メンデル艦隊首脳部の会議に顔を出した。
マリュー、ラクス、バルトフェルド、ダコスタ、アイシャ、キサカ、ダイテツといった艦長クラスに、主なパイロットであるキラ、アスラン、ディアッカ、ニコル、ムウ、ヒルダ達も顔を合わせている。
また、たまたま時間を作って様子を見に来ていたカガリも同席しており、図らずも三つの勢力が集まった艦隊のスポンサーと首脳部が一か所に顔を突き合わせる形になった。オウカのもたらした情報は、小さくない衝撃を彼らにもたらした。
まず、ニュートロンジャマー搭載の核動力機が量産体制に入っているという事、そして彼らとメンデル付近で交戦してしまったという事。偶発的な戦闘だったのだが、戦闘が起きた以上メンデルを突き止められるのも時間の問題だろう。
「ザフトがどれだけの戦力を出してくるかも考えものね」
「フリーダムとジャスティスにエターナル。全部ザフトの最高機密クラスだからな。相当な戦力が来るんじゃない?」
「フラガ少佐の言う通りだろう。ラクス嬢も含め、取り返すか最悪始末してしまいたい代物であるのは確かだ。連合の手に渡らせないためにもな」
同じ部屋から出てきたマリューとムウの意見に、ダイテツも同意する。ザフトも既存のMSと核動力機の性能の違いを誰よりも理解しているはずだ。スレードゲルミルの存在もある事を考えればかなりの戦力を割いてくるだろう。
「出したい戦力と出せる戦力が同じとは限らないが、今は宇宙も小規模な戦闘に終始しているからな。それなりの余裕を持っているはず。それに宇宙にはDCもおる」
「アメノミハシラだな。イズモ級だけじゃなく、連合・ザフトどちらの艦船も積極的に集めているらしい。結構な戦力を持っているだろう。……ビアンもそうだが、サハク家の姉弟もマイヤー宇宙軍総司令もかなりの辣腕だ。
いずれザフトとも矛を交えるだろうけど、今はまだザフトに協力するだろう」
「うむ。最悪の場合、ザフトとDCの両軍を相手にしなければなるまい」
「う〜ん、正直な所ククルやウォーダン二人だけでもかなりの戦力だし、カーウァイ大佐のゲシュペンスト、オウカくんのラピエサージュとこっちの戦力も僕が思っていた以上にあるんだがね。
まだ僕らがザフトに居た頃にもいくつか新型の開発プランがあったし、甘い見通しはしない方がいいだろうね」
悔しげなカガリの言葉をダイテツとバルトフェルドが肯定し、ゲイツや核動力機以外の兵器の存在の可能性を示唆した。ヴィレッタの乗機であるメディウス・ロクスとイザーク達に配備されたRシリーズの事だ。
エターナル奪取の際にはすでにメディウス・ロクスは配備され始めていたがRシリーズに関してはおそらく伝聞のみだろう。あれはヴィレッタ主導で話が進められていた極秘プロジェクトだ。関係者以外では概要さえ耳にする事は難しい。
いつもの陣羽織とミニスカート姿のラクスが、この場に居るカガリについての話題を振った。一国の代表(と呼べるほどの力はまだないが)であるカガリがたまたま、ザフトに発見されたかもしれないこの時期に居合わせたのは純粋に運が悪いという他ない。
「とりあえずカガリさんはすぐにメンデルを離れた方が良いでしょう。カガリさんにはまだしなければならない事、カガリさんにしかできない事がメンデルの外に多くあるのですから」
「まあ、以前に連合と一戦かわした時にDCには、私が脱出したオーブ艦隊と行動を共にしている事はバレているけどな。
今は、オーブ艦隊は私の手を離れて独自に行動しているって対外的には言ってあるから、確かに一緒に居るのが知られるといろいろと面倒だけど。でも、ラクス。どこか行く当てはあるのか?
デブリベルトとかならしばらくは隠れられるだろうが、これだけの大所帯になっていると補給は難しいし、かといって戦力を分散しておくのもリスクが大きい」
「それならわたくしに心当たりがあります。ちょうど身を隠すのに適した場所をあらかじめ用意しておきました。本来なら用意が整ってからご案内しようと思っていたのですが。……ダコスタさん」
「はい」
ダコスタが手元のコンソールを操作し、メインパネルにデブリベルトのどこかの光景が映し出された。
特に全員の目を引いたのは、崩壊したコロニーや宇宙ステーションの残骸をつなぎ合わせたような施設が画面の中心にあり、その周囲でプチ・モビや作業ポッド、旧式の艦艇やシャトルが忙しそうに飛び回っている事だろう。
大まかな外観だけだが、小規模な生産施設や防衛設備、発電衛星も備えているらしくそれなりの規模の要塞と言えるだろう。ダコスタがそのまま説明に入る。
「これは現在ボアズと名付けられたアジア共和国の新星を奪取する以前に本国で建造が検討されていた要塞です。紆余曲折を経て廃棄された要塞を、我々が独自のルートで抑え改修を進めていました。
本格的な軍事施設とは言えませんが、今のメンデルよりはずっと防衛には適しています」
「こんなものまで用意していたのか。末恐ろしいもんだねえ。歌姫さん?」
「お褒めの言葉として受け取らせていただきますわ。フラガ少佐。この『ノバラノソノ』は現在も改修作業の最中ですが、とりあえずはこちらに現在メンデルに駐留している戦力を移すべきでしょう」
「一度に動けばそれだけ足が着きやすい。複数に分けて艦を動かすしかあるまいな。それに、アークエンジェルやエターナル、クサナギやスサノオは目立ちすぎる。ここを出るのは後回しになるじゃろう」
火は灯けず、咥えているだけのパイプを手に取り、ダイテツがラクスの提案に捕捉を入れた。ラクスもそれは理解していたのかダイテツの言葉を首肯した。
「はい。ミナセ艦長の仰るとおりですわ。ザフトの狙いはエターナルとジャスティス、フリーダム、そして私。彼らを引き付ける意味も含め、艦隊がノバラノソノへ着くまでエターナルが殿を務めるべきでしょう」
「では、せめてラクスさんは他の艦に移った方がいいんじゃないのかしら?」
「いえ、私はエターナルに留まります。可能性は低いですが戦闘を回避できるよう説得できるかもしれませんし、エターナルのクルーの方々は、私がザフトからの離反を導いたようなものですから、せめて共に在りたいのです」
「でも、貴女の身に何かあったら」
喰い下がるマリューに好ましげな視線を送ってから、ラクスは傍らで沈黙を守っていたウォーダンを見た。ウォーダンは固く閉ざしていた瞳を開き、守ると誓った少女の視線をまっすぐに受け止める。
「大丈夫です。いざとなったら、ウォーダンが守ってくださいます」
「そういう事だ。殿を務めるエターナルは、おれとスレードゲルミルで守って見せよう。それが、ラクスの剣たるおれの役割だ」
「ウォーダンがそういうのならば、私も最後まで残るぞ」
「ククル、貴女まで?」
「ウォーダン一人で追手などすべて片付くであろうから、要らぬ世話ではあろうな」
これまで我関せずと壁際で様子を見守っていたククルの発言にマリューはもう一度驚くが、何かとウォーダンにこだわるククルであったから、納得するのは簡単だった。ラクスでは無く、彼女を守るウォーダンにこそ、関心があるのだ。この少女は。
「とにかく、各艦に詰めるだけの物資を積み込み、順次ノバラノソノへと向かわせねばならんな。カガリ代表も早急にお送りせねばならぬし、このコロニーも慌ただしくなるな」
「はい。そして、まだ、ここで私達は倒れるわけにはまいりません。いずれ訪れる未来が、少しでも希望あるものである様に戦っているのですから」
静かに凛とした調子で語られるラクスの言葉を、誰もが噛み締めていた。
オーブ、地球連合、ザフト、異なる三つの勢力から混沌とした今の世界を良しとしない者達が集った事自体が、世界と言う闇夜に小さくも輝く希望の火なのだ。
ラクス達メンデル艦隊が迎撃と脱出の準備を進める中、ザフトの方でもラクス・クライン包囲網は整えられていた。
ラピエサージュと交戦した、エルザムの率いるトロンベ隊、地上から帰還したクルーゼの率いるナスカ級三隻からなるクルーゼ隊。
更にヴィレッタ・バディムを隊長とするWRXチームも、実戦でのテストを兼ねるという暴挙に近い形で彼らに合流するよう指示が出されたのだ。
トロンベ隊とクルーゼ隊は先に合流しメンデルに向かうが、極秘にRシリーズのテストを行っていたWRXチームはアメノミハシラで補給を受け、そこでDCから派遣される部隊と合流し一路メンデルを目指す事になっていた。
タマハガネの格納庫に鎮座するデュラクシールやヴァイクル、PTジンの周囲でメカニックや整備用の小型メカが慌ただしく動き回り、可能な限りの修理を施す風景を横目に見ながらシンじゃ格納庫を歩いていた。
十機以上のMSとデュラクシールなどの大型の機体がひしめき合うと、流石にスペースノア級の格納庫も手狭に感じられる。ふと、歩くその先に、三十代頃の女性が傷ついたヴァイクルを見上げているのが目に入った。
「えっと、ジェニファーさん?」
「貴方は、確かシンくん」
自分の子供でおかしくないシンに、小さく笑いかけてジェニファーはシンの方へと向き直る。今はタートルネックの薄緑色のセーターとパンツ姿だ。トンと軽く床を蹴り、シンの方からジェニファーに近寄った。
「どうかしたんですか? やっぱりKCGの人達の事が気になるんですか」
「それは、そうだけれどね。少し考えていたのよ。戦うのはもう嫌だ、て思ったけれど、戦える力があるのならそれを使うべきなのかしらってね」
「ジェニファーさんは戦いなんて嫌いですね。正直、おれもです。多分戦いが好きな人なんてほとんどいないですよ。テンザン一尉なんかは喜んで戦ってますけどね」
「嫌いな戦いを続ける理由があるのね」
「まあ、一応。でもやっぱり納得できる理由を見つけるまでは無理する事はないと思います。おれみたいな子供が言うのは生意気かもしれないけど、戦場で引き金を引くのを躊躇っていたら、自分だけじゃなく、仲間も危険な目に合いますから」
「確かに、少し生意気ね。ふふ、でも、そんな事が言える位に君は戦っているのよね。こんな事言うのは本当は良くないかもしれないけど辛くはない? ご家族とも離れ離れでしょう」
「辛くないって言ったら、嘘になります。父さんや母さんはずっとおれがパイロットをするのに反対していたし、妹のマユもそうです。でも、一度決めた事だし、おれなりに戦争ってものと向き合うつもりです」
「君は強い子ね。少し、その強さが羨ましいわ」
ジェニファーは儚い笑みを浮かべてから、暗い記憶を思い起こした。特脳研から拉致され、アタッド・シャムランとしての人格と偽りの記憶を植え付けられ、自分が地球人である事さえ忘れて、母星に侵略者として牙を剥いた事。
また、それまでの間に多くの地球の同胞を手に掛けた事。
忘れられるものなら忘れたい記憶が、ジェニファーの心を臆病にしていた。
何を言えばいいのか分からず、困った顔をしているシンに気付き、子供を困らせても敷かないと思い、ジェニファーは曖昧な笑みをなんとか浮かべて、シンの肩に触れて立ち去ろうとした。
そのジェニファーの指がシンの肩に触れた時――
「!」
「ジェニファーさん?」
「え? ああ、なんでもないのよ」
「そうですか。あ、それじゃあ、おれゼオルートさんに用があるんで」
「ゼオルートならPTジンの所よ」
「ありがとうございます」
年相応の幼い笑みを浮かべて離れてゆくシンの背中を見つめながら、ジェニファーはシンに触れた指とシンの背中を交互に見ていた。困惑の表情がはっきりと浮かんでいる。
シンに触れた時、ジェニファーの体を貫いた力の感覚。今まで感じた事の無い、強く純粋で、それだけに危ういガラス細工のような力は――?
「あの子の力、念動力だけれど念動力ではない? 何か、他の力が混ざっている。でも、とても澄んだ優しい力……」
規制かかってる?
さる?
ゼオルートは、ジェニファーの言う通りPTジンの前で、整備士と何やら話をしていた。ちょこんと鼻の上にメガネを乗せた人の好さが、全開で駄々漏れになっているゼオルートは、少し残念そうに整備士の話を聞いている。
「そうですか、このジンはもう戦えませんか」
「ええ。流石にこうまでざっくり斬られていると……。でも凄いですよ。OS以外ノーマルのPTジンで、あのサムライMSとほとんど互角に戦っていたんですから。
ゼオルートさん、ホントにナチュラルですか? てかコーディネイターだってあんな真似できませんよ」
「ええ。ご期待には添えないのですが、私はナチュラルと分類されるでしょうね」
にっこりと、泣いている子供もつられて笑顔になるような笑みを浮かべてゼオルートが言う。ゼオルートを見つけたシンは、一度彼の名前を読んでから意気揚々と近づいた。
フェイルを含め、タマハガネに着艦した時に簡単な自己紹介は済ませてあるから、一応初対面ではない。
シンの姿を認めたゼオルートは、変わらず柔和な笑みのままシンを待った。
「ゼオルートさん、今いいですか?」
「ええ、私なら構いませんよ。そうですね、立ち話も何ですから、展望デッキにでも行きましょう。星空と言うのは何度見ても良いですからね」
「星空が珍しいんですか? 地球育ちなんですか、ゼオルートさん」
「う〜ん。まあそうなりますかね」
どこか誤魔化すような、子供に思わぬ事を聞かれた大人の反応でゼオルートは誤魔化した。
「それで、私に話と言うのは何ですか?」
「……実は、おれをゼオルートさんの弟子にしてください!」
「いいデシ」
「へ?」
「と、いうのは冗談で、そうですね。先日のMSとの戦いが理由ですか?」
「はい」
あっさりと見抜かれたシンは、神妙な顔つきで頷いた。両腕を落とされた飛鳥は、今もフレームの交換を始めとした修理作業の途中だ。腕を落とされたのは飛鳥が無明に極端に劣っているわけではない。
すべてはパイロットであるシンの技量の不足が理由だ。
その悔しさが、シンの眼付を鋭いものに変え、胸に焦燥の炎を滾らせる。シンの心が手に取るように分かるのか、ゼオルートは若すぎるシンの反応を見守っていた。
「あの時の戦いを見ていて、ゼオルートさんの剣技はすごいと思いました。また、あのムラタと戦う時に負けないように、おれはもっと強くなりたいんです」
「私は別にかまいませんが、拝見した所すでに別に師と仰ぐ方がいるのではないですか?」
「はい。オーブに居た頃にイザヨイという人に剣術の手ほどきを受けました。こっちに上がってからはメール位でしか連絡取ってないですけど。
イザヨイ先生には、心から尊敬できる人に会えたら、自分の事は気にせずに師事しろって言われています。おれが見込んだ人なら、間違いはないだろうからって」
「君の事を信頼しているのですね、そのイザヨイと言う人は。……そういう事ならイザヨイさんに恥じないように、私なりに努力させていただきましょう。不束者ですがどうぞよろしく」
「あ、はい!こちらこそよろしくお願いします!」
やたらと軽いゼオルートの了承の返事に、シンは余計な肩の力が抜けたが、逆に不安になってしまった。こんな簡単に引き受けてくれるなんて。
「では、一つ条件があります」
来た。正直に言えばそう思った。どんな無理難題がふっかけられるのか。どんな試練だって乗り越えてみせる。シンは腹を括った。
「私の食事に出される赤ピーマンとアスパラガスはシンが食べてくださいね」
「……ピーマンとアスパラガスですか?」
「ええ。ピーマンとアスパラガスです」
笑顔のまま至極真面目に言うゼオルートに、これは本気で言っているのだろうかと、シンは割と本気で悩んだ。
MSの実戦配備を見越して建造されていた新型の輸送艦シルバラードを伴い、プトレマイオス・クレーターを出航するのを目前に控えたドミニオンに新たなパイロット達が配属された。
カイをMS隊隊長に置き、ゲヴェルにはカイのデュエル、スウェンのストライク、ミューディーのデュエル、シャムスのバスター、ダナのブリッツ、エミリオのイージスの六機。
ドミニオンにはオルガのカラミティ、クロトのレイダー、シャニのフォビドゥンの三機が搭載されている。
新たなパイロットは計四名。彼らはシルバラードに乗る事になった。
ナタルやレフィーナと顔を合わせるため、アークエンジェルが足付きと呼ばれる由縁となった馬蹄に似たデッキに搬送された四機のMSから、それぞれのパイロットがラダーを伝って格納庫に降り立つ。
地球連合の標準のパイロットスーツとは異なり、ボディラインのはっきりと浮かぶ薄手のパイロットスーツを全員が着用していた。連合内での特別な地位を表すものだろうか。
「これがアークエンジェル級かあ、きれいな船だね」
「地球連合の最新鋭艦だからな。中身も外も金を掛けているだろう」
「お二人とも、隊長がお待ちです」
いずれもまだ十代後半らしい少年少女の声だった。先に降り立ち、三人を待っている青い髪の男の元へ三人が急いで集まる。
「ごめんなさい、待たせちゃいました?」
「いや、気にはしていない」
低く抑えられてはいるが、怒っている調子は微塵もない青髪の男の台詞に、薄い水色の長髪の少女が安堵の息を吐いた。傍らには淡い紫色の髪の少年と緑色のストレートの髪を長く伸ばした少女がいる。
隊長であるらしい青髪の青年が、一人一人の顔を見ながら、やがて口を開いた。
「ムジカ・ファーエデン、グレン・ドーキンス、ジョージー・ジョージ、我々WRXチームは本日付でシルバラード配属となり、今回のゲヴェル・ドミニオンのアークエンジェルル討伐任務の支援を行う。各員、くれぐれも油断するな」
「はい、イングラム教官」
水色の髪の少女――ムジカの返事に、青髪の青年イングラム・プリスケンは満足したように微笑した。
規制かかる寸前くらいで留めていましたが、今回ここまで。そろそろキャラが多くなりすぎてきましたね。
思ったよりも長い話になってしまったな。とりあえずそろそろウォーダンとシンの初接触にこぎつけられそうです。やっとここまで来たか。