>>1 乙です。立てられなくてすいません
(いや、考えるな!相手を、ZAFTを倒すことだけを考えるんだ)
「どこを見ているのかね?」
いつの間にかストライクのライダースラッシユは壁を切り裂いていて、クルーゼは真後ろにいる。
知りたくないはずなのに、知りたくなってしまう。なぜなのかは自分自身わからない。
「ここで君に、しかもこんな形で再び出会うとは嬉しい限りだ!」
「ここが何だっていうんですか!?」
クルーゼの爪とストライクのサーベルが切り結ぶ度に火花が散る。だが少しずつ、ストライクが劣勢になっていくのが目に見えてきた。
「ここがどんな場所で、何が行われていたか、知らないのは罪としか言いようがないな」
隙間にビームライフルを撃たれ、攻勢は完全にクルーゼに持って行かれる。
鋭利な爪がストライクのPS装甲を通してキラの体に痛みを伝える。
「ここは私の……そして、君の生まれ故郷なのさ!」
「!?!」
体の痛みよりも頭にある疑問への好奇心と、恐怖がキラの精神を支配していた。
藪から棒にサーベルを振るってはストライクはただ、クルーゼの口を塞ぐために剣を回した。
「私は……ムウ・ラ・フラガの父、アルダの遺伝子を基に造られた人造ZAFTなのさ……」
「フラガ先生の……?」
「そして君のお陰で様々な実験に使われたよ……君は……」
もうクルーゼは歓喜にも似たような笑い声を出しそうだった。あまりにも純粋すぎるキラがどうなるか知りたくて仕方がなかった。
「君は……ZAFTの゙当代神゙、ガンダムの力を授かっだ神の子゙なんだよ」
―――――!!
「君はZAFTの神たる存在、人間と完全に融合した人型のZAFTなんだよ!!」
地にサーベルが落ちる。手と足は完全に震え始まり、強ばっている。
「僕が……ZAFTの神?……そんな……」
その隙をクルーゼは見逃さなかった。腰に巻き付けてある触手の先端にエネルギーを集め、ストライクに向けて伸ばした。
放心状態のストライクは避けることなんて考えることすらなく、見事に命中を許した。
「あのバカ、なに突っ立ってるんだよ!?」
直撃に気づいたデュエルがストライクに駆けより、刺さっている触手を解き斬った。
「おい、キラ!しっかりしろ!」
声をかけるが意識はない。バスターもただならぬ様子に気づき、2人に駆け寄ったらガンランチャーで地面を撃った。
煙が晴れると、3人の姿はないがクルーゼだけは笑っていた。
「間もなく最後の扉が開く……私が開く……そして終わる……醜い争いの世界はな……」
ニコルはカナードによってキラの秘密を聞かされ、彼も戸惑いを隠せなかった。
「そんな……キラがZAFTの神?嘘だ!!」
「嘘なもんかよ……俺は奴に擬態させられ、さらに拷問みたいな実験をさせられた……だから俺は奴を殺す!」
背部のフォルファントリーがブリッツに向けられる。チャージが開始され、逃げるにも足が動かなかった。
「まあ、キラがオーブ所属のライダーとわかった。貴様に用はない……消えろ!!」
万事休す。まさに言葉の通りだった。が、ハイペリオンが突如舞い上がった。
「何だ!?」
そこには、1人のライダーが仲介に入っていた。運命を背負いし、勇敢なる戦士が。
to be continued……
4 :
1:2007/09/24(月) 23:09:49 ID:???
職人さん乙です
もうちょい早く立てとけばよかった
申し訳ない
5 :
KIRA書き:2007/09/24(月) 23:22:20 ID:???
だいぶ時間置いてしまってすいません
展開詰めちゃってますが、運命編に早く入りたいのでご了承ください
今回の話だけで神の正体にお気づきになられたかもしれませんが、まだ歴代から出すつもりです……
GJです。久しぶりに来たら前スレが絶妙なところで終わってたwww
>>1 乙
新しいガンダム始まったらすぐ落ちちゃいそうだけど
9 :
KIRA書き:2007/09/29(土) 22:03:12 ID:???
保守
ストライク系のってルージュとストライクEだけでしたっけ?
■純正ストライク■
ストライク
ストライクルージュ
開発ベース用ストライク
■量産型ストライク■
105ダガー
■ストライクのバリエーション■
ストライクノワール
テスタメント(ザフト製ストライク)
アストレイアウトフレーム(テスタメントの予備機)
ノワールは微妙だが、コイツら全員ストライカーパックを装備できる。
ストライクノワールは正確にはストライクEがノワールパックを装備した状態で機体名では無いんだよね
12 :
KIRA書き:2007/09/30(日) 17:53:33 ID:???
>>10 dクス
確かアウトフレームはインパルスのシルエットも装備出来るんでしたよね
開発ベースストライクとは初耳でした。装甲の色の配分はどんなのなんですか?
保守
映画シナリオとかどないしましょか。さりげなく「もう一つの結末」として分岐シナリオ考えてるんですが
保守あげ
落させはしない……!
16 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/06(土) 16:46:21 ID:Rl5+IqyM
落ちろ 落ちろ 落ちろ by ガルマザビ
ほっしゅ
いいよね こたえは きいて いない
ディアッカまでイマジンに
仮面ライダー衝撃(インパルス)
第16話『復活』
瓦礫に背を向けたサトーは、ゆっくりと歩き始めた。インパルスを倒した以上、もはやここにいる必要はない。
倒してしまえば、あっけないものだった。粘り強さだけはたいしたものだったが、思った以上に手応えがなく感じた。
前より弱く……いや、強くなりすぎてしまったのか。とすれば、よくもった方か。
くくっ、と喉を鳴らして哂う。この新たな姿の前には、もはや敵など存在しないとさえ思えてくる。
その時、がらりと音がした。
まさかと思いながらも、ゆっくりとサトーは振り向く。
だが、瓦礫の山はそのままだ。弾みで少し崩れただけだろう。
なんとなくその場で止まったサトーは、瓦礫の山から覗く土気色の手を見下ろした。
そこへ、いきなり右肩に強い衝撃を受けた。右半身全体を覆い尽くすような、大きな爆発。
傷ついたスパイクとシールドがごっそりと持っていかれるが、サトー自身にダメージはない。
予想外の攻撃に軽く驚きながら、爆発が来たと思しき方へと顔を向ける。
10数メートルほどの距離を挟んで、赤いバイクを傍に置いた青年が硝煙の立ち昇る巨大な銃口を向けてくる。
「……あの男は」
忘れるはずもない。ユニウスセブンでインパルスと共にサトーを倒したナチュラルの青年だ。
青年がいたということよりも、あれほど近くにいたのに気付かなかったということに驚く。
それほど余裕がなかったということか……。
サトーが足を止めたのを見た青年は外付けされたユニットを投げ捨て、銃を連射しながらバイクを降り、駆け出す。
嵐のような銃撃を受けるが、ザクファントムの身体は微動だにしない。
並のMS、いや以前の姿のサトーでも完全に撃破されていただろう。
だが、今やこの程度の攻撃はやぶ蚊程度にしか感じない。ただわずらわしいだけだ。
瓦礫の山を背にするような位置に移動した青年に顔を向けた。
いかに強かろうと、所詮ナチュラル。うるさい虫は、排除するに限る。
「グッ! ……何だと?」
しかし、一歩足を踏み出したところで激痛が襲い掛かった。貫くような強烈な痛みが全身を走る。
サトーは傷みの中心、わき腹の辺りに目を向ける。そこには、小さな亀裂が入っていた。
強固な外殻に刻み込まれた小さなヒビは、内部に大きなダメージを与えていたらしい。絶え間なく激痛が続く。
……そうか。これは、あのときの……。
思い当たるのは、インパルスの最後の一撃。
あの捨て身のカウンターが、ザクファントムの強固な外殻を貫き、内部を破壊していたのだ。
銃撃を受け続けるのにも構わず、瓦礫の下敷きとなっている手を睨みつける。
視線を感じた、というわけではないだろうが、指先がかすかに、ほんのかすかにだが確かに動いた。
意思を持たぬ動きではあったが、それを見たサトーは低く哂う。
「ふっ、ふふふ……」
あれだけ痛めつけても、生きている。全く、呆れるべきしぶとさだ。
そうだ。こうでなくてはここまで来た意味がない。
瓦礫の山、ナチュラルの姿となったインパルスをバックに銃を構える青年を睨みつけたサトーは踵を返した。
怪訝な顔をする青年へピンク色の一つ目だけを向け、一言だけ呟く。
「貴様らの命、預けておくぞ」
銃を構えたまま、アスランは硬直していた。
グレネードを使い、弾丸のほとんどを撃ち尽くした。それだけの攻撃を撃ち込んでも、たいしたダメージは与えられなかったのだ。
残弾少ないシウスが、心なしか軽く感じられる。
全く歯が立たなかった。次に来た時、俺は倒せるのか……?
自問するが、答えが出るわけもない。それよりも、今はやらなければならないことがある。
アスランはシウスを投げ捨て、瓦礫の山に取り付いた。
幾分かの瓦礫を除けたアスランはまずシンの脈を取った。非常にゆっくりとだが、確かに脈動している。
自分たちの身体の強さを知っている彼でさえ、驚くほどの生命力だ。だが、このままに放っておいてはじきに手遅れになる。
119番にかけようとして、手が止まる。
シンのことを色々と調べられるのは、非常にまずい。自分たちにとっての敵は、MSだけではないのだ。
そうかといって何もしないわけにはいかない。
背に腹は帰られない……か。
考えながらもデュランダルに連絡した。教授ならば、何か良い方法を示してくれるかもしれない。
すると、彼の方で手を廻してくれたらしい。程なくして救急車が到着する。
駆けつけた救急隊員とともにシンを助け出したアスランは、彼を担架に載せ、同じ救急車に乗り込んだ。
意識のないシンの周りを、救急隊員たちがせわしなく動き回る。彼らが話しているのを聞くと、嫌気隈でもなく
かなり危険な容態らしいことが分かる。
信号機を無視して救急車が運び込まれた先は、ミーアの見舞いなどで既になじみとなったユニウス大学病院だった。
ルナマリアは、ベッドの上で半身を起こして診察を受けているマユの姿をまともに見られなかった。
涙で目の前がぼやけてしまっているのだ。ただし、これは哀しい時の涙ではない。嬉し涙だ。
マユちゃんが起きた! これであとはシンさえ帰ってきてくれたら、きっと……
目の下に手をやり、涙を拭う。ちょうど診察も終わったらしく、初老の医師は笑顔でマユの頭を撫でた。
そのまま椅子から立ち上がり、ルナマリアの方へと向き直り、目線で合図をして呼びつける。
「もう心配は要りませんよ。ただ、長いこと寝たきりだったせいで身体が多少弱っていますから、気をつけてください」
それだけ注意した医師は二人が頷くのを見て「では、失礼します。お大事に」と言って部屋を出る。
ルナマリアは丁寧にお辞儀をして、医師が退室するまで見送った。
最後、ドアを閉じる時に軽く頭を下げた医師に向かってもう一度お辞儀をして、マユのほうへと顔を向ける。
「よかったわね、マユちゃん」
ルナマリアの言葉に、マユはこくりと頷いた。そして、何かを期待するかのように彼女を見上げる。
吸い込まれるようなすみれ色の瞳に見つめられながらも、顔を背ける。こんな目を向けられたままでは、嘘などつけない。
「ごめんね。シン、今ちょっと家に帰ってて……」
目を逸らしてながら答える。残念そうに顔を俯ける少女の姿に、ルナマリアは心を痛めた。
……こんな嘘を言って何になるんだろう。すぐばれるのに。
先ほど目覚めたとき以来、マユは一度も言葉を発していなかった。表情もどことなく虚ろで、心ここにあらず、という表現がしっくりくる。
目が覚めたときにシンの姿が見えなかったのがショックなのだろうか、と当たりをつけたルナマリアは、はっと気付いたように立ち上がった。
「そうだ。早くシンやレイにも教えてあげなきゃ! うれしくて連絡するの忘れてた。ちょっと待っててね」
ベッドの方に背を向けたまま、ルナマリアはわざと明るい声で告げた。
マユが今、どんな表情をしているのか。それを正視することもできず、部屋を出ていく。
部屋の外でドアを閉じたところで、ルナマリアは壁に背を預けるようにしてもたれかかった。
「シン……どこに行ったのよ」
目がさめてもマユは笑ってくれない。喋ってもくれない。
こんな少女が、最愛の兄、シンがいないということを知ったらどうなるか……考えたくもなかった。
「マユちゃんが、待ってるってのに……何やってんのよ」
シンが行方不明のままとはいえ、マユの目覚めたことがいいニュースであることには変わりない。
とりあえず、レイには連絡しておかないと。
病院内では携帯電話は使えないので、病院の電話を使うしかない。
確か、正面玄関近くのロビーの辺りにあったはず。ルナマリアは公衆電話を探しに一階へと足を向けた。
公衆電話はすぐに見つかった。天井から吊り下げられた案内板のおかげだった。
そこには既に何人もの人が並んでいる。携帯電話が使えないおかげで、いまどきの公衆電話には珍しく大盛況だ。
ルナマリアは列の最後尾で、自分の番が来るのを待った。
退屈しのぎに、電話をしている人の様子を見てみる。彼らの様子は本当に千差万別で、色々な人がいるということがよく分かる。
喜んでいる人、神妙な顔をしている人、事務的に無表情な人。
目の前の人はかなり大変なことになっているらしい。別に盗み聞きをしているつもりはないが、会話の端々が多少聞こえてくる上、
背中越しにも焦りが伝わってくる。
「……こちらに参られるんですか? ……ミーアが、退院? すみません、少し頼みたいものが……、ありがとうございます。
……はい、分かりました。シンの手術もそのときには……」
――ッ! シン……手術!?
断片的に聞こえた単語に、はっとする。
聞き違いかもしれない。そうでなくとも、別人ってことだってあるし……そんな偶然、あるわけない。
そうよ。シンが手術なんて……
「あきましたよ」
ちょうど電話の終わった青年が声をかけてきた。突然声を掛けられたルナマリアは困惑する。
「え……あの、その……」
先ほどの電話のことを聞かなければならない。普段なら平気でできたはずの言葉が、なぜか出てこない。
「すみません、さっきの……」
それでも、思い切って聞こうと顔を上げて青年の顔を見る。
端正で落ち着いた雰囲気を纏った、りりしい表情。以前もこの病院であったことがある相手だ。
アレックス・ディノ、いや、アスラン・ザラだ。アレックスというのは仕事で使っている通称、のようなものらしい。
「あ……あれ? アスランさん?」
「君は……」
彼の方も思い出したらしい。硬く、重苦しい表情になる。彼は目を伏せ、下唇をかんだ。
ルナマリアは彼の反応を見て、あれが聞き違いでないことを悟った。
再び病室に戻ってきたルナマリアは、能面のような不自然な笑顔をしていた。
顔を上げたマユは、怪訝そうな表情になって再びうつむく。
マユの反応が、ルナマリアにはたまらなく哀しかった。
なんで、なんで何も聞いてこないの。
以前、メイリンに言われたことがあるが、ルナマリアは嘘をつくのが苦手だった。すぐ顔に出てしまうからだ。
だから、今もショックを隠せていない、変な顔をしているということは分かっている。
それなのに、マユは何一つ口を開かなかった。これでは、しつこく色々と聞かれたほうがはるかにマシだ。
ひょっとしたらこれはシンのことを教えないことに対しての、小さな抵抗なのかもしれない。
彼女の脳裏に、唐突にそんな考えがよぎった。
それも無理からぬことなのかもしれない。
この子は、まだ12歳の女の子なのだ。
目が覚めたら見知らぬ病院にいる。両親はもういなくて、唯一頼るべき兄さえもいなくなった。
不安はどれほどのものだろう。
この兄妹がどれだけお互いを大事に思っていたか、二人をすぐ近くで見ていたルナマリアは知っている。
だからこそ、よく知っているからこそ教えるわけにはいかなかった。
何でこんなことに……あふれ出そうになる涙をかろうじて堪え、無理やりに笑顔をつくった。
アスランに会ったルナマリアは、シンの現況を聞かされた。
交通事故に遭い、意識不明の重態で今は手術を受けている、ということを。
「そんな……なんで!」
アスランの襟元を掴み、勢い込んで聞くルナマリアに対し、アスランは黙ってかぶりを振る。
彼女は手を離さずに一気にまくし立てた。
「シンとマユちゃん、たった二人の兄妹なんですよ? MSに襲われてお父さんたちが殺されて……離れ離れになっちゃって……。
やっと再会できたと思ったらマユちゃんは大怪我をして、シンはいなくなって……目が覚めたら今度はシンが意識不明の重体で……
結局会えないなんて」
言葉を切り、顔を上げる。彼女はアスランの緑色の瞳を見据えて、堰を切ったかのように叫んだ。
「何でなんですか! どうしてこんなに苦しまなきゃならないんですか! あの子はまだ、12歳の女の子なんですよ?
可哀相過ぎます……ひどすぎますよ、こんなの……」
一度爆発してしまった感情は、とどまることを知らずにルナマリアの心を責めたてる。
胸にしがみついたまま、すすり泣く彼女を落ち着けようと肩に手を伸ばしたところで、彼は結局手を止めた。
ここで下手に慰めても、何の意味も持たないことを熟知していたからだ。
彼女のしたいようにさせておく。これで、少しでもルナマリアの気が晴れるのならば。
他人、シンとマユのために泣いてあげる事のできる、この心優しい少女にしてあげられることなど、これくらいしかないからだ。
面会時間はとうに過ぎた夜遅く。見舞いの人のほとんどが帰宅してしまい、照明も落とされた真っ暗な病院の廊下。
あるのは手術中、を示すランプだけ。アスランはその場所でひとり腕を組んで、ベンチに佇んでいた。
ルナマリアも手術が終わるまで待つといって聞かなかったが、マユを一人にさせるわけには行かないという彼の説得に応じてくれた。
今は宿泊許可をもらい、病室でマユに付き添っているはずだ。
アスランの見たところ、ルナマリアも相当に追い込まれている。そんな彼女とマユを二人にさせておくのに不安がないといえば嘘になる。
しかし、マユを一人にさせていくよりはよほどマシだ。
あの後アスランはマユを見舞ったが、想像以上だった。一言も喋らず、笑わず、以前のような明るさは微塵も感じられない。
そんな状態で一人にしたら、どうなるか分かったものじゃない。シンがいない今、彼女に任せるしかないのだ。
それに、マユを守らなければという思いが逆にルナマリア自身をも救ってくれるかもしれない。
危険な賭けではあったが、今のアスランにはそれを期待することしかできなかった。
『手術中』のランプが消えた。
手術室の扉が開き、疲れきった様子の手術着のものが何人も出てきて、マスクや手袋などを外す。
「手術は成功だ」
プラチナブロンドの、いかにも自信家という風貌をした医者は、開口一番にアスランに告げた。
さすがはデュランダルに推薦されるだけある。
そう思った矢先に、アスランは付き添いということで診察室に呼び出された。
この医師の性格を表すかのごとく、きれいに片付いた部屋だった。医師はデスクから椅子を引き、偉そうに腰かけた医者は言う。
「私でなければ、どうなっていたかは分からないがな」
自慢をするために呼び出したのか? 一瞬そう思うが、彼の顔はいたって真面目だ。すぐに本題に移る。
「久しぶりにやりがいのあるオペだった。しかし、面白い患者だったな」
そして、ここまで持ってきたレントゲンの写真をスクリーンに映した。何枚もの白黒の写真が、光を通してくっきりと浮き上がる。
「筋肉組織や骨格が常人と比べてかなり強靭になっている。さらに、回復力も異常だ。何より……」
そして新たな写真を映し出す。腹部を写したと思しきレントゲン写真だ。
あばら骨の下、腹部の辺りに明らかな異物が存在している。どんな素人でも気付くほどの、明らかな異常だ。
これがあるからこそ、シンを普通の病院に搬送するのをためらったわけだ。
「こんな組織は見たことがない。ここから神経組織が全身に広がっていて、何らかの指令を発しているようだ。なんだ、これは?」
アスランは答えることができず、口をつぐんだ。医者はふっと息を吐き、どうでもいいという風に首を振る。
「答えられないか。まあいい」
助かった。このこともデュランダルに言い含められていたのだろうか。
「すみません、このことは誰にも……」
言わないでほしい。念のためにそう頼もうとしたところで、医者の憤った声が遮った。
「誰に言っている? 患者のプライバシーをしゃべるなど、三流のやることだぞ。私は一流だ!」
どうやら、この男のプライドをいたく傷つけてしまったらしい。
このタイプの自信家は、一度プライドを傷つけると厄介だ。
途端に空気が重くなり、居心地が悪くなる。
医師はこれ以上話を続けてこない。話はこれだけ、のようだ。
そう判断したアスランは頭を下げて謝罪し、そそくさと診察室を出ていった。
今日は待ちに待った退院の日だ。ミーアは小さなバッグを抱え、ユニウス大学病院の入り口に佇んでいた。
ここへデュランダルが来てくれる手はずになっている。
もう迎えの時間を過ぎていたが、影も形も見えない。渋滞にでも巻き込まれたのだろうか。
担当の看護士は入り口まで見送りに来てくれたが、迎えがあまりに遅く、仕事が忙しいというので病院の中に戻ってしまった。
それからずっと一人で待っていた。初めのうちは一人になったのをいいことにヘッドホンをかけ音楽を聴いていたが、
すぐに疲れが出てきて、柱にもたれかかる。見上げると、太陽が優しく顔を照らした。
ぽかぽかと気持ちのいい日だった。ずっと病院の中にいたおかげで、こんなに気持ちのいい日差しを浴びるのは久しぶりだった。
おまけに音楽を聞いていると、あまりに気持ちよくてうとうととしてくる。
「先生は、まだ来ていないのか?」
柱の辺りで座り込み、八割がた寝ていたミーアはその声にはっとする。
「アスラン!」
ずっと一人でいて心細かったミーアは思わず抱きつく。
少し驚いたが、今までの付き合いでこの程度のことは予想範囲内だ。彼女の肩をつかんで引き離す。
「どうしたんだ、いきなり」
「一人でずっと退屈だったんですよぉ。見送りに来てくれたんですね? うれしい!」
「いや、たまたま寄っただけでそういうわけでは……」
「えぇ〜!? あたしのために来てくれたと思ってうれしかったのに……あたし、悲しい」
そう言ってミーアは泣きマネをした。予想外の事態に、アスランは滑稽なほどうろたえる。
「お、おい! ちょっと待ってくれ!」
「どうせアスランにとってのあたしなんて、その程度なんですね」
「あ、いや……何でそうなる!? と、とにかく泣くのを止めてくれ!」
悲痛な叫び。アスランの反応があまりに面白くて、ミーアは泣きマネを継続する。
何とか彼女をなだめようと四苦八苦するアスランは、すぐ近くにハイヤーが停まったのも気付かなかった。
「やあ、遅くなってすまなかったね」
穏やかな声が届き、アスランは慌てて声のした方へと顔を向ける。長い黒髪を垂らした理知的な表情、デュランダルが
やわらかい微笑を浮かべ、少し離れたところから二人を見ていた。
「あ、いえ……あの」
「そうですよぉ。あたし、ずっと待ってたんですから」
思ってもみない事態の連発に、アスランは困惑の極みに陥ってしまう。それとは対照的に、ミーアはいち早く泣きまねを中断して
甘えた声を出した。
「ははは、すまないね。探し物が見つからなかったんだ」
「探し物? ひょっとしてあたしの退院祝い?」
「残念ながらそういうわけではないな。彼に頼まれたものがあってね」
「アスランに?」
「ああ。少し待っていてくれたまえ」
不思議そうな顔をする彼女をさておいて、デュランダルはアスランに向き直った。
「これが君に頼まれたものだ。使い方は、言わなくても分かるね? しかし、本当にZAFTに知らせないつもりなのかな?」
銀色のアタッシュケースを手渡しながらの問いに黙って頷き、肯定を示す。
残念だが、ZAFTが束になってもあのMSは倒せないだろう。ザクファントムは、今までのMSとは格が違った。
シウスも、グレネードでさえも通用しなかったのだ。ZAFTの装備でも同じ結果になるだろう。
「はい。ここは俺だけで……」
「私が言うのもなんだが、一人で何もかも背負い込もうとするのは、悪い癖だね」
デュランダルの指摘は、この上なく的確だ。アスランは何も言えなくなり、押し黙ってしまう。
「まあ、警察は今、かなりごたついている。ZAFTの方も確証がなければ人をまわすことは出来ないだろうから、
今回はそれがベストなのかもしれないね。だが、十分気をつけてくれたまえ。それも本来、生身の人間に扱える代物
ではないのだからね」
「分かっています」
首肯する。デュランダルは満足気にアスランの肩を叩いて激励した。
二人の会話を黙って眺めていたミーアは、何かに気付いたように口を開いた。
「ひょっとしてアスランがここに来たのって、先生に会いに来たからですか?」
「いや、それはその……」
なんと答えてよいか分からず、口を濁してしまう。
「アスランが来てくれて本当にうれしかったのに、ついでだったなんてひどい!」
芝居がかった仕草でよよと泣き崩れるミーア。先ほどと同じく狼狽したアスランは、助けを求めるようにデュランダルに目配せをする。
「ふむ、そうだな。君はひどい男だ」
アスランとミーアのやり取りを見て、デュランダルはより面白そうな方の味方をすることにした。
若干真面目すぎるきらいのあるアスランには、いい薬であると思ったのかもしれない。
「ちょ、ちょっと!? 先生!」
「そうですよね。アスランってば女心が分かっていないんですよぉ」
「それは困ったな。助手に雇ったのを考え直すべきかもしれん」
「ミーア! 先生もいいかげんにして下さい!」
面白がってからかってくる二人へ向けて、アスランの悲痛な叫びがこだました。
夕陽が海に沈みかけている。人気のない、寂れた倉庫が夕闇に照らされ、赤く染まる。
その壁に一人の男性がもたれかかっていた。
見たところ、30代といったところだろうか。鍛え抜かれた鋼の筋肉を纏った、大柄な男。鼻先に大きな傷跡が刻まれている。
大きな掌を開き、閉じる。その動作を一通り繰り返し、観察。
さらに、わき腹も調べる。二度三度と、確かめるように押さえつける。
「……こんなものか」
問題ない。満足気に呟いたサトーは立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。
雲が多く、月明かりさえ照らさぬ真っ暗闇の中。人気のない寂れた道をサトーは歩いていた。
身体も回復した。今度こそ、インパルスにとどめを刺すつもりだ。が、彼は足を止める。
「なんだ、貴様は?」
行く先に、一人の青年が立ち塞がっていた。男の優れた視力は、この暗闇の中でもこの青年が何者かということを知らせた。
インパルスと同様、幾度となくサトーの前に立ち塞がったナチュラルだ。手には以前も所持していた銃を提げている。
サトーはこのナチュラルにもいくつもの借りがあったことを思い出し、唇を歪めた。
「そうか。まずは、貴様が相手してくれるというわけか」
アスランは何も言わなかった。答える代わりに、男へ銃を向けて引き金を引く。いくつもの弾丸が飛び出し、吸い込まれるように男を狙う。
兆弾の音がして、火花が散る。着弾の煙幕がわずかに男の姿を隠した。煙の向こうにいるのは既に人間の姿をしていなかった。
黒いMS、ザクファントム。案の定、ダメージは与えられていないようだ。それどころか、以前の戦いによるダメージも
完全に回復していた。先の戦いで失われたシールドすら復活している。回復力が彼の予想以上だったようだ。
ザクファントムは軽く地面を蹴った。その動きにもダメージは見られない。彼を叩き潰さんと、一気に距離を詰めていく。
ごく至近距離で鋼のように重く、丸太のように太い腕が唸りを上げて襲い掛かる。
それをアスランは紙一重、という表現そのままに、後ろに倒れるようにしてぎりぎりでかわす。
かわしきれたはずなのに空気が弾け、彼の髪の毛を揺らした。
しかし、おかげで懐に飛び込むことが出来た。接触せんばかりのごく至近距離で発砲、対MS用の特殊弾を腹部に撃ち込む。
彼の超人的な反射速度と歴戦の経験のみが可能としたまさに神業と呼ぶにふさわしい動きだ。
しかし、たいした効果はなかった。
銃弾を喰らった箇所は若干傷つき、硝煙によって黒ずんではいたもののダメージとなるべき程のものではない。
「……ふっ」
嘲笑するように息を吐き、サトーはアスランを見下ろした。そして、野太い脚を動かす。
跳ね上がる脚、膝の角ばったアーマーがアスランの腹部に突き刺さり、蹴り飛ばす。
衝撃に息が詰まる。鈍い痛みとともに内臓が押し潰され、肺の中の空気が強制的に排出される。
何メートルも吹き飛ばされたアスランはシウスすら手放し、背中からアスファルトの地面に叩きつけられた。
仰向けに倒れたアスランは全身を震わせてうめくが、まともに戦うのはもはや不可能だろう。
「少しは骨があると思っていたが……所詮ナチュラルなどこんなものか」
サトーは手斧を提げ、ゆっくりと歩み寄っていく。
インパルスならいざ知らず、ナチュラル程度が自分を傷つけることなどありえない。
今こそ、ユニウスセブンで不覚を取らされた借りを返す時だ。
倒れたナチュラルの目の前で、サトーは手斧を天高く掲げた。
足音が停止した瞬間、アスランはかっと目を見開いた。
視界に飛び込んだMSを睨みつける。位置は予想通りだ。すぐさま右手を腰に持ってくる。
ガンベルトに提げられた筒を持ち上げ、ためらいなく即席のトリガーを引き絞る。
筒の先から、巨大なグレネード弾が射出される。ろくに照準も定めなかったが、この至近距離で外すわけがない。
グレネード弾はまっすぐにザクファントムの胸部へと吸い込まれ、炸裂。
通常のグレネードとは比べ物にならないほどの巨大な閃光。そして爆風と破片の嵐ににザクファントムは飲み込まれる。
が、アスランもただではすまなかった。
ごく近距離での爆発の衝撃波、そして高速で撒き散らされた破片が地面に倒れたままの彼の全身に襲い掛かる。
何とか顔面を庇うが、先ほどの膝蹴りとはまた別の、鋭く熱い痛みが全身に広がる。
爆風が収まるのを待って、アスランは手を退けた。目の前に立っている者はない。
ずきずきと痛む身体を引きずりながら、地面に手を着く。普通に立ち上がるだけでも苦痛が伴う。
思わずシウスを投げ捨てたくなる衝動に駆られたが、これで倒せたとは限らない。銃を持った右腕を垂れ下がらせ、
アスランはMSの姿を探した。それはすぐに見つかる。
爆発から2、3メートル先に仰向けに横たわっていた。着弾点と思しき胸部はずたずたで、まともに考えれば生きているとは思えない。
そのあまりの威力に、アスランはごくりとつばを飲み込んだ。
対MS用の、特殊大口径グレネードランチャー。これこそがデュランダルに頼んだ、アスランの最後の切り札だ。
もともとは専用銃にマウントして使用するものだが、ランチャー単体で使用できるように改造してもらった。
シウスにマウントして使うグレネードは通用しなかった。ならば、もっと強力な武器を使うしかない。
それがこれだ。本来、モルゲンレーテ社製のストライクなどの強化外装システムを装備したうえでなければ、反動等の
負担が大きすぎて使用できない。だが、彼はそれを地面に押し付け、反動を強引に押さえ込むことに成功した。
とはいえ、無茶な改造のおかげで射程距離も命中精度も劣悪だ。普通に使ったのでは、当てることさえ不可能だったろう。
そのための零距離射撃だった。ぎりぎりまで引きつけての、捨て身の攻撃。
これはちょうどシンの最後の攻撃、捨て身のカウンターと酷似していたことに、アスランははじめて気がついた。
アスランはこの恐るべき敵をじっと見下ろしていた。油断なくシウスを向けてはいるが、それを支えているだけでも脂汗が額を走る。
疲労と痛みに一瞬意識がとび、頭を押さえる。その瞬間、一つ目が輝きを取り戻した。
跳ねるようにサトーが起き上がる。発砲しようとしたアスランだったが間に合わず、殴られるように襟首をつかまれてしまう。
瞬間、息が止まる。
シウスを取り落としてしまった。手を伸ばすが届くはずもなく、それを察したサトーにシウスを蹴り飛ばされ、視界から消えた。
「ふ……ふふふ、面白い真似をする。これでこそ、倒しがいがあるというものだ!」
不敵に哂ったサトーは右腕を持ち上げた。左手に新しく取り出した手斧を握っているのが、かろうじて見えた。
174cmの身体が宙に浮く。手元を捻り上げたのか、更に呼吸が苦しくなった。
アスランはかすむ瞳で黒いMSを見下ろした。
自分の身体を唯一支えているのは、この鈍い光沢を放つ黒い腕だけだ。両腕で引き離そうとするが、固定されたようにびくともしない。
空気が動く。彼は手斧が振り下ろされるのを感じた。眼で見るのではなく、肌で感じたのだ。その先にある、確実な死をも。
振り下ろされるまでの間のわずかな時間が、とてつもなく長く感じられる。
一瞬で終わってくれれば……生きることを放棄していれば、むしろ楽だったのかもしれない。
だが、できなかった。
かつて生きることを、戦うことを諦めかけた時に投げつけられた言葉が脳裏に甦り、強い意志を呼び起こす。
死ねない……生きることが戦いなら、俺はまだ死ぬわけにはいかない!
瞬間、まぶたの向こうに一人の少女が見えた。
長く美しい桃色の髪の、神秘的で清楚な美少女だ。彼の視線は、その少女に釘付けとなる。
ミーアと瓜二つでありながら、纏う雰囲気は全く別種のものだ。彼女こそ、ユニウスセブンで見た幻の少女だろう。
「君は……誰だ?」
彼の問いには答えず、少女は両手を目の前に差し出した。
白い手から光が溢れる。それが集まり、光の玉となって彼の中へと吸い込まれていく。
彼の中で、何かがはじけた。
とどめを刺そうとしたサトーは、何かに弾き飛ばされた。
「な……何?」
あのナチュラルが何かを仕掛けたのだろうか。上半身だけを起こした彼は、真っ先に様子を確認する。
サトーの拘束から解放された青年は両の脚で立ち上がっている。戸惑っているのか、腰の辺りに視線を集中させている。
そこにはベルトが現れていた。それは脈動するかのように、一定のリズムで緑色の光を放っている。
これを見たことで、サトーは全てを理解した。
アスランは自らの腰にある物、その存在にアスランは動揺を隠せないでいた。
鼓動に合わせるかのように緑色の輝きを放つベルト。力を解き放つための、鍵となるもの。
四年前に、激戦の末、命と引き換えるかのように失われた力。それが今、ここにある。
実を言うと、変身できなくなったことをうれしく思う気持ちがあった。
これで、戦いが終わった。人間として当たり前に、普通に生きることが出来る、と。
しかし、戦いはまだ終わってはいなかった。かつての自分と同じように、戦いに身を投じる者もいた。
ならば戦わなければならない。かつて戦った者として、大切なものを守るために。
どうしてこの力が甦ったのかは分からない。だが、これは戦うための力だ。
左腕を引き、身体を捻るようにして右腕を内側に振りぬき、顔の左側にもってくる。
瞑目するように目を閉じ、決意を表すかのように見開く。と、同時に右手を強く握って拳をつくる。
そして叫ぶ。内なる力を解き放ち、戦う姿に変えるための、この言葉を。
「変身!」
「……ルナお姉ちゃん」
消灯時間を過ぎ、部屋の照明を落とした時、マユがふと漏らした。自分から口を開いたことにルナマリアは喜び、弾んだ声をあげる。
「えっ、何!?」
「マユのケータイ、どこ?」
その言葉に、暗闇の中でも分かるほどに蒼ざめる。携帯電話を渡したら、間違いなくシンにかけてしまうだろう。
絶対に渡してはならない。
「あ、その……ね、病院内は携帯電話禁止だから……私が預かって、家にもって帰っちゃったわ」
嘘だった。シンの携帯電話と共に、電源を切ってこの病室のチェストの中に入れてある。
本当は自分で持っているのが一番いいのだが、二つの携帯電話はとてつもなく重く、持つことができなかったのだ。
目を逸らして言うルナマリアに対して、不信感を持ったのだろう。
マユは疑いの目を向けてくるが、ルナマリアはそれを無視した。マユもそれ以上追求するようなことはしなかった。
以降、マユは再びだんまりと口をつぐむ。重く、ギスギスした空気になりながらも、ルナマリアはほっと胸を撫で下ろした。
真夜中、マユは目を覚ました。長いこと悪夢を見ていたせいか、眠れない。
ルナマリアはパイプ椅子に座ったまま、ベッドにもたれかかるようにして寝息を立てている。今日は色々とありすぎて、
精神的にドッと疲れてしまったのだ。
ルナマリアがよく眠っているのを見たマユは、彼女を起こさないようにもぞもぞと布団から這い出る。
赤い髪に当たらないように気をつけ、足を下ろす。
続いてベッドに手を着き、一気に腰を上げて立ち上がる。が、足が震えてしまう。歩くどころか、一歩踏み出すことすら出来ない。
長いこと眠っていたマユの身体は、ひどく弱っていた。
自分の身体を支えることすら、できないほどに。
それでも歩こうとして、無理やり足を動かす。途端に足がもつれる。倒れかけたマユは思わずチェストに手を伸ばした。
小さな手は引き出しを掴むが、それはマユの体重を支えきれなかった。チェストは中身をぶちまけ、派手に壊れてしまう。
「あうっ!」
倒れこんだ少女の目の前へ、チェストの中身が散らばった。
「……ん〜、何よ?」
激しい物音で、ルナマリアは目を覚ました。
寝ぼけ眼をこすりながら、物音のしたほうへと視線を向けた彼女は蒼白となった。
マユが床に突っ伏し、壊れたチェストの中身が散乱している。少女の目の前には、ルナマリアが隠していた二つの携帯電話が転がっていた。
うつ伏せに倒れたまま、マユは二つの携帯電話に手を伸ばす。
自分の宝物のピンクの携帯電話と、自分が選んだ兄のワインレッドの携帯電話。二つはストラップで一つにつなげられている。
それを手に取ったマユは、助け起こそうと駆け寄ってきたルナマリアに尋ねた。
「ルナお姉ちゃん……これ、どういうことなの?」
何でこんな所に兄の携帯電話が転がっているのか、どうして兄が持っていないのか。
ルナマリアは少女を助け起こしながらも、目を背けて質問を無視しようとする。
「ねえ、どうしてお兄ちゃんのケータイがあるの? お兄ちゃんはどうしたの! 答えてよ、ルナお姉ちゃん!」
少女の悲痛な叫びが、小さな病室にこだました。
ベルトが一際激しく緑色の輝きを放つ。
アスランの身体が変化していく。均整の取れた肉体が、薄い赤の外殻に覆われる。
額に輝く金色の角、緑色の複眼、亀の甲羅を思わせる装備、ファトムを背負ったその姿は、紛れもなくジャスティスそのものだ。
しかし、変化はまだ続いていた。
全身のシルエットが、さらに力強さを感じさせる鋭角的なものとなり、ひじや膝に銀色のラインが加わる。
ファトムは本体が小型化、翼が大型化し、まるでマントのような形状へと変貌を遂げる。そして左腕に小ぶりな盾が装着された。
ジャスティスでありながら、以前のそれとは明らかに異なる姿。四年の時を越えたジャスティスは、新たな力を得て甦ったのだ。
彼の変身を目にしたサトーは息を呑んだ。ただものではないと思っていたが、やはりナチュラルなどではなかった。
自分と同様のコーディネイター。にもかかわらず、ナチュラルの味方をするつもりらしい。
だが、サトーとしても今さら戦いを辞めるつもりはなかった。この相手にはインパルスと同様、借りがある。
自分を傷つけ、仲間をも倒した。そんな相手をどうして倒さずにいられようか。
サトーは燃え盛る復讐心とは別に、冷静な視線でジャスティスを観察する。
外見からも、かなりの力を秘めていることが分かった。そして、変身するのはナチュラルの姿のままであれだけ戦えたあの青年。
侮ってかかっては、こちらが負ける。一目でそれを看破したサトーは胸を張るようにして気合を入れ、装備を変更させた。
肩口に二本の筒、手には巨大な戦斧、ファルクスを握ったパワー重視の形態だ。柄を両手で握り、左右に振りながら回転させ、振り下ろす。
「ぬおおぉぉっ!」
持ち前のパワー、ファルクス自体の重量に遠心力をもプラスした一撃が、ジャスティスを押し潰さんと襲い来る。
「うおぉぉっ!」
だが、そのとてつもなく重い一撃をジャスティスは受け止めた。
刃を左腕の盾、キャリーシールドで受け、攻撃の重さを左腕の下に右腕を重ねた両腕の交差で止める。
両足がアスファルトを打ち抜き、大地に陥没。道路に穿たれた二つの亀裂が、威力の程を何よりも雄弁に物語っていた。
しかし、肝心のジャスティス自身にダメージはない。いかに破壊力のある一撃だろうと、当たらなければ意味はないのだ。
「はっ!」
気合とともに両腕を跳ね上げる。
シールドごとファルクスを持ち上げ、弾き飛ばすと同時にストレートキックを見舞う。衝撃で、わずかに後退してしまうザクファントム。
そこへアスランは追い討ちを掛けていく。
流れるようなスマートな動きでの、突きや蹴り。
それらは的確にザクファントムの防御を破り、ダメージを蓄積させていった。
このまま接近戦をしていては不利だ。
そう悟ったサトーは後方に跳躍し、装備を変更させた。長方形を二つつなげたような背中の、最初の姿。スピード重視の基本形態だ。
そしてすぐさま身を屈め、背中の装備を展開させる。内蔵されているのは生体ミサイル、ファイアビー。
瞬時に飛び出したそれは、あたかも花火を逆再生させるかのような軌道を描いてジャスティスに向かった。
同時にエネルギーを集中させたショルダータックル。
逃げ場のない連続攻撃、これはインパルスすらも倒したほどの攻撃だ。逃れることは、不可能だろう。
にもかかわらず、ショルダータックルをかけるサトーの目前で、ファイアビーが次々に爆発していった。
おそらく、捨て身の突進でショルダータックルを相殺しようというのだろう。
だが、爆発で威力のそがれた攻撃が何の役に立つというものか。このショルダータックルに叩き潰されるだけだ。
しかし、爆煙を抜けて飛び出してきたのはジャスティスではなかった。
背中に装備されていた外套。展開されたそれは、翼を広げた鳥のようにサトーに突進し、先端の巨大な刃が肩のシールドを切り裂いた。
この外套の名前は、ファトム01。普段は背中に装備させているが、いざとなったら分離させて攻撃させることも出来る、
ジャスティスを特徴付ける強力な武器だ。
ファトム01によってつくられた道を、続けて飛び出してきたジャスティスはキャリーシールドの裏に手をかける。
小型の青竜刀のような形の刃、シャイニングエッジがキャリーシールドには内蔵されているのだ。
シャイニングエッジとは以前のジャスティスの武器、パッセルの発展したものだ。
パッセルは小型のブーメランだが、くないのように扱うのことが多かった。
それが大型化され、シャイニングエッジとなったことで、ブーメランとしての威力も上がり、剣として扱うことも可能だ。
居合い切りのごとく抜き放たれた刃は、胸部の外殻を切り裂き、更なるダメージを与えていく。
追い詰められたサトーはとっさに手斧を投げつけた。
それをジャスティスはキャリーシールドを掲げて弾き飛ばすが、そこに隙ができた。そこへ、エネルギーを集束させた左肩をぶつける。
懐に一撃を受けたジャスティスは弾き飛ばされるものの、地面にキャリーシールドを突き刺す。コンクリートに軌跡を残し、踏みとどまる。
間合いが開く。サトーは左肩にエネルギーを集中させていく。スパイクから、エネルギーがほとばしる。
最後の激突になるだろう。
そう察したアスランは、右足に意識を集中させた。
ベルトが輝き、右足にエネルギーが流れ込み、新たに装着された足甲に集束する。
わずかな膠着。
互いに相手を睨みつけた。視線の合った瞬間、雲が切れて月明かりが差し込む。それが合図となった。
両者ともに、コンクリートの道路に足跡が残るほど、強く地面を蹴った。
突進してくるザクファントムに対し、ジャスティスも駆け出す。
接触する――タイミングを見計らい、跳躍。
「ぬぅおおぉぉぉっ!」
「ハアァッ!」
必殺の跳び廻し蹴り、グリフォンブレイク。
ともにエネルギーをほとばしらせ、右足と左肩が激突する。
勢いのまま、一回転したジャスティスは右足から白煙を立ち昇らせ、着地する。
その後方では、左肩を完全に破壊されたザクファントムが独楽のように回り、崩れ落ちた。
アスランは振り向き、ゆっくりとサトーのもとに歩いていった。死闘を繰り広げた相手、その最期を確認するためだ。
倒れたサトーは人間、彼のいうにはナチュラルの姿となっていた。
既に息も絶え絶え、といった様子だが、かろうじて動く目で、射殺さんばかりの視線を向ける。
「貴様……何故、ナチュラルどもに味方する……」
搾り出すようにして、続ける。アスランは何も言わず、怨嗟の声を聞き続けた。
「貴様も、コーディネイターだろうに!」
憎悪のこもった叫びとともに、一瞬ザクファントムの姿に戻る。そして、爆散。
アスランはシールドで爆風から自分の身を庇う。
それが収まった時、目の前には何も残されていなかった。
ユニウスセブンでの決着は着いた。そのことに、不思議な感慨を覚える。
わざわざザクファントムの最期を見届けようと思ったのも、そのせいかも知れない。
変身能力までも復活した。デュランダルに報告することは、山のようにある。
変身を解いたアスランは、その場で大きく息を吐いた。
白いベッドの上で、一人の少年が横たわっている。
全身を包帯で覆われ、口元には人工呼吸器がすえつけられ、頭の上では黒いディスプレイに鼓動を表す緑の折れ線グラフが刻まれている。
この病室の名札に刻まれた名前は、シン・アスカ。
かろうじて手術に成功した彼は、特別室で一人治療を受けていた。
電子音だけが響くこの小さな部屋に、赤毛のショートカットの少女に車椅子を押されて、栗色の髪の女の子が入ってくる。
シンの変わり果てた姿を見て、マユは言葉を失った。
思わず立ち上がろうとして、車椅子の肘掛に手をかけて、車椅子ごと横に倒れてしまう。
「マユちゃん!」
床に叩きつけられ、動けないマユを助け起こそうとルナマリアは駆け寄る。
助け起こされながらも、マユは目に涙を湛え、嗚咽を漏らし続けてた。
こんな風に倒れても、お兄ちゃんは手を差し伸べてくれない……お父さんもお母さんはもういなくて、お兄ちゃんまでいなくなっちゃったら
マユ、本当に一人になっちゃうよ。また、死んじゃうなんて嫌だよ。お兄ちゃん……
投下終了です
今回はサブタイトルをつけてみました。
それにしても、00のおかげかスレが落ちまくってますね……
ここも落ちやしないか、すごく……怖いですorz
GJ!
セイバーすっとばして隠者とは予想外でした。
が、その方がすっきりしていいかもしれませんね。
一方シン、マユ、ルナの方がエライことになってますが…
続きをwktk待ってますw
あげ
あげ
>>36 大丈夫!00以外と勢いがないから、てか面白いっ!続きがきになって仕方ないぜ!
41 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/14(日) 17:11:31 ID:XFf7HENC
この後アスランがキラに味方しないか気になる
保守
あ
い
PHASE-10 舞い降りる剣
―――君は……君はZAFTの゙当代神゙、ガンダムの力を受け継いだ゙神の子゙なのさ―――
「ぐ……ああっ……やめろ……!?!………夢?」
先程の出来事が悪夢となって出て来るとは思いもしなかった。
エルを救えなかった時もそうだったが、どうやら直後に夢となってフラッシュバックするようだ。
「トラウマ……って事かな」
自分の手を見て、どこが違うか見つけようとする。人型のZAFT……とクルーゼは言っていたが。
気にせざるを得ない。自分がZAFTの……その頂点に立ってるという事が何を意味するか。
服を着てカーテンを開くと、隣にはニコルが寝ていた。
どうやら重傷らしい。そっとしておこうと、その場を立ち去った。
それを細く開けた目で、ニコルは見ていた。
指令室に行くと、中は殺伐とした空気であった。イザークもディアッカも、マリューやナタルも。
「あの……何かあったんですか?」
「……もういいの?」
「はい。それより……何か?」
すると、ナタルが1枚のディスクをインストールした。そこには、キラの良く知る人物が、知っていた人物の姿がある。
「ザラの……おじさん?」
死んだはずのアスランの父、パトリック。彼が今、画面越しに立っている。即ち、擬態されてる事を意味する。
「丁度1時間前だ。声名が出されたんだよ……ZAFTから」
―――「私はZAFTの代表として、この場を借り、人類抹殺を宣言する!。我らの力を思い知るがいい」―――
この後も続きはあったが、大事なのは人類抹殺の宣言である。
メンデルでの戦いからわかるに、戦力が整ってると見て間違いはないだろう。
「敵は何かを隠しています……それを砕くには、あなたが必要不可欠です」
聞いたことない、しかめ幼い声がした。振り向くと、10歳ほどの男の子が立っていた。
「君は?」
「僕はプレア・レヴェリーという者です。あなた方に、ある人の使いとして、やって来ました」
イザークの話では、このプレアという子がニコルを運んできたという。さらに驚きなのは、ライダーシステムを持っているという事であった。
「僕の持つドレッドノートは、Nジャマーキャンセラーを搭載しています。これを、あなた方の力に使ってほしいのです」
「Nジャマーキャンセラー??」
17年前、ユニウスセブンが落下したときに特殊な電磁波が地球に散布された。
これは生物に対しては影響が出ないが、磁気を狂わす力があった。
さらに、電磁波の影響で世界中の軍事兵器は使用不能になった。ある意味、戦争がなくなって良かったかもしれない、などとは言ってられない。
通称、それはNジャマーと呼ばれている。発しているのはユニウスセブンの破片である。
だが、下手に駆除すればなにが起こるかわからない。さらにはZAFTまで発生する始末である。
この国の政府はブルーコスモスを結成した。だが一般市民を顧みない方法を気に食わず、ウズミはオーブを創設した。
ブルーコスモスも使用している武器の流用はあるものの、小さい勢力ながら独自の対ZAFT兵器・ライダーシステムを開発した。
ライダーシステムもNジャマーの影響を少なからず受けている。
しかし、プラズマ粒子のチャージ形式を取ることにより活動時間が制約されるものの、単独での戦闘を可能としている。
Nジャマーを取り払う。つまり、プラズマ粒子のサイクルが無限になるという事になる。
「ライダーシステムはエネルギー切れする事なく、戦闘を行えます。ただ、危険なものなので1人のみですが」
ポケットからプレアは両端にアームが付いたものを取り出した。
「これは、ミーティアというNジャマーキャンセラーを搭載したアームドモジュールです」
プレアは迷うことなくキラにミーティアを手渡した。
「これは……神の力を持つあなたにこそ渡すべきと、導師様に言われました」
「え……神?」
彼に悪気はないのだろう。だが、傷心しているキラにも戦いを終えたばかりのイザーク達にも、その事実は衝撃すぎた。
「みなさん、知らないんですか?この方はZAFTの統括者たる神の後継者なんです」
「!!??!。な……何だって……」
ガチガチと震えるキラと、その話しを止めさせようと飛び起きたニコルが真実味を帯びていた。
どれくらい眠っていたかわからない。だが、意識があるということは生きているのだろう。
包帯は巻かれていない。血も出ていなかった。なぜだろうか?
ベッドの上にいるアスランに今の状況がわかっていなかった。痛みが少しある程度だ。
「これは……」
「やっと目覚めたか、バカ息子」
「親父……!?」
擬態しているのは間違いない。だが、その姿は記憶に刻まれた父そのものだった。
「後少しで死ぬところだったな。PS装甲も切れかけていたぞ」
「あんたが……あの資格者を殺して俺を助けたのか?」
そう。あの時爆死しのはソキウスだけだったのだ。アスランを助けたのは紛れもない、殺した相手に擬態しているZAFTなのである。
「なんで俺を助けた?……まさか親父の意識がお前より強かったとでも?」
「貴様に利用価値があるからだ。……それに……それは貴様の方だろう?」
ツーっと汗が出てくる。何を意味しているか、この時点ではアスランとパトリックしか知らない。
「何にしろ、こちらに流れてきたライダーシステムの最終調整にイージスのは役だったよ」
「ライダーシステムが……なぜZAFTに?」
「オーブの開発したGATシリーズの発展型、ブルーコスモスと並ぶ公認組織、プラントがZGMFシリーズを開発したのだ」
「プラント……この国の国防省総議長、ギルバート・デュランダルの下に創設された組織……」
最近になり、ブルーコスモスのやり方を批判していたデュランダルが創り出したらしい。
「あれを潰さなければ我々ZAFTに未来はない……だが、奴ら自身が自分らを殺すライダーシステムを開発してくれたようだな」
そこには2本のベルトが置いてあり、その内1本を狂ったような表情をした男が持っていった。
「たった2本で何が出来るっていうんだ?」
「あの2本は……貴様の使うイージスよりも、いや、従来のライダーシステムを超える性能なのだよ」
一方、ブルーコスモスではパトリック・ザラの声明を聴いてから臨戦態勢となっていた。
この国の首都にある本部、JOSH-Aでは数百人の隊員が来たるべき決戦への準備をしていた。
「もうすぐ終わりですよ……我々には、クルーゼが流してくれたNジャマーキャンセラーがあるんですから……」
多数配備されている短距離弾道ミサイル。これはZAFTを一度に殲滅させようという意思の表明である。
「しかし、Nジャマーキャンセラー……信用できるのか?あの仮面の男……」
「彼は我々が作り出したZAFTです。子供が親の言うことを聞かないはずがないじゃないですか」
ロンドはアズラエルの話しを聞きながら、ウズミに代わってオーブが管理する地を、さらにはこの国を支配するための未来図を思い描いていた。
カガリもフレイもそこを訪れ、声明の映像と共にキラの出生の秘密を聞いてしまった。
驚愕どころか、顔を歪めざるを得ない。
「すみません……つい……キラさんの気持ちも考えないで……」
「ううん……いずれ話さなくちゃいけなかったし……」
そう言ったものの、一番傷ついてるのはキラである。皆が悩む中、ナタルが口を開いた。
「ZAFTであるなら倒す……違いますか?」
その言葉の意味することは一目瞭然である。直後、トールが立ち上がった。
「待ってください!。キラは敵じゃありません。今まで一緒に戦ってきたじゃないですか?」
「そうだ!キラは人間として生きてきて、人間を守ってきたんだ!」
イザークも遅れながらナタルへ反論する。マリューはアークエンジェルのデータベースにあるキラの詳細を引き出したが、異常は認められない。
遺伝子単位だけではない。頭脳や体力は平均以上ではあるが、人間という領域を逸脱してはいない。
「みなさん、神と言っても人間と代わりはないのです。キラさんがジンやゲイツのように醜い獣になることはありません」
「じゃあ、何が人間やZAFTと違うんだい?」
一番にそれを聴きたいキラはプレアの肩を掴んで急かしてしまう。
「……現在よりも遙か昔にZAFTが地球に攻めてきたそうです。その時、人類はライダーシステムに該当するもので対抗したそうです」
そして勝った。人類がこうして繁栄してるのがその証拠である。
「それで先代ZAFTの神を倒した人間が神を継承し、荒れた地球を救済したようです」
「それって……どういう……」
「ZAFTの神は森羅万象を自在に操る、万能の力を有しているそうです」
驚くしかない。それはまさにZAFTの神というより、理想的な神そのものであるからだ。
「what?だけど、今までそんな事はキラに起こらなかったぜ?」
「キラさんに自覚が無く、今まで目覚めるきっかけが無かったからです。現状のままなら、目覚めるかどうかはわからないんですが……」
そんな重大な事をすらすらと言えるプレアは一体何者なのか。
原点に帰ってみよう。こんな小さな子供がどうして変身できるんだろうか?
「プレア君、今の話を誰から聞いたの?さっきの゙導師様゙ってのも……」
フレイの質問に対してプレアは待っていたかのように言葉を静ませる口調に変わった。
「はい。マルキオ導師………ライダーシステム発案者であり、開発一任者です」
「!!?」
――ZAFT出現!ZAFT出現!ポイントはカグヤ区南西部D-62!――
その放送を聴くとイザークとディアッカは出動し、マリューとナタルは司令室へ急いだ。
トールは先程アストレイシステム試験者、ロウ・ギュールからレッドフレームを受け継いだので部屋に取りに行った。
カガリもゴッドフリートを抱えて戦地へと赴いた。つまり、その部屋にはキラ・フレイ・プレア・ベッドで眠っているニコルだけとなった。
「キラさん……なぜ戦いに行かないんですか?」
座りながらずっと頭を抱えているキラ。あまりにも突然すぎて、大きな内容に混乱を通り越していた。
既に自暴自棄とでもいうのか、プレアの言葉すらクルーゼの言葉と聞こえてしまっている。
「僕は……時々戦ってるときにZAFTを殺したくて仕方がない瞬間があるんだ。それって僕でない、誰かが僕の中から出てきそうに感じるんだ」
仮面ライダーシン→後番組仮面ライダー刹那
特にバクゥとの戦いからは自分の意思を超えて戦闘を行っている場面が見られる。
そう、あれは殺戮本能とでも言うべきだろうか。憎悪に任せたとてつもない攻撃は明らかに人間技ではない。
「こうして戦ってたらいつ僕は僕でなくなるか……わからない」
「キラさん、僕は……ぐ…あな……」
突然、動悸が激しくなってきているプレア。急いでミーティアをキラに手渡し、倒れてしまった。
布団に寝かせて落ち着いたようだが、安心は出来ない。
「きっと無理してたんじゃないかな……みんなに話してるときも……」
「……………フレイ??」
パチン!!、とキラの頬を平手が叩いた。顔を上げると、何時になく怒った顔のフレイが睨みつけていた。
「キラの不安も苦しみも私はわかってあげられない。でも、こんな子供が無理して戦って、それでも伝えたかった気持ちを無駄にしてほしくないの!」
「フレイ……」
「もしあなたが戦わないなら、私が……」
ストライクバックルを取り、腰に巻いて中枢部を開く。しかし、拒絶反応によってベルトは外れてしまった。
「痛た……」
もう一度バックルを手に取ろうとすると、先にキラがバックルを手に持った。
「今は……守るために戦いたい。僕は人間として……僕として戦うよ」
「キラ……」
ジンやゲイツを倒していたが、デュエルとバスターの装甲は削られていた。
突然痛みが襲ってくる。間違いなく、自分達の知っているライダーの特質である。
「イザーク、こいつは……」
「ミラージュコロイドだな。隠れてないと攻撃できない腰抜けがぁッ!」
仮面ライダーキラ→仮面ライダーシン→仮面ライダー刹那
その言葉に反応したのか、そいつは姿を現した。腕から胴へ、脚から腰へと紫色のライダーが出てくる。
「イージスと似ている……?」
「当たり前だぁ。こいつはぁ、イージスを基にぃ、造られてるんだぜぇ」
その声と共にイージス同様の装備である、両腕に内蔵されたサーベルが見える。
だが、アスランのような切れのある振り方ではない。乱暴な、それでいて確実に相手を仕留めるための牙のようだった。
バスターのガンランチャーを気にせず走ってきて、一太刀浴びせられる。
サーベルが交差し、力で強引にデュエルの胴へ切り込んでくる。それが狙いだ。
背後からバスターが二丁のランチャーで紫のライダーはよろめいた。
゙X-102 ライダーキッグ
そこへ空かさずライダーキックを浴びせた。距離のある場所に蹴り飛ばしたが、そいつは立ち上がった。
「こんじゃあぁ、アッシュ・グレイ様のリジェネレイトは倒せないんだよぉ……へへへ……」
見る見るうちに装甲が直っていく。しかも、アッシュの声色から資格者へのダメージすら回復してるように思える。
「リジェネレイト……再生ってのはそういう意味か」
「カカカカカカ……もっと沢山の奴らを殺すんだぁ……」
サーベルに光が灯っていく。発光が強くなっていくと、飛び上がって2人に振り下ろす。
まずは避けるものの、両脚にある隠しサーベルが抜刀されて2人の装甲に食い込むように当てられる。
゙X-11A ハイパーライダースラッシュ゙
「!!?」
「何?」
弾かれた2人はズサッと地面に伏してしまう。威力が強い。リジェネレイトのサーベルに宿るプラズマ粒子は、自分達の技よりも密度が濃いように感じれる。
「さっき……ハイパーって聞こえなかったか?」
「ああ……」
後ろのバックパックを取り出し、吸い寄せられるようにサーベルが付着してるパーツがユニットに装着されていった。
「こいつはなぁ……Nジャマーキャンセラーが付いてるZGNFシリーズなんだよぉ……ZAFTでないと使えないがなぁ」
ユニットがイージスでいうスキュラ形態になり、プラズマ粒子を集約していく。
矛先は攻撃性に乏しいバスターへと向けられた。
「ちぃ……くそ……」
胴へモロにハイパーライダースラッシュを受けてしまったバスターはやっと立ち上がれるくらいだった。
避けることは出来なそうである。
「ディアッカ!待ってろ……」
すぐにでも助けたいが、ジンやゲイツが邪魔をしていて近づけない。
このままでは痛手を負っているディアッカは……
ライドグラスパーをエールモードにして最高速度で戦いの場へと向かう。
その間に既にストライクとなっていたキラは、ミーティアを左手にはめた。
(僕の……僕としての戦い……)
゙HYPER UNION CHANGE゙
その音声と同時にキラの脳髄から何かが呼び覚まされたような……とてつもない力を感じた。
そして、いつの間にかライドグラスパーを離れて空を翔んでいた。だが不思議と驚かないでいられた。
(そうか……これが……)
゙CHANGE FREEDOM゙
゙X-11A ハイパーライダーキャノン゙
赤い閃光がバスターへと迫る。無論避けれる様子は見受けられない。
「ディアッカ!!」
大きな爆煙と爆音が広がる。小規模ながら砂嵐で視界は効かないが、外した様子はない。
「貴様ァッ!!」
前方にいるジンの爆炎をくぐり抜け、リジェネレイトを睨みつけた。
デュエルはアサルトシュラウドを装着し、差し違える構えであった。
「てめえはぁ、細切れにしてやるからよぉ……」
バックパックを背中に付け、サーベルを再び抜いた。
だが、空から現れ、その2人の間に仲介するライダーがいた。
「また……新しい…??バスター……?」
ライダーの腕にはバスターがいて、今着地した。
「おう……どうやら助かったみたいだ」
「危ないところだったけどね」
その優しい声をイザークもディアッカも知っていた。白と黒の体に、青い翼が日輪に照らされて光が反射している。
「キラ……それが……ストライクの……」
赤い眼が輝き、翼からは鱗粉のように熱粒子が撒き散らされていく。
「うん。これがストライクのハイパーフォーム……仮面ライダーフリーダムだ!!」
空へと上がり、地上にいるZAFTの数を数える。そして、自分のベルトの番号を押した。
フリーダムはZAFTの間をくぐり抜け、デュエルとバスターが被害を受けない場所で、翼と腰から砲門を出した。
空間が静止したようにゆっくり時が見える。そして、それは確実に敵も巻き込んでいた。
゙X-10A ハイパーライダーバースド
ビームライフルを含め、翼の解放と共に背部のプラズマ収束砲バラエーナとクスフィアスレールガンが地上のZAFTを焼いていく。
Nジャマーキャンセラーによる無限のエネルギーと、ハイパーフォームによるパワーを最大限に活かした攻撃である。
その中、ボロボロになりながらもリジェネレイトだけはそこに残っていた。
「強いじゃねえかよぉ……だがこいつには意味ないんだぜぇ……」
装甲の破損部分が直っていく。だが、フリーダムはハイマットモードによる異常なスピードでリジェネレイトに接近し、背部のバックパックを突き刺した。
すると、案の定再生が止まっていった。
「これは……」
「今の技はジンやゲイツを倒すためのものだった。なのに、回避すらせずにこちらを見たままだった」
「そ……そうか!背部にあるバックパックに再生機能があるから傷つけないために……」
既にアッシュは戦意を失っていた。再生を失えば、イージスとさほど変わらないスペックである。
当然、奴らには通用しないだろう。
「もしお前がこの場から引き、二度と僕らや人間を襲わないなら見逃してやる」
その言葉に驚いたのはイザーク達である。何を言い出すかと思えば、ZAFTを逃がすとは……
「おい、何言ってるだんよ。そいつは……」
「こいつは僕と同じZAFTだ」
「!??」
「人間として生きていられるなら……その方がいいじゃないか」
その言葉はどんなに重いんだろう。きっとキラは、自分に向けてそう言ってるに違いない。
そうとしか思えなかった。自分が存在できるなら、相手だって……
「全く、お前はとんだ甘ちゃんだよな」
フリーダムのビームライフルはリジェネレイトに向けられていた。だが、アッシュは変身を解き、手を上げて話し出した。
「わかったぁ……降参だぁ……もう人間は傷つけない……」
その言葉を聞き、ビームライフルを落とすフリーダム。すると、アッシュはゲイツになって腹のクローを出した。
だが、迅速な抜刀術でサーベルを引き抜いて触手を裂いた。
「そうか……そうやって何人も殺してきたんだな」
「待てぇ……やめ……」
゙X-10A ハイパーライダースラッシュ゙
音声と共に空中へ飛翔し、アッシュへ向かって急降下していく。
それは正に居合い斬りというべきか。すれ違いざまに首と胴体を刹那の狭間に斬っていた。
巨大な爆音が鳴り響くと、フリーダムはその中を余剰な熱粒子を撒き散らしながら地上へ降り立った。
「Grate!!……凄えな……そいつがNジャマーキャンセラーの力かよ」
「うん。だけど、こんなに強い力を……どうやって……」
「ぐわっ……」
「脱走だ!カナード・パルス、脱……」
そこで通信は切れた。クルーゼによってもたらされたNジャマーキャンセラーを盗み出したカナードはハイペリオンバックルに外付けして脱走を図った。
キラを見つけ出し、必ず勝てる方法を手に入れた以上はもうブルーコスモスには用がないのだ。
「ククク……これでキラもさっきの奴も……纏めて倒してやる……」
ニコルを追いつめときながら、割って入ったプレアが操るドレッドノートにバッテリー切れにより敗北寸前まで追い込まれた。
その恨みを返さなければならないのである。
「おい、カナード、止まれ!」
目の前には同型ライダーのハイペリオンUが立っていた。
「バルサムか」
「止まらなけりゃ貴様を始末……」
その時には遅かった。復讐しか持たない黒き炎は、小さい水溜まりなぞ簡単に蒸発させる。
アルミューレ・リミュエールを一点に集中させ、槍型に変えたハイペリオンは、バルサムの胴体を貫いていた。
そして、零距離でフォルファントリーを撃ち込み、バルサムの上半身は消え去った。
「アハハハハハハハ!待ってろ……キラ・ヤマト!」
to be continued
60 :
KIRA書き:2007/10/21(日) 19:55:50 ID:???
保守
電王でモモ達が自分verの技やったのは笑ってしまいました
映画見てないもんだから……なんかタロスズ戦闘が新鮮
続きを期待保守
保守
63 :
KIRA書き:2007/10/30(火) 19:30:23 ID:???
保守
他作品キャラDESTINY編で敵側として出す予定です
デス種ではガンダムタイプばかりだったので、どうも敵キャラを過去作品に頼りそうです
実はSEED編もあと3話で終了なんですが、携帯だと幾分打つのに時間がかかるので……
保守
職人さんwktkしてお待ちしています!
65 :
KIRA書き:2007/11/03(土) 01:05:56 ID:???
PHASE-11 「決意の砲火」
大きな音で目が覚めた。何者が襲ってきたらしい。しかし、自分はどうする事も出来ない。
この怪我ではブリッツに変身しても戦力にはならないだろう。
「みんな、負けないでくださいよ……」
長髪と短髪、目つきの違いはあるがほぼ同じ顔の2人が対峙していた。
1人は対峙する者への憎悪、もう1人はその憎しみの矛先が自分にあるのかを悟りながら。
「ついに見つけたぞ……キラ・ヤマト!」
「君は……メンデル関係者なんだね」
まるで同情と言うよりは捨て猫を見るような目をしている。上から見られてるような、見下されているような気がしてならない。
「お前をずっと倒したいと思っていた……お前を殺せば、本当の神になれる」
バックルが腰に巻きつけられ、カナードは左手を胸の前に持って行く。
キラもまた、バックルを巻きつけてフリーダムを手に入れるとともに変えた変身ポーズを取った。
「変身!!」
バックルの中枢が解放され、フィールドに包まれて装甲を纏う。
゙CHANGE STRIKE゙
゙CHANGE HIPERION゙
互いの拳がぶつかり弾け合い、ハイペリオンはコマンドナイフを取り出して突き立てる。
肩を掠るが合間を縫うように深く蹴りがハイペリオンの腹に入る。後方に浮くもののビームサブマシンガンを撃って追撃を防ぐ。
ビームライフルの精密さとは違いデタラメな射撃なのでかえって避けづらい。
アークエンジェルの装甲には影響はないだろうが、他の人を巻き込むわけにはいかないので跳んだ後に受け身を取るような形で避けながら距離を取る。
「ハハハ!どうしたどうした?こんな程度か?」
゙CHANGE LAUNCHER STRIKE゙
「!!?」
ホーミング弾が物陰から飛んでくる。ビームサブマシンガンでそれを撃破すると、爆煙が広がる。
それは約1.5秒程で破られた。アグニの閃光が煙ごとハイペリオンを射線上から飛ばした。
「流石だな。だがその強さ、生かしておく事は出来んな!」
両腕からアルミューレ・リュミエールを出したハイペリオンはほぼ無傷だった。
緑色の光は盾状に広がり、その先に攻撃を通すとは到底思えなかった。
「アルテミスの……バリア?」
「モノフェイズ光波シールド。ビームだろうが実体弾だろうがコイツを破るのは不可能だ!」
背部のパーツからバリアが張られ、ハイペリオンを覆う。
それは絶対的密閉空間であった。アグニを放つも、それは効いていない。
「無駄だ無駄だ無駄だ!」
ビームサブマシンガンと背部ユニットからビーム砲、フォルファントリーがアルミューレ・リュミエールを容赦なく撃ち続ける。
「中からは撃てるのか?」
「ハハハハハ!Nジャマーキャンセラーを手に入れた俺に負けはない!」
゙1-X1 ハイパーライダーキャノン゙
「消えろ!俺の……忌まわしい記憶と共に!」
奴のせいで全てを奪われた。そして、今在るものは奴への憎しみから生まれたものだ。
ならば、自分が消すのが道理。奴さえ消せば、自分が本当の神になれる。
アルミューレ・リュミエールを透過したハイパーライダーキャノンは真っ直ぐストライクへ向かっていった。
少なくとも視覚で確認出来る面ではストライクは左腕を上げたままそこを動こうとしなかった。
「今更何をしようと、そいつを避ける事は出来ん!」
巻き上がる砂塵がその破壊力を物語っている。晴れた先にストライクの姿はない。
「意外と呆気なかったな……俺が強くなりすぎた……」
ふと音を拾った。ふと耳を疑った。そして目を疑った。
青い翼から湧き出る熱粒子が、美しかった。地に足を着ける獣が舞い降りた天使に目をとらわれている。
「何だ?そいつは!?報告にはそんなの……」
静かに降り立ったようで音はかなり響いていた。フリーダムはビームライフルを持ってその場に制止した。
「それは確かに堅いシールドだ。並大抵の攻撃じゃ破れない。君の心の闇とと同じように……」
話の途中でフリーダムは空へと飛んだ。ハイペリオンの凶弾はたった一つの目標を追って何発も撃たれた。
「俺の心だと?そんなもの、最初から俺にはない!」
―――どうやら、研究員の1人が逃がしたようです―――
―――おお!これなら我々もZAFTの神の秘密を解き明かせるかもしれない。いい研究材料が手に入った―――
「貴様さえいなければ!!」
―――俺って何で生まれたんだ?―――
「君が僕には想像がつかないような苦しみを味わってきたのはわかった。だけど、僕はまだ死ねないんだ!」
数多の光弾を通り抜け、レールガンをある一点へと向けた。命中すると予想通りアルミューレ・リュミエールは消滅し、丸裸となった。
「発生機を?あの短時間で見切ったのか?」
―――ちっ!こんな程度か……やはり本物でなければ。ん?なんだ?その目は!―――
パワーが上がっただけで、基本的には以前のハイペリオンと違いはない。
あのスピードに着いていけないのはわかっていた。だが、やらずにはいられないのだ。
゙1-X1 ハイパーライダーバリスダ
もう片方の発生機からアルミューレ・リュミエールを出し、一点へと集中させた。
そこにプラズマ粒子が加えられ、フリーダムへ向かってくる。
「うおおおおおお!!」
―――鎖に繋がることを恐れるな。それを己が牙で研ぎ澄まし、本物の神を倒せ……そうすれば君が神だ―――
あの言葉が本当なら。あの言葉を信じてきた自分を。あの苦しみを変えたかったから。
―――その本当の神の名前は……―――
「キラ・ヤマトォォォ!!」
゙X-10A ハイパーライダースラッシュ゙
叫びが響いたが、貫かれたのはフリーダムではなかった。ハイペリオンはフォルファントリーを含めた発生機と体に数撃食らっていた。
膝を着くが、しつこいまでの精神力でカナードはハイペリオンの姿を保つ。
「君の憎しみは伝わってきた。だから、もうやめろ……」
「ぐ……情けをかけるつもりか…?。俺はな、ぬくぬくと育ったお前が憎い!俺を゙造っだ原因であるお前が!」
コマンドナイフを取り出し、さらにプラズマ粒子を加えてビーム状に変えた。
「はぁ……俺はまだ戦える……生きている内はまだ負けじゃない!」
片面のアルミューレ・リュミエールが展開して、その奥に隠れるようにしてフリーダムへ向かってくる。
「もうやめろ!!」
ビームライフルで動きを止めようと威嚇射撃を行う。
ビームを弾きながら向かってくるハイペリオンを止まる様子はない。
ハイパーライダーバーストではカナードごと殺してしまう。キラは悩んだあげく、ベルトの番号を押し始めた。
゙X-10A ハイパーライダーキッグ
エールと同じように飛び上がり、足の先にプラズマ粒子をストライク時以上に集約させる。
翼を展開した瞬間に突撃し、フリーダムの蹴りはハイペリオンの光波シールドを破った。
゙何だよ……俺が……やってきたことは……゙
弾かれたハイペリオンバックルが煙を上げている。カナードは見下ろしているフリーダムを睨みつけた。
「くはは……失敗作の俺には相応しい最後だ。さあ、殺せよ!!」
少しの間。キラはベルトを外し、変身解除をしてバックルを服の中に入れた。
「僕には君を殺す理由はない……」
今の言葉はカナードを苛つきを加速させるのに一役買った。
常にキラを倒すことだけを考えてきた。そして決戦で負けた。それで施しを受けるなど……
「はっ……俺は殺される価値もないってか?敗北を着した俺に存在価値などない……生きる意味なんてないんだよ!」
「なら……あなたはこれからの自分の道を自分で決めるべきだ……」
壁を伝いながら歩んできたプレア。先程よりもさらに動悸が激しいようだった。
「プレア君、何を……」奥からプレイがプレアを追いかけて飛び出してくる。
しかし、それに構わず口を開き続ける。
「あなたは……あなただ。キラさんを倒しても、神の力を奪えても、それはあなたを変える事にはならない……」
「何??」
「あなたは独りでここまで来たんですね。でも、本当に独りではきたわけではありません」
一歩一歩カナードに近づいてくプレア。キラ達はただ、見守るだけだ。
プレアは小さな手でカナードの手を握る。両手でしっかりと、それが握手のように。
「こんなに暖かい……あなたは、この暖かさを持ってるんだ……独りであるはずがありません」
そうだ。彼の中には常にキラ・ヤマトがいた。それが倒すべき敵だとしても、生きる原動力となっていたんだ。
「僕には家族がいる……友達がいる……みんなの輪の中で生きてる。人って、誰かと繋がって生きてるんだよ」
カナードへと手をさしのべるキラ。プレアも一緒に震える手を彼へ伸ばす。
「今までいなかったなら、僕らが君の喜びも苦しみも共有するよ」
「………こんな俺でも……人の輪の中に?」
コクリと頷く2人。カナードは少しずつ手を伸ばしていく。
認めていいのだろうか?今まで否定していた人の思いを。
2人の手と繋がれた瞬間、何とも言えない感情が溢れてきた。
「暖かい……」
こんなにも温もりを感じたことはなかった。こんなに素晴らしいものを今まで知らなかったなんて恥ずかしささえ抱いてしまう。
「キラ……俺は……」
「いいんだ……僕のせいで苦しませてしまって、ごめん」
3者はお互いに笑みを浮かべた。それは3者とも同じ思いだから。また一つ、人と人との繋がりが感じれたから。
ZAFTによって占拠された元国防軍基地゙ヤキン・ドゥーエ゙。そこの一部である゙ボアズ゙でアスランは療養をしていた。
特殊な培養液を打ち込まされると、傷の治りが早くなった。
このままなら戦えるだろう。だが監視されていて、イージスバックルがないんじゃ脱出は叶わない。
「どうする?」
なんとしても゙アレ゙の存在をオーブに知らさなければならない。
監獄されてる状態でも、連れてこられた人間が喰い殺されるのを何度も見た。
中には小さな子供もいた。涙ぐむ瞳をしてきた。助けを求める声も聞いてきた。だが……何も出来なかった。
拳を何度も握ったか。助けがくるとしても、どうやら1日しか経ってないようだしキラ達が自分のいないのを気づいてるとは思えない。
なぜなら……明日は決戦の日だからだ。戦闘態勢でいるのが間違いない。そして、゙アレ゙の餌食になってしまう。
「何も……何も出来ないというのか!!」
少しの間、寝てしまったんだろうか?だが、気がついたら辺りは騒がしかった。
銃声が聞こえる。ジンのマシンガンではないと思われる音だ。随分と聞き覚えのある音だ。
「あれは……イーゲルシュテルン??オーブか!?」
乗り込んできたのはよく知る顔だった。
「アスラン君大丈夫ですか?」
「ダコスタさん……よくわかりましたね……」
「ラクスさんが教えてくれたんですよ。さすがクラインの情報網ですよね」
肩を貸してくれたが、アスランは自分で立ち上がった。イージスバックルを手渡され、腰に巻きつけた。
「変身!!」
゙CHANGE AESIS゙
サーベルにプラズマ粒子を吹き込み、ライダースラッシュでその場にいるゲイツを倒していく。
駆けつけたパトリックはそれを淡々とした表情を浮かべて見ていた。
「親父!いや……擬態しているZAFT!姿を現せ!!」
振り下ろしたサーベルはビームを宿しているのにも関わらず、素手で掴まれた。
「素直に我々と同じ道を歩めばいいものが……親として恥ずかしいわ!」
擬態を解いたパトリックは灰色の体をしていた。赤い角と、太い図体だ。
「このジオング……他のZAFTと同じと思うな……」
指先からビームを撃つ。イージスはそれを避けながら接近していく。
破壊力は高いが当たらなければどうということはないのだ。
「その射撃も……懐に入れば……」
左足のライダースラッシュを防がれたが、両手もある。
しかし、ジオングの腰からビームが放たれてイージスは壁まで吹き飛ばされた。
ジオングは追撃として両手を伸ばして至近距離からビームを撃ち込む。
「うわあああァァァァ!!」
あまりにも力はかけ離れていた。辛うじて立ち上がったが、残念ながら勝ち目は見えない。
「くそ……」
「さらばだ…」
口にプラズマ粒子が溜まっていく。イージスはただそれを目の前の事象として捉えるしかなかった。
゙METEOR RIFT OFF゙
「ん?ぐわああっ!」
壁をぶち破り、巨大なマシンがジオングを飛ばした。
「さあ、アスラン。今のうちに」
「ラクス?」
マシンの中央には白色のアストレイが位置していて、声の主はあのラクスだった。
イージスはマシンの左翼に乗り、ブーストを逆噴射して猛スピードで゙ボアズ゙を脱出した。
地上へ降り立つと、変身を解いたアスランとラクスは互いに見合っていた。
「助けてくれてありがとう。だが正直、勝てる気がしない……」
「それはお姿がお父様だからですか?」
確かに奴は擬態している。本音をいうとそれも一因ではある。
「いや……あいつは強すぎる。今の俺に親父が止めれるとは思えない」
「ならばこれを……あなたの新しい剣ですわ。これを使えば、イージスをハイパーフォームへと変えることが出来ます」
巨大マシンのミーティアからアームドモジュールを抜き出し、ライドグラスパーに戻った。
それはさっきアスランを助けたミーティアと同じ形状を成していた。
だが、それを受け取ることを拒むアスランがいた。本当ならばすぐにでも手に取りたい。だが……
「あなたが戦う理由はなんですか?」
「え?」
「復讐のためですか?人の命を守るためですか?もしこれ以上戦えないなら、あなたは今を超えることができません」
「それは……」
「それとも戦うことが怖くなりましたか?゙ZAFTのアスラン・ザラ゙!!」
驚愕しかない。まさか……まさかそれを彼女知っているとは……
「一応オーブを支援するクライン財閥のトップですから……あなたのDNAを調べるのは容易でした」
しかし、ラクスは迷うことなくアスランにミーティアを手渡す。
「あなたは強く、とても優しい方です。でもそれはあなただからなのです」
両親が殺された時、命からがら逃げ出したアスラン。そして家の前でアスランは別のZAFTに殺された。いや、喰われた。
復讐のために賭けをした。強い憎悪はZAFTの意識を呑みこみ、アスランとしての自我を確立させた。
既に資格者としていたアスランは不甲斐ない自分が、なぜ自分を保ててるかが気になる。
それに意味はないかもしれない。戦ってる中で、憎しみの虚しさにも気づいた。友や仲間を欺き、それをライダーの仮面で覆って。
自分が喰われてまで゙アスラン・ザラ゙でいられる理由。それは……
「今、あなたの力が必要なのはあなたの思う大事な人たちです。ヘリオポリスで戦ってる彼らをお助けください」
「え……」
ボアズでアスランが救出される少し前、3人のライダーとダガー部隊がヘリオポリスに現れた。
彼らはロンド・ギナ・サハクによりブルーコスモスに献上されたGATシリーズの後継機であるベルトを使っている。
だが、ZAFTを撃退するためにきたわけではない。オーブを屈伏させ、それを取り込もうと言うのだ。
もし、それが叶わないのならば……オーブを壊滅させる。それがアズラエルの、いや、゙この国゙の決断であった。
キラ達も戦闘をしなくてはならない。相手は人間とはいえ、戦わざるを得ないのだ。
「ヘリオポリスの人々の安全が最優先だ……M1部隊は撃退しつつ避難を誘導してくれ」
ついに量産型のM1アストレイが少数ながら完成した。アサギ達も変身することになり、まさに猫の手も借りたいという状態だ。
「なんかドキドキするわね」
「そりゃあ、初めての戦いだもの」
「行くわよ、ジュリ、マユラ!」
その奥でカガリは完成したばかりの深紅のバックルを手にしていた。
「これで私も戦える……変身!!」
゙CHANGE STRIKE ROUGE゙
紅いフィールドがカガリを包み、装甲が露わとなる。姿こそはストライクだが眼は橙色で、全身が深紅だった。
ヘリオポリスの市街地ではブルーコスモスが避難している市民を擬態されてる可能性があるといい、捕らえていた。
反抗する者は縛り上げるか、殺されている状況であった。これは彼らのスローガン、゙青き清浄なる世界のため゙の犠牲というのだ。
「やめろぉぉ!」
シュゲルトゲベールでストライクダガーを払い、捕まっていた男性を逃がした。
しかし、隣にいたデュエルダガーがレールガンでその男性を狙い、弾丸が放たれると男性の頭を吹き飛ばした。
ストライク即座にレールガンを装甲ごと斬り落とし、ベルトを切断した。変身が解除された男に対し、キラは質問を言わざるを得ない。
「なぜこんな事を、平然と出来る!?」
「青き清浄なる世界のためにだ!」
ブルーコスモスの精神にすっかり浸っている兵士は、拳銃でストライクの頭を撃つ。
当然PS装甲で弾いていて効果はない。だが殺す事までは出来ない。
「貴様らもなぜ我らに従わない!それだけの力を持ちながら、力を貸さぬなら、貴様もZAFTと同ざ……」
言葉が途切れた。男の体は一つの砲撃によって四方に分かたれる。
焼け焦げた地面に肉片がへばりつく。それがストライクの赤い眼には生々しく映し出されているのだ。
「おっと……外しちまったよ……」
「オルガ、あれやるよ?白いの」
左手に鉄球がある黒いライダーと、見るからに砲撃専門の青いライダー、それに緑色で大鎌を持っているライダー。
ブルーコスモスの開発したライダーだろう。だが、それ以上に何だ?
「何も……感じないのか?」
「あ?何?」
拳を握り、腕が震えているストライク。何が起きたか、何をしたか、こいつらは気づいているのだろうか?
「人が死んだんだぞ!たった今、お前が放った砲弾で!!」
「だから何だよ。そんな事、僕らには関係ないっつうの」
「だいたい、お前から見たら敵だろ?良かったじゃねえか、敵が一人減って」
「……こいつ……ウザイ。さっさとやっちまおうぜ」
3人は分かれ、ストライクに向かってくる。正面から向かってきた黒いライダーが急に上空へと飛び上がる。
その背後から2本のビームが飛んでくる。陽動作戦で来るとは思わなかったが、それくらい避けられないわけではない。
「このカラミティの弾から逃げれると思うなよ!」
特徴的なその砲門、シュラークとバズーカでストライクを狙い撃ちする。だが、狙っているといっても乱れ撃ちのようなものだ。
「何て激しい砲撃なんだ……」
「駄目だよオルガ、僕の分も残しといてくれなきゃ……そりゃァッ、抹殺!」
鉄球がストライクの背中を直撃し、体を浮かせる。そこへ大鎌が襲う。シュゲルトゲベールで防ぐが空中にいるため力負けをしてしまう。
「うわあああッ!」
このままではやられる。そう思ったキラはミーティアを左腕にはめた。
゙HYPER UNION CHANGE゙
空中姿勢を取り、衝撃を消した状態で地面へ着地した。
゙CHANGE FREEDOM゙
「シャニ、てめぇが余計な真似するからトドメさせなかったじゃないか!フォビドゥンはあくまで支援用だろ?」
「はぁ?俺にもやる権利あるだろ?てめえのレイダーこそ決定打がねえだろ」
「うっせえよ、お前ら。あいつ……姿が変わったぜ?」
既に見た目からしてその戦闘力はさっきとは違うと言えよう。だが、彼らにはその事を理解することが出来ていないのだ。
「あいつは俺がやるぞ。お前らは援護しろ」
「はぁ?なにいってやが……」
電撃を帯びた弾丸が3体の間をすり抜けて後方で爆煙を上げる。
「なんだぁ?油断してたら直ぐに殺せるってか?なめんなよコラァ!」
「滅殺!」
カラミティのシュラークとレイダーの機関砲がフリーダムへ向かう。
華麗に、流動的な動きでその間をすり抜けてサーベルでカラミティを斬りつける。
破砕球と大鎌が倒れるカラミティを背中にフリーダムへと向かう。
フリーダムはビームライフルでレイダーの肩を、サーベルでフォビドゥンの膝を攻撃する。
旋回して、よろけるレイダーの顔を蹴り飛ばした。倒れるとアスファルトの道路が跳ね散る。
「……てんめ……どわあァァ!!」
脇腹を踏みつけて反動とし、フォビドゥンへ体当たりをする。体勢が崩れると握っていた左拳で顔面を殴りつける。
その隙に空中へ飛び上がってバラエーナをフォビドゥンに向けて放つ。
「痛って〜……んあ?ハッ!!」
バックパックの両翼にある大きな壁のような盾で自らを覆い隠す。
突如右側の道路が砕けた。何が起きた?
「まさか……」
今度はビームライフルを撃ってみる。だが、その光条は見当違いの方向へと飛んでいった。
「ビームが……曲がる?」
あの盾に触れる瞬間、バラエーナも屈曲した。つまり、事実上フォビドゥンにはビームは通じないことになる。
「今度はこっちの番だぜぇ……」
起き上がったカラミティはベルトの番号を押し、フリーダムを全砲門の目標とした。
゙X-131 ライダーヴォルカニズ
この距離なら避けれる……だが、気づいてしまった。もし自分が避けたら射線上には逃げている家族がいる。
「くっそおお!」
゙X-10A ハイパーライダーバースド
両者の砲門が一斉に膨大かつ強力な一撃が放たれ、ぶつかり合い、大きい光が広がった。
悩んだあげく、アスランはミーティアを受け取った。そして、イージスに変身して右腕に装着した。
「これで俺は強くなれるのか?」
「自分の眼でお確かめくださいな」
゙HYPER UNION CHANGE゙
よりシャープな、ワインレッドの装甲が姿を現した。それは彼の決意の証。
信念を貫くための力なのである。
゙CHANGE JUSTICE゙
変身が完了したアスランは一礼すると、背部にあるサブフライトユニット、ファトゥム-00をスノボーのように乗り、その場を後にした。
to be countinued ……
77 :
KIRA書き:2007/11/04(日) 11:27:36 ID:???
もう下がってる……保守
良太郎役の人が肺悪いそうですね。早くよくなってほしい
78 :
KIRA書き:2007/11/04(日) 11:29:12 ID:???
もうこんなに下がってる……保守
良太郎役の人病気っぽいっすね。早く良くなってほしい
KIRA書き氏、投下乙&GJ!
>良太郎役の人病気っぽい
ナンダッテー 無理はしないでほしいですね・・・
気胸っていう病気らしいよ
早く良くなってほしいage
気胸は本人の体力次第で復帰早かったりする事あるが…
取りあえず、頑張って欲しいね
気胸か結構きついらしいね。しかも治っても再発率結構高いみたいで従兄が何度もなってた。
上げ星
星上げ
PHASE-12 「終末の光」
類似している装備を持つダガーらを殺さぬように適度な打撃・銃撃で払っていくデュエルとバスター。
ZAFTと違って、相手は人間。トドメを刺すことも出来ず、PS装甲ではないため安易に強力な攻撃ができるわけでもない。
「グゥレイト!数だけは多いぜ」
飛び交う銃弾やビームの中を逃げる人々を、身を挺して庇う。相手が変身解除しなければ、それが減るわけではない。
相手を倒すより、倒さぬように人々を守るのは辛いのである。
「とっととfinish決めちまいたいぜ。イザーク、お前はアサルトシュラウドあっからいいよな……」
「馬鹿言うな……射撃が強いお前のがよっぽど不殺に向いてるぞ」
自分達の知る街並みが同じ人間に破壊されている。まだ高校生の少年達は、辛い戦いを強いられていた。
「特務兵、カナード・パルス。脱走及び裏切りは重罪だ。よって、貴様を処分する」
かつての同朋は今や敵である。カナードはハイペリオンでブルーコスモスのダガー部隊と戦っていた。
「貴様ら雑魚が俺を?笑わせるな!」
Nジャマーキャンセラーは破損したためアルミューレ・リュミエールが持続しないとはいえ、前にも増して攻撃性が強くなった。
キラとプレアに説され、閉じこもっていた殻から抜け出したという心理状態も関与していると言えるかもしれない。
「消えろ、カス共!」
フォルファントリーにプラズマ粒子が溜まっていく。
「カナードさん、行けません!」
駆けつけたドレッドノートはハイペリオンの肩を叩いて静止を呼びかける。
あれだけの説得でも、通じていなかったとしたら……
「騒ぐな!俺は……熱くなどなっていない」
地面に向けてフォルファントリーが発射される。爆音と共に多数の変身が解除され、同時にドレッドノートの仮面の下のプレアにも笑みが浮かんだ。
技を放ったフリーダムとカラミティは、異質なプラズマ粒子の衝突による衝撃波ではね飛ばされた。
森の一部の木は薙ぎ倒され、抉れ返った道路からは破裂した水道管が浮き彫りになって水を噴き出している。
雨のように降り注ぐ水滴も、激しい炎を消すには至らない。
「……この……こいつ……やってくれたな……」
先に立ち上がったのはカラミティである。オルガ自身、このように反撃を受けることなんて想定していなかった。
ましてはこの技を相殺する威力を持ってるなんて考えることすらなかった。
「う……さっきの……家族は……」
遅れて立ち上がり、振り返って辺りを見回す。ライダーシステムにより見える光景は鮮明に荒れ地を映し出している。
奥の方には海岸が見える。普段なら見えないが、障害となる木が吹き飛んでるせいでぼんやりながら見える。
それだけじゃない。木に押しつぶされた男性、岩に体の一部がべっとり貼り付いてる女性、頭から血を出して倒れる少女、その真ん中にはポツンと少年が立ち尽くしついた。
「……!!。なぜこんな事を、平然と出来る!?」
また救えなかった。今度は人間の手によって引き起こされ、愚かな結果が出てしまった。
オーブの隊員が彼を避難経路に誘導しようと腕を掴むが、少年は妹であろう少女を起こそうとして、体を揺さぶっている。
今出来ることは彼らに歩み寄ることではない。目の前の敵を退け、これ以上被害を出さぬようにしなければいけない。
「何言っちゃってんの?別に構いはしねぇーんだよ。誰が死のうと。だいたい、そうつらが死んだってお前に関係あるのか?」
レイダーが破砕球を振り回しながら言い放った言葉。それは、キラの心の中にある思念を引き出すのに十分だった。
翼を展開し、助走後に飛び上がる。クスィフィアスレール砲を放つと同時に、急降下しながらボタンを押していく。
゙X-10A ハイパーライダーキッグ
地面に撃ち込まれたレール砲がプスプスと煙を上げる中、フォビドゥンがシールドを前面に押し出している。
先ほどビームを屈曲させたゲシュマイディッヒ・パンツァーだが、放射されずに固定されているキックには対応しきれずにその威力に弾き飛ばされる。
着地の瞬間、2本のビームが見えたがサーベルで弾いく。しかし、背後から破砕球を当てられ、フリーダムは瓦礫の中へと飛ばされた。
「お前、さっきはよくも、よくも、よくもーー!」
起き上がった所を大鎌で斬りつけられて上空へ上がり、スキュラをまともにくらってしまった。
「うわあぁぁぁぁ!!」
いくら単体の戦闘力が総合的に上回っていても、特化した部分を持つ3人と戦うには困難である。
破壊力を活かすための直線的な戦術なキラにとっては相性も悪いのだ。
「負けて……られないというのに……」
守れなかった人達、守れる人達、守りたい人達が今自分の腕にかかっている。
人であるために、必要なのだ。この力は、人としてあるために使わなければ、それはもう人であることを認めれない、キラはそう思っている。
だから立ち上がって勝たなければいけないはず……なのに、体がいうことを聞かない。
「終わりィ♪」
゙X-370 ライダーブレズ
レイダーの口にプラズマ粒子が集約していく。同じGATシリーズでも、オーブ製のライダーには無い攻撃方法だ。
フリーダムはやっと立ち上がったところで、これを避けるだけの体力は戻っていない。
「必さ……」
放たれた赤い閃光はフリーダムを外れて空の方へと向かった。
ワインレッドの装甲をしたライダーが着地し、レイダーをふっ飛ばしたリフターを背中に戻す。
「キラ……だろ?大丈夫か?」
「その声……アスラン??今まで、何を……」
「ZAFTに捕まっていてな。話さなきゃいけないこともあるが、今は状況の打開だな」
両腰のサーベルを連結させると、フリーダムと共に3体へ向かっていく。「それがお前のハイパーフォームか……名前は?」
「フリーダムだよ……君のは?」
「俺はジャスティス……仮面ライダージャスティスだ!!」
真っ先に飛び出してきたフォビドゥンの大鎌をサーベルで受け止め、脇腹へ回し蹴りを入れ込む。
続いて、ファトゥムを外して上空からビームをカラミティに向けて放つ。
「こんなの……避けれねえとでも思ったか?」
バックステップで軽々と避ける。しかし、フリーダムがサーベルで斬りつけ、さらにレイダーに対してもバラエーナを放つ。
「へっ!馬鹿かぁ?当たらないんだよ!」
「当たるさ」
ファトゥムに乗ってそのままレイダーの背後から突撃をし、バラエーナの軌道へと飛ばす。
見事に直撃すると、地面への落下コースで、さらにフリーダムのサーベルがレイダーをすれ違いざまに斬る。
「てめぇーー!必殺!!」
避難する人々を誘導していたフレイはなぜか不思議な感覚に捉えられて、家に向かった。
「何だろう……?」
キラと知り合った頃からか、ふと妙な感覚に捉えられる時が稀にあった。
それが何なのかはよくわからなかったが、なぜか今になって強く働いている気がする。
もう近所の人も避難しているはずだが、自分の家からは誰かがいるような気配がするのだ。
家に入ると、中は静かなものだった。それは当たり前の空間だ。幼い頃に母を亡くし、父と暮らしている。
その父がフレイにとっての家族なのだ。そのはずだった。
「どうして……パパが……」
今、その父がパソコンから何かを転送している。隙間からなので良くは見えないが、そこにはバックルが確認できる。
「そこにいるのはフレイだろう?出てきたまえ……」
なぜバレたのだろう?。そう思いつつ、部屋の中へ入っていった。
「パパ、いったい何をしてたの?」
「何って……扉を開くための鍵を届けたんだよ……」
パソコンの画面にあるのはライダーシステムの詳細。それが意味するものは……
「あなたは誰?パパじゃない……」
「私はジョージ・アルスターだよ。君の父親じゃないか」
「近寄らないで!」
拳銃を構えてフレイは一歩ずつ下がっていく。だが、バッと飛びかかられ、首を絞められる。
「あぅ……うあ……」
「そう……君の父親だよ。でも、姿だけさ……」
顔が崩れ、別の顔が現れてくる。それはかつて自分を襲ったシグーの正体の男だった。
キラからは聞く限り、ラウ・ル・クルーゼという名前らしいが……。
「いつか……ら……」
「10日前かな?改造されている私は多重擬態が可能でね……他にも数人喰らった人間になれる」
気づいていた。このところ様子がおかしい部分はあったが、そう思いたくなかった。
認めることは自分を独りにしてしまうと思ってしまったからだ。
「安心したまえ。喰らうつもりはない。だが……見られてしまったからには、殺させてもらう」
握る力が強くなっていく。拳銃も落としてしまい、もう意識も朦朧としている。
(助けて……キラ……)
゙トリィ゙
ふと聞こえた鳴き声。鳥?いや……それにしては機械的な……
それはクルーゼの手を払いのけ、フレイの体に酸素を送り込んだ。
「ゲホ……はぁ……何?」
「ちぃっ!何だこいつは?」
2人が感じるのは対極だった。片やキラと同じ暖かさ、片や神と同じような気配。
フレイは机の上のバックルを手にして、腰にベルトとして巻きつけた。
変身できないかもしれない。でも、戦うしかない。
バクゥに襲われた時、弾けなかった引き金を今なら弾ける。エルを救えなかった自分、守られるだけの自分に別れを告げるために。
「変身!」
゙CHANGE STRIKEU゙
それはキラと同じ、ストライクだった。ホワイトグレーとトリコロールカラーのPS装甲がフレイを包んだ。
「何!?」
ゲイツの姿になって窓ガラスを割って外へと出るクルーゼ。
ストライクUもそれを追う。大丈夫。戦い方はシステムから脳に伝わる。
゙CHANGE GANBAREL STRIKEU゙
背部にメビウスゼロに酷似したバックパックが出現する。
クルーゼの部下のゲイツが襲ってきたが、ガンバレルを射出して近づかれる前に攻撃を仕掛ける事に成功。
体だけでなく、腕や脚も攻撃されてゲイツは手も足も出ないという状態である。
゙X-105-2 ライダーシューティング゙
ビームライフル及びガンバレルにプラズマ粒子が集約されて、四方からビームを放つ。
瞬く間に爆発するゲイツ。フレイはライダーシステムの強さに驚愕を覚えざるをえない。
「ほう……中々才能がありそうだな。だが、それもそこまでだ」
挑発するかのようにクルーゼとしての姿に変わる。許せない。父を殺し、キラを苦しめる存在。
「クルーゼ!!」
怒声を上げながら、メビウスゼロの装甲を装着したムウが現れた。彼もまた、クルーゼを感じてここに来たのだ。
「フラガ先生!?」
「驚いた……フレイ、お前まで変身したのか……」
嬉しい反面、変身出来ない自分が辛い。だが、今ならここでクルーゼとの因縁を断ち切る事が出来る。
「ふふふ……お前に討たれるならそれもありかと思ったが、所詮子は親には勝てぬ……少し遅かったな」
灰色のバックルを取り出し、腰に巻きつける。そして、狂気の笑みと共にバックルの中央が開いた。
゙CHANGE PROVIDENCE
それはリジェネレイトと共にプラントから奪取されたZGMFシリーズ。
灰色のPS装甲に黒い眼。背中の巨大なバックパックは今までのライダーとは一線を為して異質である。
「プロヴィデンスは摂理や神の意志を意味する。即ち、私は神だ。神……参上!」
2人とも同時にガンバレルを射出してプロヴィデンスに集中攻撃を開始する。
しかし、軌道を読まれて一発も掠ることさえしない。ストライクUはアーマーシュナイダーを大太刀に変えたグランドスラムを取り出してプロヴィデンスに接近していく。
「はああああぁぁぁ!!」
「甘い……所詮は付け焼き刃だ」
プロヴィデンスもそぐわないほど長いクローを出して応戦する。しかし、ストライクUは弄ばれるように斬られていく。
「きゃあああ!」
「フレイ!くそおぉぉ!!」
隙をついてガンバレルで攻撃するも、PS装甲にはあまり通用しない。
ムウは全てにおいて劣っているという感覚を感じざるを得なかった。
「ふん……時間もない。そろそろ退場してもらおう……私の必殺技でな!」
゙X-13A ハイパーライダーレインズ゙
ガンバレルをさらに小型化した無線兵器、ドラグーンを全基射出し、数多のビームをメビウスゼロとストライクUに浴びせる。
「ぐわあああああ!!」
「きゃああああああ!!」
メビウスゼロの装甲は崩れ落ち、変身が解けたフレイは気絶してしまった。
「く……これが…望みか?貴様の……」
人間同士が争っている現状。これは間違いなくクルーゼが仕向けたものである。
そして、ジオングことパトリックを利用しているのも。全てはクルーゼの、自分という存在を生んだ世界への復讐。
「違う、私のではない。これが人の夢、人の望み、人の業!他者より強く、他者より先へ、他者より上へ!」
「ふざけるな!!所詮はお前の理屈だ……思い通りになど……」
クルーゼはムウを蹴飛ばし、胸をぐいぐいと踏みつける。
「すでに遅いさムウ。私は結果だよ……だから知る!」
ぐっと力をいれて踏みつける。ムウは悲鳴を上げて野垂れじ回る。
「自ら育てた闇に喰われて人は滅ぶとな。キラ・ヤマトに伝えろ……この娘は預かっておく」
さらなる絶望を与えてキラを殺す。それがクルーゼの狙い。ムウはそれを理解した。
「お前は……私を倒す器では無かったな」
フレイを抱え、クルーゼはそう言い残して消えた。
゙X-09A ハイパーライダーベノン゙
ファトゥムに乗っかり、フォルティスビーム砲からエネルギーフィールドを作り出す。
それを通り抜けると、猛スピードでフォビドゥンに突撃した。
゙X-272 ライダーキャノン゙
「はああぁ……ウザイ!」
ゲシュマイディッヒ・パンツァーを利用してビームを屈曲させるが、それ以上のパワーでかき消してフォビドゥンに激突した。
「うわああああ!!」
その威力に驚いたのはオルガ達である。フリーダムの火力にも驚いたが、ジャスティスにはそれと同等の格闘能力があるなんて想像していなかった。
「あんま調子に……ぐっ……」
「があああ……」
3人は突如として苦しい吐き気と痛みに襲われた。すると、カラミティはバズーカで地面を撃ち煙を巻き上げて逃げ出した。
それとほぼ同時にブルーコスモスは撤退し、2人は変身を解いてアークエンジェルへ向かった。
「はは……まだ手が震える……」
レッドフレームになって戦いを経験したトールはいまだに武者震いが抜けずにいた。
それをディアッカが辛かったりと、いつもの風景のように思える。
しかし、少なからず市民が犠牲になり、幾人かはブルーコスモスとはいえ人間を殺す羽目になってしまった。
肉体的にも、精神的にも辛い。そんな中、キラは運ばれてきたフラガから起こった出来事を聞いたのだった。
「フレイが……さらわれた……」
「奴は……お前を苦しめるつもりだ。だが、お前なら……奴を倒せる」
託すしかない。ただ、そうするしかないのだ。キラ自身、クルーゼとは戦う気だった。
すぐにアークエンジェルは、コペルニクスにあるクサナギと連携して臨戦態勢をとる。
ブルーコスモスでも弾道ミサイルを配備し、ヤキン・ドゥーエへと侵攻を開始した。
「あの3人も薬で落ち着いたようだ……ご自慢の生体CPUもオーブには適わなかったが……」
「構いません。どうせ数で勝てます。今は、ZAFTを倒すのが先です」
同じ道を辿るロンドでも、捕まっている人間ごとミサイルで吹き飛ばすアズラエルの神経には疑念わ抱かざるを得ない。
「こちらにブルーコスモスが近づいてきてるようですな」
「ふん……予測の範囲内だ。ジェネシスを使うぞ」
パトリックは部下に支持し、ミラージュコロイドで隠していた生体殲滅兵器・ジェネシスを露わにした。
上空に浮かんだそれはあまりに巨大だった。ブルーコスモスは弾道ミサイルの大半をそれに向けていた。
「Nジャマーキャンセラー始動、エネルギーカートリッジ接続。フォトンブラッド精製完了、システムオールグリーン」
「発射ァ!!」
先端のミラーブロックには本体から射出されたフォトンブラッドを反射・増幅して地上へと向かった。
放たれたミサイルを破壊しながら、それはこの国の首都にあるブルーコスモス本部、JOSH-Aに向かっていった。
基地に残っていた、いや、JOSH-A付近にいた人々は瞬時に焼かれていく。
そこに残るものはなかった。有機物も無機物も、命があろうとなかろうと関係なく灰燼に変化している。それだけだった。
「……何が起きたんだ?」
状況が把握できないブルーコスモス。本部を失った事から起きる混乱。
そして、首都中枢部の壊滅。
それはこの国の政治を行う者達の死を意味した。アズラエルにとっては都合が良いのか悪いのか、そんなのはどうでも良かった。
「な、何をしている?ブルーコスモスは全力で総攻撃だ!」
首都壊滅。その知らせがクルーゼの描く最悪のシナリオの始まりだと気づかせるのに、そう時間はかからなかった。
アークエンジェルとクサナギの、オーブの戦力を結集してヤキンへの足を歩むこととなかった。
ラクスとも合流し、ハイパーフォームの状態でライドグラスパーに乗るとミーティアに変化する事を聞いた。
「アスラン君の話しと映像から判断するに、これは巨大な殲滅レーザー砲です。陽電子とフォトンブラッドの結合により、触れたものを焼き尽くすんです」
エリカが解析したジェネシスの詳細。それは人類全てを吹き飛ばすのも可能である威力である。
「ただ、このミラーは交換に有する時間があります。連射が効かないのが唯一の救いです」
一刻の猶予はない。ただちにアレを破壊しなければ、人間に明日はないだろう。
その力で人類を従わせるという事はしない。ただ、焼き尽くすに違いない。
怪我人のニコルとムウ、苦しみ出したプレア、CICを除いてはほぼ全員が前線へ出向く。
マリューやナタルとて例外ではなかった。ローエングリンの使用を解禁し、戦地へと赴く。
「全員の帰還と、勝利を信じる……頼んだぞ」
託すしかないウズミの言葉は強かった。戦闘は出来ないが、常に彼らを心配しているウズミだからこそなのだ。
「フレイ……待ってて……必ず助けるから…」
そう誓ったキラはフリーダムに変身して、ライドグラスパーに乗り込む。
゙METEOR RIFT OFF゙
フリーダムとジャスティスのライドグラスパーが、ミーティアへと変形し、いち早くジェネシスへ向かっていく。
この戦いが、未来の分岐点になることを彼らは知らない……
to be continued……
95 :
KIRA書き:2007/11/14(水) 18:42:50 ID:???
ジェネシスの設定思いつかなかったので、555のフォトンブラッドを使ってしまいました
゙この国゙って一応日本なんすよね……東京の都庁辺りは消滅してる事になります……付近にお住まいのみなさん、すいません
次がSEED編ラストになる予定です
職人GJ!
97 :
KIRA書き:2007/11/18(日) 21:04:06 ID:???
保守
登場はまだ先なんですが、今更アスランのZAFT体考えるのに手間取ってます
ガンダムシリーズから考えてはいますが、なぜかジョーカーのイメージが出てくるんです……
よくね?ジョーカーっての
奴にカリスの役どころは勿体無さ過ぎる
クルーゼの言い回しにちょっと笑ってしまったw
クルーゼのはお遊びなんで正直台詞の整合性はないです……
予定ではアスランは始というよりは木場に近い感じですかね……
歴代強敵は構想上全員敵になりますから、ZAFT体はジョーカー(に似た)かもしれません
劇場版(SP)は「もう一つの結末」にする予定なので、本編終了までは書かないのでだいぶ先かと思われます
剣に例えると、
ブレイド:シン
ギャレン:アスラン
カリス:キラ
は鉄板だな
☆
俺の保守part1!