機動創聖記ガンダムD 第二章

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1通常の名無しさんの3倍
時は聖暦0162年。
神の降臨によって人類間の戦争が終結して162年。
人類は神の加護の下に平穏な日々を享受していた。

そんな中、神罰執行機関「EDEN」の新型GUNDAM級MS、インフェルノガンダムが何者かによって強奪されたのだ。
機関所属の少年、少女たちは残された4機のガンダムで追跡を開始する。
「魔」の力を制御できるのは「聖」の力
-ディバインガンダム・セイクリッドガンダム・ホーリーガンダム・ヘヴンスガンダム-のみである。

永遠に続くと思われた楽園は、この事件によって終焉を迎え、
世界は再び戦乱の時代へと突き進むこととなるのである……


前スレ 機動創聖記ガンダムD
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1168964242/

まとめサイト「GundamD」
ttp://jakigun.ganriki.net/
2通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 10:19:15 ID:???
2ゲーッツ
3通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 10:20:51 ID:???
バイストンウェルの物語を覚えている者は幸せである
それゆえにミ・フェラリオが語る次の物語を伝えよう
4スケッチ3/ヒーリィ・イル/1:2007/08/29(水) 18:18:21 ID:???

喪失ったのはいつからか。

空をも掴めると無邪気に信じた頃。
苔むした塀。茨の柵。褪せた陰影を織りなす石の景観は、けれども一度陽光が射し入ればたちまちの内に精彩を取り戻す。
閑散と生える樹林の環と、朽ちた格式とで外界と孤絶した寺院が少年の故郷。
名門の傲慢と放埓が産み落とした胤らの揺籃。
「リーベリ・ムンディ」。聖嫡子と呼ばれた幼子ら。
捨て子に冠すにしてはいささか皮肉の効き過ぎた呼び名ではあったが、それでも彼はこの名をいたく気に入っていた。
誰にも望まれないこの生であれば、自らの望みで充たせばいい。
少年にとって自由とは、何者かからの解放であるより寧ろ何者でもない自己の肯定を意味する言葉。
その孤独な境涯にあって、誰憚ることなく生来の資質を開花させるに至る少年。
彼は幼くして頭角を現すに及んで、血族より届けられた打診に耳を貸そうともしなかった。
別に手の平を返したような家の態度に腹を立てた訳でも、捨てられた恨みに固執した訳でもない。
ただ、己が身一つで聖院に至りうる少年にとって、家銘など鬱陶しい以上のものではなかったというだけの事。
結局、継いだのは家紋に記された二枚羽の意匠のみ。簡素な図案の章紋を提げて教会を出立した少年。
その手で切り拓く道程には無色の陽光が射す。
「リーベリ・ムンディ」。
少年はまさしく世界の申し子だった。
少なくとも、この頃までは。

―――白紙を埋め尽くす預言の羅列。その日から、少年の世界は灰に転じる。
一切が意味をなし、一切が意味を失う白玉の間――――添えられた手が啓す「絶対」。秘された誓約/供された聖贄/浴せる再洗礼。
反転した特別。祝福は呪詛の言葉に、万能は無為に帰結し福音の弔鐘は従属を記す刻印として耳に残る。
動かしようもない運命にかしづいた少年は思い知らされる。
彼もまた鎖と轍に拘された存在である事を。
畢竟、依りどころであった聖痕は忌むべき呪創だった。
そうと知れば絶望より悲嘆より、己が浅薄を笑う気持ちが先に立つ。
以来、世界を識り己を識った少年は滑稽を諦観を笑いで濁す事を覚える。

―――だから。
雛鳥の巣にあって、ひたむきにこちらを向いた少女の眼に彼は気づかぬふりをした。
羨望と嫉妬と追従と畏怖が占める周囲から離れてあるその眼差しが真っ直ぐであるほど、少年は目を合わせることが出来なかった。
少年の虚偽は彼女を穢してしまうから――――否、それは逃げ口実でしかない。本当は怖れていただけだ。
自分の正体を見抜かれる事を。彼もまたありきたりの挫折に塗れた凡夫に過ぎない事を。
向けられた憧憬の無垢に苦笑し、彼女の幻想を守ろうとする己の姑息を嘲笑う少年。
そうして、逃げるように迎える巣立ちの時。

執行者。
「EDEN」の聖鎚として、選別され聖別され。制裁し、断罪しただひたすら積み上げた空白を数える日々へ。
力を振るう度に、欠け、削ぎ落され、萎びる心の在処。
「EDEN」筆頭たる「ディバイン」。かくも偉大なる王煌機を繰るはかくも矮小な我でしかなく。
喪失ったのはいつからか。
少年が立つのは鉄塵を塗した広野。頭上には青。いつしか遥かに及ばなくなった空の高み陽の高み。
「使命」が重責を増す度に器から零し落ちれていく意志。
決して手放せぬ一つの想いは深く深く沈滞する……。

5スケッチ3/ヒーリィ・イル/2:2007/08/29(水) 18:20:33 ID:???

―――聖暦167年。
階層都砦「ベト・ミロ」にて勃発した大規模な叛乱。
叛徒狩り。篭城した軍勢を「ディバイン」単機で蹴散らし。

石壁に囲われた殺風景な部屋で一人、木椅子に腰掛けたそのはパズルを弄ぶ。
轟音とともに崩れた壁。
開いた孔の向こうに覗くのは輝ける「ディバイン」の威容。
噴煙の中、機体から姿をみせた少年。金色の髪が揺れる。
「やあっと、みつけたぜ」
叛乱の首謀者である男は禿頭をぺたりと撫でた。
「今度もやはり、駄目だったか…」
「身柄は拘束させてもらうが道中の安全は保証しよう……あんたには聞きたいことがあるんでな」
「ふうん、助けてくれたってのかい?」
少年、ヒーリィ・イルは草臥れた色を隠そうともせず肩を竦める。
「悪いが賢者殿、助けてもらいたいのはこっちなんだ―――」
6スケッチ3/ヒーリィ・イル/2:2007/08/29(水) 18:26:57 ID:???

透けた衝立を砕き錯綜する破壊の弾道。光条かける鉄槌。
赫奕が染め抜いた空と地に澱む山脈の縦列―――その巨躯とは裏腹の愚鈍な本能で白い機影を敵と認識した「ビグザム」。
これが、Gの戦場。これが、「ディバイン」の戦場。
空を鼓す衝撃音が四つ。跳躍。反転。発射。着撃。
ビグザムを切り裂く聖霊の火矢。だが、巨獣の銃創から盛り上がる鋼肉は新たな砲門を造成する。中途半端な手傷では逆効果。
報復は大質量の魔砲光。魔帯苛霊子砲―――繚乱する極太の火線が「ディバイン」周空を塞ぐ。
てんでにばらばらな火勢はしかし、確度を問題としない程広範かつ大威力。
速度の有利を塗りつぶす射線の膨大。回避し得る隙間は零無。
いや、そもそも全身が砲門といっていい兆級の魔機群が相手では回避行動自体が無意味に等しいのだ。
ならば――――――避けまい。
直立する「ディバイン」。
―――全砲門開放及び装甲強度最大励起。白き全身が障壁を展開する。
射ち、且つ守り。真空に染まる世界、纏った魔質が城塞をなす巨獣の甲皮を食い破る閃光。一機を焼き一機を砕き一機を貫き。
頑強な「ビグザム」の装甲は「ディバイン」の圧倒的火力をもってしても三機を駆逐するに留まった。
再び入り乱れる射閃に機体の間を縫って一点の死角へと逃れた聖霊機は激しい過負荷に破砕した発振機ともども用を失した管を振り解く。
「あと二十……!」
光速の軌道を貪る火粒渦。
が、「ディバイン」が既に放った迎撃の猟弾で魔弾は反れ僅かに片の頬当てを崩すだけ。
弾幕が織り成す光柵を「ビグザム」が飛ばす六連の鷲爪は容易に貫く。
体表を巡るように張り付いた砲門と腕とも足ともつかぬ巨大な側柱による力押し。
単純な攻撃はそれだけにこれといって有効な戦術・戦略の類は見出せず、力でもってねじ伏せるしかない厄介な相手だった。
食いかかる飛爪をヒーリィは機体ごとの突進で切り崩す。
刹那、衝撃に大鎚が手から離れる。「ビグザム」の天地に分かたれた巨大な顎が「ディバイン」を咬んだ。
巨獣に呑まれた白影に乱立した牙の激しい重衝が両肩両足を砕かんばかりに圧し掛かる。
顎が閉じきる寸前、奔出する光燐の輪が不調和な奏音をがなりたて、
甲高い金管の響きは徐々に震撼伴い下顎を穿つ鎚の轟叩の爆音へと繋がる。
風穴からぬけですぐさま次なる獲物を定めた「ディバイン」。
「あと、十七っ……!」
「ディバイン」の真横から打ち付ける直光が機体を揺さぶる。
機体の左腕が飛ぶ。肉体の感覚は既に意識の端にかかるしこりとなって追いやられる。
定まらぬ射程を気力で手繰り寄せる。残されたのは殲滅への意思。叱咤。
拾い上げた鎚は光条かいて黒い鉄壁を穿つ。銀が炸陣をばらつかせ輝く視界を曇せる。
巨獣の罅に榴弾を螺子入れ、鎚で叩き込むヒーリィ。一文字の灼光が巨獣の皮を裂く。
露出した鉄の腸に跨った「ディバイン」。乱打するとどめの晃弾は殻を割る爆白を惹起した。
鮮血の如く飛沫をあげる瘴気が白機の羽ばたきをしとどに濡らす。
巨獣が撃ち出す魔焔は振動変換も行わぬ無垢の霊帯。
いうなれば「ビグザム」はただその魔気を垂れ流すだけの、霊質を充溢させた火薬袋のようなものだった。
よって壊すれば壊するほど吐き散らす魔の濃度が聖機を侵食する邪毒となる。
だが、瘴炎に身を汚す「ディバイン」の輝きは却って一層強まるかのよう。
7スケッチ3/ヒーリィ・イル/2:2007/08/29(水) 18:30:44 ID:???
魔としての本能のみで動く「ビグザム」は明確な殺意をもって襲いくる「インフェルノ」には比べるべくもない。
どれ程強大であろうとも、少年にとって魔は常に狩り立て、逐い、滅ぼすべき餐でしかないのだ。
至近よりの砲撃。開いた口が熱を発するより疾く腕部砲紋の凱光が注ぎ込まれる。
巨獣の排出弁から侵入した天雷が内側を焼いていく。
巨凶をも圧する神聖の獰猛。光輝の嗣衣をかなぐり捨てて戦う姿はまさしく争いの化身。
しかし、これが「ディバイン」本来の姿なのかもしれなかった。
守るべき都市も鼓舞する仲間にも気を割く必要なしにひたすら神敵を滅することにのみ全力を傾注する狂戦機。
比類なき煌光。吼える閃鎚。層鋼がくぐもった叫びを上げ。荒々しい操縦が鉄躯を震わせ。
ぶ厚い鎧装は今や見る影もなくひしゃげ破け―――。
力を速度を際限なく貪る聖霊機は怒気を荒げ魔焔を散らす「ビグザム」に飛び込む。
悉皆が瞬く燃える混沌、黄金の殲鬼がそこにあった。
巨獣の頭を力任せに貫きもぎり押し潰す「ディバイン」の隻手。
魔機は残り十四。
気付けば戦場は地面にまで僅か数間。上昇した僚軍とは完全に引き離した。
頃合は良し。
過負荷に破裂する大気が消音の閃きを帯びる。大槌可変。長大な砲身が輝きを帯びる。
ビグザムの頭上から浴びせる渾身の一射。零距離の直撃が落下する巨躯ごと支持機構を貫いた。
直後に頭上から降り注ぐ数百万の水晶雨。浮遊場を失い落下する収束版。
硝子の雹は巨獣の背を打ち、地に突き立ちやがて珪素の大地へと変えた。
地に刺さる収束板は仕切り。
巨獣の群れが放った魔の射閃は不可思議な歪みとともに場に滞留する。
霊性を誘引する性質を持つ晶板からなる収束場は霊性の結界。
つまりいかなる霊質とてこの場から排出される事はない。巨獣が内包する膨大な魔質もまた然り。
機体はさながら窯に投げ込まれた薪といったところか。
若しも、今此処に火を投じ入れればどうなるか――――

神聖機械の黄金砲が曙の光を呼び込む。

昇華された爆白、消散した聖性、収斂していく霊質―――空間を無際限に暴走する
逃げ場を失った霊子の渦が物質の一切を蒸散させていく。
身悶えするように魔光を吐き散らすビグザム。薙ぎ払う光鎚砲射。
限界まで酷使された聖霊機の発振機はしかしその回転を更にあげていく。
際限みえぬ霊流の増大。圧縮と開放を往還する地の力場はますますその振幅を激し増し。
此処からは我慢比べ。どちらが生き残るか。或いは共に斃れるか。
聖霊機は己が身を餌に罠に招き入れる事に成功したのだ。
荒れ狂う霊子的真空が分子を攪拌する。いやます怒涛は分離分断分解分散促す滅粒。
膨らみきったビグザムの体腹を貫く光針。決壊した容器の破裂―――霊に貶められたる肉の消散・揮爆。
連鎖する小太陽が丘陵を削り地盤を刳り大地を消し去った。言語を絶する無色の領域は総てを浸し、没入せしめる。
薄れゆく正と負の境。朧に霞む空。
たわむ地。蜃気楼の如く揺らめく機躯。反復する幻影は融けゆく鉄腑の無惨な蠢き。
そして、臨界を越えた霊質流が全てを伴い弾ける。
瞬く黄金は膨張する死神。駆け抜ける無の波濤が何もかもを拭い去って―――。
8スケッチ3/ヒーリィ・イル/2:2007/08/29(水) 18:32:33 ID:???
幾度かの瞬きの後。
静寂を取り戻した大地。バルネアW。
先程まで存在した都市の痕跡はもはやなく、ただ特大のクレーターが広がるばかり。
その底部、一体きりで横たわるビグザムの跡形。
外殻のみ残った骸からずと這い出た「ディバイン」が地に片膝をつく。
今や灰と褪せた鎧は隈なく亀裂がはしり、罅割れ、所々崩れ、壮絶な姿を晒している。
粘りおつ装甲。肩当が零れ落ちる。左足は踝の辺りからない。

降りたった孤影。
「……高みの見物とはいい身分だな」
中空に浮かぶ邪竜「モノケロス」。
『よくも目算を狂わせてくれたものだ。まさかあの獣群をたった一機で退けるとはな…』
「よくいうぜ、本当に想定外なら此処にはいないだろが?」
『ああ。読み合いはどうやら俺の勝ちらしい』
男はたかが戦艦一隻、一機あれば墜とせるとの余裕を示す。そして、恐らくそれは事実であろう。
「モノケロス」の性能がヒーリィの予測通りであるなら。
邪竜の鉄杭が強度を失った鎧を容易く裂いた。
『後顧の憂いを断ったその後で』
死灰降りつける陥孔。互いに挙を窺うMSが二機。
これがGの戦場。
これがヒーリィ・イルの戦場。
灰色にくすむ「ディバイン」が態勢を起した。
「……お前さんも「俺達」が憎い口か?」
―――第九汎土。世界の外に弾かれた者たち。
『……とうに古ぼけた怨恨を引きずって何になる。弱者が滅ぶのは世の習いだろう。だからこそ我々は貴様等を誅しに来たのだよ』
「それを聞いて、安心したよっ……」
朽ち果てた鉄躯から表出する詠唱紋。十字の光芒が機体を割く。
「――――――――クルス=イェド、發動(ラン)―――!」
そして此処からが。
神聖機「ディバイン」、その真なる力の発現だった。
9通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 18:41:24 ID:???
>>1様スレ立て有難う御座いました
割合すんなり移行できてよかったっす

さて、次からはずっと超展開なんでお楽しみにー
10通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 18:49:04 ID:???
>>1&職人乙
前のスレが立ったばかりの頃からいるけど
正直2スレ目までのびるとは思ってもいなかったわ
11せっかくなんでテンプレとして:2007/08/29(水) 20:13:08 ID:???

『GUNDAMとは』 

愚劣な戦争により崩壊の危機にあった旧世紀末。 
降臨した神の忠実なる徒として究極無比の力を振るい 
旧世紀の終焉と神世紀の到来を導いた、たった一体のMS。 
ただ一機で争いなす総てをうち滅ぼしたその白い機体は、 
比類ない崇敬と畏怖の念を込めて人々にこう呼ばれた。 

光神機「GUNDAM」と。 

G級の呼称は真世界の中心たる神都を守護するために 
創聖期に存在したという伝説のMSを模して作られた機体を指す。 
即ちその時代での世界最強機がGと呼ばれるMSなのだ。 


『MS機体用語説明』 

・魂核炉心:発振機関によって生じるエネルギーを注ぎ込むことで発動する霊子エネルギーの源たるMSの中枢部、 
まさに心臓ともいえる部分。 
Gがみせる驚異的な力の数々はこの機関に由来する、この世界においての最大最高度の技術の結晶体である。 
それと共に詳しい構造、実体を把握しているものの少ない謎の多い機関でもあるが 
一説にはある種の上部領域から霊子を受け取る一種の転送機なのではないか、ともいわれている。 
またG級の魂核は各々特有な霊性を備えた搭乗者でなければ正常に作動しない、 
Gは文字通り、乗り手を選ぶMSなのだ。 
(補足説明:現存するG級の炉心は聖暦99年代に造成された通称「ミレニアム・シリーズ」と呼ばれるものを使用している。 
幾度となく行われた機体の改修・新造を経ても魂核には一度も手を加えられていない 
因みに、160年代に建造された「インフェルノ」の魂核も同じく「ミレニアム・シリーズ」のものが使われている。 
この辺りの事情も「インフェルノ」建造の経緯についての様々な憶測を呼ぶ要因であろう) 

・発振機関:この世界に偏在する仮象領域(下層の並列空間?)に働きかけて、 
物理領域にエネルギーを「弾き出す」、MSのエネルギー源たる振動波を生む機関。 
魂核の起動に使われるのみならずサブエンジンとしての機能も合わせ持ち 
MSの発振兵器など外部武装に独立して搭載されることもある。 

・極粒子装甲:敵機からの攻撃に対し発生するあらゆる運動エネルギーを粒子の振動に置換して拡散する特殊装甲。 
流れる霊圧によって強度・形状・特性を変える目的や用途に応じて様々なバリエーションをみせる。 
12通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 20:14:33 ID:???

G級は「一体であらゆる戦局に対応しかつ敵を殲滅しうる」という法外な命題に応えるべく 
基本的にスタンド・アローンで活動可能な万能機として設計されているが、 
それぞれのGを比較してみれば得意な戦形、独自の特徴など、実際の運用方法ははっきりと異なる。 
中でも「ヘブンス」「インフェルノ」はあらゆる点において、 
他のGはおろか既存のMSとも一線を画した特異な機体である。 

MS「インフェルノ」 
全高(頭頂高):28m(18m) 
本体重量:16t 
タイプ:全域殲滅型 
カラー:黒地に赤 
光熱放射翼「贖罪の火<イグニッション・フェザー>」 
超光熱爪「断罪の火<ヒート・ネイル>」・二基 
振動熱線砲「陰府の火<タルタロス・フレア>」・二門  
空間歪曲断光「終末の火<アニヒレイション・ファイア>」 

・起動試験段階で暴走し、奪われたままの本機体が 
現段階で公開されたスペックどこまでに沿っているのか不明である。 
起動実験中に奪われたため外部武装は着けられていないが、 
あらゆるエネルギーを聖属霊性に変換する特殊相転移機構を備える点は注目に値しよう。 

「インフェルノ」強奪事件…この一件でには多くの謎がるが、 
中でも疑問なのは適応者でなければ乗りこなせないGを 
「D」が操りえたという点だ。 
「インフェルノ」は「D」の魔に染まる事で魔に変質したというのが「EDEN」の見解だが、 
そもそも聖なる者を適格者として選ぶ「インフェルノ」が「D」の魔性を受けつけるはずがないのだ。 
だとすれば「EDEN」は……いや、自らが乗った船を揺らすような真似はすまい。 
本機体の捕獲もしくは破壊。それが我々に課せられた任務である。 
13まちがえて前スレに投下orz:2007/08/29(水) 20:19:40 ID:???


MS「セイクリッド」  
全高(頭頂高):19m(16m)  
本体重量:10t  
タイプ:格闘戦型・先陣突破型  
カラー:白地に蒼紋の縁取り(Gには各々呪的耐性を有する文様が刻まれている)  
固定武装:  
大剣「過たぬ正義の右太刀/尽きぬ勇壮の左太刀<セイクリッド・ブレイド>」  
背部大型振動砲「闇掃う疾光の波濤<セイクリッド・シューター>」・二門  
頭部小光径砲「光撒く礫<フォース・バルカン>」・二門  
追加武装:  
長距離発振兵器「万理に届く無響の槍<セイクリッドランス>」  
    
・高い運動性と格闘能力により局所線において無類の強さを誇るが、  
オプション兵装である<ランス>を装備する事で長距離戦・大規模戦闘にも対応出来る。  
本機体の武装は操り手の意志によるある程度の威力調整が可能なため汎用性は見た目より高い。  
特筆すべきは装甲のエネルギー吸収・拡散機能による強靭なダメージ耐性であるが、  
その分搭乗者にかかる負担は大きい。  

部隊の先陣にたって突破口を切り開く勇猛さが要求される機体だが、  
現搭乗者のダネル・アラクシェはいささか度が過ぎているらしい。  
訓練時から機体を酷使し、それに合わせて機体の耐久性を挙げると  
更に限界を超えた制動で応える、この繰り返しで最後には整備師も匙を投げたという話だ。  
徒な暴走を防ぐよう上手く手綱をとる必要がありそうだ。  
14通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 20:22:48 ID:???

MS「ディバイン」 
全高(頭頂高):25m(19m) 
本体重量:24t 
タイプ:広範囲重爆撃・拠点制圧型 
カラー:白地に金紋の縁取り。 
固定武装: 
腕部回転式光波速射砲「穿ちて回る破極の炎輪<フォース・ガトリング>」・二門 
胸部振動砲「魔魅駆逐する閃き<リージョン・シューター>」・二門 
広域掃討用肩部全周輻射砲「魔群摘む星流<リージョン・バスター>」・二門 
光熱螺旋弾頭弾「魔影追いたてる猟弾<リージョン・ボマー>」・24発 
追加武装: 
近距離兵器「顕現れる権威の神槌<ディバイン・ハンマー>」 
超長距離振動砲「曙光を招くもの<ハルシオン・メーカー>」 
背部大光径誘爆弾「轟天の千雷・天照の万雷<ヨシャファト・グレネード>」・6発 

・常時展開する重装甲。全身これ火器といえる広範囲に渡る大規模集団を一挙に殲滅するに足る重武装。 
G級中でも圧倒的な破壊力を誇る機体である。反面エネルギー不足に陥りやすく、 
また僚軍さえも巻き込みかねない光火力の為、慎重かつ的確な運用が要求される機体である。 
絶妙のタイミングで勝負を決する砲火を浴びせる姿は軍団の王たるに相応しい。 

とはいうものの、乗り手のヒーリィ・イルはどう贔屓目にみても機体特性を口実に 
怠けているにしか思えないことがままある。本作戦を取り仕切る戦導主長がこれでは先が思いやられるというものだ。 
いずれ何らかの措置を講じることになるかもしれない。 
15通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 20:25:12 ID:???
MS「ホーリー」 
全高(頭頂高):18m(15m) 
本体重量:8t 
タイプ:高機動・支援・遊撃型 
カラー:白地に赤紋の縁取り。 
固定武装: 
汎用遠隔兵器「祝福に舞い散る羽根<ホーリィ・ビット>」 
 射撃形態「風紋にそよぐ尖華<カーム・シューター>」 
 格闘形態「福音を鎧う戦女<ゴスペル・クワイア>」 
 探査・偵察形態「万象を射抜く眼<スキャンション・アイ>」 
 広域攻撃形態「礼賛に響く聖鐘<エバンジェリン・ベル>」 
中・近距離兵器「かき鳴らす不朽の弦奏<ストリング・シューター>」 
頭部小光径砲「光撒く棘<フォース・バルカン>」 

遠隔型汎用可変攻撃兵器「<ビット>」は一斉砲火、牽制、側面からの挟撃など、 
様々な使用が可能な汎用性に富んだ武装である。 
その為か本体の武装は少なく、全G中随一の高機動性を生かした一撃離脱戦法を得意とする。 

また「<ビット>」は探査・諜報任務にも優れており、余談ではあるが本機を「ビットの砲台」と揶揄し、 
搭乗者を「ビットのお守」愚弄した我が「ADAM」の一隊員は、 
何者かによってその日の内に私生活の詳細を所内にて曝されたという。 
…これ以上「EDEN}及び「ADAM」の威信を著しく傷つけるような真似をさせない為に 
常に目を光らせておかねばなるまい。 

MS「ヘブンス」 
全高(頭頂高):?(14m) 
本体重量:? 
タイプ:広域防御・援護型 
カラー:白一色 
武装:広域場干渉兵器「彼方越える祈りの風唄<ゼファー・ヘブン>」 
(その他固定された攻撃専用兵器を持たない。 
目的に応じた起動式をその都度展開して武器及び障壁を汲み上げる) 

神都の守護のみを目的とするG…の筈であったが本作戦に参加。 
このことは「ADAM」だけでなく「EDEN」内部にも少なからぬ動揺を与えたようだ。 
(「議会」からの勅命ではないかと目されているが、詳しいことは分かっていない。 
搭乗者であるルエビ・アンフィルエンナも「EDEN」総帥の血族であるらしいこと以外、 
一切の経歴が不明であり、機体・乗り手ともども謎に包まれている) 
現時点で分かっていることは、本機体は外見・性能・運用目的にいたるまで 
他のMSとは明らかに異なっているという事だけだ。 
G級でもっとも多く備える振動機関のエネルギーの殆どを魂核炉に注ぎ込む、 
6枚の翼を持った天使の異形。予感に過ぎないがこの機体こそ 
「インフェルノ」打倒の切り札となる存在なのかもしれない。 

スレ立て乙でした。
とりあえずテンプレにつかえそうなのはこんな所かな?
…というか設定変わってないよね?
16通常の名無しさんの3倍:2007/08/31(金) 01:51:36 ID:???
どもっすありがとーございます
多少変わってますが設定自体そこまで重要じゃないんで雰囲気がつかめれば問題ねっす
17クルセイド・ラン:2007/09/01(土) 15:03:10 ID:???

「――――――――クルス=イェド、發動(ラン)―――!」

十字の閃煌、星辰と見紛う光芒の中から現れる骨格。
層鋼を剥き出しにした「ディバイン」の体表には爆動する心臓からこもれた光燐がさざめき鳴く。
鉄衣を脱ぎ去った痩身は放散する高熱で金に火照り、後頭部より広がる霊質の鬣がなびく様はまさに金輪背負う雄獅子の偉容。
執行機団「EDEN」筆頭足るに相応しい覇気が大気を圧する。
これこそ聖霊機の聖霊機たる所以――――真核醒形態クルセイド・ラン。
其れは聖霊機が秘めた最終闘争手段。
故意に発振機関に過剰反応を起こして暴走させ、
圧壊の瞬間得られる爆発的な導力全てを炉心に注ぐ事で限界以上の魂核励起を可能にした形態である。
無論、これ程までに酷使した機体が唯ですむ筈もない。
絶大な出力と引き換えに魂核炉心は発動後数分ももたずに完全停止する為、一歩間違えれば自滅に等しい行為といえる。
敵の完全な殲滅以外に生還を許されないこの形態は、クルセイドの名前どおり命を賭した神軍の歩み―――。
「―――最後の最後まで切り札を温存しておくのが策士ってもんだ」
大鎚の発振機関がバラバラと崩れ残った長柄の先が光刃を点す。
重武装である通常時とは異なりクルセイド態の「ディバイン」に付随する武装は唯一つだけ。金色の機体が一筋の光槍を構える。
だが、「モノケロス」の主・ラコーダは目前で展開する驚異を平然と受け流した。
『まだ奥があったということか。つくづく食えん男だ……』
重装甲重武装から一転して軽装格闘戦仕様へと変転を遂げた「ディバイン」は通常時を遥かに上回る敏捷でもって邪竜に接近した。
『だがな、いったろう―――』
対する「モノケロス」は身じろぎもしない。そのまま槍は鱗甲を裂いて―――。
『―――「モノケロス」の蹄に届くものなどないと』
斬られた筈の邪竜機は粉塵に依然として無傷なままの体躯を晒している。
そう。「モノケロス」が身に宿すは邪なる奇蹟。
「…凡その見当はついてたさ」
ラコーダが神域より賜った異能は幾つもの可能世界の束を観じる「目」。
そして、モノケロスが備える「蹄」―――ヴァリアント・ブースターは己が無事である可能世界を選択し跳躍する。
「モノケロス」が移動するのは常に己が墜とされなかった世界
―――換言するなら、邪竜の黒蹄は撃墜という「結果」自体を回避する。
超越知覚を通してリンクした可能世界へと相移動するという、
限定的な事象操作に属する奇蹟こそが邪竜の特異兵装「モノケロスの蹄」の正体。
『分かっているなら諦めるがいい。どれだけ強力な武装も当たらなければ無意味、ただの悪足掻きということだっ…!』
一躍、攻勢に転じる邪竜の広翼が反り返った曲鎌を押し出す。
旋回する数十の咎刃はこれまでにない苛烈な斬撃。
土を轍つ鋭い車輪が「ディバイン」への距離を埋めていき、一分の隙もない死の網を構築する。
「己惚れるなよ、紛い物風情が……!」
苛烈極まる剣陣の波状へと迷うことなく機体を投じ入れるヒーリィ。
片手片足、満身創痍の機躯がしなやかに跳ねた。
一撃。ほんの一撃でも加えられれば装甲纏わぬ「ディバイン」は粉々に砕け散っていたであろう。
だが、破損した鉄躯の脇を、肩を、爪先を死はすり抜けていく。
狂刃の連撃全てを回避した黄金機は斬陣に紛れていた邪竜の正面へと俄かに踊り出る。
常軌を逸した機動性能。否、機体の問題ではない。
知覚反応をも超える繰り手の予測能力はまさしく―――。
18クルセイド・ラン:2007/09/01(土) 15:10:00 ID:???

「―――みえるのが自分だけだとでも思ったか?」
咽元に突きつけられた殺気の刃。
ラコーダは直感的に把握する。敵もまた己と同じ「域」にある者―――。
金色機影が再び邪竜を射程に捉えた。意想外の事態に僅かなりとも狼狽するラコーダ。
『……! たとえそうであっても、ブースターがある限り…!』
「悪いがいい加減こっちも限界なんでな……これでしまいだよっ!!」
「ディバイン」が射ち放つ長槍は刃先から分割し白く燃える三叉の矛となって邪竜機を襲う。
黄金捲く疾風の切迫にラコーダはいいしれぬ重圧から思わず機躯を翻す。が―――もう遅い。
「忘れられた奴等が―――しゃしゃり出てくるからっ!」
時をとめるは地を割る裂帛。直走る螺光が邪竜に重なり。
『―――避けろっ!「モノケロス」!』
同時に発動する「モノケロス」の絶対回避機能。

次の瞬間。並行場を捉えるラコーダの「目」が垣間みた光景は。

迫る槍。
――破壊。
刻む槍。
――破壊。
切り裂く槍。
――破壊。
抉りぬく槍。
――破壊。

全次元における普遍の事象――――――全ての可能世界における「モノケロス」の撃墜。

それは「絶対」を射貫いて達する死。
―――「トリスケリオス・フォニックトレイル」。
三叉に分かたれた刃先は存在そのものを貫く制裁。いかなる場いかなる時に於いても対象へと届く必撃の処断兵装。
邪竜の跳躍は徒労に終わるよりないのだ。
―――何故なら「モノケロス」が回避する可能性そのものが初めから存在しないのだから。
それでもラコーダの超越視は無意識から生存しうる可能世界を探し、邪竜機の黒蹄は転送を繰り返す。
そして、その度に待ち受ける度し難い絶望。
縦者の恐るべき苦痛にも拘らず、自動的に不可能な逃走を重ねる「モノケロス」。
それは繰り返される果てなき拷問だった。
無限に等しくも繰り返される跳躍の度に果てしなく変わりなく、悪竜は首を刎ねられ続ける―――――――――。
暴走の限りを尽くした黒蹄が砕け散るその時、ようやく悪夢は終わりを告げた。
「ディバイン」の矛先が達する刹那、ラコーダに去来したのは或いは安息ではなかったかろうか。
なぜなら、刃が届くまでの数瞬までに無限ともいえる擬似死を反復した彼の精神は既に毀れていたのだから。
19クルセイド・ラン:2007/09/01(土) 15:12:15 ID:???

爆炎に沈む竜機種の最後を見届けるヒーリィ。
「死ぬのはたったいっぺんでいいってのに、難儀な野郎だ」
噴煙の渦を抜け出る「ディバイン」は急速にその輝きを失っていく。
「……恨むなよ―――お前のいった通り、力のない奴が滅ぶのは」
―――運命だ。
世界を回す理の歯車。彼もまたその一片に過ぎず。
残骸の中で倒れ落ちるヒーリィは痙攣する知覚の束に顔を歪め。
「なんとか、瀬戸際で持ってくれたって所か……」
余すことなく絞り尽くした心身と機躯は休息に飢えている。
「そっちは、任せたぜ……」
完全停止。石くれと化した「ディバイン」。
ヒーリィは空に向けて呟き、そのまま仰向けに突っ伏した。


高空には駆け上がる艦船が三隻。
灼層うずまく天の源目指す「アレオパギダ」艦隊。その途上には未だ魔機の群れが厚く垂れ込めている。
何より。
先頭を駆る「ホーリー」のビットは「アレオパギダ」の進路の延長線上にかかる一点の機影―――MS「バシリスク」の姿を捕捉する。
既にして艦隊まで届くは圧力を放っている邪竜機。
こと迎撃に関していうならこれ程驚異的なMSもなかろう。近づくだけで襲いかかる防壁無視の攻撃は最大の障害となる。
あれを退けぬ限り余力僅かな聖軍の敗北は免れまい。
「けれど、私の「ホーリー」なら間に合うし…あいつを仕留められる―――!」
十二の羽翅を引き連れて鉄の戦女は邪竜の元へ一直に翔けあがっていく。

20通常の名無しさんの3倍:2007/09/01(土) 15:26:28 ID:???
とりあえずまとめにイラだけ投下ー
因みにスキャナが壊れたんで今後のアップに支障が出る模様

>>10
自分もこんなに続くとは、ってかこんなに終わらないとは思いもしませんでしたよ、ええ
先の事を考えるとちょっくら絶望的な気分になってくるんでなるべく考えないようにしてます
21通常の名無しさんの3倍:2007/09/01(土) 17:52:06 ID:???
GJ!
モノケロス格好いいですね。
22通常の名無しさんの3倍:2007/09/01(土) 17:59:12 ID:???
クルセイドがこんな形で使われるとは…やはりロボット物には限界突破は外せないなw
23通常の名無しさんの3倍:2007/09/01(土) 20:54:55 ID:???
クルセイドと通常時の対比がイイな
24クルセイド・ラン2:2007/09/04(火) 15:22:49 ID:U89g7W6j

『―――たった一機でしかけてくるとは大胆じゃないか、』
輪を描くビットの群れは、しかし邪竜「バシリスク」が放つ衝圧にあっさりと跳ね除けられる。
『それとも血迷っただけかっ?ははっ!』
邪竜の発光に「ホーリー」の速度は削られ。
「…! 馬鹿にしてっ…!」
再度射掛けるビットの奏撃は邪機に届く前に消滅してしまう。
敵機の驚異的な力をまざまざと思い知らされるディミ。
回避も防御も反撃も不可。
『もう手加減する必要もないからなぁ、ここからは本気で叩き潰してやるよおっ!』
両腕を広げる「バシリスク」の躯が一回り膨らんだように見えた。
甲鱗の継目の一つ一つから盛り上がった瘤がぱちぱちと爆ぜていき、やがて皮膜に包まれた琥珀の半球が露出する。
腕に肩に胸に背に。
体表をびっしりと覆う眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼・眼―――。
夥しい邪眼の繚乱。
「……やっぱり…こいつの攻撃って、」
――――――邪眼。
そう、あまりにも威力が異なる為に俄かには信じられなかったが、
その性質だけを鑑みるなら「バシリスク」の攻撃が呪力に依るものである事は明らかだった。

今や全ての力を開放した「バシリスク」の邪視によって空間が歪みはじめている。
並の呪力とは質からして異なる凶悪な力は空間の変質まで招く程。世界さえ惑わす幻呪波動。
空域を侵し歪ませ、一層の勢いを増す呪力波は邪竜の周囲にいる魔機をも巻き込んで原形すら残さず粉砕していく。
宙に散じた鉄片は融けて大気を濁らせる。
視線の束によって生み出される狂鳴の輪はビットの制動をすら狂わす脅威。
聖霊機たる「ホーリー」であっても場に留まるのが精一杯だ。
―――本来、純粋な戦闘兵器としては貧弱な呪的武装にそのスペックの全てを傾けるという異端の発想の下、
「バシリスク」は呪機としては有り得ぬほどの破壊力を実現し得た恐るべきMSだった。

飛び退る「ホーリー」を悪意にぬめった眼球の群れが一斉に追いかける。
『無駄だって、「バシリスク」の千の目から逃げられるものか!』
見敵必殺。防ぎようのない呪衝の波をまともに浴びた「ホーリー」から鎧衣が剥げおちていく。
『獲物にしたってこう手応えがなくちゃあな!』
一方的な蹂叩を愉しむ邪竜の主。
「調子に……乗るなぁっ!」
ディミの憤激が機関の発振を加速させる。
「―――クルス=イェド―――」
機体が放つ十字光の元に集まるビット。
「―――發動(ラン)――!」
十二の飛羽根が戦女を包み込み、鉄の花蕾を形成する。
魂核の励起。霊質の導出。そして、発現。
眩い燦光が支配する一瞬に次いで、開いた蕾から現れ出ずる茜の鳥。
めくれ返ったビットの花弁が形作る二枚の長く伸びた翼をしなやかに二三度羽ばたかせ。
―――天を舞う聖鳥へと「ホーリー」は転身を完了した。
25クルセイド・ラン2:2007/09/04(火) 15:31:58 ID:U89g7W6j

『そんなもので――――――何だ?!』
「ホーリー」の白翼が瞬いたその時。
邪竜の繰り手プレ・イグは目標を消失した事に気づいた。
姿を消した目標を千の眼光で探す「バシリスク」。
プレ・イグの鋭敏な感覚は、空域に漂う敵意を嗅ぐ。センサーの反応からみるに「ホーリー」は離脱した訳でも、潜んでいる訳でもない。
敵機は確かに目の前にいる筈。
―――けれども、「観えない」。

「ホーリー」のクルセイド態は認識の果てを翔ける翼。
紅の飛鳥と化した今の「ホーリー」はさながら「無」を表象せしイコン。
眩光に輝く白翼は敵する者の意識へ強制的に介入し認識の盲点ともいうべきラグを作り出す。
機にも人にも捕捉することの能わない究極無比のステルス性能こそ「ホーリー」の真核醒形態が宿した理の力。
そして、この力こそ邪竜最大の武器を最大の急所へと変える最後の切札だった。

認識=攻撃。
―――呪力を必殺たらしめるこの特性は裏を返せば、認識しえぬ相手には全く効果を及ぼせないという事。
つまり。
「「ホーリー」は、あんたの天敵ってわけ!」
呪渦を祓う福音鳥。祝福の羽ばたきは邪なる視線を切り裂いて舞い跳ねる。

肌に感じ、音に聞き、近づく機影の重圧をひしひしと身に受けるプレ・イグ。
だというのに彼の認識は常に「ホーリー」を逸れてしまう。
―――敵が近づく。敵が来る。それは間違いない。だが、どこから?いや、そもそも自分は「何を」相手にしていた?
知覚の綜合はままならず離散した妄像が思考を撹乱し。
―――敵だ、敵が、敵は……
『くっそおおお!どこだ、どこだっ、どこだあああああっ!!!』
―――迫り来る「何ものか」。
恐怖に駆られた繰リ手が半狂乱で邪竜の鉄釘をばら撒く。
射弾の霰が「ホーリー」の白羽根を切りつける。着弾の衝撃が機中を揺らすも、怯まず邪竜の側面へ機体を切り込ませるディミ。
ビットの展開が出来ず決定打となる武装を備えていないクルセイド態にとっては「バシリスク」が混乱に陥っている今こそが唯一の好機。
態勢を立て直される前に、叩く。

煌く翼がひときわ大きく空を撃って突撃をかけた。
邪竜の胸元に飛び込んだ「ホーリー」。その鋭く伸びた嘴口が邪視を無効化され丸裸になった「バシリスク」の胸元を抉りこむ。
性能の全てを呪力のみに傾注した「バシリスク」の装甲は脆かった。
『己っ!貴っ様あ!女があああああ!!』
「―――女を嬲るような餓鬼なんてのはねぇっっ!」
ビットによって構成されていた二枚の大翼が弾ける種子のように飛散し、全身に生えた邪竜の目玉を悉く引き裂き潰し―――。
『俺が……俺の「バシリスク」がぁ……!』

内外を焼く爆炎に四散する「バシリスク」。
それを見届けた「ホーリー」もまた機動を停止し直下の闇へと吸いこまれていく。

「―――あとは、上手くやりなよ……ダネル―――」

26クルセイド・ラン2:2007/09/04(火) 15:33:20 ID:???

聖と魔が最後の衝突を繰り広げる戦線から十数キロの地点。
バルネアWを南に仰ぐ険しい丘陵地帯の一角に、ダレトは伏兵を潜ませていた。
総数五百を超える大量の機群。
もしもこれらがバルネアに到来してれば確実に戦局は決していたであろう。

―――築かれた機屍の山に立つ一群のMS。
「―――こちらはあらかた片付きましたあ」
ひらひらと舞う胡蝶の群れを身に纏わせる少女のような機躯。
「「こっちもだよー」」
MS「キュべレイ」が落ち着きなく辺りを旋遊する。
「あまりちょろちょろするな、遊びじゃないんだぞ」
兵士の一人が一団の長らしき男に次の指示を仰ぐ。
「で、どうします?」
「完全に出遅れてしまった。……こと此処に至っては彼等に任せるよりほかあるまい……」
男が搭乗する機体。
金の光沢覆われた鉄躯、黒一色で塗りつぶされた面相―――MS「百式」が手に提げた長刀は戦闘の熱を残して未だ鈍く輝いている。
「EDEN」「ADAM」はおろか真世界のどこにも該当しえない機兵を駆る者達。
彼らは「SIN」の一分派―――自らを「人類解放戦線」と名乗る一団だった。
「口惜しいな。戦いの趨勢をただ指を咥えて眺めているしかないとは」
「ここまで来るのに時間を食いましたからね」
「ああ、「回廊」さえ封鎖されていなければな…」
「彼らは勝てるんでしょうか?」
「そう願うしか、ないな」
そこで男は口を噤み。両の眼光を隠したバイザーが破滅の空へと向けられる。
「真なる敵は、未だ姿をみせていないというのに―――」
27通常の名無しさんの3倍:2007/09/04(火) 15:42:28 ID:???
sage忘れすみません

とりあえず、まとめ「百式」「キュべレイ」追加
「ホーリー」のゴッ○バードチェンジはスキャナが壊れたので断念w
28通常の名無しさんの3倍:2007/09/04(火) 15:59:37 ID:???
変形機構までついとるとですかホーリーっっ!!?
この、ジョジョ的な超能力バトルをガンダムでやるってのがたまらない
吹き出るようにGJ
29通常の名無しさんの3倍:2007/09/04(火) 18:40:31 ID:???
百式&キュべレイktkr
両方もはやMSというか、RPGのボスキャラっぽいぜ
30通常の名無しさんの3倍:2007/09/04(火) 20:23:23 ID:???
キュベレイがなんかモーターヘッドっぽいww肩当とか特に
31通常の名無しさんの3倍:2007/09/08(土) 11:47:17 ID:???
ほす
32通常の名無しさんの3倍:2007/09/09(日) 20:54:47 ID:???
ほす
33クルセイド・ラン3:2007/09/11(火) 20:34:33 ID:???

「セイクリッド」は盾となって立ち塞がる機屍を踏み越えて「ステンノー」へと切りかかった。
邪竜機の頭部を薙ぐ音無しの剣―――三度目の撃破。
『無駄無駄……何度やったってね…』
「ステンノー」は従僕の躯を憑依にすぐさま再生を果たす。
「またかっ…!」
ある意味でグール「ステンノー」は「ステンノー」そのものと等しい存在だった。
インコムを通して分体と共有する操り手の生体情報までをも即時、再構築する超機能が邪竜の消滅を阻んでいる。
グールがいる以上、本体への攻撃は無駄に終わろう。かといって、グールを斃した所で事態は一向に事情は同じ。
黒霧に滞留したザクの残骸を拾い上げたインコムが新たな僕を造り出していく。
『この通り、材料は幾らでも転がってるから、ね……』
――――――切りがない。
亡者と繰り広げる果てない輪舞を逃れようとダネルは弾幕の間隙を縫って離脱をかける。
「これ以上、付き合っていられるかっ」
死角にみえた一点を綾なすインコムの鋼線が埋め尽くし、「セイクリッド」の足を掴んだ。
前後から同時に巻きつく蛇触の数束。
(誘い込まれたっ…!?)
「セイクリッド」は頭部より放つ光滴を撒いて、断ち切った触手を瞬発的な飛翔で振り払う。
『残念……』
睨む邪竜。
戯れにも似た口調とは裏腹に狡猾な手管でもって、邪竜の繰り手・チルは平常を欠くダネルに更なる揺さぶりをかける。
『一人きりで寂しいのなら、』
失った機屍を再構築する邪竜機。しかし、その素材に選んだのは魔機ではなかった。
「こいつ……!」
中空に漂白していたGMの残骸がインコムの侵食を受け、頭部に目玉の刻印が突き出る。
聖属たるGMをすら自らの走狗へと変える邪竜機の異能にダネルは動揺を隠せなかった。
『ほうら、お友達がいれば少しは気が紛れるでしょう』
飯事に興じる少女のように邪竜の主は無邪気な笑いを漏らす。
「……!」
襲い掛かる僚機の成れの果てを止むを得ず切り払った「セイクリッド」。
『お仲間相手に、容赦のないこと……』
バラバラに砕けた機体が宙に散じた。
「死んでいった者を辱めるのかっ!」
『関係ないわねぇ。これはもう、私の人形なんだから……』
電光が目の端に迸る。戦士を愚弄するステンノーにダネルの怒りが爆発した。
「貴っ様ああっ―――!!」
結果からみればチルの挑発は逆効果だった。
彼女の所業は少年にとって、最も触れ難い悪夢の記憶を思い起こさせてしまったのだから―――。
「―――クルス=イェド、――――――ラン!」
昂る意識が引き金を引く発振機関の暴走。
こすれあう黄鱗の爆砕が喚び寄せる十字の星瞬を導標に旋回するシールドが「セイクリッド」の手元へと戻り
―――閃光とともに分割し―――機体の各部を覆い―――白銀の鎧装を形成するに至る―――。
追加装甲を身に纏った「セイクリッド」の核醒態。
張り出した両肩、より鋭角を厚みを増したフォルムの背後に突き出た光の旗が神々しくはためいていた。
34クルセイド・ラン3:2007/09/11(火) 20:38:07 ID:???
『衣装を変えただけでねえ!』
「セイクリッド」は新たに備わった爆発的な推力で機屍を近づけない。
直線的に奔る機動にインコムの射弾は掠りもせず、機屍の追弾を次々に回避する度に透光の旗が機体の幻像を残していく。
間合いから退いた敵機を追尾する「ステンノー」。
『そう何度も惑わされは……』
刹那、チルは背後からグールを見舞う砲撃を察知した。
『増援……?!』
辺りを確認するチル。周辺には「セイクリッド」以外の反応はなかった。
であるなら射撃の主は「セイクリッド」としか考えられまい。
だがどうやって――――
疑念の答えはすぐさま目前につきつけられた。
「セイクリッド」の旗条が残した白塵が紡ぐ幻像をすり抜けるインコム・グールはすれ違いざま左右から串刺しにされる。
――――――光条が紡いだ煌く残影は虚像、だが繰り出される攻撃は間違いなく実体を帯びていた。
虚像である「セイクリッド」の迫撃が激しい光滴を散らす。
これこそが「セイクリッド」が備えしクルセイドの秘蹟――――――存在並置機能。
暗空を裂いてはためく旗を目印に、コンマ数秒単位の過去影が現在時に追いつく。

後方に下がる機影に合わせて突撃するグールは場に残された幻影に斬りおとされる。
重なる残影の刃に足を断たれ、直上から届く火線に没し―――。

時を惑乱する神秘の光幻。多重影が織り成す逆行カノン。
攻撃のほんの一刹那だけ「セイクリッド」に追従する残影は本体と同時に存在する実体となる。
一言でいってしまえば、幻像の数だけ「セイクリッド」の攻撃は増えるという事。

側面より両断された機躯が上下からの撃閃に呑まれる。蛇鞭を掴んで手繰った機屍を射ち貫く。
一機による完全同時連携加撃という端倪すべからざる「セイクリッド」の理力が形勢を一挙に覆す。
『こんな……ことって…!』
事態の一変に愕然となるチル。今や翻弄されるのは彼女の番だった。
火花を溢し、流閃かける霞の怒涛と驚乱。
居並ぶ分影が放った連射連撃が機竜の群れを縦横に交錯し引き裂き合い喰らい合う。
軽々といなして疾駆する二刀二門を構えた機騎士の一群。
打ち込む剣迅が鋭さをいや増す毎に続く分影もまた一体、また一体と数を連ねていく。
濃霧を割する幻朧の舞。邪機の張り巡らした巣網を裂き乱れる射線と斬刃がいとも容易く薙ぎ払った。
復元した端から次々に撃破されるインコム・グ―ル。
躍り狂う「セイクリッド」の虚と実が十二のインコムと「ステンノー」を追い詰める。
空身を破る術などなく、一方的な攻撃に守勢に回ったチルは動揺の余り「セイクリッド」の誘導にも気づかなかった。
圧倒的な勢いで攻める機騎を阻む為、全てのグールに自機を囲ませるよう布陣を敷く「ステンノー」。
―――――其処は既に「セイクリッド」の手中。
円陣をなすグールを更に外側から包囲した全ての「セイクリッド」。
十一の幻像と本体、十二の「セイクリッド」が各々一体ずつグールの正面に立つ。
十二×二門の振動帯砲がインコム・グール各機に、そして其の奥に位置した邪竜本体に向けられていた。
「―――全部一片に撃破されれば……代えは効かないよな?」
戦慄にチルの漏らす吐息は悲鳴にもならなかった。
放たれる二十四の苛光。
全ての機屍を貫き、放射状に収束していく閃光が「ステンノー」を呑む。
「今いくからな…ルエビ……!」
邪竜を掻き消した光球を尻目にダネルは先を急ぐべく機躯を飛び立たせた。
35クルセイド・ラン3:2007/09/11(火) 20:39:18 ID:???

黒霧を貫いて真闇を墜落していった「ステンノー」の残骸。
上半身だけとなった機体は収束板を失った搭身周囲に骨組みのように点在した側壁の一つにひっかかっていた。
『つめが甘いよねえ……』
九死に一生を得た邪竜の繰り手はほくそ笑む。
彼女は直ぐに残骸となって側壁に転がっているザクを目聡くも発見した。
憑代となる機体さえあれば、そこから本体を再生することが可能な「ステンノー」である。
こちらが健在だとは夢にも思っていないだろう「セイクリッド」の背中を衝いてやるのもいい…。
ザクの骸を支配するべく邪竜は辛うじて一本残ったインコムをそろそろと伸ばしたその時。
機動を停止していた筈のザクの単眼に狂光が宿る。
『…何を……?止めなさいっ!』
もとより大した頭脳もない木偶は朽ち果てた今、贄を求める魔の本能のままに邪竜へと圧し掛かった。
もがく邪竜の腹腔へと伸ばされる鉄の腕。
『ひっ……』
「ステンノー」のコックピットへ向けてザクは深々と斧を叩き込んだ――――――。


一秒一刻を争い目指すは陰府の劫炎を映した天空―――。
災禍の中心へと飛突する蒼翼、しかし。
急ぎ「セイクリッド」を奔らせるダネルの眼に飛び込んだのは、漆黒の周空を払う散華の錦光だった。

「―――「アレオパギダ」が……沈んだのかっ……!?」
36通常の名無しさんの3倍:2007/09/11(火) 20:48:23 ID:???
投下遅れまして申し訳ない
例によってまとめにイラだけ追加
セイクリッドうろ覚えで描いたらほとんど別物になってたw

さて、問題はこっから先だよ…
37通常の名無しさんの3倍:2007/09/12(水) 19:11:31 ID:???
GJ!
たしかにちょっと違うね。
38通常の名無しさんの3倍:2007/09/15(土) 20:23:21 ID:???
hosyu
39煙と告解:2007/09/17(月) 08:21:32 ID:???

無数に連なる砲撃の叫びが鬩明の木霊となって震撼する空域。首をもがれた機体が戦艦表装を滑り落ち漆黒の気流に放り出される。
膨大な熱量を押し留め十二の羽が謳う天の根元へ、全速で上昇を続ける戦艦「アレオパギタ」。
黒鋼うずまく崩嵐の只中を突っ切る戦艦は取り付いた魔機によって既に船体の半分以上を覆われていた。
左舷側面に配置された砲門は悉くが破壊され幾つかの砲門が残る右舷もまた張り付いた敵群による侵食が続く。
灯りに引き寄せられる蟲のように群がった鉄機は獲物の体躯を櫛ずり、ぎしぎしと締め付ける。
甲板上にたったGM隊必死の迎撃も追いつかない。なにせ一機を撃破するごとに十以上の増援が押し寄せるのだ。
これで何度目の邀撃か、数えるのも厭わしい程の大波状。
艦上の一段高い部分にある指令区画は正面の羽光盾が途絶えたが最後、
雪崩れのごとく押し寄せる魔の群れに埋め尽くされる事になろう。
それでも、諦める訳にはいかない。執拗に艦を叩く黒い蠢きに弾幕を浴びせかけるGM。
上天へと至る血路を拓く為、機騎を駆る命の光点が一つ、また一つと逃げ場のない闇へと紛れていく。
断続的な爆音が響く船内。
ひときわ大きな爆砕に傾いだ足場が乗員の体を左右に揺する。
「―――副機関については三番以降捨てていい。あとは接触まで、突っ切るだけだからな」
損傷した推進機関を排出する「アレオパギダ」。多少推力は落ちるが主機関部に火が回っては元も子もない。
「これだけやられて沈まないでいるのが不思議ですよ。これもご加護というやつですかね」
「かもしれん。いずれ碌な死に方はせんと覚悟はしていたが、まあ、上々だな」
「同感です。最後にこういうかっこつけ方が出来るんなら、悪くはない」
そう軽口を叩く操舵手の額には汗が滲んでいる。
「お前も「ADAM」からの出向だったな―――」
通信手が告げた。
「ブロックの切り離し終わりました、これで幾らかは身軽になるでしょう」
「あとは、祈るだけ、か」
「意外ですね、参謀の口からそんな言葉が出るなんて」
「私とてこれで神徒の端くれだ」
憮然とした表情でケイルブは応えた。

天頂に近づくほどに強まる霊圧を突破せんと「アレオパギダ」は最後の加速をかける。
『MS隊はもういい、撤収しろ!』
後方を固めるアドエス級からの支援砲火も途切れがちになる中、艦首前方に孤立したMS隊の奮迅ぶりはここまで凄まじいものがあった。
荒々しい悲鳴をあげる間接機体。たわんだ層鋼。消耗しつくした機躯で魔群をひたすらに蹴散らす。
アンス・タイアンはようやく繋がった通信に怒鳴りつけるように呼びかける。
「聞こえたかコノー、俺達の役目はここまでだ。下でアドエス級が拾ってくれる、とっとと降りるぞっ!」
コノ―と呼ばれた男は努めて陽気に応えた。
『そうしたいのはやまやまなんですがね、もうこいつがいう事きいてくれませんや』
甲板に空いた陥没に埋まった「クゥエル」はみれば左半身を著しく損傷させている。これでは移動はおろかまともな動作もままなるまい。
『という事で、自分に構わんで行って下さい』
「……実は俺もな、「羽」をやられちまった。お互い引き際誤ったよな」
『そうでもないみたいですよ―――そら来た!』
猛然と迫る魔の塊球。先に戦艦から離脱していた僚機の後方から襲い掛かる機群の波を、二体同時に放った砲光が弾く。
「確かに援護は出来たか……コノー?」
魔機に浚われたか射撃の反動で転げ落ちたか、先程までそこにあったコノー機の姿はみえず、通信も途絶え。
「…ったく、つき合いが悪い野郎だ……」
銃杷を握った機械の指が軋音を唸らせ。残されたアンス機は弾丸を装填し新たに湧き出る敵影に向き直った。
非情の虚空に、MS「クゥエル」は鎮魂を謳う線条を奔らせる。
40煙と告解:2007/09/17(月) 08:27:16 ID:???

夥しい爆砕の火を経て後。ようやく魔獣の圏内に飛び込んだ「アレオパギダ」。
天に滞った霊流が生むこれまで以上の暴圧によって船体外装と共にバラバラと舞い散る魔機の群れ。
天空を華麗に雄飛するタルシス級艦の姿は今ではもう見る影もなく崩され尽くされていた。
血彩る指令室。
立方体であった空間は崩落した天井と潰れた側壁によって歪に縮んだ室内に動くものはケイルブ以外にない。
喫煙を止めてからも未練がましく紙巻を持ち歩いていた彼は慣れた仕草で煙草を巻き終えたものの、
そこで自分がライターを失念していた事に気づき失笑を漏らした。
(借りる相手ももういないか……)
早くに家族と死別し、これまでの人生で格段親しい者も持たなかった彼にとってこの場に至り思いを馳せる相手などいなかった。
その代わりに彼の心を占めたのは、脳裏に焼きついた少年の面立ちだった。

数えること八年前、「ADAM」に所属するケイルブは辺境区での職務に就いていた。
一般的に大規模の軍事力を行使しあらゆる厄災を除去する「EDEN」とは異なり、
軍事的権限の限られた「ADAM」が主とするのは治安維持活動である。
自然、その対象となるのは魔よりも人である事が多くなる。
聖暦154年初頭。
彼が所属する第63区域辺境部隊に命じられた活動もそうした中の一つだった。
工業ユニットの閉鎖に伴う領民の移送作業に伴うあらゆる危険の排除。
締め出された棄民の混乱を場合によっては武力を持って鎮圧しなければならない、
謗りを受けこそすれ決して称賛を浴することのない汚れ仕事だった。
隊を率いる主長として任務にあたったケイルブであったが、
彼はそこで飽かず続けられる代理闘争の名を借りた区画整理の一場面に出くわす羽目になった。
ユニット近隣に根を張ったSINの傍系組織の一団が、大量に流出する棄民の保護を名目に蜂起蜂起を画策していたのだ。
SINとはいえ、その末席を連ねるだけの彼らにとって武力行使とは詰まる所縄張り争いの手段に過ぎず
「ADAM」が番犬というなら彼らは肉餌にむらがる野犬の類といえた。
秩序が統べる真世界より摘み取られた不和と混沌の芽は、やがて七天の外、廃棄された世界に根を下ろし、凄惨な闘争の果を実らせる。
―――第八世界とは神代の陰、罪と穢れを一手に担う「機構」であった。
原則的に第八世界への干渉はなるべく避けるべきではあったが、領民を巻き込みかねないとなれば話は別だ。
加えて、小規模とはいえ暴徒の鎮圧は必ず幾許かの被害を招く。
暴動を未然に防ぐ為、ケイルブが講じた策は火種を別方に移す事だった。
彼は蜂起を企図する一派とは敵対関係にある勢力を裏から支援する見返りにユニット近隣への不可侵を誓わせたのだ。
多分に一時凌ぎの方策ではあったが、移送作業さえ終わってしまえば問題はないのだ。
結論として、毒をもって毒を制すケイルブのやり方は理想的な状況をもたらした。
武装勢力は小競り合いに明け暮れ、他方で「ADAM」第63区域辺境部隊は移送の間の治安維持をさしたる問題もなくやり遂せたのである。
数ヶ月の後、耳に届いた紛争にまで発展した武力衝突の報せにも彼には何の感慨ももたらさなかった。そこは楽園の外。
中央への転属が決まったケイルブにとっては遠い出来事だった。
41煙と告解:2007/09/17(月) 08:28:18 ID:???


だからこそ、後年ダネル・アラクシェの出自を知った時に彼は思いもよらぬ打撃を受ける事になった。
第63区域にて発生した小規模な紛争。次第に範囲を広げた争いは近隣の村々をも襲った。
その中には少年の生まれ育った寒村も含まれていた。
―――まさしく奇縁としかいいようがない。
少年から全てを奪った侵掠の炎。その火を放ったのは外でもない、ケイルブ自身であった。
こうして彼は少年の顔を見る度、己が犯した所業が招いた結果をつきつけられるようになったのだ。
ケイルブはダネルに事実を明かそうとはしなかった。
それは結局、自らの負った重荷を少年に肩代わりさせることになるだけであると彼には分かっていたからだ。
第一、ケイルブは自らの行いを過ちとは考えていない。
全ては秩序の為、安寧の為。彼は最善の方策をとったと信じている。
一を捨て十を守る。十を殺し百を生かす。
いずれ誰かが手を染めねばならない事であるなら、彼は迷わずそれを成す。
誰もが目を背け得ない現実に対し執り得る唯一つの道。
正しき行い。
誰憚ることなく答えるその言葉はしかし、死したる者に届きはすまい。
どれほど純潔に満ちた理想であれ、土に撒いた血の昏さを濯ぎようもなく。
胸を這う一抹の慙愧があった。
重ねた過ちを知っていながら、至福に満ちた未来を念じながら、永久に続く安らぎを願っていながら、人は絶望的なまでに繰り返す。
―――些細な暴動で肉親を失くした男がいつしか全く同じ愚行に加担していたように。



42煙と告解:2007/09/17(月) 08:29:43 ID:???


分厚い暗幕が晴れた先に迎える光景は世界の罪の総和。
濃密な霊圧を割って進む「アレオパギダ」の面前に聳える赤壁は魔獣の展開翼が取り込んだ砲門の外殻。
予想通り、「インフェルノ」本体からみて最外延にあたるこの箇所は霊障濃度が比較的低い。狙うならばここだ。
「よく、持ってくれた……!」
目標を認識した「アレオパギダ」の機首に立った三枚の羽が前に倒れ角推の光銛を形成する。
タルシス級に搭載された相打ち覚悟の突貫兵装が災禍の根源への航路を指し示す。

―――紅蓮に哭く狂獣。
劫火をもって世界を糾弾する「彼」もまた、忘れえぬ人の業が生んだ犠牲者なのかもしれない。
だとすれば、真の意味で彼を裁く資格はケイルブにはあるまい。
それが出来るものがあるとすれば――――――。

振動銃の射撃が前進する「アレオパギダ」の艦橋を薙いだ。
『決死の覚悟とは侮れんものだな。正直、畏怖の念すら覚えるよ』
前方には「アレオパギダ」の障害となるMSが一機―――
途を閉ざす「ゲルググ」はその機体越しに繰り手の薄ら笑いが透けて見えるかのよう。
操舵室に侵入した焔が踊る。
粉煙の立ち込める中、映盤を通して相対する冥府の使者を前にしながら、ケイルブは取り巻く炎で煙草に火を点す。
「わざわざ出迎えてもらって恐縮だが、死出の道行きに案内は要らんよ―――」
ダレトはケイルブの、神命に黙して殉じる男の矜持を甘くみていた。

もとより信念に偽りはない。
だが。生きるべき者、死ぬべき者――――――強いられた選択とその結果は人の身には余るものではないか。
少なくとも、彼にとってはそうだった。
罪には罰を。それが世界を形づくる原理でなければならない。
人が不可避に負う罪であっても、それが罪と呼ぶべきものであるなら。
怖れなく、迷いなく下された審判を粛然と受けとめよう。

船室に向けて「ゲルググ」の振り下ろす薙刀を突然の爆光が遮る。
「―――蜥蜴の尻尾は自ら切り離すものなのさ」
機関部の自爆による最後の一押し。
爆圧により屑おれる船体から切り出された船首部の鋭銛は巨大な鏃と化し鏡搭の登頂に向け突貫していく。
『ぐっ………!』
「ゲルググ」を巻き込み、贖いの一矢が天に生える紅翼の根元を刺し貫く。

爆散の火に我が身を裁いた男は焼尽の刹那、紫煙を深く吸い込んだ。
43通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 08:35:05 ID:???

…どうでもいい所で時間食ってしまった…
書き忘れてたけど前回とは時間的には同時進行なんで補完よろしく
44通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 21:28:22 ID:???
乙!
45通常の名無しさんの3倍:2007/09/18(火) 00:20:43 ID:???
GJ!!!
46通常の名無しさんの3倍:2007/09/19(水) 19:07:38 ID:???
ほっしゅ
47通常の名無しさんの3倍:2007/09/21(金) 19:00:35 ID:hChu201x
保守
48通常の名無しさんの3倍:2007/09/22(土) 22:38:41 ID:eB5IKZ+L
すごく…おもしろいです。
応援!
49通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 18:26:38 ID:???
すみません投下遅れます…進みが亀でホントにもう…

応援超感謝っす
なるべく早く続き書けるよう頑張りますー
50通常の名無しさんの3倍:2007/09/25(火) 23:06:10 ID:???
保守
51通常の名無しさんの3倍:2007/09/27(木) 02:36:32 ID:???
ほしゅ
52通常の名無しさんの3倍:2007/09/28(金) 23:31:59 ID:???
保守ほしゅ
53通常の名無しさんの3倍:2007/09/30(日) 08:26:24 ID:AGlhwohC
このスレは落とさないぜ
54通常の名無しさんの3倍:2007/09/30(日) 21:53:21 ID:???
まだ投下はこないのか…
55通常の名無しさんの3倍:2007/10/01(月) 22:59:04 ID:???
hosyu
56スケッチ4/ルエビ・アンフィルエンナ:2007/10/02(火) 02:05:22 ID:???

たゆたう夢の輪郭にまどろみの深さを忘れ。
ささめきが遠鳴る薫陶。囀りが刺激する在りし日の残滓。

群芳の梢に繁れる永遠園生にて。娘の瑠璃にそれは映る。
真紅に揺れる双瞳。
誕生の瞬間から常に、共にある少年の面影は幻想ではなくいつか訪れる真実の兆し。
魂核の移し身として定められた娘の生は幾度となく訪れる予見は神座に顕された未来記述にまつろうもの。
不可避の確定事象としてその魂に印づけられた烙印が囁く。
―――お前は彼の者の為に死ぬ事になるだろう、と―――。
始めのうち、いうまでもなくそれは少女にとって恐怖を意味するものだった。
つきまとう死の予感は造られた身であっても、否、だからこそ恐れは募る。
この想いも、いずれは消えてなくなる片時の泡沫と知れば――――あどけない贖罪羊を純然たる虚無が充たしていった。
狭い世界で絶えていく我と我が道。人が蒔き、神が摘みとる小さな蕾花は舞いうつ風霜に慄く様に、ただその身を震わせるばかり。

けれどもまた。少女の目を見開かせたのも少年の幻映だった。

彼女が唯一、心を許せる人間である老父・セファー・ジェラルド。
いつでも、包む両の手が幼子の愁嘆を鎮めてくれた。
だが、注がれる限りない慈しみの裏にある哀しみを彼女が知った時。
救われる命を冷徹に選別するノアであり、神の御旨に傅くヨブ―――代償であるべき恩寵を浴し得なかった憐れな老人の底知れぬ悲憤。
己が行いに戦慄き、罪を輩となす人間の哭き咽ぶひたすらな慟黙。
緋の瞳に宿る翳りは、神が賜うた宿業に一人抗う老人の眼見に潜む輝きと同じものなのだと気づいた時から、
背を向けず眼を逸らさずに少女はそれを受け容れるようになったのだった。
そんな彼女に、やがて去来する不可思議な懐愁は受け継がれた追憶の痕。
神の台座から抽出した霊子情報を基に造形された、「ヘブンス」の量子的相同体である少女は
先んじて生み出された同種の存在と遡視化された同一体といってよい。
―――いうなれば「ソフィアの娘」とは同じ過去、同じ記憶を共有する者の総称なのだ。
境遇を同じくした彼女ならざる彼女の経験、霊性に繰り込まれた情報は郷愁の如く胸を締めつける。
まるで前世の思い出のように。

過去と未来と、二つの光景、二つの時制が奇しくも重なり描出する背徳者の肖像。
世界に棄てられ世界を棄てて、夜の永劫に一人とり残された少年。
初々しい啓示を得たその日から少女の胸に宿った想いの萌芽はそっと呟く。

たとえ、誰しもが否定したとしても――――――彼女だけは、この命を赦そうと。

57スケッチ4/ルエビ・アンフィルエンナ:2007/10/02(火) 02:07:29 ID:???


未だ出逢ったことのない者へと向けられたその想いに、誰もが奇異の念を覚えるかもしれない。
事実それは、少女自身にとってさえ戸惑いを覚えるものだった。
しかし、少なくともその意志は感傷ではなく、理屈に依るものでもない。
強いていうならそれは誓いともいえるものだ。
―――何を求め。何を成し。そして、何を遺すのか。
その為にこそ彼女は在ったという証。そう在ろうと願った夢。
少女は自分の、自分だけの「意味」を定めたのだ―――。
胸に点った小さな意志は清らに透いて、けれど淡く脆く小さなもの。

過ぎにし陽の鮮烈な残り香に憑かれた少年に。
―――心灼く恨悔はその陰となり、心裂く愧怨はその影をなし。
永久に去らざる冥さの淵、自ら望んで燈る情焔に溺れ堕ちた魂にどんな言葉が届こうか。

少女はずっと自問を続け、そうして結局は覚る。
かけられる言葉など、ありはしないのだと。

けれど、いつか。

籠より飛び立ち識った世界は喜悦に充ちて。
かけがえのない出会い、かけがいのない長閑き日々に一つ一つ確かめて、
息づき、色づき、精彩を与えられた密かな想いは次第に確かなものへと育まれていく。

清明の朝に咲く白百合は一日を待たずして夕暮れには枯れゆけど、
幾千と尽きぬ永夜を越えて芽生える一粒の種子を路程に溢し落す。

それが少女、ルエビ・アンフィルエンナの――――――。

58スケッチ4/ルエビ・アンフィルエンナ:2007/10/02(火) 02:11:04 ID:???

咆哮の熱が揺らぐ意識を覚醒させた。

障壁を侵掠する赤禍き凶光は無垢に染みし嘆きの獄海。
厖大な火と振り注ぐ天を封じた詠障壁の聖蓋を支える羽根は次々に破裂し、激圧に流されていく。
身悶えの度に琥珀の飛沫を散らす「ヘブンス」。
堰きとめられた対流は尚一層の刻薄をもって乙女の機躯を刻々と崩壊に導く。
炉心と同調した魂が漏らすか細く消え入りそうな少女の囁声を遮ぎって流れる烈火の波
。ルエビはその身を引き裂かんばかりの苦痛に悶え苦しげな吐息を漏らす。
焦焔に爆ぜて飛散する羽根。瘴熱が機体に滲みていく純白を穢し焦がし。
最後の羽根が砕け散ったこの瞬間、「ヘブンス」は魔光に呑み込まれていたろう。
狂光に穿つ一閃。
―――若しも寸前に、崩壊の均衡を突き破る「アレオパギダ」衝角の一撃さえなかったならば。
横合いからの爆圧に「インフェルノ」の羽翅が支える「砲身」が僅かに揺らいだ。
膨大な霊流を押さえ込む力場への些細な影響はたちまち深刻な結果を及ぼした。
収束を乱された魔霊の束はとたんに制動を失って荒れ狂い、赤焔の勢いを弱めた刹那―――。
―――追い、求め。
繰り返す円環は問う。
―――求め、識り。
この痛みは何の為か。
―――識り、願い。
この悲しみは何をもて償えるか。
――――願い、再び追い、求めて。
そう沈黙に問う言葉は彼方に尽きて、漆黒の木霊に還る。
答えは何処にもない。答えられる者は何処にもいない。
取り戻しようのない昨日と。掴み得なかった明日と。
それでも―――。

この機を見透かしたかのように天の聖霊は躊躇いなく業火にその身を投じ入れる。
閃光の奔流に発振機関を宿した十二の翼羽は融けてなくなり、薄衣は崩れて灰に。
白形の裸身を晒した「ヘブンス」が放つ耀き―――魂核の幽かな明りが形どった翼なき鼓翼きが白い鋼を引いて舞う。
灼輪を潜る先に待つのは瞋恚に燃える狂獣―――相対する白く黒い双つの性は引き合うように接近していく。

―――それでも、彼らの、「彼女達」の生と死に値するものがほんの少しでも残されているとしたら―――。
人は。
世界は。
いつか変われるのではないだろうか。

愚かしくさえある願いと祈りを携えて、真紅の世界に存在を明かす一条の至白。
祭壇の炉に身をなげうった乙女は狂おしい嘆きに充ち溢れた世界の全貌を受けとめ。
少女の意志を伝える為、満天を抱いて翔る聖霊は絶望に眩んだ魔獣の魂を鎮める風となり。
59スケッチ4/ルエビ・アンフィルエンナ:2007/10/02(火) 02:13:35 ID:???

―――手を伸ばす。
囁くように。慈しむように。

暗灰に染まる銀の肌。
赤嵐に、鏤めた光粒の羽撃きが次第に「インフェルノ」へと近づいていく。

―――手を伸ばす。
乞うように。与えるように。

焼ける銀爛の髪条。
旋律がなぞる「ヘブンス」の煌形は空へ、遥かへと延びる無限の双曲線を紡いでいく。

囁きが伝う天空。
少女のもどかしく震える指が触れたその先。
塵ゆく想いは彼の孤独に辿り着く。

寄り添うように魔獣と重なる銀灰の乙女。
―――白羽を失った機体に魔を浄する力はない。たった一つ、聖性の本源である魂核の光以外には。
邂逅の時、境界は彼岸に消え。
対存在であるはず聖と魔の衝突が融合へと変わる瞬間。
黄昏に舞い散るはあまりに短い少女の軌跡。

「ヘブンス」の命ともいえる魂核が白光に解け。
黒白のあわいに消えていく天を抱いた少女の意識。
―――取り戻しようのない昨日と。掴み得なかった明日と。
されど、迎えるこの刻は至福。
燦然と煌く一陣の浄光は魔獣をくるむ抱擁。色をなす瞬きは永久の徴。
とめどもない光の奔流に包まれた「インフェルノ」。
心をなぞる感触に少年は面影の永遠を想起し――――――。
翔ける蒼空。豊穣の花園。傍らにある少女の姿。その声。その響き。
「――――――ティルツェ……」

昇天の彩虹に暫し時は潰え、やがて真空の闇に吐き出される緋の螺旋。
獄焔の滞留が一挙に大気の外へと放出されていき、対称をなすように白の極光が地上へと垂れる。
星霜の灯りとともに寂幕を取り戻す空。
そこにはもう、「ヘブンス」の姿はない。

砕け散った広翼の支えを失い天の頂から投げ出された「インフェルノ」が体表から焔を苦しげに吐き出した。
全身に徴づけられた数多の裂痕。解き放った業火の暴威は自らの機躯をも傷め尽くしている。
地上を焼き尽くす滅びは去った――――――しかし。

天を震わす叫びが一つ。
言葉にならない裂帛の呼気を伴い疾駆する蒼光。
クルセイドの眩煌に包まれた「セイクリッド」は、繰り手の狂おしい怒りに引き摺られるまま魔獣に激迫する。
宿命が相引き寄せた螺旋の真中は果たされるべき決着の場。
「インフェルノ」と「セイクリッド」、両影の機動は遂に終幕へと辿り着くべき激動のコーダを奔らせる。
60通常の名無しさんの3倍:2007/10/02(火) 02:23:06 ID:???

てな訳でヘブンスはこれにてお役御免
投下、遅れてごめんなさい
保守・応援してくれる方いつもサンクスです
次はもちっと早く投下できるよー努力しまス
61通常の名無しさんの3倍:2007/10/02(火) 09:05:35 ID:???
まさかフラグバリバリだったヒーリィやディミより先にルエビが逝ってしまうとは…
62通常の名無しさんの3倍:2007/10/02(火) 18:18:51 ID:???
まあ、フラグ以前に確定っぽかったが
やはりグッと来るな
63通常の名無しさんの3倍:2007/10/02(火) 23:25:56 ID:???
ルエビ死亡か…

ダブルオーなんかよりこっちの続きのほうががよっぽど気になるわ
64通常の名無しさんの3倍:2007/10/05(金) 18:37:54 ID:???
ho
65通常の名無しさんの3倍:2007/10/07(日) 14:26:10 ID:???
ほしゅ
66通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 02:15:42 ID:???
保守
67ソウセイノヒ:2007/10/10(水) 03:13:16 ID:???

紅く滾る鳴動をやめた天から、虹の細粒がMSを山と積載した甲板の上に降りしきる。
旗艦「アレオパギダ」の爆沈を後に残しいち早く戦線から離脱を開始した「バートルビ」艦隊は
僚機を収拾し終えて、今は事態の趨勢をただ見守っていた。
「やったってのか……?」
真上から注ぐ極光が黒の気流を押し流すにつれて力を失い元の鉄塊れに還る機影の群れ。
艦を防衛するMS部隊は敵勢が急速に沈静化していくのを如実に感じとっていた。
「どうなったんだ!?」
「この距離からでは…センサーさえまともに働けば、」
GMの搭乗者であるユゴ・ラウヘンはその時、
見晴るかす上空に色燐をたなびかせ天を溯る「セイクリッド」の姿を眼見に捉えた……。

宙楼を落下する「ヘブンス」の残骸。
闇に沈んでゆく銀の倒影を追う「セイクリッド」の中、ダネルは臍を噛む思いだった。
(俺はいつも…間に合わないっ……!)
侠雑が混じる念信回線から届く声。
(『―――ダネル……』)
少女の言葉は彼を諭すように慰めるように優しく響く。
(『彼を……頼みます…』)
それきり、途絶する想念の波長。見失った機影。
繰り手の想いの欠片を零すように煌めく双翼が羽ねる。
ダネルは震え、歯を食いしばりながら、その眼光は鋭く葬り去るべき狂執の在り処に焦点を絞り――――――。

焦熱にけぶりをあげ、全身を苦しげに捻じる魔獣。
身を挺した「ヘブンス」の衝突、魂核の至光が「インフェルノ」に刻んだ影響は単なる疵以上のものだった。
癒着した装甲の裂け目から覗く体幹に浮かんだ魔気の血流は盛んに収縮と分裂を繰り返し、
煮え爆ぜた脈瘤が熱粒と共に白い条光が漏らす。
これまでにない変調を来たした獣躯は今や、体表を閉じる瘴衣の其処彼処に綻びを作り始めている。
―――魔獣の足下へと切れ込む飛躍。衝迫を叩きつける一刀を伴って蒼翼の軌道が翔け上がる。
『矢張り、お前か……セイクリッド!』
強硬に攻め立てる振動帯砲の速射を迎える炎鞭が幾数条。
相殺の爆音も「セイクリッド」の前進を弱める事は出来なかった。
爆膜を、速度を弛めることなく突っ切る機騎士。
魔獣の牙を大太刀の先が削った。敵機の上方へ抜けた軌道は反転、逆立する機体が再び剣の刃を向ける。
二機のG、「セイクリッド」と「インフェルノ」。二つの怒り、ダネルと「D」。
痛覚に取って代わり冷えた泥濘の重みが侵しつつある心と身にあって茫漠に溺れる意識を明かすのは揺らぐ己が影。
68ソウセイノヒ:2007/10/10(水) 03:17:53 ID:???

能うる限りの全てを懸けて「セイクリッド」が追撃をかけた。
二の空身より四つの剣刃、四つの身より八の剣、五より十、十より二十――――。
残身残影。晃旗が無数の幻像を結び、切りかかる百もの剣の刀身が魔獣の眼光を映す。
放たれた爆炎が押し返す剣刃の波打ちから一足抜きん出る、実体の刃先。
「セイクリッド」本体が放った右太刀の一閃が魔獣の左腕を抉り抜いた。
白い機体に絡みつく熱の飛沫。
突き立てられた剣を「インフェルノ」が逆の腕で掴む。
「――ー奪ったものの重さを、その身に刻み込め!」
『それがお前の救いになるのか!?』
「黙れ…!お前は、奪うだけの存在だ!」
『そうさせたのは―――貴様等自身だろうがっ!!』
「D」が吼える。鎮まりかけた怨嗟を無理やり呼び起こしでもするように。
骨を露出させた背翼が炎熱を嘶かせる。
己が腕ごと薙ぐ魔獣の轟熱は瞬発的に退いた「セイクリッド」の腕甲を千切り、
その手から零れた太刀を続けざまの熱爪が二つに折る。
霊質の大部分を放散し傷ついて尚、魔獣は身に禍々しき暴性を保持していた。

再度の追撃に機を起こすダネルは残ったもう一振りの左太刀、「勇猛」を握る指先に更に力を込める。
―――非情にもそこで、
ダネルの視界に暗幕が下りる。切断されていく神経接続に力を失う機躯。
「セイクリッド」の、過負荷に耐え切れなくなった炉心が働きをやめた。
時間切れ―――クルセイドの発動がついに限界を迎えたのだ。
69ソウセイノヒ:2007/10/10(水) 03:21:46 ID:???

繰り手の意志を裏切って、制動を失った機体の上に紅蓮が射した。
成されるがままに焼かれ、裂壊し散乱する鎧の破片。
底なしの闇黒へと飲まれた「セイクリッド」。
逆向きの重苛に弄ばれうめきを漏らすダネル。
流れる意識の中。
「まだ……」
鼓動が広がる。
「まだだ……!」
血が訴える。
遠のく器官を掴む狂おしいまでの狂憤。
この身、灰と化そうと、この魂、塵とつこうと……。
「―――奴だけは……俺のこの手でぇぇっ!!」
少年を衝き動かす内なる火。心奥を灼く暗く激しい光。
己をなす倫理の外形をかなぐり捨てて、一心に求める叫喚が、
遡逆と侵犯と開放と甦成と―――復活を喚び寄せ。

色褪せた機腑の奥。停止した筈の魂核に再び輝きが戻る。

虚の空に闇を剖いて青く、火柱が立つ。
―――魔獣が纏う紅蓮と対象をなす蒼焔の渦中に在るのは聖霊騎「セイクリッド」。
在り得ざる現象だった。
「セイクリッド」は奇蹟なす聖霊機の条理さえ超克した力を発揮している。

青き焔は魔獣の赤炎に呼応して奔騰で機騎士の躯を包む。
もつれて巡る炎環を、咬み合う尖鋼がゆがめて躍る。
高鳴る斬戟が削りあい、激突の散らす双龍が逆巻いて。
互いの骨肉を獰猛に喰らい合う戦場で砕き、砕かれる鉄鋼巨人。魂を削る戦闘人形。

成層の高闇に照らし出された「インフェルノ」/「セイクリッド」。
絶え間ない闘争の果て、何かを振るい落とすかの如く。
漆黒を背に措いて滾る血潮のままにぶつけ合う二人。

残る一太刀と爪をもって十数度に渡る打ち込みの後、剣閃の弧が食い込んだ刹那。
「インフェルノ」が体内を横溢する条光を吐き漏らす。

「セイクリッド」の上に射した揺光はダネルの知覚を幻想の平野にまで誘う輝き。
精神にまで流れ込む白の奔流。
それは記憶の洪水だった。
長く引き伸ばされた瞬きの内、彼は世界の断片を識る事になる。

即ち、「D」と呼ばれる少年の――――――ベリア・ケイツの物語を。

70通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 03:32:35 ID:???
保守応援いつもありがとございます

そんなこんなで過去編入りまーす
…00始まる前にこの章終わらせるつもりだったのになあ
71通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 08:25:25 ID:???
やべえ盛り上がってきたwwww
72通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 19:10:50 ID:???
やべえ、過去編すげえたのしみだわ
73通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 20:09:02 ID:???
00といい勝負の邪気眼っぷりだww
74通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 22:19:06 ID:???
邪気眼度ならこっちのが上だな。
75通常の名無しさんの3倍:2007/10/10(水) 23:34:12 ID:???
比べるようなもんじゃないでしょ
76通常の名無しさんの3倍:2007/10/12(金) 04:07:47 ID:???
バートルビを逆やら読むとビートルズに

ならない
77通常の名無しさんの3倍:2007/10/13(土) 17:30:07 ID:???
ほしゅ
78通常の名無しさんの3倍:2007/10/15(月) 00:07:04 ID:0joyxtf1
わくわく
79通常の名無しさんの3倍:2007/10/15(月) 21:29:32 ID:???
保守保守
80「D」・1/ベリア―――災禍の少年:2007/10/16(火) 05:28:22 ID:???

組み合ったサイロ状の壁に四方を隔絶された室内に高い天窓だけが外界との唯一の接点だった。
砂丘の片隅に据えられた円形のドームは長きに渡る大戦の後に統合をみた神聖府において
新たに結成された一大軍事体系「ADAM」の下部組織が運営する施設の一つ。
―――予め高レベルの能力を得る為に遺伝子段階で調製された人工種の存在はこの時代、格別珍しいものではない。
そうした人工種の中から選り集められた素体に更なる肉体調整を施しMS操縦に特化した人間を生み出すのが機関の目的だった。

幼子らを純粋培養する巨大な巣箱。
その中に少年―――ファースもいた。
素体を管理する為だけの識別記号でしかない名前を賜った少年はそこで、辛酸極まる日常を送っていた。

―――神経の一糸に至るまで、分子レベルでの細心かつ精密な「最適化」はしかし、
肉体の所有者にとって暴力的な苦しみを与え、癒えない幻痛を四肢に刻むものだった。
加えて識域下で行われる戦闘シミュレーションは精神に過大な負担を強いる。
素体の中でもっとも年若い少年には苛刻に過ぎる生活だった。生来が争いを好まぬ穏やかな気性ということもある。
だが、素体である彼らに選択の余地があるわけではない。
育成段階で致命的な損傷を被ったものや不適格と判断されたものは次々と姿を消していった。
少年等には姿を消した者達がその後どうなったのかを知る術はない。
ともすれば逼塞した暗鬱が占める日々にあって。
「あんまり無理はするなよ、ちびすけ。俺の真似さえしてれば上手くいくさ―――」
その声はファースにとって天恵だった。
―――少年の名はベリア。
鳶色の瞳が柔らかな相貌に颯然と強い光を宿す個性。幼いファースはそこに剄さの証を見、気高さの徴を感じとる。
素体の中でも抜きん出た力を持つベリアは彼らのリーダー格だった。
彼を中心に生まれ・育ち・年の違う子供等の連帯は深く、その存在は少年らにとって、一握の希望を萌すもの。
そんなベリアがちっぽけな自分を眼に留めていてくれた事が純粋に嬉しく
、彼の言葉は憧憬と溶けた淡い疼きとしてファースの胸にいつまでも残った。
かけられた言葉を裏切らぬよう。
そう信じればこそ薄弱な心身を支える糧として訓練という名の責め苦にも耐えられたのかもしれない。
囲われた檻の裡で、拘束の鎖で結んだ兄弟達との紐帯が希望を繋ぐ幾年。
いつしか彼は、あれほど苦痛に満ちた調練にも何も感じなくっていた―――。

やがて、彼らは調整の結果を測定する為の最終試験に赴く事になる。
「―――あと少し、これさえ終われば此処ともお別れだ」
そう、外での再会を約束する少年達。その数は当初の半分にまで減っていた。
81「D」・1/ベリア―――災禍の少年:2007/10/16(火) 05:33:03 ID:???

剥き出しの鉛色で編まれた区画。
開け放たれた眼前には蒼穹が広がり、微かな興奮が心に沸きあがる。
最終訓練は実戦に限りなく近しい様式でもって行われた。
思考による絶え間ない研鑽を重ねた少年達は、初めてであるMSへの搭乗にも戸惑う事がない。

稼動する推進器が機体を空へ跳ね上げた。最後発での単独出撃を促されたファース。
初めての空に映る十数機は全て敵影。
敵である魔もまたMSだった。無論、敵機が実物である筈がない。
魔とみえるのは心理的操作の産物によるイミテーションに過ぎないが、
それでも異形の機骨を晒す敵影の攻勢はこれまでの訓練とは比べものにならぬ猛攻でファースを追い詰める。
だが彼は、一対多の不利な状況下にあっても連携の輪から外れた格好の獲物を見逃さなかった。
一機ずつ輪の一番弱い部分を墜としていく少年。
彼のMSが交錯の間際、敵機の頭部を擂り上げる。
自身に備わる力の手応えが歓喜を伝える。
残った一体の動きは他のどの敵機よりも俊敏だったが、秘めた実力に目覚めた少年の敵ではなかった。
シナプスに染み付き第二の本能となった戦闘技術。
頭が働く。体が反応する。戦う為に得た力に身を委ねるファース。
振り上げた加熱刀の一閃が最後のMSを屠った時、少年は知らず胸中で快哉を叫んでいた。

乗機とともに帰到を果たした少年。
開け放たれた鉄躯の腹から下りた彼を出迎えた見知らぬ男が云う。
「君こそ「勝利者」だ」
恐らくは自分が最後の帰還だと思っていたが、奇妙にも仲間の姿は見当たらなかった。
「本当はとうに君を選ぶ算段はついていたんだが。情緒面、いささか優しすぎる性質を心配する向きもあってね、
だから、上の連中に君の力をはっきりとみせつける必要があった―――」
ほんの一瞬で覚めた戦闘の熱。
少年はその時になってやっと自分が何をしていたかに気づく。
これ以上ないほどに明確な選別手段。
敵は幻覚などではない。

―――最後の試験は選抜者同士の戦いだった。
そこから先の記憶は定かではない。
彼が毀したのは。
回収されたMSの残骸。鉄棺の縦列。鮮血を包む殻。隙間から垂れる液体。その中に在るものは……。
思考が理解を拒む。
「君は立派に自らの強さを証明した」
男のにこやかな微笑みと。
「おめでとう.016、ファース」
穏やかな口調と。
「……いいや、今からは君が「ベリア」だ」
最も優秀な道具を顕す茨の冠名。受け継がれた死人の名。

ベリア・ケイツ――――――最後のベリア。
それが、何もかもを失って得た少年の新たな名前だった。
82通常の名無しさんの3倍:2007/10/16(火) 05:41:37 ID:???

過去編はあと三回か四回位でコンパクトに纏める気なので
そんなに期待されるほど内容ないかも……すんませんです
83通常の名無しさんの3倍:2007/10/16(火) 13:33:51 ID:???
過去の回想で不幸王決定戦ができるようなラインナップ、これぞ邪気眼
凄まじい厨度に目も眩まんばかりです(全面的に褒め言葉)
84通常の名無しさんの3倍:2007/10/16(火) 19:00:44 ID:???
このスレでは邪気眼とか厨くさいとかは褒め言葉
85通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 01:39:43 ID:???
なぜかここでは褒め言葉として使われてるよな
86通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 12:14:31 ID:???
ただ単に邪気眼じゃないからじゃないの?

マイケル・ムアコックのエターナルチャンピオンシリーズとか、トールキンのエルフ設定なんか、
設定だけ見たら恥ずかしくなる位邪気眼だけど、誰もそれを邪気眼だとは笑わないだろ?
作者が、これは邪気眼系の設定だと認識した上で、
邪気眼が邪気眼として、邪気眼らしくある為に必要な要素を満たさずに書いているからだよ。

私としては、これをハイファンタジー系ガンダムと分類する事を提唱したい。
87通常の名無しさんの3倍:2007/10/17(水) 19:25:12 ID:???
邪気眼かどうかは登場人物に明確な作者の投影が見られるかどうかだろう
88通常の名無しさんの3倍:2007/10/19(金) 22:17:23 ID:???
狙って邪気眼にしてるから邪気眼は褒め言葉
89通常の名無しさんの3倍:2007/10/20(土) 21:57:57 ID:???
hohohohosyuyuyuyu
90通常の名無しさんの3倍:2007/10/23(火) 01:03:23 ID:???
ほすほす
91通常の名無しさんの3倍:2007/10/24(水) 18:48:39 ID:cX+w/5Ws
ほしゅ
92通常の名無しさんの3倍:2007/10/26(金) 23:16:30 ID:???
保守
93通常の名無しさんの3倍:2007/10/28(日) 13:58:12 ID:???
保守
94通常の名無しさんの3倍:2007/10/29(月) 19:56:16 ID:???
ほす
95通常の名無しさんの3倍:2007/10/30(火) 18:55:26 ID:???
っく… 投下はまだなのか……俺の邪気眼が疼くぜ・・・
96「D」・2/出逢い(前編):2007/11/01(木) 08:26:20 ID:???

流砂を割る邪光が溢した黒い水面に映える腐肉の闊歩。
隆起した巨体は怒りを示すかのように鋼皮から伸ばした繊毛を盛んに揺らしながら
緩慢な歩みで黒の深淵から這い出でて、三対ある脚肢を砂岩に荒々しく突き立てた。
産み落とされたばかりの災魔―――「グランディーネ」と、それを取り巻く鉄蛆の群影を前にして。
「―――ブナン、エルファタイ、その位置じゃ悪いが邪魔になる。各機とも側面から伴体を引きつけてくれ」
飛翔する機騎士達の編列を割って一機先行をかける紅いMSは少年の乗機だった。
『―――手柄を一人占めする気か!?』
少年の耳元で年若いパイロット――といっても彼よりは年長だが――不平の声をあげる。
「焦るなよ新入り。チャンスなんて腐るほどあるんだ」
そうだ。それこそうんざりするほどに。
鉄の駆動が早鐘を鼓つ。
雪崩撃つ幾数の条光を細かな機動だけで巧みに避ける紅の機影は瞬く間に対象を射程内に収めた。
撓んだS字を描いて疾風駆ける紅の機動は、巨獣の鈍重な動きでは影すら捉えられない。
高空を制した少年のMSは周囲の群蟲には脇目も触れず「グランディーネ」へと狙いを定める。
ようやく敵影を捕捉した巨獣の眼孔を貫いて入る真上からの直閃。
複数の狙点をほぼ同時に刺す光弾が厚い殻に覆われた躯を鮮やかに捌き分ける。
抑揚なく行われる蹂躙作業が展開される中、功を焦ったか、油断したか果敢に攻めたてるMSが射線上にかかる。
先程の搭乗者である事を確信する少年。
砲撃の手を緩めれば魔獣の大口径火砲が放たれよう。
馬鹿な奴だ―――。
強く舌打つ少年は、躊躇わずに引き金を引いた。
通り過ぎる射熱がMSを炙り、端に弾き出す。脚部を失った程度の損傷ではまず死にはすまい。
爆砕を纏う巨獣がタールの湖面へくずおれると共に、
統制を失った蟲僕は槍と短剣をそれぞれ携えた二種類の機兵連隊によって容易く駆逐されていく。
蒸散する瘴壁が戦闘の終わりを告げると、後衛にて控えていた部隊が黒沼へ徐に弾頭を投げ入れる。
『位相軸固定及び反動。偏向領域の縮小開始します―――』
徐々に実体から虚象へと落ちていく境界域の上を偏移の赤で染まった砂粒が漂う。
「領域及び歪曲場反応、ともに完全消滅を確認―――これより帰投する」
任務を全うし再び虚空へと還りゆく翔翼の編列。
彼らが後にした大地には土くれへと還りゆく魔の骸だけが残されていた。
97「D」・2/出逢い(前編):2007/11/01(木) 08:29:13 ID:???

地表を覆う果てない砂丘の連なりに穢れた風が吹き荒ぶ。
頽廃した大地に点在するユニットは人的・物的資源の著しい窮乏と
自律復元を絶望視された自然環境で人が生きていく為の帰結だった。
そのユニットも六割以上が生産施設に充てられているのというのが現状である。
未曾有の大戦から八十余年を経て、人類は未だ惨劇の痕から立ち直れないでいた。
―――どれほど愚行を重ねようと人はいつか過ちに気づき、それを正そうと努めるものだ。
そう、人の善性を信じるものはいうであろう。
―――しかし、取り返しえない重大な過ちもまたある。
そう、人の宿業を嘆くものはいうであろう。
必然か、それとも些細なすれ違いの連鎖か―――。
一つの世紀の終わりに勃発した星系規模の諍いは次第に禍を広げ遂には終末戦争とさえ呼べるほどの事態に発展することになる。
惹起された最悪の破壊によって宇宙にまで広がった人類の生息圏は再び地球上へと後退し、総人口の七割が喪失れた。
それだけではない。
地表を焼き、山を砕き、海を渇えさせ地軸を歪めた愚劣なカタストロフ―――。
堆積する汚灰に冒された土が広がる光景はその結果だ。
死に瀕した星の上で生存した人類は自らの行いに慄き息を潜めるように、静かな平穏を守り続けた。
凪の世紀は穏やかな停滞の時節でもある。
だが世界は今長い閉塞を打ち破り、速やかな変革の刻を迫られていた。
聖暦079年現在―――。
人類は未知なる災厄「魔」の出現により滅亡の危機に面していたのだ。


世界各地に配された浮遊要都が結ぶ経路を辿って至る終着点―――神都に最も近い小浮界「パトモス」に一隻の重空翔艇が入港した。
外縁に設けられた湾口部に着艦した翔艇はそのまま両側を挟み込むレールに固定されて屋内へと収容されていく。
艇船と区画を直結した廊画を踏む隊員達に紛れて重圧から解かれた少年、ベリア・ケイツは大きく一つ息をついた。

「―――お前なら目に入らなかった筈がないと思うが」
気性の激しい者の多い部隊員の中には、特別な位置にある少年に露骨な敵愾心を燃やすものもある。
そうしたトラブルをいつも未然に防いでいるのがシモイベだ。
いつも他者と距離を置くベリアにとって、周囲との緩衝材となってくれるこの男は多少なりとも信頼のおける数少ない人物の一人だった。
「……」
「分かっていてやったのか?」
――――――「同族殺し」。
脳裏をよぎるノイズに意識は一瞬立ち止まるがすぐに流す。
「正直にいうと、少し気を抜いていたらしい。反応が遅れて間に合わなかったんだ。ブナンにはすまなかったと思っている」
白々しい嘘でも信じたふりをする方が良い時もある。シモイベはその点で抜かりのない男だった。
「お前さんでもしくじることはあるか…」
表面を取り繕うだけの益体ない会話を交わす二人。
「ともかく大した怪我では無かったんだし、俺の方からそれとなく話しはつけとく。……それと、「サートリス」の一件はもう聞いてるだろ」
「ああ。ユニット一基、丸ごと呑み込まれたってな」
「もう番兵程度じゃ相手にもならんってことだ、これからはもっと厳しくなる」
そういって去る男に、少年は呟くように漏らす。
「……悪いな」
「気にしなくていい。エースはお前なんだからな」
98「D」・2/出逢い(前編):2007/11/01(木) 08:31:43 ID:???

港内格納庫に艇より降ろされたMSが側壁に並べられる。
鎮座する突撃機兵達―――腰に槍を携えた騎兵「ジャベリン」と短剣を帯びた騎士「ダガー」。
どちらも汎用MSとしては申し分のない性能といえるが、年々活発化を続ける魔災はこれらの機体を圧倒しつつあった。
況してや不安定な動力では到底対抗出来るものではない。
―――数年来に渡る特位空間「神域」との接続不調が状況の悪化に拍車をかけていた。
MSの動力源である炉心は上位構造野からの力を得るという原理上、本来の性能を十全に発揮する事が出来ずにいた。
しかし「ADAM」とて何ら対抗策を講じなかった訳ではない。
―――この難局を打破する為の切札となる一体のMS。
居並ぶMSの中でも異彩を放つその機体は紅く染め抜かれた外装と
細身にも圧倒的な力を感じさせる骨格で従来のMSとかけ離れたフォルムを構成している。
――――――MS「Vers・Evel」。
軍事機関「ADAM」が擁する決戦級兵機「Guns of ADAM」と呼称された一連のMS群は真世界最高の武力といえる。
そして、神域とのリンク不全を受けて使用不能に追い込まれた旧Gシリーズ
―――能力の大部を炉心の高励起に頼っているG級はそれゆえ不調の度合いも深刻なものだった―――
に代わって開発された新世代MSこそが「バルゼベル」なのだ。
(「―――エースはお前なんだからな」)
戦場においては個々の生命に非情な格差を作る。
確かにベリアとその乗機の能力は他と比べて突出している。徐々に悪化する戦況では最も特筆されるべき事柄であろう。
だが同時にまた少年の孤立もその点に起因するものではあった。
暫し留めおいた紅い翳りに背を向ける。
定まらぬ感情の砕片を細い躯の深奥に鬱々と燻らせるベリア。
彼の孤独は火に似ていた。
99「D」・2/出逢い(前編):2007/11/01(木) 08:34:02 ID:???

搭乗機を技術部に委ねそれぞれの帰途に赴く兵士達。
港駅の広場の雑踏に珍しい人物を認めた少年は、人の輪を避けてその男の前まで進み出る。
「やあ。遠征お疲れ様」
「あんたがわざわざ出てきているとはな」
「そろそろ調子はどうかなと」
フラッツ・J・スコートは合いも変わらず表情の読めない物憂さで少年を見遣った。
「お蔭さまで実に悪い。それもこれもだれかさんらがろくに仕事をしないからだろうな」
「そういってくれるなよ、これでも全精力で原因解析に勤めている最中」
「まだ、解析の段階かよ。この体たらくじゃ終いまでに世紀があけちまうね」
神域とのアクセスを司る特殊機関「EDEN」に属する技術者であるスコートは「バルゼベル」の運用にあたって出向してきた人員だ。
この事は「ADAM」にとってだけでなく「EDEN」にとっても「バルゼベル」が特殊な意味を持ったMSであることの証左といえる。
「随分荒れてるようだね」
「辺境を三つ回って、その上休む間もなくとんぼ返りだ」
特異な機体である「バルゼベル」は任務が終わる都度入念な機体調整と操縦者の精査を必要としており、
それらは全て神都においてしか行えないのである。
仕方がないこととはいえ辺境と神都の往還は少年にとっては結構な負担だった。
「で、俺も検診に回ればいいのか?」
「いや、まだいい。代わりに顔をみせてやってくれよ」
少年は露骨に嫌そうな顔をする。
「バルゼベル」の運用におけるスコートの役割はもう一つある。
彼は「少女」の管理役、いうなれば世話係でもあった。
「……それも任務の内だっていうのか」
「だね」
頭を掻きながら答えるスコート。
少年は無言になって、それから不承不承頷く。
どうやら休息はまだまだ先になるらしい……。


立体交差の網、多分岐複層回廊に運ばれていく。
硝子の曲面を通して眼下に眺める都市帯は神都という響きから連想する華々しさとは裏腹に鈍色のモジュールが建ち並ぶ荒涼とした風景。
他のユニット群と同じかそれ以上に居住域を限られた街は個々モジュールが有機的連関を形成する
一つの統合メカニズムと呼ぶべきものだった。
世界の中心たる権勢を誇示する為に植えられた街路樹が却って無機質な調和を崩しているようにベリアには感じられた。
彼のそうした直観も妥当ではあろう。
事実、その都市機能の殆どを神域とのアクセスに費やす此の街は人ではなく神の為にある都市なのだから。
顔を僅か上にあげれば、内向きに閉じた花弁。
くぐもった白煙が薄い霧になって都市外周に立つシャフトによって吊り下げられた六芒形の天蓋まで昇っていく。
そして、硝子の皿盤が進む架橋の奥に煙柱を分けて佇立する巨大な構造物。
―――黒ずんだ石と鉛で組んだ大聖堂こそ神都の運行を司る「EDEN」の本拠だった。
高次域管理機関「EDEN」。
表立った活動はないものの、神域とのリンクに頼る人類にとって世界の中枢を担う組織だといっても過言ではない。
100「D」・2/出逢い(前編):2007/11/01(木) 08:39:20 ID:???

薄暗い床を流れる導灯を頼りにうんざりするほどの小路と広間を巡って、ベリアはようやく歩を止める。
扉を開いた少年を迎える女神像――――。
現前する花園が眩暈を誘う。
湿潤の気を含む循環風が土と木々の香りを舞わせ、花々で色めく繭床。
――――――「エリドの庭」と称される屋内は砂埃と鉄で出来た外界とは別天地とさえいっていい。
庭内に踏み入るベリアの先、古びた揺り椅子に身を預けた少女を穏かな白光が包む。
自分よりやや年長である彼女。
無垢の長衣は輝く長髪と合わせて花園に落ちた一片の淡雪をおもわせる。
傍らにまで近付いた少年はそこで、少女に声をかけることを止めた。
彫刻めいた相貌。軽く開いた口唇から漏れる微かな呼気。
「寝てるのかよ……」
艶めいた銀髪を編んだ飾紐が肩に垂れ、透ける様な白い頬にはうっすらと朱がさす。
神聖ささえ帯びた美貌の持ち主はだが、ひとたび口を開けばまるで異なった印象を醸し出す。
「ん? あぁ……おぅ…もう戻ってたのね…」
寝惚けた声を漏らす少女の深い蒼瞳がこちらに微笑む。
花咲ける神御子―――ティル・ツァヴィ・アンメル。
「EDEN」の彫琢しあげた至高の聖成品。
少年は彼女を見詰めて一言。
「……涎、拭いた方がいいぞ」
次いで暫くの間、庭内を頓狂な嬌声が響き渡った。

白翼を負う女神像を抱擁く金色の壁柱が庭園を見下ろすように聳える。
――――――創聖機巧「EVE」の心臓。
新鋭機「バルゼベル」の圧倒的なアドバンテージは新機軸のシステムに由来するものだ。
この機体に搭載された新型炉心は「EVEコンバータ」と呼称される機構によって本来の性能を引き出される。
それは端的にいうなら一旦、外部にある高精度の受信機関を経由して同位波長の炉心に大出力を送る仕組みである。
要するに「バルゼベル」というMSは神域と炉心との不接合という問題を、間に媒介する調整器「EVEコンバータ」を挟む事とで解決した訳だ。
だが、この方法にしても幾つかの欠点がある。
先ず、現時点で接続が可能なのは「バルゼベル」だけだという点。
次に、「EVEコンバータ」を一連のシステム「Homologous EVE Nuero network System」
―――略称「HEVENS」の操作は生育された存在である神御子ティル・ツァヴィ・アンメル以外に扱う事が出来ない。
従って彼女なしには「バルゼベル」は張子の虎も同然に成り下がってしまう。
そして、高次力の収束と戦闘、別個の役割を割当てられた「HEVNS」とMS「バルゼベル」は二つで一つの存在であるという点。
つまり、異なる受信機関を並行稼動させるという性質上、必然的に互いの操縦者同士の霊性レベルでの共感が求められる。
だからこそ、システムとMSを統御する両者の心的同調も出来れば望まれるわけなのだが。
ベリア・ケイツとティル・ツァヴィ・アンメル。
数度の出撃と会合を繰り返した今になっても両人の間柄は良好とはいい難かった。
101「D」・2/出逢い(前編):2007/11/01(木) 08:44:10 ID:???
「―――ああ驚いた。一週間ぶりくらいかな、ベリア―――」
少年の表情が僅かに曇ったのを彼女は見逃さない。
「名前で呼ばれるの嫌いだったっけ」
「…いや、気にしなくていい。俺もあんたに―――」
「あんた、じゃなくてティル・ツァヴィ・アンメル」
「長い」
「じゃティルツェでいーから」
「…それじゃティルツェ、少し訊きたい事があってさ」
「?」
「気のせいかどうも機体反応にムラがあるんだ」
「それは…機械の方の問題じゃないの?」
小首を傾げる少女の様子からして若干思い当たる節がありそうだとベリアは感じた。
「いいや、単刀直入に聞くけど今回、戦闘入る直前に思いっきり気を逸らしたろ」
「ななななんのことやら…」
実に判り易い動揺の仕方だ。
「違うよっ、違うんだよ。それには深い理由があって……」
「理由って、何だよ」
「……空が青くってさ―――」
少女の頭部をヘルメットが直撃する。
「た・叩いたぁ!清楚可憐と謳われる姫御子をぶっ叩いたあぁっ!」
「そういうことは自分でいうもんじゃないだろ」
目を潤ませ抗議する少女をみていると調子が狂う。
いうなれば「バルゼベル」を駆るベリアの命綱を握っているのは当の彼女だというのに。
「下手すりゃ戦闘に支障を来しかねない。お遊び気分でいられちゃ困る」
「うう、スコートみたいな事いう……けど、私だって訓練はしてきたっていっても、本当に試すのは初めてなんだし…」
「だったら、せめて真面目にやってくれといっている」
「なら、ならね、私もいうけどその顔!」
そう少年を指さすティルツェ。
「いっつもいっつもそうやってぶすっとした面してさ。なんだかこっちまで気が滅入ってきちゃうよ」
「……それ今の流れとまるで関係なくないか?」
「関係おおありだよ!そっちが駄目なとこ直すなら私も駄目なとこ直すもの」
「人の顔を駄目とかいうな」
「駄目なのは表情だけだよ?造作は結構いいんだからホラ笑って」
凡そ理不尽なもの言いではあるが、ここでむきになるのも大人気ない。
ベリアは如才なく朗らかな笑みを浮かべてみせる。
「無理してる感ありありですごく嫌」
すんでの所で決壊しそうになる笑顔と大人の態度。
「そうしょ気ないで。素敵な笑顔は日頃の心掛けだよー」
「……努力する」
ベリアにとって、用件さえ済めばそれ以上長居をする理由もない。
「あ、待ってて、今お茶とか出すから―――」
引きとめようとするティルツェだが暇を告げる少年は既に背を向けていた。
「気持ちだけもらっておく。今はなるべく早く休みたい」
彼はこの短時間で戦闘の倍も消耗した気分になっていた。
壁一枚越えれば元の世界、別の現実へ帰り着く。
ゆるゆると通廊を戻りながら、しらず小さな嘆息をつくベリア。
心中にさざめく苛立ちの棘に今はまだ気づいてもいない―――。
102通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 08:54:28 ID:???

三回くらいでさくっと終われるかと思ったらそんなことは無かったぜ!

毎度保守・感想ありがとうございます、遅くなってすんません…
所詮ネタ文なのでね、笑ってもらえりゃそれで幸いです、はい
103通常の名無しさんの3倍:2007/11/01(木) 19:36:26 ID:???


>所詮ネタ文なのでね、笑ってもらえりゃそれで幸いです、はい 
いや、ラノベ系のガンダム(あえて邪気眼とは言わない)ってのはかなり新鮮でおもしろいぞ
もちろんネタ小説としての感想じゃなく、真面目に小説としての感想ね。
104通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 01:21:57 ID:???
ネタ文かどうかは置いといても文章として評価できるそれなりのレベルはある
105通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 20:27:12 ID:???
あえて造語を使いまくって読みづらくしてるあたりにこだわりを感じる
しかも、感じのチョイスが絶妙でどの単語も意味がわかるのは凄い。
106通常の名無しさんの3倍:2007/11/02(金) 20:28:54 ID:???
× 感じ
○ 漢字

普通の話を志して書いたら、もしかして怪物級の職人かもしれん。
107通常の名無しさんの3倍:2007/11/05(月) 03:13:33 ID:???
ひさびさに職人さん来てる! GJ!!
108通常の名無しさんの3倍:2007/11/06(火) 00:53:39 ID:???
ho
109通常の名無しさんの3倍:2007/11/07(水) 23:46:35 ID:???
ほしゅ
110通常の名無しさんの3倍:2007/11/08(木) 19:43:43 ID:PtBmFwjW
ほしゅ
111通常の名無しさんの3倍:2007/11/10(土) 17:22:23 ID:???
保守
112通常の名無しさんの3倍:2007/11/11(日) 23:53:21 ID:???
捕手
113通常の名無しさんの3倍:2007/11/13(火) 00:59:47 ID:???
保守
114通常の名無しさんの3倍:2007/11/14(水) 01:23:32 ID:???
hosyu
115通常の名無しさんの3倍:2007/11/15(木) 18:52:24 ID:???
ほしゅ
116通常の名無しさんの3倍
しゅほ