ここは……
説明いいよね。
スレタイで全て語ってるし、前スレでテンプレ議論忘れてたし、次回って事で。
移送車の周囲を固める兵士達の一人の、目にも鮮やかな赤い髪が、不意にアスランの注意を引いたが、大人しくアスランは兵士達の指示に従って車の中に入った。しばらく車に揺られていたが、その内に、別の車に移されることになった。
兵士の一部が不審そうにしているが、アスランも同じ気持ちだった。わざわざ車を乗り継ぐ必要性があるとは思えない。なにか特別な事情でもあるのだろうか? まさか、父が何か手をまわしておいたのだろうかと、甘い考えに我ながら苦笑した。
先程の赤い髪の兵士がアスランを連れ出して、新たな移送車に連れて行き、そこからまた移送車は彼方の方向に走り出した。アスランと一緒に入ってきた赤い髪の兵は、アスランの手錠をおもむろに外した。
驚いて目を見張るアスランに、兵士は笑いかけた。
「君は?」
「いわゆる『クライン派』ってやつですよ。覚えていません? ラクス様と貴方があった劇場にもいたんですけどね」
「ああ、あの時の? じゃあ、おれを逃がすよう指示したのは」
「ええ、歌姫様ですよ。このままシャトルまで貴方をお連れしてそこから先でラクス様と合流します。今やラクス様は国家反逆者ですからね、いよいよ、プラントに潜伏しているのも厳しくなったんで、ちょっと外に出る事にしたんです」
「外に?」
訝しむアスランに、ダコスタと名乗ったその兵は自分達の計画の内容を耳打ちした。その内容に、アスランはあのラクスが自分の想像の斜め上の、さらに上を行っていた事を改めて確認した。良くも悪くも自分はラクスの事を知らなかったのだ。
しかし、なんとも大胆な事を考え付く。
「新造戦艦の強奪か。フリーダムの時といい、ラクスはそういうのが趣味なのか?」
アスランは割と本気でそう思った。
スレ立てお疲れ様です。尻切れになりましたが、22話はここまでです。
支援ありがとうございました。ええっと、このタイミングので投下してしまいましたが、まずかったでしょうか?
おお、気付いたら容量オーバーしてたが無事立ったか。
>>1乙。とにかく乙。
ザラ親子は割とまともで無事理解し合えたようだけど、桃色がぶち壊しにしそうでやきもきする。
が、まだこの段階でなら連中も方向修正可能なんじゃないかと思いたい。
ビアンSEED氏改めて乙です。
茂がこれで生きていてラクスのドタマを抑えてくれてればいいんですが……
やっぱりアボーン済みかなぁ。パトがマトモっぽいだけに茂も正常化してそうな気がするんだけど。
ラクス様って出てるから生きてても娘に頭を抑えられてる気がorz
何故皆リュウセイ主人公にしないんでつか?
人気無いからじゃない?
最初のスレでユニウス砕きにだけ出てきたのがあったな。ネタみたいなもんだったけど。
最初のスレでシンがOG1最終決戦後の新西暦に行くのを最初だけ書いた者だけど
続き書いてもいいかな?やっとOGSが終わったもんで…
なんか半端なトコで投下止まっててレスも付いてないな、と思ったら容量オーバーしてたのね。
ともあれ
>>1乙&ビアンSEED氏GJ!でした。
※ 読み返しましたところ、149と150の間に入れるべき部分が抜けていることに気付きまして、
遅まきながら、投下いたします。ご迷惑をおかけします。
真・ビアンSEED149
カガリはそんなアスランの心に気付いた様子はなく、明るい調子で言った。
『気にするな。お父様の事は仕方の無い事だ。命が助かった事は確認できているし、結果的に国は焼かれずに済んで多くの命が救われた。オーブの理念が犠牲を生まずに済んでよかったよ。
まあ、これからもそう上手く――上手くはないか――行くとは私も思っていないがな。
正直、ビアン・ゾルダークに対しては憎らしくもあるが感謝もしている。きっと、いや私達ではオーブを守り切れなかった。守れない、国を焼かれると知りながら、理念を貫く為に戦っていた。
そうなっていたら、きっと二度と取り戻せない多くのモノを失っていたに違いないと、最近思えるようになったよ』
「カガリは、やっぱり強いな」
『そうか? MSに乗って闘う事も大変だが、笑顔を張りつけた腹黒のタヌキどもとやりあっているといろいろ考えさせられるよ。
自分がどれだけ政治に向いていないか嫌になるほど理解させられた。それと、いつも政治家に相応しいものがいるのではなく、相応しくなるんだと言う事もな。って、私がいい隊のそういう事じゃなくて!
まあ、なんだ、その……アスラン。ジャスティスまで置いていったら、お前の立場悪くなるのは分かっているよな? なのに、行くのか?』
「……ああ。おれはアスラン・“ザラ”だから、な。カガリやキラ、皆がおれの無謀を気遣ってくれるのは正直に嬉しい。でも、おれは」
『分かっている、分かっているよ、アスラン。やっぱり、お前は大馬鹿だよ……馬鹿だ』
「そうだな」
俯いたカガリがその顔を挙げた時、金色の瞳には大粒の涙が一杯に溜められていた。自分が泣かせてしまった――その事実に、アスランは胸の奥が締め付けられるような感覚に、かすかな痛みを覚えていた。どこか、甘い毒に似た痛みだった。
『アスラン、だったら一つだけ約束してくれ。絶対、生きて帰ってこいよ』
「……ああ、約束するよ、カガリ。必ず君の所におれは帰ってくる」
アスランの確かな決意を込めた言葉が、不安に揺れるカガリの心に響いて、涙をこぼしながら、それでもカガリは微笑んだ。
そして、キラの乗るフリーダムを護衛に、アスランを乗せたシャトルはアークエンジェルを離れた。
プラントの最終防衛ラインの一つである要塞ヤキン・ドゥーエを通じて、アスランはプラントの首都に当たるアプリリウスに向かい、父と会うつもりだった。
地球連合製のシャトルに乗って帰投したアスランは、その経緯を語らなかった事もあり、ほとんど連行に近い形でアプリリウス市へと向かった。アスランのジャスティスを伴わぬ帰還に、不審を抱いたパトリックがそうするよう即座に命じたせいだろう。
図らずも、アスランにとっても望ましい展開と言えない事も無かった。
国防委員会本部にある父の執務室に通されたのもあっという間だった。それだけ事は重大なのだ。執務室に通され、それまでアスランの左右を固めていた兵達は退室する。何かの案件に止めを通しているパトリックは、アスランに目を向ける事も無い。
第一世代コーディネイターとして、プラント独立の為に苦渋の時代を生き、今またプラントの命運を支える男の顔には、心労が刻み込んだ皺が年齢よりも多くあり、以前にあった時よりもさらに疲れの影が濃くなっているようにアスランには思えた。
だがそれでもパトリックの全身からは、陽炎の様に上り立つ活力がある。歴史浅く、個体としてはともかく種としては脆弱なコーディネイターを支える、英雄的な存在である事もまた事実なのだ。
無言で立ち尽くすアスランに対し、モニターから目を離したパトリックは息子に向けるには冷たい視線で、問いかけた。
「ジャスティスは? フリーダムはどうした!?」
低く深く重く、耳にするものが身を強張らせる迫力に満ちた声だった。だが、アスランはそれに答えない。
「父上は、この戦争の事……本当はどうお考えなのですか?」
「なに?」
と、ここまでを投下するのを忘れていました。申し訳ないです……。
そしてシンの新西暦来訪話楽しみにさせていただきます。う〜ん、楽しみ楽しみ。
15 :
660:2007/08/27(月) 22:24:29 ID:???
たびたびすいません、上の話は149と150の間ではなく、148と149ですね。本当の149であるのは正解でしたけど。
新スレに気づいてなさそう。
新スレに気づくのに時間掛かったよ
新スレage
なんか途中できれてて今回はこれで引きかな〜と思って書き込もうとして気づいたわ
ビアンSEED氏GJです
新スレ告知
22 :
通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 09:14:07 ID:vRDb8pzg
相変わらずのGJ!!
それとふと思ったのは、何気に小ネタの元の人たちはOG世界では究極超人
ですな。某念法使いの人は念動力レベル9どころか100ぐらいいってそう
ですし、某吸血鬼ハンターの人はヴァイサーガーあたりに乗っているのが
イメージ的に合いそうですが、機体の方が動きに耐え切れず空中分解する
でしょう。
第二十三話 歌姫の刃
前プラント最高評議会議長シーゲル・クライン。ナチュラルとの融和を願う穏健派の代表たる彼が、議長席を追われ、娘ラクス・クライン共々国家反逆者として指名手配されてはや数か月。
プラント独立の礎として身を粉にして奮闘した、コーディネイターの短い歴史の中でも特筆すべき人物だ。だが今は、その身柄を司法局地下に拘束されていた。
国家反逆者とはいえそこはもと最高評議会議長である。並の高級ホテルが霞んで見える設備の整った一室にいた。
シーゲル自身には、まったくもって身に覚えの無い、娘ラクスの行った最新型機フリーダム強奪によって、そのとばっちりを受けてこうして監禁されているのだ。
シーゲル自身は、キラ・ヤマトの事を、マルキオがオーブで庇護したコーディネイター難民であり、天涯孤独の身と言う事もあって、一時的にでも良いからプラントで預かってほしいと伝えられていた。
まさか連合の開発したGの一機“ストライク”のパイロットだなどとは夢にも思っていなかったのだ。
正直な話、ラクスの行動は父であるシーゲルにとっても寝耳に水であり、故に彼自身はこうして大人しく自らで司法局に出頭し、彼がいつも気にかけ自由と公平な世界を求めて闘った同胞の作り上げた法の裁きを受ける事にしている。
彼にとっての誤算は、娘ラクスの影響力と行動力が、予想をはるかに越えて巨大であった事だろう。
シーゲル自身、ラクスの持つアイドルとしての人気やカリスマ性、ある種異常なまでの求心性をプロパカンダの一つとして利用していたから、娘の力は誰よりも知っているつもりだったが……。
まさか、これほどの事をやってのける程に力を持っていたとは、彼自身性質の悪い冗談のように思える。
いわゆるクライン派が、プラント内における戦争・及びナチュラルへの対応において穏健な勢力であるとされている。
クライン派のトップはその名の通りシーゲル・クラインであり、娘ラクス・クラインはその傍らで常に微笑みを浮かべながら、時に鋭く意見を述べ、その存在を主張していた。
だが、やはりシーゲル・クラインの娘と言う肩書からは逃れられず、実際の戦場、政治の世界を知らぬ少女であると、父であるシーゲルも見なしていた(逆に言えば、戦場と政治を知らぬという事は、大多数のプラント市民の意見を代弁する存在であると重宝されてもいた)。
その読みの甘さがこの結果を招いている、ラクスはシーゲルの思惑を超えて自らのシンパを増やし、クライン派を二分するほどの勢力を秘匿していたのだ。
そうしてラクスがフリーダムを、あの傷ついていた少年に託した事でシーゲルは国家反逆者として手配され、穏健派はその影響力を著しく低下させる事になってしまった。和平への道が遠のいた事を、シーゲルは痛切に感じていた。
「ラクス、お前はお前なりに平和の道を模索して行動に移ったのかも知れんが、それが間違っていた時の事を考えた上での事か?」
穏健派の力が衰えたことで、好戦派であるパトリック・ザラを筆頭とする勢力の影響力と発言力は増し、地球連合との戦いが終息する日は遠のいたのではあるまいか。
プラントは戦線を広げ過ぎた。戦争を長く続け過ぎた。理想的な形で勝利する時期は既に失われているのではないか? 地球群が既にMSの開発・実用・生産に入った事はシーゲルの耳に入って久しい。
所詮、プラントと地球ではマンパワーも国力も違いすぎるのだ。コーディネイターの能力的な優位性はシーゲルとて否定はしないが、ナチュラルとコーディネイターの能力差をもってしても、勝利を妄信出来るほどシーゲルはナチュラルの事を知らないわけでは無かった。
そも、彼らコーディネイターを生みだしたのはナチュラルであり、今も昔もプラントは地球なくしては成り立たない現実を抱えているのだから。
もう何度目になるか分からない溜息をついて、シーゲルは肩にのしかかる重みが増した気がした。重い罪を神に告げられた信徒の様にうなだれるシーゲルの耳に、扉の開く電子音が聞こえる。
三度の食事と新聞などの情報媒体を運びこむ以外では今までなかった来客の様だ。いずまいを正したシーゲルの前に、険しい顔をしたパトリックがいた。長い付き合いだ、どれ位機嫌が悪いかは、一目で分かる。
堅く引き絞った唇はかすかにひくつき、こめかみも時折痙攣している。誰が見ても懸命に怒りを堪えていると分る表情だった。これは相当まずい事態が起きたかとシーゲルは緊張に身を固くする。
最悪の場合、ニュートロンジャマーキャンセラーの連合への流出などだ。それに対してはラクスの行動以外にも、シーゲル自身にも身に覚えがあり、その対応策こそ施してあるが、多少どころではなく気になる。
「何かあったのか、パトリック?」
「……またお前の娘がやらかしてくれたぞ、シーゲル」
「……すまん」
シーゲルは正直泣きたくなった。ラクスはもはや彼の知る愛らしい娘では無く、彼の想像を超える力を持った女傑なのだ。うすら寒くなるような恐怖をシーゲルは娘に抱きつつあった。ラクスの力の増大を看過したのは紛れもなくシーゲルの責任であったから。
そしてパトリックの語る、ラクスの“やらかした”事とはこうであった。
アプリリウス市の宇宙船格納デッキには就航を待つ新造戦艦が一隻あった。あわい紅色の、全長300メートルほどの戦艦だ。両舷にフロートの様なパーツが突き出し、そこから白い翼が刃の様に鋭く、幾重にも伸びている。
ナスカ級に似たブリッジの前には単装の主砲が一基、ミサイル発射管が艦のあちこちに、他にも対空機関砲が備えられ、砲撃戦に向いた戦艦ではなさそうだ。
特徴的なのは艦首両側にドッキングされたミーティアと呼ばれる、フリーダムとジャスティス専用の特殊装備だろう。これ自体はドッキングした状態からも使用可能だが、本領を発揮するのは、核動力MSと組み合わされた時だ。
エターナル級一番艦エターナルと、ギリシア神話に語られる勝利の女神ニケーのローマ名を与えられた二番艦ウィクトリア他核動力機の量産に合わせて数隻が建造されているが、今後の戦況次第では日の目を見ずに終わるかもしれない。
核動力MSの専用運用艦であるエターナル級は、それゆえに汎用性に欠け、単艦での火力もやや不足気味なのだ。
ザフトの正義と自由を永遠とする為の船の艦橋に、その男はいた。日に焼けた肌に強い日差しにやや色がくすんだ茶色の髪。足に障害があるらしく杖を持ち、隻腕で、顔に走る大きな傷が左目をも封じていた。
だが、それだけの傷を抱えてもこの男の存在感を損なう事はない。傷を負って尚戦場に立つその姿は勇猛な武将を想起させる。悪く言えば海族の親玉だが。
名前をアンドリュー・バルトフェルドといい、かつて砂漠の虎の異名でザフトのアフリカ戦線を支えた名将だ。
以前、低軌道会戦の折、アフリカに降下してきたアークエンジェルと戦火を交え、地元のレジスタンスの協力を得たアークエンジェルに破れ、バルトフェルド自身もキラの駆るストライクに、愛機ラゴウを撃墜され生死の境を彷徨った。
傷はその時のものだ。奇跡の生還を遂げたバルトフェルドは、厭戦気分に覆われていたプラント市民に対する英雄に祭り上げられ、その人気と実力を利用すべくパトリックの命によって、最新鋭戦艦エターナルの艦長を任されていた。
ある連絡を受けたバルトフェルドは、艦内放送用の受話器を取り上げた。
「あー……、本艦はこれより最終準備に入る」
どこか悪戯を仕掛ける悪童の響きを含んだバルトフェルドの声が艦内に響き渡った。
「いいか? 本艦はこれより最終準備に入る……。作業にかかれ!」
いかにも艦長らしい指示に、しかし思い当たる節の無いクルー達は戸惑い、逆にその言葉の意味するところを理解するクルー達は、その当惑するクルー達に銃器を向けてエターナルから追い立てた。
それを待っていた新たなクルー達が、入れ違いにエターナルの各部署に向かう。エターナルに乗りこんできたのは、クルー達だけでは無かった。バルトフェルドのいる艦橋に、涼やかな声と共に一人の少女が姿を見せた。
「お待たせいたしました」
例え遺伝子を操作したにせよ、美しいと評するに値するピンクの長髪を後頭部で纏め、旧日本の過去の歴史に登場する武将達が羽織っていた陣羽織と似たモノを着たラクス・クラインだ。
陣羽織の下には極端に丈を詰めた着物を模したワンピースで、みずみずしい肌の輝きを零す太腿が大胆に露出していた。
紫水晶から削り出したように淡く紫の色を帯びた瞳は、どこまでも柔和で、傷ついた者、疲れた者を受け入れる母性を感じさせた。彼女がプラントの人々に愛される理由の一つの様に思える。
前プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの愛娘にしてプラントを代表するアイドル――そして、どこの誰とも知れぬ人間にザフトの最高機密たる核動力機フリーダムを与えた国家反逆者。
ラクスはバルトフェルドと視線を交わし、彼の背後に設けられた一段高い指揮官席に腰を下ろす。
「アスランは、どうなりました?」
「ダコスタくんが上手くやってくれたようですよ。途中でこっちに合流するでしょう。所でそっちの彼はどうです?」
「彼は何時もの通りです。黙って、傍に居てくれています」
「彼らしい事で。さて、では行きますか」
何事かと先程からせっついてくる管制室の呼びかけに応える事はしない。何しろ彼らはこれからザフトの指揮下を離れ、独自に行動しようとしているのだから。
メインゲートの管制システムのコードが早くも変更され、此方からの操作では開かなくなる。バルトフェルドはむしろ楽しそうに笑い、一段高い所にいるラクスを振り返った。
「ちょっと荒っぽい出発になりますな。覚悟してください」
「仕方がありませんわ。わたくしたちは行かねばならないのですから」
ラクスは白いその細面を揺るがす事無く凛とした声で答える。そう、自分達は行かねばならない。誰よりも自分自身がそう思う故に。
ラクスの柔らかい声の中に潜む決然とした意志を聞き取り、バルトフェルドは即座に行動に移った。
「主砲、発射準備! 照準、メインゲート! 発進と同時に斉射!」
ほどなくして、ザフトの最新鋭艦エターナルは、メインゲートを内部から破壊し、無限大に広がる大宇宙の海原に飛び出した。闇色の墨をまき散らし、銀の輝きを散ばせた宇宙に、永遠と名付けられた船は、乗せた者達の意思が乗り移ったように勢いよく乗り出した。
「よおし! ――ダコスタくんとアスラン・ザラは?」
「もう間もなく……来ました」
レーダー手がバルトフェルドの問いに答えるのと時を置かずに、港湾のある個所から飛び出してきた複座式のシャトルが見る見るうちに近づいてくる。
『隊長――!!』
「ほほう、遅からず速からず、良い仕事をするなあ、ダコスタくん。後で一杯奢ってやるぞ!」
『コーヒーなら結構です』
「なんだ、つまらんなあ。それでも僕の副官かい? まあいい、後部ハッチに回れ。機体収容後、機関最大、この宙域を離脱する!」
ダコスタの隣で、自分の知らぬ戦艦の、正気を疑うカラーリングに困惑しながらアスランは、同時に急激に加わった加速にこの艦がかなりの高速艦であると推測した。
ナスカ級以上の高速艦だとして、その運用法は何だろう? そういえば艦首の砲台らしき部位も妙だ。
ほとんど成り行きに身をまかしてプラントから出てきてしまった事に一抹の不安を覚えつつ、アスランはダコスタに先導されて艦橋へ上がった。自分が入るのと同時に、一段高い指揮官席から振り返った少女の白い美貌に、アスランは分かってはいたが、息を呑んだ。
「ラクス、本当に君だとは……」
「アスラン、お怪我はありませんか?」
にこりと、テレビの向こう側で、すぐ傍で何度も目にしたのと同じ笑みを浮かべるラクスに、やはり本物だとアスランは確信する。すると、副長席に座っていたバルトフェルドが陽気な声を掛けた。
「いよう、初めまして、アスラン・ザラ君。君の同僚のイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンとは面識があるが、君とは初めてだよな? ようこそ歌姫の艦へ! アンドリュー・バルトフェルドだ。よろしく頼む」
アンドリュー・バルトフェルド? 奇跡の生還を果たしたあの英雄? 流石に驚くアスランがラクスを振り返ると、彼女は静かに頷いて肯定した。
シーゲルの政治力と人望、それに娘ラクスのアイドル性とカリスマ性が描くクライン派の人脈は、アスランの予想を超えて広大だったようだ。最新鋭の戦艦を奪い、それを運用するだけの人員を揃え、英雄を取り込む。
恐ろしいまでの人心掌握と行動力だ。それだけの事を成して見せるラクスを、アスランはつい何度も見てしまった。
「アスラン、わたくし達もまた争いの産む憎悪の連鎖を断つべく立ち上がりました。共に、戦いましょう。そして、この悲しい戦争を終わらせるための答えを共に探しましょう」
「ラクス……。ああ!」
父パトリックが自分の予想とは違い、妄執に取りつかれてはいない事に安堵したアスランだが、前線の兵達の凶行を知る故に、ザフト全体への危機感は残っている。そして、今自分の前には、同じ道を選らず闘う事を選んだ人々がいる。
その事はアスランの心に新たな希望と活力を与えていた。
希望を乗せた船は凄まじい加速を見せて見る見るうちに、アプリリウスから放れ、暗黒の宇宙に一筋の輝かしい彗星となって飛ぶ。
だがその飛翔を妨げる者達は、間もなく現れた。コンソールから鳴り響く警告音に、オペレーター席に着いたダコスタが、鋭い声を挙げた。
「前方にMS、数はおよそ五〇!」
「ヤキンの部隊か……。そりゃまあ、出てくるよな。主砲発射準備! CIWS(近接防空システム)作動!」
驚く様子を見せず、バルトフェルドは次々と的確に指示を出し、目の前に展開する数十分前までの友軍達の動きを見ていた。宇宙で温存されていた精兵だけに、その動きは素早く、まだまだザフトも戦えると思える。
その事がうれしくもあり、今は厄介でもある。父に申し訳ないと思いつつ、アスランは口を開いた。
「この船にMSは!?」
「あいにくと出払っていてね。――こいつはジャスティスとフリーダムの専用運用母艦なんだ。君と彼が持っていってしまったからね」
フリーダムとジャスティスの為の艦……だとすると、キラにフリーダムを渡したのも、こうなることを予測しての事だったのだろうか? ラクス達の先見性には驚かされるが
(それはつまり、自分達がこうするような事態になる事を止められないと諦めたという事か? それても最悪の場合、ザフトにNJC機という突出した力を残さないため?)
だとしても、少なからずアスランはラクス達の行動に疑問と不安を覚えないではない。それだけの力があるのなら、なぜわざわざ監視カメラの目の前で堂々とキラにフリーダムを与えたのか。
キラの素姓を誤魔化せる位なら、監視カメラの記録だって弄れるだろうに。なんとなく、クライン派は、ここ一番という所でミスをする集団なのかも知れないと、アスランはこっそり思った。
とはいえ、今はエターナルだけでヤキン・ドゥーエの防衛網を突破するという無茶に同乗しなければならない。MSが無ければ、自分はあまりいる意味がないのが、もどかしい。
眉を寄せ、モニターを睨むアスランの耳に、ラクスの声が聞こえた。
「全チャンネルで通信回線を開いてください」
「了解! さて、歌姫の歌ならぬ言葉に、どう答えるね? ザフトの諸君!」
愉快そうにバルトフェルドは、ラクスの意図を読み取って通信機器を操作し、ラクスに頷き返した。
「わたくしはラクス・クラインです。願う未来の違いから、わたくしはザラ議長と敵対する者となってしまいました。――ですが、わたくしはあなた方との戦闘を望みません」
アスランは思わず吸い込まれるようにラクスの横顔を見つめた。柔らかな声の中に一片の媚を含む事無く、凛と鳴らされた鈴の様に心地よいラクスの声。
そして言葉に込められた決意は、いやおうなく聞く者を惹きつける――なにか言葉にできない魅力の様なものがあった。
目の前のラクス・クラインは、かつて自分が接した争いなどとは無縁に思える無邪気で、守るべき人ではないのだと、アスランは理解していた。
ラクスの言葉は続く。
「どうか、船を行かせてください。そして、皆さんももう一度、わたくし達が本当に戦わなければならぬものは何なのか……考えてみてください……」
アスラン達からはうかがい知る事は出来なかったが、ラクスの言葉に心揺らされた兵士達は少なくはなかった。それでも、彼らはザフトの兵であり、民兵上がりの軍事組織とはいえ、彼らは軍人として訓練されていた。
撃てと言われれば、肉親や友でさえも撃てる――それが軍人と言うものなのだ。
「ま、難しいよな。いきなりそう言われたってよ。だがまあ、こちらもやられるわけには行かんのでね。こちらのエスコートはどうした!」
「……来ました! 前方MS隊の後方から急速接近中、“シュリュズベリイ”です!」
間に合ったという喜びを滲ませるダコスタの声に応じるが如く、一隻のナスカ級高速艦が、猛スピードでエターナルに迫りつつあった。
シュリュズベリイ――盲目の偉大なる魔術師の名を冠したナスカ級は、通常の艦に比べ改修が施されているようで、突き出た三つ又の鉾の様な船首の中央が膨れ上がっており、赤子を抱えた母魚か虫の様だ。
中央のカタパルトから、四機のMSが出撃しエターナルに迫るヤキン・ドゥーエの防空部隊に襲い掛かる。
ザフトの最新鋭機ZGMF−600“ゲイツ”だ。
濃緑の装甲にザフトMSの特徴であるモノアイとGタイプに似た口部で構成される頭部、ジンの背部スラスターを洗練したデザインのスラスターに、腰部に装備された有線ビーム・クロー“エクステンショナル・アレスター”、
二振りのビーム・クローを装備したシールドに、ザフト製MSとは初となるビームライフルを正式に装備した意欲機だ。
指揮官機用カラーの白いゲイツを中心に二機のゲイツが左右につき、見事なコンビネーションで次々と迫るジンの戦闘能力を奪って行く。ジンのパイロット達もそれなりの腕前のはずだが、ゲイツのパイロット達はそれ以上の様だ。
「マーズ、ヘルベルト、ラクス様の乗っておられるエターナルにミサイル一発撃たせるんじゃないよ」
「お、名前で呼んでくれたねえ」
「言わずもがなだな、ヒルダ」
指揮官機のゲイツに乗った、右目に眼帯をはめたオレンジの髪の女性ヒルダの声に、メガネと左目に走る傷が特徴的なヘルベルト、爪の様に整えられた髪と顎髭が印象的なマーズがそれぞれ応える。
彼らはいわゆるクライン派のザフト兵の内、とくにラクスへの信奉と忠義の厚いパイロット達だった。しかもMSパイロットとしての実力も折り紙つき。
赤服はリーダー格のヒルダのみだが、実戦経験に裏打ちされた確か実力を持つヘルベルトとマーズは、下手な赤服などよりよほど頼りになる。
ヒルダのゲイツを先頭にして、三位一体のコンビネーションで、ヒルダ達三人は破壊の使徒と化して戦場を駆け抜けた。
突如戦場に駆け付けたナスカ級とMS達が味方と知り、アスランは思わぬ援軍に一息つこうとしたが、それでも数で勝り、次々と出現するヤキンの防空隊に包囲される現状に焦りを覚えている。
エターナルもバルトフェルドの指示の下、ラクスのコクピットは外してくださいね、という途方もなくハードルの高いお願いを叶えながら必死に迫るミサイルやMSを追い払って行く。
残る一機のゲイツが、エターナルの護衛に付き、ビームライフルと腰部に装備したレールガンでジンを戦闘不能にしてゆく。
これは火器運用試験型と呼ばれる機種で、ジャスティスやフリーダムの装備を、ゲイツで試験的に運用しデータを取る為のものだ。
背にはジャスティスのファトゥム00の原型となるリフターを装備し、ザフトMSとしては初めてPS装甲も装備している。
ただし動力は従来のバッテリーパックであるため、PS装甲とビーム系の火器を並行して使用するとリフター内の補助バッテリーを使用しても稼働時間は10分程である。
動力の問題をどのように解決したのかなどといった事はアスランにとってはどうでも良い事だったが、そのパイロットは大問題だった。
『大丈夫ですか、アスラン、ラクスさん』
「な、ニコルか!?」
『はい、僕です』
モニターの片隅に映し出された少女めいた少年の顔に、アスランはつい声を荒げてしまった。彼の見つめる先には、ストライクとの戦いから奇跡的に生還したニコル・アマルフィがいるではないか。
アスランがキラ達と合流する前に別れた、弟の様に思っていた少年が選んだ道が、自分の道と交差したことがうれしくもあり、同時に戸惑いを覚えていた。言いたい事はいくらもあったが、話し合う事の出来る状況でない事は確かだ。
開きかけた唇を閉じ、アスランはニコルの瞳を見つめた。
「ニコル、お前もこの道を選んだんだな」
『はい。また貴方と一緒に戦えて、嬉しいです』
「そうだな」
『とにかく、今はここを切り抜けないと。また話は後でしましょうね』
ニコルらしい、優しい笑みを残して通信は切られ、火器運用試験型ゲイツは戦いへと戻る。エターナルに迫るミサイルを、ニコルが火器運用試験型ゲイツに装備されたライフルとレールガンで的確に撃ち落とし、暗黒の空間にいくつもの火球を作り出す。
「ブルーアルファ及びチャーリーより、ジン七、シグー二!」
ダコスタの報国に素早くバルトフェルドが指示を飛ばし、四機のゲイツとシュリュズベリイ、エターナルは、六〇を超し始めたMS達の包囲網を突破すべく不殺の激闘を繰り広げる。
「流石にプラント本土を守る最後の砦の兵だ。質も量も悪くないな!」
「隊長、感心している場合じゃないですよ!」
「はっはっは、そう慌てるな、ダコスタくん! 男たるものどんな状況でもどんと構えていろ。それに歌姫の剣殿も、ようやく動いてくれそうだぞ?」
「剣?」
聞き慣れぬ言葉に、思わず訊き返すアスランに不敵な笑みを向け、顎をしゃくってシュリュズベリイの大きな格納庫を示した。バルトフェルドの後ろで、ラクスが万の信頼を込めた視線を向けていた。
「頼みます。“―――――”」
ラクスの呟いた名前を、アスランは聞き逃した。
シュリュズベリイの中央カタパルト上部に、改装されて備え付けられ上部展開式ハッチが開かれ、ソレが姿を現した。青いシュリュズベリイの船体を足元に、星々の煌めきを背後に雄々しく立ち上がる。
五十メートルを超す巨躯は、大きくせり出した丸いショルダーアーマーや二の腕、足の付け根などは白く、胴や腕部は黒い装甲だ。各所に、菱型の赤い水晶状の物質が埋め込まれている。背には巨大な赤いドリルを装着していた。
サイズもデザインもMSの常識から外れているが、とくに人面を模した鼻と口を持つ頭部の額から生えた巨大な赤い角などはインパクトが強い。
ただ、装甲の所々にはひびが入り、左眼のカバー付近は大きく裂けて、眼球を模したカメラ・アイが剥き出しになっている。逞しい男性の胸の様な胸部にも横一文字に斬り裂かれた跡がうっすらと残っていた。
まるで、神代の戦いに向かわんとする歴戦の巨人の戦士の様だ。猛々しさを強調する傷が戦の火に照らされ、巨人の厳しさをたたえた瞳が、戦場を見渡したような錯覚をアスランは覚えた。
殆ど確信に近い思いでアスランは巨人を見つめた。あのサイズの機動兵器を開発・実用している勢力は唯一つ。あの奇抜に過ぎるデザインにもどこか通じるものがあった。論理的な根拠にはかけるが、アスランの直感は正解であると訴えている。
しばし、その威容にアスランは見惚れていたが、バルトフェルドを振り返った。
「バルトフェルド艦長、あれは一体なんですか。まさか、ディバイン・クルセイダーズの!?」
「さてねえ? 僕もあれが何で、あれに乗る彼が何者なのかは知らないよ。ただまあ、とんでもなく頼りになる味方ってことくらいしか言えないかな? 彼を連れて来たのはラクス嬢なんでね。詳しくは彼女に聞いてくれ」
「ラクスが? ラクス、あれは一体」
困惑に彩られたアスランに、ラクスは変わらず優しく、どこまでも見透かしたような不思議な眼差しで答えた。
「彼は“剣”ですわ、アスラン。どこまでも真っ直ぐで折れることも曲がることも知らない、不器用な生き方しかできない人です。とても、頼りになる方ですわ。アスラン」
「剣?」
それは一つの比喩であり例えに過ぎなかったが、あの巨人の主を語るにはそれ以上ない、的確な言葉であった。
エターナルを包囲しつつあるザフトのMSのパイロットたちも、アスランと同じようにシュリュズベリイのカタパルトから立ち上がった巨大な人型兵器に注意を奪われ、幾人かはラクス・クラインがDCとも手を結んでいるのかと、いぶかしむ者もいた。
血気に逸ったか、数機のジンが突撃銃を撃ちかけながら巨人に、ひいてはシュリュズベリイに迫る。
「おのれ、ラクス・クライン! フリーダムだけでなく新造戦艦、ひいてはこのような機動兵器を隠していたのか!」
「反逆者め、そこまでプラントが憎いのか!?」
「ラクス嬢、大人しく投降してください! 我々は貴方を撃ちたくはありません!」
クライン派ではないらしく、口ぐちに紡がれる言葉はラクスへの愛憎が混じるものだった。プラントの皆に愛される歌姫の行いに戸惑い、なぜ、どうしてと憤り、敬慕の情は怒りや拒絶に取って代わられる。
だがその時、口々に上げられる不信・疑惑・憤懣・困惑の声を、ただ一つの言葉が斬り捨てた。
「黙れ!!!」
全周波チャンネルで戦場の全てに響き渡ったそれは、聞く者の心臓をわしづかみ、時を止めさせてしまうほど迫力に満ちていた。それは紛れもなく心を断つ意志の刃。
それはシュリュズベリイの青い船体に仁王立ちになり、古の戦神の様に鋼の人形達の戦いを睥睨していた巨人から――いや、その操者が放った一声であった。
たった一語。それに込められし意志の強さよ。聞く者の心にある邪心を打ちのめす迫力よ。誰も彼も、ラクスもアスランもバルトフェルドも、ヤキンの防空隊も、すべての者が巨人に心奪われた。
「そして聞け!! 我は……」
巨人の右肩の装飾が外れ、旋回しながらその姿を変えてゆく。
見る見るうちにその装飾から、水の様な液体金属が零れ出し、緋色の柄と青い両刃の刀身を形成する。その全長は巨人と同じかそれ以上の長さにまで届いた。
「ウォーダン、ウォーダン・ユミル! ラクス・クラインの剣なり!!! 闘いの憎悪に飲み込まれ、平和を望む声に耳を閉ざす者よ! 我が斬艦刀で、その心を断つ!! 吼えよ、スレードゲルミル!! 唸れ、斬艦刀!!!」
風車の様に長大な斬艦刀を両の手に握って振り回し、ウォーダンがスレードゲルミルと呼んだ巨人の眼差しは、鬼神さえも怯ませる苛烈さで砂漠の魔神の名を与えられたモビルスーツを睨みつける。
ジンのモノアイが恐怖に揺れる――錯覚に見えて、誰しもがそれを事実と疑わなかった。なぜならば、誰もが等しく恐怖していたからだ。
常軌を逸した大刀を振りかざす原初の巨人の姿に。その巨人に魂を吹き込む漢の叫びに。
「おおおおおおお!!!」
瞬間、その巨体からは想像できぬ爆発的な加速でスレードゲルミルはシュリュズベリイから飛び立ち、否、踏み込みあまりに非現実的なその巨大な刃“斬艦刀”を雷光の速度で閃かせた。
それは人間の潜在能力を人為的に開放させたコーディネイターであるジンのパイロット達も、ニコルもアスランもその刃の斬撃の軌跡をわずかに捉えるのが限度だった。
あまりに速く、あまりに鋭く、あまりに重く、あまりにも現実離れした刃の一閃は、刹那の時で四機のジンの両足を断ち、四肢のバランスを逸したジンは離脱する。ヤキンの防空圏内ならば、宇宙で遭難し苦しみにもがいた顔で死ぬような事はあるまい。
距離を詰められる事の絶対的な敗北を悟った他のジンやシグーは、距離を取って射撃戦によってスレードゲルミルにダメージを与えようと試みるが、スレードゲルミルに注意を奪われた者にはヒルダ達が襲い掛かってはその卓越した技量で瞬く間に戦闘能力を奪いさる。
「煌け、斬艦刀・電光石火!! 貫け、ドリルブーストナックル!!」
スレードゲルミルの上半身を捻り斬艦刀から迸った雷光は、神の裁きにも等しい非情さで次々と立ちはだかるジン達の四肢や頭部、スラスターのみを慈悲深く破壊する。
さらに背の巨大なドリルが背を跨る形で機体前方にせり出し、スレードゲルミルの両腕部に装着される。大気があったなら鼓膜を貫く擦摩音が鳴り響いただろう。鋭く太いドリルが急速に回転し始める。
ドリルブーストナックルというのがその武装の名前なのだろう。ドリルを装着した腕部はそれだけで二十メートルをやすやすと越す。射出されたドリルブーストナックルは、それぞれ衝突を繰り返しながら赤い軌跡を零して暗黒の宇宙を穿つ。
赤い竜巻の様に飛ぶドリルブーストナックルは、かすかにそれに触れるだけであらゆるものを破砕し、防ぐ事叶わぬ天災に似た暴威を振う。
瞬く間に六十余のMS達は戦闘能力を奪われて、高速で進むエターナルから引き離されてゆく。
あまりに圧倒的なスレードゲルミルの戦闘能力に、アスランは声を失っていた。ひょっとしたら、この巨人ならばDCのあの真紅の魔王とでも呼ぶべき機体に勝利しうるのではないか?
世界最強の機動兵器を、今アスランは目の前にしているのかもしれない。
その時、ヤキンの防空部隊とは別の方向から一機のMSが飛来した。青い翼をもった白い機体。ラクスが一人の少年に託した新たな意志ある力――フリーダム。モニターにアスランが思い描いた少年の顔が映し出される。
「こちらフリーダム、キラ・ヤマト。これは?」
キラも、自分が駆け付けるまでの間に繰り広げられた圧倒的な武力の顕現に目を見開いていたが、キラの声と姿に喜びの声を挙げたラクスに気付いて別の驚きを顔に浮かべた。
突然現れたフリーダムを警戒していた、ヒルダやニコルのゲイツ、ウォーダンのスレードゲルミルも二人のやり取りに警戒を解く。
「キラ!」
「え、ラクス? なんで君が!?」
アスランと別れた場所で待機していたキラは、先程の戦闘とアスランを結びつけて考え、こうして駆けつけたのだろう。出番はなかったが、友の誠実にアスランは感謝した。
と――副長席のバルトフェルドが、無事残された右腕を挙げて、あくまで軽く陽気な調子でキラにモニター越しに呼び掛けた。
「よお、少年! 助かったぜ」
そう言えばバルトフェルドは地球に降下したアークエンジェルと交戦したのだ。だが、一体どこでストライクのパイロットだったキラと出会ったのだろう? だが、バルトフェルドを前にしたキラの驚きはアスランの比では無かった。
キラは、この世にあるはずの無い人を目の前にした反応だった。確かに死んだはずの――幽霊でも見たような顔で絶句したのだ。
「――バルト……フェルド……さん!?」
かくて、ラクス・クラインはザフトに帰還し拘留される筈だったアスラン・ザラと母国の英雄アンドリュー・バルトフェルドを傘下に加え、一部の将兵達と共に新造戦艦エターナルを奪い、姿をくらましたのだった。
パトリックにラクスの所業を聞かされたシーゲルは、一歩間違えればその場で首を吊りそうな位に落ち込んでいた。ようやく痛切な声を絞り出す。
「……ラクスがそんな事を」
「そうだ。お前がどういう育て方をしたのか、実に興味があるぞ。シーゲル。もっともアスランもアスランだが。あの馬鹿者め」
「アスランか。意志が強いようで妙に脆い所があるからな。存外、なりゆきでそうなっただけかもしれんぞ、パトリック」
「否定できんのが頭の痛い所だ。だが、シーゲルお前にも多少働いてもらうぞ」
「……いいだろう。内容にもよるが、お前が私が拒絶するような事をさせるという無駄を踏むとは思えんしな」
「話が早いな。お前にはクライン派の兵達がこれ以上お前の娘に着かぬよう働きかけてもらう。彼女の行動に兵ばかりか市民も動揺しているのだ。エザリアの演説も結果には結びつかなかったしな。ならば穏健派のトップであるお前が訴えかける手だ」
「ラクス、我が娘ながら末恐ろしいものだ。分かった。お前の頼みは聞こう。パトリック、一つ聞きたい」
「何だ?」
「いつまでプラントは闘い続けるのだ? 火種を投じた私が言えることではないが、戦争の終わりが見えなくなって随分と長くなった。国も民も疲弊しているのは、とっくの昔から分っていた事だ。憎しみで始めた戦い故に、終わらせるのは難しい」
憔悴の色をかすかに刷いたシーゲルは、エイプリルフール・クライシスを引き起こしたかつての所業を思い起こしながら、盟友でもある男に聞いた。
ユニウスセブンを焼かれ、その報復と核の脅威を封じる為に地球に落としたNJ。だが、それが招いた結果はどうだ? 人類の一割を死に至らせ、今もなおあの星に住む人々に未曾有の災厄を齎してしまった。
そこにはナチュラルもコーディネイターもなく、この上ない平等さで苦しみを与え憎悪を滾らせてしまった。ユニウスセブンをはるかに上回る人命の喪失と、それを行ったものに向けられる憎悪。
それを、『ナチュラル』から進化したと謳う『コーディネイター』が予測する事は出来なかったのか? 分っていてNJを投下したというのならば、コーディネイターの精神性は、残虐で無慈悲なものだろう。己ら以外を顧みぬ傲岸さを土台としているのだろう。
だが実際コーディネイターがそうというわけではない。ただ、あの時はユニウセブンを焼かれ、二十万を超す同胞の命が理不尽に奪われた怒りに、誰もが心を曇らせていたのだ。今思えば、取り返しのつかない愚行というにも程がある事をしてしまったとシーゲル自身思う。
そして、今なお地球の人々は――ナチュラルも一部のコーディネイターも――プラントのコーディネイターを憎んでいるのだ。
パトリックは、戦いの始まりを思い出したのか、一瞬瞑想する様に瞼をおろしてから口を開いた。
「アスランにも聞かれたぞ、シーゲル。戦争の終わりが互いの滅亡などと、どこぞのSF染みた事は言わんよ。いくら怒りに心奪われてもな、それ位の理性は残さねば一国の代表なぞ務められるものか。……私はそこまで危なく見えるか?」
「……まあ、演説の内容も旧世紀の独裁国家そのままだからな」
盟友と息子にここまで言われてしまい、流石のパトリックも眠る前に真剣に悩んだそうな。
今回ここまでです。ウォーダンは頭の中の『メイガス』の部分がラクス・クラインに変わったものと思ってください。
では、ご助言・指摘お待ちしています。
31 :
通常の名無しさんの3倍:2007/08/29(水) 16:16:34 ID:vRDb8pzg
GJ!!GJ!!
シン君が本当に越えるべき壁登場ですね。さて、ドリル魔神に対抗するには
親分と大親分でも個人的には力不足(親分はともかく大親分とドリル魔神では
圧倒的にドリルの方が明らかに上なのでなのでゲームでは精神で勝ったようなもの)。
某勇者で破壊神な人の金ぴかハンマークラスの武器とそれを操れる機体がい
りますな・・・。
GJ!
でもこりゃまさにキチガイに刃物…
魚男、せっかく確立した自我を洗脳されて失ったのか…カワイソス
OGで最も操縦技術が高いのはやはりエルザムか。
せっかく自我を持ってそれを貫いたのにまた洗脳されてもうたのか?
ウォーダンとシンの戦いに期待だな。
でもだ、スレードゲルミルは要するに驚異的な再生能力を持つグルンガスト参式なだけであって…いや分からないな微妙だ
魚「フ…いくら究極ロボと言えど星薙ぎのたちを受けてしまえばひとたまりも…何ィっ!?」
いやすまん
さ、最悪だー!? 薙ぐのか?薙ぐのか星を!?
零〜参の超闘士揃い踏みで受け止めるんだ!
星薙ぎ以外なら一応150ガーベラの方が倍近く長いが……
ついでに言うとDの青マンボウのは推定200m超。ただし主人公機だから登場は絶望的。
まー傭兵だから“こっち側”の人間って事でぽっと現れても問題無さそうだけどな。
むしろ望むところだ!
嗚呼…ラクス派にスレードゲルミルがでてきたということは…
やはりここは倭の神剣クサナギを持ったDGG-001<varC.E>と地母神の名を冠したDGG-002<varC.E>によるコンビネーションを期待すべきところなのであろうか。
この世界で示現流のモーションパターンで戦うのは飛鳥だしなあ…
冗談抜きで大飛鳥(エペソが居るのでベースは大親分)開発しないかな……
今まで寡兵だと言われてきたラクシズだが、今回の登場で一気にそのイメージが払拭された気がする
それぐらい恐るべきインパクトがあるよ、このドリル魔神には……
このあまりに巨大な壁に、未だ親分の域に到達するに遠いシンが勝てるか!?
シンなら一度負けても、そこから再び這い上がってくるさ。
心に決して折れことない信念の剣宿して、この大きすぎる壁を越えていくさ
親分をよく知るガルインがDCへ来てくれれば
それにテンペストがいてくれればな、親分の生き様をシンに教えられるんだが
あと死んでないけどギリ…アポロン総統なら来てもおかしくないw
GJ!
ラクシズに合うスパロボキャラは、アーチボルトぐらいだと思っていましたが、ウォーダンがこれほど違和感ないとは思いませんでした
GJ!
しかしせっかく自我に目覚めたのにラクスなんかに使われちゃあ……
ただ機体の再生能力は失われてるっぽいので大飛鳥が出ればなんとかなりそうだw
ウォーダンというよりも、洗脳された剛戦士というのがゼンガーの初登場場面だったから、
洗脳されたウォーダン、というのも様になってる。
ウォーダンはゼンガーの人格のコピーで、OGSでも割とまともなこと喋ってたから
ラクシズの浅はかな行動原理を支持するとは思えない
作者さんはそこら辺をよく考えて作ってるな、GJ!
何もラクス陣営が原作通りのラクシズとは限らんだろうにどうして皆そう悲観的に考えるのやら…
と言うかクラインパパとザラパパが凸のこと的確に判断してることにフイタwww
ラクソはニート、凸だけじゃ満足せずウォー段まで洗脳しやがったのか…
マジ腐れてやがるな…
不様なくたばり方をして欲しいもんだ
メイガスをα外伝のメイガスを登場させてくれーーーーーーーー
あれだよ、ククルがウォーダンをラクシズの洗脳から救い出すんだよ。
ヴォーダンの真意が読めない。どの辺りでラクスを平和の導き手だと思ったんだ?
それとも本当に洗脳なのか……となると、このSSでもラクスはそういう能力を
持っているという事になるんだな。
>>54 X運命のAWNTラクスか……はっきり”洗脳能力者”であるラクスはあれが始めてだった。
作者氏がアレ知ってるかどうかでかなり今後の展開が変わるな。
他のパターンだと御輿に祭り上げられてたり、”ラプラスの魔”だったりとかか。
ドリル魔人のインパクツでここまで一切ニコルの名前が挙がってないのね(´・ω・)カワイソス
ニコルも何考えてんだか…
スパロボならWとかで生存して仲間になるから違和感ないが、ここの原作イズム溢れるラクシズの何がニコルを惑わせたのだろう
タメイキ親父団にニコルパパンが加わるんだな
>>59 今の所は痔がなにやってるかは伝わってないからバレてからだろうな
ウォーダンがカガリ達と合流したて、オウカと会って無くしているしている記憶のことを話しまうのだろうか
エザリアママンも加えて5体合体ザフトンVに乗るんじゃねーの>タメイキパパンズ
邪気眼真っ盛りこれはいい中二病大戦ですね
ウォーダンがラクシズに居るのは
・模倣とはいえゼンガーとしてのククルフラグ
・共にOG世界で同じ勢力に所属していた者としてのオウカフラグ(+記憶復活フラグ?)
の話の都合だと思ってしまう俺は穢れてるな……。
ニコルは……まぁどうでも良いか。
それにしても死んだヤツが来てるならアードラーの他にも色々とヤバイのが来てる気がする。
影鏡とか憤怒の女神とか批評者とか。
>>64 自称神の人達とか間違いを起こさせる人とか、出て来ただけで終わる最強オヤジも含まれますか?
>>65 シャピロはきてもなんか酷いことになりそうだし
間違いさんは人間に転生して3人娘とのんびりしてそうだし
完璧さんは死んでませんから…入れ物に魂が戻ってこんにちわはあるかもしれないけど
>>66 神の人は64のアル・イー・クイスじゃなかろうか……よく知らんけど。
後は間違いさんの夫が極めて気になる俺、参上!
しかし「シュリュズベリィ」ってことは「無限心母に核打ち込みます」って
明言してるような気がするんだが。
フェイル殿下とディラクシールの登場を期待していたりします。
>この悲しい戦争を終わらせるための答えを共に探しましょう
だから答えをだしてから動けと…
明確なビジョンを打ち出すことはしないのにやってることが間違ってるとは欠片も思ってねえのがこええ
手段のためなら目的を選ばない状態だなーラクシズっていうかラクス
そーいやシュヴァリアーとかネージュってペルさんに体乗っ取られた親父の作品なんだよな……
もしこっちに居たら例のビックリドッキリメカを作ってたりするんだろうか?
妻と娘を殺されて復讐者となったテンペストは同類であるサトーと一緒になってユニウスセブン落としをするような予感
しかし白目
>>73 つ 「ふ、ふふふ、復讐…復讐…復讐…復讐…」
影鏡の人らは来たとしても問題なさそうだな
物語的によさそうなのは、アクセル隊長とエキドナくらいだけどな
OGs版のアクセル隊長とエキドナなら、今のウォーダン相手によさげな対応してくれるさ、これがな
そして戦艦の砲撃に巻き込まれてあっさり撤退するヴィンデル
OG世界から飛ばされて来たヴィンちゃん、転移や戦闘の影響で傷を負って倒れてる所を付近の村の人々に助けられる。
傷の療養を穏やかに過ぎていく村での日々に自分がやろうとしていた事で失われるものについて考える機会を得るヴィンちゃん。
そして色々考えてる内にエイプリルフールクライシスorブレイクザワールドが発生。
災害やらどさくさ紛れに略奪を働こうとする山賊やら軍人崩れによってもたらされる村の危機、その時ヴィンちゃんは……!
などと考えていた時期が僕にもありました。
しかし…こうやって見ると同じロマンチストの革命家でもビアンとラクスじゃ格が違うってのがよく分かるな
ビアンは自分の手を汚す事を厭わず、自分もまた間違っている(武力に頼った革命)と言う事を自覚もしている。
ラクスは自分と自分に味方するのみが正しいと信じ、そのためには手段も目的も選ばない
ちょっと文法がおかしい気もするけどそう思いませんか?
一番違うのは相手が武器使うのはダメだけど自分らは使うのはOKって思ってる部分だな。
ビアンみたいにそれが必要悪だと理解してるならいいが、ラクスの場合はどうにも
「おまえらが愚かだから自分たちは武器を使ってでも止めないといけないんだ」
みたいな責任転嫁があるし。
要は自分の軍の平気を綺麗と思ってるかどうかの差だな。
>>77 ツヴァイザーゲインに乗せて良いなら書きますが。
>>80 おそらく麒麟・極の分身だけで山賊が逃げるかと
>>80 短編ならツヴァイで締めるのが美味しいと思う。
長編だとしばらくお預けにするのが美味しいと思う。
そんな贅沢。
ただヴィンは別に私利私欲利のために戦争を起こそうとしてるわけではなく
闘争のない世界は腐敗するという信念の元に動いてる人間だからそういう体験
したからと言って思想が揺らぐとも思えんが
その信念の代価が邪龍鱗という、ラクスには真似出来ないレベルに至ってるしなヴィンちゃんは。
>>78 ラクスも無印の頃は「平和を謡いながら武器をとる私達もまた悪しき者なのかも知れません」とか言ってたんだけどなあ
ただ俺は言いたい
ラクスは自分が悪である自覚がどうの言う前に、もう少し考えて行動しろと
悪とか言うレベル以前に、ただの馬鹿だろコイツら
>>84 ヴィン「一所に固まっているからこういうことになる(邪龍鱗」→ラミア「レモン様!!!」
これもいい思い出です
アスラン「一箇所に固まっているからこういうことになる(フルバースト」
ミーア「ラクス様!!!」
俺的にはラミアに来てほしい。
最後の自爆でビアンSEED氏の種世界に跳ばされてきて、帰るための装置が完成するまで
DCに協力するとか。
ニコルよ……DCのパイロットとして再登場してくれると信じていたのだが……OTZ
アスラン、それビアンをなめすぎ。正気のときならいざ知らず、洗脳済みでは……。
つかラミアやフィオナなら2.5の時点で死んでると解釈して召喚してもOKなんじゃね?
外伝の方は最初から話作るみたいだから一部展開変わるかも知れないしな
まあどうするかは作者さん次第だけど
あー確かにフィオナはいいな
後デュミナス三姉妹とか
ラウル達はどうでもいいです
OGSは、まだやってないので知らないのだが2.5でそんな表現があるのか……
といってもラミアのような人気キャラをそんな簡単に使い潰すとは思えないので3ではなにごともなく出演してくれるだろうけど
(Aではアクセルとの選択式だったのがいまじゃデフォルトで味方キャラだしな……スパロボは男向けのゲームで、男は美巨乳持
ちの美女には逆らえんし一部の真性ロリぺドは除くが)
シャドウミラーがラクスに手を貸していれば…
ラクスは本気で戦争を止めようとしているけど、どんどん被害が拡大していくってことも考えられるかな?
ターミナル=シャドウミラーにしちゃうのかい?
その場合ラミアではなくW17になるな……ああ、ラミアinDCVSシャドウミラーW17というのもアリか
むしろCEに来たショックでアホセルになったアクセル(OG)とエキドナを。
そうすればこうへー氏が釣られてくれるからな!
>>93 アクセルを使い潰してるという事実が有るからねぇ……
まぁ、ラミアは妙な復活をやらされそうだが。
過ちのお母さんの新しい娘として復活とか?
三姉妹に合わせて幼くなってそうだけど
100 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/01(土) 23:12:54 ID:rRurg9q/
すいません、2ちゃん初心者なので、スレを立て方がわかりません。
ビアンSEEDの触発されて、小ネタの元をベースにしたSSスレを立てたいのですが。
「もしスパロボの主人公が秋せつらだったら」というスレをたてたいのですが・・・。
誰か教えていただけないでしょうか?
>>100 それはガンダム世界でやるのかな?ここは新シャアだからガンダムが絡んで無いと……
そうでないのならキャラネタ板辺りかロボゲ板で聞いてみるといい。
あ、ガンダムキャラが多めに絡むんなら新シャアでおk、な場合もあるから。
いずれにせよ、世界とキャラによって板が決まる。
第二十四話 ラクス・クライン
ヒルダやニコルのゲイツ、そしてウォーダン・ユミルという男の駆る超絶の戦闘能力を誇るスレードゲルミルによって瞬く間にヤキン・ドゥーエの防空部隊を無力化し、
ナスカ級シュリュズベリイを伴って、エターナルはキラのフリーダムに案内される形でL4コロニー群の中にあるメンデルを目指した。
巧妙に航路をカモフラージュした後、メンデルに姿を見せたナスカ級とエターナルに、港湾施設で待機していたオーブ艦隊は即座に警戒態勢を敷いたが、フリーダムの姿とキラからの連絡に困惑しつつ向かいいれた。
今は使われていない無人コロニーに係留するアークエンジェルとクサナギとスサノオを中心に、周囲のデブリやコロニー内部に他の艦を隠している。周囲に敷設した機雷や無人攻撃衛星も、極力目立たぬようにされている。
エターナルは三隻に並んで入港し、シュリュズベリイからスレードゲルミルもエターナルの傍らに移動する。
港施設に四隻の主だったクルーが降り立ち、直接顔を突き合わせた。特にマリューを始めとしたAAのクルー達とバルトフェルドはかつて生死を掛けて渡り合った敵同士であり今こうして、国家の枠を超えて集った事に深い感慨を覚えていた。
特に、バルトフェルドの姿に驚いていたキラとの間では……。
フリーダムから降り立ったキラはバルトフェルドの傷だらけのその姿に呆然と立ち尽くしていた。なぜなら、その傷は、キラが負わせたものに違いなかったから。
バルトフェルドは壮絶な傷跡が走る顔に、あくまで人懐っこい笑みを浮かべたままで声を掛けた。
「いよう、また会ったな、少年。少し逞しくなったかな? 成長期というやつかね」
「バルトフェルドさん……。僕は、貴方に、どうやって」
今にも泣きだしそうなキラの様子に、周囲の大人たちも息を飲んで見守っていた。キラの視線は、バルトフェルドの失われた腕や左目に走る傷跡を彷徨い、沈痛な顔で俯く。
バルトフェルドの背後のダコスタも複雑な表情を浮かべた。AAだけでなく当時のストライクのパイロットであるキラによって何人の部下を奪われた事だろう。
バルトフェルドは浮かべていた陽気な調子を崩して、代わりに鞘から抜かれた刃の様に鋭いものを浮かべる。それはキラの心を見透かした言葉に繋がった。
「償いたいと思うのかね?」
キラは泣きそうな顔のまま頷き、それでも真正面からバルトフェルドの隻眼を見つめる。それは自分のしてきた事、これから行う行為から逃げはしないという決意が見て取れた。
「ええ……貴方には、僕を撃つ理由がある」
「やれやれ、そういうのは止めた筈じゃなかったのかね?」
バルトフェルドは小さく鼻で笑ってから、柔らかい声でキラに話しかける。
「撃っては撃たれ、撃たれては撃ち返し――それでは何も終わらない。敵であるものをすべて滅ぼすまで……。それに気付いたから今君はここに居るんだろう?」
バルトフェルドの言葉に、今ここに居る事の意味と理由を改めて思い出したキラは、優しく自分の肩を叩くバルトフェルドをもう一度見つめ直す。砂漠の虎と謳われた名将は、罪人を許す笑みを浮かべていた。
「終わりにしような――すべての憎悪を」
「バルトフェルドさん……」
「まあ、それに? 僕の一番大切なものも無事だったしな」
「え?」
キラが思わぬ言葉に、涙に濡れた瞳をきょとんとさせていると、エターナルからひょっこりと一人の女性が姿を見せた。どことなくエキゾチックな雰囲気のする、黒髪の両脇に金のメッシュを入れた妙齢の美女だった。
「アンディ? あら、君。久しぶりね、少し、背伸びた?」
バルトフェルドをアンディと愛称で呼び、その傍らに立って自分を見つめる女性を、キラはバルトフェルドを見た時と同じ目で見た。
アイシャという名のバルトフェルドの恋人であり、砂漠での戦いの時砲撃手としてバルトフェルドの駆るラゴウに乗り、キラと闘った人であった。あの戦いでキラが手に掛けた筈の女性。
「アイシャ……さん?」
「覚えていてくれたのね、うれしいワ。あの時は敵だったけど、ここに集まっているんだから、今度は仲間としてよろしくネ?」
「はい」
泣き崩れた顔に、確かに笑みを浮かべて、キラは差し出されたアイシャの手をそっと握った。
各艦の大人達が集まり、互いの情報を交換し合う様子を、エターナルの傍らに寄せたスレードゲルミルのコクピットで、ウォーダンは黙して見つめていた。中には、というか誰もがこのスレードゲルミルを一度は見上げている。
無理もないか、とはウォーダンも思う。MSの二倍半以上ある巨大かつ異様なデザインの機体だ。装備も機体のコンセプトも現存するいかなる機動兵器とは一線を画す。強いて言えば、DCに保有する大型機動兵器に近いが、それとても比較しての話だ。
スレードゲルミルを見上げる人々には完全に未知の代物だろう。
だがそれとは別に、地球連合、オーブ、プラント……国の枠を超え三国の勢力がこうして同じ場所に立ち、共通の目的の元に何かに導かれるように集う光景は確かに、胸に迫るモノがあるだろう。その事は素直に評価できる。
だが、希望の火に心躍らせる眼下の人々を見てウォーダンは思う。未来を憂いて軍を離れ独自に行動を行うにしても、それに武力を用いる限り彼らの行いは自己の意を通す為の暴力であり、テロルとそれほどに違いはないのだろうと。
ラクスの行為によって発言力を失ったプラントの穏健派が勢力を盛り返す事は、少なくとも今の戦争が終わるまであるまい。その事はこの戦争の終結を確実に遠ざけた――少なくとも和平への選択肢を狭めてしまった。
DCの様に軍事政権の樹立を目指すのではなく、ここに集う人々は憎しみで始まった戦いを終わらせるためにここに集っている。だが政治力が極端に乏しい彼らにどこまで出来るのか。それを思うウォーダンの心は二つの思考に別れる。
何もできないとも、それでも出来る事はあるとも。
ふと自分を呼ぶ声に気付き、ウォーダンはモニターを操作して声の主を映した。ラクス・クライン。彼の主だ。どこまでも優しく柔らかな微笑みの下に、屈強な意志と清廉な志を秘めた少女。
傷ついたスレードゲルミルと共に無限に広がる宇宙を漂流していたウォーダンを救ってくれた命の恩人だ。ウォーダンは自身がナチュラルでもコーディネイターでもない事――人間ですらない事は知っている。
自分の乗る愛機が現状の地球の技術では決して造り得ない、存在する筈の無い存在である事も。
記憶を失い、己れの名前とスレードゲルミルの事など極一部しか覚えていない自分が初めて目にした世界が、ラクス・クラインだった。柔らかなベッドに寝かしつけられていた自分を覗き込むラクスの、星の輝いているような瞳を今でも鮮明に思い出せる。
スレードゲルミルに使われている特殊な装甲材“マシンセル”は、ウォーダンの肉体にも作用し、通常の人間とは異なる彼の肉体を癒し、プラントの高度な医療技術とも合わさり、通常の人間ならば何度も死んでいるような傷も順調に癒えて行った。
もっともそれで力を使い果たしのか、マシンセルは沈黙し、スレードゲルミルに刻まれた凄惨な戦いの傷跡は完全には消えずそのままになっている。
その後、ラクス本人や父シーゲルとの問答を重ね、自分が今いる世界の状況を知ったウォーダンの胸に去来したのは激しい憤りであり、力無き人々が死んでゆく世界の否定であった。
ユニウスセブンを核で焼いたブルーコスモスと報復にNJを投下したザフトの行為は、ウォーダンにとっては許し難い愚行に思えた。血で血を洗う骨肉の争いへの義憤を露にするウォーダンを、シーゲルとラクスは静かに見守った。
彼ら自身、それを行い防げなかった自分の無力を嘆き、正しい怒りをあらわにするウォーダンへの信頼を芽生えさせていたのかもしれない。
やがて、傷の癒えたウォーダンは、シーゲルの手配で、クライン派でも極一部しか知らない秘匿施設に隠されたスレードゲルミルを前に考えるようになった。
この世界で自分が出来る事、すべき事、望む事を。どこか、その心の動きが自分自身のものではなく、誰かからの借り物の様な不安を心の片隅に抱えながら。
自分自身が誰かさえも解らない自分が何を持って善悪を判断するのかと、どこかで笑っているのが、ウォーダンには分かる。そんなウォーダンに、シーゲルは疲れた様な穏やかな顔で焦らなくていいと語り、ラクスもまたその微笑みで迎えた。
彼らの心遣いに感謝しながら、ウォーダンは時折脳裏に走るノイズにも悩まされていた。DC……アースクレイドル……シャドウミラー……ゼンガー……、そしてメイ――。
そこまでは思い出せる。だが、その先は常に頭に走る痛みが思い出す事を許さない。それが、自分にとって唯一無二の価値ある存在であるという事は分るのに。なのに思い出せない。
“それ”を自分は守らなければならない。自分が存在する大きな理由であり、“自分”にとって絶対の誓い。この身に変えても果たさねばならぬ決意。だが、なぜだろう。それが思い出せない。なによりもそれがウォーダンの胸を焦がす。
自分がなにをすべきか、何を忘れたのか、ひたすらに懊悩するウォーダンを慰めたのは、何時でもラクスの歌であり、静かで優しい声だった。例え歌声が遺伝子操作で調整されたものであっても、歌に、そしてラクスに罪はない。
揺り籠に眠る幼子の様に安らかな気持ちでラクスの歌を聴きながら、ウォーダンは思った。自分が本来守らなければならないモノを思い出せなくても、“守る”という事は覚えている。ならば、今、記憶さえも失った自分が守りたいと思うものを守ろうと。
守るという事を続けていれば、いつかきっと、自分が失った本当に守るべきものに巡り合えると、愚直なまでに信じて。
だからウォーダンは守る。ラクスが唄う平和への歌を。その心が、常に穏やかな未来を目指せるように、立ちはだかる敵は剣たる己が断つ。強迫観念にも似て、ウォーダンはある日そう決意したのだ。
まあ、ラクスの行動がいささか極端すぎ、なおかつ想像の斜め上を行くのはウォーダンも否定はしない。
もし、ラクスが自身でその道を誤った時は、他の誰でもないこの自分が、ウォーダン・ユミルがラクスを斬る――その決意もまた固く胸に抱いていた。それは、ラクスも知っているだろう。
ラクスに呼ばれ、スレードゲルミルのコクピットから降り立ったウォーダンに、自然と皆の注目が集まる。それも当然だろう。目下彼らにとって最大の戦闘能力を有する機動兵器のパイロットであり、ラクスが引連れてきたザフトの兵達にとってさえ未知の人物なのだ。
ラクスの傍らで足を止め、バルトフェルドとアイシャに挟まれたキラ、生きていたニコルと肩を組んで喜びを表しているディアッカに、肩を並べているアスランも、ウォーダンに目を向けていた。
ラクスは、どこか自分の兄を自慢する妹の様に、視線を集める全員にウォーダンを紹介した。
「彼がウォーダン・ユミル。あのスレードゲルミルのパイロットです。皆さんよしなに」
「ウォーダン・ユミルだ。以後よろしく頼む」
低く錆びた男臭い声だった。鞘におさめられた刀の様な、そこにあるだけで緊張を強いる。同時に、それを聞く者に安堵を抱かせる声でもあった。この男は裏切らない――そんな気持ちになるのだ。
逞しい体駆、落ち着いた佇まい、年の頃は三十手前位か。紫色の髪の、沈黙の中に秘めたる激情を滾らせていそうだ。身に着けているのは深海の青に染めたコートと優美に沿った刀身を鞘に収めた一振りの日本刀。
「ムウ・ラ・フラガだ。よろしく、ウォーダン」
「アークエンジェル艦長マリュー・ラミアスです」
「スサノオ艦長のダイテツ・ミナセだ」
それぞれと挨拶を交わし、ウォーダンは首を縦に振り、短く答えて応じる。あまり口数の多いタイプではないようだ。外見通りの性格らしい。機動兵器乗りとして気になるのか、いの一番にムウがスレードゲルミルを見上げて、口を開いた。
「しっかしフリーダムといい、あの凄い色の戦艦といい、このデカブツもだけどさ。良くも持って来れたよな? たぶん誰も思っているんだろうけどさ、あのスレードゲルミルってのはなんだい?」
技術畑出身のマリューも気になるらしく、無言で頷き、ウォーダンに熱意を込めて視線を向けている。そんな彼らに答えたのは、ウォーダンでもラクスでもなく、エターネルから姿を見せた一人の男だった。
青髪を総髪にして後頭部でまとめた男だ。削いだようにこけた頬に、野心を鋭い光にして湛えた瞳、どこかに常に嘲りを浮かべている様な口元といい、決して好人物とは見えない風体である。
「あれは特機――俗にスーパーロボットというカテゴリーに分類される新機軸の機動兵器だ」
「あんたは?」
「イーグレット・フェフ。スレードゲルミルはおれがメンテナンスしている。どうせ後で説明するのも面倒だ。あの機体についておれの方から説明してやる。構わんな? ラクス、ウォーダン」
「ええ、お願いします。フェフ博士」
どこか尊大なイーグレットの物言いに反発する様子もなく、ラクスは頷き、ウォーダンも特に異は唱えない。イーグレットは、それを確認してからできの悪い生徒に言い聞かせるように話し始める。
「スーパーロボットとはザフトが同盟を組んだDCから流れた技術を元に造り上げた、MSとは異なる機動兵器。MSでは打破できない戦局を圧倒的な攻撃力と装甲で打ち破る、極限まで戦闘能力を追求した兵器だ」
「ちょっと待ってくれ! ザフトがDCと同盟を組んだって、いつから?」
「DCが結成する以前からだ。基本フレームや装備はあちらからの供出品だが、それくらいの期間が無ければ、ザフト製のアレンジは加えられん」
ザフトとDCが手を組んだというくだりには、ムウだけでなくその場にいる者にとっても貴重な情報だった。すでにマドラス基地での戦闘の情報は入ってきているが、つい先ほどまでザフトの正規軍だったものから語られれば、その信憑性は高いものだ。
ただし、イーグレットの言葉には嘘が混じっている。DC結成以前からザフトと協力体制にあったこと、スレードゲルミルがDCの技術を主軸にザフトによって開発されたものである、という二点だ。
これは有り得ざる兵器であるスレードゲルミルについて、イーグレットが説明する為に事前にラクス達と打ち合わせたブラフに過ぎない。スレードゲルミルの機体にDCの技術が全く使われていないというわけではないが。
「このスレードゲルミルにはマシンセルという、特殊な金属細胞が試験的に使用されている。動力にはプラズマ・リアクターを使っている。重力制御技術の応用で造り上げた核融合ジェネレーター……。
これまでは磁場で閉じ込めていた核炉心の高温プラズマを重力場で閉じ込める事で、より高効率の発電を可能としたものだ」
「か、核融合って、そんな!? それじゃあ、核分裂炉で動いているジャスティスやフリーダムよりも……」
「ふん、出力なら比べ物にならん。そうでなければこいつの真価は発揮されんからな。DCの技術はプラント・地球連合どちらも大きく上回っている部分が多いのだ」
技術者としてGの開発にも携わっていたマリューだけでなく、スレードゲルミルの動力を知った者達は誰もが驚愕を共有する。NJCを搭載したフリーダムやジャスティスでさえも今回の戦争の趨勢を握る兵器だったが、まさか核融合技術とは。
「技術的な解析は出来ていないのでな。ザフトで量産される事はない。安心する事だな。最もDCの連中は話が別だが」
「……」
イーグレットの嘲笑を交えた言葉に、誰もが沈黙する。この男の人格への反発もあったが、それ以上にDCの保有する技術が、いかに技術大国オーブを母体とするものであったとしても、あまりにかけ離れている事を実感したからでもあった。
「ラミアス艦長、ダイテツ艦長、申し訳ありませんがエターナルのクルーは皆、疲労しています。休ませて差し上げたいのですが、よろしいでしょうか?」
「……うむ。これは気が利かず申し訳ない。では、一時間後AAでもう一度集まるとしよう。わしの方からもカガリ代表に連絡を入れておく」
「ありがとうございます。ウォーダン、貴方も御苦労さまでした。今は体をお休めになってください」
「分かった」
「おれは少しスレードゲルミルの調子を見させてもらう」
そう言いきって離れたイーグレットは、思わぬ人物と機体に驚きを胸の中で殺していた。
(まさか、ハガネのダイテツ・ミナセも来ているとはな。だが、ウォーダンに対するあの反応、ウォーダン同様記憶が無いか、あるいはこちらの世界のダイテツ・ミナセか。ならば問題はない……。だが、アレはまずいか)
ちら、と資材を手に持って運んでいるMSとは異なる機動兵器を見やる。ラピエサージュだ。エターナルの接近に、一度はO.O.ランチャーを構えて警戒態勢にあったが、今ではエターナルやシュリュズベリイが搭載していた物資の再集計と分配の為に作業に従事している。
こう言う時にも人型のMSなどは役に立つ。
(ラピエサージュ。という事はアギラ・セトメのおもちゃもいるか……。折角ウォーダンの記憶が戻らぬよう弄っているのだ。面倒な事にならねばいいが)
イーグレットの視界の先では、ちょうどそのアギラ・セトメのおもちゃと評した、オウカ・ナギサと、ゲシュペンストMk−U・Sから降りた半機半人の男カーウァイ・ラウがウォーダンの元へと歩み寄っていた。
自分の前に立つ少女とサイボーグに、ウォーダンも足を止める。オウカはどこか不安そうに。カーウァイは機械の面に人の感情をわずかに滲ませる。
「あの、どこかでお会いしたことがありませんか?」
愁眉な眉を寄せて、オウカは美貌に不安の影を落として聞いた。ウォーダンとスレードゲルミルを見た瞬間に、脳裏にフラッシュバックする光景があったのだ。だが、はっと気付いた時にはもう何を思い出したのか忘れてしまった。
だから、今こうしてその男を前にしている。ウォーダンは、しばしオウカの揺れる瞳と見つめあっていたが、小さく済まなそうに首を振った。
「いや、すまんが記憶にない。それ以前におれ自身、昔の事は覚えていないのだ」
「そう……ですか。貴方を見た時に、何か思い出したような気がしたのですが」
基本的に年齢を問わず女性に優しい欧州紳士たるウォーダンは、心から済まなそうにオウカに謝罪する。彼にしても、自分を知っている者と出会う事が出来るのは、過去を、何よりも本当に彼が守らなければならないモノを見つける為にも重要な事だった。
オウカは気にしないでくださいと言ったが、落胆の色は隠せない。
二人の様子を見ていたカーウァイが、タイミングを見計らって口を開いた。
「お前……はゼン」
「ゼンガーか!?」
「……」
思いっきり間に割って入られたカーウァイは、そのまま口を閉ざした。割って入った主は気にせず、そのままゼンガーと呼んだウォーダンに詰め寄る。その声の正体は、純白の美しい衣装に身を包んだククルだった。白皙の美貌には驚きの仮面が貼り付けてある。
ウォーダンは血相を変えているククルを、片眉を挙げた困惑の表情で見つめていた。
「ぐっ!?」
脳裏に走る痛み。ゼンガーという言葉は、ウォーダンにとっても数少ない記憶の一つとして覚えている。だが、その言葉を聞いた時に沸き起こった感情は強烈な反発と否定、そして相反する肯定の感情。認める――という言葉が近いか。
頭を押さえるウォーダンに、ククルは訝しげな声を掛ける。カーウァイも、その反応を見守っていた。
「ゼンガー?」
「違う……おれは、ゼンガー、では、ない。おれ……は、ウォーダン、ウォーダン・ユミルだ。断じて、ゼンガー・ゾンボルトではない!」
「何を言っている! お前のその顔、忘れるものか、貴様は」
「待て……。君と……ゼンガーの関係は知らん、が。この世界の……ゼンガー、かもしれんぞ」
「! なに?」
「ラウ大佐?」
カーウァイの言葉に、ククルはこの男も異界からの来訪者であると悟り、オウカは理解が及ばずに疑問符を挙げる。ウォーダンとカーウァイの視線が絡み合う。ウォーダンは怪訝な光を浮かべ、カーウァイはなんでもないと言葉を濁した。
その時、ラクスがウォーダンを呼び、オウカ達に断りを入れてからそちらへ行く。ククルはまだ何か言いたそうだったが、カーウァイに止められ、親の仇を見るような目でサイボーグの男を見る。
オウカは、そんな友人の反応に戸惑っているようだった。
「君らも……別の世界の……人間か」
「オウカは記憶を失くしているがな。貴様、ゼンガーの事を知っているのか?」
「私……の部下だった。確かにあの顔と声は……ゼンガーのものだ。だが……この世界のゼンガーという、可能性も……ある。その実例も……あるから、な」
「だが、記憶を失っていては奴が私の知るゼンガーかどうかも分からないという事か……。同時に私の知るゼンガーかも知れんという事だろう?」
「そうなる……な。だが……今は様子を見る方がいいだろう。取りあえず……お互いの情報を交換した方が……良さそうだ」
「良いだろう。オウカ、お前は作業に戻っていろ。私はこの男と少し話す事が出来た」
「え、ええ」
オウカを取り残して、ククルはカーウァイの乗るゲシュペンストに記録されていたデータを見る為と話を聞く為に、その場をカーウァイと共に離れた。
ウォーダン達の様子を見守っていたイーグレットは、ウォーダンに大きな変化が無かった事に、その唇を吊り上げて満足に笑みを浮かべ、スレードゲルミルから離れてエターナルに戻る。
格納庫の奥まった場所に、イーグレットがラクスにも詳細を知らせずに積み込んだコンテナがある。扉にパスワードを打ち込み、その内部に入る。闇に閉ざされるその中にあるディスプレイに触れて立ち上げた。
これを利用する事で、初期段階にウォーダンの記憶を操作できた。あのウォーダンがイーグレットと同じ世界からの来訪者である事は分っている。そして、イーグレットの目的の為には、ウォーダンから記憶を奪っておいた方が何かと都合が良い。
もっとも、オウカ・ナギサは予想外のイレギュラーだったが。
「イレギュラーか、どのような世界であれ付き物らしい。もっともこの世界にとってはおれもウォーダンもビアン・ゾルダークも余計なものだろうがな。ふ、ふふふ。並行世界か。面白いものだ。
死んだ筈のおれがこうして息をし、お前と巡り合うことにもなった。なあ、メイガス?」
コンテナの中で更に厳重に封じられていたボックスが開き、高さ三メートルほどの金属の薔薇の様に見える物体が姿を見せる。それがイーグレットのいう『メイガス』なのだろう。メイガスは、イーグレットの言葉に答えるように蠢動した。
メイガスを見つめるイーグレットの眼には飽かぬ探究心と学問的な知を求める者が辿り着く狂気が混在していた。
マリュー達とモニター越しにカガリを加えた話合いを終え、一人エターナルの個室に戻り、ラクスはそっとベッドに腰掛けて溜息を漏らした。
淡い桜色に染まる瑞々しい唇から零れ落ちた溜息が、そのまま輝く霧に変わりそうな美しさであり、そう錯覚させる不可思議な神秘さをまとう姿だった。
ラクスはこれまでの事を思い返す。オペレーション・スピットブレイクの発動に伴い、キラにフリーダムを渡し、それが発覚したことで父と自分は国家反逆者として手配され、
結果クライン派をその影響力を失い他の穏健派の議員こそ拘束されてはいないがもはや、ザフトはパトリック・ザラの意のままに動くだろう。
だが、ラクスは知っている。ナチュラルのへの憎悪に突き動かされながら、パトリク・ザラはいまだ、プラントとそこに住むコーディネイターを第一に考えている事、コーディネイター社会を維持するのにはナチュラルと地球がまだ欠かせぬ事を誰よりも理解していることも。
「ザラ議長がナチュラルを敵と見ることは変えられなくとも、滅ぼすような事はない……。そして穏健派が力を失ったことで、ザフトの軍内は一枚岩、とまでは行かなくとも統制がより取れるでしょう」
物量でザフトを圧倒するであろう連合相手に、穏健派と好戦派に分かれた現状のザフトでは勝利は危うい。だが、クライン派が失脚しザラ派の意が通りやすくなれば、連合を迎え撃つ手筈も整えやすいだろう。
パトリックがクライン派に属する有能な隊長クラスや兵士を左遷し、無為にするような事をしないのもラクスの予想の範囲内だ。
おそらく今頃は、クライン派の大部分を掌握した自分がエターナルを強奪した事を警戒したパトリックが、拘禁していた父を一時的にでも罪状を不問にして、ザフトに残るクライン派を押さえに掛かっている頃合だろう。
なにしろフリーダムやエターネルの強奪は完全にラクスの一存によるものであり、シーゲルは一切関与していないのだから。
自分に心酔する。所謂ラクス派の兵の殆どは今回の騒動で連れてきている。プラントに残ったクライン派は父の言葉に従い、ザラ派と多少の擦れ違いはあっても共に肩を並べるに違いない。
元々プラントを守る為に軍に志願したもの達だ。戦いの終わらせ方への思想の違いから派閥が出来てはいるが、いざ地球連合の脅威が迫る現実を前にすれば派閥の違いなど瑣末なものと気付く。いや、気付いてくれると信じたい。
自分がいわばラクス派の兵を引き連れてザフトを脱走したことでザフト内に出来ていた派閥の弊害は、仮初にせよ取り除かれた。内憂外患の内、内憂はこれで何とかなっただろう。
後はエターナルを始め強奪した戦力が抜けた事によってできた穴が致命にならぬよう、自分たちが上手く立ち回り、ザフトにとって有益になるよう動かなければならない。
願わくば、戦後、自分が扇動したクライン派の兵達の罪が少しでも軽いものになる様に、英雄的な活躍が出来ればいい。それこそ“戦争を終結に導いた英雄”などが望ましい。
「もっとも、それは夢を見るのにもほどがありますわね。でも、最も罪を負うべきはわたくし」
アスランやキラに自分は言った。共に戦争を終わらせる為の答えを探しましょうと。だが、あれは半ば嘘だ。答えは出ているのだ。
少なくともラクスの中では、この戦争でコーディネイターが生き残り、またナチュラルも生き残り、いずれ手に手を取り合う未来を残す為の答えが。
ラクスが調べた限り、連合を牛耳るブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルは度し難い拝金主義者であるが、その前にコーディネイター殲滅を謳ってはばからぬ男だ。あの男が連合の黒幕である限りコーディネイター殲滅を求める声が止む事は難しい。
ならばアズラエルを持ってしても戦争の継続が難しい事態に持ち込み、決着をつける。それには中途半端な講和で手を打ちかねない穏健派の存在は害悪だ。
スピット・ブレイクが成功していれば、断然プラント優勢の条件を結べる公算も高かったが、実際には投入した戦力の八割を失いパナマこそ破壊したものの、現状では連合との講和など鼻で笑い飛ばされるものだろう。結べたとてそれはプラントの隷属を意味するものになる。
それではいけない。いずれまた今回の戦争のような事態、あるいはナチュラルへの憎悪に凝り固まったコーディネイター達が争いを引き起こし、憎悪が憎悪を呼ぶことになるだろう。
パトリックがまだ理性的でいる間に、連合のとの戦争を優位に終わらせなければならない。
その後ならば本来罪などない父は、政治的な能力と人望を買われて政界に復帰する事も出来るだろう。その時は、戦争に勝ち、勇む議員たちのいい歯止め役に徹してくれるに違いない。
今回の戦争の悲惨さは、人々に憎悪の火種を植え付けるだろうが、同じ様に戦いの生む苦しみと悲しみも教える。
既に多くの若年層の人命を失い社会の維持も難しく、種としての限界が見え始めたプラント。連合内での軋轢を多く抱え、国力こそ膨大だが、その実NJによるエネルギーの枯渇や連合内の国家間での軋轢や民族独立問題などを多く抱えた地球。
戦争に一区切りが打たれれば、互いに抱えた問題が否応なしに血を噴出して、一種の冷却期間がもたらされる。
その間に、コーディネイターとナチュラルが互いを理解しある様になるとはラクスも思わない。だが、悲惨な戦争をもう一度望むほどに互いを滅ぼそうとはしないのではと期待している。
コーディネイターとナチュラル。互いに歩み寄る歴史はあまりに短く、憎しみあった時間は長い。それでも何時かは、やがて何時かはと理解し合い、労わり合う世界が来る為にはどちらかが欠けるようなことがあってはならない。
コーディネイターもナチュラルもどちらも共に必要とし、よき隣人として笑い合える日の為に今は、現実に起きている戦争を終わらせなければ。
結局の所、ラクスは自分が『人間』を信じていないだけなのではないかと思う。ナチュラルとコーディネイターが、互いを滅ぼしあうことなど無いと信じ切れず、
プラントを導くシーゲルやパトリック、前線で戦う兵士たちやアスランを信じることが出来ずに、こうして自分を心酔する人々を率い、迷うキラやアスランに力を与えて戦わせている。
それは全て、己以外の他者への不信が根底に根ざしているのではないかと、ラクスは自分さえ信じる事が出来ない時がある。
「わたくしが動いたことでザフトはザラ派が占める事になり、クライン派の兵もまたその内に組み込まれる。これで穏健派の、わたくしという膿をザフトから出すことが出来ました。アスランが言われるがままにわたくし達に付いて来たのは、正直意外でしたけれど」
アスランはおそらく父であるパトリックがこの戦争をどう考えているのか、どう終わらせるつもりなのか、疑問に思い、プラントに戻ったのだろう。
パトリックの真意を知るラクスからすればそれは要らぬ心配だったわけだが、ジャスティスを伴わぬアスランの帰還は、彼の立場を悪くするものだった。
だから、ラクスはザフトを脱走したクライン派が、議長の息子であるアスラン・ザラを拉致し、ザラ派に不利な情報を得ようとした、乃至は勧誘しようとしたと印象付ける為にダコスタに『アスラン救出』を依頼した。
理想的には、ザフトを離れるラクス達にアスランが反発し、一人プラントに戻る。そうして彼のザフトへの忠誠をパトリックや兵達に印象付けて、彼が拘束されるような事態を緩和する事に繋げたかった。
父の元へ真意を問いただしに戻るくらいだから、アスランもこの戦いで多くの事を学び、自分なりに戦争への結論を出しているのだろうと思い、それを試す為にラクスは共に戦争を終わらせる為の答えを探しましょうと言ったのだ。
当然、アスランは自分の答えを――それがザフトへの忠誠でも、プラントを守りたいという言葉でも構わなかったし、ラクス達を否定するものなら尚良かった――ラクスに対し決然と言い、同道するかプラントに戻ると思ったのだが……。
が、返ってきた答えは『ああ!!』だ。これには参った。
その時は微笑を浮かべていたラクスだが、内心では一瞬凍りついていた。『ああ!!』ってあそこまではっきりと言い切ると言う事は、アスラン、ひょっとして明確な答えは出していない?
じゃあ、これは間違っている、なには正しくないとただ否定するだけで、こうするべきだ、自分が出した答えはこうだ、というものは特に持っていなかった?
凛然と自らの意思でラクス達との決別をアスランが口にしていたら、アスランがプラントに戻るのを止めるつもりは無かったが、まさか本当に答えを探している途中だったとは。
キラが助けに駆けつけた事も驚きだったが、アークエンジェルやオーブを脱出した艦艇が居るのはさすがにラクスにも予想外だった。
カガリと共に、ウズミの遺志を継いでオーブを再建しようとする彼らも、この戦いの作り出した憎悪の連鎖を断ち切る為に集い、答えを探しているのだという。
カガリはある程度明確な目的意識を持ち現実に向かっているが、ラミアス艦長やキラ達は、まだ目的が抽象的で具体的な行動に移るほどではないと思う。
良くも悪くも同じ意見を出すもの同士でより固まってしまったのが、彼らの視野を狭めてしまっている。そういう意味では、古狸達と日夜舌戦を繰り広げるカガリの方が世界というものをよく実体験しているだろう。
自分は、そんな彼らもまた利用しようとしているのだ。ラクスの真意を知る者は、ニコル、ウォーダン、イーグレット、おそらくバルトフェルド薄々も気付いているだろう。ニコルは本来DCへの参加を考えていたようだが、ラクスの話を聞き、力を貸してくれた。
彼には本当に感謝している。
「平和の歌姫などではありませんね。でも、私は……少し疲れてしまいました」
人知れずついた溜息は、重く部屋の中に残り雰囲気を澱ませている様にラクスには思えた。
人前なら保てる、飾られた自分も、一人きりになれば重たく苦しい虚構でしかない。だが、一度でも人々をそれで動かしたなら、最後までたとえ虚構であってもそれこそが真実の自分でなければならない。
分ってはいても、やはり苦しく辛い事に、ラクスはもう一度だけ溜息をついた。そのまま、ぼうっとベッドに腰掛けていると、部屋のドアが横滑りに開いて、ウォーダンが顔を見せた。
ラクスはいつもとは違う微笑を浮かべていた。苦しくも辛くも無い笑みだ。
「どうかなさいましたか?」
「疲れているのではないかと思ってな。砂糖は勝手に入れたが、飲むか?」
「まあ、ありがとうございます」
と、ウォーダンの差し出したカップを受取り、マンデリンの香りを楽しむ。居住ブロックなので、無重力の宇宙でも重力は働いている。
ウォーダンは自分の分のカップ片手に壁に背を預けていた。無意識の動作であって、別にどこかの燻し銀を真似たわけではない。
「バルトフェルド艦長の新作ですの?」
「食堂のだ。艦長の趣味の理解者は少ない」
「ふふ、そうですわね。相変わらずブラックなのですか?」
「甘いのは嫌いではないが苦手だ」
屈託無く笑うラクスに、言葉短かにウォーダンは答えて、黙ってブラックのコーヒーをすする。少なくともコーヒーの嗜好に関してアルベロとは馬が合わないらしい。
ラクスは微笑を深くしてウォーダンの様子を見守り、やがて自分のカップに口をつけた。喉を通る温かさに、疲れが少し、春の陽気に解ける雪のよう消えてゆくのを感じた。
え〜〜、変なラクスが産声を上げました。どうにも納得いかないので書き直すかもしれません。
何を言わせたいのか、自分でもよくわかりません……。なんというか、ごめんなさい。
え〜と……色々浮かぶのはあるんだけど……新シャアのデフォから離れたラクスっすね。
隻腕さんとこのラプラスデーモン+ファティマを2で割ったのに続く超人系……か?
ここにはあってるのかもシレン……刀+27をちょうど無くしたところ……ますます関係ねぇw
ま、面白そうだからいっか。
貧乳二号(ノーマル)もRのタイムスリップネタで無事回収だろうな
乙です。
ピンクについては、新シャアで言われ続けてきた何も考えてない、
敵はすべてデストロイなキチガイテロリストの、無自覚に精神的に汚い部分を意図的に取りのぞいた、と言った感じがしまつた。
悪いとは言わないけどピンクとしては違和感がある可は否めないが、結局は読者次第なんじゃ??
いつものアホラクシズよりゃマシだ。この一点だけで期待できそう。
……ま、ピンクメイガスフラグも立っちゃったけど面白くできそうだしおk……
↓以下これに対する非難レスが集中
偽親分の覚悟にwktkしたところでこの明晰桃色かい。良くも悪くも予想を裏切られて期待が高まらざるを得ぬ。
獅子身中のフェフが現れたし、波乱の種は尽きないな。
メイガスがアストラナガンの力を完璧に使えるって事になると、ガチ無限力を使えるって事に…
>>117 アストラナガンはα出てきたもの「だけ」です
同一存在は存在しないとスタッフも言ってますよ
今は時期的にディス・アストラナガンなんだろうけど。
メイガスってアストラナガンのはいってないアウルゲルミルっぽいな
変わりにシズラー黒を入れてみようか
ビアンSEED氏GJ!イーグレットとメイガスも来てるのか色々やばいなぁ。
ラクスの変化については、今のままじゃ違和感あるから、何か理由が有れば良いと思う。
バルシェムシリーズのキャリコやスペクトラも来れるちゃ来れるんだよなぁ。
しかし…ここの半黒ピンクでさえ舌を巻かせるアスランのヘタレと流されっぷりには脱帽
キラもそうなんだろうけど(流され&ヘタレ)
ここの覚悟完了ラクスがシン達聖十字軍と逢ったら双方どんな感想を持つんだろ…
展開によっては共闘する場面も色々有るだろうし、結構気になるな
ラクスの方針は、プラントを一枚岩にして、自分達は独自に戦力築き上げてそれをフォローし、連合をフルボッコするって事か
しかしながらフェフの存在によって、その机上の論理が崩されていきそう
後やっぱ他勢力に比べて連合に人材が足りんよなあ
物量では圧倒的というのは繰り返し描かれてるんだけど、
やっぱり名有りでそれなりの能力を持っているキャラがもう少しいないと、今イチ強大さが実感できない
圧倒的な物量を表現したいなら人材はともかく人口はいっぱいいそうなユーラシアか東アに
ODEシステムを持たせてみるかい?
死んだかは不明だけどアインスケだせば超回復するゾンビダガー部隊が作れるぞ
フェフのDCとザフトが以前から手を結んでいたという嘘が後に問題になりそうだ
>>119 ベルゲル素体 量産型ヒュッケバインマークU
スレゲル素体 グルンガスト参式親分仕様
だったよな確か
アウルゲルミルってアストラ以外に元になった機体ってあったっけ
アウルゲルミルのは、「アストラナガンと思しき残骸」のティプラー・シリンダー突っ込んだだけ
だからアストラナガンが素体って訳じゃない
……事になってるんだよなぁ、今。
CEにレラとかエミリアとか転生してないかなぁ。
>>130 いやアストラがただのオプションなのはわかってるよ
連合といえば、ナタルさんはこの話だと生き残れるんだろうか
今のところスパロボでもWでしか助からなかったしなあ
αでナタルがブルコス派に行ってしまうのは不自然だったな
原作じゃ連合自体がブルコスに侵食されてたから命令を固守する性格から仕方ないと言えたが
α世界じゃ連邦軍の保守本流は銀河殴りこみ艦隊なのに
134 :
93:2007/09/02(日) 23:50:46 ID:???
差し迫るガイアに対して、紅のザクは弾幕を張り続ける。
背部換装式の『ウィザード』に搭載されたレールガンやミサイルポッドなど18メートルクラスのMSおいて過剰ともいえる程の砲身を備えたこの機体に対して
高機動による白兵戦を得意とするガイアは、敵機との距離差も相まって自らの得意とするレンジに持ってこれず、けん制しつつ回避に専念するしかなかった。だが裏を返せばルナマリアはガイアに対し致命的なダメージを与えては居ないという事を意味していた。
「「ええぃ、鬱陶しい!!」」
一進一退の攻防が続く中、奇しく二人のパイロットは相対する敵に対し同時に全く同じ感想を述べていた……
(このままじゃらちがあかないわ……)
いい加減弾薬も怪しくなってきた、そろそろ勝負を決めないと味方のバックアップどころか弾切れになった所を目の前の敵機にやられるがオチになってしまう。
ふと、ルナマリアは先日組み込んだあるプログラムを組み込んだ事に気が付いた。ソレは当人からすれば荒唐無稽も良い所なのだが、享受した本人からすれば「使いどころは必ずある」だそうだ……
「ダメで元々……やってやろうじゃない!!」
ルナマリアは手元のコンソールから特殊行動パターンのプログラムを起こすと火器管制システムの標準調整をオートからマニュアルに変更する。
「さあ……来なさい!!捩じ切ってやるわよ!!」
その覇気を感じたか、はたまた弾幕が止んだことを好機と感じたかのか、ガイアはその姿を四肢獣に変え、ウイングから青白い炎を引きながら突撃した。
「『緑撃破プログラム』!?なんすか?コレ」
なんともネーミングセンスの無いそのプログラムの入ったディスクを持ちながら、ルナマリアは自らの前を歩く女性に問いかけた
「まぁ、もっときなって!!いつか必要になるから」
褐色の肌の女性は人懐っこい笑みを湛えたままルナマリアの前を歩いていく。
ミネルバに乗艦する直前にカーラと名乗る女性に呼び出されこのアーモリーワン第六工場ブロックに来たのは教導隊との演習お終えて直ぐの事であった。彼女は彼等教導隊直属のパイロットであり、
主に砲撃戦のデータ収集と火器システムの構築を任されているという。
「でもあたし、MSでの射撃……あんまり得意じゃないですし……」
ルナマリアは何故自分が選ばれたのか疑問だった。彼女は士官アカデミーでも優秀であったが、事MS搭乗時の射撃センスは、お世辞でも良いとは言えないものであった。
しかし、その他の技能で彼女と同格もしくは上回るパイロットは同期の中では、シン・アスカとレイ・ザ・バレルのみであったことも又事実であった。
ルナマリアの疑問を聞き終えた後、カーラはルナマリア自身の操縦データを見た。
「で、ルナマリア。あんた……『生身での』射撃の成績はどうなの?」
何かを含んだ口調でカーラが問いかけた。
「自慢じゃ無いですけど、アカデミーではトップでしたよ」
「じゃあ才能はあるわけだ……」
ふとカーラが立ち止まる、気が付くとルナマリアの目の前には巨大なゲートが聳え立っていた……褐色の女性はルナマリアに向き直る。その顔は先程とは打って変わり、真剣そのものである……
「もし……あんたがこれ以上の力を欲しがるなら、ココを開ける。そうすれば、アンタは力を手に入れられる。多分『アンタが大切に思っている人』を守ることが出来る……」
先程とは違う彼女の雰囲気にルナマリアは無意識に唾を飲みこんだ。気が付くと、扉のその奥から異様なプレッシャーを感じていた。
「でもそれは、アンタが背負える以上の重さを持っている……この重さに耐え切れるかは、あんた自身の強さと、アンタを支えてくれる人間の多さに懸かっているんだ、」
「…………」
「アンタはコイツを使いこなすことが、出来るかい?」
「あたしは……」
ルナマリアはただ一言だけ言い、その言葉にカーラは満足したように微笑み、扉を開いた……
135 :
93:2007/09/02(日) 23:51:59 ID:???
「来たわね!!」
ミネルバMS隊に所属するザクの背負った『EXウィザード』は各パイロット用に調整された専用のバックパックである。コレはパイロットの適正、要望などから最適とされる武装を選別し、各員のスペックを最大限に引き出すのを目的とした試作装備である。
目標との相対距離……四百
システム起動……コンデンサ容量、作動範囲内
ルナマリアの『EXウィザード』は遠距離からの直接砲撃支援『ダイレクトサポート』に特化した物である。MSの背中を甲羅のごとく覆うこの装備は、6つの火砲を器用に折り畳んで詰め込んだ正に弾丸と砲身の塊とも呼べる代物だ。
当然、ザク自体から得られる出力も限りがあるため、機体各所に増槽とスラスタを追加し若干のカスタマイズされている。
距離……三百
プログラム……起動!!
6つの砲身を構えた巨人の単眼が紅く染まり、肩のミサイル発射筒から白煙が吹き上がる……その数六つ、飛び掛る瞬間の出鼻を挫かれたガイアは人の姿に戻り、頭部のバルカンを巧に使い迎撃してゆく。
「かかった」
その瞬間、ルナマリアは勝利を確信した。
彼女から預かったプログラム……それは所謂「流し撃ち」のデータである。
ミサイルを予め想定したパターンで飛ばし、敢えて逃げ道を作り上げておく
そして相手が進路上に入ってきた処で……ルナマリアは引き金を引いた
136 :
93:2007/09/02(日) 23:53:07 ID:???
ステラの駆るガイアの異変と、パイロットの悲鳴をいち早く反応したのはスティングであった。それが彼の災いであり、彼の命を救った要因でもあった。
スティングはステラの声を聞いた瞬間一瞬だけ機体を向けた
だが、そこにあったのは機体を醜く凹凸にされたガイアの姿であった……
思わずステラの名を叫ぶスティング、その直後、彼のカオスの背面を閃光が掠めていった
「つっ!!」
視線の先にロングライフルを構えたままの白いザクはモノアイを妖しく光らせながら、薬莢型のカートリッジを排出した。
「……上等じゃねぇか」
カオスはビームライフルを連射しながら機体の背部にある自立機動ポッドを射出した。
トリッキーな動きで攻撃するポッドに対し白いザクは的確に攻撃を回避しながら機械の様な正確さで反撃を繰り返す……
「コイツ……ホントに人間かよ!?」
今更ながらスティングは相手のパイロットの反応の速さにある種の恐怖感を覚え始めていた
「こうなったら一か八かだ!!」
そう決心すると、ポッドを直接相手に当てるコースを取った。対するザクは回避しようとするが、
反対側から現れたポッドの体当たりを喰らい、大きくバランスを崩す……
「取った!!」
破壊されるポッドを盾代わりに至近距離まで近付いたカオスはシールドとライフルを捨てて
腰のラックからビームサーベルを両手に構えそのまま大上段の構えのまま一気に振り下ろす。
いや、『振り下ろそうとした』といったほうが良いか……
カオスのコクピットの前面にビームの刃が形成されていた。白いザクの構えたライフルの銃口の下から銃剣のごとくビームサーベルが突き出ていた。
互いに一歩も動けぬ状態が続くと思われたその時、一本の閃光が二機の間を割った。
「ネオか!!」
「スティング、ステラを連れて撤退だ!!」
「でも!!こいつらを野放しにしておくのかよ!!」
「返り討ちで全滅……なんて格好悪いだろ。安心しろ、例の作戦が第二段階に入った。コイツらとはそこで決着をつければ良い!!」
なおも食い下がるスティングに対し、ネオは安心させるように言った。
「……判った」
よし、良い子だといわんばかりの笑みを返すとネオは通信を切った
「全く……ザフトもトンでもないものを作ったよなぁ」
アシュセイバーのコクピット内でネオはひとりごちる。彼の愛機の左肩はごっそり削げ落ちていた。
先程スティングを援護した瞬間の一瞬を付かれ、あの新型の巨大な太刀でやられたものであった……
アンカーに捕縛された時はさすがの自分も二度目の死を感じてしまった……あと一瞬遅れていたら真っ二つなっていたのは間違いない
「ふっ、くくく……ふふふははははっ!!」
しかしネオの胸のうちにこみ上げてくるもに恐怖はなかった。其処にあるのは戦士としての高揚感とこの機体と自分に立ち向かうあの機体とパイロットに対する興味である
「さて、楽しくなってきた!!」
内なる高揚感を曝け出しながら高らかに笑いあげるネオは機体を母艦に向けた
「逃げたのか」
小さくなってゆく光を見つめるシンは、小さく息をつくとサブモニターを見た。機体と斬艦刀のエネルギーは無に等しい状態である。もしこのまま続いていたら、
エネルギーの尽きた自分の負けは確実であっただろう。
いや相手がドラグーンに集中した時に仕留め切れなかった自分の未熟さか、とシンは自嘲した。
結果的に、敵の逃亡を許しあまつさえ味方を二機に失った自分たちの敗北である。シンは近くに漂う敵の左腕を掴むと、ミネルバに帰還した……
DCとザフトが以前から手を結んでいたという嘘が後にアスハ派やキラ、アスランの大暴走につながりそうだ。
エリカがDCにいるということは、ムラサメはできないということになるのだろうか。
138 :
93:2007/09/02(日) 23:57:02 ID:???
Another side
雷の舞う豪雨の中を鳥が飛んでいる……
神話の時代に棲むような巨大な鋼の鳥は背中に鋼鉄の騎兵を乗せたまま大洋も東へ渡ってゆく
その後方を二機の機体が追う……白い機体と青い機体の二人の巨人。
白い機体は空から、青い機体は海からそれぞれ巨鳥『ウィングガスト』を追い続ける……
「きゃあっ!!」
追ってからの攻撃と時折降りかかる稲光に身を竦める少女を後部シートに乗せたまま、イルムは鬱陶しいこの状況を神に感謝していた
「やっぱりアレか?あの子と内緒でアドレス交換したのが良くなかったのか!?それともあっちの子と食事をしたからなのか?そうなのか!?リーン!!」
「何ぶつぶつ言ってるんですか!!それより如何にかしないと……」
機体の上に乗るダガーのコクピットからツッコミが入る。彼のダガーはしばし後方を向いてライフルを撃つが、空中を自在に動き回る敵には余り有効打に至らない。
「くそっ!!見つからないように悪天候を飛んだのがアダになったか」
イルムは小さく舌打ちをすると、センサーがアラートを報告した
「氷ぃ!?」
「ぶ、物理学的にありえませんよ!!」
見ると、白い機体の周囲から氷の塊が出来ている……摩訶不思議な現象にキラは半パニックに陥っている
「落ち着け、世界には馬に変形するロボットだって、居るんだぞぉぉぉ!!」
叫びと共に押し寄せる氷塊を超絶な軌道で避け続ける。
何とか抜けきった瞬間、今度は青い機体が海面から飛び上がり両手から赤い刀身を発露させ、ウィングガストの正面から切り込んできた
「イルムさんっ!!」
ライフルを捨て青と金の装甲板を蹴る。キラの紺色のMSが二機の間に割り込み刀身が機体に接触する直前に腰のビームサーベルを抜き放ち相手の刀身を受ける
「このっ!!」
パワーは向かうが上だと判断したキラはとっさにダガーは敵の胴体に蹴りを入れる。すかさずバランスを崩し、海面に叩き落される青い機体。
キラはブーストを吹かし再びウィングガストの上に乗る。
「畜生、これじゃあキリがねえ」
「イルムさん、僕に考えがあります……」
そう言うとキラは自機を後方に飛ばし、そのままブーストしたまま後退させる直後に凄まじいスピードで後方から二機の追跡者が自分を追い越してゆく……
互いに音速に近い速度で鬼ごっこをしていたのだ、機体が後退すれば離される速度は速くなる!!
「「!!!」」
キラは意識を集中させる。とたんに視界がクリアになり、敵と味方の位置、予想される進路、そして「どこをどう撃てば確実に殺せるか」まではっきり理解できるようになった。
超絶な速さで敵を捕捉すると、腰部のホルスターからイングラムタイプの形状のビームマシンガンを2丁取り出しそれぞれフルオートで連射した
虚を突かれた形の二機はビームの嵐をもろに受ける形となってしまったが……
「そんな……あれだけのビームを受けて、ぜんぜん効いていないじゃないか!?」
すぐさま二機は同時に反撃に講じようとする、が
「ブゥゥゥストナッコォ!!」
またも後方から巨大な拳が襲った。
二機は空飛ぶ鉄拳をかわすと、その方向からウィングガストがを追い越しキラを回収すると、そのまま東へと飛び退っていった…
139 :
93:2007/09/02(日) 23:58:25 ID:???
「逃げられたか……」
白い機体のパイロットは氷のような冷たく、美しい声で呟いた
「これがラストチャンスな訳じゃない、そう悔しがるな」
青い機体のパイロットはそんな相方を労るように応じる
「だが、再び合うことが確定されたわけでもな。なぜそんなに落ち着いていられるのだ?」
「何故だろうな……俺にも良くわからないが、彼らとはまたどこかで合間見えるような気がするんだ」
疑問を含んだ問いに男は悟るように言う
「ジョシュア……人間は不思議だ。不確定事項を何故そんなに信用できる?」
「ラキにもいつか解るようになるさ」
「そうか……ジョシュアが言うのなら、きっとそうなのだろう」
それだけ言うと、二機はきびすを返し彼らとは異なる方向に飛んでいった。
雨はすっかり止み、雲間から太陽が顔を覗かせていた……
140 :
93:2007/09/03(月) 00:00:31 ID:???
投下終了
ちょっとPCが見れない場所に言っていたらもう三スレ目……
次回はついに親分VS……
ィやっっっっほぉぉぉぉう!!
「ザ・常識人」J・ラドクリフが魂の伴侶とついに来たぁあああア!!
ウホッ
久々のイルム話ごちそうさまです。
更にはDキャラまで来てますます楽しみですよ
>>141 嫉妬に燃える愚妹が後を追ってきそうだw
>>143 追って来るも何もジョッシュの機体的にアレは魔女に乗って来てると思うが……
>>144 愚妹は白雪姫じゃないか?ジェノサイドクロー赤くないし、ホバー移動っぽいし。
両手に格闘用兵装を持った青い機体だしガナドゥールじゃね?
実は小型化に成功した青マンボウでした
ビアンSEEDさん。
ラミア(AVer)&アンジュルグ(DCというかビアンによる大改修ヴァルシオーネ化)
リョウト&リオ(第三次α経験Ver)真・龍虎王付きの登場希望します。
OGSVerの二人も登場したら、なお面白いかもしれないですが…一発ネタにしか使えないうえに
考え無しにDCと敵対しかねないのでいまのは無しで
そういう希望さぁ、見てて苛つくんだよねぇ。
リアロボ戦線のグレンこないかなぁ……デュプリケーターの破壊とともに消滅したと思いきや、
ブランチだった両親のオリジナルがCEに居たとかそんな設定で。
>>150 出たらコバヤシさんも来てる可能性があるな
ジョージの隠し孫とかでムジカ出れへんかな
当然ジョージフェチで
ビアン氏のラクスについて違和感感じるって言う人がいるけど、脚本がちゃんとしてたらこういう考えをもっても不思議じゃないと思うのは俺だけ?
みんな種死の惨状を知っててその上で話してる節がある気がする。
15で成人とはいえ、たかが16、17のガキが我が物顔で世界に干渉しようとしてること自体、違和感あり杉
昔でいったら元服間もないころだからなと思った
プラントの成人年齢、元服をイメージとかって言ってなかったけ?
実際は、精神未成熟過ぎてダメダメだったけど。
所詮イメージだから、作る側がそれを理解してなければイメージしてても内容が追いつかないよ
>>149 でも、ラミアは来てほしいかも。
できればDC側。
イーグレットはOGSのほうらしいですね。
実際問題として、OGSからのキャラとほかのスパロボの同一存在がかちあう展開はあるんでしょうか?
>>148 リョウトとリオは死んでないだろ。
それにリョウトやリオが乗るならボクサーとかガンナーだろ…真・龍虎王なんぞ勿体無いにも程がある。
って言うか、リョウトなんてバンプレオリジナルキャラの中でも全然人気無いし…
俺自身、リョウトは嫌いだから存在自体無くて良い…
一番人気ねえのは鰤だろ常識的に考えて・・・
>>161 毎回拉致されたり洗脳されたりして「王子様」クスハに助けられる「お姫様」だぞ
ネタキャラとして大人気じゃないかw
OGじゃクスハの方が拉致洗脳されてたがしっくり来なかったなw
ある意味でαとOGで一番人格違うのがクスハだからな
OGの方は本当に大人しいけど、αの方は温厚だけど何事にも積極的で肝が太い
クスハ汁以外に共通点がないw
拉致洗脳といえばエクセレンって毎回じゃ…
鰤はクスハの相方だから出番があるだけって印象が強いな
>>160 ヒュッケVのイベントがあるあたり、リョウトは愛されてるキャラだろう。
というかキサマのその発言はヒュッケ好きの俺に対して喧嘩は売ってるのか?
167 :
160:2007/09/04(火) 10:06:20 ID:???
>>166 あれは、どう考えてもリョウトが愛されてると言うか、ヒュッケが愛されてるだけだと俺は思った。
それと…喧嘩を売ってるわけじゃないぞ。
俺自身ヒュッケは好きだ……真・龍虎王とかグルンガストみたいな特機の方がもっと好きなだけだから気にせんでくれ
ヒュッケは紅茶な俺
え?なに?OGsならレイヴンがあるだろうって?
知るか。それでも俺はヒュッケに乗せる
別にリョウトが嫌いなわけではないが
うちの紅茶の人は相方と一緒にRガンナー乗ってたな。
リョウトはMkVLボクサーで何故かゲシュMkUSに乗ったリオの魂係になってたな
170 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/04(火) 11:18:15 ID:CGnGueam
スレ違いかもしれませんが、新ゲ最終回直後の流竜馬はどうでしょう。一応
スパロボキャラと思うのですが。
>>164 エク姉はヒロインポジだからある意味当然
鰤だからネタになる
α1当時は鰤が洗脳された楠救う展開もありえたんだが
α2以降クスハ主人公が正史になってそれは黒歴史になっちゃったw
うーん…なんか最近職人さんに注文ばっかつける人が多くなってきたかなぁ…
単純な願望ならまだしも今じゃ立派な注文になってる。
あんまり注文つけてそれをなんとかしようとして停滞とかしたらどーすんだよ…
職人がしっかり無視すればおk
>>168 俺はヒュッケボクサーは紅茶だったな。
いきなり気迫で分身&Gソードダイバーできるし。
ってか紅茶をガンナーに乗せるって話はちらほら聞くけど
ヒット&アウェイがあること以外ガンナーに向く要素ってないような気が…
ちなみに気力が上げにくくてしかたないリョウトが速攻で2軍落ちした…
OG1では覚醒メタルジェノサイダーの鬼だったんだけどな、リョウト。
>15で成人とはいえ、たかが16、17のガキが我が物顔で世界に干渉しようとしてること自体、違和感あり杉
散々『広告塔』として利用させられれば鬱憤も溜まる→逆襲度が1上がった
アスランやシーゲルのようにパトリックが徹底抗戦での破滅へ進んでると思った→反逆度が1上がった
『広告塔』としてのカリスマ、『道具』として『親の威光』として権力がある事は理解出来る年→実行度が1上がった
若気の反抗期と正当っぽい理由→一気に100上がった
まあ【和平派は絶対無理・徹底抗戦で破滅一直線しかない】状況(と判断)で、自分の動きでなんらかの手が打てるかも知れないと考えるなら考え無しでもしょうがない
種時代ならまだラクスの行動は無茶無謀だけどありだと思うがね
だがこんだけ考え抜いてるラクスってのもいいなぁ
>>175 紅茶の人はガンナー向きだと思うけど、本人がH&A持ちで相方が突撃持ちのうえ
ガンナーなら常時恋愛補正発生でダメ増加するし
欠点はまあバリア貫通武器がないことくらいか、でもこれは直撃持ちと組めば補える
第二十五話 邪念渦巻く世界
宇宙で希望の種達が一所に集った頃、地上のビアン・ゾルダークにとっての希望達は――。
「うわああああ!!?」
シンは顔一杯に脂汗を浮かべて眠っていたベッドから飛び起きた。かつて見た悪夢がまた再発している。これまではDCを――なによりも家族や友人を守る為の戦いだった。
だが、マドラス基地への攻撃は違う。少なくともシンにとっては違う。あれは守るための戦いではない。敵を打ち倒し、戦争に勝つための戦いだった。戦っていた時は良かった。生き残る事で精一杯で、自分が何をしているか深く考えなくてよかったからだ。
でも戦いが終われば違う。自分が何を撃ち、何を敵とみなし、何を奪ったのか。それを考えてしまう。かつてスティングの言葉とステラのぬくもりに癒された罪の意識が、戦いを終えたシンの胸で蘇っていた。
一晩明けて眠りから覚め、シンは吐いた。自分が人を殺した事を理解した日の様に。それでも、自分がこれからも戦い続ける事を、人を殺し続ける事を理解してもいた。戦う事を選らんだのだ。
今更踏み出した足を引く事が出来ようか。そこまで考えて、なぜか、悲しそうな顔をするステラやマユの顔が脳裏に浮かんだ。
ビアンは、“これ”を見越した上で、自分を戦争に導き、それでいながらシンが戦場に出る事を悲しんだのだろうか?
だが、もうシンは手を血で染めてしまった。いや、染めたのだ。自分の意思で。だったら、奪ってしまった命に対して報いなければなるまい。失われた命以上の価値があるモノを掴むまで、この歩みを止めるわけにはいかない。
十四歳の少年が抱くには、あまりに血に濡れた、悲壮な誓いをシンは胸に刻んでいた。
粘っこく思える汗をぬぐい、シンはシャワーを浴びてから、壁に立てかけてある長さ90センチほどの木刀を握った。
木刀“阿修羅”を握る掌を通じて、体の中に入ってくる清涼な感覚にシンは寄せていた眉間の皺を緩めた。それだけでそれまで体と心に残っていた悪夢の余韻が引いてゆく気がする。
ブンと音を立てて一振りする。まるで体の一部の様な、馴染んだ感触。体を動かそう。そうすれば少しは気分も晴れるさ、そう思いシンは阿修羅とタオル片手に個室を出た。
畳敷きの道場もあるトレーニングルーム目指して歩いていると、客人であるルナマリアとレイを連れたステラ達と出くわした。
規定の訓練をこなす為に、ちょうど連れ立って出かけてシンに声をかけようとしていたようだ。トレーニングウェアに着替えて素足で道場に立ち、シンは静謐な雰囲気に呼吸を整えて、ゆっくりと吐き出す。
シンの相手は、ステラだ。レイとスティングは少し離れた所で自分達の訓練を始め、ルナマリアとアウルは二人並んで自分達を見ている。ステラは、ぼ〜、としている様に見えて、不必要な力を抜き切った理想的な自然体だ。
木刀を与えられてからの特殊な訓練を始める前はやる気があるのだろうか、と思っていたシンだが、今なら目の前のステラが、確実に獲物をしとめる為に走り出す瞬間を待ちかまえる女豹に等しいと分る。
青眼に構えた阿修羅から掌を通じて体の全細胞に染み入る力に、シンは静かな喜びを覚えていた。前時代的どころではない木刀などと言う代物を渡された時は正直困ったものだが、今こうして訓練を重ね、力を得る実感を覚えると喜びが胸を占める。
体内に存在する七つのチャクラが、音ならぬ音を立てて旋回し頭頂に存在する『王冠』のチャクラが、宇宙から降り注ぐエネルギーをとりこんでシンの細胞に霊的なエネルギーを注ぎ込み、人体の限界を超える力を与える。
純粋化した人の思念は物理法則を凌駕し“奇跡”を可能とする。ビアン・ゾルダークが招き、シンの剣術の師となったイザヨイ某がシンに課した修業の到達点であり、イザヨイが学ぶ流派の極意である。
別段大した事ではない。あまりの苛烈さに口から内臓を吐き出して、血塗れ砂まみれのそれをまた口から戻して修行を再開する位の訓練を積めば、大抵の人間は出来るようになるらしい。
閉じていた瞳を開き、裂帛の気合いを無言のうちに秘めて、シンは阿修羅を振り上げ迷う事無く振り下ろす。
「はああ!」
「えい」
「ぎゃっ!?」
気の抜ける掛け声とともに、ステラの繰り出した右フックがいい感じでシンの頬に突き刺さった。
……先程の力が満ちる感覚はシンの勘違いだったらしい。ステラの右フックをもろに食らったシンはそのまま二、三回回転して床にどさりと崩れ落ちた。
「シン、弱っ!」
ルナマリアの容赦ない評価に、アウルはうんうんと頷いていた。シンがDCに加入してから受けた訓練はほとんどMSの操縦であり、その為の体力作り位はしていたが、本格的な格闘訓練などは今だし、である。
剣術の訓練で多少はましになっていたが、もともと強化人間として狂気の訓練を施されていたステラに叶うレベルではない。
「まー、いいんじゃないの? 生身はひょろくてもMSは動かせんだしさ?」
一応擁護するあたり、アウルもシンの実力は認めているのが分かる。無論、アウルもステラに負けず劣らずの生身の戦闘能力を持っている。
床に伸びたシンを、ステラがつんつんと指で突いていた。シンの手から離れた阿修羅が、無造作に転がっている。少し離れた所では、レイとスティングが白い道着を着て、ジュージュツと呼ばれる極東の国で発祥した体術の訓練をしていた。
力に頼らなくてもそれを意図的にコントロールして、大の男も手玉にとれる不可思議な技、というのが大抵の人間の認識だ。それほどのレベルに達した達人は絶滅危惧種ではあるが。
ルナマリアの快活な性格もあり、ザフトの新兵達とタマハガネの幼年組とのコミュニケーションはおおむね問題なかった。最新鋭の戦艦であるから、収容したザフトの兵達の行動にはある程度規制が設けられていたが、便宜は十分に図られていると言えるだろう。
その内息を吹き返したシンは、もう何度目になるか分からない敗北に、頭を抱えて道場を転がりまわった。素質はあるので数か月鍛えればかなりの腕になると周囲は見込んでいるが、今は弱っちいのだ。
焦っても仕方ないが、あまりのんびりと構えていられる性格ではない。阿修羅を拾って構え直し、もう一回! とステラに挑みかかる。またすぐぼこぼこにのされるだろう。
ルナマリアは懲りずにステラに挑むシンを、呆れた顔で見て、隣のアウルに聞いた。
「男の子ってああいうもの?」
「そういうもんじゃねえの? まあ、シンは格別負けず嫌いだけどね」
肩をすくめてアウルは笑いながら言った。レイとスティングは互いに膝をついた姿勢で、それぞれの道着の裾をつかんでじっとしている。この二人は、自分達だけの世界に没入している。シンやステラのやり取りは気にせず彼らなりに集中しているようだ。
「うおおお!」
「えい」
「ぐえ」
今度はシンの顎に、ステラの掌底が叩き込まれた。見事な放物線を描いてシンはもう一度床に叩きつけられた。まだまだシンは弱い。だが、それはこれから強くなれる弱さだった。
収容されたザフト兵を纏めるイザークは、エペソと時折話を重ねながら忙しく機体や人員の扱いに頭を捻っていた。同盟相手とはいえ、他国の軍勢であるからしてそうそう自国の兵器に触れさせるわけにはいかない。
まあ、タマハガネに収容されているのはジンやシグーといった民間にも出回っている機体だから今さらという感はある。イザークのデュエルとてそも開発に携わったモルゲンレーテを吸収したDC相手では、殊更に隠すようなものは無い。
今日も今日とて傷ついた兵士達の様子を見て回り、自分より年長で白服の者も居たので指示を仰ぎ、またいろいろと相談している。ここ数日で今までに無い経験が積む事が出来、いずれ隊長として貴重な経験となるだろう。
そんな日々を送るイザークは、レクリエーションルームの一室で、ジャン・キャリーと共にいた。周囲には余人なく二人きりだ。親子ほど年の離れた二人は横に並んで窓の外の、空の青と雲の白を瞳に移しながら、ようやく話し始めた。
「こうして君と直接会うのは初めてだな。イザーク・ジュール」
「フン、連合でもっとも有名なコーディネイター“ジャン・キャリー”。パナマで戦ったアンタが、DCにいる事によほどおれは理解に苦しむがな。で、おれを呼び出して何の用だ?」
「少し話がしたかっただけだよ。パナマでの戦いの時、君は私の駆るロングダガーにとどめをさせたというのに、君はそうはしなかった。その理由を、前々から聞きたいと思っていたからね。偶然にもその機会に恵まれた、というわけだ」
「……動けぬ敵を撃って何が楽しい、そう思っただけだ」
パナマでの戦いはイザークにとって苦い思いを胸に滲ませる。無力化し、投降した敵に味方の兵が行った虐殺・蛮行の数々。強敵との戦いはイザークにとって体を滾らせるものだ。
だが、明らかに戦意を失い戦う力を持たぬ者に危害を加えるほどイザークは戦いに酔ってはいないつもりだ。
だから、あの戦いで同朋が見せた残虐性はイザークにとって強い衝撃を与えた。戦争の狂気を、今更ながら目の当たりにしたのだ。
「そうか。戦争の狂気とは恐ろしいものだ。顔も名前も知らぬ敵を躊躇なく、ただ命令と言うだけで撃つ事が出来る。そこに疑問も不信もなく、むしろ歓喜と高揚をもって引鉄を引く様になる。もちろん、すべての人間がそうなるわけではないが……。
少しでもそんな憎悪の連鎖を断つべく私は、連合で戦っていたがね。結局どれほどそれが出来たのかは分からなかった。そんな時に、耳に痛い事を言われてね、ここに居る事になったよ」
「あんたの弱音に興味はない。おれはプラントを守るために戦う。そこに迷いはない。攻めてくるからこちらも武器を手に取らなければならない。守るべき人を撃たれぬ為に敵を撃つ。それだけだ」
「……その果てに来るものは何だろうな? 今まで人類は戦争を繰り返しながらもここまでやってきた。だが、これから先も戦争を繰り返しながらも未来を紡ぐ事が出来ると誰が言い切れる?
ひょっとしたら、この戦いで人は滅びてしまうかもしれない、そんな恐怖に駆られた事はないか?」
「っ、それは」
イザークは口ごもり、ジャンに答える事はなかった。アラスカ、パナマとイザークの見てきた光景が、即座に否定させなかった。
いや、あれだけの事をしてもまだ互いを滅ぼすような真似をする事はないと理性は言う。だが、それを否定する感情もあった。
レンズの向こうから自分を見つめるジャンを見つめ返しながら、しばし、イザークは口を開く事は出来なかった。
マドラスでの戦闘の痛手を引きずりながらもタマハガネは、キラーホエール級三隻と共に無事オロゴノ島へと帰還し、収容していたザフト兵はすぐさま病院へと搬送され、中途半端に修理が施されていた機体も、
ビスの一本に至るまで徹底的に厳重にチェックされてメンテナンスベッドに寝かされる。
久し振りに自分達の場所へと帰ってきた、とタマハガネのクルーをはじめとして、シンは安堵していた。ステラやアウル達もリラックスした表情でタラップを踏みしめて港湾施設に降り立ち、船旅でなまった体をコキコキ鳴らしたりしている。
イザーク達をはじめザフト兵も、エペソといくらか言葉を交わしここまでの道のりへの感謝やこれからの武運を祈る旨の挨拶を交わしていた。基本的に尊大な所のあるエペソも、鷹揚に頷き、当たり障りなく話しているようだ。
シンはあの新しい艦長が正直苦手だ。事実目上の立場だが、それ以上に根本的に見下されているというか、何か観察されている、あるいは試されているような気がするのだ。一人称も『余』とか、なんか偉そうだし。
とにかく、今は新しい相棒ガームリオン・カスタム飛鳥の力を実感し、無事帰還できた安堵がシンの胸を満たしていた。
飛鳥の左脇に吊るされたシシオウ・ブレードの鋭さにも感心している。テレビの中のロボットみたいな装備だが、シンが絶大な信頼を寄せる示現流のモーションを最大限に活かせる装備だ。
一人、悦に入っていると首を捻るアウルの姿が目に付いた。なんだかなあ、とタマハガネに運び込まれる予定の物資のリストを見ている。興味が惹かれたので、シンもそれを覗き込んだ。
「なんかあったのか?」
「んー? なんて言うのかなあ。これどう思う?」
「なになに……。『ストライク・スパイク』『スラッシュ・ジャベリン』『クラッシュ・ドリル』『ブースト・ハンマー』? ヌンチャクに槍に腕丸ごと換装するドリル、最後は鎖付きハンマー?? どういうセンスだよ、コレ」
「そう思うだろう。特にハンマー」
「ああ、そうだな。ハンマー」
アウルとシンは互いに顔を向きあい、うんうんと頷いてこう言った。
「「漢の装備だな」」
二人の声はこの上なくハモった。
現在、ザフトが保有する大規模な地上の基地は大洋州連合領内のカーペンタリア、ジブラルタル基地、そして東アジア共和国のカオシュン基地の三つだ。
旧オーブ首長国連邦からクーデターによって発生したディバイン・クルセイダーズが、ザフトと共闘姿勢を取っているため、カーペンタリアの守りはほぼ万全の状態といっていい。
だが残るカオシュンとジブラルタルは、地上戦力の撤退と連合のMSを有する大反攻の前に、遠からず陥落する事は想像に難くなかった。
ザフト・DCの共同作戦によってマドラスに集められていた大量の物資の多くは灰燼に帰すこととなったが、それも焼け石に水を多くかけた程度の効果に過ぎなかった。
カオシュン・ジブラルタル両基地攻略に向けて、各方面軍からかき集められた戦力と温存されていた虎の子の部隊が編成され、まもなく出撃の時を迎えようとしていた。
ユーラシア連邦、東アジア共和国の戦力を核とされたカオシュン攻略部隊の総司令官は、低軌道会戦で第八艦隊壊滅の憂き目にあいながらも、かろうじて生還した“智将”ハルバートン少将(今回の攻略作戦にあたって准将から昇格している)であった。
傍らにはアガメムノン級戦闘母艦メネラオスの時と同様、コープマン大佐の姿もあった。
レセップス級に対抗するために急ピッチで建造されていた、地球連合製の陸上戦艦ハンニバル級“アムネマチン”を旗艦に、大小無数の航空機や地上戦艦が地平線を埋め尽くしている。
アムネマチンのブリッジで、ハルバートンはモニター越しに今回の攻略作戦の要を握る部隊の艦長達と話をしていた。
整えられた口鬚に穏やかさと聡明さを併せ持った、壮年の男がデュエイン・ハルバートン。
艦橋モニターに映る二人の人物の内、東洋系と思しい謹厳そうな顔つきの男がイアン・リー少佐だ。ハルバートンが毛嫌いするブルーコスモスの息がかかった男だが、能力については口を挟む余地はない。
低軌道会戦の失態を拭う形で今回の作戦の指揮を任されたハルバートンに対する、監視か牽制。どちらにせよ、心情的には歓迎できぬ相手であった。
リーに比べれば、多少贔屓目もあるかもしれないが、もう片方の相手に向けるハルバートンの眼は穏やかであった。
まだ若い女性である。ハルバートンの半分も生きていないだろう、二十歳になるかどうかの女性だ。降り積もる白雪も黒ずんで見えそうな肌に、明るいオレンジ色の、やや癖のある髪と穏やかな美貌。青い瞳には今回の作戦で負う責任への緊張が見て取れる。
レフィーナ・エンフィールド中佐。若干十九歳のうら若き才媛である。
「リー少佐、エンフィールド中佐。まもなくカオシュン攻略作戦を開始する。ゲヴェル・エスフェルは所定の位置で別命あるまで待機だ。己々奮闘を祈る」
ハルバートンの言葉に、二人は口元を引き締め、短く了解と答えた。一息つくハルバートンに、傍らのコープマンが一声かけた。
「アークエンジェル級二隻を惜しみなく投じたこの作戦。失敗できませんな。失敗してよい作戦などありはしませんが」
「君も少し皮肉っぽくなったな。だがそれも事実だ。ジブラルタルとカオシュンを押さえれば、カーペンタリアのザフトも満足には動けまい。この戦争、一刻も早く追わせねばならんのだ」
コープマンとてこの戦いの重要さは理解している。余計なひと言と取られかねない発言は、政治的な影響力から見ても崖っぷちに立たされているハルバートンの現状を、確認したものにすぎない。
ハルバートンの提唱したMS開発計画が軌道に乗ったとはいえ、ハルバートン自身は第八艦隊を壊滅させられ、その責務を負われて閑職に追いやられかけていたし、
これ以上ブルーコスモスの連合構成国への浸透を防ぐためにも、反ブルーコスモス派の主核である自分が、失態を重ねるわけには行かぬのだから。
ふうっとかすかな息を吐いて、レフィーナは艦長席に背を預けた。巻き癖のある茶色い髪の副長テツヤ・オノデラ大尉が、気遣うようにレフィーナの顔色を覗った。テツヤの視線に気づいたレフィーナは、頬笑みを浮かべて大丈夫ですと視線で答える。
「MS隊は?」
「既に第一種戦闘態勢で待機中です。エスフェルのMS隊も用意は整っていると」
「そうですか。それにしても、配属されたパイロット達の素姓、どう思いますか。テツヤさ……オノデラ副長」
「んん! そうですね。スウェン・カル・バヤン少尉、シャムス・コーダ少尉、ミューディー・ホルクロフト少尉。全員がブルーコスモスの息のかかったパイロット。しかも過去の一切の素姓や出自などはなし。
エスフェルのパイロット達は生体CPUと呼ばれているそうです。まるで人間がMSの部品扱いだ。……正気の沙汰ではないでしょう」
「スウェン少尉達は、まだクルー達ともコミュニケーションが取れていますし、既に何度か一緒に戦いましたから信用も置けますけれど。エスフェルのサブナック少尉を始め、三人のパイロット達はかなり難しいそうですね?」
「たしかに、キタムラ少佐も手を焼いてはいるようですが、それでも最初のころに比べれば大分ましです。スウェン達もコーディネイターに対する感情を別とすれば……まだ人間らしいと言えますが」
「どちらにせよ、キタムラ少佐には苦労を掛けてしまいますね」
どこか済まなそうに苦笑するレフィーナに、テツヤも同じ笑みをこぼした。
赤道連合がDCとの取引により、暗黙を持ってカオシュン基地から撤退するザフトの兵達を見過ごし、またカオシュンから宇宙への打ち上げも順調に進んでいたため、カオシュンに残された兵力は少ない。
単にカオシュン基地攻略を目的とするならば、今のカオシュンに残された兵力を一掃する事は容易だ。まるでザフトの実情をよく知る者が、連合に情報をリークしたようなタイミングでのカオシュン侵攻であった。
それでも撤退する友軍の時間を稼ぐために前線で奮戦するジンやザウート、グーン達を蹴散らす連合の勢いは止まらない。特に突出した戦果をあげているのは、二隻のアークエンジェル級強襲機動特装艦と、それに搭載されたMS達だった。
月で建造が終えられたアークエンジェル級二番艦ドミニオンとは別に、地上で建造されていた白い船体に紫のラインが走る三番艦ゲヴェル、青い船体の四番艦エスフェルだ。
一番艦アークエンジェルをベースに二番艦ドミニオンは通信・索敵能力が強化され、三番艦ゲヴェルは航行速度、四番艦エスフェルはMSの搭載・整備性が改善されるなど、艦毎に異なる方向性での改修が施されている。
三番艦ゲヴェルには、ナイトメーヘン士官学校を首席で卒業し、ユーラシア連邦最年少で中佐となった才媛レフィーナ・エンフィールドが艦長として、同学校を過去に次席で卒業したテツヤ・オノデラ大尉を副長に迎えて指揮を取っている。
四番艦エスフェルには、ブルーコスモスの息がかかった大西洋連邦からイアン・リー少佐が配属されている。
アークエンジェルの交戦データから、ドミニオン以降のアークエンジェル級には、船底や各所にイーゲルシュテルンが十基増設された事で対空砲火能力が増し、ブリッジを守る防空ミサイル“ヘルダート”の数も増やされていた。
艦橋窓全面に移るオレンジの火の玉に白皙の美貌を照らされながら、レフィーナがオペレーターのユンとエイタに指示を次々と出している。まだ十九歳という年齢にふさわしい幼さを残す顔には、眼前で繰り広げられる大規模戦闘への緊張と意気込みの色が強い。
副長であるテツヤも、レフィーナのサポートに徹し、二十九歳と十九歳のコンビはまずまずの能力を発揮している。
「ウォンバット照準、二時方向のディンを撃ちます。ユン、キタムラ少佐は?」
「現在、三機のジンと交戦中です」
「ミューディーのデュエルとシャムスのバスターに艦の護衛に着くよう指示を。推力最大、エスフェルのMS隊と連携して、前方の部隊を突破します」
凛々しさを纏い、艦長席から凛然と告げるレフィーナに答えるように、テツヤも負けじと指示を出す。
「イーゲルシュテルン、十四番、十五番、十九番、二十番下方のバクゥを近づけるな!」
ゲヴェルの奮戦に促されるようにエスフェルや周囲の連合部隊も、一斉果敢にザフト軍に襲い掛かり、次々と蹴散らして行く。
その中でも特に目立つのは、PS装甲の上から緑に染めた装甲を左肩に被せたデュエルだろう。フォルテストラは装着せずに戦っている。フォルテストラの火器や防御能力よりも、もともとの機動性や汎用性を選んだのだろう。
先ほど三機のジンと交戦していると報告があったが、既に二機のジンを沈め、残る三機目のジンも切り結んでいた重斬刀を払いあげ、左手のシールドで突き飛ばした隙に、空いた胴に抜き放ったビームサーベルを突き立てる。
パイロットの技量の差が明確に出る接近戦でコーディネイターを相手に鮮やかなまでの手並みだった。
ゲヴェルMS隊隊長カイ・キタムラ少佐である。今では珍しい純血の日本人で、厳格さが滲む顔立ちは三十六歳の年齢よりはやや年配に見えるが、滲みだす活力は、後三十年くらいは機動兵器乗りとして第一線で活躍しそうだと思わせるほどだ。
カイのデュエルの横に、動力問題が解決され実用されたI.W.S.Pストライカーを装備したストライクが降り立ち、レフィーナからの指示を改めて伝えた。パイロットはまだ十代後半の若者だ。少年と言ってもいい。
灰色の髪をし、育ちの良さをうかがわせる品のいい顔立ちをしている。だが、アメジストから加工したような紫の瞳には、感情の起伏がもたらす意志の光はほとんど見られない。
幼い頃はともかく、それから後、今に至るまでの人生が決して常識的なものではない過酷なものでなければなる事の無い瞳だ。
ゲヴェルMS隊に配属されたMSパイロットの一人、スウェン・カル・バヤン少尉だ。
「キタムラ隊長、エスフェルのMS隊と連携し敵MS群を突破の指示が出ました。支持をお願いします」
「スウェンか、分かった。……オルガ! クロト! シャニ! 聞こえていたな? オルガはシャムスとエスフェル、ゲヴェルと前方五〇〇のMS隊を薙ぎ払え。クロト、シャニ、フォーメーションを組み直す。β‐3で行くぞ!」
カイがエスフェルのMS隊――オルガを始めとしたカラミティ、レイダー、フォビドゥンといった、オーブ戦でその実力を見せた新型機とパイロット達に呼びかけるが、返ってきたのは罵声に近い反発だ。
「うっせえよ、おっさん。おれらに指図すんな!」
「へん、僕らだけで十分さ。艦に戻ってな!」
「……」
いつものやり取りに、スウェンは小さく溜息をついた。
両親を反コーディネイターのテロで失い、孤児となって以来収容された施設で受けた洗脳と訓練で、本来の人間性を強く封じ込められたスウェンがこのような反応を示す事自体も珍しいのだが、まるで学習しない同僚には呆れを通り越して感心してもいる。
オルガ、クロト、シャニは現在連合でもっとも戦闘能力の高い強化人間だが本人達の精神・倫理的な問題から彼ら同士どころか友軍との連携などまず望めない。
その為、彼らの指導に本来ゲヴェルMS隊の隊長を務めるカイが駆りだされ、今回の作戦では両艦のMS隊の戦闘指揮官に任命されていた。
ゲヴェルに配属されたスウェンの同僚である、根は陽気な皮肉屋シャムス・コーザや、エキセントリックだが社交性はあるミューディー・ホルクロフトなども癖はあるがカイの命令には従うし、それなりに人間性も残している。
比較論ではあるが、オルガらに比べればよほど扱いやすいだろう。
そして、カイがそんな扱いにくいオルガ達に下した対応策は鉄拳制裁と説教であった。
「この、馬鹿ものが!! 艦に戻り次第、説教をくれてやるぞ! それともまたブン投げられたいか!!」
「げ」
「……まじ?」
「くそ、分かったよ!?」
生身の身体能力・MSのパイロットとしての技量共にコーディネイターさえ凌駕するオルガらを相手にストライクダガー同士で演習を行った際、背負い投げを披露して三人を尽くぶん投げた光景はスウェンも覚えている。
いくらMSが人型とはいえ、まさか背負い投げを見る事になるとは思わなかったものだ。
それ以来、何度も噛みつくオルガらがカイに投げられ、絞め技を極められる光景が日常茶飯事になったのは、ゲヴェルの一種の名物であった。
まさしく肉体に刻み込んだ痛みで躾け、なんとかオルガ達に言う事を利かせる事に成功している。
「またあの三人、バカやっているの?」
「それが取り柄なんだろうさ、ミューディー」
ゲヴェルの直属に着いた二人も、戦闘の最中のやり取りに程よく力が抜けたのか、小さく笑いながらスウェンに通信を入れてきた。この二人との付き合いはまだ長くも浅くもないが、ゲヴェルに配属されてから二人とも穏やかな顔をしている事が多い。
あのおっとりとした涙もろい艦長と、生真面目で人の好い副長、厳格だが人格者のMS隊隊長のお陰かもしれない。そこまで考え、スウェンは、そんな事を考えるようになった自分に軽い驚きを覚えていた。
どうやら変わったのは自分もらしい。なぜかそれに気付いた事が口元を綻ばせていた。
「あら、スウェン。笑った?」
「まじか? 珍しい事もあるもんだな。良くない事でも起きる前触れか?」
「随分と言うな」
正直に言ってくれる二人にどこか憮然と答え、スウェンは30mmガトリング機関砲とストライクの右手に握らせている57mmビームライフルを構え直し、目の前のザフトに意識を集中し直す。
アレは空の化け物だ。アレは人類の敵だ。アレは滅ぼさなければならない存在だ。アレは地球にとって害悪だ。コーディネイターは宇宙の悪魔だ。脳裏に教え込まれ、刻みつけられた言葉が反芻する。
スウェンの瞳から感情が消え去った。ミューディーとシャムスの声からは冷徹な殺意が滲みだす。彼らは、ナチュラルの狂気が産んだコーディネイター殲滅の為の兵器なのだ。
「良いコーディネイターは死んだコーディネイターだけよ!」
「さあ、お仕置きの時間だ」
フォルテストラを装備したミューディーのデュエルが、レールガンとミサイルポッド、ビームライフルでゲヴェルに迫るディンや戦闘機を容赦なくたたき落とし、その中のパイロット達の命を散華させる。
その輝きこそがミューディーにとっては喜びに繋がる貴い光なのだ。
シャムスの乗るバスターも6連装ミサイルポッド、350ミリガンランチャー、対装甲散弾砲、収束火線砲で地上から迫るバクゥやジンを鉄屑に変えてゆく。そこには一片の情の欠片も無い。敵は殲滅する。
ましてや相手はコーディネイターなどという人の姿をした化けものなのだから。
的確な狙い、咄嗟の判断力、瞬間の反応速度、オルガやシャニ達ほど特別な措置を受けていないながらも、高いレベルで纏められた優秀なパイロットと言えるだろう。
だが、カイのデュエルと肩を並べて敵MSに突貫するスウェンの力量はその二人の上を行くものだった。
30mmガトリング機関砲とビームライフルの射線は確実にジンの装甲へと吸い込まれ、それを回避した機体にはわずかな間をおいて115ミリレールガンの、音の壁を容易く超える弾丸が襲い掛かり、空中で地上で爆発は連なり、
ただでさえ数で劣るザフトのMS達は瞬く間にさらに数を減らして行く。
カオシュンに残されたMSの数は少なく、兵の質も決して高くはない。それでも一人でも多くの仲間を宇宙に逃がす為に踏みとどまり、奮戦するザフトの兵達を嘲笑うかの如き非情な猛攻は続く。
キャタピラによる高速移動で迫るバクゥ三機に目掛けて推力を最大にして一瞬で飛び上り、右手に握った9.1メートル対艦刀を三機の内の一機の目の前に投擲する。
勢いを殺せぬバクゥはそのまま直進して自ら対艦刀に突っ込む形で両断され、残る二機はキャタピラ走行から四肢での機動に切り替え、空中でスウェンのストライクめがけて背のミサイルとレールガンを立て続けに撃ち込んでくる。
ミサイルをシールドに装備された30mmガトリング機関砲で撃ち落とし、レールガンを回避しながら、スウェンはストライクを片方のバクゥ目掛けて突撃させた。
射線軸の向こうから敵が向かってくる事は滅多になく、その滅多にない事をされたバクゥのパイロットの判断が一瞬遅れた。優雅な弧を描いたストライクの足が思い切りバクゥの頭部を蹴り飛ばし、
バランスの崩れたバクゥを踏み台にすると同時に残るバクゥ目掛けてスラスターを全開にする。
空中にあるわずかな時間の間に、腰のアーマーシュナイダーを抜きだして、傍らをすれ違い様にバクゥの胴体に突き立てた。瞬く間に三機のバクゥを屠ったスウェンの耳に、戦闘に高ぶるシャムスやミューディーの声が届いた。
「あはははは、貴方達みんな、私が良いコーディネイターにしてあげるわ!!」
「そらそらそら、宇宙の化け物は地球から出て行けよお!」
スウェンは、同僚達の言葉にカイが苦い顔を浮かべているだろうと、なぜか思った。
支援
ゲヴェルとエスフェルに搭載されたMSは、すべてGAT−Xシリーズで揃えられていた。ダガーシリーズの開発・生産によりコストのかさむGAT−Xだが、PS装甲や基本性能の高さから、少数のエースや指揮用に今も生産されている。
カラミティやレイダー、フォビドゥンもバリエーション機をはじめ徐々に生産がおこなわれている。
今そのカラミティなどを操るオルガ達は、アードラーの手による強化がある程度の成果を生み、次の研究対象を見つけた――いや、本来の研究対象へと向き直ったアードラーの手を離れている。
基地施設の奪還を試みる連合としては、砲撃能力が高すぎて破壊してしまうカラミティは少々困りどころではあったが、程よくカイの檄が飛び、オルガも味方ごと巻き込むような砲撃や必要以上の無駄弾を撃つような真似はしないでいる。
シャニやクロトも、窮地に立たされた友軍機を援護するという、少し前までは考えられない真似をしている。
カイの鉄拳指導とアードラーの手を離れた事が良い方向に働いているらしい。この二人の変化には、DCとの戦闘で出会ったオウカやシン、ステラ達もきっかけとなっていた。
「弱い奴らが出てくんじゃねえよ! 全部ふっ飛ばしちまうぞ!?」
「のろいのろい、ほら殺しちゃうよお? 滅殺・激殺・絶殺!!!!」
「お前ら……うざすぎ」
シャニのフォビドゥンのフレスベルグが、二機のジンを纏めて粉砕し、クロトのレイダーが振り回した破砕球ミョルニルが、空を飛ぶディンを真正面から打ち砕き、オルガのカラミティはその圧倒的な火力で立塞がる者全てを破壊してゆく。
移動要塞と称されるべき防御能力と攻撃能力を兼ね備えたアークエンジェル級二隻も、次々と補給を求める友軍機を収容しながら、群がるザフトを蹴散らす。
DCとの戦いでは負けが続いていた連合が、その欝憤を払うかの様な圧倒的な攻めであった。この作戦にはバスターダガーやデュエルダガー、105ダガーとGAT−Xナンバー以外にもダガーシリーズの高性能機が無数に投入されていた。
性能の面では、ザフト側の最新鋭機であるゲイツでなければ対抗できないMSの大部隊。パイロットの面ではそれでもまだ、ザフト側がわずかに優勢ではあったが、それもゲヴェル、エスフェルの二隻のMS隊と強化人間達が戦線に投入された事で覆され、
カオシュンの陥落は、当初の予定をはるかに上回る短時間で終わった。
カオシュンと時期を同じくして行われたジブラルタルの攻略に投入された部隊は、カオシュン以上の精兵と言えたが、果たしてそれを人間と呼べたかどうか。
アードラーを乗せたアークエンジェル級五番艦シンマニフェルの艦橋で、アードラーは目の前で繰り広げられる一方的な虐殺を愉快そうに見つめていた。
本来コーディネイターの強靭な肉体と運動能力を持たねば操縦できないロングダガーや、GAT−Xナンバーの機体が、あまりにも滑らかな動作で動き、コーディネイターであろうとも耐えられぬ殺人的な機動で戦場を闊歩し、敵を遭遇した端から次々と破壊している。
「くくく、流石にわしのゲイム・システムはやりおるわ。まだ人間の脳を介さねばならん段階じゃが、あの生体CPUどもなんぞよりよほど役に立つじゃろう? アズラエル理事」
「確かに、宇宙の化け物共があんなに簡単に死んでゆくとは。いやはや、僕も投資した甲斐がありましたよ。コッホ博士?」
オブザーバー席で、アードラーの笑い声に等しい声で答えるのはブルーコスモス盟主ムルタ・アズラエルだ。アードラーが研究していたゲイム・システムがとりあえずの完成と、その副産物的な成果を目の辺りにする為に、こうして実際の戦場まで足を運んだのだ。
「いやあ、やればできるもんですネエ? 脳直のインターフェイスですか。僕の所の研究所でも作らせてはいたんですけど、なかなかうまくいかなくてねえ。コッホ博士のお陰、というやつですか」
「ふふ、素体なぞいくらでも用意できるからな。死刑囚、人身売買、捕虜、それに戦傷で体を失った兵達。自分から志願する者もおったわ」
今彼らの見るモニターに映るMS達の中には、ドーム状の金属容器に収納された人間の脳がパイロットとして搭乗している。
対ショック構造のポッドに生命維持装置、周囲のチューブには脊髄の中枢神経が収められている。極限までコンパクトにまとめた“人間”だ。
MSを構成する部品を生身の肉体の代わりとした、巨大なニンゲンが今そこに居る。生物的な滑らかな動作で銃の引き金を引き、戦場を闊歩してザフトのMSと渡り合っている。
人間の肉体の面影をその動作の滑らかさに残しながら、鋼の肉体は、コーディネイターであるザフトのパイロット達を嘲笑うように次々と屠っていった。
こんな自分達が生み出されたのは、お前達の所為だと言うように。あるいは、お前達も自分達と同じ化け物だろうと、嘲笑う様に。
一人悦に入るアードラーを横目で流し見ながら、アズラエルは心中でほくそ笑んでいた。この老人の価値も、そろそろ無くなってきたと。そして、連合の切り札はまだこの老人の妄執だけではないのだ。
(さて? 地底世界とやらのお客人は、頑張ってくれていますかネエ?)
アードラーとアズラエルの眼に映る戦場とは違う場所で、その地底世界の客人達は確かに働いていた。アズラエルの考える以上の働きを。
展開していたはずの友軍が全滅したという情報を受けて急遽駆け付けた、ジン二個小隊を待ち受けていたのは、地面から突如生え、ジンの足を掴んだ巨大な腕であった。
その腕は土から次々と生まれ、それは凹凸の激しい表面を持った肩を生み、胸を生み、腰を生み、足を生み、それは30メートルほどの、赤い複眼を持った異形の巨人となった。瞬く間に数十を超すその巨人は、デモンゴーレムといった。
雄叫びや、自身を構成する岩を投げつけるなど、極めて原始的な攻撃方法ではあったが、元来土から生まれたデモンゴーレム達は、ダメージを一切考慮する事はなく、またそのパワーはMSを一撃で破壊する事も出来る。
突然の異常事態の勃発と数で勝る異形達の攻勢に、平静を保てなかったジンは、ものの数分で壊滅の憂き目にあう事となった。
その光景を、はるか上空から見下ろす巨大な影が二つ。人型の名残をわずかに留める、緑や金の角の様な装甲を持ち、見るだけでその禍々しさに心を殺されてしまいそうな異形と、
紫色の装甲に両肩の大きなアームガードや、何枚も装甲を重ねた様な脚部、バックパックなどが特徴的な機体の二つだ。
異形の機体は名をナグツァート、紫の機体はグランゾンといった。
ナグツァートのコックピットの中で、緑色の波打つ長髪に死人の様な顔色をした壮年の男が、邪悪と形容する他ない笑みを浮かべていた。
「ふふふ、御覧ください。シュウ様。地上の兵器達も、たかがデモンゴーレムにさえ満足に抗う事もできずにおります」
「……たかがと呼ぶモノに頼っているのが私達なのでは? ルオゾール」
「だめですよ、ご主人さま! それを言ったらルオゾール様の血圧が上がっちゃいます」
男をルオゾールと呼んだのは、紫の髪を持った二十代前半の若者だ。どことなく憂いを帯びた端正な顔立ちは、薄靄の様に捉え難い気品と危険な魅力がある。ルオゾールの恭しげな態度からして、この若者が主なのだろうか。
不可解なのはこの若者をご主人さまと呼んだのが、青い文鳥の様な鳥だったことだ。かなり流暢に人間の言葉を話している。極めて精巧に作られたロボット鳥……だろうか?
「しかし、この戦いに介入する事が本当に必要な事なのですか、ルオゾール? 記憶がないせいか、どうもにも必要性が私には感じられないのですが」
「無理もありませぬな。私の蘇生術は不完全なものでした故、シュウ様の記憶に欠落が出来てしまいました。我らの崇めるサーヴァ・ヴォルクルス神の復活には億を超す生命と憎悪が必要なのでございます。
すでにこの地上にでは十億を超す生命が死に、その残留思念を取り込むことでヴォルクルス様のご復活は間近なものとなりましたが、
確実にする為には信徒たる私達自身が生贄を選別し、捧げる事が肝要なのでございます」
「そうでしたね。ですが、あのムルタ・アズラエルという男、気に入りませんね。私達を利用しよう言う魂胆があからさまです」
「所詮、我らの真意もヴォルクルス様の偉大さも分からぬ地上の俗物でございます。ですが奴がこの地上の軍勢を牛耳るものである事も事実。ヴォルクルス様の為にせいぜい利用するのが、今は必要な事かと」
「貴方がそういうのなら、そうなのでしょうが。……まあ良いでしょう。周囲にザフトの反応もありませんし、私とグランゾンがこれ以上ここに居る必要もないでしょう。私は引き上げます。後は貴方の好きになさい」
どこか腑に落ちない表情を浮かべるシュウだったが、それだけ言うと、ルオゾールの返事を待たずして、グランゾンを後方へと向けて動かした。
疾風さえも追い抜くのではないかと見える速度で見る見るうちに遠ざかるグランゾンの姿が消えてから、ルオゾールはナグツァートのコックピットの中で、袖の長い法衣に隠れた左腕を強く握りしめていた。
今死んだばかりのザフトの兵士達の断末魔の悲鳴と絶望、そして死した後にさえ苦痛に苛まれる事を知った恐怖が、ルオゾールの魂に湧き立ち、歓喜を尽きぬ泉の様に生み出す。
捲り上げられた左腕は、人のものではない極彩色の瘤が蠢き、吐き気を催す色で脈動する異形のものであった。
「間もなく、もう間もなく御身の再臨の時ですぞ。ヴォルクルス様、この私自身が貴方の代弁者として世界に破壊を齎す時が。……く、くははっは、ああはっはっははは!!」
もはや人の心では造りえぬ狂気と憎悪と妄執が織り描く狂気絵画を、その心に飾り、破壊の神ヴォルクルスと一体となったルオゾールは、いつ終えるとも知れぬ笑い声を、長いこと上げ続けた。
地球連合に以下のキャラクターが加わりました。
レフィーナ・エンフィールド(CE生まれ)
テツヤ・オノデラ(CE生まれ)
ユン・ヒョジン(CE生まれ)
エイタ・ナダカ(CE生まれ)
シュウ・シラカワ(EX)
チカ(EX)
ルオゾール=ゾラン=ロイエル(LOE)
ある意味開き直ってキャラクターの大量投入。……私の手に余る内容になってきました。やっぱり、死んだキャラだけ出すようにしておけばよかったかなあ?
そして、支援ありがとうございます。
GJ!
連合がトンデモ陣営になってきたw
そして京也きたwww
シュウとか大概シャレにならんメンバー連れてきましたね。
冗談抜きで全滅戦争勃発?落としどころが見当たらん
GYAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!
シュウ様キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
GJです
でもなんだろうアズラエルに抗いようのない死亡フラグが立った気がするのは
194 :
93:2007/09/06(木) 00:39:11 ID:???
ギリアム・イエーガー!!
地球圏が大変なことになってきた!!
シュウ様の呪縛は解けるのか?そして方向音痴のあの人は来るのか!?
ある意味このゴッタ煮感こそがSRWだと思うから、作者氏がやれるところまで突っ走って欲しい
それと連合側に大量に新キャラ増えたけど、単なる戦力というだけじゃなくて、
原作での味方側キャラを配置したりして連合を単純悪にしないようバランスを保つ工夫してくれてるのが良かった
さすがにアンディは来れないでしょ…死人じゃないし、ラ・ギアスもこっちにはなさげだしさ。
それよかはシュウとビアンがいかなる出会いをするのか気になるwwwww
ついにファンタジーな機体が登場したー
ナグツァートの無敵モードをどうにか出来そうなのが記憶喪失中のシュウだけなのは痛すぎる。
しかしこんなに負の思念に溢れてると兄貴や門が反応しそうだ。
ザフトサイドが現状やられる一方だな。
最初、シンが念法使いに覚醒したのかと思って「ヲイヲイ、ロボット必要無くなっちゃうじゃん!」と焦ってたら、次の瞬間にステラに一発でノサレてて吹いたw
>>197 まだ影鏡や憤怒の女神、過ち家族とかが出てなかったりするんだぜ……流石に収集つかなくなりそうだけど。
やばいことになってきたなー
シュウきたからこの先どうなるかまったく分からん
サイバスターもこっちの世界じゃ来れそうもないし
まさかビアン総帥サイバスターつくらない……よね?
サイバスターの右手が何かの拍子にこっちに転移してきたとかで
【こっち】のサイバスターがくるかもね
シュウが死ぬようなことが起きてる以上魔装機神も存在しそうだな
魔装機神+1(LOE)が次元の壁を突破してくるぐらいしかナグツァート倒す手段が思いつかない…
ナグツァートがLOEバージョンでシュウがEXバージョンということは無敵モードに対する切り札もないということになるし
どういう展開になるかwktk
ザムジード乗りのリカルドは来れるでしょ。ザムジード持ってこれないだろうけど。
後、ビアンSEED氏GJ!
魔装機神は魔装機神でもアニバスターだったりs(ry
しかし、シュウの記憶が不完全ってどう考えてもフェイクくせえ。
そしてやっぱりデキてるとしか思えねえレッフィーとテッちゃんが(ry
ダイテツさんがこの二人を見たらどんな感慨に襲われることか……w
207 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/06(木) 08:31:29 ID:qUvfc8AU
> 205
> フェイクくせえ。
て、原作(EX)通りの展開だと思うが。
真・魔装とアニバと通常
三体同時参戦でトリプルサイバスター・・・うーんカオス
209 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/06(木) 09:14:52 ID:LrRoJxmm
ここまできたら、某魔界都市を転移しておかしくないですな。
210 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/06(木) 12:30:42 ID:LrRoJxmm
あとはネタの元の人たち本人がきてくれれば・・・。もっともあの人たちの
超人ぶりに対応できるのは某神祖が作ったか、某デウスマキナ、テックシステム
でもなければ不可能でしょうが。
さすがにそこまできたらスパロボじゃないwww
シンの師匠には、ゼンガーやリシュウは死んでおらず、ウォーダンはラクシズの所にいるので、剣皇ゼオルート=ザン=ゼノサキスを推薦します。
種死まで行くつもりなら種で登場させるキャラはこのぐらいにしとかないと種死で登場させるキャラがいなくなってしまいそうです。
久保を連れてくるしかないな
あの機体も反則だが
因子を揃えないといけないな。
ケイサルかユの字の人が必要か。
確かに久保が出てきてもおかしくないカオスな状況だなw
216 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/06(木) 14:59:23 ID:LrRoJxmm
>>211 すいません。あのネタ元の人たちの苛烈な精神構造を持ったキャラこそが、
スパロボには一番必要だと思い。つい書いてしまいました。申し訳ありません。
ギリちゃんがいたらフラスコネタが使えるのに…
普通にギリちゃんでそう
反ブルーコスモスな連合情報部少佐なんだろうなでてきたら
>>218 当然登場する時は壁際に寄りかかって
「ODEシステムだ」
……あれ?
220 :
11:2007/09/06(木) 17:02:59 ID:???
遅れましたが第二話ができましたので投下します。
第2話「シンの決意」
「コズミック・イラ?ザフト?ポリグラフは…嘘ではないということか」
とある場所にある秘密の潜伏先の一室。
エルザムは眉間にしわを寄せ、腕を組みながら左手を顎につけ、首をかしげていた。
エルザム・フォン・ブランシュタイン、ゼンガー・ゾンボルトにより救出されたシン・アスカは、
クロガネが日本に戻る前に彼らとともにその潜伏先へと身柄を移され、目を覚ました。
そしてシンが目を覚ましたとの報告を受けたエルザムは、
PTともAMとも言えない機体のこと及びその機体に乗っていたシン自身のことについて
意識を取り戻したシンに尋ねたのだが、彼の口から出てきた言葉はエルザムの理解を超えていたのだった。
「…つまり君はC・E73年、ザフトという組織の、MSという機動兵器のパイロットをしていた、というんだな?」
「はい。俺はザフトを裏切ったアスラン・ザラという男に敗れ、せめて道連れに、とデスティニーを自爆させたんですけど…」
「むぅ…だが先ほども言ったように、今は新西暦195年でコズミックイラという年号はどこの世界にも存在しない。
ゼンガー、一体これはどういうことだろうな?」
エルザムが彼の脇にいる、長身で銀髪、その腰に日本刀を携えた鋭い目つきの男に目を向けた。
「俺もこの手の話にはあまり縁がないからな…」
珍しく困ったような表情をゼンガーが浮かべ、一瞬の沈黙が生まれる。
「彼はこの世界とは違う、別世界から来た、ということだろうな」
「「ギリアム!」」
その沈黙を破った声がした方へエルザムとゼンガーが驚きの声とともに目を向けると、
そこにはいつものように壁にもたれながら腕を組み、紫色をした滑らかな髪をなびかせた男が突然現れていた。
「推測の域を出んが、おそらく彼が自分の機体を自爆させようとしたときに発生したエネルギーによって
次元を超えてこの世界に来てしまった、ということだろう」
「次元…彼が自分の世界に帰る方法はわかるか?」
エルザムもにわかには信じられないことであるとは思っていたが、既存の物とは大きく異なる機体構造、
シンが着ていたパイロットスーツの構成物質等のことを考えると別の世界から来た、というのであれば一応の説明はつくし、
何よりも信頼できる戦友の言葉を否定するほどの根拠はなかった。
221 :
11:2007/09/06(木) 17:04:58 ID:???
「いや、すまんが俺にも…」
実際のところ、尋ねられたギリアム・イェーガーには心当たりがないわけではなかったのだが、
彼が最も懸念している事態と無関係であるとまでは断定できずにいたため、口を閉ざしたのだった。
「俺はこの後どうなるんですか?」
今まで3人の会話を眺めていたシンが口を開いた。
今のところ分かったことと言えば未だに信じ難いことだが、ここは別の世界であること、
そして自分のいた世界には戻ることは不明である、ということだけであった。
「我々にも事情があるので今すぐに、とは言えないが自由に決めてくれて構わない。
君がこの世界で自由に生きることを妨害する理由もないのでな。
だが我々が聞くばかりでは君も判断できかねるだろう。だから我々の話を聞いてから考えてくれ」
そういうと、エルザム、ゼンガー、ギリアムは新西暦と呼ばれるこの世界について語り始めた。
メテオ3、異星人の存在、南極事件、そしてDCとDC戦争、エアロゲイターの脅威、L5戦役について…
「じゃああんた達はそのDCってのに参加して戦争を起こした訳か!」
一通りの説明が終わったあとシンが静かに、だが力強く口を開いた。
「ああ、そうだ」
「そうすることでたくさんの関係ない人達が傷つくことがわかっていながらそうしたのかよ!」
「否定はしない。もはや我々人類が外宇宙の侵略から己を守るためにはそれしか道がなかったからな。
さきほども話したが、連邦の高官達は自分たちの身の安全を図るのと引換えにこの星を異星人に売り渡そうとした。
それを防ぎ、彼らの侵略からこの地球圏を守るため、
そのための守護者を育て上げるため我らは血塗られた道を行くことを決意したのだ」
「・・・・・・・」
「もしあてがないのなら力を貸して欲しい。異星人の脅威は未だ取り払われたわけではないのでな…」
シンはそれ以上反論することはできなかった。
それまではSFの世界の話でしかなかった異星人の脅威、地球圏を売り渡そうとした高官
異星人の侵略を自らを犠牲にしてまで防ごうとしたビアン・ゾルダーク、彼に立ち塞がったハガネ・ヒリュウ、
ビアン亡き後もその遺志を継ぐべくハガネ・ヒリュウを支える影となることを決意したエルザムやゼンガー…
シンがいた世界で起こっていた戦争とは次元が違っていた、シンはそう感じていた。
222 :
11:2007/09/06(木) 17:06:02 ID:???
そして、リハビリも兼ねてのパーソナル・トルーパーやアーマード・モジュールのシミュレーター訓練、
ゼンガーとの剣術での試合など、エルザム達との数ヶ月の生活の末、シンは彼らとともに行くことを決意した。
もちろん彼らのすべてを信用できたわけではない。
だが逆に信用できない理由というのも特にはなかったし、オーブで家族を失い、間もなくして軍属になったシンは
パイロットのほかに生きていく術を知らなかったというのも大きかった。
「シン、我らに力を貸してくれることを決意してくれたことに礼を言わせてくれ」
少し前からどういう訳か水泳のゴーグルのようなものをかけ始めたエルザムが握手を求める手を差し出す。
シンもそれに応えるものの、その表情はまだ少し複雑そうなものを浮かべていた。
「俺に出来ることなんてほかにないですから」
「いや、今は君の決意だけで十分だ。あとは自分自身の目で世界を見てから考えてくれ」
エルザムがそういうと、シンの横にいたゼンガーが一枚の紙を差し出した。
「これは?」
「君にこれから行ってもらうところだ。そこの者達と行動をともにして直に世界を目にしてから最終的に決めてくれ」
「その部隊は昔俺が隊長をしていたチームだがこいつらであればシン、お前を任せられる」
「嫌な言い方ですけどエルザムさん達の掌の上で踊っている、ってことになるだけじゃないんですか?」
ふと頭をよぎったかすかな疑いをシンはぶつける。
「フッ、安心したまえ。君の考えているような小細工はしていない。
もっとも我らは表を堂々と歩けるような立場ではないから我々といたことを公にされては困るがな」
「…わかりましたよ、あとは自分で考えてみます」
「シンよ、次会うときにどれほど腕を上げているのか楽しみにしているぞ」
かくしてシンは新西暦と呼ばれた時代を生きる第一歩を踏み出した。
そして、極秘のうちに日本でとある機体を受領し、ある戦艦に赴任した彼が最初に目にしたのは
たわわに実り、極上のプリンのような弾力を持ったエアバッグであった。 続く
>極上のプリンのような弾力を持ったエアバッグ
なんというラッキースケベ、wktkが止まらない
少々、遅れましたが―――ビアンさんのグランゾン対策はイザヨイ師匠ではないでしょうか?
もしくは師匠の訓練を受けたシンのシシオウブレード。
流石だな らき☆すけは。
そして見たのは誰の乳か。わおわおーんか言語回路不調か。
……後、日本で受領した機体って何なんだろうな?
ガーネットだったってのはどう?
GJ!
そりゃ実際に異星人に侵略されてちゃシンもなにも言えんわな。
>そこにはいつものように壁にもたれながら腕を組み、紫色をした滑らかな髪をなびかせた男が突然現れていた。
やっぱいつもなんすかwww
というか
>>219と合わせて噂されたから出てきたようにしか見えんw
上層部が地球を異星人に売り渡そうとしてたから戦争起こしたと言われちゃさすがのシンも反論できんか。
新西暦はまともな人達が謀略でその地位を奪われたり、戦いで亡くなったりしてるからなぁ
壁際のいぶし銀wwww
電撃の漫画版第四話で、リョウトの年齢が23歳でしたが、リョウト・ヒカワ年齢詐称?
いや、誤植かなんかかなあ、とは思っていますけども。
実はOGsの設定集でリョウトだけ年齢が書いていない
一応あいつらα登場時で全員16歳のはずなんだがなー
OG1の設定集は18歳とあるぜ
ビアンSEEDに出てきそうなSRW死人さん達は、後この位の面子かなぁ?
兄貴とかあんまりヤヴァすぎる人が来ると、CE現地の人の出番がなくなるからあんまり良くないし。
後、必死に頑張ってるルオゾールには悪いけど、ラ・ギアスがないと思われるCEじゃ人類絶滅させてもヴォルクルスは復活せんような気が……w
名前(予想される受け入れ先)
ゼゼーナン(連合)
旧シリーズDC戦争からの一連の流れのラスボス……にもかかわらずこのあまりの小物っぷりはどういう事かw
初代ボスキャラのビアン&ヴァルシオンの方が遥かに威圧感があるんですがw
影鏡の方々(連合もしくはプラント)
この人らはビアン同様「テクノロジーを扱える戦力」なんで、ゲットできた陣営の技術レベルが跳ね上がるですが、こん位のてこ入れもあっていいかも。
なんせ現状非CEテクノロジーってCDとラクシズが占有してますからな。
それに「ずぅぅぅぅっと戦争してたい」っていう彼等の思想的に、絶対に相容れないブルコスとプラントって食い合わせは美味しいし。
フェイル(DCもしくはラクシズ)
平和を思うあまりの暴走はビアンと被るので、ビアン達と馬が合いそう。
美形キャラという事でラクスに捕縛される恐れがあるのが非常に怖いがw
カークス(DCもしくは連合)
こーゆーいぶし銀な人は他の所にゃ似合わんですよ。
インスペクターの方々(???)
一人くらいは来てそうだが、行き先が見当付かんw
ソフィア(ラクシズ)
ゼンガー関連のフラグがラクシズにしかないもんですから……
ちなみにα外伝のソフィアです。他シリーズでは生存してますんで。
ゼオルート(DC)
上の方で誰かが言ってたように、シンの為に剣の達人キャラが必要みたいだけど、死人で剣の達人となるとこの人くらいしか……
ラオデキア(DC以外)
死んでCEに放り出された後、人形として使い倒されていた事に気付いて「もう余の好きに生かせて貰おう!!」と暴走とかw
DCにいるエペソとジュデッカ・ゴッツォ対決なんてのも面白そうだからDC以外。
テューディ(DC以外)
ウェンディと独立した一人の女性として転生したのを機に真っ当な道を歩むか、怨霊同然の状態だった生前同様に猛悪な悪意を振りまくか。
はたまたシンがラッキースケベで新たなフラグを立てるのか!?
よく転がりそうで弄りがいがありそうな人だけに、出てくるとなったらどこ所属になるのか見当が付かんw
他にも結構いるか。
まー誰をどこ所属で出すのかはビアンSEED氏の考え一つではあるんだが。
展開予想の形を取ったキャラ出せ要求ですか。
長文でウザさも大爆発ですね。
ゼオルートの剣って弟子のマサキの剣サバキを見る限り、シンの目指すべきそれとは全くタイプが違うように思えるけどな
原作やこのSSでのシンの剣は一撃必殺の剛の剣でゼンガー寄りだけど、ゼオルートの剣は手数と速度で攻めるタイプだろ
>>236 α外伝の未来世界の場合はα世界の歴史修正パラレルになってるから複雑だな
ニルファ以降と外伝、どちらの流れが本来の歴史なのかわからん
とりあえず外伝シュウがこれはありえない世界みたいなこと言ってたし
自分が倒されることで因果律修正されたみたいなことも言ってなかったっけ。
エピローグでは未来組の様子もちゃんと描かれてたからあの世界はあの世界で
存在はしてるだろ。
ただαの世界とは完全に別の時間の流れになったのかな。
>>238 ファングの方が弟子歴長いけど、虚空斬は乱舞ではなかったような。
剣聖シュメル・ヒュールの剣は静と動のメリハリがえらくはっきりしてる感じだが、どうかな。
無音剣「さざなみ」とか。
>>242 虚空斬は、シュメルの弟子であるジノやロザリーも使うので、あれは本来は不易久遠流の剣技だと思う
多分、シュメルとの戦いを通じてゼオルートが自分の技に取り入れたのでは
シンに師匠いらない気がする。
ラクシズにヴォーダンが入るしさ、彼と死闘を繰り返して上達すれば良いよ。
導く者も居らず荒削りの我流でいきなりウォーダンとかはキツ過ぎるだろ……
剛剣ならリシュウ先生のご先祖がいるジャマイカ
ロウや劾にいろんな剣の使い方を教えてもらうとか
蘊奥に師事しに来てもらえば良いんじゃね?
あんまり原作(アストレイだけど)キャラ蔑ろにするのもなんだし
なら、既に登場し面識もあるエドで良いじゃん。
しかしウォーダン相手に出来るほど教えられるのか?
コクピットハッチの僅かな隙間を穿つなんて事するからなエドは。
253 :
11:2007/09/09(日) 20:49:33 ID:???
第3話「ATXチーム」
「うわぁ…」
機体をシロガネに着艦させ、出された誘導に従って移動していたシンであったが、何気なくつけた機体カメラに映った、
薄いエメラルド色の生地にピタリと包まれたマスクメロンを見て思わずゴクリと生唾を飲み込みながら呟いた。
そしてそのマスクメロンはその実を生やした枝が動くたびに大きな余韻を残しながら、
彼の本能から発せられる視線を絡め取るように縛り付け、彼の喉と意識をさらに焼き尽くしてゆく。
「よし、パイロットはブリッジに来るように」
「…」
「聞こえるか、パイロット!返事をしろ!」
「は、ハイ!すみません」
管制からの苛立ちが混じった指示に我を取り戻したシンであったが、
そのマスクメロンが与えたインパルス―衝撃は、
年齢的にはまだ思春期真っ只中の彼にとってはあまりに大きなものだった。
「…以上だ、下がっていいぞシン・アスカ!」
「………!?り、了解です!」
「まったく、今度はマオ・インダストリーか!しかもパイロットまでどこの馬の骨かわからんとはな!」
慌てて飛び出していったシンを見てシロガネ艦長リー・リンジュンは吐き捨てる。
上からの命令に忠実に従う統率された兵力を最も尊ぶ彼にとっては、先日配属されたATXチームを始めとする、
よくも悪くも個性的な部下達を忌々しく思っていた。
一方のシンはというと、普段の彼であればその言動等からリーに対してよからぬ印象を持つはずなのだが、
マスクメロンが彼の上下半身に与えた衝撃はリーが放つ嫌味、皮肉の全てを右から左に受け流させていた。
「あれ…格納庫はどこだったかな…」
ようやくまともな意識を取り戻したシンであったが、今度は艦内で迷子になっていた。
そして辺りを見回しながら通路を曲がろうとしたとき、足をつんのめらせてしまう。
「う、うわっ!?」
「あ〜れ〜お奉行様御戯れをでございますです〜」
「ラ、ラッキースケベ…」
だが次の瞬間に、そのまま重力に引かれながら転倒せんとした彼を受け止めたのは
マスクメロンの大きさの膨らみと形、極上のプリンの持つ弾力を併せ持ったエアバッグであった。
254 :
11:2007/09/09(日) 20:52:24 ID:???
シンの顔面を生暖かくも柔らかに、だが弾力をも兼ね備えた感触が包み込み、
その両手の指と指の間からエアバッグの実がこぼれ落ちる。
(ん?…これってまさか…)
両手を包み込む感触から、シンの脳裏にはアーモリー1でのあの出来事の記憶が蘇る。
そして恐る恐る顔を上げて目を開いた彼の視界は、
自らの両手からこぼれ落ちている先ほどのマスクメロンにより埋め尽くされていた。
そして彼の顔が急速に真っ赤に染まっていくと同時に、その手を離して身を後ろに飛び跳ねる。
「すすすすすすすいません、すいません!」
思わず我に返り1人でてんやわんやの騒ぎになっているシンであったが、
それとは対称的にマスクメロンの持ち主は平然と口を開く。
「こんな感じでよろしかったりしちゃいますか、エクセ姐様」
若草色の髪をなびかせているマスクメロンの持ち主は明らかにまともな言葉遣いではない口調で無感情に問い掛ける。
「あらん、ラミアちゃんってば冷静なんだからぁ♪もうちょっとこう、大ピン〜チ!みたいな感じ出さないと」
ラミアと呼ばれたマスクメロンの持ち主の視線の先にいる、金色の髪をポニーテールの形で結わえ、
ラミアほどではないにしろ顔を埋めたり鷲掴むには十分すぎるであろうサイズのグレープフルーツを実らせた女が
いたずらっ子がそのいたずらを成功させたときのような笑みを浮かべながら、問に答える。
そして彼女は矢継ぎ早に新たなターゲットにその悪戯の矛先を向ける。
「ふふふ、『羨ましい」って顔に書いてあるわよん、アンラッキースケベなブリット君」
「そそそそんなことはありませんよ少尉!」
「またまた無理しちゃってぇ。男ならクスハちゃんに頼んでみたらん?」
「たたたたたた頼めるわけないじゃないですか!」
「んもう、相変わらず予想通りのリアクションねえ。思わずギュッとしたくなる年下の男の子ランキング、マイナス500ポイント」
「…エクセレン、そこまでにしておけ。新人が呆気にとられているぞ」
鼻の穴から赤い液体をたらしている金髪の男の後ろから、黒い髪の先に前髪だけ金色のメッシュを入れた男が現れた。
そしてその男は、まだ心臓をバクバクさせながら3人のやり取りを眺めていたシンの方へとやってきて
珍しい笑みを浮かべながら手を差し出す。
「騒がしくてすまないな。話は聞いている。ATXチームのリーダー、キョウスケ・ナンブだ。よろしく頼む」
「マオ・インダストリーから来ましたシン・アスカです」
シンも手を握り返してそれに応える。
255 :
11:2007/09/09(日) 20:53:29 ID:???
「んもう!ノリが悪いんだからぁダーリンは。エクセレン・ブロウニングよん。よろしくねん」
「なんで俺までスケベ扱いなんですか!…ブルックリン・ラックフィールドです、よろしく」
「ラミア・ラヴレスでございますのですのよ」
エルザム・ギリアムの依頼により、シンをシロガネに配属すべくレイカー・ランドルフは手を打ったのであるが、
イスルギと癒着して極秘に作ったヴァルシオン改CFに加え、
量産型ヒュッケバインmk2を強奪された失策により弱みを作ってしまったケネス・ギャレットは
それに対抗しえず、
また、マオ社から機体のデータ取りのために派遣されたパイロットだというシン・アスカが、
特に自分に不利益になるとは思えなかったことからシンのシロガネ配属を認めたのだった。
シンの肩書きは、教導隊カイ・キタムラ少佐・情報部ギリアム・イエーガー少佐により
提唱されたゲシュペンストを始めとする、既存機改修計画の一環として改修を受けたビルトシュバインの
データを取るためのパイロットとして、マオ・インダストリーから派遣されたパイロットというもので、
ラミアがイスルギ重工から派遣されてシロガネに配属されているのと似たような立場であった。
ちなみにこれには軍属としてシンを連邦に所属させるよりは客観的な視点から
新西暦の世界を見ることができるように、とのエルザムたちの配慮があったのであるが。
「あらどうしたのキョウスケ、まーたむっつりした顔しちゃって」
格納庫で愛機アルト・アイゼンのコックピットからビルトシュバインを睨みつけるキョウスケにエクセレンが問い掛ける。
「妙だとは思わんか?」
「ん〜、そりゃラミアちゃんの胸に飛び込んだ挙句、揉みしだくなんて偶然とは思えないけど…」
「とぼけるな。確かにヴァルシオンやヒュッケバイン強奪をみるかぎりDC残党の動きが活発してる今、
戦力の拡充は望ましいが、タイミングがよすぎるような気がする。
それにラミア同様、どこか素性が知れない…あくまでも勘にすぎんがな」
「でも経歴に不審な点はないんでしょ?」
「経歴なんていくらでもでっち上げられる。何かが起きる前触れでないといいんだがな…」
「はあ、キョウスケの勘は悪いことばかり当たるのよねん」
「だが今はこの後のDC残党の拠点を潰すことだけを考える。これまでの散発的な戦闘というわけにはいかないだろうからな」
そう言って嫌な予感と少しの苛立ちを抱えながらキョウスケは愛機の点検を続ける。
だがそれ以上の苛立ちを抱えている人物がアメリカにいた。
256 :
11:2007/09/09(日) 20:56:15 ID:???
「一体何がどうなっておるのだ!奴らは何を考えておる!!」
報告書を読みながらコーヒーカップを床にたたきつけたのはラングレー基地司令官ケネス・ギャレットである。
執務用のデスクには報告書の類が山のように積み重なっているものの、
彼が望むような事態が記載されたものは1つたりとも存在していない。
DC残党による破壊活動に関するものや強奪されたヴァルシオン、ヒュッケバインの行方が未だ不明であるというもの、
交戦していた連邦軍・DC残党双方に襲い掛かった勢力によりいくつかの小隊が壊滅させられたというもの、
なかなか進まないパイロットのヒュッケバインへの機種変更などなど、
ケネス・ギャレットという軍人の功績になるものは何一つなかった。
その頃、メキシコ高原にあるDC残党の拠点に残されたライノセラスからは、
接近してくるシロガネを迎撃するため戦闘機、アーマード・モジュールが慌しく発進していく。
そして格納庫では指揮官機であるガーリオン・カスタムの出撃準備が完了しようとしていた。
「カーラ、敵はどうやらスペースノア級らしい。無茶をするなよ、俺達の役目はあくまでしんがりだ」
とある味方機に通信を入れるのはDC残党軍のアーマード・モジュール部隊の隊長であるユウキ・ジェグナンである。
彼はビアン・ゾルダーク死亡後も、ビアンの理想を実現すべくDCとしてエアロゲイターとの戦いを続けて今に至っている。
その根底には連邦のやり方では最終的に地球圏を守り抜くことができない、との信念がある。
そして、通信の相手方であるリルカーラ・ボーグナインの弟がエアロゲイターの攻撃の際に
亡き人となったことも彼の信念をさらに強いものとしているのだった。
「そんなことわかってるよ!ユウこそ油断して撃ち落されないようにね!」
「誰に言っている?とにかくこんな所で死ぬなよ、さっきも言ったがお前の復讐は終わっているんだ」
「あら、なんだかんだであたしのこと心配してくれてるんだ。ユウって実はクーデレ?」
「…(ここで乗せられるなユウキ、乗せられたらこいつの思う壺だ)」
「もうユウったら照れ屋さんなんだからぁ」
「…それだけの口を叩いているなら気負いはないようだな。カルチェラタン1、ユウキ・ジェグナン出るぞ!」
ガーリオン・カスタムが飛び立った先には、砲撃を続けながら接近してくるシロガネ、
シロガネから発進し、前線部隊と交戦は始めたアルトアイゼン、ヴァイスリッター、ヒュッケバインMkU、
それに続き、かなり特徴的な外観を有するアンジュルグ、そしてビルトシュバインの姿があった。
「あの機体は…ATXチーム、相手にとって不足はない!」
そう言うとユウはガーリオン・カスタムを前線に向けて羽ばたかせた。 続く
シンにビルトシュバイン……なるほど、シン向けの機体だ。
シンのラッキースケベぶりに嫉妬しつつ、次回をwkwkしてまっていますです。
シン、ラミアをガン見しすぎw
こいつはシスコンの癖に、女のタイプは肉感的なのが好みだから困る
肉感的な妹キャラ……袖無しか!
しかしここのシンのラッキーは一体誰なのか気になったりw
11氏のシンはタスク、アラドに次ぐラッキーLv1の保持者っぽいですな
もうこれはラッキーLv1なんてレベルじゃない気もするけど
ラッキースケベLv7くらい?効果は一定レベル以上の女性の胸を揉むもしくは顔の埋める?
タスクやイルムが泣いてでも欲しいスキルだww>ラッキースケベLv7くらい?効果は一定レベル以上の女性の胸を揉むもしくは顔の埋める?
某ゼンガー仮面にあったら間違いなく違うと断言するのだろうか?(そこで素性に関してボロがでそうだが…)
ブリットとシンは結構気が合いそう……熱血漢どうしだし。
アニメではたった一回ステラの胸揉んだだけなのに、気が付けばシンの代名詞のように使われている、らき☆すけの不思議w
一回だけだからこそ、インパクトがでかいのさ。 まだまともに種死が見れた時期っていうのもあるかもしれんが……。
>>265 >まだまともに種死が見れた時期
第一話じゃねーかwww
キョウスケ「読めたぞ…! シンはアクセル達の仲間だっというわけか」
ギリアム「違う」
キョウスケ「読めたぞ…! シンはアクセル達の仲間だったというわけか」
ギリアム「違う」
キョウスケ「べお〜ん」
ラクシズ登場フラグ立った気がするのは俺だけ?
OG世界にはC.E.など比べ物にならんほど
最低をぶち抜いた最低の部類の人間がいるからね
ラクスは洗脳婆さんの餌食になりそうだ
むしろメイガスのコアにされないかが心配になってくるがな……。
メイガスのコアになる為の条件って有ったっけ?
コアになるのはキラのが向いてる予感。条件は特になかったと思うけど。
あ?キラは無理。
だって男でしょ?
女性、意志が強いぐらいしかないんじゃね?
新たな生命を育む者、汝の名は女なり!
男?女?
でもそんなの関係ねぇ!
でもそんなの関係ねぇ!
ラクスとキラがラブラブ天驚拳……
だめだ、あれはドモン級の鈍感が最終話にやるから名シーンなんだ。
恋人が二人もいたやつの出る幕じゃない。
そもそもドモンの生身の体だけでなく機体を調整するなどもして献身的に尽くし続けたレインと、
しんどいことは洗脳した信者にやらせて犯罪を続ける桃色汚物を一緒にしたらいかんだろ…
>>278 貴様は全Gガンダムファンを敵に回しそうになったな
オウカと同じ様な扱いになるか、Wナンバーズにこそりと混じってそうだ>ラクシズ系
282 :
93:2007/09/12(水) 00:57:59 ID:???
《あ、お父さん?今回もちゃんとメール見てるかなぁ、お母さんも心配していたよ?
最近の外は物騒らしいですけど、こっちは平穏そのものです》
いささかノイズの混じった画面には十代半ば程の少女が語りかけてくる…
《お父さん仕事が入ると直ぐにのめりこんじゃうんだから……体に気をつけてね!!
道場のみんなもお父さん尊敬してるから言い出せないみたいだから
あ、そうそう。明後日は何の日でしょうか?お母さん『あの人はそんなの貰っても喜ばないから』とか言っておいて台所で内緒で頑張ってるんだから!!
じゃあまた、ちゃんと帰ってきてね……お父さん》
少女が元気良く笑っている。頑固者であったが、妻に似て優しく器量の良い娘であった。
……三年前までの話である。
あの日、彼女達はまた予定より帰宅の遅れた父親に腹を立てながら夕食の準備をしていたのだろうか……明日もまた、平和な一日が来ると信じて。
彼女たちは知っていたのだろうか、その二日後には
自らの命が散り逝くことを……
忘れもしない三年前の二月十四日、帰宅が予定より遅れた自分達を待っていたのは、崩壊するユニウスセブンの映像と非常召集の報であった……
何故、何の為に?戦略的に価値の薄い筈の農業用プラントを攻撃する?妻は?娘はどうなったのだ?
街頭用スクリーンの中で宇宙の塵となっていたかつての故郷は無慈悲にも生存の希望など万の一つも見せてはくれなかった……
男は、リピートし続けるビデオメールを切ると、コクピットの下方に映る半ば崩れかけた門を見下ろした……嘗ては自分の弟子たちと共に腕を磨き、
慎ましくも平和に暮らしていた頃の記憶が鮮やかに蘇ってくる。
数年前なのに、もう何十年も遠い昔のことのように感じる
「すまない……父さんの仕事が遅くなってしまった……ここまで来るのに、三年もかかってしまった」
男はそう呟くと、コクピットを開き、既に朽ち果てた自らの家へと足を踏み入れていった
鉄《クロガネ》SEED 『ユニウスセブン編』
士官用ブリーフィングルームではデュランダルを含む艦のトップ達が一同に会していた題目はプラント評議会からの通信、優先コードはトリプルA。
つまり最優先事項ということになる
「結論から言いましょう……ユニウスセブンは周回軌道を離れ地球に向けて降下を始めています」
ユニウスセブン……プラントと地球連合の軍事的衝突の発端となったコロニーである。
「異変が見られたのは約二時間前、観測に出ていた偵察用ジンがユニウスセブンに微細な熱源を探知しました、それがこの……」
デスクの中央にCGモデルが浮かび上がる。それぞれ地球と予定軌道を外れたユニウスセブンである。
その内の軌道を外れたユニウスセブンの進行方向から見て後方、つまり台座の様な部分の下に巨大な円筒形の柱が幾つも連なっているのが見える。
「見たところ、小惑星移動用の大型パルスエンジンみたいね」
艦長のタリアが言うのをギリアムが首肯する。
「この規模の出力から推定するとユニウスセブンは約30時間後には阻止限界点に到達する計算になります」
部屋内に緊張が走る。30時間……到達し破砕作業を行なって離脱するにはギリギリの時間である
「既に周辺の部隊にユニウスセブンの破砕作業と破砕用のメテオブレイカーを送っている。君達には追撃を一時中断して彼らの支援を頼みたい」
普段の穏やかな表情から切り替わったデュランダルは深刻な表情で辺りを見回した。
「時間は限られている……もはや一刻の猶予も無い。君たちの健闘を期待する」
283 :
93:2007/09/12(水) 01:04:17 ID:???
「……とは言ったものの、問題は今現在のザフトの戦力で果たして防ぎきれるかどうか……」
廊下を歩くデュランダル、そして教導隊のメンバーが続く。
「敵は連合だけでなくザフトからも協力者を得ています。妨害は必至と考えていいでしょう」
そう、彼らは必ず現れるだろう。
戦争がしたい、戦いたい、強くなりたい、そんな人間が居れば『彼等』の影は現れる。戦争が存在する限り
「……我々は後手に回りすぎたのかも知れないな……」
ふと、立ち止まったデュランダルが呟く、その声色にはまぎれも無く疲れが混じっていた。
無理も無い、得体の知れない連中に戦争の火種を撒かれ、なおかつ自軍の新型機まで奪われる始末、さらにはあんな物まで落とそうとする……
いくらデュランダルの政治的手腕が優れているとはいえ、此処までやられてはプラントと地球は最悪のシナリオに突入することは必至である
正直疲れた……もうこのまま奴等の手の中で踊り続けるしかないのだろうか?
「いや、まだ間に合うはずだ」
「ギリアム……」
「レーツェル、準備はどうなっている?」
「無論滞り無く。阻止限界点までには到着する手はずになっている」
不敵な笑みを漏らしつつレーツェルが答える
「一体何を……まさか!!」
「申し訳ないデュランダル議長、もしものときの『切り札』を使わせていただきます」
カイは言葉ほど申し訳なさそうでは無い、むしろ悪戯を思いついた悪童のような笑みを浮ばせている。
「……事後処理はよろしく頼む」
ゼンガーも口元に笑みを湛えている。デュランダルはしばらく呆気に取られた後
「………………クっククク…………はっははははは!!」
大声で笑い始めた。それにつられたように四人も笑い始める
しばらく大声で笑っていた後、デュランダルが目元を拭いながら呆れたように首を振った。
「いやいや、参った!!そうだったな……」
「我々はそのために貴殿に協力しているのだ。忘れてしまっては困る」
ギリアムが心外だといわんばかりに応える。
「……強いな、やはり君たちは」
「なに、俺達も最初から強かった訳じゃない。小石に躓く事ぐらい誰だって有る」
「『小石』か、確かに私の行くべき道に比べればユニウスセブンも唯の『小石』だな」
そう、唯の小石に立ち止まっている暇は無いのだ。彼らが私を信頼するならば、私が彼らを信頼せねば誰がするというのか!?
「お陰で少し吹っ切れたようだ……さぁ行こう!!ぐずぐずしてられん」
「「「「応!!」」」」
一人と四人、いや五人となった彼らははそのまま廊下を後にした。
通路の曲がり角から一部始終を目撃していたブリッジクルーのアーサーとメイリンは
「議長ってホントはあんな性格だったんですね……もっとクールで冷静な人かと思った」
「人は見かけによらない物だね……」
と、お互い頷きあっていたが
「……カレッジ時代からあの人『隠れ熱血』だったから……あとメカとかMSとかも好きだったわね」
「へぇーホントに見かけと正反対な……艦長!?」
「ホントに、変わらないわね。」
二人の背後で某いぶし銀の如く壁に寄りかかり腕を組むタリアは懐かしさと寂しさ、
そして若干の羨望の入り混じった声で言うと二人に背を向けて歩き出していった。
「……何しに来たんだ?艦長?」
「さぁ……」
284 :
93:2007/09/12(水) 01:06:09 ID:???
ミネルバの格納庫内ではシン、ルナマリア、レイの三人が整備班と共に機体のチェックを行なっていた。
「それにしてもまぁ、珍兵器の見本市みたいになってるよなぁ……」
ヴィーノの溜息にパイロット三人は同時に「「「確かに」」」という顔をする。
「だが、こいつらの外面だけに惑わされちゃあいかんぜ!!」
「おやっさん……」
現れたのはこの艦の整備班長マッド・エイブスである。この間におけるモビルスーツや艦の整備や修理などを担当する、正に縁の下の力持ちである。
「シンよぉ、お前さんが乗っているインパルス、コイツがトンでもねぇシロモンでな。分類は一応試作機なんだが、コイツには『削るべき部分』が存在しねぇ」
「削るべき……部分?」
シンには余り理解できてはいない様だ。エイブスは肩を落として溜息をつく。
「削るべき部分……つまり量産するに当たって、スペックデータにが口を挟む余地が無い。完成された状態……ということだ」
見かねたレイがシンに解説する。
「でもよ、コイツと言いみんなのウィザードといい、この二年くらいで随分と様変わりしたよな」
ヨウランが整列された巨人を見上げて呟いた。
レイのザクファントム用に装備されたウィザードは、通常のブレイズに対して、ブースター、スラスターの数が大幅に増加したタイプで、大気圏内の飛行も可能である。
武装においては、ビームカービンに加え、ロングレンジライフルと背部のウィザードに追加された『サーカスバインダー』が大きな特徴である。このサーカスバインダーは三百六十度に稼動が可能なアームに接続されており当に死角が存在しない。
レイの空間認識能力の高さ故に使用できる装備なのである
「で、『パワーランチャー』は?」
「…………」
シンのインパルスには、高速移動用の追加ブースターとウィングの追加されたフォースシルエットが装備されており斬艦刀は侍の如くに腰に吊り下げられている。
「ソードと違って出力に余裕が無いから『コーティングモード』で使えよ」
「解ってるって、リミッター外すと直ぐにエネルギー切れるからな」
「しかし、シン。何でこいつは斬艦刀って呼ばれてんだ?」
ヴィーノが素朴な疑問を尋ねた。皆の視線がシンに集中している辺り、どうやら全員が気になっているらしい……シンは咳払いを一つすると
「教官達が作ったMS用の刀には代々斬艦刀ってつけるんだって。でも、コイツは本当は戦艦を斬るためじゃない……」
「じゃあ本当に斬るものって?」
「それを見つけるのも鍛錬の内なんだってさ」
ルナマリアの質問にも、どこか上の空に答える。
(本当に斬るべきもの……か、ゼンガー教官は俺に何を伝えようとしてるんだ?)
ふと、ルナマリアのザクが視界に入った。それにしても……
「どう見ても女の子が使う装備じゃないよな……」
「そうね……」
悔しくても何も言えなかった。
支援
286 :
93:2007/09/12(水) 01:10:38 ID:???
同時刻、
落下を続けるユニウスセブンでは、工作部隊と実行犯との攻防戦が繰り広げられていた……
実行犯たちの主力、『ジン・ハイマニューバ弐型』は工作部隊の護衛機であるザク・ウォーリアより一世代前の機体にも関わらず彼らを一蹴していた。
また一機、黒と紫に染められたハイマニューバが恐らく新兵であろうザクを一刀の元に両断した。
「雑魚がっ!!死ぬのが嫌なら出てくるな!!」
「トウドウ、そちらはどうだ?」
別地区を担当する『中尉』から通信が入る。この地に点在して交戦している彼ら同志達を指揮する男である。
「こちらはザコばかりです。問題なく片付きますよ」
二三の問答の後、レーダーに三つの光点が表示される。トウゴウは気を引き締めつつ、僚機に指示を与える。仲間や『師範代』の為にもここで制圧されるわけには行かない
「どんな敵だろうと、此処を明け渡すわけには行かない!!アイツのためにも……ここは行かせない!!」
自機のモノアイに光を灯すと、スラスターを吹かし敵を迎え撃った
そしてもう一つ、着々とユニウスセブンに近付きつつある船が一隻……
「進路クリアー鼻息全身!!」
「鼻息ではなく微速だ……」
操舵士代理はケラケラ笑いながら
「まぁまぁ、細かいことは気にしない!!」
「全く……」
艦長不在の今は自分が艦を預かる身なのだが……操舵士が居ないとは計算外だった、全く持って不覚だ。
と、デスクに置いたタイマーがベルを鳴らす。葉も開ききった所だろうそろそろ入れ時だ。
カップに琥珀色の紅茶を注ぎ、まずは香りを……
ガァン!!
大きな振動と共にカップが俺に襲い掛かる!!避けられない!!
「まずいよユウ!!どうやら敵さんと鉢合わせ……ぷっ!!」
「…………」
笑いたければ笑え。傍から見れば相当シュールだろうな、紅茶を顔から被った男など……
そのまま指揮を他のクルーに任せ、艦橋を出る。
ええい、この礼は相当高くつくぞ!!
続く
287 :
93:2007/09/12(水) 01:17:26 ID:???
投下終了……
相変わらず雑な文章ですが、何とか
因みに南極夫婦が敵陣営なのも色々と理由があるんですが、
まぁDやってれば……
そして11氏GJ!!
紅茶wwwww
トウゴウってもしかして龍虎王伝奇のアレですか?
トウゴウじゃないトウドウだ
トウドウなんて聞いてもゴルゴのジャップ・トウドウしか思いつかないぜ。
リシュウ先生ですか
伝奇のトウゴウと言うと龍虎雀武王思い出すな
真は好きじゃないがアレは好きだった。
上げてもいいよね?答えは聞かないけど!!
第二十六話 魔王と魔神の邂逅
地球連合の猛攻に陥落したカオシュン基地。港湾施設に係留されたアークエンジェル級三番艦ゲヴェルでは、新たな戦いに向けて次々と物資が搬入され、
ブルーコスモスから派遣されたスウェン、ミューディー、シャムス、ダナ、エミリオ達のストライク、デュエル、バスター、ブリッツ、イージスといった機体も入念な整備を受けている。
ブリッツのパイロットであるダナ・スニップは、無精鬚をはやし、外に跳ねた癖のある黒髪の青年で五人の中でも敵をいたぶって倒す事に喜びを覚える残虐性が強い。普段はノリが軽い、調子のいい奴と言えない事もないが。
エミリオ・ブロデリックはイージスのパイロットで、コーディネイターに対する造られた憎悪が最も激しく、ザフトとの戦闘においては、コーディネイター撃破の為なら味方の犠牲もいとわぬ為に、五機のGの中では指揮用に造られたイージス向けのパイロットは言い難いとも、
あるいは適材とも言い換えられる。勝利の為にどこまでの非道が許されるか、という観点によって評価が変わるだろう。
アークエンジェル級の特徴である前方に突き出た、馬の馬蹄に似た船体部分で、搬入作業を見ていたカイ・キタムラ少佐は、近づいてくる人影に気付き、相好をわずかに崩した。
カイより年かさの、逞しい男だ。既知なのか、互いに気心の知れた相手に対する表情を浮かべていた。
「よお、カイ」
「デュクロか。お前の戦車隊、相変わらず見事な指揮だな」
「よせよ、お前の所のMS隊に比べればどうって事無いさ」
「だが、戦車隊でMSと互角以上に戦えるのはお前のとこ位だろう?」
「月下の狂犬も今じゃMS乗りだからな。もっともおれだってバクゥ相手じゃお手上げだ」
「だが、地上のザフトにもう打って出るほどの戦力はもう残っていない。戦車隊も楽が出来るかも知れんぞ?」
「その分、お前さんがたの苦労が増えるんだろうがな。ところでどうだ、MSは?」
「NJがあればこその兵器だが、確かに強力だ。メビウスでは確かに荷が重いな。それを今度はザフト相手に発揮する番だがな。……そういえば、お前の甥は?」
「ああ、コーディネイターさ。プラントに住んではいないがな。カイ、お前まで“青き清浄なる世界の為に”、なんて言うなよ?」
これには、カイも苦笑して肩を揺らした。確かに、彼らの周囲でそれを口にする人間が増えているのは確かだった。
「言わんさ。おれも娘も妻もナチュラルだが、だからといってコーディネイターを特別敵視しているわけじゃない。NJで、罪の無い人々との多くが凍えて、飢えている世界を作った事に対しては憤りを覚えるが……。
おれ達が戦っているのはザフトであってコーディネイター全てではない」
「そう言える奴が今の連合にどれだけいるんだろうな。実際、連合の兵士の多くは自分達が戦っているのはコーディネイターという、別の生物だ、なんで思っていかねん。
それに、お前の所の部下は特にそうだろう? 耳に挟んだぜ、ブルーコスモスの派遣したパイロットが集合しているってな」
「おれの部下である事には変わらん。なぜおれの下に集めたか、という意図ははっきりとせんがな。強いて言えばハルバートン派であるレフェーナ艦長やおれに対する牽制がいやがらせか、あるいはその逆だな」
「ハルバートン提督が、ブルーコスモスの動きを牽制するためにお前達を、ブルコスの上司にした、か?」
「かもしれん、という話だがな。所詮おれ達は一兵士だ。やれることは限られている。ならば、そのやれることを最大限遂行するだけだ」
「そうだな。……連合の上層部が今のままだったら、兵士ではいられんかも知れんがな」
「……かもしれんな」
ブルーコスモスの過激派が謳うコーディネイター殲滅。もし、それの実行を命じられた時、軍人である自分はそれを遂行するのだろうか? 暗い未来の予感に、カイとデュクロはしばし口を閉ざした。
遠く海洋を挟み、地球連合と戦火を交える聖十字の旗がたなびくオノゴロ島に、銀の髪をした端正な顔立ちの少年のあげる、驚きの声が木霊した。
「カオシュンが陥落した!?」
「そうだ。ジブラルタルももはや風前の灯火。バン代表のアフリカ共同体に残された戦力を集結させ何とか戦線を維持しているようだがな」
オノゴロ島にてカーペンタリアから移ってきたザフトの友軍と共に、マスドライバーでの打ち上げを待っていたイザークの耳に飛び込んできたのは、カオシュン陥落の報であった。
イザークにそれを伝えたのは、アルベロであった。イザークと共に打ち上げの後の話をしていたクルーゼも、ほう、と感心した呟きを洩らす。友軍の危機に対し非情という他ない態度であったが、アルベロはそれを一瞥したきり。
驚愕の表情を浮かべるイザークは、クルーゼの冷笑に気付いた様子はない。オノゴロ島でザフト軍に提供された施設の一室での事だった。
アークエンジェル級二隻を投入し、デュエル・バスターを大量に投入した連合の戦力には、さしものアルベロとクルーゼも内心で驚きを共有していた。
地球連合は五機のGの内、砲撃支援用であるバスターと、汎用性の高さや稼働性、バランスのとれた基本性能のデュエルを、ダガーとは別に生産している。
換装システムによって多彩な戦闘を可能とするストライクは、その換装システムのコストが問題視されて、あくまでエースなど用に、少数が生産されている。
ブリッツは装備の特殊性から、ストライクよりもさらに少ない数が配備されるだけで、イージスなどはその複雑怪奇な変形機構などが災いし、ほとんど生産はされずにいる。
これらGとダガーシリーズでは、互いのパーツの規格が共通のものが多く、生産ラインを平行に稼働させても相互に部品を流用できるので、無駄になるパーツというものはほとんど出なかった。
もともとアラスカ、パナマと大規模戦闘が続き、そのどちらでも大多数の戦力を失ったザフト地上軍だ。次々とMSを戦線に投入する連合相手に、もはや地上での戦いに勝機は失われたに等しい。
地上のザフトは残されたカーペンタリアを大洋州連合、DCとの連携で防衛するのが関の山だろう。
整えられた端正な顔立ちに、決意の色を浮かべてイザークはクルーゼを振り返った。ゆったりとソファに座るクルーゼの傍らで、イザークはクルーゼの答えが何であろうとも決意は変わらないと瞳で告げていた。
「隊長、カオシュンから撤退する友軍への救出部隊を今すぐに編成し、出撃させるべきです!」
「ふむ。だが、カオシュンから撤退する部隊の多くは傷ついた傷兵がほとんどだ。今、我々が第一に考えなければならないのは、少しでも多くの戦える兵とMSを宇宙に上げる事……」
「では、祖国の為に戦い、傷ついた仲間を見捨てるのですか!?」
「戦力にならぬ者たちを助ける為に、戦う事の出来る者達を危険に晒すわけにはいかない。私とて心苦しいがね。指揮官というものは大局を見て判断を下さねばならん。時には意に沿わなくとも非情な決断を要するのだよ。イザーク」
仮面に覆われて伺う事の出来ぬ瞳にどんな色を浮かべてか、クルーゼは少なくとも言葉だけは言葉通り遺憾だという感情を込めていた。
十の為に一を犠牲にする。主戦場が宇宙に移る事はもはや決定的だ。ならば現存する地上戦力を宇宙に上げる事を最優先にする事が、最終的にプラント防衛に繋がる。それくらいはイザークとて、いや士官学校を卒業したての新兵とて分かるだろう。
だが、今こうしている間にも必死の思いでカオシュンから後退し、生き延びようとしているであろう友軍の仲間達がどんな思いでいるか、それを考えるとクルーゼの言葉を受け入れがたいものだ。
それに傷ついた友軍を見捨てる行為は、他の部隊の軍への不信に繋がる事がある。自分達も同じ状況に陥ったなら、見捨てられるのではないか、と。自らが捨て石になることを理解したうえで尚戦うものがいるのも戦争の事実だが、多くの者はそうではないのだ。
それに、カオシュンに残されているのは、十分な訓練も受けられずに戦線に投入された新兵が多い。まだイザークよりも若い少年少女が、戦場の恐怖におびえながら、ここまで来れば助かると必死の思いで戦場を駆けずり回っているのだ。
「ですが! 勇敢に戦い、傷ついた同胞への報いがそれであるならば、たとえ理があろうとも不信を招きます。我々を見捨てた本国の為に戦うのかと思う兵が出るでしょう!
今やMSを戦線に投入し戦力を回復させた連合相手に、我々が一丸と成れずにいては、勝てる戦いも負けてしまいます!!」
「だが、君の望みを叶える戦力の余裕はない。すでにビアン総帥の計らいでカグヤから兵員・機体を始めあらゆる物資の宇宙への打ち上げも始めているのだよ? 部隊を再編成するのにどれだけの手間がかかるか……。
余分なシャトルと時間はないのだ。救出とていわば手遅れの事態になる可能性が高い。そこまでする価値と結果を得られると本気で思うのかね、イザーク?」
ばり、と噛み砕く音さえ聞こえそうなほどにイザークは強く歯を噛み締めた。胸の中で渦巻くものをなんとか抑えるには、そうする他ないのだ。クルーゼはこれで引き下がればと思ったようだが、イザークはいささか予想以上に頑固に出来ているようだった。
「……では救出部隊を募り、それに志願した者達だけでも行かせてください! それで部隊が編成できなければ、おれも諦めます!」
頑と譲らぬイザークに、クルーゼは心底からやれやれと溜息を着いた。
結果から言えば、イザークの申し出はクルーゼが渋々受け入れる形になった。イザークだけでなく、他の隊長クラスからも同様の申し出が提出されたからだ。地球連合の大反撃によって、
その恐ろしさを実体験した事で残された友軍達の苦境が身につまされる思い理解できたからだろう。
だがイザークに許された戦力はあまり多いとはいえなかった。ボズゴロフ級をはじめ、輸送潜水艦などが十数隻、輸送機もおおよそ同数。MSはディンやゾノ、グーンで揃えられたが、数は精々が二十〜三十程度だ。
これではたしてどれだけの友軍を助ける事が出来るだろうか。ましてや得られるものは傷つきぼろぼろの負傷兵達ばかりなのだ。だが、それでも行かねばならないとイザークは固く思っていた。
この戦いは、数字や理屈を超えたコーディネイターという以前の、人間としての論理を問うものなのだから。急遽部隊としての体裁を整えるべく慌ただしい指示が飛び交い始めたオノゴロ島の港で、イザークは固く歯を食い縛る。
イザークはボズゴロフ級に運び込まれる自分が乗るディンを見上げた。アサルト・シュラウドを失ったデュエルは、DCが保有していたロングダガー用のフォルテストラを調整したものが既に装備されている。
不意に、イザークは自分の左右を見た。赤い髪と、キラキラと輝いている大粒の瞳に、闊達そうな雰囲気が眩しいルナマリア・ホーク。先端に巻き癖の付いた純金の様な髪に、人形めいた風貌に起伏の乏しい感情がわずかに滲んでいるレイ・ザ・バレルがいる。
「すまんな。おれのわがままにお前達まで巻き込んで」
「何言っているんですかイザーク隊長! ここで仲間を見捨てたらザフトの名折れです。地球連合に私達の力を見せてやらないと!」
「おれもルナマリアと同意見です」
「……ふっ、士官学校を卒業したばかりのヒヨッコがよくも言ったな! そこまで言ったからにはお前達、絶対に生きて帰るぞ!」
つい緩みそうになる口元を引き締め、思わず込み上げて来た熱いものを堪える為に、イザークは強い語調でそう怒鳴った。
ジュール隊他、救出部隊に志願した隊長達と話を詰める為に施設に移ったイザークの耳に一つの朗報がもたらされた。与えられた会議室で議論を交わすイザーク達の前に姿を見せたのは、誰あろうディバイン・クルセイダーズ総帥ビアン・ゾルダークその人であった。
目の前に現れた人物に一瞬呆然と目を見合わせたザフトの面々も、すぐさま敬礼をして、応える。いつもの様に漆黒の艶やかさを纏うロンド・ミナ・サハクを侍らせたビアンは、手でそれを制して、こう言った。
「唐突な訪問の非礼をまずは詫びよう。今回の諸君ら、ザフトの救出作戦に、我々DCも協力させてもらいたい」
ビアンの思わぬ言葉に、その場にいた誰もが予期せぬ吉報に喜色の色を浮かべたが、突然の申し出に驚いてもいた。先のマドラス基地襲撃だけで無く、マスドライバーや基地施設の利用など多大な協力をしているDCの新たな申し出に
――それも総帥直々の――、思わず何か含む所でもあるのかと勘繰ってしまったのだ。
一人の黒服が、おずおずと口を開いた。
「それは願っても無い事ではありますが……」
「スペースノア級タマハガネ、キラーホエールの他輸送機、輸送艇も出せるだけ供出しよう。すでにカオシュンの部隊の殿は日本の伊豆基地を放棄しているとの情報が入った。間に合わせるためには一刻の猶予もあるまい」
「……分かりました。DCの友好に、ザフトを代表して感謝を。ビアン・ゾルダーク総帥」
支援
ビアンは重々しく頷いて答え、入室した時と同様に退室した。その道すがら――
「良いのか、ビアン? 今回の救出作戦、ザフトの点数稼ぎ意外に身入りはないに等しいぞ。貴重な装備と人員を犠牲にしてしまう可能性が大きい」
「分かっている。だが、数で劣る我らは必然的に質を高めざるを得ん。特に、これからの世代を担う剣達には様々な戦いを経て成長して貰わねばな」
「それゆえにクライ・ウルブズを投入するか。彼らには苦労を重ねるな、ビアン。シンが最後まで保てばいいがな」
「……そうだな。だが、今回はそれだけでもない。説明の出来ぬいやな予感がする」
「ほう? お前がそのような物言いをするのは珍しい。私もミナシオーネのオーバーホールが終わっていれば共に行くのだが……」
「お前には戦場以外で働いてもらっているからな。気にしなくてよい。……何か、他に情勢に変化は?」
「そうだな、後期生産型のエムリオンの生産の軌道に乗っている。以前から提案されていた余剰のリオン・パーツによるMSの生産が軌道に乗った。後は例のエンジンの開発も一区切りがついた事、スペースノア級弐番艦アカハガネも、間もなく実用に耐える仕上がりになる。
アメノミハシラのヴァルシオン・ギナ――ギナシオンが完成した。そんな所だな」
核融合炉を搭載した後期型のエムリオンを始めリオンと名のつく各機は、連合・ザフト製MSがビーム兵器を標準装備した現状を鑑み、バイタルエリアのみにPS装甲を採用し、機体全体にはラミネート装甲とEフィールドの出力強化を施してある。
弾数を多く確保するために小型弾頭を射出するレールガンとビームライフルを装備したオクスタン・ライフルなど、攻撃面でも強化されている。敵機のラミネート装甲とPS装甲に対抗する為の武器であり、
弾頭の撃ち分けを瞬時に行うのはそれなりの技量が必要となるが、コンピューターサポートでカバーすれば実用に耐えるだろう。
また、リオン・パーツの余剰から製造するMSの生産も軌道に乗っているという話だが、オーブの護りであるM1に、DC製アーマード・モジュールのリオンを換装パーツとして組み込んだエムリオンは、その製造工程故にM1部分に対してリオン・パーツに余剰が生まれる。
実用した結果、地上戦に特化したランドリオンは生産する必要性が薄いとい事から、そのパーツはほぼ生産が中止された事もあり、その分、他のパーツの生産数も増えている。それに構造的にリオンはもともと生産が簡易かつローコストである。
余ったリオン・パーツにコックピット・ブロックなど多少のパーツを組み込めば、ほら、リオンの出来上がりというわけである。
元々新西暦において、R−1のGリボルバー一発で落ちてしまうリオンである。その装甲の脆弱さを補う為に、エムリオンであるならM1部分に装備されるEフィールド発生機構を組み込む分、本来のリオンよりコストが割高になる面もあるが、
搭乗者の生存を重視するというのがDCの機動兵器の根幹的なコンセプトなので装備するにいたった。
今戦争中の実用が危ぶまれたアカハガネも、一通りの目処が付き後は搭乗員の選定と訓練を残す段階となっている。半年から一年は試験運行し様々な問題を調整したい所だが、既にタマハガネという例もある分、強行スケジュールとなるだろう。
ビアンのヴァルシオンを手本に、CE技術で一から造り上げられたヴァルシオン・ギナもアメノミハシラでロールアウトし、宇宙には二機のヴァルシオンが存在する事になる。この二機だけでも百近いMSに相当する戦力だろうと、カタログ・スペックからは判断できる。
どれだけ性能の高い機体も、パイロットと運用次第では性能の半分も引き出せない事はままあるが、幸いどちらのパイロットも有能だから、有効に使う事が出来るだろう。
だが、ビアンとミナの知らぬ所にこそ不安材料は残っていた。
ラクス・クラインが新造戦艦エターナル級を強奪し、謎の大型機動兵器スレードゲルミルを戦力としている事や、彼女らがメンデルに潜伏するオーブ艦隊と合流した情報は伝えられていなかった。
ジブラルタルのザフト戦力の一部を壊滅させたのが、DCにおいてコードネーム“G”と呼ばれていた最強最悪の機動兵器である事もまた。もっとも、ビアンが一種の直感でそれらの出現により、世界に渦巻き始めた不穏な空気に気付いたようではあったが。
シンはしばらく命令が無く、アスカ家に戻り、久しぶりにマユやステラ達と連れだって街に出かけていた途中オノゴロ島の街並みを見渡せる小高い丘の上に立つ家に足を向けた。
シンが武術の手ほどきを受けている先生の家だ。オノゴロに居る時はマユも一緒に遊びに来た事もある。二階建ての家屋と、裏に小さいが道場を構えている。表札には十六夜とあった。
「先生いらっしゃいますか?」
どことなく緊張した、そのくせ楽しそうな声でシンが玄関口で声を挙げた。周囲には風にそよぐ木立のざわめきや波の音が静かに満ちていて、自然と体に安らぎが満ちる、そんな雰囲気があった。
「なんつーか、気持ちの落ち着くところだな。ここ」
「ここの辺りだけ空気が違う、って感じだな」
「イザヨイさんの家っていつもこうなんだよ」
上からアウルとスティングに、何度かイザヨイ邸に来た事のあるマユだ。具体的にどう違うのか、と言われれば首を捻ってしまうが、感覚的なものとして彼らは確かにイザヨイ邸の周囲がはっきりと違うと感じていた。
いわば、空気が、いや世界そのものが澄みきっているというべきか。
そういう、野生的な意味では一番感覚が鋭いステラなどはきょろきょろとあたりを見回してわけも無く笑みを浮かべていた。ひどく気に入ったらしい。
その内、シンの声に応じる返事があり、ドアが開かれた。二十代半ばくらいの青年だ。爽やかな印象の黒髪黒眼の東洋系。シンやマユを認めると人懐っこい笑みで破顔して、家の中に招き入れた。
イザヨイは茶を出そうとしてくれたが、シンがそれを辞してすぐさま道場で稽古をつけて欲しいと告げた。シンの右手には紫に染めた絹の竹刀袋に収めた阿修羅があった。
イザヨイはシンの熱心さに呆れた様に微笑した。聞かん気の強かった坊主も、今は修行熱心な弟子に変わっていたのだ。
小さいが静寂という言葉をそのまま雰囲気に変えたような道場に全員が移った。靴を脱ぐという風習にステラ達は少し戸惑った。
中に入ってからは壁に掛けられた木刀や竹刀、神棚に興味を惹かれもしたが、今は道場の中央で対峙するイザヨイとシンに注目を集め、胡坐をかいたり足を崩して見守っていた。
二人が手に持つのは長さ90センチほどの瓜二つの木刀。共に名を阿修羅という。
共に青眼に構え、鏡合わせの様に対峙する。シンは激情をその小さな体に秘めた戦士。イザヨイは凪いだ海、あるいは悠久の大空の様に揺るがない。対峙する二人を見るだけで二人の間に天地ほども開いた実力の差が理解できた。
シンは阿修羅を握る手に力を込めた。イザヨイの体から立ち上る強大な、それでいて優しい力に、勝負が既に着いている事を全身が悟っていた。無限回戦おうとも無限回負けてしまうと。
――でも今はそれでいい。我武者羅に今は突っ込むだけさ。シンはすがすがしい笑みを浮かべて阿修羅を大上段に構えてイザヨイに突っ掛けた。
頭頂に近づくほど純度が高まり、高次元の力を生みだすチャクラを、シンはまだ下位のものしか扱えない。それでも、細胞の一つ一つが穏やかに燃焼するような感覚は力強い。
ダンと道場の床を踏みしめる音が響くよりも早くシンの阿修羅がイザヨイの頭部に振り下ろされる。
振り下ろした切っ先はイザヨイの頭部を二つに割り、腹まで切り裂いた。
「前より腕を上げたな、シン」
「はい」
いつの間にかシンの背後にいたイザヨイが、阿修羅を振り下ろしてシンの後頭部に一撃を見舞った。シンが切り裂いたのはその残像。
シンとは比べ物にならない純粋化された念により体内の七つのチャクラ全てを旋回させ、螺旋の生む力が人間の限界と物理法則を凌駕した時、イザヨイはまさしく超人と化していた。
そして、ゴンという音と共に、シンの頭に大きめのタンコブが出来た。マユはその光景に見慣れているらしく、いつの間にか救急箱片手に何時でも駆け寄れる姿勢になり、
スティングとアウルは並のコーディネイターを凌駕する自分達でさえも視認できなかったイザヨイの動きに目を見開いていた。
ステラは、頭を押さえて痛みを必死にこらえるシンの頭を撫でて上げていた。
その日一日、ステラ達は午後一杯、夕暮れまでシンの稽古に付きあった。
彼らにカオシュンから撤退したザフトの救援任務が告げられるのはその稽古の帰り路の事であった。
伊豆基地も陥落し、旧日本国も奪還した連合軍の部隊も、息を着く暇も無く敗走するザフトへの追撃部隊を編成していた。ゲヴェル隊にも追撃に出るよう指示が出され、補給や修理を終えるや否や再び出航となった。
艦橋で、連日の戦闘に多少疲れが見えているレフィーナを、テツヤは気遣い休むよう促すが、レフィーナは穏やかな笑みを浮かべてやんわり断っていた。
「しかし、艦長」
「疲れているのはクルー全員が同じです。私だけ休むわけにはいきません。それよりも補給の搬入作業は?」
「……後二時間ほどで積み込みは終わるかと。我々はエスフェルと共同で任務に当たるようにと司令部からの通達です。微妙な距離ですね」
「DC、ですか?」
レフィーナにとっても懸念材料だったようで、愁眉な眉を寄せて不安そうに呟いた。確かに現在ゲヴェルは、一戦艦クラスで考えれば連合の最高戦力と言えるほどの機体が配備されてはいる。
だが、DCの保有する戦力の突出した戦闘能力に叶うとは到底思えない。艦長である自分がそれを表に出すわけにはいかないと思いつつも、その不安を胸中からぬぐう事はできずにいる。
「そう言えば、ジブラルタルから一機、機動兵器がこちらに回されたと聞きましたが、今はどうしていますか?」
「確かグランゾンという機体です。パイロットは開発者でもあるシュウ・シラカワ(愁 白河)博士ですが、今は私用で外出されているとか」
手元のパネルを操作し、グランゾンのデータを照会するが、そこに記されているのはごく微細なものに過ぎなかった。
「MSとは全く違うコンセプトの機体ですね。ですが、これだけの機体を開発できる方が無名というのもおかしな話だと思いますけど」
「確かに。シラカワ博士も軍属というわけではないようですし、上層部の真意が読めませんね」
突如命令書とともに姿を見せた紫の機体グランゾンを駆るシュウ・シラカワは、レフィーナ達への挨拶もそこそこに今はどこかに出かけているらしく、伊豆基地にその姿はなかった。
端麗な美貌に秘めた妖しさが、人を魅了し惑わせる男は伊豆基地を離れて西新宿にある、古いせんべい屋を訪ねていた。古めかしい墨痕流麗な筆で描かれた看板には秋せんべい店と書いてあった。シュウという若者、せんべいが好きらしい?
オノゴロを出発したザフト・DC艦隊が、敗走する友軍と接触した時、既に伊豆基地から出撃していたゲヴェル・エスフェルの二隻のアークエンジェル級が戦場にいた。よりにもよっての邂逅というべきか、今回の作戦における両軍の最強戦力同士の激突であった。
お互いにとってもうれしくはない邂逅であったが、もとより戦う以外に選択肢の無い状況、砲火を交えずに済ます事など許される筈もない。
「アークエンジェル級二隻か、敗残兵を追うには過ぎた戦力であるな。MS隊発進、敵機の迎撃は本艦で引き受ける。各砲座照準合わせ」
今回の任務にさしたる価値を認めてはいないのか、常よりも淡々としてエペソが指示を出し、ボズゴロフ級より前に出て果敢に砲撃を開始した。アークエンジェル級と真正面から撃ち合える艦は、現状スペースノア級のみなのだ。
「敵戦艦照合、スペースノア級です!」
「何!? よりにもよってその艦か!」
ユンの報告に、テツヤがゲヴェル名物となりつつある『何!?』を口走り、クルーの間に緊張が走る。これまで地球連合にさんざん煮え湯を飲ませて来たDCの代名詞の一つである戦艦が相手なのだ。
「エスフェルと連携してスペースノアを撃ちます! コリントス装填、ゴッドフリート一番、二番照準!」
「MS隊、敵機を近づけるな!」
ザフトのグゥルを参考にしたゲタ――スカイ・フィッシュに乗って、カイやミューディー達を始めとしたMS隊も展開し、カオシュンからの撤退部隊であるザフトをさんざんに叩きまわっていた。
修理もろくに受けていないザフトの機体は、鹵獲したストライクダガーの手足を着けたものなども見受けられ、既にカオシュンでの戦闘で修理用の部品も失ってしまっていたのが分かる。
仮にカオシュンとジブラルタルが今回の戦いで陥落していなくても、戦争が長期化すれば、いずれはこのように、物資の不足からその場しのぎの機体が多くを占めただろうが。
タマハガネから出撃したクライ・ウルブズの各機も、すぐさまザフトの部隊に群がる連合部隊に襲い掛かり、蜘蛛の子を散らすように蹴散らす――とはいかなかった。今回の相手は、GATナンバーを始めとした機体もパイロットも高い水準で固められた精鋭部隊だったのだ。
ザフト側の救出部隊も、それぞれ散らばってカオシュンを脱出した友軍の元へと戦力を分散させており、現在タマハガネの他にはジュール隊を乗せたボズゴロフ級が一隻と輸送艇数隻が同行している。
支援
シンのガームリオン・カスタム飛鳥、ステラのアーマリオン、アルベロとスティング、ジャン・キャリーのガームリオン・カスタム三機、アウルのエムリオン、テンザンのバレルエムリオンV、それにイザーク、レイ、ルナマリアのデュエルAS、ディンが二機の合計十機のMS。
対してレフィーナ率いるゲヴェル・エスフェルのMSは、カイのデュエル、スウェンのI.W.S.Pストライク、ミューディーのデュエルAS、シャムスのバスター、ダナのブリッツ、エミリオのイージス。
それにオルガのカラミティ、クロトのレイダー、シャニのフォビドゥン、強化人間の乗ったエール105ダガーが三機。
同行する輸送艦から発進したストライクダガーが八機で、二十機と、MS、戦艦ともに数で倍する戦力を保有している。如何にDC側の機体の性能が頭一つ飛び抜け、核融合炉で稼働しているとはいえ、厳しい戦力差であった。それに、ゲヴェルにはまだグランゾンがあるのだ。
シンは、敵の中に因縁のあるフォビドゥンを見つけるや息を巻いて斬りかかり、ステラもクロトの乗るレイダーめがけてアーマリオンを飛ばしていた。アルベロはあえてその二人を制止せずに残る機体で襲い掛かる機体の迎撃に専念させた。
敵アークエンジェル級の艦長はこちらをかなり高く評価してくれているようで、ザフトの敗残兵への攻撃は中止されている。それはそれで今回の作戦の目的が叶う形ではあるのだ。
「ち、どれもGばかりか。AI1、各機の状況をタマハガネとおれに常にリンクしておけ。スティング、アウル、おれと来い。前方のデュエル二機とストライク三機を抑えるぞ! キャリーはジュール隊とストライクダガーを頼む!」
AI1のパネル上にアルベロの指示を了解する旨を表示し、倍の数の敵を相手にしている友軍の状況をめまぐるしく表示する。
特に実弾の装備しか持たないディンに乗ったイザーク達はPS装甲を持つGATシリーズ相手に苦戦を強いられているようで、何とか連携して性能の差をカバーしているようだ。
「ぬ!?」
「むん!」
「こいつ、出来るな。指揮官機か」
「外したか、いや、避けられたな」
肩の装甲を掠めて過ぎ去るビームの元を辿れば、カイのデュエルがライフルの銃口を向けていた。スウェンと強化人間の乗るストライク三機をスティングとアウルが相手取り、ミューディーとカイのデュエルの相手を、アルベロが務める形になっている。
「少佐、援護するわよ」
「ミューディー、敵はかなりの腕だ! 気を抜くな」
「ちい、連合にも腕の立つパイロットがいるか!」
核融合炉の生むバッテリー機とは比べ物にならない出力を活かし、ソニックブレイカーを展開して両機に突っ込ませる。バッテリーを用いていた頃よりはるかに出力の増したブレイクフィールドは、
ビームライフルの直撃にも耐え、慌てて機体を下げるミューディーに、アルベロはメガビームライフルを立て続けに撃ちこむ。
直接ジェネレーターからドライブしたビームは、ミューディーが掲げたABシールドごとその機体を後方に押し込んでみせる。
「ちょっと、出力がダンチじゃないの!?」
「……せあああ!!」
「ちい」
カイはアルベロがブレイクフィールドを解除するタイミングを見計らいビームサーベルで一気に斬りかかり、AI1の警告と同時に気付いていたアルベロは、ゲタ履きのデュエルより数段上を行く機動性で回避する。
「空戦可能な機体が相手では、いまいち相性が悪いな!」
「そうそう、やられてはやれんのでな! 落ちてもらおう」
鬚親父二人の戦いの決着はまだ先の話になりそうだった。
スウェンを始めとしたストライク三機を相手にするスティングも、決して楽な戦いでは無かった。肉体の健常化と引き換えに多少能力が低下した彼らとスウェンではややスウェンがパイロットとしては優れ、
他二機のストライクのパイロット達も強化人間としてそれなりのレベルで完成されていたからだ。
アウルが今回持ってきて置いたブーストハンマーを振り回し、目を着けたストライクに思い切り叩きつける。
「そーらああーー!! 落ちな!」
シールドでそれを受けたストライクも、内蔵されたブースターが点火したブーストハンマーに吹き飛ばされ、海面に向かい落下し、そこにスティングがビームライフルを二射して右足とエールストライカーの一部を撃ち貫く。
「あの状態でかわしたか」
だがスティングの口から出たのは苛立ちに近い。本来ならコックピットを撃ち、撃墜するはずだったのだ。海面に激突する寸前で機体を立て直したストライクに注意を向け続ける余裕は無かった。
スウェンのストライクが対艦刀で斬りかかり、スティングのガームリオン・カスタムに肉薄していたのだ。
「ちい、こいつらぁ!」
「……任務遂行の為に、消えてもらう」
共にブルーコスモスという可憐な名の下に毒の蜜を持った狂花に育てられながら、たもとを分かった二人の戦いが白熱するのに時間はいらなかった。
タマハガネの所属のMS隊がそれぞれ連合と互角の戦いを繰り広げる中、イザーク達は機体の相性の悪さに辟易されながら何とか健闘していた。
「ああもう、なによあのPS装甲って! いくら撃ちこんでもちっとも効かないじゃない!」
「見た目はな。だが内部機器やパイロットには効果があるはずだ。頭部かコックピットを狙えばやりようはある」
いくら銃弾を撃ち込んでもちっとも撃墜出来る様子の見えないGナンバーの機体にルナマリアが苛立ちを露にするが、それをレイがいつものように諌める。この二人もいいコンビになってきたようだ。
実際問題、PS装甲を相手にしていては、ディンではいつになったら撃墜出来るのかという気もしてくる。数は連合側の方が多く、パイロットの質も高い。見方を変えればそのような状況にあって互角に渡り合うルナマリアとレイの実力も新兵のレベルを超えているのだ。
「これ以上、仲間をやらせんぞ!」
イザークの駆るデェエルASがグゥルで一気にエール105ダガーの懐に飛び込み、肩の115mmレールガン“シヴァ”で牽制し、逃げた方向に合わせてビームサーベルを引き抜くや、光の刃が弧の軌跡を虚空に描くと同時にエール105ダガーの胴から上下に分かれた。
二つに分かれたストライクの機体が爆発する様を見て、イザークはかつて足つきを追う過程で戦ったストライクの強さを改めて実感していた。たった一機でイザーク達四人を相手取ったあのストライクに比べればこの程度。
「隊長、すっごい……」
「おれ達も続くぞ、ルナマリア」
「! 分ったわ、私たちだって赤服なんだから」
ボズゴロフ級が順調に兵士達を回収し、後は撤退のタイミングを見図るだけなのだが、相手がアークエンジェル級二隻とあっては、それも難しい。大気圏内で早々使用する事はないだろうが、陽電子破城鎚ローエングリンを撃たれればタマハガネとて一撃で沈む。
エペソは冷徹なまでに落ち着いた表情のままそのタイミングを慎重に見計らっていた。場合によってはアークエンジェル級二隻とも落とせるかとも思ったが、なかなかどうして有能な艦長らしく、MSの数でも劣る分勝利は難しい。
「第四ブロック被弾、隣接区画で火災発生、消火班急げ!」
「連装衝撃砲、三番、五番照準固定、撃て!」
アークエンジェルのラミネート装甲目掛けて迸る連装衝撃砲が、わずかにかすめて空を切り、反撃とばかりに撃ち返されたゴッドフリートがEフィールドと衝突しながら、タマハガネの船体を掠めて過ぎ去った。
二隻のアークエンジェルを相手に互角に戦えているのは、ハイブリッド・ヒューマンとして生み出されたエペソの卓越した能力と、辺境銀河で戦い抜いた経験あればこそだろう。
オウカに執着を見せるシャニのフォビドゥンと、シンの飛鳥の戦いはいまだ続いていた。それまで使っていたエムリオン以上に接近戦に特化した飛鳥のシシオウブレードの太刀は、幾度となくフォビドゥンの機体を捉えるが、今だTP装甲を破れずにいる。
「お前、いつも邪魔するうざいやつか!」
「おれの台詞だ! お前こそその機体で好きなように暴れやがって!」
「はん、知らないね。それよりお前、あのパイロットどうした? ここにいんの?」
「あのパイロット? ……オウカさんの事か! あの人が何だってんだ。あの人は戦争なんかしちゃいけない優しい人だ! 今も子供達と一緒に暮らしてる! なんでお前が拘る!」
「ふうん、何だここに居ないんだ」
オウカは戦場にいない事を聞かされて、シャニは一気に戦闘意欲を失ったのか、飛鳥のシシオウブレードをニーズヘグの柄で受けていた姿勢から、飛鳥の胴を蹴り飛ばして離れる。シャニ自身、どうして自分があのオウカという敵のパイロットに拘るのか理解できていないのだ。
「待て、逃げるのか!」
「はあ? 数じゃこっちが上なんだ。お前の相手は適当に誰かするよ」
機体を後方に下げるシャニに、何考えているんだこいつはと正直シンは首を捻る思いだったが、不意にタマハガネの方に不吉な感覚を感じ取った。
「何だ、この感じ? 悪意?」
しばし逡巡したものの、まもなく飛鳥をタマハガネへと向けた。近づくにつれ、その感覚が強まり、その矛先がより明確になる。タマハガネの艦橋、そこになにかがいる!
「なんだ、何か分からないけど……タマハガネには当たるなよ!」
シンは自分の感覚を信じ、タマハガネのカタパルト近くの空間に向けて、飛鳥の腰にマウントしてあるバーストレールガンを撃ちこんだ。傍から見れば無意味かつ意図の読めない無駄な行動であった。
だが、敵と味方がシンの行動に不理解の念を覚えていた時、バーストレールガンの弾道の先で何かが蜃気楼のように揺らぎ、そこに漆黒の装甲に盾と武装が一体になったトリケロスと、左手にグレイプニールを装備したブリッツが現れた。
ミラージュコロイドという、コロイド粒子を発生させて機体を隠ぺいする装備で姿を消しながらタマハガネに接近していたのだろう。シンが捉えた悪意の正体がこれなのだ。
「おいおい、なんで位置が分かるんだよ!?」
ブリッツのパイロットであるダナも科学的根拠が一切無しでこちらの位置を当てて見せたシンに、わけが分からないと困惑している。懐に飛び込まれていた事を察知したエペソが素早く周囲のレーザー機銃の照準を集中させる。
ミラージュコロイド展開状態ではPS装甲が使用できず、防御能力が著しく低下する。慌ててPS装甲を展開させ、タマハガネの甲板から飛び退るブリッツに、シンの飛鳥が肉薄していた。
「まじか!?」
「フルブースト!」
「くそお!」
右蜻蛉の構えのまま両肩に増設されたブースターとテスラ・ドライブを全開にして、一直線にブリッツに迫る。機体内部のパイロットが持つとは思えぬほどのGに耐え、シンはシシオウブレードを振るった。
虚空に描かれる縦一文字。銀に輝く月孤の先で、送電が途絶えて灰色に変わったブリッツ――の右腕。
「外した!?」
「エミリオか、悪い!」
「コーディネイターは殲滅する。その為の力は必要だ」
MA形態に変形し、とっさにブリッツの機体を掴み取ったエミリオのイージスがダナにとっての救い主であり、シンにとってはすんでの所で邪魔をした相手だった。シンはそのままタマハガネの直衛につき、ダナとエミリオを前にシシオウブレードを構え直す。
機体越しにも伝わるシンの気迫に、右腕を持っていかれた事もあるが、ダナは思わず生唾を飲み込んだ。傍らのエミリオも、強い洗脳によってコーディネイター殲滅以外には情緒の乏しいというのに、操縦桿を握る腕に力を込めていた。
だが、シンの注意はすぐに二人から逸らされることになった。それはクロトを何とか説得しようとしていたステラも同様だった。二人の顔色は、抗えぬ死を前にして、それが自分の死である事を理解してしまった不幸を如実に表していた。
「なん、だこれ? 敵意でも、殺意でも無い……。なにか、とんでもないもの?」
「……くる。すごく、強いなにか」
それはゲヴェル、タマハガネのレーダーにも捉えられた。
「レーダーに感。急速に接近する機影、数は一。は、はやい! 目視可能域に入りました。正面モニターに映します!」
そこに映し出されたのは、無機物でありながら圧倒的な威厳を醸し出す青みを帯びた紫の装甲を持ったMSよりも一回り大きな機動兵器。おそらく、いや現在世界最強の一角を担う機動兵器グランゾンであった。
「艦長、ライブラリに照合、グランゾンです」
「シラカワ博士!? 急いで連絡を」
『その必要はありませんよ、レフィーナ艦長。遅くなって申し訳ありません。少々用事に手間取りましてね』
正面モニターに、光沢のある紫髪を波打たせた涼やかなシュウの美貌が映る。どこか底知れない不敵な威圧感が、レフィーナに息を飲ませた。
「シラカワ博士、一体何を……!?」
『遅れた分の働きはしますよ。こちら側の機体を私の指定する範囲から下げてください』
「! ユン、エイタ、すぐに全機にシラカワ博士の指示を伝えてください、大至急!」
「は、はい!」
シュウの言葉に本能的な危険を察知したレフィーナはほとんど反射的に指示を出し、ユンとエイタはその剣幕に押される形で展開している全ての友軍機に、シュウから伝達された指示を更に伝える。
突然の指示に疑いを持つ者も多かったが、シュウのグランゾンを見ると同時になにか言いしれぬ悪寒を感じていたカイも、スウェンやタマハガネに迫っていたダナやエミリオに急いで離脱するよう指示を出して、自身も機体を下げた。
味方のはずのグランゾンに、なぜか不信と疑惑を抱いていたのだ。
それはグランゾンの姿を確認したエペソも、ラオデキヤ艦隊の残したデータからそのスペックを記憶の棚から引き出していた。
支援
(バルマーのもたらしたEOTで造り上げたアーマード・モジュール“グランゾン”か。余の世界のモノとビアン・ゾルダークの世界のモノ。いずれにせよこの世界の技術では到底造りえぬ機体であるはず。ならばこの世界で造り上げられたという可能性は唖ギリ無く低い。
さてどちらか……。いずれにせよ、今回の作戦はここまでか)
グランゾンの性能に対抗できる手札が現状ない事を即座に理解したエペソは、素早く全ての機体に後方へ下がるよう指示を出す。直接対峙したわけではないが、グランゾンの性能が規格外である事は事実であるだろうから。
「おや、動きが早い。グランゾンのスペックを知っているわけでもないでしょうが」
「御主人さま、さくっとやっちゃうんですか?」
「ええ。遅刻した分を手っ取り早く取り戻す為には、ね。少々手荒い真似で恐縮ですが……グラビトロンカノン、発射!」
グランゾンの胸部が展開し、中央部にある球形のパーツから黒い雷の様な光が瞬く間に溢れ、それは不可視の重力場を作り出し効果範囲内に居たすべての機体を見えざる重圧で圧殺せんと襲い掛かる。
姿の見えぬ巨人がはるか天上から踏みつけているかのようにシンの飛鳥や、スティングのガームリオン・カスタムやアウルのエムリオンも見る見るうちに海面に叩きつけられるように押し込まれ、機体内部でもパイロット達にとてつもない重圧に苦しめられていた。
「うああああ!?」
「これは、重力、操作!? ヴァルシオンと同系統の技術か!?」
イザークやレイ達のディンも巻き込まれ、推力で覆しきれない重力に機体の各所が悲鳴をあげて黒煙を上げ始めんとしている。
「きゃあああ!? 機体が……」
「ぐうぅ、こちらのスラスターでは支えきれない」
「ルナマリア、レイ、くっそお! あんな機体を隠し持っていたのか、地球連合め」
「一撃では沈みませんか。では……ほう? 効果範囲を瞬時に見切り直撃を回避した方もいましたか」
「落ちてもらおう!」
グランゾンの上空から襲いかかるアルベロ、ジャン・キャリー、テンザン。クライ・ウルブズのトップ3がそれぞれの機体の火器をありったけグランゾンに撃ちこみながら機体を加速させていた。
一気に決着をつけなければ装甲の薄いルナマリアやレイのディンが機体ごと潰れてしまう。Eフィールドを標準しているDC製の機体でも、そう長くは保たないだろう。
アルベロとジャンのガームリオンが立て続けにバーストレールガンとメガビームライフルをグランゾンへと正確無比な狙いで撃ちこむが、その全てがグランゾンに届く前に軌道を歪められ、無効化されてしまう。
解析したAI1がすぐにその結果を表示した。該当するデータがあった為に答えが提示されるのもあっという間だ。
「空間歪曲、ヴァルシオンと同じか! ライフルでは破れんな、ジャン・キャリー、おれ達であれを破るぞ!」
「そういう事になるか。了解したアルベロ三佐。ナカジマ一尉、タイミングを誤るな」
「ホ! 良い所残してくれるじゃねえの。これで成功しなきゃゲームオーバーってか? いいざ、久々に楽しめそうだっての!」
「ソニックブレイカー、セット!」
ジャンとアルベロのガームリオン・カスタム二機が共にブレイクフィールドを前方に展開し、二機揃ってソニックブレイカーを展開してグランゾンの空間歪曲フィールドと激突した。
「やりますね。ジブラルタルで戦ったザフトとは質が違いますか」
二機のソニックブレイカーと歪曲フィールドの激突は周囲の空間を陽炎の様に歪めながら、拮抗を繰り広げる。ブラックホールエンジンの生み出す核融合炉さえ比較にならない莫大なエネルギーが発生させる歪曲フィールドは、そう簡単には破れてはくれない。
「おおおお! なんだか分からないけど、斬ってみせる!」
「シンか!」
「む、どこかで聞いたような調子の方ですね」
グランゾンの上方から突撃するジャンとアルベロのソニックブレイカーとは違い、真正面からグラビトロンカノンの重力を最大推力で振り切った飛鳥が、虚空を切り裂いて歪曲された空間に獅子王の刃で斬りかかる。
「グラビトロンカノンを振り切りましたか、大したものですね」
「く、う……うおおおお!! 斬り裂けえ、飛鳥!」
「! この力は」
シンの気迫が乗り移ったかのように、飛鳥のカメラアイが一際強く輝き、歪曲フィールドに獅子王の太刀が徐々に斬り込んで行く。その瞬間、シンの意識は無我の境地へと没我した。勝利を度外視した、示現流のモーションデータではない、シンの動きであった。
歪曲した空間に、砕かれる硝子の様にひびが入った瞬間、斬り下げていた一刀を右突きの形に瞬時に切り替えた。これこそ理想の一刀――無意識が発露した奇跡の一撃。
だがそれを、グランゾンが虚空から取り出した両刃の巨大な剣グランワームソードの腹が受けていた。シシオウブレードの切っ先は、その刀身を貫きグランゾンの装甲まであとわずかという所で止まっている。
「驚きました。精神が機体の性能を左右するシステムでも搭載しているのですか?」
「後少しだって言う所で!」
「シン、どけやあ!」
「テンザンたいちょ、じゃなくて一尉」
テンザンの気合いの乗った声に反応し、シンはシシオウブレードをグランワームソードから引き抜き、とっさにその場を離れる。それを許すほどシュウは甘い男ではなかったが、解析不可能な力が、追撃を許さなかった、
飛鳥のシシオウブレードを受けたグランワームソードを握る右手を中心に機体の一部の動きが鈍ったのだ。
「これは? 機体の損傷でもプログラムの異常でもない。……興味深いですね、超常的な力ですか」
「何感心しているんですか! ほら、あの両腕が大砲になってる機体、ばりばりこっち狙ってますよ!」
「チカ、あまり耳元で騒ぐのは歓迎できません」
「ご主人様のマイペースさん! ぎゃああ、撃ってきた!」
「落ちろってのおおおお!!!」
本能的に途方もない強敵と悟ったテンザンが、バレルVの両腕のレールガンをありったけグランゾンへと叩きこんだ。歪曲フィールドの破壊と同時に後退したアルベロやジャンも、
即座にマグナ・ビームライフルやメガビームライフルを、残弾を気にせずにトリガーを引き続ける。
だがそれはグランゾンの装甲を穿つ事はできず、表面を焦がすに止まっている。
「な、化け物かよ!? あれだけの攻撃を受けて……」
「ちい、ラスボスよりもつええ、隠しボスの登場ってとこか!」
「さて、思ったよりはやるようですが、グランゾンを倒せるレベルではありませんか。そろそろ決着と行きましょう。ワームスマッシャー、発射!」
グランゾンの胸部前方に突如出現した黒い穴は、空間歪曲か重力操作で繋げた別の空間への接合点なのだろう。シュウはその虚空に穿った奈落に、胸部中央から立て続けにエネルギー弾を撃ち込み続ける。
そのエネルギー弾は、シンの飛鳥をはじめ、アルベロ達の機体の周囲に開かれた黒穴からタイムラグなしに出現して、次々と機体を穿って行く。あらゆる方向から出現する攻撃。
ほとんど回避不可能としか思えぬ攻撃に、アルベロもジャンも、そしてシンも機体のダメージが積み重なり、装甲のあちこちが爆ぜてゆく。
「何発かはかわしたようですね。ですが、それも次で終わりです」
今一度ワームスマッシャーの発射態勢に入るグランゾン。その動きに、シンは死を覚悟した。だが、そのシンの目と耳に、接近する熱源がある事を告げるアラームと光の明滅が移った。
「この反応は!」
「新手、ですか」
シュウも新たな反応に気付き、展開していたグラビトロンカノンを解除し、グランワームソードを構えてその敵の出現を待つ。窮地に陥ったシン達の前に姿を見せたのは――
「ほう? あれが噂に名高いヴァルシオンですか。となれば乗っているのはディバイン・クルセイダーズ総帥ビアン・ゾルダーク」
「ええ、敵のトップじゃないですか!」
そう、鈍重な外見に反し高機動タイプのMSも軽々と凌駕する高速でこの戦場に出現したのは、立ちはだかる敵の返り血で染め上げたような真紅の機体。グランゾンの倍近い巨躯を誇るヴァルシオンに間違いなかった。
「……グランゾン、か。ならばパイロットはシュウのはず。さて、何を考えている?」
別のザフトの部隊を回収し、連合の部隊を壊滅させシン達の元へと駆け付けたビアンは、ヴァルシオンのコックピットの中、目の前に存在するグランゾンとそのパイロットであるシュウの意図がどこにあるか、思考を巡らしていた。
開き直り第二弾ですが、イザヨイやせんべい屋はあんまり本気にしないでくださいね。ちなみにウォーダンの髪の色が紫っぽいのは、α外伝のゼンガーの髪の色をイメージした結果です。
最近出番の少なかったビアン総帥久々に登場です。では、ご助言、指摘お待ちしておりましたりしちゃったりでございますのです。
念法自重www
支援
シュウ博士誰を探しに行ったんだwww
それはともかくGJ!
グランゾンがブラックホールエンジンってことは旧シリーズ版か、ということは特異点あり?
αやOGsのはBHエンジンの細工見抜いたってことで対消滅エンジンになってるからなぁ
飛鳥は密かにウラヌスシステムでも積んでいるのか?
いずれにしろ感情がそのまま力になるってのはシン向けの機体だな
この段階でグランゾンに剣を抜かせるとは大したもんだ
>>311 出典がEXからって事になってる
旧第三次ラグナロクで死んでからルオゾールに蘇生された直後の状態
旧シリーズでもシュウとビアンは組んでいたので記憶復活プラグと考える私は負組だろうか。
314 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/13(木) 13:00:23 ID:GmJ5xf4t
あいかわらずのGJ!! イザヨイとせんべい屋万歳ーーー!!
できれば本編に登場してほしいが、せんべい屋は第3人●が覚醒したら、
イデ発動状態のイデオンなみにヤバイので自重。
しかし個人的には念法使いというとイザヨイよりも工藤明彦の方を連想してしまう
こっちの方が出演作品数はずっと多いのだが、やっぱ向こうは元祖である事と、漫画版が色々な意味でブッ飛んでたから知名度が違うのかな
age
厨房大戦だなこりゃ痛杉
そもそも痛くないスパロボがあるのか
GJ!
ビアンがサイバスター系列の技術を持っているとは思えないので(そのわりにサイコ・ブラスターとかあるがそれはT-LINK系列の技術だろうし)
世界観を壊さない程度ならシンが念法を使ってもかまわないと思います。
どうせ種の時点ではたいしたレベルまでいけないだろうし種死の時点でもそこまでたいしたことはできんでしょううし。
痛いと判断するのは住む世界が違うからだ。
褪めた価値観で熱い物語を見ても火傷するだけだぜ
修羅王様は気合いで異世界に行けるんだぜ?
シュウの記憶が戻った時こそ世界破滅フラグ発生か?
少なくとも地球側はえらいことになりそう。
>>313私も同意したいですね〜
第二次のグランゾンはつおすぎる。
間接攻撃無効wwwwwwwww
このシュウがもっとも嫌いとすることは、私の自由が縛られることだっ!
な人だからなぁ……記憶戻ったらガクブルだ
人を利用するのはいいが、人に利用されるのが大嫌い
絶対復讐してやるもんね
じゃなかったっけ? ゴメンうろ覚え
327 :
660:2007/09/13(木) 23:59:47 ID:???
こんばんわ、お世話になっております。
ネタの方はグランゾンとヴァルシオンのガチバトルが始まる寸前ですが、あんまり関係の無い所話になります。
現在ラクス陣営についたウォーダンとスレードゲルミル。スレードゲルミルに対するライバル機であるダイゼンガーには『武神装攻』という二つ名があります。
が、スレードゲルミルにはございません。私が知らないだけかもしれませんが。
で、そのうちなんか口上で言わせたらかっこいいだろうなあ、と思ったので、スレードゲルミルのフレーズ何かありませんかね?
簡単に思いついたのは剣装巨神、とかダイゼンガーをもじったの位。ますます痛い話になっていますが、生暖かくで結構ですので見守ってやってください。
それでは、お邪魔いたしました。
>>319 サイコブラスターはサイフラッシュを見たビアンが真似して作った兵器だぞ?
T-LINKとは関係ないはず。
まあ、仕込んだ時期を考えると微妙なものがある気もするが。
>>327 ゲルミルは巨人って意味なので武神にたいして巨神かな?
『巨神星剣』とか……俺センスねぇww
力の叫びの巨人が語源なんだし咆哮巨人とか咆哮巨神でよくねー?
そこで断罪巨兵ですよ
むしろ剣神の二文字で十分
断鋼魔神ゲルミルスレード!
うん、ない
剣神星薙ってのはどうだろうか
巨神咆鋼(きょしんほうこう)ってのは?
やっぱダイゼンガーの影響受けすぎ?
ごめん、デモベってよく知らないんだ
剣星巨神とかどう?
剣聖超人
斬激鋼人とか……
>>338 プレステ版のタイトルが機神咆吼デモンベインなのさね
342 :
11:2007/09/14(金) 15:40:49 ID:???
なかなかいい案が浮かばないですねぇ。というわけで空気よまず4話です。
第4話「神聖十字軍の残身」
出撃してきたDCの迎撃部隊に対峙しているシロガネから、
アルトアイゼン、ヴァイスリッター、アンジュルグ、ヒュッケバインMK-2、ビルトシュバインのATXチームの5機が出撃していく。
他方のDC残党軍もAM隊だけでなく戦闘機や戦車も出撃させてシロガネを迎え撃たんとする。
「あれはガーリオンに…それとバレリオン、リオン、ランドリオン…あの戦車と戦闘機は何だ?」
そんな中でシンはこの世界での初陣とあって敵機の機体を確認していた。
エルザムと行動をともにしていた時にエルザムの黒い機体、ガーリオントロンベやヒュッケバインMK−2トロンベ、
ゼンガーのグルンガスト零式を目にしたことはあったが、それ以外の機体を見るのは初めてであった。
そんなシンには関係なくライノセラスのアーチボルドより出された指示でDCは攻撃態勢に入る。
そのときヒュッケバインMK-2のブリットが突如、DCに対して通常周波数での通信を入れた。
「待て!お前達も東京宣言を聞いただろう!今は地球人同士で戦っている場合じゃないんだぞ!」
「ブ、ブリット君!?」
その突飛な行動にエクセレン、それにラミアも顔色を変える。
「おやおや、若い……それに熱いですねぇ」
他方、DC側のアーチボルドはブリッジの肘掛に肘を乗せ、紅茶をすすりながら鼻で笑う。
「俺達の敵は同じはずだ!こんなところで戦力を消耗するなんて無意味だ!
あんた達も地球圏のことを考えているのならすぐにこの戦いをやめろ!」
かつての戦いを通じ異星人の脅威を、身を以って知っているブリットは、その若さも相まって
いまだに地球人同士で争いを続けている現状を見過ごすことはできなかった。
「フッ……真顔でああいうことを言える人間がまだいるとはね。ですがあの手の類は無視するに…」
「連邦のパイロット、1つ言っておくぞ」
(ユウキ君?やれやれ、君も律儀ですねぇ)
一方、思わぬ部下の行動にアーチボルドは少し噴き出した血の色のような液体をハンカチで拭きながらため息をついている。
343 :
11:2007/09/14(金) 15:43:13 ID:???
「お前達では地球圏を守ることなどできん」
「何!?」
「L5戦役では運で勝利を得たようなものの、お前達連邦軍の対応の遅さゆえに犠牲となった者達の存在を知らぬわけではあるまい?」
ユウキの脳裏にはエアロゲイターの機動兵器により焼き払われていくサンディエゴの街の様が蘇る。
そしてその様は最前線で街の防衛に当たっていた彼に、
地球圏の防衛を連邦軍に委ねることはできない、との決意をさらに強固のものとさせていた。
「だから、あの後、俺達は…」
「手段や方法の問題じゃない。お前達では無理だといってる」
「!」
「次の戦いはもう始まっている。俺達がここで相間見えたようにな」
「だからといってまた新たな犠牲を生み出す気かよ!」
「犠牲は…俺達で充分だ」
「な…に!?」
ブリットは思わぬ反論に絶句するが、そこに今まで口を閉ざしていたシンが通信に乱入した。
「ふざけるな!犠牲があんた達だけで済むはずがないだろ!軍人以外誰も死なないとでも思ってるのか!?」
戦争に巻き込まれるのは軍人だけではない。
それは、オーブでフリーダムの戦闘に巻き込まれて家族を失ったシンの、
戦いを始めた原点にあることである。
「俺達だって民間人を傷つけるつもりなどない!お前達連邦に任せておいたのではそれ以上の犠牲が出るのだと言っている!」
「だからって戦争を起していい訳ないだろ!俺はあんた達のやり方を認めない!」
「お前達に認めてもらおうなどとは考えていない!」
「シン、そこまでだ。少なくとも俺達は戦争をしている。どっちが正しいかは自分で証明してみせろ」
アルトからであった。モニター越しに見えるキョウスケの目は既にDC軍を真っ直ぐに睨みつけている。
そこから伝わってくるキョウスケの意思が伝わらないほどはシンは鈍くない。
「アサルト5、了解…」
「気にするなとはいわんがもっともでもある。それに俺達が戦うことで実際の犠牲を最小限にすればいいだけのことだ。
各機、準備はいいな?俺とエクセレンはフォワード、シンとブリットは俺達のフォロー、ラミアはシロガネを頼む」
「「「「了解!」」」」
344 :
11:2007/09/14(金) 15:44:23 ID:???
キョウスケの合図とともに5機が動き出し、DCも攻撃を開始する。
だがその機先を制するようにリオンやDCの戦闘機ソルプレッサの部隊の前を、ヴァイスリッターの3連ビーム砲が通り過ぎる。
回避行動に移ろうとした部隊であるが、機体のアラートが敵機の接近を知らせたときにはもはや手遅れであった。
並みのパイロットを遥かに越えた踏み込みの速さで敵機郡の目の前にアルトアイゼンが現れる。
それに対してDCの部隊も散開を命ずるが、
その指示が発せられたときにはアルトアイゼンの肩部に備え付けられたスクエアクレイモアが放たれようとしている。
「固まっていたのが運の尽きだったな。これだけのベアリング弾、抜けられると思うなよ!」
そして運良くクレイモアの範囲から外れていた機体も遥か遠くから、しなる鞭のような動きで
襲い掛かってくるビームに切り裂かれていった。
「ふふん、油断しちゃだめよん」
実弾とビーム砲の両方を打ち分けられるオクスタンランチャーを振り回して構える
ヴァイスリッターのコックピットでエクセレンが微笑む。
そしてこの攻撃によりできた敵部隊の隙間へとアルトアイゼン、ヴァイスリッターが進んでいく。
「な、なんて突っ込み方だよ!」
前線に取り残されたソルプレッサやフュルギアにメガビームライフルを打ち込むビルトシュバインの中でシンが呟いた。
「シン!続くぞ!」
「わかってる!」
自機の横を駆け抜けていくヒュッケバインMK―Uのブリットに負けじと、
シンもビルトシュバインで切り込んで行く。
他方、ユウはATXチームの動きに歯をくいしばる。
「ちっ!突撃はお手の物ということか!」
そう言うとユウは味方の部隊に次の指示を出す。
「カーラ、お前はソルプレッサを連れてシロガネを潰せ。フュルギア、バレリオンはライノセラスのガード、
リオン、ランドリオン各機は俺に続け!隊長機を落とす!」
「ユウ!」
「来るぞ!行け!」
「うん、わかった!」
既に彼の視線の先には戦場を真っ直ぐに斬り込んで来るアルトアイゼンの姿がある。
そしてユウはガーリオンカスタムにバーストレールガンを構えさせ、アルトアイゼンの前に立ちはだかった。
345 :
11:2007/09/14(金) 15:46:16 ID:???
「ATXチーム…その実力、見せてもらうぞ」
「見たければ好きにしろ。だが逃しはしない」
アルトに向け放たれたレールガンをキョウスケは機体を横に滑らせてかわし、お返しとばかりにマシンキャノンを撃ち込む。
だがそれは読まれていたかのように上空に移動したガーリオンに回避されてしまう。
しかしキョウスケもそれでは終わらない。
機体のバーニアを噴かせて上空のガーリオンへ、頭部の角をさらに赤く染めたアルトアイゼンが向かっていった。
「伊達や酔狂でこんな頭をしてると思うなよ!」
「そうそうお前達の思うとおりにいくと思うな!」
迫り来るアルトのヒートホーンをガーリオンはアサルトブレードで何とか受け止めるが、ATXチームの攻撃はまだ終わらない。
「!?」
何かを感じ取ったユウは咄嗟にガーリオンを後退させると、数瞬前までガーリオンがいたところにビームの雨が降り注いだ。
ビームの先に目をやれば、そこにいるのは当然ヴァイスリッターである。
「さあってと、色男ちゃん?ブリット君だけじゃなくて、私の相手もしてみない?」
(何だ、この女?)
訝しがるユウであったが、さらに別の砲撃が部下のリオン達を飲み込んだ。
「少尉!こっちは俺達が引受けます!キョウスケ中尉の所へ!」
エクセレンの下にブリットからの通信が入り、
それを聞いたエクセレンは即座に、既にライノセラスへと向かっていたキョウスケの後を追う。
ユウはそれを抑えようとするが、その目の前にもう一発、Gインパクトキャノンが撃ち込まれた。
「バニシングトルーパーめ!いや、伊達にDC戦争やL5戦役を生き抜いてきた訳ではないということか」
「犠牲は自分達だけで充分だと言ったな?どういう意味だ!?」
「それを教える必要はない。だが、己の無力さを思い知ってもらおう」
346 :
11:2007/09/14(金) 15:47:44 ID:???
そういうとユウは再びバーストレールガンを構えさせてヒュッケバインMK−Uへと放つ。
対して、Gインパクトキャノンを放り投げたMK−Uも、フォトンライフルに持ち替えてそれに応戦する。
その時、両者の目先に何らかの感覚が生まれ、まとわりつくような不快感がブリット、ユウの両者を襲った。
「そんな間合いで俺に当てられるものかよ!…何だ!?」
「!?この感覚…非常識な」
「聞け!俺達の敵は同じはずだ!それはお前も分かっているだろう!」
「だがそれをお前達がどうにかできるとは思えないと言った!」
「ふざっけるなぁぁ!」
突如として乱入してきた声に2人が、その主へと目を向ける。
そこにいたのは、ミサイル郡を潜り抜け、上空へと蹴り上げと蹴り上げたランドリオンを、
左腕部固定武装サークル・ザンバーで斬り捨てたビルトシュバイン。そのパイロット、シン・アスカ。
「異星人が来るってならそいつらから守らなきゃならない人達がいるだろ!」
「だからお前達ではそれを守りきれないのだと言っている!」
理不尽な暴力から傷つく人達を守りたい、それがシン・アスカの戦いの原点である。
だからこそ、シンはデスティニープランに問題があることをわかりつつも、ギルバート・デュランダルについた。
新西暦の世界でも、DCの起こす戦争により結果として関係のない人々まで傷ついてしまう、それを彼は見過ごせなかった。
シンは再びメガビームライフルを構えさせてガーリオンへと向かっていく。
「連邦に与していても本懐は遂げられんぞ!」
「遂げてみせる!今度こそ!!」
「今度こそだと!?ならば連邦にいて何になる!」
ライフルのビームをかわしながらも体勢を整えたガーリオンのレールガンが、ビルトシュイバンのライフルを撃ち抜く。
なおも向かってくるガーリオンに応戦すべくシンはサークル・ザンバーを構えるが、それをブリットが遮った。
「突っ込みすぎだぞシン!相手はエースだ!」
「邪魔するな!奴が早いことくらいわかってる!」
「戦場で仲間割れとは余裕だな!」
ブリット、シンの隙を逃すユウではなく、ガーリオンのテスラドライブの出力を上昇させ、ターゲットを定める。
そして機体の前部にブレイクフィールドを発生させると、Mk−U、ビルトシュバイン目掛けて突っ込んでいった。
とっさに機体を下げることで2人とも直撃は避けたものの、ソニックブレイカーの一撃で
Mk−Uのフォトンライフルは吹き飛ばされてしまった。
347 :
11:2007/09/14(金) 15:48:59 ID:???
「くそ!だがこのままでは…」
「でもどうするんだよ!あんなスピードで動かれたんじゃザンバーでも捉えきれないぞ!」
「動きなら俺がなんとしてでも止める。そのあとはお前に任せるぞ」
「止めるって…おい!くそ!」
シンの突っ込みを無視して今度はMk−Uがガーリオンへと突っ込んでいき、ビルトシュバインもそれに続く。
MK−Uはそのまま腕に備えつけられたチャクラム・シューターを放つが、それはあっさりとガーリオンに回避されてしまう。
他方のガーリオンはそのまま再びブレイクフィールドを展開し、今度は狙いをMk−Uに絞り襲い掛かった。
しかし、Mk−Uはそのまま回避行動を取らずガーリオンの前に立ち塞がり続ける。
「これで終わりだ!」
「俺がこれで終わると思うなよ!グラヴィティウォール、展開!!」
ソニックブレイカーの直撃の寸前、Mk−Uは機体の前に重力障壁を発生させてガーリオンを受け止める。
「うおおおおおぉぉぉ!!!」
「何!?」
付けた勢いでMk−Uを押し続けるガーリオンだったが、予想だにしない行動にユウにも戸惑いが生まれる。
ガーリオンも止まりはしないが、そのスピードは大きく落ちてしまっている。
そしてそれをシンも逃しはしない。
Mk−Uの影から現れたビルトシュバインはサークルザンバーを既に展開し、ガーリオン・カスタムへと斬りかかる。
「はあああぁぁぁ!!」
気合一閃。振り下ろされたザンバーの刃がガーリオンの左肘・膝から先を斬り裂いた。
「チィッ!噂に違わぬ実力だな、ATXチーム…!」
「まだだぞ!肉を切らせて…骨を絶つ!」
ガーリオンはなんとか空中へと逃れるが、Mk−Uの右手に握られたビームソードがガーリオンへと迫っていく。
だが、Mk−Uのすぐ目の前を、後方から新たに現れた、
正確に言えばシロガネの方向から戻ってきたガーリオンが放ったレールガンが通り過ぎ、その足を止めた。
「新手か!」
「ユウ!今のうちに下がって!」
「カーラか!?シロガネはどうした?」
「他の機体はやられちゃったよ!あの特機、半端じゃないんだもん!」
カーラの視線の先に映るのはイスルギ重工の試作機だというSMSCアンジュルグ。
その手先から放たれる光の矢は正確無比な射撃でソルプレッサの機体を打ち抜いていた。
348 :
11:2007/09/14(金) 15:50:21 ID:???
「…撤退するぞ。また会おう、連邦のパイロット」
ユウはそう言い捨てるとカーラのガーリオンとともに後退していく。
そのスピードはMK−Uやビルトシュバインでは追いつけないものであるため追撃はできなかった。
「ふふふ、やっぱりあなた達とは長い付き合いになりそうですね、ナンブ君」
その頃、アルトとヴァイスの集中攻撃にさらされたライノセラスから脱出したアーチボルトは、
再戦を匂わせる台詞を言い放ち、ブーストドライブであっという間に戦場を後にした。
自動操縦でシロガネに突っ込んでいったライノセラスはさらなるアルト・ヴァイスの集中攻撃と、
シロガネの艦砲射撃により撃沈され、メキシコ高原での戦闘はシロガネの勝利に終わっていた。
「ブリット、だったっけ。…助かったよ」
「いや、お前のフォローがなかったらどうなっていたかわからないさ。
今、俺達が地球圏の内部どうしで争ってるわけにはいかないしな」
「はは、そうだな…」
ソニックブレイカーのダメージで仰向けに倒れているMK−Uに手を差し伸べながらシンは少し微笑んでいた。 つづく
なんというか…シンって主人公?それに戦闘が総帥達に比べて地味スwww
総帥sに比べて地味?
逆に考えるんだ総帥sが派手なだけだと考えるんだ
俺はゲームで使われてる戦闘時の台詞だけで、ニヤニヤしてるから問題ない。
総帥や白川博士はラスボスだからな〜>地味
熱血野朗同士の連携は中々のものだ……シンが何時SEED発動させるかも楽しみだ。
OG1よりは派手なはずですよ?
シンとブリットはなかなかいいコンビになりそうだな
シュバインのあとの乗機やシャドウミラー関連の話が楽しみです
シュバインの後か……アーマリオンが順当かな?
もしくは紅いビルガーとか、超大穴でヴァイサーガとか(接近戦が得意なSEED持ちがもったら鬼だな)
シシオウブレードとかもいいな
355 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/15(土) 13:43:11 ID:LfHJf144
やっぱあれだろう、特記用獅子王付きのグルンガスト参式
零式はOG2の時点では分解状態。
参式は龍虎の餌になるし、獅子王装備はブリクス専用機だからまず無理っぽい。
ヴァイサーガは飛ばされた直後、シャドウミラーに拾われない限りラミア専用だしこれも無理。
そうなるとシンが乗る機体は、アーマリオン・アルブレード・グルンガスト壱式三号機・グルンガスト弐式・アシュセイバーorヒュッケMK-U獅子王装備とかか?
可能性としては機体も一緒に来てるからテスラ研あたりで修復改造で斬艦刀つきで運命verOGで復活
358 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/15(土) 15:08:36 ID:LfHJf144
それ、まかり間違ってCEに戻ったら無敵じゃね?
もうデスティニーをマ改造して左手にブーストハンマー、右手にSBクラッシャー、
背中にオクスタン・ランチャーと参式斬艦刀、手の平にはクロスマッシャー、
胸部にはソニック・ブレイカー、足には究極!デスティニーキック用プラズマステークを
搭載してダルマにされても勝てる新西暦仕様にしちまったほうが良くね?
マ改造はそんな無節操なことはしないよ。
マ改造はあれでちゃんとコンセプトが存在するし、極端なものではあるけど
いや、自分で言っておいてなんだが……マリオンのマではなくマサキのマのような気がしてきた
11氏の作品はまとめサイトには、アップされないのでしょうか?
乗り手と面識があることだしPS2でもOGに出てOG2に出てないMK-Uトロンベに
デスティニーのパーツを使ったカスタム機ってのもありだと思う
11氏のSS読み返したら、デスティニーは頭・両腕・両脚損傷なんだよな。
こうなるともう一から作ったほうが早いくらいだから、アルブレ+ビルガー+ファルケン÷3くらいの
デスティニーの設計思想を受け継いだ機体を捏造したほうがいいかもだ。
まあ、なんだ。デスティニーに設計思想などと御大層な代物があったと思えんのだがな。
良いとこ取りしたいと言う願望だけじゃないのかと。
デザイン的にはあれだけ色んな物くっつけてる割にはゴテゴテしてない秀逸なもんなんだけどな
設定的には確かに美学を感じない
酉付けましたw
シンの乗り換えですが、どなたかに考えていたオチを言われてしまいましたwとはいえ変更する予定はないですけど…
執筆中の続きを読み返すと、このあとまた紅茶が主人公ジャネ?
みたいな気がしますがお許しくださいませ、シンは主人公ですのでwwww
執筆が続けば、という条件付ですが今後の方針についてバレを…
自分の想像力が追いつく限り、サイバスターの登場場面はいくらか派手というか華やかになるような気がします。
おそらく読者様方も気になっているであろう「奴ら」もこっちの世界に来ていますが、登場はまだ先です。
>奴ら
ジブリール把握
その「奴ら」が、
別種類との生存競争というぶち抜けた戦場で、今までどおりに行動できたら、
それはきっともう救いようが皆無の超弩級の極大馬鹿の純結晶生物ですね。
それこそまさにラクシズそのものじゃないか
保守
今月の電撃スパロボ!買ったんだが……
カチーナに萌えるなんて有り得ない有り得ない有り得ないッ!?
俺のカチーナ姐さんがラッセルの言葉にプロポーズを意識するはずなど、ないだろぉぉぉぉがぁぁぁぁ!
ツンデレ比が9.99:0.01の人だかんね
普通に999:1でいいだろw
ビアンSEED第27話 ばいばい
ビアンのヴァルシオンに続き遠方からストーク級空中母艦が姿を見せ、数機の機影が戦闘空域に加わった。
今回クライ・ウルブズから離れていたユウキ・ジェグナンとリルカーラ・ボーグナインのラーズアングリフとランドグリーズの二機だ。
グラビトロンカノンのダメージで、姿勢が安定しない飛鳥の腕を、カーラのランドグリーズが取って支えた。
「大丈夫シン? 結構ピンチだったりした?」
いつもの元気の良い闊達な声に、シンの身を案じる響きを交えて、カーラが心配そうに接触回線をつなげてきた。シンはようやく体の上げる痛みの悲鳴に気付いて、声を上げそうになったが、それを堪え大丈夫そうには見えない笑顔で答えた。
「大丈夫です。ピンチだったりはしましたけど……」
「ありゃあ、やっぱり? なんか、すごい強そうなのがいるじゃない」
「強そうじゃなくて、かなりやばい強さです。……そういえば、グリーズにラーズ、空飛んでいますけど、改造したんですか?」
カーラの陽気な調子に緊張がほぐれたか、シンはカーラとユウの機体が、若干姿を変えているのに気付いた。陸戦系の機体として飛行能力を持たない筈の二機がトランスポーターなしで飛行し、装備も若干変わっているようだった。
背にはラーズとグリーズ共にFソリッドカノンやリニアカノンの、折りたたみ式の長砲身とミサイルポッドを装備しているのは変わらないが、それぞれの武装をつなぐ背中の中央部分のコネクターにブースターやウィングバインダーが取り付けられ、
腰の部分には小型化したテスラ・ドライブがある。
肩の大きなアームガードもスラスターが増設され、ジョイント部分からフレキシブルに稼働し、高い機動性を得られるように改造されていた。
武装の方も、両機共に胴体中央部にスキュラや小口径のチタン製ベアリング弾を射出するスクエア・クレイモアなどが追加されている。
長所を残したまま、短所を埋める方向性で改修が施されていると見るべきか。
シンの疑問に答えたのは、カーラではなく二人を守るようにして機体を前に出していたユウだった。
「ラーズとグリーズの強化改修案の第一段階だ。最終的にはさらに改修を受ける事になるが、今は飛行機能とビーム兵器の搭載を行ってある。おれ達がクライ・ウルブズと別だったのはビアン総帥が直接機体の改修に関わり、出撃するぎりぎりまで調整していたのでな。
だから、こうしてビアン総帥と行動を共にしていたわけだ」
「そーいうことなんだよ。空飛ぶのにはちょっと不慣れだけど、他のザフトの人たちは大体助けられたから、後はシン達のとこだけだったんだけど……。なんだか雲行きが怪しい感じだよね」
通信越しにもカーラの緊張が伝わり、シンは改めてグランゾンを見つめる。飛鳥や通常のMSより10メートル近く大きな機体。連合やザフトの既存のMSとは異なる姿に重力や空間を操作して攻撃を行う超技術の装備。
ある種ヴァルシオンにも共通する機体の特徴だ。ユウも常にクールな彼ながら、グランゾンから伝わる重圧に、自然と厳しい目つきに変わっていた。
「何を非現実的な。機動兵器から圧力を感じるなどと……」
目下グランゾンの興味はヴァルシオンにある。グランゾンとそのパイロットにとって、自分やカーラ、既に破れたシン達は眼中にないという事だろう。それが腹立たしくもあり、助かったという思いがしてしまう事が、ユウには悔しく情けなかった。
「ビアン総帥、私達も援護するよ!」
ユウの心境を察するよりも、カーラは目の前の脅威に立ち向かう事を選んだようだ。カーラの言葉を、ユウが制するよりも早く、ビアンが答えた。
「いや、ボーグナイン曹長。あの機体の相手は私とヴァルシオンでする。ランドグリーズの改修もまだ最終段階の前だ。無理はしなくとも良い。クライ・ウルブズ各機とザフトの部隊と共に後退せよ」
「でも、あいつ、何だかすごくやばい気がする。根拠はないけど、それだけは分るんだ。総帥一人を置いてけないよ」
「カーラ、言葉が過ぎるぞ」
「だって、ユウ。ユウだってわかるでしょ? あいつ、普通じゃない」
「……」
カーラの言葉を否定する事はできず、ユウは沈黙した。
「ジェグナン二尉、アルベロ、それぞれ艦に戻り後退する様に。私個人としても、あの機体には用があるのでな」
「……あちらでの知り合いか? ビアン」
「かもしれん、という程度だがな」
ヴァルシオンとグランゾンが向かい合う。55メートルのヴァルシオンに対し、27.8メートルのグランゾンでは倍の差があるが、互いが互いに劣るとは思えぬ威圧感を滲ませていた。
とある世界では真の意味ではないにしろ肩を並べた事もある機体であり、パイロットもまた同じ人物だ。
二隻のアークエンジェル級も、スペースノア級も、そして二つの陣営に属する者達も、トリガーを引く指も、モニターを見つめる瞳も、指示を出す喉も、それを聞く耳も、この二機の機体の対峙に囚われていた。
圧倒的な戦闘能力でシンやアルベロ、ジャン・キャリー、テンザンを退け、余裕と自信に満ちた態度のまま、己例外の全てを睥睨していたシュウは、ようやく瞳にそれまでとは違う光を浮かべてヴァルシオンを見ていた。
何か、何かとても重要な事を忘れている。そして、それを思い出そうとしているのに思い出せずにいる事も解っていた。初めてビアン・ゾルダークとヴァルシオンの存在を知った時にも、似たような感覚に襲われたが、今、実物を目の前にすればその感覚はより強さを増していた。
シュウの白衣の肩に乗ったチカが、小首をかしげて自らの主を見つめる。
「ご主人様?」
「いえ、なんでもない、とは言えませんか。どうも私の失った記憶に関係があるようですね」
「グランゾンのライブラリに照合するデータがある位ですもんね」
「若干、形状や感知できるエネルギーに差異がありますが……。さてどの程度このグランゾンの相手が出来るものか、試させてもらいましょう」
「いつになく好戦的ですねえ、ご主人様」
対峙するグランゾンの、目に見えぬ気配の様なものを感じたか、ヴァルシオンも右手に握るディバイン・アームを右下段に構え直した。ヴァルシオンに、エペソからの通信が入る。
『あれは貴公の知るグランゾンか? ビアン』
「さてな。戦ってみればもう少し分かるだろうが……。エペソ、それを問うという事は、お前の世界のモノとも分からんという事だな?」
『そうなる。どちらでもないのか、どちらなのか。いずれにせよ、大した化け物であろう。地球人が造ったにしてはな』
最後の一言が、この母星に対する強烈な選民思想の入った男らしい。これでも前よりは大分和らいだものだが。
「全機を撤退させろ。ザフトの方も部隊の回収はすでに済ませてあるようだ。グランゾンの相手は、私とヴァルシオンでする」
『承知』
グラビトロンカノンの解除により、機体の自由を取り戻したザフト・DCの各機動兵器達がそれぞれの母艦に戻る動きを見せ、ゲヴェルの艦橋でレフィーナが追撃の指示を出すかどうか、わずかに迷った時に、シュウの声がそれを遮った。
「レフィーナ艦長、申し訳ありませんが部隊を後退させていただけますか? 貴方達を気遣いながら相手をするには少々手強い相手の様ですのでね」
あくまでも、余裕をたたえどこか底知れぬ雰囲気を漂わせたまま言うシュウに、テツヤが間髪入れずに反論する。
「な、シラカワ博士!? 自分が何を言っているのか、分かっておられるのですか!」
「オノデラ副長!」
「あ、いや、ですが、艦長」
「……シラカワ博士、本当にお任せしてよろしいのですか? 私達の任務はカオシュンから撤退する部隊の追撃です。貴方の意見に従うという事は、その任務の放棄と取られかねません」
「ええ、そう思われるのも無理はありませんが、このままグランゾンとヴァルシオンの戦闘の巻き添えになられては、元も子も無いのではありませんか?」
「……」
唇をきつく結び、レフィーナはシュウの瞳を見つめ返す。無言のままモニター越しに睨みあう二人を、テツヤやクルーは黙って見つめていたが、先に折れたのはレフィーナの方だった。
「分かりました。現在、我々は任務遂行を断念せざるを得ない状況に現在置かれていると、判断します」
「艦長!?」
「賢明な判断ですね。ご安心を、貴方方の上司には私の方から口添えしておきますよ」
「お気遣い痛み入ります、シラカワ博士。ユン、全機に撤退を通達してください。エスフェルのリー艦長にも。全ての責任は私が負います」
「よろしいのですか、艦長。シラカワ博士はああ言っていますが……」
「私の根拠の無い推測ですが……。シラカワ博士は、私達が退かなかったら、私達を巻き込んででもヴァルシオンと闘うでしょう」
「いや、まさか!?」
レフィーナの言葉を今一つ強く否定できないのは、テツヤ自身シュウに対して警戒の意識を強く抱いているからだろう。
他にもレフィーナの言葉を、後押しする者もいた。
「おれもレフィーナ艦長の意見に賛成だ。オノデラ副長、ここは部隊を下げた方がいい。第一、おれ達の戦力ではヴァルシオンを落とせん」
「キタムラ少佐まで。……分りました。ただし、この件を問われた時には自分も責を負う事だけは言わせていただきます」
「テツヤさん。……はい。これより伊豆基地に帰投します」
「あらら、ご主人さま、良いんですか、味方を返しちゃって?」
「ええ、足でまといは歓迎できませんし。それに、本当の意味での味方などではありませんからね。さて、あちらも同じ事を考えているようですね」
「ほんとだ。あっちも味方を下げていますねえ? 以心伝心ですかね?」
確かに、タイミングを同じくして連合とDC・ザフトの両軍の部隊は向かいあうグランゾンとヴァルシオンの後方へと部隊を下げている。ヴァルシオンの戦闘能力がどれほどのものかは既に世界中に知られていたし、グランゾンのそれもまた、たった今披露されたばかりだ。
それ以上に、この場に居る誰もが、生存本能の鳴らす鐘の音が最大限に鳴り響いているのを聞き取っていたのだろう。この場にいたら、肉の一片すら残らないと。
お互いに足手まといが離れたことを確認してから、シュウはわずかにコントロールスティックを動かす。そろそろ幕の開き時だと決めたようであった。
風が、一際強く吹いた。怯えていたのかもしれない。風だけでなく、世界の全てが。
グランゾンに、ヴァルシオンに。両者の生み出す闘争世界に。
「行くぞ、シュウ・シラカワ!」
先んじて仕掛けたのはビアン。機体背部からテスラ・ドライブの光を盛大に零しながらヴァルシオンが飛ぶ。550トンの巨体はみるみる内にグランゾンのモニターの中で巨大になり、ディバイン・アームを振り上げた姿勢に至るまでわずか数秒。
グランゾンの右手が動く。
世にも美しく澄んだ、キイィンという音が周囲に木霊した時、既に二度目の音が生じ、それは幾重にも音の波として織り重なりあい、舞踏音楽の如く連なって奏でられた。
右袈裟に斬りおろされたディバイン・アームをグランワームソードが受けた、と見えた時にはディバイン・アームを押し返し、逆に雷光の如き刺突がヴァルシオンの左胸部――人間で言う心臓に伸びていた。
削られる装甲の火花が百花の如く繚乱と散り、グランワームソードを受け止めたヴァルシオンの左手の五指を半ばまで切り裂く。
動きを止めたグランゾンの左頚部振り下ろされる銀の刃を、グランゾンは左手でヴァルシオンの右手を抑えてかろうじてその斬撃を防ぐ。
倍の体格を有するヴァルシオンを相手に、グランゾンのパワーは互角という事なのか、互いに防いだ刃は微塵も動かず、拮抗状態へと移っていた。
「わわわ、ご主人さま。五分五分ですよ!」
「ほう? やるものですね」
「……」
初めてグランゾンと正面からやり合える相手に、シュウは感心したように呟くが、それも己が絶対的に上位にあるという自身が露ほども揺らいでいないと分る声音であった。
単なる偶然か、意図してか、ヴァルシオンとグランゾンは疾風の速さで互いの刃を手離し、両機は離れ、烈風の荒々しさで第二撃を放った。
「ワームスマッシャー、発射!」
「クロスマッシャー!」
再び開かれたグランゾンの胸部前方に穿たれる無限地獄つながる奈落の様な黒穴と、そこへ向かい放たれる無慈悲な光。突きだされたヴァルシオンの血に濡れたかのような赤い左腕から放たれる、青と赤の二重螺旋を纏った白い破滅の光。
空間を超え、あらゆる方向から無差別に襲い来るワームスマッシャーを、ヴァルシオンに搭載した重力震センサーで感知し、光が吐き出されるより早くヴァルシオンを駆る。
ヴァルシオンの持つ歪曲フィールドに、ワームスマッシャーは次々と着弾し、歪曲した球状の空間にそって後方へと流れてゆく。
対して、ヴァルシオンのクロスマッシャーは直線的な軌道のまま、その先に立ち塞がる者全てを打ち砕かんとグランゾンへと迫る。
着弾に至るまでの刹那に、クロスマッシャーの出力を解析した数値を認識したシュウは歪曲フィールドでは受けずに、回避を選択した。直撃すれば、いかにグランゾンといえどもダメージにはなると判断したためだ。
グランゾンは、CE世界、新西暦世界の両方を合わせて見ても最強の一角に数えられる機体だが、その特殊装備や装甲の材質などなどから、破損した場合の修復が著しく困難である。
ましてやグランゾンが建造された本来の世界でもないこの地球では、技術と資材的な問題からわずかなダメージでも修復するのはいささか面倒となる。
その判断が、シュウに回避行動を取らせた。ヴァルシオンはワームスマッシャーの半分近くを回避し、残り半分を歪曲フィールドで受けるか直接食らっている。それでもその重装甲故に決定的なダメージには至っていない。
「グランゾンとヴァルシオンのどちらが上か。私も興味はあった。もっともグランゾンがヴァルシオンの足元にも及ばないというのは、やはり謙遜だったようだがな。シュウ?」
「ビアン・ゾルダーク総帥ですか? 申し訳ありませんが、何の事です? 私には生憎と憶えがないのですが」
「……私の知らぬ世界のシュウ・シラカワという事か、それとも」
立て続けに放たれるクロスマッシャーを、右に左に、上に下に、前に後ろにと三次元的な機動でかわし続けながら、グランゾンもワームスマッシャーで反撃を試みる。その動きを読んでいたのか、ヴァルシオンはグランゾンに獲物を狙う猛禽の如く襲いかかった。
ワームスマッシャーが数十、数百の数で空間に穴を穿って破壊の光を乱舞させ、ヴァルシオンから迸るクロスマッシャーが海を割り、天を割き何度もその輝きを煌かせる。
グランゾンの装甲を撃つクロスマッシャー。
ヴァルシオンの装甲を穿つワームスマッシャー。
互いに既存のMSであったなら百機以上を撃墜していたであろうほどに攻撃を重ね続ける。MSに比べて巨体の二機は、特殊兵装による射撃戦では収まらない。
互いにあまり可動部分が多いとは思えない右腕に握った刃で幾度も切り結び、飽く事無く刃と刃の奏でる戦場音楽を高らかに響かせる。
鍔競り合った姿勢になった両者は、互いの零距離からクロスマッシャーとワームスマッシャーを叩き込みあう。
「! グランゾンにこれだけのダメージを」
「ぬう!?」
光の燐粉を零して弾かれ合う機体を立て直し、ビアンは果たして何度目になるか、今一度クロスマッシャーを放つべく、グランゾンへ照準を向ける。
「ワームスマッシャーでは止められませんね。ならば、グラビトロンカノン!」
「む! ならば、メガグラビトンウェーブ!」
互いに重力を用いた一撃。漆黒に彩られた重力の波と波。グランゾンのそれは天空神が敵する大地の神を押しつぶさんと振り下ろした戦鎚の如くヴァルシオンを上方から押し潰す。
ヴァルシオンの放つ重力は輪の形に鍛え上げられた刃の様に鋭く重なり、それは遂には嵐の様にうねくる巨大な暗黒になってグランゾンを四方から押し包む。
「ぐうう、ぬ。流石はグランゾン、今のヴァルシオンではこれが限度か!」
展開する歪曲フィールドを越えて機体の装甲をひしゃげさせんとのしかかる、操作された重力のダメージ値に、改めてビアンはシュウ・シラカワとグランゾンの開発者達に対して敬意の情を抱いていた。
他方、グランゾンのコクピットでは――
互角近い戦闘に、軽くパニックを起こしたチカがシュウの耳元でぎゃんぎゃんと甲高い声で騒いでいた。
「ごごご御主人さま!? けっこうやばいんじゃあっ」
「少し黙ってください、チカ。――ビアン・ゾルダーク?、ディバイン・クルセイダーズ。…………ふふふ、なるほどそういう事でしたか。ですが、私の知る方とも限らない、か」
「ご主人様……! だめですよ、正気を保ってください! まだそんな悲観するほどピンチじゃないですから!!」
突然の主人の言葉と笑みに、チカが正気を疑ってしまったのも仕方ない。シュウは自らの使い魔の言葉に傾ける耳は持たず、グラビトロンカノンを解除し、同時にヴァルシオンに連絡を繋げた。
グランゾンの唐突な動きに気付いたビアンは、訝しみながらもメガグラビトンウェーブを解除し、モニターの中に移ったシュウの顔を見つめ返した。
「究極ロボの異名は伊達ではありませんね。グランゾンでもヴァルシオンの足元にも及びません。ビアン“博士”。このまま戦いを続ければこのあたり一帯の地形が変わるのにさほど時間はかからないでしょうね」
(総帥ではなく、博士か。……さて、どの様な事情があるものか)
「所で、いくつか聞かせていただきたい事があります。貴方が戦ったのは、ホワイトベース隊ですか?」
「いや、私を打ち破ったのはハガネ隊だ。私の知っている『お前』が言っていたサイバスターもその中にいたがな」
「そちらでもサイバスターですか……。なるほど。どうやら私と貴方は別の所で知己となったようですね」
「え? え? ご主人さま?」
「シュウ、お前はこの世界で何をしようとしている。私の目的は、先の演説の言葉通りと、おそらくはお前の知る『私』と同じだろう」
「確かに、貴方も、ビアン博士と同じ考えに辿り着いた方の様ですね。さて、私の目的ですか。お恥ずかしい話ですが、つい先ほどまで少し物忘れに悩まされていましてね。これから考えます。
ただ、そうですね。私を利用しようとした方々に身の程を教えて差し上げなければならないでしょう」
ビアンの言葉に応えるシュウの美貌には鞘から抜き放たれた剣の様な危うさと、血を吸って花開いた魔性の花の様な妖しいまでの美しさが浮かび上がっていた。ビアンのよく知るシュウ・シラカワが時折見せる笑みである。
「さて、お互いこれ以上戦う必要も無いでしょう。これから、チェコまで行く用事がありましてね。縁があれば今一度見える事もあるでしょうが、今度は敵になりたくないものです」
「ふ、それはこちらも同じだ。危うく、私の部下達が命を落とすところだったのだからな」
「私も無駄な事は好まざる所ですので。ではビアン博士、DCの健闘を祈りますよ」
「礼の言葉は言わぬぞ」
「ええ、それで構いませんよ」
あくまでも自信と余裕に満ちたまま、言いたい事だけを言って踵を返すシュウの背を見送り、ビアンは苦笑した。
「……シュウめ、どこの世界でも同じ性格というわけか」
ただ、シュウを利用しようとした者達の冥福を、今から祈っておくことにした。
シュウ・シラカワという存在は、毒にも薬にもなる途方もない存在だが、そういう意味ではビアンもある種似通った面を持っているし、なんとなく馬が合う所もある。
これからシュウがどう動くのか、考えても分りはしないだろうと結論付け、ビアンはモニターに映るタマハガネに着艦すべく、ヴァルシオンを寄せた。
だが、タマハガネのハンガーにヴァルシオンを着艦させたビアンを待っていたのは、狼狽し焦燥に焦がされたシンやアウル達の姿だった。
ヴァルシオンから降りたビアンに、冷静さを欠片ほども残していないシンが、泣きそうな顔で走り寄ってきた。スティングやアウルもシンに続く。尋常ではない三人の様子に、ビアンも何事かと気を引き締めた。
「どうした、何があったのだ?」
「ビアンおじさん、ステラが、ステラが!!」
「ステラが、どうした?」
きつく歯を食いしばっていたスティングが、血を吐くような声で小さく呟いた。
「戻ってこないんだ。シグナルもロストしている」
「むう……」
「親父、はやくステラを探さなきゃ、あいつ馬鹿で抜けてるし、一人じゃ危なっかしいし、だから、だから傍におれ達がいてやんねえと!」
「落ちつけアウル! 今、エペソ艦長が捜索隊を手配してくれている」
「そんなの待ってられっかよ! スティングだって今すぐあいつを探しに行きたいだろう!! こんな時にまで落ち着いてんなよ!?」
「こんな時だからこそ落ち着かなきゃいけないだろうが!」
普段のどこか冷笑的な様子をかなぐり捨てて、アウルが大声で怒鳴り散らした。ロドニアのラボで男も女も無く育てられたアウル達には、兄妹の様な、疑似家族の様な絆があった。ビアンに引き取られてからは、その絆はより深く強まっている。
だから、ステラのいないこの状況は到底耐える事の出来たものでは無かった。戦争に身を投じていながら、アウルは考えた事も無かったのだ。自分達の誰かが欠けてしまうなどという事を。
確かに強敵もいるし、予想もしなかった事が起きるのが戦場だが、それでも自分達は絶対に生きて帰ってくるのだと、アウルは信じていた。いや、妄信していた。
結局アウルは戦争を、危険な、けれど敵を落とせば褒めてもらえるゲーム程度に認識していのだ。それが覆された今、冷静でいられるはずも無かった。
錯乱しかけているアウルの肩に、大きく分厚い掌が置かれた。ビアンだ。その手の感触に、取り乱していたアウルは、はっとしてビアンの顔を見つめた。
「落ちつけ、といっても無理なのは分かる。だが、それでも落ち着くのだ、アウル。ステラを見つける為に何をするのが最も重要かそれを見失うな。ステラの捜索には私も出よう」
ビアンの言葉に少しながらも冷静さを取り戻したアウルは、拳を握りしめて、じっと耐えた。スティングもシンもアウルと同じ気持ちでいた。
艦橋に上がったビアンは、エペソとステラの捜索について話を進めていた。既にザフト側の部隊の回収は終わり、敗走していた部隊を乗せたボズゴロフ級や輸送艇などはオノゴロに向かっている。
「どうやらステラ・ルーシェはグランゾンのグラビトロンカノンに巻き込まれたようだが、レイダーのパイロットと何か話し込んでいたのが確認できた。ビアン、貴公は何か聞いているか」
「スティングに問い質したが、レイダーのパイロットはラボ時代の顔見知りだそうだ。故に、何とか説得しようとしていたそうだ。今回は、それが裏目に出たか」
「なるほど。さて、ステラ・ルーシェの捜索だが、いつまで続ける? 貴公のヴァルシオンの出現で近辺の連合部隊はかなり警戒しているようであるから、そうそう接触する様な事はあるまい」
「捜索には私も出る。時間の許す限りな」
「自分が戦争に巻き込んだと、罪悪感でも抱いたからか? 戦場の常であろう」
「それでもだ。エペソ・ジュデッカ・ゴッツォ」
「……それも貴公ら地球人の強さであり弱さか」
ステラの捜索が始まってから二日。今だ機体の破片すら見つける事ができず、捜索に出るシン達の疲労も積み重なっていた。ろくに睡眠もとらずに最後にステラのアーマリオンの反応があった海域を集中して探し回っているのだ。
この話を聞いたイザークやルナマリア、レイ達も協力を申し出て、宇宙に上がるのを可能な限り送らせて今日も捜索に出ている。
ローテーションを組み、タマハガネに着艦しハンガーに収まった飛鳥の足元に蹲り、シンはそのまま背を預けて脱力する。表面上は冷静だが、アウル同様に内心では焦りきったスティング達と碌に休みも取らずにステラを探し続けている。
不足する睡眠は体から疲労を拭い去ってはくれず、ついそのまま眠ってしまいそうになる。
ふっと、眠りの安らぎに呑まれたシンを、アウルの大声が引き戻した。
「シン! ステラが!」
「ステラが、ステラが見つかったのか!?」
「ああ、アルベロのおっさんが見つけたってよ。早く行こうぜ!」
「ああ!」
エペソとビアンのへと出撃の許可は既にスティングが取っていたらしく、戻ってきてからわずかな時間しかたっていないというのに、シンの飛鳥とアウルのエムリオンが、慌ただしくタマハガネから飛び立っていった。
ステラと乗機であるアーマリオンが見つかったのは、不思議な事にグランゾンとの戦闘地域から遠く百キロ近く離れた小さな小島の浜辺であった。
レイダーのミョルニルの一撃を受けらしい胸部の傷跡の他、グランゾンの重力攻撃により機体全体にかなりのダメージが加えられていた。
既に傍らにアルベロの機体が片膝を着いており、ヘルメットを外したアルベロがコックピットを覗き込んでいるのが見えた。シンとアウルが転がるようにコックピットから飛び出し、スティングもはやる気持ちを抑え、万が一を考慮して機体に乗ったまま周囲を警戒している。
本心では、シン達同様ステラの元へ駆け出したいだろう。
ばしゃばしゃと浜辺に打ち寄せる海水を蹴散らして、あおむけに横たわるアーマリオンのコックピットに這い登ると、なぜか苦笑いしているアルベロが二人を見た。
なんでそんな顔をしているのかと、シンとアウルは頭の上に?マークを浮かべたが、今は何よりもステラの状態を確認する事が大切だった。場所を空けたアルベロの脇を通り、シンとアウルは開かれたコックピットのハッチに手を掛け、中を覗き込んだ。
「ステ……ラ?」
「……はあ!? おれらが必死こいて探している間なにやってたんだ、コイツ!!」
ステラはシートの上で胎児の様にまるまってすやすやと寝息を立てていた。それはいい。ある意味ステラらしいと言えなくもない。だが、その恰好がおかしかった。有り得なかった。何故だと突っ込まずにはいられなかった。
パイロットスーツでも軍服でもなく、なぜか腰ミノにヤシの実を半分に割ったもので胸を覆い、頭には青いリボンと南国の花々で造られた可憐な花輪を付けている。実に南国なファッションだったが、なぜか輝きを零すみずみずしい足には網タイツを履いていた。
神よ。ステラにいったい何が? シンは天を仰いだ。
むにゃむにゃとステラの呟いたステラの寝言が聞こえた。
「……ばいばい、パプワ島」
「パプワ島って、どこ?」
「おれが知るかよ」
もちろん、シンとアウルに分かるはずも無かった。
・強化パーツ
イトウくんのリボンを手に入れました。
パプワくんの腰蓑を手に入れました。
タンノくんの網タイツを手に入れました。
今回ここまでです。うん、あれですね。自分が何をしたいのかよく分からない。ではでは、ご助言・指摘などなど大歓迎です。よろしくお願いいたします。
GJ!
最後のパプワ島に蝶吹いたw。
さすがにパプワのクロスオーバーは勘弁だと言いたいww
ラ・ギアスはないがパプワ島があるんだろうか?
シラカワ博士が覚醒!!逃げて〜逃げて〜(南無〜)。
そういえばフラガと同じ声だったな、シラカワ博士は……
相変わらずスケールが違うよ総帥、しびれたよ総帥!
GJ!!
グリーズとラーズって略されるとラーズグリーズって繋げたくならないか?
飛んでるし
セレイン大好きだし
グランゾンとヴァルシオンとの戦いか・・・
さすがにVSアストラナガンのような最悪戦にはならんか
さようならルオゾールと連邦の人達。
ルオゾールは魔装機神後だから何らかの対策練ってそうではある。
……シュウが再度呪縛されたら説得出来るヤツが居なくね?
意識を取り戻したシュウなら、きっとネオグランゾンを持ち出してくれるっ
あれは出てくるとそれだけで終わるからなぁ……
SFCので縮退砲18000しかも弾数制は恐ろしかったな
394 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/20(木) 09:08:06 ID:o6OR/grB
>>393 そんな素敵な機体がOGに登場しないのは非常に残念です・・・・。このSSでは
ぜひとも大暴れしてほしいです。
最後吹いた。
まあ、あの島も時空移動を繰り返しているし、GJですが…
気になったのは「歪曲フィールド」
魔装グランゾンは重装甲ではあるものの、バリア系装備はなかったはず…
あ、2次では「遠距離攻撃無効」の鬼畜フィールドがあったし、ルオゾールもナグツァートにつけていたから、それが「歪曲フィールド」と考えればいいのか。
グランゾンの歪曲Fについてはたしかに旧シリーズでは言われてないけど
同作品群であるLOEで出てるよ。
時間軸的には第2次前の話で、ゼオルートに破られた
ナグツァートのやつは歪曲フィールドじゃなくアストラルシフトってのだったはず
大量の賢者の石を使って造られた咒霊機特有の能力で
機体を半幽体化させることで相手からの攻撃が届かず一方的に攻撃できる通称無敵モード
現時点で対処法のアストラルコーティングを施せるのはあっちの錬金術を知ってるシュウだけだと思うけど
原理が原理だけに念法で突破できるような気も
そういやネオグランゾンって第4次で『偏在』使って増えてたよな。
それやったら、誰も勝てねえ……。
ああ・・・・・影分身ね あれにはビビッた
つGP02
ネオグランゾン増殖したのは4次Sだな。
無印では1機だった。
そういやゲストは出てくるのかなあ。
可能性高いのはゼゼーンンと4次ロフぐらいか。
DC編F完結なら3人衆そろうが。
>>401 第4次Sだけかもしれないが、イベント発生させれば
3将軍生き残らせること出来なかったっけ?
4次Sだっけ?
生き延びたのは覚えてるんだが……
>>402 F完結はルート選択で三将軍が敵になるか味方になるか変わる
DC編となんだっけ?
Wチームが揃う方と揃わない方で覚えてたからルート名忘れた
>>404 ポセイダルルート
しかしDCルートでもポセイダルとは戦うが
ポセイダルルート選ぶとDCとの決戦はなくなる
懐かしいな第四次、レッドミラージュが出てきたっけな。
敵機体ながらライグ・ゲイオスがお気に入りだったけ。
永野さんが怒ったといわれてる武装とかが違ってたブラッドテンプルか
なぜかゲスト指揮官機標準装備のギガブラスターを使う奴だな。
といってもゲストの方はメガドライバーキャノンやら大口径ビームキャノンを使ってきて、ギガブラスター使ってくる印象はほとんどないんだが。
F・F完のライグ・ゲイオスは第4次と違ってギガブラスターも大口径ビーム砲も
EN消費式になってあっという間にEN切れになるのにはがっかりした。
ドライバーキャノンも弾数少ないし。
まあ、機動兵器にマスドライバー積んでる時点で色々おかしいけどな
マスドライバーキャノンって、レールガンで気化した弾丸を榴弾上にして打ち出しているようなものなんかなあ?
>>410 見る限りドライバーキャノンは別にマスドライバーではないと思うのだが。
413 :
93:2007/09/24(月) 04:26:29 ID:???
短めですが投下、今回は
轟音、爆音、火薬と何かが焼け焦げる臭い……
これは『あの時』の記憶……
「手を離さないで!!」
そう私に言いながら、『お母さん』は私の腕を掴んで走り続ける。その言葉は前を走るお母さん自身にも向けられているのかもしれない。
……『お母さん』?俺には母親など存在しない……
「『――』、『――』、もう少しだ!!」
俺と母親の前を走るお父さんは私と『お兄ちゃん』を叱咤し続ける。私達は『お父さん』の仕事上、最後の非難船にのる手はずになっていた。何のお仕事をしているのか私達に兄妹にはお話してくれなかったけど、お父さんは「人々の発展の為のお仕事をしている」らしい。
……無論俺には父親すら居ない。
麓の避難船が見えてきた……私は気を許してしまったのか大事にしていた携帯電話を落としてしまう。
「俺が取ってくる!!」
だめ、お兄ちゃん!!行っちゃ駄目
……「――」と呼ばれる少年はそのまま斜面を滑り降り、木の根に挟まった携帯を拾おうとする……が
閃光……そして暗闇
この映像が俺に何の関係が有るのかは判らんが、それ以降イメージは全く浮んでこない……嵐のようなイメージだった。
俺は男と女の愛情の末に出来た存在ではない。無論、遺伝学上の父と母は存在するが、そのどちらも、生まれてきた俺を抱き上げたことも、顔を見たこともないのだろう。
認識番号00451716、失敗作、クズ、出来損ない、それが産まれた時の名前
俺を生んだのは何万もの擬似子宮シリンダーの一つとある男の『人類の理想』という名の狂気……
意識が止みに沈んでゆく。どうやら夢の終わりのようだ。
俺の名はカナード、カナード・パルス
『人類の夢』の失敗作……
そう、今は……まだ
鉄《クロガネ》SEED another side
414 :
93:2007/09/24(月) 04:28:33 ID:???
薄暗い部屋の中には、大量のモニター、デスク、そして巨大な水槽が幾つも並んでいる
その様子はどこかの悪の秘密結社の研究所の様だ
この部屋の主の立場上……あながち冗談とも言い切れないのだが
巨大な水槽の一つに付属しているモニターのランプが処置中の赤から完了のグリーンへ、同時に水槽を満たす液体が抜かれ、中に居る少年が目を覚ました。
「お疲れ様。気分はどう?」
この部屋の主、レモン・ブロウニングはデスクから少年に向き直り、椅子に座ったままタオルを投げ渡す。水槽から出た少年は黙ったままタオルを受け取るとそのまま体を拭いた。
「最悪な気分だ¥」
「どうして?」
足を組み指先でペンを弄りながら妖艶な微笑を湛えた科学者は少年に尋ねる。
「夢を見た」
「どんな?」
「覚えてない。だが胸糞の悪くなる夢だった」
「そう」
少年、カナードの言葉に軽く相槌を打つとデスクに向き直りキーボードを打ち始める。覚えていないという少年の答えに興味を失ったのか淡々と作業をこなす
何か意味があるのかと聞きたかったが、この女が簡単に真実を話すとは思えない。語る事実に嘘はないが、こちらの追求をのらりくらりとかわしてのける。それがカナードのこの優秀で享楽的な科学者の評価である。
「それで……」
「なぁに?」
レモンは今度はカナードを振り返らずに応じる。
「キラ・ヤマトはどうなった?」
キラ・ヤマト、カナードが倒すべき目標。幾千、幾万もの同胞の中、唯一完成品として生まれたスーパーコーディネーター。その頂点にしてカナードが求める、ヒトが持ちうる最強の資質、『SEED』を持つものである。
彼を倒すために、カナードは彼女に接触し力を求めた。全ては「完成品」にして「最高傑作」を倒すため、半端者の自分が、決して失敗作ではない事を知らしめるために……
「ジョシュア君の報告だとキラヤマト御一行はオーブを目指しているわ」
「あいつか……」
カナードは現在の自分の代わりに任務を続ける男を思い浮かべた。年の頃はカナードより一つ上の19、それなのに何かを達観したかのような雰囲気を持つ不思議な青年だ。
レモンによれば、彼らは自分とはまた違った形での協力者らしい。
「オーブか……決着を着けるには相応しい場所だな……」
「まだ彼には手を出してはダメよ?」
「知ったことか……」
タオルを肩にかけたままの格好でカナードは部屋を出ようとする。が、敢えてレモンはそれを止めようとはしない。彼に説得は無意味、しかし
「ヴィンデルの命令。前回あなたが勝手に彼と戦ったから、あの人カンカンよ?それに、スーパー・フリーダムの改修がまだ終わってないわ、足も無いのにどこへ出るつもり?」
カナードは扉の前で立ち止まる。だがその顔は獲物を目の前で奪われた獣のそれに似ている。理解はしつつも納得は出来ない、そんな顔だ。
「お前達の軍門に下ったわけじゃない、俺は俺の好きなようにやる」
「それはダメよ、協力関係にあるんだからこちらの要望も聞いて欲しいわね。貴方のその『力』付加する技術もあの機体も、全て『私達』の技術で作られているのよ?」
自分を真っ向から見据えるレモンの顔は少なからず余裕まで残している……カナードは一応己の敗北を認めた。
引き返して乱雑な動作で椅子に座る。此処に足止めされると判った以上とりあえず今できることは一つしかない
「……服をくれ」
「いい子にしたらね」
「…………」
415 :
93:2007/09/24(月) 04:33:06 ID:???
今回は此処までです。
そういえばDの幹部キャラ軍団って生身でも人間より強いのか?
コンタとアクィラとネコミミモードには勝てないな
戦闘用人造人間なんだから多分生身でも強いんだろう
ただしウェントス、テメーはダメだ
戦闘用の人造人間だから生身でも強いと思われ
ただし風、テメーはダメだ
てかレモン姐さん、服は着せてあげてwwwwww
種の場合は無印の時はまだ世界観の補完になってたアストレイが種死では本編
同様グダグダになっちゃってたのが痛いw
まだしもマシと言われる高山版やエッジは補完じゃなくパラレルワールドだし
誤爆スマソ
償いとしてちょっとラーダさんにアサナを習ってくる
手取り足取り腰取り、肌を密着させてじっくりと
>>421がアクイラを連れていったが何かあったのか?
という訳でラーダさんとレッスンしてくるノシ
11氏のSSをまとめwikiにうpしようと思ったんだが、第1話の行方がわからんので、
持ってる人がいたらまとめwikiの支援うpロダにうpして欲しいんだが。
多分これだと思うけどメモ帳にコピーしてたのがあったからあげてみるが間違ってたらごめん
保守
ビアンSEED 28話 宇宙へ
グランゾンとヴァルシオンの戦いが始まる前、ステラはクロトの乗るレイダーを発見し、今度こそ説得しようと試みていた。
この前戦った時と違い、クロトが他の機体と拙いながらも連携を持ったため、かなりの難事ではあったが、新しい機体であるアーマリオンは、ステラの願いによく答えた。
レイダーの放つ容赦ない攻撃を回避し、迫りくるミョルニルをロシュセイバーで弾き、何とかレイダーに取りつこうとするが、クロトはそれを嫌い、
レイダーをMA形態に変形させるや距離を取って牽制にアフラマズダやツォーンを撃ちこんでくる。
アーマリオンの強固な装甲とEフィールドでも連続して受ければ危険だ。
「ええい、しつっこいなあ、お前! いい加減諦めろ!!」
大気の壁を圧して迫るミョルニルを何度目になるかロシュセイバーで弾く。クロトの苛立った声に、ステラは必死に追いすがる。
「クロトが戦うのをやめてくれたら、追いかけない!」
「アホか!? 戦うのがなにより楽しいってのに、止められないね!」
「でも、それは戦う事しか知らないから、他の事を知ったら、戦う事以外の事をもっと、もっと知らないとダメ!」
「はん! じゃあ、今こうして僕と闘っているお前は何なんだよ! 説得力がないんだよ。おら、落ちろおぉぉ!」
「っ!」
横殴りに叩きつけられたミョルニルにアーマリオンの左腕を半ばまで潰されながらも、機体の姿勢を立て直したステラは、それでもクロトへの言葉を止めない。
かつてラボでは寝食を共にした者同士での殺し合いさえあった。能力が求められる基準に満たない者は処分され、廃棄されていった。その時の事は、幸か不幸かステラも覚えている。
だからだろう。その時命を落としてしまった者達の分も生きて欲しいのだ。人間らしく、当り前の幸せを知る人生を。
「クロト、お願いだから戦うのをやめて! そっちにいたら、何時か殺されちゃう! クロト達の事を使い捨ての道具としか思ってないもの。ステラ達だってそうだった」
「……ちっ、べらべらやかましい奴になったな! 何を考えているのか分からないボケッとした奴だったけど、DCに行ったせいかよ。お前の言う事ももっともだけどな、悪いけどこっちにもまともなおっさんと艦長がいるんでね! 前よりはマシなのさ」
それは、偽らざるクロトの本音であった。なんやかんやと拳を振り上げる鬼隊長に、人間らしい扱いをしてくれる艦長や副長を始めとしたゲヴェルのクルー達。
付き合いは短いが、人間性を取り戻しつつあるクロト達の人格に良い影響を与えていたのは間違いない。
この場合、今いる自分の居場所に対する執着となり、クロトを説得したいステラにとっては立ちはだかる壁となってしまった。
「〜〜〜〜クロトの分からず屋!!」
「こっちの台詞だ。バーカ、バーカ!」
「バカって言った方がバカ!」
とどこか兄妹喧嘩じみたやり取りをしながらも、レイダーから加えられる攻撃は激しさを増し、反撃しないステラのアーマリオンは徐々に追い詰められてゆく。
性能で言えば核融合ジェネレーターを搭載し、強力な武装と高い機動性、防御能力を併せ持ったアーマリオンの方が上なのだが、ステラにクロトを倒す意志がない以上そもそも勝負が成り立たない。
そうして、イタチごっこじみた二人の戦いは、グランゾンの放ったグラビトロンカノンによってステラのアーマリオンが中破し、戦線を離脱した事で一区切りが着く事となったのだ。
「で、気がついたら腰蓑履いた男の子と、犬と、エプロン着けた男の人に助けられた?」
「うん。パプワくんと、チャッピーと、リキッド。他にもイトウくんとタンノくんとヨッパライダーに……」
「あー、はいはい。楽しい夢が見れて良かったな、このおバカ。こっちはお前探すのに苦労したってのに。お前の夢にこれ以上付き合ってらん無いよ。もう寝るからな!」
「夢じゃないよ、本当だよ」
「知るかよ」
必死になって探してみたらのんきに寝ていたステラに怒り心頭らしく、アウルは素気ない口調でさっさと自分の部屋に戻って行ってしまった。タマハガネに戻り、ステラのアーマリオンを回収した後、リラクゼーションルームでの一コマである。
スティングも、ふだんのステラの様子からして、夢でも見たのだろうと判断したらしくアウルに続いて部屋を出て行った。まあ、ひょっとしたら現地の人々と仲良くやっていたのかもしれないが、しかし
「いくらなんでも、足が生えたオカマの魚と人間並みにでかいカタツムリってのはなあ」
妹分の妄想に、早急に性格か完成を修正する必要があると、密やかに思ったのは内緒だ。
ぽつんと取り残されたステラは、きゅっと小さな手でシンの服の袖を握った。残った最後の味方、といった所か。
うるんだ瞳で見つめられ、シンはいろんな意味でドギマギした。雨の降る日に、捨てられた子犬と目を合わせてしまった気分に近い。まあ、憎からず思っている女の子に熱っぽい視線で見つめられればそんなものだろう。
シンは信じてくれるよね? と無言で訴えてくるステラのスミレ色の瞳から目を離せず、シンの体温は急上昇していた。
「ええっと、そ、そうだね。ステラがそんだけ気にしているんなら、きっといい奴らだったんだね!」
「うん、皆優しかった。でも……」
「うん?」
「喧嘩するより友達になる方が簡単ってパプワくんは言ってたの。でも、ステラはそうだねって言えなかった。本当に友達になる方が簡単だったらいいのに」
「……そうだね。友達になる方が簡単、か」
その言葉に、ひどく、胸が痛むのをシンは悲しく感じていた。
いかなる地図・記録にも載っていないパプワ島についてのステラの発言は、幸か不幸かそれ以上追及される事無く、無事タマハガネはオロゴノ島へと戻る事が出来た。
グランゾンの放ったグラビトロンカノンの一撃でほぼすべての機体にダメージが積もり、早急にメンテナンスを必要とする事態に陥り、施設内の格納庫は慌ただしい。
特に機体のほぼ全箇所ダメージを負ったアーマリオンの修復には時間がかかるだろう。タマハガネの隣では、イザーク達の乗船していたボズゴロフ級も係留されていてフレームの段階から歪みが生じてしまったディンの廃棄作業や
カオシュンから脱出した兵士達を病院に搬送する作業なども行われている。
一応、タマハガネでメディカルチェックを済ませたステラも、大事をとりクエルボ立ち会いの下で病院へ検査入院する事になっていた。
病院へ行くのをいやがるステラを、スティングや駆け付けたクエルボが宥めていると、ボズゴロフ級から降りたルナマリア達が近づいていた。
「ステラ、もう、あんたって子は! どれだけ心配させるのよ!」
「ん、ごめん」
ルナマリアは駆け寄ってきた勢いのままに、ステラをぎゅっと抱きしめた。ルナマリアの胸に顔をうずめながら、ステラは少しだけ息苦しそうにしながら、心配してくれるルナマリアの心がうれしいのだろう、素直に謝った。
いつもと変わらず浮かべる表情が少ないレイと、イザークの姿もあった。
「ステラが無事なようでよかったな。シン」
「ああ。レイ達は大丈夫だったか?」
「ディンは使い物にならなくなったがな。作戦当初の予想より犠牲は少ない。お前達のお陰だ」
「いいよ。ビアン総帥が来てくれたお陰だったし。レイ達は今度こそ宇宙に上がるんだろう? ひょっとしたらおれ達も行くかも知れないから、また会えるかな?」
短い付き合いだが、いつも必要最低限度の事しか言わないレイの答えは短いだろうと思いながら聞いたシンは、良くも悪くも裏切られる事になった。
「ああ、そうだな。会えるさ。おれも、またお前達に会いたいからな」
「……そうか。そうだな」
ほんのわずか、唇の端を吊り上げ、かすか笑みさえ浮かべるレイの横顔を、ついついシンは見つめてしまった。信じられない、とまではいかないが、確かに予想外ではあったからだ。
ただ、そのレイの笑みにシンは、胸に湧き上がる暖かいものを感じていた。
今回のカオシュン基地奪還に際し、地上の勢力図は今一度塗り替えられ、アジア・ヨーロッパ・南アフリカ・アメリカ大陸を地球連合が抑え、ソロモン諸島周辺をDC、オーストラリア大陸、ジブラルタル基地をザフト。
実質DCの傘下にあるアフリカ共同体の事もあるが、事実上、地球での戦闘の趨勢は連合の優勢に傾いた事になる。
しかし、先だってDCとの戦いで投入した海洋戦力の喪失、“切り裂きエド”ことエドワード・ハレルソン、“白鯨”ジェーン・ヒューストン、“地獄の戦士”ローレンス・シュミットらが水面下で進める旧南アメリカ合衆国独立運動。
ジブラルタルから脱出したザフト兵や反連合勢力、DCの増援部隊をまとめあげたバン・バ・チュン率いる北アフリカ共同体と、連合にとっても油断のできる情勢にはいまだ至ってはいない。
日本の伊豆基地に戻ったレフィーナ・エンフィールド中佐とイアン・リー少佐のアークエンジェル級二隻も、補給作業の後カオシュンのマスドライバーから宇宙へと上がるよう指示を受け、その為の作業に勤しんでいた。
オルガら生体CPU達の調整や、カイやスウェンらエースパイロットの無茶な機動で消耗の激しい機体の整備などは、手間も部品も多く必要になる。これからの激戦を戦い抜く為にも、今はわずかな休息が、彼らには与えられていた。
終わりへと向かう戦いの舞台は――宇宙へ。
現在、DCの宇宙における拠点は実質、造りかけの軌道エレベーター・アメノミハシラのみになる。
とはいえ、モルゲンレーテ本社にも匹敵するファクトリーを備え、配備された戦力もヤラファス島やオノゴロ島のものと比べても遜色ない。
オーブ宇宙軍屈指の名将として知られ、ビアンに呼応して宇宙軍を掌握したマイヤー・V・ブランシュタインを総司令に、DC副総帥ロンド・ギナ・サハクがアメノミハシラのン主となっている。
新西暦世界において建造されたアルバトロス級、ペレグリン級を改装した戦艦に、アガメムノン級やナスカ級などザフト、連合で使用されているものが無節操に係留されている光景はDCに、独自に新型の戦艦を建造する能力がない事を表しているともとれる。
ユーリア・ハインケルを隊長に置くトロイエ隊を筆頭に、新西暦純正のAMガーリオン、コスモリオンの他、宙間仕様のコスモエムリオン、ガームリオンを主戦力として配備し、今に至るまで連合の侵攻を許さぬ不敗の城でもあった。
マスドライバー・カグヤによって宇宙へと飛びあがったタマハガネが、今そのアメノミハシラへと向かい入れられた。他にも補給物資を積み込んだ輸送船や、ザフトの艦も数隻ある。
カオシュンのザフト軍救出作戦からさして間を置かず、宇宙へと上がったシン達である。タマハガネの船側の窓から、初めて見るアメノミハシラの光景に、シンは感心したように見入っていた。となりではステラも同じ表情を浮かべている。
「これがアメノミハシラか。ギナさん、元気かな?」
「あの人の事だからな。高笑いしながら、攻撃を仕掛けてくる連合の連中を蹴散らしてたんじゃないのか?」
スティングの言葉通りの様な気がして、シンは小さく笑った。ステラ達とは違い、備え付けの小型モニターでアメノミハシラを見ていたアウルが、お、と声を上げた。
モニターには、直線で構成されたような随分とごつごつとした、四肢が短く太い人型らしい物体があった。
アメノミハシラで開発されている新型機動兵器ジガンシリーズの一号機ジガンスクードである。70.3メートル、481.9トンの巨体の胸部に逆三角形のピラミッドの形状をしたギガ・ワイドブラスターを備え、
両腕には先端が尖った巨大なシーズシールドをそれぞれ備えている。
その巨躯と分厚い装甲、両腕のシーズシールド、搭載された高出力のEフィールドによる絶対的な防御力を持ち、開発者達には“地球圏最硬の盾”ないしは“地球圏最強の盾”とも呼ばれている。
既に完成段階に入り、今は細かな調整を行っている段階なのだろう。アルベロが以前に、アウルに手配しておくと言ったのを覚えていたようで、自分の新しい機体なのだと目を輝かせているのだ。
「ようやくおれにも春が来たか!」
パックのコーヒーを啜っていたスティングが、アウルの台詞に軽く咳きこんだ。
「いや、春って。使い方間違っているぞ」
「いいんだよ! シンとステラは新型手に入れてるし、アルベロ隊長やスティングはガームリオン・カスタムだし、おれだけエムリオンのままじゃやってらんないからな」
「エムリオンだって良い機体だぞ? 核動力になってるし、性能で言えばザフト・連合のほぼすべてのMSに勝っているんだからな」
「でもさ、この前のグランゾンみたいなのが出てきたら勝てないぜ。少しでも勝ち目を増やすにはさ、おれらだけじゃなくて機体もどんどん強いのにしねえと」
「グランゾン、か。ビアン総帥のヴァルシオンと互角かそれ以上って話だったな。あそこでビアン総帥が来なかったら、今頃……」
「シンが少しだけ反撃したけどさ、おれらは結局何もできなったろ? もう、あんなのは勘弁だ」
「確かに、な」
アルベロやテンザン、ジャン・キャリーらといった面々こそ反撃らしい反撃はしていたが、アウルやスティング達はなすすべも無かったのが現実だ。あの時の無力感や悔しさは、スティングの胸にも苦く残っている。
そして、少年達の思いを乗せて、タマハガネはアメノミハシラと入港した。
ユーリアとロレンツォはアメノミハシラに入港したタマハガネに搬出されるジガンスクードを眺めていた。
ここ数日は連合側の攻撃も無く、不気味なまでに静寂であったが、地上での戦闘も、連合のマスドライバーの数が確保された事である意味一段落が付き、主戦場が宇宙に移るのは自明の理だ。
コロニー出身のユーリアは、ジガンスクードの業を知るが故に、それの開発をあまり歓迎はしていないようで、ややきつめの美貌は不機嫌さをわずかに滲ませている。
「やはり、ジガンスクードは許せないか?」
「……こちらでは関係の無い業ではあるでしょうが、やはり」
「うむ。だがビアン総帥もマイヤー総司令もそれを知りながら、あの機体の開発を行った。その真意を、我々も汲み取らねばなるまい。ホープ事件を引き起こしたあの機体を、あえて開発された、な」
「敵を貫く矛ではなく守るべきものを守る盾として生まれ変わったジガン、その意味を?」
「そういう事だ。さて、そろそろエペソがマイヤー総司令の所に着く頃だろう。我々も行こうか」
「はっ!」
新西暦世界からコズミック・イラの世界に迷い込んだものにしかわからぬ言葉を交わして、二人は肩を並べて足を踏み出した。
「ジャン・キャリー? 何しているんですか?」
アメノミハシラのファクトリーを見学していたシンは、技術者となにやら話し込んでいるジャンの姿に気付き、軽く床を蹴って近づいた。ジャンはDCの軍服ではなく私服を着こんでいた。
「もともと私は工学博士だからね。DCの技術を参考に私なりに色々と図面を引いていたモノがあったのさ。それをいくつかここで造る事になってね。その打ち合わせだよ。君こそ、ステラ達とは別行動かね?」
「ええ。みんなここが珍しいからあちこち見てるんです。おれも宇宙に上がるの初めてだし、たまには一人でぷらぷらするのもいいかなって」
「そうか。そういえば、宇宙に上がる前ハレルソンと何か話していたが、南米の話でも聞いていたのかい」
「あの時は、エドに接近戦での戦い方を教えてもらってたんです。おれの飛鳥は剣戟戦闘に特化しているし、エドは切り裂きエドなんて異名がある位だから、参考になると思って」
「そう言えばそうだな。コックピットハッチの隙間を狙ってシュベルトゲベールを突き立てる、という芸当をやってのけるからな、彼は。しかし、個人的な見解を述べさせてもらえば、君は接近戦よりの万能型のパイロットだと思うがね」
「オールラウンダー? おれが?」
「ああ。ここぞ、という時では接近戦にシフトする傾向があるが、中・遠距離戦での成績も上々だ。まあ、シミュレーターや普段の戦闘を見れば君自身は自分を接近戦のエキスパートにしたいのかもしれないけれどね」
「う〜ん、なんていうか、突っ込んでがちゃがちゃの接近戦に持ち込めば、操縦技術の差は誤魔化せるかなあ、なんて思ってるからかな?」
腕を組み、真剣に考え込んだ末のシンの言葉を、ジャンは鷹揚に頷いて聞いていた。シンの倍以上の年月を生きた大人の態度だ。ちなみにビアンの三歳年下である。
「確かに機体が直接触れ合うほどの距離ならそうかもしれないが、実際は接近戦の方が如実に技術の差が表れるのがMS戦だ。君はもう十分にエース級だから、並大抵の相手には負ける事はないと思う」
「そ、そうですか?」
「ああ。この間の戦いでは相手が全てエース級だったこともあって実感がわきにくいかもしれないが、ザフトと連合にはまだMS戦の経験がない者も多いはずだ。君の敵になり得るパイロットはむしろ少ない位だ」
この戦争でまず間違いなくトップクラスの戦闘経験を持つエースの言葉に、シンは多少の照れと喜びを感じながら、鼻の頭を掻いていた。
地球連合の主な宇宙での拠点である月のプトレマイオス・クレーターには、アークエンジェル級一番艦アークエンジェルの姉妹艦である二番艦ドミニオンが出港の時を待っていた。
既に地球で多大な戦果をあげている三番艦ゲヴェル、四番艦エスフェル、五番艦シンマニフェルとは違い、大規模な戦闘が沈黙して久しい宇宙ではいまだに戦闘を経験していない、唯一のアークエンジェル級でもある。
そのドミニオンの艦長を務める事になったのが、元アークエンジェルの副長ナタル・バジルール少佐であった。紺に近い紫色の髪をショートカットにした、落ち着いたというよりは事務的な表情を浮かべる事の多い女性だ。
軍人として勤めて私情や干渉を挟まぬように心がけているからだろう。
アラスカ攻防戦でアークエンジェルから降り、連合上層部からまだ使えると判断され生き残った女性でもある。
軍事の名門であるバジルール家の子息であり、その能力とアークエンジェル級で戦い抜いた経験を買われ、階級特進の上、虎の子のアークエンジェル級艦長への異例の抜擢を受けた。
民間人、それも学生さえいたアークエンジェルに比べ正規の訓練を受けたクルー達のドミニオンならば、ナタル自身の能力を遺憾無く発揮し、これほどの能力を持つ戦艦の采配を握る事への喜びもある。
それだけなら良かったのだが、ナタルの胸に去来しているのは、かつてのアークエンジェルを懐かしむ思いであった。
アラスカの戦いでサイクロプスの爆発に巻き込まれて撃沈したと思われていたアークエンジェルが、どういうわけでか旧オーブ軌道上で、オーブ艦隊と共にDCに協力して連合の艦隊と闘う姿を確認した時には、軍人としてはあるまじきことだが
――仲間が生きていた事に安堵をおぼえた。
どういう経緯でDCが支配するオーブ本国から脱出したオーブ艦隊と行動を共にしているのか、など疑問はいくらでも湧いてきたが、それらを越えて仲間が生きていた事実に喜ぶ気持ちの方が大きかった。
だが時がたち、ナタルの理性はその気持ちを押し殺すように働きかけていた。アークエンジェルがオーブ艦隊と行動を共にし、連合に弓引いた事実を考えれば、いつか自分があの艦と砲火を交えるかもしれないと、遅まきながら気付いたからだ。
月艦隊司令部への出頭命令が下り、ナタルはシミュレーションを終えてから、時刻きっかりに訪れた。
司令室に入り、何気なく部屋を見渡すと上司である将校の他、ナタルよりも若い、中佐の階級章を着けた女性士官とデザインはシンプルだが使われている素材は最高級の者であると一目で分かるスーツを着た金髪の男が椅子に座っていた。
どちらにも面識がなく、ナタルは内心で首を捻る思いだったが、とりあえずは将校に敬礼をする事にした。
「忙しい所をすまんな。バジルール少佐。まあ、楽にしたまえ」
「いえ」
補給があると聞いていたが、おそらくあの女性が合流すると聞かされたアークエンジェル級三番艦ゲヴェルの艦長レフィーナ・エンフィールド中佐なのだろう。
ナイトメーヘン士官学校を首席で卒業し、ユーラシア連邦史上最年少で中佐になった才媛中の才媛だ。その評判に劣らぬだけの戦果をあげている事も、すでにナタルは耳にしていた。
アークエンジェルでの戦績を考慮しても、自分よりも6つも年下の、穏やかそうなこの女性の方が艦長としては有能だろうと、ナタルは内心で評価した。
同じ地球連合でも、大西洋連邦に属するナタルと、ユーラシア連邦のレフィーナとでは厳密な意味では完全に味方とは言えないが、少なくともレフィーナ自体にはそう言ったやましさを感じる事は出来なかった。
となると、レフィーナはともかく、もう一人の金髪の男は誰だろう?
「紹介しよう。アークエンジェル級三番艦ゲヴェルの艦長レフィーナ・エンフィールド中佐と、こちらは国防産業連合理事のムルタ・アズラエル氏だ。お名前くらいは聞いた事があるだろう?」
「あ、はあ……」
ブルーコスモスの盟主、その当人が、なぜ?
どうやらレフィーナも同じ気持ちらしく、当惑した様子で椅子に悠然と腰掛けているアズラエルを見つめていた。ナタルが来るまでの間に話くらいはしただろうが、素性までは聞かされていなかったということか。
アズラエルはおもむろに立ち上がり、無遠慮にナタルとレフィーナへ視線を向けた。
「よろしく、艦長さん達」
「はあ」
「……」
軍需産業を営み、地球連合上層部への発言力が強いこの男の事だから、新型艦に興味を抱き、その見学ツアーの案内や句に自分達が選ばれたのだろうかと、ナタルとレフィーナが同じ事を思い浮かべた時、将校は二人の予想を外れた答えを提示してくれた。
「アズラエル氏は、ドミニオンに配備される最新鋭MSのオブザーバーとしてともに乗艦される。よろしく頼むぞ」
「え……?」
面食らうナタルの様子がおかしいのか、アズラエルは薄く笑みを浮かべてナタルの顔をしげしげと覗きこんだ。
「しかし、僕らの乗る戦艦の艦長さんが、こんなに若くて美人な人たちってのは、イキな計らいってやつですか?」
人並には好色らしい、いやな声音でいうアズラエルに将校は胸を張って答えた。思想はともかくセクハラをするようなタイプではないのだろう。
「御心配なく。バジルール少佐も、エンフィールド中佐も優秀ですよ。すでにエンフィールド中佐はゲヴェルで十分な戦果をあげ、バジルール少佐もあのアークエンジェルで副長の任についていた」
「おや! では勝手知ったる、というやつですか。なるほど、適材適所というわけですね?」
「そうなりますかな」
どこかざらつくような不快感に苛まれながら、ナタルは、この不遜なオブザーバーのお守りも任務の内と割り切ろうとした。レフィーナの方はまだ納得がいっていない様子で、むしろそんな初々しい所が、かつて補佐していた艦長を想わせて、好ましくまたやるせなかった。
だが、そんなナタルの感傷は、アズラエルの一言に凍てつかされ、そして打ちのめされた。
「期待してますよぉ? なにしろ、ぼくらはこれからそのアークエンジェルを討ちに行くんですから」
ナタルは、アークエンジェルの事を割りきれていない自分を、いやがおうにも突き付けられた。息苦しい。かつての仲間を討つ――その任務は、ナタルにとってあまりにも過酷な初陣になりそうだった。
シン達やレフィーナらも宇宙に上がったように、イザーク、ルナマリア、レイ達もまた宇宙へと上がり、アメノミハシラに駐留していたザフト艦隊と合流し、本国に戻った。イザークらには短くはあるが休暇も与えられた。
ちなみに、ラクスからフリーダムを託されたキラがアラスカに到着するまでに三日を要している。その間の食事や生理現象をどうしたかは、キラしか知らない。
閑話休題。
本国に戻ったイザークは、先に戻っていたクルーゼ隊に再配属されるものかと思っていたが、下された司令は似て非なるものだった。
イザークは、そのままルナマリアやレイらとともに、別の隊への転属が命じられたのである。ただし、しばらくはクルーゼ隊と共に行動を同じくするらしい、という曖昧なものだった。
ルナマリアとレイをひきつれて、軍事工廠として建造されたアーモリー・ワンの生産施設を訪れたイザーク達は、そこで新たに配属される同僚と、隊長と会う手筈になっていた。
なんでも、イザーク達には次期主力機であるゲイツとは別に開発された新型が配備されるらしく、その手続きも兼ねての本国招集のようだった。
ルナマリアは、新型に乗れると素直に喜び、レイはそれが命令であるならばと、年齢の割にはひどく落ち着いた何時もの様子であった。連合から奪ったものとはいえ、既に半年以上乗用していたデュエルに、複雑な愛着を抱いていたイザークは、多少難しい顔色を浮かべていた。
当時の最新鋭の技術をありったけつぎ込んだスペシャル仕様のデュエルとはいえ半年の月日が流れれば、性能的にロートル化した部分が無いわけではない。基本的な性能では、量産機であるゲイツと大差もあるまい。
慣れ親しんだ機体であり、今はいなくなってしまった戦友達と共に戦場を駆け抜けた機体だけに、イザーク自身の愛着もある。だが、圧倒的だった連合の物量が質を伴った事で、イザークはデュエルの限界を感じてもいた。
もっとより多くの敵を相手に出来る高性能機の存在を、戦場での経験から培ったMSパイロットしての理性が欲しているのだ。
案内を務めていた兵士が、やがて二人の人物を連れてきた。イザークより一つか二つほど年下らしい少女と、二十代前半か、前後の女性だ。
少女は黒髪をきれいに切りそろえ、首の後ろで一纏めにしている。もともと端正な顔立ちになるよう調整されているコーディネイターの水準より上の、可愛いというよりは理知的な顔をしている。
女性の方は、少女と同じように理知的というのは同じだが、よりクールな、涼やかさにぞくりとする冷たさを併せ持った、切れ長の瞳の美女だ。光沢の美しい青い髪をショーカットにしている。
二人とも赤服で、ルナマリアとは違い、ミニスカートではなく、少女がズボン、女性がタイトスカートだった。ま、そんな事を気にする甲斐性と根性は、イザークとレイの二人には良くも悪くも無縁に近い。
イザーク達が敬礼すると、二人もそれに返礼する。
「活躍は耳にしているわ。イザーク・ジュール、ルナマリア・ホーク、レイ・ザ・バレル。私はヴィレッタ・バディム、こっちはシホ・ハーネンフース。これから貴方達とチームを組む事になるから、よくしてあげて」
「シホ・ハーネンフースです。噂はかねがね耳にしていました」
差し出されたシホの手を握り返し、イザークは目の前の新しい上司を正面から見つめた。今までザフト屈指の名将クルーゼや、短い期間ではあったがアンドリュー・バルトフェルドなど人格に一癖二癖はあるものの、
有能な者達の下に居た分イザークの評価基準は自然、厳しいものになる。
ヴィレッタは、イザークの視線を正面から受けて、悪戯っぽく、小さくではあるが微笑んだ。思わぬ反応に、イザークは少しばかり困惑して表情に出してしまった。心情を隠しきれるほど出来た人間ではない。
「さっそくだけれど、貴方達を招聘したわけをこれから説明するわ。着いてきて」
踵を返すヴィレッタの後を、イザーク達は追いかけ、エレベーターを乗り継ぎ、厳重に警戒された先にある地下の格納庫に辿り着いた。イザークには預かりしらぬ事だが、ともすればフリーダムやジャスティス以上に厳重な警備が敷かれている場所であった。
厚さ数メートル近い特殊鋼の扉に備え付けられたパネルにパスコードを打ち、ゆっくりと左右、上下に開かれてゆく五重の扉の奥へとヴィレッタは足を進める。当然、後に続くイザーク達も同じだ。
広い格納庫らしい空間は暗闇に閉ざされていたが、それもヴィレッタが明りを着けるほんのわずかな間の事だった。
闇のカーテンに塞がれたみたいに真っ暗な空間を、天井や床、壁に埋め込まれた照明の放つ自然光よりもはるかに強烈で無慈悲な白色の光が照らしだし、イザーク達の眼にそれらを映しだした。
しえん
満ちていた闇色を割いて姿を露わにしたのは、五機の人型兵器――ザフトの生み出したMSであった。ザフトの仕様とは異なる、どちらかといえば連合のGに近い機体であった。見上げるイザークらを一瞥してから、ヴィレッタもその機体達を見上げた。
トリコロールカラーの機体を示して、ヴィレッタがそれらの説明を始める。
「これはRealRobotType−1。通称R−1、近接・格闘用の機体で、高い運動性と機動力を併せ持っているわ。武装はMMI−GAU2ピクウス76ミリ近接防御機関砲2門、ビームカービン、Gリボルバー、ビームサーベル。
オプションでブーステッドライフルと300mmビームキャノンを装備。特徴は戦闘機形態Rウィングへの可変機構を備えている事。パイロットはイザーク、貴方よ」
「こいつがおれの新しい機体か」
「ヴィレッタ隊長、じゃあ、のこりの機体のうちどれが私とレイの機体になるんですか!」
興奮した様子のルナマリアを、好ましげに見つめてヴィレッタは説明を続ける。R−1の傍らに立つ四角形が集まって人型を構成したような、青色を主とした機体だ。約19メートルのR−1よりも5メートル近く大きい。
「こっちがR−2。ビーム兵器を主体とした砲撃戦闘に特化した重モビルスーツになるわ。火力が高く、装甲も厚いけれど若干運動性は落ちる。その代り対ビームコーティングや耐衝撃、防弾、対刃などの特殊処理はいくつも施してある。
制圧射撃や、味方への砲撃支援が主な役割よ。ルナマリア、貴女の機体ね」
「はい! ちょっとごついけど、その分頼もしいって事にしておきましょ」
「次に、その赤い機体がR−3。指揮管制・遠距離戦闘仕様で、パイロットはレイ。兵装が特殊で、高度な空間認識能力の持ち主でないと真価を発揮できない機体に仕上がっているわ。
ザフトでもこの機体を扱えるのは、コートニー・ヒエロニムスやラウ・ル・クルーゼを始め、貴方を含めて極めて少数よ。量子通信による遠隔操作兵器ドラグーンと敵捕捉能力、情報収集能力の高さが特徴ね」
「了解です。では残りの機体にシホが? それとも隊長が?」
R−3の奥に立つ、灰色と白を基調とした機体と漆黒の、よりGに酷似した機体の事だ。
「このR−GUNにはシホが搭乗するわ。この機体は単体としてのスペックならばRシリーズでも最高だけれど、その真価を発揮するのはもっと違った運用の時ね」
「MSとしての役割以外に何かあると?」
淡々としたレイの物言いに、ヴィレッタも等しく無感情的な言葉で答えた。似た者同士というほどではないか。
「ええ。それにR−GUNの開発にはシホも関わっているから機体特性をよく把握しているのも理由の一つよ。それと、このRシリーズはまた別の意味でも今までのザフトのMSとは一線を画すものになっている。
R−2とR−GUNにはTE(ターミナス・エナジー)エンジンと呼ばれる新型の動力機関が組み込まれているわ。詳しい説明は後でシホからするから、ルナマリア、よく聞きなさい」
「は、はい」
このとき、なぜかシホが憐れむような目でルナマリアを見ていたのだが、気付く者は誰もいなかった。それよりも次に出てきた言葉に、イザーク達が驚かされた事も大きい。
「それと、R−1とR−3は核動力で動いている。この意味が分かる?」
「! まさか、ニュートロンジャマー・キャンセラー搭載機?」
「その通りよ。奪われたフリーダム、行方が知れなくなったジャスティス、そしてテスト段階のプロヴィデンスと同じNJC搭載機。間違っても連合に鹵獲されるような真似は出来ない機体という事を、念頭に入れておいて」
「しかし、プラントは核を放棄したはず! ユニウスセブンの悲劇を、忘れられるはずがない!」
声を荒げる自分を、まっすぐに見据えるヴィレッタの青い瞳に、イザークは湧き上がった激情が萎んで行くのを感じた。いや、感情の立てる荒波はそのままだが、それを表に出す気にはなれなくなったというべきか。
「戦争に勝つため、言葉にするならそれだけで済むわ。戦争に負ければどうなるかを考えれば、放棄したはずの核の力を手にせずにはいれなかったという事でしょう」
「……」
「事情は分りました。一兵士である自分達が口出しできる問題ではないでしょう。ヴィレッタ隊長、話を続けてください」
イザークや多少は動揺したルナマリアと違い、どこまでも変わらぬ表情と声音のレイに促されてヴィレッタも説明を続けた。
「貴方達に任せるRシリーズはこの四機だけ。私は奥の機体に乗るわ」
奥にあるRシリーズとは別の黒い機体だ。ツインアイにブレード状の通信アンテナと、Gタイプによく似た外見をしている。サイズはR−1とおおよそ同じで二〇メートルに届くか届かないか程度だろう。
右手に、分厚いシールドの様なディバイデット・ライフルとビームサーベル二本と極めてシンプルな武装で纏められている。
「ゲイツと同時期に開発されたエース用の機体でメディウス・ロクスというわ。まだ十数機ほどしか配備されていないモノよ。フリーダムやジャスティスも量産体制に入ったから、あまり数は造られないでしょうけれど、これはこれで優れたポテンシャルを持っている。
……貴方達には休暇を終えた後、ただちにRシリーズでのテストを行ってもらうわ。これから私達は、WRXチームと呼称される事になるかわそれも併せて覚えておいて」
「WRX(ダブル・アール・エックス)? 何の略称なんですか」
通常ザフトでならバディム隊と呼ばれる所だが、変則的な呼称に、ルナマリアが素直に疑問の声を上げた。
「“Reai Robot X−type”。……心配しなくてもそのうち分かるわ」
というわけでここまで。しえんありがとうございました。イングラムでもよかったけれど、なんとなくヴィレッタ隊長に。
好きな女性キャラトップ3の一人です。そろそろザフトもテコ入れしなければぼっこぼこにされてしまいますので、DCではなくザフトで登場です。
では、ご指摘、忠告、助言、批判、批評お待ちしております。
GJと言わせてもらおう。
ただ、格闘戦主体のR−1はイザーク向きだけど、念動力がないと合体は無理なのでは?
いや、そもそもSRXに合体した場合火器管制からトロニウムエンジンの制御までを行う
R-2にルナっていうのが(ry
……あとザフトにもゲシュペンストMk-IIが必要だな。シホに究極ゲシュペンストキックを(ry
R-2は出力がピーキーな上鈍重な機体だからなあ。
>>438 あれって、機体の強度が低いがゆえに念動力を補助として使っているわけでしょ。
少なくとも宇宙なら、バスターキャノン用のエンジン直結はできるんじゃないか。
エンジン面も、二機が核エンジンで、CE世界では破格の出力誇るわけだし。
まあ、アトミックバスターキャノンの反動にWRXの合体機構が耐えられるかどうかはわからないが。
それよりも
>>439のほうが問題な気が。
火器管制、1か3に回したほうがいいような…エンジンも、トロニウムほど不安定じゃあないだろうし…
ルナがR−2か……メンバー的にルナが乗るしかないんだが、
とてもじゃないがライのように出力調整やらその他もろもろの合体時の制御ができてる所が想像できないよ。
じゃあもうシホとルナを交換しよう。シホには研究者としてのキャリアがあるから
ライ程とまでは行かないまでもルナよりもマシであるといえる。
お前等こう考えるんだ
量産型SRと。 Xを何故つけないかって?
量産型に試作ナンバーつける罵迦が何処に居る
そもそもSUPER ROBOT TYPE-XではなくREAL ROBOT TYPE-Xなんだから、制御を全部R-2にやらせる必要もあるまい。
……それどころか合体さえしない可能性もw
もし合体したらイザークのテンションが天元突破しそうだw
>>437 ビアンSEED氏GJ!
大好きなヴィレッタ隊長が出てきてテンション上がりまくりですw
隊長はCEバージョンのヴィレ姐様?
もしくはSHOの世界から転移してきたヴィレ姐
一人乗りのTEエンジン搭載機って操縦しながらの出力調整ってかなりきついと思うんだが・・・
つかルナマリアとシホはアノ格好をするのか!?
そういやR−1のT−LINKナックルとシャイニングフィンガーって色同じだな。
イザークが叫んでくれるんかなぁ?
>>450 ミナ様でさえ、ミナシオーネ操縦のためにはあんなスーツ着込んでジャンボーグ方式で身体を
緊縛されているんだ。
シホとルナがしないという訳にも行くまいよ!
すごく細かいことだが、TEアブソーバーじゃなかったっけ
いや、うん、アクアさん大好きなんだ
!?
ぱっつん水着スーツ着たルナマリア。
OK覚悟完了
一人だけメディウスキープしてるヴィレッタ姉さんはちゃっかりしておる。
だがTEとメディウスを製造できる人間……ミタールなら良いがミッテ先生だとガチ危険な気ががが。
いや、ミッテ先生の前身とも噂されるM・T嬢なのでh(ry
お前らレイがR−3に乗るんだぞ?
つまりあのハイレグスーツを(ギルの趣味で)着ることに・・・
この世界のレイは 女 だ っ た でおk
普通にライが着てたアレじゃね?というのは野暮か。
>R−2とR−GUNにはTE(ターミナス・エナジー)エンジンと呼ばれる
>このとき、なぜかシホが憐れむような目でルナマリアを見ていたのだが、
…女性パイロット前提?
地味にメディウスが量産中なのが恐いぞ。
まぁ、何よりヴィレッタ姐さんが居るのは素直に嬉しい。
ビアンSEED氏GJ!
>>460 MXでアクア姐さんの勇(誘)姿 を見るべし。
MXは途中でめんどくさくなって投げ出したままだなぁ。
ってかコンプしたスパロボがほとんど無い。
>461
MXはかなりやりましたよ。冥王様の独壇場でしたが…
あれを思い出すと、わざとR-1とR-3をはずしたとしか…
いちおうヒューゴもあれの別バージョン着てたわけだし…
ジャケットとズボンが有るから男版はマシまだ着れる、アクアが着てた奴はどう見てもエロ水着、年頃の娘っ子には辛いと思うぞ。
ミッテ先生も着てたのかなやっぱり。
>>464 >ミッテ先生も着てたのかなやっぱり
前かがみになってしまった
そんなルナの姿を見たステラが対抗心を燃やしそうだ
>>466 ぼよんぼよんするカットイン作って、とかメタなこと言い出しそうだw
>>464 4コマネタでなんだが…半乳海パンな男性版もどうかと思うぞ…
MXじゃ描写されてなかったけど↑の格好をしたアルベロってのも否定できないんだな orz
ウホッ!
いいアルベロ・・・
メディウス・ロクスには最初TE積まれてなかったしな。
Ai1が羅図何有無と一緒に制御してたんじゃないかとも思う。
よくやったwwwwww
GJ!!!!!!
>>472 これは良いミッテ先生ですね。では貰って逝きますね?
>>474 アルベロも付けるぜ!
ヒューゴキャノンもだ!
したらばじゃだめなのかいね
といってみる
うはwwwww誤爆wwwww
第5話「ブーステッドチルドレン」
「じゃん!攻撃〜!そ〜れそれそれそれ〜はははは〜」
「もう、やめてよ、やめてってばあ!」
「ははは〜待ってよ〜」
シンはシャボン玉を出しながら、最愛の妹マユと同じくらいの年齢の女の子を追いかけていた。
自分の居場所がどこかわからないが、とても幸せな気分がしている。
そしてしばらく追い掛け回していた少女は、その前に立ち塞がった男を、その体のサイズからは考えられない豪力で殴り飛ばしてしまった。
「間違いない、鼻糞女だ」
声を聞いてその男の方向を見てシンはギョッとする。
殴り飛ばされて意識を失ったのは、なんとザフトにいたころのかけがえのない戦友レイ・ザ・バレルだったからだ。
「レイ!?お前…何やってんだよ…」
そして気付くと窓の外ではどういうわけか、水中用ゴーグルではなく、イカの化け物のようなお面をしたエルザムがいる。
そしてエルザムと槍を振り回す気弱な顔をした見たことのない男が生身で戦闘を行なっていた。
「お前、僕に釣られてみる?」
「あんまりおいたが過ぎるとお仕置きだぞ!」
「…あんた達は一体何なんだぁぁぁ!」
知らない一面を遺憾なく発揮して暴れまわる3人に対して発せられた心の叫びが飛び出した瞬間、
ベッドの上でシンは目を覚ました。どうやら夢を見ていたらしい。
営巣入りを免れ、自室で眠っていたのだが、自分のいた世界を思い出させるような夢を見たのは始めてだった。
「…レイ、お前もこの世界に来ているのか?」
誰に言うわけでもない、どこからか染み出てきた言葉であった。ただ、無事でいることも期待しきれずにいたことも確かだ。
レイが相手にしたのは、普段こそコックピットは狙わないがいざとなれば躊躇なくコックピットを狙う、
自分の家族の仇、シン・アスカの奥底に楔を打ち込んだフリーダム。自分たちのいた世界の一部では英雄とまで言われた相手である。
そして、その相手の実力をよく知っているからこそ、戦友の身が案じられていたのだった。
喉の渇きを覚えたシンは冷蔵庫にドリンクを取りに行くためベッドを出ると、
同室のブリットのベッドから声が聞こえてきた。どうやら寝言を言っているらしい。
「制作費カッツカツだしな。せめて…の半分でいいからくれよ…ライズ」
何の半分か、何に対して制作費を求めていたのはよく聞き取れなかったが、ブリットは何かを作っているらしく、
普段のブリットとは異なるところにシンは少し吹き出しつつも、
聞き取れなかった半分の基準となる対象に、なんとなく不愉快な感覚を覚えていた。
場所は変わって、ここはDCの潜水艦。
シンの夢に出てきた気弱そうな顔をした男、潜水艦のブリッジにクエルボ・セロが入ってきて、
次なる作戦の準備に関するミーティングをしていたアーチボルドやユウキの下へとやってきた。
「アーチボルド少佐、補充パイロットを連れてきました」
「ああ、例の…」
アーチボルドが思い出したかのように呟くと、サラサラとした銀色の髪を切りそろえ、胸部が大きく開いた服の少女と、
紫色の髪にやや笑みを浮かべたような明るい表情の少年が入ってきた。
「二人とも、自己紹介をするんだ」
「初めまして。自分は、ゼオラ・シュバイツァー曹長であります。以後ヨロシクお願い致します」
「自分はアラド・バランガ……以下同文であります」
(彼らが補充兵だと?まだ子供じゃないか。それにあの胸…非常識な)
2人のやり取りと、ゼオラの顔の幼さとは大きく反する胸の大きさに、ユウキの表情が曇る。
ユウキ自身、DCのパイロットの中では若い方であるし、少年兵自体が珍しいわけではない。
だがパイロットとして使えるようになるにはどうしても一定の訓練と能力が必要となる。
それゆえ彼らのような子供、とも思えるような兵士が着任することにユウキは違和感を覚えた。
そして、さらに続く2人の子供そのものともいえるやり取りは、ユウの違和感をより大きな物としていく。
(何なんだ、彼らは…)
「セロ博士、僕はミドル・スクールの教師になった覚えはないんですがね」
「も、申し訳ありません」
「やれやれ、期待のルーキーが子供だとはね」
「お言葉ですが少佐。自分とアラド曹長は『スクール』の出身であります」
(スクール?確か、連邦軍のPTパイロット特殊養成機関だったな)
「実戦経験こそまだありませんが、訓練は十分に受けております」
「…セロ博士、これは厄介払いと考えていいのですか?」
「い、いえそんなことは」
「ま、新人とはいえ人手が増えるのは助かりますが、僕たちのターゲットの中にはあのハガネもいますから大変ですよ?」
「望むところです。この手でDC総帥、ビアン・ゾルダーク博士の仇が討ちたいと思っています」
「結構。では、ユウキ君。次の作戦には彼らも連れて行ってください。実戦での性能を試すためにもね」
「了解」
(どうやら貧乏クジを引かされたらしいな)
「では行くぞ、二人とも」
ユウキはこの、貴族の末裔を自称する上司は面倒ごとを自分に押し付けたのだということを認識し、
上司にも部下にも恵まれない不遇な中間管理職であることをわずかばかり嘆いた。
だがユウキは部下を失うことを1人たりともよしとしない。
そのため、この後の作戦の成功率を上げるための詰めをすべく、アラド、ゼオラを連れて格納庫へと向かっていた。
部下はサンディエゴで救出して以来、いつの間にか押しかけパートナーとなったカーラ、
スクール出身だというが、個性がセットで強烈すぎるアラド、ゼオラ、
上司は何を考えているかよくわからない紳士ぶった得体の知れない男、
つくづく人間関係には恵まれないな、ユウキはそう感じざるを得なかった。
「ねえ、ユウ。ホントにこの場所でいいの?ここ、演習場とかじゃないよ?」
「偵察隊から例の試作機がこちらへ向かったと言う報告を受けた。カルチェラタン1より全機へ。ASRSを作動させ、待機しろ」
「…ところでさっきゼオラの胸、ガン見してなかった?」
「なんだそれは」
「やっぱユウは見た目どおり、ムッツリスケベだね」
「あれはあまりに非常識な大きさだと思っていただけだ」
「じゃあやっぱ見てたんじゃん。なんなら今度は私の胸見てみない?」
(しまった…またこいつのペースに乗せられた)
カーラは大成功!といわんばかりにニヤつきながら通信画面越しにユウキを見ている。
他方、いったんこのよく言えばムードメーカーな自称パートナーの
相手をしてしまったのがそもそもの失敗であったとユウキは後悔していた。
ユウキにとって幸いだったのは、今のやり取りが本当であれば規則違反のプライベート通信であったことだろう。
現在、ユウキの隊は連邦軍の新型機を強奪すべく、ハワイ湾で潜んでいるのだが、
新しく入った個性的な部下達も相棒同様、緊張感がなかった。
「了解。…アラド、勝手に動いちゃ駄目よ」
「いちいちうるせえな。待機だろ、わかってるって」
「ね、ね、あんた達…もしかして付き合ってんの?」
「え!?な、な、何でそんなことを!?」
「ほら、仲がよさそうだし」
「あの…リルカーラ少尉。自分たちはそんな関係じゃありません」
「あ、そうなんだ」
「ついでに言うなら自分はおしとやかなタイプが好みなんです」
「!がさつで悪かったわね!」
「んなこと一言も言ってねえっての!」
「やっぱり仲いいじゃん。ケンカするほど、って奴だね」
「そういう少尉はどうなんスか?もしかして、隊長と…」
(なぜそこで俺が出てくる。俺をそこに巻き込むなアラド)
ユウキがひそかに心の中で突っ込みを入れる。
(そういえば昔、部下や上司に恵まれないときのフリーダイヤルのCMがあったな)
以前、テレビでやっていた悩み相談のコマーシャルを思い出しつつ、
今のDCにもきちんとした人事部門があればな、と思えるのが最近のユウキだった。
「う〜ん、どっちかって言うと、年下の男の子が好みかな」
「えっ!?」
「あはは、冗談だよ、冗談」
「そ、そうですか…」
「さっきの、お前が驚くトコじゃねえだろ?」
「う、うるさいわねっ!」
「無駄話はそこまでだ。…現れたぞ」
ユウキの隊が隠れている近くの砂浜に、リオン4機を連れた濃い緑色のゲシュペンスト、量産型ヒュッケバインMk−Uに、
見たことがない機体が1機。背部にテスラ・ドライブを搭載したと思しき翼を持ち、青と白の装甲、
そしてあえて言うならばユウキが先日交戦したヴァイスリッターにやや似ていると言える。
この新型機が彼らの今回のターゲットであった。
「間違いない、あれがビルトファルケンだ。すぐに仕掛けるぞ」
「わかったよ。アラド、ゼオラ、準備はいい?」
「はい!」
「…アラド、しっかり私についてきなさいよ?」
「そんなカッコわりぃ真似ができるか。フォワードはおれがやるぜ」
「…お前達、戦場で集中力を欠くと死ぬぞ」
ターゲットが現れた今の状況を把握しているのか疑問に思わせる子供のような言い合いに
思わずユウは口を開いてしまっていた。
「す、すみません」
「ファルケン以外の相手は俺達がする。お前達は奪取任務に専念しろ。いいな?」
「はい!」
「カルチェラタン1より各機へ!ASRS解除!仕掛けろ!」
ユウキのかけ声とともにガーリオンカスタム、リオン、バレリオンが海中から姿を現す。
「カーラ、敵のリオンを!」
「任せて!もうロック済みだよ!」
カーラのガーリオンカスタムに、バレリオン、リオンの一斉射撃により虚を突かれた
連邦軍の4機のリオンはあっけなく撃破されるが、隊長機と思しきゲシュペンストMk−Uは
完全な奇襲だったにも関わらず、バーストレールガンをとっさのバックステップにより見事に回避して見せた。
「緑だけかわした!?」
「今は構うな!ヒュッケバインを抑えろ!」
ブーストドライブでユウキの隊のリオン4機が量産型ヒュッケバインMK−Uを取り囲み、
ゼオラ、アラドのリオンも作戦行動を開始した。
「あのヒュッケバイン、4機に囲まれてるのに!」
「かなりの腕前の奴らしいな」
「でもファルケンは何か調子が悪いみたいだよ?いけるんじゃない?」
「ああ。カルチェラタン7、ファルケンを奪取しろ」
ゼオラのリオンがブーストドライブで一気に距離を詰めてビルトファルケンに取り付く。
「やはりファルケンが狙いか!ラトゥーニ!!」
量産型ヒュッケバインMK−Uの強奪の報告を受けていた、教導隊カイ・キタムラ少佐が声を上げる。
一体どうやって今まで姿を隠していたのかはわからなかったが、今は新たな部下であり、
かつての部下からの大切な預かり物でもあるラトゥーニとビルトファルケンを守るべく
DC戦争の頃からの愛機ゲシュペンストをそちらへ向かわせる。
だがその前には、ゼオラ機の援護に向かっていたアラドのリオンが現れた。
「き、来たっ!」
「何だ、あの動きは!?素人か!?」
ややフラフラとした動きをしながらアラドのリオンはレールガンをゲシュペンストに向けて発射する。
しかし、運悪くアラドの相手はかつての教導隊であり、DCのみならず鬼教官として部下からも恐れられる、
ヒゲがとてもダンディな男、カイ・キタムラである。
ゲシュペンストは、ひょいひょいとリオンの攻撃を機体を左右に移動させて回避しつつ、
牽制のためにスプリットミサイルを発射した。
「こういうときの呪文はバランガバラン…おっとっと」
リオンはなんとかミサイルを回避するが、カイの目的はミサイルを当てることではない。
リオンの回避行動の隙に、マシンガンを構えたゲシュペンストが狙いを定めていた。
「教導隊を甘くみるなよ」
マシンガンから放たれた弾がリオンに襲い掛かる。
ミサイルに続いてのマシンガンにアラドは歯を食いしばりつつも必死に回避行動をとった。
だがそれも虚しくリオンの脚部をマシンガンの弾が撃ち抜き、アラド機のバランスが崩れる。
それを好機としてゲシュペンストはさらにリオンの右腕部と頭部を撃ち抜いた。
これだけの損傷を受ければ、通常であればいったんは後退するなりして態勢を整えなおすはずである。
しかしリオンはなおもゲシュペンストに向かってきた。
「俺のど根性、見せてやるぜ!」
「なんだと!特攻をかけるつもりだとでも言うのか!?」
戦闘能力を大きく削られながらも突撃してくるリオンに、カイも驚きの表情を浮かべる。
「だが貴様の思い通りにはさせんぞ!プラズマステークセット!」
ゲシュペンストは右腕の固定兵装プラズマステークを起動させて腕を引く。
そして突っ込んでくるリオンめがけて突撃して距離を詰める。
それに対して左腕部に得物のアサルトブレードを構えたリオンがその刃を振り下ろすが、刃は空を斬った。
そのままカイは機体を回り込ませてリオンの脇を取り、ゲシュペンストのステークを撃ち込もうとするが、
機体のロックオンアラートを聞き、咄嗟に回避行動を取った。
するとさきほどまでいた所をレールガンの弾が通り過ぎ、リオンの前にガーリオンカスタムが現れた。
支援
「た、隊長!」
「突っ込みすぎだぞアラド。機体特性を考えろ」
「で、でも!」
「カーラ、アラドを下がらせろ、ゲシュペンストは俺が相手をする」
「了解!」
「隊長!」
もう一機のガーリオンがリオンを抱えて機体を下がらせる。
それを見てユウはバーストレールガンをゲシュペンストに向けて構えた。
するとそのゲシュペンストから通信が入ってくる。
「答えろ。何故、ここでファルケンのテストが行なわれることを知っていた?」
「…守りきれる秘密などそうそうないということだ」
「何…!?」
カイの言葉を遮るように再びレールガンの弾がゲシュペンストに襲い掛かる。
その攻撃をカイは機体を下がらせて回避し、お返しとばかりにスプリットミサイルを発射する。
ミサイルはゲシュペンストから放れて拡散した後、煙を引き連れながらガーリオンに向かっていくが、
ガーリオンもそれを胸部のマシンキャノンで撃ち落して攻撃を防ぐ。
ミサイルが爆発して両機の間には爆煙が立ち上り、視界を塞ぐが、カイもユウも動きを止めることはない。
武器の名の如く、アサルトブレードを構えたガーリオンが爆煙に突っ込んでいく。
だが爆煙が晴れた先にいたのはブレードの刃をステークで受け止めているゲシュペンストだった。
そしてゲシュペンストはブレードの切っ先を、腕をやや引きながら脇に逸らし、
ステークがセットされている引いた腕をそのままガーリオンに向ける。
「もらったぞ!」
「貴様の思い通りにはさせん!」
ガーリオンはそのまま体ごとゲシュペンストに体当たりを仕掛けてゲシュペンストを弾き飛ばし、
ステークの攻撃を潜り抜けると同時に距離を作った。
当然、咄嗟の判断によるブレイクフィールドなしの体当たりだったので機体、パイロット双方に大きな衝撃が加えられ、
ダメージを受けたことは否定できないが、ステークの餌食となるよりはマシであった。
だが弾き飛ばされたゲシュペンストは素早く起き上がり、ガーリオンに拳を向ける。
「どうやらただのDC残党ではないようだな?」
「そちらもな。その実力…教導隊のメンバーと見た」
カイ、ユウは、ともに相手が油断ならない相手だと認識しながらも機体のダメージをチェックする。
「教導隊を相手に油断は禁物か…」
今の体当たりによりセンサーとバランサーに少々の異常が出たことを示す機体を操作しながらユウが呟いた。
もともとガーリオンはリオンに手足をつけたような機体と言っても否定はできず、
ブレイクフィールドを展開しなければ、バレリオンなどのように防御力が高いとはいえない。
あくまで機動性を重視した高速戦闘が望ましいのである。
ヒュッケバインMK−Uを取り囲ませたリオンは既に半分撃墜されており、状況はあまりいいとは言えない。
だがその時、ガーリオンに通信が入ってきた。
「ユウキ少尉!ビルトファルケンの奪取に成功しました!」
「よくやった、曹長。あとは俺達に任せてこの空域から直ちに離脱しろ」
「了解!」
ファルケンのコックピットに乗り込んだゼオラは、その機体性能を生かして早々と戦場を離脱する。
「うぬっ!ファルケンが!!」
「追尾は…不可能か…機体性能がアダになったな…!」
「よし、残っている機体で敵の足を止めるぞ!」
ユウが部下達にそう告げたとき、一機のリオンを見たことがあるビームが両断した。
「来たか、ATXチーム!」
ユウの視線の先にはシロガネから出撃したと思われる、アルトアイゼン、ヴァイスリッター
ヒュッケバインMK−Uにアンジュルグ、そしてビルトシュバインがいた。
「またお前か」
「縁があるようだな、お前達とは」
「こいつ、性懲りもなく!」
キョウスケとユウの間に、ブリットが入り込む。
「それはこちらの台詞だ。お前に付き合うだけ時間の無駄だからな」
「何だと!?」
「言っておくぞ、お前達の主義主張を聞く気はない。そして、戦場では奇麗事など通用せん!」
「知った風なことを言うな!」
再び対峙するブリットとユウキ、そしてこれにはシンも黙ってはいない。
「それに奇麗事が通じないからってあんた達の動きを放っておけばまた戦争が起こる!
そうなったら傷つくのは罪もない人達ばかりだ!」
「だがお前達連邦に地球を任せればさらに多くの人間が死ぬことになる!」
「言ったはずだ、お前達の主義主張を聞く気はないとな!」
「カーラ、既に作戦目的は達成した。撤退するぞ!」
「あらん、あなた達もワイウキバケーションはもういいのかしら?」
「ワ、ワイウキ?ワイキキの間違いじゃないの!?」
「でも泥棒ってのは感心しないわね。軍に代わってお仕置きって感じ?」
「へへん、でも悪いけど、ビルトファルケンはゲットしたよ!あとは逃げるが勝ち、ってね!」
カーラがそう言いうと、ガーリオン2機はあっさりと背を向け、ブーストドライブで戦場を後にする。
「待て!」
ブリットはなんとかそれを追おうとするが、それはアルトアイゼンに遮られる。
「ブリット、あの速度では追いつけん、それにラトゥーニの姿も見えん。教導隊と合流するぞ」
「り、了解…」
「あいつら…また戦争を始める気かよ!そんなに戦争がしたいのか!」
膝に拳を叩きつけてシンが叫ぶ。
ハワイの夕日にシロガネが紅く染まり、これから流れゆく血を暗示するかのような
赤色の空が彼らの視界一杯に広がっていた。 つづく
アカン、どうしても戦闘地に紅茶が先にいる分、シンを動かすのが難しい…
487 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/29(土) 23:31:26 ID:CLH8+lA1
銀魂wwwwwwwwwwwwwww
乙です!
ユウが主人公している感じは確かにあるかもです。私も、自分で書いていてビアンが主人公なのかシンが主人公なのか分からなくなりますけど……。
シンが加わったことで起きる変化がこれから楽しみですよう。OG2の流れに沿うならルート分岐もあるんですかね? そこらへんも含めて楽しみにさせていただきます。
GJでした!
シン……スクールの面々と絡むのかな〜?と思ったり>分岐
やはり紅茶もむっつりだった件
シンがスクールの事知ったら怒るんだろうな。ステラたちのことがあったから
初めて電撃スパロボ見てみたけど漫画がすごいことなってたな。
合体してるのにRシリーズの手も出してフルバーストとか
SRXの武装+Rシリーズの携行火器かとんでもない火力だよな
ついでクロニクル1巻も買ってしまった。宇宙ひらめってなんですかあれは?
>>491 それが八房クォリティ!
……宵闇とか色々凄いよ?
クロニクル二巻はよ出ないかなー。
週末の投下後丸二日無人かと思ったら平日夜に人がいる…どんな住人なんだ…
>>491 羽クジラの正体は宇宙ひらめの亜種って展開でもいいな
>>494 強すぎるだろ、宇宙ひらめ的に考えて……。
>>491 八房の人は連載終わってもう自分の趣味で書いてる感じだしなー。
あの人の作品が好きな俺としては、趣味前回で突っ走ってもらって嬉しい訳だが
虎蔵たちが迷い込んだ先がラ・ギアスで、ラ・ギアスの行き方を書いた稀覯本の持ち主は
美津里なんだよ。
保守
ここの住人はどんなSSスレ見てるんだろう?
俺は覚えてるのは0083、Z、CCA、G、コーヒー、風景画、逆シン、阿部だな
ジーク・ジオン
ビアンSEED29話
秋風吹きすさぶCEの宇宙に少年の愛の花は実をつけるのか!?
シン達が宇宙に上がる前――シュウ・シラカワとビアン・ゾルダークが、奇妙な縁で結ばれているかの様な再会を果たした後の事。
連合が制圧した日本伊豆基地に帰投したゲヴェルの艦長室では、レフィーナとテツヤが互いに顔を突き合わせて首を捻っていた。すでにカオシュンから撤退したザフト兵掃討作戦を、無事“完了”した後だ。
シュウの言ったとおり上層部への口添えはあったらしく、これと言って咎められる事も無く日々は過ぎた。では、なぜ今この二人が顔を突き合わせているかというと、シュウの残していった土産を前にしているからである
伊豆基地に戻ったレフィーナ達に遅れる事数時間ほどでグランゾンが姿を見せ、事情の説明を求める連合の将校やレフィーナ達に取り合う事無く、すぐにまたどこかへと姿を消してしまった。
そのさいに、どういうつもりなのか、レフィーナ達ゲヴェルのクルーに土産を置いていったのである。
レフィーナのデスクの上に置かれた包みを見て、テツヤはその名を口にした。
「せんべいですね」
「ジャパニーズ・クッキーの事ですよね?」
簡単に言えば米を突いて形を整えて焼いたものだが、それが確かに二人の目の前にあった。包みには『秋せんべい店ご長寿セット』と書いてある。
ダイヤモンドみたいに堅そうで粒の大きい白砂糖がびっしりのざらめと、パリッと焼いた海苔を巻いた海苔巻き、厳選した国産大豆から醸造した醤油と魚沼産コシヒカリを使った厚焼きの三点セットだ。
「シラカワ博士の私用は、東京見物だったんでしょうか? テツヤさん」
「さ、さあ?」
同じ日本人(という事になっている)とはいえ、そうそう他人の考えなぞ分かるものではない。
レフィーナに可愛らしく小首をかしげて問いかけられても、テツヤには満足な答えなどありはしなかった。した事と言えばレフィーナの愛らしい仕草に頬に血を登らせた位である。
せんべいを前に大の大人二人で首を捻っているという図も妙なものだが、土産を置いていった人物がシュウ・シラカワであるだけに安心できない。普段の行いがこう言う時にモノを言うという事だろう。
ただ何時までもたかがせんべいを前ににらめっこをしていてもはじまらない。やおらに、レフィーナが名案を思いついた表情をして、にこやかにテツヤに笑みを向けた。
「ちょうどお茶の時間ですから、いただいてしまいしょう。おせんべい」
「は? はあ、確かに丁度の時刻ですが」
「おせんべいって、コーヒーでもあうんでしょうか? 紅茶とコーヒーならありますけど、どちらがいいですか?」
コーヒーと紅茶。まさかせんべいを食べる時にその二択を提示されるとは。妙な感慨にふける自分に気付き、テツヤはいかんいかんと首を振った。
なにしろ折角レフィーナからのお誘いなのであるからして、ふだんから奥手な自分達としてはこう言った何気ないスキンシップとて重ねていかなければ関係の進展というものはないのだ。
……けっして二人っきりでお茶をして良いムードになるといいなあなどとやましい気持ちを抱いてはいないのであって。
まあ、奥手の達人とさえいわれる二人だが、こうして二人っきりの時には階級でも役職でもなく、お互いの名前で呼び合う程度には進歩しているのだ。
「……紅茶でお願いします(何を考えているんだ、おれは!?)」
「はい。すぐ淹れますから、待っていてくださいね」
無垢なレフィーナの笑みがあまりに眩しくて、少し後ろめたいテツヤであった。
ゲヴェル名物の一つである副長と艦長の関係に、意図せず一助を果たしたとは知らず、シュウ・シラカワとその使い魔チカは日本を離れ、遠くユーラシア連邦の旧チェコに居た。
太陽の陽ざしを遮り暗黒に閉ざしてしまうほどに濃密な森の奥深く。噎せ返るほどの緑の匂いを運ぶ風が獣鳴き声や小鳥のさえずりが吹き抜ける渓谷。岩にぶつかり白い飛沫をいくつも上げる激しい川の流れに足を踏み入れ、
この時代にまだこんな場所があるのかと思わせるような、人の手が触れていない自然の中を突き進んだ果てにそれはあった。
おとぎ話に出てくる魔女の館をそっくりそのまま持ってきたような屋敷であった。幾本も重なって壁の様に生える木の合間をすり抜け、開けた場所に立っている。煉瓦の煙突からは虹色の煙が絶え間なく立ち上り、蒼穹の空に溶けては七色に空を変えている。
緑だけではない、赤や紫の苔が生した屋根に、成人男性の二の腕ほどもある蔦が絡まりあった壁。ガラスが入っているはずの窓は光を吸いこんでしまうのか闇に閉ざされて屋敷の中を窺い知ることはできない。
「ごごごご、ご主人さま。もんのスゴイ不気味ですよぉ!?」
半分泣きそうなチカだ。これでもシュウの無意識から作ったファミリアだというのだから人間分からない。
「褒め言葉かもしれませんよ、この屋敷の主にとってはね」
大の大人でも青息吐息の道のりだと言うのに、身に着けた白衣に似たコートや靴に汚れ一つなく、端正な顔立ちに汗の一粒も浮かび上がっていないシュウが、肩の使い魔の言葉を意に介さず足を進め、屋敷の玄関の扉の前で止めた。
真鍮の輪を、同じく真鍮の獅子が加えている。シュウに手が輪を握ろうとした時、余ほどの腕を持った職人が彫琢したであろう精巧な獅子が、ぎょろりと目を向けて低く唸り声を上げた。
チカは今にも泡を吹きそうなほどに怯えているが、シュウは小さな子猫が目の前にした存在が獅子であるとは気付かずに、無謀な真似をしている程度にしか映らなかっただろう。
シュウが握った真鍮の輪がカッ、カッと音を立てて屋敷の人間を呼ぶや、獅子は仮初に吹きこまれた生命を失ったのか、元通りただの精巧な飾りに戻っていた。
「あ、あれ?」
「一種の幻覚ですよ。簡単なテストといった所ですか? お嬢さん」
「わ!? 何時の間に」
シュウの目の前に、120センチくらいの少女が立っていた。握っていたはずの輪は内側に開かれたドアと共にシュウの手から離れている。
少女の年の頃は高く見積もって十歳くらいか。純金の輝きをそのまま封じ込めたような繊細な髪に、何処までも澄み切って青く輝く瞳と、若さよりももっと純粋で無垢な幼さが持つ生命の活力がみずみずしい肌の張りとふっくらとした頬のあどけなさ。
どんな凶暴な心の持ち主でも、この少女だけは何があっても手にかけてはいけないと思ってしまいそうだ。
紫サテンのワンピースを着て、金髪を青いリボンで高く結った少女は、瞬きをせずにシュウの顔を見上げ、ワンピースの裾を持って淑女の礼を取った。どこの上流階級の人々や王侯貴族の前に出しても賞賛の目でしか見られない完璧さだった。
「遠く見知らぬ因果地平からようこそおいでくださいました。この屋敷の主も貴方様がお尋ねになられるのをお待ち申し上げておりました。シュウ・シラカワ様」
掌中の玉と大事に育てられた姫君が、慎ましく鳴らした琴の音か鈴の音の様に美しく、どこか無機質で硬い少女の言葉に、シュウは分っていたというように頷いた。
「急な事になってしまい、申し訳ありません。しかるべき手順を踏むべきだったのでしょうが、何ぶん急ぎの用事でしたのでね」
「シラカワ様が通られた森は、かつて千の顔を持つ邪神を召喚しようとした者達を、邪神と敵対する火の神性の力でもって焼き尽くした森を移植したもの。
残留する火の神性の力が、大地の上を歩む者すべてを焼くものでございます。
次にとおられました渓谷は、かつてこの星が見守る中、人の善と悪が戦ったおりに絶対零度と無限熱量によって穿たれた跡を再現したもの。
模造ではありますが極々低温と無限熱量が生命の存在を許しません。残る川の流れも扉の獅子もより強力な護り。それを超えられた方を無碍にはできません」
「そう言って頂けると、とりあえずの慰めにはなりますね。……すぐにお会いできますか?」
「はい。最後に私の質問に答えていただければ……」
シュウを見上げる少女の瞳が、怪しく輝いた様に見え、チカがひえっと呟いて震えた。少女の唇からわずかに見える真っ白な歯が、鮫の様に鋭く獰猛な牙に見えたのだ。
もとより妖の気を含んでいるかの様な大気が、その霊的な意味での濃密さを増し、エーテルの霧が立ちこみ始める。
503 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/06(土) 00:29:48 ID:uQHTwvkU
今度はデモベでも出てきったのか?
支援?
「あなたの肋骨は二十六本ですか?」
「いいえ」
「あなたの心臓は二つ?」
「いいえ。一つですよ」
「では、お好きなように」
それだけ言って、少女は金色の髪を滝の様に零しながら小さく頭を下げて、横にのいた。少女の背後の闇を見通すシュウの瞳には、恐れもおびえも無い。強いて言えば異敬の様なものがわずかにある。
深い闇であり、濃い闇であり、余分なものを持たぬ純粋なまでの闇だった。シュウはそれでも、屋敷の中が明かりに照らされているかの様な足取りで淀みなく中に踏み入る。時間の流れも止まっているか闇に吸い込まれているような場所だ。
主人たるシュウがいつもと変わらぬ態度でいるからこそ、チカもまたなんとかパニックを起こさずにいられる。
「ごご、ご主人さま、なんでしょうね。ここ? まま真っ暗闇なのに、なぜかこの霧みたいのだけはくっついてきますよ?」
「エーテルですよ。この宇宙で最も安定した物質にして絶対座標に対して静止しているエネルギー。この次元においてはいかなる場所にも存在していますからね。この光の空間でも存在しているのですよ」
「光? 闇じゃなくてですか?」
「ええ。ところでそろそろお顔を拝見したいのですが? ミス・ヌーレンブルク」
「おやおや、鋭いね」
シュウの声にこたえたのは、聞く者に数百年の時を生きた老婆を想起させるしわがれたものだった。その奥に潜んでいるのは人知の及ばぬ世界の理に挑んだものの知性だ。
声と同時に闇は晴れ、古めかしいがこれまでの道のりからは考えられないごく普通の部屋だった。暖炉の中で、パチっと音を立てて火の粉が爆ぜた。
そまつな木を組み合わせて作った椅子に腰かけた、先程の少女ほどの背丈しかない老婆がいた。皺に埋もれた顔の中に埋もれた青い瞳は、かわいい孫を前にした祖母の様でもあったが、決してそれだけではないとシュウの直感が告げていた。
「世界最高の大魔道士にお目にかかれて光栄です」
「社交辞令はおよしな。何をお求めだね? そこに掛けてあるSという男から巻き上げた姿見かい? あの男の名前、サタンのSだったかね。それとも、そこに寝ている黒猫かい? ちょいと機嫌を悪くすれば、カリフォルニア一帯を大津波が襲うね。
お前さんの横の棚に置いてある鏡が割れれば火星のアステロイドベルトから隕石が雨あられと注いで、地上が破滅するだろう。破壊神シヴァの使徒にはなかなか愉快な品だろう?」
「そこまでご存じで?」
「ふふ、アンタがもう使徒ではない事もね。でも本来ならこっちの世界と地球の中の人達との接点はないはずなのさ。なのに、あんたみたいに他所から来た連中の影響である筈の無いものがこの世界にはあふれ始めている。
特異点の所為もあるが、それ以前にどこかの誰かが、この世界でいろいろと実験をしているらしいからね。フラスコの中の実験を眺めている方たちが、ね」
「どうやら、ここに来たのは正解だったようですね」
次々と語られる老婆の言葉に、シュウは満足そうに笑みを浮かべていた。老婆――ヌーレンブルクの言葉は地上の魔術にも見るべきものはあるという、自分の判断が正しかったことの証明だ。
「その知識を見込んで少々お願いしたい事があるのです」
「なんだい? あんたみたいな人は珍しいからね。それに私を紹介してくれた相手への義理もあるし、ある程度はロハでやったげるよ。
なんならアカシア記録操作装置でも貸してあげようか? 眠れる予言者エドガー・ケイシーも、この次元に劣化したレベルでしか読み取れなかったけど、この世界の過去も未来も現在も、すべての知識をかいま見る事が出来るだろうさ。
ま、すぐに忘れちまうけどね。邪神封印クラスの封印をしてあるから、解除するのにちょいと手間取るけど」
「学術的な意味でも惹かれますが、そのような大事ではありませんよ。ほんの少し星幽界への介入手段を構築する為に手を貸していただきたいだけですから」
「ふうん?」
つまらなさそうに呟くヌーレンブルクに、シュウが小さなデータディスクを渡したのは、少女がお茶を運んできた後の事だった。
ある日、アメノミハシラから出航したMS輸送艦二隻とジガンスクードを抱えた艦隊に、奇妙な連絡が届いた。アメノミハシラに向けて不自然な軌道で隕石が迫りつつあるというのだ。
付近に友軍の姿はなく、ザフトと連合でも存在は確認しているかもしれないが、もっとも近くに居るのがこの艦隊だった。
本来ならジガンスクードの調整が一区切り付き、最終的な動作の確認などを確かめる為にここまで足を運んだのだ。
パイロットが予定されているアウルの他、護衛としてユーリアのトロイエ隊からガームリオン・カスタムとエムリオン二機、アウルの使っていたエムリオンが搭載されている。
シンやいつものタマハガネ組はアメノミハシラで哨戒任務につき、連合の通商破壊や降下ポイントの守備などにも駆りだされていた。
パイロットスーツに身を包んでいたアウルは、隕石調査に関する連絡に折角の新型の慣らし運転に水を差された気分になって頬を膨らませて、不機嫌そうにしていた。
輸送船の格納庫の中で、70メートルもの巨体故に格納庫を占領してしまっているジガンスクードを見下ろしていた。
整備の一人が、アウルに声をかけてきた。アウルよりも二、三年上の、十代後半の若者だ。頭に巻いたバンダナところころと表情の変わる闊達な性格をしている。タマハガネのメカニックの一人で、タスク・シングウジという。
「よう、アウル! どーしたんだ。そんな仏頂面でよ」
「ああ? 別に、余計な事しなくちゃいけないのが面倒なだけだよ」
「そうかあ? ステラやシン達と離れてさびしいんじゃねえのか?」
「バッカ! んなわけあるかよ。おまえこそなんだよ? ジガンスクードの整備終わったのか?」
「ん、まあな。アウル、お前あいつの使い方間違えるなよ。ありゃ敵を倒す為の剣ってより仲間を守るための盾だ。どうもお前の戦い方とジガンは合わねえんだよな」
「ハッ、メカニックならではの意見? 運動神経鈍くてパイロットの選考から漏れたひがみじゃねえよな」
「うぐ、人が気にしてる事を言う奴だなあ」
歯に衣着せぬストレートなアウルの台詞に、タスクは小さくうめいた。メカニック業の傍らパイロット適正試験も受けたのだが、運動音痴であったために実技で落ちてしまったのだ。
「でもよ、その妙な隕石てのなんだろうな? 連合がんなことするわけないし、ザフトがやったにしても妙だよな。地球に隕石落として得するってのは、宇宙のプラントが本拠地のザフト位だろうけどさ。デメリットの方が大きいよなあ?」
「さあなあ。まあそれを確かめに行くんだから、行きゃ分るって」
「そりゃそうだけどね」
そんな事を二人で言い合っていると、通路の方から今回の護衛部隊の隊長を務めるトロイエ隊のメンバー、レオナ・ガーンシュタインが姿を見せた。
巻き癖の付いた金髪にややつり上がった意志の強そうな青い瞳の美女だ。人種の違いはあるが、年の頃はさしてタスクと変わらないように見える。
若くしてDC宇宙軍のエースの一人として名を馳せている。
「何を話しているのかしら? タスク、アウル」
「レオナちゃ〜ん、どうしたの? あ、ひょっとしておれに会いたくなったとか?」
レオナの姿を見た途端喜色満面になって猫なで声をだしたタスクに、レオナは、はあ、と溜息を突いて首を横に振った。ずいぶんと慣れた仕草の様で、似たようなやり取りを何度も重ねているらしい。
「バカ、そんなわけないでしょ」
「いや、そんなしみじみ言われると怒鳴られるよりかえって辛いんだけど……」
アウルは二人のやり取りを無関心に見つめてから口を開いた。
「で、何のようなわけ? 暇なのは確かだけどさ」
「そうね。タスクの所為で言いそびれたけど、そろそろ例の隕石と接触するわ。生憎ジガンの足は鈍いから、貴方もエムリオンで出るのよ。準備はよくて?」
ジガンではなくエムリオンで出なければならないのも、アウルの機嫌がよくない理由の一つだった。なんだかんだでジガンスクードのデビューが遅れているのが気に入らないのだ。
「いつでもいいぜ」
ふんと鼻を鳴らし、アウルはエムリオンが格納されている別のハンガーへと向かった。
何このカオス 支援
ブーストハンマー、オクスタンライフル、ビームサーベル、それに遠距離砲撃用の大出力ビームキャノンを装備し、核融合ジェネレーターにアウルの換装したエムリオン。
そしてレオナの、オクスタンライフルとビームサーベルと最新の標準装備に、要塞攻略用ミサイルランチャーを装備したガームリオン・カスタムが肩を並べて輸送機から出撃した。
残り二機のエムリオンは輸送船の護衛と、万が一の隕石への対応に後方に待機している。すっかり座り慣れたエムリオンのコックピットの中で、アウルは今回あまりに遅く警戒ラインに引っかかった隕石の不自然さに、ようやく気付いた。
「にしても小惑星規模の隕石だろ? なんで警戒ラインに引っかかんないでここまで来てんだ?」
「それが突然、警戒ラインの内側に現れたらしいわ。観測しようにも探査用プロープを搭載した衛星では捕捉が難しいのよ。それで私達に出番が回ってきたのよ。話は分って?」
「ふーん。ぶっ壊すんじゃないんだろ? 加速ベクトルはいじらずに遠距離砲撃で軌道をずらす、と。直径二キロか、でかくねえ? タマハガネがありゃ楽だったなあ」
「ほんの少しずらすだけで良くってよ。探査プロープはこちらで撃ち込みます。下手に壊すと質量分布によってはアメノミハシラのデブリスイーパーやMSでも対処できなくなるわ。なんでも壊せばいいというわけではなくてよ。
今回の私達のミッションはあくまでアメノミハシラへの衝突軌道から遷移させる事。くれぐれも慎重に。調子に乗って余計な事を……」
と言おうとしたレオナの耳に、後方で待つ輸送艦『バーナウ』から通信がノイズ混じりに入った。NJ影響下とはいえ、いささか影響が出るには早い。
『ガーンシュタイン三尉、ニーダ特尉。対象が加速を始めました!』
「加速……?」
「何で隕石が加速するんだよ」
『軌道に変化はありませんが、加速による……』
そこから先は電波干渉により、耳障りな砂嵐の様な雑音に変わっていた。
「電波干渉? NJでもおかしくなくて?」
「おいレオナ! 電波干渉の正体、あれじゃねえの?」
「小惑星? もうこんな距離に!」
「怪しいってもんじゃねえな、コレ。放置するわけにもいかねえし、置いてったエムリオン連れて来た方が良かったんじゃねえの?」
「いまさら言っても始まらないわ。それにこのままではアメノミハシラに……」
二人の機体の計器が、異常を示したのはちょうどその時だった。ピシ、という音が宇宙空間で伝わるわけもないが、視認できる距離まで近づいた二キロにも及ぶ巨大な隕石の表面に亀裂が走り、勢いよく砕けた。
当たればタダでは済まない破片を避けながら、レオナは隕石の砕けた中心に何かがいるのを、視覚と、名状しがたい感覚で捉えた。
「なにか……いる?」
デブリ帯に新たに散らばる隕石群の只中で、それは悠然と冷たい宇宙空間に佇んでいた。光の届かぬ深く暗い海を泳ぐ魚の様に。
大きい。体長は100……いや長く伸びた尻尾も含めれば200メートルを超すだろう。一言でいえばひらめの様な姿をしている。頭の部分と円形の胴から先細りになって伸びる尾の付け根のあたりにそれぞれ、四本と二本の触覚のようなものが伸びている。
吐き気を催すまだら模様に、頭の部分から胴の中央にまで閉ざした唇の様な亀裂が走り、レオナに生理的な嫌悪を掻きたてさせた。
「気持ち悪いぃ! 何だこいつ、これが隕石の正体か。じゃあ、こいつをぶっ潰せばオーケーか?」
「巡洋艦? 機動兵器? こんなものを作れる技術なんて……。どうやらこのひらめかしら――の着込んでいた岩塊に撹乱剤になる物質が含有されているらしいわね。それにしてもこの熱源分布、まるで生物のような……!? アウル、回避運動!」
「!? なんだ、こいつ」
アラートの音よりも早くレオナの直感に似て異なる感覚が、目の前のひらめ宇宙ひらめの体表から射出されたミサイルらしき物体を感知した。アウルも強化人間ならではの反応速度プラスこれまでの戦闘経験が培った観察眼が、動きを見せた宇宙ひらめを捉えていた。
「ミサイル!? やはり機動兵器」
デブリ帯の中を飛び、大小無数の岩塊の破片と高速ですれ違いながら、レオナはどう言う原理でか精密にガームリオン・カスタムを追ってくるミサイル(?)に狙いをつけ、オクスタンライフルのBモードで撃ち落とす。
途端に起きたミサイルの爆発は、直撃すればMSなど一撃で撃墜出来る威力があるものだった。
「一発抜けた?」
爆発の中から飛び出してきたミサイルに気付き、レオナはビームサーベルで斬り落そうとしたが、なぜかデジャヴュの様な既視感に襲われ、そのままオクスタンライフルで撃ち落とした。その、弾痕が穿たれたミサイルの映像に、瞬間、レオナは思考を停止させた。
それはまるで直立した男性の陰部のような外見をしており、何よりも異様だったのは所々毛が生えているような肉の表面に、ひどく醜悪な目と鼻と口が存在した事だ。
ミサイルはモニター越しに見てしまったレオナの視線に気づいたのか、額に当たる部分からどろどろとした体液の様なものを溢れさせると同時に、ニイっと確かに笑い、一瞬膨らんだかと思うと、撃ち落とされたミサイルと同じように爆発した。
「くっ、ミサイルではない!? 本当に、一体何だというの!」
爆発の余波をEフィールドで受け止め、その場から慌てて離れるレオナは、コックピットの中で理解し難い敵に困惑の叫びを零す。
「ぐちってねえで、攻撃しろよ!」
ミサイルの標的になっていたレオナとは別に、アウルがオクスタンライフルのWモード――実弾とエネルギー弾の両方を射出するモードをセレクトして、宇宙ひらめに次々と撃ち込んでいたが
「くそ、こいつこんだけでかいのに動きが速いっていうか、くねくねしてて、ホントに魚みたいだな!?」
何発かはその巨体の表面に当たるものの、決定的なダメージには至らず、おまけに海の中を自在に泳ぐ魚の様にひらひらとアウルの精密なはずの射撃をよけているのだ。
宇宙ひらめの体の裏側、尻尾の付け根近くにある二つの円形の蓋の様な部分が開き、そこからあの、人面を持つ醜くおぞましいミサイルが反撃とばかりに次々と放たれる。
アウルとレオナはそれを引きつけてまとめてEモードのオクスタンライフルで撃ち落として誘爆させ、あるいは周囲の岩塊を盾にしてしのぐ。意外に高い回避能力と、巨体から想像できるタフネス、高い攻撃力、外見からくる気味悪さもあるが、予想を覆す強敵だ。
「アウル、油断してはダメよ!」
「分かってるよ、しかし何だよこいつ! くそ、気持ち悪いし無駄に強いし! てめえなんざ刺身にも干物にも出来ねえし、ここで死んどけえ!」
エムリオンの左手で振り回したブーストハンマーが宇宙ヒラメの眉間を叩き、内蔵されたブースターに火がついて回転し、そして弾かれてしまう。いかんせん質量が違いすぎる。
ブーストハンマーの効果が薄い事を実感させられたアウルは、背に負った大出力ビームキャノンとオクスタンライフルでの攻撃に切り替える。
「レオナのミサイルはまだとっとけよ! こいつ何隠してるか分かったもんじゃねえ!」
「言われなくても! アウルこそ、この生物手強くてよ」
悪態を突き合いながら、二人のエムリオンとガームリオン・カスタムは入れ替わり立ち替わり、めまぐるしく動いて宇宙ひらめにビームと実弾の雨を降らして行く。
エース二人の連携攻撃に、さしもの宇宙ひらめも動きが鈍り始めるが、より激しく人面ミサイルを放ち、更にはどう先端部分を開き、四つに分かれた口を開きアウル達を噛み砕こうと凄まじい勢いで迫り、反撃してくる。
「くそ、こいつだけでストライクダガー何機分の戦力になるって話だよ! どこの馬鹿がこんなもん造りやがった!」
何十と飛来するミサイルに辟易しながら、アウルはなんとか宇宙ひらめに一撃を加えるべくつとめて冷静になろうと、操縦桿を操りながら周囲の状況を観察する。その行為が、予想にしなかったモノを見つけた。
それは宇宙ひらめが姿を見せた時に散らばった岩塊の一つだった。問題はその片面にびっしりと貼り付けられた、いや産みつけられた卵の様なもの。
あの人面ミサイルと同じ赤子を醜く歪めたような顔を持った卵。それがミサイルと同じものか、宇宙ひらめの卵かは分からない。だが、見逃せる代物ではない。血の気が引くのを確かに感じながら、アウルは舌打ちした。
今日は厄日だ。そうに違いない。
「レオナ、これ見てくれ!」
「……!」
卵の並ぶ岩塊の映像を見たレオナが息を呑むのが、通信機越しにも聞こえた。
「こいつをほっとくわけにはいかねえだろう。お前のミサイルで一発花火上げてくれ! おれが援護する」
「なにを、貴方一人では!」
「そうするしか……、やべ!?」
二人が卵の産みつけられた岩塊に気を取られた隙を突き、宇宙ひらめがあの毛が人面ミサイルを集中させたのだ。たちまちデブリを飲み込み宇宙に花咲く炎の花弁。
その炎を見つめ、すぐさま宇宙ひらめはアメノミハシラへの衝突軌道へと戻り、宇宙を泳ぎ始めた。
「ぐっ……頭いってえ。レオナ、生きてるか」
「っええ。EフィールドとPS装甲のお陰ね」
かろうじてEフィールドの最大出力展開で耐えきった機体の中で、二人が痛む頭を押さえながら意識を取り戻した。
「まずい、あの生物に引き離されている!」
「ちい、待機しているエムリオンじゃ抑えきれねえ」
すでに宇宙ひらめは二人から遠ざかり、後方で待機していた輸送艦に迫っていた。出撃していたエムリオン二機も、宇宙ひらめを何とか倒そうと躍起になってはいるようだが、DCの誇るエース二人と互角以上に戦う相手では、足止めにもならない。
人面ミサイルの爆発をEフィールドで防ぎながらも、その勢いで吹き飛ばされる友軍のエムリオン。機体の各所から火を噴いてはいるが、まだ機体そのものは死んでいないようで、なんとかバランスを保とうとあがいている。
テスラ・ドライブを全開にして宇宙ひらめを追うレオナとアウルの目の前で、戦闘能力を失ったエムリオンには目もくれず、輸送艦に向けて宇宙ひらめからいくつものおたまじゃくしの様にも見えるミサイルが放たれた。
輸送艦に搭載された対空砲火をくぐりぬけ、脂ぎった笑みを浮かべるミサイルは、ほどなくして爆発した。
「ちくしょう、あのナマモノ、ぶっ殺してやる!!」
「ああ、タスク……」
「へへ、おれの名前呼んだ? レオナちゃん」
「タスク!? それは、ジガンスクード!」
ミサイルの爆光から姿を見せたのは、赤い巨躯にいかなる暴威からも守るべきものを守り抜く盾を持った守護機神ジガンスクード。シーズシールドでおたまじゃくしミサイルを受けきり、背後に庇った輸送艦を見事に守りきったのだ。
「貴方なにしているの、整備員がパイロットの真似事なんて」
「大丈夫だって。おれふだんからジガン扱っているし、運動神経以外は試験もパスしてるんだぜ? 自分の恋人を信じなって」
と、タスクの恋人云々の発言に頬を赤らめて、その場の緊張感を忘れてレオナは咄嗟にこう言い返した。
「だ、誰が恋人よ!?」
「そんな怒鳴らんでも〜」
「おい、夫婦漫才は後でやってくれよ」
ほどよく肩の力が抜けたアウルが、そんな二人の声を掛け、宇宙ひらめと、ひらめとは別の軌道を取る卵付き岩塊に目を向ける。タスクが乗りこんだジガンスクードならば、あの宇宙ひらめも抑え込めるかもしれない。
「レオナ、タスクお前らその宇宙ひらめなんとかしろ。おれはあの卵を潰してくる! レオナ、ミサイルとビームキャノン交換してくれ!」
「貴方一人で大丈夫? あの岩塊にもまだ何かあるとも限らなくてよ?」
「任せとけって。それよりあのひらめマジで欠片も残さずぶっ潰せよ。あんな気持ち悪いのは二度と見たくねえ」
「それは私も同感ね。タスク、話は聞いていたわね?」
「オッケー。レオナちゃんとの共同作業……く〜〜燃えて来たあ! さあ来いよ、ひらめ! ジガンで叩き潰してミンチにして、肉団子にしてやる!」
レオナとの初の共同作業という発言からして気合いの入りまくったタスクが、威勢よくジガンの片手を上げて、ちょいちょいと宇宙ひらめに向けて五指を曲げる。
それを挑発のジェスチャーであると理解する知性があるのか、宇宙ひらめがゆらりと尾をくゆらせてタスクのジガンスクードと対峙する。
レオナのガームリオン・カスタムも間もなく追いつく――そのタイミングでひらめが動いた。白煙を引くおたまじゃくしミサイルをジガンスクードめがけて射出し同時にジガンスクード目掛けて泳ぎ出した。
迎え撃つジガンスクードの胸部の逆三角形が展開し、搭載された広域攻撃用光学兵器ギガ・ワイドブラスターを放つ。
「つりはいらねえぜえ! くらっときな、ギガ・ワイドブラスター!」
ギガ・ワイドブラスターの光の中に飲み込まれたミサイルが次々と爆発するが、宇宙ひらめはするりとその光を交わして、瞬く間にジガンスクードとの距離を詰めていた。
「うお、ひらめの癖に速い!? ひらめが遅いかどうかなんて知らんけど!」
イメージ的に動きが俊敏である事に驚き、つい余計なことを口走るタスク。宇宙ひらめの甲殻がある頭部の部分が開かれ、また口腔が覗く。
「っておい、ジガンを食うつもりか!?」
ジガンスクードさえも飲み込めそうなほどに大きく開かれた宇宙ひらめの口に、思わずタスクはばりばりごっくんと食べられてしまうジガンスクードと、自分を想像して顔を青くさせてしまう。
勢いよく飛び出たモノの、初陣の相手がこんなわけのわからないナマモノだけに、色々な意味で精神的なプレッシャーは並ではないはずだ。
「タスク!」
そこにセレクターをEモードに合わせて乱射されたオクスタンライフルのビームが降り注ぎ、宇宙ひらめの体の表面を焼く。追いついたレオナが咄嗟に放った援護攻撃だ。
流石に積み重なったダメージは効果があったのか、宇宙ひらめはジガンスクードへの軌道を逸らし、ジガンスクードの傍らに寄り添うレオナのガームリオン・カスタムを憎々しげに睨んだ。
「レオナちゃん!」
「まったく、初めての実戦の相手があんななのは同情するけれど、勢いよく飛び出たからには相応に格好をつけるべきでは無くて?」
「面目ないっス」
「岩塊の方はアウルが上手くやってくれるでしょうから、私達はあの生物の撃破に集中するわよ」
「了解! 地球圏最強の盾は伊達じゃないってとこ見せてやるぜ!」
「ほんと、口だけは達者……でもないわね」
「とほほほ。っと、レオナちゃんとの会話を楽しみたい所だけど、お客さんが待ちくたびれてるぜ」
「まったく、こんな経験二度としたくないわね」
ちいさな溜息がガームリオン・カスタムのコックピットに零れ落ち、二人は同時に宇宙ひらめに仕掛けた。
「行くわよ、タスク!」
「オッケー、いくぜ、本日二度目のおぉ、ギガ・ワイドブラスター!」
デブリを消し去りながら迫るギガ・ワイドブラスターを、生物的な動きでかわす宇宙ひらめに迫るレオナのガームリオン・カスタムは、回避行動を予測しBモードの実弾を連続して撃つ。銃口から零れたオレンジの炎が一瞬、宇宙に輝き機体をかすかに照らす。
「いつまでも貴方などに構ってはいられなくてよ!」
宇宙ひらめの上(?)のポジションを取ったレオナがすかさずWモードにセレクターを合わせたオクスタンライフルを構える。だが宇宙ひらめは、その銃口の向きとモーションの出掛かりから弾道を予測し、射線上から体を翻して見せる。
「へへ、おれの事忘れてねえか! シーズサンダー!」
『!?』
振りかぶったジガンスクードの右腕が宇宙ひらめを捉え、シーズシールドから膨大な量の電流が流れ込む。青白い電気が宇宙ひらめの全身に絡みつき、更にジガンスクードの左腕も唸りを上げた。
「もういっちょ、サービスしまっせえ、お客さん!」
確かに効果はあるのだろう。宇宙ひらめは尾を激しく振りながら苦悶の様を露わにし、このままいけばこのナマモノを斃せると、タスクとレオナは確信した。
悶える宇宙ひらめの尾の付け根から、自爆覚悟のミサイルが放たれるまでは。
「なに!? こいつ、自分のダメージ覚悟で」
「タスク、よけなさい!」
「!」
おたまじゃくしミサイルが宇宙ひらめごとジガンスクードを巻き込んだ爆発の中から、限界まで開いた口から、鋭い角を出した宇宙ひらめがジガンスクードを串刺しにした。ジガンスクードの分厚い装甲さえも貫き、その巨体の人体で言う右脇腹を深く抉っている。
「タスクっ!!」
にいっと、宇宙ひらめの瞳が笑みに歪む。それだけの知性と残虐性を併せ持った生物を誰が作り出したのか。だが、その瞳が驚きに見張る事になった。
機体中央部を抉られたジガンスクードの両腕が、宇宙ひらめの頭部をがっしりと抑え込み、シーズサンダーを再び放ちはじめたのだ。
「へ、へへ。こんなでやられちゃ地球圏最強の盾の名が泣くだろうが……! おれとジガンをなめんじゃねーぞ、ナマモノ!! レオナちゃん、このお客さんに特大のビーム食らわしてやってくれ!!」
ジガンスクードに動きを止められた今ならアウルから渡された大出力ビームキャノンを容易に当てる事が出来る。だが、ジガンスクードが抑えているとはいえ、もがき暴れる宇宙ひらめへの照準をミリ単位で間違えればジガンスクードも巻き込んでしまうのは明らかだった。
トリガーに添えたレオナの指は、凍りついたように動かなかった。
「っ、自分に当たるとは思わないの?」
「レオナちゃんはおれの惚れた女だぜ? そんなヘマしないって。おれの女性を見る目を信じてくんないかな? あ、でででも、もしジガンに当たったら、ごめんねのキキキッスをしてくれるとか!?」
「はあ、まったく。貴方はこんな時でも変わらないのね」
「あ、ひょっとして見直してくれた? 惚れ直したとか?」
「呆れただけよ。しっかり捕まえておきなさい」
そして、ガームリオン・カスタムの構え直したビームキャノンの砲口の奥から、膨大なエネルギーの光が奔流となって溢れ出し、奔流となって宇宙ひらめを貫いた。
もちろん、ジガンスクードには掠りもしなかった。
神に愛された職人が繊細に彫りあげ、才能をひとしくする画家が刷いた赤色をした唇から安堵の吐息をついて、レオナはタスクのジガンスクードに通信を繋げた。
「もう放しても構わなくてよ、タスク。……? タスク?」
「……」
通信機の向こうから答える声はない。その沈黙に、レオナの元から白い美貌から理の毛が音を立てて引いた。それは最悪の結末を想像したからか。
「タスク、タスク!?」
ガームリオン・カスタムが手にした装備を放り捨て、ジガンスクードの巨体に取りつき、急いで輸送船に衛生兵と医師の用意をするよう手伝える。後はジガンスクードの中で意識を失っているタスクに負担にならぬよう着艦させなければ。
その間にも、タスクに呼びかけるレオナの声は途切れる事はない。
「タスク、タスク! 返事をなさい、いつもみたいに、私の名前を呼びなさい!」
輸送艦の一隻にジガンスクードを無事着艦させ、盛大に右脇を抉られた巨体の中から引き摺る様に助け出されたタスクの姿に、レオナは息を呑んだ。
宇宙ひらめの一撃を受け止めた時だろうか、コックピットの内で破裂したコンソールの一部でヘルメットのバイザー部分が破損し、頭部のどこかを斬ったせいでおびただしい出血が、顔を赤く染めている。
血の玉がいくつも浮かび、その一つがレオナの頬で弾けた。
ぴちゃ、と小さな音がして、レオナの頬に生暖かいものが広がる。血、タスクの血だ。レオナの頭の中が真っ白になった。考えるよりも早く体が動く。救護班を掻きわけてタスクの体に縋りついていた。
「タスク、返事をなさい! タスク、聞こえないの!?」
「ガーンシュタイン三尉、危険です! 動かしては」
「タスク、タス……」
「……」
タスクに向かって泣き叫んでいたレオナが、唐突に時がとまったかのように見事なまでに停止した。何事かと、レオナを静止していた衛生兵も彼女の視線の先にあるタスクを見た。
「……」
血で染まるバンダナ。赤い雫を纏う黒髪。閉ざされた瞼。そして……チュバチュバと音を立てて突き出された唇。
「……」
静寂のハンガーに、タスクの唇のチュバチュバという音がやけに大きく響いた。
ヘルメットを握るレオナの右手が高く振り上げられた。タスクの運命を悟り、その場にいた二人以外の誰もが目を逸らした。
ひゅ、という風切り音と、ごん、という硬いものが肉に叩きつけられる音。
「ぎゃああああ!?」
レオナの振り上げたヘルメットは容赦なくタスクの脳天に叩きつけられた。
「ジガンスクードが使えない!? なんで!」
岩塊を見事レオナと交換したミサイルで宇宙の藻屑に変えたアウルが、アメノミハシラに戻った後魂から絶叫した。新型と内心小躍りしていたジガンスクードが、しばらく出撃できないと整備士長に告げられた為である。
「わりい、アウル。ひらめの攻撃を受け止めた時にだいぶやられちまってよ」
あちこちに包帯を巻いたタスクである。無事輸送艦を守り抜いたものの、宇宙ひらめの一撃でコックピットの中で爆発し破片で頭や体の一部を傷つけてしまい、全治二週間ほどの怪我を負っている。
なお、例の一件以来、レオナは一言もタスクと口を利いていない。
「マジかよ。じゃあ、またしばらくエムリオン?」
「ああ。ほらまあ、エムリオンだって正直、量産されているMSじゃ最高水準の機体だぜ。良い機体なんだから、な?」
「……あーもう分ったよ。タスク、さっさとその怪我直せよ。おれが乗るはずだったジガン壊したんだから、後で穴埋めさせっかんな!」
「うへえ、怪我人は労わろうぜえ〜」
頬の筋肉を崩壊させて垂らしたタスクの、勘弁してくれという呟きが、ハンガーに木霊した。
タスク・シングウジが仲間になりました。
レオナ・ガーンシュタインが仲間になりました。
ジガンスクードを入手しました。でも壊れました。
ガームリオン・カスタム(レオナ専用機)を入手しました。
宇宙ひらめのサンプルを手に入れました。
今回ここまで、もう小ネタはやりません。さすがにスパロボでは無さ過ぎる。
レオナとかタスクは出すべきか否か悩んだのですが、宇宙ひらめならこの二人か、ということで出しました。次回、ようやくスレードでゲルミルな憎いあん畜生と飛鳥でシシオウなブレードが対決!ついでにルナマリアとシホのDFCなスーツも!
スレは、クロスオーバーとか、ジオン、X、W、ドモンとか読んでます。
GJ!
まさかひらめが来るとは思わなかったですよ。
電撃スパロボのSRXフルバーストみて、ついでにクロニクル買ってひらめみたばかりなんで
それにしてもアウル……新型機とは縁がないんでしょうかね?
ジガンもなんとなくタスク用になってしまいそうで
乙ー
まあ、なんだ。菊地とデモベ自重。あと、CEだから一応クジラ居るしほぼまんまでひらめはちょっと……。
それでも、期待してます。がんばってください。