>>1 乙であります!
やっと最後の部分かいてます〜。今日中…っていうか日にち変わっているけど、いけるか?!
すいません〜何だか時間が遅くなり、無理そうなので、明日…というか今夜投稿します。
後は殆ど推敲のみなので、変なトラブルに巻き込まれなければ大丈夫だと思います。
本当に申し訳ないです。
wktk
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し'ノ
お待たせしました!今より投下します。が、最初に…。
またまたオリキャラを出します。あと捏造もします。そこをどうかご了承してくださいませ…。
ではどうぞ。
気がつくと、そこは大きな海原にぽつんと一つだけある島に、僕はいた。
ああ、これは夢か。そう思いつつも、何とも夢とは思えないほどリアルな島だった。曇りがちの空、少し汚い海。ゴミが流れ着いている砂浜。何もかも、よくわからないほどリアルに感じた。
そんな島の砂浜に、僕はいた。何故?よくわからない。ただ、この島には僕しかいないのだろうか。
いや、誰かいるようだ。ピンク色の髪を持った、女性のような人。ああ、あのバカピンクか。
こんな夢の中にまで出てきて、本当に僕の事が大事なんだな。そうかそうか。そう考えて僕は彼女に近づく。
「おい、バカピンク。何やってるんだよ」
「…」
何も反応しない。僕はもう一度彼女を呼ぶ。
「おい、バカピンク!」
「よきことのため」
「は?」
「よきことのため」
彼女は気持ちの悪い声で、まるで壊れた人形のようにぎこちの無い動きで囁き始める。僕は思わず一歩下がって、彼女の事を見る。何かが違う。
こいつはバカピンクじゃない。こいつは…。そう思ったとき、徐に彼女は立ち上がり、ぎこちない動きでこちらを見る。彼女の顔には傷が無かった。
「なんじじゅうじゅんのましん。よきことのため、いまはしりょをつみとするべし」
「…!く、来るな!!」
僕は近づいてくる彼女を思い切り突き飛ばし、その場から少しだけ離れた。後ろを振り返ってみると、彼女は腕や足、首があらぬ方向に曲がっていて、本当に人形のようだ。
いや、人形なんだ、あれは。そう納得しようとした。そのとき、僕の足元が崩れて、そして僕は奈落へと落ちていく。
そして、次に気がつくと。僕の目の前にはやはり、彼女が立っていた。周りには何も無い。ただ、時間を刻む音が聞こえるだけだ。
よく見ると、彼女には何か仮面のようなものが目のところに付けられている。あの忌々しい男の、あの仮面を。
「良き事のため。今、従順なるマシンが動き出したぞ」
声は、彼女のもの。だが言葉は、あの忌々しい男のものだ。
僕が反論しようとした時、急に周りが明るくなって僕は目を瞑る。そして、次に開けた時には、僕はミネルバの中にいた。
またあの男の仕業か。そう思いつつ、外を見る。いやになるほど清清しい朝日が拝めた。
第9話 big brother
朝。キラ達は出港の準備を整えている。出港、といっても、彼らが使う船というのは、前大戦で使われていた大天使、アークエンジェルであるが。
前の大戦より、ヘリオポリス崩壊から始まり、砂漠の虎との死闘、アラスカ、そしてザフトと連合との戦いに介入し、同型艦ドミニオン、そしてクルーゼとの戦闘と、数々の死闘を潜り抜けてきたこの戦艦は、
戦後はオーブに引き取られ、そしてこの場所に隠され保管されていた。この場所に隠されていると言う事は、一部の人間しか知らない。その一部の人間が彼らなのだ。
と、正装をし、ブリッジに向かうラクスの元に、バルドフェルドがやってきた。
「ラクス」
「なんでしょう、バルドフェルドさん」
バルドフェルドがあたりを気にするように見回した後、ラクスの耳元に口を近づけ、そして言った。
「先ほどの来襲者だが…。キラから聞いたことだが、あいつの事を代理人、といったらしい」
ラクスはバルドフェルドの言葉に一瞬だけ反応を示し、そして動きを止めた。だが、普段どおりの雰囲気をすぐに取り戻し、再び歩き始める。
バルドフェルドは真剣な顔をしながらその後を追う。そして、暫くしてラクスが口を開いた。
「そうですか…。しかし今は、そのことを考えていられません…。今は、この世界が間違った方向に歩みだそうとしているのを止めなければいけません…」
「そうか…。しかし、一応ダコスタに調べさせようと思うが、いいか?それと、次の襲撃は恐らく…」
「そうですね…ええ、御願いしますわ。あれの起動を…」
「ああ、わかっている。平和な世界、築ければいいな」
「はい…」
ラクスはバルドフェルドに一礼をすると、その場から立ち去っていった。その最中、思いにふける。彼女がキラを"生み出した"時、確かに彼は死んだ。
それが今となって、亡霊となり、我々を憎しみ、襲撃してきた。彼は生き残った。
「(しかし…これも世界のため…。私達は、行かねばならないのです。いずれ、彼にもわかってもらえますわ…。そして、同志として…。人は、夢を見続けるべきなのですから)」
ラクスは、何時かは彼が自分の元へと帰ってきてくれると思っていた。そう、彼女はまだ、彼がオリジナルであることは思いもしなかった。
そして、彼女は知らない。この判断が後々に大きな影響を与え、そして、多くの人を巻き込む事になるとは、思いもしなかったのだ。
ただ彼女は、無垢に平和の花を植えるために、ただ旅立とうと、今は考えているだけだった。
「ごめん…母さん。僕、行くよ」
そんな最中、海岸でキラはオーブの軍服を着て、カリダと向かい合って立っていた。親との…いや、正確に言えば、本当の親ではないのだが、里親から離れるのは、心寂しいことだ。
特に、キラとしてはこの数年、カリダの温もりは、彼の心に安らぎを与えてくれた。だからこそ寂しいのだ。だが、行かなければ行けない。
ラクスのために、世界のために。彼は旅立つ。
「…止めないわよ。行ってらっしゃい。でも、辛くなったら何時でも戻ってきていいのよ?」
「うん…ありがとう。じゃあ…母さん」
二人は抱擁を交わした後、キラはアークエンジェルへと向かって歩いていく。その後姿をカリダは見送った。唯一つ、寂しげな目をして、そして、段々と上げて、振っていた手を降ろして。
彼女には、あんなに生気のない息子に変えてしまった戦争が嫌いだった。一時期はあの子は別人ではないかと思ったくらいだ。そして、そこへまた飛び込もうとしている彼を止めたかった。
だが、あの使命感に満ち溢れた目は、今まで孤児院で一緒に暮らしてきた中で見たことがなかった。そんな彼を止められなかった。止めたくなかった。
できれば、あの瞳をそのままに。世界を変えろとはいわない。ただ、無事に帰ってきてくれれば。そう思った。
そんな優しさをどこかで受けていたキラは、不意に涙が流れ出てきてしまった。必死にそれを拭う。
「キラ君…」
と、そんなところへ、艦長服を着たマリューがふと現れた。彼女は心配そうな表情で言った。
「本当にいいの?」
「はい…。後悔はしません」
キラは涙を止め、何時もの優しい表情をマリューに投げかける。マリューは安心した表情をした。そして更にキラは言う。
「本当は何が正しいのかなんて、僕達にもまだ全然判らないけど。でも、諦めちゃったら駄目でしょう?判ってるのに黙ってるのも駄目でしょう?
その結果が何を生んだか、僕達はよく知ってる。だから行かなくっちゃ。またあんなことになる前に」
「…ええ、そうね」
マリューはふっと笑った後、キラの背中を一度軽く叩き、その場から立ち去る。キラも少し苦笑しながらも、MS格納庫へと向かっていった。
そして、アークエンジェルは港から旅たち、そして暫くして、フリーダムという巨人はその羽を再び広げ、その目的地へと向かっていった。
それから少し前。
「うんうん、似合うよ、カガリ」
オーブ、セイラン邸にて。カガリとユウナはそれぞれ花嫁、花婿姿となって、白いドレスと白いスーツで身を装飾していた。カガリの短い髪は綺麗に結ばれ、
まるで普段とは違った、清楚な雰囲気を出していた。
「素敵だよ。でも、ちょっと髪が残念だな。今度は伸ばすといいよ。その方が僕は好きだ」
「…」
だが、その清楚な雰囲気を出していたのは格好だけではなかった。普段活気のある彼女が、今日は何も喋ろうともせず、黙ってこの衣装に身を入れたのだ。
そして、このユウナの言葉にも全く反応を示そうともせず、ただ少し俯きながら、侍女達が衣装の調整しているのを待っているだけだ。
「何か飲むかい?緊張してるの?さっきから全然口もきかないね」
「いや…大丈夫だ。心配ない」
「う〜ん、もうちょっと、言葉使いを直したほうがいいね。大丈夫ですわ、ご心配なくとかさ。まあいいや、そこらへんはおいおい直していくとして」
「カガリ様、ユウナ様、お時間でございます」
「はいはい〜。じゃあ、行こうか。こういう場では別に悲観になるのは別に構わないけど、君が決めた事でもあるんだし、国民の前ではしっかりしろよ」
ユウナは軽々しく侍女に答え、そしてカガリに叱咤しながらも優しく手を伸ばす。カガリは少し歯を食いしばった後、さし伸ばされた手に自分の右手を乗せ、そして二人はゆっくりと共に歩みだす。
二人が外に出て、警備員が乗る白バイク隊に引率される車に乗って暫くすると、多くのオーブの国民達の姿がこちらに喝采を上げている。
「おめでとうございまぁす!!」
「お幸せに!」
彼らは国の許婚同士が結婚し、国が安泰になるだろうと思っている。それに、彼らにしてみればこれはカガリにとって幸せな事だと思っているのだ。
ユウナは彼らに応えるように笑顔で手を振ってみせる。
「…おい、ほら」
「あ…」
と、横目でカガリがまた俯いていたのを見て、ひじで彼女の腕を押し、注意する。カガリもはっとし、少しぎこちなかったがゆっくりと笑顔を作って、国民に応えた。
「ほら、マスコミも山ほど居るんだぞ。もっとにこやかな顔して」
「…ああ」
ぎこちない笑顔を続けて、今度はマスコミの要るほうへ笑顔を見せながら手を振る。ユウナも少し満足した表情で再び外へと視線を戻す。
だが、この笑顔の奥では、カガリは仲間への思いと、そして父への謝罪の思いで一杯で、今にも崩壊しそうだった。
キラと過ごした日々、ラクスと過ごした日々、ナタリーと過ごした日。そして、アスランと過ごした日々。捨てられない思い出が、彼女に押し寄せてくる。彼女はまだ、割り切れない年頃なのだ。そこが彼女の利点でもあり、危険なところだった。
そんな様子を彼にも読み取れたのか、少しばかりフォローする。
「後で好きなだけ泣きな。でも今は、ね」
「…」
カガリは何も応えない。ただ、国民に笑顔を送るだけだ。
さて、そんなこんなで、式場へとたどり着いた二人は、長い階段を登り、国民達に祝福の言葉を受けながら祭壇にへとたどり着くと、二人並んで神父の前に立った。
そんな時、二つの異変が起こった。この式典を警護しているオーブ軍本部では、レーダーに何かが映っているのを発見していた。
「アンノウン接近中。アンノウン接近中。スクランブル!こ、これは…アークエンジェル!?それに…フリーダムです!真っ直ぐこっちに来ます!」
「な、何だと!?すぐにユウナ様とカガリ様を!もう一機は何処だ!」
「もう一機は…動きません!しかし、近いです!」
「そっちにはムラサメ部隊をまわせ!」
軍人達が慌てて作業を進めていく。そんなことは露知らず、式典は進められていた。
「この婚儀を心より願い、また、永久の愛と忠誠を誓うのならば、ハウメアは其方達の願い、聞き届けるであろう。今、改めて問う。互いに誓いし心に偽りはないか?」
「はい」
ユウナが神父の問いに答える。そして、カガリが少し震えながらも応えようとした時。旋風が起きた。強い、強い旋風はあたりの小物や花を吹き飛ばしていった。
「代…逃げてください!」
警備員が暴風の中、叫び散らす。振り返ると、そこには巨人が立っていた。懐かしく、そして何処か恐ろしいその姿。フリーダムだった。
「うわああ!」
ユウナは突然の出来事に悲鳴を上げながらも、カガリの手を握り、そしてその場から逃げようとしたが、手を掴もうとした瞬間、フリーダムがすでにカガリをその手で掴んでいた。
「うわあ!は、放せ!キラ!」
「カガリぃ!!何をしているんだ、早くカガリを助けるんだよ!」
「しかし、MS相手では…」
カガリは必死に腕の中でもがき、ユウナは必死にカガリを取り戻そうとするが、すっかり怯んでしまったオーブ警備員ではどうすることもできなく、フリーダムは飛び立ってしまった。
ユウナはすぐさま警備本部へと無線を入れる。
「くそ!!早く迎撃するんだ!カガリを取り戻すんだよ!」
『いや、しかし…カガリ様が…』
『その奪還、僕が引き受けた!』
「え?」
と、突然無線に変な声が乱入してきた。ユウナは少しきょとんとしながら、フリーダムが飛び去っていった方向を見る。
フリーダムの中では、引き込まれたカガリが必死にキラを説得しようと、もがきながら叫んでいた。
「こら、キラ!降ろせ!バカ!こんな事をして、ただで済むと思っているのか!?」
「うわ、凄いねこのドレス」
「話を聞け!」
「ごめん、今は少し静かにしてて。そうじゃないと、舌かんじゃうよ!」
「うあああ!」
叫び散らすカガリの言葉を無視して、ただキラはフリーダムをオーブ領海外付近で待機しているアークエンジェルまで飛び去る事を考えていた。そう、それは簡単なことだ。
何故だが知らないが、どうやらオーブの一部の軍も協力してくれていて、攻撃は散漫だ。攻撃してくるものを攻撃能力を奪うように反撃して、そのまま無視していけばいい。
そう、それならば彼にとって簡単なはずだった。だが。
「ん?レーダーに反…うああああ!?」
「うわあ!!」
レーダーに別の反応が見えたと同時に、何か黒いものがフリーダムのすぐ横を通り過ぎ、そして激しい震動が襲い掛かってきた。何事かとカガリを抱きかかえながらも機体チェックをすると、
フリーダムの右腕がごっそり持っていかれていたのだ。モニターからもそのことが確認できた。
一体何者が。全く気がつかなかった。何処から?今、あの黒い物体は何処にいるんだ。そう、キラが焦ってレーダーを確認しようとした瞬間、カガリがわなわなと震えながら指を指した。
「あ、あれ…」
「え…?な、…あれはストライク!?」
孤島に、まるで闇のような黒いボディに、真っ赤な鮮血のようなデュアルアイ。そして地面に突き刺さっているのは巨大な対艦刀。あれで切り裂かれたというのか。
そしてもう一本。同じものを肩に乗せながら持つそのMSは威風堂々と立っていた。そしてまるで獲物を見つけたかのように、こちらを見ている。
「ま、まさか…」
『おはようございます!!奪還屋ブラックk7です!カガリと僕を返してもらいに地獄の果てより来たよ。代理人!!』
フリーダムのコクピットに、聞きたくもなかった男の声が聞こえてきた。そうあの男、ブラックk7が再び襲撃してきたのだ。それにしかも今度はストライクという、昔の自分の愛機に乗って。
ブラックハウンドはその大きな対艦刀を振り下ろし、そしてその剣先をこちらに向けてくる。何だろう、この肌寒さは。殺気なのか、それとも違うものなのか。良く分からないプレッシャーがキラを襲う。
『花嫁強奪とは中々決めてくれるじゃない。でもね、それを自分達のいいように遣うために攫うなんて赦せないじゃない?ということで、いい男が取り戻しに来たよ、カガリ。
さ、まずはカガリを解放してくれ。じゃないと、君を殺せないじゃない。まあ、カガリごと殺すって手もあるけどさ』
「な、何を言っているんだ、あいつは…」
カガリも恐怖心からか震え上がっている。この狂った声で自分に親しく声をかける男から、得体の知れないものを感じて、カガリに警告を発する。
しかし、何か聞きえ覚えのある声だ。狂気の中に存在する、身近な声。何処で?しかしそれを考える余裕は無い。
「あの人は…今朝僕を殺そうと襲ってきた暗殺者…」
「な、なんだって!?」
「MSまで持っているなんて、やっぱり危険な人だ…。あの人を止めなきゃ…でも、右手がやられてるし、カガリもいる…どうすれば…」
キラは何かあの男、ブラックk7を止める手立てはないものかとSEEDを発動させ、思考してみる。だが、そうこうしているうちに、ブラックk7の方が先に痺れを切らして、
ブラックハウンドの姿勢を低くさせ、そしてそのバネで大きく飛び上がる。
「!!」
「返答は無しだ。どっちにしろ殺す」
ブラックハウンドは右手の対艦刀を横に振り下げ、そして勢いよくフリーダムに切りかかる。
無駄のない素早い攻撃だったが、キラは凄まじい反応速度でそれを最小限の動きで避けると、距離をとってフリーダムのレールガンを構えてそれをブラックハウンドの腕の部分に向かって発射する。
だが、ブラックハウンドは徐に左肩に抱えていた対艦刀を腰より下で海に向かって構え、そして柄の部分に備え付けられていた引金を引く。対艦刀の剣先から砲弾が発射され、その反動でブラックハウンドは滞空時間を延ばして宙返りをする。
そしてその回転の勢いを使って、再び切りかかる。フリーダムは残っていた左腕で何とかそれを防ぐが、ブラックk7は歪んでいた口元を更に歪ませ、ペダルを全開に踏み込む。
ブラックハウンドの背中のブースターが一気に火を噴き、フリーダムを押す。キラも何とかフリーダムに踏ん張りを利かせ、耐えようとする。
「そうだ!!反抗してみろよ!それでこそ奪いがいがあるってもんだ!!素敵だ!!興奮してくる!」
「何を言って…」
「お前は喋るな!僕が喋るんだ!僕だけが喋るんだ!お前は血反吐だけ吐いてればいいんだよ!」
「くっ!」
キラが喋ろうとするのを理不尽に塞ぐブラックk7。だが、喋る暇もなく、彼が何度も切りかかってくるので、キラも口を塞いでしまう。
ブラックハウンドが両手に持つ対艦刀はフリーダムを何度も何度もきりつけ、そのたびにフリーダムはビームサーベルで捌きつつ、装甲の硬さで何とか持っているものの、
確実にダメージは受け続けている。コクピット内に響き渡る警告アラームがそれを知らせていた。
「やばいぞ、キラ!」
「わかってる!どうにかしないと…」
キラはブラックハウンドの対艦刀特有の大振りの隙を狙って、わざとフリーダムの背部ブースターを切って、空振りを誘う。彼の思惑通り、ブラックハウンドは大きくフリーダムを外し、体勢を崩し、僅かにフリーダムより下方へ降りてしまう。
好機とビームサーベルを構え、ブラックハウンドの腕目掛けて切りかかる。必殺の間合い、キラはいけるとそう思った。
だが、ブラックk7も強敵と戦ってきて培った勘と腕でそれに反応し、右腕の対艦刀を投げ捨て、ビームサーベルを右腕一本を犠牲にして防ぐ。
刺さった右腕からは火花が散るが、まだ一部分は生きている。そのまま突き刺さった勢いでフリーダムの腕を掴み取ると、そのままブースターを吹かして海面へと突撃する。
「うわああああ!!」
「ああああああ!」
「そんなに二人でデートしたいか!じゃあ遊園地でジェットコースターでも乗りなよ!死に心地が何ともいえないよ!」
悲鳴を上げるキラとカガリ。そしてそれを楽しむかのようにブラックk7は機体をどんどん加速させていく。海面がどんどんと近づいていって、ブラックk7は一気にブラックハウンドからフリーダムを離す。
海面に叩きつけられたフリーダムのコクピット内に、まるで吹き上げられるような衝撃が襲ってくる。キラは咄嗟にカガリを守ろうと抱きかかえる。
沈み行くフリーダムに対し、ブラックハウンドは一度海に落ちるも、すぐにブースターで這い上がり、近くの岩場に、器用に立つ。
元々ストライクを基として作られた機体で、ストライカーパックシリーズであるジェットストライカーでも装備しなければ空は浮遊できない。だからこそ、ブラックk7は一気にフリーダムを地に落とした。
「右腕が逝かれたか。まあいいや。さて…まだ暴れたりないな。これじゃ、前菜にもならない。二年のブランクか?あのクルーゼを倒した実力、見せてくれよ〜。なあ、ハウンド」
海面をまるで、何か玩具を期待しながら待つ子供のような目で見つめながら、ブラックk7は頬杖をつく。レーダーにはまだフリーダムは映っている。それを黙ってみつめていた。
そして、そのブラックハウンドの様子は、上空を旋回するムラサメによってオーブ軍部に送られていた。フリーダムの強さを知る軍人たちは勿論、こう言う事にはあまり関心を持たないユウナでさえ圧倒されていた。
「…あのヤキンのフリーダムが手も足も出ず、押されている…」
「あれは、ユウナ様の差し金ですかな?些かやりすぎな気もしなくはないですが」
そんな彼を、タケミカズチの艦長トダカはユウナに問いかかるが、ユウナは首を横に振って否定しつつ、興味深そうに言った。
「まさか!僕も予定外さ。カガリが乗っているっていうのに、あんな野蛮なやり方で取り戻すかい、僕が?だけど、奪還屋ブラックk7か…面白いかもしれないね。それにあの声も…」
「…まあ兎も角、このままではカガリ様のお命も危ない。直ちに戦闘をやめさせて、フリーダムも回収しなければなりませんな。幸い、サトミの水中試験用シュライクが一機ありますから、それに…」
と、トダカは少し考え込みながらも、淡々と望遠鏡を片手にブラックハウンドを見つめながら、ユウナに対策を提案しようとした、まさにそのときだった。
タケミカズチの甲板近くを、何かが猛烈なスピードで通り過ぎ、ブラックハウンドに対して体当たりした。そこで動きを止め、確認できた姿は、オーブの主力新型可変MSムラサメだった。
「なっ、っと!?オーブが、あくまで姫と代理人が大事かよ、えぇ!?」
その衝撃に驚きを隠せず、それでもなおブラックk7は取り乱さず、対艦刀を収納すると、今度は左腕からアーマーシュナイダーを取り出し、それをムラサメの翼に突き刺す。そして、真っ直ぐ自分の方へと引いた。
火花を散らしながら、ムラサメの左翼は切り裂かれていき、そして切り離されると同時に両者は離れる。ブラックハウンドは上手く宙返りをして無人島に着地し、ムラサメも急激に変形して少しバランスを崩しながらも着地した。
その頃、オーブ軍も騒ぎになっていた。あのムラサメは一体何なのか。全く分からず、トダカはオペレーターの肩を掴みながら言った。
「誰が攻撃命令を出していいと言った!?あれは何処の隊のやつだ!」
「しょ、所属アサギ隊のキョウジ=オオハラ三尉の機体です!ですが、本人は艦にいるそうで…整備士によると、勝手に動き出したと…」
「無人で動いているだと!?…よし、何処からか遠隔操作をしているかもしれん。逆探知を試みろ。あと、キョウジ三尉には出頭するよう命じるように。それからあの機体は」
「無視、でいいんじゃないかな。とりあえずあのまま奪還屋を放置しておくのはカガリが危ないしねぇ。今のうちにフリーダムの回収、できるかい?」
トダカが一瞬指示に戸惑ったのに割り込む形でユウナが自分のあごを手で撫でながら言う。彼にとって、カガリは愛すべき妻…となる前にさらわれてしまったが、許婚であり、
そして国を良くするためには必要不可欠な人材として見ていた。だからこそ彼女を救出するべきだと思うし、連合との同盟の最中である以上、これ以上の騒ぎになるのも癪である。
しかしながら、ユウナはあのブラックk7という人材に興味を持ち始めていた。フリーダムを倒すだけの力をもち、そしてあの連合の機体であるストライクを持つ彼に、連合に対する一種の利用価値を見出したのだ。
もっとも、それ以上の危険を感じていたのだが。
「…いえ、フリーダム、再発進し、離れ、領海を抜けました」
オペレーターからフリーダムがドサクサにまぎれて逃げたのを聞いて、ユウナは少し口惜しそうに爪を咬む。これでフリーダム一機に花嫁、しかも国家代表を誘拐されるという体たらくを見せてしまった。
それは、連合に対しオーブの弱さを見せてしまったといってもいい。これから不利な立場となるのだろう。全く、とんだ地雷である。
このような状況を起こしてしまった自分の迂闊さと、カガリを攫われてしまったという事実にユウナは苛立つが、愚痴り気味に言う。
「全くしぶといね。あの高さからあの速さで落ちて普通に動けるなんて、カガリも余計なものを隠していたものだよ。…さて、後は君次第。カガリ、僕は暫くこの国を僕なりに守ってみるよ
そのために、あの力を借りようかな。トダカ、ボート一隻貸してくれないかい?」
「は?あそこへ行くというのですか?」
「うん。ちょっと会ってくるよ。なあに、大丈夫だよ。ちゃんと戦闘が終わってから行くからさ」
そこまで命知らずじゃないしね、と追加して、ユウナは再びブラックハウンドのほうを向く。トダカもそれにあわせて視線を移した。
ブラックハウンドは上半身を項垂れ、それでいながら、周りから殺気を放っていた。ブラックk7にも、フリーダムが逃げたという事実によって、折角の楽しみを邪魔されたという怒り、そして二度も逃がしたという悔しさが彼を包む。
コクピットの中でブラックk7は震えていた。そして、ゴーグルを投げ捨て、鋭い眼光を更に鋭くして光らせ咆哮した。
「僕の楽しみと生き甲斐を、よくも奪ってくれたな、この鳥もどきがぁぁ!!!」
その咆哮とともに、ブラックハウンドはムラサメへと突撃する。怒りに身を任せた攻撃だが、恐怖心などなく特攻してくるので恐ろしく早く、一瞬でムラサメの目の前に立った。
そして一気に踏み込んで対艦刀で切りかかる。だが、それを予測していたかのように、ムラサメは淡々と体を横に反らして避け、そして左手のビームライフルでブラックハウンドを狙う。
ブラックk7はすぐさま操縦桿を動かし、コクピットのある胸部に向かって対艦刀をなぎ払う。攻撃しようとしている上にこの間合いではムラサメも避けられない。
左腕は切り裂かれ、胴体に対艦刀が突き刺さる。踏み込みが甘かったせいか、途中で刃が止まってしまっているが、確実にコクピットには入った。これで動かすものも死に、行動不能になるはず、だった。
しかし、一度は動きを止めたムラサメだったが、まるで壊れた人形のように震えながら、ぎこちない動きでビームサーベルを抜こうとする。
「何!?」
流石にブラックk7は目を見開いて驚愕し、ムラサメを睨みつける。ムラサメはブラックハウンドの腕を左腕の残っている部分で挟み、距離を離されぬよう踏ん張りながらビームサーベルを振り上げる。
すでに半壊状態とは思えないほどの力で絞められているため、離れる事ができない。そこでブラックk7はアーマーシュナイダーを右手に装備させ、そのまま距離をつめ、背中にへと刺す。刺しては抜き、もう一度刺す。何度も刺す。
ムラサメは完全に電気系統をやられ、ビームサーベルの光は消え、完全に動きを止めた。ブラックハウンドはそれを一度距離をとって大きく蹴飛ばし、海へとたたきつけた。
機能を失ったムラサメは浅瀬に、半分水に浸かりながら動きを止めている。
「…ふぅん。自動運転、ね。また厄介なもの作ったね、オーブは…っと!?」
動きを止めたことを確認してブラックk7は突然機体がぐらついたのに体を傾かせた。どうやら酷使した機体に少しばかりガタが来ているようだ。
「ええぃ、このオンボロ!誰かと一緒で、扱いにくいやつめ!」
『随分手荒にやられたようじゃないか、奪還屋』
ブラックk7がコンソールに対して、愚痴りながら左右からバンバンと叩いていると、何処からか若い軟派そうな男の声が聞こえてきた。ブラックk7は一気に警戒心を高め、コンソールを叩く動作をやめてあたりを見渡す。
右方向に、何やらボートが見えている。そこには水色の髪にワインレッドのスーツを着た男が拡声器を持って立っている。ブラックk7にも見覚えがある男だ。確かあれは、セイラン家のボンボン、ユウナだ。
デュアルアイがまるで不機嫌そうにこちらを見てきて、ユウナは少し怖気つつも、気を取り直して拡声器で喋りかける。
投稿間隔制限の支援
「しかし、フリーダムをあそこまで叩きのめせる実力、確かに噂に違わない強さだね。その上で、君に仕事を依頼したい。そっちにも有用な事だと思うけど、受けるかい?」
『悪いけど、こっちは機嫌が悪いんだ。プラクトンと一体化したくないんだったら、黙ってそこから立ち去れ』
「まあそういわないでさ、話くらい聞いてくれよ」
『断る。人の楽しみを踏みにじられたんだ。帰れ』
「あれはオーブとは無関係さ。今調べさせているところなんだよ。まあそうカリカリしないでよ、K・Y君」
『…!ま、話を聞くくらいならいいさね。だが、お前一人だ、いいな』
「懸命な判断、感謝するよ。んじゃ、海岸に取り付けてくれ。あと、あの機体の回収もね。あと、この事は内密に」
「はっ」
不機嫌そうに応えたブラックk7だったが、ユウナの言葉を聴いて声の調子を少しだけ変える。k・y。はったりかそれとも。兎も角、この男は何か知っているに違いない。
ブラックk7は無関心の一部を少しの興味に変えて、機体から降りて彼を待つ。ユウナも部下に命令して無人島の近くにまでボートを寄せて、海岸に下りてブラックk7の許へと歩み寄っていく。
内心には恐怖心があったものの、ユウナはなるべく堂々とした態度で彼に話しかけ、手を差し伸ばす。
「やあ、ブラックk7。自己紹介するよ。僕がユウナ・ロマ・セイランだ」
「…奪還屋ブラックk7。あんたの事は知ってるよ、色々とね」
「そうかい。そりゃ僕も同じさ、キラ・ヤマト君」
やはりこの男は知っていた。そう考えつつ、ブラックk7はユウナの手を少しだけ強く握る。ユウナは少し痛みに顔をゆがめながらも、にっこりとした表情で話を続ける。
「何故僕の名前を知っている」
「政治家っていうのはね、情報力が重要なのさ。どんな情勢、秘密を握って揺さぶる。丁度連合の方に行ってたとき、聞いた事がある。
対コーディネイター用強化人間精製プロジェクト"K"。被験体であり、プロジェクトの中心核だった君が本当のキラ・ヤマトであり、そして基地を崩壊させて脱走した事はちらっと小耳にはっきり入ったのさ。
まあ始めは途方のない噂くらいしか思っていなかったけど、君の声とかそのストライクを見て核心をもてた」
「なるほどね。連合の関係者か。で?」
素直に聞き入るブラックk7。彼もまた、ユウナ・ロマ・セイランという男に利用価値を見出そうと色々と聞き出しているようだ。ユウナもあえてそれを分かって荒いざら喋り始める。
「オーブは連合と同盟を組む。だけどそれは、2年前のように属国になるためじゃない。少しでも同等の立場でいる事が重要なんだ。そこで君のような連合の"汚点"を持っていくことで、
あっちの好き勝手させないようにするのさ」
「…癪だね。僕はね、お前のような政治家や軍人に利用されるのはコリゴリなんだ。僕は僕のために生きたい」
ブラックk7は肩をすくめて言う。彼の人生は何処から狂ったのか。ヘリオポリスでザフトと連合の戦争に巻き込まれ、MSに乗る事になり、親友と仲違いし、何とか仲直りして決意を新たにしたというのに。
実験体にされ、そしてもはや長い命ではないというのが本人が一番分かっていた。まだ、自らの死に直面するには彼はまだ若かった。
「そりゃそうだろう。ヘリオポリスを破壊され、半ば無理やりMSに乗せられ、果てには人体実験のモルモットにされて偽者までも用意される。これで捻くれなきゃ
相当強い奴か、それともバカだ。気持ちは察するよ。だから、ここはギブ&テイクと行こうじゃないか。君はオーブに戦力と連合に対する脅し材料になることと、それにカガリ奪還という任務を受けると言う事を了承してくれればいい。
オーブは君に復讐する場を与える。アスラン・ザラはプラントに戻ったようだし、これからザフトは敵になるからね。彼と戦う機会は少なからず出てくるだろうから。そのときには君がアスランを殺してくれても構わない」
「へぇ、いいの?カガリの大事な人なんだろ?一応。ま、関係ないけどさ」
「彼がカガリとプラントでプラントを選んだ時点で敵さ。まあとりあえず当面はカガリを取り戻したいんだけどねぇ。ま、オーブが勝手に戦っていれば出てくるだろ。一番いいのは、その前に見つかる事なんだけど…」
「楽観的だな。ま、そういう考えは嫌いじゃないよ。…条件がある。カガリを奪還するのは手伝ってやる。だけど、その手段は僕の勝手にさせてもらおうか。あと、その間の行動は僕の勝手にさせてもらう」
「別に構わないよ。寧ろ、そのほうが効率が上がるだろうしね。じゃあ、よろしく…」
ブラックk7が提示した条件をすぐに飲み、営業スマイルを浮かべて手をさし伸ばそうとした時、海に沈んでいたムラサメが突如大爆発をして、調査をしていた海兵を巻き込んでいった。
大きな波が起こり、二人を巻き込んだと思うと、次はムラサメの残骸が彼らの近くまで飛んできて落ちた。ユウナは思わず驚いて腰を抜かしてしまった。
それを見たブラックk7は思わず息を噴出して笑い、手を差し伸ばす。やはりこの男は強がる政治家だ。
「ま、あのピンクが何をたくらんでいるかは知らないけど、僕はあいつらを殺す。その邪魔をしたら…わかってるね?」
半分冗談気味に、しかし瞳の奥では本気で、ブラックk7はユウナを少し乱暴に起こす。とんでもない奴を引き入れてしまったかもしれない、そうユウナは考えて冷や汗をかく。
「ま、よろしく頼むよ、雇い主さん」
そんな彼の心情を知ってか、ブラックk7は何時も見せる不気味な笑みを浮かべていた。
揺らぐ機体、全てを奪いそうになる回転運動。綺麗な海、爽やかな青空。何もかもがグルグルと回っていて、ようは酔い始めてきたのだと感じている。
無事に連合の包囲網を抜け、プラント勢力下にまで逃げ込んだミネルバにも、ひと時の急速が訪れて早3日。流石に到着当日は全員が外に出ることなく、夜だと言う事もあり、基地の責任者の計らいで艦長ともどもぐったりと睡眠をとっていたが、
二日目三日目となると彼らも体力を取り戻し、艦内の責務も落ち着き、基地の施設に行こうかという声も上がっていた。と、その前に、早朝からラクスとビルによる模擬戦が開始されていた。
一応基地の責任者やタリアには許可を取っておいた事とはいえ、やはりバビ同士のドッグファイトに対し、観戦客は自然と増えていて、ミネルバの甲板ではクルー達がそれを見守っていた。
「あ〜あ、完全に後ろ取られてるよ、ナタリー」
「よくやるわよね〜。あ、またペイント弾喰らってる。でも、短期間でよく使いこなせてるよね〜」
『ほらバカピンク!もっとこうガッ!とガッガッ!と後ろを取るんだよ!』
「…効果音では分からないと思うぞ、ケイ」
シンとルナマリア、レイもまた、その観客の一人と化かしている。ケイにいたっては野次を飛ばし始めているが、まあ基地の施設もまだ開いていないような時間帯なので、あくびをしつつも良い時間つぶしになっているのだろう。
とりあえず大盛り上がりをみせているようだ。
「でもさ、素敵だよね…ああやって、空を飛んでいる女性って…」
「いや、実際はナタリーが飛んでるわけじゃないぞ…」
「い、いやそれはわかってるけどさ…」
と、そんな中、不意にゲイルがつぶやく。シンが彼に突っ込みを入れてみるが、よくみてみると、彼の頬は少し赤く染まっていた。
何となくそれでシンは彼の心情を読み取る。ああ、惚れてるのか。そう思いつつ、再びラクスのバビの方をみる。やはりまだ翻弄されていた。
正直、あの人に惚れる理由が良く分からない。それはまあ、一度は腹を割って話したことはあるものの、普段の言動や行動から見て、女性的な魅力というのは皆無に近い。
彼女のもともとの立場というか身分から時々見せる優雅さはあるものの、やはりそれらもかき消されている。何ともまあ、悲しい事に男性クルーほぼ全員の考えだったりするから救えない。
逆に彼女に不快感を持つものもまあ少ないわけだが。当たりのよい性格や多少暑苦しいくらいの真っ直ぐな性格が受けているのかもしれない。
まあそれはさて置き、ゲイルが彼女に惚れているのは確定事項なわけだが、心底その恋が実らないものだと思ってしまうわけである。
「(あのケイとビルさんの相手しなきゃいけないんだからな、多分)」
正確に言えば、そこにハイネという男が加わるのだが、まあそれはどうでもいいのだろう。
さて一方のラクスはというと、もはや何が何やらさっぱりである。後ろを取ったと思えば何時の間にやら再び後ろを取られていて、正面から攻撃すれば逆にこちらの攻撃が当たらずじまいであるという、
何とも全てが裏目に出ているのだ。というのも、もはやビルにとってはラクスの思考などわかりやすいもので、それにあわせて動いているだけなのだが。実直な彼女の性格が裏目に出ているのだ。
「くっ!また後ろを…!それにしてもここまでいいようにされてしまって…!ああ、もう!目がグルグルしますわ!」
もはやラクスは錯乱状態に陥っていた。錐揉みをしたり、上空に逃げたり、その動きもむちゃくちゃになってきたが、それをビルは追撃し続ける。正直この無秩序な軌道を真似るのは少々応えるが、
それでも錯乱した相手をしとめるのは簡単だ。それは、これを見ていた誰もが考えていた事だ。しかし、ここでラクスは持ち前の"誰も予測し得ない馬鹿な行動"を発揮する。
ラクスは一か八か、変形を途中で止め、急激にブレーキをかけることによって、背後を取る作戦を立てる。背後のモニターを見てビルのバビとの距離、位置を把握し、バビの変形システムを作動させる準備を整える。
そして、背後のバビが衝突コースから少しだけ外れた瞬間、ラクスはバビをブレーキさせながら変形させ、一気に背後へと回る。
ビルはその突然の事に声を上げて驚き、観客達も驚愕の声を上げている。そして、ラクスのバビは攻撃態勢に入る。そう誰もが思ったのだが。バビは動かなかった。
「…?あのバカ!」
動かない、それどころかそのまま落下しそうになるバビを、ビルは反転して自身のバビを変形させて、右腕を掴む。ラクスのバビはぐったりとした状態で釣り下がっていた。
ビルはため息を吐きつつ、ラクスに通信を入れる。
「おおい、ナタリー、生きているか〜」
『…な、何とか…げほ』
「全く…。あんな無茶な変形すりゃ、そりゃ気絶だってするわ。ま、お前のそのチャレンジ精神は褒めてやるけどさ」
呆れつつ、苦笑しながらもビルはラクスの事を少しだけ褒める。ラクスも乾いた声で笑いつつも、どうやら疲労感で一杯のようだ。これ以上の訓練も可哀想だと思い、真っ直ぐミネルバの方へと降りていく。
それを見た観客達は、各々自分達の持ち場へと戻っていく。ケイもすぐに格納庫へと急ぎ、シンとルナマリアもそれについていく。格納庫には、二機のバビが膝をついていて、そのうち一機からはビルが飛び降りてきた。
「ビルさん」
「ああ、あそこに置いておいてくれ。あとで基地のほうに戻す。ちょっとトイレ借りるぞ〜」
ビルの許に歩み寄り、状況を聞こうとしたケイだったが、ビルは見れば分かるといわんばかりに自分の事だけ言って、ミネルバ内部へと入っていった。
不審に思いつつも、ケイはピンク色…だったがカラー弾のせいで色々と口では言いがたい色になっていたバビのハッチを開く。その様子を、興味深そうにルナマリアとシンも見ていた。
「おい、バカピンク大丈夫か…」
「うっ」
「へ?」
…ここから先、文章化する勇気は無いので割愛させていただくが、ケイにとって非常に悲惨な事が起こり、そしてその後ラクスは自室でぐったりと寝込んでいるというのは言うまでもない。
おかげでケイはその後着替えざるえなくなり、しかも洗濯物を溜め込んでいた所為で、ラクスが土産に買ってきた黒い生地に「焼入処理」やら「まるてん☆さいと」などと書いてあるシャツしかなく、仕方無しにそれを着るしかなかった。
そのお陰で散々笑いものにされたとか、そういう話もあるがまあそれはさて置き。
タリアとマッド、そしてビルは三人、基地の責任者のいる部屋に向かっていく。溜まっていたミネルバに関する書類やら報告書やらなにやらと溜め込んでいたので、彼女達の休む暇は少なく、
今もその返答を受けに行かなければならない。それに、彼らがミネルバを離れる事により、クルー達も緊張感から解放されるのだ。
それはつまり、リラックスという士気の上昇にも繋がる。
とりあえずそう言う事だ。三人は司令室に入ると、黒人系の坊主頭の男が彼女らに敬礼をする。彼女達も敬礼を返す。
「ゆっくり休めたかね?ミネルバも、貴官らも」
「ええ、お陰さまで。これも、貴官のご配慮のお陰です」
「なあに。あの包囲網を潜り抜けてきたどころか、返り討ちにしてやったんだ。これくらいは当然だよ。しかし、大変な事になってきたな」
男は椅子に再び座り、回転椅子を回して窓の方を見つめる。少しばかり、坊主頭が光を反射しているが、そんなことは気にせず、タリアは苦笑しながら言った。
「しかし、そうとも言っていられませんわ。戦いが始まった以上、任務をこなすのが軍人…そうでしょう?」
「まあその通りなんだがね。とりあえず、こちらもやれる事はやるつもりだ。さて…まずは人事異動についてなんだが…。ビル=タンバリはこちらに戻ってくると…」
「オレはもう帰りますよ」
男の言葉にビルは少し付け足す。それに男は少し咳き込みながら改めて話を続ける。
「…とまあそういうわけらしいのだが、まあこのゲイルという青年もうちが引き取っていいのかね?」
「ええ。本人もサインを済ませ、了承しております。まあ左足と右手を骨折していますから、ミネルバよりもここで療養していたほうが本人としても気が楽でしょう。
…ミネルバは恐らく、戦中に向かうでしょうし」
「それはまあ、そうだな。ミネルバはザフトの中でも有数の高性能艦。元々が宙戦用とはいえ、これを宇宙に戻すのも勿体無い話だろう。地上を、回ることになるな。
まあ、確かに医療施設が整っているここにいるほうが、気が楽といえば気が楽だ。まあ、どこにいようと死ぬときは死ぬがな」
「そのようで」
男の言葉にタリアは素直に納得してみせる。何ともまあ、地上にいる士官達の質は意外と高いようだ。プラントの中心からはずれ、こうして危険と隣り合わせな場所に送られる人物。
なるほど、無能ではないらしい。
「うむ。…ではゲイルはこちらで引き取るとしよう。それからマッド主任。MSのほう運搬の方は任せる。両機の修理はこちらに任せてもらおう。
バビの部品のほうも持って行き給え」
「はっ」
マッドは敬礼し、男に対して感謝の意を表す。男はそれを見て頷き、そして目線を書類の方へと戻して苦笑する。その様子に少し不審そうに見ていた。
そんな彼に気がつき、男は少し苦笑を大きくして、書類を見つめながら言った。
「いや何。このケイ・クーロンという男のバビ改造計画のための部品請求書なんだが…こんなものを集めて何を作るつもりなんだかと思ってな」
「ああ…まあ若い連中のことはよくわからんですから」
男の苦笑の意味を理解し、マッドも苦笑してみせる。ケイを中心に、どうやらカスタマイズするグループが出来ているらしく、マッドもとやかくは言っていないものの、
少し頭を悩ませているようだ。そんな若者代表、ケイは大きくくしゃみをする。
「…うう、やっぱりこのシャツはダメだ。誰からかに噂されている気がするなぁ…」
「彼女からの土産なんだ、着なきゃだめっすよ、ケイさん〜」
「そうっすよ〜なんつったて、幸せ者ですからね、し・あ・わ・せ・もの!へっへっへってあつっ!」
食堂にて、ケイとヨウラン、それにヴィーノは各々好きなものを頼んで口に運んでいた。ケイはラーメン、ヨウランは日替わり定食、ヴィーノはスパだった。
からかう二人に対し、特に気に食わなかったヴィーノに対してケイはナルトをでこに押し付ける。ヴィーノは後ろに仰け反りながら転び、全員の注目を集める。
ケイは不機嫌そうに鼻を鳴らした後、ラーメンを一杯すする。ヨウランもハンバーグを一切れ口に含んだ。
「実際のところ、ナタリーさんとは上手く言ってるんすか?」
「だから、僕と彼女はそういう関係じゃないって」
「本当ですか?随分と、仲良いみたいじゃないっすか」
「…あっちは、『大事なお友達』、だとさ」
「そうっすか」
がっくりと頭を落とすケイに対し、流石にヨウランとヴィーノはそれ以上追求しなかった。同じ男として、大事なお友達宣言ほどつらいものはない。
泣ける話である。2年間もほぼ一緒にいたというのに、友達から発展していない自分が何処か情けなく思える。やはり、近すぎる関係はお互いに、一種の距離をとりたがるものだろうか。
いやいや、そんなことは無い。恐らくあのバカピンクは愛とか歌いつつ恋人とかそういう関係に疎いだけだ。きっとそうだ。そもそも僕があのバカピンクと恋人と同士なんてそんなこと。
と自分に言い聞かせつつ、ケイはラーメンをすする。と、そんなところへルナマリアとメイリンが現れた。二人とも買い物袋を引っさげて、年頃の少女のような雰囲気でやってきた。
「おお、ルナさんにメイリンちゃんじゃないか」
「やっほー」
「どうも〜」
ルナマリアとメイリンは三人に軽く挨拶をすると、彼らの隣に座る。ケイは興味深そうにルナマリアの買い物袋を見つめる。
「…ルナさんは音楽に興味あるのかい?それ、音楽雑誌だよね。しかも五冊」
「ああ、これナタリーさんに頼まれて買ってきたんですよ」
「ああ、なるほどね」
ルナマリアの苦笑と言葉にケイ、いやその場にいた全員が納得する。あの模擬戦後、グロッキー状態に陥った彼女は、今頃部屋でぐったりと寝ている頃だろう。
というわけで、同じ部屋の住人であるルナマリアが代わりに買ってきたというわけだ。だがしかし、女性が好きそうな音楽雑誌というのは一冊くらいで、他はというと。
「…HIPHOPにロック…デスメタルまであるね。あいつの趣味が分からないな」
「まあ私達の部屋にも結構色々とありますからね。全部ナタリーさんの私物ですけど。まあ、私も使わせてもらっているんですけどね、音楽嫌いじゃないし」
「ふうん」
ケイはルナマリアの話を聴きながらスープを飲み干す。そして、箸をどんぶりの中に放り、楊枝を右手に持つと、その場から立ち上がった。
「さてと…僕はお先に失礼するね」
「あれ?どこかいくんですか?」
「ん?ちょっと基地の工場までね。色々と、MSの改造をしようかと思ってさ。…そんな目で見ないでよ。改造するのはあのバカピンクのやつだけだからさ」
「それ聞いて安心しました。ケイさんってちょっとマッドエンジニアの匂いがするんですよ。バビのバヨネットも然りで」
「あれは急ごしらえで、まだ未完成なんだよな…ってそうか、こういう発言か…。まあいいや、僕はお先で」
「はいはい〜」
どうやら自分にはマッドサイエンティストの才能があるらしいと自覚してみると、何となく空しくなった。2年前からとがが外れた彼にとって、MSの改造も楽しいもので、
その被験者となっているのが何時も彼女、ラクスだ。ハイ何とかハンマーという名の鉄球だとか、ゴルディ何とかクラッシャーという名の金槌だとか、ナタだとか。
正直半分遊びもう半分は趣味で作られていて、実用性に欠けるものが約9割なのだから世話が無い。それにしてもそんな開発する予算が何処から出ているのか、といわれればその殆どがジャンクパーツで作られていて、
格安の値段で作っていて、それでいて彼自身もカスタマイズの仕事を請け負っているから、それなりに儲けているようだ。
ミネルバに乗る前なんかでは、迷彩カラーの地上用ゲイツを作ったとか何とか。全く、抜け目の無い男である。
さて、そんな彼は工場で、ミネルバから持ち込んだバビを解体して、腕部分の改造を行っている。腕の近くにはインパルス用の高周波ブレード。
どうやら、腕の隙間にこれを差込、収出可能にするようだ。ケイは伊達めがねを外して汗を拭い、寝かされているバビを見つめながらつぶやく。
「ふう…ま、あんまり重いものを乗せちゃ、こいつの良い所をぶっ壊しちゃうからね。後はワイヤーでも使って何か作るか…。あの刀とかは、ジンが直ってからだな。早く直れよ〜。やっぱ、あいつの相棒はお前しかいないんだから」
後ろを振り返ってみると、そこにはかつてのラクスの愛機ジンが聳え立っている。だが、その姿は以前の綺麗な姿ではなく、もっとボロボロの状態で、少し哀愁を感じる。
だが、このジンもこの基地で改修を受け、正式に自作ではなく軍を上げてカスタマイズ機として復活する事は決定された。暫く先にはなるものの、出来次第ミネルバに届けられる。
それが楽しみでしょうがない。ユニウスセブン戦でラクスが持ち帰った刀も標準装備となるらしいから。
「ここで何をしているんだ?」
と、そんなところにふとレイが現れた。ケイはスパナを片手に背中を向けたまましゃべりかける。
「別に。ちょっと、あいつの機体の改造をしているだけさ。メカニックマンとしてね。君こそ、こんなところでなにやっているのさ」
「俺は散歩をしていただけだ。たまたま、お前を見掛けたんでな。寄ってみただけだ。しかし、あのライフルといい、お前はつくづくこういうのを考えるのが好きだな。
さすが、スーパーコーディネイターのクローンだけはあるな。戦いのために作られた存在、といったところか。身分がどうなろうが、戦いから離れる事ができない。
お前自身ではなく、ナタリーに戦わせているだけでな」
「…何とでもいえばいいさ。今あいつが戦っているのはあいつ自身の意思だし、それを死なないようにするのが僕の仕事だよ」
「…ふっ…まあ、そう言う事にしておこうか」
レイは少し笑った後、近くに転がっていたパーツの上に座り込む。ケイは少し首を回した後作業を再開した。この作業場は普段は誰にも使われていないのか、静かで、音らしき音といえば、
ケイの作業の音しか聞こえてこない。そこでふと、ケイはレイに話しかけてみる。
「ねえ、レイ」
「何だ?」
「君も、えぇと…何だっけ。名前忘れちゃったな…ええと…ああ、そうそう。クルーゼやムゥさんが持っていたような特異な空間認識能力っていうの、持ってるの?」
「ん…?ああ、そうだな…。一応、と言っておこうか。今のところラウやムゥ・ラ・フラガのように使いこなせているわけではないのでな。
同じ能力者が近づけば、それを感じ取れるくらいだ。…そういえば、あの強奪犯の指揮者らしきものも能力者のようだったようだが…」
レイは思い出したように言う。
「へぇ…そうだったんだ。…ああ、それでさ。その能力って、テレパシーとかそういうこととかできるの?」
「何だ急に。…そうだな…不可能…ではないだろうが…。よくわからないな。この能力自体、そんなに解明されているわけではないし、ラウもそんなに深くは喋ってくれなかったからな」
「そうかぁ…」
「どうしたんだ、急に」
「いやさ…。最近よく、クルーゼが僕にしつこく語りかけてくるというか、嫌味を言ってくるというかね…。もしその能力にテレパシーがあれば、何処かで生きているかもしれないかな、と思ってみたんだけど。
やっぱ都合が良すぎるか」
ケイは苦笑しながら作業を続ける。レイは彼の言葉を聴いて、少し驚いたように顔をはっとさせていた。彼自身、あまり霊だとかは信じないたちなので、そうとなればラウが生きている可能性があると考えるしかない。
そして、この男にずっと語りかけているというのか。そうでなければ、ラウの精神がケイに取り憑いたいうのだろうか。どちらにしろ、こんなに身近にいるというのに、話すことが出来ない。
話したいのに、話せない。そんなもどかしさがあった。
「ん?」
「?」
ふと、何かが飛んでくる音に気がつき、ケイは空を見上げる。レイもはっとして上を見上げてみる。空は眩い光を放っていて、少し眩しかった。ケイのサングラスはそれを遮断し、空にあるものをはっきり彼に見せる。
始めは何も無かったが、すぐに赤い何かがミネルバのほうへと飛んでいっていく光景が見えた。ケイにはどこかで見たことがある機体。ああそうだ、あれは。
「セイバー?完成したのか。ていうか、誰が乗ってるんだ?」
「セイバー…セカンドシリーズの生き残りか」
ケイは少しだけ興味を持ちながらも、別段それを追うようなことをせず、再び作業を開始する。レイはこれ以上話しても無駄だと思い、ミネルバの方へと帰っていった。
そんな彼とは対照的に、ミネルバの格納庫ではちょっとした騒ぎが立っていた。買い物を済ませていたルナマリアやメイリン、シン、そして整備兵一同は突然入ってきたMSに驚き、そのほうに視線を集める。
ケイにセイバーと呼ばれたMSは、そんな彼らを気にすることなく、当然のように格納庫の空いている場所に入る。そしてフェイズシフトが落ちると、ハッチが空いた。
「…あ!」
そこから出てきた人物を見て、ルナマリアは思わず声を上げる。出てきたのはオーブにいるはずのアレックス・ディノ、いやアスラン・ザラだったのだから。
「認識番号285002、特務隊フェイス所属アスラン・ザラ。乗艦許可を」
「あ、あんた!一体なんで!?どう言う事だよ!?」
「もう!口の利き方に気を付けないさい!彼はフェイスよ!」
訳が分からないとシンがアスランに食って掛かろうとしたのをルナマリアが咎める。シンがよくアスランの服の胸の部分を見てみると、そこには特務隊フェイスを表すバッジが付けられていた。
ルナマリア達が敬礼するのを見て、シンは少し納得が行かない様子で敬礼をする。アスランも敬礼を返し、辺りを見渡しながら言う。
「艦長は艦橋ですか?」
「ああ、はい。恐らくは」
アスランと目が合ったマッドは少し曖昧に答えてみせる。先ほど司令室から帰ってきてから、職務を行うとだけしか聞いていないから、恐らくなのである。
「私が案内…」
「確認して御案内します」
「あ…」
「あ…ありがとう」
そこですかさずとメイリンが前に出てアピールしようとしたが、それをルナマリアが制し、アスランを連れて格納庫を後にしようとした。
シンは納得がいかないというメイリンを横に、彼らを呼び止める。
「アスランさん、ザフトに戻ったんですか?」
「ああ…そう言う事になるね」
「何でです?」
「…」
シンの問いに、アスランが答えることはなかった。正直なところ、彼自身もまだ言葉として表せるほど、整理がついているわけではない。
だから、答えなかった。彼は少し沈黙した後、ルナマリアに促されてその場を後にした。シンはただ、その後姿を見つめているしかなかった。
さて一方そんな頃。バカピンクことラクスは包まっていた掛け布団から這い出てきて、時計を見つめる。すでに昼も過ぎた頃。だがしかし、まだ気分が良くならない。
どうやら重症のようだ。今回の酷い結果はこれにも影響されたようだ。しかし、腹は減る。
「(気持ち悪い…けど御腹減った…仕様がありませんわね、食堂で消化のいい物でも食べてきましょう)」
何だかすっきりとしない表情で、青ざめた顔をしながら、ラクスはぼさぼさの髪をそのままに部屋から出て、施錠をしてエレベーターへと向かう。何処か歩き方もふらふらとしていたが彼女は気にせず歩き続ける。
エレベーター前にたどり着き、ラクスはスイッチを押して呼び出す。エレベーターが来るまでの間、とりあえず壁に寄りかかってエレベーターが来るのを待つ。
そんな中、朦朧とする意識を保ちつつ、何だか重症だということを自覚しておいて、来たエレベーターに乗り込む。
食堂がある階を押したつもりだったが、その隣を押してしまい、しかもそれに気がつかず、ただたどり着くのを待つ。そしてたどり着いて降りてみると、何やら違和感がある。
支援?
「(あ)」
気がついたときにはすでに遅し。後ろを振り返ってみるとすでにエレベーターは閉まり、もう一度ラクスがスイッチを押したときにはすでに下へと向かって行ってしまった。
調子が悪くて不機嫌なラクスは少し眉間にしわを寄せ、乱暴に壁に寄りかかる。辺りを見渡してみると、ここは艦橋や艦長室がある階のはずだ。
汗を拭いながら、左の方を向いてみると、そこにはみたことのある特徴的な髪を持った少女が。ルナマリアだ。
何でこんなところにと思いつつ、その奥艦長室の方をみると、やはりみた事のある男がいた。あれは…アスラン…
「ザラ!?」
朦朧としていた意識が一気に目覚め、途方も無く叫び、そして艦長室まで駆ける。それをみたルナマリアは驚いて、急いで彼女を止める。
「ど、どうしたの、ナタリーさん!?」
「何でここに彼がいるんです!一番ここにいてはいけない人が何で、ここ…に…は…ひ…」
思い切り叫んでみたもののすぐに息切れして、ルナマリアに体を預ける事になる。ルナマリアは何をどうすればいいのか分からず、少しおどおどした後、ラクスを抱いたままそそくさと後にしていった。
気を失っているラクスは何だか重くて、何だか恥ずかしさあまりに彼女は文句の一つでも叫びたかった。
という彼女らを置いて、艦長室では話が進む。
「まあ外で騒いでいるバカお二人はほっといて、まさか貴方が、ねぇ」
「はぁ」
「一人フェイスが来るとは聞いていたけど、まさか貴方が最新鋭の機体を持ってやって来て、それでいて、私をフェイスにするなんて、議長は何考えているのでしょうね」
「申し訳ございません」
「貴方が謝ってどうするのよ」
少し意地悪な口調でタリアはアスランに問い詰めると、少しアスランは申し訳なさそうに首を下げる。どうやら何か、一度裏切っておいて戻ってきた事についての自責を感じているようだが、まあそんなことはどうでもいい。
タリアにとって彼が軍人として働けるかどうかのほうが問題なのだから。特に、この問題児の多いミネルバないでは。
「それで?この命令内容は、貴方知ってる?」
「いえ、自分は聞かされてないですが」
「中々面白い内容よ。アーサー」
「はあ。ええっと」
タリアはアスランが来た時に渡された命令書を少しにやけながらアーサーに手渡す。アーサーはそれを、昼食であるカップ麺を机に置き、ゆっくりと読み上げた。
「ミネルバは出撃可能になり次第、ジブラルタルへ向かえ。現在スエズ攻略を行っている駐留軍を支援せよ。スエズの駐留軍支援ですか、我々が!」
「ユーラシア西側の紛争もあって今一番ゴタゴタしてる所よ。確かに、スエズの地球軍拠点はジブラルタルにとっては問題だけど。そこで我々に白羽の矢が立ったわけだけど、
まあ何と言うか、という感じよねぇ。予想はしていたけど、まさか地上艦でもないミネルバに頼らなければいけない状況というのもね」
「艦長…ここは禁煙です」
アーサーが読み上げた後、説明を付け加えて、少しだけ愚痴を零しながらふとタバコを咥えるタリアに対して、アーサーは空かさず突っ込みを入れながら張り紙を指差す。
張り紙には『全艦終日禁煙!喫煙は喫煙室でどうぞ』という文字が書いてあった。何ともまあ、喫煙者に優しくない世の中になったものである。
タリアは心底残念そうな表情でタバコを箱に戻す。アスランは話を戻す意味も込めて、彼女らに質問する。
「ユーラシア西側の紛争というのは?…済みません。まだいろいろと解っておりません」
「常に大西洋連邦に同調し、と言うか、言いなりにされている感のあるユーラシアから、一部の地域が分離独立を叫んで揉めだしたのよ。つい最近の事よ。知らなくても無理ないわ」
「…」
「開戦の頃からでしたっけ?」
アーサーがアスランの変わりに答え、それに対してタリアは頷く。
「ええ」
「確かにずっと火種はありましたが」
「開戦で一気に火がついたのね。徴兵されたり制限されたり。そんなことはもうごめんだと言うのが、抵抗してる地域の住民の言い分よ。それを地球軍側は力で制圧しようとし、かなり酷いことになってるみたいね。
そこへ行けということでしょ?つまりは。まあ連合の瓦解を狙って、ということねぇ。まああの狸が考えそうな事だけど」
「狸?」
「あ、いいえこっちの事。さて、二人にもしっかり働いてもらうわよ」
何となく言ってしまったことをとりあえず誤魔化して、タリアは真剣な表情で二人を見つめる。二人はその表情を見て、敬礼を返し、意を表した。
アスランも、この任務を果たすことでカガリの助けになるならばと考え、そして行動を写すのだった。
さて、時間は過ぎ、夜となったミネルバ。ラクスはやっとの事意識を取り戻し、起き上がる。どうやら自室に戻っているようだが、何時戻ったというのだろうか。
記憶をたどってみても、中々はっきりしない。
「ああ、やっと起きた」
と、左を見てみると、そこには別のベッドの上に座っているルナマリアの姿だった。今は軍服ではなく寝巻きを着用していた。
ああ、そうだ。彼女を見て思い出した。ここにアスラン・ザラを見かけて、あの男を追いかけて、艦長室に入ろうとしたらルナマリアに止められたのだった。
興奮していた上に空腹と体調の悪さが重なって、気を失ったのか。とりあえず今は、すこぶる腹が減っていて、そして体調はいい。
時計を見てみると、もう夜の11時だ。
「…すいません、ルナマリアさん。ご迷惑をお掛けして」
「いいえ、どういたしまして」
ラクスはベッドから起き上がってルナマリアの方を向いて、ここまで運んでくれた事を感謝しつつ謝罪の言葉をかける。ルナマリアは少し嫌味も込めつつも、
素直に答える。そして少し間を置いて、ルナマリアは質問をした。
「ねえ。あの時なんでアスランさんに突っかかろうとしたんです?」
もっともな質問だ。普段おっとりとしていて、怒ることとは無縁そうな少女が、急に血相を変えて、全速力で走ってきたとなれば、
何故そういう風になったかというのは気になる事である。ラクスは少し息を整えた後、静かに答えた。
「昨日…オーブでセイラン家とカガリさんとの結婚で、何者かにカガリ様が攫われたという報道がありましたよね」
「ええ。アスランさんも、少し驚いてましたね。でもそれがどうしたんです?」
「…少しテレビ中継で無理な笑顔を作っているカガリさんと、出発前のあの様子を見て、酷く彼女が悩み苦しんでいる様子だというのがわかったのですが、それなのにも関わらず、
一番傍にいて上げられて、それでいて、彼女の支えになってくれる人が、何でザフトに戻ってきたんだろうって、そう思ったんです。それで…」
「それだけ?本当に」
「…」
ルナマリアはその答えに対しても疑問を感じていた。嘘は言っていない、だけど、何か隠している。いや、今だけではない。ずっと、今までも、そしてこれからも。
だからこういう二人きりのときに聞きたかった。
「まだ付き合って短いけど、少しずつナタリーさんの事わかってきたんです。ナタリーさん、嘘つくのや隠し事は下手糞だって。だって、顔に出るんですもの。
今だって、そういえば初めてあった時だって。何時も隠し事している。多分、ケイさんとか、ナタリーさん自身のこととか。本当は隠したくないのに。ナタリーさん悩んでる。
…それをムリに知ろうとする事はエゴだというのはわかっているけど、それでも私は知りたいな。悩みを共有しあって、一緒に考えて、一緒に解決していく。同じ部屋に住んでて、共同生活を送っている仲間同士として、
ううん、友達同士として。あ、でもやっぱり、無理に言わなくていいですからね、そりゃ、人には言えないこともありますから」
「…」
ルナマリアの言葉に、そこまで言われてはと少し迷うラクスであったが、やはり言い出せない。彼女の隠し事、彼女自身の正体の事は、明かせば自分の、そして彼女の命に関わる事になりかねない。
そんな彼女の様子を少し汲み取ってか、ルナマリアは少しため息をついた後、笑みを浮かべて優しく言った。
「やっぱり寝ましょうか。もう、お互い疲れてますし、明日から新しい任務が始まりますからね」
「新しい任務?」
「ええ。我々ミネルバはジブラルタルに向かい、スエズ駐留軍の援護に向かう、だそうです。暫くは地上にいそうですね〜」
「そう、ですか…。じゃあ、カーペンタリアともお別れですね」
カーペンタリアとの別れ、それはビルとの別れも意味していて、ラクスは少し寂しそうな表情をみせる。ルナマリアも少し苦笑しながら言った。
「そういうことになりますね。…ビルさんや、ゲイルとも」
「え?ゲイルさんが?どうかなさったのですか?」
「あの子、ユニウスセブン戦で怪我してましたよね。その治療のために暫くカーペンタリアで療養するそうです。それに、本人の意向でもあるそうで」
「そうでしたか…。寂しくなりますわね…」
あまり喋った事はないものの、つい最近まで一緒に戦ってきた仲間としては寂しくなるものだ。特に、先日なんかは彼と食事中に会話を楽しんだばかりだというのに。
自己紹介というか、特になんとも無い会話だったのだが、やっと彼が打ち明けてくれたという事実が、余計寂しさを呼ぶのかもしれない。
と、そこで会話が途切れ、とりあえず眠るために電気を消し、ルナマリアは小さな灯りをつけて本を読み、ラクスはイヤホンをつけて音楽を聴いている。
お互い、背を向けあいながら寝転がっていて、視線が合う事はない。と、そんな沈黙の中、ラクスは少し決心した表情を浮かべてイヤホンを外し、ルナマリアに声をかける。
「ルナさん、さっきのことなんですけれど…」
「ん?」
ルナマリアは読んでいた本を手にしたまま、少し体を横に転がし、ラクスの方を見る。ラクスはルナマリアを背にしたまま、すこし躊躇した後、ゆっくり喋り始めた。
「…やっぱり、隠し事ってあまり良くないです。でも、やっぱり今は教えられません。本当にごめんなさい。何時かは、話そうと思います」
ルナマリアは黙ってラクスの話に耳を傾ける。ラクスは、もう一度言葉を捜しながら続ける。
「でも、一つだけ…一つだけ私の秘密をルナさんに教えようと思います」
「…うん」
「私、アスランさんの事、大好きだったんです。愛していた。でも、離れ離れになって…お互いが会えなくなって…。それで…自然消滅、というか…勝手な片思いだったかもしれないんですけど…。
それでも何時かまた会えたらってずっと思ってました」
「そっか…で、アスハ代表とアスランさんが一緒にいる時に再会しちゃった」
「ええ…」
悲痛が篭った小さな声。それでもルナマリアは止めることなく、聞き続ける。ラクスは少し泣きそうになりながらも、我慢して続けた。
「あのお二方が付き合っているだとか、いい関係だとか、そういう噂って言うのは、風の噂とかで聞いたことがあって、知っていました。
私は…あの人が幸せでいれるならいいと思っていましたし、再会して、あの二人が本当にいい関係で、幸せそうで、切り離せない関係だったから、
だから素直に受け入れられましたし、それに…諦められました。でも…今は苛立ちしかでません。国を裏切ってまでオーブに行って、
あの国とカガリさんのために働こうとしたところだというのに、またここへ出戻ってきて…。何がしたいのか、それが理解できません」
「…そう…。でも、アスランさんだって、自分の生き方を自分で選んで、それでここに戻ってきたのだから…。多分あの人たちも苦渋の選択だったんですよ。
オーブのために、みたいな。正直言うと、私あんまりオーブって好きじゃないんですけど。何か、滅茶苦茶な国だし。でも…国を想うことって、素敵だと想うから。
だから、見守ってあげるのも大事だと思うな、私も。それで、彼らが間違った方向に行こうとした時、私達が止めてあげればいいんだから」
「…そう、ですわね。少し、様子を見るのが一番でしょうか…もしかしたら、この道が最良なのかもしれないですし…。でもやっぱり…」
「…許せないんだったら、許せないままでいいと思う。でも、それなりに認めてみてもいいんじゃないかなぁ。持論ですけど」
ルナマリアはアスランの事を庇いつつも、付け足して、ラクスをフォローする。彼女自身としてはアスラン・ザラは英雄であり憧れの人だったので、
あまり悪く言いたくはないが、普段人を悪く言わない彼女にこうも言われて見ると、少し考え直したくもなる。しかし、やはり彼女なりの視点から言った。
ラクスも、それはわかっていたから、それ以上何も言わなかった。少しだけ、沈黙が続いた。
「…ありがとう、ルナさん。少しだけ、気が軽くなりました」
「それはよかったです」
それを破り、ラクスはルナマリアに悩みを聞いてくれた感謝の言葉を投げかけた。ルナマリアは少し笑みを浮かべてそれを返す。
「…そういえば、ルナさんは何かお悩みはないのですか?私ばかり聞いてもらっては何だか不公平というか…お世話になりっぱなしというか…あ、別に無ければ別にいいのですが…」
「え?ああ、あんまり気にしなくてもいいのに…。そうですねぇ…家族の事、かな」
「ご家族のことですか?」
「うん…メイリンの事、ね。後祖父の事」
「…」
ルナマリアは寝返りをして、仰向けになって語りかける。
「うん。あたし達姉妹はね…両親がいないんです。お母さんはメイリンを生んですぐに亡くなったって言ってて…お父さんも交通事故で死んじゃったの」
「…!」
ルナマリアとメイリンの二人の真実を聞いて、ラクスははっとする。そして同時に、過失とはいえ、辛い事を思い出させてしまったと、そういう話題にもって行ってしまったことを後悔する。
しかし、ルナマリアは続けた。ラクスもそれを受け止めるように黙って聞き続ける。
「両親がいなくなって…私達二人は共同で、二人きりで暮らすことになった。でも、生活費だとか学費だとか…そう言う事に困って…そんな時、祖父から援助するっていうメールが来た。
…私は断りたかった。祖父は父が死んだときも、母が死んだときも葬式に姿を現してくれなかった。父はナチュラルで、地球に住んでて、結構な身分で、地上がゴタゴタしていたから、時間が取りづらいっていうのは分かるけど、
それでも連絡の一つでもくれればよかったのに、連絡すらくれなかった。そんな祖父が急に私達の機嫌取りなんて、都合が良すぎると思ったんです。でも…やっぱりお金が必要だった。だから、断れなかった。
メイリンは喜んでました。生活が楽になるって。元々、あの子は祖父に対してそんなに悪いイメージがなかったから…。私は複雑でした。祖父が嫌いでしたから。
…それで今日、ちょっと夕食中にメイリンと祖父の話になって…気まずい感じになっちゃったんですよ。あの子に、何で祖父を悪く言うのかって言われてしまいました。私としては、メイリンとは仲良くしていたんですけどね…。どうしても、祖父に関してはダメなんです。
どうしたらいいんですかね」
「…そうだったんですか…。私は…メイリンさんの気持ちが分かります。殆ど唯一と言ってもいい、肉親ですから。私にも…両親はいませんから」
「あ…」
「多分、メイリンさんもルナさんと同じ考えなんですよ。それで、お爺様の事をルナマリアさんに好きになってほしいんですよ、多分。…だからルナさんは、そのメイリンさんの気持ちを理解しようとしてあげる事が第一だと思うんです。
理解して…理解し切れなくて、どうしても否定したかった時は、そのときは彼女に本音をぶつけてみるのが一番だと思います。それにさっきルナさん、私に言ってくれたじゃないですか。
許せないんだったら、許せないままでいいと思う。でも、それなりに認めてみてもいいんじゃないかなぁって」
「あ…なるほど…そうですね。とりあえず、メイリンともっと色々話してみようと思います。それでダメだった時は…そのとき考えます。ありがとう、ナタリーさん」
「…こちらこそ、ありがとうございました。そして、無理に聞いてしまってごめんなさい」
「ううん、こちらこそごめんなさい。何か、自分で言っておいて、自分で貫けてなかったみたいだし…薄っぺらくなっちゃった」
「そんなことないですよ」
ルナマリアとラクスはお互いに礼を言い合って、そして謝罪した。だが、多少無理やりでもお互いの悩みを知る事ができた、という事実は少なからず彼女たちの絆を深める事になった。
そう思えると、何だか二人の顔に自然と笑みがこぼれてきた。
「ルナさん…。明日から頑張りましょうね」
「…うん、お休み」
そんな心地で、二人は夢の中へと入っていった。
翌朝。
「うぃ〜っす」
「おはようございま〜っす。ってケイさんめっちゃ瞼の下に隈できてますよ!?」
「おおう、寝てないぞ、僕は寝てない!うん、寝てない!アハ、アハ」
「(やべぇこの人、相当キてるよ)」
格納庫にて、ヴィーノは徹夜明けの酷い顔をしたケイに出会い、ぎょっとする。相当急ピッチで仕上げたのだろう。疲労困憊を通り越して、どうやら一種のハイ状態になっているようだ。
正直関わりたくないと引き気味なヴィーノの元に、元気な声が聞こえてきた。
「お〜っす、ヴィーノ。おはよ〜」
「お早うございます、ヴィーノさん、ケイさん!」
「お、おっす!ルナ、ナタリーさん!」
あまりに元気な声に、ヴィーノはさらに引いてしまう。普段以上に元気なルナマリアと、昨日の体調不良は何処へ飛んだのか。いや、体調不良の反動でここまで元気なのか。元気すぎるラクス。
ケイにいたってはその声で倒れそうになっている。そんな彼を見かねて、ラクスは彼のもとへと歩み寄って、肩を叩いた。
「ケイさん、大丈夫ですか?倒れそうになって…あんまり無理しちゃいけませんよ?」
「…誰の所為だと思ってるんだー!!」
「キャー!」
ケイの怒りと八つ当たりのコブラツイストがラクスに決まる。ラクスは悲鳴を上げながら、ケイの背中をバンバンと叩く。しかし、この光景も何時もの事であるから、妙な関係である。ヴィーノは呆れて、ルナマリアは苦笑しながら見ていた。
「どうしたんだ?ナタリーさん、昨日より断然元気じゃん。何かあったの?」
「ん?まあね…女の子同士の秘・密!ってところよ」
「何だそれ、ちょっと気色悪いぞ、ルナってイタタタッタタ!!」
「だぁれが気色悪いって?」
「や、やめ、ちょ!フォール!フォォル!関節はそっちにはまがらなアッー!ゲイル助けてー!」
「え、ゲイル?」
ヴィーノの失言に対し、ルナマリアは華麗に関節技を決めて、ヴィーノは必死に抜け出そうとするが、ルナマリアのあまりの強さに抜け出せず、ついには近くを通りかかったゲイルに助けを求める始末である。
そんな彼の言葉でゲイルに気がつき、ルナマリアはヴィーノを解放してそっちの方を向く。どうやらゲイルはこれから荷物を持ってカーペンタリアのほうへと行くらしく、松葉杖を持っている右手とは逆の手にバックが握られていた。
「あ…」
「ゲイルさん?ほい!」
「アッー!」
そんな彼にラクスも気がつき、体力不足でもうすでに死に体のケイを簡単に解くと、彼の元へと歩み寄る。恐らく、他のメンバーは昨日の地点で別れを言ったはずだが、
ラクスはまだ何も挨拶もしていなかった。
「ゲイルさん。ルナマリアさんから聞きました。この艦を降りられるそうですね。折角仲良くなったばかりだというのに、残念です。カーペンタリアでも頑張ってくださいね」
「う、うん…俺も、ナタリーさんとさ、最後に喋れてよかったよ…」
少し照れ気味な表情を浮かべて、ゲイルはラクスと握手を交わす。そんな様子をルナマリアは一種、何かのドラマを見ているような様子で見ていた。
暫くしどろもどろとゲイルは口を篭らせていて、ラクスも笑顔ながらどうしたのだろうとゲイルの言葉を待つ。
ゲイルは一度深呼吸して、そして一大決心の思いで口を開いた。
支援。
「ナ、ナタリーさん!俺、貴方の事が…!」
「え?」
「おお?」
「俺…!貴方「おおい、ゲイル!何やってるんだ、早く来い!」…」
ラクスが少し残念そうながら見送りの言葉を贈ると、ゲイルも別れの言葉を言い、そして彼は躊躇した後、勇気を振り絞って告白をしようとしたまさにそのときだった。
搬入口から、ビルの大きな声が響いてきて、ゲイルの言葉はラクスに伝わる事はなかった。ルナマリアはやってしまったという表情で手で顔面を覆って残念そうな声を出してしまった。
それに対し、少しぎょっとしてしまったが、それでよかったのだと、ゲイルは思い、彼女に対して敬礼をしていった。
「…俺は、貴方の無事を…祈ってます!」
「?はい!ありがとうございます」
少し不審に思いながらも、ラクスも敬礼を返す。そしてゲイルは踵を返して、ビルのほうへと歩いていく。そして、朝日の光の中に、二人は消える前に、もう一度ラクスたちの方を向いて言った。
「どうかお元気で!!」
「達者でやれよ、ナタリー!そんで、何時でも帰って来い!あいつらは何時でも待ってるからな!」
「ええ!お二人共お元気で!」
「達者でね〜!」
ラクスとルナマリアは手を振って彼らを見送る。ビルとゲイルも手を振り、それに答えながら朝日の光に消えていった。ビルとゲイルは、ゆっくりとミネルバから離れていく。
「さっきは悪かったな」
「いえ、別に」
「…本当に良かったのか?今なら引き返せるぞ」
と、その途中。ビルはゲイルに訊ねかける。本当に降りてよかったのか、名残惜しいのではないか、特に、ラクスに関して。しかし、ゲイルは今までみせなかった爽やかな笑顔で答えた。
「俺があそこにいても役に立てないで、迷惑をかけるだけです…。それは、ナタリーさんに対しても同じですから…。だから、俺、今よりも強くなって、何時かあそこに戻って…それで、
今日伝えられなかった事を、伝えようと思います」
弱き少年の強い意志。彼の瞳に、ビルは何時かのラクスの姿を思い出す。まだお嬢様で、何も知らなかったあのとき。彼女は果敢にもMSに乗って戦闘をしようとした。
そのときと同じ瞳を持っているゲイルを、ビルは何となく気に入って、彼はゲイルの背中をぽんと叩いて励ました。
「そうか、意気込みはよし。あとは努力と根性だな!」
「はい!」
ゲイルは力強く頷いてみせる。何時か戻る。そして、今度こそラクスに告白する。その思いを胸に。
最後の最後で規制に巻き込まれました。
でもまあぶっちゃっけ次に回せられるので、次回にて
それにしても、今回はちょっと色々と急に出しちゃった感が否めません・・・
もうすこし練ればよかったかなぁと投稿したあとに思っても後の祭り
このスレも早くも四スレ目、皆様コンゴトモヨロシク・・・ ちなみにタイトルと冒頭は平沢進氏の曲より・・・
投下乙
ブラックk7が今回の自動プログラムを応用して「ウェイクアップ・ダン」もとい、
「ウェイクアップ・ハウンド」をやってくれる事を祈ってる
GJ!!
(;∀;)面白すぎるぜ!!
MS戦の書き方が相変わらず格好いい!。
今回は展開が早くて、ついて行くのが大変だったけれど一気に引き込まれたよ。
しかしブラックk7の狂気と何も知らない代理人、覚悟が違いすぎて悲しくなってくる…。
今回のバカピンクは戦うヒロインって感じだったな…、ルナとの会話シーンにはグッと来た。
GJ!
正直ユウナとk7が手を組むとは思いもよらなかったがすげぇ良展開!
超GJ!!
ゲイル・・・戻ってきても壁は厚いぞ
ハイネとケイが・・・
まあ玉砕必死(涙)
GJ!
>>42 壁が厚いってか……死亡フラグ立てたように見えたのは俺だけかw
>>43 あ、それ俺も思った。そのうち基地に何か攻めてくるんじゃないかってくらいw>死亡フラグ
ブラックk9くんはやっぱりメインキャストの一人だなあ、と思いつつGJ
前スレがumeで埋まったな。
なんであれだけやってて規制されないかね。
あれって書き込みがしばらくないと来るみたいだけど…ボランティアのつもりか?
しすぎてもだめだけど、やっぱりある程度の雑談は必要かもしれないね。
適度に雑談してスレのまったりと雰囲気を保ちつつ、投稿宣言があれば大人しくするくらいの気持ちで。
今まではぴったり止まっちゃって寂しい時もあったからなぁ。
とりあえず段々ケイが病んできたな。
遅れてGJ!
バカピンクのヒロインっぷりが最高ですな。
さらに遅れてGJ!
ホーク姉妹の家族関係に踏み込んできたのは良かったな。
祖父さん、敵方で出てきたりして(ぉ
微妙にラウ関係もなんか伏線あるっぽいし
実は祖父は盟主王の親父さん(名前忘れた)だったんだよ!!ってのはさすがに無いか・・・
>>47 そりゃ、狂うぜの幻覚みてるしなぁ(関係ない
ほどほどの雑談は賛成
ブラックハウンドの対艦刀・・・柄に銃口があるってことはソードストライクの対艦刀の発展系or完全版か?
ソードカラミティの対艦刀じゃね
あれは確かビームだったよね。描写を見る限りというか、ハウンドのは実弾だからちょっと違うっぽい。
多分その系統なんだろうけど。
接近戦と射撃戦を考慮しているから、ルナマリアが知ったらケイに作らせそうだ。
ルナマリアは射撃が苦手とかいいながら砲撃担当してるし、
そのセリフのせいで逆に接近戦は得意なんじゃね?と思われている不思議な子。
まあ赤服なんだし近接も遠距離も平均以上だろうけど
PCのネット環境断絶のため、自宅以外から書き込んでいます。
9月まで復活する見込みなしです。
現状報告でした。
べ、別に悲しくなんかないんだからねっ!
ロウ「悲しいけど、これって戦争なのよね」
保守ピンク
ベガルチョ保守
キラ三兄弟(嘘)保守
仙臺灼熱保守
>>61 ブラックk7「僕は古吉良!」
ケイ「僕は今吉良!」
キラ「ぼ、ぼくは新吉良…」
キラーズ「僕ら三人揃ってキラ三兄弟!」
ブラックk7「てめーこのやろーここであったがひゃくねんめーぶっころし」
ケイ「お、落ち着け兄者!本編ではまだ僕達会ったことすらないんだよ!?ちょ、台詞棒読みの割りに本気!?ちょ、スティンガーは勘弁www!」
キラ「はあ…帰りたい」
正直スマンカッタ…。
>>63 ワロタw
それにしても
全てを失った長兄、最初から何一つ持っていない末弟
こいつらに比べるとケイの方がまだ幸せだなw
バカピンクがいて仲間がいて幸せだけど
シンの家族殺っちゃったの隠してるしクルーゼの怨念に憑かれるしwww
でも長兄と末弟に比べるとやっぱり幸せだなw
長兄もある意味幸せだぜw
100%完全否定できる敵を、思いっきり殴れるってのは、ある意味だけど幸せだよ
ある意味、でしかないけどさ
>>63 古と今の掛け合いにワロタw
そんで思ったわけですよ
ピンク三姉妹
末娘はミーアで補完
ミーア「い、胃薬を……」
こうですか、わかり(ry
保守
古ピンク「あはははは〜(天然)」
今ピンク「うふふふふ(超腹黒)」
新ピンク「い、胃薬を・・・議長タスケテー(泣」
こうですかわかりません!><
投下キボンヌ
綾崎保守
う〜ん、また時間が掛かりそうな上に今更ながらどうでもいい修正を。
>>34 父はナチュラルで→祖父はナチュラルで
なるべく早く次話を投稿しようと思います!
チハタソ保守
今日も暑いな
保守
間が開いた保守
保守上げ
残暑厳しいな
保守
マターリ保守
昨日の分を保守
保守
ちょっと短めですけど、書き終わりました。今から推敲します。
上手く行けば夜には投稿できるかもしれません。
おk。
待ってまーす ノシ
よっしゃーイクゾー!
インド洋連合基地近海。
地球連合軍第81独立機動群ファントムペインに所属し、部隊隊長を務めているネオ・ロアノークは、一人揚陸艦の隊長室で窓の外の朝日を眺めていた。いやに爽やかな日差し。
そんな日差しを少し浴びて、部屋の中にもう一人、男の影が浮かんできた。ネオは男に話しかける。
「遠くローエングリンゲートからご苦労なこって。だけど、MS開発部直属の実験部隊の中尉殿が、ここに何の用だ?しかも一人とはね」
男は無表情を崩さず、右手に持った胡桃をいじくりながら答える。
「大して貴方と仕事は変わりませんよ、ロアノーク大佐。俺はあんたが持っている、ザフトから強奪した三機のMSのデータが欲しいだけです。それも、実戦データをね。
それを隊長に頼まれたから、俺が来ただけです」
「ふ…ニシオカ大尉殿は元気にやってるのか?」
「隊長は無能な上司に無理を押し付けられつつも、何とかまあ、やってます」
「そうか、お互い変な上司の下につくと大変だな」
ネオは自分の机の引き出しからある書類とディスクを取り出すと、男が座っているソファーの前のテーブルの上におく。男は少し内容を確認した後、少しだけ不敵な笑みを浮かべて、それを懐にしまう。
「さて…これでお前さんの仕事は終わったわけだが、これからどうするんだ?」
「噂に寄れば、これから派手にドンパチをやらかすとか…。あのファントムペインと互角に渡り合えた新型艦ミネルバと…。どうせ何時かは戦う事になりましょうし、威力捜索ということで、俺も戦闘に参加させてもらいます」
男の言葉に、ネオは少し意外そうな顔をしながら、確認するように聞く。
「あのダガーLでか?」
「ええ。任務を遂行した後の私情として。コーディネイター、空の上の化け物は叩いておきたいんでね。やつらにはまだ、返しきれない恨みがある」
「そういう君こそ、コーディ…」
「それ以上は言わないでください。俺は地球連合軍第十七MS実験部隊マクスウェル所属オディオスです」
ネオが彼の素性を口にしようとした時、オディオスと名乗った男はそれを止めた。オディオスは胡桃を握りつぶし、そして中身を口の中へ放り込む。
ネオは仮面の向こう側から、この男を興味深そうに見ていた。この男は自分達と同じナチュラルではなく、元々はプラントに住むコーディネイターだ。
しかし彼らも全てがすべて、あの宇宙に暮らしているわけではない。オーブはその典型で、ナチュラルとコーディネイターが共存する国だ。まあ、それでもお互いの弊害はあるらしく、差別なども消えてはいないようだが。
そして、それは連合内部でも同じことだ。そして彼らもまた、エイプリルフールクライシスの被害者でもある。その強靭な体を持ってしまった彼は、ナチュラルの妻を亡くし、そして父と母を亡くした。
全てを失った男は軍隊に入り、ブルーコスモスとして、コーディネイターと戦う道を選んだ。
サトーとは対極の思いを持ち、そして同じ境遇に立っている男。男もまた全てを失い、その憎しみを押し込めて、そして今日もまた、敵を討つ。
全ては青き清浄なる世界のために。
第10話 「BLUE」
オーブより少し離れた海底。ここに、アークエンジェルがその羽を休めていた。
何とかブラックk7やオーブ軍を振り切り、フリーダムはアークエンジェルへとたどり着くも、その機体はボロボロになり、海に叩きつけられた衝撃によってカガリは気絶してしまった。
キラはすぐにカガリを抱きかかえて機体から出て、医務室へと彼女を運んだ。幸い、彼女は一時的に気を失っているだけで、他に体の異常は見られないということらしく、
キラや他の者達は胸をなでおろして、その回復を待ちつつも、今後の行動について話し合っていた。
さて、そんな最中に、やっとカガリは目を覚ます。起き上がり際、少し頭痛がし、彼女は頭を右手で抑えつつも、首を横に振って意識をはっきりさせる。
記憶が少し錯乱していて、整理がつかない。ここは何処だろうか?自分は確か、結婚式を行っていたはずだ。そのときに、フリーダムに攫われ、黒いストライクに襲われ…。
「あ…目が覚めましたか。何処か痛む場所はありませんか?」
ベッドを仕切るカーテンが開かれ、女医が声をかけてきた。やっとの事記憶と意識がはっきりしてきたカガリは彼女の質問に首を横に振って答えつつ、今度は自分が質問を返した。
「ここは…アークエンジェルか?」
「ええ。アークエンジェルの医務室です。ご無事で何よりです、カガリ様」
「ご無事で何より、か」
どうやら助けられてしまったようだ。確かにあの時、黒いストライクに襲われたときは怖かった。といっても、あれはどう考えてもキラを狙っていたものだから、どちらにしろ彼らが誘拐などしなければ
こちらはあんな恐怖に襲われなかったが、それは置いといて、あのどす黒い殺意は今まで戦場にいたこともある彼女も感じた事はなかった。しかし、その恐怖も生きているうちだったのだろう。
現にそれを思い出したのは立った今、起き上がったときだ。いっそのこと、このまま眠ったままだったらどれだけ楽だっただろうか。責任や形式などに囚われることなく、恐怖からも解放され、自分は自由になれたはずだ。
しかしそれはただの理想。そして逃避。今も逃避中ではあるが。どうあがいても、もう自分は何からも逃げられないのだろう。そういう生き方を選んだはずだ。
そして、もうすぐ諦めがついたというのに、それを邪魔されて。冷静に考えれば酷く残酷な事をされたと思う。責務を果たせないで、そのまま逃げたことになっているのだ、自分は。
「キラ達は何処にいる?」
「え?ああ、ブリッジにいらっしゃると思いますが。皆さん心配していましたよ?」
「そうか」
いや、まだその責任を果たせる時間はある。自分はまだ生きている。生かされているのだ。生きると言う事は、戦う事なのだから。
カガリは着替えを済ませて、キラ達がいるであろうブリッジに向かっていく。そして、いくつかの扉を潜った後、広い空間を持つ部屋にたどり着く。
ブリッジにたどり着いた彼女が最初見たのは、通信席の隣で大型のモニターを見ているキラと、その次に見たのが通信席に座っているラクス。
そして艦長のマリューとバルドフェルドとその他もろもろの、かつてのアークエンジェルの乗組員の一部だ。どうやら戻ってきていない者もいるようだが、まあ当然だろう。
こんなことに付き合う事自体馬鹿げているというのに、よくもまあコレだけ集まったものだ。
「…あ、カガリ!」
「カガリさん」
キラとラクスが同時に振り返る。カガリは不機嫌そうな顔をして、彼らの横を通り、そしてブリッジ正面の窓を見つめる。まるで水族館のような綺麗な光景だが、
それもカガリにとっては今では嫌味にしか見えない。やれやれ、そこまで私はひねくれ始めたかと少し自重した後、口を開いた。
「…全く、余計な事をしてくれたな、お前達は!こんなことをしてただで済むと思っているのか!?公式の場から国家代表を誘拐して!お前達は国際的な誘拐犯として
手配されてしまうんだぞ!?」
「いや、まあそれはわかっているのだけどねぇ…」
そんなカガリに対し、バルドフェルドははぐらかす様に言う。カガリはそんな彼の態度が気に食わず、更に怒りで顔を赤くしながら感情的に叫び散らす。
「正気の沙汰だとは思えないな!こんなことをしてくれと誰が頼んだ!ええ!?」
「でも、仕方ないじゃない。こんな状況の時に、カガリにまで馬鹿なことをされたらもう、世界中が本当にどうしようもなくなっちゃうから」
と、そんな彼女に暴言とも言うべき言葉がキラから発せられた。だが彼の瞳には邪な感情など見られず、何か考えがあってこのセリフを出したらしい。
しかし、そういう事実があるとしても、今のキラの言葉はカガリの神経を逆撫でするだけだった。
「馬鹿なことだとぉ!?」
「キラ!」
「大丈夫だよ、ラクス」
カガリは今にもキラに食って掛かろうとして、ラクスは彼を諌めようとするが、彼は笑みを浮かべてそれを止める。
何が大丈夫だというのだ。更にキラのことが気に食わなくなりつつ反論する。
「…なにが…なにが馬鹿なことだと言うんだ!私だっていろいろ悩んで、考えて、それで…!」
「それで決めた。大西洋連邦との同盟やセイランさんとの結婚が本当にオーブの為になると、カガリは本気で思ってるの?」
「な!?本気に決まっているだろうが!あれはな、ユウナと二人で話し合い、そして私が決めた事だ!あいつの言うとおり…私には、この国を再びを焼くことなどできない!この道しか…ないんだ!」
「でも、そうして灼かれなければ他の国はいいの?」
カガリの反論に、キラは再び疑問を投げかける。その疑問に、カガリは思わず閉口してしまう。今までしてきた事、世界の全てが再び戦いを起こし、あの悲劇を二度と起こさないようにしようとしてきた。
だが、今やっている事はなんだろうか。ザフトに強い力は戦いを呼ぶことになると謳いながら、自分の国を守るために強い力に頼るしかない今。
自分の今までやってきた事は一体なんだったのだろうか。しかし、それを認めようとすると余計に苛立ってくる。何なのだ、このジレンマは。
「もしもいつか、オーブがプラントや他の国を灼くことになっても、それはいいの?」
「…言い訳がないだろ…」
「ウズミさんが言った事は?」
「ああ、そうさ!私は理念を捨て、自分のいったことさえも守れない卑怯者だ!そうはっきり言ったらどうなんだ、ええ!?」
キラの投げ掛けに堪らなくなったカガリは思わず彼の胸倉を両手で掴み、そして言い寄る。その瞳には涙が浮かんでおり、どれだけ思いが溜まりこんでいたのかがわかる。
そう、彼女だって本心でしてきた事ではない。それは彼女自身が分かっていた事だ。だが、それを他人に指摘された瞬間、彼女の心は崩壊した。
「お前達に何がわかる…お前に何がわかる!!2年間何もしなかったお前達に…ただ…何もせずに…貪っていたお前達に…」
「カガリ…」
「カガリさん…」
だが、そのカガリの勢いもすぐに弱まった。泣き崩れるようにその場に膝まつき、彼女は涙を流しながら俯いた。ぽろぽろと、涙がブリッジの床に落ち、その涙のしずくから、彼女の表情が見えた。
溜まりこんでいた事が全て吐き出され、そしてその反動で気力が抜けていく。まるで、張り裂けそうだった風船の中の空気が全て抜けるように。そんな彼女にキラは優しく声をかけた。
「カガリが大変なことは解ってる。今まで何も助けてあげられなくて、ごめん。でも、今ならまだ間に合うと思ったから。僕達にもまだいろいろなことは解らない。でも、だからまだ、今なら間に合うと思ったから」
「…」
「みんな同じだよ。選ぶ道を間違えたら、行きたい所へは行けないよ。僕達は今度こそ、正しい答えを見つけなきゃならないんだ、きっと。逃げないでね」
「正しい答え…か」
そんなものあるのだろうか。独りよがりの答えに何の価値がある。ああ、そうだ。二年前だって、独りよがりの答えを出した結果、あんな犠牲を出してしまったのだ。
「(ナタリー、私、こんなことをしているんだぞ。こんなことをしていて、答え、見つかるかな?お前がここにいたら…何て言っていただろうな)」
そんなことを思ったところで言葉は返ってはきやしない。何だか急にカガリは寂しくなりつつ、どうせ今オーブに戻ろうとしても戻れる状況じゃない。彼らが止めるだろう。無理やりにでも。
だから、この状況にでも甘えて、少し休もう。そうカガリは思っていた。この選択が、何時か彼女の運命を変えることは露知らずに。
そのオーブではというと。
「き・さ・まぁぁぁ!!」
「うひぃぃ!」
ユウナが代表代行として現在働き場所としている、執務室にて。ユウナは部屋の隅っこで震え、頭を抱えながらみをちぢこませて、それに対し、ブラックk7は義手を指を力を込めながら握ったり離したりしている。
どうやらカーペンタリアに行く前にアスランがここに立ち寄り、入国拒否され、追い出されたという事実をブラックk7には隠されていたというか知らされていなかったらしく、
それに憤慨したブラックk7が執務室へと忍び込み、穏便かつ激しく詰め寄ってきたのだ。ただの政治家であるユウナにとって、殺人鬼の殺意は恐ろしいだろう。今にもいろんなものが出そうなくらいだった。
「ま、まままままあおちちちついてよ!これには深いわけがあって…」
「訳って何だよ、訳ってよぉ!おいこらぁ!なめてるのか!おら!」
「ヒィィ!」
言い訳がましく言うユウナに対し、ブラックk7は蹴りかかる。わざとユウナの顔にあたらぬよう、かつ恐怖を与えるように左へ右へと、ユウナの顔を避けて、その後ろにある壁をけり続ける。
一度の蹴りで壁は徐々に削られていくのだから、その威力はまさに目に見えていたので、結果的にユウナは動く事ができなかったので、本当に左右という感じだったが、それでも効果覿面だ。
「ヒィ、ヒィ…」
「ちっ…まあいいや。…で、訳を聞こうか。それ次第では…わかってるよね?」
「あ…ハァ…ハァ…うん…わかっているさ」
ブラックk7はユウナが完全にひるんだのを確認して、舌打ちした後、高そうなソファーに座り込む。ユウナは息を荒げ、涙目になりながらも、何とか虚勢でもいいから張ろうとしつつ、自分の椅子に座る。
しかし、まだ落ち着かない。内心震えながら、彼はことの事情を説明し始める。
「一応、追い出した建前は知っているよね?」
「ああ、連合との同盟でしょ?敵であるザフトの君は入国できません、即刻退去すべき。だったら僕を呼べば、ザフトに行ったあいつをこの手で殺してやるつもりだったのに」
ブラックk7はもう一度舌打ちをする。彼にとってはアスランへの復讐も、生き甲斐の一つとして存在している。そのチャンスをうやむやにされたのだから溜まったものではない。
そんな不機嫌な彼に対しまだ怖気つきながらも、ユウナは続けた。
「本当ならね。でも、それができなかったのはタイミングの所為さ。僕らオーブはまだ、プラントとのつながりを持っていなくちゃいけないから、あくまで『連合の言いなりになる小国』を演じなければいけない。
それなのに、むやみに撃墜なんてしてみなよ。何かいいかがりを付けられて、ここを攻められるかもしれない。そしたらオーブは完全に終わり。デュランダルは、何らかの形でこのオーブを欲しがっているはずだから。同盟であれ、占領であれ」
「ふぅん、それで黙って逃がしたと」
「黙ってじゃない。ちゃんと手続きを踏んで、正当な遣り方で追い返したんだよ。タイミングが大事なのさ…」
ブラックk7の揚げ足にユウナが少しいらつきながら言い返す。どうやらそろそろ冷静さを取り戻したようだ。恐慌状態と平静の状態ではユウナという男は極端に表情を変える。
それは、ポーカーフェイスを持ち味にしなければいけない政治家にとって、多少、いやかなりの欠点ではあるが、彼自身の持ち味であった。ブラックk7も、何となくこういうところをからかいたくなる。
「…!!」
そら来た、とブラックk7はくっくと笑いながらユウナの事を見る。ユウナは自分の股間に起こった惨劇に彼も気がついていると知り、顔を真っ赤にしつつ、部屋から出ようとする。
「失礼します…っとと、ユウナ殿?」
「忘れ物を思い出した。一度屋敷へ戻る!書類は机の上に置いておけ!」
「え、しかし」
「いいから!」
部屋の前でノックしようとした軍人、トダカを押しのけて、ユウナはそそくさとその場から立ち去ろうとした。当然何事かとトダカはユウナを呼び止めようとするのだが、その前にユウナは走り去って言った。
まあ彼に起こった惨劇は、彼のプライドをづたづたにするようなできことであり、誰にも知られたくない事だから、その焦りは察すれど、しかし逆にそれが彼の惨劇を皆に知らせてしまう結果になってしまう。
トダカも何事かと呆然としていたが、何となく部屋に入って、ブラックk7の存在に気がつき、何となく察してしまって、ため息を吐きながら書類を置き、ブラックk7と向かい合うようにソファーに座って声をかける。
「あまりいじめてやるなよ」
「隠し事をしたあいつが悪い。殺されなかっただけマシだと思わなきゃ」
「…ふぅ…」
やれやれと肩を落としながら、もう一度ため息を吐くトダカ。ブラックk7はなおもケタケタと笑いつつ、腰に差していたナイフを皮製の鞘に入れたまま取り出し、それを自分の真上に投げては取って遊び始め、そして不意にトダカに声をかける。
「ところで、カガリ…さんやテロリスト達の行方はつかめたいのかい?」
ブラックk7は少しカガリを様付けすることに躊躇しながらも、極力感情を込めず、自然と喋る。とりあえず自分がキラ・ヤマトのオリジナルと言う事は、ユウナだけが知っている事になっている。
あまり騒ぎになっても仕方ないし、そもそもこの国はカガリとラクスとキラを崇拝するものが多く、内通者がいるやもしれない。知られてしまえば、ブラックk7を手駒とする計画が台無しになってしまうのだ。
元々ブラックk7も正体を教えるつもりはさらさらなく、余計な面倒ごとも嫌いなので、ユウナの思惑に自然と乗っている。それでも、自分に正直な彼は意外に演技がへたくそだ。
「いや…はっきり確証のあるものはな…。ただ、地上で彼らを迎えられるところといえば、数少ないだろうが」
「そうかぁ。まあ、そう簡単に彼らが見つかるとは思ってないけどねぇ。隠れるのは得意だろうし、それに諜報員が隠している可能性もあるし」
「なめないで貰いたい。確かに彼らは英雄だが、今回彼がやったことで何人の怪我人が出ていると思っている。それに加えて元首誘拐。これはれっきとした犯罪だよ」
「さてさて、勤労なことでご苦労様ですけど。生憎ですけど僕はこの国の言葉はあんまり信じないんでね。態度で示して欲しいなぁ」
投げたナイフが振ってきたのを掴むと、今度は右手で、左手の掌に刃の部分をぱし、ぱしとたたき始める。トダカは冷や汗をかきつつ、目の前にいる男を見続ける。
傭兵として自分の部隊に配置された時から、この男は何処か得体の知れない何かが感じられていたが、今もそれをチリチリと感じられる。
「他国に侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入せずね。言葉は綺麗だけど、実際は言葉は言葉だしね」
段々、心なしか掌を叩く音が大きくなっていく。それに連れて、ブラックk7の顔が段々歪んだ笑顔になりつつある。
「全ては実体をえられたもの、目に見える形のものしか、僕には真実として映らない。何を為したか、だけだ。その点ではわりとユウナのやつは価値があるけどね」
トダカはブラックk7に、何時かの少年…そう、彼が2年前、連合がオーブに侵攻した際、戦闘に巻き込まれ家族をなくしたシンを保護し、プラントに行けるよう手配したのだが、そのシンが一時期見せた瞳と同じものを見て、
それが何かが理解した。これは、憎悪だ。しかも数段狂喜も混じって、混沌としたものだ。
「いやあそれにしてもまだかなぁ。楽しみでしょうがないや」
ブラックk7はナイフを左手で受け止め、そしてそれを少しだけ抜いて、刀身を見ながら、最大限に感情を込め、歪んだ笑顔を見せる。
トダカは彼のMSの操縦する腕はオーブの中でも随一なのは認めており、大変な戦力になるのは間違いないが、しかし、この男は諸刃の剣だ。
オーブにとって毒薬になるか、それとも良薬になるか。それはユウナ次第なのだが、トダカには彼にブラックk7を上手く扱えるとは、到底思えなかった。
インド洋
一方のジブラルタルに向かうミネルバ一行。ミネルバは海にその体の下半分を浸からせ、悠々と進んでいく。そんな中、海原をブリッジでアーサーは外部カメラを自分の席のモニターに映して眺め、タリアもリラックスした状態で
書類を見ていた。
「いやぁ、しかし、護衛に潜水艦一機を付けてくれるとは、カーペンタリアの司令官殿はふとっぱらですなぁ」
「それだけ期待されてるって事よ。逆にここでヘマしたら、どれだけ大目玉を受けるか分からないわね」
アーサーのお気楽な発言に、タリアは少しだけ釘を刺しておく。ミネルバの下、海中にはカーペンタリアより潜水艦が護衛として付いている。あの司令官の計らいだった。
そもそも、ミネルバとは宇宙用の戦艦であり、地上の運用はおまけ程度、という風に考えられたものだ。カーペンタリアで様々な調整はされたものの、それでもまだ弱い。
それにあの謎の部隊に奪われたアビスの襲撃にも備えなければいけなかったから、潜水艦による護衛は助かるものだった。
「ま、どっちにしろカーペンタリアの司令官に借りが出来た、て言うわけね。彼には何時か、恩返しをしなくちゃいけないわね」
「ははは、ではとりあえず高い葉巻でも贈られてはいかがですか?艦長に似て、司令官殿は愛煙家でいらっしゃるようですから」
「へぇ、そうなの。じゃ、御抓みに酒も付けて贈りましょうか」
「残念ながら、司令官殿は下戸であられるようですが」
「それは残念だわ」
アーサーの提案に、更に付け加えようとしたタリアだったが、意外な事実に彼女はがっくりとする。正直に言えば、彼とは一度酒を交えてみたかったのだが、まあしょうがないだろう。
さて、こんなそんななミネルバだったが、緊張感もある。現にタリアは今、この辺りの静けさに警戒心を抱いている。すでにここは、連合の領地なのだ。
シンらパイロット達もパイロットスーツに着替えて戦いに備えている。
「(さてと…連合はどう出るかしらね。こんな大きなもの、彼らは見逃すつもりかしら?)」
恐らくそんなことは無いだろう。ミネルバは彼らにとって厄介者なのだから。その証拠に、インド洋連合軍基地の近くでは、揚陸艦JP・ジョーンズはその身を海に貫く岩岩の間に隠していた。
艦の格納庫では慌しく出撃準備が進められている。ファントムペインの面々は打倒ミネルバに燃えていた。それはエクステンデッドであるスティング達にとっても同じであった。
中でもアウルにいたっては、宇宙での戦いの借りを返さんと一際燃えていた。
「今度こそあのピンクヤローをぶっ潰す」
「おいおい、女に対してヤローはねぇだろ」
「うるせぇ」
アウルの発言に対し、スティングが突っ込みをいれ、それをアウルは悪態をつきながら返す。あのユニウスセブンの戦い後、どさくさにまぎれて地球に降下した彼ら。
彼らの精神を整えるゆりかごによってアウルはラクスとの会話を忘れてしまっていたが、それでもなお、心の奥底ではどこかで彼女の事を覚えており、そしてそれは何時しかライバル心へと変わっていた。
普段そういう感情を出さないアウルにスティングは苦笑しつつも、彼自身もまた、あのインパルスに対してリベンジを果たさんと燃えていた。
そんな二人の様子を興味なさそうに隣でそっぽを向いていたステラは、急に何か待ちわびていたものを見つけたように、急に顔を上げて通路の方を見る。
「ネオ!」
「おう、遅くなったな」
「おせぇぞネオ!」
「また怒られてたのか?」
一応ネオも大佐という身分にいるはずだが、彼らは構わず馴れ馴れしく声をかける。ネオも特に気にすることなく答える。強化人間という特殊な状態を持つ彼らは、ただただ戦闘能力を上げるためだけに訓練されてきた。
だから、それ以外の教育というものを受けない。戦争における、殺しという名の罪悪感に囚われる事もない。しかし一方で監督役、というより親役というのも必要であって、彼らにとってネオは親密な家族のようなものだ。
ネオもその役割を演じる事に躊躇いや疎ましさはなく、寧ろ軍でこういう関係を保てる事に満足をしていた。だからこそ、言葉使いなどは直さない。
「ああ、お偉いさんからウィンダムを借りようと思ってな。交渉するのに手間取った」
「んなもん借りなくても、俺たちだけでやれるぜ」
「頼もしいな。だがな、あの新型艦は連合軍の包囲網をぶち破ったんだ。これくらい用意していてもいいだろ。ま、後は俺たち次第って訳だ。そうそう、アウル。情報によれば潜水艦も用意されてるらしいから、
お前はそっちを先にやれよ」
「ええぇ!?そりゃないぜ、ネオぉ!」
思わぬネオの言葉に、アウルはあんまりだといわんばかりの表情で詰め寄る。ネオは少し苦笑しながら、宥めるように更に言った。
「まあまあ、その潜水艦倒したら、後は作戦終了時間まで好きに戦っていいからさ。それにお前はまだいいほうだぞ?ステラはお留守番だからな…」
「え…?」
「ああ、そうか。仕方ねぇじゃん、ステラ。ガイアは泳げねぇんだからよ」
ネオの言葉にアウルは急に元気を取り戻し、今度はステラが落ち込んでしまう。だが、こればかりは仕様がない。スティングのカオスは空戦が行えるし、アウルのアビスも水中での早い動きが出来る。
しかし、この戦場では極端に大地は少なくなるだろうから、陸戦用のガイアでははっきり言ってウィンダムよりも戦力が劣ってしまうと言っていい。逆に地上に迫ってきた敵に対しての迎撃に回せば、その性能を最大限に生かせる。
だが、ステラは寂しくて堪らない。彼女は三人組の中で一番ネオに対する依存性が高く、彼の元を離れようとする事は少ない。アウルやスティング以外に心を開いているのは、ネオだけなのだ。
それをネオはわかっていたが、なんともまあ、こういう少女の涙目には弱い。と、そんな彼の気持ちが伝わったか、三人組の主格であるスティングがステラの肩をやさしく叩いて諭した。
「海でも見ながらいい子で待ってな。好きなんだろ?」
「…うん。わかった」
「よし、いい子だ」
スティングは軽く微笑みながらステラの頭を軽く撫でる。ネオはスティングに感謝しつつ、更に彼女を安心させるよう声をかける。
「俺もステラと一緒に出られないのが残念だよ。…なるべく早く帰ってくる。だから心配するなよ」
「うん…待ってる」
ステラは静かに頷きながら、素直にネオに従う。そんな様子をアウルは半分うんざり、半分は満更でもない表情で見つつ、格納庫の奥の方を見る。
そこには自分達の愛機となったアビスやガイア、カオスが眠っており、そしてそのとなりには、ダークダガーLが眠っている。
いや、正確に言えばあれはダークダガーLとは違う。黒くカラーリングされた、ジェットストライカー装備のダガーLだ。部隊名を表すエンブレムが、ファントムペインでもこのJPジョーンズに所属している部隊のものでもない。
確かあれは、ネオが以前に言っていた所謂「嫌われ実験部隊」のもの。それが一機だけここにいる。よく見れば、腰元にはナイフ…というには少し大きすぎる、太い刀身を持つ剣が備え付けられていた。
「あいつも出るのかよ、ネオ」
「ん?ああ」
アウルに聞かれ、ネオは何事かと彼が指差したほうを見ると、そこには先ほどのダガーLに乗り込もうとするオディオスの姿があった。
彼もそれに気がついたか、ネオたちの方をちらっと一度見るも、すぐに踵を返し、ダガーLに乗り込む。
「一応あいつにも協力してもらうことになっている。何、奴はエースだ。信頼は出来る。命令には従うしな」
「本当かよ?他のやつみたいに足手まといになるだけじゃねぇのか?」
「仮にも嫌われ実験部隊の一員でしかも中尉だ。それなりに実力はあるよ。さて、俺たちも出撃だな」
「…ふん」
ネオはステラの肩を一度軽く自機である紫色のウィンダムに向かって歩き出し、アウルも少し不満げながらもアビスのほうへと向かい、その後をスティング、ステラの順でついていった。
アウルはアビスにたどり着いた後、何か思いついたようにオディオス機のダガーLに通信を入れる。挑発をかねて、どんなやつかと一目見ようという彼の魂胆だった。
通信が繋がり、オディオスの姿がモニターに映される。なるほど、しけた面をしている。そう思いつつ、アウルは彼に話しかける。
「よお、あんたがオディオスかい?しけた面してんな」
『…』
オディオスは表情を全く変えず、何も答えない。それを気にせずアウルはさらに続ける。
「あんたが嫌われ部隊から来た余所者なのは聞いているけど、余計な事をして、海に落ちても助けてやんねぇぞ。ま、余所者は余所者らしく、大人しくしてるんだな」
『そうか。わかった、心得ておく』
しかしアウルの挑発に対して、オディオスは全く反応を示さず、ただ淡々と答え、自分の機体の調整を始める。相手などしていられるかといわんばかりだ。
挑発を簡単に流された事に少し腹を立てたアウルは、ならばとついに禁句を発してしまう。
「コーディネイターっていうのは信用できねぇからなぁ〜。ナチュラル共ナチュラル共って小うるせぇし、その割には大した事ねぇからな。それに、同族意識が強くて気持ちわりぃし。
あ、そういやあんたもコーディネイターだったなぁ。わりぃわりぃ」
『…』
「ま、でも今は連合にいるんだから関係ないか、へへ!ま、仲良くやろうぜ!」
『小僧』
「…何だよ?」
アウルの言葉が終わった瞬間、オディオスは静かに口を開いた。アウルはやっと乗ったかと少し満足しつつ、声を低くして答える。
『俺は任務のためなら誰だって殺し、生かせといわれれば生かしてやる。それがコーディネイターであれ、ナチュラルであれ、そして強化人間であれだ。
そして、任務に支障をきたすファクターとみなせば、これを排除する』
「おもしれぇ、それがお前に出来るっていうのかよ?」
『…試してみるか?』
オディオスが通信に答えると同時にダガーLをアビスのほうへと向かせる。その際、腰に備えてあったナイフの柄に手をかけておく。さながら戦闘体勢のようだ。
アウルも、そもそも彼の実力を測るため、その気だったので、にらみ合うようにアビスを向ける。そんな険悪なムード漂う両者に気がつき、周りがざわめき始める。
元々問題視されているファントムペインの中でも問題児だったのがアウルだ。精神的にも若く、我侭で口が悪く、また好戦的だったので、普通の者達では手が付けられない。
つまり今ここで彼らを止められるものといえば、同じファントムペインである。
「おいやめろお前ら!アウル、お前何味方に喧嘩を売ってるんだ!通信聞いたぞ!」
ネオと。
「アウル!戦闘の前に無駄な力を消費するな!」
「喧嘩、ダメ」
強化人間のリーダー格、スティング・オークレーと、同じ強化人間のステラ・ルーシェくらいだった。彼らはそれぞれの機体をにらみ合う二機の間に割って入り、ネオはオディオスの、スティングはアウルの機体を離す。
「ちぇ…邪魔が入っちまった。この勝負はお預けしておいてやるよ!この戦いが終わったらな!」
『おい、待てアウル!ちっ!あんた…悪かったな。あいつはああいうやつだから、気にしないでくれ」
アウルはアビスでオディオスのダガーLを指差した後、所定の場所へと戻る。スティングはアウルを問い詰めようとしたがその前に逃げられ、一言オディオスに謝罪した後に自分の配置に戻っていった。
オディオスは小さなため息を吐きつつ、ダガーLの戦闘態勢を解除し、カタパルトへと向かっていく。それについていくようにネオのウィンダムも歩き、ネオはオディオスに通信を入れて謝罪する。
「悪いな、中尉。うちの若いやつらは血の気の多いやつらが多くてな。特にあのアウルは一番血の気が多いんだ。若気の至りだと思って許してやってくれ。後できつくしかっておくから」
『ああいう連中はうちの部隊にも一人いるから、慣れてはいます。別に気にしてはいません』
「そうか、それならいいんだけどさ。んま、ぼちぼち行こうか」
どうやらオディオスもそんなに気にしていないという素振を見せているようだ。それに安心したネオは出撃準備を始める。オディオスもその後に続く。
『ネオ』
「何だ、スティング」
と、そんな彼の元に通信が入る。今度はスティングのようだ。ネオはそれを受け取り、彼と話し始める。スティングはヘルメットの位置を調節しながら、ネオに言った。
「さっきは止めたけど、悪いが俺もアウルと同意見だ。余所者のあの野郎を横におけるほど、俺は信頼できねぇ。大体、あいつは俺たちが敵にしているコーディネイターじゃねぇか」
なるほど、正直なものだ、とネオは苦笑してみせる。しかし、先ほどの行為といい、スティングがここまでしっかりとし、リーダーとしての素質があるとは思わなかった。
そんなことを思いつつ、ネオはオディオスを弁明すべく、彼の過去を喋り始めた。
『ま、ちょっと気持ち悪いって言うのはわかるがな。しかし、連合内にだってコーディネイターはいるし、そいつらのなかにはブルーコスモスもいる。あいつはその典型だよ。家族をザフトに殺され、全てを失った。
あいつは自分の復讐のためなら同族殺しだっていとわない。いや、もはやあいつの中には復讐なんてものは存在しない。あいつは任務に忠実な殺人鬼。連合の命令には従う。後ろから撃たれたり、裏切るなんて事はまずない』
「へぇ、じゃあ死ねっていわれりゃ死ぬのか?」
『恐らくな。まあ、ただじゃ死なないだろうがな。というわけでまあ、信頼してやってくれや』
そう言って、ネオは通信をきった。スティングは横目でカタパルトに運ばれるダガーLを見る。彼にとって、コーディネイターは信頼出来る相手ではない、いや敵として教えられてきたものたちではないか。
そのコーディネイターと今度は協力しろと命ぜられる。なんとまあ、都合のいいことか。しかし、ネオの言う事だし、連合軍にいるコーディネイターなど、余程の物好きだろうし、スパイというわけでもなさそうだ。
後はトチ狂って変な行動に出なきゃいい。それの監視も、ネオがやっているのだろう。今は、目の前の敵を叩くのみ。
「(お手並み拝見とさせてもらうぜ)」
『X24Sカオス、発進スタンバイ』
「スティング・オークレー。カオス、発進する!』
JP・ジョーンズのオペレーターの指示に従い、スティングはカオスを大空へと飛び立たせる。
「ダガーL、オディオス機出る」
続けて黒いダガーLが、ジェットストライカーの翼を広げて飛び立つ。この青空に、黒は一層に目立っていた。しかし、それもJPジョーンズやインド洋前線基地から発進したウィンダムによって隠されてしまう。
と、オディオスはネオからの通信に気がつき、それを受け取る。
「こちらオディオス」
『俺だ。恐らくミネルバは2機の空戦用のMSを所持している。そのうち一機はフェイズシフト装甲だ。お前さんは俺たちと協力して、そいつを叩く。もう一方の方は、適当にウィンダムをぶつける』
「了解、インパルスを狙う」
オディオスは端的にネオの命令を復唱すると、ビームライフルをすぐ使えるよう構えておいて、そのまま群の戦闘へと躍り出る。彼の任務の一つは、ザフトのMS、それも最新鋭のものと戦闘をし、
それのデータを取る事である。ならば、積極的に攻撃を加えるだけだ。それも、仕留めるように。いや、仕留められるくらいのMSならばデータはいらない。
忌わしきあのコーディネイターと共に消えてもらうだけだ。そのたった一つの私情と任務を引っさげ、オディオスはミネルバのいる海域へと向かっていく。
さて、そんな頃のミネルバも、当然この群の存在は感知していた。
「熱紋照合…ウィンダムです。数30!うち、カオスとダガーL一機ずつ!」
「来た?」
「しかし、数が多いですな、また!」
バードが報告をし、アーサーが軽い悲鳴のように叫ぶ。タリアも少し数には驚いたものの、それを表に出さぬように背を伸ばしながら命令を出す。
「コンディションレッド発令!またあの部隊ね…。母艦は確認できる?」
「できません」
「隠れてるのでしょうか?」
「かもしれないし、この近くに基地があるのかもしれない。しかし、こんなところに基地なんてあったかしら?」
「いえ…どちらにしろ、目の前にいる敵を倒すしかありませんな!」
「それもそうね。ブリッジ遮蔽。対モビルスーツ戦闘用意。ニーラゴンゴとの回線固定!」
タリアの指令を受けて、ミネルバブリッジ構成クルー達は素早くその作業をしてみせる。やっとのこと、ミネルバ内の連携が上手く行きそうな様子だ。タリアは満足しつつ、前を見据える。
アーサーも飛び降りるように副長席に座ろうとしたが、どうやら着地に失敗して、尻餅をついて、腰を抑えながら座り込む。その様子にクルー達は噴出しそうになりつつ、職務を続ける。
タリアも呆れてものも言えない状態のようだ。と、そんな彼女の元に、この異変に駆けつけたアスランがブリッジにやってきた。
「地球軍ですか?」
「ええ。どうやらまた待ち伏せされたようだわ。毎度毎度人気者は辛いわね。既に回避は不可能よ。本艦は戦闘に入ります。貴方は?私には貴方に対する命令権はないわ」
「私も出ます」
「そう。じゃあ早く格納庫へ行く事ね。あと、MS部隊の指揮権、貴方に任せるわ」
「分かりました。では」
アスランは敬礼をした後、駆け足で格納庫へと向かっていった。その後姿を見送り、タリアは再び前を向く。と、そんな彼女にアーサーが声をかける。
「いいのですか?指揮権まで渡して」
「ん?まあ、前大戦での英雄だったのだし、仮にもフェイスよ?信頼に値すると思うけどね」
「ううむ、しかしですなぁ。信頼といえば、確実なつながりを持っているナタリー・フェアレディのほうがいい気がすると思いますが。MS操作術もそれなりですし」
「確かに、コミュニティならね。でも私個人としては彼女には任せられないのよ。優しすぎて、バカピンクだし」
「ああ、確かに」
何となく、アーサーはタリアの最後の言葉で全て納得してしまった気がする。バカピンクというのはもうすでにミネルバで定番となった単語で、知らないものはいない。
バカピンクといえばナタリーであり、ナタリーといえばバカピンクである。そういう方程式が成り立っているのだ。
ともなれば、流石のナタリーことラクスもこういう言葉には敏感になるらしく、格納庫で盛大にくしゃみをした。
「うう〜…また誰かがバカピンクと呼んだのかしら…」
「大丈夫?まだ調子悪いんじゃないの?はい、これ」
「すいません…でも大丈夫ですわ」
ヘルメットを手渡しながら、ルナマリアはティッシュを一枚彼女に渡す。ラクスは受け取ったティッシュで一度鼻をかみ、ゴミ箱に投げ捨て、ヘルメットを被る。
ルナマリアもヘルメットを被り、パイロットスーツと一体化させる。と、そんな所へアスランも合流した。
「アスラン」
「ああ…。ルナマリアにナタリーか。君達も出撃準備か」
「はい。アスランもですか?」
ルナマリアに聞かれ、アスランは頷きながら答える。
「ああ。俺がMS隊の指揮を取る事になった。よろしく頼む」
「あ、そうなんですか。それは心強いですね!」
「はあ、よろしく御願いします」
「ああ。よろしくな。じゃあ、先に行っているぞ」
嬉しそうに言うルナマリアと、全く正反対に何か低い声で言うラクスを気にせず、端的にそう言うと、アスランはセイバーのほうへと向かっていく。
ルナマリアはラクスの態度の意味に気がついていた。彼女は少し苦笑しながら彼女に言った。
「まぁだ気にしてるんですか」
「え?ああ、すいません。意識しないようにしてるんですけど…」
ラクスはこつりと三度、ヘルメットを、丁度額に位置する場所を叩いて気を取り直してみせる。ルナマリアは更に苦笑しながら首を横に振りつつ、彼女をフォローする。
「いいのいいの。やっぱり、そういう風に自分に正直なナタリーさんのほうがいいですよ」
「そうですか。ああ、そうそう。ルナさん。私のこと、ナタリーで構いませんよ。年もそんなに変わらないですし、ルナさんもそのほうが気が楽でしょう?あ、あと敬語も」
「え、本当に?じゃあ私もルナでいいですよ。ナタリーも息苦しいでしょ?敬語もいいですよ」
「お気持ちはありがとうございます、ルナ。でもこの敬語だけは直せないんですよね」
「へぇ、直そうとは?」
「してません」
「やっぱり」
予想通りの返答に、ルナマリアは思わず笑ってしまい、それに釣られてラクスも笑ってしまう。どうやら先日のことで友情が芽生えたらしく、先輩後輩の関係ではなく、友達としての接し方に二人はなっていた。
「こらぁ!早く準備しろぉ!」
と、そんなところに、ケイがバビのハッチ近くから叫び散らしてきた。確かにいい加減出撃の時間だ。ラクスはルナマリアと別れて、少し申し訳なさそうにハッチのほうへと登る。
ハッチに上ってみると、なにやら怪しいビンから水分補給…というより栄養補給をしているようだ。寝不足の彼には何とも代えがたい嗜好品だろう。
「何ですの?その飲み物は」
「カンポーで作った栄養剤、らしい。まずいな、でも癖になる。2年前の僕じゃあ飲むことが考えられない味だよ」
「へぇ」
適当に答えつつ、ラクスはコクピットの中に入る。それを覗き込む様に、少し追うケイは栄養剤を一口飲み、それを口から離して説明を始めた。
「腕に収出可能なブレードを仕込んどいた。飛行形態でも使おうと思えば仕える品だ。まあ、銃剣だけでもいけると思ったんだけどね。もっと君の格闘能力を生かせる武器のほうがいいから」
「毎回ありがとうございます。でもケイさんもあまり無理しちゃいけませんよ」
ラクスはケイの体を案じ、心配そうに声をかける。ケイも苦笑しながら答える。
「わかってる。心配してくれてありがとう。さて、気を引き締めていかないと」
「はい。ハッチ、閉めます」
「うん。健闘を祈るよ!」
ケイは少し笑顔を見せて心配ないと諭した後、ハッチから下がる。それを確認して安心したラクスはハッチを閉め、バビのOSを立ち上げる。起動メッセージが流れた後、バビのモノアイが光り、バビが動き出す。
立ち上がらせた後、ラクスは武器のチェックをするべくコンソールを動かす。以前オーブから脱出する際に連合と交戦したときと同じ装備に加えて、ブレードが認識されている。
この手の武器というのは、ゲイツなどが装備していたタイプで、ラクスとしては初めて使うものだ。
全く、色々と思いつくものだと少しケイに対して感心しつつ、初めて使う武器に緊張感を覚えながらリフトでカタパルトまで運ばれる。
ふとバイザーを開けて、手の甲を軽く噛み付いてみる。痛みが手の甲に広がり、それが一層ラクスを引き締める。とりあえずカタパルトに運ばれるまでは咬み続ける。と、カタパルトに設置された時に通信が入り、咬みながらそれを受け取る。
『ナタリー…って何やっているんですか?』
「はふ、気にしないでください。ちょっと気を引き締めていただけです」
どうやらメイリンのようだ。メイリンはラクスの行動に呆気にとられていた様子で、ラクスもそれを見て誤魔化しつつ口を甲から離す。
メイリンはまだ呆気に取られながらも、気を取り直して職務に勤めようとする。
『バビは発進後、アスラン・ザラの指示に従い、敵の迎撃に向かってください。ミネルバの守りは前回同様、ザクファントムとザクウォーリアが担当します』
「二機だけで守備って…結構つらいのでは?」
『えっと…ニーラゴンゴも対空装備で援護してくれるそうなので、その心配はとりあえずいらないという事です。とりあえず目の前の敵に集中するようにと』
「了解です」
『ご健闘をお祈りしています。では、バビ発進、どうぞ!』
「ナタリー・フェアレディ、バビ、参ります!」
ブリッジからの発進許可を受け、バビは大空へと飛び出していく。そしてゆっくりと減速しながら、他の機体が出てくるのを待つ。その間、先ほどの武器を確認すべく、
ブレードを腕から取り出す。ブレードは丁度拳よりも少し長い射程をもち、拳で殴る感覚で使えるようだ。
両手にライフルを持ち、一応その片方は銃剣の形を取り揃えているが、密接した状態では極端に弱くなる。それは機体の使用目的から考えれば、その状態になる事自体が想定外なのだが、
ミネルバで運用されるに当たって、その目的は艦の護衛と、スタンドアローンもしくは少数での連係プレイに変わるわけで、そのためにピンクのバビは改造されたのだった。
しかしそれは量産型の持ち味の一つ、整備性の低下を意味している。その例がラクスの前の愛機ジンである。特殊な改造を続けてきたために、あれは今カーペンタリアで修理を受けなければいけない羽目になっている。
とりあえずこのバビは腕以外の改造が見られないので、ひとまずその心配も少ないが、とりあえず腕の損傷だけは気をつけなければ。
『ナタリー、シン、行くぞ』
アスランが通信をいれ、そしてセイバーがバビの下を通過する。ラクスも気合を入れなおし、ブレードをしまってついていく。さらにその後ろをフォースシルエットを装備したインパルスがついていく。
恐らく、シンは不機嫌な表情をしているんだろうな。そうラクスは考えつつも、自分もアスランを認め切れていない部分があり、そんな自分に少し自己嫌悪しつつも、目の前に近づいてくる敵を見つめる。
とりあえず集中しよう。全ては過去の事。今の自分はナタリー・フェアレディだ。ラクス・クラインではない。
ラクスはそう思い、操縦桿を握り締め、もう一度敵を見る。白と青のカラーリングのウィンダムの中に混じる、黒いダガーL。それを見たラクスは何故か、同じカラーリングであった、サトーのジン・ハイマニューバ2型を思い出したのだった。
続く
うぇ〜い!今回はちゃんと投稿できたぞー!と喜んでみたり…。
今回は少し短め。次はやっとインド洋の死闘です。
GJ!
オディオスさん、良いな〜。
本編でもこういうキャラ出せば良かったのに。
あとカオスの型番が違う気がする。
wikipediaで見ただけだから細かいこと知らんけど。
GJ!
そうだよな、本来なら地上はオディオスさんみたいなコーディネイターが居るはずなんだよなぁ
後期GATはアズラエルが保護したコーディ技術者が開発に係ってるとは聞いたがそれくらいだし・・・
なにはともあれ次回もwktk!
GJ!
ファントムペイン側はシリアスだが、ミネルバは艦長自らバカピンクって呼んだり
アーサーがケツうったり、緊迫してる場面なのになんか和むw
何気に司令官の嗜好チェックしてるアーサー、やり手サラリーマンみたいだなw
オディオスさん、いったん戦争が終わっても止まれなくなっちゃってたんだろうなあ…
いいキャラだぜ、とGJ
GJ
バカピンクが定着したナタリーに笑いつつ、まだどう転ぶか分からないカガリにこう言いたい。
このバカイエローめw
とっとと戻って来いハリーハリーハリー!だなw
バカレンジャーでも考えてみようかと思ったけど思いつかなかったぜ保守
定禅寺ストリートジャズフェスティバル保守
>>110 ラ「バカピンク、ラクス!」
カ「アホイエロー、カガリ!」
ア「ヅラレッド、アスラン!」
イ「おかっぱホワイト、イザーク!」
ア「空気嫁ブラック、アーサー!」
・・・後半からおかしくなった
バカレッド=シン
バカブルー=アスラン
バカピンク=ナタリー
バカグリーン=ケイ
バカブラック=ブラックK7
レッドは単純
ブルーは蝙蝠
ピンクは天然
グリーンは最近仮面の亡霊に憑かれて
ブラックは螺子一本外れ…(外れざるを得なかったのかもしれないけど)
…以上でFA?
何を言う。
レッドはウソすらつけない、もといウソのつけない男
ブルーは自分に正直な、最後は我が道を行く男
ピンクは天然
グリーンは一応社会復帰に成功
ブラックは主人公
ほら、いいところあるじゃないか
ブラックはなんだかんだで裏切らない気がするが
ブルーは裏切るな
オディオス…
……もしかして、魔王?
>>117 いや、彼は決して裏切らない。
決して、自分を裏切らないっ!
他人は裏切っても生きていけるが、自分を裏切ったら生きていけないんだよ!
流れ星先生もそう言ってました!
俺たちの期待も裏切らないんだぜ?
まとめの更新が8話で止まってるのは
何故ですか?
キミに更新してもらうのを待ってるんだよ?
バカピンク保守
とりあえずまた細かく書いて、やっと60%です。なんとかまた早く投稿しようと思います。
ところでGジェネPのシンの性格が冷静でびっくりした。激情じゃないのか…。
そんな自分はひたすらウィンダムを育てる毎日。ウィンダムかっこいいよウィンダム。
>>125 了解しながら保守!!
首を長くしつつ大人しく待ってるぜ!
>>125 俺たちはどこまでもバカピンクについていくぜ。
俺はブラックK7についていく
なら俺はケイについていくぜ
じゃあ私は、腹黒なのに天然を装って気苦労の多いラクスについてくぜっ!
保守上げ
よっしゃイクゾー!
男は悲しみの淵へ落ちていった。
空から舞い降りてきたあれは、男から仲間を奪った。
男は絶望した。
空から舞い降りてきたこれが、男から愛する妻と未来の子供を奪い去った。
男は憤怒した。
空から舞い降りてきたそれは、自分と同じ人種と言われる者たちが落とした憎悪の塊だった。
コーディネイター…いやザフトの最終兵器、ニュートロンジャマーは枯渇した化石燃料の代わりの地上のエネルギー源であった原子力発電所を悉く無効化し、地上は混乱の淵へと落とされた。
ニュートロンジャマーがもたらしたのは地球全土での深刻なエネルギー不足。それによってエネルギーはインフラし、国々は貧しくなり、多くの凍死者と餓死者を出した。
その中で、真っ先に犠牲になったのは子供や老人、そして女性という体力が少ない者たちだった。
男の妻もまた、その犠牲者の一人として数えられている。妻は新たな生命を宿していて、二人はその誕生を楽しみにしていた。なのに。
それが簡単に奪われた。何もかも。彼が信頼していた仲間も家族も。何もかもがいなくなった。
男は恨んだ。恨み、恨み続けてきた。何を?あんなものを投下したコーディネイターを?自分達を見放した世界を?家族を守りきれなかった自分を?
いや、今となっては彼が何を恨んでいるかなどわからなくなっていた。彼は、敵と呼ばれるコーディネイターを殺し続けている。任務のために。
一つだけはっきりしているのは、彼が望んでいる事。それは、最高の死に場所を得ること。
彼の名はオディオス。
第11話 Bleive my justice
正直な話、今回の出撃でミネルバを落とせるとは到底思えなかった。ファントムペインの戦力があるとはいえ、基地から借りてきたという兵士は実戦経験の薄い辺境警備兵なのだ。
その上一応連合の最新鋭の量産機ウィンダムを駆っているとはいえ、それはダガーLからの移項という連合の意思であり、彼らの実力が認められて、というわけではない。
どんなものでも慣れている機体でなければ、最大限の実力など出せるわけもなく、ただでさえ低い能力がさらに低くなるのだ。
とはいえ、ウィンダムは中々いい機体だ。癖がないので汎用性に優れているし、パイロット達の慣れも早い。ここは一つ、彼らには生き残ってもらいたいものだ。
そんなことを思いつつ、オディオスは自前のビームライフルを構え、敵との接触を待つ。と、敵の空戦用MSの姿がスコープで確認されたが、そのときオディオスは一つの違和感を感じた。
その違和感を確認するために、オディオスはネオに通信を入れる。
「大佐、一機見慣れないやつがいる」
『こちらでも確認した。どうやら奴さん、また新型を手に入れたらしいな。やれやれ…ザフトも、まるで戦争したがっていたと言わんばかりじゃないか』
「都合がいいですね」
『そうか?』
「ええ」
ああ、またコーディネイターを殺せる。そう考えた瞬間、少しだけオディオスに笑みが出てくる。コンソールの面に映るそれを見た本人は、ああ、醜いなと呟いてみる。
久しく感情を出さないとこういう風になる。オディオスは首を横に曲げて肩をならし、正面を見る。
「まあ、とりあえず、俺は青を」
『そうだな。じゃあ、俺もエースをやるか。スティング!お前はあの見慣れない奴をやってくれ。赤いやつだ』
『OK、任せろ!』
意気揚々としたスティングの返事が聞こえてくる。彼にとってはインパルスとの再戦への執着心も、この見慣れぬ新型への興味心と闘争心のほうが勝っているのだろう。
何ともまあ元気なことだと感心しつつ、ネオは次に左に付けているウィンダム二機へと通信を入れる。
「マックス、ハン!お前はバビを攻撃しろ!」
『Yes Sir!』
「各部隊は予定通り行動しろ!よし、行くぞ!」
ミネルバからの攻撃を合図に、ネオ率いる連合の部隊はそれぞれ散り散りとなり、部隊ごとにそれぞれのターゲットに向かって進撃を開始する。
ミネルバのブリッジではその様子が確認され、タリアに報告が伝わっていった。
「こちらの砲撃に対し、敵損害小!」
「敵機なおも接近!」
「来るわよ!対空砲火!敵を近づかせないで!」
タリアはすぐさま次の指示を与え、クルー達もそれに従い、対空砲火の準備を完了させる。甲板で待機していたレイとルナマリアもそれぞれの機体を戦闘状態にして敵を待つ。
その前方で、セイバー、インパルス、バビらがまず先に敵と接触する。先制攻撃としてバビのミサイルをウィンダムの群れに照準をあわせ撃ち込む。
飛んでくるミサイルを避けるように、ウィンダム達は散らばっていく。その中でロックオンされたものは、追ってくるミサイルを頭部バルカンで迎撃し、一部はシールドを犠牲にして防いだ。
その爆煙を払いのけ、連合軍はネオのウィンダムを先頭に突撃してくる。
「来るぞ!」
アスランはセイバーの変形を解き、迫ってきたウィンダムをビームサーベルで切り裂く。それにひるむことなく、他のウィンダムはセイバーに対し、一斉にビームライフルを撃つ。
セイバーはそれを避けてライフルを構え、確実にウィンダムを一機、二機と打ち落としていた。
「そら!見せてみろ、お前の力を!!」
「くっ…」
と、その爆煙を目くらましに利用して、スティングのカオスがセイバーに突撃してくる。アスランはすぐさまサーベルを構え、突撃し、切りかかってきたカオスのサーベルを避け、反撃しようとする。
だがカオスは兵装ポッドを事前に一基起動させておいて、セイバーの背中を狙った。それに気がついたアスランは一旦距離をとり、ビームライフルをカオスとその兵装ポッドに撃つ。
スティングは兵装ポッドをカオスに帰還させつつ、回避行動に移る。そのスティングを援護するように、周りにいたウィンダムのうち一機がミサイルを発射した。
セイバーはCIWSでそれを撃ち落とし、逆にビームライフルでウィンダムを落としていく。
「ええい、数ばかりごちゃごちゃと!!」
一方シンはインパルスに張り付いてくるウィンダムを振り払うように、ビームサーベルを振るう。それに近づくのを躊躇したウィンダムは僅かに動きを止め、距離をとるように後退する。
シンは後退の際に出た隙を逃さず、ビームライフルを撃ち、ウィンダムを撃墜した。そこへオディオスのダガーLが急速接近してくる。
「さて、いくぞ」
「くぅ!こいつ!」
オディオスは懐に飛び込み、ナイフでインパルスに切りかかる。反応が遅れたシンだったが、インパルスのVPS装甲はエネルギーを消費させる代わりにそれを防いだ。
ダガーLのナイフとインパルスの装甲の間に火花が散り、そのまま刃が滑らせ、一度振り切った後、今度はシールドでインパルスに体当たりを食らわす。
「うわあ!」
後ろへ引っ張られるような衝撃にシンは悲鳴を上げつつ、すぐに体勢を立て直し、ビームライフルをダガーLに向ける。オディオスはすぐさま垂直に飛び上がり、距離をとった。
それと入れ違うように、ネオの紫色のウィンダムが他のMSを率いてきた。
「さて、あんまり調子に乗るなよ、ザフトのエース君!」
「こいつ…!こいつさえ落とせば!」
アーモリーワンと似たような雰囲気を感じる、ひときわ目立つ機体。これは、あのMAのパイロットのものだ。この機体さえ落とせば、指揮系統が混乱を起こし、こちらが優位に立てるはずだ。
そう考えた瞬間、シンは目の色を変えてネオのウィンダムへと突っ込んでいく。その様子に感づいたか、ネオは少し不敵な笑みを浮かべつつ、少しずつ後退しながらインパルスの相手をしていく。
それに加えて、オディオスや他のウィンダムが援護をして思考させる暇を与えず、ミネルバからどんどん離していった。
「さて、追ってきなよ」
シンという男は、良い言い方をすれば、素直な男だ。ここはラクス、いやナタリーと同じで、感情の行くままに行動を走らせる。それが彼の魅力であり、そして今、弱点となっている。
割合似たもの同志であるナタリーとシンの違いは経験による恐怖心。いくつかの死闘を潜り抜けたとはいえ、まだ実戦経験に乏しいシン。それゆえにまだこれが罠でなのだ、という疑いがない。
いや、疑いならあるのだろう。だが、それ以上の勇ましさとが思考をとめている。それに加え、状況が緊迫しているのでなおさらだ。
「シン、出すぎだ!戻れ!」
『煩い、やれる!!』
完全に血が頭に上ってしまっているシンにとって、アスランの自重させる声すらも煩わしいものでしかない。アスランはそのシンの態度に歯を食いしばりながら我慢しつつ、何とか彼を援護させ、落ち着かせようと画策してみる。
自分もカオスの相手をしなければいけない以上、ナタリーに頼るしかない。しかし、彼女もまた敵のいいようにされていた。ウィンダム二機が彼女のバビに取り付き、追い掛け回しているのだ。
「そらそら!」
「行くぞ!」
「この…!」
何とかバビのスピードで相手の攻撃を避けてはいるが、反撃に出る隙を与えてはくれない。彼らの目的はただ一つ、このバビのかく乱にあるのだ。
手が打てず、ラクスは歯痒さで堪らなくなるが、それよりも先にこの状況を抜けなければいけない。連合軍の連係プレーに惑わされてはいけない。ここで打開できるかどうかが決め手なのだ。
ラクスは深呼吸をし、自分を追う二機の様子を伺う。彼らは一度噛み付いたら離れない、猟犬のような雰囲気を出している。ならば、自分が逃げれば追ってくるだろう。
ラクスは一つの賭けに出る。バビの加速力と自分のコーディネイターという体の丈夫さを信じて、MA形態に変形し、ミネルバへと引き返していく。
「ナタリー!?」
「逃げる気か、させるか!追うぞ、マックス!」
『おう!』
突然の行動に戸惑うアスランを尻目に、バビはその場から離れ、そしてそれを追うウィンダム達。カオスからの砲撃に曝されながらも、アスランはラクスに通信を入れた。
「ナタリー、何を考えているんだ!?」
『任せてください!この二機を同時に倒す方法を考え付いたんですの!隊長はシンさんを!』
「…くっ…わかった!」
ラクスの言葉に半ば納得はしていないものの、この状況では彼女に頼るほかない。渋々承諾するアスラン。ラクスはその言葉に満足し、そのままミネルバへと近づいていく。
ミネルバでは、二機のウィンダムを連れてくるバビの様子が伝えられていた。タリアはすぐにラクスの意図を読み取った。恐らく彼女は自分を囮とし、ミネルバとその甲板にいるザクであのウィンダムを撃墜しようというのだ。
だがそれだけでは足りない。あの二機のパイロットもそう馬鹿ではないし、そもそもMSを砲撃でピンポイントに当てる事など難しい。ともなれば。
「…不安ねぇ」
苦笑しながらタリアはあごに手を当てる。あれを撃てるかどうか、パイロットの腕次第となるわけだが。
そのパイロットであるレイとルナマリアはお互いに通信を入れて、確認をしあう。
「ルナ、分かっているだろうが…外すなよ」
『任せてよね!これでも私は赤なのよ?それに…』
「それに?」
『ナタリーだったら、ちゃんとフォローしてくれると思うわ!』
ルナマリアの根拠はないが活気のある言葉に、思わずレイは呆れながらも笑みを浮かべる。何故だろう、と気にしてはみるがまあそんなことはどうでもいい。
今は一瞬の勝負に集中するだけだ。レイのザク・ファントムとルナマリアのガナーザク・ウォーリアは、身を低くしてミネルバの砲塔の陰に隠れつつ、狙撃の準備をした。
通信を入れようとしたラクスだったが、その彼女らの会話を聞いて、安心感を覚え、改めて操縦桿をしっかりと握る。
これはタイミングが大切なのだ。ミネルバに近づきすぎても、遠すぎても駄目だ。効果射程ギリギリでやらなければならない。
「おい、そろそろミネルバの対空砲火射程内だ!」
『流石に二機での特攻は無理だ。さっさとしとめて戻るぞ』
連合のパイロット達も二機でのミネルバの接近はまずいと思ったのだろう。一気に加速をかけ、バビを横に挟むように前に躍り出ようとした。
その瞬間をラクスは待っていた。ラクスはカーペンタリアのとき、ビルとの模擬戦で見せた急激な変形をもう一度やって見せた。その瞬間、ラクスに急激なGが掛かり、意識が飛びそうになった。
そんな彼女を乗せたバビは急ブレーキをして、ウィンダムは勢い余ってバビから離れてしまう。
「な!?」
そのウィンダムもバビの無茶な動きに驚き、一瞬だが動きを止めてしまった。レイとルナマリアはその隙を逃さず、身を乗り出して照準を敵に合わせた。
「撃て!!」
「いっけぇぇ!!」
ザク・ウォーリアのオルトロスとファントムのライフルが同時に火を噴き、ビームがウィンダムに飛んでいく。突然の事に対応し切れなかったウィンダムは何もする事ができず、一機は胴体部を打ち抜かれ、爆発した。
だが、ルナマリアが狙ったほうは、弾がそれたお陰で僅かに逸れて右腕をごっそり持っていかれたのみで終わった。
「マァックス!!くそ!」
「ええ!?なんでぇ?!」
すぐ横で戦友が撃墜され、ハンは大声で叫んだ。それとは別にルナマリアは狙いが逸れた事に悲鳴を上げてしまった。レイは何となく予測はしていたものの、予想通りの展開に呆れてしまう。
いいやとりあえずそんなことは考えてはいられない。とりあえずレイはフォローのための一発を生き残ったウィンダムに撃ちこみ、撃破する。
何ともまあ、情けない結果になってしまった。あんな隙を作ってもらっておいて、それを見事しとめ損なおうという、情けなさ過ぎて泣けてくる。
と、そんなことをイジイジと考え始めそうになったルナマリアだが、何かに気がつき、はっとしてラクスへと通信をいれる。あの無茶な変形で、前は気絶してしまったのだ。
そのときは模擬戦と言う事もあり、ビルの助けがあったが、今気絶すればそれこそ無防備のまま海にたたきつけられる事になる。ルナマリアは彼女の意識を確かめるために、大声で叫んだ。
「ナタリー!?大丈夫、ナタリー!」
『…体調万全…』
「へ?」
『今日は絶好調!と、言いたい所ですが、結構きついですわ…これは。もう二度とやらない…』
嗚咽を吐きながらも、とりあえずは平気そうな返事が戻ってきた。ルナマリアは安堵の息を吐いた。ラクスは苦しかったのか、息を大きく吐きながらパイロットスーツの襟を開けて余裕をだし、
気を取り直してミネルバのブリッジに通信を入れる。
「これより現場復帰します!」
もう一度MA形態に変形し、海面近くを真っ直ぐ、アスラン達が交戦している地点まで、すぐに戻っていく。あの頑丈さに、少しルナマリアは呆れてしまった。
と、そんな彼女の元に通信が入る。どうやらブリッジかららしく、レイにも届いているようだ。
『こちらブリッジ。水中に一機MSの反応を確認!』
「…!アビス!」
『現在、ニーラゴンゴが水中用MSを展開し…今、交戦を開始しました。レイ機、ルナマリア機は水中戦の用意をし、ニーラゴンゴの援護に向かってください』
「水中戦…了解!これより格納庫へ戻ります!」
復唱し、ルナマリアはレイと共に格納庫へと戻っていく。
「よおし、機体調整急げ!!バズーカと魚雷の弾薬もたっぷり出しておけ!!のんびりしてると海に叩き込むぞ!」
それと同時に、マッドの怒声が格納庫中に響き渡り、整備兵達が慌しく武器を取り出してそれをザクに装備させたり、機体のチェックへと移る。
そんな中、ケイはレイのもとに飲み物を持って、コクピットに駆け寄った。
「とりあえずお疲れ。ほれ」
「ああ、すまん。俺達はまだ何もやっていないがな…。しかし、彼女は頑丈だな」
「まあね、それだけが取柄だから。…うらやましいかい?」
「まあな」
ケイの言葉に、素直に答えるレイ。アル・ダ・フラガのクローンとして生まれたレイは、不完全な状態で生まれてきたためにテロメアが短く、
薬で抑えなければいけない体となっている。これはラウ・ル・クルーゼも同じだったといわれている。そしてナチュラルの体でコーディネイターの環境に適しなければいけないのだから、
かなり体に負荷を与えて生きているのだろう。それでも成し遂げたいことがあるから、彼は今こうして生きていけるのだ。
どうやらケイはそういう体に生まれていないのは、スーパーコーディネイターのクローンであるからなのか。とりあえず今はそういう異変は見られない。
だが、自分が彼のような存在だったとすれば。だとすれば、今以上に生み出した主、ラクス・クラインを恨むだろうか。
その答えなどわからない。自分は違うのだから。ただ。
「…お互い、ただの誰かのクローンとしては死にたくはないよなぁ」
「…そうだな」
何となくつぶやいた言葉。だが、それは彼らクローンとして生まれてきた者たちの想いなのかもしれない。ラウ・ル・クルーゼも、何を成し遂げるために生きてきたのだ。
「よおし、ファントムの換装終了だ!」
「ウォーリア換装終了!」
「…あっと。じゃあ頑張って」
と、整備兵が換装を終えたことを告げ、再び出撃の時間となった。ケイは一言激励の言葉を贈り、コクピットを後にした。それを確認した後、レイはコクピットを閉じる。
彼の元に海中に出るための指定の搬出口に行く途中、ルナマリアから通信が入った。
『ケイさんと何話してたの?随分神妙そうだったじゃない』
「機体のことについてちょっとな。調整がすこしおかしかったから、調整しなおしてもらった。それだけさ」
『本当に?』
「ああ」
『ふ〜ん…』
何やらわけあり、ということのようだが、ルナマリアは特に気にすることなく通信を切って会話を終えた。もともと多くは喋らない性質のレイだから、
これ以上追求したところで何も喋らないと思ったからだ。
レイは、ヘルメットの位置を整え、ケイから渡されたスポーツドリンクを飲み干し、それをトラッシュケースに投げ捨てる。
なるほど、復讐の相手と思いながらも、どうやら彼に同類意識を持っているらしい。そこで思うことはただ一つ。
「(お前は、別のクローンを目の前にして同じ言葉を言えるか?忌わしき過去に出会って、お前は…正常でいられるか?)」
レイは裏の情報として、オーブの代表、カガリ・ユラ・アスハを攫ったのはフリーダムだという噂を手に入れていた。だとすれば、彼らが動き出したのだ。
そして、恐らくフリーダムの中には、もう一人のキラ・ヤマトが乗っているのだろう。全く忌々しい事だ。
だが、今は忘れよう。ケイのいうとおり、今は生き残る事が先決なのだ。そうレイは思いつつ、彼を乗せたザク・ファントムとガナーザク・ウォーリアは海中へと入っていった。
遠くでは爆散するグーンの姿が見えた。どうやら戦闘は激化していて、アビス一機に苦戦しているようだ。
「ルナ、行くぞ」
『ええ、任せておいてよ!今度こそ良い所みせてあげるんだから!』
ルナマリアの気合の篭った声が通信を通してコクピットの中に響いてくる。とりあえず気合だけはあるようだ。
レイとルナマリアは急ぎアビスの許へと急ぐ。こうしている間にも、ニーラゴンゴに危機が迫っているのだ。唯でさえ火力に優れたアビスなのだから、接近させてはいけない。
残っているグーンは後二機。よく善戦をしているが、それでももうもたない様子だ。どちらかといえば、アビスがわざと生かして、楽しんでいるように見える。
まずは注意をひきつけるためにバズーカを一発撃つ。VPS装甲に傷を付ける事はできないが、とりあえず注意を向けさせる事はできたようだ。
「ああん?…ありゃ、あの新造艦のやつか。ピンクのやつは…いねぇか。」
アビス内に起こった衝撃でアウルは左方向から迫ってくる二機のザクを確認した。そのなかにユニウスセブンやデブリ戦で何かと邪魔したピンク色のMSは見られなかったが、それでも十分だ。
アウルは残ったグーンの内一機を撃破し、もう一機もすぐに撃破し、二機のザクに向かっていく。
「来るぞ!」
「こんのぉ!!」
それに対応して、ルナマリアは装備させておいた魚雷を発射する。魚雷はロックオンしたアビスを忠実に追いかける。これなら射撃の腕に関係なく確実に当てられるはずだ。
だがアビスはMA形態になってすばやく岩場へと身を隠して魚雷をやり過ごし、すぐに連装砲で反撃をする。ルナマリアは回避行動を行ったが、水中では上手く動く事ができず、一発は逸れていったが、
もう一発はシールドを犠牲にして防ぐしかなかった。衝撃で吹き飛ばされ、海底に叩きつけられるルナマリア。
「ぐっ!」
「そらそらどうしたどうした!」
アウルは更にMS形態に変形して攻撃を加え、ルナマリアに追い討ちを仕掛ける。ルナマリアは必死に逃げ惑う。そんな彼女を救うべく、バズーカを撃ち込む。
アビスとザクの間に着弾し、海底の土を巻き上げて煙幕となった。ルナマリアはその隙にアビスから距離を取った。
アウルは煩わしそうにアビスの腕を振って土の煙幕を振り払い、索敵する。と、その瞬間、右側左側と交互に衝撃が走ってきた。
右には白いザク、左には赤いのがいた。
「くそ…流石に硬いな!」
「直撃の癖に…!やっぱりフレームを狙うしかない!」
あの一瞬で立て直してしかも挟撃を行う。なるほど、伊達に新造艦のメンバーに選ばれていないようだ。
「面白くなってきやがった!!」
段々と興奮し始め、アウルは本来の任務を忘れ、彼らとの闘争に意識を集中し始めた。
そんな最中、空中戦ではなおも死闘が繰り広げられていた。無駄に動かされ、エネルギーが少ない状態になってきている。
だが攻撃は尚も止まない。あの包囲の状態から何機ものウィンダムを落としたが、それでもまだ減りはしない。いや、ウィンダム全てがこちらに来ているような気もしてきた。
事実、現在セイバーと戦っているのはカオスのみ。互角の戦いをしているようにも見えているが、どちらかといえばカオスが押しているようにも見えている。
「ちっ!豪そうに言っていたわりには苦戦して…!くそ、ナタリーは何処へいったんだよ!」
今のシンにとっては全ての事が苛立つ。中々打開できない状況に、流石に焦れてきたのだ。だが焦れているのはシンだけではない。敵の指揮官ネオも流石に焦りを感じ始めてきた。
借りてきたウィンダムがどんどんと撃墜され、残りの数が少なくなってきたのだ。これ以上被害が大きくなれば、作戦を続行するのは難しくなる。
このくらいで決着を付けなければいけない。僅かずつではあるが、あの新型のパイロットはこの戦闘で成長してきている。これ以上放置すればどんな障害となるか。
まずは第一手。ネオはオディオスに通信を入れる。
「仕掛けるぞ!援護頼む!」
『了解』
ネオの要望を受けて、オディオスはビームライフルを乱射してインパルスの進路を絞らせていく。そして、一点に絞らせたその瞬間、ネオがインパルスを捉えた。
「さようなら、エース君!」
「しまった!」
ロックオンアラートがなり、シンは声を上げてしまう。すでに紫のウィンダムは射撃の準備が整っている。この距離からでは避けられない。
死んだ、シンは死を目の前にそう考えてしまった。その瞬間、ウィンダムとインパルスの間をすり抜けるように一閃のビームが通り抜けた。それに続いて、ピンク色のMSが通り抜ける。
ラクスのバビが戻ってきた。彼女はバビの速度を緩めてMSに変形させると、その勢いのままマシンガンを撃ってウィンダムを一機撃墜し、そのまま今度は腕部のブレードを出してオディオスのダガーLへと飛び掛る。
オディオスは突然の強襲にも驚くことなく、ナイフでそれを受け止める。
「遅いぞナタリー!」
『シンさんこそ、もっと落ち着いてくださいな!本当にいいようにされて!』
「なんだと!!」
『落ち着け二人とも!今はそんなことをしている暇か!』
やっと戻ってきたラクスに文句を言うシンだが、ラクスに正論を言い返され、シンは更に頭に血を上らせる。そんな彼らをアスランが割って入り、彼らを叱り飛ばす。
ムッとしたシンだったが、とりあえずは状況を打開できたので、落ち着きを取り戻し、今度こそ狙いを紫のウィンダムに絞る。
「ええい、急造の部隊では駄目なのか!予想以上の戦力だな!」
『ネオ!そろそろエネルギーが少なくなってきやがった!あんま長くはもたねぇぞ!!どうするんだ!』
「どうするか…どうするといわれれば、撤退するしかないな…しかしこのままだと追いつかれてしまうのがオチか…」
『ステラも回収してやらなきゃいけない。どうするよ』
「う〜む…しょうがない。基地のやつらに酷だが、囮になってもらうか。丁度正義感強そうなのがいるしな…。スティング、お前はその赤いのを適当にあしらったら撤退しろ。ステラは俺が回収する。
オディオス、悪いが援護してやってくれ。そこに残っている基地のやつも一緒にな」
すでに作られた基地ならば失っては大きいが、ここに作られている前線基地はまだ建造され始めてまもない、いわばハリボテのようなものだ。
ならば、破壊されても被害は少ないはずだ。基地の連中も黙って殺されるほど鈍間ではないだろう。
本来ならばとやかく言われるような事だが、幸い自分の後ろ盾は、連合の誰にも破れないほどの厚いものだ。利用できるものは利用してやろう。
『OK』
『了解した』
「ある程度まければやつらは追ってこないだろう。じゃあ幸運を祈る」
二人も了承したようだ。ネオはインパルスに対し牽制攻撃を仕掛け、そして後方へと下がった。近くにいて、攻撃を加えようとしていたシンはそれを追いかける。
「シン、待て!深入りするなといっているだろ!?」
『こいつが行く先に敵の空母がいるかもしれないんだ、無視できるか!』
「シン!くそ!」
「ナタリー。早くシンに追いつかなければいけない。君はダガーLの相手をしてくれ。他は俺が」
『了解!』
命令に従い、ラクスはダガーLへ飛び掛り、両腕のブレードで切りかかる。オディオスはビームライフルをマウントし、ブレードをナイフで細かく捌く。一回、二回、三回。捌き捌かれる度に火花が散り、
そして四回目はラクスがダガーLに突っ込み、それをオディオスが受け止めてそこで鍔迫り合いになる。
しかし、オディオスとしては真面目にこれを受ける気はさらさらなく、他の機体を逃がすという任務を最優先にする。彼個人としては目の前にいる敵を殲滅したいのだが、そうも行かないだろう。
オディオスはイーゲルシュテルンを起動させてバビを牽制する。ラクスは弱点であるカリドゥスの発射口とコクピットを守るように腕を前に出し、そのまま後退する。
「各機、閃光弾を使う。それと合わせてJPジョーンズへ退却せよ」
オディオスはセイバーも自分の方へと向けさせるためにビームライフルを一発撃ち、そして隠していたグレネードを取り出してそれをバビへと投げつける。それと同時にモニターを切る。
ラクスはしまったと思い、至近距離に存在するそれを叩き落そうと試みるが、その前にグレネードが炸裂した。
グレネードは小さな光をまず発して、そして急速に大きさを増し、あたり一面を包み込んだ。あらかじめ知っていた連合軍はそのグレネードから背を向けていたから光を受けずに済んだが、
アスランとラクスはそれをまともに受ける事になる。光が閉じた瞼の隙間までに入ってきて眩ませる。
カオスとウィンダムは全速力でJPジョーンズに逃げ、オディオスもモニターを復活させて早々と撤退する。一撃加えてやろうかと思ったが、それで逃げそこなったとなれば話にならない。
ここは素直に撤退するのが得策。オディオスは真っ直ぐJPジョーンズへと向かっていった。
さてその頃、鬼ごっこを繰り広げているネオとシンもその光を見た。シンは何事かと思い、振り返ってみるが何も見えない。
対してネオは撤退が始まったと思い、仕上げに入る。
「さあて、そろそろ俺達もか…アウル!」
『あん?』
ネオはまだ戦っているであろうアウルに通信を入れる。何事かと、少し乱暴な声がアウルから返ってきた。
「そろそろ引き上げの時間だ。戻れ」
『何でだよ、今いい所なんだよ』
「借りてきたやつが殆どやられた。これ以上ここに留まるのは危険だ」
『何やってるんだよ、タコ!』
「そんなにいうなよ。おまえだってでかい獲物は落とせてないだろ?」
状況を説明され、ネオに文句を言うアウルだったが、正論を返されて言葉も返せない。冷静になって考えれば、あの二機のザクの相手をしすぎた所為で本来の任務を果たせていない。
こんなことではあのオディオスに何を言われるか。アウルのプライドがそれを許さず、そして彼はアビスをMAに変形させ、ザクの間をすり抜け、ニーラゴンゴに突っ込んでいく。
「あ!」
「しまった!」
今まで自分達を相手にしていたアビスが突然目標を変えて突撃したのに、二人は対応しきれず見送ってしまった。
ニーラゴンゴはアビスの接近に対し、魚雷を撃って対応しようとするが、高速移動するアビスを捉えることができず、アビスの連装砲を全弾受け、水中で爆発して轟沈した。
「はっはー!!ごめんねぇ、強くってさぁ!!」
ニーラゴンゴを落としたことにアウルは誇らしげに叫び、そしてそのままJPジョーンズのほうへと去っていった。レイは逃がすまいとバズーカを構えるがすでに遅く、
悔しそうに操縦桿を叩いた後ルナマリアに通信を入れる。
「…ルナ、防衛目標が消えた。任務失敗、引き上げるぞ」
『…うん…了解』
規制かな?
ルナマリアから力のない返事が返ってくる。あれだけ大言を言っておいて、任務が果たせなかったことが悔しいのだろう。二人はその悔しさを胸にミネルバへと戻っていった。
その戦闘模様を伺っていたネオはアウルの行動に思わず苦笑してしまう。あいつらしいな。そう考えながらも、ネオは基地付近にまでインパルスを誘き寄せた。
基地の防衛をしていたステラにもその様子が確認された。彼女から見ればネオがインパルスに追い詰められているような絵図であり、彼女にとってネオは失いたくない人だ。
基地の防衛を放棄し、ステラはガイアをMAに変形させ、浅瀬を走ってインパルスに突っ込んでいく。急な横からの攻撃に対応しきれず、体当たりを食らってインパルスは浅瀬に倒れてしまう。
インパルスを突き飛ばし、ガイアはそのままネオを追いかける。
『ネオ!』
「ステラ、いいところにきてくれた。逃げるぞ、掴まれ!」
『うん!』
ガイアはMSに変形し、差し伸ばされたウィンダムの腕に捕まってJPジョーンズに飛んでいった。体勢を回復しきれないインパルスは不完全な体勢でビームライフルを撃つが、一発も当たらずに逃げられてしまった。
シンは舌打し、操縦桿を叩く。と、そんな彼へ更に砲撃が襲い、コクピット内が大きく揺れた。何事かと、砲弾が飛んできた方向を見ると、そこには連合の基地があり、そして戦車数機がこちらに発砲してきたのだ。
「こんなところに連合の基地なんて…。…あ、あれは!」
9/
反撃しようと立ち上がったインパルスのモニターから見えたのは民間人だった。どうやらこの基地で強制労働させられていたらしく、着ているものはボロボロになっていて、体もやつれているようだ。
彼らはインパルスが近づいてきたのに驚き逃げようとしているが、連合兵がそれを武力行使でどうにか押し留めようとしているようだ。
それを見たシンは、再び血を頭に上らせた。弱い人々を無理やり力で、暴力で抑え込もうとする。シンは許せなかった。
「やめろぉぉ!!」
シンはCIWSを起動させ、戦車を破壊し、そのまま連合兵を撃つ。MSの対人バルカン砲を受け、どんどんと倒れていく連合兵。そしてその隙に収容されていた民間人達がどんどん逃げていく。
シンはフェンスをインパルスで引っ張り上げて壊し、その逃亡の助けをする。無事に基地外へと逃げられた人々は家族と再会し、その喜びを露にしていた。その表情を見たシンは安堵の表情を浮かべつつ、更に連合基地へと攻撃を加える。
連合兵は皆武器を投げ出して逃げ出していたが、それでもなおシンは攻撃を続ける。と、そんなところへアスランのセイバーとラクスのバビがシンを捜しに来た。
彼らはシンのあまりに一方的な攻撃に息を呑む。アスランはすぐにシンへと通信を入れた。
「やめろ、シン!基地破壊の命令は出していないぞ!」
『煩い!ここに囚われている人たちを解放するんだ、邪魔するな!』
「君のやっているのは一方的な虐殺だ!もう連合兵に戦意はない!やめるんだ!これは命令だぞ!」
『黙れ!』
今のシンがやっているのは度が過ぎた行為だ。命令という言葉を使ってでもやめさせようと説得するが、完全に切れたシンにはその言葉は届かない。
それを見たラクスはアスランに加勢するために通信を入れる。
「シンさん!民間人の退去は済みました!それ以上はもう意味はありません!」
『意味はある!こいつらを倒さなきゃ、またあの人たちが…!』
『頭を冷やせ、シン!命令違反になるぞ!』
『その通りよ、シン』
と、ラクスとアスランの忠告も無視しようとしたとき、新たな声がコクピットに響き渡った。ミネルバ艦長タリアの声だ。全員が上を向くと、ミネルバがこちらに向かって飛んできているではないか。
どうやらあちらの戦闘も終わったようだ。タリアは更に続ける。
支援
『戦闘は終わり。基地の破壊も含め、十分な戦果は得られました。ニーラゴンゴが撃墜したのを除けばですが。これ以上の戦闘は艦長特権として許可はしません。全機帰還しなさい』
「…」
『復唱!』
「…了解!これより帰還します!!」
正直納得はしていないが、艦長命令となれば従わなければいけない。シンはセイバーとバビをおいて一人ミネルバへと帰還していった。
アスランとラクスもそれに続いてミネルバへと戻っていった。その様子にとりあえず安堵の息を吐くタリアであったが、この先不安ばかりが残った。
さて、格納庫では三機の収容も終わり、戻ってきたシンに待っていたのは、後にたどり着いたアスランによる修正だった。
「…っ!殴りたきゃ別に構いませんがね、俺は正しい事をやったんだ!あそこにいる人だってあれで…!っ!」
「うへぇ、もう一発かよ…」
「すげぇな…。でもシン何かしたのか?」
「ほら…あれだよ。陸で連合の基地を見つけて…強制収容されていた民間人を逃がして、基地をメチャクチャにしたんだってさ」
「ふぅん…」
左頬を殴られてもなおもシンは自分のやったことの正当化をしようとした。そんな彼に対し、今度はアスランは右頬を引っ叩いた。
乾いた音が響き渡り、辺りに集まっていたギャラリーはその音を聞くや自分の事のように身を縮ませていた。
「自分だけで勝手な判断をするな!戦争はヒーローごっこじゃないんだぞ!」
「…くっ!」
殴られた頬を抑えているシンを尻目に、一喝したアスランはその場から立ち去っていく。シンはまだその場に立ち尽くしていた。
そんな彼とアスランの背中を見ながらケイは昔の自分の事を思い出していた。
「(ヒーローごっこか…。でもさ、今思えば2年前に僕達がやったことだって、ヒーローごっこじゃないかい?アスラン…。いや、今は言うまいか…。結果的には良かったんだ。あれで…)」
「(君も自分の事を正当化するのかい?)」
「(黙れクルーゼ)」
2年前、ケイがキラであった頃。連合に制圧されそうだったオーブから脱出し、ザフトと連合との最終決戦に介入し、そして片っ端から戦い、戦いをとめようとしたのだ。
だが、その結果はただ単に両者の勢力を疲弊させただけに終わり、そしてまた戦争が起こってしまった。あのときに自分達がやったことは自己満足のヒーローごっこではなかったのか。
しかし…これ以上過去に自分がやったことを否定するのは虚しくなるだけだ。ケイはとりあえずは正当化させておいて、それをよしとする。
「でもさ…民間人を助けたかったんだよな…シンは」
「ああ…シンは戦争で家族を亡くしているから…。命令違反ではあるけど、別に悪い事は…」
「しているんですよ。実はね」
と、そんな彼の隣でヴィーノとヨウランがこそこそとシンを見ながらつぶやいていた。そんな彼らに割って入るようにラクスがつぶやく。
「え?」
「…」
小さく、しかし何か意味深につぶやいたラクスにヴィーノとヨウランは驚いて彼女を見るが、ラクスは少し考え込んだ後、ヘルメットを持ってその場を後にしていった。
どう言う事だと疑問を浮かべる二人だったが、何も思い浮かばず、シンを慰めようにも近づきづらい状況なので、とりあえずは作業に戻る事にした。
それを切欠に辺りにいたギャラリーたちも散り散りになり、その場にはシンと僅かな人々しか残っていなかった。
私怨
「シン…」
「やめろルナ。下手な慰めは逆効果だ。暫くは放っておいてやれ」
ルナマリアはシンを慰めようと声をかけようとしたがレイに制止され、シンは壁を一度殴ってその場を後にした。
かなり荒れているようだ。あの状態の彼に下手に声をかけたらどんなとばっちりを受ける事か。わかったものではなかったため、レイがルナマリアを止めたのは正しい。
何も出来ないというもどかしさもありつつも、それぞれはそれぞれ、持ち場に戻るしかなかったのだった。
それから数時間後。夕焼けの海をゆっくりと進むミネルバ。戦いの緊張感もやっとほぐれ、各々ゆったりと作業を進めていた。
このまま順調に進めば明日中には目的地であるマハムール基地へとたどり着く予定だった。あくまで予定だが。
そんな中、まだアスランに叩かれた事を忘れきれないシンは気分転換をするために一人甲板へと足を進めていた。潮風がゆっくりと流れ、そのたびにシンの髪がなびく。
「…」
そんな中でシンは考え込んでいた。自分は正しい事をしたはずだ。なのに、それなのに何故咎められなければいけないのだ。それに、大した戦果も挙げていないのにもかかわらず、あんな豪そうな事を言われなければいけないのだ。
思い出してみると余計にイライラする。もういい、寝よう。そう思い、踵を返そうとしたシンだったが。
「…ふん…ふ〜ん…」
と、何処からか鼻歌が聞こえてきたので足を止め、ふと聞こえてきた方のほうへと足を歩む。物陰に人影が見えたので、ゆっくりと顔をのぞいてみると、そこにはラクスの姿が。
彼女はイヤホンを付けて、音楽プレーヤーで何かの曲を聴きながら鼻歌を口ずさんでいるようだ。
「ふん…?あ、シンさん」
と、彼女もシンの気配に気がついたようで、イヤホンを外して彼の方を向きながら立つ上がる。シンは別に気づかれた事を気にせず、物陰から出て少しだけ歩み寄った後声をかける。
「…何、聞いているんだ?」
「音楽です」
「いやそりゃ分かるよ。何の音楽だって聞いているんだ」
「ああ、えっと…ロックでいいのかなぁ。ああ、多分ロックです。基本的には何でも聞きますけどね」
何だか曖昧な答えを出しながら、ラクスは音楽プレーヤーの電源を消して、シンと向かい合う。
少し沈黙が続いた後、シンが言葉を選ぶように少し考え込んだ後口を開いた。
「なあ、ナタリー。あんた、俺が基地を攻撃した時止めようとしたよな。…なんでなんだ?」
「何でって…」
「あんただってあそこにいる人は助けたいと思うだろ。それを…なんで邪魔したんだよ」
「ん…そうですねぇ」
シンの正直な疑問にラクスは手すりの近くまで歩みよる。そして夕日を眺めながら答えた。
支援?
「まあ二つくらいありますよね。まずはやめろという隊長の命令を無視したから。軍隊において、それがあまりに逸脱したものでなければ従うべきだと思います。そう、私は教えられましたからね。
そこらへんはシンさんだって、いやシンさんのほうが煩く言われたのではないでしょうか?」
「…ああ、まあな。だけど、それとこれとは」
「だから、私はあの時、隊長に叩かれたのは仕方ない事だと思います。命令違反だとわかってでもなおもやりたいことがあれば、それだけの代償を負わなければいけないのが軍人ですから。
一人の勝手な行動で一艦隊が崩壊する事だってある。私も…昔やってしまいましたから。統率を乱すことでどんな支障が出るかわからない…」
「…ナタリーは…何かやらかしたのか?」
「そりゃ色々!シンさんみたいに命令を聞かずに民間人を助けたりしましたし!そのたびにハイネ隊長に修正されましたよ。最初は流石に引っ叩かれてすぐに泣いちゃいましたけどね」
「そうだったのか…」
ラクスは苦笑しながら左頬を指差す。その表情から苦労が滲み出ていて、ああ、あのトレーニングルームのときも同じ顔をしていたと思い出した。
やはりなんだかんだで彼女も苦労してきたのだろう。
「アスランだって、彼だって苦労したから、だから止めようとしたんでしょうね…。それにもう一つの理由になりますけど、あのときのシンさんすごく怖かったですし…」
「…!」
「あれ、助けているって言うより、何だかこう…ううん、上手く言えませんね。兎に角怖かったんですよ。だからとめなきゃと思いました」
「…そうか…。今回はちょっと興奮しすぎたかもしれない。悪かった、次からもうちょっと冷静になる」
冷静に考えてみれば確かにあの時の自分は興奮しすぎて周りが見えていなかったのか。客観的に見てそう見られていたのだからそうなのだろう。自覚は…あまりないが。
とりあえず軽くラクスに謝罪をするシン。そんな彼に、ラクスは少し微笑みを向けつつ、夕焼けを背にして言った。
「でも、民間人を助けていた時のシンさんはカッコよかったですわ」
「な…!ななに言っているんだよ!あんたは!」
「いや、正直に言ったまでですわ。…確かに命令違反はいけない事。でも、命令違反を起こしてでもやらなきゃいけないことがある。
それは忘れてはいけない事ですわ。まあそのたびに叩かれる覚悟をしないといけませんけどね」
「…そう、だな」
シンは、褒められた事にまだ恥ずかしそうに顔を赤らめながら頭を掻きつつ、静かに頷く。そんな彼を見て、ラクスは思わずクスクスと笑ってしまった。
しかしなんともまあ、上手く纏められたものだと、そう思っているのは入り口付近でデバガメをしているケイ、ルナマリア、レイの三人だった。
始めは二人の会話を聞いていたのは、たまたまこの付近を通りかかったケイで、その内にルナマリア、レイとどんどん野次馬が三人に増えていた。
彼らは二人の会話を聞いて、十人十色の思いを浮かべていた。
12/
「へぇ〜あのシンが素直に聞くなんてねぇ〜。やっぱりナタリーさん、すごい人かも」
「まあ流石のシンも女性には逆らえないだろうな」
「え、じゃあ何で私の言う事聞いてくれないのよ」
「女性として認識されていないんじゃないか?」
「そんな酷い!」
「さて…さっきから黙っているケイは嫉妬をしているのか?男のジェラシーは醜いだけだぞ」
「!!!バババババーロー!そんなわけないよ!」
じとっと見ているだけのケイに対し、レイは急に話を振りながら彼の本心を代弁するような事を言う。急に振られた上に勝手なことを言われて、
ケイはレイを睨みながら、柄にもなく顔を真っ赤にして叫びそうになるところを抑えつつもレイに詰め寄る。それでもレイは余裕そうな表情を浮かべて彼を見ていた。
ケイはその表情を見て更に顔を真っ赤にして今にも噴火しそうだったが、この挑発に乗ればレイの思う壺だと思い、そうそうとずかずかと歩きながらその場を去っていった。
やっぱりレイはここ最近急激に変わった。そんな二人のやり取りを見てルナマリアはそう思った。今でも無愛想なのは変わりないし、無口なのも変わらない。
だが、何となく、何となくであるが心を開いてきているような気がする。そんなことを考えると少しばかり嬉しくなってくる。
スクール時代から一応友達の輪に入ってはいたが、自分自身の事をさらけ出す事がなかったレイ。それが今はああしてケイをからかうという行動まで見せている。そしてシンも少しずつではあるが丸くなってきている。
その事実が何だか友人として嬉しかった。ルナマリアは少し笑みを浮かべながら、外にいるシンとラクスを見つめる。
「…何か嬉しい事があったか。さっきまで自分の射撃の腕に嘆いて落ち込んでいた癖に」
「…それを言わないでよ。今の今まで忘れていたのにさ…もう!」
「ぐっ!」
そんな彼女にレイが一言心に突き刺さる事を言って叩かれた。こんなやり取りもまた、戦争の中とは思えない平和なやり取りだ。
しかし、次に向かうマハムールは、ガルナハンと連合の陽電子砲台を巡って連合軍と激戦を繰り広げている所である。
そこへたどり着けばこの和やかな雰囲気など続けられないだろう。だからこそ、今は戦士達のひと時の休息時間なのだ。
翌日、ミネルバはマハムール基地へと入港する。新たな戦いへと身を投じるために、戦士達は歩き始める。
だがその足音はすでに連合の兵士に聞かれてしまう。マハムールを見渡せる崖の上、岩場の陰に一機のMSがスナイパーライフルのスコープを使って、基地のレーダーに引っかからない様遠くから基地の偵察をしている。
そのMS、黒いカラーのウィンダムは銃先を動かしながら基地の周辺を探っている。と、その最中でウィンダムのパイロットは工場の陰から姿をのぞいていたミネルバの姿を発見する。
精一杯ズーム倍数を上げ、その姿を精密に見てデータに照合させる。モニターには彼の期待していた答えが返ってきた。
ウィンダムは銃を肩にマウントし、身を低くしたままその場から去っていく。その途中、パイロットは味方に状況を報告するために通信を送る。
「本部、こちらゴースト1。敵基地にて『スニーカー』を確認。これより写真を送る。至急、マクスウェルリーダーへ送られたし」
『了解、ゴースト1はBポイントへ移動。更に情報を掴め』
「了解、これより移動を開始する」
本部からの新しい指示を受け、ゴースト1は更にマハムール基地に近いBポイントへと移動を開始した。それと同時間、ガルナハンに近い山岳の洞窟の中。
中には電子機器やMS整備用のトレーラーなどが置かれていて、どうやら急造の拠点のようだ。その洞窟の小さな空間を使って作られた隊長室に先ほどの報告が届く。
「隊長、ゴースト1より報告です。マハムールにスニーカーが現れたそうです」
その報告を聞いて、隊長室にいた男は、椅子の背もたれから体を起こし、その報告書を受け取る。そしてそれをあらかた見終えた後、椅子から立ち上がって兵士に言った。
「全隊員に伝達。出撃準備を開始し、今夜中に終えるよう」
「はっ。隊長は」
「私は本拠地で司令官にこの事を報告してくるついでに、対策を練ってくる。…まあ期待は出来んが」
「了解しました。ああ、それとオディオスさんが後1時間ほどでここに帰ってこれるそうです」
「そうか。では機体は整備兵に任せてゆっくり体を休めろと西岡が言っていたと伝えてくれ。ああ、あとあいつをユリカゴから叩き起こしておけ」
「はっ!」
さて。ここを拠点とし、マクスウェルを統率する西岡は、タバコを一本取り出し、それを咥えながらジープに乗り込み、護衛を一人付けてローエングリンゲートへと向かっていった。
ラクス達が一歩一歩戦場へと近づこうとしているのに合わせて、連合の兵士達も一刻一刻とそれに近づいてくる。部隊は海上から地上へ。
戦士達の行進曲が少しずつ、重なり合って大きくなっていくのだった。
なんというか今回番号を入れてみたのですが、色々とぐだぐだすぎて悲しくなってきます。
13番目の12/は無視してください。あと、支援のほうありがとうございました。
ところで、質問ですが、地球連合軍の略称って、EUFで大丈夫ですかね?
おお、一番? …GJっした!!
なんだか凄い久しぶりみたいな感じですが今回もとても面白かったッス!!
そして、最後ナタリーのまとめに脱帽しますたw
なんというほのぼの、これはなかなか無い
ホント、いいキャラしてますよね〜彼女
地球連合軍の略名はO.M.N.I Enforcerですよん
ストライクガンダムのOS起動画面とかに出てきます
正直「それ、略してなくね?」とか思ったりするんですが
まあ、種ですしね
GJ!
ナタリー可愛いよナタリー。
あとBleiveじゃなくてBeliveじゃね?
>>153 _| ̄|○<…今気がつきました。ウツダ…。今からアトラスの炎に焼かれてきます…
GJ!
>「…お互い、ただの誰かのクローンとしては死にたくはないよなぁ」
>「…そうだな」
泣けるでぇ〜
>>152 >地球連合軍の略名はO.M.N.I Enforcer
とすると敵はジアス(ry
ああもう、ナタリーかわいいよナタリーw
オディオにマックスにハン・・・
その内、素手で岩盤割る奴とか出てきそうだな
>>153 いや・・・、believeじゃないのか?
ポットは地上じゃ使えなかったような
GJGJGJ
ほしゅ
下がり過ぎ上げ
初歩的なスペルミスとか、設定ミスとか今回は本当にすいませんでした。
カオスのポッドに関しては正直なかったことにしたい…。ウィンダムあたりが後ろから撃とうとしたことに…。
しかし過ぎた事なので、今度はそういう描写がないよう心がけたいと思います。
さて、お気づきの方も多いでしょうが今回登場したマックス、ハン、そしてオディオス。元ネタはあれです。
どこかのじーさんの奥義にじーさんの奥義、じーさんの奥義とじーさんの奥義が、そしてじーさんの奥義がオディオスをぶっ潰すんですね?
ほしゅ
いつもたのしみにしてるよ〜保守
保守上げ
久しぶりに来たけど、ミネルバの連合側コードネームが「スニーカー」つうのはいいねぇ。
エターナルとか、あの辺りはなんて呼ばれてるんだろ?
歌姫の艦(船)じゃね?
「ぴんく」
173 :
通常の名無しさんの3倍:2007/10/25(木) 11:33:02 ID:sT6MeY5T
保守age
連合偵察兵A「あれはなんだ?」
偵察兵B「どうやらザフトの新型艦らしいが…。データはないな。とりあえず、趣味の悪い色だ」
偵察兵A「全くだ。とりあえずコードネームは「ピンク」でいいか」
偵察兵B「いいなそれ、わかりやすい。本部へ、ザフトの新造艦らしきものの姿を確認。データを送る。コードネームは「ぴんく」で…」
2年後
偵察兵A「スニーカーの姿を確認したぞ。…あれは奪取し損ねたインパルスだな」
偵察兵B「それにザクにバビ…か…なあ、あの色、どこかで見たことがないか?」
偵察兵A「2年前のピンクに似ているな。しかし、何処かバカっぽくはないか?何と言うか…マヌケというか」
偵察兵B「そうか?…ん〜まあ何か頭悪そうな感じではあるが。じゃあとりあえず「バカピンク」とでも呼んでおくか」
偵察兵A「いいなそれ」
ラクス「ぶぇっくしょん!!…う〜また誰かバカピンクと呼びましたわね…」
悪乗りした…また時間掛かりそうなので…。本編とは関係な…いことを祈ります。
待ってるんだぜ!
176 :
172:2007/10/26(金) 11:44:21 ID:???
感謝と謝罪を要(ry
ネタ化ありがとうwww作者氏COOLJOB
それって本編に関係しちゃうかも知れないって事だよね!w
続き楽しみに待ってる!!
ほしゅ
ほしゅ
保守
助けなくて良かったのに
寧ろ助けるなよ
ロウ要らんことしくさりやがって…KY
保守
>>181 ロウが悪いんじゃない、
悪いのはいらん所にキラをデリバリーしたマルキ雄だ。
マルキオが自称宗教家な思想家でなく本物の宗教家だったらこんなことにはならなかったんだろうな……
いくら近くだったからって設備の整った病院じゃなくて
ボロい孤児院にキラを預けるのはどうかと思うぜ
いや、ロウだって爆発に巻き込まれて(赤枠は電池切れだったか?)なんとか最寄りの民家に助けを求めたって感じだったはず
応急手当てと医者なり軍なり(MSあるし)を呼んでもらうつもりだったんじゃないか?それをエセ宗教家は・・・
SEEDの思想をバラまいた事といい、ラクスにもいらん事も吹き込んだっぽい事といい。
やはりヤツが種世界の諸悪の一端か…
丸木尾は這い寄る混沌だから仕方ない
保守点検
保守保守
ホシュ
保守