予想もしなかったラクスの発言に、キラは思わず狼狽えた。
まさかキラが、そこまで狼狽えるとは思っていなかったのだろう、ラクスの顔からは笑みが消え、不安そうな表情が浮かんでいた。
「……もしかして、お嫌ですか?」
「……ううん。ごめん、そんな事無いよ。だから、そんな顔しないで」
自分の態度が目の前の少女から笑顔を消し去ってしまったのを悟ったキラは、精一杯の笑顔を作りながら答えた。
そして、キラの言葉を聞いたラクスは笑顔を取り戻すと頬を染め、真っ直ぐ見詰めながら頷くと、女性なら一度は夢見る願いを口にする。
「キラ、お願いがあります。あの……戦争が終わりましたら、私を……私を迎えに来てくださいますか?」
「ええっ!?」
キラは再び狼狽えると、ラスクの顔からは笑顔が消え、その瞳が潤み始めた。
高々、キスをしただけで、ここまで話しは飛ぶとは思いもキラも思わなかっただけに、狼狽えるのも当たり前ではあったが、今にも泣き出しそうなラクスを見て、そんな事も思っていられなくなった。そして、ラクスの頬を涙が伝うと、何故、あの時キスをしたのかを思い返した。
確かにアスランに対しての嫉妬と言うのもあったが、自分自身がラクスの事を手に入れたいと思ったのは事実だった。ましてや、目の前の少女に好意を抱いてなければ、あの様な事はしない。
「……あっ!……駄目だ、僕はこんな時に!」
己の甲斐性の無さに、キラは髪を掻き毟りながら自分の事を責めた。
キラがそうしている間にも、ラクスの涙は流れ続ける。
自分の想いに覚悟を決めたのか、キラは突然ラクスを抱きしめると捲くし立てる様に告げた。
「泣かしちゃってごめん!必ず、絶対に迎えに行くから!だから、それまで待ってて!」
「ふぇ!?……ほ、本当ですか!?」
「うん、絶対に迎えに行くから!」
「……はい。お待ちしていますから……必ず生きて……私を迎えに来てください」
キラの腕の中で、ラクスは声を震わせながら喜びの涙を流した。