1 :
通常の名無しさんの3倍:
2ゲーッツ
>1
乙!
>1
乙〜。職人の降臨をまったり待ちますかね。
>1
乙!!
>1
GJ!!
俺のこの手が真っ赤に燃える
>>iは乙だと輝き叫ぶ
保守
保守
11 :
通常の名無しさんの3倍:2007/05/29(火) 13:21:20 ID:HF8eMNPs
乙保守
全力で保守
保守
なんだこれ。乙と保守のラッシュしかねえwww
保守。
乙しかないスレに、意味はあるのか…
次回、ガンダムSEEDファイター、シン
『職人を待ちながら』
過疎期に入ってるのか?このスレ・・・
元々過疎ってた。そんなドモンスレを1人の職人が大黒柱となって支えてくれてた。
で、現在その職人が不在でスレが元の状態に戻った……と、ただそれだけのことだ。まだまだ慌てるような状況じゃない。
G-SEED氏帰ってこねーかなー
まあ、職人さんが降臨するのをまちませうか。
20 :
前スレ576:2007/06/04(月) 09:12:11 ID:???
お久し振りです。携帯から失礼します。
なんだかんだでもう前回から一月経ってしまいますね…。すみません。
第九話、まさかここまで苦戦するとは全くの予想外でした。自分の構成力の甘さと読解の浅さ、何より未熟さを痛感しています。
申し訳ないのですが、今少し時間を下さい。
追伸
G-SEED氏、自分もあなたの帰還を心待ちにしています。
保守
保守
>20さん
いつも楽しませていただいてますよ〜
wktkしてお待ちしてます。
てか、なんで他に誰もSSなりネタなり書かないんだ?
前スレに埋め代わりにいくつか小ネタ出したんだけどね。
何もないトコからネタひねり出せるほどの才能も無いんだ……
兄沢さん京アニ繋がりだってなにやってんすか・・・・
第九話…の撮影直前、ミネルバ
シン「た…ただいま…」
一同『遅いッ!!』
シン「すんません…」(バタリ)
ルナ「ち、ちょっと何してんのよ! もう本番直前なんだから、ほら! しっかり!」
シン「ああ、紅葉が見える……マユ〜待てよ〜」
ルナ「ヘラヘラ笑ってあの世に行くなーっ!」
レイ「…………。師父……」
ドモン「む、今回は少しばかり気合を入れすぎたかもしれんな」
一同『少しじゃねぇ――――ッ!!』
ヨウラン「おい、マジで危なくないか? 死んだりしないだろうな?」
ヴィーノ「あ、馬鹿!」
ステラ「死ぬ? シン、死ぬ!? 死ぬはダメぇ!!」
ヨウラン「やべ! まずい!」
ヴィーノ「お、落ち着けステラ! シンは大丈夫だから」
ネオ「はい、ちょっとごめんよっと」
ヴィーノ「うわっ!?」
ネオ「ステラ、安心しろ。この坊主はそう簡単にどうこうなる奴じゃない」
ステラ「ネオ…」
ネオ「こいつはお前を守ると言ったんだろ?」
ステラ「うぇい…シン、ステラ、守るって…」
ネオ「それとも、こいつは嘘つくような人間か?」
ステラ「うぇい! シン、嘘つかない!」
ネオ「だったらお前をほっといて逝っちまうはずがないさ。信じてやれよ」
ステラ「うぇーい! ステラ、シンを信じる!」
ヨウラン「す、すげぇ、暴走ステラをあっさりと…」
ネオ「ふ、任せろ! 口と手だけは達者だっ!」
ルナ「うわ自分で宣言してるし」
マリュー「胸張って言うことじゃないわよ、ムウ…」
アーサー「本番行きまーす! 3・2・1・Q!」
「――の野郎ッ!!」
気配を感じ、インパルスがフォールディングレイザーを振り回す。確かな手ごたえを感じ、一気に突き刺した。聞きなれた金属の破砕音。霧を割って、巨大な影が倒れこんでくる。
しかし、それと知ったシンは舌打ちをした。
「またダミーかよ……っ!?」
背後、濃霧の向こうから数条の光線が飛んでくる。背中に数発の衝撃。視界を封じられた現状では避けきれない。装甲が削られ、トレースされた痛みがシンを苛む。
慌ててダミーロボットの残骸を突き飛ばし、建物の影へと隠れるシン。しかしそこには先客がいた。
「もう終わりかい?」
かちり、と音を立て、インパルスの額に銃口が突きつけられる。
それと悟ったシンは、目の前にいるであろう敵を鬼のような形相で睨みつけた。
「霧に紛れて伏兵を使って…それでもチャンピオンかよ、アンタって人はぁ!」
「言ったろ? 闘いってのは非情なものなんだよ。勝つ者がいれば必ず、負ける者もいる」
霧の中から顔を見せたのは、赤と黒のカラーリング、縦長の頭部のガンダム。ライフルの銃口をインパルスに突きつけ、余裕を見せてか、言葉を続ける。
「じゃあな、威勢のいい坊主クン」
甲高い銃声が一発、夜のロンドンに響く。
レイは足を止めた。怜悧な顔を僅かに歪め、軽く彼方を振り仰ぐ。しかしそれも一瞬のこと、再び音もなく歩き出す。
金色の髪と白の服が、はらはらと揺れながら霧の闇へと消えていく。
少年の背が闇に消えるや、裏の路地に浮かび上がるは一人の男。
癖のある黒髪は風に揺れ、また赤い鉢巻の尾も静かにたなびく。赤いマントを羽織ったままに腕組みをし、真っ直ぐにこちらに向けるは切れ長の目。鋭い光を宿した黒い瞳は強靭な意志を感じさせる。
どこかで見た格好であるが、彼は我々のよく知るあの少年ではない。
誰あろう、語り部たるドモン=カッシュその人である。
「さて…あってはいけないことが起きてしまった。シン=アスカは敗北を喫してしまったのだ。
相手の名はムウ=ラ=フラガ。『エンデュミオンの鷹』の二つ名を持ち、かつてネオイングランドのジョンブルガンダムを三度も優勝させたガンダムファイト史上最強の男だ。
そして時期を同じくし、ネオフランスのファイター、レイ=ザ=バレルもまた、彼を探してこの街にやってきた。
果たして年若き少年達は、この英雄に打ち勝つことが出来るのだろうか?
それではッ!」
ドモンがマントをばさりと脱ぐ。
下から出てきたのはピチピチの全身黒タイツ、即ちファイティングスーツだ!
「ガンダムファイトォォ! レディィ…ゴォォォ――――ッ!!」
第九話「強敵! 英雄『エンデュミオンの鷹』の挑戦」
霧の都ロンドン。しかし実際には、霧が見受けられなくなって久しい。
元々この地の『霧』は、工場の煙に含まれる有害物質が原因でできたスモッグのことである。技術の進歩と環境への配慮が重なり、旧世紀には既に『霧』は消えていた。
地球の技術レベルが低下している今も、かつての産業革命時代ほどの工場の乱立が起こっていないために、スモッグは発生していない。
そう、普段であれば。
ロンドンの一角、街を見渡せる小高い丘に、レンガ造りの大きな屋敷がある。
夜だというのに明かりは浩々としている。繊細な細工を施されたシャンデリアには闇を払わんとばかりに光が灯され、床に敷かれた赤い絨毯は光を受けて優雅に黙する。
周囲に配置された家具はどれも一級品であろう。そしてこの部屋に立つ人々もまた、下賤な身分とはかけ離れた者たちである。
カードに興じる男達。それを見守る女達。全員が盛装してはいるが、ネオフランスの迎賓館ほど華やかでもない。女達が着こなすのは、ふわりと広がるパーティードレスではなく、しっとりとしたシルクのローブ。男達もまた全員が背広姿で、静かな威厳を見せている。
ここがフォーマルな場であることを意識しているのだろう。立ち居振る舞いも、外の浮浪者とは違う。大声も出さなければ、負けたからと言って泣きもしない。あくまで穏やかに、そして真剣に。この場には暗黙のルールがある。
その中に一人、異質な男がいた。
「スリーカード」
すっと自分のカードを卓に広げる。誰からともなくどよめきが広がった。
「おお…またフラガの勝ちだ」
「しかし強すぎる。またイカサマをしているのではないだろうな?」
「昨日の今日でそんなわけあるかよ。俺には幸運の女神様がついてるのさ」
口の端を歪めるその男。整った顔立ちではあるが、美しいというより愛嬌のある顔である。
顔面を横切る大きな傷痕は掻い潜ってきたであろう幾多の修羅場を想像させるが、口元といい目つきといい、どうにも軟派な雰囲気が拭えない。セミロングの金髪に青い瞳、背広に包んだ細身だががっしりした体つき。屋敷の主であるこの男、名をムウ=ラ=フラガという。
彼の言葉に苦笑する女ディーラー。ドレスではなく固いスーツに身を包んではいるが、目を見張るほどの大きな胸が強調されており、十二分に男の目を惹きつける。栗色の長い髪を背中に流した彼女の名はマリュー。ムウの妻であった。
「ふむ…ではもう一度」
「やめておいたほうがいいと思うけど? 何事もほどほどにしとかなきゃ」
「一理ある。が、私もこのまま引き下がっては我が家名に傷が付くのでな」
そう答える相手の目は真剣だった。
ムウは呆れたように一息ついて、マリューに頷いてみせた。マリューは少し困ったように笑って、カードを切り、回す。
かちりと柱時計の針が動いた。二本の針が八時ちょうどを指す。ごおん、ごおん、と鐘が鳴り響いた。
どうしてかこの古い柱時計は、示す時間より一つ多くの鐘を鳴らす。壊れているのは明白だが、特に困ることはないからと、ムウは修理を頼むことはしていない。
九度目の鐘が鳴り、その余韻も消えかかった頃――
「うん?」
何かに気がついてムウは部屋のドアを振り向いた。手にはカードを広げたままだ。
「どうしたムウ?」
「いや、『また』お客さんが来てるみたいでね。入ってこいよ!」
しばしの後――
「さすがに分かるか。ムウ=ラ=フラガ」
氷のように冷ややかで鋭い声。同時にドアが静かに開かれる。そこにいたのは金髪碧眼の美少年。
白を基調とし、諸所にフリルのついた服。肩の青いガーダーはシャンデリアの光を照り返す。何より特徴的なのは腰の細身のサーベルであろう。旧世紀の銃士を髣髴とさせる、一目でネオフランスの人間と分かる服装であった。
少年は優雅に一礼する。フリルが揺れ、はらりと金の髪が一房こぼれた。
「夜分に失礼する。俺はネオフランスファイター、レイ=ザ=バレル」
「こりゃ丁寧にどうも」
対してムウは、ほんの少し肩をすくめた。
「ムウ=ラ=フラガ。貴公にファイトを申し込む」
「後にしてくれないか? 今、大事な勝負の途中でね」
「それでは終了まで待たせていただこう」
「やめとけ、朝までかかるかもしれないぜ。泊まっていいから、今日は先に寝とけよ」
驚いたように、一瞬だけレイは目を見開く。しかし部屋の人々をちらりと見回すと、皆が好奇か、あるいは不快の目を己に向けているのが見て取れた。
場の空気をわざわざ乱すのは、レイの思うところではない。
「では、明日に?」
「ああ、明日」
流れるような動きでレイは一礼し、部屋を出た。
見送った部屋内の一同は、何事もなかったかのようにカードを再開した。
「初対面の人間に向かって、泊まっていい、とは…」
「ええ。おかげで私の苦労も絶えません」
前を歩く執事が苦笑交じりに答える。
レイを遊技場へと案内し、今また寝室へ案内してくれているこの執事。彼は若いという以外、特徴のない男だった。
青ばんだ短い黒髪に黒目、中肉中背。どこにでもいるような平凡な顔。美男でもなく、醜くもなく、鍛えているわけでも弱々しいわけでもない。カリスマの塊と言えるデュランダルを見慣れているレイにとっては、逆に新鮮に思えるほどの平均的な男であった。
「客人は屋敷に泊まっていただくのがこの家のルールなんですよ。しかし無尽蔵に客室があるわけでもありませんので…」
執事が足を止め振り向いた。脇には、これもまた飾り細工を施された一つの扉がある。
「ですからバレル公、申し訳ありませんが本日は相部屋となります。ご不満であれば街の宿を取っていただくほかありませんが…」
「野蛮人でないなら誰が一緒でも構わんさ」
執事は苦笑した。邪魔にならないように一歩下がる。
レイはかすかに扉を開けて――
「こぉぉの馬鹿シン!!」
「だからあれは仕方ないんだ…ってぇ、殴るなよ! 俺は怪我人だぞ!?」
迷わず閉めた。執事を振り返る。
「別の部屋は空いていないのか?」
「残念ながら」
分かっているのかいないのか、執事は苦笑を浮かべたままだった。
古風な木のベッドに横たわる傷だらけの少年。やはり木製の椅子に座って彼を看病している赤い跳ね髪の少女。どちらもレイには見覚えがあった。あまりいい思い出はないが。
「レイ!?」
ベッドの少年が気付いて声を上げる。それに弾かれたように、少女もこちらを振り向いた。
部屋に入り、ドアを閉め、あらためてレイは溜息をつく。
「久しぶりだな。シン=アスカ、ルナマリア=ホーク。出来ることなら会いたくなかったが」
「ちょっと、いきなりそれって失礼じゃない!?」
レイはルナマリアの声を無視して部屋中央のテーブルに向かい、椅子に腰掛ける。背もたれが軽く鳴く。
「前回のファイトを根に持ってるわけ!? こっちはアンタんとこの議長に振り回されたのよ!?」
「議長を危険に晒したのはどこの誰だ」
「うちの馬鹿とそっちの議長自身ね」
「俺のせいかよ!?」
『お前(アンタ)はもっと自覚しろ(しなさい)!!』
二人に同時に突っ込まれ、さすがのシンも怯む。
ちなみにそのころネオフランスの議長はといえば。
「タリア、君達はレイを追いかけなくていいのかい?」
「ええ、ネオイングランドだけは一人で行かせてほしいと頼まれましたので。それに貴方が勝手にどこかに行かないように監視も」
「はっはっは、心配性だね君達は」
「前科を作っておいて何を言いますか」
地上ネオフランス迎賓館のバルコニーで、タリアと二人、ワイングラスを片手に北西の夜空を眺めていたりする。
さてこちら、場面戻ってネオイングランドのフラガ邸。
「大体今回だって一人で突っ走ってコレじゃない! いい加減学習しなさいよ!」
「あれは俺のせいじゃないって言ってるだろ! 奴が卑怯なだけだ!」
「卑怯なら卑怯でその前に気がつくことも出来るでしょ! 馬鹿みたいに正面から当たってたらいつか砕けるわよ!」
「そうか、まだ猪突猛進癖は治っていないのか。やはり会いたくはなかったな」
「お前も乗るなよ! こっちの事情も知らないくせに!」
「なら、教えてもらおうか」
す、と氷の瞳が流れ、シンの赤い瞳を捉える。
雰囲気が変わったのを見て取ったか、ルナマリアも黙った。
シンは傷だらけで、頭にはいつもの赤鉢巻の代わりに白い包帯が巻かれていた。布団の上に出ている腕にも包帯が巻かれており、頬にはガーゼも貼られている。口論――じゃれ合いと言った方が良いか――が出来るほどには元気のようだが、やはり気になった。
「お前ほどのファイターがここまでやられるなど、並の相手ではあるまい。やはり老いたりとは言え百戦錬磨のベテランファイター、『エンデュミオンの鷹』か」
「…………」
ぷい、とシンは壁を向く。
「ちょっと、シン」
たしなめるようにルナマリアが声をかけると、渋々ながら、再びシンはレイを向いた。
「あいつはファイターじゃない」
「何?」
眉をひそめるレイ。
「あいつは、悪魔に魂を売ったんだ」
シンの話を要約すれば、こういうことだった。
ファイト中に霧が発生し、それにやられてかセンサー類が全て機能不全に陥った。メインセンサーさえ働かなくなり、盲目のまま闘うことになった。
さらにムウは霧に紛れてダミーMSを多数配置し、一対多で攻めて来た。シンを追い込み、疲れさせ、そこを狙ってきた。
「……そんな陰湿な手を使うというのか、ムウ=ラ=フラガは」
ざわりとレイの気配が変わる。目は底冷えするほど険しくなり、心の底から憤っていると見て取れた。
「ムウ=ラ=フラガ、ネオイングランドの英雄、どんな時にも正々堂々王者としての貫禄を見せ付ける――そんなのは評判だけだ。奴はファイターの風上にも置けやしない下衆だよ」
吐き捨てるシン。ルナマリアは、先程までの剣幕はどこへやら、一転して心配そうにシンを見やっている。
「下衆…か」
ぽつりと呟き、目を伏せるレイ。と、何かに気付いたように顔を上げる。
「それではお前は、負けたのか」
「負けちゃいない!」
シンは激しい剣幕で上体を起こしかけたが、途端に顔を歪める。
「馬鹿、自分の体のこと考えなさいよ!」
ルナマリアはシンの頭を枕に押し付け、再び強制的にベッドに寝かせた。すぐさまガーゼで彼の額の汗を取る。
苛立ったようにシンはルナマリアを睨んだが、ガーゼの感触は素直に受け入れられるものだったらしい。ゆっくりと目を閉じ、息を整える。そんな二人を、レイは黙って見ていた。
ややあって落ち着いたのか、再びシンは口を開く。
「確かに勝負には負けたさ。だが、あいつは最後の最後で、俺にとどめを刺さなかった」
「何?」
「奴は俺を撃てたんだ。なのに、あいつの弾は俺の頬をかすめただけでさ」
自分も不思議だと言わんばかりに、シンは続ける。
「そのまま俺を放っといて、霧に消えていったんだ。しかもなんか苦しそうだったぜ」
「ふむ」
一つ唸るレイ。
ごぉん、ごぉん、と遠くから柱時計の鐘の音が響いてくる。鳴った数はちょうど十。
レイは懐に手を入れ、懐中時計を確認した。ちょうど九時だった。
「あいつ持病でも持ってるのかな?」
特に鐘の音を気にせず、シンが呟く。
「でも、ムウ=ラ=フラガが病気持ちなんて聞いたことないわよ?」
「開示されている情報が全てとは限らん」
言いながらレイは懐中時計をしまいこんだ。代わりというわけではないが、携帯用の薬箱を取り出す。
それを見止めたシンとルナマリアは、少し驚いたようだった。
「なんだよ、お前も病気持ちか?」
「ああ、生まれつきな。委員会には教えていないが」
レイは何でもないことのように答え、慣れた手つきで蓋を開けた。カプセルを一つ、水なしで飲み下す。
屋敷に静寂が訪れるのは、全員が寝静まった後だ。
薄暗く明かりを落とした寝室のテーブルで、ムウは苦しげに息をついていた。手先を小刻みに震わせながら薬瓶を掴み取ると、カプセルを一つ取り出し紅茶で飲み下す。
「かなり量が増えているわ。もうやめた方が…」
「心配するなよ、マリュー…俺は不可能を可能にする男だぜ…?」
傍らで焦るマリューに笑ってみせて、さらにムウは紅茶をあおる。
「けど…」
「大丈夫だって。この大会が終わるまでさ…」
紅茶を飲み干し、ムウはカップをソーサーに置く。喉の異物感がなくなり、体が軽くなっていく。岩が乗っていたかのような頭の痛みも嘘のように消え、感覚が冴え渡る。ほうっと一息ついて、背もたれに身を預けた。椅子が小さく鳴いた。
「終わったら火星にでも行こうぜ。あっちはここより温暖で、過ごしやすくなってるそうだ。うるさい周りもいないだろうし」
「そう…ね…」
夫の笑顔に、少しだけ潤んだ目で体を起こし、マリューは頷いた。自身もゆっくりと椅子に座る。
「ねえ、あの子達」
「ネオフランスの坊主クンかい?」
「ええ。それとネオジャパンのあの子も。午後のティータイムに誘ってもいいかしら?」
「あ、気に入ったんだ、お前も」
「気に入ったっていうより、放っておけないのよね。あなたと似てて」
「おいおい、そりゃ俺が子供並みって言いたいのか?」
「冗談ばっかり。分かってるんでしょ?」
マリューは笑顔だった。だが瞳は濡れている。シャンデリアから洩れる僅かな光を照り返し、マリューの瞳は橙の輝きを浮かべていた。
ムウは虚を突かれたように、しばし妻を黙って見ていた。しかしそのうちに了解したか、長い溜息をついた。
部屋の壁には、全部で五枚のセピア色の写真が額縁に入れられ飾られている。
一枚目は背広姿の金髪の壮年。ムウに似てはいるが、こちらは静かな威厳を漂わせている。目元もムウのように緩んではおらず、厳しく引き締められている。
その隣は、若かりし頃のムウ。髪は短く、目元も幼い。未だ顔の傷跡もない。
さらに隣の三枚は同じ場所を写したもの。一枚目は虚しく風の吹きぬけるような焼け落ちた骨組み。二枚目は木製のこじんまりとした小屋。三枚目は今の、レンガ造りの屋敷の外観。
「あんな坊主どもがガンダム乗りだなんてな…。時代は流れてるってことか」
吐息と共に言葉を紡ぐと、そっとマリューが手を重ねてきた。振り向けば、彼女は優しく、しかしどこか儚げに微笑んでいた。
何の言葉を返すこともなく、ムウもまた妻に微笑みを向けた。
マリューの手は温かい。その分、己の手の中の薬瓶が、やけに冷たく重く思えた。
翌日の午後、あの執事に連れられ、レイとシンとルナマリアは屋敷の応接間へと足を運んでいた。
旧世紀から続くネオイングランドの伝統、三時のティータイム。それに三人が呼ばれたのである。
「まったく、体力だけは人一倍なんだから」
「少しは復帰したこと喜んでくれたっていいだろ、ルナ」
「体力馬鹿は頭が足りん。世の常だ」
「キザ野郎は打たれ弱いってのもな」
「俺のどこがひ弱だと?」
「へえ、自分がキザだって自覚はあるわけか」
「少なくとも野蛮な馬鹿でないのは自覚しているな、お前と違って」
「何だと…」
「ちょっと、廊下のど真ん中で睨み合わないでよ」
「あなた方は、仲が良いのか悪いのか理解に苦しみますね」
『余計なお世話だ(です)』
などと言葉を交わしながら、着いた応接間は昨日の遊技場である。カードの卓となっていた大テーブルは今は綺麗に拭かれ、塵一つない見事な様となっていた。
既にフラガ夫妻は席についていて、四人の到着を笑顔で待っていた。
「ありがとう、ノイマン」
「はっ」
微笑むマリューに一礼し、執事が身を退ける。
(ノイマンって名前だったんだ)
小声でルナマリアが呟いた。が、レイとシンは言葉を返さない。既に二人の意識はムウに向けられていた。
「怖い顔しなさんな。好きにかけなよ」
笑みを含んでムウが言う。
レイは静かに、シンは大股に、ルナマリアはパートナーの挙動を気にしつつ――何をどう怒り出すか分からないので――三人並んで席に着いた。フラガ夫妻とは向き合う形だ。
ノイマンがティーポットを携え、紅茶を五人のカップに注いでいく。そのティーセットもまた、花と蔦を模した美しい細工と塗装が施されていた。
「いい香り…」
「ありがとう。ウェールズのものなのだけど、気に入ってもらえれば何よりだわ」
ルナマリアの感嘆に、マリューがにっこり笑う。自分の呟きが聞こえていたことにか、ルナマリアは顔を赤くした。
「それじゃ…いただきます」
「どうぞ、お嬢さん」
ゆっくりとカップを口元に持っていくルナマリア。
対してレイもシンも動かない。
ムウは自分の紅茶が入ると、カプセルを一粒割って、中身を紅茶に入れてかき混ぜた。
レイが目を見張った。
「どうした? 坊主クン達は飲まないのかい?」
カップを手に持ち、何気ない調子で問いかけるムウ。
「ネオジャパンの子には、紅茶より玉露の方が良かったかしら?」
笑顔を崩さずに言うマリュー。
「生憎、人に親切にされるのは慣れてな…あぁぁっ!!」
嘯くシンの足を、テーブルの下でルナマリアは思いっきり踏みつけた。シンは目を剥いてルナマリアを睨みつけるが、彼女はどこ吹く風で紅茶を口に含む。
その様子をにこやかに見ながら、ムウも一口紅茶をすすった。そうしてカップを置いて、三人に笑いかける。
「別に毒なんて入ってないよ?」
「そういう問題ではない、ムウ=ラ=フラガ」
レイが口を開いた。
「我々はここにファイトをしに来たのだ。正々堂々、騎士道に乗っ取ったガンダムファイトを」
「ファイト…ね…」
「何か?」
「どいつもこいつも、ファイト、ファイト、ファイト……」
小さく俯き、含み笑いをするムウ。レイは真っ直ぐに彼を見据えた。
「何がおかしい?」
傍らのシンも、苛立ちをむき出しにして食ってかかる。
「いやねぇ、若いってのはいいことだと思ってね」
顔を上げたムウは、笑っていた。気持ちのよい笑顔ではない。多分に哀れみが含まれた、上の立場からの笑顔。
「自分の可能性だけを信じて突っ走れる。未来のことなんてこれっぽっちも考えずに、上を目指して、ひたすら敵を倒して…それで満足できる」
「何が言いたいんだよ」
「若さってのはいつか朽ちるものだってことさ」
ムウは笑みを消した。
「どんなにのし上がっても、上には上がいる。どこまで行ったって果てはない。それを悟ったときは、もう手遅れだ」
「だから昔にしがみつくのかよ。卑怯な手を使ってまで、若い頃の栄光を取り戻したいってのかよ!」
シンは思い切りテーブルを叩き立ち上がった。紅茶が揺れてソーサーにこぼれる。
ルナマリアは焦ったように、シンのマントの裾を引っ張った。しかしシンには、彼女のサインに従うつもりはない。燃えるような目でムウを見ている。レイもまた、凍りつくような目線をムウに向けていた。
マリューは聞くことすら辛そうに目を伏せている。ノイマンは無表情のままティーポットをテーブルに置いた。
しかしムウは薄笑いすら浮かべている。
「若さ故の過ちって言葉を知らないらしいな」
「何だと?」
「お前こそどうなんだ、坊主。そんなに闘いたいのか? 何のために? 俺を倒して新しい英雄にでもなりたいのか?」
ぎり、と奥歯を噛み締めるシン。しかしムウは飄々と口元にカップを傾け、シンの焼け付くような怒りさえ受け流す。
胸が痛くなるほどの緊迫感の中、レイは静かに口を開いた。
「アル=ダ=フラガ、か」
ムウの顔色が変わる。
一気に空気が張り詰めた。シンは毒気を抜かれたように――もしくは勢いを殺がれたかのように、レイを見やった。レイは氷柱の如く鋭い視線を冷たくムウに突き刺している。
シンはばつの悪い顔をして、元通り椅子に座った。
かちりと一つ、時計の針が音を立てる。
「驚いたぜ。お前みたいな坊主が、親父の名を知ってるとはな」
針の音に促されたように、ムウが言葉を搾り出した。彼はようやくそれだけを口に出来た、とレイには思えた。
「世界初のナチュラルファイターの名だ。知らんはずがあるか」
「優勝はしなかったけどな」
「ファイターになったというだけで賞賛に値する。特にナチュラルにとっては」
レイはムウの混ぜ返しを切って捨てた。
「ガンダムファイトの歴史において、転換点は二つある。一つは四年前のアスラン=ザラの優勝」
何故か小さくシンが体を震わせた。しかしレイは彼を気にすることなく、言葉を続ける。
「お前の三期連続優勝によってガンダムは重火力型が主流となっていった。大戦争、大惨禍を避けるためのガンダムファイトにおいてその在り方は本末転倒。
流れを見直すべく第十二回大会は四年間延期され、F.C.56、ネオホンコンのアスラン=ザラが優勝し、拳一つでも重火力に勝てるということを立証した。
もう一つはF.C.32、第七回ガンダムファイトにおけるアル=ダ=フラガの出場。そう、ナチュラルのファイターの登場だ」
個人の戦闘能力がものを言うガンダムファイトは、当初はコーディネイターの独壇場であった。
肉体の素質を先天的に持たされ、それを強化されてきたコーディネイターのファイターに、ナチュラルのファイターは駆逐された。コーディネイターに強烈な差別意識を持つ政府高官もいたが、彼らが上げるであろう戦果を考えると、自分の感情を押し通すことは出来なかった。
大量の人間が集団で戦闘する全面戦争の時代とは違う。ファイターがたった一人で闘うのだ。
加えて全面戦争の場合は結末が見えないが、ガンダムファイトは結末は明確である。必ず敗者がいて、勝者がいる。最も強いファイターとガンダムがいれば、四年間とはいえ、世界の覇権を得ることが出来る。
高官たちは自分の感情を押し殺し、コーディネイターをファイターに推した。そうでなければ他国のファイターに一蹴されることは明白だった。
こうして長く『ファイター=コーディネイター』の図式は確固たるものとなっていた。しかし、それを覆した男がいた。
アル=ダ=フラガ。ナチュラルでありながらネオイングランドのファイターとなった男。
ムウ=ラ=フラガの父親である。
「そのときの裏事情は、語ることすら憚られる」
吐き捨てるようにレイは言う。ムウは黙したまま、静かに少年の言葉を聞いていた。表情は岩壁の如く固く押し殺されている。
「ともかくアル=ダ=フラガは出場した。優勝は出来なかったが、経緯はどうあれ、奴の出場はナチュラルに希望を与えた。コーディネイターでなくとも、ナチュラルでもファイターになれる、と。
アルは第八回ファイトを目前に火災で死亡したが、その息子のお前が第九回ファイトに出場し優勝――そしてナチュラルの身ながら三期連続優勝を果たした」
ムウが静かにカップを置き、指を離す。小刻みに震えているのを、レイは見逃さなかった。ムウはそのままゆっくりと手をテーブルの下へと仕舞い込む。
「父親への手向けとでも言うつもりか? 卑怯な手を使ってまでナチュラルとして王座を守り抜くことを」
「そんなんじゃない。俺は、俺として闘ってきただけだ」
ムウがようやく言葉を返した。
しかし彼の声は、張りこそあるものの初めのような余裕を持っていなかった。僅かに固い。それでも強張った目はレイの氷の瞳を見据える。
「お前はお前の栄光のために闘うと?」
「下らないと思うかい? だがな、他人にどう思われようと、俺にとっては譲れない大事なものなんだよ。俺は…」
「だとしても」
レイの氷点下の声が遮った。
「お前の行いを見逃すわけにはいかない。誰しもが大切な理由を持っているのだ。お前だけに卑怯が許される何の口実がある。お前だけがなりふり構わず勝利を目指せるとでも言うつもりか?」
屋敷がしんと静まり返る。昨日の喧騒が嘘のように。
空気が張り詰めていた。レイも、ムウも動かない。
プレッシャー、とでも呼ぶべきだろうか。両者の見えない気迫が部屋を圧していた。茶会とは本来は和やかな時であるはずなのに、この場は冷ややかな殺気に満ちている。
固唾を呑むシンには、時の流れすら凍り付いているように思えた。柱時計の振り子の音が、やけにうるさい。
そこに――
「あ、あのっ」
場違いな声がした。反射的に振り向けば、ルナマリアが疲れたような顔で席を立っていた。
「すみません、お手洗いを…」
部屋の空気が一気に暖かくなった。マリューが頬を緩ませる。
「どうぞ。ノイマン、案内してあげて」
「はい」
「あ、いいです! 自分で行けますから」
とは言うものの、緊迫した空気にあてられたか、ルナマリアはぎこちない動きでドアへと歩いていく。
ノイマンはドアをそっと開けた。同時に彼女に小さく囁く。
「本当に大丈夫なのですか?」
「そんなに心配しないで下さい、ノイマンさん」
ルナマリアは疲れた顔でノイマンに笑いかけた。
「まっすぐ行って右ですからね」
最後に確認するように、ノイマンが声をかけた。ルナマリアは最後に無理矢理微笑んで、廊下の向こうへとよろめき歩いていった。
少しノイマンは迷ったようだが、やはりルナマリアが気になったのか、一礼すると自分も部屋を出て行った。
小さくドアの閉まる音がする。
場の緊張の緩んだほんのひとときの間にも、レイはムウから視線を外すことはしなかった。
そしてムウも、自分にここまでの圧をかけてくる少年を無視することはなかった。
再び応接間は、湖面に氷の張る如く、冷ややかな緊張に満ちていく。シンはほんの少しだけ、退出したルナマリアを恨んだ。
かちりと一つ、時計の針が音を立てる。
「随分と律儀な考えをするな。白い坊主クン」
からかうように、しかし静かに、ムウが再度口を開いた。
「ネオフランスの騎士として当然のことだ」
「騎士、ね。そんなからっぽの称号に惑わされてるとも知らずに」
「議長から直々に賜った名だ。この時世において実体があろうとなかろうと関係ない」
レイが語気を強めた。
「俺は議長の役に立ちたいだけだ。もはや取り戻せない過去の栄光を追うお前と、大切な人の夢のために闘う俺、どちらが空虚と言える?」
先程からレイは全く表情を動かしていない。氷壁のような面貌でムウを睨みつけている。
ネオフランス議長・ギルバート=デュランダルの役に立つという目的は、レイにとっては己の存在理由に等しい。誰にどう揺さぶられようと、その一点においてレイは強固であり、それゆえに彼は迷うことのない人物であった。
ムウは一つ息をつき、口元だけで笑う。
「やれやれ…頑固な上に随分と口の回る坊主クンだ。そっちの彼とは違って」
「一々俺を引き合いに出すな」
ぼそりとシンが抗議する。
「だがね…口だけじゃどうにもならないんだよな!」
ムウの手元が動く。
シンが色めき立つ。レイもまた目を見開く。
「アンタって人は…!」
ムウの手に拳銃が出現していた。先程は小刻みに震えていた指先も、銃を握った今は微動だにしない。ムウは真っ直ぐにレイの心臓に狙いを定めている。
「栄光が取り戻せない? そんなこと誰が言った。今俺の銃は、お前らの心臓をぶち抜くことだって出来るんだぜ?」
「負けるときのことは考えないもんだろ!」
「そう言って、おととい見事に負けたのはどこの誰だ? 死に急ぐなよ坊主!」
歯軋りするシン。強く握られた手は噴火の予兆の如く震える。直後――
かちりとまた一つ、時計の針が音を立てた。
低い低い鐘の音が、重く苦しくこの場に響く。
ルナマリアは屋敷の中をさまよっていた。
トイレと偽って応接間を退出した後は、屋敷を探っていたのである。確かにあの緊迫感には辟易したが、それだけで抜け出すほどルナマリアは礼儀知らずではなかった。
シンの話が確かなら、MSの一群の証拠なり何なりあるはずだ。この屋敷にはないのかもしれないが、まずは当たってみるしかない。
音を極力殺し、廊下を小走りに行くルナマリア。ムウら屋敷の人間が応接間にいる隙に――
「ホークさん? どうしました?」
いきなり声をかけられ、飛び上がる。振り返れば、執事のノイマンが心配そうな顔をしてそこにいた。
大丈夫だと言っておいたのに、結局追いかけてきたのだろう。ありがた迷惑である。
「ご、ごめんノイマンさん、やっぱり迷っちゃって!」
「ああ、ここをまっすぐ行って左に二回曲がってください」
「ありがとう!」
とってつけたような礼をして、駆けて行く。
心臓がまだ高鳴っている。全く彼の気配に気付かなかったのだ。仮にもアカデミー卒である自分が。油断していたのだろうか。
まずは本当にトイレに入り、少し経ってから飛び出す。そして角を曲がり、屋敷の奥へと――
「ホークさん?」
「うひゃあっ!?」
またも飛び上がる。やはり背後にノイマンがいた。
「そちらは応接間ではありませんよ」
「あ、そ、そうですよね! すみません、この屋敷広くって…」
「ご案内しましょうか?」
「い、いえ結構です! お手数かけるわけには」
「まあ、そう仰らずに」
かちゃり、という音。
ノイマンの右手に、拳銃があった。ぴたりとルナマリアの額に向けられる。
自分の顔が引きつるのを、ルナマリアは感じた。
何の特徴もない男は、やはり何の変哲もない表情をしている。
「手数なんてお気になさらず。一瞬で済みますから」
「ぐっ!?」
呻いたのはムウだった。胸を押さえ、拳銃を取り落とす。
「ムウ!?」
夫を支え、背中をさするマリュー。
「おい、またかよ!? どうしたんだ一体!」
滾っていた怒りを忘れ、立ち上がるシン。咄嗟に駆け寄ろうとするが、
「余計なことしないでッ!!」
激しい声でマリューはシンを叱責した。思わぬ人物の強い声に、シンは体を震わせ硬直してしまう。
「あなた…」
「大丈夫だ…マリュー…」
それは、もはや先程までの張りのある声ではない。
ムウが息を整える。その間にも、鐘の音は重く響いていく。
針は四時を指している。しかし壊れた柱時計は、五つの鐘を鳴らした。
「お前ら…若い頃から闘いに染まっちゃいいことないってのになぁ…マリュー!」
「ええ!」
マリューが力強く頷く。
ムウはよろよろと顔を上げた。青い瞳に暗い炎を宿し、シンを、レイを交互に見つめ、精一杯声を張った。
「受けてやるよ。その無謀な挑戦をな! ガンダムファイトだ!」
「アンタ…」
呆然とするシン。対してレイは――彼にしては珍しく――思い切り顔をしかめていた。
夕日が紅く照らすロンドンの町。そこに二体の巨人が出現した。
片や白と青の華麗なる騎士ガンダムローズ、片や黒と赤の銃兵士ジョンブルガンダム。
『最初はお前からか、白い坊主クン』
「ああ。だが、ファイトの前に一つ聞いておきたい」
『うん?』
「お前は、あと何年生きられる?」
一瞬奇妙な静寂が降りた。ムウが虚を突かれたように、レイには思えた。
『どこまで知ってる。坊主』
それは今までのどの言葉よりも、一際低い声。
レイはかぶりを振った。
「知っているわけではない。推測しただけだ」
『だったら、お前が気にする必要はない。ガンダムファイトォ!』
「レディ!」
『ゴォォォ――――ッ!!!』
ルナマリアは目を覚ました。額に鈍痛。どうやらノイマンの銃は、自分の銃と同じくゴム弾だったらしい。
慌てて立ち上がろうとするが、動けない。自分が手足を縛られて床に倒れていると気がつく。
周りを見れば、そこは戦艦のブリッジかとさえ思えた。壁一面のディスプレイ、そこかしこの機材にシート、そして中央のキャプテンシートに座る栗色の髪の、胸の大きな女性――
「マリューさん!?」
ルナマリアが叫ぶと、マリューは椅子ごと、ちらと振り向いた。酷く悲しげな瞳で。
「ごめんなさい、手荒な真似をして。でもこうするしかなかったの。女の私にはね…」
「行け! ローゼスドラグーン!」
ローズのケープを跳ね上げ、無数の紅いバラが飛び出していく!
「オールレンジ…空間認識能力か!?」
驚きと共にジョンブルは大きく後ろに飛び、ライフルを構え乱射する。
高出力のビームが中空を裂く。さすがに小銃やバルカンとは威力が違い、一つドラグーンを破壊してもまだ貫通する。次々にドラグーンが爆発する。
しかしドラグーンは、単調に飛ぶミサイルとは違うのだ。
「逃がさん!」
レイの喝に応じ、ジョンブルの横手から、後ろから、光の奔流を逃れたバラが突撃していく。
しかし次の瞬間、レイは我が目を疑った。
「うひょーッ!」
どこか楽しげなムウの声。それと同時にジョンブルは、生き残ったドラグーンを全て回避した。後ろから、斜め上から、横から、避けきれないはずの放火を、僅かに身をずらしよじることで。近場にあったドラグーンは手とライフルの銃床で撃ち払った。
無論、ファイターとは言え当たり前に出来ることではない。
「空間認識能力…! やはりお前も!」
レイが呻く間に、ジョンブルはドラグーンを全て撃ち落としてしまった。
通信を繋げるレイ。ディスプレイにムウの顔が映る。双方、自分の驚きを隠さなかった。
「やるな、坊主! 初めて見たぜ、俺と同じような能力持ってるファイターは!」
「初めて、か。そうかもしれんな…」
僅かに自嘲の色を見せたが、レイはすぐに真顔になった。
「だがこれで分かっただろう。どんなにお前が撹乱しても、俺にはお前の位置が分かる。
討たせてもらうぞ、ムウ=ラ=フラガ! 誇りを失ったかつての英雄!」
「さあて…そう上手く行くかね?」
ムウは壮絶な笑みを浮かべると、通信を切った。
「煙幕装置作動。MS部隊、出撃!」
「了解」
事務的な声を聞き、ルナマリアはそちらを向いた。
シートの一つに、ノイマンが座っている。座って、機材を操作している。
「ノイマンさん!?」
やはり、ちらりと振り向いただけで、ノイマンはすぐに操作に戻った。
霧が街に立ち込めていく。旧世紀に既に消え去ったはずの霧が。
「これか、シンが言っていた霧は…!」
確かに計器が全て振れていく。メインカメラ、レーダー、赤外線モニター、全てがブラックアウトする。
ローズの装甲越しに響いてくるのは無数の金属の重低音。シンの情報を信じるならダミーMSどもの足音だろう。
「だが、俺には通用しない!」
レイは目を閉じた。意識を空間へと拡大させる。ムウ=ラ=フラガの存在を捉えるために。
しかし――
「馬鹿な」
レイは闇の中で愕然とした。
見えない。ムウの気配が見つけられない。いや、正確には、複数の気配に紛れ込んで、どれがムウなのか判断がつかない。
「馬鹿な! 生命体の感覚をECMで惑わすことなど!」
『ECM? 違うな。一流の戦士は殺気を隠すことを知ってるってだけだ』
声が聞こえる。どこからだ。分からない。捉えられない。
『俺と同じ能力者なら、自分の気配くらい誤魔化せるようになれよ。白い坊主クン!』
声と同時に、ダミーたちが銃を構える気配がする。
「ち…!」
レイは思わず目を見開くと、後ろに飛び、建物に隠れた。ちょうど一昨日のインパルスと同じように。
直前までローズがいた空間を、無数の光が貫いていく。
「マリューさん、ノイマンさん! アンタ達、何やってるか分かってるの!?」
「分かってるわ、それくらい!!」
声を荒げるルナマリア。彼女以上の迫力で叫び返すマリュー。
「分かってるわ…だけど…」
彼女は震えながら、ディスプレイを見ていた。
「あの人の身体は、度重なる闘いでもうボロボロなのよ! でも一度体に染み付いた硝煙の匂いを拭いさる事は出来ない…だから…」
画面の中で、本物のジョンブルガンダムが飛ぶ。
「あの人は最後の一瞬までファイトする事を求めているの…あの薬もそのため!」
「落ち着け…ダミーの気配が分かる以上、まだシンよりも有利のはずだ。ドラグーンを使って、全て破壊すれば!」
レイは再びローゼスドラグーンを射出した。バラたちは一時ローズの周りを漂い――
「行け!」
主の命に従い、敵の気配へと飛んでいく。
数瞬の間を置いて、爆発音。気配が一つ消える。
「よし、次…に…!?」
ぐらり、とレイの視界が揺れた。頭が重い。明確に感じていた気配が拡散したように分からなくなる。
霧の向こうで、コントロールを失ったドラグーンはあさっての方向に飛び、爆散した。
「ルナマリアさん…男達はね、好きな時に命を懸け、惜しげもなく捨てる事を美しいと思い込んでるの」
「え…」
「でもね! 私は決めたの。あの人の決めた通りについていこうって!」
「マリューさん…」
呆然とするルナマリア。視界の隅で、ノイマンが小さく俯く。
そんな勝手な話で、ルール違反が許されるわけはない。だが、それを分かっていてやっている彼女らに、一体何を言えるというのだろう。
『空間認識能力。こいつは厄介でね。ドラグーンを使うだけならまだいい。視力の補助として気配を探るなら負担も少ないさ。だが、攻撃も探知も完全に能力に頼るとなりゃ、簡単に脳に限界が来る』
どこからだろう。ムウの声が頭にがんがんと響いてくる。
『じゃあ、限界を超えるにはどうするか? 手っ取り早いのは薬だ。ま、習慣性も副作用も強いから、使う奴はほとんどいないが』
レイは目を見開いた。
自分の推測は外れていたのか。あの薬は、自分が普段使っているものではなく、むしろ逆の効用。
であれば、ムウ=ラ=フラガは、ごく普通の――
『ヒトはそんなに便利な代物じゃないんだよ。どんなに遺伝子弄くったってね』
ぎり、とレイは歯を噛み締めた。
何も知らない男がよくも言う。そう思った。
「言っておくがな…ムウ=ラ=フラガ…」
『うん?』
「俺はナチュラルだ! お前と同じ、ナチュラルだッ!!」
激しい頭痛をこらえてレイは天に叫ぶ。怒れる獅子の如く髪を振り乱し身を跳ね上げ、サーベルを引き抜いた。同時にドラグーンの制御を閉じる。
頭痛が和らぐ。しかしレイの形相は、より激しいものになっていた。普段の彼からは想像も出来ぬほどの獣の如き顔。議長にすら見せたことのない、心の底から滾る激情。
近場に僅かに気配がする。
「答えろムウ! 長い寿命をわざわざ削って、何のためにお前は闘う!?」
「いきなり何言って…」
「答えろォッ!!」
魂の底から咆哮し、レイはサーベルを叩きつけた。金属音と共に、確かな手ごたえ。そのまま突き刺し、横に払う。
「……なら、俺に追いついて来れたら教えてやるよ。白い坊主クン」
若干呆れたかのようなムウの声がする。斬ったのはダミーであったと知り、レイは僅かに冷静さを取り戻した。
しかしもう遅い。ムウの声は完全に消えてしまった。
(どこにいる…ムウ=ラ=フラガ!)
レイは心に強く念じた。ケープを閉じ、ドラグーンを完全に封印し、空間へと全感覚を解放した。
敵の気配が見える。近場に、弧を描くように包囲して――
(囲まれている!?)
先程の混乱が命取りになったのだ。冷水を浴びせられたように、感情の昂ぶりが一気に冷める。
急いで一点を突破しようと走るレイ。しかしダミーたちは一斉にライフルを構える。
銃口の狙いが定まる。はっきりと感じる。
(議長、俺は!)
レイは最期を覚悟した、そのとき――
『パルマッ! フィオッ!! キィィィナァァァァァッ!!!』
聞き覚えのある声が、敵の気配の一つを吹き飛ばした!
ダミーたちの狙いが一瞬それる。AIが予想外の敵に混乱をきたしている、とレイは感じた。
「シン=アスカ!?」
『ボケるなよレイ! ピンチなのは変わってないんだ!』
「……ああ!」
『よし! どけ、お前らぁぁぁぁ!!』
霧を割って現れたインパルスは、闇の中でなお光輝く右手を掲げ、ダミーたちを薙ぎ払っていく。その光景が、レイの脳裏にありありと見えた。
レイもまたサーベルを振るう。元より議長直伝の剣、奥義会得には至っていないものの、まともに戦えばAIに遅れは取らない。
ほどなく、二人の暴れた一角には、ダミーの瓦礫が山と積まれることになった。
「礼を言う、シン」
『それを聞くのはまだ早いぜ、レイ。ムウの場所は分かるか?』
「残念だが……!?」
言いかけて、レイは一際強い気配を感じた。
これはAIではない。生きた人間の気配だ。しかも、明確に自分を呼んでいる。
俺はここにいる、と。
『おい?』
「……いや、たった今捉えられた。もう見失わん」
『なら、雑魚は俺に任せろ! 今回の主役は譲ってやる!』
「フッ…」
小さく笑い、レイは飛んだ。
一路、英雄の待つ場所へ。
陽は既に没していた。
夜と霧、二重の闇に覆われたロンドンを、浩々と輝く満月が見下ろしている。
レイは己の感覚を頼りに月下の闇を走り抜ける。背後にビームの発射音と金属の破砕音を聞きながら。
邪魔をしてくるダミーMSはいない。皆シンのインパルスに狙いを定めているのだろうか。
しかしレイは心配などしなかった。ひたすらムウの気配を見定め、駆けた。
唐突に、メインカメラが回復した。
霧を抜けたのだと了解する。各種センサーも次々に復調し、ローズは視力を取り戻した。
足を止める。霧のない、満月に照らされたそこは郊外の荒野だった。
『昔はここも、立派な街だったんだがね』
荒野の真ん中に、ジョンブルガンダムが佇んでいた。ダミーではない。本物だ。
長いライフルを肩に担ぎ、無防備のまま、ローズの到着を待っていた。銃兵士を象った機体は蒼白い月の光を浴びてなお赤く、黒い。
『何年か前のガンダムファイトでこの通りだ。これが意味するもの、分かるか、白い坊主クン?』
「ガンダムファイトは地球にとっては破壊活動でしかない。議長がよく言っていた」
『ああ、半分正解だ』
「半分?」
『ファイトだけじゃない。闘いってのは、後には荒野しか残らないもんなんだよ』
「何を…!」
反論しかけたレイの元へ、通信が送られてきた。
一瞬、レイはディスプレイの映像が理解できなかった。次には、これは本当に現実なのかと思った。また虚偽の映像を送っているのではないかとさえ疑った。
そこには、大量のカプセルを手づかみで貪るムウの姿があった。
「よう、坊主」
にやりと笑うムウ。レイは声が出なかった。
「おかしいか? ここまでして闘い続けるのが…」
「もう、終わりね。ノイマン」
「了解です」
ディスプレイの向こうで、霧が消えていく。ダミーMSたちも次々に機能を停止していく。
「終わりって…」
「終わりは、終わりよ。私に残された仕事は、たった一つ」
マリューはディスプレイを見続けている。
ノイマンが静かにシートを立ち、音もなくルナマリアへと歩いてきた。そっと手足の戒めを解いていく。
「すまなかったな、ルナマリア」
それは執事の口調ではなかった。
エネルギー残量を度外視してダミーを蹴散らしていたシンも、異変に気がついた。
センサー類が全て回復し、ダミーMSが全て動作を止める。
反応が残っているのは、荒野の二体のみ。
(レイ!)
シンもまた、決戦の荒野へと駆ける。
「闘いってのは非情なものさ。強い者だけが生き残り、力及ばぬ者は泥に塗れる」
「だから常に勝ち続ける、と? 無様に地を這いつくばらぬために、寿命を削ってまでか?」
「お前、俺の親父のこと知ってるんだろ?」
「……!」
『アル=ダ=フラガのことかよ? なんでそいつが関係あるんだ?』
シンの声がした。
レイは思わず振り返った。いつの間にかインパルスが傍に来ている。街の霧が消えていること、ダミーMSが全て停止していることに、そこで初めて気がついた。
「ネオジャパンの坊主クンは知らないみたいだな」
じゃらりと音をたて、ムウがまた一掴み、薬を貪る。
「ガンダムファイトは四年ごとに行われる。つまり、たとえ優勝したとしても、世界の覇権は四年間しか与えられないってことだ。不満を持つ奴は大勢いる。そういう奴らが裏で手を組んで、ファイトを転覆させようとしたことがあった。
第七回ガンダムファイトは――ありゃあファイト自体が壮大な陰謀だった。世界の半数のファイターが地下組織の犬になって、狂言で試合を進めた。
俺の親父も、奴らに尻尾を振ったファイターの一人だった」
「!?」
シンが息を呑む気配がする。レイは黙ってムウの話を聞いている。
「あのクソ親父にとっちゃ、陰謀なんぞどうでもよかったんだろうがね。あいつはただ、世界初のナチュラルファイターって名誉が欲しかっただけだ」
ふうっ、とムウが天を仰ぐ。
「陰謀自体は潰された。どこかの五人のファイターが、ファイト自体を捨てて地下組織を潰したらしい」
シンの喉が鳴るのが聞こえた。ちらと振り向くが、インパルスは全くの無表情のままだ。
「陰謀は各国のトップにのみ暴露され、加担したファイターは逮捕されるか処分されるか、総スカンを食らった。
だが親父は――ナチュラルのファイターとして世間に注目されてた。お前が言ったように、全世界のナチュラルに希望を与えた存在だった。
そしてネオイングランドの高官にも、コーディネイター嫌いのナチュラルはいた。そいつらの横槍で、アル=ダ=フラガの罪状は消された。
おかげで親父は――フラガ家は栄光を得て、代わりに上の奴らに弱みを握られたわけだ」
「フラガ家自体が…?」
「つまり、アルの行いを公表されたくなければ、と事あるごとに脅されるようになったのよ」
マリューが背を向けたまま語る。
「ムウは嫌ったわ。いつもいつも恩着せがましく迫ってくる上の人たちを。そして――」
「そして何も知らずに親父を英雄視して、息子の俺にでかい期待をかけるネオイングランド国民もな」
ムウは吐き捨てるように言った。
「二世だの何だのと。俺は俺でしかないんだぜ? 親父は第八回ファイト直前に屋敷と一緒に焼け死んじまったんだ、なのに何でいつまでも奴の影が付きまとう?」
父の影。レイはうつむき、視線を落とした。
「だから俺は、最初に徹底的に、正々堂々っていう俺のスタイルを確立させた。今から考えりゃ、思春期の反発みてぇなもんだったがな」
レイの反応は気に留めず、ムウはまた一掴み、薬を貪る。
「がむしゃらに闘ったよ。世界回って、色んな奴と会って。親父の真相を知ってる奴には、卑怯者の息子と罵られもした。そんなもん俺には関係ねぇってのによ。
俺は俺を認めさせるために闘い続けた。で、気がついたら三期連続で優勝してた。
そうさ、ようやく我に返ったんだ。無茶やってたせいで体にもガタが来てたし、親父より俺の知名度の方が高くなっちまったからかもしれん。
気がついたら周りにギャアギャア騒がれて、大袈裟な仇名までつけられて、ネオイングランドの英雄に祭り上げられちまってた。どうにもな、何もかも虚しくなっちまって、さっさと引退宣言したよ。
だがそのときはもう……全部手遅れだったんだよなぁ……」
くっくっ、と低くムウは笑う。ありったけの自嘲を込めて。
「前々回まで俺が三連覇したせいで、十二年間ネオイングランドは世界の頂点だった。国民はそれに慣れちまってた。
なのに前回――誰が俺の後釜に出たのか知らんが、とにかく優勝はネオホンコンに持ってかれちまった。そのときのネオイングランド国民、どんだけ騒いだか想像つくか?」
レイは何も言えない。連続優勝による国民の『慣れ』? 考えたことすらなかった。自分の立場、国を背負っているという自覚はしていたつもりだったのに――
「闘いってのは非情なもの。なのに民衆は英雄ってだけで当然のように勝ちを求める。勝って当然、負けるなんてありえない、ってな。
委員会の奴ら、わざわざここまで俺を引っ張り出しに来たよ。こちとらとっくの昔に引退したってのに」
『じゃあ…』
シンが問いかける。言葉に起伏が感じられないのは気のせいだろうか?
『アンタは、上に脅されて、無理矢理ファイトに出させられたのか?』
「いいや」
自嘲の笑みを浮かべたまま、ムウは首を横に振った。
「喜んで飛びついたよ。またファイトが出来るって聞いちゃあな」
シンが目を丸くしているのが、レイには見えた気がした。
「穏やかな暮らしなんて、俺には無理だった。俺はどうせ闘うことしか知らない男さ。平穏無事に過ごしてても、胸の奥じゃ何かが燻ってる。あいつらはそれを突いて来た。
ファイターを何人も手玉に取ってきた奴らだ、俺の心理なんてお見通しだったんだろうな」
『だけど、アンタの体は!』
「ああ、もうボロボロだったさ。こんな薬がなけりゃ、まともに闘うことも出来ない」
ムウは最後の一掴みを貪ると、空になった薬瓶を放り投げた。
「……だが、それは」
レイは口を動かした。自分の体のはずなのに、随分と重く感じた。
「副作用でお前の寿命を縮めてしまうのではないのか」
「ああ、そうだよ」
あっけらかん、とムウは頷いた。
「それじゃあ何…?」
ルナマリアは震える声で呻いた。
「ムウさんは、最初から、死ぬこと前提で闘っていたってこと…!?」
「あの人は根っからのファイターなの」
マリューがルナマリアの呻きに答える。彼女もまた、ディスプレイの向こうの夫を見据えたままに。
「ファイターにとって、ガンダムファイトは特別なのよ。各国の選びぬかれたファイターと自由に闘える、まさに夢の一年間だもの。ファイトに出られるのであれば躊躇なんかしないわ。
例え死期を早めることになっても、ファイターとして、闘いの末に死ぬのなら本望なのよ、彼は」
「何よ…それ…!」
ルナマリアの震えが大きくなる。
どうしてそこまで自分を中心に考える。どうして周りのことを考えない。残される者のことを省みない。
どうしてこうも男たちは――!
「勝手すぎるわよ、そんなのッ!!」
「勝手なのは君や俺達も同じだ」
低い声だった。ノイマンが呟いたのだ。ルナマリアの激情を切り捨てるように。
ルナマリアは激しい剣幕のままにノイマンを振り返る。彼は音もなく、無造作に立ち上がり、ディスプレイに目を戻した。
少女を見返すことはなかった。
『馬鹿言うなッ!!』
叫んだのはシンだった。
『それで満足なのかよ、アンタは! 上の連中の期待通りに生きて、死んで、それでいいってのかよ! マリューさんやノイマンさんはどうすんだよ!』
「はは…だから若いって言うんだ。坊主」
やはり自嘲を込め、ムウは笑う。
「言ったろ? もう後戻り出来ないところまで来ちまったんだよ、俺は。ファイトには毒がある。周りに乗せられてるだけだと分かってても、闘える機会だったら飛びついちまう。誰がいても、何があっても。
強くなれば更に上を。勝負に勝てば更なる敵を。戦士ってのは、強くなればなるほど、修羅の道から抜けられなくなるものなのさ」
「だからって…だからってここまでしなくちゃならなかったの!? 薬だけじゃないわよ、霧とか、援護のMSまで!」
「何も知らないわ。あの人は」
「……え?」
「私が…あの人に、最後までチャンピオンでいて欲しいのよ…」
涙交じりのマリューの声。ルナマリアは言葉を失った。頭の中が混沌とし過ぎていた。
大声で叫びたかった。そんなのは間違っている、と。しかし自分の中の何かが引き止める。
『勝手なのは君も俺達も同じだ』
つい先程ぶつけられたノイマンの言葉が蘇る。
幻の声に引き寄せられたように傍らを見上げれば、ノイマンは変わらぬ表情でディスプレイを見据えていた。
「さあ、俺の話はこれで終わりだ。来なよ」
ジョンブルガンダムがライフルを構える。
「別に二人がかりでもいいぜ? お前らに、闘いの泥沼に踏み込む覚悟があるんならな」
ディスプレイの向こうで、ムウは笑った。鬼気迫る壮絶な笑顔。
闘いに殉じるこの男は、それほどの業を背負っているのか――
「レイ」
思考を遮るように、シンが通信を送ってきた。今まで聞いてきた中で一番低い声。
「俺は闘う。俺には闘いしか残されてないんだ。選択肢なんか、一つしかない。だからやる。お前はどうだ」
真摯な瞳だった。思わず、こんな表情も出来たのか、と驚いてしまうほどに。
「辛いなら…お前は下がって」
「何を言っている、シン」
短くレイは息をついた。自分の息が震えているのは、気付かなかったことにした。
「今ムウとファイトしているのは俺だ。俺が、闘う。邪魔をするな」
「……分かった」
ふっ、とシンの顔が消えた。
同時に、インパルスが数歩、後ろに下がったのが視界の隅に見えた。
「ムウ=ラ=フラガ」
「うん?」
「俺には分からない。お前の生き方が、本当に良いものなのかどうか。長い寿命をわざわざ縮めて、自己満足のために生きるのが、本当に良いことなのか……。だが、これだけは伝えておきたい」
レイはサーベルを構えた。目の前の男を、己が強敵と認めて。
「俺は、お前と戦える運命に、心から感謝する」
「……そうかい」
通信の途切れる間際、ムウは一瞬だけ、清々しく笑った――ように見えた。
ローズが走る。
ジョンブルがライフルを撃つ。二発。三発。
急所に迫るビームを、レイは細かなサイドステップでかわす。足は止めない。
懐に飛び込んだローズがサーベルで突きを入れる。ジョンブルが体をそらし、こちらもかわす。
ライフルの銃身を振り回すジョンブル。身を屈めてローズは避ける。
この戦いは何かがおかしい。互いに相手の先を読んでいるとしかシンには思えなかった。向ける銃口、突き刺す剣の全てが虚しく宙を切る。
そのうち二人は、埒の明かないことに業を煮やしたのだろう。
――やるか。
――ああ、名案だ。
同時に二人は得物を捨てた。そのまま、素手で殴りかかった。
ジョンブルの拳がローズの腹に打ち込まれる。システムと実際の衝撃に抉られ、ローズの鋼鉄の足が浮く。レイが腹の底から血と共に息を吐き出す。
地を削り後ろへ退るも、レイの形相は尚凄まじい。雄叫びを上げて前へ踏み出す。ローズの右がジョンブルの頬を捉える。もろに殴り飛ばされるムウ、しかし首を無理矢理正面に戻し、折れた歯と共に血の混じった唾を吐いた。
二人は倒れない。前へと踏み込み、相手の腹へ。頭へ。胸へ。回避も防御も考えない。
ガンダムファイトは頭さえ取れば勝負はつく。なのに二人はそれを忘れたかのように、ひたすら殴りあった。人を魅せるものなどなく、泥臭く、命尽きるまでと言わんばかりに。
優雅さなどどこにもない。装甲はへこみ、殴り削られ潰され、トレースされた痛みが二人を襲う。
両者の金の髪は振り乱されていた。陶磁器のようなレイの白肌にも無数のあざができ、呼吸は荒く、口元からは血が流れていた。コクピットの床にも血反吐の痕が見て取れる。腕や胸、ファイティングスーツの各所が、損壊をトレースしたことを示し赤く明滅している。
ムウもまた、ざんばらの髪をそのままに、大きく肩を動かして荒い呼吸を繰り返していた。こちらも腕に、腹に、胸に、ファイティングスーツのナノマシンが赤く明滅している。
レイがゆらりと動く。剣法など忘れたかのように、餓えた獣のようにジョンブルの首に掴みかかった。右で掴み、左で胸を殴りつけようとする。
首を絞められるムウ、しかし彼もまた己が人であることを忘れたかのように、低く苦しげに、けれども地獄から轟くかのような大声で叫ぶ。伸び来るローズの左腕を右膝と右腕で勢いよく挟み込み、そのまま砕く。
割れ鐘の如く響く重い金属音。疲労していたローズの左腕は、とうとう肘の部分から折れ、轟音と共に地を揺るがした。
しかしレイは悲鳴を上げない。大きく鋭く息を呑み込むだけだ。ローズは右手をジョンブルから外し、よろりと後ろへ一つ下がり大地を踏みしだいて、止まる。
震えながら、激痛をこらえながら、ローズは今一度頭を上げた。来るであろう追撃を見定めようとした。
しかしジョンブルは苦しげに呻き、がくがくと大きく震え、頭を両手で抱える。
薬の効果が切れ、副作用が襲い掛かってきたのだ。頭が割れるように痛く、重くなり、視界すら黒くなる。
だがもうムウに手持ちの薬はない。そして、彼はこの戦いを放棄する気もなかった。
滝のように流れてくる汗も拭わず、刃物の如く双眸を光らせ、ムウは幾度目になるか分からない雄叫びを上げた。もはや目も見えず、脳への過負荷のために空間認識能力もあてにならない。だが相手は近くにいる。
ムウは拳を繰り出した。
手ごたえはなかった。そしてそれは、普通であれば、決して外す状況ではなかった。
ローズのすぐ左、虚空を殴りつけたジョンブルを見、レイは彼に限界が来ていることを知った。
途中ですが30レスに分割乙。
何か規制に引っかかったかな?
「どうした…坊主ッ…!」
だらりと頭と両腕を下げ、荒い息でムウが呻く。頭の中で蛇がのたうち回るような、加えて重苦しい割れ鐘が絶えず鳴り響いているような感覚。しかし、もう彼は悲鳴など上げない。
「……ムウ、もう勝負はついている」
レイの声がわんわんと反響して聞こえる。しかしムウは強く奥歯を噛み締め、どこにいるかも分からなくなった相手に向かって、吼えた。
「馬鹿野郎がッ!!」
視覚も聴覚も正常ではない。ただ己の最期の矜持を貫き通すべく、ムウは吼えた。
「俺に切った啖呵はハッタリか!?」
「しかし、俺は騎士として…」
「だから甘いってんだよ坊主!」
ムウは叫び続ける。腹の底から、魂の底から、頭の痛みを圧するように。
「騎士だの英雄だのと! 言っただろ、そんなもんは最初ッから虚像なんだよ! ファイトになれば肩書きなんざ関係ない、いるのは二人の戦士だけだ!! ファイター同士の闘いに、余計なもんを持ち込むなァッ!!」
ディスプレイ越しに見守るルナマリアは背筋を震わせた。
片時も見逃すまいとしていたシンは、熱いものと同時に、胸に風穴の空いたような虚無感を覚えた。
「さあ討て! お前が本物の戦士なら、俺を討て!!」
そして、直接意志をぶつけられたレイは――
「お前にも譲れない目的があるんだろうがぁぁァァッ!!」
レイは歯を強く噛み締め、右の拳を振り上げた。
敵意はない。闘争心もない。わだかまりも、とうの昔に消し飛んでいた。
ただ、これこそが目の前の男への最大の敬意なのだと、そう思った。
ローズの拳は、狙い過たずジョンブルの頭を貫いた。
――そうだ。それでいい。
ムウの声が聞こえた気がした。
「ムウ」
荒野に横たわるムウの手を、静かにマリューは握り締めた。
温かさを感じることは出来なかったが、ムウはかすかに笑った。
ファイトの結果がどうであれ、もうムウの体はもたなかった。ルナマリアはそう言った。
「時代は流れる、か…。悪い。火星に行くって約束、あれな…」
「いいの。あなたが満足できる闘いをしたのなら」
「はは…お前らの影の力添えがなかったら、こうはいかなかったさ…」
マリューが目を丸くし、息を呑む。ムウの瞳は動かない。
「まさかあれだけやってて気付かないとでも思ってたのかよ…なあ、ノイマン?」
「ええ」
こくり、と頷くノイマン。
「ま、そういうとこ、お前らしいけどな…」
ぼろぼろと涙を流すマリュー。一つ、二つ、そして雨のように、重ねられた二人の手に雫が零れ落ちていく。
マリューはムウの手を、更に強く握り締めた。しかし力は返って来ない。彼の手は氷のように、ただ白く冷たくそこに在る。
ムウは長く息をつく。胸の内の全てを吐き出すように。
「すまんな、二人とも…ずっと付き合わせちまって…」
「謝らないで下さい」
ノイマンが言い切る。
「あなたがあなたのために闘ってきたように、俺も俺の目的のために行動してきただけです。マリューさんもそうでしょう。ですから…」
ムウが知る中で初めて彼の声が震えた。ノイマンは言葉を切り、一つ深呼吸をした。
「ですから、気に病むことなどしないで下さい。全部、俺達が好きでやってきたことです」
ゆるり、とムウの瞳が動く。
ノイマンを見ようとした。しかし視界は闇に閉ざされ、何も見えない。少しだけ、いつも平然としている男の今の表情を見れないことが残念に思えた。
もう一度、深く深く息をつく。妻の嗚咽がかすかに聞こえる。
「苦労かけた…ノイマン」
「いいえ」
「ありがとう…マリュー」
マリューはもはや嗚咽することしかできない。
そんな妻を安心させようとして、ムウは笑った。笑おうとした。しかしもはや彼の喉からは、ひゅうひゅうと風の音がするばかりだった。
――なあ、マリュー。
ちゃんと言えているだろうか。自信はない。もう自分の声さえ聞こえない。それでもムウは舌を動かそうとする。
――笑えよ。美人が台無しだぜ?
屋敷の応接間で、かちりと一つ、時計の針が音を立てる。
壊れた柱時計が十一時を指す。酷く重たい鐘の音が十と二つ、無人の屋敷に鳴り響く。
それを最後に、柱時計の振り子は動きを止めた。
二度と時を刻むことはなかった。
ぼろぼろに傷ついたまま、やるせなく佇むレイ。彼に肩を貸しつつも、魂を手放したように呆然としているシン。今にも泣き出しそうなルナマリア。
三人の少年少女は、少し離れて、この王者の最期を看取った。
かける言葉が見つからなかった。三者三様の胸中ながら、自分達が来なければ、そんな意識が共通してあった。
しかし――
「何も言わなくていい。謝罪も必要ない」
立ち上がり、彼らを振り返ってノイマンが言った。
「こうなることは覚悟していたんだ。俺も、マリューさんも。この人に会ったときから」
何の変哲もない男は、何の変哲もない声で――しかし、頬を濡らして言葉を続けた。
「それよりも、よく見ておくんだ。君達もいずれ、こうなるのかもしれないのだから」
ルナマリアは両の拳を強く握り締めた。紫の瞳から、大粒の涙が零れ落ちていった。
「戦士の…運命…」
シンが虚ろな瞳でぽつりと呟く。己の生の全てを闘いに投げ打った男を前に。
レイもまた、黙したまま、穏やかすぎる死者の顔を見ていた。
「そうね…でも」
マリューも顔を上げ、若い三人を振り返った。
彼女は泣きながら無理矢理笑っていた。ぎこちなく上げた頬は小刻みに震えていた。
新たな涙が零れ落ちていく。
「でも、それを避けるのもあなた達次第なのよ」
次回予告!
「みんな、待たせたなっ!
ネオエジプトに来たシンとフレイ一行!
だが彼らの前に、世にも恐ろしいミイラ男が現れ、大昔のガンダムに乗って襲い掛かってくる!
窮地に陥ったフレイはどうする!?
そしてシンは再び、デビルフリーダムの痕跡に触れることになるのだ!
次回! 機動武闘伝ガンダムSEED DESTINY!
『恐怖! 亡霊ファイター出現』にぃ!
レディィ… ゴォォォ――――ッ!」
撮影後
ドモン「うむ! 遠慮の一切ない拳と拳の語り合い…見事だ、レイ!」
レイ「ありがとうございます」
シン「はは…やったな、レイ」(バタリ)
レイ「ああ、お前もギアナの修行直後によくやった」(バタリ)
ステラ「うぇい!? シン!? レイ!?」
ヨウラン「いやー、最後までよくもったな」
ヴィーノ「ほんとほんと」
ルナ「だべってないでこいつら運ぶの手伝えそこの二人っ!!」
ノイマン「一佐! フラガ一佐!」
ムウ「…………」(←気絶中)
ノイマン「起きて下さい、アークエンジェルに戻りますよ!」
ムウ「…………」
ノイマン「……起きろ!」(指パッチン)
ボムッ!!
ムウ「うわちゃちゃちゃちゃちゃぁっ!? お、俺の髪がアフロにぃぃ!?」
ノイマン「その声なら違和感ありませんから無問題です。アークエンジェルに戻りますよ、一佐」
ムウ「ノイマン…お前もなかなかいい性格してるじゃないの…」
マリュー「何も本気で殴り合わせなくても…!」
アーサー「リアリティのためだそうで」
マリュー「しかし、これでは役者の身がもちません!」
アーサー「そうなんですけどねぇ…。まあとにかく、しばらく出番はありませんから。ゆっくり静養させて下さい」
マリュー「…………(怒)」
アーサー「(うわ怖っ!)か、監督にはなんとか言っておきますから」
マリュー「……お願いしますよ」
その頃のプラント宙域・哨戒中のジュール隊
ディアッカ「うん?」
イザーク「どうした、何か発見したのかディアッカ」
ディアッカ「や、絶好のシャッターチャンスを逃しちまった気が」
イザーク「貴様は何を考えとるかぁ――ッ!!」
シホ「ディアッカさん、仕事中くらい盗撮は忘れてくださいよ…」
場面戻ってミネルバブリッジ
アビー「ところで艦長、メイリンから電報が来ていますが」
タリア「電報?」
アビー「『アスランさんを降板させてください、このままじゃ殺されちゃう!』以上です」
タリア「……。あのヘタレは! 不死身属性持ってるのに今更殺されるも何もないでしょう」
アビー「最近黒くなってませんか艦長」
タリア「ストレスは溜まってるかもしれないわね。監督なんて初めてだし」
アビー「(そのうち無理矢理にでも休暇入れさせよう…)それで、アスランの件はどうします?」
タリア「却下。もう名前出しちゃったんだもの」
アビー「では、そのように返信を」
タリア「待ちなさいアビー」
アビー「え?」
タリア「この際だもの。絶対に降板なんて言い出せないように徹底的に…」
アビー「叩き潰すんですね」
タリア「そう、叩き…って何言わせるの!」
アビー「は、すみません。つい条件反射で」
タリア「とにかく、ドモンを呼んで。一つおつかいをしてもらいます」
そんなこんなで第十話舞台裏に続く
祝リアルタイム&グッジョォォォオゥゥブッ!!
初めてですよムウがカッコ良く見えたのは!
そして遠慮なく100回位生まれ変わるがいい凸よッ!!(オry
>63
和訳すると神業の意味でGJだ。ただひたすらに。これ以上の言葉は思い浮かばない。
ムウ…おいしい役なのに…おいしい役なのに舞台裏で台無しだ!w
ってかノイマンの必殺技久しぶりに見たなw
次回もwktkしながらまったりとお待ちしてます!
超GJ!!
こんなに本編もあとがきも充実してるSSを見たのは実に久しぶりだ!!
次回作も期待しているから頑張ってくれ!!!
追記
>アビー「『アスランさんを降板させてください、このままじゃ殺されちゃう!』以上です」
師匠容赦ねえwwwアスラン大丈夫かオイwwwwww
お、おい……
ガンダムファイト7thのネタまで入ってるぞ……
凄過ぎる。心からGJ!
乙。だが強いてひとつ言うならば文法に気を使ってるのに改行だけが雑………そこんとこだけが非常に残念。
GJGJ! しかし…これでデビルフリーダム四天王としての再登場の際には
仮面着けてネオと称して出てくるのかな?
もっとも今回の時点で長髪+傷持ちにはなってたようだけど。
また、Gガン本編の方では奥さんの出番は一回こっきりでフォローもなかったが
こっちのマリューとノイマンにはぜひ再登場して欲しいな。
GJ!
……スゲー久しぶりに読んだなぁw
GJ!
ところで原作にはない、ノイマンの目的って一体何なんだろう…
再登場フラグなのか?
ホシュー!
保守
保守
ほしゅ
保守
あげ
ドモンACE3参戦保守
アスラン「ぶぎゅるぶばあああああああああっ!?!?!?!?!」
東方不敗「ほれほれどうした!? まだ準備運動も終わってはおらんぞ!」
メイリン「(アスランを抱き起こしつつ)もうやめてっ! アスランさんのHPはとっくにゼロです!」
東方不敗「むう。そう言われても、役作りの一環じゃしのう」
アスラン「いいんだ、メイリン……俺なら大丈夫だ」
メイリン「アスランさん!? でも……」
アスラン「君が気遣ってくれるのは嬉しい。だが、これは俺がやらなければならないことなんだ。この世界を守るためにも、俺はここで休んでいるわけにはいかない」
メイリン「こ、この世界を守る? いったい何を言ってるんですか……?」
アスラン「見ていれば分かるさ。さぁ、どいてくれメイリン!」
メイリン「あっ……(アスランさん、『男の子』の顔してる……やだ、なんか私ドキドキしてる……)」
アスラン「どうだ、東方不敗! 俺はまだ二本の足で立っているぞ。さっきの続きをしないのか!?」
東方不敗「ふふふ、かつてザフトのエースと呼ばれたのは伊達ではないようじゃの。今回はこのくらいで良いじゃろう。さぁ、世界を守って参れ!」
アスラン「応!」
東方不敗「ふっ、去り行く後姿からも力が感じられよるわ。む、どうしたメイリン。ぽ〜っとして」
メイリン「……え? あ、はい。その……あはははは。荒療治だけど、マスターさんの修行でアスランさんは立ち直れるかもしれない。私、今まで過保護すぎたのかな……でも世界を守るってなんだろう?」
アスラン「
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1179923378/、メル欄にsageと入れて保守、と」
アスラン「よし! 書き込み成功、これで数日は大丈夫だ! 時には平仮名にしたり半角カタカナにしたりして変化を持たせつつ、これからも俺がこの世界をぶぐおごぉああああああ!?」
メイリン「世界を守るって、ただの保守カキコかあああああああ!?」
東方不敗「むう、今のは鷹の目流星薙ぎの太刀!? かの高名な秘剣をお主が会得していようとは」
スティング「ぶっちゃけあの娘が爺さんの役になった方が早いんじゃねぇの?」
アウル「器量が良くて気立てが良くて、しかも強い。なんであんないい娘があんなヤツに……!」
東方不敗「というわけで、保守じゃ!」
完
グッホシュ!
ACE3で共演保守
>>82 アスランと師匠の事か。楽しみだな。
シンは…シンは…!ううっ…グスン。
保守
>>83 デス種って本当にはぶられっぱなしだよなあ…
SS読んできた。
なにこのワンス・アポンス・タイムinザフト。
続き読みてえ・・・
????「保守、と。ふう、世界を守るのも楽じゃないな」
凸乙
ACE3ではGガンダムのシステムは改善されているのだろうか・・・
前作のままじゃ同時参戦のキラに
「やめてよね僕が本気d(ry」
てな事になってしまいそうだ。
もしそうだったらゲッターでうさはらすか
その前にキラはゲイナー&レントンと共にアデット先生にボンテージ着せられるから安心しろ。
保守
そういえば…いまのところはインパルスだけが種死からの機体になってるが、
頭髪不生えアスランもそのままクーロン→マスターガンダムで出てくるのかな。
まあイージス→(∞)ジャスティスじゃDF細胞による変貌といってもあんまり
変わらん気がするし…
ほ
ちょっとGガンのDVD最終巻を見直した。
やっぱり良いな…。
SEED Dの終盤も楽しみだ。
と保守代わりに。
ところでメイリンの役どころは何になるんだろ。
アスランが師匠ポジだとすると、そのサポート…もしかして風雲再起か?w
あえてそこは役無しで
アスランが頑張れるよう黒子として回りをうろちょろするとか
後の女性キャラって言うとアレンビーしかいないけど、どう考えてもステラだからなぁ。
…ごめんなさい、ブラックジョーカー先生を忘れてました。
アナウンサーを忘れないで
でも、サイ・サイシーのポジにフレイがいたりもするからなぁ。
師匠と一緒にいることが多いキャラは…ウォン?
ルナ=レインの代理という事でアキノ女史役…は当たり前過ぎか。
ところで第三話の頃から気になってたが、ネオチャイナ代表がフレイだと
ネオデンマーク代表はどうなるんだ?どういう兄妹、それとも姉弟になるのか?
保守
保守
105 :
63:2007/08/09(木) 09:18:30 ID:???
皆さんに何とお詫びすれば良いやら…。
すみません。投下が更に遅れてしまいます。最短でも今月の末頃となりそうです。
申し訳ありませんが、気長にお待ちいただければ幸いです。
俺たちはただここで保守をする事しか出来ない。
だが職人さんには、職人さんならできる事があるはずなんだ。
俺たちはそれを信じる限り、保守をし続けるよ。
そして作品が上がっていたら、GJをするのさ。
107 :
通常の名無しさんの3倍:2007/08/11(土) 22:25:54 ID:R4hsmK8X
待ちながらスレ換気
>>105まあ焦るな、別に期待されてない。
笑いのネタにならないような代物になるといいね
それまで妄想を張り巡らせておくと良いんじゃないか。
>>108 ここにも居たか…
あちこちで似たような事書いて高みに立ててる気分になりたいんだな…
我に返ったとき虚しくならないのかね。
保守
酒保
>>63の何が凄いって映像が違和感なく浮かぶところなんだよな
配役にそう無理がないのと描写が丁寧なので
待ってるだけじゃなくて、俺もなんか書いてみるかなぁ
wktkして待ってるw
シン「ついに恐れていた日がやってきてしまった‥‥」
ステラ「シン‥‥」
シン「予想はしてたんだ。『ヤツら』がいつまでも金のなる木を放っておくはずがないってさ‥‥でも、予想はしょせん予想だな。こ、怖くてどうにかなっちまいそうだ」
ステラ「‥‥‥‥」
シン「だが、まだだ! 俺はまだ何も成しちゃいないんだ! このままで終わってたまるかよっ‥‥ステラ、力を貸してくれ! あの計画を実行に移すッ!」
ステラ「うぇい! ステラわかった、シンのためにがんばるっ!」
‥‥‥‥
シン「とうっ! よしよし、みんなそろっているなっ!?」
レイ「どうしたシン。レクリエーションルームといえど、あまり騒がしく入室するのはどうかと思うぞ」
シン「そんなことはどうでもいい! それよりルナ、聞いてくれッ!」
ルナ「ん? 別にいいけど、お金の相談ならお断りよ」
シン「お前が好きだ! お前が欲しいィイ――――――ッッ!!!」
三人「「‥‥‥‥」」
レイ・ルナ「はぁ?」
ステラ「うぇーい! シン、どういうことなのっ」
シン「ああっ、ステラ! 許してくれ、これにはワケがっ‥‥!」
ステラ「(台本を見ながら)えーと‥‥わたしとのことはあそびだったのね。あのことばがぜんぶウソだったなんて。らっきーすけべ。うぇーいっ!」
シン「ステラ、ステラーッ! 大変だ、急いで追わなければ‥‥! ルナ、残りの話はまた今度。とうっ!」
ルナ「‥‥‥‥なにあれ?」
レイ「気にするな、俺は気にしない」
>>113 楽しみにしてまつ
しかし、最近は小ネタもなくなったな…
今度スクコマ2とやらに種死が出ると聞いたが、一応祝・スパロボ初参戦!!でいいのかな
メイリン「アスランさん、ご飯ですよ。今日のメニューはアスランさんの好きなロールキャベツのリゾットです。たくさん食べてくださいね」
アスラン「かゆ‥‥うま‥‥」
メイリン「え? 俺はもうダメだ、頼むから放っておいてくれって? そ、そそそそんなことないですよ、マスターさんとのトレーニングで燃え尽きた毛根もきっと元に戻ります」
アスラン「ウボァー」
メイリン「はいはい。私がずっと側にいますから、目と鼻と口と耳から変な色の体液噴出してないで、ゆっくり養生してくださいね」
シン「アァ――――――スラァアアア――――――ンンンッ!!」
メイリン「わっ、なになに!? 大きな声出さないでよシン、アスランさんちょっといろいろ深刻な状態なんだから!」
シン「そんなことはどうでもいい! 立て、立って俺と戦えアスラン・ザラ!」
メイリン「あのねぇシン、今のアスランさんにそんなことできるわけ‥‥」
ステラ「うぇーい! おでこ広い人、これステラが書いたキラ・ヤマトとラクス・クラインとカガリ・ユラ・アスハからのお見舞いの手紙!」
アスラン「なにいいっ、キラたちからの手紙だとう!?」
メイリン「都合のいい部分だけ聞きつけて復活したあああ――――――っ!?」
アスラン「貸せっ! なになに、『おでこひろいひとはやくげんきになってね』‥‥ここまで言われたら、元気になるしかないじゃないかあああああああ!!!」
メイリン「それ間違いなくキラさんの手紙じゃな‥‥ああ、でもここは勘違いさせたままの方がいいのかも‥‥」
シン「さぁ、勝負しろアスラン! 今日こそ長年(?)の因縁に決着をつけてやる!」
アスラン「ふっ! 何がなんだかわからんが、白兵戦でこの俺に勝てると思うな!」
シン「お前こそ、流派東方不敗を嘗めるなよ! 超級! 覇王! 電影弾ーっ!!」
アスラン「ふん、そんなもの目をつぶってリアップを使いながらでも避けられ‥‥ハッ!?」
メイリン「偉そうなこと言いつつ棒立ち状態で直撃したあああ――――――っ!? アスランさん、大丈夫ですか!? 変にカッコつけるから避けられないんですよ、もう」
アスラン「だって避けたら君に当たりそうだったから‥‥ガクッ」
シン「ふっ、やったぜ! さぁ次に行くぞ、ステラ!」
ステラ「うぇーいっ!」
シホ「さて、基地の女子更衣室から発見された隠しカメラですけど‥‥いったい仕掛けたのは誰なんです?」
イザーク「お、俺は知らんぞっ?」
アーサー「いや〜はっはっは、右に同じく」
ディアッカ「グゥレイト!」
シホ「うーん、どうしたものかしら。セクハラな上に風紀的な問題もあるし、このままにはできないけど‥‥決定的な証拠が無いし」
シン「ならこの事件、俺に任せてもらおう!」
シホ「はい? 突然出てきて、なんのつもり‥‥」
シン「犯人はこの中にいる――――――っ!!」
全員「「!?!?!?!?!?」」
シン「トリックは分かった! あとは、証拠さえつかめれば‥‥」
ステラ「うぇーい! シン、ステラ証人を連れてきた〜」
ミリアリア「ちょっとちょっと、なんなのよいきなり。大体ここザフトの基地じゃない」
シン「なるほど、彼女ならこの事件の犯人が分かるはず。今こそ謎はすべて解けたっ!」
イザーク「さっぱり分からんぞ!? そもそもトリックとはなんのことだ?」
シン「ふっ、安心してくれ。この一言で謎はすべて解決する! ミリアリアさん、実はこの基地で盗撮がありまして」
イザーク・アーサー・ディアッカ「「!?」」
ミリアリア「‥‥盗、撮‥‥‥‥? 盗撮か、盗撮ねぇ‥‥そんな悪い子にはお仕置きが必要よねぇキヒェヒェヒェヒェ!!!」
ディアッカ「ヒイイイイ!? ハルパーミリィだっ、ハルパーミリィが出たあああああっ!」
アーサー「くっ、この場はここまでかっ。さらばだ同士ディアッカ、木の葉隠れの術!」
ミリアリア「逃がすかあああああああ! 全員まとめて闘殺してくれるわああああああ!!」
イザーク「なんで俺までえええええええ!?」
シン「盗撮者ハンターのミリアリアさんの嗅覚に反応した。ということはつまり、そいつらが全員盗撮野郎だったってことさ。我ながら完璧な推理だなっ」
ステラ「シン、すごいすごいっ。じゃあ次に行こっか。あ、その前にステラが更衣室にわざと忘れてったカメラ返してね」
シホ「え?」
シン「行くぞステラ、次の事件が俺たちを待っている!」
東方不敗「むう、このカップメンは!? 某有名ラーメン店のレシピを参考に作られた超限定品‥‥インスタントとは思えぬ見事な味じゃ!」
アウル「そ、そんな! 俺の料理が、カップメンなんかに負けるってのか!?」
シン「お前の料理はただ空腹を満たすだけの代物に過ぎなかったんだよ。それがお前の敗因‥‥料理とは心で作るものなんだ!」
アウル「お前のカップメンのどこに心があったんだ!? というか、敗因も何も俺らの飯の材料ステラが食べ尽くしちゃったから、大根おろししか作れなかっただけじゃないか!」
ステラ「うう。ステラおなかいっぱいで苦しい‥‥」
キラ「ラクス、そのハロ珍しい色をしてるね。光沢のある緑色‥‥玉虫色っていうのかな」
ラクス「ヘタレに命じて作らせた激レア物ですわ。玉虫色‥‥まさに我がラクシズに相応しい色だと思いませんこと? オ〜ホホホホホ(ヒョイ)‥‥あら?」
シン「はっはっは! 秘宝玉虫色のハロ、予告状通りこの怪盗シスコーンがいただいた!」
ステラ「うぇーい! おのれシスコーン、おとなしく捕まりなさ〜い!」
シン「ステラ刑事、俺を捕まえたいなら追ってくるんだな! とうっ」
シン「九回裏ツーアウトフルベース、カウントはワンストライクスリーボール。わずかに一点だけこちらがリード。次の一球で勝負が大きく動く‥‥!」
ステラ「うぇい‥‥シン、ステラを甲子園に連れてって‥‥」
スティング「ふふふ、さぁ来いコーディ野郎! 俺のバットでお前のボールをスタンドに叩き込んでやるぜっ」
シン「よし、勝負だ! このボールに俺のすべてを込めてやる‥‥石破! 野球ボール天驚拳んんんんんんんっっっ!!!!」
スティング「にゃにィ!? ちょっと待て野球じゃないのグボハアアアアアアッ!!」
シュバルツ「ダウン! 3、2、1‥‥一本! 勝者、シン!」
シン「うおおおお、やったぜ! ステラアアアアアアアアアッッ!!」
ステラ「シン、シィ――――ン!!」
ドモン「何やらあちこち騒がしいな。む?」
シン「見つけた! 勝負だ師匠‥‥いや、勝負だドモン・カッシュ! 今こそ俺はアンタを超える!!」
ドモン「ほう、威勢がいいな。そこまで言うのなら、師としてではなく一人の武術家として応えてやろう!」
ステラ「うぇい! シン、がんばって。私ずっとここで応援してる!」
シン「見ててくれ、ステラ! 今まであっちこっちで蓄えてきた主人公力、この体が朽ち果てるまで発揮してやゴパアッ!?」
ドモン「どうしたシン! 大口叩いておいてパンチ一発でもう終わりか!」
ステラ「ああっ、シンの頭蓋骨が歪んでムンクの叫びな感じに!? でも大丈夫、ステラ痛いの治す方法知ってる! 痛いの痛いの飛んでけ〜、痛いの痛いの飛んでけ〜」
シン「ま‥‥まだまだイケルぜっ」
ドモン「では続けるぞトォォォリャアアアアアアア(ボキボキグシャ)!!」
ステラ「ああっ、シンが内臓破裂して体中の穴という穴から血が噴き出して赤服がさらに真っ赤に!? でも大丈夫、ステラ痛いの治す方法知ってる! 痛いの痛いの(以下略)」
シン「ま‥‥まだまだ‥‥いけ‥‥‥‥」
ドモン「では続けるぞトォォォリャアアアアアアア(ドスガスボゴン)!!」
ステラ「ああっ、シンの全身の骨が砕かれてイカやタコみたいに体がグニャグニャに!? でも大丈夫、ステラ痛いの治す方法(以下略)」
シン「マ‥‥マ‥‥イケ、ル‥‥」
ドモン「では続け(以下略)」
ステラ「ああっ、シンの(以下略)」
‥‥‥‥
ステラ「ああっ、シンがついに『少し前までシンだったっぽい物体』に!? でも大丈夫、ステラ痛いの治す方法知ってる! 痛いの痛いの飛んでけ〜、痛いの痛いの飛んでけ〜」
シン「ちょ‥‥も、無理‥‥‥‥」
ルナ「ああ、いたいた。アンタ何こんなとこで死んでるのよ?」
ステラ「うぇい? みんな、どうしたの?」
レイ「どうしたもこうしたも、それを聞くために全員でお前たちを探していたところだ」
ルナ「新しいガンダムが発表されて、悔しくて主人公っぽく活躍しようとしたぁ?」
シン「うう、だってだって。本編が終わってずいぶんになるし、俺、アニメ紙にもさっぱりお呼びがかからないし」
ステラ「痛いの痛いの飛んでけ〜、痛いの痛いの飛んでけ〜」
レイ「だからといって、あんなやり方はどうかと思うがな。巻き込まれた側の人間はいい気はしないだろう」
イザーク「そうだ、潔白な身である俺まで殺されかかったのだぞ!」
アウル「食った分の材料費くらい置いてけ!」
スティング「というかアレは結局なんの勝負だったんだ!?」
ドモン「やれやれ、情けない……いいかシン、主人公とは『なるもの』ではない。『なっているもの』なんだ」
シン「なるものではなく、なっているもの……? ど、どういうことですか!?」
ドモン「いくら目立とうが、どれだけ活躍しようが、それで主人公になれるわけじゃない。視聴者に認められて初めて、お前は主人公になれるんだ」
シン「で、でも、だったら俺はどうすれば!?」
ドモン「己の道を進め。ただ成すべきことを成せ。忘れるな、シン……脚本家の思惑がどうであろうと、お前はお前自身の人生と、そしてこのスレの主人公なんだ」
ルナ「まぁ、そうやって悩んで暴走したりするのも主人公の仕事だしね」
レイ「今回のお前はなかなか主人公っぽかったぞ、シン。少々ギャグ寄りではあったがな」
シン「ルナ……レイ……! お、俺は、俺はっ……!」
アスラン「そうだぞシン、努力なんかしてもあまり意味は無いんだ。俺だってヘタレたり脱走したり流血したりしてる内に、なんか知らないがスペエディで主人公になってたからな」
全員「「……………………」」
シン「うわああああああんお前なんか腐女子に弄ばれてばいいんだぁ――――――っ(脱兎)!!」
ステラ「うぇーい!? シン、血涙流しながらどこ行くの〜〜〜〜っ!?」
メイリン「どうして一言多いんですか、せっかくいい話で終わりそうだったのに!」
アスラン「だって本当のことじゃないか!」
ルナ「シンの主人公病も根深いわねぇ……そういえば劇場版ってどうなってるのかしら?」
レイ「またガッカリな出来になりそうな気がするがな。スクコマ2に期待しておこう」
完
GJ!
そして割り込んでスマンかったorz
>123
気にするな、俺は気にしない。
つーかある意味タイムリーw >スクコマ2
Xスレがキンゲやエウレカとラブコメ路線つながりでネタがあるかも、って沸いてるな。
ラブコメ…シンにラブコメ…
うおおおお久々の小ネタGJ!!
やっぱ多人数でドタバタ騒げるのは良い!
しかしステラ、アンタも健気だよ…
GJ!
なんかこのステラ、キノコ服用してないか?
そういやあったなそんなキノコの話
ステラ・ルーシェに花束を、また見てみたいなぁ……
今年のスパロボはオリジェネ年っぽいから
今回はACE3には種、スクコマには種死が来たようですな
(Gジェネは宇宙世紀のみだし)
ACEはあのメンツだと種の影が薄くなりそうだし……まずはキングゲイナーだ
スクコマは前回の評価は駄目っぽかったし……よく続編だしたよなぁ
……さー、勝つのはどっちだ?
保守
>>129 じゃあひさしぶりにスレに来たのでリクエストにお答えして。
シン「あー今日の飯はうまかったなー。やっぱ海軍と言ったらカレーだよな。
…あれ? レイどうしたんだ? 通路をうろうろして」
レイ「いや…ちょっとな…少々まずい事態が起こってしまったんだ…」
シン「まずい?」
レイ「ああ…研究所からギル議長に”とある薬”を隠密裏に運ぶ予定のはずだったんだが…」
シン「は、はるか以前にも、んなことがあったような…」
レイ「今回はもっと量が多い。スーパーで売っている本しめじ3パックくらいの量だ」
シン「やっぱりキノコ型かよ…」
レイ「偽装のためだ。パッケージも市販のしめじとそっくりにしている」
シン「ふーん、やっぱり落としたのか?」
レイ「いや…配送先を間違えて、ミネルバの食堂に納品されてしまって」
シン「偽装でき過ぎだああああああああ!! い、いや場所がわかっているんだから取り戻せば…っ!」
レイ「いや…すでに消費されたあとだった」
シン「そういえばカレーの中にしめじが入っていたああああ―――っ!!!
っていうか全員食った後だぞおい! どどどどうするつもりだよぉぉぉっ!!」
レイ「だから焦っているんだろうがぁぁぁぁ――!!!」
シン「逆切れだああああああああ――――!!」
ルナマリア「…」
シン「…あれ? ルナマリアじゃないか。どうしたんだ黙って立っていて
…ハッ! もしかして具合でも悪いのか!? 実はさっき食べたカレーに…!」
ルナマリア「…鬱だ………死のう…」
カチカチカチブシュー
シン「ぎゃあああああ!! ルナマリアが唐突にリストカットしたあああああ!?
だ、大丈夫! 傷は浅い! 包帯! 包帯!」
ルナマリア「…傷は浅い…?」
シン「当たり前だ! 手首を切って死にたいなら手首ごと落とすくらい深く切らないと大動脈が…」
ルナマリア「(ヌゥッ…)」
シン「ぎゃああああああ!! ルナマリアがひぐらしのカナカナみたいな鉈を手にしてるぅぅぅ!?
やめれえええええっ!!」
ルナマリア「離してぇぇぇ!! 死なせてぇぇぇっ!!」
シン「ど、どんなに失敗やらかしてもポジティブシンキングなルナマリアがなんでこんなネガティブに!?
おいレイ手を貸せ! そこのロープを…」
レイ「ろーぷぅー? なぁにそれー♪」
シン「……はい?」
レイ「れいむずかしいことわかんないー♪」
シン「ルゥェェェ――イッ!!?」
ステラ「はいロープ。変に手心を加えずに思いっきり縛り上げるようにね」
シン「ス、ステラ!?」
ステラ「そこの角で話は伺っていたわ。ほらさっさと縛って」
シン「そ、そのしゃんとした物腰は! 間違いないっ、キノコステラ!!」
ステラ「いつの間にかすごい名前がつけられてるわね…まあいいけど…」
シンとレイの部屋
ステラ「(カチャカチャ)セキュリティが3重とはまた念入りな…ふむ、やはり件の薬が原因ね」
シン「やっぱりかよ…あれ? でもおかしいぞ。
だったらみんなステラみたいに頭が良くなっているはずじゃないか?」
ステラ「いえ、臨床データがあるわ。今回の薬は”性格が反転”するようね」
シン「は、反転?」
ステラ「前向きなルナが後ろ向きに、頭の良いレイが思考不可に。馬鹿な私はお利口さんに。
より激しく偏る傾向があるみたいね…別に副作用はないけれども…艦の全員が食したとなると
…もし誰かが近くを渡航する船に向けてミサイルを撃ち込んでしまうような事態になったら」
シン「た、大変じゃないか!」
ステラ「ええ面倒だわ。艦内の人員をチェックして、害がなければそれでよし。問題なら自由を奪って正気に返るまで拘束ね。幸い効果はおよそ3時間で消える。シン、行きましょう」
シン「…なあステラ」
ステラ「なに?」
シン「なんで俺は平気なんだ」
ステラ「簡単よ。個性のない人間は反転しても変わりようがないでしょう」
シン「ああ! 納得したよ! そうか俺は無個性だから平気なのかーあっはっはっは………
うあああああああああ……」
ステラ「…さめざめと泣くのは事後にしてくれない?」
ブリッジ
ステラ「一番心配なのは最高指揮官」
シン「ああ、軍隊で艦長が暴走したらシャレにならない。普段温厚な艦長だからきっと…」
タリア「あら二人ともいらっしゃい(ニコー)」
シン「…はい?」
ステラ「何故こたつ…」
タリア「二人ともお茶とみかんはいかが〜?」
シン「あ、はい、いただきます」
タリア「戦争は良くないわ〜人を法で縛るのも良くないわ〜(ズズー)どうしたら世の中が平和になるのかしら〜」
ステラ「どうやら問題ないようね」
シン「ええっと…ということは本来の艦長は…」
ステラ「考えるだけ損よシン。あとは…うん? アビー?」
アビー「そうですよ〜私みなさんのこと大スキ〜♪」
シン「おわ! アビー、意味もなくくっつくなって…ウホ! 胸が背に!」
ステラ「シン、その子はロープで縛りなさい」
シン「ええっ!? だってこんなにおとなしいじゃ…(あ、まさか焼きもちを…)」
ステラ「その子後ろ手に抜き身のナイフ持ってる」
シン「ひいいいいいいいいい!?」
アビー「シン♪ 大スキだからこのロープほどいてぇぇ?」
シン「誰がほどくかぁ!」
ステラ「ツンデレの逆、デレドスってところかしら」
シン「怖ええええええ……あ、あと副館長は!?」
アーサー「素晴らしい! もえたんを修正しまくる地方放送局の倫理の高さは素晴らしいぃぃぃ!!」
ステラ「ほっといても問題ないわね。次行きましょ」
シン「……」
ドモンの部屋
シン「師匠! 艦内が大変なんです! いつものノリでなんとかしてください!!」
ドモン「駄目だ! 俺なんかがなにかできるわけがない!!」
シン「…(ピシッ)」
ドモン「俺なんかっ…年賀状は書き損じばっかりで!
中古で安いゲーム店を見つけることもできずに新品を買ってしまって!
それどころか焼きそばパンをこぼさずに食べることすらできないんだあああああ!!」
ステラ「えらくみみっちいレベルで自信喪失しているわね…うっとうしいけど、まあ害はないか。
石になっていないで行くわよシン」
シン「しぃぃしょうぉぉぉぉぉ−――−――っ!!」
ステラ「うるさいわよシン」
格納庫
ヨウラン「野郎共! がんばって仕事をするぜ!」
ヴィーノ「おう! ちょっとでも手を抜こうなんて考えるんじゃないぜ!」
「「「オオウッ!!」」」
ステラ「ここもほっといても問題なしと」
シン「うちの整備兵って……」
再びシンとレイの部屋
ステラ「杞憂か…そんなに大騒ぎすることにはならないようね」
シン「なんか見てはいけないものを見た気がする…」
ステラ「面白いわね…」
シン「なにが?」
ステラ「人間に。こんなに性格性癖が変わっても社会生活を維持できるという柔軟性に。」
シン「それって…本心と建前は別ですから、ってこと?」
ステラ「端的にいえばそうね」
シン「うーん…………俺は…本心で語りあえるほうがいいな。
それって、こういう騒動が起きたときに大変なことになってしまうんだろうけど…
でも俺は………そうありたいな」
ステラ「馬鹿ね…そろそろ時間ね。さて、私は自分のお部屋に帰るわ」
シン「そうだね」
ステラ「…シン」
シン「なに?」
ステラ「このキノコステラはあなたに ま っ た く 興 味 が な い の」
シン「へ?」
ステラ「たぶんルナも同じでしょうね」
シン「ええ?」
ステラ「(クスクス)察しが悪いわね。じゃあね」
ぷしゅー
シン「…………あ」
数分後…周囲が慌ただしくなって、そしてすぐにいつも通りに戻った。
確かに人間って柔軟だと思う。俺は…そんなに上手くやれる自信はないけど。
そしてしばらく後に警報が鳴った。
ラクス「どうしたらいいんですの? どうしたら皆さんの心を傷つけずに暮らしていけるのか私わからない!」
キラ「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ……」
メイリン「ああ? うぜーんだよお前等は!! おいカレーのお代わり食堂からくすねてこいよ!」
ラクス「わ、わかりまし…」
パーン!!
メイリン「な…私の顔を」
アスラン「ああぶったさ! そうやって皆の和を乱すような奴には何度だってぶつさ!
それが自分の恋人ならばならさらだ!! すぐに別れる予定だし、とくに興味もないが!」
メイリン「私だって名目上はお前の恋人ではあるがひとかけらも興味ねえよ!!」
ルナマリア「…敵陣中で何をやっているのよ。この人達」
シン「アスランとメイリンって俺以上に下手なのかもしれない…」
ステラ「うぇーい♪」
【終わり】
スゲェGJ!!
艦長怖いよ艦長
ステラ大人だよステラ
そしてキラとラクスの性格が種初期にまで戻ってないかと小一時間
なんつーか、建て前って怖いな……
何故かドモンには違和感を感じなかったりするが
OK爆笑した。レイが頭の足りない女の子っぽくてちょっと欝になったけどな!!
GJ!
恐るべし性格反転キノコ…
ミネルバクルーの反応でニヤリと笑い、ラストのステラで萌えた後、
アスランとメイリンの気持ちいいくらいの反転っぷりに大爆笑ww
久々に大笑いしたぜ、ありがとう!
GJ! やっぱミネルバはドタバタしてなきゃねw
…つまり
レイ=キノコステラ
ステラ=キノコレイ
って事か!
保守
何作っちゃってんの議長w相変わらずレイの逆切れは激しいなwww
いやーやっぱりドタバタギャグは落ち着くぜ!GJ!!
ラクス 「まったく!なんでなんでいつもいつもあなたたちはミネルバ連中に勝てないんですの!」
キラ 「うーん、僕らの機体は一応最新鋭のはずなんだけどねえ」
アスラン「ああ…フリーダムもジャスティスも動かない敵には無敵のはずなんだが…」
キラ 「だよね!後ろから攻撃してこない敵にも強いはずだし」
メイリン「そですね…」
キラ 「そうだ、新合体技を使うのはどうかな?
アスランが敵を羽交い絞めにして核エンジン自爆するって感じで」
メイリン「合体技になってないし!?」
キラ 「技名はトゥルーフレンドアサルトっていうんだけど」
アスラン「キラ…そこまで俺のことを信頼して…いい技だな…」
メイリン「友達という言葉にだまされないでぇーー!」
マリュー「そうね…動いてる敵が苦手って事は、動体視力が鍛えられていないって
事じゃないかしら」
メイリン「なるほど。確かにドモンさん達の動き、追えてないですからね」
キラ 「ちゃんと動体視力なら鍛えてるよ、このトレーニング装置で」
メイリン「「動体視力を鍛えるトレーニング」…って携帯ゲームじゃないですか!」
キラ 「買ってから10分で飽きたけどね」
アスラン「俺だってゲームで鍛えてるんだ!!」
メイリン「「大人の美顔トレーニング」…動体視力関係ないし!何を気にしてるんですか!
てか、なにこのプレイ時間!?超やりこんでるし!!」
ラクス 「実は私もそのようなものをたしなんでおりますの」
メイリン「「計算トレーニング」ですか」
ラクス 「最近2桁の足し算をマスターしましたわ」
メイリン「そですか…」
キラ 「つまり、僕達はまだまだ強くなっていくということなんだ」
ラクス 「ええ、すでに私は完璧な存在ですが、あなた達が強くなればミネルバも敵ではないでしょう」
アスラン「顔の血行を改善することによって、俺の頭髪も回復するだろうしな」
メイリン「ですよねー…」
キラ 「主役は成長していくもの!最初は未熟でもいいんd」
ドガア!
シン 「あんたたちは一体何をしてるんだあああああああああ!!」
メイリン「シ、シンが主役という言葉に反応してMSで突っ込んできたあーーーーーーーーっ!!」
アスラン「シン!?」
シン 「あのなああああ、俺は毎日毎日師匠にしごかれて、主役を維持するために、
色々必死なんだ!それなのに」
アスラン「え、主役維持できてたのか?」
ドゴス!!
メイリン「ああーっ!アスランさんが美顔トレーニングの甲斐もなくなんかボコボコの物体にーーっ!」
シン 「なのになのにぃーー!」
レイ 「やれやれ、やっぱりここに来たか、帰るぞシン」
ルナ 「ごめんね〜メイリン、ちょっと最近シンが主役って言葉に敏感になっててさ」
シン 「ちょ!俺はまだ言いたいことが…」
ルナ 「レイそっち持って、はいはい、帰るわよ〜!」
メイリン「いっちゃった…」
ラクス 「悲しい人…力と立場に固執する者はいずれ滅んでいく運命なのですね」
キラ 「うん、だからこそ僕達は歩いていかなければならないんだ」
メイリン「ずっと隠れといてこの方々は何を…ってアスランさん!大丈夫ですか?」
アスラン「ああ、メイリン…もう「主役」なんて言うのはこりごりだよ、もう二度と「主役」なんて言ったりしないよ」
シン 「あんたって人はああああああああああ!!!!」
メイリン「2回言ったーーー!そしてシンが戻ってきたーーーーー!」
マリュー「(アスランのゲームを持って)肌年齢22才か…私もまだまだあの子達にも負けてないわね」
この勢い、この破天荒ぶり、このラクシズの馬鹿さ加減!
なんて懐かしいノリだGJ!
G J !!
こんな時間に爆笑させないでくれwww
アスランいいキャラしてるなぁ
22歳は無理があるぞ、魔乳おばちゃん。
ほしゅ
ほしゅ
保守
ミネルバin砂漠地帯
アビー「――ダメです。サイ=アーガイル、カズィ=バスカーク両名、消息が掴めません」
タリア「ふう…仕方ないわね。マリク、バート、チェン。準備して。それからシュバルツに緊急連絡を」
シン「役者が雲隠れぇ!?」
レイ「ああ、フレイの御付き役が二名とも行方不明だ。前回見つけられたのも奇跡のようなものだったが」
ルナ「ちょっとちょっと。個人情報控えて監視もつけたんじゃなかったの?」
レイ「ミネルバのデータベースに侵入された形跡がある。間違いなく消されたな。
監視映像は少なくとも四話収録終了時にはダミーに差し替えられていたそうだ」
ルナ「何その無駄に高い技量」
アーサー「いやぁ、どこに隠れたんだろうねぇ二人とも」
ルナ「その笑顔が無茶苦茶怪しいのよド変態ッ!!」
シン「どーすんだよっ!? 仮にも坊さん達はレギュラーだろ!? 今更交代なんて…」
サイ「待たれいッ!」
カズィ「ここは我らにお任せあれ!」
シン「うわっ! …って、サイにカズィ! 来てくれたのか!」
ルナ「なーんだ、二人ともちゃんといるんじゃない」
レイ「……? 土壇場で見つかったのか? 何にせよめでたい事か」
ピンポーン
フレイ「あーもう最悪ッ! 一週間シャワーなしなんてあり得ないわよ!」
ルナ「仕事場に来て第一声がそれかい」
シン「スポンサーはどうしたんだよ。最低限の生活は出来るはずだろ」
フレイ「マザー・バンガードが暗礁空域に突っ込んで出られなくなってたのよ。
ミリアリアが好き勝手暴れたもんだから操舵系が狂って」
シン「あの人どこかに封印した方がいいんじゃ……」
レイ「封印とは即ち解放フラグだ。悪いことは言わん、やめておけ」
フレイ「ねえルナ、日焼け止めとパックとトリートメント貸してくれない? 今度埋め合わせするから」
ルナ「ええ〜っ? まーいいけど…(ぼそぼそ)安物だからって愚痴言わないでよ?」
フレイ「(ぼそぼそ)失礼しちゃうわね、私だって礼儀くらいわきまえてるわよ」
サイ「おお、これはフレイ殿」
カズィ「お待ちしておりました。ささ、更衣室に」
フレイ「……誰、あなたたち」
・
・
・
一同『え?』
フレイ「もしかしてサイとカズィに変装してるつもり? 違和感ありすぎよ」
サイ(中身はマリク)「何故バレたぁぁぁぁ!?」
カズィ(中身はチェン)「ええい、どこが完璧な変装術だよあの変態覆面ッ!」
ルナ「お前ら何やってんだぁ――――っ!! 他人になりすましてまで出番が欲しいわけっ!?」
チェン「ち、違うんだ、コレは艦長の命令で!」
シュバルツ「説明しよう!
元々の印象の薄い人間は変装術に向いている。特徴を付け加えるのが容易なのでな。
故に! AAの空気三連星と違い名前すら挙がらないミネルバブリッジクルー三羽烏は、
代役を果たすには最適なのだ!」
ルナ「うわ褒めてねぇ。つーかアンタ傭兵部隊に出張してたんじゃ」
シュバルツ「監督直々に呼び戻されたのでな。撮影が終わればとんぼ返りだ」
マリク「シクシク…珍しくスポットライトが当たったと思えばまたこんな仕打ち…」
ステラ「マリオ、なかないなかない、いいこいいこ」
マリク「ありがとうステラ、でも僕はマリオじゃなくてマリクだよ…」
シン「うう…グスッ…なんて身につまされる話だ…」
レイ「む? 三羽烏というなら、バートはどうした?」
シュバルツ「奴は、アレだ」
ミイラ男←アレ
一同「…………」
ミイラ男(中身はバート)「見るなぁぁ! そんな哀れみに満ちた目で俺を見ないでくれぇぇぇ!!」
アーサー「と、ともあれ…本番いきまーす! 3・2・1・Q!」
その夜、砂漠は荒れていた。
吹き荒れる嵐。テントの外からは風の唸りが轟々と響いてくる。荒れ狂う砂や石がテントに当たり、
絶えず雨垂れのような音を立てる。
薄暗い橙の明かりの中で、男たちは黙したまま地に座り込んでいた。唯一の光源であるカンテラは
テントの骨組に吊るされ、落ち着きなく揺れる。それと共に、ぼんやり映し出された男たちの影も
時に膨れ上がり、時に小刻みに揺れる。
彼らはネオエジプトのファイター一行であった。窪地にテントを張り、夜と嵐をやり過ごそうというのだ。
骨組に吊るされたカンテラが揺れる。白い装束に身も顔も包んだ男たち、彼らは何も言わず、
ただ催眠術にでもかけられたかのように、カンテラの焔に目をやっている。
テントの中で動くのは、頼りない焔と男たちの薄い影。誰も、何も言わない。
「……なあ」
砂嵐に包まれた不自然な沈黙を、一人が破った。
「知ってるか、ジョージ=グレンの噂……」
「あの我らが英雄のか? しかし彼は死んだはずだ」
もう一人が相槌を打った。彼もまた奇妙な緊張感に耐えられなかったのだろう。
「そうだ、死んだはずなんだ。だが、そのジョージが最近ファラオガンダム四世を引き連れて、
このサハラ砂漠に現れるんだとよ……」
「ありえん!」
三人目の男が叫んだ。しかし、装束から僅かに見える顔は血の気が引け、焔に照らされてなお蒼白い。
「だが彼は未練を残して死んだんだ……彼を見た者は何人もいる……それも決まってこんな砂嵐の夜……」
直後、背後でばさりと布音がした。刺すように冷たい暴風がテントの中に雪崩れ込んでくる。砂嵐の呻きが
はっきりと耳をつんざく。
弾かれたようにテントの出入口を振り向いた一同は、そこに一つの影を見た。
体格は大柄。頭から指の先まで全身に包帯を巻きつけ、さながらその様は怪談に言うところのミイラ男。
しおれ枯れた白髪が数本包帯の隙間から見える。ただ一つ露出しているのは、血のように赤い右の瞳。
「お、お前は……!」
男たちの悲鳴は砂嵐に掻き消される。もとより声を聞く者などここにはいない。
カンテラが激しく揺れ、地に落ちて割れた。頼りない小さな火も吹き消される。闇の中に唯一つ、
夜を見下ろす三日月のように、『それ』の血の瞳が浮かんでいた。
「地球が汚れ切ってしまったこの時代でも、ここネオエジプトには、古代王国が栄えた頃の遺跡が
数多く残っている。だが、残っているのは好ましい遺産だけではない。世に闘いの嵐渦巻く時、
勇敢なる戦士の魂、怨念と共に永き眠りより目覚めるであろう――そんな不気味な言い伝えも残っている。
さて、今日のカードは墓場からの挑戦者、ネオエジプトのファラオガンダム四世なんだが……
不思議な事に、そのファイター、ジョージ=グレンは既に死亡しているのだ。
馬 鹿 な ! !
そう思うかも知れんが、これは紛れもなく事実。そしてこの亡霊こそが、デビルフリーダムと共に
地球に落ちたシンの義兄、キラの手がかりを握っているのかも知れないのだ。
それではッ!!」
ドモンがマントをばさりと脱ぐ。
下から出てきたのはピチピチの全身黒タイツ、即ちファイティングスーツだ!
「ガンダムファイトォォ! レディィ……ゴォォォ――――ッ!!」
第十話「恐怖! 亡霊ファイター出現」
「こ、こいつは……」
「酷い……」
白くぎらつく太陽の下、それを見つけたシンとルナマリアは、揃って思わず呻いた。
砂漠のとある大きな窪地に、ガンダムの残骸があった。コクピットは大きく抉られ、頭部から脚部、指の先に
至るまで徹底的に破壊されている。装甲など潰れていないところを見つける方が難しい。剥き出しにされた内部
配線の束は無残な断面を晒し、放電すら起こさず沈黙していた。僅かに原形をとどめたコブラの飾りの破片が、
瓦礫の正体を告げている。
ファラオガンダム十三世。ネオエジプトのガンダム。
更にその隣にはテントの残骸。布も骨組もばらばらにされ、白装束の男達がゴミのように倒れ伏していた。
キッと奥歯を噛み締め、シンはひらりと飛んだ。そのまま砂の斜面を滑り降りていく。パートナーの動きに
我を取り戻したルナマリアも、それに続いた。
「おい、しっかりしろ! おい!」
シンは片端から男たちを揺さぶっていく。しかし反応は返ってこない。誰も彼も、糸の切れた人形のように
かくかくと揺れるだけだ。
ルナマリアも息を確認して回ったが、状況は絶望的と思えた。
これほど完膚なきまでにガンダムを破壊する相手が、クルー達の命を見逃すだろうか。
「ルナっ!」
シンの声に、ルナマリアは我に返った。振り向けば、向こうでシンは一人の男を抱え起こしている。
「こいつ、まだ生きてる! 手当ての用意だ!」
「え、ええ!」
急いで駆け寄る。だがその間にも、男の呼吸は徐々に弱くなっていく。
それと気付いたシンが、さらに男を揺さぶった。
「おい、頑張れ! 今手当てを」
「や、奴が……」
男がかすかに呻いた。はっとして、シンは黙る。
「奴が現れた……死んだはずのあいつが……!」
「死んだ奴? おい、どういうことだ!?」
男の耳元で怒鳴る。男は喘ぐように、震える口を動かす。
「みんなやられちまった……!」
「誰だ! 誰の仕業だ!」
「ジョー……ジ……」
それが精一杯だったのだろう。男はかくりと首を落とし、それきり動かなくなった。
「おい! おい!!」
大声をかけながら揺さぶるが、もう男は何の反応も返さない。
駆け寄ってきたルナマリアは、ほんの一瞬だけ息を呑んだ。しかしすぐにシンの傍にしゃがみこみ、
彼の手を止める。彼が振り返るのには構わず、男の胸に耳を当て、次いで眼球を覗き込む。そうして、
静かに男を元のように砂地に寝かせた。
「ルナ……」
彼女は応えない。紫の瞳からも、何の感情も読み取れない。真っ直ぐ男を見ているだけだ。
やるせない思いで、シンは男に目を戻した。徐々に安らかになっていく死に顔を見、静かに黙祷する。
燦と輝く太陽が、死者に二つの影を落とした。眩しい光とは対照的な、黒々とした影を。
周囲に散乱していた持ち物、何よりファラオガンダム十三世の残骸から、男達はネオエジプトの
チームだろうと推測できた。
すぐさまルナマリアはネオエジプトのファイト委員会に連絡を入れた。ガンダムが破壊されたのは
キャッチしていても、まさかチーム全員が死亡したなどとは夢にも思っていないだろう。
彼らの身元の確認と回収・埋葬を頼むと、すぐに承諾してくれた。簡潔な、感情を廃したような声だった。
ガンダムファイトでの不慮の事故は珍しくない。特にこういった砂漠などの難所では、油断すれば
地元の民でも簡単に遭難して、ファイトに関係なく命を落とす。
それを知っているから、応対した委員は淡々と言葉を発したのだろう。
そして、こうも忠告してくれたのだろう。
「最近サハラ砂漠全域で竜巻発生と遭難事故が相次いでいる。死者の怨念に引き摺られぬよう、
貴女方も気をつけてくれ」
時計の上ではまだ午前中のはずなのに、太陽は容赦なく照り付けてくる。白い光は汚れた地上の全てを
焼き尽くそうとしているかのようだ。マントに守られていない黒髪や顔は、本当に白光に焼かれている
ような心地がする。なのに酷い乾燥のためか汗は一筋も流れてこない。
足元を見れば、砂は僅かな風も見逃さずに転がって、時に足首までも飲み込もうとしてくる。靴の中に
容赦なく入り込んでくる熱砂を努めて無視して、シンは黙々と炎天下の砂漠を歩いていた。こんな難所で
延々と、半ば惰性で足を動かしていれば、ルナマリアから又聞きしたネオエジプト委員の言葉が蘇ってくる。
――死者の怨念。
馬鹿言うな、と首を振る。あれは単なる遭難ではあり得ない。死者の呪いでもない。何者かが、それも
明確な殺意を持った者が虐殺を行ったのだ。怨念にこんな芸当が出来ると言うなら――呪詛で破壊が
行えるなら、自分は今この場にいない。とっくの昔にキラとデビルフリーダムは呪い殺されているはずだ。
しかし、ネオエジプト委員の言葉は、何故か頭にしがみついて離れなかった。
思えば生まれて此の方、何人の死に遭ってきただろう。ファイトに巻き込まれ、家族を目の前で失った。
浮浪児時代には、餓死し銃殺され撲殺され自殺する、同じ境遇の子供達を何人も見てきた。そしてコロニーに
上がってからは、義母と、義妹が――
「シン!」
今度はシンがルナマリアの声に我に返る。先行していた彼女は、前方の砂丘の上から手を振っていた。
「見て! あれ、ガンダムファイトよ!」
「何だって!?」
転がる熱砂に足を取られながら、それでも急いで砂丘を登っていく。徐々に見えてきたのは、
一本の小規模な砂竜巻と、それに対峙する一体の巨人。竜を模した頭部に両腕。黄と緑に彩られ、
姿勢を低く取り、ビームフラッグを槍のように構えている。
シンは目を見開いた。見覚えのある機体だった。
「ドラゴンガンダム……フレイ!?」
竜の巨人は突然後ろに飛んだ。先程まで巨人のいた地を、竜巻からのレーザービームが薙いだ。
一瞬の光と熱を浴びて砂が溶け、僅かに異臭と煙が上がる。それも竜巻によってあえなく吹き散らされた。
「もう! まだファイト宣言もしてないのに!」
ざっと砂を削って着地。苛立ちを吐き出し、ドラゴンガンダムは砂地を蹴った。竜巻に近付くにつれ、
フレイの表情は鋭くなる。ひゅっと短く息をつき、体を跳ね上げ、掬い上げるようにフラッグを思い切り
砂竜巻に叩きつけた。風の壁を突き抜け、確かな手ごたえがする。フレイは口の端を上げた。しかし次の瞬間、
その表情は驚きに変わる。
確かにフラッグは相手の脇腹を破砕し、めり込んでさえいた。だが、相手は意に介した様子はない。
全く反応がない。
「効いてないの……?」
呆然とフラッグを放す。途端に信じられないことが起こった。相手の傷口内部に六角形の銀の鱗が浮き出たか
と思うと、見る間に増殖して損壊を埋めていく。瞬きする間に銀の光沢は消え、そこには元通りに復元された
装甲が出現していた。
ぎょっと目を見開いて、フレイは立ち尽くした。この機械とは思えないプロセスは何なのか。
そもそもダメージを瞬時に修復する機体など聞いたことがない。
隙を逃さず、竜巻の中から数本白い鞭が伸びた。瞬時にフラッグの柄を絡め取る。フレイは正気に戻るが既に
遅く、フラッグが圧に耐えられたのはほんの一瞬のこと、金属のきしむ音と共にあっさりへし折れてしまう。
「こいつっ!」
目に鋭さを取り戻し、フレイは破壊されたフラッグを放した。軽く後ろに飛びつつ、背に手を回して
新たなフラッグを取り出そうとする。が、そこに砂竜巻から追い討ちのレーザービームが発射される。
フレイは慌てて腕をガードに回した。間に合わなければコクピットを貫かれていたところだ。
竜巻から断続的に発射されるレーザービームは、竜を模した両腕の装甲を抉る。有り余る熱量は
直撃していない箇所すら溶かし、飾りの鋭角的な竜は鋭さを失っていく。刺すような痛みに加え、
焼かれたような感覚。加えてレーザーの圧力がドラゴンを後ろに押していく。鋼鉄の足がじりじりと
砂を削る。防戦一方の現状に苛立ち、フレイは左腕の竜を竜巻に向けた。
「私を甘く……見るんじゃないわよっ!」
すっぽ抜けたように、左腕が伸びた。機体は動かない。腕だけが際限なく伸びていく。
これぞネオチャイナが極秘技術の一つ、ドラゴンクロー! これまで数多くのファイターが間合いを
読み損ね、首を噛み切られている。
予想外だったのか、レーザーの狙いがドラゴンの腕に定まらない。ドラゴンクローはそのまま直進、
砂竜巻に隠れたガンダムに容赦なく噛み付いた。
低く、長く、背筋を凍らせるような呻き声が上がる。竜巻が一時勢いをなくし、中のガンダムが
その姿を露わにする。
「あっ!?」
「嘘!?」
観戦していたシンとルナマリアは、思わず声を上げた。
竜巻の中から現れた機体は、全身に白い包帯を巻きつかせていた。しかし頭部の包帯の隙間から、
コブラの飾りが垣間見える。つい先程見た残骸にそっくりのものが。
「どういうことだ!? さっき俺達が見たのは一体……!」
シンの驚きに答えられる者はもちろんいない。ミイラを象ったようなガンダムは、不気味な唸り声と共に
再び竜巻を纏っていく。
ドラゴンクローは相手の肩口を捉えていた。ほどけかかった包帯に噛み付き、装甲を露出させている。
包帯を解かれたミイラとは斯くの如きものであろう、そう思わせるほどに黒く、皺が寄って捩れている
ようにも見えた。機械のはずなのに、どこか生命体の皮膚を思わせる。
ドラゴンガンダムの中で、フレイは顔をしかめた。生理的に嫌悪感を催したのだ。その心理と僅かな動きに
トレースシステムが反応し、伸びたドラゴンクローが戻ってくる。
ドラゴンの腕が完全に戻るとほぼ同時に、ミイラ型ガンダムは完全に竜巻に隠れてしまった。
再び包帯で攻撃してくる。やはりコクピット狙いだ。
鞭だと思っていたときは何とも思わなかったが、正体が分かると途端に怖気が走る。
迫り来る二本の包帯、しかしフレイはビームフラッグを消して棒に戻すと、包帯を二本まとめて地に
打ち付けた。直後、ビームフラッグを一瞬だけ起動させて焼き切る。包帯の束は蛇か何かのように
びくりと跳ね、まるで本物の紙のように燃え崩れる。
「悪趣味な男は嫌いなのよっ!」
思い切り嫌悪感を舌に乗せ、フレイは地を蹴った。視線は相手に向けたまま、砂竜巻を囲むように走り出す。
竜巻の中のガンダムは、たじろいだように包帯を止めた。
一本、一本、また一本。ドラゴンが走る軌跡に、次々に旗が突き立っていく。あっという間に砂竜巻は
ビームフラッグの林に囲まれた。光り輝くビームの旗はドラゴンの姿を隠し、回る旗と砂煙が方向感覚を
惑わせる。
これぞネオチャイナ少林寺はフレイ=アルスターが妙技、フェイロンフラッグ! 一度嵌れば抜け出すことは
至難の業!
ミイラ型ガンダムは闇雲に包帯を伸ばすが、黄のビームフラッグに阻まれ焼き切られてしまう。ならばと
思ったのだろう、砂地沿いに包帯を伸ばし、旗を潜り抜けてドラゴンを捕らえようとする。が、全方位に
伸ばしてもドラゴンは捕らえられない。何故なら!
「竜はいつまでも地べたにいないわ。空を駆けるものなのよ!」
ミイラ型ガンダムが気付いたときは既に遅かった。ドラゴンは残ったフラッグの一本を槍状にして構え、
旗を軽々と跳び越えてきた。
ビームの穂先が眩い光を放つ。ミイラ型ガンダムは咄嗟に後ろに下がろうとするが――
「あなたの、負けよっ!」
気合と同時に、ドラゴンガンダムはビームの穂先を砂竜巻の中心に突き立てていた。
「――ダメだ! フレイ!」
そしてシンもまた、同時に声を上げていた。目を丸くしてルナマリアが振り向いてくるが、
彼女に気付く余裕すらない。
固い手ごたえと同時に、異質な感触が伝わってくる。
フレイはびくりと体を震わせた。補助バーニアが勢いをなくし、ドラゴンの足が静かに地を震わせる。
恐る恐るフラッグから手を放し、一つ後ずさりをする。ビームの穂先は消え、両の支えを失ったフラッグは
ずしりと砂地に落ちた。小さく上がった砂煙は竜巻に吹き散らされる。
その竜巻も、徐々に勢いをなくしていた。またもミイラ型ガンダムの姿が露わになる。
「あ……ああ……!」
フレイは目をこれ以上ないほどに大きく見開き、もう一つ後ずさりをした。水色の瞳が、人形のような
整った顔が、鍛え引き締められた体が小刻みに震える。主の心理に応じ、竜巻を取り囲んでいたフラッグ達も
ただの棒に戻り、命を失ったかのように次々に砂地に横たわっていく。
ミイラ型ガンダムのコクピットは、先程のビームフラッグの一撃に貫かれていた。頭から包帯で巻かれた
ファイターが、炎と小規模な爆発に巻き込まれながらも恨みの篭った唸りを上げる。ただ一点、包帯の隙間から
露出している右目が、ねっとりとした視線をドラゴンに向ける。
血のように赤い眼。
「ち、違う、そんなつもりじゃ……」
呆然としたままに、フレイは首を横に振る。ドラゴンがまた一つ後ずさりをする。横たわるフラッグの
一本に、かかとが触れた。ごつりと固い音がした。
その間にも爆発は起こり、ミイラ型ガンダムは崩壊していく。名も知らぬファイターは、地の底から
響くようなおぞましい唸り声を上げ、ゆっくりと倒れていった。地を震わせたのも束の間、ミイラ型ガンダムは
ずぶずぶと流砂に飲み込まれるように沈んでいく。
それを合図にしたように、砂竜巻は今まで以上に激しさを増し――収まった時は、ガンダムもファイターも、
影も形もなくなっていた。
後には呆然と佇むドラゴンガンダムがあるばかり。
フレイはかくりと膝をついた。ドラゴンの巨体が崩れ落ち、一瞬だけ砂地を震わせた。
自分の両手を見た。まっさらなはずの白い指が、血に染んでいるように見えた。
「殺した……。私、殺してしまった……」
魂を手放したように呟き続ける。シンが通信をつなげてきたことにすら気付かなかった。
「おかしいな、このあたりのはずなんだけど。ルナ、どうだ?」
「座標に間違いはないわよ。ネオエジプトの委員会に送ったデータとも一致したし」
「だよなぁ」
首を傾げる二人に、
「ねえ、冗談でしょ? きっと夢でも見たのよ、暑さで頭がぼーっとしちゃったのよ、きっと」
傍目にはっきり分かるほど怯え震えるフレイ。その隣りでは、サイとカズィが訝しげな顔をしている。
五人は連れ立って、ネオエジプトチームを発見した場所に戻っていた。しかし、窪地の縁に立ってくるりと
辺りを見回してみても、ガンダムの残骸もネオエジプトの男達の姿もない。まっさらな砂地が広がるだけだ。
「委員会から回収班が来るには早すぎるし」
『ルナマリア殿、単に砂嵐で埋もれただけなのではありませぬか?』
「ガンダムまで埋もれるくらい地形が変わってたら一目で分かるわよ」
『ふむむ……』
「だから夢だってば! ファラオガンダムとは、私がついさっき闘ったのよ!?」
「いや、確かにあれはファラオガンダムの残骸だった。全身を破壊されていたんだ、クルーと一緒に」
必死に言い募るフレイを横目で見やり、シンは静かに言う。
ネオエジプトは第一回ファイトから同じ形状、同じ名前のガンダムでファイトに出場している。
無論技術の進歩に従いマイナーチェンジは行っているが、基本的に武装もシルエットもそのままだ。
名前も『ファラオガンダム○世』で統一されている。
故に、ファラオガンダムに似た他国のガンダムが出場していることなどあり得ない。
ガンダムファイトは国家の威信を賭けた代理戦争である。各国は自分達のオリジナリティを出すべく、
デザインには性能と同じくらい頭を使う。なのにわざわざ、デザインのあらかじめ分かっているネオエジプトの
ガンダムに似せようと思うデザイナーはいない。
「じゃあさっきのは何なのよぉ!? あれは絶対現実よ、ドラゴンの両腕だって、ほら!」
ぴっとフレイが指差したのは、後ろに聳え立つドラゴンガンダム。太陽を背にし、巨大な影を五人に
提供している。諸所に破損や痛みが見えるが、中でも両腕の竜の飾りは溶けかけている。左腕など、
見ようによってはナマズに見えてしまうほどだ。
「分かってる。俺だってあれが夢だとか言うつもりはないさ」
腕組みをしながら、つられてシンもドラゴンを見上げる。
「『死者の怨念』……」
ぽつりと発せられたルナマリアの呟き。少年らはきょとんと彼女を見やったが、フレイはまともに
顔色を変えた。
「あ、ち、違うわよ! 私オカルトなんて信じてないから!」
視線に気付き、ルナマリアは慌てて片手を勢いよく振る。しかしもう遅い。
「つまり、幽霊ということですか?」
「余計なこと言うんじゃないわよカァァズィィィィ!!」
「の――っ!?」
いっそ面白いほどに顔面蒼白となったフレイが、カズィの首を締め上げる。ばたばた手を振り回すカズィ、
フレイと対照的に顔色が赤黒くなっていく。
「ふ、フレイ、やめてくれ! このままじゃカズィが落ちる!」
「サイは黙ってて! あなたには関係ないでしょ!」
「んなっ……そんなわけないだろ!? 僕らは君の……!」
とまあ、にぎやかなネオチャイナ一行を無視し、
「本当にそうなら楽なんだけどな。もしものことがあっても、とりつかれるのはフレイだけだ」
「そうよね……」
言い切るシン。あっさり頷くルナマリア。二人はくるりと窪地に背を向け、歩き出そうとする。
……が、進めない。柔らかい感触がシンの背中にもたれかかってくる。
「待って、お兄さん」
何という変わり身の速さか。振り向けば、フレイがシンの背中にすがりついていた。つい体ごと振り返れば、
今度は右手をそっと掴まれる。潤んだ瞳がこちらを見上げてくる。酷く乾燥したこの場で、水色の瞳だけは
きらきらとゆらめく。その下には、桃のように形よく膨らんだ胸元が中華服を盛り上げているのが見える。
シンはぎょっとして、そのまま硬直した。視線を動かすことが出来ない。充分に暑いはずの砂漠で、
更に顔に熱が上がってくる。
「気味の悪いこと言うだけ言って、いなくならないで!」
追い討ちか、意識していないのか。フレイは今度はシンの胸にしなだれかかってきた。少女の豊潤な胸が
少年に押し付けられる。
「私、こういうの苦手なの、凄く怖いの!」
「や、そのっ、フレイっ」
「一緒にいてよ! 今晩だけでもいいから! お願いよ、お兄さん! ねえ!」
フレイが顔を埋めてくる。ふわりと赤の髪が流れ、闘いとは無縁な芳しい香りがする。
シンは自分の頭のどこかが爆発したような気がした。
ああ遠い空の父さん母さん、僕はどうすればいいのでしょう。笑ってないで助けてください、せめて何か
言葉を、いや待ってくれマユ、汚らわしいものを見るような目で蔑まないでくれ、お兄ちゃんは獣なんかじゃ
ないんだぞ、ああ目を背けないでくれ! コレはお兄ちゃんのせいじゃないんだ、この女がいけないんだ、
いや違う、何もかもアイツのせいだ! この子がこんな色気で迫ってくるのもキラが教え込んだんだ、
そうに違いない! よって全ての責はキラにあり! そうだ、そうに決めた、今決めたっ!
強引に責任を仇敵に押し付け、何とか正気に戻る。努めて平静を装って、シンは必死で視線をフレイから
引き剥がし、傍らのルナマリアを見やった。しかし頼みのパートナーは、何を思ったか、つんと横を
向いてしまう。
「おい、ルナ?」
「どうして私に振るのよ。好きにすればいいじゃない」
突き放したような言い方だ。振り向いてすらくれなかった。
御付きの二人に目をやれば、咳き込むカズィの背中をサイが叩いている。ふとシンの視線に気付いたサイが、
諦めなさいと言いたげに首を横に振った。
フレイに目を戻せば、彼女は未だに自分にしがみつき、ふるふると震えている。
シンは茹蛸のようになったまま、溜息をついた。
フレイ=アルスター。少林寺の命運を背負った、ネオチャイナのガンダムファイター。ナチュラルの、
しかも女性ながら、その実力は折り紙付き。以前のファイトではシンのインパルスを引き分けに持ち込んだ。
しかし、彼女の最大の武器は少林拳などではなく、彼女自身の魅力であろう。
ナチュラル、つまり一切遺伝子操作をせずにこれほどの美貌を持ったことは奇跡に等しく、だからこそ
彼女もそれを己の武器と心得ているのだろう。フレイは自らの性的魅力の引き出し方を熟知している。
耐性のない少年であれば、一発で堕としてしまうほどに。
まさに魔性の女である。十五年という未だ短い生の中で、どれほどの男を誑し込めばこんな恐ろしい女に
なれるのだろうか。…………
「……何書いてるのよ私は」
自分に呆れ、ルナマリアはキーボードのバックスペースキーに指を押し付けた。
窪地のキャンプから一人離れた彼女は、情報検索と同時に、フレイ=アルスターに関するローカルデータの
更新を行っていた。しかしいつの間にやら、途中から誹謗中傷の類になってしまっていたのに気付いた。
とろんとした半目になりながら、まだまともと思える文面にカーソルが到達するまで指を押し付け続ける。
辺りはもう暗い。月と星が夜空を埋め尽くし、気温も低下している。昼間とは打って変わって肌寒い。
ふと携帯端末のバッテリーを見れば、ゲージは残り半分を切っていた。
それほど使い続けた自覚はないのだが。
バックアップの後に電源を切り、ルナマリアは携帯端末を自分のザックに仕舞い込む。
そしてそれを肩に担いで、身を翻そうとした。
視界に人影が入った。
『それ』は、少し離れた砂地に、幻のように現れた。
全身に包帯を巻きつけていた。体格は大柄だが、背筋は猫背。両腕を軽く広げ、頭を垂らしている。
顔面すら包帯に覆われていたが、右目だけは血のように赤かった。
ルナマリアは呆然と立ち尽くした。『それ』は視線だけを上げ、ルナマリアをじっと見据えていた。
どんよりと濁った赤い瞳からは、何の感情も読み取れなかった。
緩やかな風が吹く。ルナマリアの赤い髪を僅かに揺らし、砂粒を申し訳程度に転がし、行き場を
失ったかのように止む。
――チガウ。
声が聞こえた気がした。同時に、『それ』の姿も消えた。現れたときと同じく、幻のように掻き消えた。
ルナマリアは、しばらくしても、呆然と立ち尽くしていた。とろんとしていた目は徐々に徐々に
見開かれていく。ぱちくりと瞬き。二回、三回。
視線の先には、月と星に照らされた夜があるばかりだ。
どさりと音を立て、ザックが砂地に落ちた。今頃になって背筋が凍りつく。ルナマリアは目を皿のようにし、
せわしなく口をぱくぱくさせた。空気を求める哀れな水槽内の金魚のように。
そうしてようやく、彼女は悲鳴を上げることが出来た。
「違うの……そんなつもりじゃなかったのよ……」
頭から毛布に包まり、フレイがうなされている。外からでは、毛布の塊が何事か呻きながらもぞもぞ
動いているようにしか見えない。
その毛布の塊から視線を外し、シンは自分の毛布に寝転がった。自分の腕を枕に夜空を見上げる。宝石箱を
ひっくり返したかのように、月と無数の星が視界一杯に広がる。
何となく、金箔交じりの墨を連想した。自分が『シン=ヒビキ』だった短い時代の記憶。一年に一度しか
出番のない墨と筆は、無駄に高級だった。書き初めを済ませた母の硯を拝借し、兄と妹と三人で、納屋から
羽子板を持ち出した。光の粒が混じった黒で顔中塗りたくられるのは、大抵自分だった――
思い出を振り切るように、シンは顔を歪め、目を瞑る。自分が感傷に襲われていることを自覚する。
こんな心では、奴を倒すことなど出来ない。奴を兄と認めてしまってはいけない。
今回の件は奴に関連しているとしか思えないのだ。消えたファラオガンダムの残骸と、フレイが闘った
ファラオそっくりのミイラのようなガンダム。この二つを結び付けられるのは、デビルフリーダム三大理論
機能の一つ、自己再生しか考えられない。
「そんなつもりじゃ……キラ……」
びくりとして、シンはフレイを振り返った。相変わらず彼女は毛布に包まって震えていた。
ただの寝言だったらしい。
シンはまた仰向けに寝直し、目を閉じた。妙に腹立たしくて、怒ったように鼻から溜息をつく。
確かに自分は奴の手掛かりを捜し求めてきた。それらしい事件に触れて、嬉しくないわけではない。だが。
――何もこの子がいるときに遭遇しなくてもいいだろうに。
「シン殿」
少年の声が、シンの意識に割り込んできた。
目を開ければ、眼鏡の少年の顔がこちらを覗き込んでいる。シンは不機嫌を隠さず顔をしかめた。
「何だよ、部下その一」
飴色のレンズの奥で、サイの目もしかめられる。
「せめて御付きと言ってくだされ」
「はいはい」
よっこらせ、とシンは体を起こす。
サイは隣に座っていた。ふと気付けば、カズィもサイの隣りにちょこんと座っている。
「それで? 何の用だ?」
「大したことではござらぬ。一つお聞きしたいことがございましてな」
「もったいぶるな。さっさと言え」
「ムウ=ラ=フラガの敗北をご存知か?」
シンは一瞬だけ言葉に詰まった。
ムウ=ラ=フラガ。先日闘った、ネオイングランドの『英雄』。
「……なんで俺に聞くんだよ」
「ジョンブルガンダムの反応が消える数日前、ネオジャパンチームがネオイングランドに入ったとの情報を
得ておりました」
サイは真剣な目でこちらを見ている。カズィは、どこか申し訳なさそうに上目遣いをしている。
シンは何か後ろめたい心地がして、つい、と視線を落とした。サイの持つ数珠が目に飛び込んできた。
「あの人を殺したのは俺じゃない」
ろくに考えもせず口走った。はっとしたが、もう言葉はサイとカズィの耳に入ってしまっている。
緩やかな風が吹き、砂をほんの少しだけ転がした。シンの黒髪が、見開かれた赤い瞳と同じように揺れる。
「死んだ、のですか? ネオイングランドの英雄は」
呆然としていたカズィが、呆けたままに問いかけてくる。
「……あれはどうしようもなかったんだ」
そんなことを聞かれてはいない。だがシンは、そう言って顔を背けてしまう。
ネオイングランドの一件から随分経つが、未だしこりは心に残ったままだ。
シンは歯を噛み締め、勢いよくかぶりを振った。苛立ちを乗せ、カズィを睨みつける。
「それより、何でそんなこと聞くんだよ」
カズィはびくりとしたが、サイは毅然としたままだった。
「ムウ=ラ=フラガはナチュラルでありながらガンダムファイトを三連覇した、ファイト史上最強の男」
「知ってる。それで?」
「そしてまたフレイ殿もナチュラルファイターであり、しかも女性」
「だから?」
「ムウはフレイ殿の仮想敵だったのです」
「…………」
「彼がサバイバルイレブン中に消えるとは――それもフレイ殿とではなく、他国のファイターと闘い
敗北するとは想定しておらなんだ」
「何が起こるか分からないだろ。ガンダムファイトは」
「これはしたり。ですが、彼を下したファイターが何者であるかは我々も是非に知りたいところ。
そやつはムウ以上の強敵ということでありますからな」
思わずシンはサイの目をまじまじと見た。相変わらず眼鏡の少年は真剣な顔をしている。
「故に我ら二人、まずはシン殿に伺おうと思った次第」
カズィも、シンの緊張が緩んだのを感じ取ったか、言葉を継ぎ足す。
「……それだけ、か?」
『他に何があるというのです?』
二人の少年僧は、揃ってきょとんとして、首を傾げる。
シンはしばし唖然としていた。が、正気に戻ると深々と息をつく。気を張り詰めさせていた自分が
馬鹿に思えてくる。また顔に熱が上ってくる。
『いかがなされた、シン殿』
「なんでもない!」
ぷい、と顔を横に背ける。余計なことを考えていたのが恥ずかしかった。
「それより、ムウに勝った奴が誰だか知りたいんだろ!」
『は、それは是非とも』
「ネオフランスのレイだ! これでいいんだろ、もう寝るぜ!」
言い捨てて、シンは毛布を頭から被ってしまう。
ルナマリアの金切り声が夜の砂漠をつんざいたのは、その直後だった。
「ルナッ!?」
がばと勢いよく跳ね起きる。砂の窪地を急いで上り、シンは声の方へと駆ける。
「カズィ、おぬしは残ってフレイ殿を!」
「あい分かった!」
短いやりとりの後、サイが追ってくる。
ルナマリアはあさっての方向を見て立ちすくみ、小刻みに震えていた。その足元にはザックが転がっており、
口から携帯端末はじめ小物類が飛び出している。
「おい、ルナ! 無事か!?」
駆け寄ったシンがルナマリアの肩を掴む。はっとしたルナマリア、シンを振り返ると、大声で叫んだ。
「出たの! 出たのよ、ミイラが!」
「……はあ?」
ぽかんとするシン。ルナマリアは自分が見ていた方向を指差し、尚もわめく。
「さっきそこにいたの! 全身包帯だらけで、右目だけメチャクチャ赤くて、濁ってて、どんよりしてて、
こっちをじーっと見てたのよ! でも風が吹いたらいつの間にか消えちゃってて!」
「お、落ち着け、ルナ!」
「いかがなされた、ルナマリア殿!」
サイが追いついてきた。これ幸いと、シンはルナマリアを押し付ける。
「ルナを頼む。俺は少し辺りを見てくる!」
反論は聞かず、シンは身を翻し、砂地を走っていった。
後には少し困った顔のサイ。ルナマリアは荒く呼吸を繰り返している。一つ思いついて、
サイはそっと声をかけた。
「ルナマリア殿、うろたえなさるな。心配は御無用、今シン殿があやかしを退治して来られますからな」
ぽんぽんとあやすように彼女の背中を叩く。
「べ、別に、幼児退行してるわけじゃないんだけど」
ルナマリアが不満げに呻いた。声色は低いが、まだ動悸は早い。
「ならば、尚のこと落ち着きなされ。シン殿はフレイ殿に匹敵するファイター。そこらのあやかしに
遅れは取りますまい」
しっかりとした口調でサイは言い切る。同時に、ぽん、と背中を叩き、シンの去った方向を見つめた。
それきり彼女に触れることはしなかった。
そんな少年僧を、ルナマリアはちらりと見た。呼吸を整え、彼に習って、夜の砂漠にシンの背中を捜す。
それほど経たずにシンは戻ってきた。お手上げ、とばかりに肩をすくめて。
気配も、足跡も、全く何も残っていなかったのだ。
そして翌朝。
相も変わらずぎらつく太陽の下、四頭のラクダが砂漠を歩く。
ラクダの手配をしたのはルナマリアだった。そもそもシン達はネオエジプトのファイターと闘いに来た
だけなので、移動手段はインパルスとブッドキャリアーしか持っていない。フレイ達も似たようなものだ。
そして今から行こうとしている場所は、そういった兵器を近付ける事は御法度になっていた。
故にルナマリアはネオエジプトの回収班に追加注文をつけたのだ。ついでにラクダを連れてきてくれ、と。
急な話であるために四頭しか準備出来なかったが、フレイの発案により、シンとフレイが二人乗りを
することで解決した。運び手からはどう考えても相場の三倍はあるチップを要求されたが、文句を言える
立場ではなかった。
「ねえ、どこに行くのよ、お兄さん」
「墓さ」
「はかっ!?」
「ほら、見えてきた。あれだよ」
と、馬上ならぬラクダ上のシンが指差したのは、巨大なピラミッドである。と言っても古代遺跡ではない。
積み上げられている石材はそれほど古ぼけてはいないし、本来ならスフィンクスにあたるであろう巨像の顔が
ガンダムのそれになっているあたり、未来世紀の産物と一目で分かる。
「ネオエジプトのクルーが最後に言い残した言葉は、ジョージ。そこから調べてみて分かったのよ」
ルナマリアが解説する。
「ジョージ=グレンは、第三回ガンダムファイトの優勝者。一度はこのネオエジプトに世界の実権を持たせた
ファイターだったの。でも第四回ファイトにおいて、とある少年に暗殺されたのよ。ここは彼の栄誉を讃える
ためと、怨念を鎮めるために建てられた、彼のお墓というわけ」
第七回ファイトを迎えるまで、ガンダムファイターは英雄であると同時に、コーディネイターの優位性を
見せ付ける存在でもあった。
ナチュラルとコーディネイターの確執は根強い。無論、両者の融和の努力は続けられている。その甲斐
あってかどうかは別だが、今日では地上と宇宙という二極構図に全ての不満を集結させる形で、二者間の
極端な蔑視や差別は抑えられている。だがジョージの時代では、確執の解消など夢物語だった。
ガンダムファイターの鋼の肉体も、気を張っていなければ常人レベルのそれである。斬られれば痛みを感じ、
傷もつけば血も流れる。下手な箇所をやられれば熱を持ち腐敗もするし、頭や心臓を撃ち抜かれれば死ぬ。
そしてガンダムファイターとはいえ、普段から気を張り詰めさせているわけではない。素手でMSさえ破壊
出来るシンにしても、ネオメキシコでは吹き矢に倒れたことがあるのだ。
ジョージ=グレンは、第四回ガンダムファイト決勝戦を目前に、ファイター志望のナチュラルの少年に
撃たれてこの世を去った。当時はナチュラルがファイターになることなど不可能とされていたのだ。
『コーディネイターが二連覇を果たすことが許せなかった』
夢を潰された少年は、逮捕された際、そう供述したという。
「幽霊の正体は、かつてのガンダムファイターってわけだ。それも、またファイト優勝者」
ふう、とシンは息をつき、
「つくづく英雄に縁があるらしいな、俺は」
口の中で呟く。誰にも聞こえないように。
確かにシンの呟きには気付かなかったようで、ルナマリアは言葉を続ける。
「昨日、最近のサハラ砂漠での不自然な遭難をリストアップしてみたんだけど、襲われたのは
ナチュラルばかりなのよ。ネオエジプトのファイターもそう。ナチュラルに殺されたジョージなら、
ナチュラルを恨んでてもおかしくない。そう思わない?」
いつの間にか四頭のラクダは砂地を渡り終え、石畳を踏みしめていた。ピラミッドが近いのだ。
ガンダム顔のスフィンクスに守られた英雄の墓は、来訪者たちを静かに見下ろし迎える。
ルナマリアは、眼前の巨大建造物に気圧されるのを自覚した。
これほどに威容という言葉が相応しい人工物もないだろう。インパルスやドラゴンの体長を軽く
三倍は上回る高さ。黄金比に基づいた美しい四角錐。外観は化粧岩が施され、滑らかな斜面となっている。
降り注ぐ陽光を受け、元々白く美しい表面は更に白く照らされている。
感嘆の息を一つ小さくつき、ルナマリアは再度口を開いた。
「それに、ネオエジプトには言い伝えがあるの。『世に闘いの嵐渦巻く時、勇敢なる戦士の魂、
怨念と共に永き眠りより目覚めるであろう』――眠っているジョージを目覚めさせないために、
墓の近くに兵器を近付ける事は禁止されているくらいよ。迷信だとは思うけど、でも、もし本当に」
「興味ないわね。私、帰るわ」
皆まで聞かず、フレイはラクダから滑り降りた。が、シンは彼女の首根っこを掴んでひょいと持ち上げ、
元通りラクダに乗せてしまう。
「ち、ちょっと、お兄さん!?」
「ここまで来てそんなこと言うなよ? 中に入るぜ」
振り返り、にやりと笑うシン。さぞかし意地の悪い笑みになっていることだろう、と自分でも思う。
一方フレイはまともに顔色を変え、
「嫌! 嫌よ! 絶対イヤっ!! 何で私が行かなくちゃならないのよ! こんなのファイトと関係
ないわよぉ!!」
シンの背中にすがりつき、ふるふると首を振る。
「大体ナチュラルに恨みを持ってるなら、私が行ったら呪われちゃうわよ絶対!
お兄さんコーディネイターなんでしょ!? 行くならお兄さんが行ってよぉ!!」
柔らかい感触といい匂いが女性を感じさせる。しかしシンは、昨日とは対照的に、笑みを消して
眉をひそめただけだった。
「あのねぇ、フレイ……」
半ば呆れ顔のルナマリアが何事か口を挟もうとした、そのとき。
『情けなや!!』
例のユニゾンが響き渡る。何かと思えば、いつの間にやらサイとカズィは砂地に下りていて、
シンとフレイのラクダの傍にちょこんと正座している。
ぴたり、とフレイの震えが止まった。
「少林寺を再興し、また将来背負っていこうというお方が」
「幽霊騒ぎ如きでこのような有り様とは」
「サイ!」
「カズィ!」
『我らこの先どのようにすればよいのやらぁ…… よよよよよ〜〜〜』
互いに向かい合い、滂沱の涙を流す二人。
あっけにとられるシンとルナマリア。フレイは名残惜しそうに、ぎこちなくシンの背中から離れると、
御付きの二人組を見下ろした。思い切り顔をしかめて、渋々言葉を搾り出す。
「分かったわよ。行けばいいんでしょ……?」
外の猛暑とは対照的に、ピラミッド内部はひんやりとしていた。壁の石材に触れば、火照った指先に
冷気が伝わってくる。
古代のピラミッドの場合、内部は蒸し風呂のようになっている。観光客の汗と吐息が内部に淀んで
しまうためだ。しかしこのジョージ=グレンのピラミッドは、外よりは湿っていると感じるものの、
汗ばむほどではない。参拝者も観光客も、内部まで入った事がないのだろう。
気温は夜の砂漠ほどに低い。少し肌寒く思える。手すりも照明も全くなく、岩壁は高く真っ平らに
聳え立っている。
扉から少し中に入れば、もう辺りは真っ暗闇だ。外の光は届かない。先頭を行くシンの持つ小型ライトと、
しんがりを務めるサイのカンテラが頼りだ。
こつこつと五人分の足音が反響する。シンとルナマリアと少年僧たちは無言のままだが、
「うう、気味悪い……」
フレイは内部に入る前から、ぴったりシンの右腕にしがみついてぼやき続けている。
「気をつけてよぉ…… こういうところってよく罠とか仕掛けられてるんだから……ぁ?」
みしり、と嫌な音がする。
恐る恐る踏み出した足の先を見れば、石畳にひびが入っていた。と思えばぼこりと陥没、
それを皮切りに床が崩れていく!
「どぉしてぇぇぇぇ……」
「アンタって人はぁぁぁぁ……」
「シン!」
『フレイ殿!』
ぽっかり口を開けた落とし穴は、サイとカズィとルナマリアを残し、二人のファイターを悲鳴ごと
奈落の底へと飲み込んでしまった。
かちりと音がして、闇に一条の光が生まれる。
瓦礫の中から発された光の筋は、ひょこひょこと落ち着きなく闇を横切り、やがて瓦礫の中に戻っていく。
「大丈夫か、フレイ?」
「うう……なんとか……」
二人の声はかすかに闇に反響し、流れていく。
ライトに照らされたフレイは、両手で頭を押さえていた。シン自身も右手にライトを持ちながら、
左手で腰をさすっている。したたかに床に打ち付けてしまったのだ。
「ったく、注意しろって言った奴が罠踏んでどうすんだよ」
「し、仕方ないじゃない、どこに何があるかなんて知らないんだから!」
フレイは反射的に頬を膨らませた。
「それに、私はイヤって言ったもの! 無理矢理連れて来たのはお兄さんじゃない!」
「泣き落とされたのは君じゃないか」
「それじゃあお兄さんは、あの二人のユニゾン攻撃に耐えられるの?」
そう言われれば、シンには返せる言葉はない。
「……分かったよ」
一つ息をついて、立ち上がる。
「道が続いてる。行こうぜ」
手元のライトを向けた先には、他の三方と違って壁は無かった。更に奥の闇へと続いている。シンの向ける
一条の光は、闇の通路へ走り、そのまま呑み込まれてしまっている。
渋々といった具合に、フレイも立ち上がった。しかし、ライトを持たないシンの左腕にぴったりしがみつく。
「おい、フレイ」
「嫌」
少しふてくされたような声だった。きゅっとシンの腕を握り締める。
「離れるのは嫌なの」
シンはカッと頭に血が上るのを感じた。昨日とは違う、もやもやしたものが胸の内に沸き起こってくる。
「俺はキラじゃないんだぞ!」
フレイの体が震えた。だが彼女よりも、口走ったシン自身の方が驚いていた。
自分で分析する前に、自分の心の真実を図らずも口走ってしまう。そんなことは、稀にだが、人間にはある。
昨晩から続く妙な胸の苛立ちの正体はこれか。自覚してしまったことに、シンは心の隅で後悔する。
それでもフレイを振り返り見下ろした。自分の激情を止める術には、シンは精通してなどいなかった。
「……そんなの、当たり前じゃない」
「だったらアイツを重ねるな! 君が好きなのは俺じゃなくてアイツだろ!」
「けどっ!」
更にフレイは力を込めてくる。シンの苛立ちに満ちた赤い瞳を見返すことはなかったが、自分の体を
くいと押し付けてくる。水色の瞳は潤んでいた。
「けど、怖いのは怖いんだもの……」
シンはきょとんとする。そして、自分が何とも恥ずかしい早合点をしていたと思いつく。
一人の男性と一人の女性がいるとしよう。加えて女性は極度の怖がりだとしよう。二人の関係は
顔見知り以上友人以下。恋人など思いもよらない。その二人が同時にお化け屋敷に入ったとする。
怖がりな女性は、どんな反応を示すだろうか?
フレイの一連の反応は、女性が恋人に示すものではないのだろう。怖がりの少女が他人に保護を
求めているだけなのだろう。いくら性的な興奮を催させるものだったとしても――いや、それすらも
自分を守らせる作戦なのかもしれない。
何にせよ、フレイは自分に対して、最初から恋愛対象としては見ていないのだろう。
シンはばつの悪い顔をして、闇の向こうへと視線を戻した。何も言わずに歩き出す。
いきなりシンが動き出したことで、フレイはバランスを崩しかけた。だが腕にしっかりしがみつき直すと、
引きずられたように歩き出す。
シンも、今度は彼女を振り払おうとはしなかった。
闇を往く二人の間に言葉はなかった。
フレイも怯えた声を上げることはない。シンは初めから無言のまま、歩を進めている。
未だにフレイは小刻みに震えているし、シンの腕を掴んで放さない。怯えているのは明白だが、
声に出すことだけはしなくなっていた。
こつり、こつり、というゆっくりとした足音だけが、固く壁に反響して続いていく。
何度か角を曲がりもした。段のない坂をよじ登りもした。崩れて瓦礫となった石材を共に
踏み越えたりもした。それでも二人は無言。
体は密着しているのに、シンの胸中は冷めている。フレイを連れて来たことに、内心で舌打ちをした。
やはり素直に返せばよかった、妙な仏心など出さなければよかったと思う。
と、フレイが更に強くしがみついてきた。軽く悲鳴まで上げた。
シンは口の端を歪めた。奇妙な緊張感のまま闇の回廊を歩くのには、いい加減うんざりしていた。
ライトに照らされ、前方に浮かび上がったのは、祭壇と長方形の石材。それを見下ろすように、壁には
一枚の巨大な肖像画が飾られている。描かれているのは金髪碧眼の、どこか柔らかな印象を与える美丈夫。
「間違いない。ジョージ=グレンの墓だ」
しばらく動かしていない舌は、少しだけ粘ついていた。
「どうするの、お兄さん」
しばらく振りに聞いた囁きは、やはり鈴の転がるような可愛らしさを持っていた。
僅かに震えているのも変わらない。
「決まってるだろ。棺を開けるんだ」
「ええぇぇ――っ!?」
甲高い叫び。石室に反響し耳朶を圧するのも束の間、ソプラノの悲鳴は通路に吸い込まれていく。
我知らず、意地の悪い笑みを浮かべながら、フレイを無視してシンは棺を開けにかかった。
「な、な、何言ってるのよ、そんなことしたらバチが当たるわよ! 呪い殺されちゃうわよっ!」
きゃあきゃあと大変やかましい。だが彼女にとってはシンを止めることすら恐怖となるらしく、
騒ぐばかりで一向に手出しはしない。構わずシンは棺の蓋をずらす。
「やめてやめて、やーめーてーっ!」
石と石が擦れ合い、重い音が石室に響く。
「フレイ、見てみろよ」
「いやーっ! 怖いもん怖いもん嫌よイヤよ許してぇっ!」
「いいから、見ろっ!」
騒ぐフレイの頭を鷲掴みにし、強引に棺に首を向けさせる。じたばたと騒いでいたフレイも、
拍子に中身を見てしまい、ぴたりと大人しくなった。
棺の中は、空だった。
「そ……それじゃ、やっぱりあのミイラは……」
フレイの顔から僅かに残っていた血の気が失せていく。
直後、小型ライトの光が消えた。石室が完全に闇に閉ざされる。フレイがびくりとしがみついてくる。
シンもまた、さすがに体を強張らせた。急いでライトのスイッチをいじるが、カチカチと言うだけで、
光は一向に生まれてこない。だがバッテリーにはまだ余裕があったはずだ。
石室が揺れた。最初は小さく、しかし段々大きく。それと共にどこからともなく重低音が響いてくる。
固い瓦礫を砕くような音。ぐらぐらと揺れる石室の中で、シンは深呼吸した。湧き出してくる恐怖を鎮め、
意識を切り替える。徐々に闇に目が慣れてくる。
規制解除
支援
「フレイ、放してくれ」
「で、でもぉ……」
「引っ付かれてたら動きにくいんだよ!」
声を荒げる。フレイは小さく悲鳴を上げ、怯えたようにシンから離れてへたりこんだ。
油断なくシンは身構え、周囲に目を走らせる。だが音が反響して、どこから来るのか正確に
読み取ることが出来ない。怯えているフレイはそもそも当てにならない。
揺れと重低音はどんどん近付いてくる。がおん、がおん、と不吉な音は断続的に響き、やがてピークに達する。
シン達の背後で、肖像画のジョージの青い双眸が赤く光った。と、そのとき!
ドゴォォォォォォォォン!!
「きゃああああああっ!!」
「でぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
フレイは元より、シンまでもが思わず悲鳴を上げていた。
あろうことかミイラ男は、ジョージ=グレンの肖像画をぶち抜いて出てきたのだ!
「いやーっ! ごめんなさいごめんなさいもうしませんだから許して!」
「謝って聞く相手かよっ! 君は早く逃げ」
「もうイヤ私おうち帰るーっ!!」
シンの言葉を皆まで聞かず、フレイは脱兎の如く逃げ出した。一瞬ぽかんとするシン、しかし
その隙にミイラ男から二本の包帯が伸びる。矢の如く迫り来る包帯はフレイの背後から首に絡みつき、
締め付け宙に持ち上げる!
「フレイ!?」
「ん……ぅ……!!」
首吊りにされたフレイの形相を見て、シンは顔色を変えた。とっさに包帯に飛びついて引きちぎろうと
するが、固くて全く歯が立たない。質感は紙のそれなのに、この強度は何なのか。
「この……!」
包帯を諦め、シンはミイラ男に突進した。ミイラ男は迫り来る少年など眼中にないようで、
ひたすらフレイを締め付ける。少女のか細い悲鳴が消えていく。
それが、シンの心にスイッチを入れた。
「フレイを放せっ!!」
ミイラ男に到達する直前、軽く右腕を引く。親指、人差し指、中指。闇の中でシンの右手の三本指が、
確かに黄金の光を放つ。
己が気を神気にまで練り上げ三本指に込める、これぞ流派東方不敗が奥義の一つ!
「超級ッ!! 神・威・掌ォォォォッ!!!」
裂帛の気合と共に跳躍、シンは輝く三本指をミイラ男の額に突き立てた!
耐え切れなかったか、額の包帯が溶けるように蒸発する。下から出てきたのは人の肌ではなかった。
黄金の輝きに照らし出されたのは銀の鱗の鈍い光沢。それもすぐに、飴細工のように溶けていく。
とうとう露出したのは、鋼の配線に歯車、紛れもなく機械の組織!
はっとシンは息を呑む。
同時にミイラ男が絶叫を上げた。両手で額を押さえ、たたらを踏み、包帯を引っ込める。
着地したシンの背後で、どさりと音がした。
「フレイっ!」
振り返り駆け寄る。フレイは酷く咳き込んでいたが、生きている。
素早くシンは彼女を背負い、石室から逃げ出した。後ろから不気味な唸り声と、石材の破砕音が追ってくる。
ピラミッド全体の揺れは、二人を捜すルナマリア達のところにも届いていた。埃や砂が天井から
ぱらぱらと落ちてくる。
何事かと身構えている三人に、轟音と悲鳴が近付いてくる。目をこらせば、闇の奥からこちらに
向かってくるのは先程消えた二人だ。
「もう帰るっ! 絶対帰るーっ!」
「うるさい、耳元で叫ぶな!」
とは言いつつも、フレイを背負うシンの形相も尋常ではない。驚くルナマリア達を見止めるや否や、
シンは腹の底から叫ぶ。
「ルナァァッ!! 『あれ』を使えぇぇぇっ!!」
その日、ネオエジプトはサハラ砂漠の一角で、巨大な爆発が確認された。
数時間後、ネオジャパンコロニーでその記録影像を見たヴィーノとヨウランは、揃ってぽかんと
口を開けることになる。
「マジで使ったんだ……冗談のつもりだったのに」
「備えありゃあ憂いなし、とは言うけどねぇ……」
ジョージ=グレンのピラミッドが崩れていく。内部で起きた爆発に耐え切れず、轟音を立てて。
煙を上げ、石材は雪崩の如く崩れ、美しい四角錐は陥没していく。爆風のとばっちりでガンダム顔の
スフィンクスまでも吹き飛ばされ、威厳ある彫刻など無関係に瓦礫の山と化していく。
その崩壊の様を、脱出に成功した五人は、遠く離れた砂丘の上で眺めていた。
ネオジャパン整備士コンビ謹製、試作型地球破壊爆弾。威力は完成型には遠く及ばないものの、
特撮に出てくるような悪の秘密基地くらいなら余裕で潰せる、とはヴィーノの談。
説明と共に渡されたときは、どこから突っ込んでいいものか分からず軽く頭痛がしたものだが――
「世の中、どこで何が役に立つか分からないわね……」
ルナマリアの呆けた呟きに応えるかのように、ピラミッド跡地に上がるはドクロ雲。
彼女の隣りでは、シンが腕を組み、鉢巻の尾とマントを風になびかせていた。真剣な目をして
ドクロ雲を眺めている。しかし極度の乾燥にも関わらず、頬に流れるは一筋の汗。
そして、彼の更に隣りでは。
「うふ……うふふふ……」
『フレイ殿?』
「やった! やったわ!! あは、あはは、あははははははっ!!」
長い緊張と恐怖から解放され、フレイが狂ったように笑っていた。先ほどまでのしおらしい少女は
どこへやら、顔に片手を当ててはいるものの、喜色満面の笑顔は隠しきれていない。
「この私を散々脅かしてくれた報いよ! ミイラならミイラらしく地の底で眠ってればいいのよっ!!」
「いや! 奴はまだ生きてる!」
「え?」
シンの緊迫した声に我に返る。ほぼ同時に、再度ピラミッドの瓦礫の下から爆発が起きた。まるで生物の
ように粉塵は膨れ上がる。中から包帯に包まれた巨大な腕が突き出され、雲を掴もうとするかのように
ゆっくりと宙を掻いた。
ルナマリアが目を丸くする。
「嘘でしょ!? あの二人の趣味人度合いを上回るガンダムなんて!」
徐々に徐々にミイラのようなガンダムが粉塵を抜けてくる。包帯は未だ巻かれていたが、爆発と瓦礫を
抜けたせいか大分ほどけ焼け落ち、中の正体が見えていた。頭部には古代エジプトの面を模した意匠。
間違いなくジョージ=グレンのかつての愛機、ファラオガンダム四世であった。
ゆらりとファラオの視線が流れ、五人を――いや、フレイを見定める。
静かに足を動かし、自らを封印していたピラミッドの瓦礫を踏み潰す。石畳を砕き、流れる熱砂も
ものともせず、ファラオは進む。フレイ目掛けて、一歩一歩、ぐらりぐらりと近付いてくる。
フレイはただ真っ青になって凍りつく。悲鳴すら上げられない。
風の唸りか、怨嗟の声か、背筋を凍らせるほど不気味な呻きが聞こえる。
命をよこせ。そう叫んでいるように、フレイには思えた。
「何でか知らないけど、奴は君を諦めないらしいな。君の手でケリをつけるしかないみたいだ」
「い、い、い、イヤよそんなのぉぉぉぉ!!」
がちがちと震えシンにしがみつこうとするが、今度は取り付く島もない。ひょいと腕を掴まれ外される。
ミイラと違って澄んでいるシンの赤の瞳は、呆れていた。
「それでも地上人ファイターかよ!? 少林寺の跡取りはどうした!」
「そうよ。仏教の流れがあるなら悪霊退散だって出来るでしょ」
『ルナマリア殿、それは余りに暴論というもの』
「え、そうなの?」
暢気なクルー達を尻目に、フレイは子犬のように上目遣いでシンを見た。だがシンにはもう容赦する気は
全くないらしい。少しずつ苛立ちを増していく。
その間にも地響きは大きくなってくる。ちらりと音の方向を見れば、ファラオガンダムはゆっくりと、
だが真っ直ぐに近付いてくる。フレイは中にいるであろうジョージ=グレンの、濁った血の瞳を見た気がした。
正面に目を戻せば、あるのはシンの苛立った赤い瞳。
フレイは観念したように、かくりと首を落とした。と思えば顔を上げ、近付いてくるファラオに向き直ると、
強く目を閉じる。そして勢いよく右の掌と左の拳を合わせ、やけっぱちのように叫んだ。
「来来ッ! ドラゴンガンダァァァムッ!!」
主の声に従い、遥か彼方より巨大な影が飛来! 轟音と爆風を伴い、黄と緑で彩られた竜の巨人はフレイを
守るように地に降り立つ。両腕の竜の飾りは昨日の非公式ファイトで溶けたままだが、機体の持つ力強さは
変わらない。迫り来るファラオを吃と見据える。
ネオチャイナ代表、ドラゴンガンダム!
「最初からそうすりゃいいんだよ」
風にマントをはためかせ、シンは満足げに腕組みをする。半泣きのフレイは彼を横目で睨み上げ、
小声で呟いた。
「……お兄さんのバカ」
「なんでこうなるのよぉ……こんなの正規のファイトじゃないのに……」
システムを起動させファイティングスーツに締められながらも、フレイの涙交じりのぼやきは続く。
だがシンの声には容赦がない。
『こんなことで怖気づいてたら、ネオチャイナだけじゃない、地上人やナチュラルの恥ってもんだろ!』
「だからってぇ……」
『それにほっといたらアイツ、どこまで追いかけてくるか分からないぞ!』
「うう……」
そう言われてしまえば、フレイも観念するしかない。
セットアップが完了する。ドラゴンガンダムとフレイが一体となる。だが、途端に先程までの力強さは
消えてしまった。普段なら重厚な鉄の巨人が躍動感を手に入れるはずなのに、完全に腰が引けている。
『フレイ殿! いかがなされた!』
『それではファイトになりませぬぞ!』
「だ、だって怖いんだもん!」
と御付きに返す間に、ファラオの双眸が赤く光った。風が渦を巻き、小規模な砂竜巻を形成、
ファラオの姿を隠していく。
『なるほどな、砂漠を荒らしてたのは人の作った竜巻ってわけか!』
「人じゃなくて幽霊よぉぉぉぉ!!」
フレイが絶叫する。その隙を見逃さず、ファラオは竜巻の中から十数本の包帯を繰り出した。
ドラゴンの全身は包帯に巻きつかれてしまう。フレイは身をよじるが、一向にほどける様子はない。
逆にますます締め付けは強くなる。
『フレイ殿、何をなさっているのです!』
『そのような攻撃に屈するなど!』
『『気合です! 気合を入れなされ!!』』
「そ、そんなこと言われたって! 体が動かな……ああああああっ!?」
フレイのぼやきは悲鳴に変わる。ファラオが包帯を通して電撃を放ってきたのだ。
トレースシステムどころの話ではなく、電撃は直接フレイの身を苛む。
『『フレイ殿ーっ!』』
サイとカズィの声が遠い。フレイは仰け反り、体を焼き焦がさんとする熱と激痛に喘ぐ。
だがファラオの攻撃は止まず、むしろ一層出力を強めていく。
傍から見ても、ドラゴンに流されている電撃の出力は尋常ではないと知れた。
サイとカズィは血相を変え、腕組みしているシンを振り向く。
「シン殿、これは正規のファイトではござらぬ!」
「何とぞお助けを!」
だがシンは繰り広げられる闘いを見据えたまま、二人を振り返ろうともしない。
「いいや、まだだ!」
『そんな!』
「待って、二人とも!」
ルナマリアが声を上げた。彼女は先程から携帯端末を操作していたのだ。キーを叩く指は止まらず、
目もモニターに向けられたままで更に叫ぶ。
「ジョージ=グレンがどうしてこんなにフレイを狙うのか、分かりかけてきたわ!」
『何ですと!?』
二人はおっとり刀でルナマリアの背後に回る。少女の陰から両隣に顔をひょこんと出して、
モニターを覗き込んだのはほぼ同時だった。そして同時に目を見開く。
『こ……これは!』
『フレイ! 聞いてくれ!』
激しい電撃をぬって、サイの声が聞こえてくる。喘ぎながらもフレイはかすかに目を開けて、
地上の御付き達を見やった。
「さ、サイ……何よ……」
『ジョージ=グレンが君を狙う理由が分かったんだ!』
今度はカズィの声がする。元のようにフレイは目を強く閉じ、悲鳴の代わりに叫ぶ。
「言われなくたって分かってるわよ! 私がナチュラルだからでしょ……私にまた殺されたからぁっ!」
『誤解だよ!』
『ジョージは多分、君を恨んでるわけじゃない!!』
フレイは目を見開いた。体を苛む痛みが一瞬消えた心地がした。
『四十年前のことだ。確かにジョージ=グレンは第四回ガンダムファイトで暗殺された』
『でも、そのとき彼が目前にしていた決勝戦、相手が誰だったと思う!?』
『『我等が少林寺、先々代の大僧正なんだ!』』
二人の少年僧は渾身のユニゾンを上げる。かすかに少女の息遣いを聞いた。ドラゴンガンダムは変わらず
包帯の電撃に苦しめられているが、サイとカズィにはフレイの顔つきが変わったのが見えた気がした。
「確かに、今まではナチュラルを目の仇にしていたのかもしれないわ。だけど!」
目まぐるしく変わるモニターの表示を紫の瞳に映しながら、ルナマリアは声を上げた。胸の内には、
昨晩のミイラの言葉が蘇っていた。
チガウ、と。確かにそう聞いた。あれは『この少女はナチュラルではない』という意味だと思っていた。
だがもっと別の意味があったのではないか。
彼はフレイの中に、かつての好敵手を見出していたのではないか。
「きっとあなたに会って、ジョージのファイターとしての意識が目覚めたのよ! 彼はファイターの
プライドにかけて、生前に出来なかった決勝戦を望んでいるんだわ!」
フレイは呆然と、ルナマリア達の言葉を聞いていた。体を走る電撃の痛みなど遠い世界のことに思えた。
「決勝戦、ですって……」
拳を握り締める。朦朧としていた意識が目覚めるのを感じた。沸々と体の内から何かが湧き起こってくる。
ジョージ=グレンのファイター魂に感銘を受けた、怨嗟を超える闘志に感動した。そんな熱い感情ではない。
むしろ逆だった。
本当に少林寺の戦士と闘いたいだけなら、何故ピラミッド内においてあんな方法で襲ってきたのか。そもそも
ファイトをしたいと言っても、昨日既にそれは果たされ、勝負もついたではないか。
フレイは思う。ジョージは、ナチュラルへの恨みを忘れているわけではない。
ナチュラルで、その上ネオチャイナ少林寺の戦士である自分に、現世への執念の全てを向けているだけだ!
『フレイ、きっと彼は君と闘いたがってるんだ!』
『未練を果たさせてあげればきっと……』
「うるさいわよ外野ッ!!」
尚も言い募る二人に叫んで、フレイは渾身の力を込めて両腕を思い切り開いた。包帯はそれでも
フレイを締め付けようとするが、フレイの方が強い。耐え切れずに包帯が破れ散る。
ファラオは一瞬たじろいだようだった。ちぎれた包帯が思い出したように竜巻内部へ戻っていく。
自由を取り戻したフレイは、背のフラッグを一本引き抜き、慣らしを兼ねて振り回した。
まだ腕にまとわりついていた包帯の残骸が振り解かれ、砂地に舞い落ちる。
「サイ、カズィ、それにお姉さん! もうたくさんよ! それ以上余計な口出ししてみなさい、ビームフラッグで
黒焦げにしてやるんだから!」
フレイは吐き捨てる。感じていたはずの恐怖は、胸の内に湧き起こる何かに押し潰されていた。美談に仕立て
上げようというクルー達の魂胆が気に食わなかった。反吐が出そうになる。
プラスの感情はマイナスの感情に勝る? そんなもの、ただの戯言だ!
ざん、と砂地にフラッグを立て、フレイは仁王立ちになった。竜巻の中のファラオを見据える。その様、
先程までとはまるで違う、竜の化身の名に恥じぬ堂々たるもの。
「ジョージ=グレン! 来なさい! あなたの未練、私が断ち切ってあげるわ!!」
鋭い双眸は、もはや怯える少女のものではない。凛とした声は乾燥した砂漠を駆け抜け、大気を震わせる。
ファラオは咆哮を上げた。怖気の走る低い呻き、しかし中には歓喜の色がある。
フレイはフラッグを砂地から引き抜き、ひゅっと風を切って横に構えた。真っ向からファラオを見据え、
低く体勢を取る。
腕組みをしたまま、シンは満足げに一つ頷いた。ジョージのファイターとしての闘志にフレイが応えたのだ、
と思った。隣りではサイとカズィがそろって口に両手を当てて、必死に声を出さないようにこらえている。
携帯端末を片付けて、ルナマリアが近付いてきた。シンはファラオを見据えたままに口を開く。
「ルナ、セッティングは」
「万全よ。いつでも出せるわ」
「そうか」
「ひょっとしてアンタ、ジョージ=グレンの事情知ってたの?」
「そんなわけあるかよ」
「でも、やけにフレイを……」
「ファイターの亡霊なら、一回ファイトで終わらせなけりゃ浮かばれないだろうなって思ってただけだ」
彼の赤い瞳は、ファラオの奥に何かの影を見ていた。
ルナマリアは少しだけ驚いた。だがすぐに納得した。ああ、と思い至った。それ以上何も言わず、彼女も
二機のガンダムを見やる。
「ガンダムファイトォォ!!」
「レでィぃィ!」
『ゴォォォ――――ッ!!』
開始と同時にドラゴンは地を蹴った。
砂煙がドラゴンの軌跡に舞い上がる。フレイはフラッグを下段に構え突進する。
竜巻の中のファラオからレーザーが発射される。ドラゴンは瞬時にビームフラッグを展開、弾き飛ばす。
衝突で光の粒子が散り、中のフレイの顔を束の間照らす。だがドラゴンは止まらない。突進し跳躍、燦と輝く
太陽を背に、全身のばねを使い袈裟懸けに振り下ろした。風の壁を突き破り、伝わってくるのは破砕の感触。
反作用を利用し、後ろへ跳ね飛ぶ。ファラオのレーザーがドラゴンの残像を貫く。
着地したフレイはフラッグを構えたままファラオの破損部を見た。やはり今の僅かな間で修復され、
元通りになってしまっていた。
執念のなせる業か。だが。
「傷つけても再生するなら、全部消し去ってやるまでよ!」
フレイはいつになく本気だった。敵国のファイターであるシン=アスカに見られていようと、
奥の手を隠すつもりはなかった。
背のフラッグの束を両の手に引き抜き、眼前に交差させる。
「宝華経典・十絶陣!」
ざん、と両のフラッグを地に立てる。フラッグが地を走り、砂地を削り、煙を立てて竜巻を取り囲む。
ビームフラッグを展開しても止まらない。二重三重にフラッグは不規則な軌道を描きファラオを翻弄する。
フレイは後ろへ宙返り、竜は陽光の中を跳ぶ。着地と同時に右腕を突き出した。拳が引っ込み、溶けかけた
竜の飾りの中に砲口が出現する。
「走れ! 宝貝ッ!!」
竜が火炎を吐き出した。燃え盛る炎は猛烈な勢いで砂竜巻へ走り、回るビームフラッグに引火、
更に勢いを増して襲いかかる。砂竜巻は一瞬にして紅蓮の柱と化し、中のファラオを焼き尽くさんとする。
胡乱な洞で咆哮したように、死者の呻きが風を震わせる。
数瞬の後、炎の渦が爆発。ジョージ=グレンの最期の声を消し去った。
『おお! フレイ殿、よくぞ!』
サイとカズィは戒めを忘れ、歓喜の声を上げた。が、はっとして再び口を手で塞ぎ、互いを横目で見る。
それでサイは気付いた。シンがいない。カズィの向こうにいたはずなのだが。
「やや、シン殿はいずこに?」
「何と?」
カズィも振り向くが、やはり黒髪の少年の姿は見つけられない。ルナマリアの姿まで消えている。
風に火の粉が散る。炎の渦は徐々に勢いを弱めている。赤い炎は風に煽られ、離れたドラゴンの巨躯を
朱に照らし揺らめいている。
コクピットの中で、フレイ自身も照らされる。呼吸が荒い。白いはずの頬は上気し、更に風に舞う炎を受けて
うっすらと赤く染まっている。表情は徐々に険しさを失っていき、やるせなさを露わにする。
――所詮、私達は恨みを乗り越えることなんか出来ないのよ。
息遣いが収まっていく。構えを解き、フレイは未だ燃え続ける炎を見つめた。揺れる炎に記憶の中の少年の
顔が重なる。少女の如き中性的な風貌、絶望に彩られた表情、心の亀裂を顕すように大きく見開かれた紫の瞳。
余りにも生々しい幻視だった。
フレイは逃げるように強く目を閉じた。
「今更よ。もう終わってしまったんだから……」
小さく自分に言い聞かせる。だが少年の幻影は残照のように瞼に焼けつき、消えてくれない。
『フレイ殿! まだ終わってはおりませぬ!』
空を裂く音がした。
はっと目を見開くフレイ。少年の幻影が今度こそ掻き消える。同時にドラゴンの右腕が何かに絡みつかれる。
反射的に右腕を上げれば、絡まってきたのは包帯――ではなかった。細い蛇、いや蛇を模した鞭だった。
もしやと思い、見てみれば、蛇は炎の中から伸びている。
揺れる炎の中に黒い影が盛り上がる。何度も聞いた、あの呻き声が風を震わせる。
「う、嘘でしょ……?」
戦慄が走る。確かに十絶陣はまともにファラオを捉えたはずだ。
炎が消え、中の影が露わになった。包帯は完全に焼け落ちていた。ファラオは体中を焼け焦がせ、全身から
しゅうしゅうと黒煙を上げていた。内部組織と配線は曝け出され、放電を繰り返している。頭部すら爆発を
もろに受け、アイカメラの奥、人で言う眼球に等しい部分が剥き出しになっている。光は灯っていない。なのに
機体表面に銀の鱗のようなものが浮き出たと思えば、見る間に増殖して盛り上がり、滑らかな装甲へと変わって
いく。欠損部からはまるで触手か何かのように緑色の配線が湧き出し、互いに絡み合って組織を復元していく。
断絶した通常の配線もまた、ずるりと音を立てて機体内から伸びる。無残に焦げた部分を自ら切り捨て、元の
ように、あるいは別の配線と繋がって新たな体を創り出していく。
全く沈黙していたはずのファラオの双眸が、再び妖しく光った。血のように赤く濁っていた。
ドラゴンに絡みついた蛇は、僅かに残った腕の装甲の隙間から伸びていた。それにすら緑色の触手が次々に
絡みつき、また突き刺さり潜り込んでいく。鞭は軋んだ音を立てて内部から泡立つように膨れ上がり、いびつに
変形しながら一層ドラゴンの腕を締め付けてくる。飾りのはずの蛇がまるで生きているように鎌首をもたげ、
ぬらりと血の眼を開いた。嘲笑うかのように牙を剥き出し、威嚇音を発する。
フレイは悲鳴を上げた。掛け値のない怖気と恐怖が少女を捕らえていた。
ファラオは銀の鱗に覆われた足を動かす。立ち尽くすドラゴン目掛けて砂地を踏む。蛇はその身を大きく
うねらせ、ドラゴンの胸部、即ちコクピットのフレイ目掛けて突撃する。
――しかし!
『パルマッ! フィオッ!! キィィィナァァァァァッ!!!』
天から降ってきた光の掌がファラオの頭部を捉え、粉砕した!
光を受けたファラオの体は連鎖的に爆発! 蛇もまたコクピットを突き破る寸前で身を仰け反らせ、
断末魔と共に砕け散る!
一瞬混乱したフレイだが、インパルスの背中が自分の前に着地するに至って、状況を理解した。
「お兄さん!?」
『どいていろ、フレイ!!』
有無を言わさぬ怒号。通信もなく、インパルスも振り返りもしない。
「だ、だけどジョージ=グレンは……」
『あれはもうジョージじゃない。君の役目は終わったんだ!』
直後、またもあの呻き声が上がる。インパルスの背中に遮られて見えないが、ファラオに何が
起こっているかは想像がつく。
「どういうことよ!?」
『君は知らなくていい。知らない方がいい! ここから先はっ!』
インパルスが太陽の如く黄金に光り輝いた。フレイは目を焼くような眩しさに思わず顔を背け、手を翳した。
『俺の、仕事だぁぁぁぁぁぁッ!!』
一人の少年の咆哮が、輝きと共にインパルスの姿を変えていく。
ずっとこれを待っていた。捜し求めてきた。
死んだはずのジョージ=グレンと共にガンダムを何度も蘇らせる自己再生機能。
――間違いなく、デビルフリーダムの能力を受け継いだ奴だ!
シンは目を瞑り、天へと咆哮した。自分の中で何かが軋み、爆ぜたのを感じた。インパルスの色彩は
深い青から鮮烈な赤へ。コクピット内には真紅の稲妻がほどばしる。再び目を見開いたとき、世界の全てが
変わってしまっているのをシンは知る。精彩を失った世界の中で、そいつの動きだけが鮮やかに感じ取れた。
目の前で蠢く機械の塊。醜悪な化け物とも呼べるそれを、シンは怒りに満ちた鬼の如き形相で睨みつけた。
憐憫はない。嫌悪もない。ただ許せざる敵であることだけが分かっていた。
それで十分だった。
「俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶぅ!!」
両の手から自分の感情が溢れ出すのが分かる。実体となったそれを合わせ、シンはさらに吼える。
怒りの具現である膨大なエネルギーは光の奔流となり、インパルスの全長を遥かに越える大剣となる!
これぞインパルスガンダム・スーパーモード、最強にして最後の武器!
「喰らえ! 愛と、怒りと、悲しみのォ!!
エ・ク・ス・カリバァァァァ!! ソォォォォォドッ!!!
突き! 突き!! ツキィィィィィッ!!!」
インパルスの光の剣は、またも再生しようとしていたファラオガンダムの頭部を貫いた。
ほどばしるエネルギーがファラオの全身を駆け巡る。一瞬の後、蠢く機械の塊は内部から爆発、四散した。
もうあの呻き声は上がらない。
「お、お兄さん……?」
恐る恐るフレイは声をかけた。過去の亡霊よりも、今のシンの方が恐ろしく思えた。
インパルスは振り向いてすらくれなかった。荒い息遣いが対外スピーカーから洩れていた。ファラオガンダム
の残骸は過剰なエネルギーを受けてか、沈黙している。しかし、それにすらシンは容赦なく剣を振るった。
剣は残骸に突き刺さる。骸は眩い光に呑み込まれ、空を舞う金色の雪へと姿を変えていく。
シンの息遣いは徐々に鋭さを潜めていった。纏っていた怒気が鎮まっていく。機体色は赤から青へ。
巨大な光の剣は消え、震えていた大気が穏やかさを取り戻す。
ふと、インパルスがしゃがみこんだ。両手を砂に潜らせ、そっと何かを掬い上げる。
それはジョージ=グレンのミイラの上半身だった。あの赤く濁った瞳は閉じられていた。胴体から下はなく、
断面からは鋼の配線がだらしなく伸びていた。
――純粋な戦士の魂すら悪に変えてしまう。デビルフリーダムと接触すれば、死人ですらこうなる。
シンは内心で呟くと、そっと光り輝く両手でミイラを握り締めた。ミイラは音もなく光の粒へと分解され、
手を開けば静かに風に散っていった。
砂漠に舞う黄金の雪は、傾きつつある陽光を浴びて柔らかに煌き、空に溶けていった。
ルナマリアは少し離れた砂丘で、一部始終を見ていた。光の粒が自分を撫ぜていくのにも構わず、何を言う
こともなく、シンの行動を見ていた。
『……あれもまた、キング・オブ・ハートか』
サイとカズィは、感慨を込めて嘆息する。ふとドラゴンガンダムを見やれば、竜の機体は全く動かない。
インパルスに顔を向けたまま、その場に立ち尽くしている。
フレイはただ呆然とするしかなかったのだ。自分の思考回路の限界を超えていたし、何より、シン=アスカと
いう少年が恐ろしくてたまらなかったから。
だから、とうとう訊くことが出来なかったのだ。
これはキラを捜していたことと何か関係があるのか、と。
次回予告!
「みんな、待たせたなっ!
雨に煙るネオトルコの町で、ルナマリアはかつての師匠と再会する。
だが恐ろしい事に、彼はデビルフリーダムの手先となっていた!
果たしてルナマリアは、彼を悪魔の手から救い出す事が出来るのか!
次回! 機動武闘伝ガンダムSEED DESTINY!
『雨の再会… フォーリング・レイン』にぃ!
レディィ…… ゴォォォ――――ッ!」
撮影後
アビー「はいカット! OKでーす!」
タリア「なんとかなったわね…。それでは三人とも、以後よろしく」
バート「艦長、まさかとは思いますが、代役以外の自分たちの出番は…」
タリア「あるわけないでしょ」
三羽烏「orz」
シン「ヨウラン、み、水をくれ…」
ヨウラン「ミミズをくれ? 何言ってんだ」
シン「ベタなボケかましてんじゃねぇよっ!! お前らばっかり涼しいところで撮りやがってぇ!」
レイ「甘えるなシン! この程度で音を上げるとは何事か!」
シン「っ!?」
レイ「……と、師父がこの場にいたら言うだろうな」
シン「く…すみません遠い空の師匠…俺は…」
ハイネ「まーまー、とりあえず入れよ。クーラーのありがたみが身に染みるぜ」
フレイ「そういやドモンいないわね。どうしたの?」
ルナ「ヘタレにハッパかけに出張中よ」
フレイ「何それ」
ルナ「それより日焼け止め効いた? コーディ用だからナチュラルにどれだけ効果あるか自信ないんだけど」
フレイ「先に言ってよ! シミとか出来ちゃったら最悪じゃない!」
シュバルツ「心配はいらん。DG細胞が紫外線を吸収し、地肌を守るはずだ」
フレイ「そうなの?」
シュバルツ「うむ。でなければ私もマスク焼けを気にせねばならんからな」
フレイ「へえ…知らなかった。結構メリットあるのね、この体」
ルナ「……いいなぁDG細胞」
シュバルツ「使ってみるか、ルナマリア?」
その頃の東方不敗一行
メイリン「なんちゅうモン勧めてんだ覆面野郎ぉぉ――――っ!!
ああぁぁぁお姉ちゃんお願い正気に戻って、それは悪魔の誘いよぉっ!!」
ドモン「ふ、さすがはメイリン、ヒマラヤのアイアンギアからエジプトのミネルバを察知するとは」
メイリン「こらアビー! アンタまで寄るな! 大体アンタ元から美白…って艦長まで喜んでないでぇぇ!!」
スティング「周りの俺らには何が起こってるかさっぱりなんだけどなー」
アウル「いつもいつも大変だよな…時間関係なくどこかに突っ込んで…それに加えて奴の世話までっ…!」
ドモン「(ポン)そうだった。アスランはどこにいる?」
スティング「あっちでまだ爺さんとやりあってるぜ。ほら」
ドカーン… パラパラパラ… ズーン…
ドモン「あの音は! 超級覇王電影弾!? アスランめ、ヘタレていると聞いたが、ここまで習得したか!」
スティング「あいつがそうそう成長するタマかよ。大方また爺さんに殴られて…」
東方不敗「この馬鹿弟子がぁぁぁ!!」
アスラン「ぶわあおぉぉぉぉ〜っ!? な、何故だ、やっと俺は電影弾を習得したんじゃなかったのか!?」
東方不敗「だぁからお前はアホなのだっ! 貴様の電影弾は見た目を似せただけの紛い物!
見よ、貴様が破壊せんとした岩を!」
アスラン「はっ!? こ、これは…抉れていない! ちょっとヒビが入っているだけだ」
東方不敗「貴様はここに来た当初と何も変わっておらん。目先の悩みに囚われ、本来の目的を見失う…」
アスラン「目先の悩み…本来の目的…」
東方不敗「明日もう一度、わしの前で電影弾を撃ってみせい!
そのときまたこのような電影弾もどきを撃ったならば、貴様は破門だ!」
アスラン「!!!」
東方不敗「今日はここまでだ。一晩よぉく考えることだな!」
夕食時
アスラン「…………」
メイリン「アスランさん、どうしたんですか? ゴハン冷めちゃいますよ」
アスラン「メイリン…俺には何が足りないんだ…」
メイリン「えっ」
アウル「そりゃあれだ。人望とか主体性とか責任感とか実力とか」
アスラン「…………」
アウル「少なくともさぁ、メイリンに甘えてる時点でダメだろ」
アスラン「…………orz」
アウル「アンタのせいでメイリンがどれだけ苦労してるか、考えたことあるのかよ?」
メイリン「そ、そんなことないですよ! アスランさん凄く強くなってますし、私は苦労なんて…! 」
アスラン「いや、いいんだメイリン。ごちそうさま…」
メイリン「アスランさん…」
アウル「なんだよ、アイツ」
スティング「おいアウル、嫉妬はみっともないぜ」
アウル「な! だ、だってホントのことだろ!」
アスラン「確かにここに来てから、俺は強くなった…。修行も最初はジェネシスで焼かれた方が何千倍も
マシだろうって思ってたが、慣れてくればジャスティスの自爆くらいのレベルだと思えるように
なってきた。ラクスやキラのお願いを叶えているときの方がキツいんじゃないかってほどに…。
思えばゴハンも三食ちゃんと食べられて、睡眠時間も取れて、申し訳ないくらい規則正しい
生活してるんだ、体がしっかりしてきたのも自分で分かる。
そうだ、鍛えられてるはずなんだ…第十二話の最低条件である電影弾も、撃てるようになった…
そのはずなのに! 充分に気合は込めているはずなのに…何故…!」
ドモン「悩んでいるようだな、アスラン」
アスラン「! ドモンさん…監督から俺を審査するよう言われてきたんですか」
ドモン「うむ。だが無用な心配だったようだ」
アスラン「やめてください。俺は…明日で破門になってしまうんです」
ドモン「ほう?」
アスラン「俺の電影弾は紛い物なんです。岩一つ粉砕することが出来ない…
俺が目先の悩みに囚われ、本来の目的を見失っているかららしいんですが、
まだそれが何なのか分からないんです。明日までに掴むことが出来なければ、俺は…!」
ドモン「ふむ。アスラン、今ここで撃ってみせろ。実物を見ないことには何とも言えん」
アスラン「はい! 超級! 覇王! 電影弾ーっ!!」
ドカーン… パラパラパラ…
アスラン「やはり、ヒビが入るだけか…」
ドモン「……なるほどな」
アスラン「分かったんですか!? 俺の何がいけないのか!」
ドモン「ああ。お前は確かに悩みに囚われている」
アスラン「それは一体!?」
ドモン「超級覇王電影弾という技の特性を考えてみろ。俺が言えるのはそれだけだ。これ以上は
お前自身で見つけなければならん」
アスラン「そんな…」
ドモン「俺はそろそろ帰らせてもらう。と、その前にこれを渡しておこう」
アスラン「……ビデオレター?」
ドモン「アイアンギアーの設備ならば見れるだろう。ではさらばだ。新宿で待っているぞ」
アスラン「…………」
アイアンギアー・一室
アスラン「励ましの言葉とかかな…。はは、それじゃ小学校の寄せ書きみたいじゃないか。
応援されてるならやるしかない…やるしかないけど、俺は明日には…」
【再生】
ドモン『そらそらそらそらぁ! どうしたどうしたぁぁ!!』
シン『ぐっはぁぁぁぁ!?』
アスラン「シン!? ということは、これはまさかあいつの修行風景!?」
ドモン『どうした! もう終わりか! お前の根性など所詮こんなものか!』
シン『ま…まだ、まだだぁっ! 行くぞ師匠…いや、ドモン=カッシュ!!』
ドモン『来い、シン!!』
シン『俺のこの手が真っ赤に燃える!』
ドモン『勝利を掴めと轟き叫ぶぅ!!』
シン『ばぁくねつ!』
ドモン『ゴッド!』
シン『パルマ! フィオ!!』
ドモン『フィンガァァァァァァ――――ッ!!』
シン『キィィィナァァァァァァッ!!』
アスラン「超級神威掌同士が激突した! こ、これはまるで第二十一話の…!」
ドモン『どうしたシン! お前の力はそこまでか! 大口を叩いた割にこの程度で終わるのか!』
シン『ぐっ…くうぅ…!』
ドモン『お前は主人公になるのではなかったのか! 役柄だけの主人公ではない、真の主人公に!!
この程度で膝をつくようでは、主人公はおろか端役にもなれんぞこの馬鹿弟子がぁッ!!』
シン『う…うるさいっ! 今日こそ俺は、アンタを越えてみせるぅ…っ!!
そして名実共に主人公の座を手にしてやるんだぁぁぁ!!』
ドモン『その気迫や良し! ならば行くぞっ!』
シン『応っ!!』
両者『ヒィィィィィト! エンドォッ!!』
ドオォォォォン…… ドサッ
ドモン『よくやった…と言いたいところだが、まだまだだな、シン』
シン『くっ…さすがはキング・オブ・ハート…! だがぁっ!!』
ドモン『む!?』
シン『この程度でくたばっててたまるか…
今頃は師匠の師匠役の馬鹿ピンクもシュバルツ役のカナードさんも相当しごかれてるはずなんだ…!
俺が休んでる分、あの二人はもっと先に行ってるんだ!!』
ドモン『馬鹿ピンクだと? そうか、まだお前は知らないんだな』
シン『え?』
ドモン『当初の役柄は大幅に変更されている。師匠を演じるのはラクス=クラインではない』
シン『な!? じ、じゃあ誰が…』
ドモン『アスランだ』
シン『!! あの凸が…東方不敗マスター・アジア…!?』
ドモン『どうしたシン、アスランが最大のライバルポジションと聞いて気が抜けたか?』
シン『……いえ。つまりそれは、少なくとも撮影中は覚醒アスランが出てくるということですよね』
ドモン『うむ』
シン『だったら尚更です! 俺はいつかヘタレてないアスランを倒してみせると胸に誓ったんです!
覚醒したあの人が来るなら、今回こそ勝ってみせる!』
ドモン『ふっ…ならば良し! もう一セット行くぞ!』
シン『はい、師匠!』
ドモン『超級ゥ!』
シン『覇王ォ!』
両者『電・影・だぁぁぁぁぁぁん!!!』
アスラン「…………」
メイリン「あ、こんなところにいた! アスランさん、そろそろリアップの時間ですよ」
アスラン「…………」
メイリン「アスランさん?」
アスラン「リアップ…俺の髪…」
メイリン「そうですよ。それじゃ頭失礼しますねー」
アスラン「メイリン、すまない。気遣いはありがたいが、そんなことしてる暇はないんだ」
メイリン「え!?」
メイリン「行っちゃった…アスランさんがリアップタイムを『そんなこと』呼ばわりするなんて…」
ドモン「メイリン、しばらく育毛剤は封印しておけ」
メイリン「ドモンさん!? もうミネルバに帰ったんじゃ」
ドモン「少々興味があってな。奴がどれほど化けるのか」
アスラン「自分の悩みに囚われて、目的を見失う…
だが、もうそんなこと言ってる場合じゃない!」
メイリン「あ、アスランさんが鶴みたいな構えを! あれはまさしく!」
ドモン「うむ、流派東方不敗が奥義の一つ!」
アスラン「超級! 覇王ッ! 電・影・だぁぁぁぁぁん!!」
ドカァァァァァン……
アウル「うおあっ!?」
スティング「なんだぁ!? 地震かよ!?」
東方不敗「ふ…あの馬鹿弟子め、掴んだな」
アスラン「はあ、はあ、……やはりそうだ!
超級覇王電影弾は気の弾丸であると同時に頭から突撃する技でもある…
なのに俺は髪を気にする余り、無意識に頭皮を庇ってしまっていた!
それじゃあ勢いは死ぬしエネルギーも集中させられるわけがない!
『悩みに囚われている』とは、このことだったんだ…! だが、そうと分かれば!」
ドカァァァァァン… ドォォォォン… ドゴォォォォォン…
メイリン「アスランさんが血涙流して電影弾を撃ってる…ってドモンさん、そのビデオカメラは一体」
ドモン「何、馬鹿弟子に土産をと思ってな」
アスラン「許せ…許せ俺の髪ッ!!
待ってろよ、シン! 俺は必ず新宿に行ってみせるからな!」
第十一話舞台裏につづく
190 :
189:2007/09/20(木) 20:41:28 ID:???
舞台裏なのにまともなアスランは書いていながら違和感を覚えます。
それはさておき、三ヶ月超の大苦戦でした…。予想はしていましたがここまで書きにくいとは。
一応改行に気をつけてみましが、どうでしょう。また何かありましたらご指摘いただければ幸いです。
そして支援してくださった方、ありがとうございます。
前回支援してくださった方もありがとうございました。三ヶ月以上前の話ですみませんが…。
今更ながら第八話に間違いがありました。インパルスのナイフはアーマーシュナイダーではなくフォールディングレイザーですね。
アーマー(ry はストライクのナイフです。すみません。
GJ
ともかく「SEED D」最初から読みたいんだが。
ま、待ってた甲斐があった……!!
グッジョブだ、グッジョブすぎるうううううううううう!!!!!
アスラン、髪の事なら全部そり落としちゃえば気にならないぞw
もう10月も近いってのに真夏並みに暑い、いや熱いぜ!
194 :
通常の名無しさんの3倍:2007/09/20(木) 22:46:38 ID:MUeTpTNU
あの…
G-SEEDさんってもうやめちゃったの?
そうか、電影弾の正体はきりもみ頭突きなのか。
お帰りなさいませGJ!!!
>>189 珍しく真面目に熱血かと思えば結局それかいwww>頭皮
それでこそアスラン!!
ルナの師匠が誰か本気でピンとこないまま続きを楽しみに待ちますw
>>189 いつも楽しみに読ませていただいております。
僭越ながら第十話までクロスオーバー倉庫の方にまとめさせていただきました。
字数制限がかかります関係で、前後編、あるいは前中後編に分割したり、
第二〜四話まではロングバージョンの方で掲載いたしましたので、
それぞれの舞台は第六話分に一括する等適宜微調整をさせていただきました。
事後の申告になって申し訳ございません。
もしも編集し直すべしという部分がございましたらお申し付け下さい。
198 :
197:2007/09/22(土) 19:00:48 ID:???
しまった…
×⇒それぞれの舞台は
○⇒それぞれの「舞台裏」は
でした…
>>200 なんだこの誇大広告はw 誰かー。誰かJAROに電話して〜
【訃報】Vガンダム、Gガンダム等のキャラデザを担当したアニメーターの逢坂浩司さんが癌でお亡くなりになりました【BONES】
アニメアール時代の毛利の後輩、逢坂浩司君が今朝亡くなられました。
逢坂君には「ドリームハンター麗夢」の作監を私の代わりに2本担当して頂いており、いつかお返ししなきゃと思いつつ、
6〜7年前に「機巧奇傳ヒヲウ戦記」の作監を一本のみ担当し、それっきりとなってしまいました。大変残念です。
去年の暮れに西武電車の駅で彼と偶然会って、20数年前初めて会った時と変わらない笑顔で
「お互い年を食ったね」と笑いあった時にはすこぶる元気そうだっただけに、未だ信じられない気分です。
この場を借りてご冥福をお祈りします。
逢坂さんのアール時代の先輩の毛利和昭さんのHPの日記より
http://www.bigcosmic.com/board/f/board.cgi?id=hayata
>>194 それは言うな(;;)
俺も僅かな望みに希望を託して待っているのだから…
運命を否定するレイ。それを友として真正面から受け止めるシン
くそう、見たいじゃないか
まとめ保管庫の三スレ目途中から更新されてない。
保守
通りすがりだが全部読んでしまったよw
これは職人さん期待待ちせざるおえない。保守!
ほしゅ
久々にこのスレに足を踏み入れた
俺もいずれ投下させてもらうんだぜ
保守
さて、ゆっくり気ままに投下させてもらいますか。
その奇妙な事件の始まりは、三日前の朝にまで遡る。
あの朝、喫茶店でリードから聞かされたヘンテコな幽霊話が全ての発端だった。
最近になって、地球連合・プラント・オーブの三勢力間である条約が締結された。
ガンダムファイト国際条約。
要するに、国家間の戦争行為をモビルスーツによる武闘大会で代用し、核兵器を撃ち合ったり毒ガス
をバラ撒いたりするような全面戦争を回避しようというヒューマニズムとスポーツマンシップ溢れる趣旨の
条約だ。
ガンダムファイトの提唱者であるプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルによれば、ガンダム
ファイトは戦争による世界の終末を回避する最後の手段である、とか何とか。
この条約が三勢力間で締結されたことによって、世界は大きくその在り様を変えていった。
ガンダムファイト国際条約締結に伴って半ば形骸化していたユニウス条約も見直され、各国は大幅な
軍縮を余儀なくされた。
ユニウス条約はあくまで停戦条約であって講和条約ではなかったのだが、このユニウス条約見直しに
際して全条文が整備し直され、各国は戦争行為の停止を認め、ようやく戦争は公式に終結した。
ザフトで開発されたデスティニーやレジェンドといった核動力を搭載したモビルスーツはその殆どが解体
処分となり、同様に禁止技術の一つであるミラージュコロイド・システムを搭載した兵器群も同じ運命を
辿った。
そんな大幅な軍備縮小と規制強化の中、各国のモビルスーツ開発は衰えるどころか更に活発化した。
既存のバッテリー動力システムで、いかに長い稼働時間を確保するか、いかにパワーを上げるか……。
核動力の再禁止化の中にあってなお、モビルスーツ開発が活性化したのは、2年後に迫った第一回
ガンダムファイト選手権大会の存在が大きい。ガンダムファイト国際条約には、ガンダムファイトの公式
レギュレーションも盛り込まれていた。その中にはユニウス条約の内容を踏まえたものも多い。
ガンダムファイト国際条約に記されている公式レギュレーションには7箇条からなる大会ルールに加え
各国代表のガンダムの構造に関する細かい条項も含まれている。
例えば、核動力及びニュートロンジャマーキャンセラー、ミラージュコロイドの全面禁止がある。これは
さっきも言ったように、ユニウス条約を踏まえたものだ。核エンジンが使えないためにエネルギーは全て
既存のバッテリーで賄う他なく、ミラージュコロイドが禁止されたためステルスや残像形成などの迷彩が
使えなくなった。
他には、コクピットの設置部位を胸部に限定する、というものがある。ガンダムファイト公式レギュレー
ションには『頭部を破壊された者は失格となる』という条項があるのだが、もしも頭部にコクピットがある
タイプのガンダムが存在した場合、『相手のコクピットを攻撃してはならない』という条項に抵触し、攻撃
したくてもできず、対戦相手は手も足も出せなくなるというジレンマに陥る危険性が指摘されたからだ。
まあ、頭にコクピットを置いているなんてヘンテコなモビルスーツも、そうそうないのだが……。
そんなわけで、各国の技術者連中は主にユニウス条約に関する条項に気を配っている。
終戦後の今これほどユニウス条約に関して敏感なのは、戦時中、連合もプラントもオーブも、ユニウス
条約を遵守する気がまるでなかったからだ。連合はミラージュコロイド搭載艦や核動力を搭載したモビル
スーツを開戦前から運用していたし、連合のプラントへの核攻撃に際して使われたニュートロンスタン
ピーダーはニュートロンジャマーキャンセラーを使っている。オーブは核動力搭載機のフリーダムを保有し
続けていて、こと軍事に関連する事項においてユニウス条約を遵守していない事例が多々ある。
閑話休題。
まあ要するに、連合もプラントもオーブも、今度こそユニウス条約に抵触しない範囲内でモビルスーツを
開発して、2年後のガンダムファイトに備えようとしていたのさ。
そんなモビルスーツ開発競争の最中、プラント最高評議会の要請で、ザフト軍がある一機のモビル
スーツを開発した。
型式番号やコードネームはわからないが、それはガンダム・タイプのモビルスーツだった。
2年後に迫った第一回ガンダムファイトを視野に入れて開発されていたそのモビルスーツは、ミネルバ
からもたらされた戦闘データが比較的多く残っていたインパルスをベースに造られたもので、生産性を
度外視したスペック検証用の実験機だ。
要するに、後の機体へ実験データを残すためだけに製造されたトライアル・モデルってわけ。
実験が終わったら解体処分が運命づけられているとはいえ、その機体はガンダムだ。
その機体のテストパイロットに任命されたザフト兵は、先の戦争でのガンダム・タイプのモビルスーツの
活躍を耳にしていただけに、そのガンダムに特別な思い入れと愛着を持った。
そのパイロットはガンダムと共に数多くのテストをこなし、その全てで高いスコアを出した。
動力として搭載されているバッテリーの出力は核エンジンには及ばないし、どう頑張ってもフリーダム
やジャスティスの活躍を再現することはできなかっただろうが、それでも彼は満足だった。
やがて、そのパイロットは、
「俺もガンダムファイターになりたい。こいつと一緒に戦いたい!」
と、強く思うようになった。勿論、本人はそれが叶わぬ夢であることを重々承知していたが、それでも、
自分がこのガンダムと一緒に国家の威信を賭けて戦うことを夢想せずにはいられなかったという。
が……悲劇は突然訪れた。
模擬戦の最中に起きた事故で、パイロットが死亡したのだ。
原因は、模擬戦の相手を務めていたザクのビームライフルの暴発。
ガンダムのコクピット・ブロックに灼熱したトンネルが穿たれ、言うまでもなくパイロットは即死だった。
回収されたガンダムはデータを回収され、コクピット周辺のパーツを予備のものに交換された後、格納
庫で静かに眠ることになった。次のテストパイロットが決まるまで。
ところが……事件はそれで終わりではなかったのだ。
その日の晩、格納庫の周りで見張りをしている兵士が、格納庫の中から大きな機械の駆動する音を
聞いた。格納庫の中に置いてある機械といえば、モビルスーツか作業用のパワーローダーくらいのもの
だが、敵襲があったわけでも、急な戦闘で機体が損傷したわけでもなく、従ってモビルスーツもパワー
ローダーも動かす理由がない。
もしかして、実験中の試作モビルスーツを狙うスパイが忍び込んだのか?
そう考えた見張りの兵士は、合鍵を使って格納庫へ駆け込んだ。
そこで見たものは、今にもメンテナンス・ベッドから立ち上がろうとするガンダムの姿だった。
見張りの兵士は急いで警報を鳴らし、ガンダムが勝手に動いていることを基地の司令官に知らせた。
しかし、その間にガンダムは格納庫から出て行ってしまった。
すぐさまザク3機からなる小隊が、ガンダムの追跡に出た。
グゥルを使って飛行するザクの部隊は、すぐに荒野を走るガンダムを捕捉した。
基地の司令官は、敵の手に渡るくらいなら破壊してしまって構わない、と命令を出していた。モビル
スーツというのは軍事機密の塊だし、実験中の試作モビルスーツなら尚更だ。2年後のガンダムファイト
のための新技術が結集したその機体を、連合かオーブか知らないが、どの勢力のどの国にも渡すわけ
にはいかなかった。
「攻撃開始!」
隊長機の号令と同時に、ザクのビームライフルが火を噴いた。
が、ガンダムは逃げ続けながらもそれを避けた。PS装甲の電力消費を極力抑えて鉄灰色のボディの
まま荒野を疾走するガンダムは、後頭部のサブカメラで追いすがるザクの動きを把握し、向けられた銃口
の向きや角度から着弾点を瞬時に計算し、そこを巧みに避けているのだ。
ガンダムの機体性能とパイロットの技量に舌を巻く思いだが、隊長はそこで一計を案じた。
このまま奴が走り続けると仮定し、その予測進行方向に向けてタイミングをずらしてビームライフルを
撃つのである。そうすればたとえ一発目を避けられたとしても、ニ発目、三発目に高い確率で当たる。
作戦は即座に寮機に伝えられ、3機のザクが一斉にガンダムの背にロックオンをかける。
が、ここでそいつは予想を超えた動きを見せた。
隊長機がビームライフルのトリガーを引く、まさにその瞬間。そいつは地面を踏みしめて制動をかけた
かと思うと、後方へバックステップしたのだ。隊長はその予想外の行動に反応が遅れ、放たれたビーム
はさっきまでガンダムがいた地面を焦げ付かせるだけだった。
そして追撃部隊とそのまったく逆方向に跳躍したガンダムとの相対距離はグングン縮まっていき、すれ
違いざまにビームライフルでグゥルのエンジン部を撃ち抜かれたザクが、敢え無く脱落していった。
残りの2機は急いで機体を翻すが、その間に更に1機、頭部を撃ち抜かれて目と耳を奪われる。
残るは隊長機のザクファントムのみ。
隊長はガンダムのビームライフルから放たれるビームを避けながら、グゥルで可能な限りガンダムに
接近し、そしてザクとグゥルのコントロール・リンクを外してグゥルから飛び降り、乗り捨てたグゥルをあた
かもミサイルのようにガンダムへ突っ込ませた。
勿論そのガンダムはグゥルによる体当たりを避けたが、それこそが隊長の狙いだった。
バックステップで急接近するグゥルを避けたガンダムに、隊長のザクがブースト全開で急迫した。肩の
シールドからビームトマホークを抜き放ち、それをガンダムの胸に振り下ろす。
対するガンダムは体を反らし、バックパックの背部スラスターを全開に噴かして回避を試みる。
果たして隊長機のビームトマホークは、ガンダムの胸を掠めてコクピットハッチを抉り取った。
しかし、ハッチを剥ぎ取られて露わになったコクピット内部を見て、隊長は絶句することになる。
「――ッ!?」
ガンダムのコクピットには誰も乗っていなかったのだ。空席のシートにはパイロットの姿はない。
一瞬戸惑いが隊長を支配し、攻撃の手が緩む。
そして、その一瞬の隙が勝負の明暗を分けた。
素早く態勢を整えたガンダムは、腰のラックからコンバットナイフを抜き、ビームトマホークを振り抜いた
態勢のまま硬直するザクファントムの頭部に突き立てた。
隊長機はバランスを失って倒れ、それを見届けたガンダムは踵を返して走り去った。
メインカメラを破壊されてブラックアウトしたモニターを見つめながら、隊長はガンダムの空っぽのコク
ピットの不可解な不気味さを何度も反芻していた……。
「モビルスーツに乗ったザフト兵の幽霊だって?」
リードから話を聞いた俺は、思わず聞き返してしまった。
ここは俺達が根城にしているホテルの一階にある喫茶店だ。仕事がない時、俺はいつもここで朝の
コーヒーを飲むことにしている。もっとも、近頃はその頻度も増えてきていて、傭兵が本来請け負うべき
仕事だけで食い繋ぐのが少々難しくなりつつある。
俺はリードが冗談を言っているのかと思って、こう言った。
「この科学万能のコズミック・イラに、幽霊? 冗談にもならないぜ、そんなの」
コズミック・イラという時代は、科学万能であるだけでなく宗教が絶えて久しい時代でもある。祖霊崇拝
などというのはカビの生えた古臭い価値観でしかなく、幽霊など以ての外だ。
だが、リードは思いの外真剣な眼差しでこう言うのだ。
「冗談なんかじゃない。本当に出るんだよ、幽霊が……お前さんは信じてないようだが」
「当然だろ。百年前ならいざ知らず、今時幽霊なんて時代遅れにも程がある」
今の技術を以ってすれば、幽霊の存在をでっち上げるなんていくらでも出来る。人間の姿を虚空に映し
出すなんて簡単だ。ホログラム投影機を使えば、高いとは言えない値段で幽霊でも何でも投影できる。
つまり幽霊なんていうのは時代遅れの遺物であり、怪談話の題材としても失笑ものだ。霊魂の存在を
信じている奴だって少数派だろう。今の若者には、どちらかといえば謎のウィルスや突然変異のクリー
チャーのようなバイオハザード系の方が怖がられると思う。
芝居がかった大袈裟な動作で、リードは肩をすくめた。
「まあ、信じられないのも無理はないがな」
「それで? お前はどんな魂胆があって俺にこんな話をするんだ」
「おいおい、魂胆ってのは何だよ。人が折角話してやったのに」
「リード・ウェラーともあろう者が、俺の失笑を買うためだけにそんな全然怖くない怪談話をしてくるとも
思えない。何か魂胆があって俺にその話を聞かせたんだろう。ついでに言うと、お前だって幽霊なんか
信じちゃいない。違うか?」
リードは不機嫌になった様子もなく、むしろ「バレたか」とでも言いたげな表情を作ってみせた。俺もこの
反応は想定していただけにそれ以上突っ込む気にはなれなかった。
リードが更に語った内容を要約すると、軍事機密の塊である新型モビルスーツをそのまま放置しておく
ことはできない。すぐさま討伐隊を編成して出動させたいところだ。が、兵士達は幽霊の存在をすっかり
信じてしまって士気はガタ落ち。その上基地のモビルスーツの数も限られている。
それにこんな事件はプラント本国にも報告しづらい。
まさか『幽霊がモビルスーツを奪って逃げて行きました』などと報告するわけにもいかないからだ。
失笑か冷笑か、どちらにしろ物笑いの種になるのがオチだ。
そこで、迅速・丁寧・仕事確実に加えてクライアントの秘密厳守の信頼できる傭兵にこの一件の始末を
頼もうということになり、それで俺達サーペントテールにお鉢が回ってきたというわけだ。
「久々に傭兵らしい依頼があったかと思えば、よりにもよって幽霊退治か」
この幽霊話の詳細を聞いても、俺の感情は驚きや恐怖より呆れが先行していた。
そりゃあ確かに不可解な話だ。操縦者のいないモビルスーツが勝手に脱走して追ってきた部隊を全滅
させるなんて、常識的に考えれば有り得ない話に見える。
だが、それでも俺はこの話がそんな不気味なものには思えなかった。最近になってモルゲンレーテが
凄腕のパイロットの戦闘データを解析して優秀な自動操縦プログラムを完成させたという噂を聞いていた
し、大方その手の自動操縦プログラムが暴走したんだろう、と思っていた。
発達しすぎた科学は魔法と見分けがつかないなんて警句があるが、今回の一件なんかまさにそれだ。
ソフトウェアのバグやプログラムミスが、あたかも幽霊のような得体の知れないものに見えただけさ。
「まあ、その幽霊が本物かどうかはともかくとして……ザフトの連中は俺達をゴーストバスターか何かと
勘違いしてるんじゃないのか? 幽霊退治はいくらなんでも専門外だぞ」
「いや、ゴーストバスターじゃなくてガンダムバスターさ。逃げ出したガンダムを破壊すればいいんだ」
「そのガンダムだって、誰かが盗んだんだとしたらもう手遅れじゃないのか?」
「それがな……そのガンダムの居場所はもう特定できているんだ。内蔵されてるビーコンが生きている
からな」
何だそりゃ? ますますわけのわからない話だ。
スパイか何かがその新型を盗み出すつもりでやったのなら、まずビーコンなり発信機なりから破壊する
ものだ。というより、そうでもしなけりゃ正規軍から逃げおおせるなんて不可能だ。勿論、モビルスーツを
盗もうっていうんだ。他にも色々と準備は必要になるが、そのガンダムを盗んだ奴は盗人の自覚が足り
ていないらしいな。
「だから、幽霊なんだよ。幽霊がガンダムを操縦して逃げてったんだ」
「くどいぞ、リード。幽霊なんて非科学的だ」
「へへへ……で、どうだ? この依頼、受けるか?」
誰がこんな胡乱な依頼を受けるか……と言いたかったが、俺は正直迷っていた。
さっきから言っているように、俺は幽霊の存在なんかこれっぽっちも信じちゃいない。死んだ奴は死んだ
まま、どのような形であっても再び生者の前に姿を現すことはない。それは俺が一番よくわかっている。
だから死んだテストパイロットが化けて出てくるなんて思ってない。
この話から『幽霊』というワードを消した上で考えてみると、つまりはモビルスーツの盗難事件だ。
普通なら、盗人がモビルスーツを盗んで逃げおおせた時点で取り戻すことは不可能だ。バラバラに
分解されて競売にかけられて、元の形に復元することはできなくなるだろう。
だが今回の場合、盗んだ相手はビーコンを生かしたままその居場所をザフト軍に知られている。しかも
依頼主が『ガンダムを破壊しても構わない』ときたもんだ。
一見するとメチャクチャなくらい簡単な任務だ。単なる失せ物探しよりも遥かにシンプルな話だ。
だが、その反面、どこか名状し難い不気味さを感じるのも確かだ。幽霊がどうとかではなく、『傭兵の
勘』って奴がこの一件に怪しい何かを感じている。
受けるべきか、受けざるべきか。
コーヒーが一気飲みできるくらい冷め切るほどの時間をかけて、俺は決断した。
「わかった、受けよう」
「そうこなくっちゃな」
リードは満面の笑みを浮かべ、俺の肩を叩いた。
俺はコーヒーを一気に飲み干すと、地球行きに何日かかるかとか、報酬は幾らくらい出るのかとか、
実務的な話に話題を移した。
久々の仕事の割には、随分と楽な仕事だ。その時の俺はそう思っていた。
だが、結果としてその予想は外れ、外れるだけならまだしも外した矢がそのまま大空へ吸い込まれて
大気圏を離脱し木星辺りにまで到達するくらい俺の予想の遥か斜め上を突っ走る展開が待っていた。
それを予想だにしていなかった俺を誰が責められよう。それほど想像力豊かではなく、また至って常識
的な思考回路と精神状態を保っているこの俺を。
いや、ホントにもう――
『事実は小説よりも奇なり』ってのはまったく至言だと、深く思い知らされた気分だ。
幽霊の正体とは?
イライジャは幽霊ガンダムを倒せるのか?
いや、そもそもこれはSFなのか幽霊話なのか?
続きはまあ期待しないで待っててくださいな。
運命プランもたいがいだけど、もっとムチャを言い出したなこの議長ww
間違いなくGガンキャラ的な強引さと、問答無用の説得力があったんだろうなあ。
投下乙っした
ドモン抜きでGガン設定か、新しいな
続き楽しみにしてる
いや、シャッフル同盟として影からファイト条約成立に働きかけた可能性が
というかあの連中が暗躍でもしない限りCE世界でガンダムファイトは無理じゃね?
なあ、Gガン見たことないんだが、ドモンが二股かけてたってマジ?
アレンビーの事だろ?
二股かけてかけていたとはいえないな
ドモンはアレンビーの事を純粋にファイターとしか見ていなかった
レインの事も恋人として認識したのは最終回だ
あ、そうなの?二人の女と関係を持ってたって聞いてびっくりしたから。じゃ、ドモンはどちらともキスすらしてない?
最終話で大告白
これは自分の目で確かめてくれ
というか、Gガンは1話から順番に全部見ないと盛り上がりが理解できない。
冒頭から続く鬱展開→師匠登場→ギアナでの修行→サバイバルイレブン→決勝バトルロイヤル→大団円
ドモンの心情を1話から追いかけていかないと、最終回も真最終回たるマスターとの別れも入りきれない。
>>230 よくわかってない奴がGガンの主役は師匠だとかいうけど、
第一話からきちんと見てたら物語の中心にいるのは常にドモンな
きっちりとしたつくりになってるんだよな。
どこぞの主役交代したアニメとは違ってw
香港行ったあたりから、ドモンがヘタレ化してたのだけ憶えてる
あれはへタレというよりむしろ慢心だわな。
まぁキングオブハートだから「慢心の一つもせずに何が王か」というところでもあ(ry
唐突に出てきて消えてった、シャッフルズの方々とか、使い捨てにされたキャラたちも沢山いるしなー
通して見ないと、色々和歌欄わな。
>>234 毎話ごとにゲストキャラが出てきては消えていくのは、ロボットアニメの伝統だと思うんだがな。
例えばゲッターをリアルタイムで見てても、テキサスマックのことは1話見逃すだけでわからない。
新宿編から面白くなるね
それまでは顔見せと物語の紹介と思えばいい
や、だから、マスター登場で一気に話が動き出すのは理解できるんだが、
その前の話でドモンの心情を理解しておいた方がマスターとの再開に涙する
ドモンの姿に心打たれる。