乙
オッゴ
おつ
>>1は、スレ立て初めてって言ったろうが…
乙しちゃうぞ!
hosyu
テン・テ・テテン・テテテン♪
現在まったりとssを書いてるんですが、投下してもいいでしょうか?
CE73
ここ、アーモリーワンでは新造艦ミネルバの進水式とセカンドステージMSの披露を控えているため慌しかった。
そんな中、新型MS「カオス」「アビス」「ガイア」の三機が強奪されたとの連絡が入り、
コンディションレッドが発令されミネルバのクルーも戦闘態勢に入る。
ザフトのパイロットである、シン・アスカもミネルバ着任早々に出撃を命じられた。
コアスプレンダーは発進準備を完了し、まもなく発進しようとしていた。
「マユ・・父さん・・・母さん・・・見ててくれ。俺、頑張るから・・!!」
シンは、コックピットの中で呟き操縦桿を握る。
と、突然誰かに呼ばれたような気がした。
「?・・・呼んでる・・?誰が・・?」
だが、そんな疑問も考える時間もなくすぐに消される。
『進路クリアー、発進どうぞ。シン、頑張ってね!』
「りょ、了解!シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!!」
第一話「宇宙(そら)からの声」
ミネルバから発進したコアスプレンダーは空中で変形し、後続のパーツ群とドッキングし一体のMSへと姿を変えた。
パーツも搬入の途中で揃っておらず、時間もないため、近接型のソードでの出撃だった。
視界には三機に追われるザクがいた。すでに、片腕を破壊されている。
「聞こえるかザク?援護するから後退してくれ!!」
「すまない。感謝する。」
シンはインパルスを降下させつつ、ライフルによるけん制を行った。
三機はけん制のビームでこちらに気付き、機体をこちらに向ける。ザクはその隙に後退する。
「このぉぉ!!」
接近してきたガイアにフラッシュエッジを投げつけるも容易く回避される。
カオスの兵装ポッドから射出されるミサイルを回避しながらインパルスはライフルで弾幕を張る。
すかさずエクスカリバーを構えカオスに振りかざす。カオスもそれに対応するようにビームサーベルを抜く。
『甘いんだよ!』
鍔迫り合いになるも間合いを空け、アビスにフラッシュエッジを投げつける。
三機との位置にを気をつけながら接近戦に持ち込もうとしては距離を離すの繰り返しだった。
しかし、シンは不利な状況ながらも敵をけん制する状態は保った。
『アウル、ステラ、そろそろ時間だ。撤退するぞ。』
「逃げるのか!?させるか!」
『行っけぇえ!!』
その直後、三機を追おうとするインパルスをアビスのフルバーストが襲う。
一瞬、背筋が凍った。回避行動をとるもインパルスの右腕と脚部を打ち抜かれる。
バランスを崩し体制を立て直す隙に三機は隔壁を破壊して、逃げてしまった。
そして、それを追う余力もインパルスには残ってなかった。
シンは自分の弱さを嘆きコンソールを思い切り叩いた。
「ちくしょう!!」
すると、また声が聞こえてくる。
さっきよりもはっきりと聞こえる。男の声だ。
「・・・!?誰なんだ・・・?一体・・・?」
しかし、シンの問いかけに誰も反応することはなかった。
インパルスはミネルバに回収され、ミネルバは三機のMSを強奪した部隊の追撃を命じられ、アーモリーワンを後にする。
その途中、救難信号を発したままの所属不明機を発見し、これを回収せよとの命令でシンは回収作業に向かった。
レーダーで信号を確認しつつ、その方向へ機体を進める。
そこでまた、あの声が響いてくる。その声は少しずつだが、はっきりとしてくる。
そして、トリコロールの機体が視界に入ってきた。
呼びかけてくる声もなぜだか分からないがその機体からくるものだとシンに確信を持たせた。
響いている声は繊細で、澄んだ少年の声だ。
シンにはその機体が淡く光を放っているようにも見えた。
そして、運命はシンだけでなく世界を巻き込み静かに動き出していた。
とりあえず、こんな感じです。
感覚がつかめないので話が短めなのは許してください。
GJ!新職人にwktk
>>12 ソードシルエットでしょ?
何処からライフル出てきたの?
ソードでもライフルは装備してるはず
>>17 今、1話見たら持ってた!
しばらくロムってる…orz
シンが回収した機体には一人の少年が乗っていた。年はおそらく自分と同じくらいだろう。
少年の意識はなく、傍らにはバイザーの割れたメットが転がっている。
しかし、少年は怪我をしている様子はなかった。
「おい、あんた一体どこから・・」
そう言いかけると、一瞬にして少年の周りを静寂が包みあたりは宇宙へと変わる。
「なっ!?何だ!?これ・・・!?」
―――・・は・が分・る・か?君・は・・・が聞・え・・か?―――
(幻覚・・・なのか?)
「おい、シン」
呼ばれて、我に返る。周りは宇宙でなくMSデッキに戻っていた。
あの声も止んでいた。
「そいつ、運ぶからどいてくれ。」
「ああ、ごめん。」
結局、少年はこちらの問いかけに反応もなく、コックピットから出され、医務室へと運ばれた。
MSデッキは整備班の人間だけでなくほかのクルーも集まっていて妙な光景だった。
整備班の人間が謎の機体を調べているが、やっとのことコックピットを開けてからは首をかしげてばかりだった。
とりあえず分かったのは謎の機体の名前は”Zガンダム”ということぐらいだった。
しかし、シンは謎の機体Zガンダムも気に掛かっていたが、それよりも医務室に運ばれたあの少年のほうが気になった。
シンは一人壁にもたれ、少し離れたところからその様子を見ていた。
第二話「予感」
「シン、何やってんの?こんなところで。やっぱりあの機体が気になる?」
声をかけてきたのはアカデミーの頃から一緒だったルナマリア・ホークだ。彼女もこのミネルバのMSパイロットだ。
赤髪のショートで特徴的なアホ毛、そしてスタイルの良さが彼女の特徴でもあった。
「そりゃあ、自分が回収してきたんだ。気にならない訳ないだろ。でも、それよりもあのパイロット・・・」
「パイロットスーツは連合の物には見えなかったけど、一体どこの所属なんだろう?それに、あんなところで漂流してるなんて。」
「ルナは・・・あの機体や、パイロットから何かを感じないか?」
「・・・?そうね、まぁ普通じゃないってことは感じるけど、それ以上は特に。どうかしたの?」
「そっか、いやなんでもない。気のせい。」
「・・・・・・変なシン。疲れてるんじゃない、今のうちに休みなさいよ。」
ルナは床を蹴って人だかりへ向かっていく。
「そうだ、シン。ルナマリアの言うとおりだ。今のうちに休んでおけ。いつ敵と戦闘に入るか分からない以上、少しでも体力を温存しておくべきだ。」
いつの間にか隣にいるのはこちらもアカデミーから一緒のレイ・ザ・バレルだ。
彼もMSパイロットでブレイズザクファントムのパイロットである。
「大丈夫だって、俺は。別に疲れてなんか。」
「そうか。なら、いい。大事なときに万全の態勢を取れないのでは話にならないからな。」
「分かってるよ。・・・ここにいるってことは、レイもやっぱりあれが気になるのか?」
「まあ、それなりにはな。ザフトの物でも連合の物でもないらしいと聞いたからどんなものかとな。」
レイも人だかりから少し離れたところで整備班の人間の様子を見ていた。
シンは、あのパイロットの少年の事が頭から離れなかった。何度も頭の中に呼びかけてきた声は間違いなく彼のものだと。
今は、声は聞こえないが、回収するときに彼のはっきりとした声を聞いたのだ。
彼が何を言おうとしたのかは分からないがとても大事な気がした。
シンは床を蹴って医務室へ行く。やはりあのパイロットが気になった。
「なるほど。では彼は、身体ではなく精神に異常がある。ということかね。」
「ええ、それ以外考えられません。とくに、目立った外傷もなくきっかけとなるような傷もありませんし。」
「じゃあ、一体何なんだ?」
「脳の検査も行いましたが、脳波も乱れていませんでしたから過度のストレスからくるものだと思われます。」
話が聞こえ、医務室に入るとデュランダル議長とオーブ首長国代表カガリ・ユラ・アスハとその付き人の姿が目に入った。
シンは一瞬バツの悪そうな顔をして、舌打ちした。
(なんでアスハがここにいるんだ!?)
内心罵りながらもデュランダル議長の手前もあり、そこはなんとか抑えた。
「回収作業ご苦労だった、シン・アスカ君。姫、改めて紹介しましょう。彼がインパルスのパイロット、シン・アスカです。」
シンはカガリを睨んだまま、形式的に会釈した。
カガリはシンの鋭い目つきに戸惑った。彼女の脳裏には彼に言われた一言がよぎる。
【さすが、綺麗事はアスハのお家芸だな!!】
回収作業前にMSデッキで言われた言葉が何度も繰り返される。
カガリは思わずシンから目を逸らしてしまい、それに気付いた付き人の男がカガリを気遣っていた。
その後、カガリを含めた三人は医務室を後にする。
「まったく、次から次へと。これじゃ、病人が休まらないよ。」
「すみません。・・・それで、その人は大丈夫なんですか?」
「ああ、命には別状はないよ。それ以上は、まだ何とも言えないな。」
「そうですか・・・ッ!?」
ベッドに横たわる少年を見たとき、シンをまたあの感覚が襲った。
横たわる少年と宇宙が広がり、星のきらめきが散らばっている。
シンは自分の足元の感覚が消えたような気がしたが、何故か不安はなくどこか心を穏やかにさせるなにかを感じた。
―――危険な意思が・・・近づいている・・・・・・気をつけるんだ・・・―――
横たわっている少年からなのか、シンにはその声がいままでで一番はっきりと聞こえた。
(あんたは・・・一体・・・!?)
しかし、突然艦内の警報が鳴りシンは我に返る。
『コンディションレッド発令!!コンディションレッド発令!!』
「な、何だ!?」
『敵部隊を捕捉、各員戦闘態勢へ移行せよ!!繰り返す、敵部隊を捕捉、各員戦闘態勢へ移行せよ!!』
「また、あいつらか!!こんどこそ!!」
シンは医務室を飛び出し、MSデッキへ向かった。
(それにしてもあの人、なんで敵がいることが分かったんだ?)
新たな疑問を抱えつつもシンはコアスプレンダーに登場し、発進する。
ドッキングして、ブラストインパルスとなりルナマリアのザクとともに暗い宇宙に2条の光を引いていった。
ひとまず、第二話投下です
>>15 ありがとうございます
誤字、脱字その他ありましたらご指摘お願いします
うん、いい感じ!
この調子どんどん続けてくだしあ。
GJ!
CEの人間がZを解析したときの反応が楽しみだ。
現在ゆっくりと書いている作品が問題だらけなので聞きますが、
オリキャラ多め
どっちかと言えば、「逆襲のシン」
捏造設定多すぎ&種死の結末が若干変化
こんな作品を投下しても大丈夫でしょうか?
>>26 書いている作品がこのスレのタイトルにあっているかだとおもう
もし心配ならクロスならなんでもありのクロスオーバースレへどうぞ
種死アフターである以上オリは仕方ないってーのが大勢の意見。
アズ子とか大人気だし気にするこたないと思うでよ。
30 :
29:2007/05/27(日) 13:21:03 ID:???
ごめん逆シンスレと間違えた。
名前とパーソナリティだけZや他から借りるって手もあるんじゃないか?
そんなことよりおまいら、前スレまだ埋まってませんよ
>>26 そのネタでZ抜きなら逆シンスレだね。常識的に考えて。
>>26です
Ζの話が入っている以上、ここに投下します。
念のために注意書きです。
オリジナルキャラが多いです(むしろ、オリジナルキャラメイン)
捏造設定が多く、種死の結末がわずかに変化しています
一部のオリジナルキャラに関しては、パロディネタが混じっています
色々な意味で無茶苦茶な設定が多いです
では、現在完成しているプロローグを投下します。
「光が…広がっていく……」
U.C. 0088 2月22日
『エゥーゴ』所属の少年、カミーユ・ビダンは、Ζガンダムのコックピットの中で光を見た。
それは、カミーユの心を焼き尽くす光になるはずだった。
……だが、その光は宇宙世紀からカミーユの存在を消し去る光だった。
同時刻
アナハイム・エレクトロニクス社にて、奇妙な事態が発生していた。
「ガンダムMk.Uが……無い!?」
存在していたはずの機体…ガンダムMk.Uが、忽然と姿を消していた。
誰かが格納庫に侵入した形跡は無い。
だが、間違いなくガンダムMk.Uは消えていた。
この格納庫で保管されていたガンダムMk.Uは、研究用に解体、保管されていた機体である。
だが、激しくなる戦局に合わせて、再び元の形に組み上げたのである。
もっとも、この機体がグリプス攻防戦に投入されることは無かったのだが……
本来の歴史ならば、このガンダムMk.Uは後にエル・ビアンノの乗機となるはずだった。
しかし、歴史は奇妙に捻じ曲がろうとしていた。
C.E. 74
メサイア攻防戦
「来たか…!」
「………………を奪ったお前を……俺は許さん……!」
その男は、目の前に迫る敵を見て呟いた。
「あれは…ストライク!?」
キラ・ヤマトの前に現れたのは、黒い“ストライク”を中心としたMS部隊だった。
“ストライク”の僚機は全てウィンダムのようだ。
奥にはその部隊の母艦らしき戦艦が見える。
キラは、すぐにそれらの機体を同時にロックオンする。
そして、躊躇うことなくトリガーを引いた。
「邪魔するんじゃない!」
ストライクフリーダムの強化武装“ミーティア”から大量のミサイルとビームが放たれる。
普通ならば、この時点で部隊は壊滅していた。
しかし…その火線がMSを捕らえることは無かった。
この部隊のパイロットは、信じられない技量を持っているようだ。
「うっ…かわされた!?」
キラは驚愕した。
これまでの敵は自らの思い通りに動き、自らの思い通りに戦闘能力を殺がれていった。
だが、この部隊は違う。
これまでのように、棒立ちのまま倒れていくような甘い敵ではなかった。
「出会い頭の一撃はかわした…!」
「いくらフリーダムと言えど、無敵じゃない……落とすぞ!」
黒い“ストライク”こと、ストライクノワールに乗る男は、部下に檄を飛ばす。
その男は、隊長を名乗るには若いように見える。
「一気に押し込む…!」
ストライクノワールとウィンダムが一気に襲い掛かり、波状攻撃を仕掛ける。
フリーダムは得物が大きいため、とてもではないが回避できない。
だが、相手はキラ・ヤマトである。
驚異的な反応速度で、ビームの嵐を掻い潜る。
それでも、いくつかのビームがミーティアを少しずつ傷つける。
そして遂に、ストライクノワールの放ったビームがミーティアに直撃した。
「しまった、直撃!?」
「それならっ!」
キラは、誘爆を起こす前にミーティアを素早くパージする。
その直後、ミーティアは爆散した。
爆発の光が消え去った時、ストライクフリーダムは遥か彼方へ去っていた。
爆発に紛れて、戦線を離脱したらしい。
フリーダムの機動力を考えれば、追撃は不可能である。
「逃げられた…か……」
「……終わり……だな」
その男は、静かに呟いた。
彼は、負けたのだ……
メサイア及び、レクイエムが破壊されたことにより、メサイア攻防戦は、オーブ軍の勝利に終わった。
後に、プラントは再建の為にラクス・クラインをプラント評議会に招聘し、クライン派の時代が訪れた。
それは、新たなる時代の幕開けだった。
だが、
地球連合軍の資料に、奇妙な記述があった。
それには、
メサイア攻防戦にて、ユーラシア連邦所属国『日本』の一部隊がザフトに加担し、オーブ軍・地球連合軍と交戦。
終戦後、軍事裁判なども無く、その部隊の兵は全員退役。
しかし、部隊の母艦及び、MSの行方は不明。
撃墜された記録なども無し。
……と、言うものだった。
また、この部隊については他にも興味深い資料がある。
それは、
部隊長はアクタイオン・インダストリー社から横流しされた特別機を使用。
その機体は、特殊部隊『ファントムペイン』専用の機体として作られたものである。
……と、にわかには信じられない内容である。
……この2つの資料が示す物、
それが何を意味するのかを知っている者は少ない……
とりあえず、これでプロローグは終わりです。
本編はメサイア攻防戦から3年後という設定で進めていきます。
補足として、3レス目の最後に、
“ちなみに、ストライクフリーダムがこの後に使用したミーティアは、インフィニットジャスティスが使用していたものである。”
という文を入れるのを忘れていました。
亀更新になると思いますが、それについては勘弁してください。
カミーユワープ系ね……黒ストライク乗りがオリキャラ?
カミーユ以外がワープするのが問題でなければZキャラで代用すればいいとこだけど。
オリキャラを書きたいがためのオリキャラでなければまあいいんじゃないかな。必要最低限と言う奴。
>>39 構想の中では、ラクシズ(笑)に対して、カミーユ達がエゥーゴ的な組織を創って、対抗するというストーリーになっています。
作中で死亡したキャラを使わずに書こう思うと、どうしてもパイロットが少なくなってしまうので、オリジナルキャラを投入しました。
まあ、所詮は素人の妄想ですが……orz
どうでも良くない事なのですが、所々「ストライクフリーダム」が「フリーダム」になってますね……orz
アポリーとかロベルトとかエマさんとか
トーレスとかアストナージ的ポジションか、いいんじゃね
>>40 > どうでも良くない事なのですが、所々「ストライクフリーダム」が「フリーダム」になってますね……orz
本編でもストライクフリーダムがフリーダムに"差し変わって"いた。
気にするな。俺も(ry
インパルスとストライクほどには違わないから別に
新スレに移行して次々と新たな職人さんが!
仲間が増えたみたいで嬉しいです。お互い、頑張りましょう
ところで、前スレがまだ埋まってないようなので、埋めついでに前スレのほうに投下するのって有りかな?
後、前回のブルコス会議については、ジブが会議大好きだからということで、ジブが盟主になってから始まったということにして下さい。…苦しいですがorz
最強主人公のキラきゅんもドラグーン操れるに決まってます><
みたいな理由で登場したようにしか見えないMSだしどうでもいい
>どうしてもパイロットが少なくなってしまうので、オリジナルキャラを投入しました。
そりゃ種とZどちらの要素にもないオリジナル勢力を考えれば当然だな。
で、オリジナルキャラは君の『ラクシズ』で君の『キラ』君かね。
住人がマタ〜リしているSSスレにオリキャラだらけの汚物を投下して荒らしていく三人目氏乙。
かっこよく散って逝く下りキャラかも試練じゃないか
>どうしてもパイロットが少なくなってしまうので、オリジナルキャラを投入しました。
パイロットなら名無しで十分だろ。
正直になりなよ。
ぼくの考えたさいきょうのオリキャラで皆さんの好きな作品を蹂躙したくなりましたってさw
種キャラ(含むラクシズ)やカミーユを
オリキャラの踏み台にしなけりゃなんでもいいよ。(メアリー・スーでググれ)
その…えっと…見てきたけどさ…
メアリー・スーってこれキラとラクスのことじゃないの?
マンチキンもいいぞ
これは思いっきり滑ったようですね……orz
どの道、個人での実力はキラには遠く及ばないって設定の予定でしたが……
そもそも、棒立ちの敵に比べれば動くだけマシ……
それ以前に嫁補正が無くなれば……
と、言い訳するのも面倒ですので、一から出直します。
>>54 まぁ、そう落ち込むな。
種本編やアストレイに名前だけ出てくるキャラとか利用しちまえばいいんじゃね?
とかアドバイスしてみる。
...つかそんなキャラいたっけ?
1stとかならいそうだが...
オリキャラは過去に色々あったのさぁね
ま、苦い薬としてくれ
『オーブの海』
バルトフェルドと共にミネルバへ戻ってきたデュランダル。そこでは、コンディションイエローのままMSデッキで待機しているシン達MSパイロットの姿があった。
三人のMSパイロットの中の一人、レイ=ザ=バレルは、帰ってきたデュランダルを見つけると直ぐに近寄ってきた。ブロンドの髪を肩まで伸ばした中性的な雰囲気を醸し出す少年だ。
「お帰りなさいませ、議長」
「うむ。客人をお連れした。例の物を見せてやってくれ」
「客人?」
デュランダルの後ろからついて来る人物に目をやり、レイは目つきが鋭くなる。デュランダルが伴ってやって来たのは、バルトフェルドだったからだ。
「議長、この方は――」
「私達の協力者だ。頼んだぞ、レイ。私はブリッジに上がる。…それではバルトフェルド、よろしく」
簡潔に言うと、デュランダルはその足でMSデッキを後にした。シンやルナマリアがデュランダルに対し、敬礼をして見送る。
「初めまして、アンドリュー=バルトフェルドだ。早速議長の仰っていた例の物を見せてもらいたいんだが」
「ザフト艦ミネルバ所属MSパイロット、レイ=ザ=バレルです。砂漠の虎でいらっしゃいますね」
「ほぉ、君の様な若者が、僕の様なロートルを知っていてくれるなんて感動だな」
努めて冷静に会話をこなすレイに対し、バルトフェルドは余裕を持って応える。自分とて歴戦の勇士である。このような少年兵たちに遅れをとるつもりはない。
「失礼しました。こちらへ」
レイとバルトフェルドは連れ立ってMSデッキの奥へと進んで行く。それを脇で眺めながら、シンとルナマリアは不審な目でバルトフェルドを見ていた。
「砂漠の虎ですって。裏切り者って話じゃない。そんな人を連れてくるなんて――」
「オーブの毒にやられてんなら、俺が追い出してやるさ」
横目でバルトフェルドを見送りながら、シンは指を鳴らす。オーブに深い恨みを持つ彼としては、そこに住んでいたバルトフェルドを信用する気にはなれない。少しでもおかしな事を口走れば、即座に引導を渡してやるつもりでいた。
「止めなさいよ。あんたがそういう考えだってのは知ってるけど、余計ないざこざは増やさないでよね。あたし達にまで迷惑掛るじゃない」
「知ってんなら俺の好きにさせろよ。オーブが胡散臭いのは分かってるだろ?」
「みんなあんたと同じ思考してると思わないでよね。そういうの、独善って言うのよ」
シンの独りよがりな考えに、ルナマリアは難儀を示す。彼は、自分の思考が一番正しいと勘違いしている。だから、場所も弁えずにカガリに対して喧嘩を吹っ掛けたのだろう。地球に降りる前のトラブルの現場を思い出した。
「それにしたって、あんな現役を引退したようなおっさんにあれを動かせるのかよ?」
「さぁね。少なくともあんたよりはまともに動かせるんじゃないの?二つ名で呼ばれてたぐらいだし」
「じゃあ、ルナよりもまともだってことだよな。俺はインパルスのパイロットに抜擢されたわけだし」
意地悪そうな顔でルナマリアに言うシン。バルトフェルドより自分を低く評価するルナマリアを皮肉った言い方だ。
「はいはい。あたしは自分の力量って奴を弁えてるから、別に何だっていいのよ。あんたは一人で愚痴ってなさい」
「いてっ」
手にぶら下げているヘルメットを軽くシンの頭にぶつけながら、ルナマリアは自分の乗機であるザク・ウォーリアの下へ歩いていった。そのルナマリアの行為に、シンは腹を立てたが抑えた。バルトフェルドを前に喧嘩して、見くびられたくなかったからだ。
シンは、そのまま手に持った飲み物を口に含みながら、バルトフェルド達が向かっていった先に目を向ける。
レイがつれてきた場所には、一機のMSが佇んでいた。その威容に、バルトフェルドは見覚えがあった。それは、キラが二年前に乗っていたMS、ZGMF-X10Aフリーダムだ。オーブに入る前にメカニック達が懸念していたコンテナの中身は、これだった。
それを、彼等が徹夜で組み上げたのだ。
バルトフェルドが聞いた話によると、フリーダムはヤキン戦役において大破し、戦後はザフトが回収していたという。それが今、完全な形で目の前にある。
「まだこれが残っていたのか……!」
唾を飲み込み、バルトフェルドは驚嘆する。このMSの性能は、彼の記憶の中に、今でも鮮烈な印象を残している。そして、それに自分が乗ることになるかもしれないという現実が、えらく希薄に思えた。フリーダムは、乗り手を選ぶマシンだからだ。
やはり、これにはキラが相応しいと思う。しかし、そう考えてバルトフェルドは直ぐに首を横に振った。キラを、二度とMSに乗せないようにするのが自分の目的なのだから。
「これは外見こそフリーダムですが、NJC(ニュートロン・ジャマー・キャンセラー)は積んでいません」
レイの説明に、バルトフェルドは疑問に思う。これがキラの乗っていたフリーダムを回収したものならば、NJCは積んであるはずである。
「NJCを積んでいない?なら、これは二年前のものとは別物って事か?」
「そうです。これはフリーダムの量産を前提とした試作機です。動力源には、あちらのインパルスと同じ、新型のバッテリーを積んであります」
「フリーダムを量産ねぇ…プラントは世界を滅ぼす算段かい?」
「新型とは言え、バッテリーです。ヤキンの時のように圧倒的な火力を実現する事は出来ません」
「それを聞いて安心したよ。僕には過ぎた力になるかもしれないからね」
視線をレイからフリーダムに移し、口元に笑みを浮かべる。
下から見上げるフリーダムは、やはり圧倒的だ。これがキラの乗っていたフリーダムと同じでないとは分かっていても、見た目が同じだから安易に割り切れない。
「それでは、バルトフェルドさんは指示があるまでここでお待ちください。私は自分のMSの準備がありますので」
そう告げると、レイはその場を去って行った。
「レイ=ザ=バレルか……どこかで会ったような気もするが、ああいう奴はどうにもな――」
レイの後姿を見つめ、バルトフェルドは不思議な既視感を抱いていた。彼とは何となく顔見知りのような気がしたのだ。しかし、その意味を知ることは決してないだろう。彼の秘密は、今はまだデュランダルしか知らないことだ。
(しかし、指示があるまで待機か…まさかミネルバはオーブの中から大西洋連邦を迎え撃つつもりなのか?このコンディション・イエローは出国する際に備えてだと思いたいが――)
そのままバルトフェルドは思考を始める。嫌な予感はびんびんしている。その予感が外れて欲しいが、そうは行かないのが世の常である。そうなった場合を想定して、先に対策を考えておくのが建設的な行動だろう。そう思い、一人フリーダムの前で佇んでいた。
「オーブ政府からの通信は入っているか?」
ブリッジに入ってくるなり、デュランダルは即座にタリアに訊ねた。先に行政府へ戻ったカガリから、この状況に対しての何らかのアクションがあったのではないかと考えたからだ。
「いえ、何もありませんが」
タリアの答に落胆するデュランダル。こうまで決断が遅いとなると、カガリの気持ちは大西洋連邦に傾いている可能性がある。純粋に迷っているだけならいいが、ウナトという参謀も付いている。彼が居るならば、カガリに何か入れ知恵を仕込んでいるかもしれない。
そうなると、オーブが大西洋連邦と組む可能性が濃くなってくる。デュランダルとしては、それはなるべく避けたい所だ。
「オーブはこのまま大西洋連邦と組むつもりかな?」
「政治の事は私には分かりかねます」
同調を求めるデュランダルに対し、タリアは冷たく返す。どうやら、ここ最近の自分は些かしつこかったようだ。これ以上嫌われたくはないので、それ以上は絡まない事にした。
「オーブに留まる限り、大西洋連邦はミネルバに手出しはしてこんだろうが、オーブは大西洋連邦と組みたがっている…と仮定するとなると、今やミネルバは四面楚歌か」
「どうなさるおつもりですか?」
デュランダルの呟きを聞いていたアーサーが不安げに訊ねてくる。それに気付いて、デュランダルはブリッジクルーの顔を見渡した。皆、一様にアーサーと同様の顔つきをしている。いくらミネルバがザフトの新造艦とはいえ、不安なのだ。
ならば、不安を取り除くためにする事は一つしかない。この四面楚歌の状況を打破する為には、どちらかを味方にすればいいのだ。大西洋連邦は敵対国なので説得は不可能だ。となると、残るのはオーブである。
「既成事実を作ってしまえば、オーブも我等と同盟を組むしかあるまい。…艦長、戦闘配置だ」
「戦闘配置?」
デュランダルの言葉に、タリアは驚愕の表情を浮かべる。前門には虎、そして後門にはいつ狼なるかもしれないオーブが控えている。この状況で戦闘行為を犯したなら、オーブは間違いなく狼になるだろう。
「それでは――!」
「部隊配置はオーブの領海内だ。交戦も、相手が仕掛けてくるまではするなと伝えておけ」
「それでは、まるで私達がオーブと――」
そこまで声に出してタリアは気付いた。デュランダルは、既成事実を作るといっていた。オーブの領海内で部隊を展開させ、戦う意思を見せれば、大西洋連邦艦隊はオーブがプラントに与したと勘違いするかもしれない。
それが最上だが、そこまでいかないにしても、少なくともこちらが剣を交えるつもりである事は伝わるはずである。
そう思わせられれば、ユニウス・セブン落下事件で頭に血が昇っているであろう大西洋連邦は、憤って攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。そして、もしそうなった時はデュランダルの思う壺である。海の上とはいえ、戦場はオーブだ。
オーブとしては、国土に危害を及ぼさない為にも直ちに軍を出動させるしかないが、ザフトと大西洋連邦の二軍を排除するだけのスタミナを持っていない。
そうなった場合のオーブの選択肢は一つしか残されていないだろう。大西洋連邦は不可侵を主張するオーブ国土に武力侵攻した形となり、自然とオーブとの同盟締結交渉は消滅。
オーブ軍はオーブを守る形となったミネルバの味方に廻り、これをザフトと共同で排除する事で、大西洋連邦はオーブを敵性国家と認定する。
こうしてめでたく共通の敵が出来たプラントとオーブは、事が終わった後にゆっくりと同盟を締結して、共同声明なり何なり出せばいい。共に馬を並べて戦えば、多少なりとも信頼を得られるだろう。オーブが同盟を断る確率は確実に減少するはずである。
これが、デュランダルの頭の中のシナリオだった。
「ギル…あなたは――!」
「プラントの為だよ。ブルーコスモスの過激思想で、あの美しい砂時計を狂わせるわけには行かない」
目を見開くタリアに対し、デュランダルはじっと前方を見つめたまま笑みを浮かべていた。
その頃、オーブ行政府では、未だにカガリが難儀を示したまま会議が膠着していた。懸念していた通り、大西洋連邦は同盟に応じない場合はオーブを敵性国家と認定すると通告してきたのだ。
会議室は騒然としていた。議員がそれぞれに議論し、まとまりが欠けている。急な事態に、皆混乱しているのだ。そんな彼等と同様に戸惑っているカガリの傍らには、いつもと同じ様にセイラン親子がついていた。
「プラントの申し出はありがたいが、現状で即決するのは危険すぎる…」
「その通りです代表。デュランダルの言葉を信じるのは危険でございます。彼等がオーブから流出した技術を軍事に転用していた事実をお忘れなきよう」
悩めるカガリに、ウナトが忠言を与える。
「分かっている。しかし、大西洋連邦と同盟を結べば、ミネルバがどう動くか――」
「あれにはデュランダルが乗っているはずです。例え我等が大西洋連邦と同盟を組もうとも、無理はしないでしょう。脱出を優先させるはずです」
「ならば――」
大西洋連邦と組むのが現状での一番の選択肢か。少なくとも、プラントと同盟を結ぶよりは国への被害は小さく済むかもしれない。しかし、そうなれば中立の理念は崩れ去る事になるだろう。同盟を結んだ大西洋連邦は、オーブにも戦争の参加を迫ってくるはずである。
(くそぉ!駄目だ私は!何が正しいのか全く分からない!)
両手で頭を抱え、髪を掻き毟る。カガリの頭の中は沸騰しかけていた。
「お気持ちは分かりますが、オーブを焼かない事が一番大事です。ここは一つ心を鬼にして、大西洋連邦と同盟を結ぶべきです」
「そうです、代表。早くお決めにならなければ、大西洋連邦が痺れを切らすかもしれませんよ」
ウナトに続いてユウナもカガリに決断を促す。先程から、ずっとこの調子である。
と、その時観音開きの扉を激しく突き開いて、一人の兵士が飛び込んできた。その扉を開く音に、何事かと議員全員が議論を止め、その方向を見た。
「た、大変です!オーブ領海内で、ザフトと大西洋連邦軍が戦闘を開始しました!」
「な、何だと!?」
兵士の言葉に議場内は紛糾する。ザフトと大西洋連邦軍の勝手な行いに罵声を浴びせるものも居る。
「どうしてそんな勝手な事を――こちらに通告はあったのか!?」
カガリは立ち上がり、険しい表情で兵士に言う。それに対して兵士は手に持った紙を見やり、応える。
「いえ、どうやらミネルバが部隊を展開し、それに対して大西洋連邦軍が攻撃を仕掛けたようなのです。息つく間も無く、戦闘が開始されました」
「大西洋連邦もザフトもどういうつもりだ!」
拳を強く握り、机に激しく叩きつける。連合の宣戦布告から、よもやこんな速い展開で戦いに巻き込まれる事になろうとは、予想だにしてなかった。
「大西洋連邦はザフトの挑発に乗ってしまったようですな。ユニウスの悲劇からまだ日も浅い」
ウナトがカガリの肩に手を置き、慰めるように言う。しかし、カガリには納得できない。
「だからってオーブで戦わなくても――!」
「彼等にとって、我等の中立の理念などどうでも良いものだっただけの事です。同盟を求めてきた時点でそんな事は分かりきった事でした」
「それは…そうだが、じゃあデュランダル議長はどうなんだ!何のつもりで大西洋連邦を挑発なんかしたんだ!?こうなるって事、分かってるはずだろ!」
髪を振り乱し、詰め寄るようにウナトに聞く。傍から見れば、冷静なウナトの方が国家元首に見えるかもしれない。
「シナリオ通りでしょう。我等がどちらと同盟を組むかで議論を紛糾させている間に、先手を打たれたのです。大西洋連邦とザフトが戦闘を開始した時点で、彼の思惑は殆ど成就されたことでしょう」
「それで国を焼く訳には行かない私達は軍を出撃させる!しかし大西洋連邦とザフトを同時に相手する力をオーブは持っていない――くっ!踊らされているのか、私は!」
状況は緊迫の色合を強めていく。このままオーブ領海内で戦闘が続けば、いずれ本土にも戦火が拡大するだろう。それは、つまり二年前の再現を意味している。
「双方に呼びかけは行っているのか!?」
「どちらも戦闘中でこちらの呼びかけには応えられない、とのことです」
「進退窮まったね、カガリ」
狼狽するカガリをなだめるようにユウナは言う。
「理念上、他国の争いに介入できないけど、この戦いが我が国への侵略に繋がるとも考えられる。防衛目的なら、軍を出動させるしかないよね。戦力で言えば大西洋連邦につくのがいいと思うけど、カガリの理想の為にはザフトかな」
「しかし、戦いを前提にしていたのでは――!」
「もう話し合いで何とかできる状況ではなくなっているんだよ、カガリ。ちゃんと目を開いて現実を見つめてごらん?」
いつもはへらへらした顔をしているのに、今のユウナは真剣そのものだ。不意に現れた意外な表情に、カガリの頭の中が一瞬空っぽになる。
「ここで全てが決まるわけじゃない。今は最良と思える選択をする時なんだ。君は、この国の国家元首だろう?」
「ユウナ…」
「君はこんな所でまごついてちゃいけないんだ。ウズミ様から託されたオーブは、君だけのものじゃないんだよ。こんな所で無駄に時間を浪費しちゃいけない。国は君の玩具ではないんだから」
ユウナの言葉の一つ一つがカガリの心の中に染み渡る。
確かにユウナの言うとおりだ。自分は、迷っていた。今もこうして優柔不断な態度を見せるばかりで、国家元首としての毅然とした態度を忘れていた。頭がこんな有様では、他の者達にまで動揺が拡がってしまう。
そんな軟弱な人間には、国家元首は相応しくない。先程のキラは、その事を言いたかったのかも知れない。
「分かった。軍に出動要請、ミネルバと協力して大西洋連邦軍を排除させろ!このオーブ、二度も焼かせはしないぞ!」
「かしこまりました。民の避難誘導は私どもにお任せください」
手を掲げ、凛とした声で兵士に告げる。ウナトとユウナは一礼すると、直ぐに部屋を後にした。
「こいつ等、勝手に攻撃してきやがって!」
「オーブの中じゃ戦っちゃいけないんじゃないの!?」
「構うな!敵は仕掛けてきている!」
大西洋連邦からの攻撃に、シン達ミネルバのMS隊は苦戦を強いられていた。こちらがミネルバ一隻に対し、相手は空母や巡洋艦など五隻ほどの戦力を投入してきているのだ。ミネルバの戦力も単一艦としては並々ならぬ力を保持してはいるが、流石に多勢に無勢だ。
オーブに配慮して海上で戦闘を行ってはいるが、戦線は徐々に後退していた。
「オーブ軍は出てこないの!?」
ミネルバの甲板の上で砲撃を繰り返しながら、ルナマリアは叫ぶ。目をチラチラとオーブ本土に向け、オーブからの救援を期待していた。
『オーブは出てこない!奴等は理念を守る為なら、俺達がどうなったって構わないのさ!』
「でも、これって他国の侵略を許さずってのに抵触してんじゃないの!」
回線からシンの声が聞こえてきた。彼の言い分も分かるが、ミネルバとたった三機の防衛線では直ぐにも崩されてしまうだろう。
『なら、俺が手伝ってやろうか?』
「この声は――!」
その時、三人の内の誰でもない声が聞こえた。その声は先程聞いたバルトフェルドのものだ。
『確かに、大西洋連邦の行いはオーブへの侵略行為にも見れる。が、挑発をしたのはミネルバだ』
「こんな時に何を!」
『分かっているかい?お前達は、彼等に余計な刺激を与えて災いを引き起こしたんだ』
「でも、出撃は命令で――それに先に仕掛けてきたのは大西洋連邦です!私達は何もしてないじゃないですか!」
こんな時に講釈をしてくるバルトフェルドに、ルナマリアは抗議する。唯でさえ必死に砲撃をしなければ危ないのに、話しかけて集中力を乱そうとする彼の心根が気に入らなかった。
『ルナマリア、相手にするな!』
「レイ!」
『フリーダムの出撃命令は出ていない!出られん戦力を当てにするな!』
ルナマリアの集中力が落ちていると判断したレイが、彼女に注意を与えて再び集中力を取り戻させた。
ミネルバの甲板の上には赤いガナー・ザク・ウォーリアと、白いブレイズ・ザク・ファントムが陣取っている。そして、シンのフォース・インパルスが空中で遊撃戦を行っている。
ミネルバのMSデッキの中のフリーダムのコックピットで、その様子を観戦しながらバルトフェルドは苦虫を噛み潰した表情をしていた。これは、恐らくデュランダルが仕組んだ茶番だろう。わざと大西洋連邦を怒らせるように、敢えてMS隊の出撃を許可したと思われる。
「ちっ!自分の思い通りにするには、何でもするって事か!…キラを置いてきて正解だったな」
こんな状況なら、キラなら間違いなく飛び出していただろう。自分ですらちょっとだけ飛び出したい衝動に駆られているのだから、彼なら尚更だろう。
「さて、どうしたもんか。オーブ軍はお嬢ちゃんの様子を鑑みるに余り期待できない。しかし、このまま大西洋連邦の行為を見逃しておく事は出来ない」
ここに連れられてきた時点で、デュランダルの思惑に乗ってしまっていたということか。しかし、キラを守れただけでもよしとする事にした。自分が身代わりになる分には構わない。
『バルトフェルド、君に協力をお願いしたいのだが』
バルトフェルドが思考を廻らせていると、まるでこちらの心の内を読んでいたかのように、モニターからデュランダルが話し掛けてきた。
「私が出るしかないと踏んだ上で仰っているのなら、一言お礼の言葉がほしいものですな。こちらは、タダであなたのキャスティングに加わっているのですから」
『君は代役だがね』
デュランダルとしてはキラを連れて来たい所だったのだろう。しかし、実際にやって来たのはバルトフェルドである。これはデュランダルの構想の範囲外の人選だ。
そんな不満を押し出すデュランダルに、バルトフェルドは不快感を顔に顕す。
『なら、君がやって見せればいい。そうすれば、君を主役に取り立ててやることも出来る』
「何事も、あなたの筋書き通りになると思わないで頂きたい」
『しかし、君はそのフリーダムで出撃する。ミネルバのカタパルトハッチからな』
「くぅ……!」
覚悟を決めるしかない。オーブで戦いが行われている以上、キラ達にも危害が及ぶのは目に見えている。ならば、彼が執る行動は一つ。
「了解しました。フリーダムを出します」
『期待しているぞ、砂漠の虎』
苦渋に満ちた表情で決断するバルトフェルドに対し、デュランダルは顔色一つ変えずに言う。それが、バルトフェルドには悔しかった。今は、彼の思惑通りに動くしかない。
フリーダムをカタパルトに移動させ、ハッチの解放を待つ。前方の暗闇から徐々に光が拡がっていき、美しいオーブの海が視界の中に入ってきた。そこで行われる醜い争いも同時に。
「フリーダム、カタパルト設置完了」
固くスロットルレバーを握り締め、各種設定を確認する。後は発進のサインを待つだけだ。
『進路クリア、フリーダム発進どうぞ!』
「アンドリュー=バルトフェルド、フリーダム出るぞ!」
掛け声と同時に猛烈な加速が掛る。舌を噛まないように口元を食いしばり、体を硬直させる。ハッチの出口の光があっという間に大きくなり、フリーダムは空に開放された。灰銀の装甲がフェイズシフトを展開し、鮮やかな色に染まっていく。
背中の六翼を大きく開き、その威容を見せ付けた。
「あれはフリーダム!ミネルバは砂漠の虎を出したのか!?」
その姿を見て、シンは驚く。元はザフトのエースだったとは言え、今はオーブに魂を売ったバルトフェルドなんかに助けられたくはなかったからだ。そして、それを信用してフリーダムを預けたデュランダルの思惑が、分からなかった。
『フリーダムはインパルスと共同で敵部隊の各個撃破をお願いします』
「了解した。よろしく頼むぞ、少年!」
メイリンからの通信内容に頷き、バルトフェルドはシンに呼びかける。
『俺はあんたを認めないからな!』
「結構、それでこそ若者だ。その情熱で、俺を驚かせてくれたまえ」
バルトフェルドからの思いがけない言葉に、シンは何て奴だ、と思った。そして、その口調は紛れもなく二年前に活躍した砂漠の虎である。人を食ったような会話こそが、彼の真骨頂なのだ。
「この感じ…懐かしいねぇ。俺はやはり、根っからの軍人らしいな!」
いきなり目の前に現れたダガーLを、ビームサーベルで薙ぎ飛ばす。胴体を両断されたダガーLはそのまま落下しながら爆散する。流石はフリーダムである。いい動きをする。
出撃前の鬱屈した気持ちが嘘のように晴れやかだ。フリーダムに乗ってカタパルトを発進し、戦場に躍り出た瞬間、バルトフェルドの中のスイッチが入った。今フリーダムのコックピットに居るのは、ザフトのエースであった頃の砂漠の虎である。
「次ぃ!」
続けざまに切りかかるフリーダム。二機で襲ってきたダガーLも、ビームサーベルの一振りでまとめて撃墜する。
「もう一丁!」
更に続けるフリーダムは、今度は自分から躍り掛かる。駆け抜けざまにビームサーベルを抜き、またもや二機まとめて切り落す。そんな高速の攻撃に、フリーダムの後方で爆炎が起こった。
「す、凄い!」
「フリーダムの性能を使い切っているのか」
ミネルバの甲板で砲撃を繰り返すルナマリアとレイは、バルトフェルドの操るフリーダムの動きに感心していた。その様な余裕が出来たのも、フリーダムの出現により、敵の攻撃頻度がミネルバからそちらに移ったからだ。
「フリーダムだからって…俺だってあの位!」
シンの目にも、フリーダムの凄まじい動きが見えていた。しかし、シンはその活躍を認めたくなかった。赤服として、インパルスのパイロットとしてのプライドがある。
「てぇぇい!」
ビームライフルを抜き、ビームを連射して一機、二機と落としていく。
『やるじゃないか、少年』
インパルスの獅子奮迅の動きを見て、バルトフェルドが話し掛けてきた。その口調に、何処までも人を馬鹿にした人だと思う。
「うるさい!俺はシン=アスカだ、少年じゃない!」
『失礼。じゃあ、俺がトップを張るぞ』
と、唐突にフリーダムが敵陣の中に向かっていく。
「お、おい!?」
『大丈夫だ。フリーダムの後ろは任せる』
敵陣をある程度の距離に据え、フリーダムは空中で制止して全砲門を前方に展開する。右のマニピュレーターにはビームライフル。両肩からせり出しているのはバラエーナ。両腰から伸びているのはクスィフィアス。
「俺はキラのように急所を外してやる事は出来んからな。死にたくない奴は自分で避けろよ!」
フリーダムのメインカメラが煌き、全ての砲門から一斉に攻撃が開始される。五つの砲撃を何発も撃ち、相手に回避させる余裕を与えずに次々と撃墜していく。二年前にキラが得意としていたマルチロックによる一斉射撃である。
ただし、バルトフェルドとキラが違うのは、その精度である。キラは極力急所を狙わずに攻撃できていたのに対し、バルトフェルドにはそこまでの精度を調節できない。ある意味、この攻撃はキラだからこそ完璧な形で実行できるといえる。
しかし、だからといって威力が変わるわけでもない。故にバルトフェルドが操るフリーダムの一斉射撃は、敵MSを次々と撃墜していく。
「NJC無しでも、武装に差があるわけじゃないが…チィ!やはりガス欠か!」
ある程度の敵を撃墜する事は出来たが、早くも警告音が響く。バッテリーの残量が尽きかけているのだ。
「アスカ君、こちらは一時後退する!戦線の維持を頼むぞ!」
『な!?』
シンにそう告げると、バルトフェルドはフリーダムをミネルバへと向けて、一目散に後退していく。そして、シンの目の前には大西洋連邦軍の後続が現れた。
「あのおっさん!偉そうな事をほざいておきながら!」
自分はバルトフェルドに振り回されていると思った。確かにフリーダムの攻撃で一時的に敵の攻撃を減衰させることが出来たが、それも直ぐに盛り返してくるだろう。凄まじいまでの攻撃力を見せ付けたフリーダムだが、倒した敵の数はそう多くない。
「ミネルバ、援護が薄いんじゃないか!?俺だけじゃ、戦線を維持できないぞ!」
やや、やけくそ気味にシンはマイクに向かって怒鳴る。その向こうで、メイリンが何か文句を言っていたような気もしたが、そんなことに構っている余裕がシンにはない。ひたすら目の前の敵に向かってビームライフルを撃ち続けた。
「フリーダム、戻ってきます!」
「デュートリオンビーム照射準備」
「了解、デュートリオンビーム照射準備!」
ミネルバのブリッジで、タリアの命令を復唱するメイリン。
フリーダムに積まれているバッテリーエンジンは、シンのインパルスと同じものである。それは、ミネルバから照射されるデュートリオンビームによって瞬時にエネルギーを回復できるという優れものである。
基本的に無限動力である核分裂エンジンであった二年前のフリーダムほどの継戦能力はないが、エネルギーを回復できる分、無限動力に近い性能を誇っているのが、このフリーダムである。
ただし、エネルギー回復の為に逐一ミネルバの近くに戻らねばならないのが唯一のネックだった。
『直ぐにビームを発射してくれ!アスカ君一人では、あの数は持ち堪えられない!』
「了解です!デュートリオンビーム、発射!」
ミネルバからフリーダムの頭部アンテナの中央部へ向かって細いビームが照射される。それを受け、コックピット内のバルトフェルドはエネルギーの回復を確認する。
「エネルギー回復確認!再び前線の援護に出る!」
『こちらでも確認しました。ご健闘を祈ります!』
このフリーダムの弱点は、搭載火器の燃費の悪さだ。威力は現時点での最高クラスを誇っているが、何分エネルギーの消耗が激しい。
バルトフェルドが最初、ビームサーベルでの攻撃しか行わなかったのは、一斉射撃を使えば直ぐにエネルギーが尽きてしまう事が分かっていたからだった。
しかし、思った以上の敵の数に、バルトフェルドは一斉射撃を使わざるを得なかった。それに、もう一つ気付いた点がある。
(おかしい…フリーダムの動きはこんなものではないはずだ。キラのフリーダムは、もっと動きが鋭かった)
初めは気分が高揚していて上機嫌だったが、徐々にフリーダムの動きの鈍さに気付いてきた。それでも十分な性能を誇ってはいるが、本来の動きが出来るならば、この程度の数はもっとエネルギー効率を考えて戦ったとしても十分お釣りが来るはずである。
なのに一斉射撃を使うしかなかったのは、このフリーダムがキラの操っていたフリーダムよりもデチューンされているということか。
「こんなのがオーブ防衛の切り札になるものか!デュランダルの言っている事は出鱈目だ!」
デュランダルに対して不満を口にするバルトフェルド。しかし、彼は勘違いをしていた。この新たなフリーダムは、キラの手が入っていないのだ。OSの最適化をしなければ、二年前のような真価を発揮する事ができない。
だからこそ、デュランダルはフリーダムにキラを乗せたかった。
「だが、やるしかない!俺がやらんで、誰がやると言うのだ!」
意を決し、バルトフェルドはシンが持ち堪えていてくれるだろう前線へ向かう。
と、その時レーダーに新たな複数の機影が表示される。それはオーブの本土から迫ってくる。
「M1アストレイ!オーブ軍が出たのか!」
それはようやく出撃してきたオーブ軍だった。一瞬、オーブ軍がザフトの敵に回るのかと懸念したが、それは杞憂に終わった。オーブ軍は、大西洋連邦に対してのみ攻撃を仕掛けている。
オーブの対応はかなり遅かったが、助かったのは事実である。数で劣るミネルバにとっては、オーブの救援は実にありがたい。バルトフェルドはフリーダムに乗っていても、キラのような活躍が出来ない故に、余計にそう思えた。
「これで、少しは何とかなるが…デュランダルの目論んだ図式が完成した事にもなるか。ザフト・オーブ軍対大西洋連邦軍…一気に世界の縮図になっちまったな……」
溜息混じりに呟く。こうなってしまえば、もうオーブも無関係を装えない。この状況を見て、大西洋連邦もオーブがプラントの味方についたと認識しただろう。
助かったと思いつつも、やるせない気持ちのまま、バルトフェルドはフリーダムを加速させた。
オーブ本土、軍施設の周辺は慌ただしさを増していた。政府が大西洋連邦と戦う事を決めたのなら、オーブ軍はこれから本格的に防衛戦力の整備を始めなければならない。次世代主力MSであるムラサメの実戦配備も急ピッチで進められていた。
「M1アストレイを出せ!ムラサメは出撃できる機体だけでいい!」
「数が足りん!戦場が本土に移っちまうぞ!」
「この二年、何も無かっただけに、いきなりのこの状況では平静を保てないか…」
喧騒の中、アスランも自分に何かできると思い、空いているMSを捜していた。ここでカガリを守る為には、彼も二年前のMSパイロットとしての自分に戻るしかない。
その裏で、カガリがプラントの味方をすると分かった時、アスランは純粋に嬉しかった。袂を分かったとはいえ、プラントは彼の出身地である。そことオーブが敵対関係になるのは、正直避けたかった。
アスランは手近に居る整備兵に話しかける。
「何か空いているMSは無いんですか?」
「あ、あんたはカガリ様のボディーガードの…お仕事はいいんですかい?」
「こんな状況では、敵を追い払う方が正しいものの見方です。私もMSに乗って少しでも戦力の足しになればと」
「それは助かるな。じゃあ、あんたにはこの――」
「私たちにもMSを貸してもらえませんか?」
アスランにムラサメを貸与しようかと思っていたところに、駆けつけてきたエマとカツが会話に割り込んできた。彼女達も、オーブの為に何か出来ないかと思ってここへやってきたのだ。
「誰だ、あんた達は?」
訝しげに整備兵がエマ達に言う。当然だが、彼女達を怪しんでいた。しかし、それを遮ってアスランが前に出た。
「ちょっと待って下さい。――あなた方はここを何処だと思っているんです?ここは民間人が入って来ていい場所ではない。直ぐに避難を――」
「MSの心得ならあります。今は少しでも戦力が欲しい時ではないんですか?」
「MSの操縦が出来るって――何者なんです、あなた達は?」
アスランは当然エマ達を信用しない。エマとしては、それは分かりきっていた事だったが、バルトフェルドが戦場に出た以上、何かをしなければと思っていた。
「私達の知り合いの方がザフトの味方をしているんです。彼を少しでも助けたいと思って――」
「バルトフェルドさんがフリーダムで出ているんです!僕たちは、あの人にお世話になったんです!だから――!」
「バルトフェルドだって!?それに、フリーダムって――本当なんですか?」
状況が上手く飲み込めないアスラン。エマ達の言っている事が本当かどうか、整備兵にオーブの監視班からの報告を訊ねる。
「あ、あぁ。本当らしい。テレビでも映ってる」
それを聞き、アスランは再び顔をエマ達の方に向けた。
「バルトフェルドが乗っているなら…じゃあキラやラクスは?」
「彼等は安全な場所へ避難しています。私達は、彼等と別れてここに来たんです」
「キラを知っているって事は、あなた方が最近オーブに越して来たって言う――」
「は、はぁ…そうです。エマ=シーンとカツ=コバヤシです」
別にエマとカツはオーブに引っ越してきたわけではない。偶然ここに流れ着いただけで、住み込むつもりは無かった。しかし、バルトフェルドはそれでは不便だろうと思って、勝手にオーブの住民票に登録していたのだ。
勿論、本来エマ達はこの世界に存在するはずの無い人物なので、経歴やその他諸々を詐称してあるが、カガリの知り合いであるバルトフェルドのすることなので、役人もそれ程厳しく咎めなかった。
「でも、MSの操縦が出来るって事は、以前のバルトフェルドと知り合いで?」
「そうです。部下を――やっていました」
「そうか、それなら話は早い。お力添えをお願いします」
「任せてください」
バルトフェルドの知り合いということで、アスランはエマ達に協力を申し出た。それに対し、整備兵は何処か不満げだ。彼女たちのMSの手配を他の整備兵に任せた後、アスランの耳元に話しかける。
「本当にあんな女子供に任せていいのか?どう考えたって怪しいだろ」
「大丈夫です。もし、彼女達が嘘をついていたとしても、私が好きにさせません」
「そりゃあ、あんたのMSパイロットとしての腕は認めるよ?けどな、それとこれとは話が別だ。折角造り上げたムラサメを壊す羽目になるのだけは勘弁してくれよ」
「分かっています。彼女達の言葉が真実なら万々歳、もし違っていたとしても、情報を引き出すこと位は出来るはずです」
「頼むぜ、ヤキンの英雄さんよ!」
整備兵はアスランの背中を叩いて乾いた音を響かせた。それに反応する事無く、アスランは目の前のムラサメに乗り込む。
エマとカツも、直ぐにムラサメのところに連れて来られた。整備兵から簡単な説明を受けた後、彼女達も臨戦状態のムラサメに乗り込んだ。
『エマさん、カツ君、準備は宜しいか?』
コックピットシートに腰を埋め、シートベルトを締めると直ぐにアスランからの通信が入ってきた。
「大丈夫です。…えっと――」
『アレックス=ディノです。このムラサメはオーブの最新型なので最初は戸惑うかもしれませんが、何とか私についてきて下さい』
「了解です」
アスランからの通信が切れ、それと同時に彼のムラサメが飛び立つ。そして、今度はカツが通信を繋げてきた。
『エマ中尉は可変機は初めてじゃないですか?僕にちゃんとついて来て下さいね』
「カツ!」
エマがヒステリックな声を上げると、カツは即座に通信回線を切り、アスラン機の後を追っていった。
カツはエマよりも可変機の操縦に自身があった。エマはリックディアスやガンダムMk-UといったスタンダードなMSしか乗っていなかったが、カツは支援機型MAであるGディフェンサーや、ムラサメ同様の可変型MSであるメタスに乗った経験もあった。
故に、最初は間違いなくエマは戸惑うだろうと踏んで、日頃叱られている恨みを言葉に託したのだ。
「変形アーマーだって、基本は同じでしょ!エマ=シーン、行きます!」
カツの暴言に頭に来たエマは、声を荒げてムラサメを発進させる。好都合な事に、操縦系統は自分の世界のMSとそれ程変わらない。後はMAに変形した時の操縦感覚次第だが、カツにあんな生意気な口を利かれたのでは、上司としての自分の立場が無い。
この怒りを力に変え、エマは気合を入れてムラサメをMAに変形させた。
今回は以上です。今日は規制に掛らずに投下できました。
……ちょっと嬉しい
一言だけ言わせてもらう。
GJ!
乙ッジョブ。
議長がやり手でイヤミだなぁw悪印象持たれるのはやりすぎだぜ。シンもレイも青い青い。
GJであります!
いよいよエマとカツのMS戦ですね
UCでのMSの戦い方を魅せてくれ、エマ中尉!(ついでにカツもW)
…とはいえ、いきなり訓練もなしにCEのMSに乗って戦うのはちと?な感じもしますが
いくらUCでのMs戦の経験が豊富とはいえぶっつけ本番ですからね〜
ラクスの秘密基地の中にAAの格納庫にあったシミュレーションみたいなものがあって
一回位でも訓練みたいな事をしていればよかったかも
いや、虎が警戒してたから無理かな、やっぱ
次回も期待しております!
>>72 まぁ、同じ目的で同じようなモノ作ってるんだから、操作方法だって全く見当も付かないほどじゃないだろう。
ましてムラサメならナチュ用のOS載ってるんだし。
しかしCEのOSは微妙な気がする
コーディ用のOSは操縦のサポートがほとんどないからごく一部を除いて複合動作をさせようとすると的になり
ナチュ用のは基本動作以外にも必要以上にオートで動かすから的になる
主人公だけは戦闘中でも楽々最適化で、問題ないようだけどねー>OS
ガサラキをちっとは見習え、シナリオライター
そういえば、カミーユってはじめてMSに乗ったとき自分に乱暴したティターンズの兵士を笑いながら踏み潰そうとしたんだよな。
シンでもしないんじゃないか?そんなこと(笑)
カミーユは色んな意味でまっすぐなんだよ
その時にやりたいと思った事をその通りにやる
シンは相手を批難する割に、自分も同じような事をやってそれを正当化しようとして自己矛盾に陥る
カミーユ→民間人
シン→職業軍人
この違いは恐ろしくデカい
そうそう
ファは軍人になったけど、カミーユって最後まで立場上は民間人なんだよな
つーか、エゥーゴって一応は非合法組織じゃなかったっけ?
階級はあったけど、それって連邦の時の階級だろ?
連邦軍内の派閥だろ?
新板ならではの混乱ですな、エゥーゴは反地球連邦組織で非合法ですが改革路線であり、保守派で正規軍でありながら数々の暴虐無尽を働いたティターンズの危険性を訴えていた為、連邦軍内にもシンパが増えて行ったという経緯があります。
シャアのダカールでの演説で立場が逆転、ティターンズ打倒後は連邦軍主流に徐々に吸収されていきました。
つーかティターンズ打倒で精一杯だったんでネオジオンに好き放題される結果に
まあ内戦・派閥抗争であった分いろいろあやふやな点があるわけだが、
それはそうとカツは次回のCE初陣で早くもデブリ…じゃないか、海だから
岩礁にでもクラッシュして血と内臓の桶((c)禿小説)に300万ボール。
死人が増えるほどカミーユのNT能力は肥大していく
カミーユはイデだから
そのときカミーユが発動した
カミーユ=イデ。
ちょっと納得…
カミーユがバイストウェルに召還されてたら、物凄く強力な聖戦士になったんだろうな
地上に出たときに遠慮なく両親を踏み潰す悪寒。
いやカミーユは両親のことそこまで嫌ってないだろ
いてもいなくてもいいって程度じゃないかと
本気で嫌っていたら錯乱しない
カミーユの言動は自分の「親」をきちんとやって欲しいという欲求から来る反発
逆説的だが親の愛に飢えているというのは親が好きだって事
カミーユ♪カミーユ♪って言うなよ!
カミーユってのが俺だって誰にでも判ってしまうだろ!…(笑)
カミーユ氏GJ!です。
原作では、空気だった虎が熱くてイイ感じだな!
やっぱ戦争なんだから不殺とか(ry
この戦闘の連合側にティターンズの誰か混じってんのかな?
ザムザザー→ブラン
ウィンダム→ジェリド&カクリコン
艦艇→ウッダーとか?
って言うかシロッコとの戦いの時にカミーユに味方した女性達の扱い(敵or味方?)は、どうするのかな?
次回も楽しみにしてます!
一つだけ気になってることがあるんだ。
虎さんてさ。ひょっとして『あの』パイロットスーツ着てないよな?w
ディアッカのと同じ緑のじゃね
>>96 さすがにないでしょw
着てたとしたら、マルキオハウスから持参ですよ。アナタ。
あの緊急時に。
でも米の国の超男や蜘蛛男は普段着の下に戦闘服着てるんだぜ?
シンは、もう敵艦はすぐそこだというのに、敵のMSの動く気配がない事に不審に思った。
そのとき、ロックされていることを告げるアラームがなると同時にビームが飛んでくるのを目視する。
「何!?攻撃!?」
『なんなのよ!こいつら!?』
ビームの飛んでくるほうを見ると強奪された三機がビームを連射しつつこちらに向かってくる。
ブラストとザクは敵の一斉射撃を間一髪で回避する。
しかし、ショウのゲイツRがビームの雨に成す術なく打ち抜かれ、爆散する。
『ショウ!』
ルナマリアが叫ぶ。しかし、ビームの雨は止まず反撃するにも身動きが取れない。
シンは突然の奇襲に身動きを取れない上に、仲間を失ったことで逆上していた。
「くそっ!待ち伏せか!?」
第三話「見えない導き手」
―――落ち着くんだ・・・後ろから狙われてるぞ・・・―――
「えっ!?」
あの少年の声と思われる声が聞こえる。その声の通りに背後からカオスの機動兵装ポッドからビームが撃たれようとしている。
シンはすばやく回避して、少し落ち着きを取り戻すと指示を飛ばす。
「各機散開して応戦だ!・・!?ボギー1が!!?」
レーダーに映っていたはずの敵艦ボギー1がロストしている。シンは突然のことの連続で動揺した。
アビスのパイロット、アウルはこの隙を見逃さなかった。すかさずアビスのフルバーストがインパルスを襲う。
寸前で回避してフルバーストが目の前を横切り、シンは冷汗をかく。
ルナマリアのザクが応戦してアビスにライフルでけん制するが、ガイアの援護で狙いをつけられない。
そして、後方でゲイツRがカオスのビームを防ぐもミサイルの直撃を受け、機体が光球に飲み込まれ、パーツが吹き飛ぶ。
「味方が!?まずい、囲まれる!」
『デールまで!!』
その頃、ミネルバもロストしていたボギー1に背後を取られ防戦一方だった。
更に、ボギー1からダガーLが発進し砲撃を開始しようとしていた。
「ミネルバが!?でも、この状態じゃ、戻れない!」
『なんとかしないと!!』
「分かってる!」
インパルスは廃棄されたコロニーへと移動しつつ、ライフルを捨て、ケルベロスで砲撃し敵を近づけさせない。
―――上に敵が・・・。・・・今だ、撃て!―――
「そこだっ!」
シンは反射的にその声の通りにケルベロスをインパルスの頭上に放つ。
カオスは回避するが兵装ポッドが一基巻き込まれ、カオスの右肩のアーマーを焦がす。
『ちっ、なんて奴だ!!』
「やった!」
―――・・・まだだ、もう一機・・・来るぞ・・―――
ガイアがサーベルを抜いて接近してくる。しかし、ルナマリアがライフルを捨ててオルトロスでそれを妨害する。
インパルスはミサイルを一斉に発射して弾幕を張り、ケルベロスによる砲撃を行う。
『そう簡単に当たるかよ!!』
「行けぇ!!」
ケルベロスから放たれたビームは一直線になり、そのまま砲を縦に振る。
ビームは偏光ミラーを両断し、三機の戦力を分断する。
『ッ!!無茶苦茶するぜ!!』
『アウル、お前はあのドッキング野郎の先に回りこめ!』
『へーいへい』
『ステラはその赤い奴と遊んでやれ!』
『わかった』
シンは敵の攻撃を回避しつつ、インパルスをコロニーの残骸の通路へ進め敵をおびき寄せる。
ルナマリアは、果敢に接近戦を挑んでくるガイアに苦戦を強いられていた。
ガナーザクウォーリアは砲撃仕様であるため、接近戦向きの機体とはいえなかった。
さらには、この近距離では狙いをつけられるはずもなく、けん制にもならない。
それでもルナマリアがこの状態を保っていられるのは赤服としてのプライドだった。
しかし、サーベルをシールドで受けたとき、ガイアの蹴りを食らって弾き飛ばされる。
『ああっ!!』
突如シンの目の前にルナマリアのザクが弾き飛ばされ壁にぶつかる。
シンは追撃してきたガイアにケルベロスをお見舞いする。
ガイアはすばやく回避し、姿を消す。
「ルナ、大丈夫か!?」
『何とかね!』
―――油断するな!意識を集中するんだ・・・前から来るぞ!ミサイルでかく乱するんだ・・・―――
「ッ!そんな簡単に!」
ザクが後退すると同時にミサイルを全弾発射して突っ込んでくるアビスをかく乱する。
『こいつ!』
―――今だ、撃て!―――
「遅い!!こっちだ!!」
アビスは爆風を吹き飛ばすように見えたビームを回避し切れなかった。
左肩シールドのビーム砲に直撃して爆発を引き起こす。
『うわぁあ!!』
『アウル、畜生!!』
カオスはビームで弾幕を作りつつ、アビスに駆け寄りアビスは体制を立て直す。
その隙にインパルスとザクは砲撃しつつ後退する。
一方、ミネルバからレイのザクが出撃し、ネオ・ロアノークが操るMAエグザスと交戦していた。
レイはミネルバに砲撃をかけるダガーLをどうにかしたかったがネオがそれを阻む。
エグザスのガンバレルが分離してレイのザクにオールレンジ攻撃を仕掛けるが回避しつつ反撃をし、互いに互角だった。
『俺の攻撃が当たらない?何なんだ君は、一体?白いボウズ君!』
普通のパイロットならば、最初の一撃を回避するのも難しいであろうこのエグザスのガンバレルをいとも容易く回避する白いザクが、
ネオには自分を小馬鹿にしているように思えたのだ。
だが、苛立たしさを口にしながらもエグザスを操るネオの技術に乱れはなく、むしろ正確だった。
レイもガンバレルを回避しているものの、実際には回避することに集中しており二機のダガーになかなか追いつかない。
「・・・・ッ!!」
レイはガンバレルを回避しつつ、目視で確認したダガーへビームを撃つ。
ビームはダガーへ吸い込まれるようにしてコックピットを貫き、パイロットは自分が死んだことにも気付かずに意識を消失させた。
『・・・この感覚!やはり只者ではないな!』
ネオはビームを回避しつつダガーへの正確な射撃で何かを感じ取る。
対するレイもガンバレルの操作、この隕石群での操作技術以外から同様に何かを感じ取る。
そして、二人は同時に対する相手以外からもこの宙域で自分たちと通ずる何かを感じていた。
「これで!!」
ザクのファイヤビー誘導ミサイルが一斉に発射され隕石を一掃してダガーとザクの間に遮るものがなくなる。。
すかさずレイはライフルをダガーへ向け、正確な一撃を与える。
二機目のダガーも打ち抜かれたあと一瞬動きが止まり、爆散する。
『こうも簡単に落とされるとはな!!』
ネオも部下を二人失って黙っていられるほどの人間ではなく、ザクへ向けて猛攻をかける。
二機は、互いに一歩も引かずの激しい攻防戦を繰り広げる。
一方、シンとルナマリアは三機の連携の前に善戦していた。
カオスも兵装ポッドで狙ってくるがシンはあの声に従って正確に回避していく。
『こいつこの前と動きが違うぞ!!後ろに目でも付いてるってのか!?』
『なんなのよお前たちはぁ!!』
『させないわよ、この泥棒!』
ガイアで食いつこうと付いていこうとしたがザクのオルトロスが立ちはだかる。
二機の砲撃があって近づけさせてもらえない。
そのとき信号弾が発光して、あたりを照らす。
『チッ、アウル、ステラ撤退だ。』
『撤退・・・帰るの?』
『アイツ・・・次は必ず・・!』
「逃げるのか・・?」
『こっちもミネルバに急がないと。』
―――大丈夫だ。船は無事だ・・・―――
三機は反転して逃げていく。シンもルナもそれ以上は追おうともしなかった。
二機のエネルギー残量もほとんどなかったからだ。
シンは深く息を吸ってその声に身を委ねる。戦闘のときもその声に従うことに不安がなくむしろ安心できた。
二機は、機体を反転させてミネルバへ向かう。
ミネルバはアスランの機転とレイの迎撃により何とか難を逃れたが、ボギー1に逃げられてしまった。
また、ミネルバは今回の戦闘で受けたダメージが大きく、強奪部隊追撃は一時断念された。
着艦したシンはあの少年に礼を言わなければならない気がした。
「助けられちゃったもんな・・・」
シンは、ひとまず戦闘が終わったことで一息ついた。ミネルバ全体も緊張していた空気から開放された。
しかし、そんな休息も長くはなかった。
静かにただ静かに、ユニウスセブンは地球への落下コースを取っていた。
そして、少年は眠りから目覚めようとしていた。
規制かかっちゃいましたが、ひとまず第三話投下です。
初リアルタイムでGJ
投下乙!
乙です
このシンはカミーユの声に安心感を感じるのですね
ユニウス落下の時、開きっぱなしのカミーユにどんな影響が出るのか楽しみです
・・・ゲイツに乗ってたのはショーンとデイルって名前なんデスヨ・・・
みーんなワスレるんですケドネ・・・
GJ!
>>108 逆に考えるんだ。
カミーユが来たこの世界では、『ショーン』『デイル』ではなく『ショウ』『デール』がミネルバに載っていたと。
ま、運命は一緒だがorz
110 :
108:2007/05/31(木) 16:51:43 ID:???
>>109 そうですね!
それできっと本編とは関係ないところで、『ショーン』『デイル』は生きているんですよね!
あれ?
いや、方言なんだ。発音が微妙に違うんだ。
あれ?結局DEAD・・・
>>108 ご指摘ありがとうございます。
映像確認したらやっぱり「ショーン」と「デイル」でしたorz
一応、この話ではミネルバに乗っていたのはショーンとデイルではなくてショウとデールでと思いましたが、
それだと今後、誤解を招く恐れがあるので申し訳ありませんが「ショーン」と「デイル」に脳内変換でお願いします
久しぶりにきました
◆x/lz6TqR1w
新連載乙です
エマが『自分の都合で、大人と子供を使い分けないで』
って台詞で、キラやラクス、その他に説教するのかwktkしてます
◆1ITb1290kc
続き楽しみにしてます
病人になっても史上最高のNT能力は健在だなカミーユは
精神崩壊カミーユは人の精神みたいなリミッターがなくなってNT能力が更に上昇してるのでは?
と、思う今日。
カミーユは能力に精神が耐えられなかったし
禿曰く
カミーユは人間の許容範囲を超えるほどの最高NT能力だから壊れた
つう設定だからな
『共同戦線』
ザフト・オーブ軍と大西洋連邦軍との戦いは続いていた。カガリの別荘から避難してきたキラ達は、付近の軍施設シェルターに身を潜めていた。
「ここまで来れば大丈夫だと思うけど…」
「カミーユが震えちゃってるよ!」
キラが安堵していると、子供の一人がカミーユの様子に気付き、告げてきた。キラが視線をカミーユに向けると、ユニウス・セブンが落ちてきたときと同じ様に体を小刻みに震えさせていた。子供たちが、そんなカミーユに寄り添って慰めている。
「エマ様もカツ様も、彼をここに置いて行ってしまって良かったんでしょうか」
抑制した声でラクスが言う。普段は穏やかな表情を崩さない彼女も、この状況に不安になっているのかもしれない。
「エマさん達って、MSに乗れるって言ってたけど、どういうつもりなんだろう?」
「もしエマ様とカツ様が軍の関係者の方であっても、わたくし達にとって悪い人たちでは無いと思いますわ。そうでなければ、もっと早くにわたくしを狙っていたはずですから」
「うん…それに、バルトフェルドさんが気を許していたくらいだし、僕もエマさんやカツ君を信じてるよ。でも――」
キラは考える。エマとカツが軍人だとすれば、一体どの組織の人間なのだろうか。初めて彼等と会ったとき、どちらも似た制服を着ていたが、その制服は連合にもザフトにも当てはまらないものだった。
キラでさえ疑いを持つのだから、バルトフェルドなら即座に彼等に対してアクションを起こすはずだ。しかし、実際には彼女達とは懇意に話している場面しか見たことが無い。
(だったら、もしかしたらバルトフェルドさんは最初からエマさん達の事を知っていて――いや、既にアクションを起こしていて、エマさんの事を信用できる人だって判断したのかもしれない)
そう考えれば辻褄は合うが、納得できないのが、どうして彼女達の事をバルトフェルドが隠していたかだ。エマ達の素性を知って、危険性が無いと判断したのなら、何故自分にその事を教えてくれなかったのだろうか。
ふと、キラはいつぞやのバルトフェルドが不思議な事を言っていたのを思い出した。別の世界がどうとか言っていたが、それと何か関係しているのだろうか。
「考えても仕方ないか。今は早く戦いが終わる事を祈ろう」
「そうですわね…子供達も疲れていますし。つい先日ユニウスが落ちてきたばかりだというのに…」
憂いを秘めた目でラクスは狼狽して座り込んでいる子供たちを見やる。カリダやマリアが何とか慰めてはいるが、何時までもこのままではいられない。
キラは拳を握り締める。何も出来ない自分が悔しい反面、もしまたMSに乗るようなことになったらどうしようと思っていた。
二年前にラクスから、強奪したフリーダムを託された後、キラは極力人を殺さないように戦っていた。それは、できるだけ人に死んで欲しくないからだったが、本心はただ人を殺すのが怖かっただけなのかもしれない。キラは最近そう思うようになってきた。
ただ、自分には力があった。望んで得た力ではなかったが、少なくとも人殺しの為の力ではないと思っていた。神業のような精密射撃によって、フリーダムに乗った後のキラは無敵に近かった。その技術によって、キラは腫物に触るような戦いをしていた。
(結局、僕は自分の弱い心の言い訳の為にあんな戦い方をしたのか…?)
二年前の自分がどう思っていたかは覚えていない。二年前を忘れようと過ごしてきたからだ。
しかし、キラは二年前を忘れる事は出来ない。フレイというかつての少女の存在が、今のキラと二年前のキラを結び付けているからだ。彼女無くして、今のキラの存在はあり得ない。
「キラ…無理はしないで下さい。あなたは、今はまだ――」
「無理はしないよ。でも、今の自分が――みんな必死になっている時に逃げることしか出来ない自分が、どうにも情けないんだ……」
ラクスの励ましも、キラには届かない。ラクスは、キラがまだ心の整理が出来ていない事を知っていた。だから、今はまだ無理をするなと言ったが、彼は彼女の言葉を単純に受け止めていた。
キラが二年経っても未だに気持ちを消化できていないのは、傍から見ればただの情けない男に映るかも知れない。しかし、結論が出るまで何度も考え続ける彼には、二年はまだまだ短い。
哲学に終わりは無いとはいえ、一度確立できたと思っていた持論にふと疑問を持ってしまった彼は、再び答を求め始めた。
普通はどこかで妥協するものだが、キラの考える戦いに対する哲学は、相手の事を考えるあまりにちゃんとした形になるまでは妥協できないのだ。そして、キラはそれが自分の主観による一方的な価値観の押し付けである事に気付いていない。
「キラは休んでいてください。あなたが答を見つけるまで、わたくしがあなたの代わりに皆さんをお守りしますから。…でも、できるだけ早くしてくださいね?あまり待たされると、あなたの事、嫌いになってしまうかもしれませんから」
「え…?」
にこやかな顔でキラに発破をかけてくるラクス。そんな意外な言葉に、キラは動揺した。ラクスに嫌われるなんて事を、今まで考えた事が無かったからだ。彼女はいつまでも自分の最高の理解者で居てくれると思っていた。
しかし、それはキラの一方的な思い込みだったのだと思い知らされてしまった。
一方のラクスは本気で言ったわけではなかったが、このまま出口の見えない思考の迷路を辿っているよりは、少しでもきっかけになるのならこんな言葉も掛けてみるべきだろうと、キラを見ていて思うようになっていた。
「ラ、ラクス……」
「子供たちの前ではそんな顔をしないで下さい。今一番頼りになるのは、キラなんですから」
いつもより少し厳しいめに言うラクス。こんな状況では、何時までも優しくしてあげられない。
「分かったら、もう少しキリッとしていて下さいね。虚勢でも何でもいいですから」
「う…うん、分かったよ……」
まるで母親のように言ってくるラクスに、キラは思わず子供のように返事をしてしまった。カリダも母親だが、ラクスも母親のような存在に思えた。今までは恋仲だと思っていただけに、意外と尻に敷かれてしまうのではないかと危ぶむ。
それも意外と悪くないと思ったところで、考えをやめた。自分にマゾ気質があるのではないかという疑惑が浮上してきたからだ。こんな状況で、自分の性癖を考えるのは不謹慎だ。
(そうだ…今はここに居るみんなを守る事だけを考えればいいんだ!それが、今の僕に出来る精一杯なんだから――!)
表情に力を込め、キラは両手で頬を叩く。気合を入れ直し、バルトフェルドやエマ、カツの活躍に思いを馳せた。
ミネルバ隊とオーブ軍は協力して大西洋連邦軍に対抗しているが、戦線は徐々にオーブ本土に近付いていた。フリーダムという一騎当千のMSが居るとはいえ、如何せんバッテリー動力ではずっと最前線で戦い続ける事は出来ない。
何度もミネルバとの間を行き来しているが、その間に少しずつ戦線の後退を余儀なくされているのが現状だ。
「さっきよりも敵の数が多くなってきてる…!フリーダムが出たからか?」
苦い表情でシンは呟く。インパルスも高性能ではあるが、如何せん火力の差がある。基本兵装であるビームライフルとビームサーベルだけでは、フリーダム離脱中の穴埋めは出来ない。
「オーブが出てきたって、これじゃあ!」
『シン、ミネルバがタンホイザーを使うわ!射線軸に気をつけて!』
「タンホイザー…陽電子砲を使うのか。…了解!」
文句を口にしていると、ミネルバのメイリンから通信が入った。タリアは、ユニウス・セブンを砕いたタンホイザーを使うつもりらしい。確かに、この状況では陽電子砲を使うのが、打開策としては妥当だろう。
「大西洋連邦め!好き勝手やってくれたけど、これ以上はやらせないぞ!」
『済まない、アスカ君!遅くなった!』
その時、三度目のエネルギーチャージに戻ったバルトフェルドのフリーダムが戻ってきた。シンは、そんなあまり頼りにならない高性能MSに舌打ちする。
『少しずつ押されているな…このままではいずれオーブが――』
バルトフェルドが苦々しげに言う。それに対し、シンは一つ鼻で笑った。もう、こんなロートルの手を借りる必要は無い。
「大丈夫ですよ。ミネルバがタンホイザーを使うって言ってます。フリーダムなんかよりもずっとか頼りになる武器をね」
『タンホイザー…ローエングリンの事か?』
「ザフトでは、タンホイザーです。…陽電子砲には変わりありませんけど、ね!」
遅い来るダガーLを、ビームサーベルで薙ぎ払うインパルス。
『ユニウスを砕いたって奴か?しかし、相手もタンホイザーの事を知っているのでは――』
フリーダムもダガーLを撃ち落す。
『それに、この布陣…ミネルバの動きに気付いているのではないか?』
「関係ありませんよ。ミネルバが撃てば、それで終わりなんですからね」
シンは勝利が目前とタカを括っているが、バルトフェルドは懸念していた。自分が前線に戻ってから、敵MSの数が減っているような気がしたからだ。
この意味が、もしバルトフェルドの考えている通りのものなら、大西洋連邦軍は陽電子砲に対して何らかの対策を持っている事になる。
「だから、もうあなたに頼る必要も無い。フリーダムなんか無くたって、俺達はやれるんだ!」
『熱血する分には結構だが、それは慢心というものだ。相手が俺たちよりも劣っているとは思うな』
「何言ってんです?分かりきった結果じゃないですか。連中がタンホイザーの事を知ってたって、撃っちゃえば終わりでしょ。砂漠の虎の癖に、そんな事も分からないんですか?」
既に頭の中で勝利のヴィジョンが出来上がってしまっているのか、シンは難色を示すバルトフェルドに対して挑戦的な言葉を吐く。しかし、バルトフェルドはそんなシンの戯言に耳を貸さない。少しでも目測を見誤れば、オーブは二年前と同じ轍を踏むことになるからだ。
「もう直ぐ終わりですよ。そうしたら、ちゃんとフリーダムは返してくださいよ。それは、俺達ザフトの物なんですから、あなたみたいなオーブの人間が乗るべきものじゃない」
シンの言い分に、最初は言わせておくままで居たが、流石にこの不穏な状況で聞いていられるほどバルトフェルドは穏やかではない。少しシンの声がうるさく感じた。
『戦場でお前の主観など聞きたくない。少し黙っていろ』
「な…何だと!?」
『敵がミネルバの射線軸を避けていく…先には空母があるのに?…あれは!』
一つ凄みを利かせ、シンに警告を与えた。そして、直ぐに戦場の空気を読んでみたが、どうやら敵はわざとミネルバに母艦をさらけ出している様にも見える。罠か、と思った時、大西洋連邦軍の陽電子砲対策と思われるMAが飛び出してきた。
「連合のMAか!あれがタンホイザーの対抗策だ!」
『えっ!?』
バルトフェルドは、そのMA――ザムザザーが陽電子砲の対抗策であると瞬時に見抜く。
『な、何でそう思うんだ?』
「ミネルバの射線軸とあのMAの位置を確認してみろ。タンホイザーの射線上にあのMAが居るはずだ」
シンは慌ててレーダーを確認してみる。
「あ――!」
バルトフェルドの言ったとおりだった。ザムザザーの位置は、ミネルバと正対するように位置を固定させている。
『と、言う事は、あのMAは何らかの方法でタンホイザーを無効化出来るという事だ』
「じゃ、じゃあ今タンホイザーを撃てば――!」
『無駄撃ちになるな。ミネルバのエネルギーを消耗させるだけだ』
「は、早く止めさせないと!」
『無駄だ。タンホイザーはもうエネルギーのチャージが完了する頃だ。今止めれば、暴発する』
「そ、そんな…」
『タンホイザーが無駄になるだけじゃない。恐らく、他の者達もタンホイザーに期待を寄せていたはずだ。だが、それが防がれるとなると、そのショックは大きいな。今のお前のように――』
「くっ――!」
悔しいが、バルトフェルドの言っていることが正しいのだろう。バルトフェルドの言葉を聞いて、自分の気が削がれている事に気付いた。勝利を確信していただけに、ショックは大きい。
そして、二機のMSが見つめる中、ミネルバのブリッジ下部から突き出した陽電子砲の砲身から紅い光が伸びる。それは一直線にザムザザーに向かい、無情にも弾かれた。ザムザザーは、陽電子砲を弾くリフレクターを持っていたのだ。
「あぁ――!」
それを眺め、シンの手から力が抜けていくのが分かった。自分の驕りが、このピンチを招いたのだと、自虐する。
「くそ…くそっ――くっそおおおぉぉぉぉぉ!」
悔しさの余り、絶叫するシン。通信回線から聞こえる悲鳴に、バルトフェルドは片手で耳を押さえた。情けない声を出すのは、彼がまだヒヨッコの証明だろうが、そんな事は今は関係ない。少しでも動いてもらわなければ、この窮地は超えられないのだ。
「悔しがっている暇があるのなら、あのMAを倒す算段を考えろ!喚いていたって、何も変わらん!」
『あんただって何も出来なかっただろうが!偉そうにほざくな!』
「そうかい?だがな、俺はまだ諦めたわけじゃない。貴様のようにな!」
言うなり、バルトフェルドはフリーダムをザムザザーに向ける。敵を一気に殲滅するには、やはりタンホイザーが必要だ。そう思い、バルトフェルドは決死の行動に出る。
『ミネルバ!次のタンホイザーのチャージまでの時間は!』
「え…れ、冷却完了までに5分、それから再チャージするのに3分で、発射可能になるのは今から8分後になりますけど…」
『了解、それまでにあのカニバサミを何とかする。タンホイザーは第二射の準備に入れ!』
それだけ言うと、バルトフェルドは通信を終えた。
ミネルバのブリッジでは、今のバルトフェルドの通信を聞いて、タリアが難色を示していた。艦長である自分を差し置いて、新参者のバルトフェルドが勝手に指示を出したのだ。少し、ムッとなった。
その感情が空気を伝染してしまったのか、ゲストシートに座るデュランダルが微笑んでいる。
「いいところを取られてしまったな、艦長?砂漠の虎としての野生が目覚めたようだ」
「…議長はお黙りください」
茶化すデュランダルに対し、タリアは振り向かずに応える。デュランダルからは表情が見れなかったが、声で怒っている事がわかった。きっと、ものすごい形相をしているのだろう。
「何とかするって言うのなら、何とかしてもらおうじゃないの――!冷却が終わり次第、タンホイザー・再チャージ開始!彼に伝えたとおり、8分後にタンホイザーの第二射を掛ける!総員時間合わせ!」
怒鳴り散らすようにタリアが号令を掛けた。ブリッジを包む怒気に、クルーの緊張も高まる。いつまでも、タンホイザーが防がれてしまったショックを引き摺っている場合ではない。ここでヘマをすれば、後で彼女に雷を落とされるのは明らかだ。
そんな罰は受けたくないクルー達は、必死に作業を行った。
その頃、オーブ軍基地を飛び立ったエマ、カツ、アスランの乗る三機のムラサメは、戦場に辿り着いていた。各所では、オーブ軍のM1アストレイが大西洋連邦のダガーLを相手に抗戦している。
「二人ともついて来られるか…中々熟練したパイロットではあるようだが――」
『アレックスさん、後方から三機です!』
アスランがエマとカツに警戒していると、カツから通信が入った。彼は自分より先に敵を捕捉したようだ。
「戦場にも慣れている。バルトフェルドの部下だというのは本当か?」
MA状態のまま機体を下降させる。それに倣い、エマ機とカツ機も続いた。
「なら、これはどうだ」
MSへと変形を解き、ビームサーベルを抜いて、中央のダガーLに向かって躍り掛かる。すると、カツ機がビームライフルでその他の二機を散開させ、エマ機がバルカンでアスランの狙うダガーLに牽制を掛ける。
アスランは、そのままビームサーベルでダガーLを切り裂き、撃墜する。
「連携も出来る…かなり戦い慣れしているな。――信憑性も帯びてくるか」
エマとカツの動きに、アスランは感心する。本当はあまり期待していなかっただけに、嬉しい誤算だ。
残った二機も、彼等との連携で撃墜し、アスランは気分を高揚させる。
「よし、これならば行ける!エマさんとカツ君は私の援護に回ってください!私達の小隊で敵陣の奥に仕掛けます!」
『エマ機、了解』
『こちらも了解です!一気に敵を追い払いましょう!』
冷静なエマとは対照的に、カツの勇ましい声が聞こえてくる。エマは軍人としても違和感が無いが、カツはどうにも娑婆っ気が抜けてないような気がする。
しかし、戦力になるのは確かである。急な実戦にも、初めて組む自分に動きを合わせられるだけの実力を持っているのだ。彼等に対する疑いも、大西洋連邦に攻撃を仕掛けて何事も無かった時点で殆ど解けた。
後は、オーブを守る為にザフトと協力して敵を追い払うだけである。確かな手ごたえを感じ、三機のムラサメは前線を目指す。
ザムザザーと相対するフリーダム。相手は巨大なヒートクローのようなものを持っている。あれに捕まれば、いくらフリーダムといえどもひとたまりも無いだろう。接近戦は出来るだけ避けたい所だ。
「くっ!やはり、外からのビームでは無理か!」
しかし、遠距離からの砲撃ではリフレクターが邪魔で攻撃が届かない。加えて、ザムザザーの推力はフリーダムよりも上だ。直線の追いかけっこでは、簡単に追い着かれてしまう。
「最悪でも、ミネルバと大西洋連邦艦との間からこいつを引き離さなければ!」
推力では負けていても、小回りなら人型のフリーダムの方が断然上だ。追い着かれそうになる度に急旋回を掛け、ザムザザーからの距離を離す。その繰り返しだったが、ザムザザーの方もバルトフェルドの意図が分かっているのか、空母の近くから離れようとはしない。
何度か誘導を掛けてはいるが、こちらの思惑に乗るつもりは無いようだ。
「と、なれば落とすしかないが、俺だけでは――!」
OSの最適化のなされていないフリーダムの動きでは、ザムザザーを相手に単機で挑むのは難しい。せめて、相手をかく乱させられるだけの味方部隊がいれば話は別だが、これではホラ吹きになってしまう。ミネルバはタンホイザーの第二射準備に入っているだろう。
そんな考え事をしていたら、いつの間にかザムザザーが真後ろに迫ってきていた。バルトフェルドは直ぐに旋回を掛けたが、接近を許しすぎてしまったのか、ザムザザーの唯一の可動部位であるクローがフリーダムを捕えに掛る。
「しまっ――!」
不覚を取った。そう思った瞬間、脇から一機のMSがビームサーベルを振り下ろした。その一振りはザムザザーの装甲を掠る程度のダメージしか与えられなかったが、直ぐに蹴りを見舞って突き飛ばした。
「アスカ君!」
『あなただけに、任せて置けませんからね!』
生意気な声、再び。しかし、助けてもらったのは確かだ。
『早く態勢を立て直して!偉そうに言った手前、出来ませんでしたじゃ、許してもらえませんよ!』
「そりゃあそうだ。こっちも、責任を持って言ったつもりだからねぇ。やるときゃやる男だよ、僕は。…それよりも、君の気分はもう晴れたのかい?」
『余計なお世話です!まだ終わっちゃいないんだ!こんな所でくたばってたまるかよ!』
今のシンの声は、先程の悔しがっていた彼の声じゃない。彼の中でどんな意識革命が起こったのかは知らないが、彼なりに自分の中の気持ちを消化した結果、バルトフェルドを助けに来たのだろう。ただ、その立ち直りの速さは彼の単純な性格故なのかもしれないが。
バルトフェルドは、一つ鼻で笑う。いい意味で、彼を馬鹿だと思った。
「いい根性だ。そうだ、まだ何も終わっちゃいない。少しでも希望がある限り、最後までその可能性に賭けて見せろ。それが若いって事だ」
『言われなくたって分かってるさ!俺は…ここで負けるなんて冗談じゃない!』
咆哮と共に、ザムザザーに躍り掛かるインパルス。しかし、純粋な加速性能ではMAであるザムザザーの方が上で、追い着く事すらままならない。
「埒があかない!第二射まで時間が無いってのに!」
『援護する!アスカ君はカニバサミに接近する事だけを考えろ!』
バルトフェルドは、消費エネルギー効率を気にしてか、ビームライフルでのみ攻撃を行っている。もっと手数を増やせればザムザザーの動きを止めることも出来ようが、現状では継戦時間を出来るだけ長く確保する方が優先だ。一か八かの一斉射撃は分が悪すぎる。
「こんな手数の少ない援護じゃ、近づけないですよ!」
『文句を言うな!死にたくなければやって見せろ!』
「そんなこと言ったって、俺は――ん!?」
苦戦していると、後方からビームの一斉射がザムザザーを襲う。全て弾かれてしまったが、衝撃でザムザザーの態勢を少し崩す事は出来た。
『オーブ軍特別編成部隊のアレックス=ディノです!ご無事ですか、バルトフェルドさん!』
「アレックスだと?アスランか!」
バルトフェルドの耳に聞こえてきたのは、顔なじみのアスランの声だった。彼はアレックスと名乗ったが、バルトフェルドは正体を知っていただけに、思わず本名を口にしてしまった。
その通信内容を聞いて、シンは驚愕する。アスランの名前は、ヤキンの英雄の一人として知っていたからだ。
「じゃ、じゃあ、俺と一緒に地球に降りたのは…アスラン=ザラだったのか……!」
『アンディ、救援に来たわ』
『僕も一緒に居ますよ!』
「エマ!それにカツ君も!」
アスランと共にやって来たのがエマとカツである事に驚くバルトフェルド。彼女達まで戦場に出てくるとは思わなかったからだ。
「よくもまぁ、MSを借りる事が出来たもんだな?」
『話は後にしましょう。今は、あのMAを撃墜するのが先ではなくて?』
「その通りだな。説明は、後でゆっくり聞かせてもらおうか!フォワードは俺とアスカ君がやる。ムラサメ隊はカニバサミの動きを止めてくれ!」
言うなり、フリーダムはビームサーベルを引き抜き、インパルスに合流する。
「エマさん、カツ君。聞いての通りだ、あのMAの動きを止める!」
『了解、カツも宜しくて?』
『任せてください!』
三機のムラサメは散開し、ビームライフルを構えて外からザムザザーを蜂の巣にするようにビームを放つ。ムラサメのビームライフルの一発一発の威力は大した事は無いが、三方向からの集中攻撃により、少しづつザムザザーの動きを制限して行った。
『止めは俺たちで決めるぞ、アスカ君!』
「分かりました!」
癪だが、今はバルトフェルドの言う通りにするしかない。単機ではザムザザー相手にどうしようもない事は分かっていた。
ザムザザーの動きが、ムラサメのビームライフルの斉射で少しずつ鈍くなっていく。何発ものビームを受け、その度に機体が微妙に揺れている。姿勢を制御する為のスラスターを蒸かす時間が増えてきていた。
『タイミングは君に任せる!勝機と見たら一気に押し込め!』
バルトフェルドの檄が飛ぶ。それを受け、シンは集中力を高めていく。何時しか、頭の中がクリアになり、最初は目も眩むほどだったザムザザーの動きが、スローに見えた。
(この感じ…分かるぞ!あいつの動きが手に取るように分かる!)
ザムザザーの加速のタイミング。ビームを受けた事による姿勢制御の為のバーニアが火を吹き出す瞬間。こちらを捕捉しようと繰り出してくるクローの動き。それら全てが、シンの頭の中にダイレクトに情報として伝わってくる。
「見切った!今だ!」
加速の瞬間を狙われたザムザザーが、大きく態勢を崩した瞬間を突き、シンはインパルスのスロットルレバーを一気に押し込み、ビームサーベルを片手に突撃する。それに合わせて、フリーダムも数瞬の遅れはあったものの、続いていった。
「くらえぇっ!」
大きく振りかぶった袈裟切りから、ザムザザーの右のクローを切り飛ばす。続けて、フリーダムの逆水平切りがもう片方のクローを薙ぎ飛ばす。
『止めだ、アスカ君!』
「これで終わりだぁ!」
シールドを放り投げ、両手でビームサーベルを逆手に持ち替えたシンのインパルスが、ザムザザーのコックピットに止めの一撃を突き立てる。そのまま真っ二つに切り裂くようにビームサーベルを突き抜き、インパルスを離脱させる。
「よぉし!やったぞ!」
ザムザザーは煙を上げて海に向かって墜落していく。海面に接触した所で、爆発が起こった。
「各機、散開だ!陽電子砲の一撃が来るぞ!」
バルトフェルドが時間に目をやり、叫ぶ。それに呼応して5機は散開し、それを待っていたかのようにミネルバからタンホイザーが放たれる。今度の一撃は見事に大西洋連邦艦の旗艦と思われる空母に直撃した。
旗艦を失った大西洋連邦軍は命令系統が混乱し、統制が取れない状態に陥った。そして、オーブ軍も徐々に勢いを取り戻し、後退していた戦線を押し返していく。
やがて、これを見た大西洋連邦軍は、戦況が不利だと判断し、艦隊を撤退させていった。戦場はギリギリの所で最終防衛ラインを死守できたのだ。オーブ本土は戦火に塗れる事無く、無事平穏を取り戻した。
ミネルバへ帰還する道すがら、シンは複雑な心境を抱いていた。オーブ、というよりもアスハという名前に憎しみを持つ彼としては、結局カガリを助ける結果になってしまった今回の戦いに迷いを生じさせていた。
頭の中ではオーブという国が悪いのではない事は分かっている。しかし、それを治める代表がカガリだというのが許せないのだ。プラントはオーブと同盟を結ぶつもりでいるのは知っているが、シンは口に出さないまでも、それに対して不満を持っていた。
「これから、どうなっちゃうんだろうな?…俺は、オーブから逃げられないのかな?」
亡き家族に思いを馳せ、シンはコックピットで呟く。ミネルバに帰還したら、直ぐにシャワーを浴びようと思っていた。今の複雑な心持を、少しでも洗い流したかった。
今回は以上です。
仕事中にリアルタイムキター!
GJ!
GJ!!
カツがいい味出してるw
カツ スゲェ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
カミーユ氏GJお疲れさまでした。
凸も本編と違いザフト所属に成らずイイ感じになってる。
今回は、トダカ出るのかな?
次回も楽しみにしてます!
ユニウスセブンの粉砕作業にはミネルバも参加することになり、先遣隊のジュール隊とは現地で合流する予定だった。
また、強奪事件は今回の件で不本意にも後回しとなってしまった。
粉砕作業のことを聞いてシン達とカガリの間に一悶着があり、不機嫌なシンは気分を紛らわせるためにMSデッキへ向かった。
デッキでは各機体の整備をしてる端で、あの謎の機体Zガンダムの調査を行っていた。
シンはまだ、まともにZを間近で見たことはなかったので近くまで行く。
「おう、シン。こいつが気になるのか?」
「えっ、まぁそれなりに。」
MS整備班の班長であるマッド・エイブスに声をかけられ、あやふやな回答をするシン。
「ははっ、遠慮するこたぁない。もっと近くで見たって構わねぇさ。」
「でも、まだ調査中なんですよね?邪魔じゃないですか?」
「まぁ、今のところ俺らには、判らないことだらけだからな。調べるだけ無駄ってわけだ。」
「それって、どういう・・・?」
「コックピットの形状は球形で全天周モニター、装甲も現存しているMSとは比べ物にならない強度と軽さ、そして材質も不明。
しかも・・」
「ばかたれ、油売ってる暇あったら仕事しろ!この半人前!」
シンの問いに答えたのはマッドではなくヴィーノだった。
得意げに言ってみせるが、途中でマッドに怒鳴られ慌てて持ち場に戻る。
「ったく、少し目を離すとこれだ。今のはまだ、誰にも言うなよ。今これを知ってるのは俺ら整備班でも一部くらいなもんだ。
もし、今こんな事がミネルバの全クルーに知れ渡ったら、ただでさえユニウスセブン粉砕の準備で忙しいってのにパニックになりかねねぇからな。
代わりにっちゃあなんだが、コックピットで面白いもん見せてやるよ。」
「いいんですか、そんな事して。マズいんじゃ・・・」
「気にすんな。こんなのは、またとない機会だからな。さぁ、乗った乗った。」
第四話「Zの覚醒」
シンはマッドに気圧されてZのコックピットに入れられる。
シートに座ると周りは本当に球形の形をしておりその真ん中にシートがある。
マッドは計器類をすこしいじるとモニターに電源が入る。
モニターにはMSデッキが映し出されている。シンは身を乗り出して周りを見渡すが、本当に全方位が見渡せる。
驚きと同時に不安感を抱いた。まるで、宙に浮いてるような感覚がコックピットに乗っていると思わせなかったからだ。
「すごい・・・」
「驚くのはこれからだぜ。」
マッドはまた計器類のスイッチをいじると、モニターは切り替わり宇宙となった。
周りにはビームの火線が飛び交っており、爆発が断続的に起こっている。
視界には時折、ザクに似た機体が出てきては光球に飲み込まれたり、連合のダガーに似たような機体も現れる。
巨大な船が視界にはあり、その周辺でも激しい戦闘が起きている。
すると、黄色い重MSが現れサーベルを片手にこちらにビームを放ってくる。
こちらからもビームが発射されるが、互いにそれを回避して一歩も譲らない。
次の瞬間互いに撃ったビームが相殺して、干渉波を起こしたのか、二機の距離が離れる。
相手のMSがサーベルを振りかざしそれを回避するとき、黄色い重MSのスカート部分からもう一本のアームが出てきて、
サーベルが襲い掛かる。機体は間一髪で回避したがライフルを破壊されたのか、その残骸を投げ捨てる。
距離を取って再びビームを連射する相手、それを紙一重で回避しつつ、サーベルを抜いてこちらの機体は腕部からランチャーのようなものを発射する。
相手もそれを重MSでもあるにも関わらず、機体を捩るようにして回避しサーベルで応戦する。
二機の鍔迫り合いはサーベルの干渉波で両機を弾いた隙に、こちらの機体が左脚で敵のライフルを弾き飛ばす。
ひるんだ相手から若干距離を取る。
二機は急に静止して相手の出方を伺ってでもいるのかしばらく、動かない。
しかし、突然機体は高速で敵の機体へ向かい変形をして突っ込む。
そこで、マッドは映像を切る。
「おい、大丈夫か?顔色悪いぞ。」
「えっ、大丈夫です。あんまりにも信じられないことばかりで驚いただけです。」
「そうか。ちょいとばかし、刺激が強かったか。」
「それにしても、見たことない機体ばかりだった・・・」
「あぁ、しかもあれだけの大規模な戦闘なんてヤキン・ドゥーエ以外記憶にないが、それとも違うみたいだしな。」
「じゃあ、一体?」
「さぁな、あのパイロットが起きない限り何もわからねぇってこった。」
マッドは少し気を落とすと、いつもの表情に戻りコックピットから出る。
シンもそれに続いて、外へ出る。
「ありがとうございました。なんか、邪魔したいみたいで。」
「いいってことよ。あっ、でもこの事誰にも言うなよ?まだ、議長や艦長にも見せてないし教えてないんだからな。」
「えぇ?それはさすがに・・・」
「いいんだよ、ミネルバのエースになるだろうパイロットへの景気づけだと思えばな。ははっ。」
マッドは冗談交じりにシンの背中をバシバシ叩く。
シンはその後MSデッキを後にして食堂にいた。シンはあることを考えていた。
あの機体Zについてだ。あの少年がコックピットにいたこと、あの映像を見る限り、あの少年があの機体で戦っていたことは間違いなさそうだ。
しかもかなりの操縦技術を持っているのはすぐに分かった。しかし、対抗意識から自分よりも操縦技術があることを素直に受け入れることはできなかった。
シンはあの映像を見てるとき少年の声が聞こえるときと同じ感覚がしたのだ。
それがなによりもシンを驚かせたのだった。そして、シン自身もあの少年に出会ってから少しではあるが戸惑いとともに変化を感じていた。
ユニウスセブンへ近づくにつれてなんというか、どことなくだが悲痛な叫びが聞こえるような気がしていた。
その頃ミネルバの医務室にいた少年、カミーユ・ビダンはついにその眠りから目覚める。
(フォウ、分かってくれ。また、多くの人が悲しむんだ。僕はそれを少しでも助けたいんだ。)
(でも、それじゃあカミーユは?今のあなたは戦い続けて、立っているのもやっとなのよ。これ以上、あなたが傷つくのは耐えられないわ。)
(僕も同じさ。これ以上、誰かが君や僕のような人間と同じように傷つくのは耐えられないんだ。悲しみを知っている僕らだからこそ出来ることをしなきゃならないんだよ。)
(カミーユ・・・)
(大丈夫、僕はいつもそばにいる。君だって僕にそう言ってくれたろ?)
(・・・分かった。私もあなたのそばにいるから、辛くなったら無理はしないで。)
(ありがとう、フォウ。そろそろ僕は起きるよ、このままにしてはおけないから。)
「っはぁ!!空が落ちていく・・・落としてはいけない・・止めなければ!!」
「大丈夫かね!?君!?私がわかるか!?」
飛び起きるようにして、カミーユは大声を上げる。
軍医はそれに気付き駆け寄り、落ち着かせる。
議長と艦長には少年カミーユの意識が戻り、落ち着いたことが伝えられる。
カミーユは軍医にこれから戦闘に入るということが告げられ、しばらく安静にしているよう伝えらた。
しかし、カミーユはそんなことをしていられる余裕はなく、焦っていた。
確実に、ユニウスセブンが地球の重力に引かれ落ちていくのを感じていた。
それだけでなく、失われた人々の魂の悲痛な叫びが彼を突き動かしていたのだ。
(分かってるよ、フォウ。そんな簡単に根を上げるつもりはないさ。今は僕のできることをするまでだ。)
そして、現場に到着したミネルバは先行した部隊が襲撃されているとの報を受け出撃していく。
カガリの付き人としていたアスラン・ザラも粉砕作業の協力することになった。
ユニウスセブンの作業を援護をしているミネルバ隊がジンと交戦状態入り、苦戦していた。
シンはジンと交戦しながらも、いち早くあの少年の気配を感じ取った。レイも前回の出撃と同様の何かを感じていた。
カミーユは、医務室から抜け出し、パイロットスーツに着替え病み上がりとは思えない足取りでMSデッキへ向かっていく。
ブリッジにマッドの怒鳴り声が入り、例の少年が急に現れMSに乗り込んで出てこないと言う。
ハッチを開けてくれとの要求があるがそう簡単に要求を飲むわけにもいかず、コックピットと回線をつなげる。
「あなた!?なんでそこに!?今は戦闘中よ!?」
『無理を承知でお願いします。僕に、手伝わせてください。僕はパイロットですからMSで作業ぐらいできます!!』
「あなた正気なの!?病み上がりの人間で、まして敵か味方かもわからない人間をMSに乗せることなんてできる訳ないでしょ!!」
『分かってます。けど、また過ちを繰り返そうとしているのを見過ごす訳にはいかないんです。あそこで亡くなった人たちの気持ちを無駄にしないためにも止めないと!!』
「でも、そんな理由で出させるわけには・・・」
艦長のタリアの主張することはもっともで今はそれどころではなかったのだ。
しかし、カミーユの言葉にはそれを納得させるような重みがあり、一瞬タリアは気圧される。
それでもタリアはカミーユの意見を却下しようとして口を開きかけたとき、デュランダルが言葉を発する。
「いいだろう。私の議長としての権限で許可しよう。君が乗っていた機体を使いたまえ。」
「議長!!?しかし、」
「艦長、これは我々だけの問題ではない。今は離れてこそいるが、地球は我々のかつての故郷でもあるのだ。
地球の今後が掛かっている。アスラン君にも言ったように人手は少しでも多いほうがいい、それに私には彼から何か特別なものを感じるのだよ。君、名前は?」
『・・・カミーユ・ビダンです。』
「いい名だ。カミーユ君、行きたまえ。」
『ありがとうございます。』
「議長!!」
「タリア、あの機体の発進準備を。」
「・・・・・・判りました。エイブス、聞こえる?ハッチを開けて、発進準備をして頂戴。」
「すまない、艦長。」
「いいえ、・・・もう慣れましたから。・・・・・・それにしてもあの子、この状況を一瞬にして理解したとでも言う様な身のこなし、一体?」
タリアは厳しい表情を通り越して呆れてデュランダルに言い放つ。デュランダルは不謹慎と思いながらも苦笑をした。
一方のタリアは少し気持ちを落ち着けるとこの状況であの少年の行動が疑問に残ったのだった。
MSのデッキはZガンダムの発進準備で慌しかった。マッドはカミーユに回線で話しかけている。
カミーユは機体に異常がないことを確認して発進準備に入る。少し間があり通信が入る。先ほどの艦長だ。
『いい、もし不審な行動をとったら撃墜するわよ!判ってるわね!』
「分かっています。不審だと思ったら攻撃してもらって構いません。」
『分かっていればいいわ、味方の作業隊を援護して頂戴。』
「了解です!!」
『おい、ボウズ。一応、バルカンとサーベルはセットしてあるが、腕部のグレネードは使えるか保証できねぇぞ。
それと細かい部分は見れなかったから、不具合があるかもしれねぇ。やばくなったらすぐに戻って来いよ!!
お前さんには帰ってきたら聞きたいことが山ほどあるんだ。いいか、死ぬんじゃねえぞ!!』
「分かっています。僕もまだ死ぬつもりはありませんから。」
ウェーブライダーは今にもミネルバから発進しようとメインスラスターから青い光を噴射する。
(フォウ、行って来るよ。君とはまた会えるから、それまでしばらくの間だけどお別れだ。)
カミーユは心の中で呟き、発進の合図と同時にペダルを踏み込む。
「カミーユ・ビダン、Zガンダム、行きます!!」
今回はここまでです、次回から本格的な戦闘に入ってきます。
規制に掛からず投下できてちょっと嬉しいです。
134 :
通常の名無しさんの3倍:2007/06/02(土) 23:42:45 ID:BZtT44qt
135 :
通常の名無しさんの3倍:2007/06/02(土) 23:46:27 ID:BZtT44qt
ごめん、sage忘れたorz
二番乗りGJ!!
V3GJ!
今来たら2作品投下されてた
お2人ともGJっす!!
ええい、どいつもこいつも! GJだぜ!!
GJです
今回カミーユがハイパー化して
ユニウスをサーベルでぶった切ったり、押し返したりしたら
結構IFの話が作れるよな
カミーユのユニウス落下阻止は確かにみたい
ぶった切りをこんな初期で出されても逆に萎えるかな、俺は。
それよりサトーさん他をわりとあっさり撃墜してメテブレで普通に壊すとかの方が。
せっかくZは単独大気圏突入が可能なわけだし。
でもハイパー化するなら一番ここっていうタイミングだよな
「ゼータでアクシ……ユニウスを押し戻してやるっっッ!」
WRだ突撃で粉砕しそうでもあるな
カミーユのNT能力ならやりかねんw
ホントはミノ粉が無いといけないけど
カミーユには関係ない
◆x/lz6TqR1w氏のカツは死因聞かれたらなんて答えるんだろうか?
カツ「す、すみません、ち、近くの岩にゴニョゴニュ(。。;)」
虎「えー?と、なんだって?」
カツ「え、あの、…岩にぶつかりました(*..*)」
後ろのキラ達「( ´д)ヒソヒソ(д` )」
虎「えーと、なんでぶつかったのかね?」
客「前方不注意(>_<;)」
虎「(゚Д゚)ハァ?」
後ろのキラ達「プ━( ´,_ゝ`)━ッ!!」
カツ「後ろ見てたらで前方の岩にぶ つ か り ま し た !_| ̄|●」
店「撤退命令無視して敵と交戦中に調子に乗って後ろ見てたら気づいたら前に岩があって避けきれずにぶつかったんだな !!(・∀・)b」
後ろのキラ達「(ノ∀`)アチャー」
な羞恥プレイをさせられるのだろうか
いや、クチャおじさんの電磁ムチの方かもしれんぞ?
うはww名前修正忘れまくりwwwwwww
ついでに修正
カツ「す、すみません、ち、近くの岩にゴニョゴニュ(。。;)」
虎「えー?と、なんだって?」
カツ「え、あの、…岩にぶつかりました(*..*)」
後ろのキラ達「( ´д)ヒソヒソ(д` )」
虎「えーと、なんでぶつかったのかね?」
カツ「前方不注意(>_<;)」
虎「(゚Д゚)ハァ?」
後ろのキラ達「プ━( ´,_ゝ`)━ッ!!」
カツ「後ろ見てたらで前方の岩にぶ つ か り ま し た !_| ̄|●」
虎「撤退命令無視して敵と交戦中に調子に乗って脇見操縦してて気づいたら前に岩があって避けきれずにぶつかったんだな !!(・∀・)b」
後ろのキラ達「(ノ∀`)アチャー」
2作品ともGJ! Zの鼓動が聞こえるようだ
>>150 そっか、カツも迂闊で残念なヤツの一人だったな……しかも死んでも治ってない
遅れながら両作品投下乙!
それにしても虎さん・・・
アスランの名前口走っちゃうってカガリと同レベルだよ
単純にアスランが偽名使ってると知らなかったんじゃね?
それでつい確認したとか
小説の方じゃ悪夢のような強さのヤザンにコアファイターを隕石に何度もぶつけられて死んでるんだがなぁ
でも小説のカミーユはさらにありえなくて
そんなヤザンを「フン!」とせせら笑いつつ
無造作にグレネード一発撃ってコクピットに直撃させて落としてるんだよな・・・
で、その後に「みんな……死んじゃえよっ!!」と
小説版のカミーユの強さはありえないよな・・・
最後の方は機体の動きが人間のそれとかだし、アムロでさえそんな
表現はない。
そしてあの発狂ぶりは怖すぎる・・・
ヤザンのハンブラビ撃破直後にサラのパラス・アテナのコクピットにビームサーベル
つきさしながら
>>155の台詞だし、劇場でのクワトロとハマーンとシロッコに手榴弾
投げつけたりと、ある意味イデオン以上に黒富野が炸裂してる・・・
サラ撃破忘れてたわ
確か振り向きもせずに無造作に一撃でヤザン撃破
↓
サラが戦慄、その一瞬の間にカミーユは既にサラに接近してて
ビームサーベルをパラスのコクピットに押し当てた後「ジュッ」
サラ「あ……」で死亡、だったか
シロッコも突撃じゃなくてオーラバリアでコロニーレーザーにジオを弾き飛ばして終了だしな
精神崩壊した後の言動もTVと違って完全にイっちゃってるし
小説版のカミーユは終盤イデ発動みたいな現象起す前に
死ぬんだよな
あれが起きてたらと思うとぞっとする
幼児退行してたし
エウーゴの大人達はカミーユに対して、叱りつけたり、突き放したりする態度をとることで、彼の成長を促していって
カミーユもそれを理解して、不満にも思ってなかったんだろうけど
話が進むにつれて、カミーユがだんだんゆとりとか余裕みたいな物を失くしていってる感じがするんだよな
ちょっと余裕が出来そうだった時に『親が死んだからって甘ったれてんでしょう』とか言われたりしてるし
そりゃあすさんでいくだろうよ
人を成長させるには飴と鞭の両方を使わねばいけないのに
鞭だけ使ってるという感じだよな・・・Ζの大人連中
小説版はカミーユ死ぬんだな。
たしかアムロも死んだよね。小説版のファーストじゃ。
小説版もカミーユ死んでないよ
サイコガンダムUがバウンドドッグからZ庇って刺し違えたときに精神崩壊してる
最後メットのバイザー空けたままな上にΖのハッチが開いたままで暫く宇宙漂流→ファがZ回収したけど
きづかないままにアーガマへ向かう所でエンドだから確実に窒息死してるだろ。
多分ファが拾ったときには既に死んでたと思う。
「流れるΖの機体から、かすかな発光があった。しかし、それもいつしか消えて、閃光の
なくなった宇宙を流れていった。」という所の発光が消えた時点で。
トースター長瀬ちゃんになるところだったのか
>>159 まあ、まともな親に育てられたと思われるのエマくらいだからなw
他は両親いないか、片親とかだしw
要はまっとうに育った大人がいないw
Zに必要だったのは大人のカイさんとミライさんだったんだな・・・
>>166 『親が死んだからって甘ったれてる』を言ったのは、そのエマなんだけどな
エマも軍人一家出身だし普通の家庭の人とは感覚がずれてる
アーガマにミライさんがいれば全く別物の話になったんだろうな
171 :
通常の名無しさんの3倍:2007/06/08(金) 22:39:33 ID:xpfawPIk
◆1ITb1290kc氏のZの戦闘記録は新約Zの戦闘描写だな。
あの新作カット一連の動きはかっこいい!!やっぱ全部新作カットにしてほしかったなあ。
『プラント・オーブ同盟』
プラントへの宣戦布告、そして大西洋連邦が軍をオーブに派遣したのは、ジブリールの口添えによるものだった。ユニウス・セブン落下の真相を記録した映像を連合の代表者たちに公開したのだ。
「ジブリールめ、やはり戦争を始めよったな」
「分かりきっていた事だ。だが、奴は自らの責任を認めんだろうな」
そして、オーブと大西洋連邦との同盟締結交渉が失敗に終わり、ザフトと協力したオーブ軍に派遣艦隊が敗れたとの報告を聞き、ブルーコスモスの連面は溜息をついていた。ジブリールのやんちゃな行動に辟易しているのだ。
「宣戦布告は、結局はプラントとオーブの結びつきを早めただけだ。デュランダルはそこまで考えて動いておった様じゃな」
リモコンのスイッチを入れ、スクリーンに映像が映し出される。そこには、オーブ官邸で記者に囲まれたデュランダルとカガリが映っていた。
『この困窮した状況で、我々はとても心強いパートナーを得ました。オーブとは友好関係にありましたが、これまで以上に綿密な協力体制を構築していきたいと思っております。そして――』
「デュランダルの狸め、ほざきよるわ。最初からオーブを狙っておった癖して」
「だが、これで調子に乗せんことが大事じゃな。確かにモルゲンレーテは惜しいが、戦力差では我等地球軍の方がまだ上じゃ」
デュランダルの声明に、ブルーコスモスの一同が届かない野次を送る。
『プラントとは友好関係にありました。デュランダル議長閣下も私共の理念を理解してくれています。その上での今回の同盟締結の申し出は、こちらにとってもありがたい事でした』
続いてカガリが言う。その表情はやや強張っているが、ブルーコスモスの面々にはデュランダルを疑っているという風には見えなかった。
「この小娘も、何の抵抗も無くかどわかされおって」
「若いとはいえ、これでは国を支えていく事など出来んわ」
「オーブはくれてやって良かったかも知れんな。お荷物を抱えずに済んだかも知れんぞ?」
「下らないですね。もう良いでしょう」
と、唐突に姿を現したジブリールが画面を消した。自分の思い通りに行かなかった事が気に喰わないのか、眉間に皺を寄せて口をへの字に曲げていた。それを見て、他の面々が声を殺して笑う。
「開戦の準備、ご苦労だったなジブリール?オーブとプラントが手を結び、パワーバランスが多少は拮抗したな」
「お主の目論見どおりじゃなぁ。これで戦争が少しは面白くなる。武器商人のお主にとっては、またとない好機であろう?」
粘着質な言い方で言葉を投げ掛ける老人達。ジブリールはそれを不機嫌そうな表情で聞いていた。
勿論、ブルーコスモスの面々は今回の一件がジブリールの望んだ顛末ではない事を分かっているし、彼ら自身も余り歓迎できる事態ではなかった。だからこそ、ワザと厭味に聞こえるように口にしているのだ。
それに対し、ジブリールは口を閉ざす。老人の若者いびりに付き合ってなどいられない。
「どうした、顔が強張っておるぞ?もっと嬉しそうな顔をせんか」
「そうじゃ。これでお主の与するロゴスも潤うというもの。我等を利用したのは、その為なのだろう?」
(くたばりぞこない共め――!)
ジブリールの口の端に皺が出来る。口の中では、堅く歯を食いしばっていた。
しかし、ここで感情的になってしまっては、老人達の思う壺である。必死に冷静さを維持し、椅子に腰掛けた。
「――さて、これからは暫く様子見です。戦争が始まった以上、連合とプラントのどちらかに変化が現れるまでは下手に手を加えられませんからな」
「出来るだけ戦争を引き延ばす為か。だが、勿論最後は地球側の味方をするのだろう?」
「当然です。コーディネイターなど、この世にあっては災いを呼び続けるだけです。ジョージ=グレンが現れて以降、奴等がもたらした災禍は数知れず。
コーディネイターの発現による混乱期に始まり、ニュートロン・ジャマーなどという物で地球経済、その他諸々を危機に陥れ、そして今回のユニウス落下です。我等の母なる地球を、何度奴等が踏みにじってきた事か…それを考えるだけでおぞましいですよ。蕁麻疹が出ます」
大袈裟な身振り手振りで、ジブリールはとくとくと説く。彼の演説染みた話には、いつもこのような動きが加わる。それが癖になってしまっているのか、彼自身も無意識に行っているようだ。
「よろしい。ならば、決まりだな」
「今回はこれで解散に致しましょう。いきなりの開戦で、皆さんお疲れでいらっしゃるでしょうから」
「その前に、ジブリール」
閉会を告げるジブリールに、ブルーコスモスメンバーの一人が待ったを掛ける。
「…何か?」
その老人は、確か以前面白い男を拾ったとか何とか言っていた人物だ。ジブリールは目を細め、じっと見つめる。未だにこの老人の思惑が掴めていなかった。
「そう睨むなよ。なに、この間の疑問に応えてやろうかと思うての。…入ってきなさい」
老人が振り返り、誰かを呼ぶ。その視線の先の影から、一人の男が姿を現した。
「本日はこの場にお招き頂き、まことにありがとうございます。私は――」
白い制服に身を包み、細身でやや背の高いシルエット。鋭い瞳に輝きは無く、肩に掛ろうかという長髪をなびかせている。オールバックの髪型は特徴的なリングで縛られ、前髪もそれで纏められている。
「パプテマス=シロッコと申します。あなた方の協力者として、やって参りました」
片手を腹部に添えるように曲げ、深く頭を下げる。その男は、不敵な声で名乗りを上げた。
大西洋連邦軍との戦いが終わり、再びカガリの別荘へ戻ってきたエマ達。そこには、既に避難していたキラ達が帰ってきていた。
「アンディお帰り!」
「エマもカツもお帰り!」
玄関に入ってくると、子供達が一斉に出迎えてきた。口々に感謝を述べ、笑顔を輝かせている。
「お疲れ様でした、皆様」
「アンディのブレンドコーヒーほどおいしくないかも知れないけど、お茶を用意してあるわ。早くリビングに来て」
更に、ラクスとマリアもやって来る。彼女達も緊張感から解放されたのか、安堵の表情を浮かべていた。
「ま、たまにはマリアの淹れたお茶を飲むのも悪くないか」
「あれ?キラさんは?」
バルトフェルドがマリアに率いられてリビングに連れて行かれる時、カツは不意にキラの存在が気になった。マルキオやカリダの姿まであるのに、何故か彼だけいないのだ。
「キラはお二階のカミーユ様のお部屋ですわ」
「カミーユの所に?」
カツの疑問にラクスが応えてくれた。
「避難中も、キラがカミーユ様を背負っていましたわ。きっと、あの方を気に入ったのでしょうね」
「キラさんがカミーユを…?」
ラクスの言葉にカツは考える。話をすることの出来ないカミーユを、何故キラが気に入るのか分からないが、気になっているだろうなとは思っていた。
それは、ユニウス・セブンが落ちてきたときの事だ。あの時、様子を見に行こうとしたキラに、カミーユがしがみ付いた。普通なら、それを振り払って出て行くところだ。足手纏いを連れて行っても、何もいい事があるわけ無い。
しかし、キラはカミーユを連れて行くと言った。それは、彼の表情の中に共感できる何かを見つけたからではないだろうか。キラはカミーユの気持ちを何となく理解して、それで一緒に連れて行くと言ったのではないか。
その考察の裏には、カツなりの根拠がある。二人を見比べた時に、何となく境遇が似ている様な気がしたのだ。共に偶然に戦争に巻き込まれ、様々な体験を積み、そして最後に疲れ果てた。
(キラさんもカミーユに何かを感じてるんだ…)
カツの直感から得た推理が、核心に近付いた気がした。
「ちょっと見てきます」
「あら?」
皆がこぞってリビングルームに向かう中、カツは踵を翻して、二階のカミーユの部屋へ向かう。カミーユを見るキラが、何を感じているのか確かめたかった。
階段を上り、廊下を歩いてある部屋の扉の前で足を止める。コンコンと二回ノックすると、中からキラが返事をしてきた。
「カツです。入りますよ」
「カツ君?」
ノブを回し、扉を開けると、ベッドに寝かされたカミーユと、その側で椅子に腰掛けているキラの姿があった。
窓が開かれ、斜陽の光が優しく差し込んでいる。揺れるカーテンとオレンジ色に染まった空間。幻想的な雰囲気を感じさせた。
「無事だったんだね、カツ君。ありがとう、オーブを守ってくれて」
「お世話になりっぱなしでしたから。何か役に立てる事があれば、やるつもりでいました。それよりも、カミーユの面倒を見てくれて、ありがとうございました」
「…あの中では僕が一番体力があったから」
少し疲れているのか、キラの表情は優れない。他のみんなは、災いが未然に回避できた事に喜んでいた風だったが、彼は何処か不安げだ。ふと、キラは顔を上げてカツの顔を見た。
「その…聞いていいかな?」
「何をです?」
「君やエマさんと、カミーユさんの事。まだ、詳しい事を聞いていなかったよね?」
不意に投げ掛けられた言葉に、カツは動揺した。キラは、自分達の事を疑っていると思ったからだ。バルトフェルドには全て話したが、あまりにも荒唐無稽な話故に、他の人たちには本当のことは黙っていた。
しかし、自分とエマだけならまだしも、カミーユまでやってきた事がまずかったのだろう。これ以上誤魔化し通すのは難しいようだ。
一方のキラとしては、単純に疑問に思っていただけだった。バルトフェルドが気を許している辺り、3人が自分たちにとって悪人ではないのは了承している。ただ、最初から挙動が怪しかったのと、カミーユとの関係がいまいち曖昧な点が、キラには不思議に思えたのだ。
「カミーユは、僕の知り合いで――」
「この症状、きっと二年前の戦争で辛い目に遭ったからだと思うけど、君達は3人ともMSに乗っていたの?」
説明しようとした所で、間髪入れずにキラが言葉を挟んでくる。曖昧に誤魔化そうとした考えが見透かされたと感じ、カツは何も言えなくなってしまった。
「僕が言えた事じゃないかもしれないけど、エマさんはともかく、君やカミーユさんがMSパイロットだったなんて、変だと思うんだ。だって、若すぎる」
「その訳は、話が長くなって――」
「もう話してしまってもいいわよ、カツ」
カツが言葉に迷っていると、いつの間にかやって来ていたエマが言葉を挟んできた。
「エマちゅ…さん」
「他の人にも全て話したわ。今、アンディが説明している所よ」
「何で――」
「アレックスって子が来たのよ。ほら、さっきムラサメに乗って一緒に戦った子。今、その子が訪ねてきてね、それでアンディの部下だって言ったのが嘘だとばれてしまったのよ」
「アスランが来てるんですか?」
キラが、エマの話に口を挟む。アレックスというのが、アスランの偽名であると知っていたからだ。
「アスランって…じゃあ、あの子があなたと二年前に共闘したって言うアスラン=ザラ?」
「えっ…あ、そうです」
口が滑った、とキラは思った。よもや、これだけ自分達に絡んでおきながら、アスランの事を知らないとは思わなかったからだ。今のアスランは、色々な事情を踏まえた上で、偽名を名乗っている。むやみやたらに正体をばらしていい身分ではない。
「で、でも、他の人には黙っていてください。アスランは今、カガリのボディーガードを勤めているから、名前がばれちゃうの、良くないんです」
「旧ザラ派総統のご子息ですものね。分かっているわ」
「すみません…」
エマに向かって頭を下げるキラ。それを見て、カミーユやカツとは違い、素直な少年だとエマは思った。
「それで、本当のことって――」
気を取り直し、先程の続きを訊ねてくるキラ。そういえば、話の途中だった。
「…信じてもらえないとは思うけど、私やカツ、カミーユは、この世界の人間ではないの」
「え……?どういう――事ですか?」
言葉とは裏腹に、キラの中の疑問が核心に近付いた。思い出したのは、エマがやって来た日にバルトフェルドが告げた言葉。彼が言っていた『別の世界』とは、この事だったか。
「私たちにも良く分からないの。ただ、気がついたら私達はここに居た――それだけしか分からないの」
「じゃあ、MSを動かせるのも――」
「ごめんなさい、怪しまれたくなかったから隠していたけど、私達は本当は軍に所属していたの。反地球連邦組織――通称エゥーゴに。そこでMSのパイロットをやっていたわ」
「エゥーゴ……」
「信じられないのも無理ないわ。でも、あなた達に敵対する意思は持っていない事は信じて欲しいの。今の私達は、あなた達に頼るしか出来ないから――」
この間まで読みふけっていた本の世界が、現実のものとなった。いや、にわかには信じることは出来ないし、もし真実だとすれば多少の畏怖もある。反面、面白くその本を読んでいただけに、高揚する気持ちもある事も気付いた。畏怖と興味で、胸の鼓動が高鳴る。
「じゃあ、カミーユさんは――」
「分からない。私達は、カミーユがどうしてこうなってしまったのか知らないの」
「どうしてですか?一緒に戦っていたのでは――」
「私達、本当は死んでいるはずなの」
「え!?だって――」
「何の因果かは分からないわ。――だから、その後に何か起こって、こうなってしまったんでしょうね…」
あっけらかんと信じられない事を話すエマ。キラは、その話に衝撃を受け、言葉を失った。視線の先のエマは、哀れむような目で焦点の定まらないカミーユの顔を見つめている。
「もしかして、カツ君も――?」
「岩にぶつけられて、そのまま――」
「そ、そう…なんだ……」
訊ねておいて、適当に相槌を打つしか出来なかった。自分もかなりきつい戦いを経験してきたが、この二人は一度死を経験しているのだ。その意味を、キラは消化できないで居た。
そして、カツはキラに対して軽い嘘をついた。本当は、岩に“ぶつけられた”のではなく、“ぶつかった”のである。その後に、ハンブラビに狙い撃ちにされて戦死した。その様子を見ていたエマはそのことを知っていたが、別段突っ込む気にもなれなかった。
この世界で元の世界の話をしても、意味が無いからだ。
「キラ、アスラン君が来ているわよ。カミーユ君は私が看ているから、顔を出してきなさい」
「母さん」
重い空気の中、カリダが部屋にやって来た。そして、エマとカツを見ると、優しく微笑んだ。
「アンディから聞きました。でも、悪い人ではないと信じています」
「カリダさん…」
「これからも、息子共々仲良くしてくださいね」
笑顔が素敵な婦人だとエマは思った。こんな女性に育てられたのなら、キラがこのような少年に育つのも道理だと思う。血の繋がりはなくとも、彼女達だからこそ、健全な養子関係を築けたのだろう。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
にこやかに言葉を返すエマ。カミーユをカリダに任せ、3人は階下に降りていった。
「それじゃあ、オーブはプラントと同盟を結ぶ事を正式に決めたんだな?」
「はい、セイランもその方向で納得しているようです」
リビングには、アスランとバルトフェルド、それにマリアとマルキオが居た。ラクスは、子供たちと外へ散歩に出かけていた。彼等の話の邪魔を子供たちにさせないためだ。
「あの親子にしては、あっさりとした対応だな。彼等は連合寄りだと思っていたんだが」
「彼等もオーブ臣民です。国の利益を考えた時、プラントとの同盟も有りだと考えたのでしょう」
「そうかな?俺には、デュランダルに誘導された風に見えたがね」
「そういう考えはよくないわ、アンディ」
アスランからの報告に、難儀を示すバルトフェルド。マリアは、そんな彼の疑り深い態度が面白くなかった。
「君はデュランダルに会った事が無いから分からんのさ。テレビの画面を通じてじゃあ、政治家の本音なんて見えてこないものだよ」
「だからって…折角カガリさんが決めた事なんだから――」
「それが危ないって言っているのさ。お嬢ちゃんは確かに志の高い政治家さ。だが、それが資質の高さに比例するわけじゃない。今の彼女を信用しすぎるのは危険だ」
「代表殿は、そんなに頼りなく見えますか?」
バルトフェルドの忠言に口を挟んできたのはマルキオだ。彼はSEEDの信者でもある。カガリにその素質を見出している彼は、バルトフェルド程カガリを不安に思っていない。
「導師、僕はあなたの言うSEEDの発現とやらを信じたいとは思いますが、現実問題はそんな理想を語っていられるほど優しくは無い。彼女の覚醒が、手遅れになってしまってからでは遅いのです」
「それは分かりますが、何もそこまで不安に思うことも無いでしょう。彼女の理想の高さは、間違いなく時代をリードする事になると思います。そして、今も成長は続けているでしょう」
「そうだと思います。ですが、僕はそんな悠長に構えてられない性分でしてね。彼女の成長を待ってられないんですよ」
少しイラついたように、バルトフェルドはカップの淵を唇に運んだ。それを見るアスランは、少し悔しい。彼自身もカガリはまだ頼りなく映っているが、彼女はいずれ良い政治家になるだろうと信じている。
加えて、自分に近しい人が他人に勝手な事を言われるのが、妙に腹立たしかった。自分が一番カガリを理解しているという自負があるだけに、バルトフェルドの言葉は無知なるがゆえの暴言だと思った。
「いらっしゃい、アスラン」
そんな風にして、バルトフェルドにチラチラと視線を送って睨んでいると、2階からキラ達3人が降りてきた。エマとカツの姿も確認し、立ち上がる。
「無事だったんだな、キラ。――それに、カツ君、先程はありがとう。お陰でオーブ本土を守る事が出来た」
「わざわざ御礼をしに来てくれたんですか?」
アスランの礼を受けて、カツは言う。律儀な青年だと思った。
「あぁ。そのついでに、色々と話を聞きに来たんだ。エマさんとカツ君…それともう一人居るとか?」
「じゃあ、もうバルトフェルドさんから聞いたんですね?」
「信じられない話だけど、バルトフェルドさんが言っているのだから本当のことなんだろうな」
アスランは視線をバルトフェルドに送る。それに気付き、カツは改めてバルトフェルドが周りから信頼されているんだな、と実感した。
「オーブはプラントと同盟を結ぶのよね?その後は、どうなるの?」
カツを押しのけ、今度はエマが訊ねる。
「5日後にザフトからオーブに駐留軍名義の守備隊が配属されます。デュランダル議長は明日帰られる予定でしたが、同盟が結ばれる事により、その部隊の到着を待ってから帰るそうです」
「ミネルバでは帰らないのかしら?」
「ミネルバは3日後にオーブを出て、カーペンタリア基地に向かうそうです。そこで新たな指令を受け取り、そのまま作戦行動に入ると聞きました」
「3日後?では、オーブの防御が2日手薄になるわね…カガリ代表はそれを了承しているの?」
「それが――」
ミネルバが明日発つというのなら、2日だけとはいえオーブは自前の戦力だけになってしまう。その時に再び大西洋連邦軍に攻め込まれれば、今度こそオーブの本土が戦火に巻き込まれてしまうだろう。
デュランダルは、それが分かっているはずである。今日の戦いも、ミネルバのタンホイザーが無ければ、オーブ軍だけでは敵の侵攻を防ぎきれなかった。万が一の事態が起こる可能性を考えれば、同盟を組んだ意味がなくなってしまう。
アスランもそれが分かっているのか、言葉を少し詰まらせた。
「デュランダルも考えちゃいるさ。その為に、あれを持ってきたのだろう?」
バルトフェルドは言う。アスランも彼の言う“あれ”が何なのかを知っているのか、首を一つ縦に振って先を続ける。
「フリーダムを置いていくと言っています。そして、バルトフェルドさん、あれにあなたが乗るようにお2人から伝言を預かっています」
「俺に再び軍人に戻れってか?」
「引き受けてくれますか?」
「そりゃあな、この日の為に俺は気持ちだけは維持してきた。覚悟は出来ているよ。…が、それもデュランダルの思惑の内ってのが面白くないがね」
「そんな事、言ってる場合じゃないでしょ」
隠す事無くデュランダルに対する不審を口にするバルトフェルドに、マリアが言う。このような状況で口にする言葉ではないと思った。
「こっちは利用されているようなものだ。この場で不満を口にしたぐらいじゃ、罰は当らんよ」
「そうではなくて――」
「やらないとは言ってないんだ。それとも、誰か他の奴が居るってのかい?」
バルトフェルドは面白くなかった。デュランダルは、キラをフリーダムに乗せるつもりでいた。そして、それは今も変わっていないはずだ。そうなると、彼にとって自分は代役、いわばキラが再びMSに乗る気になるまでの繋ぎに過ぎないのだ。
キラを争いから守るのを目的としてはいるが、それ以上に自分のプライドが傷つけられた気分になった。デュランダルにとって、バルトフェルドは思惑の範囲外にあるのだ。かつて砂漠の虎の異名を持っていた彼にとっては、屈辱だ。
「…引き受けてもらえるということで、報告していいんですね?」
「二つ返事で引き受けたと伝えてくれ。張り切っていたってな」
「分かりました」
バルトフェルドの魂に火が点いたのか、目つきが変わっていた。アスランはそれを見て少し笑う。彼が本気だと分かったからだ。
「それじゃあ、俺はそろそろ時間なので、帰ります」
「うん、またね、アスラン。カガリによろしく」
「あぁ、またな、キラ」
軽く会釈をし、アスランは自分の所有しているスポーツカーで帰って行った。
見送りの為、外まで出てきたキラは、ふと視線を海へ向ける。夕日が水平線の彼方に消え、一日の終わりを告げていた。
翌日、相談事があると言って、デュランダルがカガリの下を訪れていた。デュランダルがカガリの執務室に入ると、そこにはカガリと共に二人の男が居た。軍指令のソガと、カガリの付き人も兼ねるキサカだ。
(セイランは居ないか…彼等が居ないだけで、随分と話しやすくなるものだな)
ウナトとユウナが居ないのが、デュランダルには楽に思えた。彼等の存在は、デュランダルにプレッシャーとなっていたからだ。
「お取り込み中でしたか、これは失礼」
「いえ、大丈夫です。…下がっていいぞ」
デュランダルの来訪に合わせて、二人を退室させようと促す。これから訪れるであろう敵の襲来に備え、部隊の整備を話し合っていたところだった。
しかし、デュランダルは今やオーブにとって超VIPの立場にある人間である。故に、カガリはデュランダルとの会談を優先させようとした。
「お待ちください」
だが、デュランダルはそれに待ったを掛ける。
「見たところ、彼等は軍の関係者とお見受けしますが、違いますか?」
「その通りですが、何でしょう?」
引き止めるデュランダルの意図が分からない。こういう話は、出来るだけ人の耳を避けるのが普通だと思っていた。
「昨日の戦闘ですが、ミネルバからオーブ軍の戦いを拝見させてもらいました。急な事態にも関らず、中々のものでした」
「ザフトに比べれば、まだまだです。昨日は援護が遅れまして、非常に申し訳なく思っています」
デュランダルのお世辞に、ソガが応える。若干の皮肉も混じっているように感じられたが、ここは素直に言葉を受け止める事にした。
「彼が軍指令の方で?」
「そうです、ソガといいます。あちらがキサカです」
カガリが立ち上がり、手を差し伸べて2人をデュランダルに紹介する。するとデュランダルはソガに向き直り、彼に話しかける。
「では、ソガ殿。昨日の戦闘で、三機編成の変形MSを見たのだが、彼等が誰なのか分かるか?」
「三機編成…ですか?確かにトリオを組ませているのは何組か居ますが」
「インパルスとフリーダムと共闘した三機だ。彼等をザフトに転向させて欲しいのだが」
「転向…ですか?」
「そうだ。これからミネルバは独立部隊として世界中を回って任務を遂行していく事になる。その時に、プラントとオーブの融和をアピールする意味も込めて、その三人をミネルバに編成したいのだ」
「そちらがフリーダムとザフトの戦力をオーブに振り分けてくださるので、私の方ではお断りする事は出来ませんが、何分誰の事を仰っているのか分かりませんので…キサカ、お前は分かるか?」
難しい表情で考えるソガは、振り返ってキサカに問い掛ける。彼は先日の戦闘で、部隊の発進を指示していたはずである。思い当たる節があるのではないかと思ったのだ。
問われたキサカは、顎に手を当てて少し考え込む。思い出せるだけの記憶を辿り、口を開いた。
「確か、整備兵の一人が言ってました。ムラサメに、アレックスと民間人らしき二人を乗せたと。帰還した兵によると、彼等は三機で敵陣の奥に突っ込んでいったと言っていました」
「アレックス君が?なら、そうだな。いい動きをしていたのを覚えている」
(アスランを――!?)
デュランダルが転向させたいと言っているのは、アスランとエマとカツだ。デュランダルの意志を知り、カガリは複雑な思いに駆られた。アスランとは、単なるボディーガードという関係を超えた気持ちを抱いている。そんな彼と離れなければならないのは、彼女にとっては辛い。
「ちょっと待って頂きたい。デュランダル議長は、オーブの理念を理解していてくれるものと思っていたのですが?こちらから転向させるとなると、理念の一つである“他国の争いに介入せず”が損なわれてしまいます」
「おや?国際的に見れば、我等と同盟を結んだ時点で既に理念は崩壊していると見られているはずですよ。それを知った上で手を組んだと思っておりましたが」
「なっ……!?」
不敵に言い放つデュランダルに、カガリは目を丸くする。
オーブが連合と戦争状態のプラントと同盟を組むのは即ち、国際的見地から見れば戦争に介入しているという事になる。カガリは、自国が守られるという条件のみに目を奪われ、外からの目に気付いていなかった。
「そ、それでは約束が違います!あなたは我等の理念を守ると仰っていたではありませんか!」
「私はその様な事を言った覚えはありませんが」
「そ、そんな――で、ですが、我々が戦争に参加してしまっては――」
「しかし、あなた方だけが無関係で居る事は許されない。ヤキン戦役の時にも、クサナギ級の戦艦がザフトと連合の戦争に介入していたではありませんか。今更、それを無かった事にすることなど、出来ませんよ」
「しかし、それでは――!」
カガリは反論できない。確かに、ヤキン戦役では、エターナル、アークエンジェルと共にオーブ艦であるクサナギも戦闘に参加していた。それはつまり、他国の争いに介入したという事である。
カガリが狼狽していると、デュランダルは続ける。
「代表にとって理念とは、世間体を気にする為だけのものですか?」
身に覚えは無いが、グサッと来た。それは、カガリの中に知らず知らずの内に、そういう考えが生まれつつあったのを意味している。かつてシンに責められた時も、似たような気持ちになった。
「違います。平和を築く為の指標であると、思っています。決して、飾りではありません」
「そうです。理念というものは、その人の心の指標なのです。ならば今、この状況で真に何をすべきなのかをお考え下さい。時には、理念に矛盾するような行動も、後になって意味を持つ場合もあります」
「それは、理念の一つを崩せと仰っているのか?」
「その必要があると言っているのです。理念が代表の身を飾る為だけのモノでないならば、それを示して頂きたい」
「……」
カガリは目を閉じた。思い起こしたのは、ミネルバで出会ったシンという少年兵の言葉。“家族をアスハに殺された”――そう言っていた。恐らく、二年前のオーブ防衛戦での事だろう。
その時、父・ウズミは、中立の理念を守る為に最後まで連合の圧力に屈しなかった。そして、最後までその志を貫き通して死んでいった。その姿は立派だったと思う。だから、その志を自分も受け継ごうと思ってこれまでやってきた。
しかし、その背景で消せない痛みを背負った少年が居た事を、あれから二年経た今知った。彼は、謂わばウズミの理念の犠牲者とも呼べる存在。理念を貫き通す事で民を苦しめる事など、あってはならない事だ。
「完璧な理念などありえない…」
カガリは呟く。デュランダルが目を細めた。
「どんなに立派に見える理念も、所詮は一つの価値観に過ぎません。それに凝り固まるのは、独裁者のすることです。カガリ代表は、その様な人物ではないと、私は思っております」
デュランダルの言葉が突き刺さる。自分は、理念を守る事に対して、頑固になっていたのかもしれない。養父の最後を見たから余計に理念を大切にしなければと思い込んでいたのだろう。
心の中で“ごめんなさい”と呟く。ウズミのように初志貫徹は出来ないかもしれないが、オーブを守る為に、自分なりに考えてやっていく事を亡き父に誓った。
「キサカ、アレックスを呼んでくれ」
カガリが決断を下す。
今回は以上です。
このレスをしようと思ったら規制に引っ掛かるなんて…くやしい!でも(ry
あと、関係無いかも知れないけど、雨トーークでΖガンダム芸人をやるっぽい?です。
品川と土田の言葉を誰も否定しなかったから確定だと思うんですけど、個人的に切望してただけにかなり嬉しいです。もしかしたらやらないかもしれないですけど
リアルタイムGJ!!
とうとうシロッコが出てきましたか〜
シロッコが世界をどこまでかき回すか見ものです
雨トーク・・・見ないと
シロッコキター
雨メトークって何?
TVみないから分からない・・・
GJ!お疲れさまでした。
凸・エマ・カツ=ザフトへ移籍ですか!…ちょっと残念かな?
まぁ予想が出来ない方が楽しみだから次回も期待してます。
>>184アメトークは、テレ朝の木曜の深夜番組です!
GJです!
ティターンズ側の転移者初登場はやはりシロッコでしたか
MSパイロットとして前線に出てきたらどんなMSに乗ってるのか今から楽しみです
エマ・カツ・アスランがミネルバに出向となるとシン達との絡みも見れそうですね
オーブからの出向となるとオーブ軍人として行く事になりそうなので、エマ=シーン二尉が誕生?
>>168 あれを酷いというのはどうかと思うがw
変に同情された方がよっぽどみじめだろ
>ブルーコスモスの連面は溜息をついていた。
>これでお主の与するロゴスも潤うというもの。
えーと、ロゴス⇔ブルコス入れ替え?
>ブルーコスモスの過激思想で、あの美しい砂時計
?つまりブルコス内の過激派=ロゴスなの?
あと、「砂時計」は原作ではブルコス側でのプラントコロニーの蔑称なので議長自らが口にする言葉じゃないよ。
>ロゴス⇔ブルコス入れ替え
普通にZとのクロスにすればいいのになんでこんなわけわからん独自設定入れたんだろ。
最初勘違いしてて、途中から直すと色々矛盾するからそのままでいくって言ってなかったか?
GJ
>ロゴス⇔ブルコス入れ替え
自分はロゴスとブルコスを取り違えて書いてしまった回で
シロッコ登場フラグを立ててしまったため
ええいままよと突っ走ってるんだと解釈してる
カガリ…なんで即答しようとするの…
一言「他と相談して、後ほどお答えいたします」が思い浮かばないの…
>>192 いじめないで!
カガリが少しだけ頭の弱い子だからっていじめないで!
もうイッパイイッパイなんだから!!
ロゴスとブルコスの件、単語入れ替えるだけじゃ駄目なのか?
カツがミネルバに来るとシンと底辺のお子様対決が…
口はカツの方が達者かな…
カツはウザイが腕はいいぞ
とりあえず口で言うだけの腕はあるとオレは思ってる
ハマーンのキュべレイに攻撃しかけたりシロッコのジオに攻撃しかけたりして生き延びてるんだぜ?
まぁNTキラーのヤザンに振り回されて激突死したがw
197 :
192:2007/06/09(土) 17:37:07 ID:???
ごめん、いじめてるつもりはないねん。ただそういう駆け引きを教えてあげたい気分なんよ
>>196 カツが生き残ってるのは、いい噛ませ犬として使いまわすためじゃなかろうか
だから用済みになった瞬間に……
>>197 そういうカガリの教師って、誰かいるかなあ。セイラン親子じゃなんか違う気もするし。
>>197 しかしだな
「少々お待ちいただけないだろうか、議長。あなたの言葉はもっともだが、これは国防と外交の両方に関わることだ。」
「オーブは私の一存で動かせるものではないし、国軍も同様だ。今この場での返事は控えさせていただきたい」
などと理路整然と述べたてるカガリはもはやカガリでは無いと言えないだろうか。
ってかデュランダルもセイラン親子いなかったから、あそこまで踏み込んだ物言いをしたんじゃないかと。
カミーユが速く復活して
Zに乗ってCE世界でシロッコの乗るジオと戦って欲しい
それじゃただのZじゃないか
>>201 種世界の状況が絡むとまた違うとは思うけどね
ブルコスとロゴスに関しては、wikiによるとジブリールはブルコスの盟主であり、ロゴスの一員でもあるとのこと。
なので、自分の最初の勘違いから訳の分からないことになっていますが、とりあえずロゴスはブルコスの財布みたいなものであると考えてください。
つまり、この話におけるロゴスはその程度の役割しかないということです。
ブルコスはロゴスを母体にしているということなので、そういう関係も有りかと思って突っ走らせてもらいました。
そうすると「老人達」が偉すぎるYO!って感じるかもしれませんが、そういう人達がブルコスのメンバーになったと言う事で目を瞑っていただきたいです。
ぶっちゃけ、ティターンズとダブらせると言う意味もあるので、種死本編におけるロゴス的な役割は、軍産複合体のロゴスよりも、CE73においては主義者揃いとされているブルコスの方が適任のような気がしました。
あと、カガリに関しては、青二才な感じを出す為にわざと単純な描写をしています。
長レス失礼しました。
今の状況からしたらカミーユ復活は当分無理っぽいな・・・
キラがカミーユを気に入ってるから、それがカギになりそう
まあ、もうちょっとカミーユが居ない状態で
エマやカツが頑張ってる姿を見ていたいところだ
カガリの教師って…マーナだったりしてw
それだと良い人間にはなれるだろうが、政治家としてはとても駄目フラグっぽいw
カガリはバカ親父の教育方がなってないからだろう
まぁ普通キサカじゃなくて腹芸を学べる文官を側近にするぞ
護衛は黒服SPでいいわけで
G確認するためだけにコロニーまで行ったり、その後ゲリラに参加したりしちゃうからなぁ。
そういう行動を許してる時点でどうしようもないと思われ。
少なくとも世襲が認められる国の政治家とその娘としてはダメポ。
……ディズニーランド行きたかったとか言っちゃうのと、どっちがマシかってレベルかもw
ディズニーランドって、マサオ君の事かなw
そりゃあ、マサオ君の方がマシでしょう。カガリの方が行動がはた迷惑だ。
>>172 これでお主の与するロゴスも潤うというもの。
>>203 つまりスポンサーがたくさんいてロゴスはジブの勢力になっているのか、
ティターンズというよりエウーゴみたいだな。◆x/lz6TqR1w 氏のブルコス。
ラクス達のほうがSEEDの信者という宗教信者:主義者…
ティターンズに見えるよ。自分には…
本編では、だろ。
>>212 確かにこんな感じにみえるな。
エゥーゴ=ブルコス
ウォン・リー=ジブリール
アナハイム=ロゴス
あとこうなるのか
連邦=連合
※そのまんま
ティターンズ=オーブ
※連合よりからプラントよりに。蝙蝠ぶりがそっくり。
アクシズ(ジン)=プラント
※そのまんま
>>210 なんかわざわざ跡取りって設定いらんよなw
上に優秀な跡取りがいて、その妹はアホでしたの方がまだましw
>>215 ジブリがウォンさんみたいに空手熟練者のカミーユをボコし、
プチモビで月面の戦場を生き残ることが出来る鉄人かというと、出来ないと思う…
むしろジブリ=メッチャーといったところかと…
そこでジブヌコがカミーユを引き裂くんだよw
というか記憶違いならすまんが
確か代表って5首長家の中から選挙じゃなかったか?
神聖ローマ時代のドイツみたいな選帝侯=氏族で
氏族が投票するって形の。いつの間に世襲になったんだ?
それともこの設定って俺の記憶違い?
本来は選挙だが、実質的に世襲じゃなけりゃカガリが選ばれたりしないだろ。
北の将軍様の先代のようにウズミが遺書か遺言でも残していたのかもしれんぞ
アカツキと同じようにDQNで…
アスハ家の力が強くなってバランスが崩れて
無し崩し的に世襲になってしまったと言うことかね
ジブリとフォウに似てないか?
口紅とか・・・いやなんとなく
選挙で代表就任は旧五大氏族だな
種死じゃ旧五大氏族はカガリとミナしか生き残ってなくて
ミナはアスハ派が追い出したんでミハシラに引きこもってる
ちょっと聞きたいんだけど、種のMSってムーバブルフレームのMSじゃないよね?
>>225 GAT-X系列はムーバブルフレームだけど腐苦駄が設定無視とかさんざんやらかすので
それ以降は不明に……ガンダムタイプはムーバブルフレームでいいんジャマイカと。
>>226 なるほどなぁ。ありがとう。
種死でなく種にΖ飛んでその機構を解析してどうのっていうネタを考えてたんだが、出直してくる。
おまんこ
を舐めたくなるような
職人さんマダ〜?
おまんこを舐めたくなるような職人さんマダ〜?
「最近のスレにはおまんこを舐めたくなるような職人さんがいない」
最近職人さん居ないから、自分で書いてみてたんだがカミーユの口調って難しいな…
マジ職人さん尊敬するわ
つーか富野語が難しいんだよな。
「あなた達って人はー!」と言って、キラ達を殴って突っ込むのしか思い浮かばんな。
確かに
地球の重力に徐々に引かれていくユニウスセブン。
ミネルバのシン達の援護もあるが、敵の数が多く地の利も向こうにあり、更には相当な熟練したパイロットの集団だった。
正直なところユニウスセブンに取り付くのが精一杯で作業どころではない。
『こりゃあ、本格的にやばいぜ。どうすんだよ、イザーク?』
『分かっている!!ここで戦闘をすればメテオブレイカーが使い物にならなくなる!!ええい!!これでは、手が出せん!!』
ディアッカとイザークも奮戦しているが、メテオブレイカーを守るのが最優先なため下手に動けず状況は相変わらず不利だった。
同様にシンやレイ達も粉砕作業の邪魔をさせないようにしなければならなく、少しずつ敵のジンに押され始める。
「こんな状況でどうやって粉砕作業なんて!!無茶苦茶だ!!」
『シン!後ろだ!!口を動かす暇があるなら腕を動かせ!!』
「分かってるよ!でも、敵が多すぎてこれじゃあ援護どころじゃ・・・」
『何、弱気になってるのよ!!それでも赤なの!?根性見せなさいよ!!』
「根性ったってこれじゃあどうしようも・・・・・・これは!!?」
シンはレーダーに新しい機影を捉える。ミネルバから高速でこちらに向かってくる。
同時にメイリンから各員に通信が入る。
第五話「刻が動くとき」
『Zガンダムも粉砕作業の援護でそちらに向かいました。データを送ります。持ちこたえてください!!』
「あのパイロット!?病人なんか乗せて大丈夫なのか?」
各員の機体にZのデータが送られ、レーダーに表示される。
シンは、メイリンの言葉を聞きながらもそれが信じられなかった。
「やっぱり、只者じゃない?」
一方、ウェーブライダーに変形したままZをカミーユはユニウスセブンのビームの光や爆光が見えるほうへと加速させる。
ユニウスの残骸の破片を巧みに回避しながら直行し、敵の機影を確認する。
カミーユの機体にも手打ちのデータだけは送られて表示されている、もっともこれは詳細なデータなど見れるわけもなく識別信号を判断させるだけのものだった。
しかし、カミーユにとってそれはあってもなくても変わらなかった。
なぜならば、ニュータイプとしての彼のセンサーが悪意を感じ取っており、誰が敵であるかが大体分かっていた。
「こんなものを落とそうなんて・・・!!思い上がりだ!!」
ウェーブライダーから変形して、スマートな体型へと変わるまで1秒も掛からなかった。
たたまれた頭部のセンサーが開き、デュアルアイは強く発光する。
「こちら、Zガンダム。作業の援護をします!」
『気をつけろ!!敵の動きは普通じゃない、熟練したパイロットの動きだ!』
「了解、何とかこちらに気を引きます。」
ビームサーベルを抜いてZはビームカービンで撃ってくる接近してくるジンを捉える。
ビームは機体を狙っているが、すべて紙一重で回避されジンのパイロットは初めて恐怖を感じた。
まるで自分の動きが分かっているような、この相手にはいくら攻撃をしても当てられる自信がなかった。
眼前まで迫る機体がビームサーベルで横一閃、薙ぎ払いパイロットの意識はそこで終わった。
カミーユもそのパイロットの意思を感じ、顔を歪める。
「下がっていれば、やられなかったものを!!」
ジンの爆発から離れ、メテオブレイカーに取り付こうとするジン三機へ向かうZ。
インパルスのシンもそれを確認して、射撃武器もなしにジンに向かう無謀にも見えるZに回線をつなぐ。
「ライフルもないのに無茶だ!!死ぬつもりなのかアンタは!?」
『あれをやられる訳にはいかないんだろ!?だったら・・・』
Zは更に加速をして、ジンがライフルを構える前に左腕のグレネードランチャーを発射する。
三機は容易く回避しビームを斉射してくるが、一機はZの策に気付き後退しようとするも遅すぎた。
ランチャーはユニウスの廃墟に直撃し、爆発の衝撃でコンクリート片を撒き散らす。
至近距離でコンクリート片の雨を受けたジンはメインカメラや背部のメインスラスターにダメージを受けて、
持っていたライフルで応戦しようにもコンクリート片のおかげで使い物にならなかった。
それを見たシンはZの戦いが信じられなかった、そしてそれを操縦するパイロットの予測したかのような技量も。
「なんて戦い方だ・・・一瞬で逆転させるなんて。」
瓦礫の中から先ほど退避しようとした損傷の少ないジンが出てきてサーベルで襲い掛かる。
Zはシールドでそれを受け、バルカンでメインカメラを潰し、サーベルで腕を斬り飛ばし蹴りをお見舞いする。
ジンは地表に叩きつけられ、動きを止める。
シンも負けじと攻めて来るジンにライフルでけん制して左手にサーベルを抜かせて接近戦に挑む。
「でも俺だって、それくらい・・・!!」
無意識のうちの対抗意識が口に出てしまうシン、互いの機体の力比べでは最新機体であるインパルスのほうが上だった。
相手のジンの関節部に過負荷がかかり左腕から火花が散る、チェーンガンを至近距離で放ちシンはたたみかける。
ジンは距離を離して、ビームを撃ってくるがもうそれが恐怖には感じなかった。
なぜならば、相手が近距離戦を恐れるあまり正確な射撃になっていなかったのを感じ取ったのだ。
「そんな攻撃、当たるもんか!!」
シールドを突き出してジンに突撃し、まともに吹っ飛ぶジン。
「これで!!」
ついで、錐もみしながら体勢を立て直そうとするジンにインパルスのビームが飛んでいく。
ジンは成す術なくビームの直撃を喰らい、その機体を爆散させる。
「あの人、本当にあれに乗ってるのか?病み上がりの人間とは思えないな・・・」
『・・・?何か言ったか?』
「いえ!何も!」
『他の区域にも敵が残ってる、手伝ってくれ。』
「りょ、了解!」
(やっぱりこの人も、コーディネイターなのか?)
シンのインパルスもZの後に続き別の作業部隊の援護に向かう。
その頃、ザクに乗るアスランもメテオブレイカーによる粉砕作業を手伝っていた。
作業部隊の決死の作業によりユニウスセブンは半壊したものの、まだ半分は地球に引かれていた。
また敵の数は減っているものの、それでも作業部隊にとっては大きな脅威だった。
「何!?これは強奪された三機!?この忙しい時に!!」
『冗談じゃないぜ!こんなところでドタバタと!!』
「下がれ!!」
アスランのザクが小隊を組んで攻撃を仕掛けて来る三機にビームを放ち、分散させる。
次の瞬間アビスのフルバーストが数瞬前のザクがいた位置を通過する。
すかさず、反応して射撃が行われた位置へけん制の射撃をする。
アビスのパイロット、アウルも軽々と回避するが前回の戦闘で左肩のシールドが丸々なくなっているため姿勢制御が難しくなっているが、
それでも難なく操って見せるところがファントムペインでエクステンデッドのなせる業だろう。
『まったく、扱いづらくてしょうがないぜ』
『自分で壊したんだから、文句言うなアウル』
『うるせーよ、スティングだって同じだろ?』
『・・・』
スティングのカオスも前回の戦闘で機動兵装ポッドが一基破壊されている。
応急処置を二機とも施してあるため、出撃できないわけではなかった。
しかし、二人のプライドを傷つけたインパルスに対して殺意を露わにしていた。
『良いか?この間の奴らは絶対に生かしておくな!!特にあの合体する奴はな!!』
『その前に、この緑の奴だろ?これ奪ったときにもいたじゃんコイツ!』
『倒す・・・』
三機は散開しつつアスランを囲み、ビームを放つ。
アスランは巧みにそれを回避して作業部隊から離れるようにしながら、反撃をする。
『こちらZガンダム、援護します!』
「Z!?・・・あの機体か!?すまない、頼む!!」
Zはウェーブライダーに変形し三機の連携を乱す様にして飛行する。
『なんなんだよ、コイツ!?』
『ザフトの新型か!?ネオの奴こんな変形するのがいるなんて、聞いてないぞ!!』
『ちょろちょろと!!』
三機の意識はZに向けられ、攻撃を見事なまでに回避するZが不快だった。
しびれをきらしたアウルが接近戦に持ち込もうとスラスターを全開にする。
『目障りなんだよ!!』
カミーユも接近してくるのを感じ、急制動をかけ変形を解いて機体を反転させてサーベルを抜く。
アウルは自らのスピードも相まって接近しすぎる。
「そんなことでは・・・・」
Zはビームランスを持った右手をサーベルで切り落とし、シールドのビームを向けられる前にシールドの根元からばっさりと切り飛ばされる。
「死ぬだけだ!!」
パニックに陥ったアウルはところかまわずカリドゥスを乱射する。カミーユはアビスからいったん距離を離れる。
アスランの前に飛び出すアビスだが、アスランがビームトマホークを投げつけ、左脚を破壊する。
『うああああ!!』
カミーユは流されてきたアビスにサーベルを一薙ぎする。
アウルの視界にはスローモーションでビームサーベルを振るZの姿が映る。
『母さ・・・・!!』
どうすることもできず、次の瞬間アウルの意識は弾けとんだ。
アビスは真っ二つにされ行き場をなくしたカリドゥスのエネルギーは爆発と同時に拡散する。
アビスの爆発とビームを回避すると同時にアウルの思念を感じて苦痛に感じるが耐える。
「うぅ、まだだ。こんなの、こんなの解ってたことじゃないか・・・・!!」
口にすることでなんとか気を紛らわせようとするカミーユ。合流したシンにも、アビスの爆発と同時に頭の中に叫び声が響く。
スティングがその隙に兵装ポッドで攻撃を試みようとするもアスランにそれを阻まれる。
『アウル!!こいつら!!』
『いやあああああ!!』
こちらの状況に気付いたジンがこの戦いに参戦してくるも、それは無謀だった。
「よせ!!死にたいのか!!」
『今は、戦ってるときじゃないっていうのに・・・!!』
『邪魔だぁああ!!』
こちらに向かってくるジンの背後からカオスのビームが放たれ、容赦なくコックピットを貫く。
『だから、言ったのに!!』
「これ以上、無駄な犠牲を出すな!!」
二人はカオスとガイアに連携して攻撃を仕掛ける。
アスランがライフルで援護をしてカミーユが接近戦に持ち込むといった形でいつの間にか二人の間で連携が取れていた。
これも、二人の技量があるからこそなせる業だからだろう。
『まだ、重力に引かれている・・・』
「何とかこの場所から引き離さなければ」
『アスラン!!貴様こんなところで何をやっている!!』
『久しぶりだな、元気でやってるか?』
「イザーク!ディアッカも!」
スラッシュザクファントムとガナーザクウォーリアが二機やってくる。
アスランはイザークの厳しい口調に苦笑してしまう。
『この程度の敵にてこずるとはたるんどるぞ!!』
『まぁまぁ、アスランは俺達と違ってパイロットを続けてたわけじゃないんだし』
『敵がきますよ!!』
カミーユが言うと同時にガイアとカオスの攻撃が来るが、四機は散開して回避しつつ反撃をする。
ガイアはサーベルを抜いてスラッシュザクに接近戦を仕掛けてくる。
『この程度で、甘いわ!!』
イザークは冷静にサーベルをビームアックスで捌きつつ、距離を開けてハイドラガトリングビーム砲でけん制する。
『いけぇ!!』
すかさずディアッカのガナーザクがオルトロスで追撃し、アスランは弾幕を張ってカオスを近寄らせない。
「邪魔はさせない!!」
カミーユも動きの取れないカオスにウェーブライダーで接近してはサーベルで勝負を仕掛け、離脱する戦法を取る。
『死にたくなければ下がれ!!』
もはや仲間を失ったカオスとガイアの動きはめちゃくちゃだった。
『死にたくない!!死にたくない!!』
『ステラ!!落ち着け!!くそ、ここは一旦引くしか!!』
四機の活躍によって二機は後退していく。
ジンをさばきながらもシンはそれを見て、この4人のパイロットの技量の高さを感じた。
「これがヤキン戦役を戦い抜いてきた実力・・・」
『呆けている場合か!!まだ、粉砕は完了しておらんのだぞ!!』
『そろそろ、阻止限界点だぜ。急がないと・・・・ってもうバッテリーの残量がもうないぜ!!』
『くっ、俺もだ。これ以上は持たん。もう少しだというのに!!』
二人のコックピットにはバッテリー残量の危険を知らせるアラームが鳴り響く。
イザークたちの苦痛な表情が、シン達のコックピットにも映る。
『・・・・後は俺がやる、イザークとディアッカは後退してくれ』
『アスラン!!?』
『僕も最後まで手伝いますよ、そのために来たんですから』
シンは二人がそう言うのを聞いて引っ込みがつかなくなってしまい、二人に合わせてしまう。
「なんであなたみたいな人がオーブに・・・俺もやります・・・やらせてください」
『・・・分かった・・・・すまんが、後は頼むぞ!だが、決して死ぬなよ!!』
『ああ、まだ死ぬつもりは無い!!』
そう言って、アスランは再びユニウスに取り付く。
カミーユのZも後に続き、最後にインパルスが二機を追う。
二機は戦友を見送り、ボルテールへと帰還した。
三機は散開して、メテオブレイカーを起動させるべく作業に移る。
いまだに、各所では戦闘の光が見えるがそれどころではなかった。
カミーユのニュータイプとしての能力が敵味方、そしてユニウスで死んでいったものたちの声を取り込んでいき、そのセンサーが感度を増していく。
「まだだ、これが終わるまでは・・・・?・・・敵が残っている!?あの人が危ない!!」
カミーユはメテオブレイカーを既に起動させており、ウェーブライダーに変形しアスランの元へ向かう。
シンも同様にこの戦場の気配を感じ取り、息苦しくなり冷汗をかいていた。
「なんなんだよ、この感じは・・・・」
アスランに二機からメテオブレイカーの設置、および起動の完了の連絡が来た。
味方もすでに撤退し初めており、残るは自分達とテロリストぐらいのものだろう。
なぜならば、作業部隊、ミネルバ隊のMSに帰投命令が出ているからだ。
メテオブレイカーの設置に完了し、アスランも起動させる。
しかし、生き残っていたジンたちがこちらに気付く。
「くっ、これで最後だというのに・・・!!」
『貴様らもコーディネイターならば、我らに従え!!』
「こいつら!!まだ・・・!?」
アスランは後ろにはメテオブレイカーがあるため、うかつに回避することも反撃することもできなかった。
いくら、アスランがヤキン戦役の英雄といっても守りながら戦い、そして敵が熟練したパイロットであること、
そして自分はMSに乗るのにブランクがあることは大きなハンデとなり、ジン達の攻撃を通さないようにシールドで耐えるのがやっとだった。
そのときだった。
『我らコーディネイターにとってパトリック・ザラのとった道こそが、正しい道なのだ!!なぜ分からん!!』
「・・・!?・・くっ!?」
『貴様たちが我らと同じコーディネイターであっても、邪魔をするならば容赦はせん!!』
今は無き父の名をこんなところで聞くとは思ってもいなかったアスランには衝撃だった。
しかも、2年経った今でも父の言葉に囚われている者たちによってこの凶行がもたらされたものだと知って、動揺を隠し切れなかった。
『甘いわ!若造が!!』
その動揺がMSにも現れたのを敵のジンが見逃すわけが無く、容赦なくビームを放つ。
断続的に防御をし続けてきたシールドがジンの猛攻に耐え切れず、ついに吹き飛びザクの左腕をも持っていく。
「・・・シールドを!?」
爆発の衝撃でバランスを持ち直そうとバーニアをふかすアスラン、しかしジンはそんな隙を与えてはくれない。
『沈むがいい!!』
「こんなところで死ぬわけには・・!!」
ザクはジンのサーベルを機体運動のみで回避して、タックルをかます。
『何!?だが・・・』
ジンも弾き飛ばされると同時に右手に持たせたライフルでザクの右足を撃ちぬく。
「くぅ・・・!!」
『ここまでだ!!』
『待てよ、お前達!!』
再びモニターいっぱいにジンの姿が映り、そのモノアイが鈍く光りアスランには死神に見えた。
しかし、ジンに高速で一機のMSが組み付く、それは僅かに発光するZガンダムだった。
第五話投下です。
忙しいのやなんやかんやしてたら、風邪引いて寝込んでしまいなかなか投下できませんでした。
みなさんも体調にはお気をつけください。
GJ!
ってニダの退場はやッ!
リアル投下キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!
体調崩されていたとの事でお疲れさまです。
アウルがカツのようだ・・w
GJです
やっぱカミーユが戦闘に出ると面白い
ハイパー化が楽しみです
GJ
ユニウスをハイパーZでぶった切ってください
GJ 最高ニュータイプの復活キター
GJ!
カミーユの神懸りにNT能力に期待する
GJ!
アウル…早い…涙…
>>253 なんかステラとアウルがエチして、アウルだけ先に……みたいな文章だw
>>254 そんな事言うから、そういう文章にしか見えなくなったじゃねーかww
256 :
253:2007/06/18(月) 10:34:12 ID:???
昨日やっと映画版Ζ見たんだけど、シロッコ倒すシーンで鼻水出そうになった
ロザミア、お前唐突に出てくんなよと
>>257 あそこって、俺も最初はミスかなと思って劇場で吹いたんだけど
考察サイトとか見ると、一概にそう思ってないみたいなんだよねぇ。
ちゃんとTV版と台詞変わって、2回出てたりとか。
思うに一般人代表とかそういう感じで出てたんじゃね?
Z劇場版とりあえず1と2は見たけどラスト見てないな
2のときのつなぎの荒さがちょっときになっちゃって・・・
劇場版はなかったことにしたほうがいいんじゃあ・・・
2の光速展開除けば、劇場版それなりに名作だと思うけどな。
ラストあたりの台詞の変化なんかは前向きなメッセージが多いし。
アニメ版と同じ物差しではかると微妙だが、今の時代を考えると良い変化だと思うぜ。
劇場版は1〜3部ぶっ通しで見ると印象がかなり違くなるよ
特に2部
まあ、お禿様のことだから、数年後に「あれは違う」って言い出しかねないけどなw
でも、お禿様って気にいらない場合は作った直後ぐらいから失敗だったって言わないか?
でもさぁ、某所でも言われてるけど、Zは最後カミーユが精神崩壊するからバランスが取れてたと思うよ。
最後だけ見てきたけど何でもかんでもオウムに結び付けてる時点で論外。
一例を全体論として錯覚させるのって詐欺テクニックであるよね。
それもそうか。
そろそろカミ−ユ氏が来るかな?
「お前達、こんなことをして誰かが喜ぶとでも思ってるのかよ!!?」
『ふざけたことを!!先に我らコーディネイターに攻撃を仕掛けてきたのはナチュラルではないか!!』
「そうやって、今度は自分達が罰を与えるとでも言うのか!?思いあがりだ、そんなもの!!」
『では、多くの同胞を殺した小賢しいナチュラルどもを見逃せと言うのか!!?』
「殺されたら、殺して、殺されるから、殺す。相手のことも分かろうともしないから、相手の存在を否定するだけでいつまでたっても・・・・!!
自分から歩み寄らずに相手を見下して自分達が一番上になったつもりでいるから!!
そんなことだから、自分達が間違っていることにも気付かないで!!」
『小僧が分かったようなことを!!』
ジンがZを振り払い、ビームカービンを撃つがZはそれをあえて避けようとしなかった。
Zの光が強くなり、ビームはZの光で弾かれる。
『なっ!!これは!!?』
「その小僧に言われなければ、こうも言われなければ、ここで散っていった人たちの悲しみも希望も何も分からないくせに!!」
『なんだと!!?』
突如Zの光が当たり一帯に拡散し、各機のパイロットはその眩しさに目をつぶる。
目を開けると、コックピットは消えて宇宙に投げ出されたようになっているが、視界には巨大なユニウスの広がっている。
一人のパイロットが光を放っているのに皆気付くき驚くが、それ以上に自分達の頭の中に今は無き人々の声が聞こえてくる事に驚く。
第六話「渡された希望」
アスランには母親の声、そして友達だったニコルの声が聞こえる。
「アスラン・・・ここは彼に任せて行きなさい。」
「母上!!しかし・・・。」
「彼なら、大丈夫です。僕達も微力ながら手伝います。さぁ・・・・。」
「ニコル・・・・ありがとう。」
「アスラン、あなたはあなたの道を進んでください。それが僕からのお願いです。」
それ以上、言葉が出てこなかった。今ならばすべてを受け入れていいように思えた。
ジンと交戦していたシンにも亡き妹の声が聞こえ、叱咤されていた。
「いつまでも、そんなもの持ってて恥ずかしくないの?お兄ちゃん。」
「・・・マユ!?」
「お兄ちゃん、分かってるんでしょ?今のままじゃいけないって。」
「けど・・・俺・・。」
「私そんなお兄ちゃん嫌いだな、らしくないもん。だから、約束して。」
「何を?」
「もう分かってるでしょ?・・・・あ、私もう行くね。あのお兄ちゃん手伝わなきゃ。」
「待ってくれ!!マユ!!俺は・・・・!!」
「また、会えるから。だからその時まで約束だよ!!」
我に返り、コックピットが元に戻っていることに気付くシン。
メテオブレイカーで完全にユニウスが粉砕され徐々に重力から離れて行くものの、それでも多くの破片が地球の重力に引かれて行く。
アスランは声の通り、ユニウスから離れてミネルバに回収されようとしていた。
光はまたZに集まっていく。まるで魂が吸い寄せられるように集まっていくのにも見えた。
『貴様・・・一体・・・!?』
「みんな分かっているんだ!!何をしなければならないかを、何が大切なことなのかを!!」
『ここまで来て、退けるか!!貴様ごときに!!』
サトーはビームを連射させつつサーベルを左手に構えさせ、Zに特攻する。
Zは光に守られビームを弾き、ビームサーベルをゆっくりと振り上げる。
ビームサーベルの出力が上がり、長さは機体の5倍以上はある。
『うおぉおおおおおお!!』
サトーのジンもライフルを捨て、サーベルを両手で構え踏み込む。
「この分からず屋が!!」
Zのサーベルが振り下ろされ、サトーのジンと共に周辺のユニウスの破片も切断される。
『ぬぅぅああああああああああ!!!』
サトーは意識が消失する寸前、亡き家族の幸せな姿と笑みを浮かべる自分が共に並ぶ様子が鮮やかに写り満足げに散っていった。
爆発から遠ざかるZ、サーベルはゆっくりと元の大きさに戻っていく。カミーユは、はっきりとした意識で叫ぶ。
「・・・・なんで!!?・・・分かっているのになんで受け入れようとしないんだ!!?」
一方、シンはできる限りジンたちを無視して、最後に残ったユニウスの粉砕を行おうとした。
既に死ぬ気なのか、大気圏突入のできないジン達が猛攻をかけてくるが最小限の動きですり抜けようとする。
ライフルを捨てて、シールドを突き出してサーベルを持たせてビームの雨に突っ込む。
「ここまで来て見過ごせるか!!」
負荷がかかりシールドごと左腕が吹き飛ぶ。
「邪魔だぁああああ!!」
ダメージを気にせずにジンを一機ずつサーベルで仕留める。
フォースシルエットも半壊し、ビームを避けきれずインパルスの右足が小爆発を起こす。
バッテリーが危険域に達してアラームが鳴るが気にせずに、メテオブレイカーを設置させ残った右腕のマニュピレーターで操作をする。
「これを壊せなくて大勢の死を無駄にできるか!!」
既に大気圏突入による摩擦による機体温度の上昇が始まっていおり、インパルスは戦闘のダメージも相まって危険だっただった。
メテオブレイカーがついに破片を砕き、ユニウスの巨大な破片はついに砕かれ、巨大な破片は粉砕の衝撃で大きく落下軌道から逸れて行く。
「やった!!これで!!」
しかし、今度はバランスを崩したインパルスが重力に引かれて行く。
「しまった!!高度が!!」
常時なら可能な大気圏突入も既に限界を迎えているインパルスには無理な話だった。
機体温度が急上昇していき、バッテリーのアラームとは違うアラームが鳴り始める。
シンは、何とか近くの破片まで近づきを盾にするようにしてやり過ごそうとする。
「だめだ!!機体温度が下がらない!!こんなところで・・・!!」
(カミーユ!!彼が重力にひかれているわ!!)
『何!?』
カミーユの研ぎ澄まされた感覚が重力に引かれて落ちてゆくシンを見つける。
シンも同時にカミーユがこちらに感づいたことを感じるとる。
『大丈夫か!?』
「あ、あなたは!?」
光を纏ったZが接近してくる。ウェーブライダーに変形して更に加速をかけてくる。
『この機体につかまれ!!』
(カミーユを信じて!!)
若い女性がZのコックピットに寄り添うようにしているのが一瞬だがはっきりと見える。
「えっ!?」
『時間がないぞ!!急げ!!』
(早く!!)
「は、はい!」
Zに促され、隕石からウェーブライダーにバーニアを噴かせて飛び移る。
大気圏突入が可能なのだろう、Zは入射角を調整する。
『機体のできる限りのパワーを冷却部、廃熱機能に切り替えるんだ!!』
「はい!!」
『吹っ飛びたくなかったらウェーブライダーから手足を出すなよ!!』
眼前に広がる地球が赤く燃えている。
周辺のユニウスの破片は摩擦熱で燃え尽きていく。大きなものは残っているが、今は仕方ない。
なにせ、下手をすればこちらが燃えつきかねない。
Zは最小限の動きで巧みに破片を避けつつ重力の井戸の底へと引かれて行く。
両機体の摩擦による衝撃が大きくなる。シンは必死でZにインパルスをしがみつかせた。
ミネルバは後方で大気圏突入をしようと試みている。無線を使おうにもすでにブラックアウトしているため交信は不可能だ。
『船はあそこか・・・!!』
ますます眼前の青い星は赤く燃えていき、周辺部の隕石が摩擦に耐え切れず消えていく。
そして衝撃は収まり、雲の切れ間から海面を覗かせている。シンは2年ぶりの地球の重力をその身で確かに感じていた。
「地球か・・・・・」
燃え尽きずに落ちていくユニウスの破片が散らばって落ちていく。シンにはそれが亡き人々の悲痛な嗚咽のように感じられ、悔やんでも悔やみきれなかった。
しかし、シンにはこれから何をすべきなのかを分かっている、それだけで十分だった。
夢か現実なのか死んだはずの妹との約束、ここで死んでいった多くの人のためにも自分にできることをしようと思い始めていた。
大気圏を突入したZとインパルスを包んでいた光が徐々に収まっていく。
(この世界の人々はこんな僕に力を貸してくれる。だから、今度は僕が、僕達が力を貸して助けになりたいんだ。)
(カミーユ・・・無理はしないでね・・・・)
『あの・・・・』
「ん?どうした?」
インパルスとの接触回線でパイロットの声が少々ノイズがかっているが聞こえる。
『助けてくれて、ありがとうございます。』
「そう言われるとなんだが照れるな・・・」
カミーユは少し面食らって苦笑する。礼を言われるとは思っていなかったからだ。
「そういえば、名前を聞いてなかったな・・・僕は、カミーユ・ビダンだ。」
『シン・アスカです。』
『・・・ますか!?・・・こちら・・ルバ!!聞こえますか!!?』
「迎えが来たみたいだ。ひと安心だな。」
シンも緊張を解いて、メットを外して深く息を吸い込んだ。
「約束・・・・・・必ず、守るから。」
カミーユも研ぎ澄まされた感覚が戻っていくのを感じて、心地よい気分でシートに身を委ねる。
ミネルバが二機の信号を発見し、接近し無事に二機は回収された。
シンが異世界のパイロット、カミーユとの邂逅を果たした頃、
シェルターに避難する子供達から離れて浜辺に立つ青年も空から落ちてくる赤い涙を遠くを見るような目で見つめ続けていた。
これから始まる、新たな戦火を見ているようなまなざしだった。
今回はこれで終わりです。
ご指摘、どんどんお願いします。
カミーユ氏、続き楽しみにしております。
乙
アポロ宇宙船の頃は、再突入時に宇宙船がプラズマに囲まれている間は外部との通信が不可能となっていた。
21世紀初頭のスペースシャトルでは再突入中でも、プラズマの希薄な機体上方のアンテナから、静止軌道の中継衛星を介した通信が可能となっている。
昨今は準備しておけば通信途絶しないよ、Nジャマー下での扱いは知らんが
◆1ITb1290kc氏GJです。
氏の作品が刺激となってこちらも意欲がわいてきます。
そして、どうも投下が遅れて申し訳ありません。
実は、一週間ほど前から自分のPCからネットに繋がらなくなって、投下ができずにいました。
原因がまったく分からないので、いつごろ復帰できるかは分かりません。
ですが、続きは書き続けているので、復帰できるまでどうか待っていてください。
お。いつの間にか新作が投下されてる
>◆1ITb1290kc氏
乙であります!
最後はウェーブライダーの大気圏突入でしたね
こうなるんじゃないかと期待してた通りでしたよ
カミーユがZに他のMSを乗せたのは本編tだとキリマンジャロでしたよね
でも今回読んで頭に浮かんだのはジュドーがキュベレイ乗せた時の方でしたが^^
次回もがんばってください
>カミーユ氏
お久しぶりです
ネットにつなげる事が出来ないとは不運ですね
自分が以前ネット不通になった時は、セキリティソフトが原因でした
・・・ていうかインストしたらネットが不通になるセキリティソフトってある意味最強かもw
投降の方は気長に待っておりますので
>>278 GJです
カミーユの哀しみからくるハイパー化が凄くよかった
これからも無理せず頑張ってください
◆1ITb1290kc氏
GJ
てかwikiに ◆1ITb1290kc氏の小説もうpしようよ
おお新作きたか
GJ!
GJす
GJGJGJ
乙
290 :
通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 17:29:37 ID:aYrc43Xh
GJ!
死者の魂と感応するとはシン、アスラン、議長の3人には
ニュータイプの資質があるのだろうか?
そうなったら、ラクシズどもとどう戦うか
楽しみっス!
ニュータイプの中のニュータイプだなカミーユは
wikiに◆1ITb1290kc氏の作品1〜6話のうp完了しますた
(´д`)
カツ「貴方は英雄なんです!地下にMSを隠してるくらい言ってくださいよ!」
アムロ「そんな物あるわけないだろう」
カツ「貴方は(ry
キラ「やめてよね、そんな物あるわけないでしょ?」
ラクス「ありますわよ」
逆に空気嫁www
虎「なんなら、戦艦もあるが」
エマ「あなたたちは一体なんなんですか!」
・・・・・・はぁ、眠い・・・。」
ミネルバのデッキの上でシンは手すりに寄りかかるようにして空を見上げ、潮風を感じながらあくびをひとつする。
現在ミネルバは進路をオーブに向け、オーブが見えてきたところだ。議長とカガリをオーブへ送るため、そして物資の補給や艦の修理のためだ。
ユニウスセブンを粉砕するためにではあったが、ミネルバは地球に降りてしまい議長とカガリは輸送船に乗り換える時間はなかったからだ。
地球に下りてきてからは今のところ連合と顔を合わせることなく順調だった。
その理由の一つとして、ユニウスセブン落下のニュースが全世界で報じられミネルバがユニウスを粉砕して落下を防いだことで名前を知られたからだろう。
そしてそれから既に数日が過ぎており、世論もあり連合はミネルバに手を出せずにいた。これはミネルバクルーにとっても嬉しい誤算だった。
各地で多少の被害が出たものの死傷者が出なかったこと、当初予測されていた地球崩壊のシナリオは避けることができたことは地球側、プラント側にとっても幸いであった。
警戒態勢を敷いてはいるが、ここに至るまでを思い返すととても楽なものだと思える。
しかし、ミネルバでは新しい問題が起きている。それは・・・・
「・・・地球か・・・久しぶりだな・・・」
(のんきだなこの人、自分の状況わかってるのか?)
シンの数メートル隣には同じく赤服を着ている青年がいる。カミーユ・ビダンだ。
なぜ、彼が赤服を着ているのか、そしてここに至るまでの経緯を説明しなくてはならないだろう。
第七話「それぞれの迷い」
時は遡る事3日前、地球に降下したミネルバはオーブ行政府に連絡して向かっていた。
ブリーフィングルームには議長、艦長のタリアをはじめとした何人かのミネルバのクルーそして、カガリとアスランも呼ばれておりカミーユの姿もあった。
「信じられん、本当なのかねその話は?」
さすがのデュランダルもカミーユの話を聞いて驚きを隠せない。もちろん、信じているわけではないがそれにしてはよく話ができている。
「この状況でウソを言って、とても僕の得になるとは思えないんですけど・・・・・・」
Zのパイロット、カミーユ・ビダンは少し怪訝な顔を周りの人間に向ける。
ミネルバの面々はほとんどが固まって、理解できないような困ったような表情をしている。
シンも特別なものをはじめて会ったときから感じていたが、こうもはっきりと示されるとは思っていなかったのでどう反応すべきか迷った。
しかし、彼の話が本当ならば謎のMS”Zガンダム”、そして彼の存在も府に落ちるというものだったが、
この場合順序が逆で、彼とZガンダムの存在が彼の話にリアリティを持たせており、事実であることを何よりも証明している。
整理するとこうだ。彼、カミーユ・ビダンはコロニー、グリーンノア1の学生であり地球連邦軍のエリート集団ティターンズのメンバーとひと悶着あった。
その後、カミーユは成り行きでMSを盗むはめになり、挙句に反地球連邦組織エゥーゴの一員でパイロットとして戦うことになった。
そして、ティターンズや新たな勢力アクシズとの三つ巴の戦いになりグリプス宙域で最終決戦を迎えた。
コロニーレーザーなる兵器でティターンズの艦隊を壊滅に追いやり、カミーユはニュータイプであるパプテマス・シロッコが操るMSジ・オを撃破し、気付いたらこの世界にいた。
彼の話の中には、聞きなれない言葉がたくさんあった。地球連邦軍やティターンズ、エゥーゴ、ニュータイプ、など挙げればきりがない。
年号も、コズミックイラでなく宇宙世紀だという。カミーユ以外の全員が驚きのあまり、何を言ったらいいのか分からなかった。
「しかし、こんな話信じられませんよ艦長!連合のスパイかも知れないんですよ!!」
「落ち着きなさい、アーサー。彼の話がウソだとしても、それは自分に疑いの目を向けるだけでなんの得にもならないのよ。」
熱くなるアーサーを抑えるタリア。タリアの言うことはもっともでカミーユもそれに合わせてうなずく。
「信じられないな・・・彼がそんな戦いを潜り抜けてきたなんて」
「だけど、アスラン。アイツの操縦の腕は確かなんだろう?」
「それは確かだが、いささか話が飛躍してる。別世界から来た人間だなんて・・・!」
アスランは自分の言ってる矛盾で混乱しそうになるが、自分を落ち着けようと深呼吸する。
「だが、それにしても興味深い話だな・・・その話。」
デュランダルは彼の顔を真剣なまなざしで見据え、素直な感想を述べる。
今度は、カミーユがタイミングを計って質問をする。
「あの、ザフトとか連合とかナチュラルとかコーディネイターとかって一体何なんです?よく分からない単語なんで教えてもらえると助かるんですけど・・・」
カミーユの一言で全員が沈黙する。しばらくの間があってからルナマリアが目をこすりながら言う。
「私、疲れてるのかなぁ。ちょっと休んだほうが良いかな?レイ?」
「ルナマリア、気持ちは分かるが、現実逃避はよせ。もっとも、話が本当かは分からないが・・・」
レイも珍しく自信がないのか語尾が小さくなる。
「俺はこの人の話は、本当だと思います。」
『俺もシンと同意見ですぜ。それで、裏づけとまではいかないんですが、機体の調査結果の説明をしてもいいですかい・・・?』
皆が思ったことを口に出す中でシンが、ぼそりと言った一言で全員の視線がカミーユからシンへと移る。
映像に映るメカニックのマッドもシンの言葉に同意する。続けて、Zの調査の報告を始める。
『まぁ、本人がいるからそっちのほうに説明してもらったほうが早いんですがね、とりあえず現段階での説明をします。』
モニターのマッドはカミーユのほうをチラッと見てから手に持った報告書を読み上げる。場にいる全員がモニターのマッドに注目する。
『まず、動力なんですがね核動力なんですよ。しかも、核融合炉ってシロモノです。核融合炉を使ってるMSなんて分かったときは驚きましたよ。』
「か、核融合炉ですって!!?まさか!!?」
再びざわつき始める室内。カミーユが再び口を開く。
「僕にはMSがバッテリーで動いてるって事のほうがびっくりなんですけど・・・」
『核の使用が条約で禁止されてるからな、他の動力でで動かすことを考えた結果だ。』
「そうなんですか・・・同じMSでも全然違いますね。」
当の本人であるカミーユはどこか他人事のようにあっさりと話を受け入れるのに対して、全員が驚く。
ルナマリアがシンに耳打ちしてくる。
「ねぇ、核動力が凄いっていうのは知ってるけど、核融合炉ってそんなに凄いの?」
「俺に聞くより、レイに聞いたほうが早いんじゃないか?」
シンはレイに目配せすると、レイはため息をつきながら説明する。
「まず、現在核動力で知られているのは2年前のヤキンで知られているフリーダムやジャスティスだ。これについては知っているな。
この二機は核分裂炉が使われていることは知っているな?説明するまでもないが、Nジャマーの影響で本来地球圏では稼動できない。
だが、ザフトがNジャマーキャンセラーの開発に成功したことで核動力のMSの開発に成功している。
バッテリータイプとの大きな違いとして無制限の電力供給があり、PS装甲の常時展開、高出力ビーム兵器の連続使用、攻撃面、防御面でも圧倒的な性能差がある。
対して、核融合炉はNジャマーの影響を受けないうえに、核分裂炉よりも強力な動力源だ。しかし、核融合炉の実用化と小型化にはまだ成功はしていない。」
レイはひと通り説明して、二人はそれを真面目に聞こうとしてはいたが理解できてないのか固まっているのを見て一言付け加えた。
「・・・・・・二人とも、もう一度勉強し直したほうが良い。」
「不覚ながら、そう思うよ・・・・・・」
「あたしってシンと同レベル・・・・・・」
二人は自分達の理解力のなさに俯く。マッドが咳払いをして再び口を開く。
『説明、続けてもいいですかね?』
「ごめんなさい、マッド。続けて頂戴。」
『核融合炉については、今レイが説明したまんまなんで省きます。他になんですがね、フレームと装甲が別になっていて更に変形機構を持ってます。
これは、そこのボーズに説明してもらったのと実際に調べたことで分かったことですが、なんでもムーバブルフレームってのを採用してるようです。
このフレームのおかげで回収時のウェーブライダー形態に変形できるんですが、更にはフレームの強度も現在の技術の遥か上を行くんですよ。
ただ、メカニック泣かせなのが試作機なためか非常に複雑な設計なんで整備性は最悪なんですよ。』
マッドは説明しつつ最後の言葉は困ったような口調で続ける。
『そして、装甲ですがこれも化け物じみてましてね。見たこともない材質でできてます。強度はもう言うまでもなく現在発見されている材質より上なんですが、
重量も約半分くらい軽いんですよ。そのためZの本体重量だけならインパルスの本体重量の半分以下でこの強度を実現しているんです。
コックピットは球形の全天周囲モニターで脱出ポッドも兼ねて、シートはリニアシートといって座席後部からアームで支えられるようにして浮かせて作られていて、
衝撃を緩和させることができます。手元の資料にその写真が載ってますんで確認しといて下さい。』
ブリーフィングルームのカミーユ以外が配られていた資料の写真を見る。
「凄いな・・・全天周囲って・・・・・・」
「いくら連合でもここまでできるとは思えんな。それにしたとしても、これほどの技術が漏洩しないなど・・・」
「これを見せられたら、信じない理由が見つからないな・・・・・・」
ここまで説明されると流石に誰も反論しようとしない、ここにいる彼の存在がデタラメならばこのZという機体もデタラメだ。
だが、そのデタラメが実際に目の前にいて現実なのだから否定のしようもない。
『まぁ、あと決定打があるとしたらアレくらいかもしれませんね。』
「アレ・・・?マッド、説明して頂戴。」
タリアをはじめ全員が食いつくようにしてモニターのほうへ再び注目すると、マッドは少しニヤついてもったいぶるようにして続けた。
『それはですね、そのZって機体の戦闘データですかね。恐らくそれが一番の証拠になるんじゃないですか?』
議長が興味深いといったような表情でマッドにたずねる。
「ほぅ・・・その戦闘データは見れるのかね?」
周りの人間もそれを期待してか息を呑む。
『この機体の中へ入れば見れます、なにせ全天周囲なんでここのスクリーンには映せないんですよ。』
「では、後で案内してくれるかね?是非、この目で見ておきたい。」
『別に構いませんよ。もちろんそこのボーズが良いって言えばですがね。』
再びカミーユへ視線が集まる。シンは既に戦闘データを見たのでそこまでではなかったが細部まで見てみたいと思ったので場に合わせる。
「僕は構いませんよ、それで僕への疑いが晴れるならそれに越したことはないですから。」
『すまねぇな、後でこの機体の詳細を教えてもらえると助かるんだが・・・』
「僕も手伝いますよ。・・・あ、もちろん、皆さんが許可してくれればですけど。MSデッキですから軍の機密とかもあるでしょうし・・・」
カミーユは、マッドに応えるも周りを気にして言葉を付け加える。
しかし、即答に近い速さでデュランダルはカミーユに応える。
「私は構わんよ、今のところ説明を聞いて信じない理由が見当たらないのでね。少なくとも今の段階では君の事を信じてもいいだろう。」
「議長!!?」
「私も許可します。もし何かあってもこの状況ならば対処できますから。この意味、分かってるわね?」
「艦長まで!!」
「ええ、もし信用できなければ警備の兵でも監視カメラでもつけてもらって構いません。今は信じてもらうことが先ですから。」
周りがざわつくものの議長と艦長が確かに物的証拠をつきつけられたため認めるしかなかったが、それでもこうも簡単に認めてしまったことに驚きを隠せない面々。
とりあえず、カミーユはひとまず自分のことを信じてもらえそうな流れになりほっとする。
だが、聞いておかなければならない問題も残っているのでたずねる。
「それで、あの、僕はこれからどうすればいいですか?なにぶんこの世界について知識がないので、頼るべき相手も分からないんです。」
「そうだな・・・・・・確かにこのままにはしておけない問題だな。・・・・・・この艦に乗ってみるかね?もちろん、君さえよければだが。」
カミーユのことを認めた直後もあり、再び驚愕する面々。しかし、カガリがここで食って掛かる。
「お言葉だが、議長、それはあまり私達にとって喜ばしいことではないな。
私達も何かの縁があってこの場にいるのだ、その気になれば彼をオーブでも受け入れる手続きを取ることは難しいことではない。
彼の存在はまだ、現段階では何とも言いがたいが世界にこのことが知られれば、影響を与える可能性は十分有り得る。
その存在が世界にどのような力を働きかけるのか、見極めるべきではないか?」
デュランダルはあくまで冷静にカガリに応える。
「確かに、姫の仰るとおりです。しかし、私も何も無理に艦に乗せようというわけではありません。あくまで彼の意思を尊重したいのです。
その結果、彼がオーブにとどまることを望んでもそれはそれで彼の意思ですから、止めるつもりはありません。
しかし、MSに関しては我々が回収したこともあるので調査が完了するまでは彼に返還することはできませんがね。
とにかく、ミネルバも物資の補給や修理が必要です。数日は滞在することになりますからその間に短いですが彼に考えていただくことにしましょう。
そういうことならば、姫もよろしいでしょうか?」
「いいだろう、最終的な判断はあくまで彼に任せるということならば問題はない。しかし、それまでの間はどうするのだ?
ここにいる人間はいいとしても、たった数日とはいえ他のクルーが不審がって黙ってはいないだろう。」
「それに関してですが、私に案があります。彼は、MSのテストパイロットで極秘任務で新型機の演習中に事故で漂流をしていたということにしておきます。
もちろん、オーブに着くまでの数日ですが、それならば周りの目もそれほど気にならないでしょう。そろそろクルーも普通ではないことに気付き始めています。
ここで対策を講じておかないとクルーの不信感も高まります。それは、私も艦長として見過ごすわけにはいきません。」
「君がそこまで、考えてくれていたことは感謝する。ならば、この件に関してはオーブに着くまでの間君に一任する。いいですね、アスハ代表?」
「ああ、この艦での対応は艦長に任せる。今しばらく、オーブまで頼んだぞ艦長。」
(なんだが、大事になってきたな。とりあえずはなんとかなりそうだけど・・・どうするか・・・)
カミーユはここに来て自分の存在がこの世界において大きなものになりつつあるのを感じ始めて、戸惑った。
「ではカミーユ君、その時までじっくりと考えておいてくれたまえ。」
「オーブに着くまで、空いてる個室を使ってもらってかまわないわ。艦内を歩き回ってもかまわないけど、監視がつくことは忘れないで頂戴。」
「ありがとうございます。」
「この件については、ここにいる人間だけが知っていることだ。各員、くれぐれも内密にしてくれたまえ。それでは・・・」
デュランダルが席から立ち上がると、ミネルバクルーが敬礼をしてカミーユの事情聴取を終了した。
カミーユは空いてる個室に案内され、警備の兵から赤い軍服を受け取りベッドに倒れこむ。
この短時間で自分はいささかこの世界に干渉しすぎた。もちろん、未曾有の大惨事を防ぐことができたから結果オーライではあるものの、
カミーユは先ほどの事情聴取のときにも思った自分の行動をこれからは、より慎重に決定しなければならないと改めて認識する。
本来ならば、この世界の住人ではない自分が干渉すべきではないのかもしれないが、何かの縁でこうしてこの世界にいる。
なら、元の世界に戻れるまで自分にできることを精一杯やるだけだと心に決めたのだ。その意思に偽りはない。
そんなことを考えていていつの間にかカミーユは眠ってしまった。
その後数日は、カミーユがこの世界の知識を勉強しておきたいとの要望により部屋にこもってこの世界の常識について学んでいた。
下手に出歩いて知らない人間に、話題を振られて不審がられるのを防ぐためのカミーユなりの考えだった。
一方、シンは食堂で射撃訓練を終えて、一休みしていた。アスランが一人で食堂に入ってくる。
「席、空いてるか?」
「ああ、どうぞ。」
シンはアスランががらんとした食堂なのにわざわざ自分の前に座ってきたのが良く分からなかった。
「君は、彼のことをどう思う?」
「彼って、あのカミーユって人ですか?」
「ああ、そうだ。」
唐突にカミーユについてどう思うかと聞かれて、少しの間考える。
「さぁ、よく分かりませんね。悪い人じゃなさそうだとは思いますけど。それに・・・」
「それに?」
「なんだか分からないんですけど、他人事じゃないような気がするんです。あの機体を回収したときにも何か特別なものを感じましたし。」
回収したとき、その後にも何度かあの声を聞いたときの感覚を思い出す。
「特別なもの?」
「自分でも良く分からないんでなんとも言いようがないんでなんともいえませんけどね。」
「そうか・・・彼はザフトにいくのか、それともオーブに来るのか・・・どうするんだろうな・・・」
アスランはどこか遠くを見るような目で、ボソリと呟く。
「さぁ、あの人が決めることですからね。なら、アスランさんはどうしてオーブにいったんですか?ザフトだったんでしょう?」
シンの質問が来ることを予測していなかったアスランは少し顔を逸らすようにしてから答える。
「俺は・・・俺は・・・・・・戦うことが怖かったのかもしれないな・・・だから、こうしてオーブにいるのかもしれない。
でも、ユニウスセブンであのジンのパイロットが言った言葉・・・あれでそう思った。君も聞いただろう?」
「ええ、なんとなくですけど。パトリック・ザラのとった道がコーディネイターの取るべき道だとかって言ってましたね。」
「俺はこの2年間オーブで平和のために力を尽くしてきたつもりだった。2年前に父がしたことを恐れ、後ろ指差されることが怖かったのかもしれない。
それであのパイロットの言葉を聴いたとき、俺は平和のために戦ってたんじゃなくて、父の幻影に囚われる事を恐れるあまり、
目の前で大勢の人が死んでいく事実からさえも耐えられずに逃げていたんだって気付いたんだ。
だから、今度は今何が世界で起きようとしているのか、知らなければならないと思っている。きっと、自ら再び戦わなければならない時が来るだろう。
そのとき果たして、俺は戦えるんだろうか。そんなことを考えていた。・・・・・・すまない、答えになってないな。」
アスランは、自嘲気味に話して買ったコーヒーに口をつける。
シンは何も言えなかった。あの、ヤキンを戦い生き抜いてきた英雄がこの2年間もしかしたら無意識のうちに罪の意識にさいなまれていたのではないかと思った。
話を終えたアスランの表情は一瞬、とても20に満たない青年の顔とは思えないような哀しい顔をしていた。
自分も2年前、オーブで家族を亡くしたときも自分に力がないことが罪だと思っていた。そのために、今こうしてザフトにいる。
けれどもそのときの罪の意識はあの日から一度も途絶えたことはなかった。きっと彼もそうなのだろうと思った。
彼は戦いに勝利したけれど、自分には敗北してしまったのだろう。それが、この青年を苦しめているのかもしれない。
しかし、シンにはアスランにかけるべき言葉を知らない。この2年間、復讐心と罪の意識から戦うことばかり学んでいた自分にはどうしたらいいのか分からない。
「君も、オーブで家族を亡くしたんだったな。すまない・・・空気を重くしてしまったな。」
確かに、オーブ、とくにアスハはシンにとって憎む相手でしかなかった。
けれども家族と共に暮らしてきた思い出がそこにはあることは忘れたわけではなかった。
ユニウスで聞こえた妹の声、本当は憎むべき相手が違うことは分かっていない訳じゃなかった。
それでもやり場のない怒りを家族を守ってくれなかったオーブという国に向けることで、家族が死んだという事実から逃げようとしていたのだ。
頭ではずっと分かっていた、しかしそんな簡単に心は受け入れてはくれない。その事実を受け入れるのに2年という時間はあまりにも短すぎた。
彼には答えを出すこともできなければ、答えを出すために方法をこれから探そうという状況なのだ。
他人の痛みを聞いてやることはできても、それを背負ってやることもできなければそれにどう対処すべきか助言もできない。
またしても自分の無力さを痛感して、拳を強く握り締めていたのだった。シンは我に返り、その場を取り繕おうと立ち上がってしゃべる。
「いえ、いいんです。俺が質問したんですから。では、俺はこれで・・・」
シンは食堂を後にして息苦しさを覚えて深く息を吐き、外の空気を吸いたくなりデッキへ出る。
太陽で煌いている海面、渡り鳥の群れが見え、潮風が通り抜けていく。デッキには既に先客がいた。
赤服を纏ったカミーユ・ビダンだった。目を閉じて、手すりに寄りかかっている。
地球の空気を直に吸ったのは恐らくユニウスで地球に降りてから初めてかもれないとシンは思い返した。
カミーユはこちらに気付いて、声をかけてくる。
「君は・・・シン・アスカ君?」
「シンで良いですよ。カミーユさん。」
しばらくの沈黙。カミーユが再び口を開く。
「君は、地球生まれかい?」
「ええ、2年前までオーブで家族と一緒に暮らしてました・・・カミーユさんも地球生まれですか?」
「ああ、生まれはね。だけど、親が軍の技術士官でねコロニー暮らしさ。もっとも、その両親も死んでしまったけど。」
シンは再び、余計なことを聞いてしまったと思った。
「すみません。」
「いや、いいんだ。それに家族を戦争で亡くしてるのは僕だけじゃないし、君もそうなんだろ?なんとなくだけど話は聞いたよ。」
「オーブは自国の領土を戦場にして、家族を奪っていんだ!理念だかなんだか知らないけど、そのせいで大勢の人が死んだんだ!」
オーブの話になり、シンは感情を高ぶらせる。カミーユは話題を振ったことを謝る。
「すみません、オーブの話になるとどうしても我慢できなくて・・・・・・」
果たして、自分は何のために力を望んだのか。オーブという国へ、家族を奪ったMSフリーダムへの復讐心なのか。
それとも自分と同じような人間が増えるのを目の当たりにするのが怖くて逃げ出したからなのか。
本当はオーブという国が間違っていなかったことをアスハ自身の言葉で証明して欲しい気持ちからだったのか。
考えれば考えるほどよく分からなくなっていく。自分は何をどうしたかったのか。
そして、また沈黙。しかし、気まずい空気にはならなかった。カミーユもそこまで気にしていないのだろう。
どこか懐かしむような目で水平線を見ている。初めて会ったときから感じていたが彼はとても不思議な存在だった。
もちろん、カミーユが異世界から来たからとかそういう理由ではなくすべてを受け入れてしまうようなオーラのようなものを感じたからだ。
それがどこか心地よく感じられ、心を落ち着かせる。手すりに寄りかかり潮風と日の光が眠気を誘う。
「・・・・・・はぁ、眠い・・・」
「・・・地球か・・・久しぶりだな・・・・・・」
今は、まだ分からなくてもいい。今自分にできること、それを精一杯こなすことで答えに近づけるはず。マユとの約束が守れる頃には答えは出ているだろうか。
眼前に迫ったオーブ。2年という時間は今の自分には短いものかもしれない。けれども2年が無駄でなかったことを信じたかった。
カミーユもあと数日後には、果たしてどちらに自分がいるのだろうかと考えながらオーブを見つめていた。
それぞれに突きつけられた決断の時は、彼らを待つことなくもう目の前にまで来ていたのだった。
第七話投下です。
話が思いのほか長くなった上に若干暗いなと書き終わってから思ってます。
カミーユ氏の復帰を楽しみにして頑張っていこうと思います。
>>292さん
アップありがとうございます。
GJです
だんだん文章がうまくなって来ましたな
この調子で頑張ってください
GJ!
アスランがカミーユの敵に回りそうな、そうでもないような微妙なふいんき(ry……
GJ!
でも、ムーバブルフレームは名称こそ違うものの種にもあるらしいよ?
アスランならムラサメとΖが似てるとか言っても良さそうだがな
>>309 ご指摘ありがとうございます。
その設定を忘れてました。
訂正しておきます。
訂正です。
>>301のマッドのセリフです。
× このフレームのおかげで回収時のウェーブライダー形態に変形できるんですが、更にはフレームの強度も現在の技術の遥か上を行くんですよ。
○ このフレームのおかげで回収時のウェーブライダー形態に変形できるようです。フレームの素材もまったく違いますね。
似たような技術はこちらのMSでも使用してますが、とてもじゃないですが比になりませんね。Zのほうが現在ある技術よりも格段に上ですよ。
他にもおかしなところがありましたらご指摘お願いします。
カミーユ氏投下しておくれよ〜
>>313 まだ問題解決したわけではないですけど、明日か明後日くらいには投下できたらいいなと思います。
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!
>>312 修正してみましたので確認よろしくお願いします
◆x/lz6TqR1w氏こないなー。
勘違いのブルコスとロゴスの関係をそのままで通したり
Zキャラの設定の齟齬から強引な独自解釈を捏造したり
無茶苦茶やっているので非常にwktkしてたんだが。
『ミネルバへ』
沿岸線を一台のスポーツカーが疾走する。オープンカーを運転するその男は、髪をはためかせ、サングラスで表情を隠す。
ふと、ちらりと時計に目をやった。降り注ぐ陽気は午後の昼下がりに相応しい。
(何て伝えればいい……)
その男、アスラン=ザラは、ザフトへの復隊を決意していた。デュランダルに誘われたのだ。
カガリの護衛にはキサカが居る。別に自分でなくとも、彼なら十分に役割を果たせるに足る人物だ。それに、デュランダルには自分の正体がばれていた。
当然といえば当然かもしれないが、やはり色眼鏡だけでは素性を隠し通すのは難しかったか。
《できれば、君と共に戦っていた者達にも協力してもらいたいのだが》
デュランダルの声が頭に響く。その意味は、自分にエマとカツの協力を取り付けろという事だ。彼女達の素性を知っているとはいえ、今はオーブの一国民に過ぎない。そんな彼女達を戦いに巻き込むのはどうなんだろうと自問した。
しかし、明確な解答は見つけられなかった。カガリの、ひいてはプラントとオーブの同盟関係という手前があったからだ。ザフトにオーブを守ってもらう以上、彼の要望に応えなければ対等な関係は維持できない。
「聞いてみるだけさ…聞いてみるだけ――」
呪文のように呟く。どうせ断るだろうと暗示をかけていた。エマ達を巻き込むのは、本意ではない。
スポーツカーは走る。陽気に照らされ、心地よいエンジン音を響かせながら。アスランは、邪念を吹き飛ばすかのようにギアを一段上げた。
「君がザフトに戻るって…どうして!?」
カガリの別荘に辿り着き、キラにこれからの身の振り方を伝えると、分かりきった反応が返ってきた。アスランの知るキラは、そう言う事を口にする人間だ。
「カガリのボディーガードはどうするの? 君が居なくちゃ、カガリは――」
「キサカ殿がついている。…俺は臨時の雇われみたいなものだったから――いい機会だと思ったんだ」
「そんな……」
落胆するキラ。やはり、こういう感じになったか。分かりきっていたとはいえ、この空気は苦手だった。 頼まれごとを断れないアスランは、いつも損な役割を回される立場に居た。今回ザフトに復隊するのも、デュランダルに頼まれたからだ。
そして、それを引きとめようとしてくるキラに会えば、その決心に迷いが生じるのは目に見えていた。
「俺は、俺の居場所を求めてザフトに戻るんだ。二年前の俺の行動については、議長が不問にしてくれた。だから――」
「それでも、カガリは君に居て欲しいと思っているはずだよ。君はカガリの事が嫌いなの?」
「そんな事は無い。彼女の事は好きさ、しかし――」
カガリのボディーガードだけをしていたのでは、彼女の力にはなれないと思っていた。カガリの為に何が出来るのか…そう考えた時、アスランはザフトに戻る決意をした。
オーブとプラントが同盟を結んだのなら、ザフトで戦って勝利を得れば、その分だけ彼女の理想に早く近づける。
「男の決意だな、アスラン。僕は、そういうのは好きだがね」
テレビを見ながら、バルトフェルドが言う。
「ただ、一つ聞きたいことがある。ザフトに戻るのは、君の意志か、それともデュランダルの入れ知恵か?」
バルトフェルドはデュランダルに対抗心を持っている。確かに味方になったのには違いないが、その手段を選ばない手法に、不信感を持っていた。
表面上は協力の姿勢を見せてはいるが、内心では彼を疑っているのだ。それは、砂漠の虎としての鼻が効いたのかも知れない。
アスランは少し間を置いてから、口を開いた。
「…俺の意志です。このままカガリの側に居ても、彼女の手助けにはならない。それならば、俺は俺自身の手で少しでもこの戦争を早く終わらせる為に出来ることをしたい。
そして、それが彼女の為に出来る、俺の唯一の事なんじゃないかって…そう思ったんです」
アスランの言葉を聞いて、キラは少し圧倒された。無力感に打ちひしがれる自分と違って、彼は何と前向きで力強いのだろうと。今の自分と比較してみて、その差を強く感じた。
これが、昔からの自分とアスランの違いなのだろう。
旧友であるアスランは、幼少の頃からいつも自分よりしっかりしていた。そんな彼を尊敬し、頼りにしていた自分。一度は肩を並べたと思っていた。
しかし、長いトンネルの中に居るキラは、再びアスランとの溝を開けられてしまった。これでは、昔と何も変わっていない。
「意気込みは結構。しかし、お前は自分が戦争で命を落とす事を考えているのか?」
コーヒーを一口飲み、バルトフェルドが振り返る。その目は鋭い。
「お前もお嬢ちゃんも、互いを大切に思っているのなら、一番は側に居る事だ。そうは思わないのか?」
バルトフェルドは、二年前の戦争の時、アイシャという恋人を失っている。そして、それを奪ったのはキラだった。
彼は、戦争だから仕方ないとキラに割り切って見せたが、私怨に関係なく、彼女の思い出を今も心の中にしまってある。
だから、バルトフェルドはアスランに問う。本当にカガリと離れて良いのかを。
「…俺は、絶対に死にません」
「何故、そう言い切れる?」
「俺自身がカガリと一緒に居たいからです。必ず生きて帰って、彼女と共に理想を追求していきたい。そして、それが、二年前に死んでいった人達の供養になると信じています」
アスランは真っ直ぐな視線で、睨みつけるようにバルトフェルドを見る。その真剣な眼差しは、彼の本気を伺わせるのには十分だ。
バルトフェルドは一つ溜息をつく。
「それは根拠じゃあ無いな。お前の信念だ」
「……」
「だが、信念の無い者が戦場に出ても生き延びられない。お前のような信念は、生き残るに必要な、絶対不可欠の条件だ」
「それだけで生き延びられる保証が無い事は分かっています」
「いいさ。元々お前の決めた事に俺が口を挟む権利など無い。ただ、お前の覚悟を知りたかっただけさ。おせっかいな事聞いちまって悪かったな」
「いえ、俺も話していて決意が固まりました。正直に言います。今日、俺がここに来たのは、エマさんとカツ君をザフトに勧誘する為です」
「何?」
それまでは穏やかな顔をしていた二人が、急に険しい顔つきに変わる。アスランの言葉に衝撃を受けていた。
「デュランダル議長からの提案は、俺と彼女達をミネルバに編入する事だったんです。先日の戦闘で俺と一緒に戦っている所を見ていたそうです」
「ちょっと待て。それはいくらなんでも勝手過ぎる。彼女達は軍人だったとはいえ、今は民間人だぞ」
「しかし、彼女達は既にMSに乗って戦闘をこなしました。バルトフェルドさんも間近で見ていたはずです」
「そりゃあ、そうだが……」
「エマさんもカツ君も、かなり戦闘慣れをしています。私情抜きで言えば、デュランダル議長が彼女達を自軍の戦力に加えたいと感じるのは至極当然の事だと思います」
「私情を抜きにすればなぁ……」
確かにアスランの言うとおりだとバルトフェルドは思った。いきなり異世界のMSを操縦し、初めて組むアスランとコンビネーションを組めるセンスも持っている。
それを考慮すれば、彼女達が優秀なMSパイロットであるという認識は出来る。仮に、自分がデュランダルと同じ立場であったのなら、彼と同じ事を考えたかもしれない。
「だが、それは彼女達の意思次第だ。それに、カミーユ君の事だってある」
「カミーユ? もう一人居るって言う――」
「そうだ。どういうわけか知らないが、彼は今病気で殆ど動けない状態にある」
「そうなんですか……では――」
「アスランさん?」
その時、子供たちの相手から帰ってきたカツが彼等の会話に入ってきた。海岸で遊んでいたのか、顔や体に砂が付着している。鼻の頭を黒くしていた。
「カツ君か。この際だ、直接本人に聞いてみたらどうだ?」
「そうですね…」
「何の話です?」
キョトンとするカツに、アスランが事情を説明した。その内容を聞いているうちに、カツの表情が複雑に変化する。
「もし引き受けてくれるなら、便宜上、君はバルトフェルドさんの元部下ということで、復隊という形でミネルバに乗り込む事になるんだが――」
「僕の力を必要としてくれるのはありがたいですけど、カミーユの事もあるし、エマ中尉に相談しないと…」
「そ、そうだよな…」
カツ一人で決めるには難しい問題なのだろう。同胞がエマとカミーユしか居ない現状では、仕方の無い反応だと思う。
「エマ中尉は何て言っているんです?」
カツはリビングを見渡してみたが、エマの姿が何処にも見当たらない。
「まだ話していない。偶々君が通りかかったから、聞いてみたんだ」
バルトフェルドが応える。
「じゃあ、中尉も呼んでください。僕個人としては行ってもいいですけど、そういう問題じゃありませんから」
「分かった。エマを呼ぼう」
カツはソファに腰掛け、バルトフェルドはエマを呼びに行った。キラは、一人複雑な顔をする。
「どうした、キラ?」
アスランが話しかける。彼がそういう顔をする時は、決まって何かに悩んでいる時だ。不謹慎ながら、そういう所は昔から何も変わってないんだな、と懐かしむ。
「…みんな世界の為に何かしようとしているのに、僕だけ何もしないのはいいのかなって……」
キラはそれぞれが行動を起こしていく中で、それに心を触発されていた。
オーブを守る為にフリーダムに乗ることを決めたバルトフェルド、カガリの為にザフトに戻る決意を固めたアスラン、この世界に関係ないのに戦ってもいいと言っているカツ。皆が皆、輝いて見えた。
そして、キラはその中で一人取り残された気分になっていた。疎外感を味わっているといってもいい。みんな何処かへ行ってしまうような気がして、寂しく思った。
「お前は今のままでいいさ。昔からお前は危なっかしいって言っていただろ? だから、全部俺に任せればいい。お前の気持ちの分まで頑張ってやるから」
「……」
アスランの同情が苦しかった。まるで、彼が自分に頑張るなと言っているようで、悔しくもあった。もう、甘やかしを受けたくない。もう一度、彼等と肩を並べて一緒に歩きたいと思った。
このままでは、一生彼等に頼ったままだ。
(自分を変えなくちゃ! もう一度、誰かに必要とされる僕になりたい――!)
キラは拳に力を込める。無性に何かをしたい気分になっていた。
そして、バルトフェルドがエマを連れて来る。アスランは、彼女にも事情を説明した。
「確かに、勝手な話よね」
「じゃあ、中尉はザフトに加わらないんですか?」
難儀を示すエマに、カツが言う。彼はザフトに参加したいと思っていた。
「そうは言ってないけど、強引なやり方だわ。軍が民間人を当てにするなんて、考えられる?」
「カミーユを、当てにしたじゃないですか」
「それは――」
カミーユは民間人上がりのMSパイロットだ。確かに、ガンダムMk-Uを強奪したのは自業自得とは言え、平凡なハイスクールの生徒だったのだ。
「エゥーゴもザフトも同じなんですよ。僕等に声が掛ったって事は、それだけ僕等が注目されているって事でしょう?なら、それに応えてやりましょうよ!」
「でも……」
エマは、異世界の人間である自分達が、この世界の争いに介入する事を躊躇っていた。この世界の争いは、その世界の人間が解決すべきであるというのは、何となく出てきたエマの正論だった。
しかし、懸念する事もある。それは、以前バルトフェルドと話していた事だ。
「中尉、この間話したじゃないですか。僕等以外にも、この世界に飛ばされている人が居るかもしれないって。だったら、それを確かめに行きませんか?
もしティターンズだったら、きっと戦場に出てくるはずです。そうなったら、それは僕等が止めるべきじゃないですか?」
結局は推測に過ぎない。それが外れていたとすれば、イレギュラーは自分達だけという事になる。そうなれば、ザフトとして戦うのはエマとしては気が引ける。
だが、推測が真実だった場合も考えられる。その場合、カツの言うとおり自分たちもザフトとして戦うべきではないのか。
それを確認する為にも、ミネルバに乗る選択は、一つの方法として有りなのかもしれない。
「カツの言う通りかもしれないわ。でも、カミーユはどうするの? 彼を一緒に連れて行くことは出来ないわ」
「そ、それはバルトフェルドさん達みたいに事情を話せば――!」
「あ、あの!」
エマとカツが議論を紛糾させていると、キラが急に声を上げた。その声に、二人は振り向く。
「ぼ、僕にカミーユさんを任せてもらえませんか?」
「キラさんが?」
キラの突然の提案。カミーユの事で揉めているエマ達を見て、先程から疼いていた気持ちが爆発した。
「エマさんとカツ君はオーブを守ってくれました。だから、今度は僕があなた達の役に立ちたいんです。僕に、カミーユさんを守らせてください!」
自分は彼等のように戦う力は無いかもしれない。しかし、カミーユを守る力ならあると思った。
ヤキン戦役で、自分は他人より優れた力を有していると言われた。そして、それが人の闇を拡げる力だと断罪され、それは違うと今日まで自問してきた。
その答は、もしかしたらこういう事なのかもしれない。キラは、戦うだけの力ではなく、誰かを守る為の力でありたいと願った。
「無理しなくていいのよ、キラ君。別に、私達は無理にザフトになりたいと言っている訳じゃないのだから」
「でも、中尉、やっぱり僕達はあの時の推測を確かめるべきだと思います。もしシロッコが居たら――!」
「カツ……」
先程からムキになるカツを不思議に思っていたが、成る程そういうことか、とエマは思う。自分があまりにも渋るので、カツの口から思わず本音が出てきた。彼は、シロッコの可能性を懸念していたのだ。
そういうことなら、彼に付き合ってあげようと思った。カツだけを行かせる事もできるが、彼だけでは不安もある。キラはこれまで生活を共にして信頼出来る人物であると判断した。
ならば、カツの監督も含めてミネルバに乗るのが、これからのすべき事だろう。
「あなたの言いたい事は分かったわ。ミネルバに乗りましょう」
「中尉!」
「いいのか? 戦争に巻き込まれるんだぞ」
決心するエマに、バルトフェルドが忠言を与えてくる。当然、彼としてはデュランダルの思惑に乗るのは反対だ。
「何かしなくてはいけないんです。いつまでも、ここでお世話になりっぱなしで居るわけにも行きませんから」
「…そうか、寂しくなるな」
少し表情を落とすバルトフェルド。永遠の別れになるわけではないが、人が去るというのは寂しく思う。短い間の共同生活だったが、自分がエマ達の最初の理解者だっただけに、余計にそう思うのかもしれない。
「必ず帰ってきます。それまで、カミーユをお願いね、キラ君」
「は、はい!」
エマに言われ、やや緊張気味にキラは返事をする。多少頼りない気もするが、他にもカリダやマリアもいるから大丈夫だろう。
「すみません、無理を言って…」
アスランとしても、エマやカツを戦いに巻き込むのには抵抗があった。故に、せめて誠意だけでも示そうと、深く頭を下げた。
「いいのよ、私達にも理由があるわ。…それで、ミネルバの出航は明日だったわね?」
「はい。それで、早速で申し訳ないのですが、これから俺と一緒に来てください。デュランダル議長に紹介しますので」
「分かったわ」
アスランに連れられ、エマとカツは外にでる。見送りの為に、キラとバルトフェルドも付いて来た。
「君達の私物は後で送っておく。死ぬんじゃないぞ」
「大丈夫です! 僕達は、二度も死にませんよ!」
バルトフェルドの心配に、カツが豪気に言い返す。それに対してバルトフェルドは笑顔で返した。
三人はアスランのスポーツカーに乗り込み、走っていった。
「ニュース、ニュース!」
ミネルバのレクリエーション・ルームに、奇声を発するヨウランが駆け込んでくる。別段どこにも出掛ける気の無かったシンは、レイと共にビリヤードに興じていた。
「何だよ、ヨウラン? オーブの代表が辞任でも発表したか?」
「んな訳ねーだろ。そうじゃなくて、ミネルバにあのアスラン=ザラがやって来るらしいぜ!」
「アスラン=ザラが?」
シンが盤上から目を離したその時、レイのショットが9番をポケットした。乾いた音が響く。
「俺の勝ちだな」
「……」
反応してレイを見ると、キューの先端をチョークで擦り、シンを挑発するように言う。それを無視し、再びヨウランに顔を向けた。
「…それで、ヨウラン。それは本当なのか?」
「本当も何も、議長と一緒に居るんだよ、ここに」
「ミネルバに?」
「そう! 俺も最初は代表さんのボディーガードがアスラン=ザラだとは思わなかったけどよ、話している内容を聞いたら、あの人がそうだって分かったんだ」
アスランはアレックスの偽名でカガリの護衛をしていた。シンも最初は彼がアスランだとは気付かなかったが、先日の戦闘の時、バルトフェルドの通信を聞いてその正体を知った。
正直意外だった。英雄と呼ばれた豪傑が、あのような優男だとは思わなかったからだ。大気圏突入の時は、歳の割に老け込んでいる印象を受けた。
「な、ビッグニュースだろ? 議長って、もしかしてオーブと同盟を結んだのは、アスラン=ザラをミネルバに乗せる為だったのかなぁ」
(アスラン=ザラが何だ! あんな奴に頼んなくたって、俺達だけでやっていけるってのに!)
浮かれるヨウランとは対照的に、シンは唇を噛む。折角バルトフェルドがミネルバに乗らないということが分かって喜んでいたのに、今度はよりによってヤキンの英雄である。
しかも、カガリの護衛をしていた男である。そんな男と共に戦う気にはなれなかった。
「お、噂をすれば何とやらだ」
「……」
ヨウランが、通路から入ってきたデュランダル達を見つける。釣られて、シンとレイもその方向を見やり、敬礼をする。
デュランダルが連れて来たのはアスランだけではなかった。他にも、年上と思われる女性と、少年を伴っている。女性は赤服、少年の方は緑服だ。
まさか、あの二人もアスラン同様にミネルバに配属になるのだろうか。
デュランダルは女性と談笑している。
「いや、それにしてもまさか君達がMSに乗れるとは思って無かったよ」
「経歴はバルトフェルド隊長に抹消してもらいましたけど、二年前には彼の部下をしていましたので」
「ほぉ、カツ君もかい?」
「両親が連合軍の攻撃に巻き込まれて、それでカッとなってザフトに入隊したんです」
「そうか、若いのに大変だったのだな。…では、二人ともバルトフェルドの計らいでオーブに住んでいたわけか」
「はい」
エマとカツの素性は、バルトフェルドの元部下という事にしておいた。その方が、色々と面倒な事が起きなくて済むし、バルトフェルドは彼女達の事情を知っているからだ。
それに、ザフトに復隊という形にすれば、オーブにも迷惑を掛けなくて済む。
(…ん? あいつは確か――)
シンは少年を見て、驚いた。よく見れば、あの少年は先日、何となく出かけた海浜公園で会った、不思議な病人を車椅子で押していた少年ではないか。
シンが目を丸くしていると、デュランダルがシン達に気付いた。
「ちょうど良かった。彼等がこれから君達と共に戦う事になるMSパイロットの、アスラン=ザラ、エマ=シーン、それとカツ=コバヤシだ。
アスランは言うに及ばないが、エマとカツはナチュラルとは言え、かなりの腕前を持つパイロットだぞ」
笑いながら言うデュランダルの紹介を受け、レイはキューを置いて背筋を伸ばした。
「ザフト艦ミネルバ所属、赤服のレイ=ザ=バレルです。ザク・ファントムのパイロットをしています」
レイは前に歩み出て、アスランに握手を求めてきた。
「アスランさん、英雄と称されたあなたと馬を並べられる事を光栄に思います。そのお手並み、拝見させてもらいます」
「あ、あぁ。こちらこそよろしく」
握手を交わし、応えるアスラン。何となくだが、レイはどこかで会った事があるような気がした。初対面のはずだが、妙な感覚がアスランの記憶を刺激する。
レイは、そんなアスランの思考に関係なくエマとカツの前に来た。
「それと、エマさんとカツ、俺もあなた達と同じナチュラルです。共に頑張りましょう」
「えぇ」
二人とも握手を交わす。その柔らかな印象と冷静沈着な物腰から、エマは少年らしからぬものを感じた。同じ年頃のカツに比べれば、遥かに彼の方が大人だ。
ちらりとカツの顔を見ると、その視線の意味に気付いたカツが少々不機嫌そうな目つきをした。
「シン、どうした? お前も自己紹介をしろ」
ヨウランは、既にアスランに自己紹介をし、エマとカツに話しかけている。しかし、先程からこちらの輪に加わろうとしないシン。不貞腐れたような顔をしている彼に、レイが呼びかけた。
「あっ! お前は――」
カツは、レイの呼んだ方向にシンが居る事に気付き、驚きの声を上げた。カツもシンの事を覚えていたのだ。
「知り合いなの、カツ?」
意外そうな顔をしてエマが訊ねる。
「え…はい、この間海浜公園で会ったんです――」
あの時の会話は、とてもではないがこの場で話せる内容ではない。何かを言いかけてカツは口を閉じた。
「ん? 君と彼は面識があったのか?」
デュランダルが怪訝そうに言う。世の中、案外と狭いものだと思った。自分はラクスに面会しに行った時にエマとカツに偶然出会い、シンもカツと面識があったのだ。
こうして集ったのは、不思議な巡り合わせなのかもしれない。
カツに気付かれたシンは歩を進め、アスランの前に立った。
「シン=アスカです…よろしくお願いしますよ、ヤキンの英雄さん…」
ぼそぼそと気の無い声で手を差し伸べるシン。握手を求めている。
「…よろしく」
不穏な空気を感じたのか、やや躊躇いがちにアスランは手を伸ばす。シンの顔は、歓迎してくれていると言う雰囲気ではない。
「く――!?」
シンの手を握った瞬間にアスランがうめき声を上げた。シンがアスランの手を思いっきり握ったからだ。
「せいぜい、俺達の邪魔になるような事はしないで下さいね」
すれ違いざま、シンがアスランの耳元に言葉を吹きかける。それは、シンのアスランに対する挑戦状だった。そのまま、シンは誰にも視線を合わせる事無く、ラウンジを後にしてしまう。
その場の空気が、重く淀んだ。
「すみません、アスランさん。自分が後でシンによく言って聞かせますので」
「いや、気にしなくていい。彼の事は俺にも分かっているから」
謝罪するレイに、手を擦りつつ応えるアスラン。以前カガリに食いかかった時に、シンのオーブに対する憎しみは知っていた。だから、シンがこの様な態度に出るであろう事は、ある程度の覚悟はしていた。
「それと、あともう一人居るのですが、生憎今日は非番ですので…帰ってきたらお三方に紹介します」
その場を取り繕うように、レイは一言延べてシンを追って行った。
「ふむ…若者同士、衝突するのは結構だが、正直心配だな」
言葉とは裏腹に、あっけらかんとした声で言うデュランダル。こういうことに関して、彼は余り気にする方ではなかった。そもそも、そんな気概がなければ、未だに一人身でいるはずの人間ではないのだ。
デュランダルはシンの暴挙を咎めるわけでもなく、平然とした顔でアスランに向き直った。
「アスラン、この部隊の指揮は君に任せることになると思う。統制はしっかり執ってくれたまえよ」
「了解です」
「それでは君――」
デュランダルはヨウランの方を向いて言葉に詰まった。彼の名前を知らなかったのだ。それに気付いたヨウランは、少し苦笑いを浮かべた。
「ヨウラン=ケントです」
「ヨウラン、彼等にミネルバを案内してやってくれ。私は、ホテルに戻る」
「了解しました」
「それでは、後は頼むぞ」
そう告げると、デュランダルは宿泊先のホテルへ戻っていった。どこまでもマイペースな人だとアスランは思う。
ただ、そういう性分でなければ、戦争参加拒否を謳うオーブから自分やエマ達を引き抜くような真似はしなかっただろう。
「デュランダル議長って、こんなに長く本国を離れていて大丈夫なのか?」
「議会を纏めるセンスは抜群だって聞いたぜ。多分、他の議会員の人に任せても大丈夫だって事じゃないか?」
カツの疑問にヨウランが応えた。この二人は同世代という事もあり、早速仲が良くなったようだ。
同世代の少年がいてくれて良かったとエマは思う。大人が殆どのエゥーゴにあっては、カツのような思春期の少年にはストレスにしかならなかっただろう。
そういう意味では、カツが今後ミネルバで窮屈な思いを味わわなくて済む。
それよりも、問題なのはアスランとシンという少年の方だ。レイは問題ないかもしれないが、あの態度を見ていれば、これから先の部隊内の関係が危ぶまれる。
「大丈夫、アスラン? あのシンって子、問題児かもしれないわよ」
「分かっています」
「手に負えない時は、私に言って頂戴。少しなら何とかできるかもしれないわ」
アスランの深く沈んだ表情を見て、エマが心配そうに話しかける。どうにも彼は気持ちの浮き沈みが激しいような気がした。その不安定さは、部隊を指揮する人間には致命傷になりかねない。
隊長は、いつでも平静を保っていてもらわなければ、隊員が困惑する事になるからだ。
「それじゃあ、行きますよ。ミネルバの中を案内します」
不安を抱えるアスラン。シンが居るという事は、ミネルバに乗ると決めた時点で覚悟していたはずだ。しかし、それでも改めてあんな風に敵対心を露わにされると、やはりやりにくさは否めない。
この先どうなるかは分からないが、今はヨウランに率いられてミネルバを探索する。気持ちが沈んだ時に気分転換をする場所を確保する為、それを捜していた。
その翌日、エマとカツのムラサメを積んだミネルバは予定通りにオーブを出航し、カーペンタリア基地に向かった。アスランの分のMSはそこで受領する事になるらしい。
そして、ミネルバの出航を待っていたとばかりに大西洋連邦軍が再びオーブを襲撃しようと艦隊を派遣していた。その艦隊の中には、二年前に不沈艦の異名を持ったアークエンジェルの姿もあった。
とりあえず久しぶりの続きです。
今回、間がかなりあいてしまったので、続けてもう一話落とします。
『導かれるキラ』
ミネルバがオーブを発った翌日、オーブ軍司令室は大西洋連邦艦隊の再接近を感知していた。再びオーブ全土に響き渡る警報。国民は一斉に非難を始め、オーブ軍は戦闘配置に就く。
防衛ラインは前回と同じ、敵を本土に侵入させないことが絶対条件だ。しかし、前回の戦闘とは違い、今度は自前の戦力だけで持たせなければならない。
「フリーダムは出せるのか?」
「はっ。既にバルトフェルド殿のスタンバイは完了しております」
ソガの問い掛けに、兵士が応える。今回はタンホイザーのような強力な殲滅兵器を当てにすることが出来ない。ここは、バルトフェルドのフリーダムの活躍に期待するしかない。
「大西洋連邦め…不沈艦まで引っ張り出してくるとは、余程同盟を断られたのが気に喰わないらしいな」
「逆恨みでしょう。異性に振られた人間がストーカーになるのと同じ事です」
細面の中年男性がソガの呟きに応える。彼の名はトダカ。かつて孤児になったシンを、プラントへと導いた恩人とも呼べる人物である。
「情も深くなりすぎると憎悪に変わるか…部隊の配置、遅いぞ!」
「ここが正念場である。各員は大西洋連邦のオーブ進入を断固阻止せよ!」
『フリーダム、出るぞ!』
通信回線から、バルトフェルドからの発進の合図が出される。それと同時に、見栄えのいいMSが青い六翼を広げて飛び立っていく。
「頼みの綱がフリーダム一機だけとは…厳しい戦いになるな」
「それでも、オーブは守らなければなりません。カガリ様の理想の為には」
オーブの忠臣ソガとトダカ。オーブ防衛に心血を注ぐ。
出撃したフリーダムのコックピットの中、バルトフェルドはこれまでにない緊張感を味わっていた。
このフリーダムにはデュートリオン・システムを搭載しているとはいえ、今はエネルギーを供給できる送信機が無いのである。
いわば、フリーダムは受信機で、それだけではデュートリオン・システムは従来のバッテリー機と何ら変わりが無い。
そうなると、いかにしてバッテリーを消耗させずに戦うかが焦点となるが、まだザフトからの派遣軍がきていない状況ではそれは難しいだろう。先日エマが懸念していた通り、2日間のタイムラグが仇となった。
「バラエーナとレールガンは使いにくいな…ライフルとサーベルで何とかするしかないのか? …チッ!」
水平線の彼方から、次第にMSが飛んでくるのが見えた。数はかなり多く見える。セオリー通り、数の少ないオーブ軍に対して物量戦を仕掛けてきているということか。
「このフリーダムではあの数はきついな!」
バルトフェルドは囮になる為にフリーダムを最前線に躍り出す。無駄玉を撃てないとなれば、攻撃は後方のM1アストレイやムラサメに任せるしかない。
しかし、懸念はバッテリー容量だけではなかった。やはり、動きが多少鈍い。一般機に比べれば十分ハイスペックな機体だが、囮になるにはもう一歩先の動きが欲しい所だ。
「最高にスリリングなゲームだ!」
口をついて出てくる言葉が、どこかわざとらしい。こうして叫んで気持ちを誤魔化さなければ、バルトフェルドの気合が殺がれそうだった。
ダガーLや新型の主力量産機であるウインダムの大軍が押し寄せてくる。その中にフリーダムを飛び込ませ、一斉射撃の雨を紙一重の動きで次々とかわしていく。
「この俺が、こんな戦法しか取れないとはな! 笑ってくれていいぞ!」
誰に対して言っているのか、顔に薄ら笑いと冷や汗を浮かべるバルトフェルド。順調に攻撃をかわしてはいるが、余裕は一切無い。
このままの緊張状態では、いくら彼がコーディネイターとはいえ戦闘終了まで体力が持たないだろう。
しかし、一縷の望みを託してバルトフェルドは避け続ける。
「くっ……!」
どんなに強い決意を持っていても、気持ちだけでは現実をひっくり返す事は出来ない。フリーダムの左のバラエーナが吹き飛んだ。
「くそぉ…! やはりバラエーナは邪魔だ!」
搭載火器が多数あるフリーダムの真骨頂は殲滅戦にある。砲撃による広範囲の一斉攻撃が最大の売りなのだ。
二年前のキラはそれに関係なく広範囲での運用法でフリーダムを無敵たらしめたが、それは彼の技術による所が大きかった。
今のバルトフェルドとフリーダムには、それがない。故に、今の彼の運用方法では、フリーダムの搭載火器は的を大きくするだけの物でしかなかった。避け続けるのにも限界がある。
多少エネルギーを消耗させても、少しずつ敵を排除していくべきだろう。そう思い、ビームライフルを構えさせる。
「ぬおおぉぉぉ!」
気合負けすれば、そこで即終了だ。それをさせまいと、虎が吼えた。
「代表」
険しい表情でカガリが通路を歩いていると、デュランダルが話し掛けてきた。その声に足を止め、訝しげな目で見る。
「申し訳ありませんが、今は議長とお話をしている時間はありません」
「いえ、一言お詫びをしておきたいと思いまして」
「結構です」
一言返事をし、直ぐに歩き出す。
カガリはデュランダルの言いたい事が何となく分かった。オーブの守りが薄くなる2日間のタイムラグは、明らかにデュランダルのミスだ。その間に大西洋連邦が攻めてくる事態は、十分予測できたはずだ。
それなのにミネルバを出航させたのは、彼の凡ミスであると言わざるを得ない。
「そう仰らずに、聞いていただきたいのです」
しかし、デュランダルはカガリの不満を余所に話を続けた。足を止めて横目で睨むように見据える。
無神経な男だと思う。これなら、あのタリアとかいう女艦長に振られるのも道理だと感じた。
そんなカガリのジト目にも、デュランダルは全く意に介していない様子だ。政治家たるもの、彼のように鈍感であるべき、という見本なのか。雑音に敏感な自分には、彼から学ぶべき所は多いのかもしれない。
「…何でしょう?」
「オーブに配備する部隊が到着するのは明日だと言いましたが、実は、もうこちらに向かっておりまして、そろそろ衛星軌道上に到達する頃だと思います」
「え…?」
意外な告白。カガリは目を丸くしてデュランダルを見据えた。彼を侮っていただけに、よもやこんな事になっているとは考えもしなかった。
「本来ならもう一日、時間を掛けて準備をさせるつもりでいましたが、それでは流石に遅いと思い、本国に連絡を取ってスケジュールを一日早めてもらいました。報告が遅れて申しわけありません」
穏やかな表情で語るデュランダル。この顔に、自分は騙されたのか。カガリは心の内で舌打ちする。
デュランダルは恐らく、最初から大西洋連邦軍の再侵攻を予測していて、あえて2日間のタイムラグを空けたのかも知れない。
そうしてこちらを焦らせて、ザフトの必要性を強烈に認識させようと目論んでいるに違いないとカガリは思った。
そもそも、フリーダムを提供されても、デュートリオン・システムの送信機が無ければ意味が無かったのだ。あんなものでオーブを守れるなど、デュランダルほどの男が本気で思っているわけでもあるまい。
そうでなければ、都合よくこんな事を言ってくるわけが無いのだ。デュランダルは、自分をからかって遊んでいる。カガリは感情を制御するのに四苦八苦していた。
「…それならば、今すぐにでも援軍を期待できるということですか?」
「今すぐには無理でしょうが、小一時間といった所でしょうか。大気圏突入前に連絡が入る手筈になっておりますので」
「小一時間……」
それまで戦線が維持できるのだろうか。小一時間とデュランダルは言っているが、それが真実かは分からないし、本当だとしても予定通りに行く保証は無い。
心配するカガリの表情を読み取ったのか、デュランダルが続ける。
「今のところ地球は連合優勢ですが、宇宙はザフトが優勢です。信じていただきたいものですな」
よくも抜け抜けとこんな事が言えたものだ、とカガリは顔つきを険しくする。オーブが危機に晒されれば、デュランダルとて無事では済まないと分かっているはずである。
この男は、自分からアスランを奪っておいて、更にオーブまでも玩具にするつもりか。それとも、純粋に戦争というゲームを楽しんでいるのか。こんな男に、戦争を遊びで済まされたくは無い。
尤も、これらの考えはカガリの主観から出たデュランダルの印象ではあるが、そう思われても仕方ないのはデュランダルがそういう性格だからだ。彼は、状況を楽しもうとする癖があった。
戦況は、聞く限りではかなりの数の部隊を投入してきていて、アークエンジェルまでも居るらしい。そんな大部隊を、オーブ軍だけで抑えることが出来るだろうか。
「だが、ザフト降下前にオーブが占拠されたら――」
「ご心配には及びませんよ。何しろ、あの“砂漠の虎”がフリーダムに乗って戦っているのですからね。代表の弟君のように、素晴らしい活躍をしてくれるはずです」
穏やかな表情でキラの事を口にするデュランダル。カガリはハッと目を見開いた。
「何故…キラの事を? アイツの事は本当に一握りの人間しか――」
「昔、遺伝子工学の研究をしていた時期がありましてね。その時に噂で少し――」
不敵な笑みで意味深な言葉を吐く。人差し指と親指で噂で知った程度を表す。
「二年前は凄まじい戦果を挙げたらしいですがね、今の彼は戦う意思を持っていないようだ。それも、仕方の無い事なのかもしれませんね…」
心の中で“何が言いたい”と呟いた。勘の鈍い自分でも分かる、デュランダルは挑発をしている。
「力があるのに戦わないのは、きっと心が疲れてしまっているからでしょう。ならば、ラクス=クラインは最上の癒しになります」
「キラはもう戦わせないと決めています。彼は二年前に十分戦いました」
「そうですね、私もそう思います。しかし、彼がもし、再び自分から戦うと言ってきたら――その時代表はどうされますか?」
カガリの眉間に皺が寄る。キラの性格から、二度とMSには乗らないはずだとタカを括っていただけに、そんな事を考えた事など無かった。
「どうするって――」
「MSに乗せるのか、乗せないのか」
「そんな事…言う必要はないでしょう」
我ながら何をもったいぶっているのかと思った。答は、“乗せない”に決まりきっている。それなのに、何故こんな曖昧な返事をしてしまったのだろう。
まさか自分の中に、またキラに頼ろうと思っている心があるということなのか。
「失礼しました。確かに、私には言う必要のないことですね」
「……」
あっさりと引き下がるデュランダル。それを気にも留めずに、カガリは考えていた。そんな気持ちがあったなんて事は、認めたくない。
「お時間を取らせて申し訳ありませんでした」
デュランダルはすれ違いざまにカガリの表情を横目で確認した。どうやら、キラを再びMSに乗せることに対して、まんざらでもない気持ちを持っているようだ。
デュランダルにとって、オーブの存亡はどうでも良かった。そもそも、オーブと同盟を組んだ最大の目的は、モルゲンレーテの技術と、ラクスの確保だった。そのついでにキラも引き込めれば文句無い。
そして、それら全ての目的を達成する為には、オーブをプラントに依存させる必要があった。そうしなければ、オーブが滅びた際にカガリはラクスをプラントに亡命させたりしないだろう。
だから、わざとオーブを窮地に追い込ませ、それをザフトが救援する事でプラントの必要性を強烈にアピールしておく必要があった。
オーブの防御が薄くなる2日間のタイムラグは、カガリが先程気付いたとおり、デュランダルの計らいだ。
ただし、デュランダルにも懸念する事がある。当然こちらの目論見を感知しているはずのセイランの動きが全く掴めないという事だ。彼等なら、この2日間のタイムラグを見過ごすはずがない。
(何か隠しているという事か、彼等は?)
何か無ければ、この事態を静観して招いた意味が分からない。彼等にはまだ誰も知らない後ろ盾があるのだろうか。
肩を落とすカガリを背に、デュランダルはセイランを気にしていた。
戦闘が始まり、半刻ほど経過した。前回同様シェルターに逃げ込んだキラ達は、お互いに身を寄せ合って励ましあっていた。
「今度も、絶対に何とかなるよね?」
「またアンディが怖い奴等追っ払ってくれるんだよな!」
「大丈夫ですわ。ここに居れば、安心ですからね」
子供たちの心労もかなり溜まってきている。つい先日戦闘があったばかりだというのに、又してもオーブが危機に晒されてしまったのだ。
「本当にプラントと同盟なんて結んでよかったのかねぇ…」
「大西洋連邦と同盟を結んでおけば、こんな事にはならなかったかもしれないのに…」
不安が不満に変わる瞬間。一緒に逃げ込んできたオーブ国民から、オーブ政府に対する不満の声が聞こえてきた。
当然といえば当然の事だ。政府の打ち出した政策が実を結べば、国民から不満の声は聞かれないが、逆に成果が中々見えない場合は、不安から不満を口にする者が出てくる。
政治から遠い大衆心理としては、口をつく言葉が結果論になってしまうのは仕方ない。
そんな声を聞いて、キラは俯いてしまう。その政治を取り仕切っているのが、実の姉であるカガリなのだから。
「カミーユさん、震えちゃってる…」
「私が代わりましょうか?」
震えるカミーユを見やり、呟く。すると、マリアがキラに気を遣って声を掛けてきた。
「いえ、僕が守るって、約束しましたから」
「そう…」
マリアの気遣いはありがたいものだが、キラはそれを丁寧に断った。男が一度言い出したことである。ここでまた誰かに頼ってしまえば、自分は一生前に進めなくなってしまうだろう。
だから、最後まで責任を持ってカミーユの面倒を看ようと思った。
「ラクス様ぁ…怖いよぉ……!」
「お外から音がするぅ……」
シェルターの中とはいえ、外でMSが出撃する音が聞こえてくる。戦災で親を亡くした子供たちにとっては、MSの音は恐怖以外の何物でもないだろう。ある意味、ユニウス・セブンの落下よりも恐怖がある。
泣きながら縋ってくる子供達を、ラクスは優しく包み込んだ。
「落ち着いてください、皆さん。こういう時は、お歌を歌いましょう。そうすれば、不安もなくなりますよ」
ラクスの声は、とても優しい。そんな声で“大丈夫”と言われれば、本当に大丈夫なのだと信じてしまいそうになる程だ。
ラクスは瞳を閉じ、優しく丁寧に歌い始めた。
(この歌は…)
かつてプラントの流行歌になった歌。キラも、いつか聞いた事がある。気の休まるいい歌だと思う。
「う…うぅ……ぁ……」
「あ――」
ラクスが歌い出して直ぐに、カミーユが反応した。先程までの震えが止まり、何かを懸命に伝えようとしている風に見える。
「大…丈夫ですか?」
「は…あぁ……!」
その時、初めてカミーユと視線が合ったような気がした。これまでも何度かカミーユと目を合わせたことはあったが、それとは違う。何となく、意志を持った視線が何かを訴えているような気がした。
「ど、どうしたんですか?」
「キラ君?」
心神喪失のカミーユに話しかけるキラを怪訝そうに眺めるマリア。しかし、キラはマリアの声が耳に入っていないのか、じっとカミーユを見つめたままだ。
(何を――何を言いたいんですか?)
キラは、カミーユを見つめて心で問い掛けた。当然、返事が返ってくるはずも無いと思っていた。
しかし――
《あの人が…危ない》
「え……!?」
何かが聞こえた。思わずキラは辺りを見渡してみた。
「さっきから様子が変よ?」
「あ、あの、何か言いましたか?」
「いえ、私は別に――」
マリアが挙動の怪しいキラに心配そうに訊ねる。どうやら、空耳が聞こえているらしい。これは尋常ではないと悟る。
「疲れてるんじゃない? カミーユ君の事は私に任せてもらっていいのよ」
「あ、いや…すみません。…大丈夫です」
マリアに心配されたくないキラは、背を向けてこれ以上の会話を拒否した。
今の声、誰の声だろうか。一つの可能性に賭けるべく、キラはカミーユに向かって、先程の声に再び心の中で語りかける。
(…誰ですか、あなたは?)
《あの人が…危ない》
また聞こえた。しかし、こちらの声が聞こえているわけではなく、向こうから一方的に話し掛けてきているだけのようだ。会話がまるで噛み合っていないのを見て、確信する。
キラは心を静かに保ち、次の声が聞こえてくるのを待った。
《まだ来ていない…大丈夫だ》
(何がですか?)
《僕があの人を呼び寄せる。…だから、君は外に出て…》
(それで、外に出て僕はどうすればいいんですか?)
《君に出来る事を…頼む…これ以上悲しみを増やさない為に……》
(悲しみ…)
声が止まった。今の声は、一体自分に何を伝えようとしていたのだろうか。誰かが危ないとか、悲しみを増やさない為にとか、訳が分からない。考え込むあまりに眉間に皺を寄せるばかりで、硬直してしまった。
「本当に大丈夫?」
置物のように制止してしまっているキラを見て、マリアがもう一度訊ねる。ふと我に返り、目をきょろきょろと動かしてシェルターの中を大きく見回すと、子供達や他の避難民達の表情が見えた。
耳を澄ませばラクスの歌声。今、本当に外で戦争が起こっているのかすら疑ってしまうほどの、安らかな空間。聞き入る人々は状況を忘れてしまったかのように、ラクスの歌声にウットリとしている。
もしかしたら、大西洋連邦軍の攻撃で死ぬかもしれないと言うのに、まるでそれを感じさせないその歌声は、人の心に安心を与えてくれる。
と、そこまで考えてキラは気付いた。例えラクスの歌声が怯えた心を鎮めるものであっても、現実が変わるわけではない。怯えるだけの自分は、こうして彼女の歌に身を委ねるだけだ。
(でも――!)
しかし、ラクスの歌は勇気を与えてくれているような気がする。優しい歌声は、キラにとってはカンフル剤になっていた。そして、誰かの声は彼を必要とした。
キラは思う。アスランもエマもバルトフェルドも、誰一人として彼ら自身から自分に頼ってこなかった。それは、これまでの自分を顧れば理由は分かるが、今はそうありたくない。
自分から戦いを拒否しておいて考える事ではないと思うが、足手纏いにして欲しくなかった。自分にだって、男として立ちたい時がある。
今が、そのチャンスの時なのだろうか。誰かの声は、自分に出来る事を、と言っていた。運命が自分に出番を回してくれたのだろうか。あの声は運命の声なのだろうか。困難を打ち払う力が、まだ残っているのだろうか。
キラは恐怖心を払拭するかのように首を振る。もし、そうであれば、ここで立ち上がるべきだ。間違っていたとしても、確認するだけの価値はあるはずだ。そう言い聞かせて立ち上がり、シェルターの出口へ向かう。
「キラ君?」
マリアがキラに気付き、声を掛ける。扉の前で佇むキラ。何をしようというのか。
「…すみません、カミーユさんをお願いします」
「え? キラ君?」
振り向いた肩越しのキラの顔が、とても男らしく見えた。まるで、二年前にフリーダムに乗って帰ってきたときのように、精悍な顔つきをしていた。
こんな顔は、オーブへ越してきて以来見たことがない。何があったのかは知らないが、キラの中で何か一つのハードルを飛び越えたのかもしれない。
「行って来ます……!」
キラは噛み締めるように一言発すると、シェルターの扉を開けて外に出て行った。その後姿に、マリアは決意を見た。
シェルターの中は、ラクスの歌声が響いている。
戦場では、未だにバルトフェルドが粘っていた。しかし、フリーダムは機体が損傷し、既に片脚を失っている。少しずつ抵抗を試みたが、やはりエネルギーを気にしつつの戦闘は難しく、敵の物量に押されるばかりになっていた。
「バランスが悪い! ――くそっ、エネルギーさえあれば…!」
残エネルギー量は、既に3割を切っている。このままでは、いずれ抵抗する力すら失い、不敗伝説を誇ったフリーダムは撃墜されてしまうだろう。
その反面、この動きの悪いフリーダムで我ながらよく粘ったものだと思う。先程、トダカからあと半刻ほどでザフトの降下部隊が到着するとの報告を受けた。その増援が来れば、戦力差を一気に縮める事が出来るだろう。
「…最後の戦いが、パチ物とはいえフリーダムに乗ってのものになるとはな……。砂漠の虎としてはイメージが違うが、悪くない」
息詰まる攻防に、覚悟を決める。こうなってしまえば、これ以上敵の大群を食い止めるのも難しいだろう。これまで何とか自分が囮になり、ムラサメやアストレイに攻撃を任せてきたが、やがて防衛線を突破されるのも時間の問題だ。
ならば、残りのエネルギーを使いきり、少しでも多くの敵を道連れにするべきだ。
「腐ってもこの“砂漠の虎”! タダではやらせん! …アイシャ、今逝くぞ――!」
決死の突撃を決め、スロットルレバーを固く握り締める。そして、それを思いっきり奥に押し出そうとしたその瞬間だった。
《彼が居ます。あなたは戻って下さい》
頭に直接響く声が聞こえた。その声に、バルトフェルドは手を止める。
「誰…だ?」
その間にも、敵の容赦ない攻撃は止む事が無い。慌ててバルトフェルドは回避行動をとった。
《このままでは、あなたは犬死です》
「誰だか知らないが、勝手なことを言ってくれる!」
あくせくかわすフリーダム。バルトフェルドは、敵の攻撃に翻弄されながら誰とも知れない声に向かって叫んだ。
「彼とは誰だ!? 俺以外に一体誰がこれを動かせるって言うんだ!」
苛立つバルトフェルド。体力を消耗し、ついに幻聴まで聞こえ出したか、と自らの醜態に舌打ちする。
「応えてみろ! 誰だ、一体誰が待っていて、お前は誰なんだ!」
全ては自分の心が描いた現実逃避のための声だと分かりきっている。しかしこの二年、バルトフェルドは兵士として片時も訓練を怠ったつもりは無かった。
それなのに、このような幻聴が聞こえるという事は、自分の実力がその程度だったということの証明になる。どんなになっても最後まで平常を保っていられると思っていただけに、バルトフェルドはそれが悔しかった。
《戻って。それしか、方法が残されていない》
「く…ぅ……!」
しかし、これは本当に幻聴なのか。それにしては随分とはっきりと声が聞こえるような気がした。
『フリーダムは後退しろ! その損傷ではこれ以上は無理だ!』
『エネルギーも残り少ないんじゃないのか!? ここは、我々が命に代えても死守して見せる!』
「うぅ…ぬ……!」
思考がバラバラになる。友軍機からの通信の声も、殆ど耳に入っていない。
二年前にキラと戦い、死を覚悟した時もこんな事にはならなかった。つまり、それだけ自分は衰えていたという事だ。この二年間積んできた鍛錬は、結局は無駄だったのだろうか。
「チィッ――!」
バルトフェルドのフリーダムが身を翻してオーブ基地へと進路をとる。どうせ無様なら、とことんかっこ悪いことをしてやろうと思った。そうとなれば、この幻聴の指示に従って狂おう。
それが、アイシャを置いて生きた自分に相応しい最期なのかも知れない。
《戻れば、彼が待っている……》
「うるさい!」
首を振って、バルトフェルドはフリーダムを加速させる。一度覚悟を崩された以上、何としてでも戻って見せようと思っていた。
その頃、走り続けるキラは、沿岸部のオーブ軍工廠施設に辿り着いていた。
「ここまで来れば…バルトフェルドさんは!?」
空を見渡し、フリーダムの影を捜す。先程の声が呼び寄せるのは、きっとバルトフェルドのフリーダムだろう。キラは何故か分からないがそう確信していた。
その時、一機のMSが戻ってくるのが見えた。それは二年前に自分が愛機としていたMS。何年経っても見間違う事は無いだろう、フリーダムが帰ってきたのだ。
「バルトフェルドさぁん!」
キラは大きく両手を振り、大声で叫んで懸命に存在をアピールする。コックピットの中のバルトフェルドもそれに気付いた。
「あれはキラ!? 何でこんな所にあいつが居る!」
モニターのカメラを人影に合わせて拡大すると、そこには見慣れた少年の姿があった。フリーダムを反転させ、背中から沿岸部に腰掛けるように着陸させる。
それを待つキラは、バーニアの衝撃波にさらされ、両腕で身を守り腰を低くした。
フリーダムの腰を下ろし、少し上半身を寝かせると、バルトフェルドはコックピットを開き、外に躍り出た。それを見てキラが駆け寄ってくる。
「何をしている! お前はシェルターで大人しくしていろ!」
「代わって下さい、バルトフェルドさん! フリーダムは、僕が動かします!」
「何…!」
バルトフェルドは目を丸くした。この二年、一緒に暮らしていて、こんな表情を見たことがなかった。言うなれば、これまでは何処か無気力な顔をしていたが、今は覇気が戻ってきている。
しかし、バルトフェルドはフリーダムのコックピットシートをキラに譲るつもりは無い。このまま言うがままにフリーダムを任せれば、また彼は戦う事になるだろう。それでは、デュランダルの思う壺だ。
それに、彼がまた戦争に加われば、再び苦しめる事になる。彼を息子のように思っているバルトフェルドにしてみれば、そんな事はさせたくない。
「早く! フリーダムに慣れている僕なら――!」
「駄目だ! お前に戦いは無理だ!」
「戦ったじゃないですか! それが、何で今出来ないって決め付けるんですか!?」
懇願するキラ。ある意味、それは驕りなのかもしれないが、キラはフリーダムの操縦なら誰にも負ける気がしなかった。
相手がバルトフェルドであろうとも、二年のブランクがあろうとも、フリーダムのことなら自分が最も知っているとう自負がある。
「お願いです! 僕に、フリーダムを任せてください! 絶対に何とかして見せます!」
「キラ…お前――!」
自分の言う事を聞かないキラに腹立たしさを覚える反面、強く言葉を発する彼が頼もしくもあった。バルトフェルドの中の矛盾した気持ちが、判断を難しくさせる。
「――っ!」
中々動こうとしないバルトフェルドを見かねたキラは、無理やりにでも交代する為にフリーダムをよじ登り始めた。どうしてもパイロットを代わらないつもりなら、力づくでコックピットに乗り込むまでだ。
「く、来るな! 俺に任せておけばいい! お前はもう戦うな!」
「それが…嫌なんです! 何で僕を…そんなに戦わせたくないんですか!? 僕だって、戦えるん…です!」
一つ一つ足元を確かめながらフリーダムを登ってくるキラ。既にバルトフェルドの足元まで来ていた。
バルトフェルドはそれを見て、歯を食いしばる。キラを戦わせたくないと言う保護者的な気持ちと、気合を取り戻した彼に任せてみたいと言う教師的な相反する気持ちが、葛藤を呼んでいた。
「お前も戦いが嫌だとか言ってたじゃないか! だから、お前はワザと相手の命を奪わないように戦っていたのだろう!」
「でも、それは勘違いだったんです!」
ついにキラがフリーダムのコックピットにまで登りこんできた。バルトフェルドの前に立ち、毅然とした態度で正面に見据える。目が、据わっていた。
「いくら相手の戦闘能力を奪っても、その人が無事に帰還できる保証なんて無かったんです!」
息は上がっているが、流暢に話すキラ。両腕を開いて必死にアピールする。
バルトフェルドがその仕草に呆気に取られていると、キラはそれに気付いて少し気持ちを落ち着かせ、しかし弱気を見せないように取り繕う。
「あ…それに、僕に生かされた事を不名誉に思う人だって居たかもしれません。確かに戦争とは言え、誰にも死んで欲しくないと言う考えは変わりませんけど、それが通用しない人だっている…」
バルトフェルドはキラの話を黙って聞いていた。彼の視線が、口を挟むなと言っているように見えていたからだ。
「だけど、もしラクスを…僕の大切な人達を守れなかったらって考えたら、とても悲しいんです。だから、僕はもう一度戦うと決めました。アスランたちが戦争を早く終わらせてくれる。だったら、僕はその間にオーブを守ります」
決意に満ちた鋭い目つき。今のキラは、恐らく自分よりも強い決意を持っているのだろうとバルトフェルドは思った。
キラの覚悟は、一度は決めた覚悟を崩して逃げ帰ってきた自分とは比較にならないだろう。やはり、自分はそこまでの人間であったか、と自嘲する。
それならば、彼にフリーダムを任せた方がいいかもしれない。今の彼なら、自分を見失うような事は無いだろう。
「…分かった。フリーダムはお前に任せる」
「バルトフェルドさん!」
「だが、一つ条件がある」
「え…?」
ただし、タダでフリーダムを引き継がせるわけには行かない。これでは不甲斐無い自分の気が済まなかった。
「キラ、俺を思いっきり殴れ。それが、お前にフリーダムを渡す条件だ」
「えぇっ!?」
一体バルトフェルドに何が起こったのかと、キラは驚いた。表情に躊躇いの色が浮かぶ。
「早くしろ、何時までも他の奴等に前線を任せて置く気か?」
しかし、悠長に構えていられないバルトフェルドは急かす様に言う。貴重な戦力であるフリーダムを、いつまでもここで休ませて置くわけにはいかない。
「で、でも――!」
「俺のけじめみたいなもんだ。気にせずやれ。それで、お前にこいつを渡してやれる」
「う……」
気の穏やか過ぎるキラだからこそ、このような事をバルトフェルドは言った。自分の憂さ晴らしの意味もあるが、ここで自分を殴れないようなら、キラを戦場に行かせることは出来ない。キラの気合の証明を見たかった。
「じゃ、じゃあ…行きますよ?」
「あぁ。遠慮せずにやれ」
「く――!」
キラの拳が、バルトフェルドの左頬にめり込んだ。彼の拳は、流石に二年間碌に訓練してなかっただけあり、痛みはそれ程感じなかった。しかし、殴られた左頬から何かが吹き飛ばされていくような爽快さを感じた。
キラは、パンチのモーションのまま固まっている。
「…いい気合だ、キラ」
「す、すみません、バルトフェルドさん」
「謝るな。俺が頼んだ事だ」
そう言うと、バルトフェルドはキラとすれ違い、フリーダムを降り始めた。
「任せたぞ、キラ。みんなを守ってくれ!」
「はい!」
力強く返事をするキラに、バルトフェルドは満足そうに微笑んで降りていった。
キラはそのままコックピットに乗り込むと、すぐさまキーボードを引き出す。
「…やっぱりだ。こんなものじゃ、いくらバルトフェルドさんだってまともに動かせるはずが無い」
モニターを見つめ、呟く。キラは右腕をスロットルレバーに添え、左手でキーボードを叩き始めた。初めてストライクに乗ったときと同じ様に、OSの書き換えを始める。
「こんな所でのんびりしている暇は無い!」
バーニア・ペダルを踏み込み、一気にフリーダムを上昇させる。その間にも、左手は休む事無くキーボードを叩き続けていた。
「片脚が無いんなら、各種アポジモーターの出力バランスをずらして――キラ=ヤマト、ガンダム行きます!」
キラ=ヤマト、飛ぶ。
今回は以上です。
予想通り2回規制に引っ掛かったわけだが
いつも後ちょっとというところで掛かるから困る(AAry
うぉ!連作投下ktkr!今から読んできます。が予告しておく。GOODJOB!
GJ!
キラが無印初期の頃のような人間の心を取り戻した!やっぱりカミーユのNT能力って神だな。
そして降下してくるザフト軍のメンバーに誰がいるのか。大西洋に誰がいるのか。楽しみだ。
なんつーか、ムチャクチャさ加減にワラッた。
七夕に投下とはにくいぜGJ!
ひええっ最新50のほとんどを占めるとは。
俺も精読前からGJ!
GJ!
相変わらずそこはかとなく漂うZの香りが心憎いぜ!
GJ!久々の投下お疲れさまでした。
トダカ出してくれてありがとう!!
カミーユ氏の思うがままに突っ走って下さい!
次回も楽しみにしてます。
GJ!・・・てか、長っ!!
キラが知らない間に人間になっているのがGJ!
GJ
カミーユはさすが最高NT
復活が待ちどおしい
GJ!!
カミーユの心の声が…鳥肌たってしまった♪
次回のボロ自由に乗るキラの戦い方に期待!!
嗚呼…
カミーユは導く人なんだな
まるでイデのメシアのようだ…
GJです
カミーユってNT能力で導く演出が一番似合うな
ZZ時代のカミーユとか見てるだけで
キラが虎を呼んだシーンで鳥肌立ったわ…
保守
GJ
保守
『オーブは落ちず』
「残りエネルギーは30%弱…武器へのエネルギー供給を最小限に抑えれば、まだ十分に戦える!」
フリーダムのコックピットの中、キーボードを叩きながらキラは呟く。敵の姿が見えてきた。
「使用武器は…ライフルじゃ直ぐにエネルギーが尽きる! なら、ビームサーベルで!」
乱戦に接近戦仕様のビームサーベルを選択する。普通はビームライフルを選択するべきだが、キラはビームサーベルでも何とかする自信があった。しかし、後になって考えれば、それは過信だったのかもしれない。
調整を終えたキラはキーボードを押し込み、左手もレバーを握り締める。フリーダムがサイド・スカート・アーマー部分からビームサーベルの柄を取り出し、目標に定めたダガーLに向かって突撃する。
「エネルギー供給をカットしたことによるサーベルの長さを考慮して――!」
出力を落としたことにより、ビームサーベルの刀身は極端に短くなっていた。ただでさえリーチの短い武器が更に短くなったのだ。
「それで出力を押さえた事によるビームサーベルの威力も考えれば、最も効果的なMSの部位は――!」
コックピットを突けば一撃だが、今のビームサーベルでは貫く事が出来ないだろう。となると、狙う部位はMSが最も情報を集め、出力不足のビームサーベルでも貫けそうな部位。
「そこだ!」
ダガーLのビームライフルの砲撃を掻い潜り、ナイフのように短いビームサーベルをピンポイントで頭部に突き立てる。ダガーLは目を失い、フリーダムの動きを確認する事が出来ない。
フリーダムはそのまま回し蹴りで吹き飛ばし、次の敵に標的を定める。
「チッ! まだ動きが鈍い!」
もう一度キーボードを引き出し、左手を再びせわしなく動かす。細かい部分の調整を続けながら、キラは更にもう2機の頭部を破壊する。
「次は――!」
後ろから襲ってくるウインダム。警告音と同時に超反応し、横に回避させる。ビームをかわされたウインダムはそのまま突撃してきてビームサーベルを引き抜いていた。
「やらせるものか!」
キラはそれをものともせずにウインダムの頭部にもビームサーベルを突き刺し、左のマニピュレータで腕を掴んで放り投げる。
しかし、その隙を突かれ、フリーダムの六翼の一枚を吹き飛ばされてしまう。
「く…ぅ――!」
反転して攻撃してきたウインダムに対してバルカンの斉射を浴びせる。エネルギーを節約している現状ではこんなものでしか牽制をかけられない。
更に、周囲から敵MSが集まってくるのがレーダーで確認できた。フリーダムは孤立状態にあるが、オーブ軍の援護は期待できない。キラが戦っている間にも大西洋連邦軍は侵攻を続けているからだ。
今キラが相手にしているのは、敵の一部に過ぎない。
「くそっ! フリーダムって、こんなものだったのか!?」
フリーダムの動きはOSの改善でかなりいい反応を取り戻した。しかし、思った以上に敵の侵攻を防げていない現状に、キラは苛立っていた。これでは、バルトフェルドと交代した意味が無い。
何が違うのか。フリーダムが予定していた性能を発揮しているのなら、おかしいのは自分だ。二年前に比べ、腕が鈍っている。
「こうなったら、もうフェイズ・シフトに回している電力もカットしてライフルのエネルギーに回した方がいいのか?」
確かに敵MSがビーム攻撃しかしてこないのなら、実体攻撃しか防げないフェイズ・シフト装甲は無意味だ。その分を攻撃のエネルギーにまわせば、乱射は出来ないまでもビームライフルが使えるはず。
しかし、問題はそこではないような気がした。昔戦っていた時と比べると、単純に腕が鈍っただけではないと思った。あの頃は、戦いになるともっと頭の中が鮮明になって、敵の動きが手に取るように分かったような――
「うっ!」
考え事をしていると、新たにやって来た敵の集中攻撃でシールドと左肩部のアーマーが吹き飛ばされてしまった。いよいよ危機的状況に追い込まれ、キラの表情に焦りの色が浮かんでくる。
「このままじゃ、僕は――!」
恐らく撃墜されて死ぬだろう。嫌だと思っても、回避しようが無い。キラの頭の中を色々な思考が駆け巡る。複雑に絡み合う思考は、キラの集中力を低下させていた。
《余計なことは考えるな。目の前の敵に集中するんだ》
「え……?」
もう駄目だと半ば諦めかけた時、キラの頭の中に先程の声が聞こえてきた。彼の声は、こんな所にまで届くのか。
《頑張れ。君は、ここで死ねない》
「そんな事を言っても!」
声が、余計にキラの頭の中を掻き乱す。瞳孔は開き、瞳は絶えずあちこちのモニターをチェックし続ける。レバーを握る手は汗でじっとりと湿り、額から汗が垂れてくる。
それでも、必死になったフリーダムの動きは敵の集中砲火の中をまるで鼠花火のようにすばやく動き、これ以上の被弾を許さない。
《もう直ぐソラから援軍が来る。それまで持ち堪えれば、勝機が見えるはずだ》
「ソラから…? まさか、ザフトが!」
宇宙からの味方という事は、オーブに配属されるというザフトの部隊のことだろう。本来なら明日到着の予定だったが、大西洋連邦軍の再侵攻を予測していたデュランダルによって既に呼ばれていたのだ。
確かに、ザフトの降下部隊がやって来れば戦力差を縮める事が出来るだろう。しかし、それまで自分が堪えれるかどうかは分からなかった。急な実戦に、キラの体力は急速に奪われている。
「でも――」
《みんなを守ってくれ。君には、守らなければならない人が居るじゃないか? それは、素晴らしい事なんだ》
「守らなければならない人……」
頭の中のスクリーンに浮かんできたのは、ラクスではなく赤毛の少女だった。その少女は何かを自分に伝えようとして口を動かしているが、何を言っているのか分からない。
その少女、フレイ=アルスターは、キラが人生で最も後悔している少女。最後まで自分が傷つけたと思い込み、そのままだ。ヤキン・ドゥーエで戦死し、もう何も伝えられない。
フレイのヴィジョンは、結局何を言いたかったのか分からずじまいのまま消えていった。記憶に残ったのは、寂しそうな表情だけ。
しかし、その後すぐにラクスの笑っている顔が浮かんできた。
「ラクス!」
キラの頭の中で何かが弾ける。途端に頭の中がクリアになり、かつて無い集中力を生み出した。
もう余計なことを考えるのは止めた。自分が何をしたいのか、それだけを念じる。それは、ラクスや大切な仲間を守る事。優しくしてくれたみんなを守るのが、自分の最大の使命だ。
オーブとかプラントとかは関係ない。ただ、ひたすら仲間の無事を祈った時、キラの封印されていた力が解放された。
「うぅおおぉぉぉぉぉ!」
温厚なキラからは想像できない獣のような雄叫び。目の前の敵に集中し、1機、2機と続けて頭部を破壊する。
感じていた体の疲れは、集中力が忘れさせてくれた。今のキラは、二年前の絶好調だった頃の調子に戻りつつある。もう、後でどんなガタが来ても構わない。
『フリーダムに続けぇ! このまま大西洋連邦の好きにさせるな!』
『オーブ魂を見せ付けてやるんだ!』
キラの奮闘に触発されたオーブ軍MSが、フリーダムの援護に向かって来る。敵の侵攻もあるが、根性で少しずつ前線を押し返していた。
「みなさん……」
援護にやって来たムラサメが、ダガーLの小隊を撃墜する。更に、M1アストレイの小隊も援護に駆けつけてきた。これで、勢いは完全にオーブ軍側に移った。
数で劣るオーブが、物量で仕掛けてきた大西洋連邦を少しずつ凌駕し始めたのだ。
キラはその光景に感動する。自分だけではない、みんな大切なものを守る為に戦っているのだ。あるいは家族の為に、あるいは自分のプライドの為に、そして、オーブの為に。
しかし、束の間の勝機は、あっさりとひっくり返される事になる。前線に飛び出してきたオーブ軍は、部隊を前に出しすぎた。
《敵の攻撃が来る――!》
「え?」
声が警告してきた。その懸念とは反対に、オーブの部隊は進軍を続けて、敵の本営を目指している。
《駄目だ! このままじゃ、まとめてやられる!》
そう頭の中に響いた瞬間、前線に進出してきたオーブのMS部隊が陽電子砲の光の中に消えた。キラはその光景に慄いて、フリーダムを硬直させてしまう。
「ロ…ローエングリン――!」
正直、キラも危なかった。他の友軍機が押せ押せで進軍しているのを見て、それに加わろうと思った矢先の出来事だったのだ。大西洋連邦軍は、アークエンジェルを戦力に加えてきていた。
前回ミネルバのタンホイザーで痛い思いをしていただけに、それに対する報復の意味も込めてローエングリンを放ったのだ。
これで、息を吹き返したかに思われたオーブ軍は再び劣勢に立たされてしまった。多くのMSが前に出てきたことにより、その殆どがローエングリンに巻き込まれ、本土の守備が薄くなってしまった。
これでは、いくらキラが調子を取り戻せても、対処の仕様が無い。今のフリーダムでは、数の劣勢をひっくり返せるほどの力を持っていない。
「どうする? ビームサーベルじゃ、アークエンジェルを止める事は出来ない……!」
今手にしているビームサーベルでは、鉄砲に対して竹槍で向かっていくようなものである。例え接近できたとしても、ラミネート装甲の前に出力を抑えたビームサーベルでは傷一つ付けることも出来ないだろう。
万事休す。キラの頭の中を絶望が襲った。
バルトフェルドは走る。キラにフリーダムを預けた以上、今度は自分でMSを探さなければならない。フリーダムを降りはしたが、このまま手を拱いているわけにもいかない。
「ちょっと、そこのあなた!」
基地施設内を駆けていると、突然声を掛けられた。しかし、構っていられない。そのまま無視して駆け抜けようとしたとき、不意に見覚えのある顔が目に飛び込んできた。
「ミリアリア?」
「バルトフェルドさん!」
足を止めて少女を見やる。襟足の跳ねた茶髪にラフな格好で肩からバッグを提げている。彼女は、かつてアークエンジェルのCICを担当していたミリアリア=ハウだ。
ヤキン戦役の後アークエンジェルを降り、今はフリージャーナリストをやっているはずだ。
「何故、君がこんな所に?」
「私、戦場カメラマンになったんです。それで、この間オーブが大西洋連邦に攻め込まれたって聞いたので――そしたら今回の騒ぎじゃないですか。ザフトは何をしているんですか?」
カメラを片手に訊ねてくるミリアリア。バルトフェルドは苦渋の表情で歯を食いしばっていた。
「もう降下を始めている頃だろう。だが、間に合うかどうかだな。アークエンジェルのローエングリンが、こちらの戦力をかなり削ったらしい」
「アークエンジェルが来ているのですか!?」
「最悪の編成だ。ここも、いずれ戦場になるかもしれない」
「ちょっと、私にも話を聞かせてくださらない?」
ミリアリアと話していると、先程声を掛けてきた女性が近寄ってくる。ミリアリアに近い髪の色のショートカットの女性だ。気の強そうな眉と、それとは反対に女性らしさを感じさせる厚い唇が印象的だ。
「この軍人さん、ミリアリアの知り合いなの?」
「あ、はい。昔にちょっと…アンドリュー=バルトフェルドさんです」
「アンドリュー=バルトフェルドって…ザフトの砂漠の虎じゃない!」
「あの、失礼だがこちらのご婦人は?」
自分を差し置いて勝手に話を進める二人の女性に、先を急がなければならないバルトフェルドは困惑していた。いつまでもここで長話をしてる場合じゃない。
このまま無視して先を急ごうかとも思ったが、知り合いを無碍にするわけにも行かないだろう。
「こちら、私が依頼を受けた会社の担当の方で、レコア=ロンドさんです」
「ゲリラ屋上がりなので、よくこういう仕事を回されるんです」
レコアは名刺を取り出し、バルトフェルドに差し出した。それを受け取り、適当に見やって視線をレコアに向ける。
「まだお若いのに、随分と苦労してらっしゃる」
「よく言われるわ」
バルトフェルドは、このレコアという女性にエマやカツと似た印象を受けた。何処と無く世間慣れしていない感じがする。もしかして、彼女達の推測が当っていたのだろうか。
しかし、その問題は後回しだ。彼女達とはまたいずれ会うこともあるだろう。まずはオーブを守るのが先である。
「申し訳ないが、僕は急ぎますのでこれで失礼させてもらいます。…ミリアリア、何かあったらお嬢ちゃんの別荘に来い。そこが、今の僕達の住処だ」
「あ…!」
そう言い捨ててバルトフェルドは再び駆ける。制止するようにレコアが何かを言いかけたが、無視した。これ以上の時間のロスは余計だ。
バルトフェルドが去るのを見届けた後、レコアは溜息をついて髪を掻き揚げた。バルトフェルドがオーブの軍人として戦っているのなら、もう少し詳しい話を聞きたかったからだ。
そして、それを制止しなかったミリアリアに呆れていた。
「そんな顔をしないで下さい。オーブが攻め落とされちゃったら、大変な事になっちゃうんですよ?」
「今更彼一人が出て行ったところで何が出来るというわけでもないでしょう? それだったら、少しでもオーブの内情を聞き出すべきだったわ。"砂漠の虎"がオーブで戦っているっていうのも、いい記事になるのに」
「それはこの戦いの後、アスハ代表の記者会見でじっくり聞けばいいじゃないですか。今でなくたって――」
「あんな小娘に、まともな会見を期待するなんて間違っているわ。もっと戦いに近い人からナマの声を聞くべきよ。あなた、ジャーナリズムというものを勘違いしているわ」
「あ…ちょっと!」
レコアは不機嫌そうに腕を組んで歩いていってしまう。ミリアリアは慌てて彼女の後を追っていった。
戦線では、大西洋連邦軍がアークエンジェルを押し出してきた事により、徐々にオーブ軍が押し込まれていた。加えて先程のローエングリンの一撃で減少した戦力では戦線の維持が難しい。
キラのフリーダムも、局地的にMSを相手にするので精一杯だった。
「残りエネルギーが10%を切った…ザフトはまだなのか!?」
確かに動きは最高に切れている。しかし、それではどうしようもないのがエネルギーだ。このままでは、いずれただの的になってしまうだろう。そうなれば、終わりである。
「さっきバルトフェルドさんからこれを受け取ってから、もう大分経つのに…プラントはオーブを見捨てる気なの…?」
良くない予感がする。実はデュランダルの言っていたオーブ守備隊というのは嘘で、本当はオーブが滅びるのを待っていたんじゃないかと疑った。そのメリットは分からないが、こうまで増援が遅いとなるとそう考えざるを得ない。
しかし、そのキラの考えは杞憂に終わる事になる。その頃デュランダルはオーブ国防本部の部屋の中で降下部隊を衛星軌道上で待機させ、機を窺っていたのだ。
こうしてオーブを窮地に追い込む事により、そこにザフトの部隊を送り込む事で強い恩を売っておくのが狙いだった。
「そろそろか…」
ギリギリまで引き延ばした。こうまでやられれば、オーブも自らの無力を悟るだろう。
通信端末で待機中の降下部隊に指示を出す。そしてデュランダルは立ち上がり、部屋を出て国防本部の発令所へ向かった。現在の状況を知る為だ。
「戦況はどうなっている?」
扉を開き、顎に手を当てて唸っているソガに訊ねる。デュランダルの声に気付いたソガは振り向く。かなり困憊している様子で、デュランダルにとっては面白い顔をしていた。
「かなり劣勢です。…ザフトの降下部隊はまだなのですか?」
ソガの顔には汗が吹き出ていた。その顔を見て、デュランダルは心の中で笑う。ここまで追い込めば十分だろう。
「フリーダムは?」
ソガの質問を無視して聞くデュランダルに歯痒い思いをしつつも、ソガは通信兵にフリーダムとの通信回線を開かせた。
「フリーダム応答されたし」
「私にやらせてくれ。…聞こえているか、バルトフェルド?」
通信兵の傍らから身を乗り出し、体を前のめりにしてマイクに向かって話しかける。
『え?』
しかし、通信回線から聞こえてきたのはバルトフェルドの声ではない。不思議に思ってデュランダルはもう一度呼びかける。
「応答しろ、バルトフェルド。フリーダムはまだ持つのか?」
『その声…デュランダル議長!』
「何? 君は――」
「映像、でます」
目の前のモニターにフリーダムのコックピットの様子が映し出された。そこに座っているのは隻眼の中年ではなく、あどけなさの残る少年だった。
「キラ君…君が何故そこに?」
デュランダルは驚く。あれ程戦うのを拒んでいた少年が、何故かフリーダムに乗っているのだ。そして、彼に戦いを拒絶させていたバルトフェルドの姿が無い。
と、言う事はつまり、計らずもデュランダルの図っていた状況になったという事か。
『す、すみません…でも僕は――!』
「いや、いい。気にしないでくれ。君がその気になってくれたのなら、私としては嬉しい。二年前に最強と謳われた君の力を見せてくれ」
キラは言葉に詰まる。自分が戦うのは、仲間を守るためだ。パイロットとして優れているから戦うわけではない。それに、自分の実力がそんなに大きいと自惚れている訳ではない。先程から苦戦のしっぱなしなのだから。
「…それで、フリーダムのエネルギーはどうか?」
キラはちらっとモニターに視線を移した後、表情を曇らせた。どうやらかなり追い詰められているらしい。
「…わかった。キラ君はフリーダムを思いっきり上昇させてくれ。もうザフトの降下が始まっているはずだ。降下部隊の中には使い捨てのデュートリオン・システムの送信機を持たせてある。そこでエネルギーの回復をしてくれ」
『分かりました』
キラとの通信を切り、デュランダルは背筋を伸ばす。その顔には余裕の笑みが浮かんでいた。ソガはその表情に不信を募らせる。
「全て、予定通りですかな?」
「予定外だよ。キラ君が戦うとは思わなかったし、大西洋連邦の戦力がこれ程大きいとは思わなかった。まさか、アークエンジェルを投入してくるなどと、誰も思うまい」
苦笑しているように、笑いながら話すデュランダル。拳を口元に当て、わざとらしい仕草を見せる。
「勝てますかな?」
「ザフトの戦力、当てにしてもらいたいな」
普通に見れば、デュランダルの余裕の表情は自軍の戦力に相当の自信を持っている証拠に見えるだろう。しかし、ソガの目には全てを予定通りに進行させている余裕に見えた。
きっと、キラがフリーダムに乗るのも予想していた事なのだろう。
「降下部隊の指揮は貴官に任せる。存分に使ってやってくれ」
コートをなびかせ、デュランダルは司令室を後にする。その後姿を、ソガはじっと見つめていた。
バルトフェルドはムラサメを1機見つけて本島の防衛に回っていた。整備兵が整備中だと言っていたが、そんな事はどうでもいい。今は、少しでも戦力が欲しい時だ。MSの状態を気にしてはいられない。
「さっきよりも崩されている…キラはどうしたんだ!?」
押し込まれているオーブ軍。戦線が維持できなくなったのか、所々で防衛ラインを突破してくる敵が居た。何とか基地から迎撃して本島への侵入は防げているが、それが破られるのも時間の問題であろう。
そんな中にキラが居ない。アークエンジェルも侵攻して来ていて、いよいよ危機的状況に追い込まれつつあるというのに、フリーダムの姿が見えないのだ。彼ならこの状況をほうっておく事など出来ないだはず。
「まさか…落とされたのか?」
頭の中を不安が過ぎる。やはり、いくら優秀なコーディネイターであっても、訓練を積んでいないキラにいきなりの復帰戦は無理だったのだろうか。こんなことなら、キラと代わるべきではなかったかもしれない。
しかし、考えても始まらない。まだ撃墜されたと決まったわけではないし、何より今は敵の侵攻を食い止めるのが先だ。たとえキラが生きていたとしても、オーブが陥落すれば元も子もない。
「アストレイ部隊は飛べ! 地上に居れば狙い撃ちにされるだけだ!」
バルトフェルドは檄を飛ばす。地上から迎撃しているだけでは、空中からの攻撃には不利だ。
『駄目だ、ここは動けない! 地下のシェルターにも人が居るんだ!』
「何だと!?」
ならば、ここは何とかして守り抜かなければならない。M1アストレイの部隊が動けないとなると、ここはムラサメに乗っている自分が踏ん張るしかない。
ムラサメは、先程まで乗っていたフリーダムとは違い、エネルギー消費効率が格段にいい。それは、消費の大きい武器を搭載していないからだ。バルトフェルドにしてみれば、フリーダムよりもムラサメの方が使いやすい。
「分かった。アストレイ各機はそのまま迎撃を続けろ! ムラサメ各機は各個撃破! ここを突破されればもう後が無い、絶対に守り抜くんだ!」
その時、洋上に浮かぶオーブ軍の巡洋艦がアークエンジェルからの2発目のローエングリンによって轟沈した。その衝撃で起こった高波が沿岸部の基地に押し寄せ、それに巻き込まれたM1アストレイ数機が流されてしまった。
「チッ! 波にさらわれる間抜けが何処に居る!?」
苛立ちを募らせるバルトフェルド。上手く行かない時は何をやっても上手く行かないものである。結局、数を減らされた守備隊は敵MSに対して弾幕を張り続けるしかない。このままではジリ貧だ。
「ザフトはまだなのか!? これじゃあ、オーブは本当に落ちるぞ!」
バルトフェルドの表情にも焦りの色が浮かぶ。ザフトが来るにしても、あまりにも遅い。もったいぶっているのは何となく分かるが、これでは引っ張りすぎだろう。
デュランダルにしても、ここでオーブを攻め落とされるのは本望ではないはずだ。
バルトフェルドが危惧していると、一機のムラサメが被弾してバランスを崩された所に、ビームサーベルを携えて突撃してくるウインダムを発見した。このままではあのムラサメは撃墜されてしまう。
「これ以上はやらせん!」
救援に向かうバルトフェルドのムラサメ。ビームライフルで牽制しつつ、シールドでウインダムを突き飛ばす。その間に被弾していたムラサメは不時着し、態勢を立て直そうとしている。
それを確認し、バルトフェルドはホッと一息つく。
しかし、その油断の隙を突かれ、ダガーLの小隊がバルトフェルドのムラサメを後ろから狙って来た。不意を突かれたバルトフェルドは、ムラサメの左腕を破壊されてしまう。
「くっ――!」
続けざまに止めを刺そうとビームサーベルで切りかかってくるダガーL。バランスを崩し、反転している時間は無い。背後からの接近を告げるアラームの音を聞き、バルトフェルドは撃墜を覚悟した。
しかしその時、一筋の複相ビームの光が止めを刺そうとするダガーLを吹き飛ばした。その光は、見覚えがある。
『大丈夫ですか、バルトフェルドさん!』
「キラ――!」
射線の方向に目を向けると、そこにはボロボロになったフリーダムが佇んでいた。しかし、バラエーナを撃ったということは、エネルギーを回復させたという事だろう。この短時間でそんな事が出来るという事は――
「うおっ!?」
考えが纏まる前に高度からの一斉射撃が大西洋連邦軍のMSを襲う。空中で佇んでいるフリーダムの更に上空を見ると、そこには各種ザクが武器を構えて降下してきていた。
数は分からないが、相当な規模だ。
その中に、1機だけ微妙に形の違うザクがいた。塗装をオレンジに塗り、かなり派手な見栄えをしている。
『ザフト特務隊フェイスのハイネ=ヴェステンフルスが助けに来たぜ! オーブ軍、もう安心だ!』
いきなり全周波で通信を繋げてきた。そのMSの趣味と相まって、相当陽気な人物である事が覗える。
『各小隊はオーブの守りに就け! 1機たりともここを通すなよ!』
彼が隊長なのだろう。フェイス権限を持つということは、現場レベルでは最高の権限を持つことを意味する。案の定、彼の命令が下されるとザクが本土に着陸し、次々と迎撃態勢に入る。
この数なら、まず突破される事も無いだろう。
『バルトフェルドさん、僕は前線に向かいます! ここは頼みます!』
キラはそう告げると、フリーダムを加速させる。
『ちょっと待てよお前さん! 俺も行くぜ!』
先程の調子のいい声の男が、回線も切らずに叫んでフリーダムの後を追って行く。衛星軌道上で散々待たされ、元気が余っていた。
だが、これでオーブの守備は万全になったと言っていいだろう。ザクは飛行できないとはいえ、セカンド・ステージ・シリーズだけあり、性能はいい。
連合の新型主力MSのウインダムよりは総合的に劣るが、そのウィザード換装による汎用性の高さで凌駕する。
ただ、セカンド・ステージ・シリーズのMSをこれだけ投入できるという事は、プラントは軍備をずっと続けていたという事になる。それは、ある意味で残念な事だ。
デュランダルが戦争に向けて準備を進めていたことの証明になるからだ。
バルトフェルドは溜息をつく。それには、安堵と不安が混ざっていた。今のところは全てデュランダルが掌握している状態だろう。
「これが終わっても、また大西洋連邦は攻めてくる……。結局、こうやって真綿で首を締める様にオーブを弱らせ、その後で服従を迫ってくるに違いない……」
そして、キラ同様にラクスを利用しようとするだろう。その時、オーブはまだ存在していられるかどうかは、今の時点では分からない事だった。バルトフェルドは深呼吸し、標的に照準を合わせた。
再び前線へ躍り出たキラ。しかし、先程とは違い、今度はエネルギーが十分の状態だ。ビームライフルを使えるし、局地的にバラエーナやクスィフィアスを使うことも出来る。
今のフリーダムは、短いビームサーベルでセコセコしていた先程までとは違う。
「アークエンジェルは…居た!」
ザフトの降下部隊を確認したアークエンジェルは、急いでローエングリンの冷却をしている最中だった。大量に降ってきたザクの大軍を見て、大西洋連邦側も焦りだしたのだ。
『おい、足付を落とすつもりか?』
その時、先程の全周波男が話し掛けてきた。
「アークエンジェルを落とせば、敵はもうローエングリンを使えません。なら、僕は――!」
『落ち着けって。どうせなら、あれをかっぱらっちまわねぇか?』
「え!?」
『考えても見ろよ、そうすりゃまた敵が攻めてきた時にこちらの切り札になるじゃねぇか。それに、足付を威嚇にも使える。敵だってそう簡単に攻めてこようって思えなくなるはずだぜ?』
「そ、そうか――」
ハイネの言うとおりだ。アークエンジェルを鹵獲してこちらの戦力に加えれば、2門の陽電子砲を備えるアークエンジェルは対外的に脅威になる。
そうなれば、今回のように安易に攻め込まれるようなことはなくなるはずだ。戦力の乏しいオーブにとっては、これ程使えるものは無い。これは行けるか。
「分かりました」
『なら、決まりだな? ローエングリンが撃たれる前にけりをつけるぞ』
「僕が囮になります。その間にアークエンジェルを!」
『おいおい、いくらフリーダムでも、そんな状態で大丈夫か?』
「僕はまだ、死ねないんです。だから、大丈夫なんです」
『理由になってないぞ』
キラは頭に響いていた声が言っていた事を思い出していた。気が付いたら聞こえなくなっていたが、苦戦している間は何度も励ましてもらった。あそこまで粘れたのは、もしかしたらあの声のお陰なのかもしれない。
「そちらこそ、大丈夫ですか? アークエンジェルの弾幕はかなりきついですけど――」
『俺を誰だと思っている? グフがザクとは違うって所を見せてやるよ!』
ハイネはそう言うと、グフをアークエンジェルに向かって突撃させる。オレンジショルダーが、オーブの青い空と海を切り裂くように飛翔する。
「ちょ、ちょっと! 先に行ったら、僕が囮になるって言った意味が無いじゃないですか!」
ただし、これではグフの方が先に標的にされてしまう。勇み足ハイネ、自ら墓穴を掘った。キラは、そんな奔放なハイネの行動に調子を狂わされた。
ただ、息が詰まるような攻防戦に疲れていたキラにとっては、そんなハイネの奔放さは丁度いい清涼剤になった。
アークエンジェルが存在している限り、予断を許さない状況に違いは無いが、気持ちを切り替える意味ではいいきっかけになったのかもしれない。キラの表情から焦りの色が消えた。
『フリーダム、援護を頼むぜ!』
「そ、そんな事言ったって――」
無茶苦茶言う人だと思った。勝手に突撃して自分に援護を頼むなど、並の神経では出来ない芸当だ。彼は果たして自分の言う事を聞いていたのだろうか。
しかし、今の自分になら出来る。エネルギーは十分あるし、調子も戻ってきた。アークエンジェルとグフを避けて敵を撃墜する自信がある。
「レールガンは迂闊に使えないな…なら、ライフルだけで!」
フリーダムにビームライフルを構えさせ、グフを追い越してアークエンジェルに突撃する。思ったとおり弾幕を張ってきたが、キーボードを引っ張り出してフリーダムの機動性を細かく調整しなおす。
「新たな損傷部位は左肩と羽…推力を機体のバランスに合わせて――!」
フリーダムの急襲に慌てるアークエンジェルの守備MS。それに向かってキラはビームを連射する。エネルギー効率の問題上、一撃で決めるのが理想的だ。
「ターゲット・ロック! 前みたいに行かないけど――!」
フリーダムのビームライフルから放たれるビームは確実に敵MSを捉え、撃たれたMSは踊るようにもんどりを打ちながら海に落下していく。
それを見つめるハイネは口元に笑みを浮かべていた。
「よくもまぁ…流石はフリーダムといった所か。なら、俺も約束は果たさなくちゃな」
ハイネはフリーダムの獅子奮迅の動きを眺めて感嘆する。その動きは、文字通り一騎当千だ。
「こんな弾幕ぐらい、潜り抜けて見せるぜ!」
ハイネは四連突撃銃で弾を撒き散らしながらグフにブーストを掛ける。途中で襲い来るMSをスレイヤー・ウィップで薙ぎ払いながら、アークエンジェルへと進路をとった。
そして、アークエンジェルのブリッジでは突如現れたフリーダムと、接近してくるグフの機影に焦っていた。アークエンジェルは、大西洋連邦軍の攻撃の要として重要な艦である。ここで攻め落とされるわけには行かない。
「ローエングリンの発射はまだか!?」
苛立つ声で艦長が怒鳴る。
「チャージ、今開始した所です!」
「何だと!? …それでは遅い――うおっ!?」
アークエンジェル艦長がアームレストに拳を叩きつけた所で、グフがブリッジの正面に現れた。ゆっくりとソードを引き抜き、それをブリッジに向けて突きつける。
「チェックメイト…いや、オーブ流に言えば王手か?」
どうでもいい事を呟くハイネ。しかし、ここまで接近すれば、もう勝負は決まったようなものだ。今、ハイネはアークエンジェルを追い詰めたと同時に敵に対して盾にしているのだ。
この状態なら、敵も迂闊にグフに攻撃を仕掛けるような真似はしないだろう。これで落ち着いて話をすることが出来る。
「アークエンジェル、聞こえるか? こちら、ザフト特務隊フェイス、ハイネ=ヴェステンフルスだ。貴艦の命運は今、こちらが握っている。このままブリッジを潰されたくなければ、こちらの指示に従え」
ハイネは全周波でアークエンジェルに呼びかける。こうして戦場全体に聞こえるようにしておけば、アークエンジェルを捕捉した事が皆に伝わるだろう。
その上で交渉が上手く行けば、この戦闘を一気に終わらせる事が出来る。
『…こちら、アークエンジェルだ。貴官の条件とは何だ?』
こちらの思惑に乗ってきた。このまま不意打ちで攻撃を仕掛けてくるようならば、容赦無しにアークエンジェルを潰すつもりでいたが、話し合いに応じる気があるということは、相手も冷静に今の状況を認識しているという事だろう。
これなら上手く行くかもしれない。
「アークエンジェルに搭乗している全人員を退艦させろ」
『これを…そちらに引き渡せというのか!?』
「そうだ。その際、脱出艇の安全はこの俺が保障する」
『我々を根絶やしにするための嘘じゃないのか!』
何とも物騒な事を言ってきた。若干雲行きが怪しい展開だ。ハイネとしては、アークエンジェルを即戦力としてオーブに加えるために、出来れば無傷で奪取したい所だ。
「何を言っている? こっちだって、出来るなら無駄な血を流したくは無いんだ。信用してくれ」
なるべく穏便にと思い、柔らかい言葉を投げ掛ける。しかし、それが逆効果だった。通信回線の向こう側から、怒りで震える声が聞こえてきた。
『信用しろだと? ユニウスを落としておきながら…なんと破廉恥な! お前達コーディネイターのせいで多くの同胞が死んだのだぞ! この艦のクルーだって…私の家族だってそうだ!』
「なっ――!?」
『我々を苦しめておいて無駄な血を流したくないなどと、よくもそんな事を言える! 構わん、目の前の敵機を沈めろ!』
「ちょ、ちょっと待て! ユニウスの落下は――!」
釈明する暇も無く、アークエンジェルからCIWSの弾幕が張られる。こんな至近距離では流石にハイネと言えども如何ともし難く、折角接近できたアークエンジェルから離れざるを得なかった。
「くそっ! どうだってんだアイツら? 俺達がユニウスを落としたって本気で思っていやがる!」
ユニウス・セブンが旧ザラ派の残党が引き起こしたテロだったという事は知っているし、実際にプラント国内ではテロリストの仕業であったというデュランダルの発表が主に信じられていた。
しかし、連合側は違ったのだ。ブルーコスモスの煽動で、ユニウス・セブンの落下がコーディネイターの仕業であると吹聴され、それが地球側の主張となっていた。
地球と宇宙で世界が分かたれている現状で、ナチュラルとコーディネイターに温度差があるのをハイネは考慮していなかった。その温度差があったからこそ、戦争が起こってしまったのだ。
『どうしたんですか、ハイネさん!』
キラからの通信回線が入る。フリーダムは、まだ敵MSを相手に善戦してくれている。しかし、それでもこれ以上待たせるわけにも行かないだろう。
何よりも、アークエンジェルはローエングリンの発射態勢に入ってしまっている。
「やるしか…ないのか?」
ハイネとしても、これ以上オーブが無駄な血を流すのは避けたい。もし、3発目のローエングリンが発射されるなら、今度の標的はオーブ本土だろう。
陽電子砲の一撃を喰らえば、オーブは壊滅的な被害を被る事になる。それは、絶対に避けねばならぬ事だ。
アークエンジェルの上空にグフを位置取り、ハイネはブリッジを見据える。無傷での奪取は諦めるしかない。
「ブルーコスモスの口八丁に踊らされやがって…そんなんだから、ナチュラルは馬鹿なんだよ!」
ハイネは悔しい。アークエンジェルを無傷で奪取できなかった事よりも、彼等を説得できなかった事よりも、ブルーコスモスの虚言が彼等を間違わせていた事が最も悔しかった。
『貴様等コーディネイターが生まれてこなければ我々は――うぉああぁぁぁ!』
「くっ――!」
ハイネのグフが放った四連突撃銃がブリッジを破壊した。そんな中で、ハイネは彼等の最後の言葉を聞く。それは、コーディネイターに対する恨み節だった。
フリーダムが囮として敵MSと交戦を続けていると、にわかにアークエンジェルから爆発が起こった。それにキラが振り向き、ハイネの交渉が失敗に終わった事を悟る。
「アークエンジェルが――!」
ブリッジから黒煙を上げるアークエンジェルの浮力が、徐々に失われていく。ブリッジを失った事により、アークエンジェルの指揮系統が失われたからだ。
カタパルトハッチが開き、慌てたように脱出艇が発進する。残ったクルー達も、アークエンジェルがもう戦えない事を悟ったのだ。
二年前に不沈艦と謳われ、恐怖の対象だった大天使がついに堕ちる。それを確認した大西洋連邦軍は、攻撃の要がやられたことにより退却を開始した。今回も、何とか撃退する事に成功したようだ。
『済まない、足付を無傷で奪取する事が出来なかった』
「何かあったんですか?」
引き揚げて行く大西洋連邦軍の後姿を眺めていると、ハイネが話し掛けてきた。その声は暗い。
『お前、コーディネイターだよな?』
「いきなり何を言っているんですか?」
怪訝に思った。
『…奴等、ユニウスを落としたのが俺達だって、本気で信じてやがったんだ。ブルーコスモスに踊らされてるって知らずに――』
「そう…だったんですか……」
ナチュラルとコーディネイターの軋轢を改めて思い知る。自分の命が危険に晒されていても復讐を選んだという事は、それだけコーディネイターに対する怨念が強かったという事だ。それは、とても悲しい事だと思う。
不意に、シェルターで聞いた声の事を思い出した。その声は、もしかしたらこの事を言っていたのかもしれない。
(これ以上悲しみを増やさない為に僕に出来る事を――か)
エマがかつて言っていた。彼はユニウス・セブンに眠る悲鳴を聞いていたのではないかと。そして、彼がそういう神経を持った人物であり、今は疲れているとも言っていた。
彼は今は動けない。それが運命だとすれば、彼はキラに動けない自分の代わりに出来る事を託したのではないか。そう思い、ボロボロのフリーダムをオーブへと向ける。
オレンジと白のMSが海上を飛行する。しかし、その姿は何処か寂しげだった。
今回の投下は以上です。
最近、初めてイボルブ9観たんだけど、敵のMAと3機のZにもの凄い違和感を感じました。
こんなSS書いてて言えた義理じゃないんですけど……
リアルタイムktkr
カミーユ氏乙&GJです
カミーユ氏、GJです!
キラとハイネのj活躍よりもレコアさんがいた事が驚きw
レコアさんがジャーナリストって似合ってますね
行動力もあるし修羅場くぐってきたし、ある意味天職?
次回も楽しみにしております!
>>370 カミーユ氏GJ!!
イボルブ9ってよく覚えてないけどアムロがでるやつ?
ナディアに出てきそうな目玉模様(?)たくさんある奇想天外なMAでてきたよね
設定では確かゲミヌスっていうサイコガンダムを
参考にティターンズが開発した試作型MAで
強力ではあったが多くの乗組員、しかも強化人間やNTを複数必要としたので
長期的な使い勝手はあまりよろしくなかったとも・・・
GJです
イボルブ9はあくまで正史ではなく
もしアムロがZに乗ったらというお遊び企画らしいすよ
あとレッドZのサイコニュートライザーはカミーユが起したバイオセンサーの現象を
科学的に分析して意図的に制御するために開発された新型サイコミュらしいです
サイコフレームもびっくりな性能ですけどw
最近のファクトファイルは映像作品のネタが尽きてイボルブやらゲームやらの解説が目立つな。
公式扱いでも非映像作品のネタは絶対に使わない編集方針のおかげで資料としての価値が完全に破綻している……
377 :
提案:2007/07/14(土) 21:57:55 ID:???
唐突ですが、『ZZはZの延長』とみなしてこのスレでZZキャラも登場させる、などということもできませんか?
設定上、ZZはZのすぐ後の時系列ということになっているので、出してしまってもさほど違和感は感じないと思うのですが・・・・・・。
なにか脳内に投影された、プルにジャンボパフェを奢らされるシンの姿が・・・・・・。
ZZのif系スレはまだないしな……
いや、かつてはあったんだけどな。
ハマーンが来てるやつが。
>>377 別にかまわないと思いますよ
自分もシンがプルにジャンボパフェ奢らされるシーン読んでみたいですね
GJ!
ユニウス落としがプラントの仕業だと思い込むAAクルーの想いも
それをナチュラル故の愚かさと言うしかなかったハイネの想いも悲しいな……
>>377 流石にZZ単体にしか出てないキャラだけで出すのはどうかと。
カミーユ、クワトロあたりと絡ませて出すならいいんじゃね。
その場合もZキャラか種キャラメインにしたほうがいいとは思うけど。
短時間に似たようなレスが続くと自演って思われるわよぉ?
まぁ、どうでもいいけど。
さすがに377には空気読んで欲しいとは思う
スレ違いをたしなめてるだけだし
自演ってほどでもないよなあ。
ZZをやりたいなら該当スレを立ててやればいいだけ
延々保守が続いてたならともかく、職人さんの投下直後にこんなこと聞いたら叩かれて当然だw
GJ!お疲れさまでした。
レコアが出てきてビックリした…w(゚o゚)w
お禿様も劇場版に出すか悩んだ難しいキャラをどう扱うのか楽しみです。
イボルブは、シンの扱いに涙した…
>>376 ファクトファイルは完全に同人資料と認定されてるからな
間違いやオレ解説だらけやwikiの誤字まで丸写しとか
資料としては酷すぎる
今は動けない♪
それが運命だから♪
諦めはしな〜い♪
もう目覚めたか〜ら♪
悪魔怪獣なんでも来〜い♪
電撃集中ぴちぴちドカ〜ン♪
歌がつながらねーよw
エマとレコアのデュオで、この曲「デリケートに好きして」 どうぞ♪♪
ほ
に
う
402 :
通常の名無しさんの3倍:2007/07/21(土) 11:48:16 ID:E0qkE+JZ
けど、ZZってハイメガ内蔵だよな。
戦闘が一瞬で終わりそうだ。
『急襲、ファントム・ペイン』
大西洋連邦軍との戦いは、オーブ軍に甚大な被害をもたらした。ザフトの援軍がやって来たとはいえ、オーブの現有戦力は当初の40%にまで落ち込んでいた。
これでは、次に大西洋連邦軍が今回同様の戦力を送り込んでくれば、ひとたまりも無いだろう。ザクでは、沿岸部で迎え撃つ事しか出来ない。
「演出家だな、デュランダルは」
オーブ、セイラン邸で、ウナトはユウナと二人でオーブの報道番組を観賞していた。どこのチャンネルでも、オーブの窮地にやって来たザフトを歓迎する内容だった。
オーブ軍の体たらくを見かねたマスコミが、プラントとの友好関係をアピールしているという事だろう。
「ザフトがあのタイミングで現れたのは彼の策略だったと?」
ユウナが訊ねる。
「そうだ。オーブを窮地に立たせたのは、ザフトの恩恵を我々に知らしめるのと同時に、オーブを弱体化させる意味があった。デュランダルは徐々にオーブをプラント化させるつもりなのだろう」
「父上はそれでよろしいのですか?」
「良いわけが無い。しかし――」
「手の内はなるべく見せないで置きたい――知れば、カガリが黙っちゃ居ないですからね」
「そうだ」
ウナトは腰掛けていたソファから立ち上がり、窓の側に立ってオーブの街を見下ろした。自分達がロゴスと通じていると知れば、いくらカガリでも自分たちを疑ってくるだろう。
彼等はオーブを守る手段としてロゴスとのパイプを繋げているが、理想家のカガリにそれは通用しない。そうとなれば、ユウナとの婚約も破談にされかねない。
今回も、いざとなればそのパイプを使って大西洋連邦軍を退却させる事も出来ただろうが、その前にデュランダルの手配した軍がやって来た。ロゴスには、ブルー・コスモス盟主のジブリールが関与している。
そのパイプは、大事にしたいものだ。
「上手く付き合っていかなければな。どんな所とも……」
「そして、最後に立っているのはこのオーブ…ということですね?」
本心を声に出され、ウナトは笑った。
「デュランダルのような道楽者にくれてやるには、このオーブは美しすぎる。奴には、餌でも与えておけばいい」
「その為のキラ=ヤマト…そしてラクス=クラインですか」
「デュランダルが欲しがっているのはあの二人だ。必死に信頼を集めておるよ」
「では――」
ウナトにとって、キラやラクスの存在など目障り以外の何物でもない。彼等のお陰でオーブが脅威に晒されるのなら、排除した方がマシだとも考えている。しかし、それはカガリが決して許しはしないだろう。
彼等と親交の深い間柄ゆえに、カガリは二人に特別な情を挟んでいる。別荘を貸与したのも、その情が絡んでいたからなのだろう。普通なら、あんな屋敷を無償で貸し出す事などしないはずだ。
現状、セイランにとってカガリは目の上のたんこぶ以外の何物でもない。だからこそ、ウナトは息子のユウナとカガリに婚約を結ばせている。ただし、カガリの方は今のところ全く乗り気でないのが問題ではあるが。
「僕らもデュランダルの手法を参考にするべきですかね? どうも、僕はカガリに嫌われているようなので」
「恋敵は不在。やるなら、今のうちかも知れんな。…だがユウナ、お前にそんな甲斐性があるのか?」
「あの子が髪を伸ばしてくれたのなら、本気にもなれましょう。今は真剣に口説く気になれませんね」
ユウナの女性の好みは髪の長い女性だ。今のカガリはちょうどショートカット。その顔つきからややボーイッシュな印象が強い。ユウナの好みからは外れている。
しかし、政略結婚を成立させ、セイラン家がオーブの実権を握るにはそれしか方法が残されていない。ここは少しずつカガリに髪を伸ばさせるよう仕向けるのが確実な方法か。我ながら甘い事を考える、とウナトは笑った。
「情けない息子よ。女の趣味でオーブの行く末を決めるつもりか?」
「とんでもない。ただ、僕にだって伴侶を選ぶ権利があります。今のカガリじゃ、僕は喜べませんよ」
「お前は気に入っていると思っておったのだがな」
「見せかけですよ。あの子は僕のお嫁さんにはまだまだです。そうですね…もっと女性らしい――」
「よい」
ユウナが女性の趣味を語るとき、ウナトはいつも逃げ出していた。彼のこの手の話は長くなるからだ。
ウナトは葉巻を一本取り出し、火を点けた。煙を纏い、目を細める。青い空と海が、美しかった。
ファントム・ペインの指揮官、仮面の男ネオ=ロアノークは新設の基地に向かっていた。まだザフトにも知られていないその基地は、カーペンタリア基地の目と鼻の先にある。
「新たに私の部隊に配属になったというのは君たちか?」
目の前に現れたのは金髪のリーゼントの男と、大分髪が後退した黒髪の男。リーゼントの方は細面で端正な顔立ちをしていて、黒髪の方はいかにも無骨そうな四角い顔をしていた。
ただ、二人とも体つきはかなりいい。それだけで、彼等が優秀な兵士であると分かる。
「連合軍特別派遣兵のジェリド=メサ中尉」
「同じく、カクリコン=カクーラー中尉。貴官が司令官か?」
「ネオ=ロアノーク大佐だ。ファントム・ペインの指揮を任されている」
三人はお互いに自己紹介を交わす。ジェリドとカクリコンは口には出さなかったが、彼等もエマ達同様異端者だ。
フランクに語りかけてくるのは、彼らの自信の表れか。普通なら上官に対する態度の修正として懲罰の対象になるだろうが、ネオはそんな事をするつもりがないし、そういう性格でもない。
だから、パイロットとして優秀であるならば、態度に特に文句はない。
「ほぉ…スローター・ダガーか。いいものを持ってきたな」
ネオが視線を二人の後ろにあるMSに移す。黒系統で塗装されたそのMSは、高級量産型MSであるストライク・ダガーのバリエーション機だ。
本家と同様に、かつてのGAT-X105ストライクの様にパックの交換で戦況に応じる事が出来る。
「何機か選ばせて貰ったんだが、これが気に入ってね」
「特に色がな」
ジェリドとカクリコンは振り返り、満足そうにスローター・ダガーを見上げる。彼等にとって、スローター・ダガーの専用色である黒のカラーリングは、かつてのティターンズ・カラーを髣髴とさせたのだろう。
そのジム・クウエルに似たプロポーションも、気に入っている点の一つだった。
「こいつにはストライカーパックの換装が出来るって思っていたんだが――」
「MSは汎用性が命だ。砲撃戦は他の機体に任せりゃいいし、接近戦主体のソードなんかおまけ以外の何物でもない」
「そりゃあそうだが……」
「だから、俺達はエールだけで十分だ。心配しなくても、大佐にはいい思いをさせてやりますよ」
からかうように言うジェリド。それだけ自分の実力に自信があるということか。ネオはそれを受けて苦笑いする。ただ、このような頼もしい味方が増えるのであれば、あの3人に無理をさせずに済むかもしれない。
「頼むぜ? これからザフトの新型戦艦を叩かなきゃならないんだからな」
「カーペンタリアから出るミネルバとか言う新造艦か。インド洋を渡ろうってんで、それをこちらから急襲して出鼻を挫こうってんだろ?」
「手強いぞ。相手は何と言っても陽電子砲を積んでいる。それに、MSも新型が配備されるって話だ。一筋縄で行く相手ではないな」
「臆病風に吹かされるのは御免だな。それなら、俺達は俺達で勝手にやらせてもらうぜ」
「それは勘弁してもらおうか。私も、一応責任者の立場にあるからな」
ジェリドの発言に、ネオは釘を刺した。いかに彼等が実力者であろうとも、こちらの命令を無視されたのではたまったものではない。
「中間管理職は、胃に穴でもあけていればいい。だが、その分に見合った働きは、してやるよ。なぁ?」
カクリコンが笑いながら言う。冗談だとは思いたいが、あの顔で言われたら冗談に聞こえない。ネオは何も言わず、口元の引きつった笑みで返すしかない。
「では、私は失礼する。ガルナハンのローエングリン・ゲートの様子を知っておきたいのでな」
「ゲリラ共なぞ、苦戦する程の相手でもなかろう?」
「これも責任者の仕事でね」
そう言ってネオは去って行った。口では軽く言っていたが、その後ろ姿に中間管理職としての哀愁が漂っていないとは言いきれない。色々と大変なのだろう。
「…マウアーとライラはガルナハン行きだったな」
ネオが去り、ジェリドはふと漏らす。二人の女性の事を思っていた。
「また女か?」
「いけないかよ?」
「いいや」
カクリコンは首を横に振る。
「だが、お前がどちらを選ぶのかと思ってな」
「からかうなよ。俺はもう一度生きる、このチャンスをモノにしたいだけだ」
「そりゃあそうだ」
二人で笑い合う。こうしてまた出会えたのも、何かの縁なのだろう。
サイド1での攻防戦で戦死したライラ、エゥーゴのジャブロー降下阻止作戦の折に大気圏で燃え尽きたカクリコン、ジェリドを庇って宇宙に散ったマウアー、そして最後まで復讐を果たせなかったジェリド。
その面々が、再び出会ったのだ。これは奇跡と呼ぶべきものだろう。ジェリドは、その奇跡を大事にしたかった。
「シロッコは月だったな」
「地球の重力が気に喰わないんだとさ。全く、これだから木星帰りは――」
地球育ちのジェリドにしてみれば、シロッコの感覚が理解できない。地球は生命を育んだ母なる星だ。その地球の重力を嫌うのは長い間地球を離れていたからだろうが、そこに郷愁の念を感じないのだろうか。
宇宙空間に比べ、ずっしりと感じる地球の重力を心地よく感じられないのは、シロッコが既に宇宙人である証拠か。
「ん…?」
「へへへ…」
ジェリドはふと気付いた。いつの間にか、直ぐ側のコンテナの上に3人の少年少女が座っていたのだ。その中の青髪の少年が、こちらを見てにやけている。その顔が気に触った。ジェリドは顔をそちらに向ける。
「何だ、貴様等は?」
見た目どおり生意気そうなガキだ。派手な髪の色は、教育がなっていない証拠だろう。
「おっさん達だろ? 今度俺達の部隊に配属になったってのは」
「おっさん…」
ジェリドは24歳である。まだおっさん呼ばわりされる年齢でもない。
「俺達は、おっさん達の先輩さ」
「貴様のようなガキがMSのパイロットをするのか?」
「おっさん達よりもいい働きをするぜ」
「このガキ――!」
「待て、ジェリド」
激情家のジェリドには、この少年の言い方が気に喰わない。加えてティターンズのエリートであったというプライドが、彼をいきり立たせた。しかし、そんなジェリドをカクリコンが止める。
「そうそう。そっちのデコッぱちのおっさんの言うとおり、やめて置いた方がいいぜ。俺達、強ぇからな」
「言わせておけば!」
「だから、やめて置けといっている、ジェリド」
「何故だ、カクリコン! こういう生意気なガキには――!」
「こんな乳臭いガキにムキになるな。こいつ等から見れば、俺達は確かにおっさんだろうよ」
そう言いながらカクリコンは笑う。直ぐに冷静さを失うジェリドに比べ、カクリコンの方は冷静だった。
「笑っている場合か! 舐められているんだぞ!」
「こっちは、やってもいいんだぜ? その代わり、どうなってもしらねーけどな」
逸るジェリドを制止しているカクリコンを尻目に、青髪の少年は更に挑発をしてくる。対するジェリドの苛立ちは募るばかりだ。
「こんな娑婆ガキの言う事に一々構うな。どうせ、そいつらは大した事無い」
「言ってくれるじゃねーか、デコッぱちのおっさん。何なら、試してみてもいいんだぜ?」
「止せ、アウル」
身を乗り出し、カクリコンに対して詰め寄ろうとするアウルを、緑髪の少年が制止する。見た感じでは、彼がリーダーなのだろう。3人の中では一番の年長に見える。
「止めんなよスティング。こいつらに、俺達の実力って奴を見せてやろうぜ。…おい、ステラもボーっとしてんな!」
アウルは先程から遠くを見つめて呆けている金髪の少女に向かって怒鳴る。しかし、ステラと呼ばれた少女は横目でアウルを見やると呟いた。
「…アウル、うるさい」
「何だと!?」
アウルの怒りの矛先がステラに向かう。
「だから、止めろって言ってんだろうが! こんな所で喧嘩したって何にもなんねーだろ!」
しかし、それを良しとしないスティングがすかさず止めに入る。それを尻目に、ジェリドとカクリコンは去ろうとした。こんな子供の喧嘩には付き合っていられない。
「ちょっと待てよおっさん! 逃げるのか?」
アウルがそれに気付き、カクリコンに向かって怒鳴る。しかし単純な挑発だけあり、カクリコンは意に介していない様子だ。溜息をつき、振り返った。
「相手にしないと言っている。ガキはとっとと帰ってママのおっぱいでも飲んで寝てな」
「――っ!」
カクリコンが何気なく言った言葉を聞いたアウルは、急に表情を一変させた。顔色が青ざめ、体を震わせる。
彼等は3人とも身体を強化されたエクステンデッドだ。特殊な訓練と投薬により、ナチュラルでありながらコーディネイターに匹敵する能力を備えている。
しかし、その代償に彼等には"ブロックワード"という一種のタブーが其々用意されていた。その言葉を聞くと、今のアウルの様に苦しむ事になってしまう。
「か…母さん――! あ…あぁ……!」
「ア、アウル!」
アウルのブロックワードは"母親"だった。カクリコンの"ママ"という言葉に反応してしまったのだ。
アウルの急変に慌ててスティングが体を支える。その様子に気付き、ジェリドとカクリコンは疑問の色を浮かべた。
「どうしたってんだ?」
「さあな」
アウルは両手で肩を抱き、跪いて苦しんでいる。並みの苦しみようではないのは見れば分かった。ジェリドはその苦しみ方に、過去を思い出す。
「この感じ…強化人間か?」
「強化人間? ここにもあるというのか、ジェリド?」
「あの苦しがり様は、強化人間のものだ。前にキリマンジャロでカミーユと一緒に居た強化人間の女を見たことがある」
かつて、キリマンジャロ基地で療養をしていた頃、ジェリドは潜入してきたカミーユが強化人間の女をつれている現場に遭遇した事がある。その時感じたのは、彼女の精神が異常であった事だ。
目の前のアウルは、ちょうどその時の強化人間とダブる。
「ふん、随分とでかい口を利くからどんなものかと思ったが、まともに話も出来ないポンコツとはな」
吐き捨てる様に言うジェリド。これでは先が思いやられる。
「気にするなジェリド。どうせ、ガキに何も期待しちゃ居ない。俺達は俺達でミネルバを落とせばいい」
「そうだな」
未だに苦しむアウルを気にも留めずに、ジェリドとカクリコンはその場を後にする。
強化人間は基本的に不安定で、肝心な場面で頼りにならないのが慣例だ。それはかつてティターンズに在籍していた頃から報告で聞いていたことだ。
だとすれば、頼りになるのは自分達の腕だけだろう。確かに強化人間は強大な力を有してはいるが、反面とても脆い部分がある。それが事もあろうに日常会話で噴出してしまうようでは、話にならない。
普通の人間が常識の範疇を超越した力を有するには、こういった代償を伴わなければならないと言う事だろう。
ティターンズは力――そう言った自分の言葉を噛み締め、ジェリドはああはなるまいと心に決めていた。
カーペンタリア基地で指令を授受し、ミネルバはスエズ支援のために発進する。地球上は連合軍の支配地域が殆どだ。
そこで、東ユーラシアにおける連合の勢力をスエズのマハムール基地で牽制し、彼らが築こうとしている橋頭堡を崩そうと言うのが今回の任務の内容だ。
加えて、ガルナハンにある火力プラントを奪取し、エネルギー確保をして地球上でのザフトの活動をしやすくするという目的も兼ねている。
しかし、ガルナハンにある火力プラントへの道程には峡谷があり、連合軍がそこにローエングリンを配置しているという話だ。
現地の連合軍に対するレジスタンスと共に何度か攻撃を仕掛けたらしいが、ローエングリンが邪魔で失敗続きらしい。そこで、様々な新型兵器を積んでいるミネルバの出番というわけだった。
カーペンタリア基地を発ったミネルバはインド洋を行く。エマは甲板に出て、潮風に髪を弄ばれながら新鮮な空気を満喫していた。目の前に一面に広がるのは、青い水の絨毯と綿飴のような白い雲。
「エマさん」
柵に体を預け、首を伸ばして潮風の匂いを堪能していると、背後から声が掛った。
「ルナマリア。どうしたの?」
振り向いた先に立っていたのは、一人の少女。気の強そうな顔立ちに、少女とは思えない抜群のプロポーション。だが、大人と呼ぶにはまだかわいらしいあどけなさの残る印象を受ける。
そして、最大の特徴は赤髪のショートカットから生えている一本の角。最初に彼女と対面した時、カツがそれを見て"シャア専用ですよ"とか訳の分からない事を言っていたのを覚えている。
「オーブ、無事だったみたいでよかったですね」
ルナマリアは笑顔で言う。オーブが再び大西洋連邦軍の攻撃に遭ったと聞き、エマが気を落としていたのを彼女は見ていたのだ。
エマがオーブ襲撃の報を聞き、何とか撃退したと聞いたのはつい先程だ。本当はバルトフェルド達を助ける為に飛び出して行きたい所だったが、ザフトの救援が間に合ったらしく安堵していた。
ただ、その件でカツとシンが何やら揉めたと聞いたが。
「ありがとう、ルナマリア」
「いえ。エマさんって、オーブに住む前は砂漠の虎の部隊にいらっしゃったんですよね?」
「えぇ、そうよ」
「どうでした? あたし、オーブ海戦の時に少し会ったんですけど、どんな人なのか良く知らないんです」
「え? ど、どうしてアンディの事を知りたいの?」
聞かれてエマはギクッとした。バルトフェルドの元部下というのは勿論嘘で、本当は彼の過去の事など文献で読んだ程度の知識しかなかったのだ。
そして、ルナマリアがザフトの士官であるならば、自分の知っているバルトフェルドの知識などよりももっと多くの情報を知っているだろう。
「えっ…と――ほら、あの人渋いじゃないですか! だから、お近付きになる為に少しでも何か知れればなぁ…と思って……」
対するルナマリアの興味はバルトフェルドには無かった。彼女が本当に知りたいのは、エマの人となりだ。
ナチュラルで、しかも女性という立場でありながらコーディネイターに混ざって戦っていたというエマの人物像を知りたかった。同じ女性としてエマに興味を持ったのだ。
それは、深い意味では彼女を尊敬しているという事なのかもしれない。
「そんな事…カツに聞けばいいじゃない。カツなら、教えてくれるわよ」
「えぇ〜…?」
当然ルナマリアは肩を落とす。彼女が知りたいのはエマの事である。だから、カツの所にではなく、エマの居る甲板にやってきたのだ。
「そんな事言わないで教えてくださいよぉ。あたし、砂漠の虎と居た頃の事をエマさんの口から聞きたいんです!」
「そ、そう言われても…ほら、彼にだって知られたくない過去とかあるかもしれないでしょ? あなただって、昔の事とかで知られたくない事とか、あるのではなくて?」
「そ、そうですけど! でも――!」
ルナマリアが言いかけたその時、ミネルバの警報が鳴った。艦内アナウンスでメイリンがコンディション・レッドを告げる。敵襲だ。
「敵襲!? こんな所で――!」
「話はまた今度ね。出撃準備に取り掛かるわよ!」
言うが早いか、エマは即座に駆け出して甲板を出て行った。
「あ――! ちょっと、エマさん待って下さい!」
遅れてルナマリアが駆け出し、エマの後を追って行った。
一方ブリッジでは、敵襲に備えて次々とブリッジ・クルーが入ってくる。それぞれが持ち場に就き、最後にタリアが艦長席に腰を据えた。
「索敵、敵の規模は?」
「11時の方向からウインダムおよそ20機。それに、別方向から奪取された3機も来ています」
「ミネルバ一隻に大した力の入れようね。…敵艦の数は?」
「それが、まだ見つからなくて…こちらのレーダーには引っ掛かっていません」
バートの報告を聞き、タリアは考える。こんな辺鄙な場所で、しかもカーペンタリア基地の近くでMSの編成だけで攻めてきたということは、もしかしたら近くに母艦なり連合軍の基地なりがあるのかもしれない。
(そうでなければ辻褄が合わないわね…複数方向からと言う事は、両方があると考えるべきか)
恐らくこちらが情報を得ていない基地なのだろう。密かに存在していたのか新設なのかまでは分からないが、カーペンタリア基地に対抗するために造られた物なのかもしれない。
そして、ミネルバがスエズに向かうと聞き、部隊を派遣してきたか。ならば、ここで敵基地を叩いて後続の憂いを断つのが賢明と判断する。
「メイリン、MS隊の発進準備はどう?」
「順次発進可能です」
「了解。MS隊順次発進後、ミネルバは現空域に固定。レイとルナマリアには水上ウィザード装備でミネルバの援護をさせて。海から出てくるアビスは手強いわよ」
「了解です」
ミネルバのカタパルトハッチが解放され、MSの発進が行われていく。最初に飛び出したのはアスランのセイバーだ。飛び出すのと同時にフェイズシフトを展開させ、全身を真紅に彩る。
『ミネルバから隊長機へ、飛行ユニット各機は敵を撃破しつつ周囲の索敵をしてください。敵の母艦か、連合軍の基地が隠されている可能性があります』
「セイバー了解」
通信でメイリンからの指令を聞き、アスランは各機に通信を繋げる。
「各機へ、飛行可能な機体は二手に分かれて敵母艦、及び連合軍秘密基地を探索する。シンは俺と、エマはカツと共に索敵を行え」
『エマ機了解。カツ、行くわよ』
『はい、エマさん!』
アスランからの命令を受けたエマとカツのムラサメが、MAに変形して陸地へと向かっていく。
『どうして俺が隊長と一緒なんです?』
その直ぐ後でシンが不満を訴えてきた。彼がオーブからの出向者である自分に不満を抱いているのは知っている。彼としては、出戻りの自分がいきなり隊長になったのが許せないのだろう。
その上カガリのボディーガードをしていたのだから、その思いは尚更なのかもしれない。
しかし、今はそんな不満を口にされても困る。
「不満があるのなら後にしろ。これは隊長命令だ、今は従うんだ」
『隊長だからって、編成まで勝手にしていいんですか?』
「何を言っている? 部隊の指揮を執るのは隊長である俺の役目だ。お前は軍人の癖に命令を無視して勝手に戦うつもりか?」
シンはまだお子様だ。自分の実力を過信し、何でも出来ると思っているに違いない。シンの言葉はアスランの耳にはそう聞こえていた。だからこそ、彼の面倒は隊長である自分が見なければならないだろう。
彼が生きるのも死ぬのも、これからの自分の指導次第だ。
『大気圏もまともに突破できなかったくせに』
「…前方に敵小隊だ。掛るぞ」
『…了解』
シンの侮辱を無視し、アスランは前方に迫ってきたウインダムの小隊に注意を促す。シンも不満そうにしていたが、一応命令には従う姿勢を見せているようだ。
と、思った矢先にシンのインパルスが単機で躍り出て勝手にウインダムの小隊に突撃して行ってしまう。これにはアスランも呆れた。
『こんな奴等、俺一人で何とかしてやりますよ。隊長は後ろでのんびり眺めていてください』
「待てシン! 勝手な行動をとってどうする!?」
しかし、そんなアスランの制止も聞かずにインパルスは勝手にウインダムと戦闘を開始してしまう。確かに指令内容には敵機の撃墜も含まれているが、こちらの足並みを乱されたのでは堪ったものではない。
それでもここでインパルスを失うわけにも行かず、セイバーも突撃させるしかない。アスランは一人溜息をつく。
その頃、ジェリド達は待機命令のままJ・Pジョーンズに留まっていた。何故自分達が待機なのか分からないが、その代わりにあの生意気な小僧達が出撃したのが気に喰わない。
同じく専用のウインダムの前で待機しているネオに詰め寄った。
「何であのガキ共が出て俺達が待機命令なんだ! 本当にミネルバを落とす気があるのか!?」
「そういきり立つなよ、ジェリド。複数方向から仕掛けたって事は、相手もここか基地を探しているはずだ。あいつ等には注意を引き付ける役割を与えた」
「それは俺達に任せればいい! あんな欠陥品の強化人間などに頼らずとも、俺達の方が確実にこなせるだろ!」
「あの基地の司令官殿の命令だ。私は従わねばならん。それに、逆にあいつ等に任せていたら、もし発見された時に万が一の事態が起こったら困るだろ?」
あの発作が万が一の事態なのだろうか。適当な会話でですら発症する発作が万が一で済むわけが無い。こんなのは、ネオのいい訳だ。ジェリドはそう思って更にネオを追及しようとした。
「だから俺達がここに残って、タイミングを見て基地の援護をする――そういうことか」
と、その前に発したカクリコンの声にジェリドが顔を振り向かせる。気勢を挫かれた感じだ。
「だが、それじゃあ納得できないんだな。俺達は戦う為にここに来たんだ。留守番をするためじゃない」
「そうだ。留守番など、それこそあのガキ共にやらせておけばいい」
カクリコンの意見にジェリドも同調する。これでは何の為に自分達が派遣されてきたのか分からないからだ。折角新たに戦いの場を与えられたのに、与えられた命令はJ・Pジョーンズでお留守番である。
これでは兵士としてのプライドはズタズタだ。
「まぁ、待てって。奴等は見つけるさ、絶対にな」
「ほぉ…その自信、何処から来るのか知りたいものですな」
「見つけるよ。ミネルバって艦は、この私を追撃してきた艦だからな。今度も、絶対にやってくれる」
ネオが思い出したのは、アーモリー・ワン襲撃からユニウス・セブン落下までの事だ。カオス、ガイア、アビスの3体を強奪し、それを追って来たのは当時進水式を終えたばかりのミネルバだった。
新造艦だけあり、優秀なスタッフを揃えていたに違いないが、それでも自分の指揮するファントム・ペインの錬度とは比べ物にならないほど経験で劣っていただろう。
しかし、それでもしつこく喰らいついて来て、罠を仕掛けてもそれを掻い潜ってきた。更にユニウス・セブンの破砕作業の最中でも、偵察に出したMSの奪回をも目論んでいた。それは、ネオにとっては脅威だった。
それ故、ネオはミネルバを単なる新造艦としては見ておらず、ザフトの主力艦として警戒していた。更にそれに新たな戦力が加わったと聞けば、嫌でも慎重にならざるを得ない。
ジェリドは、そんなネオの表情を横目で見ていた。この男は単に臆病なだけだ。守りの姿勢を取るという事は、相手を殲滅する自信が無い証拠だ。だが、兵士である以上、上官の命令は無視できない。
彼や基地の司令官がその気になるまでは大人しくしているのが賢いだろう。
「分かりましたよ。だが、20分経っても敵が来なかった場合、俺達は勝手に出させてもらいますぜ」
ただし、このまま大人しくしているのも性に合わない。この位の条件なら、大して蟠(わだかま)りも残らないだろうと思った。
「あぁ、それでいい」
ジェリドの言葉に、一言だけ返事をするネオ。確かにこれではミネルバを落とす事は出来ない。この慎重さは自分の弱さなのか、それは分からない。ただ、警戒感だけは持ち続けようと思った。
そうでなければ負けるような気がしたからだ。
シンとアスランはカオスとガイアに遭遇していた。相手はザフトから強奪した3機の新型の内の2機だ。アスランの本心としては、この機会に1機でもいいから奪還しておきたい所だ。
「シン、ガイアに目標を絞るぞ」
『まとめて捕まえちゃえばいいじゃないですか? それなら、2機纏めて相手にした方が――』
「確実に捕えるのが最優先だ。さっきみたいな勝手な行動は慎むんだぞ」
『…了解』(何だ、偉そうに!)
返事はしたが、シンは心の中で悪態をついていた。先程遭遇したウインダムの小隊も、先に仕掛けた自分が殆どやったのだ。その時出遅れたアスランは観戦していただけに等しかった。
自分の実力は見せ付けたはずである。それなのに、どうしてこの男はこんなに偉そうに言えるのだろうか。シンはアスランの神経を疑っていた。
一方のカオスとガイアのパイロット、スティングとステラは目の前に現れた2機のGタイプを確認し、気合が入る。先程、水中を潜行するアウルからミネルバに仕掛け始めたとの連絡が入った。
彼の声を聞く限り、展開は有利に働いているらしい。それなら、こちらも負けるわけには行かない。
「ステラは地上からビームを撃ってりゃいい。飛べないガイアで飛び掛ろうとするなよ?」
『分かった』
「よし、ネオに言われたとおり、派手に行くぜ!」
スティングが気合を入れ、機動兵装ポッドからファイア・フライ誘導ミサイルをばら撒き、次いでビーム砲を連射する。そして地上からはMA形態のガイアが背部のビーム砲で2機を狙い撃つ。
「くぅっ! 弾数が多い!」
シンは舌打ちする。彼等とは何度か剣を交えた事が会ったが、追撃戦であった前回までと違い、本格的に攻めてくるカオスの攻撃に手を焼いていた。
『落ち着くんだ、シン。あんな攻撃の仕方をしていて、いつまでも弾が持つはずが無い。弾切れになった時を狙えばいい』
苛立つシンを意識したのか、アスランが通信回線でシンにアドバイスを送る。しかし、シンにとってアスランのアドバイスは屈辱だった。まだ、自分の方が上だと思っているからだ。
「じゃあ、隊長一人で待っていればいいでしょ! 俺は行きます!」
『ま、待てシン!』
シンはアスランの制止も聞かずに突撃をかける。シールドを構え、ビームライフルを撃ちながら地上のガイアに向かって一目散に向かっていく。
当然ガイアもビームで応戦したが、たった2門のビームでは弾幕にもならずにあっさりとインパルスの接近を許してしまった。
「これでも喰らえ!」
「やらせない!」
インパルスがビームライフルを納め、ビームサーベルを引き抜く。そして、それを大きく振りかぶってガイアに振り下ろした。
しかし、ガイアは即座に横へステップしてかわし、MSに変形して空中にジャンプしながらインパルスに向かってビームライフルを撃った。インパルスはそれをシールドで防ぐとガイアを追って空中へ躍り出る。
「こいつ!」
「負けるもんか!」
再びビームサーベルでガイアに切りかかる。対するガイアは1Gの重力下では飛行能力を持たない。故に、空戦に特化したフォース・インパルスの前では置物に等しい。
必死にビームライフルで応戦するガイアの攻撃をいなしながら、シンは勝利を確信していた。
しかし、その時にMAに変形したカオスからのカリドゥスがインパルスを襲った。シンはそれにギリギリで反応し、シールドで機体をカバーしたが、威力に負けて左腕ごと吹き飛ばされてしまった。
『へっ、油断しやがって! ステラ、今だ!』
「分かった!」
スティングの作った好機。ステラはガイアを再びMAに変形させ、両翼にビーム刃を発生させてインパルスに必殺の突撃を敢行する。インパルスはカオスのカリドゥスで態勢を崩し、尚且つ左腕を失っている。
このタイミングなら、確実に獲れる。
そう思ったのも束の間、今度はインパルスに飛び掛るガイアをプラズマ収束ビームの光が掠めた。それに慄いて、ステラは思わずガイアを後退させてしまう。
「好きにさせるか!」
インパルスを援護したのはアスランのセイバー。シンの突撃で出遅れてしまったが、彼もただ傍観しているわけではない。
「んなろぉ! もう少しで白いのをやれたってのに…紅い新型が!」
スティングはインパルスを仕留められなかった事に苛立ちを募らせた。インパルスは何度か交戦した経験があり、その度に何かしらの痛手を負わされていた。だからこそ、インパルスを仕留め切れなかったのが悔しくて仕方ない。
対するアスランにはそんなスティングの憤激など知る由も無く、続けざまに小脇に抱え込んだ砲身からフォルティスビームを連射してガイアに牽制をかけ、インパルスから引き離した。
「無事か、シン!」
『た、隊長――!』
地面で尻餅をついて倒れているインパルスに駆け寄り、アスランはシンに呼びかける。それを受けるシンは屈辱だと思っていた。ここは強がりを見せて助けてもらった事を無かった事にしたい。
『べ、別に助けてもらわなくたってあのくらい――』
「何とかできると思ったのか、お前は? だが――」
アスランは即座にMA形態のカオスが、こちらに向かってカリドゥスの照準を合わせているのに気付いた。インパルスの腕を引っ張り、飛び上がるセイバー。そしてビームライフルを連射してカオスの機動兵装ポッドに穴を空けた。
「こ、この野郎!」
スティングのカオスが煙を噴いてMSに変形する。そして、そのまま地上に不時着した。それを確認し、セイバーの頭部カメラがインパルスに振り向く。
『貴重な戦力であるお前をここで死なせるわけには行かない。敵が連携で来るのなら、こちらも連携を取らなくてはならないだろう?』
(っていうか、あんた一人で十分なんじゃないのか?)
通信回線越しに爽やかに言ってくるアスランの声を聞いて、シンは心の中でそう突っ込んだ。
エマとカツは、敵軍の出現方向から秘密基地の位置を探っていた。途中の敵を撃破しつつ、内陸部の奥へと向かう。
『敵の秘密基地って、何処なんだ…?』
通信回線からカツの不安げな声が聞こえてきた。もうかなり進んだはずである。とすれば、そろそろ当りがあってもいい頃だが、未だに発見できないのは、タリアの判断が間違っていた可能性も考えなければならない。
エマもそう思い、カツの不安に思う気持ちを理解していた。ミネルバを孤立させてしまっている現状では、タリアの判断をミスと仮定すれば、ミネルバにとって致命傷になりかねない。だからこそ、逆にタリアの判断は信じなければならない。
敵の母艦か秘密基地を見つけ、根城を叩いておかなければ敵の策略に嵌められてしまった事になるのだから。そうでなければ、この戦いは負けである。
「焦らないで、カツ。まだ敵が出てきているって事は、この方向に何かがあるって証拠よ」
『ですが、こうも見つからないと――』
「来たわよ、カツ!」
その時、2機のMSの反応をレーダーが捉えた。まだレーダー有効範囲のギリギリの位置にいるが、相手もこちらの存在に気付いただろう。
「行くわよ!」
『了解です!』
2機のMA形態のムラサメが敵機に向かって加速を始めた。
スローター・ダガーのコックピットの中、ジェリドとカクリコンはJ・Pジョーンズを後にして意気を上げていた。J・Pジョーンズで命令に従って待機し続け、やっと掛った獲物である。これで仕事が出来るというものだ。
先に出て行ってしまったネオを恨みつつも、ジェリドは歓喜に舌なめずりをする。
『久々の実戦だ。抜かるなよ、ジェリド!』
「ふん、誰にモノを言っているんだ。MK-Uを盗まれた貴様じゃないんだ、遅れを取るかよ!」
『そのMK-Uを本部ビルに落としていた貴様がよく言う』
お互いがお互いの恥ずかしい過去を知っている。それはかつてティターンズであった頃のグリーン・ノア・コロニーでの事だ。
ジェリドは訓練飛行中のガンダムMK-Uを本部ビルに墜落させ、カクリコンはカミーユにガンダムMK-Uを奪われた。
カクリコンとしては急なエゥーゴの襲撃に何も出来なかったし、ジェリドに至っては無理な低空飛行が原因だった。
ジェリドは思う。あの頃は若かった。
「だが、もうあんな無様な真似はしないさ。俺達のコンビでコーディネイターとかいう人造人間をのしてやるぜ!」
『向こうもこっちに向かってきている。接触まであと30!』
カクリコンに言われて気付いたが、こんな遠くからでも相手の位置を察知できるというのは驚きである。彼等が戦っていた頃は、ミノフスキー粒子の影響でレーダーや通信の類は殆ど役に立たなかったのだ。
それが、Nジャマーによる多少の影響があるとはいえ、こうしてレーダーを便利に使えているということは、彼等にとっては有利だった。
「ミノフスキー粒子が無いってだけでこんなに戦いやすくなるとはな!」
『俺達にしてみれば、敵が丸腰で向かってくるようなものだ。こりゃ楽勝だな』
「あぁ、行くぞ!」
モニターを映すカメラにも敵の姿が映し出された。相手は2機の戦闘機。まだ有効射程外だが、レーダーに映っていれば彼等には問題なかった。射程外から攻撃を仕掛け、敵の出鼻を挫く、そう考えていた。
「何!?」
しかし、相手の戦闘機の方がこちらよりも先に仕掛けてきた。同じ事を考えていたという事だろうか、ミサイルが白い尾を伸ばしながら向かって来る。
『敵もそれ程馬鹿ではなさそうだ。少しは楽しめそうだな、ジェリド?』
ロックオンはされてないはずだから、その攻撃は簡単に的を外す事が出来た。易々と敵の先制攻撃をかわし、カクリコンが笑っている。ジェリドも同じ気分だった。
「そうでなくちゃ面白くないさ!」
しかし、敵に先制を取られたのは面白くない。ジェリドとカクリコンはレバーグリップを握りなおし、スローター・ダガーに加速を掛けた。
ジェリド達に対するのはエマとカツのムラサメ。先制攻撃を放ったのは、2人もジェリド達と同じくミノフスキー粒子下の戦闘経験があったからだ。
こうしてレーダーで相手の位置が丸見えならば、先手を取ったほうが有利である。
『当らなかった――中尉!』
「敵もこちらが見えているはずだわ。掛るわよ、カツ!」
ヘルメットのバイザーを下ろし、敵機の上空を取る為にムラサメを上昇させる。カツもそれに倣い、エマの後に続いた。
敵機との距離が近付き、相手のMSのフォルムが鮮明になってきた。今までのウインダムとは違う、ダガーのシルエット。しかし、その塗装は黒に彩られている。一目でその2機が普通の相手とは違う特別機だと分かった。
「黒いダガー、まるでティターンズね…カツは私から離れないようになさい! 相手は只者じゃないわ」
『分かりました!』
ビーム攻撃の中を2機でフォーメーションを組んで、当初の目的どおりスローター・ダガーの上空に位置をとる。そこで変形を解き、上からビームライフルのビームを2機に浴びせた。
『ジェリド、散開だ!』
「言われなくたって!」
スローター・ダガーは一旦お互いの位置を離し、ムラサメのビーム攻撃を逃れた所で再び合流した。
『外れた!?』
「もう一度よ、ついて来なさい!」
再びMA形態に変形し、スローター・ダガーの上を取ろうと上昇させる。
「二度もやらせるか!」
しかし、エマの目論見を察知したジェリドはスローター・ダガーにビームサーベルを引き抜かせ、上を取ろうとするムラサメに向かって加速を掛けていく。カクリコンのスローター・ダガーはビームライフル装備のまま、ムラサメに牽制を掛ける。
「こちらの変形MSを相手に、向こうから仕掛けてきた…カツは私から離れて! もう一機の方の頭を取るのよ!」
エマの指示に従い、カツのムラサメがカクリコンのスローター・ダガーの上空へと向かう。向かって来るジェリドのスローター・ダガーは、どうやらエマ機に狙いを定めたようだ。
エマは止む無くムラサメをMS形態に戻し、頭部のバルカン砲で牽制を掛ける。しかし、ジェリドのスローター・ダガーはロックオンを無理やり外す大きな旋回を掛けて、横からエマ機に襲い掛かった。
「くっ――!」
コックピットの中を衝撃が襲う。ジェリドの斬撃は何とかシールドで受け止める事が出来た。しかし、攻撃を仕掛けてきたのが左側からで良かったと思う。もし右側から攻められていたら、シールドでの防御が間に合わなかっただろう。
「このっ――!」
近付いたジェリド機に向けてビームライフルを取り回す。しかし、そこに既にジェリド機の姿は無く、今度は反対方向からのアラームが響いた。エマは慌ててムラサメをMAに変形させてその場から緊急離脱をする。
「ちっ、逃がしたか。…だが、何時までも逃げ切れると思うなよ、人造人間!」
ジェリドは完全に取ったと思って仕掛けた攻撃が外れたことに、それ程落胆していなかった。待機していた時間が長かっただけに、この程度の攻撃であっさり片がついてしまってはつまらないと思っていたからだ。
対するエマは深呼吸をする。一瞬ヒヤッとしたが、直ぐに冷静さを取り戻さねばまた危ない目に遭ってしまうだろう。
「やはり…この敵、普通の相手とは違う!」
黒のカラーリングは伊達では無いと言う事だろう。片割れに向かわせたカツも苦戦しているようだ。向こうは中距離戦をお互いに仕掛けているようだが、追いかけられているのはカツの方だ。
「何とか合流しないと…」
個々で戦っていたのではこの2機相手では分が悪い。相手も合流して手強くなるかもしれないが、確実に不利だと分かっていながら個別に戦うよりは、少しでも互いを補い合うために敢えて集団戦に持ち込んだほうが勝機もあるだろう。
エマがカツを気にしていると、ジェリドが再びビームサーベルで襲ってきた。今度は丁寧にバルカンでこちらの飛び道具を牽制してきている。
「余所見とは舐められたもんだ! …が、貴様の命運もこれまでだな!」
「当るものですか!」
しかし、ジェリドの意図は正直すぎた。いくら先程エマが致命傷を受けそうになったとはいえ、接近戦を仕掛ける気が見え見えの突撃では、流石に当てられない。バルカンをシールドで防ぎ、エマはムラサメを横へ流す。
「掛ったな!」
しかし、ジェリドのスローター・ダガーはシールドで隠すようにビームライフルを所持し、エマからは見えないように右肩を突き出して半身で迫ってきていた。
エマがビームサーベルを避けるのと同時に左腕を突き出し、ムラサメに向かってビームライフルを構える。
「少しはいい腕をしているようだが、これで終わりだ!」
「やられる――!」
咄嗟にエマは危険を察知した。ジェリド機の狙いは完全に自機を捉えている。今からでは方向を変えようにも、敵のビームが自分の機体を貫くほうが先だろう。何とかならないかとレバーを必死に動かした。
「堕ちろ!」
ジェリドのスローター・ダガーのマニピュレーターがビームライフルのトリガーを引く。それと同時に銃口からビームの筋が伸びた。直撃コース。
しかし、そのビームは一瞬だけ動いたエマのムラサメのビームライフルを吹き飛ばしただけに終わった。何とかエマはムラサメを捩(よ)じらせて、致命傷を避けた。
取りあえずビームライフルを失うという失敗を犯してしまったが、何とか機体が無事だっただけでも良かったとしよう。
「これを避けただと? 何だってんだ、こいつは――何!?」
ジェリドが驚愕していると、今度はすかさずエマ機がビームサーベルを片手に迫ってきた。
エマとしては、ビームライフルを失った時点で効果的な射撃武器が残されていない。MA形態で戦おうにも、ジェリドが相手では当てるのが難しいだろう。何より、MA形態では立ち止まって戦う事が出来ない。
それではカツを孤立させる事になってしまう。合流して迎え撃つのが得策であるこの状況では、MA形態での射撃は選択できない。それ故、エマはビームサーベルで接近戦を挑むしかなかった。
受けて立つジェリドとしては、好都合だろう。彼の機体にはまだビームライフルが残されている。相手が接近するしかないのならば、ビームライフルの使えるこちらの方が圧倒的に有利だ。
「まぐれで何度もかわされて堪るか!」
ジェリドはそれでも敢えてビームサーベルで相手の土俵に合わせた。どんなパイロットが乗っているのか確かめたかったからだ。
ファントム・ペインに配属になる前に何度か模擬線やらシミュレーターでの訓練はしていたが、カクリコンや他の元ティターンズのメンバー以外でこれ程苦戦する相手はいなかった。
ビームサーベルを振りかぶり、お互いの刃が交錯する。ムラサメのビームサーベルがジェリドのスローター・ダガーの胸部装甲を掠った。
「こいつ!」
すかさず返す刃でムラサメの胴体を狙いに行く。もうこの際誰が相手だろうが構わない。ムラサメのパイロットの力量がこちらの想像以上であるならば、手加減をすればやられるのは自分だ。
だが、エマも同じ事を考えていたのか、ムラサメのビームサーベルもジェリドを狙っていた。そんな気持ちの交錯が、お互いを互角たらしめ、二人の振るったビームサーベルは共に相手のシールドに防がれてしまった。
『どけって!』
「この声!」
ジェリドの声が接触回線でエマの耳に届いた。その声に、エマはハッとする。対するジェリドにもエマの声が届いたらしく、同様に驚いているようだ。
『その声…まさか!』
「ジェリド!」
『エマか!』
かつては志を共にしたティターンズの同志である。エマがエゥーゴに移籍した後も、何度か戦場で交戦した経験もある間柄だ。一声で相手が誰であるか分かった。
そして、同時にエマが最も危惧していた事態が起こった事も証明していた。かつて予想したとおり、自分たちだけでなく、ティターンズの面々もこの世界に飛ばされていたのだ。
カミーユが来た時点で何となくそんな予感はしたが、こうして現実になって見ないとどうも実感が沸かなかった。しかし、今それが現実になってしまった。
ムラサメとスローター・ダガーは互いに動揺したのか、シールドで相手のビームサーベルを弾きあって距離を開ける。
(ということは、カツが相手にしているのもティターンズの誰か――?)
(エマがいるという事は、もう片方にはカミーユが――?)
少し間を置いて、先に動いたのはジェリドだった。もし自分の予測が正しいのだとすれば、カクリコンが今相手にしている相手は自分の手で落とさなくてはならない。
そういえば、エマのMSの戦闘機形態のフォルムは、何処となくΖガンダムのウェイブライダー形態に似ている。その脳裏に焼きついた記憶と、単純な思い込みから、ジェリドはカミーユの存在を勝手に確信する。
「待っていろ、カミーユ! 貴様は、この俺が引導を渡してやる!」
思い出したようにエマを放ってカクリコンと交戦するムラサメに向かう。
「待ちなさい、ジェリド!」
それを追ってエマもムラサメをMAに変形させて後を追う。
最悪の事態になったと感じた。この調子で次々と異端者が明らかになれば、シロッコが出てくるような気がしたのだ。事の真相はジェリドにでも聞かなければ分からないが、聞いたら聞いたで後悔しそうな気がした。
シロッコがいればこの戦乱は益々混乱の様相を呈し、泥沼に嵌っていくだろう。そう思うと、真実を知るのが怖かった。
最後中途半端ですけど、今回は以上です。
ジェリドの搭乗機は、以前にレスしてくれた方の要望どおり、スローター・ダガーにしてみました。
実際に検索してみたんですけど、いいっすね、黒いダガー。
因みに、スターゲイザーは関係ありません。観てないので……
420 :
1:2007/07/21(土) 16:49:47 ID:???
カツ、死にそうだなあw
カミーユとかシロッコとかハマーンとかシャアとかヤザンとかには負けてるけど、一流ではあるジェリドを何となく応援GJ
なんか紺碧/旭日の艦隊みたい
ルナマリアのアホ毛を"シャア専用ですよ"
と言い放ったカツに惚れたw
シャア専用ルナマリアもワロタけど、ジェリドとカクリコンのコンビ、やっぱいいっすね。
この調子でブランも出して欲しいなぁ。
424 :
大高首相:2007/07/21(土) 21:12:42 ID:???
カツ最高っw
ジェリドって実はティターンズのエースだからな
ヤザンとかシロッコとかのラスボス級のバケモノに囲まれてる所為でそうは見えんがw
マウアーもいるのか(*´д`*)ハァハァ
ひょっとしたら……デストロイにフォウが乗って来たりして
ネタバレはいかんよ〜(艸д+)
フォウとロザミアの巨大MS部隊!!
ヘンケン出てこないかなぁ〜
「エマちゅぅ〜いぃ〜!!(/; ̄□ ̄)/!!」
カミーユ速くZと共に復活してくれ
シロッコはキラじゃ止めれないよ
フォウ・ロザミア・ステラのデストロイジェットストリームアタックもありうる訳か
やっぱりスローターダガーってCE版GMクウェルなんだなあ。
ここでのカラーはスタゲ本編、というかプラモそのままなんでしょうか。
一度それぞれの塗装そっくり入れ替えてリペしてみようかと思った事もあって。
ブランがアッシマーの代わりに正式レイダーに乗ってたりするのだろうか
アポリーとロベルトがドムトルーパーに乗るとか
>>430 むしろシロッコはマルキオ教≒ピンク集団に迎合したりして…
ヤザンがでてこないのだけがおしまれるなw
GJ!お疲れさまでした。
PCの問題良くなったみたいですね♪
遂に、マラサイコンビが…
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
やっぱり、大人が入ると話が締まるな!
不謹慎だが、ヤザンが戦死して無いのが悔やまれる…orz
出来れば、ヘンケン艦長を出して欲しいな!
次回も楽しみにしてます。
早くUC側のMS出してジェリドらも本領発揮してくんねーかなぁワクワク
ヤザンはハンブラビ破壊されたときに飛ばされたって事にしといてもよかね?
どうせZZで頭おかしくなってるよりゃマシかも知れんし
>◆x/lz6TqR1w氏
まとめwiki更新しましたが、文量が多かったため分割しました。
ジェリドってハマーンには
勝てそうだったよな?
話は変わるが、マルキオのSEED教はシロッコの思想とほぼ一緒だよな
女性が世界を支配すべきだと?
マルキオはそんな事考えてたのか
シロッコがいう女性が支配する世界になるというのは
シロッコの先見性から来てるもので
シロッコ自身はその女性を後ろからコントロールするというのが
自分の役割だと考えてるんじゃないか?
要するに、
「どやどや〜ワシのスケはごっつエエやろ〜ドタマも夜もそう簡単にはヘタ打たん奴らばかり
やでェ〜けんど万が一勝負所でヘタ打たれたらかなわんさかいワシが陰で手ェ出しとるんや
どや〜ウマい事やっとるやろ〜」
こんな所か。
まあ実際
クロスボーンバンガードにセシリーがアイドルとして象徴になったり
ザンスカールのマリアが女王になったりと
何気にシロッコの先見性は当たってたよな
ディアナ様のことじゃないの?
451 :
通常の名無しさんの3倍:2007/07/23(月) 15:28:56 ID:N4Op1ebZ
そこでザムザザーに搭乗ですよ
デザイン的にはデストロイの方がアッシマーっぽいな
>>451 うっかりしてたorz
ブランの顔のでかさがバビのイメージにピッタリだったからついw
>444-6
ちゃうわ、「一部の天才が…」云々の方。マルキオの言う種持ち=天才ならまんまじゃねえ?つー意味だ。
カボチャが好きです、でもオーラバトラー型の方がもっと好きです
>>454 何も必ずしも
ティターンズ→連合
エゥーゴ→ザフトかオーブ
の図式に入れんでもいいんでないかな。
飛ばされた直後なんかは特に状況を分かってないから
後で事情を知って裏切るとかでもいい訳だし。
暁にクワトロとかあるかな
>>458 カミーユ以外はグリプス戦役の死人オンリーだって
あくまでも、俺の中での解釈だが…
Z本編で、カミーユと分かり合えてた人がザフト&オーブ側で、戦死した時に敵対していた人は、連合側になってる気がする。
ライラが連合なのは?って言うのは、劇場版では「パワーが段ちなんだよ!」が削除されていたから、分かり合えて無かった事で…
そうか!
壊れたカミーユがCEに来たのは劇場版で壊れたカミーユの存在が抹消(=死んだと同じ)されたからか!
>>460 劇場版はライラと直接出会ってないからな
でも、何故かロザミーw
>>464 ロザミアはちゃんと邂逅してる場面があるからな
カミーユの先読み時にロザミアと共鳴してる描写がある
カミーユ氏の小説も楽しみだが
◆1ITb1290kc氏の小説も楽しみ
個人的にはカミーユが元気だから
今が一番面白い
二人ともガンガレ
お願いです・・・・・・ジェリドを、ジェリドを殺さないでやって下さい・・・(´;ω;`)
あ、あとカクリコンも。
ジェリドの復讐の原動力の中で大きなウェイトを占めていたライラ・カクリコン・マウアーが
こっちじゃ……健在と言っていいのかどうかw まぁ、とにかく執念がなんぼか削がれている
可能性はあるかもしれんね。それでも執着するんだろうけど。
469 :
通常の名無しさんの3倍:2007/07/24(火) 17:01:57 ID:qGK7Gtln
ハマーン様まだあ?
ジェリドが壊れたカミーユに会ったら、どんな反応を示すだろうか……
ハマーンはZでは死なないから来ないんじゃね?
ジャミトフ・バスク・ジャマイカンはどこにいるんだろ
何でもかんでも出せば良いというモノじゃ
無いと思うけどな。
ジブ公とバスクはナチュラルやアースノイド至上主義で意気投合しそう。
個人的には近親憎悪で殺し合ってくれる方が世のためだとは思うけど。
あと意外とエコロジストでバスクにも辟易しかけてたらしいジャミトフが
同じくジブを持て余してたロゴス古参組と組んで二人の排除を図るとか。
ジャマイカン?シンのオーブ八艘飛びかどこかでテキトーにあぼーんで…
そもそも異世界から来たなんていう怪しい連中をみんながみんな前職のようなポストにつけることもないんじゃないかな?
際立った才能を示したが故に、怪しみながらも用いらざるをえないような突出した人間を除いてはさ。
つまり何が言いたいかというと、ジャマイカンに指揮など執らせず、オーブ艦隊の便所掃除でもさせときゃいいと思うよ。
まあ、そうだよなー。
元の世界の役職がいくら凄かろうと、MSぐらいの現場レベルの才能ならともかく地位として上には来れないよなぁ。
何、この人頭おかしいんじゃないの?で終わってしまう。
別に異世界から来たとか正直に言うことも無くないか?特に腹黒い連中は。
的確にゴマをすればそれだけで出世できそうなゆるい世界だし、ジャマイカンとかはその路線でいいんじゃね?
ジャマイカンが無責任男路線に行くのか
どうして前世で敵同士だった者が後世で手を結ぶという燃えるシチュエーションを想像せんのだ・・・・・・?
確かにジェリドとカミーユ、ブランとロベルトの共闘とか想像すると燃えるな!
でもシロッコは勘弁な
壊れてしまっているカミーユをジェリドが救助・保護するんだ。
んで、ブツクサ文句いいながらも、しっかり面倒見てたり。
決して根っからの悪人じゃないだけに、ジェリドはつくづく生まれた時代が
最悪のタイミングだったとしか…。
少年期に一年戦争があって、そのままティターンズの偏狭な教育に染まり、
いざ任官してみると周りはカミーユはじめバケモノ揃いだったわけだし。
もう少し遅く生まれていればロンド・ベルの一員とか、ビルギットやハリソン
あるいはオリファー等々あたりの、善玉の兄貴分キャラとして生きる道も
あったかもしれないのにな。
ジェリドの相手ってNTとしては最高の能力を持つカミーユだったのが痛いわな
それでもジェリドはクワトロ追い詰めたり
NT的なセンスもあったり、終盤にはジャミトフの親衛隊に配属されたり
NT部隊の一員としてNTの素養がある可能性があると認められたわけだからな
でも最後までジェリドだったんだよなぁ…
ところで、士官学校出て、実戦経験して、権力争いして成り上がってって
で、オッサンのまま異世界に放り出されて、ゼロから出世…ってのが想像し辛いんだが
一足飛びにいきなりエライさんにはなれんだろうし、偶然コネでも手にしないことには辛いじゃなかろうかと
何が言いたいのかと言うと、ジャマイカンとかが若手に混じって出世レースやりなおし、とか想像できんw
485 :
通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 10:17:34 ID:UGA/hM4G
>>480 サンライズ英雄譚2では仲間になるんだよね、シロッコ。
あれには驚かされた。
487 :
通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 11:19:53 ID:xRbxrgyB
>>488 紺碧の艦隊みたいな後世世界構造なのかもしれない
>でもシロッコは勘弁な
不意にシロッコ様を思い出した・・・
>>489 そこのサイトって管理人のオナニー考察が多い気もする…
,. -ァ'⌒ ̄`ヽ _,. -─ァヘ / ヾ、
/ ,. -─ _,ノ.._ヽ,. _ィ '' / /|!、/ /iヽ、 |i
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レ ! ::::::;イ/ !/ ! {ヽ、 i リ{o:::リ /じ} /:::/:ソ::ノ
! i ::::::し! l/ \_,.ヾ  ̄ {ソ'ソ/_//
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{i ,' .:::〃:::::レ' .:/:::::::: ! |l \ ヽ、 リ
ゝ| .:::i :::::;r ./.::::::::::/l |_! ',. ', ヾ、
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ヽV 〃 .: :::::/::::::::::レ _,. -─ '' '' ヽ V
/レ! .: ::: ,'::::::::::::::レ' \ ヾ ー- 、_
/イ! :: :l::::::::::::::::|! ヽ Vヽ ゙i
,' |! :: :|::::::::::::::l:::! i ヽ ! リ |
! |i : l::::::::::::::l:リ /! ヽ.__ ノ |! ',
| |ハ : :l::::::::::::レ ,' /ハ 「 / ! ヽ
| ', ヽ l::::::/ { // ヽレ \
. ! ヽ ヽ ヽ、.ゝ _,.... ---──---V// / ヽ
\ /_,.- '" _,. -─‐-レ' \ _,...._ ヽ
,r ' _/ | ヒニ._li ;;;T -、 /
/ / | /__ |!;; /-、_|'´
/ ,r' ! ヽr ニ`ー'- ._|
,' / i /  ̄ ̄
ハ ,' V ヽ
{ \. ! ト--=j
! `ヽ、 __ゝ 「 ̄
| ` ‐- ',
. l ', ',
! ', !
テンプレサイト
http://28.xmbs.jp/uc/ 映像=富野、制作人発言≧富野小説>資料・設定集>>>>>その他>>>>ファクトファイル
クロボン評価は富野が関わってる無印のみ。基本的に長谷川単体作品は同人誌
スパロボ、Gジェネのステータスだすやつはスルーでお願いします
めやすになるまとめ
パイロット最高はアムロ
ニュータイプ能力最高はカミーユ
バイタリティ最高はジュドー
メンタリティ、発想最高はウッソ
成長最速はシーブック
最後に毎回辿り着く結論
富野発言
アムロは最強の兵(1st時でのシャアの言葉)
学習できないCCAのアムロ、シャアはオールドタイプとして死んでいった
カミーユはNT能力最高だから気が触れるしかない
カミーユは隣の人を大事にする究極のニュータイプ
ジュドーは木星で訓練したらアムロ、カミーユのようなNTになる
ハマーンは漁夫の利を狙う小悪党、女帝でエリザベスのような女
ウッソは嘘みたいな少年、こんな少年いるはずがない
シーブックは見本となるべき少年として生まれた
シャアは悩むことをやめたらアムロを瞬殺、しかし最後には負けていく男だろう
■最強スレニュータイプ主人公のまとめ
・最高パイロットのアムロ
最強パイロットの声が圧倒的に多数、最高のパイロット技量、戦闘にNT能力を使う能力、
長い戦いからの経験で身につけた卓越した戦術、駆け引き、やはりパイロットとしては最も最強に近い男
弱点らしいとこはないが、あえて挙げるなら富野がカミーユに比べOTと言ったことくらいか
・ニュータイプ最高のカミーユ
描写、富野発言からNT能力最高はどの信者も納得
キレれば瞬間的にはアムロを超える無敵の戦闘力を発揮というのが大体の評価
しかしキレるには条件が必要なため。あくまでNT最高という評価で落ち着いてる
弱点は普段の戦闘にムラがありすぎることと、NT能力が高すぎて精神的に不安定
・発想最高のウッソ
パーツアタックはアムロが既にTV版ビグザム戦でやっているが戦術としてやれていること
機体で勝る相手と戦って切り抜けていること
厨機体と言われようが、V2ABなんて化け物の力を、さらに引き出して戦っていること
さらにそれを13歳の若さでやっているなんて、正にウソのような少年
兵士として高いメンタルティを持ち、精神・技量・NT能力といった総合的なバランスが良さがウリ。
・成長最高シーブック
訓練も無くいきなり乗って、3次元戦闘なんていくら補正があったところで実力が無いと無理
対MS戦は機体で勝っている面もあるかもしれないが、
UC最強と目されるラフレシアに数回の実戦経験で勝利を収めていることは奇跡
・バイタリティ最高のジュドー
現在最強スレや世間では最弱と言われることが多いが、ジュドーの強さを挙げる人はメンタルの強さ、
ここ一番での火事場の馬鹿力的なハイパー化などを主にしている。ZZ脚本家の意見でも、
ジュドーの強さはNT能力や操縦技量ではなく、このバイタリティからくる力を彼の一番の特徴としている
弱点はアムロ、カミーユに比べてNT能力が劣ると言う富野、脚本家のソース
NT主人公にしては感知能力が低いのではないか?ZZの性能は突出しすぎてるのでは?という感じである。
主人公キャラはそれぞれに凄い所がある
Ζガンダムというマシーンに内臓された機能は人の心の力というものに
敏感だったのだろう。カミーユの意思が集中することで、その性能は
パワーアップを遂げているのである。
それは怨念を込めた刀のようなもの…相手を切れば、その使い手も引き込まれる力である
シロッコには理解などできるはずがない。物理世界の極限状態で生活したからこそ
彼の価値観はこの世の現象に囚われてた
シロッコの認識は、人の限界を示したのかもしれない。
カミーユが発現させてる力は、人の心の集まったもの、意思の力である
それは人が使いこなしては良い「力」ではないのだから…。
Ζノスタルジア
カミーユはNT能力を超えて念動力でジオの動きを止めて勝利する
新しい力を持った若者が新旧の強大な力を合わせ持った強大な力を持つシロッコに
思いの強さだけで勝利してしまう。それはあまりにも現実的ではない
またラストカミーユが命を捨てて得た力だとしても死が描かれ続けてたΖでは
ファンタジーになってしまう
現実認知のテーマにするにはカミーユは精神崩壊しなければならない
カミーユはそのための犠牲であり天使なのだ
全富野仕事集より
自我を開放し他人の意思を共有することは
けして幸福ではない。人はそこまで他人の介入に耐えれない
それでもカミーユはNTの才能を先鋭化させ続け
死者の魂とまで感応し、自分の精神に取り込んでいってしまう
無制限に他者を取り込んでいけば、必然的に自我の枠組みは軋み、揺らぎ、崩壊する
人はNTであることに耐えられない
カミーユ・ビダンはNTとして正しく能力を拡大していったため崩壊した
Ζヒストリカ11号
AM カミーユというキャラクターが非常に感情移入しにくかったですよね。
アムロ、フォウとかの人気が比較的高いということも、逆にいえば彼らを
通すとカミーユが見えてきたからだと思うんです。
まずカミーユの設定のねらいを聞かせてください
富野 カミーユというのはパート2ものを作っていく上での基本なんです
最初からわかんないキャラであれ以上にはならないキャラだったんです。
その意味でかなり予定どうりです。現実にはみんなわけわからないとこで
ゴチャゴチャやってるよねということ。そのキャラをずーと引きずるしかなかった
ようするに人の限界っていうのはこんなもんだよ。
いくらカミーユのNT能力が最も凄くても人間なんてそんなもんです。
だからカミーユは気が触れるしかないんです
ここは一歩も踏み外してないし、こういうふうにしか作れなかった
AM NTは戦争を終結させる能力はないですよね
富野 そう、はなっからないんです。
AM そのあたりがあまりにリアルすぎて悲しみのカタルシスばかりが強かったようですが。
富野 それもなかったんじゃないかな事実ばかりがダダダってきちゃうと
悲しんでいられないですよ、ていうとこまでやってるつもりだし。
カタルシスがあるわけがない
新手の荒らしか?クロスSSスレだぜ。ここはよ。
ほしゅ
Zの考察は中々面白かった
なんでもいいからSSの続きが読みたい
『戦い、それぞれ』
沿岸部に程近い浅瀬でアビスの猛攻に苦しむミネルバ。火器をふんだんに搭載しているアビスは奪われたMSの中でも最も火力のあるMSだった。数多の砲撃が海中からミネルバを襲う。
何とか防げているが、最も懸念すべきはカリドゥスだろう。あれをまともに受けたら、ミネルバとてたまったものではない。加えて空中からはウインダムがカトンボの如く舞っている。
アビスを迎撃するのは、ノクティルーカ・ウィザード装備のレイとルナマリアのザク・ファントムとザク・ウォーリア。ウインダムはミネルバの弾幕で何とか凌げているが、アビスは水中から執拗に攻めてくる。
これに対応する二人は対潜爆雷や魚雷で対抗しているが、状況は芳しくなかった。相手の姿がレーダー越しでしか見られないのは、目視で相手にするよりも厄介だ。
いっその事水中に潜って直接叩こうかとも考えたが、水中戦に特化したアビス相手では機動力に翻弄されて、どちらにしろ大した効果は見込めないだろう。敵の根城を探索に出かけた4人を信じつつ、今は耐えるしかない。
その4人の内の2人、エマとカツは旧知のジェリドとカクリコンのスローター・ダガーと交戦中だった。その最中でお互いの存在に気付き、ジェリドはカツの事をカミーユと勘違いして攻撃を仕掛けようとしていた。
辛酸を散々なめさせられた屈辱は忘れていない。エリートであったジェリドが、民間人であったカミーユにいいように弄ばれたのだ。何度苦杯を味わい、そしてコケにされてきただろうか。仲間を取り戻した今でも、彼個人に対する執着心は衰えていない。
「逃がさんぞ、カミーユ!」
『ジェリド!?』
ジェリドの咆哮を聞いたカクリコンが、目を丸くする。カミーユと言うのは確か自分からガンダムMk-Uを奪った小癪なガキだ。月面での戦いでも、大気圏突入でも手を焼かされたあのガキが目の前のMSに乗っているというのか。
もし、彼の言っている事が本当であれば、カクリコンにも怨念返しをしなければならない理由がある。
「ジェリド、こいつがあのガキだというのか?」
『あっちの変形MSにはエマが乗っていた! …だとすれば、こいつはカミーユだ!』
「ん? 貴様の気持ちも分からんでもないが――」
エマが居たからといって、これにカミーユが乗っているという確証にはならない。ジェリドがカミーユに拘る男だとは知っているが、それにしてはあまりにも短絡的だ。恐らく自分が死んだ後も、彼はカミーユに散々な目に遭わされていたということだろう。
「接触する。何はなくとも、先ずは確証を得たいところだ。ジェリドはMSのパイロットを確認しろ」
『恩に着る、カクリコン!』
2機のスローター・ダガーが、カツのムラサメに襲い掛かる。向かってくる2つの黒い影が、カツの目には悪鬼が襲ってくるように見えていた。わずかにコントロール・レバーを握る腕が震えた。
「なっ…! エマ中尉は――!」
単機でも苦戦する敵が2機に増え、カツは慌てた。自分一人では彼等の相手は無理だ。思わずエマを捜す。 すると、エマのムラサメはこちらに向かってきている最中だった。合流するにしても、敵の突撃には間に合わないだろう。このままではやられる。
「くそっ、何とかしなきゃ、何とか――うわっ!」
必死に抵抗するようにビームを連射したが、相手は2機で襲ってきている。的を分散させられ、一気に距離を詰められてしまった。
これまでか――カツがそう思ったとき、1機のスローター・ダガーが組み付いてきた。正面のモニターにスローター・ダガーのメインカメラが不気味に光った。黒い装甲の中から浮かぶ青い光が恐怖を煽る。
これが白いMSであったなら、幾分かはマシだっただろうか。そんな事を考えつつ、何をしてくるのか身構える。
「こいつら、僕を生け捕りにしようとしているのか!?」
『カミーユ! 貴様、カミーユなんだろ!?』
「何!?」
接触回線から聞こえてきたジェリドの声。その声にカツは不意を突かれた。
『声が違う…誰だ、貴様は! カミーユを何処に隠した!』
「何を言っているんだ、お前は――カミーユだって!?」
ジェリドの呼びかけに、カツは必死に状況を整理しようと試みていた。ただ、その答は単純明快。この世界の人間がカミーユの事を知っているはずが無い。ならば、この事実が示す真実は一つ。
『カツ、離れなさい! それに乗っているのはジェリド中尉よ!』
「エマ中尉!」
思ったとおりだ。エマと共に考え、懸念していたかつての憶測が現実のものとなってしまったのだ。目の前に出てきたのは、ティターンズのメンバーで何度も戦いを繰り広げた宿敵とも言える相手。
『その声は、フォン・ブラウンでちょっかい出してきたガキ!』
「くっ…離れろぉ!」
当てが外れたジェリドは舌打ちをして、一瞬だけ気を抜いてしまう。その隙を突き、カツは思い切ってバルカンを発射した。ゼロ距離からの攻撃に、ジェリドのスローター・ダガーが悲鳴を上げる。
「貴様!」
『何をしている、ジェリド!』
ジェリド機が頭部カメラから煙を噴いて、カツのムラサメから引き剥がされる。そこにMA形態のエマ機がミサイルを撃ち込んできた。それを庇う為にカクリコンのスローター・ダガーがシールドを構えて間に入り、エマの攻撃を防ぐ。
「くそぉ…メインカメラが――!」
『ミネルバに仕掛けたガキも攻めあぐねているようだ。ここは残存戦力に任せて大佐と合流する。付いて来られるな、ジェリド!』
「済まない、カクリコン…」
ジェリドの目を失った事で状況を不利だと判断したカクリコンは、ネオの元への後退を指示する。一度彼と合流し、態勢を整える為だ。
スローター・ダガーが去っていく。何とか急場を凌げたカツはコントロール・レバーから手を離し、安堵していた。そこへ、エマのムラサメが心配して近寄ってくる。
『大丈夫、カツ?』
「はい、何とか…でも、エマ中尉、あいつ等はティターンズの――」
『悪い予感が現実になってしまったようね。確かに、あなたの言うとおり、ミネルバに乗って正解だったかもしれないわ』
エマの言葉にカツは考える。だとすれば、シロッコが居るかもしれないとの予測が現実味を帯びてくる。カミーユがこちらの世界に飛ばされてきたという事は、彼が相討ちでシロッコを倒した可能性が高い。
カミーユが死んだなどと言う事が確定したわけではないが、彼なら自分の命に代えてもシロッコを倒そうとしただろう。
「あのジェリドって言う人、カミーユの事を探しているみたいでした」
『ジェリド…カミーユに対して根に持っていたんだもの。私が居るのを知って、カツの事をカミーユと勘違いしていたみたいね』
「こっちに来てまでそんな事を考えているなんて…」
しかし、自分も人の事は言えないかもしれない。もし本当にシロッコも居るのなら、彼に対してジェリドと同じ気持ちを持つかもしれない。自分が誤ってサラを殺してしまったのは、シロッコを倒す為だった。その責任をシロッコに転嫁していたのは否めない。
『きっと、他にも飛ばされてきてるティターンズのメンバーが居るはずよ。何としてでも彼等を止めなければ――』
「そうですね…ん?」
カツが返事をすると、レーダーに大きな反応が映っているのを見つけた。この反応の大きさからすれば、もしかしたらそれが連合の秘密基地なのかもしれない。
「中尉、レーダーに反応がありました! きっと、これが連合の秘密基地ですよ!」
『え…? 本当だわ、艦長の推測が当ったようね』
「行きましょう、エマ中尉。ここを抑えれば、敵の帰る所がなくなります」
『了解』
2機はMA形態に変形し、反応のあった地点へ進路をとる。
その頃、カオス・ガイアと交戦を続けるシンとアスランは、乱入してきたネオのウインダムに手を焼かされていた。その見た目から、紫の専用のカラーリングを見て即座にエース機だと分かった。
動きもさることながら、損傷したカオスを庇いながらの戦いには目を見張るものがある。
対してこちらはアスランが奮戦してはいるが、シンのインパルスが片腕を損傷して不利な状況にある。加えて2対3の状況では数的にも厳しい。
「隊長、このままじゃ――」
『シンは前に出るな! ここは俺が食い止める!』
カオスは先程のアスランの攻撃で飛行できなくなってしまったのか、ガイアと連携して地上からアスランを狙い撃ちしている。エース機のウインダムはその援護を受けてアスランのセイバーと互角以上の戦いを繰り広げていた。
そんな中でシンはアスランを援護する為に、地上のカオスとガイアに牽制のビームを撃つ事しか出来ていない。
アスランもコックピットの中で、今自分に出来る全ての技術を総動員して、必死に砲撃の中でネオのウインダムを相手にしている。
『隊長!』
「まだブランクが――エマとカツが敵の本営を見つけると信じて待つんだ! ここでこいつ等を引き付けておけば、ミネルバはレイとルナマリアが何とかしてくれる!」
『でも、それじゃあ隊長が――』
「俺だって伊達にあの戦争を戦ったわけじゃない!」
とは言うものの、アスランは防戦一方だ。ガイアのビーム砲は大した事無いが、カオスの誘導ミサイルが厄介だった。
フェイズシフト装甲を持っているとはいえ、ダメージを受ければその分だけエネルギーを消耗するし、何より態勢を崩されては目の前のウインダム相手にはきつい。ナチュラルとは思えない動きをするネオのウインダムは、アスランにとっては脅威だった。
何とかこちらから仕掛けなければこの局面は打開できそうにも無いが、アスランは何となく思い切った行動が出来ない。それは、自分がそれだけ年老いているという事なのだろうか。強敵に向かっていく情熱が足りない。
ネオはそれを機械越しに感じ取り、冷静に周囲の位置関係を確認した。セイバーが動きに精細を欠くのであれば、役に立たないインパルスなど物の数ではない。新型と思って慎重に攻めていたが、その必要は無いと判断する。
「よし…スティング、ステラ! 敵は防戦一方だ。この辺で一気に決めたいところだが、行けるか?」
『行けるも行けないも無いんだろ? だったら、やってやるよ』
『行ける』
「よぉし…」
ネオの問い掛けに二人が応えた。ネオは口元に笑みを浮かべ、セイバーを牽制する。
「スティングは援護、私が新型の動きを止める。ステラが止めを刺すんだ」
『飛べないならしょうがねぇか…しくじるんじゃねぇぞ、ステラ!』
『スティングじゃないから、やってみせる』
『んだとぉッ!?』
「喧嘩すんなって! ほら、掛るぞ!」
仲良き事は美しきかな。スティングとステラの口喧嘩を聞いてネオは思う。嗜めつつも、ウインダムをセイバーに向けた。ガイアはMA形態で森の中を高台に向かってひた走る。
地上からカオスがセイバーに向けて砲撃を続ける。対するアスランはウインダムの動きを注視しつつも鮮やかにかわし続ける。シンはそれを見て、ウインダムに牽制を掛ける事しか出来なかった。シールドを失っていては、たった一発のビームが致命傷になりかねない。
「――? ガイアが消えた…何処に?」
ふと、シンはガイアが消えた事に気付いた。レーダーに反応は残っているが、現場から遠ざかっていっている。こちらが防戦一方である以上、撤退する理由は無いはずだ。怪訝に思いつつも、アスランに注進する。
「何かするつもりなのか? 隊長、ガイアがここから離脱していきますよ!」
『ガイア? ――クッ!』
シンはアスランに呼びかけるものの、彼はそれどころではない。カオスからの猛攻と、ウインダムの執拗な攻めがセイバーを自由にさせてくれない。
ネオはその様子を眺め、セイバーの動きが制限されつつあるのを確信する。今なら捕まえる事が出来るだろう。インパルスも、相変わらず遠くからセイバーを援護しているだけだ。
「よし! スティングはインパルスの抑えに移れ! 私はこのまま新型を捕獲する!」
『りょーかい』
ガイアは既に高台に上り、ネオがセイバーを捕まえるのを待っている状態にある。今が絶好の時、これ以上待たせれば、ガイアの存在に気付いたインパルスがちょっかいを出すかもしれない。
ここで決められれば、セイバーを落とす事が出来る。その後は、半壊したインパルスをじっくり料理してやればいい。
ネオはウインダムをセイバーに突撃させる。アスランも抵抗を試みるが、多少の焦りもあるのか命中精度がすこぶる悪い。曖昧な照準でフォルティス・ビームをウインダムに向けて放つが、掠りもしなかった。
そのままウインダムはセイバーを回りこむ様に旋回を掛け、後ろから組み付いた。
『な、何だこいつ!?』
「隊長!」
カオスと交戦しつつもセイバーがウインダムに羽交い絞めされているのを見たシン。思わず叫んだ。
そして、ガイアが高台からセイバーに飛びかかろうと態勢を整えているのを見つけた。先程その場を離れて行ったのは、このためだったのか。
「隊長をやるつもりなのか? これは――ぐぅ!」
視線を外していた隙に、カオスがビームサーベルでインパルスに切り掛かってくる。カオスは牽制に弾を使いすぎたのか既に残弾が尽きかけていた。機動兵装ポッドを破壊され、飛べなくなったカオスが、走ってこちらに向かってくる。
勿論、スティングも何の考えも無しに襲い掛かったわけではない。こうして格闘戦に持ち込めば、インパルスの動きを封じることもできる。そうとなれば、セイバーをやれる確立は飛躍的に高くなるはずだ。
後はネオとステラのコンビがセイバーを撃墜し、インパルスを始末するだけ。
しかし、それが彼の判断ミスだった。格闘戦に特化したシンのパイロットとしての特性を、彼は知らない。
一方でネオはセイバーに止めの一撃をステラに掛けさせようとしていた。ギリギリまでセイバーを拘束し、そこへガイアのビームブレイドを叩き込んで真っ二つにするつもりだ。
「今だステラ! 思いっきり飛び込んで来い!」
『うぇーいッ!』
ガイアが高台から飛び上がり、背部の姿勢制御ウイングのエッジ部分からビーム刃が形成される。
「な、何っ!?」
コックピットの中、正面から飛び向かって来るガイアの姿に、アスランは驚いた。それと同時に恐怖を感じる。このままでは間違いなくコックピットを両断され、自分は死ぬ。
ふと、ザフトに復隊すると伝えた時のバルトフェルドの台詞が頭の中を過ぎった。戦場で死ぬ事は考えていないのか――今、自分は死にそうになっている。
(カガリを遺して、俺はこんなに早く死ぬというのか?)
こんなことなら、デュランダルに唆(そそのか)されてザフトに戻るべきではなかったのかもしれない。しかし、いくら後悔したところで既に後の祭り。体中から力が抜けていくのが分かった。
ガイアのビームブレイドはガイアの装備の中では最も威力のある武器だ。それを直撃すれば、いくら頑丈に作られているコックピットでも、容易く切り裂かれてしまうだろう。絶体絶命のアスラン。
抵抗する様子の無いセイバーを見て、ネオは確信した。このパイロットは既に諦めている。
「タイミング良好! さらばだ、新型!」
ガイアの突撃にあわせて、ネオはウインダムをセイバーから引き離す。そこへ一撃必殺の下にガイアが突進をしてくる。これで、セイバーの全てが終わるはずだった。アスラン自身も、そう思っていた。
が、しかしネオが見たのはセイバーが真っ二つになる光景ではなく、意外な敵からの妨害だった。
「やらせるかよ!」
「何だと!?」
突如脇から出現したのはインパルス。セイバーに突撃するガイアのビームブレイドを、ビームサーベルで根元から切り飛ばした。ビームブレイドを失ったガイアは態勢を崩し、そのままセイバーとすれ違って地上に着地した。ステラはコックピットで舌打ちをする。
「インパルスだと? スティングは!?」
『わ、悪りぃ、ネオ。やられちまった……』
通信回線で伝えるスティング。カオスの様子に目を向けると、右腕を切断されたカオスが横たわっていた。
「な…何があったんだ――?」
ネオにはどうしてカオスがやられ、インパルスが間に入ってこられたのか分からない。いくら損傷したカオスでも、片腕を失っているインパルスとなら互角に戦えたはずだ。
それで無くともインパルスのパイロットの技量がそれ程高くない事は、先程の戦いから推測できた事。それならば、インパルスのパイロットが実力を隠していたのか、それとも自分の目測が誤っていたのか。
インパルスはこちらを睨みつけたまま抗戦の意志を見せ付けている。我侭な子供の素振りを見せるあの機体のパイロットが、能ある鷹であるとは思いたくない。
「シ、シン――!」
目の前に現れたインパルスを見て、アスランは目を丸くしていた。シンはカオスの足止めで動けなかったはずである。そのカオスに目を向けると、損傷してフラフラの状態のカオスが何とか機体を起こしている所だった。
「誰だろうが関係ない…俺の目の前で誰かが死ぬのはもうたくさんだ!」
シンのトラウマだった。目の前で無残に家族を失った彼にしてみれば、いくら気に入らないアスランであっても、見過ごす事ができなかった。
少し前、シンはガイアの動きに気付き、ビームサーベルで切り掛かってくるカオスの懐に思い切って踏み込んだ。普通、シールドが無ければ相手との距離を離し、防戦に徹するのがセオリーだが、シンは逆に飛び込んで行ったのだ。
それが功を奏したのか、不意を突かれたスティングはシンの行動に面食らい、右腕を切り飛ばされてしまった。
そこからは無我夢中だった。頭の中がクリアになり、ザムザザーを葬った時と同じ感覚になった。そのまま急いで飛び上がり、ガイアの攻撃を阻止したのだ。
「帰れよ、お前等! こんな所で襲ってきやがって、ふざけんなよ!」
理不尽な事を叫ぶシン。しかし、アスランの危機にキレたシンは感情が抑制できない状態になっていた。シールドを失っている事も忘れ、ビームサーベルをかざしてウインダムに躍り掛かる。
「こ、こいつ――!」
『ネオ!』
ステラが叫ぶ。インパルスの思い切った攻撃にネオは意表を突かれ、ビームサーベルを弾き飛ばされてしまう。
シンの動きは確かにネオのウインダムを圧倒しているが、無茶苦茶な動きである事には変わりなかった。今のところその無謀な動きがネオを混乱させ、有利に働いてはいるが、いずれは返り討ちにされてしまうだろう。アスランの目にはそう見えていた。
ただ、その一方でそんなガムシャラな動きのできるシンを羨ましく思った。自分には彼のような若さに任せた思い切った動きが出来ない。基本に忠実にMSを動かし、正確に戦う事しか出来なくなっていた。
アスランはセイバーにビームサーベルを引き抜かせ、インパルスとウインダムが交戦する場に突撃させる。シンの中に自分が忘れてしまった情熱を見たような気がした。
「このッ、このぉッ!」
「チッ!」
インパルスの猛攻に舌打ちするネオ。しかし、動きが出鱈目だ。わざわざ接近戦に付き合ってやる義理も無く、ネオはウインダムをインパルスから離脱させる。距離を取ってビームライフルで狙い撃ってやれば、それで終わりなのだから。
そう思ったのも束の間、セイバーがインパルスの援護に入ってきた。セイバーはインパルスと違い、損傷を受けていない。
対するネオのウインダムも無傷だが、カオスは中破、ガイアも片翼を失い、数的有利を作りながらも形勢は一気に逆転されてしまっていた。空戦ができる機体が自分だけでは、流石に今のインパルスとセイバーを相手にするのは難しい。
両者は睨み合う。シンとアスランはタイミングを計っていた。
「シン、このまま一気に決めるぞ。俺が先に仕掛けるからお前は隙を突いてあの隊長機を落とせ」
『了解!』
役割は決まった。アスランが先に飛び込み、シンが止めを担当する。が、その時ミネルバからの呼び出音が聞こえてきた。こんな時になんだというのか。
「交戦中だ! 後にしろ!」
『す、すみません。ですが、エマさんとカツから敵基地を制圧したとの報告があったので――』
「本当か?」
『はい』
『隊長! 新しい敵が!』
「――ん?」
シンの声と同時に新たな敵機が出現した事を告げるアラームが鳴った。モニターの中に、黒いMSが2機、映し出される。しかし、基地を制圧したという事ならば、もう数は問題ではない。恐らく基地を制圧された部隊が逃げてきたのだろう。
その黒いMS――スローター・ダガーのジェリドとカクリコンはネオに合流して来た。ジェリド機の方は頭部カメラを損傷し、まともに動けない状態だ。
『済まない、大佐! ジェリドはまともに戦える状態じゃない!』
カクリコンがネオに呼びかける。
「後手に回されているな。基地も制圧されたということらしいが――やはりミネルバ、錬度を上げてきている」
こうなってしまえばもう戦っている場合ではない。一刻も早くここを去り、戦力を整えなければならないだろう。ネオは通信を母艦に繋げる。
「イアン、J.Pジョーンズ発進準備! 各機は私に続け! トンズラするぞ!」
何とも間抜けな話だと思う。結局こちらから仕掛けておきながら、敵を一機も落とす事が出来ずに、こちらが被った被害はカオスとガイア、そしてジェリドのスローター・ダガー。
多少の損害を与えられはしただろうが、MSは直せばまた使える。ミネルバに仕掛けていたアビスも優位に戦闘を続けながらも、結局は決定打を与える事が出来なかったようだ。
そんな間抜けを演じながらも、撤退していくファントムペインと連合軍。ネオの頭の中に、ミネルバに対する執念が更に深く刻まれた。
「逃がすかよ!」
『待て、シン! そんな損傷で先走るな!』
「でも――!」
『捕獲は出来なかったが、撃退できただけでも良かったとしよう。基地はエマとカツが押さえてくれた。後の事はカーペンタリアの部隊に任せるんだ』
奪取されたMSの奪還は成らなかった。しかし、基地を制圧し、カオスにも損傷を与える事が出来た。これなら、スエズに辿り着くまでに、もうファントム・ペインからの襲撃を受ける事も無いだろう。
今ミネルバが受けている指令はスエズの支援。ファントム・ペインの殲滅ではない。
ミネルバの方も多少のダメージを受けたようだが、作戦の継続には支障が無いようだ。アスランはシンをなだめて共にミネルバへと帰還する。
ファントム・ペインの地球での母艦となるJ.Pジョーンズ。巨大な空母に戻った一同はMSから降り、ヘルメットを脱いでいた。
「へっ、無様だなおっさん達? 基地を奪われちゃうなんてさ」
ジェリドとカクリコンが話をしていると、アウルが話しかけてきた。相変わらず舐めた口を利く小僧だと思う。
「フン、俺達に主力の相手をさせておいて、ミネルバを落とせなかったガキがよく言えたな。それでも強化人間か?」
「…その言い方止めろよ。不愉快だ」
ジェリドの言葉に眉を顰めるアウル。一緒にやって来たスティングとステラも同様だった。
「そうじゃないか。強化人間を強化人間と言って何が悪い?」
「てめぇ!」
殴りかかろうとするアウル。しかし、それをスティングが肩を抑えて制止した。
「何すんだスティング! このおっさん達に、今こそ俺達の凄さって奴を見せ付けてやら無きゃならねーだろ!」
「いや、今回はイーブンだ。俺達も囮の役を全うし切れなかった。お陰でカオスがあの様だ」
睨み付けるアウルに、スティングは顔でカオスを指した。右腕を失い、焼け焦げた機動兵装ポッドが痛ましい。
「それはスティングが勝手にやられただけだろ? 俺はちゃんとミネルバに仕掛けたぜ!」
「だが、沈められなかった。これで俺達はミネルバがスエズに入るまで指をくわえて見てなくちゃならなくなったわけだ。どの道基地を守れたとしても、カオスとガイアを修理しなきゃならないなら結果は同じだ」
「だから、それはお前等がだらしねぇからだろうが! 撤退命令さえ出なけりゃ、あんな艦沈めてた!」
「どうかな。基地を制圧した2機がミネルバに戻ってたら、お前はやられてたかもしれないぜ」
「ンな事はねぇ!」
「そっちのスティングとやらは良く分かってるじゃないか。それに比べ、お前は駄目だな、強化人間?」
やり取りを聞いていたカクリコンが口を挟んできた。アウルはそれに対して気勢を強めていたが、スティングが体を前に出して抑えた。しかし、スティングも完全に冷静というわけではない。
「けどよ、おっさん達が基地を守りきれなかったのは事実だぜ。これはミネルバを落とせなかった以上に痛手だ。その辺分かってんだろうな?」
「あれはあの基地司令が間抜けだったからだ。最初から俺達を出しておけば、こんな事にはならなかった。
基地を制圧された今回の失態は全て基地司令の責任――この艦に出港準備をさせていたということは、大佐もそう思っていたということだ。そうだろ?」
カクリコンが視線をアウル達の後ろから歩いてくるネオに向かって語り掛けた。それを受けたネオは一つ頷く。
「確かに、ジェリド達は司令の命令に従って行動したに過ぎん。上の連中がどう言うのかは知らんが、私はあの基地の責任者ではないからな」
「最初から見捨てるつもりだったのかよ?」
反応したアウルがネオに問い詰める。
「冗談を言うな。いくら司令の命令が凡雑だったとはいえ、私もまさか基地を制圧されるとは思わなかった。完全にミネルバの戦力を測り間違えていたという事だ。その点は、私の失態だ」
「じゃあ、Gを壊した件に関しては、部隊を指揮していた大佐の責任だな?」
「そうなるな」
ジェリドに言われ、ネオは苦笑いを浮かべた。部隊指揮という中間管理職の立場として、貴重品である奪取したGの内2機を損傷させた責任を取るのは自分になる。
「今回の件に関しては、そういうことでお互い身を引け。お前等の分まで私が怒られてやるから――」
「ネオ、怒られるの?」
心配そうな目でステラがネオを見上げてくる。彼女はネオに依存している部分がある。それを手で制し、ネオは続ける。
「大丈夫だ。…私は自室に戻る。今回の件の報告をしなけりゃならんのでな。3人は戻ってしっかり休んでおけ。ジェリドとカクリコンも――」
それだけ告げてネオはデッキを出て行った。これからお叱りが待っているわけだが、彼が心配しているのは3人の処遇についてだ。ペナルティが自分の分だけで済むのならいいが、3人が研究所に戻されるのだけは避けたい。
今も十分に兵士として使っているが、研究所に戻されれば彼等を兵器として使うだろう。聞いた話によると、エクステンデッドを使ったそういう兵器が間も無くロールアウトする予定だという。
彼等に対して情を持ってしまっているネオにとって、彼等が兵器として利用されるのは忍びない。それならまだこうして憎まれ口を利ける兵士のままであった方がマシだろう。
ネオの後姿を見送った3人も、渋々ではあるが戻って行った。
「お優しい大佐様なこって。あんな強化人間にまで気を遣って」
ジェリドが皮肉るように言葉を口にする。ネオの甘さに辟易していた。
「そんな事よりもジェリド、エマが来ていると言っていたな? と、すればエゥーゴの連中が来ている事になる」
「そうだ。誰が来ているのかは知らないが、エマやあのガキが居たという事はカミーユも来ているはずだ。必ず見つけ出して仕留めてやるぜ」
掌と拳を突き合わせ、意気込むジェリド。カクリコンに誘われて再び軍人として連合軍に入ったが、何処か物足りなさを感じていた。コーディネイターとナチュラルの私怨関係には興味ないが、再び宿敵に巡り会えるのかと思うと俄然やる気が出る。
「まだ何処に居るのか分かっちゃ居ないんだぜ?」
「見つかるさ。俺はアイツを倒すまでは先に進めやしないんだ。必ず見つけ出して仕留めてみせる」
復讐の為にカミーユを追い続けたジェリド。最後までそれは果たせず、こうして別の世界で死んでいった仲間とも再会できたが、それでも彼の中でカミーユの存在が壁として立ちはだかっていた。
そのコンプレックスを取り除き、ジェリドが先に進める様になるにはカミーユを倒すしかない。それは、ジェリドの意地でもあった。
エマとカツが秘密基地を押さえたことにより、それを伝えたカーペンタリア基地から直ぐに引継ぎの部隊が駆けつけてきた。その部隊に後を任せ、ミネルバはインド洋をスエズに向かって航行を再開する。
MSデッキでは出撃した各MSのパイロットたちが帰還し、それぞれメカニックに整備を任せ、休養に入った。
そんな中、アスランはヨウランにミネルバを案内された折に見つけた甲板に出ていた。潮風を受け、ここならリフレッシュにも丁度いい場所であると思って押さえていたのだ。
尤も、エマも同じ事を考えていたようで、出撃前にルナマリアと話していたのもここだ。目立つ場所なのか、アスランだけの場所にはなりそうも無い。
今日が終わる。アスランは水平線に浮かぶ夕日を眺めて気持ちを落ち着けていた。
「隊長」
そこへやって来たのはシン。アスランは警戒する。先程の戦闘で何か彼に気に触る事を言ったのだろうか。いつもの調子なら、ここから彼の憎まれ口を聞かされる羽目になるだろう。
せめてこの場所でだけではそんな事を聞きたくなかったが、彼が来てしまったのでは仕様がない。また新しい場所を探さなければならないだろう。
「何だ、シン?」
努めて平然とした様子で応えるアスラン。出来るだけ波風を立てないように、穏やかに話しかけた。ところが、シンの様子がいつもと違う。何処か気恥ずかしそうに視線を泳がせ、落ち着きが無い。
「どうした? 何か用があってここに来たんじゃないのか?」
「その……」
しどろもどろ、言葉に詰まるシン。どうも愚痴を零しに来たわけではないようだ。それだけでも、アスランにとってはありがたいことだ。思わず溜飲を下げる。
シンは後頭部を掻き毟(むし)り、首を傾げて舌打ちする。何がそんなに気に入らないのだ、とアスランは内心でシンを小馬鹿にした。
「今日の戦闘…少しあなたのことを見直しました」
「あ…? 何が――」
「俺なんかよりも、ずっとかMSの操縦に長けている」
思わぬシンの言葉にアスランは目を丸くした。よもやこのような言葉が彼の口から出てくるとは思わなかったからだ。意外と素直な所もあるんだな、と思いアスランは表情を和らげた。
「いや…昔取った杵柄さ。それに、セイバーは俺に合っている。相性が良かったんだな。…お前とインパルスと同じさ」
「いえ、さっきはっきりと分かりました。損傷した俺を庇いながら戦っている隊長を見て、俺はまだあなたの域に達していないと思いました」
「買い被り過ぎだ。俺はお前のように思い切った戦いが出来ない。所詮は、一度現役を退いた老兵さ」
「…そうでしょうか」
アスランの自嘲にシンは表情を曇らせる。謙遜するのはアスランの人柄だろうが、ここは素直に自分の賛辞を受けて欲しかった。普段こういうことを言い慣れていないシンだからこそ、たまに見せる素直な賛辞を率直に受けて欲しかったのかもしれない。
アスランは続ける。
「俺も今日ハッキリとしたことがある。お前は俺の持っていない資質を持っている。それは、戦士として成長する為に必要な、力への貪欲さだ」
「力への貪欲さ?」
「そうだ。その貪欲さがあれば、お前は必ず強くなれる。俺なんかよりも遥かにな」
「俺が隊長よりも……」
アスランは思う。シンはこれから先、自分よりも優れたMSパイロットになるだろうと。それは自分には持ち得ない彼独自の情熱ゆえだ。その情熱は、きっとシンを素晴らしい兵士へと導くだろう。言ってしまえば、最強と謳われたキラ以上の素材に成長するかもしれない。
アスランはそんなシンの中に眠る資質を羨ましく思いながらも、それを導ける自分を喜ばしく思った。今、自分は確かに老け込んでいる。
しかし、こうしてシンと関りあいながら先に進んでいく事で、彼の情熱を受けて、もしかしたら自分も情熱を持てるようになるかもしれない。それは、老いた自分の若返りに他ならない事で、若干18にして感じた自分の老いを認めたくなかったことにも繋がる。
シンは、少しの間何も言わずに考えていた。まさか自分にそんな才能が眠っているとは思わなかったからだ。確かにアスランが来るまでは自分は優れたMSパイロットだと思っていた。
しかし、彼の戦いぶりを見せ付けられることで、シンはちょっぴり自信を失くしていた。だが、そのアスランが自分には才能があると言ってくれているのだ。これはシンにとっては嬉しい事だった。これで、また自分に自信が持てる。
「俺…頑張ってみようと思います。もっと強くなって、それで戦争を早く終わらせます。こんな戦争なんか、誰かが悲しい思いをするだけですから……」
「そうだな…オーブの為にも――」
視線を逸らして呟くアスラン。それを聞いたシンの表情がまた少し曇った。アスランはそれを見ると思わず顔を顰める。シンの前でオーブの名は余計だったか。
「オーブ……」
「済まない、シン。お前の前で今のはデリカシーが無かったな。忘れてくれ」
良い雰囲気になりかけていただけに、今の失言でまたいつもの調子に戻られてしまったのでは台無しだ。アスランは必死に取り繕った。
しかし、シンは意外なことに冷静だった。アスランの事を少しだけ尊敬し始めたからだ。
「いえ…でも、一つだけ教えてください」
「何だ?」
ここで機嫌を損ねるわけには行かないアスランは、シンの質問には出来るだけ応えようと思っていた。それで彼の機嫌が悪くならないのなら安いものだ。
「何故、あなたの様な人がオーブなんです?」
「俺がオーブ――何故って……」
思わぬ質問にアスランは言葉を詰まらせてしまった。このままではまずい。
「ユニウスが地球に落ちる時だってそうだったじゃないですか。オーブの連中は自分さえ良ければそれで良いって人でしょ? なのに、隊長はあの時自分の死も顧ずに俺達に協力してくれた。俺はともかく、タンホイザーに巻き込まれそうになったのに――」
「シン、お前はオーブの事を誤解している」
シンはまだオーブの事を良く分かっていないと思った。もしくは、彼の目にはオーブという国がそのような自分勝手な姿に映っていたということだろう。その誤解は解いておかなければならない。
「何を誤解してるって言うんです? 俺の家族は殺されたんですよ、まだ幼かった妹だって――!」
「それは――でも、今は違う。カガリは、その過ちを繰り返したくなかったから、理念を崩してまでしてプラントと同盟を組んだんだ。俺はそんな彼女を守りたかったからオーブに居たんだ」
「でも、それは結局はザフトにオーブを守らせる為の同盟でしょ? 自分たちだけ守ってもらって、対等じゃないじゃないですか」
「だから、こうして俺達がミネルバに来た。これだけでは不満かもしれないが、カガリにとっては苦渋の決断だったんだ。俺達がミネルバに出向してくるって事はだな――」
「でも、隊長は今はザフトです。エマって人も、カツだってザフトになったんです。オーブには直接関係無いじゃないですか」
「そうだが――」
シンの中でカガリに対する不満はかなり大きいのだろう。ちょっとやそっとの事では彼の心は動かせないらしい。確かに、家族を亡くしているのだから、その思いは根強いだろう。かつてその場に居た自分も責任を感じる。
しかし、いつかは分かってくれる時が来ると思いたい。へそ曲がりな彼の中にも、先程自分に示してくれたような素直さがあるのだから。
「確かに、今お前に言えることは何も無い。でも、これだけは信じてくれ。オーブは…カガリは世界の平和のことを真剣に、本気で考えている。
オーブとプラントの同盟が、ただの利権関係だけのものではなく、本当に世界に平和をもたらす同盟になってくれるって事を、片隅にでいいから願っていてくれ」
「……」
シンはどうしてアスランがここまでオーブに必死になれるのか、分からなかった。平気で国民を犠牲に出来る国が、どうして世界に平和をもたらすことが出来ようか。
ただ、アスランの顔は本気そのものだ。少しだけ尊敬できる彼の言う事だから、同じく少しだけオーブの事を信じてみようかと思う。今は、彼の言うとおり、頭の片隅にでも放置しておこう。
これから先、オーブがどのような行動に出るのか分からないが、その時まで一先ず同盟国としてオーブを見てみようと思った。
少し空が暗くなってきた。一日の終わりというものは、いつも寂しいものだと思う。天国で見ていてくれるであろう亡き家族に思いを馳せつつ、シンは拳を強く握り締めた。
今回は以上です
やっとPCが完全復活しました
自由に使えるPCがあるっていうのは、本当にいいものですねぇ
これはGJとしか言いようがない
GJ!!
このままシンが更正されていくのか、それともどっかで擦れたガキに戻るのか…
デストロイのステラで戻りソウ…
投下乙!
アスランかっこいいよアスラン
アカン……
このままだとジェリドがZ本編と
同じ結果に……
まあその方がジェリドらしいと思うけどな。
カミーユが健在ならそうかもしれんけど、目に星のカミーユ倒しても壁越えにならんから
その件でイベントあるでしょ、どんな形になるかは知らんけど。
ショウとトッドみたいにはならんだろうな
つーかジェリドは、トッドというより黒騎士(バーン)でしょ
するってぇとカツはトカマクくらいの迂闊さか。
つまり長谷川裕一に漫画化してもらえばカツにも意外なハッピーエンドが(ry
片腕になったり、盲目になったりするハッピーエンドか
ジェリド、いい加減学習してもいいと思うんだがなあ。カミーユにかかわると不幸になるってw
GJです!!
アスランカッコイイ…カミーユ氏の前作品の様なヘタレにはならなそう。
シンはステラ次第かな?
ジェリド…作品上無理なんだろうけど、マウアーとかライラも来てるんなら
カミーユになんか関わらないでひっそりと暮らせばいいのに…。
マウアーもライラも先にあぼーんでこちら(CE)へ→腹減っただ(´・ω・`)→仕事探すべ
→やっぱスキルの関係で軍人さんだべ(^ω^)→ジェリドあぼーんでCE到着(´・ω・`)→
仕事探すべ(`・ω・´)→おお!おらのおなごが( ゚∀゚)入るべ入るべ軍人さーん?
避けられないかと。
「『カミーユ、カミーユ!貴様を倒さなければ俺は先には進めん!』なんて、
馬鹿の一つ覚えみたいにそれにこだわってた自分が小せぇって事に気付いたのさ」
・・・なんて言えるようなジェリドだったら、主役にもなれそう気はする。
あれ?禿監督が言ってた「シャアは迷いが吹っ切れればアムロなんか瞬殺できる」
ってのと同じパターン?
それは裏を返せば、
『迷いを吹っ切れるようなシャアはもはやシャアではない』
『カミーユに固執しない男前なジェリドなどもはやジェリドではない』
ということだからなw
バーン・バニングスと意気投合して居酒屋で飲み明かすジェリド
こんな状態で壊れたカミーユなんかと出逢ったら……
ま、先の話だけどな。
>531
意外と呆然自失で男泣きなんじゃないか
ジェリドが超えるべき壁は崩壊、先へ進もうにも道などもはや無かった……
無けりゃ自分で作ってでも乗り越える
ライラ「お勉強だけが良く出来て馬鹿な子って居るんだよね!」
それって種世界のほとんどのヤツラだろ…
特にコーディとオーブ人には多いな
連合のヤツ等はお勉強もできないがな
っつーか負債ら自身がね……
ガンヘッドか。
>>519 > 目に星のカミーユ倒しても
SDガンダムのカミーユ想像してフイタ
ho
保守
おまえは、俺の〜
『おもいの丈は』
オーブ連合首長国本島ヤラフェス。その海の近くに位置する、国家元首カガリ=ユラ=アスハ別邸に向かう一台の黒塗りの車。それにはバルトフェルドとキラが乗っていた。
運転席でハンドルを握っているのは、新たにオーブへやって来たザフトのフェイス、ハイネ=ヴェステンフルス。
「本当に、良かったのか? お嬢ちゃんにはかなり厳しい顔をされていたが――」
キラに向き、カガリの顔を思い出す。相当納得のいかない表情をしていたが、キラの頑なまでの決意表示に、結局は彼女が折れた。一応納得したような素振りは見せていたが、明らかに不満そうな顔をしていたのが忘れられない。
「先日の戦闘で、僕にもまだ戦えるってことが分かりましたから。オーブが狙われているのなら、僕も戦うべきだと思います。例えそれが――」
バルトフェルドの問い掛けに応えつつもキラは考える。かつてこの国で戦いを繰り広げ、ハッキリとした傷跡を残してしまった。その傷跡は、更に今を生きる少年にも残されている。本当は、そんな事をしてしまった自分が再びMSに乗る事自体が破廉恥なのかもしれない。
しかし、だからと言ってこのまま放置していたのでは、自分は何も出来ない情けない人間のままだ。優しくしてくれる人達に何も恩返し出来ない。
そして、自分に再び戦う力が戻ってきているのなら、今度こそ過ちを犯さない為に出来る事をするべきだ。それが、悲しみを増やさない事に繋がると信じて。
「俺としては、お嬢ちゃんと同じでお前をMSに乗せるのは反対なんだが――」
「今更じゃないですか。僕はフリーダムに乗って戦いました。もう、今までのように無関係では居られないんです」
「そういう思いつめ方をするから、俺はお前に戦いをさせたくないんだ。そのまま自分を追い込んでいけば、いずれお前もカミーユの様になってしまうぞ」
実際、その一歩手前だったのかもしれない。ラクスの存在が無ければ、彼は今頃どうなっていたか分からない。それほどヤキン戦役で負った精神的ダメージは大きかった。
「そんな事はありませんし、僕はバルトフェルドさんが思っているほど思いつめてなんか居ません。ただ、少しでも何かが出来るんじゃないかって思っただけなんです。
戦争は始まってしまったけれど、それはアスラン達が必ず終わらせてくれる。だったら、僕はオーブでアスランの帰ってくる場所を守ります。それが、僕が再びフリーダムと巡り会った意味だと思うんです」
「キラ……」
2年経て、心境にも変化が訪れたようだ。彼の顔は、以前までの気の弱そうな青年の顔つきではない。この心境の急な変化は一体何がきっかけになったのかは分からないが、どうやら少しは気力を取り戻せたようだ。
しかし、一方でバルトフェルドが気に掛っているのは、これでキラがデュランダルの思った通りになってしまったという事だ。彼がフリーダムを持ってきたのは、キラをそれに乗せるためだという事は分かりきったことだ。
そして、オーブがプラントと同盟を結んでいる以上、キラの力はデュランダルの味方になったことになる。それはつまり、デュランダルはキラの力を欲してオーブと同盟を結んだ事にも繋がるだろう。
確かに大西洋連邦にオーブを渡したくないという意図も存在していただろうが、一番の目的はそれだったのかもしれない。
そして、ラクスにも接触してきたということは、彼女も目的の一つに含まれていたのだろう。カガリと親交の深い彼女は、きっとデュランダルに協力的な態度を取らざるを得ないはずだ。
一応は簡単に引き下がってくれたが、もしかしたらデュランダルからラクスをプラントに戻すように要請してくるかもしれない。彼女のアイドルとしての影響力は、プラントでは絶大だ。
「君は、デュランダル議長から何か聞いていないのか?」
「ん…俺ですか?」
運転席のハイネにバルトフェルドは尋ねた。フェイスの称号を持っているということは、デュランダルに近い存在だといえるだろう。彼から何かを聞いているのではないかと思った。
「いいえ、何も聞いていませんよ。俺は専ら現場に出るのが多いですからね。議長のお考えについては何も聞かされていません」
「そうか」
何かを隠している素振りは無い。きっと、本当に何も聞かされていないのだろう。
「なんです? もしや砂漠の虎殿は議長を疑っておいでですか?」
「少しな」
「アハハ、確かに、デュランダル議長は傍から見れば怪しい雰囲気を出してますからねぇ。歴戦の勇士である砂漠の虎が不審に思うのも無理も無いことです」
バルトフェルドの率直な意見に、ハイネは声を出して笑った。彼自身もデュランダルの纏う怪しい空気を感じていたのだろう。だからこそ、バルトフェルドがそう思うのも納得できる事だった。
寧ろ、自分の感性がかのエース、砂漠の虎と同じであった事が素直に嬉しかった。
「ですが、これは俺がザフトだから言うんじゃないですけど、議長は信頼出来るお方だと思いますよ。色々と他人を利用しようと考えているみたいですけど、それも世界の平和を考えての事です。
最後はみんなが笑えるような結末に導いてくれますよ」
「まぁ、俺はプラントを裏切った男だからな。君の言うように素直に彼を信用する事は出来ない。が、君の言葉は頭のどこかに残しておこう」
「そうしてください。お互い、表面上は仲良くやっている風に見せなきゃ。でも、俺は出来れば本当に仲良くしたいと思っているんですけどね」
「そう簡単に行かないのが、今のオーブとプラントだ。君らがいくら友好的に歩み寄ってきても、前回の戦闘では、こちらは大きな被害を被ったんだ。デュランダル議長が早々にミネルバをカーペンタリアに寄越してくれたお陰でね」
「確かに、俺達の到着があと少しでも遅れていたら、オーブは陥落していたかもしれません。ですが、我々はこうしてオーブを守る為にやって来た。しかも、セカンド・ステージ・シリーズの新型を多数引き連れて。少し位はこちらを信用して欲しいもんですが――」
「分かったよ。少なくとも、君は悪い人間ではなさそうだ。これから宜しく頼む」
「頼まれました。こちらこそ、お二人に期待していますよ」
ハイネは信頼するに足る人物だろう。キラは彼の話を聞いていて、そう思えた。緊張感の無い印象を受けるが、それは彼の性分だろう。本当の彼は先日の戦闘で見せてもらった。
車はそんなこんなでカガリの別邸に辿り着く。3人は車を降り、屋敷に入ってリビングへ向かった。
「お帰りなさい」
「お邪魔させてもらっているわ」
そこで待っていたのは、先日の戦闘で出会ったミリアリアとレコアだった。ソファに腰掛け、部屋に入ってくるなりこちらに視線を向けてきた。
「ミリアリア!」
「ひさしぶり、キラ。元気にしてた?」
旧知の仲である二人は簡単に挨拶を交わした。
「どうしてここに居るんだ?」
「え? だって、言ってたじゃないですか、何か聞きたければここに来いって」
前回の第二次オーブ防衛戦の折に、バルトフェルドはミリアリアとレコアに遭遇していた。その時はバルトフェルド自身も急いでいたので、適当な事を言って煙に巻いたのだが、まさか本気で彼女達が訪れてくるとは思わなかった。
マリアが紅茶を乗せたトレイを片手に、入ってくる。
「突然の訪問だったけど、私としては嬉しいわ。久しぶりに会えたんですもの」
「そうは言うけどねぇ、彼女達はマスコミだ」
バルトフェルドとしては、ミリアリアの方はいいとして、問題はレコアの方だ。以前にも思ったことだが、彼女にはエマやカツと同じ匂いがする。彼女達が懸念していた事態がもし起こっているのなら、レコアはティターンズに居た可能性もある。
ティターンズがエマの言うとおり地球至上主義者だとすれば、彼女はブルーコスモスに内通しているかもしれない。そんな彼女を目の前にしていたのでは、迂闊な発言は出来ないだろう。そういう考えが、彼の頭の中をドミノ式に駆け巡った。
「もしかして、私達を疑っていらっしゃる?」
そんなバルトフェルドの考えが表に出てしまったのだろう。難しい顔をしているバルトフェルドに向かって、レコアが微笑を浮かべて聞いてきた。
「ん…いや、そういうわけじゃないんだが――」
「確かに、私はこの中では仲間外れみたいですしね、当然の反応だわ。流石は、砂漠の虎と言ったところでしょうね」
「分かっているなら言うが、僕はマスコミ向けに話すことなど何も無いぞ。どうせマスコミのやる事といったら、憶測だけで対象を叩く事しか知らない。僕はそういうのが嫌いでねぇ」
ヤキン戦役の後、各マスコミが雲隠れしたラクスについて散々に書いていた事を思い出していた。確かにラクスは人の上に立ってもおかしくない人物だ。しかし、冷静に見てみれば未だ20にも満たない少女。
かつては人々を纏め上げたとはいえ、それは一時的なものに過ぎなかっただろうし、その時は皆の意識が一つの物事に向かって突き進んでいた時期でもあった。それが上手く作用してあれだけの成果を残せたのだろう。
ラクスには失礼かもしれないが、バルトフェルドは今の彼女に人々を纏め上げる力は無いと思っていた。
ヤキン戦役が終結した以上、様々な意見の出てくる中で彼女の言葉は一つの意見に過ぎないし、何より政治を知らない彼女が仮に纏め上げた所で碌な事にはならなかっただろう。
そうなればマスコミはそれ以上に彼女を叩く事になったはずだ。そんな連中に、餌を与えるような真似はしたくなかった。
「あなたの思ったことだけでも良いのよ。オーブの決断をどう思っているのかとか、この間の戦闘でザフトが遅れてきたこととか――」
「論外だ。それこそ、オーブを叩く為の手段にしかならない」
「残念ね」
あっさりと引き下がるレコア。バルトフェルドが簡単に口を割る人間で無いと判断したからだ。
そんな時、興味深そうに聞いていたハイネが口を挟んできた。
「あんた、マスコミの人? なら、ユニウスの落下について思っていることを教えてくれないかな?」
「ハイネさん?」
キラはハイネがこのようなことを聞くのは、きっとアークエンジェルに乗っていた連合兵の事が引っ掛かっているからだろうと思う。彼等は、ユニウス・セブンの落下をコーディネイターの仕業であると信じていた。
それならば、マスコミはどう思っているのか、キラも興味があった。
「ジャーナリズムは第三者の視点から客観的に物事を捉えるのが本道だわ。だから、地球ではブルーコスモスのプラント首謀論が定説になりつつあるけど、私達は違う。その言葉の裏にある証拠を、私達は求めているの」
「なら、一概にプラントのせいだとは言えないって思ってるわけだよな?」
「そうかもしれないわね。だから何?」
「いや、この際言っておきたいんだが――あ、俺、ザフトのハイネ=ヴェステンフルスね。フェイスだからそこそこ信用できると思うんだけど――」
「ユニウスの落下にプラントは関係ない――そう言いたいんでしょ?」
「そうだ。第一、俺達に地球を破壊する理由が無い。あれはザフトとは関係ない」
「では、何故ユニウスは地球に落ちたのかしら?」
レコアはしめたと思った。ハイネがザフトで、彼のほうから自分に食いついてきたとすれば、何か情報を引き出せるかもしれない。
「それは言えない。しかし、今のプラントとは関係ないとだけは言っておこう」
「それは、過去のプラントには関係が有った…と考えて良いのね?」
「それ以上は自分で考えてくれ。だが、ユニウスの落下は不可抗力だった。それだけは信じてくれ」
ハイネとしては、連合側がユニウス・セブンの落下がプラントの仕業であると信じきっている以上、こうしてマスコミによる情報操作で少しでも相手に疑問を持つように仕向けたい。
ユニウス・セブンの落下がこの戦争の引き金になった背景を考えれば、もしかしたらこの行為で少しでも戦争が早く終わるかもしれない。地球側の被った痛みは先の戦闘で知っているが、ハイネとしても出来れば戦争など早く終わって欲しいと思っていた。
二年前にあれ程苦しい思いをして戦ったのだから。
「さっきも言ったけど、証拠が無ければ意味が無いの」
「そこを何とか…小さなコラムでも良い。その代わり、ミネルバの今の目的地を教えるからさ」
「ミネルバの?」
「おいおい、いくら君がフェイスでも、そんな大事な事を教えてしまって良いのかい?」
やり取りを聞いていてバルトフェルドは苦笑いを浮かべていた。いくら何でも、軍の機密事項を教えるなどフェイスの権限があったとしても問題がある。この男は常識が無いのだろうか。
「この際だから良いでしょう。どうせもうミネルバは到着しているころです。今から向かっても、彼女達が辿り着くころには作戦も終わっているでしょう」
「ん…そうか。まぁ、ザフトじゃない僕が言ってもしょうがない事か」
「で、それでそのミネルバの目的って何なの?」
レコアが言う。
「スエズのマハムール基地に向かっている。そこでローエングリン・ゲートの攻略作戦を行う事になっているはずさ」
「ローエングリン・ゲート…その先にはガルナハンの火力プラントがあるわね。地球におけるエネルギー供給の難しいザフトにとっては、是非抑えておきたいところ。そういうことではない?」
「参ったね。そこまでは言えないけど、その考えであらかた合ってるよ」
そういう意味もあるが、本当の目的は連合のユーラシア大陸における勢力をスエズでストップさせる意味がある。スエズにマハムール、そしてジブラルタル基地の存在を考えれば、連合にとってヨーロッパでの活動がしにくい現状にある。
そこで連合としては、ヨーロッパ方面におけるザフト勢力を一気に鎮めてしまいたい所だったのだが、そうは問屋が降ろさないのがザフトだ。ユーラシア大陸東側が連合の勢力圏になってしまっている現状では、これ以上の侵攻は避けたい。
そこで、ガルナハンを落として火力プラントを押さえ、連合の築こうとしている橋頭堡を崩し、西ユーラシア、ひいてはアフリカにおけるザフトの優位を確保しておきたいのだ。ミネルバは、その作戦を成功させる為にカーペンタリアからスエズに向かった。
「それじゃあ、エマとカツ君は今そこに居るって事ね」
話を聞いていたマリアがふと漏らした名前に、レコアが反応した。
「エマとカツ?」
眉を顰め、マリアの顔を睨むように見やるレコアの表情を、バルトフェルドは見逃さなかった。彼女達の名前に反応したという事は、やはり自分が感じた彼女に対する印象が間違っていなかったということだろう。
そして、それに輪をかける出来事が起こった。二階から、カリダがカミーユを乗せた車椅子を押してリビングに入ってきたのだ。その姿を目の当たりにし、レコアは言葉を失った。
(この反応…やはりか)
レコアを見てバルトフェルドは思う。彼女は間違いなく異端者だ。あるいはティターンズの者かもしれない。ここは彼女の素性をハッキリさせておく必要があるだろう。
「あぁ…っと、レコア=ロンドさん、だったな? 君に聞かねばならないことがある」
「……」
「レコアさん?」
「…ぇ、え?」
レコアはカミーユを見つめたまま固まってしまっていたようだ。バルトフェルドの声も聞こえていなかったようで、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「聞きたいことがあるんですけど、いいですかねぇ?」
「な、何でしょう?」
慌てて取り繕うレコアを見て、間違いないと思った。この反応の仕方は決定的だ。
「あなたはエマとカツのことを知っていますね? そして、そこのカミーユの事も」
「……」
レコアはバルトフェルドの問い掛けにゆっくりと頷いた。彼女もバルトフェルドが何を言いたいのか分かっているのだろう。そして、言い逃れ出来る状況でもないことも分かっていた。
「あなたもエマ達同様に異世界から来たと言うのか?」
「エマ中尉とカツはあなた達の知り合いなの?」
「少しの間でしたが、ここに居ましたよ。その時、彼女達からあなたのような方が居るかもしれないとも聞きました」
「そうだったんですか…」
レコアはこのC.E.世界に来てから、知り合いに誰にも会っていなかった。だから、この世界にやって来たのは自分だけだろうと思っていた。しかし、実際にはエマとカツも来ていて、そして目の前にはカミーユが居る。
ならば、もしかしたら他にも居るかもしれないというエマの推測は、恐らく合っているだろう。
バルトフェルドは続ける。
「では、君はエゥーゴか、ティターンズか?」
「それは…言いにくいわね。両方、と言っておきましょうか」
「両方?」
「はい。それ以上は、言わなくても分かりますよね?」
彼女の口からは言いたくないようだ。だとすれば、彼女はどちらかの組織を裏切っているという事になる。ただ問題は、最終的にどちらの組織にいたかという事だ。
「では、今の君が考えているのはどちらの組織の事だ? それも言えないかい?」
「……」
レコアはその質問には即答できなかった。彼女の中にまだ迷いがあるのか、それともこの場で言うのが危険だと判断したのか。それは分からないが、それでもここでハッキリさせておかなければ彼女がスパイだった場合に厄介な事になってしまう。
やがて、搾り出すようにレコアは口を開いた。
「…正直、自分でも分からないんです」
「そんな事は無いだろう。君はどちらかの組織を裏切ったんだ。なら、その組織の信念に君が引かれたって事だろう?」
「私は主義者ではありません。エゥーゴのスペースノイド解放に興味は無かったし、ティターンズの地球至上主義にも興味ありませんでした」
「だったら何故? 君は戦争をしたいが為に所属していたというのか?」
「それは言いたくありません」
釈然としない表情で言うレコア。どうやら人には言えない事情があるらしい。
「…でも、カミーユのこんな姿を見ていて、私は本当にあれで良かったのかと思ったんです。私は、彼の気持ちを知りながら傷つけてしまった…」
今の言葉が本心からだとすれば、レコアが最終的に就いていた組織はティターンズだということだろう。カミーユはエマの言っていた事が正しければエゥーゴだ。その彼を裏切ったというのなら、そういうことなのだろう。
それならば、ハイネには悪いがこの場から彼女を解放するわけには行かなくなった。彼女がブルーコスモスに内通しているという疑いが強くなったからだ。
レコアは瞳に輝きを失くしたカミーユを見つめていた。彼がこの様になってしまったのは、きっと自分のせいだろう。自分がティターンズに移ってからも、戦場で幾度かカミーユと出会うこともあった。
その時の彼の必死な声を、レコアはハッキリと覚えている。そして、自分は勝手だと言っていた事も。
実際その通りだった。レコアはエゥーゴに参加してはいたが、その内では支えを欲してた。クワトロにそれを求めたが、彼はそういう人間ではなかった。カミーユも自分を気に掛けてくれていたが、そういう対象には見れなかった。
だからこそ、ジュピトリスで出会ってしまったシロッコに惹かれたのだろう。男を求めて仲間を裏切ったなど、恥ずかしくて口が裂けても言えない。それを知っているのは、裏切り者同士のエマだけで十分だ。
レコアは車椅子に座らされているカミーユに歩み寄った。相変わらず生気の無い目で、何処を見ているのかも分からない。視線の先に、自分の姿が見えているのだろうか。跪き、レコアは廃人同様のカミーユを抱きしめた。
ミネルバはマハムール基地に入った。道中、インド洋で仕掛けてきたファントムペインの追撃は無かった。先の戦闘で与えた打撃が効果有ったのだろう。
マハムール基地の司令室で、今後の作戦の概要が伝えられる。話には聞いていたが、マハムール基地からガルナハンにある火力プラントへ向かうためには、ローエングリン砲台のある渓谷を抜けなければならない。
マハムール基地指令、ヨアヒム=ラドルも攻略を試みたようだが、結果は散々だったようだ。その時の損害で減ってしまった戦力を補い、尚且つローエングリン・ゲートを突破する糸口を得るために、ミネルバは呼ばれたのだ。
今回の作戦はラドル指揮下の部隊と、連合に街を破壊されたレジスタンスとの共同戦線となる。そのレジスタンスから派遣されてきた代表の少女と、ミネルバのブリーフィングルームで顔を合わせる事になった。
「こちらが、ガルナハンからやって来たミス・コニールだ。今回の作戦の協力者である」
アーサーが紹介した少女は浅黒い肌の色をし、茶色の髪を後ろで束ねている。服はラフな格好をしているが、若干埃っぽい。どうやらガルナハンの街は相当酷い状況にあるらしい。
「こんな女の子が協力者ですか? 俺達の作戦に邪魔になるだけじゃないですかね」
「シン!」
暴言を垂れるシンをアスランがなだめる。投げ掛けられたコニールはムッとしていた。
「でも、MSを使ってローエングリンを壊すんでしょ? そんな所にゲリラ紛いのやつらが紛れて来ても、邪魔になるだけでしょ」
「あたし達はゲリラじゃない! 連合の暴挙に対抗するレジスタンスだ!」
「変わんないだろ? 名前変えたって、やってることはちょこまかしてるだけで、だから連合なんかに好き勝手にやられるんだよ」
「何だとお前!」
シンの言葉にキレたコニールがシンに掴みかかった。場が騒然とし、とても作戦の打ち合わせが出来る状況ではない。
「アスランはシンを押さえて! 私がコニールさんを押さえます!」
「分かりました」
このままでは戦う前に仲違いして自滅する事になってしまう。それは避けなければならないので、エマはアスランに二人を押さえるようにいう。
「いい加減にしろよ、シン!」
「カツは黙ってなさい! あなたが絡むと、ややこしくなるわ」
「エマさん!」
カツがシンを止めようと身を乗り出したが、エマが押さえた。彼もシンと似たような気性の荒い面を持っているからだ。
「落ち着いて、コニールさん。彼には後できつく言っておくから」
「放して下さい! こいつは一発ブン殴らないと!」
「何でお前はそういうことしか言えないんだ!」
「隊長だってそう思うでしょ! ゲリラに今回の作戦なんて、足手纏いになるだけだって!」
エマとアスランが二人を引き剥がし、なだめる。コニールの方は何とかエマが落ち着けることが出来たが、シンの方は少々手こずっているようだ。アスランが押さえるのに必死になっている。
「止めないか! 彼女達は今回の作戦に欠かせない重要な協力者達だ!」
「ミネルバがあればどうって事無いでしょう! わざわざこんな奴等の手なんか借りなくたって、ザフトだけの方が良いに決まっている!」
「それを決めるのはお前じゃない! 司令官にでもなったつもりか、お前は!」
「何ですかそれ! どう考えたって――った!?」
その時、シンの体を壁に押し付けるアスランの後ろから平手打ちが飛んで来た。それはシンの左頬を的確に捉え、顎にもダメージがいく。かなり打ち慣れた平手打ちだった。
「何す――!」
もう一度返す手で 今度はシンの右頬を薙ぎ叩く。バシンという乾いた音がブリーフィングルームに響いた。それを放ったのはきつい目でシンを睨むエマ。
「口答えしないで。もう一度叩くわよ」
「何の権利があって――!」
言いかけたところにもう一度エマの平手打ちが飛ぶ。顔を横に向けられたシンは、涙目になって直ぐにエマの顔を凝視する。
「黙りなさいと言っています。これは修正よ」
「ぐっ――!」
「わかったら、今の自分を反省して、二度と同じ間違いを繰り返さない事ね」
「オーブから来たってあんたが! どうして俺に――!」
更に続けてエマの平手打ちがシンの顔を横に向けた。アスランが押さえていたのでシンは身動きを取る事が出来ず、まともに4発の平手打ちを受けた。手加減は一切無く、2度ずつ叩かれた両頬の感覚が鈍くなっている。
「安っぽいエリート意識は捨てなさい。そういうのは、あなたの価値観を狭める事になるわ」
「くぅっ――!」
歯噛みし、悔しそうな顔をするシン。対してエマは一寸も表情を変えていなかった。その場に居たルナマリアはそんなエマの表情を見て戦慄し、カツは先ほど飛び込んでいかなかった事を安堵していた。
もしこの騒動に紛れていたら、シンと同じ立場になっていたかもしれないからだ。
そのままシンは押さえつけているアスランを振り解いて、ブリーフィングルームを走り去っていってしまった。その目にはうっすらと涙を浮かべていたのをルナマリアは見逃さなかった。
「エマさん…」
呆気に取られているアスラン。エマの理知的で落ち着いた印象が音を立てて崩れる。まさかこんな暴力的な人だとは思っていなかった。
「アスランも、シンを指導するならもう少し厳しくしないと駄目よ。ああいう子は、ちょっと甘やかすと直ぐに増長するから」
「は、はい――」
アスランにはエマが人の皮をかぶった鬼に見えた。自分もああならなくてはならないのだろうか。他人に厳しくしたことの無いアスランは自信が無かった。
シンは一人ミネルバの甲板で黄昏る。医務室に行き、ガーゼを張ってもらった両頬はまだヒリヒリしている。
「ったく、思いっきり叩きやがって、あのおばん――!」
ガーゼの上から頬を擦り、中々引かない痛みに眉を顰める。
そんな風にしていると、入り口からコニールが入ってきた。シンの姿を見つけたコニールは少しばつの悪そうな表情でシンに歩み寄ってくる。それを見たシンは向き直り、身構えた。先ほどの続きをするつもりなのだろうか。
「何だよ?」
「別に。戦艦なんて珍しいからさ、少し見て回ってただけだ」
「迷子になっただけじゃないのか?」
「何だとお前!」
顔をシンに突き出し、コニールは怒りを顕わにする。しかし、ガーゼが両頬に貼られているシンの顔を見たら、途端に笑いがこみ上げてきた。片方だけならまだ分かるが、両方というのは珍しい。
コーディネイターというのは総じて整った顔をしているものだと聞かされていたので、そんな間抜けな顔をしたシンがおかしかったのだ。
「ククク…!」
「な、何を急に笑ってんだよ?」
「間抜けな顔してるなぁって…アハハ! あぁ〜、おかしい!」
「人の顔を見て間抜け!? し、失礼な奴だな!」
笑うコニールに怒るシン。
「大体だな、お前が突っ掛かって来たから叩かれたんだぞ!」
「自業自得じゃないか。先に馬鹿にしてきたのはお前だろ?」
「だから、ゲリラなんてMS同士の戦闘でどうやって戦うってんだよ? 俺はそういうことを言ったつもりだぜ」
「レジスタンスだ! あたし達にだって戦いようはある。そっちこそ、そんな口の利き方でちゃんとMSを動かせるのかい? もしへぼだったら、承知しないからな!」
「誰がへぼだ! 俺はザラ隊長に目を掛けられてんだぜ?」
「あの堅物そうな人の事かい? …そうは見えなかったけど」
先ほどのやりとりでは、シンはアスランに目を掛けられているというよりは、手を焼かされているという風にコニールの目には映った。それに、口をついてくる言葉が一々娑婆くさい。
どうしてこんな子供みたいな少年がザフトのエリートと呼ばれる赤服なのだろうか。同じ制服のアスラン=ザラと比べると、とても同じ階級の軍人とは思えない。
「そもそも、何でお前はゲリラなんてやってんだよ? 軍にも所属してない一般人が、生身でMSと戦えるわけないじゃないか」
訝しい目で見つめるコニールにシンが聞く。何と言われようとも、どうしてもレジスタンスが何故今回の作戦に加わるのか、分からなかったからだ。逃げ惑うだけの人間が戦争でどれ程無力なのかを、シンは知っている。
但し、その教訓を知った代償は家族の命だった。
彼女も同じなのだろうか。コニールの表情が、少し曇った。
「悔しいからに決まってるだろ。お前はガルナハンの街を知らないからそういうことを言えるんだ。連合の奴等がやって来てあたし達の街は無茶苦茶だ。家も食料も碌に無いのに、仕事だけは山ほど押し付けてくる。
寝る所だって、ベッドも殆どやられて、疲れているのに固い床に体を横にするしかない。それでまともに睡眠も取れないまま、同じ事の繰り返しさ。逆らえば街を焼き払われるし、従っていたってみんなどんどんやつれていって倒れちまう。
だから、今度のザフトとの共同作戦が最後なんだ。これが失敗すれば、きっともっと酷い目に遭わされる。だから、絶対に成功させなくちゃならないんだ」
世界の何処でも、こうして戦争の犠牲になるのは一般人なのかもしれない。軍人も戦争で死ぬ事があるが、それは仕事の上での事だ。しかし、一般人というのはただ巻き込まれて何も出来ずに死んでいくのが普通だ。
それは二年前にシンが身を以て体験している。このコニールという少女は、そうなるのが間違っていると思うからこそ、こうしてささやかながらの抵抗を繰り返していたのかもしれない。シンにも、そう思う気持ちは分かる。
「戦争をするのが仕事のあんたにはわかんないかも知れないけど、あたし達は自由を取り戻すために必死なんだ。だから、あたし達のやっている事を馬鹿にするのは許さないよ」
視線をシンに向け、コニールは強く言う。彼女なりの覚悟がにじみ出ていた。
「確かに…な。その――さっきは悪かったよ。お前の事情も知らなくてさ」
「ん?」
意外なシンの言葉にコニールは思わず表情を緩めてしまった。いかん、いかんと思いつつも、シンにもこういう素直な所があるのか、と感心していた。
「俺もさ、戦争で家族を亡くしているんだ」
「え…?」
「2年前のオーブでさ、どうしようもなかったよ。ただ爆発に巻き込まれて、気付いたらみんなバラバラになってた。形見になるのは、これぐらいしかなかった」
そう言って、シンはポケットの中からピンクの携帯電話を取り出した。少し傷がついていて汚れが付着している。
「それは?」
「マユの…あ、妹の大事にしていた携帯電話でさ、これを逃げてる時に妹が落としちゃって、それを取りに行ってたから、俺だけが助かったんだ」
「そう…だったんだ」
「力が欲しいって思ったよ。あそこで俺がもしMSを動かせていたら、戦ってる奴等みんな追い出して――だから、お前がレジスタンスやってる理由が少しだけ分かったんだ」
コニールの目には、シンが自分と同じ傷を持った少年に映っていた。こういう過去があったのなら、彼がどうしてザフトに所属しているのかが分かる気がする。こうしてお互いに素直になれれば、本当ならもっと仲良く出来るのではないか。
そう思っていたら、コニールは知らず知らずの内に視線を横に向けているシンの顔に向け、貼ってあるガーゼに手を伸ばしていた。そして、一気にそれを引き剥がす。
「いっ――!? な、何すん――!」
シンが大声を出そうとした時、コニールの唇がシンの左頬に触れていた。その感触に戸惑い、混乱して体を硬直させてしまう。
エマに叩かれた腫れがまだ引いていないので、若干の痺れるような痛みはあったが、コニールの意外なほど柔らかい唇の感触は、その痛みを忘れさせていた。
空は茜色とコバルトブルーのグラデーション。まばらな星粒と、まだ低い位置にある月の輝きが2人を見つめている。少しの間、2人の影が重なり、やがてコニールは離れた。
「――だよ……」
やっとの思いで口にしたのは先ほどの台詞の続き。シンは頬に残る感触を頭に焼き付けながら、何故コニールがこんな事をしたのかを必死に考えていた。両頬が熱っぽいのは、エマの平手打ちのせいか、はたまた別の原因か。
対してコニールも少し頬を赤らめている様に見えた。薄闇でよくは見えないが、少し気恥ずかしそうにしているのかもしれない。そして、恐らく彼女もなぜ自分がこんな事をしたのか分かっていないだろう。誤魔化すように、フイっと背を向けて言う。
「何かさ、あんたとは仲良く出来そうな気がしたんだよ。だから――」
「キス…したのか?」
「い、いけないかよ!」
後ろ姿からでも何となく分かるほどに彼女は照れている。震える影は、体をもじもじさせているからだろう。そして、言葉の動揺がシンにそう確信させた。
「いや…こういう事、初めてだから。…あのさ、お前――」
「コニール。あたしはお前じゃないんだぞ、シン」
肩越しに振り返る、コニールの少し上気した顔。少年のような身なりだが、不意に見せた仕草が女の子を感じさせる。とても可愛らしく見えた。
「おま――コニール、俺の名前を?」
「さっき揉めてた時に聞いたんだよ。シン…えっと――」
「アスカ。…俺達、本当に仲良くなれるかな?」
「なれるよ。だって、一緒に連合と戦うんだ、仲良くなれるに決まってるじゃないか」
「そう…そうだよな。なれるよな」
シンの表情が戸惑いから笑みに変わる。コニールの方も気恥ずかしそうな表情から笑顔に変わった。
完全に日も暮れ、空を漆黒の帳が覆いつくす。
「そろそろ夕食の時間だな。シンは行かないのか?」
「あ、あぁ。もう少しだけここに居る。先に行っててくれ」
「分かった」
甲板の出口に向かうコニール。扉の前で立ち止まり、シンに振り返った。
「今度の作戦が成功してさ、戦争が終わったら一度ガルナハンの街に遊びに来てくれよ。何にも無い街だけど、みんな良い人たちばかりだから」
「あぁ、勿論!」
扉を閉め、薄闇の甲板にシンは一人で海を眺めていた。シンが甲板に残ったのは、先ほどの感触を噛み締めたかったからだ。一人締まりの無い顔で呆けている。
その様子を、上の窓からルナマリアが見下ろしていた。その表情は何処か複雑そうである。
「意外と素直な所があるのね」
「エマさん…」
話しかけてきたのはエマ。実は先ほどからずっとルナマリアの後ろに居たのだが、彼女はその気配に気付くことも無くじっと甲板の様子を眺めていたのだ。
「いい傾向かもしれないわ。これで今度の作戦が上手く行けば、シンも少しは成長するきっかけになるかもしれない」
「そ、そうですね……」
愛想笑いを浮かべ、歯切れの悪いルナマリアの返事。エマは少し気に掛った。
ミネルバに来てからまだ日は浅い。だから、元々のクルーであった彼等の関係は知らない。普段のシンとルナマリアを見ていれば、何て事の無い関係に見えていた。
しかし、思春期の少年少女というのはそういうのを表に出さない様に努めているのだろう。彼等の中には隠れた想いというものがあるらしい。
そんな時期が自分にもあったような気がする。青春の最中に居る彼等を羨ましく想う反面、エマは少し髪の毛の寂しくなった、体格のいい髭の艦長のことを思い出していた。
この世界に来て、ジェリドに遭遇し、ほんの少しだけまた会えるのではないかという気がしていた。しかし、その想いが届く日が来るのだろうか。会いたいと思いつつも、それは叶わぬ夢のような気がした。
空が闇に包まれる。青春っていいわね、と心の中で呟きながら、エマは固まってしまっているルナマリアを背にして夕食に向かっていった。今度の作戦は、必ず成功させなければならない。誰の為にも。
第16話は以上です。最近ちょっと煮詰り気味で、投下が遅れました。
今回の話は、次の話と続けて読んでもらいたいので、出来れば今夜にでも続きを投下しようと思います。
てか、また規制に引っかかったorz
10レス前後の連投で規制が発動するみたいですね。
前はもっと緩かったと思うんですけど……
RT投下!
GJ!つーか、シンにはやっぱり修正が似合うw何で本編じゃやらなかったんだろうな(あ、大人がいないのか。見も心も)
今晩の投下もwktkしてます!乙
ヘンケン艦長は髪が寂しかったのかw
いやエマさんもまだまだ若いですよGJ!
でもヘンケン艦長やラーディッシュクルーはMS操縦みたいに派手に技能をアピール出来ないからなぁ。
全員バーガーショップ従業員で出てきたりしてw
待ってましたッー!GJってねぇ!!
GJ!
エマによる修正の後は、甘いラブコメ……
シンがうらやましいw
まさかのコニールENDか?
……ヘンケン艦長、髪の毛が寂しいって……w
では、今晩の投下もwktkしながら待機させてもらいます。
乙!
エマさんはほんとに修正好きだなあww
『ガルナハンの夕日』
ローエングリン・ゲート攻略作戦開始前、ミネルバのMSデッキでインパルスの調整を行っているシン。そこに、コニールがバギーでインパルスの足元にやってくる。
「ちょ、ちょっと! こんな狭い所で車を動かすな!」
「ごめーん」
シンがコックピットから顔を出すと、ヨウランがコニールに向かって叫んでいた。いつもの調子だと思い、ヨウランは無視する。視線をこちらを見上げているコニールに向けた。
「コニール! バギーの調子はどうだ?」
「絶好調さ! この日の為にガスだってケチってきたんだ」
「そうか!」
「ガルナハンで落ち合おう! 絶対にこの作戦、成功させようよ!」
「勿論!」
コニールはシンに告げると、ハンドルを切ってミネルバのカタパルトから外に飛び出していった。先に予定地点に向かった他のレジスタンスのメンバーと合流する為だ。
「よぉ、シン! お前、ちょっと降りて来いよ!」
「何だ?」
下でヨウランが叫んでいる。シンはゴンドラを操作して下に降りる。そこではヨウランがなにやらにやけた顔でこちらを見ていた。
「お前、あのコニールって子と何かあったんだろ? その湿布だって、あの子と揉めてエマさんに殴られたからって話だったじゃないか?」
「別に…何だっていいだろ?」
思い出すだけで顔が熱くなってくる。頬の赤らみは湿布で誤魔化せるだろうが、まさか自分がこれ程にまで純情だとは思わなかった。女性に対して人並みに興味はあったつもりだったが、やはり経験が無いのがいけなかったか。
「いいや、俺は許さないね。そんな不埒なシンには俺のチューで地獄を見せてやる!」
「や、止めろよ、気持ち悪い!」
「へぇ、シンとヨウランってそういう関係だったんだ?」
ヨウランのチューなど冗談ではない。せっかく昨日のコニールのキスがあったというのに、こんな気色悪いことをされたら甘美な想い出が台無しだ。
それだけは避けなければならない、と抱き付こうとするヨウランに抵抗していると、カツが通りかかった。
「何言ってんだ! 俺はノーマルだ!」
「そんな連れない事言うなよ、シンきゅん〜。俺とお前の仲じゃないか〜」
「黙れって…こらっ、変な所に手を入れるんじゃない!」
「やっぱ、そうなんじゃないか」
「冗談言う前に助けろよ! ――くそっ!」
シンはヨウランの顎を突っぱねて、無理やりに引き剥がす。そのままローキックを見舞ってヨウランを更に突き放した。
「痛い! じょ、冗談だって! ちょっとお前をからかっただけじゃないか、ラッキースケベ」
「その呼び方も止めろ! 何でちょっと女の子と話しただけでラッキースケベなんだ!」
「だって、そうだろ? こんな荒れた土地でさ、女の子といい感じになっちゃうなんて、ラッキーだろ? それでシンのような奴だったら、むっつりスケベに決まってるじゃないか」
「だから、本当に何でもないって! そんな事言ってる暇があるんなら、さっさとインパルスの調整終わらせろよ!」
シンはそっぽを向いて腕を組む。ムッとしたように頬を膨らませようとしたが、まだ少し残る腫れの痛みで上手く膨らまなかった。
「ひひひ、見ろよ、こんなにムキになってよ?」
「やっぱりあのコニールって子の事が気になってるんじゃないか」
カツとヨウランが肩を組み、にやけ顔でシンを見ている。
「な〜?」
「な〜?」
「何が“な〜?”だよ…出撃前なんだから準備してろってんだ!」
シンはゴンドラに乗り込み、再びコックピットの中に入っていった。
「おっと、これ以上はシンのへそ曲がりの機嫌が悪くなるだけだからな、この辺にしておくわ。ミネルバを守ってくれなくなっちまう」
「じゃあ、僕もムラサメの準備があるから」
シンのむくれ面をみて、ヨウランは作業に戻る。一方のカツも、ヨウランに別れを告げて自分のムラサメの下へ向かった。
(シン、あいつ恋したのか?)
シンの態度を鑑みる限り、コニールに対していい感情を抱いている事だけは確かだろう。恋する少年の気持ちが分かるカツとしては、そんなシンが暴走しないかどうかが心配だった。
そもそも、カツがそんな心配をするのはおかしい。彼はグリプス戦役で出会ったサラ=ザビアロフという敵の少女に恋をしてしまった事があった。
そのせいで何度かアーガマを危機に晒したり、命令違反をしたりして周りに迷惑ばかり掛けていた。
(…胸騒ぎがする――サラが来た時と同じだ)
何か良くない事が起こるような気がした。カツとてニュータイプの端くれ。たまにではあるが、変な予感めいた感覚がすることもある。それが、何故か今来た。シンの身に何か起こるのだろうか。
カツが恋をしたサラ=ザビアロフは、最後はシロッコを庇ってカツに殺された。今でもその時のことを思い出すと胸が締め付けられる思いに駆られるが、自分がこの世界にいるのならもう一度彼女に会えるのではないかという期待はしていた。
「大丈夫なのか、あいつ――」
出撃の時間は直ぐそこまで迫っている。カツは急いでムラサメの下へ向かっていった。
「作戦開始時間まであと5、4、3、2、1――ラドル隊が前に出ます」
「ローエングリン・ゲート攻略作戦、スタート!」
ミネルバが浮上し、その上下左右からラドル指揮下の部隊が進軍を開始する。空にはバビ、地上からはバクゥ・ハウンドとガズウートが編隊を組んで進む。
「MS隊の出撃お願いします」
『了解。セイバー、出る!』
ミネルバのカタパルトハッチが解放され、各MSが出撃する。
「ルナマリアとレイはラドル隊と協力してミネルバの援護。エマと――」
『アスラン隊長、僕をシンと一緒に前に出してください』
「カツ?」
アスランが各機に指示を出していると、カツが通信を繋げて告げてきた。作戦では前回同様にカツはエマと一緒に周辺の警戒を任せるつもりでいたが、どういうつもりだろうか。
「この前のブリーフィングで決めたはずだが?」
『アイツと僕が仲悪いままでいて良い訳でもないんです。この機会に――』
「とは言うが、相手はバリア持ちの大型MAだぞ。――やらせる価値はあるかもしれないが」
『カツ、こんな時に冗談を言うのはお止しなさい。部隊全体に迷惑が掛るわ』
アスランとのやり取りを聞いていたのか、エマが回線に割り込んできた。彼女としては、カツに迷惑を掛けさせるのは監督者として歓迎できない。
『俺はいいですよ、別に。誰が相棒でも、MAを落とせば文句ないじゃないですか。それなら、誰とだってやれるって所を、俺は証明しますよ』
「シン?」
更に割り込んでくるシン。そんなシンの言葉がアスランには意外だった。彼とカツの反りが合わないのは知っている。普段のシンなら、そんな関係の悪い人間とコンビを組むなどしないはずだ。だが、今回のシンは何かが違う。何処と無く張り切っているような気がした。
「分かった。なら、やって見せろ、シン=アスカ、カツ=コバヤシ」
『ありがとうございます』
カツは一言述べて敬礼した後、通信を切ってMA形態にムラサメを変形させた。インパルスとムラサメが、前線に向かって突き進む。
「エマさんは俺とミネルバの道筋を確保します」
『ミネルバのタンホイザーを見せるためにエスコートするのね』
「そういうことです。…レイとルナマリアは先ほど伝えたとおりに」
『了解』
アスランが指示を出し終えると、ミネルバからタンホイザーの砲身が浮き出てくる。こうしてタンホイザーを敵に見せておいて、注意をミネルバに集中させる為だ。
連合側は、ミネルバの姿を見て攻撃を集中し始めた。空中のバビを中心にウインダムと交戦し、地上からバクゥ・ハウンドとガズウートが砲撃を繰り返す。レイとルナマリアもガナー・ウィザード装備のザクで迎撃していた。
そんな襲ってくる連合のMSの中、インド洋で遭遇した黒いMSが姿を現した。スローター・ダガーだ。
「あの黒のMSはジェリドともう一人! 先回りしていたの?」
『エマさん! あれはあなたの世界の方が乗っているんですね?』
「そう思います。でも――」
対する二機のスローター・ダガーもセイバーとムラサメを確認した。そのコックピットに座るのは、女性達。白金に近いホワイトブロンドのショートカットの女性と、エキゾチックな感じのするビリジアンのセミ・ロングの女性だ。
「先行していったインパルスともう一機はゲルズゲーを叩くつもりだろうが――」
ブロンドヘアーの女性、ライラ=ミラ=ライラはインパルスとカツのムラサメを見逃した。どうせ行かせてしまっても、たった2機ではリフレクターを持つゲルズゲーには敵わないだろう。
「出来るのかい? パイロットは坊やだと聞かされているが――」
『ライラ大尉、あの2機はジェリドからの報告にあったミネルバの艦載機です』
「見えているよ、マウアー少尉。ジェリドからの報告が間違っていなければ、ムラサメの方にはエマ中尉が乗っているはずだ。なら、あたしがムラサメの相手をする。仕掛けるよ!」
『了解です』
2人のスローター・ダガーは一目散にセイバーとムラサメに躍り掛かる。ここで最も厄介なのは、この2機だ。だとすれば、先にこの2機を撃墜してしまえばミネルバは裸も同然だ。後の部隊は他の味方と協力して当ればどうとでもできる。
「来た! アスラン!」
『混戦です! 固まってください!』
セイバーがプラズマ収束ビーム砲で2機のスローター・ダガーに牽制の一撃を浴びせる。ライラ達はそれを軽くかわしたが、衝撃で機体が少し揺れた。
「チッ! 賢しいザフトの馬鹿力かい!」
『大尉、アグニを使います』
マウアーのスローター・ダガーはランチャー・ストライカー装備で出撃していた。ライラ機がマウアー機の射線上から身を引き、太めの複相ビームがセイバーとムラサメに伸びる。
「クッ! 敵も砲撃戦用の装備で出てきた! こちらは――」
『アスラン、ランチャータイプの方を任せるわ! 接触して誰が乗っているのかを確かめます!』
「了解です。…ここは各個で戦ったほうがいいのか」
エマのムラサメが仕掛けるのと同時に、セイバーはフォルティスビーム砲をマウアー機に向けた。
ライラ機はムラサメが向かってくるのを見て、それに乗っているのがエマだと直感した。こちらの正体を突き止めようとする衝動に見えるのは、その証拠だろう。
「来るのかい、エマ中尉!」
「それに乗っているのは誰? またジェリドなの?」
ライラのスローター・ダガーは基本的なエール・ストライカー装備。よって、同じ様な装備のムラサメとは同じ土俵での戦いとなる。ライラはムラサメがビームサーベルを抜いて向かってくるのを見て、自身の機体にもビームサーベルを握らせた。
そのまま2機はビームサーベルを振り上げ、交錯させる。
「それに乗っているのがジェリドなら引きなさい! ここにカミーユは居ないわ!」
『やはり、その声はエマ中尉。サイド1で会った時以来じゃないか? それに、カミーユってのは一緒に居た子供だね? あの坊やもこっちに来てるってのかい』
「ジェリドじゃない…その声はガルバルのライラ大尉!」
エマは至近距離でバルカンを発射するが、ライラ機は素早い動きで機体を後退させてビームライフルを取り出した。慌ててエマもビームライフルを構えさせる。
「ライラ大尉! 何故この世界で戦争なんかやっているんですか? あなた程の人なら、こんな所で無茶やっても空しいだけだって、分かってるはずです!」
『そっちもやってるじゃないか? 訳も分からずこんな世界に飛ばされれば、生きて行くためには飯を食えなくちゃならない。だから、あたしは軍に入ったのさ』
「それは言い訳です! 異世界の私達が、こんな所で世界に介入していいわけが無いでしょう!」
お互いがビームライフルで牽制をかけ続ける。実力が拮抗しているのか、ビーム同士が交錯するだけで殆ど相手に当らない。
『それは中尉のものさしだね! 戻り方が分からない以上、あたし達はもうこの世界の住人だって事なのさ! だったら、何をしようがあたしの自由じゃないか?』
「子供の理屈を捏ねるのか、ライラ大尉は!」
ライラの言い分に苛立つエマ。そうだとすれば、ジェリドも同じ理由で連合軍に入ったのだろうか。自分の世界のMSを持ち込んでいないだけマシとも思えるが、それでもこの介入はエマの良心に反している。
もし自分の世界の技術情報をもたらすつもりならば、ここで食い止めなければならないのが今の自分の役目だろう。
他方でマウアー機と交戦するアスラン。マウアーもグリプスを戦った戦士である。ヤキンの英雄と呼ばれるアスランに対しても、一歩も引けを取らない戦いを繰り広げていた。
「敵はダガーの特別機なのか? インド洋でエマとカツが交戦した連中なら、セイバーでこうまで苦戦するなど――!」
『動きが鈍いな、セイバー!』
「女性の声…敵は女性なのか?」
聞こえてきた声が女性のものである事にアスランは動揺した。アスランにも一つの戦争を経験した自信がある。だから、ナチュラルには尚の事、女性に遅れを取るつもりは無かった。
しかし、その認識は改めなければならない。こうして自分と対等に戦える敵の女性が出てきたということは、エマ達の世界ではそれが普通だったのだろう。
「エマもあれだけ出来たんだ…同じ世界の同じ女性なら、これくらい出来て当然だという事か!」
『今更そういう感じ方に変えようとも、既に遅い!』
正確な狙いのアグニの光がセイバーの右肩アーマーに掠り、ビームサーベルが一本吹き飛んだ。
「やらせた!? ええい!」
セイバーはMAに変形し、ロール回転しながら突撃し、フォルティスビームを連射する。高速の突撃に、マウアーのランチャー装備のスローター・ダガーでは回避は困難だ。
「敵は焦っている。こちらの力量を見誤ってくれたお陰で、こういう攻撃は当らずに済む!」
しかし、マウアー機は岩陰に隠れてセイバーからの攻撃をやり過ごした。地上から狙い撃つ形になっているが、最初のコンタクトの時にマウアーの力量を測り間違えていたアスランの攻撃などに当るマウアーではない。
地形を利用して身を隠しながらセイバーを攻撃し続ける。
「くっ! 相手は地の利を生かして、飛べるこちらが有利なのを誤魔化そうとしているのか? …冷静になれ、アスラン。機体の性能では、ロールアウトしたばかりのセイバーの方がダガーよりも上のはずだ!」
岩陰に隠れるスローター・ダガーを真上から急襲する為に、アスランはセイバーを上昇させる。マウアーはそれに気付き、上に向かってランチャーを構えた。
「上に逃げた? 太陽を背にするなど!」
アグニを連射し、セイバーが襲ってくるであろう方向に向かってビームを浴びせる。太陽の光で目が眩んだが、牽制するには十分だ。
マウアー機の上空から一気に下降するつもりでいたアスランだったが、マウアーからのアグニの連射に襲われて、機体のバランスを崩してしまった。
うまく隠れたつもりだったが、こんな使い古された攻撃方法では何とかできない相手らしい。インド洋でエマがライフルを失ってしまった理由が良く分かる。
「下から先手を取られた!? …それにしても、相手は量産機のアップバージョンだというのに――この間のウインダムといい、連合は量産機でこちらに対抗する力を身につけたというのか!?」
セイバーは隊長である自分に託されたザフトの最新鋭機だ。それがダガーの特別機を相手にこうまで苦戦するとなると、特別な何かが作用している気がしてならない。
尤も、それはアスランの気のせいなのだが、それだけマウアーはティターンズのパイロットとして優秀であったという事だった。過去にはジェリドのガブスレイと協力してカミーユのガンダムMk-Uを戦闘不能に追い込んだこともある。
「砲撃戦の機体なら、接近してしまえば終わりだろう!」
アスランはセイバーに左肩アーマーからビームサーベルを引き抜かせた。そのままマウアーのスローター・ダガーに突撃をする。
「近付いてくる…大尉はアーガマの女を相手にしている。なら、ここは!」
マウアーは冷静に状況を判断し、アグニを突撃してくるセイバーに向けた。
「やらせるか!」
マウアー機の構えを見たアスランはバルカン砲で牽制し、マウアー機に最接近する。ビームサーベルのレンジ内にスローター・ダガーを捉え、大きく振りかぶった。
「見え見えだ!」
「かわした! …跳んだのか!?」
しかしマウアー機はセイバーの動きを見切った上で自機のバーニアを噴かせ、セイバーがビームサーベルを振りかぶるのと同時に上昇していた。
「くっ! しかし、俺はここから――うっ!」
シンの動きを思い出し、アスランはそのままスローター・ダガーを追撃に掛ろうとした。自分に足りてないのは思い切りの良さだ。シンの様に動ければ、もっと良い働きが出来る。
しかし、追撃しようとスローター・ダガーを確認した所でアスランは一瞬だけ怯んでしまった。マウアー機はこちらに向けてアグニを構えたまま跳ねていたのだ。
この接近した状態で追撃を掛けて、もし撃墜する前にアグニを撃たれてしまったらどうしよう。直撃を受ければ、アスランはそこまでだ。かわしきれる自信はまだ無い。
そんな風に考えていたら、知らず知らずの内にアスランはセイバーを後ろにジャンプさせていた。折角の追撃の機会であったが、アスランの意気地なしの根性がセイバーを下がらせてしまった。
「距離を開けた? 向かってくると見せかけて、こちらの砲撃を牽制しようというのか?」
アスランの動きはマウアーにはちぐはぐに見えていた。ある意味優柔不断な動きは、傍目から見れば規則性のない出鱈目な動きだ。それに、マウアーは騙されていた。
対するアスランにはそんなつもりは毛頭無い。スローター・ダガーの持つアグニの威力を考えれば、それを受ける前に早めに決着を付けたいのが本音だ。
しかし、マウアーを相手にあの一撃を掻い潜り、ビームサーベルのレンジまで接近できる自信がまだ無かった。かつて英雄と称されていようとも、アスランは現場に復帰してまだ日が浅い。
だからこそ、アスランはブランクを取り戻すためにシンのような情熱が欲しかった。
「躍起になるのだけは駄目だ…ここは確実に仕留めないと、あのランチャーにやられる事になる――!」
カガリへの誓いもある。戦いで死ぬなど言語道断だ。敵は倒さねばならないが、自分が死ぬ事も許されない。アスランは歯噛みしつつ、スローター・ダガーを睨みつけた。
先行するシンとカツ。敵の大多数はタンホイザーを見せびらかしているミネルバを落とす事に躍起になっていて、たった2機でゲルズゲーを落とそうという彼等には殆ど見向きもしなかった。
それだけ、連合軍はゲルズゲーの防御性能に自信を持っている。
「いいぞ、タンホイザーを出した事でミネルバに攻撃が集中している!」
『残ったルナ達は大変だろうけどな』
「分かってるさ、そんな事。だから、早くローエングリンを潰さなくちゃならないんだろ?」
『タンホイザーの牽制が来るぞ』
その時、ミネルバからの長距離狙撃が、彼等の後ろからローエングリン砲台に向かって放たれた。恐らくこの一撃はゲルズゲーに弾かれてしまっただろうが、これでゲルズゲーの目もミネルバに向けられる事になるだろう。
そうすれば、ゲルズゲーも前に出てくる。砲台に向かう進路がこの渓谷しかないのならば、連合軍も油断して砲台の防御に回している部隊も前に出してくるはずだ。
作戦としては、手薄になったローエングリン砲台をレジスタンスの面々に破壊してもらう手筈になっていた。先に出て行ったコニール達は、敵に見つからないようにローエングリン砲台の近くに身を隠しているはずだ。
『で、何でお前が俺と一緒に前に出るって言いだしたんだ? 俺と仲良くなりたいだけじゃないだろ』
シンの疑問は尤もだ。カツは本来なら組みなれているエマと行動を共にするのが最も効率がいいはずである。それが、何ゆえにこうして仲の悪いシンと一緒に行動をしたがったのか。シンにはカツの考えていることが分からない。
「別に――女の子の事ではしゃいじゃってるシンが見てられなかったからさ」
『はぁ? お前にそんな事を心配されるいわれなんか無いだろ。それに、俺は別に浮かれてなんか居ない!』
「本人に、自覚が無い所が危ないって言ってるんだ。――こちらの思惑に乗ってきてくれた? …来た!」
パネルのレーダーに大型の機影が映し出される。これがブリーフィングで見たゲルズゲーというリフレクター持ちのMAだろう。その威容はダガーの上半身に昆虫のような下半身をくっつけた、醜悪なデザインのMAだった。
「なんてMAだ! タランチュラに人型を乗っけるなんて!」
『タランチュラ…そうか、こいつはここで蜘蛛の巣を張ってやがったんだ!』
「何だって?」
『いきなり宣戦布告してきた連合の考えそうな形じゃないか? こんなデザインなら、人が乗っているなんて思えない』
「それはそうだけど…接近戦を挑むしかないと見るけど、どう思う?」
ゲルズゲーの周囲には護衛のMSが数機ついている。それは恐らくゲルズゲーが単機による任務遂行を考えられていないMAである証拠だろうが、堅牢なシールドを持つ相手には接近戦を挑むしかない。だからこそ、カツは護衛のMSが邪魔だと思った。
「その為に、こいつを持ってきたんだ」
ゲルズゲーがでてくると分かっていた時点で、シンはソード・シルエットのエクスカリバーを持ってきていた。対艦刀にも使えるその巨大な一振りは、ビームシールドを持っているゲルズゲーに対して有効だ。
「カツは他のMSをMAから離せ!こいつは俺が落とす!」
インパルスにエクスカリバーを構えさせ、ゲルズゲーへの突撃準備に掛る。
(そして、コニールのガルナハンを解放するんだ!)
敵からのビームをかわしつつ、シンはゲルズゲーに躍り掛かる。カツもそれを援護しながら周囲の護衛MSに対して攻撃を仕掛けた。
その頃、コニール達レジスタンスは岩陰に身を潜めて戦闘の成り行きを見守っていた。そして、ゲルズゲーが居なくなった時を見計らい、ローエングリン砲台に向かっていく。それぞれ、ザフトから支給されたロケット砲や手榴弾などの武器を携えている。
「これでこいつを潰せりゃ、俺達は自由だ! もう少しだな、コニール!」
「うん! シン達が頑張ってくれているお陰だよ!」
コニールの胸の鼓動が高鳴る。もう少しで、苦しかった連合からの圧力から解放されるのだ。貧しく辛い日々を暮らしてきた。それが、この乾坤一擲の一撃で終わるのだ。
「やろうよ、みんな! これで連合をガルナハンから追い出すんだ!」
「おぉー!」
雄叫びを上げ、レンジスタンスの駆るバギー車やトラック十数台が一気に崖を下っていき、ローエングリン砲台の下までやってくる。
「今だ! ローエングリンに向かってありったけの弾をぶつけてやれぇ!」
手持ちの火器ではあるが、動かないローエングリンを潰すには十分だった。撃ち出された弾がローエングリンに向かって放たれ、命中して大きな爆煙を撒き散らした。爆破の衝撃で崖が崩れ、小石や土埃が振ってくる。
少しして炎が上がり、ローエングリンが爆発を始めたのを確認すると、蜘蛛の子を散らすように一目散にレジスタンス達は逃げていった。
これで、最大の目標であるローエングリンの破壊は成功した。後はこれをミネルバに報告し、敵が撤退するのを待つばかりである。
「やったな、コニール! これで俺達は自由だ!」
「そうだよ、やったんだよ! ガルナハンの街に平和が戻るんだ!」
バギーを運転しながら、後ろから歓喜の声を上げる仲間と一緒に喜びを分かち合う。これでミネルバに戻る頃には作戦も終了しているはずだ。シンに会ったら、今度は右の頬にキスをしてやろうと思っていた。
(やった――やったんだよ、シン! あたし達、やれば出来るんだよ!)
コニールは、この作戦を通じてシンともっと仲良くできると感じていた。ミネルバとマハムール基地の部隊、そして自分たちレジスタンスが力を合わせて連合軍を打ち破ったのだ。
この結束力があって、仲良く出来ないわけが無い。逸る気持ちを抑えつつ、コニールはミネルバへの道を飛ばす。
ゲルズゲーの部隊と交戦するシンとカツ。しかし、相手は護衛のMSと鉄壁のMAである。若い二人では中々思うように攻撃が出来ていなかった。
「何やってんだカツ! 囮になってMSをこいつから引き剥がすのがお前の役割だろ! こんなんじゃ、こいつは落とせない!」
『無茶を言うな! こっちは一人で4機のウインダムを相手にしているんだぞ! 偉そうな事を言う前に1機や2機のMSぐらい避けてあれを落とせよ!』
ちぐはぐで動きの合わない2人。カツのムラサメでは4機のMSを相手に囮になるのは難しい。せめてセイバーのような大出力のビーム兵器でもあればもっと目立てただろうが、これでは巨大剣をもつインパルスの方が目立ってしまっている。
かくなる上は動きで敵を引き寄せようとも考えたが、自分はアムロ=レイの様に天才的なMSの操縦技術を持っているわけではない。
「僕とでもやれるって事を証明するんじゃなかったのか!」
『カツがついて来たいって言ったんだろ! ――ん?』
その時、ミネルバからの通信が入った。交戦中のこのタイミングで入ってきたということは、もしかしたら朗報かもしれない。
「こちらシン=アスカ! ミネルバどうした?」
『レジスタンスの人達からローエングリン破壊が成功したとの報が入りました! 残存戦力の掃討に入ってください!』
「そうか、了解!」
通信を切り、シンは安堵した。これでローエングリンを撃たれる心配は無くなった。
「コニール達がやってくれたんだ、コニールが――」
シンの頭の中にコニールの顔が浮かび上がってきた。それだけで俄然やる気が出てくる。
「カツ! こんな所でもたもたしてる場合じゃないぞ! もうローエングリンは無いんだ!」
『僕だって聞いてた! そんな事言われなくたって分かってる!』
シンの嬉々とした声が癇に障ったのか、カツは不機嫌そうな声で返した。カツだって、好きな女の子のためにはしゃぎたい。シンにはコニールという背の小さい可愛らしい子が居るが、カツの好きなサラはまだ合えていない。
会える保証もないが、いつか会えたらシンに自慢してやろうと思っていた。
その時のカツは、サラが自分に靡(なび)いているかどうかなどは考えていなかった。はしゃぐシンを見て、対抗意識を燃やしているだけに過ぎない。
「そうと分かったらこんな奴! ――いけぇぇぇ!」
エクスカリバーを構え、インパルスはゲルズゲーに飛び掛る。ウインダムが1機、妨害しに掛ってきたが、多少の損傷は覚悟の上だった。一発貰った所で、その程度で落ちるインパルスではない。
そして、損傷を負ったとしても、後のウインダムはカツに任せてしまえばいい。愚痴を零してはいたが、流石はミネルバに特別に編入されてきただけあり、いい動きをしているのは認めていた。
彼なら、たとえ不利な状況でもナチュラルのウインダムに遅れを取る事などないだろう。
『待って、シン! そんなの無謀だ!』
「カツは俺とコンビを組むって言ったんだ! だったら――!」
案の定、インパルスはウインダムのビームライフルの一撃を頭部に受けてしまった。ビームの光に溶かされ、インパルスのメインカメラが機能を失う。コックピットの中のモニターも、正面が映らなくなった。
しかし、そんな事はもうどうでもいい。狙いは既についている状態だ。後は勢いに身を任せ、ゲルズゲーをエクスカリバーで貫くだけだ。
「――!?」
そう思ったのも束の間、どれだけ突っ込んでも手応えがない。不審に思い、何とか生きているレーダーでゲルズゲーの位置を探ってみた。
「…真上?」
何の事かは分からない。しかしレーダーのゲルズゲーの反応はインパルスの反応に重なっている。どういうことなのかを考えていると、大きな衝撃がコックピットを襲った。
「な、何だ!?」
危険と思いつつもコックピットハッチを開き、外の様子を確認する。すると、何とゲルズゲーは蜘蛛の足でインパルスに正面から組み付き、地面に落とそうとしていた。シンが気付いた時には既に遅し、地面に突き落とされる。
「ぐぁっ――!」
地面に衝突した衝撃で、シンの体にシートベルトがめり込む。その強烈な痛みにシンは思わず呻いた。
カツは、ウインダムと交戦中にその様子を見ていた。
「シンのお調子者! 迂闊をやってるから――!」
口では文句を口にしているが、何とかしなければならないと思っていた。このままではシンはやられてしまう。
「――ん?」
と、その時一台のバギーがやって来た。それはミネルバへ戻る途中のコニールのバギーだ。
「こんな所にあんなもので――何をするつもりなんだ!」
「あれにはシンが乗ってるんだよ! やられそうになってんだ、助けなきゃなんないだろ!」
「だ、だがコニール! こんなバズーカ一つじゃ――」
「運転代わって! あたしがやるんだから!」
「うわわっ!」
コニールは同乗していた仲間に運転を任せ、バズーカ砲を構える。そして、それをゲルズゲーに向かって放った。
「こいつ! シンから離れろ!」
コニールの放った弾はゲルズゲーに直撃したが、リフレクターを持つゲルズゲーには傷一つ付けることが出来なかった。しかし、ゲルズゲーの注意がコニールのバギーに向いて、インパルスの上から離れた。
「こっち来た!」
「に、逃げるぞコニール! これ以上は無理だ!」
慌ててアクセルをべた踏みにし、バギーを全速力で走らせる。
「シィィン! 早く逃げろぉッ!」
「だ、駄目だコニール! そんな事をしたら――」
バギーで逃げるなど巨大兵器相手には所詮無意味だったのだろうか。ゲルズゲーにはビームライフルもビーム砲もある。遠距離攻撃が出来るのだから、結果は見えていた。
「きゃああぁぁぁ――!」
何とか蛇行運転をしながらゲルズゲーのビームを避けていたコニールのバギーだったが、爆風に巻き込まれてバギーごと吹き飛ばされてしまう。
「あ――あぁッ!?」
シンの瞳の中に、バラバラに吹き飛んでいくバギーと、宙に舞うコニールの姿がハッキリと見えてしまった。視線はコニールに釘付けになり、その軌道を目が追う。
時間が長く感じた。コニールの上着がはためくのが、やけにハッキリと分かる。一緒に吹き飛んだ土埃や細かい石の礫、バギーの残骸が、まるでシンにそれを見せまいとするかのようにコニールの姿をちらちらと隠す。
そして、もうこれ以上見ていられないと感じた頃、コニールの肢体が地面に叩きつけられ、土埃を上げて跳ね滑る。ニ回転、三回転した所でやっと止まり、ぐったりとしたコニールが土埃の中から出て来た。
シンの目が見開かれる。
「こ――こいつぅッ!」
シンの頭の中で何かが弾けた。瞬間に怒りが爆発し、エクスカリバーを携えて再びゲルズゲーに飛び掛る。今度はもう外せない、迂闊な突撃は出来ない。
「ぶっ殺してやるぞぉッ!」
シンは鬼になった。剥き出しになった犬歯が悪魔の形相を思わせ、充血した目玉が飛び出さんばかりに大きく目蓋を上げる。バイザーの裏側に、咆哮で飛び散った唾が付着した。
インパルスのエクスカリバーがゲルズゲーに突き刺さる。そのまま勢い良く振り上げ、ゲルズゲーを真っ二つに切り裂いた。爆発するゲルズゲーを尻目に、インパルスがバーニアを吹かして跳躍する。
「お前もぉッ!」
バランスが取れていないのか、インパルスの跳躍はフラフラしている。しかし、長大な大剣を振りかぶり、ウインダムの胴体を両断し、続けざまにもう一機のウインダムも縦に切り伏せた。
「シン――くっ、落ちろぉッ!」
シンの鬼気迫る動きに、残りのウインダムは怯んでいる。その隙を突き、カツがビームライフルでそれらを纏めて撃墜した。
一方、その頃ライラの元に通信が入ってきた。部隊指揮官からのもので、ライラは眉を顰める。
「――ん? ローエングリンが落ちた? 撤退命令が出たのか。なら、あたしもジェリドの事は笑えないね」
『何ですって?』
「エマ中尉、今回はあたし達の負けだ。でも、次もこう上手く行くとは思わないことだね。…マウアー少尉、撤退する!」
マウアーのスローター・ダガーを引き連れ、ライラ機が撤退していく。それに釣られる様に、他の生き残った連合軍も撤退を開始した。
「あの女性…これがエマの世界の女の力か…」
マウアーが撤退して安堵の溜息をつくアスラン。戦ってみて、マウアーが普通のナチュラルよりも成熟したMSパイロットであることが分かった。確かに、エマの世界ではMSが世に現れて十数年が経過している。
MSの歴史が2年そこそこのこの世界の事情に比べれば、彼女達の方がMSの扱いにかけては一枚も二枚も上だろう。
去っていく敵の後ろ姿を見つめ、アスランはゆっくりと体をシートに預けた。
念の為支援
支援
再支援
もうひとつ支援!
クロスドライブの運命にパルマハムなかったらしいぜ支援
コ、コニール死んだ!?
続きが気になるので支援!
インパルスが四つん這いになり、コックピットからシンが飛び出してくる。カツは、それをムラサメのコックピットの中から見ていた。シンが駆け寄るのは勿論コニールのところ。彼女は、無事なのだろうか。
「は――!」
コニールを抱きかかえるシンが首を横に振っている。がくんと首を下に落とし、肩を震わせていた。駄目だったのだろう。
シンの後ろ姿がとても小さく見えた。カツは、動こうとしないシンを待つことにした。待っていてあげるのが、仲間としての自分の役目だろう。先程から、帰還命令が出ている。後でタリアかエマ辺りに怒られるかも知れないが、それは自分が全て受けようと思っていた。
作戦が終わり、歓喜に沸くガルナハンの街。その騒々しさから逃げるように、夕日が照らすミネルバの甲板にシンは出ていた。柵に体を預け、夕日を見つめる。
コニールが居ないのに、何が嬉しいものか。シンにとって、ザフトの作戦成功よりも、コニールを守れなかった後悔の方が遥かに大きい。彼にとって、今回の作戦は死に等しい敗北だ。
ふと、後ろから扉の開く音がした。ふいにシンはその方向に顔を向けてみる。すると一瞬、コニールの幻が見えた。しかし、それは直ぐに消え、現れたのはルナマリアだった。シンは目を擦ると、視線を下に外してルナマリアに背を向けた。
「シン――」
「何しに来たんだよ?」
何かを言おうとしたルナマリアの言葉を遮るように、シンは言う。まるで、ルナマリアに何も言って欲しくないかのように。そんな意図が透けて見えたのか、ルナマリアは視線を落として言おうと思っていた言葉を飲み込んだ。
「俺を慰めに来たんだろ? コニールが死んだから」
「分からない……」
「分からない? じゃあ、どうして俺のところに来たんだ?」
棘のようなシンの言葉。笑い混じりでしゃべっているが、ルナマリアには痛いほど分かっていた。シンはかつて無いほど落ち込んでいる。口では強がっているが、顔をこちらに向けないのが何よりの証拠だ。
シンが落ち込んでいるということは、もしかしたら亡くなった家族にも影響しているかもしれない。シチュエーションは似ている。しかし、流れ弾に巻き込まれたシンの家族に対し、コニールは戦闘に参加していて死んだ。
「あのさ、あたし――」
「触るな!」
ルナマリアがシンの肩に手を伸ばすと、急に荒げた声でシンが怒鳴った。それに驚いてルナマリアは思わず体を一回ビクつかせ、差し伸べた手を引っ込めた。
「なんで――?」
「…今俺に触ったら、ルナの事殴るかもしれないだろ」
「な、殴る? …そうか、そうだよね。ごめんね、シン……」
ルナマリアは少し泣きそうな顔をして甲板を出て行った。それを肩越しに確認すると、左頬に貼られている湿布を剥がして擦った。コニールとの想い出は、それしかない。
甲板の上の展望室で、エマとカツはそんなシンを見つめていた。特にカツはシンと一緒に戦っていただけに、彼の事が心配だった。
「戦いには勝ったっていうのに、どうしてこんなにやりきれない気持ちなんでしょう」
「人間は、勝利の喜びよりも、誰かが死んでしまった悲しみの方を強く感じてしまう生き物だからよ。だから、夕日の色だって悲しく見えてしまうわ」
ちょうど、夕日が渓谷の間から覗いている状態だった。刺すような光が、カツの小さな目を更に細くする。
「だったら、人はどうして戦争を続けられるんですか? 人の死を悲しく思える人間が、どうして人が死ぬ戦争を続けられるんです? そんな理屈じゃあ、僕達はいつまで経っても先に進めやしませんよ!」
「あ…えぇ、そうよね、カツ。理屈だけでは駄目よね……」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ――……!」
夕日に向かって雄叫びを上げる獣が一匹。その雄叫びも、ガルナハンの夕日に融(と)けて消えた。
今回はこれで以上です。
どうしようかと悩みましたが、どうしてもイデオンのキッチンが頭の中にあってこういう形になりました。
個人的にこういうのが好きとはいえ、やっぱり湿っぽくなっちゃったなぁ……
>>576-581 支援ありがとうございます。実際にはその直前に既に規制が発動していて、時間がかかってしまいました。
すんませんorz
乙鰈。カツの予感が的中、か……。
ライラはやっぱり喰う為に軍に入りましたか。シロッコより先にきていたんだろうか。
>583
投下乙です!
凸、弱!w
マウアーが相手だとはいえこんな戦いしか出来ないんじゃ英雄の名がなくぞ
相手がライラだったら坊や扱いされそうだw
コニール死んじゃいましたね…
甲板でのキスシーン辺りではこんな展開になるとは思いませんでしたよ><
乙!
うーん、コニールここで退場……アレ?こっちで死んだら次はどこへ行くんだ?
火の鳥に導かれてキキとして転生します。
小説版の世界にか?
>>588 種死で死んで、08の世界で強(ryされるなんて酷すぎるだろ。
…あれ?地球軍の暴虐という共通点が……
それはともかく、乙!
コニールもシンもカワイソス…
凸弱すぎだろw
凸については相手は一応とはいえ経歴上はエリートの仲間入りしてた
マウアーだったのが不運だったとしか・・・
それでもセイバー使ってスローターダガーに
苦戦というと相手を軽く見る傾向はちょっと痛いw
特に「敵はダガーの特別機なのか?インド洋でエマとカツが交戦した連中なら、セイバーでこうまで苦戦するなど――!」
は頂けない。
>凸弱すぎだろw
逆に考えるんだ!「マウアーが強すぎるんだ」って
実際、ライラと戦ってたエマだって足止めされちゃってるしね
むしろ「よく生き残れたな」ってモノだと思うよ
>>592 それが真理なのかもしれないな。
マウアーに実力があるのは事実。
舐めてかかった凸が迂闊で残念だったな。
しかし炒飯は作れない罠
かつては最強とも言える実力を持っていたのに色々あってヘタレて苦渋舐めさせられまくりの元英雄って
すげぇオイシイ役どころだよね
蝙蝠キャラは匙加減一つで立場がぐるりと変わっちゃうのが強みなんだぜ!
…最新の特別機ばっかりに頼りすぎてるからなぁ…CEの連中ってのは…
ぶっちゃけ、そうでなくっちゃあ面白くねぇ
量産機で散々苦戦しておいて更に強い敵が来たら俺は燃えるなぁ
ちょっと言葉足らずだった
>…最新の特別機ばっかりに頼りすぎてるからなぁ…CEの連中ってのは…
>量産機で苦戦してくれなけりゃぶっちゃけ、そうでなくっちゃあ面白くねぇ
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ノ ヽ, `ヽ、__,/
CEの種馬キラ・ヤマト
「やめてよね、僕が本気になったらフレイなんかあっという間にボテ(ry」
後にラクス・クラインと出会い、精神的に去勢される。
捕手
保守
先生!00のあるキャラのファミリーネームを見てパプティ様が恋しくなりました!!
609 :
通常の名無しさんの3倍:2007/08/23(木) 07:25:02 ID:Vt4klgS7
シロッコって、ガチでMSの設計できたよな。
ジ・Oとか出てこないかなぁ。
610 :
607:2007/08/23(木) 08:55:12 ID:???
>>608 アルレヤ・「パプティズム」って名前のヤツがいるの
アレルヤ! パプティマシズム!!
宗教がかってまいりましたw
偽Z・偽トロワ・のハプティズムだろ…
フランクリン&ヒルダってCEに、来てないのかな?
>613
和田の開発に関っていそうな気がする。
フランクリンはまだしも、ヒルダに関してはCEでは出番無さそうだな
PS装甲のせいで材料なんて関係無さそうだしw
馬鹿か。PSなんてアホな装甲が幅きかすC.Eだからこそ、ヒルダママンの価値があるんじゃん
冶金の研究者だっけ?
チタン系合金の導入にがんばって欲しい
>>616 ケースバイケース。
実際、ザフトでもPS装甲は試験機しか実装してない(ザクとか違うよな)みたいだし、
通常装甲の需要もあるかと思われ
なんだかんだいって、コスト高いんじゃね?PS装甲って
折り合いがつけば、ヒルダママンがチヤホヤされることがあるかも試練。
文章化されてもチヤホヤされて鼻高々なヒルダママンは読みたかないが...
コストもあるだろうけど、最大の欠点はエネルギー消費の問題じゃね?
どうだろ?あのアホな世界だとマトモな思考の持ち主は皆、逝ってしまうからなぁ
需要はあっても、相手にされなさそうな気もするぞ
監督補正でPS装甲+ラミネート装甲だけでイイ!量産機?やられるだけだから関係ねぇ!とか言いそうだし
そもそもドムパイロットに同名がいる時点でないだろ
紛らわしいし
あ、、、忘れてた、、、そうだよなw
保守
625 :
保守:2007/09/01(土) 14:51:04 ID:???
実はカミーユママンが転生してきたのがあのヒルダだったりして
他の連中よりも十数年前に転生、しかもそのショックで記憶喪失&肉体的にも若返り
保守
ほす
hs
???HOS
【只今の風速】・・・40m/s
そんな風、台風でも上陸しなきゃ吹くわけない……
って、そもそも箱舟ないyp!
投下したいけど容量残り15KB
一ヶ月も空いてしまったのでまだ需要があるのかどうか分かりませんけど
このスレに収まるかどうか微妙なラインなんで新スレ立ててもいいものかどうか……
そもそも、劣悪なネット環境のせいで最近碌に繋がらなかったわけで
というわけで意見求めます
需要が一切無ければこのままフェードアウトという事にしたいと思います
よし、埋め
◆x/lz6TqR1w氏ずっとお待ちしておりました。
という訳で梅
うめ
埋め
埋めeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
あと15kb埋めだけで落とすのも不毛だろ……
ロベルトCE録
CE世界へとやって来た、宇宙世紀で戦い、散った者たち。
もとが軍人であり、戦乱の世であるせいなのか。
彼らはCE世界の歴史にかかわるような行動を起こすか、あるいは巻き込まれる者が多かった。
しかし、中にはそうではない者も当然ながら存在した。
これから紹介する彼も、その一人である。
彼はMS乗りだった。それも一年戦争を生き抜いた、歴戦のベテランパイロットであり、相棒と上司にも恵まれていた。
だがそんな彼の豊富な経験にも、空中を自在に飛び回る、UFOのような円盤型のMAとの戦闘経験は含まれておらず。
飛行のかなわぬMSによる、HLVの防衛任務の最中。彼は敵機に背後に回り込まれ、愛機リックディアスとともに最後を迎えた。
痩身で口ひげを生やした、エゥーゴ中尉ロベルトはそうしてUC世界での人生を終え、CE世界へとその存在をシフトする。
彼が目覚めた場所は、コロニー。この世界の言葉で言うならばプラントの、外周にほど近い場所だった。
幸い、彼が出現した瞬間は誰も見ていなかったらしい。
ロベルトは死と、シフトによるショックから立ち直るまで、半日ほどそこでそのまま気絶していられた。
地上で死んだ彼がプラントに出現したのは、最後の瞬間に彼が
「宇宙での戦いならば…」
そう、思ったせいかもしれない。
とにかく、ロベルトはプラントに現れたのだ。
そして、目覚めた彼は……
パイロットスーツ姿のまま「ここはどこだ」と聞き込みを行い、見事に逮捕され
そのまま不審人物として、終戦まで拘束され続けたそうな。
めでたしめでたし、と小ネタ投下埋め。
カワイソス梅
コロニーだと、住んでる人間全部登録してあるはずだし、プラントは遺伝子で議員選んでるらしいんで遺伝子登録もあるとすると、密入国者以外の何者でもないって事になっちゃうのか。
まあ、仕方ないわな梅
埋め〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
test
sage
埋め〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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こっちみんなume
埋め
埋め
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( ゚д゚ ) <埋め ( ゚д゚ ) ( ゚д゚ ) ( ゚д゚ ) ( ゚д゚ ) ( ゚д゚ ) <埋め〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
桜
() ,-、 , 、
|i トノ (`ノ
'イ) /,、_,,,/
〉イ レ' )
/ 〉.i彡:<、
/;⌒')/;;ー''__ヽ、ヽ__)
,-、__ (-、ミ::⌒<ヽ、 __  ̄/ノ,,
,、,、 ;(` )--;ア`ヽ)_つ' ヽヽニノ ノ
,,,( )__,- ヽ ノ )ニ> ,〉-i lミ::
〉 ヽ,ノ' 〉 ::彡`-''' ) l ノ )
`ー':彡;'-`ー'/ )、_) '-lノ
,,=( ノ( ,_,)`ヘ' ヽ⌒;
/~~ `' ~ ヽ(_)
=='''"
// 1 . {. . .ヽ. . ヽ. . ',. .ヽヽ
/ .:/ ハ: :!: :.:ト、:.:. :\:...l:.. :}: : |_⊥ 、
j . {: .:{ :l、:l、: :.ト-ヽ、_:..`ヽ、j__イ_つノ
l 1:ハ.::{ゝl=くヽ:.ヽ トィjr}Tァ┬ァ:.:´|
|ハ :ヽlァ{トィrj \i ー_'っ /:.イ-、:。:|
ヽ。ハ^rぅ' 丶 ` ノ', く } }:.ol゚ o
。 `ハ 。 {ァ´ヽ ,ー o':.へl お客様の中に小ネタ職人さんは
゚ ´ノi\ ー' ィ:;:.ィ/|/゚ 。 いらっしゃいませんか??
。 o 。 ゚ハヘ;:>ー--<_rv〈、_
/ ̄ヽ \/ll }l}`'^'ト、
/ ::Y77l j l !_`7
l, ---::、〉 jl l ハゝ-i
ヽ Vi } ,' ノ, ー_ヽ
} , -‐ァl ノ / レ´,.- j
j イ !l / / ハ -,.く!
_Y_
r'。∧。y.
ゝ∨ノ このスレが ,,,ィf...,,,__
)~~( 埋まらないうちに _,,.∠/゙`'''t-nヾ ̄"'''=ー-.....,,,
,i i, ,z'"  ̄ ̄ /n゙゙''''ー--...
,i> <i 次スレはどんどん r”^ヽ く:::::|::|:::〔〕〔〕
i> <i. 進んでいく・・・・・・。 入_,..ノ ℃  ̄U ̄_二ニ=
`=.,,ー- ...,,,__ |,r'''"7ヽ、| __,,,... -ー,,.=' >ーz-,,,...--,‐,‐;;:'''""~
~''':x.,, ~"|{ G ゝG }|"~ ,,z:''" ___
~"'=| ゝ、.3 _ノ |=''"~ <ー<> / l ̄ ̄\
.|)) ((| / ̄ ゙̄i;:、 「 ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| ̄ ̄ ̄\
))| r'´ ̄「中] ̄`ヾv、 `-◎──────◎一'
├―┤=├―┤ |li:,
|「 ̄ |i ̄i|「.//||「ln|:;
||//__|L_」||__.||l」u|:;
|ニ⊃| |⊂ニ| || ,|/
|_. └ー┘ ._| ||/
ヘ 「 ̄ ̄ ̄| /
蒼く眠る水の惑星にそっと
口付けして命の灯を灯す
ひとよ 時間という金色のさざ波は
大空の唇に生まれた吐息ね
心にうずもれた 優しさの星たちが
炎age呼び合う〜 ageないけど
波間さすらう難破船のように
もう泣かないで
今 あなたを探してる
人はいません
お前に逢いたいと
さすが獣の数字
>>666。流れをスッパリ断ち切ったぜ。
. -―- . やったッ!! さすが
>>666!
/ ヽ
// ', おれたちにできないことを
| { _____ | 平然とやってのけるッ!
(⌒ヽ7´ ``ヒニ¨ヽ
ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′ そこにシビれる!
/´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {. ヽ _ _ 愛は多分誰かのためそっと だッ!
`r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ ) ( , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
{(,| `'''7、,. 、 ⌒ |/ニY { \
ヾ| ^'^ ′-、 ,ノr')リ ,ゝ、ー`――-'- ∠,_ ノ
| 「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
, ヘー‐- 、 l | /^''⌒| | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
-‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ !‐}__,..ノ || /-‐ヽ| -イ,__,.>‐ ハ }
''"//ヽー、 ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿! , -===- 、 }くー- ..._
//^\ ヾ-、 :| ハ  ̄ / ノ |. { {ハ. V'二'二ソ ノ| | `ヽ
,ノ ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<. / |. ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/ <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ \ `丶、 |、 \\'ー--‐''"//
\___,/| ! ::::::l、 \ \| \ \ヽ / ノ
捧げられた永遠い祈りなのね
人はひとりではいられない
淋しさの星座から〜♪
こぼれた花びらだからね
あなたが祈るたび宇宙(オオゾラ)に帆が上がる
優しさに惹かれて 蒼い眠りを解かれた美しい星よ
umeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
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