「――あ!あぁっ……」
後を歩いていたダコスタは慌ててカップをキャッチする。
バルドフェルドが足を止めると、そこには月明かりに照らされた虎とも狼とも採れる巨大なモビルアーマーとヘリコプターやバギー、そして今や遅しと出撃を待つ部下達の姿があった。
自分達の隊長の姿を見た彼らは、素早く整列するとバルドフェルドが口を開く。
「ではこれより、地球軍新造艦、アークエンジェルに対する作戦を開始する。目的は、敵艦、及び搭載モビルスーツの、戦力評価である」
「倒してはいけないのでありますか?」
兵士の一人がバルドフェルドに言うと、隊の全員が笑い声を上げた。
「んー、その時はその時だが……あれはクルーゼ隊とFAITHのユウキが仕留めらなかった艦だぞ?それを忘れるな。……一応な」
バルドフェルドは少し考えると、そう言ってニヤリと笑みを湛えた。
兵士達の顔にも自信に満ち溢れた笑みを浮かぶ。
「では、諸君の無事と、健闘を祈る!」
満足そうな表情でバルドフェルドが言うと、まるで、それが合図であるかの様に全員が揃って敬礼をした。
彼らの隊長も敬礼で応えると、ダコスタが号令を掛ける。
「――総員、搭乗!」
兵士達は散ると、各々、自分の機体に乗り込んで行く。
ダコスタが指揮車を運んで来ると、バルドフェルドは素早く乗り込んだ。
「んー、コーヒーが旨いと気分がいい。さあ、戦争をしに行くぞ!」
呑気そうに言うバルドフェルドの目が途端に獲物を狩る者の目へと変化した。
彼らの獲物――大天使と言う名を持つ、白い船を狩る為に動き出した。