ミリアリアはどう答えて良いのか分からず、俯きながら首を振った。
ムウも、これ以上は説得するのは諦めたのか、疲れた様子で立ち上がった。
「まぁ、嫌だと言っても、本人が乗る気で居る訳だし、俺としては乗せない訳にはいかんのよ、諦めてくれ。その分の努力はこっちもすっからさ」
立ち上がったムウは格納庫に入って来たトールを見ながらミリアリアに言った。
それは、今のミリアリアにトールの行動を左右する権利は無いと言われた様な物だった。
ミリアリアは俯くとその瞳に涙を滲ませる。
今までの事など知らないトールは、息を切らしながらミリアリアの前までやって来た。
「――ハァハァ……ミリアリア……ハァハァ……こんなとこに居たのか……ハァハァ……」
「……トール」
「おせーぞ!自分の女の場所くらい、直感で当てろよ!」
「……ハァハァ……済みません」
「それよりも、早く医務室へ連れてってやれ。……トール、まだ疲れてないだろうな?」
「ええ、元気です!」
トールは頷いて、いかにも元気だと言わんばかりの表情を見せた。
ムウは表情を引き締め、背後に有るスカイグラスパーを親指で指しながら低い声で言う。
「スカイグラスパー二号機は、今日からお前の機体だ。こっちとしても簡単に落とされちゃ堪らんし、俺はお前の彼女の恨みを買いたくないからな。医務室に届けたら戻って来い。今から訓練を再開する」
「分かりました!宜しくお願いします!」
真剣な表情で言うムウを見て、トールは、自分が本当の意味でモビルアーマー乗りになる為の訓練が始まる事を感じ、思い切り背筋を伸ばして敬礼をした。
そして、ミリアリアの手を取り、医務室へと歩いて行く。
ムウは二人を見送ると、スカイグラスパーへと歩み寄り、「頼むぜ」と言って機体を撫でる。そして、踵を返し、アムロ達の元へと歩いて行った。