シンは仮面ライダーになるべきだ 4回目

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46214/16 ◆orYN7qK/0E :2007/08/02(木) 10:08:36 ID:???
シンは痛みに耐えつつも、青へと変化する。
向こうが俺と同じように変わるんなら、弱点だって同じはずだ!
その考えに全てをかけての変化だった。経験上、赤は力はあっても動きが鈍かった。ならば、それと対応するような形態の
今のザクファントムも同様のはずだ。
果たして、その考えは正しかった。
脳天に振り下ろされるはずだった重い一撃を、ギリギリでかわすことに成功したのだ。
サトーはさらにファルクスを振り回すが、青へと変化したインパルスはそれを見切り、避けることができた。
ファルクスは重量級の武器であるがゆえ、振り回すと大きな隙が生じる。俊敏さに優れた青のインパルスなら、
そこにつけこむことができるのだ。
振り下ろされた一撃を後方にステップしてかわし、跳躍して頭部にとび蹴りを喰らわせる。
その衝撃でサトーはファルクスから手を離した。

シンは二歩、三歩と後ずさりし、右足に力を溜める。
先ほどからベルトの力を連続で流し込んでいるせいか、集束が悪い。それでも、全力を右足に込める。
そして、相手の様子を伺う。
サトーはやはり自らの身体を変化させていた。長方形の箱を二つつなげたような、最初の形態。これが、青のインパルスに対応した
形態なのだろう。
そして、残されたスパイクとシールドをこちらに向けてくる。向こうは向こうで、必殺のショルダータックルを
真っ向から仕掛けてくるつもりのようだ。
このまま飛び込めば、先ほどまでのようにやられてしまうかもしれない。
しかし、別の方策を練ることもできない。
シンの体力はもはや限界だった。この激闘だけでなく、今までに蓄積した疲労とダメージが彼の体力を徹底的に奪っていた。
もはや、全てをぶつける以外に手はなかった。
右足にエネルギーが溜まる。
シンは顔を上げ、強く地面を蹴って駆け出す。助走をつけて、一気に跳躍。
「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
すさまじいエネルギーを迸らせ、右足から飛び込んでいく。

インパルスが跳躍したのを見たサトーは、背中に意識を集中させた。
背負った二つの箱のようなもの、その一部が展開し、蜂のようなものが飛び出す。
ファイアビー。この形態のザクが持つ、一種の生体ミサイルだ。
それらは全て、インパルスの右足めがけて突っ込んでいく。

エネルギーとミサイルのぶつかりあい。すさまじい閃光と爆風が辺りを包み込む。これで、完全に威力が相殺された。
インパルスはバランスを崩し、墜落する。
その瞬間に、サトーは強く地面を蹴って駆け出した。スパイクつきの盾を掲げ、全身のエネルギーを込めた必殺のショルダータックル。
それは見事、インパルスに炸裂した。
墜落途中では、防御することすらできない。何メートルも宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられる。
46315/16 ◆orYN7qK/0E :2007/08/02(木) 10:10:49 ID:???
地面に投げ出されたインパルスは灰色に変わり、ピクリとも動かない。
「ふん、この程度か」
馬鹿にするように、冷たく言い放つ。
そうは言っても、これだけダメージを与えた上、ショルダータックルも完璧に決まったのだ。立ち上がれるなどとは、到底思っていない。

しかし、インパルスの右手がかすかに動いた。
それはもがくように砂を掴み、自らの方に引き寄せる。そして、地面に手をつく。
「まさか……」
サトーの目の前で、ひどく緩慢な動きで、よろめきながらもインパルスは再び立ち上がった。
自らの、二本の足で。
右腕は垂れ下がり、折れているのか左腕は動かない。足はとうに限界を超しているのだろう。震えが止まらず、おぼつかない。
そして頭もうなだれており、もはや敵も見えていない。
それでも、確かに立ち上がったのだ。

「しぶとい奴だ。今度こそ、甦らないようにしてやろう」
呆れた口調で言いつつも、サトーは内心舌を巻いてしていた。
こんな状態になりながらも、戦いを捨ててはいない。これは戦士、いや、戦鬼か。
だが、いいかげんこちらも限界がちかい。そして、手加減をするのも戦士として最大の侮辱だ。
だから、最大の技で葬る。
左肩にエネルギーを集める。右足を引き、力を込める。
インパルスは避けようともしない。いや、できないのだ。すでに、立っているだけで限界なのだろう。
エネルギーが集束し、強く地面を蹴る。

その瞬間、右手を握り締めたシンは残された全てのエネルギーの集中させ、拳を振り上げる。
「うおおぉぉぉっ」
捨て身の、カウンター。
これが今のシンが取れる、最後の攻撃だった。
それが、ショルダータックルと衝突する。

インパルスは吹き飛ばされ、今度はブロック塀を突き破り、小さなコンクリート製の小屋をも破壊した。
灰燼が収まったとき、そこにあるのは瓦礫の山だけだった。
その隙間からわずかに、土気色の手が覗いている。
今度こそ、立ち上がることはないようだ。
「終わったか」
サトーは呟き、瓦礫の山に背を向けた。

46416/16 ◆orYN7qK/0E :2007/08/02(木) 10:15:52 ID:???
ルナマリアはいつものように、マユの病室にいた。
立ち上がり、そっと髪をなでる。
たとえ目が覚めなくても、髪は女の命だ。手入れを欠かさず、艶やかな美しい髪を保っている。
やわらかい感触を感じながらも、この少女はずっと目覚めることがない。
ふと、ため息が漏れてしまう。

すると、ベッドに横たわる少女の口から、苦しげな声が漏れた。
「う……ぅん」
見ると、目に涙も溢れさせている。
いつものことだった。この少女は、一日に何回もこうしてうなされる。
彼女はベッドの脇の丸イスに座り、少女の手を握る。
こうすると、少女は少しは安心するのか、穏やかな表情になる。
しかし、このときはいつもと少し様子が違った。
手がかすかに握り返される。これは今までになかった反応だ。
「マユちゃん!?」
驚きに目を見開くルナマリアの目の前で、少女は静かに、目を覚ました。
かすかに開いたまぶたの奥、きれいなすみれ色の瞳が、ルナマリアを見つめ返す。

起きた、起きてくれた!
泣き笑いの表情となっているルナマリアに、マユは小さな声で訊いた。
「お兄……ちゃん、は?」
二週間ぶりに見る少女の瞳は、不安に揺れていた。
465衝撃/16 ◆orYN7qK/0E :2007/08/02(木) 10:26:17 ID:???
就活オワタ)━(゚∀゚)━━━!!
これで次はもっと早くに投下できます。
466通常の名無しさんの3倍:2007/08/02(木) 16:29:15 ID:???
就活乙!自分も無事終えましたよ
続き待ってます
467通常の名無しさんの3倍:2007/08/02(木) 23:21:03 ID:???
GJ!
ぼろぼろにされたシンはどうなる!?
続きwktk
468通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 12:23:10 ID:???
GJ! & 就活乙!

サトーさん強いな。
だが、この壁を乗り越えればきっとシンは強くなる!
続きwktk
469通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 20:42:11 ID:???
まとめ更新マダー?
470MRS-D:2007/08/12(日) 11:06:50 ID:???
背面のバックパックから圧縮された空気が噴出す。跳躍。ビルの屋上から飛び上がり、上空を
疾駆する緑の異形に対して大型のライフルの狙いを定める。
引き金を引く。爆音。ライフルから薬莢が飛び出す。空気を引き裂き、緑色の光が空間を疾走する。
光は狙い違わず緑の異形の背面に命中。だが緑の異形は僅かに体勢を崩すだけに留まる。
「浅いか。」
静かな呟き。ZAFT製簡易型ライダーシステム―――通称ザクに乗り込んだレイ・ザ・バレルだ。
手に持つ大型のライフル―――全長は少なくとも1.5mを下らないだろうそれは対ライダー用
に製造された特殊なレーザーライフルである。
呟きながらも、レイは体勢を操作し、ビルの屋上―――先ほどとは違うビルだ―――に着地す
るとすぐさま足裏のローラーを起動し、速度を付ける。そして跳躍。今度は前方へ。
レイがそのビルを離れた瞬間、それまでいた場所が爆発する。上空からの緑の異形による射撃
だ。光が尾を引き着弾していた。つまりレーザーライフルによる攻撃。一撃でも喰らえば致命的な
ダメージとなり得る。
レイが一つの場所に留まらないのはその理由による。防御は全て回避か、もしくは外すことに
専心。攻撃は中、遠距離からの射撃に徹する。
対ライダー用の基本戦術である。
跳躍と疾走を繰り返し、相手に決して的を絞らせない。動きは一瞬足りとも止まることなく動いて
動いて動き続ける。
そしてその間も敵から眼を外すことなく―――簡易型ライダーシステムは基本的に背部にもカメ
ラアイを搭載している―――動きを見続ける。
『・・・・・』
咆哮し、戦うシンとは対照的にレイ・ザ・バレルは喋らない。一対一であれば言葉を口にするな
ど具の骨頂。そんな暇があるのならば思考に費やす。
敵の攻撃動作を盗み、行動パターンを模索し、自身の回避と攻撃の精度を上げることに専心す
る。覆すことの出来ない性能差を経験と技術で埋めるのだ。
『やるな、お前。だが―――』
空中の敵から声が掛かる。だが、レイは止まることなく動き続け、撃ち続ける。
喋りながらも敵は集中を切らしていないのか、その射撃を避ける。そして、レーザーライフルが
放たれる。
471MRS-D:2007/08/12(日) 11:08:53 ID:???
難なくそれを避けるレイ。だが、その攻撃のせいでレイは攻撃を放つタイミングを一瞬遅らせる
ことになる―――そしてそれが敵の狙い。それは間を取る、それだけの為の攻撃。
「・・・・・これは」
緑の異形の背中の羽が蠢き、舞い始める。まるでそれの一つ一つが意思を持つかのように。羽
は寄り集まり、大きな塊となっていく。寄り集まった羽は、凡そ数十cmほどの巨大な羽を形作る。
その数は目算で約20ほど。
仮面の下のレイの顔が青ざめる。羽が集まったソレが何なのか気付いたのだ。
『このライダーカオスのドラグーンを同じように避け続けられるか?』
緑の異形―――ライダーカオスと名乗ったライダーの寄り集まった羽が動いた。
「・・・・くっ!」
レイは直ぐにローラーダッシュとジャンプを繰り返し、その場から離脱する。

ドラグーン。それは前大戦で作り出されたライダー専用の特殊武装の一つである。「思念誘導に
よる長距離射程からの遊撃」と言う馬鹿げた設計思想に基づいて作られた、ライダーと言う超人
以外では決して操作出来ない―――と言うよりも常人ではその際に発生する膨大な情報量の処
理に耐え切れない―――武装である。
使用者を選ぶドラグーンはその敷居の高さにも関わらず、比類なき戦火を上げた。それもたっ
た一人のライダーによって。

カオスの放つ20基のドラグーンがレイに迫る。動きながら的を絞らせないレイ。そして目標を上
空のカオスからドラグーンへと変更し、ライフルを構える。
「落ちろ・・・!」
静かに、けれど強く叫びレイはレーザーライフルの引き金を引く。狙い違わずその一撃はドラグ
ーンを撃ち貫く―――瞬間、別方向から放たれた光がその光を弾いた。
「ちっ」
レイの放ったレーザーが別のドラグーンが放ったレーザーによって弾かれたのだ。
そして、その一瞬の隙を逃すことなく殺到するドラグーン。レーザーが放たれる。
瞬間、背部バーニアの出力を全開し、引き出せる最高速度でその場を離れるレイ。
爆発。ビルが崩れる。
別のビルの屋上に何とか着地する。
472MRS-D:2007/08/12(日) 11:10:14 ID:???
『やるじゃないか・・・・・だが、もう終わりだ。』
カオスが呟く。その背後で煌くドラグーンは正に羽の如く軽やかに彼に付き従う。
「・・・・・・」
答えるようにザク内部で黙々と、だが素早く各種設定に勤しみながらレイは淡々と呟いた。
「煩い男だ。」
それはまるで他人事のように。


『くそっ!!』
吹き飛ばされるソードインパルス。シンは両の手に持った大剣を握り締めながら毒づく。
眼前には黒い異形がこちらを見下ろしている。
『なんだ、お前もガイアより弱いんだ。』
声に滲むのは落胆。
ガイア―――恐らくは目前のライダーの名前だろう。今、彼の目の前で人の頭をゴミのように踏
み潰した異形が落胆している。
『ふざけるなっ!!』
言葉と共に立ち上がる。脳裏には先ほどの人を殺す光景。怒りがシンの意識を焼き尽くしていく。
身体を支配する激情のまま右手に持った大剣を振りかぶる。
握り締めた大剣に込める意思は必殺。眼前のガイアを切り裂き、貫く、明確な殺意。
『フラッシュエッジィィ!!!』
叫びと共に殺意を込め、右手の大剣が真ん中で折れたブーメランのような形に変形する。
『当たれえ!!』
下からすくい上げるようにして目前のライダー、ガイアに向かって投擲する。
だが、ガイアは当たる瞬間にフラッシュエッジの軌道から身を動かし、ソレを難なく避ける。
《シン、少しは落ち着きなさい!》
シンを諌めるルナの声。だが、シンには届かない。見せ付けられた惨殺がシンから正常な判断
能力を奪っている。
『うおおおお!!!』
残ったもう一本の大剣を両手で握り締め、そのまま突進。対するガイアは、腰を低く―――それ
473MRS-D:2007/08/12(日) 11:12:03 ID:???
はレスリングのタックルに近い―――構え、シンに向かって突進。
両手両足の先の爪が鋭く長く尖り伸びていく。
加速。加速。更に加速。伸ばした爪で大地を掴み、駆け抜ける。
突風すら従えるような勢いでガイアが突進する。
『はあっ!!』
裂帛の気合と共にガイアの右腕の爪が振りかぶられ、シンに迫る。声を出す間もなくシンはそ
の一撃にかろうじて反応し、大剣の腹で防御。だが、衝撃を逃がすことも出来ず、既に倒れ崩落し
ているビルの瓦礫の中に吹き飛ばされる。
《何回同じコトやるつもりなのよ!?いい加減少しは落ち着きなさいよ、シン!!》
『うるさい、黙れ!!こいつは殺したんだぞ、人を!人間を!!落ち着ける訳があるか!!』
瓦礫の中から立ち上がり、シンは叫ぶ。
――――先ほどからずっとこのやり取りは続いている。
目前で行われた無残な殺し。シンはそれを目撃した瞬間からずっと激昂し続け、猪突猛進を繰
り返している。
恐れていたコトが現実になった。タイミングの良さは最高だ。これまでで一番の強敵との戦いで
この状況に陥る。それは考えうる最悪のパターンだろう。これでは勝てるモノも勝てない。まして相
手は冷静に戦って勝てるかどうか分からないほどの強者。こんな状況で勝てると思う方がどうかし
ている。
ルナは冷静に、「敵」を見定める。
ライダーガイア。
武装は両手両足の爪と仮面の口のような部分から生えている牙。その武装からして恐らくは近
接戦に特化したライダー。
『うおおおお!!!』
咆哮と共にシンは再び突進する。
『遅いよっ!!!』
ガイアの言葉と共に右手から生えた爪が巨大化する。鉤爪のようだった爪が、剣と言っても差し
支えないほどに巨大化し、小刻みに震え出す。同時にキィィンと蜂の羽音のような音を鳴らし出す。
高速振動による衝撃の増加。それはPS装甲、そしてその亜種でもあるVPS装甲。その弱点は
以前語ったように強力な点の衝撃である。高速振動による攻撃もその一種である。一点への衝撃
474MRS-D:2007/08/12(日) 11:13:22 ID:???
を振動によって何百回何千回と行い続ける。
小さな窪みは振動によって少しずつその大きさと深さを広げ、穴となり、装甲を突き破る。問題
点はそれに必要なエネルギー量とその衝撃を制御する筋肉量であり、事実上ライダー専用の装
備でもある。
ライダーシステムへの適応手術が全面禁止された現在では使用する者などいない筈の技術で
ある。――――だが、それが今ここに現出する。ライダー専用の対ライダー用装備として。
『死ねええええ!!!!』
咆哮はガイアから。速度はそのままにシンに向かって爪を突き出す。対するシンは大剣を大きく
振りかぶり、ガイアに向かって振り下ろす。
鳴り響き、耳を貫く甲高い金属音。白熱したソードインパルスの刀身と高速で振動する爪による
鍔迫り合いである。
『うおおおおおおお!!!!』
『はああああ!!!』
お互いの全霊の力で以っての鬩ぎ合い。一瞬の膠着。ガイアが下から天に向かい爪先で顎を
狙うように右足を槍のように突き上げた。だが一瞬早くシンはそれに反応し、咄嗟にその場を離れ
―――瞬間、ガイアの身体が腰を軸に回転し、左足をシンの腹部に向かって回し込み、降りぬく。
『があっっ!!?』
再び吹き飛ばされるシン。そこに爪を振りかぶり襲い掛かるガイア。
『うおおおお!!』
シンは直ぐに立ち上がると剣を大きく振りかぶり勢い良く振り抜―――こうとして違和感に気付
く。身体の動きが鈍い―――否、これは鈍いのではない。意図せぬ方向に動いている。前へ、前
へと突き進もうとする動きではなく、後ずさり、後方に撤退しようとする動きへ。
《シン、引くわよ!》
『ルナ?』
何のことか分からずにいるシン。だが、ルナは構うことなくシンの「肉体の操作権」に干渉を始める。
《逃げるって言ったのよ!!》
『!?』
シンの意思に反して、身体が動く。ぎこちない動きながらも全身の筋肉を連動させ、後方に大きく跳躍。
475MRS-D:2007/08/12(日) 11:14:42 ID:???
シンの身体が、その場を離れる。その距離、凡そ数十m。そして着地と同時に再び跳躍。途中、
幾つかのビルに衝突。だが、そんなことお構いなしに後方に、後方へとひたすら逃げ続ける。
『くそっ、動かないっ!?ルナ、お前何してるんだ!!』
《逃げるのよっ!》
『ふざけるな!!倒すんだ!あいつを、倒すんだよっ!』
大剣が自身を追いかける一人の異形に向けられる。
両手から伸びた爪が剣のように重ね合わせられ、それを振りかぶりこちらを追いかけてくる。そ
れを見てシンは再びガイアに向かって突き進もうとし―――身体は逆に後方に下がっていく。
《逃げられない・・・・?》
『だから、戦って、倒すん』
《そうして・・・・メイリンを泣かせるつもり!?》
『な・・・に・・・・?』
 《私は、このままなら確実に死ぬって言ってるのよ!!》
息を呑むシン。少し押し黙る。迫るガイアから逃げる為にルナは無理矢理シンの足を動かし、跳躍――ひたすらに退がり続ける。
そして、話を続ける。
《ただ目前の敵に自分の憎しみをぶち当てればそれで充分。憎しみをぶちまける場所を求めてい
るだけなのよ、あなたは。だから、こうやって自殺志願みたいな戦いを繰り返す――――そんな泥
まみれの戦いの方が憎しみをばら撒くには一番都合が良いから!!》
『ち、違う。俺は』
その言葉を遮ってルナがシンの脳裏で呟く。
《それでも、私は死なせない―――約束したんだから。》
約束―――それはメイリンと。
《あなたを死なせないって約束した。だから、私はそれを守ってみせる。》
そう呟くとルナはシンの肉体の操作に没頭し始める。
生き残る為に。彼を守る為に。彼を死なせない為に。
眼では見えない意識の奥の彼女の顔。そこに映るのはその一念だけ。
眼で見ずとも分かるその雰囲気。
シンには何も言えなかった。ルナの声。それはどこまでも正しく、彼の本音だったから。
爆発音。瓦礫が舞い散り、視界を覆い隠す。そこから跳躍し、相手の死角を突くようにして逃れ、
476MRS-D:2007/08/12(日) 11:16:11 ID:???
移動を繰り返す。
泥まみれ、埃まみれの逃避行。勝手に動く自分の身体を見つめながらも、彼は呆然と思考を巡らせた。
(・・・・・俺は)
爆音。そして衝撃。
身体を襲う衝撃でシンは我に返る。回避が間に合わずに吹き飛ばされたのだ。ルナが操る自分が。
《―――くそっ!》
口汚く罵るルナ。
見えないが瞳からは未だ力強さは消えていないだろう。そんなもの見るまでもなく分かる。
彼方からこちらを見下ろす黒い影―――ライダーガイア。
ドクン、と胸が鳴った。怒りと憎しみが燃え上がる。
―――消えはしない。消せはしない。
ソレはシン・アスカの本質に根ざす欲望。復讐を遂げたいと言う切なる願い。
―――奪われるのなら、二度と奪えないように殺してしまえ。
ソレは既にシンを彩る一部と成り果てている。シンは悟る。自分自身を。自分でも気付いていな
かったソレを。
自分の本質は、あの時、デュランダルの手を握り締めたあの瞬間から復讐者に摩り替わっていることを。
『ルナ。』
《何!?》
『俺は逃げない。絶対に。』
『シン、あなたね・・・っ!?』
凝りもせず同じことを呟くシンにルナは激昂し・・・その声に滲む虚ろに圧倒される。
『俺には・・・・そういう戦い方しか出来ない。』
空虚な声。悲しさすら感じさせる虚ろな声。
《―――シン、あなた》
『けど、誰かを泣かせるのも嫌だ。だから、』
言葉を切る。心中に渦巻くのは整理され、自覚した己の心。
何もかもかなぐり捨ててしまえ。復讐者に誇りなど無い。泥水を啜り、卑怯者と罵倒され、外道
邪道を歩み続ける。
それこそが復讐者にとっての正道。シンにとってそれだけが進むべき道。
『力を貸してくれ、ルナ。俺は・・・・死ぬ訳にはいかない。』
凡そ真っ当とは到底言えない気持ちで、その言葉を紡いだ。
少年は復讐者としての道を選び、それを自身の運命として自覚した。
自覚は決意を促し、様々なものを削り取る。
復讐を遂げる為にはなんであろうと利用しねじ伏せる、その決意を。

477MRS-D:2007/08/12(日) 11:18:08 ID:???
すいません、タイトル書き忘れてました。
PHASE06『セカンドステージ』 SIDE-B
です。
もう少し更新速度上げれるようにしてみますのでよろしくお願いします。
478通常の名無しさんの3倍:2007/08/13(月) 15:11:50 ID:???
GJっす!
ルナがいいっすね〜
ただ、ちょっと文章の途中でレスが変わるのがちょっと読みづらかったです
できれば、文章の区切りで次レスに移っていただけるとありがたいっす
479通常の名無しさんの3倍:2007/08/16(木) 16:13:26 ID:???
GJだす!
カッコイイなぁ今までにないハードな感じ
480通常の名無しさんの3倍:2007/08/19(日) 20:33:53 ID:???
>>477
なんというダークヒーロー…こういうシンを待っていた!
481通常の名無しさんの3倍:2007/08/20(月) 12:34:23 ID:???
>>477
GJ!
なんというか、黒い。でもカッコいい!!
続きをwktk
48231 ◆MRSinWBV9. :2007/08/21(火) 16:42:21 ID:???
遅い夏休みが取れたのでwiki更新しました。

>>469
に書き込まれるくらい長期間更新できなかったりするので
久々に@wiki使うとメニューに見たことがない機能ばかりが追加されて驚きましたよ……。
483MRS-D:2007/08/21(火) 17:32:41 ID:???
すいません、まとめサイトみて気付いたんですが、
よく見たら今回のタイトル、PHASE06『セカンドステージ』 SIDE-Cでした。
申し訳ないです。

レスありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
484通常の名無しさんの3倍:2007/08/23(木) 17:52:42 ID:???
乙です。そして保守

KIRA執筆中ですが、試行錯誤しまくって書いてます。急ぎで運命編に向かわしたいのですが………
485通常の名無しさんの3倍:2007/08/25(土) 01:39:43 ID:???
保守がてらに投下
早く出てこないかな

↓仮面ライダーデスティニー(デスティニーフォーム?)
http://q.pic.to/gp32a
486通常の名無しさんの3倍:2007/08/31(金) 12:07:50 ID:???
上げ保守
487通常の名無しさんの3倍:2007/09/02(日) 11:05:31 ID:???
リュウタロス、ボコられた
488通常の名無しさんの3倍:2007/09/07(金) 23:06:13 ID:???
保守
489Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:10:00 ID:???
少し短編書いてみました。一部かなりキャラが変えられているのもあるので注意してください!
途中ですが保守代りに。まぁ予告編だと思ってくださいね。拙文ですがどうぞ。

第一話「運命が変わる日」

少年が今までの人生で少しずつ積み上げてきた常識という名の積み木はたった数日間でバラバラに崩れていった。
子供の頃によく観ていたTVのヒーローは大人になるにつれてそれが幻想であると知り、悪の組織も存在しない事を知った。
(少なくとも彼が幼少時に調べた電話帳には悪の組織の名は載っていなかった。)
そんな一般人なら誰でも持っているような認識を、今の彼はそれを捨てざるをえなくなっていた。その認識が目の前の現実と大きく矛盾していたからだ。
おとぎ話に出てくるサイクロプスのような一つ目の人間が確かに彼の眼前に存在している。全身が鎧のような筋肉でその上全身は緑である。
それは間違いなく怪物と認識しても差し支えないだろう、どんなに地球温暖化が進行しても人間こうはならない。怪物はしきりに暴れ回っていた。
その様子は小さなハリケーンの如し、パワーは凶悪で周りの物や人を見境無しに破壊していた。
少年は子供の頃好きだったヒーローの姿を思い浮かべる。彼のヒーローはこんな時にはカッコ良く怪物をやっつけるのだ。
だが周りを見渡してもヒーローの姿はない。当然それは偶像であり実在するはずがない。だが怪物はバッチリ存在している。
「世の中理不尽過ぎないか…?怪物がいるなら正義の味方くらい用意しとけよ」
誰に言わずとも彼の心情がそのまま口に出ていた。
「君がなればいいだろう、君ならいいヒーローになれる。私が確信を持って保証しよう!」
「お断りだよ!あんたみたいな怪しさ全開の変態仮面の言う事なんか誰が聞くか。」
「ハッハッハ!ディ・モールト!実にいい!この絶望的な状況でその負けん気、それでこそ我が友だ!」
「何勝手に友達にしてんだよ?!」
「しかし友よ、この状況、決して生易しいものではない…」
「無視かよ。」
「この状況を打破するとなると、やはりこのままでは無理だ。」
「…わかってる…いきなりマジになるな。」
「君にもわかるはずだ、君が今、何をすべきなのかを。」
少年、シン・アスカは決断を迫られていた。
490Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:16:04 ID:???
話は前日へと遡る。シン・アスカは教室の窓際の席で退屈な授業が早く終わらないかとぼんやりと空を眺めていた。外からは暖かい春の日差しが降り注いでいる。
教壇の上ではもうすぐ定年間近の、髪の毛の色がほとんど真っ白な老年の教師が古典の解説をしているところだった。
シンにとっては意味がわからない謎の呪文にしか聞こえない。おかしなのにおかしくないってどういう事だよ?というのが成績が悪いことに対する言い訳であった。
空を眺めるのにも飽きて教室に目を向ける。昼休み前の四時間目の授業、さらにあまり生徒に怒らない教師の授業という事もあり
熱心に解説を聞いている生徒は少数であった。それ以外の生徒は机の上に突っ伏しえ寝ていたり、隠れて漫画を回し読みしたり、弁当を食べていたりした。
シンは不意に一人の女生徒の方へ目をやった。彼女は視線を教師に向け、時々下を向いてノートをとっている。かなり真面目に授業を受けている。
(真面目に頑張って…あいつらしいな)
そんな姿を見てシンは溜め息をついた。同時に劣等感も感じていた。視線の先の女生徒、名はルナマリア・ホーク。
彼と彼女は家が隣同士の幼馴染だ。当然小中高同じ学校である。小学生の頃は毎日一緒に学校に行ったりしていたのだが中学に入ってからはそんな事も少なくなった。
と言うのは中学に入り周りの男子が騒ぎ始めたのだ。整った顔立ち、モデルのようなスタイル、成績優秀で同姓からの人気も高い。まさに完璧であった。
それまでルナと呼んでいたのだが段々話しかけづらくなり以前のように一緒に登校したり話したりすることが少なくなっていった。
高校に入る頃には彼女をホークを呼んでいた。ようするにシンにとってはルナが自分の手の届かない遠くの世界に行ってしまったように感じた。
もう彼女は自分の知っているルナじゃなくなったのだ。そんなことを思う度にシンは暗い気持ちになる。
シンは特別秀でたところもない、どこにでもいる高校生であった。成績は中の中、運動能力は上の下、ルックスは…年齢より子供っぽい。
こんな平凡な自分ではルナと仲良くなる資格もないんじゃないか、と考えるようになってから気軽に話しかけられなくなってしまった。
授業終了の鐘が鳴る。それと同時に教室の中が騒がしくなる。それぞれ自由に仲の良い者達と昼食をとり始める。
「シン、飯食おうぜ。」
クラスメートであり、よく一緒に行動するヴィーノとヨウランがシンの机に近付いてきた。いつも彼らはここに集まる。
「いやぁ〜しかし今日は暖かいな。朝なんか猫が盛ってうるさい事うるさい事」
浅黒い肌が特徴のヨウランが気の抜けた調子で口を開く。
「春か…俺にも春来ないかな…。いい加減愛の手料理っていうのを食べてみたいよ。」
小柄で茶髪、前髪が赤いメッシュのヴィーノが悲しげに焼きそばパンを頬張りながら答える。
「俺らって…女っ気ないな。」
「言うなよ。」
2人の虚しい会話もシンは聞き流していた毎度の事だからだ。春夏秋冬、何につけてもこういった会話しかしてないのだ。
「神様は不公平だよな、みんなモテルやつに集中しやがる。そう言えばルナマリア、また告られたらしいぜ。」
ヴィーノの一言にシンの心拍数が一気にレッドゾーンまで高まる。
「またかよ!この前サッカー部のエースに告られたばっかじゃんか。くそっ!俺もあんだけもててみたいぜ!」
「やめようぜ、悲しくなるから。…ん?シンどうした?飯…食わないの?」
その一言にはっとするシン。
「あ、ああ!食べる食べる!それにしてもすごいな、ホークは。」
動揺を悟られまいと必死に平静を装って弁当を口にかきこむ。
「そう言えばお前あいつと幼馴染なんだろ?なぁ、頼むよ、今度女友達紹介してって言っといてくれよ!な?」
「情けないなヨウラン…でもシン。俺も頼むよ。」
「あ…ああ。まぁ、あんま期待はするなよ。」
シンは曖昧に濁してその場を切り抜けた。
491Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:17:21 ID:???
その日、シンは下校中ぼんやりとヴィーノの言葉を思い出していた。またルナマリアが告白された事だ。
ルナマリアのそういった話はもはや特別珍しくもなかった、しょっちゅうそういった話を聞くしシンが知らない話ももっとあるだろう。
だがその事を考えるだけでシンは鉛を目一杯詰められたように頭と胸が重くなる。この重しにいつまでたっても馴れる事はなかった。
考えないように考えないように、そう考えれば考える程、頭からその考えが離れなかった。接着剤でとめたかのように頭にこびりついている。完璧な恋煩いだった。
彼は自分の気持ちに気付いてはいるがそれを認めようとしない。それを端へと追いやろうとする。学校の人気者が特別優れた訳じゃない、唯一の接点が幼なじみだけの自分に振り向く…
まるで想像がつかなかった。幼なじみと付き合うなどハッキリ言って漫画だけの出来事であり、加えてシンは某有名ゲームから幼なじみを落とすのは難しいと学習している。
今じゃ普通に喋れもしないのだ、ましてや付き合うなどとそこら辺を歩いていたらたまたま宇宙人と会って一緒にお茶するくらいの確率だ、そんな事を考えていた。
気付くと考え事に没頭しすぎてまったく知らない裏道を進んでいた。こりゃいかん、と道を引き返そうと振り向いた矢先シンの視界に奇妙な物体が立っていた。
全身が緑系であり鎧のような筋肉が盛り上がっているような姿であった。二の腕の太さはシンの太ももぐらいはあるだろう。だが最も特徴的なのは目にあたる部分だ。
黒いバイザーの中心に淡く発光した赤い真円が不気味に浮かんでいる。何故こんなものが特別変わったところもないこの街にいるのだろうか?
そうだ、これは素人ドッキリなのか。シンはすぐに結論を下した。穏やかな住宅街に現れる怪物、逃げ惑う人々!なるほどね、安い話だ。カメラはどこにあるんだ。シンは隠して
ありそうな場所をキョロキョロと探し始める。緑色の着ぐるみがシンの目の前まで近付いてきた。春で暖かいとは言えこれだけの着ぐるみはとても暑そうだった。
「いや〜大変ですね。これいつ放送で」
喋りきる前に急にシンの視界が真っ暗になった。次に気付いた時は視界は青一色であった。仰向けになって倒れていた。彼は訳がわからなかった。
混乱しつつも体を起こす、同時に頭に激痛が走る。
「がっ…!」
一瞬で髪の毛を全部抜かれたかと思い手をやるが黒髪はしっかりと生えている。クラクラするが意識はハッキリしている。
ぼやけた視界の中でまたも緑がこちらへ来るのがわかる。
「いきなり何すんだよ!いくら撮影だからって危ないだろっ!!」
シンの怒りへの返事はミドルキックであった。動きを何とか察知して皮一枚で蹴りをかわす。脚はシンの真横のコンクリート製の壁にぶち当たる。
壁は衝撃が波で伝わる事を教えるよう放射状にひび割れた。
間近で見たシンは流石に撮影ではない事に気付いた、同時に緑のモノが少なくとも人間でない事、そして友達にはなれそうにないなと思った。
あの赤い単眼に睨まれたら誰でもそう思うだろう。たとえ慣れてもお断りだった。
緑は脚が壁に刺さったままで身動きがとれなくなっていた、シンはこの隙を見逃さず一目散にに逃げる。
「警察っ!警察!!誰か警察をっ!!」
頭で考えていたつもりだったが声に出して叫んでいた。体を限界まで動かす。頭が痛いのも忘れて走った。捕まったら死ぬ、そう、命をかけたおにごっこだった。
走りながら後ろを振り向く。だが【奴】はいなかった。奴は前にいた。目の前の光景が信じられなかった。シャツの裏の汗が一気に冷たくなる。
あれだけ先にスタートしておきながら一気に追い越されてしまった。
シンは決して足が遅い訳ではない、いや、そういう次元の話ではないのだ。イキモノとしての能力が段違いだった。
それは兎と亀の競争のようなもの、だが現実は亀が勝つ事ができない。
瞬間、シンは今来た道を引き返す。だが緑の兎が亀を狩る方が速かった。鋭く荒々しい爪がシンの胸から腹部にかけて袈裟に切り裂く。
肉と骨ごと削られた。削られた肉片はビチャリと音をたて地面へと飛び散った。
シンは膝から崩れ落ちそのまま俯せに倒れた。これだけの痛手を負いながら、‘不幸にも’シンの意識はまだ保たれていた。
(熱い…なんだこれ…真っ赤だ…血?スゲー…トマトジュースみたいだ…いてぇ…俺…死………)
湧き水のようにシンの血液が地面を覆っていく。肌が白くなっていき、体温が奪われていく…。緑の怪物はもういなかった。

492Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:19:33 ID:???
小さい頃の夢を見た。まだ恋とか愛とかわからない、いや、今でもわかんないよな。とにかく昔の夢、妹のマユと、メイリン、そしてその姉のルナマリアと遊んでる夢だ。
おままごとをしてた。俺がお父さんでルナがお母さん。マユとメイリンはどっちがお姉さんになるかもめてる、結局順番でやってたな、確か。
ルナが泥でできたピザを出してきた。この泥ピザを一回だけ本当に食べたんだよな、ルナが真似じゃダメだって言うから。我ながら無茶だよな。
当然次の日具合を悪くした。ルナは布団で苦しむ俺に泣きながら謝ってたっけ。その時の事はすごく印象に残ってる。
「ごめんね、ごめんねシンちゃん」
そうだ、昔はシンちゃんって言われてたんだよな。…今は?…わからない、そもそも話さなくなったから。何でだろう?
背中に冷たく堅い感覚がある。目を開くと眩しい光が飛び込んでくる、シンは思わず目を細め顔を背ける。しばらくして当たりを見渡した。
病院の手術室みたいなと部屋だった。高価そうな機械、点滴が部屋の至る所に置いてあった。そして自分は上半身裸で手術台に横たわっていた。意識が定まらない、自分はどうして…
「もうお目覚めかな?」
背中の感覚に似た声が部屋中に響く、だがその声には優雅な、どこか気品に満ち溢れた声だった。首を回して声の主を探す。
「後ろだよ。」
笑いを含んだ調子で響く。シンは体を起こし後ろを向く。壁際に独りの青年が寄りかかっていた。
「やぁ、調子はどうかね?シン・アスカ君。」
男は貴族のような雰囲気を纏っていた。ただし口から下だけ。顔の上半分に鉄製のマスクを被っている。シンの疑惑の視線に気付いたのか男は軽やかに挨拶をした。
「私はラウ・ル・クルーゼ。決して怪しい者ではないよ。」
手術室に自分を運び込んだ仮面の男、十ニ分に怪しい。疑惑の視線は更に強くなる。それを無視するようにラウは続ける。
「心配は無用だ、あの怪物はここにはこない。」
ラウの言葉にシンの記憶が沸々と蘇ってくる。下校途中に怪物に襲われた記憶が。
「そうだ!俺怪物にやられて…血が出て…アレ?俺死んだんじゃ…?」
シンは自分の体を見回す。脚はしっかりと存在していた。どうやら幽霊にはなっていない。他の部分も何も異常らしい異常はない。
「安心してくれ。ここは天国でも地獄でもないさ。」
ラウが芝居がかった口調で言った。確かにどっちにもこんな怪しさ全開の変態仮面男はいないな、シンは口には出さなかったがそう思った。
「じゃああれは一体…夢?」
最後につけられた胸の傷が綺麗さっぱり消えていた。
「いや、あれは紛れもない現実だよ。そして君は一度死んだ。」
ラウは平坦な口調で発せられたためわかりづらかったが確かに死んだと言った。
「死んだ?」
493Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:21:25 ID:???

「だが君は生き返った。いや違うな…生まれ変わったというのが正しい。君はそのベルトの力で新しい命を手に入れたのだよ!」
ラウは最後の1行に力を込め吠えた。シンの腹部を指差したポーズでパントマイムをするように固まっている。ラウはしばらく動かずにいた。シンも呆れて動けなかった。
「ククク…ハァーハッハッハ!!」
突然ラウが気でも触れたように笑い始めた。突然の変化に驚きシンは手術台から転げ落ちた。シンが立ち上がっても仮面の男は満足そうに頷いていた。
「これだ…この感覚!私は確実に夢へと近付いている!」
興奮しながらブツブツと呟いている。そんなラウを尻目にシンは独り愚痴をこぼす。
「んな事言われても信じられるかよ。てかこいつ何者だよ…」
ラウという男、見かけだけでなく中身も怪しすぎる。新興宗教の勧誘かとも思った。ラウはシンの独り言を聞いていたようだ。
「ふむ…では一つずつ説明していこうか。」
ラウは顎に手を添えてゆっくりと話を始める。
「まず、あの怪物の正体だ。あれは人間じゃない、だが動物が突然変異で出るものでもない。」
「じゃぁ、遺伝子組み換えとかなの?」
「半分正解だ。確かにあれは遺伝子組み換え生物だ、だがそんな技術はここには存在しない。」
「じゃああれは何なんだよ。未来や異次元からでも来たのか?」
「ほぅ…君は勘がいい!そう、奴らは未来ではないどこか…限りなく近く、そして遠い世界からきたんだ」
シンはこいつは何かドラッグでもきめてるのではないかと心配になった。さっきの怪物は夢なんだと、だが夢にしては血と共に力が抜けていく感覚はリアルすぎた。
ラウの言葉を笑って聞き流す事ができない。
「信じられないのも無理はない、奴らはこの世界には今まで存在しないものなのだからね。」
「ちょっと待て!近いだか遠いだかわかんないって!この世界ってなんだよ!」
ラウはまたしばらく考える素振りをみせ、口を開いた。
「パラレル・ワールド、と言えばわかりやすいかな?つまり怪物は他の世界から君達の世界へと来たのだよ。」
「パラレル・ワールド…?何でまた…」
「その説明はまた後だ。長くなるからね。今はあの怪物は君達の脅威になる…それだけを認識してくれればいい。」
「まとめると、技術の高い世界で生まれた怪物が、この世界に来た…って事でいいのか?」
ラウは嬉しそうに頷いている。どうやらこれが正解らしい。その上ラウが嘘を言ってるようには感じられなかった。どうやら本当にややこしい事になっているようだ。
「まぁ…よくわかんないけどな。とりあえず助けてくれたみたいでありがと。じゃあ俺帰るよ。」
そう言ってシンは近くにあった自分の制服に袖を通す。出口に向かうシンをラウが引き止め悲しそうに叫んだ。
「待ちたまえ!君はまだ僕が何者か聞いてないじゃないかっ!」
494Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:23:00 ID:???
いや、やっぱあんま興味ないからいいよ。」
さらりとかわすシン。ラウは諦めない。
「ずるいぞっ!もう君は僕と離れられないぞ!まだ説明は終わってない!」
ラウは扉を背にしてシンを部屋から出られないようにしてから、落ち着きを取り戻し話し始める。
「オホン…おめでとう。君は新しい力を手にしたのだ。その力で、あの怪物も簡単に倒せるぞ。」
「俺は別に何も変わってないよ。」
そう言いながらシンはさっきまでとの変化した部分に気付いた。制服の革のベルトが銀製のものに代わっていた。バックルが特徴的である。
「そう、そのベルトの力を使うんだ。腕時計でもよかったのだがね、やはりベルトが昔からの良い伝統なんだよ。さぁ!ヒーローになり、共に悪を討ち滅ぼそうではないかっ!」
「断る。」
「何故だ!ヒーローになれるのだぞ?変身できるのだぞ?魅力的じゃないかね?カッコイイヨ?」
まさか断られるとは思っていなかったラウは動揺を隠せない。自身が考えつくヒーローの利点をあれこれと挙げていく。
「うるさいな、悪いけど、俺はそんな事に興味ないんだ。それにやりたいならあんたがやればいいだろ。」
「フッ…やれるものなら…とっくにやっているさ…」
悲しげに呟く。その姿を見てシンはなんとなく気まずい気持ちになる。
「頼む、シン君。やって欲しい、級友の頼みだと思って…」
あんたなんかと級友になった覚えはない、と言おうとしたがその言葉は驚きで喉に引っかかりでてこなかった。ラウが仮面を外した、その顔に見覚えがあったからだ。
整った目鼻立ち、艶やかに煌めく金髪、何より特徴的なのはその瞳だ。吸い込まれそうな程澄んだマリンブルーで目を合わせたら息をするのを忘れてしまう程美しかった。
シンのクラスメイトの、レイ・ザ・バレルだった。
「いきなりすまなかったな、シン。」
仮面を外したラウは先程とはまったく印象が違っていた。喋り方はもちろん、彼をとりまく空気までも変わってしまったようだ。
演技とかそういった次元ではない。人が変わったようだ。
「レイがラウでラウがレイ…?」
シンとレイは特別仲がいいという訳でもなかった。ただ、会ったら一言二言話す程度、シンはレイの事を勉強もできてスポーツもこなせる、知的で冷静な奴くらいに思っていた。
先程のラウとは正反対の認識である。
「ああ、俺の身体には二つの人格が宿っている。そう思ってくれ。」
このたった数時間でシンにいくつもの「非常識」が降り注いだ。怪物、生き返った自分、二重人格なクラスメイト、もう認識能力は限界に来ていた。
それを察知したのかレイが穏やかに言葉を紡ぐ。
「シン、ラウはああ言っているが、無理はするな。今日は疲れただろう、帰って休むんだ。」
レイがシンの肩に手を置いた直後シンの視界がグニャリと溶けて歪み、意識が薄れていった。
495Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:25:50 ID:???
シンが次に目を醒ますと自宅の前に立っていた。辺りを見回すが慣れ親しんだ光景が見えるだけで何も変わった事はない。
そのままぼーっとしていると背中にドスンと重いものがぶつかる感覚に襲われる。
「ただいまお兄ちゃん、家の前でぼけっとして何してるの?変質者みたいだよ?」
一つ年下の妹、マユだった。ぶつかってきたのは妹の通学鞄であった。またおかしな事が、と必要以上に身構えたがマユと知って一気に緊張が解けた。
「マユか、よかった…。」
「何が?お兄ちゃんどうしちゃったの…?」
「何でもない、行くぞ。」
二人で家に入る。普段は何とも感じないのだがこの日ばかりは違う、シンは今日を経て自分の家がどんなに安心をもたらすかを初めて知った。
「ただいまお母さ〜ん、マユお腹減った〜」
「おかえり。まったく帰ってくるなりはしたないわね…ちゃんと手を洗うのよ。ほら、お兄ちゃんもぼーっとして何してるの。」
いつもはうるさく聞こえる母の小言もとても暖かく感じた。言われるがまま手を洗い着替えもしないまま食卓についた。既に夕食の準備は済んでいるようだ、メニューはハンバーグだった。
「二人ともおかえり、じゃあご飯にしようか。」「父さん、早かったね。仕事もう終わり?」
「ああ、思ったより早く片付いてね。こうして家族でご飯を食べたいと思った訳だ。シン、久しぶりに一緒にビールでも飲まないか?」
父は既に少し顔が赤くなっている。普段は仕事が忙しくあまり家にいない、稀に早く帰ってくる時はこうしてシンを御相伴に誘う。
「マユも飲んでみた〜い!」
「こら!高校生にはまだ早いわよ、お父さんも勧めないの!」
母の一喝で一家の大黒柱は体をちぢこめた。久し振りでもこれである、主導権がどちらにあるかは明白だ。
それからシンはゆっくりと落ち着いた時間に身を委ねた。先程の出来事が嘘のように感じられる。いや、むしろあれは夢なのだ、疲れていたのだと思えてくる。
いつも通りの自分になっていた。すっかり気をよくしたシンは自分の部屋に戻り漫画でも読もうとした。机に見慣れない本が置いてある。
両親はめったな事がないと部屋には入らない、という事はマユの仕業だな。と考えながら本をパラパラとめくる。
中には〜ヒーローとは〜と意味不明の文字が、更に下にはびっしりと条文が羅列してある。一番下にはby心の友ラウと書き添えられていた。
ポケットに入れっぱなしだった携帯が鳴り響く。知らない番号からかかってきている。嫌な予感がするが電話をとる。
「やぁ、シン。具合はいかがかね?」
「…お前は…」
「何、嘘をついても私には全てわかる。心配かけまいという心遣いだけで十分!」
ラウの声だった。日常が一気に崩れ落ちた気がした。シンはげんなりとしている。それでも何とか声を絞り出すが明らかに疲れている。今疲れさせられた。
「お前何で俺の番号を…」
「レイのクラス名簿を見れば簡単な事さ、友よ。」
「切るぞ。」
「待ってくれたまえ、マニュアルは読んでくれたかね?」
「マニュアル?」
「君の机の上に置いておいた。よく読んで欲しい、わからない事があったら何で…」
シンは途中で電話を切りマニュアルをゴミ箱へ叩き込み、気を紛らわせようと風呂場へ向かった。
風呂からあがってもマニュアルはゴミ箱に入ったままだった。シンはベッドに飛び込んでそのまま布団をかぶった。
496Masked Rider Blood:2007/09/08(土) 03:27:31 ID:???
翌朝、シンは完璧寝坊した。昨日の夜はなかなか寝付けなかった。
急いで教室へ駆け込むが教室はもぬけの空だ。今日は月に一度の定例全校集会だ。彼はその事をすっかり忘れていた。
シンの学校の校庭は校舎に面していない。体育館の向こう側にできている。つまり校舎から校庭に向かうには体育館を横切らなければならない。
体育館で集会をやればいいのに、外で行うのは今時珍しい。
集会はどんなに雨が降っていようと必ず屋外で行われる古き習わしがあったのである。今日は太陽が異様に自己主張している。4月後半だが半袖でもいいくらいの気候だ。
「シン、少しいいか?」早足で校庭に向かっていると、体育館の影からレイが現れた。シンは反射的に身構えてしまう。
「何をしてるんだ?早く行こう。集会はとっくに始まっている。」
「あ、ああ。」
普段のレイだった。もしかしたら昨日の出来事は質の悪い白昼夢だったんだな。そんな事を考えていた。
どこか拍子抜けしたが慌ててレイの後を追い掛けるシン。自分が遅刻していた事を忘れていた。校長のダラダラとつまらない話をBGMに二人は身をかがめてコソコソと列の後ろに並ぶ。
「そういえばシン、何故遅刻したんだ?」
「あ…まぁ、ただの寝坊だな。」
「フッ…お前らしいな。」
「うるさいな、レイこそ遅刻してるじゃないか。」
「俺は遅刻じゃない。先生に頼まれて保健室の先生を呼びに行ったところだ。今日は日差しが強いからな、念のため、だろう。」
「ふぅ〜ん…」
確かに暑い。シンはふと太陽を見上げる。体育館の屋根に人影が見えた。その人物は全身が緑の服を着ていた。そして三階程の高さの屋根からその人影が飛び降りた。
ちらほらと謎の人物の存在に気付くものも現れた。謎の人物はゆっくりと生徒達に向かって歩き始める。生徒達はざわついたままだ。
横からエンジ色のジャージの中年体育教室が謎の人物に近付き、首根っこを押さえようとする。
シンの中で昨日の出来事がフラッシュ・バックする。あれは夢なんかじゃ…なかったんだ…。
「貴様何者だっ!うちの生徒だったらただじゃおかんぞ!」
「…に、逃げろぉぉーっ!!!」
シンが叫んだと同時に体育教室の首が宙を舞った。切り口からは盛大に血が噴き出している。まるでトマトジュースの噴水のようだ。
司令塔を無くした肉体はやがて、ゆっくりとドサリと音をたてて地面に突っ伏した。
生徒達はその光景を音一つたてずに見つめていた。校庭は水を打ったように静まり返り、まるで時が止まっているようだった。
「キャァァァァァァァァア!!!」
先頭の女子生徒の劈くような悲鳴を合図に校庭は混乱の坩堝に陥った。

中途半端に終わります。続きは今から急いで書きます。
497通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 18:27:31 ID:???
GJ!
そしてなんという鬼引きw

ぶっ飛んだラウにかなり笑わせて貰いましたw

後、シンよ、某有名ゲームなら2もやっとけw
難易度の低い赤毛ショート幼なじみが(ry

とにかく、続きをwktkしながらお待ちしております
498通常の名無しさんの3倍:2007/09/10(月) 22:20:42 ID:???
煌めく朝日 夜更けのラジオ
499通常の名無しさんの3倍:2007/09/13(木) 21:51:26 ID:???
保守
500通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 17:27:21 ID:???
容量的にそろそろ次スレの季節かな?
501通常の名無しさんの3倍:2007/09/16(日) 18:39:34 ID:???
うむ
502通常の名無しさんの3倍:2007/09/17(月) 18:26:27 ID:???
何だかんだで4スレ目も完走したのか
なかなか地味に続いているなこのスレも
503通常の名無しさんの3倍:2007/09/20(木) 21:36:16 ID:JFhwlxBV
保守
504仮面ライダーKIRA:2007/09/24(月) 21:32:05 ID:???
PHASE-09 悲しすぎる贈り物


危ないところを助けられたアスランとニコルはは、カグヤ区にあるサハク家へ招かれていた。
広い屋敷で、2人は肩が狭いような気がしてならなかった。間違いなく誰かに見られている、そう確信していたからである。
長い廊下を歩いた先の部屋に入ると、1人の人物が座っていた。
「あれは……ムルタ・アズラエル?」
アークエンジェルを始めとするヘリオポリス限定で活躍するオーブと違い、国が設立したブルーコスモス。
その盟主であり、国家機関としても運用をしている人物であり、この国の裏の総理と言える。
「待ってましたよ。アスラン・ザラ君、ニコル・アマルフィ君」
自分達の事を可能な限り調べ尽くしてるだろう。狙いはある程度予想がつく。
「最初に言っておきますが俺達はブルーコスモスの傘下になるつもりはありません」
「おやおや……随分と感がいいんですね。ですが、本当にそれで人類が救えると思いますか?」
アズラエルは紅茶を置いて窓から見える景色を眺める。
「現在、ZAFTの活動範囲はユニウスセブン落下地点の半径30qです。そして次第に範囲は広がっているのをご存知ですか?」
「!?」
「私達も努力はしていますが、被害は確実に広がっています。もはやこれは人類存続か否かの瀬戸際なのです」
505通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 21:34:17 ID:???
部屋のカーテンが閉まり、大きめなスクリーンが出された。そして、そこにはダガーヘッドそっくりなものが出された。
しかもそれは明らかにベルトがあり、ライダーシステムと酷似していた。
「これは……」
「私達の組織で開発しているライダーシステムの量産型ですよ。融合計数に関係なく変身出来ます」
アズラエルの言葉でハッとある点に気づいたアスランはロンドを見た。
開発段階だったアストレイシリーズの早すぎる完成、ブルーコスモスでのライダー開発。それは双方の協力無しには有り得ない。
「ロンド・ギナ・サハク、あなたはまさか……ライダーシステムの情報をブルーコスモスに?」
「だったら……何だと言うんだ?。所詮ヘリオポリスとてこの国の一部だ、協力するのは当然だ」
数人の男がアスランとニコルを囲む。ロンドが合図をすると、男達はベルトを巻いて画像にあったライダーに変身した。
その姿は明らかにストライクに近かった。
「どうします?我々に従い、ブルーコスモスに入る道しか……」
完全に上機嫌のアズラエルとロンド。僅かな隙を見逃さず、2人は窓を割って飛び降りた。

゙CHANGE AEGIS゙

゙CHANGE BLITZ゙

着地した2人に下で待ちかまえていたストライクダガー達と、サハク邸の庭で戦う羽目になった。
「どうしましょうか?相手はZAFTじゃなくて人間ですよ?」
「殺さない程度に戦うしかないだろ……」
506通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 22:01:25 ID:???
一斉に向けられた銃口。飛び上がると同時にビームライフルを下にいるダガー達に向ける。
ビームが空へと昇っていく。逃げ場はない。グレイプニールを壁に打ち込んで、イージスごと屋上へ移動する。
「実戦は僕達ほどではないでしょうが、経験していると思われます」
「ああ。ブルーコスモスはそれに加えてまだ何かあるはずだ。規模はオーブの比ではないからな」
「……アスラン、僕があいつらを引きつけます。その間にアークエンジェルのみんなに伝えてください」
そう言うとブリッツは姿を消した。下ではダガー達が見えない所からのビームに慌てているのが伺えた。
助けに入るか迷う。しかし、ここは妨害電波が発せられてるとライダーシステムが看破しているために通信は不可能とわかる。
伝えるにはニコルの言うとおり直接行くしかないのだ。イージスはぐっとこらえて裏側に止めてあるライドグラスパーへ急いだ。
が、既に読まれているのはわかっている。アスランの予想通り、通路には色違いのダガーが待ち構えていた。
「ターゲット………確認……排除を開始する」
そう言うとビームライフルを地面に撃った。砂埃が巻き起こるが、イージスの足は止まらない。
「こんな事で俺を止めれると思ったか!」
前方にビームライフルを撃つ。しかし、命中した音は聞こえない。
「排除……」
咄嗟の反応だった。頭に向けて突き出してきたサーベルを屈んで避ける。
丁度晴れた辺りで2人の距離は縮まっていた。合間を取らないまま、イージスは足のサーベルでの相手の銅を斬った。
507通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 22:03:58 ID:???
よろけるが、体制を立て直すとベルトにあるボタンを押す。
「……ターゲットの攻撃手段増加……ロングダガー……フォルテストラを装備……」
空間転送により、装甲がロングダガーの体に装着される。驚いたのはアスランだった。
その装甲はデュエルのアサルトシュラウドと全く同じ形状をしていたからである。
これでオーブが開発したライダーのデータ全てがリークされてると見て間違いはないだろう。
「だが……負けるわけにはいかない!」
ロングダガーは突きを主体として刃を向けてくる。さらに一定のリズムでレールガンを撃ってくる。
それを弾きながら後ろへ下がっていくイージス。
一向にパターンを変えずに行動を行っているロングダガーには、無機質さを感じさせられるくらいである。
「まるで機械のよう…… 」

――――!!

そうに違いなかった。人間ではない。少なくとも、゙普通の゙人間にこんな真似は出来ない。
間違いない。ニコルの戦ってる相手とは異質な存在……
「作られた……人間なのか?だがやられるわけにはいかないんだ!」

゙X-303 ライダースラッシュ゙

両手足のサーベルが発光し、 プラズマ粒子が溜まっていく。
まずは腕の動きを止め、左足でロングダガーのベルトを切り裂く。
強制的にライダーシステムが解かれ、変身していた人物が露わになった。見た目は自分とはあまり変わらない年に見えている。
「やはり……」
アスランが読んでいた通りだった。こいつの目は死んでいる。まるで、意志を持つ人形。それとしか思えなかった。
「変身機能解除……想定外……」
508通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 22:06:09 ID:???
すると彼はポケットからある物を取り出し、イージスに抱きついた。
「??……しまっ……!」
「想定外……自爆コード作動……」



爆発音はブリッツのいる場所まで響いていた。しかし、それが何が原因で誰がその被害を受けてるのかはわからなかった。
トリケロスからランダーサートが放たれ、ストライクダガーを倒していく。
殺さない程度に手加減をしてるせいか、エネルギーを余計に使ってしまっていた。
ニコル自身さっきの戦闘のダメージがまだ残っているせいか、思うように体は動いていないのである。
「はぁ……はぁ……どうにか…全員……」
変身解除に追い込むというのは相手を殺すことより難しかった。
急いでイージスを追いかけようと足を踏み出す。すると、男が1人跳び蹴りをしてきた。
「な、あなたは何者何ですか?」
男は長髪だった。瞳は紫で、細い割に筋肉で固まっている肉体。
何より、その顔はニコルのよく知る人物に似ていた。
「キ……ラ?」
ピクッと反応を示す男。彼はブリッツをさらに睨みつけるように顔を向ける。
「貴様……キラ・ヤマトを知っているのか?」
「え?」
男はバックルを取り出して、ベルトとして腰に巻き付ける。鋭い眼光はキラのとは正反対である。
「あいつの仲間か……案内してもらうぞ……キラの場所へ」
左手を胸の前に置き、変身の掛け声と同時に突き出してバックルを開く。
ダガーとは違い、GATシリーズ同様ライダーの姿であった。どちらかといえばストライクに近いかもしれない、

゙CHANGE HIPELION゙
509通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 22:48:40 ID:???
緑色の眼をしたライダーは変身音から判断すると、゙ハイペリオン゙というらしい。
どうやら友好的対話解決は行えそうにはない。ブリッツは既にサーベルを抜刀していた。
「さあ、連れてけ!!」
細かい弾丸を撃ちつける。連射に特化しているビームサブマシンガンがブリッツの装甲を剥がすように放たれる。
応戦しながらも、ダガー達とは比べものにはならない強さに苦戦を強いられてしまう。
「あなた、キラの何なんですか!?」
「やはりな……ぬくぬくと育ったあいつは自分がどういった存在か知らないでいやがる……教えてやるよ」


その頃、緊急調査のために残りのライダーは封鎖されている島へ向かった。
その島はユニウスシティ同様、ユニウスセブンの破片の一つが落下した場所であり、遺伝子研究所があった場所である゙メンデル゙である。
「……それで、なんで俺達がこんな事しなきゃなんないわけ?」
「一応既に汚染被害はないから生身でも調査は可能らしい。だが、ここで調査団体が行方不明になってるからだろうな」
ユニウスセブンの一部。つまりはZAFTの運び屋であった可能性があるのだ。
「what?ユニウスセブンもそうだけどよ、だったらなんで最近になって出現したんだ?」
「それがわからんから調査するんだ」
510通常の名無しさんの3倍:2007/09/24(月) 22:51:20 ID:???
研究所の扉を開けて入ると、中は隕石の影響で崩壊したものが散乱していた。
研究者達の白骨死体は触れると砕けるくらいに灰化が進んでいて、残っているのはほとんどない。
「何もないよね……イザーク、ディアッカ、地下室があるようだからそこに行ってみよう」
「え?地下室……」
良く探索をしたわけでもないが、なぜかキラにはわかった。
伏してはあるようだが、視力を絞り込めば見える扉である。
(なぜだ……僕はどうして…ここを……)

階段を降りると、そこには実験用と思われる液体に浸かっているZAFTと思われるもの達の変わり果てた姿だった。
3人は驚きはしたが、それ以上にこの施設が今だに駆動してるのを不思議に思う。
「ここのが生きてるってことは、誰かが研究を続けてるって事だよな?」
「ああ……しかし、何だ?この……ZAFTの死骸の山は……」
デュエルとバスターはすっかり驚いて見入っているが、ストライクはその場にあるパソコンを調べていた。
そこには人間の遺伝子だけでなく、ZAFTの遺伝子の詳細にも触れられている。
「この塩基……遺伝子配列……嘘だ……」
「どうした?」
2人も駆け寄ってパソコンのデータを見る。そして同様に驚いてしまう。
「どういうことだ?……人間と、ZAFTの遺伝子の相互性が99%一致している……」
人間とハツカネズミは同じ哺乳類であるため、遺伝子配列もほぼ同じである。
しかし、全く別の星から来たZAFTとは進化方法も根本的に違うために重なるなどありえないはずなのである。
511通常の名無しさんの3倍
「ZAFTってのは何者なんだ?……それと……ここに保管されてるのは本当にZAFTなのか?」
よく見ると同じ緑色だが、ジンよりも明るくて肩は突き出ている。
少なくとも今まで戦ってきたZAFTとは全く別であると言えるだろう。


―――――知ってしまったようだね

「!?」
陣形を固めてあらゆる方向への攻撃にも対処できるようにする。
すると、物影からは幾度か襲ってきたサングラスをしたZAFTの人間体の姿だった。
「お前は……」
「私はラウ・ル・クルーゼ。ああ……これは私が擬態してる人間の名前ではなく、私個人の名前なんだ」
ガシャンと、壁を打ち破って十数体のZAFTが入ってきた。それは今までとは違って、ビームライフルを所持している新種と確認できる。
「初めて見るタイプだな」
「ZAFTなら倒すまでだ!」
それぞれ、2人は敵を撃破するために散っていき、ストライクとクルーゼのみがその場に残った。
「あれはゲイツという進化体だよ……我々もまだ決戦゙に向けて進化している……いや、しなければならない」
「決戦?」
クルーゼは擬態を解いてシグーに代わってゲイツの姿に変わった。
互いにビームを撃ち交わす。研究器具やカプセルが割れていく中、それを利用してストライクはゲイツの背後に回った。
エネルギー消費が続くがサーベルにプラズマ粒子を流し込んでエールストライクのまま、゙ライダースラッシュ゙を当てようと考える。
聞いてはいけない、聞きたくない事実をクルーゼは知っている。そんな気がしてならなかった。