「キラ君、君はどう思ってんの?」
「え?」
「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては」
「やはり、知っていたか」
「戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなねぇ。ならどうやって勝ち負けを決める?どこで終
わりにすればいい?」
どうやって終わりにすればいいかって? 本当ならもう疾うに終わるはずだったじゃないか! それを介入して来
てめちゃくちゃにしたのはあんただろ! って、過去のこいつに言ってもしょうがないか。
「そう、問題はそこです。何故我々はこうまで戦い続けるのか。何故戦争はこうまでなくならないのか。戦争は嫌
だといつの時代も人は叫び続けているのに」
「ほう、君は何故だと思う? キラ君」
デスクに向かって歩きかけたバルトフェルドの足が止まり、こちらを振り返る。
「誰かの持ち物が欲しい。自分たちと違う。憎い。怖い。間違っている。そんな理由で戦い続けている人がいるの
も確かです。でもが、もっとどうしようもない、救いようのない一面もあると思います、戦争には」
「ほう?」
バルトフェルドに飲まれちゃいけない。俺は、デュランダル議長との、お茶会での会話を必死で思い出していた。
「たとえばあの機体、バクゥ。見たところ、またすでに改良型が作られているようですね。こうして新しい機体が
次々と作られる。戦場ではミサイルが撃たれ、モビルスーツが撃たれる。様々なものが破壊されていく」
「……」
「故に工場では次々と新しい機体を作りミサイルを作り戦場へ送る。両軍ともね。生産ラインは要求に負われ追
いつかないほどです。その一機、一体の価格を考えてみてください。これをただ産業としてとらえるのなら、これ
ほど回転がよく、また利益の上がるものは他にないでしょう」
「確かにな。それで?」
「戦争が終われば兵器は要らない。それでは儲からない。だが戦争になれば自分たちは儲かるのだ。ならば戦
争はそんな彼等にとっては是非ともやって欲しい事となるのではないでしょうか?」
「彼等とは?」
「あれは敵だ、危険だ、戦おう、撃たれた、許せない、戦おう。人類の歴史にはずっとそう人々に叫び、常に産業
として戦争を考え作ってきた者達がいます。自分たちに利益のためにね。今度のこの戦争の裏にも間違いなく
彼等ロゴスがいるでしょう。あのブルーコスモスの母体となった! だから難しいのはそこです。彼等に踊らされ
ている限り、プラントと地球はこれからも戦い続けていくでしょう」
バルトフェルドは、しばらく黙り込んでいた。
「なるほどね。君は色々知っているようだなぁ。しかし、その考えには穴がある」
「え?」
「昨今の巨大資本にとって全世界を巻き込んだ大戦争などと言う物は、悪夢だよ。なぜなら現代の戦争は彼らの
資産を徹底的に破壊し、良質な労働者と言う資源を戦争に取られてしまうのだからね。資本主義の発達した現代
、最も大きな消費は民需だ。これを減退させる戦争は企業にとって悪夢に他ならない。そうなれば経済は後退す
るだろう。現にそうなっている」
「……ぁ……」