風華生徒会長はオーブ国家元首より賢いぞ

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529通常の名無しさんの3倍
じゃあ予告編、2話は書けるかどうかわかんない
俺自身まだプロットが形になってないから。




「この馬鹿野朗!!」

パルマフォキオナをかわされ
足サーベルを叩き込まれたデスティニーは月面に叩きつけられた
部品を撒き散らしながら月面を跳ね、そのまま地面を抉りながら滑走し、やがて止まった
残骸になったデスティニーを一瞥したジャスティスはそのまま何処かへと飛び去っていってしまった

その一部始終を見ていたルナマリアは思考を凍らせていた
戦いはあっという間に均衡を崩し勝敗を決めた、自分が殺されそうになったという事よりもシンが負けたという事に驚く
正義が去った戦場に静寂が支配する、勝者は奪い敗者は無惨な体を横たえる
はっと思考が再開したルナマリアは満身創痍のインパルスに鞭打って駆けつけようとする
シンが心配だ、幸いコクピットが残っている
怪我はしているだろうが生きているはずだろう、もしくは死んでいるか
後者を考えから振り払いスラスターを噴かして横たわるデスティニーの近くに下りていく

しかし―――残念ながら戦場と言うものは何が起こるかわからない
何者かが放った敵意ある弾丸が飛び交う様は戦場では当たり前で、誰も気づけないような”不幸”な流れ弾も多々ある

その戦場の”不幸”な流れ弾の一つが吸い込まれるようにシンのデスティニーの胸に着弾し、爆発した

如何に受けた衝撃を向こう側へ消し去り無効化するVPSと言えど
エネルギーを通さなければチタン複合装甲材にも劣るそれはバズーカの弾一撃でも跡形も無く吹き飛んでしまう
そう、――――粉々に 粉々に  コナゴナに  こなごなに?

「・……えっ!?」


530通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:34:47 ID:???
>>526
なっきーは相方としてはなかなか王道キャラなのにな。
クールなガンナー。ヘタレが余分だけどw
乙ならサラも相棒役としてはいい資質を持ってると思う。
531通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:35:48 ID:???
ルナマリアは一瞬何が起こったのかわからなかった
だが四散した灰色の装甲と目の前に漂う血の涙を流したデスティニーの頭部
モクモクと上がる煙に散る火花、燃え盛る炎
そして跡形も残らない胸部を見てルナマリア・ホークは絶望してしまう

「い……や………」

急ぎインパルスをデスティニーの落ちたところに着陸させ
コクピットハッチを開きシートを蹴って残骸になったデスティニーに向かう
死ぬ筈が無い、死んで良いわけが無い、シンが死ぬ筈なんて無いと願う
だがそこは多数の破片が漂い爆発点からはブスブスと煙を上げている

ふと胸に向かって何かの破片がとんと当たった。月の引力に惹かれて落ちるそれを拾い上げる
それは煤で汚れた傷だらけのピンク色の携帯電話、シン・アスカがいかなる時でも手放さなかった携帯電話の成れの果て
跡形も残らない胸部を見てルナマリア・ホークは完全に確信してしまう


シン・アスカは死んだのだ。


彼の大事に持っていた携帯電話は遺品となりルナの手の中にあり、そしてその持ち主のシン・アスカは死んで、この世から消え去ったのだと

「――シ、ン? シン!? い、イヤ……嘘……嫌ぁ………いやあああああああ!!!?」

突きつけられた現実に戸惑う彼女はやがてそれを本当の物と認識し、ルナはそれきり助けが来るまでずっとそこに腰を落として泣き続けた
戦場とはすべてに平等だ、運があれば生き残り無ければ死ぬ。技術経験性能、そして圧倒的な力を持ってしても死ぬ物は死ぬのだ

「―――ばかぁ! 絶対、守ってくれるって…絶対守るって……約束したじゃない、言ったじゃないのよおぉぉぉぉぉぉっ!!!」

世界のどこかで人が生まれて死んでも、それでも時は廻るのだ。それはとても残酷で儚く、美しい―――

時はC.E74年、疲弊した連合軍、プラント自警軍はオーブに調停され、此処に終戦と成った
――戦後、勝利者無き今大戦の戦死者が記載されたデータにはまぎれも無く「シン・アスカ」の字が載っていた
歌姫はプラントに入り調停者として君臨し、騎士達は歌姫を守る剣として在り、獅子は地球を率い
―――その”平和”は長く続いたと言われる
532通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:36:06 ID:???
>>529
SS書くときは、気にいらない人がNGにできるように名前を入れたほうがいい
533通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:36:54 ID:???





……

目が覚めた
頭をニ三度振り辺りを見回すと真っ暗な部屋、どうやら俺は椅子に座っているようだ
体は―――動く、辺りを手探りで触ってみると操縦桿らしき物に触れる
カクカクと動かしてみる――反応無し
被っているヘルメットに付いたライトを点灯させると―――自分がMSのコクピット、デスティニーのコクピットシートに座っている事がわかった

サイドコンソールにある計器に触れて現在の状況を把握しようとしたがキーを押してもまったく反応が無い
目の前はライトが照らす所以外全部真っ黒で、その外の様子も何もわからなかった
何故、こんな所に居るのか―――確か、俺は――

そう、アスラン・ザラの駆る∞正義と戦って、執拗に追い詰めてもひらりひらりとかわすアイツ
次第に押され始めて次々と武装が破壊された、奴の独善的な言葉にムカついてカァっとなって
怒りに我を忘れて突撃して、あろう事か割って入ったルナのインパルスに襲い掛かって
もう何か、止められなくって……気が付いたらジャスティスに月に叩きつけられてそのまま意識を手放したんだ

そうか――俺は、負けたんだ

「―――くそ」

ポツリとつぶやいたそれは熱を帯びて怒りに変わる
変えられない現実と認識した心は悔しさとして口に出た

「―――くそ! ……くそっ! ……くそっっっ!!」

やり場の無い怒り、握り拳に変えて何かに八つ当たりしたい黒い気持ちに覆われる
負けたという事実と仲間に対してまで牙を向けてしまった事を悔やんだ
何が守る為の力だ、守りたい物にまで力を振るってしまった俺は――なんて道化
それが例え錯乱していたとしても、守りたいものに手をかけようとしたことは変えられない事実

「―――くそぉっ!……くっそおぉぉぉぉっっ!!―――っ痛ぇ」

太ももに力一杯振り下ろした両拳、痛みが後悔に彩られた思考をクリアにする
ちゃんと痛みがあるんだなと―――そういえばミネルバは、レイは? ルナは??
反応しないコンソールをいじってどうにかして外の様子を確かめようとしたが
何度操作しても計器版はうんともすんとも言わなかった
一体どうなってるんだよ――と、月面上と言う事もありハッチを空けて外を確認するために非情開放グリップを力一杯捻って
爆裂ボルトを作動させてハッチを吹き飛ばそうとするが―――動かない
534通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:37:02 ID:???
>>530
サラも飛び道具(ブーメラン)だしな
535F:2007/02/04(日) 21:38:46 ID:???
>532 アイ・サー

念のため非常用救難信号ビーコン発振スイッチを何度か押す
だが計器が死んでいるために何度押してもうんともすんとも言わない

カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ……カチカチカチカチカチカチカチ……ブチッ

何かキれた

「………こんちくしょおぉーっ!」

ドンとサイドレストに拳を叩きつける
それでも反応が無い、あきらめたシンはバサっとシートに体を預ける

「あーっもう!! 動けデスティニー!! 動いてくれ!!」

それでもあきらめきれないシンはコクピットの中をいじり、マニュアルに示された機動手順を何度も繰り返したり
シート後部の配電盤を調べたりなんとかデスティニーを復帰させようと足掻いたのだったが



―――15分後



ぐったりとした様子でシンはシートに項垂れていた
そういえばコクピットの酸素は非常用も含めて1日分、抑えれば三日は大丈夫なのだが
こんだけ暴れたら酸素が薄くなるのは当たり前
俺馬鹿じゃないのか?と自嘲する。思えばここは月面上の筈なのだ
残骸として残っていても友軍なり敵軍なりが漂流者回収の為に動き
出来うる限りビーコンの送信している物からコクピット周辺が残った反応のないものまで調べ尽くすはずと
勿論後者だった場合を考慮してシート下部に備え付けられた自動拳銃を何時でも撃てる様に手動でコッキングして初弾を装填する
536通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:39:20 ID:???
>>524
だってあのキャラデザはないよ
命は結局強いハロってかんじだ
537F:2007/02/04(日) 21:40:46 ID:???
――そうやって落ち着いているといろんな考えが頭に過ぎり
いろんな事柄がもやもやになってざらざらした感覚がめぐる
俺たちのやってたことって―――本当に正しかったのかな と

アスランに問いかけられた言葉―――は論外だ、俺はアイツを許さない
アイツを許さないという思いはあまり考えた事が無かった
だがアイツのいっていることは正しい事だけど絶対じゃないって俺の心が言っていた
独りよがりな言葉、具体性に著しく欠け、彼自身の正義を押し付けるかのような説得
どれもこれも、嫌いだ、嫌いだ―――

でもそれが本当は正しかったのかな と

レイに誓った戦争を殺すと言う夢
ディスティニープランによる地球統治による恒久的平和
果たしてそれが現実可能なのかと言われると本当にそうなるのかはわからない
だけどそうする事で本当に戦争が無くなるならと思って言った本音
それだけは間違いないと思った、自分の取った道だしレイの願いだった
寿命幾許も無い友の誓いを無下に出来る筈が無かった

でもそれが本当に正しかったのかな と

ルナに言った絶対守りきるという誓い

―――守れなかった。
それどころかあろう事に必殺を叩き込もうとした
守ろうとしたものに、守ろうと誓った者に


結局俺のした事って間違いだったのか
ただ力が欲しかった、力さえあれば守りたい物だって絶対に守りきる事が出来るって思った
力さえあれば夢は叶うって信じていた。だから 軍に入った。けど守りたいって思った物は全部掌からすり抜けて落ちてった
やり遂げたいって思ったことは全て掌から零れ落ちていった

結局俺は何がしたかったんだろう?

未来の為?  違う

自分の為?  違う

じゃあ、何の為?
538F:2007/02/04(日) 21:45:57 ID:???
そう、俺はただ大事な人を失いたくないと思ったから。だから力を欲したんだ
守りたかったものがあった……救いたかった人がいた。ただ救いたかった人がいた
マユの事やステラの事、レジスタンスの人たちやコニールの事、そしてルナマリアの事
ただみんなの笑っている顔が見たくって、幸せな顔が見たくって力を欲したんだ

それがこの結末か。俺は誰も助けられなかったんだ。そんな事なら―――本当は俺、…でも、どうしたかったんだろうな
力を欲したからいろんな人に会えて、それで戦いを通じていろんな人と知り合って、友も出来た、親友も出来た、好きな人も――できた
守りたいって思いが会ったからいろんな人と出会って分かれた
それに、この守りたいって思いだけは間違いなんかじゃない

でも、また俺には守りたいものが無くなってしまった
やりたい事も何もなくなってしまった
意義も何もかも無くなってしまった
何もなくなってしまった
何も

「ぐ……フゥ…………ふ、ぁぁぁ……うあ”あ”あ”あ”あ”――ッ!……」

本当に俺は、何を守り―――いや、何がしたかったんだろう
幾ら自分に問いかけて答えを出そうとしてもそれがわかるはずも無く、ただ虚しさだけが心の隙間を埋めて行った





泣き疲れたシンはシートに力無くもたれかかっている
それは糸の切れた人形の様

何も無い、光の無い目はぼんやりと天井を見上げる
もう、何も無い。なんだか、正直生きているのでさえ億劫になった
考えるのまで鬱陶しくなった、何も無いなら、俺自身が元々空っぽで何も無かったんじゃないかって
539F:2007/02/04(日) 21:47:37 ID:???
――――生きる意味を見失った

助け出されれば軍なりで何かしら治療を受け、恐らく負けたのだから裁判を受けて最悪投獄か銃殺だろう
もし釈放されたとして、日常――普通の人が普通だと思う生活に戻ったとしても生きようとする気持ちが起きない
伽藍どうのままに過ごす毎日は楽しくも無く悲しくも無く同じ毎日を繰り返していく、それは苦痛にしか思えない

――――――もう何も考えたくない

なんだか、もう疲れたな……
膝の上で使え使えと揺れるコクピット内で拳銃はカタカタと揺らいでいた
生きるのに意味が無いならこのまま死んでしまっても悪くないと思った
丁度目の前には指先一つで終わらせる物があるんだって
でもそれで本当にいいんだろううか?

「………生きていれば、いいことはあるって……本当なのかな」

おずおず手を伸ばして銃を手に取り、その重みを確かめる
冷たい銃の重み、冷ややかな鋼の冷たさが手袋越しにでも伝わってくるよう――
……とりあえず先ず、此処を出ようと思った

その時

きしり、と……コクピットが揺れた


ぎちり、と……一度インパルスの中で聞いた事のある音がコクピットに鳴り響いた、
途端、起動音とともにコンソールに光が灯りOS起動を示す文字と同時に真っ暗だったコクピットが光に包まれる
その眩しさに拳銃を取り落として顔を覆う
次の瞬間言い知れぬ衝撃が体を襲い、何か変なビジョンが浮かんでは消えて浮かんでは消える
硝子のようなもの臓物のようなもの言い知れぬ黒いもの「   」が千切れそうな程の言い表せそうにないものが体と心を容赦なくかき混ぜる
丁度目隠しをされてブラックなデスメタルを掻き鳴らすヘッドホンを取り付けられたままミキサー車の中に放り込まれ攪拌されたような感覚
それが数秒ないしは数時間続いたのかわからないが、徐々にそれは収まっていく、振動は緩くなってモニター光量も押さえられて。

だが其処で俺は驚くべき状況を突きつけられる
ディスプレイが映し出す外の光景は静かな月面上でもなく光線と爆発の瞬く戦場でもなく救出活動による騒音でもなく
圧倒的な存在感を示す大地、目の前一杯に広がる蒼い星と雲に覆われた地表と海、そして機体を焼き尽くそうとする大気の摩擦


そう、何故かつまり――今デスティニーは信じられないことに大気圏に突入をしているのだ
540F:2007/02/04(日) 21:49:30 ID:???
「え…………なん…だこれ!?」

そしてシンは気づく
目の前に広がる地表と雲の水平線
蒼い海に白い雲に黒い大地にかぼ沿い灯
だが見知った大陸の形は影も何も無く見慣れない大陸と大陸と大陸の連なるまったくわからない地平
レーダーに映る地球世界地図はざらざらと消えうせ見慣れない世界地図がレーダーに表示される
新たに更新されたそれはシンを絶望させるには十分だった、ただ短文で一言

      【惑星エアル:大気圏再突入開始:シーケンス成功率66.6%:以下成功率下降中】

「――――――どこだよ」

それは答えを見失ったシンを更なる絶望に叩き込むのには十分だった






―――夜

広大に広がる砂漠を歩く人影
月夜に照らされるその人物は頭から被ったポンチョに身を包み、只管歩いていた
未だ見えぬ町を目指して只管に歩き続けた
とある夢を叶える為に、自らの親に出逢う為にまっすぐに砂漠を歩き続けた

夢は絶対に叶うと信じて

ふと空を見上げると満天の星、黒い布に真珠の粉を惜しげなくぶちまけたような夜空とても綺麗で
星星は美しく瞬いている、ふと月を横切るように赤い彗星のようなものが空を横切って向かっている場所に進んで行くのを見て
ゴーグルとマスクを取り、フードを脱いだ

意思の篭った爛爛と輝く蒼い目と細く結った二つの長い三つ編みの女の子
胸元にはばっちゃから託された蒼天の青玉を首から下げた女の子
空往く赤い流れ星にがしっと両手を合わせて

「オトメになれますようにオトメになれますようにオトメになれますようにっっ!!」

と、願いを懸けた
541通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:50:44 ID:???
専ブラって便利だな
542F:2007/02/04(日) 21:52:07 ID:???
大気の摩擦で赤熱化した装甲
四肢の一部を失ったデスティニーは文字通り星に堕ちていった、だが
シンはそんな事はどうでも良かった
今更守るべきものなど何も無いと言うのに、それなのに生きていて何があるって言うんだ
このままソラを漂って死ぬのも良いかなって思った
月でほうって置かれて死んでも良いかなって思ってた

だが何せ月じゃない、何も知らない別世界
本当に別世界?
そんなもの信じたくは無い、信じたくは無いが
レーダーに表示された地図は何度操作しても変わらず
宇宙地図を出しても何も表示されず
見知った星座や星々すら見つからず
変わりに互いを食い合うような双子星から幾つものリングに覆われたガス状の星

そして月と思われる星の近くには紅い星が不気味に輝いていた
これは新手の嫌がらせ?月に横たわる俺へのドッキリ?
だが次第に熱を帯びるコクピット内と一度体験したことのある摩擦による断続的な揺れと体を押さえつけるGと星の重さ

認めたくないけど――認めなきゃ、其処は俺の居た世界ではなく明らかに別世界
誰も俺を知らない俺も誰も知らないまったくの別世界だと
どうしてこんな世界に飛んできたという理由なんていらない
聞いても答えてくれる奴なんていないから


コンソールを見る、計器は機外温度・高度・速度を表し
それぞれがけたたましく警告の赤と耳障りな音を響かせる
操縦桿はカタカタと揺れ動き、速く速くと主が動かしてくれるのを待っている
左腕はコクピットを守るように覆いかぶさり仮に敵弾に当たっても主を守ろうとしている
右手と右足と翼を無くしたデスティニーは必死に主を守ろうとしていた
543F:2007/02/04(日) 21:53:46 ID:???
そんな様を見てシンは滑稽だなと思った
自分は死にたがっているのに機体は死なせないとばかりに守ろうとしている。―――なんて無様だ

「――――――は」

それでもデスティニーの願いはかなわない
仮にも万全なら硬度を固めるだけで済む装甲は灰色のままで欠落した箇所から火花が散り
片羽は既に折れていて使い物にならない
それでもデスティニーは守ろうとするのをやめない、主を守ろうと足掻いて足掻いて足掻き続ける
そんな様を見て無駄だと呪った

「頼むよデスティニー、もう俺を―――ほうっておいてくれないか?」

機外温度は既に1000度を超えており、速度はゆうにマッハ15
大気との摩擦・断熱圧縮による空力加熱、熱圏の通過の衝撃がコクピットをシェイクし
周りの希薄空気がプラズマ状態となって明るく輝き、デスティニーを赤く染め上げている

「もう、俺には守るものも守るべきものもないんだ――――だから、放って置いてくれないか?」

諦めないでと警告音が鳴り響く、最後まで頑張るんだと機体状況を示すパネルが赤く染まる

「このまま―――塵になって朽果て消えるのも……悪くない…かな?」

それでも、それでもシンの心の暗闇は深く、そして疲れきっていた
もう瞼を動かす事すら億劫、手足はGで拘束されて……動かせないほどではないが動かなかった
膝の上で使え使えと揺れるコクピット内で拳銃はカタカタと揺らいでいる

「(このまま―――もう)」

護身用携帯拳銃:M93RUを手にとって弄ぶ、ただそれだけ、             ――拳銃自殺する覚悟も無いのか

けたたましく鳴り響く警告音、コクピットを揺らす振動、赤熱かしたデスティニーの腕
高温のコクピットはまるでオーブンレンジの様に熱い金属部分に触れているスーツの一部がほんの少し変形している
熱くて熱くて、何も考えられそうにないああ、俺は今から死ぬのかな?

だったら、今其処にある拳銃の引き金を引けばいい。
それともなんだ、コクピット強制開放レバーを捻れば大気摩擦の熱風が一瞬にして自身を焼き尽くしてくれる
でも、死にたいとは思っていない。でもこの、何もわからない世界?何か違うかもしれない所に一人で放り出されて一体何をしろって言うんだろうか
生きたい、でも生きる目的を失って生きてる意味が無い、何もわからなくて、涙がただ溢れ出る

「俺は、どうして、こんな所に来ちまったんだ………」
544通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 21:54:20 ID:???
>>526
変化球というか萌えポイントが一つもない
野球でたとえるなら糞ボールの暴投かと
545F:2007/02/04(日) 21:55:37 ID:???
その言葉を最後に彼は気を失う、如何に調整者とはいえこの高温に長時間曝されればただではすまない
元々デスティニーは大気圏を突破できるだけであって突破能力を搭乗者に保証していない
さらに機体温度が上昇する、熱で装甲は変形している
腕もなんとか前に翳しているだけで最早盾の意味すらない

それでも

デスティニーは搭乗者を守るために足掻き続けた
長い間熱圏に曝されたのと、防衛戦での激戦が装甲素材を駄目にした
このままだと確実に中空で燃え尽きて爆発する!―――何か無いか、何か無いか、何か……

デスティニーは左腕にかろうじて残ったビームシールドを展開させる
ブワッと広がる光波の盾は椀部を覆うそれではなく機体前面を大きく包んだ
するとみるみるうちに機体表面温度が徐々にだが、下がっていく。突入速度もM20で安定している

さらに正確なコースに乗せるためにバーニアを駄目もとで動かしていく
こつんこつんとバーニアのノック音が体を揺らす。両翼も生きてた!
半壊した両翼を広げ限界ギリギリまでスラスターを稼動させる
どうせこれが最後なんだ、生きるも死ぬも精一杯やらなきゃ駄目だ
それにまだ、私はまだ主に勝利を齎していない

大量のミラージュコロイドを噴出するスラスターの力によって徐々に突入角度が変えられていく
戦い続けたその体は既に満身創痍
最早動いている事自体が奇跡の機体

血の涙を流すエメラルドグリーンの双眸がギンと輝いた

眼前に広がるのは蒼い星「エアル」角度も万全、速度も十分、イケる。
雲はうねり、水平線の向こうは何処までも真っ青でその向こうで太陽の光がゆらゆらと輝き揺らめいていた

最後に、最後まで、己の主に勝利の運命を齎す事を出来ずに残念がり
己を犠牲にすることで主を守り生還させると言う、生きる勝利の運命を齎す為にデスティニーは飛ぶ

どうか、未来に幸あれ、主の未来に幸あれ。
546F:2007/02/04(日) 21:59:49 ID:???

「うわぁあ〜〜〜〜綺麗〜〜〜〜〜!!凄い凄いすっごぉいっっ!!」

砂漠を渡る三つ編みの女の子が赤い彗星を見てはしゃぐ
さっきまでゆっくりと赤く光り、尾を引いていたそれが
赤い光りとは別に紅く輝く光の翼を羽ばたかせて飛んでいるのだ、今、自分の頭上で

信じていれば夢は叶うと信じた少女はその光景に心奪われていた


「(あれは―――まさかッ 地球の!? 陛下の言っていた先時代文明の物が滅んだ地球からやってきたというのか!?)」

砂船に乗っていた額に傷のある男は大気を引き裂くような音に目を覚まし
何事かと空を見上げる、そこには赤い光が紅い翼を纏ってゆっくりと降りてきていた
――これは世界が動き出す前兆だと言うのか?と身震いする体を拳を強く握って戒めた

ツインテールとおさげを組み合わせた女の子が学科提出物の為に机に向かっていた所を轟音が響き
ふと空を見上げるとそこには何かが此方に向かって降りてくるのが見えた

「――――――紅い翼……空から降りてくる―――とても怖い……お父様、どうか無事帰ってきてくれますように…」

一抹の不安を感じ、ぎゅっと、懐に仕舞ったペンダントを左手で握り締める

隣のベッドで眠る金髪のショートカットの女の子は轟音で目を覚まし
それを盗み見て何か――悪い事が起きませんようにと祈っていた

「紅い流れ星……とても綺麗じゃ……」

自ら光り輝くそれは妾にとってとても赤く眩しく輝いて見えた。だが――

「妾は、あんなふうに輝けるのじゃろうか ミコト、妾はあのような星のように光り輝く事が出来るのじゃろうか」

心を穿つのは根拠なき中傷、しかし父も母もおらず自信を知る大臣も死んだ
自分が正当な王族の子孫であり後継者だと保証する物は何も無い

「妾は、偽者ではないのじゃ……。正当なヴィントブルーム王家の血筋を引き継いだマシロ・ブラン・ド・ヴィンドブルームなのじゃ……」

ポツリポツリと猫のミコトに独白する。しかしマシロの手に抱きしめられた猫は一言 「なぁご」
紅い光がベッドに座るマシロを照らす。ミコトは抱きしめられた力が強くて何とか脱出しようと必死だった
547F:2007/02/04(日) 22:01:55 ID:???
砂漠を旅する黒一色の女性が空を見上げる
4人のサイボーグを伴う頭領が見上げる
オトメを総括するセミロングを髪留めで止めた女性と茶色のウェーブのかかった女性が共に見上げる
眼鏡をかけた大統領の女性と金髪のセミロングの女性が共に見上げる
玉座に腰掛けた野心を秘めた老人とその老人に中世を貫くオトメが共に見上げる
床で空を見上げる少年は在りし夢の記憶の奥底で姉に似た人物が使役する異形の子供の姿を見、
その様をそばに仕えるくノ一は少年の容態に気を配ると同時に紅い光を訝しげに睨んだ

「アルタイ歴史書の予言どおりだね……【青玉失われし時より15の年、空より翼を纏いて天のみ使いが舞い降りる】っと
 予言書なんて確定予測不可能な物信じてなかったけどまさかほんとおに的中するなんて思わなかったヨ」

銀髪の少年が紅い荘重の本を閉じて空を見上げる
不敵に笑う少年の笑顔は不気味で、そして少しはしゃぐ様に。これから来る時代を夢見て不敵に微笑んだ

世界の様々な所が空から降りてくる紅い翼の使いを見上げた
人はそれを天使と、悪魔と。

それは新たな兆し、新たな戦乱の予兆だった



 『私!絶対オトメになってみせるんだからっ!!………あれ? こっちに来る?  きゃああああ!?』




以上、続く・・・?