ロウがキラを助けてなかったら クローン二人目

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1通常の名無しさんの3倍


前スレ
もしもロウがキラを助けてなかったらを考えるスレ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1155986338/
2通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 00:14:36 ID:???
ケイ・クーロン乙
3通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 00:14:56 ID:???
>>1乙です。
4キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/25(木) 00:22:41 ID:???
>>1お疲れ様です
5592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/25(木) 00:53:23 ID:???
>>1さん乙です!
6通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 02:42:19 ID:???
>>1
7通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 13:29:59 ID:???
>>1
職人さん達GJ!
続きをwktkしながら全裸待機してますね(^ω^ )
8通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 13:59:44 ID:???
緊急浮上
9通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 17:11:26 ID:???
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
10通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 18:17:39 ID:???
まだだッ!!まだ終わらんよ!!!
11通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 19:04:16 ID:???
種シリーズのクローンはストーリーの整合性を持たせる!
12通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 19:33:00 ID:hED/8FZN
なあ。このスレって別にロウがキラを助けてなかったらのIFなら、
別にキラがクローンでなくてもいいのか?
ちょっとそんなのを書いてみたいんだが。
13通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 19:40:44 ID:???
>>12
俺はそういう展開も読んでみたいノシ
14通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 19:40:57 ID:???
>>12

前スレを見れば解るぞ
15通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 20:14:41 ID:???
>>12
GOGO!READYGO!
16通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 21:13:14 ID:???
種・種死のキャラに「二人目」「三人目」がいて「一人目」は密かに生き残っていたり、
キラがワープ無しで最初から性格が一貫していたり。
そんなifな話のスレです。
1712:2007/01/25(木) 21:25:59 ID:???
それじゃ今から書いてみるわ。
投下までに大分かかると思うけど。
18通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 22:08:34 ID:???
>>17
正座して待ちます
19通常の名無しさんの3倍:2007/01/25(木) 22:58:44 ID:???
>>17
恋姫しながら待ちます
20通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 01:34:03 ID:???
ところで、前スレのバカピンクことラクスって、さり気なく激戦区だったヤキンドゥーエを生き残っているんだよな。これも努力と根性の賜物なのか?
それとも気絶している間に戦いが終わってしまったのだろうか?ハイネに助けられているようだし。
21キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/26(金) 01:49:28 ID:???
第7話の続き

 イージスのコックピットに誰かが入ってきた。
 アスランはそんな事も気がつかなかった。
「もうやめろよ」
 アスランに声を掛けてきたのはディアッカであった。
 アスランは何度もモニターを殴り続け、手が傷ついていた。
 しかしアスランは一向に止めようとしない。
「もう好きにしろ。そんの事しても何も変わらないぞ。ニコルも戻ってこない」
 ディアッカはそう言うと、その場を後にした。
 ディアッカがイージスのコックピットから出ると、格納庫の出入り口にイザークが立って
いるのを発見した。
 ディアッカはイザークの元へと近づいた。
「どうなんだ」
 イザークはイージスを見上げた。
「さっきのイザークより酷いな」
「そうか」
 イザークもブリッツのシグナルロストの情報が入ると、いても立ってもいられず近くにあ
るロッカーに当たっていたのだ。
「降りてきたみたいだぞ」
 イザークが顔を上へとあげた。
 アスランは二人を無視し、格納庫から出て行った。
「あいつ…」
 イザークがアスランの後を追おうとすると、ディアッカが止めに入った。
「一人にしといてやろうぜ」
「しかし…」
「気持ちの整理が必要だ」
 ディアッカの言葉にイザークは従った。
 アスランはパイロットの着替え室へと向かった。
 部屋に入るとアスランはニコルが使っていたロッカーへと足を進めていた。
 アスランはロッカーのネームプレートを指でなぞる。
 アスランの目から涙が溢れてきた。
「どうしてなんだ…、どうして…」
 アスランはニコルの横のロッカーを殴りつけた。それは自分のロッカーだった。
 拳を離すと扉に血がべっとりとついていた。殴った衝撃でアスランの手を切ったようだ。
 アスランがロッカールームから出ようとすると、後ろの方で何かの音がした。
22キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/26(金) 01:50:18 ID:???
 どうやらニコルのロッカーがさっきの衝撃で開いたようだ。
 ロッカーから紙が数枚床に舞い落ちた。それはどうやら楽譜のようだ。
 その楽譜はすべてが完成していない。
「俺が、私情を挟まなければこんな事には…。俺のせいでニコルも、ミゲルも…」
 アスランはその場に崩れ落ちた。
「次は必ず、キラを倒す。倒れていった仲間のためにも!」
 アスランはすぐさま楽譜をロッカーに戻すと、ディアッカ、イザークを探しにでた。
 二人はブリッジにいた。
「二人供、今からすぐに足つきを追うぞ」
 二人はアスランの今までとは違う雰囲気の呑まれ頷いた。
 二人の横にいた艦長、今回の出撃に待ったを掛けた。
「つい先程帰ってきたのに、すぐ出撃など何を考えているんだ!」
 しかし艦長は、三人の目を見ると了承するしかなかった。
 すぐさま補給を終わらすと、アークエンジェルを撃墜するために母艦から飛びたった。 
 先の戦闘から数時間しか経っていない為、アークエンジェルはまだオーブ領海付近の孤島
にいた。
 アスラン達、三人は孤島の森を突き進むアークエンジェルを発見した。
「先に行かせてもらう」
「馬鹿やろう!」
 ディアッカがアスランに叫んだ。
 MA状態にイージスを加速させ、アスランはアークエンジェルに接近した。
 アークエンジェルも気付き、イージスを対空バルカンイーゲルシュテルンで狙う。 
 イージスはイーゲルシュテルンのおかげで、アークエンジェルに近づけないでいた。
 アークエンジェルから、ストライク、スカイグラスパーが次々と出てきた。
 アスランはストライクが出撃するのを確認すると、アークエンジェルから離れストライク
の所へと向かった。
「アスランそいつはまかせた!」
 ディアッカは、アスランがキラを食い止めている間に、アークエンジェルをつぶす事にした。
 イザークは、アスランと一緒にストライクを潰す事にした。
 バスターのビームがアークエンジェルを襲う。
 ビームはイーゲルシュテルンを貫いた。
 と同時にディアッカはバスターが乗っているグゥルを、アークエンジェルの船尾にぶつけ
た。
 船尾に搭載されているミサイル発射口を潰す事に成功した。
23キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/26(金) 01:52:01 ID:???
 そしてディアッカはアークエンジェルの甲板へと着地した。 
「いい加減に沈め!」
 ディアッカはコックピットの中で吼えた。
 バスターのライフルがアークエンジェルのブリッジに照準をつけ、撃とうとした瞬間コッ
クピットが激しい揺れに襲われた。
 バスターのライフルの照準が狂い、ビームが地面と供にアークエンジェルの甲板を抉る。
 ディアッカは、上空を見上げると一機のスカイグラスパーが旋回していた。
 バスターは肩に積んである、ミサイルポットを使用した。
 ミサイルがスカイグラスパーを襲う。
 しかしスカイグラスパーはミサイルを難なく避けた。
 ディアッカはこの事を予想していたかのように、最後のミサイルを避けたと同時に、ライ
フルをスカイグラスパーに向けて使用した。
 スカイグラスパーはディアッカの攻撃を、何とか避けた。だが完全には避けきれず、翼を
切断された。
 この一瞬で形勢は逆転した。
 気が付くとアークエンジェルの火器が、バスターを狙っていた。
「まだ死ぬ訳にはいかない」
 ディアッカはコックピットを開くと、外に出て両手を上へとかざした。 
 アークエンジェルの横に先程のスカイグラスパーが不時着した。
 その頃イザークはようやく、アスランの元へと付いたようだ。
 イージスとストライクの戦いには鬼気迫るものがあった。だが確実にアスランが押されて
いた。
「アスランそこをどけ!」
 アスランは突然のイザークの言葉を信じ、右へと飛んだ。
 イージスが元々いた後ろから、ストライクに目掛けてグゥルが突っ込んできた。
 ストライクの胸部あたりにグゥルは当たった。直撃したと同時にデュエルがグゥルとスト
ライクに向けてビームを放った。グゥルは、ものすごい勢いで爆発をした。それはアークエ
ンジェルのブリッジからでも見えるぐらいの勢いだ。
 だがストライクはまだ立っていた。片腕をデュエルのビームで貫かれたのか、無くなって
いた。
 ストライクがデュエルに向かって突っ込んできた。
 アスランがストライクに向かってMA状態になっているイージスのスキュラを放つ。
 だがストライクは、急速に旋回してそれをかわす。
 その避け方は体に急激のGが掛かる避け方だった。
24キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/26(金) 01:56:07 ID:???
「あれを避けただと!」
 イザークはストライクのその動きに驚いた。
 Gのある程度の特訓を受けたコーディネータでもきつい避け方なのだが、それがナチュラ
ルにできた事への驚きだった。
 イザークはアスランの声で我に返った。
 モニターを見ると、ストライクがすぐ目の前にいた。
 イザークは操縦桿を動かしデュエルを後方に下げた。
 だが時はすでに遅し、ストライクのビームサーベルがデュエルを無常にも襲う。
「終わりか…」
 イザークが死を覚悟したが、それは一向に訪れない。
 イザークがもう一度モニターを見ると、そこにはストライクの変わりに、イージスが立っ
ていた。
 イージスがストライクをふっ飛ばしたようだ。
「イザーク、お前はもう戻れ!」
 アスランの命令にイザークは怒りをあらわにした。
「その状態で何ができる」
 イザークは自分の機体を確認すると、片腕は切り落とされ、頭部が半分融解していた。
「しかし」
 イザークはまだアスランに抵抗していた。
「無駄に命をなくしてほしくないんだよ」
 とアスランの言葉を聞いたイザークは母艦へと戻った。
「死ぬなよ」
 通信越しにイザークの言葉を聴きアスランは「ああ」と答えた。
「キラ、さあ始めようか…」
 アスランは目の前のストライクを見つめた。
「お友達ゴッコは終わったかいアスラン!?」
「お友達ゴッコだと!? ならお前にもう一度聞く!お前は何のために連合にいるんだ!」
「そんなの決まっているだろう!楽しむためだよ!」
「楽しむ!?」
「もちろん、この戦争をだよ」
「キラァァァァ!おまえはあの時、友の為に残ると言った!それは嘘か?」
「そんな事、覚えていないな」
「覚えていないだと! ふざけるな!」
「ふざけていないさ。覚える価値も無かったって事さ」
25キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/26(金) 01:58:32 ID:???
 アスランは怒りに我を忘れ、ストライクに向かって突っ込んでいった。
 ストライクはイージスの攻撃を簡単にいなす。
「君が隊長のせいで、仲間が無駄死にしたな。たった一人の友達の為に仲間が何人死んだこ
とか」
「無駄死にだと」
 キラはさらにアスランを挑発した。通信越しにキラの笑い声が聞こえる。
 それがアスランに神経を逆なでにする。面白いようにアスランが挑発に乗り攻撃を繰り出
していく。
「君は馬鹿の一つ覚えのように同じ攻撃をするんだね」
 すると突然、アスランの攻撃がやんだ。
「お前は誰だ!」
 とアスランはストライクに向かって叫んだ。
「アスラン何を言っているんだい?僕はキラ・ヤマトだよ」
「俺の知っているキラ・ヤマトではない。だからお前を撃つ」
「そうやって自分の思いを殺すのかい? まぁいいさ。撃てるものなら撃ってみなよ」
 アスランはコックピットで叫んだ。目の前の敵を倒すために!仲間の命を奪ったMSを破
壊するために。言葉にならない叫びを上げた。
 するとアスランの中で何か異変が起こった。
 ストライクの攻撃がすべて手に取るように分かるのだ。
 先程とは逆に、圧倒的にストライクを押していた。
 キラはストライクの手に持っている盾を、イージスに向けて投擲した。
 アスランはイージスを動かし飛んできた盾を難なく避けて見せた。
 イージスの後ろには、スカイグラスパーが一機飛んでいた。
「キラァァ!」
 トールの声がキラの耳に届く。
 盾はスカイグラスパーの翼をかすめ、大地へと突き刺さった。
 スカイグラスパーは、そのまま姿勢を制御しきれずあらぬ方向へと墜落していく。
「使えないな」
 キラは冷たい目で墜落するスカイグラスパーを見つめる。
 イージスのコックピットでアスランは、キラの行動に呆然となった。
「自分の仲間の事を気にせず盾を投げつけたのか?」
 キラはモニターに写っているイージスの動きが止まっているのを確認すると、イージスに
向かって加速した。
 アスランはストライクが向かってくるのに気づくと、イージスをストライクに向かって加
速させた。
「お前は仲間を何だと思っているんだ!」
「使える駒」
26キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/26(金) 02:01:05 ID:???
 キラの声には感情がこもっていなかった。
「お前は俺が必ず殺してやる!」
 イージスのビームサーベルがストライクのコックピットに振り下ろされる。
 ストライクはそれを紙一重でかわす。
 ビームサーベルはコックピットの装甲を溶かした。
 アスランは、ストライクのコックピットに乗っていキラを見た。
 アスランはキラの表情に驚いた。
 キラは顔は狂気に歪んでいた。
「キラなのか…」
 それはまるで別人かのごとき顔をしていた。
 MA状態になったイージスはストライクががっしりと掴み込んだ。
「キラ!お前を楽にしてやろう」
 アスランがイージスのスキュラを放つ。だがスキュラは不発に終わった。
「バッテリー切れか。くそ!何か方法はないか!」
 イージスとストライクのバッテリーが切れた。
 アスランは素早テンキーである番号を打ち込んだ。するとモニターに10:00と出た。
 すぐさまアスランはコックピットから出ると、イージスから離れた。
「さよならだ、キラ」
 イージスの閃光と共に爆発した。その爆発はストライクも巻き込んだ。
 アークエンジェルのブリッジでミリアリアの叫び声が響いた。
「ミリィ!」
 サイがミリアリアの側に駆け寄った。
 ミリアリアの体が小刻みに震えていた。
「大丈夫か?」
 サイの言葉にミリアリアは何も答えない。
 サイの顔色が変わった。
「この状態は…あの時と一緒か!キラ、トール…生きていてくれ」
 ナタルもミリアリアを心配し、近づいてきた、
「医務室に連れて行っていいですか?」
 サイがマリュー達に問う。
 マリューはミリアリアの状態を見ると、医務室に連れて行く事を了承した。
 ミリアリアは、ブリッジに入ってきた医療スタッフに支えられブリッジから出て行った。
 出て行くミリアリアを見つめるサイの、後ろでマリュー達はアークエンジェルの近くで起
こった爆発と炎上する森を見つめ、息を呑んでいた。

第7話完
第8話へ続く
27通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 02:04:24 ID:???
職人氏乙!

また新たなるキラが表舞台に現れる!
28通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 11:08:00 ID:???
GJ!
やっと一人目(二人目?)のクローンが死んだな。
これからどんどん劣化していくね。
29通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 12:00:37 ID:???
キラーズ更新乙。文章が平坦と言うか、また「〜た」で終わる状態になってるぞ。少し落ち着くんだ。
30通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 21:09:32 ID:???
http://wiki.livedoor.jp/arte5/d/LOWE%20IF

↑このスレのSSうpが工事中なんだが
どなたか工事の続きをおながいします














母ちゃん携帯厨でごめんね
31通常の名無しさんの3倍:2007/01/26(金) 21:55:59 ID:???
帰れ!
32通常の名無しさんの3倍:2007/01/27(土) 01:19:38 ID:???
>>30
IDがない、力になれなくてすまん。
33通常の名無しさんの3倍:2007/01/27(土) 06:51:07 ID:???
>>32

せめて本文をSSごとにTXTに抜き出して、
支援用UPローダーにUPしてID持ちに協力申し出るとかしてくれや。

こっちはIDあっても時間が無くて本文の切り出し作業やってるヒマが無い。
34通常の名無しさんの3倍:2007/01/27(土) 11:22:06 ID:???
時刻を超えて俺様が切り出し作業完了!
ただいま編集中。
月曜深夜までには長編はwiki投稿可だと思う。
誤字脱字三点リーダー改行位置行頭一文字開けぐらいまでは強制的にいじるが、
内容とか文末が不統一だったり全部一緒とかは流石にいじらないのでその辺は勘弁。
35通常の名無しさんの3倍:2007/01/27(土) 11:37:49 ID:???
>>34
オリジナルのキラとラクスも喜んでいます
36通常の名無しさんの3倍:2007/01/27(土) 18:30:13 ID:???
>>33
……すまんかった。
37通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 10:20:20 ID:???
>>34
激しく乙
38通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 12:29:44 ID:???
>>34
狂うぜ先生乙。
そして前スレも何とか埋まったな。
39通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 12:53:26 ID:???
>>34
禿乙
40通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 15:11:12 ID:???
時刻を超えてオレ参上!

済みませんがキラーズとCE登録した人、
ファイル名のフォーマットをそろえたいので、読み仮名を教えてください。
41通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 15:24:12 ID:???
>>40
お疲れ様です。
登録したものですが、確か「ろういふきらーずだい○わ」「ろういふしーいーだい○わ」のはずです。
42通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 16:30:45 ID:???
>>40
そこの俺様乙であります!!
43通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 17:16:19 ID:???
時刻を超えて再びオレ参上!

とりあえずキラーズ登録完了、CEは登録分が一話分貯まってないので保留。
ダルマキラとバカピンクの正式タイトルどうしよう?
(流石に通称で登録する勇気はない)

長編が終わったら短編行く予定。
タイトル指定のある作者の人は自己申告頼む。
言っとくがオレは勝手にタイトルつけたり「短編 その1」で行っちまうぜ!指定ないと。
44通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 17:30:02 ID:???
>>43



キラーズ氏の作品で
プラントに移動したオリジナルキラの今後が気になる

ラクスに関わらずフリーダム奪取に関わらず
独自の行動を見せてくれるのか?
45通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 18:22:49 ID:???
とりあえず一人で初期登録作業もてえへんだろうと支援とばかりに592氏の分
(熱血バカピンク)だけ登録してきた
46通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 19:08:14 ID:???
>>45
さんくす、出来たら作業入る前に言っといてほしかったwww

ダブルキラ登録行きます。
47通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 22:20:10 ID:???
またまたオレ参上!
ダブルキラ登録完了。
飯食いに行くので今日はここまで。
48通常の名無しさんの3倍:2007/01/28(日) 23:03:34 ID:???
>>47


ダブルキラのラクス残忍だなw

鉛玉をしこたまオリジナルキラに撃ち込むとはw
4912 ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/01/28(日) 23:43:41 ID:???
 目覚めて、まず感じたのは、痛みだった。
 (ここはどこだろう?確か僕はアスランと戦って、それで…、とんでもない衝撃が来て…。)
 そこまで思い出したところで、ドアの開く音がした。
 「よう、少年。」
 入って来た人に、キラは絶句した。
 左顔面がズタズタになっているが、その人は間違い無く自分が殺したはずだからだ。
 「まあ、今ではこんな顔だが、僕のことは判るね。」
 「バルトフェルドさん…。」
 (ここはあの世だろうか…?死んだはずの人がいるなんて…。)
 「どうだい、体の調子は?ちなみに、ここは天国でも、もちろん地獄でもないぞ。」
 心の中を読まれたような言葉に、キラは驚いた。
 が、その前の質問に答えるために、体に意識を向ける。
 体全体が、ひどく痛い。 骨が折れているのか、かなり痛む。
 「大丈夫……、じゃないと思います。」
 キラは他人事のように言う。
 寝起きやらで、本当にこの痛みが、他人事のように思えているからだ。
 「そうか。痛み止めは、飲むか?」
 「いえ、いいです。それよりも……。」
 「状況が知りたい、かね。」
 「はい。」
 「いいだろう。」

 バルトフェルドは、戦闘があった所のジャンクを売って、生計をたてているので、
 キラ達が戦った所にも行き、そこでストライクを見つけた。
 それで、ボロボロになったストライクのハッチをこじ開けたところ、
 キラが見つかったので、手当てをしたと、バルトフェルドは説明した。
 「…でもバルトフェルドさんは、ザフトの人でしたよね?」
 今の説明だと、バルトフェルドは軍人を辞めたことになる。
 ザフトが、負けたといえども『砂漠の虎』を手放すなんて事は、考え難い。
 むしろ本国で、『還って来た英雄』などと祀り上げられそうなのは、目に見えている。
 「僕は…、逃げてきたんだよ。アイシャが死んで、それで自分が生きていて、
  そんな僕が嫌になって、それで、…逃げ出したんだ。卑怯な男だろ?」
 「………。」
5012 ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/01/28(日) 23:44:52 ID:???
 キラは知っている。 大きな期待をかけられるというのが、とてつもないプレッシャーなのを。
 それに応えられず、そして愛する人を失ったのだ、逃げたい気持ちは良く分かった。
 そして…、
 「君には、いろいろなモノを奪われた……。」
 その全てはキラのせいなのだ、恨まれていないはずが無い。
 バルトフェルドの言葉に、キラは背筋に冷たい物が通った気がした。
 だが、
 「だからって憎んだりはしないよ、僕のほうから仕掛けて、いやそれ以前に戦争だったんだ。
  憎む方が、筋違いさ。」
 「本当に、そうなんですか?」
 「まあ、僕が意気地無しなだけかもしれないけどね?」
 どうやらバルトフェルドは、キラを恨んでいなかったらしい。
 それが良いのか、美しいかは関係無く、キラには嬉しいことだった。
 全ての人が、バルトフェルドの様な人ではないかもしれないが、自分の犯した罪が
 許されたからだ。
 無論、それが人殺しを犯していいという理由にはならない。
 しかし、少しだけキラの心の重しが、軽くなった気がした。
 
 突如、キラの腹の音が鳴る。
 「ああ、何日か食べなかったことになるから、当たり前か。
 お粥を作ってあげよう。」
 「あ、ありがとうございます。」
 バルトフェルドが、部屋から出て行く。
 キラの思考は、アークエンジェルや、アスランの方に移っていった。
 
 
         アラスカ――JOSH-A
 
 
 アークエンジェルのクルーは、アラスカ入港後、下船を許可されなかった。
 数日たってマリュー等は、艦内のブリ―フィーリングルームに集められ、
 そこで査問会が行われた。
 「軍令部の、ウィリアム・サザーランド大佐だ。
  諸君等第8艦隊アークエンジェルの審議、指揮、一切を任されている、座れ。
  既にログデータはナブコムから回収し、解析中であるが、なかなか見事な戦歴だな、
  マリュー・ラミアス艦長。」
 「………。」
 「では是より、君達からこれまでの詳細な報告、及び証言を得ていきたいと思う。
  尚、この査問会は軍法会議に準ずるものであり、ここでの発言は、全て公式なもの
  として記録されることを申し渡しておく。各人、虚偽のない発言を。よいかな?」
 「はい。」
 「ではまず、ファイル1。ヘリオポリスへのザフト軍奇襲作戦時の状況。
  マリュー・ラミアス当時大尉の報告から聞こう。」
5112 ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/01/28(日) 23:46:02 ID:???
 
          ―数日前―
 
         オーブ飛行艇内
 
 
 アスランは、自爆した後付近の島に打ち上げられているのを、
 アークエンジェルから連絡を受けたオーブに発見され、回収された。
 「ううっ。」
 「気がついたか。」
 アスランはまだ完全に覚めていない目で、周りを見渡す。
 目の前には、アスランも知っている少女、カガリが銃を構えて立っていた。
 「ここはオーブの飛行艇の中だ。我々は浜に倒れていたお前を発見し、収容した。」
 「オーブ、か。」
 「…聞きたいことがある。ストライクをやったのは…、お前だな…。」
 「……あぁ。」
 そんなこと当たり前だ、といわんばかりに、アスランは普通に答える。
 「ぅ!…パイロットはどうした!お前の様に脱出したのか?…それとも…。」
 アスランはカガリの言葉を受けて、ふっ、と小さく笑う。
 「見つからないんだ!キラが!…なんとか言えよ!」
 勢いこそあるが、不安な声だ。
 アスランは、ボンヤリとした頭で、質問に答える。
 「あいつは…、俺が………、コロシタ………。」
 一瞬、部屋の中の時間が、止まったようになった。
5212 ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/01/28(日) 23:47:16 ID:???
 「殺した…、俺が…、イージスで組み付いて…、自爆した…。
  脱出できたとは…、とても思えない…。」
 軽く棒読みの様な口調で、アスランは続ける。
 その内容はカガリにとって、心の片隅で思いながらも、決して認めたくないものだった。
 別れる時に、「死ぬな!」と、カガリは言い、キラはそれに「大丈夫。」と、応えてくれた。
 それをずっと信じていた。
 ストライクの撃墜を聞いた時も、ストライクがまったく見つからないと聞いた時も。
 …今、目の前にいる少年の言葉を聞くまでは………。
 アスランが嘘を言っている可能性もあるが、少なくとも、カガリの知っている
 アスラン・ザラは、嘘を言うとは思えない。
 それに、今のアスランはボンヤリしていて、とても嘘を言う状態ではない。
 「それしかもう、…手がなかった、…あいつを殺すには…。」
 カガリの心を他所に、アスランは続ける。
 アスラン自身、ただ頭に浮かんできた言葉を喋っているだけかもしれない。
 「でも…、何で俺、生きてるんだ?……あの時脱出しちゃったからか…。」
 あくまでも真面目そうな自問自答だ。
 「うっ、うっ。」
 カガリは後悔するしかなかった。
 (あの時コイツを殺しておけば、…キラは死なずに済んだ…。)
 感情の爆発を抑えきれずに、銃をアスランの頭に突きつける。
 「お前が…、俺を撃つからか…。」
 自分が殺されそうなのに、なおも冷ややかとした言葉に、カガリはより腹を立てる。
 「キラは…!危なっかしくて、…訳分かんなくて、…すぐ泣いて、
  …でも優しい、…いい奴だったんだぞ!」
 「…知ってる…。やっぱり変わってないんだな、…昔からそうだ…、
  あいつは、…泣き虫で、甘ったれで、…優秀なのにいい加減な奴だ…。」
 「え、キラを知ってるのか!?」
 アスランの口から出た、思いもよらぬ言葉に、カガリは戸惑う。
 「…知ってるよ…、よく…。小さい頃から…、ずっと友達だったんだ…、仲良かったよ…。」
 「それで…、なんで!…それでなんでお前があいつを殺すんだよ!?くっ…。」
 カガリには、友達同士が殺しあうなんてことは、とても理解できない。
 「解らない…解らないさ!俺にも!ぅぅ…別れて…次に会った時には敵だったんだ!
  一緒に来いと何度も言った!あいつはコーディネイターだ!
  俺達の仲間なんだ!地球軍に居ることの方がおかしい!」
 その言葉の向き先は、カガリか、それともアスラン自身か…。
 「なのにあいつは聞かなくて…、俺達と戦って…、仲間を傷つけて…、ニコルを殺した!」
 「だからお前は友をっ、キラを殺したのか!」
 「敵なんだ!あいつはもう…、なら倒すしかないじゃないか!」
 さっきとは打って変わって、アスランは激情する。
5312 ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/01/28(日) 23:48:48 ID:???
 「くっ…バッカ野郎!なんでそんなことに!なんでそんなことしなきゃならないんだよ!」
 「あいつはニコルを殺した!ピアノが好きで、まだ15で…。
  それでも、プラントを守るために戦ってたあいつを!」
 「キラだって、守りたいものの為に戦っただけだ!
  なのになんで殺されなきゃならない!それも友達のお前に!
  殺されたから殺して、殺したから殺されて、それでほんとに最後は平和になるのかよ!
  ホントに戦いでしか解決できなかったのか!
  それで満足出来たのかよ!
  オマエそれでもコーディネイターなのか!
  もっとその賢い頭で考えろよ!」
 「コーディネイターだって、出来ない事くらいある…。」
 カガリの執拗な言葉に、アスランはこうとしか反論できなかった。
 
 
 「なるほど、これが真のOPスピットブレイクか…、くくっ。」

 「GAT−01ストライクダガー、ブーステッドマン、セカンドXナンバー、
  これさえあればコーディネイター駆逐だって夢じゃない…。」
 
 「ほら、お粥だ。」
 「ありがとうございます。…熱っ。」


          ――誰がどう時を過ごそうとも、世界は動き続ける――
 
54通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 00:00:18 ID:???
GJ!虎はプラントにいないのか。これは新しい。
予告どおりクローンキラは出ないで、キラがプラントに行かなかったifになるのかな?

作品タイトルをつけるとwiki登録してる人たちが凄く喜ぶと思う。
55通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 00:01:35 ID:???
【熱血漢】ここだけキラが健康的【正統派】の695-698も熱血バカピンクの話なんでWikiに登録した方が良くない?
592氏も695-698の続編って言ってるし。
56キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/29(月) 00:03:07 ID:???
GJ

バルドフェルドとキラが出会うとは…
面白そうな展開になりそうだ!
57通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 00:46:36 ID:???
職人氏GJ

オリジナルキラとバルトフェルドが共に地球…

原作と違う流れが読めそうだ!

>>55
同意。
携帯厨だから俺は手伝えないが
58通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 01:35:59 ID:???
こんなの考えてみたので投下します。
舞台は種死でデュランダルとアスランが面会してセイバーもらうときの少し前です。


広く暗い議長室に男性が二人、テーブルを挟んで座っていた。
一人はこの部屋の主であるプラント最高評議会議長、ギルバード=デュランダル。もう一人は10代後半〜20代前半ぐらいの茶髪の青年だった。

「ついに始まっちゃいましたね……戦争」

青年は憂鬱そうに呟きながら、手に持った黒のナイトをテーブルの上にあるチェスボードに置く。

「我々人類は常に争いを生み、そして続けてきた。争いを誰もが望んでいるわけではないのに、だ」

デュランダルはそう言うと、白のクイーンを少し動かした。

「しかしそんな負の連鎖もそろそろ終わらせなければならない、ですよね?」

青年が口元に小さな笑みを作りながら言う。

「先に言われてしまったか……その通りだよ、キラ。そんな負の連鎖など今すぐに断ち切らなきゃいけない、君はそう思わないかい?」

デュランダルも口元に小さな笑みを作りながら話す。が、彼の瞳は決して笑ってはいなかった。

「僕は世界がどうなろうが別に構いませんよ。ただこの戦争が終わった時、その時僕は二人もいません。生き残るのは……僕だけです」

キラと呼ばれた青年はそう言って、黒のクイーンを上にずらした。

「チェックメイトか、君は本当に強いよ。……さて、そろそろアスランの所に行ってあげなければ。彼が私に面会を要求してきているのでね」
「アスランが?」
「あぁ、アスランだ。彼も本当に私の期待通りに動いてくれるな、嬉しい限りだよ。……ではまた後で会おう、キラ」

デュランダルは言い終わると同時に部屋を後にした。部屋にはキラ一人が残された。
残されたキラは席を立ち上がると、デュランダルの座っていた議長席に移動した。そして、席に座ると同時に高笑いをしだした。

「アハハハハハ!アスランが戻ってくる?そうか、まさか同じザフトの軍人として再開するとはね。……戦場で再び殺し合うのを楽しみにしてたのにな」

その時のキラの表情は傍から見ればとても綺麗な笑顔だった。だが、その笑顔が本当は酷く醜い歪んだものだったということは、誰も知らない。

59通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 05:02:33 ID:???
>>58
gj!是非続きを!
60通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 08:14:56 ID:???
>>55 >>57

うーん
オイラもアレ好きだけど、時系列が確か本編よか未来だったようなイメージが。
本編がヤキン宙域でキラ回収、未だハイネ存命
件の熱血ラクスが、デュランダルvsクローンラクスの論戦に乱入 だから。

その辺どうすべきなのか職人さんの降臨待ちかなぁ。

スレ違いでも構わないという意見多ければ、『小ネタ』として登録したいとこだけんど。
61通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 08:24:31 ID:???
この人に助けられても大きく話変わるなとか言ってみる

                       r''"~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`丶、
                         /               `丶、
                    ,.-'" 、                 ヽ
                   ヽ  ハ  ヽ、             ヽ
                    > ./ 丶  ヽ'、   \       〈
                    '、 {ニニミ、 ヽ`丶、  `丶、_    ',
                      ヽl ‐;rミ `丶ヽ;=ニ;:‐-;、_`−-;、 ',
                     {j  `"    `ミ=ミ_ `` 7    ̄~ /
                     i!   /        / /‐,  {
                    r' !   ,         / /) / ノ
                    `1   `_       _ノ /"/./
                     丶 `ー―一   ヽ,.イ`" (_,
                         ハ  `      _∠ヘ `ヾ´
            , -,           'ヘ'、   _,. -''"  _, へ ル' __ノ
     _,,.._,,.. -''′.ノ ̄ ̄ ̄~`''ー‐--、/´r>''´   _,.-'´   ∨ヾニユ,,,,................._
/ ̄~'"  {  ,‐'´         ∠" ヽ !{  _,._'´      〃
    、  ヽ '"}T ―――へ_/ _/ / //// \   , '/
  _  \  丶`−-、 __,,.-/‐''"  /_,. '"´ \    > //,、  _,,.. -‐┐     /
   \  ヽ.  〉、,,,..ノテ~ ̄    ,.-''"      \/, ' /  `´    /    , へ
 ヽ、 丶、,イ‐'"{ l l /     ,.-'´           \ヽ、      /     /
‐''" >1′} r' l ∨    /               >、ヽ、  /    /
62通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 08:53:11 ID:???
>>58
おお

このキラはアスラン脱走時、実に楽しそうに「やっぱり殺し合う運命だ」って語るんだろうな。
63通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 13:04:07 ID:???
戸惑うシンをレイと一緒に焚き付けたりな
64通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 13:16:26 ID:???
>>63
シンは兎も角レイが何かに戸惑う絵が想像出来ないw
65通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 18:05:38 ID:???
>>58
いい感じだ。
もし続ける気があるなら、適当なところで改行を入れるのと「ギルバート」に気をつけて。
66592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/29(月) 22:17:41 ID:???
>>12氏、>>58
GJ!!続きが気になります!
12氏のはキラとバルドフェルドがどういうコンビを見せてくれるのか。原作とは違う流れなのかな?
58氏の狂気キラがカッコイイ!これからアスランと出会ってどうなるのかが気になるなぁ。

>熱血スレの熱血ピンクについて
あれに関しては一応本編とは違った流れなので、掲載するとしても小ネタで御願いしたいなぁと思います。
や、考えてはうわなにkp@あjkwぱじゃを
67通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 23:56:18 ID:???
しょうじき
「コーディネイターだって、出来ない事くらいある…。」
にわらた
68キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/30(火) 00:41:35 ID:???
第8話

 キラは朝早く宇宙港へと向かっていた。
 先日キラは、パトリック・ザラに呼び出され、ある命令を受けた。
 その命令とは、技術部に在籍している博士をオーブへと連れて行く間の護衛のようだ。
 宇宙港に着くとキラは待ち合わせの場所へと向かった。
「あなたなの?」
 待ち人はキラを見るなり、驚きを表わした。
 キラもその人物の顔を見て、笑みをこぼす。
 護衛する博士とはキラがクルーゼとザフトで初めて立ち寄った場所で出会った女性のようだ。
 紫の髪がとても似合う女性だ。
 いつも博士の近くにいる少女がいない事にキラは疑問に思い、博士に聞いた。
「あの子は先の便でもう向かっているわよ」
「一人でですか?」
「馬鹿いうんじゃないわよ。ちゃんと付き人がいるわ」
「それなら安心ですね」
 キラは、パトリックの話を聞いた時から疑問に思った事を博士に尋ねた。
「どうしてこの時期、オーブに行くんですか?」
「上から何も聞いていないの?」
 キラは首を横に振る。
「博士をオーブまでの護衛しか」
「簡単に言うとお払い箱よ」
「お払い箱…ですか?」
「そうよ。でも実際の所は違うわよ」
「実際の所?」
「でもこんな所で話していいんですか?」
 突然キラの声が小さくなった。
「それもそうね」
 そう言うと博士は、腕時計を見た。
「時間だからさっさと行くわよ」
 キラ達は話を止め、オーブへ向かうシャトルへと向かう。
 シャトルに乗り込むと博士はすぐさま眠り込んだ。
「護衛だから眠れないんだろうな…」
 シャトルがオーブに着くと二人はタクシーに乗り込んだ。
「どこに向かうんですか?」
「モルゲンレーテよ」
69キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/30(火) 00:42:53 ID:???
 と博士は簡潔に答える。
「モルゲンレーテにですか?」
「そこで私の親友が待っているのよ。あなたの護衛もそこまでよ」
「博士の親友はモルゲンレーテの技術者なんですか?」
「違うわよ」
「それじゃ何を?」
「学校の先生ね」
「気になるの?」
 博士の顔をキラは見ると、その表情はなんともいえない笑みをしていた。
「博士の友達なのでどんな人物かと…。学校の先生なら」
「私と違ってまじめだと言いたいのかしら?」
 博士はキラが言おうとした言葉を先に言った。
 キラは首を横に振る。
「博士はこの後どうするんですか?」
 とキラは自分の身が危機を感じたのか、話の話題を別のに変更した。
「どういう意味よ?」
「モルゲンレーテで働くんですか?」
 博士は首を横に振った。
「それじゃ学校の先生ですかね」
 キラの言葉に博士は笑い出す。
「それもいいわね」
 笑いすぎたのか博士の目尻には涙が溜まっていた。
 二人が雑談を交わしているとモルゲンレーテ本社が見えてきた。
 二人はタクシーを降りると、モルゲンレートのロビーへと向かった。
 ロビーに入ると突然博士が立ち止まった。
「ここでお別れね」
 博士の言葉にキラは「はい」と頷く。
「もう会うことがないから一言言わせてもらうわ」
「何ですか?」
「無理はしない事…。それだけよ」
「本当に一言なんですね」
「文句ある?」
 博士の目が鋭くなった。
 睨まれたキラは何も言えなくなった。
「そう、それと議長がこれをと」
 博士はポケットから封筒を取り出した。
「ザラ議長がですか?」
 博士は頷くと、手に持っていた封筒をキラに渡した。
「確かに渡したわよ。って聞いているの?」
 キラは博士の事を見ずに、別の方向を見ていた。
 博士もキラが見ている方向に顔を向けた。
70キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/30(火) 00:43:50 ID:???
 そこにはいつも博士の近くにいた女の子が立っていた。
「迎えが来たようね」
「そのようですね。感動の再会を邪魔してはいけないのでこの辺で」
 と言うとキラは、モルゲンレーテの出入り口へと向かって歩き出した。
 モルゲンレーテから出ると、キラはガラス越しに博士と女の子を見た。
 女の子はキラに気づき、手を振る。
「バイバイ」
 とキラは聞こえたような気がした。
「バイバイ」
 と誰も聞こえないようにキラも返すと、モルゲンレーテから離れた。
 キラは近くにある喫茶店に入ると、空いている席に座り博士から貰った封筒をおもむろに
開けた。
 書かれている内容を見たキラは、ため息をついた。
「モルゲンレーテで研究データを抜き取れか…。しかも期限は無しか。家に戻ってからハッ
キングしても全ては無理だな。さすがに今晩、進入して博士達に出会っても気まずいし、明
日にするか…」
 と物思いに耽っていると、路地裏でキラと同年代ぐらいの少年が年下と思われる少年を一
方的に殴っている風景が目に入った。それを近くで見ている少女は何もできずその場で泣い
ていた。
 キラは席を立つと、少年達の元へと向かった。。
 キラが偶然見なければ、暴力行為が終わるまで誰も気がつかなかっただろう。
 急いで路地裏へ向かいう。黒髪の少年が一方的に蹴られているのがキラの目に入った。
 蹴っている少年の周りには、その取り巻きと思われる少年達がいた。
 キラは地面に落ちている石を取ると、蹴っている少年に向かって石を投げつけた。
「っ!」 
 蹴っている少年に動きが止まる。
 キラはその隙を狙い、少年の顔面に目掛けて拳を放った。
 殴られた少年が後方に吹き飛んだ。
 キラは蹴られていた少年に近寄った。
「大丈夫か」
 少年は頷いた。
「早く逃げるんだ!」
「でも、あなたは…」
「あの子を連れて早く」
71キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/30(火) 00:44:46 ID:???
 キラの言葉に少年が、近くにいる少女に気がついた。
「わかりました」
 少年は少女の手を取った。
「マユ、行こう」
「うん、お兄ちゃん」
 二人は表通りへと向かって走り出した。
 キラの肩に突然衝撃が走る。
 キラは刈り取られそうな意識を何とかつなぎ止めた。
 振り返ると、鉄パイプを持った先程の少年がいた。
「人が遊んでいたのに邪魔しやがって!」
 とリーダー格の少年が叫ぶ。
「小物が…」
 キラの声が思いのほか小さく、少年達の耳には届かない。
「なんだって?」
 取り巻きの一人がキラに近づく。先程の攻撃で片腕が使えないと思い、近づいた取り巻き
は突然キラに顔面を蹴られ、意識が飛んだ。
 残りの二人がキラに襲いかかろうとしたが、キラを見るなり突然動きを止めた。
 キラの日と睨みで、少年達は全身になにか恐怖を覚えていた。
 キラが一歩前へ進むたびに、少年達は後ろへと下がる。
「おい、あの顔どこかで見た事ないか?」
 とリーダー格の少年が、取り巻きの少年に聞いた。
 少年達は、数秒頭を悩ませると「あ!」と小さく叫んだ。
「「オーブノウエタオオカミ」」
 少年達の膝が震え始めた。
「オーブの学生でしらない奴はいない。奴はたった一人で族を潰したらしいぞ」
 キラは少年達の前に近づき、言った。
「さっきの少年達に今度手出して見ろ!確実にお前達を潰すからな!さっさと行け」
 その言葉を聞き、少年達は一目散に逃げ出した。
 キラはさっき少年達から出た言葉に、キラはため息をついた。
「さっきの話って、ヘリオポリスの時にあの事か…。内容が真実と全然違っているし…」
 キラはヘリオポリスの事を思い出しながら、路地裏を後にした。
72通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 02:16:02 ID:???
職人氏GJ

オリジナルキラとシンが邂逅を…
73連邦の白い、あっ!クマ:2007/01/30(火) 18:31:45 ID:P52iIVcl
熱血スレとかロウスレとかユウナスレとかどこにあるんでしょうか?
検索かけてもHitしないのですが
74通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 18:38:09 ID:???
ロウスレでそんなこと聞くなんてw
75通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 18:39:09 ID:???
>>73
知るか禿



























「ユウナ」でググレばユウナスレが出るよ
「熱血」か「キラ」でググルと熱血スレに行ける


ロウスレはここだけど君は店の看板を見ないで入る人?
76通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 18:44:36 ID:???
>>73
君は礼儀知らずのふざけた香具師だな

人に教えてもらったら礼をいいなさい
77通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 18:49:16 ID:???
つーかsageろや池沼
7858:2007/01/30(火) 22:17:30 ID:???
皆さん感想ありがとうございます!
今続きを書いているんで、今日中には投下出来ると思います!
79通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 22:28:29 ID:???
>>58
おー!
ワクテカして待ってますよ
80通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 22:38:59 ID:???
>>58
ワクワクしています
81592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:06:36 ID:???
わしも投下できそうですばい。戦闘むずいばい…。相変わらず展開も速くて申し訳ないばい…。
というわけで第二話イクゾー
82592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:07:29 ID:???

初めてMSを動かしたのは何時だったか。
そうだ、あの後、反ブルーコスモス団体の少女と怪しい男に助けられ、南アメリカ地区に行ったときだ。
彼女らは村を守るためにザフトと協力していた。怪しい男はコーディネイターで少女はハーフだった。だから、ブルーコスモスから迫害を受けた。
連合軍の中には多くのブルーコスモスに所属する人間がいたから、彼女らにとってザフトとの連携は悪い話ではなかった。だから、プラントにいた。
村にはナチュラルもいた。コーディネイターとナチュラルが半々の割合で暮らしていた。いい村だった。理想郷だった。
しかし、そんな理想郷を潰そうとする者達がいた。連合軍の兵士達、それも醜悪な連中だけでは終わらなかった。
私が『ナタリー・フェアレディ』になって、この村へ来た時、村の一部が炎で包まれていた。
そこで私が見た光景は、ジンとジンが戦っていたのだ。ジンだけではない。ディンという名のMSもいた。
それに乗っていたのは、全員ザフトの脱走兵たちだった。一方、村を守っていたのもまた、脱走兵だった。
私は、呆然とした。ナチュラルもコーディネイターも関係ない。これは、人という根底の問題だ。弱者を守るための軍隊が、弱者を虐げる。
脱走したとはいえ、いや脱走したからか。しかし、私は許せなかった。
村を守っていたジンが倒れる。私は、気がついたら走っていて、そのジンに駆け寄っていた。その時、ディンが襲い掛かろうとしていて、
私はコクピットの中に引き釣りこまれた。
中に入って判ったが、パイロットは怪我をしていた。もはや、MSを動かせるような状況じゃなかった。最後の力を振りぼってディンを破壊したが、それまでだった。
私は、操縦桿を握った。MSの動かし方などわからなかったし、到底勝てる相手ではないというのはわかっていたけど、それでも。
パイロットが指示する。私は、無我夢中でジンを動かした。
83592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:08:31 ID:???
守るべきものを守るために

第二話 Fire Cracker

ピピピピ…

と、そこで、目覚ましの音でラクスは現実に戻される。懐かしい夢。二年前の、あの時。全ては始まったか。
キラとの再会、いやケイ・クーロンとの出会いから二年。講和条約による終戦をもって、今のところは平和な時を過ごしていた。
軍内部は任務を戦略から防衛、または戦後の後処理という風に変えただけで、忙しさは変わりない。
そんな最中、旧ヴェステンフルス隊の一部は異動となり、ラクスもまた、ここアーモリーワンに仕事場を変えていた。因みにキラもここに来ている。
一人暮らし、というには少しリッチなアパートマンションの一室を借り、生活する事一年半。
暫くはここで演習や新型MSのテストパイロットをやっていたが、今回、ミネルバという名の新型艦のMS部隊に所属されるらしい。
ミネルバクルーの殆どは前大戦を経験していない、いわば士官学校の卒業生らしい。そこに、経験のあるものが少数配属されるらしい。
らしい、とばかり記しているが、今日がその進水式なのは間違いはない。

「ん…もう朝ですか?…あ、ら…まあ」

そう、間違いはないのだ。

「ち、遅刻ですわぁぁぁぁ!!」

初日から忙しい人である。
ラクスは急いでザフトの制服に着替え、必要な荷物をまとめたボストンバックを両手に急いで外に出る。ハロもそこに入っていた。髪は寝癖で酷いことになっていたが構いやしない。
ようは間に合えばどうにでもなる。しかし、腹が減っては戦は出来ぬと言うので、
ラクスはコンビニでサンドイッチを購入した後、自慢のスクーターに跨り、ヘルメットを被ってそのまま猛スピードでザフトの軍施設にまで向かっていった。

「もう!目覚ましさんのバカバカ!ていうか私のおばかー!ああ、もう絶対ケイさん怒ってますわ!!ていうか、早くしないと最悪…」

『おーまーえー!推薦してやったオレノタチバワカッテテコンナコトシタノカー!海老反りじゃー!』

「…ぜぇぇぇったいに嫌ぁぁ!」
「って…今頃言ってるんだろうな…」

一方のケイ・クーロンことキラ・ヤマトはアーモリーワンの軍基地に一足先に来ていた。メカニックマンとして、今回の進水式に使う式典用ジンの整備や
新型のザク・ウォーリアの整備点検など、彼、いや彼ら整備班の仕事は山済みだった。
今は本当の小休憩で、ケイはコーヒー片手にのんびりとハンガーの前で寝そべっていた。
本当ならば今頃ラクスがここに来ていて、彼女に与えられるはずのゲイツRの調整やら他のMSの搬入の手伝いをしていたかったのだが、
案の定というか、ケイの予想通り彼女は寝坊した。
84592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:13:55 ID:???
「全く…、今日で何回目だと思っているんだ。ほんと、やめてよね。遅刻して作業遅れて怒られるのは僕じゃない?大体おやっさんの恐ろしさは尋常じゃ…」
「誰が恐ろしいって?」

愚痴っていたケイだったが、視界外からの予想外な声に、目を見開いて冷や汗をかく。まるでさびたロボットか人形のように
ケイが体を起こしてみると、そこには噂されていた人物、おやっさんことマッド・エイブスがそこにいた。

「あ、いや、おやっさん、その」
「川に投げ込まれるだけじゃ、お前のその曲がった根性は直らんか…じゃあ、宇宙に投げ込むか…」
「勘弁してくださいよ、おやっさん!本当にすいませんでした!」
「だったら最初からそういう口を利くな、馬鹿者!」

ケイの頭にマッドの拳骨が飛ぶ。威勢のいい音ともにケイの脳天に激しい痛みが襲った。

「ぐぉぉぉ…」
「やれやれだな…全く」

マッドはあまりの痛みにのた打ち回るケイの隣にどかっと座り、胸ポケットからタバコを取り出して咥えて噴かす。

「…平和だな」
「ぐぅぅ…え?…ああ、そうですね」

マッドの言葉にケイは痛がるのをやめ、体を起こして答えた。確かに今は平和だ。
ケイ自身もミネルバの整備兵として配属される事になるが、暫くは暇な任務が続くのだろう。
いや、整備兵自体は忙しくなるか。特に、新米ぞろいのミネルバであれば。

「新米達、正直どうなんです?」
「ん?ああ、癖のある連中だが腕は確かだ。後は実践経験を積めば大丈夫だろ。少なくとも、お前よりは素直だ」
「ちょ、そりゃあないですよおやっさん。…そりゃ愚痴りましたが」
「ま、自業自得だわな。そういう事はもっと隠れて言え。…そういや、ここのハンガーにゃあ新型が格納されてるんだったか」

マッドはタバコを口からはなして手に持ち、背を向けていた六番ハンガーへと入っていく。キラもその後を背伸びしながら追いかけた。
中ではザフト兵が厳重に警備しており、ここが重要な場所なのだと一見でわかるほどだ。
普段ならばザフト兵でさえ、呼び止められるほどなのだが、マッドとケイはこのMSの開発に少しばかりかかわっていたので、問題なく挨拶をするだけで中へと入ることができた。
85もう、改行エラーはいやだ592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:14:46 ID:???
「ザフト・セカンドステージ…か。皮肉なもんだな。ナチュラルが作った機体を、俺たちが真似てるんだからな」
「一筋の道もまずは模範から、と言いますし、いいんじゃないでしょうか。いいものはいい、悪いものは悪い」
「…ま、それもそうか。とはいえ、何時見ても悪趣味だ」
「ええ、変態ですよ、これは」

酷い言われようのザフト・セカンドステージと呼ばれた、ハンガーに格納されているMS達は、確かにデザインに特徴があったし、その性能も特殊だった。
肩の後ろに手を回しながら、そのMSを見上げて、ケイはため息をつく。

「大体、停戦中なんですし、こんなごてごてに武装つけちゃって、本当にいいんですかね。ガイアは兎も角、アビスとカオスは明らかにオーバースペックですよ」
「そうは言っても、連合の奴らだってちゃくちゃくとMS開発を進めている。こっちだって力をつけにゃあ対抗できん。
MSっていうのも、要は使う奴次第ってことさ…。力と一緒でな」
「…そういうもんなんですか?」
「ああ。別にこいつらを無理に使う必要はない。いや、寧ろ使わない時がくればそれがいいさ。しかし、それまではこいつを預けられる奴に預けるしかない」
「…」

ケイは思い出す。かつて自分が乗っていた愛機フリーダムのことを。
あれもまた、『強すぎる力』の一つだ。使い方を一歩でも間違えれば、あれは悪魔にでもなるだろう。事実、自分は敵にとって悪魔と同じ存在だったのだろう。
あの機体が二度と使われない事を祈る。それが、今のケイ・クーロンの思いだった。

「このうち一機はハイネ隊長に回されるんだろう。なあに、彼ならしっかり使ってくれるさ」
「そうだといいですね」

マッドの言葉に少しは安心感を覚えたものの、それでも憂いを隠し切れないケイに対し、マッドは苦笑しながら背を伸ばし、そしてタバコを咥えながら言った。

「そんなに心配しなくても大丈夫さ…さあてと…そろそろ作業に戻るか。俺はミネルバに戻るが…まだ嬢ちゃんからは連絡ないのか?」
「まだですよ。多分、今頃人でも轢きそうになってるんじゃないですか?」


「このラッキースケベ!」
「ちょ、おい!ヨウラ」
「どいてくださいまし――!!」
「うわ!!」
86592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:16:19 ID:???
当たりだった。
ラクスはショートカットするために小さな道を選び、大通りへと抜けた。その際、歩行路からその道へ歩こうとした青年を
轢きそうになって、逆にラクスがすっころんでいた。

「シン、大丈夫か!?」
「あ、ああ…っていうか、あっちの心配したほうが…」
「あの人いっちゃったぞ?」
「え?あ」
「すいませんでしたー!」

シンと呼ばれた、黒髪の青年がラクスのほうを向いたときにはすでに、彼女はスクーターを起こして、謝罪の言葉を残して何処かへ行ってしまった。

「何なんだよ、一体…」
「あっちは軍施設ってことは…しかも緑服着てたってことはザフト兵じゃね?」
「…ふぅん」

あまり興味なさそうな顔を浮かべながら、ラクスが去った方向を見ていた。
そのラクスは、恐らくスピード違反ギリギリのスピードでザフト軍の基地へと向かい、スライディングするようにその入り口へと止まった。

「おお〜ナタリーちゃん、また遅刻か?」

警備兵が緊張感がない、にこやかな表情でラクスを迎える。ラクスは身分証明書をとりだしながら警備兵のほうへ歩いていった。

「も〜目覚ましがならなかったんですよ…。でも、ギリギリ間に合いましたでしょ?」
「ギリギリもいいところだが…それって進水式にだろ?またケイの野郎が怒ってるんじゃないか?」
「ああ〜…そういえば、私に新しいMSが配備されるって聞きましたけど…その調整終わってなかったような…」
「じゃあ怒られるなぁ、ははは」

怒られる原因を思い出し、ラクスは落胆したように肩を落とす。そんなラクスを他人事のように笑いながらからかう警備兵。
そんなラクスに警備兵は扉を開きながら言った。

「ま、更に怒られないよう、早く行ってやりな。ああ、あんまり大通りには出るなよ、ジンが歩き回ってるからな」
「はぁい…」

出発時とは打って変わって、力なくスクーターに跨るラクスは、そのまま門を通って、自分のMSがあるという10番ハンガーへと向かった。
辺りを見回してみると、まるでアンティークのように彩色されたジンがところ狭しと歩き回っている。あれは式典用のはずだ。
自分が昔ラクスだった時代はそんなことはしなかった。それだけ、今回の進水式は気合が入っているのだろう。ただ、ラクス本人として気になるのは。

「あんなの作って、お金大丈夫なんですかね?」
87592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:18:07 ID:???
ただでさえ、プラントは食料問題やら色々と問題を抱えているのだから、ジンの彩色にお金をかけないで良いような気もするとラクスは考えたのだが、
それは自分の考えるべき事ではないと改めて考え直し、真っ直ぐ目的地へと向かっていく。
10番ハンガーの前では、案の定ケイが腕を組みながら、眉をピクリピクリと動かし、明らかに苛立ちをあらわにしていた。
ラクスは申し訳なさそうにスクーターから降りて頭を下げた。

「ごめんなさい」
「よろしい。じゃあ、早く作業やっちゃおう。一通りはプログラムはやっておいたから、後はラクスの持ってるジンのデータを入れれば言い。
といっても、後細かいテストとか、調整やんなきゃいけないから、とりあえずミネルバまで搬入するのが最初の仕事だよ」
「はい」

素直に謝ったラクスに、ケイはそれ以上咎める事もなく機嫌を直した。毎度毎度の事だし、しかも時間がない。
喧嘩している暇などないから、ケイは気にしなかった。そんなキラの気持ちを察したか、ラクスも急いで、ハンガーに設置されていたゲイツRに
乗り込むが、肝心のデータがない。手探りで探すが、やはり見つからなかった。

「ないの?」
「…すいません、家においてきちゃったかもしれませんわ」
「別に気にしてないよ。ないならコピーすれば良いからさ。じゃあ一回降りて」
「はい」

ラクスは自分の両頬を両手で二回叩き、気を取り直す。どうやら自分は気が抜けているようだ。
これ以上ケイに迷惑をかけまいと、駆け足でケイより先に、隣のハンガーに設置されていたかつての愛機ジンのコクピットへと向かっていった。
そんな一生懸命の彼女を見て、ケイは苦笑しながらゆっくりと歩いてその後を追った。
この第11番ハンガーには、演習用の機体が保管されていて、ラクスのジンも演習用に回されていた。
また、試作型の武器などもここに保存されているらしく、ジン用のマシンガンとしては小型なものや、明らかにジンの身長と同等の、しかも「dangerous」などと乱暴に書かれている大型ライフルなど
あるものには宝の山、またあるものには危険物の山としてここは映っていた。
そんな場所に保存されている、最近ではめっきり乗る事のなかった愛機に懐かしさを覚えながらも、ラクスはコクピット席に座る。

「懐かしいですわ」

ゆっくり目をつぶりながら、シートの感触を確かめるように深く背を預ける。ケイも昇降用のワイヤーで上に上がり、コクピットの入り口辺りでしゃがみながら言った。

「ラクスはずっとこの機体に乗ってるんだっけ?」
「ええ。これはもらい物なんですの。前にも言いましたよね?南アメリカ戦線のこと…」
「ああ、そこのレジスタンスに参加していたときか…その時に?」
「ええ」
「そうなんだ…。まあジンって言っても、この機体大分改造された機体なんだよなぁ。
ジンの汎用性を生かしつつ、機動力を補うためにスラスターの改良や、MSの動きを軽やかにするための学習コンピュータ。
それに見合うだけのパーツを使用しているし…名ばかりのジン、て言っても差し支えないよなぁ」
「は、はは…そうですか…」

全然分からない、とラクスは心の中で考えた。どうも、ソフトウェアやらハードウェアやらには疎いのだ。
殆どの事はマッド率いる整備兵軍団や、今ではケイに頼りっきりだった。

「あ、とコピー完了っと…」
「あ、終わった?じゃあ早くしないと式典が始まって…」

作業を終えた二人が、まさにジンから降りようとしたその時だった。
88592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:19:17 ID:???
ドォォォォォォ・・・・・ン

突然、後方から爆音が聞こえてきた。ケイとラクスは何事かと振り向くが、そこはコクピットの中なので当然何も見えない。

「式典が始まったんでしょうか?」
「そんなわけあるか!早く乗るんだ!」

楽観的なことを言うラクスに対し、ケイは何か危険な"香り"を感じ取り、ラクスをジンのコクピットに引き込む。
そして、ハッチを閉め、全てのシステムを再び起動させる。

「あの音は何か大規模な爆発が起こった音だ!それに、ああ、もう!警報なってるしさ…」

今日は厄日だ。そんな風にケイは考えていた。爆音の方向には覚えがある。あの三機のMSだ。
そして、警報がなったという事は、それに何か異変が起こったという事だろう。その異変を、考えたくはなかった。

「そんな…そんな事って…」
「だからあんなもの作るんじゃない、って言ったんだ、僕は!ラクス、行くよ!ここにいると危険だ、早く…っ!」

ケイは操縦桿を握り、ジンを動かそうとしたが、その瞬間、視界の先に様々な光景が浮かび、急に胸が苦しくなる。僅かに触っただけなのに、だ。
コクピット恐怖症が再発したのだ。いや、再発したのではなく、まだ治っていなかったのだ。
ケイは胸を押さえながら苦しそうに荒く息をした。そんな様子を見たラクスは目を見開いて驚いていたが、すぐに自分が操縦桿を握り、ジンを動かす姿勢を見せる。

「ミネルバに行けばいいんですね?」
「…ふっ、はふっ…そう…はっ…はっ…だ!敵は…ハンガーを潰すだろうから…あ、念のためにそこのマシンガン持って行って」
「了解ですわ!」

ラクスはジンをハンガーから離し、隣に置かれていた、小型のマシンガンを持たせて外に出そうとする。しかしその時、先ほどまでいたハンガーが攻撃され、MSに誘爆したために起こった爆風が
ラクスたちのいるハンガーを襲う。ラクスは咄嗟にジンをしゃがませ、姿勢を低くとる。
爆風の煙で視界が塞がれていたが、すぐに開いた。その瞬間、目の前の惨状に息を呑む。
もし、ラクスがデータを忘れていたら、自分達は死んでいたかもしれないのだ。ケイはラクスの天然に今日ばかりは感謝した。

「とはいえ、ここも危ない、ラクス早く…」
「あぁー!!!私の、スクータぁぁ…」

ケイがラクスの肩を掴んで催促しようとしたが、それを振り切るが如く、ラクスは背を伸ばして叫んだ。
よくみると、ここにやってくるために使っていたラクスのスクーターが見るも無残に瓦礫の下敷きになっていた。
炎上はしていないが、二度と修復できないだろうという事はメカニックマンの知識でなくても、ケイの目からはっきりしていた。

「いや、ラクス。スクーターじゃなくてさ…」
「く…私があんなところに止めたばかりに…く…スクーターちゃん、ごめんなさい…私のせいで…」
「いやあの、おーいラクス?ラークース?ラクスさん?バカピーンク?ピンク!!」
「…この恨み、晴らさないでおくべきかー!ですわぁぁ!!」
「ちょ、うわあああ!?」

急に旋回したために、ケイは思わず慣性で吹き飛ばされそうになるが、コクピット席にしがみ付き何とか耐えた。
激昂したラクスはそんな事に気がつかず、先ほど掴ませたマシンガンの隣にあった、『dangerous』と乱暴に書かれていた大型実弾ライフルを右腕に持たせ、銃弾をいくつかストックさせる。
89592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:20:57 ID:???
「うぉぉい!ちょっと、それはまだ試作型でまだきけ…」
「ならば、今からテストをして差し上げますわ!」
「いや、そういう問題じゃなくって、ああもう!好きしてよ!」

ケイは何とかラクスを宥めて逃げるよう説得しようとしたが、もはやスクーターに対する恨みで頭が一杯なラクスにはもはや無駄だと判断し、
諦めたようにケイは叫び散らした。その答えに満足したか、ラクスはジンを走らせた。

「ラクス、出たら左を向くんだ!左から攻撃してる!」
「了解ですわ!…い・ま・し・た・わぁ!!」

ケイの助言通り、出て左を向くと、そこには見覚えのあるMSがいた。確か、セカンドシリーズのアビスというMSのはずだ。
アビスは手当たり次第にビームライフルを放ち、ザフトのハンガーやMSを破壊していった。シグーやディンが交戦しようとしていたが、アビスは何の苦労もなくそれらを落としていく。
しかし、ラクスのジンにはまだ気がついていない。ラクスは瞳を光らせ、ここが好機と、先ほどのライフルを構えさせた。

「お父さまお母さまから、ものは大事にしなさいって習いませんでしたかぁ!!!」
「あん?」

アビスのパイロットもそれに気がついたが、もはや遅かった。
ジンはすでに射撃体勢に入っている。大型のライフルから銃弾が一発、放たれた。そして、放たれた、と認識した瞬間、アビスの肩に直撃した。
ジン自体もそのライフルの反動で吹き飛ばされそうになるも、低い姿勢を保ち、何とか耐え抜く。

「うわああ!」

凄まじい衝撃によって、アビスは体勢を崩し、中のパイロットも震動に揺らされ、悲鳴を上げた。
もし、セカンドシリーズの装甲がVPSではなく通常のものであれば、アビスの肩は吹き飛ばされていただろう。それだけ強力なライフルだった。
が、しかし、一発一発の威力が高いものの、装填時間や冷却時間に難があり、そのまま二発目とは行かなかった。

「野郎…!なめやがって!」

アビスのパイロットは血管を浮かべながら機体を立たせ、お返しとばかりにバラエーナ改を構える。

「ラクス!後ろに飛びながらマシンガンを撃つんだ!」
「はいさ!」

ケイはすぐさま指示を送り、それにしたがってラクスは機体を飛び上がらせる。ぎりぎりというところでアビスの一斉射撃を避け、
ライフルを肩に背負わせ、反撃にマシンガンを放つが、アビスはすぐさま物陰に隠れやりすごされた。
ラクスはすぐさま機体を着地させ、適当な物陰に隠れ、先ほどのライフルの装填をさせる。
その動きはなれたものだ。バカピンクバカピンクと罵られつつも、こういうところはしっかりしている。
いや、この二年間の演習の賜物、といって良いかもしれない。
とはいえ、ジンがアビスに勝てるわけがない。先ほどの一撃も奇襲によるものだ。

「全く、どうして奪われるんだよ、あれが…!ということは、他の二機も…」

ケイの予想は当たっていた。セカンドシリーズのうち、ガイアとカオスの相手を、一体のザク・ウォーリアが相手をしていた。
前後、挟撃される形でいる中、ザクは片手で、しかもヒートホーク一丁で何とか持ってはいるが、やられるのも時間の問題だった。
90592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:22:18 ID:???
「く…こんなところで…!」
「うぇぇぇい!!…はっ!?」

ガイアが止めといわんばかりにビームサーベルで切りかかろうとしたが、突然来た戦闘機のようなものから放たれたミサイルによって動きを止められてしまう。
ヒット&アウェイのつもりだったのだろうか、戦闘機はそのままアーモリーワンの中心に飛び去った。否、後から付いてきたMSのパーツが合体し、一機のMSが降り立ってきた。他のセカンドステージと似た、その顔。

「こんな事をして…また、戦争がしたいのか、あんた達は!!」

そのMS、セカンドシリーズの一つ、インパルスに乗っている赤目のパイロット、シン・アスカは怒りを含んだ叫び声を上げた。
そして、対艦刀『エクスカリバー』を連結させ、それでガイアに切りかかる。ガイアは一度食らうものの、その反動飛び上がって、CIWSを発射させるが、同じVPS装甲では牽制にもならない。
インパルスは手持ちのビームライフルを連射させる。ガイアは素早く避け、地面を蹴って瓦礫に隠れる。それを追うようにインパルスはビームライフルを連射する。
カオスもガイアを援護をするようにビームライフルを発射するが、インパルスはそれに反応し、後ろに下がりながらカオスにライフルを発射する。

「…なんだこれは!?」
「あれも新型か!?」

ガイア、カオスの両機体のパイロットは驚愕の声を隠し切れなかった。ザク・ウォーリアに乗っている一人、いや二人も驚きを隠せず、唖然としていた。
威風堂々構えるインパルスは、かつて連合のMSとして多大な戦績を残したストライクのそれを思わせる。

「あんな機体の情報…!アウル!!」
『スティングか!今手放せねぇよ!変なジンが…うあ!』
「くそ!」

先ほどのアビスのパイロット、アウルへスティングは応援を要請するが、当のアビスはラクスのジンと交戦している間に、他のMSにも囲まれてしまったので抜け出せずにいた。
スティングは毒づきながらも、ガイアの援護をすべく、インパルスにビームライフルを放つ。ガイアと鍔迫り合いをしていたインパルスは、一度ガイアを蹴り飛ばし、その反動で回避運動を行った。
カオスは倒れたガイアに手を貸して起き上がらせ、すぐさまインパルスへ攻撃を再開する。

「こんのぉぉぉ!!」
「うぇぇぇい!!」
「く!!」

流石に最新鋭のMS二体を、同期のMSとはいえ同時に相手にするのは難があるか、インパルスは苦戦を強いられる。
奪われたばかりというのに、まるで手足のように使う彼らの連携は凄まじい。
もはや捕獲するという任務に拘っているわけにも行かなくなってきた。
ガイアは一度変形し、インパルスに突撃する。シンは唸りつつも連結していたエクスカリバーを分離させ、ガイアに突撃する。
ガイアのパイロットはそのインパルスの行動に驚き、一度回避運動をしながら交差をし、振り向きざまに背中のビーム砲を発射する。
インパルスはそれをシールドで受け止め、片方のエクスカリバーをガイアに投げつけた。ガイアはそれをシールドで受け止めはしたが、反動で吹き飛ばされた。

『シン、命令は捕獲だぞ!?わかっているのか!?あれは我が軍の…!」
「解ってます!でも出来るかどうか分かりませんよ。大体何でこんなことになったんです!」

急に流れてくる男の通信の声に、シンは苛立ちを覚える。彼の言うとおり、このような状況にまで陥ったザフトの危機管理は甘かったのかもしれない。
それに、命令とはいえ、これ以上拘ればインパルスさえ危険だ。被害は最低限に抑えるべきとシンは判断していた。
唯一つ、救いといえば、アビスがここにいないことか。他のところががんばっているのだろうか?
91592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:26:52 ID:???
「うわあああ!?」「たあああああ!!」「やめてよねー!?」

…飛び込んできた。翼に桃色をあしらった、変なジンと共に。まるでラグビーかアメフトのタックルのようにアビスの腰のところを掴んだままスラスターを命一杯噴かし、
アビスともども瓦礫に突っ込んでいった。そして、すぐに出てきたと思えば、アビスがカリドゥス複相ビーム砲を放ってきた。

「はあ…はあ…危ないところでしたわ…」
「いや、僕は十分危険な状態に陥っているけどね?」

シートベルトをしているラクスに対し、ケイは掴める場所に掴んでいるしかないので、先ほどのタックルでは彼も吹き飛ばされそうになっていた。今はひっくり返り、コクピットとモニターの間に挟まっているというなんとも情けない状態でいた。

「アビスは元々水中用だから、他の二体と比べてそんなに動きは良くない。あいつだけを集中して叩くんだ、ラクス!」
「わかりましたわ!」

その状態のままのケイの助言にラクスは気合の篭った返事をして、すぐさまジンをマシンガンを打たせながら突撃させた。アウルは一旦瓦礫から飛び出てラクスのジンをやり過ごし、反撃の肩部ビーム砲を一斉に撃つ。
ラクスは機体をあえて地面に付かせ、受身を取りながら瓦礫に隠れる。他のMSも敵味方関係なく各々避ける。

「バカアウルが!俺たちもいるんだぞ!?」
『うるさい!!』
『敵が来るよ!』
「くっ!」

アウルの容赦ない射撃に巻き込まれそうになったスティングは喧嘩口でアウルを叱るが、ガイアのパイロット、ステラの言葉に気を取り直し、迫り来たインパルスのエクスカリバーを受け止める。
それを見たアウルとステラは加勢しようと迫るが、アウルのほうはジンからの射撃を受け、邪魔をされる。ガイアは一旦動きを止め、ビームライフルをジンに向かって構える。

「しつこいんだよ、雑魚が!」
「ラクス、飛べ!」
「はい!」

アウルの正確で素早い射撃に対しても、ケイが的確にかつ迅速に指示を送っていたためにいとも簡単に避けられてしまう。
表面上は一対一だが、事実上は一対二だ。だからこそ、ジンで最新鋭のアビスに対抗できるのだろう。

「こんのぉぉぉ!!」

しかし、完全にアビスのほうに目線が行っていたジンはガイアのビームライフルを左スラスターに受けてしまう。

「くぅぅ!!」「ぬぐ!ガイアか!」

悲鳴を上げそうになるのを歯を食いしばって踏ん張るものの、それで状況が変わったわけではない。地面に叩きつけられたところを変形したガイアに狙われそうになる。が、その時、傍観を決めていたザク・ウォーリアがついに動いた。

「つかまっていろ!」
「え、うわ!」

ザク・ウォーリアはガイアを無防備の横から体当たりをし吹き飛ばす。それを見たアビスが狙いをジンからザクへと変え、
両肩のシールドに付けられた連装砲を放とうとするが、ザクは残存の武装ビームトマホークを投げつけ、アビスへ牽制する。

「こんのぉぉ!!」

アビスは体勢を立て直してバラエーナ改を放ち、ザク・ウォーリアの肩に直撃させた。
92592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:27:59 ID:???
「くぅぅ!」
「ああ!」
「はっ!?カガリ!?」

ザク・ウォーリアの中のパイロットはうめき声をあげながらも耐えるが、もう一人のほう、カガリと呼ばれた女性は額から血を流しながらパイロットに倒れた。
パイロットは倒れた女性を支える。そのために動きを止めたザク・ウォーリアに対し、これを好機と思ったアウルはもう一度バラエーナ改を発射しようと体勢をとる。

「もう一丁!!…はっ!?」
「「足元が隙だらけですよぉぉぉ!!」」

が、その隙に体勢を立て直したジンにライフルを構えさせる隙を与えてしまい、
ラクスとケイはわけのわからない気合の入った雄たけびを上げながらライフルを発射する。
あまりの近距離で受けてしまい、VPS装甲も空しく、アビスは大きく吹き飛ばされ、衝撃のあまりにアウルは気絶してしまった。
完全に動きを止めたアビスに対し、スティングは一度インパルスを鍔迫り合いから距離をとり、ビームライフルを乱射して牽制しながらアビスを回収する。

「おい!アウル、アーウル!」
『…あ…ぐ…う…』
「くそ…!ステラ、動けるか!?」
『うん…大丈夫…どうする、スティング』
「撤退するぞ!損害が大きすぎる!ネオも今頃港の強襲に成功しただろう。さっき震動があったからな。これ以上ここに留まる理由はない!」
『このまま下がるの!?こいつを残して!!』
「任務を果たせなきゃ意味ねぇだろうが!文句があんならネオに言え!」

終始押されたままのこの状況に納得のいかないステラに対し、ついに苛立ちを表したスティングだったが、
冷静に判断してステラを諌め、牽制のために機動兵装ポッドを飛ばして、それぞれインパルスとジンに攻撃を加える。インパルスとジンはそれぞれ後ろに飛んで避けるが、
ポッドのビーム砲によって破壊された瓦礫の煙によって視界がさえぎられ、その隙にカオスとガイアは飛び去ってしまった。
それに気がつき、シンは追撃しようとしたが、かなり離されてしまった。

「くそ!…ソードじゃきついか…ミネルバ!フォースシルエットを射出してくれ!」

すぐにシンはミネルバに連絡を入れ、インパルスの特徴である換装システムの一つ、フォースシルエットの射出を要求した。
ミネルバ副長アーサーはすぐに艦長であるタリアに指示を仰ぐ。

『艦長!』
『許可します。フォースシルエット射出』
『了解!フォースシルエット、射出準備!あっと、シン!今レイとルナマリアが追撃に出たぞ!』
「そうか、それは助かる!…さて、そこのジン!」
『はい?』

ミネルバの報告にシンは安堵の息を吐くと同時に、近くにいた友軍のジンへと無線をつなぐ。すると、そこには今朝あったバイクの女性が写っていた。
93592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:29:08 ID:???
「あ!!あんた、今朝のバイク女!」
『あら?あらあら…その件ではどうも申し訳ございません』
『また何かしたのか?ナタリー』

第三者が来たところで、ケイはラクスの事をナタリーと呼ぶ。久方にその名を呼ばれたので、少し反応が遅れたが、ラクスは振り向いて事情を説明した。

「いやぁ、ちょっと危ない目にあわせてしまいまして…」
『ちょっと何処じゃないだろうが!…まあ、素直に謝ってくれんならいいけどさ。今回は正直助かった。あんた達がいなかったら、もっと苦戦しただろうからな…だけど、仲間が来たから大丈夫だ。
あんた達はけが人とかを助けてやってくれよ。これから俺はあいつらを追う!それじゃあな!』
「はいはい、お気をつけて〜。ご武運を〜」

一方的かつ少し偉そうなその声の主にも苛立つことなく軽く流し、ラクスは飛び去っていったインパルスをジンの手を振らせて見送った。
途中別の戦闘機が来たかと思えば、武装を換装して、色まで変えて素早く飛び去っていったインパルスにラクスは興奮していた。

「かっこいいですわねぇ、あれ。昔のストライクを思い出しますわ」
「一応コンセプトはそれだからね。一つの機体で様々な状況に応じる事のできるオールラウンダー。また、核エンジンを使わずとも、ミネルバと連携する事で
デュートリオンビームからエネルギーを補給できる優れもの。僕もコクピット恐怖症がなければ乗りたいところなんだけどね」
「へぇ〜」

ケイの説明に、更に瞳の輝きを強くするラクス。やはり、ああいうエースパイロット用のMSは全てのものの憧れの的なのだろうか。
とはいったものの、ケイは今回のラクスの、いやジンの動きを見て認識を改める必要があった。
ラクスのジンはカスタム機で、普通のジンよりも優れているというのは以前よりも分かっていた事だったが、まさかここまでやれるとは思わなかった。
ジンはあくまでもジン。しかし、そのジンも上手く使いこなせれば生き残れるというものだ。特に、ラクスとこのジンは前大戦からずっと乗り続けてきたものだ。
最近は別の機体に乗る事のほうが多くなったとはいえ、それでも手足のように動かせるのだろう。もし、この機体が新型のゲイツRであれば、特性を生かせずに先ほどのアビスにやられていただろう。

『MSっていうのも、要は使う奴次第ってことさ』

マッドの言葉が今になって心に響く。あの言葉は正しかった。
自分はどうだったのか?思えば、MSの性能におんぶに抱っこだったじゃないか。フリーダムの高い射撃に頼っていたから、上手くいった。
実際は自分などただ少しだけ性能を引き出せるだけの人間だった。別に戦闘に長けていたわけではない。

「はあ〜…それにしても、助かりましたわぁ…」
「え?なんだ、あんなにいきり立って戦っていたのに。追わなくていいのかい?」
「いえ…なんか、急に力抜けちゃって…私自身、よくあんな相手に立ち向かえたなぁって思ってますわ」
「はは、なんだよそれ」

ラクスはシートベルトを外し、ため息をしながら、背もたれに深く背を預けて崩れた。
無我夢中の状態から抜け出したことで、現実感がラクスを覆い、絶え間ない安心感が脱力感を生んだ。
そんな彼女の様子にケイは笑みを浮かべつつも、そのラクスの、強い相手に昼まず立ち向かう勇気がうらやましく思い、そしてすこし嫉妬の念をどこかで持ってしまった。

(バカだな、僕も…嫉妬なんて)

ケイは苦笑しながら自嘲する。そして、自分も努力してみよう。そう思った。
今は唯、パイロットたちを守るために。そして、何時かのように、また人を守る事ができるように。
そう、彼女の好きな努力と根性で。
94592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:31:23 ID:???
「さあて、ラクス。そろそろ戻ろうか。ゲイツもないし、ミネルバへはこれで行こう」
「そうですわね…ってあー!そういえばスクーター!」
「あ〜…」

と、ラクスは急に叫んだかと思えば、先ほどの10番ハンガーへとジンを急がせた。そんな彼女の様子にケイは苦笑した。
何故こんなにラクスがスクーターに拘るかというと、それはケイから贈られた手作りの物だからだ。
ケイがメカニックマンという仕事をし始めてから、余った部品などを使って、ラクスの誕生日の時にプレゼントしていたのだ。
生まれてこの方、こういう同い年くらいの友達から貰ったプレゼントはアスランからのハロくらいだったから、ラクスは至極大事にしていたのだ。
…大事にしていたという割には、先ほどすっころんだわけだがさて置き。

「あ〜あ…こんなにめためたになってしまって…」

戻ってみると、そのままの状態で放置されていた。先ほどのアビスとの戦闘で巻き込まれなかったのは奇跡だろう。ラクスは瓦礫をどかして、そのジンの手に乗せて運ばせた。

「直りますわよね?これ、直りますわよね?」
「え〜?…あ〜う〜ん…」
「ふえ…もしかして、直らないんですか?!」

ラクスの涙を浮かべての懇願にまさかもはや直らないと言えるわけもなく、ケイは返答に困っていると、ついにラクスは涙を流し始めた。

「うわぁぁ!ちょっと、泣く事ないだろー!?」
「ふぇぇぇん!だって大事にしていたのにー!あー!?しかもハロー!!」

更に、スクーターに積まれていた、というより固定されていたバッグに入っていたハロの事を思い出し、ラクスは更に大泣きをし始めた。

「うわぁぁん…今日は厄日ですわぁぁ…」
「まあ、自分の命が助かっただけでも良かったとおもいなよ…それに、ボストンバッグのほうはつぶれてなさそうだから、ハロも大丈夫なんじゃない?丈夫だし。
バイクも僕が修理してあげるからさ」
「ほんとう!?本当ですか!?」
「あ、ああ…本当」

あまりのラクスの勢いに、もはや嘘とはいえない状況だったケイだった。
厄日なのは自分のほうだ…。と、ケイは思っていたが、ラクスのお陰で助かったのもあるし、少しくらい不正を働いたところで何の問題は無い。またジャンクパーツ集めて組み立てよう。暇があるときに。
ただ、彼が気がかりなのは、今回の襲撃。

「爆竹かあ」
「え?」
「いや、前地球の何処かで爆竹が引火して、花火工場の中の花火が全部爆発したのを思い出してさ」
「ああ〜、この前やってましたわね。そのニュース私も見ましたわ。すごかったですわねぇ…。死者が出なくて良かったですけど」
「そうだね」
95592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:32:46 ID:???
いやそうではなく。
今回の爆竹が、この世界にどう影響するのか。
ただの嫌がらせか。
それとも花火工場のように、すべての世界を巻き込む戦争の前兆なのか?
ケイは、なにやら嫌な予感がして止まなかった。
そんな思いを乗せつつ、ジンはミネルバへとその足を向けていった。

第三話 「Warrior」へ続く
96通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 23:35:18 ID:???


バカピンク強いなぁ。
そして何より運が良い。

しかし、スクーターご愁傷様。
97592蛇足的あとがき ◆M2a2eh6/s6 :2007/01/30(火) 23:36:59 ID:???
また時間掛かって&長文申し訳ない。いやぁ、本当に改行エラーに引っかかりすぎだ自分…。
とりあえず、急に二年後に飛んで、アーモリーワンですよ。
一応戦闘などは原作に忠実…と行きたかったのですが、バカピンクもそろそろ働かせたほうがいいと思ったので、
アビスとやらせてみました。とりあえず、アウルVSバカピンクは次回にも持ち込みです。
戦闘シーン、もっと上手くなりたいなぁ。

因みに大型ライフルの元ネタはフ○ントミッショ○の「ツ○ーゲライフル」だったり。
98通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 23:43:22 ID:???
GJ!
このままバカピンクとケイがミネルバに行くとカガリとアスランと鉢合わせ!?
二人の反応が楽しみだ
99通常の名無しさんの3倍:2007/01/30(火) 23:45:38 ID:???
リアルタイムキタコレ激しくGJ!!!ケイとバカピンクいいコンビだな。

それにしてもケイと聞くとひぐらしを思い浮かべてしまう俺ガイル。
100通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 00:18:05 ID:???
GJ!バカピンク強いなぁ
次回、どんな展開になるのか楽しみにしてます
101通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 00:21:17 ID:???
GJ!

これはよいナタリーさんとケイ君ですね

地に足が着いていて凄く好きです♪

ケイの「やめてよね」に茶目っ気を感じてしまう俺w

それと旧式のカスタム機で牽制役を果たすナタリーはかなりの腕前ですね!

このオリジナルラクスとクローンのキラが
ミネルバのクルーにどう絡むのか
かつての仲間とどう接するのか…


とても楽しみだ
102通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 01:18:17 ID:???
おお、あのあまりにも有名すぎる隠し武装ですかwww

おかげでどういうモノなのか想像が容易にできましたw
10358:2007/01/31(水) 01:56:53 ID:???
「……はい、そうです。それでお願いします。これはデュランダル議長からの特命なのでくれぐれも内密にお願いします。……でわ」
受話器を置いたキラは椅子にもたれかかかり、大きく伸びをする。

「さて、これで準備は整った……多少強引だったかもしんないけど、このくらいしなきゃ彼女達は出てこないもんね。さぁ、再び表舞台に出てきてもらうよ……ラクス=クライン」

不気味な笑みを浮かべながらキラはそう呟くと、黒いコートを羽織り部屋を後にした。


一方デュランダルは、ザフトレッドの制服を再び身に纏ったアスランと共にいた。アスランの制服の左の襟元では、デュランダルから与えられたフェイスの徽章が燦然と輝いていた。
デュランダルと別れの挨拶を済ませたアスランは、新たな愛機に乗り込むと一度深く息を吸った。

(オーブの情勢も気になるところだろうから、君はこのままミネルバに合流してくれたまえ。あの艦には私も期待している、以前のアークエンジェルのような役割を果たしてくれるのではないかとね。君もそれに手を貸してやってくれたまえ)

デュランダルの言葉を思い出したアスランは再び深く息を吸い、そして叫んだ。

「アスラン=ザラ、セイバー発進する!」

アスランを見送ったデュランダルは一息つくと、後ろを振り向いた。そしてそこには全身黒尽くめの格好をした男が立っていた。

「何時からいたんだね?」
「フェイスの徽章を渡した辺りからですかね……ずっと隠れてたんですよ」
「まだ顔を見せないってわけか……そういえばどうだったかい、久しぶりの親友との再会は?」
「議長が前に言ってた通りですよ、全くもって覇気を感じませんね。あの時のアスランはあんな腑抜けてなかったのに……」
「そうがっかりしてくれるな。あれでもパイロットの腕だけは確かなのだからね」
「さぁ、それもどうなんでしょうね?……今のままだとあっさり殺せちゃいそうで面白くないですよ」
「……そんな事を言わないでくれたまえ、これから君達には共に戦ってもらうと言うのに」
「アハハハ、冗談ですよ……少なくとも今は殺しませんよ、今は」

一瞬キラは満面の笑みを見せたが、またすぐに表情を戻し淡々と語る。

「今のアスランを殺してもしょうがないんですよ。それに……議長を敵に回すのは僕にとって厄介になるんで」
「そうか、それならよかったよ。こちらも君を必要としているのでね……そうだ、例のMSの件だがもうすぐ完成するそうだ」
「そうですか……これで僕ももう一度戦えますね」
「君には期待してるよ、キラ」

デュランダルの言葉に笑顔で返したキラは、そのままその場を後にした。そして、誰にも聞こえないほどの声で一言だけ呟いた。

「……もうすぐ終わりの始まりが始まるんだ」
10458:2007/01/31(水) 02:04:17 ID:???
ようやく投下出来ました。アスランの台詞とか非常にいらない気がしますが……
まぁ、読んでいただけたら嬉しいです。
105通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 02:17:18 ID:???
>>103
ダークなオリジナルキラいい!
106通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 03:13:44 ID:???
ああ、ラクスが生き生きしてる


おやっさんとかスクーターで特車二課思い出した
107通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 03:34:29 ID:???
バカピンクとケイ、実にいいコンビだなw
108通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 03:53:16 ID:???
名前はケイとナタリーで統一したほうがいいと思うんだ

作中でも、誰がどこで聞いてるかわからんし
109通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 04:06:01 ID:???
>>108
オーブに隠遁しているキラとして生きるクローンと
ラクスとして生きるクローンがでで来るまでは
そのままでいいんでね?

話が進めば
「あ、こいつはザフトで別人として生きるキラとラクスだ」
なんて描写で一発だし
110通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 17:37:00 ID:???
>>103
オリジナルキラがストライクのレプリカに乗るのか気になる
111通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 18:12:16 ID:???
>>110
そこでノワールですよ
112通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 19:58:30 ID:???
>>111
ノワールストライカーでなく、他のストライカー装備のストライクEなんてのも良いと思う……
113通常の名無しさんの3倍:2007/01/31(水) 20:14:53 ID:???
逆に考えるんだ
E型があるんだからD型やF型、G型もあると
そう考えるんだ。


……G型と言うと後期GATシリーズのテストヘッドで青枠方式の信頼性の悪いTPS装甲装備してるような印象があるな
イカンイカン、G型は忘れてくれ。
114キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/31(水) 23:49:18 ID:???
>>71の続き

 路地裏から出るとキラは先程の喫茶店に戻り、食事を取る事にした。
 喫茶店に戻り食事を取りながら、手紙の続きを読み始めた。
 最後まで読み終えると、封筒を逆さまにした。すると中からカードが一枚出てきた。
 キラは喫茶店を出るとあるジャンク屋へと向かった。
 キラはジャンク屋につくと、すぐさま店主の所へと向かった。
 そして封筒に入っていたカードを店主に見せた。
「そこで待っていろ」
 店主はキラをその場で待つように言うと、店の奥へと消えていった。
 数分立つとオーナーが店の奥から出ると、封筒をキラは手渡される。
「この中には何が?」
 キラは店主に聞いた。
「モルゲンレーテのIDカードが入っている」
「ここで開けてもいいか?」
 店主は首を横に振った。
「わかったよ」
 そう言うとキラはジャンク屋を後にした。
 外に出るとキラはすぐさまホテルへと向かった。
 チェックインするとすぐさま部屋へと行き、ベッドへと潜り込んだ。
 キラは今日の疲れが出たのかすぐさま眠り込んだ。
 キラは朝早く目を覚ますと、図書館へと向かった。
 図書館に入ると、ある本を手に取った。
 その本の題名は「友達との上手な付き合い方」と書いてあった。
 キラが本を読んでいると、薄暗くなり文字が見えなくなった。
 顔を上げると、目の前には昨日の少女がいた。
「おはようございます」
 と笑顔でキラに挨拶をしてきた。
「君は昨日の…」
「昨日は助けてくれてありがとうございます」
「君と一緒に子は?」
「兄は無事です」
「無事ならそれは良かった」
「あのー」
 少女が何か恥ずかしそうにキラを見ていた。
「この後お暇ですか?」
115キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/31(水) 23:50:13 ID:???
 少女の顔が真っ赤になっている。
「暇といえば暇だな」
 その言葉を聞き、少女の表情を明るくなった。
「それなら私の家に来てくれませんか? 両親もお礼がしたいって言っていましたから」
「いやしかし、お邪魔ではないかな?」
 キラの言葉に少女は首を横に振った。
「いえ大丈夫です。まったく問題ありません。だからいいですよね?」
 少女の勢いに負けてキラは了承した。
「なら今から私の家に…」
 キラは少女に手を取られ、少女の家に向かう。
 家に着くと、なすがままに中へと上がりこんだ。
 あがると少女の両親の姿が目に入った。
 少女は両親の元に行き、キラを紹介した。
 キラの元に少女の両親が近づいてきた。
 昨日の事で、少女の両親はキラに何度もお礼を言った。
「昨日の男の子は?」
 とキラは少女の両親に尋ねる。
「数日で完治する怪我を」
「大事にならなくて良かったですね」
「ええ」
 4人が玄関で雑談していると、家のドアが開いた。
「玄関で何をしているんだよ」
 と昨日の少年が家に戻ってきたようだ。
 キラが少年を見ると、至る所に包帯やガーゼを施している。
「あんたは…」
 少年は助けてくれたキラが自分の家にいるのに驚いた。
「お兄ちゃん、昨日のお礼!」
 少女が少年を睨みつける。
「昨日はどうも助けてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃ僕はこの辺で」
 とキラが帰ろうとすると、両親に今晩一緒にどうかと誘われた。
 キラも断りきれずに、夕食をご馳走になることにした。
「キラさんは図書館で何を読んでたんですか?」
「マユちゃん、それは秘密だよ」
116キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/31(水) 23:51:45 ID:???
 キラは、マユという名前の先程の少女と楽しく話していた。
 だがその光景をマユの兄である少年が、つまらなそうな顔で見ていた。
「シン、食べないのか?」
 父親の声で、シンと呼ばれた少年はハッと我に帰る。
「食欲がない」
 母親が微笑んでいた。
「お母さんが作った料理を残すのかしら? シン」
 母親の声にキラの箸が止まる。
 先程とは声の質が違っていたのだ。
 シンの体が小刻みに震え始めた。
「食べさせて貰います」
 シンは突然口調が変わり、目の前に置いてあった料理を食べ始めた。
「どうしたんだ?」
 とキラがマユに聞いた。
「うちのお母さんの料理を残すと、次の日から私達が嫌いな食べ物をメインに作るんですよ」
「それは大変だね」
 と二人が話していると、またシンの箸が止まった。
 その事で、キラとシンの母親はある予想を立てた。
「「シスコン」」
「キラさん何かいいました?」
「何か言ったか?」
 とマユはキラに、シンの父親が母親に言葉をかけた。
 二人は「なんでもない」と答えた。
 シンはそんな4人を見ていて、妹についた変な虫の事忘れ呆れていた。
 そんな楽しい夜はまだ終わりを迎えない。
 次の日の朝もご馳走になったキラは、なぜか遊園地にいた。
 目の前には、シンとマユが歩いている。
 キラはシンの家族と共に遊びに出かけていた。
「遊園地か…、久しぶりだな」
「彼女と一緒に行かないんですか?」
 突然横から出てきたマユにキラは驚いた。
「そんなのいないから」
 それを聞いたマユは笑顔になって、シンの元へと戻っていく。
 キラは歩き疲れ、近くのベンチに腰を下ろした。
117キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/31(水) 23:52:47 ID:???
 そして手に持っていたジュースを口に含んだ。
 ふと人ごみに目線を向けると、見知った人物を見かけた。遊園地には絶対にいないと思わ
れる人物の登場にキラは、ジュースを器官につまらせた。
 どうやら向こうもキラに気がついたようだ。
 ベンチに座っていると、シンの父親が横に座った。
「もう休憩かい?」
「はい」
「ならお昼まで自由行動でいいかな。僕達はそこら辺を一周してくるよ」
「どうぞお構いなく」
 シンの父親は家族の元へと向かった。
 シン達が人ごみに紛れて見えなくなると、キラの横に誰かが座った。
「久しぶりだね」
 と横に座った人物がキラに話しかけてきた。
 その人物はギルバート・デュランダルであった。
「お久しぶりです。しかし一人で遊園地にくるなんて…」
「勘違いしてもらっては困るな。私一人ではないのだよ」
「そういう事にしときましょう」
「どうして君はここに?」
 キラはデュランダルにこれまでの経緯を話した。
「まあ、頑張りたまえ」
「そっけないんですね」
「まあ、私には関係ない事なのでね。私はまだオーブにいるつもりだから、何か用があった
ら宇宙港の近くのホテルに来たまえ」
 デュランダルはそういうと、人ごみの中に消えていった。
 数十分経っただろうか、キラは人ごみの中からシン達を確認した。
「キラ君、お昼にしよう」
 シンの父親がキラに話しかけてきた。
 キラ達は遊園地内の、食事処へと向かった。
 食事を終えると、シンとマユが行きたい所があるというので、皆はその場所へ向かった。
 そこはゲームセンターのようだ。
「ここで一体何を?」
 キラはゲームセンターにまで来て何をするのかわからない。
「ここの遊園地に、今オーブで流行っているゲームの最新機が置いているんですよ」
 マユの説明にシンは何度も頷く。
118キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/31(水) 23:53:35 ID:???
「どんなゲームなんだい?」
「中に入ればわかります」
 シンに促されてキラはゲームセンターへと入った。
 二人の後に続き、マユたちも続けて入ってきた。
 シンに連れてこられた場所に、置いてある物にキラは見覚えがあった。
「これはザフトにあったシミュレーション装置?」
 キラの声は小さくて、幸い誰も聞こえていないようだ。
 目の前にはザフトで見た、長方形の人が一人すっぽり入る大きさの鉄の箱があった。
「このゲームは、ザフトのMSや連合のMA等を操縦して相手を倒す格闘ゲームです」
 キラは開いた口が塞がらなかった。
「やりましょう」
 シンの熱意に負けてキラは、シンと勝負することになった。
「お兄ちゃん! いきなりは無理なんじゃ。キラさんも断って良かったんですよ」
「何事も挑戦しないと」
 マユはキラを心配しているようだ。
 そんな光景を見たシンは、さらなる対抗心をキラに燃やすのだった。
「最初は俺がやります」
 とシンは鉄の箱に入りゲームを開始したようだ。
 ゲームの内容は天井から吊るされている大画面に映されるようだ。
 ゲームが始まると、周りで遊んでいた人達、画面を見始めた。
「一体どうしたんだ?」
「このゲームはオーブで、注目の的なんですよ。ニュースでも取り上げられる程に」
 と二人が話していると、シンがどんどんステージをクリアしていく。
 シンはどうやら、M1アストレイを選んでいるようだ。
 ステージをクリアするたびに周りから歓声があがる。
 キラはなぜ歓声が上がるか意味がわからなかった。
「いま、お兄ちゃんがクリアしているステージは一番難易度が高いんですよ。ほとんど人が
クリアしていないんです」
 十分ぐらいたつと、シンが鉄の箱から出てきた。
 出てくると、ゲームを見ていた人達に取り囲まれた。
 キラは画面を見るとエンディングのスタッフロールが流れているようだ。
 スタッフロールを見ていると、中で見知った名前をキラは確認した。
「博士の名前があったな」
 キラは頭が痛くなってきた。
「大丈夫ですか?」
 マユがキラの顔を覗き込む。
「大丈夫だよ。優し…」
「キラさんもやってみましょう」
 とキラの言葉は言い終わる前に、シンがキラに声をかけてきた。
「そうだな」
 キラは鉄の箱に足を踏み入れた。
「ザフトの奴と全く同じじゃないか…。博士も一体何を」
119キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/31(水) 23:54:26 ID:???
 気持ちを切り替えて、操縦桿を握っても何も起こらなかった。
「金が入っていないか」
 キラはお金を投入口に入れると、ゲームが起動した。
 画面にはMSやMAが次々と姿を現した。
 その中でキラはストライクを選んだ。
 画面に出てくるMSやMAをキラは次々に撃破していく。
「平和だな」
 とキラは鉄の箱の中で呟いた。
 キラの成績は途中までしか行かなかった。
 外に出ると、見物人がキラの所に近寄ってきた。
「おしかったな」
「もうちょっとだったのに」
 と労いの言葉をかけてきた。
 キラも見物人の言葉を返すと、シン達の所へと戻った。
「キラさん、次はあなたと戦って見たいです」
 シンの目が本気だったので、キラは勝負をする事にした。
 シンはポケットからメモリースティックを一枚取り出した。
「あれは何かな?」
 キラはマユに質問した。
「このゲームは市販で発売されているんですけど、そのデータをこのゲームに反映させるん
ですよ、好きな色とかに変更した自分のMSを使えるようにするんですよ」
 キラは何とかマユの説明を理解した。
 そしてある事を思い出した。
 先日博士から分かれる際、シンが持っていろ同じ物を受け取った事を。
 キラはポケットを探ると、それを見つけた。たしかにシンと持っている物と同じだった。
「お兄ちゃん、先にいっています」
 シンは先に準備をしているようだ。
 キラも鉄の箱に入ると、メモリースティック投入口に差し込んだ。
 キラは画面に映し出されたMSを見て、とても後悔した。
 映し出されたMSはフリーダムだった。 
 シンが選んだMSの情報がキラの画面に映った。
 先ほどの時は無かったのだが、対戦の時は映し出されるようだ。
 キラはそのMSを見て、もう笑うしかなかった。
 そのMSはオーブが極秘裏に開発を進めているアカツキだった。
 しかもドラグーンを背負っているようだ。
「とてつもない軍事機密がゲームになっている。アハハハハ」
 とキラが壊れ始めた時、電子音が耳を貫いた。
「キラさん、何をしているんですか? もう始まっているんですよ」
 とシンの声が聞こえた。
「全力で君を倒そう」
(そしてここから早く退散しよう!)
 キラは目の前に映る、金色のMSに向かってフリーダムを加速させた。
120キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/01/31(水) 23:55:31 ID:???
今日はここまでです
121通常の名無しさんの3倍:2007/02/01(木) 00:07:15 ID:???
> 「とてつもない軍事機密がゲームになっている。アハハハハ」
なんだ、このとんでもない世界は……

まあ、フリーダムの異常な能力は補正の一言で片付けるとして(それでも十分ウザイ代物だが)、
アカツキなんて情報だけで実物みないと誰も信じそうにない機能ついてるよな。
122通常の名無しさんの3倍:2007/02/01(木) 00:25:10 ID:???
キラーズ氏GJ

遊園地の人混みに紛れ込むギルにワロス

それから軍事機密のシミュレーターで稼ぐ博士にびっくり

暁にしろフリーダムにしろ公の存在でないのに
ゲーセンにあると言うのが凄い

オーブでのキラの諜報活動の伏線かな?


そしてアスカ一家と過ごしたこの日がきっかけで
プラントにシンが頼れる人が出来ると
123通常の名無しさんの3倍:2007/02/01(木) 01:14:39 ID:???
まあ、スパロボと同じで民間人から才能を見出すためだろうな
それ以外に思いつかねえ
124通常の名無しさんの3倍:2007/02/01(木) 02:12:38 ID:???
キラーズ氏、乙。
まったくオーブは何処まで黒いんだw
125通常の名無しさんの3倍:2007/02/01(木) 16:43:02 ID:???
ザフトよりオーブの技術のほうが上なのか!

オーブすごい
126通常の名無しさんの3倍:2007/02/01(木) 20:48:08 ID:???
簡単に言えば、ナチュとコーディの技術が入り易いからね。
地球とプラントの技術の良い所を取り合っている。
コレ一番重要。偏った技術じゃそりゃ良いもんは出来んし融通が利き辛い
127通常の名無しさんの3倍:2007/02/02(金) 20:46:09 ID:???
保守
128通常の名無しさんの3倍:2007/02/04(日) 07:02:24 ID:???
保守
129オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/04(日) 23:50:40 ID:???
       オーブ飛行艇内
 
 
 「カガリ。」
 いきなりのアスランからの呼びかけに、カガリは驚いた。
 なんせ、数日前に話したっきりだったのだ。
 引渡しの手続きが、上手く進まないので、数日かかっているのだ。
 「な、なんだ?」
 「俺は…、どうすればいいんだろうか?」
 「ど、どうするって?」
 「俺は、何か重大な過ちを犯してしまったらしい。
  それを…、どうすればいいんだろうか?」
 「え、えーと。…まあ清算するしかないんじゃないか?
  勇気をもって、さ。」
 「ゆう…き…?」
 「ああ、なにかを直すためには、自分を捨てる勇気が必要だからさ。」
 おもいつきで言ったので、アスランが上手く理解してくれる事を、
 カガリは祈った。
 「………例えば?」
 上手く理解してくれなかった。
 「迎えが到着した。」
 キサカが部屋に入って来た。 どうやらとりあえずは、凌げたらしい。
 「うん。アスラン。ほら、迎えだ。
  ザフトの軍人では、オーブには連れて行けないんだ。」
 アスランは立ち上がるが、ふらついて壁に手をついた。
 「お前、大丈夫か?」
 カガリが、アスランを支えた。
 「やっぱり…変な奴だな。ありがと、って言うのかな。よく解らないが…。」
 「…ちょっと待て。ハウメアの護り石だ。お前は危なっかしい。護ってもらえ。」
 カガリは、自分の首にかけていたネックレスを、アスランの首にかけた。
 「キラを殺したのにか。」
 友を殺した自分に、護ってもらう価値があるとは、アスランには思えなかった。
 「…もう、誰にも死んで欲しくない。」
 「………」

 「キシャマァ!どの面下げて帰って来た!」
 イザークが、帰ってきて早々罵声をあびせる。
 「ストライクは討ったぞ。」
 「ふっ。」
130オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/04(日) 23:52:34 ID:???
              アラスカ――JOSH-A
 
 
 「では是にて、当査問会は終了する。 長時間の質疑応答、御苦労だったな。
  アークエンジェルの次の任務は追って通達する。
  ムウ・ラ・フラガ少佐、ナタル・バジルール中尉、フレイ・アルスター二等兵以外の
  乗員は、これまで通り艦にて待機を命ずる。この3名には、転属命令が出ている。
  明0800。人事局へ出頭するように。以上だ。」
 「あの…アルスター二等兵も転属と言うのは?」
 「彼女の志願の時の言葉、聞いたのは君だろ? アルスター家の娘でもある彼女の言葉は、
  多くの人々の胸を打つだろう。 その、志願動機と共にな。」
 「うぅ。」
 「彼女の活躍の場は、前線でなくて良いのだよ。」
 こうして査問会は終了し、サザーランド大佐は艦を降りていった。
 
 今サザーランドは、墓の前にいた。
 墓に刻まれたその名は、デュエイン・ハルバートン中将。
 地球軍第八艦隊元司令官である。
 サザーランドは、眼を瞑り、手を合わせた。
 ハルバートンと、サザーランドの出会いは、今から数十年前の事だ。
 サザーランドがまだ一桁の年齢の頃に、彼は、コーディネイターからのいじめを受けた。
 罵声、蹴る、殴る。
 相手は一人であったが、年上のコーディネイターであったので、彼は一切抵抗できなかった。
 そんな時にたまたま通りすがり、サザーランドを助けてくれたのが、
 当時十代のハルバートンであった。
 ほぼ同年代のコーディネイターに、ハルバートンは喧嘩で勝った。
 それで、その日からハルバートンは、彼のヒーローとなったのだ。
131オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/04(日) 23:53:44 ID:???
 それからサザーランドは、ハルバートンの通ってきた道を通り、大西洋連合軍に入った。
 ブルーコスモスには、サザーランドが少佐の時に入った。
 サザーランドはハルバートンに入会を勧めたが、彼は入らなかった。
 しかし軍本部では、反コーディネイター思想が広まっていくので、ハルバートンは
 だんだん本部からないがしろにされていく。
 そんな時に、理事国とプラントのいざこざが大きくなり、戦争となった。
 どんなにコーディネイターが強かろうと、地球軍の数の前にプラントはひとたまりもない、と
 皆が思った。
 しかしその予想は大きくはずれ、ザフトのMSの前に地球軍は敗れていく。
 ハルバートンは、早急に我が方もMSを開発すべきと提言、
 オーブ等の力を借りたが、Xナンバーとその専用艦を完成させる。
 だがそれはザフトに襲撃され、Xナンバー五機の内、四機が強奪された。
 生き残ったアークエンジェルは、ハルバートン提督率いる第八艦隊の犠牲の末、地球に降りてきた。
 サザーランドは、ハルバートンが命を賭けて守ったその艦を助けたかったが、彼は
 アラスカ基地司令で、さらにストライクの戦闘データは回収されたため、本部から見たら
 アークエンジェルに価値はもうほとんど無かった。
 それでも、彼は今度艦隊司令に転属されるので、もし生き延びていたらアークエンジェルを
 艦隊に加えたいと思っていた。
 が、ストライクのパイロットが、コーディネイターとの事実。
 そして、丁度内通があったザフトの作戦とあわさって帰還してきたために、アークエンジェルは
 囮として、アラスカ守備隊に配属された。
 軍人としては、任務に私情をはさんではいけない。
 それによって、提督の死を無下にしてしまうのを、許してくれ。
 そう祈り、サザーランドは黙祷をやめ、その場から立ち去った。
132オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/04(日) 23:54:38 ID:???
                  オーブ
 
 
 「よう、気分はどうだい?ほら、飯だ。」
 キラは、目覚めて一日たったいまでも、バルトフェルドの厄介になっていた。
 トールを守れなかった事に、負い目を感じているためだ。
 友達を、仲間を守れなかった。 それは昨日、キラの心に大きな悲しみとして、表われた。
 こんな思いをしたくないから、キラは今まで戦い続けてきた。
 しかしその思いは、昔の親友によって最悪の形で裏切られる。
 アスラン(この時点では、まだ飛行船内に居る。)は、多分生きているだろう。
 そして自分も生きていて、守るべき人はまだいる。
 つまり、またこんな事が起きるやも知れないのだ。
 ――いっそ死んでいた方が良かった、それならばあの世にいるトールにも顔を向けられた。
 だがこれはなんだ?自分はアスランの戦友、―おそらくニコルという人―を殺し、
 トールを殺され、アスランとの仲も、もう取り戻せない程だろう。
 それでも自分は生きている。
 友達一人守れない自分が、どんな顔をして皆(この時点では、査問会以前で、アラスカに居る。)
 に会える?
 ―――自分はいったいどうすればいい?―――
 「悩めばいい。」
 その声は、バルトフェルドから発せられた。
 おそらく暗い顔をしてなにもしない自分を、気遣ってくれているのだろう。
 「どんな問題も悩んでこそ答えが出る。昔、教官がボクに言ってくれた言葉だ。
  その傷も、完治するのは時間がかかる。外には出れないけど、頭は使えるから、
  悩んでごらん。行き詰まったときは、相談に乗ろう。」
 そう言い、バルトフェルドはご飯を残し、部屋から出て行った。
 ドアの閉まる音がした後は、静寂が残り、キラは上半身を起き上がらせ、ご飯を食べた。
 「悩んでみろ、か………。」
 そう呟き、キラは思考を巡らせていった。
 バルトフェルドは、悩めと言った。
 自分はこれからどうするか? それを悩もう。
 ……きっとある答えに向けて。
133オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/04(日) 23:55:30 ID:???
                 カーペンタリア
 
 
 一人の男が、暗い部屋で唯一の光源であるパソコンを操作していた。
 パトリック・ザラが、OPスピットブレイクの準備をしている画像を、地球軍に送る。
 その男は、自嘲気味に笑い、銀色の仮面を着け、アスラン達を迎えるために、外に出た。
 
 
                   オーブ
 
 
 日が落ちて、キラは悩み続けていた。
 やはりなかなか考え付けない。
 …そういえば、何をするのにもポジティブにいけ、と昔誰かがいっていた。
 自分は、後ろ向きに考えすぎていたのかもしれない。 だから八方塞がりなのだろう。
 嫌な事ばかり考えるのは、もうやめだ。
 そうキラが思っていたところに、バルトフェルドが入ってきた。
 「どうだい?」
 「うーん、やっぱり迷いますよ。戦い続けるのか、それとも皆と軍から身を引くか…。」
 とりあえず、キラの中で大きなモノを占めているのは、皆と軍だ。
 多分自分は、戦死扱いだろうが、皆は違う。辞めるならばそこをどうするか、そして…。
 「まあ、見つけたまえ、キミ自身の答えを。」
 そう言ってまたバルトフェルドは、ご飯を置いて出て行った。
 「この血で汚れた自分は、もう戦いから抜け出せるのだろうか…。」
 そこが問題だった。
 地球軍で、少しでも早く戦争を終わらせる努力をするか、それとも逃げるか。
 なんだかキラの中では、答えが決まりきっている気がした。
 それでも、やはり決心がつかない。
 それに、この戦争が早く終わったからといって、また戦争が起きない訳では、無い。
 世界を変えなければいけないだろう。
 それがキラに出来るとは、到底思えなかった。
 
 
 
 ―世界は、常に変わり続ける。それを、希望ととるか、絶望と取るかは、人しだいである―
134592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/05(月) 00:59:01 ID:???
GJ!
これからの展開が楽しみです。苦悩するキラがどう動くのやら…。
135通常の名無しさんの3倍:2007/02/05(月) 01:19:45 ID:???
職人氏GJ
クローンなしのプラントワープなしネタ見たいですね

キラの苦悩の様に注目
136通常の名無しさんの3倍:2007/02/05(月) 08:13:59 ID:???
>>61
ユウナに救われてアークエンジェルに戻るSS書いちゃったりしてもいいのねん?
137通常の名無しさんの3倍:2007/02/05(月) 08:30:11 ID:???
>>136
頼んだ!
138通常の名無しさんの3倍:2007/02/05(月) 09:42:22 ID:???
>>136
もちろんだよ、136君。
139592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:12:20 ID:???
申し訳ない。事情により、第三話のタイトルを変えます。
では第三話どうぞ。


初めてあの人に出会ったのは、連合前線基地攻略戦の時。
あの事件の後、私は怪我を負った持ち主に代わって、ジンのパイロットを務めることになった。その最初の任務がザフト本隊との連携だった。
前線基地の連合軍がザフト本隊と戦っているうちに、私達レジスタンスが基地へ強襲するという作戦だった。勿論、本隊からも数体その援護をしてくれる人物がいた。
それが、ハイネ隊長だった。
オレンジ色に染め上げられた、その彼専用のシグー。威風堂々。その時から、私は彼に憧れの情を抱くようになった。
いざ作戦が始まり、前線基地から主力部隊がいなくなったところで私とハイネ隊長は突撃した。
そして、初めて人を殺した。
その時は無我夢中でわからなかったが、しかし、作戦が成功した後、私はその光景を見て、思わず、いや躊躇なく吐いてしまった。
そんな私を、ハイネ隊長は慰めてくれたが、それでも私は。

人を殺める。私は、ついに戻れない場所まで来てしまったのだと、認識せざる得なかった。
140592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:13:15 ID:???
第三話 I HATE IT

「…」

アビス達をやり過ごしたラクスのジンはミネルバへと向かう。ラクスが操縦している後ろでは、キラが色々と考えに更けこんでいた。
周りでは、ザフト兵達があわただしく動き回っている。警備に出ているMS達もいた。そんな中でけが人も多く見られた。
どうやら、今回は手荒くやられたらしい。ここに避難してきたのだろうか?泣き叫ぶ子供の姿を見ると、少し心が痛んだ。

「…こんなになるまで、私達は…」
「…後悔しないでよ、ラクス。僕達はやれることをやった。僕達がアビスと戦わなかったら、もっと酷い事になっていたかもしれないんだ」
「そう、ですわね…いえ、私が力不足だったから…」
「一人でどうにかできた状況じゃないだろ?」

ケイはケイらしい言葉を浮かべ、それでラクスを励まそうとしたが、ラクスは自身の力量のなさに落胆するばかりだったので、
あえてケイは厳しい言葉を投げかけた。確かに、ケイのいうとおり、ラクス一人で解決できるようなことではない。寧ろ、ラクスはよくやったほうだろう。
要は全体がいけなかったのだ。ザフトの危機管理の甘さが浮き彫りになってしまった事件となってしまったのだ。

「…はい」

ラクスは俯いたまま、返事をした。やはり何処か引っかかるものがあるようだ。そんなラクスの正直なところを見て、ケイは苦笑した。
それと同時に、彼女がお嬢様だったときはどんな人物だったのか、それも少し気になっていた。

「ま、そう自分の力量不足を呪うなら、もっと努力すればいいさ。起こってしまったものはしょうがない。これからどうするかだ」
「はい、ケイさん。…ところで、さっきから何をお悩みなのですか?」
「え?うん、まあね」

先ほどからケイは色々と考えていた。それは、奪われた三機について、いかに対処するか。テストしたライフルの修理、改良についてとか。
はたまた、ドサクサ紛れに触ってしまったラクスの胸の形の良さだとか。最後は本当にくだらなかったが、健康優良青春男児としては、ちょっぴり嬉しい事だった。

「(そういや、あっちのラクスよりこっちのバカピンクのほうが胸大きいや…)」

自分の手のひらを眺めて、ラクスの胸の感触を思い出してみる。少しばかり興奮しすぎたか、顔が真っ赤になった。
それと同時に、あの時、ヤキンドゥーエのときはこんなうつつを抜かす暇などなかったな、と思い出して、今の生活がいかに恵まれているかを感じていた。

「どうしたんです?」
「あ、いやなんでもない!なんでもないぞぉ!」

と、急にラクスに声をかけられたケイは、慌てて誤魔化しながらラクスの顔から視線をそらす。
そして、何度か荒く深呼吸をしながら、心を落ち着かせた。全く、これが前大戦の英雄だというのだと誰が信じるだろうか。
しかし、少しずつケイ・クーロンにも人間性というものが身にしみてきたようだ。
感情を当たり前に表現して、バカみたいに笑ったり、こんなことをしてみたり。
そういえば、趣味も増えて、最近なんかは音楽を聴いたり、映画もよく見るようになった。
健康的になったものだ。ケイはしみじみそんなことを考えていた。
141592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:17:42 ID:???
「(しかし、こんなことハイネさんにばれたら殺されるな…僕。しかし、いい形だった!)」
「あ、つきましたわよぉ」

小さくガッツポーズをするケイを尻目に、彼らを乗せたジンはミネルバのドックに入り、そのまま飛び上がってミネルバのカタパルトのほうへと向かう。
先ほど損傷したウィングが気になりはしたが、上手く着地し、ミネルバ内部へと入っていく。と、格納庫へとたどり着くと、そこではなにやら修羅場が繰り広げられていた。

「お前達、軍のものではないな!何故その機体に乗っている!?」

ザフトレッドにミニスカートという、なんとも奇妙な組み合わせの、赤い跳毛の少女が、目の前にいる二人組みにマシンガンを向けていた。一人は青い毛に緑の服に青い上着。もう一人はワインレッドのシンプルな上着を着ている金髪の少女だった。

「…!?か、カガリ!?」

一瞬こちらを振り向いたその少女の顔を見て、ケイは驚いた。それもそのはず、その少女とはケイのオリジナル、キラの姉カガリ=ユラ=アスハその人だった。
ケイ自体もテレビ越しでオーブの代表に就任していた事は知っていたが、まさかここに来ているとは予想外だった。

「カガリ様って…あのオーブの?」
「そう。そして、僕のオリジナル、キラ・ヤマトの姉さ。まあ、僕も姉のように接していたけど…なんでここにいるんだ?ということは、あの隣にいるのはアスランか?アスランもオーブにいたのか…」

まさか、昔の友人にここで出会うとは思わなかったが、今ここで自分やラクスの正体を知られるのは得策ではない。
もしかしたら、すでにもう一人のラクスが『キラ・ヤマト』を作り出し、溶け込ませているのかもしれないからだ。
しかし、難題だ。アスランは適当にはぐらかせるとしても、カガリは直情故にしつこい。特に、自分に対しては。そういえば、このラクスとカガリは面識がないんだった。それも踏まえねば。そう考え、ケイはラクスに指示を送った。

「ナタリー。とりあえず修理しないと。スクーターも降ろしてさ。それと、絶対に僕の事やラクス自身のこと、言っちゃだめだよ。
僕はもうケイ・クーロンなんだし、クライン派の人たちが何処で聞いているかもわからないしさ」
「あ、はいはい…わかってますわ。宜しく御願いします」

ケイはバンダナを頭に巻き、少しオシャレな伊達眼鏡をかけ、ラクスも髪を結んで、少しわかりずらくする。
とはいえ、ラクスに関しては明らかに傷が見えるので、本人とは思えない、というのもあるので、別にこうまでしなくても似ている人、になるが。

「ハッチ、開けます」
「はい」

ラクスはジンのハッチを開け、一旦ケイを降ろす。ケイは降りた後、まず周りの人間に対して言った。

「はいはい、邪魔邪魔!今から修理するんだから、もっと離れて!」

その時、カガリはケイの顔を見て、何か引っかかるものを感じていた。一方のアスランのほうは赤毛の少女にも警戒をしなければならなかったので、それどころではなかった。
しかし、その場ではカガリも"何か引っかかるもの"としか感じる事ができず、この状況では問い詰める事ができない。
どこかで、いや絶対に見たことがある顔。そして、声。しかし、眼鏡やバンダナのせいでいまいち思い浮かべているものと合致させる事ができない。そんな様子にケイは気がついていながらも、あえて無視し、ラクスに指示を送る。

「よぉし、ナタリー、手をゆっくり降ろして!」
「え?こうですか?」
「馬鹿!自分の手を下ろしてどうする!ジンのだよ!」
「わ、わかってますわよ!もう!」

軽い漫才をやった後、クーロンはケイの指示にしたがって、スクーターを乗せていたジンの手をゆっくりと下ろす。ケイは下ろされた手に乗り、スクーターを回収した。
142592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:18:56 ID:???
「よぉし!ナタリー、ジンを格納してくれ!」
「了解ですわ」

腕を振って、ラクスに指示を送るケイ。ラクスはハッチを閉めて、自分に指定されていたハンガーに向かってジンを歩かせた。
そして、慣れた動きでハンガーに固定し、ジンを収容した。

「さてっと…」

ケイは一度バンダナを外し、髪を後ろに撫でて整える。その時、ケイの横顔をちらっと見たカガリは、先ほどの引っかかりが取れたような気分になっていた。そして、アスランの肩を掴み、ケイのほうを向いて言おうとした。

「キ―――」
「ケイ!!」

そのカガリの声を遮る様に、整備長のマッドがケイの元へと歩み寄る。ケイはバンダナを再び頭に巻きながら、マッドのほうを振り向いた。

「ケイ、無事だったか。それに、嬢ちゃんも」
「おやっさんこそ、無事でしたか。よかった」
「マッドさんとケイさんがあの機体を整備しておいてくれたお陰ですわ。でも、少し壊してしまいましたけど…マッドさんもご無事でなによりですわ」

そのケイとマッドの下に、ラクスもジンから降りて合流して、お互いの無事を確認し、安堵の言葉をかけていた。
ただ、ラクスとしては、普段から整備へいたちが万全にしてくれている機体を損傷させてしまった事が気がかりのようだ。
そんなラクスの言葉にマッドは首を横に振って微笑みながら言った。

「嬢ちゃんが無事で何よりだ。旧式でよくがんばったよ」
「(柄にもない事をまあ…僕には拳骨食らわしたり、川に放り込んだりするくせに)」
「なぁにぐずぐずしているんだ、ケイ!お前はそのスクーターをどこかに保管しておけ!その後、ザクの整備を手伝え!
よぉし、第六班から七班はルナマリア機の修理だ!!3班はジンの修理を急げ!」
「りょりょうかい!」
「了解!」

マッドの怒鳴るような指示にケイら整備兵達の顔が引き締まり、先ほどの静寂などどこかへ言ってしまったかのように慌しくなった。
そんな整備兵達が慌てて動く中、ケイはそそくさと移住区へと向かおうと通路へ、スクーターを荷台に乗せて歩いていった。

「あ、待て!」
「動くな!!」
「私を行かせてくれ!あいつは…!」

そのケイを呼び止めようとカガリは足を動かそうとしたが、赤毛の少女、ルナマリアによって制止させられる。
カガリはなんとかケイの元へ行こうとするが、上手い言い訳が思いつかない。
そんな彼女の様子を見て、アスランは一度ため息を吐き、先ほどから言おうとして、ごたごたになってしまった事を改めて言った。

「…銃を下ろせ。こちらはオーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ氏だ。俺は従事のアレックス・ディノだ」
「(なるほどね。アスラン、君も自分を偽っているんだ)」
143592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:20:24 ID:???
キラはアスランが何故オーブにいるのかがわかった。あのヤキンのときの二人の親交から考えても、そしてザフトにおけるアスランの立場を考えれば妥当な線なんだろう。
つまり、今ではオーブのアレックス・ディノとして生きているのだ。自分が、ケイ・クーロンとして生きているのと同じく。

「代表はデュランダル議長との交渉中、此度の騒動に巻き込まれ、已む無くあの機体を拝借した。
代表は怪我を負ってらっしゃる。医務室で治療させていただけないだろうか…。丁度、彼も移住区へ行くのだろう?」
「(な、なんだってぇ!?)」

だが、この言葉は理解できなかった。もう少し早く出て行けばよかったとケイは後悔した。そしてそれと同時にアスランのことを恨みそうになった。

「あ、アス…アレックス…」
「…オーブのアスハ…。俄かに信じがたいですが、怪我人であれば、それに対する処置はしなければなりません。えっと、ケイさん、ですよね?」
「いや、うんそうだけど」
「連れて行ってくれませんか?念のため、私も行きますから」

頼りのルナマリアも頼れず、ケイは大きくため息を吐いて観念した。

「わかりました。じゃあお連れしますよ」
「あ、じゃあ私も」

と、このメンバーにラクスが加わったところで、ケイはまた心の中で項垂れる。

「(熱血バカピンクに生意気小僧。それにアホ毛レッドか…頼りないなぁ、この艦)」
『本艦はこれより発進します、各員は所定の作業についてください。繰り返します…』

もはやケイの言葉は、唯単なる八つ当たりにしかならなかった。艦内アナウンスも、何時もより空しく聞こえていた。
144592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:21:26 ID:???
さて、強奪されたMSを追い飛び出したインパルスとザクの援護のために、アーモリーワンを発進しようとするミネルバ。そんな中を、憂鬱そうな表情で進むケイと警戒心丸出しのルナマリア。
そして警戒心ゼロのバカピンクことラクスがアスランとカガリを連れて医務室へと向かっていた。

「(…やっぱり、この男…)」

そんな中、一番前を歩くケイの背中を見て、カガリは疑念を確信へと変えつつあった。この男とよく似ている男を、自分は知っていた。
しかし、わからないのは何故その男がここにいるのか?いるはずもない、ザフト艦の中にだ。
カガリの心で色々問い詰めたい気持ちが逸る中、ラクスが彼女に声をかける。

「それにしても、こんな近くでオーブの代表、カガリ・ユラ・アスハ様に会えるとは思いもしませんでしたわ」
「…ん?そうか、ありがとう」
「私、テレビで貴方様が映っていた所を見て、なんて力強そうなお方だなぁと思っていましたが、やはり近くで拝見させていただきますと、風格が違いますわね」
「(いや、強情っていうんだ、それ)」

憂鬱から面倒くさそうな表情にして、ケイは心の中で突っ込みを入れた。

「ありがとう、そういう言葉をもらえると、私も励まされる。…名前は?」
「ナタリー・フェアレディですわ、カガリ様」

微笑むカガリに満面の笑みで自己紹介をするラクス。
奇妙な光景だ。と、ケイは考えた。とはいえ、あのバカピンクでは仕方がないか。あまりに性格が違いすぎるうえに、このラクスとはカガリは初対面なのだから。
それはそうと、アスランくらいは気がついてもいいような気がするのだが、まあそれも杞憂で終わってくれればいいだろう。

「ありがとう、ナタリー。いつか、お前と食事でも一緒にしたいな」
「ええ、こんな緑服の弱輩者でよろしければ、いつでもお付き合いさせていただきます!」

この図々しさもまた、あのラクスに…ないのかあるのか。微妙なところだった。

「(さてそろそろ)」
「ところで、お前」
「(来たなあ)」

ついに自分のほうへ話題が振られたかと思うと、ケイは気が締まる。ここで誤魔化せるかどうか、それで全てが決まる。
そう、自分は"キラ・ヤマト"でもそのクローンでもなく、ケイ・クーロンとして生きるのだ。
そのためにも、カガリを突き放す必要があった。
145592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:22:34 ID:???
「…キラなんだろ?お前。…何でお前がここにいるんだよ!」
「代表!?」
「…?」
「…」

また直球勝負できた。こういうときはこう、カーブとかで様子見なんじゃないの?とかくだらない事を考えつつ、ケイは反論する言葉を捜す。

「…誰です?それ。僕の名前はケイ・クーロンですよ?紹介が遅れましたが」
「とぼけるな!私がお前を間違えるわけがないだろ!?大体、お前は…」
「代表!…失礼した。代表の知人がよく似ているもので」

第一ラウンドはケイの勝ちである。ケイはカガリに素っ気無い返事をすれば、必ず食いついてくると踏んでいたため、あえてわざとらしい態度をとっていたのだ。
案の定カガリは食いつき、何もかも口から吐き出そうとしてしまった。それをアスランが必死に宥め、ケイに謝罪する。
しかし、アスランがどう止めようとももう遅い。もはや『ラクス』が更なる『キラ・ヤマトの代理人』を用意しているのは明白になった。
鍵の一つは手に入った。

「(ま、まだまだ足りないけどね)」

そう考えつつ、ケイは眼鏡の位置を直しながら更に言った。

「いえ、それは別に構いませんが…。しかし、そういう事をあまり大声で言わないほうがいいのではないのですか?代表さん」
「何!?」

ケイの突然の言葉に、カガリは怒りをこめた表情をして彼を睨んだ。だが、ケイはひるむことなく指摘していく。

「仮に僕が『キラ』だとして、じゃあ貴方が知っているキラさんというのは何なんですか?」
「いや、それは、その…こっちに来ているのかもしれないじゃないか!」
「じゃあ何故わざわざ貴方にケイ・クーロンと名乗らなければいけない?」
「そ、それは…」
「この場であれば貴方に対して僕はキラ・ヤマトだと名乗ればいい。何の都合も悪くもないのに。でもケイ・クーロンと名乗っている。何故?
それは僕がケイ・クーロンという名の男であり、キラ・ヤマトではないから。なのに、貴方は僕をキラ・ヤマトだと決め付けている。
そうやって、貴方は自分が正しいと信じて、周りを信じないのですか?」
「そんなことは…」
「はっきり言って失礼ですよ、貴方。僕に対しても、貴方が知っているキラ・ヤマトさんにも」

カガリを追い詰めるケイ。それを呆然と見ている外野。少し気が引けたが、仕方がない。キラを少し否定するのもだ。
先の大戦ではそんなに気にしはしなかったが、交流関係が広くなったお陰で色々と気がつかされた。カガリは直情過ぎるのだ。
だから、はっきり言って政治家には向いていない。どちらかといえば軍人など、義憤に燃えるような人物なんだろう。
しかし、彼女には父親のあとを継ぐという使命感に燃えているのだ。ただ、燃えているだけなのだ。
気がつかなければならない。そのためには、自分を変える必要があると。

「(…まあ、変えられても変えられないものだってあるけどさ…)」

何となく言ってみる一言。しかし、彼はこの言葉を自分が受ける事になるとは今は思いもしなかった。

「思ったことをすぐに口にして、それで人が傷つく事もあるというのに。あまり直情になりすぎるのも問題ですよ」
「…いい加減にしてもらおうか?」
146592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:23:28 ID:???

と、ここでずいっとアスランが二人に割ってはいる。冷静を装っているが、そのうちには怒りの炎が混じっているようだ。

「確かにこちらの言葉はそちらの気分を害してしまったのかもしれない。しかし、今は医務室に連れて行ってくれないか?文句なら後で俺がゆっくり聞こう」
「…いえ、こちらこそ。では行きましょう」

ケイはあえて、その誘いに乗らず、素直に謝る。そして、再び一行の前へと歩き出した。そんな中で、カガリは豪く落ち込んだ様子でいたようだ。
そんなカガリの様子にケイは一安心した。正直、外交問題にならないよう、繊細に事を運ぶ必要があったため、内心では疲れていた。
できるならこのままベッドに潜り込んで眠りこけたい。
そんな様子を、ルナマリアとラクスはきょとんとしながら眺めていたままで、会話が終わって、やっとお互いを見合って言った。

「えっと…ケイさんってあんな人なの?」
「まあ気難しい人なんですの。色々と…」
「どういう関係なの?あの人と。ジンから一緒に降りてきたって事は、行動を共にしてきたんでしょう?」
「え?あ、まあ…う〜ん…どんな関係って言われましても…大切なお友達、ですわ」
「へぇ〜大切なお友達、ね」

ラクスの言葉にケイが内心少しだけ傷ついたのは内緒だ。そんな彼を、にやにやとしながらルナマリアは見ていた。

「と、ところで…この艦はアーモリーワンを出立したようだが、そんなにプラントの損傷は酷いのか?」

と、こんな会話の中、痛まれなくなったか、カガリは自ら話題を振る。どうやら事情を読めないらしい。

「え〜っとわかりませんわ」
「わからないって…ああ、そうか。お前もさっきついたばかりだったな…」

一瞬、事態を把握していないラクスを問い詰めようとするが、自分より遅く来た彼女が事情を知っているわけがないと判断し、ルナマリアのほうへ視線を送る。
ルナマリアは別段答えることなく、黙って歩いていく。と、その時だった。

『ミネルバ発進!コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!MSパイロットは速やかにブリーフィングルームへ召集してください』
「…!!」

突然のアナウンスに、その場にいた人間は驚いた。そんな彼らの横を、あわただしくミネルバクルーたちが走り回る。
そんな艦内の様子から一つの危惧を感じ、アスランがルナマリアに問い詰める。

「戦闘に出るのか!?この艦は!!」
「あ…」
「アスラン!…あ」

その様子にいてもたってもいられなくなったか、カガリは思わずアスランの名を言ってしまう。
言ったところで、はっと気がついたがすでに時遅し。あたりは気まずい雰囲気が漂う。

「アスラン?」

ルナマリアがアスランをじっと見つめる。そんな中、ケイは思わず吹きそうになるのを必死に押さえて回りと同じ表情をし、ラクスはすでにブリーフィングルームへと向かって行った。
思い立てばすぐ実行。彼女の優先順位は、任務のほうが、安全なミネルバの中での護衛よりも高くなっていた。
147592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:25:18 ID:???
「くっそー!!」

一方、宇宙空間ではシンのフォースインパルスとレイのザクが、強奪されたMSの追撃中正体不明のMAと戦闘を繰り広げていた。
敵はかつてのメビウスを思わせるような流形フォルムの戦闘機で、しかもガンバレル系のポッドを装備していたためにできる空間戦法にシンは苦戦を強いられる。

「さぁて、その機体も頂こうか!」

そのMAのパイロット、仮面をつけた金髪の男は不適に笑いながらインパルスを追い詰めていく。一方シンのほうはガンバレルを必死に撃ち落とそうとするものの、まるでそれ一つ一つがシンの思考を読取っているかのごとく
避けては反撃のビームを撃ってきた。シンはいくつかは見事に避けては見せたものの、やはり避けきれず、シールドで何とか持たせてみせた。

「演習では、こんな!」
『シン!ぼぅっとするな!』

と、そこへ金髪のザフトレッドの男レイのザク・ウォーリアがたどり着き、シンを襲ったガンバレルの射撃をザクのシールドで防ぐ。
そして、専用ビームライフルを構えてガンバレルを狙い、数発撃つ。そのうち一発が命中し、ガンバレルが爆発した。

「ほう…」

MAのパイロットはそのレイの射撃能力に感心しながら、標的を彼に絞る。この様子では、インパルスは後回しにしても良い、そう感じたからだ。
レイは予想通り、自分に攻撃を仕掛けてきた。彼はすぐさまスラスターを吹かし、ガンバレルをインパルスから引き離すように避ける。
そして、シンに対して叱咤した。

「突っ立ていたら、唯の的だぞ!!」
『わかっているけど!』

言い返してみるが、状況は最悪だ。先ほど動き回りすぎた所為もあり、インパルスのエネルギーは底を迎えようとしていた。それに、敵のMA相手に自分は唯の赤子のようにあしらわれている。
自分の敵う相手ではなかった。しかし、それが一番シンにとって気に食わなかった。
演習では、全てが上手くいっていた。赤服にも選ばれた。なのに、敵わない。

「くそ、こんな、こんな事!!」
『事実だ、認めろ!!だが落ち込んでいる暇はない!こいつは普通の敵ではない!こいつを叩かなければ、先へ進めない!』
「畜生ぉぉ!!」

この時、MAのパイロットは不思議な感覚を感じた。頭に電撃が走ったと思えば、相手の声が少しだけ聞こえたような気がした。

「な、なんだ…この感覚…」

一瞬戸惑いながらも、男は気を取り直してガンバレルをザクへと飛ばし、牽制しつつ、ビームカッターを出していたほうで切りかからせるが
レイはそれを読んでいたように避け続け、MAへとライフルを撃つ。男は舌打ちをしながら、機体にブレーキをかけ、それを避ける。
お返しにと本体頭に付けられていたビーム砲で反撃する。レイはザクの上半身だけを反らし、その慣性で機体を回転させながら避け、そのままライフルを放つ。
148592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:26:30 ID:???
「す、すげぇ…」

そのザクとMAの攻防を目の当たりにしたシンだったが、自分が除け者になっていた事に気がつき、インパルスのビームサーベルを取り出させて慌てて現場に向かう。
が、それに気がついた男はガンバレルを二基、インパルスに向かわせ牽制する。
一発、二発…三発目は避けられず、シールドで防いで、再び突撃する。

「新型君もやるようになったねぇ、だが!」

フランクな口調でシンのことをほめる男。その表情にはまだまだ余裕がありそうだ。現に、彼はMAを軽やかに動かし、ギリギリのところで避け、ザクを振り切って、ビームサーベルでインパルスを切り掛かる。
その突然の攻撃にシンは対応しきれず、左腕をもっていかれた。

「な!?」
「さあ、止めと行こうか!」
「そうはさせるか!」

驚愕するシンを尻目に男は止めを刺そうと反転し、再びビームサーベルを発動させて突撃する。しかし、そこへレイがザクを反転させず、わき腹の隙間から後方へと射撃する。

「何!?」

男はMAの機首を上に向かせて急停止させ、そのまま飛び去る。

「危ない危ない…まさか、あんな芸当も出来るとはな。あの白い坊主はただものじゃあなさそうだ。それに、あの新型君も」

言葉とは裏腹に、男は何処か愉しそうな表情を浮かべていた。指揮官である前に、戦士としての魂が彼の戦闘本能に火をつけようとしていたのだろう。
しかし、そうなる前に、男の魂は鎮まってしまった。

「ん…?敵艦…新型か。こりゃ、遊びすぎたかもしれんな。ま、欲張りすぎは元も子もなくすか」

敵艦がプラントの影から姿を現そうとしたのを確認したのだ。敵艦は何かの信号を発射している。
それを見るや否や、こちらに牽制しつつ、二体のMSはその艦へと飛び去っていった。
至極残念そうな表情を浮かべ、男は近くで逃亡中の母艦へ向かう。そして、すぐに着艦し、ブリッジへと指示を送る。

「リー、逃げるぞ!!」

指示を受けた副官イアン・リーはすぐさまブリッジいるクルーに通達する。

「よし、これよりガーティー・ルーは本域より離脱する!進路イエローアルファ!全速前進!」
「了解!進路イエローアルファ、全速前進!」

ガーティー・ルーは機関最大にし、その機動力の全てを使って、現場に急行してきたミネルバから逃げようと試みる。
その様子はミネルバブリッジでも確認でき、艦長タリアはクルーたちに指示を送る。
149592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:28:33 ID:???
「これより"ボギー1"を追います!進路イエローアルファ!」
「進路イエローアルファ!」
「シン達は?」
「もう少しで着艦完了します!」
「急がせて!シン達が着艦すると同時に機関最大!」
「ナイトハルト、てぇ!!」

シン達が着艦する間も、ミネルバはボギー1とコードネームを付けられたガーティー・ルーにミサイルを撃ち込む。ガーティー・ルーは船底に付けられているイーゲルシュテルンを撃ち、ミサイルを迎撃する。

「着艦完了しました!」
「よし、ミネルバ前進!同時に、ボギー1のエンジンに向けて射撃開始!!」
「了解!イゾルデてぇー!」

ミネルバの副砲が火を噴く。二発の砲弾がガーティー・ルーのエンジン目掛けて飛んでいくが、瓦礫に阻まれ、その前に爆発した。
続けて第二弾が発射されそうになった時、先ほどの男がブリッジに上がった。

「すまない、遊びすぎた」
「ネオ大佐」
「敵も中々やる。どうやら、アウルを撃退したジンもいるようだし…ザフトも呆けてはおらんか」
「敵艦尚も接近!ブルー0、距離110!!逃げ切れません!!」

オペレーターが絶望した表情を浮かべて、状況を報告する。それを聞いた先ほどの男、ネオは舌打ちをしつつ指示を送る。

「両舷推進剤予備タンクともども切り離して爆発させろ!!アームごとでいい!奴らの鼻っ面にぶつけてやれ!同時に上げ舵35、取り舵10、機関最大!」

ネオの指示通り、ガーティー・ルーの推進剤予備タンクを切り離し、ミネルバ向けて流す。
タリアはそのガーティー・ルーの行動に驚きつつも、すぐに言った。
150592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:29:52 ID:???
「撃ち方待て!面舵10、機関最大!」

タリアはそれが機雷代わりだと判断し、すぐに攻撃を止めさせて回避行動に移させる。予想通り予備タンクは爆発し、ミネルバは爆煙の中を突き進むことになってしまった。

「くぅぅ!」
「うわあ!」
「きゃああ!!」

ミネルバブリッジ内で悲鳴が響き渡る。それだけでは終わらず、ミネルバ内全体で振動が起こり、クルー達は何かにつかまって耐えるしかなかった。
爆破によるダメージはないものの、ミネルバは完全にガーティー・ルーを見失ってしまった。

「各ステーション、状況を報告せよ!」
「くっ…バード、索敵を急いで!アンチビーム爆雷発射!次は撃って来るわよ!」
「いえ…敵艦、離脱しました。レッド88、マーク6チャーリー、距離500」

必ず反撃を仕掛けると踏んだタリアだったが、予想は外れた。バードの報告どおり、彼らは反撃を行わず、その全力を持ってこの宙域から離脱していった。
タリアは深くため息を吐き、帽子を脱ぎながら言う。

「…やられたわ…こんな方法で逃げるとはね…」
「大分手強いようだな」

と、深く艦長席に背も垂れるタリアに、ゲスト席に座っている長髪の男、プラントの最高評議会議長、ギルバート・デュランダルが表情を変えずに言った。
タリアはデュランダルのほうを向き言った。

「なら、尚の事このまま放置しておくわけには行きません。そんな連中に機体が渡れば…」
「ああ、そうだな…」
「今では下船してもらうわけにもいきませんが、我らはこのままあの艦を追うほうが良いと思います。議長のお考えは?」
「私のことは気にしないでくれたまえ、艦長。私だってこの火種、放置したらどれほどの大火になって戻ってくるか…それを考えるのは怖い。
あれの奪還、もしくは破壊は現時点での最優先責務だよ」
「ありがとうございます」

デュランダルの言葉に満足そうな笑みを浮かべるタリア。そして、表情を真剣なものに変え、指示を送っていった。
151592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:30:34 ID:???
さて、こうしてボギー1を追うこととなったミネルバだったが、暫くは戦闘もなく、待機任務についていた。
その中で、ラクスとケイはジンの最終調整のために格納庫に来ていた。そこにはルナマリアも混じっていた。

「しっかし、この先ジンで大丈夫なんですか?」

ルナマリアがラクスのジンを眺めながら言う。それに対し、自信ある表情でケイが言い返す。

「これが大丈夫なんだよね。僕が整備しているし。それに、ナタリーとこのジンの相性は最高にいいようなんだ」
「へぇ…まさに相棒、ってとこね」
「はわぁ〜…ブースタープログラム調整終わり!ですわぁ…」
「まあ一部はゲイツとかのパーツ使わせてもらってるけどね、こっそり」

ケイはウインクをしながら舌を出して言った。
わりとお茶目な人だ、この人は。そうルナマリアはケイに対して印象を感じた。

「まあ、あんな強運は二度と続くとは限らないし、次は僕も行かないし、少しは気を引き締めなよ、ナタリー」
「わかってます。はぁ…でも、そう考えると不安で不安で」
「なぁに言ってるんですか、ナタリーさん」
「え?」

不安そうな表情を浮かべながら操縦席に座っているラクスに対し、今度はルナマリアがウインクをして、明るい声で言った。

「今度は一人じゃなくて私達もいるでしょう?」
「あ…そう、ですわね!うん!ルナマリアさんやあのインパルスがいれば心強いですわ!」

一瞬きょとんとした表情を浮かべていたラクスだったが、そのルナマリアの言葉の心強さに安心感を覚えたか、ルナマリアの手をいきなり掴み、上下にぶんぶんと振り回す。
そんな彼女の様子にルナマリアは困惑しながらも苦笑していた。

「あ。ていうか、何を私一人で突っ込もうという気でいたんでしょう…あ、恥ずかしい…自分の実力におぼれて…まだまだ努力が足りないですわ」
「まぁた、それ?まあいいけどさ。まあナタリーはこういう人なんだ。ってははは!」
「あ、はは。面白い人なんですね、ははは」

と、ラクスは急に冷静になり、自分の発言がいかに調子付いたものかと思うと、急に恥ずかしくなってきた。顔が真っ赤になり、ケイとルナマリアはそれを見て笑ってしまった。
そんな彼らに対し、ラクスは更に顔を真っ赤にして怒った。

「な、何で笑うんですの!?」
「だ、だって顔真っ赤なんだもん、トマトみたいだよ。あははは…」
『MSパイロットへ通達。これよりブリーフィングを開きます。MSパイロットと整備班長マッド・エイブスとケイ・クーロンは会議室へ集まってください…繰り返します…』
「あら」
「お」
152592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:31:34 ID:???
と、ここで格納庫にアナウンスが流れた。どうやらこれからの対策をとるようだ。ケイは首を回しながら面倒くさそうに言う。

「面倒くさいなぁもう…説明しろっての?やめてよね、どうせ皆僕の説明なんか退屈でしょうがないんだろ?ったく…」
「なぁに自虐的になっているんです!私が最後まで聞きますわ!」
「…いっつも最初に寝るくせに…」
「何か言いましたか?」
「いいえ別に。さあ行こう!」

やっぱり変わった人たちだ。そう思いつつ、ルナマリアはケイとラクスと共にブリーフィングルームに向かっていった。

「それにしても、ケイさんって結構男前ですね!」
「そうかい?いやぁ、それほどでもぉ」
「ケイさん、鼻の下が伸びてますわよ…」

その途中、ルナマリアがケイに積極的にアタックしたり、それにラクスが少しだけ嫉妬感を覚えたりと、まるで過ごせなかった青春時代をすごしているようで、
ケイは満更でもなかった。アークエンジェルに戻ったころも、エターナルにいたころも、こんな経験はなかった。
自分がクローンとして生まれてきて、4番目くらいに良かったと思った出来事だった。

「(ああ、もうミネルバ最高!)」

そんな事を考えつつ、そんなこんなで、すぐにブリーフィングルームへとたどり着いた。

「あ」
「ん?」
「あら」

と、そこでシン・アスカとレイ・ザ・バレルと扉の前で出会った。ルナマリアは地面を蹴ってラクスとケイの元を離れ、彼らの元へと行く。

「ルナ。何処行ってたんだ?」
「ちょっとケイさんとナタリーさんと喋ってたの。ね?」

ルナマリアに振られ、ケイは頷いて答えた。

「ああ、まあね。君は…インパルスの?」
「ああ、そうだ。あんた達は…あの時のジンの」

シンは急に思い出したように少し驚いてみせる。ラクスは微笑みながら敬礼をしていった。

「ミネルバに所属する事になりました、ナタリー・フェアレディです。宜しく御願いしますわ」
「ああ…こちらこそ。俺の名はシン・アスカ。宜しくな、ナタリーさん」

シンは敬礼を返す。ラクスはシンの言葉を聴いて、少し笑った後に言った。

「ナタリーでいいですわ。シンさん」
「そ、そうか。わかった」

シンはラクスの柔らかく、それでいて優しい雰囲気に少し見とれていたが、すぐに気を取り直して差し出された手を握る。
女性にしては少し大きいような気もしなくはないその手は、温かかった。
153592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:32:20 ID:???
「ああ、そうだ…こっちはレイ・ザ・バレルって言って俺の同僚なんだ。な、レイ…ってどうしたんだよ?」
「レイ?」

と、シンがレイの事を紹介しようとした時、レイは何かに驚いたように眼を見開いてケイの事を見つめていた。
まるで、何か恐ろしいものを見たかのように、少し体も震えていたのだ。

「おい、レイ?どうかしたのか?」
「…あ…な、何だ?」
「何だじゃないわよぉ。どうしたの、一体?」

シンがもう一度肩に手を置きながら声をかけて、やっとレイははっとして返事をした。そんな様子にルナマリアは心配そうな表情で彼を見ていた。

「い、いや…何でもない。少し、知合いにそっくりだな、と思ったんだが、違った」
「そうなの?」
「そうだ。…レイ・ザ・バレルです。宜しく御願いします」

レイはケイとラクスに対して手をさし伸ばした。その表情はまだ何処かおぼつかない様子ではあったが、クールなものだった。

「うん、宜しく…ね」
「宜しく御願いしますわ!」

ケイとラクスは順々にその手を握った。その時、ケイは少しばかり力強く握られた感覚を覚えたが別段気にしはしなかった。

「おい、そろそろ始めるぞ!早く入れ!」

と、ここで先にブリーフィングルームにいたミネルバ副官アーサーが彼らに部屋に入るよう促す。
彼らは少し慌てて部屋に入り、各々の席に座り、会議の開始を待つ。そして、アーサーの言葉で会議は始まった。

「さて…貴公らも分かっている通り、現在ミネルバは強奪されたMSガイア、アビス、カオスを追って、ボギー1の追撃任務に入っている。
ボギー1はかなりの高速艦だ。そこで、我らはこれを補足と同時に背後より叩き、三機のMSを奪還、または撃滅する。
その奇襲隊をシン、ルナマリア、ショーン、そしてナタリーに任せる。レイとゲイルはこの艦の護衛だ。恐らく、あのMAも出てくるぞ。気合を入れろ」

アーサーの言葉に、MSパイロットたちは息を呑んだ。無理もない。今まで訓練生だった彼らが、いきなりの実戦。しかも一番失敗すれば死亡率が高い奇襲作戦。
彼らだけではなく、ラクス自身も手に汗を握っていた。

「奇襲、ですか。敵が待ち伏せしているという可能性は?」
「否定できない。しかし、こちらには時間もあまり残されてはいない以上、こちらから仕掛けるしかない。MS各隊は全力を持って速やかに敵戦力を排除する事。
それに、どこの部隊であれ、ここはプラントの領域。奴らも足を止めているほど暇ではないだろう。ならば、速攻をしかけ、奴らの足を止める。そうすれば、他の部隊も包囲網を作る事ができるしな。
慎重に行き過ぎて、敵を逃がしてしまうようではザフトは世界の笑いものだ」
「どちらにしろ、待ち伏せされてようがされていないであろうが叩いてみないと始まらない、か。だけど、それって危険すぎませんか?」
「まあ、そう言うな。そこで開発に関わっていたケイとマッド主任を呼んで、対策を練ろうということだ。では、お二人とも」
「はい」
「うい」
154592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:33:25 ID:???
マッドとケイは席から立ち、コンソールの前に立ってスクリーンにデータを表示させる。スクリーンにはアビス、カオス、ガイアの細かいデータが載っていた。

「さて、まずカオスですが、我が軍が独自に開発した"ドラグーン"システムを簡易化した空間自律ポッドを装備しているのが特徴です。
これは、空間認識能力がなくとも使える代物ですが、その分動きは単調になりがちです。というのも、フォーメションを組ませて、そこから先はコンピュータの自己判断という形式をとっております」
「しかし、元々が空戦などの空間戦闘を得意としている機体ですので、宇宙空間での戦闘では一番手強いといえるでしょう。それに、インパルス同様オールラウンダーなので、弱点という弱点は火力不足くらい…」

スクリーンをレーザーポインタで色々と指しながら説明するケイとマッド。その様子を、レイは何か考えるように見ていた。
いや正確に言えばケイを何か憎しみをこめたような目つきで、だが。

「(あの男…間違いない。しかし、奴が何故ここにいるんだ?奴はラクス・クラインと共に姿を消したはず…いやしかし、そんな事はどうでもいい…)」

そう、この男、レイは何かケイと因縁を持つ男だった。いや、正確に言えばケイになる前、キラ・ヤマトだった時の彼とか。
そんな事は露知らず、ケイは説明を続けていた。

「ガイアは元々地上戦を想定した機体です。なので、宇宙空間での動きはもっとも鈍いと考えてよいでしょう。火力も弱く、これは…」
「(奴を消さなければいけない…ギルのために…ギルの目指す世界のために…!!)」

と、そこで何かに気がつき、席のほうへと視線を送る。それに気がつき、レイは顔を俯かせて視線をそらす。
ケイはレーザーポインタを置き、近くにおいていた本を片手にレイのほうへと歩いていく。
ばれたか?いや、それにしては本とは一体?と思ったその時、すでにケイはレイの後ろを通りすがり、そして。

「寝るなバカピンク!!」
「あたぁ!!」

…ラクスの頭に本が叩きつけられた。かなり分厚いものだったので、ラクスはその痛みで頭を抑えて机に伏せている。
ケイは呆れたようにため息を吐いた後、スクリーンの元へと戻っていった。

「…続けます」

結局、レイの視線はばれておらず、レイはため息を一つ吐いた。そんな彼の心情は表出ることなく、そのまま会議は進んでいった。
さて、この後ケイとマッドの解説も終わり、細かな決定事項を決めて会議は終了した。
ラクスらMSパイロット達が部屋から出て行く中、ケイとマッドとレイだけが残っていた。

「んじゃ、ケイ。ザクのビームライフルとインパルスの調整、それとジンの武装チェックしておけよ」
「はい」

先に仕度を済ませたマッドはケイにやるべき事を与えてその場を後にする。ケイはパソコンを閉じたり、書類を集めていたが、先ほどから座ったまま動かないレイを見つけ、声をかける。

「どうしたんだい?レイ君。皆行ってしまったけど…」
「…」

先ほどの態度とは打って変わって、レイは無口のまま何も反応を示さない。いや、俯いているその顔からは何か唯らぬものを感じ取れる。
ケイはそんな彼の表情を、書類の整理をしていたためにうかがうことができず、そのままの調子で喋り続ける。

「ルナマリアさんもシン君もレイ君も訓練生だからな、しっかり生き残れるよう、僕らがしっかり整備してあげなきゃね。じゃないと、折角の―」
「ふざけるな」
「え?」
155592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:34:36 ID:???
レイの突然の言葉に、ケイは顔を上げてレイを見る。レイの瞳は、それを覗き込んだだけで凍てつきそうなほど、冷たい。
ケイは事態を把握できず、少し戸惑いながら言った。

「え、え?僕なんか気に食わない事言ったかな?参ったな…」
「そうじゃない…。いや、気に食わないさ、お前が」
「…どういうことだよ?」

レイの態度にさすがのケイも怒りを感じ始めたか、まとめていた書類を少し手荒く机に置き、睨みながら少しだけレイのほうへ歩み寄る。
レイも負けじと睨み返し、言った。

「俺の姿を見て、何にも感じないんだな」
「どこかでお会いしたかな?」
「"キラ・ヤマト"」
「!」

挑発に挑発を返してみたが、次にレイが発した言葉に、ケイは少しだけ反応を示した。突然だった。何故この青年が、その名を自分に言うのか?

「…図星か…誤魔化したところで何も変わらん。お前は感じないだろうが、俺はお前の存在を感じ取る事ができる」
「気持ち悪いな。…確かにアスハ代表にも、キラ・ヤマトだとは言われたけど、僕はケイ・クーロンだ」
「ふざけるな!」

レイは先ほどの冷たい表情とは一転し、怒りを露にして机を叩き立ち上がる。
ここが防音加工を施された場所でよかった。しかも、監視カメラもないから会話を聞き取られる事もない。

「ふざけてなんかないさ。それに悪いけど、君は誰だ?僕の記憶の中には、君と同じ顔を持つ人間は…一人くらいか」
「その一人だとしたら、どうするかね?キラ・ヤマト…俺は、ラウ・ル・クルーゼだ…!」

一瞬、ほんの一瞬だったが、ケイの頭の中にヤキン・ドゥーエのときの記憶がはっきりとした光景として映し出された。
世界を滅ぼそうとした男、ラウ・ル・クルーゼ。自分が倒した男。
しかし、目の前にいる、クルーゼと名乗った青年は彼よりも若い。ともなれば答えは絞られる。
自分と同じ存在、クルーゼと同じく、呪われた子。クローン。
ケイは一度ため息を吐いた後、レイを睨んだまま言った。最大限、動揺しないよう気を強く持ったまま。

「だったらどうする?僕をこの場で殺して、また世界でも滅ぼすつもりかい?ラウ君。いやレイ君」
「…俺はそんな事は毛頭ない。ただ、お前には消えてもらう。これから生まれる、新世界のために。安心しろ、俺も直に行くからな。
人の夢、人の未来、その素晴らしき結果、キラ・ヤマト!お前のような存在はもういらないんだ!」

レイは銃を取り出し、ケイに向けて構える。丁寧にサブレッサーまで付けられていた。
ケイはもう一度ため息を吐き、両手を挙げる。しかし、強く言い返す。

「僕はケイ・クーロンだ」
「まだそんな口を開くか!」
「話は最後まで聞け」

この場に及んでまだケイと名乗る目の前の男にレイは激昂し、引金を引こうとしたが、次の瞬間、ケイの表情が硬く冷たく、そして狂気があるものに変わり、
思わずためらってしまった。ケイは少しにやけながら、机の上に座って話し始めた。
この男は、こんな表情をする男だったか?レイは戸惑いながら、不思議とその話に耳を傾けてしまった。
156592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:36:11 ID:???
「まず、君はアル・ダ・フラガのクローン、つまりラウ・ル・クルーゼと同じ、という事なんだね?」
「ああ、そうだ。お前という存在を作り出されるために作られた、出来損ないといわれた者の生き残りだよ」
「僕も同じさ」

ケイの言葉に、レイは更に戸惑いを隠せない。真顔で何を言うのだ、この男は。しかし、そんな彼に構わずケイは続けた。

「君は僕をキラ・ヤマトだと思っている。それ自体は全く間違っちゃいない。だけどね、僕は君と同じ存在さ。一人の人間のエゴによって生まれ、そのエゴの手伝いをさせられ、
そして一度は世界を呪った、ラウ・ル・クルーゼとレイ・ザ・バレルと同じ、ね」
「何だと…!?」
「僕はキラ・ヤマトのクローンさ、レイ君。大きい声じゃ言えないけどね」

ケイは威圧はそのままに口をにやけさせる。その表情は何処か、狂気染みたものだった。そうまるで、ラウ・ル・クルーゼが世界を呪い、そして滅ぼそうとしていた時のように。

「キラ・ヤマトの、クローンだ、と?馬鹿な!」
「本当の事さ。自分でも認めたくはなかったけどね。今では、大きな試験管から出された時の記憶だって残ってて、思い出すたびに反吐が出る。
生み出した奴らをこの手で殺してやろうとも思ったこともあった」
「…」
「でもさ」

ケイの表情が一気に和らいだ。

「僕は僕じゃない?どんな生まれ方をしようとも、どんな運命が待っていたとしても、僕は僕だ。キラ・ヤマトじゃなく、「ケイ・クーロン」だ。
確かに、過去は消せないものだ。だから、ラウ・ル・クルーゼを殺した僕が君に恨まれるのは仕方ない事なんだろうけど、それはキラ・ヤマトではなくケイ・クーロンとして受ける。
君も、二度と自分がラウ・ル・クルーゼってほざくな。それはクルーゼに失礼だ。クルーゼはクルーゼ、レイはレイだ。
君の思いも願いも、そしてその僕を消したいという感情も全部君のものだ。誰でもない、レイ・ザ・バレルのものだ」
「…」
「レイ・ザ・バレルとして復讐するというなら、僕は受けてたつ。だけど、あくまでクルーゼというならば、僕はその憎しみを受けない。
理不尽だからね、死んだ人間の代弁者を語られるのは。死んだものの意思を受け継げられる奴なんていやしない。それは自分の意思だからね。
自分の意思は自分の言葉で伝えなければいけない。自分の意思は、自分の体でぶつけなければいけない」
「…お前は、どうしてそんなに笑っていられる。そんなに平然としていられる?何故、ラウのようにはならなかった?」
「…人を信じているからじゃないかな?少なくとも、一人だけでも。君だってそうなんだろ?」
「そう、だな。俺は議長を信じて、議長が作る世界を信じて生きている。お前は?」
「僕か?僕は…そうだね、あの熱血バカピンクが危なっかしくて、見てられないんだ。バカでさ、ドジでマヌケで泣き虫で。でも、何かをしようと一生懸命なんだ。
彼女だって酷い眼にあっているはずなのに、めげずにひねくれずに。そんなの見せられたら、自分が世界を呪っていた事なんてバカらしく思えてくる」

ケイはラクスの事を思い浮かべる。自分を助けてくれた、あの日の笑顔を。
彼女がいなければ、キラ・ヤマトを演じ続けていたか、ラウ・ル・クルーゼと名乗って、世界を滅亡させようとしていただろう。
何気ない言葉だったが、それはケイを救ったのだった。

「バカな奴なんだよ、あいつは」
「…ナタリー・フェアレディのことか?」
「うん。今じゃ、あいつに会えただけでも生まれて来てよかったと思う」
「…そうか…」
「さて、どうする?撃つの?撃たないの?撃たないんだったら僕仕事に戻りたいんだけど」

と、ケイは机から降り、再びレイと向かい合う。あまりに無防備だったが、レイは撃つ気にはなれなかった。
目の前にいる男も、業を背負って生まれた人間だ。自分と同じく、呪われた存在。
しかし、なんと清清しいことだろうか。
157592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:37:56 ID:???
「完全に許したわけじゃない。俺はやっぱりお前を憎んでいる。だが、撃たない。今はお前には生きていてもらいたい。貴方や俺、ラウのような存在を二度と生み出さないためにも、俺たちは作るべきだ。二度とそのような存在が生まれない世界を、な
だが、もし貴方が議長の足かせになるようであるなら、俺はお前を殺す。ラウ・ル・クルーゼではなく、レイ・ザ・バレルとしてな」
「そうか。今のところは僕は邪魔する気はないから安心してよ。だけど、その時は受けて立とう。ケイ・クーロンとして」

ケイとレイはお互いの拳同士をこつんとぶつけた。そして、互いに軽い笑みを浮かべる。

「さあてと、そろそろおやっさん切れてるな。行かなきゃ」
「すまない」
「気にするな、僕は気にしていない」

そういいながら、書類を持ち、ケイは手を振ってその場から立ち去っていろうとしていた。と、その時レイは何かを思い出してケイに伝える。

「一つだけ忠告を与えよう」
「ん、何?」
「お前がケイ・クーロンとして生きていくなら、なおさら聞いておいたほうがいい」

レイは一つだけ間を置き、そして口を開く。

「貴方はシンの仇だ」
「…!」

レイの一言は、酷く冷たくて、そして確実にケイの心に突き刺さった。
158592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:38:54 ID:???
『スクール時代にあいつから聞いたことがある。オーブ出身のあいつが、何故ザフトにわたったか。先の大戦で連合とオーブとの戦いの際、あいつの家族は流れ弾に巻き込まれて全員死んだそうだ。
それが、貴方が乗っていたフリーダムの攻撃だったんだ』
『そ、んな…そんな事って…』
「でもさ、こんな調整でいけるのか?もうちょっとFCSの調整をしておきたいんだけど」
『事実だ。あいつ自身がその眼で見て、その心に刻んだ事だからな。その復讐と、二度とそんな犠牲者を出さないためにも力が欲しいとあいつは言っていた。だからザフトに来た。
…まだ、お前がフリーダムのパイロットだという事は気がついていないが、それも時間の問題だろう。その時は、覚悟したほうがいい』
『はは…覚悟していた事だったのになぁ。そういう、シンのような存在がいるとはわかっていたのにさ。いざ聞かされると、震えが止まらないや』
「おい、聴いているのか?」
『…名を変えようとも、変えられないものだってある…ケイ・クーロン、お前はあいつに殺される覚悟は、出来ているのか?』
「おい!」
「あ…な、何?ごめん聞いてなかった」

突然、会議室だった風景にシンの声が混じり、そして彼の怒鳴り声でケイは現実に戻され、インパルスのハッチのところで作業をしていた自分に戻った。
あの後、レイに聞かされた事実の事で頭が一杯になっており、ケイは仕事の事もおろそかになっていた。
しかも、今現在しているのがシンの機体の調整なのだから、なおの事、レイの言葉を思い出してしまうのだろう。
そんな思いも露知らず、シンは呆れたようにコンソールを叩き始める。

「FCSの調整、まだ終わってないんだよ」
「そうか…いや、ごめん。何かぼぉっとしてた…。シン君、ちょっと頼みがあるんだけど」
「シンでいいぜ。で?」
「じゃあ、シン。一回引っ叩いてくれ。頬らへん」
「おいおい…」
「いいから」

ケイは真剣な眼差しでシンを見つめた。突飛もないことを言われ困惑するシンだったが、こうまで言われては仕方がないと思い、
コンソールをいじっていた右手を放し、ケイの頬向かって思いきり振り払った。
パアン!と威勢のいい音を格納庫中に響かせ、その場にいた全員の注目を浴びる中、頬を手のひらの形に赤くしたケイは首を回して気合を入れなおした。

「よし、起きた。さあ、FCSの微調整始めちゃおうか」

その異様な雰囲気にシンは少々引き気味だったが、彼も気を取り直し、FCSの調整をはじめた。
その作業をしている中で、少しだけケイは自己嫌悪に陥る。

「(これじゃあ駄目なんだよ、これじゃ。何ちょっとだけ満足してるんだ僕は。最低だよ、全く)」

少しだけこれで復讐された気分に陥っている自分が嫌になったようだ。それもそのはず、自分が催促して実行させているのだから、それは復讐とはいわない。
ただ、今までこういう人物がいることは分かっていたのにもかかわらず、いざ目の前にいる状況になると、怖くなる。
どう接すればいいのか、どう謝ればいいのか、自分は何が出来るのか。
そう考えると、ケイは頭の中が混乱しそうで、気を取り留めるだけで精一杯だった。
だが、その時。格納庫中に響きわたった声にケイははっとする。
159592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:41:24 ID:???
「そもそも何故必要なのだ!そんなものが今更!」

レイとデュランダルに連れられ、アスランと共に格納庫へやってきていたカガリの怒りの叫びが響き渡る。
前の大戦で様々な友人や肉親を失ったカガリにとって、このように大きすぎる力を持つ事は危険で、間違っていると思っていたのだろう。
事実、今MSを奪われてしまった。そのために戦争が起こったとしても、過言ではない。
だが、その声は、何処か説得力にかけるものだった。政治家のとしての彼女の言葉は、ただ感情に任せている言葉でしかない。
それを感じているのか、はたまたは…。シンはコアスプレンダーのコクピット席で、俯きながら震えていた。
そんな彼の心情が分かるのは、目の前にいるケイだけだった。

「シン…」

そうか、レイが言っていた。そしてあれは、ウズミ=ナラ=アスハが引き起こした惨事とも言える。そして、それがアスハ家への恨みとなっても、無理はない。寧ろ当然なのかもしれない。

「我々は誓ったはずだ!もう悲劇は繰り返さない!互いに手を取って歩む道を選ぶと!」

その言葉を聴いた瞬間、シンは眼をこれでもかというくらいに開き、そしてコクピットから飛び出して叫んだ。

「さすが、綺麗事はアスハの御家芸だな!!!」
「シン!?」

先ほどのカガリの叫び声とは比べ物にならないほど、力とそして、憎しみをこめられた心からの叫び声。それは、整備士のヴィーノやルナマリアなどの周りのものを唖然とさせ、そして、ケイの心の中に響いた。

「(…きれいごと、か)」
「シン!!」

ケイがコアスプレンダーの前で愕然として考えている中、思わずレイがシンのところへと飛んでいく。
確かに魂の叫びには違いないが、これは明らかにアスハに対する暴言であって、外交問題になりかねない。だが、ここでシンに対し救いの手がさし伸ばされる。

『敵艦捕捉、距離8000、コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ!』

敵艦が見つかった。この知らせが流れた瞬間、辺りの雰囲気が一気に変わる。

「来たぞ!最終チェック急げ!!ヴィーノ、何をぼやっとしている!ザクのチェックをしろ!!」
「うわ、やべ!!」

マッドの声が格納庫中に響き渡り、名指しされたヴィーノは急いでザクの調整に飛ぶ。

「ケイ!お前は嬢ちゃんの機体だ!!」
「了解!!シン、戦闘中はアスハの事は忘れなよ!」
「言われなくても…!レイ、そこにいると危ないぞ!」
「シン!!…くそっ!申し訳ございません、議長!この始末は後ほど必ず!!」

レイはシンを問い詰めようとしたが、その前にコアスプレンダーのハッチが閉まり、レイは仕方なくデュランダルとカガリに謝罪の言葉を代わりに言って、
自機のところへと飛んでいく。デュランダルはすぐにカガリのほうへと向きなおし、頭を下げる。
160592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:42:04 ID:???
「本当に申し訳ない…姫」
「え?」
「彼はオーブからの移住者なので、よもやあのような事を言うとは思いもしませんでしたので…」
「え…?」

オーブからの移住者が何故、自分に対し、こんな憎しみをこめた言葉を投げかける?
カガリは戸惑った。
そんな彼女を尻目に、戦闘準備は着々と進んでいく。ラクスのジンもまた、武装チェックに追われていた。

「アーモリーワンのときのマシンガンは腰に装着してあるけど、VPS装甲相手じゃ効果は薄い。対MS用大型ライフルもそうだ。
そこで今回はザクのビームライフルを装備させてもらってる。機体の出力に依存しない、エネルギーパック形式の優れものだ。
これなら」
「ねえケイさん」
「ん?なんだいナタリー?」

と、不意にラクスがケイに声をかける。その表情は何処か複雑そうだった。

「さきほどの、シンさんの言葉なんですけど…彼、相当オーブのことがお嫌いのようですわね」
「あ?ああ。そうみたいだね。ちょっと事情があるみたい」
「そう、ですか」

ラクスは更に鎮痛そうな表情を浮かべていた。そんな彼女の心情を読み取ってか、少し苦笑しながら肩を叩いてケイは励ます。

「あまり気にするなよ、ナタリー。僕らがでしゃばったところで解決できるような問題じゃなさそうだしね。今は、任務に集中したほうがいい。絶対に生き残ってきなよ」
「わかっていますわ。…でも、デブリ戦ですかぁ…あんまりいい思い出ないんですよね」
「二年前とは違うんだ、もっと自信持って!ビームライフルの予備パックは左腕の対ビームラウンドシールドの中に仕込んどいた。玉切れになったらすぐに補給しなよ。
ラウンドシールドもおまけ程度に考えてもらったほうがいい。あと、捕獲用ネットを仕込んだ特殊ミサイルも腰につけている。まあ、後はナタリー次第だよ」
「了解ですわ。では、行って参ります」
「ああ、気をつけて!」
『ナタリー・フェアレディ、ジン発進スタンバイ!』

ラクスはヘルメットのバイザーを閉め、息を吐きながらジンをカタパルトへと歩いていく。二、三度呼吸をして息を整えるたびにバイザーが白く曇る。
161592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:43:55 ID:???
「ナタリー…貴方なら大丈夫、大丈夫…やれますわ…やれます…」

ラクスが呪文のように何度も何度も自分に言い聞かせている間にも、カタパルトを踏み、ジンは発進準備を整えられた。

「(でも)」

気がかりなのは。ケイとシンの事。ケイは何を隠している。多分、先ほどのカガリとシンの確執に関係するんだと思う。
ケイの過去は大体聞いたつもりだったが、分からない事はまだまだ多い。いや、分からない事のほうが大部分なんだ。
こういうとき、自分の無力さを呪いたくなる。自分は彼らではないのだから何も出来ない。そう、考えてしまう。

「(私って駄目ですわね…本当)」
『プラットホームのセットを完了。中央カタパルトオンライン。気密シャッターを閉鎖します。コアスプレイダー全システムオンライン』

人間なんだから当たり前じゃないか。何でもできる、私はケイを救える、シンを救える。そう考えるのはただの自惚れ者のいう事だ。
だけど、自分の意見をぶつけてみたい。彼ともっと話をしてみたい。彼女と話をしてみたい。
顔と顔を向き合って、眼と眼を向き合って。全部知りたいという望みは、ただの迷惑かもしれないけれど。
少し、少しだけでもいい。自分が彼らの救いになれるのであれば。
彼らを理解したい。憎しみも愛も全部。高望みなのは分かっているけれど。それが、どれだけ僭越なことだとしても。

『ジン、カタパルトエンゲージ』
「ナタリー・フェアレディ、ジン、参ります!!」

誰かの力になりたい。その思いを乗せて、ラクスはジンと共に、デブリの宇宙へと飛び出していった。


第四話 『世界が終わるまでは』に続く
162592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/07(水) 00:46:10 ID:???
ふぅ〜やっとこさ投稿が終わりました。毎回時間掛かってしまって申し訳ございません。
これからテスト期間なので、暫くは更新できません。

というかもうケイがキラじゃないですね、これ。精進します。
163通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 00:46:27 ID:???
乙!
164通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 00:51:36 ID:???
GJ!!
165通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 00:55:53 ID:???
GJ!
熱血バカピンクがイイ!
ところでハイマニューバ2をバカピンク仕様で作ろうと思ってるんですけど、羽のみピンクで本体はノーマルカラーで良いんですか?
166通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 01:00:20 ID:???
GJ!

ケイが青春してるな
そして相変わらず馬鹿ピンクは可愛いなぁ

なんかカガリが・・・まさかカガリまで・・・?

読み返してみたらナタリー用ジンは学習型コンピューターってオーパーツ積んでるのなw
167通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 03:27:21 ID:???
592氏GJ
ケイが幸せそうで何より。
人間の性格って、その人の人生と周囲の環境でどうとでも変わるものだから
キラっぽさが影を潜める職人氏が描くケイでいいと思う。

というかケイはどさくさに紛れてナタリーの乳に触れるとは
シンに負けないラッキースケベだなw

ケイがシンに真実を告げる日がいつかは来るのか注目だし、
それとレイとのやり取りも良かった。

ケイとレイは同じ境遇の者同士でお互い違う物を見ているけど、
とりあえずの休戦関係からいつかは共闘に発展かな?

ナタリーのリアクションは相変わらず微笑ましいね。
ブリーフィング中に居眠りできる胆力は流石。

ケイはレイから自分はシンの仇と告げられ苦悩が始まったわけだが
今後どのように接するのかな?

「仕方ないじゃない?」等、無神経な事を言うやつじゃないのも確かだけど。
168通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 03:55:56 ID:???
本編最終回のやり取りをここで活かすとは。
物語序盤でケイ(キラ)からのメッセージを受けて、
レイは今後どう考え、行動していくのか?
169通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 12:14:08 ID:???
何かケイとギルとの会見がきそうだな

レイがケイの正体をギルに言わずに胸の内に留めるとは思えん
170通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 13:24:09 ID:???
>>169
それがギルのためだと思えるならいくらでも隠すだろ
171通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 13:59:54 ID:???
ためになる……かなぁ
けっこう重大な情報かと思われ
172通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 14:46:39 ID:???
仮にレイからケイの存在の報告をギルが受けたとして、
ギルがそれに強い興味を惹かれるのは間違いないだろうね。

ケイの現状の立ち位置はギルに取って無害だから、
いきなりケイの排除を狙うなんてないだろうけどね。
173通常の名無しさんの3倍:2007/02/07(水) 15:04:59 ID:???
オーブにいる3人目のことを考えると(しかも今後原作のように行動するとしたら)、
2人目であるケイは3人目に対抗するための重要なファクターになってくるのでは。
174通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 00:59:21 ID:???
初期っぽいまま、現実に目を向けられるようになってるバカピンクいいなあ。GJ

運命とか伝説作っちゃってる議長は、優秀なパイロット欲しがってるからな。キラクローンには興味持つわな。他にもいるかもと考えるかもしれんし
175通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 01:28:51 ID:???
でもこの人、実は何気に遺伝子操作とかクローニングとかについては地味に反対派なんだよな
だってレイがDPがそういうのを否定するプランである事の生きた証拠だしな
176通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 03:50:32 ID:???
>>173
現状はコクピット恐怖症だからなぁ……。
手札としてオープンする所を間違えれば現在絶賛行方不明の狂戦士一人目キラも襲いかかってくるので難しい所だと思う。
177通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 05:58:49 ID:???
そう考えると何気に一番カワイソス(´・ω・`)な狂戦士、オリジナルキラ…

二人目→シリアスを秘めつつミネルバで青春時代を謳歌中

三人目→原作通りならマルキオハウスにて現在ニート中

オリジナルキラ→勝手にクローン作られた上に実験動物にされ更に狂戦士化…、現在行方不明中
178通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 07:52:29 ID:???
オリジナルキラがクローンと思ってカナードに攻撃加えて返り討ち、
誤解が解けたあと、カナートの舎弟と化して、Xのオルバ&フロスト兄弟の様になったら楽しげ。
179通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 10:05:56 ID:???
オリジナルキラが黒アキトっぽいとか思ってしまう俺…
フレイを護れなかった事もあって、2人目への憎悪は増す一方とかな感じで
180通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 11:45:28 ID:???
久し振りに592氏の作品をwikiに行って読んだけど、
皆が触れてるようにオリジナルキラはモルモット扱いされていたんだね。
ケイとナタリーの印象が強くてちょっと忘れてたw
ストライクvsイージス相討ち後に、どのような経緯で彼が強化人間研究所に回収されたかwktk

オリジナルキラがフレイの死を知ったら確かにぶちギレそうだね。

ま、彼の行く先は限られてくるんだろうが

物語が終盤になるとケイがコクピット恐怖症を克服し
ナタリーの相棒としてグフ辺りに乗ったりしてね。

キラ(ストライク)vsケイ(量産機)vs戦闘人形(フリーダム)

真のキラ決定戦が物語が進むと行われたりしてwww
181通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 12:08:36 ID:???
そう言えばキラーズ氏の作品では
二人目が爆死して三人目がプラントで覚醒するころだね。

オリジナルは、アスカ一家としっかりフラグ立てちゃって今後が気になるところ。
キラーズ氏の短篇にもあるように
オリジナルがオーブ戦後シンの身寄りになりそうだね。













どなたか暇な方いらっしゃったら
キラーズ氏の第8話wiki登録をお願いしますです。。。

かあちゃん携帯厨でごめんね
182キラーズ登録した人:2007/02/08(木) 19:19:02 ID:???
>>181
キラーズ氏は一話分を数回に分載しておられますので、第8話分が完結するまで掲載を保留しております。
しばらくお待ちください。
なお、フォーマットを他の掲載分にあわせられる&追加分投稿時に責任を持って修正してくださるなら、
他の方が登録してくださっても何ら問題ありません。
183通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 19:39:34 ID:???
>>182
スイマセン
お騒がせしました
184通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 20:06:53 ID:???
ナタリーのことを議長が知ったら替え玉ラクスにしようと考えるかも試練

なんてったってアイド、じゃなくて本物だし。
185通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 21:21:05 ID:???
熱血スレの某ネタみたいにラクスの電波ジャックにジャックし返すと見た
186通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 21:24:53 ID:???
>>185
作者同じ人だから繋げてくれるかもね
187通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 21:30:22 ID:???
ナタリーこと真ラクス、ミーア、偽ラクスの純粋な歌手としての実力はどういう順番なんだろう。

個人的妄想ではナタリーとミーアは歌うことが楽しくてしょうがない真正の歌姫。
始末書の歌みたいに即興で次々歌が出てくる。
ミーアは新曲を『ラクスとして』歌える。

偽ラクスは技術的には二人より上手いが、どんな時でもCDのリピート再生のように同じ調子でしか歌えない。
過去のラクスの歌しか歌えず新曲を『ラクスとして』歌えない。
188通常の名無しさんの3倍:2007/02/08(木) 21:35:51 ID:???
禿同
ナタリーとミーアは真性の歌手だと思うが
クローン二号はマフィアのボス
18958:2007/02/09(金) 00:09:13 ID:???
遅くなりまして、すみません。第二話投下します。


無数の星が煌く宇宙を一機の輸送艦が地球に向かい進んでいく。その輸送艦の中にはデュランダルがいた。
デュランダルの両隣には白服と赤服の男が二人いて、二人とも制服の左の襟元にはフェイスの印が輝いていた。

「ハイネ、君は地球に降りるのは初めてかい?」

デュランダルが白服の青年に尋ねた。ハイネと呼ばれた白服の男はデュランダルの方に向き直ると、

「はい、自分は今回が初めてになります」

難い言葉でデュランダルに返すハイネ。その様子を見ていた赤服の男は、何故か少し微笑んでいた。

「何がおかしいんだよ、キラ?」
「ハイネが敬語を使う姿見たら笑っちゃって。人には敬語使わせないくせに、自分は使うなんておかしいよ」
「キラ、オレが今話していた御方は議長だぞ。いくらオレと言えども敬語を使うのは当たり前だ」
「でも、やっぱりハイネが敬語なんておかしいよね」

キラが再び微笑する。そして、二人のやり取りを窺ってたデュランダルが口を開いた。

「ハイネ、そう難くならなくていいのだよ。現にここには私達三人しかいないじゃないか。それにこんな時ぐらいしか、私も気を緩める事が出来ないのでね」
「議長、そのようなお言葉自分にはもったいない……」
「アハハハ、だからハイネ難すぎだって。もっと楽にしなよ」
「難くて悪かったな!大体オレには何でお前が議長を目の前にして緊張しないのかが不思議だよ……そういえばよ、お前は地球行ったことあるの?」

ハイネの言葉を聞いたキラは突然窓の方へ振り向いた。そしてしばらく外を見つめ、一言呟いた。

「一度だけ……一度だけあるよ」

キラの脳裏には地球に行った時の記憶が甦っていた。キラはその記憶をすぐに振り払おうとした。
何故ならキラにとっては、地球での思い出などどれも苦々しいものばかりだからだ。しかし、一つだけどうしても振り払えないものがあった。

それはキラが自分を失った時。


宇宙を駆ける輸送艦はもうすぐ地球に降下しようとしていた。
19058:2007/02/09(金) 00:15:19 ID:???
デュランダル一行が地球に降下している頃、ミネルバはディオキアのザフト軍基地を目指していた。
「ユニウスセブン落下事件」以降、ミネルバは様々な戦いを戦い抜いてきた。
オーブ沖の海戦ではインパルスのパイロットであるシン=アスカの鬼神の如き活躍により連合を退け、
インド洋では奪取されたセカンドステージのMSとウィンダムの大部隊を相手に帯同していたボスゴロフ級を撃破されたものも何とか撤退させ、
ガルナハンではマハムール基地のザフト軍と共に難攻不落と言われていたローエングリンゲートを攻略した。
このような激戦をなんとか制してきたミネルバは、今ディオキアで一時の休息を得ようとしていた。
ミネルバがディオキアに入港した時、ちょうど上空から3機のザクが降りてきた。そして、その3機の中心にいるザクの手の平には一人の黒髪の美しい女性が立っていた。

「ミーア=キャンベルだ!」

ミネルバクルーの一人が叫んだ。ミーア=キャンベルとは、ラクス=クラインの居ないプラントで国民から絶大な支持を得る女性歌手だ。
高い歌唱力と定評のあるダンス力、そして豊満な胸とスラリとした美しく長い脚を強調した露出度の高い衣装を身に纏うミーアは、いまやプラントの新しい「歌姫」と言っても過言ではなかった。
そして今、ミーアは戦いに疲れた兵士達を慰問する為に地上のザフト軍基地を転々としていたのだった。
この日はこのディオキア基地に訪れる日予定だった為、ミネルバクルーはこのライブを観戦する事が出来たのだ。

「やべぇ、ミーアちゃん超かわいくねぇ?」
「気持ち悪い声出してんじゃねぇよ、ヴィーノ」
「おい、シン!お前はミーアちゃんを見て何にも思わないのか?」
「あぁ、何にも」

ミネルバクルーの男性陣の大半がミーア=キャンベルを見て興奮している中、シンはとても冷めていた。

「はぁー、うちのエース様は色事に関しての関心はゼロなのかね?副艦長なんかあの興奮ぶりだぜ」

ヴィーノが一人ディオキアの兵士達と共に飛び跳ねるアーサーを見てため息をつきながら話していた。

「知らねぇよ。レイ、先に艦に戻ろうぜ」
「あぁ、そうするか。ルナマリア、お前はどうする?」
「えっ、私?……うん、私も戻ろうかなぁ」

レイに突然話しかけられ不意を突かれたルナマリアは、少し曖昧な回答をした。

「ルナ、戻るんだったら早く来いよ!レイ、先行くぞ」
「あぁ」
「ちょ、ちょっとシンってば!」

三人はミネルバに向かい足早に進んでいく。その途中彼らの目の前にある男が現れた。

「よっ、久しぶりだなお前ら!元気にしてたか?」
「ハイネ!?」

彼らの目の前に現れたのは、サングラスを掛けたハイネだった。
19158:2007/02/09(金) 00:17:55 ID:???
ハイネは掛けていたサングラスを外すと、そのサングラスをポケットにしまった。
シン達が初めてハイネと会ったのは彼らが士官学校に通ってきた時の事だった。
ハイネがまだ赤服だった頃、後輩指導の名目で士官学校に訪れた時にハイネはシン達と出会い、そこから彼らは交流を深めていった。

「何故あなたが地球に……?」
「ってか、いつ白服になったんですか?」
「それにフェイスにまで任命されてんのかよ」

三人がそれぞれの言葉を口にする。ハイネはその様子を見ながらニヤニヤと笑っていた。

「まぁまぁ、お前ら落ち着けよ。オレに再開出来て嬉しいのはわかるけどよ、まずは落ち着け。それとシン!オレにタメ口使うとは、お前も偉くなったな!」

ハイネは言いながらシンの耳を思いっきり引っ張り上げた。シンの表情が苦痛で歪む。

「痛っ!ゴメンナサイゴメンナサイ……あぁ、痛ってぇ」
「まぁ、今日はこんぐらいで許してやろう!シン、お前こっちで随分と活躍してるらしいけど調子に乗んなよ。じゃないと、お前死ぬぜ」
「わかってますよ、そんくらい。オレだって成長したんですから」
「お前、やっぱ天狗になってんな?これでもくらえ!」

今度はシンの脳天にチョップを喰らわすハイネ。当たった瞬間、シン声にならない声を上げながらうずくまった。

「よし、修正完了と。で、何だっけ?……レイからもう一度話してって」

そこから彼らはお互いの近況を話していった。ハイネにとって、士官学校時代から目に掛けてきた言わば愛弟子とも言うべき存在の彼らの武勇伝を聞くことは、地球に降りた時の楽しみの一つでもあった。

「……そうか、お前らも随分成長したな」
「やだ、ハイネったら。そんな言い方年寄り染みすぎですよ」
「ハハ、そうかもな。オレもまだまだお前らに負けてらんねぇな!……そうだ、今回お前らの隊に新しいパイロットが来るんだぜ」
「また来るんですか?」
「あぁ、何たってお前らは今となってはザフトのシンボルの一つ、だもんよ。簡単に落ちてもらっても困るんだよ。……それに、今度来る奴の腕は保障してやるぜ」
「ハイネ、あなたは会ったことがあるんですか?」
「あぁ。それに何度かシミュレーションもやってる。はっきり言っとくけどよ……今のザフトに1対1で奴に勝てる奴はいないぜ。アイツを倒すにはエース級のパイロット五人はいなきゃまず無理だな」

ハイネの言葉を聞いた三人は驚いた。何故なら、彼らは士官学校時代にハイネの実力を嫌というほど見せつけられてきたからだ。
彼ら三人が束になって勝てなかったハイネにここまで言わせるパイロットに、彼らは少し恐れた。そんな様子をじっと見ていたハイネは、何故か笑いをこらえていた。

「どうしたんですか、ハイネ?」
「嘘だよ、嘘。お前ら、そんな怪物みたいな奴がいたらザフトは安泰だよ。アイツでも、多くて四人が限度だろうな」
「……変わんねぇじゃん」
「うん?何か言ったか、シン?」
「いや、なんでもないです」
「ならいいや。それじゃ、オレ用事あるから……あ、お前ら今夜議長に食事に招待されてるからちゃんと身だしなみ整えて来いよ。じゃあ後でな」

ハイネが去ってすぐ、三人が絶句したのは言うまでも無かった。
19258:2007/02/09(金) 00:23:11 ID:???
シン達がデュランダルに招待され食事に行っている頃、ミネルバに2機のMSが搬送されていた。その為、ミネルバの技術スタッフ一同は多忙を極めていた。

「すいません……この艦の責任者の方はいらっしゃいますか?」

新しく搬入されたMSの最終確認をしていたマッドに、見知らぬ男から声がかかった。

「グラディス艦長ならデュランダル議長に招待されて食事に行ってるよ。何のようだい?」
「すみません、申し遅れました。この度、ミネルバ隊に配属されたキラ=ヤマトです。明日からミネルバに正式に合流する前に、一度挨拶に伺おうと思いまして」
「おお、それはどうもご丁寧に。って事は、アンタがあのMSのパイロットかい?」

マッドは言いながら1機のMSを指差した。そのMSはセカンドシリーズのMS達によく似た顔立ちをしていた。
キラはマッドを見ながら、クスッと笑って頷いた。

「ええ。少し難しいMSですけど、整備の時はよろしくお願いします」
「ああ、結構やっかいな奴だけどよ……ミネルバには他にもやっかいな奴が2機いるんだ。こんな、自分らの腕を試されるような場所は他にはねぇよ」

この人は職人気質な人だな、とキラは思った。それと同時にキラは自分がよく知ってる整備のプロを思い出す。
(マードックさんか……元気にしてるかな)
キラがそんな事を考えていた時、遠くから声が聞こえてきた。どうやら、食事に招待されていた彼らが帰ってきたらしい。

「レイ、お前の新型どんな奴なんだろうな」
「オレも楽しみだ。議長から期待されているのだと考えると、嬉しくてな」
「ルナ、お前も頑張んなきゃずっとザクのままだぞ」
「うるさいわね、シン。私ももしかしたら新型貰えるんじゃないかって、一瞬期待しちゃったんだから」

キラが見たのは仲が良さそうな赤服の三人と、その集団から一人外れている赤服の男だった。
そんな中、赤髪の少女が声を上げる。彼女の声は少し震えていた。

「レイ……もしかしたあれじゃない?」
ルナマリアが1機のMSを指差す。それはザフトの軍人なら誰もが知ってる機体だった。

「まさか……あれは」
その機体を見たアスランは真っ先に言葉を漏らした。何故なら、その機体は彼の親友がラクスに与えられた剣だったからだ。
「何故こんなところにあれが……」
アスランに続いてレイが声を出した。視界に映るその機体は、兄のように慕った男をこの世から葬った男の機体だった。
「フリーダム……!」
最後にシンが叫ぶ。何故ならそこには、彼から全てを奪った悪魔が立っていたからだった。

「僕の愛機……君達はお気に召さなかったみたいだね」
フリーダムを見て立ち尽くしていた四人に男から声が掛けられた。その男を見て、ルナマリア以外の人間は呆然とした。

「アンタはあの時の……」
「キラ……!?」

四人の目の前に現れたキラを見て、シンとアスランは思わず言葉を漏らした。レイはキラを前にしてただ動揺するだけだった。
そして、そんな彼らを見たキラは妖しい笑みを浮かべるだけだった。
19358:2007/02/09(金) 00:36:27 ID:???
投下終了です。
キラのMSはストライクと悩んだんですが、ストライクがでてくるSSはたくさんあるのであえてチャレンジして自由にしてみました。

二週に一回は投下できるよう頑張るつもりです。
194通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 00:58:20 ID:???
>>193
GJ!もしかして修羅場の予感?
フリーダム対フリーダムも楽しみだがシンが突っかかるかどうかがより気になる。
ミーアたん顔はあのままかな?

>>184-188
もしかしてバカピンクはラクスが自分の歌を歌えるようになるまでの物語になるのか?
(でもそれが同時に死亡フラグになりそう――)
195通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 00:58:34 ID:???
58氏GJ

第1話でキラが黒いところを見せたけど
ここの議長はとても白いですね。

ミーアをラクスに仕立てずに普通に仕事させてるw
フリーダムともう1機搬入された機体の正体が気になる。
本文からはよくわからんかったがジャスティス?
議長がキラとレイのために、わざわざレプリカを用意したと言う事かな?
物語が進んでいく内にミネルバのキラとAAのキラで自由vs自由対決とかあるのかな?

オリジナルが何時AAを抜けて、ギルと接触したかも触れられるのかな?

と言うかキラがあっさり実名名乗ったw

色々伏線が貼られている感じなので続きもwktk
196キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/09(金) 01:28:38 ID:???
>>119の続き

 アカツキがドラグーンを展開させた。ドラグーンがフリーダムを襲う。
 フリーダムはドラグーンから発射されたビームを全て避けきれなかった。
 画面上部に表示されているゲージが減った。
(実際の戦闘ならここで死んでいるな。所詮はゲームだな)
 キラはフリーダムが持っているライフルを使用した。
 ビームがアカツキを捉えた。だがしかし、ビームは着弾したと思うと、フリーダムに跳ね返ってき
た。
「!?」
 キラは跳ね返ってきたビームを避けきれず、さらにゲージを減らしてしまった。
「ビームを跳ね返した?」
(机上の空論でしかない物をゲームで再現するとは!)
「やってくれる」
 キラは遠距離をあきらめ、接近戦をする事にした。
 フリーダムが接近すると暁は後に下がった。
 シンはキラと一定の距離を保とうとしているようだ。
「お兄ちゃんの卑怯者!」
 外からマユの声が聞こえる。
「マユに嫌われた…」
 突然、アカツキの動きが止まった。シンはマユの言葉に動揺し、操縦桿から手を離してしまった。
 キラはこの隙を利用し、アカツキの接近しビームサーベルを振り下ろした。
 シンはキラの攻撃で我に返り、フリーダムから逃げるようにアカツキをその場から離れさせた。
 二人の攻防は長時間続き、やっとの事残り一発ダメージを与えたらどちらも終わるぐらい
にゲージが減った。
「兄の威厳のために負けられないんだ!」
 シンは叫んだ。シンのSEEDが弾けた。フリーダムの動きが手に取るようにわかる。
 キラは先ほどの攻撃より確実に変化したアカツキの動きに、呆れるばかりだった。
「こんなゲームにいつも以上の力を出してどうするんだ!」
 アカツキはフリーダムの攻撃を避けているだけで、接近しようとしなかった。
 キラはフリーダムに搭載されている全ての兵器を使用した。
 何本ものビームがアカツキを襲う。
 アカツキの周りを旋回していたドラグーンが、アカツキの元へと戻っていく。
「これでやっと終わる。やっと…」
 キラはやっと勝負が終わる事に、感動を覚えた。
 しかしゲームは一向に終わり気配がない。
 先程のビームの衝突で起きた煙が晴れると、そこには無傷のアカツキが佇んでいた。
「やっぱ俺って不可能を可能に…」
 とどこかで聞いた事あるような言葉を最後まで言い終わる前に、フリーダムの加速に気付
きその場から離れた。
「最後まで言わせてくださいよ」
「断る!」
197キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/09(金) 01:30:07 ID:???
 シンの願いを即座に否定する。
「ってそんな言葉一体どこから?」
 キラは興味が沸いてきたので、シンに聞いてみた。
「ネットですかね。エンデュミオンの鷹ファンサイトっていう所にあるらしいですよ。学校
の奴に聞いたんで詳細は分かりませんが…」
 と二人が話していると突然、フリーダムのゲージが減った。
 キラが辺りを見回すと、ドラグーンに取り囲まれたいた。
 フリーダムはアカツキのドラグーン攻撃を避けきれず、直撃した。
 ゲージがすべてなくなり、キラの負けが確定した。
 画面には大破したフリーダムが、閃光あげ爆発した。
 キラはその爆発の大きさに肩を落とした。普通のMSとは違う爆発だった。
 その爆発はアカツキをも巻き込んでいた。
「ここまでしなくても…。しかし実際ニュートロンジャマーがなかったら、こうなっていた
かも知れないのか」
 キラがシミュレータから出ると、マユが近寄ってきた。
「次は私と勝負してください」
 マユの言葉にキラは表情を少し引きつらせた。
「お兄ちゃんと勝負して私とはしてくれないんですか?」
 目に涙をためているマユを見て、キラは断れきれず勝負する事にした。
「先に行って待っているからね」
 と言うとキラはシミュレータへと戻った。
「マユ…。まさか本気を出すんじゃないだろうな?」
 いつに間にかシミュレータから出たシンが、マユに聞いた。
「もちろん手加減なんかしない」
 その言葉にシンはため息をつく。
「あの人は、お前がこのゲームのネットランキング一位って知らないだろう?」
 マユはシンの言葉に頷いた。
「お兄ちゃん、ダメかな?」
「かまわない。むしろボコボコにしてこい」
「お兄ちゃん、まさか嫉妬しているの?」
 シンはマユの的確な攻撃を貰いながらも、顔には出さずに否定する。
「そんな訳ないだろう」
 マユはシンの鬼気せまる表情から逃げるように、シミュレータへと向かった。
 マユは座席に座ると、いつも使っている機体を選んだ。
 マユが選んだのはメビウスゼロであった。
 キラはストライクを選ぶ。ステージは宇宙のようだ。
 二人の戦いはきって落とされた。
 二人の戦いはマユの勝利であっけなく終わった。
 シン達家族と、キラは夕方まで遊園地で遊んだ。
 キラは夕方、シン達と別れモルゲンレーテへと向かう。

――――――

 今日はとても短いです。ここまでです
198通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 03:08:07 ID:???
キラーズ氏GJ

シミュレーターで種割れするシンにワロス

シンが実際にパイロットになった時が楽しみ

マユのチョイスがメビウス・ゼロとかしぶ過ぎw

兄妹揃ってやり込んでるなぁ。これも博士の陰謀だな。

キラの諜報活動とプランとクライン邸での3人目覚醒をwktk
199通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 03:26:56 ID:???
GJです。

ただ
>(机上の空論でしかない物をゲームで再現するとは!)
ここがちょっとよくわからないのですが、机上の空論をゲームで再現って別に問題ないのでは?
200勝手に投下(続き無し):2007/02/09(金) 12:53:42 ID:???
―ずっと思っていた―
 ―僕らは、こんなところに居ていいのかと―
  ―あれで、正しかったのかと―

『MSが来ている、シェルターが破られるのも時間の問題だろう』

―あの時、僕が違った答えをしていたら―

『…今は、戦うしかありません』

―僕は…―


『カガリが拉致された!?』

―たとえ僕が望ま無くても―

『あぁ、しかも奪い去ったのはフリーダム どうやら君の友達が乗っているみたいだ』
『そんな…』

―世界は動いていく―

『…僕が止められなかったから…あの時、ラクスを僕が止められれば』
『それは違う、彼女は決して止まらない 自らが絶対に正しいと思っているんだからね』

―それは決められた脚本のように、修正を加えて―

『これで同盟を結ばざるを得なくなったわけだ…カガリが居ないんじゃどうにもならない』
『ラクス…ラクス=クラインはそれを望まないでしょうね』
『あぁ、そうだろう きっと邪魔をしてくるだろう…フリーダムを使ってね』

―それが世界が望んだことなら…僕は…―
201勝手に投下(続き無し):2007/02/09(金) 12:57:51 ID:???
『僕に行かせてください』
『え?』
『僕がラクス=クラインを止めて、カガリを助け出してきます!』
『…何故君が行く必要がある?』
『確かにあの時止められなかったかもしれない…でも僕には、彼女を止める責任があります!』

「ミネルバからMSが発進!」
「奴らは必ず来る!それまで戦力は温存しろ!」

『これは…?』
『オーブもムラサメやアストレイの開発だけをしていたわけじゃない、って事さ』
『その装備…エールの発展系ですか?』
『うん 前大戦のストライクに習って作った、いわばオーブ版ストライクといったところかな?』
『PS装甲搭載機…この金色の盾は?』
『これはビーム反射装甲『ヤタノカガミ』 正式にはPS装甲じゃなくそれを全身に搭載するはずだった』
『だった?』
『これの正式版はカガリの専用機になる予定だったからね』

<新たな機影を感知! フリーダムです!>
「ラクス…やはり君は…」
<進路クリア!どうぞ!>

―僕は…戦う!―

「キラ=ヤマト いきます!!」



こんな妄想
俺にはここまでが精一杯…そしてスレ汚しすまん…
202通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 13:15:03 ID:???
>>200-201
GJ
単発なら仕方がないが続きが読んでみたかったりw
203通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 14:42:25 ID:???
どの職人氏の作品でも
「ラウ・ル・クルーゼ」「レイ・ザ・バレル」vs「キラ・ヤマト」の関わりの描写は
物語の重要な要素みたいだね。
204通常の名無しさんの3倍:2007/02/09(金) 19:30:20 ID:???
投下乙です

 単発なのがちと勿体無いくらい主人公してるキラですね。
205通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 10:13:35 ID:???
う…なんだ…叩かれるまくるとばかり思っていたんだけど(汗
そんな>>200-201です
これ以上続けないのはセルフコントロールです(過去多数の失敗を犯してますw)

続きは…とてもおこがましいのですが、誰かお願いします、としか

取り敢えず設定を置いておくと
・孤児院襲撃事件後、キラがラクスの言葉に従わなかった
・かわりに他の人物をラクスが駒に(最有力がアスラン)
・フリーダムでカガリを拉致
・オーブ出兵軍にキラが参戦、ラクシズの襲撃と戦う
こんな感じで まぁ、こんなんに付き合ってくれる心優しい人はいるかどうか…
206通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 12:32:10 ID:???
>>166
カガリに怪しい描写あったっけ。
どっちかってぇとアスランの方が怪しくない?
無印一話で数年会わなかったキラの顔一発で見分けたのに、至近距離からケイの顔見ても無反応だし。
カガリは一目見ただけで怪しんだのに。
ラクスにいたっては一番付き合い長くてナタリーがラクスだった頃を知ってるはずなのに何の疑念も持ってないし。
207通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 12:53:21 ID:???
凸の場合思い込んだら一直線な上に視界が狭まるから、、、
208通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 14:15:25 ID:???
592氏の作品は
アスランのオリジナルもイージス自爆で死んだという設定かもしれないね。

ラクスのクローンにしてみれば
戦闘人形としてのキラとアスランは必要だろうしな。
209通常の名無しさんの3倍:2007/02/10(土) 18:04:45 ID:???
二人目ラクス、恐ろしい子…!!
210592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/10(土) 20:55:28 ID:???
>>165
おお!ナタリー専用ジンは、一応羽だけがピンク色なんですが、多分ザクのビームライフルを装備させればいいと思います。

というか、正直アスランを凸にするかアスランにするか迷っているところです。あと、二人目(ケイにあらず)も。
キラとかカガリとか三人目は決まっているんですけどねぇ…。なるべく、ドロドロした感じにはしないようにと思っています。
211キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/11(日) 01:06:11 ID:???
>>197の続き

 エリカ・シモンズは深夜までMSのOS開発の作業に追われていた。
 エリカは気分転換にモルゲンレーテの中を散歩する事にした。
 中枢部の廊下でエリカはキーボードのキーを打つ音を聞いた。
「誰かいるのかしら?」
 エリカは音のする方へ向かって歩き出した。
 音の発生源は、中枢部のコンピュータがあるすぐ横の部屋だった。
 だがその部屋には明かりがついていない。
 エリカがその部屋に入ると、中には少年が端末を操作していた。
 少年はエリカが入ってきた事に全く気がついていない。
 エリカは部屋の電気をつけると、端末を操作していた少年がエリカの方へ振り向く。
 エリカは少年の姿を見て驚いた。
「キラ君!? どうしてここに?」
 エリカ・シモンズは、いないはずの少年がいる事に驚きを隠せなかった。
「どうしてここに? どうしてなんでしょう?」
 エリカはキラに質問を質問で返された事にため息をついた。
「先日の戦闘であなたがMIAになっていると聞いたから…」
「MIAにですか…」 
 キラはエリカの言葉で、もう一人の自分がどうなったかある程度想像はついた。
「それでアークエンジェルは?」
 キラはエリカにアークエンジェルがどうなったか聞いた。
 エリカの情報によると、どうやらアークエンジェルは無事のようだ。
「若いっていいわね」
 エリカは、からかうようにキラを見た。ふとエリカはキラが操作していた端末を覗いて見た。
 キラが操作している端末を見て、エリカはキラが今何をしているか理解した。
「あなたの欲しい情報は何かしら?」
 とエリカはキラに単刀直入に聞いた。
「先日、ザフトがここに潜入したのは気付いていますか?」
「一応ね。その事に気がついたのは昨日だけど…どうしてそんな事を?」
「その時に手に入れた情報の中にあったドラグーンシステムのデータを全て。そのかわりに
こっちも面白い情報を教えますよ」
 キラはエリカの質問に答えず、キラは話を切り出した。
「わかったわ」
 エリカは端末を開くと、ドラグーンのデータを取り出しキラに渡した。
「どうしてこんな物が必要なのかしら?」
「お土産ですかね」
「これがお土産? そんな事よりあなたの面白い情報っていうのは?」
「これを」
 キラは胸ポケットからメモリースティックを取り出し、エリカに渡した。
 エリカはメモリースティックの内容に驚愕する。
「ジェネシス…」
「知っているんですか?」
「噂程度にね。しかしこの情報は一体何処から?」
212キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/11(日) 01:07:17 ID:???
 エリカはキラを問い詰める。
「こんな正確な情報が比較的簡単に手に入る所は限られてきます」
 キラの言葉にエリカはこの情報源が何処か気付いたようだ。
「この情報は、ジェネシスが使用されるまで誰にも言わないでください」
「どうして? こんな物地球に撃たれたら終わりなのよ」
 エリカは声の大きさにキラは耳を塞ぐ。
「ブルーコスモスに知られたら、この戦争は終わりが来ないかもしれないんですよ」
 エリカは何も答えない。
「アークエンジェルで久方振りに会った時、全く私達に反応しなかったわね。まるで初めて
会ったような対応したでしょ」
 エリカは話の内容を突然切り替えた。
「からかったんですよ」
 キラはエリカに言い訳のような言葉を発した。
「って言うのは冗談よ」
「…」
 キラは言葉が出なかった。
「悪いと思ったんだけど、勝手に貴方の事を調べさせてもらったわ。私の後についてきて」
 と言うとエリカは部屋を出ていった。キラも後についていく。
 エリカは自分の研究室へ向かう。部屋に戻ると、ついてきたキラにある紙を渡した。
 キラは渡された紙を一通り眺めた。
 紙を眺めているキラにエリカは話しかけてきた。
「そこに書かれている事は本当かしら?」
 キラが手に持ってきた紙にはたくさんの文字が書かれていた。
 キラは何も答えない。
「その事は、貴方のご両親には黙っといてあげるから手伝って欲しい事があるのよ」
「なんですか…」
 睨み付けるようにキラはエリカを見た。
「オーブのパイロットを戦闘で使えるまで指導して欲しいのよ」
「戦闘でですか?」
 エリカは頷いた。
「わかりました」
「しかし大人数は指導できません」
「それもそうね…」
 キラの言葉にエリカは納得したかのように頷いた。
「それならシミュレーション上位三名を指導してもらいましょう」
「それなら何とかなります」
「時間が無いから今晩から始めたいけど、MSの準備などがあるから明日の朝ここにきて」
 キラは頷くと、エリカに別れの挨拶を言い、モルゲンレーテを後にした。
 ホテルに戻ったキラはベッドに倒れこみ、すぐさま眠りへと落ちていった。
 次の日キラは、モルゲンレーテのエリカの所へと向かった。
「おはよう」
 とエリカはキラに挨拶をした。キラも挨拶をした。
213キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/11(日) 01:08:14 ID:???
 エリカは机の引き出しを開けると、何かを取り出しキラに投げつけた。
 キラが受け取ったの何かの入れ物だった。キラは其れを開けてみると中にはサングラスが
入っていた。
「これは何ですか?」
 キラの質問にエリカは簡潔に答えた。
 キラがここにいるのは、可笑しいという事なので其れを使えという事だ。
 サングラスを掛けたキラを見たエリカは、突然笑い出した。
「その身長にそのサングラスあっていないわね。もっと身長があったら格好よかったのに」
 キラはエリカから渡されたサングラスを、そのままエリカに投げ返したい衝動に駆られた。
 そんなキラを見てエリカはさらなり追い討ちをかける。
「そのサングラス、世界的有名メーカーの物だから高いわよ」
 キラの動きが止まる。
「いま、そのサングラスしかないから…」
 キラはエリカの言葉に絶句する。エリカを見ると笑いを我慢しているようだ。
「冗談はそのくらいにして、私についてきて」
 エリカはモルゲンレーテの地下へと向かう。
 目的の場所に着いたのかエリカの足が止まる。
 目の前には扉があり、二人はこれ以上進めないようだ。
「この先が目的地の場所よ。サングラスはするように」
「これをする必要あるんですか?」
「念のためよ念のため。たまにカガリ様がここにくるのよ?」
「オーブの獅子の娘ですか」
「そうよ。それで準備はいいかしら?」
 キラはエリカに言われた通りにサングラスをする。
「ばっちりです」
 エリカはIDカードを取り出すと、目の前の扉についてある、カード挿入口に差込み、暗
証番号を打ち込んだ。
 目の前の扉は軽快に開いた。
 キラが扉をくぐると、目の前にMSが立ち並ぶ光景が映った。
「M1アストレイ」
「あなた知っているの?」
「常識ですよ」
「どんな常識よ?」
 エリカは溜息をついた。
 立ち並んでいるM1アストレイの中の一機が動き始めた。
 エリカたちの前まで来るとM1アストレイは動きを止めた。
 コックピットハッチが開き中から女の子が降りてきた。
 女の子はエリカの元へと駆け寄る。女の子は紺の髪とメガネをかけている事がキラの位置
からでもわかった。
 二人は何を話しているようだが、キラの位置からでは聞き取れない内容だ。
 話し終わると、女の子はその場を後にした。
 エリカはキラの方へと振り向いた。
214キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/11(日) 01:09:31 ID:???
「今から模擬戦をするから準備して。あなたのMSは目の前にある奴よ」
 キラは目の前のM1アストレイに乗り込んだ。
 M1アストレイに乗り込むとエリカから通信回線で指示された場所へと向かう。
 その場所はモルゲンレーテの外に出た所にあるようだ。
 モルゲンレーテの外に出ると、そこにはキラが乗っている同じMSが三機待ち構えていた。
 エリカから通信が入り、模擬戦を始めるように命令が下った。
 相手から通信が入る。
「誰だか知らないけど手加減はしないから」
 そういうと三機のM1アストレイが一斉に動き始めた。
 一機が接近戦を仕掛けてきた。一気にキラの懐まで加速し、殴るようだ。
 キラはその攻撃を十分に引き付けて避けようとした。
 避けられると思い操縦桿を操作した。だがキラの思い通りに動かず、一瞬の硬直の後M1
アストレイは避ける動作を開始した。その時には、間に合わず相手攻撃を受けてしまった。
 キラは振動に耐えながら、エリカに通信を開いた。
「模擬戦は中止だ」
 キラは通信を切るとすぐさまモルゲンレーテの地下ドックへと戻る。
 後ろのほうで女性の声がするがキラは無視する事にした。
 キラは地下ドックに戻ると、すぐさまコックピットに備え付けてあるキーボードを探し始
めた。
 キーボードを発見するとMSのOSを書き換え始めた。
 書き換え始めたキラは、OSに使用されている複雑なプログラムに頭を悩ませた。
「どうかしら?」
 エリカは心配になったのかキラの様子を見に来た。
「はっきりいって、このプログラムは確かに最高ですけど、無駄な部分もありますね」
「それ貴方が作ったのよ」
 エリカの言葉にキラは少し驚く。
 キラはモニターに表示されているプログラムに目を通す。プログラムの一部分は確かにキ
ラの癖が残っていた。それを見たキラはこれは誰が作ったの想像がついた。
 キラは丸一日かけてOSを書き換えた。
 OSを書き換えた頃にはもう夜になっていた。
「当分、コンピュータはさわりたくないな…」
 キラはエリカの研究室で休んでいると、エリカが部屋に入ってきた。
「今から、シミュレーションをやって欲しいのだけど…」
「別にかまいませんよ」
 キラの答えには覇気が感じられなかった。
 それもその筈だ。朝からコンピュータを睨めっこをし、それが終わるとシミュレーション
が待っているのだから。 
 地下ドッグに着くとキラはシミュレーション装置に乗り込んだ。
 キラはM1アストレイを選ぶ。
 相手は三機のM1アストレイのようだ。
 三機は一向に動こうとしないので、キラから動くことにした。
215キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/11(日) 01:10:44 ID:???
 キラはビームライフルを三回使用した。三つのビームは三機を狙う。三機はビームを避け
るためその場を散る。散ったM1アストレイでキラから一番近いのに向かってキラは加速し
た。キラが接近に気がついたM1アストレイは、ビームライフルを構えた。
「その選択は間違っている」
 相手に言い聞かせるように、言葉を発した。M1アストレイがビームライフルを使用する
動作を起こすと同時に、キラは相手のライフルを持つ腕をビームサーベルでなぎ払う。体勢
を崩したM1アストレイをもう一機のM1アストレイに向かって蹴り飛ばした。蹴り飛ばし
た方向にいたM1アストレイが蹴り飛ばされM1アストレイを助けるために近づく。それを
狙ってキラはビームライフルで二機を貫いた。と同時にキラのビームライフルが爆発し、ラ
イフル持っていた腕ごと巻き込んだ。
「終わる間際に、ライフルに向かってバルカンを撃ったのか」
 キラは先程の行動に感心していると、コックピットの衝撃が走った。
「オーブのシミュレーション装置もザフトと同じぐらいの性能があるのか」
 キラはオーブの技術力の高さに感心した。
 キラがM1アストレイの体勢を整えた瞬間、相手のビームサーベルがコックピットを狙っ
ているのを確認した。
 キラはM1アストレイの残った腕を使いビームサーベルを構えた。
 キラは相手のコックピットに向かってサーベルを突き出したが、相手は其れを片腕を犠牲
にして避けると、残った腕で、キラのM1アストレイにコックピットめがけてサーベルを振
り下ろした。
 三対一で勝負をしたがキラはギリギリの差で負けた。
 いやキラは自分がこの三機に負けるとは、これぽっち思っていなかったようだ。そのせい
でキラは油断をしていた。その油断のせいでキラは負けてしまった。
 キラはシミュレーションから出ると、近くある椅子に腰掛けた。
 今までしていたサングラスを外すと、目頭を抑えた。
 シミュレータ越しに女性の話し声が聞こえる。
 先程まで戦っていたパイロットは全員女性のようだ。
 女性達はエリカに連れられその場を後にした。
 10分ぐらい足っただろうかエリカがキラの元へ帰ってきた。
「今日はどうもありがとう。また明日お願いするは」
「いつまで続くんですか?」
「さあね」
 キラはエリカの言葉に溜息をついた。
「今回の勝負で、自分の悪い所も判ったような気がします」
「なにか得るものがあったのね」
「はい。今日はこれで失礼します」
 キラはエリカに挨拶をすると、モルゲンレーテを後にした。 

第8話完 
第9話へ続く
216通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 02:10:06 ID:???
キラーズ氏GJ

モルゲンレーテザル警備だなw

諜報活動しつつ情報と訓練のバーター取引か。

いよいよ三人目覚醒?
217通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 02:43:12 ID:???
キラーズ氏GJ!乙。

オリジナルキラの会話が大人びててイイ!!
やっぱりオリジナルには普通の少年部分あり、黒い部分あり、人間味がある…。
エリカとの関係がどう影響するのか楽しみ
218通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 19:59:56 ID:???
>>592
了解しました、ナタリー機はいろいろ改造されているそうなんで、ハイマニューバ2で作ってます。

アスランが気づいたかどうかの描写が無いのはまだどちらにするか決まってないからだったんですか。
206書いたときは気づいた/気づかないの描写の違いが今後二人の付く陣営の違いとクローンかオリジナルかの
伏線になってるんだと見てましたんで凸で現ラクス側に一票入れときます。
219キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/13(火) 00:15:37 ID:???
第9話

 キラがモルゲンレーテでMSのパイロットに戦闘の指導をして数日が経った。
 シミュレーション上位三人が女性だったのでキラは驚きを隠せなかった。
 最初の頃は、キラが圧勝していたが、ここ最近は違っていた。
 キラは三人の弱点、癖を紙に書き、エリカを通して三人に渡していた。
 三人はすぐさまそこを改善し、戦いに応用していく。キラも三人のお陰で操縦技術が上が
っていく。
「三人でうまく連携を取れば、ザフトレッドを倒せるかもしれない」
 とシミュレーションが終えたキラは、エリカに率直な感想を言った。
「ザフトレッドってたしか、ザフトの士官学校での成績トップ3に与えられる新人兵の事か
しら?」
「たしかザフトレッドはもう少し多かったような気がするが、そんな所だ…」
「どうせ戦場に入る前の成績でしょ? 当てになるのかしら?」
「例えが悪かったな…。それなら…」
 キラは今まで戦った有名な相手を記憶の中から探した。
「サーペントテールの叢雲劾ですかね。一度戦った事があるんですが、その人となら三機で
良い勝負ができると思います。ま、勝てないと思いますがね」
「貴方はいつ、サーペントテールと戦ったのかしら?」
 エリカが興味津々にキラを見ている。キラは簡単な説明をエリカにした。
 エリカの顔つきが突然変化した。
「貴方と戦った叢雲劾は本当に本人なの?」
 キラはエリカの言っている意味が解らなかった。
「どういう意味ですか?」
「その日は、ここモルゲンレーテにサーペントテールはジャンク屋と一緒にいたのよ」
 エリカの答えにキラは、驚く。
「そうですか…。どっちにいる叢雲劾が本物かわかりませんが、どっとも叢雲劾と名乗って
も可笑しくないぐらい強いって事ですよ。今の三人はそのぐらい強いと思いますよ」
「でも一人なら、貴方にも負けるって事よね?」
 エリカがキラを見る。突然キラは笑い出した。
「確かに一人なら僕にも勝てませんが、普通たった一人で戦場に行きますかね? 一緒に行
動する仲間がいると思いますがね…」
 とキラは自分で言いながら、今まで自分がやってきた事との矛盾がある事を感じていた。
「所詮、餅は餅屋か…。私とは分野が違うから、貴方が言いたい事半分は理解していないわ。
ま、これからもよろしく頼むわよ」
 キラはその日の作業が終わり、ホテルへと戻った。
 キラは毎日モルゲンレーテへと向かい、三人を指導するのだった。
 しかしある日を境に、エリカからキラはお払い箱にされた。
 キラはホテルで、ぐーたらな日々を送っていた。
 時にはキラはシン達の元へ向かい、ある時はギルバート・デュランダルの元へと向かって
いた。

220キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/13(火) 00:16:37 ID:???
 シンやデュランダルが用事でいない時は、端末を操作し連合にハッキングし、極秘データ
を閲覧していた。キラは連合のデータの中で新型のMSを開発していることを知った。その
三機はXナンバーを元に新たに進化させたものらしい。
「オーブにいるならそんなに関係ない事か…」
 キラは連合の新型MSに殆ど関心を示さなかった。
 さらに探っているとあるデータを発見した。
「エクステンデッド計画と大型MA開発計画?」
 キラはこの二つが気になり、データを閲覧しようとした瞬間、端末が強制終了した。
 端末を起動させようと、電源を入れるが全く反応しない。
「ウイルスか!してやられた」
 などとキラがそんな毎日を過ごしていたある日、オーブは連合軍から宣戦布告を受けた。
 ホテルで泊まっている人々は荷物を整え、オーブから出て行く。
 人々も我先にと身支度を整え、オーブを後にしている。
 キラはホテルでその事に関するオーブ代表による会見をテレビで見ていた。
 テレビを見ていると、突然部屋の電話が鳴る。
 電話の相手は、モルゲンレーテのエリカ・シモンズであった。
「どうかしたんですか?」
「テレビ見ていたわよね?」
 エリカの問いにキラは肯定した。
「オーブのためにMSに乗って」
 キラの顔の表情が変化した。
「何故僕が?」
「あなたしかいないのよ」
「…断ると言ったらどうします?」
「それならアークエンジェルの為にと言ったらどうかしら」
 キラは受話器を落としそうになる。
「なぜここでアークエンジェルが?」
「今オーブにいるのよ。貴方はそれでいいのかしら? お友達が乗っているんでしょ?」
「…わかりました。今からそちらに向かいます。」
「ありがとう」
 エリカからの電話が切れると、キラは急いでモルゲンレーテへと向かう準備をする。
 キラがホテルから出ようとすると、支配人が出てきた。
「お客さま、今から何処に行かれるのですか?」
「避難しようと思ってね」
 キラの口から出た言葉はでまかせだ。そうでもしなければ、ホテルから出しては貰えなか
っただろう。
「支配人さんはどうするんですか?」
 とキラはホテルの支配人に聞いてみた。
「私は、このホテルに残ります。先代から受け継いだホテルなので、最後までここにいよう
かと…」
221キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/13(火) 00:18:16 ID:???
 キラは支配人の言葉を聞き、ここから逃げるようにとは言えなかった。
 気まずい思いになりながらも、キラはホテルを後にした。ホテルから出るとき、支配人の
挨拶が耳に聞こえた。 
 キラがホテルの外に出ると、ホテルの前は人っ子一人いなかった。この付近にいる住民は
殆ど非難しているようだ。キラがモルゲンレーテへ向かうため、ホテルにあるバイクを使わ
せてもらうことにした。
 キラがバイクでモルゲンレーテへ向かっていると、道路の反対車線で見知った一団がいた。
 それはシン達家族であった。
(今からならギリギリで出航する船に間に合うか…。何とか間に合ってくれよ)
 キラはシン達家族や、ホテルの支配人等、今まで見知った人物ができるだけ死なない為に
自分も力が役に立つなら、役に立てようと思うのであった。
 モルゲンレーテへ近づくにつれ、連合とオーブの戦いが激しくなっていく。
 走っているすぐ上を、爆発音が響く。
 キラが上空を見上げると、M1アストレイが爆発し、その破片がキラ目掛けて落ちてくる。
 キラはバイクを加速させ、その破片を避ける。しかし全てを避けきれずに小さな破片がバ
イクに直撃した。バイクは体勢を崩し、転倒する。キラはバイクから投げ出された。
 キラはアスファルトには落下せず、地面に叩きつかれた。
 何とかキラは立ち上がり、
「両親から特訓受けていたから、軽傷ですんだか。思い出すだけで泣けてくる。厳しい訓練
だった。」
 とキラは、昔の事を思い出しながらバイクの元へ向かう。
 バイクは何とか動くようなので、キラはバイクに跨りモルゲンレーテへと向かう。
 モルゲンレーテへ着いたキラは急いで、地下ドッグへと向かう。
 そしてM1アストレイへ乗りこみ戦場へと駆け出した。

――――――――――

今日はここまでです
222通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 01:54:56 ID:???
やべ。アスカ家に死亡フラグktkr・・・・・・・GJです
223通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 03:26:14 ID:???
GJ。
劾の件も何とか折り合いついたようで……。
さて、アスカ一家はどうなるのやら。
224通常の名無しさんの3倍:2007/02/13(火) 11:37:12 ID:???
お払い箱になったのは、もう1人のキラが来たからなのかな?
とすると、アスカ家はフリーダムの砲撃であぼんと。
もう1人のキラの所業に、オリジナルキラは苦悩する日々が待ち構えている、と。
うわぁグズグズの人間ドラマが繰り広げられそう
225キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/14(水) 22:34:25 ID:???
>>221の続き

 戦場はオーブが圧倒的な不利な状況であった。
 キラがストライクダガーと交戦をしていると、突然通信回線が開く。
 内容は、この先には市街地があるので、海岸線へと連合を追い詰めて欲しいとの事だ。
 オーブ軍は市街地から、海岸線へと連合を追い詰め始めた。
「オーブのMSだけで連合を退けているのか?」
 キラはオーブのMSの動きに感心した。
 いやオーブ軍ではできなかっただろう。キラはオーブ軍の中にアークエンジェルの姿を発
見した。
 アークエンジェルから、ストライクが出撃する。続けてもう一機のMSが飛び出した。そ
のMSにキラは驚きを隠せなかった。
「あれはフリーダム!どうしてここに!?」
 しかしキラはフリーダムにかまっては入られない。M1アストレイを動かしキラはアーク
エンジェルの甲板の上に着陸した。そしてアークエンジェルへ向かってくるミサイル、連合
のMSを一機一機確実に落としていく。だがキラだけでは全ては撃墜できない。何発かは確
実に、アークエンジェルへと向かってくる。
 キラはアークエンジェルに向かうミサイルに向かってビームライフルを放つ。
 だがしかしキラが放ったビームは一発もミサイルに当たらない。
「あたれ!あたれ!あたれぇぇぇ!」
 キラは動揺しているのかライフルの照準がずれているのに気がつかない。
 アークエンジェルに当たると思われたミサイルは、何者かによって撃墜された。
 それはバスターの長距離ライフルであった。
 バスターの援護射撃に、キラは気持ちが楽になっていくのを感じた。
「アークエンジェル、早く其処から離れるんだ!」
 とバスターから通信が入る。
「バスターがアークエンジェルに?」
 キラは今まで敵だったバスターが、アークエンジェルを援護している事に正直驚いた。
 バスターがここにいるので安心だと思ったキラは、アークエンジェルから離れ海岸線へと
向かう。海岸線へ向かう途中、キラは連合の襲撃を何度か受けた。だがキラはその襲撃をう
まくやり過ごしていく。
「上から貴方を狙っている!」
 突然の通信にキラは驚くが、その言葉を信じM1アストレイを加速させた。
 先程までキラがいた場所に、一条の光が貫く。上空から攻撃のようだ。
 キラはビームが飛んできた方向を見ると、そこには連合に新型カラミティがいた。
「あれは連合の新型…」
 キラは先日見た連合のデータを思い出す。
 キラの周りいつの間にか三機のM1アストレイがいた。
 カラミティがキラ達の所に胸からのビームスキュラのを放つ。
 四機は四散し、ビームを避けた。キラは三機の操縦技術が他のオーブ軍より飛び抜けてい
るのに気付き、三機のパイロットが誰なのか想像がついた。
 キラは三機のM1アストレイに通信を開く。

226キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/14(水) 22:35:30 ID:???
「貴方達は、別の仲間の援護に行ってください」
「一体何を言っているのよ」
「貴方一人で何ができるのよ」
「死ぬき?」
 三者三様の言葉が返ってきた。
「シミュレーションで貴方達が圧勝していたら、その命令を聞こうと思えるんですがね」
 キラの言葉にM1アストレイのパイロット達は、キラが一体誰なのか気付いたようだ。
「あなたはもしかして…私達の相手をくれた人? てっきり年上かと思っていたけど声から
すると私達と同じぐらいみたいだけど」
「たしかに貴方なら何とかするかもね」
「死なないように…」
 三人はキラを心配しながらも、その場を離れた。
 M1アストレイとカラミティ一対一になった。
 カラミティはM1アストレイに向かって突進してきた。
 キラはカラミティの攻撃を避けきれず突進をまともに受けてしまった。
「ぐぅぅ」
 キラはコックピットの操縦桿に頭を打ち付けた。頭を打ち付けたせいで意識が一瞬とんだ。
 意識を取り戻し、モニターを見ると目前にカラミティが映る。キラは操縦桿を握り、M1
アストレイを動かすが、カラミティの攻撃から逃れられない。突然カラミティが後方に飛んだ。
 M1アストレイの前にフリーダムが降り立つ。
 その時キラはカラミテの向こう側で、シン達家族を見た。その時、キラは自分の現在地を
確認した。そこはオーブの港へと続く道が通る山の近くだった。
 フリーダムはカラミティに向かってレールガンを使用した。
「やめろ、やめろ、やめろぉぉぉ」
 キラは目の前のフリーダムに叫ぶ。
 キラの言葉が聞こえないフリーダムは、カラミティに向かってレールガンを使用した。
 カラミティはその攻撃を避けると、フリーダムに接近しビームサーベルを振り下ろす。
 フリーダムはカラミティの攻撃を避けると、アークエンジェルがいる方向へと向かって加
速し、その場を離れていく。
「貴方も其処から離れるんだ」
 フリーダムの通信が聞こえてもキラはその場を動こうとしない。
 キラはモニター越しに、シン達家族が戦闘に巻き込まれた場所を見ていた。
 煙が晴れると其処には、マユが倒れていた。
 キラはコックピットから飛び降りると、マユに駆けよる。
 キラはマユに呼び掛けたが、ほとんど反応しない。
「お父さん…お母さん…お兄ちゃん」
 マユは目の前の光景に耐え切れず意識を失った。
 倒れたマユを抱き抱えると、キラはその場を離れアストレイに乗り込んだ。
 キラはアストレイを市街地へと向かわせた。
 市街地にアストレイを着陸させると、アストレイから降りキラはある家へと向かった。
227キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/14(水) 22:38:39 ID:???
 キラはその家の扉を勢いよく開けた。開けるとキラの見知った人物がいた。
 それはキラの母親だった。
「キラ…どうしたの?」
 キラはコックピットにいるマユの事を話した。
 マユの事を聞いたキラの母親は、キラにマユを家の中まで運ぶように言う。
 マユをベッドに寝かせたキラは、リビングへと向かう。
「あの子の事お願いします」
 とキラは両親に言うと家を出て、MSに乗りこむ。
 そしてキラは戦場へと向かった。キラのモニターにカラミティと戦っているフリーダムに
映る。
 フリーダムは連合の新型の相手をしているようだ。カラミティとフォビドゥン、レイダーだ。
 三機は確実にフリーダムを追い詰めていく。レイダーがフリーダムにとどめの一撃と思
われるビームサーベルを振り下ろした。だがしかしフリーダムを腕一本とスラスター一枚を
犠牲にしつつも振り下ろされたビームサーベルを避けた。フリーダムは体勢を崩し地面へと
降り立つ。そこへ連合のストライクダガーがフリーダムにビームライフルを構える。だが一
向にストライクダガーのビームはフリーダムを貫かない。いきなりビームライフルを構えて
いたストライクダガーが爆発した。真紅の機体がフリーダムを守るように上空から降りてき
た。
「あれはジャスティス!?」
 キラは、ジャスティスがこの戦場に乗り込んできた事に驚きを隠せなかった。
 連合の三機は突然乱入してきたフリーダム、ジャスティスに攻撃を仕掛けた。
 フリーダムとジャスティスは見事な連携で、三機の攻撃を避け、反撃を始める。
 決着がつかず、数分たつと連合の新型三機突然戦線を離れた。
「あの三機が撤退しただと?」
 キラはなぜあの三機が撤退したのか納得できなかった。
 撤退したと同時に、連合の艦隊から信号弾が撃たれる。
「撤退をしていく?」
 キラはアストレイの中から撤退していく連合軍を見つめる。
 フリーダムとジャスティスが互いを見るように立っていた。
 キラはモニターに映るフリーダム、ジャスティスに向かってビームライフルのトリガーを
引いた。
 フリーダムとジャスティスはM1アストレイのビームを何とか避けると、攻撃を仕掛けて
きたM1アストレイに通信を入れた。
「一体何をしたいんですか!」
 キラはフリーダムからの通信を無視し、フリーダムに加速した。
 キラは加速している途中でも、ジャスティスをビームライフルで牽制する。
 フリーダムの横にいたジャスティスは、M1アストレイの攻撃でフリーダムから離れた位
置へとさせられていく。
 フリーダムの姿がどんどん大きくなる。キラはビームライフルを捨てると、サーベルに持
ち替え、フリーダムに襲い掛かった。
228キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/14(水) 22:39:47 ID:???
 フリーダムはM1アストレイの攻撃を避けると、残っていた腕でサーベルを構える。
 ジャスティスからM1アストレイに通信が入る。
「あれは敵じゃ…」
(黙れ!)
「攻撃をすぐに止めてください。あれは仲間です」
 ジャスティスのパイロットの言葉が別の声で遮られた。
 アークエンジェルからの通信だ。聞き覚えがある声だがキラはそれを無視した。
(黙れ!あれは、あれは、あれは!)
 キラはフリーダムのコックピットに狙いをすまし、ビームサーベルを突き出した。
 フリーダムはバーニアを吹かし後方に下がる。フリーダムが後方に下がったせいで、キ
ラが操縦するM1アストレイのビームサーベルは空を切った。フリーダムはすぐさま反撃に
移り、キラのM1アストレイの四肢を切断し蹴り飛ばした。
(目の前のあれに一矢報いる事もできないのか…)
 キラはコックピットの中で蹴られた時の衝撃に耐える。四肢を切断されたM1アストレイ
は、木々にぶつかり、地面を数十m転がりやっとの思いで止まる。キラは衝撃、そして振動
に耐えた。そしてコックピットから這い出るため、開口部に手を掛け、力を入れると腕に軽
い痛みが走った。キラはその痛みに耐えコックピットから這い出ると山道を走り出す。
 キラは山道を走りぬけると、そこは崖であった。キラはその場に崩れ落ちる。
「これ以上は走れないか…」
 ふと崖下を見るとフリーダムとジャスティスが降り立つのが見えた。その後に続き、バス
ター、アークエンジェルが続く。アストレイの周りには連合のMSの影が一つも無かった。
 キラは崖の上からその光景を眺める。 
 フリーダム、ジャスティス、アークエンジェルから人が出てきて何か話をしているようだ。
 キラの所から何を言っているか聞こえない。キラが崖下の光景を見ていると、後ろで車の
エンジン音がした。キラが後ろを向くとそこにはエリカ・シモンズが立っていた。
「どうしてくれるのよ? あれ」
 とエリカはM1アストレイがある森を見た。
「中のパイロットが生きていたから良かったじゃないですか」
 キラは当たり前のようにいった。
「モルゲンレーテに戻るわよ」
 とエリカはキラを乗ってきた車に乗せ、モルゲンレーテへと向けて車を走らせた。
 キラはモルゲンレーテにつくと、すぐさまM1アストレイへと乗り込み調整を開始した。
 調整をしていると、外が騒がしくなった。
 キラは外が気になり身を乗り出すと、視界にフリーダムとジャスティスが映った。
 二機の足元を見ると、ザフトのパイロットスーツを着た少年が、連合のパイロットスーツ
を着た少年の頬を叩いていた。
「どうしてこんな事を? おまえはもう戦場に出なくて良かったんだぞ!あのままプラント
にいても…ラクスの所にいて良かったのに。お前がこれを持っていったせいで、ラクスとラ
クスの父親は、父によって反逆の疑いがかかっているんだぞ」
 とザフトの少年はフリーダムを見る。
229キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/14(水) 22:40:40 ID:???
 ザフトの少年の言葉は震えていた。少年の声はキラがいるアストレイのコックピットまで
聞こえるぐらいの大きさだ。
 フリーダムのパイロットは反論した。
「戦争を早く終わらせる為に、僕ができる事をやろうと思って…」
 ジャスティスのパイロットは、フリーダムのパイロットの胸倉を掴む。
「それで馬鹿げた事を…」
 ジャスティスのパイロットは掴んでいた腕を放すと、踵を返しその場を後にした。
「馬鹿げた事だって…」
 フリーダムのパイロットはアスランの方へと一歩足を踏み出した。
「馬鹿げた事だって!? ラクスは、ラクスはこの戦争を早く終わらすために、危険を犯し
てでも僕にこの剣を与えてくれたんだ。ラクスの行為を冒涜するの!?」
 フリーダムのパイロットがジャスティスのパイロットに向かって走り出す。背後から殴り
かかろうとしているようだ。
 ジャスティスのパイロットは、振り向くとフリーダムのパイロットの拳を避け、鳩尾に拳
を一発撃ち込んだ。相手の少年はその場に倒れこむ。少年を心配して仲間が少年を取り囲む。
 キラは持っていた銃を、床に倒れこむ少年に向けて構える。
「それであたるのかしら」
 とキラの後ろで女性の声がした。
「やって見ないとわかりませんけど」
「それなら撃つのかしら」
 エリカの言葉にキラは銃のトリガーに指をかける。だがキラは一向にトリガーを引こうと
しない。キラは引くのを止め、銃をアストレイの座席の下に置いた。
「あら撃たないの?」
 エリカがキラに聞いてきた。
「今は乗り気ではないので、やめときます」
 キラは笑顔で答えた。
「自分の手が汚すのが怖いのかしら…。卑怯ね」
 エリカの言葉にキラは反論しない。
「主任」
 とエリカを呼ぶ声が聞こえた。
「呼んでいますよ」
「わかっているわよ」
 エリカは、キラの元を離れた。
 離れる際、エリカはキラに「次も期待しているから」そんな言葉を残した。
 キラも追い込みをかけるがのごとき、アストレイの調整に勤しんだ。
 キラは気分転換に地下ドッグから地上へと出た。その時キラは見知った人物を見たような
気がした。だがキラは特に気にしなかった。
 外に出るとキラはフェンスにもたれ掛かると、先程の戦闘の事を思い出していた。
 シン達家族を守れなかった事にキラは、涙を流す。
「あの時、一人で行動しなかったらあんな事には、ならなかったかもしれないのに」
230キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/14(水) 22:41:47 ID:???
 木の枝が折れる音がした。キラは音をした方向を見ると、そこにはキラの知っている人物
がいた。
「ミリアリア、どうしてここに…」
 キラは目の前の人物に驚いた。
「キラ…、それはある人にキラの事を」
 何かミリアリアはその理由を言い出せないでいた。
「まさか…」
 キラはある人物の顔を思い浮かべた。キラはその人の特徴をミリアリアに伝えた。
 ミリアリアはその人かもしれないと、首を縦に振った。
「泣いていたの?」
 キラはミリアリアの言葉に首を横に振る。
「泣いていないさ」
 キラは自分に嘘をついた。
「キラはもうアークエンジェルには戻らないの?」
 とミリアリアが突然聞いてきた。
「戻るつもりはない。もうあそこには居場所が無いだろうから。あそこにはもう僕がいるの
だから」
 ミリアリアは何も答えない。
「一番最初に、あの砂漠の町で言った事だが、この戦争が終わったらまた会えるから…だか
らそんな顔をしないでくれよ」
 ミリアリアは泣きそうな顔をしていた。
「大丈夫、必ず会いに行くから…」
 キラはそう言うと、地下ドッグへと向かう。
 アストレイのコックピットの戻ると一枚の紙が置いてあった。
 その紙の書かれている内容を確認した。

―悲劇の王子様なんて似合わないわよ―

 キラはその紙を握りつぶした。
(悲劇の王子様!? 一度もそんな事は思っていないさ)
 地下ドッグにサイレンが響く。どうやら連合がまた攻撃を開始したらしい。
 オーブは連合との二回目の戦いを開始した。

―――――――――
今日はここまで
231通常の名無しさんの3倍:2007/02/14(水) 23:25:15 ID:???
GJ!
このキラは悲劇の王子でなく泥にまみれても勝利を勝ち取る感じがする
232通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 00:25:26 ID:???
むぅ……話は面白いのだが文の書き方でちと気になる所があるな……
さりとて些細な事で口を出していいものか……
233前スレ1:2007/02/15(木) 01:21:54 ID:???
久しぶりに来た。
自分の思いつきでありそうな話題なのにないから作ったスレがこんなに伸びるとは・・
234通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 08:25:50 ID:???
GJ!
ただカラミティもレイダーもビームサーベルは装備してないぞ
235通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 08:30:28 ID:???
>>234
アッー!
236通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 10:39:42 ID:???
・・・マユ生存、シン死亡?
237通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 13:39:05 ID:???
GJです

>>326
シンのザフトフラグじゃないかな?
キラーズ氏は本編の流れをあんまり変えてきてないから…
238キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/15(木) 22:00:43 ID:???
資料らしき物は手元にあるのだが確認していなかった。

ちょっと質問なんですがストライクダガーのビームサーベルをレイダー達は使えますか?
使えるならフリーダムに倒されたダガーのサーベルを使ったって事で…
使えなかったら困るなぁ。
どっちにしたってその辺を修正して、その部分だけ再度投下しようと思います。
239通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 22:10:28 ID:???
ゴールドフレームは連合の武器のコネクタとザフトの武器のコネクタを両方装備している設定だった。
という事はザフトは(少なくてもヘリオポリス襲撃までは)基本的に規格共通だった。
ならそれを基にした連合も規格共通だった、で通せるんじゃないかな?
240通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 22:24:10 ID:mqIxrIOv
でもレイダーにしろフォビドゥンにしろカラミティにしろ携行型のビーム兵器持ってないんだよな。
でもカラミティのバリエーション機としてソードカラミティがあることを考えればコネクタは付いてる気がする。
241通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 22:25:42 ID:yFQFY9d8
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                 |;:_;:_;:_;:_|_;:_;:_;:_;:」
                 fT 、_ `"'''"´ _,.゙!}
    r―、-、          tj、 t苙、 ,ィ苙ア lノ
    ',  ヽ ヽ         ',':,   ,! l、  ,イ
    l   !"´!         ヾ! ,.ィ竺t:、 リ
    l   l  l         人.'´三`' /l          f'^i-、__
    |   |  |,. ―- 、_r≦´、、 `'ー' " ト、       {゙ヽ丶ヽヽ
    |   |_|_::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヾミ丶、、ヽヽー-、_  ヽヽ丶ヽヽ
    |  /   i\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`丶.`'=┘::}:::::::`,==、! ,l_.l,..ヽヽ、
    ト、_.|    l / ̄`ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::`'ー-一'::::〈::ヽ ゙',   、_ ',
    ノ  `'ー‐(⌒ヽ ノ l::ヽ:::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:ヽ ゝ -‐ァ
   ,! __,,.. -r-、`'ーr'´ ノ、:::ヽ::::::::l!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾヽ   ;'
    l       ヽ_,.ノ  /::ヽ}::::'i,::::::|l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ丶、_,. -‐
   {  -‐' ´ ̄ソ  /::::::::::::::::|l:::::||::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l!:::::::::::ト-

ttp://www.nicovideo.jp/watch/ut6A4nX-R0yYM

「東方軍vs陰陽軍の戦に参加するのだ」
242240:2007/02/15(木) 22:27:01 ID:???
ageてしまった、スマン。
243通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 22:27:12 ID:yFQFY9d8
                 |;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|
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                 |_;:_;:_;:_;:_;:_;:_;:_;:_!
                 |;:_;:_;:_;:_|_;:_;:_;:_;:」
                 fT 、_ `"'''"´ _,.゙!}
    r―、-、          tj、 t苙、 ,ィ苙ア lノ
    ',  ヽ ヽ         ',':,   ,! l、  ,イ
    l   !"´!         ヾ! ,.ィ竺t:、 リ
    l   l  l         人.'´三`' /l          f'^i-、__
    |   |  |,. ―- 、_r≦´、、 `'ー' " ト、       {゙ヽ丶ヽヽ
    |   |_|_::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヾミ丶、、ヽヽー-、_  ヽヽ丶ヽヽ
    |  /   i\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`丶.`'=┘::}:::::::`,==、! ,l_.l,..ヽヽ、
    ト、_.|    l / ̄`ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::`'ー-一'::::〈::ヽ ゙',   、_ ',
    ノ  `'ー‐(⌒ヽ ノ l::ヽ:::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:ヽ ゝ -‐ァ
   ,! __,,.. -r-、`'ーr'´ ノ、:::ヽ::::::::l!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾヽ   ;'
    l       ヽ_,.ノ  /::ヽ}::::'i,::::::|l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ丶、_,. -‐
   {  -‐' ´ ̄ソ  /::::::::::::::::|l:::::||::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l!:::::::::::ト-

ttp://www.nicovideo.jp/watch/ut6A4nX-R0yYM

「東方軍vs陰陽軍の戦に参加するのだ」
244通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 22:29:15 ID:???
 否定的な意見になりますが、仮に使用可能でモーションデータ等のプログラムもレイダーに入ってたとする場合、
あまり嵩張らないサーベルを何故標準装備してないのか? と言う疑問が沸きますね。

 それを咄嗟に規格をあわせるプログラムを作成したり、モーションデータが無いのを別のトコから引っ張り出して、
でっち上げたりするシーンをいれれば使用出来そうかなともおもったり。

 長文になりましたが、出来る出来ないが不明の時は、作者様が使用出来る理由を作ってしまえば問題ないのではと。
245キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/15(木) 22:45:17 ID:???
>>227の11行目

 そしてキラは戦場へと向かった。M1アストレイのモニターにフリーダムが映る。
 フリーダムは連合の新型の相手をしているようだ。カラミティとフォビドゥン、レイダーだ。
 三機は確実にフリーダムを追い詰めていく。レイダーがフリーダムにとどめの一撃と思
われる破砕球ミョニルを振りまわした。だがしかしフリーダムを腕一本とスラスター一枚を
犠牲にしつつもミョニルを避けた。フリーダムは体勢を崩し地面へと降り立つ。そこへ連合
のストライクダガーがフリーダムにビームライフルを構える。だが一向にストライクダガー
のビームはフリーダムを貫かない。いきなりビームライフルを構えていたストライクダガー
が爆発した。真紅の機体がフリーダムを守るように上空から降りてきた。

に変更。まだまだ変な所があるかも知れませんが、小さなミスは見逃してくれ
大きなミスは報告してくれたら、修正するかも。
修正した分は、ここじゃなくて、クロスオーバー倉庫にアップロードしたほうがいいのかな?
246通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 23:12:31 ID:???
>>238
高級機が上位互換じゃなきゃなぁ。
使えないとなるとそもそもMSに手が有る意味が無いよ。

……という設定捏造はどうだ?
247通常の名無しさんの3倍:2007/02/15(木) 23:15:07 ID:???
>>238
アメノミハシラの制式レイダーがM1Aのビームライフル使ってたしいけるのでは?
まあ、改造したのかも知れんが。
248通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 00:57:30 ID:???
ちと聞きたいんだが……ここで文の書き方で口挟むのはご法度?
249通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 01:00:15 ID:???
べつにご法度って訳じゃないと思うが、言い方には気をつけてな。
職人だけじゃなく、他の人にも不快感を与えないように。
250通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 01:08:32 ID:???
文の書き方に口挟むのは別にいいんじゃない?

それをどう受け取るかは職人さん次第だと思う。でも厳しくは言わない方がいいと思う凹むかも知れないから

読む側からひとつ

推敲をしていなかったら、推敲はした方がいいと思う
251通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 01:34:18 ID:???
それじゃあ、僭越ながらキラーズ氏に。

話は面白いんだけど、地の文がやや読みづらいです。
事象をただ事象として書き連ねている為に箇条書きみたいな感じで文が硬くなってるのでそれが惜しいと思います。
表現に一工夫をしていただければ読みやすくて感情移入もしやすくなるかと。

あと文の最後尾をなるべく同じ文字で連続させない事。
例えば245の文で言えば
「破砕球ミョニルを振りまわした。だがしかしフリーダムを腕一本とスラスター一枚を
犠牲にしつつもミョニルを避けた」
これも
「破砕球ミョニルを振りまわした。だがしかしフリーダムを腕一本とスラスター一枚を
犠牲にしつつもミョニルを回避する」
にすると文の硬さが消えて良くなると思います。


それでは、失礼いたしました。
252キラーズアップ担当してる人:2007/02/16(金) 02:04:00 ID:???
>>245
収録時にこちらで修正しますのでご安心を。
253通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 16:43:42 ID:???
そこの文、例えば俺だったら
「レイダーがフリーダムに向け、とどめの一撃のつもりで破砕球ミョルニルを叩き付けた。
 しかしフリーダムは腕一本とスラスター一基を犠牲としてそれを回避する」
とか、そんな感じにするかなぁ。別に手本にしろとか言うんではなく、あくまで自分の書式ね。

>>244を見て、罵り合いながらもキラばりの戦闘中OS書き換えをやってのける三馬鹿が浮かんだw
生体CPUってんだから機体のシステム熟知してても…。
254通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 17:38:15 ID:???
面倒だからどちらかのキラがサーベル多用してたから
極めて有用な武器だということで装備されるようになったってことでいいじゃんwww
255通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 17:51:06 ID:???
>>254
現地改修って奴?
256通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 18:02:52 ID:???
キラーズを読んでいて思ったんだがここ最近は、
本物のキラ視点のみで進んでいるような気がする

まったく持って問題ないんだけど、ちょっと気になった
257通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 20:39:46 ID:???
>>256
哀れなレプリカキラだと書いてる方もイライラするんだろ、多分。
258通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 02:20:16 ID:???
今回の話ではオリジナルとクローンが同じ戦場に立ち、オリジナルからクローンの方を視ていた。
それ以前ではそれ以前の話ではオリジナルとクローンが同じ戦場に姿を現す事はなかった。
そういう事じゃないか?
259通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 16:04:49 ID:???
無印編が終わったらデスティニー編も書いてくれるのだろうか?
260通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 10:59:46 ID:???
592氏あきらめたのか・・・?
十日経っちゃったよ

連絡マダー?
261通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 11:25:15 ID:???
>>260
>>162をじっくり読んでみよう。

月末には続きを投下してくれるんじゃまいか?
262通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 16:05:23 ID:???
クローンものが多いけど、逆にキラが死んでるifもアリか。

替わりにトールが生きててストライク改修機に乗る。とかいう電波を受信した。
263通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 16:46:05 ID:???
>>262
よし、こっちに来てくれ
つキラが死んでトールが生きてたら
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1164270429/l50
264キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/19(月) 00:30:55 ID:???
>>230の続き

 キラは整備の終わったM1アストレイに乗りこんだ。
 モルゲンレーテの格納庫にウズミ・ナラ・アスハの声が響いた。
「今からオーブ軍の既存のMS、そしてそのパイロットは、アークエンジェル、クサナギに
収納。そして宇宙へ向かってもらう」
 ウズミは、モルゲンレーテを事実上廃棄するようだ。
 キラが放送を聞いていると、エリカ・シモンズの姿が見えた。
「あなたはどうするの?」
 エリカはキラがアークエンジェル、クサナギと共に宇宙へ上がるのかをどうかを確かめて
いるようだ。
「地上に残って、連合と戦いますよ」
 と言うとキラはM1アストレイのハッチを閉め、操縦桿を動かしクサナギへと向かう。
 モルゲンレーテに残っているM1アストレイを収納したアークエンジェル、クサナギは
マスドライバーへと向かった。マスドライバーに着いた、アークエンジェルとクサナギは大急
ぎで大気圏離脱用パーツに換装し始める。
 クサナギの格納庫では、三人のオーブ兵がM1アストレイに乗り込む準備をしていた。
 それに気がついた女性パイロットが声を掛ける。
「それに乗り込んでどうするんだ?」
「アークエンジェルとクサナギが宇宙に出るまで、時間稼ぎをする」
「でもそんな事したら、お前達がここに取り残されるのだぞ?」
「だが誰かが出なければ確実に、宇宙には行けないだろう」
 出撃準備しているパイロット達の決意は揺らがない。
 確かに、フリーダム、ジャスティスだけでは、宇宙に飛び立つ前に終わってしまうかもし
れない。物量戦でこられたら確実に負けるだろう。誰もが分かりきっていた事だが、今準備
しているオーブ兵以外戦場に出ようとはしない。いや出られないのだ。殆どの者が充分な訓
練を受けずに実践を迎えた。フリーダム、ジャスティス、ストライク、そしてアークエンジ
ェルのお陰で彼らは死ななかったのである。もしここでウズミの言葉を無視し、数部隊が外
に出れば、宇宙での戦いでMSが足りなく、今度はオーブが不利になるかもしれないのだ。
「それなら僕もついていきますよ」
 壁にもたれ掛かっていた少年が話に割って入ってきた。
「たった一人加わったぐらいで…」
 女性兵士が少年を選別するように見つめる。少年は女性兵士に近づく。少年はキラ・ヤマ
トであった。
「コーディネータだからあなた達より優秀だと思いますよ」 
 キラの言葉に、格納庫はどよめきが起こる。今クサナギにいるオーブ兵は、ナチュラルが
大半だ。たしかに大きな戦力にはなる。
「上に報告はこっちでしておくわ」
 女性兵士は諦めてその場から離れる。どうやら出撃を認めたらしい。
 キラを加えた四人は、格納庫のハッチを開き外へと出て行った。
「坊主さっきどうしてあんな事を…」
 アストレイのパイロットの一人がキラに話しかけてきた。
265キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/19(月) 00:33:22 ID:???
「コーディネータっていう事ですか?」
「そうだ。君のような少年には宇宙に行って、オーブの手助けをして貰いたかったんだが」
 アストレイのパイロットは、コーディネータであるキラに何かを期待しているようだ。
「ここで遣り残したことがあったので、ここに残ったまでですよ」
 二人が話をしていると海岸線に連合の軍勢が姿を現した。四機の上空をフリーダム、ジャ
スティスが通過する。
「こっちも始めますか」
 キラの声で、アストレイのパイロット達も心身ともに気合を入れた。
 フリーダム、ジャスティスがストライクダガーの群れに攻撃を仕掛ける。二機の功撃は連
合の新型、カラミティ、フォビドゥン、レイダーによって阻止された。カラミティ達はフリー
ダム、ジャスティスをストライクダガーの群れに近づかせようとはしない。
 何とか隙を作りフリーダムが群れの中のストライクダガーにレールガンを構えるが、フォ
ビドゥンの曲がるビームフレスベルグがフリーダムを襲い、フリーダムはストライクダガー
に攻撃できないでいた。フォビドゥンがフレスベルグを使用する溜めの間に、フォビドゥン
を撃破しようとジャスティスがビームブーメランを投擲する。フォビドゥンはその攻撃を避
けるために、ビームを撃つのを止め迫ってくるブーメランを弾き飛ばした。
 フリーダムは、ジャスティスが作ってくれたわずかな時間を使いレールガンでストライク
ダガーに向かって発射した。フリーダムの攻撃を避けきれずに直撃したダガーは地面へと墜
落していく。ストライクダガーの群れは一機減っても、隊列を崩さず、アークエンジェルへ
と向かっていく。
 フリーダムが再度攻撃をしようとした時、何者かの邪魔が入った。それはレイダーであった。
 一方でジャスティスがカラミティによってストライクダガーの軍勢に近寄れずにいる。
 連合の新型三機を動かすパイロットは、どうやらフリーダムとジャスティスのパイロット
と同じぐらいの操縦技術を持つ者だろう。確実にフリーダム、ジャスティスを追い詰めてい
く。フリーダム、ジャスティス動きが突然変化した。その動きは先程とは違い、動きに無駄が
ない洗練された攻撃になっていた。
 アストレイのコックピットでキラは5機の攻防に魅せられていた。 
 キラもアークエンジェルを落とされまいと奮闘する。
「当ててみせる」
 M1アストレイは、アークエンジェル、クサナギに近づく連合のストライクダガーをビー
ムライフルで撃破していった。そんな中アークエンジェルとクサナギから通信が入る。どう
やら発進スタンバイに入ったようだ。
 フリーダムとジャスティスが通信が入ったと言うのに、まだ新型と戦っていた。
 アストレイのパイロットが二機に通信を入れる。
「君達は、早くアークエンジェルに戻りたまえ」
「しかしあなた達が…」
 ジャスティスのパイロットからの返答だ。
「俺たちは大丈夫だ。それに君達は希望なんだ!俺達を失望させないでくれ」
「…わかりました」
 フリーダム、ジャスティスはアークエンジェルに取り付き一緒に宇宙へと登っていった。
266キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/19(月) 00:34:21 ID:???
アークエンジェルとクサナギが発進し、肉眼で見えなくなるのと同時にマスドライバーとモ
ルゲンレーテが爆発を始めた。
 二つの施設が爆発を始めると、連合の新型三機は、M1アストレイに興味がないのか戦線
を離脱した。
「やばいな…」
 キラは数機のストライクダガーに囲まているようだ。キラのアストレイは片腕が切り落と
され、持っていたビームライフルも使い物にならなくなっていた。後は接近戦しか残されて
いない。アストレイはサーベルを装備した。そしてキラが操縦桿を握り、ペダルを踏み込ん
でもM1アストレイは、キラが思った通りには反応しなかった。振り下ろした、ビームサー
ベルが簡単に回避される。どこかで不具合が起きたのか、動作がワンテンポ遅い。
 敵のストライクは、好機と思いアストレイに攻撃を仕掛けた。
「絶体絶命か」
 そう思われた時、一機のM1アストレイがキラの窮地を救った。
「坊主、アストレイを捨てろ!そしてモルゲンレーテに行き、ジープに乗ってここから出る
んだ!」
 とキラの窮地を救ったパイロットから通信が入った。
 パイロットの話によると、モルゲンレーテに車があるからそれに乗ってここから出ろとい
う事らしい。
「でもそんな事したら、あなた達がどうなるか…。それにまだ戦えます」
「はっきりいって、足手纏いなんだよ。俺たちでどうにかするから早くしやがれ!」
 今のキラは、足手纏いにしかならない。そう感じたのかキラはM1アストレイから降りる
と、モルゲンレーテへと向かった。
 ストライクダガーはキラの事に気づき、ビームライフルをキラに構える。だがビームライ
フルは使用されることはなかった。ストライクダガーがトリガーを手を掛けた瞬間、ビーム
ライフルを持っている腕が何者かに切断される。それはもう一機のM1アストレイが振り上
げたビームサーベルであった。
 キラが爆発するモルゲンレーテについたと同時に、後方から爆発音が聞こえる。
 後ろを振り向くと、キラを助けてくれた、M1アストレイがストライクダガーの攻撃を受
け無残に爆発した。そして残っていた仲間もストライクの攻撃に散っていった。
「あ…あ…あ…」
 その光景を見たキラは何も言葉を発せられなかった。 
 キラは悲しみを涙を堪え急いで車に乗り込むと、モルゲンレーテの門へと向かう。
「助けてもらってここで死ぬわけにはいかない」
 キラは爆発するマスドライバーとモルゲンレーテを横目に見ながら、車を市街地へと走ら
せた。突然、モルゲンレーテの方から激しい爆発音がした。それは予想以上の爆発だった。
まるで、爆弾に引火したように次々にモルゲンレーテの至る所で爆発を始めた。
「まさか…」
 キラは先程モルゲンレーテに進入したザフト隊を思い出した。
「情報収集とついでに破壊工作までしたのか」
 馬鹿な思いを捨て去り泊まっているホテルへと向かう。
267キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/19(月) 00:35:59 ID:???
 幸いホテルへの被害は殆どなく、やろうと思えばいつでも営業ができる状態だ。
「お帰りなさいませ」
 キラがホテルに戻ると支配人がフロントで出迎えてくれた。
「本当に逃げなかったんですね」
「ええ、ここが私の家みたいなものですから。さしでがましい事だと思いますが、何かあり
ましたか?」
 支配人の言葉にキラは何も答えない。キラは動揺を隠し返答した。
「何もありませんよ。それではまたお世話になります」
 キラは支配人に挨拶をすると、すぐさま部屋へと戻る。
 部屋へと戻ったキラは、疲れが出たのか、すぐに寝てしまった。
 目を覚ますと朝になっていた。枕に何かが乾いたような後があった。
 キラはその日、マユの事が心配になり自宅へと向かう。
 自宅に着くと、キラは玄関を開けた。開けると目の前にはキラの父親がいた。
「キラ…ちょうど良かった」
「え、何が?」
 父親はキラの腕を掴むと、突然居間へと連れて行った。
 キラはそこでソファーに座っているマユの姿を見た。その横にはキラの母親がマユに何か
を話しているようだ。
 母親はキラに気がついたようだ。横にいるマユにキラがいる事を伝える。
 マユがソファーから立ち上がった。そしてキラの所へと歩み寄る。
「キラさん。助けてくれてありがとうございます」
 マユは先日の事でキラにお礼を述べた。
「私以外にはどうなったかわかりますか?」
 キラは首を横に振った。
「あの時、マユちゃんしかいなかった。お兄ちゃんやご両親がどうなったか僕にもわからな
い。役に立たなくてすまない」
 キラの言葉を聞いてマユは顔を伏せた。キラの母親はそんなマユを寝室へと連れて行く。
 二人と入れ替わるようにキラの父親が居間へと入ってきた。
「あの子が心配になったのかい?」
 キラの父親は寝室がある方向へと視線を向けた。
「そんな所かな」
「あの子と一緒に暮らそうと思っているんだが」
 父親の突然の発言にキラは多少なりと驚いた。
「どうして?」
 キラは自分が助けたマユの事が気になっていたようだ。
「あの子は身寄りが家族以外にいないからね」
「いいんですか?」
 とマユの声がした。
 マユは落ち着いたのか、寝室から居間に戻ってきていたようだ。
「孤児院とどっちがいいんだい? マユちゃんが決める事だよ」
268キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/19(月) 00:38:44 ID:???
「時間をください」
「構わないよ」
 とキラの父親はゆっくりと考えるようにとマユに言った。
「僕はこの辺で」
「どこに行くんですか」
 マユがキラに聞いてきた。
「ちょっと用事があってね」
「何時ぐらいに戻ってきますか?」
 マユの問いにキラは何も答えられない。
 意を決して答えようとした時、父親がかわりに口を開いた。
「この子は世界中を飛び回っている風来坊なんだよ」
 父親の言葉にキラは、体中から冷や汗が流れた。父親はまだ続けた。
「だがらいつ戻ってくるかわからない。世界が戦争していてもお構いなしにどこかへ行って
しまうんだよ」
「そうなんですか…。でも、たまには戻ってくるんですよね」
 マユはキラを見た。
「そのつもりだけど」
 キラは父親の話に合わせ、マユに嘘をついた。
「そろそろ船が出る時間だから、また」
 キラは両親とマユに別れの挨拶をすると家を後にした。
 振り返ると、マユが玄関で手を振っていた。キラも軽く手を振ると、もう一度正面を向き
ホテルの道を進み始めた。
 家へ行くときは急いで、周りの景色を見ていなかったが、市街地の被害は思ったより少な
いようだ。家を除いてみると、避難していない家族がいくつか見受けられた。
 キラは帰り道、ギルバート・デュランダルに会いに行った。
 デュランダルはどこかに出かけて、いないようだ。
 ホテルに戻ると、支配人からキラに客が尋ねている事を知らされる。
 その人物はギルバート・デュランダルであった。
「数日振りですね」
 キラはデュランダルに挨拶すると、椅子に腰をかけた。
「先程、あなたに会いにいったんですよ」
「私の所に来たのかね」
「ええ」
 キラはコーヒーを口にする。
「それで何か用ですか?」
「ザラ議長から頼まれ事があってね」
 キラの眉がわずかに動く。
「ザラ議長から?」
「君をプラントに連れて帰るようにとね」
「理由は聞いてますか?」
269キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/02/19(月) 00:39:53 ID:???
 デュランダルは、出されていコーヒーを手に取ると、話をさらに続けた。
「いや聞いていない。君と話がしたいので、連れてくるようにと」
「しかしどうしてあなたなんですか?」
「君の一番近くにいるのが私だからだろうね」
「災難でしたね。それでいつプラントに?」
「今からでも戻りたいのだがね」
「わかりました」
 支配人を呼んだキラは、ホテルの宿泊代を精算し、荷物をまとめた。
「あの事だろうな…」
 とキラは呟いた。
「何か心当たりがあるのかね?」
 何処ともなく現れたデュランダルに、キラの小言が聞かれたようだ。
「たくさんありすぎて困りますよ」
 キラは笑顔で答えた。
「私には関係ないことだろう。準備が出来たのかね?」
「はい」
 そしてデュランダル達と共にキラは、プラントへ戻るシャトルがあるザフト基地へと向かうためオ
ーブを離れた。

第9話完
第10話に続く
270通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 10:07:49 ID:???
キラーズ氏GJ

マユが生きてるのはデス種編に向けてどのような伏線になるやら。

つくづくオリジナルはギルと因縁あさからぬ関係にあるな。

もう諜報活動するところもないから
オリジナルはザフトでも前線に立ちそうだ。

本編では生死不明のシンが生き延びているといいんだが…
271通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 16:18:18 ID:???
職人GJ!

今週辺り58氏の投下あるかしら?
27258:2007/02/19(月) 23:36:03 ID:???
四人の赤服を目の前にしたキラは妖しい笑みを浮かべたまま彼らに近づいていく。そして、キラから一番近かったシンの前で歩みを止めた。

「初めまして、ザフト軍特務隊FAITH所属のキラ=ヤマトです。君がシン=アスカだね?君の活躍はよく耳にしてるよ、よろしくね」
「え……あ、こちらこそよろしくお願いします」

戸惑った表情のシンに対し、終始にこやかな顔でシンと話したキラは次にレイの所に向かった。

「久しぶりだね、レイ。まさか君と一緒に戦うことになるとはね……まぁ、君の実力はよく知ってるから期待してるよ」
「…………」

無言のまま手を差し出すレイ。その手を見て、キラは笑顔でレイの手を握った。そんなキラに対しレイは一瞬憎悪の篭った瞳で睨み、そして小さく口を開いた。レイの口の動きを見たキラは、レイに小さく微笑み返しただけだった。
レイとのやりとりを済ませたキラは、今度はルナマリアの前に立つ。

「は……初めまして!ザフト軍ミネルバ隊所属ルナマリア=ホークです!よ……」
「ハハハ、そんな緊張しなくてもいいのに。君は美人なのに赤服を着てるなんてすごいね」
「え、私が美人なんて……アハハハ」
「僕は本当に君は美人だと思うよ、ルナマリア……これからよろしくね」
「あ……はい、よろしくおねがいしま……す」

顔を赤らめるルナマリアに微笑み、その場を後にしたキラ。そして、ついに最後の一人の前に立った。

「キラ……お前、何故ここにいるんだ?」

キラが目の前に立ってすぐ、アスランは口を開いた。

「何故って、デュランダル議長の命を受けてこの艦に……」
「俺はそんな事を聞いてるんじゃない!お前がカガリをオーブから連れ出したんだろ?なのに、どうして……」
「あぁ、そういう意味か。アスラン、よく聞いてね……君は僕をどうやって殺そうとした?」

キラの突然の質問に対し、アスランは少々困惑気味だった。

「どうやってて、あの時俺は……」
「PSダウンを起こしたイージスで僕のストライクを鷲掴みにして自爆した、だよね」
「……あぁ」
「あの時の事、僕よく覚えていないんだけどさ……少なくても気がついた時は、身体中を押し潰されるような痛みと焼けるような熱さが襲ったんだ。僕あの時は……」
「やめてくれキラ!俺はそんな話……」
「聞きたくないだろうね。でも、最後まで聞いてもらうよ」
「やめろ、やめるんだキラ!大体今さら……」
「今さらって、何?……わかった。そんなに僕の話が聞きたくないんなら……見せてあげるよ、真実を」

キラの冷ややかな声に全員が一瞬震える。そしてその直後、キラは制服の上着を脱ぎだした。
27358:2007/02/19(月) 23:37:21 ID:???
何やってんだよ、あんた?」
「シン、君も黙ってみてて……アスランは僕の話を聞きたくないみたいだから、こうするしかないんだ」
「おい、キラ!お前は何をやって……え、え?」

アスランは自分の目を疑った。上半身裸になったキラの身体は全身傷だらけで、所々縫い合わせた後が痛々しく残っていた。さらにキラの左腕から下は全て鉄で出来ていた。

「ここまで治るのに一年半はかかったんだよ。幸い、ヘルメットが丈夫だったおかげで顔に大きな傷が付く事はなかったけどさ……臓器移植したり、皮膚移植したり、義腕造ったり大変だったんだよ」
「そ……そんな……嘘だ!だってキラは!」
「ラクス=クラインに助けられ、その上フリーダムを受け渡され前大戦を終わらせるのに大きく貢献した、でしょ?……でも、それは本当に僕だったの?」
「何言ってんだ、お前……だってキラは……」

アスランは気が動転していた。そんなアスランを見て、キラは口元に笑みを作る。
(アスラン、君をこんなにいたぶるつもりはなかったんだけどね……楽しくなっちゃった)
キラはそんな事を考えながら、アスランにとどめをさしにかかった。

「君がイージスで殺したのが本物の僕だよ、アスラン……君と一緒に戦って戦争を止めた僕は僕じゃない。そいつはラクス=クラインが造った偽者なんだよ」

キラがアスランに言い放った言葉は、アスランに深い衝撃を与えていた。そしてその衝撃はアスランに混乱を生み出した。

「ラクスが造った?……キラを?」
「うん、僕も信じたくはないんだけど……オーブで見たんだ、ラクス=クラインと僕の偽者を」
「でも、そんなことは……」
「不可能ではないんだよ、アスラン。だって、ラウ=ル=クルーゼはアル=ダ=フラガのクローンなんだから」
「え……?」

アスランの顔から血の気が引いていく。それと同時にレイの瞳からは憎しみの炎が滾っていく。そんな二人の様子を見ながらも、キラは尚も淡々と話を続ける

「それにね、MSのような大型かつ繊細な兵器が作れる現代において僕そっくりのロボットが作れないこともないだろうし、もしかしたら整形をして僕そっくりの顔にしたのかもしれない。それに……」
「それに……?」
「アスラン……君には言ってなかったけど、僕は究極を目指して作られた存在なんだよ。一部の人間の間では、スーパーコーディネーターと呼ばれてるらしいけど」
「……何だって?」
「デュランダル議長の話によるとね、僕はいくつもあった試験体の内のたった一つの成功作なんだって……失敗作と呼ばれる人達でもその能力は非常に高いらしくて、もしかしたらラクス=クラインはその中の一人と接触したのかもしれない」

キラの話にアスラン、シン、ルナマリアは絶句した。しかし、ただ一人レイだけは眉一つ動かさずキラを睨み続けていた。そんな中、アスランが一瞬にして床に崩れていってしまった。

「アスラン!?」
「おい、しっかりしろよ!おい!」
「アスランしっかりして!シン、この艦の医者を!ルナマリア、レイ、君たちはアスランを運ぶの手伝って!」

アスランに呼びかけながら、必死の表情で三人に指示を出すキラ。そんなキラに応えようと、シンもルナマリアもいつのまにか必死になっていた。しかし、キラの必死の表情が作り物だということをレイだけが見抜いていた。
27458:2007/02/19(月) 23:39:01 ID:???
アスランは医務室に運ばれ、すぐに軍医に診察をしてもらった。診察してすぐ精神面の問題だと理解した軍医は、すぐにアスランを基地内にある病院へと搬送させた。
そして、ミネルバ艦内が一瞬の内に騒がしくなってから既に二時間は経っていた。キラは自分の個室になる部屋でベッドに寝転び、天井を見つめていた。

「脆かったな、アスラン……あんな簡単に壊れてもらっちゃ困るのに」

キラは言いながら右手で顔を覆い、クスクスと笑っていた。そして、頭の中に浮かぶイメージを膨らませる。

「……こんな上手くいくわけないか。でも、やってみる価値はあるよね」

ベッドから起き上がったキラは、部屋に備え付けられているデスクに置いてあるノートパソコンを開く。そして、物凄いスピードでキーボードを打ち込んでいく。
その時キラの部屋のドアがトントン、とノックされる。来客者がわかっているキラはすぐにドアを開けた。開いたドアの前に立っていたのはレイだった。

「遅かったね、レイ。入りなよ」
「…………」
「用があるって言ったのは君でしょ、どうしたの?」

にこやかな表情で話すキラに対し、レイの表情は終始強張っていた。瞳を閉じて顔を下に向けたレイは、瞳を開くと同時に銃口をキラに向ける。

「ギルにとってお前が必要な存在だと言うのはわかっている……だが俺はお前をここで殺す」
「……随分と大きくでたね。そんなに君がクルーゼの事を想ってるとは思わなかったよ」
「黙れ!」
「冗談だよ、冗談……まぁ、でも僕をここで殺すことは君にとってもデメリットだと思うけど?」

突然真剣な表情を見せるキラに、レイは一瞬竦んだ。

「実はデュランダルの話によるとね、ちょうど僕の偽者が現れる少し前に君の仲間が行方を晦ましてるらしいんだ」
「……本当なのか?」
「多分デュランダルは君には刺激の強すぎる話だろうと思って伏せてたんだろうね……まぁ、これも数ある可能性の内の一つだけど」
「しかし、ラクス=クラインに……」
「彼女を常識で図っちゃいけないよ、あれは……怪物だから」

キラの脳裏にある場面が浮かぶ。それはキラとラクスが初めて出会った日、初めてキラが人間を心から怖れた日だった。
27558:2007/02/19(月) 23:41:41 ID:???
――『貴方も私も神に選ばれた人間なのです』

そう言って僕の舌先に君は絡み付いて来る。息をする間も与えぬ程、長く激しく。

『選ばれた人間は神の意志を成し遂げなければなりませんわ』

そう言いながら、君は僕の身体を支配する。僕はただ耐えるだけ。

『やがて私の意志は全世界の意志になります、だから貴方は私の意志には逆らえません。それが貴方の運命なのです』

僕の上で乱れながら言う君。君は恍惚とした表情だったけど、その言葉は僕を呪った。

『もう引き返すことは出来ませんわ、貴方と私は繋がってしまったのですから』

僕の隣で無邪気に微笑む君。でも、僕には君が悪魔にしか見えなかった。――



「うわぁぁぁぁぁぁぁ!……はぁ……はぁ……はぁ……夢、か」

目覚めた瞬間、まず両隣を素早く見る。今まで見ていた物が現実ではない事を確認すると、今度は全身に嫌な汗が拡がっている事に気づく。すぐに着ていた衣服を全て脱ぎ捨て、シャワーへと向かう。
冷たいシャワーにしばらく打たれて、キラは自分が段々と落ち着いてきてることがわかった。

「久しぶりに見たな……レイに喋りすぎたみたいだね、いつ以来だったろう」

最後にこの夢を見た日など覚えてもいないのに小さく呟く。鏡に映る自分の顔が酷く醜く見えた。

「僕は復讐するんだ……怖れるな」

鏡の前でそっと誓う、それと同時にキラの心には黒い波紋が広がった。
276通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 02:51:03 ID:???
58氏GJ

イージス自爆後にキラがどのような思いでいたかが語られます種。

傷だらけの体と義手を見せられシンルナが
以後どのようなリアクションを示すか気になります。

と言うかミネルバ隊はキラクローンの存在を知ってしまったw

アスランは衝撃の事実に脆くも崩れ去り、
レイはラウの怨念からキラに銃口を向ける…

それと、レイ関連でも伏線が張られている香りがする。

ラクスはもろ宗教家だなw
中身が空っぽのクローンを己の使徒に仕立てるのはたやすいようだw


キラが特務隊ということでミネルバMS隊の指揮を取るんだろうけど
果たしてチームワークはいかに?


続きが気になります
277通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 03:18:59 ID:???
GJ!保志が楽しそうに「嫌味なキラ」を熱演する様が目に浮かぶぜ!
278通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 22:11:25 ID:???
>>58
GJ!!黒いキラがカッコイイ!!シン以上の憎悪と凶悪さを兼ねているな…。でもそれを恐怖させるラクスはどれだけ恐ろしいんだ…
279通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 00:52:41 ID:???
最早使い古された言い方だが『這い寄る混沌』とかそれぐらい恐ろしいんだろ。
280通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 11:15:31 ID:???
58氏のオリジナルキラは腹に一物を抱えている感じ

しかし、それも人間の持つ一面だがらいいのだ。
281通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 22:00:20 ID:???
592 ◆M2a2eh6/s6氏へ
ttp://77c.org/d.php?f=nk1115.lzh
パスzinn
時間がかかってしまいましたがようやく完成しました。
本体はノーマルでウイングをミーアザクのピンクで塗装
大型実弾ライフルとしてACプラモのライフルを持たせてみました。
282通常の名無しさんの3倍:2007/02/22(木) 12:45:44 ID:???
圧縮データが壊れてるよー
283通常の名無しさんの3倍:2007/02/22(木) 19:09:34 ID:???
>>282
拡張子にZIPをつけると大丈夫っぽい。自分は見れたよ。

>>281
GJ!!
284通常の名無しさんの3倍:2007/02/22(木) 20:13:24 ID:???
>>281
やべなんかカワイイw
GJ!

>>282
rar入れればおk
285592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:33:53 ID:???
>>281
GJです!!まさか本当につくってくれるとはww
お陰で創作意欲がくすぐられました。ということで続きイクゾー!
286592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:35:40 ID:???
訓練は辛かった。兎に角辛かった。泣いた。多分、毎日泣いたんだと思う。
そのたびに基地の長官に怒られては、やっぱり泣いていたんだと思う。
私は、あの作戦の後、村を離れ…いや、村を守るためにあえて軍に入る事にした。力をつけるのにはうってつけだったし、
それに、戦う意味をそこで知りたかった。でも、結果は今言ったとおりだ。
元々運動能力のコーディネイトを受けていたわけではなく、ナチュラルのそれと大して変わらない私は、戦士としての能力は最低クラスだった。だから、人の二倍いや5倍訓練しなければいけなかった。
泣いて泣いて、泣きじゃくって。泥だらけになって、血だらけになって。アイドルであった時がどれだけ恵まれていたのかと思うと、やっぱり泣けてきた。何度気が狂いそうになったか。
でも、そんな辛いと思う心のどこかで充実感を覚えていた。辛い、しかし、そうする事で私は強くなっているのだと実感できた。
MSの動かし方も、人の10倍訓練した。MSでこけたり、壊したり、そのたびに怒られたり泣いたり。でも、他の兵士達とバカみたいに笑ったり、泥だらけになっても挫けないで。
何時の日か、私はバカピンクと呼ばれた。熱血バカと単純バカからとったらしいとこっそり聞いた。
最初は本当に馬鹿にされているんだと落胆していたんだけど、熱血バカって言われるのは悪くないと思った。
私は、感情を無くした賢者よりも感情を表に出し、愛を伝えられるバカになりたい。
そういう願いを胸に、私はヤキン・ドゥーエへと場所を移した。


第四話 世界が終わるまでは
287592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:36:44 ID:???

「デブリ戦、あんまり成績良くなかったのよね…」

デブリ帯の中、ルナマリアの愚痴が機体の中で響く。
ミネルバを発したシンのインパルス、ルナマリアのガナーザク・ウォーリア、ショーンのゲイツR、そしてラクスのジンは捕捉したガーティー・ルーに向かっていた。
辺りは戦争の傷跡か、何かの施設が破壊された後にできたデブリや小惑星がゆらりゆらりと漂っている。
デブリは危険なものだ。こうやってゆっくり進んでいる時は良いものの、こちらが速度を上げているときは勿論の事、
たとえネジ一個であれ、速度を持ったものがフレームの隙間などに衝突すれば、それだけで致命傷になりかねない。
だから、デブリ帯で戦闘を行う事自体が、危険な行為なのだが、こういう状況ならば仕方がないのだ。
それが一番憂鬱に感じていたのがラクスだった。彼女はヤキンで一度、余所見をして小惑星に衝突し、気絶してしまったという恥ずかしい過去があったからだ。

「向こうだってこっちを捉えているはずだ、油断するなよ」

と、そこでシンは淡々とした口調でルナマリアを注意する。しかし、その声から少しばかりの緊張が伺えた。

『わかっているわよ。レイみたいな口の利き方しないでよ。調子狂うわ』
「別にいいだろ、油断しているのは本当なんだからさ」
『あんたねぇ…』
『まあまあ、喧嘩なさらずに、ね』

極度の緊張と、新型MSを奪われたという事実からの苛立ちからか、ルナマリアとシンの間に険悪なムードが漂い始めた。
それをラクスが割り込んで和ませる。

「あんまり緊張しすぎても、MSの動きが硬くなって、昔の誰かさんみたいにデブリに当たって気絶してしまいますわよ」
『それって誰の事なんだ?』
「ご察しください」

ショーンの言葉に顔を少し赤らめ、苦笑して答えるラクスを見て、その場にいた人間はすぐに誰の事かわかり、ちょっとだけ笑いが起こった。
そして、険悪な雰囲気もなくなったところで、再び気を引き締めなおす。

「…しかし、何でまだ動かない?敵は…ここまで近づいて…」

シンはレーダーを見て、いまだ敵艦が動いていない事を不審に思う。敵の動きが全く見られない。こうもこちらが近づいているのにもかかわらず、何のリアクションもとらないというのはどういうことか。
そんな時、ふと、ラクスが辺りを見回したとき、ある異変に気がつく。
デブリとして浮かんでいた、ガラスが光景を反射して映し出していたそれに、何か違和感を感じ、拡大して見ると、そこには。

「(MSの足…?これは…はっ、しまっ…!)シンさん、これは罠ですわ!!!」
『何!?うわっ!』

全てに勘付いた頃にはすでに遅し。ラクスがシンに報告したと同時に、上からのビームの雨が降り注ぎ、彼らを襲う。
シンとラクスは対ビームシールドで何とか防ぎ、ルナマリアのザクとショーンのゲイツRも散開して避けるが、強奪部隊も姿を現し、彼らに襲い掛かる。

『アウル、ステラ。奴さん、掛かったみたいだぜ』
「へっ、馬鹿な奴ら。おい、スティング、ステラ。僕はあのクソッタレ桃色のジンを相手する。邪魔すんなよ」

無邪気な声でスティングの通信に答えているアビスに乗っているアウルだったが、その言葉のどこかには憎しみがこめられている。
リターンマッチといったところか、とスティングは苦笑して答える。
288592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:37:57 ID:???
『了解了解。俺は今度こそあの新型の首を貰うとするか。ステラ、お前は赤色のザクをやれよ。宙域戦闘じゃあ、そのガイアは不利だからな』
『うん、わかったよ…』
「よっしゃ、決まりだな!!」

アウルは指を鳴らし、アビスをラクスのジンに突っ込ませる。カオスとガイアもそれぞれの担当する敵MSに向かって突撃する。
それを見たシンは指示を送る。

「くそ、待ち伏せか!!だけど、そっちの奇襲は失敗だよ!各機迎撃!ショーン、お前は艦に戻ってくれ!」
『了解、死ぬなよ!』
「誰が!よし、ショーンが戻れるだけの時間を稼ぐ、行くぞ!」
『メイリン、待ってろよ!今行くからな!』

シンはブラストインパルスの武装、腰部大型ビーム砲ケルベロスでまずカオスを牽制しつつ、ビームライフルで追撃を咥える。
それに対し、カオスはスラスターを吹かして大きく避け、兵装ポッドを射出すると同時にビームライフルを放つ。

「ステラ、逃がすな!」
『うん…うぇい!?』

ステラの乗るガイアは、艦の護衛に戻ろうと背を向けたゲイツRに対しビームライフルを撃とうとするが、目の前にルナマリアのザクが現れ、思わず下がってしまう。

「あんたの相手はこの私よ!!」

ルナマリアはザクのシールドを使って、ガイアに体当たりを食らわし、ショーンと距離をとらせる。ステラは衝撃に悲鳴を上げながらも、体勢を立て直す。
この一撃でステラのどこかのスイッチが入ったか、一心不乱にザクに攻撃を加え始めた。
ルナマリアもその攻撃に耐えながらも、ガナーザク・ウォーリアの最大の武器、オルトロスを命中させられるタイミングを計る。

「はぁん?全く、ステラもスティングもだらしねぇの。ま、いいか。あっちにはネオもいることだしな」

対して、ラクスのジンに当たっていたアウルはどうでもいいようにゲイツRを見送っていた。
そして、至極愉しそうにラクスのジンを甚振ろうとする。ラクスも必死に避けてはいるが、前の戦いのようにケイのサポート無しでは分が悪い。
何か策はないか、そう考えてはいるが、避けるのに精一杯で思いつかない。

「(元々遠距離支援用のような武装してからに、胸部のビーム砲とかもう…。どうすれば、接近戦に持ち越せますか…)」

何度かビームライフルを撃ち、アビスを牽制する。が、その内数発はデブリにあたるだけだ。対して、アビスはバラエーナ改を放って逃げ場を無くし、連装砲でジンを攻撃する。
ジンは連装砲をシールドで防ぐも、その反動で吹き飛ばされ、デブリに背中をぶつける。

「かはっ!」
「おらおらどうしたどうした!!あん時の威勢は何処行ったよ、ええ!?」

アウルは狂ったような笑みを浮かべながらラクスをどんどん追い込んでいく。ラクスは何とか避けては見せるが、それでも全弾を避けれるわけではなく、
どんどんとジンはダメージを蓄積してゆき、ついにはシールドが黒く焦げあがってしまった。これ以上はビームを防ぐ事などできない。
289592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:41:36 ID:???
「ナタリーさん!!…ちぃ!!」
「うぇぇぇい!!この赤いのがぁぁぁ!!」

オルトロスで援護しようとしたルナマリアだが、それを見たステラがビームライフルでルナマリアを牽制し、そのまま突っ込んでいく。
ルナマリアは突っ込んできたガイアに舌打ちをしながらも、オルトロスをガイアに放ち、避けたところでビームライフルを乱射し、近づけない。
弾切れになっても、演習通りに素早くリロードし、再び距離をとり始める。

「こいつら、ザフトの新型MSをこうも簡単に!だけど、俺だってインパルスを使いこなせるんだ!!やってやる!!」

シンはケルベロス後部に付けられているミサイルランチャーを起動させ、現在交戦しているカオスとジンを攻撃しようとしているアビスにマルチロックオンし、ミサイルを放つ。
そして続けざまにレールガンを撃ち、ミサイルを回避していたカオスを予測射撃する。カオスはミサイルに気取られ、レールガンの弾丸の直撃を受けた。

「ぐあ!!くそ!」

衝撃に揺さぶられ、スティングは喘ぎ声を出しながらも、すぐさま歯を食いしばってペダルをふみ、ブラストインパルス最大の弱点、接近戦に持ち込む。
インパルスはビームジャベリンを取り出し、柄の部分でカオスのビームサーベルを抑える。
一方、ミサイルを自慢のバラエーナ改で迎撃したアウルは不敵な笑みを浮かべながらラクスのジンを見つめる。彼は残虐な性分があるため、追い込んだ敵は嬲り殺すのが一番だと考えていた。
だからこそ、どのような風に倒そうか、そう考えていた。
ラクスもそれを感じ取ったか、バイザー越しに見える顔には冷や汗が流れていた。

「ああ、もう!こうなったら…ハイネ隊長から教えてもらったこの手で…恥ずかしいですけど」
「あん?」

ラクスはやけくそ気味に国際救難チャンネルを開き、アビスへと通信を開く。何事かとアウルも答えてしまった。

「やーいやーい、オバカさん、アオ髪ー。変な髪型ー。ぇーと…アビスカッコワルイーですわ」
「…」

場が一瞬だけ凍りつく。流石に幼児過ぎたか、とラクスも顔を赤らめそうになるのを必死に我慢する。
国際救難チャンネルだったため、他の者達にも聞かれていたので、ステラと、その相手をしているルナマリア以外、凍りつく。
しかし寒い、あまりにも寒い。こんな子供だましに引っかかる者などいるのだろうか。というのも、これはハイネが冗談でラクスに教えてたもので、それを真に受けて使ってしまったというわけだ。
しかも普段悪口など言う事など少ないラクスにとって、語彙が少ないのでどうしても幼児なものになってしまう。

「ナ、ナタリー…あんた…酷い…」
「こんなんに引っかかる奴なんか…」
『…誰が変な髪形だぁぁぁ!!!』
「…いたか…」

スティングはバイザー越しに顔を抑える。誰も、言った本人さえも引っかかるとは思わなかったのに、アウルは怒っていた。
そして、ビームランスを片手に、ラクスのジンへと突撃する。
290592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:42:40 ID:???
「うわ、本当に引っかかりましたわ!しかも一直線にって…!ちょっちょっと!」

あまりの突然の事だったので、嵌めようとしていた本人が一番狼狽してしまった。ジンは一旦下がりながらビームライフルを撃ち、ガラス表面の大きなデブリに降り立つ。
少しはなれたところで、アウルのアビスも着陸する。

「よっしゃあきなさぁぁぁい!!」
「言われずともぉぉぉ!!!!」

アビスはデブリをけり、浮かび上がって、デブリの表面のスレスレを飛んでジンへ突撃する。
ラクスはあえて動かず、ジンを仁王立ちさせて待ち構える。

「(ランスは長いから、少し早めに…ケイさん、期待してますわよ!!)」
『ナタリー、何やってるんだ!迎撃しろ、おい!!』

そんなラクスの様子にシンが怒鳴るが、ラクスはそれでも動かない。そして、ジンにアビスのビームランスが迫り来た、まさにその時だった。
ジンが後ろへのけぞりながら、腰のミサイルをアビスに発射する。至近距離だったため、アウルは反応しきれず、アビスにミサイルが着弾する、はずだった。
しかし、爆発は起こらず、代わりにネットが飛び出してきた。そして、アビスの体全体を覆うように絡みつくと、アビスは無様に吹き飛ばされた。

「な、なんだよこれ!?くそ、取れろよ!!」

もがいてみるが、ビームランスもネットの隙間に引っかかって動かせないし、シールド内臓のビーム砲や連装砲やバラエーナ改もネットで引っかかって起動できず、このまま発射すれば自滅してしまうのがオチだ。
しかももがく毎に慣性で変な回転をしたりして、実に不愉快だ。

「くそ!だが、カリドゥスなら」
「たああ!!」

もがくのをやめ、カリドゥスを起動させようとするアウルだったが、その前にラクスのジンが彼の機体に取り付き、マシンガンを至近距離で打ち込んで、カリドゥスを潰す。そして、重艦刀を取り出す。太陽光が当たったのか、眩い光を反射させ、それが一層威圧感を感じさせる。

「よぉし、いいぞ!ナタリーいけぇ!」

援護しようと兵装ポッドを射出したカオスの邪魔をするように応戦しているシンも歓声を上げていた。ラクスもそれに答えるよう、アビスの腹部目掛け重艦刀を振り下ろす。
と、その時だった。デブリが避けたと思えば、そこからルナマリアのザクが飛び出してきて、ラクスのジンと衝突する。続けて、ガイアが現れた。

「きゃああ!!」「く、うう…!だ!」

一緒に吹き飛ばされたルナマリアとラクスはそれぞれ悲鳴を上げつつも、ブースターを吹かし、何とかブレーキをかける。

「ナタリーさん、ごめんなさい!」
『私は大丈夫ですわ…それよりも!』

ラクスとルナマリアはお互いの機体の背を向け合い、アビスとガイアと向き合う。ガイアのお陰でやっと解放されたアビスとガイアもまた、ジンとザクを挟む形で立ちふさがる。

「今度はあんな手にのらねぇぞ!」

アウルも冷静さを取り戻し、彼女らの出方を伺っている。
291592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:43:42 ID:???
「ルナ、ナタリー!っくそぉぉぉ!!」

救援に向かいたいシンだったが、予想外にカオスの力が強く、またブラストとカオスの相性があまりよくないせいもあるのか、苦戦を強いられていた。
換装できるものならしたい。だが、ミネルバは先ほど届いたメールが正しければ交戦中のはずだ。だから戻らなければいけないのは自分達のはずなのだが、戻る事ができない。
そのもどかしさに歯痒さを感じつつ、シンはカオスに突っ込んでいく。

そのミネルバだが、ガーティー・ルーに背後を取られ、立場を逆転された状態で交戦を続けていた。いや、攻撃を受けていた。
足自慢のミネルバはその機動性を活かし、小惑星を盾にしつつ、背後に回れないかと模索はしていたが、ガーティー・ルーも素早い立ち回りでミネルバを追い詰める。

「シン達の帰還は!?」
「敵MSに阻まれ、まだ…あ、いえショーン機がもうすぐ帰還できます!」

タリアの言葉にミネルバオペレーターのメイリン・ホークはすぐに答える。
MSを発進させたいのは山々だが、デブリ地帯の中でももっとも密度が高い場所ゆえに発進進路がとれず、中で待機中のレイとゲイルは外に出られずじまいだった。
こんな中でショーンの機体一機が戻れるだけでも状況は違うだろう。タリアは更に指示を送る。

「では、ショーン機にはそのまま敵艦の妨害に行かせなさい。30秒でもいい、時間を稼ぐように。但し、無理は禁物よ。一機だけでは高が知れているし。
すぐにレイ機とゲイル機を出させます」
「了解しました!ショーン機、応答願います!」
『おう!メイリン無事か!』
「ええ、こちらも何とか…。ショーン機は敵艦へ攻撃し、少しでも時間稼ぎをしてください!こちらもその間に援護を出します!」
『了解!メイリン、俺の活躍、見ててくれよ!』
「…がんばってね!」

メイリンはすぐにタリアの言葉をショーンに伝える。因みにこの二人、恋人同士、といわなくとも親友同士だった。年も一個違いで、兄妹のような関係だった。
さて、その間も戦況は動き、タリアは檄を飛ばす。

「ここが正念場よ!マリク、小惑星の地形を利用して直撃を回避して!アーサー、迎撃よ!!」
「了解!!」
「了解!ランチャー5、ランチャー10、エスパール、てぇ!」

戦艦でありながら、ドッグファイトさながらの戦闘を繰り広げるミネルバとガーティー・ルー。
ミネルバに対し、何度も攻撃を加えるものの、それを全て避けられているガーティー・ルー内では流石に焦りを見せていた。

「粘りますな」

イアンが言う。それに対し、ふっと笑い、ネオが答える。

「ああ。足自慢という名は伊達じゃないな。だが、それは足を止められたら終わりって言う意味でもあるんだぜ?
小惑星に火力を集中させろ!敵艦に岩の雨を降らせてやれ!!」
292592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:45:33 ID:???
ネオの指示を受け、ガーティー・ルーはバリアントと呼ばれるミサイルをミネルバの近くにある小惑星向けて撃った。
ミネルバ・クルーは始めミネルバを狙った攻撃と判断し、それを回避する。その判断自体は間違っていない。
事実、バリアントの中の数発はミネルバへの直撃コースを飛んでいる。だが、これは囮だ。
対空砲火でバリアントを打ち落としているうちに、小惑星にぶつかるバリアントはミネルバの左右を通り過ぎようとしていた。
その様子を遮蔽されていたミネルバのブリッジ・ゲスト席で見ていたアスランは思考を巡らせ、そして叫んだ。

「(直撃コースじゃないのが二つ、いや三つか…!これは)まずい、小惑星から艦を離してください!!」

しかし、アスランが叫んだところですでに遅い。そんなゲストの突然の言葉に反応しきれるわけがなく、バリアントは小惑星にぶつかって爆発し、
割れた岩がミネルバを襲う。それにより、右舷の一部のスラスターが破壊されてしまった。
その衝撃により、ミネルバ中にクルーたちの悲鳴が響き渡る。そんな事にはお構いなしに第二波が襲い掛かり、ミネルバに更に岩をぶつける。

「4番、6番スラスター破損!これでは身動きが取れません!!」
「針路、塞がれます!!」
「更にモビルアーマーとモビルスーツ接近!!」

クルー達の状況報告にタリアは舌打ちをしながら歯をかみ締める。嵌められた。タリアは艦内通信を開き、格納庫につなげる。

「エイブス!レイとゲイルを出して頂戴!!」
『はっ。しかし、進路が塞がれていますが』
「歩いてでも何でもいいから!!兎に角、このままじゃ狙い撃ちにされるわよ!」

タリアの言葉を聴いて、マッドは頷き通信機を置いて、他の整備士たちに指示を送る。

「よぉし、お前ら、ザクとゲイツRを出すぞ!レイ、ゲイル!お前らは歩いて外に出てくれ!いいな!!」
「了解」
「りょ、了解!!」

レイのザクとゲイルのゲイツRは歩いて艦の外へと出ようとする。と、ふとレイはピンポイント通信で前方で誘導しているケイに繋げる。

『どうしたんだい?レイ』
「いや、何故お前がMSに乗らないのかと思ってな…」

レイの記憶では、ケイはMSパイロットのはずだ。それが何故今メカニックマンという役目を負っているのか。
それに、議長が乗っているこの艦を守るためにも、MSパイロットはひとりでも多くいたほうがいい。しかし、その期待をケイが簡単に裏切った。

『…怖くなったのさ、何もかも。僕はね。操縦桿を握っただけで、嘔吐物ぶちまけるMSパイロットなんて、邪魔者以外なんでもないでしょ?』
「本当なのか、それは…」
『一種の恐慌症さ。そうでなきゃ、今頃インパルスで僕が戦っていたところだよ』
「そうか。悪かったな」
『いや』

レイは一言謝って通信を切る。真相はどうかはわからないが、MSに乗る気がないのは確かなようだ。だとすれば、自分達でどうにかするしかない。
MSをカタパルトの出口まで歩かせ、そして外へと出る。岩が多く、視界が利きづらい。しかし、それは相手も同じこと。
レーダーが使えない今、どちらが先に敵を見つけられるか。それに掛かっている。
293592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:47:15 ID:???
「ゲイル、お前は艦に迫ってくるMSを頼む。俺はあのMAをやる」
『ああ、頼むよレイ。あんなMA、相手に出来るのお前だけだからさ…死ぬなよ』
「ああ。わかっている」

レイとゲイルはお互いの機体の手でハイタッチし、二手に分かれる。ゲイルは艦の近くでその護衛に辺り、レイは艦から離れて索敵を行う。
レイの持つ空間認識能力によって、同じ能力を持つ相手を感知する事ができる。そして、アーモリーワンでの戦いで、敵のMAパイロットもまた、同じ能力を持つ者だと感じていた。
だからこそ、自分が相手をしなければいけない。こんな状況では、あの空間認識能力による空間攻撃は、その思考を認識できる自分でしかできない事だ。
ゲイルがいてくれてよかったとレイは心の中で安心した。もしゲイルがいなければ自分だけでMAとMSを相手にしなければいけない。流石にそれは厳しいだろう。

「(ミネルバにはギルが乗っているんだ!やらせてたまるものか!!)」

これでMA一体に集中できる。気合を込め、レイは索敵を始める。そして、何かを感じ取った。
それを感じたか、MAエグザスのパイロット、ネオも頭に何かが走るような感覚を覚え、気を引き締める。

「(あの白い坊主か…面白い!)ミラー、お前は新型艦を狙え。俺はあの白いザクを相手にして道を開く。残っているMSは教習生上がりだ。お前なら楽勝だろ?」
『どうだか。しかし、やって見せましょう』
「ふっ、頼んだ」

ダガーLのパイロット、ミラーに指示を与え、自分は何かを感じた方へと向かっていく。ミラーは指示されたとおり、ミネルバへ真っ直ぐ突っ込んでいく。

「…いたか!!全く、何なんだね、君は!!」
「うおおお!!」

ガンバレルを切り離し、レイのザクに向かわせるネオ。対し、レイはトリガーを引いてビームライフルをエグザスに向けて発射する。
エグザスはバレルロールの要領でビームをギリギリでかわし、そのままザクへビーム砲を撃つ。
レイはデブリの影を上手く使い、エグザスの攻撃を回避しつつ、ガンバレルの一つを撃ち落とす。

「ちぃ!!」

デブリを撒き散らした事でミネルバの足をとめることが出来たが、その分ガンバレルを使うには障害物が多すぎる。
そのガンバレルを動かすだけでも集中力を要するのに、戦闘機であるエグザスの操作。エグザス自体は耐久力に欠けるものだ。
ザクのビームライフルは勿論、このデブリに少しでも衝突するだけでも致命傷になりかねない。そもそも高速戦闘が出来ない
このデブリ帯では、この機体は不利だった。
しかし、ダークダガーLやダガーLが整備が終わっていない状況である以上、使えるものは使わなければいけない。
ともなれば、この機体を最も扱えるのはネオである。ネオだからこそ、このような場所でも高速戦闘が可能なのだ。

「さぁて、こりゃ気合を入れなおさなければいけないな」

ネオは一度ザクをデブリの少ない場所へ誘い、そこで再びガンバレルを展開して迎え撃つ。レイもそれをあえて受け、狙いをエグザスだけに絞る。
294592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:48:42 ID:???
一方ナタリー達はいまだカオス達と交戦を続けていた。変わったところといえば、担当するMSくらいか。
相変わらずカオスとインパルスは戦闘を続けていたが、アビスはザクと、ガイアはジンを交戦していた。

「確かにガイアの動きは他のと比べて鈍いですけど…」
「うぇぇい!!」
「何なんですの、このむちゃくちゃな攻撃は!!まあ人の事言えませんけど!」

遠距離攻撃によって接近できない状況ではない今、幾分かはましにはなったものの。それでもガイアの動きは常人のそれとは比べ物にならない。
ガイアはデブリを利用し、まるで地上にいる時のそれと変わらぬ機動力を再現している。ガイアは変形状態で背中のビーム砲をジンへ撃つ。
ラクスは追う様にトリガーを引いてビームライフルを撃つが、急に引金を引いても反応しなくなった。どうやらエネルギーがなくなってしまったようだ。
それを好機とステラはビームカッターを展開し、ジンへ特攻する。ラクスは歯を食いしばりながらビームライフルを盾にし、防ぐ。
しかし、当然ながらビームライフルはビームカッターにより切り裂かれてしまう。しかし、完全には切られていないので、ラクスはジンを押されるがまま、斜めに倒れながらガイアの進行方向を変えて避ける。
そして、完全に切れたビームライフルを放し、ガイアの体を掴んだ。

「あう!?」

突然のことでステラは驚いてしまった。それを知ってか知らずか、ラクスはそのままジンの姿勢制御用のブースターを全開にして、まるでブレーンバスターのような形でガイアを小惑星にたたきつけた。
VPS装甲のお陰でヘッドパーツに異常は見られなかったが、それを胴体と連結するフレームに異常をきたし、ガイアのメインモニターにノイズが入り始める。そのついでにステラ自身にも自分の体が上に引っ張られるような衝撃を受け、嗚咽を吐いてしまう。
と、それと全く同時期にミネルバのある方向から爆発が起こった。しかし、あの距離はミネルバではない
事実、ミネルバはまだ何とかではあるが、一番遠いシンのコクピットからでも確認できていた。
ともなれば。

「は?」
「あら?」
「え?」
「何!?」
「ガーティー・ルーかよ!?」
「うぇぇ…い?」
『時空を越えて俺、参上!!ってか!待たせたな、ミネルバ!ショーン様のお帰りだ!!』

そう、目立たぬよう、誰にも悟られぬよう遠回りをしてガーティー・ルーに近づいていたショーンがガーティー・ルーの左側面を攻撃したのだ。
ミネルバ付近でゲイルとミラーの交戦があった所為か、すぐに攻撃しなければという切迫感からか、狙いを定められず、急所を攻撃できなかったが、それでも十分な一撃だ。

「メイリン、俺やったぜ!初任務、大成功だ!ははは!」

ショーンはコクピットの中でガッツポーズをし、ミネルバにいるメイリンへ喜びの声を叫ぶ。といっても、通信が使えないこの状況では聞こえやしないが。

「ぐ、ぅぅ!!被害報告!!」
「は、はい!各ステーション被害報告急げ!!」
「対空砲火は使えるか!?」
「使えます!」
「よし、迎撃!!敵を離したらスティング達に帰還命令を!この宙域を離脱する!」
「了解!」
「おっと!」

対して、ガーティー・ルーはすぐに対空砲火を撒き散らしてショーンのゲイツRを牽制する。ショーンもすぐにペダルを踏み、そのまま上方向へと逃げる。難を逃れ、ショーンは安堵の息を吐いた。
が、しかし次の瞬間、ショーン機が胴体から真っ二つになった。エグザスのサーベル装備のガンバレルが、ショーン機を襲ったのだ。
295592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:50:08 ID:???
「あ、あ…メイリ…」
「調子に乗るなよ、ザフトの諸君」

悲鳴を上げる事も叶わぬまま、ショーンは爆発に巻き込まれ、死んだ。それと同時に、ガーティー・ルーから信号弾が発射される。
それを見たスティング達は少し納得の行かない表情をしながらも、ガーティー・ルーへと下がろうとする。

「ショーン!!いや、そんなぁ!!」

ミネルバのブリッジにメイリンの悲鳴が響き渡る。あまりにも痛々しいその光景に、ゲスト席に座っていたカガリは眼をそらしてしまった。
一方のアスランも、何か悔やんでいる表情で俯きながら歯を食いしばっている。

「ショォォォン!!畜生、お前らぁぁぁぁぁ!!!」

シンは怒りの叫びながら、ビームジャベリンをインパルスの片手にカオス達に突っ込んでいく。エネルギー残量が少ない所為もあり、有効な武装はこれしかないのだが、それでも無謀だ。
ルナマリアとラクスはそんなシンの援護に向かう。感情を押し殺してはいたが、彼女らの心情も同じだ。目の前で仲間を殺されて平気な人間などいるものか。

「あん?しつこい奴らだぜ…おい、アウル!」
「しょうがねぇな…」

アウルはスティングの声にこたえるようにアビスの踵を返してバラエーナ改をばら撒くようにはなつ。
頭に血管を浮かべながら、怒り狂ってカオス達に襲いかかろうとしていたシンだったが、ビームの雨に曝され、下がざるえない。
ビームは所々デブリに当たって、それは爆発し、そして煙幕のようにカオス達の姿を隠す。
その爆発の中に巻き込まれたインパルスは腕で頭やコクピットを保護する。

「逃がすかよ!!」

そして、シンは闇雲にケルベロスを撃とうとしたが、その時には煙幕は晴れ、三機は遠く遥か彼方へと飛び去っていった。

「…くっそぉぉぉ!」

インパルスのコクピット内にシンの無念の叫びが響き渡る。
ショーンとはレイやルナマリア、ゲイルと同じ、士官学校での友達だった。お調子者で、すぐ図に乗るのが玉に瑕だったが、それでもいい奴だった。同じミネルバ所属と決まって、互いに喜んだ。
その友が死んだという事実をシンは認めたくなかった。だが、ショーンは死んだ。

「シンさん…」

ラクスはそっとジンをインパルスへ近づけ、その肩に手を置かせる。ルナマリアも沈痛な表情を浮かべていた。
初めての実戦で友を失う事になるとは、誰が予想しただろうか。いや、戦場に出た地点で、それは予想されていた事なのかもしれない。だがしかし。
その事実を認めることは、この場にいる誰よりもラクス自身が知っていた。彼女もまた、ヤキンで仲間を失った経験を持つ。
しかし、認めなければいけない。死者に魂を引かれては自分も死ぬ事になる。

「シンさん、戻りましょう。ショーンさんが救ってくれた、ミネルバへ…」
「ああ…」

シン達は、自分達の未熟さをかみ締めながら、ミネルバへと戻っていった。
296592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:51:19 ID:???
ミネルバに戻った彼らが眼にしたのは、ボロボロになった母艦の姿だった。進水式もまだだというのに、歴戦の艦、というには傷が深すぎた。
装甲は岩の衝突によってへこんでいるところがあるし、スラスターの一部も爆発してしまったのか、焼け焦げていて、使い物になりそうもない。
武装の一部も傷だらけになっていた。つい先ほどまで綺麗な状態だったのが嘘のようだ。
が、その事で嘆いているわけにもいかず、彼らはミネルバ付近に浮遊している岩を除去し、何とか航行可能にまで応急処置を済まし、宙域を離脱した。
現在は付近まで来ていた補給艦に、ミネルバが襲撃後そのまま搬入できずじまいだった本格的な装備や補給物資を貰い、ミネルバ本体の修理のためにザフト領域の地球衛星軌道上を漂っていた。
幸い、包囲網はできているらしく、強奪犯達も簡単には抜け出せないだろうから、その処置は委員会にゆだねられていた。
ミネルバクルー達にやっとのこと、つかの間ではあるが休息が訪れていた。

「ふぅ…ブラストの意味ないんじゃない?この動きじゃ…。今度からシンが出るときはフォースかソードがいいな。ルナも…ガナーはなぁ…ブレイズのほうがいいんじゃないかなぁこれ」
「…」
「いい加減機嫌治せよ、ハロ」

と、そんな中。ケイは一人部屋に戻って、貰った戦闘データの解析をしながら、ハロの調子を見ていた。
長い間ボストンバックの中で放置されたのがそんなに気に食わなかったのか、ハロの機嫌は最悪のようだ。話しかけても答えようとしない。
まるで感情があるかのようなそのロボットに少し興味を持ちつつも、そっとその機体を撫でてやる。

「ラクスだって忙しいんだからさぁ。もう少し我慢しろって。もうちょっと落ち着いて、そのへこんだ体治したら、彼女の元に戻してあげるよ」
「ハロハロ」
「うん、約束する」

突然のハロの声に、ケイは苦笑しつつ、戦闘データのほうへ眼を向ける。丁度、レイの場面になっていた。
ケイの表情を真剣なものに変えてその場面を見る。エグザスとの戦闘を見て、ケイはそのザクの姿にクルーゼが操っていたゲイツを投影する。
確かに、似ていた。が、しかしやはりクルーゼのほうが動きがいい。経験の差か、それともやはりクローンといえども癖の違いが出るのか。
そういえば、自分もオリジナルも癖は似ているものの、好みとしていた距離というのが違っていた。オリジナルは接近戦が得意だったらしいし、
対して自分は遠距離からの攻撃のほうが好みだったといえば好みだった。まあ、あのラクスにフリーダムを与えられたというのもあるかもしれないが。

「…ふぅん。まあ、そこそこってとこかな。総合的にはよくやれてるみたいだし…。まあ後は経験で何とかなるかな。…けど、実戦、か」

椅子にもたれながら、ケイはコーヒーを一口二口飲む。少し前まで平和だった。だが、それはもろくも崩れた。あのミネルバを襲ったダガーLを見ても、敵は恐らく連合だろう。
連合にはブルーコスモスという反コーディネイター組織が絡んでいるため、その過激派が何かを漬け込んで戦争をしたがっているという可能性も捨てきれない。色々と複雑なのだ、地球は。
ザフトという軍組織に入ったケイだったが、正直言って、いや誰もが思っているだろう。戦争などしたくはない。戦争など起こって欲しくない。
だがしかし、自分はただの一兵士だ。どう言える立場ではない。
だから、最善を尽くす。

「さってと…」

ケイはあるファイルを開く。そこにはアーモリーワンでラクスのジンが使用していた対MS用大型ライフルのデータや他にも怪しげな武装やMSのデータが映されていた。
所謂ブラックボックスと呼ばれている、いわばケイの趣味的なものも兼ねた企画書だった。

「あのライフル勿体無いなぁ〜。レイ辺りに使わせようっかなと。ああっとブラストも何か利用できないかなぁ。こう、ミネルバの艦砲にするとか?ケルベロスを砲か…いいじゃないか…。あ、でもプログラム追加するの僕か。めんどくせ。
あっと…インパルスの変形パターン増やせないかなぁ。スカイグラスパー形態とか。フォースシルエット使えば出来そうなんだけどなぁ。うーん…調達してもらうか、グラスパー…」
297592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:52:43 ID:???
ビー

と、そんな所へケイの部屋のインターフォンがなった。画面を見てみると、どうやらレイのようだ。ケイは椅子から立ち上がって、ドアを開ける。

「突然すまない。暇か?」
「ああ〜…うん。まあ。ちょっと待ってもらえれば」
「分かった」

ケイはパソコンに戻り、先ほどのデータを纏めたものを携帯用のフラッシュメモリに保存し、それをポケットの中に入れる。そして、改めてレイの前に立った。

「で?」
「ちょっと来てもらいたい。会ってほしい人物がいるんだ」
「はあ。まあいいけど」

ケイは頭を掻き、欠伸をしながらレイの後を付いていく。そんなだらけたケイの反応には無関心なレイはどんどん進んでいく。
暫くミネルバの奥へと歩いてゆき、たどり着いたのは艦長室。ここは艦長であるタリアが使っている私室だ。ということは、タリアに自分を合わせたいというのか。首をかしげるケイを尻目にレイはブザーを鳴らす。

「議長、彼を連れてきました」
「議長!?」

レイの思わぬ言葉にケイは思わず甲高い声を上げてしまう。それを見たレイは口にしぃっとケイを黙らせる。

『レイか。うむ、入ってくれ』

中から聞き覚えのある、凛々しそうな男の声が聞こえてきた。テレビの演説で、何度か耳にした、あの声。
ケイは口元をピクピクと動かしながら、レイを睨む。

「はっ…。ケイ、今から議長と面談してもらう。議長はお前という存在に大変興味を惹かれている。ぜひ、一度会って話してほしい。それが、かならず議長やお前のためになるからな…」
「僕のためってね…。君さ、もうちょっと前置きっていうか、こう…時期を待つということができないの?」
「気にするな、俺は気にしない」
「気にしろよ!!…まあいいや。入ろうか」
「ああ…」

ケイは頭を抱えながら、レイと共に部屋に入る。そこには、やはりプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルその人がいた。
彼は座っていたソファーから立ち上がり、柔らかな笑顔を浮かべながらケイとレイに歩み寄る。そのケイの後ろのドアが閉まり、そこにレイが立つ。これで逃げられないか。デュランダルはケイの前に立つと、その左手をケイに差し出した。

「ケイ・クーロン君、いやキラ・ヤマト君だね?」

デュランダルの言葉に、ケイは眉を少しだけ跳ね上げながらも、その差し出された手を強く握る。少しばかりの宣戦布告だ。
ケイは正直言って、テレビで見ていたときにもあまりいい印象、というより腹黒い何かを感じてあまり好意的に取れない。油断できないこの雰囲気がいやだった。

「僕はケイ・クーロンです、議長。お会いできて光栄です」

ケイは笑わないまま、威圧するつもりで冷たい視線で言った。その表情に抑えることなく、デュランダルは手を離す。

「こちらこそ、君に会えて嬉しいよ。…まあ掛けてくれ」
「(…食えないおっさんだなぁ。やりにくい)どうも」
298592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:53:54 ID:???
口が裂けても決して出せない事を心に思いつつ、デュランダルと向かい合う形でソファーに座る。艦長専用、ということか上等なようで、感触は柔らかかった。
ふと扉のほうを向きなおしてみる。レイがいつの間にかいなくなっていた。つまり、味方もいなければ敵もいない。
やれやれと思いつつ、ケイはため息を吐いた。それを知ってか知らずか、ふっと笑ってから話をはじめた。

「それにしても、レイから話を聞いたときは驚いたよ。君が、このミネルバの一整備兵をやっているとはね。てっきり、ラクス・クラインとどこかで隠遁生活を過ごしているものだと思っていた」
「あながち多分間違ってないでしょうね。僕も、プラントで好き勝手に過ごしているだけです。自分の好きな事をしている。それだけですよ。責任だとかなんだとか、あるんでしょうけど。今日はそれを問い詰めに来ましたか?」

にやっと笑いながら、あえて挑発的な態度をとるケイ。やれやれ、二年前に比べて大分ひねくれたものだと心の中で苦笑しながら。
しかし、対するデュランダルの表情はまだ柔らかい。どちらかといえば、困惑しているといったところか。

「いやいや、そんな事はない。寧ろ、私は感謝しているんだ。ラウ・ル・クルーゼはこの世界を呪い、そして絶望を覚えていた。私は、彼の友人だというのに彼の事をわかってやれなかった。誰も彼の事をわかってあげられなかったから、彼は手段を見誤った。
そしてパトリック・ザラもムルタ・アズラエルもね。もしあの後ジェネシスが発射されていれば、地球もプラントも、全て終焉を迎えていただろう。君は、いや君達は人類を救った英雄だ」
「英雄扱いなんてごめんですよ、僕は。結局利用されていただけなんだから。確かに、あの戦いは酷いもので、見ていられるものじゃない。だけど、冷静に考えれば僕達がやったことはただの思い上がりだ。上手くはいきましたけどね。それに僕はそんな器じゃあない」
「捻くれているな君は。まあ、その出生では仕方あるまいな…。…君から見て、クルーゼはどう思えたかね?」

デュランダルの顔が少しばかり暗くなる。なるほど、これが聞きたかったのか。ケイは猫背にして、ソファーの前にある机に手を合わせて乗せて言った。

「僕自身、否定は出来ませんでしたよ。その時は守りたい世界があったから彼を殺したに過ぎません。でも、時々考えます。彼の言った事は正しいってね。
欲望に汚れた世界の上に憎しみや悲しみなどの業を重ねてきた人間達。ナチュラルもコーディネイターも皆欲塗れだ。自分のほうが優れている。自分のほうが金持ちだ。だから力を持つべきだ。
僕もクルーゼも好きでこう生まれたくはなかったのに、そう生ませたのは人のエゴだ。憎しみを作り出したのは、一体誰だ?人ですよ。そう考えると、救えない存在ですよね、はは」
「…まるで世間話をするような感覚で言うね、君は」

ケイの乾いた笑い声と少しばかりの狂気に流石のデュランダルも何か得体の知れない恐怖を感じる。しかし、ケイの体からすぐにそれはなくなり、少しばかり人間らしい笑顔を見せる。

「でも、そんな腐った世界にも、いや腐っているからこそ何かいいところって言うのは見つかるんですよね。それに、世界を綺麗にする方法は滅ぼすだけじゃあない。何か、方法があるはずなんです。
まあ、僕は知りませんけどね。ただ、僕は一人の女性がいるから、死なせたくないし死にたくないだけです」
「…ナタリー・フェアレディかね?ジンのパイロットの…」
「ええ」
「彼女は何者なんだね?経歴を見せてもらったが、謎が多すぎる。それに…この顔は、ラクス・クラインそのものだ」
「あ、わかります?」

驚いたように眼を見開かせるケイだが、その口元は笑っていた。あんなに正体が暴かれる事を危惧していたのにもかかわらず、全くその素振を今は見せていない。そんな彼の反応にデュランダルは驚いた様子で彼を見ていた。

「まさか…本人かね?」
「まあ今はナタリーという事にして置いてあげてください。彼女は今を一生懸命生きているんですから、その邪魔をしないであげてくださいよ。もしその邪魔をするというなら、殺しますよ」

ケイは笑みを消し、デュランダルを睨みつける。その瞳からは濁りきった狂気と凄まじいまでの純粋な想いが混ざり合い、何か、不安定さを見せていた。
決して混ざり合う事のない二つが混ざり合っている。しかしそれは、一つのバランスが崩れれば崩壊するのだろう。アンバランスな存在、それが今のケイ・クーロンなのだろうか。
299592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:55:13 ID:???
「はっきり言うね、君も。まあこちらとしても君もラク…いやナタリー君もプラントのために働いてくれている。どうしてこれの邪魔をしようか。私は、その支援をしよう。但し、君達がもしプラントの害となるならば、その時は…わかっているね?」
「僕は兎も角、彼女がそんな事をするとは思えませんけど。まあいいや、お互い、あまり深いところまで干渉しないようにしましょう。それが、お互いの身のためでしょうし」
「どういうことかね?」
「僕という存在というのを利用されないための保険を、僕が持っているという事です。まあ色々と黒〜い噂、聞いてますから。貴方の、いや…この部屋の持ち主のね」
「…」
「貴方と艦長さん。いい関係だったみたいですねぇ。まるで、恋び」
「キラ君」
「僕はケイです」

先ほどの雰囲気をなくし、デュランダルは静かに、だがまるで逆鱗に触れたように、ケイを怒りを含んだ瞳で睨みつける。対するケイはそれを真っ向か受けるように挑発的な笑みを口元に浮かばせていた。
ケイの指摘通り、デュランダルとミネルバ艦長タリア・グラヴィスは肉体的関係を持っていた。しかし、二人の間に子供が生まれなかった関係もあり、彼らは別れてしまった。
コーディネイターは、その同じ民主間では出生率が低く、それは世代を追う毎に低くなっていく。その悲劇が、二人を裂いたのだ。
しかし、更に不幸なのは、その噂がどこからか流れていて、タリアが色仕掛けでこの立場を貰ったという風に言われているのだ。
別にそんな事がないのだが、ケイがこの事実を広めればタリアの立場は危ういだろう。因みに、ケイ自身は別にこれを知っていたわけではなく、タリアとデュランダルが仲が良い関係だという噂と、
そういう噂から、少しばかり釜にかけてみたのだ。そしたら出てきてしまった。自分の勘の出ところの悪さに少しケイは心の中で苦笑してみる。

「何が望みかね、ケイ君」
「今言ったでしょうに。つまり、お互い必要になった時になるまでは秘密を明かさない事。まあそれと、そこの冷蔵庫に入っているであろうお酒を一個拝借したいことですかね。それ以上は望みません。ああ、そうそう。こちらからの口止め料ということで、
何だったらこのデータでも使ってください。あなたは強いMSが好きなようですから。ただ、あんまり核とか使わないでくださいね、危ないから」

ケイはポケットから携帯用メモリをデュランダルに投げ渡す。それをデュランダルは受け取り、そしてため息をつく。

「…ふぅ…まあいい、これはありがたくいただく。それにしても、正直、君がそこまで腹黒いとは思わなかったよ、ケイ君。戦時中のキラ・ヤマトの人物像から想像してね」
「僕も、貴方の奥底の黒い部分にびっくりしてますよ」

お互い腹の探りあいを終えたところで、二人は笑みを浮かべて握手をした。だが、二人とも眼が笑っていない。
お互いがお互いを危険人物だと認識し合い、そして牽制しあっている。握り合っている手も、何処か力が入っているようだ。

「…ところで、君のことは姫やアスラン君は知っているのかね?そしていい加減手を放したまえ」
「いいえ、教えるわけないでしょう?教えたら彼らや僕らがクラインの過激派に消される可能性だってあるのに。怖くて話せやしません。ていうかそっちが放せよ」

お互いの手をより強く握り、お互いの表情が痛みで歪みつつも笑いながら会話を進める。

「そういえば、僕の事、カガリは気づいているようですけど。アスラン、何か言ってましたか?(痛いな、畜生。このおっさん意外と力あるな)」
「いいや、何も?姫は気がついていたのか(これがスーパーコーディネイターというものか、しかぁし!)そんな素振は見せてなかったけどな、ふん!!」
「ぎゃ!!あだだだだだだ!!すいません、調子乗りすぎました!!」

意地になってデュランダルに対抗していたケイだったが、更に意地になったデュランダルが命一杯力をこめてケイの手を握ったため、その痛みに負けて、悲鳴を上げながら手を振り回した。
それに満足したか、デュランダルは得意げに笑いながらソファーに再び座る。対してケイは悔しそうな表情で涙ぐみながらソファーに座る。
300592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:57:15 ID:???
「ふふん、大人を嘗めないでくれたまえ。…しかしだな、色々と味方は増やしておいたほうが良いのだぞ?特に、姫は直情で正義感溢れる人だ。君の事を知れば、なんらかの援助をしてくれるはずだし、
アスラン君は君の親友だろう。…そういえば、アスラン君は君やナタリー見て気がつかなかったのかね?」
「あーいたた…ええ、まあそうですけど。僕個人としては、ケイ・クーロンとしていきたいわけで、あんまりそういうのに頼りたくないんですよ。それにカガリは頭悪いし、アスランだって優柔不断だからどっちに付くか分からないし。
それ以上にもし議長がアスランだったとして、偽者だけど賢くて、一見すると聡明で綺麗なピンクと、傷だらけでバカで単純でアホでやかましいくらいの熱血なピンクとどっちを選びます?」
「難しい質問だな。私だったら前者の恐ろしさを知っているから、後者を選ぶが」

デュランダルは少しだけ悩んだ後、敢えて自身の視点の意見を述べてみる。確かに綺麗なラクスは魅力的だろうが、それは表面的なことだ。クローンを平気に生み出し、自分のこまとして働かせている彼女の真意が読めないのだから、読みやすいほうを選ぶべきだろう。
それに対し、軽くデュランダルを指差しながらケイは言った。

「僕でも後者を選びます。好きですしね、やかましいの。でも、何も知らないアスランだったらどうでしょ?」
「う〜む。まあ前者を選びたい気持ちがあるだろうな。人というのは、より良きものを選びたがるのが性だ。だからナチュラルはコーディネイターを生んだ」
「まあ、アスランが気がつかないのはそういうことですよ。ある程度おろかのほうが可愛げがあるはずなんですけどね。デコは以前のラクスについて、人が変わったけど、彼女も大人になったのだろうと言ってましたし。
つまり、彼女がバカピンクから黒ピンクに進化したと錯覚をしているわけです。許婚の癖に」

微笑しながらため息を吐くケイ。デュランダルは少し呆れた表情で言った。

「君は本当に遠慮のない男だな。まあ確かに、昔のラクス・クラインはテレビで見ていてもあまり頭のいいと言えない発言をしていたが、それでも真っ直ぐだっただろう。それに、彼女は父親の行いに対し、反対したと聞くしな」
「え、そうなんですか?」
「ああ、噂だが。彼女の父、シーゲルがニュートロン・ジャマーの投下指示を出したのは知っているか?」
「ええ、まあ。知ったのは最近ですけど」
「エイプリルフール・クライシスを起こしたのは彼だ。その時も彼は生粋のナチュラル嫌いの一人だったからな。だが、娘であるラクス・クラインはその所業に反対し、一時は家出もしていたくらいだ。
その後、血のバレンタインなどを経て、彼は自分の行いを悔い、ナチュラルとの融和を図った。まあ、彼なりの贖罪、といったところか」
「(家出、ね。あのバカピンクの事だからなぁ)だけど、彼は殺された」
「そう、しかも自分の娘…いやその偽者の所業によってな。彼女はそれを知っているんだね?」
「ええ、少し後悔しているようでしたが。まあ、でも結果的に戦争が終わったので、許せないけれど、それ以上は何も言わないと」
「そうか…私としては止めてもらいたかったんだがな…。しかし、彼女を含めた三隻同盟がジェネシスを破壊したなどのお陰で、前回は上手くいってしまった。
誰にも何も言えることはない。今のまま隠居し続けるのであればの話だが…。全ては遅すぎた」
「まあ、今は未来の事を考えましょうよ。僕だって、まだ解決していない問題がありすぎて、困っているんだから」
「そうだな。今はお互い目の前の事を片付けるとしよう。奪われた三機のMSも追わねばならないからな。君達の事は姫には内密にしておこう。暫くは、君達が自由にやってくれたまえ」
「ありがとうございます、議長」

ケイは議長に不敵な笑みを浮かべながら敬礼し、ちゃっかり酒を貰ってその場を後にした。
301592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 01:59:43 ID:???
そんな会談があった中、シン・アスカは一人ミネルバのトレーニングルームに向かっていた。待機任務中ではあるが、やることを全て済ませた後だったので何もする事がなく、気分転換にトレーニングでもしようと思っていた。
ゆったりとした足取りでトレーニングルームへと歩いていく。

「あ…」
「あら?」

と、目的地にたどり着いて中に入ると、そこには桃色の髪を持つ少女ナタリーことラクスがサイクリングマシンに乗っていた。
さわやかな汗を掻いていて、汗臭いはずなのに何処か青春らしさというか、爽やかな空気が流れている、気がする。

「シンさんもトレーニングですか?」

ラクスは汗をハンドルにかけていたタオルで拭きながらシンのほうを向いて言う。シンはランニングマシンのほうへ歩きながら答えた。

「ああ、うん。まあ…そんなところかな。あんたもトレーニングか?」
「私の場合は日課ですから」
「そう、なのか?お嬢様だと思ったから、こういうことしないと思った」

言葉使いやその雰囲気から、シンはラクスがどこぞのプラントの議員の娘、もしくは有力者の娘だと思っていたが、どうやら先入観だったらしい(あながち間違えではないが)。
今のラクスからは土臭さというか、何か親近感のようなものが沸いてきた。

「まあ、一応貴族の娘なんですの、私。といっても、もうすでに没落していますが…」
「そうだったのか…ごめん」
「いえいえ、お気になさらず」

ラクスは眉毛を八の字にしながらシンに言う。その表情は、何処からどう見ても普通の少女だ。

「…でもさ、よく軍に入れたな。俺だって、士官学校入るの結構苦労したんだぜ?」
「いや、まあその…色々ありまして。大きな声で言えませんけど…正式な手順踏んでないんです…」
「はあ!?」

ラクスの思わぬ言葉にシンは声を張り上げてしまう。それをラクスは慌てて人差し指を唇に添えて静止させる。

「…どういうことだよ?」
「いや、まあ…実はレジスタンスを経て、色々と前大戦のごたごたを利用して入ったんですよね…。まあ、だから…そのレジスタンスの人達を助けたかったんです」
「すごい人生だな…一角のお嬢様からレジスタンスメンバー、そして軍人か。ということは、あのケイって奴も同じなのか?」
「え?」
「すげぇ仲良さそうだしさ。長い付き合いなのかなって」
「彼とは軍のほうで知り合いましたの。2年の付き合いですわ。大切なお友達です」
「大切なお友達、ね」

まあそうなんだろうな、とシンは苦笑しながら納得してみる。その様子に気がついたか、きょとんとした表情でラクスは彼を見つめていた。

「いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ」
「はあ…あ、そういえばシンさんはどうして軍に入ったのですか?やっぱり、軍人に憧れてですか?」
「ん?ああ…」
302592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 02:00:22 ID:???
「そうだな、あんただけつらい過去を思い出させちゃって、俺が話さないなんて不公平だよな」
「いや、そんな」
「気にするなって。…俺、本当はオーブで生まれてオーブで育ったんだ。至って普通の、普通の家族の中に。贅沢な生活じゃなかったけど、妹もいたし、俺幸せだったんだ。
だけど、ある日、それはズタズタに壊された。オーブは連合に攻められた」
「…二年前の」
「そう。連合の侵略にオーブは、人々の避難もままならない状態で抗戦した。その結果があれだ。俺の家族も、避難の最中、俺と妹の携帯を残して…」
「シンさん…」
「…俺は憎んだ。あの時、俺達を虫けらのように吹き飛ばしたあのMSを。白い悪魔を…そして、理念を謳っておいて、勝手に戦争をおっぱじめて勝手に死んだアスハをな」

シンの静かではあるが確かに赤い瞳の奥に持っている憤怒と憎悪にラクスは言葉を失う。
それもそのはずだ。彼女は知っている。そのMS、フリーダムの事を。そして、その搭乗者が、キラ・ヤマトことケイ・クーロンだという事を。だから、あの時様子が変だったのだ。
ケイにとって、あの頃は何もかも必死だったのだろう。『生まれて』間もない彼にとって、『ラクス』は絶対的な存在だっただろうし、彼女から渡されたフリーダムで何もかもが守れると思っていた。
本当に、人がいるなんて思ってもいなかったのだろう。事実、彼が話したことだ。
彼はその時の事を後悔していた。あんなに地面に向かって発砲して、人が残っていたらとどうしていたんだと。
そして、それは現実となってしまった。彼は、多分知っているのだろう。だから、あんなよそよそしかったのだ。あの時。出撃前の時。
ラクスは、その事を思うと何か心の中が張り裂けそうになった。だが、自分にできる事など少ない。これはシンとケイの問題なのだから。
他人が口出しできるほど、簡単な問題ではない。しかし、ラクスは言いたかった。言葉では分からないが、少しずつ、だが確実に憎しみに囚われつつある彼に対して。

「俺は…守れなかった。父さんを、母さんを、そしてマユを…!俺は守るための力が欲しい!俺が守りたいものを守れるだけの力を!!」
「…そして、ザフトに入ったのですね。ご苦労を重ねてきたのでしょう…。あの、シンさん。憎しみを持つ事自体、本当に悪い事じゃないと思うんです。それが道理ですし…。私が同じ立場だったら、そうしています。
でも、憎しみに囚われないでください。憎しみだけに囚われると、守りたいものも傷つけてしまいます…。何もかも、見えなくなってしまいます。
守りたいものを守る。その想いを大切にしてくださいね」
「…」
「あ…も、申し訳ございません!私ったら、何を過ぎた事を…本当にす、すいません!ああ、バカですわ私…」

ラクスはシンが自分の言葉が癪に触れたのだと想い、必死に謝罪の言葉を投げかける。その光景は何処かこっけいだ。
事実、シンは少しばかり、自分の何がわかるんだとイラついていたが、この光景を見て、そんな考えはばかばかしいと思い、ふっと笑った。

「あんた、純粋に俺の事心配してくれてんだな。ありがとな。少し、気が楽になった」
「は、え、いや…その。あはは…」

先ほどの焦燥はどこへやら。今度は顔を真っ赤にしてラクスは苦笑した。それに釣られ、シンも少し苦笑する。

「あんたって、あの時もそうだけど、一生懸命なんだな、いっつも。どうやったらそこまで一途になれんだ?」
「う〜ん…まあ色々と若輩ですから、私は。体力もナチュラルのそれと変わりませんでしたし、多分そこからなんだと思います」
「なるほどな」

なにやら納得したかのように頷くシン。ラクスの体はアイドル時代のそれとは違い、少しばかりがっちりしている。コーディネイターは鍛えずとも基礎能力はナチュラルのそれを凌駕しているものが多いのだが、
彼女の場合はそういう作りにされなかったようだ。事実、シーゲルはラクスのコーディネイトをする際、政治に利用できるようなことしかしなかった。そんな体を見たシンはランニングマシンの設定を行い、走り出す。

「んじゃ、俺もあんたに負けないくらい努力しなきゃな。そうじゃなきゃ、守れる力なんて持つ事なんかできやしないからさ。それに、赤服の面子もあるし」
「うふふ。では、年長者として私もがんばらないといけませんね!」
303592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 02:01:14 ID:???
ラクスも気合を入れなおし、サイクリングマシンのペダルをふみ、早くこぎ始めた。ただ、気合の空回りですぐに息切れし、酸欠状態になりかけてシンに笑われていたが。
…彼女らは知らない。こんな微笑ましい日常の中で、おぞましい憎悪が動き出していようとは。
そして、それが世界を巻き込む混乱のトリガーとなってしまうとは。
彼女らは知らない。
304592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 02:02:29 ID:???
ユニウス・セブン

かつて、ここには喜びがあった
かつて、ここには希望があった。
かつて、ここで悲劇があった。
そして、今は怒りしか残っていない。

廃棄された農業用プラント・ユニウスセブン。かつてここには多くの人々が住み、プラントに支給される食物が作られていた。
ここは、プラントの人々にとって独立を象徴する場所であり、そして生命線であった。
しかし、地球連合軍の核攻撃により、多くの人は核の炎で焼き払われ、そしてユニウスセブンはその機能を失った。後に言う『血のバレンタイン』である。
これが切欠で連合とプラントとの対立は激化し、地球全体を巻き込んだ大戦が始まった。もっとも、コペルニクスの悲劇など、それ以前からナチュラルとコーディネイター間にはごたごたがあったわけだが、
その場所で、前大戦の停戦条約、ユニウス条約が結ばれた。悲劇が二度とおこなぬよう、ナチュラルとコーディネイターが共に歩める道を模索できるよう。
だが、それを望まぬ者たちが多くいるのもまた、事実なのだ。

「愛する同志、そして家族よ。俺は、戻ってきたぞ…!そしてもうすぐだ、もうすぐ終わる…!」

現在は無人となっているユニウス・セブンの大地に立つジン・ハイマニューバ2型のパイロットであるサトーは、手に持っていたペンダントを掲げ、その嘆きを思い出す。
彼もまた、あの悲劇で家族を失ったものの一人で、そして、ナチュラルを憎む者だった。
彼はザフトの緑服軍人だった。血のバレンタイン以前からのMSパイロットで、世界樹攻防戦にも参加していた。
彼はナチュラルと戦う事を生き甲斐にし、そして何よりナチュラルを殲滅する事がコーディネイターにとってより良き未来を生むものと考えていた。彼は、ザラ派の中でも特に過激派の分類に入っていた。
もっとも、始めはそういう考えではなかった。だが、血のバレンタインが、悲劇が、憎悪が彼を変えた。

『サトー隊長』

と、彼の元に通信が入る。仲間からだった。彼の元には彼と同じ境遇であったり、同じザラ過激派だった者達が集っていた。
しかし、今の男は違う。ザフト時代からの付き合いで、サトーの部下だった男だった。彼には思想も何もなかったが、慕っていたサトーが行動を起こすと聞いて、同行したのだった。

「隊長はやめろ。俺はもうお前の隊長ではない」
『いえ、どんな状況になろうと、サトー隊長は俺達の隊長です。…フレアモーターのほう、もうすぐ作業が終わります。行動、そろそろ始まりますよ』
「そうか…わかった」

サトーはふっと笑いながら通信に答える。通信の向こうで、男は少し俯きながらサトーに問いかける。

『隊長』
「何だ?」
『本当に、よかったんですか?これ、娘さんと奥さんの墓標…っていうと聞こえがいいですが。でもそういうもんでしょう?それを落とすって』
「はは、確かにそうだな。…だが、これを落とす事によって、あの悲劇を起こしたナチュラル共に思い知らせる事ができると同時に、コーディネイター達の眼も覚まさせることができる。
この欺瞞に満ちた、偽りの平和から、本当の歩むべき道を歩むための、な。お前も無理して付き合わないでいいんだぞ?これは俺やあいつらの問題だからな」
『いえ、俺は隊長の部下です。部下は最後まで上司に付き従うのが道理です。テロリストになろうとも、俺はお付き合いさせていただきます。この命、尽き果てるまで』
「…ふっ、ありがとうよ」
305592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 02:05:34 ID:???
感謝の言葉を男に投げかけ、サトーは通信を切る。そして、深く背中を椅子に預け、ため息を一つ吐いて眼をつぶった。
今でも思い出せる。あの時、ユニウスセブンが閃光に包まれた時。家族が死を知り、その復讐を誓った時。
だが、わかっている。これがばかげた事だということは。彼自身が良く分かっていた。
もしこれが地球に落とされれば、それは全人類の滅亡に繋がる。ナチュラルだけではない。宇宙に住むコーディネイターだって、農業用プラントがない現在は地球から送られてくる食料に頼るするしかない。食べるものを作る場所が減れば、それは食えなくなるのと同じだ。
そうすれば、自然とプラント内で暴動が起こり、餓死者が増え、そして自然と死ぬ。農業用プラントを作るといっても、それを形にするまで何年掛かるか。どちらにしろ、人は取り返しの付かないところまで行くのは確かだ。
わかっていた。だから、試す。

「(もし、お前達が本当にあの悲劇を起こしたナチュラルと共に歩みたいのであれば、俺達を止めてみろ。だが、俺はナチュラルを滅ぼす。それが俺の意志だ)」
『フレアモーター設置完了。残り一分程度で目標フレアレベルへ到達します』
「そうか。では、全員30秒の黙祷をせよ。…黙祷!」

ユニウスセブンに再び、静けさが漂う。サトーらテロリスト達はそれぞれの作業を中止し、胸に右手を当て、祈りをささげた。この、墓標に眠る愛した者達に対し。
あるものは家族に対し。あるものは愛する恋人に対し。あるものは友情を誓った友に対し。
そして、30秒という短くも長く感じた時は過ぎ、ついにそのときを迎える。

『…フレアレベルS3、到達まで予測30秒』
「よし、全フレアモーター準備いいな!」
『オールグリーンです。…カウントダウン開始します。10…9…』
「(さあ、はじめよう。俺達の復讐を。そして、世界よ、動き出せ!)」
『3…2…粒子到達、フレアモーター作動。ユニウスセブン、動き出しました』
「アラン、クリスティン、これでようやく俺も、お前達も…。さあ行け!我等の墓標よ!嘆きの声を忘れ、真実に目を瞑り、またも欺瞞に満ち溢れるこの世界を、今度こそ正すのだ!!」

サトーらは敬礼し、サトー達の意志と共に真っ直ぐ、地球落下軌道を進むユニウスセブンを見送っていった。
願わくば、我らが祈願を達成されるよう、そう願うように。

「世界が終わるまでは、俺達はきっと恨み続けるんだろう。だから終わらせる、俺は!」

第5話に続く
306592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 02:07:09 ID:???
ふうぅ。毎度毎度無駄に長い文申し訳ない。あと容量の使いすぎも申し訳ない。
とりあえず次回ユニウスセブン落下&噂のあの黒い奴の登場です。
307通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 02:08:40 ID:???
リアルタイム来た。
GJ! 仕事があるのに思わず読み魅入っちまったぜ!
308通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 02:42:42 ID:???
592さん来たー!!うぇーい!
ケイとデュランダルの絡みはもちろん、丁寧な描写とか適度な笑いとかGJ!
ケイも腹黒覚醒きましたね。ナタリーは相変わらず萌え。
ハロを内側から金槌で叩いて凹みを直すケイを想像して笑いがこみ上げて来たり。
309通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 03:31:52 ID:???
GJ! あ、けどステラは「わかったわ」というより「わかった……」と言った方がらしい気もします。

・ショーン、主役の台詞吐いて無茶しやがって……(AAは省略
・オリジナル、接近戦重視ストライクノワールフラグ&孤児院襲撃フラグ?
・ケイ特製のデータ、議長へ渡る?

あ、後……今気付いたんですが。
血のバレンタイン→エイプリルフールクライシス(NJ投下)の流れじゃなかったでしょうか?
本文読んでるとエイプリルフール→バレンタインであるようにも読めたので。
310通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 04:37:02 ID:???
GJ!

ショーンの奴…

それにしてもナタリーは
「MSの性能差が戦力の決定的な差でないことを教えて差し上げますわ!」
と言う戦いだな。シブトス
ケイとギルの面会が早くもきたな。
両者腹の探り合いにワロス
両者の間にギブアンドテイクが上手く成立するか否かも注目
311通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 04:40:49 ID:???
職人氏GJ

ケイのカードは多彩過ぎてワロス

オリジナルのキラが搭乗するストライクEは
二人目ラクスの居場所を突き止めたんだね。

ヨッピー隊より遥かに強敵だ
312通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 04:59:26 ID:???
サトー隊のやり取りいいな
GJ
313281:2007/02/23(金) 06:10:07 ID:???
夜中に目が覚めてみれば投下きてた――――!
GJ!
キラと意地張って握力勝負する議長が何かカワイイ。
創作意欲の足しになったようで何よりです。
314592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/02/23(金) 12:22:30 ID:???
>>309
_| ̄|○
_| ̄|    ○
失念していました…。そうだ、年表見ながらやったのに何故こんなイージーミスを…。
申し訳ない。議長の「血のバレンタインを経て」というセリフはなかったことにしてくだせぇ…。
315通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 12:43:49 ID:???
血のバレンタインでナチュラル憎し、NJ投下
        ↓
エイプリルフール・クライシスの凄まじい災禍で己の行いにはじめて恐怖を覚える。
        ↓
ナチュラルとコーディネイターの融和を考えるようになる

こんな感じだったんだろうか……。
316通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 12:53:07 ID:???
たった2ヶ月かそこらでNJは量産できないよ。血バレがなくても打ち込んでたと思う。
317通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 15:21:01 ID:???
あるいは核とおなじ様に抑止力として準備してたのを使用したのかも
318通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 15:33:39 ID:???
投下乙です
 色々見所が多かったのですが、ケトと議長の握手がシャアの声でやり取りしてるかと想像したらインパクトがありすぎて記憶が飛びましたw
 そして、サトーさん……あと数年まってくれれば最前線で戦ってくれるのに残念と思いつつ黙祷を -人-

>>316
 そこらへんの原作の矛盾は上げてくときりが無いので作者さんまかせで良いのでは? 議論になるとあれますし。
(NJCのデータもらったアズラエルがすぐにNJC量産できてたり)
319通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 16:41:36 ID:???
すぐにって言っても2ヶ月はかかってるわけで。
理論自体はすでに出来てたとかじゃないか?
手元にベースマテリアルあったんじゃないかという疑惑もあるが。
320通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 19:05:02 ID:???
自由の頭を確保してたんならNJC2ヶ月で量産にも納得できるんだがな・・・
ドレッドノートは頭にNJC仕込んでたから自由正義天帝も多分頭に仕込んでるだろうから
しかしそうするとラクス&ファクトリーは無印の時点で自由量産計画を準備してたことに・・・

まぁそれはさておきGJ!
ナタリーかぁいぃよナタリー
321通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 19:18:27 ID:???
>>319
理論自体はできていて
小型化が難航していたってアストレイだかMSVだかで読んだような気が、、、

ベースマテリアルの設定を鑑みるに、
NJCデータ手に入れる前でも理論上は無効化できるNJCの理論が連合側にはあったけど、
その理論通りにNJCを作ったら必要なベースマテリアルの量が半端なかったんだろーか
とか妄想が沸く
322通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 19:19:59 ID:???
>>320
ドレッドノートのNJCは色々あって他のNJCとはちと仕様が異なります
試作品なので必要な仕様以外にもいろいろとムダな効果範囲とか誇ったりする
323通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 15:54:46 ID:???
GJ!あいかわらずアスラン哀れ。ケイ、原黒キラが板についてていいっす。

> 「世界が終わるまでは、俺達はきっと恨み続けるんだろう。だから終わらせる、俺は!」
この一言でサトー達がぐっといいキャラになった。
こう言う細かな手間を惜しまなければ種死も名作になったものを……
324通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 18:51:26 ID:???
>>323
脇役キャラは一言グッと来るセリフを言わせると
見てる方としても強い印象を抱けるよね。

逆にそれがないと存在価値が不明な空気キャラw
325通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:09:14 ID:???
>>324
少しスレ違いだが、エースコンバットZeroの敵エースたちとかな。
彼らとは誰でも1回しか戦わないにも関わらず台詞が良くて燃える。
326通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 20:32:14 ID:???
>>323
なんか、グラーフ化した時のラカンを思い起こさせる台詞回しに感動。

「生きてやる――世界が滅ぶときまで、俺は生きてやる。
 それでもなお、そのときが訪れぬというなら――この俺が滅ぼしてくれよう!
 我が名はグラーフ 力の求道者なり!」
なんか、うろ覚えで原典とだいぶ違う気が…まあ、いいや。
327通常の名無しさんの3倍:2007/02/24(土) 23:53:58 ID:???
>腹黒い
>もしその邪魔をするというなら、殺しますよ

こういう台詞が出てくるととたんに安っぽくなるな。
この手の台詞は腐女子がすきなんだっけ。
328通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 00:02:31 ID:???
ラクスとサトーの演出の格好よさに比べキラと議長が餓鬼っぽいのが対照的。
592さん実はキラ嫌いなの?
329通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 00:04:44 ID:???
>>327
それはお前の感性だろ?
別に腐女子が好きだとか関係ない。
個人の感じ方の違いだ。
330通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 02:40:54 ID:???
>>327
よく気がつきましたね勇者よ、、、その通り!!

 そ れ が 
  実 は 伏 線 で す 
331オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 22:53:14 ID:???
 SEED――Superior Evolutionary Element Distend‐factor――
        優秀な   進化の  要素 を膨らます 因子  
 それは、人類の次のステップとして提唱された能力。
 これは先天的な能力であり、コーディネイターとは対極に位置する存在である。
 実例が無いので詳細は不明だが、優れた適応能力を持ち、強力な生存本能と
 ある分野に関してに特化する才能を示す。
 つまり、コーディネイター以上の才能と、宇宙に対する適応能力を持つ、ということだ。
 先に実例が無い、と記したが、我々はこの能力を持つであろう少女を見つけた。
 彼女は、コーディネイターだが、幼いころから無重力に慣れ、遺伝子にあるはずがない、
 先天的なとてつもない歌唱力を持つ。
 これがSEED能力ではないならば、なんなのか。
 彼女もまた、コーディネイターとナチュラルの確執を、解決せねばならないと思っている。
 あなたも賛同してはくれまいか、アンドリュー・バルトフェルド。
 もし賛同してくれるならば、いますぐプラントに戻ってきて欲しい。
 我等ならばきっとこの争いを終わらせられるだろうから。
 
 バルトフェルドは、手紙を読みきり、丸めて投げ捨てる。
 後ろ向きに投げても、ゴミ箱に見事入った。
 自分が生きているのが、知られたらしい。
 だがそれは、妙な考えを持つ組織にだ。
 ―馬鹿馬鹿しい、そんな三文小説にも出てこないような御伽話を本気で信じているのか。
 差出人は不明だが、その字には見覚えがあった。
 彼の元副官、ダコスタだ。
 あいつこんな宗教みたいのに入っていたのか、あいつの髪が後退気味だったのも、
 この考えのせいか? 変な宗教だ、仏教と並ぶハゲ宗教の称号を与えるか。
 彼は、そう失礼な事を考えながら、キラの部屋に向かった。
 悩めと言ってから数日。 彼はかなり悩み、悶々としている。
 あんまり考えすぎて、ダコスタの様な若ハゲにならなければいいが。
 まあ彼の髪は強そうだから、あんなハゲ宗教にでも入らない限り大丈夫だろう。
 彼は、フッと笑いながら部屋に入っていった。
332オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 22:54:49 ID:???
             数日前―――プラント
 
 
 「オルバーニの譲歩案など、今更そんなものを持ち出してどうしようと言うのです。
  スピットブレイクは既に可決されたのです。」
 プラントの最高評議会では、議長の席に就いたパトリックがシーゲルの言葉を降ろしていた。
 「私とて無論、これをこのままと言うつもりはない。だが戦えば、必ず犠牲は出る。
  回避できるものなら、その方が良いではないか。」
 「そんな事はここにいる全員が思っている。だからと言って、こんな愚にも付かぬ講和条件が
  飲めるものか!彼らは、勝った気でいるようではないか!」 
 オルバーニの譲歩案とは、戦争初期に地球連合が出した、とても譲歩とはよべないないものだった。
 「はじめから突っぱねてしまっていては、講話への道などない!」
 そう叫ぶのは、今では数少ないクライン派の最高議員の一人、アイリーン・カナーバだ。
 「この時期にこんなもの!下手な時間稼ぎですよ。」
 そう反論したのはパトリック・ザラに最も近い人物、ヘルマン・グールドだ。
 「オルバーニとて、理事国側全ての意向を纏め上げている訳ではなかろう?
  話し合うと言っても、それではな!」
 そう言うのは、イザークの母親、エザリア・ジュールである。
 「では、我々は今後言葉は全て切り捨て、銃のみを執っていくと言うのかね?
  そのようなものか我々は!」
 「クライン前議長殿、それは極端過ぎますし、お言葉が過ぎるでしょう。 
  我々は総意で動いているのです。個人の感情のままの発言はお控えいただきたい。」
 「…失礼した。」
 その言葉を少しパトリックは意外に思った。
 もう少し噛み付いてくるかと思っていたが、まあ、ここにいる議員に反感を持たせたく
 は無かったのだろう。
 派閥は違えど、長い付き合いのパトリックには、それが簡単に解った。
 そしてそのまま会議は進み、結局和平の意見は出なかった。
333オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 22:55:42 ID:???
          プラントと同時系列―――カーペンタリア
 
 
 アスランは、ただただ外を眺めていた。
 外では、目前に迫った『オペレーション・スピットブレイク』の準備に追われている。
 しかし、その緑の瞳には何も映ってはいない。
 ノックの音がした、彼はドアの方を見やる。
 「クルーゼだ、入るぞ。」
 クルーゼが部屋に入ってきて、少ししてアスランは敬礼すべき事を思い出した。
 「はっ、隊長。」
 「そのままで良い。」
 クルーゼは、アスランの体の事を思い、それを制した。
 「…申し訳ありません。」
 ストライク一機を撃破するのに、ブリッツとニコルはやられ、バスターとディアッカの
 生死も不明、さらに自分はイージスを失ってこのザマだ。
 「いや、報告は聞いた。君はよくやってくれたよ。私こそ対応が遅れてすまなかったな。
  確かに犠牲も大きかったが、それもやむを得ん。それほどに強敵だったということだ、
  君の友人は。」
 アスランの体が、少し震えた。
 クルーゼは少し間をおき、続けた。
 「辛い戦いだったと思うが、ミゲル、ニコル、バルトフェルド隊、モラシム隊、
  他にも多くの兵が彼によって命を奪われたのだ。それを討った君の強さは、
  本国でも高く評価されているよ。君には、ネビュラ勲章が授与されるそうだ。」
 「え…」
 「私としては残念だが、本日付で国防委員会直属の、特務隊へ転属との通達も来ている。
  トップガンだな、アスラン。君は最新鋭機のパイロットとなる。
  その機体受領の為にも、即刻本国へ戻ってほしいそうだ。」
 つまりは、昇進、そして今自分は賞賛されていることに、アスランはやっと気付いた。
 友一人殺すのに大きな犠牲を払った自分が昇進、勲章―?
 「お父上が、評議会議長となられたのは、聞いたかね?」
 アスランの混乱も知らずクルーゼは続ける。
 「ザラ議長は、戦争の早期終結を切に願っておられる。本当に早く終わらせたいものだな、
  こんな戦争は。その為にも、君もまた力を尽くしてくれたまえ。」
 クルーゼはそう言い、部屋を出て行った。
 しかしアスランはそんな事にも気付かず、呆然と自分の手を見ていた。
 いや、顔を下に向けているだけでは、見ているとは呼べないだろう。
 たしかに友が殺し合う様な戦争は終わって欲しい。
 憎しみ合い、壊しあい、殺し合う、そんな戦争は。
 しかし終わってどうなる?
 憎しみは残り、戦火の傷は残り、命は戻らない。
 そしてまた戦争を始める。 終わりが無い。
 何故そんなことをする―?
 俺はどうしたら良い――?
 何故終わらない――――?
 ナゼ―――――――――?
334オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 22:57:24 ID:???
 何故戦わなくてはならない?
 それは世界に戦争があるからだろう。
 ならばどうやって戦争を無くせばいい?
 …分からない。
 
 キラは考え続けていた。
 とりあえず当面は戦う事にしたが、その大儀がキラには無く、戦意を萎えさせていた。
 体はリハビリする程度には治ったので、大儀さえできれば今すぐにでもアラスカに行って、
 アークエンジェルに帰るのに。
 トールには、戦って少しでも犠牲を減らす事で、償うことにした。
 どう考えても、自分にはそれしか思いつかなかったから。
 「よう、いい答えは出そうかい?」
 バルトフェルドが部屋に入ってきた。
 リハビリのために、リビングまで行って食事をするので、最近はあまり来ない。
 「………。」
 キラの答えは沈黙。 やや場が気まずくなる。
 「まあ、あせる事はないよ。時間はたっぷりある。」
 バルトフェルドが部屋の片隅に置いてある機械を弄っている時、キラが話し掛けた。
 「バルトフェルドさん…。」
 「なんだい?相談にはのるよ。」
 「戦争って、どうやれば無くなると思いますか?」
 難しい質問だと思っていたので、少し待とうとキラは思ったが、
 「無理だね。」
 あっさりと否定された。
 「そんな…」
 「いいかい、キラ君。動物、いや生き物はなにかしら争っているんだ。
  生き物は、争うことによって成長するからね、本能に刻まれているんだ。
  この戦争が始まるまで百年間程、アフリカとイスラエルに小さな紛争があった以外は
  戦争が無かったのは、奇蹟に等しい。
  まあそのせいで地球軍の錬度が低くて、ここまで大きな戦争になっちゃた訳だけどね。
  戦争を無くすのは、人間が生き物を越すしかないんだよ。」
 「じゃあ………あきらめるしかないんですか。」
 キラがためらいがちに口を開く。
 バルトフェルドが言ったのは、かなり絶望的な事だったからだ。
 しかし…、
 「でもね、戦争を無くす事はできない、けど減らすことはできるよ。」
 「え…」
 「さっきも言ったけど、百年間も戦争が無かった事があったんだ、その期間を延ばす
  努力をすれば、ほとんど戦争は無くなるさ。」
 その考え方は無かった。 しかしそれも難しい事ではなかろうか。
 「百年でも奇蹟なのに、もっと延ばすなんて…」
 無理だろう。 その言葉は出なかった。
 バルトフェルドは一つ溜息をつき、また語りだす。
 「いいかい、奇蹟は起きるもんじゃない、起こすモンなんだ。
  一見偶然に見える出来事も、その前の下積みがあってこそ、さ。
  何もできないって言って、何もしなければ、もっと何も変わらないんだよ。」
 バルトフェルドの言葉は、キラの心の中のわかだまりを溶かした気がした。
335オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 22:59:11 ID:???
 キラはがばっとベッドから起き上がり、バルトフェルドに晴れやかな顔を向けた。
 「バルトフェルドさん、いままでありがとうございました!」
 そう言い、ベッドから飛び出しドアに向かった。
 「おいおい、何処に行く気だね?」
 「アークエンジェルにです。」
 「そんなの無理…ん?」
 部屋の隅に置いてあった機械が、ピーピー鳴っている。
 バルトフェルドは、機械のディスプレイを見て唸った。
 「まさかここが…!?」
 
 
            アラスカ――JOSH-A
 
 
 「嫌よ!嫌です私!離して!うっ……艦長!なんで私だけ…。」
 移動命令に対し、フレイは激しく抵抗していた。
 今まで親しかった者と離れるのだ。 その気持ちはマリューにも解った。
 しかし、彼女のこれからの任務は、プロパガンダだろう。
 そう思うと、砲火に晒されるよりは幾分かましに思えた。
 「いい加減にしろ!これは本部からの命令だ。君は従わねばならない。」
 「そう言うことになってしまうわね。軍本部からの命令では…、
  私にはどうすることも出来ないの。ごめんなさい。異議があるのなら、
  一応人事局に申し立てをしてみることは出来るけど…」
 「取りあう訳ありません。では、艦長。」
 ナタルがマリューに敬礼し、マリューもそれに返す。
 「今までありがとう。バジルール中尉。」
 「………いえ。」
 さすがのナタルも少し弱い表情を垣間見せる。
 これまで何度も衝突してきた二人だが、いや、だからこそこの別れが悲しかった。
 二人は正反対故に、たびたび意見が衝突した。
 しかしそれは良い事だろう。
 軍人とて人間だ、足りない所もあるし、意見が違うこともある。
 だが、足りない所は補い合えばいいし、意見の違いはより洗練された考えを生むだろう。
 そういう意味ではこの二人は、よいパートナー同士だった。
 故にこの別れが惜しく、悲しい。
 「また、会えるといいわね…。戦場でないどこかで。」
 「終戦となれば、可能でしょう。」
 マリューは、軍人でない形で会う自分等を想像すると少し心が和らいだ。
 彼女は、軍務以外ではどんな事を話すのだろうか?
 「そうね。彼女をお願いね。」
 ナタルは、フレイを半分引きずる形で去って行った。
336オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 22:59:58 ID:???
 「俺も、言うだけ言ってみっかな。人事局にさ。」
 次はムウだ。 彼にも移動命令が下されていた。
 「取りあう訳ないそうよ。」
 マリューはナタルの言葉を借り、ムウに返す。
 「しかし、何もこんな時に、カリフォルニアで教官やれはないでしょ。」
 「貴方が教えれば前線でのルーキーの損害率が下がるわ。」
 そう、なんといったってエンデュミオンの鷹なのだから。
 「ほら、遅れますわよ。」
 「あぁもう、くっそ!」
 ムウは、何かを言いたげに髪を掻きまわす。
 「今まで、ありがとうございました。」
 「…俺の方こそ、な。」
 そう言うとムウはハッチを出て行った。
 いろいろな言葉を飲み込んだまま―――。
 
 
 「アラスカ守備軍?」
 「アークエンジェルは宇宙艦だぜ?」
 アークエンジェルのアラスカ守備隊への転属命令を聞き、CIC要員がこぼす。
 普段ならこんな愚痴言わないのだが、やはりナタルが居なくなって緊張感が無くなった
 のだろうか。
 確かに、アークエンジェルは原子力発電のできるから、宇宙艦だろう。
 よく、完全に原子力発電が出来ないと思われるこの時代だが、広大な宇宙にはまだかなり
 ニュートロンジャマーの届かない範囲が存在する。
 戦闘中は、ザフト艦がNJを使うために核攻撃はできないが、それ以外の時は原子力発電に
 より、エネルギーの補給を行う。
 それによって、化石燃料を使い果たし、原子力発電の全くできない地球は持っている所がある。
 「それを受け、1400から貴艦への補給作業が行われる。以上だ。」
 どうやら命令はそれだけらしい。 意を決しマリューは尋ねた。
 「こちらには休暇、除隊を申請している者もおりますし、捕虜の扱いの件もまだ…」
 「こっちはもうパナマがカウントダウンのようで大変なんだよ。大佐には伝えておく。」
 そう言われては、マリューも何も言えない。
 伝令の将校は、そう言ってすぐに立ち去って行った。
337オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 23:01:22 ID:???
 「状況は?」
 連合の高級将校が、サザーランドに尋ねる。
 「順調です。全て予定通りに始まり、予定通りに終わるでしょう。」
 
 
 
 「スピットブレイク、全軍の配置、完了しました。後はご命令いただくのみです。」
 クルーゼが上層部に伝える。
 
 
 
 「この作戦により、戦争が早期終結に向かわんことを切に願う。真の自由と、
  正義が示されんことを。オペレーション・スピットブレイク!開始せよ!」
 パトリックが叫ぶ。
 
 
 
 「スピットブレイク発動されました。目標はアラスカ、JOSH-A。」
 「ジョシュアだと!?」
 いろいろな艦でそのようなやりとりが行われる。
 
 
 
 「頭を潰した方が、戦いは早く終わるのでね。」
 クルーゼがにやりと笑みを浮かべる。
 
 
 オペレーション・スピットブレイク。それは、パナマへの攻撃とみせかけ、アラスカに
 総攻撃を仕掛けるというものだった。
 
 
 「まだパナマへ出る隊があるんでしょうか?君の搭乗艦は向こうだな。少佐はどちらですか?」
 グランド・ホローに着いたら、かなりの大所帯に驚いたナタルがフレイを誘導しつつ、ムウに尋ねる。
 「え?あー、俺はお嬢ちゃんと一緒だよ。」
 「そうですか、では頼みました。」
 「ここでお別れか、中尉も元気で。」
 そう言い、ムウはナタルと握手をし、潜水艦に向かう。
338オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 23:03:20 ID:???
 潜水艦の列に並んでいる最中、ムウはずっと思い悩んでいた。
 マリューの事だ。
 最後に言い残した一言、それを言わずにいいのかと。
 ムウは意を決した。
 「ここ、並んで。自分の番が来たら、それを見せて乗るんだ。いいな。
  俺、ちょっと忘れもん。」
 「ええー!?」
 驚くフレイを尻目に、ムウは走り去っていった。
 
 
 
 アールエンジェルは、突然鳴ったアラートに混乱していた。
 「統合作戦室より入電。」
 モニターの上官に、マリューは尋ねる。
 「サザーランド大佐!これは!」
 「してやられたよ、奴等は直前で目標をこのジョシュアへと変えたのだ。
  守備軍は直ちに発進!迎撃を開始せよ!」
 そう言うと、モニターは黒くなる。
 「艦載機も無いのにどうやって」
 「これで戦えと言うのも酷な話だけど、本部をやらせるわけにはいかないわ。
  総員第一戦闘配備。アークエンジェルは防衛任務の為、発進します!」
 そう言うと、アークエンジェルの機関が唸りをあげ、大天使はゆっくりと動き出していく。
 
 
 
 ザフトの艦からディンが飛び出し、まず対空施設が潰されていく。
 それを見計らい、宇宙から降りてきた降下ポッドからジンが弾け出てくる。
 「よーし。この戦争を終わらしてやるぜ!」
 「ザフトのために!」
 ジンは次々に施設を破壊していく。
 揚陸されたバクゥが、ザウートが砲撃を加えていく。
 海からはグーンが、ゾノがどんどんと基地内に入り込んでいく。
 地球軍も反撃していくが、絶対的に戦力不足であった。
 そんな中、一機のディンがトーチカを潰し、滝の中に入り込んでいく。
 この奥に内部に続く通路があるのだ。
 「ふ、アズラエルの情報は確かなようだな。」
 ディンのパイロット、クルーゼはその通路を進んで行った。
339オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 23:04:24 ID:???
 ムウはアークエンジェルに向かっていた。
 だがその最中に警報を聞き、さらに、
 「この感じ!?ラウ・ル・クルーゼか!」
 いままで何度も感じてきた、敵の気配を見つけた。
 その気配のする部屋に入ると、銀の仮面をした男を見つけた。
 生身では初めて会うが、ムウはその男をクルーゼだと確信した。
 ムウは銃を構える、するとクルーゼも銃を構える。
 「ほぉ…。久しぶりだな、ムウ・ラ・フラガ。せっかく会えたのに残念だが、
  今は貴様に付き合っている時間がなくてね。ここに居ると言うことは、
  貴様も地球軍では既に用済みか。堕ちたものだな、エンディミオンの鷹も。」
 そう言い、クルーゼは発砲する。
 ムウも撃ち返すが、クルーゼには当たらず、クルーゼはすぐさまドアから飛び出ていく。
 しかし警備の兵がいないのはどうゆうことだろうか?
 「奴め、端末を弄っていたようだが……。これは!」
 ムウは、そのデータを見るなり走りだした。
 ――間に合ってくれ、アークエンジェル!
 ――手遅れになるまえに!
 
 
 
 一方フレイは、独りの怖さから列を抜け、アークエンジェルに向かっていた。
 向かっているというよりも、迷走している様だが。
 「アークエンジェルは?どこなの?私…。」
 いつもなら誰かが助けてくれる、けど今は独り。
 どうしてこんな事に――?
 そう思うと、目の前から白服を着た、ザフトの男が歩いて来た。
 「キャアアア!」
 どうしてここにザフトが?と、考える余裕すら、無かった。
 「おやおや、これはこれは。」
 どうやらその男―クルーゼは、フレイが怯える姿を見て呆れた様だ。
 「あぁ!パパ?」
 その声にフレイは反応する、父親の声に眼を開けて前を見る。
 しかしそこには、手に銃を持つザフト兵しかいない。
 「ん?パパが近くに居るのかね?」
 「違っ…、声…、パパに…、似て…。」
 目の前にいる敵に、フレイは完全にパニックに陥っていた。
 「ほう………。」
 クルーゼは、フレイに当て身をくらわせ、気を失ったフレイを抱えて
 ディンに戻って行った。
340オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 23:05:31 ID:???
 「まさかアラスカが攻められるとはな………。」
 バルトフェルドの見ている機械は、個人ジャンク屋ネットワークという物で、
 どこで戦闘が起こったか知らせてくれるのだ。
 「アラスカが………!?」
 それを聞いたキラは、真っ青になっている。
 それを見たバルトフェルドは、
 「アークエンジェルは、確かアラスカにいるはず、か………。」
 と、呟いた。そして、
 「キラ君!」
 呆けているキラを、大声で呼ぶ。
 「あ、はい?」
 「戦う覚悟はあるか?」
 「え?」
 アークエンジェルへの心配と、いきなりの問いかけに、キラは訳が分からなくなっていた。
 「今すぐ戦えるかってことだ。」
 その様子を見て、バルトフェルドは再度問い掛ける。
 「は、はい、ありますけど………。」
 そんな事を聞いて何を?キラは、疑問に思った。
 「戦うという事は、キミにとっては茨の道だ、これからますます戦いは激化し、
  仲間や敵の死を見なければならない。それでもか?」
 バルトフェルドの言葉に、キラは少し頭の中でいろいろな事が回った。
 また親友と戦い、コーディネイターと妬まれ、あの太平洋の事以上に………。
 でもキラは言う、自分の言葉で。
 「覚悟はある、僕は戦う。」
 そう。
 自分自身で考え、
 「どんなに辛くたって」
 自分自身で決めた、
 「僕は戦い抜く。」
 自分自身の答えだ。
 
 「わかった、付いて来い。」
 しばしキラの眼を見たバルトフェルドは、キラをモーターボートでとある島に連れていった。
341オリジナルシード ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/02/25(日) 23:08:13 ID:???
 「ここは?」
 ここはオーブから離れた小さい島だ、その地下通路をキラ達は進んでいる。
 「着いたぞ。」
 バルトフェルドがハッチを開くと、そこには灰色のMSがあった。
 「ストライク…。」
 「そう、大破していたのを、キミのついでに拾ってきたんだ。」
 「でもっ、これだけじゃあアラスカには行けませんよ。」
 機動兵器が単体で赤道から真上の北極圏にいける訳がない。
 だがバルトフェルドには考えがあった。
 「いやー、実はここ、大昔のシャトル打ち上げ基地なんだ。どうやら何かの理由で
  放棄されていたらしくてね、機材もほとんど生きてている。」
 つまりシャトルでアラスカにまで行くらしい。
 「あとストライクの推進剤を取って、バッテリーにしておいたから。
  宇宙では使えなくなるが、活動時間がかなり延びている。」
 「ありがとうございます。じゃあ早速…」
 「ただGがかなりあるからね、体には気をつけろ。」
 「はい。」
 キラはストライクのコックピットに入り、計器を弄る。
 前と全く同じだ、ただバッテリーの最大値が延びていただけだ。
 『よーし打ち上げ準備だ。』
 どうやらシステムを弄くったのだろう、バルトフェルド一人でどんどん動いていく。
 ストライクにシャトルが取り付けられ、上のハッチが開く。
 『僕からのアドバイスだ、人生どうあっても辛いんだから、その分楽しんで生きろ。』
 「はい。」
 『よし、5秒前・4・3・2・1レディ・ゴー。』
 バルトフェルドの声と共に、爆音が鳴り響き、体に負担がかかっていく。
 そして煙を残し、シャトルは飛び立っていった。
 「俺の金全部使ったんだからな、どうゆう人生を送るか、俺を楽しませてくれよ。」
 そう言い残し、バルトフェルドは立ち去った。





           ―人生は辛い、だからこそ楽しい―
342通常の名無しさんの3倍:2007/02/25(日) 23:44:10 ID:???
バルドフェルドが渋いぜGJ
343通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 00:39:21 ID:???
職人氏GJ

虎の独白シブス

ザフト側はイザークも生死不明見たいだけど
ディアッカと同様にAAに居るのかな?

自由抜きでストライクが合流する分の戦力調整と見た。

と言いつつ、アラスカで連合軍から脱走するフラグはまだでしたwww

>-人生は辛い、だからこそ楽しい-

キラは望んで茨の道を選んだ訳だが
彼の願いは叶うのか虎を楽しませる事が出来るのか…

続きが気になります。

キラがストライクでアラスカ空域に向かい、どのような活躍を見せるやら。
344通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 01:39:08 ID:???
第二話?でイザークこっそり出てる
345通常の名無しさんの3倍:2007/02/26(月) 22:48:59 ID:???
虎とキラが良いコンビだなぁ…。というか、虎のポジって本当はこうあるべきだと思うなぁ…。
GJ!
346通常の名無しさんの3倍:2007/02/28(水) 02:41:04 ID:???
キラーズ氏は投下に間が空いているけどお忙しいのかな?
347通常の名無しさんの3倍:2007/03/01(木) 21:19:35 ID:???
忙しいんじゃないかな?まあとりあえずマターリ待とう。慌てさせてもいかんしね。
348通常の名無しさんの3倍:2007/03/02(金) 14:47:42 ID:???
age
349キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:21:56 ID:???
第10話

 プラントに戻ったキラは、デュランダルと共にパトリック・ザラがいる国防委員会本部へ
と向かう。本部がある建物の出入り口に、ザフト兵が集まっていた。
「何かあったんですかね?」
「さあ私にもわからんよ」
 と二人が話をしていると、出入り口にいる一人のザフト兵がキラ達の下へと近づいてきた。
「サイ・アーガイルだな」
 とキラ見る。
「サイ君、君を呼んでいるようだが」
 キラは自分が呼ばれる事に気付き、前に出る。
「はい」
「着いてきてもらおうか」
「私はもう必要ないのかな?」
 デュランダルは兵士に聞いた。
「ちょっとお待ちを……」
 兵士は無線機を取り出し、何処かに通信を始めた。
 通信を終えたのか無線機を所定の位置に戻すと、デュランダルの方へと向く。
「大変申し訳ないのですが、デュランダル氏への御用は特に無い様なのでお引取りお願いし
ます」
「それなら議長とお会いしたいのだが」
「少々お待ちを」
 と兵士はまた無線機を取り出し、何処かへ連絡をする。
「議長はデュランダル氏とお会いするそうです。今すぐとは無理なので待機してもらう部屋
へとご案内します」
 兵士は受付を呼び、デュランダルを待合室に案内するように言った。
 デュランダルは、受付の後についていく。キラの視界からデュランダル達が消えた。
「ついてきてください」
 とキラの横から女性の声がする。声の方を向くと、其処にはザフトの女性仕官が立ってい
た。そうやらこの女性仕官がキラを議長の所まで案内するようだ。キラは女性仕官の後につ
いていく。
「表で何かあったんですか?」
 キラは出入り口の騒動が気になり、女性仕官に聞いた。
「アスラン・ザラを知っていますか?」
 女性仕官の口からでた親友の名にキラは驚く。
「名前ぐらいなら。議長のご子息で士官学校をトップで卒業したエリート。その人物がが表
の事とどんな関係が」
「命令違反で、そのアスラン・ザラを留置所へ連行する時、クライン派が介入して何処かに
連れて行ったらしいんです」
「赤なのにたいした事ないんですね。クライン派に連れ去られるなんて」
「あなたも赤ですが」
 キラが着ているザフトの服も赤だった。
 キラは、ここに来る前のデュランダルとの一騒動を思い出す。
350キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:23:09 ID:???


「君はその服装で議長に会うつもりなのかい?」
「え、何か変ですか?」
 デュランダルがキラの服装を見て、頭を抱える。
「それはどう見たって私服ではないか。そんなのでは議長とは会えないぞ」
「それなら別に会わなくたって……」
「冗談はさておき、議長に会う前に服を新調しなければな」
「ザフトの服なら、仕官学校の寮に服が」
「ここからでは遠い。ザフトの服を仕立てている服屋へ行く」
 デュランダルはタクシーを拾い、その服屋へと向かう。
「どうしてタクシーなんだ。ザフトの迎えがなぜ来ないんですか?」
 タクシーに乗って疑問に思ったキラはデュランダルに聞いた。
「何、簡単な問題だよ。私がただザフトに連絡を忘れただけさ」
 デュランダルの答えにキラは呆れた。
「僕達がオーブを立って充分な時間があったのに連絡をしていないんですか?」
 デュランダルは首を縦にふる。
「忘れていてね。いてもいなくてもさほど問題はないだろう?」
「それはそうですけど」
 キラはデュランダルとの低レベルの論争に飽きてきたのか、話題を変えようとする。
「どうやら目的の場所に着いたようだ」
 キラが話題を変えようとした時、都合よく服屋に着いたようだ。
 タクシーを外に待機させ二人は服屋へと入る。
 デュランダルは店主と話をする。店主は店の奥からザフトの服を出してきた。
 店主から服を受け取ったキラは、服の色を見て試着室に向かっていた足を止める。
「なんのつもりですか」
 キラはデュランダルを睨み付ける。
「気に入らなかったかい?」
「それはもちろん。どうして白何ですか?」
 キラが持っている服は白であった。
「ためしに着てみたらどうだい?」
「嫌です」
「着ないなら、ここにずっといる事になるな」
 デュランダルはキラを脅しているようだ。
「食事の心配はしなくていいですよ」
 店主もデュランダルに続きキラを追い詰めていく。
「なっ!」
 デュランダルはキラが白を着ることに期待しているようだ。
「わかりました。着たら別のを出してくれるんですね」
 キラは渋々試着室に入り白服を身に纏い、デュランダルの前に姿を現す。
351キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:24:11 ID:???
 デュランダルは店主とお茶を飲んでいた。キラのその姿を見ると、店主とデュランダルは
突然咳き込み始めた。
「店主、早く赤を!」
 デュランダルは店主に赤を持ってくるように注文した。店主はデュランダルの言葉を聞く
前に赤服を取りに行く。キラは二人に服を渡されたので、試着室に入り着替える。外に出る
とデュランダル達は表情を変えずお茶を飲み続けていた。
「最初よりはマシですね。出てきた時、あの身長のお陰で白服は似合って無かったですからね」
「うむ、そうだな。やはり白服を着るには、相応の身長がないとカッコよくはないな」
 デュランダルは赤服のキラを眺める。
「準備が出来たようだな。向かうとしようか」
「しかしお金がありませんが」
 キラはお金の心配をする。
「構わんさ。必要経費で落ちるはずだ。ご主人、ザフト宛で請求してくれ」
「わかりました」
 デュランダルは店主にそう言付けると店を出て行く。キラもその後についていく。

「確かに赤ですね」
 キラは物思いに耽っていた思考を切り替え、目の前の女性仕官に答える。
「何期生ですか」
 女性仕官の質問にキラは困惑した。キラはザフトの士官学校を卒業した訳ではない。
「そ、それは……」
「年齢から見るに、最近士官学校を卒業したんですね」
「ええまぁ」
 キラは曖昧に返事した。
「目的の場所に着きました。」
 女性仕官がある部屋の前で足を止めた。
「この先に議長がいます」 
 部屋に入るとキラは、パトリックの机に置いてあった写真が無いことに気がつく。
 その写真はザラ一家が幸せそうに映っていた。
 写真が何処に消えたのか考えながらキラは自分の名を告げ、パトリックに敬礼をする。
「君がのこのこと戻ってくるとは思わなかったよ」
「どういう意味ですか?」
「その事は君が一番知っているのではないのかね?」
「僕がフリーダムを盗んだと思いなんですね」
「よくわかったな」
「オーブで見ましたから」
「信じられないな。あれを操縦できるのは現在パイロットと登録している君だけなんだよ。
それとだ君に見てもらいたい物がある」
352キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:24:57 ID:???
 とパトリックはSPに命令し、目の前にあるスクリーンにある映像を映し出させた。その
映像には、ラクス・クラインとザフトの兵士がプラント内にある宇宙港の近くにある基地に
入ろうとしている所が映し出されていた。二人は門番に止められ、何か紙を書いているよう
だ。書き終わると、ザフトの兵士が運転する車で基地内へと進んでいく。スクリーンに映っ
ている映像が切り替わり、二人は一緒に廊下を進んでいる所が映し出されていた。二人とす
れ違う兵士達は敬礼をしる。二人はある区画まで進むと、扉の前で止まった。扉の前で兵士
が警備をしている。ラクスが兵士に向かって何かを合図をした。すると兵士は持っていたカ
ードを使い、扉を開ける。ラクスとその兵士は、扉の向こうへと進んでいく。扉の向こうに
はフリーダムが主を待つかのように立っている。ラクスと共にいたザフトの兵士はフリーダ
ムに乗り込む。フリーダムの、目に光が走る。発進シークエンスへと移行すると、フリーダ
ムはそのまま宇宙へと飛び出していった。そこで映像は切れているようだ。
「あの兵士が僕だと疑いなのですか?」
 ラクスと一緒に写っていた兵士は、誰がどう見たってキラ・ヤマトであった。
「ラクス・クライン、そして一緒に映っている兵士が、あの区画にいくまですれ違った兵は
十数人いる。どの人間に聞いてもあの兵士は、君だと言うんだがな。説明をしてもらおうか?」
「整形、変装すれば顔なんて、すぐに変わります。あの映像に映っている兵士は喋ったんで
すか? 喋っていなかったら、僕では無いかも知れないじゃないですか?」
「決定的な証拠があるんだよ。君の指紋、網膜紋が一致したんだよ。それでも君は自分は白な
のかと言うのかい?」
「それもやろうと思えば偽造ぐらい簡単に…」
「君には失望したよ。息子の親友、そして容疑が確定した訳ではないから極刑ではない。だ
がしかしこの戦争が終わるまで、君を監禁する」
 SPの一人がキラに手錠をかけた。
「この手錠は……」
「察しが早くて助かる。先程問題が起きてね。最新鋭の物だ。下手な事は起こさない事だな。
最後にラクス・クライン、シーゲル・クラインの居場所は知っているか?」
 パトリックの最後の問いに、キラは首を左右に振る・
 キラとの話を終わらせ、周りにいたSPに部屋から連れ出すようにパトリックは命令した。
 そしてキラは車に乗せられ監禁場所へと向かう。
 数十分走っただろうか、突然車が停止した。キラが車から出ると、そこは倉庫であった。
港によくあるあの大きな倉庫だ。後ろを向いたキラの視界一杯に、水が多い尽くす。
「着いてくるんだ」
運転手に連れられてキラは倉庫の中に入っていく。倉庫の天窓から照らす光によって人がい
ることを確認できる。 その人影は、キラを連れてきた男達に外へ出るように命令をくだした。
「シーゲル・クライン……」
 キラは目の前の男を睨み付けた。
「パトリックの所で一度会ったきりだな」
「此処が監禁場所なんですか?」
「いやここは君の死に場所だ」
 シーゲルは笑顔でキラを見る。そしてシーゲルは指を鳴らした。
353キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:25:58 ID:???
 するとシーゲルの後ろから、銃を手に持った男達が姿を現す。
「僕を殺すんですか?」
「ああ。前の時は失敗したからな」
「前の時?」
 キラはシーゲル達から命を狙われた心当たりが全くない。
「わからないかね」
 キラは何も答えない。
「新型のテストの時に狙ったのだがな」
「サーペントテールとの模擬戦ですか。しかし予定が狂いましたね」
 シーゲルの顔の表情が少し変化する。
「叢雲劾がキラ・ヤマトにとどめを刺さなかった。あの叢雲劾がクローンだったのですか」
 キラの言葉にシーゲルは笑い出す。
「その通りだ。しかしあれが失敗作だとは思いもしなかったよ。いやクローンとしては成功
でも、私の駒としては失敗だったな。一体作るのに予想以上のお金がかかるのでね」
 落胆した様子を表すかのように、シーゲルの肩が下がる。
「もちろん、失敗作は処分したがね」
 キラはシーゲルに襲いかかろうとする思考を理性で止めていた。今ここで襲いかかったら
シーゲルの周りにいるSPによって、キラは蜂の巣にされてしまう。
「しかしよく分かったね。理由を教えてもらおうか?」
「あなたに答える必要は……」
 キラの言葉を終える前に、銃を持って男が引鉄を引いた。地面に弾丸の痕がつく。
「わざと外した。君は私の質問に答えればいいのだよ。そうでなければ天国が近づくだけだ。
しかし君だけが私の質問に答えるのは忍びない。君が質問を答えるたびに、私も君の質問に
答えよう」
 キラは口を開く。
「気付いたのはオーブに戻ったときです。サーペントテールと模擬戦をしている日、モルゲ
ンレーテにもサーペントテールがいたそうです。それを聞いた時、叢雲劾はクローンかもし
れないと思いました。キラ・ヤマトのクローンが存在するなら、同じ組織が別のクローン体
を作ってもおかしくありませんから。それが、あなただったとは……。そこで私もあなたに
聞きたい事があります」
「なにかね?」
「なぜあなたはこんな事を……」
「なにが言いたいんだね」
「クローンを作って一体何がしたいんですか」
「姫を守るには騎士が必要だろう。最高の最強そして姫に従順な騎士が!そのための手段だ
よこれは。そしてそれは見つかった。それが君だ!」
 シーゲルは笑みを浮かべる。キラはその笑みが醜悪に見えた。
「どうして僕なんですか?」
「しいて言うなら君がアル・ダ・フラガより性能がいい人間だからだろうな。君の友達のお
陰で完成が早まったよ」
354キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:26:48 ID:???
「友達!?」
 シーゲルは胸ポケットから紙切れを一枚取り出し、キラに見せた。
 その紙切れは写真であり、それにはある少年が映っていた。
「トール……なぜ貴方が彼を? 彼に一体何をしたんですか?」
「この少年のおかげで、姫を守る騎士は完成したんでね。ある少女達の力も使ったがな」
 シーゲルは笑う。
「なぜそんな事まで」
「教えてくれるのかと? 今の君の顔を見たいからと言うべきか。憎しみ、悲しみに包まれ
る表情を」
 キラは今まで堪えてきた物が堪えられなくなっていた。シーゲルを殴りたいという衝動に
かられる。両手を塞がれているが、まだ両足が使える。キラはシーゲルを殴るより蹴る事に
した。キラはシーゲルに方へと体を動かす。
「両手を塞がれているのに何ができるんだ?」
 声を無視し、キラはシーゲルに向かって蹴りを繰り出そうとする。だがキラの蹴りはシー
ゲルに繰り出せなかった。シーゲルの部下がキラに向かって銃を撃つ。肩から血を流してキ
ラは床に倒れる。
「だから言ったのに」
 とシーゲルは両手を肩の上まで上げ、首を左右に振る。
「殺さないんですか?」
 キラは痛みを堪えながらシーゲルを見た。
 シーゲルは笑みを浮かべる。
「まだ殺さないさ。まだ楽しめそうだからな。話の続きだったな。君のお友達はきっちりと
処分したよ。ほうまた目付きが変わったな。私を殺したい思っている目だな。その目を変え
るのも一興だな。脚を撃て」
 シーゲルは部下の一人に命令を下した。キラが脇腹に痛みを感じ、顔を歪ませる。
「まず脚を撃つ筈だったが失敗したか」
 キラの脇腹を打ち抜いた男に向かって、シーゲルは銃の引き金を引く。
「失敗作だなこれは」
 倉庫内に銃声が響くと同時にその男は、地面に崩れ落ちる。頭から血が流れている。死ん
でいるようだ。
「人の命を何だと思っているんですか!」
 キラはシーゲルを睨みつける。シーゲルは倒れているキラの下へと近づいてきた。
「娘の命に比べたら安い物だろう?」
「命に安い高い等……」
「無いと言いたいのかい? 君の価値観を私に押し付けないでもらおうか? 私に取って娘
は世界の中心なのだよ。娘のためなら悪魔に魂を売るさ。それに私の駒なのだから、処分す
るのは私の勝手だろう? 君だって自分が作った玩具を気に入らなかったら捨てるだろう。
それと変わらないと思うんだが」
「狂っている。あなたは狂っている」
「私から見れば君の方が狂っていると思うのだがな。足つきで自分の居場所を奪われたのに、
君は何も行動を起こさなかった。奪った相手を殺そうとはしない、逆にそれを利用する。正
常な人間ならたぶんそんな事は思わないはずだ」
355キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:28:30 ID:???
「なぜあなたが誰も話していない事を知っているんですか?」
 キラは最初自分のクローンを見た時、殺意、憎悪が芽生えなかったらと言えば嘘になる。
だがしかし、クローンの方が当時すべてのにおいて、オリジナルより勝っていた。MSの操
縦技術、身体能力等は特に差があった。砂漠の戦闘を終結させる早さ、その後のブルーコス
モスの襲撃時の身のこなし、決定的であった。自分より全てが勝っている者がいるならそれ
に賭けてみたいとキラは思う。そしてその事を話したのはあの時、偶然砂漠で再会したミリ
アリアしか知らない筈だ。
「私の部下は世界中にいてね。意外な所にもいるのだよ」
 シーゲルの言葉を聞いたキラは、ミリアリアがシーゲルの部下ではないかと思う。
「安心していい。君の彼女は無関係だ」
 キラはシーゲルを睨んだ。
「足つきにも私の部下がいるんだよ」
「そんな事が……」
「だから君の事を知った。君と彼女の会話をも。その会話を聞き、ありえないと思ったよ。
コーディネータの軍人が操縦するMSを、何も訓練を受けていない君が退けたと聞いたい時、
体が震えたよ」
「もう一度言う。貴方は狂っている」
 シーゲルはため息をつく。
「しかし君は両親と同じ事を言うんだな……」
「何を」
 キラは痛みにより考えが纏まらない。
「君の本当のご両親のことだよ。もしかして知らなかったのか? 君のご両親はコロニーメ
ンデルで最高のコーディネータを作る研究をしていたのだよ」
 キラはシーゲルを視線で殺せるぐらいに睨み付けた。
 男達が銃に引鉄に手をかけるが、シーゲルはそれを止める。
「そして死んだ」
「どうしてあなたがそんな事を知っているんですか。まさかあなたが命令して」
「私は少し手伝いしただけだよ。ブルーコスモスに君のご両親の居場所を教えただけさ。そ
の情報知った連中はすぐに、その場所に向かったよ。あの時の表情は今でも忘れられない」
「ご息女がそんなあなたの事を知ったらどうするんですかね」
 キラは痛みを堪えながら口を開く。
「知ったら落胆をするだろう。だがそんな事は起こらない。全てを知る者は私以外にほどん
どいないからな。実験の参加者、そして失敗作は全て処分したよ。命乞いをする時の顔も最
高だったな」
 狂った笑みを浮かべるシーゲルをキラは見た。シーゲルはさらに続ける。
「私を見てもその真実は変わらんよ。私は君と話をするのを飽きてしまったよ。悪いがもう
死んでくれたまえ。最後に言い残した言葉はあるかね?」
「地獄に落ちろ」
 キラの言葉にシーゲルは笑い出した。
「面白いな。だが損な陳腐な台詞に付き合うほど暇ではないのだよ。悪いが私には君が居て
もらっては困るんでね。早速死んでくれたまえ」
 シーゲルは男達にキラを殺すように命令した。そしてシーゲルはその場から離れ、倉庫を
出て行こうとする。男達がキラに近づいてくる。
356キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:29:14 ID:???
 銃撃音が倉庫に響いた。その音に、キラは反射的に目を瞑る。だがキラの体には全く痛み
が走らない。銃撃音を終わり目を開けると、キラに近づいてきた男達、そしてシーゲルが地
面に倒れていた。そして体から赤い液体が流れている。キラは一体何が起こったのか状況が
把握できなかった。
 静かになった倉庫のシャッターが突然開く。シャッターの外にはたくさんのザフト兵が銃
を構えていた。隊長らしきザフト兵が倉庫に入ってくる。ザフト兵はキラの状況見ると、懐から
通信機を取り出し何処かへと連絡する。通信を終えるとキラに話しかけてきた。
「救護隊を呼んだ。もう大丈夫だ」
 痛みに堪えながら立ち上がったキラは、一瞬の隙をつきザフト兵の横に落ちている銃を拾
い、シーゲルの所まで向かって走りだす。拾った銃はシーゲルの部下が持っていた銃である。
倒れているシーゲルの所まで近づいたキラは、持っていた拳銃の引き金を引こうとする。
「最初とは形勢逆転だな」
 口から赤い血を吐きながらシーゲルは言葉を紡ぐ。
「あなたがここでいなくなれば、まだ世界は変わってくる」
「私が死んでも変わらんさ。死ねば私の計画が成就するまでの時間が早くなるだけだ。それ
でもいいのか」
「あなたを生きたまま議長の前まで連れていきたいが、僕は貴方を許さない。だからここで
僕が貴方を殺す。そう僕は私怨で貴方を殺す」
 倉庫内に銃声が響く。何度も引き金を引く。
「辞めるんだ。シーゲル・クラインはもう死んでいる」
 ザフト兵がキラの動きを止める。だがキラはザフト兵を振り解こうと暴れ始めた。
「鎮静剤を!」
 別のザフト兵はキラの腕に鎮静剤を打つ。キラはそのままその場に倒れこんだ。

 次にキラが目を覚ますと、そこは病室だった。キラが体を起こすと、この病室にはキラだ
けしかいないようだ。病室に誰かが入ってくる。キラの知らない人物であった。
「初めまして、サイ・アーガイル君」
 キラは自分が呼ばれているのに気付かない。
「聞いているのかい?」
 キラは自分が呼ばれているのに気付き返事をする。
「初めまして。あなたは……一体誰ですか?」
「レイ・ユウキだ」
 そんな人物、キラの知り合いにはいなかった。
「議長の側近だと思ってくれても構わない」
 キラはユウキに手を差し出す。
「握手のつもりかい。悪いが今はできない」
「どうしてですか」
 レイ・ユウキは少し困った表情をする。
「君はある事件の容疑者になっているんだよ」
「情でも芽生えたら冷静な判断が出来ないんでね。容疑が晴れたら握手でも何でもしてやる
さ」
「わかりました。あの……」
357キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:30:06 ID:???
「どうしたかね」
 レイ・ユウキはキラに声を掛けられ少し戸惑った。
「僕がどこにいったかどうして分かったんですか?」
「これだな」
 とレイ・ユウキはポケットから、手錠を取り出した。それはパトリックが始めにキラにつ
けられた物だ。
「これには発信機がついていてね」
「それで僕の位置が」
「そういう事だ。こんな時に悪いんだが、傷が癒えたら君は士官学校の寮で生活をしてもらう」
「士官学校にですか?」
「ああそうだ」
「なぜ?」
「議長が考えている事はわからない。君の監禁場所に打って付けなのだろう」
「そうですか。へんな事聞いてすいません」
「構わんよ。それと一つ君に忠告だ。死にたくなかったらいたらん行動は起こさない事だ。
ここは監視されているからな」
 レイ・ユウキはそう言葉を残すと病室から出て行く。
「こんな傷で、外に出ようとしてもすぐ捕まるだけだな」
 誰もいない病室で、キラは一人呟いた。キラの傷は重傷では無かったが、監視している兵
から逃げられる程の体ではない。キラは今の状況では何も出来ないことを悟り、自分の傷を
癒すことに専念する。傷が癒えるのに数日を要した。
 キラは傷がいえ、士官学校の寮に監禁された。
 ある日士官学校の校長がキラの所へ尋ねてきた。
「サイ・アーガイルさんですね」
「そうです」
「折り入って頼みがあるんですが……」
 校長は神妙な顔つきでキラを見る。
「なんでしょうか?」
「士官学校の教官をしてほしいのですが」
 校長の言葉にキラは固まる。
「今の状況分かっていますか?」
 キラは校長に問う。
「ええ分かっていますよ。戦線に出られない程の問題行動を起こし、議長命令でここに監禁
されている事ぐらいは。それでもあえて頼んでいるんです」
 校長の熱意に負け、キラは渋々承諾した。
「一体どんな事をするんですか?」
「シミュレータでここの生徒と戦ってもらうだけです」
「それだけなんですか?」
「あなたには実技しか期待していませんから。できれば今日からお願いします。時間は昼一
番です」
 と言うと校長はキラの部屋を後にした。キラは誰もいない部屋でため息をつく。
「何をやっているんだか」
358キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:31:05 ID:???
 昼になるとキラは、シミュレータが置いてある部屋へと向かう。部屋の中に入ると、生徒
がシミュレータの前で並んでいた。生徒達はシミュレータへの操作方法を、教官から受けて
いるようだ。
 キラは操作方法を既に知っているので、先にシミュレータに乗り込もうとする。
「待ちたまえ」
 キラは突然誰かに呼び止められた。キラは声の方向へ振り向く。そこにはラウ・ル・クル
ーゼがいた。
「どうしてここに?」
 キラは予想外の人物がこの場所にいるのに驚いた。
「議長から聞いてね。君が教官をするみたいなので、その雄姿をこの目に焼き付けようかと
思ってね。そんな事より君にこれを……」
 とクルーゼはキラにある物を見せた。
「これは……」
 それはクルーゼが愛用しているマスクであった。
「どうしてこれを」
「もしもの為さ。もう一人の君がプラントに来た時、どうするつもりなんだい? 私と同じ
ような存在の君にはこんな事で終わって欲しくないんでね」
「貴方も知っているんですか?」
 キラの言葉に、クルーゼは頷いた。キラは更に話を続ける。
「貴方ほどの身長があったら、それは似合っているかもしれませんが。今の僕には……」
「それならこれを」
 とクルーゼはマスクとは別にサングラスを取り出した。
「それなら使わせてもらいます」
 とキラはクルーゼからサングラスを貰う。
「どっちも変わらないと思うが」
 クルーぜの呟きはキラには聞こえない。クルーゼはその言葉を残すと、外の出て行った。
キラは校長によって生徒達に紹介される。キラを見た生徒達は、突然騒ぎ始めた。
「あのサングラス似合ってないぞ」
「たしかに微妙だな」
「あれで似合っていると思うのかしら」
「センスが私達より一歩先に行っているわね」
 所々からキラがしているサングラスの批評が飛び出る。騒がしくなった生徒達を静めるた
め校長が咳をする、すると辺りは静かになる。その後に続くように教官が口を開く。
「いまからシミュレータを始める。相手は先ほど紹介したサイ・アーガイル君だ」
 キラは軽く生徒達に挨拶すると、シミュレータに乗り込む。
 シミュレータの外が騒がしくなったが、キラはそれを無視しMSを選ぶ。数分立っただろ
うか、相手もやっとシミュレータに乗り込む。模擬戦が始まった。
 生徒との戦いはすぐに決着がついた。キラの相手にはならない。キラから見れば、止まっ
ている蚊、トンボのように見えていた。調子に乗ってキラはシミュレータの中で吼えた。
「落ちろ蚊トンボ!」
 キラの雄叫びと同時に、生徒が操縦するMSが爆破する。
そうして四、五人程と模擬戦を終えると、また外が騒がしくなった。キラは外の様子に耳を
傾ける。
359キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:32:20 ID:???
「今日はサプライズが多いな」
「センスが可笑しい新任教官はくるし、クルーゼ隊に所属していた人もくる。すごすきだぜ」
「そうだな」
 と生徒達の会話にキラが耳を傾けていると、シミュレータ内に音が響く。通信画面に、先程
生徒達にシミュレータの操作方法を教えていた教官が映る。
「申し訳ないんですが、今から軍の人と戦って貰ってもいいですか?」
「いきなりですね」
「生徒達のやる気を起こさせるためには、デモンストレーションも必要でしょうから」
「分かりました」
 キラは教官の頼みを承諾した。シミュレーション内の電気が一旦全て落ち、再度また明る
くなる。どうやらもう一度最初から設定をするようだ。対戦相手はMSを選んだようだ。目
の前のモニターに映っているMSにキラは少なからず驚く。そのMSはブリッツであった。
アスランがいた部隊が奪った、ヘリオポリスで開発されていた連合の試作MSだ。キラもM
Sを選ぼうと選択画面に移行すると、連合のXナンバーが新たに加わっていた。キラは迷わ
ず、ストライクを選ぶ。そして戦いのゴングは鳴る。場所はどこかの孤島であった。キラは、
軽く操縦桿を倒しストライクを動かす。ストライクは宇宙より動きが鈍いと感じた。だがキ
ラは戦闘中にもかかわらずOSを修正するなどそんな技術はない。このままの状態で目の前
のブリッツを撃破しなければならない。
 ブリッツも最初は動きが遅かったが、すぐさまOSを修正したのか動きが最初と確実に違
っていた。
「ここまで再現しなくても……」
 キラはため息をついた。ブリッツのOSが完成しているとしたら、今のストライクは8割
までしか完成していない。キラはブリッツに通信を入れたが相手は何も答えない。通信を切
っているようだ。
「このまま戦えって事か!?」
 キラはブリッツが攻撃をしてくる度に、シミュレータの中で声を上げていた。
「なんと!」
 や
「うおぉぉぉぉ」
 などである。だがブリッツの攻撃を避けるため集中しているのか、キラは最初に比べ言葉
が少なくなってきた。キラはブリッツの攻撃を避けるだけで精一杯で、攻撃する暇がないよ
うだ。なんとかビームライフルを使うが、簡単にブリッツに避けられる始末。逆にブリッツ
の攻撃にはついて行けず、避けられず全てが命中する。被弾のしすぎなのか、ストライクの
バッテリーが残り少なくなっていく。
「所詮これはシミュレータ、操縦しているパイロットは死なない。それなら」
 キラは死なない事を利用し、相打ち覚悟でブリッツに挑む。ストライクの突飛の行動に、
ブリッツは驚き動きが一瞬だが止まる。キラはその隙を狙い、ビームサーベルをブリッツに
目掛けて振り下ろす。ブリッツは何とかストライクのビームサーベルを避けた。しかしその
代償としてブリッツの片腕が持っていかれた。ブリッツは残った腕を使い、ストライクのコ
ックピットにビームサーベルを突き刺した。
360キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:33:11 ID:???
もちろんこの戦いはブリッツの勝利で終わった。だがキラも奮闘し、ブリッツを半壊まで持
ち込んだ。そのかわりにブリッツのビームサーベルがストライクのコックピットを貫いている。
 外へ出ると、生徒達が対戦相手を囲んでいた。キラの所からでは、髪位しか見えない。ど
うやら緑色の髪をしている少年のようだ。少年は生徒達に取り囲まれ何かを話していた。授
業の終わりのチャイムが鳴った様なので、近くにいた教官が生徒達を集める。そして何か話
をすると、生徒達は再度緑の髪の少年の周りに集まる。教官たちが部屋から出るのに続き、
キラも外に出ると兵士が待ち構えていたのかキラを自室に連行する。
 部屋に戻ると其処には、ラウ・ル・クルーゼがいた。キラは先程の事で嫌味の一つでも言
おうとしたが、その事よりもクルーゼがなぜここにいるのか聞く。
「君を待っていたからさ」
 クルーゼは簡潔に答えた。クルーゼの言葉にキラは完全に引いた。
「その発言は誤解を招くような」
「心配するな。私はそっちには興味がない。君はどうだか知らないが」
「僕も興味ありません。そんな事より僕を待っていた? 貴方こんな事してていいのですか」
「ちょうど次の作戦に入る前に時間ができてね。議長に会いに行ったら、君が掴まっている
と話を聞いてね」
「それで会いにきたと」
「ちょっと話でもしようと思ってね。暇なんだろう?」
 キラは頷いた。さらにクルーゼは話を続ける。
「しかし君も大胆な事をしたな。ザフトの新型を盗む何て」
「それは濡れ衣です」
「ああ、分かっているさ。その事で君と話があるんだ。君はこの世界の事をどう思っている?」
「唐突ですね。しかしどういう意味ですか?」
「君と私は人類を裁く権利があると思わないか? それでだ私と共に来る気はないか」
「人類を裁く!?」
「そうだ。君と私にはクローンという共通の点がある。弄ぶのは弄ばれる覚悟がある覚悟が
る人間だけだ。だから私は、人を世界弄ぶ。もしその気があるなら、いつでも私の元へきて
くれたまえ」
 クルーゼはそう残すと、部屋から出て行く。
「ラウ・ル・クルーゼ、僕達に人類の裁く権利があるだと!それは、面白い考えだ」
 部屋中にキラの高笑いが響く。笑っていると、部屋のドアが開き外にいる兵士が中に入っ
てきた。
「声がでかいぞ。静かにしないか!」
 キラは兵士に怒られ冷静に戻ると、今日の疲れが出たのかベッドへ潜り込んだ。 

 なにも変化がない日常が数週間ほど過ぎた頃、キラの所にギルバート・デュランダルが面
会を求めてきた。その日キラは特にする事なかったので、デュランダルに会う事にした。そ
の時、先日クルーゼに言われた事をデュランダルに話そうとしたが、話すと命が狙われると
思いその事については口を閉ざすことにした。
 デュランダルの計らいで、面会場所はキラは監禁されている部屋で行われた。
「僕に何かようですか」
「なに世間話でもしようかと思ってね。しかしここは不便ではないかね」
361キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:34:32 ID:???
 デュランダルは辺りを見回した。キラが監禁されている部屋には、生活に必要最低限の物
しか置いていない。
「慣れました。それにシミュレータを使わしてもらっていますから、ストレスはたまってい
ません」
「監禁されているのに優遇されているようだな」
「議長のお陰ですかね」
 デュランダルは、キラの今の現状を想像したのか、笑い出す。笑いならがらもキラとの話
を続ける。
「先ほどの話に戻るのだが、シミュレータでどんな風にストレスを発散しているのか知りた
いものだよ」
「相手を完膚なきまで倒していますから……」
「相手はまだ実践を経験していない士官学校の生徒なのだろう?」
 キラはデュランダルの言葉に頷いた。
「だからいいんですよ。経験の差で必ず勝てますから」
「そうかい」
 デュランダルはキラの言動に冷や汗を掻いた。
「何か別の話でここにきたんじゃないですか?」
 キラはデュランダルが此処にきた理由を聞いた。
「ああそうだった。君に言ってもしょうがないかも知れないが……」
「何かあったんですか?」
「ニュートロンジャマーキャンセラーのデータが何者かによって持ち出された」
 キラはデュランダルの口からでた内容に顔色を変える。
「連合の諜報部隊がプラントに進入したんですか?」
「いやそんな形跡はなかったらしい」
「一体誰が?」
「今の所、調査中だ。持ち出した容疑者はクライン派ではないかと議長は思っているらしい。
そしてそれを手引きしたのが君だと……」
「馬鹿馬鹿しい。部屋に監禁されていて一体何が出来ると思っているんでしょうか」
「私も君ではないと思っているよ。たぶんこれはクライン派をあぶり出すために考え出した
計画かもしれない。データを盗まれたのは確かだが、それを利用しクライン派を追い詰める」
「すごい作戦ですね。しかしなら誰がデータを?」
 デュランダルは一旦口を閉ざすと、数秒か十秒か間を空け、再度口を開いた。
「私にはそんな情報は入ってこないんでね。そこまでは分からない」
「そうですか」
 キラは、デュランダルが何も知らない事に落胆した。
 部屋のドアがノックされる。
「時間だぞ」
 と外にいた兵士が部屋に入ってきた。どうやら面会時間がすぎたようだ。
 デュランダルはキラとの面会を終え部屋から出る際、キラにある包みを手渡した。
「こんな物渡されても困るんだよ」
 兵士がキラが持っている包みを取り上げようとした。
「すまないが見逃してくれないかな」
362キラーズ ◆vKFms9BQYk :2007/03/04(日) 01:35:47 ID:???
 とデュランダルが兵士に何かを渡した。
「今回だけだぞ」
 兵士は手のひらを返したように、包みの事は何も言わずデュランダルを外へと連れ出す。
 部屋にはキラだけが残った。
「そこまでしてこれを僕に……」
 キラはイスに腰をかけると、渡された包みの封を開けた。中から分厚い紙の束が姿を現した。
 その内容は、先日倉庫で聞かされたシーゲル・クラインが画策していた計画の全貌が事細
かに書かれたいた。金の流れ、シーゲルが作り出した組織の概要等である。
「計画名はディスティニープラン!? 壮大な計画だ。きっかけは、血のバレンタインのよ
うだな」
 キラはデュランダルが記したシーゲルの計画に目を通し始めた。シーゲルが今回の計画を
本格的に練り始めたのは、ラクスの母親が死んだ事から始まったようだ。その時ラクスはま
だ7歳になったぐらいだろうか。ラクスが成人するまでに平穏な世界を作るために、シーゲ
ルは全てを費やした。そしてきっかけは、血のバレタイン。この事件のお陰でナチュラルと
コーディネータとの間に、中々埋めることが出来ない溝が生まれた。そしてシーゲルは計画
を実行に移し始めたようだ。ラクスを、コーディネータ、ナチュラル両方の支持を得られる
体制を作るための計画が……。途中シーゲルが死んでも最後まで計画を実行するようになっ
ている。シーゲルはこの計画に全容を話しているのは、デュランダルだけのようだ。残りの
駒には偽りにプランを聞かせているらしい。シーゲルが死ねば、その意思をデュランダルが
受け継ぐようにと。
 呼んでいるとキラは、先日自分の手で殺したシーゲルの事を思い出し、トイレへと駆け込む。
 数分たつとトイレから出てきたキラは、再度イスに腰を掛け紙の束に目を通し始める。
 気がつくと時計の針は真夜中の12時を刻んでいた。
「もうこんな時間か……明日も早いからもう寝るか」
 キラはベッドに潜り、眠りについた。

第10話完
第11話へ続く
363通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 01:51:48 ID:???
流石コズミック・イラ、どいつもこいつも狂ってやがる。
GJ!
36458:2007/03/04(日) 23:24:26 ID:???
軍服に着替えたキラはホテルへと向かった。何故ならミネルバの一行はディオキアに停泊している間休暇を与えられていて、ディオキアにあるホテルに宿泊しているからだ。
キラもホテルへの宿泊をデュランダルに勧められていたが、これからはミネルバで寝起きをするから早めに慣れておきたいと断っていた。
ホテルについてすぐ、キラはルナマリアを見つけた。

「やあ、ルナマリア。シンを見なかった?」
「お、おはようございますヤマト隊長!シンですか?シンは起きて早々にバイクに乗ってどっか行っちゃいましたよ」
「ヤマト隊長なんて堅いなぁ……キラでいいよ、キラで。そっか、彼に話があったのに残念だな」
「え……じゃあ、隊長今日お暇ですか?実はディオキアの街を散策しようと思ったんですけど、シンは一人でどっか行っちゃうし、レイは議長に与えられた新型に早く慣れたいってシミュレーションに篭りっきりだし……」
「ようするに僕を誘ってるんでしょ?いいよ、行こう」
「え?本当ですか!あ……ありがとうございます!じゃあ、私すぐ着替えてくるんで隊長も着替えてきてください!じゃあ、30分後にホテルの受付で待ち合わせしましょう!」
「うん、わかった。じゃあ、また後でね」
「はい!ありがとうございます!」

頬を赤らめ意気揚々と部屋に戻っていくルナマリア。そんなルナマリアの後ろ姿を冷ややかな目で見るキラ。彼にとってはルナマリアなんてどうでもよかった。
30分後、軍から車を借りてホテルまでやってきたキラはホテルの前で車を止め、ホテルの中へと入っていく。待ち合わせ場所である受付にはルナマリアの姿はなかった。

「こういうとき、女性って何でいつも遅れてくるんだろうね……」

キラは心の中で思っていた言葉を思わず呟いてしまった。
女性とデートをする事はキラにとって実に久しぶりであった。まだ身体が何一つ不自由なく動くようになって日が浅かった頃は、一日一日を生き抜く為キラは女性を食い物にしていた。
実際持ち前のコーディネートされた端整な顔つきに少しの話術を心得ただけで、キラは幾月か衣食住に困らぬ生活を送る事が出来ていた。しかし、そのような生活を送っていたのも偽者と出会うまでだった。
キラが少し前の自分の事を回想していると、後ろの方から高い声が聞こえてきた。どうやら待ち合わせの相手がご到着らしい。

「遅くなってスミマセン!30分後にここで、って言ったの私なのに……」
「ううん、気にしないで。僕も今さっき来たばかりだから」
「本当ですか?……よかったぁ。じゃ、行きましょっか!」

本当は10分ぐらい前から待ってるのにキラは嘘をつく、というかついてしまっていた。条件反射というものは恐ろしいな、とキラは思い苦笑していた。

「どうしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ……君は僕の身体を見て、あんな話聞かされたのに何も言わないんだね」
「え……はい。だって、私達は戦争をやってるんですもん。流石にクローンとかの話は少し現実離れしすぎって驚いちゃいましたけど……隊長みたいな人がいても不思議ではないと思います。それに……」
「それに?」
「隊長はアスランを必死に助けようとしてたじゃないですか。だから、隊長は悪い人じゃないって思いましたし……人には触れられたくない所もあるだろうし……」
「……ありがとう」
「いいえ、とんでもないです!……今日は折角の休みですし、楽しみましょ!」

キラは一瞬ルナマリアに気を許してるのに気づき、ハッとした。しかし、彼女も自分の上辺の部分しか見えてないと思うと途端に悲しくなった。
晴れわたる青空の下を走るジープは、ディオキアの市街地に向かってスピードを上げていた。
36558:2007/03/04(日) 23:27:01 ID:???
レイは一人シミュレーターに篭り、議長から与えられたグフイグナイテッドに一日でも早く慣れようと必死だった。
地上に降りてからのミネルバのMS戦において、単独での飛行能力を持たないザクに乗っていたレイは後方支援、または艦の護衛をすることが多かった。
しかし今度与えられたグフは単独での飛行能力を有しており、また装備も近接格闘戦用に偏っていた為、レイは今までとは180度違った戦い方を強いられていた。

「どうやら俺はシンを見習わなければならないようだな」

今し方本日何度目かのシミュレーションを終わらせたレイは、タオルで汗を拭いながら水の入ったボトルを手に取り口に含んだ。
今考えてみれば、士官学校在学時にレイはシンとのMSの一対一による模擬戦においてあまり勝ったことがなかった。とは言うものの、レイも士官学校を主席で卒業しているだけあってMS戦闘も他の生徒と比べると断然強かった。
だが、シンはMSの一対一において無類の強さを誇っていた。

「後でシンの戦闘データでも見てみるとするか」

レイは気を取り直して、再びシミュレーションの中に入ろうとする。その時、レイに声が掛けられる。その声にレイの心が揺すぶられた。

「そろそろシミュレーションにも飽きた頃なんじゃないの、レイ?」

後ろを振り向くと、そこには赤服を身に纏ったキラとルナマリアがいた。レイは一瞬感情を昂らせたが、ルナマリアがいた為それを抑えた。そして、キラには目もくれずにルナマリアに話しかける。

「市街地に出かけていたのではなかったのか?」
「うん、でもキラさんが一度私達の実力を測ってみたいって言ったから早々に切り上げてきちゃった」

ルナマリアのキラの呼び方が変わった事にレイは懸念を抱いた。何故なら、デュランダルがキラに取り込まれた時もそうだった事をレイは強く覚えていたからだ。

「今から2対1の模擬戦をやらないか?もちろん僕が一人の方だけど」
「お断りしときます、隊長」
「何で?君にも悪い話じゃないと思うけどな……議長の期待に応えたいなら、実戦を重ねるべきだと思うけど」
「そうよ、レイ。ここはキラさんの厚意に甘えとこうよ、ね?」
「……わかった、ルナマリア。ここは隊長のご厚意に甘えとくとしよう。ただし、その前に一度だけ一対一での模擬戦を俺にやらさせて欲しい」
「うん、いいよ。じゃあ、時間が勿体無いから早く行こうか」

レイの眼光がキラに向かって鋭く光る。しかしキラはそんなレイに対しただ微笑むだけだった。
36658:2007/03/04(日) 23:28:32 ID:???
ディオキアの基地で2機のMSによる模擬戦が行われようとしていた。一機は白いカラーリングのグフ、もう一機は前大戦の英雄であるフリーダムだった。
しかし、そのフリーダムのカラーリングは白と黒をメインに構成されていて、所々にあしらわれたゴールドやシルバー、紅色がフリーダムを兵器ではない全く別の高貴な物に昇華させるようだった。

「なんだ、この配色は?……お前にこのような趣味があるとは思わなかったな」
「戦場で偽者が出てきた時2機とも同じ色だったら困るでしょ?それに、白と黒は究極の美だからね……この二つを引き立てるには少しだけ派手な色があった方がいいんだよ」
「……己の美意識に酔っていろ、すぐに終わらせてやる」

レイは昂る心を抑える事が出来なかった。普段、冷静なレイをこうまでさせたのはMSに乗る間際のキラからの一言であった。

(なんなら実弾、実剣でやろうか?そっちの方が緊張感があるでしょ……まぁ、仮にそれでやっても僕には傷一つ付けられないと思うけど)

「何をふざけたことを……キラ、あまり俺を舐めない方がいいぞ!」

言葉と共にグフを一気に前進させる。接近戦を得意とするグフにとって、遠距離で戦えるフリーダムに勝つにはいかにして距離を縮めるかがキーだった。
模擬戦の開始の合図と共に全速力で距離を縮めにかかったレイの行動は、キラの不意を衝くのに十分だった。

「まさか、君がいきなりそう来るとはね……よほど、クルーゼの事を口にしたのを怒ってるみたい」

キラは引きながら頭部のバルカンで牽制する。グフが回避することを想定し、避けたところを狙って撃とうと考えていたキラ。しかし、ここでもレイはキラの虚を衝く。

「スピードを緩めない?……面白いことをやるじゃないか、レイ」
「貴様が考えてる程俺は弱くないッ!」

そのまま突進してきたグフを上空に飛んで回避するキラ。だが、そこを狙っていたレイはヒートロッドでフリーダムを襲う。
半身になって回避し、すぐさまビームライフルを放とうとする。が、今グフを狙えば基地に被害が及ぶかもしれない。模擬戦である以上、基地への被害など論外であることはキラにもわかっていた。

「くっ、実弾なんて言わなきゃよかった……遊びが出来ないならとっとと終わらせるよ」

ビームサーベルを引き抜いて、グフとの距離を縮めるフリーダム。フリーダムの圧倒的なスピードによって生じる強烈なGがキラを襲う。キラは思わず顔を歪めるが、それでも口元は笑っていた。

「初めて戦った時よりは大分強くなってるけど……まだまだだよ」

勝負は呆気なく着いた。左手に持ったビームサーベルはグフのテンペストを完全に押さえ、右手に持ったビームサーベルはコクピットの直前で止まっている。
レイはコクピットの中で呆然としていた。フリーダムの狂気ともいえるスピードと、そのスピードを維持したままドラウプニルのビームの雨を潜り抜けるキラの人間離れした操縦技術に。
しばらくして、レイは突然ハイネの言葉を思い出した。

「ハイネ……俺の目の前にいる男はまさしく怪物だ」

背中に脂汗をぎっしりとかいている事など全く気にも留めずに、レイは呟いた。
36758:2007/03/04(日) 23:33:49 ID:???
それからキラとレイは武装を実戦演習用の物に切り替えて、さらにルナマリアを加えて2対1の変則的な実戦演習を行った。しかし、ここでもキラは負けることはおろかMSにかすり傷一つつけないで演習を終わらせた。

「何なのあの人……反応速度が尋常じゃないわ……」
「それにあの射撃の精密さと来たものだ……ルナマリア、お前何回コクピットに当てられた」
「……24、5回よ」

先に各々のMSから降りてきたレイとルナマリアは、今のキラとの演習を思い出していながら話していた。そこに、コクピットから降りてきたキラが現れる。

「お疲れさま、二人とも。レイは回数を重ねる度にグフに慣れてきてたからいいとして……ルナ、君は射撃があまり得意じゃないみたいだね」
「え……あ、はいスミマセン……」
「謝らないでよ、人には得意不得意ってものがあるんだから……でも、君の射撃精度が上がれば上がるほど僕達は大きな戦果を上げられると思うんだ。だから今度一緒に射撃の訓練をしようか」
「え!?は……はい、ありがとうございます!」

キラの言葉を聞いて、思わず卒倒したくなるのを堪えるルナマリア。そんなルナマリアを見てレイは顔に出さずに呆れていた。
そんなところに、緑服を着たザフト兵がキラの前に現れる。緑服はキラに耳打ちすると素早く帰っていった。

「どうしたんですか?」
「シンが外で何かやらかしたらしいから、迎えに行かなきゃならないみたい。二人とも先にミネルバに戻っといて」


「どうして君はこんなところにいるんだい、しかも女の子と一緒に」

キラは開口一番、シンに言い放った。キラの表情はにこやかだったが、その表情の裏では笑っていないことなどシンはすぐに察せた。

「いや、違うんですよこれは……その……」
「あんま外で派手なことやらかさないでよね。ザフト軍人は軍の機密どころか個人の性欲も管理出来ないのか、ってなっちゃうじゃないか」
「そんな事は全然してませんって!」
「ねぇ君、この人にホントに怖いことされてない?」
「怖くない。シン……ステラ……守る」
「ほら何にもしてないじゃないですか!だよねぇ、ステラ♪」
「うん♪」
「顔緩んでるよ、シン」

ステラの口調に一瞬目の色を変えるキラ。だが、それを悟られないようにすぐに戻しにこやかな表情に戻し、そして腑抜けた表情を見せるシンにポカン、と拳骨を一発かます。
シンが音に似合わず重い痛みに顔を歪めてると、岬の方からステラを呼ぶ声が聞こえてきた。

「スティング、アウル!」

ジープで送られてきたステラは嬉々とした表情で二人を呼ぶ。だが、送ってきた相手を見てスティングとアウルは一瞬驚く。
ジープから降りたシンは緑髪のスティングと呼ばれた男にステラが海に落ちたの助けたのだと説明する。その間、アウルはキラに絶えず鋭い視線を送る。それを見て、キラは自分の考えに確信を持った。
立ち去ろうとするキラ達にスティングが話しかけてきた。 

「ザフトの方々には、色々とお世話になりました」
「シン……行っちゃうの?」
「うん……ごめんね、ステラ。でも、また会えるから!」

キラとシンを乗せたジープは三人に別れを告げ、走っていく。帰り道、シンがステラの事を強く想っていることに対しキラはある懸念を抱いていた。
36858:2007/03/04(日) 23:48:24 ID:???
投下終了です。
今回初めての戦闘描写だったのですが……中々難しかったです。

次回、偽者初登場の予定です。
369通常の名無しさんの3倍:2007/03/04(日) 23:53:25 ID:???
キラーズ氏に続いて58氏キター!お二人ともGJ!
キラーズ氏のシーゲルはドス黒かったですね…まだこれでも生きてるんじゃないかと疑うくらい…。
58氏のダークヒーローキラもカッコイイです!
370IF SEED STORY ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/03/04(日) 23:56:09 ID:???
 すみませんがオリジナルシードから題名変更、
 ではいきます
371IF SEED STORY ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/03/04(日) 23:57:01 ID:???
 アスランは、今プラント行きのシャトルの中にいた。
 それが発進し、急速に大地が遠ざかっていく。
 シャトルは雲を割り、どんどんと漆黒の宇宙に近づいていく。
 ふと下を見ると、旧世代の飛行機雲の様な物が見えたが、気にする事でもない。
 目を閉じて一つ息をつき、再び目を開いたら、無数の星が目に飛び込んできた。
 この無限とも思える宇宙のどこかに、コーディネイターブームの理由の一端である、
 宇宙鯨がいる。
 彼らに会ってみたい。
 それは、アスランの子供の時からの夢の一つだった。
 もっともそれは、プラントの子供の大半が持つ夢なのだが。
 彼らが何を教えられ、何を信じ、何を考えているか、今のアスランはとても知りたかった。
 知れば、この心の霞が晴れる気がしたから。
 プラントの独立のために始まったこの戦争は、コーディネイターとナチュラルが、
 互いを憎み、殺し合うものになっていった。
 その中には、ナチュラルがナチュラルを、コーディネイターがコーディネイターを
 殺す事もあっただろう、…自分の様に。
 議長となった父上は、この戦争をどう終わらせるつもりなのだろう?
 まあ、突っ走る所もあるが、聡明な父上の事だ、
 きっと上手くこの戦争を終わらせる戦略を練っているだろう。
 こんな事は終わらせたい。
 皆がこう思っていることを、アスランは願っていた…。
372IF SEED STORY ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/03/04(日) 23:58:06 ID:???
              アラスカ――JOSH-A
 
 
 砲弾がザウートに命中し、ザウートは爆発する。
 その爆煙からバクゥが踊り出て、ザウートをやった戦車を自重で押しつぶし、
 そのまま跳躍して、空からレーダードームを撃つ。
 そこに戦闘機がミサイルを当て、バクゥを地に落とし、そのバクゥは運悪く地雷に引っ掛り、
 爆散する。 その戦闘機はディンにあっさり撃ち落される。
 
 海上では、地球軍の船が砲弾を放ち、ミサイルで近づいて来るアジャイルを落とす。
 が、グーンの魚雷に当たり、あえなく撃沈された。
 そのグーンも、爆雷と対潜ミサイルの雨にやられる。
 
 そこへ、滝を割りアークエンジェルの白亜の艦体が現れた。
 「ウォンバット、ってー!!」
 マリューの指示と共に、ミサイルが放たれ、反応が遅れたディン一機に当たった。
 が、喜んでいる隙もなくディンが近づいてきた。
 「ミサイル来ます!」
 「取り舵30!グリーンチャーリーのディンにミサイル集中発射!」
 ノイマンが必死に舵を回すが、ミサイルが一発当たった。
 「右舷フライトデッキ、被弾!」
 艦載機の無いアークエンジェルには、大した事のない被害だが、このままじわじわと
 削られるのは危険だ。
 ミサイルは全て回避されたので、また攻撃を仕掛けてくるだろう。
 守備隊全体も、善戦しているものの、この少ない戦力では容易に突破されてしまう。
 「オレーグ、轟沈!」
 考えている隙も無く、凶報が飛び出してくる。
 「面舵25!オレーグの抜けた穴を埋める!ゴットフリート、てぇ!」
 閃光が走り、それはジンを貫く。
 「尚もディン接近!数6!」
 「主力部隊は全部パナマなんですか!?」
 サイは、眼下でジンが戦車を蹂躙している様を見やり、唸る。
 「ああ、そう言うことだね!」
 チャンドラがそれに答えた。
 しかし、接近するミサイルがそれ以上の会話を打ち消した。
 「ミサイル接近!24!」
 イーゲルシュテルンがそれをなんとか撃ち落とす。
 また艦が一隻火を噴き、撃沈される。
 「リューリク轟沈!」
 そういえばユーラシアの艦が多い…。
 しかしそんなこと考えている時ではない。
 またディンが迫って来た。
373IF SEED STORY ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/03/04(日) 23:58:58 ID:???
 ムウは人気の無い基地内をバイクで疾走していた。
 やっと戦闘機の姿が見えた。
 整備士が三人程いた、彼らに質問しようとバイクを降り、走る。
 が、シグーがマシンガンで駐機場を蹂躙する。
 「進入路確保!よーし、ナチュラル共はこの奥だ!行くぞ!」
 シグーのパイロットが隊員に伝え、続くジンがハッチを破壊し中に向かう。
 それを見送り、ムウは立ち上がる。
 戦闘機はほとんど破壊されたが、なんとか一人だけ生き残ったらしい。
 「おい!ここは撤退だ!基地は放棄される!ほらしっかりしろ!」
 その整備士は、辺りに散らばった同僚の肉片を見て呆然としている。
 ムウは彼の頬を引っ叩き、正気に戻らせた。
 「生き残った奴を集めて、早く脱出するんだ!
  最低でも、基地から10km以上離れるんだぞ!いいな!これは命令だぞ!」
 彼が走り去っていくのを見て、ムウは生き残った戦闘機に乗り込み、発進させた。
 「チィ!ヒーローは柄じゃねぇってのに!」
 
 
 戦闘が始まって何時間かしたころ、アークエンジェルは限界が近づいていた。
 「バリアント、1番2番沈黙!」
 「艦の損害率、30%を超えます!」
 「イエルマーク、ヤノスラフ、轟沈!」
 もう報告は、絶望的な事だらけだ。
 「既に、指揮系統も分断されています!艦長、これでは…。」
 トノムラもかなり絶望的な報告をしてくる。
 「パナマからの救援隊は?」
 「全然何にも見えません!」
 「友軍機接近!被弾している模様!」
 「着艦しようとしているの!?」
 マリューは慌てて艦内マイクで格納庫に伝える。
 「整備班!どっかのバカが一機突っ込んで来ようとしているわ、退避!」
 「おらおら、みなさんどいててくださいよぉ!」
 ムウは無理矢理着艦し、急いでブリッジに向かった。
374IF SEED STORY ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/03/04(日) 23:59:48 ID:???
 ムウがこの作戦の事を伝えると、皆顔面蒼白になった。
 ザフトの主力を引き込み、サイクロプスで壊滅させるという作戦だ。
 「戦争だから、私達軍人だから、そう言われたら、…そうやって死ななきゃいけないの? 」
 ミリアリアは、泣き出しそうな顔でだれとなく問う。
 「まあ、それが役目なわけだけどなぁ。」
 「でも今回は少し勝手が違うわ。」
 ムウの答えに、マリューが反論する。
 「あそこを攻めろと言われたり、ここを守れと言われれば、それも半分死ねという事
  だけど…、何も知らされずに自爆の巻き添えになれなんて…、割り切れないわ。」
 「じゃあどーすんの?」
 ムウが試すようにマリューの顔を見る。
 「ザフト軍を誘い込むのが、この戦闘の目的だと言うのなら…。」
 マリューは決意を決めて語りだす。
 「本部隊は既に、その任を果たしたものと判断致します!尚これは、アークエンジェル艦長、
  マリュー・ラミアスの独断であり、乗員には、一切この判断に責任はありません!」
 その言葉に、それぞれの乗員も意を決して持ち場の仕事に向かった。
 「本艦はこれより、現戦闘海域を放棄、離脱します!
  僚艦に打電!我ニ続ケ。機関全速、取り舵、湾部の左翼を突破します!」
 「そう気張るなって。」
 ムウが、マリューを落ち着かせる様に肩を叩いた。
 「脱出もかなり厳しいが、諦めるな。俺も出る!」
 「少佐…。しかしこの数では…。」
 マリューがムウの目をみつめる。
 「心配しなさんな、忘れた?俺は不可能を可能にする男だってこと。」
375IF SEED STORY ◆Rjq0tSZ8i6 :2007/03/05(月) 00:01:34 ID:???
 ムウの乗ったランチャー装備のスカイグラスパーは、ディンの銃弾をひらりと避け
 アグニでそのディンを撃ち落とした。
 どうやらメインゲートはもう陥ちてしまったらしい。
 しかし、敵は殲滅するつもりなのか、隙間なく包囲している。
 海上では、少ない僚艦もどんどん撃沈されていく。
 そして…
 「後方より、デュエル!」
 会いたくない宿敵に、クルーは息を呑む。
 「足つき!今日こそ終わりだな!!」
 そしてまだまだ敵がやってくる。
 「ジン接近!5!」
 「取り舵20!」
 「64から72ブロック閉鎖!艦稼働率、43パーセントに低下!」
 「うわぁぁもう駄目だぁ!」
 カズイは、もうパニック状態だ。
 「推力低下…艦の姿勢、維持できません!」
 ノイマンは、もうほとんどきかない舵を力任せに回す。
 そこに、ジンが対空砲火を越えて艦橋の前に肉薄する。
 ジンの単眼が光り、マシンガンの銃口を艦橋に向ける。が――
 「うおおおおぉぉぉぉ!!!」
 空から現れたストライクが、ビームサーベルを一閃し、ジンを真っ二つにした。
 そして、落ちてきたシャトルが水飛沫を上げて、その姿を威圧的なものにした。
 
 
 
   ―無理を成してみせることが、本当の有能なのさ―
                  ―ムウ・ラ・フラガ―
376通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 00:44:01 ID:???
キラーズ氏GJ
ギルの呑気さにワロス

シーゲルは鳥肌が立つ位腹黒杉www
馬鹿親する前に娘へ政治の専門教育をしろと小一時間問い詰めたいねw

シーゲルと対比させると、パトリックが純粋なのか馬鹿正直に見えて困るw

遂に仮面の「サイ・アーガイル」教官が誕生w
しかしラウに同心することはあるのかな?

58氏GJ
オリジナルキラは実は紐経験あり?
キラのニート属性はクローンにも伝わるんだなwww
ルナミーハー杉www
キラが冷めてるからいいが、女ったらしが目覚めたらどうなることかwww
自由の特殊メイクにも受けたw
戦場で対面する二機の自由…
果たしてアスランはそれにどんな反応を示すやらが気になる。

軍人としての本分か、やはりキラはクローンでも討ちたくないのか…

オリジナルキラなら、優柔不断のアスランを迷わず粛清しそうでコワスw

しかし腹黒キラでもちょっとした幸せな時間を過ごした
シンにはジェラシーを抱くのかな?
自分がクローンと出会ったことで幸せな紐生活を捨てているし。

シンのステラへの感情を察したキラが、戦場でどんなリアクションを取るか気になる。
377通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 00:52:33 ID:???
IF SEED STORY氏GJ

いよいよシナリオの分岐点クルー?

サイクロプスから脱出しつつもストライクと合流したAAが
オーブに逃亡せずに原隊復帰するのか否かが気になります。


IF SEED STORY氏と58氏の作品のwiki登録どなたかおながいします

かあちゃん携帯厨でごめんね
378通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 02:09:16 ID:???
58氏のキラなんかキモイな。
尻がムズムズしてくる。
379通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 03:03:32 ID:???
>>378
58氏キラがアッー!だって?
380通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 03:18:58 ID:???
>>378
汚い穴だなぁ
381通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 19:15:52 ID:???
58氏のアスランはアニメ以上に精神面が脆そうだが、
腹黒キラ隊長は彼をどう扱うのか気になるな。
382592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:38:55 ID:???
投下、行きます〜。
383592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:40:49 ID:???
最初は熱かった。その次に痛かった。その次は眠かった。
そして気がついたときには僕は変なベッドの上で寝かされていた。朦朧とする意識の中、眩いライトの光が僕の視界に入ってきて、不愉快だった。
だけど、僕は体を動かすどころか首も動かす事も出来ない。それに、足や腕が無いような感覚に陥っている。何だろう、この感覚は。不愉快、不快、不満、不安。
視界も、ぼやけて何が何だか。僕は何とか左目を閉じてみる。どうやら、右目はしっかりしていて、左目がやばいらしい。いや、今はそんなことどうだっていい。
ここは何処なんだ?僕は、ストライクに乗っていて…アスランのイージスが自爆して…。それから記憶がない。残っているのはその時の熱さだけだ。
あ、誰か来た。白衣が見える。何だここ、病院なのかな?で、僕は助けられたのか。ああ、よかった。僕は、助かるのかな。

『…どうだ、体のほうは?』

だい

『概ね回復。皮膚も移植完了…。精製、可能です』

何だよ、精製って…僕は…生きているんだ…。くそ…眼開けてるんだよ…。何だ、くそ…僕に、何を…

『おや…どうやら意識が戻ったようだ。可哀想に、眠ったままのほうが幸せだったのにな。まあいい。絶望に伏せたほうが自我を捨てられるだろう。実験体7号、いやキラ・ヤマト君』

実験体だと!?僕に何をするんだ!!くそ、声が、声が出ない…!手が動かない、足がない…畜生、ちくしょうぉ…!

『今日から生まれ変わる。君は、最強の戦士として…皆を守るのさ…青き清浄なる世界のために…コーディネイターを滅ぼすのさ…さあ今はお休み』

あんまりな言葉に、反抗しようと僕は口を開いたけど、その時、僕の心臓が激しく、まるで暴れまわる猛獣のように動き始めた。
痛いいたいいたいイタイイタイィ…チクショウ…ボクガナンデコンナメニアワナキャイケナインダ
ボクハボクハヘリオポリスノガクセイダボクハミンナヲマモルンダデモソンナボクヲダメニシタノハダレダヨ
アアトールヲコロシタアイツダアイツガイケナインダ。シンユウトカイッテボクヲシツヨウニオイツメタアイツガ
コロスコロシテヤル。マッテロヨボクハ…ボクハダレニモマケナイ。ヤクヅケニサレヨウトモココカラデテキミヲコロシテヤル…

アスラン ザラァ
384592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:42:22 ID:???
第五話 THE END OF THE WORLD〜憎しみは愛よりも深く〜

一方、プラントでもこのユニウスセブンの異変が観測され、プラント評議会は慌てて招集をかけていた。そして、その知らせは勿論ミネルバにいる議長デュランダルの許へも送られていた。
知らせを聞いたデュランダルはすぐさま艦長のタリアと今後の対策について相談をし、またオーブ代表であるカガリを艦長室へと呼び出した。
緊急事態だという話に何事かと慌てて駆けつけたカガリとアスランは、デュランダルの言葉を聴いて唖然としてしまった。

「ユニウスセブンが…動いている…?一体何故!?」
「それは分かりません。ですが、動いているのです。現に今もかなりの速度で地球に向かっています。危険な軌道でね」
「それはこちらの艦でも確認済みです。間違いありません」

デュランダルの言葉に加え、タリアの報告にカガリは言葉を失う。問いただしたい事が山ほどあるのに、あまりの出来事に言葉が出てこない。
それを感じ取ったか、アスランが代わりにデュランダルに質問をした。といっても、彼自身も驚きを隠せず、未だに信じられないという表情をしているのだが。

「しかし、何故そんなことに?あれは100年の単位で安定軌道にあると言われていたはずのもので…」
「隕石の衝突か、はたまた他の要因か…兎に角動いているのですよ」
「…もし」

と、ここでゆっくりとカガリが俯いたまま口を開き、全員の注目が一瞬で集まった。

「もし地球に落ちたら、どうなってしまうのだ?オーブは…いや地球は!」
「あるほどの質量です。言わずとも、姫にはお分かりでしょう?」
「…」

敢えて聞こうとしたのか、それとも。デュランダルは流石に心の中で呆れつつも、冷静にカガリを悟らせる。
カガリも心の中ではわかっていたのか、俯いていた顔を更に俯かせて考え込んでしまった。

「原因の究明や回避手段の模索に今プラントは全力を挙げています。またもやのアクシデントで姫には大変申し訳ないのですが、私は間もなく終わる修理を待って、このミネルバにもユニウスセブンに向かうよう特命を出しました。
幸い位置も近いもので。姫にもどうかそれを御了承いただきたいと」
「無論だ!!これは私達にとっても…いやむしろこちらにとっての重大事だぞ。私…私にも何かできることがあるのなら…」

慌てて立ち上がって、カガリは自身の意をデュランダルにぶつける。確かに、オーブの代表として彼女はこのような非常事態に落ち着いていられる事などできないだろう。しかし、それをためらいもなく表に出す彼女の姿が何処か滑稽だった。
そんな彼女の様子を見て、デュランダルは苦笑しながら彼女を宥める。

「お気持ちは解りますが、どうか落ち着いて下さい、姫。お力をお借りしたいことがあればこちらかも申し上げます」
「難しくはありますが御国元とも直接連絡の取れるよう試みてみます。出迎えの艦とも早急に合流できるよう計らいますので」
「…ああ…すまない…」

デュランダルとタリアの言葉に平静を取り戻したカガリはそのままソファーに座り込んだ。
385592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:43:32 ID:???
こんな最中、勿論ミネルバクルー達にも話は広まっていて、シンなどの一部のクルーは休憩室に集まり、その事について話していた。

「ふーん…けどあれが何でさ?」
「隕石でもぶつかったか、何かの影響で軌道が変わったか…」

赤毛のメッシュが特徴的なヴィーノの質問に対し、黒人系の男、ヨウランが考察して答える。それに対し、ケイは泡だった飲み物を口にしながら言った。

「まあこのままだと、地球直撃コースだなぁ…何?ナタリー」
「ケイさん何飲んでいますの?それ…」
「ん?ファンタファンタ」
「…赤色のファンタなんて聞いたことないですけれど。それにお酒の匂い…」
「気のせいだって」

と、ラクスはケイの飲み物を何やら疑いの目で見ていた。ケイは誤魔化していたが、実は彼が飲んでいるのはタリアの部屋から頂戴したカクテルのカシスオレンジだった。
勿論、任務中に酒を飲むことなどご法度であり、ケイもそれを分かった上で嗜めていた。が、ラクスが顔を近づけてくるので、それを振り払おうとして飲むことが出来なくなった。

「それ本当なのか?」
「うん。な、メイリンちゃん」
「え?ああ、そうみたい。バートさんが言ってた」

シンがケイに聞き、それを尚もコップに視線を送るラクスの顔を手で押し引き離しながらメイリンにケイは振った。
メイリンは急に振られた事で少し硬直していたが、すぐに気を取り直して答えた。

「はぁ〜、アーモリーでは強奪騒ぎだし、それもまだ片づいてないのに今度はこれ?どうなっちゃってんの」
「仕方ないってルナちゃん。僕達軍人の仕事はそういうもんさ。特に、下っ端現場兵隊は特にね、上の失態を片付けなきゃいけないしさ」
「…はあ辛いですねぇ…それって…あ、何ですそれ?」

ケイの言葉に落胆するルナマリア。憧れと現実の狭間を知ればこんなものである。その上で軍人は働かなければいけないのだ。弱き者たちを守るために。
そんな時、ルナマリアはケイが机で何やら眺めていたものを見つけた。ケイは少しにやけながらそれを手にしてルナマリアに見せ付ける。

「ふふん、宝くじ」
「ふぅん…ケイさんも理想に生きる男?」
「夢に生きる男といって欲しいね。当たったら奢ってあげるよ」

ケイの自信満々の言葉にルナマリアは少し呆れ気味に、受け流しながら話をそらす。

「期待しないで待ってますよ。で、今度はそのユニウスセブンをどうすればいいの?」

ルナマリアに流された事は気にせず、ケイは少し思考しながら答えた。

「う〜ん…まあ軌道を変えられるならそうしたほうがいいんじゃない?映画のようにさ。最近でもあったよね、『コメット』とか」
「いやケイ、それは不可能だな。ユニウスセブンはもうすでに地球のそばにいる。引力から飛び立たせるのは不可能だな。もう少し離れていれば、遥か彼方に飛ばせただろうが…」

ケイの回答にレイは反論する。それに対し、ケイは腕を組んでレイに答えを求めた。
386592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:45:06 ID:???
「じゃあどうするのさ?」
「砕くしかない」
「…砕く?あの大きなものをですか?すごいですわね…それ」

レイの言葉に一同は騒然とし、ラクスは息を呑んで言った。確かに、単純な方法であるが、それこそ映画のような事だ。
それに対し、レイは静かに頷きながら言う。

「軌道の変更など不可能だ。衝突を回避したいのなら、砕くしかない。最悪、落ちるとしても被害は少なくなる」
「でもさ、ナタリーさんの言うとおりだぜ。あんな大きなもの、どうやって砕くんだよ、レイ?」
「それに、あそこには死んだ人がまだ…」
「だが衝突すれば地球は壊滅する。そうなれば何も残らないぞ。そこに生きるものも」
「確かにね…」

レイの冷たくもありえるであろう未来を言い、一同は再び騒然とする。あの大きさの隕石が落ちれば、それがどんな結果を生むかは誰の眼にも分かる事だった。
その場の雰囲気は冷たく固まってしまった。

「…地球滅亡、ね…」
「はぁ…でもま、それもしょうがないっちゃあしょうがないかぁ?不可抗力だろう?けど変なゴタゴタも綺麗に無くなって、案外楽かも。俺達プラントには」
「ま!ヨウランさん、それはちょっとご冗談にしては過ぎませんか?ちょっと笑えませんわよ」
「あ、わり…」

バタン!!!

と、ヨウランが雰囲気を変えようと冗談を言って、それをラクスが少し真剣な表情で注意し、ヨウランが謝ろうとしたとき、休憩室の入り口から激しい音が鳴り響いた。
何事かとその場にいた全員…いや、唯一人その音に驚いた勢いで先ほどのカシスオレンジを盛大にこぼしたケイが何やら床に突っ伏してもったいなさそうにティッシュで拭き取っていたが…それ以外の全員が入り口のほうを向く。
すると、そこには怒りを露にしたオーブの代表カガリが入り口に手を押さえながら立っていた。

「よくそんなことが言えるな!お前達は!しょうがないだと!?案外楽だと!?これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬことになるか、ほんとに解って言ってるのかッ!?お前達はッ!!」
「(か、カガリめぇ!!僕の折角艦長室からいただいた限定版の高級カシスオレンジを台無しにしてぇぇ!僕は今泣いているんだ!!ていうかもったいないぃぃ!!うわぁぁ!)」

カガリの怒りの言葉に辺りの空気が悪くなり、誰もが沈黙してしまう。そんな中、ヨウランはカガリに向かって謝罪した。

「すいません」
「くっ…やはりそういう考えなのか、お前達ザフトは!」

だがそれもむなしく、頭に血が上ったカガリはプラント全体に対する暴言ともいえる一言を吐いてしまった。アスランは一瞬その言葉に顔を顰めながらも、他の者達に聞こえないよう小さな声でカガリを宥めようとする。

「あれだけの戦争をして、あれだけの想いをして、やっとデュランダル議長の施政の下で変わったんじゃなかったのかッ!!」
「よせよ、カガリ…」
「…くっ…」
「別に本気で言ってたわけじゃないさ、ヨウランも。そんくらいのことも判んないのかよあんたは」

と、カガリがやっと叫ぶのを止めたと同時に、シンが座って眼をつぶったまま、呆れたように冷めた言葉をカガリにぶつける。
それを聞いたカガリは再び怒りのボルテージを上げてシンに掴みかかろうとしてアスランに止められながらも叫んだ。
空気が一気に険悪状態になり、流石のケイも真剣な表情でシンを見つめていた。
387592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:46:14 ID:???
「何だと貴様!!」
「やめろカガリ!!」
「シン、言葉に気をつけろ」
「そうですわよ…ああ、カガリ様も落ち着いてくださいませ」

シンを冷静に注意するレイに対し、ラクスはそれに賛同しつつ、カガリのほうを正面から抑えて宥めようとする。その時一瞬ラクスとアスランの顔が急接近した時、アスランは少しだけ何かを感じたが、それが何かはわからなかった。
いや、こんな状況だと、カガリを宥めなければいけないので頭が一杯で、彼女がラクス・クラインだと考える事などできないだろう。ただ、似ているとだけ感じた。
ラクスも久しぶりにアスランの顔を間近で見つめてしまったので、少しばかり顔を赤くしつつも、すぐに視線をカガリに戻して誤魔化した。
しかし、そんな彼女らの努力を水泡にするかの如く、シンは嘲笑しながら言った。

「あ、そうでしたね。この人偉いんでした。オーブの代表でしたっけ」
「おまえぇ!!!」
「おーちーつーいーてーくーだーさーいー!はい落ち着く!ああ、もう!シンさんもあんまり彼女を怒らせてはいけませんよ!!」

まるでカガリの神経を逆なでするかのような言葉に、彼女はついに殴りかかろうとしたが、ラクスに、腰に腕を回されてそのまま抑えられていて進むことが出来ず、もどかしさだけが彼女を更に激昂させる。
ラクスも必死に抑えるが、意外と力が強く、危うく振り払われそうになるのを絶えつつ、シンを咎める。が、シンは反省していないような表情でそっぽを向いてしまった。

「いい加減にしろ、カガリ!!」

と、ここでアスランが国家代表とは思えぬカガリの態度についに怒り、彼女を叱りつつ、彼女の前に出る。ラクスはそれをカガリを抑えながらじっと見つめる。
アスランは少しばかりシンを睨んで言った。

「君はオーブがだいぶ嫌いなようだが、何故なんだ?昔はオーブに居たという話しだが、下らない理由で関係ない代表にまで突っかかるというのなら、ただでは置かないぞ」
「くだらないだって…?」

しかし、このアスランの言葉はシンの逆鱗に触れた。それを、ケイは感じ取り、彼らに背を向けて表情を暗くする。

「…くだらないなんて言わせるか!関係ないってのも大間違いだね!俺の家族はアスハに殺されたんだ!」
「!!」

激昂したシンはアスランに向かって力一杯叫び散らす。その覇気と言葉にアスランは少したじろいでしまった。
シンは額に血管を浮かべながらカガリとアスランに向かって叫んだ。

「国を信じて、あんた達の理想とかってのを信じて、そして最後の最後に、ボロボロで殺された!!」
「え…?」
「シンさん…」

呆然とするカガリを放し、ラクスはシンを悲しい視線で見つめる。あの時トレーニングルームで自分に告白してくれた事だ。それを知らなかったとはいえくだらないと言われたら、それは怒るだろう。

「だから俺はあんた達を信じない!オーブなんて国も信じない!そんなあんた達の言う綺麗事を信じない!この国の正義を貫くって…あんた達だってあの時、自分達のその言葉で誰が死ぬことになるのかちゃんと考えたのかよ!」

シンは休憩室から飛び出ようとした時、一度カガリの横に止まって自分の怒りを直接ぶつける。カガリは彼を見ることが出来ず、顔をそらしてしまった。
それを見たシンは思い切り舌打をして、怒りに顔を顰めたままその場から歩き去ってしまった。アスランもとめようとしたが、もうすでに彼は立ち去っていた。

「あ、シン!」
「シンさん!」
388592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:47:19 ID:???
それを見たヴィーノとラクスは彼を駆け足で追いかけていく。カガリは、唯呆然としているだけで、何もいえなかった。
そんな彼女をちらっと後ろ眼で見たケイは一度ため息を吐いてつぶやいた。

「なんだかなぁ…」
「ケイ?どうかしたか」
「ん…。いやまあ…うん…」

レイはそんな彼を背中で見送っていたケイの様子の変化に気がつき、声をかける。頭を掻きながら、ケイは少し考え、そして言葉にする。

「代表さん。何で貴方はそうやって唖然としているんです?何で、そんなに傷ついているんです?」
「…!!」

カガリははっと顔を上げ、ケイの背中を見つめる。その背中は何処か寂しげだった。

「オーブは交戦する事を選んで、そして負けた。その中で犠牲になった人はたくさんいるし、それを指揮した人物が、責任を取るべき人物が恨まれるのは当たり前でしょうに…。
それを現実として全て受けて、そしてそれを糧に二度と過ちを繰り返さないようにするのが、それが国を治める者の宿命でしょう?」
「あ…」
「…なんだか当たり前の事言っちゃったな。ま、理想もいいけれど、彼の言ったとおり、その犠牲となる者たちの事も忘れないでやってください。ヨウラン、行くぞ!仕事だ仕事!」
「え!?あ、はい!」
「…ガンバレよ」

勝手に話し出し、勝手に終えて、ケイはヨウランを連れてその場から立ち去った。その時、ケイはカガリとすれ違う時に少しだけ優しい笑顔を見せて、つぶやきながら軽く背中を叩いてやった。
これが、弟を演じさせられた男のせめてもの恩返し。自分を弟だと思ってくれた、優しい姉への。せめてものの言葉だった。
それを見たカガリははっとケイの背中を見ようとするが、すでにケイはその場から去っていた。
カガリは、少し涙を浮かべながらも、頭を彼に対し、軽く下げた。
389592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:48:47 ID:???
一方ラクスとヴィーノは怒りとやるせなさで、暴言を吐いたままその場を後にしていたシンの横をずっと歩きながら彼に話しかける。

「シンさん!」
「何だよ、うっせぇな!!俺が間違った事を何か言ったかよ!!」

ラクスが掴みかかってシンを制止しようとするのを、シンは振り払って尚をも歩こうとした。

「おい、シン!!お前の女性に」
「…シンさん!!」

それを見たヴィーノがシンに掴みかかろうとしたが、それよりも早くラクスが彼の両肩を掴んで彼を自分の正面に向かせる。
シンは戸惑いながらも彼女をにらみつけたが、ラクスはそれ以上の眼力でシンを見つめる。

「シンさんの言った事は間違ってはいませんし、あのようにカガリ様に真正面から言った事は、自分の気持ちをぶつけられていいことだと思います。ですが!
嫌味ったらしい言い方と、言いっ放しでは何も解決しないでしょうに!」
「…いいだろ、別に!俺の事は放っておいてくれよ!」

シンはその視線から眼をそらし、そしてラクスを振り払って走り去ってしまった。ラクスはそれを呼び止めようとしたが、ヴィーノに肩を叩かれてやめる。

「やめとけよ、ナタリーさん。ありゃ、俺達がどうといえる問題じゃないぜ」
「だけど!…ああもう!」

ラクスは何かもどかしい思いを隠しきれないまま、ただシンの背中を見送る事しかできなかった。
390592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:50:17 ID:???

さて、時間は過ぎてアスランとカガリは自室として割り当てられていたゲストルームへと戻っていた。
暗い部屋の中、カガリは机の前で、暗い表情で何かを思いつめている様子だった。そんな彼女に、アスランがジュースを差し出して優しく話しかける。

「飲むか?」
「…ありがとう、アスラン」

カガリは無理やり笑顔を作り、アスランからジュースを受け取る。アスランはカガリの隣に椅子を持ってきて座り、静かに口を開く。

「あまり思いつめるな。あの男の言うとおり、解っていたことだろう?ああいう人もいるはずだって」
「…わかっている。わかっているけど…。お父様のことをあんな風に言われると……お父様だって苦しみながらお決めになったことだから…。
それが…あの男…シンのような奴も生んでしまったと思うと…怖いんだ…私は…」

あの時、カガリの父ウズミがオーブの理念を守り、最後まで戦ったその姿はカガリにとってかけがいの無いものだったし、それ以上に父を最期まで尊敬していた。
だから自分はオーブ代表を受け継ぎ、そして理念を守ろうと努力してきたつもりだった。しかし、あのシンのような人物に改めて出会うと、それを説く自信があるかと言われれば、ない。
それに、あの男の言葉を聴いた瞬間、何故か、キラに叱られたような気分になって、それが彼女の心を揺さぶっていた。
何故だろう。何故、彼とキラを合わせてしまうのだろう。やはり、あの男はキラなのか。だがしかし、それではオーブにいるキラは一体…。カガリの思考は混乱していた。

「カガリ、大丈夫だ…。君は強い。君なら、憎しみも悲しみも乗り越えられるさ…。俺も、できる限り協力する」
「…ありがとう、アスラン…。…それにしても、あのケイという男は何者なんだろう?私はやっぱり、あいつがキラとしか思えないんだ」
「…まだそんな事を考えていたのか。そういえば、確かにあのケイという男はキラにそっくりだし、声も同じようにも聞こえるが…。
しかし、他人の空似だろう?」
「何でそういいきれるんだ、お前は!」

アスランのあまりにあっさりとした返事に、カガリは不満げに言い寄るが、アスランはふっと笑った後諭すように答えた。

「この旅に出る前、俺はキラとラクスに会ったよ、オーブでな。元気そうにしているようだし、そもそもプラントにはキラ達を恨んでいる人だって多くいるんだから、わざわざその中に飛び込もうとはしないさ。
それに、あの男はキラと違って体格がいいし、皮肉屋のようだしな。キラはもっと素直で純粋だよ」
「…そうだろうか…。私には、何か…ああもう!わからない!私は寝る!」
「疲れているだろうし、それがいいさ。おやすみ、カガリ」
「ああ、お休み!」

カガリは悩むのを止め、今は唯眠りに呆ける事にした。どちらにしろ、今ここで悩んでも仕方が無い。オーブに戻り、全てが分かるまで。

「ふぇ…くっしょい!!」
「ぎゃー!汚いですよ、ケイさん!」

と、噂されていたケイはというと、くしゃみをルナマリアに食らわせてそうになった。幸い、ルナマリアは驚異的な反射神経でそれを避けたが。
ケイはちり紙を取り出して鼻を拭き、そして捨てながら自信満々に言った。因みにここはMS格納庫前。ルナマリアはパイロットスーツを着ていた。
いつでも出撃が出来るよう、準備せよという命令が出ていたからだ。
391592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:51:50 ID:???
「ごめんごめんルナマリアさん。どうやら誰かがこのカッコ良くて眼鏡とバンダナとスパナが似合う僕の噂をしているようだ」
「うわーケイさん自意識過剰ー」

あまりに変な事を真顔で言うため、ルナマリアは苦笑しながら彼に突っ込みを入れる。それを待っていたのか、ケイも軽く笑って言った。

「ごめんごめん、スパナは余計だったかな?」
「いい加減にしなさい」

更なるケイのボケにルナマリアが苦笑したまま呆れて手の甲で彼の胸をぽんと叩いた。そして、二人の間に笑いが広がる。こういうコミュニケーションをケイが取れるようになったのも、
日ごろ夫婦漫才をラクスとしている所為と、人脈が増えた事にあるのだろう。

「さて、冗談はこれくらいにして…。ルナマリアさんのザク、ガナーじゃ使いづらくない?よかったらスラッシュでも使ってみない?」
「ルナでいいですよ。あたし射撃の成績、訓練学校じゃあトップクラスだったんですけどねぇ…正直、実戦だと違いますよね。でもガナーでいいと思いますよ、私は。好きですし。あれが相棒ってやつ?」
「う〜ん。そうか、じゃあ…もうちょっとオルトロスの射撃補正をしっかりさせて…かつもっと連射の聞くように…もうちょっと使いやすくなんないかな〜」
「ねえ、ケイさん」
「ん?」

と、不意にルナマリアは考えふけているケイに話しかけた。ケイは考えるのをやめてルナマリアのほうを向く。

「何?」
「いやね、あの時さ…。ケイさん、アスハ代表に優しい声掛けてて、何か、知合いみたいだったから」
「ああ、あれね」

やっぱ図々しかったか、と少し反省しつつケイは答える。

「別に、当然のこといったまでじゃない?」
「そうかなぁ…それに、何かすれ違い様になにか言いながら肩叩いてたし」
「(結構観察眼いいなぁこの子は)ああ、あれは流れって言うか何と言うか」
「…本当に、あの前大戦の英雄キラ・ヤマトじゃないんですか?」

ルナマリアの言葉にケイは肩をすくめる。もうミネルバに乗ってから何度目なんだろうか。髪型も変えたし、雰囲気も変えたというのに、全部カガリの所為だ。
そう考えつつ、ケイは横に首を振る。

「いやだなぁ。僕はキラ・ヤマトじゃないって。他人の空似、僕はケイ・クーロンさ。疑うようであれば、ヴェステンフルス隊の隊長、ハイネ・ヴェステンフルスに聞いてみるといいよ。ハイネさんだったら僕の両親まで知ってるから」

前半は真実、後半からははったりをかましてみる。が、ルナマリアは驚いたようにケイを見つめながら言った。

「ええ!?あのハイネ・ヴェステンフルスさんとお知り合いなんですか!?」
「(よし話がそれた!)うん、ほらこれ証拠品」

心の中で小さなガッツポーズをしながら、ケイは懐からあるものを取り出し、それをルナマリアに渡す。
と、それを見た瞬間、ルナマリアの表情がぱあっと明るさを増した。
392592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:54:12 ID:???
「わああ、本当だ!ハイネさんとケイさん、それにナタリーさんが写った写真かぁ!あのフェイスとしても、軍人音楽家としても有名なあのハイネさんとお知り合いなんて…ケイさん実はすごい?」

その明るい表情でルナマリアは写真を眺める。普段着の三人。しかも、表情豊かで、ラクスはハイネにいたずらをされている。こんな写真は知合い同士でなければ撮れないだろう。

「うん、実はグゥレイトゥな男だよ僕は。あ、よかったら食事でも行く?僕の口利きでハイネさんも誘えるよ?」
「わあー!本当ですか!?いやん、嬉しいわぁ!」
「(ついでにナンパ成功!やめてよね〜僕に掛かればこれくらい当然じゃない?)」
「まあ、それは私も一緒に行きたいですわね!」

と、ルナマリアを食事に誘えたことに心の中でガッツポーズを決めていた最中、恐怖とも言える一言がその場に聞こえてきた。
普段と変わらぬ一声。だが、それがケイにとって恐ろしく思えた。ケイはまるで油が切れた機械のような動きでその声の方向に振り向く。

「あ、あ…なたりーさん?」
「ケイさん、ルナさんとお食事に行くんですよね?では私も一緒に行きますわ!いいですわよね?」
「はい…構いませんが何か」
「お食事会、楽しみですわねルナさん!」
「(…バカピンク追加か…は、はは…ていうか天然かよ畜生!)」
「そうですね〜!そういえば、ナタリーさんもハイネさんの知合いなんですってね!」
「ええ、私のお師匠様みたいな人ですわ!尊敬している上司です」
「いいわね〜。私もその指導受けてみたいわ〜!あ、そうだメイリンとかも誘おうっと!いいですよね、ケイさん」
「いいよ、任せとけ〜(…まあ何はともあれいいか。これで二人ゲットかぁ。レイとかも誘うか。)」

どうやらケイにとってラクスは勘定には入っていないらしい。まあ、この二年間近くで生活を過ごしてきたのだから、お互い慣れてしまったというのはあるのだろうが。その割には友達宣言されて落ち込んでいたはずなのだが気にしない。
と、そんな所へシンとレイがパイロットスーツを着て現れた。まずはシンが、そしてその次にレイが。それに釣られて三人は沈黙する。
華やかな話をしていた三人とは対照的に、二人の雰囲気はどこかどんよりと暗い。レイは普段からそうだとして、シンのほうは先ほどのことを引きずっているのだろう。
時々レイのほうをチラッと見ては眼をそらしていた。
そんな彼の様子に気がついたか、レイはシンを背にしたまま、コンソールを操作しながら話しかけた。

「なんだ?」
「いや、別に」
「…気にするな、俺は気にしていない。お前の言った事も正しい」
「あ…」
「ん?ふっ…」

必死に誤魔化そうとしていたシンの心情を知ってか、レイは一言彼に投げかけてやった。と、その言葉がそこにいる男、ケイが自分に言った言葉だったのを思い出し、少し笑いをこぼした。
それに対してシンは、自分がふてくされているのをバカにされたのと勘違いし、レイに対し少し怒った表情を浮かべていった。

「な、何笑ってるんだよ!」
「あ、いや何でもない。少し思い出し笑いをしただけだ。それとも、笑って欲しかったか?」
「だ、誰がだよ!」

レイのからかいにシンは顔を真っ赤にして反論するが、レイはその様子がおかしかったのか、思わず笑ってしまった。
その光景がものめずらしいのか、終始見守っていたケイ達だったが、ついに噴出して、レイと同じように笑ってしまった。

「はははははは!」
「な、なんだよ!あんたらまで!」
「まあまあ、皆さん。あんまりシンさんをからかってはなりませんわよ。お茶でも飲んで落ち着きましょう!」
393592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:55:08 ID:???
と、そんな光景に見かねたか、苦笑しながらナタリーは全員分の紙コップを用意して、いつの間にか取り出した水筒の中身をそこに注ぎ、全員に渡す。
それは、少し赤色のした、仄かな香りがするお茶のようなものだった。恐らく紅茶だろう。

「ん…?」
「へぇ、ナタリーさんこういうことできるんだ。意外というか意外じゃないというか」
「ええ、まあ。何を隠そう、私はお茶入れの達人だったんですぅぅ!!ぎゃう!」
「やかましい、バカピンク!」

無駄にテンションの高いナタリーの背中をケイがツッコミ代わりに蹴飛ばす。それでもラクスは自分の分と水筒を上に向けてこぼさないようにしているところを見ると
もはやコンビ芸である。それを呆れながらルナマリアは見ていた。

「本当、仲いいのねお二人さん」
「まあ、二年間もこんなボケされたら突っ込みもそりゃ上手くなるさ」
「ボケたつもりは無いですけれど…」
「お前は存在自体がボケみたいなものだよ」
「そんな酷い!」
「あー…もう。まあいいや、皆で飲んでみようぜ」
「そうね」

シンは誤魔化され何か釈然としないままケイとラクスの夫婦漫才?を終わらせ、一同はコップの紅茶を口に含んだ。その瞬間、ラクスを除いた全員の動きが止まる。
確かに、彼女が自分で言うくらいなので、紅茶自体の風味などは素晴らしいし、美味しいはず、美味しいはずなのだが。

「(あ、甘い、甘すぎる!!こいつは…ただの紅茶じゃない!砂糖茶)」
「いい味だ」
「な、何ぃぃ!?」

そんな中で意外すぎる反応を見せたレイに対し、ラクス以外からの総突っ込みが彼に集まる。が、それを気にせず、レイは二口目も行く。
その表情に満足したのか、ラクスがレイに加勢する。

「美味しいですよねぇ?」
「うむ。この風味、この甘み。洗練されたものだ…。もう一杯くれ」
「はいはいどうぞ」

レイに催促されてラクスは彼のコップに紅茶を注いだ。そして、レイとラクスは同時に口に運ぶ。何やらいい関係のようなその光景を見たケイは少し何かもやもやした感情が浮かび上がって、わけもわからずイラついた。
そんな彼の心情を読み取ってか、レイはケイを見た後、ふっと少しばかり嘲笑した。

「(あ、あいつぅぅ!)」
「(ふっ…)」

別にレイ自体ラクスに惚れた訳でもなく、彼自身別に恋愛に興味など無い。本当に紅茶の味をほめただけなのだが、ケイの表情を伺うと、どうやらこのいい雰囲気に嫉妬しているようだ。
だからレイは敢えてこの流れに乗り、ケイを少し小馬鹿にしてみたかった。これが、少しばかりの彼に対する嫌がらせ、というには少し幼稚だが。まあ、こういうのもいいのだろう。

394592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:57:02 ID:???
そんな事は露知らず、ケイはレイを睨み続ける。と、そんな所へもう一人、同じミネルバ乗員のMSパイロット、ゲイルが現れた。
彼もまた手続きを終えたところで、ケイ達に気がつく。その時、ケイが睨んだままゲイルを見てしまったため、ゲイルはひるみながら眼をそらした。
ケイは少しその光景を不審に思いつつも、表情を緩めて挨拶をする。

「やあゲイル」
「や、やあケイさん…それに皆。今日も良い天気だね…」
「良い天気も何も、宇宙船の中じゃわからないだろ?」

ゲイルの発言にシンが空かさず突っ込みを入れる。確かにそうだ。ゲイルとてそんな事くらいわかっているだろう。
ゲイルは苦笑いをしながら答えた。

「はは…そうだね。じゃ、じゃあ俺、ゲイツの調整あるから…」

そう答えると、ゲイルはそそくさとその場を後にした。まるで集団で行動するのを避けるがの如く。ケイとラクスはきょとんとしてしまったが、
シン、レイ、ルナマリアはまたか、という表情を浮かべて、コップを置き、さっさと作業へと戻ろうとする。
ラクスは不思議に思い、ルナマリアに問う。

「ルナさん、ゲイルさんどうしたんですか?」
「え?ああ、あれは元々。ゲイルってば、プラントのお金持ちの息子らしくて、それで士官学校入れたらしいんだけど、気が弱いのよ。だから、本当は通信士とかになりたかったらしいんだけど、
何か知んないけどMS操縦適正があってさ、選ばれちゃったのよねぇ。気が弱いから断れないしさ」
「ふぅん…そうなんですか。大変なのですね」

ラクスはゲイルの背中を見る。その背中は何処か、寂し気な空気を漂わせていた。
395592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:58:19 ID:???
さて、そんな事をしている間。アスラン・ザラは就寝したカガリを部屋に残し、一人ブリッジへと向かう。
ミネルバも他のザフト勢と共にユニウスセブン解体作業を行うことはアナウンスで聞いていた。アスランもその事に関してデュランダルに話がしたくてブリッジに向かっていた。
彼は、謎の強奪部隊との戦闘の時、元軍人の性かミネルバの慣れていない動きにもどかしさを覚え、そしてまた、自分も無意識のうちに意見を言いかけていた。
その時から、自分でも何か出来ることがあるのではないか、裏切り者の自分でも何かできることが。そう思っていた。
ああ、何と自分は勝手な人間か。父を裏切り、そして今、カガリを守るという職務を放棄した。だが、ここではカガリを襲う人間はいないだろう。
あのシン・アスカという青年も、MSパイロットだから今頃出撃準備を行っているところだろうし、これから出撃するのだろう。
そう、自分に言い聞かせながらアスランはブリッジにたどり着き、そして中に入った。すでに遮蔽されていたそこには、タリアとデュランダル、そしてミネルバクルーたちが待機していた。

「おや…姫はどうしたのかね?アスラン君、いやアレックス君」
「今は部屋でゆっくり寝ていらっしゃいます…。これからミネルバは隕石の粉砕作業に向かうのですか?」
「その通りよ。それがどうかしたの?」
「…無理を承知でお願い致します。私にもMSをお貸し下さい」

突然のアスランの言葉に不審に思い、代わりに答えたタリアに、アスランは率直な願いをぶつけた。タリアは呆れたようにアスランを見ながら言った。

「確かに無理な話ね。今は他国の民間人である貴方に、そんな許可が出せると思って?カナーバ前議長のせっかくの計らいを無駄にでもしたいの?」
「解っています。でも、この状況をただ見ていることなど出来ません。使える機体があるならどうか」
「気持ちはわかるけど…」
「いいだろう、議長権限の特例として許可しよう」

と、アスランの嘆願に渋るタリアに対してデュランダルはすんなりと許可を与えた。そんな彼にタリアは驚き、彼を見る。

「議長!」
「戦闘ではないんだ、艦長。出せる機体は一機でも多いほうがいいだろう。それに、彼がスペシャリストなのは君も知っての通りだろう?」
「…そこまで言われるのであれば仕方ありません。アレックス君、ザク・ウォーリアを使いなさい。パイロットスーツはロッカールームにある予備のものを使う事、わかった?」
「ありがとうございます」

アスランはザフト形式の敬礼をし、その場を後にした。そしてロッカールームでパイロットスーツに着替え、格納庫へと向かう。そこで整備長マッド・エイブスに呼び止められた。
マッドは格納されている緑色のMS、ザク・ウォーリアを指差してアスランに説明を始める。

「アレックス・ディノだな?ブリッジから報告は受けている。お前さんに搭乗してもらう機体は、お前さんがここへ来た時に乗ってきた時使ったザク・ウォーリアだ。修理は済ませてある。お前さんなら使いこなせるだろうが…
本当に出撃するのか?」
「ええ、わざわざ用意してもらってすいません。ありがたく使わせてもらいます」
「いや、お前さんが覚悟を出来ているんならいいんだが…あんまり、無茶はするなよ。じゃないと、あの姫さんが泣いてしまうかもしれないからな…」
「はい、わかってます。…では」
396592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 22:59:38 ID:???
アスランはマッドに一礼した後、当てられたザクの元へと飛んでいく。マッドはその背中を見送った後、忙しなく整備士達に指示を送っていった。
さて、ザクの中に入ったアスランはOSを起動させ、まずは自分にあったものに変えていく。Gシリーズを奪った時も難なく出来たので、これくらいはどうという事はない。
と、丁度終わらしたと同時に通信が入ってきた。どうやらあの赤毛の少女ルナマリアのようだ。

『へぇ…貴方も出るんですね。ヨウランから聞きましたよ』
「ああ…宜しく頼むよ」
『こちらこそ、宜しく御願いします。まさか、ヤキンの英雄と一緒に任務が出来るなんて思いませんでしたよ』
「…そんな大それた奴じゃないさ、俺は」
『もっと自信持ってくださいよ。じゃないと、折角の実力も影になくなっちゃいますから…あ、と発進二分前ですね』

発進まで後二分。その場にいる全員に緊張が走る。整備士達も忙しなく、最終チェックに移行し、各々担当のMSの各部をチェックする。
彼らの役目はMSを万全の状態にし、パイロットを生還させる事。その実務は地味ながらも重大さは最も高いといえる。
パイロットを殺すも生かすも、彼ら次第なのだ。

「2番班ブレイズザクファントムチェック完了。…ヴィーノ、そっちは!?」
「8番ジンOKです、ケイさん!」
「10番ガナーザクウォーリア完了」
「6番インパルス…問題ありません」
「4番同じくザク問題なし」
「よぉし、発進準備整いました!!」
「遅い!10秒遅れてる!この遅れが命取りと思えよ!!」

整備士チームの報告が終わった瞬間、マッドの怒号が響き、全員が身を強張らせる。しかし、士官学校時代からの上官の言葉に逆らえる人がいるわけ無く、
すいません、という整備士一同の言葉がマッドに届く。

「あ〜あ。またしごかれてますわね…ケイさん達」
『まあ、そのお陰で俺達は安心して外に出られる、て訳だからな。あいつらにも感謝しなきゃ」
「そうですわねぇ」
『発進まで一分前』

そんな様子を見ながら、シンと他愛の無い会話をしているラクスの元に、いやMSパイロット全員の下にブリッジのメイリンから通信が入る。
それを聞いたラクスは一度大きく息を吸い、そして吐く。その時、次の通信が来た。

『発進停止。状況変化。ユニウス7にてジュール隊がアンノウンと交戦中』
「…!」

ラクス、いや全員が息を呑んだ。本当は粉砕作業だけのはずが、何故戦闘に?疑問が解決されないまま続けられる。

『各機対MS戦闘用装備に換装を御願いします』
「どういうことだ!?」
397592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:01:49 ID:???
事態が飲み込めないアスランはメイリンに対して怒鳴りかける。その疑問はもっともだ。あまりの剣幕に少し驚きながらも、メイリンは応対した。

『分かりません。しかし本艦の任務はジュール隊の支援であることに変わりなし。換装終了次第各機発進願います』
「くっ…」
『…俺達は与えられた仕事をやるだけさ。あんたもそのつもりなんだろ?アレックスさん』
「…ああ、そうだ」
『危険ですよ。やめたほうがいいんじゃ…』
「馬鹿にするな、大丈夫だ。…いやすまない、本当に大丈夫だ」

少し小バカにするようなシンの口調に少し苛立ち、心配したルナマリアに対し少し乱暴に答えてしまったアスランはルナマリアに謝罪した。
ルナマリアは少し苦笑しつつも通信をきった。メイリンもそれを確認し、まずはインパルスの発進指示を送った。

『中央カタパルトオンライン。発進区画、減圧シークエンスを開始します。非常要員は待機して下さい。コアスプレイダー全システムオンライン。発進シークエンスを開始します』

コアスプレンダーがカタパルトへ運ばれる中、ラクスはノーマルスーツの中で何度も呼吸を何度も何度もする。
極度の緊張が彼を襲う。と、その時ジンのハッチから何かが物音が聞こえてきた。モニターには外でケイがラクスを呼ぶ仕草をしている。
ラクスはハッチを開き彼を招く。

『緊張してるのか?』
「ええ、まあ」
『毎度の事、大変だね、君も。ほら』
「あ…これ」

ケイは手に持っていた真空パックをラクスに投げつける。ラクスは慌ててそれを受け取り、それを見つめる。すると、それは先ほど休憩室で見ていた宝くじだった。
ラクスは訳が分からず、それとケイを視線を行ったり来たりさせていた。そんな彼女の様子に苦笑しながら、ケイは自分の心情を語る。

『それ、明日発表なんだ。まだわかんないんだから、持って帰って来てよ、生きてさ。あと、ハロも君が帰ってくるまでに直しとく』
「ケイさん…。ちょっとロマンに欠けるような…」
『煩いよ!…今回はライフルとシールド装備だ。マシンガンも付けといた。ライフルは少し改良を加えておいて、少しは連射を早くしたのと反動を少なくした。まあその分威力は低いからね。装填数は2発』
「了解ですわ。がんばってきます」
『よし、頑張って来い。ジン出るよ!!』
「…ありがとう、ケイさん」


「そうですわねぇ〜。あっと…兎に角早く行きませんと」
『ああ』
398592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:03:40 ID:???
チラシの裏
申し訳ない。前の最後の二行は無視してください。
↓ここからまた本文

ラクスの緊張がほぐれたのを確認したケイは微笑みながら足場を蹴ってジンから離れ、発進シーケンスを取らせる。
ラクスもケイに対し感謝の言葉を眼を瞑りながらつぶやきつつ、ハッチを閉め、ゆっくりとカタパルトへと向かう。

「星に抱かれて〜…僕は何処へ行くのだろう〜…?ああ、きっとあの先は…ユートピアが待っているんだ〜…う〜ん、何かいまいち」

即興で作曲した曲に不満を抱きつつ、苦笑しながらカタパルトにジンをセットする。どうやら、緊張は完全に解けたようだ。
ラクスは一度深呼吸をし、二度右手を握ったり広げたりし、最後に操縦桿を強く握り締める。そして。

『ジン発進どうぞ!』
「ナタリー・フェアレディ、ジン参ります!」

カタパルトから射出されたジン。それに続いて、レイのザクファントムとルナマリアのガナーザク、そしてゲイルのゲイツRが続く。
それに少し遅れてアスランのザクが出てきた。インパルスは合体のため一番初めに出終え、そして少し先にいた。
その光景の一部始終を眺めていたラクスは、まずはシンが普段どおりの様子に安心しつつ、インパルスに見とれていた。
ラクスがはじめて『ガンダム』と呼ばれるものを見たのはアークエンジェルに保護された時だ。彼女がまだ、ラクスとして生きていたときに。
ザフトに恐れられ、連合の希望となったGAT−X105ストライク、本当のキラ・ヤマト愛機だった。彼女はあれに救われ、そしてあれによってプラントに戻された。
ラクスは、あれを見たときに何か、恐怖よりも憧れの情のほうが大きかった。その時、彼女はストライクがガンダムという愛称を付けられていたのを覚えている。
そして、あの顔を持つものは、何処から広まったのか、ガンダムと呼ばれるようになった。
だから何時かあんな機体に乗れたら。そんな思いを胸にしているのも確かだ。

「何時見ても、カッコイイですわね…私も、あの機体に乗れたら…」
『じゃ、もっと功績あげなきゃな』
「そうですわねぇ〜。あっと…兎に角早く行きませんと」
『ああ』
「うおおおお!!」
「うああ!!」
「ふん!」
「ぐああ!!」

一方ユニウスセブンでは先の大戦で白服に昇格していたイザーク率いるジュール隊とテロリスト集団との壮絶な戦いが始まっていた。
サトーとその部下達はまずメテオブレイカーの作業をしているゲイツ部隊を重点に撃墜しつつ、それから向かってくる者達を叩いていた。
ジュール隊もそれなりの実力を持っているはずなのに、サトー隊はそれ以上の修羅場を潜り抜けてきた猛者たちだ。忽ちゲイツ隊の数は減っていく。
と、その場に指揮を取っていたディアッカのガナーザクが現れた。彼はイザークとは対照的に先の大戦での裏切りを問われ、緑服へと降格されていた。
しかし、イザークからの信頼は厚く、彼の右腕として今も働いていた。

「何なんだ、こいつらは…。旧式のジンの癖に…なんでこんな強いんだよ…!」

ディアッカはオルトロスを起動させ、背中を向けていたサトーのジンを狙おうとする。テロリスト相手では隊長機を落とせば終わるはずだ。しかし、それを読んでいたか、サトーは背面越しに、振り向かないでビームライフルを乱射する。
まるで背中に眼があるかのように、それは精確にディアッカのザクに向かっていく。ディアッカは舌打ちをしながらザクを後退させ、それを避ける。

「ヒヨっこどもが…。情けない、今のザフトとはこれほど堕落しているものか」
『間借りなりにも平和な時代が続いていました。それでは戦う必要もないでしょう。だから弱いのでしょう』
「…そうだな。だが、それが俺達には好都合になったな」
『…ま、貴方に勝てる者等いないでしょうが』
「…過大評価しすぎだ。俺はあのザクを相手にしてくるぞ。お前はこのまま押し込め」
『了解です。気をつけてください』

部下達は他のゲイツR隊の相手を始め、サトーはジン・ハイマニューバ2型に装備されていたMS用の大刀を抜く。その姿、まるで大昔の日本の侍のようだ。
サトーは精神統一をし、そして静かに、しかし急速にディアッカのザクに接近する。
ディアッカはしめたと、慌てず正面から向かってくるジンにオルトロスの照準を合わせるが、しかしその直後背筋から何かゾクリとおぞましい寒気が走った。
殺される。ディアッカはそう思い、瞬時にオルトロスを引っ込め、ザクの姿勢制御用ブースターで一旦下がる。ザクがいた場所を、ジンの刀が切り払われ、もしオルトロスを発射しようとしたら死んでいただろう。
もしディアッカが先の大戦で経験を積んでいなければ。

「(死ぬ死ぬぜってぇ俺死ぬやべやべやべまじやべ…いや落ち着け俺)」
「ほう…やはりやる。量産機とはいえ、さすが新型。だが我等の想い、やらせはせん」

錯乱しそうになっているディアッカに対し、サトーは感心した表情でほくそ笑む。彼もまた一角の戦士であり、闘争本能に火がついたのだろう。
まるでサトーが構えるが如く、ジンは構えを取る。それに反応し、ディアッカは再び背筋に寒気を感じながらも、ユニウスセブンの大地を踏む。そして、全部隊に指示を送った。

「ええぃ、一旦下がれ!下がるんだよ!」
『ディアッカ!ゲイツのライフルは射出した!俺もすぐスラッシュで出る!それまでメテオブレイカーを守れ、いいな!』
「イザーク!…了解!おら!」

ディアッカはオルトロスを起動させ、なぎ払うようにビームを発射し、ユニウスセブンの建造物を破壊して煙幕とし、まずはジンと距離をとる。
サトーは煙幕の中をまずは付きぬけ、ザクを探す。そして、オルトロスを構えているところを見つけ、サトーは突撃しようとするが、上からのビームに阻まれ、一旦後退する。
先に下がったゲイツ隊による援護射撃だ。サトーは舌打ちをしつつ、ザクのほうを見ながら下がり、そしてその場から去っていった。その代わりに他のジン隊が現れ、彼らに襲い掛かる。
サトーはある程度下がった時、ふと上方向から見えた光に気がつき、ジンを動かし、そしてその方向を見上げてみる。すると、そこには何やら見覚えのないMS同士が戦っている。
いや、パーソナルカラーであることを除けば、ザクファントムとザク・ウォーリア、そしてジンは見たことがあるのだが。

「…別働隊か?まあ潰しあってくれるなら結構。今は補給を受けよう」
サトーはそのままテロリスト達が臨時的に補給場として使っている場所へと潜り込み、そこで酸素などの補給物資を貰う。
さて、その一方でサトーが目撃したとおり、ミネルバのインパルスたちは何処からともなく現れた強奪隊に襲われ、それとの交戦を余儀なくされていた。

「こいつら…また!」
「こんのぉ!泥棒がぁ!!」

シンとルナマリアは果敢にもカオス、アビス、ガイアに向かっていく。それを見たアスランが慌てて彼らを制止しようと無線を入れる。

「やめろ、シン、ルナマリア!今俺達のやるべき事はそいつらの相手じゃない!!」
『だけど、こいつらが撃ってくるなら、迎え撃つしかないだろ!』
『シンの言うとおりだわ!!それに、こいつら作業しているMSも無差別に攻撃してるし、援護にもなります!』

だが彼らは聞かない。それに、彼らの言葉は確かに正論だ。ここに来る途中、ゲイツが彼らの手によって落とされている光景を見てしまったのだから。
彼らを抑える事が作業効率を上げるという事実は誰から見ても捻じ曲げられないことだ。それはアスランにもわかっていた。だから反論できなかった。
そんな中、ラクスがアスランに通信を入れる。

『アスランさん、聞こえますか?ナタリーです』
「…?君はあの時の。どうしたんだ?」
『彼らのいう事は正しいです。ですので、私も彼らの援護に迎いますわ。アスランさんはレイさんとゲイルさんを連れて作業を!』
「…くっ…仕方がない…任せた」

アスランは苦汁を飲んだ表情を浮かべながらも、手空きになってしまっていたメテオブレイカーのほうへと飛んでいく。
ゲイルも、戸惑いつつその後を追いかけていく。そんな最中で、ふとアスランはある疑問が解けた。あの時、あのナタリーという女性を間近で見たとき覚えた感覚。
ああ、そうか。彼女もまたラクスに似ているんだ。あの男、ケイがキラに似ているように。
だが、それだけだ。彼女に似ている人なんて世界中探せば一人くらいいて、それが今偶然ここで出会っただけだろうし、それにラクスにはあんな傷はないはずだ。
アスランはそれ以上気にかけず、そのまま進んでいった。

『ナタリー』
「はい何でしょうか?」
『シン達を頼む』
「はい、任されました!」

と、レイは一声をラクスにかけてからアスランの後を追う。それに敬礼しながら答えたラクスもシン達の後追う。すでに戦闘は始まっており、あのデブリ帯の戦闘のときと同じ組み合わせだった。
だが、違うのはシンがアビスの相手をしている事か。ラクスはここで、ある事を思いつく。こんな事をして、作業を遅らせてはいけない。
早く終わらせるためには、彼らにも協力してもらわなければいけない。理想論ではあるが、ラクスは賭けに出る。危険な賭けだが、最低限でも時間稼ぎにはなるだろう。

「シンさん!」
『あ!?何だよ!?』
「アビスは私にお任せください!貴方はカオスのほうを!」
『…OK、わかった!』

シンは一度カオスに牽制の攻撃をして注意を向かせ、一旦ラクスと距離をとる。カオスもその誘いに乗り、彼のインパルスを追っていった。
401592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:17:47 ID:???
一方アビスはラクスのジンを見るや否やビームランスを展開して真っ直ぐ突撃し、大きく切りかかった。
ラクスはジンを後退させながら大きくそれを避け、そしてアビスに対し国際救難チャンネルを開く。
アウルはそれに気がつくが、また挑発して捕らえようとするのだろうと判断し、その通信を無視して攻撃をし続ける。
それでもラクスは諦めず、アビスに対し攻撃は加えず、あくまでも逃げ続ける。アビスはそれを追って、カオス、ガイアから離れてしまった。
だが関係ない。ここであのジンをしとめる。何かとしつこく、何かとイラつくこのMSを今日こそ。

「くっそー逃げ足の速いやつめ!!こいつが動いたのもお前らのせいなんだなぁ!?」

興奮しきった状態で、前のめりになりながらアウルは操縦桿を押し出そうとしたが、その時の拍子でラクスからの通信を受けてしまった。

『あ、やっと通じましたわ。こちらザフトのナタリー・フェアレディ!アビスのパイロットに告げます。今すぐ戦闘をやめなさぁい!というか御願いですからやめてください!
今ザフトはこのユニウスセブンの粉砕作業を行っています!その邪魔をしないでくださいませ!』
「あん、何言ってるんだあんたは!!どう考えたってあんたらが落とそうとしてるんだろうが!」

売り言葉に買い言葉…ではなく、一方的にアウルが疑ってかかっているので、ラクスの嘆願は叶わない。それもそうだ。周りを見ればラクスと同じ機体を乗っているテロリストが大暴れしているのだから、
疑われても仕様がないのだろう。しかし、ラクスは諦めなかった。この男を説得してみせる。だから戦わない。攻撃を加えない。

「いいですか、聞きなさい!!そのMSはザフトとは関係ありません!私達が敵に…いや見えるでしょうけど!敵じゃないんです!信じてください」
「我らの思い、やら」
「ああもう!邪魔しないで!!」

ラクスとアビスの間に、テロリストの一員が襲い掛かってきたので、ラクスは苛立ってライフルをジン・ハイマニューバ2型向けて発射した。
反応し切れなかったハイマニューバは頭に直撃を喰らい、そのまま来た方向へと吹き飛んでいった。
アウルから見れば、仲間割れしたとしか思えず、目を命一杯開いて驚いていた。そんな中ラクスからの通信から怒号が聞こえてくる。

「なっ!?」
『どの人この人も皆々これを落とそうとしちゃって!もうちょっと状況というものを見て判断しなさい!!貴方だって男の子でしょうが!』
「な、男かどうかは関係ねぇだろうが!大体、同じザフト同士で何戦っちゃってるわけ!?ああそうか、そうやって僕達を騙そうとしているんだな!?」
『だから違うと言っているでしょうが!…ってきゃ!?』

再び口喧嘩が始まりそうになった時、ユニウスセブンが揺れた。ラクスは突然の事に驚いて姿勢を制御できず、ジンは尻餅をつく。アビスも倒れそうになるが、ビームランスのお陰で倒れずにすんだ。

「な、なんだぁ!?」
『割れた…。成功したんですわ!』

突然の自体に混乱するアウルに対し、ラクスはガッツポーズをして喜んだ。そう、彼女の考えている通り、破砕作業が成功し、しかもそれがポイントを打ち抜いていたために一発で割れてくれた。
この光景はシン達は勿論、首謀者サトーにも目撃されていて、サトーは歯を食いしばって悔しがっていた。その一方で、ディアッカたちは歓声を上げていた。
アウルは何が何だかとわけもわからず、首を横に大きく振った。
402592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:19:29 ID:???
『何なんだよ一体、こりゃ!割れるなんてさぁ!?説明しろよ、あんた!!』
「だからさっきも言ったとおり、私達ザフトはこのユニウスセブンが動き出したから、地球に落とさないようにするためにこうやって破砕作業をしているのです!!
あの黒いジン隊は私達は関係ありません!彼らは破砕作業の邪魔をしているのですの!わかったら貴方も手伝いなさい!」
『手伝えつったって…』

さらには敵からの説得にアウルはどうしていいのか分からず、ただ混乱しているだけだった。そんな時、彼の元に通信が入る。どうやら味方のスティングからのようだ。
まさに天の助けとアウルはその通信回路を開く。スティングの顔が画面に小さく表示される。

『アウル!信号弾だ!ネオが帰還しろってさ!』
「何だって!?…くそっ、何にもしてねぇっていうのによ!納得いかねぇ!わけわからねぇ奴もいるしさ!」
『お前のほうがわけわからん!馬鹿なこと言ってないで退くぞ!』
「畜生ぉぉ…今日はこのくらいで 退いてやらぁ!!」
『あ、お待ちな…また!?』

アウルはラクスに対し捨て台詞を吐くと、ラクスから逃げるようにその場から去っていこうとした。ラクスもジンのメインスラスターを吹かしてアビスを捕まえようとしたが、
それを妨害するかのように乱入してきたテロリストのハイマニューバ2型が攻撃を加えてきたので、ラクスは歯を食いしばりながら胸部ブースターでブレーキさせ、ジンを後退させる。
テロリストの攻撃が激化し始めた。もはや背水の陣といったところか。逃げようとしていたアウルも、その途中で目の前に立ちふさがられ、交戦を余儀なくされる。

「くそ…くそぉ、こいつらぁぁ!!」

アウルは叫び散らしながらそのテロリスト達にバラエーナ改を撃ち込む。だがそれは軽々と避けられ、その内一体に体当たりを喰らい、アビスはユニウスセブンに落ちていく。
地面に叩きつけられ、アウルはあえぎ声を出しながら、上のほうを見る。すると、彼の視界に、なにやら見たことのない機械があった。それを動かしているゲイツRがいたが、何処からかビームが降りてきてその機体を貫き、無残に爆散してしまった。
その機械、メテオブレイカーは無人となり、無防備となっていた。と、そこへ、一機のハイマニューバが突撃してきた。破壊しようとして、ビームライフルを構えている。
アウルはあの生意気な少女の事を思い出していた。

『だからさっきも言ったとおり、私達ザフトはこのユニウスセブンが動き出したから、地球に落とさないようにするためにこうやって破砕作業をしているのです!!
あの黒いジン隊は私達は関係ありません!彼らは破砕作業の邪魔をしているのですの!わかったら貴方も手伝いなさい!』
「(…このままじゃ僕の、僕の…くっそ!考えんじゃねぇ!それを考えたら、わけわからなくなっちまうんだ!僕は…僕は…くっそぉぉぉ!!)」

アウルは歯を食いしばり、操縦桿を全力に押し込み、アビスをメテオブレイカーの前へと踊りださせる。そして、アビス自身を盾にし、メテオブレイカーを身をもって守る。
幸い肩のシールドに当たったため、アウル自身には震動だけが被害となり、機体自体にも特にダメージを受けていなかった。
アウルはお返しとばかりに連装砲を撃ち、高速で打ち出された弾はハイマニューバの腕と胴体を貫き、機体は爆散する。
その光景を見て、アウルは冷や汗をかきながらもにやけていた。だが、その背後から別のハイマニューバが彼ごとメテオブレイカーを狙っていた。それにアウルが気がついたときにはもうすでに遅い。
ハイマニューバはそのライフルをアビスの首のフレームを狙っている。やられる、そう考えた瞬間、ハイマニューバが複数の弾に貫かれ地面に墜落した。
何事かと、辺りを見回した時、アウルはぎょっとする。ピンク色の羽を持つジンがそこに立っていた。
403592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:23:00 ID:???
「あ、あんた…生きてやがったのか…」
『…いいですから、早くそちら側を押さえていてくださいまし。私が起動させますから。…え〜とマニュアルマニュアル…』
「使い方わかんねぇのかよ!?…ったくしかたねぇなぁ!早くしろよ!」

アウルは悪態をはきながらも、アビスでメテオブレイカーを抑える。もたもたしながらも、ラクスの作業は進み、そしてメテオブレイカーが作動してドリルが地中に入り込み、
そしてラクスとアウルの間に亀裂が生まれる。いや、心ではなく、地面の事だ。
ゆっくりと、しかし確実に二人の距離が離れていく。完全に離れる前に、ラクスはアウルに通信を入れた。今度はアウルも素直につなげる。

「…ありがとう、手伝ってくださって」
『あん?…敵に礼なんて言うなよ、ピンク女。僕はただ、こいつをあそこへ落としたくなかっただけだよ。…僕、行くぜ?』
「…今回はお互いに、見なかったことにしましょう。…本当にありがとうございました」

ラクスはもう一度、微笑み返して礼を言うと、その場から飛び去っていった。敵同士とはいえ、通じ合えた。正直アーモリーワンでの行いは許せないが、今はそれに拘っている時ではなかったから、
最終的には協力もしてくれたし、軍律違反かもしれないけど、彼をとっちめるのはまた次の機会。ラクスは、とりあえずこの場は満足して、急いで次の現場へと向かっていった。
そんな彼女のジンが飛び去っていくのを見ていたアウルは、スティングの怒号が通信から聞こえてきたので気を取り直し、ボギーワンへと戻っていった。


その頃のシン達…いや、損傷を受け、レイやルナマリアは高度の関係もあり、ミネルバに帰還していたが、ゲイルとシン、そしてアスランは最後に残ったメテオブレイカーの設置を急いでいた。
本当ならば、シンはゲイルとアスランを連れて、さっさとミネルバに戻りたかったが、アスランが最後のこれだけでもと言ったため、その付き合いをしていた。

「(…限界高度まで二分か…他の皆も撤退を始めてる…俺達も戻んなきゃ…あっと帰還命令か…)おい、帰還しようぜ。もう限界だよ」
『ああ、君達は戻れ。俺はこれだけでもやる。あとは一人で大丈夫だからな』
「一緒に吹っ飛ばされますよ?いいんですか?」
『それに、限界高度ギリギリですよ!?ザクじゃ危険ですよ!』

それでも、というアスランの言葉にシンは何処か冷めたように、ゲイルはあせったように言った。
シンにとって、オーブの人間が何故ここまでやろうとしているのかが理解できなかった。確かにこの場所で割れば被害は少なくなるだろう。
オーブの人間、それも幹部の人間なんて、皆理念理念と口うるさくて、そのくせ無責任な者なんだとシンは考えていた。だが、目の前にいるこの男はどうだろうか?
自分の命の危険など顧みず、ただ被害を少なくしようと作業を続けている。ただその行為に二心はなく、ただ被害を小さくするために。
シンはため息を吐きつつ、ゲイルのゲイツRをどかし、代わりにメテオブレイカーを押さえる。

「ゲイル、お前の機体じゃ危険だ。すぐに戻れ。後はこの人と俺がやるよ」
『…わかったよ。ごめん、ありがとう』
「何で謝ってるんだよ。早く行けよ」

ゲイルの細々とした声にすこし苛立ちながらも、早く帰還するよう催促し、ゲイルはミネルバのほうへと戻っていった。
その背中を見送った後、シンはアスランのザクのほうを見ながらはなしかける。

「あんたは何で…なんであんたみたいな人がオーブにいるんだよ…」
『ん…?ああ…オーブとか関係ないさ。今は…』
404592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:24:55 ID:???
アスランはそんなシンの言葉に対し、ふっと笑いながら、作業を続ける。と、その時だった。突然一閃の光がメテオブレイカーの足を貫いた。
固定を失ったメテオブレイカーは傾き、このままではユニウスセブンを割るどころか突き刺さるかも怪しい。
シンとアスランはその光が来た方向を急いで見る。すると、そこにはテロリストの残存勢力がシン達のほうへ向かっていた。

「まだ残っていたのか。しかも二機…か。はは、最後の一発も終わってしまったか」
『…では俺のライフルをお使いください。先ほどゲイツからぶん奪った奴です』
「おう、すまん使わせてもらう。お前はあのザクをやれ。俺はあの…新型をやりつつ、ブレイカーを破壊する」
『了解です』

二機のジンは二手に分かれ、サトーの方はインパルス、もう一方はアスランのザクに襲い掛かった。一方シン達も体勢を立て直し、反撃に出ようとするが、メテオブレイカーも立て直さなければいけない。
そこでシンはアスランの方へ向かおうとしたジンに対しビームライフルを乱射し牽制、近づけさせない。そして、続けざまにCIWSによる牽制でサトーのジンの勢いを殺す。サトーはメインカメラを狙った攻撃をシールドで受け止め、
シールドによって視界が利かなくなったので一旦下がりつつビームライフルを撃つ。シンはすぐさま対ビームコーティングが施されたシールドでそれを受け止め、メテオブレイカーを守る。メテオブレイカーは何とか無事で、アスランが急いで作業を再開した。
限界高度まであとわずか。予断は許されない。今度はサトーに対しライフルを撃ち、破壊を狙う。が、サトーは超人ともいえる速さで反応、操縦し、ジンは右足を軸に半回転してビームを避け、そのまま抜刀してインパルスに近づく。

「くっ…このぉ!!」

シンもインパルスのビームサーベルを抜き、サトーに切りかかる。機動性、突撃力ならインパルスが遥かに上だ。それはその場にいる全員がわかっている。
サトーはその構え、その動きからどう切り込むかを判断する。そして、刀を素早くインパルスの首へと当てる。そして、VPS装甲の聞いていないフレーム部分を切り落とそうとする。
そのサトーの攻撃にシンは驚異的な速度で反応し、すぐインパルスを横に倒すように避けた。首があった場所にジンの刀が僅かに通過した。
サトーは避けられたことに驚きつつも、すぐにインパルスから距離をとる。インパルスは振り払うようにサーベルを振り回した。が、その時大きな隙が生まれ、重艦刀を抜いた別のジンがインパルスに襲い掛かる。

「隙ありゃぁぁ!!」
「はっ!?くっ…」
「シン!!」

やられる、とシンは考えた。アスランもザクで援護しようとするが、間に合いそうにない。重艦刀が、インパルスに迫る。その時、突然ジンの体を何かが通過し、そして爆発した。

「はっ!?」
「!?」
「何だ!?…!ジン、だとぉ!?」

全員が振り向いたその場所に、桃色の羽を持つジン、ラクスのジンがこちらに来ていた。ラクスはすぐライフルを肩にかけ、重艦刀を抜き、サトーのジンに突撃する。サトーはその剣を受け止め、受け流し、ラクスのジンを殴りつける。

405592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:26:37 ID:???
「きゃあ!!…くっ!」

ジンはそのままメテオブレイカーの方へと吹き飛ばされたが、それをインパルスが受け止めて、シンはラクスに通信を入れる。

『ナタリー!何でまだ避難してないんだよ!?』
「…頼まれたんです、シンさんたちを頼むって。シンさん達を置いて、戻れませんわ!!」
『あんた…くぅ、このバカピンク!!なんて命知らずなんだよ、あんたは!!』
「バカピンク上等ですわ!ミセス・バカピンク!私は戦います!」
『それを言うならミス・バカピンクだろうが!!この、バカアホピンクがぁぁぁ!!』
「細かい事は気にしないで共に!行きますわよ!」

ラクスのジンとシンのインパルスが同時にサトーのハイマニューバに突っ込んでいく。サトーは目を見開きながら歯を食いしばり、まずは先ほど撃墜された部下のハイマニューバの重艦刀を自身のMSに持たせる。
ライフルを捨て、完全に接近戦スタイルに変えた。

「…借りるぞ!お前の意志、無駄にはせん!!うおおお!!」
406592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:28:13 ID:???
その頃のミネルバというと。

「格納急げ!大気圏突入が始まるぞ!」
「ゲイツR収納!でも損傷激しいです!消火班急いで!早く!!」
「ゲイル生存確認!ただ、怪我を負ってます!タンカ急いで!」

大気圏突入に備え、あわただしく準備が始まっている中、ゲイルのゲイツRが滑り込むようにミネルバに入ってきた。
どうやら手厚い歓迎を受けたのか、中破したゲイツRは所々から煙を上げている。そして、その中から怪我を負ったゲイルが引きずりだされた。
ゲイルは担架に乗せられ、すぐさま医務室へと運ばれていく。と、その時、ケイはいまだラクスのジンやインパルス、そしてザクが戻ってこないのに気がつく。
ジンには大気圏突入の能力はない。だからそろそろ戻ってこないと大気圏突入の際に戻ってこなければ、最悪燃え尽きる。

「くそ!ブリッジ聞こえますか!?こちらデッキ!」
『何?』
「ナタリー・フェアレディとシン・アスカ、それにアレックス・ディノが戻ってきてません!どうなっているんですか!?」
『メイリン』
『あ、はい!えっと駄目です、ノイズが激しくて…。通信、繋げられません!帰還命令は出ているはずなのですが…』
「何だって!?」
『何だと!?アスラン…!』
「くそ!」

ブリッジにいるオペレーター・メイリンの言葉を聴いて、ケイは唖然とする。そしてすぐに内線を切ると、すぐさま半壊したゲイツRの許へ向かった。
そして、無人となったコクピットの中に入ろうとするが、それをヴィーノとマッドに止められた。

「放せ!放してくれ!僕は、僕は行かなきゃ!」
「何馬鹿なこと考えてるんすか!!今から行っても間に合いやしませんって!」
「ナタリーが死んじゃうだろうが!!僕が助けに行かなきゃ駄目なんだよ!放せ、はなせぇぇぇ!!」
「馬鹿野郎!!操縦桿も握れない奴が、助けに行けるわけないだろうが!!!」

涙を浮かべ、叫び散らしながらマッドとヴィーノを振り払おうとしたケイを、マッドは自分のほうを向かせ、そして彼を殴った。
それを受けて、ケイは呆然とし、悔しさで涙を浮かべ、そして歯を食いしばった。
このままでは、ラクスの生存率は限りなくゼロに近い。なのに、助けに行く事ができない。そのもどかしさが、余計彼を絶望の淵に追いやる。

「…チクショウ…ナタリー…」
「後は、嬢ちゃん達の運に任せよう。な」

マッドの言葉に、ただケイは泣くしかなかった。
407592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:29:50 ID:???
再びユニウスセブン。二刀流となったサトーのハイマニューバはまずジンの重艦刀を抑え、そのままいなし、続けざまにインパルスに向けて、二刀で切りかかる。インパルスはシールドでそれを防ぐものの、勢いそのままに吹き飛ばされる。
ラクスは再びジンに切りかからせるが、刀で重艦刀を弾かれ、隙が出来た瞬間に左腕を落とされる。だが、それでもなお戦おうとする。

「我が息子のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!!」
『…!?息子…?』
『何を…!まさか』
『…!』

突然のテロリスト・サトーからの通信に、全員が息を呑む。サトーはインパルスに対し切りかかる。一撃目は盾に防がれたが、二撃目は左足に当たった。

「ぐっ!何て強さだよ、こいつ!…足に異常!?」

シンが再び踏み込もうとしたが、インパルスのダメージ報告で左脚部にエラーが発生と赤くアラームが鳴る。先ほどの攻撃が、脚部のフレームにダメージを与えたらしい。

『此処で無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と何故偽りの世界で笑うか!何故、何故そんなに笑っていられる!?』

サトーの叫びが全MSのコクピット中に響き渡る。その言葉を聴いて、全員がはっとする。この男の悲しみ、怒り、憎しみが全て伝わってくる。だが、ラクスにはわかった。
泣いている。彼は泣いている。彼の声の強さが先ほどの叫びと全く違う。

「俺は、俺は何時まで憎み続ければいいのだ!?何故そんなに早く許す事ができる!?あの悲劇から、あの悲しみから何も、何も変わってないじゃないか!!
憎しみだけでは何も変わらないのはわかっている、だが!また連合は戦争を望もうとしているではないか!!奴らも誰も何も変わろうとしないから、俺が変えてやるんじゃないか!!
パトリック・ザラが、あの男が目指した世界になぁぁぁぁぁ!!!」
『…は…あ…』

サトーが涙を振り払いながら刀を振るう。それを抑えながら、その言葉を聞いたラクスはわなわなと震えていた。アスランも、父の名を聞いて呆然としてしまう。
自分の父が行った事、そして目指した世界。それはナチュラルを滅ぼし、その上で作り出す世界。憎しみに囚われ、果てはジェネシスという大量殺人兵器まで使い、
前大戦では全滅戦争の一歩前まで歩ませようとしてしまったものの一人。そんな彼の遺志を受け継ぎ、今もなお、ナチュラルを滅ぼそうとしている。
そんな彼に対し、右手一本でラクスは切りかかる。ジンとジンの鍔迫り合いとなる。

「あなたは…貴方って言う人は…地球にも、地球にも多くのコーディネイターが住んでいるのですよ!?こんなもの落としたら、それこそ、全てを滅ぼしてしまいますわ!!」
『ああ、知っている』
「ならばどうして!?」
『さっきも言っただろう!もはや俺には憎しみしか残っていない。だから、殺して、そして終わらせるのさ、俺の憎しみを!俺の命と共に!!』

片手では分が悪く、ラクスのジンは押し込まれ、ついに膝をつくが、それでもラクスは諦めず、鍔迫り合う。シンも突撃するが、もう片方の刀で腕を押さえ込まれてしまう。
408592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:31:12 ID:???
そんな状況の中、ラクスは叫ぶ。サトーの言葉が許せないわけではない。だが、言わなければいけない。そう思ったから。

「そういうの、無責任っていうんです!!それに愛がありませんわ!憎しみだけで、愛は何処へ行ってしまったのですか!?憎しみを持つ事自体はわるくありませんけど、それでも!憎しみに囚われて、人間が持つ素晴らしいものを忘れて!!」
『煩い!愛だと!?ふざけるなぁ!愛などで世界は変えられぬ!!愛という甘い言葉で惑わして、最終的にははき捨てるだけではないか!憎しみも、全て!それを馬鹿正直に馬鹿みたいに叫びおって!』

ラクスの言葉に、サトーは怒りを露にする。憎しみに生きる彼にとって、愛という言葉などただの幻想でしかないのだろう。だが、それでもラクスは叫び続ける。

「煩いお馬鹿!!そうやって一つの事に固執してしまえば他の事を見ないですむなんて思っているんでしょうが!!それに家族の墓標を落とすなんて!酷いですよ!折角、折角安らかに眠っていたのに!怖がってますわ!絶対!」

サトーは、彼女の叫びを聞いて少し違和感を感じる。どこかで聞いたことのあるような声。何故か、それを聞いたとき、息子との会話を思い出した。何気ない、あの会話。
しかし、今は戦闘中。サトーは紛わすように叫び散らした。

『馬鹿に馬鹿と呼ばれたくないわ!小娘がわかったように喋りおって!貴様に何がわかるというのだ!敵と悠々と笑い、挙句は騙されて、同じように痛みを受けている者がぁぁ!!』
「じゃあ何度でも言います、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿バァァァァァカ!分かった口利いているのはそちらのほうでしょうがぁぁぁ!」
『語彙が少ない!頭が悪いぞこの小娘がぁぁぁぁ!』

もはや売り言葉に買い言葉状態だったが、ハイマニューバは事態を打開するべく、インパルスを一度引き離し、ジンを立たせるように重艦刀を弾き、そして殴り吹き飛ばす。ラクスは吹き飛ばされた拍子に頭を打ち、そのまま気を失ってしまった。
が、その隙に作業を終えたアスランがメテオブレイカーを起動させ、そしてついにユニウスセブンを割ることに成功した。小さくなったほうの破片は大気圏突入による摩擦で燃え尽きるだろう。

「作業が終わった!早く離脱するぞ!」
「ちっ熱くなりすぎたか…だが、まだだ!!」

それを見たサトーは舌打ちをし、そのまま構えを取って、インパルスに切りかかった。その殺気に押されつつも、やけくそになったシンはペダルを強く踏み込み、
ハイマニューバに対し体当たりをする。突然の事に反応できず、そのままインパルスと共に吹き飛んでいく。

『あんたがやっている事ぜってぇ間違ってるよ!俺も頭悪いしさ、俺だって家族を殺されてる。だけど、それで人類全部殺すなんて間違ってるよ!関係ない奴まで殺すなんて、やっぱりおかしいよ!』
「若造!…どいつもこいつも!!ならば止めてみせよ!新しい時代を、俺に見せてみろ!!」
「うああああ!!」

一旦ハイマニューバはインパルスから離れ、そしてインパルスに切りかかる。インパルスは下がりながら避け、そして一瞬の隙をついてサーベルを振り下ろす。
だがその必殺の間合いも、サトーは最低限の動きのみで避け、逆に隙を作ったのはインパルスだ。サトーは好機と、腰を切りかかる。が、それを防いだのはアスランのザクだ。
ザクが体当たりをし、サトーに隙を作る。嗚咽をはきながらも、サトーはジンを操作し、刀でザクの左足を切り裂く。バランスを崩したザクが膝をつく。

『シン、今だぁぁぁぁ!!』
「うおおおお!!」
「ぐ、ヒヨッコ共がぁぁぁ!!」

身をかがめながら上から切りかかろうとするインパルス。それを、旋回しながら、遠心力を使って切りかかるハイマニューバ。刹那、ハイマニューバの二刀を潜りぬけ、
そしてインパルスは交差際に脇腹を切りつけた。地面が崩れた所為で深く斬りつけることはできなかったものの、それでも十分な一撃だ。
機体の異常を告げる警告アラームを見たサトーは眼を瞑り微笑む。負けた。だが、戦士の本懐は遂げられた。それに、強き戦士に出会えた。
409592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:32:12 ID:???
「…ふ、やるな、若造」
『若造じゃない、シンだ!』
「シン。俺の名はサトーだ」

腹部を切られたことでわき腹から電流が発生している。また、コクピット内でも小爆発が起こり、メインモニターのガラスが彼の右脇腹に突き刺さっていた。
だが、彼の表情は晴れ渡っていた。痛みなど感じていない。ただ感じるのは少しばかりの希望と大きな充足感。

「この男の勝負、俺の負けだ。だが、これは落ちる。どうする、お前はどうする?これが落ちれば戦争が始まるだろうな。そんな状況にお前はどうする?」
「…!…最善を尽くすさ。俺は俺みたいな奴を増やさないようにする!それだけだ!!」
「ふっ…若いな。だが、何時かはわかるさ。そして、俺のように一度なるだろう。憎しみを受け、憎しみに実を焼かれる。だから、行け何処までも。さあ、そろそろ行かないとこの落下に巻き込まれるぞ」

サトーは微笑み、そして挑戦的な言葉をシンに投げかける。その言葉を受け、シンは苦悶の表情を浮かべながらも、意志をこめた瞳をサトーに見せる。
それに満足したサトーは機体の踵を返し、そしていまだ気絶しているラクスのジンに向かって歩き始めた。そして、その機体を担ぐと、どこかへと向かう。
その行動に驚いたシンはサトーを呼び止める。

「おい!?」
『安心しろ、食ってとらんさ。どっちみち、こいつのこの損傷じゃ大気圏突入には耐えられん。他に手がある。お前らは…自力で生き残ってみせろ。…新しい時代、地獄で見ているぞ…!』
「おい!!わっ!!」

サトーの真意がわからず、インパルスで追おうとしたが、割れた隕石がその間に直撃し、二つにわかれてしまった。そして、姿が見えなくなってしまった。
シンはサトーに通信を入れてみるが、破片などでノイズが酷く、繋がらない。シンはラクスの名を叫ぶ。

「ナタリー!!」
『シン!今は彼を信じよう!俺達は俺達で降りるしか…くそ、耐えられるか!?』
「くそ…!」

そんな彼を、アスランが宥める。彼の言うとおり、早く離脱しなければ、落下に巻き込まれてしまうし、それに他の破片が彼らのいる場所に衝突しようとしていた。
落下するユニウスセブンから離れ、そして二機は大気圏突入の体勢をとる。と、それと同時に、赤色の光が彼らの足場だった場所を貫いた。
見覚えのある光、ミネルバのタンホイザーだった。

『あ、あぶねぇ…もう少し遅れてたら俺達死んでた…』
「ミネルバか…無茶をしてくれる」

だが正しい判断だ。この一発で何とかまた破片が小さくなり、燃え尽きてくれた。少しずつだが被害は小さくなっている。サトー達が消えていったところもいまだ健在だ。
410592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:33:04 ID:???
そのサトーだが、外にラクスのジンを残し、補給基地だった場所へと入っていた。他のテロリスト達は全員死亡し、今ここにいるのは彼だけとなっている。そんな場所に、一つ、大気圏突入用のポッドがあった。

「もしもの時に備えていてよかった。まさか、使うとは思ってもいなかったがな」

サトーはそれを見て笑みを浮かべ、そして担ぎ運び、そして外に出すとラクスのジンをそこへ放り込む。温度が上がり続ける。早くしなければいけない。彼女が気絶している以上、助けられるのはサトーだけだ。
何故サトーがこうまでしているのか。それは、馬鹿馬鹿しくも彼女の言葉に強い力を感じ、新時代も悪くないと思ったからだ。ナチュラルは憎い。それは変わらないし、これが落ちることは切に願っている。
だが、彼女だけには生き残って欲しい。ああ、そうだ。憎しみに生きた自分とは反対の、愛だけに生きる彼女にもう少し、世界を見て欲しい。
運が悪ければ死ぬだろうが、良ければ生き残る。サトーはそれに賭けた。

「持っていけ。愛の戦士。憎しみに生きた男からのプレゼントだ」

サトーは自身のジンに装備していた刀をポッドに放り込み、そしてポッドを起動させ、ユニウスセブンの亀裂から落とす。無事、落ちてくれるようだ。
それを見届けた彼は、ジンをユニウスセブンの大地に座らせる。周りが赤く染まり、機体からも温度上昇による過度熱で、赤いアラームが鳴り響く。が、サトーは気にしない。
サトーは懐のペンダントとポケットのタバコを取り出し、それを見つめながら一服する。最後の晩餐、というには味気ないものだが。だが、美味かった。
そこで思い出した。ああ、そうだ。あの違和感は…。サトーはふっと笑いながらため息をつく。

「ふぅ…アラン、クリスティン…。そういや、俺に禁煙しろとか言ってたな。お父さん口臭いとか。ははは…。懐かしいな。アラン…俺、お前の好きな人にあったぞ。アイドルで馬鹿で、全然変わってなかったな。
俺の事を理解しようとしていたが、理解できなかったんだろうな。いいさ、それでいい。クリスティン…お前の料理、もう一度食いたかったな」

もう一服する。ジンの右腕が爆散するが、サトーは気にしない。

「…もう一度、お前達に会いたかったよ。だが、それは叶わぬか。俺は…たくさんの人間を殺したからな。…だが、後悔していない。俺が望んだ事だからな。後は、地獄にでも落ちてやるさ。アラン、クリスティン…来世では、幸せに暮らせよ」

ついにコクピット内で小爆発が起こるがサトーは気にしない。その時が来るのを待つ。そして。

「じゃあな。俺の憎しみ。さらばだ、ラ」

サトーは最後の呟きも最中に、爆炎に包まれ、そして落下するユニウスセブンと共に死んでいった。
自身の憎しみと共に消えた彼が残したものは何だったのだろうか。彼のメッセージとは、一体。
変わろうとしないのだから変える。彼はそう言った。確かに、この後時代は変わった。いや、戻ってしまった。
ナチュラルとコーディネイターとの戦争が始まる。そう、時代は、先の大戦にまで戻ってしまったのだ。
時代が動き出した。だが、彼らはまだ、知らない。何も知らないのだ。
411592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:33:59 ID:???
何とか大気圏突入を成功させたインパルスとザクだったが、ザクのほうはサトーに切り離された左足の付け根を筆頭に突入の際の摩擦熱で多大な損傷を受け、ブースターを使う事ができなかった。
このままでは自由落下のまま海に叩きつけられるか、それとも最悪地面に叩きつけられるだろう。どちらにしろ、死ぬには変わりないのだが。
アスランは何とかして事態を打開しようとするが、為すすべなくそのまま地面に向かっていく。と、その時、シンからの通信が入る。

『アスランさん!』
「シン、君か!」

雲の向こう側にトリコロールの機体。インパルスが同じように落ちている。インパルスはブースターを使ってアスランのザクの方へと向かっていく。

「待っててください、今!」
『よせ!いくらインパルスのスラスターでも二機分の落下エネルギーは…!』

ザクを掴もうとするインパルスをやめさせようとしたが、その前に掴まれ、その衝撃で少し嗚咽をはく。

「…どうして貴方は、そんなことばかり言うんですか』

シンは呆れた様子を浮かべながらアスランに話しかける。そんなシンに対し、困ったように微笑みながら言った。

『じゃあ何を言えばいいんだ?』
「俺を助けろこの野郎とか」
『ふ…その方がいいのか?』
「…いえ、ただの例えです。それに、そんな事よりも、ナタリーは…!?」
『彼女か…。レーダーにも…いや、反応があるぞ!上だ、シン!』
「あ!?」

アスランに言われ、シンが上を向くと、そこには大気圏突入ポッドが落下し、彼らの横を通過したと思えば、パラシュートが複数開き、ゆらりゆらりと彼らの近くを漂った。
通信越しに、アスランとシンは目を合わせる。そして、閃いたと言わんばかりに、頷き、そしてインパルスはザクを連れて、そのポッドに向かって飛んでいくと、外郭にしがみ付く。
その作業は慎重かつスピーディだったのでパラシュートに問題は無く、また元々四機のMSを積み込めるように出来ているものだ。落下スピードは少し速まっただけで問題ない。ひとまず安心だった。

「はぁ…おおい、バカピンク生きているかぁ?」
『う、うう…ん…わたしわぁばかじゃありますぇん…』
「駄目だこりゃ…完全に気絶してるよ…。全く、肝がでかいって言うか…無神経っていうか」
『あんまり彼女の事、悪く言うな。彼女はよくやったじゃないか。こうやって生きているのも奇跡だな』
「冗談ですよ。…あのサトーとかいう人…本当に助けたのか…。そんな人が何で、何であんなものを落とそうと…」

理解できない、という表情をシンは浮かべていた。確かに、何故敵を助けたのか。同じ、コーディネイターだからなのか?それとも、ただの気まぐれなのか。
それを聞いたアスランは少し眼を瞑り、そして考えを纏めた後言った。

『…もしかしたら、まだ迷いがあったのかもしれないな。だからこそ、俺達を逃がしてくれた。正直、あのまま戦っていたら、俺達も危うかったな…。
しかし、パトリック・ザラの目指した世界、か…。まさか、ザラ派の亡霊が、今になって…』
「アスランさん…」

アスランの表情が曇る。彼の父、パトリック・ザラがしでかした事をまだ受け継ごうとするもの達が多くいる。ようやく平和になって、幸せに暮らせる世界が出来たと思ったのに。
だが、それは本当にそうだったのだろうか?目先だけの事だったのではないだろうか。こうやって、コーディネイターの中で戦争を望むものがいるとすれば、ナチュラルの中でもいるのではないか。
わからない。わからないが、故に。進むしかないのか。

『…俺、何にも言えなかったな。あの人に』
「…」
412592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:35:04 ID:???
沈痛な表情で苦笑するアスランにシンは何も言葉をかけられない。いや、今声をかけるのは野暮というものなのだろう。と、そんな彼の許に、通信が入ってきた。

『…パ…きこえ…こち…ミネルバ…応答願い…』
「ミネルバ!?こちらインパルス、応答願います!!」

その聞き覚えのある声に、シンははっとして答える。雲が途切れたその先に、ミネルバがいた。シンは顔に喜びの表情を浮かべ、インパルスの手を振って、合図を送る。
それを確認したミネルバは歓喜の声で溢れ返り、そして指示が送られる。

「よくもまああんな脱出ポッドみつけてきたわね…。マリク、艦を彼らの許へ。海に落としたら、色々と面倒よ。インパルスへ伝達。
任務ご苦労。最後にこの艦へ見事着艦されたし」
「了解です」
「ブリッジからデッキへ。三機MSが格納される。準備して」
『了解です。おい野郎共…うお!?』
『そこにジン、ジンはいますか!?』

と、錯乱したような様子でケイがマッドを突き飛ばす形でブリッジへの通信に割ってはいる。その様子に少し驚きつつ、呆れた表情でタリアは言った。

『メイリン!』
『あ、あ、はい!えっと…はい、インパルスからの通信。ナタリー・フェアレディ機も損傷を受けつつも無事だそうです!今、着艦しました』
「本当ですか!?本当に!?」
『はい!』
「よ、よかったぁ…」

タリアの言葉を受けて、メイリンが慌てて確認を取り、ケイに伝える。その言葉を受けて、安心して力が抜けてしまったのかその場に座り込んでしまった。
が、それと同時にマッドの拳骨が飛び、ケイは慌てて外へと向かう。そんな様子を見て、タリアは苦笑してしまう。

「元気ねぇ。ま、気持ちはわからなくもないけど」
「でもこれからどうするんです?テロリストとはいえ、コーディネイターがしでかした事ですよ?ナチュラルからどんないちゃもん付けられるか…」
「わかんないわよ。でもまあ今は」

開かれるハッチ。中には気絶しているラクスの姿。が、日差しが顔に当たり、ラクスは眩しそうに目をしぼめながら、ゆっくりと開く。
すると、そこにはケイの心配そうな表情を浮かべている。ラクスは疲れた表情ながら微笑みかける。

「…ケイさん…」
「ナタリー…!無茶してさ…!このバカピンク!!」
「私…あのテロリストと戦っていて…それで…あ…」

立ち上がろうとしたとき、何かが落ちる。それは、ケイがラクスに預けた宝くじの券だった。ラクスはそれを拾い上げ、そして見つめる。

「…ケイさん」
「何だよ」
「番号、何か見ました?」
「…一等は2067―16」

ラクスの言葉を少し不審そうに聞いていたケイは、突入前に知らせがあったその宝くじ当選番号をラクスに知らせる。それを聞いて、ラクスは微笑んだ。
413592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:36:56 ID:???
「ふふ、残念でした。大外れですわ。…もしかしたら、この宝くじが…私を守ってくれたのかも…しれませんわね…」
「そうか。良かった、お守り代わりになってくれて」
「…暖かい…この温かみ、忘れて…は…」

ケイはラクスを優しく抱きしめ、その温かみを感じる。ラクスも、ケイの温かみを感じつつ、疲れからか、段々と眠気が襲ってきて、ラクスはそのまま眠りについた。
憎しみも悲しみも、全て受け止められたらいいのだけれど、あの人の憎しみは受け止められなかった。この温かみを、彼は忘れてしまったのだろうか。全ては、遅かったのかもしれない。
だけど、今安心して、この温かみを感じられる自分がここにいる。それは身勝手な事なのだろうか。違う、違うと思う。
この温かみを感じられる人は、この温かみを誰かに分けなければいけない。
この世界は混乱に包まれる。近いうちに。そう、彼は予言した。それを元に戻せるのは、人の温かみだけなのだから。
414592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:37:35 ID:???
そんな事を彼女が考えていた時から暫くして。無人島に作られていた、ザフトの秘密基地…といえば聞こえがいいが、どちらかというと、廃棄された基地。
所々にMSの残骸が転がり、前大戦の傷跡が生々しく残っている。そんな場所だったが、基地としての機能は最低限のものだけだが生きているらしく、薄暗い明かりがジャングルの奥でついていた。
その中で、ザフトの緑服の男、ヨップ・フォン・アラフォスは同志たちを集い、この場所に集まっていた。彼らもまた、ザラ派の一味だった。

「…上も思い切ったことをしてくれる。地下がなければこちらもやられたところだ。まあいい。これでナチュラル共にも思い知らせられる」
「しかし、問題はこちらだ。どうするのだ、あの件は…」
「うむ…」

円卓の左隣に座っている男の言葉にヨップは言葉を濁す。それに連動するかのように、周りも黙り込んでしまった。と、そのとき。部屋の通路奥から悲鳴が聞こえてきた。
ヨップ達は立ち上がり、各々銃を持つ。と、それと同時に扉の向こうから声が聞こえてきた。

『殺してはいません。少しお話がしたい』

若い青年の声。それを聞いたヨップ達は騒然とするが、ヨップは扉から離れつつ、相手を威圧するかのような声を出し、男に答える。

「貴様、何者だ?何故ここに来た」
『名前などありません…全てを奪われた男ですから。ん〜…まあ差し詰め奪還者ブラックK7とでも名乗っておきましょう。ヨップさん?』
「(俺の名を知っている…!?)ふざけた名前だな」
『ははは、それはどうも』

ヨップの挑発に、扉の向こうの男はまるで堪えない。不気味に笑いながら、話を進めていく。

『そちらは探し物をしているようですが…。そのお手伝いをしようかなと思いましてね、ええ。そうなんです』
「…悪いが、探し物などない。そうそうと立ち去ってもらおうか。今なら、君を殺さずに済む」
『おや、優しいんですね。ラクス・クラインを殺そうとしている男が、何と生ぬるい』
「!」

男の言葉を聴いて、ヨップは素早く扉に近づき、銃を構えながら開く。すると、目の前には、黒いツナギに黒いズボンをまとった声の若さから想像できていた姿と、想像できなかったほどの淀んだ瞳。
ドブ川のよどみではないのだ。そんなレベルではない。まるで、毒沼のようで、ある種の美しさをそこから感じられる。
ヨップはその男が左手に掴んでいるものを見る。そこには泡を吹いて気絶している自分の部下がいた。そんな視線に気がついたのか、一度その男を見て、青年は左手を放す。
情けない嗚咽をはきながら落ちた自分の部下の様子に、青年の実力を予想してしまい、圧倒されながらも、敢えて強い態度で打って出る。

「何処でそのことを知った奪還者」
「さあ、何処でしょう?まあそれはどうでもいいのです。問題は、そのラクス・クラインの居・場・所。どうやら苦戦しているようじゃないですか」
「…隠し事は無駄か。その通りだ、奪還者。どうやら情報に精通しているようだが、ラクス・クラインの居場所でも知っているのかな?」
「いえ、存じてません」
「貴様、ふざけて」
「待て!」

ブラックk7の言葉に苛立ちを覚えた同志の一人が掴みかかろうとしたのを、ヨップが制止する。一方のブラックk7は、その腕に何か仕込んでいたのか、それを素早く取り出しては素早く取り込んでいた。
この男はいろんな意味で普通ではない。そう直感したヨップは彼を刺激しないようにする。
415592毎度申し訳ない ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:39:50 ID:???
「ではどうするのだ?」
「まあある程度検討がついているんですよ。それの確証が手に入れば大丈夫なんです。それに僕はオーブにすんなり入る事ができる。オーブの人間ですのでね…そこで、貴方達の代わりに僕がラクス・クラインを探し、貴方達が殺す。
悪い話ではないでしょう?因みに報酬は別にいりませんよ。ただ、少しばかりMSを格納できるスペースさえくれれば、ね」
「…貴様、何を考えている?」
「単純に殺して欲しいだけです。ちょっとした仇討ちなんですけど、僕には実力がなければ、金もない。その点貴方達は行動できるし最新型MSも持っている。そうでしょう?」

ケラケラと笑うブラックk7。その笑みには狂気などない。憎しみという感情が、喜怒哀楽全ての感情を表現している。純粋だ。
それがいっそ、ヨップ達に狂気を感じさせていた。狂っている。そう、ヨップは考えていた。だが、嘘は言っていないだろう。

「よかろう。但し、監視を一人つける。報告もそいつを介して…いいな?もし裏切るようであれば…」
「いいでしょう。お互い、うまくいくといいですねぇ。では、僕は自分のMSを持ってきますので」

そう言って、ブラックk7は笑みを浮かべたままその場を去っていった。ヨップは冷や汗を垂らし、疲れたように肩を垂らした。

「…あの男、正常ではないな」
「いいのですか、ヨップ殿。あのような男を信用して…!クライン派のスパイかもしれませぬ」
「いいのだ。あいつは多分、大丈夫だ。あの憎しみは本物だからな…。ただ危険には間違いない…」

『あいつの調査が終わったら、殺してしまおう』
「よく言うね。ま、殺されるようなヘマはしないけどね。ふふふ…どちらかといえば殺されちゃうんじゃない?」

ブラックk7は外に出た後も、ヨップらの会話を盗聴していた。ヨップの企みに対し、彼は嘲笑を浮かべる。
彼が暫く歩くと、そこにはジャングルの闇に隠れていた黒いMSがあった。その顔は、まさしくストライクのものだった。
そこでブラックk7は通信を開き、誰かと喋り始めた。

『私だ。どうだ、上手く行きそうか?』

声の向こうは、少し高めの、しかしある程度落ち着きのある男の声。

「おかげさまで。しかし貴方も酔狂な人だ。僕の手伝いなんかしなくてもいいのに」
『ふっ…私はお人好しなのでね。それに、こちらはこちらでやるべき事がある。そのついでだ。オーブの偽ビザは作っておいた。いつでも入れるぞ』
「ありがとう。助かりますよ」
『…ではまたな。健闘を祈る』

男は通信を切り、ブラックk7も少し間を空けた後、コクピット席に背も垂れる。

「これで手駒は増えたか。ま、どうせ咬ませ犬にもならないだろうけど…。お手並み拝見といかせて貰おうかな。二人目君。キラ・ヤマトを名乗っているんだからねぇ。僕をガッカリさせないでくれよ?
ふふふ、楽しみだなぁ。ゾクゾクするよ」

不気味に笑うブラックk7。そう、彼こそオリジナルのキラ・ヤマトその人だったのだ。

時代は進む。誰が望もうとも望まなくとも。そして今、全てが始まろうとしている。

第六話 So sad に続く
416592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/05(月) 23:41:35 ID:???
ふい…毎度毎度長文申し訳ない…。時間掛かる上に容量食いますね…。
今度から分割して、ある程度できたら投下とかにしたほうがいいんでしょうか?
とりあえず次回、彼と彼が邂逅します。
417通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 23:41:57 ID:???
超乙
418通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 23:45:03 ID:???
リアルタイムGJ!!
419通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 23:48:59 ID:???
>>416
GJ! 読み応えある文章実にGJ!!

俺は今の形で続けて良いと思う
420通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 23:51:40 ID:???
あ、そろそろ容量やばいな
421通常の名無しさんの3倍:2007/03/05(月) 23:51:48 ID:???
>>416
今回もGJ!
俺的には全然おk!!

タイトル、「愛の惑星(ほし)の詩」とかどうだろう?
422通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 00:38:35 ID:???
GJ!
次回、邂逅するのはシンとキラ(オリジナルor3人目)か
キラ(オリジナル)とキラ(3人目)のどっちなんだろう?
次の話もwktk状態で待っています!
423通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 01:43:07 ID:???
毎度GJ

592氏の投下はいつも描写が丁寧で、
小ネタが随所にちりばめられているので、いつもゲラゲラ笑いながら読んでおります。

今の形を続けてもらえると読者として嬉しいです。

談話室で皆の前でこっそり飲酒をするケイの大胆不敵っ振りにワロタw
シンのカガリへの批難は、実は当事者のケイに取ってみれば複雑な心境何だろうけど、
カガリに優しく諭す余裕があるのはまさに、地に足が着いた一個人「ケイ・クーロン」として、
作り上げて来た人格のおかげなんだろうか。

ナタリーの馬鹿ピンクっプリも絶好調でなにより。
全てを失い、憎しみと哀しみしか残されなかったサトー隊長をつき動かした「愛」スゴス。
真に人の心を動かす熱血振りは、クローンラクスには似合わない芸当だw
サトー隊長の散りかたも印象深かった。
ゲストキャラは一発強烈なアクションをしてくれてナンボですな。
しかしまあ、ミネルバ隊の纏まりのよさに噴きっぱなしだw
ケイのジェラシーを弄ぶレイとかレイとかレイとか。
シンの身の上を知っているからこそ気遣えるナタリーとか。
ルナを軽くナンパするケイはやはり女ったらしだw

この世の全てへの復讐に燃えるオリジナルキラの行く末はイカに?
424通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 04:20:52 ID:???
まぁ色々違うかもしれないけど気にするな、俺は気にしない
http://hisazin-up.dyndns.org/up/src/30685.jpg
425通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 08:49:24 ID:???
>>424
保存しますた
426592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/06(火) 11:17:38 ID:???
>>424
…GJ!嬉しすぎて弾けて混ざりそうですww保存しますたww
427通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 14:13:14 ID:???
>>416
改行を適当なところで入れるのと、叫ぶ台詞の伸ばしを軽減&記号を連続させないようにすれば
大分読みやすくなると思うのですが、どうでしょうね。
展開自体は好きですんで。
428通常の名無しさんの3倍:2007/03/06(火) 14:26:52 ID:???
今スレの容量が481KBもあるんだな。

意外と早かったな。
429通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 02:06:24 ID:???
つまり500行かずに次スレを立てる必要が出てきたってわけか
430通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 03:11:21 ID:???
1つのSSで20KB超過する恐れが有るし、そろそろ立て時か。
431通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 19:34:43 ID:???
誰もピンク氏のアウルに反応しない件について。何か微妙なフラグが立ったようなたってないような…。
432通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 19:54:01 ID:???
あれだ。
ナタリーとアウルは敵味方を越えて通じ合う関係になるんジャマイカ?

そしてナタリーはアウルにとどめをささざるを得なくなり
その哀しみを乗り越えて戦士としてさらに上への階段に上るんだ

だからナタリーは592氏の単発ネタにもあるように
愛の力で二人目ラクスを論破できる強い女になるんだよきっと



といらぬ妄想をしてみる
433通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 20:05:03 ID:???
このスレに作品を投下している4職人氏が描く
キラーズが一同に会したらどんな光景になるかな?

やはりカオスか?
434通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 21:41:03 ID:???
これだけはいえる。ケイの肩身が狭すぎる。唯一の二人目だからなぁ。ただIF SEEDのキラが一番純粋で、逆に浮いてしまいそうだけど…。カオスなのは違いない。
435通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 22:04:46 ID:???
総勢何人になるんだかw
436通常の名無しさんの3倍:2007/03/07(水) 22:08:20 ID:???
展開次第でバトルロワイヤルなキラーズになるかもしれんなwww
437通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 10:28:32 ID:???
4職人のキラのMS操縦技術の腕前
438通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 16:37:08 ID:???
オレの一押し、58氏のキラが最狂だと思う。
↓おすすめ場面
>フリーダムのカラーリングは白と黒をメインに構成されていて、所々にあしらわれたゴールドやシルバー、紅色がフリーダムを兵器ではない全く別の高貴な物に昇華させるようだった。
素敵な美意識だ。きっと頭がとても可哀相なのだろう。でもそこがイイ。
439通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 16:55:50 ID:???
同意

ミネルバの自由のカラーリングセンスは噴飯だがそれがいい

58氏の作品はミネルバのオリジナルと、アークエンジェルのクローンとの対比、
戦場で相対するカラーリングの違う2機の自由と、それに唖然とする各陣営の首脳部(ラクスの驚愕に超期待)

そしてあまりの展開にヘタレるアスランの醜態と、
気になるところが沢山あるな。

シンのベクトルも、オリジナルが原作と異なる方向へ向けてくれそう。
原作ではアスランが見事な駄目上司だったしな。
序章で張られたキラ対アスランの伏線も気になる
440通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 17:32:01 ID:???
>>437

四人のキラの中で一番腕前がなさそうなのは、キラーズのキラなのか?

ケイさんは、今は整備士だろうが、クルーゼ倒したんだから高いだろうな
441通常の名無しさんの3倍:2007/03/08(木) 17:56:09 ID:???
キラーズ氏の描くオリジナルキラは実戦経験の場数こそ見劣りするだろうが
仮面の「サイ・アーガイル」教官として
優秀なザフトレッドを送り出すと期待している。
ケイはコクピット恐怖症の注文が付くから、
技術披露の場であるパイロット復帰はまだ先の話だろう。
ミネルバかナタリーの危機でそれを克服してくれることを期待。

IF SEED氏のキラは相対的に性能で見劣り出したストライクで
どのような創意工夫を凝らして生き延びるかに期待。
このスレ唯一の非クローンネタだしね。

58氏のキラはとにかく直接対決が間近に迫っている感じなので
「自由vs自由」がとにかく楽しみ。
ダークでサディスティックな一面が無印キャラを精神的にいたぶりそう。

主人公として一番影を感じるのはミネルバのキラかなぁ
正当派はIF SEED氏のキラだね。

このスレッドの全てのキラーズ達には、次スレにも超期待と言うことで
442通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 00:57:05 ID:???
誰が言い出したか知らんがキラクローン話でここまで膨らむんだから凄いよな〜
もしくは各職人方の力量の高さ故か?
443通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 08:47:19 ID:???
登場確定まで含めると4職人氏のキラは9人いるね。

ここはとてもよいキラーズなスレッドですね。
444通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 13:44:20 ID:???
なるほど、つまりもう2人増えて11人いる!
445通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 13:45:58 ID:???
もう一人増えるとあれだな。旧シャア板のダメ親父スレみたいだな。
446通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 14:05:06 ID:???
キラクローンとラクスクローンしか今の所いないんだっけ?
447通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 14:45:28 ID:???
アスランのクローンは未定とかいわれていたような
448通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 17:06:21 ID:???
 虎クローンもいた気がすけど……かなり昔なので記憶が曖昧

[過去ログ] λ.....
449通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 17:12:47 ID:???
確か、キラーズのアンディがクローンのような気がする。そういう話も出てたかな。
450通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 17:27:05 ID:???
>>448-449
確かにそう言うシーンが有ったねw

キラーズ氏の作品で、オリジナルがパトリックと面会している時に
シーゲルがこれみよがしに割り込んで来てその情報を伝えたやつだね。

それにしてもシーゲルとパトリックの対比は面白かったなあ

娘の為に基地害じみた手段を平気で選ぶ腹黒シーゲルと
腹黒シーゲルのクローン計画を知らぬピエロのパトリックwww

息子をシーゲルに奪われた辺りとか、
オリジナルキラを誤認逮捕してしまう辺りは、
パトリックヘの同情を禁じ得ない。
451通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 20:07:42 ID:???
>>450
……パトリックは全部分かっててキラを逮捕したんじゃないか?
それにさ、強奪犯と同じ顔をした奴を野放しにできるわけ無いだろう?
逮捕=保護なんだけどな。
452通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 20:19:30 ID:???
>>451
そこら辺はパトリックの独白として、
シーゲルの悪事を糾弾するような描写をされることを楽しみにしたいね。








ところでスレ立ては日曜辺りまで引っ張るのか?
453通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 20:41:46 ID:???
スレ立てに挑戦してみようか?

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このスレはイージス自爆後プラントに行かなかったキラが頑張ったり、
種主要キャラのクローンが出て来る話が有ったりするスレです。

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……テンプレ書こうとしたがやっぱり上手くいかないけど。
454通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 20:58:06 ID:???
こんなもんか?


ロウがキラを助けてなかったら クローン三人目

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ここはイージスによる特攻の後
ロウがキラを助けていなかったとしたらを妄想するスレです。

またそこから発展した、重傷を負ったキラが奮闘する展開や
それ以降のキラはクローン、登場人物ほどんどクローンなどの
展開予想・SSなども大歓迎です。
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オリジナルと以前のクローン
もしもロウがキラを助けてなかったらを考えるスレ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1155986338/
ロウがキラを助けてなかったら クローン二人目
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1169651461/
455通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 20:59:10 ID:???
ほどんどて
456通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 21:02:21 ID:???
>>454
いいと思うよ。スレ残りもやばいし、ソロソロ立てといても損はないかな。
457通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 21:05:24 ID:???
>>454
お願いします
458通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 21:58:49 ID:???
あっと…落ちる前に、58氏やIF氏の奴も保存しておかないと。
でも会員じゃないんだよなぁ。どなたか御願いします。
459通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 22:03:28 ID:???
誰かライブドアID持ってるPC厨いないか?



漏れは携帯厨だからごめんね
460通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 22:28:42 ID:???
とりあえずスレをmhtなどで保存しておいてwikiのアップローダーに上げておくとか。
そうすれば以前編集してくれる人がやってくれる……かも?
461通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 22:47:32 ID:???
それでいいと思う
462592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/09(金) 22:57:29 ID:???
どうも。自分アカウント持っているので編集してみましょうか?一応トップページだけは変えてみましたけど。
あと、タイトル&意見を述べてくださった皆様ありがとうございました。次回参考にさせていただきますね。
463通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 23:09:17 ID:???
>>460は自分でやると宣言したのか、はたまたやり方の提案なのか判断に迷う。

おそらく後者なんだろうが。

せっかくだから592氏にお願いした方が早く済みそうだな。
464592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/09(金) 23:13:29 ID:???
んではやって来ます(`・ω・´)残り10kbか…。
465通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 23:20:00 ID:???
>>464
お願いします
466592 ◆M2a2eh6/s6 :2007/03/09(金) 23:50:27 ID:???
とりあえず一通り。キラーズのほうは専門に登録している人がいるはずだから下手にやらないほうがいいかな…?
一応メモ帳に保存しておくつもりではありますが。
467通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 23:54:26 ID:???
確かにキラーズ氏の作品は専任の登録人がいますね
468通常の名無しさんの3倍:2007/03/09(金) 23:55:33 ID:???
お疲れ様でーす!
469通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 00:24:55 ID:???
>>463
後者だった、すまん……。

>>464
そしてお疲れ様です。
470通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 00:28:19 ID:???
立ててきた

ロウがキラを助けてなかったら クローン三人目
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1173454044/
471通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 00:40:25 ID:???
>>470
すれ立て乙

592氏編集乙
472通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 00:51:34 ID:???
残り9kB
473通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 12:55:55 ID:???
ここはよいスレでした。
474通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 14:32:15 ID:???
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475通常の名無しさんの3倍:2007/03/10(土) 14:33:00 ID:???
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476通常の名無しさんの3倍
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