アスランは、ユウキに気に掛けて貰い恐縮しながらも、ラクスやキラの事が頭から離れないのか、あまり元気の無い声で返事をした。
その様子に業を煮やしたのか、イージスのコックピットにユウキは怒りの声が響く。
「――アスラン・ザラ!そのような府抜けた態度では、貴様も死ぬ事になるぞ!」
「――!も、申し訳ありません!」
突然の怒鳴り声にアスランは、慌てたように背筋を伸ばす。
ユウキが声を荒げるような態度に出る事は、訓練校時代ならいざ知らず、余程の事が無い限り有り得ない。
ユウキは、アスランに対して気合を入れるかのように言葉を続けた。
「戦う意思が有るのなら、そのような顔は二度と見せるな!」
「――はい!」
「分かっているとは思うが、既に先発のモビルスーツ隊は戦闘に入った。必ず生き残り、ラクス・クライン嬢の分まで生きろ!いいな!」
「――は!」
アスランはユウキに怒られ、自分がいかに弱かったかを実感する。今は軍の作戦行動中なのだ。ユウキが怒るのも無理はない。
通信が切れるとヘルメットを脱ぎ、両手で気合を入れるように両頬を打った。
余程、自分が許せなかったのか、両頬をかなり強打したらしく、顔を下に向けた顔を抱えるようにしながら、唸り声を上げる。
「――っ!」
「アスラン、僕達も出撃で――。……唸り声……ですか?アスラン、どうしたんですか?何かあったんですか?」
丁度、その時、ニコルからの通信が入る。
ニコルは、アスランの唸り声をまともに聞いてしまったらしく、心配のあまり呼びかけの声を出していた。
アスランは下を向いたまま「……いや、何でもない」と返事をする。
「……そう、ですか。……アスラン、さっきは言い過ぎました……。ラクスさんが居なくなって、一番辛いのはアスランなのに……」
ニコルは合流した時に話した事を気にして、申し訳なさそうな声で謝罪をして来た。
アスランは痛みから復活したのか、ヘルメットを被りながら答える。
「……いや、気にしていない。今は、この作戦に集中しよう」
「……はい。必ず成功させましょう」
ニコルが頷くと、アスランはイージスをリニア・カタパルトへと移動させる。
カタパルトの向こうでは、ビームや爆発の光りが見て取れた。
アスランは、軽く深呼吸をすると、出撃確認の為の声を上げる。
「――アスラン・ザラ、出る!」
アスランの声と共に、イージスが勢い良く射出され閃光が瞬く戦場へと消えて行った。