種・種死の世界にXキャラがいたら-コーヒー22杯目-

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692キラ in AFTER WAR
第一話・「招かれざる者です」

かつて戦争があった―

愚かな戦いの果てに、連邦軍兵士ジャミル・ニートは悲劇の鉄爪を引いてしまった。
地球は多くの人間が死に、やがて長い冬に覆われ死の星と化した。
あれから15年―。
愚かな歴史は終わったかに見えた、だが‥。


「ガンダム売るよ!」
戦後生まれの少年ガロード・ランは、自分の愛機GX-9900を公開オークションに出していた。
今まで孤独に生きてきたガロードは、兵器パーツの回収を仕事とするバルチャー艦、そのフリーデンの集団生活に馴染めないでいた。
しかも、助けた時から想いを寄せていたNT少女・ティファにも愛想をつかされたと思い、落ち込んだガロードは一人フリーデンを飛び出して来たのだった。
若さゆえの暴走、人はそう言うだろう。
ガロードはこれからの生活のために、フリーデンから持ち出した自分の愛機を売ろうとしている所だった。
「あれ本物か?」
「あんな子供が何故?」
参加していた客誰もが信じられない様子だった。目の前にある白いMSは、まぎれもなくあのガンダムだったからだ。
「さあ、高く買ってよね!」
ガロードの掛け声と共に、客たちは一斉に声を上げた。
「4000万!!」
「5000万!!」
「なら俺は6000だ!!」
提示される数字に、ガロードは納得がいかないようだった。
「おいおい、コイツはガンダムだよ?もっとビシッとした奴はいないの?」
そこに、一人の少女の言葉に一同は静まる―
「3億」
ガロードの前に現れたその少女は、間違いなく3億と言った。
「3億だと?」
客たちはざわついて、誰も金額を提示するものは居なくなった。
「3億で買い取りますわ、ガロード・ランさん」
ピンク色の髪の毛の少女の言葉に、ガロードはためらった。
(3億だって?こんな女が3億も?いや、それより、どうして俺を知っている!?)
「分かったよ、あんたに売るよ」
ガロードは承諾した。交渉は成立し、ガロードとその少女は後で落ち合うことにした。
(なんかあるな)
ガロードの野生の感はそう感じていた。
693キラ in AFTER WAR:2006/12/11(月) 16:45:06 ID:???
「MS確認、例の2機です!!」
サラがジャミルに報告した。フリーデンは、ティファを狙うフロスト兄弟からの追撃を受けていた。
「よし、総員戦闘配置につけ!エアマスターとレオパルドを出せ!」
「了解」
ジャミルの指示を、サラはMSデッキに伝える―。
「またあいつらか!」
「毎度の事ながらよくやるねえ」
好戦的なパイロット・ウィッツは勢い良くフリーデンから発進し、ナンパな色男・ロアビィはしぶしぶレオパルドを発進させた。
フリーデンから発進したMSを確認して、オルバが回線を入れる。
「GXは居ないみたいだね、兄さん」
「なめられたものだ」
オルバの言葉に、シャギアも不快感をあらわにした。
これまでの戦いはパイロットの差ではなくMSの性能でGXに負けた。それを今日こそ証明しようとしていたからだ。
「来るよ、兄さん」
「まあいい、GXをおびきだす餌になってもらうとしよう」
シャギアの言葉に、オルバは静かに答えた。
「了解、兄さん」


「さあ聞かせてらおうか?どうして俺の名前を?」
近くの森に呼び出したガロードは、ピンク色の髪の少女に銃を突きつけて聞いた。
勘が良いガロードは、この少女を殺し屋とでも思ったのだろう。しかし、少女は冷静に答えた。
「私はラクス・クライン。わけあって自分の素性はお話し出来ません。ですが、どうしてもこのMSを手に入れる必要があったのです」
「なんだって?ふざけるな!そんな説明だけで、ガンダムをやれるか!」
ガロードは目の前に居る少女の正体が何者か見当がつかない。だが、ガンダムはやれない、渡してはならない、そんな気がしていた。
「ですが、あなたはお金が欲しいのでしょう?でしたら‥」
「金の問題じゃないんだよね。得体の知れない奴にコイツは渡せない、それだけだ」
ガロードの野生の狼のような気迫に、ラクスは溜息をついた。
(このような人には何を言っても無駄ですね)
決心したラクスは、ガロードを見た。
「なら、力ずくで貰う事にします」
「なんだって!?やれるもんならやってみろ!」
ガロードは銃を撃とうと引鉄を引こうとした。その時、背後に殺気を感じた。
(なんだ!?)
ガロードが振り返るより早く、ガロードは持っていた銃を蹴りで弾かれ、相手を確認する前には、すでに顔面に拳が迫っっていた。
「っぐお!!」
鈍い声を出して、ガロードは後方に大きく吹き飛んだ。あまりの衝撃に、歯が何本か折れたようだ。口の中はガタガタになっていた。
「ごめんね。でも、こうでもしないといけない理由が僕らにはあるんだ」
ガロードの前に立っていた少年はそう言った。
694キラ in AFTER WAR:2006/12/11(月) 16:46:45 ID:???
見た目は普通の少年だが、先ほどの動きからして只者ではない、ガロードはそう感じていた。
「おまへは、えだれだっ!?」
歯が折れて口の中は血まみれになり、ガロードはうまく喋れなかった。それでも、野生の獣のような目だけは変わらなかった。
「僕はキラ・ヤマト、フリーのMS乗りです」
キラは最小限の答えしか示さない。あまりガロードに時間を費やすのも面倒な様子だった。一気にまくしたてる―。
「わけあって僕のMSは戦闘不能になって、このMSを貰う事にしました。じゃ、これで、行こうラクス」
そう言うと、ラクスを呼んでGXのコックピットに乗り込もうとする。
「まてえ!そんな理由でわはしてはまるかあ!!」
ガロードはキラに襲い掛かったが、あっさり腕を取られると、そのまま一気に逆方向に曲げられた。
「うぎゃあああああああああああああ!!」
あたりに鈍い音と、ガロードの悲痛な声が響き渡った。
そんなガロードに対し、キラが冷たく言った。
「やめてよね、君なんかが僕にかなうわけないだろ」
その冷たい目に、ガロードはすっかり怯えてしまった。今まで生きてきて怖い事はあったが、怯えたのは初めてだった。
キラとラクスはGXに乗り込み、ハッチを閉じた。
「どうですか?」
ラクスの問いに、キラは画面を確認しながら言った。
「うん、たいした事ない、原始的なシステムだね。でも、どうやらコントローラーが要るようだ」
「コントローラー?」
ラクスが尋ねた。すると、下にいたガロードがコントローラーを持って叫んだ。
「おまえた、こいつがないとうごかせないぞ!」
ガロードの必死の抵抗だった。だが、キラはコックピットからガロードを撃ち殺した。この距離から正確に、キラはガロードの脳天を撃ち砕いていた。
「回収してくる」
「ええ」
ラクスは静かに答えた。
しばらくして、コックピットに戻ってきたキラの手にはGXのGコンがあった。
「さ、行こうか」
キラの言葉にラクスはうなずいた。
ガロードの無残な死体を残して、GXはその場を飛び去った。
695キラ in AFTER WAR:2006/12/11(月) 16:47:44 ID:???
「っくそ!ゲテモノガンダムめ!」
ウィッツは、フロスト兄弟のコンビネーションに完全に押されていた。
ロアビィとの連携がうまくいかないわけではないのだが、兄弟のコンビネーションにすっかり押されてしまっていた。
「このままじゃ、やばいよね、やっぱ」
ロアビィも焦っていた。ガトリングの弾は尽き、ミサイルも残りわずか、足も被弾して動きが悪くなっていた。徐々に追い詰められていくレオパルドとエアマスター。そんな二人をよそに、シャギアはいたって冷静に言った。
「そろそろトドメをさすか、オルバよ」
「了解、兄さん」
アシュタロンはMSに変形すると、両方のハサミで一気にエアマスターの翼をつかんだ。
「しまった!」
ウィッツが叫ぶと同時に、ハサミが翼を切り落とす。
「うおおおおおおおおお!」
エアマスターは、そのまま回転し地面に撃墜した。動けなくなったエアマスターとレオパルドを、二機のガンダムが取り囲む。そして、ヴァサーゴの腹部からビーム装置が開かれる―。
「切り札は最後まで取っておくものだよ」
ビーム装置に粒子が収束されていく。
「切れ切れついでに、人生の幕切れか‥」
ロアビィは、失神したウィッツを見てそう言った。
「艦長!」
その様子を見て叫ぶサラだったが、ジャミルには唇をかみ締めるしかなかった。
「MSあらたに確認!これは、GXです!」
トニヤの報告に、ジャミルは画面に映し出されたMSを見た。
「ガロード!」
そこには、たしかにGX-9900が映し出されていた。
「兄さん!あれは!」
「何?」
メガソニック砲を放とうとしていたシャギアは、後方から迫るMSを確認した。
「来たか」
フロスト兄弟は戦闘態勢を取る。だが、次の瞬間GXから強力なエネルギーの粒子が放たれた。
「兄さん!!」
「っく、サテライトキャノンか!!」
あまりの出来事に、アシュタロンもヴァサーゴも回避しようとしたが間に合わず、アシュタロンの下半身やヴァサーゴの右腕右足は高エネルギーで蒸発してしまった。
「馬鹿な!!」
「兄さん!」
「っく!ええい、引くぞオルバよ!!」
戦闘は不可能だった。フロスト兄弟は、その場を引くことしか出来なかった。
「どういうことだ、なぜいきなりあれが撃てる‥?」
ジャミルもわが目を疑った。ブリッジクルーも、みな言葉を失っていた。
そこに、ティファがあらわれてつぶやいた。
「招かれざる者です」
「なんだと!?」
ティファの言葉がジャミルには理解できなかったが、関係なくGXからフリーデンに通信が入る。
「初めまして。僕はキラ・ヤマト、かつてコーディネーターと呼ばれた者です」

―つづく―