【チャット・age厳禁】デス種失敗の理由 Part257

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1通常の名無しさんの3倍
ここは『機動戦士ガンダムSEED』及び続編の『SEED DESTINY』の問題点を検証するスレッドです。
なにげに終了から一周年です。
沈黙を保ったままの劇種こと劇場版ガンダムSEED(仮)ですが、とりあえずそれのことは忘れて、
HCMproνにwktkしたりMGストフリ決定に唾棄したりして
エレガントに日々を過ごして行きましょう。

過度な推測・憶測・妄想、どさくさに紛れた脱線&余計な叩き、激情&感情的な即レス、単純叩きなどは
"できるだけ"控え、基本的に落ち着いて『冷静に』議論していきましょう。
なお、福田巳津央カントクを、全国の監督や福田さんや豚に配慮して「」あるいは「と呼ぶ件、
および両澤千晶氏を全国の両澤さんや嫁に配慮して「 」あるいは」で呼ぶ件に関しては、
皆様自身のご判断にお任せします。

<お約束>
・基本的にはage禁止。
 無闇やたらとスレをageる奴には付き合わないで「sage」基本。「saga」などの小細工でageるのも禁止。
・他スレや個人サイトのヲチと批評は『原則として』禁止。ひろゆきと"第三者"に迷惑がかかることになりかねない。
・成功談なんか殆ど無いけど禁止。いちいち釣られないでジサクジエンを見抜いて荒らしは放置。
・他作品を引き合いに出すと見せかけたSEED擁護禁止。雑談/大幅な脱線は空気を読みつつマターリと
・初心者歓迎。予備知識等は下記のリンクにて。
・キャラの名前については、同じ名前の人がいるかもしれないので、相手の立場になって考えましょう。
 他名前関係は『できるだけ』避けた方が無難だと思われます。
・〜厨、〜信者といった叩きはやめましょう。気持ちは解りますが荒らしと変わりません。
 『妄想』で人を叩くのはこの世で恥ずべき行為です。例:ラクシズ
・『次スレは>>950が立ててください
・立てられなかったらホウレンソウ(報告、連絡、相談)を
・再利用とかいう言葉に惑わされない 。

前スレ
【チャット・age厳禁】デス種失敗の理由 Part256
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1162461468/
過去ログ倉庫(一部違うスレ有り)
http://makimo.to/cgi-bin/search/search.cgi?q=%8E%B8%94s%82%CC%97%9D%97R&andor=AND&sf=0&H=&view=table&all=on&shw=2000

<関連サイト>
○公式
ttp://www.gundam-seed-d.net/
ttp://www.xg-seed.net/
○種の失敗・テンプレサイト
ttp://tanepo.at.infoseek.co.jp/
○もう種ぽ検証サイト(種へのツッコミ、用語解説等など)
ttp://moutanepo.at.infoseek.co.jp/tanepo/
○シャア専用ブログ
ttp://char.2log.net/
2 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 02:12:31 ID:???
面白いかどうかは別にして現実的な線で考えてみた種の大幅路線変更シナリオ。
プラントの先軍政治、オーブの首長制、政教分離・シビリアンコントロールされた軍隊と政党政治・三権分立、などの点を大幅に変更。
某国が民主主義人民共和国なのに人民選挙も無く軍政を敷いているのに等しく疑問な点は全て変更
24と銀英伝が混じったようなシナリオだけど。

キラ・ヤマト                                  =普通の少年の感じで
マニュー・ラミアス    連合・戦略・宇宙方面軍・第8艦隊所属AA艦長・大尉  =
ムウ・ラ・フラガ     連合・戦略・宇宙方面軍・大尉             =実戦指揮に抜群の冴えを見せる
ナタル・バジルール    連合・戦略・宇宙方面軍・第8艦隊所属AA副長・少尉  =現実派路線
ダリダ・チャンドラ    連合・戦略・宇宙方面軍・第8艦隊所属・伍長
ジャッキー・トノムラ   連合・戦略・宇宙方面軍・第8艦隊所属・伍長
アーノルド・ノーマン   連合・戦略・宇宙方面軍・第8艦隊所属・曹長
ロメル・パル       連合・戦略・宇宙方面軍・第8艦隊所属・伍長
ハルバートン、      連合・宇宙軍指令官・大将               =名将・後に統合参謀本部議長を一時兼務
フレイ・アルスター                               =ただのお色気要員
ミリアリア・ハウ                                =CIC兼分析官
トール・ケーニヒ                                =パイロット候補。器用貧乏な男
サイ・アーガイル                                =善良ないい男ぶりを発揮

ウズミ・アスハ、     オーブ議会議員・党総裁・国家元首           =清濁併せ呑み鷹揚な名君
カガリ・アスハ、     オーブ議会議員・官房副長官              =卓越した指導力を発揮、惜しむらくは女性
レドニル・キサカ     オーブ元首補佐官、国防省から出向           =実働部隊を率い作戦遂行能力も高い
ホムラ、         オーブ議会議員・内務省副大臣             =
ロンド・サハク      オーブ議会議員・国防委員               =


ラウ・ル・クルーゼ    ザフト軍・特殊作戦宇宙軍・分遣隊隊長・少佐      =攻守ともに名将
アスラン・ザラ      ザフト軍・特殊作戦宇宙軍・少尉            =情や恩義には厚く作戦遂行能力は高い
イザーク・ジュール    ザフト軍・特殊作戦宇宙軍・少尉            =名門の出自を生かし栄達を目指す若き野心家
ニコル・アマルフィ    ザフト軍・特殊作戦宇宙軍・少尉
ディアッカ・エルスマン  ザフト軍・特殊作戦宇宙軍・少尉
アデス          ザフト軍・宇宙方面軍・ヴェサリウス艦長・少佐
パトリック・ザラ     プラント議会議員、評議会国防委員           =自己の理想のため突っ走る
アンディ・バルトフェルド ザフト軍・陸軍・北アフリカ方面軍司令官・准将     =政治的な手腕も併せ持つ智将
マーチン・ダコスタ    ザフト軍・陸軍・北アフリカ方面軍指令付、民政部・大尉 =卓越した行政手腕も併せ持つ
マルコ・モラシム     ザフト軍・海軍大西洋・地中海方面軍・中佐
シーゲル・クライン    プラント議会議員、評議会内務委員           =人望と卓越した陰謀家、咬ませ犬
ラクス・クライン      政府高官の娘だがアイドル歌手             =お色気要員
3 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 03:51:01 ID:???
1、運命の邂逅、哀しみのプレリュード

漆黒の宇宙に一筋の光が差し込める。オーブ共和国配下の資源衛星ヘリオポリスの宇宙港ドックに連合軍が誇る新型・強襲機動特装艦
アークエンジェル級1番艦・アークエンジェルが滑り込むように入港し優雅な姿を湛えている。
「これが連合の新型艦か」
「はっ、強襲機動特装艦アークエンジェル級1番艦・アークエンジェルです」後ろに控える下士官が答える
「従来のものとはだいぶ違うようだな、G計画これが起動に乗ればプラントのザフト軍など恐るるに足らん」
G計画を推進してきた連合軍の将官は満足そうに眺めうなずき、係留が完了しタラップから脱帽敬礼で降りてきた新型艦・艦長以下
クルーが慣れない習熟訓練の労苦を率先してねぎらった。

同じ頃、連合軍のG計画をいち早く察知した、ザフト軍ナスカ級高速戦闘艦ヴェサリウスが静かに胎動を始めていた。
「アデス艦長、未知の宙域でご苦労だがもう少し、ヘリオポリスに寄せてくれ」
仮面の男ラウ・ル・クルーゼは艦橋で宙域図を指しながら指示を出す。
「了解であります、このあたりの隕石の後ろヘリオポリスから5キロの地点まで接近させます」
体格もがっしりとし艦を任せるにふさわしい風格を備えたヴェサリウスの艦長アデスはしっかりとした物腰で答えた。
「君の腕は信頼している。艦の運用は全て任せる」
「それにしても、連合軍の新型艦を捕捉出来るとは、僥倖でしたな」
「艦長、僥倖かどうかは捕獲作戦をやってみないことには判らないよ」
と、クルーゼは新しいおもちゃを与えられた子供のように瞳を輝かせて答える。

ヘリオポリス内では、プラント・ザフト軍と地球圏・連合軍による戦端が開かれたとはいえ、連合軍側に戦略物資・MSの先端技術
の供与とオーブ本国がまだ旗幟を鮮明に表明していないこともあってか、昨日と変わらず今日も平穏な日常が繰り返されていた。
ヘリオポリス内の重要施設である最先端技術研究所から一台の車が走り去っていく、その中にオーブの主要閣僚でもある
二人が座っていた、カガリ・アスハ官房副長官とレドニル・キサカ補佐官である。
「父上いやウズミ代表も最新MSを開発しているなら打ち明けてくれればいいものを、存外他人行儀だな」
「カガリ様、そうおっしゃられてもウズミ代表は、貴方の立場を政治的に慮っての事でしょう」
「でも、ザフト軍と互角に戦うには今しばらく時間がかかりそうだな」
「大丈夫でしょう、連合のMS技術供与もありますし問題の解決も早いかもしれません」
「そうだといいんだが」
ザフト軍とのMS技術の開きを憂いるかのように瞳を曇らせたカガリを乗せ一路ヘリオポリス外務公館へと車を走らせていた。
その時、閃光がきらめいた瞬間爆発と衝撃波が車中の二人にも伝わる。どうやら研究所の一角にあるMS実験施設の方向である
カガリは色めき経ったが、キサカの判断でヘリオポリス代表部に車を走らせ、情報の収集と事態の収拾に動くことにした。
4 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 03:52:16 ID:???
MS実験施設では、散発的な戦闘が続いていたがザフト軍特殊部隊の猛攻は凄まじく、すでに3機の試作MSが奪取されていた
「ニコル、ディアッカはシステムが起動次第、敵MSで母艦に帰還する。アスランは残りのMSを奪取いいな」
イザーク・ジュールが短いが的確な指示を出す。
「了解」ニコル・アマルフィ、ディアッカ・エルスマンそしてアスラン・ザラが命令を復唱する。
作戦時間の残りはさほど多くは無い。若干の焦りを感じながらアスランは残りのMS2機が格納された工廠へサポート部隊とともに
突入する。整備用の土台に載せられたMSに肉薄するが散発的だが連合軍・警備隊との戦闘が続いていた。
アスランは、視界の隅に何かがよぎり反射的に突撃銃を構え銃口を向ける。一瞬の間をおいてそれが機械仕掛けの鳥だと判別した
瞬間、少年の肩にとまりスローモーションのように記憶を蘇らせる。
「ドリィ・・・・・・・・・・・・・・・キラ・・・・・・・・・・・・・・・」アスランの脳裏に別れた頃の記憶と少し成長した少年の面影が重なり合う。
「アスラン・・・・・・・・・・・・・・・・」見詰め合う少年もまた確かに自分の名前を呼ぶのが聞こえた。
なぜ、こんなところに入ると思い浮かぶが、互いに二の句を告げないで入る。一瞬の出来事だが数時間にも数週間にも感じられる。

パシ横から拳銃の銃声が切り裂き、アスランは咄嗟に物陰に飛び込む。工廠の裏手からマニュー・ラミアス副長がMSコクピットを
確保する射線に回り込む、アスランは銃撃で牽制しながら残されたもう一台のMSの方へ走りこみコクピットへ入り込みシステムの
起動に取り掛かる。
ラミアス副長は佇む少年の方に歩み寄り訝しげに声をかける。
「君は誰、民間人ね」誰何を発しながらも、MSが何者かに奪取され二次被害の恐れも多分にある今、焦りが先行する。
「僕は工業カレッジの学生で・・・・・・・・・システム工学を専攻し・・・・隣りの施設で実験していたんです・・・・・・」
しどろもどろな答えだが今は悠長なことは言ってられない、ラミアス副長は嫌がる少年を強引にコクピットに乗せシステム起動と
発進準備をする。
いち早く起動し離脱に取り掛かったアスランは奪取した機体から燃え盛る工廠を空から眺めつつとどまっていた
「アレは、人違いじゃなくキラに間違いない・・・・・・・・・・・・しかし」まだ動揺を隠せないままだった。
ラミアスはまだ散発的な戦闘が続く中、工廠内の燃料に引火し爆発の振動と容赦の無い熱風、轟音の衝撃がコクピットを揺らす中
GAT−X105ストライクを立ち上がらせた。
突然の再会が、少年達の運命の交錯を加速する
5 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 03:54:24 ID:???
2、漂白の少年(クルー)たち、あらたな戦乱の予兆

ヴェサリウス艦内では入手したデータと鹵獲したMSの解析が行われていた。
「状況はどうだ」クルーゼは、計画が司令部ひいては評議会が満足する出来に終わったことを心から喜んでいた。
「データの解析は順調で間もなく終わります」
「司令部と評議会の動きはどうだ、そろそろ手を打ってくるはずだが」
「ハッまもなく議長声明で、今回の事件は”第3の牙”を自称する過激派の犯行との発表があるはずです」
「欲を言えば新型戦艦も手に入れたかったが、連合が動き出す前にこの宙域を離脱する準備の状況はどうか?」
「こちらも、あと30分で完了です」
「では艦長、本艦は16時に現宙域を離脱する出港準備を整えてくれ」
艦長以下隊員の復唱と出航準備で謀殺されるなか、鹵獲した新型MSの解析中のアスランは予期せぬ友との再会を思い出していた
「キラ・・・・・・・・やっぱりキラだったんだ」今しがたのことなのに、ぼんやりとした感じがするのは再会の喜びなのか
ザフト軍に入隊し志願して選抜されたエリート部隊員となった自分の姿を見られた事なのか判別できずにいた。

プラント評議会では”第3の牙”を名乗り以前からオーブ近隣を騒がせたテログループの犯行声明と亡くなった無辜の人たちへ
遺憾の意を表明し犯人逮捕には協力を惜しまない声明を出していた。
緊急のテレビ電話の会談は紛糾するかもしれないが、あくまでも善意の第三国を演じなければならない。
無論切れ者と名高いオーブ代表ウズミには通用しないと知りながら。
「シーゲル議長、貴国の姿勢には国民を代表して感謝の念をお伝えします」
「ウズミ代表、我々は同じコロニーに住むものとして今回の事件には深甚の想いです、どうか今後一層の友好を築きましょう」
「もちろんです、しかしシーゲル議長なぜかザフト軍製の物が現場で検出されておりますが、だとすれば犯人は巧妙ですな
 テロ支援の疑念も出てきますが出来ることなら、貴国とはテロ撲滅と紛争に関する共同採択を行いたかったのですが」
「ほう、それは初耳です。卑劣な犯人が偽装したのでしょう」内心の動揺をおさえつつパトリックは論点を摩り替える
「友好の証として、貴国に対する最恵国待遇の引き上げと、わがザフト軍のMS技術供与の用意があります。今回の事件を
 受けて共同声明を発表することで合意しては」この狸親父は相変わらず喰えん男だと舌打ちしつつウズミは矛を収める
「いいでしょうシーゲル代表、貴国との友好は我が国も望むところです心を一つにして卑劣なテロを撲滅しましょう」
次官級の会合で合意済みとはいえ、ウズミは内心では事件の死亡者たちへの哀しみの気持ちで満たされていた、何度こんな思いをすれば
いいのか代表たるものの努めとはいえ混迷を深めるばかりの事態に憤りを超えたなにかが心を蝕んでいく。

クルーゼは上がってきた報告書から興味深い物を見つけ出し、頭の片隅に浮かんだ作戦計画を練り始めていた。
機雷散布の位置を設定し、新型戦艦を連合軍難攻不落の誉れ高いアルテミス要塞に誘き寄せ拿捕もしくは破壊する
GAT−X207ブリッツガンダム、ミラージュコロイドが使える機体とは連合も粋なMSを作ったものだ。
これで要塞内部に潜入し指揮系統が撹乱できれば特殊部隊潜入も容易になる。おもわず口の端が笑いで上ずりそうになる。
16時まであと2時間、作戦の承認を急ぐこととしブリッジへ赴くため士官室を後にした。
6 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 03:55:49 ID:???
ヘリオポリス、ドック内部はMS奪取と時を同じくして破壊工作が行われ混乱していた、軍用ドック内に繋留されたアークエンジェル
は被害が一番激しく、当直の仕官は爆発では殆どやられ混乱の最中だった。
先任仕官の一人ナタル・バジルール少尉は生き残った下士官をまとめて緊急の出港準備に入っていた。
受領するはずだった新型MSが、奪取された情報が伝わってきてはいたことも気がかりだが
第2派攻撃を仕掛けられてはこの状況では一溜まりもない、あせりが語調を強める。
次第に情報が集まり始め、生き残った艦の副長でもあるマリュー・ラミアス大尉、ムウ・ラ・フラガ大尉も参集してきた。
「メビウスで外から帰って、この有様では出航はおぼつかないようだな」率直な意見を口にするフラガ。
「次第にクルーも集まりつつあります。3時間後には出航の手はずは整うはずです」とナタル大尉は現状を手短に説明する
「艦長はブリッジに?一機だけになったがG兵器の試作機の引き渡しを行いたいが」
「いえ、艦長は先の爆発で戦死されました。主だった士官は我々だけですラミアス副長いえ艦長」
「私が?」
「はい、私は随伴してまいりましたがラミアス副長は階級も上ですし、指揮の訓練も履修しておられ最適任であります」
ラミアスは同じ階級のフラガ大尉を見つめるが彼は肩をすくめる格好で返事をする。
「わかりました、では引き続き出港準備にかかりましょう」ラミアスは覚悟を決め艦長としての表情で指示を出す。
ウッカリ軍の機密に触れることになった少年キラ・ヤマト以下数名の学生たちも、アークエンジェル内に引き入れ今後の対策を
協議しなければならない、それにしても実質、襲撃現場から此処まで機体を運んでこれたのもキラという少年のおかげなのだが
彼のMS操縦とシステムに関する知識は並みの学生でないことは確かだ、コーディネイターだろうか?
宙の偵察から帰ってきたフラガの説明を受け、敵の脅威と機雷散布の状況からルートをアルテミス要塞に進路を決めて出航した。

そのころ、アルテミス要塞を無血占領したクルーゼ部隊は連合軍の偽装をおこなうなか、虎視眈々とアークエンジェル到着を
待っていた。
7 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 03:56:53 ID:???
3、罠にかかった大天使
ヘリオポリス内ではカガリ、キサカが先の事態の収拾とコロニー内の復旧に腐心していた。
「キサカ、敵の攻撃でコロニーの重要施設がかなりやられたようようだな」
「被害が広範囲にわたるため、今現在復旧の見通しは立っておりません」
「うむ、宙に出ようにも、ご丁寧に機雷まで施設されては生活必需品はおろか緊急の救援物資までままならん事になる」
「緊急に掃海部隊の派遣要請と引き続きライフラインの復旧を最優先で勧めるよう本国とコロニー代表部の調整を行います」
「そうしてくれ、不眠不休だろうが今は市民の安全が最優先だ」なれない非常事態に沈うつな雰囲気になりがちだが
こんなときキサカの精力的な姿勢は助かると思い、自らを鼓舞するのであった。

アルテミス要塞ではアークエンジェル入港の準備が進められていた。
「アークエンジェル進路クリア、3番ドックに入港願います」要塞の官制からのやり取りが始まる。
「アークエンジェル了解、副長操艦」とイラズラ娘のような目でラミアス艦長が見つめる
「副長、いただきました」ナタルは反射的に敬礼で応じる。満足そうな目でうなずき返すラミアス艦長
「ガイドビーコン確認。誘導レーダーオールグリーン、両舷前進半速、進路このまま」
的確に指示を出すナタル副長を見てラミアス艦長は一つ心配が消えるのを感じた。

さてどう料理するかだが・・・・・・新たな司令室の主となったクルーゼは鹵獲の計画をめぐらせていた
入港直後に拿捕するのもなんだが自分の趣味ではない、やはり乗員に悟られずに離艦してもらうのが上策か・・・・
「アークエンジェル仕官を会議室に丁重にご案内しろ。一般乗員は夕刻の食堂にご招待するとしようか」
隊員たちに指示を出し、乗員の拘束への準備が進められる。

アークエンジェル・第1甲板MSデッキでは整備班のコジロー・マードックが訝しげな面持ちで仕事をしていた。
「どうかしたのか班長」見咎めたフラガが気さくに声をかける。
「いえ、少しばかり気になるんですが、たいしたことではありません。」
「その顔はたいしたことに見えないぞ、なんでもいいから話してみてくれ」気さくな声のままフラガは聞き出そうと付け加える
「はあ、この要塞には前の艦に居たときの友(ダチ)がいるんですが、様子が変なんです」
「変とは?」
「それが唯の感になるんですが、友(ダチ)はいつも決まってドック内に自分の整備班の旗を飾るんですがそれがありません
 なにかあったんではないかと」
「たんに忘れたとかじゃないのか?」
「友(ダチ)のジンクスってヤツですから、それは考えられないんですがねえ。これを飾ってから整備した艦は撃沈されてないって」
「ふうぅん・・・・・・・・・」とフラガも考え込む。
「いえ大尉、余計なこと言っちゃって申し訳ありません。気のせいですよきっと」コジローは一転笑顔を作り和ませようとする。
「万が一ということもある。ヘリオポリスの襲撃といい引き際といい敵ながら天晴れだった」真剣な表情で返すフラガ
「よくよく考えると機雷は追撃を防ぐためでなく、我々をおびき寄せるためとも考えられる節もある艦長に進言してみよう」
すぐさまデッキ脇の受話器をとり艦橋に繋ぎラミアス艦長を呼び出す
「万一ということも考えられるから、俺は死亡した事にして密かに艦内に残る、それとあの坊やキラ君も一緒の方がいいだろう」
「フラガ大尉、考えすぎではありませんか?」当然ラミアス艦長の疑問がでる。
「いや、俺は班長のこともあるが機雷の施設が腑に落ちない、アレはよく考えれば要塞の進路をワザと取らせるためかもしれない」
「そこまでおっしゃるなら大尉の思い通りになさって下さい。経歴を偽装しておきます」
「すまない、何でもなければいいんだが妙に引っかかる。これからキラ君と落ち合って隠れるよろしくたのむ」
フラガは急いで整備班長と打ち合わせ、キラと合流するためデッキを離れた。
8 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 03:58:15 ID:???
アークエンジェルがドックに入港しタラップが接続されるとアルテミス要塞のクルーが出迎え、恭しくアークエンジェルの仕官6名が
要塞内の第2会議室に案内された、一堂が室内に入りと同時に数人の突撃銃を装備した警備兵が出迎えドアを閉めた。
会議室の奥で背を向けてアークエンジェル仕官達の到着を待っていたクルーゼが向き直り、鷹揚に出迎えの言葉を発する。
「ようこそ、アルテミス要塞へアークエンジェル士官諸君」クルーゼの挨拶とともに警備兵達は銃口を向け、ラミアスたちの両手を
上げさせ所持していた拳銃を没収し始めた。
「なるほど、そういうことですかザフト軍はいつから内職で”第3の牙”家業までやるようになったんですか、
 特殊部隊隊長、そうラウ・ル・クルーゼ少佐」
「私も少々有名になったようですな、うれしいですよ。それにしても私と勝るとも劣らない”エンディミオンの鷹”ムウ・ラ・フラガ大尉
 が見当たらないようですが、うちの情報部のミスですかな」
「仮面を付けた貴方ほどの有名人は居ませんよ。いや、助かりました実のところ私達はザフト軍を待っていたんです。」
突然の申し出に、居合わせたザフト軍兵士達は唖然となるなかラミアスは平然と続ける。
「私達はヘリオポリス内で抗生物質の密造と密輸をしていました。これはココ居る士官達しか知らないことですが、それを嗅ぎ付けた
 フラガは脅しをかけてきたんです、この秘密がばらされたくなければ俺の言うことを聞けと、無理やり愛人にされ密輸資金のネコババ
 だけでは飽き足らず、横に居るナタルを次の愛人にして今度は軍上層部と大々的にやろうと持ちかけられたんで始末して、先の騒ぎを
 利用して機雷に接触して死んだことにしました。それで連合から脱走する機会を窺っていたんです」と言いおわると大粒の涙を一滴流した。
無言で聞いていたナタルは肩を震わせ叫ぶ
「あんた達はそんな事までやってたのか!!これが非常時でなければこの手で、いや軍法会議ものだ。フラガ大尉の姿が見えないと思ったら」
「何をいまさら、ムウを垂らしこんだのはあんたの方じゃないの!このドラ猫が」ラミアスがナタルに向かって摑みかからん勢いで罵る。
「なんだと、このオバハンのくせに、上官だからと黙っていたがムウはあんたとは手を切るつもりでいたのを知らないの、とっくの昔に
 私のいい男になっていたのに」と勝ち誇った女の目線でかえすナタル。
「勝手にしゃべれとは言ってない、まあ、フラガのことはいい、その密輸品はどこにあるんだ?」
聞き飽きたと言う表情でクルーゼは尋問調で問いただす。
「その前に、私達がプラントで亡命できると言う証明をしてもらいたい。なら私達はザフトに進んで協力しましょう。
 でないと品物の在り処も、今後ヘリオポリス内での密造と密輸にも協力しません」きっぱりと言い切りラミアスは押し黙った。
「いいだろう、私の権限で議長に恩赦の手続きを取ろう、早く在り処を言え」クルーゼは焦り気味に答えた。
「恩赦が先よ議長の署名入りでね」微笑んでラミアスは返す。

格納庫内のメビウス燃料タンク内に隠れたキラとフラガは通信機からの連絡で予感が当たったことを悔やんでいた。
「当たって欲しくなかったが、ザフト軍だとのラミアスからの信号が来た」
「じゃあやっぱり」弱弱しく聞き返すキラ
「しゃあ〜ねぇ、救出に取り掛かる。行くぞ」フラガは声をかけて軽機関銃と閃光弾を携えてタンクから這い出る。
9 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 13:11:16 ID:???
4、大天使の羽ばたき、虎口からの大脱出。

MSデッキを急襲し警備と思しき3人を倒したフラガとキラはストライクのコクピットへ駆け寄る。
「班長にソード装備のまま準備してもらっていてよかった、いいか坊主15分後キッカリにストライクを発信させて騒ぎを起こせ」
「坊主じゃありませんキラです、15分ですね」
「そうだ、キラ・・・・では時間を合わせる。3・2・1いまだ、では行ってくるぞ」
「フラガさん、気をつけて」
右手の親指を付きたててウインクで挨拶し、フラガは要塞を目指して行った。

フラガは通路内の警備兵を一人倒し、左手のハンディターミナルに映された要塞内の地図を指し、警備兵に銃をこめかみに当てて尋問する
「アークエンジェルのクルー達はどこだ!早く言え」凄みに圧倒され兵士は地図を指差す。
「大食堂のフロアか、間違いないな」うなずく兵士を銃で殴り気絶させる。
ドアの隙間からフロアの様子を探る。5人6人か・・・・やるしかない。時間まで10秒・・・・閃光弾のピンを引き抜き投擲体制をとりつつ
ドアを蹴破る体勢をとる。

10秒前・・・・・・キラはシステムを起動させMSデッキでストライクをランディング体勢に入らせゲートのハッチをオープンさせた。
3・2・1・ゼロ・・・・ムウが食堂に突入し閃光弾を投げ入れる。キラはストライクを発進させ要塞のゲートにシュベルトゲーベルを
突き立てる。

突入したムウは閃光弾の光の中、軽機関銃で確実に4人まで仕留める。
「全員伏せろ!!」叫びながら5人目・6人目を拳銃で仕留める。
「ミンナ無事か!アークエンジェルへ戻る急げ」励ますような声をかけ、クルーを引率して通路を引き返す。
「ラミアス艦長は」コジローが心配顔で尋ねる。フラガは、
「艦長なら大丈夫だ、自力で脱出するさ」こともなげに片目をつぶり微笑んで返す。

シュベルトゲーベルを振りかざし要塞ゲートをほぼ破壊しつくしたキラは騒ぎで出てきたMSに唖然とする。
「奪取された4機のMSか・・・・・」位置取りを間違えたら不味い。
逃げた方が早いかと要塞内部を逃げ回るがドック内では早々に逃げ道を塞がれる。外しかないと思い定めてゲートに突っ込む
逃げるストライクを容赦なくビームが発射され爆発で要塞が振動する。
「くっ・・・・・・・・」辛くも要塞の外へ飛び出したストライクは、シュベルトゲーベルを構えて、敵が飛び出してくるのを待ち受ける。

「議長の了承は出た。在り処を話せ」クルーゼは電話越しに問い詰める。
「証明が先」冷静にラミアスが答えて見つめ返す。電話を押し付けるように真直ににじり寄ってくる。
その時、爆発音とともに要塞内が激しく振動した。ラミアスは鋭く目配せをし
「ナタル!!」と叫ぶ。
と同時に息を合わせたナタルの蹴りがクルーゼに飛ぶ。間一髪クルーゼは身を捩じらせて蹴りを交しつつ、銃に手をかけるが
同じくチャンドラ、トノムラ、ノイマン、パルの4人がザフト兵に飛び掛り突撃銃を奪っていた。
一瞬の差でノイマンの奪った突撃銃がクルーゼ目掛けて乱射される。
苦悶の表所を浮かべ後方へ退くクルーゼを見た6人は乱射で牽制しつつ会議室を後にしアークエンジェルへ急ぐ。
「それより、さっきの話は本当ですか、二人ともフラガ大尉の愛人だったなんて」
情けない声でチャンドラが申し訳なさそうに聞く。
「むっ」射るような目でラミアスとナタルが同時に振り向きチャンドラを睨んだ。
10 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 13:15:52 ID:???
司令室には苦悶の表情のままのクルーゼが飛び込んできて指示を出す。
「状況を報告しろ」
「はっ、アークエンジェル内のストライクが起動し要塞内部で暴れだしました。抑えるために我が隊のMS4機も出ました」
下士官の報告を受け粗方の状況をつかむと
「要塞を破壊するような発砲は控えるよう命令を出せ」と指令を出し、事態の収拾も図る。

アークエンジェルではドック内とタラップを挟んで銃撃が続いていたが、いち早く出港準備を整えていた。
艦橋に上がってきたラミアスほか仕官達より先についていたフラガが
「艦長待ちくたびれましたよ、出港準備は整っています、いつでもご命令を」と笑顔で出迎えた。
「了解。アークエンジェル発進。各種兵装起動しアルテミス要塞を脱出します。」とラミアスが水に帰った魚のように指示する。
「アークエンジェル発進します、両舷全速」トノムラが舵を切り発進させる。
「各種兵装起動よし」ナタルの復唱が続く、
「要塞ゲートを完全に破壊する。ゴットフリート1番2番照準要塞ゲート、ナタル射撃!」
「射撃いただきます。ゴットフリート1番2番照準・要塞ゲート・・・・・・・・・照準よし。撃て」
掛け声とともに主砲の衝撃と閃光が轟きゲートが吹き飛ぶ。アークエンジェルが無事通過できる大きさだ。
「引き続きキラ君の援護に入る。ストライクの現在位置の特定急げ」ラミアスは次の指示を出す。

4機のMSがストライクを挟撃する中。今回のアスランは他の3人とは明らかに違う動きを見せていた。
「キラ・・・・なのか」もしかしたら、という思いが動きを消極的にさせていた。
キラはソード装備のストライクでは如何せん分が悪く逃げ回っていた。
「逃げるな勝負しろ」消極的なアスランの動きが余計に癇に障り、イザークはコクピットで怒りをぶちまけていたが
それは無理な相談である。多勢に無勢とくれば、真っ向から勝負する方が神経を疑うような状況だ。
そんなとき、ラミアス艦長からストライクへ通信が入る。
「キラ君、砲撃で援護する。宇宙基準面でN32/W30方面へ逃げろ。カウントを開始する10秒前」
キラにとっては救いの神のような通信だったが、必死のあまり気を緩められない
「くっ・・・・・」寸前で攻撃をかわしながらカウントする。
「5・4・3・2・1・ゼロ!!」急速離脱で指示された方向へ逃げるストライク。
「逃すわけには」とイザークたちが追いすがろうと方向転換をかけた瞬間あたりに砲撃の衝撃波が響く。
「くそ・・・もうすこしのところで・・・・・・・・・・・・一時退避だ」イザークの通信で全機撤退する。
絶妙の連携を見せたストライクがアークエンジェルに無事帰還する。
「キラ君。よくやってくれました。感謝します。」ラミアス艦長の通信が入る。
「いえ、こちらこそ、無事に脱出できて何よりです。」少し憔悴した声で答える。
MSデッキを降り、トールたちのいる食堂へ帰るキラ。その後姿を見送るようにフラガ大尉がグラスを3つ提げて
入ってきた。
「コジロー班長」そっとグラスを出しチューブに入った琥珀色の液体を注ぐ。
「大尉」二人で3つ目のグラスに挨拶をし同時に飲み干した。
コジロー班長はフラガ大尉が差し出した、この日の琥珀色の液体の味は少し塩味に感じた。
11通常の名無しさんの3倍:2006/11/03(金) 13:38:19 ID:???
乱立をいつまで放置するのでしょうか?
12通常の名無しさんの3倍:2006/11/03(金) 19:10:34 ID:???
スレを乱立させてアンチのせいにする
姑息な手口晒しage
13通常の名無しさんの3倍:2006/11/03(金) 20:07:04 ID:m0ftq3HY
やっぱキャラがカエルじゃ無理でしょ
14 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/03(金) 22:30:22 ID:???
全員生存の方向でプロット考えてあるので、書けるだけ載せるよ。

ただ、ラクスは途中で消えてもらうかもしれないのと
凸はザフトに残ると過酷な運命が、
軍を脱走すると督戦隊かMPと情報部に狙われて過酷な運命が〜あっ同じだね
15 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/05(日) 00:01:34 ID:???
5、たった一つの冴えたやり方、アークエンジェルは電気羊の夢を見る

ヘリオポリスでは指導部の努力の甲斐もあり急速に復旧しつつあった、掃海部隊も到着し既に半数の機雷を除去・処理を終えている
1週間後の学校再会や社会基盤が整い市民が日常の平穏を取り戻しつつある手ごたえを確認したカガリは次の着想を描きつつあった。
ヘリオポリス代表部官邸で、カガリは本国とのテレビ電話を繋げた
「父上お久しぶりです、重要資源の眠るアフリカ戦線を視察してまいります。補給の手はずをお願いします」
「いきなり用件からかまったくお前は、戦略的に重要な地域には違いないが、カガリお前のことだ視察だけではあるまい」
「さすがは父上、ご賢察です。現地ゲリラの支援だけではなく住民の復興銀行の設立も考えておりますODAの準備もお願いします」
「その件は善処しようそれとカガリ、父の言うことも聞いて顔を見せに帰ってきてはくれないか、死地に行かせるのは忍びんのだ」
「お戯れを、申生は内にありて危うく重耳は外にありて安きを得たりですよ、ご心配は入りませんキサカも連れて行きます」
「いまさらとめても遅いか、とにかく目処が付いたら一度帰ってきてくれ」
「判っております父上では」
カガリは電話を切り、すこしばかり興奮気味に出発の準備に取り掛かる。
アフリカは名将と名高いザフト軍バルトフェルドが進駐している。十分心してかからないと現地住民もプラントになついている公算が高い
いや、その前に治めていた連合が嫌われているといった方がいいのかもしれないな、とカガリは自分なりに思いをめぐらせた。
相手にとって不足は無しか・・・・・・・・・・現地ゲリラとの連絡は付いていたが
一抹の不安とともに10日後カガリは中央アフリカに降下しゲリラ部隊と合流した。

アークエンジェル艦橋では、今後の進路について話し合われていた。
「当初の計画では試作MS・G兵器5機を受領し、アークエンジェルに搬入・月面基地までの航路で艦内慣性訓練を行いつつ
 アラスカ基地・第2ドックおよび隣接して建設されたG2工廠にてG兵器の量産体制に入る手はずでした」
手短にG計画の要点を説明するナタル、後を引き取りラミアスが
「思わぬ襲撃によりヘリオポリスにて試作機4機を、ほぼザフト軍と思われる部隊に急襲奪取された今、状況は大きく変わったと
 見ていいでしょう、ナタル月司令部からの命令は」
「大きな変更はありません、月基地に向かいアラスカへ降下せよとの指令電文が届いております」
ラミアス艦長が思案のしどころと沈うつな表情で続ける。
「では問題は航路ではなく現在の装備でザフト軍の追撃をかわし、月面基地を経由しアラスカ基地へ行くのは難しいということね」
「追撃してきているのが、ザフト軍のクルーゼとなれば状況は切迫していると考えていいでしょう。なにせしつこい男ですから
 執拗な追跡があると見て間違いない」
フラガがラミアスの後を付け加えた。緒戦からの数々の戦場を経た発言は凄みが違うフラガもクルーゼを相手にするのは大儀の
様子が見て取れる。
ナタルが月面基地へのルートをスクリーンで示しながら説明を加える。
「でどうされます?主なルートは二つしかありません。ちょうどこの宙域がザフト軍第3艦隊の護衛艦の哨戒範囲になりますが
 月面基地への最短コースです、もしくはデフリと隕石群の隙間を縫うこの迂回コース」
「護衛艦が待ち受ける宙域へ飛び込むのは危険けど、迂回コースを取れば包囲殲滅される危険が増えるのは得策ではありません。
 まして、後ろの相手がクルーゼならなお更のこと、最短コースを最大戦闘速度で突入し敵護衛艦を各個撃破します。」
ラミアスは艦長の職責にふさわしく毅然とした態度で言いきり、付け加えた。
「今回の作戦は前方の艦隊をすばやく撃破し宙域を離れることが大前提になります。万が一後ろのクルーゼ隊と思しき
 艦に捕捉されると包囲されたも同じでしょう。そうなると包囲宙域を脱出し、こちらに有利な新戦場を作り出さないと勝機は
 ありませんが、クルーゼが相手では簡単に脱出させるような手落ちは無いはずです。各員心して準備に取り掛かってください」
短く敬礼すると各クルーは直ちに準備に取り掛かる。
16通常の名無しさんの3倍:2006/11/07(火) 21:23:01 ID:???
age
17 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/08(水) 00:32:41 ID:lUVSBjPJ
食堂ではキラと彼の工学部の友人たちと昼食を終え歓談していた。なかでも心安いトールが切り出す。
「キラ、この前MSに乗ったけどこれからも乗るのか?」
「それは、まだわからないよ。正式に軍属になったわけでもないしね」
「でも、乗ってくれって言われたら、また乗るんだろ」
「ああ、そうなると思う。どうも人手が足りないらしいんだ、でもホントのところ僕が乗ってもいいのかなっていうのもあるんだ」
「そうだな、助けるとか守るって言っても。戦争には違いないんだし、間接的には人を殺すってことにもなるんだから嫌だよな」
「うん、あれは軍の物だしMSに乗ってどうこうするのは動かしてるっていうか、操縦しているだけなんで戦争とか、それで
 人が死んでいるって言う実感はないんだ。」
「でもキラじゃないとだめなんだろう。」
「う〜ん、極端に言えば動かすだけなら誰でもいいんじゃないかとも思うんだけど、巧いとか慣れてるのもあるから今のところ
 僕なんだろうな」
「そうか、ボクは正直キラがうらやましいよ、こんなときに何も出来ないなんて、それでもいいかなとも思うんだけど、やっぱり
 なにかした方がいいんじゃないかって言うか、なにかボクも役に立てないかな。」
キラはトールの肩に手を当てて感謝の気持ちで伝える。
「ありがとう、トール気持ちだけでもうれしいよ。たぶん、フラガ大尉に言えば案外なんでも手伝えって事になるんじゃないかな」
「なら、ボクも何か手伝うよ。同じシステム工学だから整備とか色々手伝えたらいいけど。」
「おいおい、二人で勝手に盛り上がるなよ。オレもなにか手伝えることあるなら協力するぜ」サイ・アーガイルも加わる。
「サイ、でも手伝うって言ってもなにやらされるのか見当も付かないけど」
「そりゃそうだ・・・・・・・・・」
その後、三人の笑いが食堂内で木魂する。工廠で戦闘に巻き込まれそのままMSを運搬し駆けつけた友人たちとアークエンジェルに
乗せられたキラにとって久しぶりの笑いだった。
「ちょっと、いやらしいわね。三人だけでヒソヒソと何はなしてるのよ」
微笑みながらミリアリア・ハウが食後のコーヒーを片手に持ちキラ達のいるテーブルに座る。
「何って、やらしいことじゃないよ」あわてた風にトールが反す。
「で、なにするの手伝うとか言ってたけど」
「何かした方がいいんじゃないかって言うだけで、コレと言ってはまだ何も・・・なあ」
ちょうどフラガ大尉がやってきて話に加わる。
「みんな揃っているな、話があったんだ」
フラガは気さくに、キラたちがいるテーブルに腰掛けつつ話し始める
18                :2006/11/09(木) 20:56:44 ID:???
    ̄ ̄ ̄l/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ∧_∧
    ( ´・ω・`)     ∧_∧
    /     \   (´∀` ) ハハハ
.__| |    .| |_ /      ヽ
||\  ̄ ̄ ̄ ̄   / .|   | |
||\..∧_∧    (⌒\|__./ ./
||.  (    )     ~\_____ノ|   ∧_∧
  /   ヽアホか       \|   ( ´_ゝ`) 何言ってんだコイツ?
  |     ヽ           \/     ヽ.
  |    |ヽ、二⌒)        / .|   | |
  .|    ヽ \∧_∧    (⌒\|__./ /
19通常の名無しさんの3倍:2006/11/10(金) 00:46:38 ID:???
age
20通常の名無しさんの3倍:2006/11/10(金) 00:55:35 ID:???
普通に面白かっただろうが。
21 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/10(金) 22:33:09 ID:???
「みんな、成り行きでこの艦に乗ることになって、正直驚いていると思う。」
フラガは率直に自らをさらけ出し訴えかける。
「おれ自身は、すまないことをしたと思っている。でも軍の秘密を守るためでもあるし、万一秘密を知った君達が敵に狙われたり
 しないためでもある。それを理解して許してほしい。」
キラたちは押し黙ったまま無言でうなずく
「それにキラ君には厚かましいお願いだがこのままストライクに乗ってほしい、キラ君がヘリオポリスで成り行きとはいえ
 機動プログラムを書き換えてしまった以上、君より他に巧く動かせるものもいない」
「正直。オレはパイロットだがオレがストライクを動かしたんじゃスグにやられるのがオチだ。この通りだ頼む」
フラガは誠意をこめて頼み込んだ。
「フラガ大尉、お気持ちはわかりました。ソコまで頼み込まれては断れませんよ。」
キラの言葉にフラガの若干張り詰めた表情がほころぶ
「でも、このチューブのコーヒーは勘弁してもらえませんか」サイがおどけた調子でその場を和ませる中、フレイ・アルスターは
そっとその場を後に自室に引き取った。
「さっき僕たちで話していたんですが何かすることはありませんか?」
キラだけに負担をかけまいと、トールが先ほど固めた決心を打ち明ける。
「そんなことなら、山ほどあるぞ。」フラガ大尉は喜んで後の話を続けた。

「で結局ストライクの整備かよ」サイが不満げにもらす。
「そういうなよ、サイなかなかこのシステム面白いぞ」トールはビームサーベルを使用した格闘プログラムを解析しながら続ける。
「なあキラ、この格闘のプログラムはチェスのロジックを応用しよう、8方向プラス1で最善の手を虱潰しに読ませて後の先を取る
 ようにロジックを組み立てよう。」
「ああ、そうだね任せるよ」キラはキーボードを操作しつつ返事する。
「例えば、こちらから仕掛ける時はアクチュエーターの動作とジョイントにかかる負担、それとココの横軸ベアリングはおそらく特殊な
 合金だと思うけど、この慣性モーメントの運動データから、特に振り下げる動作の方が、速さと負担がかからないということが判った
 そこで、ビームサーベルを抜く一連の動作から連続した動き、右上から左下への切り下げ、袈裟切りだな。ここから足を
 入れ替えて前進と反対側の切り上げにつなげる。」
トールが説明しながらプログラムを組み立てる。
「なるほど、これなら一段目をかわされても2段目で対応できる。」サイがトールを手伝いながら補足する。
「このマニューバを基本に色々組み立ててみた、あとは若干の先読みとセンサーから読み取った相手の動きでほぼ対応できると思う。」
「あと、このプログラムはなんだい。」
キラが実装前のプログラムを指して聞くと
「これは、ヒミツ〜いや武器が無いときの最後の技だよ」トールは意味深にはぐらかす。
「白刃取りか?ただの頭突きじゃないだろうな?」
「サイじゃあるまいしボクはそんなことしないよ」
「オレならドロップキックかDDTだよ」
「サイはプロレス好きだからな。」
やっぱり仲間との作業は良いキラも笑いの中に自然に入る。
22 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/10(金) 22:42:47 ID:???
「キラが今作業している射撃の方はどうする?」
手伝いを終えたサイが、手持ちぶたさなのか聞いてくる。
「地上なら重力を計算する必要もあるけど、もっともデータが少なすぎてどうにもならないけど、偏差射撃を極めるしかないかな」
「ソコが肝だな、相手の武器より初速が速ければ到達も早い、先の先を制することが出来る。」
サイが大きく頷きながら無遠慮に続ける。
「ビームライフルの初速と距離、このデータでは1500mまでだけど。」
「一般のライフル射撃で最高1200位だから、光学上はその辺りが限界じゃないかな、あとは補正をかけたら良いと思う」
一通り作業を終えたトールも参加する。
「ジンの兵器のデータが揃っていれば同時に撃っても、こちらのライフルの初速が速くて解析が正しければ打ち勝つことが出来る」
「それと、回避マニューバを連動させれば理論上は完璧だけど、そう巧くいくかどうか」
「特に奪取されたって言う同じシリーズなら射撃は互角かな。」
「同じビーム兵器だからな、ならプログラムでリミッターを解除するか」
「なあ、キラ。解除の操作はキラに任せるとしてもプログラムを組んで置こうか。難しそうなのはキラに頼むけど」
3人で分担しつつ作業を進める、いままで一人で抱え込んでいたものが和らいだ気がし友達の存在を一層ありがたく思うキラ
もっとも作業の大半はキラが行ったのはいうまでも無い。

アルテミス要塞では連合軍の捕虜の運搬と、後任の要塞指令官となる左官との引継ぎ、および新たな指令アークエンジェル追撃の
任務を拝命しドック内は特に煩雑を極めていた。
要塞の重要機密に当たるものは機密保持を図られたので急襲する前に若干破壊されていたが、それでもあらかた復元・解読作業も
終えていた。そのなかにアークエンジェルに関する資料も目聡く見つけたクルーゼは、次なる追撃任務のため資料を反芻していた
所だった。
「アークエンジェル級か、それにしてもあの艦長中々やるな、先日は一杯食わされた。」
独り言のようにつぶやいた後、考え続ける。
あの艦長ならこの後どうするかだが、おそらく護衛艦を強襲して直進するか、追撃できないような迂回ルートを進むかのどちらか
だがはたして、彼・いや彼女の人となりでは直進か・・・・・・・・・・・・・私ならではの考えが入っては見誤る恐れがあるな。
クルーゼはアークエンジェルと艦長であるラミアス大尉の資料を見つめ一つの答えを結論づけた。
訓練・指揮評価A++ 評価を下したのはハルバートン提督か・・・・・・・・・・彼が直接評価するほどの人物でもあり、彼が理想とする
であろう指揮をして評価されたのなら、間違いなく直進だ!!ハルバートンなら必ず直進するに違いない、直進して最短コースを取る。
迂回してやり過ごすよりも挟撃されることの方を嫌がるに違いない彼はそういう人物だ。
どのみち早く出撃するに越した事は無い。

満足そうな笑みを仮面の下に隠しクルーゼはひとり浸っていた。それは軍人の業なのか好敵手の出現に喜ばずにはいられなかった。
23 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/12(日) 15:18:22 ID:???
( ^ω^)当面戦闘シーンが続く展開だけど
( ^ω^)ラブらぶなシーンも入れないとフレイに死亡フラグが立つから
( ^ω^)がんばるよ
24 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/12(日) 18:42:54 ID:???
6、敵宙域突破、最後の国境線

敵の哨戒宙域を航行中のアークエンジェルでは警戒態勢が命じられ、其々の部署でまんじりともせず過していた。
パルがレーダーが捕捉した物が敵艦と解析し張り詰めた緊張が一気に高まる。
「敵艦レーダーに捕捉、ローアシア級3船を確認」
ラミアスが続けて指示を下しアークエンジェルは一瞬にして戦闘体制に切り替わる。
「総員戦闘準備、各種兵装起動、メビウスとストライクの発進急げ、フラガ大尉、キラ君、すべて打ち合わせどうりに、準備が整い
 次第発進願います。」
カタパルトデッキでは先に準備完了したメビウスがスロットルを開けて発進する
「ムウラ・フラガ、メビウス出る、キラ君遅れるな」
「ハイ」
続いて、ランチャー装備に換装したストライクがカタパルト接続を終え発進準備が完了した
「キラ・ヤマト、ストライク発進します」
アークエンジェルを発進した2機は青白い光を放ちながら、宇宙の闇を切り裂くように飛び去る。

「ナタル火器管制。両舷全速、面舵5度。ローエングリーンの射線を取る。」
「火器管制いただきます。ローエングリン1番2番照準、敵ローアシア級1番・・・・撃て」
ザフト軍ローアシア級が探知するより早く、攻撃を開始したアークエンジェルが一歩リードする形で始まりローエングリーンを
2射撃続けたあとは、敵MSを巻き込む艦対戦へと替った。
「続けてゴッドフリート照準、スレッジハマー装填急げ、敵MSが出撃する前に出来るだけ損害を与えたい。」
ザフト軍ローアシア級艦内では、アークエンジェルが放ったローエングリンに不意打ちを喰らう形になり混乱を起こし
また、兵装やカタパルトに命中しMSがすぐに出撃できなかったのも、アークエンジェルに幸いした。

上空からローアシア級を俯瞰するように位置取りした2機、メビウスとストライクは敵艦のMSカタパルトが始動するのを見計らって
攻撃に移り。ランチャーストライクのインパルス砲・アグニでカタパルト付近を狙い打つなか、IFFが敵MSジンが6機出撃したこ
とを伝える。
「キラ君、予定どうりフォーメーションを組むぞ」
フラガは歴戦の猛者にふさわしく、ジン6機を目の当たりにしてもひるむことなく、機体を操り堅牢なストライクの援護もあり
今まで以上にジンを翻弄し1機また1機と損傷を与えながら、逃げるかのごとく見せ掛けアークエンジェルの射程距離に誘導する。
キラもまた、事前のプログラム調整が良かったのか、はたまたストライクの性能かアグニの威力も凄まじく敵艦に多数の損害を与え
敵MSに対しても無難に応戦できジン2機を倒す戦果を上げた。

前方の敵艦を何とかやり過ごすことに成功し、警戒態勢に戻った所に今度は後ろから追撃してきたナスカ級をレーダーが
捉えた、MS4機の機影も確認し追撃してきたのはクルーゼであることを物語っている。
「一難去ってまた一難か、出撃準備いそいでくれ」
フラガが整備班に檄を飛ばす中、ストライクもエネルギーの切れたランチャーからエール装備に切り替え作業が進められる。
25 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/13(月) 00:50:15 ID:???
ナスカ級ヴェサリウス艦橋ではクルーゼが臍を咬んでいた。ローアシア級を3船も沈めるとは、さすがに新鋭艦のことはある。
前後に挟撃するつもりが各個撃破されるとは、あの艦長やはり唯ならん人物だ、ひいては私の思惑の障害になるやもしれん
「艦長そろそろ逆に敵の宙域に入りかねん、十分注意してくれ、イザーク」
「はっ」
「挟撃は出来なかったが君の手腕に期待するよ、存分にやってくれたまえ。」
「はっ、必ずや足付を仕留めてご覧に入れます。」
敬愛する上官に声をかけられたイザークは血気盛んにやる気を見せた。それに対しクルーゼは内心、敵宙域に入る危険を悟りながら
むしろ暴走を誘発するイザークに期待し、危険よりも敵を葬り去る方を優先した。

「艦長このまま振り切りますか」
ノイマンが操舵の指示確認をかねて聴く。
「このまま諦めてくれる相手でもなさそうね。大きく右にターンして迎撃する。対MS戦準備」
「フラガ大尉、キラ君、発進願います。」
「了解、こっちは準備OKだ。キラ君先に出るぞ。」
フラガは愛機メビウスの出番を待ちかねたように発進させた、キラの駆るエール・ストライクもそれに続く。

メビウス&ストライクも見事なコンビネーションを見せるが、今度の相手であるG兵器4機はザフト軍エリート選抜の精鋭部隊
もとは同じ計画の兵器同士とはいえ苦戦を強いられた。しかしアスランの登場するイージスは今回も精細を欠いていた。
26 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/13(月) 00:52:18 ID:ps0XCrGR
このまま、ストライクと一対一に持ち込んで、通信のチャンスを作ればハッキリする。アスランはキラが操縦している恐れを
抱きつつストライクにビームサーベルで格闘に持ち込み通信の機会を窺う。
「キラ・・・・・・・・キラなんだろう、なら返事をしてくれ。ボクは君とは戦いたくない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「アスラン・・・・・・・・・・・・・・・」
「キラやはり、その機体に乗っているのはキラなんだな」
「アスラン・・・・・・・・・・・やっぱりアスラン・ザラ・・・・・君なんだな」
「キラ、なぜその機体に乗っているのかは知らないが、君とは戦いたくはない投降してくれ」
「アスラン、君こそなぜザフトなんかに、戦いをするような君ではなかった」
「状況が変わったんだ、キラ、君はコーディネイターだ悪いようにはしない頼む」
「それは、出来ないあの船には友達がたくさん乗っている。」
ビームサーベルの鍔迫り合いを続け揉み合う2機にイザークが駆るデュエルがビームライフルの乱射で割ってはいる
「アスラン・・・・早々に決着を付けろ。」
割って入るデュエルに対し、距離をとり再び間合いを計るストライクとイージス、キラとアスランは互いに機会を狙いながら
デュエルとは逆方向に回り込み、再びサーベルを切り結ぶ。
「アスラン、君こそ僕達を見逃すことは出来ないのか」
「そんなこと出来るわけない、軍に入った以上連合の船は敵になったんだ、キラこそ何とかあの船から下りてくれ」
再び離れて距離を測る2機に対し、メビウスとデュエル・バスターが間に入り再び接触する機会が巡ってこないまま
連合軍の宙域に入り、連合軍第8艦隊所属の護衛艦3船が戦闘宙域に入ったのをうけてナスカから退却の信号弾が上がる。

アークエンジェルに無事帰還したキラだったが親友との予期せぬ再会に心を痛めてコクピットからすぐには出られなかった。
「キラ君、よくやってくれました。ありがとう」
ラミアスの労いの言葉には返事をしたものの、心は晴れることは無かった。
27 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/13(月) 00:55:22 ID:???
7、月面基地

護衛艦とともに月面基地に向かったアークエンジェルは、そのまま補給を受けアラスカ本部へ降下することになったが、両軍とも
北米の降下ポイント確保を巡り軍を展開していた。
アークエンジェルでは第8軍及びG計画の推進者でもあるデュエイン・ハルバートン提督が艦内と残されたG兵器ストライクの視察
に訪れていた。
「ラミアス大尉、良くここまで乗り切ってくれた感謝するよ。」
「はっ、光栄であります。」
「G兵器を強奪されたのは遺憾だが、あの事態では致し方ないと上層部では判断している君が気にすることは無い。」
ハルバートンは乗員を一人ずつ労いながら、ストライクの格納デッキまで足を運び視察する。
「君がキラ・ヤマト君だね。話には聞いているよ」
「はい」
「君はコーディネイターかね、隠す必要は無いよヘリオポリスなら当然だからね、戦火を逃れてあのコロニーにいる人は多い」
「はい」
弱弱しくキラは返事を返す。
「でもコーディネイターとナチュラルの違いは何かな、高い運動能力と優れた反射神経、もちろん並外れた知性もあるが
 それは、この過酷な宇宙で生活するためのものだったはずだ、降り注ぐ放射線から身を守るには余りにも人類は脆弱だ
 地球という揺り籠なくしては、満足に生存を保障できるものではない。
 しかし、悲しいかな人類は違う存在を憎みあうようになってしまった。キラ君だったね、君はこの境遇を苛むことなく
 互いの架け橋になるよう頑張ってくれ、私から言えるのはそれだけだ。 この船と仲間を頼むよ。」
キラの瞳を見つめ力強く手を取り、硬い握手をしてハルバートンは旗艦に戻った。
28 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/13(月) 01:00:49 ID:???
ラミアスの艦長室ではナタルがフラガを伴って訪問していた。
「ナタル、あらたまって用件はなに」
ナタルは意見を言っていいものかどうか自答するように視線を下に向けたままだった。
「ナタル、貴方が私に拘りを持っていることは判りますが、積極的に話し合いの機会を持とうとしなかった私ににも
 非はあります、この艦は今まで以上に危険な任務になることだけはハッキリしている今、率直に言ってくれませんか」
ナタルはラミアスの言葉にハッと居住まいを但し、今度はまっすぐにラミアスの鳶色の瞳を見つめながら
「かように含むところがあるように見受けられたのなら申し訳ございません。今ひとつ考えが纏らなかったものので躊躇
 しましたが、フラガ大尉とは意見が食い違ったのですが、ハルバートン提督がヘリオポリスの件を不問に付したことを
 受けて今一度アラスカ本部にも上申書を提出した方が良いかと愚問いたしました。」
ナタルは蟠りが解けたこともあって率直に意見を具申する。
「では、アラスカ本部ではこの問題を蒸し返すと・・・・・・・・・・・・」
「はい、G計画はハルバートン提督の後押しがあればこその計画です。アラスカには計画を良く思わない者もいると思われます」
「フラガ大尉はどう思われます。」
ラミアスはフラガのほうに向き直りまっすぐ見つめる。
「おれ、いや本官は、薮蛇になるのではないかと思いますが」
「差し出がましいようですが、この機を捉えて上申しておかなければ、いずれ査問会が開かれると愚考します。」
「なるほど、提督のお墨付きが出たこの機会を逃しては、いずれ査問会が開かれると」
ラミアスは少し上を向き天を仰ぐように天井をみあげる。室内の蛍光灯がまばゆい光をそそぐだけだが一点を見つめて呟く
「権力というものは、いつ何時、牙をむくか判らないという事か」
立場を間違うと命取りになる、ナタルはおそらく連合軍高官を勤め上げた父上の後姿を見て自然に権力の恐ろしさを学んだのかも
しれない、重い沈黙が支配する中、ラミアスは上を見上げたまま考えを巡らした。
「判りました、ナタルあなたの言う通りです。上申書をアラスカ本部に送りましょう。」
ラミアスが微笑んでナタルの手を握る。いまアークエンジェルは得がたい副官を迎えた。
29 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/13(月) 12:21:58 ID:???
( ^ω^)いちおう保守
( ^ω^)政治は進むけど恋愛は進まねぇ〜
( ^ω^)(巨乳×チチゆれ)+魅惑のクチビル=いくのが礼儀 byフラガの法則
30 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/13(月) 22:09:18 ID:???
( ^ω^)過疎でも突き進むぉ、がんばるぉ
( ^ω^)全員生き残りエンドへ向けて書き溜めちゅうだぉ
( ^ω^)ほしゅだぉ
31通常の名無しさんの3倍:2006/11/15(水) 01:19:55 ID:???
乱立晒しage
32 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/15(水) 01:35:41 ID:???
( ^ω^)マッタリでいいんだぉ
( ^ω^)先に最終回を仕上てしまった、うつだぉ
33 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/15(水) 20:46:49 ID:+y3Mtdno
 サイはストライクの整備もなく、ブリッジでのCIC習熟訓練も終えて自室に引き取るところだった、同じくパイロットの
訓練を受けているトールは一足先に自室に引き取った後だった、サイは廊下で婚約者のフレイを見かけ、ひと時を一緒に過そ
うと呼び止める。
「フレイ」
呼び止められたフレイはサイの方に振り返り立ち止まる。
「フレイ、君とゆっくり話したかったんだ、このところドタバタしていて話す時間もなかったけどいいかな。」
サイは、フレイの手を両手に取り笑顔で話しかける。
「サイごめん。なんだか動転していて話をする気分じゃないの」
「フレイ君はボクの婚約者だろ」
「ごめんなさい。」
フレイは際に背中を向けると降り向きをせずに行ってしまった
「どうすればいいんだよ」
サイは。この船に乗せられてから自分自身、宛の無い思いをしている。寂しさだけがこみ上げてくるのを今は我慢するしかな
かった。
34 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/15(水) 20:47:56 ID:+y3Mtdno
キラは相変わらずストライクの点検に精を出していた、先程サイが来たが今は取り立てて自分もやることがあるわけではなか
った。ただ、こうしていれば気がまぎれる、何か歯車が狂ったかのように親友との再会が最悪の形になり、またコーディネイ
ターであることが、いまは憂鬱に感じられる。ヘリオポリスでの暮らしが幻のように遠い思い出しかないような気がする。
「はぁ」
思わずため息が漏れる。ふいに誰かの視線を感じて辺りを見回すが人影らしきものはない。
「疲れてるな、ボク・・・・・・・・・」
そういやパック詰めの宇宙食は慣れない所為もあって、好きになれないし食べている気もしない、最近は飽き気味で食も進ま
ない、お皿で食べていた頃にくらべて楽しみが一つ奪われた気がする。もっとも、ボクはカズイほどじゃないけど。
「キラ。」
余り聞きなれない声に思わず過剰に反応し、急に前かがみ気味の上半身を起こしたので、思わず広くは無いコクピットで頭を
ぶつけそうになる。
頭を上げると、デッキに立ち尽くしこちらを見下ろすフレイの瞳と視線がまっすぐにぶつかる。
「えっと・・・・・・・フレイ・アルスターさん」
パッチリとした鳶色の瞳に、長めの朱鷺色の艶やかな髪をポニーテール風に後ろに纏め、ミリアリアの可愛さとは違うお嬢様
タイプの美少女。
美人だし、やっぱり惹かれるものを感じる。特に、この瞳に見つめられると何か見透かされているようで。
もっとも婚約者のサイから聞いた話では外交官の娘で、たしかにお嬢さんだけどチョッピリ我侭だと言っていたっけ。
「キラってコーディネイターなんでしょ。なんでこんなことやっているの」
あっ、キラは思いがけない問いに言葉を詰まらせながら
「何でって・・・・・・・・・・・・・」
自分でも、間抜けな答えを返すのに精一杯だった。
「もう、彼方もコーディネイターなんでしょう。だったらコーディネイターのプラントと戦うなんて」
「何でって、云ってもなんでだろう。」
「それに、こんなものに乗ってまで」
「う〜ん、皆を守りたいっていうか、役に立っているような気もするし」
「もう、いいわ」
キラには良くわからないまま、怒って行ってしまったフレイの後姿を黙って見送るしかなかった。

フレイは、自室までの通路を進みながら、自分でも説明の付かない感情に悩む
「なぜ、私があの男に一喜一憂するんだろう、考えてもよくわからないイライラする。」
35通常の名無しさんの3倍:2006/11/16(木) 00:04:33 ID:???
乱立をやめて下さい
36 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/16(木) 00:45:44 ID:???
8、北アメリカ降下宙域会戦

 連合軍・月面基地から地上用・戦力としてストライクパックと連携運用可能なように設計された機体・スカイグラ
スパー2機とストライクの予備パーツ、食料などの物資の補給で久しぶりにカーゴ区域は満載になった。
 補給を完了したアークエンジェルは北米に降下するべく、降下ポイントへ向かっていたが折り悪く降下宙域を巡る
会戦が始まろうとしていた。

 そのころ、降下ポイント宙域を巡る作戦の参加を命令されたクルーゼ率いるナスカ級も、予想される会戦宙域で艦
隊の集結を終え、最後の布陣と入念な準備に謀殺されていた。
その中でクルーゼはアスランを呼び出し、新たな任務を与える。
「私は北米降下ポイントの奪取作戦の後も、引き続き北米降下作戦に参加せねばならん。」
士官室の1番良い椅子に腰をかけ事務的な口調で切り出す。
「そこでだ、君をアークエンジェル追跡部隊のチーフとして、異例だが隊を率いてもらいたい。」
「私がでありますか」
先程とは打って変わった、親しみをこめる口調でクルーゼは続ける。
「心配するな、部下といっても気心の知れた君の同期3人のほかに地上部隊のサポートも十分に確保してある」
「ですが」
「拒否する事は許されんぞアスラン、君のお父上のこともある。そろそろ次の武勲を立ててもいい頃だ」
クルーゼはアスランの肩に手を置き、子供をあやす様に続ける。
「プラント本国では君のお父上は次の議長選での立候補と、もちろん当選を目指しておられる。ここで君が武勲を立
 てることは、これは君が考えている以上に、君のお父上への良い・・・・・・・・・いわば強力な援護射撃になるだろう。」
「はい、謹んで拝命します。」
 同期より上に立つことをそれほど欲したわけではないアスランにとって、望外の話であったがプラント本国の父の
立場を考えれば、申し出を喜んで受ける。
「では、別働隊を編成して、すぐ準備してくれたまえ」
クルーゼは命令書をアスランに手渡し、アスランは敬礼の後、俊敏な動きで士官室を後にする。部屋に残ったクルー
ゼは作戦準備の忙しさを、ひと時忘れて投げられた匙の行く末を夢想した。
37 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/16(木) 00:52:50 ID:???
( ^ω^)ごめんだぉ
( ^ω^)乱立スレに便乗したけど本当なら、”全員生存エンドのシナリオを考えるスレ”なんだけど
( ^ω^)マッタリ進行するから、ゆるしてほしいぉ
38 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/16(木) 10:05:55 ID:???
( ^ω^)匙と賽を間違えた。
39通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 05:15:33 ID:???
俺は読んでるからがんがれ
40 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/18(土) 00:15:18 ID:CXrQvfrZ
第8艦隊旗艦アガメムノン級メネラオスではハルバートン指揮の基、北米降下中域を巡る会戦が開始されようとして
いた。アークエンジェルも戦列に加わり、北米降下の準備を整え終えている。
「作戦の準備状況はどうだ。」
「順調です、すでに戦列も整っております。」
ハルバートンの副官ホフマン大佐がすばやく答える。
「今回の作戦は降下ポイントそのものが問題ではない、狙いは別にある敵に悟られた形跡は」
「そちらの方も抜かりなく進めております、今のところ敵に気取られた様子はありません」
「出来るだけ被害は少なくな、呼吸を合わせて退くように厳命を怠るな」
「はっ」
この半月の間、ハルバートンの意を受けホフマンは抜かりなく作戦の準備を進めてきた。今作戦はその成否を問う重要
な戦いでもある。
そう、プラント本国に送り込む潜入部隊を敵に察知されることだけは許されない。そのために鹵獲した輸送艇と訓練を
積んだ特殊部隊の精鋭たちである。敵の本国で破壊工作は勿論だが情報収集の橋頭堡を確保することはハルバートンの
悲願でもある。

 両軍ともに其々の思惑を秘めながら満を持して、会戦の火蓋が切って落とされた。アークエンジェルは右翼にて戦場
の様子を俯瞰し降下の時期を見計らっていたが、連合軍の分が悪く劣勢になりかけていた。
「ラミアス艦長、出撃しなくてもよろしいですか」
戦闘体制に入りメビウス・ゼロで待機していたフラガ大尉からの進言の通信が入る。
「降下を最優先しなければなりませんが、フラガ大尉出撃しても時間はありませんよ」
「それは、十分解っているが出きればココにいるより出撃しておきたい」
「いいでしょう、しかしアークエンジェル周辺に限ります。くれぐれも敵の挑発に乗って時間内に帰れないようなこと
 は謹んでください」
「ラミアス艦長感謝します。メビウス発進準備OK、発進する」
ラミアスはナタルの方を向きアイコンタクトをかわす。ナタルも不肖ながら相槌を打つ
「キラ君、ストライクも発進してください。但しフラガ大尉の援護を優先して決してアークエンジェルから離れないよ
 うに」
「はい、了解です。ストライク発進します。」
キラも艦内に伝わる振動を感じて宙に出た方が、とも感じてはいたが戦闘となると緊張感が高まる。気を引き締めフラ
ガに続いて発艦する。
41 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/18(土) 00:17:13 ID:???
比較的戦場の後方の位置にいたヴェサリウスでは、アークエンジェルとストライクの発進を捕捉した。待機中のイザ
ークはすかさず発進アークエンジェルとストライクの撃破を進言してくる。
「アスラン隊長、アークエンジェルを発見したなら、すぐ発進して撃破したい命令を」
少々居丈高に進言するのをアスランは受け流し気味に答える。
「アークエンジェル追撃が我々の受けた指令だ。今しばらく様子を見る」
「隊長、そんな悠長なことでは部下は付いてこないぜ、イザーク発進準備、ディアッカ後に続け」
「了解。」
アスランの消極的な見通しが気に入らずにイザーク、ディアッカは出撃態勢を整え激戦の中を出撃する。
「放っておいて宜しいのですか?」
補佐する下士官がアスランを心配げに窺うが
「かまわないさ、それよりもアークエンジェルの監視を怠るな」
アスランは気にする様子を見せずに戦局を見極めるべく無数の光が錯綜する宙を見つめる。

 出撃したイザークとディアッカはアークエンジェルを捉え攻撃を開始する。バスター・ガンダムの超高インパルス長
射程狙撃ライフルがアークエンジェルのラミネート装甲を狙い撃ちし、デュエル・ガンダムのビームライフルが加わる。
「ストライク、逃さん」
イザークはアークエンジェルを守るストライクを優先に攻撃を仕掛け、デュエルの猛攻にストライクは次第に押される。
「このままでは、高度が下がる。」
キラはストライクの高度が下がりつつあるのは判っていたが、デュエルの猛攻に反撃の隙がつかめずにいた。
「大気圏突入シークエンスに入る。そろそろ二人を呼び戻して」
「フラガ大尉。キラ。大気圏突入に入ります至急アークエンジェルに戻って下さい」
この戦いから、通信オペレーター担当になったミリアリアが呼びかける。
フラガのメビウスは何とか突入前にアークエンジェルに帰艦したが、残った2機のガンダムの攻撃に翻弄されつつある
キラのストライクはまだ帰艦ができずにいた。
「このままでは3機とも大気圏に、重力に取り込まれる。」
あせるキラを執拗に追い回す2機に、なすすべがなく落下し追い込まれるストライク。
「非常時です。アークエンジェルを移動させましょう。」
ラミアスは追い込まれるストライクに苦渋の決断を下す。
「しかし、本艦も突入に入りつつあります。進入角度を誤れば本艦も無事にはすみません」
ナタルも乗員の生命を庇うべく進言する。
「残されたG兵器を失うわけにはいきません。軌道の再計算をいそいで、ストライクの前方に移動する」
「はっ」
最終決定は下された。急いで突入進路を調整しストライクの前方に艦を移動する。どうにかストライクを艦の後方デッキ
に収容したが。進路は大きく逸れ思わぬ方向に降下することになりそうである。
ラミアスは出撃命令を下したことを心の中で悔やんだが、奪取されたG兵器2機を相手ではアークエンジェルが損傷し
大気圏に突入できたかどうかも怪しい。
42 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/18(土) 00:20:32 ID:???
戦況を見守っていたアスランはローアシア級の降下ポッドにニコルと共にイージスとブリッツを乗せて大気圏に突入した
しかし、このときアークエンジェルが進路を大きく変えたことは知らずに勢力圏であるザフト軍カーペンタリア基地へ
降下した。


第8艦隊旗艦アガメムノン級メネラオスではハルバートンが安堵のため息をついていた。
「うまく行った様だな」
「はっ、今のところは順調と思われます。連絡手段を確保する頃にはハッキリしますが」
「そうだな、プラントの動きが判ればこちらも動きやすい。こちらの損害は、思ったより軽くすみそうで良かった。作戦は
 ひとまず成功といえよう」
副官のホフマンも少しだけ緊張が解ける。
「しかし正念場はこれからだ。ザフトの北米降下を最小限に抑える必要がある。こちらの準備も入念にな」
「はっ。アラスカ基地の準備は最終段階に入っております。今のところはご心配されるようなことはありません」
「広大なアメリカ大陸を治めきれる物か・・・・・・・・お手並み拝見ってところか」
ザフト軍の力を今回の会戦であらためて確認したハルバートンは、次の一手を模索するようにアークエンジェルのことを
脳裏に浮かべる。うまく降りてくれればいいが・・・・・・・・・・
途中進路を変更し降下していくアークエンジェルを見送ることしか出来なかった悔しさがこみ上げる。いずれ戦況が覆れば
ザフトへの闘士を新たにハルバートンは精力的に次の仕事に戻った。


アフリカ砂漠に降下したアークエンジェルに先遣隊の一段が迫っていた。
「強襲機動特装艦アークエンジェル級・アークエンジェル。間違いない」
43 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/18(土) 00:30:31 ID:???
( ^ω^)>>39さん、応援ありがとう、がんばるぉ
( ^ω^)一段→一団を間違えた、度重なる誤字・脱字はごめんなさい。
( ^ω^)予定ではアフリカ→インド洋→南海・オーブ→再び宇宙
( ^ω^)自由登場まではそんなに変わらずにいや変わっているか。アラスカ基地の暴走、ブルコスのフラグを潰す準備完了。
44 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/18(土) 00:36:55 ID:???
9、アフリカ砂漠の虎

 雲間から顔を出した月の明かりに徐々に輪郭を浮かび上がらせた連合軍の新型艦、双眼鏡からも優美な姿が月明かり
に照らされて浮かび上がり、砂漠の風景と大天使の組み合わせにがそうさせたのか、連合の先遣隊の一行はアークエン
ジェルの雄姿に少しの驚きと感動がこみ上げる。
「あれがアークエンジェル」
連合欧州方面軍・陸軍第7軍・第2師団大佐コープマンが辺りをかまわず一人ごつ。若干大佐ながらアフリカ方面の戦
闘で頭角を現し師団を任されている。欧州方面軍内部でも切れ者と噂される人物だった。
「我が国も関与している。むざむざと敵にやらせるわけにはいかないさ」
隣りで双眼鏡を手にし先日ヘリオポリスから連合軍の顧問の一員として来ていたオーブ官房副長・カガリ・アスハが覗
いていた双眼鏡を下ろし、砂漠に佇むアークエンジェルを見つめる。
「北アフリカ制圧を前にして思わぬ駒が飛び込んできましたな。」
「気が早いな、バルトフェルドを詰めることが出きればの話だよ大佐」
 カガリは制圧した都市の内政を軍が派遣した補佐官と共に切り盛りしていることもあり、またコープマンが全権を存
分に振るえるように、関連機関との調整と実戦には一切口出しをしなかった。コープマンも辣腕を振るうことが出来、
便宜上カガリの階級は少佐待遇だったが二人の関係は良好だった。
「彼らとの接触は地球連合・欧州方面軍・軍事顧問でいいかな大佐。」
「結構です。顧問団の少佐待遇でお願いします。では行きましょうか」
「オーブの外交官とは言えないんで助かる。キサカ一緒に」
キサカが運転するジープに乗り込み一堂はアークエンジェルと向かう。カガリは後ろの席で数回しか袖を通したことの
ない連合軍の上着に着替え制帽を被った。

 途中コープマンはふと横にいるのが女性であることを思い出し、そっと窓際に体を向け外の景色を眺め感慨に浸る。
この方は物が見えすぎる。中央アフリカまで奪還しすぐに旧コンゴ地区の復旧に取り掛かったが、王道の教育と医療施
設の設置から手をつけ、早々とレアメタルの国有化を行い就業対策にも手を打った。軍にとっては幸か不幸か治安維持
の名目で長期駐留を余儀なくされたが、今となってはザフトに対抗するには幸いし、戦力増強の時間を稼げた、また駐
留MPが中央アフリカの治安維持と安定を取り戻すのに成果を挙げたのは間違いなかった。
 でもそれがこの人の幸せとは限らないことが人生の絢とも言えるが。
 上着のボタンをはめ胸の襟を直し身づくろいを整え終えたカガリは。携帯端末を取り出しアークエンジェルに関する
情報を取り出す。艦長はマニュー・ラニアス、女性かな会うのだ楽しみだ。
ニュアンスの違う其々の思いを乗せた車がアークエンジェル・MSデッキの格納庫から入り出迎えと思われる人々の前
で静かに横付けし、ゆっくりと車から降り立ち敬礼で互いに挨拶を交わす。

同じく砂漠の月夜に佇み大天使・アークエンジェルの雄姿を見つめる男の姿があった、
「あれが、アークエンジェルか優美だな。クルーゼが仕留め損ねたのは運か実力か」
45 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/20(月) 14:24:05 ID:I1yUs4vp
茶色の髪に砂漠で日に焼けた精悍な肌、精気に漲る黒い双眸を伸びた不精髯のアンバランスで隠し砂漠迷彩の軍服を着
込んだ、砂漠の虎と異名を取るアンドリュー・バルトフェルドが獲物を探るように見つめていた。
「ダコスタ、監視部隊を置いて帰艦する。行くぞ」
「隊長、攻撃しなくてもいいのですか?」
「バカもん、この満月で攻撃しても丸見えだろう。すぐには逃げんさ、それよりダコスタ早く髯ぐらい蓄えないと、そ
 っちの組合の人に間違われるぞ、お前には現地民の内政を任せているんだからな」
「すみません、なかなか生え揃わなくて」
監視の部隊を残し旗艦レセップスへ引き返す途中。バルトフェルドは車上で戦力増強とアークエンジェルについて考え
をめぐらす。いけすかない奴だがクルーゼほどの実力者が取り逃がしたのならば、それなりに用心する方が肝要か。
こんなときのためにも現地住民を慰撫してきたかいがあったというもの、ハダル(定住)だけでなくベドウィン(遊牧)
の有力者に協力してもらい、まずはアークエンジェルの補給路を絶つとするか。

そのころアークエンジェル内では会議が開かれていた。
「現地司令部の要請という事で申請し許可を得ました。レセップス攻略作戦へのアークエンジェル参加とアークエンジ
 ェルのアラスカ基地行きへの支援、平たく言えばお互いに連携する旨の指令書と作戦の概要です。」
持参した命令書とスクリーン上の地図を指し示しコープマン大佐が続ける。
「われわれ連合軍地上部隊はアフリカ中央部を北上し、旧リビア・エジプト国境に集結し反撃の機会を窺っております。
 また、再来月には旧暦の9月に当りラマダンが始まるため、遅くともそれまでにはザフトアフリカ軍との趨勢を固めた
 いと思っています。」
「作戦の概要はこうです。アフリカ北部の主要都市に布陣するザフト軍をこの地点から分断し、旧カイロ方面を孤立分断
 しスエズ・シナイ半島を奪還、海上交通路を確保した後。旧トリポリ方面に残るザフト軍を、ジブラルタル基地モロッ
 コ方面に押し込めます。 そこで、再来週には作戦を発動し一斉攻撃をかけるべく、アークエンジェルにはこの砂漠地
 帯まで南下し、左翼部隊の一翼を担ってもらいます。」
「しかし大佐、カイロを奪還するさいに旧ヨルダン方面に残るザフトからの攻撃の心配は」
フラガが疑問点を指摘する。
「それに関しては私の方から、まだ極秘事項ですが旧ヨルダン・ベイルート方面では大規模なインティーファーダを計画
 中です。適切に実行されればこの付近に駐留するザフト守備隊の規模なら十分足止めが出来ます。」
カガリが地図を指し示し後を補う。
「大佐では、アークエンジェルが重要な役目を」
地図と作戦書を丹念に眺めたラミアスが念を押すように聞いた。
「そういう事になります。われわれもアークエンジェルには期待しております。」
46通常の名無しさんの3倍:2006/11/21(火) 03:09:26 ID:???
核戦争が起こる日も近いかも知れんな。
47通常の名無しさんの3倍:2006/11/21(火) 20:11:30 ID:???
age
48誘導:2006/11/21(火) 20:13:57 ID:???
49 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/21(火) 22:22:52 ID:???
誘導してもらって、いろいろとありがとう。
アフリカ編・書き溜め中&南海オーブ編改変中です。
50 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/22(水) 17:43:22 ID:???
 医療室ではキラが高熱により病床で安静の日が続いていた。大気圏突入のムリが日ごろの疲労と重なったのか、ここ3日
眠ったままうなされる日が続いていた。
「キラ」
流れ落ちる額の汗を濡れたタオルでそっと拭うフレイ。リンゲル液の点滴が行われているが医者の話では血液検査も問題な
く自立呼吸もしている以上、当面は安静にしているしかないと言っていたが、それにしても、私はコーディネイターは嫌い
なはずなのに、この3日病室で付きっ切りになっている。ミリアリアやトールたちが艦を手伝っているから、何もしていな
い自分が苛立たしいだけなのか、それとも・・・・・・・・・・・・・
その時、うっすらと目を開き焦点が定まらない様子で病室の天井を見つめる様子でキラの意識が戻る。
「キラ、・・・・・・・・・・キラ」
「ここは、・・・・・・・・・・・・・フレイ・・・・・・・・・・・・ボクは」
「よかった、大気圏の戦いで戻ってからずっと意識不明だったのよ」
大きな鳶色の瞳に少し涙を浮かべ、ナースコールのボタンを押しキラの意識が戻ったことを告げる。医師が駆けつけ聴診器
でキラの胸の心音を聴き異常は無いが、高カロリー輸液の点滴を追加処置して去っていく。
「心配したのよ。キラ」
いつの間にか、病床の横に座りなおしキラの手を握りしめながらフレイが話す。
「ありがとうフレイ。君がずっと」
頷き微笑むフレイ、心の奥底ではキラに対する自分の気持ちに気付いていたことに、今日は素直に認められた。


連合軍補給部隊がアークエンジェルの補給作業に艦を訪れ、カガリも同行し個人的に興味のあったキラを探し出す。
「君がキラ・ヤマトか」
「ええ、あなたは・・・・・・・・・」
「私はカガリ、アフリカ連合軍の通訳みたいなことをやっている。それよりこれから私と一緒に来てくれないか」
「今から」
「そうだ、一日中艦にいても退屈だろう。町に行くにはボディガードがいるからな」
キラの手を取り強引に連れ出す。用意してあった学生風の砕けた服装に着替えさせ自分はスカーフを巻き自らハンドルを
握りアクセルをふかせて、ジープの砂煙を残し南のオアシスを目指す。
「いいね。若者は」
「フレイにライバルが現れたか、オレも頑張らないと」
ジープの砂煙を見送りながらフラガは一人ごとをつぶやき、艦橋に姿を消す。
51 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/22(水) 17:45:12 ID:???
容赦の無い日差しを降り注ぐ砂漠を進む車上、キラが激しく揺れの中、懸命にシートとドアに力をこめて踏ん張っていた。
「どうだ、たまにはドライブも良いだろう」
「どうしてボクをボディーガードなんて」
「あのストライクのパイロットなんだろう。どんな人がパイロットなのか興味があったし、一日中あの艦にいてココの
 名物料理を食べないで帰らすわけには行かないだろ」
カガリはアクセルを一層踏み込む、そのたびにキラの体がシートに押し付けられるが久しぶりのドライブは悪い気分では
なかった。2・3箇所キラにとっては怪しそうな建物やテントの人物と会話するカガリに付き合い、今度は食べ物のにお
いのする店に入る。今度こそキラにとっては本命の名物料理とやらが出てくる店である。
「庶民の料理コシャリはいけるぞ、モロヘイヤはちょっと癖があるけど、肉料理のカバーブは絶品だ。ほかは適当に食べ
 てくれ」
一通り注文した料理が並ぶなか、カガリは説明し終わるとモロヘイヤのスープをキラの前に差し出し食べ始めるのを促す。
「え、これ緑色だけど」
「赤でも緑でもスープだ。野菜のスープは飲んだこと無いのか」
「あるけど、なんか青臭いんだけど」
「現地の食文化を知ることはとっても大事なことなんだ、良いからもっとニコヤカに食べれないかな。こんなに美人と一
 緒なのに」
「えっ・・・・・・・・いやその」
おそるおそる、スープに手を付けるキラ。そのとき、数人の部下を引き連れたザフト軍人が店に入ってくる。
「あっ」
キラは制服を着たザフト軍人を見て思わずスプーンを落とし、こぼれたスープがカガリの白い麻のシャツにシミを付ける。
カガリは微笑みながらキラの足を踏み囁きかける。
「あわてるな、私達は学生だ、い・い・な」
カガリは、今日接触した族長の誰かが通報したか後を付けられたか、内心、砂漠に生きる民の強かな側面を垣間見た気が
したが。うなずき返したキラに向かって、一人のザフト軍人が歩み寄り気さくに声をかける。
「あ〜君たちは学生か何かかな、そちらの彼には驚かせて悪かったようだな。」
「あ、いえ、初めて食べる味だったのでびっくりして」
キラは、内心の動揺を隠しながら答える。
「あらためて、私が君たちを招待したいがどうだろう、一緒に来てくれないか」
「これから、遺跡の調査も残ってますし、せっかく大学が許可を取ってくれたものですから」
「手間は取らせないよ。さあ」
強引にキラの手を取り表に連れ出す。カガリも店には迷惑をかけられず覚悟を決めて付いていく。ザフト軍のジープに乗
せられ旧市街を抜け新市街に入り、ザフト軍が接収して使用していると思われる迎賓館に止まる。
「さあ、着いたよ。アイシャお客さんをご案内してくれ。」
52 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/22(水) 17:46:23 ID:???
キラは豪華な応接室に通され、この地方では珍しいドリップ式のコーヒーが饗される。
「まあ、くつろいでくれたまえ」
「カガリは」
「お嬢さんは汚れた服を着替え中だ。おっ済んだようだな」
大きな紫檀で作られたドアが開き、コバルトグリーンのロングドレスに身を包んだカガリが、同じくしっとりとした桔梗
色のロングドレスを着込んだアイシャに伴われて入室してくる。
舞踏会でも開くつもりなのかタダの酔狂なのか分からないが、カガリは招待主の身分と着慣れないドレスにすこし不満で
あったがロココ調に統一された豪奢な内装のソファーに腰掛け室内を見回した後招待主に目を向ける。
「やはり、高貴な方にはドレスが似合う」
招待主、アンドリュー・バルトフェルドは満足げに告げる。
「さて、君たちはこの争いはどうなるのか、わかるかな。」
キラは立ち上がり胸のうちを搾り出すようにこたえる。
「いつまで続くのかは、わからないけど。みんな守るために何かと戦っている。いまはそれが戦争だけど」
「この戦争には明確な終わりのルールなど無い。それでも、戦うかね」
キラは答えにつまり立ち尽くす。バルトフェルドは銃をキラに向けて構え質問を続ける。
「殺し合い、憎しみあって。互いがいなくなるまで戦い続けるかね」
「それは、貴方がザフトだからだ、貴方達は負けたことが無い、しかもこの戦争まで戦争をしたことも無い、負け方
 を知らないと壊滅寸前まで追い込まれないと負けを認められないだろう。」
カガリはソファーから立ち上がり、キラを庇うように少しだけ銃口の前に位置を変えるように一歩前に出て話を続ける。
「それに比べて、ココの住民はしたたかだザフトでも連合でも、かりそめの客にすぎない」
「ボクは戦いはしたくないが、仲間を傷つけるのであれば戦う」
今度はカガリを庇うようにキラが一歩前に出る。
「オレが見込んだ通りだ。」
バルトフェルドは銃口を下げ、二人を長年の友人を見つめるように佇む。
「キラそろそろお暇しよう。」
「ああ」
軽く会釈し踵を返して出て行く二人を見送ったバルトフェルドにアイシャが寄り添う。
「アンディ」
「判っているさ、どんな為政者も一時の支配者、ココの住人は熟知している。それにくらべ・・・・・・・・あの少年と少女
 真っ直ぐないい目をしていたな。」
「気に入ったんでしょ、アンディ」
「ああ、あの二人とは戦場で出会いたくないな。アイシャ」
そっとアイシャの手を取り、バルコニーから二人が帰った砂漠を見つめた。
53 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/22(水) 22:55:53 ID:???
10、砂漠の決戦・バルトフェルド

北の砂漠を凄まじい砂煙が突き進んでいた。旗艦レセップスを中心としたザフト軍MS・陸上部隊の大軍団である。
ザフトとしても国境に集結した連合軍を叩き、アフリカの形勢を決定付ける必要がある。
「ザフト軍・MS部隊確認。大機甲部隊です。」
「ついに来たか、向こうもここらでアフリカの雌雄を決するときだな。作戦開始。総員戦闘準備」
「準備完了」
「後方のMLRS部隊に敵GPS座標を通達、対MS用誘導弾発射」
コープマン大佐の指令が下り、連合とザフトの激突が始まった。
後方で待機していたMLRS部隊50両が一斉に発射態勢を整える
「前線司令部より発射命令が来ました。」
「よし、座標を入力次第発射だ」
MLRS(多連装ロケットシステム)12発のロケット発射システムを備えた大型車両で運用され、誘導用の移動式
レーダーを引き連れた支援兵器である。およそ50キロ離れたザフト主力MS部隊に向けてロケット弾が発射される。
1発に600余りの小弾頭を搭載し1台に搭載された12発のロケットで2万5千平米に散布される。目標により弾
頭が変わるがおよそ90秒の発射間隔で連射できる優れものだ。
ロケットから分離し、バラ撒かれる無数の鋼鉄の弾が雨となって降り注ぎ、砂漠の主を誇るザフト軍MS・バクゥを
無力化していく。
「ロケット攻撃か、全機散会して敵主力部隊を叩く。」
後方の旗艦レセップスで指揮を取るバルトフェルドは即座に密集体型の具を悟った、散会させMS・バクゥを立て直
し連合軍・主力戦車部隊に襲い掛かる
「散会したな、右翼ヘリ部隊を突入させ側面から攻撃、孤立したMSバクゥを各個撃破だ。左翼のアークエンジェル
 も前進MSの掃討戦に入らせろ」
前線司令部で双眼鏡と監視衛星のモニターを眺めながら、刻一刻と変わる戦況を俯瞰しコープマンは絶妙のタイミン
グでの突入支持を下した。
左翼を担うアークエンジェルも前進し砲撃を加える中、ストライクとスカイグラスパーが発進準備を整える。発進直
前のストライク外側の点検を終えたキラはコクピットに乗り込もうとしたとき呼び止められた。
「キラ」
「フレイこんなところにいては危ないよ。今から発進するから。」
ヘルメットを被ろうとするキラに歩み寄りそっとキスをするフレイ。
「ごめんなさい、でも無事で帰ってきてね。」
あまりのことに立ち尽くしてしまったキラを残し、すこし恥ずかしげに急いで立ち去ったフレイを呆然と見送るしか
なかった。
54 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/22(水) 22:57:59 ID:???
「発進急げ・・・・・・カタパルト準備・・・・」
廻りの騒然とした音に我に返ったキラは、急いでヘルメットを被りコクピットに潜り込む。
「ストライク、エール装備完了。」
カタパルト準備を終え発進を整えたキラはミリアリアに報告を入れる。
「ストライク発進どうぞ、キラ何かあったの声が変よ」
「なんでもないよ。キラ・ヤマト、ストライク行きます。」
カタパルトが勢いをつけてすべりだし、ストライクが発進するPS装甲を展開したストライクは、分断されたMS
バクゥに照準を合わせビームライフルを放ち、MSを斃していく。
しかし、ストライクは着地した瞬間に砂地に足を取られる。
「くそ、2本足じゃ重いのか、接地圧をオートで調整したんじゃ間に合わないか」
キーボードを叩き砂漠に合わせるよう接地圧を調整し、推進剤を抑えてホバー走行にバーニアを微調整する。足を
止めたストライクにバクゥのミサイルが襲い掛かるが、一髪の差で調整を終えたストライクが滑るようなホバー走
行で距離を詰め、ビームサーベルの一撃でバクゥを葬り去る。
「あれがストライクか、うわさ以上だな。あんな短時間で砂漠に対応できるものかな。パイロットはコーディネー
 ターか」
旗艦レセップスから戦況を眺めていたバルトフェルドはストライクの攻撃力に脅威を感じた。早急に止めないと敵
に右翼を崩され、全軍の崩壊につながる。
「ダコスタ、指揮は任せる。オレはラゴゥで出撃する」
「今、隊長が出なくても」
「ストライクが出てきている。あれを止めないと全軍が消耗する頼んだぞ」
「はっ」
バルトフェルドはラゴゥに飛び乗り発進させる、目指すはストライクのみ、それがこの間の少年とは思わずに。
ビームサーベルでストライクに肉薄する。
55 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/23(木) 01:58:03 ID:???
具→愚を間違えてる。
手元のメモは順次書き直しているが、ごめんなさい
56通常の名無しさんの3倍:2006/11/25(土) 00:41:04 ID:???
age
57 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/28(火) 01:15:00 ID:xX30iQsL
アークエンジェルでは、旗艦レセップスをレーダーで捕捉した。
「ラミアス艦長、一撃で構いませんレセップスに対してローエングリーンの使用を許可してください」
「ナタル、ローエングリーンは地上では威力が強すぎて放射線の影響も残ります。許可できません」
「ですが、このままでは艦の被害も増えます」
「ハーグもありますし戦後を考えれば仕方ありません、操艦運用で最大限の射線をとります。それで持ちこたえて」
「わかりました、了解です。」
「面舵10、本隊の行進と合わせつつレセップスを追い込む」
本隊と歩調を合わせてレセップスを追い込むアークエンジェルの姿を戦場の後方で1台のジープが眺めていた。
「コープマンが後方予備の第3師団を投入した、いよいよ大詰めだな」
「そのようですね」
ジープに乗ったままでカガリとキサカは双眼鏡で戦況を眺めながら続ける。
「アークエンジェルもよく善戦しています」
「うん、あの白いMSの坊やも頑張っている。我々もそろそろ行こうか」
「はい、でもこの戦況なら南の住民も大丈夫ですね」
「あれでなかなか、したたか揃いだ。そのためにも緒戦は必ず勝たないとね」
有力部族を味方につけるために二人は南を目指し戦場を後にジープを走らせる。


ひときわ敏捷な動きで連合の戦車部隊を的確に捉え、こちらに向かってくるMSを見分けキラがコクピットで思わ
ずつぶやく
「早い、あれは隊長機か、ひょっとしたらこの間の」
ふと、数日前に出会った隊長と思しき人物が重なる
「早い、並みの相手じゃない」
キラはストライクを操りながら、ラゴゥの正確な射撃に翻弄される。
「うわさ以上だ、ストライクとやらの機体性能かパイロットがすごいのか」
バルトフェルドもいつもなら、すでに倒しているはずの攻撃をかわされた以上に手傷を負わされている事態に驚きを
隠せなかった。
58 ◆hO5UpTpm0s :2006/11/28(火) 01:18:24 ID:???
ストライクのビームライフルに射撃が命中し爆発する。一瞬の差を盾で爆発をかわしつつ後退しながらビームサー
ベルを引き抜き接近戦に戦法を代え、ラゴゥとストライクのビームサーベルが交わる。何度かかわされたサーベルで
ラゴゥの2連装ビームキャノンが壊され、ストライクもシールドを失い互いのMSは満身創痍に近かった。
もはやストライクの警報がバッテリー切れが近いことを示し、キラは焦りを感じ始める
「これ以上はPS装甲が・・・・・・・・・稼動限界も近い」
ラゴゥを操るバルトフェルドも機体の限界が近いことを悟っていた。
「向こうもそろそろ限界のはずだが、こちらもマズイ」
キラは何かが頭の中で弾け、エール装備を捨て去りアーマーシュナイダーを両手にラゴゥに突進する。対してバルト
フェルドもビームサーベルで一撃を繰り出す。互いの装甲が傷つきコクピットの装甲が切り裂かれ肉薄する。
そのとき、スローモーションのように互いのコクピットから目が合う。
「まさか、あのときの少年だったとは」
「やはり、貴方ただったんですね・・・・・・・・・・」
「少年がパイロットとは、だがこれで戦争は終わりじゃないぞ・・・・・一度始まったら止められん互いが気付くまでは」
 言い終わるとバルトフェルドは脱出レバーを引き炸薬でコクピットのキャノピーが左方向に吹き飛ばされ、パイロ
ットシートが右方向に射出、そのまま砂漠の中に消え去った。
突き刺されたアーマーシュナイダーから火を噴きラゴゥが主を失った悲しみを吼えるように爆発し四散する。
ストライクは丸裸になったコクピットを腕で庇うように後ろに跳びラゴゥの最後を看取る。
「あの人がバルトフェルド・・・・・・・・・」
キラは裂けたコクピットから去って行ったバルトフェルドの行方を追うように眺める。
「あの人にボクはどう写ったのだろうか・・・・・・」
キラは敵との非情な出会いだったが、越えなければならない壁のように立ちふさがったものに思われた。
 間一髪脱出したバルトフェルドはダコスタに通信を送りながら旗艦に戻るべく砂漠の中を疾走していた。
「ダコスタ、ラゴゥがやられた。レセップスに合流後、残存部隊を纏めてトリポリ方面に再集結だ」
「了解です。隊長お怪我は」
「こちらは、掠り傷だ。アイシャを迎えをよこしてくれ」
ダコスタは了解と通信を切り、すぐに部隊を纏めにかかる。
「レセップスに残存部隊を集結させる。バクゥ部隊をあわてずに後退させろ・・・・急げ」

今、北アフリカの覇権をかけた戦いの第1ラウンドは連合軍の勝利のうちに集結しそうだった。
59通常の名無しさんの3倍:2006/11/29(水) 17:12:56 ID:???
age
60 ◆hO5UpTpm0s :2006/12/03(日) 14:29:12 ID:???
11、新たな旅立ち

 バルトフェルド率いるザフト・アフリカ方面軍をトリポリからアルジェを経てオランまで敗走に追い込み、ハ
イファからエイラート、ヤンブーからバハレーンのパイプラインと主要積出港の再奪還を果たした連合軍はアフ
リカでの最終局面を迎えつつあった。
 アークエンジェルの補給物資を満載したトラック郡が市街地を抜け砂漠地帯に向かう。先頭のジープには連合
アフリカ軍を率いたコープマン大佐とカガリ、キサカの姿があった。
「大佐、もうアフリカでの趨勢は固まったようですね」
「今のところは、ザフトも大人しくしてますがどうでしょう」
後席で小さな手荷物を小脇に抱えたままのカガリはとなりに座るコープマン大佐と会話する。
「バルトフェルドが先の戦闘で負傷したのが堪えたようですね」
「詳細は未確認ですが、負傷したのは間違いないようです、しかし重症というわけでもないようですから、いず
 れ打って出るでしょう」
「さすがの砂漠の虎もストライクとの戦闘は手に余ったようで、これもキラ・ヤマトのおかげですか」
「アークエンジェルとストライクの能力には正直舌を巻いております。量産の暁には我が軍も早期に巻き返せる
 でしょう」
「ロタ奪還の目処も立ったし、アフリカでの仕事は終わった。大佐では、私は予定通り。」
「お名残惜しいですが、命令とあれば仕方ありません。幸運と良い船旅を」
補給部隊を先導してジープで乗り付けた二人はMSデッキで出迎えたラミアス艦長とともに物資の引渡しと新た
な任務に赴く命令書を差し出す。
「爆雷にアスロック?!」
61 ◆hO5UpTpm0s :2006/12/03(日) 14:30:12 ID:GSC7ZJZ2
補給リストをチェックしながらラミアス艦長は少し驚いた感じで告げる。
「バブ・エル・マンデブ海峡からインド洋を抜けるには、これがいるだろう。それにこのタイプなら艦尾ミサイ
 ル発射管で使えるだろう。なあコジロー班長」
ラミアス艦長の驚きを知ってか知らずか、カガリが理由を付け足す。
「これは最新型のヘッジホッグじゃないですか射出器で十分使えますね。」
コジロー班長はトラックに詰まれたままの荷台を確認し確かめながら答える。
「それにしても、なぜこんなものまで持ち込んだんですか?」
ラミアス艦長が真意を窺うような面持ちで。命令書を確かめながら続ける
「それはもちろん必要だし、私達も同行するからだ、連合軍司令部の許可は取ってある。大佐お願いします」
「これが司令部からの許可証です。」
ラミアス艦長は許可書を確認し、命令書の中ほどに書かれた文面を読み上げる。
「アフリカで随員2名を搭乗後、紅海を抜けインド洋からハワイ基地にて補給を受けアラスカへ向かう」
「じゃ、快適な船旅と洒落込もうじゃない・・・・ラミアス艦長。カガリ、キサカ2名の上官許可を!!」
カガリとキサカは揃って脱帽敬礼し許可を得て下士官用の部屋に案内されて行った。
62通常の名無しさんの3倍:2006/12/04(月) 00:01:47 ID:???
age
63通常の名無しさんの3倍:2006/12/04(月) 00:04:17 ID:???
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|;;::|ヽ;;;゙、:..    /`ー'>´ ̄´::::::::::::::::::::::::::::``''''''フ ̄´ヽ:::............
64 ◆hO5UpTpm0s :2006/12/04(月) 13:54:58 ID:???
∧,,∧ ∩
( ´・ω・)彡 おっぱい!!星人にはうれしいぉ
(__⊂彡) 
続き頑張ろうwでも、ごめんキャラは誰なの、わかんないぉ。教えてえらい人
65 ◆hO5UpTpm0s :2006/12/04(月) 13:59:23 ID:???
インド洋、対潜哨戒・潜水艦戦闘編、真面目にやると艦長との復唱多いし省くけど頑張っちゃうよ。
66通常の名無しさんの3倍:2006/12/09(土) 06:29:30 ID:???
sage
67 ◆hO5UpTpm0s :2006/12/12(火) 00:04:35 ID:???
o(≧ω≦)o〃
68 ◆hO5UpTpm0s :2006/12/19(火) 01:03:13 ID:???
o(≧ω≦)o〃
69 ◆hO5UpTpm0s :2006/12/23(土) 02:52:28 ID:uiVbtECS
o(≧ω≦)o〃 もうちょっとまってくれ
70通常の名無しさんの3倍:2006/12/31(日) 16:08:22 ID:???
面白いのを見させて頂いたので、続きをお待ちしております。
焦らずにマターリ行きましょう。
71 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 00:07:04 ID:dDMtAYgR
 カガリは案内された士官室に荷物を置き簡単に制服などの衣類を仕舞うと艦内後部の展望デッキに出た、すで
に先客の遠くの紅海を見つめるキラが所在なさげに立っていた。
「ここにいたのか」
「きみは、カガリ・・・・・・・どうして此処に?」
「ハワイまで一緒に乗せてもらうことになった。あらためてよろしく」
満面の笑みを浮かべて握手を交わす二人の姿をちょうど遠くから見つけたフレイが駆け寄ってくる。
「キラこちらは、どなた?」
「ああ、今度一緒に乗ることになった」
「カガリ・アスハです。よろしくカガリで結構です」
「フレイ・アルスターです。こちらこそよろしく」
フレイとカガリは握手を交わす。すかさずフレイはキラの手を取り腕を組み二人そろって遠くの海を見つめる。
その時、展望室の扉を抜けてサイがキラとフレイの二人の元へ近づきながら声をかけてくる。
「あっ、丁度良かった。揃ったときに話したいと思っていたんだ」
キラとフレイは少し気まずい雰囲気を感じながら黙ってサイの次の言葉を待つ
「フレイとボクは婚約した間柄だけど、正直、最近はすれ違っている。フレイの本当の気持ちを聞きたいんだ。」
「わたしは、サイとのことは親の決めたことだし、本当の気持ちは・・・・・・もう終わりにしましょう。」
サイは予想どうりの言葉だったと見えて、軽い落胆の表情を見せたものの真剣な表情でキラに向き直り
「わかっていたよ・・・・・・・・・・・・・・。キラ、一つだけフレイを悲しませるようなことはするなよ」
キラの手を取り強く握り締めつづける。
「そのときはオレが許さないからな。約束してくれキラ。」
握り締めたキラの手をフレイの手に重ね合わせて、サイは大きく頷きながら二人の答えをうながす。
「ありがとう・・・・・・・・・サイ、約束するよ。」
「じゃあ、ボクは行くよ」
短く言い残しサイは展望デッキを後にする。フレイに対する気持ちはまだ残っていたがサイはキラになら認めて
托した。でも後ろの二人を振り返るには、もう少し気持ちを整理する時間が必要だった。
72 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 00:13:45 ID:dDMtAYgR
3人を気遣って隅の方で様子を見ていたカガリは、キラの行く末を要らぬおせっかいで思わず考える。
「気の強そうな彼女だこと、どうやらキラは女難の相だな」
女難のウチに自身が含まれているのかいないのか?この時は知る由もなく一人つぶやく
「こちらでしたかカガリ様。探しましたよ」
「あ、いや何か急用でも」
「ラミアス艦長がインド洋上の進路も含めて進言があればと申しております。」
「こちらからは特には無いが、艦長室に伺うとするか」
カガリはキサカと共に展望デッキを後にし艦長室に向かった。
73通常の名無しさんの3倍:2007/01/03(水) 00:17:37 ID:/69/bDzN
ファースト以外の世界の作品だとリーオー、ジェニス、ジンとか独自の量産機を作ってたのになぜかファーストを侮辱するかのようにザクやグフ等ジオン公国のMSを出すのがまず謎。そして主人公が誰だがわからなくなってしまってて話がめちゃくちゃになってるところかな
74通常の名無しさんの3倍:2007/01/03(水) 00:26:35 ID:???
パクリについてなんだけど、種運放送時にファーストとの繋がりがあるとか言う設定あったっけ?
75 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 03:07:03 ID:dDMtAYgR
12、インド洋の激闘

 紅海を抜けてインド洋に入って1週間、幸いにも戦闘はなく。真昼を過ぎ穏やかな海面を見せるこの日も何事
もなく過ぎようとしていた。
 しかし、穏やかな海に潜望鏡が一つ海面から突き出し、低高度で飛行するアークエンジェルを静かに見つけ狙
い定めた者がいることにはアークエンジェルのクルー達はまだ気付いていなかった。

 インド洋を作戦海域にし、潜望鏡深度に浮上したザフト軍大型潜水艦・ボズグロフ級・クストー艦長、マルコ
・モラシム中佐は潜望鏡を一回りさせながら見かけない機影を確認した。あれが噂の連合軍新型艦か、飛行して
いる以上は迂闊には攻撃できないが、黙って通すほど甘くは無い、さてどう攻撃するかだが。
「EMSに感知、方位131」
潜望鏡に写る機影とEMSが捉えたものが重なり連合軍の新型艦アークエンジェルであることが判明する。
「ヴィクター128、エコー131をマスター130とし追尾する。面舵25、合戦準備。MSいつでも発進で
 きるように準備しておけ、両舷全速ミサイル射程まで接近する。」
「面舵25、両舷全速」
操舵手ほか乗員の復唱が艦内に木魂して一気に緊張が高まる。副長ほか幹部達と海図を睨みモラシムは少しの緊
張と新型艦を捕らえた喜びを味わっていた。敵艦の左舷後方から接近できるのも悪くない。
「深度20、ハプーン1番から4番装填、発射管注水」
先刻探知した位置と時計を睨みながら発射の機会を待つ、ミサイル発射深度に到達しツリムが自動で艦を水平に
保つのを、足元で確認したモラシムは秒針を睨みながら発射の指示を下す。
「ハプーン1番から4番、撃て。」
艦長の命令に従い砲術長の復唱と共に打たれたハプーンはアークエンジェルに向かって真っ直ぐに飛んでいった。
76 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 03:09:12 ID:???
アークエンジェルではここ数日間の平穏を楽しんでいたが、レーダーが捉えたミサイルの警報で艦内は一瞬に
して緊張した。
「左舷後方からミサイル4来ます。」
チャンドラが短く答えたあと、ラミアス艦長が矢継ぎ早に指示を出す。
「迎撃、イーゲルシュテルン、バリアントの起動急げ。敵は何処から」
「今でます、ミサイルの航跡からの解析ではハプーン・ミサイル。左舷後方の海中からの攻撃です。」
イーゲルシュテルンが起動し接近する目標を捕らえる。ハプーンは爆発四散するが爆発で艦が揺さぶられる。ラ
ミアス艦長は傍らの受話器を取りMSデッキに連絡を入れる。
「フラガ大尉、スカイグラスパーにソナー搭載後すぐに指定海域へ向かってください」
「了解。今度の敵は潜水艦か?」
「まず間違いないと思われます。敵水中MSの警戒も怠りなくお願いします。」
「こちらは了解した。すぐに出る」
ラミアス艦長はフラガ大尉との通信を終えるとナタルに向き直り次の準備に入る
「アスロックとヘッジホッグの準備は」
「後方ミサイル発射管にアスロックの準備は出来ています。ヘッジホッグの準備も完了しておりますが、こちら
 は、いま少し敵艦との距離を詰める必要があります。」
ナタルの報告を受けてラミアス艦長は少しだけうつむき加減で考えた後
「取り舵一杯、敵との距離を詰める。フラガ大尉がブイ投入後ヘッジホッグ、アスロックを使う準備しておいて」

フラガ大尉が駆るスカイグラスパーがIFFが指定する海域にブイを投入する。
「こちらフラガ、ブイを投入完了。指定海域上空で待機する。」
「了解しました。チャンドラ、ジャッキー索敵急いで。」
「了解です、今でます。」
ソナーの解析を続けるチャンドラがしばらくの沈黙のあと報告する。
「解析でました。キャビテーション・ノイズからザフト軍・ボズグロフ級・大型潜水艦です。」
「よし、これなら射程内ね。深度設定しヘッジホッグ発射。」
ラミアス艦長の命令後、ナタルは指定座標・深度に発射する。
77 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 03:12:05 ID:???
「海面に着水音、爆雷と思われます。」
ザフト軍・ボズグロフ級クストー艦内では、第2弾のハプーン発射後。敵のブイ投入を探知していた。モラシム
艦長は思ったより早い敵の動きに好敵手が現れたことを心の底では喜んでいる自分を戒めた。さすがと言うべき
かなクルーゼ、バルトフェルドが手を焼いたのも頷ける引き締めてかかるとするか。
「来たか、メインタンク注水。ダウントリム最大、急速潜行。爆雷をかわす急げ!!」
その何十秒か後、浅い深度で設定されたヘッジホッグが爆発し一帯の海面を持ち上げた。直撃してはいないが爆
発の衝撃で艦全体が軋むような唸りを上げる。
「こちらも。お返ししないとな艦の被害の確認急げよ」

アークエンジェル艦橋ではヘッジホッグの爆発が収まった後、投入しなおしたブイが敵のスクリュー音を捉える。
「敵キャビテーション確認。」
チャンドラがヘッドホンとディスプレイを眺めながら報告する。
「第1弾のヘッジホッグを読まれたか、爆雷深度を深く取って、第2弾撃て」

「爆雷、第2波来ます。」
「全タンク・ブロー。急速浮上。総員急げ」
モラシム艦長の命令が響き渡り、艦が大きく傾斜して急速浮上する。海面付近まで浮上した所に下から突き上げ
る爆発の衝撃が艦を大きく揺さぶる。
「艦の被害は?」
「損傷軽微、艦の運行に支障ありません」
「今度はこちらの番だ。ハプーン1番から4番発射管注水、発射」
部下からの被害状況の報告に胸をなでおろし、攻撃に転じる。
78 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 03:15:03 ID:???
敵潜水艦のキャビテーション音確認。発射音4、ハプーンと思われます。」
敵も一筋縄では通してくれそうにも無いことを改めて感じたラミアス艦長は、こちらも次の攻撃に転じるべく
指示を飛ばす。
「対ミサイル防御、アスロック1番から16番、ホーミングモードを切って航跡進路予測データを入力、撃て」

アークエンジェルから発射されたアスロックが海面に着水、ロケットを切り離し弾頭の魚雷がスクリューを作動
させて海中を突き進む。
「海面に着水音、魚雷16来ます探信音ありません。」
「データ誘導か味なマネを、1番囮魚雷発射。面舵最大。急ターンをかける」
アークエンジェルから発射された魚雷はあるものは海中の岩礁にあたり、あるものは囮魚雷の金属に反応して磁
気信管を作動させて爆発し、モラシム艦長の卓越した操艦指揮で互いに致命的な損傷を負わせるには至らなかっ
た。

部下の疲労を考えると互いに決着を付ける時が近いと察しながらも決め手を欠いていた。
「フラガ大尉、HUDの指示地点に新たなブイの投下をお願いします。チャンドラ、ブイの投下後解析早くね。」
新たなブイ投入を確認したチャンドラはすばやく解析を終える
「敵艦のキャビテーション確認、方位15、水深40」
「アスロック1番。敵キャビテーション・データ入力、発射。今度は捕まえさせてもらう」

アークエンジェルから発射された魚雷がアクティブソナーを発信しながら急速に接近する。
「着水音確認、敵魚雷1、来ます」
「急速潜航。深度60」
急速潜航し海水温度が分離する層を攪拌しソナーを乱す磁気信管が作動し、この日何度目かの爆発の衝撃が艦を
揺さぶる
「左舷に浸水、ダメコン急げ」
「機関部の浸水で出力が出ません、アークエンジェルの追跡はこれ以上は無理です」
モラシム艦長は浸水はひどくはなかったが大型艦で喰らい付くのは断念した。
「ハプーン1番から8番、魚雷管注水、発射。」
「MSで出る準備急げ。艦の修理も急げよ」
モラシム自身が駆るゾノとグーン3機の発進準備が整えられ、大型のドライチューブから発進していった。
79 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 05:07:45 ID:???
モラシムが駆る水中MS部隊がアークエンジェルを再び補足するのにそれほどの時間は必要なかった。浮上
し目測で捕らえられるほどの距離に接近しフォノンメーザー砲の射程距離に入るとフォーメーションを組み攻
撃を開始した。
 アークエンジェル艦橋では、ボズグロフ級潜水艦のキャビテーション・ノイズ、スクリュー音が消え僅かに
浮上する音を確認した後、魚雷とは異なる発射音からMSの発進を探知し、ソード・ストライクに魚雷仕様の
バズーカを緊急配備していた。
「ストライク発進します。」
緊急発進の準備を終えたキラの通信が艦橋に入る。
「ストライク発進どうぞ」
相変わらず元気を分けてもらえるようなミリアリアの快活な返事が返ってくると、キラはストライクを今だ戦
ったことの無い未知の海中へと発進させた。
「思ったより動きが鈍い。でもアクチュエータにこれ以上は負担をかけられないし」
敵の水中MSとの距離を詰めながらバズーカ仕様の魚雷の照準を付けながらトリガーを絞る。しかし、難なく
魚雷をかわしたゾノ、グーン部隊はモラシム自らストライクと相対する。
「これが、連合のMSか噂の程を確かめるとするか」
モラシムはゾノのフォノンメーザー砲で牽制しつつ接近用クローでストライクを難なく追い詰める。
「他愛も無い、これが本当に噂のMSとは」
水中とはいえ、これが宇宙でクルーゼを砂漠でバルトフェルドを翻弄した機体なのかと疑いつつも、トドメを
差すべくクローで押さえこみフォノンメーザー砲の発射体勢をとったその時だった。
「このままでは、やられる。」
キラはコクピットでうめくような叫び声を発した後、アーマーシュナーダーを取り出し、一瞬ゾノが撃つより
も早くMSの肩の関節に突き刺した。
「何を!!」
モラシムは一瞬の出来事に驚愕したが、歴戦の兵らしくフォノンメーザーで牽制しつつ後退した。
80 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 05:09:49 ID:???
アークエンジェルではグーンのフォーメーション攻撃に翻弄されていた。艦の損傷も増えつつあり火器管制を
任されているナタルは思いつめたように進言する。
「ラミアス艦長これ以上は敵に打撃を与えられません、主砲発射態勢を取れませんか」
「ナタルまさか」
「無理を承知でお願いします。これ以上の攻撃を受けると艦の航行も危うくなります」
ラミアス艦長はナタルを正面から見つめ決断を下す。
「わかりました、ノイマン、アークエンジェルをバレルロールさせて、ナタル、チャンスは1度だけ」
「了解です。1度で十分です」
ナタルは一度で仕留めるべく主砲を起動させ発射態勢に入る。
「本当にやるんですか」
ノイマンが心配げな表情で聞き返すが、ラミアス艦長は構わずに傍らの受話器を取り艦内放送のスイッチを入
れる。
「総員に告ぐ、本艦はこれよりバレルロールを敢行する。各員は傾斜と衝撃に備えろ。」
艦内放送がされた上は、ノイマンは覚悟を決めてスロットルに手をかけて、操縦桿を握り直す。艦内の調理室
やMSデッキの整備班は「まさか、気でも狂ったのかと」文字どうり驚天動地の大騒ぎだった。
「10秒前からカウントダウンを行います。10・9・・・・・・」
カウントダウンが進む中、艦内の全員が身構える。
「2・1・0今だ!!」
「行けーーーー」
ラミアス艦長の合図と、やけくそ気味のノイマンの掛け声でスロットルを全開にし操縦桿を引き寄せる。アー
クエンジェルはバレルロールのマニューバを取りつつ艦を反転させる。
「ナタル!!」
「ゴットフリート1番2番照準、撃てー」
アークエンジェルの捨て身ともいえる主砲の攻撃がグーンに命中し海面に水柱を立てて爆発が起こる。丁度、
退却したモラシムのゾノが合流し残存部隊を纏めて引き上げたが、アークエンジェルが被った被害も大きかった。
「左舷のダメージコントロール、消火急げ。」
「艦の推力低下。これ以上は速力上がりません」
ザフト軍を退けたアークエンジェルだったが、修理には時間がかかりそうだった。
81 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/03(水) 05:10:38 ID:???
先の戦闘により食堂で倒れたテーブル等を片付け終わり、カガリとキサカは窓から見える左舷の黒煙を見な
がらコーヒーを飲みながら一息入れていた。
「アークエンジェル・クルーは良くやっているな」
「はい、思いのほか優秀です艦長も良くやっています。」
「食べ物以外はな、アフリカでそっちの補給を怠った。コープマンのミスだ」
「口に合いませんか、大佐の好意だと思いますが」
「合わせているさ口の方を、でもこれは違うよ、これは良いコープマンのお手柄だ」
カガリは炭酸飲料の表示を指差す。真面目な口調に戻り後の話を続ける。
「石油資源のほうは概ねうまく片付きそうだな」
「まず問題ないでしょう。しばらくは連合軍主導で採掘管理する見通しは立ちましたし」
「うん、仕方ないか有力部族も利権はほしいだろうが、それだけでは治められない」
「部族対立が思いのほか激しかったですからね。それもこれも部族で独占しようとするからですが」
「程度の問題だが、まだ軍が管理する方がマシだろう。その間に産業が立ち上がらないとザフト占領前に逆戻り
 だが」
カップを皿に戻し、海原を見つめ艦からの黒煙を見つめて少し表情を曇らせた。
「速力が落ちているな損傷がひどいのか」
「では、ブリッジに」
「ああ、そうしよう」
二人はカップを還すと、艦橋に上がっていった。
「ラミアス艦長、被害がひどいようだが艦の進路に変更は」
「今のところその予定はありませんが、なにかプランでも」
「もし、被害がひどいなら連合軍オーブ第7ドックに入港することを提案したい。あそこならモルゲンレーテ工廠
 も至近の距離で何かと補給もたやすい、それにアークエンジェルに収容されているヘリオポリスの避難民の収容
 とキラ君達学生の両親とも再会させられる」
ひとしきり説明を終えたカガリはラミアス艦長を見つめる。
「それだけが理由でもないようですねカガリさん」
「もちろん、我が国の国益になると判断したからでもある。申し遅れたがオーブ官房副長官を拝命しているカガリ
 ・ユラ・アスハです」
「同じく。オーブ国防省および主席補佐官を拝命しております、レドニル・キサカです」
右手を頬にやりナタルに視線を送りながらラミアス艦長は考えをめぐらしたが、ナタルも被害を考えて頷き返す。
「わかりました、ご提案に沿うようにしましょう。」
ラミアス艦長以下幹部クルーは、連合軍本部に進路変更とあらたな航路の策定に奔走した。
82通常の名無しさんの3倍:2007/01/03(水) 20:31:37 ID:???
凄く…きもいです
83通常の名無しさんの3倍:2007/01/04(木) 11:39:30 ID:???
カガリがまともなのがか?
84通常の名無しさんの3倍:2007/01/04(木) 14:11:03 ID:???
こんなもんを書いてることがだろう
85 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/04(木) 18:47:38 ID:???
(´・ω・`) ぶちゃけオレの妄想だからな
86通常の名無しさんの3倍:2007/01/05(金) 23:02:39 ID:???
存在自体がきもいんだろう
87通常の名無しさんの3倍:2007/01/06(土) 18:02:14 ID:???
大元に比べたら、まだこっちの方がいい。
88通常の名無しさんの3倍:2007/01/06(土) 20:37:30 ID:???
結論、どっちもきもい
89 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/12(金) 00:06:24 ID:???
( ^ω^)保守
90 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 02:00:10 ID:4ZEdQCDw
13、それぞれの休息
 
 カーペンタリア基地では大気圏カプセルで降下したアスランとニコルの元に、ストライクを追って計らずもMS
で降下したイザークとディアッカが無事に合流を果たしていた。
「これからどうするんだアスラン、いや隊長」
「偵察衛星がオーブ領海内に入るアークエンジェルを確認している。なら、やることは一つだろ」
「安心した。でどうする気だ。」
「イザークあわてなくても、アークエンジェルは思いのほか深手のようだ、すぐには逃げないさ。」
「元々、モルゲンレーテの息のかかった船だオーブも親心が出たか。」
「そこまでは、わからないが。明朝オーブ近海に進めたボズグロフ級と合流するべく我が隊も発進する以上」
イザークはアスランに安堵の笑みを浮かべ、あらためて敬礼しなおした3人は踵を返して準備に取り掛かった。


 連合軍・月面基地ではザフト軍に対抗するべく戦力増強に努めていた。ハルバートン提督の副官ホフマン大佐は
過日の戦闘でプラントに潜入した工作員の情報を手に提督の基を訪れていた。
「シーゲル議長との接触に成功したようだな。」
「ハッ、シーゲル議長は穏健派でもありますし、連合国の議員や上流階級との親交も厚い人ですから。」
遮光された執務室の窓から、漆黒の宇宙にひときわ輝く青い地球を眺めながら。ハルバートン提督は自らの考えと
情報部の報告を反芻しながら続けた。
「情報網が構築されつつあるのは朗報だ、それとザフト軍の動きに近々大規模な作戦があるとのことだが。」
「確度は非常に高いと思われます。裏づけるようにプラント国内の製薬会社の株が急騰しており関連物資の株価も
 大幅に続伸しております。また軍施設を監視しているエージェントからも大規模な納入を確認しております。」
「ズバリ目標は何処だ。」
後ろに控えるホフマン大佐は自らの考えを交えて核心を切り出す。
「情報部の報告と先のザフトの動きからおそらくは、連合軍アラスカ本部。」
「指揮官は誰だろうか、やはり仮面の男かな」
「閣下のお考えどうりと思われます。大規模な攻略部隊を率いるのはクルーゼしかいないでしょう。」
「ならば、こちらも歓迎の準備をしなければならないな。といっても逃げる準備だが」
ホフマン副官に向き直ったハルバートン提督は、逃げる演技が巧くなりそうな自軍に可笑しさを感じながら次の手
の準備を進める。ふとアークエンジェルがオーブに寄航しているのが幸いしたことを思い出しながら喜んでいた。
91 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 02:02:29 ID:???
 オーブ国内の連合軍第7ドックに入港したアークエンジェルは、待っていたモルゲンレーテ社の技術者による
修理改修作業が行われ、2台目となるストライク本体とバックアップの予備パーツもふんだんに納入された。
「2台目のストライク、こんなの本当に納入していいのか。」
整備班のコジロー班長は物資を眺めながら、うれしさと驚きを交えた悲鳴を上げる。
「もちろん、2台目のパイロットはオレなんだろう。」
コジロー班長の隣りに立ち、フラガ大尉が目を輝かせながらトレーラーに幌を被せられて納入されたMSを見上げ
ながら二人で頬を緩ませながら顔を見合わせる
「パイロットまでは聞いてませんけどね。」
「オレだろう、いやオレしかいない。なあキラ君。」
たまたま二人の隣りに居合わせたキラだったがフラガ、コジローと共に3人で見上げながら
「ボクもパイロットのことは何も聞いてませんけど。」
「まあ、オレしかいないんだから。それとキラせっかくの上陸なんだから、今のうちにたっぷり休んでおけ、休める
 ときに休むのもパイロットの務めだ。」
フラガはうつむきがちなキラの肩を組み、納入されていく物資を見つめたまま話を続ける。
「オーブにいる親御さんとも面会しておけ、親に心配をかけ過ぎないないのは子供としての務めだぞ。まあ心配かけ
 通しのオレが言うのもなんだけど。」

半減上陸が許された乗員は久しぶりの自由時間を満喫し、ヘリオポリスの一部避難民の収容やキラたち乗員となった
学生たちにはオーブ国内在住者の親子面会が果たされていた。
92 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 02:04:05 ID:???
 アスランたち4人は夜間オーブ沿岸に浮上した潜水艦からゴムボートで上陸を果たし、アークエンジェルが入港し
たと思われる連合軍ドックとモルゲンレーテ工廠の監視を始めた。
「隊長、情報に間違いは無いのか、もうすでに5日目なのに何の証拠も摑めない」
アークエンジェルの入港ドックが割り出せないでいたイザークの苛立ちが伝わってくる。
「間違いない、このドックに入ったのは確実だが、用意したIDではこの先には容易には入れない暫くはこの地点で
 の監視を続けよう。」
モルゲンレーテ社の工廠の先、連合軍ドックは警戒が厳重すぎて容易には潜入できそうには無かった。交代で車上か
ら監視を続けていたが、夕方の淡い日差しが今日も徒労に終わることを告げたときだった。
「トリィ・・・・・・」
アスランは見覚えのある機械仕掛けの鳥が自らの肩に飛び込んできたのに驚き、また、キラがまだアークエンジェル
に乗っているであろうことに落胆した。
 立ち上がって飛んできたであろう工廠内の敷地に近づき、フェンス越しに駆け寄ってくるキラを複雑な思いで待つ
「ありがとう・・・・・・。」
キラはアスランの姿をハッキリと認めながらも真っ直ぐに近寄り、アスランのエメラルドグリーンの瞳を見つめて、
感謝の気持ちを伝える。
「大事なものなんだ、親友がくれた・・・・・・・・・とても大切な。」
フェンス越しにトリィがアスランからキラの手に乗り換える。
「そうか、なら大事にしてくれ。それとどんなことになっても信じている。親友なら信じている」
アスランは分かたれた道は少しのはずなのに、このフェンスの壁は引き返せない距離に感じられた。しかしキラが
揺るぎない瞳を向けてアスランに告げる。
「ボクも信じているよ。必ずこの戦いが終わったら・・・・・・」
アスランはそっと胸元まで手を上げて目を瞑り踵を返し車の方へ歩き出す、少し肩を震わせて。

「アスラン隊長、何かあったんですか。」
一緒に監視していたニコルがアスランを心配して声をかける。
「なんでも無い。大丈夫戻るぞ。」
少しの間目頭を押さえたアスランは車に乗り込むと郊外へ向けて走らせた。キラは車が見えなくなるまで佇んで見送
った。
93 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 02:06:03 ID:???

 アークエンジェルがオーブに入港してから3週間、改修が進みハワイ基地へ向けての発進が迫る中。連合軍のアラ
スカ本部に近いクリア基地、チューレ基地のレーダーサイトでは、ザフト軍の大部隊を捕捉した。
コロラド・スプリングの連合軍防空司令部では捕捉したザフト軍部隊にむけて第1種戦闘態勢が取れるなかでも多忙
を極めた人物が一人いた。
「砂漠からいきなりモグラ生活とは、ハルバートン提督も人使いが荒い。」
アラスカ本部付き北米防空指令官に転属になったコープマン大佐その人である。
「ザフトの目標はアラスカ本部に間違いないか。」
「ハッ、目下のところアラスカ本部への直接の降下ルートおよび海上からの進軍ルートを取っております。」
「NORAD防空デューライン(北米本土防空の三重早期警戒線)を越える様子は」
「ありません。」
「第1目標はアラスカ本部か、提督の読みが当たったな。」
コープマンは席を立つと咳払いと拍手を一つ打つと騒然となる部員達を鎮めて指示を出す。
「諸君、聴いてくれ。現在アラスカ本部はザフト軍に急襲されつつあるが、それこそが我々が待ち望んだ反抗作戦の
 第一歩である。予てより準備を進めていたハルバートン閣下の作戦通り整然とアラスカ本部撤退作戦を実行に移し
 てもらいたい、来るべきアラスカ本部奪還作戦へ向けて君たちがベストを尽くすことを信じている。」
コープマンは部員一人ひとりを眺めるように見渡して締める。
「さあ、はじめよう。」
アラスカ本部は今回は初めから負けるように、来るべき奪還作戦をしやすくするためコンピュータウィルス、主要部
署へのEMPおよび爆弾を仕掛けて守備部隊にも徹底抗戦はせず呼吸を合わせて撤退するように厳命してある。
しかし、流されるであろう血の多さを考えると防空本部地下深くとはいえ、アラスカ本部には苦楽を共にしていた部
下も多くコープマン大佐の心はすぐれなかった。



 一方プラントでは連合軍アラスカ本部制圧の勢いに乗るかのように、議会の解散総選挙が実施されザフト率いる政
党が歴史的な大勝利を収めいち早く勝利の美酒に幹部や議員だけではなく、いまや熱狂する国民そのものが酔ってい
た。

94 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 18:22:15 ID:reOyNg1U
14、南海の激突

 アークエンジェルの修理・改装も完了し連合軍ハワイ基地へ向けて出発する時が迫っていた。カガリはキサカを伴
って形式的に離艦許可を求めて、ラミアス艦長の基を訪れていた。
「艦長、お世話になりました。あらためて許可を」
「カガリさん、こちらこそ望外な補給をしていただき感謝します。」
「2機目のストライクなら気にしないで下さい。あれはモルゲンレーテ社の是非請いですので」
敬礼と握手を交わし話を続ける。
「それより艦長はアラスカ本部がザフトに急襲されたことのほうが大きいのでは」
「お見通しでしょうが、本艦の目的はアラスカ本部でしたので」
「ハワイのほうが暖かくて良いですよ。それに奪還作戦では我々の艦艇も合流するかもしれません。これは政治向き
 の話ですが、ではラミアス艦長これで。」
カガリとキサカは笑みを残しアークエンジェルを離れていった。


「出港準備整いました。」
「アークエンジェル発進。」
ラミアス艦長の号令一家、アークエンジェルの甲板には総員が敬礼し、オーブの連合軍ドックで見送るもの達も敬礼
しあるものは帽子を振って見送る中ハワイへ向けて出航した。
95 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 18:23:34 ID:???
アークエンジェルは順調にオーブ領海内を離れようとした海域で、ザフト軍・アスラン率いる追撃部隊が待ち構え
ていた。
「オーブ領海内を離れ、予定通りこちらに向かってきます。」
レーダー員の報告とボズグロフ級が捕捉したレーダーがアークエンジェルの反応を映し出すのを確認したアスランは
浮上と追撃部隊の発進を決断した。
ボズグロフ級の垂直カタパルトから発進した4機は、MS支援空中機動飛翔体・グゥルの背に乗り海上を低空飛行し
つつアークエンジェルに接近する。
 キラはいるに違いないが、巧く傷つけずに出来るか、いや戦場でこんなことを考えていては自分の身が危ういか・・・
MSコクピット内で逡巡するアスランにレーダー警報がアークエンジェルを捕捉したことを告げる。
「よし、行くぞアークエンジェルを仕留める、攻撃開始。」
「了解した」
アスランの攻撃命令にイザークがひときは気合の入った返事を返し残る二人も続く。


MS4機の機影を捉えたアークエンジェルでは迎撃準備が慌しく整えられた。
「MS機影4、奪取されたG兵器4機です。」
チャンドラーの報告に間髪いれずにフラガ大尉が発進デッキから連絡を入れる。
「ムウ・ラ・フラガ。スカイグラスパー出る。」
フラガ大尉はオーブに寄航した折の補給が功を奏し、ストライカーパックに随分と余裕が出来たのを見て取り。左右バ
ランスが悪くフライバイの操縦システムがあるとはいえ操作が悪くはなるが支援効果の高い、ランチャー装備のスカイ
グラスパーをチョイスし発進させた。
「キラ・ヤマト、ストライク発進します。」
 同じくランチャーストライク装備で発進したキラはアークエンジェル甲板にストライクを陣取るとアグニの照準を付
ける。
 アスラン・・・・・・やっぱり避けられないか・・・・・・・・・。
照準システムに写る機影を確認すると一瞬親友の顔が浮かんだがスグに思いを振り払うと引き金を引いた。
96 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 18:24:58 ID:???
同時にアークエンジェルの主砲も砲撃を開始する。火器管制を受け持つナタル少尉が指示を飛ばす。
「主砲。撃てー 対空防御開始。あわてずに狙え間違えて見方を撃つなよ。」
ランチャーストライクのアグニがブリッツのグゥルを掠め飛行不能になる打撃を負わせたが、ランチャー装備のバッテ
リー切れを知らせる警報がコクピットに響く。
「エールストライカーの換装準備を」
艦橋に連絡を入れるとキラはランチャー装備をはずしカタパルト前にジャンプしつつバーニアを噴かして姿勢を制御する。
カタパルトから飛び出したエールストライカーが待ち構えていたストライクと換装を済ませるとキラはエールストライカ
ーの推進力を生かし空中戦を始めた。

キラはデュエルガンダムに狙いを定めて、ビームライフルを連射しつつ肉薄する。イザークも千載一遇の機会を逃さず
同じくビームライフルを連射しつつ巧みに回避しながら一撃入れるチャンスを狙う。
「ムウさん」
背後に控えるフラガ大尉へ合図を送ったキラはデュエルに不意に近づくと急速離脱し、デュエルの注意を惹きつけフラ
ガ大尉が操るスカイグラスパーのランチャーの射線を空ける。
「なんだと」
イザークは視覚の外から現れたようなスカイグラスパーのアグニの直撃を受けて大きなダメージを追い撤退せざる終え
なかった。

「キラ、アークエンジェルに取り付いたほうが心配だ急ぐぞ」
「はい」
ストライクとスカイグラスパーは右舷に取り付いたブリッツを引き離すため攻撃を始る。フラガ大尉は注意を惹きつけ
る様にブリッツとアークエンジェルの間にアグニの連射を入れて離脱する。スカイグラスパーに注意を取られたブリッ
ツの左からキラが操るストライクが渾身の蹴りを見舞いブリッツは宙を舞うように飛ばされ、ニコルは衝撃で半ば意識
を失いかける。
 間髪いれずにキラはストライクのビームサーベルを抜きブリッツの左腕を切り飛ばし追い討ちをかけた。
「ニコル」
アークエンジェルの砲撃を避けながら状況を見ていたアスランは思わず叫び、キラの実力を垣間見た今、心の奥底では
避けていたキラとの対決を決断した。
「大丈夫です、隊長でも撤退します。」
ニコルからの通信アスランは安堵の表情を浮かべたが、表情を引き締めてキラが操るストライクへビームライフルを連
射しながら接近する。
97 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 18:26:40 ID:???
フラガ大尉は残るバスターへ照準を合わせてアグニを撃つが同じくバスターも高エネルギーライフルで迎え撃ち膠着状
態に陥りつつある。見かねたナタル少尉は一計を案じ艦尾大型ミサイルを連射させアークエンジェル近くで爆発した衝
撃が艦を揺さぶるが同時に大量の爆発の炎と煙がバスターのレーダーと視界を遮る。
「ビンゴ!」
距離をとったスカイグラスパーのフラガ大尉が冷静に狙いをつけアグニの連射と2連装350mmガンランチャーを連射
し確実にバスターを仕留めにかかる。
「ここまでか」
被弾しすぎてフェイズシフトダウンが近いことを悟ったディアッカは不肖ながらも撤退していった。


イージスのビームライフルを撃ち抜いたストライクはビームサーベルを抜いて接近するイージスに呼応するようにビー
ムサーベルを抜いて何度目かの鍔迫り合いに持ち込まれた。
「キラ、ザフトへ投降してくれ悪いようにはしない。」
「アスラン、君こそ・・・もう止めてくれ勝負は付いてる。」
イージスが渾身の力でストライクのサーベルを押し切り、ストライクとの間合いを取るように引き剥がす。その弾みで
体制を崩したストライクにイージスがビームサーベルを振り上げ止めを刺すべく、にじり寄る体勢をとった。
「く・・・・・」
 キラは呻くように短く言葉を発しトールが施したプログラムを思い出した「・・・・・・・・最後の技」そう確かにそう
いった一か八か
「ええぃ・・・・ままょ」
ドロップキックが発動される思いがよぎる中、スロットルを開けマニューバを実行する。
ストライクは敏感に反応し、体制を立て直した姿勢から両腕を下ろしたまま信じられないスピードでイージスに
肉薄しイージスがビームサーベルを振り上げた手を逆手に取った瞬間に足を返し体を入れ替える。
 そのままストライクが返し手のまま投げ技を極める。イージスはカウンターを返されたようにストライクの足元
に転げ落ちた、そこへ間髪射れずに、ストライクの手刀がイージスの首の付け根に突き刺さり頭を弾き飛ばす。
 トールが施した渾身の機動プログラム、リミッターを解除し俊足の動きで無刀取りから手刀への2段攻撃が鮮や
かに決まったのである。
98 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 18:27:48 ID:???
 アスランは何が起こったのか、わからないまま投げ技をかけられた事に気付かなかった、耐Gコクピットといえ
ども投げられた衝撃はすさまじく意識を失うブラックアウト寸前だった、また頭を飛ばされメインカメラからサブ
カメラに切り替わった映像がただ事ではない事態を告げている。
 二本目のビームサーベルをイージスのコクピット突きつけたストライクが迫るのを目の当たりにし、アスランは
最後の賭けに出る。
「アスランこれ以上の戦いは無意味だ、大人しくアークエンジェルの通過を見逃して撤退してくれ」
「キラ、軍人でもない君が、コーディネイターでもある君がなぜ戦う。戦う理由など無いのに」
問いかけながらアスランはGAT―Xシリーズに共通する通信ポートを開きプログラムを送信する。さすがはキラ
、新しくファイヤーウォールを書き換えてある。だがこちらもそれなりに対策をしてある。
「キラ、君と戦う理由は無い、どうだ僕と一緒に戦ってくれないか」
「それは、出来ない僕はもう・・・・・・・・・・・・・・・僕の祖国は一つしかないんだ」
ストライク内部の警報が鳴る。キラはストライクの制御プログラムにウィルスが送信されていることを一瞬で理解
し、駆除に取り掛かる。
 しかし、その瞬間ストライクのフェイズ・シフト装甲が解かれる。アスランの放ったウィルス・プログラムが優
ったのである。
隙を逃さずアスランはイージスを操りモビルアーマー形態に変形しストライクに組み付く。
「アスラン・・・・・・・・・・なにを!」
身動きを取れないストライクを必死に操作するキラ、しかしイージスの組み付いた機体では満足な操作もままなら
ない。
「キラすまない。これしかないんだ許してくれ」
 アスランは自爆装置を起動しカウントダウンさせる。コクピットから抜け出し安全圏まで脱出すべくノーマルス
ーツの脱出装置で手際よく飛び出す。
 キラは全てのリミッターを解除し全力でビームサーベルで切り付けイージスを振りほどいた時、閃光と轟音が響
きわたり、付近の木々が爆発の鳴動に合わせて揺れ動きあるものは破片になぎ倒される。
 かろうじて直撃は回避したものの、爆発でストライクは大破し地面に倒れ伏したまま起き上がることは無かった。

この海域でも発達した低気圧の影響か、二人の対立を埋めるがごとく雪が静かに舞い降りたのであった。
99 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 18:29:59 ID:???

 プラントではパトリックの秘書官がドアをノックし少し大き目のスペイン杉で設えられた木箱を執務室に届けてきた。
新年を目前にして大西洋連邦大統領から贈られたプレゼントだった。慣習的にやり取りしているものではあったが、
緊張状態が続くなか、心休まる思いがする出来事には違いなかった。
「議長、時期が時期だけに送り返しましょうか」
ユーリ・アマルフィ官房長官が気を使うが、パトリックはこともなげに箱をあけ上質のハバナに火をつける。
「いや、かまわんよ、君もどうだね。プラントの科学が優れていようともハバナの本物を作り出すことは出来ないか
 らね」
ユーリもお相伴に預かり紫煙を眺めながら大きくうなずく
「これだけは、ハバナで作ったものでないと100パーセント同じものでも贋物になるからね。」
添えられたカードをユーリ長官に渡しながら皮肉をこめて続ける。
「”愛と平和の幸多からんことを”か、お返しはいつものキャビアだったかね。カウボーイたちの口には合わんか
 もしれないが」
「それとも地球降下作戦の第一目標はカリブ海沿岸にしておくべきだったかなパトリック」
二人とも軽く笑い、先ほどまでの会議での緊張が、軽口を交し合うほどまでにひと時の安らぎをもたらした。
「戦局は厳しいが、何とか踏ん張って地球連合に自治権の拡大を認めさせないとな」
「資源衛星の権益がなくなると我々の自主独立の道は険しくなる。パトリック戦前より後退することは許されんぞ」
パトリックは大きくうなずきながら話を続ける。
「分かっている。そろそろ引き際だとも思うがプラント国民が許すかどうか」
「弱気は禁物だぞ」
「弱気にもなるさ、妻を亡くし息子を戦地に送った。それがプラントの頂点に立つ者の使命と思ったからだ、また
 息子もそれを理解し君の子息と共にエース部隊として頑張ってくれている。それには本当に感謝しているし時に
 挫けそうな私に再び立ち上がる原動力ともなっているが、でも本当にそれが息子や、ひいてはプラント国民のた
 めになっているのだろうか」
パトリックは椅子から立ち上がり、執務室の窓から外を眺めココからは見えない地球のほうを向いて感慨にふける
ように一点を見つめたまま離れた愛息子であるアスランの無事を祈る。
「パトリックそれが弱気というものだ。総選挙を強行して以来激務が続いている。今日は早めに休むといい」
「ユーリありがとう、でも大丈夫さ私の耳にはプラント国民の声しか聞こえない治めてみせるよ」
「君の成し遂げようとするものが、いかなる結果になろうとも君が必要とする限り私は協力を惜しまないさ」

その日の紫煙はプラントに被さっていた地球連合との深い重圧を思わせるもののように漂っていた。
100 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 20:44:00 ID:M3lz+sh5
15、離れ離れの二人

 アークエンジェルではロストしたストライクの信号を頼りに捜索活動を続け、オーブ近海での停泊を余儀なく
されていた。
残された2台目のストライクの機体のテストも兼ねてフラガ大尉がエールストライカー装備のストライクに乗り
また、習熟飛行を兼ねたトールがスカイグラスパーに乗り込んで精力的に捜索活動を行っていた。
「ロストから10日、これ以上はオーブ沿岸警備隊に引き継いでハワイ基地を目指すしかないか」
「不本意ながら英断と思います。」
ラミアス、ナタルともにオーブでの親子再会を見届けた手前、キラ・ヤマトの行方不明は心苦しかったが、普段
より大規模な捜索をナタル自ら指揮し、期間も長く捜索打ち切りの決断は遅めとはいえ最後は自らを納得させる
ような期間だった。
「ハワイに向けて出発します。総員に準備を遅れた日数も取り戻さなければなりません」
「ハッ」
ラミアス艦長の苦渋の決断にフラガ大尉ほかの総員はキラを失った哀しみと虚無に似た脱力感を忙しさで紛らわ
すほか無かった。

また、オーブではオーブの領海外とはいえ公海との境ギリギリで起こったことでもあり、観測レーダーや偵察
衛星が爆発を捕らえ独自に捜索活動を行っていた。
そのとき、波打ち際で意識を失ったザフトのパイロットスーツに身を包んだアスランをオーブ沿岸警備隊が発見
し急遽保護を行う。

 一方、カーペンタリア基地ではニコルがオーブ沿岸警備隊の艦影が映し出された偵察衛星の映像を何度も見比
べ、また同期でもあった通信部に配属された知己の同僚から、オーブ通信情報をひそかに入手し、上層部に救出
もしくは早期の捕虜引渡しを求めたが、政治問題にも発展しかねないこともあり事態の進展は叶わず沈うつな数
日を過していた。
万策尽きたニコルは重い気持ちでイザークに相談に訪れる。
「救出したらオーブに偵察衛星と通信の傍受がもれる、ヤツ一人のために暗号を変えられたらザフト全軍の脅威
 にもなりかねんアスランのことは戦死したと思って諦めろ」
「待って下さいよ。アスランは僕たちの隊長じゃないですか、居所が判っていて救出しないなんて」
イザークは書類の入った大判の封筒をニコルに差し出し
「これをお前が個人的に使うのは自由だ。あくまでもお前個人だぞ」
ニコルはあわてて中を確かめ、おもわず目に涙をためる。
「イザーク・・・・・・・・・・・」
「気にするな、いやお前だけに負担をかけるがスマン。オレにはザフト軍で出世するのが親の・・・・・いや俺の夢
 なんだ、後のことは任せてくれアスランには悪いようにはしない。」
「ありがとうイザーク」
「礼を言うのはオレのほうだニコル、それにオレの女神ラクス・クラインの婚約者を放っておけんしな」
すこし、照れたようにイザークはニコルの肩を叩き、踵を返して自室にこもってしまった。

手始めに、ニコルは上層部に知られないように連絡を入れる。
「ああ。人権救済センターですか?・・・・・・そうです捕虜の虐待の可能性が極めて高いです。場所はオーブの・・・」
101 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 20:45:08 ID:???
 オーブでは赤十字からの派遣と名乗る弁護士が、捕虜の取り扱いと人権の救済を求めてオーブ国防省に出向い
てきた、キサカが対応に出てるが弁護士の申し出は本人の面会と尋問の立会いを求める物だった。
カガリとキサカが大又に速いペースで歩きながら打ち合わせする。
「早いな」
「早すぎますね。ザフトの偵察衛星でしょうか」
「まさかとは思うが、デジタル暗号を解読されているかだ」
「ザフトなら案外。両方かもしれません。」
「後日の捕虜交換の折での引渡しはいいとしても、今は最大限情報を引き出さないと」
「拷問ですか」
「それは出来ないな、多少は目を瞑るが」
カガリは片目だけ瞑ってみせる。
「すべて、打ち合わせどおりにな、あくまでも丁重にだぞ」

 傷の手当は終えていたが、手錠をかけられて座らされていたアスランに屈強な男が尋問を始める。がさすがに
ザフトのエース部隊というべきか氏名以外しゃべろうとしないので、鋭い平手打ちが飛び椅子ごと後ろに飛ばさ
れたアスランは、したたかに後頭部を強打した。
 屈強な男の合図で、横で見ていた軍医がスコポラミンのアンプルを取り出し注射器に薬品を詰める、注射器内
の空気を押し出し少しだけ薬剤が飛び出す。思わずアスランは見開いた目を瞑り後に続く我が身の行く末を思い
暗澹たる気分で支配された。
「待ちたまえ、私は赤十字のものだが断固として虐待は認められない、すぐに止めていただこう」
弁護士とキサカが入室し尋問が中止される。アスランは緊張の糸が切れ思わず安堵のため息がもれる。
「私は赤十字から人権の保護で派遣された弁護士です。まず君の名は」
キサカの指示ですぐに打撲の応急処置を加えられながらアスランは先程とは打って変わって素直に答える。
「アスラン・ザラ」
「ザラというとプラント議長の?」
「そうです、あれは父です」
「そうか、なら慎重に扱わないと国際問題だ、もちろん君の父上はプラントかね」
「そのはずです、アプリリウスに居る筈です。」
「そうか、君の部隊は」
 二人のやり取りをマジック・ミラー越しに確認したカガリは情報の裏を取るために壁際の電話を取り情報部に
指示を出す。
そのとき、カガリの携帯が鳴り、一瞬相手の剣幕にひるむ表情を見せる。抗議の電話である一旦電話を切りアス
ランと弁護士のやり取りを見つめながら腕時計を確認した45分これ以上は無理か。
「時間切れだ、仕方ない弁護士に合わせるとしよう」
カガリは命令を下し、場所を近隣の収容所に移して今度こそ本物の派遣された弁護士とアスランを面会させた。
102 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 20:46:33 ID:???
 そのころ、ニコルはカーペンタリア基地内でアスラン救出に向けて孤軍奮闘していた。イザークから託された
資料をもとに詳細な地図を添えて命令書を偽造する。ヘリ3機による特殊部隊を編成した救出作戦を、素知らぬ
顔で指令官の指令書にまぎれさせ作戦の認可を取り付け、自身も素知らぬ顔で準備に勤しんでいた。
また、イザークが指定した作戦日時にはあらかじめ司令部の主要幹部にイザークが作戦会議と称した用事が作っ
てあった。

 オーブ近海の海中に留まっていたザフト軍・ボズグロフ級・大型潜水艦が作戦開始時間に合わせて浮上を開始
する。
「そろそろ、時間だな」
 腕時計で時間を確認したニコルは自らもアスラン救出作戦に加わる為、パイロットスーツに着替えMSデッキに
向かう。ヘルメットを小脇に抱え整備員に混じり何時ものようにブリッツを点検し出撃書類にサインをする。
MSコクピットに入りブリッツを起動させた後
「これが最後の出撃になるな・・・・・・」
誰にも聞こえないような声でつぶやく、巧くいっても除隊、悪ければ軍法会議か・・・・・・アスラン救出には換えら
れないと決めたものの出撃前の不安がそうさせるのか、マイナスな思いがよぎる。
「ニコル・アマルフィー、ブリッツ出ます」
管制官とのやり取りを終え、ボズグロフ級大型潜水艦から発進したブリッツと少し遅れてアスランが収容された
施設を急襲する特殊部隊をのせたヘリ3機が発進し、ブリッツに随伴してオーブ内の収容所を目指して飛翔する。

 ブリッツが変電設備を壊して収容所を撹乱する中、特殊部隊が所内を急襲しアスランを発見無事に保護する。
少し憔悴した表所を浮かべるアスランをコクピット内のモニター望遠で確認し安堵したニコルは笑みを浮かべて
警戒しながらも帰艦の航路を取る。


オーブの片隅の島では治療を受けたキラが眠りに付いていた。
「彼には何か、特別な力を感じる。これ以上の治療はココでは無理だ、プラントに連れて行こう。」
103 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/15(月) 21:09:16 ID:???
o(≧ω≦)o〃其々のターニングポイントとフリーダム登場に向け書き溜めます。
104通常の名無しさんの3倍:2007/01/17(水) 14:16:31 ID:???
がんばれ〜
105今北産業:2007/01/19(金) 23:57:21 ID:???
tyo、ちょっと待ってくれ。
ココって失敗スレだよな?
106通常の名無しさんの3倍:2007/01/20(土) 02:50:05 ID:???
>>105
次スレ乱立でフライングで建てられたスレに◆hO5UpTpm0s氏がSSを投下してこうなった。
ちなみに本物の失敗スレはとっくに292まで行ってる。
107 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 00:03:08 ID:???
16、新たなる道を選ぶ者たち

 今日も穏やかな夕日が頬を照らす海岸の砂浜で北大西洋連合・外務次官マルキオは傍らに杖を携えて佇んで
いた。
プラントと地球連合の溝が深まり、戦火が激しくなったころ一部私財と人脈を活かし、オーブ近海の孤島に戦
火から逃れた孤児達を引き取り、教育と医療そして子供達に一時とはいえ、ひと時の平穏を与えるために共に
暮らす生活をここしばらく送っていた。
 今は出向扱いの身ではあったが振り返れば、北大西洋連合・外務次官の肩書きは平時の若き時には国益と平
穏を守る国民の盾として激務にもかかわらず充実したときをもたらし、今は無理を言って一線を引いているが
子供達の将来を預かり、盲目の身でもあることを考えれば満ち足りた生活でもあると、子供たちの笑い声を聴
くたびに思い返される。
 特に施設の建設や財団設立の折には、有償無償の提供をしてくれている。オーブのウズミ代表やプラントの
シーゲル・クライン議員には特に感謝するべきなのだが、昨今の情勢は孤児院を切り盛りする暮らしで、逼塞
することを許してはくれなさそうである。
「連合事務総長の懇願とあれば従うしかないか・・・・・・・・・。」
見えるともしれない夕日を愛おしそうに眺めるように、歩きなれた砂浜を杖一つで院に戻っていった。


孤児院に併設された医療施設に入ったマルキオは、傍らのベッドに歩み寄ると院長とおぼしき壮年の実務派と
の印象を与える医師に話しかける。
「彼の様子はどうです。」
「容態は安定しております、長期の搬送も問題ないでしょう。」
「では、プラントの医療施設には。」
「ええ、プラントの大学病院の私の同期に良い医師がいます。重度の打撲と裂傷、火傷ですが、この患者は明
 らかにコーディネーターですね。ナチュラルなら死んでいてもおかしくないですが、驚異的な回復力です。
 この手の移植ならプラントで治療を受けるのが一番でしょう安心して任せられます。」
「では、5日後のシャトルを予定通り手配しておきます。連合事務総長の使いですから安心ですし。」
マルキオは連合事務総長から託された外交交渉の日程に1週間前に漂着した瀕死の少年を同行させることを決
め日程を組んだ。特別に飛行機やシャトルの6席分ぐらいを医療用ベッドに変更してもらわなければならない
が、それが難航しそうな外交交渉の妨げに、なるようなものでもあるまいと手配を急がせた。

 まだ名前も知らない少年だが奥底に眠る何かを感じてマルキオは未来を垣間見たように呟く。
「この少年にはシードを感じる。」
「わたくしも、ご一緒に連れて行ってください、ここの施設と同じくプラントの大学病院設立に父が尽力しま
 したので、何かのお役に立てると思いますマルキオ導師様。」
マルキオは、少年のベッドの側に立ち、数日の間この少年を看病していた、朱鷺色の髪の少女を見つめるよう
に真っ直ぐ向き直り同意する。
108 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 00:04:10 ID:dl8CxAjy
 プラントの執務室では、アスランとそれに伴う一連のオーブ国内施設の侵犯事件に至った、事態の全容を把
握したパトリックは収拾を図るべく側近とプラント内の大手広告代理店の敏腕プロデューサーを急遽呼び集め
ていた。
「今日来てもらったのは他でもない、オーブの収容所急襲にまつわる事案を解決する方法について集まっても
 らった。」
冒頭、連合アラスカ本部奪取の成功を勝機と見て、議会の解散総選挙を打ち出し、見事に過半数を上回る議席
を確保すると共に、選挙対策委員長を務め圧勝に導いた功績の余勢をそのままに、年末の首班指名で新議長に
選出されたパトリック・ザラが立ち上がり睥睨するように核心を切り出し議事を進行する。
「今回の件についてまず、アスラン・ザラ少尉は、歴戦の猛将たちを苦しめた連合軍の新型MSを見事撃破し
 た功績を持って2階級の特進。
 同じくニコル・アマルフィー少尉もよく部隊長を補佐し、武勲を立てた英雄の窮地を救った功績を持って同
 じく2階級特進とする。しかし、本人の強い希望を持って名誉除隊とする。」

ニコルの父ユーリのほうへ大きく頷きつつパトリックは続ける。
「重ねて付け加えるが、今回の一連の作戦においては、些かの命令違反に該当する行為は無かったものと認め
 る。この点を基本方針に事態の収拾を図ってもらいたい以上だ。」
一気に提出された原稿を読み上げたパトリックは、椅子に深く腰掛け議事進行を促すため続ける。
「諸君らの忌憚の無い意見を聞かせてくれたまえ。」
109 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 00:05:10 ID:???
ユーリが補足するように続ける
「まず、このような事態に至ったのは、該当する国家オーブに責任は無く、全て反コーディネイターによる政
 治団体ブルーコスモスによる情報の操作と隠蔽工作が行われたためであり、彼らのせいで固い紐帯で結ばれ
 た盟友であるオーブがミスリードされたに過ぎないと結論付けるものである。」
ユーリ官房長の発言に触発され、他の主席者たちからも兼ねてより政治的に反目するブルーコスモスを主犯と
する意見が議場の大勢を占める。

「ザラ議長の方針に我々も賛同するが、ブルーコスモスに対してはどうする気かね」
「それは、私のほうから説明します。」
大手広告代理店プロデューサーが詳細の説明を始める
「今回の事件を受けて、ブルーコスモスに対する国家の方針を強くアピールすることは、一市民の立場からも
 喫緊の課題と考えております。
  まず、課題としてはプラントと北大西洋連邦の議会、公聴会に対して事件の主犯でもある政治団体のブル
 ーコスモスが各地で行った不当な弾圧、また連合軍の一部親派による虐殺の生き証人でもある少女の証言を
 予定しており、各メディアの中継と特集を手配済みです。
  それと、ブルーコスモス主導による環境破壊に対する、各メディアでのキャンペーンを大々的にやります
 主要な放送局・通信局のプライムタイムほか、新聞の論説委員は押さえてあります。油田破壊の汚染と放射
 性物質による野鳥や草木が汚染・破壊されるシーンですが、大衆はこの映像を見て完全にブルーコスモスを
 嫌悪の対象から憎悪の対象、ひいては全人類共通の敵に変化するでしょう。」
会議に集まった面々は用意された映像を眺めながら大いに満足し、詳細を詰めるためプロジェクトチームの発
足が決まり、この日の会議は終わった。

パトリックはユーリに歩み寄って心からの謝意を述べた。
「ユーリすまない、君の息子だけこんな形にしてしまった。他にも遣り様はあっただろうが・・・」
「いいや、パトリックありがとう。」
二人は手を取り合いあらためて硬い握手を交わす。
「本来なら軍法会議だ。不問に付してくれただけでなく名誉を与えてくれた。」
「愚昧な息子のために、君の子息は命を懸けてくれたんだ。償いにはならないが心から礼を言うよ。ありがとう」
「いや、ニコルは軍には向いてなかったのさ、ピアニストのほうが性にあっている。」
パトリックは恣意的に権限を発動したことに後ろ暗さと、先々の政局を考えると後悔していた。しかし、執務
室のデスクの隅に置かれた写真を見つめて思い直す。
「レノア・・・・・・。」
最愛の妻を失って数ヶ月、さらに最愛の息子アスランまで収容所生活を送らせることは耐えられないし、ユー
リとニコルは自らの友とも片腕とも頼む存在であり息子の親友である。そんな大切な者たちを悲しませ軍法会
議にかけることなど同じ息子を持つものとして出来なかった。
これでよかったのだな・・・・・・誰知ると無くパトリックは写真の中で・・・自らの心にいる妻に語りかけた。
110 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 00:06:45 ID:???

 オーブでは沿岸警備隊による一連の捜索活動から、アスランを救助した近隣の孤島で大破したストライクを
発見するとともに、ヘリオポリスで奪取されたGAT−X303 イージスがおよそ2分割され大破したであ
ろう機体の残骸を、綿密に調査し回収作業を行った。
 おそらく、アークエンジェルがオーブ出向直後に起こったであろう戦闘を調査するため。即日、調査委員会
が組織され、捕虜としたアスランの証言と現場の状況から2週間後には拙速ではあるが1時資料的な報告書が
関係各位に上梓され、時を同じくしてモルゲンレーテ社に運び込まれた両機体の新造に近い全面的な補修作業
が急がれていた。

「それにしてもプラント政府というのはナイロン・ザイル並みの良い神経をしているらしい。臆面も無く姑息
 な政府の公式見解を持ってくるとは。」
閣議の冒頭、ウズミは閣僚たちの意見を代弁する形で怒りを交えて発言し、抑え役を心得たホムラの発言をう
ながした。
「ウズミ代表のお怒りはご尤もであり。我々閣僚もプラント政府に強硬な姿勢で臨むのが良いと思いますが」
不自然に言葉を切り、考える素振りを見せるホムラに、ウズミほか閣僚たちも沈黙のまま続きを待つ
「ブルーコスモスの動向を考えるとプラント政府の案に乗ってみるのも悪くはありますまい。それにヘリオポ
 リスの立場を考えると・・・・・・」
ヘリオポリス!!閣僚一同、失念しかけていたオーブのアキレス腱とも言える存在に、今回も外交交渉の手札
を狭めることになろうとは、自国領でありながらプラント政府・ザフト軍に対抗するだけの戦力を、新たに宇
宙に配備するだけの余剰戦力はオーブにはない。それだけに鮮明に旗幟を表明することなく中立のような政策
を取らざる終えなかったのだが。
 ホムラが閣僚一同萎みがちな空気を察し言葉を続ける。
「現状ではプラントもヘリオポリスには地勢の上では手を出さないでしょう。政治的に行き詰まり生け贄以上
 の必要があれば別ですが、現状はブルーコスモスを共同で叩いておくのが得策でしょう。」
ウズミはホムラの言葉に頷き閣議を締めくくる。
「では、ブルーコスモスを叩くとしても地球連合軍内部と連携しておくに如くはない、誰と組むかだがおそら
 くは宇宙軍・提督と組むしかないか」
111 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 00:07:56 ID:???
 オーブ近海で起こった、アークエンジェルとストライクの調査報告書を読み終えたカガリは、タメ息をもら
さずにはいられなかった。
「そんなにため息を漏らされては、脳細胞が死にますよ。」
いつのまにか、入室していたキサカが気遣ってコーヒーをテーブルに並べながらカガリの正面のソファーに腰
を下ろす。
「なんだい、ソレは・・・・・・」
「先日の健康番組でやっておりました。タメ息をつくのは良くないと・・・・・・」
「タメ息の一つも出るさ、キラとアスランが親友だったとは本当のことのようだな。」
カガリは、入れたての香りが際立つコーヒーを一口すすりカップを皿に戻すとつぶやく
「親友同士で戦うはめになるとは、心底寒い時代になったもんだ。」
「同感です。特にオーブはコーディネーターとの宥和政策をしておりますから、兄弟同士で敵味方に分かれる
 ことも珍しくはないでしょう苦しい限りです。」

ふと、カガリはキサカが訪れた本来の用事を思い出して話題を促すように頷きつつソファーに座りなおす。
「そうでした、イージス艦隊の出航準備が整いました。5日後の明朝に出航し連合軍ハワイ基地へ向かいます。」
「ストライクの搭載は間に合いそうか」
「ご心配なく、モルゲンレーテに無理を言って間に合わせますがX303イージスは間に合うかどうか」
「無理なら、同行する補給船内で作業を続けさせるように手配してくれ。アークエンジェルにあと二人パイロ
 ットの訓練を促しておくのも忘れないように。」
「了解しました。おそらく大丈夫でしょう。」

杞憂の表情が晴れないカガリの表情を読み取りキサカが心配そうに訊く。
「ブルーコスモスを心配しておられるのですね」
「座して死を待つようなタマではないからな、オーブ国民多数を占めるコーディネイターがテロの標的になる
 やもしれん。幸い中産階級を生み出し宥和政策が功を奏しているが、テロで人種差別や選民思想の過激な輩
 が蠢動を始めると厄介だ国家としての鼎の軽重を問われかねない、情報部と警察との連携には配慮してくれ
 護民官が動きやすいように。」
「国防省の方は全力で動かします。ザフト軍の動きが慌しい事もあります」
「北米・西海岸攻略だと思うが決定的な情報はない、アスランも知らなかったようだし、あとはハルバートン
 提督の手腕に任せるしかない」
親しげにハルバートン提督の名を告げるのを、キサカはいぶかしげに思いそれとなく尋ねる。
「カガリ様と提督はお知り合いで」
「いや、でもそのウチ用があれば向こうから接触してくるさ。」
かぶりを振りながら、笑みを取り戻した表情で未来を予言するかのようにカガリは答えた。
112 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 00:08:47 ID:???
 カーペンタリア基地では無事に帰還したアスランとニコルが、一躍時の人となり英雄に祭り上げられている
ことに驚きと不安を隠せないでいた。特にアスランは捕虜となって過ごす数週間のうちに父が議長となり強権
を振るったことは想像に難くなく、父を自らの不手際でそんな事態に追いやったことと、親友を討ち果たした
ことが評価され叙勲の候補となっていることに驚きと戸惑いを一層強くした。
「アスラン、おめでとう英雄勲章の授与が決まったそうじゃないか、ニコルと二人、プラント本国でいままで
 の疲れを癒すといい。」
イザークが相変わらず照れ隠しの皮肉の混じった抑揚で伝えてくるが、ニコルから経緯を聞いているアスラン
は素直に感謝の言葉を告げる。
「イザーク、ありがとう無事に帰ってこれたのも君のおかげだ」
「オレを使いこなせるのは、お前しかいないんだ忘れるな。それとニコルに感謝しろ、あいつは良くやった。」
どちらとも無く腕を差し出し、両手で硬い握手を交わす。
「オレは今から北米作戦支援の命令が下って出撃するが、プラントでオレの分まで楽しんで来い」
「ありがとうイザーク。」
 
 離れて過ごした分の親交を取り戻すように握手を交わすと、互いに背を向けて立ち去り。アスランはニコルと
共にシャトルでプラント本国を目指し、イザークは大幅に改修し新たに生まれ変わったデュエル・アサルトシュ
ラウド、ディアッカと改修の終わったバスターを引き連れて、北米作戦の集結地点カナダ沿岸へと向かうボズグ
ロフ級に乗り込んだ。



 プラントの医療施設で目覚めたキラは、海の匂いがしない乾いた空気と、わずかな日差しの変化に戸惑いを
感じながら目を開け、病室のベッドから起き上がろうとした。
「まだ、起き上がってはいけませんわ。さあもう暫くは安静のままに。」
「ここは何処・・・・・・、君は・・・・・・。」
「ココはプラントの大学病院。わたくしはラクス・クライン。いま主治医を呼びますから。」
ラクスは優しく微笑みかけ、ベッドの毛布を丁寧にキラの体にかけなおし、インターフォンで意識が戻ったこ
とを主治医に告げる。
113 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 00:13:48 ID:???
o(≧ω≦)o〃いつもありがとう。
o(≧ω≦)o〃つぎの17は、ほぼ出来ているので18との整合性を調整後早めに投下します
114通常の名無しさんの3倍:2007/01/21(日) 10:24:38 ID:???
お疲れ様です。
115 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 12:41:27 ID:???
17、動き始めた道で

 アラスカの数年ぶりの記録的なブリザードの中、接収を終えた連合軍アラスカ本部の機能をフル活動させ、
次なる北米・西海岸の各都市を攻略するべく着々と準備が進められていた。
「北米・西海岸攻略作戦発動まで、あと5日か・・・・・・。」

 アラスカ本部攻略作戦に引き続き、北米・西海岸攻略作戦を任された男、ラウ・ル・クルーゼは自ら前線指
揮に望むため、こちらも準備に余念が無かった。
 アラスカ本部攻略のときはアデス艦長が側らにいないのを、なんと心もとないものに思われたが地上戦では
致し方なく、引き続き北米・西海岸攻略も任に当たるとは、いよいよザフト軍も人がいないのか、バルトフェ
ルド、モラシムと立て続けに病院送りにされただけで、このザマとは地球連合軍の人の多さを羨むしかない。

「今回の作戦は、今までの軍事拠点を攻略したのとはワケが違う、くれぐれも都市の民間人には被害が及ばな
 いように配慮しつつ、行政機関・放送局・交通機関の中枢を急襲し占拠するように、重ねて民間人への暴行
 略奪行為の禁止、違反したものは軍規に照らして厳罰に処すと各部隊に徹底通達して置くように。」
「ハッ、戒厳令と夜間外出禁止令は予定どおりでよろしいでしょうか?」
「うむ、作戦発動後しばらくの間は仕方ない措置とするが、民政が安定すれば早急に緩和するように、それと
 現地の公務員、特に警察・消防の協力を得られるように配慮しろ、広大な地域を軍単独で治められると思う
 な。」
新たな副官とのやり取りを終えたクルーゼは、バルトフェルドが療養中、彼の副官マーチン・ダコスタ大尉を
借り受けるべきだったと少々悔やんだ。彼の手腕なら占領した都市の行政を任せても安心なのだが、ダコスタ
大尉は確かアフリカ戦線から離れられないでいるようだが、バルトフェルドの愛弟子とはいえ、いつまでも砂
漠の番人というわけにも行かないはずだが・・・・・・クルーゼは山積する都市部の制圧任務に考えを絞り、自ら艦
艇に乗り込み直属の部隊を率いて南下した。
116 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 12:42:15 ID:???

あれから数日、意識を取り戻し順調に回復したキラは病棟の窓際で外の景色を眺め風の匂いを感じていた。
「キラ、外の風は冷たいですわ、さあこれを。」
キラは毎日のように様子を見に来るラクスとも打ち解け、自然な笑顔で答えるとラクスがそっと上着を肩から
かけるのにまかせた。
そのとき、秘書官と共に入室してきたマルキオ導師に、あわててキラとラクスが駆け寄る。
「ああ、医師からも聴いたが順調なようだね。」
「ありがとうございます。マルキオ導師様のおかげです。」
「気にしないでくれ、こちらこそ忙しくて様子を観に来る暇もなかったのだから、親身になったのはラクスの
 ようだがね。」
「マルキオ導師様、お戯れを申されては困ってしまいます。」
「いや、すまない確か許婚がいたね許してくれ。」
たわいもない会話を交わし、別人のように平癒しつつあるキラに安堵しつつマルキオ導師は病院を後にする。


 プラントで情報・監視網を敷いていた連合軍特殊部隊エージェントは、秘かにマルキオ導師の警護と監視で
浮かんだ人物の特定を急いでいた。
「キラ・ヤマト、連合軍月面基地での登録記録か・・・・・・例のG兵器のパイロット」
「もうひとり、気になる人物が」
「ラクス・クライン・・・・・・・・・。」
「前議長の愛娘とマルキオ導師とは前議長シーゲル氏との交友関係からすれば不自然ではないが」
「単なる偶然か、・・・・・・・・・・・・奇妙な取り合わせだな。」
「偶然でも不自然な点があれば調査するのが我々の任務。微妙な時期だけにいま少し洗ってみましょう」

「それと前議長シーゲル氏の亡命は巧く行きそうか。」
「やはり、娘の処遇がネックになると思いますが・・・・・・・・・」
「シーゲル氏自身は今の置かれた立場は理解していますので 政情が不安定になれば意外と早いかと」
「ザフト軍の新MS開発計画と新兵器開発も最終段階に近いと思われる。うまく利用できれば・・・・・・」
「接触するか・・・・・・マルキオ導師の立場を悪化させることになるが」
「・・・・・・いま少し時間があれば」
117 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 12:43:11 ID:???

 ザフト軍は北米・西海岸の各都市シアトル・セイラム・ロサンゼルス・サンタアナ・サンディエゴの都市部
制圧と各都市に近い軍事拠点攻略作戦を発動。
 クルーゼ少佐は特にヴァクナの通信傍受施設を無傷で攻略するべく、特に選りすぐった部隊を編成し突入さ
せ数々の傍受記録と通信データを入手できたことは、その後ザフト軍だけでなくプラントの命運に大きく貢献
することになった。
 あらかた攻略を終えた段階でポートランドとサンフランシスコに、商社が保有し点在する各地から集積され
たエクスポート、リバー、ターミナルの各エレベーターをすばやく接収、ザフト軍の管理下に置き民需用を残
してプラント本国へ送る手はずを取った、プラント本国の悪化する食料事情を鑑みての施策である。
 また、美術館などの芸術・文化にも特に配慮し、各地の美術館を厳重に警備し保護に努め、本国への移動や
破壊を厳重に禁止し無用な混乱や誤解を未然に防いだ、そして先の通達どおり民間人への暴行・略奪行為を行
ったザフト軍人も出自の貴賎にかかわらず厳重に処罰した。

「クルーゼ閣下、軍規違反に問われている兵士の上官や家族、議員から減刑・助命嘆願が出ておりますが」
「今回の作戦においては特に厳命しておいたはずだ、例外はない裁判の結果、罪が重ければ銃殺もありうる」
「しかし、プラント本国での閣下のお立場も」
「今回は只の戦闘ではない都市制圧とは、つまるところ今まで地球連合国民がプラントの国民に変わったとい
 う事だ、プラント国民が自国の軍隊に略奪や暴行の被害を受けたのなら答えは一つ、その議員に言っておけ
 そんな事では次の選挙は落選すると。」
副官とのやり取りに余計な気遣いをするものだとも思ったが、クルーゼは今までの軍同士の戦闘とは違い瑣末
な事柄が多すぎることに苛立っていた。
118 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 12:44:47 ID:???
 コーディネイターがプラントに逼塞している以上この混乱は続く、地球・宇宙にこだわらずコーディネイタ
ーの安住の居場所を増やさなければ、混乱が続き出生率の低さにも悩むコーディネイターが、古の出エジプト
のごとく彷徨える民になりかねない、モーセやヨシュアが都合よく出てくるわけもなく、優れた指導者が出て
こなかったからこそ、滅ぼされた民族も多いという事は推して知るべしで、戦火であろうが最大限に利用し、
ザフト軍支配に名を借りてでもコーディネイター入植の地均しをする時なのに、優秀といわれるコーディネイ
ターでも命令の趣旨を理解し動ける兵は少ない、やはり末端の兵士はただの兵士でしかないという事か。


 ダコスタ大尉の転属を懇願しておいたが、配属となるまで少し時間がかかりそうである。しかし、忌々しい
の一言に尽きる、今まで率いてきたザフト軍が、こんなにだらしの無いものとは思ってもみなかった。
 アスランやイザークならこんな心配も杞憂に終わるのだが、アスランは今頃プラント本国で叙任式に臨んで
いる頃だし、英雄となった彼をスグには前線に復帰させることも出来ない相談だろう。
 イザークは後方支援で軍事拠点の制圧と後方監視で直接の指揮下には入らなかった。

 本国もひっ迫しているのか、家畜用に備蓄されたものまで集めて送っておいたが、所詮西海岸ではニューオ
リンズのエレベーターほどの備蓄もない、多少はシカゴの相場に影響は出るだろうが・・・・・・
「シカゴの代理人に買いを入れておけばよかったかな、多少とも恩給に加算できたものを・・・」
いかん、疲れが貯まっているのか余計なことを考えたと一人でクルーゼは恥じ入り職務に精励した。
119 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 12:45:57 ID:???

 プラント本国ではアスランの叙勲が盛大な式典で挙行されていた。いまだ表情に陰りが見られるものの体調
は万全といってよく戦闘での傷もすでに癒えていた。
 式典を終え次の任務まで特別休暇を与えられたアスランは、クライン邸を訪問する道すがら、まず大通りの
花屋に心のこもった花束を注文し、同じ通りに面した有名な宝飾ブランド店で、あらためて婚約を申し出るつ
もりでシルバーリングを購入し胸の内ポケットに少しだけ誇らしく忍ばせ、もう逢えなくなって久しいクライ
ン邸を訪問した。
 
 入れ違いにシーゲル・クラインが慌しく出かける準備をし、数名の秘書を伴い立ったままアスランと挨拶を
交わす。
「失礼、アスラン今日はゆっくりしていってくれ、私は閣議に出なければならないから今日は戻ってこれない
 が、世間知らずなところもあるが娘をよろしく。」
「はっ、閣下もお変わりなく、お元気そうで何よりです。」
握手を交わし、本当に慌しく迎えの車でシーゲルは出かけていき、応接室に一人残されたアスランに暫しの静
寂のあと、ソファーに座りなおし居住まいを正し直したアスランの耳に階段を下りる音と背中側のドアをあけ
る音に加えて、春の日差しのような匂いと共にラクス・クラインがいつもより清楚な感じで身を整えて弾んだ
ようにアスランの胸に飛び込んでくる。
「ラクス、暫くみないうちに一段と綺麗になったね。」
アスランは少し照れながらラクスを抱きしめ、おもむろに思い出したように花束を差し出す。
「まあ、いい香り・・・・・・ありがとうアスラン」
再び抱きしめあった二人はキスをかわし、今度はラクスが思い出したように切り出す。
「アスラン、ゆっくりしていってください、今日はお天気がいいので、庭先での食事を用意しました。」
「ああ、今日はそのつもりだよラクス」
「さあ・・・・・・」
アスランはラクスをエスコートし、応接間から直接テラスに面した庭に出て、用意されたテーブルセットに近
づきラクスの椅子を引きながら、自らも木製の椅子にゆったりと腰を落ち着けた。今日の天気は少し肌寒いか
もしれないが快晴なので庭で過すにはもってこいだ。
 特別に用意したらしい料理もすばらしく、幼少のころから親しんだラクスお付の家政婦が給仕をするのも昔
に戻ったようでアスランの心は和んだ。
120 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/21(日) 12:47:04 ID:???


市街の喧騒を離れた木々の多い公園を人目を避けて目立たぬように近づく者があった。
「決心が・・・・・・・・・・・・付いたよ。」
「・・・・・・・・・閣下のご英断に大統領に成り代わり感謝します。」
「手ぶらでは失礼と思い土産も用意した。NJCを聴いたことがあるかね。」
「!!・・・・・・噂程度は・・・・・・最高機密と伺っております。」
「NJCの基本設計書と搭載した新型MSのIDを用意した・・・・・・・・・・・・私に出来るのは此処までだ。」
「・・・・・・・・・。」
「君たちで奪取すると・・・いい・・・・・・出来るかね・・・・・・。」
「お任せ下さい。では2日後の外交・・・シャトルで・・・・・・・・MSは・・・・・・閣下が離れてから奪取します。」
「では・・・・・・・・・任せたよ」
互いに顔も合わせず、背中を向けたままで会話を終えた片方の男が、抱えていたケースを道端に置くと足早に
立ち去り、一方の男が残った道端のケースを小脇に抱え何処かに去っていった。
121 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/22(月) 15:55:07 ID:???
(´-`).。oO(パトリックのオヤジ達が以外に出番多い頑張るよな)
(´-`).。oO(キラとアスラン出番が少ないなパイロットだから仕方ないか)
(´-`).。oO(カガリは狂言回しとしても出番が多いからな、フレイとラクスの出番は・・・ハゥ)

o(≧ω≦)o〃またちょっと書き溜めネタ振りok
122通常の名無しさんの3倍:2007/01/23(火) 01:31:58 ID:???
まだ書いてるとは・・・
123 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/25(木) 03:18:12 ID:???
( ^ω^)保守
124 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/25(木) 03:20:25 ID:???
( ^ω^)よかった、スレ落ちたと思ったアセアセ
125 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/26(金) 13:02:20 ID:???
( ^ω^)ほしゅ。なかなか宇宙に進まないけど必ず行くぞ
( ^ω^)ちょっと気合いれてっとぉ
126 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:14:35 ID:???
18、新たな力を持つもの

 日焼けした顔に緊張の面持ちでシャトルから降り立ち、足早にロスアンゼルスの空港から出迎えた車に乗り
ザフトが接収したホテルの臨時政府官邸に到着した男をラウ・ル・クルーゼはわざわざ正面玄関まで出迎え
た。
「待ちかねたよ君の到着を、マーチン・ダコスタ大尉」
この男にしては珍しくよほど機嫌がよかったのか、首を長くして待ちかねたのが堪えたのか硬い握手と抱擁を
交わして上階の執務室へ共に向かった。
「ラウ・ル・クルーゼ大佐。配置換えの折に軍令部への出頭を命じられ預かってまいりました」
「大佐・・・・・・。」
執務室に入るとダコスタ大尉はアタッシュケースから恭しく辞令と階級章一式を取り出して両手で手渡す。
「本来は小官が手渡すものではありませんが、お受け取り下さい。」
「・・・・・・。」
「議長閣下にも呼び出され、本来なら直答にてクルーゼ大佐の日頃の労苦と活躍を讃え労いの言葉かけたいと
 おっしゃっておいででした。差し迫る問題を処理するため、ままならない事情を詫びておられました。」
「そうか、議長のお立場は理解しているつもりだ。私も直接お会いして礼を言いたいところだが、あいにくと
 このザマでね。慣れない民政仕事にホトホト手を焼いている。」
「ご心中お察ししております。そのためにわたくしをお呼びになったのでしょう。」
「その通りだ、バルトフェルド准将の後任で大変なところを是非にとお願いした。君の手腕を高く評価してい
 る存分に活躍してくれ。もちろん気付いたことは進言してくれ。」

「閣下の真意は計りかねますが、大佐のお考えは多少なりとも理解しているつもりです。」
ダコスタの言葉にふとクルーゼは顔色に出ないような笑みを漏らし、慣れない行政の仕事で鬱積した心情もあ
いまっていつになく口数が多くなった。
「閣下はおそらく私などよりより大きなことを考えておられる。プラント国家の枠組みにとらわれず民主主義
 の新しい形を模索しておられるのではないかな。夢想に過ぎないだろうが先ごろの選挙制度改革や今月早々
 に発表された医療・教育改革などはその手始めだろう。」
「では、議長閣下は本気でマニュフェストを実行すると・・・」
「改革の波は足元のザフト軍にも及ぶだろう。任期満了まで努めたとして議長2期8年の間に大幅に透明度と
 開放を進めると私は見ている、議長に対する私の思いいれかもしれないが。」
「大佐は先駆けとして占領政策に反映させるおつもりですね。」
「理想と現実は違うが違わないものもある。北米はもともと民主主義の国だからより透明度と開放を進めるの
 にはか適しているし占領政策にもかなっている。だが思ったより保守的でね、そこで君の出番というわけさ」
127 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:15:29 ID:???
ダコスタは今まで仕えていたバルトフェルド准将とは少し肌合いが違うものの、クルーゼ大佐もまた名将に
相応しい器量を備えていることに安堵し続けて名将の部下になれたことの幸運に感謝した。

「よくわかりました。では早速具体的な話に入ってかまいませんか」
「もちろんだ」
「着任前に検討したところですが、市民のタイプとしては都市部と農村部の考えはまったく違うと考えていい
 でしょう、保守と革新層の違いです。
 そこで、前の政権との違いを打ち出すためにも議会の再会と公民権の年齢の引き下げなど諸刃の政策ですが
 多少は手荒なことも実行してみてはいかがでしょう。それと報道通信社に対する検閲の規制をいま少し緩和
 される方がよいと考えております。」
「それでかまわん思うところは存分に実行してくれ。急ぎと判断した場合の報告は後でもかまわない。」

一通り喫緊と思われる政策を協議し終えたクルーゼとダコスタは、どちらともなく最近の気になる噂について
話を始めた。
「大佐が先の戦闘で入手したヴァクナの解析が進んでいるようですね。」
「すでに君の耳にも入っているか、連合軍がMSの投入を始めたらしい事の他に何か聞いているかね」
「まだ噂程度ですが聞き及んでおります。」
「憂慮すべき事態だが・・・」
「何か不審な点でも。」
「噂が広まりすぎている、高官の亡命など珍しくもないが情報が漏れすぎているあるいは。」
「あるいは・・・。」
ダコスタは相槌を打ち促すように見つめながらクルーゼの二の句を待つ
「何かは分からないが誰かの演出があるような気がする・・・・・・この話はやめようただの考えすぎだ」
クルーゼは自分の悪い癖が出たと詫びながら、ダコスタの手腕期待する旨を告げ、少し余裕のできた職務の
隙間を埋めるように連合軍反抗作戦への準備のほうに比重を移し仕事の忙しさを増していった。
128 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:16:32 ID:???


 宵闇の暗闇をより濃くした男たちが目立たぬように注意を払い、ホテルに滞在するマルキオ導師の元をプラ
ント当局の警護の目を掻い潜り接触してきた。
「マルキオ導師様、お噂はかねがねお聞きしておりましたが始めてお目にかかります。」
「君たちは・・・」
「後輩といったところでしょうか、外務省次官としての・・・・・」
「なるほど・・・で私に何の用事かな随分と危険を冒したようだが。」
「時間もありませんので単刀直入に申し上げます。プラント元議長が亡命を求めておりますマルキオ導師様に
 物心両面でのお力添えをお願いいたしたく参上しました。」
「ははっ、盲目の老人に何をお望みかな。」
「両日、外交交渉が延期で打ち切られ地球に帰還なされるとお聞きしました。その折シャトルの随員にお加え
 下さい。」
 マルキオは自嘲気味に対応したものの外務次官として、この手の話や自らアタッシェとして情報収集に働い
たこともあり協力を了承した。

「それともう一つ、キラ・ヤマト君についてですが。」
「さすがに耳が早いね。もう気付いていたのかい。」
「彼にやってもらいたい仕事があります。」
男達の計画の全容を聞き、マルキオはあらためて今まで自らが行ってきた仕事の罪深さを実感した。キラ君は
望まないだろうが、これも運命の巡り会わせというものか、キラ君を保護しプラントに連れて来たときに決ま
っていたのかもしれない。
「彼には迷惑だろうが、それでも君たちの話を受けるしかないだろうね。」
129 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:19:44 ID:???

 アークエンジェルが入港したハワイ基地では、現地艦隊と空軍の合同演習やMSパイロットの習熟訓練が行
われていた。連合軍として次の作戦となる北米・西海岸奪還作戦参加を命じられたアークエンジェルは特に艦
隊との連携とMSパイロットの訓練に明け暮れる日々が続いていた。

キラが行方不明になって一月はゆうにたつ、あれ以来気分がすぐれず沈みがちなフレイはたびたびキラと二人
で過ごした艦尾の展望デッキで沈む夕日を眺めていた。
「フレイ今日もここにいたのかいそろそろ中に入らないと冷えるよ。」
「サイ・・・・・・」
一緒に横に立ったサイに少しだけ首をもたげ力なく夕日を眺めたままつぶやく
「私いったいどうしたら」
「フレイ、君の力になりたいでも弱った君のスキに付けこむような事はしたくない」
サイは夕日を眺め続けるフレイを見つめながら
「キラのことだ、きっと無事に帰ってくるさ。」
キラおまえだからフレイのことを頼んだのにどうしてこんなことになちゃったんだろう・・・サイはフレイをあき
らめた気持ちが揺らぎそうになるのをおさえ、いまだ帰らぬ友のことを思い沈みきってしまった夕日の辺りを
一緒に見続ける。


 オーブから派遣されたオーブ軍イージス艦隊と付随した補給艦がハワイ基地に到着し、修復が完了したGAT
−X105ストライクとGAT−X303イージスがアークエンジェルへの引渡しと搬入作業が行われていた。

搬入された2機の整備をはじめたコジロー班長にフラガ大尉が話しかける。
「あーやっと到着か、こいつを待ちくたびれたぜ。」
「フラガ大尉には新型のストライクがあるでしょう。新しいOSで操作もこなれてますし。」
フラガは搬入されたストライクを撫でながら真剣な顔でコジローに尋ねる。
「いや、オレはこれに乗る。念のためにひとつ聞くがこれも2台目と同じ色にしたのではないだろうな。」
「大丈夫ですよ前のままです、心配なら起動してみますか。」
「いや、いい元の色なら」
「なんだフラガ大尉はあの赤い色がお嫌いだったんですか。」
「あたりまえだろう、どうしてあんなに真っ赤なんだしかもモルゲンレーテの連中はストライク・ルージュって
 呼んでて恥ずかしくて乗ってられるか。あの機体は残念ながらトール君に譲ることにしよう。」

コジローは肩をすくめながら、あえてフラガ大尉の嫌がるような話をする。
「フラガ大尉さえよければ、もっと真っ赤なイージスもあるのに残念ですぜ。」
「……あの機体も残念ながらトール君に譲るとしよう。」
この二人のやり取りに、再び帰ってきた1機と本来用意されたMSデッキに収まった新たな1機のMSの整備で
忙がしく殺気立った整備班に久し振りの笑いがこだました。
130 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:21:32 ID:???
同じころ、月面基地で一人悩む男の姿があったハルバートン提督その人である。
「まずい、アラスカの意趣返しがこの重要局面でしてやられたか」
「出し抜かれましたね、しかしここまでブルーコスモス派が結束するとは」
「海上からの攻略部隊を率いるのはウィリアム・サザーランド大佐とは、ムルタ・アズラエル理事も艦艇に乗り
 込むそうじゃないか巻き返されたな」
「いっそのことフレンドリーファイヤということになさいませんか。」
「ホフマン副官、めったなことは言うもんじゃない。」
「ハッ、これは失言でした申し訳ございません。」
「気持ちはわからないではない、しかしどこで嗅ぎ付かれるか分からない下手をすれば君の今後にもかかわる
 いまの我が軍は魑魅魍魎だ。」

 ハルバートンが懸念し頭を抱えていたのは、今回の北米・西海岸奪還作戦にあたり攻略部隊を率いるサザーラ
ンド大佐が、ブルーコスモスと呼ばれる軍需産業を主要スポンサーにする反コーディネイター団体に心酔してい
る点にあった。
単に退役後の転職先確保から人種差別、一部の幹部クラスには特権意識がそうさせるのか選民思想に染まる者
まで傾倒する者のレベルは様々であったが、最近は軍内部での隠然たる勢力となりつつあり。長いものに巻かれ
ろで支持者を増やしているようであった。

「作戦自体に不安はない、サザーランド大佐はその点では手堅い用兵をする人物だ。」
「問題は先程の報告ですね。」
「エージェントの報告ではザフト軍の新型MSを奪取するそうだが、合流する予定のアークエンジェルは奪還
 作戦中でサザーランド大佐の指揮下だ。」
ハルバートンは一層の憂いを深め眉間にしわを寄せて考えに集中する。

「ブルーコスモスは抜け目のない連中だ、意に染まないアークエンジェルと新型MSがどうなるか。」
「閣下、この局面を打開するのに思い当たる人物が一人いますが。」
「やはりそうか、多少の譲歩も止む終えないだろうが直接連絡できるよう取り計らってくれ、コープマン大佐を
 付けよう彼女も安心だろう。」
「では早速。」
131 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:23:31 ID:???

 プラント大学病院からでた救急車が、地球連合専用機のシャトルが待つ宇宙ポートを目指すマルキオ導師一行
の乗る車の列に加わり、宇宙ポートに近づくと車列から離れ目立たぬように別門から入りシャトルに搭乗した。

宇宙ポートの搭乗エントランスでは、マルキオ導師の親交ぶりを示すようにプラント穏健派の議員や市民が見送
りに詰め掛け、多くのTVや新聞の報道関係者のカメラのフラッシュが降注ぐ中、惜しみない拍手に見送られる
形で地球連合専用機シャトルが離陸した。
「名残惜しいですか。しばらく祖国の土を踏めないことになりますが」
宇宙ポートを離れ人口の光が照らす、かすかな光の星となったプラントを眺める隣の席に座る男に、マルキオ導
師が声をかける。
「それもありますが多分それだけではありません。これから始まる未来に思いを馳せていました。」
132 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:33:26 ID:???
19、力が目指した先は。

 カガリはウズミが戦局を乗り切るため、より強固な挙国一致体制を目指し内閣改造を示唆したことによって
新たな組閣作業にともない行政府の次長クラスとの調整作業に追われていた。
「父上のお考えも分かるが、この時期にやることはないだろう。」

あいかわらずの多忙ぶりだったが血相を変えてキサカが訪れたことにより一層の多忙が加速した。
「連合軍ハルバートン提督から通信が入っております。」
「ウズミ代表かサハク大臣宛じゃないのか。」

カガリは立ち上がり、キサカが先導した大型のスクリーンに映るハルバートンの姿をテレビ電話越しに認めると互
いに少し緊張の面持ちだったが、二人とも社交辞令に時間をとるほど暇ではなく話は早々に核心に移った。
「カリフォルニア沖に展開したアークエンジェルも含む我が軍と、ザフト軍から奪取した新型MSが合流する。
 しかし、私の懸念する通りならブルーコスモスに接収されてアークエンジェル共々闇に葬られる危険が高い。」

カガリは徐々に大きくなっていく話の複雑さに眉をひそめるが、ハルバートンはカガリの表情の変化にかまわず
話を続ける。
「あなたに、ザフト軍の新型機体とアークエンジェルを守ってもらいたい。」
「付け加えるならブルーコスモスも、なんとかしろとでもおっしゃるのではないでしょうね……提督」
カガリはやけくそ気味に皮肉交じりの返事をしたが、ハルバートンの表情は険しくそれだけで本気と読み取るこ
とができた。
「本気のようですね。」
「すまない、軍の提督といっても全ての権限があるわけではない。私にできるのはコープマンを呼び出して
 カリフォルニアの東から地上軍を率いさせサポートできる程度だ。」
133 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:34:18 ID:???
苦渋の表情をにじませたカガリは額に右手をあてて、しばしの沈黙の後答えを切り出す。
「こちらにも条件があります飲んでいただけますか。」
「出来る事なら協力は惜しまない」
「では、新型機体を数日お貸しいただけますかオーブで少しは解析したい、それに時期主力MSの選定に我が国が
 かかわったストライクの採用をサポートしていただきたい、それとブルーコスモスの主要な者の詳細な資料を」
オーブの国益を代表する立場からすると当然と取れる要求を平然と聞き流したハルバートンは
「私は卑しくも公僕です。初めと次のご要望にはお答えできませんが最後のご要望はすでに官邸にお届けしてあ
 ります。」
ハルバートンの表情を読み取ったカガリは満足げに深くうなずきながら了承する。
「分かりました、微力ながら全力を尽くすとしましょう。」

カガリは手回しのよいハルバートンの行動にあっけにとられるでもなかったが、奇妙に利害が合致した以上全力
で当たるべく早速行動を起こした。
 夕刻のハワイ行きの飛行機を用意しハワイからオーブ軍のヘリに乗り換えて、すでにハワイを出向していたオ
ーブ軍イージス艦隊と合流した。
134 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:36:00 ID:???

 昼間の喧騒が途絶え、人の気配が途絶えた深夜のプラントの軍研究施設に一台のバンが止まったのは、マルキ
オ導師率いる連合全権特使の一団がプラントを去ってから数日が経っていた。

「ブラボー1、準備はどうだ。」
「こちらブラボー1、準備OKモニターの確認を」
ザフト軍研究施設の地下ケーブルが埋設された地下道に侵入した工作員ブラボー1は、各種監視網を制御するケ
ーブルにバイパスを設けて手際よく接続を終える。
「こちらでも接続を確認できた警報装置、監視カメラのセンサーを制御。突入部隊は乗り込むぞ。」
バンから降り立った男たちはザフト軍の制服を着込み整然と研究施設に入っていった。途中警備員の詰め所を怪
しまれること無く切り抜け、各種のIDカードで扉を開けつつ、何ら警戒されることが無かったのも事前の協力
者の情報が正しかったことを証明していた。
プラント内に潜入組織された地球連合軍特殊部隊エージェントたちが、わずかな時間で新型MSの格納施設まで
進入し周囲を警戒しながら新型MSのコクピットを開けた。

「どうだ、操縦できそうか」
「ええ、OSさえ起動できれば問題ないと思います。」
マルキオ導師に乞われて新型MSの奪取部隊に加わったキラが新型MSのコクピット内に収まりキーボードを打
ちながら答えた瞬間だった。ロックしたはずの扉からザフト軍の正規兵がなだれ込み軽機関銃を構えて侵入者た
ちを制圧するべく殺到して来た。
「まさか、情報が漏れていたか・・・・・・はじめから。」
どちらともなく激しい銃撃戦が始まり銃弾が新型MSにも当たり兆弾をひびかせる。
「坊や、どのくらいで発進出来る。」
「10分・・・いや5分あれば。」
「上出来だ、5分持たせる。連合をアークエンジェルを守ってやってくれ。」
奪取部隊を率いる隊長は上機嫌でキラに笑顔でうなずき各隊員に通信を入れる。
「ブラボー1はサポートチームを率いて撤収しろ。残りの俺たちは時間を稼ぐ5分持たせろ。」
135 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:37:04 ID:???
銃撃と兆弾が跳ねる音を聞きながら、キラは慌しくキーボードを打ちながらOSを起動させるなかで、数日前の
深夜見知らぬ男を伴ったマルキオ導師が病室に訪れた日の出来事を思い出していた。
「キラ・ヤマト君、深夜にすまない。今日は突然のお願いがあってきたんだ。」
マルキオは深夜の訪問を詫びた後、用件を率直に切り出した。

「君の力を貸してほしい、この方に協力してザフトの新型MSを奪いアークエンジェルに合流してもらいたい。」
「どうして、ボクのことを。」
「すこしばかり調べたようだが、実戦に出た連合軍初のMSパイロットだから苦労はしなかったようだね。」
うつむいて考えるキラは、しばしの沈黙の後ポツリポツリと答える。

「アークエンジェルを守る戦いでこの通り傷ついたあと、もう戦うことも無いだろうと思っていました。プラン
 トで過ごすうちにその気持ちも強くなっていましたが。」
天井に視線を漂わせてキラは言葉を続ける。
「マルキオ導師様に助けていただいたときから決まっていたのかもしれませんね。再び戦いに戻りアークエンジ
 ェルに行くことを。」



 キラは全ての入力を終えるとOSを起動させPS装甲を展開させる。激しい銃撃を続けながらザフトに抵抗す
る地球連合軍の奪取部隊の隊長の姿をモニター越しに確認すると、キラは思いをぶつけるようにトリガーを絞り
ピクウス76mm近接防御用機関砲を始動させ、遠巻きに囲んでいたザフト兵に向けて発砲し右から左へと射線を
移動させ包囲網と脱出路を確保するように出入り口付近を吹き飛ばした。
 奪取部隊が退却をはじめたのを確認するとスロットルのレバーを入れ自らも脱出するべく飛行上昇に移る。
「マルキオ導師様…そしてボクを信じてくれた人たちのためにも今は………そしてアークエンジェルで待ってい
 るの仲間のためにも。」
アフターバーナーを全開にし勢いよくMSを発進させたキラは、サポート部隊の残した誘導によりコロニーの
気密扉を開け放ち宇宙へと飛び出していった。
136 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:38:31 ID:???

 キラは地球を目指し最短経路を進んでいたが、脱出してきたプラントコロニーを抜けた所でレーダーがザフト軍
所属のジン2機を補足する。IFF識別データが見方のザフト軍を示したままであり連合軍用のコードを実装作業
中だったキラはすばやくマニュアルモードに切り替え、識別が見方のままのジンに向かってラケルタ・ビームサー
ベルを引き抜き斬りかかる動作に入った。

たまたま定時パトロール部隊のジン2機は登録の無いMSの出現に驚くしかなかった。
「未確認MS急速接近中。」
「警戒態勢」
ザフト軍でも熟練に相当するパイロットは慣れた手順で標準装備の76mm重突撃銃を構えたがロックオンする暇も
無く、高速で迫る最新鋭の機体の動きに翻弄されあっという間に両腕を斬り飛ばされて宇宙に漂う。

「すまないが、今は迂回する余裕が無いんだ。」
キラは慌しく最短航路と大気圏突入の軌道計算に入る。わずかだがプラントのコロニー重力を利用しスイングバイ
で加速し速度を稼ぐ。大気圏突入速度・角度を間違えれば弾き飛ばされるか地表に衝突するか、ギリギリの所を計
算し最短時間で合流するべく全力を傾ける。
137 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:39:44 ID:???

 ロスアンゼルスのザフト軍が接収したホテルの司令部の一室では、クルーゼ大佐が執務室の隣に設けた自室の
ベッドで悪夢とも呼べる発作の苦しみから起き上がり、かたわらの小机から薬を取り出し苦しみと震えの残る手
で口に運ぶと音を立てるように飲み込み、一息ついて喘ぐ息と肩を上下させながら側のボードからグラスとボト
ルを取り出すとグラスに注ぎ半分ほど勢いよく飲んだ。

 少しあわてた様子で外から声がし入室を請う声が聞こえると、姿勢を正してダコスタが入ってきた。
「クルーゼ大佐、おかげんが優れないと聞き及んでおりましたが大丈夫ですか。」
クルーゼは心配そうな眼差しで入室してきた部下をねぎらうように答える。
「大丈夫だ、時々発作が起こるんだが心配ない。君も一杯どうかね」
「いただきます。………しかし大佐」
グラスをもうひとつ用意し琥珀の液体を注ぎダコスタに手渡すと、落ち着きを取り戻した様子でクルーゼは答え

「いや、治療法があるにはあるがどうなるか分からないんだ、まったく変わらないか副作用で苦しんで死ぬか
 君ならどうする」
突然、水を向けられたダコスタは戸惑いながらもクルーゼをまっすぐ見つめ、飲み干したグラスを少し上げなが
ら答える。
「私ならもう一杯飲みます。」
138 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:42:19 ID:???

クルーゼは空になった二つのグラスに琥珀の液体を注ぐと、ダコスタに来訪した意図を促す。
「そうでした、偵察部隊の報告では連合の奪還作戦が近いようです。沖合いに集結した連合軍の艦艇も衛星で
 確認できました。」
ダコスタは夜半にもかかわらず訪れた理由を告げる。
「連合もゆっくり、させてくれないか」
「ハッ、すでに主要な軍施設に誘導ビーコンが発見されました。ただいま工兵が重要施設を手始めに撤去作業を
 行っております。」
「君は作業を終えたら夜が明ける前にシアトルに地上部隊を率いて部隊を再編してくれ。」
「大佐はどうなされるので。」
「心配しなくても玉砕などしないよ。MS部隊と特殊部隊を残しておいてくれたら多少は連合軍を翻弄してみせる。
 市街戦などしていたずらに部隊を損耗させるわけにも行かないし、ここの市民を巻き込んでいたずらに市民感情
 を悪化させるわざわざ敵を作ることは無い。」
「大佐・・・・・・改めて敬服しました。私に全幅の信頼をおいてくださり、またこの状況で市民を巻き込まないとは。」
「そんなことは無いよ、むしろ私は信用できないし憎んでいる。この歳でも独り身なのもそのせいだろう」
139 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 17:43:58 ID:???

クルーゼは執務室の椅子に腰をかけ、記憶をたどるように話し出す。
「私の父親は、まだ幼少だった私を殺そうとした。そのせいか私は余り人を信用しなくなった。なぜ父が私を殺そ
 うとしたのか、父が鬼籍に入った今となっては真意は分からないが、あの人なら意に染まないものを片付けるよ
 うなものだったのかもしれない。
 だからかな、この世に生まれたことを不幸だと思い続けていたし、すべては後悔と憎悪の対象だった。しかし、
 戦争という不条理を前に考えさせられた。隣に居ただけで死んでいった者たちと比べて何が違ったのか、コーデ
 ィネイターというだけで憎悪の対象になり蛇蝎のごとく嫌われ殺された市民も多い。
 どうやら長生きは出来ないそうにない自分と比べて、何が違うかなんて何も分からずに死ぬことぐらい。そのこ
 ろから少しは感謝してもいいかなと思えてきてね。じっと待つほど生きられないかもしれないが信じて待ってみ
 ても良いと思えてきた。」

空になったグラスを見つめながら、今度は少しだけボトルから注ぎ入れ連合軍の迎撃策に考えをめぐらす。
「最後の悪あがきに何か仕掛けておくのも悪くは無いが、トロイの木馬みたいにね・・・・・・。」

クルーゼはハッっと自らの言葉に気づくと、あわてて立ち上がりダコスタに次々と指示を出した。
「トロイの木馬・・・・・・・・・そうか」
「ダコスタ大尉。シアトルで軍を再編したら至急アラスカ本部へ飛んでくれ・・・・・・すべての機器を再点検、いや連合
 の残していったものはすべて廃棄だ。
 しまった・・・・・・その手があった。杞憂であることを祈るのみだが私の勘と本能が確信している。」
仮面の下でもわかるように瞳を輝かせ、ダコスタを伴って司令部を飛び出し迎撃するべく奔走した。
140 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/28(日) 20:12:39 ID:???
(。≧◇≦)ノ直後3話ほど、また書き溜めます。
ノ〃^▽^〃)ノブルコス台頭を潰すあたりはストック済みなので整合を取りつつ
141通常の名無しさんの3倍:2007/01/29(月) 22:06:34 ID:???
大儀である。だが、いま、汝の赤心に応える暇がない。よって只一言だけ送る。
がんがれ。
142 ◆hO5UpTpm0s :2007/01/31(水) 23:55:25 ID:???
応援ありがとうございます、勇気百倍です^^
このごろメンテが多いのかな保守しておきます。
143 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/04(日) 20:44:08 ID:???
│・ω・`)こっそり保守。
144 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/05(月) 14:32:24 ID:???
「Pi・・・pi・・・Pi・・・pi・・・ピピ・ピピ・ピピ・・・」

 朝のいつもの時間にセットした目覚まし時計が部屋に鳴りひびきベッドで布団をかぶり
まどろみながら睡眠をむさぼる頭に響きわたる。

メモ帳からワードパッド切り替え試験
145 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/08(木) 13:36:26 ID:???
(´-`).。oO大規模戦闘前は筆が進まんな〜今回は思い付きで他所で内職しちゃった
(´-`).。oOオーブも連合もザフトもまともに艦隊運用させられる人材が
(´-`).。oOこのさい顔出し程度でも有能な指揮官やってもらうしかないな
(´-`).。oOとりあえずほしゅ
146 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/13(火) 22:24:45 ID:???
│・ω・`)こっそり保守。
147 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/15(木) 23:46:36 ID:svpSL3/z
│・ω・`)フリーダムまで戦闘が思ったより長引きそう
│・ω・`)こっそり保守&あげ

148 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/20(火) 02:17:17 ID:qMsxxHTO
20、翼は舞い降りたT、西海岸奪還作戦開始

「ムーサよ 数多くの苦難の男を……朝のまだきに生まれ、指ばら色の……アイギス持つアテナ…」
 オーブのイージス艦隊が、文字通りアイギスとなるか……空一面が暗闇の底に沈んでいたが夜が明け始め海面が
輝き始める、静寂に包まれ時を止めたかのような幽玄な水面を、オーブ・イージス艦隊旗艦の艦橋から眺めていた
カガリは幼少のころに学んだ一節を口ずさみ考える。

 これがB級SF映画のように、異星からの侵略者・エイリアンとの戦いなら気が楽なんだが、とはいってもエイ
リアンも生活に困って、やむにやまれぬ事情で侵略してくるんだろうけど、鯨がイカを生きるために捕食するのに
逐一、鯨が非難される謂れのないことと同じ理屈だが、懸念すべきはブルーコスモスのアズラエル理事みずから乗
り出した事が憂慮される。
戦いの事情とやらは、つまるところ私怨やトラウマにもとづく差別意識になのか・・・・・・長引く戦局が、それすらも
超える怨念となってしまっているのか。

「カガリ様、そろそろ作戦時間です。」
今回の北米西海岸奪還作戦において、地球連合軍とオーブ軍との初の本格的な合同作戦を行うに当たり。オーブ軍
イージス艦隊を総指揮するトダカ一佐が、一人水面を見つめ続けるカガリに呼びかけた。
「ああ・・・・・・、説明してある例の新型MSとやらが出現するまではトダカ一佐に全て一任する。それとなくアーク
 エンジェルを見守ってくれれば良い。私の仕事は奪取した機体とやらが現れてからだ。」
「心得ております。」
短く答えたトダカ一佐は作戦開始時間に合わせて、艦隊の陣形を再確認し巡航ミサイルを準備する。



「さあ大佐、時間です始めましょうか」
 ムルタ・アズラエルは、地球連合軍・スペングラー級・モビルスーツ搭載型強襲揚陸艦・パウエルの司令官のよ
うにブリッジに陣取り、いまや地球連合軍の精神的支柱ともいえる存在となったブルーコスモスの盟主は、文字通
り連合軍内でも盟主のように振舞っていた。
 アズラエルの傍らに座り、地球連合軍を率いて北米西海岸奪還作戦を指揮するウィリアム・サザーランド大佐は、
アズラエルに向けていた顔を艦隊の正面に戻すと作戦開始を命令する。
「作戦を始める。攻撃開始。」

地球連合の各艦艇から、発射されていく巡航ミサイルの曳航を満足げに眺め
「早く済ませてしまいたいですね大佐、期待してますよ。」
アズラエルの皮肉をこめたイントネーションに動じることもなく、サザーランド大佐はそっけなく答える。
「アズラエル理事、ご自慢の虎の子部隊の活躍しだいでしょう。」
149 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/20(火) 02:18:44 ID:???
 一方クルーゼは、市街地を抜け海岸線に築いた防御陣地に篭り、巡航ミサイルの迎撃を見守りながらMS戦の頃
合を計っていた。
地球連合軍の艦艇から発射された巡航ミサイルを防ぐには、事前に準備した鉄筋とコンクリートの量だけが物を言
う事を熟知していたとは言え、圧倒的な物量に押され爆音と振動が響き渡る防戦一方の状況に、今は耐えるしかな
かった。
「MSいつでも発進出来るようにしておけ、敵MSに対してはフォーメーションを崩すな。」

クルーゼは爆音が響き渡る中、自らのMSの出撃準備に余念がなかった。
「クルーゼ隊長、自ら出撃されなくとも我々で抑えて見せますよ。」
「イザーク、ディアッカも一緒か。君たちには住民の避難誘導と後方の備えを命令していたはずだぞ。」
爆煙で汚れた頬もそのままに、ミサイル攻撃の間隙を縫って急行してきたイザークとディアッカは、クルーゼに正
面の敵に正対したいと懇願する。
「いいだろう、遊撃として私の後方を固めてくれ、君たちが一緒なら私も心強い。」

クルーゼは、イザークとディアッカの熱意に負ける形で許可を与えると、自らはMSコクピットに乗り込み。イザ
ーク、ディアッカも、それに続いてMSに乗り込み出撃準備を整えた。




 旗艦から時機をうかがっていたサザーランド大佐は、主要施設の破壊を確認すると、次の段階に入るべく命令を
下す。
「そろそろですな。MSを発進させろ、地上部隊を掃討する。」

 アズラエルの肝煎りで随行してきた、実験部隊と呼ぶべき3機の新型MSと3人のパイロットが、旗艦から発進
準備を終えコクピットで待機していた。
「いいかい君たち、無闇に建物を壊しちゃいけないよ。わかっていますね。」
アズラエルがコクピット内のモニター越しに、3人のパイロットたちに向かって子供に言い聞かすように告げる。

「無闇じゃなきゃ、いいんだろう。」
「ふっ・・・・・・。」
「はぁ・・・・・・うぜぇよ。」
3人のパイロット、GAT−X131カラミティに乗るオルガ・サブナック、GAT−X252フォビドゥンのシ
ャニ・アンドラス、GAT−X370レイダーのクロト・プエルの3人はアズラエルの通信を、あからさまに辟易
した態度で聞き流すと返事もソコソコに発進していった。
150 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/20(火) 02:19:43 ID:???
サザーランド大佐は発進する新型の3機を見送り、右翼に展開するアークエンジェルの方を見やる。
「あの戦艦、まだ居たんですね。」
アズラエルが後ろから不躾に、見透かしたように投げかける質問をサザーランド大佐は鼻で笑いながら、
「ふっ・・・・・・何もしなくても、ザフトが始末してくれますよ。」
「大佐はコーディネイターが、お気に召さない・・・・・・。」
「我が軍の御印が、コーディネイターに守られた船では具合が悪い。英雄は我々が用意したナチュラルで十分。」



 連合軍正式配備となったGAT−01ストライクダガーが、この戦いから実戦に投入され、3機の新型MSを先
頭に押し頂いて、ザフトが築いた海岸線の陣地に殺到してくる。

 防御陣地から戦況を見守っていたクルーゼは、こちらも連合軍のMS部隊投入に呼応するように、満を持してM
S部隊を出撃させ、練度で勝るザフト軍は連合軍のMS部隊を翻弄し撃破していくが、次第に数で圧倒する連合軍
に対し戦線は膠着状態に陥った。
「なにやら、連合の新型のMSを抑えねば戦線が崩される。」
クルーゼは突出して進撃しザフトの防衛線を崩す動きを見せる。連合軍新型MSカラミティ、フォビドゥン、レイ
ダーに狙いを絞り自ら攻撃を仕掛ける。
「イザーク、ディアッカは、私の後ろを固めてくれ・・・・・・・・・行くぞ。」

 クルーゼは最新配備となったジンの後継機、新型のZGMF−600ゲイツを駆り、イザークのデュエル、ディ
アッカのバスターを引きつれ、ビームライフルで確実にストライクダガーを仕留めつつ、最前線を我が物顔で暴れ
まわる3機に肉薄する。

「前線で突出しすぎるのは、危険なことを覚えておくがいい・・・・・・中央の小隊は、私に呼応し少しずつ後退せよ。
 あの3機を半包囲する。」
「ですが隊長・・・あの機体は、PS装甲のようで攻撃が効きませんが。」
「効かなくてもいい、ありったけの弾を撃ち込んで3機の動きを封じ込めろ。」
クルーゼの率いるMS部隊は、よく訓練された動きで3機一体となったフォーメーション崩すことなく、連合のMS
ストライクダガーを一機ずつ仕留め、次第にカラミティ、フォビドゥン、レイダーを半包囲状態に追い込み、火砲を
集中させ始めた。
151 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/20(火) 02:21:17 ID:???
 このとき快進撃を続ける新型を駆った3人は、クルーゼが直接最前線に現れ指揮を執ったことにより、ザフト軍の
崩れていた戦線が持ち直し、逆に巧みに誘い出され突出しすぎて追い詰められていることに、まだ気づいていなかっ
た。

 シャニが駆るフォビドゥンは、クルーゼが遠距離から牽制してくるビームを、エネルギー偏向装甲”ゲシュマイデ
ィッヒ・パンツァー”で歪曲させると同時に巧みに回避運動を取り、先程までと同様にジンやディンを相手に誘導プ
ラズマ砲”フレスベルグ”で牽制し追い詰め、重刎首鎌”ニーズヘグ”で仕留める攻撃を繰り返していたが、極端に
当たらなくなっていた。
「フッ・・・・・・。」
 レイダーは破砕球”ミョルニル”を振り回しディンを文字通り粉砕、海面に叩き落すように簡単に敵機を落として
いたが、破砕球の間合いを読まれ殺到する火砲に苛立ちをあらわにしていた。
「クソッ、おまえら全て滅殺。」

「鬱陶しいんだよ、おまえら。」
オルガは、訓練とは違う戦場の空気と、クルーゼの統率された部隊が持つしぶとさに苛立ちを深めていた。カラミテ
ィの125mm2連装高エネルギー長射程ビーム砲”シュラーク”を、難なく交わす熟練のエリート部隊相手に、ペー
スを乱され、狙いを確実につけるのも忘れて次第に弾数が多くなっていることに気づかなかった。


 クルーゼは取り分け弾数の多いカラミティに狙いをつけると、イザークとディアッカに後方を守らせた安心感から
か余裕の構えで接近し格闘戦に持ち込む。
「無駄弾を使いすぎだ。砲撃仕様だろうが、狙いを付けないと当たるものも当たらんよ。」

ゲイツのビームが確実にカラミティを捉えて直撃コースを取るが、オルガも訓練と薬物で強化されたパイロットの本
領を発揮し、瞬時に回避行動を取り致命傷を与えさせない。
「お前か。」
オルガはコクピットの中で絶叫し、337mmプラズマサボット・バズーカ砲”トーデスブロック”を連射しながら突
進してくるが、百戦錬磨のクルーゼは冷静にカラミティの懐に飛び込み、2連装ビームクローで切りかかりながら巻
き込むようにカラミティにゲイツの重量を預け投げ飛ばした。
「新型のPS装甲でなければ仕留められたものを、しかしあの衝撃ではパイロットも無傷ではあるまい・・・しかし。」
クルーゼは常人ではない反応の速さに、嫌な予感を感じていた。

 クルーゼは素早く動きの悪くなった残りの2機、とりわけ破砕球”ミョルニル”を振り回すレイダーに狙いを定め
ミョルニルを誘うようにゲイツの動きを止めて挑発する。
「おまえ、目障りなんだよ・・・。」
クロトは挑発に乗り、レイダーのミョルニルをゲイツに投げつける。
152 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/20(火) 02:22:24 ID:???
「安い挑発に乗るとは・・・・・・イザーク、ディアッカ。」
 クルーゼのゲイツは難なくミョルニルを避け、ミョルニルにつながれたロープをつかむと、ゲイツのスラスターを
全開にし、ミョルニル投擲方向にレイダーを引き摺り回す。イザークはアサルトシュラウドの右肩にマウントされた
115mmレールガンを撃ちミョルニルのロープを正確な射撃で切断すると、レイダーは反動で糸の切れた凧と同じよ
うに、慣性のままに飛んで行き機体を地面に激突させた。
 衝撃のあまり気を失いかけたクロトに、ディアッカのバスターが350mmガンランチャーを前に、94mm高エネル
ギー収束火線ライフルを後部に連結して対装甲散弾銃を撃ち放し、瀕死のレイダーを畳み掛けるように連続攻撃し追
い討ちを掛ける。

残るフォビドゥンに対して、ゲイツを先頭にデュエル、バスターの砲火が集中し、ジンやディンの部隊も四方八方か
ら浴びせかけるように攻撃を掛けられると、新型のPS装甲といえどもバッテリーが急速に減り始め、シャニはフォ
ビドゥンを巧みに操作し海面ギリギリを飛び回って回避するが、損傷と補給のために徐々に後退を余儀なくされる。

 思わぬ敗北による精神的な動揺もあったが、3人は予想外の長時間の戦闘を強いられたことによって、薬が切れ始
めた事による禁断症状が現れ始め、身の内から湧き上がる苦痛に耐えていた。
 
 パイロットとしてのみ最適な物として扱われ、人為的に生みださた薬物により強化された反射神経・運動能力や集
中力を得ていたが、ひとたび薬が切れると禁断症状が現れ、耐え難い苦痛により廃人同様の態をなす。
今のオルガやクロト、シャニは大きく眼を見開き、眼球の血走った血管が薬効が切れたことを如実に示していた。
「くそっ・・・・・・・。」
3人は同じように薬が切れ禁断症状に苦しみ始め、負けた屈辱感をひきずりながら戦線を離脱していく。

「3機が帰還しました。」
精彩を欠き、だらしなく帰還する3機のMSをまざまざと見せ付けられ、旗艦パウエル艦内に流れるアナウンスにア
ズラエルは顔色を替え、落胆の色を隠さなかった。
「あいつら・・・・・・・・・・・・、大佐、攻撃を一時中断して部隊の再編としましょう。」
「・・・・・・・・・・・・。」
アズラエルはサザーランドのほうを振り向きもせずに、鷹揚に椅子に腰をかけると頬杖を付きダンマリを決め込む。
「全軍一時撤退、部隊を再編する。」
些かアズラエルの身勝手な態度に呆れ気味になったが、サザーランドは消耗戦に引きずり込まれるのを嫌い、仕切り
なおすため撤退命令を下した。
153 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/20(火) 02:24:52 ID:???
 山脈を越えて東から進撃してきたコープマン率いる地球連合軍地上部隊は、刻一刻と変わる戦況を山の裾野から眺
め、突入のタイミングを計っていた。

「灼熱の砂漠で駱駝と楽しく過ごし、湿った地下の穴倉でモグラと仲良くなったが、寒空の下で熊とだけは仲良くな
 る自信はない。襲われたらどうするんだハルバートン提督も益々人使いが荒い。」
「よろしいではありませんか大佐、世界遺産の大自然ですよ。」
「地球連合軍も深刻な人不足だな、ザフト軍は噂に高いあまたの人材がいると言うのに・・・・・・羨ましい限りだ。」
「ないものねだりは大佐の悪い癖ですよ。」

コープマン大佐は、ハルバートン提督から極秘裏に厳命された作戦を思い返していた。
「まずは、カリフォルニアから順番に返して頂くとするか。サザーランド大佐も、あの御仁と一緒では骨が折れるだ
 ろう・・・・・・同じ穴の狢といえども所詮は・・・・・・やめておこう、今回の作戦は突入の時期が全てだ。」
懐のポケットから煙草を取り出し、口に咥えてライターを取り出したときに思い直してライターと煙草をしまう。
「山で残していいのは足跡だけだったな・・・・・・大事の前だ控えるとしよう。」
154 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/20(火) 02:26:24 ID:???
│・ω・`)21は書き終えておりますので整合性を取って早めに投下します。
155通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 03:24:54 ID:???
GJ!wktkしながら待つぜ!
156通常の名無しさんの3倍:2007/02/20(火) 11:52:35 ID:???
157通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 22:09:50 ID:???
晒し好き
158名無し募集中。。。:2007/02/21(水) 22:43:10 ID:syni0OgD
VIPPER氏ね
159通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 22:43:45 ID:???

【心の】旦那には絶対言えない過去4【奥に】『カテゴリ雑談・既婚女性板』

大人気スレッド★206が大人気★
各板から2ちゃんねらが大集結して、現在炎上中

206 名前:可愛い奥様[] 投稿日:2007/02/20(火) 15:59:04 ID:bbuJrbBF0

子供2人とも旦那の子じゃない

どっちも父親は元彼

結婚後もずっと続いてて、旦那の出張中に彼と4人で家族ごっこしてた
そのうち元彼をパパと呼ばせようと思ってます
私にとってはこっちが理想の家族だし

旦那には悪いけど、もうATMとしか思えない

いっそ浮気してくれたら慰謝料たっぷりもらって離婚出来るのに
私にベッタリだから余計腹が立つ
160 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:08:30 ID:D5x+B5rQ
21翼は舞い降りたU、狂乱と混沌の果て

 クルーゼは水入りとなった時間を奇貨として、前線の将兵を視察していた。なかでも一時野戦病院と化したホテル
や、重傷者が運び込まれた総合病院を重点的に見て廻っていた。
「クルーゼ隊長、すみません不甲斐ないことで足手まといになりました。」
「気にすることはない、君は善く戦った。傷が治ったらまた存分に戦ってくれ。」

一人ひとり負傷兵に丹念に声をかけながら、クルーゼは仮面の下の涙を隠しつつ、連合軍の新型MSとパイロットの
技量がズバ抜けていたのを思い返していた。アレは噂に聞く強化された人間かもしれんな・・・・・・連合軍も厄介なもの
を作る。
 それに医者だけでなく、ここの地区の住民は良く協力してくれている。ダコスタの行政が順調だった事が窺い知る
ことが出来るが、それでもアフリカで巻き返された事実は、ダコスタ以上の手腕を発揮した者の存在を示している。
まさか、ここにも現れるんじゃないだろうな、別れ際にダコスタに言ったように地球連合軍に損害を与えて、引き際
を計るのが得策か・・・・・・。



 オーブ軍イージス艦隊の後方に待機する医療船でも、カガリが負傷兵を見舞っていた。
「カガリ様、・・・・・・わざわざ来ていただけるとは・・・・・・。」
「私の指揮がいたらなかったばかりに、すまないことをした。出来るだけ早く本国に帰れるように取り計らっている
 しばらくは、ここで療養して治療に励んでほしい。」
カガリは、一人ずつ負傷兵と握手を交わしながら丁寧に見舞い、もうすこし長引きそうな戦いの行方を憂慮していた。
161 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:09:41 ID:???
 旗艦パウエルの治療室では、密室状態となった部屋に隔離された新型に乗るパイロット、オルガ、クロト、シャニ
の3人が苦悶の表情に顔を歪めながら、いつ果てるとも知れない苦痛に耐えていた。

「役立たずどもが、そろいも揃って逃げ帰ってくるとは、何たる醜態・・・・・・。」
アズラエルは幼少からの躾けのせいで、特に他人から辱めを受けることを最も嫌っていた。それも、自らが高らかに
連合軍に押し込んだ、自慢のMSとパイロットたちが満足な戦果を挙げることなく、帰艦したとあっては怒りの矛先
をどこに向けるべきか、アズラエルにしてみれば躊躇する必要はなかった。
「まあいい・・・・・・お仕置きは、コノぐらいで十分だろう・・・・・・・・・・・・それにこれ以上やると、それこそ役立たずの
 廃棄物になっては元も子もない。」
アズラエルは口の端を微妙に歪め、医師に適切に処置を施すように指示する。

 オルガ、クロト、シャニの3人は度重なる投薬や、戦闘の模擬訓練を通して記憶を操作され、もはや戦うためだけ
に許された存在になっていた。
 何度も見せ付けられる戦闘の映像、模擬訓練で流される血の匂いに慣らされ、どんな効き目か判然としなくとも繰
り返される幾種類もの投薬で、幼少のころの楽しかった家族の記憶を失い、副作用や禁断症状、模擬戦闘で作り出さ
れる極限状態が、わずかに残った感覚まで容赦なく奪い、今は命じられる標的を破壊することのみが、生きている充
実と満足を満たし、明日を生きる保証を約束するものになっていた。
 
 しかし、ときおり満足する実験結果が得られないときは、いつ終わるとも知れない禁断症状のまま放置され、この
まま処分という名の死を待つだけの時間を、悶え苦しみながら過ごさせる事が間々あった。
 今までは処置が施され再び実験が続けられたが、あいつらなら・・・・・・無慈悲な、得体の知れないあいつらなら突然
自分たちを、そこら辺のゴミ同然に平然と処分してもおかしくない、こんな実験こそ滑稽に違いはないのだから・・・。
 隔離された部屋にプラスチックタイルを踏む低音のサンダルの音が聞こえ、白い靴底が見えた瞬間3人は苦痛の終
わりと戦いの始まりを感じて安堵のため息を漏らし、安心感からか痙攣する筋肉の動きが幾分和らいだ。
「・・・・・・少しだけ、生き延びたようだ。」
聞こえない微かな声を誰となく漏らした。
162 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:10:43 ID:???
「第2ラウンド開始といきましょうか。」
相変わらず、旗艦パウエルのブリッジで鷹揚に振舞うアズラエルは、隣のサザーランド大佐に作戦開始を強いる。
「全軍作戦を再開する、攻撃開始。」
「今度は上手く行って下さいね。そろそろ船の上での食事にも飽きましたし・・・。」
特別に用意された食事、士官用の食堂で給仕付きで取っているアズラエルが食事の不満を漏らすと、まわりの下士
官たちの失笑を誘ったが、本人は気づかない様子で続ける。
「ザフトもなかなか、やるもんですね・・・・・・もっと簡単に墜ちると思っていましたが。」
「情報によるとザフト軍の指揮官は、あのクルーゼです。簡単には墜ちんでしょう。」
「そう思ってあの新型3機を、わざわざ持ってきたんですがね。」



 新たに生まれ変わったように、オルガ、クロト、シャニの3人は最前線で暴れていた。増量され投与された薬のせ
いもあったが、それだけではなかった。今の3人には戦いの高揚感だけが生きている証であるかのように、先程の出
撃とは比べ物にならないほどの奮闘振りだった。
「ヒャハァハァ・・・・・・・・・。」
「フッ・・・・・・どいつもウゼェ・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」


 後方で見守っていたクルーゼは、再びあの3機を目視で確認すると苦しげな表情を浮かべ、自らMSを操り前線に
赴く。
「負傷兵と輸送部隊の撤退が完了するまで、あと2時間は持たせる必要がある。」

今度はイザーク、ディアッカを後方に残して単身攻撃を仕掛ける。ゲイツのビームがクロトの操るレイダーを的確に
捉えるが、ありえない反応速度で回避され逆にレイダーの、短射程プラズマ砲”アフラマズダ”2連装52mm超高初
速防盾砲が火を噴きゲイツを襲う。
「早い・・・・・・さっきとは桁外れの反応だ。・・・・・・やはりコイツらは。」
対ビームシールドでやり過ごしたクルーゼは、お返しとばかりにEEQ7Rビームロケットアンカー”エクステンシ
ョナル・アレスター”を射出しビーム砲をお見舞いする。
しかし、ダメージは与えたものの新型の堅牢なボディーには致命傷とはならずに、直ぐに破砕球”ミョルニル”を投
擲し反撃してくる。


「こいつはオレがやる・・・・・・撃滅!!。」
先の戦闘よりも増量された薬の効き目と、負けた屈辱と戦場の高揚が渾然一体となりクロトは絶好調だった。いや絶
好調すぎて周りが見えなくなり、クルーゼのゲイツと争う間に、何機かのストライクダガーがミョルニルの巻き添え
になっていた。
163 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:12:31 ID:???

 クルーゼがレイダーを抑えていたとはいえ、残りの2機カラミティ、フォビドゥンは抑えきれずにザフト軍の第1
次防衛線を少しずつ突破され状況は苦しくなっていた。
 前線の部隊が後退し、市街地に近い第2次防衛線まで連合軍の攻撃が迫り、支援の後方部隊の撤退が7割方済んだ
のを確認したクルーゼは撤退作戦を最終段階に進める命令を下す。

「そろそろ仕上げにかかるか、グーン隊発進。退路の確保と時間を稼ぐ。存分に連合軍の艦艇を叩け。」

 MSグーンを擁する水上部隊の隊員たちは活躍の機会に恵まれず、いまや遅しと漲る英気だけは隠せずに、海岸線
で隠れながら歯がゆい日を送っていたが。
 クルーゼの指令に、いまや遅しと攻撃命令を待ちかねていたグーン部隊は、沖合いの地球連合軍艦隊に猛然と襲い
掛かった。グーン部隊は、連合軍の艦艇を全滅させるだけの火力は持ち合わせていなかったが、持ち前の水中での機
動力を生かし、連合軍艦隊の横合いから楔のように突然打ち込まれた攻撃による混乱は、指揮命令系統を麻痺させる
には十分だった。



しかし、地球連合軍でも目立つ艦体であるアークエンジェルは事情が違い、地上からのジン、空中のディンに加わり
海中のグーンにも標的にされ集中砲火を浴びていた。
「どうして、アークエンジェルは攻撃が多いんですかね。」
どの方向に舵を切っても振り切れない攻撃にノイマンが思わず口走る。

「アークエンジェルは目立ちますから。」
ラミアスは思わず庇うような答えを言うが
「宇宙艦がコノ作戦に投入されること自体、何らかの作為を感じます。」
ナタルの意見は鋭く核心を突くように、その場を凍らせる。

「いえ・・・・・・深い考えがあってのことだと思いますが・・・・・・。」
凍りついた雰囲気を察して、ナタルはあわてて取り繕う。


「トール、俺の後ろをしっかり付いて来い。」
「はい。」
エール装備のストライクを操る二人、フラガ大尉と初陣のトールは無理をせずに、アークエンジェルの周囲の敵を
二人の絶妙なコンビネーションで、ザフト軍の攻撃から、かろうじてアークエンジェルを守り抜いていた。
「トール。スカイグラスパーよりストライクの方が頑丈だ。もう一度いくぞ・・・・・・今だ!」
「はい。」
フラガのストライクが囮になり空中戦を展開する中、少し離れた後ろからトールが援護射撃を行い、何機目かのデ
ィンを仕留めていたがトールの緊張と疲れは限界に近かった。
164 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:15:12 ID:???
調度その頃、高速で接近する機体を、地球連合軍のAWACS(空中早期警戒機)のレーダーが捉えた。
「フラッシュ(緊急)。ボギィ(所属不明機体)。マストヘッド(低空)。マッハ0.8。東南に向かう。」
MSにしては高速で移動する物体を捉えたレーダー士は、該当する機体情報がない”最新鋭機”であることを告げる
だけであった。

「現れたようだな。・・・・・・全軍進撃開始。後方のストライクダガー部隊を、空挺降下させ一気に拠点を制圧せよ。」
コープマン大佐は、AWACSからの緊急情報を待ちかねたように命令を下し、自らも指揮車両に乗り込んで山道を
猛進して駆け下りていった。

同じく、オーブ軍イージス艦イージスシステムのフェーズドアレイレーダーが高速で接近するMSを捉えた。
「所属不明機が高速で接近中。」

「来たか・・・。」
カガリは座席から立ち上がり、レーダーに映る点を確かめるとトダカ一佐と視線が合い、互いに頷きあう。
「ここからが正念場だ。頼んだぞ。」
「心得ております。お任せアレ。」
トダカ一佐は艦体の陣形を円形に再編し、オーブ軍の虎の子であるMBF−M1 M1アストレイを発進させ、オー
ブ全艦隊に総攻撃の命令を下し。アークエンジェルを包囲攻撃するザフト軍の一角を穿つように猛攻撃を掛け始めた。
165 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:16:01 ID:???

 アークエンジェルに群がるザフト軍は減る気配がなく、手土産代わりに撃沈し戦功を稼ごうとするかのように苛烈
な攻撃を受けていた。
「そろそろエネルギーも限界か、それよりトールは初陣だからそっちの限界も早いか。」

 フラガはトールを気遣うように先にトールを後退させ、自らも補給に一時帰還しようとしたときだった。
 アークエンジェルに群がるザフト軍を嗅ぎつけたのか、オルガのカラミティが、アークエンジェルを包囲するザフ
ト軍に攻撃を掛けるが、見境のないオルガはアークエンジェルにも容赦なくカラミティのシュラークを当てて損傷を
与える。
「あいつら、どういうつもりだ!。」
見境のない攻撃を繰り返すオルガを目の当たりにし、フラガはおもわず血が上りコクピット内で怒りをぶちまける。

「避けない、お前が悪いんだ・・・バーカ。」
「オルガ、後で知らないぞ。」
 シャニのフォビドゥンも加わり、アークエンジェルの一帯はたちまちの内に乱戦状態になる。
 この乱戦の隙を付いて、何機かのディンが砲火をすり抜けアークエンジェルに接近し、艦体目掛けてバラ撒くよう
に攻撃する。艦橋付近に当たった攻撃がブリッジに黒鉛と爆発の衝撃を伝えクルー達は思わず椅子に縋り付く。
「艦の損傷拡大、これ以上は航行に支障が出ます。」

 そのとき、3機のグゥルに載ったジンが、アークエンジェルに接近し艦橋を目指して攻撃を掛ける。フラガがいち
早く気づきストライクのビームライフルが、後ろを行く2機のグゥルに当たり爆発する。
グゥルを失ったジンが方向転換し、ストライクの方に攻撃の矛先を変えて殺到してくる隙に、攻撃をすり抜けた一機
のジンがブリッジ目掛けて76mm重突撃機関銃を構える。
「・・・・・・・・・・・・!!。」
ブリッジクルー達は”もはやこれまでか・・・”と不適に輝くジンのモノアイを睨み付けたり、咄嗟に床に伏せたり行動
は様々だったが、一瞬の閃光とともにジンの機関銃がビームの光によっれ爆発四散し、その衝撃がブリッジ全体を揺
さぶり、あわててビームの方向をジンが振り返った先には一機の不明機がビームライフルを撃ちながら急速に接近し
てきた。

 ありえない急速度で接近した機体は、ブリッジを撃とうとしたジンの重突撃銃をビームライフルで吹き飛ばし、何
事かとあわてて振り返ったジンの頭を、再びビームライフルの閃光が撃ち抜いたと思うと、肉薄して海中めがけてジ
ンの胴体を蹴り飛ばす。

 その機体は、アークエンジェル艦橋に背を向けるように空中で停止すると、背中の翼を広げ胸部のエアインテーク
から排気する。何が起こったのか分からずに見守るブリッジのクルー達には、10枚の翼を広げたその機体はアーク
エンジェルを守るに相応しい天使セラフィムの姿に見えた。
「こちら、・・・・・・キラ・ヤマト。」
「アークエンジェル・・・聞こえますか。・・・・・・・・・ラミアス艦長。」
166 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:19:09 ID:???
ブリッジに忘れもしない、キラ・ヤマトの姿が映し出されると同時にミリアリアが思わず叫ぶ。
「!!・・・・・・キラ。」
「キラくん。生きて・・・・・・無事だったのね。」
ラミアス艦長は、ナタルと視線を交わし頷き会うと素直に無事を喜んだが、逼迫した状況が旧交を懐かしむ暇を与え
ない。
「詳しい説明は後で・・・・・・アークエンジェルを守ります。」
通信モニターに写る、ザフト軍の制服を着込んだキラの姿が複雑な状況を物語る
「こちら、機体コードZGMF−X10Aフリーダム、連合軍の最新識別コードを送信してください。IFFを合
 わせます。」

 フリーダムの中継プログラムを設定し、連合とザフトの識別を合わせたキラはフリーダムをハイマット・高機動空
戦形から、背中のM100”バラエーナ”プラズマ収束ビーム砲と、腰部に収納されたMMI−M15”クスィフィ
アス”レール砲を展開する。合わせてMA−M20”ルプス”ビームライフルが同時に照準を付け、ザフトの機体を
次々とロック・オンし同時に5つのビームがジンやディンを捕らえて一撃で墜していく。
 フリーダムは、アークエンジェルを取り囲むザフトMSを巧みに捉え、次々と撃墜するさまは性能の劣るジンやデ
ィンにはあまりにも一方的過ぎた。


「なんだ、あの機体……ついでに殺っていいのか。」
「変な機体……オレが!。」
オルガとシャニは、識別のハッキリしない機体を見つけたのを、これ幸いと弄ぶように二人がかりで攻撃し始める。

「この機体は…いったい……。」
キラも行きがかり上、ビームライフルで反撃するがフォビドゥンの偏向装甲がビームを反らし、巨大な鎌を振りかざ
すトリッキーな攻撃と、海面をホバー装甲で滑るそうに攻撃するカラミティに挟まれ苦戦を強いられる。
「動きが違う……コーディネイター、ザフト軍でもないようだが……。」
キラは、手当たり次第に攻撃を仕掛けフリーダムに迫る2機に、思わず戸惑いを覚えながら否応なく応戦する。
167 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:22:11 ID:???
「くっ……。」
窮地に追い込まれたキラは、頭の中で何かが弾け覚醒したかのようにフリーダムのスロットルを開きスラースターを
全開にすると、MA−M01”ラケルタ”ビームサーベルを引き抜き連結させ”アンビデクストラス・ハルバード”
ツインランサーの状態にする。
 カラミティーが海面から砂浜をホバー走行で移動しつつ、距離をとりながら絶え間なくシュラークを撃ち続けるが
スラスターを全開にし高速で接近するフリーダムを交わしきれず、接近戦に持ち込まれてしまう。オルガは115mm
2連装衝角砲”ケーファー・ツヴァイ”で牽制しながら距離をとろうとするが、フリーダムの猛追を交わしきれず苦
し紛れに後退しながら放ったトーデスブロックの連射も全て巧みにかわされ、確実にロックオンしたシュラークの2
連射をも、いとも簡単にツインランサーで捌かれると、オルガのカラミティは打つ手を失い、一瞬機体の動きが止ま
りわずかな隙を作った。
 
 フリーダムを操るキラはその隙を逃さず、トーデスブロックをツインランサーで跳ね上げると、返す刀でシュラー
クの砲身を切り裂き、飛ばされたトーデスブロックとシュラークの砲身が残骸となって砂浜に突き刺さる。
 カラミティを無力化したのを見届けたキラは即座に反転し、今度は後ろで砲撃するフォビドゥンに接近していった。

 シャニは偏向シールドの絶対的な安心感からか、大鎌ニーズヘグを振りかざしフリーダムを迎え撃ったが、フリー
ダムはニーズヘグを盾で捌きながら、左腕を回して巻き取るようにフォビドゥンの懐深く入り込み、自慢の偏向シー
ルド”ゲシュマイディッヒ・パンツァー”をツインランサーの連続した突きを見舞い致命傷を与える。
「コイツ……。許さない!」

 機体に損傷を負わせられたシャニは完全に頭に血が上り、ガムシャラに大鎌ニーズヘグを振りかざし突進してくる。
シャニのフォビドゥンの突進するだけの単調な攻撃パターンは、簡単にキラに見透かされフリーダムのハイマットモ
ードから繰り出すフルバースト射撃攻撃の的だった。
 先刻のフリーダムのツインランサーの突き攻撃で損傷し、満足なビームの偏向が出来なくなった”ゲシュマイディ
ッヒ・パンツァー”はもう偏向シールドとしての用を成さず、2度3度と繰り返し続くフリーダムのフルバースト攻
撃の前では、新型機体の堅牢なPS装甲と言えども致命傷を負わされ、シャニのフォビドゥンは海中に没する形で撤
退していった。
168 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:29:14 ID:D5x+B5rQ
地球連合軍・旗艦パウエルでは、グーン隊の痛烈な攻撃の混乱から立ち直り、撤退を始めるザフト軍を追撃する構
えに移っていたが、一人別方向のアークエンジェルに飛来した機体に、異常に興味を引かれた男がいた。
「大佐………あの機体、鹵獲できませんかね。」
「アークエンジェルのですか、アズラエル理事。」
「あの機体、ただの機体じゃないですね。あの2機を手玉に取る動きをするとは……それに。」
サザーランドは、瞳を輝かせて双眼鏡で見つめるアズラエルに頷くと指令を下した。
「艦隊を再編し移動させる。アークエンジェルを半包囲陣形で取り囲む。」



「トダカ一佐、いよいよ連合軍のお出ましだぞ……アークエンジェルと連合軍の間に割り込む。」
「了解です。」
 トダカ一佐は、カガリの命令よろしくオーブ軍イージス艦隊を魚鱗陣形に編成すると、アークエンジェルと地球連
合軍艦隊の間に割り込ませ、包囲陣を形成する地球連合軍艦隊に対してアークエンジェルを中心に円陣形を完成させ
包囲を阻止する構えを取る。
 カガリは、ハルバートンから届けられたファイルをめくり、通信周波数を合わせてコープマン大佐を呼び出す。
「大佐、コープマン大佐……。」
「カガリ、お久しぶりです。こちらの準備は何とか間に合いました。………慌しいですが、ザフトが築いた海岸線の
 陣地とドッグを接収し終えました。予定ポイント・アルファWでお待ちしております。」
「よし、アークエンジェルを誘導する。ラミアス艦長に通信回線を………。」

呼び出されたラミアス艦長が、通信スクリーンに映し出される。
「ラミアス艦長、説明は後だ。指定するポイントにアークエンジェルを降下させてくれ。」
怪訝な顔で見つめるラミアスも見つめ返し
「心配するな、ハルバートン提督からの指示だ。アークエンジェルは四面楚歌じゃない……海上のオーブと地上では
 ハルバートン麾下の連合軍が付いている。」
「そういうことなら、喜んで指示に従います。カガリさん。」
「それと、あの機体………、キラ・ヤマトも一緒にな。」


「クソッ……オーブ軍め、ノコノコ出てきたと思ったらこのザマとは……。」
「してやられましたな、オーブ軍が戦列に加わった真意は・・・・・・、こういうことでしたか。」
前方に展開するオーブ艦隊と、その後方に位置するアークエンジェルが整然と港に入っていくのを睨み付けると、ア
ズラエルが感情を露にするのとは対照的に、サザーランド大佐は冷静に答えを返す。

「大佐、ボクは諦めたわけじゃありませんから。」
 悔しそうにつぶやくアズラエルを一瞬見つめ、前方に視線を戻したサザーランドは、双眼鏡から見える地上部隊の
様子をゆっくりと眺める。コープマン大佐の部隊が投入されたか、わざわざコロラドから呼び戻したとすればハルバ
ートン提督は、初めからそのつもりだったようだ………。
 終わってみればこの作戦、どこまでが役者で、どこまでが脚本なのか、そして誰が主役なのか・・・・・・慎重に進めた
つもりだったが、アズラエル理事が直々に乗り出したとなっては当然の反応だな。
海岸線に展開する地球連合軍の部隊を、感慨深げに眺めていたサザーランドは双眼鏡を覗いたまま、アズラエルに聞
こえるように漏らした。
「………陸での食事は、お預けですな。」
169 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:31:51 ID:???

 攻撃で損傷し速力が出ないアークエンジェルを守るように後ろに逃し、オーブ艦隊はゆっくりと歩調を合わせ後進
をかけながら、地球連合軍との距離を置いて指定ポイントに整然と並んだまま対峙する格好となる。

 入港したアークエンジェルに続き、まとわり付く2機を撃退したフリーダムがアークエンジェルに着艦し、機体か
らウインチを使って、ザフトのパイロットスーツを着込んだキラ・ヤマトが降り立ちヘルメットを脱いだ。
「!…………キラ。」
「キラ。」
「坊主、足付いてんだよな……。」
「キラ、……よく生きて戻って……。」
ブリッジから駆けつけたフレイやサイ、ミリアリア、ストライクのコクピットから、転がるように出てきたトールや
フラガ大尉がキラの基に駆けつけ、交替で抱き合いながら”本物””生きてたんだな”と繰り返し確かめるように言
い合い再開を喜び合った。
170 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/22(木) 23:41:33 ID:???
(≧∀≦)もう1話、北米作戦の最終的なエピソードやります。
22話まだ、8割ぐらいなのでがんばります。
171通常の名無しさんの3倍:2007/02/23(金) 21:49:09 ID:???
こちら、フォックス1
貴電受信、了解した。
172 ◆hO5UpTpm0s :2007/02/28(水) 22:59:10 ID:???
│・ω・`)ほしゅ。グーン参上スレを見てから、グーンたん活躍させてしまう
│・ω・`)まさか、宇宙には連れて行かないけどw
173 ◆hO5UpTpm0s :2007/03/04(日) 18:08:49 ID:???
(。≧◇≦)ノほしゅ。さっきの特番けろろ軍曹面白かった。
174 ◆hO5UpTpm0s :2007/03/10(土) 20:58:46 ID:???
(。≧◇≦)ノほしゅ。こんなところで詰まるとは
175通常の名無しさんの3倍:2007/03/11(日) 17:10:12 ID:???
大儀である。だが携帯から長文を書き込むのは大変なので、ただ一言だけ送る。
がんがれ。
176通常の名無しさんの3倍:2007/03/17(土) 13:13:18 ID:???
ほしゅ
177通常の名無しさんの3倍:2007/03/27(火) 15:09:33 ID:???
178 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/01(日) 22:39:35 ID:???
(。≧◇≦)ほしゅ
179 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/02(月) 01:31:26 ID:Nw/c4p4m
(。≧◇≦)武者修行が効きました。ほぼ書き直してます。
(。≧◇≦)おかげでチョッとは読みやすいかなアイデア重視だったからな
(。≧◇≦)悩みすぎて筆が進まんのはトホホなところ。でも、がんばる
180 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:16:01 ID:???
22、翼は舞い降りたV、キラ・ヤマト

 オーブ軍イージス艦の甲板では、離陸前のヘリの轟音が響きわたっていた。ヘリのローターが起こす風に逆らいな
がら乗り込んだカガリとトダカ一佐が大声で会話を交わす。
「トダカ一佐。”もしも”と言うこともある。キラはコーディネイターだ、変な動きをしたら容赦なく撃て」
「ですが……」

カガリは、銃の弾倉を確かめ遊底をスライドし、手早く初弾の装填をすませると腰のホルダーにしまいこんだ。
「下手に動きを静止できると思うな。躊躇すればこちらに犠牲者が出るだけだ」

 トダカ一佐は、カガリとアークエンジェルとの経緯を知っているのか、少々気遣うような表情を見せるが、カガリ
は構う様子を見せずに、乗り込んだヘリの中で考えをめぐらせる。

 あの、ハルバートン提督が私を指名して加えたのは、単なる新型機体鹵獲を有利に進めるためか………。
しかし、キラ・ヤマトが奇跡的な生還を果たした事と、何らかの係わりが有るのか無いのか、この計画の首謀者は
ハルバートン提督だけなのか、誰もが主役と思っているだけで本当は。

 堂々巡りに至る考えを打ち切り、カガリはヘリからの無線を使い、密かに陸路を南から北米に潜入したキサカを呼
び出す。
「私だ、オーブ在外公館の被害はどうだ、すぐに使えるか。………そうか、よろしくたのむ」

 ヘリが到着した先では、コープマン大佐が直々にカガリら一行を出迎え、一緒に差し回しの車に乗り込むと、今し
がたの戦闘で荒れた、海岸沿いの道路を突き進みアークエンジェルが寄港するドックに向かった。
181 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:17:18 ID:???
 アークエンジェルのMSデッキでは、奇跡的に生還したキラを囲んで喜びの再開が続いていた。
 フレイは艦橋から駆けつけると、キラを囲んだフラガや整備班のコジローたちを押しのけてキラに走りより、離れ
離れになった数ヶ月を埋めるようにキラの胸に頬をうずめる。
「キラ!」

キラとフレイは顔を近づけ言葉を交わす。
「キラ、必ず戻ってくるって信じてた」
「ああ、心配掛けて……ごめん」
短く言葉を交わすと、フレイは鳶色の瞳を潤ませながら、キラの胸に顔を埋め離れるのを嫌がる子供のように、しっ
かりとキラを抱きしめる。

 フレイの手をしっかりと握り締めたキラは、二人の再会に水を差さないように見ていたトールやサイ達に近寄り
声を掛ける。
「トール、ミリアリア……サイ、カズイ」
「よかった、本当に……よかった」
「生きて、戻ってくれて」
口数は少なかったが、ヘリオポリスの学生仲間だけの輪になると、学生生活を満喫していたコロに戻ったように
自然と皆の顔がほころぶ。
182 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:20:20 ID:???
 ラミアス艦長は、キラたちと少し離れ新型機体を見上げていたが、意を決したように顔を引き締めると
キラ達の輪に割って入り質問を発する。
「キラくん。……本当にキラくんなのね」
「はい」
キラは少しぎこちない笑顔を向けて、言葉を続ける。
「ラミアス艦長、間に合って良かったです」

 ラミアスはキラが行方不明になった南海での出来事以来、胸につかえていたものが落ちたように、少し緊張した
面持ちを解き、軽くうなずきながら話す。
「その、パイロットスーツ、ザフト軍のようだけど、色々事情があるようね」
「……長い話になりそうですが、ボクはザフトではありません」
「では、あの機体は」
「あれは、ザフトが開発した新型です。ワケあって奪取計画に参加した人たちから託されました」

 ラミアスは知りえない計画、機体奪取に関わり合っていないことに戸惑いの視線をフラガに投げかける。
「地球連邦軍に引き渡すのが筋だろうな」
 フラガは、ラミアスの視線に答えて正論を口にして助け舟をだす。そこへ、ナタルが先刻の戦闘での疑問を差
し挟んだ。

「しかし、あの戦闘で連合の新型を相手にした以上。連合軍でもどうなることか……成り行きとはいえ」
「でも、誰かさんが上手い具合に、機体を引き取りに現れるんじゃないか?」
フラガがナタルの懸念を軽口で引き取る。
「カガリさん、のオーブ軍……まさかね。ハルバートン提督が付いているとは言っていたけど、提督は宙に……」
ラミアスは、先の戦闘での経緯とカガリらとの通信を思い出して、オーブ軍の名前を口にしたが、まさかオーブ
軍が乗り出してくるとは考えられない。
 それぞれが、やれやれという感じで肩を落とし、少々不安げな眼差しで新型機体を眺めたとき、その誰かさん
が車両を連ねて騒々しく現れた。
183 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:22:45 ID:???
 コープマン大佐を先頭にして、カガリを引き連れた部隊が、アークエンジェルを係留したドックに現れた事で
その場に居合わせた、アークエンジェルの乗組員一同は、納得と驚きの表情を交互に浮かべる。

「皆さん、お揃いで調度よかった。ラミアス艦長よくやってくれた」
「はっ」
コープマンが気さくに声をかけ、ラミアスらと敬礼で挨拶を交わす。
「では、ラミアス艦長、新型機体を引き取らせてもらうとしよう。それとパイロットも……彼はどこかな」
「キラ・ヤマトも……でありますか」
コープマン大佐が見回した視線の先で、キラが思いつめた表情で歩み寄ってくる。

「あれには……あの機体には……」
言葉を詰まらせるキラに変わって、カガリが後を続ける。
「あれには核動力が搭載されている。…………そうなんだろうキラ」

「そうです、あれは核動力が使われています。NJ・キャンセラーを搭載しています」
キラの脳裏に浮かぶ、新型機体フリーダムの起動画面に表示される頭文字。

”Generation Unsubdued Nuclear Drive Asault Module COMPLEX”(核機動強襲仕様)

 キラはニュークリア・ドライブの文字が意味するものを十分感じていた。実際に操縦して今までのストライクを
十二分に上回るパワーと、搭載火器が繰り出す桁違いの破壊力とエネルギーは、否応なしに核の力が持つ脅威を伝
える。
「だから、あれは危険すぎる連合にもザフトにも!」

抑えながらも核を前にして、語尾に怒りが混じるキラに対して、動じる様子も無くカガリが答える。
「だがキラ……君の手にも余る代物だ。そうだろう」
「でも、連合に渡れば再び核兵器が」
「キラ、私を信じてくれ。地球もプラントにも核ミサイルを使わせはしない」

 カガリの鳶色の瞳が、キラを包み込むように見つめる。キラもカガリの誠意を理解したのか頷き返し納得した
ように告げる。
「わかりました」
184 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:25:22 ID:???
 カガリは内心を悟られぬように、ほっとした気持ちで胸をなでおろし、コープマンと顔を見合わせると互いに
頷きあいながら話あった。
「大佐、機体はオーブの技術部に解析させます。それとキラ・ヤマトの身柄はオーブ公館に預かります」
「解析には連合の技術者も加わりますが、依存はありませんね」

カガリはコープマン大佐の目を見つめ頷く。
「問題ない。で……キラのグリーンカードと他、軍籍の手配はいつまでに、隠し通せるのも時間の問題でしょう」
「3日・・・いや2日下さい。書類は完璧に揃えて見せます。付け入る隙は与えません」
「大佐、奴らは意外と早いんじゃないかな。アズラエル氏の面目を潰した禍根は大きい」

「ラミアス艦長、キラ・ヤマト君をお預かりします。本官はこれにて」
コープマン大佐は挨拶を済ませると踵を返してドックを後にし、キラを連れたカガリたちもそれに続いた。




 翌朝、キラを一時的に保護したオーブ在外公館に、大西洋連邦の外務官僚を名乗る人物が訪れた。
 あまりにも早くキラの居所を見つけ出したその裏には、ブルーコスモスの盟主・アズラエル理事が面目を潰さ
れたことに対する、彼の深く傷ついた自尊心の穴埋めを、新型機体とパイロットに求めたからであり。
 また、オーブの在外公館を訪れた人物である。任務を引き受けたサザーランド大佐も、アズラエルが持つ
理事の強権をフルに駆使して、外務官僚の辞令や特権を引き出させた手腕に驚きを隠せなかったが、それだけ彼
のプライドが傷ついたと深く受け止めていた。

 予期していたとは言え、突然の訪問者にカガリとキサカは少し慌てたが、短く手順を確認し応対にでる。
「これは、これは、わざわざのお運び恐縮です」
「初めて、お目にかかります。大西洋連邦外務官サザーランドです。お見知りおきを」
共に型通りの挨拶を済ませると、カガリはソファーを指してサザーランドに勧めつつ、自身も腰を下ろす。
「こちらこそ、ザフトの接収から返還を終えたばかりなので、何のお構いも出来ませんが」

すぐにテーブルにコーヒーが供され、焙煎された香ばしい匂いが部屋に溶け込む。
「サザーランドさん、確か事件に関わった重要な人物の、引き渡し要求で参られたと伺っておりますが」
「いま捜査中の事件に、関わっている疑いが出て参りまして、核を取り扱った重大事件ですので、かかる事態を
 政府も重く受け止め。是非、事件解決に貴国の協力が、速やかに得られることを期待しております」

カガリはサザーランドの口元からテーブルのコーヒーに視線を移すと俯きがちに答える。
「その人物が、事件に関わった証拠は、おありなんでしょうね」
「もちろんです。この写真をご覧下さい」
言うと同時にサザーランドは数枚の写真を取り出しテーブルに広げた。
「この未確認MSとパイロットの少年の行方を追っていたところ、こちらの公館に入る様子が確認されました」
フリーダムの機体が写った写真と、望遠でやや鮮明さに欠けるものの工廠から出る様子を写したキラと確認できる
写真を示しながら説明を続けた。
「この少年は、所属不明のMSに搭乗しており、我が連合軍MS部隊も多数犠牲になりました」
サザーランドは畳み掛けるように続ける。
「このまま放置しておくのは、国内の安全と平和を守る。我が大西洋連邦としても、貴国代表部たる公館を守る
 義務があります。是非引渡しをお願いします」
185 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:26:22 ID:???
カガリは、サザーランドの熱弁を聞き終わると静かに切り返す。
「残念ですが、治外法権です。ご心配はごもっともですし、貴国の安全に対してオーブは協力を惜しみませんが
 残念ながら該当人物はここにはおりません。もし居たとしても敷地内の出来事は、こちらで厳重に警備してお
 りますからご心配には及びません」
当然の反応と気にもしない様子でサザーランドは食い下がる。
「ですが、安全保障は接受国である北大西洋連邦にあります。是非にも引渡しを」
「サザーランドさん、判っております……どこかのテレビドラマのように、わが国の領土だと訴えているわけでは
 ありません。しかし、敷地内はウィーン条約で保障されているように不可侵権の範囲内です」
食い下がるサザーランドに対し、カガリも引き下がらずに返す。
「それに、もしわが国にそのような人物が居たとしても、修正第4条 (フォース・アンドメント、米国の憲法。
 権利条項を規定した修正十か条のうちの第4条。捜査に対する個人の権利を規定している) が担保されない
 ようでは何人たりともオーブの人間を引き渡せません」

条文を盾に食い下がれ、サザーランドは話題を移した。
「いや、そこまでおっしゃるのなら残念です。大西洋連邦ではオーブ出身者の犯罪の多さに苦慮しておりまして」
この物言いに、これまで横で黙って聞いていたキサカが思わず口を挟む。
「サザーランドさん。今のお言葉は、わが国に対する侮辱です」
「これは失礼、言葉が過ぎたようです」
キサカを片手を挙げて制止を促しつつ、カガリが戯れの代償とばかりに返す。
「期待に添えなくて申し訳ありませんが、オーブには窃盗を働くようなものは一人も居りません」
カガリは冷め始めたコーヒーを一口のみ、間を整えると続ける。
「小耳に挟んだ話ですが、オーブのオレンジの種を植えたところ、北米の気候風土が合わないのでしょうか。全て
 枳殻(カラタチ)に育ってしまったそうです。オーブで犯罪を犯さなかった者も、北大西洋連邦に入ると順法精
 神が損なわれるようです」

サザーランドはカガリの言い様に、外交ルートでの引渡しを断念し、非礼を丁重に謝罪すると帰って行った。
186 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:30:49 ID:???

 オーブ本国では、カガリの父であるウズミと叔父のホムラが主になり、NJ・キャンセラーの報告を受けて対応
を巡り検討を重ねていた。特別に編成されたNJ・キャンセラー調査委員会の委員たちの報告を聞きながら、ウズ
ミは報告書を目で追い要点を問いただす。
「NJ・キャンセラーは、オーブの資源外交の切り札となる存在だ、実用までにどれぐらいかかる」
「電力用の軽水炉の運転を目標に、試験段階に入るまで概ね2ヶ月と見ております。実用炉への完全復旧までには
 1年はかかるかと」
「1年か……少しでも短期間で解析と実用化を終えるように励んでくれ、エネルギー問題で死者が増えるのを防が
 ねばならん」
ウズミは担当者を鼓舞するように言うと、調査委員会の解散を促し残ったホムラに向き直り詳細をつめる。
まずホムラが決定した日程を話す。
「大西洋連邦とは概ね話がついている」
 ホムラは、大西洋連合と歩調を合わせて行ってきた外交政策をウズミに説明する。GAT−X105ストライク
を、アクタイオン・インダストリー社を通じノックダウン方式で大西洋連邦管轄の軍に供給。NJ・キャンセラー
相互協定で、合意が形成されていることを日程を交えて説明し、ユーラシア連邦、大洋州連合、アフリカ共同体と
もNJ・キャンセラー技術貸与での政治決着がつきつつあるのを告げた。
 ウズミはホムラの説明を聞き終わると、視線をホムラからはずして天井を見上げながら話す。
「内々で提示されたフリーダムの費用負担ぐらいは相当な対価とするか」


 ひとまず順調な滑り出しに、ウズミ、ホムラともに安堵の表情を浮かべ、互いに深く腰をかけなおす。
ウズミは、NJキャンセラーをもたらしたカガリを思い出し、つい口ずさむ。
「瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ……」
ホムラはウズミの言葉に気付き、後の一説をつなぐ。
「……何処より 来たりしものそ 眼交に もとな懸りて 安眠し寝さぬ。……カガリが心配で安眠できないか」
「昔からお前には隠し事は出来なかったな、カガリにキラ君とのことを話しておくべきだったかなと……考え出
 すと、どうして良いか判らなくて」
「兄さん。二人が出会ってしまった以上。いずれは、話さなければいけないことだ」
ホムラは居住まいをただし、自分の考えを率直に話す。
「今がその時期だろう、カガリなら必ず解ってくれる。兄さんの愛娘だろう」
「簡単に言ってくれるな……だが、ありがとう決心が付いたよ。」
「カガリは、私の姪でもあるからね。大丈夫さ」
187 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:34:44 ID:???
 ウズミは、早朝の6時ごろに目を覚ますと、意を決して電話の受話器をもどかしげに取り、番号をダイヤルする。
オーブは早朝だが、カガリがいる北米は時差で昨日の夜の10時ごろになる。受話器から呼び出し音が鳴り始め
るが、ウズミにはこのときの呼び出し音ほど、緊張を煽るように聞こえたことは無かっただろう。
「はい、カガリです」
「カガリか、今回の働きは見事だった。そちらの仕事が終わり次第、本国に帰ってきてくれ」
「……父上。用件があるのならおっしゃってください。いつもの父上らしくないですよ」
「いや、用件というほどのものではないんだ、時にキラ君は息災かね」
「キラ・ヤマトなら無事に保護しております。もともとオーブ・ヘリオポリスの市民でもありますし、丁重に扱
 ってますよ」
「あ、いや、それなら、いいんだ」
「まさか、私とキラ・ヤマトのことを心配なされているのなら大丈夫です。彼との関係は氷雪の志操ですから」
「そうか、それなら……なんでも……ないんだが。早く帰ってきてくれ。では」
 ウズミは結局、肝心なことを切り出せずに電話を終えてしまい、受話器を置いた手を長らく見つめ頭を抱えた。



 カガリは切れた電話を置きながら、父であるウズミの様子がいつもと違うことを、訝しく思い首をかしげて
つらつらと考える。
 父上らしからぬ電話だったが、キラとの関係を疑ったにしては不自然すぎるけど……まさかね。
 恋愛関係を心配したのではないのなら、生き別れの兄弟姉妹ってことは……ありえないが、別に検査したわけ
でもない。父上の隠し子かなにか……どっちが……もしかして私がか……キラか……ありえないと言い切れない
ところが……ありえない。
 よくよく考えれば。……思い当たる節もある。私には、幼少のころの写真がない……子煩悩でなくても、親な
ら1枚や2枚あってもいいはず……なにより、キラが血族なら長子継承・男子優先を慣わしとしてきたアスハ家
にとっては跡取りとしても問題ない。ひいては私の……いやいやオーブのためにも。
 ここは、ひとつ藪を突いてみるか……その前に証拠が必要だな。
188 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:38:25 ID:???

 それから、2日ほどはカガリとコープマンは共に、キラとフリーダムを地球連合軍に正式編入するべく精力的に
動き、ハルバートン提督の人脈も功を奏し3日を経ずして正式な書類を整い終えた。
 
 カガリは書類をそろえ終えると、オーブのセイフハウスのひとつであるキラの保護先のコテージに向かい。洋装に
設えた年代物のソファーセットにキラと向かい合って座り用件を告げる。
「キラ、正式な地球連合軍。アークエンジェル所属の部隊および階級を証明する書類だ」
テーブルに書類を広げキラの方に提示する。
「アークエンジェルに戻って再び戦うのもよし、書類を破棄して君の好きに戦うのも自由だ。フリーダム置いていっ
 てもらうが」
「カガリ、ボクは間違っているんだろうか」
木蘭色の瞳を真っ直ぐに向け、真摯な表情で問いかけるキラに対し、カガリも真っ直ぐに見つめて返す。

「キラ、君が迷う気持ちもわかる。フリーダムを使いこなしアークエンジェルを守れるのは君しか居ない。君は君の
 出来ることをやればいい」
「ボクは、誰も傷つけることなく終わらせたい」
「本当は戦いをするべき人、ではないのかもしれないなキラ。戦いをするには優しすぎ純粋すぎる」
「それでも、ボクは傷つけたくはない、でも多くの人を守るためになら」
カガリはゆっくりと席を立ち、部屋の大きな窓を開け放った。

「アークエンジェルに戻って君の信じる道を進むといい、君の仲間も離艦せずに帰りを待ってくれている」
部屋の中に外からの風が入り、ゆっくりと繊細なレースのカーテンが持ち上げる。風に誘われるようにキラも窓際
にゆっくりと歩み寄る。

「もしキラが望むなら、オーブにいる両親と暮らせるように図ろう。南海での凡そのことは聞いている。なんなら
 オーブで私の仕事を手伝ってくれ。いやそばにいてくれるだけで……も……」
頬を染めながらカガリがキラの胸元を見つめながら話す。
「いや、カガリ。ボクはアークエンジェルに戻る。この戦いをボクの闘いを終わらせるためにも」
キラは、カガリの鳶色の瞳に溢れる涙を、そっとぬぐうとやさしく抱きしめた。
「ボクの力で、もうこの涙を流すことの無いようにしないとね」
189 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:46:00 ID:???

 プラントでは、新型MS強奪の報告を受けたパトリックが、執務室の机を叩き声を荒げていた。
「新型MSがこうもたやすく持ち出されるとは、警備体制と軍の管理体制を見直すよう即刻手配するように」
 重要機密の漏洩は、かかる事態の深刻さから言えばパトリックの怒りは当然ではあったが、あまりの議長の逆鱗
に触れた軍の担当者は、明らかに顔色を変えたまま執務室を後にした。

ユーリが、怒りの醒めぬ様子で執務室を歩き回るパトリックに話しかける。
「パトリック、逮捕者83名、死傷者21名、こちらの被害は死傷者11名。予想以上の成果じゃないか」
「ああまで易々と機体の奪取を許すと思わなかったが、たかだか1機のMS高くはついたが止む終えまい」
「……シーゲルには気の毒なことをしたな」
「プラントに巣食う、地球連合のエージェントを一網打尽にするためだ」
パトリックは掃き捨てるように言うと、苦悩の表情をにじませ話を続けた。
「シーゲル・クライン。私が唯一プラントの命運を託すに足ると信じる友を逃したのだ、連合に疑いや断る理由の
 無いようにしてな、全てはプラントの運命を紡ぐ種を残すために」

 外の騒ぎに気付いたようにパトリックは窓際に歩み寄り、大通りを整然と行進する、反ブルーコスモスのデモを
見つめつぶやく。
「議会証言が、世論を動かしたと見える」
「今はブルーコスモスだが、反戦デモにいつ何時変わるか分からんぞ」
ユーリの言葉を受けて、パトリックはこともなげに言い放つ。
「それも、また善しとするさ」
パトリックの発言を受けたユーリは、思い出した事柄を告げる。
「ラクス・クラインの処遇はどうする。彼女の歌声が兵の士気を高めているが、反戦に利用され始めている」
パトリックは窓際から離れ、執務を取る椅子に戻り胸の内を晒すように話す。
「いずれにせよ粗末には扱えん、丁重に扱うように厳命してくれ」
「……」
「快く了承してくれたが……、私は友人を一人失った。友の娘は守らねばならん」
パトリックは成り行きとはいえ、袂を分かったシーゲルを思いやっていた。
190 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/05(木) 22:55:26 ID:vXQLFlB9
│・ω・`)時間掛けたわりに……、自分的にはいっぱいいっぱいです。
│・ω・`)練りまくり。今回投下分は下書きした2話分が一まとめになりました。
│・ω・`)また、書き貯めに入ります。
191 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/14(土) 11:50:13 ID:???
ほしゅ
192通常の名無しさんの3倍:2007/04/24(火) 13:42:13 ID:+gd5wVz7
ほす
193 ◆hO5UpTpm0s :2007/04/29(日) 23:10:45 ID:???
ほしゅ。eonet書込み規制であせった
194通常の名無しさんの3倍:2007/05/10(木) 14:25:12 ID:???
規制解除してくれ><
195通常の名無しさんの3倍:2007/05/12(土) 02:39:46 ID:t1Z5IWyi
196 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 13:47:10 ID:???
23、崩壊の予兆

 裁判所の階段を、人混みを避けながら急いで駆け下りる少壮の弁護士の姿があった。
 彼は通りに面した車の後部座席に体を押し込み、同じく後部座席に座る先客の執行官に手短
に挨拶を済ませると運転席のレドニル・キサカに車を出すように促す。
 歳若いが精悍な印象を与える弁護士は、後部座席で裁判所からの書類を整理しながら運転す
るレドニル・キサカに語りかける。
「Mr・キサカ、これも片付けて3連勝と行きたいですね」
「……こちらも、そう願っております」

 同じく、後部座先に座る老練な雰囲気を加味す、執行官が釘を刺すように告げる。
「船舶が出向していないことが絶対条件です。お忘れなき用に願いますな」
執行官の言葉を受けてキサカが答える。
「わかっていますよ先生。港湾代理店によると出港準備を始めたらしいんです。ですから、こ
 うして急いでいるんです」
キサカはアクセル踏み込み、目的の貨物船が係留されている埠頭へと車を急がせた。

 キサカたち一行は、今回で3度目となる船舶の差し押さえに向っていた。
 ブルーコスモスの盟主アズラエルを追い詰めるため、彼の企業の積荷を押さえるために、船
積みした貨物船が補給した燃料の代金債権を譲り受け、裁判所から船舶の先取特権の命令を引
き出す手法を駆使していた。
「それにしても先生。船舶の先取特権は思ったより効力がありますね」
猛スピードで走る車を操りながら、キサカは弁護士に話しかける。
「普通は造船所や銀行などに債権や担保権が設定されています……」
弁護士は、これで通算3度目の問いかけだぞとばかりに、視線をキサカに走らせたが得意分野
の解説に幾分滑らかに話し出し先を続けた。
「……しかし、船舶の先取特権は抵当権に優先し……そして、船舶油代金は先取特権を有する
 と定められている」
弁護士は執行官に振り向き、重要な点を告げる。
「船主は傭船に出しただけでも、つまり誰が所有者でも関係ない……と」
197 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 13:49:20 ID:???
 キサカは、埠頭の隅に出航を待つ、赤茶色の貨物船を見つけると思わず叫ぶ。
「あれだ!!」
15000tクラスの貨物船が岸壁のようにそびえる中、キサカ達は車を飛び降り、港湾の事
務所に駆け込むと、発航の有無を港長に問いただしあわてて車に戻ってくる。
「港長によると、まだ届けは出ていない―― 執行官、発航の条件は」
キサカは執行官に問いかけると、うなずきながら中年の執行官は答える。
「そう、ひとつは積荷の準備が終わっていること……船員が乗船し終えていること……そして
 届けが出ていることですかな」
執行官が条件を列挙し終えると、キサカが念を押すように告げる。
「……間に合ったと云う事ですね先生」
キサカの問いかけに弁護士と執行官は、少し弾んだ様子で頷きあう。

「タラップと言う奴は、――いやなものですな」
キサカの前を行く弁護士は、なれない急角度の階段を上りながら、つい愚痴がでる。
「先生。倒れないで下さいよ」
弁護士を励ましながら、キサカたち3人はタラップを上りきり、船長室を目指してデッキを進
む。
 そして、船長室のドアを恭しく開き、初老の船長が室内にいるのを確認すると、執行官が身
分を示して、やや緊張した声で宣言する。
「本船は差し押さえられました」
 海の男がもつであろう、威厳をそなえた船長が悔しそうに差し出す国籍証書を受け取り。キ
サカは胸のうちで”スマナイ”とつぶやきながら執行手続きを見守る。



 オーブ本国では、カガリのデスクに一通の報告書が届けられていた。
「これが、コテージで集めたキラの毛髪……執務室から失敬した父上の毛髪」
 カガリは、サンプルと報告書を眺めながらページをめくりながら読み進めていく。
「……!! キラと私が兄妹。父上とは血縁関係が認められない」
――なるほど、父上の狼狽振りも説明がつく。

 カガリは、考えをめぐらせながらデスクの椅子に深く架け直すと、ちょうど机上の電話が鳴
り反射的に受話器を素早く取る。
「カガリか、ブルーコスモスの解体を画策しているようだが」
電話の向こうからでも、ウズミの貫禄が伝わってくるような声が受話器から室内に漏れる。
「わかっております。相手は巨大ですから穏便に進めております」
「ムルタ・アズラエルは役に立つ、――この意味がわかるな」
「はい、ご心配なく心得ております」
 カガリは、ウズミからの電話を終えると、少し疲れた表所を浮かべ。
 椅子から立ち上がりつつ、窓から差し込む日差しに眼を細めながら、ため息を一つつくと局
面を詰める決心をつけ、攻め手を再考するように考える。
 父上も、あいかわらず喰えないお人だ。父上の計算ではあの手の人間は御しやすく、組み安
いと見て自分の手駒として使う気でいるようだが……。
「いよいよ将を射るとするか」
 カガリは、決意を固めると渡航する準備を始めた。
198 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 14:09:13 ID:???
商法842条と849条、知っていても突っ込まないようにww
199 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 18:26:07 ID:???
24、青い地球の吐息

 ブルーコスモスの盟主であるアズラエルは、カガリと共に大西洋連邦・大統領と三人で昼食
会を催していた。

 いつもとは違う、桜花紅色のシルクのドレスとロングの黒髪のウィッグでドレスアップした
カガリは、その場にいた者からは一層魅力的に映った、ひとりムルタ・アズラエル氏を除いて。

 食前酒の刺激に食欲をかきたてられ、赤のブルゴーニュの気品あふれる芳香が、鼻腔を刺激
し舌を潤しながら、咽から胃になめらかに滑り幸せな至福の酔いを約束するはずであった。
 しかし、アズラエルは昼食会で饗された、極上のシャリアピン・ステーキを睨みつけると、一
週間前に起こった屈辱的な出来事を思い出していた。

――全ての誤算は、この小娘が尋ねて来たときから訪れたのだ。

 いや、プラントがブルーコスモスに対する。ネガティブキャンペーンを行ってからかもしれ
ないが、この娘カガリ・ユラ・アスハが来てからだ。
 そう……この鳶色の燃える様な瞳と金髪の儒子……いや今は黒髪の小娘に。
200 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 18:27:24 ID:???

 一週間前、アズラエルのロンドンの私邸にカガリが訪れた。
アズラエルは、カガリの訪問に忙しさを忘れるのと反比例するように、先の戦闘でのオーブ艦
隊が取った出来事を思い出し不満をみなぎらせた。
 豪華な応接室で応対したアズラエルに、カガリが平然と近づいてくる。
「アズラエル代表ですね、お噂はかねがね窺っております」
 カガリは、にこやかに微笑み屈託の無い笑顔で握手を交わしただけでなく、抱擁を交わす熱
烈な歓迎振りに、切先を逸らされたアズラエルは少し戸惑った。
「アスハさん、とお呼びして宜しいでしょうかな。今日はどんなご用件で」
「カガリとお呼びください」
 豪奢なソファーに腰を下ろした二人は、運ばれた紅茶に手をつけるまもなく、にこやかに微
笑みながらカガリは一通の書類をテーブルに差し出す。
「アズラエルさん、単刀直入に用件を申し上げますとブルーコスモスを解体してもらいたく参
 りました」
「なっ……なにを」

 アズラエルは、望外の要求に驚いた様子を隠さず、思わず大きな声で答える。
 年端も行かぬ少女に面と向かって、尊大な要求をされるとは思いもしなかったが、気を取り
直しスグに引き取ってもらおうと考えを変える。
「なにを言い出すかと思えばカガリさん、ココをどこだと、いえ私を誰だとお思いですか」
「なに、なんでもありません」
カガリはアズラエルの怒りを素知らぬ様子で話を続ける。
「そろそろ潮時でしょうか、むしろ発展解消させることで事実上の盟主であり続けることも可
 能です。私共も協力を惜しみませんが条件があります。」
「ふんっ、条件とは??」
鼻で笑いつつも、アズラエルはプラントのネガティブキャンペーンで、悪いイメージを持たれ
幾つかのビジネスでのトラブルも目立ち始めたこともあり、何か手を打ちたかったが発展的解
消までは思い浮かばない、せいぜいカンバンを架け替えようかと思っていた矢先であった。
201 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 18:29:07 ID:???

アズラエルの内心の逡巡にも構わず、カガリは核心を告げる。
「リストにある地球連合軍の将校を、予備役に戻すことを了承していただきたい」
カガリは、テーブルの書類を指し示し続ける。
「了承いただければ、来週マルセイユで大西洋連邦大統領と一緒に会談していただく、それだ
 けで結構です」

――それだけで結構です。だと……

 何年かかって連合軍にコネクションを作り、議会工作のためのロビー活動を行ったと思って
いるのか。
 そんなことをすれば、損失は計り知れないものがある。
 そろそろ、我慢も限界に近いアズラエルの内にこみ上げる憤怒を、カガリは平然と続ける。
「迷っておいでのようですね、当然です」
短く告げた後、カバンから新たな書類を取り出しアズラエルの前にすべらせる。
「ではこうしましょう、このプランを受け入れていただけるなら、貴方の経営している会社の
 悩みは全て取り除かれる」
 
 アズラエルは、カガリの言葉とともに出された書類を取り上げて、食入るように何度も読み
返す。
「ある会社の株を組合が収得しましたが、穏便に株の買い戻しに応じるでしょう」
 悪魔のように囁きかけるカガリを、アズラエルは改めて簡単に追い払えるような相手ではな
いことを強く思う。
「それと、今貴方のプライベート・ジャンボに乗っている貨物については一切知らなかった事
 にしましょう。」
 カガリは微笑みながら一方的に言い終えると、再びカバンから優雅な動きで書類を取り出し
仮譲渡契約書とジャンボ機内を撮影した写真をすべらせる。

 アズラエルは写真を素早く取り上げると、最近の自社を悩ます真の元凶が目の前にいる人物
である事を思い知らされ、ジャンボ、貨物、誰も知るはずのない秘密を知っていることに激し
く動揺した。
202 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 18:30:43 ID:???

――知るはずが無い、細心の注意を払ってきたのに。

 アズラエルは、平静を装いながら考えをめぐらせるが妙案は浮かばない。
「な・な・なにを言い出すかと思えば……嫌だと言えば」
「それも、貴方の自由ですが、お互い厄介なことになります訴訟は手間がかかりますので」
 少し大袈裟に両手を広げ、膝頭で組み合わせたカガリを見て、ついにアズラエルの苛立ちは
頂点に達する。
「カガリ、私には連邦の外交官としての特権もある。ただの言いがかりなら国際問題になりま
 すよ」
肩を少し弾ませながらアズラエルは言い切った。しかしカガリも表情一つ変えずに言葉を返す。
「ならば、ご自由ですが、外為違反はともかくワシントン条約違反の疑いで、機内を捜索する
 手はずは整っております」
カガリはアズラエルの注意を引くように、携帯電話を取り出し話を続ける。
「私の合図で、いつでも機内を捜索できます。ワシントン条約にはあらゆる外交官特権は通用
 しないことはご存知のはず」
アズラエルに見えるように携帯電話の電話番号を入力しながら続ける。
「大量の現金・金塊は結構ですが、もし妙齢の金髪の女性が出てきたらさぞ、お立場が悪いこ
 とになるでしょうね」
見えるようにカガリが入力した電話番号に、アズラエルは顔色を変えた。
「Mr.アズラエル。狭い部屋での暮らしは大変ですよ」
「な……。なにを……」
アズラエルは、目の前にいる少女が、悪魔のイメージと重なり青ざめたまま押し黙る。
「金髪の趣味は結構ですが、行き過ぎはいけませんよ。……私も金髪だから今度は黒髪で窺う
 としましょう」
 
 顔色を替えたアズラエルを、終始素知らぬ風に一方的に用件を告げた形のカガリは、ソファ
ーから立ち上がり、念を押すように告げる。
「お返事は30分以内でお願いします。では」
カガリは恭しく礼儀を正し建物を後にする。
203 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 18:31:35 ID:???


 カガリはアズラエルの私邸から、裏口に回されたリムジンに人目を避けるように乗り込む。
後席に座ったキサカが、私邸の様子を傍受しながら見守っていた。
「キサカ、アズラエルが私邸から出るまでに電話が傍受できなければSIS(英国:情報局秘密
 情報部、旧称MI6:軍事情報部第6課)にも連絡してやれ」
「ハッ、SISが乗ってきますかね」
「大丈夫だ、アズラエルはマネーロンダリングにも関与しているし、この間のザフト侵攻でS
 ISはロンドン官邸に結果的にミスリードをした、汚名返上の良い機会になる」




 一週間前の屈辱的な出来事を思い出しながら、アズラエルにとっては長く果てしなく感じら
れた昼食会を終え、元来の育ちの良さから公邸内の庭をカガリをエスコートしながら歩き自虐
気味に話す。
「これで、宜しいんですね」
「ありがとうございます。これで貴方も心置きなくビジネスに専念できますよ」
 アズラエルは、この小娘の鳶色の瞳に見つめられると、アレ以来なぜか苦手意識が先に出て
ペースが乱されるのを痛切に感じながら、カガリをエスコートしていた。
204 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 18:32:24 ID:VzVrZKZM
 庭の中央に差し掛かったところで、カガリが微笑みながらアズラエルに話しかける。
「アズラエル代表、もう一つお願いがあるのですが……よろしいですか?」
 上目遣いで、ものをねだる様子のカガリをみて、アズラエルは悪魔には敵わないと悟り答え
る。
「なんでもどうぞ、オーブの姫」
「では、お言葉に甘えて、貴方が連合軍で行っている試験MSとパイロットを早急に1個中隊
 が編成できるように増強してください」
 アズラエルは目を見開き、長年の研究の援助が実を結びつつあった試作機と強化パイロット
の研究を奪われるような悪寒に襲われながらも、反論するように告げる。
「早急といっても……簡単には出来ませんよ」
「予算なら大丈夫です。早急に一桁は増やしてください。どんな手を使っても構いません」
 微笑みながら話すカガリを見て、先日経験した悪魔と会話しているようなデジャブに襲われ
る。
 また、この小娘は法外な要求を平然と、先日は複数の組合から自社株を買い叩かれ空売りを
仕掛けられ、最後は足元を見られて法外な値段で契約書にサインさせられた。
 あのときの利益からすれば、予算ぐらいは出るだろう。
 しかし、どんな手といっても、直接手を下すのは私だから無理は言わないでもらいたいもの
だが、MSはともかく強化パイロットは、特にオルガなどあいつ等は、私でさえも見下した態
度で命令など素直に聞きやしないのに……。

 アズラエルは中庭に咲き乱れる花々の美しさと、今自身がおかれている立場に奇妙な感じが
した。
 戦禍の手が伸びているといっても、ここはまだザフト軍の脅威からは程遠い平和と静寂に充
ちている。そして行き届いた熟練の庭師たちの手による美しい庭園には、花々が咲き乱れまさ
しく桃源郷を現出させているといっても間違いではないだろう。
 しかし選りにもよって、美しい花々に勝るとも劣らない。
 聡明で美しい女性をエスコートしているというのに。あにはからず、この美しい花には猛毒
の刺があるとは、なんという悲劇いや喜劇と言わずしてなんというのか。
「連合軍の趨勢は貴方の研究にかかっているのですから」
 カガリは、アズラエルをはにかんだ表情で見つめエスコートされた手を強く握り締める。
 アズラエルはこの時、追い詰められたネズミのように、猫を噛み逆襲することは出来ず、立
ちすくむと直感的にカガリの申し出を受け入れるしかなかった。


 数週間後、連合軍では大幅な配置転換が行われ、多くのブルーコスモス支持者は退役・予備
役に編入一掃された。
 ハルバートンはこの人事において元帥に昇進し統合参謀本部議長を拝命、連合軍指令官を兼
務し位人臣を極めることになる。
205通常の名無しさんの3倍:2007/05/14(月) 20:52:34 ID:???
プラントによるアズラエル銃殺ヘイトマダー?
206 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/14(月) 23:42:42 ID:???
変換したイメージとしてはこんな感じなのよね。
特にオープニングの血のバレンタインは、デイアフターの津嘉山氏がいいと思うな

カガリ=進藤尚美 →田中敦子
ナレーション=三石琴乃 →津嘉山正種or小林清。

どんなSSでも森本レオに置き換えれば佳作に思える。
207 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/20(日) 18:14:48 ID:???
ちょっと、保守。
208 ◆hO5UpTpm0s :2007/05/29(火) 17:35:09 ID:???
他スレでgjもらって充電完了!!
209通常の名無しさんの3倍:2007/06/07(木) 00:08:11 ID:???
ほしゅ
210通常の名無しさんの3倍
ほしゅ