アムドライバー>(ヒーローの壁)>種系 stage3
マリー「ハロー、ピーポー!ついにアムドライバーたちの反撃が始まったわ!
今回の見所は帰ってきた主人公、シーン・アスカー!!」
新シャアで時に種の話題も交えつつ「Get Ride! アムドライバー」を語るスレです。
現在、クロスオーバーSS「アム種」鋭意連載中。
次スレは
>>960がファインに決めな!
無理なら申告して
>>980が、踏み逃げするような不届き者は・・・・・
l ! ト、| | \ :::ヽ l l / /
l::::.. l l:.l:.ヽ!\ | \:::::::.. .:::::::::ヽ l ! / /
!:::::::! |.:l\.:.:T \ ヽ:::::::::::::::::::::::::ヽ!l―┐/ /
, - 、 ヽ:::::l ヽヽ:.ヽ:.`:ー-`ヽl::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::|' / てめぇぇぇぇぇ!!!!
\ -― \ \ lヽヽヽ:.:.:.:.:.:.:.:;`ニ=- ;_::::::::::::::l::_L - _ 二
,.-\:::../ ヽ:.:.:\!. ヽヽ`ヽ、ー/ ̄!/lヽTl 7 ー'‐‐‐ -/ -‐
:.:.:/_,. -‐ \ \:.:.::\l l` ー-<::: l |ト\|\'.............:::// :::::::::::
`ー‐-、._ `ヽ、 /,/''`゙ ': :,r 一-、゙ヽ, ゙ヾヾ: : : : : : : : : : : : /
: : : : : : :`ヽ、_<ヽ/{::: 、::ヽ. @ ゙、. !、 ゙:, `ヽ、: : : : : : : : :|
: : : : : : : : : : :゙ヽ'、:: ミ=、;;;;jェ,::`-, ,ノ_,ィ,ノ゙ヾ、 : : : : : | 抹!殺!
|: : : : : : : : : : : : `:、  ̄""´ ニ、r、,ノ,.._゙、 ゙、 : : : : |
`7¬ヽ、: : : : :|\: :\ ゙、:f"eヽ`゙; }| : : : /
/ ,>、: :.| ヽ、゙、 ,. _ ,/::ヽ_,..!リ'ノリ: : : :/
3 :
前スレ805:2006/10/13(金) 16:20:39 ID:???
イージーワークだ。ま、ざっとこんなもんさ。
新スレ立ってたのか、乙!
Get >>1乙!!
ピープルのみんなに代わって声援を贈らせてもらうぜ!
一生ヤッテロ!! ケケ!
クラエ
(ΘеΘ)≡≡≡●鳥∴:
ケケビーム!
9 :
定期上げ担当者:2006/10/13(金) 21:16:36 ID:???
ゼアムの力が>>1乙と言っている!!
・・・無理があったな(´・ω・`)
うし毒男小屋に戻した
落ち着きneeeeeうちの子
誤爆したorz
第四十八話 刹那の邂逅
みんなで出かけるというルナマリアたちの誘いをパスして、
シンは基地で借りたバイクに一人飛び乗った。
とてもそんな気分にはなれなかった。
憤りは、深い。
しかし、自分になにができるだろう。
ロゴスという存在はあまりに大きすぎて、雲を掴むような話だ。
フリーダム一体倒せない自分に果たして、何が出来る。
一晩眠れば忘れるかとも思っていたが、色々と考えてしまう精神状態は、
数時間の十分な睡眠程度では消え去ってはくれなかった。
一人になって。
なにもかも忘れ去ってしまいたくて。
バイクのスピードをシンはあげていく。
「……ん?」
前方に、道路わきに寄せられたオープンカーが見えた。
三人の男女がその側に立ち、なにやら話している。
ボンネットが開いているところをみると、故障だろうか。
バックミラーにも、対向車線にも、自分以外に走っている車両は見えなかった。
放っても置けず、スピードを落とし車の横にバイクを停車させた彼は、三人組の男女に声をかける。
「故障ですか?どうしました?」
「あ、いえ。大したことは。ちょっとガス欠で───……」
「って、スティング!?ステラ、アウル!?」
「?」
だが。フルフェイスヘルメットのスモークバイザーをあげたところで、
素っ頓狂な声を発することになる。
「失礼、あなたは───……?」
「ああ、俺!!俺だよ!!シン!!」
「あ───!?アーモリーやインドの海岸で会った、あのときの!!」
「なんでここにいんの!?」
慌ててヘルメットを外すと、先方も顔を覚えていたのか、指を指して驚く。
ただ一人、ステラは首を傾げてきょとんとしていたけれど。
スティングたちに説明をされ、ぽん、と両手を打ち合わせたステラは、
突然顔を輝かせたと思うとシンの胸に飛び込んでくる。
身構えていなかったシンは押し倒される形になり、地面にしたたかに後頭部をぶつけた。
「あっつ、つ……!!」
「……シン……ひさし、ぶり……」
「ああ、うん、そうだね……」
「大丈夫か?」
頬を摺り寄せてくるステラを跳ね除けることもできず、
覗き込んでくる二人に向かい笑って返す。目尻にほんのり痛みの涙を浮かべて。
「と、とりあえず燃料切れなんだな?ひとっ走りバイク飛ばして、町までいってくるから」
****
「ご苦労さまです」
「レイ」
つなぎ姿に着替え、レジェンドのOS構築を続けていたキラの目の前に、
飲み物と軽食の載ったトレーが差し出された。
そういえば朝からなにも食べていなかったな、と顔をあげると、自分と同じくつなぎ姿のレイがいた。
「ありがとう。……どうしたの?その格好」
「ギル……失礼。議長にお聞きしたところ、ここにいると聞きましたので」
「ふぅん。きみはルナマリアたちと行かなかったんだ」
「……どうも、賑やかなのは苦手でして。恥ずかしながら」
この、無感動な性格なものですから。
レイにしては珍しく、困ったように頬を掻く。
その様子がぎこちなくて、キラは吹き出しそうになる。
「だから、こちらで手伝おうと」
「手伝う?けど」
「ドラグーンのことならば、ある程度は助言できますし。シンのクセもそれなりに知っています」
───ああ、そうか。
キラは言われ、納得した。
「きみも……使えるんだ、ドラグーン」
「ええ。ですから、多少なりとも参考にはなると思います」
「わかった。じゃあ、お願い。実際僕もこの手の兵器はメビウスのガンバレルくらいしか知らないんだ」
トレーを側に置き、空いた隣のスペースにレイを招く。
彼は長い金髪を邪魔にならぬよう束ねると、コンピュータの画面を覗き込んだ。
****
無事街までたどりついたシンたち四人は、喫茶店に入った。
それぞれに注文を終えると、互いのことについて説明をしだす。
「そうか、仕事って……前、海で迎えにきた四人と?」
「ん、まあ……そんなとこ。艦(ふね)に乗って、あちこち」
「奇遇じゃん、俺達もだぜ?」
「ネオやみんなも……いっしょ」
もちろん双方、相手が軍人である、敵であるとは知らず。
自分達が軍人であるということは、隠したままで。
不思議な対話に、思いもかけぬ再会ということも重なりシンの心は安らぐ。
安らぎが、不安で乱れていた心に勝っていた。
「しっかしまあ……ステラが忘れてなかったってのが驚きだよ、なあ」
「ああ、まったくだ」
「へ?」
事あるごとにシンの腕を引っ張ってくるステラを見ながら、
向かいの席の二人が呆れ顔を見せてきた。
「いや、忘れっぽいんだよ、そいつ」
「なんかやらかしたんじゃないだろうな、お前ステラに」
「い!?いや、別に心当たりは───……」
エクステンデッドは、その戦闘能力維持のために、「最適化」とよばれる特殊な睡眠を必要とする。
それはは、記憶に対するイメージの希薄化を促し、しがらみを薄くすることで戦闘時に残す心残りを断ち、恐怖を消す。
元々ぼうっとしたところのあるステラにはそれが、健忘を起こさせやすくする要因となっていて、
スティングたちはそのことを言ったのだが。
けれどシンが彼らの事情を知る由もなく、
彼はただアーモリーワンで自分がステラにした狼藉(?)のことを言われているのではないかと
気を回し、勝手に冷や汗を流していた。
いつのまにか引っ張られていた右腕は、しっかりと握られていた。
注文した料理が運ばれてくるまで、ステラはその手を離そうとしなかった。
****
「はー。しっかし、ほんとに使えるのかねェ、この『バイザーバグ』だっけか」
搬入される、ステルス戦闘機にも似たフォルムの機体を見下ろして、ネオが言った。
「例によって整備は専門の連中以外、見せてもらえないし」
一応指揮官なのよ?俺。
がっくりとネオが肩をおとしたところで、艦橋へとディグラーズが入ってくる。
「お、客人。どうだったよ?被験体のお二人は」
「……やつらのことは言うな」
ディグラーズはこの艦の戦闘員で唯一、二人の被験体──通称、「D」と「T」との
接触を許されていた。しかも彼らと対面したあとでは決まって、
彼は不機嫌になって戻ってくる。一体、何が気に入らないというのだろうか。
「あれでは……強さも弱さもない。人形だ」
「はぁ?」
「それより、バイザーバグ共は到着したのか」
「ああ。あとは夕方ステラたちが戻ってくればいつでも出航できる」
───人形、か。
答え、眼下の光景を示しながらネオは思う。
部下であり、わが子であるような三人の男女。
彼らも、自分が操る人形のようなものかもしれない。
情を移すと辛いと言われていながら、移しつつある自分を自覚する。
そしてそれは、罪悪感を彼に覚えさせる。
彼は、今三人の子供たちがエクステンデッドではなく、人間として
満ち足りた時間を、彼が意図した以上に送ることができているということを知らない。
三人の心からの朗らかな笑顔を生み出しているのが、敵である少年ということも。
何も知らず、次の戦いへの準備が整っていく。
新スレ立て、乙です。
もう一回くらい再会させとかんとね……ってことで、はい。
お
つ
まさかここまで続くとは思わなかった
>>16GJ!!
彼ら三人は死なせたくないものですね・・・
願わくば彼らが生き残らせたい・・・
乙!
>「あれでは……強さも弱さもない。人形だ」
この分だと、なんか後にマジバトルに飢えた先生が紫組をリリースしそうだなw
何、ロゴス如きのぬるぽ洗脳なんざ先生がマジな鉄拳を一発振るえば楽勝で解けるべ。
セラにぶっ叩いてもらうとかなwwwww
紫組は子供の扱い得意だし、連合新三馬鹿と仲良くなれそうな感じだなぁ。
甲板上でぼーと海を見るステラに影がかかる、なんだろうと見上げるとひょろりと背の高い男が自分を見下ろしていた。
その腕には真っ白な流線型の板が。きょとん、と首を傾げてそれを見つめたステラにその板を頭の上に持ち上げるとにやりと笑いながら答えるタフト。
タフト「乗るか乗るか乗るか?」
ステラ「…うん」
ネオ「…何してるんだ?あいつらは」
タフト「ギューンッ!ギュッギュッギュッギューーーン!!ウワァオヒャッホヒャホヒャホォォォォォォォウ!!」
ステラ「あははは、早いはやーい!!」
タフト「イヤォォォォォウ!ヒャッハッハッハハハハァァァァァーー!!」
甲板上をすべるように高速で移動しながら、踊るように駆け回るタフト。
肩車をしながらもステラを落とさないように、安全なバランスを保つのはベテランゆえの流石さだ。
ステラの楽しそうな声につられたのかアウル、スティングも甲板に上がってきた。
なかば呆れながらも二人を眺めるアウル、スティング。その二人の体が突然中に浮かぶ。
アウル「うわわっ!?」
スティング「お、オッサン!?」
ダーク「オッサンじゃない!おーいタフトぉ!俺も付き合うぜ!」
タフト「わう!」
ステラ「あはは、アウルもスティングもいっしょ!」
見たいな感じで。
いいわすれた
俺たちの月曜日!
第四十九話 パーソンズ・アイ
「オーブ派遣軍司令官、ユウナ・ロマ・セイランだ」
「同じく旗艦タケミカヅチ艦長、トダカ一佐であります」
タケミカヅチ艦橋に足を踏み入れたネオを、二人の指揮官が迎え入れた。
ユウナのほうは鷹揚に微笑を浮かべ、トダカのほうはネオの異形のマスクにうろたえるような
表情を見せながら。交互に握手を交わす。
「遠路はるばる、よくぞおいで下さいました」
ネオとて、連合の部隊を預かる指揮官である。だが相手は一国の代表、それに準ずる存在だ。
その辺はちゃんとわかっているから、最初から高圧的に出るようなことはしない。
「さっそくで悪いのですが……戦力のほどは?」
「ええ。トダカ一佐」
「艦隊といっても、わずか数隻の──これでも、我軍としてはぎりぎりだったのですが──ものですから、
けして十分とはいえませんが……。空母1、戦艦2。その他補助艦4。MSがM1、ムラサメ合わせ20機ほど」
「いえ、そんな。うちも似たようなものですよ。オーブの派兵に感謝いたします」
カーペンタリアの近いオーブとしては、これだけの艦隊を動かすのもびくびくものだっただろう。
素直に感謝の意を、ネオは述べる。
「それで、相手は例の『ミネルバ』、『アークエンジェル』とのことですが……?」
「はい。その件で早速ですが、作戦の打ち合わせなど───……」
トダカの問いに頷き、ユウナのほうを向くと、彼は黙って頭を振る。
そして、頭を掻いて苦笑交じりに彼に言った。
「生憎と、作戦その他軍のことは殆ど、トダカ一佐に任せておりましてね」
「ほう?」
「私は政治家です。こうやって乗り込んできたのもお飾り的なものにすぎません。
なにぶんそういうわけで素人ですから、なるべく口出ししないようにしているんですよ」
「なるほど。よい心がけです」
「いやいや、当然でしょう」
少なくとも、なにかにつけて口出ししてくるうちの上司とは大違いだ。
心底、ネオはそう思う。
思いつつ改めて、トダカに向き直る。
「ではトダカ一佐。お願いします」
「ええ。ではこちらに」
「……?」
海図の表示されたパネルのほうへと案内されながら、ネオは目撃した。
ほんの一瞬、ユウナとトダカがなんらかの意図をもったアイコンタクトをしているのを。
なにやら、こちらには言えない考えがあちらにもあるようだ。
用心しておいたほうがいいかもしれんな。
自国の守りのみにしがみついている臆病者たちだと思っていたが、
なかなかやっかいな、食えない相手なのかもしれない。
彼らを心中では侮っていた自分に、ネオはそう言って認識を改めさせるのだった。
****
───さて。
「ネオはオーブ軍との折衝で向こうの艦にお出かけ中、ザフト艦とぶつかるまでは余裕もある、と」
二人組の兵士たちが談笑しながら歩いていったのを見送ってから、
ブルーの変わった髪色の少年──アウルはひょっこりと曲がり角から顔を出した。
左右確認、接近する人影、なし。1ブロック先まで走ってから、二人の「連れ」に手招きする。
気分は某探検隊。だがクルピラもズォン・ドゥーも艦内だからいるわけもない。
「これってつまり、チャンスってやつ?」
「ま、そういうことだな」
「……」
続いて、緑がかった髪を持ち上げた少年。さらに金髪の少女。
スティング・オークレーにステラ・ルーシェ、いささか軍艦には似合わない三人組が
通路の角に隠れつつ周囲を窺う。
一応彼らも、れっきとした連合の軍人である。
『エクステンデッド』───、そう呼ばれる、身体能力を強化した兵士達。
そんな彼らがこそこそとなにやら悪巧み(?)をしている理由、それは───……。
「お、あれだ」
「やっりぃ、丁度だれもいねーじゃん」
隔離されたように人気のない、艦内の一角。
これより先への立ち入りを禁ずる、簡単な細いロープによる仕切り。
「こりゃ……会えそうだな?」
「うーっし!!一体どんなやつか見ものだな!!」
「……アウル……声、大きい……」
その先にいる、未だ知らぬ同僚のパイロット。
紫色のフリーダムとジャスティスの操縦者たちの顔を、
アウルは純粋な少年らしい好奇心から、スティングは強い者への興味・あこがれ。
あ、ステラは二人になんとなくついてきただけだが……それぞれの理由から、一目見るためであった。
──お仲間らしいし?ここの先輩として会って顔見る権利くらいあるんじゃねー?──
そうはじめに言ったのは、アウルである。
言いだしっぺということで、見つかってネオに怒られた場合には、
残りの二人に対する賠償(食堂のおごり)を含み、彼が全責任をかぶるということになっている。
「暗証番号は?」
「……4……1……2……6……」
二人のパイロットがいるであろう自動扉前の、テンキーの前に三人集まり最後の関門突破を試みる。
予めアウルが係官の指先を盗み見て書きなぐった数字を、ステラがぽつぽつと読み上げた。
「よし、これで」
「さあ……ご対面といきますか」
ロック解除を告げる電子音とともに、自動ドアが開いていく。
三人は足音を殺して、室内に足を踏み入れた。
****
「どうだ?ニルギース」
「ああ、悪くない。……どうやら、身体が覚えているようだ」
ディオキアを出航したアークエンジェルの、格納庫。
ここではアスラン立会いのもと、ジェナスとセラによってニルギースの
アムジャケットの試着が行われていた。
「不思議なものだ……随分、自然に身体に馴染むようだ」
白とモスグリーンを基調としたジャケットを、ルビーのように紅い
クリスタル状のアーマーが覆う。それは肩にマウントされた剣も含め、凶悪なデザインであった。
「バスタードソードまであったのは驚いたけどな……。動くのに問題なければ、それでいいだろ」
やはり修復・再構成されている───、セラと軽く目線を交わし、
同じ意見の彼女と無言で頷きあう。
「大丈夫なのか?やはり記憶がないというのなら……」
「いや、問題ない。この分ならおそらく、戦い方も身体が覚えていよう」
気を回すアスランだったが、ニルギースはやんわりと断った。
「戦っていて思い出すこともあるだろうし……無理はせん。だからやらせてくれ」
「しかしだな」
「アスラン、ミネルバから通信!!マリューさんがブリッジにあがってくれって!!」
「あ?」
「あー、わかった。今行く。……いいだろ、頼むから無理はしないでくれよ」
キャットウォークからのキラの声に、溜息、ひとつ。
キラの声に中間管理職の悲哀を後姿から滲ませながら、アスランが立ち去っていく。
これで『フェイス』、一応隊長として、なかなか忙しいのである。
「……ま、海上で飛行できる装備もないし、当分はモトバイザーでの支援たのむな」
「ああ」
そういえばニルギースが生身以外で銃を使って戦うところをみたことはなかったな。
彼が射撃主体のモトバイザーを使うというのが少し、変な感じがした。
同時に射撃が得意で、バイクを愛用していた相棒のことがふとジェナスの頭をよぎった。
彼もまた、この世界にきているのだろうか。
きているのならば一体、どこにいるのだろう。
こんな時間に投下。なにやってんだ、寝ろ俺。
本編の流れからちょっと寄り道って感じで。
乙!ただ、これだけは言わせてくれ・・・・。
>「暗証番号は?」
>「……4……1……2……6……」
伊東に行くならハットッヤッ♪ハットッヤッに決めた♪♪♪
乙!
ついにモトバイザーが…そしてラグナくるか!?
でも最近ラグナが、ずっとこのまま来ないで、某風の方向音痴みたく、いいとこで全部かっさらっていくのもありかと思い始めた。
しかしニルギースのジャケットってモトバイザー装着できるんだろか、だれかトイで試してみた人います?
>>31 別にニルギのジャケットもギアを外せば普通のネオジャケなのでバイザーは何でも装備できるでしょ。
トイだとヘルメットの後ろが飛び出してるので一部付けられないバイザーもあるけど。
モトは問題ないよ。
保守
保守
35 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 14:20:36 ID:cBaJ6o/R
無茶苦茶な変形シークエンス、アムエネルギーというご都合主義の塊、リアリティのないメカ、
ジョイの異常なまでの開発能力の高さ、気分によって変わる実力、恥ずかしすぎる台詞群・・・
書き出すと問題点が多いように感じるのに不思議とはまらずにはいられないのは何故なんだぜ?
スマソageちまったOTL
これがアムドライバーの魅力だよなあ。勢いがありすぎるw
>>35 キャラ描写がマトモだから。少なくとも行動理由には納得してた。
物語の展開そのものには特に破綻した所も無かったからじゃないの。
SCENEさんはどうされたんだろう
なんか暇がないとか言ってたから、まだ読んでる最中なんじゃマイカ
>>41-42 ヽヽ
彡/ノノ彡
彡;゚ヮ゚ノミ < ご心配ありがとうな・・・
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ゼアム /
なんだ、確かに暇がねぇ。今日も今日とて今から色々と忙しいんでな。
ただ、俺も企画自体はやめたくねぇからな。暇を見つけて読んでいく事にするぜ。
じゃあな!(シュバッ)
44 :
42:2006/10/20(金) 09:25:18 ID:???
SCENEさん、無理はしないでくださいねー
キャラネタのスレが落ちてると思ったら此処で糞コテ化してたのね・・・
第五十話 プライベート・エネミー
ルナマリアは、苛立っていた。
丁度すぐに発進できたのが自分だけで、一人で迎撃をやらされていることもあるけれど。
「ええいっ!!なんなのよ、こいつらあぁっ!!」
パイロットの毒づきと同時にオルトロスを、赤いザクが撃ち放つ。
だがビームの噴流は目標を外し。飛行する機体、ディンたちは散開して彼女の砲撃を避け、
ミネルバを目指す。
「新型に……エース級のパイロット!!一体、何者!?」
砲塔を構えなおしたザクが二射目を放つよりもはやく、
上空のMS部隊がミサイルの雨を放った。
****
「前方のボスゴロフ級三隻から、応答は!?」
「依然、ありません!!っ!?続けてMS、四機射出!!これは、バビです!!」
「そ、そんな!?最新型じゃないですか!!どうして!!」
「アーサー!!落ち着きなさい!!」
「海中よりアッシュ、三!!接近中です!!」
ミネルバのブリッジは、混乱の只中であった。
おそらくは僚艦のアークエンジェルも同様だろう。
「はっきりしてるのは、彼らが我々を明確に害そうとしているということよ。相応の対応をします」
ダーダネルス海峡まで、あとわずか。
いつ連合の艦隊と会敵するかというときに、彼らは襲撃を受けていた。
同じ軍の仲間であるはずの、二隻のボスゴロフ級潜水艦によって、側面からの奇襲を受けたのだ。
『シンにはソードで水中のアッシュを。俺とレイが空中で迎撃します』
「ええ、お願い。ルナマリアが一足先に出ているわ、急いで」
一体、何者だ。水中に飛び込むインパルス、飛び立つグフ。グゥルに飛び乗る白いザクを
見送りながら、タリアは襲撃者たちの正体に思いをめぐらす。
……だが。相手が誰であれ、こんなところで落とされてやるわけにはいかない。
こちらにはまだやらねばならぬ任務があるのだ。
「トリスタン!!イゾルデ!!照準!!タイミングは副長に任せる!!」
「はっ!!」
ここは、押し通る。
彼女の号令にクルーたちは、きびきびとした返事を返した。
****
「……お?警報?」
室内に設けられたベッドに座り雑談をしていたアウルは、
戦闘態勢への以降を告げる警報に、天井を見上げる。
「どうやら、敵さんが近いらしいな。お前らもそろそろ戻ったほうがいいぞ」
「みたいだな。あんがとな、オッサンたち。楽しかった」
「おいおい、オッサンはねえだろ。これでもまだ20代なんだぜ?俺達」
彼らに退出を促した男は、言ってから豪快に笑った。
男の名は、「ダーク」というそうだ。
本人としてもそれしか知らないらしく、聞いたアウルもスティングも首をひねったが。
なにかしらの事情があるのだろう、深く詮索するのはやめておいた。
あの紫色の二機のうち、『ジャスティス』を愛機としているとのこと。
「ほら、ステラも人が来る前に戻るぞ」
「うぇい?」
スティングが、四つん這いになった男の背中に乗ってはしゃいでいたステラに声をかける。
彼女の馬になった男は奇声をあげつつ、部屋中を四足で走り回り、
二人がダークと話している間中、ステラのことを喜ばせ続けてくれていた。
こちらのほうは、『フリーダム』のパイロット。
名前はダーク曰く、「タフト」。
その妙なテンションに、スティングたちは思わず後ずさってしまったが、
不思議なことにすんなりとステラは懐いていた。
「行くぞ。ネオに見つかったらおかんむりだ」
「うぇーい……」
「なに、また来いよ。こっちもヒマしてたんだ」
残念そうにタフトの背から降りて俯くステラを、ダークがそっと撫でる。
上目遣いの少女を見る男の目は、やさしい。
「まーた来い!!来い来い来い!!」
「な?」
「……うん、また、来るね……」
タフトの声と、片目をつぶってみせるダークに、ステラはやっと顔を綻ばせた。
既にドアを開いて待っている二人のほうへ駆けていくと、振り返りダークたちに手を振る。
ステラに手を振り返してくる二人の姿が、スライドするドアの向こうに消えた。
───さあ。戦争だ。少年少女たちは、兵士へと変わる。
****
ビームサーベルが、バビのガンランチャーを切り裂く。
深紅の機体、『セイバー』の性能は予想以上、パイロットの腕も自分の能力を遥かに超えている。
「……アスラン・ザラ……」
バビ隊の隊長、ヨップ・フォン・アラファスは自分で呟いたその名に、
じわりじわりと怒りが蓄積していくのを感じる。
通信機のスピーカーからは、あちらが再三喚いているのが聞こえるが、
そんなもの知ったことではない。
「この、裏切り者が……!!」
全ては、コーディネーターのために。
その衝動が彼を動かす。
****
「!?」
急に敵の動きがよくなり、アスランの顔に驚きが浮かぶ。
この新型は、性能を抑えていたとでもいうのか?
だが悲しいかな、そのスペックはセイバーに、技量はアスランのそれに到底届くものではなく。
『アスラン!!そいつでラストだ!!殺さずに捕獲しろ!!』
「了解っ!!」
一瞬目を閉じて、意識を集中させる。
視界と思考がクリアとなり、なにかが精神世界においてはじける。
アスランもまた、先程まで敵に見せてこなかった動きで、相手を追い詰めていく。
「でえいぃっ!!」
変形し逃げ回るバビを、同じく変形して追走。
雲間に入り変型を解き、敵の眼前に急降下しつつ右のサーベルを引き抜く。
───反応し、向けられたビームライフルが右手ごと、宙を舞った。
「お前達……おとなしくしろっ!!」
加えて、左肩からサーベルを抜き、左右ともに逆手に。
目にも留まらぬ速さの光刃が、バビの機体上を幾度も疾る。
その数、優に十六回。
頭部が、両腕・両足が。翼や武装が切り刻まれ、達磨と化した機体が落下をはじめる。
アスランは無言でセイバーを操作し、着水する前に背後からそれを捕獲する。
「……こちら、独立機動艦隊、特務隊『フェイス』所属のアスラン・ザラだ。
そちらの機体に抵抗する力はもう残っていないはずだ、所属と目的を名乗れ。何故友軍を襲う」
『ふん。アスラン・ザラ……貴様に名乗る名なぞ、持っておらんわっ!!』
「何?」
バビの機体には、捕獲しているアスラン以外にもレイのザクがバズーカをつきつけている。
この圧倒的にこちらが有利な状況で一体、何を言っている?
『偉大なる御父、パトリック・ザラ閣下の意思も忘れ、クラインの小娘の妄言通りナチュラル共と馴れ合う
デュランダルの犬めがっ!!貴様もデュランダルも、ラクス・クラインも!!生かしてはおかんっ!!』
「な……お前たちは、まさか?」
『アスラン!!機体を放してください!!そいつは……』
ザラ派。未だ父の怨念に踊らされ続ける哀しき者たち。
襲撃者たちの言葉から、その正体に思い至ったことで、アスランの思考が一旦停止する。
何かに気付いたらしいレイの警告も、耳に入らなかった。
父の呪縛……その言葉がまさに、今のアスランを締め付ける。
『我々が消えようと、志を同じくする仲間たちが……』
『ちっ!!我慢してくださいよ!!』
「え?……ぐううぅぅぅっ!?」
ザクのタックルに、セイバーが大きくのけぞりバビの残骸を取り落とす。
重力に引かれ落下していった胴体だけのMSは、海面に到達する少し前で、
内部から爆発を起こし四散していった。
「自爆?だと?」
その爆発に呼応するように、水中から数本の水柱があがる。
彼らの母艦も、残った機体も。彼に続いたのだ。
『……アスラン』
「キラ」
見下ろすと、海面からストライクノワールとソードインパルスが顔を出していた。
彼の様子に、アスランも襲撃者たちが全員死亡したことを悟る。
『くそっ!!なんで……なんで死ぬ必要があるんだよ!!意味、ないじゃんか!!』
『ジェナス、落ち着け。終わっちまったことを悔やんでも仕方ないだろ』
ハイネがジェナスを諭しているのが聞こえる。
だがそれ以上に、反芻する襲撃者たちの言葉が、耳の奥、脳に直接響く。
───貴様もデュランダルも、ラクス・クラインも生かしてはおかん。
───貴様もデュランダルも。ラクス・クラインも。
「!?」
ぼんやりと色を失っていた彼の目に光が戻り、我に返る。
シートに預けていた背中を勢いよく起こす。
『生かしてはおかない』『貴様を』『デュランダルを』『ラクスを』。
まさか。アスランは慌てて通信機を操作し、ブリッジのメイリンではなく、
艦隊の隊長たるタリアへと直接繋ぐ。
「グラディス艦長!!」
『アスラン?お疲れさま。一体──』
「ディオキア基地……いや!!今デュランダル議長のいらっしゃる基地に、急いで連絡を!!」
『!?』
「ザラ派です!!やつらが、議長とラクスを狙っています!!」
怪訝そうであったタリアの表情が一変し、厳しく固いものとなる。
アスランの口調も、語る内容も、それに足るだけのものであったからだ。
「デュランダル議長とラクスが……危ない!!」
アスランが珍しく中心にいます(酷
回天剣舞をする側にまわっていただきました。
GJです!ジェナスの出番がないのは久しぶり…かな?
>>45 キャラネタのスレはキャラハンの怠惰じゃなくてレスが付かなくて落ちたんだし…。
でもまあ、アムドライバーのネタが続かないのもそうだけど、スレを盛り上げるキャラハンがいなかったのが問題かね(タフトさんとかね)
SCENEさんは言い方悪いが淡々と質問に答えるだけだったし。耳が痛いかも知れませんが正直な感想です。
うーん、糞コテは言いすぎかなーと
凡コテってところか
まあキャラハンからネタコテに転向って事で
56 :
1:2006/10/20(金) 18:50:43 ID:???
放映終了後のアニメのスレの保持に関してはご本人の責任とは思えないですね・・・。
>SCENEさんは言い方悪いが淡々と質問に答えるだけだったし。
その昔、「インディヴィジョン」前後にちょうど名前欄「ウィルコット」な
カキコがあって、それに「まああんたはそんな悪くなかったんじゃない?やり方は
ちょっとアレだったが」と答えられてたのを見て、んで本放送がアレだったので、
「物分り良すぎるんじゃない?」とちょっと揚げ足取りじみた質問を書いた事が
あったのですが、その時凄く丁寧な長レスを頂いて感激した覚えがあります。
そして「ディシジョン」前後のあの粋な演出と・・・。
そういう方がこのスレでそれなりの役割を感じてくださってる、と言う事を私は
否定したく無いですね、はい。
色々思う所のある方も多いかと存じますが・・・・。
キャラネタ板も本放送時は賑わってたよね
保守
乙!
紫組も記憶喪失だったのね。
記憶を無くせど本性は変わらないみたいだけど。
>ザラ派
前作の2大勢力の一角だし、デス種でもプラント落としなんてものを敢行するだけの組織力があるのに
本編ではユニウス以降では全然強調されてなかったんだよね。
オーソドックスに行くなら、アスラン以外のパトリックの血縁者を頭に添えて悪役としてデビュー、
と言うやり方も大いにアリだと思うけど、なんで本編ではやんなかったんだろうね。
ヨップ・フォン・アラファスって誰かと思ったらあのヘタレ特殊部隊のアッシュのパイロットか。
あのヘンテコアナウンサーが声当ててた奴。
自爆する敵というのをこう使うとはな。
>>61 スタゲでは子供をMSに乗せて無差別テロ世界中でやってたよ。
なんでそれを本編でやらないのかと。
>>65 スタゲの西澤とか森田って嫁と連名で本編のホン書いてた人だよね?
どうせ本放送時にそう言うアイデア出しても「それよりもアスランとキラきゅん描く方が大事なのよッ!ムキーッ!!」
で嫁に却下されて終わりだったんだろうな。
第五十一話 デスティニー・プラン
成層圏を抜けようとする、一機のシャトルがあった。
窓から見える内部キャビンは豪勢そのもの。白亜に塗り上げられた機体色、
特徴的な識別マークとともに、それがプラント最高評議会議長の専用機だということが一目で見て取れる。
「いやはや。彼の能力にはまったくもって、驚かされますな」
対向座席に座するラクスに語るデュランダルの手には、ディオキア基地においてキラから
提出された報告書があった。デスティニーと、レジェンド。二機のOS教育の、
進行状況について。
「たった三日で基礎的な土台の部分から、ここまで仕上げてしまうとは。
あとは時間をかければこちらの技師たちでも十分に完成させることができるでしょう」
キラのプログラムを手放しで褒める彼に対し、一方のラクスの顔色は優れない。
地球に残ったミーアが隣にいれば、心配そうにおろおろしていることだろう。
デュランダルとて、彼女の気の乗らない返事に気付いていないわけではない。
だから、弁解するように言う。
「……私は彼を『スーパーコーディネイター』として賞賛しているわけではありませんよ。
純粋に、彼のもつOS構築の腕前を評価しているに過ぎません。その、働きからね」
「……ええ、わかっていますわ」
わかってはいる。が、やはり神経質にならざるを得ない。
いけないことだとは思っていても。
「ラクス。あなたは『デスティニー・プラン』という言葉を聞いたことはありますか?」
「『デスティニー・プラン』?」
「ひょっとすると、お父上からお聞きしているかもしれませんが……」
彼女の憂い顔を察したのか、デュランダルは話を変える。
聞いたことのない単語に、ラクスが首を傾げると、彼は言葉を繋いだ。
「コーディネーターとは、要するに人間の能力を最大限、引き出したもの。そのことは知っていますね?」
「……ええ。それを嫌うナチュラルの方々も多いですが」
だからこそ、コーディネーターは高い能力を持って生まれてくる。
自然に生まれてきたならば、持ち得ないほどにその力を引き出されて。
その不公平さに、ブルーコスモスやナチュラルは噛み付く。
「ですが、あくまで我々コーディネーターとて人間です。どうしても向き不向きがあるし、
その選択を誤れば当然、能力は完全に発揮することができず、満足いく結果は得られない」
「……」
「逆にナチュラルであっても自分が最高に能力を発揮できる事であれば、コーディネーターを越える能力の者も多い」
「なにがおっしゃりたいのですか?」
「つまり、こうです。コーディネーターとナチュラルの能力の差が対立の原因ならば、その差が埋まればよい。
自分が最大限能力を発揮できることを知ることができれば、それは達成される───……違いますか?」
「!?……それは───……?」
それは、そうかもしれないが。だが、どうやって。
「そのために自分の遺伝子から、己の才能を知る。そうすれば、全ての問題が解決される。
そうして提唱され、私が研究者時代携わっていたのが先程の『デスティニー・プラン』。
遺伝子解析による管理型社会の構築計画です」
「な……?」
「世の中のことを知らない、研究者たちの戯言と思ってくれてかまいませんがね。今となっては」
研究者たちにとっては、一見完璧なこのプラン。
だがそれは議会に提出されることなく終わり、終戦を迎え。
デュランダルは一介の研究者から議員を経て、プラント最高評議会議長となる。
「彼らも、私も。気付いていなかったのですよ。民衆とは自分達の気に入らない方向に、動こうとしないことに」
たとえ、遺伝子で適性のある能力が判明しようとも。
「意志、やる気なくしては十分な成果は得られない。そんな簡単なことに気付かなかった」
その行く末がけっして彼らの望むものでなかった場合、民衆がそれに従うとは限らない。
また、それを強制するような高圧的な政治が、行えようはずもない。
特に戦中、パトリック・ザラの暴走を招いたプラントにおいては専制に対するアレルギーは根強い。
「仮に導入できても、続きはしない。ジェナスから彼らの世界の話を聞き、改めて思い知りました。
強引な手段による世論誘導、管理世界。それらが永久に続くわけなど、ありえないということをね」
「議長」
「それにね。ジェナスたち、異世界から来たという者たち。彼らを見ていて、
もう少し信じてみる気になったのですよ。人間のもつ潜在能力、その可能性を」
彼らはナチュラルであるにも関わらず、コーディネーター以上の能力を持ち、
生身に近い装備でMSと渡り合っている。身体の構造そのものは何一つこの世界の人間と、
何ひとつ変わらないというのに。
それらはすべて、彼らが己を磨き続けたが故。
己の意思に従い、自らを高みに導く努力をしたから。
能力の高いコーディネーターと同等以上の力を得た。
異世界の人間である以上にそれは、彼らに先入観を与えない。
彼らは自分達が他の誰かよりも強くなれるということを、知っている。
「彼らに出来て、この世界の人々にできないはずはない。我々とて、自ら努力や精進していけるのだ、と」
いい年をして、青臭いと思われるかもしれませんが。
そういって、デュランダルは少し気恥ずかしそうに頭を掻いた。
ラクスは彼に首を振って、そんなことはないと告げる。
「無論、人々の選択の参考程度には、このプランを導入する可能性もまだ残っていますが。
キラが、自分の意思で立ったように、人々が自らを動かす助けとなるよう、補助的なものとして」
ナチュラル、コーディネーターかかわらず。全ての人間が自分を生かす権利がある。
キラも同様に。彼の能力が高いのは事実であっても、そのことは同じだ。
他人がどうこうすべき、言うべきものではない。だから、あまりそうぴりぴりしないよう。
デュランダルが言い終わると同時に、シャトルは地球の引力を完全に脱した。
無限の宇宙が、シャトルを包み込む。
───同じ頃、遥か遠く。彼らの目指す護衛部隊との合流地点において、
いくつかの光が瞬き、そして消えた。
****
「デュランダル議長とラクスが……危ない!!」
アスランが通信機に向かい、叫んだそのとき。
『危ない!!アスラン!!』
「……えっ?」
一発の長距離ミサイルが、彼の眼前に着弾し、水しぶきをあげる。
当てようとした弾ではない。そのことだけははっきりとわかったが、
突然のできごとに、彼は呆然と身体を硬直させる。
『前方に、大小の艦影多数!!連合……それに、オーブ軍艦隊です!!』
管制のメイリンの声がパイロット全員に伝わるのとほぼ同時に、
彼らもまた自らの目でそれを確認した。
後続弾はなく、かわりにゆっくりと迫ってくる艦隊の群れ。
その中でも一際大きく目立つ三隻、ガーティ・ルー、J・P・ジョーンズ、
そしてタケミカヅチ。
『……あー、アークエンジェル並びに、オーブ軍より離反した貴君ら反乱兵たちに告げる』
ミサイルを放った張本人であるタケミカヅチから全開にされた回線で
海域全体に流されるのは、若い男の声。それはシンやジェナスはもちろん、
キラたちアークエンジェルクルーには忘れるはずのない声だった。
『こちらは、オーブ派遣軍最高司令官、ユウナ・ロマ・セイラン。今からでも遅くない、
オーブへ帰順せよ。中立の理念を破る貴君らの行為は国家元首の夫として看過できない。
繰り返す、我々オーブ軍に帰順せよ』
自分達を国から送り出した、張本人の声。
その持ち主による、事実上のアークエンジェルに対する降伏勧告であった。
これから寝ます、おやすみなさい。
ユウナとかに関しては色々ありますので、はい。
ラクスと議長がスゲー心配だー!
うわぁ、先が気になる展開GJ!そしておやすみなさい
ラクスと議長、宇宙……、うわ、宇宙に今のとこ味方いないですよ!?
こうなったらパフユニットとイザーク、ディアッカの登場に期待するしか!
そういやジョイとかハローピープルな人達が来てないなあ
>>72 ラクスが心配されている事に凄い驚愕を受けた。
他所や原作じゃ考えられんなあ。
>>74 この辺も先の展開次第なのかもね。
彼らみたいな後方支援要員ってのは、後ろ盾が無くなった時に真価を発揮するから。
久し振りに上げ
>>71 おお、一波乱ありそうな展開ですな
次回も期待してますよ!
第五十二話 フェイス・トゥ・フェイス
『この要求が聞き入れられない場合、貴艦をザフトとみなし、撃滅する。
できることならば同胞を撃ちたくはない、即刻我々に帰順せよ』
───さあ、ボールは投げた。君たちはどのように返してくる……?
通話機を手に、ユウナは白亜の艦を睨む。
彼らがやれるのは、そこまでが限界だった。
国民を納得させるため、オーブ軍の派兵理由は
強奪され、中立の理念を逸脱した行動をとっている自国艦、アークエンジェルの
奪還・もしくは撃破のためとなっている。
それを利用し、ユウナは彼らにメッセージを投げた。
無駄な戦闘で、血を流すのをオーブは望んでいない、と。
果たしてそれが伝わるか、どうか。
トダカが、彼の副官であるアマギが同じようにアークエンジェルを見つめる中、
次なる行動を、とユウナは通話機の回線を変更し、デッキ上に待機するMSへと繋ぐ。
「さて、準備はどうだい?」
『……いつでも行けるよ。問題ない』
「一応、状況次第だが……いざというときはキミたちとジェナスの特殊回線がたよりだ。
あれは、こちらの技術ではそうそう介入はできないからね。その時は頼むよ」
『了解』
『『がんばりまーす』』
「ん、元気でよろしい」
カードは、準備している。
大丈夫だ、やれる。
ユウナは甲板デッキに並ぶムラサメ部隊へと目をやった。
彼はアークエンジェルが起こすであろうなんらかのアクションを、待ち続ける。
****
ユウナの声が海峡に響き渡る中。
ジェナスは二機の紫の機体が連合の空母から飛び立つのを確認し、歯噛みする。
「く……またあの二機だ。あれに乗ってるのは、ダークさんたちなのか?やっぱり」
だとしたら、どうする。
皆にそれを言ったところで、やりにくくするだけだ。かといって、放ってもおけない。
エッジバイザーを二機へと向けようとした彼の進路を、バルドフェルドのムラサメが塞いだ。
「バルドフェルドさん?」
『待て。まだ、戦闘がはじまったわけじゃない』
「けど、オーブ軍が。やつら増援部隊を」
『大丈夫だ。オーブ軍は俺達に任せろ。……そのために、キラがいる』
「え?」
****
『オーブ軍は、我々に任せていただけないでしょうか』
「……本気ですか?オーブ軍が都合よくそちらだけに向かうとは……」
『来ます。間違いなく』
「?……随分と、確信がおありですのね?」
二人の艦長が、モニター越しに話し合っていた。
ユウナからの勧告を受け、マリューからタリアへと通信が繋がれたのだ。
たしかに彼女の言うとおり、オーブ軍をアークエンジェルだけで引き受けてもらえるのならば、
ミネルバとしても連合の相手のみに集中することができるが。
「本当に、よろしいのですね?」
『はい。バルドフェルド隊長とアムドライバー達も、そちらに回します』
「?……ストライクとセイバーの二機で?」
大した自信だ。だが言うからには、それなりの根拠があるのだろう。
だが、あの大軍を相手に、二機のMS。それに飛べない直衛のニルギースだけで?
「……それはつまり、投降はない、ということですわね?」
『はい』
「わかりました。互いの健闘を」
『ええ。では』
****
「オーブ軍……ユウナ・ロマ・セイラン!!あの人たちと戦わなきゃいけないのかよ!?」
シンは激昂し、叫びをあげた。
彼らのために出て行った自分を、アークエンジェルを。
今度は彼らが撃とうとしている。
そして自分が撃たねばならないその事実に。
「なんで、こんな……」
『シン、あいつらも連合なんだ。ここは堪えろ』
「わかってます!!けどっ……」
『……換装しろ。ブラスト装備で、艦の直衛に回れ』
「えっ!?」
ハイネから飛んだ指示に、目を丸くする。
何を言っているのだ?相手に多数の飛行可能なMSがいる以上、フォースで迎撃にまわるのが
セオリーのはず。グフ一機とグゥルによって動きの制限されるザクでは、対応しきれないだろうに。
『いいから、早くしろ!!俺を部下に同胞を撃たせる男にする気か、お前は!!』
「っ……!!」
それがハイネなりの気遣いであったことに気付き、シンは口を噤む。
感謝すると同時に、やるせない思いが心に広がっていく。
『……大丈夫。シン、きみにオーブ軍は撃たせない』
「キラ?」
『ミネルバ所属MSの各パイロットに通達。戦闘は、連合の二隻とのものに集中せよ。
オーブ軍はアークエンジェルで対応する!!ミネルバは連合の部隊を撃つ!!』
そんな彼の心を安心させるようにキラが言い、シンが疑問に思った瞬間、
タリアからの通達が各パイロットに届く。
あれだけの数を、アークエンジェルだけで。
しかも送られてきた指示では、ジェナスやバルドフェルドもミネルバ指揮下にある。
たった二機、キラとアスランだけだなんて。
サブモニターに映ったキラの姿に、シンは怒鳴った。
「死ぬ気ですかっ!?」
『……』
「キラ!?」
『……まだ僕は死ぬわけにはいかないよ』
「っ……!!」
『僕はまだ、償いきれていない』
シンは、気付いていない。
自分が殺したいほど恨んでいた相手のことを、心配しているということに。
仲間、戦友として彼のことを認めはじめているということに。
『乗り切って、みせる!!死にはしない!!』
「キラ!!」
ソードインパルス同様に海面から上半身だけを出していたストライクノワールが、
二枚の翼を広げ舞い上がる。アークエンジェル前方へと向かい、そこで滞空する。
回線が、全開に開かれる。
ユウナがやったように、今度はキラが語る番であった。
『こちら、アークエンジェル所属。オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハの弟、キラ・ヤマト』
「……なっ!?」
『その要求は、受け入れられない。何故なら───』
青年のよく通る声が、海域の全パイロット、全将兵たちの耳に届く。
全ての者が、彼の声に聞き入り、その動きを止めていた。
****
小惑星やジャンクの破片が漂うデブリの海を、二機のMSが疾走する。
「急げ、ディアッカ!!」
『わーってるよ!!お前こそ急ぎすぎでぶつかんなよっ!!』
イザーク・ジュールは急いでいた。
地球からあがってくる最高評議会議長・デュランダルとラクス・クラインの乗ったシャトルの
護衛に配備した部隊が消息を絶って、半刻ほども経とうとしている。
部隊になにかがあったとすれば、何も知らない議長一行が無防備にそこに向かうのは危険すぎる。
だが動ける部隊は間の悪いことにほとんどなく。
もっとも近い位置にいた彼の部隊が回されたものの、デブリを挟み反対側に位置する
会合点には普通に行ったのでは時間がかかりすぎる。
故に、たった二機での強行軍。
小回りの利くMSでデブリベルトを最高速でつっきるという、荒業を彼らは敢行していた。
図体の大きい戦艦や生半可なパイロットではデブリに激突し、自滅するのが落ちである。
「もっと飛ばすぞ!!」
『了解っ!!』
水色とグリーン、それぞれのザクの背に装備された高機動用のブレイズウィザードが、
推進剤の爆発的な勢いを放ち、二人の機体は更に加速していった。
****
「……な」
これほどに心の底から驚いたことが、あっただろうか。
『プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル氏のシャトルとお見受けする』
護衛部隊との会合点において突如として現れた、ザラ派と思しき襲撃部隊。
既に屍ばかりと化していた護衛部隊の残骸から見てわかるように、
彼らの戦力はけっして、小さなものではなかったというのに。
今となって窓から見えるのは、残骸。
ジャンクとなり自分達が屠り去った護衛部隊と同じ道を歩んだ、彼らの成れの果て。
『乗船許可をいただきたい。こちらに害意はない』
───『アムジャケット』の性能が、これほどとは。
ユニウスでの戦闘のモニタリングは見ていたが。今目の前で行われたのは
戦闘ではなく、むしろ虐殺。
(ジェナス達も、これほどの力を秘めているというのか……?いや、しかしこれは異常すぎる)
デュランダルたちの危機が、去ったのは間違いない。
たった一人の男。窓の外の宇宙空間に浮かぶ、奇妙なノーマルスーツを身に着けた男の介入によって。
そう、虐殺はただ一人の、MSにも乗っていない男の手によって行われたのである。
『私は、ガン・ザルディ。ギルバート・デュランダル氏との会見を望む』
助けてもらった相手だというのに、禍々しいイメージをデュランダルは彼の
ノーマルスーツ……いや、『アムジャケット』から抱いた。
ブルーとパープル、銀で構成された有機的なフォルムのボディースーツ。
彼の名乗った名は、かつてジェナスから聞いた覚えのある名前であった。
その彼が今、デュランダルとラクスの前に、姿を現した。
次回は蒼天の剣を多少流用できるからやや楽……かな?
ジョイたちに関しては登場させる予定はいまのところないです。
最終決戦で彼らは皆を信じて待っているわけですから、
ちゃんとそれを貫いてほしいかな、と思うわけで。
ガ、ガンちゃん来たーーっ!
すっかり忘れてたよ、GJ!
そしてパフユニットも来てるかな?次回が楽しみです。
ラグナの活躍はいつだろう……(´・ω・`)
俺達の月曜日!
>>86 ヒーローってのはヨ、遅れてやって来て、カッコよく現れるもんだZE!
保守
保守
保守!
☆
第五十三話 蒼天の下の兵士たち
「……これは、オーブ軍の問題です。どうかあの艦は我々だけでやらせていただきたい」
『セイラン司令?ですが?』
「あいにくと妻の名を、その弟の名を騙られて冷静でいられるほど、人間ができていない。
勝手ではあるが、あの艦との戦闘に、連合は手を出さないでもらいたい……っ!!」
『な……セイラン司令!?ちょ……!?』
返事も聞かず、ユウナはアームレスト上の通話機を叩きつける。
さも、怒気を孕んでいる様子で。
顔面を押さえ、怒りを押し殺しているようにその仕草からは見て取れる。
「……ふん」
だが、その実、内心は。
───『代表首長の弟として命じます。オーブの理念にそぐわぬこの同盟を、破棄してください』───
掌で精一杯顔を隠し、全開になった回線から聞こえてきたキラの声を
脳内に呼び戻しながら。目を伏せほっと、安堵の息をついていた。
こちらの意図をどうやら、あちらとしても掴んでくれたらしい、そのことに一安心して。
「アークエンジェル、MS2、こちらに向かってきます!!」
「……トダカ」
「はっ。取り舵10。目標、アークエンジェル」
「全軍に通達。無理はせず、被弾した場合即座に帰投せよ」
「はっ」
あとは身内同士で盛大に、八百長試合をやっておけばよい。
もちろん兵士たち皆がそのことを知っているわけではないが、
念には念を入れてこちらのエース級は旗艦の直衛にまわしてある。
彼らの腕前ならナチュラルの一般兵の乗ったムラサメを
撃破せずに無力化することなど、造作もあるまい。
いくら必死であろうと、その戦闘力の差は大きい。
「一人も、死なせるなよ」
「了解しました」
既に船窓の先では、ミネルバと連合が戦闘をはじめている。
そちらがどうなろうと、知ったことではない。
****
「でーっ!!この白い坊主くんといい、黄色のムラサメといい!!なんでこいつらはこうもやっかいかね!!」
グゥル装備だってのに、まったくよくやる。
ネオは白いザクの機動に舌を巻く。
アウルに待機を命じ、各機に発進を促したあとで、ネオも出撃したのだが。
飛べる代わりに足かせに等しいグゥルに乗っていながら、白いザクはジェットストライカー装備のウインダムと
互角の戦いを見せてくる。
そういえば、宇宙でもこうだった。互いに引かれあい、互いに有効打がない。
「みょーな感じはあるし……ほんとに何者なんだ、白坊主っ!?」
互いの投げた手榴弾──スティレットとハンドグレネードがぶつかりあい、閃光を放った。
****
当たれば、それだけで終わる。
フリーダムの火力は、それだけのものがある。
『ハイネっ!!やっぱり俺もフォースで前衛に……っ!!』
「うーるさい!!命令つったろ、お前はミネルバ守ってろ!!」
そして混沌としつつある戦場では、ジャスティスのトリッキーな動きは脅威だ。
シンからの通信に怒鳴り返しながら、ハイネは乾きそうになっていた唇を、舌なめずりして潤わせる。
「くっそ!!さすがにこいつはきついか!?」
ハイネはたった一機で、フリーダムとジャスティスの二機を相手にしていた。
シンを前に出すわけにはいかない。それはシンに故郷の軍を撃たせたくないというだけではなく、
彼らには母艦を守ってもらう必要があるから。
視界の隅では、バルドフェルドのムラサメがカオスと高速戦を繰り広げている。
レイは、紫の隊長機と。グゥル装備でよくやる。
一見、総力戦だ。
だが、まだだ。アビスがいない。また、ガイアもいざというときは多数ある艦艇を足場につっこんでくる
ことだろう。
今はアムドライバーたちも迎撃にまわっているが、あのディグラーズとかいうやつが出てくれば、
彼らをそちらにまわすより他にない。MSで相手をするには、的が小さすぎる。
そうなれば、ルナマリア一人で母艦の直衛というのは辛い。
「っと!!まだまだぁっ!!」
思考が、フリーダムのレールガンの咆哮により中断される。
なにも考えず、ただ回避に専念。かわした後、牽制のビームガンを放つ。
(やつらは切ってないカードが多すぎる……!!デュートリオンビームは……インパルスの隠し玉は温存だっ……!!)
アビスが、ガイアが動いたとき、相手ができるのはインパルスしかいない。
長期戦に持ち込まれても、インパルスならばやれる。
だからこそ、パイロットのシンを無駄に消耗させられない。
インパルスのミサイルが、ミネルバへと取り付こうとしたウインダムへと命中する。
更にはせまる砲弾の雨に向けケルベロスを放ち、薙ぎ払う。
(そうだ、それでいい!!)
ジャスティスが放ったリフターに、肩がぴくりと反応する。
だめだ。どの方向に行っても、フリーダムが待ち構えている。
「なら……避けなきゃいいんだよっ!!」
聞く者のない叫びとともに、スレイヤーウィップ一閃。
大空を駆け抜けるリフターの片翼を絡めとり、フリーダム向けてぶん投げる。
「どうだっ!!」
自滅しろ。拳を握ったハイネを嘲笑うかのように、フリーダムはあっさりと対応し、
向かってきたリフターを蹴り飛ばす。ジャスティスもその動きを予測していたように
移動し、落ち行く機体を回収した。
「ちっ……やっぱ一筋縄じゃいかねえか!!」
しかし、ここは押さえる。やれる。
一人でやらねばならないのだ。
「『フェイス』を……なめるなあぁっ!!」
左手のシールドからビームソードを引き抜いて、ハイネは二機へと躍りかかっていった。
****
───そして、ハイネの予測どおりに動き出す者がいた。
『バイザーバグ部隊、全機発進準備完了しました』
「……そうか」
整備員たちからの報告に彼は甲板上に並んだ機体を見渡し、うちの一機へと足をかける。
ステルス戦闘機にも似たそれは、彼が載ってなお、足場とするに十分な広さがあった。
「……ガングリッド・ディグラーズ。バイザーバグ隊、出るぞ」
彼の声にあわせ、10機のステルス戦闘機型の機体が飛び立った。
「……ぬ?」
そのレスポンスのよさに、ディグラーズはわずかな違和感を感じる。
かつて配下に使用していた「あちらの世界」のバイザーバグよりも、反応がよい。
性能や技術ではこちらの世界よりも優れていたはずなのに、である。
「まあ、いい」
別系統の技術で再現したが故の誤差だろう。
それに利用するにあたって性能が高いに越したことはない。
「さあ……決着をつけるぞ、ジェナス・ディラ」
彼の意識から、わずかに感じた違和感は消え。
見えてきた蒼き機体を駆る宿敵のことだけが彼の頭を支配した。
どうも。
実は、パソコンを修理に出すことになりまして。
CDドライブ(ノートなんです)がいかれちゃいまして。
戻ってくるまで投下ができなくなりそうなのでどうか、ご了承下さい。
本当に申し訳ありません。
GJ!しばらく投下は無理なんですね・・・
SCENEさんも忙しいらしいし、しばらく普通にアムドラと種の比較スレになるっぽいかな
乙!
またしても地獄のヒキキターーーーーーー!!!!
とんだ災難かと存じます。気長にお待ちしております。
ひとつ疑問なんだが、
>『代表首長の弟として命じます。オーブの理念にそぐわぬこの同盟を、破棄してください』
芝居なのは分かるが、キラにそもそもこんな事言う権限あるのか?
なんか、本編のキラ様中将が頭をよぎって、ちょっと引っかかってしまった
>>99 事前に、カガリとの何らかのやりとりがあったんじゃないかな、とオモ
>>96 いやいやこちらこそ、楽しみに待ってますよ!
ほっしゅ
上げないと・・・
>>103 凄い量のアムエネルギーが放出されているな
>>103 随分懐かしいネタだなw
そういやダークさんの中の人もパワーレンジャー版
ギンガマンのレッドだかブルーだか当ててなかったっけ?
>そういえばニルギースが生身以外で銃を使って戦うところをみたことはなかったな。
>彼が射撃主体のモトバイザーを使うというのが少し、変な感じがした。
ソード系、接近戦主体のスタイルだったのが同タイプの主人公の為に射撃による
後方支援に転身、もろに「彼」だよなぁ・・・・・。
そのうちニルギはランドバイザーも使ったりするんだろーか・・・・。
ニルギがランドに乗ったら「彼」の立場が無くなってしまうなあ
ランドバイザーじゃなくてバスターガンダム使うんだろう、こういうときは
110 :
107:2006/10/28(土) 11:13:34 ID:???
そう言えばお誂え向きに「ヴェルデバスター」なんてものが最近はあるようですなぁ
アドボ使わせて遠近万能ってのも絵になるよね
モトって事はネオモトじゃないんだよな?
ネオモトの白い部分黒に塗り替えたらニルギ仕様になったり
>>106 ダークさん(つか小川さん)、パワレン版(ロストギャラクシー)ではレッドの吹き替えやってました。
そう言えば共演編ではラグとの共演はなかったんだな。ゼインは出なかったみたいだし。
>>99>>100 某スレ雑談所でちょうどその辺の議論してますね。あとウィキペディアのオーブの説明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%83%8F%E3% 82%B7%E3%83%A9_%28%E6%A9%9F%E5%8B%95%E6%88%A6%E5%A3%AB%E3%82%AC%E3%83%
B3%E3%83%80%E3%83%A0SEED%29#ASTRAY.E3.82.B7.E3.83.AA.E3.83.BC.E3.82.BA.E3.81.
AE.E3.82.AA.E3.83.BC.E3.83.96
で、見てみるとそもそものカガリがアスハの養子、でキラがそのまた兄弟(ついでに子宮違い)
でしか無い、しかもそれ知ってるのはウズミとキラ養父母、んでカガリ(マルキオはよく知らん。
あとアム種みたいなユウナならカガリ自身がぶっちゃけてそうだし「弟くん」と呼んでる。でも
シンがフリーダムのパイロットがキラと知らなかった辺りヤキン時のメンバーの情報が世間
に表沙汰になってる訳でも無い)しかいないんで、最低限でもカガリが何らかのメリットがあ
ってキラをアスハ氏族に迎え入れる、ないしはその旨を公表しない事には、
───『代表首長の弟として命じます。オーブの理念にそぐわぬこの同盟を、破棄してください』───
キラがこの言葉に政治的権威を付与する余地はまぁ無いでしょうな。
115 :
114:2006/10/28(土) 19:15:42 ID:???
もっとも、もっと単純にユウナの
「あいにくと妻の名を、その弟の名を騙られて冷静でいられるほど、人間ができていない。」
と言う発言が単に「ハァ!?俺様のマイハニーに弟ぉ?んな話旦那様の俺も聞いてねぇぞ!!
たかが反乱分子の一兵卒風情がなに戯けた事抜かしとんじゃいエーゴルァ!!!」
と言うニュアンスだったりするかも知れんが。
>>115 詳しい事は作者さんが語ってくれるんじゃないかな?
それまでワクテカしながら待ってるよ
117 :
114:2006/10/29(日) 07:18:14 ID:???
同意。
実の所このスレの中で、この辺の考察一番強いのは当の作者さんだと俺も思うし。
モトバで思い出したけど、そう言えばバイザーって使ってるアムドライバーの
パーソナルカラーになるタイプとそうでないのがあるけどあの差ってなんなんだろう?
ネオ仕様だから?とも思ったけどジャイロみたいなのもあるし。
保守
他にも神職人が降臨しないかな…
今度は逆に、種キャラがアムドラ世界に渡って、アムドライバー装着して戦ったりとか
つまり種アムか。
……種キャラでアム世界いいって一番強そうなのがロウ=ギュールに思えてくる俺の頭をどうにかしてくれ。
行ける人員も限られそうだ罠。
エクステンデッドやブーステッドマンだとあっと言う間に行き倒れ・・・。
サーペントテールの皆様はどうだろうか?
アム世界行き→素で強いキャラっつうイメージがあるな。
種でそういう方々って思い浮かばないんだけど。
GガンやWの方々だと、どこ行っても生き延びられそうな気もする。
種本編の主要人物がアム世界に行ったとして、馴染んでる光景が想像出来ないんだよね・・・・orz
アスラン辺りは案外イケるかも知れないけど。
ソドダンと銃歌で並んでる遺作とシホを思い浮かべておっきしたお
保守
保守
ほっしゅ
保守
種→アム、MSパイロットの場合は活かせる技術は狙撃系技術くらいの気も。
後は大型機の操舵技術くらいか。
「たとえば動力エネルギー 全てのべぇべぇべぇべぇあるとあらゆるエネルギーを
べぇべぇべぇべぇ制してこそべぇべぇべぇべぇMSパイロットだべぇ」
「そしてレバー操作 これはバグシーンの首をカッ切る時に応用できる!!
おまえはこの基本も出来ないだろう」
「きわめつけはMS操縦 これは様々なバイザーをジャックするときの運転技術を学べる」
こうですか!わかりません!
131 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/06(月) 04:36:52 ID:MC66uLiJ
俺たちの月曜日!
新シャアにアムのスレがあったのかと思って開いて一番最初に目に入ったのが魔界の帝王とはどうゆうことなんだぜ?
保守!
保守
お待たせしました、無事パソコンが戻ってまいりましたので、
続きを投下させていただきたいと思います。
今回は、54話(27話Bパート)になります。
アム種 第五十四話 フェイタル・ブロウ
「───なめてくれるねェ、俺達『ファントムペイン』を」
ヘルメット状のマスクから覗く口元には、皮肉の笑みが浮かぶ。
だが実、その内心はそんな薄い表層的なものではなく、
ふつふつとした屈辱の怒りが渦を巻いているのが自覚される。
「とんだ茶番をやってくれるもんだ、ったく」
───また一機、ムラサメが四肢を飛ばされて着水した。これで、何機目だ。
まったく、ふざけた真似をしてくれるものだ。
自分達の目はそれほど、節穴ではない。
その程度に思われていたのだとしたら、屈辱であり、冒涜だ。
罪にさえ、等しい。
「また焼かれたいのかね?奴らは」
なんにせよ、このツケは払わせてやらねばなるまい。
あいにくとこちらも白の坊主と黄色の奴のせいで、見逃してやれるほど寛大な気分ではない。
『ファントムペイン』の眼力を侮った、下らない見世物に付き合わされた報いは、
ちゃんと値段分払わせてやらねば。
「悪い子たちには……おしおきだ」
白いザクの追撃を振り切り、艦隊近くまで後退。
通信機を操作し。
彼は、海中に待機させておいた蒼き機体を呼び出した。
「いいか。自分達の立場を、よーくわからせてやれ。いいな?」
懲りないやつらに、自分達が轡を並べている相手のことを。
存分に理解させてやれ。
****
こんなものまで、用意していたのか。
この男はどこまで戦いを私物化し、自分を中心に据えているのだ。
「バイザーバグ……こんなものまで作らせたのか、ディグラーズッ!!」
ジェナスもまた、怒っていた。
内には秘めず、思う様吐き出し、叩きつけながら。
「ふん……条件はなるべく、あっちと同じほうがいいからなぁっ!!」
「てめえぇっ!!ふざ、けるなああぁっ!!」
振り下ろした大剣が空を斬り、海面を叩く。
すかさずそこを狙い集中的に降り注ぐステルス機型メカの火線を避け、
ジェナスは背面のブースターを咆哮させディグラーズを追う。
「っ!?……こいつら?動きが……違う!?」
───わずかに、早い。
あちらの、元の世界で相手取っていた機体群よりも、ほんのわずかに。
ごくごく微細なその違いが、身体で覚えていた彼のリズムを狂わせ、
戦闘をやりにくいものとする。
苛立ちは、比例して募っていく。
「邪魔……ッ!!……すんなっ!!」
ネオエッジのパーツをパージ、その排出される慣性の勢いでビームを避けつつ、
ビークルモードへと可変した機体に跨る。
腰のアブソリュートソードを一閃、すれ違いざまの一機を一刀両断に切り捨てた。
「!?」
だが、戦闘能力と同じく、その撃破の感触もかつてのそれとは異なっており。
(……液体!?)
ぬるりとぬめるような手ごたえのもと、真っ二つに分かたれた暗色の機体は、爆ぜることなく。
僅かに濁り色づいた液体を撒き散らしながら海上へと落下していく。
今までに奴らとの戦闘では感じたことのない、生々しい感触だった。
(構造そのものが違うのかっ!?)
あいにくと、足を止め、振り向いて回収している暇はなかった。
続くようにディグラーズの載った一機と、その周囲に配置された数機の同型から
射撃の雨が降り注ぐ。
「くそっ!!やっちゃる!!」
振り向くどころか、もう彼は見てさえもいなかった。
海中に沈みゆくバイザーバグの残骸のことなど。
倒した機械になど、かまっていられないとばかりに。
しかし彼が捨て置いたそれはまるで、力尽きた人間が助けを求めるように。
意志持たぬはずのその身の最期を厭うかのように、
天高く右腕を伸ばし、掴むものもないまま水中へと静かに沈んでいった。
****
『被弾したムラサメ、帰還します』
八百長試合は、怖いくらいに順調だった。
『部隊損耗率、20パーセントを超えます』
けれど。
オペレーターや甲板員たちの報告を聞きながら。
それでもトダカはやはり一抹の不安を拭うことができない。
(確かにこれならば、被害は最小限で済むだろうが……)
言い訳もつく、遠征の疲労という理由もある。
確定した不安要素は今のところ、ない。
変な言い方ではあるが、船窓から見える赤と黒の二機のMSは、
順調に自軍のムラサメやM1の数を減らしてきている。
(果たして、通用するのか?)
この、茶番が。
あくまで文民、政治家であるユウナの考えた策が、戦場において。
平時の理の通用せぬ、非情の場であるこの海で。
万一この裏切りに等しい行為、舞台裏が連合に気付かれれば、
国も自分達もただでは済まないであろうことが、想像に難くない。
その疑念が、芝居を演じているという己の背徳感からきているだけのものであるということを、
トダカは切に願う。
と同時に、何かあったその時は。
自分が国を、部下達を。そしてユウナを。守り通さねばならないとも思う。
誇りあるオーブ軍人として、この艦隊を預かる者として。
一命を賭してでも。
「!!か、艦長!!」
「!?……どうした?」
彼の決意は、確かなものであった。
だが指揮官として戦況に目も向けず自己に埋没するなど、あってはならぬ行為。
そのことも自覚していた彼は索敵の慌てた声に答え、そちらへと意識を戻す。
「九時方向より、魚雷接近!!」
「!?」
九時?その方向には上空どころか水中にも敵機の反応はなかったはず───……。
彼の動揺は、状況を正確に把握していた指揮官であるが故、一層深かった。
それをまるで体現するかのように、タケミカヅチ艦体側面に立ち上った水柱が吼え、
大きく艦体を揺さぶった。
「な、何事だよっ!?」
「ちょ、直撃です!!第八、第七ブロック浸水!!火災発生!!」
「ダメージコントロール、急げ!!消化、はやく!!」
そしてそこは、もっとも弱く脆い、船腹の部分であった。
一番、狙われてはまずい、艦の急所。
そこが黒煙を吹き上げ、直撃を受けている。
動揺し、狼狽するユウナ。
彼をシートに押さえつけながら、各員に指示をトダカは飛ばしていく。
副官のアマギの復唱がひびき、タケミカヅチ艦橋は大いに混乱の様相を呈していた。
直撃の被弾に揺れるオーブ軍旗艦の姿を、
海中からオレンジ色の一対の目が、見つめていた。
一応間が空いてしまったので溜まった分の疑問点等に回答をば。
>>99>>100>>114各氏に。
この場合、キラがオーブにおいてどういう立場にあるか、というのは
実をいうとさほど重要ではなかったりします。一応小説版を参考にするならば、
軍や政府関係者には公然の秘密となっているようではありますが。
首長の縁者を騙る(事実であっても)者がいて、それが兵を引け、と言われれば
オーブ軍は当然混乱するでしょうし、カガリの人気が高いあの国ともあれば
そちらに向かっていくのもより自然となります。
まあ、本人たちはカガリに了解とってるでしょうが。
以前皇族を騙って金集めをしたケースがニュースでありましたが、それに
あてはめて考えていただけたら幸いです。信じて騙される人、怒る人、眉を顰める人。
色々いればいるほど混乱は大きくなりますから。その分キラたちもやりやすくなります。
>>112氏に。
一応、ネオバイザー化されたやつ(ジョイが説明してたやつ)です。
ただ本編でもネオバイザーはエッジが呼称を省略されてたりしたので、
ここでもそれに従ったわけでして。
>>136-140 乙華麗にGet Ride!
おかえりなさい。
オーブ、微妙にぴんち?
バグバイザーの中身、怪しすぎて次回に期待。
やったぁ!帰ってキテター!
やっぱり面白いわぁ。
>>141 >だが、戦闘能力と同じく、その撃破の感触もかつてのそれとは異なっており。
>(……液体!?)
>しかし彼が捨て置いたそれはまるで、力尽きた人間が助けを求めるように。
・・・・まさかね・・・
・・・・・・ほら、一応グロはロゴスのお約束だし・・・。
>自分が国を、部下達を。そしてユウナを。守り通さねばならないとも思う。
>誇りあるオーブ軍人として、この艦隊を預かる者として。
>一命を賭してでも。
ああ、トダカたんに死兆星が・・・・。
主役級でも無い香具師が命を賭けるだの何だの言い出してスポットが当ると・・・・。
ユウナに人差し指を立ててムラサメでアビスに特攻、自爆する訳だなw
そう言えば相克のクライマックスで、JA製アムマテリアルミサイルの追尾装置に
生身の連邦アムドライバーを使用するなんていうエグい話があったな。
まとめサイトきぼんぬ
148 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/09(木) 21:37:07 ID:3xWzxUp1
それは酷い・・・でもアニでもやりそうだな・・・そういうところはしっかりしてる(?)作品だし
続き期待保守
>>143 その寸前にパフユニットが登場して美味しいとこ持ってきそうな予感。
アム種 第五十五話 想いと方法と
警報と混乱に騒然となる、タケミカヅチ艦橋。
『こちら、J・P・ジョーンズ所属、アビス。貴艦の側面にザフト水中MS残敵を
発見、撃破したが流れ弾が当たってしまった。申し訳ない』
「な……なん、だって?」
『気をつけなよぉ、おっさんたち?別の艦にも「また流れ弾が当たる」かもしれないんだしさ?』
「貴様っ……!!」
『ま、せーぜー死なないうちに脱出するこったね』
ノイズ交じりの少年兵の顔が、モニターから消える。
あとには言葉を失う将兵たちと、怒りに肩を震わせるユウナだけが残された。
つまりは、そういうこと。
これは裏切りに気付いた連合からの、警告。そして報復。
自分達は、友軍から撃たれたのだ。
「くそっ!!どこだ!!どこで、気付かれた!!」
シートの肘掛に拳を振り下ろすユウナ。
だが、悠長なことはしていられない。
連合によって撃たれたその場所は艦にとって、致命傷であったのだから。
(……このままではオーブ全てが、裏切り者として撃たれることになる)
このままでは。
上司の激した様子を見ながら、トダカは考える。
それを避けるには、ユウナを無事国へと返さねば。彼本来の戦場へ。
彼は元来政治家、本職の軍人である自分達が畑違いのユウナの策に頼り切っていたのが、
愚の骨頂であったのだ。
プロである自分達が真っ先に策を練らずして、どうするのだ。
国のために血を流すことを軍人が厭うて、何になる。
そして、自分は───……。
「……ユウナ様、退艦してください」
「……ああ、わかっているよ。でもその前に色々と指揮官として───」
「いえ」
懐を、まさぐる。
硬く冷たい感触を掴み、トダカはそれをユウナへと向けた。
青年の顔が、驚愕に歪む。
「この艦は、私が占拠致しました。この茶番の全ては私の指示によるものです。
人質であったあなたは───奮起した兵たちによって解放されてください」
自分は、全ての責を負おう。
愛用の拳銃の銃口が、ユウナの眉間を正確に狙っていた。
****
「お、青の坊主、やりやがったな?」
ジャスティスのコックピット内の彼は、あれほど急激な機動を繰り返したにもかかわらず、
殆ど息も乱してはいなかった。
彼ら二機を相手取りたった一機で持ちこたえ押し留めていたハイネには知りえず、
また気の毒なことではあるが───、彼らに遊ばれていたのだ。
全ては、限界まで鍛え抜かれた強靭な肉体と、薬物による更なる強化による賜物である。
「よっしゃ!!『タフト』!!こっちもそろそろこいつ、落としちまうぞ!!」
『りょーかい!!りょーかいかいかい!!りょおーかいっ!!』
口元に、笑みが自然浮き出る。それは狩りを心から楽しむが故のもの。
空を舞う全身オレンジの一つ目は、
彼らにとってもはや敵たりえず、獲物としてしか見えていなかった。
****
「!?タケミカヅチがっ!?」
それを目撃したときシンの胸に去来したのは、
敵が損害を受けたという安心ではなく、故郷の艦がやられた、その心配であった。
「あれには……トダカさんがっ!!」
トダカ一佐。
かつて家族を失ったシンをオーブで世話をしてくれた軍人。
アークエンジェルでオーブを発つ数日前、僅かながら再会することができた彼は、
今はあの艦に司令として乗っているといっていた。
恩人の乗っている艦が、火を噴いている。
『シン!!危ない!!』
「!?」
その動揺が、隙をつくる。
ビームサーベルを引き抜いた数機のウインダムの接近を許し、
ルナマリアの援護射撃によって救われる。
しかしそのせいで、続き自分を狙おうとしていたダガーやウインダムの矛先が赤いザクへと向けられる。
「ルナぁっ!!」
『このおおっ!!』
艦と、インパルス、それにザク。
三つの標的に敵の狙いを分散させることでなんとかさばいていたのだ。
ルナマリア一機へと攻撃を集中されると、とても追いつかない。
『しま……リロードが、間に合わな……きゃああああっ!?』
シンのミサイルが撃ちもらし、
赤いルナのMSのオルトロスが火を噴くのを停止すると。
ジェットストライカー装備のウインダムはそれぞれにミサイルとビームライフルをたった一機に集中させる。
「ルナ!!ルナ!!大丈夫かっ!?」
辛うじて左腕のシールドで、彼女はコックピットへの直撃は避けていた。
だがカバーしきれぬ部位───頭部や、腕部。それに腰部などのコックピット以外の胴体部は
直撃を受け、まるで交通事故にあった人間のように鉄塊であるそれは宙を舞い、
ミネルバ後部甲板に落下した。
そして、ほどなくしてその瞳に当たるモノアイから光を失った。
「ルナああぁぁっ!!」
『お姉ちゃん!?お姉ちゃん!!返事をして!!お姉ちゃん!!』
死んでなど、いないはず。
コックピットは防いだではないか。
その想いに叫ぶシンと、彼以上に彼女を心配し呼びかけ続けるメイリン。
二つの声がインパルスを満たしていく。
『シン!!ルナマリアはこちらに任せなさい!!今は任務中でしょう!?』
「ですけどっ!!ルナが、ルナが……!!」
俺達の、仲間が。宇宙で死んでいったデイルやショーンのように。
冷静さを失い動揺するシン。
『ハイネ!!だめだ、やめておけっ!!』
そんな彼の耳に届いたのは、
歴戦の指揮官らしからぬバルドフェルドの焦りのまじった言葉。
警告された相手、彼が警告した理由。
気付いたときには、もう間に合いはしなかった。
****
『ハイネ、ダメだ!!やめておけ!!そいつらは……』
バルドフェルドの警告など、ハイネは既に聞いてはいなかった。
紫の二機へと、どちらかといえば時間かせぎ、いなす戦い方であった戦法を捨て、
グフを突撃させていく。
(……ルナマリアがやられた。こいつらをなんとかしないとおちおち、艦の守備にも回れねえっ……!!)
セラと、動揺したシンだけでは辛いだろう。
誰かが、ルナマリアの脱落した穴を埋めなければ。
だからリスクを覚悟で、汗の滴る身体でハイネはグフを急発進させた。
腕の一本や足の一本、持って行かれるのは覚悟のうえ。
片腕でも機体の腕が健在なら、艦上から支援に回れる。
「うおおおおおっ!!」
いくら相手のほうが性能が上であっても、そのくらいの自信はハイネにもあった。
撃墜はできなくてもいい、後退させる程度のダメージを与えるくらいなら、
この二機が相手でも不可能ではない。
ビームソード・テンペストを手にビームガンを乱射。弾幕を張りつつそれを追いかけるように
機体を突進させる。
目標の二機の一斉放火をかいくぐり、「突き」の姿勢へ。
手元のキーを叩きソードのリミッターを解除すると、ビームの刃部分が倍ほどの厚さ・大きさとなり、
その先端部までを包み込んだ。
砲弾・ビームの雨を抜けた。
(……よしっ!!)
この距離では、射撃はもう意味を成さない。
サーベルを抜いても、ひたすらに前進するだけの単純な動きであるぶん
こちらのほうが早いはずだ。
これで片方を落とし、もう一機もスレイヤーウィップで捉え串刺しにする。
まともな人間の反応速度ならば───たとえコーディネーターやナチュラルを強化したエクステンデッドであっても、
回避も撃墜も不可能な間合いだった。
(とったっ!!)
では。
まともな人間ではなく、それすら越えた人間であったとしたら。
コーディネーター並みか、それ以上の身体能力を持ち。
更にその肉体を強化した人間が相手であったならば。
ない可能性では、ないのだ。ごくごくわずかであっても。
その可能性を、ハイネは失念しきっていた。
あ、たじろいだシンを叱咤してるのは艦長です。
説明いれるの忘れた……。
次回で連合・オーブ海戦は多分一区切り。
うわぁぁ、灰猫西川がーっ!
色々な正体ばらしや加速していくテンポお見事です、GJ!
最終戦で肉体一つで戦ってたあの人たちだから納得できますなぁ、ああ西川……
ぶっちゃけ、ジェナのストーカーに成り下がった先生よりよっぽど強敵として機能してるよね>紫組
>>159 同意してみる
やっぱりさ、先生は「あの人」がいないとダメな気がするんだよ
まあ死んじゃってるからしょうがないけど
西川出てるんだしHIRO☆様も出そうぜ
,ハ , ハ
i (ハ| `ヾ)
从リ `ー´リ <
>>158、呼んだ?
〜(,_uuノ
,.イ ,ィ"`)
i (ハ| `ヾ)ハァックシュ・・・ココントコロサミィナ
从リ*`д´リ∵° 。
.c(,_uuノ
163 :
定期上げ担当者:2006/11/12(日) 15:19:50 ID:tgv0EYXO
上げてなかったOTL
明日に上げるのも良いが今上げとく
乙!
ユウナ、以外と脆かったな・・・・・・。
権謀術数がウリのキャラみたいだから、今回みたいに自分の策を見透かされてケツっぺた
に火ぃつけられるような展開は充分に予想できた筈なのにここまで取り乱すとは・・・・。
意外と自分の最初の策を過信してしまう「策士策に溺れる」タイプなのかな。
これだと本編の「戦争は貴方の得意なゲームとは違います!」と言う台詞を言われちゃうかも。
というかバイザーバグの中が人だったら初殺しじゃないか、ジェナ。
お前もいい子にしてろぉぉぉ〜はノーカンとして。
「初殺し」と言えば、紫組が越してはならない一線を越えてしまうかどうか・・・、と言うのも興味深いポイントだよね。
いずれにせよ次回にwktk
灰猫もうあぼんかな
灰猫VSヒロ見てみたかったw
アム種 第五十六話 ハイネ・イズ・オーバー
「……?」
両腕に装備したバーレスクでミサイル群を撃墜し、撃ちもらした数基をバスタードソードで
切断したニルギースの目に、それらが映る。
「救命ボート……あの艦、長くはないらしいな」
オーブといったか、敵軍の旗艦と思しき空母が突如黒煙を吹き上げて、幾許。
ミサイルの雨がわずかに途切れ、ニルギースは彼らの退艦の様子を見つめていた。
「!?」
と、頭上を大きな影が通過し、即座に反応したかれの銃口がそちらを向く。
「……ムラサメ?」
編隊を組んだ三機の飛行MSが、攻撃を加えることもなくアークエンジェル上空を通過していった。
一瞬、そのオレンジに塗り替えられた後姿へ向けて狙いを定める。
が、すぐにニルギースはその照準を下ろす。
なぜだか、彼にはあのムラサメの小隊が敵であるようには思えなかったからだ。
その理由は、記憶のない彼にはよくわからなかったけれど。
****
間合いは、計算どおり。
ビームソードの切っ先が、一足早く届くはずであったのに。
「何ッ!?」
肝心のそのビームソードは、グフの手首から失われていた。
とった。
この距離で、はずすものか。
彼の確信は打ち砕かれ。
歴戦のエースたる彼の目ですら追えぬ斬撃が、緋色の機体を粉々に分解していく。
およそ人間業ではない、神速の剣をもってジャスティスはハイネのグフを無力化していた。
「っぐ!?」
フライトユニットさえも失い。
頭部が残っているおかげで敵の行動が見える分、そのショックと屈辱は大きい。
『じゃあなぁ、オレンジの一つ目ェっ!!』
グフの頭部パイプが掴み上げられ、海面めがけ放り投げられる。
飛行能力を失った機体では、その加速を止めるなどできようはずもない。
懸命にバーニアを噴かすも、止めきれない。
重力にシートに押し付けられる彼の耳に、接触を通じ野太い声が聞こえた。
『空母落としたご褒美だ!!くれてやるぜ、坊主!!』
****
ハイネが、なす術も無く落とされた。
それは、二機の強敵に立ち向かう彼を見ていた他の者にとっても、あまりに瞬く間のできごとで。
その事実に一瞬呆けたようになったシンは、大破したグフが放物線を描き始めるのを前に我に返る。
「っ……そうだっ!!」
まだ、ハイネは生きている。
なぜだかはわからないが、ジャスティスは彼の機体に止めを刺してはいない。
───海面に叩きつけられる前に、救出しないと。
『シン、行くな!!放っておけ!!』
「!?……レイ、何を!?」
そう思い持ち場を離れようとしたシンを、マゼンタカラーのウインダムと交戦を続けるレイが押し留める。
だがその言い方はまるで、ハイネを見捨てろと言っているようなものだ。
『ハイネは……もう、ダメだ!!お前までやられるぞ!!』
「なっ……!?」
まだ生きているのに、もうダメ?
『センサーを、見ろ!!っく……!!海面、近くに……ッ!!』
「レイ!?」
機動力に勝るウインダムの手榴弾が、ザクの載るグゥルを撃墜した。
だが同時にレイは飛び上がり爆発を避け、バックパックのミサイルを使い逆に
ウインダムの頭部と翼を破壊する。
ブレイズウィザードの最大出力で上昇し、重いそれを切り離した上で本体のバーニア噴射。
ぎりぎりミネルバ右舷上に着地する。
お互い飛ぶ手段を失ったザクとウインダムは痛みわけといったところだ。
『まだ、奴がいるんだっ!!あの二機だけじゃなく!!お前一人で言っても死人が増えるだけだ!!』
「あ!?」
言われて、シンは気付く。
グフの落下していく先の海面を目を凝らしてみると、わずかに色の違う箇所があり、
大破した機体を追うように移動していることを。
インパルスの計器類も、「そこ」に独特の熱紋があるのを捉えていた。
幾度となく戦った機体のものと、一致する。
「まさか……!?ハイネ、脱出を!!」
『無理だ……間に合わん……っ』
****
───二人のやりとりは、落下の重圧にシートへと押し付けられるハイネのもとにも、届いていた。
(……そう、だ。レイ。それでいい……ッ!!)
シンを引き止めたのは、正解だ。
ここは自分を見捨てる選択が、正しい。
「く、っそ……」
完敗、か。
殆ど死んでいるグフの計器類では、ノイズだらけの映像を拾うのがやっとだったけれど。
動かせる頭部カメラで、彼は呆然とこちらを見つめるようにホバーで浮遊するインパルスを捉える。
(ばっか、野郎……)
ぼーっとしてるんじゃない。
これは戦争だ。自分に命を差し出す順番がまわってきただけのこと。
だがそのことをシンに伝えるには、あまりにも時間がない。
(わり……きれよ)
ハイネ・ヴェステンフルスという存在を。
こういった可能性を見越した上であくまで一人の兵士として戦ったのだから。
自分は納得しているのだ。
(……でないと、死ぬぞ。お前まで)
だから、動け。
お前がそうやってこちらを見とれていても、艦は守れない。自分自身を守れないだろうが。
シン、お前は。お前たちはまだ生きて戦わなくちゃならないんだぞ?
「悪いな」
アスラン。バルドフェルド隊長。
彼は、歴戦であるが故に下から迫る死の気配に気付いていた。
気付いても、この大破した機体ではどうしようもない。
「後のこと、たのむわ」
自分はここで、一抜けだ。
不思議なほど穏やかな心で、彼はそれを受け入れ、瞑目した。
あばよ。
彼が瞼の裏に映る同僚たちに別れを告げた刹那、
閃光がその肉体を包み込み、一瞬にして肉体もろとも意識を消滅させていく。
死と生の境界線も、判別できぬまま。
『ハ……ネッ……!!』
通信機の拾ったシンの声が、既に主のいないコックピットを覆う炎に飲み込まれていく。
****
「ハイネェェェェッ!!」
三叉の矛に刺し貫かれ、グフの胴体部はようやくにその落下を止めていた。
ほどなくして、機体は爆散し。
煙る炎が海上へと、散らばり落ちていく。
グフ・イグナイテッドへと止めを刺した張本人たるMS───アビスが、爆風を避けていた水中から顔を出し。
再び変形して海中へと消えていった。
「あ……あぁ……」
『グフ……ハイネ機……シグナル、ロスト……』
「くそおおおおおおおぉぉぉっ!!ハイネを、ハイネをぉぉぉっ!!」
メイリンの沈痛な声に、シンの中で何かがはじける。
怒りにまかせ、シンは四門のブラストシルエットの砲をはねあげる。
あいつらは、倒す。ハイネの敵討ちだ。
『!!シン、よせっ!!』
しかしそれは、おそい。
砲撃を海中のアビスに向け放とうとしたインパルスの砲口にそれぞれ、
同じ数のビームと砲弾が吸い込まれる。
既に砲撃準備に入っていた砲戦仕様の装備は誘爆し、インパルスはその攻撃手段を失った。
敵のフリーダムによる、一斉射撃だった。
ご丁寧に、後ろ腰のビームライフルまで銃口を潰されている。
「っく!?」
『シン!!』
ホバーでの水上活動が不可となった機体を、間一髪レイのザクが受け止める。
崖から落ちそうになった登山家を、仲間が救助したような形で、右腕一本で支える。
「く……フリーダムぅぅぅっ!!お前ら一体、何なんだっ!!」
まだだ、まだミサイルが残っている!!
『シン、戻れ!!狙い撃ちにされるぞ!!』
『!?タケミカヅチ、移動開始!!』
「『!?』」
───彼の怒りは、一瞬どこかへ行ってしまった。
メイリンのすすり泣きが漏れ出してきていたブリッジとの通信から
受け取った、索敵のバートの驚愕の声によって。
フリーダムやジャスティスのその更に向こう。
たしかに巨大な空母が煙を噴き上げながらも、ゆっくりと。
その巨躯を徐々に動かし始めていた。
予定がずれました。
海戦、あと一話続きます。
バイザーバグに関しても追い追い・・・。
オレンジの三機編隊
もしや、もしや、あのユニットか!
ともかくGJ!
乙!!
・・・・・・ああ、ダークさん、ついにやっちまったか・・・・。
本人自身が手を下さなかった件なんてまるで免罪符にならん罠。
この後の泥沼展開が辛くも楽しみ。
>「く……フリーダムぅぅぅっ!!お前ら一体、何なんだっ!!」
フリーダムと言うMSの中の人と所属とをちょっといじるだけで、これ程話がスッキリまとまりもすれば
深みも出るとはな・・・・。
>>174 とりあえずストームとジャイロの出番はお預けなのかな。
特に後者は本編でも一度しか出番の無かったレーヴァティンの種世界での威力の程を見て
みたかった気もするけどね。
177 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/13(月) 21:45:59 ID:AKzA7zkp
俺たちの月曜日!
全く、良い所で続くんだからw
続きをwktkしながら待つよ!
保守
ほっしゅ
ここ見て原作に興味持ったが、どこにもレンタル置いてないんだけど……よつべでもOPしか見れないしなあ
183 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 03:23:31 ID:J1S6Vvck
>>181 最初はちょっと「うーん」かもしれないが世界観にはまれば3話目あたりから格段に面白くなるぞ。
スマソあげちまったOTL
アム種 第五十七話 残る命
「あん?セイランの糞坊主からの通信?今更なんだって?」
「は、はぁ……それが」
なんとかJ・P・ジョーンズへと着艦したネオは、ブリッジに戻ると
通信士から電文の打ち出された紙を渡された。
「なになに……『我、賊軍ニ占拠サレシ旗艦、奪還セリ。然ルモ既ニ艦に戦闘力ハ無シ。
我、敵軍ニ向ケ旗艦・タケミカヅチヲ特攻セシム。ツイテハ後退ト後方カラノ援護ヲ要請スル』……ってなんじゃ、こりゃ!?」
「なんだ、と言われましても……。こちらは送ってきた通信を受けただけですから……」
「あの若狸……『これ』で全て通す気か……!?」
****
ネオの睨んだ、タケミカヅチ付近に漂う救命ボート群の一艘に、
救命具を身に着け立ち上がり、煙を上げて前進するタケミカヅチを見つめる青年の姿があった。
「ユウナ様。揺れます、お座りください」
「いや、いい」
アマギの言葉に、ユウナは頭を振った。
ゆっくりと座ってなど、いられない。
「連合の艦隊には電文、送ったね?」
「はい。あとはユウナ様にイザナギのほうへと移っていただければよろしいかと」
「わかってる。……アマギ」
「は?」
「僕には、タケミカヅチを見届ける義務がある。他の連中を先に回収させて」
「……承知、いたしました」
あの艦には、まだトダカが残っている。
全ては自分の失策が招いたことであるというのに、その責任を彼一人が背負って。
ユウナの心には政治の世界で感じたことのない、無力感と歯痒さがあった。
戦場は、政治家たる彼の力の及ぶところではなかったのだろうか、やはり。
「アマギ、君は僕を笑うかい?」
「……」
「政治家がのこのこ前線に出てきて、艦を沈め。挙句部下に責任をすべて押し付ける。滑稽だろう?」
「……いえ」
タケミカヅチが遠ざかっていく。
アマギが救命ボートに積まれた無線機を、ユウナへと差し出してきた。
「アマギ?」
「そう思うのでしたら、あなたはあなたの戦場に戻るべきです。そして、一佐にどうか餞を」
周波数は既に、オーブ軍のみで通用するものにあわせられていた。連合に聞かれる心配はない。
アマギの言わんとしていることを理解したユウナは、わずかに目を見開いた後、頷く。
「……そうだ、ね。よし」
無線機をとり、口元へ。空いた右手は、こめかみに向かい、敬礼の形をとる。
「全軍に通達する。タケミカヅチ、並びにトダカ一佐に、敬礼!!」
海に散らばる救命ボートの兵たちも、残った艦艇の乗組員たちも。
ユウナの命に背筋を正しびしりと姿勢を合わせる。
彼らに見送られ、タケミカヅチが徐々に遠ざかっていく。
****
『ジェナス!!セラ!!ニルギース!!誰でもいいから聞こえてたら返事しな!!』
「!?」
自分が騎乗している以外の全てのバイザーバグを撃破され、ディグラーズが後退していく。
追撃をすべきかそれともタケミカヅチを警戒すべきか躊躇したジェナスは、
耳に飛び込んできた声を聞き、上空を見上げた。
周波数はこの世界では使われていないもの。ということは、この声は───……。
「パフ!?」
『───繋がった!!こっちからは三人とも確認できてる!!オレンジ色のムラサメ!!ジュリとジュネも無事だ!!』
「パフたちもこっちに来てたのか!!」
上空を探すと程なくして、オレンジに塗装された三機のMSが確認できた。
『パフ!!MSに!?』
『セラ、あんたも元気そうでよかった!!丁度ジェナスと入れ替わりでオーブに着いてね!!話は後だよ!!』
『時間が』
『ないんだよー!!』
続くのは、似通った声の双子の発した言葉。
ジュリ・ブルームとジュネ・ブルームのものだとすぐにわかる。
三人の声のトーンは一瞬安堵したようになり、すぐさま緊張の色を戻していった。
『いいかい!!よく聞くんだ。今からタケミカヅチはアークエンジェルに向けて特攻する!!』
「なんだって!?」
『でも、特攻っていってもただつっこんでくるだけ』
『オーブ軍撤退の理由を作るためだって、トダカさんたちが言ってたー!!』
『だからジェナス!!あんたは仲間に伝えな!!そっちにタケミカヅチがぶつかる前に、沈めるんだ!!』
「わかった!!」
一応、戦闘をしているように見えるよう、
機体をMS形態に可変させビームライフルをジェナスの周辺の海に撒き散らしながら。
ジェナスと彼女とのやりとりは続く。
脱出できるだけの人員は既に脱出していること。
狙うべき、艦体のダメージを受けた脆い部分。
「パフ達はどうするんだ!?」
『ユウナや他の艦と、オーブに戻る。場所さえわかってれば合流できるだろう?』
「……ああっ!!」
『パフ!!気をつけてね!!』
『ありがと!!セラもね!!』
『『元気でねー!!』』
セラの射撃をビームライフルで受け、「当たらない」ミサイルを全弾撃ち尽くしてから
三機のムラサメは後退する。その姿を確認し、ジェナスは今度はアークエンジェルとミネルバに通信を繋いだ。
****
「特攻!?そんな……タケミカヅチで!?」
『ああ。こちらに被害が出る前に……おとすぞ』
連合の部隊は、被害を恐れてか既に遥か後方へ下がっていた。
わずかに小さく艦体の周囲をフリーダムやジャスティス、無事なウインダムが飛び回っているのが
見える程度である。
『ローエングリンを使います。この位置なら大陸へ汚染が到達する心配もあまりない』
『ええ、それがベストでしょうね。時間もありませんし、火力的に見ても』
「待ってくださいよ!!特攻ってことは、あの中にはまだ人がいるんでしょう!?」
いくらなんでも、完全自動操縦ということは不可能なはずだ。
とすればまだ、艦内にオーブの人間が残っている。
シンは思わず越権であることも忘れ艦長同士の会話に割って入った。
どうしてオーブの人間を自分達が殺さねばならない?
「あの人たちは……俺達を撃ってません!!」
『わかっているけれど……仕方ないでしょう?時間がないのよ』
「っ……俺が行きます!!」
『は?』
「俺がインパルスで行って艦内の人たちを助け出して!!それから沈めてきます!!」
ブラストシルエットの予備機は整備中だが、まだソードシルエットがある。
対艦刀を以ってすれば救助も撃沈もさほど難しくはないはずだ。
『本気なの?』
「お願いしますっ!!」
あの艦には、まだ人が残っている。同胞たるオーブ国民が。
そしてそれはあの恩人、トダカ一佐かもしれないのだ。
いや。あの実直な人ならばきっと残り責任を全うしようとするはず。
彼らが死ぬことを、シンは恐れる。そして懇願する。
『バート。本艦隊とオーブ旗艦の激突までの時間は?』
『十五分です』
「艦長……」
二つのモニターの片方で、タリアが問うていた。
もう一方に映るマリューには、シンに対する指揮権はない。
また艦隊の長であるタリアの決定にも逆らうことはできない。
『いいわ。五分よ。五分だけ待ちます。その間に戻ってこない場合、
ローエングリンとタンホイザーでタケミカヅチを撃沈します。……いいわね?』
「っ……はい!!ありがとうございますっ!!」
『ラミアス艦長もよろしいですね?』
『ええ』
五分。それだけあれば十分だ。
艦を動かす最低限の人員ともなれば、いる場所は自ずと限られてくる。
その間に探して、救出。しかる後エクスカリバーで叩ききる。
『ジェナスとセラも連れていきなさい。手は多いほうがいいわ』
そういって、マリューが微笑んだ。同時に、二艦の陽電子砲が起動していく。
『いくぞ、シン!!』
『急ぎましょう!!』
「ああ!!」
充填が開始された砲台を、目の端に見る。
これがタイムリミットを告げる号砲だ。それまでに、助け出さねば。
「メイリン!!デュートリオンビーム!!ソードシルエット!!」
『はいっ!!』
ミネルバから発射された充電用ビームを胸で受け、バックパックを換装し。
ジェナスとセラを連れ、インパルスが海上を駆ける。
またまた設定変更部分がございます。
デュートリオンビーム受けるとこですね、はい。
本編では額のVアンテナ基部だったわけですが。
あんな小さくて狙いにくいところにつけるのもどうよ?ってことで
胸のVマーク部に変更。これならすこしずれても外れにくいだろう……ってことで。
乙!
最後の最後で思わぬ形でシンとジェナに見せ場キター!!!
職人さんの作風(本編の設定は極力使う)だけで考えるならトダカ死にそうだけど、ユニウス
落としのクライマックスを考えるに「大人の事情を若さで振り切る」という所もテーマっぽい
からほんと先が見えない・・・。
>>174 まさかオーブの新三人娘になるとはね・・・・。
種本編の元祖と同じ運命にならんことを祈ろう・・・と縁起でも無い事を言ってみるテス
>自分が騎乗している以外の全てのバイザーバグを撃破され、ディグラーズが後退していく。
せっかく任された新兵器(この世界基準)を全てオシャカにされてなす術もなく豚顔かい。
とことんヘタレてますな先生。
もういっそジブに新型バイザー造ってもらえw
バイザーバグが造れるならギアの新造も不可能ではあるまい・・・。
なんか一時期のシーンを思い出すなあ>アム種の先生のヘタレ具合
ヘタレ繋がりってわけでもないけれど、やっぱり彼がいないと張り合いがないんだろうか
シーンは今やジェナのエッジの背後霊に過ぎないからなぁ・・・・。
てか先生、なまじ一度頂点を極めちゃった所為で持ち前の怨念パワーが無くなってしまったんだろうか。
アムドラ本編ではもっと勇敢だったよーな気がする。手下がやられたからって豚顔ってのはなぁ・・・・。
落 と さ れ る け ど
続き期待保守!
保守
俺たちの月曜日!
殺すためでなく救うために戦う、と言うのはもろにアムドラだよなぁ。
エンド・オブ・ムーロン中盤を思い出す。
守
199 :
1:2006/11/22(水) 11:02:51 ID:???
>>175 次に紫組と相まみえた時、ジェナはやっぱり言うんだろうか。
「ダーグザアアアン!オンドゥルルラギッタンディスカー!」
>>200 ブレイドネタだと「戦えない全ての人の為に・・・俺が戦う!!」も似合いそうだなジェナス。
むしろシンに言って欲しい台詞だったが。こっち(アム種)ならそんなに違和感も無さそうな気が。
以前本スレでもジャックフォーム登場の時の嶋さんネタがあったけど。
結構剣崎クンの台詞が似合いそうだな。
どうも、134です。大変申し訳ないのですが、現在私事が立て込んでおりまして、
週末まで多分書けない状態です。来週になれば余裕もできてくるのですが・・・。
代わりといっては代わりにもなりませんが、二話ずつにまとめた際のここまでのサブタイ集だけでも。
第一話(1と2)怒れる瞳、蒼き少年
第二話(3と4)星屑の動くとき
第三話(5と6)少年達の傷
第四話(7と8)世界の終わる時
第五話(9と10)崩壊の大地で
第六話(11と12)それぞれの選択肢
第七話(13と14)ボーイ・カムバック
第八話(15と16)砥がれし牙
第九話(17と18)テル・ザ・トゥルース
第十話(19と20)咎人の翼、復活のキラ
第十一話(21と22)ヘイト・ミー
第十二話(23と24)出航の日〜ready?〜
第十三話(25と26)再会の海
第十四話(27と28)シード発現
第十五話(29と30)ジャンクション・ポイント
第十六話(31と32)紫電の剣
第十七話(33と34)ルーザー
第十八話(35と36)ミネルバ合流
第十九話(37と38)想いの方向
第二十話(39と40)インド洋の基地に
第二十一話(41と42)マイ・サクリファイス
第二十二話(43と44)フー・アムアイ
第二十三話(45と46)ガルナハンの傷痕
第二十四話(47と48)休息は業深く
第二十五話(49と50)プライベート・エネミー
第二十六話(51と52)招かれざる者
第二十七話(53と54)フェイタル・ブロウ
第二十八話(55と56)ハイネ・イズ・オーバー
第二十九話(57と58)残る命、散る命(58話『散る命』)
ほんと、申し訳ないです><
お疲れ様です。
ほんとどういう訳か年末は何処も忙しいですなぁ。お体にはお気をつけて。
時間かけてイイもの作ってくださいませ。
>>202 ほんと、こうして見ると壮観ですなぁ・・・・。
繰言だけどまとめサイトが(ry
デス種本編のサブタイと並べてみるテスト。
1 怒れる瞳 第一話 怒れる瞳、蒼き少年
2 戦いを呼ぶもの 第二話 星屑の動くとき
3 予兆の砲火 第三話 少年達の傷
4 星屑の戦場 第四話 世界の終わる時
5 癒えぬ傷跡 第五話 崩壊の大地で
6 世界の終わる時 第六話 それぞれの選択肢
7 混迷の大地 第七話 ボーイ・カムバック
8 ジャンクション 第八話 砥がれし牙
9 驕れる牙 第九話 テル・ザ・トゥルース
10 父の呪縛 第十話 咎人の翼、復活のキラ
11 選びし道 第十一話 ヘイト・ミー
12 血に染まる海 第十二話 出航の日〜ready?〜
13 よみがえる翼 第十三話 再会の海
14 明日への出航 第十四話 シード発現
15 戦場への帰還 第十五話 ジャンクション・ポイント
16 インド洋の死闘 第十六話 紫電の剣
17 戦士の条件 第十七話 ルーザー
18 ローエングリンを討て! 第十八話 ミネルバ合流
19 見えない真実 第十九話 想いの方向
20 PAST 第二十話 インド洋の基地に
21 さまよう眸 第二十一話 マイ・サクリファイス
22 蒼天の剣 第二十二話 フー・アムアイ
23 戦火の蔭 第二十三話 ガルナハンの傷痕
24 すれ違う視線 第二十四話 休息は業深く
25 罪の在処 第二十五話 プライベート・エネミー
26 約束 第二十六話 招かれざる者
27 届かぬ想い 第二十七話 フェイタル・ブロウ
28 残る命散る命 第二十八話 ハイネ・イズ・オーバー
29 FATES 第二十九話残る命、散る命
205 :
204:2006/11/23(木) 11:00:27 ID:???
スペース入れた筈なんだが・・・・orz
>>205 連続する半角スペースは1個に圧縮されるんじゃなかったっけ?
AAのズレの元凶。
保守
209 :
204:2006/11/25(土) 13:16:49 ID:???
>>205 >>206 ありがと。
・・・・・・本スレに昔凸のお持ち帰りAA張ったら皿だけ飛んだ理由が分かったよノシ
ウケが取れたのは完全に怪我の功名だった訳だが。
しかし修正して貰っても凸凹多いなorz俺の雑さがよく分かる。
>>160 >>193 思えばシーンは丁度ピュアムの中では「真ん中」のポジションなんだよなぁ。
ジェナ達に比べると、年上の先輩なんだけど一方でニルギや紫組と比べるといい意味で「青さ」が
出るという。どっちとも絡めるオイシイポジションだと思うんだ。
似たような位置にパフがいたけど、何せシーンはシリーズ通してジェナ達と絡んでいた訳で、
本格参戦が第三クール後半の彼女とは年季が全然違う、と。
その年季故に先生との因縁も長い訳なんだな。
>>210 そうそう、シーンはオイシイポジションにいたと俺も思う。
復活後、ジェナスらの前でも弱味を見せた事はあったけど(「クレイモア」の時とか)基本的にはいい先輩でいて(17とは思えない言動多数)、
「サクリファイス」(久方ぶりにボーダタックかました回)ではニルギの冷酷さ(演技だったが)に青さというか若さ故の熱を見せてみたりね。
最終的には敵わなかったけど、やっぱりディグ先生との因縁もシーンが一番深いと思っているよ。
もし彼が死なずに無事に成人式(アム世界にあるのか知らんが)を迎え、結婚し(相手がセラとは限らないけど)、子供を作り(相手g(ry)、バーガーショップを経営し(確定)・・・
したらどうなっていたんだろう。いろいろと考えてしまうね。
>>211 ただサクリファイスはジェナにもってきてほしかったなぁ。
>>212 でも、ジェナだったらあの場面で見捨てるという行動ができないだろうから
冷静な判断もできるシーンが適役だったと思う。
アム種 第五十八話 散る命
なんだ、あれは。
一体あの男は、どういうつもりだ。
「ジブリールに繋げ!!今すぐにだっ!!」
ディグラーズは帰艦するなり、ヘルメットを投げ捨て壁の通話機に怒鳴りつけた。
『はぁ?一体どうしたんだよ、客人』
「繋げと言っている!!あの下衆に問いたださねばならん!!」
『無茶いうなって。今は戦闘中だぞ?あとでにしてくれ』
彼は激昂していた。
ジブリールより送られた、バイザーバグのまがいものたちについてである。
だが言葉を受けた通話機の向こうのネオは、そんなことを知る由もなく。
それが一層彼の長くない気を逆立たせる。
「あんなもの……使えるか!!」
確かに、バイザーバグの性能は元の世界で生産されていたものよりも高かった。
だがそれも、攻勢に回っている場合に限る。
「くだらん……俺を、欺きおって……!!」
守勢へと転じた、その場合。
一転して奴らは足手まとい以外の何者でもなくなる。
「機械が……弾に怯えてたまるかっ!!」
バッテリー式だと奴は言っていた。だが、ならばあの液体はなんだ?
飛び散った残骸の中にあった、肉色の生々しい物体は?
得体の知れぬ、碌に役にも立ちはしないものを戦力として使おうと思うほど、
ディグラーズも酔狂ではない。
「奴が俺を嵌めるなら……こちらにも考えがある」
彼は通話機を壁に叩きつけると、
肩を怒らせてその場を立ち去っていった。
****
「こっちだ!!はやく!!」
「すまん!!これで全部だ!!」
ジェナスの指した先には、セラの護衛するシルエットフライヤーが着水している。
元来が重いシルエットパーツを搬送するための機体だ、内部に多少の人間が乗ったとして
飛行に問題はない。余剰の人員はエッジバイザーとストームバイザーで運べばいい。
「シン!!そっちはどうだ!?」
『悪い、まだかかる!!先にメイリンに連絡して、行ってくれ!!』
「わかった、急げよ!!」
セラに頷き、後ろに一人、兵士をしがみつかせ。
エッジバイザーのエンジンを噴かす。
同時に兵士を乗せたストームバイザーが離水し、
ミネルバの誘導を受けてシルエットフライヤーが飛び立った。
空を舞う二機を追う様に水上をエッジバイザーに走らせながら、ちらと連合艦隊のほうへと目を向ける。
空母の甲板上に、紫の二機のMS。フリーダムとジャスティス。
弾薬の補給か、それとも単に特攻の爆発に巻き込まれることを懸念してか。
敵MS部隊はタケミカヅチ近辺のジェナスたちには散発的な攻撃をしかけてくるに止まっている。
(……もし、あれがダークさんたちだとしたら)
ハイネは、彼らが殺したも同然だ。
自分達の仲間が、彼を。
(……いや!!まだそうと決まったわけじゃない!!)
まだ、確証がありはしないのだ。
そもそも、彼らがあのような残酷なやり方でハイネを殺すわけがないではないか。
誰よりも、「人を救う」というアムドライバーのあり方に誇りを持っていた二人が。
後ろ髪を引かれるような思いがあった。
だがジェナスは、そんな感傷を振り切るがごとくスピードをあげ、セラたちを追う。
甲板上に降り立ったインパルスとすれ違い、彼は離脱していく。
彼の後ろでMSが飛び立ったのは、殆どミネルバ近くまで彼らが撤退をしたときであった。
****
「お願いです!!はやく脱出してください!!時間が……」
『……わかっている。だが私は、ここを動くわけにはいかん』
一方。
タケミカヅチへと降り立ったインパルスのコックピットで、
シンは一人の男と対峙していた。
「トダカさん……!!」
『誰かが、責任を負わねばならんのだ。そしてこの艦の責は、艦長たる私にある』
「そんな!!だからってこんなこと!!」
かつての恩人。再会を果たしたのはほんの少し前のことだというのに。
シンとトダカはこのような形で相見えていた。
船窓の窓は殆どがひび割れ。
あちこち火花を噴き出すブリッジに、トダカは一人背筋を伸ばして立っている。
「艦を破壊します!!だから脱出を!!」
『……できんな。どうしてもやるというのならば、私ごとやればいい』
「できるわけ、ないじゃないですか!!あなたを!!」
『だが、やらねばそちらの艦が沈むかもしれんのだぞ?』
「けど!!」
トダカの言うことも、事実ではある。
ミネルバとアークエンジェルまでの距離は、もうさほどない。
二艦が沈むことは無いにしろ、ぐずぐずしていてはシンまでもが陽電子砲に巻き込まれてしまう。
だからといって、彼を見殺しにすることなど、シンにはできない。
『勘違いするな。あくまでザフトとオーブは敵なのだ。敵を助けて自軍に被害を及ぼすなど、言語道断』
「敵……?あなたが敵だっていうんですか!?」
恩人が、敵。故郷を同じくする者が敵。
そのトダカの物言いは、若いシンには納得のいかないものであり、
困惑をさせるものでしかない。
当然、インパルスの腕に握られたエクスカリバーが持ち上がり、振り下ろされることはなく。
『そうだ。上に立つ者が定めた目標こそが敵。オーブにとってはザフトが、ザフトにとっては連合に与する者が』
「理屈、こねまわしてる場合ですか!!いいから脱出を───」
『ダメだと言っているだろう!!君も軍人だろうに!!』
「ですけどっ!!……!?反応!?」
レーダーの、警告音。
トダカとシンが同時にその指し示す方向を見た直後、
タケミカヅチへとビームと砲弾の雨が降り注ぐ。
ただでさえ沈没を時間の問題に控える空母の船体は、それだけで大きく傾いだ。
「……フリーダム、ジャスティス……!!」
『ガイアにカオス、アビスだと……!?ぐうっ!?』
「トダカさんっ!?」
対峙するブリッジ付近に、フリーダムのレールガンの至近弾が被弾。
窓ガラスが砕け散り、爆風の中にトダカの姿が消える。
『シン、何をやってる!?はやく戻ってこい!!』
「アスラン……でも!!」
ミネルバ上空で待機し、ミサイルを迎撃するアスランからの通信。
たしかに彼の言う通り、もう時間は無い上に、この五機に囲まれたままではまずい。
だが、シンにはトダカのことが放ってはおけない。
『裏切り者と仲良く消えな!!白いのぉっ!!』
『滅殺抹殺撃滅殲滅必殺瞬殺ぅぅぅーっ!!やるぞやるぞやるぞuryyyyyy!!!』
タケミカヅチと同調させていたせいだろうか、敵MSのパイロットたちの声がスピーカーに拾われる。
ビームと砲が乱射され、至近弾を浴びるインパルスとともに、空母の飛行甲板へと
いくつもの穴を穿っていく。
五機ものMSから放たれる破壊の驟雨は嵐となり、とても手がつけられるものではない。
左腕に折りたたんで装備していたシールドが砕ける。
額のVアンテナが半分折れ、右のエクスカリバーも失った。
『シン!!急ぎなさい!!もう時間が無いわ!!』
「っけど、まだ人が……!!」
『……うだ、やれ、シン・アスカ……』
艦長たるタリア直々の叱責にも躊躇するシン。
ためらう彼は、ノイズと爆音にまみれた、呻きにも似たトダカの声を聞く。
「トダカさん、無事で……」
『やれ!!』
「え……?」
『時間がないのだろう、はやく艦を沈めろ!!そして離脱を!!』
「そんなっ……」
ミネルバとアークエンジェルの陽電子砲は、既に十分すぎるほど輝きを満たしていた。
インパルスがブリッジを潰し、離脱したのを確認すれば、
即座に砲撃を加えることだろう。
『どの道……私は無理だ!!さっきの爆発で……やられた……』
「な……でも!!」
『きみは生きろ。生きて再びオーブに戻ってきてくれ』
「……」
オーブ。トダカが身を賭してまで守ろうとしている、シンの故郷に。
『さあ、やれ!!シン・アスカ!!軍人として、守るべきもののために敵を討て!!』
「……う、く……」
『私を犬死にさせる気か!!連合のためではない!!私に、君やアークエンジェルを……
オーブの者たちを護るために死なせてくれ!!オーブの盾となって死すれば、それが本望だ!!』
「う……あああああぁぁっ!!!」
『私は土となって……還ろう!!オーブへ!!』
遂に、インパルスの右腕が上がる。両腕で対艦刀を握りしめ、最上段に。
寸分違わぬ狙いはブリッジに向けられ、大質量の剣が弧を描く。
───これで、いいのだ。
これは、彼の望み。軍人として、自分が成すべきこと。
言い聞かせ、目をきつく閉じて遮二無二シンは剣を振るう。
止めるな。止めてはならない。
顔は苦渋に歪み、目からは涙が零れ。
脳裏には二年前のオーブでの彼との出来事が再生される。
止めない。止めてはならない。
彼の遺志を、叶えてやるのだ。
シンは顔を背け、目をきつく閉じながらも、最後までそれをやりきった。
インパルスの背丈ほどもあった艦橋はひしゃげ、潰れ。爆発に包みこまれていく。
『ローエングリン、一番二番!!』
『タンホイザー、照準!!』
二人の艦長の声を耳に、シンは無言でインパルスを上昇させる。
ビームブーメランを投擲、更に機体を各パーツ毎に分離。
コアスプレンダー以外の各機を、二枚のブーメランとあわせそれぞれ五機の敵MSへと向かわせる。
彼らに生まれた隙をついて、シンはその場を離脱した。
なにも、見たくなかった。
自分が殺した恩人や、自分が潰した空母が。自分の母艦の砲に焼かれていく様など。
「ちく……しょう……」
陽電子に燃え尽きていく空母を背に、シンはひとり、涙した。
なんとか仕上がりました。遅くなってもうしわけありません。
・・・でもこれ、5〜6回書き直してるんだよなぁorz
主にシンとトダカの部分で。
最初は自由の砲撃→トダカが砲台動かして実弾でインパふっとばす→身代わりで死亡
だったわけなんですが。公式見たら使えそうな砲台がないデザインで断念orz
まあ、空母だから当然といえば当然ではありますが。
というわけでこんな感じになりました。
海戦編はこれにて一段落です。
書き直し含め乙です
先生が怒ってくれたことがちょっとうれしいなぁ
トダカ一佐に敬礼〜(泣
>>219 乙です!!
>バイザーバグのまがいものたち
やっぱり、中は機械ではなく・・・?
もう、乙ってレベルを超えて「すげぇ」としか言いようが無いですな‥‥。
ロゴス製バイザーバグの禍々しさを真っ先に見抜いたのが先生だったと言う冒頭も凄いけど
、「犠牲という十字架を、戦う者はみな、背負っている」と言うアム種キラの言葉がいよいよシンに重くなって来ましたな‥‥。
自らの犠牲でもってシンに軍人のあり方を教えるトダカがありえない程濃すぎるぜ‥‥。
『さあ、やれ!!シン・アスカ!!軍人として、守るべきもののために敵を討て!!』
『私を犬死にさせる気か!!連合のためではない!!私に、君やアークエンジェルを……
オーブの者たちを護るために死なせてくれ!!オーブの盾となって死すれば、それが本望だ!!』
この台詞を見て、思わずデラーズ閣下の
「ガトーよ、意地を通せ。現にコロニーはあるのだ。ゆけ!わしの屍を踏み越えて! わしを宇宙の
晒し者にするのか、ガトー!」
これを思い出してしまった。
難産が続きますな‥‥でもその結果がこのハイクォリティなら一ヶ月でも一年でも待てるぜよ。
続き期待保守
保守
保守!
ほっしゅ
アム種を最初から読みたくて29chで過去ログ探したけどなかった…… orz
どなたか前スレの過去ログ持ってませんか?
こうなるとやっぱまとめサイトほしいよなあ。
誰も作れないなら、クロスオーバー作品のまとめwikiみたいなのなかったっけ?あそこ入れてはどうだろ
それも良いかもしれない。
ワンピース、リリカルなのは、デモンベインとあるぐらいだし。
問題は編集権限に制限(ライブドアID保持者のみ)になってる事か。
アム種 第五十九話 エブリマン、エブリウェア
ダーダネルス海峡においての戦闘を終えたミネルバ艦隊は、
マルマラ海のザフト軍基地へと入港した。
ハイネの死、ルナマリアの負傷に加え、大部隊を相手にしたことによる
艦そのものへのダメージも大きかったのである。
「……そっか。ルナ、目、覚ましたんだ」
「ああ、まだ安静らしいけどな。さっきメイリンとセラが病室に行ってた」
ドックのキャットウォークから、
ヴィーノとヨウランがミネルバから搬出されるインパルスを眺めていた。
分離状態の各機に続き、各種シルエットパーツが続いていく。
もとより複雑な可変・分離機構を持つ機体だ。
基地の設備で定期的に入念な整備をする必要があるし、海戦で潮を浴びたあとともなればなおさらだ。
「アークエンジェルのほうも、大変だって言ってたしなぁ……」
カオスと激しいドッグファイトを演じていたムラサメ。
たった二機でオーブ軍の大多数のMS部隊を相手にしていたセイバーとノワール。
独自のチューンがなされたバルドフェルドの機体をはじめ、けっして低くない性能の三機であるが、
パイロットたちの無茶な操縦技術により各部の関節をはじめとする内部からのダメージが激しく、
入念なオーバーホールが必要となっていた。
「戦えるのはレイのザクと、ジェナスたちだけってことだもんなあ……」
そのザクも、この基地にはフライトユニットのストックがなく、
陸上戦力としてはあまり期待できるものではない。
「なあ」
「戦力、大幅ダウンだよなぁ……」
「まあ、基地には入港してるんだし、そう悲観するもんだもないだろ」
「おい」
「「……え?」」
考え込む二人は、ようやく自分達にかけられている声に気付いた。
二人揃って横に顔を向けると───……。
「シン!?」
「もう、いいのか?」
オーブ軍との戦闘以来、部屋に閉じこもりっぱなしだったシンがそこに立っていた。
手にはピンク色の携帯。同室のレイから無事だとは聞いていたが、
彼らが見るシンの目の下には、うっすらと隈ができていた。
「お前ら、インパルスと上陸するんだよな?整備で」
「え?ああ、そうだけど」
「頼みがある」
「頼み?」
「ああ、実は」
シンの頼みごととは、ごくごく簡単なものであった。
大仰な言い方に身構えていた二人は、拍子抜けしたようになる。
「そんくらいならちょっとシルエットの設定ちょっといじればできるだろうけど……なんでまた?」
「いや……少しでも強くならなきゃ、と思って」
───そう、あいつらを倒せるくらい強く。ハイネやトダカ一佐の仇をとれるくらい、強く。
「……へ?」
「ん、いや。とにかく、頼むな」
シンの最後の呟きは、二人には聞こえなかった。
歩き去る彼を、ヴィーノとヨウランはぽかんとして見送った。
****
「大丈夫?具合、どう?」
「キラさん!!来てくれたんですか?」
「うん、基地のドックに丁度用事があったから。怪我、平気?」
「は、はい!!そりゃあもう!!」
一方、ルナマリアが入院することになった基地内の病室には、キラが訪れていた。
酒保で買った果物を手に現れた彼に、ルナマリアは飛び起きる。
セラが生けていった花瓶の隣にバスケットを置くと、彼はベッドサイドに腰掛ける。
「セラやメイリンから、ある程度のことは聞いてるんですけど……その、やっぱりハイネは」
「……うん。残念ながら」
「これが……戦争なんですよね、やっぱり」
ハイネが墜とされた時既に意識を失っていたルナマリアには、実感が湧かないのだろう。
彼がもはやこの世の人ではないということが。
絆創膏の張られた彼女の物憂げな顔には、そう書いてあった。
冗談で、実はそのうちハイネがひょっこり顔を見せるんじゃないか。
そんな表情だ。
「……あの二機は、僕らが倒す。僕と、アスランで」
「え?」
キラの言葉に、ルナマリアは戸惑うように顔をあげる。
「仇討ち……ですか?」
ストレートに聞き返す彼女に、キラは小さく首を振って返す。
そうではない。違うのだ。
仇討ち、私怨による戦い。その怖さをキラは既に知っているから。
「憎いとか、そういうんじゃない。ただ」
「ただ?」
「あの二機……フリーダムとジャスティスは、元々僕らの乗っていた機体だから」
「……え?」
「言ってなかったかな。前の戦争でフリーダムに乗っていたのは、僕なんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!?えと、えっと……」
───おそらく彼女は、シンから彼の家族を殺したのが自分であることは聞かされてはいまい。
驚いているのはオーブの人間であるキラが、ザフト製であったフリーダムのパイロットであったということだろう。
だが問題はそういうことではない。
「……だから、僕らが止めなくちゃ。フリーダムも、ジャスティスも」
過去の戦争の亡霊は。
本人達の手で断ち切らねばならないのだ。
****
「───お」
食堂から出たジェナスは、向こうの通路を歩いていくシンを見つけた。
「シン、もういいのか?」
いつもの通り、なにげなく声をかける。
部屋に篭ったままだった彼が出てきたことに対して、安心感もあった。
「……シン?」
だが、彼は聞こえなかったのか、気付かなかったのか、
ジェナスに応答も足を止めることもなく。
すたすたと立ち去っていく。
「あいつ……」
右手の指の隙間からこぼれる携帯のピンク色が、妙に印象に残った。
****
「バルドフェルド隊長?よろしいですか?」
また同時刻、マリューはバルドフェルドの船室のインターホンを鳴らした。
やや間があって通話が繋がった音がして、尋ねる。
『……開いてる……入ってくれ……』
「……?失礼します」
くぐもった、低い彼の声に疑問を感じながら室内に入るマリュー。
ベッドの隣のライトのみが点いた部屋は、布団が乱れ、そこには───……、
「バルドフェルド隊長!?」
蹲り、インターホンの応答ボタンに手を伸ばし。
額に脂汗を浮かべ苦悶するバルドフェルドの姿があった。
マリューは駆け寄り、助け起こす。
「大丈夫だ……大したことは……っぐ」
「そうは見えませんよ……とにかく、ベッドに」
「すまん」
マリューとて、一応軍人だ。それなりに鍛えている。
重い彼の体を支え、ベッドへと横たわらせる。
「何か、いるものは?」
「いや、いい……。すまないな、恥かしいところを見せてしまったね」
まだ玉の汗が浮かんでいる額を手の甲で押さえながら、バルドフェルドが笑った。
「やっぱり……前の戦闘で?」
「……ああ。どうやら、そうらしい。まだまだ現役のつもりだったんだがねぇ」
それは明らかな自嘲。
マリューからすれば、五体満足にないその体で十分すぎるほど戦っていると思うのだが、
彼本人にとっては屈辱以外のなにものでもなかろう。
「MSはキラくんたちに任せてはどうですか?」
「そうもいかんよ。あいつらの戦闘能力は高い、だがシンたちの指揮までやらせるとなると、な」
「また別の話だと?」
「……ああ。正直、荷が重かろう。アスラン一人でひよっ子共のお守りまでは」
ハイネがいない今、バルドフェルドが抜けては部隊の指揮経験を持つ人間はアスランだけになってしまう。
ジェナス達、こちらの軍隊にまだ不慣れな者たちもいる。
それでは彼のほうが持つまい。
「……だけど、あなたの体は」
「わかっているさ。とっくに自分がパイロットとしては不適格ってことくらいは」
四肢のうち、二つまでを失い、隻眼となった男が人並みにMSを扱うなど。
身体にかかる負担は並大抵のものではない。
まして、カオスと空戦を演じるなど自殺行為に等しい。
現にこうして、バルドフェルドは苦痛に苦しんでいる。
「だが、やらねばならんのだよ、ラミアス艦長……いや、マリュー」
「バルドフェルド隊長」
彼はオーブを出航して以来呼ぶことの無かった彼女の名前を呼んだ。
「なに、無理はせんよ。この艦を残して……死ぬわけにはいかん」
愛する者を失った、二人だった。
彼らは戦後、引き合うようにいつも共にいた。
いつしか、彼女を守らねばならぬと思う自分がいた。
死したムウ・ラ・フラガの分まで。
自分のかつて愛し、守れなかった一人の女の、その分まで。
「……心配するな」
「はい……」
「僕は死なん……さ。大丈夫だ」
バルドフェルドの額を、マリューのハンカチが静かに拭った。
その感触に、彼の隻眼が心地よさそうに細められた。
少々、アムキャラの影が薄くなりつつある今日この頃。
投下スピードも低下気味でもうしわけないです、はい。
>>235 GJ、待ってました!!
>投下スピード〜
いやいや、無理しない程度で十分ですよ
乙!
虎もすっかり中堅指揮官が板についてますな。
今回はさしずめ次回に向けてのインターミッションって所でしょうか。
いよいよ種新旧主人公VS紫組の決戦ムードが高まって来ましたな。
そう言えば、キラが自由パイロットだった事知ってる人間は内輪の人間だけだったんだっけ。
出来たらこちらも巻き返しに期待したい先生のジェナ以外のキャラとの絡みも見たい所。
>「MSはキラくんたちに任せてはどうですか?」
>「そうもいかんよ。あいつらの戦闘能力は高い、だがシンたちの指揮までやらせるとなると、な」
>「また別の話だと?」
>「……ああ。正直、荷が重かろう。アスラン一人でひよっ子共のお守りまでは」
指揮官の人選絡みの話でキラが虎に華麗にスルーされてるのにチョットウケタ
いくら指揮経験が無いからと言っても、人材不足ならこのテの役ははベテランにお鉢が回ってくるのが普通なのに。
戦闘中での指揮云々はアムドラだと敵の方が多かったような気が。
ピュアムだと、おおまかな作戦立てて後は勝手知ったるコンビなりトリオなりの
単位で好き勝手やってたような感じだったし。
そう言えばアムドラでも組織でもって連携して攻撃してくる敵ってあんま覚え無いな。
例外はJA時代のパフユニット位か?
大体が数で攻めるか各アムドライバーの個人技か、そうでなくば罠とかそんな感じだった
気ガス。
保守
保守!
第六十話 スタンド・プレー
「探査……制圧任務?」
ミネルバのブリッジに、三人の指揮官が集まっていた。
艦隊の補給、整備も順調に進んでいたところに舞い込んだ出撃要請について、
検討するためである。
「ええ、ロドニアに連合軍のものと思しき研究施設が発見されたのだけれど……アーサー」
「はい。こちらがその航空写真らしいのですが」
アーサーが差し出した写真に、マリューとバルドフェルドが見入る。
「たしかにこりゃ、単なる研究施設みたいだが……本当に連合の?」
「ええ、らしいわ」
「けれど、なぜ私たちに?」
マリューの質問はもっともだった。
ただの研究施設にかまけておける戦力の余裕は、ないはずだ。
おまけにミネルバもアークエンジェルも艦体を修理中。
MS隊を先行させようにもこの距離を迅速に行き来できる機体は、
インパルス以外整備・補修が終わっていない状況だ。
「さきほど、この施設で爆発が確認されたそうよ」
「爆発……ほう」
それに、といってタリアは続ける。
「施設に、連合のMSが数機迫っているとの報告があったの。……あの、フリーダムたちの部隊よ」
「あの……!!」
フリーダム。その言葉にバルドフェルドもマリューも口を噤む。
あの部隊が、爆発のあった施設に向かっている。
連合のMSが、連合の研究所へ。とすればその目的は───……、
「なにかの隠滅、処理ってとこか」
「でしょうね」
つまりは、処理せねばならぬほどのなにかがそこにはあるということ。
向かっているのがあの部隊であるというところからも、それは示されている。
「しかし、上層部は消極的でして……専門チームの派遣は、とても連中の到着に間に合わず───」
「俺たちにお鉢がまわってきた、ってわけか」
言われてみれば、まわされてきたのが出撃「要請」である時点で上のやる気のなさが窺える。
別に、拒否してもいい。「命令」でなくあくまで「要請」。
「それで、二人の意見を聞きたいの。ロドニアに向かうべきか、どうか」
最も近く、最も早く到着することのできるのは、自分達。
あるいは艦載されたインパルスをはじめとする航空戦力だ。
だがその大半は未だ出撃可能な状況に無い。
戦力の安定を優先させるか、出撃しその価値が不確かな施設を確保するか。
「ふぅむ」
タリアは、マリューたちに意見を求めた。艦隊を預かる者として。
一方、彼らの後方で。
交代要員と入れ替わりにブリッジを出て行くメイリンの姿があった。
****
『ステラ、もっとスピードでないのかよっ!!』
『ごめん……アウル……無理……』
『アウル、慌てんな。アビス単体のスピードよりははやいんだ』
ジャスティスの胸に位置するコックピットで、
ダークは三人のやりとりを耳にしていた。
眼下を飛ぶカオスと、地上のガイア。それに跨ったアビスの通信会話だ。
『ほら、お前ら無駄口叩くな。任務なんだぞ?』
『わかってるよ!!なんでみんなそんなに落ち着いてんだよ!?あそこには母さんが……っ!!』
そこに指揮官の諌める声が加わるにつけ、ブロックワードが発動してしまったようだと、
彼は心中で一人ごちる。
以前部屋に忍び込んできた、親しくなった少年に対しても、
コックピットに座るとひどく冷徹な自分がいる。
ブロックワード。恐怖心を封じ込めるための、心的なロック。
技術者たちは自分とタフトには設定していない、必要ないと言っていたが、実際のところどうなのだろう。
ダークとしては人を実験材料程度にしか見ていないあの連中を信用する気は、毛頭無かったが。
「しかし、妙に馴染むな」
ジャスティスが、ではない。
彼の愛機は今までと特に変更点はなく、目的地であるロドニアへと順調に飛行を続けている。
違うのは、彼の身に着けているパイロットスーツだ。
「ディグラーズの旦那は、一体どういうつもりでこいつを持ってきたんだ?」
白を基調とし、紫のラインが入ったそれは、通常のものより硬質な素材で組まれており。
ヘルメットも一目で特注であるとわかるものであった。
その装着感は、はじめてとは思えぬほど、実に馴染む。
<<……ク>>
「?」
不意に誰か、聞き覚えのある若い男の声が聞こえたような気がして、顔をあげる。
しかしそこにはモニターと計器が、当然のごとく並んでいるだけだ。
<<ダー……ク、……ト>>
二度目の呼びかけは、彼の意識には入らなかった。
(……悪い、シーン)
入らずとも、彼は己でも知らず知らず、内面の深層において謝っていた。
自分に呼びかけた今は亡き男の幻影に。
****
インパルスの整備、調整は終わっただろうか?
上陸許可を得たシンは、その確認に向かうべくミネルバの通路を歩いていた。
「───で、例の部隊が向かってきてるんだって」
「?」
例の部隊?
聞き覚えのある単語が聞こえてきて、レクルームの前にさしかかったところで足を止める。
「なんでも、ロドニアに研究施設があるとかで───」
話しているのは、食事を終えたばかりだろう、メイリンで。
聞き手はジェナスとニルギースだ。
だが、聞いてしまったシンにとってそのようなこと、どうでもよかった。
「MSだけで、破壊しに向かってるとか───……」
奴らが、動いている。
投下中にプロキシ規制にまきこまれました。続きは少々おまちください。
ちょ…規制〜!
規制がとけるまで楽しみにしてます
Noooo!!
俺達の月曜日を台無しにしてくれた荒らし野郎はどこのどいつだぁ!!!orz
規制orz
しかしアレですか、シーンの魂はジェナだけでなくダークさん達にも何かを伝えようとしてるですか・・・
そろそろ規制解けたかな?ってことで続き(というかはじめからまた)
投下したいと思います。こんな時間ですが。
第六十話 スタンド・プレー
「探査……制圧任務?」
ミネルバのブリッジに、三人の指揮官が集まっていた。
艦隊の補給、整備も順調に進んでいたところに舞い込んだ出撃要請について、
検討するためである。
「ええ、ロドニアに連合軍のものと思しき研究施設が発見されたのだけれど……アーサー」
「はい。こちらがその航空写真らしいのですが」
アーサーが差し出した写真に、マリューとバルドフェルドが見入る。
「たしかにこりゃ、単なる研究施設みたいだが……本当に連合の?」
「ええ、らしいわ」
「けれど、なぜ私たちに?」
マリューの質問はもっともだった。
ただの研究施設にかまけておける戦力の余裕は、ないはずだ。
おまけにミネルバもアークエンジェルも艦体を修理中。
MS隊を先行させようにもこの距離を迅速に行き来できる機体は、
インパルス以外整備・補修が終わっていない状況だ。
「さきほど、この施設で爆発が確認されたそうよ」
「爆発……ほう」
それに、といってタリアは続ける。
「施設に、連合のMSが数機迫っているとの報告があったの。……あの、フリーダムたちの部隊よ」
「あの……!!」
フリーダム。その言葉にバルドフェルドもマリューも口を噤む。
あの部隊が、爆発のあった施設に向かっている。
連合のMSが、連合の研究所へ。とすればその目的は───……、
「なにかの隠滅、処理ってとこか」
「でしょうね」
つまりは、処理せねばならぬほどのなにかがそこにはあるということ。
向かっているのがあの部隊であるというところからも、それは示されている。
「しかし、上層部は消極的でして……専門チームの派遣は、とても連中の到着に間に合わず───」
「俺たちにお鉢がまわってきた、ってわけか」
言われてみれば、まわされてきたのが出撃「要請」である時点で上のやる気のなさが窺える。
別に、拒否してもいい。「命令」でなくあくまで「要請」。
上層部は戦力が削がれるのを、嫌っている。
「それで、二人の意見を聞きたいの。ロドニアに向かうべきか、どうか」
最も近く、最も早く到着することのできるのは、自分達。
あるいは艦載されたインパルスをはじめとする航空戦力だ。
だがその大半は未だ出撃可能な状況に無い。
戦力の安定を優先させるか、出撃しその価値が不確かな施設を確保するか。
「ふぅむ」
タリアは、マリューたちに意見を求めた。艦隊を預かる者として。
一方、彼らの後方で。
交代要員のアビー・ウィンザーと入れ替わりにブリッジを出て行くメイリンの姿があった。
****
『ステラ、もっとスピードでないのかよっ!!』
『ごめん……アウル……無理……』
『アウル、慌てんな。アビスのスピードよりははやいんだ』
ジャスティスの胸に位置するコックピットで、
ダークは三人のやりとりを耳にしていた。
『ほら、お前ら無駄口叩くな。任務なんだぞ?』
『わかってるよ!!なんでみんなそんなに落ち着いてんだよ!?あそこには母さんが……っ!!』
そこに指揮官の諌める声が加わるにつけ、ブロックワードが発動してしまったようだと、
彼は心中で一人ごちる。
以前部屋に忍び込んできた、親しくなった少年に対しても、
コックピットに座るとひどく冷徹な自分がいる。
ブロックワード。恐怖心を封じ込めるための、心的なロック。
技術者たちは自分とタフトには設定していない、必要ないと言っていたが、実際のところどうなのだろう。
ダークとしては人を実験材料程度にしか見ていないあの連中を信用する気は、毛頭無かったが。
「しかし、妙に馴染むな」
ジャスティスが、ではない。
彼の愛機は今までと特に変更点はなく、目的地であるロドニアへと順調に飛行を続けている。
エクステンデッドの研究所、そこで起こった動乱を処理するために。
違うのは、むしろ彼自身。彼の身に着けているパイロットスーツだ。
「ディグラーズの旦那は、一体どういうつもりでこいつを持ってきたんだ?」
白を基調とし、紫のラインが入ったそれは、通常のものより硬質な素材で組まれており。
ヘルメットも一目で特注であるとわかるものであった。
その装着感は、はじめてとは思えぬほど、実に馴染む。
<<……ク>>
「?」
不意に誰か、聞き覚えのある若い男の声が聞こえたような気がして、顔をあげる。
しかしそこにはモニターと計器が、当然のごとく並んでいるだけだ。
<<ダー……ク、……ト>>
二度目の呼びかけは、彼の意識には入らなかった。
(……悪い、シーン)
入らずとも、彼は己でも知らず知らず、内面の深層において謝っていた。
自分に呼びかけた今は亡き男の幻影に。
****
インパルスの整備、調整は終わっただろうか?
上陸許可を得たシンは、その確認に向かうべくミネルバの通路を歩いていた。
「───で、例の部隊が向かってきてるんだって」
「?」
例の部隊?
聞き覚えのある単語が聞こえてきて、レクルームの前にさしかかったところで足を止める。
「なんでも、ロドニアに研究施設があるとかで───」
話しているのは、食事を終えたばかりだろう、メイリンで。
聞き手はジェナスとニルギースだ。
だが、聞いてしまったシンにとってそのようなこと、どうでもよかった。
「MSだけで、破壊しに向かってるとか───……」
奴らが、動いている。
ルナに大怪我を負わせ。
ハイネを殺し。
自分にトダカを殺させた、あの連中が。
そのことしか、耳に入らない。
「おー、シン。インパルスの調整、注文どおり終わったぜー?」
「っておい?シン!?」
通路の向こうから曲がってきたヨウランたちの言葉を聞くと同時に、
シンは弾かれたように飛び出していた。
二人を押しのけ、突き当りへ。見えてきたタラップを降り、ひたすらに駆ける。
向かう先は、まだ基地内ドックにあるであろう愛機のところ。
すべきことは、決まっている。
やつらは、倒す。
なにがなんでも、この手で。
息も切れるかというところで、インパルスのあるドックが見えてくる。
ロドニア、そこに奴らがのこのことやってくるのだ。
この機を逃す手はない。
****
基地内と停泊するミネルバ艦隊の二艦に、警報が鳴り響く。
一瞬、ブリッジがざわつき。
慌てて確認作業をはじめる通信のバートにタリアは問いただした。
「何事?」
「は…少々、お待ちを……は!?なんだって!?」
「「「?」」」
タリア、マリュー、バルドフェルド。
三人とも彼の狼狽ぶりに首を傾げる。
だがしかし、通信機のヘッドフォンを置いた彼の発した言葉に、
一同の顔色は急変する。
「シンが……インパルスで無断出撃を……基地ドックから」
「なんですって!?」
モニターに、艦のカメラに捉えられた映像が映る。
確かにそこには、ジェット噴射の煙をたなびかせて飛翔する、
フォースインパルスと二機のシルエットフライヤーの後姿があった。
「基地の部隊に、攻撃はしないように言って!!あれでは……!!」
「はっ」
「……あいつ、まさか」
即座に指示を出すタリアの横で、
バルドフェルドが厳しい顔をインパルスへと向けていた。
「バルドフェルド隊長?」
「……あいつのあの方向……例のロドニアの方向だ」
「「!?」」
二人の女艦長が、驚愕に顔を凍らせる。
彼女達二人とも、このところシンの様子がおかしかったことはクルーたちから聞いている。
「まさか」
「シンのやつ、一人でやつらと戦う気かもしれんぞ」
「そんな、無茶です!!」
マリューが叫ぶ。バルドフェルドは彼女の肩を叩いて頷いた。
同時に、バートがインパルスのコンピューターがミネルバのデータベースから、
先程更新されたばかりのロドニア近辺の地図データがダウンロードされた旨報告する。
もう、間違いない。彼の目的地は決まった。
「ああ、無茶だ。……グラディス艦長」
「ええ」
「どっちみち、出撃するしかなさそうだ。それも大急ぎで、な」
悠長なことはしていられない。
シンを連れ戻すか、ともにあの部隊を迎撃するか。
どちらにせよ。
「うちの部隊の馬鹿息子を、叱ってやらにゃな?」
言われるよりもはやく、タリアの腕は艦内放送の通話機を、掴み上げていた。
こんな時間ですみません。
前回と今回で第三十話「スタンド・プレー」となります。
規制乙でしたー
シーンの霊はこれからも出てくる予定なのかしらー?
補修
うおっ、このスレまだ続いてたのか
小説のまとめサイト的なのありませんか?
残念ながら無いんだよね・・・
とりあえず一話から固めてあぷろだに投げるだけでも新規さんの助けにはなるんじゃないだろうか
もうにくちゃんねるもまとめサイトも無いんだよ・・・・・・
あれ、にくちゃん死んだんだっけ?
生存してたらどっか借りてまとめ作ってみるよ
後23日で消えるはず
266 :
264:2006/12/07(木) 23:05:41 ID:???
にくちゃんが生きてたんで、前スレの1話から47話を確保。今スレも現段階までの話を確保しますた
改めてハイネが死んだ辺りに素凹みしつつ、現在サイトを構成中。色気も素っ気もないようなモンなら、俺達の月曜日までには公開出来そう
乞う御期待と言えるよーなもんじゃないけど頑張ってみまさ
そしていつもの事ながら、134さん乙!貴方のアムエネルギーに支えられております
保守!
アム種 第六十一話 Reason
基地内に鳴り響く警報に、彼女は顔をあげた。
眼前には屹立する、テストと調整を任された新型があった。
「……?何事です?」
「あ、ハーネンフースさん」
「敵、ってわけでもないでしょう?」
通った整備兵に聞きながらも一瞬、考えないでもなかった。
今この基地には、ザフト最新鋭の機体、二機の片割れが
極秘裏に運び込まれ調整されているのだ。
もし襲撃など受けているというのであれば、迎撃せねばなるまい。
本来想定されているパイロットに機体を渡すまでは、この機体に傷をつけられては困るのだ。
戦略的価値の低いこの基地をMS1機のためにわざわざ狙ってくるほどの余裕が、
連合にあるとも思えないが。
「いえ、なんでもインパルスが無断出撃したとかで……」
「インパルスが?」
「ええ。それで格納庫内滅茶苦茶になったらしくて。まったく、いい迷惑ですよ」
「そう……」
歩いていく兵士の後姿を見送りつつ、シホは考え込む。
そして、自分が調整を続けていた機体を見上げる。あとはほとんど、誤差を修正していく程度で済むだろう。
新機軸のビーム兵器を搭載した機体ということで半ば強引に元のジュール隊から
ビーム兵器の技術者であったという過去と、いざというときにテストパイロットを務めることができるという
利点を買われ異動させられた彼女であるが、それなりに頭上の機体に対し愛着もできていた。
「あなたの本当のご主人は、なかなか人騒がせね?デスティニー?」
まあ、あの「裏切り者」のアスラン・ザラがいる部隊ならば仕方ないか。
シホは溜息をつき、灰色の機体へとその体をよりかからせた。
****
「……ん?前方に敵機確認、ありゃ例の白い奴の支援機だ」
ロドニアのラボが、小さな点となって見えてきた頃。
ジャスティスのセンサーが、接近する熱源を確認した。
並列飛行するタフトのジャスティスにも確かめてから、他の僚機にも通達する。
そのほぼ直後に、前方の小型機からミサイルが発射された。
だが、それは馬鹿正直に真正面から放たれたもの。
さして警戒を強めるでもなく、かわすことができる。
───と。
『気をつけろ!!上だ!!』
スティングが気付き、叫んだ。
丁度、熱紋センサーとメインカメラの死角。
太陽の熱と眩しさとで塞がれた位置から。
若干角度のずれた、離れた位置を飛んでいたカオスだけが気付くことのできた
太陽の真下と部隊とをつなぐ軌道を通り、二振りの剣を装備した小型機が襲い掛かってくる。
出力されたビームの刃を避けたところに放たれる、反転した砲戦仕様機の二条のビーム。
6機のMSたちは隊列を崩すことを余儀なくされる。
並び後退していく二機の戦闘機の向こうには、見慣れた旧敵の姿があった。
****
ソードシルエットから、二振りのエクスカリバーが投下され、大地へと突き刺さる。
それを見てから、シンはインパルスの機体を上昇させた。
シルエットフライヤー後部のブーメランを両方とも掴み、投擲。
同時にシルエットフライヤー自体を特攻させる。
ブーメランは、一枚は赤紫のウインダムに、もう一枚はガイアによって撃ち抜かれ。
特攻させた本体もまた、カオスによって両断された。
「……お前らは……倒す……!!」
もとより、攪乱以上の効果を期待して放ったわけではない。
敵が対応している間に、ブラストシルエットをシルエットフライヤーから切り離し、
フォース装備のインパルスに腰だめに構えさせる。
残ったフライヤー部はさきほどと同じように、特攻させた。
「生かしちゃおかない!!ハイネや、トダカさんや!!ルナの怪我だって!!お前らがっ!!」
即座に、ビームとレールガンを乱射。
碌に照準もあわせず、怒りに任せ撃ち放し続ける。
死ね。
死ね。
マユを殺したように、死んでしまえ、フリーダム。
ハイネを殺したように、お前も死ね、アビス。
トダカさんの死の苦しみを知るがいい、お前達みんな。
とにかく、死ね。
今すぐ、死ね。
俺が倒す、俺が殺す。
レイやジェナスたちにさえ隠し堪えていた怒りを、
シンは怨嗟とともに吐き出していた。
「うおおおおおぉぉっ!!」
頭の中で、何かがはじける。
思考と反応がより鮮明となり、乱射されるだけであった
弾幕が、次第に敵機への至近弾を増していく。
「!?……くそっ!!」
が、今にも命中しようかというところで、弾が尽きた。
砲身から二本のビームジャベリンを取り出し、荷物にしかならない
シルエット本体を投げ捨てる。
特攻させたシルエットフライヤーは、フリーダムのビームを受けて四散していた。
(───そうだ、こいつらは)
いつも、こうだ。
こんな風に、なんでもないことのように破壊し、撃ち。奪っていく。
「いっつもそうやって、やれると思うなぁぁッ!!」
両手のビームジャベリンを振りかぶり、胸の前で連結させる。
その両端からビームが出力され、
シンはそれを手に、憎しみの対象たる敵たちへとインパルスのバーニアを咆哮させた。
「お前らは俺が討つんだ!今日!ここで!」
新鋭機、高性能機のエース部隊を相手に一対六。
それは、無謀といえば無謀すぎる戦いだ。
だがシンは、そのようなこと、露ほども考えてはいない。
憎い敵を、撃つ。ただ、それだけだった。
そしてそれは、
かつてキラやアスランが歩んだ道、ジェナスが踏み出しかけた一歩と同じ道であった。
撃った相手を、撃つ。
ただ、それだけの修羅の道。
風邪引いてダウンしてます。
短くてすいません・・・。
まとめ、つくっていただけるのでしたらよろしくおねがいします・・・。
>>273 乙ですが、くれぐれも無理などせずに、お大事に・・・
♪きーーこーーえてるかーー 君を呼ぶこの〜〜^?
ぅん? 君を呼ぶこの〜〜 呼ぶ子の〜〜〜〜??
のぶよのーー ドラえもーーン〜♪
届〜けた〜いィ〜んにゃ マェーィ チョ〜♪
カケニュ〜 オモい〜のせし〜 ゲッラーーーーイ^^
懐かしいね
俺達の月曜日!
俺月
保守!
続き期待保守
保守!
アム種 第六十二話 悪夢
「ええ、ノワールの装備はそれで……はい」
とるものもとりあえずといった状態で基地を飛び出した、
アークエンジェルとミネルバ。
キラやアスランが整備クルーと話しているすぐ側で、
一人ジェナスは苛立っていた。
───シンのあの、横顔。
あれを止めなかった自分を、責めていた。
(無事でいろよ、シン……)
かつての自分と同じ、憎しみに支配された横顔。
それで彼は出て行った。たった、一人で。
****
「はああぁぁぁ!!」
ビームジャベリンが、横一文字に薙ぎ払われる。
アビスが回避することなどわかっていたし、こちらの攻撃後の隙を
他の連中が狙ってくることも予測済みだ。
インパルスをジャンプさせた元の大地に、火線が集中する。
「討つ……討ってやる!!俺が!!」
上空でジャベリンの連結を解き、片方を投擲。
それを追うように機体を突進させ、アビスへの距離を詰める。
「ハイネを……お前が殺した!!まず、お前をっ!!」
はじかれたジャベリンは、大地につきささり。
シンはくるりとインパルスに空中回転させてアビスの右腕へと踵落としを見舞う。
続けてバルカン。
キックの衝撃と、指の関節部を破壊されたことで、アビスの右腕から
主武装であるビームランスがこぼれ落ちる。
『てんめええぇっ!!』
接触回線で相手の激昂する声が聞こえてくるが、気にも留めない。
更に顔面にバルカンを。こちらも相手の腹の複相ビーム砲が機体の顔面をかすめ焦げ目がつくが、
メインカメラを叩き割ることに成功した。
「ゆるせ……ないんだよっ!!」
右肩のあたりに、ジャベリンを深々と突き立てる。
モニターの隅に、変形し迫るガイアの姿を見たシンは、
小さな爆発と共にだらりと肩を落としたアビスを、インパルスに持ち上げさせる。
そして、ガイアめがけ放り投げる。
盾、あるいは隙をつくるための動きであったが、
ガイアはアビスを撃つことも、避けることもなく。
人型へと再度変形してそれを受け止める。
その間にインパルスの身を翻し、二本の対艦刀を引き抜くシン。
「───はぁ、っ、はぁっ、っあ」
レーザーの刃を、出力。
体勢を立て直す前に───まずは、あの二機をやる!!
ブースト全開、上空から追ってくるビームの雨を振り切りながらインパルスが突き進む。
「死ねええぇぇっ!!」
****
「───おせえよ」
やらせるか。
ダークはビームライフルの照準を的確に相手の大剣へと向けながら、言った。
発射。
敵の白い機体は、本体やバックパックへの攻撃は予測していたのであろうが、
武器そのもの、細く狙いにくい剣だけを狙うものは想定していなかったであろう。
「タフト」
一本となった剣で、なおもガイアとアビスに襲い掛かろうとするインパルスのバックパックを、
彼からの声を受けたフリーダムが切り落としていく。
崩れた体勢に蹴りを入れ、つんのめった機体脚部を、カオスとウインダムのビームライフルが吹き飛ばす。
支えを失い、白い機体が地面を舐め、這い蹲る。
「この戦力差に一人で挑むたあ、いい度胸だけどな」
二門のフォルティスが、
両足を失いそれでも残った剣を手に立ち上がろうとするインパルスを狙い撃つ。
頭部、そして上半身の装甲版が吹き飛び、コアスプレンダーがむき出しになる。
キャノピーさえ失われた脱出用戦闘機からは、小さくパイロットの姿が見えていた。
おそらくはもう、脱出装置として機能すまい。
「そりゃあ、無謀ってもんだろ」
こちらを向き、なおも機体を起こし戦意を示す半壊の機体へと、ダークはビームライフルを向けた。
「じゃあな」
───だが、彼が引き金を絞る前に。
黒い機体が、彼と白い機体の間に割り込んだ。
****
はじめは、それと気付かなかった。
「───え?」
モニターを、半壊した機体のコックピットにあわせてみたのは、なんとなくだった。
相手は、敵は「もうおわり」。
つまらないと思ったから、操作して、見てみただけだった。
だが、その先に映っていたのは。
「し、ん……?」
『ステラ、どうした』
見た瞬間、スティングからの通信も聞こえなくなった。
だって、そこには。
半壊したコックピットに座っていたのは。
血だらけで、ヘルメットすらなくして。ボロボロで荒い息をついていたのは───……、
<<君は俺が、まもるから───……>>
そう言ってくれた人。やさしくて、だいすきな人。
「シン……?」
シンが、そこにいたのだから。
「シン……どうして……?」
その彼へと、ジャスティスのライフルが向けられる。
シンが、殺される。
「!?」
ダメ。
シンを殺すなんて、ダメ。
シン、ステラを守ると約束した。
だから、ステラもシンを守らなきゃ。
思うよりはやく、機体を動かしていた。二機の間にガイアを割り込ませる。
そして通信機を全開にして、叫んでいた。
「ダメえええぇぇっ!!シン撃っちゃ、ダメっ!!」
全開になった周波数は、間違いなくシンにも届いていただろう。
「シン、逃げる!!ステラ、シン守る!!」
はい、遅くなりました。
これで31話「悪夢」です。
それでは。
うぁぁ(;;)
震えがきました。いっちゃダメとは絶対言えないけれど、ダメだよステラ―っ!
今回もGJでした次回も楽しみにしています
>遅くなりました
待つのも一つの楽しみですので、納得いくまでお書きください
>「シン、逃げる!!ステラ、シン守る!!」
ステラがシャシャ語喋ってる件についてw
おつかれさまです。
ステラがガイアでtrrrrrrしながらハイネグフの首獲るってのも面白かったかもな
いや、むしろステラも触手に(trrrrrr
アム種クロスwikiに収録しちゃっていいかな〜?
アム種 第六十三話 フル・ウエポン
やられた、と思った。
ハイネの仇もとれず、トダカの復讐もできず。
圧倒的な力の前に、死を覚悟した。
その時、声が聞えた。
血染めで朦朧とした意識の中にも、はっきりと。
聞き覚えのある少女の声が、聞き違えようのないほど、耳の奥底を貫いていった。
『ダメえええぇぇっ!!シン撃っちゃ、ダメっ!!』
「───え」
一瞬、自分の耳が信じられなかった。
けれど、それは確かに、間違いなく。
『シン、逃げる!!ステラ、シン守る!!』
「ステ……ラ……?」
自分が、守ると約束した少女の声。
殆どが死んだコックピットの計器が辛うじて拾った、敵機からの
最大音量での叫び。
「うそ……だ、ろ……」
黒い機体が、紫の機体を遮り立ちはだかっている。
ステラが、あの機体のパイロット。
ガイアの、強奪犯。
幾度となく殺しあった相手だったなんて。
大量の出血に消えゆく意識は、その事実を認めようとはしなかった。
だが、このような極限状態だからこそ、より深く刻み込まれてしまう。
ステラが、敵だった。
あのか弱い少女が、敵。
守るべき存在は、殺しあう相手。
「ステ…………」
嘘だと、言ってくれ。
叫びたくても、声なんてもう出やしなかった。
守るべき者と敵の逆転。その残酷な現実に、シンは絶望を抱きながら。
真っ暗な意識の深層へと埋没していった。
その黒い色は、血の色にも似て、ほんのり赤みを帯びていた。
****
『おいおい、嬢ちゃん一体、どういうつもりだ?』
ダーク、だっただろうか。野太い男の声が尋ねてきた。
「ステラ、シン守る。死ぬのはダメ、シン殺して、死ぬのダメ」
『ああん?……おいおい、そいつは敵、なんだぜっ!!』
「っ!!」
返事が、気に食わなかったのだろう。
紫色の機体はビームライフルを一発、発射し。
ガイアの右肩へと直撃する。
避けるわけにはいかない。後ろには、シンを乗せた半壊状態の機体がその機能を停止しているのだから。
ステラは耐える。
『そこをどきな。あと一発ぶちこみゃ終わるんだから』
「いやっ!!」
『おい、ステラ!!何をやって……』
ネオが言い終わる前に、今度は右膝に一撃。
片膝をつくガイアに、それでも彼女は盾を構えさせ続ける。
『ダークのおっさん!!待ってくれ!!ステラは、あいつは……!!』
スティングも、シンのことに気付いたらしい。
だがガイアのだらりと垂れ下がっていた右腕が、ビームによって完全にふっとぶ。
コックピットの計器にスパークが走り、小さな爆発と衝撃にステラは身をすくめた。
『もう一度言うぜ。さっさとどきな。敵をかばうなんざ、裏切り者のすることだ』
『D!!ステラ!!よせ!!俺たちの任務は……』
『ザフトぶっつぶすことだろうが、最終的には。裏切り者も同じだ』
二門のビームキャノンを受け、シールドが爆散する。
頭部へと、ビームライフルが撃ち込まれる。
あっという間に、インパルス同様ガイアが無力化される。
それでもステラは退かなかった。
『さあ、どきな』
「やだっ!!ステラ、シン守る!!守らなきゃ死ぬの!!死ぬはダメ!!」
『ステラっ!!』
『……てめえ』
ネオの声に、はじめてステラは従わなかった。
死ぬのは嫌、死ぬのは怖い。
シンが死ぬのは、ダメ。
『ステラ、よせ!!おっさんも!!これには事情があって……』
『お前ら、俺たちの任務はだなァ……』
スティングのカオスが降りてきて、ダークをなだめるように言う。
ネオも、なんとかステラから彼の矛先を外そうとしているのがわかる。
今のステラは、彼らの説得のおかげで生かされているようなものだ。
シンも。
『くくっ……反応、反応ッ!!敵!!敵!!戦艦戦艦戦艦んーっ!!』
揉める彼らを静観するように、じっと滞空していたフリーダムから
歓喜のごとき叫びがあがる。
同時に、ステラを含む他のパイロットたちも表情を一変させる。
『戦闘!!戦闘撃つぞ撃つぞ撃つぞあおおおおおおおんんっ!!!!!』
スクラップと化した、インパルスを目指し。
また、ロドニアの彼らが目前に見据える研究施設を目指し。
白亜とダークグレー、二色の戦艦、旧敵たる艦隊が、近づいていた。
結果的にその遭遇戦ともいえる状況が、シンとステラの命をこの場において救ったのだった。
****
『ジェナスたちはシンの救助!!急げよ!!』
『了解』
『レイは俺と一緒に基地の確保を最優先だ。いいな』
『はっ』
バルドフェルドの指示を聞きながら、キラは機体を立ち上げていく。
『キラ、アスラン。お前らは少々きついかもしれんが……あ───』
「フリーダムとジャスティス。あの二機を施設に近づけないように」
『そうだ。頼むぞ』
「はい。アスランも」
『ああ……やつらは俺たちで』
ノワールの機体がアームに持ち上げられ、カタパルトへと移動していく。
だがしかし、その装備は、普段のそれとはいささか異なるものとなっていた。
どこか、見慣れた者が見れば違和感がある。そんな感じだ。
「うん、やろう。アスラン」
『ああ』
肩の鋭角的な突起状のパーツが、取り外されているのだ。それだけで大分イメージが変わる。
「……シン」
待っていてくれ。
思う彼を乗せたストライクノワールが発進位置へと就き、
左右のハッチが開いて装備すべき武装がせり出してくる。
本来装着されるべきパーツを外された両肩に装備されるのは、それぞれ
右はモスグリーンの重機関銃、左は水色のビームブーメラン。
左腕に、アンカー兼用の小型盾。後ろ腰には、慣れ親しんだ形状の57mm高エネルギービームライフルがマウント。
そして、右手にはMSの身の丈ほどはあろうかという、対艦刀を。
左手には、強大な火力を持つ超射程のビーム砲、アグニをしっかりと保持する。
もちろん、機体の機動力と戦闘力の要たる、ノワールストライカーパックが背中にはある。
「フリーダム。昔の僕……」
蘇った幻影。
それは、自らの手で倒さなくては。
同じように、アスランもセイバーのコックピット内で思っていることだろう。
かつて、キラが使用した事のあるストライクの武装のほぼ全てが、そこにあった。
己の過ちを体現するあの機体。その幻影を、拭い去るために。
「キラ・ヤマト。ストライクノワール・フルストライカー。いきます!!」
黒ではなく。
純白に染まった機体が、空に舞った。
アム組の活躍はもう少し我慢していただきたいです・・・はい。
もう少しできちんと見せ場も役割もありますので・・・。
近いとこだと、ニルギとジェナあたりが・・・。
乙です!
ノワールにかつて使用したストライカーパックの装備を全て持たせるなんて
実に燃える展開ですな。
アムドラ組の活躍もwktkしながら待ってますよ!
フルストライカーと白ストライクEktkr
フルウェポン、アム種のキラなら使いこなせそうだが種死の無能キラならすぐに
エネルギー切れ起こしそうだな。
洗脳の影響かダークさんまさに暗黒化してるのにびっくりだ
301 :
291:2006/12/17(日) 16:55:48 ID:???
切り出し完了ただいま編集中。
登録作者名は134の人 ◆SdN5hSk1hY でいいかな?
>>301 おkです。ありがとうございます。
・・・さて、なんで手元に紫の塗料とHGフリーダムがあるんだろうね
塗装済みのHG白ストライクEが手元にあるんだが、ソードとランチャーは
何処の店行っても置いてなかった。
ノワールフルウェポンうpしようかと思っていたんだが……
304 :
291:2006/12/17(日) 19:10:35 ID:???
とりあえず二話分登録。
フォーマットとかご意見があれば今のうちにどうぞ。
修正とかなければ、そのままどんどん登録していきます。
>>304 GJ!!やったZe!!!!
凄く見やすいですよ!俺は初代からの住人だけど、話数で見出しつけて見れればと思ってたんだよね・・・・。
未完の今ですら60うん話ありますが、宜しくお願い致しますね。
俺達の月曜日!
保守!
連ザUの隠者の前格ってもろにボーダタックだよなぁ。
こっちは左手で持ってるけど。
それにしてもシン、無力だな・・・・。
まぁ憎悪に支配された人間が勝ってはいけないんだけどね。
それにしても新三馬鹿は今後どうなるんだろう・・・。
シンに「お前も俺たちと来い!」とやるんだろうか。
アム種 第六十四話 刹那の幻
「シン!!おい、しっかりしろ!!」
コックピットからひきずり出したシンは、既に半死半生。
ひどい出血に顔が染まり、意識さえも失って不規則な荒い呼吸を返してくるのみだった。
ジェナスはそんなシンをかつぎ、待機するセラのストームバイザーへと載せる。
「ゆっくり、なるべく動かさないようにたのむ」
「ええ」
セラならば、万が一にもそのようなことはないだろうと思いながらも、
一応注意しておく。
と、バイザー上に横たえたシンがなにやら、うわ言のように呟いているのが耳に入る。
「……ら……テ、ラ……そ…って…って、……れ……」
「シン?」
「行くわ。護衛よろしく」
「あ……ああ!!」
慌てて、ネオエッジバイザーに飛び乗る。
先導にジェナス、後方にニルギース。
大破したインパルスを残し、彼らは機体を発進させた。
****
「でえええいっ!!」
セイバーと、ジャスティス。二機のサーベルが交差し、干渉のビームを散らす。
「お前達は、俺たちが討たなくちゃならないんだ!!」
頭部を狙ってくる相手のフォルティスを、首と身を捻ってかわし、
お返しにバルカンをコックピットの真上に叩き込む。
PS装甲だから決定打にはならないが、かなりの衝撃が襲っているはずだ。
「……ハイネ!!力を貸してくれ!!」
サーベルを収め、シールド裏にマウントされた武器に手を伸ばす。
急造の収納機構にロックされたそれは、
ハイネの遺品たる、グフの予備ビームソード。
予備とはいっても、整備にぬかりはなく調整は完璧だ。
自分の過去の亡霊が、ハイネを殺した。
その思いが、彼にこの武装を手にさせていた。
「戦争は……戦争だ!!それ以上でも、以下でもない!!」
続けて、四門のビームを撃ち放つ。
「だが、割り切れないことだってあるんだっ!!」
ビームソードに、ビームを出力。
セイバーの膨大な全推力で接近戦を挑む。
「お前ら亡霊にはわからなくとも!!俺たち人間にはっ!!」
気合いを吐き出すと同時に、例の種が割れるようなイメージが頭をかけめぐる。
「俺は……自分の過去の罪をそのままにしておけるほど、狂っちゃいない!!」
左手のビームライフルが、撃ち抜かれる。
直後投げつけられたシールドを、アスランは一刀両断にビームソードで切り捨てた。
───流石、ハイネの愛用の品。手に吸いつくようだ……!!
骨太だったグフに比べ、可変機のセイバーでは
大型のビームソードの出力による関節部への負担が気にかかるが、
それを補って余りある。
「いくぞっ!!ジャスティス!!」
お前たちはもう───あってはならないのだ。
****
「スティングはステラとアウルを連れてけ!!ここは俺たちで押さえる!!」
『ネオ!?』
「いーからいけ!!どっちみちその状態じゃ二人とも戦えん!!」
向かってくる白いザクと、黄色のムラサメ。
いつもの二機を相手にし、分が悪いことがわかっていながらも、
ネオはスティングに大破した二機とともに脱出することを命じた。
「ちいいぃっ!!こいつぁ面倒なこった!!」
いざというときは、施設内部まで入って爆破することも考えておかねば。
ミサイルの弾幕を避ける軌道を描き、ウインダムを操る。
ムラサメとザク、二機分のミサイルが一機を襲うのだ。
その数は容易に避けきれる数ではない。
だが、ネオは避けきった。
「ナチュラルだからって……なめんじゃねーぞっ!!」
ムラサメと、ビームライフルを向け合う。
ネオの放ったビームは、ムラサメのシールドを撃ち。
ムラサメの射撃は、ウインダムのジェットストライカーへと命中した。
「ちいいぃっ!!」
****
羽根から煙を上げて、ふらふらとウインダムが降下していく。
ただ飛行し続けるのが不可能になったから、というわけでもないらしい。
「あいつ……施設を!!」
『追いましょう!!バルドフェルド隊長!!』
マゼンタカラーの機体の狙いに気付いたバルドフェルドは、
同じように気付いたらしいレイの言葉に強く頷く。
「ああ、そのつもりだ!!……ミネルバ!!」
『は、はいっ!!』
「施設に突入する!!シンの収容が終わり次第、ニルギースとジェナスもよこしてくれ!!」
『了解です!!』
もう、敵は施設に不時着しようというところだった。
誘爆の危険性があるため、狙い撃つことはできない。
「いくぞっ!!」
『はっ!!』
キラとフリーダムの激しい空戦を横目に、レイと共にウインダムを追う。
モニターは、丁度機体から降りた敵パイロットの後姿を自動で拡大した。
「……ん?」
その後ろ姿に、妙な既視感をバルドフェルドは覚えた。
黒い連合の制服に、なにやら頭を覆っているヘルメット?らしきもの。
そこからこぼれ出す長い金髪にも、見覚えなどあるはずもないのに。
その後ろ姿の身のこなしに、なにか心当たりがあるような気がする、そんな不思議な気分だった。
「……フラガ?」
口をついて出た言葉にはっとなり、慌てて頭を振る。
何を言っているのだ、自分は。死んだ男の名を、敵兵に向かって呟くなど。
通信機のチャンネルが、アークエンジェルのブリッジと直通になっていなかったことを確認し、安堵する。
気のせいに決まっているのだ。
現に、今自分は彼の代わりに彼女の側にいるのだから。
ムラサメを着陸させ、拳銃を確認しながら。
バルドフェルドは自分の感傷を愚かしく思った。
****
『……それではシャトル207便、ポートタルキウスに向け降下します』
「おう、気をつけてな」
仏頂面で一言も発さない上官に代わり、ディアッカは地球に降りていく
シャトルの乗員たちを労い、通信を切った。
「そう、不機嫌になるなよ。イザーク」
「これがならずにおれるか!!こんな大事な時期に、シャトル一機のために護衛など!!」
「仕方ないだろォ、積荷が積荷なんだし。アーモリーワンの一件だってある」
上官にして親友の怒鳴りつける声をなだめすかし、
やれやれとディアッカは溜息をつく。
「それとも何?シホちゃんが地球に降りてっちゃったまんまで、寂しいわけ?」
「ああ?何を言っている?大体だな、いつもいつもアスランのところにばかり議長は補給を……」
「お前だってグフまわしてもらっただろうが……」
まったく、冗談も通じない。
そりゃ、長い付き合いだからわかりきっていることではあるが。
「ま、大丈夫だって。アスランやキラたちなら、アレを腐らせることもないだろ」
「そういう問題じゃない!!」
「はいはい」
そういえば、ポートタルキウス……マルマラ海のアークエンジェルにはミリアリアも乗っているのだろうか?
イザークの喚きを聞き流しつつ、ディアッカは一人の少女のことを思う。
振られておきながら、自分も未練がましい男だな、と笑いながら。
「笑うなっ!!大体お前は副官として隊長への……」
自由の翼が、再び彼らの力とならんことを。
「聞いてるのかっ!!」
オペレーターの女性隊員が噴き出しそうになっているのに気付き、ようやくディアッカはイザークのほうへと向き直った。
はい、64話投下です。
これで63話とあわせ第32話「刹那のまぼろし」となります。
そして、あらためましてwikiへの登録ありがとうございます。
>>308 まあ中には最後まで己の憎悪に忠実に従ったまま、復讐を完遂させて最後まで普通に生き延びた主人公もいるから一概には言えんけどね
ただアムドラ的にはマイナスなんだろう
>>314 GJ!個人的には、ネオとステラ達がどうなるのかが気になったり
続きをwktkしながら待ってますよ!
乙!
>「仕方ないだろォ、積荷が積荷なんだし。アーモリーワンの一件だってある」
>「ま、大丈夫だって。アスランやキラたちなら、アレを腐らせることもないだろ」
>自由の翼が、再び彼らの力とならんことを。
・・・中身は和田と隠者か・・・、議長とザルディの会見がどんな結末に終わったのか
興味は尽きないが・・・。
>急造の収納機構にロックされたそれは、ハイネの遺品たる、グフの予備ビームソード。
こう言う所で自然にアムドラ本編のオマージュを入れる辺り相変わらず芸が細かいですな。
思えばハイネもドラマティックさの欠片も無いようなおざなりな登場の仕方をした割には
実にオイシイキャラであった、合掌。
そんな貴方にボンボン版
月を背に1ページぶち抜きで颯爽と登場し、大活躍した勇姿と、
短いながらもシンの良き先輩として、最後にはシンを庇って見事にその命を散らせた男ぶりに惚れること間違い無し
うむ。あれはいいものだ。
インパルスの合体システムの盲点を突いたカタパルト狙撃(しかもアビスの水陸両用の
設定を生かす為に舞台を渓谷に設定する緻密さ)でピンチに陥ったシンを救うあの鮮烈な
初登場はまさに神。「ザクとは(ry)」に物凄い説得力があった。
高山ハイネの台詞で一番好きなのは「便所掃除三回!(ブリーフィング遅刻の
ペナルティならそんなもんでしょ)」かな。
この一語で話の分かるフランクな上官と言うのが凄くよく分かる。
散り際のやり取りなんかも、最後まで飄々とした先輩を貫いた名シーンだが
何より戦死の後でシンが黙って便所掃除してるのが泣かせるんだよな・・・
これ、たった月刊誌2回分(+数ページ)の内容なんだぜ。濃すぎ。
本編以外は概ねまともな死に方(てのも変な言い方だが)してるな。ハイネは。
>散り際のやり取り
シンがハイネを呼ぶ時はいつも「ヴェステンフルス隊長」だったのにシンを庇って散った
その時初めて「ハイネぇぇぇ!!」だからな・・・切ないよ。
元々本編でもシーンと似たような立ち位置のオイシイポジションにいたから描写次第では
かなりの重要人物になれた筈なんだよね、ハイネも。
本編でおざなりな死に方だったのは所詮負債のお遊びでしかなかったからと言うのが大な訳で。
二次創作の職人さんや高山先生みたいにある程度フリーハンドで出来る方は、勿体無いと
思う方が多いのかも。
このアム種でもシンの独走を論理的に嗜めてみたり、一方でアスランに心情を吐露させて
みたり、何より紫組に人殺しの十字架を背負わせたのが大きいと思う。死ぬ時丸々一話貰ったし。
「死」によって後に残された人間に存在感をアピールするのはアムドラの定番だからな‥‥‥。
保守!
ウィキ更新無いな・・・
こういう時パソコン使えないとつらい・・・ その前にlogねぇ('A`)
すみません、ここ数日私用でたてこんでましてネットに入れなかったもんで……
で、問題なんですけど、ファイル名を登録作者名+話数という、
標準的なフォーマットで行くと、更新履歴でモノスゴクわかりにくいという弊害が……
ファイル名を現行のままでいくか、頭の識別符を『アム種』と日本語にしてしまうか、
作者名をトリップかNoがいずれか一方にしてしまうか、などなど悩んでいるのですが、
皆様のご意見をいただけないでしょうか。
おつかれさまです。
オレの場合は、wiki内のアム種のページに直リンしてるから更新履歴は殆ど利用しないのですが、
>頭の識別符を『アム種』と日本語にしてしまうか、
個人的にはこれに一票。
作者名に関しましては、134さんご本人にお伺いしたい所ですね・・・・。
>>326 1スレ目からのログはあるけど、うpローダー使うまでのプロセスって、やった事無いから
分からないんだよね・・・・or
>>327 毎度、ありがとうございます。
自分は
>>327氏がやりやすい形にしていただいてかまいません。
まあ、作者名をNoだけか識別符をアム種か、がわかりやすいとは思います。
では、65話(33話Aパート)を投下します。
今回は人によってはちょっとアレな表現があるかもしれません。
その場合は申し訳ないです。
アム種 第六十五話 バイザーバグ・ファクトリー
「いくぞ」
ちらと後方の戦闘へと目をやって、バルドフェルドは拳銃を片手に言った。
施設内部の汚染状態、衛生状態は確認済み。
踏み出した彼にレイが続く。
『ジェナスとニルギース、発進しました』
「了解した。先に突入する」
敵の隊長と思しきパイロットは、既に内部へと消えている。
爆破などされてはことだ。急がねばなるまい。
銃撃に警戒しつつ、バルドフェルドとレイは、その身を躍りこませる。
エントランスのようになっている天井の高いそこは、薄暗く。
これといって見るべきものもなさそうだった。
「しかし……一体こりゃ、なんの施設だ?……ん?」
予想以上に、広い。
壁に見つけた見取り図を見る限りだと、多少危険でも分かれたほうがよさそうだ。
「レイ、お前さんはどう思う?」
彼は振り返り、レイに問いかける。
だが、そこに無表情に立っているはずの姿はなく。
「レイ!?」
一人の少年が、苦しげに身体を抱えて蹲っていた。
「おい、レイどうした!!どこか……」
「ここは……この場所は……いやだ……それに、やつは……」
「レイ!!」
がくがくと震える彼の顔は、蒼白だった。
普段の落ち着きようなど、見る影もない。
「バルドフェルドさ……レイ!?」
「ジェナス、ニルギース!!」
遅れて到着したジェナス達が、駆けつける。
「お前達のセンサーに、何か異常はあるか!?空気の成分や、ガスの類の!!」
「え!?」
「……いや、ないな。いたってこの周辺の空気状態は正常だ」
うろたえるジェナスと対照的に、ニルギース冷静にが答える。
つまりは、レイのこの状態は、彼だけのものだということだ。
ジェナスやニルギースのアムジャケットに搭載されたセンサーの類は、
こちらの世界のヘタな調査機器よりよほど性能がいい。
自分達が見落とした異変も、彼らならばわかるはずだ。
その彼らが言うのだから、間違いはない。
バルドフェルドはそう判断した。
「ニルギースは、レイを頼む。ジェナスは俺とこの施設の調査に当たれ」
震え続けるレイを支えるジェナスに、ついてこいと命じる。
ジェナスは少し躊躇してから、ニルギースのほうに目をやって頷いた。
「まずは地下。そのあと、上を捜索。敵のパイロットが潜んでいるかもしれん、気をつけろ」
****
フリーダムの腰のレールガンが、火を吹く。
敵がレールガンを起動しだした時点で、キラは行動を起こしていた。
左腕に携えたアグニを撃ち放しつつ、横に薙ぐ。
こちらのほうが下方に位置しているから、施設に当てる心配はない。
ビームの帯が、レールガンに撃ち出された砲弾を焼き払った。
「ふうっ!!」
今度は、こっちが。
翼のレールガンとアグニを、一斉に放射する。
ハイマットモードに変形したフリーダムは鮮やかにそれをかわすとサーベルを引き抜き、
電光石火のごとくこちらに向かってくる。
かわしきれる距離ではないことをキラは悟っていたから、
逆にアグニの砲身を差し出す。エネルギーの充填を、続けたままの状態で、あえて。
同時に、脳内に種が弾ける。
斬られた砲が起こした派手な爆発の中へと、視界もないまま対艦刀を手につっこむ。
もっとも隙の少ない刺突であったが、手ごたえはない。
フリーダムはその異常なまでの回避能力で爆風を抜け、背後からストライクを切り捨てんと狙う。
「まだっ!!」
ビームブーメランを引き抜き、サーベルを受け止める。本来は投擲用の武器だが、こういう使い方もある。
振り向きざまバルカンと肩のガンランチャーを乱射し、牽制。
アグニを失った左手を、対艦刀へと添える。
「っく!!」
まさか、「この状態」でも攻めきれないなんて。
自分の力を過信していたわけでも、敵を過小評価していたわけでもないが、
フリーダムの動きにキラは舌を巻く。
『でええぇぇいっ!!』
ジャスティスとは、アスランのセイバーが激しく剣と剣をぶつけあっていた。
あちらも一進一退、互角といっていい。
「でもっ!!」
気は抜けない。だが、負けるわけにもいかない。
長期戦は禁物だ。
こちらはバッテリー、あちらは核。
いずれ、エネルギーが先に尽きるのはこちらなのだから。
****
レイたちを残し足を踏み入れた地下のその場所は、スクラップと化した
機械の山に埋もれていた。
「これは……」
その一角に座する、見知った形の「それ」に、ジェナスは気付く。
「バイザーバグ……こんなところで」
幾度となく戦ってきた、もの言わぬ機械の兵士たち。
それが、このような場所で実験、製作されていたなんて。
悟り、ジェナスは複雑な思いを抱く。
「ジェナス、こいつは」
「……ええ、バイザーバグです」
「調べられるか?少しでも情報が欲しい」
「やってみます」
だだっ広いドックと思しき部屋の一角に、言いながらバルドフェルドは生きている
コンピューターの光を見つけ、歩いていった。
「……どうやら、ここは『エクステンデッド』の研究施設だったらしいな」
「『エクステンデッド』?」
共に、手を動かしながら。
二人は会話する。
「簡単に言えば、薬漬けにして身体の機能を大幅に高めた兵士だ。ドーピングの極まったもんだと思えばいい」
「……」
「ここでは孤児を集めて、そういう兵士にするよう仕向けていたようだ」
子どもを、兵士に?
その単語に、ジェナスのゆびがぴたりと止まる。
子どもなど、まず真っ先に護られるべき存在ではないか。
彼は、自身の年齢も忘れ憤る。
「まあ、子どもの身体は発展途上だからねェ。戦闘技術を教え込むにも、薬漬けにするにもうってつけだったんだろうよ」
「ひどい……」
「まあ、な」
相槌を打つバルドフェルドの目は、何故かジェナスへと向けられていた。
申し訳なさそうな、憐れむような目だった。
「目的と手段が、入れ替わっちまったんだろうよ。でなけりゃ、こんな無茶な研究はせんだろ」
コーディネーターの優位性を否定するために肉体を強化し、戦争に勝利する。
戦争に勝利するために、肉体を強化する。
吐き捨てて、彼は肩を竦めた。
「しかし、妙だな?」
「え?」
「その機体……バイザーバグ、か?生化学中心のこの施設で一体何故、機械兵器が……」
防衛用、というならもっと数があるはずだろう。
ということは研究、開発用のものであるはず。
このような場所に、一体何故?本来ならば工廠で開発されるべきものであるはずなのに。
「さあ───……っ!?」
「どうした?」
「中枢部分が、開けそうです」
「本当か?」
緊急排出用と思しきスイッチが、見つかった。
これもまた、あちらの世界のバイザーバグにはなかったものだ。
そもそも自分で考え、動く機械に不用なものだ。
不審に思いつつ、操作する。
「開けます」
さして問題もなく、スイッチは作動した。
軽い音を立てて、機体胸元のハッチが開く。
そして、無色の液体が噴出し。
「「!?」」
同時に、赤黒い肉色をした物体が、転がり落ちた。
それは紛れもなく───……人間の、脳であった。
今回は以上です。
近いうちにまた死人が出ることを先にお断りしておきます・・・。
それでは。
乙!
キラが完全に読み合い、化かしあいで凄く頭使って戦ってますね
予想通り早々にアグニはスクラップになったか・・・。
>いずれ、エネルギーが先に尽きるのはこちらなのだから。
禿しく乗換えフラグっぽw
そして研究所だけど、成程、エクステンデッド施設を見る役目にジェナとニルギを
持ってくるか・・・・。CE世界の腐敗の現状を14の子に見せなけりゃならない32歳
虎も相当複雑だろーな・・・・・。
乙!バイザーバクの正体が判明したか・・・
>近いうちにまた死人が出る
このタイミングで死ぬ奴って?
予想通りとは言え、ジブリールに対しての怒りが胸に沸くな……。
そしてこの時点で死ぬとなると……虎か紫組辺りしか思い浮かばない。
正史では死んでたはずのアウルはもう撤退してるし。
紫組は一度死んだと思いきや再登場と言う前歴があるが、結果虎が思いっきり
レッドゾーンだよなぁ・・・・。
>>233 >>234で、
>「……だけど、あなたの体は」
>「わかっているさ。とっくに自分がパイロットとしては不適格ってことくらいは」
>四肢のうち、二つまでを失い、隻眼となった男が人並みにMSを扱うなど。
>身体にかかる負担は並大抵のものではない。
・・・・・・・・言われてみるとここでこんな伏線出てた辺り・・・。
誰がいなくなってしまうのか…。
それはおいといて本日もGJ!
バイザーバグの中身が思ったより遙かに悪かった……
ジェナたちが運んできたかもしれない悲劇;
あの男が味方にならないかなぁ…
>正史では死んでたはずのアウル
アムドライバーがCEに飛ばされてきた事によって、どうやら死の筋書きが大幅に変わったらしいな。
さようならアンディ、君はこのアム種では実に立派な大人役だったよ‥‥‥
一機は少なくともジェナが落としてるし、残り八機は全滅してるんだよな、「バイザーバグ」。
さあ、どう出るジェナよ・・・・・。
>>341 その話で行くと後でアウルも殺される訳だがw
待たせたな,ピープルのみんな!
アム種一話〜十話まで、華麗にwikiにレジスト完了だ!!
(第一話と第二話はファイル名変更だけだけどな)
これから1週間、毎日十話ずつ登録していくぜ。
過去ログを持ってないみんなもジュナとシンたちの活躍に期待していてくれ。
おっと、wikiのアドミニストレイターの許可が得られたら、
十話と言わず一気にドバーっとレジストするかもしれないぜ。
こっちはあんまり期待せずにwwww、ほどほどに待っててくれ!
それじゃ、明日も華麗にキめるぜ!
ご覧下さい!アムドライバー
>>343がDat落ちしてた過去話を解放しました!!!
GJ!
登録を「アム種」にしたのは大正解であったな。
他が長いのにこちらは3文字だから凄く目立つ。
それにしても、一気に10話とは何てカゲキにスゴい更新速度だー!
俺らにはまさに最高のクリスマスプレゼント。メリークリスマス。
そして俺たちの!
月曜日!
ハローピープル!今日はみんなにバッドニュースが二つとグッドニュースが一つあるぜ!
まず最初のニュース、日曜日の分のwiki登録を落としてしまった。
約束を破るなんてピープルを守るアムドライバーの風上にも置けない。
オレたちは深く深く反省している。すまなかった。
第二のニュース、い週刊連続で登録すると言う約束だったが、これも事情によりできなくなった。
せっかくのクリスマスに暗いニュースばかりですまない。だがあきらめるのは早い!
最後にみんなにでっかいプレゼントだ!
アム種既発表分全六十五話、ついに登録完了だ!!
驚いたかい、みんな。
実はオフラインで編集にかかりっきりになっていたんで、日曜日分の登録がずれ込んでしまったんだ。
全ストック分の登録が終わったから、(新作が出るまで)明日以降の登録もなくなったってわけさ。
もう●もモリタポもないピープルでもいつでも過去のエピソードが読めるぜ!
我らがディーヴァ、ラクス・クラインとインスタント・ヌードルで乾杯だ!!
アムドライバーはピープルを守るためならいつでも全力を尽くすぜ!
これからもCEワールドでのアムドライバーの活躍を応援してくれ!
そしてユニット134に惜しみない賞賛を!GJの声が最高のバジェットになるぜ!
それじゃシーユーアゲイン!
乙を通り越して更新履歴がSugeeeeeeee!!!!
まる一日がかりでしたでしょうに・・・・・・。
アムドライバーとサンタクロースは実在した、と言う事か・・・。
これぞ俺たちの月曜日と言うもの。アムドライバー兼サンタ
>>347に惜しみない拍手を!
(それにしてもバッドニュースを一気に覆すグッドニュースと言うは芸が細かいw)
∧,,∧
(`・ω・´) カップラーメンにお湯をいれたよ!俺と一緒に、
( o__,o)
 ̄ ̄ ̄ ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄\
プ ロ ー ジ ッ ト !
凄い行動力と体力‥‥‥いや、これもアムエネルギーの為せる業か‥‥
>「「(新作が出るまで)」」明日以降の登録もなくなったってわけさ。
アッハーン!?新作投下時の編集、登録もやる気まんまんってか!
>>347氏の背中に後光が見えるぜ‥‥
アム種 第六十六話 フォールン・エンジェル
「なん……だよ、これ……」
転がり落ちた生々しい物体に、ジェナスは絶句する。
何故、バイザーバグの中にこんなものが?
こんなおぞましいものが入っているのだ、と。
「成る程な……そういうことか」
一方で、同じように顔を顰めていたバルドフェルドは、何かを理解したようだった。
「お前らから、自律行動する機械兵器だなんて聞いて、おかしいと思ってはいたんだ」
そのようなもの、この世界のどこでもまだ、開発されたことはないのだから。
自我を持つAI程度ならば存在するが、兵器に転用できるほどに
高性能でかつ生産性、整備性に優れたものがそうたやすく出来るわけもない。
そういった技術の差がありながら、あきらかなオーバーテクノロジーであるバイザーバグを
連合が生産、運用することが出来ていた理由。
「……それがこいつってことだ」
薬漬けにしたエクステンデッドから脳を取り出し、制御コンピューターの代わりに搭載する。
MSよりも小さく、素早く。更に様々な状況に対応できて安い兵器の出来上がりと言うわけだ。
「でも、それじゃあ!!そんなことのために子どもたちを!?」
「不思議じゃああるまい。現にここは「そういう実験をしていた」施設なんだ。データも残ってる」
「そんな……!!」
だったら。
ダーダネルスで、自分が斬ったあの何機ものバイザーバグは。
なんの罪もない───……。
「おい、自分を責めてるんじゃないだろうな」
「……」
「悪いのはお前じゃない。それにこんな仕打ちを受けて、人間が人間でいられると思うか?」
「だけど、これは」
「こういう言い方は嫌いだがね。楽になったほうが、死んだほうがましってこともあるもんだ」
仮に、万一自我が残っていたとしても。
このように脳だけにされて生きていて、何になる。
バルドフェルドは壁の一角にかかっていた土埃だらけの白衣をひっぺがすと、
かつて人間であった「それ」を休ませるように、覆い隠した。
「そうだなァ、こーりゃあひでえもんだよなァ」
だが、彼のその、神妙な行為も。
打ち消すかのように軽薄な声が暗い地下に響く。
「「!!」」
とっさに、近くにあった机の裏に隠れるジェナスとバルドフェルド。
彼らの飛びのいた地面を銃弾が襲い、白衣に隠された脳髄を弾けさせる。
「ったく。どーりで上は見せてくれないわけだ」
一応隊長の、この俺に。
仮面の男は、背後に一人の影を従えて。
煙燻る銃口を二人に向けたまま口元に笑みを浮かべた。
****
───ここは、いやだ。自分と同じ者たちが、多すぎる。
ニルギースに支えられながら、レイは震え、怯え続けていた。
クローンである自分。造られた自分。
エクステンデッド、造られた者たち。
間違いない。彼らはここで「造られて」いる。
肌で、わかる。だから、不快で辛い、怖い。
けっして満足な人間たりえぬ生命である、己を突きつけられているようで。
そして、あの男。
自身のオリジナルと同じ遺伝子を持つ男が、近くにいる。
よりにもよって、この場所で。
自分と同じ存在──ラウ・ル・クルーゼの顔が脳裏に浮かんでくる。
彼は、自分には優しかった。けれど、世界を憎んでいた。
世界を憎み、そして身を滅ぼしていった。
自分もまた彼と同じく、誰かのコピーに過ぎないのだ。
レイは、ラウで。ラウは、レイ。メンデルで言われていたことが、
彼の心を苛んでいく。
『はああぁぁぁっ!!』
と。
ニルギースの外したヘルメットから、空中で戦うキラの声が流れ込んできた。
人の夢、人の業。そう形容された彼の、必死の気合いが、それから伝わってくる。
──君は君だ。彼じゃない──
彼は、スーパーコーディネーターだから、戦っているのだろうか?
否。彼が、それを望んだから、戦っている。一人の、人間として。
彼にかつて言われた言葉を思い出し、レイの瞳に光が戻る。
命はいつだって。誰にだってひとつだから。
意志も、命も。それはレイ自身のものだと、キラは言ってくれた。
レイの生み出された原因に等しい、彼の口から。
「そう、だ……」
「レイ?」
俺は。
俺は、レイ・ザ・バレルなのだ。
ラウでも、アル・ダ・フラガでもない。
たとえこの身が造られたものであったとしても、
この意志は違う。
エクステンデッドのように命じられ、造られた理由で戦っているのではない。
これは……自分の意志なのだ。
気がつけば、震えは止まっていた。
手を数度握り、やれるということを自己に確認させる。
「……ニルギース」
「大丈夫、なのか」
レイは、すっくと立ち上がった。
「行きましょう。二人のことが心配です」
そこには、普段の冷静な少年が、完全に蘇っていた。
****
「悪いけど、消えてもらうよん?ここ見られちゃ、さすがにまずいだろーしねぇ」
ええい、まったく。
声まであの男に似ているなんて。
バルドフェルドの心は、敵の士官の馬鹿にしたような口調に苛立ちを募らせる。
「あいにく、そういうわけにはいかんなァ!!この事実は色々利用のしがいがありそうだ!!」
「だから消えてもらうっつってんでしょーが、このザフトちゃん共!!」
近付いてくる相手に、時折机から顔を出して撃ち返す。
撃ち返しながら、どうするべきかバルドフェルドは考えていた。
(……おい、ジェナス)
(はい)
(俺が囮になる。その間に奴を取り押さえられるか)
危険ではあるが、不可能ではないと思っていた。
ジェナスの身体能力とアムジャケットの性能ならば、一度取り押さえてしまえば抵抗もできないだろう。
彼の予測どおりに、ジェナスは頷く。
(不可能じゃないと思います。注意さえ引きつけてくれれば)
(ああ、任せろ。……よし、いくぞ)
(はいっ)
バルドフェルドが走り、少し離れたもう一つの机を目指す。
義足だなどと言ってはおれない。
着弾が、彼を追っていく。
「ここだぁっ!!もうやめろっ!!」
彼に気を取られた連邦士官へと、ジェナスが躍りかかる。
鳩尾に、一発。
それで無力化できるはず。
ジェナスはそう踏んでいた。
「……サセナイ」
しかし。
拳が士官の腹に吸い込まれることはなかった。
固めた右手は、眼前に突如として割り込んできた白い影に、がっちりと受け止められる。
「なっ……!?ぐ!?」
動揺し足を止めたバルドフェルドの肩を、銃弾が貫く。
だがそれ以上に、ジェナスは動揺していた。
「ヒュー、セーフっと。こいつだけでも回収できてよかったぜぇ、全く」
「……敵、首トル」
ヘルメットを外したボディスーツは、純白だった。
加えて、艶やかな独特の色をした髪がこぼれ出て、確かにジェナスにそれが彼女だと、認識させる。
「……な」
動くこともできず、腹に蹴りを食らいふっとぶ。
壁に激突し、よろよろと頭を持ち上げ。
ジェナスは弱々しく呟いた。
それが精一杯というほどに、呆然と。
「……どうして、お前が……」
白い、悪魔のようにも天使のようにも見えるデザインのそれは、紛れもなくアムジャケットだった。
ダークさんやタフトさんに続いて、お前もなのか。
そんな思いが、喜ぶべき再会でないこの出会いを一層、濁った色に彩る。
「シャシャ……」
かつて仲間であった少女は、笑わない。応えない。
無言でヘルメットを被り、剣をジェナスに向けるだけだった。
保管庫への収録、ありがとうございます。
自分も応えられるよう頑張らねば。
まとめさんも134さんもGJ!
そしてこのタイミングでよりにもよってシャシャきたぁ―?!
相変わらず先が実に気になります
ワクテカ
134さんもキター!!!
展開的にはありえる話とはいえおもいっきり凹んだけどねorz
成程、連載当初にアムキャラの誰が出せて誰が出せない、と言う話が
出てたのはこう言う事だったんですな。
ミネルバ&AAとファントムペインのパワーバランスの問題だったんだ。
遅くなったけど俺月!
そしてまとめGJ!
毎度の事ながら乙だ
アム種を絵にでもしたいが、俺の画力は棒人間以下だという・・・
そして今回の新作ももう登録済みと言う事実。
まさに抜く手も見せぬ電光石化の神業。GJ!
保守!
365 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/27(水) 16:25:40 ID:EyEZdhDF
あげとく
保守
アム種 第六十七話 戦士達の困惑
「ぐ……うっ!!」
ハイネの形見たるビームソードが、跳ね上げられるように斬り落とされ宙を舞った。
それを保持した、セイバーの深紅の右腕ごと。
「まだ、だっ!!」
シールドを投げ捨て、エネルギー供給を絶たれビームの刃を消失した刀身を左手に掴む。
間髪いれずジャスティスに投げつけると同時に肩のサーベルを引き抜き、頭部に突き立てる。
ビームソードは弾いたジャスティスであったが続く頭部への攻撃は完全には避けきれず、
メインカメラのある頭が、左半分ごっそりと失われた。
四肢のひとつと、視界。
ともに失ったものは大きく、痛みわけといっていいだろう。
セイバーのアムフォルタスとジャスティスのフォルティス、
双方のビーム砲が激突し、スパークを起こす。
まだまだ、やれる。こっちだって、その機体のことは十二分に知っているんだ。
そのことがなんのアドバンテージにならないことは、重々承知。
再度せりあげたビーム砲を片方、連結された相手のサーベルに切り落とされながらも
肩部装甲を吹き飛ばすことに成功する。
連結サーベルのビーム発振口も片方、潰した。
互角の状況は、未だ続く。
****
少女が被ったのは、見慣れた形状のヘルメット。
鋭角的なデザインが純白に染められた、特徴的なそれは間違いなく彼女自身のもの。
「シャシャ……」
「敵、ダメ……倒ス……」
とうに腹に一撃食らったダメージなど、抜けているはずなのに。
ジェナスは立ち上がれなかった。
その気力がなかった。
想像だにしないことであったから。
あまりに、ショックが大きくて。
ダークやタフトが敵にまわったかもしれないと思ったときよりも、それは遥かに大きかった。
「終わりかい?案外不甲斐ないねぇ」
仮面を被った士官が、嘲るように言っても、
ジェナスはそのようなこと、どうでもよかった。
「ジェナス……っぐ」
「おーっと、動くなよ?砂漠の虎さんよ?」
呻くバルドフェルドに、士官の自動拳銃が向けられる。
銃口を睨みつけるも、身動きのとれないバルドフェルド。
「させんっ!!」
だがそこに、闖入者が現れた。
ルビーの赤に似た色の装甲を纏ったニルギースが剣を振り上げ、
白の少女と打ち合わせる。
同時に、拳銃を片手にしたレイが、駆け込んでくる。
「ジェナス!!バルドフェルド隊長!!無事ですか!!」
「……レイ!!ニルギース!!」
「ニルギース!!やめろっ!!」
安堵するバルドフェルドとは対照的に、ジェナスは叫んでいた。
剣と剣をぶつけあう二人に向かい。
ニルギースとシャシャが戦うなんて、いけない。
兄妹も同然であった二人が戦うなど、絶対に。
「シャシャと戦っちゃ、ダメだっ!!」
****
「シャシャ……だと……?」
記憶にない、名前だった。
自分が忘れた、失ってしまった記憶の中に、きっとその名はある。
ニルギースは鍔迫り合いの中、思わず相手の白い姿をじっと見つめる。
(シャ……シャ……?)
ぞくり、と全身に鳥肌が立った。
その名前を、自分は傷つけてはいけない。そんな気がして。
剣を持つ手に、力が入らない。
(これは、一体……?)
思い出せそうで、思い出せないのがもどかしい。
その間にも、均衡は破れ手の内から剣が弾き飛ばされる。
横っ面に、蹴りを一撃。
受けたニルギースは、派手にジェナスのすぐ横の壁へと吹き飛ばされた。
****
一方、アークエンジェルのブリッジ。
「ストライクノワール、被弾!!ランチャーストライカーを失った模様!!」
ミリアリアの報告にも、ブリッジの一同は騒然となることはない。
数の利があったとはいえ、あのハイネやシンを破った二機が相手なのだ。
そう容易く倒せる相手ではない。
「調整のほうは?」
「完了しています。いつでも射出できるそうです」
なにより彼らは、二人の腕を信じている。
だから自分達のやるべきことに専念できる。
「タイミングを……誤らないようにね」
「はい」
****
「く……貴様っ!!」
レイが向けた拳銃にも、士官は全く動じない。
バルドフェルドへと銃をつきつけたまま、
撃てるものなら撃ってみろ、と言わんばかりの態度だ。
「ほう……この感覚。どうやらきみが例の白い坊主くんらしいね?」
「何を……?」
「レイ、撃て!!俺にかまうな!!」
右肩から血を流しながら、バルドフェルドが叫ぶ。
左腕に仕込んだショットガンは使えない。ノーマルスーツが邪魔だ。
だが。
ちらとレイが向けてきた目線に、無言で頷く。
大丈夫だ、と。
痛みで動かぬ右腕を、そっと先程の白衣へ伸ばす。
ゆっくりと、気付かれぬように。
「うおりゃあっ!!」
「ぬっ!?」
銃撃を受け脳漿を浴び、穴の空いた白衣を士官めがけ投げつける。
酷使と銃創に傷ついた身体は、それだけで悲鳴をあげる。
ばさばさと広がったそれは、相手の視界を一瞬にして覆う。
苦し紛れの発砲が床を撃った。
「今だ!!やれ!!」
「うおおっ!!」
視界を遮る白衣にもがく敵士官へと、レイは発砲した。
しかし白衣に吸い込まれたのは一発だけで、あとは
無茶苦茶に暴れながらも相手はかわしていく。
白衣を跳ね除け、仮面の士官は飛びのいた。
「な!?」
「……う!?」
そして、その顔には……灰色の硬質な仮面はなかった。
白衣が床に落ちると同時に、重厚なごつごつとした音が部屋に響き。
仮面が銃撃を避けたはずみではずれたのだと知らせる。
露わになった顔と、つややかな金髪がこぼれ出る。
自分達の目撃したその顔に、レイとバルドフェルドは驚きを隠すことができなかった。
「馬鹿な……お前?そんな?」
「何故……生きているんだ……そんなはずは」
「あーあー……やってくれたな。今のは少しびびった」
驚きはつまり、隙へと繋がる。
ニルギースを壁に叩きつけた白いスーツの女が、あっという間にレイの眼前へと迫り、
彼の喉元を掴み壁へと放り投げ。
「死ねよ」
「どうしてだ……マリューはお前を……」
気を失ったレイを、気遣う間もなく。
金髪の男の放った銃弾がバルドフェルドの胸へと、吸い込まれていった───……。
これから帰省します。年内は多分これが最後かな?
あ、ちなみに前回、前々回あわせた(第三十三話)タイトルはまんま、「シャシャ」
です。
そしてもう一点補足。
今回鍔迫り合いしてるのはアム組ですが、
MS同士が鍔迫り合いやってる場合、意図的に設定無視してます。
ビームサーベル同士でできないなんて、足をひっぱる設定でしかありませんので。
こればっかりは勝手に改変してます。でわ。
>>372 乙です!やはりアンディーが・・・
あと、ネオを含めた洗脳された連中の事も気になったり
まずは良いお年を・・・
乙!
ニルギに「シャシャと戦っては駄目だ!」と叫ぶジェナ見て「空気嫁よぉ!」と思わず
悲鳴を上げてしまった。
でも確かにジェナなら言うだろーなぁ・・・。彼はそう言う子だ・・・。
この窮地どうやって脱出するつもりなんだろう・・・。
しかしノワールとセイバーで自由正義と互角となると、和田隠者乗り換え後は
どうなるのかな。>紫組&無印主人公組
>MS同士が鍔迫り合いやってる場合、意図的に設定無視してます。
そんな無印種の第一クールの時点で現場にスルーされてなし崩しに消えた糞設定なんて(ry
いずれにせよ、よいお年を・・・。
「フー・イズ・スパイ」思い出したw
あの時もシーンとキャシーの密会を見てしまったばかりに他のメンバーが
止めるのも聞かずに「俺は(シーンがキャシーとの密会の件について確たる
説明をしないかぎり)シーンに粘着するんだー!!!!」と絶叫してたっけ。
マサキが馬脚現して自滅しなかったらどうなっていた事か。
思わずキャラネタに「いらん腹探られてよく怒りませんでしたねSCENEさん」と
投稿したものだ‥‥。
保守
フライング月曜日
続き期待
>359
〇
≡≡≡≡≡≡☆† Trrrrr!
大
遅レテ シマッタ!
俺達の月曜日!
それが元旦とはまたイケテル展開だぜ!
あけましておめでとうございます。
元旦ではありますが投下させていただきたいと思います。
第六十八話と第六十九話の二本立てでどうぞ。
アム種 第六十八話 グッド・バイ
「落とす!!墜とす!!地面に落とすうぅぅっ!!」
両腰のレールガンが対艦刀によって切断された直後、
その目障りな大剣を彼はキックで叩き落していた。
墜とす。
敵。
倒す。
敵。
殺す。
敵。
単純かつ明快な衝動にも似た思考に動かされ、彼は機体を駆る。
──……やめろ……タ……ト……──
熱しきられた彼の頭に、声なき声は届かない。今は、まだ。
男は、修羅と化して戦い続ける。
****
「っ……!!」
二刀流同士の斬り合いは、どちらも翼を奪われた。
キラが奪ったのは右の一枚。
一方、キラが奪われたのは───二枚。
推進力を翼に頼らぬフリーダムにとって、それは安定性を失っただけのこと、
武装の一つを喪失しただけのことであるが。
ノワールストライカーに飛行能力を依存しているキラのノワールにとっては、痛手となる。
純粋な斬り合いにおいて、負けに等しい結果を得た。
しかしそれでも、キラの目に敗北の色は映らない。
「まだだ!!マリューさん!!」
それすら、可能性のひとつとして考慮にいれていたのだから。
だから対応策も、もちろんある。
落下をはじめる機体を必死に制御し、フラガラッハを投げ捨てビームブーメランを投擲。
かわされたそれにパンツァーアイゼンのアンカーを伸ばし、
軌道を無理矢理に変えてフリーダムにぶつける。
大きくのけぞり、敵は胸のPS装甲に傷をつくった。
「もってくれ……ブースト!!」
バーニアを、焼き尽くさんとばかりに全力でふかし機体を安定させる。
そこに鳴り響く、接近する機影の反応。
使い物にならなくなったノワールストライカーを切り離し、ドッキング体勢に機体が入ったことを、報せてくる。
「相対速度……よし!!」
そのままでは自機に直撃するブーメランを、アンカー基部ごとパージし、
今度は機体に内蔵された両腕のアンカーを左右とも、大地に向け射出する。
金属同士が連結される、小気味よい音と振動。
もっとも慣れ親しんだ装備が装着されたという、安心感。
灰色に染まっていた機体が白亜の色を取り戻すと同時に、左右のワイヤーアンカーは掴んでいた。
自身と親友の、それぞれの剣を。
「アスラン!!受け取って!!」
右手に、己の蒼き対艦刀を。
左手は、ハイネの形見のビームソードを。
空中戦において翼を奪うは戦闘力を奪うと同義。
どんなエースであろうと、相手を戦闘不能に追い込んで、安堵せぬはずはない。
均衡を崩すべきところは───ここしかない!!
キラの操作を受け、エール装備へと換装したストライクEの両腕は突き刺さる大地から、二本の剣を引き抜いていた。
****
その機体は、殆ど無力化されたにもかかわらず怯むことなく向かってきた。
「なんだとっ!?」
迎撃に撃ち出したリフターが、唯一相手に残っていた片方のビーム砲からの零距離射撃を受け
敵の砲塔もろとも爆発する。
その中をつっきって、半壊に近い状態の機体はスピードを緩めずに迫る。
それ以上にダークを驚かせたのは、メインカメラもそれらしいそぶりもなしに、
深紅の機体が背後から僚機の投げたビームソードを受け取った、流れるような動作であった。
一瞬の動揺に対応が遅れ、避けきれぬ斬撃に右膝から下をジャスティスは失う。
なおも紅き敵は追いすがり、密着し。
接触回線越しに通信が交わされる。
『……初から、……つ…りだったんだ!!お前達二機は、連携させてはいけないからな!!』
「っ!?こいつ!?」
『機体性能、核とバッテリーの差は重々承知!!だが機体を知っているからこそ……対応もできる!!』
年若い、敵パイロットの声は気迫に満ちていた。
『俺たちが乗っていた、機体だから!!』
「!?」
『こいつらは……俺たちが、責任をとらないといけないんだっ!!』
ビームライフルに伸ばした腕部が、叩くようにして切断される。
やられる、ダークはそう思った。
……そして、声を聞いた。
──……脱出しろ、ダーク……──
懐かしくさえある、男の声で。
ダークの指は、その声に衝き動かされるように、ハッチの解放スイッチへと伸びていた。
機体の胴体と腰とが、泣き別れとなる前に。
『墜ちろっ!!』
そしてそれは、タフトも同様であった。
****
ビームに焼かれ、ストライクの左腕が肩から落ちる。
それでも右腕は、しっかりとシュベルトゲベール、対艦刀を保持したまま。
「でえええええええいいっ!!」
エールストライカーを装備したストライクEは、
先程ブーメランによって傷ついたPS装甲の「穴」ともいうべき場所めがけ大剣を突きたて貫いていく。
それは、コックピットの真上。
ハッチを開き飛び降りるパイロットの姿を見ながらも、キラは突進を続けやめることはなかった。
機体中央を剣が砕き貫き、その勢いのまま。
二機は大地に向かい急降下していった。
硬い地表に激突し、墓標のごとく剣が聳え立つフリーダムの灰色の骸の上で。
すべきことを終え力尽きたようにストライクは機能を停止した。
****
「何!?フリーダムとジャスティスが!?」
『ああ、負け戦だよこりゃあ!!はやく戻ってきてくれネオも!!』
やろうと思えば、敵はレイたち全員を殺せる状況であった。
ジェナスは呆然と座り込み、ニルギースは気を失い。
ようやく意識を取り戻した彼は、未だはっきりと意識を集中できぬ状態にあったのだから。
だがしかし。
突如として施設全体を揺らした地響きの直後、金髪の敵士官は受けた通信に動揺し。
「っち……しゃーねえ!!嬢ちゃん、ここは退くぞ!!」
「ウィ」
「ま……待てっ!!シャシャ!!」
「ジェナス、よせっ!!」
先程からの様子を見るに、追ったところでジェナスには奴らは討てまい。
むしろ、なにもできずやられる可能性のほうが高いだろう。
そう判断し、レイは追おうとする彼を止めた。
「レイ!!けど……」
「今は、こっちが先だ。急げ」
こちらにだって、追う余裕などあるものか。
レイは血の中に仰向けに倒れるバルドフェルドに駆け寄ると、抱え起こす。
ジェナスに、彼と気を失っているニルギースのために医療班を呼んでくるよう命じて。
レイ自身、足元がふらついた。
「バルドフェルド隊長」
「ぅ……レ、イ、か……?」
「すぐに医療班を呼びます。どうかそれまで」
「いや……いい……こいつぁ……急所、だ」
レイが気休めにしかならないことを言っているのを、バルドフェルドも気付いていた。
そのくらいはわかる。
「ですが、まだ」
「いや……わかる、無駄だ。ぐ……どうせ、一度、拾った命……だしな……」
あまりしゃべられては、と気を回すレイに首を振り、彼は会話を続けることを望む。
「レイ……お前、やっぱり……」
「はい……「彼」と同じ遺伝子を持つ……『メンデルの子』です」
「そうか……やっぱか……」
「……」
皮肉なもんだ、と血を吐き出しながら顔を歪め笑うバルドフェルド。
「レイ……ひとつだけ、頼みがある」
「……はい」
「マリューには……ここであったことを言うな」
ここで、自分を撃った相手が誰であるのかを。
彼女にだけは、絶対に。
レイが、彼にきつく握りしめられた右腕に痛みさえ感じ顔を顰めるほどに、
バルドフェルドは必死に懇願していた。
「たの…………む……」
レイが頷いたのを見て、バルドフェルドは安堵する。
と同時に、力が抜け、気が遠くなってくる。
(……言えるわけ……ないだろうが……)
ぼんやりとした意識は、白く白く、染まっていく。
(死んだはずの男に撃たれて……殺されました、なんてな)
誰かが、白い世界の向こうで手を振っていた。
(ムウ・ラ・フラガが生きていて……敵になった、だなんて……)
──言えるものか。なあ、アイシャ?
「……」
「……バルドフェルド隊長?」
彼は、再会した愛する女性の差し出した手をとり。
肩を寄せ合い、静かに歩き出す。
──今度こそ、俺はお前と……。
そして。
呼びかける少年たちのもとから、別れも告げずに旅立っていった。
以上、六十八話と前回の六十七話をあわせて、
第三十四話「彼は夢の中へ」になります。
続けて第六十九話を。
アム種 第六十九話 ロゴス
そこは元々、「国」であった。
その名前は、「スカンジナビア王国」といった。
連合側に付きながらも、プラントと細いながらもパイプを持つ、数少ない国であった。
だが今。
そこには廃墟しかない。
街であった場所は、瓦礫の山。累々とした死体の群れ。
国防に配備されていたMSたちの残骸に埋め尽くされている。
その中心に、巨大な山の如き、二つの機影があった。
黒と、白。
それらは、ここが「国」であった名残りすら、焼き払っていく。
周囲を飛び交う、一つ目の悪魔たちが禿鷹のように焼き尽くされた大地へと群がっていった。
****
−ザフト軍・ジブラルタル基地−
『勇猛にして優秀な指揮官であった彼を喪ったのは、我々にとって大きな痛手であった──……』
大きく、広い基地の敷地内に急造で設けられた斎場に、基地司令の演説が響き渡る。
───ロドニアの研究施設における制圧戦にて戦死した、アンドリュー・バルドフェルドの葬儀。
彼が死を遂げてから、早くも4日が経っていた。
敵・味方双方に名前の知れている彼の死は、ザフト上層部にも重く見られ。
軍をあげてのこの祭祀を行うことへと相成ったのである。
彼の死による兵達の士気低下を、派手な演出による戦意高揚式典を利用することで
食い止めようという狙いがそこにはあった。
『しかし!!我々は氏という尊い犠牲を無駄にしてはならん!!』
そこには、アークエンジェル、ミネルバ両艦からの参列者も多く。
彼と最も親しかった者の一人であるマリュー・ラミアスは、
ある意味では死者をも利用する節操のない行為を打診された際、断らなかった。
彼ならば、そうするだろう。
非情に徹して、自分の死さえも役立てようとするだろう。そう思っていたから。
思っていたからこそ、この葬儀にも参加したのであったが。
タリアに付き添われ、献花台に花を供えた直後。
彼女は、泣き崩れた。
彼女にとって、近しい男を喪うのは、三度目のことであった。
****
「申し訳ありません、バルドフェルド隊長の葬儀にも参加できず」
ブリーフケースを置いたレイは、そう言って握手を求めてきた。
「いや。帰還命令なら仕方ないだろう。向こうでも元気でな」
「……はい。しかしなにもこんな時に……」
プラントからの帰還命令を受けた彼を、アスランは労った。彼の自室を訪ねて。
無論、彼がいなくなれば艦隊の台所事情はより一層苦しいのはわかっている。
ハイネに続き、バルドフェルドも喪い。
ルナマリアとシンが重傷──マルマラ海基地に二人は残してきたが──、未だシンは目覚めないそうだ。
機体もインパルス、セイバーが大破、ノワールは中破だが、関節部が酷使されすぎとても戦える状態ではない。
五体満足なのはアムドライバーたちと、アスラン、キラ。
使えるMSはバルドフェルドの遺したムラサメが一機。
それを知っているから、レイはすまなそうな顔を向けてくる。
ならばこちらも何も言わず送り出してやるのが礼儀だと、アスランは思う。
「補給を受けられるそうですが、生半可な機体では──……」
「レイ」
「──はい」
「大丈夫だ。なんとかなるさ」
だから気にせず、行ってこい。
こういうのは苦手であったが、精一杯気さくに、彼の胸を小突く。
バルドフェルドがいない今、こういった役目も自分には求められるのだ。
「……はい」
レイが頷き、床に置いたブリーフケースに手を伸ばす。
「それと、ジェナスの仲間だったか?回収された二人の敵パイロットだが……」
「はい。プラントの設備の整った病院に───……」
と、突如。
彼がブリーフケースを持ち上げた瞬間、
電源の落とされていた部屋のモニターに突如灯りが灯る。
「?」
「これは……ギル?」
「ラクスも……これは、なんだ?」
****
バルドフェルドさんを、救えなかった。
シャシャが敵として、自分の前に現れた。
生きながら機械の一部にされた子供たちを、殺してしまった。
自分は、だれも助けることができなかった。
「……なんだ、これは?」
その自責の念に苛まれていたジェナスもまた、突如としてモニターに映された、
一組の男女の映像に見入っていた。
『私は、プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです』
長髪の男は、簡単に自己紹介を済ませると本題に移る。
『本日、一つの国が国民ごと喪われたのを、地球の皆さんはご存知でしょうか?』
「!?」
『その国の名は、スカンジナビア王国!!戦争の早期終結に向け動いていた彼の国を、
地球連合は裏切りだと、連合の敵だとして抹殺したのです!!罪なき人々とともに!!』
映像が、焼き尽くされる街のものへと変わる。
その中心に立つ、白と黒の巨大な機体が放つビームの豪雨はあまりにも残虐な暴力であった。
「ひどい……」
『こんなことが本当に、ナチュラルの皆さんの望みなのですか?連合の誇りある兵たちの、
すべきことなのでしょうか!!ブルーコスモスに煽動され、なにかを間違ってはいないでしょうか!!』
デュランダルの演説が、熱を帯びてくる。
『では、ブルーコスモスが悪いのか?否!!彼らはそれだけでは単なる過激な思想集団でしか
ありません。ならば、何故このようなことを兵たちにさせ得るだけの力を持っているのか?』
「……?」
おや、と思った。
なにか、方向が奇妙なことになっている、と思った。
『それは今、彼らを援助し、政治を動かし!!戦争を誘発する勢力があるからです!!』
デュランダルの拳が、机を叩く。
『全て、己の欲望、利益のために!!その勢力の名は───……「ロゴス」!!』
──ロゴス?あのとき、議長の言っていた?
だが、やはり妙だ。
議長は、焦っているようにすら見える。
『彼らがいる限り、ブルーコスモスはなくならず!!ブルーコスモスがいる限り、
我々コーディネーターと心あるナチュラルの方々は触れ合うことが出来ません!!よって!!』
それは、嘘だ。そのくらいはジェナスにもわかった。
ブルーコスモスは思想、先程デュランダルも言っていたではないか。
どんな手を使おうと、一度生まれた思想が消えることはない。
『私はここに、連合内のブルーコスモス勢力及び、ロゴス!!彼らを打ち倒し滅ぼすことを、ここに宣言します!!』
デュランダルの叫びに、世界の要人と目される人々の顔写真の数々が重なる。
その直前にジェナスが目を向けたラクス・クラインの顔は。
どこか、優れない表情を浮かべているように見えた。
彼のもった感想は、けっして間違ってはいなかった。
本編ではいまいちロゴスとブルーコスモスの違いが
曖昧に感じたものでこういった形になりました。
それではみなさま、お正月がよき日々であらんことを。
新年に乙!やはり虎死亡か……
バジェット寄付しとくぜ
>>392 あけおめ、そして乙です!
しかし、色々と問題が山積みですなあ・・・
そうれお年玉バジェットだ!
396 :
通常の名無しさんの3倍:2007/01/01(月) 19:41:49 ID:oQTDs69M
あけおめ!一気に話が動いたな・・・。
合体ノワールにエールが無いなぁと思ったら隠し玉であったか。
虎も男を見せたが全体的にはキラと凸が美味しい所総取りだな、シンとジェナの巻き返しに期待。
でもついに紫組との決着が付いたと思いきや今度は議長とレイの悪役化フラグが・・・。
何やらかしたんだザルディは。
黒白のデストロイの中の人はシャシャと先生?
意表を突いてロシェとKKだったらびっくりだけどw
397 :
396:2007/01/01(月) 19:46:56 ID:oQTDs69M
スマンあげてしまった
志村ー、また忘れてるよ!
>>399 洗脳よりは恫喝されて、とかのような気がする。
プラントの一、二基くらいでも消し飛ばされたりでもしたんだろうか‥‥。
ザルディの目的自体が皆目見当つかないから何とも言えないけど。
「聞こえてくる声」ってのは、やっぱり土の匂いのわかるあの人でいいんだろうか
>>401 他にいるまいw
語りかけてくる死者、と言うとΖやΖΖとかの方がお馴染みではあるけど。
マリューの失った三人のうち一人って誰だっけ?ハルバートン?
無印なんてもうすっかり忘れちゃったからなぁ・・・。
>>396 134さんは二話を一話に纏めたサブタイも作ってる辺り、種やアムドラ本編が4クールだった事を意識してるのかも知れない。
34話と言うと第3クールの半ばだから、起承転結の転、大詰めは近いからな‥‥。
急展開の理由はそんな所にあるのかもな。
保守!
ほっしゅ
アム種 第七十話 戦争屋たち
「妙、だな」
「……やはりあなたもそう思いましたか?アスラン」
「ああ」
シャトル乗降場までの通路を、レイとアスランは並んで歩いていた。
「あの演説の内容とはいえ──どこか余裕のない感じだった」
「ええ。どうみてもあれは、本来の議長ではありませんでした。何かを、焦っているような」
先程、ザフト軍の駐留する全ての地域、及び親ザフト系マスメディアを通じて可能な限り
ありったけの場所へと流されたデュランダルの演説は、彼と近しいレイ、
直接の面識をある程度もつアスランにとってはどうにも違和感を拭えないものであり。
二人して首を捻る。
「ロゴスを討つ、と言っていたが……これも変だ」
「変?」
「彼はロゴスの本質をある程度掴んでいたはずだ。だったら単純に討てば済むというものでないことも
十分、わかっていたはず。あの演説のように一方的に彼らだけに非を着せるということは考えにくい」
自分達の利益のために、戦争をコントロールする。
戦争によって生まれる利益を啜るならば、その戦争が不利益を生み出し始めたら?
そんなとき、利己のため彼らはどのように動く?
それはつまり、戦争を起こしもするが、やめさせもするということ。
コントロールするということは、そういうことだ。
「ラクスの父、シーゲル様から昔聞いた話でしかないが……良くも悪くも、奴らは『戦争のバランサー』だと」
利益になるうちは無責任に燃え上がらせるが、損になるようであれば火消しに走る。
そういった日和見的な存在であると、聞かされていた。
いくら戦争屋とはいっても、それだけをやって続けていけるはずがない。
あっても困るが、なくても困る。
それが「ロゴス」だと、アスランは認識していた。
「長期的に見ればないほうがいいのだろうが……果たして今、討つことが必要なのか?議長はそう考えたのか?」
「……」
それはない、とレイは思った。
プラント評議会議長として彼は、決して背伸びをする人間ではない。
目の前にある問題を片付けず、その背後の問題を一足飛びに扱う人間でもない。
そのことは、もっとも身近にいた自分が、一番よく知っている。
「……ギルは。議長は、戦争の行く末に悩まれているのかもしれません。だから私を呼び戻したのかもしれません」
「……かも、しれないな」
近しい者。親しい者にそんなとき、意見を求めたくなるものだ。
そして彼にとってもっとも親しい存在といえば、レイしかいるまい。
「あるいは、他のなにかがあるのかも。向こうに着いたら、私のほうでも調べてみようと思います」
「頼む」
警備の兵のいる乗船口に到着し、二人の男は改めて握手を交わす。
「それじゃあな。向こうでも頑張ってくれ」
「ええ。アスランたちも。……そうだ、これを」
交わしてからレイが差し出したのは、一枚のデータディスク。
「これを、キラに」
「キラに?一体……」
受け取ったアスランは、奇妙な預かりものに困惑する。
「必要になるときがくるかもしれません。ですから」
「……わかった」
アスランは、深くは追及しなかった。
彼がそう言うのなら、そうなのだろうから。
いつか、どこかで必要になるかもしれない。彼はそう思い渡したのだから。
「では」
踵を返した彼を、アスランは見送った。
****
「……これで、満足かね?」
演説を終え。
執務室へ戻り、腰掛けるなりデュランダルは吐き捨てるように言った。
誰も他にはいないはずの、先程まで彼自身留守にしていた、自身の薄暗い執務室の影に向かって。
「ええ。十分ですとも。流石は最高評議会議長殿」
柱の影から現れたのは、赤服。
アップにした派手な色の髪に眼帯という、目立つ格好をした女性士官。
名は、ヒルダ・ハーケンといった。
「それもこれも、ラクス様のプラントのため。上出来といっていいでしょう」
「……ふん」
“お前達の”プラントの間違いだろう。ラクス本人はそのようなもの、望んではいまい。
忸怩たる思いで、デュランダルは彼女を睨む。
迂闊だった。ザラ派と連合を警戒するあまり、同派閥だと彼らのことを甘く、軽く見すぎていた。
「このあとのことも、わかっておられますね?」
「ああ、わかっているとも」
「万一、なにかあれば……我々の『あの力』がプラントを焼くとお思い下さい」
「……」
それも“我々の”ではなく、“あの男の”力だろうに。
これだからいつの時代も、過激な思想を崇拝する者たちは手に負えない。
「『あの方』のもたらした力を受けた同志達がプラント各地にいることを……お忘れなきよう」
****
「なんだ?出撃?」
ミネルバのブリッジにアスランが足を踏み入れたと同時に、基地そのものの警報が鳴った。
同じように訪れていたキラとジェナスもまた、振り向かせていた顔を困惑させる。
「グラディス艦長、これは?」
「待って。今確認するわ」
キラにラミアス艦長は大丈夫か、と聞きながら、アスランはタリアにも問うた。
頷くキラを見て、ひとまず安心する。
「付近の部隊へ、ベルリンへの出撃命令……?これは一体?」
「艦長!!」
メイリンがシートから振り向き、わずかに青ざめた表情を一同へと向ける。
「どうしたの?」
「れ、例の……スカンジナビアの」
「?」
「スカンジナビアを壊滅させた黒いMAが、ベルリンに!!」
****
破壊されゆく町の惨状を見ながら、男は喉を鳴らして愉快そうに笑っていた。
「どうです?デストロイの破壊力は?」
ロード・ジブリールは上機嫌だった。
コーディネーターを受け入れた裏切り者どもを。
憎き宇宙の悪魔どもを、焼き尽くす黒き巨獣が、誇らしい。
あれがまだ、もう一機あるのだ。量産計画も進んでいる。
さあどうだと言わんばかりに、部屋のあちこちに設置されたモニター越しに彼を見つめる
老人たちへと言葉を投げかけていく。
『……ああ、確かにこれは凄いな』
『凄すぎて、何も残らんわい』
彼らは、「ロゴス」のメンバーであった。
ジブリールの要請によりブルーコスモスへ出資している、スポンサー達でもある。
「奴らによって穢れたものなど、焼き尽くしてしまえばいいのです!!その上で新たに造り直せばよい!!」
『……本気か?大体、我々の存在がデュランダルによって明かされたことは──』
「そんなもの!!デストロイで潰してしまえばよいのです!!デュランダルを、コーディネーターどもを!!」
今のところ、デュランダルの演説に民衆は戸惑っている。
だが存在を公表されたことで、動きにくくなってしまったことも事実だ。
散発的にではあるがテロに見舞われたメンバーもいる。
だがしかし、ジブリールは聞く耳を持たない。
すべて、コーディネーターさえ抹殺すれば全てが済むものと思い込んでいる。
『……いいじゃろ。やってみろ、ジブリール』
『せいぜい、やってくれ』
彼らは、そう言いながら。
ジブリールに気取られぬよう、モニター越しにアイコンタクトを交わす。
古狸達の腹は決まっていた。
近いうちに彼を処分、ロゴスメンバーから除名することを。
元々、ジブリールのごり押しで出資していたようなものだ。
既に彼らは、ブルーコスモスへはもうびた一文、くれてやる気はなかった。
よく使いこなされた彼らの嗅覚が、ブルーコスモスからは益はもうないといっている。
メンバーの一人が、通信を操作し、モニターに一人の男を呼び出す。
『……聞いていたかね?』
『ええ……これだから救えない。過剰な権力を持った人間は』
『頼めるかね?』
『お任せ下さい』
『……成功すれば、君には「ロゴス」メンバーの椅子を用意しよう。頼むぞ』
男は、足を組み、微笑を浮かべていた。
彼らの殆どが、男が何者でどこから来たのかも知らない。知ろうとも思わなかった。
むしろ、メンバー全員を把握している人間という者のほうが少ない。
今までもそうしてきた。だから歴史の闇に隠れ、尻尾を出すことなく甘い汁をすすってこれたのだ。
だから、今回もそうした。
男の出自など、どうでもいい。
重要なのは彼が、老人たちにとって有用となるであろう技術、明らかなオーバーテクノロジーをもたらしたこと。
金のなる木を、彼は運んできた。
損か、得か。それこそが唯一にして、絶対。
「……権力者など、信用できん」
知らないが故、彼の呟きに自分達をもが含まれていることに老人たちは気付かない。
「やはりこの世界にも、神が必要だ」
この時点では老人たちは、彼のことをコントロールできるものと思い込んでいた。
ガンちゃん暗躍中。
とりあえず色々詳しい点は徐々に・・・明かせるようがんばります。
乙です!
ヒルダの言う『あの力』は、やはりジェネシスかな?
続き期待保守
>>413 ジェネシスだと思うけど、実はザルディがこちらでも後ろ盾やってるのかも。
それにしても、成程、「ラクス」と「クライン派」を切り離して後者だけを敵役
に持ってくるか・・・・相変わらず134氏のアイディアには驚かされる。
>>413 >>415 >それも“我々の”ではなく、“あの男の”力だろうに。
>「『あの方』のもたらした力を受けた同志達がプラント各地にいることを……お忘れなきよう」
あの男と言う辺りガンちゃん絡みの気ガス。
同士たち云々を見ると、もしやCE謹製のアムドライバーが登場するのかも・・・。
ドムトルーパーの三人やら何やらが黒のアム鮭付けて人文字で「LACUS」と
やる訳だなwwwwwww
『あの男』がシムカ閣下だったら大笑いする。
乙!ヒルダ達が敵という事はちゃんとシン辺りが踏み台にしてくれるんだろうな。
本編でやってくれると思ってたんだが、ドム隊に無駄に補正入って生還してたからなぁ。
>>418 原子分解されたのではなく異世界に飛ばされていた訳かw
流石フルゼアムw
>>418 するとあれですねっ!シムカたんは最後はクライン派お得意の盗難技術で作り上げた
ヤタノカガミ装甲製全身金ピカのデストロイで出撃してくれるんですねっ!w
・・・・・・・ストフリでも勝てやしねえwww
アム種 第七十一話 自由よ再び
「グラディス艦長!!待ってください!!この任務は無茶です!!」
ブリッジを出て一旦艦長室へと戻ろうとするタリアへ、アスランは食い下がる。
「この戦力であの黒い機体とやれと!?即刻中止を申し立てるべきです!!もう一度司令部に……」
既に、ベルリン駐留軍はほぼ壊滅状態だという。
かなりの大規模を誇る部隊ですらそれなのだ。
今の、ムラサメ一機しかないミネルバとアークエンジェルでどうにかなるものではない。
殆ど生身に近いジェナスやセラたちをあの化け物にぶつけろ、とでも言う気か?
「そんなことはわかっています!!でも、これは命令なのよ」
「……そ、それは」
「勘違いしないで。『フェイス』といっても、軍の命令は絶対……!!」
ない袖であっても、振れと言われれば振るしかない。
アスランとて、それはわかっている。だが、これではみすみす死にに行くようなものではないか。
「機体がないのも、重々承知よ。けれど──」
「しかし!!これでは!!」
「機体なら、あります」
二人のやりとりを遮り、静かな声が背後から届く。
振り向いたそこには、キラがいて。
「機体なら、あります。もう一機」
「ある、ってお前……」
「ムラサメは、アスランが使って」
「まさか!?お前ひょっとして」
詰め寄るアスランに、キラは頷く。
そして、一言。
「僕は、スカイグラスパーで出る」
「おまっ……正気か!?」
自身の想像が正しかったことを知り、彼は親友の肩を掴んで、激しくゆすった。
それこそ、自殺を志願しているようなものだ。
MSですら一撃で撃破する機体を相手に、旧式の。
しかも脆弱な装甲しかもたない戦闘機で挑むなど。
大体、キラはいままで殆ど戦闘機など乗ったことはないはずだ。
「大丈夫。昔、少しだけどムウさんに教わった」
「そうじゃないだろ!!無茶にもほどがあるぞ!!」
言い争う少年二人に、タリアも困惑の表情で推移を窺うしかない。
無茶を言っているのはキラのほうだとわかる。
だが、少しでも戦力は欲しい。
いずれにせよ、出撃はせねばならないのだ。
命令が出ているのだし、友軍や罪のない一般人がやられていくのを、黙って見過ごすわけにはいかない。
「か、か、艦長!!」
と、そこへ。
ブリッジから泡を食ったアーサーが転がり出てくる。
「どうしたの?」
「き、基地管制塔からの連絡で───……」
さっさと出撃しろ、か?
それとも、なにか別の緊急事態か?
だが残念ながら、彼女の予想は外れる。
「ミネルバ隊への補充機体を積んだ輸送機が到着するから、受領次第発進せよとの命令が!!」
まぎらわしい言い回しをした彼を、タリアは思わず次の瞬間、おもいっきり殴りつけていた。
****
−ベルリン市街−
「……ふん」
瓦礫と化したビルの上から、自らの指揮するバイザーバグの部隊を俯瞰し、ディグラーズは気のない溜息をついた。
よくもまあ、これだけの数を揃えたものだ。
あのようなつまらぬ人形を。
顔をあげた先には、あの金髪の小娘の乗る──デストロイと言ったか──黒い機体が、
街を破壊し続けているのが見える。今ではもう、ザフトの攻撃は散発的だ。
護衛に周囲を飛ぶ、緑と赤紫の二機。
そして、壊滅した街を、バイザーバグの編隊が制圧する。
作戦としては、間違ってはいない。人道的には問題があれど、合理的ではある。
しかし。ディグラーズはどうにもつまらなかった。
「でてこい、ジェナス・ディラ……このようなくだらん戦いのために俺はいるのではない」
このように戦わぬ者たちを一方的に叩き潰して、何が楽しい。
強者を叩き潰してこそ、その力に酔うことができるというのに。
「くだらん……ん?」
彼が再び溜息をついたとき、見慣れた二隻の艦の姿が、空の向こうにみえた。
「来たか」
そして発進した一機のMSが、同時に五体ものバイザーバグをこの世から、消滅させた。
その機体は───蒼い、二対の翼をその背に持っていた。
* * *
『キラ、本当にいいのか』
「───……うん」
機体の感触を確かめるように、操縦桿を握り、撫でる。
間違いない、この馴染むような感じ。
まさに、あの機体。二年前と、なんら変わらない。
『……わかった。正直、お前が頼りだ。ムラサメではどこまでできるかわからない』
絶対的な火力も、機動力も。あの化け物が相手では役に立つかどうか。
親友の言に、キラは頷き返す。
もう、二年前のようなことはさせない。
オノゴロの戦いを。シンの慟哭を。彼から浴びた怒りの拳を、思い出して。
「僕がまだ、お前にふさわしいとは思わない」
お前のもつ、その名前に。自分はまだけっして、相応ではあるまい。
「けど、今は」
シンの紅い瞳。憎しみと悲しみの同居する眼光が、閉じた瞼の裏に浮かぶ。
「今は、力を貸してくれ」
もう二度と、彼のあの目を、生み出さないためにも。
今度は生み出さない、お前にけっして生み出させはしないから───……!!
「フリーダム。いや」
その故郷において新たな力を授かった、生まれ変わった自由の翼。
自由を求め、「闘い、打ち破る」ための力。
「“ストライク”フリーダム」
新たなる鋼の天使が、背中の蒼き翼を広げ空を舞う。
マルチロックオン。弾けた種子の破片が、脳裏に散る。
両腕、腹部、両腰の銃口、砲門が輝いた。
それぞれは、それぞれの向けられた方向へとまっすぐに飛んでいき。
逃げ遅れた親子、金髪の少年。あるいは負傷し取り残された兵、
その看護師や何も知らぬ子犬へと襲いかかろうとしていたバイザーバグたちを焼き、蒸発させていった。
****
───同じ頃。
ルナマリアが戦闘の様子をモニターする、遠く離れた病院の個室において。
昏睡を続け指一本動かすことのなかったシンの瞼が、微かにぴくりと反応した。
ストフリの名前はいくら好意的に解釈してもこれが限界でした。
旧機体の名前二つつなげて「祈り」って何さ。
乙!
なんかここんとこ主人公どう見てもキラだよね、と言う展開であったが今回の
ラストの展開はもしや・・・・・・。
とんでもない誤解に発展しそうな一抹の不安は残るけどね。
つーかラグっちの登場もいよいよ秒読みですな。
>>420 とりあえずMSなら腰の心配しなくていいのはデカイよねw
俺たちの月曜日!
>>426 ホ〜ォタァイ〜まみ〜れでぇ〜、さぁぁっそぉぉぉとぉぉぉ〜♪と言うのは紫組のお家芸だが
シンがそれを会得する可能性があると言う事だな
流石にここの悟りを開いたキラもそろそろ負けパターンだよなぁ
向こうにはシャシャもいるし、それに凸のセイバー(肝心な所で痛恨のセーブミス)やハイネグフ
(愛機をよりにもよってザク呼ばわりされた挙句栄えある初任務は荷物持ち)と言った具合に
「本編準拠の新型機」デビューは大概変なミソがつく、と言うのはもはやこのアム種ではジンクスに
なりつつある品
>>425 乙です、残りの新型3機もそろそろ登場するのかな?
>>426 そこでジェナスの出番に期待ですよ!
アム種 第七十二話 ゴースト・ボイス
──赦してくれ。お前達を救えない、俺を。
両断したバイザーバグから噴出する、脳を収めた培養液の噴出が、彼にとっては素肌を焼く硫酸だった。
いや。素肌ではなく心だ。心が焼かれ、焦がされ。苛まれていく。
「ピープルを、守る……」
セラが、ブーメランで切り裂き。
ニルギースがモトバイザーからバーレスクで撃ちぬいていく。
「なのに俺たちはお前らを……守れなかったんだ……」
こうなる前に、なんとかできなかったのか。
いや。そもそも自分達が。あの男がこの世界にこなければ……!!
「せめて、俺たちが……俺たちが楽にしてやるから……!!」
心を軋ませながら。
ジェナスは6機目のバイザーバグを、切り捨てていった。
****
目覚めた世界は、不思議な色に包まれていた。
辺りを見回しても、なにもない。上下感覚すらあやふやなそこは、
わずかに宇宙に漂う感覚にも似ていた。
「ここは……どこだ?」
状況が掴めず、シンは呟いた。
自分は、どうしてこんなところにいるのだ?
レイや、ルナマリアは。キラやアスラン、ジェナスにセラは?
それに、インパルスは───……。
「!!」
そう、だ。
自分は、インパルスで奴らに……あの部隊に戦いを挑んで。負けて。
「ステラが、敵だったなんて」
あの声は、あの叫びは。間違いなくステラだった。
彼女は自分をかばって、それからどうなったのだろう?
いや、それ以上に。
「俺は……ステラを殺そうとしてたんだ」
守る、などといっておきながら。
その実、敵として、幾度となく。
アーモリーワン、デブリ帯、ユニウスセブン。地球に降りてからも、何度も。
知らなかったから、で済ませてしまえればよかった。
けれど、もうそうはいかない。
「また……戦うのか、俺は。ステラと」
そんなの、できるわけがない。この手にステラをかける。あるいは、ステラの手を、自分の血で汚すなど。
『よお、悩んでるみたいだな?』
「!?」
頭を抱え悩み苦しむ彼は、突如としてかけられた声に、びくりと怯えたように恐る恐る振り向く。
『よかったら、話してみないか?』
そこにいたのは、顔立ちの整った。緑色の服を着た、一人の男であった。
****
「っく!!ビームは弾かれる!?なら!!」
陽電子リフレクター。あるいはビームシールドか。
一撃、ビームライフルを放ち判断したキラは、腰のレールガンによる砲撃に切り替える。
しかしそれも、黒い巨体の前に出現する光の壁によって阻まれ、そこで爆散する。
弾かれて街に被害を出すビームよりはましだが、決定打とはなりえない。
『キラ!!接近できるか!?援護する!!』
「やってみる!!」
二丁のビームライフルを、腰へ。かわりにサーベルを引き抜き、
ビームの弾幕の合間を縫って接近を試みる。
この火力をこれ以上、街に向けさせるわけにはいかない。
機体を上空高く、舞い上がらせて。
「この……邪魔、しないでくれっ!!」
右の砲塔へ斬撃をたたきこもうとしたところを、紫のウインダムに妨害される。
あと、もう少しというところで。
アスランが即座にビームを乱射して牽制するものの、彼もカオスと性能の劣るムラサメで
乱戦を演じており、完全に追い払うには至らない。
なにより、この絶え間のない膨大な量の弾幕に、息つく暇もないのだ。
鉄壁の防御に、止むことのないビームの雨。
射撃、砲戦主体のストライクフリーダムでは相性の悪い相手だ。
「それでも!!」
これ以上、やらせるわけにはいかないのだ。
****
『そうか、守りたいと思ってたやつが敵だった……か』
バルドフェルドからシンのことを聞いたという男は、彼の話を何も言わず聞いてから、呟いた。
ステラを、守りたい。
ステラのような子を、助けたい。
ステラと同じような子を、生み出させない。
それらはみな、あの金髪の儚げな少女から始まっていた。
軍に入った理由が家族を喪ったが故、力を欲した結果であるならば、
今までシンが戦ってこれたのは、心の底辺にその土台があったから。
その、もっとも根幹をなす部分が、脆くも崩れ去った。
『……ちっとばかし、つまらん話をするか』
「え?」
自分の内面に関わることだというのに、シンはこの男に語ることについてさほど抵抗を感じなかった。
バルドフェルドの名を彼が出したからかもしれないし、あるいは、
この今自分がいる場所のもつ、非現実感からかもしれない。
『昔、な。一人の男がいた。そいつは……言ってみれば道化だった。だが、戦わなければならない立場でもあった』
「道化?」
『聞いてろ。……そいつには、心を許せる仲間がいた。常に自分を導いてくれる女性がいた。
彼女がいたからこそ、その男は成功を収め、彼女に向かっていけば常にうまく行くと信じていた』
道化が、戦う?変なことを言う男だと、シンは思った。
「……」
『だがあるとき、男とその女は、離れた。仲間もどこかに行ってしまった。
そして再会したとき───……女は、男に前に敵として現れた。かつての仲間達と共に』
「え?」
『ほんの少し前まで、隣にいた連中に命を狙われるんだ。仲間だと、信頼していた人間に。
本心からいえば、戦いたくなどなかったろう。逃げ出したほうが男にも楽だったろうよ。
でも、男は戦った。自分の命が、奪われるまで。何故だと思う?』
男に尋ねられて、シンは答えに詰まった。
仲間と、したくもない命のやりとりをして死んだ男の考えたことなど、わかるはずもない。
わかるのは、目の前の男がこの話を通して、自分になにかを言おうとしていること。
そして自分もまたこれからさき、ステラと戦うことを望んでいないということだった。
『そいつはな。「止めたい」と思ったんだよ。仲間たちや、自分を導いてくれた女性が、
道を踏み外そうとしているのを。自分の手で、なんとしても』
「止める───……?」
『ああ。大事な仲間だからこそ、止めたい。それが男の戦う理由だった』
言い終えて、細身の男は立ち上がった。
話はこれで、おしまいということだ。
『お前が戦う理由……もう一回、考えてみな。じゃあな』
「あ、あの。ちょっと……!!」
『ジェナや───セラによろしくな。ファインに決めろ……ってな?』
「あ、あんたは一体───!?」
『憎しみに捉われるなよ?止めるほうが頭に血を上らせてちゃ、意味がない』
男の姿が、世界を包む様々な色をした靄の中に、かき消えていく。
彼の話に、一体どんな意味があったというのだ?一向に掴みきれぬまま、
伸ばした手は、彼の後姿に届くことはなく。
「───シン!?」
代わりに掴んでいたのは、ルナマリアの右手。
「……ル、ナ?」
見開いた目が、覗き込む彼女の顔を確認し。
ようやく彼は、自分が今目覚めたのだと知った。
****
「あれは……フリーダム!?」
ルナマリアから、大筋の事情を聞き。
彼女の見守っていたモニターに目を向けて、シンは驚愕する。
白い身体。蒼き翼。連合のやつらとも違う、あの二年前の機体が、空を舞っている。
「後継機だそうよ。ノワールが壊れたから、キラさんが代わりに。アスラン……隊長もムラサメで出てる」
「たった、二機で!?あんな化け物を相手にか!?」
極太のビームが、フリーダムのいた空中を薙いでいく。まるで、象に人間の子供が立ち向かっていくようにしか見えない。
──俺が。俺があの時、勝手な行動をせずにいれば。インパルスもセイバーも、ノワールも健在で、
バルドフェルド隊長だって死ぬことはなかったはずなのに。
包帯に覆われた拳を、握りしめる。
「……?」
「ルナ?どうした?」
「いや……変なの、フリーダムの動きが」
「え?」
言われ、再びモニターに目を向ける。
「遮蔽物のある街を利用しながら戦ったほうが、やりやすいはずなのに……。
上空から、降りようとしないの。あれじゃ的にしてくれって言っているようなものだわ」
「!!」
確かに、フリーダム……ストライクフリーダムは、上空を飛び回るだけでけっして街には降りなかった。
撃ってこいとでも言うかのように。空中を飛び回り、ひたすらビームを避け時折、ミサイルの流れ弾を迎撃する。
そして、シンにはすぐにその意図が理解できてしまう。
(キラは……「あの時」のことを、繰り返さないために……!?)
シンが家族を喪ったときのように、万が一にも砲弾やビームが市街地を襲わないように。
MAの放ったミサイルを、反撃もせず全てに優先して撃ち落していることからも、間違いない。
(キラ……あんたは……!!)
行かなければ。
彼を望まぬ機体に載せ。苦しい戦いをさせているのは、自分なのだから。
画面の隅に映るカオスを見て、その思いは一層強くなる。
「あれ、は」
敵が、あの部隊ならば。ステラもいるかもしれない。
ならば彼女を「止めなくては」。
守りたい存在だからこそ、彼女を。この手で、止めなくては。
仲間達を助け、大切な少女を止める。
シンの心と身体を衝き動かすのに、これ以上の理由はいらなかった。
書き忘れてました。
第三十五話(69と70)ロゴス−戦争屋−
第三十六話(71と72)自由よ、再び
です。
ファインに決めてくれたあの男に拍手を!
そして134氏にGJを!
きたきたきました!さあこれからが一層楽しみだ…
この戦いのあとがどうなるか非常に楽しみです
乙です。
そしてあの男セリフ付きで出演キタ――(゚∀゚)――!!
乙!
まさかシンの夢枕にまで立つとは・・・・・。
つか視聴者サイドからはどー考えても救いようの無い「あの」キャシーに見事な受容・・・・。
感服しました。
この調子で虎もムネオの夢枕に立ったりするんだろうかw
>「でてこい、ジェナス・ディラ……このようなくだらん戦いのために俺はいるのではない」
完全にストーカーです、本当にあり(ry
>瓦礫と化したビルの上から、「「「自らの指揮するバイザーバグの部隊」」」を俯瞰し、ディグラーズは気のない
溜息をついた。
って、ちょwwwww
先生あんだけ前に文句言ってキレてたのにちゃっかり使ってるんかい!>ロゴスバイザーバグ
GJだ!!CEでアンタに会えるとは思ってなかったぜ。
アンタの相棒はしっかりジェナを守ってくれているぜ!
そしてあんたの意思は「シン」がしっかり受け継いだ!
ふと気付いたんだ
あの人の名前からCEを除くと…
どう見てもグループSNEです、本当にありがとうございます
一斉に場がシーンとなりそうな位どうでもいい話だな
保守!
SCENEさんの道化発言とか、シホが近隣の基地で調整していたとか、
運命の登場フラグがどんどん立ってるな!
ここのデストロイはいきなり変形からの回転頭突きでジェナ達を吹っ飛ばしたりしないかな
アム種 第七十三話 ライフ・ゴーズ・オン
「父上」
オーブ首長国連邦行政府にある、一室。
貫禄のある大柄な男を前に、ユウナが呟いた。
隣にはカガリもいる。
豪奢な造りの執務机に座るのは、彼の父にしてオーブ代表首長会が一人。
カガリの後見人も兼務する男、ウナト・エマ・セイランである。
「『ロゴス』。あなたもその、一員であると?」
ぱさりと、机上に一枚のプリンタ用紙を投げたユウナ。
そこにはプラントから各国政府に向けて送られた、「ロゴス」構成員の名(と言われている)の
リストがあった。
そして、その中には確かにウナトの名や、オーブにおける主要企業の代表・幹部クラスの人間の名もあり。
「ウナト……」
カガリとユウナが見守る中、彼はゆっくりと頷く。
「否定は、せんよ」
「ウナト!!貴様……」
「待つんだ」
はやるカガリを押さえ、ユウナは不思議なほど落ち着いている父に目を向ける。
「理由を、お聞かせいただけますか」
「……オーブのためだ」
「え?」
オーブの?
「ロゴス」とは、デュランダルの演説を(ユウナとしては鵜呑みにする気はないが)信じるならば、
私利のための団体のはず。それを、オーブのためというのは?
案の定、カガリが激昂する。
「な、なにがオーブのためだと!?これが!!ロゴスが!?」
「落ち着いて、カガリ」
「……先の大戦において、わが国は多大なる被害を受けました」
静かな口調で、彼は語り始める。
今度はユウナにではなく、カガリに。
「マスドライバーを、オノゴロを失い。連合の軍門に下って。それが僅か二年でここまで復興したのは何故でしょう?」
人材も、多く流出した。技術立国のオーブにとって工業生産力の低下も、大きな痛手であったはずだ。
「そ、それは連合が……」
「占領政策を弱めた。大した見返りも要求せず、資本を投入し、復興すら協力して」
「父上、あなたは」
「コーディネーターを多く擁するわが国を、です。おかしいとは思いませんでしたか?」
ユウナは、何かを勘付いたようだった。
カガリのほうは飲み込めず、彼とウナトを交互に見比べるしかできない。
「あなたは、人身御供になったのですか」
「……疲弊した国を立て直すには、それしかないと思った。「ロゴス」傘下に入り協力を乞うしか」
だから、正確にいえば彼は「ロゴス」メンバーではない。
彼らから投資を受け、その見返りに大局を彼らの望むように動かすよう努力する。
いわば手足となったのだ。
「ウナトッ……」
「代表。あなたは実に清廉だ。ですが」
ウナトの手が、机の引き出しに伸びる。
「政治家の清廉は、時として害毒にすらなる。それをお忘れなきよう」
引き出しを、太い指先がまさぐって。
「こうなってしまえば、私はオーブの立場を悪くするものでしかない。幸い、最後の上納も終えることができた」
「父上?」
「MS二機……国ひとつと比べれば、安いものであろう」
「二機……まさか、“アレ”を!?」
二人がその機体が何であるかに思い至ったとき。
彼は銃口をこめかみにつきつけていた。
室外に控えていた、パフたちを呼ぶ間もなく。
「そして、この老骨の命などいうまでもない」
「父上っ!!」
「今この瞬間から──わが国は「ロゴス」とは無関係だ」
銃声が、官邸に木霊した。
****
「こいつ……変形するっ!?」
空中を飛び回り、必死に突破口を探していたキラは、
巨大な黒い機体の異変に気付いた。
漆黒の、円筒状だったボディが、形状を変化させ。
その両足を、反転させ。
現れたのは、特徴的なデュアルカメラのツインアイ。
「ガンダムだって……!?こんな、大きな!?」
口元から放たれるビームを、両腕のビームシールドをフル稼働させ防ぎきる。
形態は変わろうと、火力が異常ということに変わりはない。
「どっちにしたって!!」
とめなければ。こいつを倒さねば、被害は広がるばかりなのだ。
****
ハンマーに、大太刀はまたしても弾かれた。
「っぐ……!!」
「どうしたどうした!!貴様の力、その程度かジェナス・ディラァッ!!」
鉄拳を刀身で受け止めるも、衝撃は殺しきれず。
大きく土煙をあげて、ジェナスは後ずさることを余儀なくされる。
「やつは……シーン・ピアースはもっと巧く使っていたぞ、そのバイザーを!!」
「うる、さいっ!!お前が!!シーンの名を出すな!!」
かわされた一閃は、瓦礫を真っ二つに断ち割った。
「お前が!!バイザーバグの技術を与えたばっかりに!!何人、無駄死にしたと思っている!!」
罪のない子供たちを。
一体どれだけ、変わり果てた姿にしたと思っているのだ。
「知ったことかっ!!あのような人形、何体あろうと関係ないわっ!!」
「ぐうっ……てめえっ!!」
「俺にとって重要なのは力!!強さだけだっ!!」
二人の拳が、激突する。
双方の強大な破壊力に、火花が舞っていく。
「おおおうううらあああああっ!!!!」
「はあああああっ!!撃ぃっ!!」
****
人のいない、しずかな格納庫。
そこでミーアは一人、灰色の機体を見上げていた。
地球上での慰問ライブ日程を全て終え、一旦プラントに帰還する彼女は時間を持て余していた。
「デスティニー……運命……か」
シャトルの時間まで、まだ数時間はある。
マネージャーに無理を言って、目立たない区画限定で散歩することを許してもらい出歩いていると、
この場所を見つけたのだ。
───どうして、アスランやキラじゃないんですか?
ミーアがこの機体を見るのは、これがはじめてではなかった。
プラントで一度、ラクスたちとともに開発される様子を視察したことがある。
その時、ミーアはふとデュランダルへと尋ねていた。
この機体、デスティニーと、もう一機の最新鋭MS・レジェンド。
そんな高性能な機体なら、見合うだけの腕のパイロットに使ってもらうべきではないのか。
もちろんそれが自分の素人考えだとわかってはいたけれど、ラクスや議長から時折伝わってくる
彼らの活躍を耳にするに、失礼ながらシンとレイの二人がそれ以上の技量を持っているとは思えなかった。
「運命を……切り拓く。……撃ち貫く。掴み取る、か」
ミーアの質問に対して、デュランダルの答えの第一声はなんとも要領を得ないものだった。
軍人でも技術者でもない彼女に、それらがデスティニーの武装に込められた意図だとは、知る由もない。
───彼らだから、だよ。ミーア。
議長は微笑を浮かべ、囁いた。
───シンは、コーディネーターとはいっても一般家庭に生まれた身だ。調整とはいっても、
殆ど健康面に関する程度しか受けてはいない。遺伝子操作にも、それなりの予算はかかるからね。
いわば、遺伝子における格差社会である。
裕福な者はより高い能力調整を遺伝子に施すことが出来、一般層、それ以下の者たちは
限られた予算で限られた調整しかすることはできない。
あくまでもオーブの、普通の家庭に生まれ育ったシンが、アスランやキラのような
最大限、最高の調整を得ることなど、比べるべくもない。
───レイに至っては、ナチュラルだ。そうでありながら、二人はこれまで戦ってくることができた。
遺伝子……いわば、自身の身体に刻まれた運命の差に、屈することなくね。
二人とも、自らの力で運命を切り拓いてきたのだ。
己の目指す運命を貫き通し、掴み取るために。
結果、彼らは赤服というトップガンの証を得。
アスランたちと共にザフトのエースの一角を占めるまでになった。
「『だからこそ、遺伝子に左右されるこの世界で二人は、貴重なのだ』……かぁ」
わかるようで、わからない。
議長は肝心の、あの二人に何故新鋭機を託すのかという質問への答えを、ぼかしたように思える。
「───!!」
「──……よ!!……な、身体……」
「んお?」
手すりに預けていた背中を、どこからか聞えてきた男女の声に持ち上げる。
振り返って見下ろすと、二つの赤い影が言い争っているのが見えた。
そして遠巻きにそれを見守る、やれやれといった様子のもう一つの赤服の姿も。
「離してくれ!!俺は、俺がいかなきゃ!!」
「無茶よ!!さっきまであんた意識なかったのよ!?」
片方は女、たしかミネルバに乗っていた子だ。
そして、もう片方は───……。
「シン・アスカ?」
「「へっ?」」
キャットウォーク上からの彼女の呟きが、聞えたらしい。
彼らは、見守る女性士官───シホ・ハーネンフースとともに、予期せぬ方向からの声に
驚いたように顔をあげ目を瞬かせた。
「なに、やってるの?あなたたち」
全体のおおまかなプロットは既に開始前から書き上げていたんですが、
細かな部分は数話ずつあげてく方法を自分はとっています。
んで80話(つまり40話)までプロット練り上げたんですが、ようやくゴールが見えてきました。
もともと落着点は決まっていたけれど、そこにいくまでの道のりがやっと明確になった感じでしょうか。
とりあえず、完走まで進むだけです、はい。
GJ!
>「やつは……シーン・ピアースはもっと巧く使っていたぞ、そのバイザーを!!」
>「うる、さいっ!!お前が!!シーンの名を出すな!!」
このセリフの応酬、かなりいいと思いますた。
ジェナスも、シーンが「ナイトメア」で見せたオーラクロスアタックが出来れば先生落とすのも余裕でしょうw
それにしても今見返しても、あのオーラはなんだったのだろうと思う・・・
お昼のGJ!
俺たちも一緒に突き進むぜ!アロンジー!!
GJ!! そして愛国精神を持った一人の政治家、その姿に涙するしかないな
>>451 「これが…っ、これがっ!これがジェナス・ディラだぁぁぁっ!」なんていった日には燃え尽きる。
>>450 「シン」と言う存在をどう定義するか、と言うのが落着点の一つなのかな、何だか今回はそんな気がしました。
もう一踏ん張りですね。
続き期待保守
>陽電子リフレクター。あるいはビームシールドか。
>一撃、ビームライフルを放ち判断したキラは、腰のレールガンによる砲撃に切り替える。
>しかしそれも、黒い巨体の前に出現する光の壁によって阻まれ、そこで爆散する。
>なにより、この絶え間のない膨大な量の弾幕に、息つく暇もないのだ。
>射撃、砲戦主体のストライクフリーダムでは相性の悪い相手だ。
厨機体と呼ばれたストフリにも相性はあるもんだな。
来るべきドム3人組との決戦の時もスク水にさんざ悩まされるんだろうか。
紫組が収容されてる病院がプラントのものと言うのが気になるな・・・w
あの二人今度はクライン派に拉致されてまた敵になったりしてw
今度の愛機は紫繋がりでドム、と。
合計5人だから「LACUS」でも「SIMCA」でも思いのままと言うw
>>427 実際その通りになったが、まぁ驚くには当たらんなぁ。
・調整不足のゼアム鮭で意識不明の重態だったのにBパートで大暴れするジェナ
・毎度毎度崖から落とされてるのにいつもピンピンしてる先生
・ビームだ触手だでエライ目に遭ったのにニルギとの絶妙のコンビネーションで危機を抜け出すシャシャ
・足を撃たれたのにボーダタックで見事ニルギの危機を救うシーン
意識不明の重態なぞアムドラでは怪我のうちに入らん。
ピストルで一発撃たれたりライトセイバーで胸を刺されたりしてそのままぽっくり逝っちまう香具師もいるがな。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥orz
大胆な予想をしてみる。
ミーアの正体は死んだはずのシシー。
ミーア「なんでアタシが逮捕されなきゃいけないのーっ!ザルディ(の鮭)はカッコ悪いって言っただけじゃなぁぁぁぁいっ!!!」
アム種 第七十四話 真なる運命
キラは、耐えていた。
二基のビームシールドを広げ、極太のビームを機体前面で防いで。
「く……はやく、脱出を……っ!!」
彼の背後には、半壊したバクゥの残骸が一機。
黒いMAの迎撃に参加し、撤退しそこねた機体とそのパイロットがいる。
『キラ、頑張って!!今ニルギースがパイロットの救助に……』
「たの、む!!こっちは持たせるから!!」
ミリアリアの声に、自らに気合を入れるがごとく大声で返す。
「こっちだ!!」
一旦ビームが弱まったのを見計らい、後ろ腰のサーベルを一本放り投げる。
当然敵は反応し、空中に舞ったサーベルの柄をビームで焼き払った。
その隙に上昇をかけ、連結させたビームライフルの照準を向ける。
「だめかっ!!」
やはり、弾かれる。
弾速の速いロングビームライフルなら手薄な部分を狙えばあるいは、と思ったのだが。
巨体に見合わぬ反応の速さで、黒い悪魔は腕の陽電子リフレクターを掲げ防ぐ。
(……どうするっ!?)
ウインダムの手榴弾をバルカンで撃墜。
キラは、必死で考える。
どうすればいい。どうすればこの化け物を止められる。
****
黒き翼が、疾っていた。
灰色の曇った空を、一直線に。
****
「おらあぁっ!!ステラに手を出すんじゃねぇっ!!」
憤りにも似た感情を吐き出すように、スティングは黄色いムラサメにサーベルを振り下ろす。
「どうしてまたてめーらなんだ!!どうしてステラとシンを……っ!!」
変型する機体を、スティングも追う。
デストロイに乗ったステラとシンが、また戦う羽目になるかもしれないのだ。
本人たちが望もうと、望むまいと。
そのことを考えると、スティングの心は今まで感じたことがないほどに苛立ち、怒りを覚える。
「させるかよ!!ステラには!!かわりに俺が……っ!!」
お前らが。シンが戦場にいさえしなければ、ステラと彼が戦うことはないのだ。
半ば責任転嫁のような論理で、スティングは盾の機銃を撃ち鳴らす。
「お前らが悪いんだっ!!お前らが!!」
ムラサメの放ったミサイルを両足のビームクローで蹴り斬り裂き、
スティングは敵機のあとに追いすがった。
****
「シン、見えてきた。前方よ」
「ああ、わかってる」
機体は、桜色の燐光を纏い急いでいた。
少年と少女は、自分達の目指すべき黒い機影を視認し、頷きあう。
「にしても、狭苦しいわね」
「……言うなよ。無理に乗り込んできたのはルナだろ?」
桜色の輝きが一層強い光を放ち、機体は更に加速していく。
その重圧が傷に障り、少年は僅かに表情を歪めた。
少年も、少女も。紅い制服のまま。
ある程度の耐圧機能を約束してくれるノーマルスーツすら、身に着けてはいない。
そんな時間さえも惜しかったのだ。
───いや。平気だ、このくらい。
唇を噛み締めて、痛みを堪える。
操縦桿を握る掌に、力が篭った。
****
『こちらは救出した。思う存分やれ』
言われなくても、既にやっているさ。
やってるんだけど……ね。
ニルギースの通信に、キラは密かに心の中で愚痴った。
思う存分とはいっても、市街地。しかも突発的な戦闘で避難を完了しているわけでもないから、
やってやれることとやれないことがどうしても出てくる。
あの機体は、手加減して戦えるような相手ではないというのに。
「っ!?両腕を!?」
だから本来、このように雑念に捉われている場合ではないのだ。
キラが自分にそう言い聞かせた瞬間、街を蹂躙する敵機は、その両腕を分離し、
ストライクフリーダムへと向けて発射してきた。
「これは……ドラグーン!?」
こんなものまで。
避けても避けても、三方向からやってくるビームの驟雨が機体を焦がしていく。
一対一だったのが急に、三対一になったようなものだ。
「くそ、だったらこっちも───……」
自身も翼に装備されたドラグーンを放出しようとして、
スイッチに伸ばしかけた手が止まる。
……だめだ、使えない。
元来、キラはそこまで空間認識力に長けているわけではない。
それにストライクフリーダムのドラグーンは宇宙用で、その上調整がまだ完了していない代物だ。
十分に調整し、訓練をしなければ、とても役に立つようなものではない。
「ぐううっ!?」
ビームを放出するばかりだった黒い右腕が突如機動を変え、急速に接近してきた。
射撃があたらないのならばという、直接ぶつける打撃へと切り替えたというわけだ。
背面を強く殴打され、ストライクフリーダムはバランスを崩し落下していく。
なんとか立て直し着地するも、衝撃は消えず瓦礫を薙ぎ倒し地面を滑っていくフリーダム。
「く……」
くらくらする頭を振って、視界を安定させる。
敵は?ぐずぐずしていたら、やられる。
「!?」
眼前に、巨大な右腕があった。
黒く光るそれは、五本の指にそれぞれ、巨大な砲口を持ち。
それが今、撃ち放たれんと光り輝いている。
───ビームシールドを。
機体の左腕を操作するが、その腕は瓦礫に埋まり、微動だにせず。
ビームシールドを起動し、瓦礫を吹き飛ばすもその一瞬の遅れこそが、まさに命取り。
「まずい……!!」
間に合わない。この至近距離では、とても。
右腕を使おうにも、もうおそい。
砲口から、ビームが放たれる。
キラは諦観に、両目を閉じた。
そして不思議なことに───……彼の身体は、焼き尽くされるよりはやく、浮揚感に包まれた。
瞼を照らす、鮮やかな桜色の光とともに。
****
「───はぁっ、はぁっ」
なんとか。
間一髪、間に合った。
シンは急速な機動によって身体にかかった負担に息を切らせながら、
内心ほっとしていた。
「ったー……ちょっと、シン!!無茶しないでよ!!こっちは固定するものが──」
「……縞か」
「!?ああっ!?」
ひっくりかえっていた同乗者が慌てて姿勢をなおし、スカートを押さえるのを見て安堵の溜息をつく。
そう、自分達はなんとか間に合ったのだ。
レーダーにも映ることなく突如として現れた闖入者に、敵も味方も戦闘を中断し、
支えあうように空中に滞空する二機のMSに見入っている。
「キラ、無事ですか」
『シン?その機体───……身体は大丈夫なの?』
左肩には、白い機体が抱えられていた。キラのストライクフリーダムだ。
シンはミラージュコロイドで近づいたデスティニーの最高速度を以って、
射線上からぎりぎりのところで救い出したのである。インパルスでは、こうはいかなかっただろう。
光の翼を──化け物じみた機動性をもつデスティニーだからこそ、出来た芸当だ。
「助けたんだから、礼くらい言ってくださいよ」
ぶっきらぼうにシンは言った。
この機体の調整には、彼も参加したと聞いている。それが故の心配なのだろうが。
だが、そのために自分は来たのだ。
「ルナ、ごめん。ちょっと荒っぽい操縦になるかも」
「いーわよ。好きにしなさい」
皆を、助けるために。
あの部隊を、ステラを止めるために。
『シン!!シンなのね!?』
「艦長」
『その機体……詳しいことはあとから聞きます。やるべきことはわかってるわね?』
「はい!!」
ジェナスたちが、救助にまわりバイザーバグたちの相手をしている間に。
自分はあの巨大な敵を止めなくてはならない。
フリーダムから手を離し、背部にマウントされた対艦刀・アロンダイトを引き抜く。
「いくぞ、デスティニー」
そしてゆっくりと、正眼に構え。
「この街を……皆を!!守るんだっ!!」
彼の意を受けた機体は飛び出した。
強大な敵へと、蒼き刃を手にして。
黒き機体が街にもたらした、「破壊」という名の運命を、打ち破るため。
はい、設定またいじってます。
運命のミラコロですね。本来だと分身オンリーのようですが、
出力調整で本来の消える能力も使えるってことで。
ただし最大出力だと×。ラグはようやく次回登場か・・・。
守るんだぁー!の叫びに凄く興奮しました。
本日もGJです!
>ラグはやっと次回登場か…
アロン人クル―――――ッ!
作者さんGJ!!
やっぱ、新機体登場はこれくらい燃えるものじゃなきゃだめだよな!
ラグナ参戦によるアムドラサイドの燃える展開も期待してますよ!!
>>471GJ!シンが格好良い!
パンツを見られて慌てるルナもウケたW
保守!
保守
ほっしゅ
アム種 第七十五話 夜明けを求めて
シャトルの船窓から、ミーアは遠ざかっていく地球を見つめていた。
「だいじょーぶ、かなぁ……」
あのシンという子は、もうアスランたちの元に着いた頃だろうか。
ひどい怪我をしているようだったけれど、無事だといいのだが。
「ミーア様。どうなされました?」
隣席の護衛兵が尋ねてくる。
それほど自分は奇妙な表情をしていたのだろうか。
「なんでもないわ。……プラントに戻ったら、ラク……お姉さまには会えるのかしら?」
「さあ。私にはどうにも」
本来、ミーアはラクスの影武者を演じる予定であった。
だから整形もしたし、髪も染めた。本人から直接、教わったこともあった。
だが、自分は今、彼女のことを姉と呼んでいる。
本名の、ミーア・キャンベルのままで。
(でもまだ、そんなに経ってないんだなぁ)
彼女と、形だけの偽りとはいえ姉妹になって。
けれど当初に比べれば、随分と戸惑うことも少なくなったと思う。
なにより、今の生活にミーアはそれなりに満足していた。
ラクスやアスランたちの手伝いができるのは嬉しいし、ライブのステージに立つのも好きだ。
時折、目の回りそうな忙しさに辟易することもあるが、
自分の好きなことができて、人の役にも立てるのだから、不満などあろうわけもなかった。
(ラクス様、元気かな?)
政治関連の仕事は大変だろうが、身体など壊していないだろうか?
先日の演説では、なんだか元気がなさそうだったが。
心配する彼女は、知る由もなかった。
ラクスとデュランダルの二人が置かれている、今の状況を。
****
「ウワッチャ!?……っぶねー!!」
金髪の少年は、目の前へと落下してきた瓦礫に尻餅をつく。
「こりゃあ、素直に避難しといたほうがよかったかな……?」
ラグナ・ラウレリアは皆の避難していった道をひたすら、舞い戻っていた。
突如として訪れた混乱。
巨大な、黒い怪物のようなMAに追われるようにして世話になっていた宿の主人と共に
逃げた彼は、元来た道を逆行する。
「でも、あいつら……ナンでバイザーバグなんかがヨ……!!」
すべては、この世界にあってはならぬものを見てしまったため。
何ができずとも、その事実が彼の足を戦場へと向けていた。
「俺にも移ったカナ?ジェナの熱血馬鹿っぷりがヨ」
頭上を飛行していくバイザーバグから身を隠し、やり過ごす。
新聞やニュースを見るほどの余裕がなかった彼は、知らない。
その熱血馬鹿と彼が評した仲間も、この戦場にいることを。
「でも、やっぱあいつらは俺がなんとかしねーとナ!!」
自身の寝泊りしていた宿が、見えた。
この世界に飛ばされた時、何故だか身に着けていたアムジャケットも、あそこにあるはず。
稼動できるほどエネルギーが残っているわけではないが、なにも身に着けないよりはましだろう。
「わわっ!?」
勢いこんで向おうとした彼の頭上に、煙を噴き上げたバイザーバグが降ってくる。
泡を食った彼は、慌てて半開きになっていた近くの倉庫のシャッターの中へと転がり難を逃れる。
「あーっぶね、あっぶね。……ん?」
そして気付く。倉庫内に、二つのどこか見慣れたような形をした物体が鎮座していることを。
「こいつは?」
ひょっとして、と近づいていく。
彼の指先がそれらに触れようかとしたとき───……。
「うわっ!?」
倉庫の壁を突き破り。
蒼い影が、彼の側へと躍りこんできたのだった。
「くそっ!!まだ……」
「ジェナ!?」
「あ?」
それはまぎれもなく、熱血と彼が笑った、友の姿であった。
****
「シン!!カオスが!!」
「っ!!」
緑色の機体がムラサメを振り切り、光刃を輝かせて迫ってきていた。
肩からビームソードを引き抜き、アロンダイトとの二刀流をもって、その斬撃をシンはさばいていく。
『おらああぁっ!!新型だかなんだか知らねえが、ステラはやらせねぇっ!!』
そして、接触回線越しに届いてきた声に、目を見開く。
「スティング!?スティングなのかっ!?」
右を防がれたカオスが振り下ろそうとしていた左腕のサーベルが、ぴたりと止まる。
『……シン、か?』
「あ……ああ!!そうだ!!シンだよ!!よかった、話を───」
話をさせてくれ、できるなら、ステラとも。
安堵して声をかけようとした彼の言葉は、言わせてもらえない。
再び力のこもった一閃に、間一髪対応する。
「何するんだ!?相手がわかってんのに、戦う意味なんて……」
『お前が相手ならなおさら!!俺がやらなきゃなんねえんだよ!!シン!!』
「く……!!話をきいてくれ!!話を、ステラとさせてくれ!!」
『やかましい!!ここは戦場だろうが!!』
兵装ポッドのミサイルをバルカンで落とし、MA形態のカオスと刃を交えるデスティニー。
なんで、話を聞いてくれない?
こんな殺戮にステラや、彼らの手を貸させたくないからこそ話そうとしているのに。
「俺はお前達を止めたいだけだっ!!殺し合いたくは……」
『あまったれんな!!お前に……デストロイは!!ステラはやらせねえ!!』
「デストロイ、だと!?あの黒い化け物のことか!?」
ビームシールドで、カリドゥスを防ぐ。
動揺したシンに代わり、ルナマリアが手を伸ばして作動させてくれたのだ。
「まさかあの中に、ステラが!?」
『……っそうだよ!!だからお前には、落とさせねえ!!ステラが懐いてたお前には!!』
「そんな!!俺は……!!」
『俺達は……エクステンデッドはなぁ!!戦うしかないんだよ!!ずっと!!』
「っく!!」
スティングは、強い。
だが、自分だって。
負けられないのだ。
「……言っただろ、止めにきたって!!」
ゼロ距離で向けられたライフルから身を翻し、その銃身を掴み破壊する。
デスティニーの掌に装備された武装──ビーム砲、パルマ・フィオキーナによって。
『何っ!?』
「ステラなら、なおさら!!あの子にこんなこと、させられない!!」
光の翼が、輝く。
カオスはバルカンと兵装ポッドの砲で迎撃するが、そのスピードに翻弄されとらえきれない。
『分身だと!?』
幻惑するように、残像が現れては消え、消えては現れていく。
かつて見たことのないこの現象に、スティングは明らかに困惑していた。
「ステラを、止める!!そして、助け出す!!」
両腕を、斬り落とす。
「邪魔なんか、させるかっ!!」
ビームブーメランが兵装ポッドを次々に二機とも墜とし。
「絶対に!!」
二刀の太刀筋が、頭部と両足を宙に舞わせる。
『馬鹿……な?』
重力に引かれ、カオスの機体が落下していく。
黒い機体は、こちらを向いて停止していた。
「ステラ」
彼女は今、怯えているのだろうか。それとも、泣いているのだろうか。
きっと、どちらもなのだろうと、シンは思う。
死の影を恐れ、逃れようともがき苦しみ。
子供のように泣き喚いて、自分の逃れた死を別の誰かに与え続けている。
「今、俺が助け出す。俺が止める」
大人と幼児ほども体格差のある二機は、対峙する。
ルナが、がんばれという風にシンの肩に手を置いた。
「だから、ステラ。俺が今行く」
その黒い機体から、今俺が解放してやるから。
きみの怖がる「死」から、最も今近い場所から。
今回は少し時間かかりました。忙しかったもので。
次回か次々回でデストロイ戦は決着つくかな?
乙!
シンにデストロイの中の人の件を知らせる役がスティングになったか・・・。
本編でネオがやった時は非難轟々だったからなぁ。
んで更に馬に蹴られる噛ませとはつくづく今回は運が無いなw
しかしラグが持ってるのが自分のネオ鮭だけってのが意外だったな。
絶対ファーブニルとフェンリルもあると勝手に予想しとったが。
>>484 >>479 >そして気付く。倉庫内に、二つのどこか見慣れたような形をした物体が鎮座していることを。
ソダンとガンガーかも知れんぞ?w
本命:ファーヴニル&フェンリル
対抗:ソードダンサー&ガンシンガー
大穴:ウェンディゴ×2
紫組が横たわってるとか
実は何故かバグブレイムを装着したロシェとKKとかw
洗脳済みで目を覚ますと襲ってくる。
>>487 一つはライドボード
もうひとつは蓮根ガンにきまってんジャン!
俺はモノクルとジャイロ!
マジスゲー!なボドバとマルチジョイントガン一式だろっ
無印クロスバイザーじゃないか?
保守!
シムカが突き刺さってて隣でジンクロスが棒立ちしてるとか
保守。
アム種 第七十六話 シュート・イット
男の時計に、狂いはなかった。
一分。一秒。
時間を決める、グリニッジ標準時に等しく設定された針が、正確な時を刻んでいく。
「……」
そして、閃光が煌いた。
男の時計が、丁度午後八時を差したのと時を同じくして。
地球上の、十数か所に及ぶ場所に、炎が燃え盛ったのだ。
そのうちの一つは、男の目の前で、煙をあげて今もなお猛り続けている。
「こちら、マーズ」
男は、通信機───見た目は殆ど、携帯電話でしかない───を取り出した。
任務の完了を、報告する必要があった。
「……ああ、ヒルダ。あの方に伝えてくれ。『戦争屋』たちは始末した、と」
短く言って、男はその場から立ち去っていった。
****
「いかせるかっ!!」
シンがカオスを落とした直後、動き出したウインダムにアスランは対応していた。
黒い巨大な敵に向うデスティニーを追う二本の腕も、キラのストライクフリーダムがその行く手を阻む。
アスランは、シンとあの黒い機体のパイロットの間になにがあったのかは知らない。
だが、今あの化け物を止められる可能性が最も高いのが、
機動性に優れ接近戦を得意とする、シンのデスティニーであるということは認識している。
故に、ウインダムの進路を塞ぎビームライフルを撃ち放つ。
「あなたは……あなたが、バルドフェルド隊長を……っ!!」
レイは、シャトルへと姿を消す去り際、彼にひとつの言葉を残していた。
絶対に、内密に。そう、念を押した上で。
「本当に、あなたなんですか!?彼を殺したのは!!」
彼自身信じられないようですらあったレイの言葉が、脳に木霊する。
レイの言葉が、真実だというのなら。
「あなたは……どうしてラミアス艦長の元に戻らなかったんです!!フラガ少佐!!」
───ムウ・ラ・フラガです───
生きていたのなら。どうして彼女のところに帰らなかった。
やるせない思いが、アスランの心を駆け巡っていく。
****
出ていこうにも、とてもそんな隙間はありはしなかった。
「じゃあ、何?セラたちも一緒に軍人しちゃってんのかよ!?」
「仕方ないだろ!!ディグラーズだってこの世界に来てんだ!!こうなった以上……っく!?」
瓦礫を防護壁にして、バイザーバグの弾幕から身を隠す、男二人。
ジェナスと、ラグナ。二人の勝手知ったる戦友は再会するなり、この窮地に追い込まれていて。
「くそ……ディグラーズのやつ、燻り出す気か……」
一対一を奴が望んでいる以上、直接これで殺されることはないだろうが。
それでも、こうやっていても何の解決にもならない。そのうちこの倉庫も崩れてしまうだろう。
「出て来い!!ジェナス・ディラ!!俺と戦え!!」
「……あーらあら。あのオッサン、張り切っちゃってまぁ」
かといって、無防備に出て行って、バイザーバグたちが素通りさせてくれるとも思えない。
ジェナスはともかく、丸腰のラグナの身が危険だ。
「ちっ……どうする」
せめて、バイザーバグをある程度まとめて撃破できるような装備があれば。
この狭い場所では、ゼアムを解放するわけにもいかない。結局のところ、ラグナを巻き込んでしまう。
「なあ、ジェナ」
「ん?」
「あれ、使え」
ラグナが指差すのは、薄暗い倉庫の一角を占める二機の機影。
「あれは……!!」
「二人なら、使えっだろ?」
****
ステラは、止まらない。
通信機を必死に操作し呼びかけ続けるが、純正の連合MSが相手では繋がるはずもない。
これがガイアのままであったならば、まだ望みもあったのだが。
「く……ステラ!!俺だ!!シン!!シン・アスカだよ!!頼む、もうやめてくれっ……!!」
胸部から放たれるビームが、デスティニーの残像を薙ぐ。
アロンダイトを手に、シンは右往左往を続けていた。
「シン、これじゃ街が!!」
「わかってる、だけど!!まだ話せてすらいないんだ!!」
話すことができれば。
ステラはきっとわかってくれる。
なんの根拠もない想いであったが、シンはそう信じていた。信じたかった、というべきか。
まず話さなければ、なにもはじまらないのに。
それすらできないなんて───……!!
「!?」
「メール!?しかもこれ……カオスから!?」
「スティングっ!!」
そこには、なんの飾り立てる文字もなく、コンマのついた五桁の数字が並んでいた。
さらに、あの黒い機体のライブラリ平面図と、コックピットと思しき位置を示す赤い矢印が表示される。
たったそれだけで、なにかはわかる。
周波数を、彼は送ってきたのだ。おそらくはデストロイと彼が呼んだ、あの黒い機体への。
カオスのデータベースに残っていたであろう、ザフトの通信コードを使って。
既に実戦で奪われた三機と戦闘を重ねていたインパルスのコードは、防諜のため変更されていたが、
まだ完熟飛行も終えていない状態で出撃してきたデスティニーの通信コードは、修正されておらず。
そのままだったのである。
スティングは、一縷の望みを託したのだ。
一通のメールが届くことを信じて。
シンの指先は通信機を表示された周波数どおりに操作し、そして叫ぶ。
「やめるんだ、ステラ!!俺が……迎えにきたから!!こんなことは、もう!!」
****
「もういい、やめろ」
今にも崩壊しそうな倉庫の様子に、ディグラーズはバイザーバグたちの射撃をやめさせる。
こんなもので死ぬようなやつでもないが、対等の条件で戦わねば意味がない。
万一にでも、このような雑魚どもに奴を傷つけられては困るのだ。
燻り出すだけなら、もう十分だろう。
一歩一歩、倉庫へと近づいていくディグラーズ。
「出て来い、ジェナス・ディ───」
だがその歩みは、一瞬にして水泡に帰す。
返ってきたのは、返事でもなく。
まして、突撃してくる蒼い影でもなく。
「ぐおおおおおぉぉっ!?」
一条の、太いビームの光弾であったのだから。
「なにいいぃぃっ!?」
彼の身体は瓦礫を巻き添えにして吹き飛び、廃墟となったビルを貫通し。
ひび割れだらけのアスファルトの道路へと落下していった。
脆弱に破損した大地が、その衝撃を受け止めきれるわけもなく、
ベルリンの地下を走るレールウェイの沿線が、暗い穴となって砕けた地面ごと飲み込んでいった。
「───なんとか、切り抜けたか?」
彼を吹き飛ばした砲口からは、砲撃の残り火とも呼べる煙が、立ち上っていた。
「ンとに、こいつがあって助かったゼィ。しっかしジャケット着てねーと熱がすっげーなー」
屋根が半分、吹き飛んだ倉庫の中には、二人の少年。
彼らは一機の機体へと、二人共に乗り込んでいる。
ディグラーズは、彼らの砲撃を受けたのだ。
すぐ側にはさきほどまでジェナスが装着していたネオエッジバイザーが、ビークルモードで待機している。
白き上半身に、漆黒の下半身。そして長大な砲塔をもつそれは、ネオクロスバイザーという。
「んじゃ、俺ァエッジのエネルギー使ってアムジャケットを回収してくる!!頼んだぜ、ジェナ!!」
「ああ!!」
砲塔を兼ねたホバーバイクが機体後部から分離し、自動操縦のエッジバイザーを連れて飛翔する。
「こいつらは……やっちゃる!!」
そのシルエットは、エッジバイザーよりも遥かにマッシブだった。
向ってきたバイザーバグへと、力強い拳が叩き込まれた。
****
「───へっ。あの馬鹿……ちゃんとステラを……」
言葉の途中で、スティングは気を失った。
大破に等しい状態のカオスは、切り刻まれ落下し、無惨な姿となっても、その操縦者の命だけは救ったのだ。
ザフトも、連合も。
屍同然の機体になど、見向きもしない。
この激戦のなか、する余裕などあるはずもない。
だが、そんなスクラップ状態のカオスへと取り付く者たちがいた。
彼らはコックピットをこじあけ、スティングを回収すると───……。
どちらに合流するでもなく、立ち去っていった。
当初の予定ではこのときアスランが通信切り忘れててマリューに聞える、て案もあったんですが。
それじゃさすがにうっかりすぎるなーと。
第三十七話 (73と74)真なる運命
第三十八話 (75と76)闇、打ち払うために
失礼、途中で送信した(汗
第三十七話 (73と74)真なる運命
第三十八話 (75と76)闇、打ち払うために
です。
GJ!
ディグラーズが例によって落ちたのはいいとして、ネオクロスバイザーって
グラム以外に武装あったかなぁ? 後は徒手空拳しかなかった気がする…。
GJ!やはり先生は落ちるものだwww
しかしネオクロスをアムジャケなしで乗るか、ラグナw
GJ!って先生落下wwwww
ドム隊いいな。やっぱラクシズに居るよりこっちの方がしっくり来るような気がする。
>グラム以外に武装あったかなぁ? 後は徒手空拳しかなかった気がする…。
その通り。
だが、先生を相手にするに辺りおのが魂を込めた拳以上に相応しい武器は存在するまいw
何そのダンクーガwwww
保守
保守
アム種 第七十七話 ベルリン・デイ
「フラガ少佐……あなたはっ!!」
アスランの脳裏で、種が弾ける。
彼はやり場のない憤りと、理不尽に身を焦がしながらも機体を駆っていた。
「あなたは、アークエンジェルに……ラミアス艦長の前に立ってはならない人なんだ!!」
ビームライフルが、撃ち抜かれる。
いや。撃ち抜かせた。肩の装甲が吹き飛ぶが、気にもしない。
こちらはバルドフェルドの専用機として徹底したチューンのなされたムラサメだ。
ただ色を変えただけのウインダム、しかも腕がいいとはいえナチュラルの乗る機体に、負けはしない。
無論、ドラグーンやガンバレルでも装備していたなら話は別だろうが。
「俺達の前から……立ち去ってください!!」
変形し、ミサイルを発射。
一基は相手のビームの射線上に、もう一基を片翼へと浴びせて。
煙を吹いて体勢を崩すウインダムのバックパックを切り裂き、飛行を不可能にする。
仕上げとばかりにサーベルを投げ、ライフルを保持した右腕を潰した。
「あなたには、バルドフェルド隊長を撃って欲しくなかった」
墜落していくマゼンタ色の機体を、アスランは苦々しげに見下ろした。
「頼む……シン。あとは……」
****
聞えるはずのない声が、聞えた。
『ステラ!!俺だ!!聞えるだろ!?俺、シン・アスカだよ!!ステラ!!』
怖かった。
「死ぬ」「殺される」、その恐怖をどうにかして消してしまいたくて。
怯えきった心のまま、ステラはただ無我夢中でデストロイを動かしていたというのに。
その声だけで、怯えが嘘のように和らいでいく。
この忘れもしない声は、やさしい。怖くない声だ。
「シ……ン……?」
『そうだよ、ステラ!!俺だよ!!』
自分の口から出た彼の名前が、何故だか暖かい気持ちにさせてくれる。
二枚の翼から柔らかな光を輝かせている機体。そこに、シンがいる。
『迎えに、来たんだ』
彼女の暴れるような操縦が止まったことで砲撃が止み、その機体も巨大な剣をその背へと収納する。
『死ぬのが怖くないやつなんて、いないよ。きみだけじゃない。ステラ』
「シン……?」
『当たり前なんだ、戦争をやってようと。コーディネーターだろうと、人間なら誰だって』
滞空するMSのコックピットハッチが開く。
そこには、シート後ろに収まる赤毛の少女と、包帯を巻いたシンがいた。
「シン!!」
『聞くんだ。君も、みんなと同じ人間なんだ、だから』
デストロイに両腕が戻っていき、白い機体も突然のことに二機の様子を見守る。
漆黒とブルー、二機のMSは、徐々にその距離を縮めていく。
鮮やかな、ミラージュコロイドの噴射とともに。
『だから、そんな君が、みんなに「死」を与えちゃいけない』
───誰よりも死のことを怖がるきみが。同じように死を恐れる人たちに。
『そんなことする必要ないんだ。君は、俺が』
そして、二機は遂に目と鼻の先の距離までやってくる。
もうモニターを拡大せずとも、彼の顔ははっきりと見えていた。
『俺が、守るから』
****
黒い機体──デストロイが、脱力したように両手をだらりと下げた。
「よくもまー、そんな恥かしい台詞吐けるわね、あんた」
安堵するシンへと、シートの後ろから、ルナが言った。
「そう、かな?」
「そーよ。聞いてるこっちが恥かしくなるくらい!!」
何故だか、ルナの調子は怒っているようであった。
でも逆に、どこか嬉しそうでもある。
「で?あんたにとってあのコ……ステラだっけ?なんなの?」
「ルナ……」
「今説明しろとは言わないけど、あとできちっと説明しなさいよ。みんなにも」
「ああ」
彼女の気遣いに感謝しながら、シンはミネルバへと回線を開く。
メイリンが出るかと思ったが、応対に出たのは、呆れた表情のタリアであった。
後ろのルナマリアともども、一瞬どきりとする。
「艦長」
『まったく……無断出撃とは、いただけないわね?』
「……はい。処分は覚悟してます」
『ルナマリアもね?』
「はい。無茶は承知でしたが……」
ルナマリアを巻き込んでしまったことには、シンもすまなく思う。
自分の無茶に付き合ってくれた彼女に、申し訳ない。
これが自分一人なら、喜んで懲罰だろうとなんだろうと受けるのだが。
『それで?あの機体は無力化できたのね?』
「え?ぁっ、はい。それは。もうあの機体に敵対の意志はありません」
『……そう。なら早く終わらせなさいな』
「はっ?」
───終わらせる?
『さっさと終わらせて帰ってきなさい。それまでにどんな処分にするか考えておくわ』
「あ、ちょ、艦長?」
『“機体は”破壊するのよ。いいわね』
通信回線は、一方的に切れた。
シンとルナマリアは、タリアのどこかひっかかる言い回しに顔を見合わせる。
そしてそこに含まれる意を理解し、表情を輝かせていく。
二人は頷き合い、デスティニーをデストロイへと接触させた。
刹那、ミサイルの雨がデストロイの機体へと降り注いだのだった。
****
「あれは!?ザフトが!?」
背面のウイングでバイザーバグを両断したジェナスは、異変に気付いた。
センサーに反応する、友軍の識別コード。
後詰めで到着したザフトのバクゥ部隊が、活動を停止した黒い機体へと
一方的にミサイルの雨を浴びせている。
「やめろっ!!もう、意味なんてないはずだ!!」
『正式に停戦しているわけではない!!いつまたこの化け物が街を焼くとも……』
「戦う意志がないのが、見てわかんないのかよっ!!」
ジェナスには、シンとステラのやりとりが聞えていたわけではない。
聞えていたのはシンの声だけだ。だがそれでも、シンの説得のおかげであのMAが
破壊活動をやめたというのはわかる。
だが、街を壊滅させられて逆上した彼らには、それが見えていない。
こいつらは、シンのやったことを無駄にする気か。
憤る彼のもとに、装備を終えた戦友が舞い戻る。
「ジェナ!!行け!!」
「ラグ!!」
脚部を覆っていたパーツが分離し、ラグナの駆るホバーバイクへと合体する。
ジェナスのほうも、バイザーを変形させた。
「ここは俺が……引き受けるゼェッ!!」
大型のマシンガンにチャージングチューブが伸びる。
可変した銃に、更にハンドガンをセットする。
装甲さえもが、ひとつの銃を形成していく。
エネルギーが充填された巨大な合体銃──マルチジョイントガンが、
指揮官を失ってなお未だ抵抗をやめぬバイザーバグたちに向けられる。
「ラグ、そいつらは……!!」
「わーってるよ!!でも俺達が来たせいなら、こいつらのことは俺達が責任とるのが筋ってもんダローが!!いけ、ジェナ!!」
「……たのむ!!」
ビークルモードのライトバイザーを、発進させる。
シンの苦労を、水泡とさせはしない。
「よっし!!チャージ完了!!Allons-y!!」
火を噴いた銃口が、次々とバイザーバグたちを砕き、貫いていった。
下書き状態の仮サブタイトル。
今回→ステラが死ぬとき!ベルリンは沈没する!(仮)
次回→大沈没!デストロイガンダム最後の日!(仮)
どう見ても執筆中何見てたかバレバレですね
本当に(ry
GJ!
デストロイが悪魔なガンダムの役割だと気付いて噴いたwww
そしてラグが迎撃か…
しくじるなよぉっ…
>>517乙です!
しかし、バクゥ隊は空気読めよ、と
するとあれか、オクレがウォンでルナがアレンビーでステラがレインと。
・・・・・・正直ちと拍子抜けかなぁw
話してこうもすんなり通じる相手ならわざわざ新型の運命持ち出すまでも
無かったよーな気がする。
もっとも、もっと深刻なのは敵としての威厳もビルからどん底に叩き
落された先生の方だが。何の工夫もなく殺虫剤かけられたゴキブリの
よーにビーム一発で追っ払われるってちと気ぃ抜き杉。
殆どここまで来るとΖΖ時代のヤザンだ罠。
まぁ先生は「ロンリー・ファイター」の時がフロックだったんだと言われれば
それまでであるが。
>しかし、バクゥ隊は空気読めよ、と
そんな時に限ってキラが戦意喪失してるのが悔やまれますな。
>敵としての威厳
あったっけ?
>>520 >「ロンリー・ファイター」
きっと先生はあの時の爆発で宇宙に飛ばされ酸素欠乏症に‥‥‥‥。
‥‥‥‥これはシシーの悪夢再来への伏せんか………
‥‥‥‥それとも『運命』がやってくれるか…………
次回が楽しみだ………
そして、
>>517乙
>>517 今週は80の人が来ていたと聞きました。
次回ステラは助かるのか、それとも運命は変えられないのか!?
wktkして待ってます。
>>517 GJです
来週はとうとう頭を燃やすあいつの正体が判明しますな
俺達の月曜日
保守
保守
そういえば遊佐さん電王に出るね
ガタゼクの次はウラタロスか……
保守
531 :
人誅:2007/02/01(木) 00:50:31 ID:???
失せろ
目障りだ
ほっしゅ
保守。
アム種 第七十八話 リザルト
既に彼は、その部屋の主ではなかった。
『議長。地上の部隊から届いたベルリンの映像、編集が完了致しました』
彼を意のままに動かす者がいる。そしてそれは、目の前の女性士官ひとりではなく、
幾人もの組織となって確かにプラントという国家に存在している。
「……わかった。会見は明後日にセッティングしてくれ。その席で“プラン”を発表する」
『はっ』
気の進まぬ彼とは対照的に、赤服の女軍人は口元を満足そうに歪める。
その不敵な表情が、デュランダルの癇に障った。
「いよいよですな」
「……本気で受け入れられるとでも思っているのかね?あのような机上の空論が」
「受け入れさせてみせますとも。すべてはラクス様の導く、融和した世界のために」
彼にヒルダの言葉を跳ね除けることは敵わない。
それはけっして、彼女の右手に銃が握られているからでも、
自身の命が惜しいからでもない。
人質は、彼ではなく。またラクス・クラインでもなく。プラントそのもの。
(───『クレイモア』)
異世界の技術であるという、物騒な代物。
それらによって、地球上のロゴスメンバーが全て抹消された。
彼を監視する彼女からだけでなく、ザフト軍正規のルートからもその情報は既に届いている。
罪のない国民達を、彼らと同じ末路に向かわせるわけにはいかない。
(今は、まだ)
従うより他にない。
この状況を打開する、その準備が整うまではまだ。
(……ラクス、ミーア)
彼らが頂くべき対象として崇める、一人の少女。
そして、その影武者として用意された、同じ顔を持つ“妹”。
(どうか、彼らに。正義を)
それらこそが、デュランダルに──いや、プラントに残された切り札であった。
****
『あ……あぁ……っ、あっ……!!』
「ステラ!!気を確かにもつんだ!!ステラ!!」
一度落ち着いた少女は、再び震えていた。
ミサイルの雨に怯え、降り注ぐビームの束に恐怖する。
力を失っていたデストロイの両眼が、鈍く光を取り戻す。
「ステ……くっ!?」
「なにやってんのよ、あの馬鹿バクゥ部隊は!?」
今までやられた仇とばかりに、その弾幕はあまりに濃密だ。
これではせっかく戦いから切り離したステラの意識も、無意味になってしまう。
呼びかけながらも、シンは必死にミサイル群を撃ち落し、ビームをシールドで防ぎステラを守り続ける。
だがとても、手が足りない。
「このままじゃ……やめてくれぇっ!!」
シンの懇願は、聞きいれられない。
ただ目の前の敵に怒りをぶつけるだけのMS隊が攻撃をやめることはない。
たった一機でこの数のMSの攻撃から、デストロイの巨体を守りきれるはずもない。
下手をすればこちらまで敵とみなされることだってありうるのだ。
「……シン!!あたしをあの子のとこに下ろしなさい!!」
「はあ!?何いってんだ、今冗談を……」
「冗談なんかじゃない!!あたしがコックピットからあの子連れ出から!!」
「な、馬鹿!!無茶言うな!!危険すぎる!!」
外はビームとミサイルで、アリの這い出る隙間もない状態だというのに。
生身で出て行って、無事で済むわけがない。
「あんた、あの子助けたいんでしょ!?だったらさっさとこんなところから避難させないと!!」
「わかってるけど!!でも!!」
ビームブーメランを投げ、ミサイルを数機、同時に撃墜する。
「はやくしないとステラだって、また暴れ出しちゃうわよ!?」
「わかってるって!!でもできるかよ、そんなこと!!」
それは、ルナに死ねにいけというようなものだ。
彼女を助けたいのは自分であって、その我侭でルナを危険に晒すわけにはいかない。
せめてもう少し、弾幕が弱まれば。
「くそ……ステラ!!」
『諦めるんじゃない!!シン!!』
シンのカバーしきれなかったミサイルを、光条が撃ち貫く。
「キラ?」
『僕だけじゃない、みんなもいる!!』
ハイマットフルバースト、五門の砲口で、飛来するミサイルを撃墜していく。
そのキラの下では、ニルギースがモトバイザーのガトリングで、ミサイルへと対空射撃を行いつつ
ジャンプ一閃、バスタードソードで切り裂き。
『セラ!!シンとルナマリアを手伝ってやれ!!』
変形し急機動でミサイルを翻弄し、チャフをばら撒くアスランがセラへと指示を飛ばす。そして。
デストロイの巨大な背後に、滝のような分厚い、溢れ出るエネルギーの壁が湧き上がる。
「ジェナス!?」
『はああああっ!!撃!!』
リミッターカバーを外したアブソリュートソードが地面を割り、
噴き出すアムエネルギーがビームシールドの要領で、ステラの機体を守っていた。
『ラミアス艦長たちも、あっちの部隊と話をつけようとしてくれてる。……シン』
「は、はい」
『あのMSに乗ってる子は、君が守らなくちゃならない子なんだね?』
キラの問いかけは、どこか確かめる響きがあった。
迷うことなく、シンは頷く。
「……約束、しました」
『そう。なら、守るんだ。僕に出来なかったことを、やってみせてくれ』
シンがキラの事情など、知るわけもない。
だがキラは言いながら、自分の守れなかった、赤毛の少女を思い浮かべていた。
「……はいっ!!ルナ、やるぞ!!」
「ええ!!」
再び、デスティニーをデストロイのコックピット側へと密着させる。
誰も、彼女を傷つけないように。
ビームシールドを展開し、コックピットを覆うようにシンは機体を密着させた。
****
怖い。
怖い、怖い。
シン、怖い。
シン、助けて。
ステラは真っ暗になったコックピットで、一人膝を抱えて震えていた。
窮屈なヘルメットは脱ぎ捨て、何度も滴る涙を、ノーマルスーツの手袋で拭う。
「シ、ン……」
会いたい。でも、怖い。
きっと揺れ続けるコックピットの外は、「死」をステラに運んでくるものでいっぱいだから。
一人でいくなんて、できない。
「あ……ぁ……うぅ……」
「泣かないの」
膝に顔を預け、嗚咽する。
どうしよう、どうしよう。
やっぱり、死ぬのは、怖い。
でも今となってはシンの言うように、みんなを「死なせる」のも怖い。
彼女は、突如として聞えた声に顔をあげる。
「なによ、かわいい子じゃない。こんなとこで泣いてたらその顔が台無しよ」
「……だ、れ……?」
コックピットハッチが、開いていた。
そこから見える空は、曇っていたけれど。
コックピットの暗闇に比べれば、驚くほど明るい光をステラに見せていた。
開いたハッチから、覗き込む少女が一人。
「ルナマリア・ホーク。その……シンの、友達よ」
「シンの……?」
戸惑いがちに微笑んだ軍服の少女は、ステラに手を差し出す。
「迎えにきたわ。行きましょ。……シンが、待ってる」
今度は、迷うことのない優しい笑みで。
彼女はステラに手を伸ばしてきた。
「さ、ステラ」
迷いは、あった。けれど、シンの友達。
ならばきっと、シンが信頼できる人だ。
だったら。
ステラは、彼女の手を取った。
****
ステラとルナを載せ、セラのストームバイザーが離れていく。
「ステラを……頼むな。ルナ。セラ」
あとは、こちらに残された仕事を終わらせるだけだ。
ステラを戦いに縛り付けていた、この忌まわしい機体を破壊して。
「ステラ……君の運命は」
デスティニーが、羽ばたく。
引き抜いたアロンダイトを、正面に構えて。
ルナに肩を抱かれ、ステラが見守る中、黒い巨体へ、大剣を振りかざし急降下する。
「俺が、変えてやるっ!!」
剣は、その勢いを止めることなく機体の中心を貫き。
ステラが収まるべき場所として設けられていたコックピットは完全に潰れる。
もとから、存在しなかったように。
「終わりだ!!これで!!」
頭部を掴み、掌のビーム砲──パルマ・フィオキーナを作動させる。
ゼロ距離のビームに穿たれ、ツインアイの顔面が爆散した。
ゆっくりと、後ろに倒れ崩れ落ちていく。
それは破壊という名を持つ機体と、それに縛られた少女におとずれた、終焉であった。
ベルリン編終了です。
ひとまずステラは生きてます。
>>539 乙です!!
今回も面白かったです。
‥‥‥‥‥しかし、クレイモアまで出てくるとは………
今後が楽しみです。
作者氏乙です!
キラ、アスラン、アムドライバー、そして、ルナが皆でシンを支え
見事にステラの運命を変えましたな。
これからも、彼らに沢山の苦難が立ちふさがるだろうけど、きっと彼らなら
乗り越えられる、そんな予感がひしひしと感じられました。
ほんとGJですよ。福田版じゃお荷物だったルナがこんな形で活躍するなんて・・・
感動した!!
>>539乙です、ステラの救助が出来てまずは一安心ですな
でも、ヒルダ達過激派連中の動向が気になる・・・
>「ひとまず」ステラは生きてます。
さて、エクステンデッドの医療施設の問題をどう解決するか・・・・
それが問題だ。
>>540 クレイモアって、要するにアムマテリアル製の地雷の事だよね?
アム種 第七十九話 変革のはじまり
「……ててっ。くそ、ステラまでやられたか?」
半壊した機体から這い出す男の顔は、傷だらけだった。
「ザフトの連中、すぐわんさかくるんだろうナァ?ったく」
無論それらの傷は、この撃墜によって受けたものではない。
男の顔に残るそれらは、もっと以前から彼の皮膚に存在し、
彼が彼であることを証明しているもの。
勝ち馬には、逃げられたか。男はひとりごちる。
「!?」
ジャリ、という地面を踏む音に男は金髪を靡かせて振り返り、拳銃を向ける。
「っと。そいつを下ろしてはもらえませんかね」
両手をあげたのは、トレンチコートに身を包んだ一人の男。
見も知らぬ男のいうことなど、聞く気はない。
銃をつきつけたまま問い質す。
「何者だ」
「なぁに。別にとって食おうってわけじゃないさ。地球連合軍『ファントムペイン』、ネオ・ロアノーク大佐」
こちらの名を知っている。ネオは更に、男への警戒を強める。
「俺ァ、あんたをスカウトにきたんですよ」
「何?」
「既に、あんたの部下──エクステンデッドの連中や、あの白い化け物は確保してある」
アウルたちが?
拳銃を持つ手に、力が篭った。こいつは一体、何者なのだ。
「俺の名はヘルベルト。あんたの力、貸しちゃくれませんかね?ロアノーク大佐。いや」
「?」
「ムウ・ラ・フラガ少佐」
* * *
デュランダルの声が、人で埋め尽くされた会見場に響く。
カメラのフラッシュがあちこちからたかれ、数多くの報道陣が
彼の言葉を記事にすべくメモを取り、録音していくのがわかる。
「ご覧下さい、この光景を」
彼の背後には、巨大な電光掲示板。
そこに映るのは、ベルリンの出来事、そして爆発に消えていくロゴスメンバーたちの住居。
二つの異なる光景が、交互に上映されていく。
「我々は、忘れてはなりません!!ロゴスのやったことを!!そして、彼らがいなくなった今、
誰もが彼らと同じく、私利に、自分の弱さに負ければ第二第三のロゴスとなりえんことを!!」
熱を帯びていく彼の演説。だが対照的に、彼の心は叫び訴えるほどに冷え切っていって。
(……タリア。見ていたら私を嗤ってくれ)
これから、心にもないことを宣言せねばならぬ私を。
きみとの別れが教えてくれた、空虚な計画を実行せねばならぬ私を。
「私達はつい先年にも大きな戦争を経験しました。愚かとも言えるこの悲劇の繰り返しはたしかに、
一つには先にも申し上げたとおり、間違いなくロゴスの存在があったからこそ。再び彼らを生み出してはならない」
彼は、これから自分の発表する計画が無意味であると、身を以って知っていた。
子が成せぬ、遺伝子が適合せぬ。ただそれだけで、愛する者との別離を余儀なくされた。
その経験によって。
「我等自身の無知と欲望。それがあるが故、人は求める。ロゴスとなる危険性をもつ。
ですがそれももう終わりにする時が来ました。克服するときが!!
なぜなら全ての答えは、皆が自身の中に既に、持っているのですから!!」
そう。答えは、否。このようなものが、うまく行くはずもない。
できるとしたら神のように、全ての人類をひとつにまとめることができる者だけだろう。
わかっていながら、彼は演説をやめるわけにはいかなかった。
「私は人類存亡を賭けた最後の防衛策としてデスティニープランの導入実行を、宣言いたします!!」
****
砂浜など望むべくもない、無機質な軍港ではあったけれど。
空は晴れ、海は穏やかに凪ぎ。
二人の男女の鼻腔に、潮の匂いを届けてくれる。
「きれい……」
車椅子に乗った少女は、ぽつりと呟いた。
肩に置かれた少年の手に触れながら。
「……ああ。きれいな海だな、ステラ」
入院着の彼女の隣には、赤い軍服の少年がいた。
海は、大好きだ。そして、シンのこともステラは大好きだった。
「……シン?」
ステラは、彼の手が微かに震えているのに気付く。
顔を向けると、何故だかシンは今にも泣きそうな表情だった。
「悲しい、の?」
「……あ。い、いや」
どうしてだろう。
ステラは、こんなに嬉しいのに。
海がきれいで、シンがいて。
なのに、どうしてシンはこんな顔をしているのだろう。
****
「んじゃ、宇宙にあがるの?俺達」
缶ジュース片手に、ヴィーノが言った。
レクルームには、ヨウラン。
ジェナスをはじめとするアムドライバーチーム、それにMSのパイロットたちが集まっている。
「近いうちにはそうなるだろうな。ロゴスがいなくなってから連合は瓦解しつつあるからな」
アスランが、頷いた。
正確には、連合の結んだ、安全保障条約機構が、である。
ロゴスの存在発表から殆ど間を置かずして脱退を表明したオーブをはじめ、
彼らの壊滅の報が伝わるにつれ、各国もまた恐れるものはないとばかりにそれに続いた。
そもそもの同盟提案国である大西洋連邦までもが大統領の名において破棄を発表したほどだ。
「でも……それじゃシン、あの子と……」
あの様々なことの起こったベルリンの日から、一週間以上が経とうとしていた。
ようやく傷も治りつつあり退院したシンは、ベルリンで助け出したあの子のところに、ちょくちょく通っている。
「あとは月に終結しつつある連合……ブルーコスモス派くらいだからね、警戒が必要なのは主に」
ルナマリアの背中をぽんと叩き、キラも言葉をつづけた。
「んでそこに、デュ……ナントカ議長のナントカプランってわけか」
「デュランダル議長の」
「デスティニープランだ」
あの日以来ミネルバに居候することになったラグナが、缶を口にくわえたまま呟く。
セラとニルギースが、彼のいい加減な言葉につっこみを入れた。
「……そのデスティニープランだが、妙だとは思わないか」
「え?」
空き缶をゴミかごに捨て、アスランが一同に問う。
妙、とは?
「先日の説明によれば、遺伝子による職業適性判断を行い適職に就ける、一種の管理型社会だということだったな?」
その言葉は、この中で唯一ブリッジクルーのメイリンに向けられたものだ。
彼女はその時丁度当直で、デュランダルの放送を録音していた。
「は、はい。もっとオブラートに包んだ言い回しでしたけど、大体は」
「……それが、おかしいんだ」
彼が、管理型社会を目指そうということが。
「ロゴスが裏から手を引いていたのも、一種の管理型社会になるだろう。彼はそれを嫌っていた」
「……あっ」
「それに、だ。議長はジェナス達の世界のことを聞いているだろう?
ならば権力者によって管理された社会が長くは続かないということも、既に知っているはずだ」
そのような彼が目指す施策とは、到底思えない。
まして、地球圏全体に導入できるとはとても。
彼が元は遺伝子工学者であったとしても。
「そうね。アスランの想像は多分、正しいわ」
「グラディス艦長?」
話を聞いていたのだろうか。
タリアとマリューが、レクルームへと入ってくる。
とはいっても入り口のところで壁に背を預けて、淡々と語るだけだが。
「艦長は、なにかご存知なんですか?」
「ええ。これでもあの人とは、長い付き合いでね」
腕組みして、苦笑する。
「あの計画───デスティニー・プランも以前、彼から聞いたわ」
タリアの横に立つマリューも、バルドフェルドを失った直後よりは
顔に色が戻ってきているようだった。彼女もまた、タリアの話に耳を傾ける。
「そしてそれが、欠陥品だってこともね。……だからありえないのよ。彼があのプランを導入しようなんて」
「艦長……」
完璧主義者の部分があれで、意外にあるのよ。
懐かしそうに、タリアは天を見上げる。
「でもそれはそれ。私達は軍人よ。任務に従うしかない」
「あ、次の任務、きたんですか?」
自分が席を空けている間に、ということで気になるのであろう。通信士のメイリンがいの一番に声をあげる。
「……ええ。『ミネルバ、アークエンジェルの両艦は宇宙へあがり友軍と合流せよ』だそうよ」
「やっぱり、宇宙か……」
「それで、ジェナス」
「はい?」
唐突に自分の名を呼ばれ、身を強張らせる。
タリアは問う。
「あなたたちは、どうするの?セラも、ニルギースも。そこの彼……」
「ラグナでっす!!」
「ラグナも」
どうする、と言われても。
当然自分たちもついていくものだとばかり思っていたジェナスは、返答に困る。
「あなたたちは本来、もとの世界に帰る手がかりと、仲間を探すためにこの艦隊で地球をまわっていた。
けれどこれから先、戦場はなにもない宇宙よ。どうするかはあなたたちで決めなさい」
宇宙。
そう言われて、ジェナスの思考は一瞬、ぴたりと止まった。
ブルーコスモス……あの部隊の残党がいるというのなら、ディグラーズもそこにいる。
奴をこのまま放置しておくわけにはいかない。もう自分たちはこの戦争の部外者ではないのだ。
(……それに)
シャシャもおそらく、そこにいる。
あのウインダムの指揮官に連れて行かれた以上は。
パフたちとは、またあとで合流できる。なら。
「いきま───」
「か、かかかか艦長!!大変です!!」
わずかな時間で決意は決まった。
しかし彼の言葉を遮り、副長のアーサーが転がり込んできて。
「どうしたの、アーサー」
「大変なんです!!プラントに行ったレイが……」
「レイが?」
どもりながら彼の言った一言が、その場の空気を変えた。
「レイが、デュランダル議長をしゃ、射殺、い、いや、暗殺したと!!」
レクルームに設置されていたテレビは、流していた穏やかな熱帯魚の映像から切り替わり。
兵士達に連行される金髪の少年を移す、緊急報道へと変化した。
わかりにくいかもしれないので補足。
最初のネオはベルリン戦直後、議長演説は二日後。
それでシンとステラ以降は一週間後となってます。
>>552 乙にしてGJ!
しっかし急転直下だな、レイも議長も…………ここまで予想のつかないSSは久々だぜ
そしてタリアさんのギルを想う心にちょっと胸キュンですだよ
>>552乙です!
>顔を向けると、何故だかシンは今にも泣きそうな表情だった。
もしや、担当医から、ステラの余命が短いと聞かされたのかも・・・
保守
乙!
一つの区切りがつき次へのプロローグの場合更新が鬼早いな。
レイの議長暗殺ってのは、やっぱり両者示し合わしてのフェイク(イ羊死、と言う
もっと相応しい表現があるがどの辞書にも載ってねぇ)なのかな。
議長をクライン派のマークから外すための。
そもそも現在のクライン派の頭ってのは誰なんだろう?
無印でもザラ派とプラントを二分する勢力だし、デス種でもストフリ隠者ドム密造
大艦隊保有とクライン派がどれたけトンデモ大人脈かはこの新シャアで知らぬ者無し。
所詮一介の赤服に過ぎんヒルダなんて役者不足も甚だしい訳で。
・・・・・・でもザルディは、その更に裏にいそうな雰囲気なんだよね・・・。
そもそもガンちゃんが後ろ盾になる理由は何なのかと。
1.クライン派を操りプラントを陰で支配
2.(1と被るが)デスティニー・プランを自ら主宰
3.月のジブリールを始末し、クライン派には馬鹿をやらせてそれを自分で成敗して
CEの神としてデビュー、つまりマッチポンプ
4.それ以外
‥‥‥つかクレイモアでいつの間にかあぼーんかい>ヘブンズベース
アム種 第八十話 天空の先へ
「クク……ククッ……そうか……デュランダルは死んだか、そうか!!」
月の裏側に位置する、地球連合軍基地。
ブルーコスモス派の残り少ない拠点となったここで、男は口から漏れ出る愉快な声を、
止めることができなかった。
ロード・ジブリール。最後のロゴスメンバー……「元」であることを本人は知らないが……にして、
ブルーコスモスの盟主たる男は、この月基地まで後退することを余儀なくされていた。
「これで、まだ!!あの化け物共を抹殺できる!!」
基地の彼の元へと飛び込んできた、プラント最高評議会議長死すの一報。
追い詰められつつあった彼にとって、これほど喜ばしいことはない。
これが、嗤わずにおれようか。
勝機が、見えてきた。
「レクイエムは!!チャージはどうなっている!!」
デュランダルの死んだ今が、最高の好機。
せっかく死んだのだ、葬送歌のひとつも、送ってやらねばな。
彼の口元が、冷酷に歪む。
屈折した悦びに、彼は打ち震えていた。
ロゴスの出資を失い、連合からは切り捨てられ。
子飼いのファントムペイン、ロアノークの部隊も行方がようとして知れぬ。
これまでの屈辱を、倍にして返してやるのだ。
「……レクイエムの準備は、順調なのでありますか?」
背後から問う声に、ジブリールは上機嫌で応える。
「うむ……これでやつら、コーディネーター共を一掃できると思うと、感慨深い」
「左様ですか」
ジブリールは、興奮していた。
だから、違和感に気付かない。
「んじゃ……アンタはもう、用なしだ」
「何?」
と、彼が怪訝な顔を背後に向ける間もなく。
目前で作業を続けていた兵士達が一斉に立ち上がり、振り返り。
引き抜いた銃を、全員が揃い彼に向ける。
「なっ!?」
驚いたのも束の間。
彼の全身は、何十発もの銃弾によって貫かれ、切り刻まれたボロ雑巾と化していた。
「……悪いな。この基地はとっくに『こいつら』に制圧されちまってたんだよ」
金髪をなびかせた男は、無感動に足元の死骸に呟く。
「ただ、レクイエムの起動コードはお前さんしか持ってなかったからな」
かつて上司であった骸に対し、男はひどく冷たく言い放った。
「終わったぜ、美人のねーさん?」
「ええ、流石ですわ。フラガ少佐。ただ」
男は、近寄ってきた濃い色のゴーグルの女性士官に問う。
「『こいつら』ではなく『我々』。それに私のことはサラとお呼び下さいな」
「へいへい」
明らかに自分の監視が目的であろう女はそう言うと微笑む。
惜しい。足元に死体さえ転がっていなければ、随分と魅力的な笑顔なんだが。
ネオ……いや、ムウはひとりごちる。
この状況では、女狐。魔性の笑みにしか、見えなかった。
****
───何故だ。何故、俺がこんな仕打ちを受けねばならない。
暗い牢獄の中、一人少年は自分に舞い込んだ理不尽に、憤っていた。
眼前には、太く冷たい鉄格子。
どうして、こうなってしまったのだ?
(俺が……ギルを殺せるはずなど、ないじゃないか)
敬愛する、デュランダルを。殺せるわけなどない。
(あいつだ……あいつがやったんだ。あの黒い服の男が)
どうして誰も、気付かないのだ。
あの男がやったということに。
サングラスをかけた黒髪の男の顔が、ちらつく。
……そう。あれは、昨晩のことだった。
レイはようやく時間がとれたというデュランダルに呼ばれ、彼の待つ執務室へと向かっていた。
案内と議長の護衛を兼ねる、二人の武装した警備兵たちに付き添われ。
彼の心は、久々の再会に、心躍っていた。
だが。
開かれた扉の先で、彼が見たのは。
(胸から血を流して倒れる、ギルと……拳銃を手にした、『あの男』───)
今思い出すだけでも、腸が煮えくり返る。
あの状況で、自分が殺せるわけがないではないか。
どう考えても、室内にいたあの男だと思うのが自然だ。
にもかかわらず、警備兵たちは───……。
(俺を拘束し、ギル殺害の犯人として連行した)
馬鹿げた話だ。彼らだって、状況は見ていたはずなのに。
しかしそれは逆につまり。
「奴らも……一緒になって仕組んでいた、ということか?」
デュランダル殺害の罪を、レイに着せるために。
それはつまり、連中にはまだ仲間がいるということ。
デュランダルの執務室に出入りできるパイプや、警備兵を摩り替える人事が可能な位置に。
(なんだ……何かが、起ころうとしている……のか?)
だったら、報せなければ。だが、誰に?どうやって?
頭に浮かんだのはやはり、苦楽を共にしてきた、ミネルバ艦隊の仲間達。
だが自分がこの状態では、どうすることもできない。
(……考えろ。考えろ、レイ。どうすればいいのかを)
どうすれば敬愛するデュランダルの仇が討てるのかを、必死にレイは思考していた。
自分は、名目上は要人を殺害した殺人犯。タイムリミットがあまりないのを、わかっていながら。
****
レイのことも。デュランダル議長のことも。
もちろん、月に終結しつつあるブルーコスモス一派のことだって、気になってはいたけれど。
それでも、行けるはずがないと思っていた。
「……行って、シン」
───『もって、三ヶ月です』。医師の言葉は、あまりにも残酷であったから。
議長が生前に遺してくれた温情措置で、ずっとそばにいられるなら。
いられる間だけ、彼女の側にいてやりたかった。なのに。
「ステ、ラ」
「シン、悩んでる。ステラ、シンの悩んでる顔、見たくない」
背中を押してくれたのは、彼女のほうだった。
「ステラ、笑ってるシンのほうが好き。だから、行って」
「でもっ……!!」
「シンが悩むの、みんなが「死ぬ」こと。「死ぬ」のはダメ、みんな怖いから」
笑顔で、彼女はシンを送り出してくれた。
「ステラ……シンのこと、待ってるから」
****
「……よかったのか、ほんとに。あの子の側についててやらなくて」
大気圏離脱を控える、ミネルバ。
突入は一度ユニウス7で経験済みだが、若手が多く離脱ははじめてという者が多いミネルバでは、
手の空いたものは一人では心細いらしく、手の空いた大半の者達がミーティングルームに集まり、
椅子に身体を固定するシートベルトを既に装着しだしている。
その中でシンとジェナスは、話し込んでいた。
彼のことを心配したジェナスが、こちらに移ってきた形だ。
「……ああ。決めたんだ」
シンもまた、タリアに宇宙に行くか、地球に残るかを選ぶよう言われていた。
そしてシンは彼女の心遣いに感謝しながらも、宇宙に行く道を選択していた。
───ステラの笑顔に、応えるために。
『本艦、並びにアークエンジェルの両艦はこれより、大気圏離脱シークエンスに入る。
総員、ショックに備え身体を固定せよ。繰り返す、本艦はこれより大気圏の……』
副長による艦内放送で、一気に室内の緊張が高まる。
「全部、終わらせて、戻ってくるんだ、って。ステラのところに」
「そうか」
大気圏離脱用の大型ブースターを装着したミネルバが、アークエンジェルがその機体を加速させていく。
ブースターによってその形状を更に大きくした二隻は、高く高く、舞い上がる。
彼らが向かうのは最後の戦場、宇宙。
敵側の仕込みは概ね終わりかな?あとはオープンにしていけば。
味方側はもう少しですね。
次回から舞台は宇宙です。
更新早っ!乙です。
しっかし、頭の天辺からつま先まで徹底的に小物であったな>ジブリール
レクイエムを撃つ指揮する暇すら与えられずあっさりぬっ殺されるとは。
ゼゼーナンかアム種ジブかと言うレベルだなw
しかしマジでレイははめられたのか・・・・。
黒髪にグラサンと言うとザルディしか思いつかないけど、彼にしてはえらく迂遠だな・・・・。
アムドラ本編だと何の考えも無く殺しまくっただけのあの彼が。
いずれにせよクライマックス、次回が楽しみ。
てか先生がちゃっかりクライン派にいたら大笑いする
>>563 乙です。しかし……
>この状況では、女狐。魔性の笑みにしか、見えなかった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥この女は…………………まさか…………………
ぬこ〜〜〜〜っ!!
>>563乙!
サラっていうと、種死本編でラクスを暗殺しようとした奴ですな
このアム種ではクライン派、ヒルダ達の仲間なのか・・・
表向きミーアのマネージャー・実質監視役のアイツの事か<サラ
>>568読むまでコロッと忘れてましたよ。
一瞬「キャシーが偽名使って・・・」なんてのが頭をよぎりました(汗)
∧,,,,,∧
ミΦÅΦミ ぬこの出番はあるのかにゃ?
〃 ;;;;;ミ
ヽ(,, JJノ
実はぬこが黒幕だったんだよ!!!
保守
>表向きミーアのマネージャー・実質監視役のアイツの事か<サラ
まさかと思うがクライン派の黒幕、ミーア!?
・・・・・・・・・・・・推理ものとか「黒幕は誰だ!」系の展開の場合、「スポットが当ってない
奴が一番怪しい」って、「お約束」の一つなんだよね・・・・・・・・・・・・。
しかもここの職人さんって、オーソドックスな「お約束」に凄く忠実な話創りするし。
アム種 第八十一話 折られし旗
黒い毛長の猫は、よく餌を食べていた。
皿まで食べてしまいそうな勢いで、がつがつと。
うまそうに、食べている。
「ガン・ザルディ殿」
ぼうっとそれを見ていた男へと声をかけるは、隻眼の女性兵士、ヒルダ。
敬礼を下ろした彼女に目を遣ると、女は報告をはじめる。
「レクイエムの制圧、完了。メサイアも我々の同志達が抑えておりいつでも出られます」
「そうか」
「レイ・ザ・バレルの処刑は、明後日にも」
計画は順調そのもの、ということか。
ザルディは、頷いてみせる。
「『ラクス様』はどうなっている?どちらも」
目下の懸念事項はまず、そこにあった。
「はっ。ラクス様は相変わらず……我々の行く道に賛同してはくれませぬ。
ですが結果を見せれば、これが正しいものだときっとわかって頂けるでしょう。
そして、もう一人の『ラクス・クライン』は───……」
そこでヒルダは、言葉を切った。
残虐性を秘めた表情で、口元を歪めて。
「ラクス様を冒涜しているあの尻軽女には……サラの部隊を差し向けました」
「……わかった。それでいい」
下らぬことにこだわるものだ、この世界の人間も。ザルディは内心で少々呆れる。
いや、だからこそ導かねばならないのだが。
他の誰でもない、この私が。
「ザルディ殿……我々は感謝しているのですよ、あなたに」
「?」
「大戦後議長に就任したデュランダルは我々と同じくラクス様を奉じる身でありながら、
あのような贋作をつくり!!あまつさえラクス様を日陰へと追いやった!!そして
我々正統なクライン派を解体しその勢力を奪おうとした!!これは裏切りだ、明らかに!!」
「……」
「分解されつつあった我々の前に現れ、まとめ。力を与えてくれたのはあなただ!!
ラクス様のため、どうか今しばらく我々に力添え、願いたい!!」
「無論だ」
「ラクス様の、ためにな」
故に、扱いやすく、動かしやすい。
心にもない一言を少し、言ってやるだけでいいのだから。
力は、貸してやるつもりだ。
神として、この世界においても神になるためにも、な。
まずは、プラントを。そのための仕上げに、行こうではないか。
****
「それにしても友軍と合流……とはいっても、一体どこの部隊となんでしょうか?グラディス艦長」
眦から目の下にかけての隈が未だ残る顔で、マリューはミネルバ艦橋のタリアへと呼びかけた。
バルドフェルドを失ったあの日から、碌に眠れない日が続いている。
しかし、彼の遺志を継がねばならない。その思いが身体を動かしている。
『それなら……ついさっき、指令が届いたわ。あの人が死ぬ、直前……その日の、日付で』
送られてきた指令書を、ミリアリアがサブモニターに表示する。
「……?これは……」
『不思議よね。まるでこうなることを“予測していた”かのようだわ』
───“我が意志は、ラクス・クラインに預ける。それに従い、エターナルに合流せよ。”
「エターナルに……」
かつて、共に戦った艦。戦後ザフトに返還されたその名を、もう一度聞こうとは。
その艦長席に座っていたバルドフェルドの、在りし日の姿が心中を駆け巡る。
『送られてきたのも、第一級の極秘文書を扱うような秘匿コードでよ』
「なにか……あるということですか」
『ええ。おそらくは。レイのことも、……あの人の死にもね』
あの人の、死。その単語を発声するのに、タリアはひどく苦労していた。
口が動いてくれない、というのだろうか。
マリューにも、同じ経験はあるからわかる。
前大戦の終結後。「彼」のことが言えなかった時期があった。
『ひとまず、指定された合流点に向かいます。よろしいですね?』
「ええ」
きっと、そこで合流するであろうエターナルが。
なんらかの情報をもたらしてくれることであろう。
****
−プラント最高評議会、議事堂−
議事堂には、多くの評議員たちが集まっていた。
アイリーン・カナーバ、タカオ・シュライバー、オーソン・ホワイト。
他にも要職に就いていたり、プラントの統治を担う上で欠かすことのできない
評議員達がいずれも、椅子に座り会議が開かれるのを今か今かと待っていた。
「一体なんなのだ、こんな忙しい事態のときに」
緊急の評議会を招集するなど。
大詰めとなったブルーコスモスとの戦争に加え、
突如としてデュランダルの発表した『デスティニープラン』。
そしてその張本人の死である。
悠長に時間を食っている場合ではないというのに。
それに大体議長の亡くなられた今、誰がこの議会を召集したのだ?
特に軍事担当であり過密なスケジュールをこなすタカオがこぼす。
「ひとまず議長が亡くなられたことで、あの『デスティニープラン』は凍結でしょうな」
「ええ。今の経済力、国際情勢の中であんなものが導入できるとは、とても」
口々に言葉を漏らす議員達。だが、その雑談、愚痴は乱入してきた一人の男によって中断される。
「いえ、導入するのですよ。今だからこそ」
黒い革の服に、黒い長髪、黒いサングラス。
乱入してきた男に、一同は一斉に視線を集める。
「誰だね、君は?」
「ガン・ザルディ。ギルバート・デュランダル前議長より“全権を頂いた”者です」
「は?なにを言っている?評議会にはきちんと手順を踏んでだな」
「部外者はさっさと出て行きたまえ!!」
口々に怒鳴る議員たちに、ガン・ザルディは溜息をつく。
そのような些末なことに拘るとは。
これだから、権力者は。政治家というものは救いがたい。
───私の世界には、不要だ。
「それならば、判決だ。お前達は、世界の敵。神に楯突いた者として───……」
すっと挙げた右手が、合図。武装した多数の兵士たちが、議場へと押し入ってきて。
「死刑」
撃ち放されたマシンガンの銃弾が、議員達をボロ屑同然の挽肉へと変えていく。
厳粛な会議の場として使われるべきその場所は、一瞬にして血の海へと染まった。
****
−プラント・とある辺境のコロニー−
プラントでも首都・アプリリウスから離れたそこは、人もさほど多くはなかった。
あくまで比較の上でのものだから、それでも地球上の先進国程度の人口密度はあるのだが。
富裕層などがバカンスに利用するリゾート都市という趣のそこはシーズン外(季節、ではなく時期として)
であったこともあり、プールサイドには少女を除き誰もいない。
時折ホテルのガラス越しにボーイが、飲み物はまだ残っているか覗きにくるくらいだ。
「あーあ……いつまでこうしてるんだろ」
白いプラスティック製のプールサイドテーブルでパソコンの画面を覗きながら、ミーアは呟いた。
もう、五日にもなるだろうか。
アプリリウスの喧騒から離れ、この場所で無為に時間を過ごすようになって。
デュランダルは休暇だといって送り出してくれたが、結局プラントに帰ってきてもラクスとは会えず仕舞いだった。
彼女をこの目立たぬ場所に移したデュランダルには、
過激なクライン派から疎まれているミーアを彼らの目から離し、危険から遠ざける目的があったのだが。
不安にさせまいとなにも知らされていない彼女に、その意図が伝わっているはずもなく。
このところの忙しさに慣れてしまっていたミーアは、落ち着かない。
「ラクス様……どうしてるのかな。あの、レイって子……ほんとうに……」
そして、そのデュランダルが死んだというニュースは、ミーアのもとにも届いていた。
不安や憂鬱に駆られ、気にならないわけがない。
プールで泳ぐのも、豪華なホテルも、気晴らしにはなり得なかった。
「───ん?」
南国を模して作られた茂みのほうで、何かが光った気がした。
気になり、顔を上げる。やはり何かが太陽──プラントの人工の灯りだが──を反射し、光っている。
なんだろう。水着の上から椅子にかけていたパーカーを羽織り、
そちらに歩いていく。
彼女が近づいていくそれは、黒い。
銃口の放つ、光沢の光。
今週は時間がとれるんでけっこう早く投下できてます。
本来登場予定のなかった猫がなんか心配されてるので登場させてみたり。
GJ!そしてガンちゃんキターーーー
>撃ち放されたマシンガンの銃弾が、議員達をボロ屑同然の挽肉へと変えていく。
>厳粛な会議の場として使われるべきその場所は、一瞬にして血の海へと染まった。
エザリアママン死んだか……どうする遺作
乙!
クライン派の黒幕は普通にガンちゃんだったのね。
それにしても「軒を貸して母屋を取られる」ってか何て言うか、浅はかだなヒルダは・・・・・・・・・
クライン派の為なら異世界の訳分からん奴でも容易く尻尾を振るんかいorz
なりふり構わずだな。
>「それならば、判決だ。お前達は、世界の敵。神に楯突いた者として───……」
>「死刑」
鮭を使わなくてもガンちゃんはガンちゃんですな。それにしても・・・・・・・・・・、
>───"我が意志は、ラクス・クラインに預ける。それに従い、エターナルに合流せよ。"
>あの人の、死。その単語を発声するのに、タリアはひどく苦労していた。
>突如としてデュランダルの発表した『デスティニープラン』。 そしてその張本人の死である。
議長、ほんとに死んじまったんだな・・・・・・・・
>>578、乙です!
やはりギルは殺されたか、しかも議員達まで…
ヒルダ達クライン派が、ラクスを議長にしようとしているみたいだが、
当のラクス本人は、毅然とした態度で彼等とその所業を糾弾するでしょうな
あと、ミーアが…!?
猫って人肉食うかなぁ・・・?
>>579 エザリアはザラ派急先鋒の議員だったから、前大戦の責任とって既に議員は辞めているはず
>>583 俺はエザリアママンの地盤でイザークが議員になってたと脳内補完してた。
俺達の月曜日!
保守
俺たちのげ……火曜日だった (´・ω・`)
アム種 第八十二話 レベリオン
そしてそれは、突然に発表された。
いや、発信された。未だデュランダルの死と、彼の遺したデスティニープランへの
対応に揺れる、世界各国に向けて。
『我が名は、ガン・ザルディ。新たなるプラントの指導者である』
ウナトの死、それに伴うユウナの閣僚辞任に混乱するオーブの、カガリたちの元にも。
『我々は、ここに宣言する。ラクス・クラインを元首とするプラントの、新しい体制を』
ガルナハンのすすけた大地の、コニールたちの眼前にも。
『我々は、地球圏がひとつになることを望む。ナチュラルとコーディネーターの融和を望む』
勿論宇宙へと上がった、ジェナスやシンたちの元にも。
「な……ガン・ザルディ!?」
『故に我らは要求する。デスティニー・プランへと従え。我々の、デスティニー・プランに。
ナチュラルとの融和、それにはもはやこれしか手はない。これは文字通り神の定めた運命なのだ。
運命に逆らうな。それは即ち、神への冒涜だ。私は、いや我々は、それを許さない』
それはもはや、宣言ではない。
一方的な通告、要求。理不尽な、命令。
『繰り返す。我々に従え。従わぬ者は世界の敵とみなし、武力による排除も辞さない』
****
「“レクイエム”起動。照準、大西洋連邦・北部アメリカ大陸」
『その証拠を、見せよう』
ガン・ザルディの演説が続く中、月面の大穴が開口していく。
地獄の底のように暗く全てを飲み込むような、漆黒のクレーター。
その蓋が全て開ききったとき、そこに光が生まれた。
希望の、ではない。
全てを焼き払う、絶望の光が。
淡かったそれは、眩いばかりにその輝きを増してゆき。
巨大すぎる砲口から、放たれる。
まっすぐ、ただまっすぐに。
しかし、その方向は目標とは、地球とは正反対。
何もない暗黒の宇宙をただあてどもなく飛んでいく。
ビームの光が目指す先には、輪があった。
巨大な、筒状の輪が。
それを通過したとき───光は、曲がる。
何度も、何箇所も。
光の速さで飛ぶビームは、通過と歪曲を繰り返し。
そして。
目前に迫った、蒼き星へと───……突き刺さった。
****
キノコ雲が、立ち昇る。
その様子を映したモニターは、砂嵐のノイズと煙により、一様に灰色に染まり。
見る者全てから、ビームの直撃を受けたその場所の光景を覆い尽くしていく。
「なんてことを……!!」
ラクス・クラインは絶句した。
自身がほぼ軟禁状態に置かれている、豪勢な邸宅の一室で。
モニターの乱れた画像に、呆然と目を見開く。
「素晴らしい力でございましょう?ラクス様」
眼帯の女は、この状況にも平然と笑みを浮かべていた。
いや。この状況だからこそ、笑っていられるのだ。
この惨劇をつくった張本人だからこそ。
成功の悦び……歪んだそれに、心底から。
「ヒルダさん……あなた方は」
「ラクス様の、ためなのですよ。お父上の平和の遺志を、あなた様が達成なさるための」
「なにを……」
物静かで冷静な彼女とて、その物言いには怒りを禁じえなかった。
だがきつい目で睨もうとも、赤服の女はまったく動じる様子がない。
「泥は、我々が被りましょう。そのために我々がいるのですから。……いい加減、ご理解下さい」
踵を返し、木製のドアに手をかけ開く。
そう、この殺戮劇も彼女達にとっては「泥」、その一言で済む程度のこと。
ラクスのためという絶対のものの前の、些細な出来事に過ぎないのだ。
わずかに音を立てて、扉が閉まる。
一人残された部屋で、ラクスは再びノイズだらけのテレビモニターに目をやった。
「……私の。お父様の責任なのですね、これは」
たしかにラクスの父、シーゲルはナチュラル回帰論をはじめとする融和論者であった。
だが、しかし。彼が当初からそういった思想の持ち主であったというわけではない。
「……お父様。あなたの苦悩を、どうしてもっと伝えようとしなかったのですか……?」
俗に言う、前大戦におけるエイプリルフール・クライシス。
それを命じたのは他でもない父、シーゲル・クラインだった。
地球上に落とされた、多数のNジャマーによって地球上にもたらされた被害は、計り知れない。
民間人をも巻き込んだ無差別の攻撃であり、地球全土は深刻なエネルギー不足を引き起こし。
多くの犠牲者と二次災害とを引き起こしたのだ。
その罪の大きさ、生み出した犠牲の数では、アスランの父、パトリック・ザラと殆ど変わらない。
「だからこそ、お父様は……」
自分の行いに恐怖し。
ナチュラルとの融和、戦争の早期終結を考えるようになったというのに。
彼らは、その背景を知らず。
その手段として父と同じ殺戮の道を歩もうとしている。
「……急がなくては」
彼らを、止めるために。
そのための準備は、不自由な状況ながらも密かに、進めてきた。
デュランダル議長とともに、少しずつ。
自分の正義のために望まぬ他の誰かを犠牲にしていい権利など、誰にもありはしないのだから。
たとえそれが、仮にどんなに正しくとも。
───こん、こん。
「!!」
そしてどうやら、その時は訪れたらしかった。
窓を叩く音に、振り向く。
「キラやアスランじゃなくて悪いな、姫さん。遅くなっちまった」
そこには、かつての同志である浅黒い肌の男が。
二人の仲間たちを連れて、窓ガラス越しに笑っていた。
「ディアッカさん……!!」
「こっちの準備も、整った。おたくの妹さんも無事だ。……窓から離れてな。派手にぶっ壊すからな」
****
「───?」
なにか、爆発のような音が聞えた気がした。
まさか、な。
暗い監獄の中で、レイは首を振る。
ここは、軍内部でもアプリリウスの本部最中心部の鉄格子だ。
爆発など、起こりえるわけもなく、聞えるわけがない。
「ッ!?」
しかし。
彼の冷静な結論を、真っ向から否定するがごとく、
派手な音を立てて独房を外界から隔絶する、分厚い鉄の扉が吹き飛ばされる。
「!?」
爆薬、などではない。
むしろ、殴り飛ばされたような。
壁に向かって一枚の扉が、新聞紙でも飛んでいくかのように吹っ飛んでいく。
「……なんだ?」
思わず腰掛けていたベッドから立ち上がり、檻の前まで行く。
部屋に舞った埃と煙が空気に流されて出て行く、扉の先程まであった場所に、
目が釘付けとなる。
「……よお、あんたがレイ・ザ・バレルかい?」
「!!」
その男達が身に着けていたのは、色こそ違えどよく見知っているボディスーツだった。
彼が知っているのは、蒼、橙、そして紅。
(……アムドライバー?)
室内へと押し入ってきた男達が身に纏うそれは、紫。
「お前たちは……?」
「ま、詳しい話はあとだ。ひとまずはお前さんを助け出しに来たわけだが……ふんっ!!」
レイと会話を交わす男は、両腕に装着した巨大なアーム状のパーツを器用に使い、
軽々と鋼製の鉄格子を捻じ曲げ、その隙間を広げてみせた。
「ここから、出ようや」
「な……」
二人組のもう片方が手にした長柄の斧を振るうと、横の壁が十字に切り裂かれ。
彼らの現れた通路とは一本逆の、別の道が切り拓かれる。
「生憎と、俺たちは人殺しをするためにここに来たんじゃないんでな。とっととずらかろうぜ」
「脱出!!脱出!!脱出!!」
レイは、柄にもなくあっけにとられた。
だがそれも、一瞬のこと。即座に自分がどうすべきかを計算し、判断する。
その上で、二人に頷く。
装備からみても、この常識外れの力からも間違いない。
彼らは、「ジェナスたちと同じ」だ。
ならば信用できる。少なくとも、脱出するまでは。
それはレイにしては、些か短慮にして短絡な思考ではあったのだが。
この状況では、脱出のあてのなかった身としては、ありがたい。
男の切り刻んだ穴から、先を行く二人を追うように。
レイは、その身を外界へと躍らせた。
こんな時間にすみませぬ。
とりあえずアム側メンバーはこれで出揃ったかな?
あっちの世界に残ってる非戦闘員メンバーを除けば。
>>594GJ!!
ウナトはやはり自害してしまったのか…
レイを助けた二人は、洗脳が解けたのかな?でも彼等は、
過去にハイネを殺してしまってるんですよね…
乙、ガンちゃんの外道っぷりが凄まじい。
保守
599 :
通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 23:48:25 ID:Wjpi2c+I
このスレ見てたらアムドラ熱が自分の中で再度湧き上がり始めたZE!
おお同士
保守
602 :
通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 10:35:57 ID:1qSIYBwk
オークションに出たいが買えねぇ! (ヒント 年齢の壁)
アム種 第八十三話 真実の歌のために
「なあ、お前さん、ミネルバとかいう船に乗ってたんだったな」
「は?」
二人の男に先導され、レイが到着したのはアプリリウスにある中でも
もっとも小さいであろう、人気のないドック。
一応軍のマークが各所に見えるからには軍の管理するものなのだろうが、
このような場所があったとはレイも知らなかった。
「なんでも、ついこの間新型が強奪されることがあったんだろ?それでそれからは、
コロニー内では新型やわけありの機体はここでテストしたり、整備したりしてるそうだ」
あまりその存在を知られていない、この場所で。
元々は、『フェイス』専用のドックとして建造されたものらしい。
だが議長直属の部隊にそれほどの優遇をしては指揮系統の乱れやクーデターを引き起こす
恐れがあるということで議会からの反対を受け、つい最近まで凍結されていた場所であるとも。
「……ま、全部デュランダルの旦那と、歌姫さんからの受け売りだがな」
「議長は生きていらっしゃるのですか!?」
男の物言いに、僅かな希望を抱き声を上げる。
だが、残念ながら男は首を振り。
「……前に、一度だけ会った。俺達はまだ病院だったがな」
「そうですか……病院?」
沈むレイは、気になる単語に眉を顰める。
病院にいたのか?彼らは最近まで。
「で、だ。さっきの質問。ミネルバに乗ってたんだな?」
「え?はい。自分はミネルバに所属していましたが……」
「そうか。なら───……」
自動ドアのロックを解除するテンキーを叩き、男達は顔を覆っていたヘルメットを外す。
「……いや、やめとこう。他の連中とも、合流してから」
「?」
言いかけて男がやめたところで、扉がスライドする。
彼らについて、レイもその先に歩を進める。
「さあ、ついたぜ」
「これは……!!」
彼の足を踏み入れたその先、その眼下には。
鮮やかな緋色に染め上げられた流線型の艦が、再び目覚める時を待ち、鎮座していた。
****
二年前には行き慣れていた通路を、彼女はブリッジに向かい進む。
また、再びこの艦に乗ることになろうとは。
プラントに返還した時点で自分とこの艦との接点とは、なくなったと思っていたのに。
人の行く道とは、わからないものだ。
だが、今回は違う。
漠然と何をすればいいのかもわからず、
明確な目的も手段も見つからぬまま出立せなければならなかった、二年前とは。
責任も、重みも。かつて裏切りも同然にプラントを出たあの時とは話にもならない。
伝えなければ、プラントの現状を。
ブリッジに続く自動ドアがみえてくる。
開いたそれをくぐった彼女の視界には、懐かしき艦橋が広がり。
自分と同じ顔をした少女が、こちらを振り向くのを捉える。
「ラクス様っ!!」
少女は叫ぶなり、胸の中に飛び込んでくる。
華奢なその身体を抱きとめて、ラクスはブリッジクルーたちに目礼を送った。
「ご無事で、なによりですわ。ミーアさん」
「あ、あたし……もう、なにがなんだかよくわからなくって、それで……」
「怖い思いをさせてしまったようですわね」
亡き父・シーゲルとその血を引くラクスを妄信する現在の急進的なクライン派にとって、
自分の妹を名乗る(名乗らされている)ミーアは当然、排除すべき対象となるであろうことは
ラクスもデュランダルも予測はしていた。だからこそ一時的に人目のつかない場所に避難させ、
その間に彼女を守る手立てを用意していたのだが。
予想よりもあちらの動きははやく、こちらは後手に回らざるをえなかった。
間一髪で議長や自分の送ったメンバーが間に合って、よかった。
その指揮を任せていたダコスタはラクスの目線に気付くと、頷いてみせる。
「出航の準備は完了しています。あとは───」
『ブリッジ、こちらダーク。坊主の奪還に成功、到着した』
「───いつでもいけるようです」
ラクスはミーアを引き離し、微笑みかけてから後ろを振り向く。
彼女の後ろに部下と共に付いてきていた、“新しい艦長”に。
「だ、そうですわ」
「ええ。……ディアッカ、シホ。MSで待機していろ、追撃が予想される」
白服の彼はキャプテンシートに身を滑らせながら、指示を出していく。
「なにしろこっちは向こうの脛にある傷をありったけ、暴露しにいくんだからな。
おまけに奴らの旗を奪っていくんだ。シホは俺のグフを使え」
銀髪の若き新艦長───イザーク・ジュールは宣言する。
「エターナル、発進する!!友軍艦隊と合流後、ミネルバ艦隊との会合点を目指す!!」
****
中継されるアメリカ大陸の様子は、あまりに無惨だった。
瓦礫、瓦礫、瓦礫。
上空からヘリを使い中継しているのであろう、
一面の瓦礫が続き。レポーターの声にも色がなく、空しい響きしか感じられない。
「くそっ!!ガン・ザルディ!!」
ジェナスは思わず、力任せに壁を殴りつけた。
「繰り返そうっていうのか……この世界でも、同じことを!!」
憤懣をその全身に漲らせているのは、彼だけではない。
ラグナも、セラも。ガン・ザルディの過去の行いを知る人間たちは皆、
一様にその怒りに拳を握りしめ、俯いている。
デスティニー・プランも、今こうしてプラントの頂点にいることも、
奴にとっては、ひとつの手段にしか過ぎない。
すべては、自分が神となるための。
「あのヤロウ……こっちでも、神気取りかよ……!!」
ラグナの吐き捨てた声が、彼らの思い全てを表していた。
キラやアスランといった、ジェナス達の話からでしか知らぬ者たちもまた、
行われた惨劇に言葉を失っていた。
「……ジェナス、教えてくれ」
そして、記憶のないニルギースも。
「奴は、何者だ」
「ニルギース」
「私は、奴が何者かは覚えていない。だが」
画面の向こうのガン・ザルディを睨みながら、言う。
「疼くのだ。奴の名と。そして、あのシャシャというアムドライバーの名を聞くと」
彼らを止めろと、肉体そのものが囁いてくる、と。
ニルギースは目を伏せた。
****
「それで、逃げられたってわけぇ?ばっかじゃないの?」
『言うな。奴らはラクス様を拉致している。これがどういうことかわかるな』
眼帯の女は、有無を言わさぬ態度で迫ってくる。
通信越しだというのにそれが、鬱陶しくてしかたがない。
「わーかってるって。墜とすんじゃなくって、拿捕しろってんだろ?」
『そうだ、それでいい。なんとしても取り戻せ。貴様もいいな?』
「ああ」
なんだかんだで腐れ縁の長い少年のほうも、異存はないようだった。
「しっかしネオのやつはいつこっちに戻ってくんのかね?なんだかんだでしばらく見ないけどさ」
『俺が知るか。大方、別々に引き離すことで双方への人質にしてるつもりなんだろ』
「なァんだよ、そりゃあ?意味ないぜ、それ」
『だからつもりなんだろっつってるだろうが。時間だ、いくぞ』
「へーいへい」
少なくとも今までとやることは変わらない以上、少年達に文句はなかった。
別に人質がとられていようといまいと、関係ない。
自分たちは「戦争」していればいいのだから。
レバーを引き、少年達は各々に与えられた新しい機体を発進させる。
『スティング・オークレー、シラヌイアカツキ、いくぜ!!』
「アウル・ニーダ、オオワシアカツキ、出るよ!!」
二人の駆る機体は、黄金に輝いていた。それぞれ異なる形状のバックパックを、その背に装備して。
漆黒の宇宙に飛び出た金色のボディが遮るもののない太陽の光を直接に浴びて、きらきらと輝く。
『ORB−01・アカツキ』。その二機は、オーブによって開発された最新鋭のMS。
ウナトの命とともにロゴスへと、ブルーコスモスへと差し出されたそれらは
その搭乗者たちと同様に、数奇な運命を辿り異端者たちの軍へとその身を置いていた。
『これより、エターナルを追撃する!!』
「見え次第、つっこむ!!ぐずぐずしてっと、置いてくからねぇっ!!」
位置的には、追撃というよりも進路を遮る形になる。
黄金色の二機を囲むようにザクが、そして無数のバイザーバグたちが周囲に寄り集まってくる。
いわば、MSとバグたちで作られた、得物を捕らえるための「網」。
彼らは、待つ。
得物が───それも、とびきりの大物が、網に飛び込んでくるのを。
アカツキの設定変えてます。
あんなオーバーテクノロジーの塊がMS黎明期の無印種時代から
あってたまるか、ということで。
せっかく二種類装備あるのに使わないのもまったいないですし。
>>597氏
一応、「両手」ということでデモリッションハンドのつもり
だったのですが・・・。わかりにくくて申し訳ないです。
キョシヌケ艦長ktkr!
本日もGJです!
これからの戦いが実に楽しみになってきた。
やっぱりフルキャストで一つの決戦に向かうのはいいものだ!
610 :
597:2007/02/17(土) 14:51:39 ID:6lCnCfq1
乙!
いえお気になさらずに;;
むしろ「アーム状のパーツ」と言うだけでグラップルハンドの方に短絡した俺の読解力の方がアレですしw
というより、時期が時期だけにウナトが上納した2機のMSがデストロイかと思って「?」と思っていたら
こっちだったんですな。
で、カオスの機動兵装ポッドを使ってたオクレがシラヌイと。
デス種の設定そのものが最初からそうだったかのようにピタリと決まりますな・・・・。
611 :
597:2007/02/17(土) 14:52:31 ID:???
間違えてageてもうた、失礼;;
>>608 乙です、待ってました!
両陣営が出揃ってきた、と言う事は、もうそろそろ最終決戦ですか?
続きも期待してますよ!!
保守
電王のウラタロス、中の人シーンだってね。なんとなくうれしい。
俺達の月曜日
>>616 ためているのだ。
( * ゚∀゚)
(◯ ◯
ググ… " ) ) )゛ ググ…
"(__)_)
アム種 第八十四話 反撃への道
『ラクス様!!どうしてわかっていただけないのです!!我々の行く道こそが……』
「本当に正しいのですか?対話のために集まった者たちを力によって消し去り、
奪取した政権の行うことが、本当に?」
「ラクス・クライン……ミーア・キャンベル?」
エターナルのブリッジへと通されたレイが見たのは、特徴的なピンク色の髪の、二人。
そして。
「イザーク・ジュール隊長……?」
ユニウス7において共に轡を並べた、銀髪の青年。
あのヤキン・ドゥーエの英雄としても知られる彼が、キャプテンシートに納まっている。
すぐ側のピンク髪のうちのひとり──おそらくラクスだろう──がなにやら通信機越しに、
どこかとの問答を行っているようであった。
「来たな。レイ・ザ・バレルだったか。イザーク・ジュールだ」
『仕方のないことなのです!!あなたの、シーゲルさまの理想のためには!!』
「それは父の理想でも、私のものでもありません。あなたがたの単なる我侭でしょう」
『ラクス様!!』
「国民の民意を受けぬ国家の理想に……一体どれほどの価値がありましょうか。国家は、世界は、
一部の人間のものではない。まして、不用な流血の上にたつものなど、認められるものではありません」
レイが入ってきたことに気付くと彼は、わずかに首だけ捻って、不敵に、満足げに笑んでみせた。
ラクスが頷いたのにあわせ、どこかと繋がりラクスとの会話を行っていた通信を、遮断する。
通信が切れたのを確認し、ラクスは目を伏せていた。
「艦長さんよ、俺たちも出撃の準備しとく。バイザーバグ共が出てきたらやっかいだ」
「ああ、たのむ」
ここまでレイを連れてきた二人組がブリッジを辞し、レイは若干、身の置き場がなくなる。
ぐるりと見回したブリッジは資料でみたことのあるそれと相違ない、「あの」エターナルそのものだった。
この艦がまだ残されていたとは、驚きだった。
前大戦後返還されてからは、複雑な事情を嫌った評議員たちの意向により隠匿、
破棄されたと聞いていたのだが。
───と、彼の疑問を、顔も見ずして察したように艦長席の白服が口を開く。
「破棄、寸前だったがな。デュランダル議長の命で、それは免れた。
軍でもごく一部のみ知らされていたことだ。俺も知らなかった」
「艦長!!三時の方向に敵影!!MS、バイザーバグ多数!!及び母艦、8!!」
「各艦に通達!!MS隊発進、迎撃!!ただしまともにやりあうな、振り切るのを最優先に!!」
そして、敵の来訪を告げるクルーの声。
それにも、彼はきびきびと対応し、命令を下していく。
「こちらの戦力は?」
「この艦を含めて、三隻。なんとかかき集められるだけ、集めたんだがな」
まともな戦力は、レクイエムの発射と同時に爆破され。
残ったものも殆どがクライン派によって取り込まれ、接収されてしまった。
兵士たちも武器なしには戦えず、プラントそのものが人質にとられていては、従わざるをえない。
「敵は、倍以上ということですか……空いているMSは?自分も出ます」
戦力を無駄にはできない。ここは、自分も出るべきだろう。
尋ねたレイに、イザークは前を向いたまま返す。
「デッキだ。行き方はわかるな?空いている機体ならどれを使ってくれてもかまわん」
「了解」
「ミネルバとアークエンジェルに連絡しろ!!歌姫を連れて行くと!!」
指示を出してしまえばもう、彼の頭にはレイのことはなかった。
この場を切り抜けること以外は、なにも。
****
一方。
ミネルバとアークエンジェルは、指定された合流ポイントにほぼ近付いていた。
とりたてて敵影も(また、敵対する勢力そのものも)いないというのに、
そこはデブリの密集する暗礁宙域。これはやはり、なにかある。
正規軍で、しかも名の知れた艦同士が平時に会合する場所として適当な場所ではけっしてない。
「通信?エターナルから?」
プリントアウトした電文が、アーサーから手渡される。
「ラクス・クラインを奪取、現在この宙域に急行中……?敵の追撃を受けている?」
「どういうことなんでしょう。敵の追撃って、もう連合は敵ではないわけですし」
月のブルーコスモス一派も壊滅したと聞く。ならば───、
「プラントそのものに追われている、ということかしら?」
「ええっ!?」
正確には、プラントの現政権から。
あの巨大なビーム砲で地球を撃ったという衝撃の冷めやらぬ今、
議長が自分たちに奇妙な命令を出していたのはこのためかとも、疑いたくなる。
祖国の政治に疑問を持つのは、愚直に従うことを要求される軍人としては失格ではあるが。
「エターナルの現在位置は?」
「ここです」
バートの呼び出した座標と図を見て、しばし考え込む。
「……事情はどうあれ、本艦隊に課せられた任務はエターナルとの合流です。
MS隊を向かわせます、ラミアス艦長にも連絡を。ただし艦隊はこの位置に固定」
「は、はい!!」
「なお、この命令は部隊長である私の独断によるものです。他の人間には一切の責任はないものとします」
****
味方のゲイツRが撃ち抜かれ、撃墜される。
「ちいいっ!!数だけは多い!!シホちゃん、そっち行ったぜ!!」
『わかってます!!でもこっちも……!!』
怒鳴りあいながら、それぞれに敵機を撃ち、切り裂いていく。
ディアッカのガナーザクファントムに、シホのグフイグナイテッド。
エース格の彼らがいるとはいえ、倍以上の戦力差は如何ともしがたい。
機体もこちらがゲイツRを中心とした編成であるのに対し、
あちらはグフやザクを惜しげもなく投入してくるというのが腹立たしい。
『ヴォルテール、大破轟沈!!』
『しまった!?』
「おいおい、マジかよ。ありゃあ……」
沈みゆく僚艦、そのエンジンを撃ち、多くの兵士達の命を奪ったのは。
「オレンジショルダー隊、あんな連中までいやがるってのかよ!!」
橙に肩を染め上げたザクウォーリアが無数に。
かつて、あのハイネ・ヴェステンフルスが指揮していた腕利きの部隊。
やっかいな連中が篭絡されたということになる。
「こーりゃ、きっついんじゃないの?」
『口より手を動かしてくださいよ!!』
「へーいへい。……各機、オレンジの肩のやつには手を出すな!!俺とハーネンフース機で相手をする!!」
『私達だけって……数が多いですよ!?』
「仕方ないだろ!!他に対応できそうなやつが……」
相手は手練。こちらも相応の実力が要求される。
赤服レベルの腕がなければ、手玉にとられるだけだろう。
『ディアッカ!!今ミネルバ隊からMS隊の発進を確認した!!もう少し耐えろ!!』
「りょーかい!!たく、簡単に言うけどよっ!!」
腕のいい敵パイロットに加え、バイザーバグなる小型の機体の数が多く、目障りで仕方がない。
「あーくそ!!手が足りねえ!!」
『心配するな、今発進させる』
「あん?」
****
「すまないな。なにぶん準備からなにから、目立たないようにする必要があったもんでな。
廃棄処分寸前の機体をかすめとってくるしかなかったんだ」
「いえ。やれます、十分です」
紫色の二人組は、それぞれ赤と青の、ジェナスの使っていたライドボードとエッジバイザーを
足して二で割ったような機体を駆って一足先に出撃していった。
少々手間取ったが、自分もいける。
「なんならあっちの機体でも。あれならきちんと正規で……」
「『あれ』は、アスランが乗るべき機体でしょう。合流し次第」
「そうかい?言っておくがあまり稼働時間は長くないぞ?シルエットへの追加エンジンの装備もまだだし」
そんなことは、百も承知。
今は少しでも手が必要なとき。
その意味ではこの艦に、多少なりとも勝手を知っている“この機体”があったのは幸いだった。
「シンほどではありませんが……やってみせます」
名も知らぬ整備兵の気遣いに頭を下げ、コックピットハッチを閉じる。
「レジェンドがあればとも思ったが……贅沢も言っていられんしな」
ヘルメットのバイザーを下ろす。
オペレーターの管制に従い、カタパルトハッチが開いていく。
「レイ・ザ・バレル、デスティニーインパルス、発進する!!」
機体の色は、青とグレーを基調とした落ち着いた色に染まった。
戦友のかつての愛機と同じMSは、彼が今駆るMSと同じ翼を持つ。
光の翼が、鮮やかに輝く。
戦力バランスを考えてレジェンドはプラント側に。
デスティニーインパルスとセイバー、どっちにしようか迷いましたが
赤いしサーベル使うしでレイがセイバー乗ると俺参上しそうなので
デスパルスに。おあつらえ向きにグレー・青カラーと赤中心の二機があるしね。
レジェンドはあちら側でレイにはデスパルスか、こいつぁGJだ!!
>赤いしサーベル使うしでレイがセイバー乗ると俺参上しそうなので
ちょwwww
GJ!
紫組の機体はひょっとしてネオボードバイザーかな?
( * ゚∀゚)
(◯ ◯
ググ… " ) ) )゛ ググ…
"(__)_)
◯( *゚∀゚)◯ GetRide!
\ /
_/ __ \_
(_/ \_)
lll
>>622GJ!!
レイがデスパルスという事は、レジェンドはネオが乗るのかな?
>「オレンジショルダー隊、あんな連中までいやがるってのかよ!!」
・・・・・・・・・第四クールはロクに見て無かったので俺自身こんなタ○ラの某作品みたいな舞台が公式に
存在したなんてこのSSのお陰で初めて知ったorz
正確には部隊じゃなくてハイネの友人やらが弔問のため勝手に肩を染めてるだけらしいが
とりあえずアニメ見る限り無茶苦茶統率が取れてるから部隊と言っても十分通るな
保守
保守
ほっしゅ
GET RIDE!
ゲーム化もされてるんだな…
保守
アム種 第八十五話 ignited
背中のラックにマウントされた、二振りのエクスカリバーを引き抜く。
ビーム刃は出力させない。ただでさえエネルギーを食う機体なのだ、
PS装甲を相手にしないならば、実剣のままで節約したほうがいい。
「なるほど、これは……!!」
疾い。
ザクなどとは比較にもならない。
刺突が、横一閃が、次々に敵MSを撃墜していく。
火線が追いすがろうとも、敵は反応そのものが追いついていない。
「いける……う!?」
だが、彼の快進撃はそこで一旦中止。
敵機の群れを駆け抜けた先に見慣れぬ機体を見つけ、レイは機体を停止させる。
「黄金の……MSだと?」
二機のMSの装甲は、金色に光っていた。
ほぼ同じ外見、背中に背負ったバックパック以外、
差異の見られない機体が、二機。
ザクやグフといった量産機の群れの奥に、ならんでいて。
「!!……ドラグーン!?」
そのうちの一機が、背中の突起状のパーツを射出する。
小型のそれらは五機、目にもとまらぬスピードでデスティニーインパルスをとりかこみ。
放射されるビームの驟雨の中を、レイは駆け巡る。
「ちいいぃっ!!」
更にはもう一機が双刀状のビームサーベルを引き抜き、接近戦を仕掛けてくる。
「同士討ちでもする気か!?このドラグーンの中を!!自滅するぞ!!」
ビームシールドで防ぎ、背後から放たれるドラグーンのビームをかわす。
デスティニーインパルスの機動性と、空間認識力に長けたレイの組み合わせだからかわせているのだ。
そこに飛び込んできても、味方から撃たれるのがおちだ。
斬りかかってきた機体のコックピットと思しき場所へとビームが吸い込まれていくのを、レイは確信する。
だが。
「何!?」
胸部へと直撃を受けた機体は、貫かれることも、爆散することもなく。
あろうことか、そのビームを、
「反射した!?」
その射角のままに跳ね返し、虚空の宇宙へと弾き飛ばしていく。
陽電子リフレクター、いや違う。そのような素振りは見えなかった。
ならば、おそらくは。
「ビームを反射する装甲、というわけか……!!」
弾くだけならまだしも、下手をうてば角度によっては自分に攻撃が跳ね返ってくるなど。
やっかいな敵だ。
こちらのカードは対艦刀とバルカン、通用するかはわからないがビームブーメランだけと
いうことになる。
「───だが」
センサーが、新たな機影を告げる。
「どうやら、間に合ったらしいな」
認識のシグナルは、戦友たちのもの。
ミネルバとアークエンジェルの、MS隊。そしてアムドライバーたち。
****
『こちらミネルバ隊アークエンジェル所属・ムラサメ、アスラン・ザラだ。エターナル、応答を……』
『遅いわ、馬鹿者!!来るならもっとはやく来い!!』
『……イザーク?』
『そんな機体よりも、貴様には乗るべきものがある!!さっさと着艦しろ!!』
通信の向こうで、なにやらアスランたちがもめている。
だが、ジェナスにとって重要なのは、それではない。
聴覚よりも、視覚の捉える情報のほうが、彼にとって、また共に戦場に駆けつけた
セラにとって、重要なことであった。
「……ダークさん、タフトさん」
本来なら、懐かしい。喜ぶべきである合流・再会も、素直に喜べない。
『ジェナス……セラ』
自分たちは、彼らのやったことを知っているから。
向こうの声のトーンから、彼らも自身のやった行為を憶えているのだろう。
紫のアムジャケットの二人との間に、緊張が流れる。
『……お前らには……色々と言わなきゃならないことが、あるんだろうな』
「……」
『この戦闘が終わったら……少し、いいか?』
「……ええ」
今は、その暇はない。
シンや、アスランや。合流せねばならないエターナルが、戦っている。
すべては、それからだ。戦いながら解決するには、彼らの間に流れるものは重すぎる。
「終わったら……必ず」
けじめを、つけなくてはならない。
****
地球を発つ前、ステラの病室に、一度だけ一人で会いにいったことがある。
『ルナ……シン、お願い……』
小康状態なら、ともかく。
薬物の禁断症状に苦しむ彼女は、ベッドに縛られた絶え絶えの声で、ルナマリアに願った。
シンが「死なない」ように、と。守ってほしい、と。
ルナマリアは、引き攣り、血管の浮かんだ彼女の掌を握った。
そして、強く頷いた。シンは死なせない、ステラの元に、なにがあっても帰すから。
彼女の目を見て。たしかに、約束したのだ。
───なのに。自分はなにもできず今こうして、ミネルバに残っている。
パイロット待機室で、ぼんやりとルナマリアは星の海を見つめていた。
あれから、機体の補充はなく。
搭乗機のないルナマリアは、艦隊の護衛に残ったキラとともに、出撃していくシンたちを見送った。
今ミネルバ艦隊に残されたMSは、キラのストライクフリーダムだけ。
インパルスのチェスト、レッグの両フライヤーはあるが、肝心のコアスプレンダーがない。
故に、ルナマリアが出撃することは適わない。
(任せろって言っておいて……情けないもんね、まったく)
自分に出来る事に、地球のステラと何の違いがある?
無事を祈るくらいなら、彼女だってやっているに決まっている。
「どうしたの?元気ないけど」
「あっ……キラ」
パイロットスーツに身を包んだキラが、隣にきていた。
赤の軍服姿のままとの対比が、一層強調される。
シンがステラを助け出してからだろうか、キラは穏やかだったその雰囲気を、
さらになだらかなものとしていた。呼び方もアスラン共々、さん付けはいらないと言って。
「あたし……あの子に頼まれたんです。シンをお願い、って。なのに」
機体がない。なにもできない。頼まれたことなのに。
「心配?」
「……はい」
それは無論だ。だけどそれ以上に、
「歯痒いよね」
「え?」
「なにかしたいとき、しなきゃならないときにできないっていうのは」
キラは、微笑んでいた。ルナマリアを元気づけるように。
「でも、今は代わりにそれをやってくれる人がいるでしょ?あの子がきみにシンのことを任せたように」
「アスランや、ジェナスたち……ですか?」
頷く。彼らの力を、信じてみてはどうか。彼は、そう言っていた。
「それでも落ち着かないなら、今自分にできることを精一杯やればいい」
「自分に、できること……」
まだやれることがあるのに、それを見逃してなにかを望むのは不相応だ。
ルナマリアは考える。そして。
「あたし、整備班手伝ってきます!!やれること、やっとかないと!!」
駆け出す。正確には、無重力の床を蹴って、跳躍する。
明るさを取り戻した表情で、弾かれたように。
自動ドアを開いて、格納庫へ急ぐ。
こんなところで物思いに耽っているよりは、整備を手伝ったほうが有益だ。
ドアをくぐり一度身体を反転させ、キラに頭を下げて。ルナマリアは通路に消えていった。
「……頑張って」
自分も、今自分がせねばならぬこと、やれることをするしかない。
(みんな、ラクスを……お願い)
ストライクフリーダムなら、多数の敵を一度に相手に出来る。
彼が艦隊に残るのは、ある意味では当然であった。
たとえ、ラクスのことが心配であっても。
先程ルナマリアに言ったことは、自分自身に対しての戒めでもある。
自分の役目は、この艦隊を守ることだ。
「!!」
敵襲を告げる警報が、鳴った。
くるかもしれないという予想は、多少なりともあった。
こちらが救援のMS隊を向かわせれば、それによりこちらの位置もある程度特定される。
合流場所が暗礁宙域という穏やかでない場所、そして合流すべきエターナルが
追われている事からも、こちらにも矛先が向けられることは考えられていた。
「よし」
ヘルメットを手にする。
二年前と同じだ。あの頃もMSはたった一機で、アークエンジェルを守らなければならなかった。
エレベーターに乗り込み、機体へと向かう。
そんな彼が相対するのは二年前、共に同じ艦を守り、戦った相手───……。
戦闘同時進行な次回がけっこうきついかな?
核動力ーズ集合を餌にがんばろう。
乙!!
>そんな彼が相対するのは二年前、共に同じ艦を守り、戦った相手───……。
成程、こっちにムネオをぶつけるのか・・・・。
・・・・・・・・・・・正直ムネオが善戦する姿がまるで想像出来んが(苦笑)
逆だろ? キラが苦戦するんだ
GJです!
ドラグーンの扱いは圧倒的にムネオが勝り、ビームはヤタノカガミで返されるので使えない
頼みの綱はレールガンと接近戦と種割れのみ
こりゃ苦戦必至ですなぁ
つーかキラがルナフラグ立ててしまってる気がするんだがw
ネオの搭乗機はやっぱりアカツキかなと思ったけど、向こうにレジェンドあるんだよなぁ。
色々因縁があるかも。
>>640乙、次回はキラ対ネオかな?
>薬物の禁断症状に苦しむ彼女は、ベッドに縛られた絶え絶えの声で、ルナマリアに願った。
ステラがカワイソス(´;ω;`)
ムネオはレジェンドでしょ、消去法で行って。
>>446 >「MS二機……国ひとつと比べれば、安いものであろう」
>「二機……まさか、"アレ"を!?」
>>622 >戦力バランスを考えてレジェンドはプラント側に。
俺達の月曜日!
アム種 第八十六話 Vestige
詳しいことは、あとで話す。だから、今は力を貸してくれ。
レイの言葉を信じ、脱出を図るエターナルを守り敵MS隊と戦っていたシンの耳に、
男の怒声が響く。
『シィィィィンッ!!てめえ、また俺達の邪魔する気かっ!!』
使っているのは、互いにザフト正規の通信回線。
故に、その声はコックピットのスピーカーに拾われる。
突進してくる、黄金の機体の片方からのものであった。
「!!」
斬撃が、胴体すれすれを薙ぐ。
シンは一瞬冷やりとしながら、叫び返した。
「スティング!?お前……どうして!?」
アロンダイトを引き抜き、二刀流に分割されたサーベルを一度に受け止める。
シンの心情には、スティングが無事であったことに対する安堵と、
連合ではなくザフトに身を置き、なおかつ未だ自分に刃を向ける彼への困惑があった。
サーベルと対艦刀のせめぎあいの中、返ってくる返事はつれなく。
『毎度、毎度……邪魔しやがって!!てめえとはいえ容赦しねえ!!……ステラはっ!!』
「!?」
『ステラはちゃんと、助け出したんだろうなァ、おい!!』
「あ……ああ!!それはもちろん!!」
『へ……ならいい!!こっから先は男と男の!!全力全開の戦いだっ!!』
スティングの気迫のなせる業だろうか、シンは気圧される。
ブルーコスモスの軍が壊滅し、もはや彼との間に戦う意味など、ないはずなのに。
その、モチベーションの差なのかもしれない。
『最初っから最後まで……全力!!手加減も、容赦もしねえぞ、シン!!』
「く……」
『……なるほど。手加減も、容赦もか。だがしかしそれは、長すぎるな』
圧すスティングに、圧されるシン。二人の会話に、冷静そのものの声が割り込んでくる。
そして飛来するブーメランが、二機の間を分けた。
『クライマックスというんだ、そういうのは。短く、簡潔にな』
レイの、デスティニーインパルス。
デスティニーと同じ翼もつ機体は戻ってきたブーメランをキャッチし、彼は呟くように言った。
「……それも微妙に違くないか?」
『気にするな。俺は気にしない。それより、もう少しだ。あと少しであちらの追撃が不可能な位置まで抜けられる』
クライマックスどころか、いつもの無感動な口調でレイが告げる。
『アスランが出てきたら……一気に決めるぞ』
彼も、その機体も、ちらりと緋色の戦艦の持つカタパルトに目を向けながら。
****
カタパルトハッチが開いたそこには、いつのまにか取り付いた一機のザク。
待ち構えていたようにその敵は、両腕に保持したビーム突撃銃を構える。
集中砲火で、内部から破壊してやろうという魂胆なのだろう。
ラミネート装甲のことを考えたその手は、悪くはない。
──だが。
「遅い」
大蛇の顎のようなワイヤーアンカーが、ハッチ内部の暗闇から伸びる。
目にも留まらぬ速さでザクを捕獲したそれは、動揺する機体を一瞬にして艦内に引きずり込み。
わずか数秒後には、右腕が。
左腕が、右足が、頭部が。
カタパルト内部から、蹴り出される。
左足までもが虚空に消えていったあと、残る胴体部もまたハッチから放出され。
最期の断末魔のごとくミサイルを放出せんと背部のブレイズウィザードを開いた
その機体中心を、一条のビームが貫いていった。
『調子はいいようだな』
「……ああ」
『先程、ミネルバ艦隊が敵襲を受けているとの連絡が入った。さっさとここを突破して救援にいくぞ』
「了解だ」
ガイドライトが灯り、アスランは機体の両足をカタパルトに噛ませる。
なかなかどうしてイザークも、艦長が様になっているじゃないか。
……無限の、正義。当然といえば当然の、世の中の理。
そう、正義とはひとつではない。
「アスラン・ザラ、インフィニットジャスティス、出る!!」
****
「ふんっ!!」
──また、お前達か。
エッジバイザーの機動性を利し、次々にバイザーバグの部隊を切り刻みながら、ニルギースは思う。
お前達がいるのならば、あの白いアムドライバーもいるのか。
「お前達は……知っているのか」
あのアムドライバーと、私の絆というやつを。
ならば、教えろ。ジェナスたちに言われようと、実感の湧かなかったそれを。
記憶のない私に、伝えてくれ。
「私と!!あのシャシャという少女の関係を!!応えてみろっ!!」
エイドロンソードのエネルギー波がバイザーバグたちを薙ぎ払い、
艦上のラグナの射撃によって止めを刺されていく。
****
無警告の攻撃、こちらの呼びかけに対する無視。そして、部隊の規模。
やはり、これはなにかある。
「数が多い……だけど!!」
かといって、ここで墜とされてやるわけにはいかない。
皆の戻ってくる場所を、そうそう簡単には。
斬っても、撃っても、きりがない。敵MSの群れを前に、
キラは自身初めて使用することになる装備を投入することを決めた。
計器を叩き、予めインストールしておいたデータを呼び出す。
それこそは、あの日レイがアスランを通じ、キラに残したもの。
彼自身が組み上げた、彼自身のデータを使った戦闘プログラム。
「完全とまでは、いかなくても!!」
ストライクフリーダムが、その四枚の翼を広げる。
そして、蒼い部分に当たるパーツが全て脱落した。
否。脱落したのではない。射出されたのだ。
スーパードラグーン・機動兵装ウイング。多角的な戦闘を可能にする
ストライクフリーダムの特殊装備である。ただし、その運用には常人離れした
高い空間認識能力が必要とされる。
「あたれぇっ!!」
本来、キラにはドラグーンの運用を可能にするほどの空間認識能力はない。
その彼の能力を、ドラグーン適性をもつレイによって組み上げられた補助プログラムがサポートする。
それでも、かつてのラウ・ル・クルーゼのように自然で滑らかな動きは望めない。
あくまで直線的で、ある程度アルゴリズムの決まったものでしかない。
しかし、それで十分。ドラグーンの素早くトリッキーな動きを、戦闘中に読み切ることのできる
パイロットなど、そうそういるものではない。ザクやゲイツRが、その数を減らしていく。
レイのプログラムの補助を受け、キラはかつて自分を苦しめた力をその手にしていた。
「!?」
不意に殺気を感じ、機体を急旋回させる。
キラのいたその場所を、何方向からものビームが切り裂いていった。
ちょうど今、キラ自身が敵機に向かい行っていたように。
「敵もドラグーンを!?……っぐ!!」
間髪入れず、集中砲火。機体にかなり無茶な機動をさせ、強引に避ける。
シートベルトに押さえつけられた自身の骨格が、ぎしぎしと鳴った。
キラのような、補助に頼ったものではない。
間髪入れず、四方八方からストライクフリーダムへとビームが降りそそぐ。
『やるねェ、流石スーパーコーディネーターさんってとこかい?』
「……え?」
ちょうど少し前、離れた宙域でシンがスティングの通信を受けたのと同じだ。
コックピットのスピーカーが、受信した通信をパイロットの耳へと届ける。
同じ周波数、故。
彼に砲火を浴びせていたドラグーンたちが戻っていく。
主に撤収を命じられた猟犬のごとく。
キラ自身が、手塩にかけた機体のもとへと。
「レジェンド!?いや、それより今の声……!?」
『アークエンジェルに、フリーダムねぇ。昔は俺のお仲間さんだったらしいけど、まあ』
「!!」
『今は敵ってことだ!!いままで散々な目に遭わせてくれたことだしなっ!!』
その機体よりも、届く通信こそがキラを惑わせる。
機体とパイロット、二重の困惑が彼を襲い、追い討ちのごとくドラグーンが射出される。
「く!!」
無論キラとて、手をこまねいてはいない。対抗するように、翼からドラグーンを放つ。
『ここで墜ちてもらうぜぇ……大天使に、女神さん?それに……キラ・ヤマト!!』
「……ムウさんっ!!」
かつてともに戦った男が、これからともに戦うはずであった機体を駆り彼に銃口を向ける。
二年前男が守り、今男が討とうとしている艦を守りきるるべく、キラもまた撃ち返す。
龍の名を冠する武器を互い、使い魔のごとく使役しながら。
何故、どうして。キラの胸を占めるのは、そのような言葉ばかり。
あ、ストフリの羽八枚だった・・・。
・・・付け根から生えてる分かれ方で四枚ということにしといてください(死)
いつも乙です!
>『クライマックスというんだ、そういうのは。短く、簡潔にな』
ちょwwwwwwモモタロスwwwwwwwwwwww
GJ!そして乙です!
レイのモモタロス発言に吹いたwwwww
なんかスティングがモモタロスっぽいなセリフ言ってると思ったらレイwwwwwww
「ああ……次はウラタロスだ……」って思った奴は手を上げろ。
ノ
GJです!
次はむしろゲルズゲーに「蟹が飛ぶな!」かとw
シーン再登場フラグだな!
GJ!
隠者、初登場からザク解体で凄味たっぷりだなぁ。
暗がりに引き摺り込んで瞬時に解体ってのは普通悪役の登場の仕方なんだけどなw
乙!インジャの登場の仕方が、微妙にホラー映画みたいだったw
おおっ、更新早ぇ!
>わずか数秒後には、右腕が。
>左腕が、右足が、頭部が。
>カタパルト内部から、蹴り出される。
ザクをちぎっては投げちぎっては投げwwwwww
銀河鉄道999の原作思い出してお茶吹きそうになったw
更新乙です。
隠者登場シーン、俺はドラえもんののび太とジャイアンの喧嘩を思い出してしまったw
保守
☆
アム種 第八十七話 PRIDE
『何、あの羽根つきに乗ってたの、シンだったわけ?』
アウルの口調は、どこか責めるようでもあった。
口を尖らせて、訊いてくる。
「……ああ、そうだ」
もう、追撃は不可能だった。
これ以上は、プラントから離れすぎてしまう。
最大望遠のメインカメラに映る緋色の船体の遠ざかっていく後姿を、スティングは見送った。
『僕はやらないからな?なんてーか、そういうのやだ』
「ああ、わかってる。お前がシンの相手することはないさ」
周囲のザクが引き返していくのに従い、スティングとアウルもアカツキの機体を反転させた。
「ま、ひとまずは……ネオのやつに任せるさ」
****
青と、灰。二種類の色のドラグーンが、それぞれに撃つべき敵の姿を求め飛び交う。
数は、レジェンドが上。
破壊力も、レジェンドが上。
そして、動きのしなやかさ、俊敏ささえも──レジェンドのドラグーンのほうが上だった。
『ほらほら、どーした!!そんなヌルい制御で俺を捉えられるとでも思ってんのか!?』
「く……」
キラのドラグーンは、当たらない。
直線的な動きは読まれ、かわされ。すべて紙一重で避けられ続ける。
一方、キラは変則的で滑らかな動きのドラグーンの驟雨に晒されていた。
数も砲門数も多いそれらをいくらキラとて捌ききれず、機体全身、両面を覆える出力の
ビームシールドがなければ、既にストライクフリーダムの四肢のいくつかはビームに
撃ち抜かれ、もぎとられていることだろう。
『キラ!!艦に戻って!!ラグナとニルギースだけじゃ……!!』
「わかってる!!けど……」
『お願い!!こっちも今、艦長が……!!』
ミリアリアの悲鳴に似た声に怒鳴り返す。
彼は、目の前のMSとだけ戦っているのではない。
心の中に生まれた動揺とも等しく、戦わなければならなかった。
「ムウさん……本当に……ムウさんなんですかっ!?」
『さあね!!俺自身、自分がそーだっていう自信はないもんでな!!』
アンビデクストラス・ハルバード。デファイアント改・ビームジャベリン。
両刃の剣が交錯し、二人の声もまた交錯する。
分割して二刀流で斬りあうも、迷いのあるキラは攻めきれず逆に押し込まれる。
『大したことないな!!スーパーコーディネーターさんよ!!』
「くうっ……!!」
こうしている間にも、ミネルバとアークエンジェルが攻撃を受けている。
ラグナとニルギースの二人だけで、到底守りきれるものではない。
『母艦どももなかなかしぶといが……この程度なら、もうおしまいだな!!』
「何!?」
『いいぞ!!出ろ、シャシャ!!』
そして、敵の母艦の一隻……ナスカ級を改装したと思われる艦の、巨大なハッチがスライドし。
白い機体が姿を現す。
「あれは……ベルリンの!?」
正確には、スカンジナビアを壊滅させた機体。
ベルリンで撃破した黒い機体には、あのステラという少女が乗っていた。
シンから彼女のことを聞き、説明を受けていくうちに知った悪魔の名は──、
「デストロイ……!!」
地球では、黒き悪魔が。
今ここ、宇宙においては、白き悪魔が彼らの前に立ち塞がっていた。
****
「あれは……そんな!!」
「艦長、指示を!!」
アークエンジェルのモニター一杯に、白い巨体が映し出される。
この不利な状況に、ダメ押しの一機が投入されるとは。
騒然となるブリッジ。
だが、ただひとりそんなことなどどうでもいいかのように、
虚ろな目をサブモニターのグレーの機体に注ぐ者もいて。
「ムウ……ですって……?」
「艦長ッ!!」
マリューはかつて愛した、死んだはずの男の出現に呆然としていた。
本当に、ムウなのか。ならばなぜ自分たちを狙うのか。
ストライクフリーダムとの通信を開いたままにしていたが故、彼女は彼の声を聞いてしまった。
二年間をかけて癒えたはずの傷が、ぱっくりと開いたような心境だった。
「艦長、指示を!!」
「ダメだ、ノイマン!!これじゃあ……」
「自己判断で!!お願いします、ノイマンさん!!」
「ああ、もう……っ!!」
クルー達の喧騒も、意識の外。
彼女はキラ以上に動揺していた。
指揮など、とれようはずもない。
****
艦外においても、デストロイの出現は波紋を呼び。
「マジかよっ!?あの化け物の色違いなんてヨ!!」
バイザーバグの迎撃で手一杯だったラグナとニルギースも、その姿を確認する。
『あれは……』
「わ!!あぶねーぞ、ニルギース!!」
確認した直後、ニルギースの動きがぴたりと止まった。
白い悪魔の巨人を、じっと見据えたまま。
彼を背後から狙うバイザーバグを撃ち落し、ことなきを得るが。
ニルギースは動きを止めたまま、エッジバイザー上でぴくりとも動かない。
──そして。
『シャシャ……』
「あん?」
弾かれたように、飛び出した。
「ニルギース!?」
『シャシャ……シャシャ……!!』
「待てよっ……うわ!?」
白い怪物へと向かって。
追いかけようにも、バイザーバグが即座に弾幕を張り行かせてもらえない。
たったひとり、ニルギースが駆けていく。
彼は、何の確証もなくとも感じ取っていた。
あの機体、あの場所に。
一人の少女が待っていることを。
****
──……行くな、ニルギース……──
彼を止めたのは、声さえ聞えぬ声。
「シーン……?」
今は亡き友の声に、彼は我に返る。
──……今はまだ、シャシャは……──
エッジバイザーを急停止させると同時に周囲を見回す。
当然、声の主が見えようはずもない。
「今のは……」
今のは、誰だ。
ない記憶を探っても、その答えは出てこない。
それよりも、自分は何をしようとしていた?
一体あの機体に、あの少女に。何があるというのだ?
彼のまわりを、バイザーバグとMSたちが取り囲む。
だが、それによってニルギースが窮地に陥ることはなかった。
彼を取り囲んだ機体たちは全機、瞬時にしてすべて打ち抜かれていき。
「……?」
センサーとヘルメットのカメラに、緋色の戦艦とその周囲を飛び交う
友軍機の姿が捉えられた。
****
『グラディス艦長!!ご無事ですか!?』
「アスラン?その機体に乗ってるのはあなたなのね!?」
緋色の戦艦・エターナルと一隻のナスカ級。
それを取り囲み、先導するように戦域へと乱入してきたMS隊の戦闘にいたのは、紅き機体。
そこから送られた通信の顔は、先刻送り出した少年達のひとりだった。
『このままやりあっても消耗するだけです!!ここは一旦後退を!!』
「でも……退くといっても、どこに?」
エターナルがプラントから追われ出てきたということは、ザフト軍関連の施設はあてにできない。
そもそも、彼らを信じるべきか、ザフト軍として彼らを拘束すべきかもまだ決めかねている状況なのだ。
そんな状況で、一体どこに?
『月の自由都市……コペルニクスに向かってください。あそこならば』
「!?」
「ら、ラクス・クラインっ!?」
モニターに割り込んでくるのは、ピンク色の髪の少女。
その姿に、アーサーが驚きの声をあげた。
『デュランダル議長の……最後の遺産です。話は、つけてあるはずです』
信じてくれと、懇願するような目で彼女は言っていた。
同時に、その言葉には確信を持った響きがあった。
タリアは再度アスランの通信をメインモニターに呼び戻し、確認をとる。
「……信用できるのね?」
『はい。無論、私の個人的な判断ではありますが……“フェイス”として』
評議会直属、議長直属の士官として。
自分より彼らのことをよく知っているであろう青年は、強く頷いた。
彼らの仲間としてではなく、フェイスとして、信用できると。
「わかりました。ならば、現時刻を以ってこの宙域を離脱します。
機関最大!!目標、月面・コペルニクス!!アークエンジェルにも通達!!」
「はっ!!」
「ニルギースとラグナにも、振り落とされないよう注意するよういって!!」
たしかに、ここであの白い悪魔と対峙するのは得策ではないといえた。
他のメンバーが合流したとはいえ、キラさえ押さえ込む敵もいるのだ。
一度決めてしまえば、彼女の決断は早かった。
迷うことなく、彼女は命じた。
月の自由都市って、コペルニクスでよかったよね?
書いてから確認してなかったことに気付いたもので。
間違ってたらどうしよう・・・。
乙です!
>>671乙です!!
マリューはいずれ、ネオがアンディの仇だって事も知ってしまうんだろうな…
そして茄子が影薄いのにorz
本編でもシーンにいいとこもってかれっぱなしだったなぁw
乙!
>>671 コペルニクスでちゃんと合ってますからご心配なく。
・・・・・・・・つかそれが舞台になるって・・・・・・・・・ミーア死亡フラグ?orz
保守
保守
俺達の月曜日!
アム種 第八十八話 僕たちの行方
−月面、自由都市・コペルニクス三番ドック−
かつてはそこにあるのが当たり前であった小型戦闘機──コアスプレンダーが、
ミネルバへと搬入されていく。
クレーンで吊り上げられた機体を、シンとルナは並んで見守る。
「上手く使えるかなぁ、あたしに」
ようやく機体が増えたのはいいことだが、果たして自分に扱えるか。
自分がシンやレイに比べ一枚落ちるということを自覚するルナマリアはぼやく。
元気づけるようにシンが肩を叩くが、いまいち効果はない。
「大丈夫だろ。シュミレーター、いい感じだったじゃん」
「んー、でも実戦とは違うし。しかもデスティニーシルエットって、殆どデスティニーと同じなんでしょ?」
「心配しすぎだよ、ルナは。レイだってうまくやってただろ?」
──だから、それがプレッシャーなんだってば。
次からはインパルスが二機体制となる。
同じ機体である以上、明確にパイロットの差が出てくるのだ。
まだ扱いやすいムラサメに替えてもらうか。いや、それも無理だ。
どうせアスランやタリアから、「赤服なんだから使いこなせ」と却下されるのは目に見えている。
「……って、そういえばレイは?」
「ん、ああ。ブリッジに呼ばれてったけど」
多分プラントでの出来事と、今後のことだろうな。
しれっと言ってのけるシンは、彼女の気持ちには思い至らないようである。
「……何、睨んでんだよ」
「いーえ、別に。せいぜい壊さないように頑張るわよーだ」
もし、ステラが回復したとして。
この鈍感男との間はどうなることだろうか。
きっと、前途多難なのだろう。
****
『……俄かには信じ難いことではあるな、それは』
通信は、オーブと繋がっていた。アークエンジェルが国を出立する際、
ユウナの用意しておいた非常回線によって。
一時はオーブとアークエンジェルとの繋がりが残っていることを
快く思わず、疑いかけたこともあったが、今となってはタリアはそれに感謝していた。
プラントという後ろ盾がなくなった以上、自分たちにとってはこの国との繋がりのみが
最後の生命線であるのだから。
『あの突然の地上へのビーム攻撃と……新議長の誕生は知っていたが』
金髪の少女はブリッジの面々を見回すようにしながら呟いた。
通信越しでも、驚いているというのがわかる。
『最高評議会そのものが失われ、独裁体制が敷かれているとは……な』
ミネルバのブリッジには、タリア、イザーク。
マリューの代理としてノイマンがそれぞれの艦の代表者として集まり。
オーブのカガリと彼らへの説明に立つラクスとレイに、視線が注がれている。
『それで?どうする気なんだ、一体。先日の声明に対する対応はこちらでも検討中だが』
地球上では大西洋連邦を無警告に焼き払ったプラントに対し、非難の声も多く上がっている。
と同時にその威力の前にプラン導入もやむなしという声もある。
ガン・ザルディの恫喝に、世論が二分されている形だ。
各国は今のところ被災地の大西洋連邦への救援優先を盾に、回答を出してはいないが。
プラントが業を煮やす前に結論を迫られている。
「レクイエム……あの巨大砲台を破壊し、プラントを取り戻します」
『だが、どうやって。先程の話が確かならザフト本隊は動けまい。地上も最大勢力の
大西洋連邦が潰されては戦力・政治力共にに乏しいぞ。話し合いに応じる相手でもないだろう』
「……カガリさん、あなたにお願いがあるのです」
だが、現状は打開せねばならない。
ラクスは旧知の彼女へと、深々と頭を下げ、言った。
「私に……発言の場を頂けないでしょうか。プラントに。いや、世界に向けて真実を発信する場を」
****
鉄拳が、頬にめり込んだ。
「お、おいジェナ!?」
更に、もう一人別の相手にもう一発。
二人は倒されることもなく、歯を食いしばり踏ん張って、その場に耐えている。
「一体どうしたってんだよ!?ダークさんたち殴るなんてよ!?」
一人状況の飲み込めないラグナが割って入ろうとする。
しかしその肩はニルギースに抑えられる。そして、セラが彼に知らせる。
「……いいの。必要なことだから」
「はあっ?」
周囲には、アムドライバーたちしかいない。
ジェナスの頼みで、シンたちMSパイロット勢はアラートを既に後にし、人払いがされていた。
肩を震わせた彼はようやく、言葉を搾り出す。
「ダークさん……あなたたちは……」
「……ああ。憶えてるよ。あのオレンジの機体。全部、憶えてる」
もう一発。鈍い音に、セラもラグナも顔を顰めた。
「話を」
「……ああ。どこから話そうか。お前達に回収されたところからでいいか」
ダークは切り出して、壁にもたれかかる。
「あの戦闘で墜とされて……お前達に回収されて。プラントか?送られて、薬物除去の治療を受けた」
それと同時に、催眠療法を使って記憶の復元も試みられ。
果たしてそれは成功した。
記憶が戻った──その言葉を聞いたニルギースの肩が、ぴくりと動く。
「けどな……それまでやってきたことを忘れることができるほど、都合よくはなかったんだな、これが」
気がつけば、ベッドに寝かされていたことも。
薬と刷り込みによって、戦わされていたことも。
もちろん自分たちが仲間たちと戦い、立ち塞がった者を殺めたことも。
何ひとつ忘れることなく、全て記憶のうちに残っていた。
「……それで、どうするつもりなんです」
セラの問いに、ダークは俯いた。考えるような仕草で。
「……俺達は、アムドライバーとしてやってはいけないことをやってしまった。そして、お前達も」
「俺達が……?」
「わかってないわけじゃねえだろ。お前達自身はやってなくとも、既に俺たちもお前達も、人の死を見過ごしてるんだ」
MS同士の戦いでの犠牲。
それからけっして目を逸らしていたわけではないが、人間同士の戦闘。
殺めては殺められ。その繰り返しを戦いの中、ジェナスたちも見てきている。
命のやりとりをしている仲間達に殺すななどと、言えるわけもない。
自然、見過ごさざるを得なかった。また、慣れてきてしまっていた。
その数は元の世界の戦争……バイザーバグが主力兵器であったそれとは桁が違う。
「それは……」
「別に、それを引き合いに出してチャラにしようってわけじゃない。だがな、そう思って色々考えたんだよ」
自分たちがこの世界に、この世界でやってきたこと。
これからこの世界のために、やれることが何であるかを。
「本来、俺達はこの世界にはいない人間だ……。そんな俺達がこんなにも割り込んじまってる」
「ダークさん」
「だったらきっちり最後まで、面倒見るのが筋じゃないか、ってな」
この世界に生きるピープルたちのため。
異なる世界の住人でありながらこの世界の戦乱に加わった者として最後まで見届け、
ピープル達の暮らす世界を少しでも本来の道に戻さねばならないのではないか。
アムドライバーとは、ピープルのために戦うものなのだから。
「それで、あの艦に?」
「ああ」
ガン・ザルディの更なる暴走を止めるために。
自分たちはかつて彼のした行為を知っている。そして、その本質は変わっていなかった。
更なる取り返しのつかない犠牲が出る前に、彼を止めなくてはならない。迷惑をかけた分は、取り返す。
「それが、俺達なりのこの世界への……落とし前だ」
ダークの言葉に、タフトも深々と頷いた。
****
「意外だな。反対するかと思ったんだが」
ラクスとの通信を終えたカガリが、言葉を投げた。
既に実権はなく、彼女の相談役としての役目のみを全うする男は彼女の言葉に微笑む。
「……そんなことはないさ。オーブにとってマイナスでなけりゃ、反対はしないヨ」
ウナトの死後、彼がロゴスであった責任をとり(対外的には「とらされる」形で)、
息子であるユウナは閣僚を辞任していた。
それは彼自身がカガリに申し出たことであり、カガリはそれを受け入れ彼を罷免した。
今の彼はカガリから情勢の相談を受け、アドバイスをする程度の立場でしかない。
「しかし、あの歌姫もよくやるもんだね。前回は艦隊を率いて、今回は……」
オーブにおいて、現プラント政権の糾弾とともに臨時評議会の樹立宣言を行うつもりであるなど。
親オーブ政権が生まれることは望むところであるし(無論彼女たちがプラントを取り返すことが前提だ)、
再三再四返事を求めてくるあの巨大砲を使った恫喝を跳ね除ける口実になるから、こちらとしては良いのだが。
地球と、宇宙。プラントの内と外を彼女は、纏めようとしている。
「……戦争になるよ、カガリ」
「ああ……わかっているさ」
そうした場合地表への直接攻撃を行った現政権の性格からして、衝突は避けられまい。
「ま、いつまでもあんな物騒なもの向けられてちゃ、交渉もおちおちできないしね」
近く、開戦するだろう。決戦の場は、宇宙。
地球に向けられた脅威の排除を、その名目として。
あと二話インターバルで、最終決戦に入ってく予定です。
今回色々つっこみどころがあるような気がするのは自覚してます(汗)
乙です!!
カガリとユウナ、久々の登場ですな
色々と混乱があったが、なんとか立ち直った様で何より
GJ!!そろそろラストバトルか……。
個人的にはネオの記憶が戻るか否かが気になる。
保守!
タフトってかっこいいよなー
ここのレイは「俺、参上!」って言いそうだ
アム種 第八十九話 ジャンク・バトル
カメラのフラッシュ舞う会見場に、護衛のSPに囲まれ、二人の少女が登っていた。
その後方には一般人レベルなら誰でも知っているであろう、世界各国の外相・首脳レベルの
議員達が並んでいる。
『──以上がプラントに起こったすべての真実であり、許されざる事実であります』
結った髪に、東洋の羽織を模したデザインの服装。
ピンク色の髪の少女は、張りのある声でざわめきと記者たちの服の擦れる
衣擦れの音に満ちた部屋に宣言する。
『民意なき政権、血によって成った政変。それらが我が父、クラインの名のもとに行われたことは
真に遺憾であり、到底看過できるものではありません。プラントの国民として、また
政変によって命を奪われた、ギルバート・デュランダル前議長の薫陶を受けたものとして』
彼女の言葉に重なり、全世界の電波にはプラント最高評議会で行われた虐殺劇が載せられる。
民を煽動している、プロパガンダであることはやっている本人が一番よく分かっていた。
このようなやり方は、あまり好きではない。
『よって、私。いえ、我々はプラント現政権、ガン・ザルディ氏による政権を認めません。
同時に、氏による政権の即刻退陣と世界各国へのデスティニープラン参加要求の撤回を、ここに要求いたします』
だが、世界中に知ってもらわねばならないのだ。
プラントで行われた事実を。
あの国が今、たった一人の独裁によって支配されているということを。
彼の、危険性を。
『オーブ代表、カガリ・ユラ・アスハです。私もまた、先程のラクス・クライン氏の発言に賛同致します』
プラントの……いや。ガン・ザルディの要求は、ふたつにひとつ。
デスティニー・プランに従いプラントの指導下に入るか、あるいは撃たれるか。
彼一人に牛耳られるプラント傘下に入るということは、彼を唯一の神とするも同義である。
絶対的な独裁の指導者とは、その被支配者にとって、神に等しい。
だが、たった一人に全ての悪を押し付けるというのは、気分のいいものではなかった。
それでも、プラント国民に罪はないのだ。
地表への無警告のビーム攻撃や、理不尽な要求。それらに、プラント国民は関与していないのだから。
彼らに憎しみの矛先が行ってはいけない。
ラクス、カガリに続き、世界各国の首脳達の演説が続いていく。
自分たちは間違っていない。正しい。心で己に言い聞かせながらも、二人は。
正義。解放。自由。……そして、平和。
首脳達の吐く言葉の端々と、自分たちの行っている行為に空々しさを感じ、
全幅の信頼を持つことが出来なかった。
****
「……で、アメノミハシラってどんなとこなんだよ」
CDショップのガラスウインドウに寄りかかりながら、ジェナスはふとシンに訊ねた。
「オーブの宇宙ステーションだよ。つっても、行くのはあくまでその『宙域』で、寄港はしないみたいだけど」
シンのほうも、BGMとして流れる流行歌をぼんやりと耳で追い、応える。
あと二日の後にはここコペルニクスを出航し、オーブ軍を主体とした艦隊と合流する。
今日はその前に二人に与えられた最後の休暇。
にして、ちょっとした護衛任務だった。
「……」
その対象たる少女は、先程耳に当てたばかりの試聴機のヘッドフォンを、気のない様子で頭から外す。
ウイッグと伊達眼鏡で変装したミーアは、待っている二人の姿を認め力なく笑った。
このところの軍艦暮らしは、民間人にはいささか窮屈で疲れるだろう。
そういったタリアの配慮から、二人にミーアを連れて行くよう任務が言い渡されたのだが、
彼女もやはり彼ら同様、この自由時間をあまり楽しめていないようだった。
仕方のないことだろう。
この二週間弱ほどの間に、色々なことがありすぎた。
暗殺部隊に狙われ、命からがら助けに来た部隊の軍艦に逃げ込み。
MSの追撃をかいくぐりこの地にたどりつき、こうして目立たない生活を余儀なくされる。
彼女を見出したデュランダルは既にこの世の人ではなく、故郷であるプラントに帰る事も
今の状況では叶わない。
民間人、一般人には些か酷である。
買い物だといわれて、心から楽しめるわけがない。
「……どうする、これから」
「どうするもこうするも、土地勘もなければ時間も半日しかないしなぁ」
それでもラグナやルナマリアからはずるいと口を尖らされたんだけれど。
今頃二人はそれぞれ、慣れない宇宙でガンシンガーを扱う訓練と、
デスティニーインパルスの機動性を使いこなすための特訓中である。
キラとアスラン、ニルギースによる監督のもと。
「なぁ」
「ん?」
「ここは……平和だな」
地上が攻撃を受け、あれほどの被害を受けたというのに。
多少時間は経過しているとはいっても、市民達はモールに繰り出し、楽しそうに過ごしている。
「そう、だな」
結局は、対岸の火事ということか。
自分に被害が及ばないことについて、人はいくらでも鈍くなれるものなのだ。
「ほんと、平和ってなんなんだろうな……?」
シンの呟きは、店内を満たすBGMの安っぽい愛の言葉を連呼する歌手の声に紛れていった。
ふと窓の外に目を移したジェナスは、歩道の街路樹をつらつらと眺めていく。
「……あ?」
その中の一本、葉の数も、枝も少ない貧弱なものに、目が留まる。
そこには、一羽の鳥がとまっていて。
ジェナスと目を合わせ──明らかに『笑った』。
「ジェナス?」
「……シン。帰るぞ」
その鳥は、ジェナスにとってけっして、見覚えのないものではない。
怪訝そうなシンを急かし、ミーアを呼び。
ジェナスは表に止めたジープへ向かった。
走り出した彼らの車のあとを、それはずっと追っていた。
****
テーブルの上には、酒のグラスが二つあった。
元来あまり飲むほうではないし、艦内の風紀も考えて艦長職に就いてからは、殆ど口にしていない。
だからグラスの中身も、酒の風味が損なわれない程度に薄めに割ってある。
女同士の会話。弾まぬそれと同じように、グラスの液体も殆ど減っていない。
「ムゥ・ラ・フラガ大佐。彼のご高名は私も聞いておりますわ」
「……」
タリアは俯くマリューに、意をけっして話しかけた。
この話が、少しでも彼女の気を楽にしてくれればいいと思う。
彼女をもてなすに当たって、コーヒーは避けた。故人を偲ばせるようなものは、今はよくない。
「……二年前」
「……」
「二年前……戦死したはずなんです……艦を守って」
ぽつぽつと、マリューがこぼしていく。
「なのに……どうして」
死んだ男は、彼女を守り死んだはずだった。
生きていた男は、彼女に銃を向けた。
タリアは何も言わず、彼女の背中を軽く叩いた。
この場に、部下はいない。
吐き出せるものならば、吐き出してしまったほうがいい。
****
自由都市として栄えるコペルニクスとて、当然汚れた部分、負の部分は存在する。
ここはそれを視覚的にもっともわかりやすく表現しているであろう、
民間人はおろか役人も忌み嫌い、蔑むジャンクと廃棄物の山ばかりの区画。
男はそこで、待っていた。
「……来たか」
飛来する一羽の梟を、視界に捉える。
そしてその先導を受けこちらに向かってくる、蒼い影を。
小高いジャンクの山に腰を下ろした男の前で、それは止まった。
「待っていたぞ、ジェナス・ディラ」
「やっぱり……生きてたか」
肩に寄せる大鎚とともに、立ち上がる。
「貴様と完全に決着をつけるまでは……けっして逃さん!!」
それだけが、彼の望み。彼の目的。
「……わかった。けど、これで最後だ」
向けられた大鎚に応えるように、ジェナスもまたアブソリュートソードを構える。
「それでいい」
力と力のぶつかりあい。
それを予感し、ヘルメットに隠された男の顔は歪んだ笑みに満ちていることだろう。
本来なら、このようなことにつきあっている場合ではないのだ。
だが、逃れられないのなら。
「これで最後にするぞ……ディグラーズ」
ディグ最終戦。
そしてミーア死亡フラグ回避。
こんなとこです。
乙です、次回はついに先生とのバトルですな
wktkしながら待ってます!
>>696GJ!!
>死んだ男は、彼女を守り死んだはずだった。
生きていた男は、彼女に銃を向けた。
さらに、虎さんを殺した事も知ってしまう悪寒が・・・。
俺達の月曜日!!
保守
保守
保守
続き期待保守
>その中の一本、葉の数も、枝も少ない貧弱なものに、目が留まる。
>そこには、一羽の鳥がとまっていて。ジェナスと目を合わせ──明らかに『笑った』。
>「待っていたぞ、ジェナス・ディラ」
・・・・・このシチュが無印種の「キラ」のオマージュなのに今更気付いたw
保守
すいません、134です。
今週末まで私事で立て込んでおりまして、少々次の投下には
時間が空くと思います。
保守
保守
保守
ほっしゅ
保守
職人さん復帰祈願保守
俺達の月曜日!!
アム種 第九十話 ファイティング・タイム
「キラ?どうした?」
ルナマリアもラグナも、大分まともな動きになってきた。
訓練が一段落ついたところで、アスランはストライクフリーダムが先程から
ぼんやりと半ば漂うような形で停止しているのに気付く。
機体のメインカメラは、自分たちの艦のあるドック、その向こうの
コペルニクスそのものに向けられているようであった。
「キラ?」
『あ……ああ。ごめん。まかせっきりにしちゃって』
「いや、それはいいんだが……」
やはり、前回の戦闘のことが尾を引いているのだろうか。
死んだはずの、ムウ・ラ・フラガが自分たちに襲い掛かってきたこと。
そのことに思い悩んでいるのだろう。
(やっぱり……伝えるべきじゃないな)
レイから地上で聞いたことは、嘘ではなかった。
ストライクフリーダムの通信記録にも残っていたし、
なによりキラやマリューの前に彼は現れたのだから。
戻ってきたレイと二人で話し合い、バルドフェルドの死の一件については彼らには話してはいない。
ただでさえ衝撃を受けているのだ、報せるのは賢明な判断ではない。
『アスラン?』
「……ん?シンか?早かったな、もう戻ったのか?」
ミネルバから──もっと正確に言えば、デスティニーからの通信。
まだ帰還を命じられた時間には随分とあるはずだが。
『いえ、ジェナスのやつが戻るぞって』
「ジェナスが?」
『はい、それでアムジャケット着込むなりどっか出かけちゃって』
一応、報告しておいたほうがいいだろうと、デスティニーから繋いだわけだ。
「……」
アムジャケットを着ていったというのが、アスランとしてもひっかかる。
通信を切り替えて、艦長たちがこの時間なら集まっているであろう、エターナルのブリッジに呼びかける。
「エターナル。こちらインフィニットジャスティス、聞こえるかイザーク」
『どうした、アスラン』
「シンに発進許可を。すぐじゃなくていい、なにかあったときに」
『了解した。それと、お前達はそろそろ帰還しろ』
「?」
『演習らしい。“ガン・ザルディの”ザフト艦隊が近づいている』
****
場所が、悪かった。
雑然としたジャンクの山は足場が悪くまた、まだ生きている可燃性の燃料を積んだ機材やMSの残骸なども数多い。
下手にフルパワーを出せば、誘爆の恐れもある。
この月面都市そのものに被害が及ぶ可能性もあるのだ。
もちろん相手はそのようなこと、気にするような人間ではない。
周囲に気を配り、力をセーブして戦わねばならないジェナスは当然のごとく追い込まれていく。
「どうした!!全力でこい、ジェナス・ディラ!!貴様の力、そんなものではあるまいぃっ!!」
「ぐあっ……!!」
ジャンクの山をいくつも蹴散らし、崩壊させてジェナスは壁面へとつっこむ。
アムジャケットを身に着けているとはいえ、激痛に息が詰まる。
(くそ……せめて、もう少し自由に戦える場所なら……!!)
身を起こしたところに、唸りを上げたハンマーが回転し、飛んでくる。
転がるようにして避け飛びのいた彼のもといた場所は、ハンマーの破壊力に粉砕される。
「温い!!この程度かァッ!!」
「くそ……っ」
距離をとりつつ、考える。考えつつ、避ける。
そして目に入るのは、月面都市の最外周、その外壁に位置する壁面の、ひとつのエア・ロック。
──あれだ。あれしかない。
その様子を認めたジェナスは即座に行動に移す。
大振りのスイングを身を屈めてかわし、ディグラーズの背後に回る。
「ぬ!?」
「もっと……迷惑にならないとこにいくぞ!!」
抱きついて、がっちりとその身体を押さえ込む。
「はあああああっ!!」
全力で向かう先は、件のエアロック。
けっしてスピードも、両腕にかける力も下げることなく、激突せんばかりの勢いで二人壁面に飛び込んでいく。
否、激突するのが目的なのだ。
「ぬうううううっ!?」
弾丸と化した二人の身体は、鋼鉄製のエアロックの扉を破り、貫いて。
宇宙空間へと飛び出していく。
「ジェナス、貴様!!」
そう、これこそがジェナスの狙い。
これで、対等な条件で戦うことができる。
これで──……。
「「!?」」
だが、安心は束の間でしかなかった。
戦い続けることは、二人には許されない。
一筋のビームの光がジェナスとディグラーズ、相対する二人の間を切り裂くように飛来し。
無粋にも、一騎討ちに割り込んでくる。
「MS!?こんなところで!?」
ビームを放ったのは、数機のザクを付き従えた、三機の黒いMSの一機だった。
****
「ガングリッド・ディグラーズだな?こちらザフト軍『フェイス』所属、ヒルダ・ハーケン。脱走兵討伐のため、貴君を支援する」
ヘルベルトとマーズ。
二人の部下、そして護衛のザクの部隊を従えたヒルダは、ほくそえんでいた。
新型MS──“ドム”の完熟飛行を行うタイミングは、最高だったというわけだ。
なんと格好の状況に出くわしたことか。
生憎とギガランチャーに実弾は入っておらずビームのみしか使えないが、この戦力差なら十分だろう。
『断る。邪魔をするな』
「……なに?」
もともとは、こちらについたムウ・ラ・フラガ──この際、ムウが本人かどうかは関係ない──と、同じ部隊にいたと聞く。
だから、ヒルダは当然ディグラーズのことも抱きこめると思っていた。
しかし彼女のその認識が甘かったことを教えるがごとく、男の声は敵意と不快感に満ち溢れていた。
『失せろと言っている、馬鹿が』
「な……目的が同じならば手を組むのが道理というものだろう?」
『知るか。これを俺の戦いだ』
ディグラーズはジェナスとの戦いを中断し、ハンマーの先端がこちらに向けられていた。
手を出してみろ、ただでは済まない。
それだけで、言外に告げていた。
『どうする、ヒルダ』
『取り込めるなら、取り込んだほうがいいんだがな』
マーズやヘルベルトが、口々に問う。
付き従う立場の自分たちにはどうなろうと責任が降りかからないからといって、いい気なものだ。
それを負うのは隊長の任を任されている、自分なのだから。
「……かまわないさ、二人まとめてやっちまうよ」
味方にならないのならば、敵。
どの道自分たちに賛同しない者を野放しにはしておけない。
ならば今のうちに叩き潰しておくというのが道理というもの。
その極端な考えを、ヒルダは疑わなかった。
彼女の指示に従い、MS隊の銃口が、二つの小さな反応へと一斉に向く。
的が小さい分、やっかいではあるが。
ここで、叩き落す。
投下が遅くなってもうしわけありません。
まだ少々たてこんでおりまして、もうしばらくスローペースが続くと思います。
お詫びにもなりませんが二話ごとにまとめたタイトルの三十九話以降を。
第三十九話(77と78)ステラ
第四十話(79と80)変革の天空(そら)
第四十一話(81と82)移る御旗
第四十二話(83と84)反撃の歌
第四十三話(85と86)亡霊と正義と
第四十四話(87と88)カウント・ダウン
第四十五話(89と90)マッチ・オブ・ディグラーズ(前編)
大体、55話以内に納めるつもりでやっています。では。
>>719 GJ!!ドム三人組が逆に返り射ちに遭いそうw
あと、気にせずマイペースで続けて下さい
乙!
先生とジェナの最終決戦なんて言うトテツモナイものを書こうって言うんだからそりゃプレッシャーも
大変なもんでしょうなぁ。
あ
乙であります!!
>>719 乙です、スローペースでも構いませんよ。
wktkしながらお待ちしております・・・。
保守
保守
ホシュ!
≡≡≡≡≡≡☆ Trrrrrrrr!
さて、レイとシーンに続きシンもライダーになったわけだが。
729 :
通常の名無しさんの3倍:2007/04/01(日) 17:34:15 ID:GBLDQo76
モモタロス=レイは綺麗に忘れてた(とりあえずクルーゼは今確認したところだけど)
シンは・・・次のフォームのヒト(つかイマジン)か。
どうなるか楽しみだ
声はシンだが、性格と能力はキラみたいだぞ>新ライダー
俺達の月曜日!
保守
保守
保守!
保守
続き期待保守
保守
俺たちの月曜日っ!
ほっしゅ
保守
職人さん復帰祈願保守
保守
保守
保守
保守
俺たちの月曜日
職人さん復帰まだかな?
ようやく見始めたんだが、3話でいきなりザムザザーが出てきて吹いた
保守
保守
職人さん、多忙なのかな・・・?
保守
保守
種運命のDVD、中古で安くなってたんで買って来た(まだ見てないけど)
ふと原作版のユウナの性格思い出して、こっち版とのギャップにちと混乱。
しばらく見てなかった上に、こっちのほうのキャラが頭に染み付いてたもんで(汗)
37〜39話収録だけど、ここらは普通に面白かったと思う。「傑作」とは絶対言わないけどね(笑)
756 :
755:2007/04/22(日) 17:37:04 ID:???
って40話までだよ入ってるの(汗)
俺たちのっ月曜日!
getride!
職人さんが心配だ・・・
保守
保守
保守
保守
保守
ご無沙汰しています、134です。
なんとか落ち着いた&再開の目処が立ちましたので、GW明けからの
再開を目指して執筆しています。
・・・最終的にとんでもなく風呂敷が広がることになっちゃいそうなので先に謝っておきますね。
>>764 復活おめでとうございます
wktkしながら、待ってます
がんばってください
俺達の月曜日!
祝職人さん復帰保守
保守!
GET RIDE!!
保守
ホシュ
≡≡≡≡≡☆ Trrrrrr!
俺達の月曜日!
アム種 第九十一話 求む力の先
アムジャケットに包まれたジェナスの肉体、その周囲をビームの雨が掠めていく。
いくらゼアムの力があるとはいえ、全開でない今直撃を受ければたまったものではない。
もちろん、己が手に余る最大出力を発揮する気もない。
MSすら撃ち抜く光の弾丸は当たりさえすれば、いとも容易くジェナスの身体を飲み込み、燃やし尽くしていくことだろう。
「やめろ、ディグラーズ!!戦ってる場合じゃないだろ!!」
「知るか!!俺は貴様に勝ぁつ!!ただそれだけだ!!……ぬ!?」
その標的は無論、ジェナスだけに限定されない。
彼に攻撃を加えるディグラーズをもが、その対象。
そんな一騎打ちなど望むべくもない状況にありながら、ディグラーズはなおもジェナスに固執する。
『ほらほら、逝っちまいな!!我々の正しい世界のために!!』
「くそ……!!こいつら!!」
大人と子供……いや、象と鼠の喧嘩である。MSとではサイズが違う。
しかもこちらは一人、あちらは多数。バイザーも生憎と持ってきていない。
そこにディグラーズの攻撃が加わっては、たまったものではない。
「くそ……!!」
『ジェナス!!』
ディグラーズ共々、ザクに囲まれる。
彼らの周囲を包囲した機体の頭が、胴体が、四肢が撃ち抜かれ、
仲間の声がヘルメットのスピーカーに拾われる。
「シン!!みんな!!」
シンのデスティニーと、二機のデスティニーインパルス。ルナとレイの機体が、
ビームライフルで次々とザクを無力化、もしくは撃墜していく。
『はやく交戦禁止宙域まで戻れ!!ここじゃあ……!!』
「ダメだ!!MS隊はともかく……ディグラーズのやつはそんなこと気にしやしない!!そのまま戦闘を持ち込むだけだ!!」
ディグラーズの左鉄拳をかわすジェナス。
デスティニーが放った長射程ビーム砲が、ザクを遠距離から撃ち貫く。
『だったらどうすりゃいいんだよっ!?』
「MSの相手を頼む!!奴とは俺が!!」
『わかった!!……レイ!!』
『ああ、使え、ジェナス!!』
シンの合図に合わせ、レイのデスティニーインパルスが後ろ腰からマウントされていた流線型の機体を切り離す。
本来のライフル用マウントに無理矢理備え付けていたのだろう、機体と機体を繋げていたワイヤーが棚引く。
「助かる!!……やっちゃるぜ!!」
ネオボードバイザー・ソードダンサー。
分離後加速した機体は変形し、ジェナスはそれを身に纏う。
装甲に覆われた四肢と、蒼い切っ先の大剣が直射する太陽の光に輝いた。
****
『ルナマリア、無駄弾を撃つなよ。我々の機体は燃費が悪いんだ』
「わかってるわよ!!あたしだって「赤」なんだから!!」
デスティニーインパルスは本来欠陥品だ。
あまりにその装備であるデスティニーシルエットがバッテリーを食うが故、
とても実戦に耐え得る代物ではなかったのである。
故にデュートリオンと核動力のハイブリッドエンジンを搭載することでようやく、
デスティニーという完成形が生まれたわけだ。
そのことは運用上の留意点という形で、ルナマリアも機体を運んできたエターナルの整備スタッフたちから聞いていた。
「母艦、一隻確認!!」
今彼女とレイの乗っている機体は、そんな廃棄寸前の扱いを受けていた機体を回収し、
ミラージュコロイド発生装置を本来搭載していた部分に大容量のバッテリーとエンジンを追加で積み込んで
無理やりに燃費を稼いでいるという強引なものである。
それでも大型高出力の推進器と、高エネルギーを必要とする武装群のためにお世辞にも稼働時間は長いとはいえないが。
「このずんぐりむっくり!!どきなさいよ!!」
月の影から姿を見せた母艦を護るように、三機の見慣れぬMS──恐らく新型だろう──が、
こちらに矛先を変え向かってくる。
三機纏まってつっこんでくる一つ目のMSたちに、ルナマリアはビームライフルを向けた。
「!?ビームをはじく!?防ぐんじゃなくて!?」
だが、正確に中心を狙ったそれは、MSたちを包む朱のヴェールのようなものに阻まれ拡散する。
「デストロイじゃあるまいし、MSになんてものをっ……!!」
『ルナ!!接近戦だ!!二機で同時につっこむぞ!!』
「了解!!」
アロンダイトを抜いたデスティニーが先行し、ルナマリアもまた右のエクスカリバーを手にシンのあとを追う。
レイが墜としたザクに代わり、母艦から新たに二機発進してきていた。
****
「何故そんなに力を求める!!力だけあって一体、何になる!?」
ソードダンサーの出力が加わってなお、鍔迫り合いは互角。
「アムドライバーの力は、みんなを守るためのものだろう!!目的あっての力じゃないか!!」
「力こそ俺の目的よ!!頂点に立つ、それ以外の目的が生きる上であるものか!!」
「ぐ……ディグラーズ!!」
大剣は、威力は高いものの大振りにならざるをえない。
横一文字に振り抜いた一撃は、ディグラーズに易々とかわされる。
「強い者に勝ち、高みに上る!!それ以上に力を求めるための理由が人間に、生物にあるか!!」
「ふざけるな!!人間は他の目的のためにだって強くなれる!!お前の尺度は本能だけしか見ていない!!」
「本能に従ってこその動物というものだろうがぁっ!!」
「動物と人間はぁ……っ、違うっ!!人は本能を抑えられる!!」
本能を抑えられるから、人間というものは文化を、社会というものを創り出しその中に生きることができる。
理性という共存を育む要素があるからこそ。
肩の小型ソードを兼ねたシールドで、鉄拳を受け止める。
胸元に叩きつけかけたエクスカリバーの柄もまた、相手の掌に阻まれる。
「頂点は常にひとつ!!そこに上るための本能を縛る理性など、糞の役にも立たんわっ!!」
「勝手を言うなっ!!頂点に立って、それから一体どうなるってんだ!!」
「そんな先のことなど知るか!!言っただろうが、頂点、それこそが目的なのだと!!」
鳩尾に、ディグラーズの蹴りが吸い込まれる。
激痛と嘔吐感を堪え、ジェナスはその蹴り足を掴み回転、放り投げた。
慣性にしたがって遠ざかる姿は近くのデブリをハンマーで殴打し、その勢いを殺す。
「俺は全てを超える……そして最強を証明する……!!」
「まだそんなことを……っ」
「貴様の、ゼアム!!アムエネルギーも超えてやるわあっ!!」
「!?」
ゼアムを、超える?
一瞬の疑問が、反応を間に合わなくする。
猛然と突進するディグラーズの鉄拳がヘルメットへと叩き込まれ、脳天に星が舞った。
『ジェナス!!』
シンの叫びが、遠い。
ふらつく頭で見据えた黒いアムジャケットが二重に分身しているように、ぶれて見えた。
「ジェナス・ディラ!!貴様や俺をこの世界に飛ばしたアムエネルギー……その最高の力、ゼアムの持ち主たる
貴様こそ、最強を決める相手に相応しい!!」
「っ……ぐ……」
世界までもが、ミックスされていく。
がんがんと頭が痛み、朦朧とする視界の中にジェナスはディグラーズの声を聞く。
ゼアムを超える。何を言っている。
ただのエネルギーではないか、アムエネルギーも、ゼアムも。
そんなものを超えるなんて論理、どうかしている。
自分自身、自分の考えが纏まらないことを自覚しつつ、
とめどなくディグラーズへの反論がジェナスの中で浮かんでは消えていく。
「ゼアムも!!貴様も!!俺が倒して最強を証明するのだぁっ!!」
大変お待たせしました。次回でディグラーズ編終了です。
週一ペースは頑張って戻そう。そして維持しよう・・・。
>>778 乙!
ディグラーズ………最後にはどうなるんだ……
保守
保守
保守
俺達の月曜日!
保守
保守
保守
俺達の月曜日!!
再開祈願保守
保守
保守
≡≡≡≡≡☆ ミンナノ 月曜日ホシュ!
保守
保守
職人さん来ないかなあ・・・
保守
hoshu
職人さん復帰祈願
800GET RIDE!!
保守
保守
俺達の月曜日!!
職人さん復帰祈願保守!
保守
保守
俺達の月曜日!
職人さん、このスレ見ていればいいなあ・・・。
保守
ホシュ!!
職人さん来ないね(´・ω・`)
保守だけなのもあれなので
なんとなくインパルスとクロスバイザーって似てると思った件
インパルス本体…テュポーン
各シルエット…エキドナ(合体パーツ部分)
Sフライヤー…エキドナ(バイク部分)
…無理あり過ぎだね、ごめんね(´・ω・`)
俺達の月曜日!!
>>811 そういやなんとなくw
,
ホケー ,/ヽ
ヽヽ , / ヽ
△ 彡/ノノ彡 ,/ ヽ
;´_ゝ` 彡 ゚ヮ゚ノミ / ヽ
(つ∨ (つ@ ヽ
__ | | │ ヽ
|ゼアム| (_ )_) ヽ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ヽ
/⌒\/⌒\/⌒\/⌒\|彡~゚ ゜~ ~。゜ ~ ~ ~ ~~ ~ ~~ ~ ~~ ~~ ~~
⌒\/⌒\/⌒\/⌒\/⌒\彡 〜 〜〜 三途の川 〜〜 〜 〜
ト「……何してんですか…」
S「おわびっくりしたぁ!ミラコロで後ろに立つんじゃねぇよトール!…見りゃわかるだろ?釣りだよ釣り」
ト「いや、ていうか・・・時事ネタかよっていうか場所的に問題が…三途の川ってアンタ…」
S「だって桃源郷の釣り場とか予約が半年先まで埋まってるしな。ここしか場所がねぇんだよ」
ト「…それなら仕方…なくねぇよ!(スパーン!) とりあえず保守してくれてた皆さんへの言い訳とかいろいろあるだろ!この空白期間何してたとか!」
S「釣り」
ト(ゲシッズガバギドゴッ ボシャーン!)
S「…(ズタボロ)…冗談冗談…んーと…話せば長いからな…」
ト「で、何があったんスか?」
S「一言で言うならば、だな…」
ト「言ってみてください。場合によっちゃあ…(パキペキ)」
S「怖いぞ、トール…忙しかったのもあるが、ついでというか何というか、PCがぶっ壊れちまってなあ。ZEAM製だって聞いてたから信用してたんだが」
ト「ゼアムって壊れるんだ!」
S「まあそこはそれ、夜中のうちにジョイの所に置いておいたらファインに直してくれたが」
ト「ゼアムって直せるんだ!ていうかどう考えてもパチモンでしょうが!」
S「で、まあそれやこれやで戦意喪失したやら何やらで…こうして釣りとかしてるわけだよ。わかった?」
ト「言い訳としては不十分な感じもしますが…ていうか釣りって…で?再開すんの?ネタトークショー?」
S「随分空白期間作っちまったからな…需要があればやるし、逆も然り、ってとこだな」
ト「まあそれはスレの皆さんの意見を聞いてから、って感じですか」
S「『アム種』も佳境に入ってる今、出にくいってのも正直あったんだが、な」
ト「そういえばSCENEさん、アム種にもセリフ付きで出ましたねぇ」
S「俺は今やあの世とこの世を又にかける男だからな。キッチリ埋葬された分は働くぜ」
ト「あのシン君を諭すとは…俺もビックリしましたよ」
S「ああいう形で出してくれた作者様に感謝感激雨あられ、ってヤツだ。古い言い回しだがな」
S「そんなワケで!」
ト「どういうワケだよ」
S「ネタキャラハンとしてのSCENEさん、本名シーン・ピアース!ここに健在だ!死んでるけど!」
ト「今やすっかりツッコミ役、トール・ケーニヒも忘れないでくださいねー。死んでるけど!」
S「マジレス、ネタレスなんでもかかって来やがれ!まとめてクロスアタック!」
ト「斬ってどうする、斬って」
●この漫才とも呼べないボケとツッコミの応酬は、コナミとバンダイの共同提供でお送りしました●
S「まあ実際こんな共同提供なんてありえないんだけどな」
ト「夢がブチ壊しじゃねーか!」
ちょ、何やってんのシーン・ピアースwwwww
>>814 久しぶり、そして乙!
後はアム種の作者さんの復帰を願うばかり・・・。
シーンだっ、ゼアムも壊すシーンが釣りにきたっ
釣られてみたいんでトークしてください
お題はステラあたり
シン「あいつ……殺っていい?」
シーン「まあ待ちなよ。今度、俺がさりげなく聞いておくからさ」
>>818 レイ「お前年上に向かって馬鹿はないだろうが!!」
シン「だって馬鹿は馬鹿だよ。そうだろ!!」
アスランは30分前で実況役か(笑)
俺達の月曜日!!
保守
保守
俺達の月曜日!
アム種の作者さん・・・(´・ω・`)
リアルが忙しいのか、それとも最後の展開が思いつかないのか…
申し訳ありません、果てしなくご無沙汰しております。
ここ二ヶ月ほどリアルに忙しかったのとそのおかげで体調を崩しておりました。
必ず完結はさせます。これだけ長い期間を空けてしまい恐縮することしきりですが・・・。
ひとまず、復活しましたので92話を。
アム種 第九十二話 ラスト・ディグラーズ
「ディグラーズ……お前……何を知ってる……!?」
シェイクされた脳が捉える、極彩色に歪んだ視界の向こうに敵は居る。
強大な敵──ディグラーズが。
ソードダンサーのバーニアでの姿勢制御も空しく荒涼とした月面へと着地せざるを得なかったジェナスへと
彼は、一歩一歩、緩やかに近付いてくる。
『フン……ジェナスよ。貴様こそ、まだ気付かんのか?それほどにゼアムを行使していながら』
「何……?」
『貴様も所詮、その程度!!やはり最強に相応しいは俺しかおらぬっ!!』
そして飛来するハンマー。
反応しきれぬ肉体を身に纏ったバイザーもろともに、岩盤へと釘付けにする。
首から右脇にかけてハンマーが背後の岩へと硬くめりこんだために、身動きひとつジェナスはとることができなかった。
『あのとき……爆発に飲み込まれ、深淵の暗闇に落ちながら俺は見たのだ!!アムエネルギー……この忌々しい力の本質を』
「なん、だと……っ」
『……考えてもみろ。ただのエネルギーふぜいが人間を。モノを異なる世界に送り込むことなど、可能だと思うか』
一歩、一歩。
ディグラーズは語りながら歩み寄る。
ジェナスの焦りに反して、ひどくゆっくりと。
「それじゃあやっぱり……ゼアムが、俺達をこの世界に……?」
『ああそうだ!!俺も!!貴様も!!アムエネルギー……ゼアムに弄ばれているに過ぎなかったのよ!!ゼアムのもつ、意志によってなっ!!俺は感じたっ!!』
意志持つ、エネルギー……?
一瞬の動揺に、焦りの念がジェナスの中で消える。
代わりに浮かんでくるのは、この世界にやってきてからのこと。
ユニウスセブンにおける戦闘。
開かれた戦端と、参戦を余儀なくされた自分達の戦い。
ハイネの死、彼を殺さざるをえなかった、ダークにタフト。
バルドフェルドも、オーブの軍人達も死んでいった。
「全部……全部、見られてたっていうのか……?アムエネルギーは、全て?一体、なんのために……?」
『そんなことは知るか。ゼアムとやらが何の意図をもって俺達をこの戦場に送り込んだかなど、どうでもいい』
「っが……!!」
首を掴まれ、ぎりぎりと締め上げられる。
ハンマーに囚われた身体は、一向に自由にならなかった。
****
『アスラン、いいかい?』
「……ん、ああ。どうした、キラ」
イザークからの帰還命令に従いアークエンジェルに機体を戻したアスランは、未だにコックピットにいた。
細かい調整を続けながらパイロットスーツも着替えずに、半ば待機状態でシンたちの帰還を待つ。
それはどうも、キラも同様だったようだ。
『遅いね、シンたちもジェナスも』
「ああ。だが増援は……」
『うん、わかってる』
心配なのは山々だが、中立の自由都市であるからにはこれ以上の増援を向かわせるわけにはいかない。
それはキラもアスランも、互いに承知していた。
ここまでなら遭遇戦に端を発した、ちょっとした小競り合いで済ませることができる。
しかし更に増援を向かわせるとなると、本格的な衝突に発展しかねない。
場所的にも現在の戦力的にも、それは避けねばならない。
「待つだけなのが……辛いところだな」
『本当に』
****
締め上げられ、圧迫される喉からは声ひとつ、出せはしない。
「わかるか?この屈辱が。力を手に入れるため欲したアムエネルギーに弄ばれていたのは、俺のほうだった……忌々しい!!」
ディグラーズは力任せに、拳を首へと食い込ませてくる。
時間を置いていくぶんましになりかけていた脳のダメージが酸欠により、再び視界を不明瞭なものへと戻していく。
(俺は……動いていたのか?ゼアムの意志で?ゼアムのために?)
混濁した意識は、自己に埋没し。
「貴様だってそうだ。だが、俺は違う。俺は何者にも使われん。俺はアムエネルギーを、ゼアムを超える」
ディグラーズの声も、どこか遠い。
「そして証明してやる。ゼアム如き、俺の力には及ばぬ、俺こそが最強であるとなぁっ!!」
ゼアムが、すべてをやった。
ゼアムが、やらせた。
俺に、やらせた。──いや。違う。
(違う。俺は……俺は)
だらりと垂れ下がっていた腕に、力が篭る。
右のエクスカリバーと、左のアブソリュートソードを、共に無意識下にフルドライブ、リミッター解除していた。
(俺は……っ!!)
「ぬうっ!?」
「俺はああっ!!」
語るに任せていたディグラーズの腹を、渾身の力で蹴り飛ばす。
首にかけられていた手がはずれ、メット内の酸素を肺が取り込んでいく。
「俺が戦ってきたのは、俺の意思だ!!そうするべきだ、そうしなきゃならない!!そう思ったから!!」
二刀を大地に突き刺し、両腕で力任せに自由を束縛していたハンマーを引き抜く。
今度はディグラーズが、自分のハンマーに襲われる番だった。
「ゼアムがそうさせたんじゃない!!俺は俺の意志で、この世界で戦ってきた!!他の何のせいでもない!!」
「!?」
フルゼアム・最大出力。
ソードダンサーの背に、光の翼が閃く。
「うおおおおおおっ!!!」
再び手にした二本の剣はあふれ出すゼアムの力を一文字に放ち、まるでそれぞれに光の柱のようですらあった。
「俺は……ゼアムに踊らされてなんか、いない!!」
光の不死鳥と化したジェナスは、ディグラーズに向かっていく。
身構えようとも、応戦のハンマーを投げようとも、止められるはずもない。
純正のゼアムに、アムエネルギーが届くわけがないのだ。
叫びながらもジェナスの心には、そう冷静に評する意志が内包されていた。
無駄な抵抗を、するものだと。
どれほど奴が最強を謳おうとも、超えられぬものはたしかに存在するのだから。
──果たしてそれは本当に、ジェナスの心が思い、考えたことであったのだろうか?
* * *
「あれは……!?」
『シン!!敵が退いていくぞ!!』
その光景を、戦闘を続けるシンたちも見ていた。
あちらでもその異様な光景を確認したのか、三機の重MSが撤退していく。
ジェナスの背に輝く、光の翼。白い鮮やかな色をしたそれは発色の違いこそあれ、まるで──……。
「デスティニー、みたいだ……」
その光はデスティニーに酷似し、それでいてより一層しなやかに。
羽ばたいてすらいる。
『天使みたい……』
『……敵にとってすれば、悪魔に見えているかもしれんがな』
天使。白き光の翼持つ、天使。
悪魔。敵を殲滅する、畏怖すべき悪魔。
「……白い、悪魔……?」
仲間に対して、ひどい感想ではあると思う。
だがシンはそのとき、レイとルナマリアのやりとりのせいか。
それとも率直にそう思ったのかはわからなかったが、そのようなイメージを彼の姿に抱いた。
* * *
──気がつけば、漆黒の宇宙にいた自分達の周囲はわずかな青みの混じった白い光に、埋め尽くされていた。
「……やは、りか……ジェナス……ディ、ラ……」
「!!」
そして砕けたジャケットのディグラーズが、目の前を漂う。
ひび割れたヘルメットの内から、ぎらついた右目がこちらを見ていた。
一体、何があった。わからない。
自分が何をし、どのようにして敵を打ち破ったのかがわからない。
「……俺、は……?ディグラーズ、俺は一体何を……」
「貴様も結局は……力に使われる存在……所詮は、その程度……」
「違う!!これは……」
「何が違う。どこが違う。俺は貴様になど敗れておらん。あれは貴様などではない、断じて」
白い空間が、ひび割れていく。
くもの巣のように、細かく、四方に不規則に曲がったひびを走らせて。
割れた先には、無があった。
宇宙なのか、何なのかすらもわからない。
黒い、何もない空間だけが大きく口を開け。
漂うディグラーズは、その中へと静かに吸い込まれていく。
「俺は違う!!俺は力に使われず、使う!!このようになあっ!!ゼアムになど、俺は屈さん!!」
半壊したヘルメットをディグラーズはジェナスへと投げつけ、そして消えていった。
満足げな高笑いと共に。
そんなものでダメージになどなるはずもなく、慣性のまま軽くぶつかったそれは月の弱い重力に、徐々に落ちていく。
残ったのは、それだけだった。
向こう側に見えた黒も、周囲を包んでいた白も。
いまは消えうせ、ただ月の大地が広がっている。
ディグラーズの嘲笑がただ、耳に残った。
以上です。ディグラーズ編終了です。
一応今回が今後の伏線ではあるので、なんとか完結はさせます。
不定期であっても必ず。
職人さん復活キター!
超乙です!!
ゼアムや謎の空間・・・これからの展開も楽しみにしてます!
待ってました!GJ!
ゼアムがなんかゲッター線みたいになってるのは気のせい?
>>831 GJ、あと無事で何より・・・
続きをwktkしながら待ってますよ!
まあゼアムだし
それにしてもディグラーズは勝ち逃げっぽいなあ
俺達の月曜日!
保守
保守
俺達の月曜日!
アム種 第九十三話 ギフト・フロム
──何?記憶を拒絶する?
血色の悪い顔をした男が、白衣の研究者たちに囲まれていた。
そのとき自分は、ただ横たわって。その光景をただ見ているだけだった。
──遺伝子によるものなのか、別の要因か……確かにこの固体は、予定されていた記憶では拒絶反応を示してしまい……何度やっても、です。
額に汗を浮かべる眼鏡の研究者は、滑舌も説明も聞いていて心地のいいものをしていなかった。
それでも一応の言いたいことは伝わったのか、一人高級そうなスーツに身を包んだ男は、思案する。
──やはり、自分と殆ど同じに近しい存在故かな。同属嫌悪……わからんでもない。
さして問題視する風でもなく。
あっさりと、その男は言った。
──ならばよい、別の丁度よさそうな人材データを探すとしよう。それまでは眠らせておけ。
そして彼の夢は、いつもここまで。
目覚める直前、彼は思い出し、一瞬ののちには目覚め自分の見た光景を忘れるのだ。
男の顔が、声が。
かつての上司、ロード・ジブリールのものであるということを。
自分に贈られるはずであった記憶と存在の持つ、その異名を。
* * *
「こーら。何ぼけっとしてんのよ」
オーブ宇宙ステーション・アメノミハシラ。
ミネルバ艦隊が停泊するその場所にオーブ・地球軍連合艦隊が到着したのは二時間ほど前のことだ。
双方の指揮官たちからの訓示を受け、それぞれに決戦のときを迎えるべく、けっして広大とは呼べない宇宙ステーションの中、
兵達は各々の持ち場に戻っていった。
もっとも、MSのパイロット達はといえば自機の整備さえやってしまえばすることはない。
他の部隊員たちの仕事を手伝ったり、休んだりして時間を潰している。
だからシンが非難される謂われは、同じパイロットであるルナマリアにはないのだが。
「別にいーだろ。すること終わらせてんだから」
「そうじゃないってば。そんな辛気臭い顔してんじゃない、って言ってるの」
「へ」
格納庫の一角に積まれた機材に腰掛けて、ぼうっとしていたのは事実だ。
しかしそれほど心配されるような表情をしていた憶えはシンにはない。
きょとんとしているとルナマリアはこめかみを押さえ、呆れたように大袈裟な溜息を吐いてみせる。
やれやれ、自覚なしか。さもそう言いたげに。
「なんだよぉ」
「別に。どーせジェナスのことでも考えてたんでしょ、あの子あれから部屋閉じこもっちゃってるし」
「……う」
それはまあ、図星だった。
前回の戦闘から帰還する際、一切ジェナスは口を開かず。
また艦に戻ってからも最低限食事などに姿を見せるだけで、ずっと部屋に閉じこもっている。
同室のラグナから聞いた話では、一日中なにやら考え込んでいるとのことだった。
「セラやダークさんたちからも言われてるでしょ。本人が納得するまでそっとしといてやれって」
「それはわかってるけど……」
なんだかんだで苦楽をともにしてきた仲間であり、友である。
塞いでいるというのであれば、気になっても仕方ないではないか。
「だったら、ほら」
ルナマリアはシンの反論を遮って、掌ほどの大きさの茶色い小包みを投げてよこす。
これは一体?受け取りながらもシンはルナマリアと小包みとをしげしげと交互に見比べる。
「さっき地球から届いた荷物よ。ステラからですって、メイリンがうちの艦の分をチェックしに行ったときに見つけてくれたのよ」
「ステラから!?」
「そ。だからそれ見て元気出しなさい。んじゃね」
「?……どこ行くんだよ?」
「お風呂。セラと、あと上がってきたオーブ軍の人たちに同じ世界出身の仲間がいるんですって。出航しちゃうとシャワーだし、今のうちに入っとかないとね」
覗くなよー、と冗談めかして彼女は歩いていった。
……ひょっとしなくても、元気付けようとしてくれていたのだろうか。
少し同期の友人に対し、少しばかり申し訳ない気分になるシン。
「でも、ステラからか。なんだろ」
軽く振ってみると、透き通った音がした。
がさがさと音を立てて包みを開き、中身を確認する。
「……貝殻?」
出てきたのは、小さな瓶。
コルクで蓋をされたその中には、一枚の小さな貝殻が収められていて。
蓋を外すと、彼女の大好きな海の匂いがほのかに香った。
****
「キラ!!」
この声は、と、聞き覚えのある懐かしい声に、整備中のストライクフリーダムのコックピットからキラは顔を出す。
もしかして。彼の予想は当たっていた。
「……サイ?サイ・アーガイル?」
機体の足元に見えるのは、かつての戦友、そして学友である一人の青年。
オーブ軍服に身を包んだ彼が、こちらを見上げていた。
降着リフトに飛び乗り、キラも彼の元に降りていく。
「やあ」
「君も上がってきたの?でも、どうして?」
「ひどいなー、どうしてはないだろ」
リフトが着地した瞬間、そんなやりとりと共に互い、破顔して笑いあう。
随分と久々の顔合わせだった。
キラがアークエンジェルに乗り込みオーブをあとにしたとき、彼は既に海外に出ていた。
「まったくひどいじゃないか、置いていくなんてさ。俺だってアークエンジェルの元クルーなんだぞ」
「ごめん、ごめん」
キラと彼との間には、複雑な関係があった。
基本的には、友人。だが、かつてキラの裏切りにより一時はその仲が砕けたこともあった。
とある、一人の少女をめぐっての衝突。
キラの傲慢に、サイの劣等感。追い込まれた精神状態。様々な要因が絡んでのことだった。
「アークエンジェルのことをニュースで見て、オーブに慌てて戻ってさ。それで姫さんに頼んでクサナギの通信にしてもらったってわけ」
「そっか。……また、一緒に戦ってくれるんだ」
「当たり前だろ」
がっちりと、肩を組まれる。
彼はいい奴だ。自分が友人と呼ぶには、もったいないくらいに。いい奴過ぎると、キラは思う。
「……で、クサナギの格納庫に預かりものがある」
「預かりもの?」
「ああ。実戦に投入できるようなものじゃないらしいが、大事なものだそうだ」
「?」
まあ、行ってみればわかる。
サイに肩から引っ張られ、二人は歩き出す。
やれやれ、ちょっと見ないうちに少々強引な性格になったんじゃないか。
友の歩幅に合わせながら、キラは思わず苦笑した。
****
皆で、入浴。
そのことを提案したのは自分であったのだが。
換えの下着や石鹸などを手に歩く廊下に待ち人がいるのを見つけ、パフは足を止める。
「よお」
「ダーク」
そういえば、こちらの世界にやってきてから実際に顔を会わせ、言葉を交わすのははじめてだった。
「何?セラたちを待たせてるんだけど」
「なあに、ちっと聞きたいことがあってな。時間はとらせねえよ」
聞きたいこと、と云われてパフにはそれと思うことの出来る心当たりがあった。
そして日に焼けた肌のベテランは、目の前に立つなり真剣な表情を彼女へと向ける。
「……MSで、決戦に出ると聞いたんだが」
──やっぱり。
想像通りすぎて、息を呑むということもしなかった。
別に隠していたことではないし、後ろめたいことでもないのだけれど。
仲間たちの誰かからは訊かれるものと予想していたことだった。
「そうよ。あたしは次の戦闘MSでみんなの補助にまわる」
「補助、ねえ。……何故だ?アムジャケットはあるんだろ?」
「単純なことよ。大人と子供の喧嘩より、大人同士で喧嘩したほうがいいってこと」
MSの相手は、MSでやるに限る。
無論アムジャケットの出力を考えればMSの相手をするのもけっして一概に不利といえるものではないが、
それでもバイザーバグを相手にするのとは違う。
バグそのものの相手もしながらでは、少々てこずることになるだろう。
「露払いってか、俺達の。けどわかってんのか、MS同士の戦闘じゃ」
「わかってる。覚悟の上だよ」
当然、人死にが出る。それも、自らの手によって、高確率で。
自分の手を汚すことになる──それでも、いいのかと。
答えは、イエス。
「バイザーバグの相手があたしたちになる以上、誰かがこの役をやんなきゃなんないんだよ」
「……俺やタフトがやったっていいんだぜ」
仲間の戦闘を守り、そのために人の乗ったMSを手にかける役が、必要なのだ。
彼女の答えに、ダークは少々困ったような顔を見せた。
パフも彼らが敵の手に落ち、MSを駆って戦っていたことは聞いている。
だからやめておけという、ダークの気持ちもわかるが、しかし承服は出来ない。
「ジョナサンも、シーンもいない以上……セラを守るのはあたしなんだよ」
「……そうか」
だったら、自分がやる。
セラや、ジュリや、ジュネや。皆の手を血に染めることはない。
ダークたちに再び人殺しになれとも云わない。
明確な目標のある、自分がやるべきだ。
「セラは……責めるかもしれないけどね」
それ以上、ダークは引き止めなかった。
小さく溜息をつくだけで、すれ違うパフをそのままに行かせる。
「大丈夫さ。手加減は割りと……得意なほうだからね」
少しずつペース戻そうと努力中・・・です、はい。
次回まで最終決戦準備続きます。
>>845 乙です!冒頭でのネオの夢は、何かの伏線かな?あと、サイが登場するとは思わなかったw
ついでに、カズイが現在何やっているか、ちょっとだけでもサイから語って欲しかったりw
>>845GJ!!もうそろそろで最終決戦か・・・。
どんな結末が用意されているか楽しみだな!
保守
俺達の月曜日!!
GJ!
ついにここまで来た!
保守
保守
俺達の月曜日!!
保守
ホシュ!
保守
俺達の月曜日!
858 :
通常の名無しさんの3倍:2007/08/07(火) 20:44:56 ID:drNcSzjc
v
作者さん来ないかなー
保守
月曜日ニ Trrrrrr!
≡≡≡≡≡≡≡☆
気が付いたら3話ばかり進んでた……wikiの更新停止してるな。
余裕が有ったら上げておくか……。
保守
某祭で忘れないうちに保守
俺達の月曜日!!
保守
保守
保守
俺達の月曜日!!
保守
保守
872 :
人誅:2007/09/02(日) 15:39:30 ID:???
失せろ
目障りだ
俺達の月曜日!!
保守
保守
作者さん来ないなあ・・・
アム種 第九十四話 ラン・ビギニング
アムエネルギー。そしてそれをより完全な形で発現させた、ゼアムという技術。
即ちゼアムとはアムエネルギー本来の力。
ゼアムによって、自分たちはこの世界にやってきた。──おそらくは。いや、そうとしか考えられない。
「俺は……ゼアムに踊らされてるのか?」
耳に残るのは、消失していきながらも嘲笑を置いていったディグラーズの声。
あれもすべて、アムエネルギーによるものならば。
アムエネルギー……ゼアムとは一体、なんなのだ。
自分は、どうすればいい。ジェナスは闇の中、一人思案する。
数え切れぬほど、考えが浮かんでは漆黒の中に消えていく。
一体何時間、そうしていたことだろう。
ずっと、ずっと。同じポーズでひとつのことに思考を傾け続ける。
「……俺は」
そして出た結論は、たったひとつだけ。
──行くのだ。全てを知る人間のもとに。
「……」
ジェナスは立ち上がり、閉じこもっていた部屋の扉を開いた。
「ガン・ザルディ」
全てを、知る者。
その可能性をもつ、唯一の存在。
それは今まで単にジェナスにとって止めねばならぬ相手、野望を阻止せねばならぬ相手でしかなかった。
だが、奴ならば知っている。
最初のアムドライバーであるあの男ならば、あるいは。
ゼアムを強烈に欲していたが故。
聞きに行くのだ、あの男に。
アムエネルギー。ゼアムとはなんなのか、抽象ではなく具体的な答えを聞き出しに。
部屋を出たジェナスの耳に、ブリーフィングの召集をかけるミリアリアの声が響いてきた。
それに従うように、自然ジェナスの足も皆の待つブリーフィングルームへと向いた。
****
MBF−02。その機体は、ストライクルージュと呼ばれていた。
「これ……カガリが?」
代表首長、カガリ・ユラ・アスハの愛機──とはいっても、政務に専念している彼女が実際に乗って動かすことなどこの二年で皆無であったが。
オーブ軍の象徴として、その色、姿は全軍に知られている。
「ああ。もうとっくに型落ちだし、PS装甲も外されて完全に式典用になってるけど。好きなように使ってくれてかまわないから持っていけってさ」
オーブ軍にとっては代表首長の愛機。
そうでなくともストライクルージュはあのヤキン・ドゥーエの戦いを戦い抜いた機体だ。
その機体がアークエンジェルの格納庫に座している。──決戦艦隊とともにあるということは、即ち。
彼女が彼らに、全てを委ねたということ。彼女の意志が彼らと共にあるということだ。
大義と信任。その二つはなによりも兵たちの士気を強固なものとする。
PS装甲でなく発泡金属の桜色は、カガリから艦隊の兵たち全てに向けられた期待が込められた、メッセージそのものということだ。
地上に残った彼女たちの思いが、キラとサイの見下ろす機体に託されているのだ。
「フン。気に入らんな」
「イザ……ジュール艦長」
「色が違っても……俺はストライクタイプの機体はどうも気に入らん」
大して不機嫌でもなさそうな様子で、イザークが隣りに立っていた。
「時間だ。パイロットはブリーフィングルームに集合。クサナギのほうでもそろそろ始まる頃合だ、戻れ」
****
「まずは、確保せねばならんポイントが三つ。レクイエムと呼ばれる月面の巨大砲、相手の守りの要であるメサイア。そして──プラント本国、アプリリウス」
シンの横で、ジェナスは真剣にイザークの説明を聞いていた。
ほんのつい先ほどまで、部屋に閉じこもっていた人間とは思えないほど、表情を引き締めて。
「……もう、いいのか?」
つい、脇を小突いて小声で問いかける。
「ああ。もう大丈夫だ」
直後、アスランの咳払いに背筋を正す。
片目を閉じて、私語を慎めと睨みつけてくるその視線が怖い。
「特にアプリリウスには“クレイモア”と呼ばれ、アムエネルギーに反応して爆発する物質を利用した起爆装置が多数、設置されていると考えられる」
「つまりは、プラントそのものが人質と同じ。ここを押さえなければ我々は身動きがとれない」
プラントを盾にされてしまえば、こちらはうかつに攻撃できなくなる。
「そこで、だ。まずオーブ軍の一部をプラントに直接差し向ける」
スクリーン上のマップに、オーブ軍を表しているであろうポインタがいくつか表示され、プラントの位置まで矢印が伸びる。
完全に表示されきるまで、イザークは言葉を切って待っていた。
「ただし、これはあくまで陽動。本命は──ジェナス。それにニルギース」
「はい」
「ん……」
更に二つの光点が現れ、同時にアスランが二人へと向く。
「オーブ軍が陽動をかける間に、二人にはプラントに潜入してもらう。そしてジェナスのスーツの能力で、起爆装置を無効化してくれ」
突入にはブレイズウィザードを改造したガス推進装置に、バイザーごと搭載して。
ジェナスが突入の肝であり、ニルギースはその護衛役というわけだ。
「無効化って、そんなことできるのか?」
だが、それにしてもさも当然のように言う。
アスランたちは何か聞いているのだろうかと、シンはジェナスに問うた。
ジェナスもまた、問題ないとばかりに頷いた。
「ゼアムジャケットは……出力次第で周囲のアムエネルギーを吸収・無効化できる。アムエネルギーに反応して起爆するクレイモアなら、それで無効化できるはずだ」
「ふうん。すごいな」
「クレイモアの無効化確認後、残りの部隊も行動を開始する」
画面上の光点と矢印とが、一挙に増えていく。
それぞれ、月面とそこから少しはなれた、メサイヤとに主に二箇所に分かれて。
「エターナルを旗艦とした部隊は、メサイヤに向かう。アークエンジェルとミネルバはレクイエム攻略部隊のほうにまわってもらう」
「MS隊の指揮はシン。お前がとれ」
「は、はいっ!!……え?」
突然名前を呼ばれ、シンは慌てて返事をした。
が、すぐにその違和感に気付く。
何故、自分なのだ?アスランや、キラは?
彼らも所属はアークエンジェルだから、こちら側ではないのか?
彼の疑問は、とうに二人には予想済みのことだったのであろう。
キラも、アスランも。
交互に顔を見比べられて、口元に笑みを浮かべる。
「俺とキラはエターナル組だ。ミーティアの訓練済みなのは俺たちだけだからな、少数精鋭で一気に制圧する」
「戦力的に温存していられる状況でもないし。レクイエムのほうは任せるよ、シン。ルナマリア、レイ」
「セラやラグナたちもな」
小競り合いや、ちょっとした戦闘ならともかく。
決戦ともいうべきこの戦いに、頼るべき上官たちがいない。
任せたぞなんて笑いかけられても、それはプレッシャーそのものだった。
「そんな!!俺じゃ!!」
「頼むわよー、リーダー」
「ルナっ!?」
けれど、仲間たちは。
「俺に依存はないぞ、しっかりやってくれるならな」
「レイまで!!」
そんな彼を信じていた。
「シン。指揮ならもう何度かやってるだろう。そう緊張するな」
「ですけど……っ」
「大丈夫だ。俺たちが保障する」
なにも、無理なことをやれと言っているんじゃない。
お前ならやれると思った、だから任せるんだ。
もう既にシンも、立派なエースのひとりなのだから。
キラやアスラン、イザークが口々に言う言葉に戸惑い、シンは狼狽し。
「不安なら持って行け、俺からの保証書代わりだ」
アスランから突き出された“フェイス”の徽章を、ぼんやりと受け取る。
そしてそれをしばらく見つめ、黙りこくったあとで──……。
もう一度その場一同をぐるりと見回して、ことごとくに向けられる、しっかりやれという視線に気付かされ。
一度閉じた目をしっかりと開き、ようやくシンは、頷いた。
また期間があいてしまった・・・申し訳ないです、ほんとに。
でもリアルがほんとに忙しくて、そりゃもう。
誰か僕に時間を分けてください。
なるべく次ははやくいきたいです・・・。
久々にGGGGGGJ!
…なんか懐かしさすら感じるけどw
>>881 お待ちしておりました、GJ!!
次回以降から最終決戦に入るんでしょうか?
あと、リアルの方、あまり無理しない程度に頑張って下さい
保守!
俺たちの月曜日に保守!
保守
保守
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