もしカミーユが種・種死の世界に来たら

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1 ◆XdXnStWCJQ
「光が……広がって行く……」

突如として浮遊感に包まれる体に、カミーユは恐れを抱かなかった
暖かで優しいそれは、非常に心地がいい

そしてカミーユは目を閉じた――運命に巻き込まれたことも知らずに――

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機動戦士ZガンダムDESTINY
第01話『謎の機体』

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2通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 17:44:38 ID:???
ま た ク ロ ス オ ー バ ー か

最近多いな。
3 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/28(木) 17:44:59 ID:???
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慌ただしく作業に取り掛かる人々――
ここアーモリーワンではセカンド・ステージMSのお披露目のための式典が催される予定のため、軍人たちは休み無く働いている
その中を走り抜けるジープがあった
運転席に金髪の少年、助手席に黒髪の少年、
そして荷台に荷物と共に忌々しげに座る赤髪の少女が乗っていた
軍用地には似つかない風景だが、それぞれ赤い制服を着用している

「はあ、暇だな……」

シン・アスカは退屈そうに欠伸を噛み殺した

「今のうちだけだ。配属されればそうも言ってられまい」

そんなシンをレイ・ザ・バレルは無表情のままでいさめる

「なんで私が荷台なのよ……」
「ジャンケンに負けたからだろ」
「それにしてもこういう時はレディーファーストでしょ!!」
「気にするな、俺は気にしない」
「気にしてよ!!」

不満気なルナマリア・ホークの愚痴を軽くいなす二人
彼等が向かう先はザフト軍新鋭艦『ミネルバ』
そこで正式に着任を済ませた後には軍の生活が待っている
期待と不安が入り混じるような初々しい気持ちとは
無縁な三人を乗せたジープは、ミネルバの搭乗口に吸い込まれていった

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4通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 17:45:09 ID:???
秋田
5 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/28(木) 17:46:02 ID:???
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「着任ご苦労様。これで貴方たちはミネルバのクルーよ。
よろしく頼むわね」

大人の雰囲気漂う女性艦長、タリア・グラディスの敬礼に、三人はそそくさと敬礼を返した
流石に指揮官を目の前にすると緊張は隠せない

「それと、MS隊の隊長に当たる者がこれから来る予定だから挨拶しておいて」
「どんな人なんですか?」

ルナマリアが興味深々といった具合に尋ねた

「彼はこの艦に配属予定のパイロットで……」

――その時だった

『コンディションレッド!コンディションレッド!
新鋭機『カオス』『ガイア』『アビス』が強奪された模様!
艦長はブリッジまでお越しください』
「なんですって!?」

タリアには、けたたましく鳴り響く警報がまるで戦場の火種のように思えた

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6 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/28(木) 17:47:29 ID:???
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一機のザクが三機の強奪された機体に追い回されていた
このままでは撃墜は免れないだろう

『着任早々悪いけど、ひと仕事頼むわね。
他の機体は今、取り行かせてるけど、間に合うか微妙よ』

モニターにタリアからの通信が入る

「落としていいんですか?」
『なるべく捕獲して頂戴』
「簡単に言ってくれるよな……」

画面が切り変わって、オペレーターの姿が現れる

『シン、頑張って!』

メイリン・ホークからだ

「はいはい」
『進路クリアー、発進どうぞ』
「了解した。シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!!」

勢い良く飛び出す戦闘機、それに追従する『部品』群。
それらは空中にて合体し、一つのMSを形成する
その名も『インパルス』
7 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/28(木) 17:48:59 ID:???
「そこのザク!!援護するから撤退しろ!!」

シンの怒鳴り声に反応し、ザクが撤退して行く
それを見送ったシンは、戦闘に頭を切り替えた

「喰らえ!」

ライフルを撃ち、戦力を分断させる
装備は近接仕様のソードゆえ、距離を詰める必要があった
手近なガイアに連結させた対艦刀を叩き付けんとする

「何だ……こいつ……」

ガイアのパイロット、ステラ・ルーシェは介入してきた機体を睨みつけながら、サーベルを抜く

「墜ちろ!」
「うぇーい!」

反発する粒子、出力は互角

「アウル!奴を囲むんぞ!」
「了解ってね」

カオスのスティング・オークレの指示に、アビスのアウル・ニーダが軽い口調で答えた

「……ちっ!!」

舌打ちをしながらガイアと距離を取る
囲まれることは死を意味する
8 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/28(木) 17:50:06 ID:???
その後の戦闘はシンにとって劣勢を極めた
同等のスペックの機体同士での戦闘はパイロット技量が左右する
しかし、その技量も拮抗し、ジリ貧の雰囲気が漂う

「このままじゃ……」

ビームブーメランで牽制しながら距離を取る
格闘戦に持ち込みたいが、敵の連携は強固なもので、なかなか崩せずにいた

「もらったぁ!」
「しまった!」

アビスのフルバーストの追撃に右腕が損傷
もはや拮抗を維持することもままならなくなってきた

「はぁぁぁぁ!!」

更にガイアのサーベルが襲い来る
シンは血液が凍りつくのを感じた

爆発音が鳴り響き、恐怖から思わず瞳を閉じてしまう

――目を見開いたとき、シンはその光景を疑った

ガイアのサーベル部分が消失し、尻餅をついているのだ

「何だ!?」

メインカメラを動かすと、空中を滑空するMA――おそらく友軍だろう

そしてそのMAは1秒にも満たない一瞬で姿を変えた

表情が印象的な、まるで一線を画したような機体

『お前ら……そんなに戦争がしたいのかよ!!』

罵声が響き、強奪された三機の動きが一瞬止まる
シンは突如として現れたMSに目を奪われていた

〜つづく〜
9通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 17:57:54 ID:???
おい出だしが不安だぞ!
10通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 23:08:01 ID:???
これからに期待
11 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 19:15:15 ID:???
目の前には二機の新型MS――情報にない機体
これ以上だらだらと戦っていてはパワーダウンの恐れすらある

「くそっ……旗色が悪くなってきやがったぜ……」

スティングは苛立ちながら呟いた

「ステラ!まだ動けるな?お前ら、あの『合体』MSの捕獲は断念するぞ……
いいな?さっさとずらかるぞ!」

スティングの指示に従って、撤退行動を取り始める三機

『この感覚……強化人間か……?
くっ……逃がすか!!』

しかし、介入してきた後者の機体――Zガンダムのパイロット、カミーユ・ビダンはそうさせまいとスラスターを吹かした
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機動戦士ZガンダムDESTINY
第02話『強敵』

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12 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 19:17:03 ID:???
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「……こいつっ……!」
『墜ちろぉ!!』

Zガンダムのビームライフルから発せられる閃光が三機を追い立てて、パイロットたちは顔をしかめた

『スティング、こいつの射撃は……うわぁぁぁぁ!!』
「アウル!!」

アビスは一発のライフルにスラスター部を貫かれ、機動力を削がれてしまう

「何て正確な射撃だ……」

スティングは恐怖する――一瞬で技量の差を感じてしまったのだ
ひょっとしたら三人とも無事に帰還出来ないのではないか、という悪寒に晒される

『アウル!!』

動けなくなったアビスの元へガイアが心配げに駆け寄ろうとするが、カオスがそれを制した
13 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 19:18:35 ID:???
『スティング!?』
「ステラ……アウルは置いていくぞ……」
『そんな……』
「一機でも多くこれを持ち帰るのが任務だ!!」
『……でも……!!』
「悔しいのは俺も同じだ……援護するから、撤退しろ」

後ろ髪引かれるように踵を返したガイアに呼応して、Zは追撃を強めた

『待てぇ!!』
「やらせるか!!」

カオスはZガンダムの足を止めるべく特殊兵装ポッドを射出し、オールレンジ攻撃を仕掛ける
しかし、Zガンダムはそれを紙一重でかわして行く

「こいつ……化け物か!?」
『インパルス、カオスは任せろ!!ガイアを追ってくれ!!』
「は、はい!!」

それまで、カミーユの戦いぶりに見とれていたシンは、意識を戦場へ戻した

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14 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 19:21:47 ID:???
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「ミネルバ!フォースシルエット、チェストフライヤーの射出を!」
『了解しました!』

戦場を飛び交う部品群とドッキングし、機動力重視のフォースでガイアを追い掛ける
その頃ガイアは、やっとコロニーの隔壁破壊に成功したようだった

「好き勝手させるか!!」

ビームライフルの照準を合わせ、引き金を引く。
銃口からビーム粒子が飛び出し、ガイアに襲いかかるが、ガイアは反撃に転じない

「隔壁破壊にエネルギーを食ったようだな!!」

シンはこれを好機と見て、ビームサーベルを抜き、ガイアに迫る

『死ぬの……いやぁぁぁぁ!!』

残り少ないエネルギーにも関わらず、ライフルを使用するガイア
しかし、狙いは定まらず、接近を阻むことは出来ない

「うわぁ!!」

衝撃がシンを襲う――後ろから撃たれたのだ

『ネオ!!』
「遅いよ、お前ら。何やってんだ?」
『アウルとスティングが……』
「分かったよ、助けるさ
まずはこいつからだ!!」
15 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 19:23:12 ID:???
ガンバレルを展開し、インパルスに四方から十字放火を浴びせる――MAエグザスの真骨頂だ

「何だこれ!?」

予想外の攻撃に反応が遅れるシン
――腕は落ち、シルエットはもげ、満身創痍の姿に変貌してしまう

「まず一つ……次はあいつだ!!」

ネオの視線の先には二機の可変MS――一方の敵に向かって攻撃を加える――!

「……サイコミュ!?」

――しかしビーム群は無情にも空を切った

「かわしただと!?……スティングたちがてこずる訳だ」
「こいつはニュータイプなのか!?」

カミーユは反撃の腕部グレネードランチャーを見舞う

「当たらないねぇ!!」
「こいつ……できる!!」
「スティング!!撤退しろ!!こいつは俺が押さえる!!」

戦闘で傷付いた体を引きずるようにスラスターを吹かしたカオス
だが、カミーユにはそれを追う余裕がなかった

「さっきの連中とは大違いだ……!」

ガンバレルの網をくぐるので精一杯だったのだ

「そこっ!」

網が弱まる間隙を縫って、振り向きざまにライフルを撃ち込み、
一基のガンバレルが閃光と共に爆散して行く
16 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 19:26:10 ID:???
「落としただと!?」
「中距離の刺し合いは不利だ……距離を詰める!!」

ウェイブライダーに変形し、エグザスに向かって行く

「やってられないよ、全く」

そんなカミーユとは対照的に、あっさりと身を翻すネオ
アビスを除いた他の連中は、既に撤退を済ませたようだった

「待て!!」

引き金を引く――気の抜けたような音が鳴り響いた

「弾切れか……」

追撃を断念するカミーユ。そんな彼の元へ一通の通信が入った

『すいません、回収してください……』
「了解した」

溜め息を一つついて、バラバラ死体のようなインパルスに駆け寄る

「(あんなパイロットが、この世界にもいるのか……)」

予想だにしなかった強化人間らしき連中と強敵の出現――

「(フォウ……こっちにも、『君』がいるみたいだ……)」

カミーユには哀愁が漂っていた

〜つづく〜
17通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 19:45:08 ID:NzMG09gl
age
18通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 21:08:07 ID:???
えっと…この作品は"0083キャラと種〜5"の>102さんが書いているんでしょうか?
間違ってたらすいません

続き楽しみです
19 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 21:44:13 ID:???
>>18
違いますよ
今、確認しに行きましたが、話の流れが似通っていますね
まあ、カミーユを異世界に持ってく考えは皆同じなようで……
2018:2006/09/29(金) 22:01:45 ID:???
m(__)m 申し訳ない
21ちょいと失礼:2006/09/29(金) 22:52:18 ID:???
俺も出していいかな?
22 ◆kvxDXEEXio :2006/09/29(金) 22:58:43 ID:???
テスツ
23 ◆XdXnStWCJQ :2006/09/29(金) 23:01:23 ID:???
新職人ktkr
2421の者 ◆ROfy9RtNnc :2006/09/29(金) 23:12:21 ID:???
期待はしないように^^;
25通常の名無しさんの3倍:2006/09/30(土) 00:07:45 ID:???
カミーユがカミーユっぽくない以外はまぁ
26通常の名無しさんの3倍:2006/09/30(土) 00:22:56 ID:???
富野っぽくがすごい難しそう
27通常の名無しさんの3倍:2006/09/30(土) 02:00:38 ID:???
>>18 が言ってるのはシンがUCに来たって設定のSS?
28通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 01:38:09 ID:???
おお、こんなスレがあったとは!職人さん頑張ってください。
29通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 22:11:12 ID:???
カミーユ好きとしてはありがたいスレだぜ!また楽しみが一つ増えたぜ!
 
>>18
亀レス失礼
それは多分俺の事じゃないかな。あの時は空気読まずに勝手に投下した形になってしまって申し訳なく思ってます。そのせいで多少荒れ模様になってしまった事は反省しています……orz
なので続きは投下せずに自粛させてもらいました。

>>27
それは別の方のSS。俺のはこのスレの職人さんと同じカミーユが種死の世界に来たらってやつ。
3018:2006/10/02(月) 00:09:20 ID:???
>>29さん
ならここのに投下したらいいんじゃないですか?
どうでしょう?>>1さん?
31 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 01:32:44 ID:???
おkですよ
職人さんは大歓迎ですから
3229:2006/10/02(月) 16:47:55 ID:???
お二人ともレス感謝です。

ただ、俺が投下するとなると◆XdXnStWCJQ 氏と同じ「種死の世界にカミーユ」というシチュエーションのSSが二つという状況になってしまうので読む側にとっては混乱する事もあり得るのではないかと思われます。
出来るだけ分かりやすいようにしたいとは思いますが、それでも構わないと仰ってくださるならお邪魔させてもらおうかと思います。
33通常の名無しさんの3倍:2006/10/02(月) 17:38:30 ID:???
コテハンかトリップでも十分おkでは?
そのうちタイトルでも付けていただけるとより分かりやすいかと。
どうでしょう?
3429 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 17:52:56 ID:???
テスト

>>33
これでいいかな?
 
後、出来ればもう一度◆XdXnStWCJQ 氏の意見も聞いてみたいです
35通常の名無しさんの3倍:2006/10/02(月) 19:07:54 ID:???
カミーユはカミーユでも、こんな設定ならいいんじゃないか?
ZZ後のカミーユが、種・種死世界に行くとかw
36 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 19:38:02 ID:???
>>34
むしろお願いしたいくらいだ
今、カミーユの台詞が煮詰まってて投下遅れそうだから……
37 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 21:21:46 ID:???
『破損した部品は俺が回収しておくから、
君はコア・スプレンダーで先に帰投してくれ』
「頼みます」

ドッキングアウトをし、ミネルバへ向かって舵を取る
後方モニターを展開すると、次第に小さくなって行く謎の機体とインパルスの残骸
――そして、前方モニターではその機体が撃墜したアビスの回収が始まっている

「くそっ……もっと上手く操縦出来ていたら……」

悔しさから、レバーを握る力が強くなるのをシンは感じた
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機動戦士ZガンダムDESTINY
第03話『対立』

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38 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 21:23:39 ID:???
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「まずは初陣ご苦労様」

タリアの労いに素直に喜ぶことなど到底できないシンの表情は浮かない
今から強奪騒ぎでうやむやになってしまった『隊長』との顔合わせをすることになっており、
レイとルナマリアも姿を見せていた

「早速、本題に入るわね。
貴方たちの隊長となるのは、セカンドステージMSの設計にも関わった者で、
名前は『カミーユ・ビダン』
今、MSデッキにいるそうだから、ちゃんと挨拶するのよ」

三人は敬礼をし、艦長室を後にする
――向かう先はもちろんMSデッキだ

「憧れちゃうな〜」

道中にて、ルナマリアが楽しげに口火を切った
39 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 21:26:17 ID:???
「ふん、きっと『安楽椅子のパイロット』だろ。実戦じゃどうだかな?」

シンは苛立ちを隠さずに答えた。デスクワーカーなら図面を引いていればいいのだと言わんばかりの態度だ

「ひどい言い様ね……ボコボコにされたからってイライラしすぎよ」
「うるさいな!」

シンは悪態を突かれて声を荒げたが、ルナマリアは気にせず話続けた

「それに名前からして女の人でしょ?凄いなぁ……」
「その辺にしておけ、ルナマリア」

シンがわなわなと震えているのを見かねたレイの制止に、
ルナマリアは口をつぐんだ
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40 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 21:27:36 ID:???
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「ああ、カミーユさんなら、あの青いパイロットスーツの人だよ」

古顔のメカニックの指差す先にはインパルスのコンソールをいじっている人影があった
ヘルメットを付けているので表情は分からない

「あいつ……俺の機体に!!」
「ちょっと、シン!」

ルナマリアの制止も聞かずに、疾風怒涛の勢いでコックピットに詰め寄るシン

「あんた!いくら上官でも、人の機体を勝手にいじらないでくれ!」

コックピットの人影は、怒鳴り声に一瞬ぎょっと身を強張らせた

「済まない。気になってしまって」

ヘルメットを外し、表情が露になる

「カミーユ・ビダンだ。よろしく」

少し不機嫌そうな顔つきの上官は手を差し出したが、シンは応じなかった

「……なんだ男か」

何故ならシンは予想とは反した上官の性別に驚愕していたからだ
――カミーユの表情は一層思わしくなくなった
41 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 21:28:49 ID:???
「悪いか?」
「……?」
「カミーユが男の名前で悪いかよ!」
「何を怒ってるんだ!?あんたは!」

明らかにカミーユは激昂している

「だいたい、あの戦い方はなんだ!?
数的不利にも関わらずソードでの出撃!
自信があるのかと思えば、損傷!
再換装してもすぐに戦線離脱!
もう一度、学校からやり直した方がいいんじゃないか!?」
「あ…あんたに何が分かるんだ!」
「一番間近で見れば明らかだ!
今、俺がここでインパルスをいじっているのも、お前の尻拭いの整備のためさ!」
「うっ……」

何も言い返せない――目の前の男は援護に来た機体のパイロットだったのだから――
不満を吐き出しきったのか、去って行くカミーユ――
シンはその場に立ち尽くしていた

〜つづく〜
4229 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:19:59 ID:???
>>36
ありがとうございます。

という訳で投下させてもらいます。↓
43カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:26:00 ID:???
CE73、二年前のヤキン・ドゥーエの決戦から世界はようやく活気を取り戻しつつあ

った。
しかし、そんな中オーブ連合首長国代表カガリ=ユラ=アスハが訪れるプラントの

コロニー"アーモリー・ワン"にて新型MSの強奪事件が起こってしまう。
その混乱の中、アレックスという偽名でカガリの護衛についていた前大戦の英雄の

一人アスラン=ザラも、現地にて進水式を行う予定であったザフトの戦艦"ミネル

バ"の戦力と共にこれを阻止しようと試みる。しかし、相手の素早い撤収に敢え無

くMSの奪還は失敗に終わってしまう。
奪取された三機のMSを追う為に外の宙域にミネルバと共に出るが、そこで意外な拾

い物をすることになる。
 
「こんな所に戦闘機?何故…」

視界の先にはトリコロールカラーの派手な塗装が施された未知なる戦闘機らしき物

体がカメラに捉えられていた。そんな宇宙を漂う謎の戦闘機を見て、ブリッジでカ

ガリに付き添うアスランは不思議に思っていた。

「見たことのないタイプね。あれも議長の造らせた新型で?」

ザフトの軍帽をかぶった金髪のショートヘアの女性が顔を少し上に向けて長い黒髪

の男性に尋ねる。

「まさか…あんな物を造らせた覚えはないよ、タリア」
「デュランダル議長、それは本当か?ザフトの物でないのなら、あれは一体何なの

だ?」
 
デュランダルの側に居たカガリは、少し疑念のこもった声で問う。

「さぁ…私には何とも…。あぁ、連合の新型という線がありますね」
「本当に知らないんだな?」
「勿論です、姫。今の時代MAは流行りませんからね。あんな物を造るなど、MAの製

作技術が盛んであった連合以外に考えられません」
「そうか、だとしたら……」
 
44カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:28:50 ID:???
カガリは謎の戦闘機を見つめたまま物思いに耽る。
その横顔を見てデュランダルが口を開く。
 
「もし、姫がお気になさるようでしたら回収させますが…?」
「そんな時間があるのか?こんな所で時間をかけて、奪取されたMSを見失ったらど

うする?」
 
カガリの懸念にデュランダルは少し考え込む。そして、タリアの方に顔を向けて訊

ねる。
 
「そうですね…、タリア艦長出来るか?」
「索敵班に追跡をやらせております。作戦時間に多少の誤差が生じますが、可能で

す」
「姫…?」
「わかった。頼む、やってくれ」
 
何故か分からないがカガリは謎の戦闘機が気になった。
それが、今後の世界の運命を少しづつ動かしていく事になろうとは、この時点では

誰も予想だにしなかった……
 

ミネルバのとある個人部屋。
わずかな光が灯る暗い部屋で、少年シン=アスカは自分のベッドに横たわり、本人

にはとても似つかわしくないピンク色の携帯電話を握り締めていた。それを見つめ

る彼の瞳は悲しみに満ちている。
前大戦時、彼はオーブに住んでいた。
戦時下にあっても中立を標榜するオーブで両親と妹と幸せな生活を送っていたが、

ある日その全てを失うことになる。
激しくなる連合・ザフトの戦いは拡大を続け、ついには中立国であるオーブまでも

がその炎に焼かれることになってしまったのだ。
オーブの本土でも繰り広げられる戦闘。そして、広がっていく炎の中では一般人だ

ろうが何だろうが関係なかった。皆、生きたいが為に必死に逃げた。
45カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:31:58 ID:???
その避難の中、彼が妹の落とした携帯電話を拾いに行ったほんの一瞬の出来事であ

る。流れ弾による爆風が彼を襲い、その衝撃で彼は吹き飛ばされた。
体中が痛かったが、何とか立ち上がった彼は家族の無事を確かめるため、先ほどの

場所へ向かう。
 
しかし、そこで彼が見たものは死臭たちこめる凄惨な光景と……
 
 
「シン、起きろ。出撃命令が出ている。」
 
ブロンドのやや長めの髪の美しい顔立ちをした少年が部屋へ入ってくる。シンの同

僚であり、ルームメイトでもあるレイ=ザ=バレルである。
 
「…もう敵と接触したのか?」
 
シンは少し体を起こしてレイに訊ねる。
 
「違う、正体不明機の確保だ」
「正体不明機の確保?奪われたMSに追い着いたんじゃないのか?」
 
ベッドから立ち上がってシンは怪訝そうにレイに再び問う。
 
「正体不明機だ」
 
そう言うとレイは部屋を出る。
それに続くように赤服を着ながらシンも部屋を出る。
 
「なんだってそんなことを?随分余裕なんだな?」
 
釈然としない状況にシンは不思議に思う。そんな事している暇があれば、さっさと

奪われたMSを取り返した方が建設的だと思った。
46カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:38:26 ID:???
そんなシンの心境を察したのか、レイが応える。

「これはデュランダル議長の意向ではない。オーブのカガリ=ユラ=アスハ代表によるものだ」
「はぁ?なんであいつがそんな事を!?」
「シン、口を慎め。お前の気持ちも解らんでもないが、俺たちはザフトの軍人だ。命令には従わ
なければならない」
「そ、それはわかってるけど…」
「なら、やってもらうぞ」
 
シンはカガリの事が許せなかった。
あの時、何故オーブで戦闘を行ったのか、どうして自分の家族が巻き込まれなければならな
かったのか……オーブを焼いたウズミ前代表の娘がのうのうと現代表として自分の目の前に
現れたことがその気持ちに拍車をかける。
 
(なんで俺があんな奴の言うこと聞かなきゃなんないんだ…!)
 
不満を感じつつもシンはザフトの新型MSインパルスに乗り込み、正体不明の戦闘機の回収に
向かう。
 
「それにしてもなんだってこんな所に戦闘機が…?それに正体不明って…」

不満を誤魔化す様にシンは呟く。

「いや、こんな所で時間を喰う訳にはいかないな、さっさと済ませよう」

そう言い、回収のためにインパルスで戦闘機に接触する。
しかしその時、シンを不思議な感覚が襲う。

「……!な、何だ!?」

瞬間何かが自分の体を駆け巡る気持ち悪さを感じた。しかし、それはすぐに消え、
シンは呆気にとられる。
47カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:41:13 ID:???
「い、今のは…一体…?」
『シン、どうしたの?大丈夫?すごい汗かいてるみたいだけど』

通信回線からミネルバのCIC担当のメイリン=ホークが心配そうに聞いてくる。
インパルスのコックピットの様子をモニターしていた彼女がシンの異変に気付き、心配して
通信回線を開いたのだ。

「い、いや、何でもない…」
『そう…なるべく早くしてね。時間ぎりぎりだから』
「了解、直ちに帰還する」

通信を終えた後、シンは謎の戦闘機を伴ってミネルバに向かう。

(さっきの感覚…ただの幻覚だったのか…?)

気味の悪さを感じ、謎の戦闘機を見つめるシン。それは、シンと謎の戦闘機の男との
ファーストコンタクトだった。
シンは取り敢えずミネルバへと着艦する。
 
「よーし、こっちだ!…そう、そこ!ゆっくり降ろしてくれ!」

ミネルバのデッキに整備士ヨウランの声が響く。
シンはインパルスで丁寧に謎の戦闘機を降ろす。

「おし、OKだ!」

シンは作業を終え、インパルスから降りた。

「おつかれ、シン。敵と接触するまでもう少しあるみたいだから部屋で休んでなさいよ」
48カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:44:25 ID:???
そう言って一人の少女がシンにタオルを渡す。赤毛のショートカットに飛び出した"アホ毛"が
特徴的な髪型。丈の短いスカートを履きこなし、メリハリのある体型がスタイルの良さを覗わ
せる。
レイと同じく同僚のルナマリア=ホークである。彼女は先ほどのCIC担当のメイリンの姉である。

「別に、ただ戦闘機を回収しただけだ、疲れてなんかない。俺はここで待機してるよ」
 
気遣うルナマリアを余所に、シンは淡白に返事をする。
それが気に入らなかったのか、ルナマリアは眉を吊り上げて表情を強張らせる。
 
「あっそ、折角メイリンが気に掛けてたから心配してやったのにさ?それは失礼しました。
それじゃ、好きにすれば!」

シンの素っ気ない態度にルナマリアは少しふてくされた様子で離れていった。
しかし、シンはそんなルナマリアを気にも止めずじっと謎の戦闘機を見つめる。

「おい、これどーやって開けるんだ?」
「この辺にスイッチかなんかないのか?」
「お…?これそーじゃねぇのか?」

早速調査に取り掛かったメカニック達が謎の戦闘機を弄る。
初めて見る特異なMAに苦戦していたが、やがて整備士の一人がそれらしいボタンを見つけて
押す。そしてゆっくりとハッチが開いていく。

「ん……?パイロットが乗ってるぞ?」
「見たことのないパイロットスーツだが…おい、お前は誰だ?所属と名前言えるか?」

シンの見つめる先でメカニック達が何事か騒いでいるのが見えた。
その様子を見て、シンは戦闘機に近づいて行く。先ほどの感覚の正体を確かめたかったのだ。

「俺にもちょっと見せてくれ」
「お、おいシン!」

シンは整備士達を押しのけ、コックピットの中を覗き込む。

そこには白地に青のラインの入ったパイロットスーツに身を包んだ少年が呆然とした様子で
座っていた。
年は自分と同じか少し上だろう。癖のある青髪になんとなく中性的な顔立ちをしている。

「あんた、なんであんなとこにいたんだ?」

シンはその少年に向かって質問を一つ投げかけてみる。しかし、反応がない。
少年は焦点の定まらない瞳でただ一点を見つめていた。彼の脇にはバイザーの割れた
ヘルメットが転がっていた。
49カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 22:47:47 ID:???
取り敢えずここまでです。
途中読み辛くなってしまってすみません、改行ミスりました……orz
カミーユが復活するまではもう少し掛ります。
50 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/02(月) 22:55:42 ID:???
GJ!
描写が精密かつ、切るところはバッサリしてあるメリハリSUGEEE!
続き楽しみにしてます!
51カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/02(月) 23:02:39 ID:???
何たる不覚、◆XdXnStWCJQ 氏にGJを忘れていたとは……orz

◆XdXnStWCJQ 氏GJ!!
そちらのカミーユは種の世界に来てからある程度時間が経っているようですね。
そうか、それなら最初からカミーユを活躍させられたか…正直盲点でした。
52通常の名無しさんの3倍:2006/10/02(月) 23:19:51 ID:cxm8xUOA
まあ何だ
二人ともGJだ
53通常の名無しさんの3倍:2006/10/02(月) 23:21:26 ID:???
◆XdXnStWCJQ氏のは種死の始まるちょっと前に来ていて

◆x/lz6TqR1w氏のは始まってちょっとすぎたところに来る
という解釈でいいでしょうか?

御二方ともGJです
54通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 05:45:28 ID:???
続きが気になる
55通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 13:42:38 ID:???
これはとてもいい前フリのプロローグですね
最近、UCクロスオーバーの良作が増えて来ているのはうれしい事です
56通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 18:02:20 ID:???
でも少し気になることがあったんだが
シロッコ戦のあとなら
カミーユはフォウとの出会いで名前のコンプレックス克服したから
名前で切れることはないと思う。
後半のカツへの対応考えればシンとは衝突するんじゃなくて諭す存在のような
57通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 19:24:55 ID:???
>>56
殴ってないだろ?
58通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 19:35:47 ID:???
>>56
異世界に来てまで言われちゃ切な過ぎるだろ
多少キレるくらい気持ちは分かる
しかも相手は直前の戦闘で醜態さらした小生意気なコゾーだし
59 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/03(火) 21:35:50 ID:???
「カガリ……大丈夫か?」
「ああ、問題ない」

ミネルバのMSデッキに着艦するMS――ザクウォーリアのコックピットには二人の若い男女の姿があった
会談先での騒ぎに巻き込まれ、難を逃れるためにこれに乗り込んだのだ
しかし、運悪く騒ぎの張本人たちに目を付けられ、援護を受ける形で、ここ、ミネルバに逃げ込んだのである
昇降ワイヤーに足を掛け、女を抱き締める形で地に降り立つ男――アスラン・ザラは複雑な心境であった
再びザフト艦の敷居を跨ぐとは思ってもなかったのだから無理は無い
見渡す先には、懐疑的な目でこちらを見つめる人だかりがあった

「アスラン?」

傍らの女――カガリ・ユラ・アスハは、いぶかしげに顔を覗き込んだ

「いや、なんでもない。それと、俺は『アレックス』だ」
「あ、ああ。アレックス」

世を逃るための偽名を念押しすると、カガリは慌てて訂正した
60 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/03(火) 21:37:18 ID:???
「貴方、なぜこの機体に乗っているの!?」

足を人工の地面に下ろすと、真っ先に赤髪の女兵士が尋問してきた

「緊急事態を回避するためにやむなく搭乗した。こちらはオーブ代表のカガリ・ユラ・アスハ
俺は随人のアレックス・ディノだ」
「……って、代表ですか!?」

ルナマリアが驚嘆した時だった

「うわっ!?」

倒れそうになったカガリをアスランは両手で抱き止めた
艦が振動を始め、足下がおぼつかなくなったのだ

「この艦……どこに行くんだ!?」

強い語勢で問いただすアスランに、面食らったようにルナマリアは答える

「どこって、強奪部隊の追撃ですけど……」「……そんな……」

アスランは歯噛みする――逃げ込んだ先は、戦場行きのバスだったのだから
=======================
機動戦士ZガンダムDESTINY
第04話『イミテーション』

=======================
61 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/03(火) 21:38:20 ID:???
「ったく!なんだあの男は!!」

自室にてストレスを物にぶつけるシン
あの騒ぎのおかげで、挨拶どころではなかった

「カリカリするな」

これでは玩具を買ってもらえない子供と同じではないかとレイはレイは辟易していた

「気分転換でもしよう。俺の機体のザクファントムの調整を手伝ってくれないか?」
「……ああ、わかった」

破壊衝動が治まったのか、踵を返して部屋を出るシンの後ろ姿を、レイは見つめていた

「先が思いやられるな……」

溜め息を一つついて後を追い掛ける。
アカデミーの同期という関係上から慣れているとはいえ、
シンの癇癪は問題である
これからもカミーユと衝突を繰り返して行くと想像すると身の毛がよだつ思いだった
62 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/03(火) 21:39:31 ID:???
MSデッキに着くと、辺りがざわめいていることに気が付いた。
多少は気になるが、今はそれどころではない
先着がいたのだ――間の悪いことにカミーユ・ビダンだ
カミーユは、少しだけ表情を曇らせながら此方へ近付いてきた
それを見たシンが身構える

「……なんですか?」
「さっきは言い過ぎた。済まない」

予想外の謝罪の言葉にレイは安堵した――相手は大人だったのだ

「別に……」

対照的に、シンは戸惑っていた

「俺は、名前にちょっとコンプレックスがあって……
克服したつもりだったんだが、
つい古傷がうずいてしまったんだ」

カミーユから謝罪の握手がさし延べられ、
不満げながらもシンはそれに応じた
二人の手が離れたとこれで、レイは疑問を投げ掛けた
63 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/03(火) 21:41:23 ID:???
「ところで、騒がしいようですが、何かあったのですか?」
「ええと、君は……」
「レイ・ザ・バレルです。ザクファントムのパイロットであります」

敬礼するレイにカミーユも応えた

「さっきオーブの代表が着艦したらしいんだ。今はブリッジにいるらしいが……」

カミーユの言葉に、明らかに表情が強張るシン

「なんでアスハが……!?」

その理由は二人には理解出来なかった

=======================
「流石、綺麗ごとはアスハのお家芸だな!!」

シンの叫びがデッキに木霊する

――事の顛末は、カガリの『平和』への理想論が原因だった
それに猛反発したシンが怒りに声を荒げたのだ――

「シン、止めろ!」

見かねたカミーユが制止に入った

「うるさい!」
「自分の立場をわきまえろ!今すぐ代表に謝るんだ!」
「嫌だ!」

脱兎の如くその場を離れるシンを、カミーユはカガリに一礼してから追い掛けた
64 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/03(火) 21:48:08 ID:???
――走る――無重力とはいえ、床を蹴る作業は疲労の蓄積をきたす

「待てよ!」

カミーユは、全力で走った甲斐あって、シンの腕を捕まえることに成功した
シンは怒りに顔を歪めている

「あんたには関係無いだろ!?」

シンの姿に喚起されたのだろうか
一瞬、カミーユの頭の中で、まるで走馬灯のように
過去の記憶がよぎった

「……お前を見てるとな……イライラするんだよ!
昔の俺を見ているようでな!」
「はぁ!?」
「いいか、よく聞け!
一人前になりたかったら、
精神的にも強くなるんだ!わかったな!?」

カミーユはシンの腕を乱暴に離し、そのまま去っていく
残されたシンは、その言葉の意味が理解できず、
また、理解しようともしなかった

〜つづく〜
65通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 21:54:36 ID:???
カミーユも子供のお守りなんて大変だな。
66通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 21:58:43 ID:???
>>65
まあカツでだいぶなれたと思う
67通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 22:02:24 ID:???
GOOD!
シンがカツ的な立場になりそうで怖い。
カミーユがレイ辺りと協力できれば、何とかなりそうだが・・・
68カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/03(火) 22:19:56 ID:???
「これは……こんな症例は診たことがない……何というか、
正常な生命活動を保てているのに、彼自身に生きる気力が全く感じられない……」
「つまりどういうことなんだ?」
「言葉では説明しにくいことですが、彼のこの症状は精神疾患の類のものであると
思われます。
重度のストレスによる自閉症とでも言いましょうか……とにかくそんな状態だと思います」
 
放心する少年は、医務室に連れてこられていた。
そんな中、少年を診察した医師の煮え切らない言葉に痺れを切らせたカガリが求めた問い
に医者はそう答えた。
ベッドの上に横になっているその少年は、今もただ生気のない眼で一点を見つめている。

「何故こんな状態であんなものに……」
「もしかしたら、彼は被害者かも知れんな……」
 
カガリの疑問にアスランが反応した。
 
「えっ……?」
「ここ二年、不安定ながらも世界は大きな紛争もなくやってきた。
だとすれば、ストレスが極端に溜まる原因として考えられるのは二年前の戦争の時だけだ…」
「だが、それでは……」
「それはすこし想像のし過ぎではないのかね、アレックス君?」

アスランの推測を受け、うろたえるカガリに代わる様にデュランダルが口を挟んできた。

「想像のし過ぎ……?」
「そうだ」
「ですがデュランダル議長、他に人をこんな風にする原因が見当たりません!」
 
デュランダルの決め付けるような言葉に少し興奮した口調でアスランが返す。
それでも、デュランダルは努めて穏やかな口調で切り返す。
 
「だが考えてみたまえ?彼がこのような状態になってしまった理由はわからないが、
仮に君の言うとおりに二年前の戦争が原因だとすれば彼はその時からあのような状態で
あったことになる。それが今更戦闘機に乗ってあのような場所に放置されていたというのは
おかしくないかね?」
「うん、確かにそうだ」
69カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/03(火) 22:23:06 ID:???
デュランダルの言葉に納得し、カガリは一つ相槌をいれた。
しかし、それでも納得のいかないアスランは少し強い口調で言葉を返す。

「では、彼がこの二年の間にこうなってしまったと言うんですか!?
戦争が終わって、平和な世の中に在ってああなってしまったと…そう言うんですか!?」
「おい、落ち着けアス……、アレックス!」

少し興奮気味のアスランを、うっかり彼の本名を出しそうになりつつもカガリが制止する。
しかし、それでも彼はさらに言葉を続ける。

「議長はあの戦争を終わらせた事が無意味であったと、そう仰るつもりですか!?」
「話が飛躍し過ぎだよ、アレックス…いや、今はアスラン=ザラと呼んだほうがよいかね?」
「なっ……!?」
 
突然デュランダルに本名を言い当てられ、アスランは思わず驚愕の表情を浮かべてしまう。
慌てて取り繕おうとするが、既にデュランダルは分かっていたらしく、そんなアスランの表情の
変化を目を細めて楽しんでいるようだった。
 
「ふふふ…私も単なるお飾りの議長というわけではないのでね?」
「あ…いえ……」
「君の顔はプラント中の人々が知っているからね。あのラクス=クラインと同じ様に……
そんな色眼鏡だけでは有名人のオーラは隠せんよ」
 
そう言ってデュランダルはアスランに体を向ける。
 
「しかしな、ふむ…君が前大戦に対して責任を感じているのはわかる。君はパトリック=ザラ
元議長の御子息だからね。だが、だからと言って君を責めるつもりはないし、戦争を終わらせ
た事が無意味であるとは思わない。現に今、私はこうして平和を乱さんとする者を止める為に
この艦に乗っているのだから……」
 
感情を揺さぶられたアスランは、対照的に寸分も感情を乱さないデュランダルを恐ろしく
思った。勿論、隠し事をしていたアスランの落ち度はあるのだが、口ではこの人物には
勝てないと直感する。
70カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/03(火) 22:28:15 ID:???
少年のことが気になったシンは、部屋の外で一連の会話を聞いて驚きの表情を浮かべて
いた。カガリと共に居た従者の青年が、かの英雄・アスラン=ザラであるという事実は
彼にとって衝撃的なものであった。

(あのアスラン=ザラがなんであんな奴と……)

《さすが、奇麗事はアスハのお家芸だな!》

MSデッキでカガリに投げつけた自分の台詞がシンの脳裏をよぎる。
何だか無性に腹が立って、シンは誰も居ない通路でうつむき、拳を強く握り締めた。
 
そんな時、艦内に警報が鳴り響く。コンディション・レッド発令。
追っていた敵に追いついたのだ。

『コンディション・レッド発令、各員は所定の位置につけ。繰り返す、各員は……』

戦闘配備を告げるアナウンスが流れる。
そんな音声を聞きつつ、シンはMSデッキに向かって無重力の中を泳いで行った……


奪取されたMSを取り返すべく行われたミネルバによる追撃戦は、結果的に失敗に終わった。
奪ったMSを搭載したボギー・ワンと呼称されたガーティ・ルーの艦長イアンとファントムペイン
の司令官であるネオ=ロアノークは、その奇抜な戦法でミネルバを煙に巻き、
まんまと逃げ延びたのだ。
その奇策でピンチに陥るミネルバであったが、アスランの機転により難を逃れる。
しかし、それまでであった。ミネルバはガーティ・ルーを見失った。

そんな折、追い討ちをかけるようにミネルバに衝撃的な情報が入ってくる。

「ユニウス・セブンが地球の引力に引かれているですって!?」
「えぇっ、そ、そんな……!?」

送られてきた情報に驚くタリアと、激しく動揺する副長のアーサー。
ブリッジにいるクルーにもざわめきが起こる。

「ど、どう言うことですか、艦長!?」
「知らないわよ、どうしてあんな近くまで動いているのが解らなかったのよ!?」

混乱するブリッジ。
そして、艦を降りてプラントへと帰還したデュランダルよりユニウス・セブンの破砕命令が
出された。

現場に急行するミネルバ。そして、到着と同時に発進するMS達。
その中に、人手が要るという理由で協力を申し出たアスラン=ザラの姿もあった……
71カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/03(火) 22:30:38 ID:???
ミネルバの病室のベッドの上で、その少年、カミーユ=ビダンは居た。
相変わらずただ一点を見つめるその瞳は何を見ているのだろうか。
物言わぬ彼はただ静かに佇んでいた。
 
カミーユはユニウス・セブンで失われた人の命の叫び声を感じ取っていたのだろうか。
その表情は恐怖に引きつり、寝かされたベッドの上で悶えていた。
 
ユニウス・セブン…プラントの食糧事情を支える農業プラントである。
前大戦の開戦の引鉄となったその岩の塊は、核によって20万以上の犠牲を生み出した。
その、まさに宇宙に浮かぶ巨大な墓標とも言える物体の悲鳴をカミーユは感じ取っていた
のだろう。
そして、それはこれから引き起こされるであろう悲劇も予感していた……


「なぜわからん!?我等コーディネイターにとってパトリック=ザラがとった道こそが
唯一正しい道であった事が、なぜわからんのだ!?」
 
「この、私の家族の眠るユニウス・セブンを地球に落として、連合の愚か者共に我等
コーディネイターの怒りの鉄槌を下すのだ!」
 
「っ……!?」
 
メテオ・ブレイカーによるユニウス・セブン破壊作業の最中、この事件の首謀者と思われる
ジンのパイロットが放った言葉にアスランは激しく動揺した。
前大戦から2年経た今も、死んだ父親の妄執に囚われた者がいるということが、
彼の良心を苦しめていた。
そしてその隙を突かれ、乗機のザクの腕をもぎ取られてしまう。
 
「くぅ……!ユニウスはまだ破壊できていないというのに!」
「貴様もザフトのコーディネイターなら、我等のとる行動に同調を示すべきだ!」
 
追い討ちをかけてくるジン。
しかし、アスランはメテオブレイカーに拠る破砕作業を止めたくは無かった。
早くしなければ、ユニウスセブンは大きな質量を持ったまま地球の重力に引かれてしまう。
このままだとユニウスセブンの岩塊は大気圏で燃え尽きる事無く地表に降り注ぎ、
甚大な被害が出るだろう。
何としてもアスランは被害を最小限に食い止める為に少しでも岩を砕いておきたかった。
72カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/03(火) 22:32:30 ID:???
「言う事を聞かぬのであれば、同胞であっても排除するまでだ!」
「まだだ!ここを砕くまでは……!」
『あんた、こんな時に一体何してんだ!?もう突入は始まっているんだぞ!』

アスランのザクがジンに追い詰められていた時、シンのインパルスが援護に駆けつけ、
それによって難を逃れた。
ジンはシンが撃破し、アスランはメテオブレイカーでその場の岩を砕く。
ユニウスセブンはメテオブレイカーによって真っ二つに切り裂かれる。
そして、その片方は未だ地球の引力に引かれたままであった。


「空が…空が地球に落ちる……!」

誰も居ない病室を抜け出したカミーユは通路をおぼつかない足取りで歩いていた。

「空を…落としちゃいけないんだ……」

うわ言のように呟きながら、彼は外の様子が見える窓の側で歩みを止めた。
そして、そこで彼はいくつかの巨大な岩の塊がまるでマグマのように燃え、
地球に落ちていくのを見た。
今まで生気を失っていたその瞳に移ったその光景は、彼の奥底に眠る意識を揺り動かす。

「お…落ちていく……!」

カミーユを襲う圧倒的な絶望感。
地球に落ち行く岩塊に眠っていたであろう生命の悲痛な叫び声が、彼の魂を激しく揺さぶる。
そしてそれは、彼の直接的なプレッシャーとなって周りの空間へと拡散していった。

「か、艦長、何か、か、感じませんか!?」

アーサーの突然の問いにタリアは答えなかった。彼女自身、信じたくない感覚であったからだ。
そして、それは他のクルーも同様であった。

(……!鳥肌が立っている?何なの、この感覚は…!?)
「か、艦長ぅ…?」
「いいから、黙ってて!これから本艦はユニウスを直接叩かなきゃいけないのよ!?
しゃきっとなさい!大気圏の降下シークエンスを開始して!」

正体不明の気持ち悪さとアーサーの態度にタリアは少し苛立っていた。

「まだ早いと思いますけど……?」
「あぁもう!今からじゃなきゃタイミングが合わないのよ!」
 
アーサーの気弱な声に苛立ち、タリアは声を荒げる。
73カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/03(火) 22:35:05 ID:???
一方、シンとアスランはメテオブレイカーによる破壊作業にギリギリの時間を費やした上、
先ほどのジンの襲撃の影響もあり、最早MS単体での大気圏突入を余儀なくされていた。

「なんでもっと早く離脱しなかったんだ、あんたは!?
くそっ、こっちも離脱しそこなったじゃないか!!」
『仕方がないだろう!ユニウスの大部分はまだ破壊できてなかったんだ!
できるだけ小さくしておくべきだろう!……そう言う君こそ、何故先に離脱しなかった!?』
「あんた一人置いて、自分だけ離脱できるわけないでしょう!
それに後はミネルバが直接叩く手筈になってたんだ!全く、何であんたは……!?」
『まて、……シン、と言ったな君は?何か感じないか?』
「っ……!この感じ…あの時の…!?」

二人が口論をしながらも、地球への降下準備をしている時だった。
二人を包むプレッシャー…シンにとっては二度目となるカミーユのプレッシャーである。
それがほぼ真空の宇宙空間を伝ってきたのである。

『知っているのか!?』
「えっ…いや、何となく……」
『どっちなんだ?』
「……んなことより、大気圏突入ですよ!?そんな状態で出来るんですか?」
『やってみせるさ、このまま灰になるつもりはない』

アスランのザクは右腕と左足が無い状態だった。
機体の強度にも不安はあったが、何よりもバランスが悪くなっていた。
しかし、そんなザクを器用にバランスをとらせ、アスランは水の星に降りていく。

「上手いもんだ……」

そんなアスランの降下にシンも続く。
大気の摩擦による熱と地球の重力を感じながら、シンは先ほどの感覚を思い出していた。

(いつのまにか消えていたけど、さっきのはやっぱり……)

ミネルバは砲撃でユニウスを砕きつつ降下していく。
砕かれた細かな破片はさながら流れ星のように散っていき、
燃え尽きなかった破片は皮肉にも地上を鮮やかに彩った。
シンはそれを上から見下ろし、地球で海岸に佇む二人の男と女は、地上からもの悲しげな瞳
でそれを見上げていた……
                                            〜つづく〜
74通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 23:05:35 ID:???
職人さんGJ!
75通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 01:54:30 ID:???
GJ!
76 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 19:10:26 ID:???
「ルナマリアとレイと俺は敵艦を叩く。
シンはミネルバの護衛を頼む」

強奪部隊へ接近することに成功したミネルバのMSデッキでは、
ブリッジからの通達により各々の機体に乗り込むパイロット達がいた

Zからの通信を肝に命じるパイロットたち――ただ一人を除いて

「何で俺が後方なんですか!?」
「こっちが接近しているのに、敵艦が進路を変えないのは納得出来ない
伏兵がいるかもしれないからな」
「だったら、あんたが残ればいいでしょう!?」
「あのな!状況への対応力が高いインパルスが適任だというのが分からないのか!?
ブラストで出撃!MS戦になったらフォースに換装!わかったな!?」

一方的に通信を切るカミーユ――シンとの関係は冷えきっていた

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第05話『嫉妬』

=======================
77 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 19:12:27 ID:???
インパルスを残して、敵がいると思われる地帯へ索敵しながらじわじわと進む三機――

『敵です!』
「散開!」

ルナマリアの報に対応して指示を出すカミーユ

「時間稼ぎだけじゃもの足りねぇな……
アウルの借りを返すぞ……!行くぜ、ステラ!」
「……うん」

スティングのカオスはポッドを分離させ、Zに狙いを定め、
ステラのガイアは変型し、赤いザクに狙いを定める

「出て来なければ……死なずに済んだのに!」

回避運動をしつつ、ライフルを放つが、カオスはシールドで防ぐ
その後方では二機のザクがガイアと交戦していた
78 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 19:15:15 ID:???
「おい、お前ら!」

カミーユが回線をオープンにする

「なんだ……?」
「……?」

敵からの通信という予想外の事態に、二人は一瞬戸惑った

「カオスもっ、ガイアもっ……!俺が図面を引いて、一から創ったんだぞ!
よくも……よくも盗んでくれたな!!」

カミーユから漏れる本音――シンと初めて会った時の不機嫌さは、
このせいだったのかもしれない

「だからなんだ!?花嫁衣装でも着せに来たのかぁ!?」
「花嫁泥棒が言えたことかよ!」

接近するZを落とさんと、カオスは変型して
腹部ビーム砲を撃つ――しかし、かすりもしない

「くそっ……ステラの負担も大きいな……ネオはまだか!?」
=======================
79 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 19:17:22 ID:???
=======================
――その頃ミネルバの護衛をしているシンは――

「だいたい、何で敵が来るって前提なんだ!?」

愚痴を漏らしていた。来るかも分からぬ敵の伏兵に戦力を裂くとはどういうことだと、カミーユの判断に懐疑的である。

――その時――

凄まじい爆音が響いた
「な、なんだ!?」
『後方から敵艦の攻撃を受けています!直ぐに援護を!』

メイリンからの状況報告に、先程までの懐疑は爆音と共に吹き飛んだ

「くそっ!」

後方に振り返って、二門の大型ビーム砲を照準もそこそこに撃つ――牽制が目的だ

「これじゃ、あいつの言った通りじゃないか!」

認めたくない――だが、認めざるを得ない

それはシンだけではなかった
80 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 19:18:20 ID:???
「MSが残っているだと!」

ネオが驚嘆したように叫ぶ

「敵はこちらの奇襲を読んでいたのかもしれませんな」

傍らの艦長、イアン・リーは対照的に冷静そのものだった

「くそっ……時間を稼がれると奇襲の意味が無いな……
あいつらの回収もきつくなる……
よし、俺も出る。後は任せた」

足早にブリッジを去るネオをイアンは敬礼で見送った

=======================

「このぉ!」

シンはブラストの火力を最大限に使用し、敵艦をミネルバに近付けまいと奮戦していた

『今、カミーユさんがこちらに向かっています!頑張って、シン!』

メイリンからの激励に応えるように引き金を引き続けるシンの目に、
先の、自分に辛酸を舐めさせたMAの姿が映った
81 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 19:19:31 ID:???
「メイリン!フォースを出してくれ!」
『了解です!』

間髪入れずに装備変更をする
ブラストでは的になるのが目に見えていての判断だが、
またしてもカミーユの思い通りになると考えるのは癪だった

「厄介だねぇ、換装システムってやつは」

ガンバレルでインパルスの周囲を囲み、一斉射撃を加える
シンはシールドを使いながら慌ただしく回避を続けた

「このままじゃ前と一緒だ……!なら!」

バーニアを一気にレッドゾーンに持って行き、エグザスに接近する

「近付けば、あの武器は使えないはずだ!」
「おっと!」

ガンバレルをビームスパイク形態に変え、インパルスのコックピットに突撃させる

「なっ……!うわぁぁぁ!」

予期せぬ攻撃に悲鳴を上げるシン――急加速した機体は、すぐには止まれない
シールドも間に合わない
それは死に繋がっている――
82 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 19:23:26 ID:???
「させるかよぉ!」

――はずだった。
しかし、一条の閃光が凶刃をとらえ、ガンバレルは爆散した

閃光が発した先を見据えると、ウェイブライダー形態のZガンダムが
猛スピードでこちらに向かってくる

「あいつか!?くっ……イアン、撤退するぞ!
あいつらにも伝えろ!所定のポイントで合流だ!」

潔いとも取れる素早い撤退に、シンは反応が遅れてしまい、
カミーユが着く頃には、敵艦は既に踵を返していた

「くそっ!相変わらず引き際がいい……」
「……」

悔しがるカミーユとは対照的に、シンは無言だった

「……深追いは禁物だな……
シン、よくミネルバを守った。帰るぞ」

カミーユは簡単にシンを称え、変型してミネルバへと帰還していく
しかし、シンはそのまま宙を漂い続けた

「……あんたなんか……認めてやるもんか……」

嫉妬――カミーユの的確な判断と凄まじい技量に、
シンは命を助けられたのも忘れる程、嫉妬していたのだ

〜つづく〜
83通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 19:35:28 ID:???
GJ!
シンがガキ過ぎる・・・
大人になるんだシン!コーディなんだろ?

カミーユが指揮官として凄すぎるな、アムロ並の手際だよ。

セカンドシリーズ系はカミーユが殆ど設計したのか。
パイロットよりも技術者としての高いのでは?
これで、ナチュラルってのはコーディには認められんだろうな。
ある意味コーディからの嫉妬の対象になるんじゃないか?
84通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 20:19:11 ID:???
このガキッぷり、この嫉妬、
……後の成長へのいい伏線だね!

そしてカミーユ、アンタ設計までこなすんか、、、
想像以上にスゲェぜ! ロウ並みだ!!
85通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 20:23:45 ID:???
GJ!
強奪機体が一機減って、カミーユが加わった分ミネルバにMSを残す余裕ができたんですね。
そしてネオがいい感じ
86通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 20:36:06 ID:???
GJ!
でもNTとコーディネータの能力の差がよくわからんから
カミーユはNT的な能力で戦闘や予知で魅せる
シンは遺伝子弄られたが故の反応や対応を魅せるといった
差別化がうまくできれば最高
87 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 22:16:53 ID:???
「カミーユさんって、どんな人なんすか?
先輩はセカンドステージの設計に関わったんでしょう?」

戦闘が終わり、破損区域を修理しながら、ヨウランは古参のメカマンに尋ねた

「うーん、一言で言うならユニークってとこかな」

歯切れの悪い回答に、ヨウランは顔をしかめる

「……それじゃ分かりませんよ。
でも凄ぇよなぁ……エースパイロットで、
正規採用されるような設計も出来て……才能が羨ましい……」
「おいおい、あいつはナチュラルだぜ?」
「えっ!?」

驚愕の表情を浮かべたヨウランに構わず、古参メカマンは続けた

「とはいえ、最初持ってきた図面は酷かったぜ
だがな、俺たちコーディには考えもつかないユニークなコンセプトが多々あってな
それを俺たちが改良を加えて、セカンドステージが完成したんだ
……だから俺はナチュラルを卑下出来ねぇな
俺たちは優秀だが、理屈が先走って革新的なことは出来ねぇ
って知っちまったからな」
「……バカと天才は紙一重って奴ですか?」
「ま、そんなとこだな。さ、手を動かせ、手を」
「……はい」

ヨウランはショックだった
劣等とばかり思っていたナチュラルだが、
コーディネイターを凌駕する部分もあると
身をもって知ってしまい、認識を変えざるを得ないのだから

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第06話『修正』

=======================
88 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 22:18:13 ID:???
「ナチュラルだって!?」

シンは自室に備えられたコンソールが映す人物資料を見て驚愕した
嫉妬の対象であるカミーユ・ビダンの人物像を調べるために、プロフィールを参照していた時のことだった

「なんで……ナチュラルのくせに!!」

壊さんばかりの勢いで、コンソールに拳を叩き付ける

シンは苛立っていた
認めたくない対象が、劣等という存在であることを知ったのだから

=======================
「ユニウスセブンが落ちている!?」

談話室で、レイが切り出した話題にヨウラン、メイリン、シン、ルナマリアは驚き果てた

「ああ。ミネルバはこのまま破砕作業に出るらしい」
「強奪部隊は?」
「断念だろうな」

静まり返る一同

「なんで俺たちが……!」
「そうだよねぇ……冷静に考えたら、
私達がユニウスセブンを砕く義理なんて無いし……」

口火を切ったのは、シンとメイリンであった

「面倒ね……」

ルナマリアもそれに続く。レイとヨウランは黙ったままだ
89 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 22:20:34 ID:???
「いっそのこと、ナチュラルなんて死に絶えりゃいいんだ」
「お前たち!!」

シンの呪詛にも近い言葉に、偶然その場を通りかかったカガリが噛みついたのだ

「よくそんなことが言えるな!人がたくさん死ぬんだぞ!」
「あんたに言われることじゃないね」
「シン、やめろ」

ヨウランがシンをいさめた。ヨウランをよく知る一同が唖然としている

「ヨウラン?……お前らしくないな」
「ナチュラルだって良いとこはあるんだから、助けてやろうぜ」

ヨウランはなるべく語勢を穏やかにして話したが、それでもシンは気に入らない

「そうだ。そいつの言う通りだ」

カガリの同意に、シンの堪忍袋が更に膨らむ

「だから、あんたには関係ないだろ!?」

怒鳴り声が響く――それを聞き付けたカミーユが人知れず談話室にやって来た
カミーユは場から少し離れていたレイにひっそりと尋ねてみることにした

「どうしたんだ?何があったんだ?」
「少し揉めています」

――返ってきた淡々な報告とは裏腹に、重たい空気――

「ちょっといいか?
……お前は代表が気に入らないみたいだが、何故だ?
下らない理由での行動だったら、只では済まないぞ……」

アスランが語気を強め、威圧的に問いかけた
――シンの瞳は赤い――

「下らないなんて言わせるかっ!!
俺の家族は……俺の家族はアスハに殺されたんだ!!」
=======================
90 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 22:23:07 ID:???
――シンの怒りの言葉の一部始終――
それを聞いたカガリは顔面蒼白で、アスランは戸惑いを隠せなかった
そしてカミーユは、複雑な心境だった
似ているとは思ったが、まさか境遇も似ているとは思っていなかったからだ

「だから、ユニウスセブンが落ちようが、関係ないね!
オーブなんか滅べばいいんだ!」

――だが、この発言は聞き捨てならない――

「おい、シン」
「あんたは……!」

カミーユの存在にレイを除く一同が気付き、その危機迫る表情に閉口した

「人が死ぬんだぞ」
「……」
「人がいっぱい死ぬんだぞ」
「……何が言いたいんです?」
「命は……この世界を支えるものなんだ……
それが簡単に失われることは、酷いことなんだよ!」
「ふん……ナチュラルどもが死んでも影響無いんじゃないんですか?」

わなわなと震えるカミーユ

「歯ァ食いしばれ!!」

――振り上げられる拳
「そんな奴は、修正してやるぅぅ!!」

――鈍い音――
振り上げられた拳はシンの顔面を殴打し、シンは壁際まで吹き飛ばされた

「あんたは……」

うずくまりながらシンは口を開く

「あんたはナチュラルだからそんなこと言ってんだろ!!」
「……立てよ」

カミーユはシンの襟首を掴み上げ、無理矢理立たせた
91 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 22:25:26 ID:???
「そんなものに俺が囚われていると言いたいのか?」
「……ナチュラルもコーディネイターも、皆囚われていますよ」
「貴様っ!!」

シンに再び修正が加えられ、シンは立ち上がることが出来なかった

「誰でもいい……こいつを自修室へ連れていってくれ」

もう誰も口を開く者はいない
一同は、思い思いにカミーユの言葉を噛み締めていたのだ

カミーユは、ヨウランとレイに連れて行かれるシンの背中を見ていた

カミーユの背中は寂しげだった

〜つづく〜
92 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/04(水) 22:26:58 ID:???
明日は忙しくて投下できそうにないので、
先に明日の分を投下しておきました

ではノシ
93通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 22:36:39 ID:???
二発目GJ!

>私達がユニウスセブンを砕く義理なんて無いし……
メイリン馬鹿すぎ!
コーディが管理してた物だろうが!止める理由がありすぎます。

カミーユが言いたい事がスゴイ分かりやすい。
動く理由なんてそれだけで充分過ぎるほどです!

シンがカツ街道を驀進し過ぎている。
戻って来るんだ、シンーー!

コーディの殆どが言ってる事がガキ過ぎて駄目すぎる。
こいつら、本当にプラントじゃ成人扱いなのか?
コーディの説明の一文に
「コーディは精神的な成熟が早い」
とあるが、これって最初期のコーディに限った話じゃないのか?
こんな奴らばかりだったら、出生率云々の前にプラントは滅ぶぞ?
94通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 22:39:21 ID:???
正確には
「(ナチュラル社会で荒波にもまれた)コーディは精神的な成熟が早い」
が正解かと
95通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 22:45:58 ID:???
「コーディは精神的な成熟が早い」
時代によって環境は異なりますから。
種死の新赤は平時のぬる〜いアカデミーでやってた感じみたいだし。
心構えからして違うんじゃマイカ。
ま、種の戦争でプラントは曲りなりにも独立勝ち取って目標を達したみたいだし。
緊張感無くなって平和ボケしたのかな。

実際に現実で大戦から2年やそこらでそうなるもんかは分からんが。
96通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 22:52:01 ID:???
よっしゃ!GJ!
シンが思春期(反抗期?)してる
それがライバル心やらなんやらで捻くれちゃって
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって感じ?
一応アカデミーのエリート君だしね(たまに忘れそうになるが)
97通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 22:52:41 ID:???
えっ、そうだったのか?
98カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:33:48 ID:???
きみの〜すぅ〜が〜た〜は〜〜ぼくに〜に〜てぇい〜る〜

◆XdXnStWCJQ氏GJ!
シンとカミーユがいい感じで反発しあっていますね。
CCAでシャアが言っていた通り「似すぎた者は憎みあう」というのがしっくり来ると思います。

……アムロとシャアは似てないけど

こちらも投下しますね↓
99カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:35:02 ID:???
地球へと降下したミネルバは、カガリを送り届ける為オーブへと上陸した。
そして、ミネルバのクルーにも束の間の休息が与えられた。
カガリとアスランが降ろされた後、各々がそれぞれの息抜きに入る中、シンは病室にいた。

(この人、あの戦闘の中部屋を抜け出したって聞いたけど、どういうんだ……?)
「シン、街には出ないの?せっかくの故郷なんでしょ?」

大して気にもしてない事を考えているところへルナマリアが病室へ入ってくる。

「別に……」

シンはルナマリアにそっぽを向く。

「何よ、その態度は!?せっかく一緒に行ってやろうと思ってたのに!」
「そんなこと別に頼んでないだろ?俺はオーブには来たくなかったんだ」
「なんでさ?」
「ルナに話すことじゃないだろ?」
「あっそぉ、勝手にすればいいわ!この引きこもり!」

シンに一言罵声を浴びせ、ルナマリアは怒った様子で病室を出て行った。

「なっ……引きこ……!?」

いきなりの思いがけない発言に、シンは何も言い返せなかった。
そこへ、入れ違いになるようにミネルバの艦医が荷物を抱えて入ってきた。

「おや、シン?どうした、上陸許可がでたってのに?街には行かないのか?」
「あ、いや……ちょっとそんな気分になれなくて……」
 
医師が困ったような顔をして荷物を机の上に置く。
中には薬が入っているのだろうか、袋が大きくかさばって膨らんでいた。
 
「そうか……医者としてはリフレッシュの為にも外に出て欲しいのだがね。
ルナマリアが誘ってくれたんだろ?」
「えぇ、まぁ……」
 
表情を落とすシンに気付き、医師は優しく問い掛ける。
シンの身の上の話は彼も知っていた。
100カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:36:41 ID:???
「……やはり辛いかね、オーブは……?」
「……はい……」
「だが、いつまでも現実から目を背けていてもしょうがない……
どうだろう、彼を連れて出てみないか?彼も外出すれば少しは変化があるかもしれないし……
任務の一つとでも思ってさ?」

そう言って艦医はカミーユを起こし、車椅子に乗せる。
カミーユは車椅子の上で頭を横に傾けた。しっかりと頭部を固定する事も出来ないのだろう。

「えぇっ!?だ、大丈夫なんですか!?」
「大丈夫さ。身体的には異常は無いからね。……頼めるかい?」

そう聞かれたシンは少し考える。
 
オーブ……シンはこの国に対して憎しみを抱いている。
彼にはかつて共に暮らしていた家族が居た。両親とまだ年端のいかない妹だ。
幸せに続いていた暮らしを一瞬にして奪ったのは一筋の光だった。
目の前に広がる信じられない光景を前に彼はふと光の射した空を見上げる。
そこには青き翼を広げた白いMSが居た。それはさながら白い死神のようにシンには思えた。
シンは生涯その光景を忘れまいと誓った。
 
回想を終え、シンは医師に顔を向ける。

「……正直、気は進まないけど取りあえず行きます。こうしてても仕方ないし……」
「そうか、行ってくれるか!
……そうさ、辛くてもたまには家族に会いに行ってやらなくちゃな!」
「!……そうですね!」

言われてみてシンは家族のもとにほとんど会いに行って無かった事を思い出した。
前大戦後、シンはプラントへ渡ったのでそれからオーブに戻ってくるのは今回が初めて
だった。

(そっか…そういえばあれから会いに行ってなかったんだっけ……)

そう考えると、シンはカミーユの乗った車椅子を押して病室を出て行った。
外へ出ると、皮肉な位オーブの空気は澄んでいた。
青い空と戦争の傷痕を感じさせない綺麗な町並み、そして美しい海。
シンが悔しい位オーブは平和だった……
101カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:39:04 ID:???
カミーユの意識の奥底で、彼は一つの決意を胸に抱いていた。
あの時見たユニウス・セブンの落下、それが呼ぶ悲劇の始まりを予感したカミーユは再び
それを止めるために表に出ようとしていた。

(あんなことがあったこの世界、もう後戻りは出来ないだろうな……)

意識の奥底でカミーユは呟く。

(だが、被害を小さくすることなら出来るはずだ。ニュータイプの力がその一端になれれば……)
《カミーユがそんなことする必要は無いわ……》

一人で居るはずのところに女性の声が響く。
ふと、カミーユが振り返るとそこには一人の女性が立っていた。
その顔立ちはどこか儚く、髪はショートの薄いエメラルドグリーンをし、カミーユを悲しげな瞳で
見つめていた。

(フォウ…どうして……)
《カミーユはあの戦争で十分に戦ったわ……これ以上辛い思いをすることなんてない……》

珍しい紫の口紅で彩られた口で、フォウと呼ばれたその女性は悲しそうに話す。

《あなたはその力と優しさであの戦争を戦い抜いた……実際あなたに救われた人もたくさん
居た……。でも、あなた自身はボロボロ…これ以上辛そうなカミーユは見たくないの……》

そう言い終えるとフォウはカミーユから視線を外し、うつむいた。
カミーユはそんな彼女を優しく見つめる。フォウに抗議されても怒る気にはなれなかった。
カミーユは穏やかに語りかける。

(フォウ……でも僕がこの世界に介入することで救われる人が出てくるかもしれないんだ……
行かせてくれ……)
《……カミーユ……でも、それじゃあ今度こそあなたの心が持たないかもしれない……。
今でさえギリギリの所で保っているだけなのに……》
(わかってるさ)
《わかってないわ…だからそんな風に言える……》
(そうかもしれないけど、僕にはそうすることがニュータイプの使命のように感じているんだ。
……でなきゃ、きっと後悔する事になる)
《そうなの?》
 
なだめる様なカミーユの言葉を受け、フォウは俯いていた顔を上げる。少し泣いていた。
102カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:40:59 ID:???
(そうさ……それにニュータイプの可能性にも賭けてみたいんだ。
ニュータイプが本当に人の革新なら、この世界でもきっと……)
 
そこまで言ってフォウはカミーユの首に腕を回す。
 
《そう……どうしてこうなっちゃったんだろうね……?》
(君のこと、好きだからさ……)

カミーユの答えを受けてフォウは瞳を閉じて軽くカミーユに口付けをする。
カミーユも目を瞑ってそれを受けたが、感触は無かった。

《……わかった、カミーユ、気をつけて……また会いにくる……》
(あぁ……)

フォウの姿が薄くなってやがて消える。
それを見届けると、カミーユは決意のこもった表情で上を見上げた。


カミーユを連れてオーブの街へ出たシンは、岬にある慰霊碑にやって来た。
実際にそこに埋葬されているわけではないが、そこはシンの家族が眠る場所であった。
……シンはそこで一人の男と遭遇していた。

「……君は…花を供えに来てくれたんだ……?」
「ぇ……あ、はい……」

その男は黒髪だが、シンよりもやや茶色がかっていて少しうっとおしそうな感じをしていた。
整った顔立ちはどこか哀愁を漂わせ、全身黒ずくめの服装がそれを更に際立たせていた。
キラ=ヤマトだった。

「ありがとう、ここ潮風ですぐ花が枯れちゃうから……」
「いえ……別に……」
「……?その人は?」
 
キラはおもむろにシンに訊ねる。
ただの病人なのだろうが、何故か車椅子に乗せられているカミーユが気になった。
とても正気を保てている表情ではないが、どこかに強い意思を隠し持っているような気がした。
 
「あっ……いや、なんか病気みたいで……」
「そう……」
 
シンの言葉に納得したわけではないが、車椅子を押すシンに分からない事が自分に分かる
はずがないと思い、その場は軽く流すだけに留めた。
 
「そ、それじゃ俺はこれで、あまり外に居ても良くないみたいなんで……」
「あ、うん……」

こんな所で誰かと出くわすと思っていなかったシンは、場の空気に堪えられず嘘の理由を
言ってその場を離れた。そして、遠くなっていくシンの後姿をキラは無言で見つめていた。
103カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:43:33 ID:???
慰霊碑にお参りを終え、ミネルバに帰る途中にシンは浜辺で沈みかけの夕日を眺めていた。
今は穏やかな海であるが、所々に割れた木や千切れた布等のゴミが散乱している。
ユニウスセブンが落ちた影響だろう。辺りはまるで人里離れた無人島の様に静まり返ってい
る。
シンはカミーユを乗せた車椅子を後ろの方に放置し、波打ち際で片膝を付いてしゃがみこみ、
片手に砂を握り込んでゆっくりとそれをこぼし始めた。

「やっぱり…出るんじゃなかったな……」
「何故そう思うんだ?」
「そりゃあ、あれを見たらあの時の悔しさが……?」

独り言の筈のシンの言葉に来た有り得ない返答に、シンは思わず途中まで答えてしまった。
シンが浜辺に着いた時、辺りに人影は見当らなかった。
少しの間夕日を眺めていたが、誰かが近づいてきた気配は無い。
シンもまだ若いとは言え、ザフトの軍人である。相手がプロでもない限り気付かない筈が無い。
では誰が……?
そんな考えが一瞬のうちにシンの脳裏を一通り駆け巡った後、一つの可能性に辿り着く。
にわかには信じられない事だが、その可能性を確かめるべくシンは車椅子のある後方に振り
返る。

「あの時の悔しさ……?」

そこには夕日を受けて立つカミーユ=ビダンの姿があった。
支える事の出来なかった首はしっかり据わっており、車椅子から立ち上がろうとしている。

「あ、あんた……どうして……!?」

先ほどまでは話すことはおろか、自分で体を動かす事すら出来なかった男が、しっかりした瞳
でシンを見つめている。その姿にシンは激しく動揺した。

「あの隕石落としの事か?」
「いや、違うけど……って、そうじゃなくて、あんた、ずっと意識があったのか!?」
 
カミーユの問い掛けに動揺を続けるシンは質問に答えそうになったが、即座に我に返って
怒鳴りつける。カミーユはそれを気にする事無くシンの質問に答える。
 
「いや、その事しか覚えてないし、なんとなく覚えてるだけだから、あれが本当にあったことなのかどうかもよく分からないんだ……で、何の事なんだ?」
104カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:45:55 ID:???
若干しつこいカミーユの問い掛けにシンは辟易した顔で、しかし内心で激しく動揺しつつも切り
返す。
 
「そ、そんな事はどうでもいい!とにかく、あんたはもう大丈夫なんだな?なら、まだ素性が知
れないわけだからミネルバで取り調べを受けてもらう!
……俺はこう見えても軍人だからな!逃げようとしたって無駄だからな!」
 
聞きなれない言葉にカミーユは首を傾げて怪訝そうに聞き返す。
 
「みねるば……?」
「俺達ザフトの戦艦のことだ」
「ざふと……?」

次々と出てくる聞きなれない言葉にカミーユは間の抜けた声で鸚鵡返しをする。

「あんた…ザフトも知らないのか!?」
「…あぁ、何の事なんだ?」
 
眉を顰め、シンはカミーユを疑う。
一応自分は軍人である事を伝えてあるのだからよもや抵抗する事は無いだろうと思っていた。
カミーユに対する大方の見解はナチュラルであると聞かされていた。
ならば、コーディネイターである自分には逆らえない事を了解しているはずであるとシンは
考えていた。ただとぼけているだけなのか分からないが、シンは訝しげにしつつも説明する。
 
「まさか…記憶喪失とか言う落ちじゃないよな……?
まぁいい、ザフトは俺達コーディネイターの軍のことだ」
「コーディネイター?……また知らない単語だ」
 
シンはカミーユの言葉に驚いた。
いくら何でも世界の常識であるコーディネイターの存在を知らないとは思わなかった。
少し口を開いて硬直していたが、直ぐに呆れたように言葉を紡ぐ。
 
「そんなことも……もういい、これ以上は後にしてくれ」
「あぁ、こちらとしても色々詳しく知りたい」
「詳しく知りたい……?あんた、一体何者だ?」
「それは……」
「まあいい。あんたの正体については取り調べのときにたっぷりと聞かせてもらうさ……!」
105カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:51:03 ID:???
得体の知れないカミーユにシンは目をギラつかせ、口元を少し引き上げて若干の敵意を込めて
言い放つ。こうして多少なりとも脅しをかけておけば、本当に彼がナチュラルなら無駄な抵抗は
しないはずである。
 
「じゃあ、そのミネルバって所に案内してくれ」
 
しかし、カミーユは怯んだ様子は全く無かった。
純粋に情報を知りたいのか、努めて冷静な口調でシンに案内を求める。
そんな様子にシンは肩透かしを食らったのか、折角落ち着きを取り戻そうとしていたのに再び
焦ってしまう。
 
「くそ…何なんだよあんたは……?もういい、俺に付いて来い!
あ、後その車椅子も持って来るんだ!あんたが使ってたやつだからな!」

そう強くカミーユに言い放ったシンは、動揺しながらも精一杯平静を装ってカミーユをミネルバ
へと導いていった。

(どうやら思った以上にこの世界は違うらしい……)

ミネルバへ向かう道すがら、カミーユはあたりを見渡して新鮮な空気を大きく吸い込む。
潮の香りと綺麗に澄んだ空気がおいしかった。
カミーユは違う世界に来ている事は承知していた。断片的ではあるが、地球に落下していく
ユニウスセブンをカミーユは初めて目撃した。それに、先程のシンの話す知らない単語が
決め手となっていた。
不安を抱えつつも、カミーユはこの世界にある種の新鮮さを感じていた……


オーブへと戻ってきたカガリは国家元首としての仕事をこなしていた。
先のユニウスセブン落下事件を受け、すべき事は山ほどあった。
 
そんな中、一方のアスランは先のユニウスでの破砕作戦の時に出会ったテロリストの首謀者が、
亡くなった父・パトリック=ザラを信奉するコーディネーターであったことに悩んでいた。
二年前の戦争では、パトリックは大量破壊兵器である"ジェネシス"を使い、連合軍に多大な
被害を与えて何人ものナチュラルを殺していた。
勿論核を持ち出した連合側にも非はあったが、その核ミサイルは自分たちが全てプラントへ
届く前に破壊した。その上でパトリックはジェネシスを撃ったのである。
彼が最後に見たのは復讐に心を支配された哀れな父の姿だった。
独善が暴走し、部下の制止を振り切ろうとするパトリックは部下の銃弾に倒れて彼の目の前で
逝ってしまったのだ。
そんな父の姿をアスランは忘れようと努力していたが、"パトリック"の名を聞いたとき、
忘れかけていた記憶が蘇ってきたのだ。

《パトリック=ザラがとった道が唯一正しいものであった事が、何故分からん!?》
106カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:53:02 ID:???
この言葉を思い出すたびにアスランの眉間に皺が寄る。
あのテロリスト達がただのゲリラなのか、それとも有り得ない事ではあるがプラントと関係があ
るのか……そんな事を難しい表情で考えていた折に更に衝撃的なニュースが飛び込んで来る。
連合がユニウスセブン落下の原因がコーディネイターであるとして、宣戦布告と同時に再び
プラントに核を撃ち込んだと言うのだ。
幸いプラント側が予め用意してあった強力な殲滅兵器によって事なきを得たが、この事件を
きっかけに連合とザフトは再び戦争状態へと入っていくことになった。
そしてアスランはユニウスセブン落下事件の真相調査を行う為、ディランダルに面会を求めに
プラントへ行く決意を固める。

「えっ……お前、プラントに行くのか?」
 
そんなアスランの言葉にカガリは驚きの声を上げる。
カガリのボディーガードをしていたアスランはその旨を伝える為に彼女の下を訪れていた。
アスランは答えて続ける。
 
「あぁ、どうしても気になるんだ、今回のこと……」
「いや、お前が気にすることじゃないだろう?お前とは関係ないじゃないか?」
 
カガリの言う事は尤もであるが、それでもアスランには行かざるを得ない理由があった。
 
「……あのとき、テロリストの一人が父の名を出したんだ」
「……!」
 
アスランの言葉にカガリは絶句する。
やっと二年前の戦争の傷が癒えようとしているこの時期に、何故そんな事を目論む人間が出
てきたのかが分からなかった。
しかし、アスランの言葉を聞いて何となくカガリにも分かった気がした。
二年前、アスランと共に会ったパトリックは、確かに極端な選民思想を持っていたように彼女
には見受けられた。
そんな人物の名前を持ち出す位である、そのテロリスト達が何を考えていたのか何となく
分かる気がした。
 
「そう…だったのか……」
「だから、俺が確かめなきゃいけない……。他にも同じ事を考えている人間が居るかも知れな
いし、もしそれにプラントが関与していたとすると…俺は……!」
「アスラン……」
 
アスランは辛そうに顔を歪ませ、視線を背けて俯いてしまう。
そんな彼に掛ける言葉が見つからないのか、カガリの方も俯いてしまった。
暫くの間沈黙が続いていたが、やがてアスランが何かに気付いたのか顔を上げてカガリを
見つめる。
107カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:54:20 ID:???
「……そうだカガリ、……これ……」

そう言うとアスランはポケットから小さな箱を取り出す。
その箱を開けると、中には紅い宝石が埋め込まれた指輪が入っていた。
アスランはその指輪を箱から外し、カガリの左手をとって薬指にそっとはめる。

「えっ!?アスラン!?あの、これ……!?」
「あっ、いや…その……と、特に深い意味は無いんだ、安物だから……」
「……嬉しい……」
 
カガリは指輪に見惚れている。思わぬアスランからの贈り物に心が弾む。
 
「ありがとう、大事にする!」
「あ…あぁ……」
 
照れくさいのか、アスランは顔を赤らめて頭を掻く。そんな様子をカガリは可愛く思えた。

「…すぐ戻って来るから、心配しないで待っててくれ」
「……あぁ、わかった。けどあまり無茶はするなよ?お前、危なっかしいからな」
 
冗談っぽく鼻を擦りながら言うカガリにアスランの方も笑顔を見せた。
 
「キラじゃないんだ、大丈夫さ。カガリの方こそ気をつけろよ、お前の命はもうお前だけの物じゃ
ないんだからな?」
「わかってるさ」
「じゃあ、行って来る。キラとラクスによろしく言っといてくれ」
「あぁ、帰ってきたらあいつらの所にもいってやれよ?」
「命令か?」
「命令だ」
「フッ……了解」

悪戯っぽく言い放つカガリにアスランは少し微笑んで敬礼をし、部屋を出て行った。
108カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/04(水) 23:59:33 ID:???
一方、プラントに核が撃たれる数時間前のミネルバの艦長室では正常になったカミーユに対
して取調べを行っていた。
部屋の中には艦長であるタリア、副長のアーサー、機体を調査しているメカニック主任の
マッド、更には発見及び回復した場に居合わせた当事者のシンと万が一の事態に備えて
レイ、そして回線のモニターを通してデュランダルがそれぞれカミーユの周りを囲んでいた。
まずタリアが最初に口を開く。

「では、まず貴方の名前と年齢、それと所属を聞かせてもらえるかしら?」
「はい…僕の名前はカミーユ=ビダンです。年は18で所属は……」

ここまで話してカミーユは言葉に詰まる。
自分が別の世界からやって来たなんて話をまともに信じてもらえるだろうかという不安が
あったからだ。
しかし、他に自分にしようが無い事を認識すると、いっそのこと何もかも話してしまおうと
カミーユは思った。
そして、言葉に詰まったまま沈黙を続けるカミーユを見て不審に思ったタリアがもう一度
尋ねる。

「所属は?」
「所属は……反地球連邦組織エゥーゴです。そこでMSのパイロットをしていました」
 
カミーユの言葉を聞き、アーサーは顎に手を当てる。眉間に皺を寄せて怪訝そうに口を開く。
 
「連邦…?連合じゃなくて?とするとユーラシアの…いやいや、それにエゥーゴですか……
聞いたことありませんねぇ?艦長は御存知ですか?」
「私も知らないわ。議長は何か御存知なのではありませんか?」

タリアが議長に少しわざとらしく尋ねる。
しかし、当の本人はそれに気付かずに難しい顔で答える。

『いや、私もそんな組織は聞いたことも無い。カミーユ君、それは確かに存在している組織
なのかね?』
「はい……。ですが知らなくても無理はないと思います。僕はこの世界の人間じゃありません
から」
「「え、えぇ!?」」
『なんと……』

カミーユの衝撃的な発言にシンとアーサーは驚きの声でハモる。そして、その他の全員も、
デュランダルでさえも驚きの表情を浮かべていた。
しかし、すぐに冷静さを取り戻したレイが疑いの言葉をカミーユに投げかける。

「ここに来る前に行った精密検査では、貴方がナチュラルであることが確認されています。
この艦がコーディネイターの艦であることを知って嘘をついているのではないですか?」
「さっきもそこの彼に聞いたけど、そのコーディネイターっての何なんです?」
「貴方、コーディネイターを知らないの!?」
109カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 00:01:33 ID:???
タリアが驚く。
この世界にコーディネイターの存在を知らない者は居ない筈である。
ナチュラルとコーディネイターの区別は、世界の常識として通っているのだ。
 
「それにナチュラルなんて言葉も知りませんね」
 
続けて放たれるカミーユの言葉にその場の全員が首を傾げる。
その様子を超然として佇んでいるカミーユに対してレイが更に疑いの眼を向ける。
 
「それもただとぼけているのではないですか?」
「とぼけてなんかいませんよ。軍人相手にとぼけても、調べられればすぐ解ってしまう事を
言うわけないじゃないですか」
 
カミーユは渋い表情で答える。艦長室にざわめき声が響き渡る。
カミーユは当然だろうという顔で特にその様子を気にしていない表情をしている。
すると、シンが慌てた顔で一歩前に進んできた。
 
「じゃ、じゃあ…あんたは本気で別の世界から来たって言い張るつもりか!?」
『君の理屈にも一理あるが、そんな事を我々に信じろと言うのかね?』
 
デュランダルもシンの意見に続いて発言した事にカミーユは少し苛付いたように答える。
他に言い様が無いのだから、そう答えるしかないと言いたかった。
 
「軍人相手に嘘ついても仕方が無いんです。僕には他に言い様がありません」
「ふぅ……参ったわね……」
 
意見を曲げる気の無いカミーユに対してタリアは溜息をついた。
それでも納得できないのか、レイがまたも質問する。
 
「妄想なんじゃないですか?受け答えは出来ても精神が安定してるとは言えません」
「ちょっと待ってください。その彼の言うこと、自分にはあながち嘘とも思えませんぜ」

各々がカミーユ相手に押し問答のようなやり取りをしている中、マッドが流れを止めるように
口を挟む。
すると、カミーユ以外の全員がマッドに振り向いた。

「おぉっ、一気に……!……ま、まぁ取りあえずこれを見てください。これは彼が発見時に
乗っていた戦闘機の解析結果なんですがね?これを基にメカニック的見地からですが論拠
を述べさせてもらいます」

そう言うと、マッドはスクリーンに画面を映し出す。
110カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 00:03:11 ID:???
(Ζもあるのか……!)

「まずこの戦闘機で最初に目に付いたものがですね、コックピットが全天周モニターになって
いる事と、構造がフレームと装甲に分かれている事が大きく我々の技術と異なっています」
「新規に連合が開発したんじゃないのか、それ?」
 
シンが早々に口を挟む。すると、レイが注意を与えてきた。
 
「シン、まだ始まったばかりだ。おとなしくしていろ」
「けど……」
「シン、だまってて」
「……はい」
 
言い訳するシンにたしなめる様にタリアが睨みをきかせる。
その視線に身を強張らせ、シンは素直に返事をする。
そんな様子にマッドが窺うように口を開く。
 
「……続き、話していいですかい?」
「えぇ、ごめんなさい」
 
タリアがそれに平然と返す。
 
「で、次に問題なのは動力炉と使われている装甲です。
動力炉の方は、信じられないことですが、どうやら核融合炉のようなんです」
「核融合炉!?それって……何でしたっけ?」
 
驚いた声でアーサーが天然ボケをかます。
またも話を阻害されたマッドは溜息をつき、タリアはアーサーをきつく睨んだ。
 
「アーサー、こんな時に冗談は止めて頂戴」
「はっ、すみません……」
「核融合炉の実用化には我々は以前失敗している。だが、その出力はあのフリーダムに搭載
された核分裂炉より上だと言う話だ。ただし、その制御は相当に難しいらしいな」
 
レイが説明口調でアーサーの疑問に答える。
 
「まぁ、実際の所そんなにパワーが出てるとは思えないんですがね……」
 
マッドが怪訝そうに言う。詳しくは調べていないが、どうやら彼の思っていたよりも残念な結果
が出たらしい。
  
「ふぅん…詳しいんだな、レイ」
「常識だ。知らなかったのならお前ももう少し勉強したほうがいいぞ、シン」
「……ヘン、悪かったな」
 
レイの厭味な一言に不貞腐れた様子でシンが不平を口にする。
111カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 00:05:31 ID:???
「一応これの解析も試みてみたんですがね、不明な点が多すぎて完全にお手上げなんです
わ。どうも我々の技術とは全く異なる物みたいで……」
「ニュージャマーキャンセラーは積んであったんですか?」
 
不貞腐れていたかと思うと、マッドの声を聞いたシンが急に明るい顔で発言する。
そして、"どうだ"と言わんばかりにレイの顔に視線を送る。
 
「核融合炉にニュージャマーは関係ない。あれは核分裂を抑止するものだ」
「へ……?」
「どうやらシンは本格的に勉強をしたほうが良さそうだな」
「あぁ、我ながらそう思う……」

冷静にシンの視線に対抗するようにレイが説明する。
その説明を受けて、シンの自信が粉々に砕け散る。自分の学の無さを情けなく思い、ガックリ
と頭を垂れる。
何処までも冷静で厭味なまでに完璧に見えるレイに一泡噴かせてやろうかと思っていたが、
逆に返り討ちにされてしまった。

「ちょっと待ってください、核融合炉の実用化に失敗したって……じゃあこちらのMSは全部
核分裂炉で動いてるんですか?」

ここで唐突に疑問を持ったカミーユがマッドに尋ねる。それにマッドが首を横に振って答える。

「いや、ユニウス条約と言う条約で核の使用はどんな形であれ原則的には禁止されてるから
な、俺達のMSは基本的にはバッテリーで動いているんだ」
「バッテリー……?電気で動かしてるんですか?」
「あぁ、そうさ」
「そんな無茶苦茶な……」
 
カミーユの中の常識ではとても考えられない事だった。
彼の世界のMSは核融合炉で動くというのが一般的なのだ。
それは、初めてのMS"MS-05"ですらそうだったのだ。
 
「こっちとしちゃあ、あんたの乗ってた戦闘機のほうが無茶苦茶なんだがなぁ……」
 
マッドが苦笑して先を続ける。
 
「んでもって動力炉以上に謎なのが装甲なんです」
「見たところ特に変わった所は見当たらないみたいだけど……」
「えぇ、詳しく調べるのはこのミネルバの設備では無理でしたが、その材質が全くの未知の物
なんです。フェイズシフトこそ使われておりませんが、その強度は我々の使っているMSの装甲
よりも遥かに上です。こればっかりは解析の糸口すら掴めませんでした」
「なるほどね…カミーユ君、これについて話してもらえないかしら?」
 
マッドの後を受けてタリアがカミーユに訊ねる。
それに頷いてカミーユが口を開く。
112カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 00:07:11 ID:???
「はい、これは月から採れる特殊な鉱石から精製されたものです。
もっとも、今Ζに使われている装甲の精製方は最近になって発見されたものですけど……」
「Ζ?あの戦闘機の名前かしら?」
「あれは戦闘機じゃありません。可変型のMSです」
「あぁ、なるほど!それでメインスラスターがあんな風になっていたのか!」
 
要領を得て納得した顔でマッドが声を上げる。その形状からスッキリしない点が多々あったの
だろう。
 
『で、他には何かあるのかね?』
「あ、いえ、以上であります!」

そう言うとマッドはスクリーンに映された画像を消した。
そして艦長室は一瞬、静寂に覆われる。

「……今ので少しは信じてくれますか?」

カミーユの問いかけに皆難しい表情を浮かべる。
とてもではないが、誰もカミーユの言葉を信じられる雰囲気ではなかった。
そんな中、モニター越しのデュランダルが口を開く。

『MSの仕組みだけでは決定力に欠けるが、今の所は君の事を信じることにしよう』
「ありがとうございます」
 
デュランダルの言葉に再び部屋の中がざわつく。いくら他に何も無いからといって、一国を
預かる責任者がこうも簡単に認めてしまう事に驚愕の心持になる。
そんな彼等の空気を気にしないかのようにデュランダルが言葉を続ける。
 
『で、君はこれからどうするのかね、カミーユ=ビダン君?』

デュランダルの問いかけにカミーユは少し戸惑いながらも応える。

「この艦に乗せてもらえませんか?何故この世界に来てしまったのか分からないし、帰り方も
分からない。頼るあてがないんです」
『そうか。では……、ん?』

言葉を言いかけたままデュランダルの口が急に止まってしまった。

「議長、どうされました?」
『……すまない、緊急の事態が発覚した。この件に関してはタリア、君に任せる。では……』
113カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 00:09:57 ID:???
そう言うとデュランダルはすぐさまモニターを切った。
突然の事に部屋の中が不穏な空気に包まれる。

「どうしたのかしら議長……何かすごく慌ててたみたいだけど……」
「あの、艦長?カミーユ君の処遇は……?」
 
難しい顔をしていたタリアにアーサーが訊ねる。

「……身寄りが無いみたいだし、仕様が無いわ。貴方の乗艦を許可します。ただし、貴方にも
仕事をしてもらうし、監視は当然付けさせてもらいます。……それでいいわね?」
「はい、ありがとうございます」

(これで取りあえずは当面の目的を果たせた事になるかな……でも、こんなんで本当にいい
のか、俺?)

カミーユにとってこの世界に介入する事が本当に良いことなのかどうかはまだ分からない。
しかし、今はそれで良いんだと自分に納得させるしかないのも事実であった。
そして……

(あの人、カミーユ=ビダン……何かあるんだ……きっと……)

カミーユを見つめるシンは彼から伝わってきた不思議な感覚を忘れられなかった。
それが一体何なのか、確認が取れるまでカミーユを信頼する気にはなれなかった。


カミーユがミネルバのクルーに迎えられた頃、デュランダルは連合の核攻撃からのプラント
防衛に成功していた。
有事の際に備えていた兵器"ニュートロンスタンピーダー"が役に立ったのだ。
試作機であるが故に一度の使用で壊れてしまったが、連合側の後続が無かった事が幸いし
ていた。
しかし、手段を選ばなかった連合に対し、デュランダルは懸念を抱かざるを得なかった。

(よもや連合が再び我等に核を使うとはな……ブルーコスモスの影もあるだろうが、やはり人
は争いを捨てきれないか……)

宣戦布告と同時に核を撃ってきた連合に対し、デュランダルは徹底抗戦の決意を固める。
こうして人類は再び悲劇の幕を上げたのである。
                                     〜つづく〜
114通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 00:11:40 ID:???
gjです!!
115カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 00:12:28 ID:???
カミーユ復活までやりたかったので結構長くなってしまいました……
時系列が多少ずれていますが、大目に見てください。これからも都合で何度かあるかもしれないので
116通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 00:14:59 ID:???
はてさてカミーユに対するシンの不信はどう解かれるのか、
なにはともあれGJです!
117通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 00:26:51 ID:???
GJ!
シン!もうちょっと勉強するんだ!
お前を見ているとコーディがホントに優秀なのか疑いたくなるじゃない・・・
いや、シンだけに限らんか。
もしかして、コーディが優秀とされる種世界の基準がおかしいのか!?
118通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 00:30:27 ID:???
GJ!!です職人さん二人とも

IN C.E のほうのカミーユ放心状態から戻ってきましたね…
ただぎりぎりってのが気になります
ステラとかの件でまた崩壊したりして…などと不安が
119通常の名無しさんの3倍  :2006/10/05(木) 00:33:32 ID:???
GJっす!
優秀な作戦参謀のレイに、切り込み役のシン。そしてムードメーカーのルナというのが
従来のミネルバ三羽がらすだが、そこに世界は違えど激戦をくぐり抜けてきたカミーユ
が加われば・・・圧倒的じゃあないか、ミネルバの戦力は!!
120通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 04:01:28 ID:???
GJです。正直どっちの小説も面白いので困っております
スパロボのライターより100倍センスがあります

121通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 06:25:54 ID:???
むむむ。
シンにNTの兆候?
NTとの接触により一気に発現って事はあるようだが
122通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 06:39:14 ID:???
カミーユは接触した人間をNTにするからな
特にZZではジュドーやシャングリラチルドレンのNT化しただけでなく
ハヤトにも覚醒を促してたし
123通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 07:25:28 ID:???
そういやミネルバの連中は地球のザフトやコーディネーター、親プラント国を
完全にスルーしてたな。駄目すぎる…
124通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 07:46:32 ID:???
良スレ発見
125通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 08:06:12 ID:???
>>121
ねーよはーかw
126 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 12:14:24 ID:???
GJ!
カミーユ復活ktkr!

俺もボキャブラリー増やさなきゃな……
127通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 19:03:37 ID:???
>>125
はーかw
128通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 19:07:55 ID:???
はーかと書かれてるのを見て瞬間的に「破瓜」の二文字を思い浮かべてしまった俺の若さが憎いorz
129通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 19:13:16 ID:???
>>128
坊やだからさ・・・。
130 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:17:29 ID:???
投下時間とれたから、今日も投下します

今日の分は7000字近くもある……長くてすまん
131 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:20:35 ID:???
破砕作業の開始時刻が迫ってくる
メカマンたちは自らの戦場にて慌ただしく作業をし、
パイロットたちも自らの戦場であるコックピットで待機していた
その中には、破砕作業に志願したアスランの姿も見える

「……何か肌寒いな……」
「そうですか?私は感じませんが……」
「いや、気にしないでくれ」

ルナマリアを軽く一瞥する。カミーユはコックピットのモニター越しの
巨大なコロニーだったものを見たとき背中に鳥肌がたった
それは恐怖も、気候のせいでもない
コロニーから発せられる歪んだ思念が原因だった
自らの直感を信じ、意を決する

『進路クリアー、発信どうぞ!』
「待ってくれ!全MSの装備変更をしてくれ!」
『は?』
「戦闘装備に切り換えてくれと言っているんだ!」
「……またか」

カミーユの通信を聞いたシンは毒づくように言葉を漏らした
あれから、今までの間、暗い自修室に押し込めたカミーユに憎しみさえ感じる
132 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:22:59 ID:???
カミーユの指示を聞いたメイリンが、メカマンたちに戦闘装備の通達を発令する
――暫くすると装備変更を終え、疲れ果てたように座り込むメカマンたちが目に映った

『装備装着完了!進路クリアーです!各機、発進してください!』
「了解!
カミーユ・ビダン、Zガンダム!行きます!」
「ルナマリア・ホーク、ザク!出るわよ!」
「レイ・ザ・バレル、ザク!発進する!」

次々と猛々しく飛び出して行く僚機たち

「ふっ、見てろよ……カミーユ・ビダン……
シン・アスカ……コアスプレンダー、行きます……!」

対照的に、シンは慇懃無礼な態度であった
その瞳は凶々しい光を帯ていた

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第06話『解逅』

=======================
133 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:24:10 ID:???
編隊を崩さぬように目標物へ向かって行く
メイリンによると、先遣隊であるジュール隊が既に作業を行っている、という話だった

「とにかく下がれ!」

ディアッカ・エルスマンの怒鳴り声が上がる
彼の機体、ガナーザクウォーリアは備え付けの大型砲身が唸りを上げ続けていた
武器を持たずに作業に出た戦友たちの援護のためだ
――実は、この騒ぎはテロリストが起こしたものであったのだ
そんな彼等が破砕作業を妨害してくるのは当然だった――

ディアッカの援護も虚しく、次々と丸腰のままで戦死
――否、殺戮されていく戦友たちを目の当たりにしても、
ディアッカは歯噛みするしかできなかった

「くそぉぉぉぉ!」

紅の閃光が黒いジンを捉える――しかし、それは氷山の一角に過ぎない

――だが、氷山が崩壊をしはじめた――

数を急激に減らし始めるテロリスト――ディアッカはその先を見据えた

『ミネルバの増援だ』
後方から来る青いザク――イザーク・ジュールだ

「イザーク!」
『遅れて済まなかった……蹴散らすぞ!』
「了解ってね!」

=======================
134 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:26:08 ID:???
「ルナマリアとレイはあのザクたちの援護を!
俺たちは作業に取り掛かる!」

カミーユの指示が飛び、各々の持ち場へと散って行く

「それにしても、隊長の予感って怖いくらい良く当たるわね……」
「ルナマリア、戦闘中だぞ」
「手は動かしてるわよ!」

レイの讒言を捨てるように放つ弾丸が、ジンを灰塵と帰さしめた

「しかし、あの感覚……ラウに似ているな……」

トマホークを投擲しながらレイもうそぶいた
ルナマリアのことは言えないなと、軽く自嘲する

――ラウもそうだった。予知にも似た凄まじい判断力――

そして自分にもそういうときがあるが、
今回のことは予見出来なかった

「……俺もまだまだだ……」

ミサイルをばらまく――ジンが散る

=======================
135 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:27:29 ID:???
「あれは!?」

正面から接近してくるジン部隊を確認する

「シン!二人で迎撃するぞ!アレックスさんは作業を!」
「了解だ!」
「……了解」

力強い返事の主はアスラン、そして陰のある方はシンである

「……見てろよ……絶望させてやる……」

シンの口許が歪む――それは誰も気が付いていない

=======================

『パトリック・ザラの採った道こそ、我等コーディネイターの行く道なのだぁぁぁ!!』
「なっ……!?」

オープン回線から流れる、テロリストの一人から叫ばれる血の出るような言葉によって、アスランは身が凍る気がした
その隙を見逃さなかったテロリストは、ザクウォーリアのメインカメラをブレードで破壊する

「しまった!」
『下がれ!』

ジンに蹴り飛ばされ、後方へ流されるアスラン
メインカメラの損傷で細かい作業が出来なくなった身では、さして働くことは出来ないので、
ユニウスセブンから離れてしまおうが同じだった

「なぜ……父の名が……」

アスランはコックピットの中で、
テロリストの言葉によって心を締め付けられるのを感じた

「アレックスさん!?
くっ……このままじゃ……!
シン!俺がここを受け持つ!お前は作業に行け!」
136 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:30:14 ID:???
カミーユの必死の言葉に、シンの口がにやりとつり上がる

「……どうした?聞こえないのか!?
……だが、俺がここを離れればシンが……!
くそっ!!」

カミーユの問掛けに返事はない

「(手なんか貸すもんか!やりたいなら一人でやればいいんだ!)」

――確信的な通信断絶――ジンと交戦し続けるシン
アスランを戦闘不能にしたテロリスト――
サトーのジンもこちらにやってきた

『貴様らも退け!』

敵からオープン回線が繋がれた

「……なぜこんなことをする!」
『ナチュラルに鉄槌を下すのだ!』
「……どいつもこいつもっ!!」

その刹那――!

『『『な、なんだ!』』』

その場にいた全員が驚愕する――ただ一人カミーユを除いて
137 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:32:19 ID:???
――鈍い桃色に輝きだすZがそこにいた――

「そんな下らないものに心を縛られて……
こんなものを地球に落とすと言うのか?」
『く、下らないとはなんだ!!』
「自分達が優秀なのを鼻にかけて、
ナチュラルを壁にぶつかっている劣等だと見下して……」
『何が言いたい!?』
「そうしてるお前らが一番、壁にぶつかっているんだ!
他人を理解しようとせず、わかったような口を利いて自分で自分の心を縛りつける!
それは下らないことなんだよ!」
『……こいつっ!?』
シンもこの通信を聞いていた――何も口にすることは出来なかった

更にZの光が増していき、辺りを包む
シンの意識はそこで途絶えた

=======================
138 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:33:18 ID:???
《お兄ちゃん》

少女の声だ

《マ、マユ!?》
《お願い。もうこれ以上、悲しみを増やさせないで》
《……でも、俺は……》
《あの人が言ったでしょ?そんなことは下らないって……
死ぬのは哀しいことなの……
だからお願い……》

消えて行く少女――

「まってくれ!!」

そこで意識が戻った
瞳には涙が溜っている
だが、それは力強かった

「……マユ……そうだよな……
人が死んでいいわけないよな……
俺は大馬鹿野郎だっ!!」

スラスターを全力で吹かし、ユニウスセブンに向かう
テロリストたちも続いてくるが、何故か攻撃しない
139 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 19:34:15 ID:???
「どういうつもりだ!」
『……天国の妻に叱られちまってな』
『……俺は息子だ』
『お前らもか!?……俺は母だ……
よし、ユニウスセブンを破壊するぞ!』

連なって行くバーニアの閃光――

『お前達!!何をする気だ!!』

サトーは仲間達の寄行に慌てふためいていた

「人は……分かりあえるんだ……」

カミーユから漏れる言葉――サトーは激昂した

『……貴様さえいなければぁぁ!!』

――斬りかかる――

「……くっ……この分からず屋ぁぁぁ!!」

Zもサーベルで応戦する
重なる機体――貫かれたのはジン――

爆発音が広がって行く

「……ユニウスセブンは……?」

カミーユは疲れた瞳で、ユニウスセブンを見つめた
けたたましい音を立てて崩れていくそれを見たとき、
カミーユはぐったりと体をシートにもたれさせ、瞳を閉じ、
同時にZの光は失われた

〜つづく〜
140通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 19:36:17 ID:???
gj
141通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 19:37:14 ID:???
おおGJ!!カミーユのNT能力の発動だ。
テロリストが次々と破砕作業に加わっていくのを、逆シャアのアクシズ落としを彷彿とさせたよ。
シンもこれで少しは成長できたのかな。続きも楽しみにしてます。
142通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 20:19:56 ID:???
GJです!
まさに御大が語った、真の意味でのニュータイプですな。

>「人は……分かりあえるんだ……」
いいセリフだ・・・
何処ぞの電波芸人とは言葉の重みが違うぜ。

今回は若干シンの口調に違和感がありましたが脳内で修正しました。大丈夫です。
シンもようやくカツ化が止まったか?

無印でもそうでしたが、あの世界で壁を作っているのってコーディの方なんですよね。
キラが特にそうでした。今でもそうでしょう。
ラクスにしても上から見た物言いしか出来ないため、壁を作っている人間の一人ですね。
無印の時にはナチュとコーディの共存が目的とか何とか言ってた様な気がしますが
上に立つ人間がこれでは、不可能でしょう。
大体中心人物にナチュの数が少なすぎます。ダメポ。
143通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 20:21:41 ID:???
まあ、ハーフコーディネーターに対する扱いもコーディの方が酷いしな。
144通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 20:42:24 ID:???
ハイパー化GJ
さすが御大曰くカミーユは究極のニュータイプ
CCAにカミーユがいたらこんな感じだろうな
145通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 20:53:26 ID:???
シンのモデルってカミーユよりカツだよなw
まあカミーユは前半はそうだったけど
後半は成長したし
シンはちょっと成長する場面を与えられなかったのが可哀想
146通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 20:56:34 ID:???
gj!
アムロみたいに人と人との絆を繋ぐ方向にもカミーユのNTが発揮されたか・・・
一度は怒りと悲しみに押しつぶされたカミーユだからこそ
ジョージ・グレンの言う所の本物の調整者(コーディネーター)になれるだろう。
しかしサトーは哀れだな・・・復讐心で自分の心を縛りすぎて
深く愛していた奥さんと娘の声を聞く事すら出来なかったなんて・・・
147 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 21:08:40 ID:???
>>142

シンの台詞の違和感ってどこかな?
後学のためにも是非、脳内補完も交えてお聞きしたいのだが……
148142:2006/10/05(木) 21:18:52 ID:???
>「ふっ、見てろよ……カミーユ・ビダン……
「ふっ」じゃなくて、「ふん」だと思っただけです。
何か何処ぞの気障野郎が頭に思い浮かんだもので・・・
細かい所でスイマセン。
149 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/05(木) 21:34:30 ID:???
>>148
確かにそっちの方がしっくりしますね

ジェリドっぽくなってしまった……orz
150通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 22:05:49 ID:???
>>146
カミーユは人と人を繋ごうとしたけど
みんなエゴばっかで疲れちゃったからな
最後は自分も切れちゃったし
151カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:04:26 ID:???
GJです!
ぐったりした後のカミーユが気になる……

そして気になったまま投下↓
152カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:08:31 ID:???
世界が再び二分化して争いが始まった事を受けて、オーブでもこれに対応するべく首長会議
が開かれていた。カガリはオーブの理念――他国の侵略を許さず、他国を侵略せず、他国の
争いに介入せず――の精神に則り、あくまで中立の立場を貫こうとした。
しかし、そんな事もお構いなしと言わんばかりに大西洋連合から同盟の申し入れが入り込ん
でくる。
それに反発するカガリであったが、彼女以外の者はそれに応じようと言う気運になっていた。

「だめだ!大西洋連合との同盟は組めない!」
「ですがカガリ様、このままではまたオーブを焼くことになりかねませんぞ?」
「くっ……しかし、それではオーブの理念に反することになる!」
 
カガリにとってオーブの理念は故・父ウナトから受け継いだ大切な形見みたいなものだったの
だろう。それを放棄する事は彼女には考えられなかった。

「……代表はオーブの理念と国民の生命、どっちが大事なんです?」
「……!?」

頑なに大西洋連合との同盟を拒もうとするカガリに突込みが入る。
ユウナ=ロマ=セイランである。
その見た目は長身の痩せ型で身に纏ったスーツが良く似合っていた。癖のある淡い紫の髪は
後ろで束ねられていて、その顔は自信に満ちている。
一目見た印象からはやや軽薄そうな印象をうけるが、彼はオーブ五大氏族の一つ、セイラン
家の長男であり、カガリの許婚でもあった。
そんな彼がカガリを責めるように問い詰める。

「今、彼らと同盟を組まなければ、彼らは力づくにでもオーブを抑えようとしてきますよ?そうな
れば当然侵略を許さないオーブの理念によってこの国は再び戦場となる……二年前と同じ轍
を踏むことになります。代表はそれで宜しいのですか?」
「……いい訳が無い。だが、それではオーブの理念はどうなる!?お父様が守ってきたものを
私に捨てろと言うのか!?」
 
カガリが顔を紅潮させてユウナに怒鳴る。
そんなカガリを鬱陶しく思ったのか、ユウナは溜息混じりに言葉を返す。
 
「ふぅ……いいですか代表?貴方にとって国民の生命と国の理念、秤に掛けた場合どちらの
方が重いのですか?」
「そ……それは……国民の生命に決まっている……」
「なら、決まりでしょう。大西洋連合とは同盟を結ぶと言うことで」
 
ユウナがカガリから視線を外し、他の会議出席者に向き直る。
そんな様子にカガリは慌てて"待った"を掛けた。
153カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:10:44 ID:???
「ま、待て!だからと言って理念を捨てることなど私には出来ない!
もっと話し合って他の道を……」
「いい加減にしてください代表。これ以上は時間が待ってくれません。彼らが攻めて来てからで
は遅いのですよ?……この国は貴方の玩具ではないのです」
「くっ……ぅ……!」

ユウナの言葉にカガリは言い返すことが出来ない。
未だ政治家として未熟な彼女は余りにも理想を抱きすぎていた。大きな理想を抱いていても、
それを実現させる実力を彼女は持っていなかったのだ。
そんなカガリを嘲笑うかのようなユウナの言葉に、カガリは歯噛みして悔しがる。
そして、会議は大西洋連合との同盟を組むと言う形で閉会となった。
カガリは同盟の締結を止められなかった自分の無力さに憤りながら会議室を出る。
すると、そこで待ち伏せしていたユウナがカガリに話しかけてきた。

「ごめんよ、カガリ?あの場はきつい事を言うしかなかったんだよ」
「……別に気にしていない」
「怒らせちゃったみたいだね?けど、カガリももう少し時勢を見極める目を身に付けたほうが
いい。理念、理念……革命家辺りならそんなのも許せられるけど、カガリは政治家で国の
代表なんだ。こんな事では正直困るんだよ」
「……悪かったな、言いたいことはそれだけか?なら、私は気分が悪い、一人にさせてくれ」

そう言うとカガリは明らかに不機嫌な態度をとってさっさと自室に戻っていった。

「ほんと、困るんだけどねぇ……」

ユウナは肩を竦め、その後姿を呆れた様子で見送った。



「オーブが大西洋連合と同盟を結んだって……!?それじゃあ!?」
「あぁ、正式にはまだ決まってないが、オーブは我々の敵になった」
「えっ?それじゃあオーブの理念とかってのどうなったのよ?」

オーブと大西洋連合が同盟を結ぶらしいとの報を受けてミネルバのクルーは皆動揺していた。
特にシンはカガリへの憎しみもあってか、感情を抑えることが出来ない。

「アイツ…!口では理念だの平和だの言っといて立場が危うくなったらこれかよ!」
「どうしたんだ?」

そこへ通りがかったカミーユが怪訝そうに話に割り込んできた。
154カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:13:54 ID:???
「あっ、カミーユさん。いえ、シンが癇癪起こしてるだけですから……」

そうルナマリアが説明する。

「オーブと大西洋連合が同盟を結ぶらしいのです。シンはオーブを憎んでいますから、それで
愚痴っているのです」

レイが付け足すようにルナマリアに続く。

「憎しみって……何故だ?ここは彼の故郷だって誰かに聞いたんだが……
この間話してた"あの時"っていうのと関係あるのか?」
「あの……それは……」
「俺の家族はあの国に殺されたんだ!」
「えっ……?」

はぐらかそうとしたルナマリアの言葉を切って、シンが語り始める。

「二年前の戦争の時、中立だったあの国はオーブの理念を守る為だとか抜かして国を戦場に
したんだ!好き放題に暴れまわる奴らのせいで俺の家族は流れ弾に巻き込まれて
死んだ……!あの国は、理念を守るために俺の家族を殺したんだ!
あんたに分かるかこの気持ちが!?国の勝手で家族を奪われた俺の気持ちが!?」
「……」
 
激情に任せてしゃべり倒すシンにカミーユは何も応えない。
真剣なシンの表情を見つめて何か考えているようであった。
 
「奴らは理念は守っても人の生命は守らない奴らなんだ!その上今度は核を使った連合と手を
組み、俺達の敵に回ったんだ!癇癪の一つも起こしたくなる!」
「……そう言う事か……どこに居ても上の連中の勝手で普通の人が迷惑を受けるんだな……」
「……あんたにそんな事分かるのかよ?」
「俺だって自分の世界じゃ戦争やってたんだ。似たような経験は何度かある」
「平気な顔してよくもそんな事が言える!」
「いつまでも被害者面して文句ばかり言ってるよりはマシだろう?」
「なんだと!?」
 
カミーユの挑発的な言葉にシンが掴みかかろうと歩を進める。
それに危険を感じたのか、ルナマリアが二人の間に割って入る。
 
「ちょっ、カミーユさん……シンも……」
「そうやって周囲に気を遣わせてる奴が戦場で生き残れるとは思えないな」

険悪な雰囲気の中、ルナマリアに抑えられているシンを尻目にカミーユは吐き捨てるように
そう言ってラウンジを出て行った。
それを見てシンは壁に拳を打ち付ける。
155カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:16:33 ID:???
「あいつ……自分がお荷物だって事分かってるのかよ!」
「全く……何なのよあの人?」
「……」

ラウンジに残った三人の間に気まずい空気が流れた……



オーブが大西洋連合と同盟を結ぶことにより、ミネルバは半ば強制的にオーブを出ることに
なった。
一応の修理と補給は終わっていたが、なんとも後味の悪い出航のために、クルーの士気は
下がっていた。
 
しかし、気落ちしているミネルバを待ち受けていたのは連合の艦隊であった。
そして後方にはオーブ軍が陣取り、ミネルバがオーブ領海を出ると同時に威嚇射撃をしてくる。
ミネルバを戻ってこさせないようにさせるためである。
最早ミネルバは眼前の敵を倒すしか道が残されていなかった。

「前方の連合艦隊より敵MS隊接近!」
「くっ、MS隊の発進準備は出来ているわね!?艦砲射撃後順次MS発進、レイとルナマリアは
ミネルバの守りに付かせて!」
 
バートの報告にタリアが命令を下す。苦しい状況である事は承知していた。
続いてアーサーが指令を仰ぐ。
 
「後方のオーブはどうするんですか!?」
「仕掛けてこない様なら相手にしなくていいわ!」
「了解です!艦砲射撃一斉射、照準は取らなくていい……撃ぇー!」
「続いてMS隊発進!レイ機とルナマリア機はミネルバの甲板にて援護!
インパルスはフォースシルエットにて散開した敵部隊を遊撃!」
 
アーサーの号令の後、タリアがメイリンにパイロット達への指令を伝える。
それを受け、メイリンが伝達する。
 
『MS隊は出撃後、レイとお姉ちゃんは甲板でミネルバの援護、シンは散開した敵を順次撃破
して!』
「了解!シン=アスカ、コアスプレンダー行きます!」
「指令確認…レイ=ザ=バレル機、出るぞ!」
「ルナマリア=ホーク、ザク行くわよ!」

ミネルバからの艦砲射撃が敵部隊を狙い通り散開させる。
そして出撃したレイとルナマリアのザクはミネルバの守りに付き、シンのインパルスが散った敵
を順次撃破していく。
156カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:19:08 ID:???
対する大西洋連合側も、ミネルバが戦闘を開始したのを確認していた。
 
「奴らもMSを出してきたか……相手が新型艦という事はもしかしたらあれが積まれているのか
も知れん。例のMAを用意させろ」
「はっ」
「……ふん、それにしても敵もなかなかやるようだな。単艦なのによくやる……
流石はザフトの新造艦と言ったところか」

大西洋連合艦隊の司令も顎に手を当ててミネルバの戦闘力に感嘆する。

「しかし、数ではこちらの方が遥かに上です」
「その通りだ軍曹。ザフト製のGと思われるMSを敵艦から引き離せ!艦を孤立させるんだ!」
「了解、先行している第一、第二群隊を敵艦に向かわせ、後続の部隊で敵Gを足止めさせます」


次から次へと襲い来るウインダムの群れ。いくらインパルスが高性能とは言え数的不利は明
らかであった。
敵に埋もれるようにしてシンは目に付いた敵MSをビームライフルで片っ端から落としていく。

「くそっ、こいつらうじゃうじゃと!」

何体もいるウインダムをシンは捌ききれない。尚も増え続ける敵に、シンは徐々にミネルバを
離されていってしまう。
そしてそれを見計らったように一部のウインダムがミネルバに向かう。

「あいつら……!」
 
その様子に慌てたシンがミネルバに通信を繋ぐ。
 
『ミネルバ、敵の一部がそちらに向かった!』
「艦長!」
「レイとルナマリアにやらせなさい。それとシンを呼び戻して!全く、突っ込みすぎよ!」
「了解!シン、聞こえる?ミネルバの防衛に戻って!」
『そんなこと言ったってこの数じゃ……!』

シンの周りには既にウインダムによる包囲網が出来上がっていて、それを相手にするだけで
精一杯の状態であった。まんまと敵の策に嵌ってしまったのである。
そして、ミネルバの甲板の上では抜けてきたダガーLの群れを相手に苦戦するレイと
ルナマリアの姿があった。

「もうっ、シンは何やってるのよ!?甲板の上から射撃じゃ、この数相手にきついわよ!」
『シン……敵に乗せられたようだな……』
「冷静にそんなこと言ってる場合じゃないわよ!このままじゃジリ貧でしょうが!」

一瞬レイの方に気を取られたルナマリアの背後からダガーLが襲い掛かる。
157カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:21:49 ID:???
『馬鹿っ……!』
「……っ!?」

しかしすぐにそれに気付いたレイがビームライフルでウインダムを撃墜する。

『口を動かす前に手を動かせ!死にたいのか!?』
「わ、分かってるわよぉ!」

レイに注意され、半ばやけくそ気味にルナマリアは襲い来る敵MSを迎撃し始めた。


「くっ……何やってんだ!このままじゃいずれ沈められるぞ!?」

敵の攻撃に苦戦する状況を見ていたカミーユはミネルバのブリッジへと向かう。
少し前のカミーユなら、こんな時には了承も得ずにすぐに飛び出していたのだが、軍と言う性質
が彼の気性を変えていたのかもしれない。
それはカミーユの無意識の部分に、皮肉にも毛嫌いしていた軍人の証明として刻み込まれて
しまっていた。
 
「ここで沈んで堪るかよ!」
 
カミーユはブリッジへと急ぐ。
 
その頃ブリッジでもタリアがこの戦況を打開するべく決断を下そうとしていた。
そこに息を弾ませてカミーユがブリッジへ入ってくる。

「タリア艦長!」
「……!?あなた、ここはブリッジクルー以外立ち入り禁止よ、すぐに出て行きなさい!」
「僕をΖで出してください!」
 
突然のカミーユの申し出に、タリアは目を丸くして驚く。
 
「正気で言ってるの!?出せるわけ無いじゃない!」
「このまま沈むつもりですか、あなたは!?」
「このままでいるつもりはないわ。
……アーサー、タンホイザー起動!メイリン、シンをミネルバの射線軸から下がらせて!
一気に敵艦を焼き払ってここを突破します!」
「ぇっ、あっ……」
「りょ、了解です!」
 
タリアの命令にアーサーが固まる。
一方のメイリンはインパルスに通信を繋げて退避を勧告している。
それでもカミーユは食い下がる。何故か嫌な予感がしたからだ。
 
158カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:23:08 ID:???
「タリア艦長!」
「君は黙ってなさい!……アーサー!」
「はっ、はいっ!」
「目標は敵艦隊!」
「了解!各員に通達、タンホイザー起動!照準合わせ!目標は敵艦隊、チャージ開始!」

ミネルバの艦首の下から陽電子砲の砲身が浮き上がる。それは一撃でこの戦局を変え得る兵器であった。

「ミネルバがタンホイザーを使う……!?」
「こ、これで何とかなりそうね……!」

苦戦を続けるレイとルナマリアにとって、それは救いとも言える光景であった。


一方の大西洋連合艦でもミネルバから巨大な砲身が浮かび上がってきたのを確認していた。索敵が報告する。
 
「司令!敵艦から何やら巨大な砲身が浮かび上がってきました!」
「そうか、どうやら私の勘が当ったようだな……。よし、ザムザザーを出せ!」

連合の旗艦空母より巨大な三人乗りMAが出撃する。そして、それは艦隊の前でミネルバを正面に見据え、待機する。

「敵艦正面、我が艦隊の前に固定完了しました」
「ザムザザー機関安定、システム・オールグリーン。陽電子リフレクター展開準備完了です」
「よし、陽電子リフレクター展開!敵殲滅兵器をここで食い止めるぞ!」
「「はっ!」」

ザムザザーと呼ばれた巨大MAが光のシールドを展開する。その様子は、戦闘を続けるシンやミネルバの面々にも確認されていた。

「何だあれ……?メイリン!」
『シン、ミネルバの射線上から離れて!ミネルバはタンホイザーを使うわ!』
「タンホイザー!?りょ、了解!」
 
メイリンからの通信を聞き、シンは慌ててインパルスをミネルバの正面から離脱させる。その様子をミネルバも確認していた。
159カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:24:42 ID:???
「インパルス、ミネルバの射線上より外れていきます!」
「艦長、敵艦隊前方に大型MAです!」
「タンホイザー、チャージ80%!発射可能です!」
「な、何をするんだ!?」
 
次々と報告が飛び交い、カミーユは異様なブリッジの雰囲気に呑まれる。
 
「MAごと敵艦隊を焼き払います!……タンホイザー撃ぇー!」
「了解、タンホイザー撃ぇー!」

ミネルバの切り札とも言える大きな砲身から太く紅い光が放たれる。
その光は射線上の敵MS部隊を巻き込み、爆発の閃光が鮮やかにその光を彩る。

「ぅぐっ……!」

ニュータイプ能力が過剰に肥大化したカミーユに、散ったパイロット達の意思が伝わってくる。
その意思の重さにカミーユは思わず呻いた。
ところが、まだ続くと思われたその不快感が急に途切れる。
タンホイザーの紅い光がある一点で弾かれたのである。

「なっ!?」
「タンホイザーが敵MAによって無効化されました!」
「タンホイザーを弾くなんて……」

陽電子砲をザムザザーに弾かれ、ミネルバのブリッジに動揺が走る。

「回避急いで!敵が来るわよ!」

一度放たれたタンホイザーは連射が出来ない。砲身の冷却が必要だし、エネルギーの再充填
に時間が掛かるからだ。
だからこそこの一撃で仕留められなかったミネルバクルーのショックは大きい。
それは甲板の上で戦いながらその様子を見ていたレイとルナマリアも同様であった。

「そ、そんな……タンホイザーが効かないなんて……」
『ルナ、気をしっかりと持て!敵はまだきてるんだぞ!』

押し黙ったブリッジの空気の中、そんな雰囲気を感じてか、カミーユは声を張る。

「僕を出して下さい!あと一機前線に出れれば戦局も変わる筈です!」
160カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:26:49 ID:???
そんなカミーユにタリアが呆れたように言い返す。しつこいカミーユを少し鬱陶しく感じていた。
彼女はカミーユを信じていないのである。
 
「出来ないと言ってるでしょう!私はまだあなたを信用したわけではないわ!
獅子心中の虫に落とされるなんて御免よ!」
「少しでも違和感を感じたら撃ってくれて構いません!こんな所でノコノコと死にたく無いんで
すよ!」
「言ってくれるわね……!」
 
カミーユの言い草に引っ掛かる事があったが、しかし必死なカミーユの表情に何だかタリアは
少しだけ信じてみようと思えた。
 
「タリア艦長!」
「……分かりました、出撃を許可します。
その代わり自分の言った事はしっかり覚えておきなさい」
「はい、有難うございます!」

一言礼を言い、カミーユはMSデッキに向かう。
近くでやり取りを見ていたアーサーは不安げな表情を浮かべた。

「MSデッキに連絡、カミーユのMSを用意させて!」
「い、いいんですか艦長!?」
 
頼りなく訊ねてくるアーサーにタリアは苦虫を噛み潰したような表情で語る。本当は彼女とて
カミーユをMSで出したくは無かった。
しかし、切り札であるタンホイザーを防がれてしまった今、彼に出てもらうしか他に方法が無
いのも事実なのだ。それしか頼る方法が無い事がタリアは悔しかったのだ。
 
「どの道このままではいずれ沈むわ……彼に賭けるしかないのよ」
「しかし……」
「わかってるわ。彼が裏切る可能性は否定出来ないもの。
だからアーサー、照準の一つは常に彼を捉えていて」
「わかりました、そういう事ですか……」
「そうよ」
 
納得したのか、アーサーは晴れやかな表情を浮かべる。それに対してタリアは冷徹な声で
それに応えた。可能性として裏切りがある限り、気を緩める事は許されないのだ。
161カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:29:09 ID:???
カミーユがMSデッキに着くと、既にΖガンダムの準備が整っていた。
慌しい雰囲気の中カミーユは急いでΖガンダムの方へ向かう。
コックピットに入り込み、起動の操作をしているとマッドが話しかけてきた。

「おい、お前が出るのか!?」
「えぇ」
「出た瞬間こっちを向くなんて勘弁だぜ!」
「そんな事しませんよ」
「ほんとかね、こいつは?……そのMS、空飛べないんだろ?どう戦うんだよ?」
「飛べなくても可変機にはやり様があります。……閉めますよ」

そう言うとカミーユは確認もせずにΖガンダムのコックピットハッチを閉める。
そしてすぐさまカタパルトの上に乗せ、ミネルバのハッチが開くのを待つ。

「ハッチ開放遅いですよ!出る前に沈むなんて御免ですからね!」

そう怒鳴るカミーユの声に反応してか、ミネルバのハッチがゆっくりと開かれていく。

「まだ俺は死ぬわけにはいかないんだ……Ζガンダム出るぞ!」

発進の掛け声と共にカミーユは勢いよく飛び出す。そして、滑らかに姿勢制御を行いつつすぐ
さまウェイブライダー形態へとスムーズに変形させ、そのまま前線へと飛び立っていった。
それを見送ったマッドにヴィーノが話しかけてくる。

「何だよあの人、MSに乗った途端に威張っちゃってさ!
戦争がしたいだけなんじゃないんスかねぇ親方!」
「さぁな……確かに出撃の手際はこ慣れた様子だったがな、何とも言えん。
俺はまだアイツの事よく知らねぇからなぁ……」
「俺も全然知らねッスけど」
「んなこたぁ分かってるっつーの!ほら何サボってんだ、手ぇ動かせ手ぇ!
今ミネルバはピンチなんだよ!分かってんのか、こぉの半人前がぁ!」
「うわっ何スか!?親方危ないッス!」

呑気に話すヴィーノを鬱陶しく思ったマッドが鉄パイプを振り回して配置に戻させる。

「えっ!?あのMS……まさかカミーユさんを出したの!?」
「……」

未だ襲い来るウインダムを迎撃する中、飛び出していったΖガンダムを確認したルナマリアは
素っ頓狂な声を上げ、レイは静かにそれを見送った。
                                             〜つづく〜
162カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/05(木) 23:31:33 ID:???
ようやくまともな戦闘場面に突入したかと思ったら、今回も長くなってしまいました……
しかもカミーユ未だに活躍せずとは……orz
163通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 23:31:45 ID:???
GJです
激しくつづきが気なる…
はやく読みたい
164通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 23:33:28 ID:???
>>162
乙です
これからカミーユの最高のNT能力が発揮かと思うと
ワクワクしております
165通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 23:35:48 ID:???
GJです。
憎い幕引きですなぁ。コンチクショー!!

166通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 23:46:04 ID:???
このスレでどこまでいけるかわからないけど
カミーユがコーディネーターやナチュラルを繋ぐ切っ掛けになって欲しいな
コーディネーター、ナチュラルだと言ってる
地球の重さと大きさを想像できない連中にもそれを分からせたい
167カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 00:02:59 ID:???
>>166
その役目は恐らくシンがすることになると思います。
一応カミーユのクロスオーバーものですが、主人公はシンという定義が頭にあります。
自分のSSでのカミーユの存在意義は、本編で上手く行かなかったシンの先導役といった所に重点を置いているつもりです。

まぁ、最終的にシンとカミーユのW主役みたいな形になるかもしれませんが……
168通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 00:17:30 ID:???
>>167
なるほどあくまでカミーユはシンの導きてという役割なのね
でもそういう偏見や差別意識を排除し人を繋ぐのはカミーユの仕事かなとか思ってました
続き頑張ってください
169通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 02:36:27 ID:???
でもいくら成長したとはいえカミーユって17〜18歳なんだよな
シンと大して年齢変わらんのに導くというのもちょっと違和感あるよな
170通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 04:19:43 ID:???
まぁガンダムの主人公が、連載初期と終盤で精神年齢が大きく異なるのは仕様ということで。
・・・・・・一部例外あり。
171通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 04:20:20 ID:???
くそっくそっくそ!!
何でこうも先が楽しみで仕方が無いSSばっかりなんだ新シャアは!!

両氏GJ!!
172通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 06:25:28 ID:???
カミーユとシンって導く導かれる存在というより
少し境遇や性格が似てるからある意味本当の意味で解り合える友人関係になるんじゃないだろうか?
キラやアスランのような腐女子が好きそうなノリではなく
カミーユって何気にZ劇中は友達がまったくいないんだよな
大人の中でほぼ一人だし、後から出てくるカツはただの自重という言葉をしらないし
ファは幼馴染だから同世代の仲間といえる存在がいなかったわけで
一人で全て抱え込まされたらそりゃあ気が触れたくなるのもわかる
173通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 07:18:10 ID:???
性格的にも癇癪持ちな辺り似てるしな。
というかカミーユが大人びてるんで、シンとかと同年代って忘れてたよw
174通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 08:15:55 ID:???
>>172
つトーレス
175通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 13:21:50 ID:???
此処でのファはどうしているんだろう・・・・・?
176通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 13:31:41 ID:Fz1lMUQ+
>>175
UCでアーガマ降りる機を逸してZZでエマポジション
177通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 14:43:20 ID:???
カミーユを捜索中
178 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/06(金) 21:25:37 ID:???
「もう限界だ!!戻れ!!」

シンの悲痛の叫びがコックピットの中に響いた

『まだだ!もっと砕かねば、被害が大きくなってしまう!』
「けど、ジンは大気圏を突入出来ないのを知ってるだろ!?」
『自分で蒔いた種は刈らねばならん!!
お前は沈黙しているあの機体を回収してやれ!!
仲間なんだろう!?』
テロリストが指し示すのは、
鈍い光が失われてから微動だにしていないZガンダムである

『さぁ、行け!』

ガァアァン!

「うわっ!!」
『あのパイロットによろしく言っておいてくれ!』

ジンに蹴り飛ばされるインパルス――流された先にはZガンダム
アスランのザクは既に帰還したようだった

沈黙しているZをミネルバのハッチに移動させながら、
シンは粉々になって行くユニウスセブンを見つめた

――同時に、摩擦熱で爆発して行くジン――
179 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/06(金) 21:27:25 ID:???
「……格好つけやがって……」

シンは無意識に敬礼のポーズをとっていた
それには怒りも哀しみも乗り越えた戦士たちへの畏敬の念が込められていた

テロリストとでさえ、理解しあうことが出来る
そこにはナチュラルもコーディネイターも関係無い尊さがある
しかし、憎しみ、嫉妬に囚われていてはそれは永遠に訪れない
カミーユはそれを今まで伝えたかったのだとシンは理解する
今までの振る舞いを振り返ると、
自分はなんて愚かだっただろうとシンは反省した

「カミーユ……さんに謝ろう……」

あの光景を創ったカミーユは、きっと人の『調整者(かくしん)』だ
あの人の言うことが理解されれば、きっと争い事は消えるだろうと、シンは感じた
しかし、それは儚い願いであった

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第07話『喪失と決意』

=============
180 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/06(金) 21:29:47 ID:???
ミネルバは、細かい破片を更に砕きながら大気圏を突入し、
カガリの計らいでオーブに身を寄せていた

ドックにて、これまでの労をねぎらうかのようにミネルバの整備が始まっていた
回収したきり整備をしていなかったアビスも、時間が取れたことから整備が始まっている

平時の時には仕事の無いパイロットたちには休暇が出された
しかし、その休暇も使わない者がいた

「何でこんなことに……」

医務室にてシンが無念そうに拳を握り締めている
その視線の先には無機質な表情
――カミーユがベッドに横たわっている

あの後、Zで気を失っていたカミーユは医務室へと運ばれた
しかし、何時までたっても意識は戻らない
否。意識はあるのだが、空虚を見つめ、視線が虚ろであった
医者の診断だと、極度の統合失調症に似た症状らしい

自分の無力さを嘆き、涙が溢れる
181 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/06(金) 21:30:54 ID:???
「俺は……見たんだ……
人が……理解しあえる姿をこの目で……
なのに……それを見せてくれたあんたがっ……
何でこんな目に会わなきゃならないんだぁぁぁ!!」

ベッドのシーツにすがって、恥も外聞もなく泣き叫ぶ

人が分かりあえることと比べて、怒り、哀しみ、憎しみがどれだけ下らないことかを身をもって知ったシンだが、
自分を見捨てずにそれを教えてくれた人間はもうここにはいない

こんなことがあってたまるかと、
シンは子供のように泣き続けた

=======================

あまりに疲弊しきったシンを見かねた医者たちは、気分転換に外出を勧められた
気が乗らないシンであったが、艦長命令という手続きを踏んでいたために、
外に出ない訳にはいかなかった
182 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/06(金) 21:35:59 ID:???
仕方なしに行く気も無かった家族が眠る慰霊碑へと足を運んだ
心地のいいはずの潮風すら、感じることが出来ない

「(マユ……俺は……どうしたらいいんだ……)」

夕日が目に染みる
涙が浮かぶのはそのせいにしておこうとシンは思った

《泣かないで》

「えっ……?」

女の声が聞こえた気がした

ユニウスセブンの時に似た感覚がシンを襲ったが、直ぐにそれは消え失せた

「カミーユ……さんはいないんだ……気のせいか……」

きっと疲れているんだろうと自分にいい聞かせ、シンはその場を後にした

=======================

――その日の晩の出来事である――

《シン》
《……カミーユ…さん!?》

カミーユの思念がシンの夢に訪れたのだ
その表情に無機質さはない
183 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/06(金) 21:43:05 ID:???
《……》

カミーユは何も語らない。どれほどの時が過ぎただろうか

《……すみませんでした……俺は……俺は……》

シンが己の生の感情を露にし始める
シンは叱責か、罵声を喰らうかと思った

《気にするな》

しかし、カミーユの表情は穏やかのままだ

《……でも……!!》
むしろシンは罵って欲しかった
お前のせいだと言われればどんなに楽かと思えた

《俺は少し疲れた。ミネルバを頼むぞ》
《……俺には……無理です……》

シンから弱気な言葉が漏れた
そんなシンの肩を叩きながら、カミーユは続ける

《大丈夫だ。お前なら出来る。革新を見たお前ならな
……じゃあ、暫くお別れだ》
《待って下さい!!》

そこで夢は醒めた
ベッドから飛び起き、夢を思い返す

「……俺に……出来るのかな……?」

拳を強く握る
使命感が背中を押した

「……いや、出来るか出来ないかじゃなくて……
やるかやらないかだ……!」

シンの心には、新たな決意が芽生えていたのだ

〜つづく〜
184通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 21:45:06 ID:???
カミーユまた壊れちゃったのかよ…
185 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/06(金) 21:45:08 ID:???
今回少なめでスマソ……

蓄えが消えて、明日から投下スピードが落ちそう……
('Α`)ノシ
186通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 21:53:46 ID:???
GJ!
いかん!カミーユが壊れちゃった!
だが、この辺で一時退場しないと早く終わりすぎるからな。
カミーユが再び目覚めた時に絶望しない事を願いたい。(主に顔芸人・議長・テロ支援国家・テロリストとか)

しばらくはヨーダみたいに、要所要所でシンに助言を与えてくれるだろうから
シンは道を誤らずいけそうだ。
187通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 22:06:47 ID:???
GJ
しかしカミーユ一時退場か…早すぎる気もするがあれだけのことしたって考えれば当然の帰結か

今後はどうなるんだか…まさか他キャラの出演?
188通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 22:21:06 ID:???
やはりガンダム主人公の成長の基本は、スターウォーズなのか!!
GJ!!!
189カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:43:46 ID:???
GJ!
カミーユ……orz

投下します↓
190カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:45:42 ID:???
敵陣の近くで孤軍奮闘を続けるシン。ザムザザーも戦闘に加わり、いよいよ危機的な状況に
陥ってくる。更に、先程のタンホイザーの件もあり、シンの体力も徐々に消耗していく。

「くそっ……このままじゃ……!」

インパルスのエネルギーも既にあと残り僅かである。その不安感からシンに焦りが生じる。
焦りは集中力を奪い、注意力を低下させて隙を生み出す。

「しまった!?」

その隙をザムザザーに突かれ、インパルスはクローで片足を引き千切られてしまう。
そしてそのままもう片方のザムザザーのクローに胴体を掴まれてしまう。
 
「あ……!…ぐっ!」
『フン!ザフトのGも大した事は無いな!』
 
接触回線から勝ち誇ったザムザザーのパイロットの声が聞こえてくる。
……その瞬間、シンの脳裏に"死"と言う言葉がよぎる。
両親の事、妹のマユの事、その他諸々……
絶望と言う言葉はこんな事を言うんだな、とシンは思った。

《生きるんだ……!》

不意に誰かの声がシンの頭に響く。
その声を聞いて、ふと我に返るシン。自分が何故まだこうして生きているのかを思い出す。
まだ死ねない、死にたくないと言う気持ちが頭から溢れた瞬間、シンの精神に変化が起こる。

(こんな所でこんな奴らに殺されてたまるか……俺は生きるんだ……)
「生きるんだよぉぉぉ!」

叫び声を上げた瞬間シンの頭の中で何かが弾ける。
すると焦りは消え、落ち着きを取り戻し、冷静に状況を判断出来るようになる。
瞬時にモニターを見回すと右のモニターに何かが近づいて来てるのが確認できた。
シンには見覚えがある。それはカミーユのウェイヴライダーであった。

(あの人が出たのか……!)
191カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:48:41 ID:???
シンにとって気持ちは複雑だが、好ましい状況である事は分かっていた。
そんなシンの安心感がカミーユにも伝わる。

「落ち着いた……?インパルス、聞こえるか!?こちらカミーユ=ビダンだ、援護する!」

カミーユはウェイヴライダーをMSに変形させ、ビームライフルをザムザザーのクローに二連射
する。一発が命中するものの、まだクローは破壊できない。
それを確認した瞬間、カミーユはバーニアのペダルを一気に踏み込み、同時にマニピュレーター
の操作を行いサーベルラックよりビームサーベルを左腕で引き抜き、逆袈裟切でクローの間接
を狙う。急加速からのΖガンダムの突進にザムザザーは身動きを取れずにクローの間接を切り
取られる。
そしてΖガンダムは少しザムザザーと距離を取った後、再びウェイヴライダーに変形させて高度
を確保する。

『インパルス、一度下がれ!ここは俺が持たせる!』
「了解だ!」

何故戦場にカミーユが出ているのかなんてことは今のシンにとってはどうでもよかった。
ただ、今はこの場を何とかしようと言う気持ちで一杯だったからだ。
バランスの悪くなったインパルスに無茶な加速を掛け、ミネルバへ向かうシン。
無規則に掛かる重圧を気にする事も無くただひたすら懸命に急ぐ。

『ミネルバ、デュートリオンビームとレッグフライヤーとソードシルエットの準備を!』
「えっ!?」
『早く!』
「やんなさい!」

いきなりの要求に一瞬の戸惑いを見せるメイリンであったが、シンとタリアの言葉にすぐに
デュートリオンビームを照射させる。

『MSデッキ、レッグフライヤーとソードシルエットを射出して下さい!』
「おい、お前ぇら、仕事だ!もたもたすんなよぉ!」
「はいっ、親方ぁ!」

マッドの豪快な声が響き渡り、整備士達が一斉に行動を開始する。
 
「よっしゃ、出すぜ!」
 
準備を終え、ミネルバのカタパルトから予備のレッグフライヤーとインパルスの換装装備の
一つ、ソードシルエットが射出される。
 
「…よしっ!」
 
エネルギーの回復を確認し、ソードシルエットへの換装を終えたインパルスは再び前線へと
向かって行く。その体に紅い色を纏って……
192カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:51:42 ID:???
「ぬうっ……!何だあのMSは!?」
「過去のデータベースからも該当機種ありません!」
「ザフトの新型とでも言うのか!?」

カミーユのΖガンダムと交戦するザムザザーのパイロット達は焦っていた。
Ζガンダムは変形を繰り返しながら攻撃してくる。MS形態の時は明らかに空中戦が出来そうも
無い様子なのだが、ある程度攻撃をするとすぐさまウェイブライダーに変形して高度を確保する
戦法で空中戦を戦っていた。
しかし、どう考えても空中で自在に動き回れるザムザザーの方がサイズを無視しても有利の筈
なのに、どういうわけかザムザザーの攻撃はことごとく回避され、Ζガンダムから放たれる正確
な射撃はザムザザーのリフレクターの隙間を撃ち貫く。

「隊長!敵MSが捕捉出来ません!」
「くぅっ、ロックオンに拘るな!目で捉えるんだ!」
「駄目です!死角に入られました!」
「なんだと!?」

ザムザザーは小回りが効かない。カミーユは後ろに回りこみ、ザムザザーの真ん中に向けて
ビームライフルを放つ。

「落ちろぉ!」

後ろからの射撃をザムザザーは回避できずにまともに直撃を受ける。
 
「何だとぉ!?」
「隊長、機関が不安定になっています!このままでは……!」
「海に落ちます!」
「ぬうぅぅ!」
 
コントロールを失ったザムザザーでは既にどうしようも出来なくなっていた。
コックピットの真ん中で隊長が呻き、歯を食いしばるが何も出来なかった。
そしてそのままザムザザーは海に沈み、爆散した。

「後は船をやれば……」

残った敵MSをビームガンで落としながら艦隊の方向へ向かうカミーユ。
 
「……!?あれは……!」
 
艦隊の近くまで接近すると、カミーユの目に煙があちらこちらから昇っているのが見えた。
その様子に何事かと目を凝らす。
すると、そこには大きな剣を振り回す一匹の修羅がいた。
片っ端から文字通り艦もMSも叩き落している赤の映えるMS。ソードシルエットに換装した
インパルスであった。
インパルスは次々と艦やMSを落としていく。
193カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:52:45 ID:???
「何て動きだ……まるで鬼みたいじゃないか……」

そのインパルスの姿にカミーユは戦慄を覚える。

「シン……」
「……」

ミネルバの上からその様子を見ていたルナマリアとレイも、もちろんミネルバクルーも呆然と
していた。
 
こうして全てを破壊しつくしたシンの活躍によって連合の戦力は無効化した。
後方のオーブ軍は仕掛けて来る気配はない。
各MS収容後、ミネルバはその場を離れていった。



最後に帰還したシンはMSを降りるや否や、クルー達に取り囲まれた。

「どうしたんだよシン!急に強くなっちゃってさぁ!」
「いきなり換装パーツ出せって言われて焦っちゃったぜ!」
「何にしてもお前の活躍で命拾いしたぜ!」

賞賛を浴びるシンの脇でカミーユもまたMSから降りてくる。

「お前さんもよくやってくれたな」

話し掛けて来たのはマッドであった。

「僕もまだ死にたく無いですからね。出来る事はしますよ」
「それにしてもあんな戦い方でよく出て行ったな?」
「被弾はしてないはずですよ」
「そうじゃない、お前さんの腕を褒めてやってんだよ」
「お世辞、いらないですよ」
「そうじゃないさ、照れてんのか?」
「見返りは無いって言ってんです」
「ふん、そういうことか捻くれ者め!」

そう言ってマッドは歯を見せて笑い、カミーユも少し微笑んでデッキを後にした。
194カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:55:09 ID:???
その日の夜、カミーユは夕食を終えた後呼び出しを受けていた艦長室へと向かっていた。
その艦長室へ向かう通路の途中で一人の人物がカミーユを待ち伏せしていた。シンだった。
怪訝に思いながらもカミーユがその脇を通り過ぎようとすると、すれ違いざまにシンが話しかけ
てきた。

「あの時の声、あんたか?」
「…何の事だ?」
「しらばっくれるな、俺がMAに捕まったとき"生きろ"って言ったろ?」
「……」
「あの声は確かにあんたの声だった」
 
カミーユは疑惑に満ちた視線で語りかけてくるシンを少し鬱陶しく感じた。
それに付け加え、自分を"あんた"と呼ぶシンにいくらか不満の感情も沸いてくる。
 
「いい加減、名前を覚えてくれないか?俺はカミーユ=ビダンで"あんた"じゃない」
「誤魔化すか!?それで引き下がらないぜ!」
 
不満を口にしたつもりだったが、話を噛み合わせようとしないシンに呆れたのか、カミーユは
大きな溜息をついて応える。
 
「シン……お前にはまだ分からないことだ」
「認めたな……!あの声を聞いたときと同じ感覚を二回体験している。
…一体あんたは何者なんだ?」
「違う世界から来たって言ったろ?艦長に呼ばれてるんだ、又にしてくれ」
「お、おいっ!」

カミーユはシンを横目で見るとその場を去っていった。
シンは初めてカミーユと出会った時から不安を抱いていた。それはカミーユを畏れるという事に
他ならない事で、シンはそれを認めたくなかったのだ。
加えて戦場でのカミーユの動き、不利な機体での戦いはシンの赤服としてのプライドに障った
のだ。
シンはまだカミーユを認めたくなかった。


「失礼します」
 
艦長室へと入室するカミーユを待っていたのはタリアとアーサーだった。

「カミーユ、今日の戦いはご苦労でした」
「はい、有難うございます」
「それで、今度からのあなたの待遇だけど、本国のデュランダル議長との話し合いの結果、
あなたにこの艦のパイロットになってもらう事にしたわ」
「…いいんですか?」
195カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:57:35 ID:???
急な決定にカミーユは怪訝に思い、思わず問い返してしまった。
そんなカミーユの態度を煩わしく思ったのか、タリアの眉間に若干の皺が寄る。
 
「上からの命令よ。軍で働いていたあなたならその意味が分かるでしょ?」
「はい…でも僕は艦長に意見して出て行ったんですよ?それについて…」
「つべこべ言うのはお止しなさい。男の子ならもっとハキハキと!」
「は、はい。すみません……」
 
他人なのに母親のように睨みつけるタリアの迫力に押されたのか、カミーユは気合を削がれて
しまう。他人に何故このような事を言われなければならないのかという不満はあったが、
ウォン=リーのようにいきなり殴られないだけマシかと思った。
 
「…で、その決定を受けてあなたを赤服とします。後で正式に制服を渡しますので、以後あなた
は赤服として行動して下さい」
「その赤服というのは何です?」
 
カミーユの質問を受けてアーサーが答える。
 
「赤服と言うのはザフトのエリートが着る赤い制服の事である。
ザフトには階級が存在しないので服の色でその代わりをしていると言う事だ」
「僕がエリートですか」
「君が過去、違う世界でどのような経験をしてきたかは知らないが、ザフトではまだ新兵だ。
加えて今日の戦果を吟味した上での決定だ。デュランダル議長は君の事を高く評価して
おいでである」
「本音を言うと、私はあなたの事を完全に信用しきれていない所があるわ。けど、実際にこの艦
の戦力も足りていないのも事実なの。
……正直に言えば今日の戦闘でもあなたの言った通りずっとマークさせてもらいました」
「えぃっ!?そ、そんなこと言っちゃていいんですか、艦長!?」
 
アーサーはそんな事を言う必要は無かったのではないかと思う。いくら出撃を許可した時に
そんなやり取りがあったとしても、カミーユの側にしてみれば覚悟の上での言葉の"アヤ"で
あったのかもしれないのだ。
もし、この事がきっかけでカミーユが造反などすれば、Ζガンダムの働きを考えると相当な
被害を被る事になるのではないかと心配する。
しかし、アーサーの懸念に対してカミーユは冷静な顔つきをしていた。
 
「……正しい判断だと思います」
「物分りが良くて助かったわ、期待させてもらいます」
「はい、失礼します」
196カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/06(金) 22:58:50 ID:???
会話を終え、カミーユが艦長室を退出していく。
ドアが閉まり、艦長室にはタリアとアーサーだけが残された。

「艦長…あんなこと言って彼が何か仕出かしたらどうするつもりなんですか!?」
「あの子は賢い子よ。自分と周りの状況は十分に理解しているわ」
「本当ですかぁ……?私にはただの神経質そうな少年にしか見えないんですが……」
「見る目が無いのよ、アーサーは」
「そうですかねぇ……」
 
アーサーの言葉が頓珍漢な発言にしか聞こえないタリアは、そんな彼をなじって笑った。

その夜はミネルバのクルーは今日を無事に乗り切った安堵感に包まれ、次なる戦いに備えて
束の間の休息をとった。
しかし、そんな彼らをよそに世界は大きく動き始める。
 
プラントにて調査を続ける前大戦の英雄の一人は謎の新たな歌姫と出会い、旧友に誘われて
ザフトに復隊する。
そして、デュランダルより新型のMSを授かり、それを駆ってミネルバへと向かう。
同じ頃、もう一人の英雄は襲撃された歌姫を仲間と共に守り、象徴の人形になりかけたオーブ
の姫君を連れ出した。
彼もまた再び自由の翼を広げ、大天使と共に戦場へと舞い戻ろうとしていた。
様々な思いが交錯する中、戦場は冷たい現実のみを人に突きつける事になる……
                                                〜つづく〜
197通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 23:05:20 ID:???
GJ!
しかし隊長役は凸になんのかな?
198通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 23:27:09 ID:???
GJです

>>197
難しいとこだよね
カミーユは指揮するんじゃなくて基本的に自由に戦場を動いて
戦果をあげるほうが得意だからね
隊長になってしまうと部隊をまとめないといけないから
NT能力で感知したことを即座に行動に移すことができなくなってしまう
カミーユは理論より感覚で動くタイプだし
199通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 01:58:03 ID:???
>>197
カミーユは指揮官ではなく、シンと同じく遊撃戦力として動く方が
Zの特性活かせるかもな。ウェイブライダーってほぼスラスター推力で
飛んでいる状態だから、大気圏内だと物凄く燃費が悪い(航続距離が少ない。これは
公式設定でもある)から・・・・・・大規模戦闘ではインパルスやセイバーと足並み
が揃えられないというのがネックかな。
200通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 02:01:30 ID:???
>>199
種世界の物理法則ならだいじょぶじゃね?
201通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 02:03:04 ID:???
まあZは本来強襲用の機体で一撃離脱という戦法が基本スタイルだから
指揮官向けの機体ではない
202通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 02:03:45 ID:???
>>200
翼があれば飛べるからな。
203通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 08:46:42 ID:???
なんかすげー
GJ!
204通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 08:58:36 ID:???
つっけんどんなカミーユとシンの会話がらしくてにやりとした。GJです
ついでにタリアに叱られるカミーユもわろた、おっかさんの雰囲気には勝てんのか。

種世界であっさり空中戦してるのを見ると、初代ガンダムのアムロが秒数を数えながら
ジャンプとブースターで翔びながら空中戦を行ってたのを思い出す。
空中戦のデフレかな、このまま推移すると種にはプロペラ付きMSは出ないな。
205通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 09:45:02 ID:???
ビームローターwktk
206通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 09:52:48 ID:???
>>199
種MS自体が斥力場とかじゃなく、スラスター推力で強引に浮かんでるような気がするけど。
207通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 09:54:02 ID:???
◆XdXnStWCJQ氏の小説はカミーユがはやく元気になって欲しい
新訳で大丈夫なカミーユだからはやく立ち直ってくれー
208通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 12:51:23 ID:???
>>207
◆XdXnStWCJQ氏のカミーユは新訳なのか?
二人共テレビ版カミーユかと思ってた。
209通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 13:26:45 ID:???
どっちのカミーユでもいいがビームコンフューズを披露してやってくれww
210通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 15:23:12 ID:???
新訳見てないから分からないんだが
ビームコンフューズってどんな武装なんだ?
211通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 15:24:36 ID:???
ビームサーベルを回転させて投げつけてそこにビームライフルをうちこんで乱反射させる
んでキュベレイのファンネルを一度に叩き落した
212???:2006/10/07(土) 15:25:15 ID:???
オレはZZの最後でカミーユが元気になってて、浜辺でファと楽しそうに走ってるのを見て本気で泣いてしまった事を思い出したよ。
職人様のSSでカミーユが復活したらオレはきっとまた号泣だな。
楽しみにお待ちしてます。
213通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 15:50:02 ID:???
全部テレビ版カミーユだろう。
新訳なら精神崩壊なんかしないからな。
禿が認めた最高のNT。
214通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 16:00:22 ID:???
>>212
あの後、連邦軍に志願して戦死したって説と
勉強して精神科医版赤ひげ先生みたいなカウンセラーとして
人々に貢献したって説があるけどどっちなんだろう?
どっちもデマや誇張かもしれんが・・・
215通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 16:13:29 ID:???
>>211
thx
216通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 16:30:34 ID:???
>>214
>あの後、連邦軍に志願して戦死したって説と
についてkwsk
217 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 16:33:34 ID:???
「なんでこの距離から射撃が当たるんだ!?
うわっ!!反応速度が速い!!

……なんか酔ってきた……」
「熱心ねー。どうしたの?」

下からルナマリアの声に反応し、シンはハッチを開けた

「研究だよ」
「参考になった?」
「……全然……」

ルナマリアの辛辣な指摘に、シンは肩をがっくりと落とした
――この日、シンは朝一番でMSデッキに走り込むと、Zの戦闘記録を眺めていた
何かヒントでも無いかとの行動だったが、あまりの技量差に驚愕するだけであり、収穫は無いに等しい
それどころか特殊な全方位モニターに酔いを感じてしまう有り様だった――
218 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 16:34:47 ID:???
「大体、技量を盗もうとするのが間違ってるのよ」
「……じゃあ、どうしろっていうんだよ……」
「さぁ……?
……カミーユ隊長が健在だったら、
教えてもらえたのにね……」
「……」

重苦しい空気が流れる――
ミネルバではカミーユの話題は軽いタブーと化していた
戦いの中で精神を患うことは、ドラマなら美談になるかもしれないが、
現実はそうはいかない
戦場に身を置く自分たちも、いつあんな状態になってもおかしくないのだ

「……ミネルバは俺が守る……
それが、今の俺がやるべきことだ」

シンは強い意思を込めるように呟いた
カミーユから託された任務――その荷は重い
=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第08話『向上心』

=======================
219 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 16:36:22 ID:???
「OSの改良だって!?」

古参メカマンの一人が鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている

「改良というか、設定を変えて欲しいんです」
「どんな……?」
「今のOSは、パイロットにかかるGの負担を減らすために
リミッターがついてますよね?」

シンがたどり着いた結論は、技量を磨く前に機体性能を十二分に引き出すことだった

「って、おい!!
外せっていうんじゃないだろうな!!」
「……駄目ですか?」
「駄目駄目!!
機体の限界を上げる心がけはいい。だが、機体がピーキーになり過ぎちまって、
少しの操作ミスでも機体は言うこと聞かなくなる
おまけにG負担が大きくなって、内臓がもたないぞ!」

メカマンが話にならないという風に肩をすくめた
だが、それでもシンは引き下がらなかった

「そこをなんとか!」
「駄目だ駄目だ!
お前の生存率が上がる仕事ならいくらでもやってやる
だが、パイロットを殺すような仕事はやりたくないね!」

メカマンが苛立ちながら去って行く

「だったら……使いこなせりゃいいんだろ……!!」

しかし、シンは不屈だった

=======================
220 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 16:37:35 ID:???
「本当にいいのか……?」
「やってくれ!」

ミネルバの簡易演習場にて、シンに向かって、銃口を向けるレイ

バァァン!

――唸る銃声――

「がはっ……」

シンは腹部を押さえながらその場に蹲った
嘔吐物が辺りを汚した

「止めよう、シン。こんなことをしても無意味だ」
「も、もう一回!」
「やれやれ」

再び引き金を引くレイ

「がっ……げほっ」

今度は血ヘドが飛ぶ

レイのアサルトライフルには、武力デモ鎮圧用のゴム弾が装填されていた
故に、死には至らぬが、その苦痛は想像を絶する
シンは、それを至近距離から腹部めがけて撃つという、なんとも過激な特訓をしていたのだ

バァァン!

……バタリ

「あっ、落ちた」

シンは三発目に気絶した
既に胃の中には何も残っていなかった

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221 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 16:38:48 ID:???
「何、馬鹿なことをやってるの!!」

艦長室で、大目玉を食らっているのはシンである
医務室に運ばれたシンを一目見て異変を感じ取った医師が
詳細をレイから聞き出し、このような次第になったのだった

「何が目的でこんなことを!?」
「内臓を……鍛えたかったんです……」

見るからに小さくなって行くシン
――説教を喰らえるほどすぐに回復できたのはコーディネイターのなせる技だろうか

「ああっ、ナンセンスもいいとこだわ!!
カミーユが倒れて大変なときに!」
「……すみません」
「いい!?もうその特訓は禁止!!わかった!!」
「……はい」

力無くその場を後にするシン――

「次は……ルナに協力してもらおう」

シンはとことん不屈だった
=======================
222 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 16:42:17 ID:???
「本当にいいの?」
「ああ、頼む」

シュミレーターでの模擬戦――しかし、妙にシン機の動きが悪い

「のろいなぁ……」

ルナマリアが気だるそうに引き金を引く
――暴散する機体

「も、もう一回!」
「無駄だと思うけどね……」

――何度も敗戦を重ねて行くシン――

「くそぉ!!」

シンは悔しげにコンソールを叩く

「大体、射撃と移動がマニュアルで勝てるわけないでしょ?」
「……手足のように使えなきゃ駄目なんだ……」
「ま、暇だから付き合うけど……」

結局、50戦全敗という記録を作ってしまったシンであった

「もう勘弁して……寝かせて……」
「……ああ、ありがとう。付き合ってくれて……」

辺りを見渡すと既に朝日が顔を出していた
気だるそうに歩いて行くルナマリアを見送ったシンは
再びコンソールに向き合った

「無駄を無くすんだ……OS制御じゃ、
『ポージング』が消えないんだ……」

ポージングとは、OS制御時に現れる特徴で、
機体のブレを無くすために、攻撃時に一瞬ギクシャクする動作のことを指す
これが隙を生み出す要因の一つであった
カミーユの戦闘記録を見る限り、ポージング動作は皆無である
つまりカミーユはマニュアルで戦っていたことになる

「出来る……俺なら出来る……」

根拠のない暗示を自らにかけるシン――
彼はZのOSが根本から違うことを考えもしなかった

=======================
223 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 16:45:39 ID:???
シンの奇妙な特訓の噂は、瞬く間に艦内を駆け巡った
噂というのは実に膨らみやすく、酷いものでは、

『実弾を防弾チョッキを来て喰らう特訓』

とか、

『MSで折り紙を折る特訓』

といった現実離れしたものもあった

「おい、坊主!」

噂を聞き付けた古参メカマンがシンのもとに訪れたのだ

「なんですか?」
「設定、変えておいたぞ……」
「……本当ですか!?」
「……ったく……お前の熱意には負けたよ……
訓練のベクトルがぶっ飛び具合が伊達じゃない」
「……あはは」

メカマンの呆れた口調に、シンは苦笑いを浮かべた

「……死ぬなよ……」

メカマンのその一言に、どれだけの想いが込められているのだろうか
シンはそれに応えるように、去って行くメカマンに敬礼を向けた

「……生き残って……みせます……!」

きっと、自分のしたことは無駄なことかもしれない
しかし、その無駄がいつか肥やしになるはずだと、シンは自分に言い聞かせた

〜つづく〜
224通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 16:49:32 ID:???
GJ!
シン、お前何処のスポコン漫画主人公なんだよwww
225通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 16:57:14 ID:???
GJ!
シン、何か間違ってると思うがその心意気は買うぞ。
内臓を鍛えるのに鎮圧弾使うなよ・・・orz

だが、努力しているはイイ、やはり何か間違っている気がするが(主に方向が)

カミーユがこう思ってる気がする。
「俺は人選を間違ったかもしれん」
226通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 17:03:03 ID:???
ウルトラマンレオのムチャな特訓を思い出したw
そのうちナイアガラの滝を対艦刀で斬る特訓しそうだ。
227通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 17:21:30 ID:???
>ポージングとは、OS制御時に現れる特徴で、
>機体のブレを無くすために、攻撃時に一瞬ギクシャクする動作のことを指す
>これが隙を生み出す要因の一つであった

こっちでもあるんだな、ポージングwww
コーディなのに直せないのかよ。
228通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 18:52:05 ID:???
>>214
漫画のアウターガンダムに医者ででてなかったけ?
229 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 19:02:36 ID:???
次の話を投下しようか凄く迷っている……
下手するとスレ違いかも……
230通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:04:29 ID:???
>>229
カモン!
231 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 19:07:00 ID:???
いくつも連なる砂時計の群れ――
コーディネイターたちが身を寄せるコロニー、プラントの宙域である

「目標、射程距離に入りました!」
「よし、MS隊を出せ!
コーディネイターどもを撃ち滅ぼすのだ!」

そこには嵐の予兆が静かに訪れていた

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第09話『招かれざる客』

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「くそっ!!やっぱりこうなるのかよ!!」

ダガーをまっ二つに切り裂きながら、イザークは怒りに震えていた

――地球軍は、先のユニウスセブン落下騒ぎの報復として、プラントに攻撃を仕掛けてきたのであった――

覚悟していたことではあったが、
二年前に終らせた筈の戦争が再び訪れ、あの時の犠牲も苦労も全て水泡に帰すのだと考えると
自分達は何のために戦ったのだと虚しくなる
「……今は……やるしかない……」

ビームマシンガンをばらまきながら、自分の憤りを適当な所で切り上げさせた
――そうしなければ、戦うことなど出来なかった
232 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 19:08:41 ID:???
『イザーク!何か妙じゃないか?』

相棒の言葉によって、ふと辺りを見回す
確かに、強襲してきた割には戦線を上げる強引さは無く、
とはいえ、撤退する意図も見えない

「……囮か!?」

以上を踏まえると、時間稼ぎと戦力分断が目的の攻撃という結論に行き着くのが妥当である
そして、別動部隊が存在するとすれば、それが本命の攻撃であるのは間違いない
さらに、本命の攻撃は、確実にこちらを仕留められる『打撃力』を有する可能性が高い

『た、隊長!!別動隊を確認しました!!』

自らの思考を裏付けるように部下の報告が入った

「よし、そちらに向かうぞ!座標を部隊に送信しろ!」

――しばらくして送られた座標をもとに、機体を翻すジュール隊の面々――

「間に合えよ……」

イザークは切に願う
最悪の『打撃力』――核ミサイルが存在していないことを

=======================
233通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:09:05 ID:???
いいね、間違ってるのがいい
間違ったまま突き進んで本当に克服しそうでそこがまたいいwwww
やっぱ主人公って、いい意味でバカな直向さがあった方が面白いんだなぁ
234 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 19:11:28 ID:???
「これは……別動隊です!!」

CIC担当兵が青ざめた表情で叫びを上げた

「だそうだ。どうする?」

しかし、その傍らにいる女は冷静なままであり、歴戦の戦士であることが伺える
そして、問掛けられたモニターに映る男は、苦々しげな様子で返答する

「無論、迎撃してくれ。何が来るか分かったものではないからな
君なら出来るだろう?」

その少し挑発の混じった言葉に、女は鼻で笑いながら受け応える

「当たり前だ。ギル……私の機体を用意させろ!!
あの部隊は核を搭載しているかもしれん
事は一刻を争う!!」

モニターの男――デュランダルを一瞥しながら、女は踵を返して指示を飛ばした
デュランダルはやれやれと言わんばかりに肩をすくめ、一言呟く

「愛しているよ」

女はその言葉のためだけに生きていた

=======================
235 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 19:13:20 ID:???
主戦場と少し離れた戦域にて、両軍の衝突が行われていた
戦線を維持しようと粘る地球軍に対し、戦線を押し上げようとするザフト軍の姿は、
本来の有り様からは駆け離れていた

「あの部隊を落とせ!!」

奮戦するジュール隊――
イザークの儚い願いはあっさりと裏切られたのだ
というのも、敵防衛部隊の後方の戦艦から飛び出していく、
巨大な砲身をその両肩にマウントしているウィンダムが
イザークの願望の破壊を意味しているからだ

『このままじゃプラントが!!』

流石にディアッカも、皮肉を言う余裕は無いらしい

「蒼き清浄な世界のためにぃぃ!!」

ドォオォン!

ウィンダムのパイロットたちがお決まりの台詞を口々に唱えた後、
禁断の弾頭が次々と撃ち出された

「糞ったれぇぇぇ!!」

イザークは絶叫した
それで何が変わる訳でもないが、
憤怒と無情を内に溜めておくなど、到底無理な話だった

『……』

対照的にディアッカは無言になった
己の無力さに身を震わせていたのだ

核ミサイルが唸りを上げ、あまたの命を奪わんとする
236 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 19:15:56 ID:???
『行け、ファンネル』

その時だった――!

バァアァァン!!

プラントに着弾する前に閃光を上げる核ミサイル群――
イザークとディアッカは何が起きたのか理解出来なかった
機体を操縦する気も起きず、ただ閃光を見つめていた

『MS隊!残党狩りを行うぞ!ぼやぼやするな!』

核ミサイルを落としたと思われる白を基調としたMSのパイロットから
イザークたちへ通信が入る
核攻撃を阻止した時点で勝敗は決した
後は撤退する敵を追い落とすのみである

「今のは……一体……?」

イザークは目の前の事実を信じることが出来なかった
しかし、事実は事実であり、プラントが守られたことを素直に喜ぶことにした

〜つづく〜
237通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:17:47 ID:???
・・・ハマーン様?
238通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:24:01 ID:???
シロッコ!?

>ビームマシンガンをばらまきながら、自分の憤りを適当な所で切り上げさせた
スラッシュウィザードのはガトリングビーム砲ではないでしょうか?
239 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 19:28:17 ID:???
>>238
間違えスマソ……

>>全員
スレタイ無視しちまった……スマソ
240通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:36:06 ID:???
>>228
あれ、アウターって一年戦争の話じゃなかったっけ?

ムーンクライシスの方にはいたけど。
241通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:48:11 ID:???
・・・コメントは控えさせていただきます。

でもやっぱ言う。
ハマーン様出すのは良いけど、議長じゃねぇ・・・
242通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:50:02 ID:???
見なかった事にしようぜ!黒歴史だ。
243通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 19:52:10 ID:CLoMd6Gd
GJ!!
ハマーンが出てきたか今後に期待!!
職人さん楽しみに待ってます。
244通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 20:25:37 ID:???
>あの後、連邦軍に志願して戦死したって説と
まさかギュネイに落とされたとか言う話か?
245通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 20:31:13 ID:???
これは完全にスレ違い
246 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 20:32:32 ID:???
A・今まで通りカミーユのみの登場で、シンの成長を中心に物語をミクロに進める

B・Zキャラを出して、物語をマクロに進める

実はどっちのパターンにするか迷って、Bを選択したんだが、
あまり不評なようなら、さっき投下した09話を黒歴史にして09話を再構成するけど……

どちらがいいかな?
前もって相談すべきだった……
247通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 20:39:24 ID:???
>>244
ちょうどそういう話は漏れも聞いた事がある。
医者の話は旧シャア板で知った。
248通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 20:41:53 ID:???
個人的にはA
せっかくシンが無謀な成長始めたのでガンガンイって欲しい
249通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 20:43:31 ID:???
>>246
ぎりぎりでAかなあ。
ハマーン様だと影響がでかすぎて主役を乗っ取っちまいそうだし、収拾もつかなさそう。
ただカミーユとZだけというのもなあ…難しい選択だ。
250通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 20:44:49 ID:???
ギュネイに落とされたっていうやつなら誤解だぞ
あれは逆シャアにカミーユを出したとしても、これはアムロとシャアの物語だからそういう役しかやれないと言っただけだ

医者の話は同人じゃなかったっけ
251通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 20:52:32 ID:???
職人さんが好きな様に書けばいいんじゃね?
252通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 21:01:48 ID:???
ジェリド出そうぜジェリド
253通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 21:05:44 ID:???
>>244
それは捏造だ。
富野はカミーユがギュネイに落とされるなんて一言も言ってない。
昔のジュドー厨は捏造しまくってたからな。
信じている奴が多いだろう。

254通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 21:06:53 ID:???
作者さんのやりたいようにやればいいと思う。
255通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 21:08:45 ID:???
何か今旧板の怨念を感じた、、、、
256通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 21:09:27 ID:???
>>250
これがソース

名古屋テレビ主催の「逆襲のシャア」公開前イベント(1回目87年12月、2回目88年2月14日)での質問コーナー
質問「今回の映画で決着がつくひとは良いんですけど、カミーユやジュドーみたいに決着がつかないひとはどうなるんですか?」
富野「予算の問題で出せませんでした。でも、好きな人はあまり出したくないとも思ったんです。カツみたいになってしまうから。」

ギュネイのギの字もでとらん。
ジュドー厨の捏造だ。

ムンクラは同人でFA
257通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 21:14:25 ID:???
カミーユギュネイに落とされ説はひとまずやめれ

此処はこうゆうスレではない
258通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 22:41:39 ID:???
説も何も全くの捏造だから
259通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 22:53:22 ID:???
>>246
ハマーンだけでシンじゃなくてカミーユに絡むだけならBでもOK

260 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 23:54:57 ID:???
再構成してみました
では、第09話(真)を投下します
261 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 23:55:49 ID:???
――地球連合がプラントへ核攻撃を行った――
そのニュースは瞬く間にミネルバ中に広がった
ある者はこれからのことを憂い、
また、ある者はナチュラルに対して嫌悪感を覚えた

情勢が情勢なだけに、ミネルバがこれ以上オーブに止まることは出来ない
いつ中立を反故にされ、後ろから撃たれるのか分かったものではないからだ

「本格的に戦争になるな……」
「くっ……」

レイの言葉に、シンは歯噛みする

なぜこうも簡単に争いが起きるのか、反省を出来ないのかと
シンは人の愚かさを身をもって実感した
しかし、つい最近までどっぷりと憎悪に漬かっていた自分を思い起こすと、
それも仕方の無いことなのかもしれないと納得してしまう

それが一層苛立ちを加速させた

「カミーユさん……教えてくれ……
どうすれば、あんたが見せたものを、皆に見せられるんだ……」

その答えは返るはずもなかった

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第09話『覚醒』

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262 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/07(土) 23:58:49 ID:???
『コンディションレッド発令!パイロットは直ぐに出撃準備をして下さい!』

シンは駆け足で更衣室へと向かう
先程、耳にした情報によると連合軍艦隊が待ち伏せしていたらしい

「アスハめ!俺たちを売りやがって!」

ついつい口汚くなってしまう
つくづく自分はオーブに縁が無いと軽く自嘲する

「いや……駄目だ……憎しみに囚われるな……」

これでは何も学んでないじゃないかと自分を諌めた

「おぉい!坊主!」

パイロットスーツに着替え、MSデッキに着くと古参メカマンが手を振りながらシンに声を掛けてきた

「なんですか!?」

急ぎ足のまま受け答える

「無理だと思ったら直ぐ帰ってこい!」
「了解です!!」

OS調整を体感しないままの実戦――
危険極まりないが、やるしかない

専用カタパルトに駆け込み、コアスプレンダーに飛び乗った

「……やってやるさ!」

自らを鼓舞し、レバーを握った
その手は少し震えていた
263 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 00:00:11 ID:???
「メイリン!装備はフォースを!発進まだか!?」

震えを騙すかのように通信を開いた

『進路がまだ確保出来てません!』
「何だって!?」
『待ち伏せを受けたため、カタパルトの軌道上に敵が居座っていて……
まず艦砲で敵を分散させます!』
「……」

メイリンの言葉尻から、圧倒的な戦力差を悟った
敵を分散させたからといって、ドッキング中に横槍が入る状況は変わらない

《頭を使え》
「……えっ?」

――囁くような誰かの声――
天啓のようにあるアイディアが閃く

「……メイリン!」
『はい?』
「俺にいい考えがある」

=======================
264 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 00:01:38 ID:???
「よぉし、カタパルトと艦砲は常に警戒しておけよ!」
『『『了解!』』』

ウィンダム隊の面々が口々に上官命令に返答した

『隊長!量産機が出てきます!』
「捨ておけ!所詮砲台に過ぎん!
狙いは飛行MSだ!」

飛行MSが無ければ、守勢一辺倒になる筈だという判断だ
赤と白のザクが、歩行出撃をし、カタパルトデッキの真上に陣取り、
ウィンダム隊はミネルバに攻撃を仕掛ける
無論、先述した命令は忠実に守りながらである

その時だった

『中央カタパルト開きます!』

一人のパイロットの報告に全員が固唾を飲む

『来た!!』
『射線を集中させろ!』

飛び出してくるMSのパーツ群を追い掛けながら、隊総出でビームの雨を降らせる
少し手こずるものの、MSのパーツ群を撃墜するのに成功した

『やった!』

各々歓喜を上げるパイロットたち

『……?いや、待て!』

その中で異変に気付く者がいた

『『『アッー!!』』』

その声で全員がその異変に気付く

『なぜMSがドッキングしている!?』
『さっきのはブラフだったんだ!』

隊総出での駆逐作業が裏目に出て、本命のドッキングを見逃してしまう結果になってしまった

=======================
265 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 00:03:39 ID:???
――シンの『いい考え』とは――

「メイリン、よく聞け!
先ず一回目のパーツを飛ばして敵の目を引くんだ
敵がそれに釣られたら、直ぐに二回目のパーツを射出してくれ」
『そんな子供騙し……』

呆れ果てるメイリン

「集中放火さえ食らわなければいいんだ!後は何とかする!」

少しでも誤魔化せればいい――
そう思ったシンだったが、敵は物の見事に嵌ってくれたのだ

『小癪な真似を!!』

襲いかかってくるウィンダムに、バーニアを吹かせながらライフルで応戦するインパルス
――まだマニュアル操作は完璧に会得していなかったので、攻撃はOS制御に頼っていた

「ぐっ……Gがきつい……」

リミッター制御を取り去った急加速により、吐気が襲いかかる

「けど……ゴム弾の方がきつかったぞぉぉ!!」

もし、あの苦痛を知らなかったら今頃オチていたかもしれないと
シンはあながちあの無謀は無駄ではなかったと感じた

次々と海の藻屑になって行くウィンダム――
266 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 00:05:13 ID:???
『は、速い!』
『あのパイロットは化け物か!?』

無茶苦茶な機動を見せるインパルスに、ウィンダムのパイロットたちは畏怖し始めていた

「落ちろ落ちろ落ちろぉぉ!!」

吐気を押し殺す結果として、鬼のような形相になっているシンは次々とウィンダムを落としていく
――操作ミスも見られない

『シン!タンホイザーで敵の数を減らすわ!
射線から待避して!』
『了解!!』

インパルスが安全圏に待避したのを確認し、
ミネルバは最大火力のタンホイザーの照準を合わせた

「照準、敵艦隊!撃ぇぇぇ!!」

タリアの掛け声と共に赤い高エネルギー体が唸りを上げた
=======================
267 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 00:07:29 ID:???
「何だ……あれは……」

虎の子の陽電子砲――だが、それはある地点で塞き止められてしまった光景を見ていたシンは寒気を感じた
MA――ザムザザーが陽電子砲を止めたのだ

「くそっ!!」

バーニアのレバーを押し上げ、MAに接近する
あれを落とさねばミネルバはジリ貧であると判断したからだ

攻撃し、防御する

しかし、ライフルもサーベルも寄せ付けぬリフレクターはシンに焦りを生じさせた

「どうすりゃいいんだよ!」

そして失策が発生した
「しまった!」

バーニアを吹かす量を間違え、インパルスはコントロールを失って海に一直線に向かって行く
このスピードで叩きつけられれば、只では済まない
――水は一定速度を越えるとコンクリートと化すのだ
フェイズシフトによって機体は無事だろうが、中のシンの命は保証されない

「(格好悪いな……俺……)」

急激なGのせいで薄れ行く意識の中で、シンは自虐的になった

「(自爆で死ぬんだもんな……)」
268 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 00:13:12 ID:???
――目を閉じてしまおう
楽になれる
どうせ自分には無理だったんだ

《それでいいのか?》

――声――

いや、そんな筈はない
冗談じゃない

「こんなことで……死んでたまるかぁぁ!!」

シンの中で何かが弾け飛んだ

――明瞭になる思考――

コンソールのマニュアル切り替えのスイッチを押し、一気にバーニアを吹かす――!
綱渡りのような姿勢制御――ミスは死に等しい

《お前なら出来る》

鳴り止まない声が勇気をくれた

『あの体勢から持ち直しただと!?』

切りもみ落下から生還したインパルスを見て、
驚嘆するザムザザーのパイロットたち
だが、直ぐに思考を切り替え、弾幕を張り始めた

《後ろを取るんだ》

声に従って機体を動かす
Gに構ってはいられない
弾幕をかすらせもせず接近してくるインパルスの動きに、ザムザザーのパイロットたちは恐怖した
269 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 00:17:42 ID:???
『何故当たらん!!』

目前まで接近してきたインパルスに対応し、
弾幕を見限って、クローで応戦する

――降り下ろされるクロー

『消えた!?』

否。急上昇したのだ
クローの慣性でザムザザーの正面は海面に向いた

「背中を見せたな!!」

インパルスのライフルがザムザザーを貫き、光を発しながら爆発していく

=======================

そこからはシンの独壇場だった
ソードシルエットで戦艦を屠る姿に恐れをなしたのか、
連合艦隊は総崩れになって撤退して行く

「これ以上は……無駄な憎しみを増やすだけだ……」

追撃はせずミネルバに帰還し、シンは疲れた体を自室のベッドに預けた

「……また……助けられちゃったな……」

そしてシンは眠った。その表情は、穏やかであった

〜つづく〜
270通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 00:18:52 ID:???
アッー!
271通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 00:20:36 ID:???
だよねまずそこに反応するよね
272通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 00:31:29 ID:???
GJ
>「けど……ゴム弾の方がきつかったぞぉぉ!!」

特訓が無駄にならなくてよかったなシンw
273通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 00:39:25 ID:???
すげぇ、ホントにマジで漢を見せやがった、、、
GJ!!
274通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 00:45:51 ID:???
GJ!!
読んでて普通に鳥肌立ちました!次回も楽しみです!
275705:2006/10/08(日) 00:55:12 ID:???
GJ!
やっぱりこっちの方が良いな。

あの訓練、意味があったのか・・・
よかったな!シン!(涙)

カミーユがジェダイ張りの活躍ですな。
このままでも(寝たきりでも)いいかも。
276通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 01:11:46 ID:???
最終的には職人さんの判断だと思うけど個人的にはAを押します。
277通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 02:41:52 ID:???
ZZでのカミーユみたいだな
これもいい
278通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 03:55:00 ID:???
投下乙です。
やっぱAルートが良いと思います。

それはそうと、切り札(カミーユ)を封印したまま手持ちの戦力で話を引っ張るのって
かつての大長編ドラえもんに通じる面白さがあると思うんだが、皆はどうよ?
279通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 05:29:08 ID:???
>>278
(勝手な話だがSS職人には正直スルーしてもらいたい話題だ)
無駄なインフレ防止にも丁度良いと思う。切り札封印ってのは割りとお約束だな。

序盤からΖが出ていると、話的には後半Ζが息切れせざるを得ないんだよな。
周りが運命、伝説、和田、隠者、暁と乗り換えるから。
一方で(オリジナル要素を禁止すると)バイセン搭載済みΖは強化できない。

と言って最初から最後までΖ&カミーユ最強をやると…福田と何処が違うんだ?って話になるし。
280通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 05:53:21 ID:???
例えが古いが、第4次スパロボSで第一話にゲイオス・グルードを出してその圧倒的な力をアピールして、後半への伏線にするみたいなもんか。
序盤にZの圧倒的な力を演出、そして早々と封印。後半のパワーインフレが激しくなった時に開放すれば、Zが圧倒的に強くても違和感ないしな。
281通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 06:20:17 ID:???
もしもZに強化がありえるとすれば、
Z+C型のデータが入ってたことにしてZ版ハミングバードとか・・・

さすがに無茶すぎるか。
282通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 06:53:07 ID:???
劇中の演出だと
バイセン起動したΖ>後半の4機>>Ζ>セカンドステージ
って感じだから大丈夫かと
283通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 07:01:28 ID:???
GJです
カミーユは寝たきりだけどさすが宇宙世紀では最高のNT
復活することを待ち望んでます
284通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 09:07:45 ID:???
>「俺にいい考えがある」

コンボイ司令かよw
285通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 09:22:17 ID:???
この後、ルナがカミーユにどうアプローチするかが気になる。
286通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 10:00:11 ID:???
カミーユはこのままパイロット引退でシンがZ乗るとか。
287通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 10:03:55 ID:???
そもそも和田はネモクラスなのでZは強化しなくても大丈夫よ。
288通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 11:54:28 ID:???
>>287
誰が上手いこと言えとw
もっとも、ネモもあの世界の量産機では割と高水準なんだけどね
Zとかがトンデモに強いだけで・・・
289カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 13:00:21 ID:???
オーブ近海での連合との戦いに何とか勝利したミネルバは、カーペンタリア基地にやってきて
いた。先の戦闘で消耗したミネルバは修理と補給を受けていた。

「カミーユ、これがあなたの制服になります。これからのあなたの働きに期待させてもらいます」
「はい」

ザフトのパイロットとして任命されたカミーユはタリアより赤服を渡された。
カミーユは一度部屋を出てそれに着替える。
その服は明らかにエゥーゴの制服とは違い、デザインは何となくジオン軍のそれに近い印象を
受けた。
カミーユはその赤い制服に袖を通しながら、エゥーゴで自分の上司であった男の事を思い出し
ていた。

美しいブロンドの髪にサングラス、そして鍛えられた肉体にこの赤服と同じ色のノースリーブの
制服を着た男……クワトロ=バジーナ。
かつての世界の一年戦争でのジオン側の伝説的エースパイロット・シャア=アズナブルであり、
スペースノイドの自治権を得ようとしたジオンの生みの親、ジオン=ズム=ダイクンの息子・
キャスバル=レム=ダイクンでもあった男。
カミーユはこの男に多大な影響を受けていた。
クワトロ=バジーナがいなければ今日のカミーユの存在は無かったであろう。
彼はカミーユのニュータイプとしての才能にいち早く目を付け、それがより良く成長する様に
導いてきたつもりであった。
しかし、その期待はカミーユの心に大きな負担となり、彼の精神的な脆弱さを露呈する事と
なった。
そんなクワトロもコロニーレーザーを巡る最終決戦の最中、過去を清算できなかった自らの
弱さに敗れた。
そしてカミーユがその力の強さ故に押しつぶされてしまった事を知り、見えかけていた希望の
光がかき消されてしまったと言う絶望感が包む中、彼は突然姿を消したのであった……

(あの後あなたがどうなったか知りませんけど、僕はあなたの事を信じますよ)

彼のトレードマークでもあったその制服の色を見つめてカミーユは頭の中でそう呟いた。
290カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 13:02:07 ID:???
「着心地はどうかしら?」
「悪くは無いですけど……派手ですね、これ」
「赤は目立つ色です。これであなたを監視しやすくなるわ」
「疑うのは結構ですが、そういう事はあまり口に出さないで下さい。
…気のいい物ではありません」
「釘を刺してるのよ。でないと、あなたに甘く見られるわ」
「タリア艦長は優秀だと思います」
「おだてても無駄よ。信用を得たいなら地道に成果を稼ぐ事ね。そうすればあなたの監視も
解いてあげるわ」
「今のは本音ですよ。そういう油断が無いところがそうだと言ったんです」
「あなたに評価される云われはないわ。戻りなさい」
「は、はい。失礼します」

少し調子に乗りすぎたな、とカミーユは反省し部屋を出た。

(やはり油断のならない子ね……)

部屋に残ったタリアは色々な意味でカミーユをそう評価していた。



カミーユが正式にザフトとして制服を受け取った頃、ミネルバに一機のMSがやって来た。
パイロットは前大戦後退役していた筈のアスラン=ザラ。
補充人員としてデュランダル議長の指示でミネルバへと配属になったのだ。
その姿にクルー達は驚く。中でもシンはカガリと共にいたアスランに対していい感情は持って
いなかった。

「ザフト特務隊のフェイス、アスラン=ザラだ。本日付でこのミネルバに配属となった、よろしく頼む」

アスランの挨拶を聞くとクルーの間にどよめきが起こる。
フェイスとは大きな権限をもつ称号である。復隊してすぐの、ましてや前大戦末期にはザフトに
対しても仕掛けて来た男がいきなりフェイスとしてやって来たのだ。
だが、アスランの襟元にはその証であるバッジが輝いていた。
291カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 13:03:49 ID:???
「君は……」
「は、はっ!ミネルバでパイロットをしています、ルナマリア=ホークであります!」
「あ、あぁ……艦長はどちらにいらっしゃるのかな?」
「かんしょ……艦長室にいると思われまふっ!」

言い終わってルナマリアはしまった、という顔をする。緊張して台詞を噛んでしまったのだ。

「ありがとう。そんなに緊張しなくていい、もっと楽に話してくれ」
「は、はいっ!すみません……」
「そういう時は『了解』っていうんだ」
「了解です!」

そういい終えるとアスランは艦長室へ向かっていった。
残されたルナマリアは緊張から解放されたせいか、やや疲れた顔をしている。
その様子に不満を持ったシンがルナマリアに突っかかってくる。

「あんな奴に緊張する事無いだろ」
「だってアスラン=ザラなのよ!緊張するに決まってるじゃない」
「ちょっと前にも乗ってただろ?」
「その時は彼がアスラン=ザラだなんて思ってもみなかったわ。オーブの姫と一緒にいたんだ
もの」
「女と一緒だったから意識しなっかたって事かよ?」
 
無思慮なシンの言い草にルナマリアは溜め息をつく。
 
「ハァ……子供ね、シン。それじゃあアスラン=ザラの様なパイロットになれないわよ?」
「俺は赤服だぜ?」
「あたしもそうよ。あんた、服の色で強くなれると思ってんの?だから子供なのよ」
「俺はこの間の戦闘で敵の空母を何隻も沈めたんだぜ!?それでもあいつに勝てないって
言うのか!?」
「何言ってんのよ、アスランさんは二年前の大戦じゃもの凄い活躍をしているのよ?英雄って
呼ばれてるんだから!たった一回活躍したぐらいでいい気にならないでよね!」
「はっ!そう言うルナこそちょっと話しかけられたくらいで随分あいつの肩を持つじゃないか!
めでたい頭してるんだな、ルナは!」
「別にいいでしょ、これから一緒に戦っていくんだもの!
……それともシン、あんたあたしに焼き餅焼いてるんじゃないの?」
「んな事あるか!大体お前が……」
「あ〜やめやめ!あんたと言い争ってると疲れるわ」
292カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 13:06:33 ID:???
ルナマリアが突然肩を竦めてシンに背を向ける。
呆れたように溜息をついて立ち去ろうとする。

「逃げんのかよ!?」
「冗談、あんたの相手はしてられないって言ってるのよ」
「待てよ!」
「止めておけ、シン」

ルナマリアを追いかけようとしたシンを、先程からやり取りを傍観していたレイが制止する。

「熱くなり過ぎだ、お前は。ルナマリアを落とすんならもっと落ち着いて話さなければな?」
「なっ、何言ってんだよレイ!」

レイの意表を突く発言にシンは少し顔を赤くする。

「フッ、冗談だ」
「お、脅かすなよ……」
「だが、痴話喧嘩ならもっと場所を選んでするんだな。ここでは目立ちすぎる」
「……!」

そう言われて周りを見渡すと、他のクルーが急に顔を背けた。
今のやり取りがまさか注目されてたなんて思っていなかったシンは必死に弁解する。

「ち、違う!今のはそう言うんじゃないんだ!」
「まぁ、違うって事にしておくか」

そう笑ってレイはさっさと戻って行った。
少しの間ばつの悪そうにしていたシンだが、冷静になって考えてみるとレイがあんな事を言う
なんて、まず有り得ない事だった。
レイもそういう事を話するんだな、と思うと、レイに対して少し興味が沸いてきた。

(ん……?という事はレイもそういう事に興味があるのか?)

シンは勝手にそう想像すると、レイともっと話をしてみたいと思った。


タリアの下へと移動していたアスランはその途中で彼にとって意外な人物と遭遇していた。
ザフトの赤服を着るカミーユ=ビダンであった。
一瞬、時が止まったかのような感覚でカミーユを見つめていると、それを不思議に思った
カミーユがアスランに話しかける。

「君は……?」
「……」
「……?どうしたんだ?」
「……ぁ、何で君が……」
「俺の事、知ってるのか?」
「前に……寝ているところを……」
「なら、俺の事は聞いているんだろ?」
293カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 13:11:12 ID:???
「なら、俺の事は聞いているんだろ?」
「議長から現地徴用兵として一人パイロットが補充されたって聞いたけど……
それがまさか君だったなんて……」
「カミーユ=ビダンだ、よろしく。Ζガンダムのパイロットをしている」
「あ、あぁ……アスラン=ザラだ。今日からミネルバに配属になった」

握手を交わす二人。
ふとカミーユがアスランの襟元に目をやった。

「それ、"フェイス"っていうんだろ?現場レベルでも大きな発言権があるって聞いたけど……」
「あぁ、そうだ」
「凄いもんだな、その若さで」
「いや、実際大した意味は無いさ、この勲章には……結局実戦になれば大局を見るのは
難しくなる」
「そうだな……」
「そう言えばカミーユは体の方はもう大丈夫なのか?」
「あぁ、寝てるばかりじゃどうにも出来ないしな。元の世界に帰れるまではこの艦で戦うつもり
だ」
「……?元の世界?」

首をかしげて難儀な顔をしているアスランは明らかに何も知らない様子だった。
それを感じ取ったカミーユは自分がこの世界の人間でない事を説明する。
かつてカミーユの存在にしこりを残していたアスランはその事実を知り驚く反面、あの時の自分
の推理が全くの的外れであった事に安心を覚えていた。

「そうだったのか……それであんな不自然な所で……」
「まぁ、これが俺の運命らしい。この世界に俺が加わる事でどうなるか想像もつかないんだけ
ど、俺はこうしなきゃいけない様な気がするから」
「自分のやるべき事、ちゃんと解ってるんだ?」
「気がするだけさ……アスランだってそうなんだろ?」
294カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 13:12:18 ID:???
「いや、俺は今はこうするしかないって思うけど、まだ実感は湧かないな……」
「探せばいいさ、戦っていく内に分かる事があるかも知れない」
「そうだな……」
「二年前は英雄だったんだろ?戦いでは当てにさせてもらうからな?」
「誰がそんな事言ったんだ?」
「皆そう噂してる。心強いってさ」
「そうか……そんな大した者でもないのにな……。
そう言うカミーユの方こそ君の世界じゃ活躍だったんだろ?こちらの方こそ当てにさせてもらう」
「艦長は疑ってるみたいだけどな?」
「軍ってそういうものさ、そうだろ?」
「そう……だよな」
「じゃ、艦長に挨拶に行くから……」
「あぁ」

アスランはそう告げると艦長室の方へと向かっていった。その目的はタリアにフェイスのバッジ
を渡すためであった。
初めてアスランと会話したカミーユの彼への印象は、落ち着いた奴だな、という印象であった。
そんなアスランの存在はとても頼りになりそうだ、と感じた。
                                        〜つづく〜
295通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 13:28:48 ID:???
・・・この感じ、富野節か!?
冗談はともかくお疲れさまです、今回はインターミッションでしたかカミーユの赤軍服
似合うのか・・・、ミネルバ三人組の痴話げんかは本編でもほしかったすね、GJ!

XdXnStWCJQはちょっとずれたシンの成長にわらた。苦痛の訓練で強くなる兵士って
なかなかいないんではなかろうか。近くキラとの対決があるけどシンはどんな反応を
みせるのだろうか、ついでにキラの戦い方とか関心するのか、不快と感じるのか。
296通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 13:32:52 ID:???
あのさマジで面白いから映像化してくれ
スパロボ厨臭くても面白ければいいんだなと読んでて思った
本編よりはるかに面白い
297通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 18:34:48 ID:???
>>296
激しく同意!!

とりあえず…職人様達GJです!
298カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 18:38:09 ID:???
白服…いきなりそんなに偉くなれるわけが無い
緑服…妥当か?いや、それではカツになってしまうw

というわけで赤服にしました。新約の新画ならギリギリ想像できるか……?

いや、カツも好きですよ、本当に。人間不信になってもサラを諦めきれない必死なところとか

あと、インターミッションだけでは何となく味気ない気がしますね……インド洋の戦いは既に出来上がっていますが、投下していいですかね?先程のよりも長めなんですけど
299通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 18:45:28 ID:???
>>298
> 投下していいですかね?
もちOK。

ハイペースだけど大丈夫?って心配はありますが。
300カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 18:56:36 ID:???
以前投下に失敗した後も趣味で書き続けていたのでストックはまだ十分に余っていたりします
ただ、ペースが早すぎると面白みに欠けるんじゃないかな、とも思うので、聞いてみました。

という訳で↓
301通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:00:18 ID:???
おお、来るぞ!!
302カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:00:19 ID:???
補給を終えたミネルバに次の指令が下る。スエズへの支援である。
新たにアスラン=ザラという強力な兵士を得たミネルバは彼をMS隊長とし、潜水艦
デグチャレフと共にカーペンタリア基地を出発してすぐ近くのインド洋へとやってきた。
すると、突然どこかに潜伏していたのであろうか、連合のMS隊が襲い掛かってくる。
その部隊編成の中には事の発端とも言うべき、ネオ=ロアノーク率いるファントムペインの
姿もあった。

「敵MS隊出現、こちらへ向かってきています!奪取されたGの姿もあります!」
「こんな所で……?コンディション・レッド発令!対MS戦用意!レイとルナマリアは前回の
戦闘同様ミネルバの上で援護!前線をアスランとシン、カミーユで敵を引き付けます!」
「了解!コンディション・レッド発令、各パイロットは直ちに配置に就いて下さい

!」

警報の鳴り響く中、パイロット各員が自分のMSへと向かう。

「アスラン=ザラ、セイバー出る!」
「シン=アスカ、コアスプレンダー行きます!」
「カミーユ=ビダン、Ζ行きます!」
「レイ=ザ=バレル、ザク出るぞ!」
「ルナマリア=ホーク、ザク行くわよ!」

ミネルバよりMS隊が出撃する。
ΖガンダムとセイバーはMAへと変形し、シンはインパルスのフォースシルエット装備で
これに続く。
それを確認したネオ=ロアノークは編隊の一部をミネルバへ向かわせ、残った部隊で
カミーユ達を迎撃に掛かった。

「あいつら、ミネルバに仕掛けるつもりか!?」
『シン、構うな!奴らはレイとルナマリアに任せる!目の前の敵に集中しろ!』
「っ……了解!」

(くそっ、フェイスだか何だか知らないが偉そうに……!)

胸の内で悪態をつくシンをよそに、アスランは受領したばかりのセイバーで次々と敵機を撃墜
していく。そしてカミーユも前回同様変形を繰り返しながら戦っていく。
そのカミーユの戦い方をシンは初めてじっくりと見た。前回は助けてもらった時以外彼の戦闘
は見ていなかった。その圧倒的に不合理な戦闘スタイルにシンは目を見張る。

(何だよあの戦い方……滅茶苦茶だ!それであれだけ戦えるのかよ……!)

シンはカミーユに助けてもらった事に関しては、前回の戦闘では自分があの窮地を救ったん
だという自負があったために認めないことにしていた。
しかし、空を飛べるのが当たり前の現在のMS戦に於いて、空中戦に不適格な機体で戦い
退けてしまっているカミーユの実力は認めざるを得なかった。
そして、それはアスランにとっても同じような心境であった。
303カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:04:53 ID:???
(カミーユ……予想以上にやる……!)

『戦闘中に余所見をするとは、余裕かい!?』

一瞬カミーユに気を取られていたアスランにネオ=ロアノークの指揮官用ウインダムが
襲い掛かる。セイバーとの距離を一気に詰められ、ビームサーベルで切りかかってくる。

「むぅっ……!」

アスランは間一髪それをかわすと、一旦上昇して距離をとってビームライフルを撃とうとする。
が、間髪いれずに追撃してきたネオの攻撃に、今度は後方に回避せざるを得なかった。

「フッ、やるようだな。だが……いつまで持つかな!?」

ここからはネオとアスランの追いかけっこの始まりであった。
一瞬見せた隙にすかさず付け込んだネオは、アスランに態勢を立て直す間を与えずに
どんどん攻撃を仕掛けていく。
一方のアスランも何とか牽制の砲撃をするが、それも効果無しと言わんばかりにネオは
ビームサーベルを振り回してくる。
仕方なしにアスランもセイバーにビームサーベルを抜かせるが、勢いのあるネオの攻撃に、
大して戦いの変化に効果は無かった。

『逃げるのは得意かい、紅いの!』
「くそっ!ブランクか!?」

アスランはセイバーの操縦に慣熟しておらず、その上この機体での実戦は初めてである。
尚且つ本格的な戦闘も前大戦以来となる彼にとって、普通の一般パイロットに対しては
ともかく、エース級のパイロット相手には思うようにいかなかった。
その一方で他のウインダムを相手にしているシンは、そんなアスランの戦いぶりに苛立って
いた。

「何やってんだあの人は!防戦一方じゃないか!?」
 
ファントムペインの主力MSであるウインダムを相手に、シンは苦戦するアスランを見つめる
余裕があった。インパルスに慣れている分、アスランのセイバーよりも動きがいい。
 
「あんなんでよくも偉そうな事が言えたもんだ!……ん?」
304カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:06:43 ID:???
戦闘空域が海の上から陸の上へと移行しつつある中、シンは隠れるように存在する基地を
見つけ、その中に囚われている人々の姿が目に入った。
強制的に働かされていたのであろう、その姿はひどくやつれている様に見えた。
 
「あれは…くそっ!あいつら酷い事しやがる……!」
 
恐怖におののく人々の姿に目を奪われていると、ウインダムが一機インパルスに
襲い掛かってくる。
 
「うわっ!?こいつ!」
 
何とかその攻撃をかわし、返り討ちにするがいまだ周囲にはウインダムがうようよ点在して
いる。シンは基地に囚われている人々を助けてあげたいと思ったが、今はまだMSの相手で

そんな事が出来る状況ではなかった。
 
「お前ら……好き勝手やってくれてぇー!」

シンは連合に深い怒りを感じ、その怒りをぶつける様に敵へと向かっていった。 
 
一方、ミネルバの甲板で応戦しているレイとルナマリアの下に水中から忍び寄ったアビスが
襲い掛かる。
 
『お姉ちゃん、レイ!下から接近するMSが居るわ!』
「下!?水ん中って言うの!?」
「それ以外に何がある!」
 
当たり前の事を口にするルナアリアに多少の苛立ちを覚えながら、レイが言葉を発する。
 
「連合の水中型なら…奪取されたアビスだな……!デグチャレフをやるつもりか!」
『アビス!』
『二人はウィザード換装後、潜ってデグチャレフを守って!』
「了解した」
 
急遽ミネルバの格納庫に戻り、水中戦に対応したウィザードへの換装が行われる。
マッドの迅速な指示もあり、換装はスムーズに行われた。
再びミネルバを出撃し、アビスが向かってくるであろう水中に潜る。
 
「ルナマリア、水中装備でもアビスの性能には敵わん。デグチャレフを守る事だけを考えてい
ろ」
『了解、レイも気を付けてね!』
 
ルナマリアの言葉に通信を切る。
 
「ルナマリアに心配される云われは無いが……気を付けるべきなのだろうな……」
 
相手は奪取されたザフト製のセカンドシリーズの中でも随一の火力を持つMS。
いくら士官学校時代に成績が優秀であったレイでも、その実力を侮るようなことは出来ない。
305カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:08:41 ID:???
「来たな……!ルナマリアはデグチャレフの正面へ!俺がアビスを引き付ける!」
 
そう告げてレイのザクがアビスに攻撃を仕掛ける。
 
「はっ!量産型の木偶人形が生意気にもこのアビスの道を塞ごうってのかよ!
身の程を知れって!」
 
アビスのパイロット・アウル=ニーダが叫び、MA形態のアビスからミサイルがばら撒かれる。
それを回避したレイであったが、その直後にアビスがMSに変形し、巨大なランスを片手に
襲い掛かってきた。
 
「ぬっ!?」
『ほぉ…良くかわしたじゃないか!褒めてやるぜ、木偶人形!』
 
レイはそれも何とか回避したが、水中の抵抗の中では専門のアビス相手には分が悪すぎた。
そのままアウルはデグチャレフに目標を移し、そちらへ向かっていく。
 
「ルナマリア!アビスが行くぞ!」
『任して!狙撃ならこのルナマリア様!』
 
言ってルナマリアがアビスを狙うが全く当りもしない。水中である事を考えても、その射撃は
余りにもへたくそ過ぎた。
 
「何をやっているルナマリア!」
『くぅ…卒業しても練習はしてたのに……!』
 
落胆するルナマリアを余所に、アビスはルナマリアの紅いザクを攻撃し、腕を破損させて
デグチャレフの正面からどかせる。
後は水中戦の得意なアビスの独壇場であった。
 
「そらそらぁ!でかい水中花火を咲かせてやるぜ!」
 
デグチャレフからの応戦もあったが、高機動のアビスはそんな攻撃をものともしない。
嘲笑うようにデグチャレフの周囲を飛び回ってかく乱させた後、ありったけのミサイルを放って
デグチャレフを撃沈させた。
 
「ははは!ごめんねぇ、強くってさぁ!」
 
アウルはコックピットの中で高笑いを浮かべ、方向転換して去っていった。
 
「くっ……!デグチャフを落とされた……!」
 
レイはデグチャレフ防衛に失敗して落胆していた。
306カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:11:45 ID:???
アスランがネオを、シンがその他の敵MS数機を相手に戦っている頃、カミーユは奪取されたG
"カオス"と取り巻きのように居るウインダムを相手にしていた。
ウインダムがΖガンダムを取り囲むように連携を取り、その合間にカオスが本命として攻撃を
仕掛けているのだが、カミーユはそれを全て見透かすかのような動きでひらりひらりとかわし
ていく。
カミーユのニュータイプ能力は既に戦場に居る人間全てを把握出来るぐらいの域に達してい
る。視認出来る範囲の敵が次に行う行動ぐらいは当たり前のように予測出来ていた。

「んなろぉ……!何で当たりやがらねーんだ、こいつはぁ!?」

理解不能な回避力を披露するΖガンダムに、気味の悪さを感じ始めたカオスのパイロット・
スティング=オークレーはそれを払拭するかのごとく叫ぶ。
 
「ザフトの人形がぁ……!よくも!」
 
Ζガンダムがやがて周りのウインダムを撃墜し終わり、続けてカオスへと仕掛けようと
ビームサーベルを抜く。
 
(……!殺気のようなものを感じる……!)

しかし、その時カミーユは背後に何かを感じ、咄嗟に回避行動を取った。
すると一瞬前にΖガンダムが居た場所に砲撃が通り抜ける。それは、地上から放たれた
ガイアのレールガンであった。戦場が陸地に移行したため、飛行能力の無いガイアがカオスの
援護にやって来たのだ。
まるで獣のような風貌をしたMA形態のガイアのパイロット・ステラ=ルーシェは、完全に取った
と思っていた砲撃が外れた事に驚いていた。

「外れた……何で……?」
『馬鹿がっ、しっかり当てろよ!』

不意打ちの一撃を外したステラに対し、スティングは苛立つ。
 
「うるさい!」
『あぁ!?』
 
口喧嘩しながらも、二機はそれでも空と地上の双方から連携を取りつつΖガンダムを追い
詰めに掛かる。
彼等の連携攻撃は、並みのパイロットなら既に落とされていても不思議は無い位合っている
のだが、ウェイブライダーに変形したΖガンダムには掠りもしない。

「気味の悪いヤローだぜ!おいステラ、ちゃんと狙ってるのか!?」
『うるさい!こいつ……こいつ……!』
「うるさいだと!?当てられもしないくせに生意気言うんじゃねぇ!」
『スティングも当ててない!』
「黙れ!俺はここからだっつーの!」
307カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:15:00 ID:???
流石にΖガンダムの異常な回避に気付き、焦り始める二人。
普通、回避の上手いパイロットでもこれだけの攻撃を受けたらシールドで防御もするのが当た
り前なのだ。しかし、今回カミーユはまだシールドを一度も使用していない。変形を繰り返しな

がら砲撃をすり抜けていくだけである。
 
Ζガンダムはウェイブライダーで高度を確保しないと空中戦ができない。故にそんな中で
シールドでの防御も駆使していたら滞空時間が短くなってしまうのだ。
その為にカミーユはシールドでの防御を極力行わない事で、他の空中戦MSを相手に同じ
だけの滞空時間の確保を可能にしている。
尤もこの戦法を可能にして戦い退けてしまっているのも、カミーユがニュータイプ能力による
高い直感力で異常な回避力を持っているからこそであった。

「こいつら……なかなかしつこい!」

「直接叩いてやる!」
『馬鹿!ガイアで突っ込むな!』

痺れを切らせたステラがガイアでウェイブライダーに突撃を計る。だが、そのせいでカオスに
よる砲撃が迂闊には出来ない状況になる。その瞬間をカミーユは待っていた。

「突っ込んできた!……今だ!」

カミーユは変形を解き、MS形態で一直線に向かってくるガイアに向けてビームライフルを構え
る。

「あっ……?」
「くそったれが!」

地上戦に特化したガイアに空中での機動性の自由は少ない。カミーユが狙いを定めた瞬間
勝敗は決したのだ。
カミーユがΖガンダムにビームライフルのトリガーを引かせ、ライフルの銃口からビームが
放たれる。
 
「いやっ!」
 
ステラは直撃を覚悟した。空中に飛び出したガイアではΖガンダムの攻撃を防げない事を
直感した。
 
「馬鹿が!」

だが、Ζガンダムとガイアの間にカオスが割って入り、機動兵装ポッドの一つを楯にしてその
攻撃を防いだ。それを見たカミーユはすぐさまウェイブライダーに変形して離脱をする。

「今のが弾かれた!?こいつら、連携はなかなか出来るみたいだ!」
308カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:17:06 ID:???
「この間抜け!飛べもしねーのに迂闊に突っ込むんじゃねぇよ!死にてぇのか!?」
『死……?死ぬ……ステラ……死ぬの……?』
「くぁっ……しまった……!」
 
ステラの様子が少しおかしい。スティングはメットに掌を叩きつけ、顔を顰める。
 
『死ぬの……嫌……死ぬの……死ぬの、嫌ぁー!』
「やっちまったぜ……迂闊なのは俺の方かよ……!」
『嫌ぁー!死ぬのは嫌ぁー!』

「……!?四本足のパイロットの様子がおかしい……?……!?これは……」

急に動きが変則的になったガイアの様子にカミーユは直感する。
 
「この苦しみの波動は…強化人間のものだ!」
 
実際にはカミーユの知っている強化人間とは違うのだが、ステラの苦しみの波動がカミーユに
そう錯覚させたのだ。

「この世界でも強化人間が存在していたのか……!」

人のエゴによって生み出された悲しい存在を察知したカミーユの怒りが、一気に沸き上って
いく。

「くそっ……人は貴様らの玩具じゃないんだよ……!
……こんな事……人間がすることじゃない……!」

「あぁ……ああぁぁぁぁあぁー!死ぬの嫌!死ぬの嫌ぁぁぁー!」

カミーユの怒りの感情がプレッシャーとなって拡散して行き、それに触発されたステラは更に
錯乱していく。最早ほとんど理性は失っており、ガイアはのたうち回る様に不規則に動き
回っている。

「おい、ステラ落ち着け!」
『あぁぁぁぁあぁぁー!嫌ぁぁ……嫌ぁぁぁー!』
「駄目かよ!……仕方ねぇ」

ステラの発作が普通ではない事を察知したスティングはネオへ回線をつなぐ。
309カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:19:20 ID:???
「……おい、ネオ!悪ぃ、やっちまった!」
『どうした?こちらはまだ戦闘中だぞ!』
「うっかり俺がステラの"禁句"を言っちまったんだよ!今かなり混乱してる!」
『何?どういう状態だ?』
「それが、いつもより余計におかしいんだよ!落ち着かせようにも普通じゃねぇんだ!」
『チッ……仕方ない、全軍撤退だ』
「全軍!?いいのか!?」
『ウインダムをやらせすぎた』
「そんならせめて一撃してからでもいいじゃねぇか!」
『だが、アウルが潜水艦をやってくれたようだ。それで十分だ』
「ちっ…!結局アイツの一人勝ちかよ!」
 
アウルの活躍にスティングが不満を漏らす。
アスランと交戦していたネオであったが、彼を追い詰めていたものの逆に構いすぎていた。
落とせそうで落とせないセイバーの動きがネオの判断を鈍らせたのだ。
アスランにしてみれば、ただ必死に攻撃をかわしていただけだが、それがかえって良い結果
に繋がったのだ。
ネオが気付いた時には、既に半数以上の味方のMSがシンによって沈められていた。
しかし、一方ではアウルがデグチャレフを落としたという報告も聞いていた。
この状況を見て、ネオは全軍に撤退の指示を出す。

「……?敵が退いて行く?」

この戦闘でも獅子奮迅の活躍で魅せたシンが、敵が撤退を始めたのを確認してある事を思い
立つ。

(今ならあそこの人達を解放してやれる……)

シンにとって基地に拘留されている人達は気になっていた。敵が撤退し始めた今、彼等を
解放するには絶好の機会であると踏んだのだ。
シンはインパルスを基地へと移動させる。

「シン?……どこへ行くつもりだ?」

ネオが退いて戦闘終了の命令を出そうとしていたアスランは、急に動き出したインパルスに
難儀を示した。仕方なくアスランもシンの向かった方向へ進路を向ける。
310カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:21:04 ID:???
基地に配置されていた連合兵が驚いた顔をしている所へインパルスが降り立つ。
そこには我先に逃げようとする兵士と、ほったらかしにされたままの捕囚が見える。
 
「こいつらが酷い事をしたんだ!」
 
シンはインパルスのチェーンガンで基地施設を破壊し始めた。無論、捕囚が居る場所は避けて
いるのだが、連合兵の事は気にせずにひたすら撃ちまくる。
基地施設はあっという間に炎に包まれていった。
そこに追いかけてきたセイバーがやってくる。

「こんな所に連合の基地……?カーペンタリアの目と鼻の先じゃないか……!」
 
思わぬところに存在していた連合の新設基地にアスランは驚いていた。
しかし、その間にもシンは基地を破壊していく。
 
「くっ……止めるんだシン!基地を破壊しろという命令は出していない!」
『ここに囚われている人達を解放してやるんだ!邪魔をするな!』
「お前のやっている事は単なる一方的な虐殺だ!今すぐ攻撃を止めるんだ!」
『うるさい!』
「これは命令だぞ!」
『聞けるか!』
『止せ、シン!』

シンとアスランの会話に、異変を感じてやってきたカミーユが割り込んでくる。

『聞いてくれ、シン!お前のその怒りから来る正義感は大事なものだ!でも、それを虐殺に
使ってはいけない!』
「何を言っている……!?」
『今はその怒りを使う時じゃないと言ってるんだ!』
「戯言を……!」
『それに命令違反は重罪だぞ!ザフトを敵に回すつもりか!?』
「そ、それは……!」
『分かったらもう止めろ。これ以上は無駄な被害を大きくするだけだ』
「くっ……」

アスランとカミーユの説得に納得した訳ではないが、仕方ない様子でシンはミネルバへと
戻っていった。
311カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 19:23:16 ID:???
『すまないカミーユ……俺がもう少ししっかりしていれば……』
「気にしなくていい。シンはまだ軍や戦争の事をよく分かってないみたいだ」
『あぁ、シンは戦争をヒーローごっこと勘違いしている節がある』
「帰ったら修正かな」
『修正?何だそれ?』
「問題行動を起こした奴を殴って気合を入れるんだ。前は俺もよくやられたよ」
『カミーユが!?』
「そんなに驚く事かよ?」
『いや……結構過激な軍隊に居たんだな、と思って……』
「別に不思議な事じゃないさ。違反を起こせばペナルティがある。
…例えそれが納得できない事でも違反は違反だ」
『……』
「軍とは理不尽な所ってさ……上司の人に言われたよ」
 
カミーユにそう告げた人物はエマ=シーンという女性だった。彼女はしとやかな外見通りの
規則にうるさい性格だった。
そんな彼女はカミーユにとって姉のような存在だったのかもしれない。違反を繰り返す彼を
幾度と無く引っ叩いていた。
それに反発を覚えることも多々あったが、カミーユにとってエマは好意に値する人物だった。
しかし、そんなエマも最終決戦の折にカミーユの見守る中で息を引き取った。
そんな事を思い出し、カミーユは少しだけしんみりとしていた。
 
『……戻ろう』
「……?あ、あぁ……」

沈黙していたかと思うと突然言葉を発したアスランにカミーユは少し驚く。
カミーユから"修正"の話を聞かされ、アスランは何かを決意したように戻っていく。
それに続いてカミーユもミネルバへと帰艦する……
                                        〜つづく〜
312通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:25:35 ID:???
乙です!
最近はジャンプよりこのスレの続きのほうが待ちどおしい
313通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:27:35 ID:???
GJ!
アスランが歯ァ食い縛れとか言うのかな?
ドキドキしてきた。
314通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:28:56 ID:???

ニュータイプの戦闘とコーディネーターの戦闘の違いがよく出てて良かったです
カミーユスゲーの一言ですな
これからもNT的な活躍がもっとやっちゃってください
315通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:29:18 ID:???
修正…
こっちでもか…アムロスレでも入れられてこっちでもかシン…
でもまあ、普通"修正"の無い軍隊なんて異常なんだよな…
316通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:35:12 ID:???
なんかスパロボの寺田にパクられそうで怖いくらいよくできてる
317通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:38:12 ID:???
風邪引かないように気をつけてください
連載が止まるのが辛いです…
318通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:42:04 ID:???
一日二話投下とは恐ろしや、乙です!
戦闘が長くて嬉しい、ザクの水中ウィザードがあるとは思ってなかった、名前は何だろう
ルナの撃った弾種は何だったんだろう、実弾はPS装甲で防がれるし、ビームは撃てないし。
シンが降伏しない反撃してくる基地を攻撃したこと自体は変でもないんですけどね、発見
報告、降伏勧告、敵の攻撃能力を奪ってからの攻撃停止を行わなかったのは、やはり
やりすぎでしたね。・・・このSSにおける捕虜の扱いってどうなるんだろう、スルーかな。
敵基地の捕虜を尋問するだけで敵戦力やエクステンデッドのことが分かると思うんだけど、
種世界では捕虜の表現あったのディアッカとステラぐらいなんだよね、変な世界だ。
ともかく次回更新を楽しみにしてます。お疲れ様でした。
319通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:46:15 ID:???
>>316
シンジくんで通過済みだ!
320通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:51:27 ID:???
>>319
エヴァのネタもパクられたのか…最悪だなスパロボ
321通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:53:31 ID:???
>>320
(; `・д´・)??????????
322通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:55:19 ID:???
>>320
シンジがブライトさんに修正されたということについてなんだが…
正直スパロボにパクられるとかありえないから。
323通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 19:59:34 ID:???
種よりはマシだろ。
あっちは劣化コピーどころじゃないからな。
324通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 20:43:46 ID:???
>>◆XdXnStWCJQ
アウルは死んだの?
325通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 20:55:12 ID:???
なんか脚本が良いなここは!詠めとは大違い
326通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:08:36 ID:???
種の素材は結構いいレベルだと思うぞ
話しの作り手がちょっとというだけで
というか戦争をホントの意味で"経験"している人間がまるでいないから
種の話しはしまらないんだよな…
職人さんGJ
327通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:21:18 ID:???
>>326
素材は良いのだが作り手がサラリーマンみたいな連中だからなぁ・・・・・
328通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:26:26 ID:???
>>327
ソレは言いすぎ。世のサラリーマンの中には「職人の心」を失っていない者もいる。
まぁ、嫁は「キラキュン、ハァハァ」する以外の能が無いと見えるけどね
329通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:39:38 ID:???
>>328
素直すまんかった・・・・職人の心を持ったサラリーマンも居るよな
大河原とか。後嫁はキラ厨じゃない。アスラン厨。「キラキュン、ハァハァ」なのはは福田だろ
330通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:43:41 ID:???
シンが成長できなかったというか視聴者からあんまり好かれなかった理由は
暴走しても修正するだけで誰もシンの立場になって理解してやろうとして
諭すキャラがいなかったんだよな今はカミーユがいい修正のあとのチェイサーになってる
まあこれはカミーユ自信そういうシンのようなキャラだったからこそできる役割なんだけどね
331通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:46:25 ID:???
>>330
アスランよりカミーユとかハイネが上司ならシンももうちょっと成長できたかも
332 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 21:51:44 ID:???
オーブ沖を突破することに成功したミネルバは、一路、カーペンタリアへと向かっていた

「捕虜の引き渡しの支度をしなきゃねぇ……」

談話室では、衛兵たちの雑談が聞こえる
――捕虜とは、アビス強奪の罪で拘束されていたアウルのことだ
アーモリーワンでは手続きを踏む暇もなく、拘束したまま追撃に出ていたのだ

そして、その内容に興味を持つ者がいた

「あの……」
「何です?」
「その強奪犯に、会ってみてもいいですか?」

少し癖のある赤髪の少女――ルナマリアである

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第10話『再会』

=======================
333通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:53:50 ID:NXjvV57x
ちんちんかもかもっ!
334 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 21:54:45 ID:???
衛兵に先導され、強奪犯が収監されている牢屋の前まで歩く

この行動を一言で言い表すなら気まぐれである

大胆にも最新鋭の機体を強奪せんとした者の顔を見てみたくなったのだ
その上、引き渡しが行われれば二度とチャンスは訪れないという限定感がその欲求を加速させた

「此方です。何か有りましたら、大声を上げて下さい
直ぐに駆け付けます」

衛兵は丁寧に敬礼すると、持ち場に戻って行く
形式上は尋問という形を取っていた。とはいえ、ここまで来て聞き出せることなど無いに等しいだろうが

「ひでぇな、人を何だと思ってやがる」

捕虜の男の毒づく声がする方を見ると、ルナマリアは驚愕した
自分とそれほど変わらぬ年齢の少年が佇んでいたからだ

「ねぇ……?」

思わず言葉が溢れる

「何だよ」
「何であんなことしたの?」

間抜けな質問だなと、ルナマリアは自己認識した
彼は尋問で自分の所属を明らかにしていないのだから
情報を提供すれば減罪されたかもしれないが、彼はそうしなかった
――それは、極刑を意味する
捕虜は呆気に取られた顔をした後、くすくすと微笑を浮かべ出した
335 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 21:57:37 ID:???
「今更聞くか?そんなこと」
「わ、悪かったわね!!」

笑い飛ばされた羞恥心をまぎらわすかのように、ルナマリアはその場を立ち去ろうとした
そして、何で私はこんなことをしているんだと軽い後悔が生まれた
――その時だった

「生きるためだよ……」

後方から捕虜の力無い声が聞こえてきた
それに続いて、鳴咽が静かに響いた

彼は生きるためだと確かに言った

「……それじゃあ……私と同じ理由じゃない……」

ルナマリアも生きるために戦っていた
そのため功名心などは無かったが、そんな自分が好きだった
そして、同じ理由から行動しているのに、
彼はこれから鉛弾を喰らわなければならないのだと考えると何だか寒気がした
――自分があちら側にいてもおかしくないのだから
=======================

引き渡しはスムーズに行われた
ルナマリアもその場に居合ていた
何か声をかけてやりたいが、言葉が見付からない上、立場もあるためそれは叶わなかった

「なぁ、あんた」

捕虜――アウルが泣き張らした目でこちらを見つめてきた

「何よ?」
「『赤い』から、パイロットなんだろ?」
「……ええ」
「……生きろよ」

そう言い切った後、アウルは直ぐに連行されていく
その時、ルナマリアの頭の中に童謡の『ドナドナ』の歌詞がよぎった
きっとこの歌は、人間がモデルなのだろうと、ルナマリアは確信した

その出来事の直ぐ後だった
ルナマリアはアビスのパイロットに任命されたのだ
彼女は複雑な気分だった

=======================
336 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 21:59:03 ID:???
カーペンタリア基地にて、整備を受けているミネルバのMSドックに一機のMSが降り立ち、
偶然その場にいたシンは、コックピットから姿を現したパイロットの顔を見て慌てふためいた

「あ、あんたは!?」
「特務隊フェイス所属、アスラン・ザラだ
よろしく」

オーブにいる筈の男が、自軍に、それも特権を携えてやってきたのだ

「あんた、オーブにいた筈じゃ……
何で復隊したんですか!?」
「あんなものを見せられて、じっとしてなどいられないからな」
「……?」
「ユニウスセブンのことだ。俺も確かに見た
これからの人があるべき姿をな」

アスランもシンと同様に、『人の相互理解』を目にしていた
そして、それを知りながらも世界を傍観することなど出来ないと、再び軍に戻ってきたのだ

「ええと、カミーユ……さんだったかな?
彼は今、何処に?」

シンの表情が曇る

「カミーユさんは……今、患っています……」
「……怪我でもしたのか?」
「……こちらです……」

百聞は一見にしかず
――シンはアスランを医務室へと誘った

=======================
337 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 22:02:05 ID:???
「……なぜこんな状態に……」

ベッドに横たわっているカミーユの悲惨な姿を見て、アスランは小さく呟いた

「きっと……疲れちゃったんですよ……
あれだけのことをしたから……」
「……彼は今後どうなるんだ?」
「ここの医療施設に収容される予定です……」
「そうか……」

沈黙が辺りを包み、重苦しい空気が流れた

「だから、カミーユさんが戻って来るまで、
一緒にミネルバを守りましょう」

この状態から回復出来るとは到底思えないが、シンの言葉が現実逃避とも思えない
きっと強い確信、ないし願望めいたものが有るのだろうとアスランは結論付けた
そして、内心は気に入らない筈の自分に一緒に艦を守ろうと言うその姿は、
カガリに食いかかっていたときからは想像出来なかった

「お前……成長したな」

その言葉に、シンは少しばつの悪そうな顔になった

「そんなこと無いですよ。ここに来る前の戦闘で、自爆しそうになったんですから」
「そうじゃないさ
……とはいえ、自爆は良くない
基地にいる間、みっちり鍛え直してやるから覚悟するんだな」

冗談とも本気とも取れない言葉に、シンの顔が青ざめた
おそらく、その内容を想像しているのだろう

「……はい!」

しかし、シンは力強く答えた
藪蛇であっても、英雄と讃えられた人物のシゴキなら受ける価値があるはずだと前向きな考えであったのだ

〜つづく〜
338通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 22:04:41 ID:???
「自爆は良くない」ってアスランが言うのは笑った
339通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 22:09:42 ID:???
GJ!

>自爆はよくない
経験者だから、そこから何か学んだんだなw
340 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/08(日) 22:21:28 ID:???
シリアスを書けない(地の文が書けない)体質が憎い……

カミーユinC.E氏GJ!
クロスオーバーの王道だなぁ……なんだかワクワクしてきた
341通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 22:29:17 ID:???
GJ
でもやっぱりカミーユがいる死種なんで
はやく復活して欲しいです
342通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 22:29:32 ID:???
乙!

一瞬、アウルルナフラグktkrと思っちまったぜ
しかし、鎮圧銃で内蔵鍛えてたような奴が青ざめるって何を想像したんだw
343通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 22:59:19 ID:???
カミーユinC.E氏GJ!!
ところで0083スレで書かれたプロローグはうpしないのでしょうか?
344カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/08(日) 23:50:21 ID:???
◆XdXnStWCJQ氏GJです!
この先アウルにまだ出番があるのならどのような立場になるのか興味津々です

>>342
読んで頂ければ分かるとおり、このスレの>>1と0083スレのものと終わりが同じだったので敢えてうpしませんでした。同じ内容のものを二度うpするのもどうかと思うので、そのまま先を投下させてもらいました。
しかもΖの最終回をそのままトレースしたような内容ですしね

あと、ザクの水中ウィザードの事ですが、正直種死は本放送の時に一回だけ観ただけなので、参考としているのは公式のみです。しかも、大分先まで出来てたりするので、大幅な書き直しは難しいですが、ふいんき(ryを楽しむものとして捉えていただければ幸いです。
細かい点で納得できない場面もあるかもしれませんが、その点は自分の力不足なんで申し訳ありません……orz
345通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 23:59:59 ID:???
>>318
僭越ながら自分が説明させていただきます
実はザクには、ノクティルーカザクウィザードってのが公式設定にあるのです
これがいわゆる“水中戦用”ザクウィザード。
ノクティルーカの意は、ラテン語で「夜光虫」

「脚部には水上スキーを装備し肩部に大型ファンと姿勢制御用ウィングを装備し頭部も潜望鏡を装備している。
普段は海中に潜み戦闘時だけに浮上し海上を滑走する。」らしい


実物は、↓こんな感じ
http://www.noda-ya.com/goods/026/large/00319.jpg
346通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 00:23:51 ID:???
GJ!アスランはどのSSスレでも笑いを与えてくれるキャラだな
347通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 01:01:02 ID:???
>>345
これ「水中戦用」というより、「水上戦用」だよな?
348通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 01:28:30 ID:???
>>347
水上戦っつーか対水上-水中戦用MSらしい
一応、水上に出た方が速いので推奨なわけだが、今回の敵であるアビスは水上に出てるとホラ、
撃ってくるじゃんビームのデカイの、、、だからだと脳内保管しますた

武装は
・144cm大型魚雷×2
・マーク13 ホーミング魚雷×4
・M25 対潜爆雷×8
と色々水中用の装備が揃ってる上に
手持ち武装も付けられるので
レンジ範囲が海とかだと元来スゲェ使える
349通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 01:32:01 ID:???
>>344
あんまり作者が表に出てこない方が…
350通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 02:01:20 ID:???
>>348
アビス相手だと実弾兵器は通用しないけど、
そんだけの火器があるなら5,6機で包囲して一気に叩き込めば落とせなくも無いかも知れんな。

どっちにしてもルナとレイの2機だけでは無理な話ではあるが・・・
351通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 04:46:39 ID:???
>>345
後ろについてる扇風機は何に使うんだ?
まさか、推進器兼スクリューじゃあるまいな。
どう見ても、グーン・ゾノ・アッシュの方が水中での運動性・機動性が高そうなんだが・・・
というか、ユニウス条約でMSの保有数が制限されているとしても、水中用MSくらいは別に作ってやれよorz
アビスなんて作ってんだからさぁ。
武装にしても、艦船用の対潜装備とあまり変わらん気がするのは気のせいか?

プラントは一体何を考えてるんだ?
352通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 08:29:08 ID:???
>>345
UC系にしてもCE系にしても、水中用のMSが丸くて流線型の形が多いのは水の抵抗という最大の敵の為なのに。
汎用機の水中版にしても、あんなごてごてしたファンが着いてるような思いっきり水にケンカ売ってるようなのは初めて見たぞw
353通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 09:26:03 ID:???
やはりアッガイの出番だな
354通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 10:34:22 ID:???
投下乙です

「ドナドナ」の作者は妻子を絶滅収容所に連れて行かれた後にゲットーでこれを書いたらしいです。
なのでルナマリアはご明察ですね。
355通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 10:55:47 ID:???
>>352
ザクマリナーとかマリンハイザックも人型・・・
でも、こいつらはどっちかっていうと水中作業が
メインで戦闘は非常時とか人手が足りない時にはやむを得ず・・・
って感じらしいし

背中のファンが違和感あるのは同意
356通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 11:07:45 ID:???
>>351
そのまさかです。水上ではホバー、水中では推進に使います。
頭部の出っ張りは潜望鏡、それを出して浅い水中を移動する。
357通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 12:02:38 ID:???
>>356
水上メインの機体ってことか?
っても簡単に空が飛べる種世界だと水上ホバーはあまり意味がないし、水中では水の抵抗をモロに受ける構造のせいで動きが悪いんだったら
この機体の売りはどこに?
358通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 12:06:27 ID:???
なんというか、第2次大戦序盤から中盤ぐらいの海上での運用がメインの潜水艦みたいですね。
あの辺も水上での高速性や戦闘力を重視して水中抵抗が少々悪くなっても無視してるから、
これはこれで良いのかも。
359通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 12:07:22 ID:???
無いから本編でも出なかったんじゃね?
360通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 12:14:00 ID:???
>>357
ロールアウト当時はシュライクとか無いしジェットストライカーとかも出てなかったんだよ
どこぞの負債の馬鹿が種死作中で出しやがったのがそもそもの始まりだしね
361通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 12:24:45 ID:???
>>357
沿岸部に対する強襲や水中用MSに対する爆撃が主な役割みたい。
362通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 13:16:01 ID:???
ザクに飛行用ウィザードが無いことを考えると、
水上メインでも海戦では十分役立つ装備だと思うが?>ノクティルーカザクウィザード
363通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 13:23:00 ID:???
まあ、素ストライクよか役に立つよな
一応水中で動ける用になるんだし、ストライクにもこういうのがあったらよかったのに
364通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 13:43:54 ID:???
本物の海を知らないために、宇宙空間用の気密は万全でも
水中用MSの開発初期には四苦八苦したジオン軍みたいだな。
しかし既に一度の大戦を経験していてこれってのは…
ザクヲでなく当初のジン用の装備案とかいうならまだわかるんだが。
365通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 13:51:59 ID:???
>>355
ザクマリナーとかマリンハイザックは、水中用MSの代替品、コスト削減の為に造られてるしなあ。
水中での運用のデータも揃ってから改修されてるから、人型でもそれなりに良好な性能持ってるし。

クティルーカザクウィザードはあれかな?
ザクマインレイヤー(これは宇宙用だけど)みたいに水上を高速移動しながら、対潜用に爆雷をばら撒くのが目的なのかな。
さすがにあの大型ファンは水中では邪魔になりそうだけどね。
366通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 14:11:24 ID:???
グーンの頭被せた方がはやくね?
367通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 14:24:08 ID:???
UCの連邦軍は結局まともな水中用MS開発せずに何とかなってるし。
完全に水中専用に開発した機体って実は必要ないんじゃない?
生産ラインを混乱させるよりも量産機を一部換装することで対処しよう
って発想も生産性を考えれば健全だ。
より高性能な敵に対しては数で押しつぶすことになるけどさ。
大丈夫、ティーガーだってシャーマン4台で刺し違えられるんだから、
怒涛のようにザクを突っ込めばカオスだって潰せるさ、そのうち。
368通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 14:26:30 ID:???
>>366
グーンの頭被せたら、作業用として無類のパワー発揮しても動きとか極端に遅くなるから
369通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 14:32:52 ID:???
水中用MSといえば、ゾノ、グーン、フォビドゥン系列、アビス、インパルスの水中用換装、
前述の水中ウィザードか、フォビドゥンが百機いてアグニ持たせるだけでCE世界征服
できると考えるのは俺だけだろうか、TP装甲&ゲシュマイなんとかの組み合わせは詐欺
だし、なにげに水・陸・空・宇宙で活動できるし明らかに無敵だと思うんだが。
370通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 15:07:22 ID:???
>>367
ザフトは数で不利なのに無茶言うなw
371カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:07:38 ID:???
「ぐっ……!」
 
MSデッキに鈍い音が響き渡る。
ミネルバへ帰還したシンに待っていたのはアスランによる"修正"であった。
周りのクルーもその様子に押し黙っている。
 
「なぜ殴られたかわかっているな、シン?」
「……」
「中途半端とは言え、敵意の無い者に対しての一方的な攻撃、更には隊長である俺の命令
の無視。立派な軍規違反だ」
「俺は……俺は正しい事をしたんだ……!」
「何?」
「あそこで囚われていた人達は強制的に働かされていたんだ!俺はそれを助けようとした
だけだ!」
「自分の言い分を正当化しようとするな!」
「……っ!?」
「お前が何を考えていようが、お前のやった事は許されない事だ!軍人であるならば物事の
判断をもっと区別しろ!」
「あんたなんか……あんたなんか全然役に立ってなかったじゃないか!口では偉そうな事を
言って……」
 
言いかけたシンの言葉を遮る様に、また鈍い音がMSデッキに木霊する。
今度殴ったのはカミーユだった。
  
「現状を把握しろ、シン。子供の理屈で戦争されたら堪らないんだよ」
「何すんだあんた!あんたなんかに殴られる云われは無いだろ!」
「分かってないから殴ったんだ。これは修正だ」
「修正だと……!」
 
シンの右頬が赤く腫れる。口の中が切れたらしく、血の味がした。
 
「けッ……!怪しいあんたに言われてもなぁ!」
 
血を吐き捨てて言う。
 
「この中じゃあんたが一番信用が無いんだぜ!それでよくも殴れたもんだな!」
「そんな事関係あるか?違反を起こしたから殴られているんだぞ、お前は」
「違反だと……!」
「そうだ。勝手な行動は艦を沈める事にも繋がる。一人の勝手でみんなが迷惑する事にな
る。それはお前の傲慢だ」
「あんた、俺の正義感は大事だって言ってたじゃないか!?」
「見込み違いだった。自分のした事も認識できない奴の正義感なんて無い方がマシだ」
「なんだと……!じゃあ、あんた達はあそこの人達の事なんかどうでもいいって言うのか
よ!?俺達は軍人だから命令が無きゃ知ったこっちゃ無いって、そう言うのかよ!?」
372カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:10:38 ID:???
それを聞いたアスランは堪忍袋の緒が切れたようにシンを一喝する。
 
「いい加減にしないか!戦争はヒーローごっこじゃないんだぞ!」
「……!」
 
一喝されたシンはその場を飛び出した。
それを見届けた他のクルーもやっかみを受ける前にそれぞれ散っていく。
 
「シンの奴め……!」
「落ち着け、アスラン。その内何とかなる」
「……」
「今はまだこれでいいんだ。戦っていく内にシンにも分かる時が来る」
 
慰めるカミーユの言葉にもアスランは眉間に皺を寄せるばかりで難しい表情をしている。
アスランほどの人物であれば、これ位でへこむ様な事は無いはずである。
 
「…何をそんなに神経質になっているんだ?」
「……確かにあいつの言う通りでもあるんだ……」
「えっ?」
「今回の戦闘、ブランクを感じていたとは言え、俺は大した成果も挙げてない。
……そんな奴に説教されれば反発だってしたくなるよな……」
「苛立ちの理由はそれか」
「……」
「フェイスなんだろ?隊長なんだろ?しっかりしてもらわなきゃこっちも困る。
……シンの前ではそんな顔出さないでくれよ?余計に付け上がる」
「……」
 
アスランは力ない表情のまま戻っていった。
その様子を心配したルナマリアが後を追いかけて行った。
 
 
ミネルバはスエズ支援の為、マハムール基地へと到達する。そこで次の作戦内容が説明
される。地球戦略の上で、ガルナハン基地周辺における優位性を確立する為にその先に
ある火力発電プラントを押さえたいという内容だった。
現地の部隊から送られてきた映像には巨大な砲塔と、それを守る大型MAが映されていた。
陽電子砲台のローエングリンと、以前接触したザムザザーと同じ様なシールドを持つMAであ
る。その長大な射程距離と、隙の無い防御は難攻不落と言っていいもので、更にそこの地形
が細長い谷間になっている事が余計に攻略を難しくさせていた。
現地部隊も何度か攻略を試みたものの、殆どの攻撃はMAのシールドに阻まれ、ローエング
リンによる砲撃が何も出来ないままの撤退を繰り返す結果となっていた。
ここを突破しない限りこの地方でのザフトの優位は無い。
そこで白羽の矢が立ったのがミネルバであった。
今回は連合に対するレジスタンスとの共同戦線になるという。詳しい作戦説明は現地にて、
合流した後に行うと言う事で、その日のブリーフィングは終了した。
373カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:15:31 ID:???
ブリーフィングが終わった後、カミーユは一人でミネルバの甲板に出ていた。
いくらカミーユがザフトになったといえど、このミネルバに於いてカミーユは異邦人である。
何となく自分に居場所を感じられず、黄昏ていた。
 
「こんな所で何湿気た面してやがる?」
 
不意に投げかけられた言葉に、カミーユははっとする。
声のした方向に目を向けると、そこには煙草を銜えたマッドがいた。
 
「ミネルバの空気にまだ慣れないか?」
「いえ……そんなことは……」
「隠すこたぁねぇよ。お前さんの表情を見てりゃあそんな事くれぇ解かる」
「……話ならシンにした方がいいですよ。彼の方が僕よりもよっぽど問題ですから」
「アイツは……なぁ?人の話聞かねぇからよぉ」
「言えてますね」
 
二人で笑い、マッドは煙草の煙を大きく吐き出す。
気を取り直してマッドが続ける。
 
「まぁ、可愛げのない美人艦長にうだつの上がらない隊長、会話も殆どしない同僚とエースは
自信過剰のお子様ときたもんだ。そんな中に飛び込んだとなっちゃあ、お前さんの気が滅入
るのもよく分かるって話だ」
「僕が今の事告げ口すれば怒られますよ」
「おっと、口が滑ったな……聞かなかった事にしてくれ。
俺にとっちゃあ戦争より減俸の方が怖いからな」
 
マッドは冗談っぽくそう言って笑う。カミーユもつられて少し笑う。
 
「だがよ、お前さんも自分から進んでこの艦に乗り込んだんだ。もう少し打ち解けなきゃ本当
に孤立しちまうぞ?戦争っていう命張った状況にこのミネルバは立たされているんだ。
…人との繋がりは大事にしたい物だろ」
「分かってますよ。ただ、きっかけが掴めないんです。
…前いた艦じゃ大人が多かったですから……」
「大人の振りして青春を満喫できなかったってか?
今からでも遅かねぇんじゃねぇか?まだ若いんだしよ」
「そんなんじゃないんです。……死んでしまった人の事を考えてたんです……」
「死んじまった人の事、か……忘れたくは無ぇよなぁ……」
「……」
「だが、引きずりっぱなしじゃあ先には進めねぇぜ?居なくなっちまった人の事を忘れないの
も大切だが、お前さんはこの世界で生き延びて自分の世界に帰らなくちゃいけねぇ。そんな
時一人ぼっちだったら、寂しいじゃねぇか」
「……分かる……気がします……でも、何でそんな事僕に……?」
「何となく、な?人生の先輩としてアドバイス出来る事があるんじゃねぇかなって思ってさ」
「あなたも馴染めなかったんですか?」
「……ま、若ぇ奴等が多いからな、この艦は。
…とりあえず頑張ってはみてくれよ?俺に言えるのはこんな事ぐらいしか無ぇからよ」
374カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:19:27 ID:???
そうカミーユに告げるとマッドは銜えていた煙草を揉み消した。
 
「一服も終わりだ。じゃあよ、俺は仕事に戻らぁ」
 
マッドは背を向けて肩越しに右手をひらひらさせて甲板を出て行った。
そこに入れ違いになるようにシンが甲板にやってくる。その右頬には湿布が貼られている。
 
「何、話してたんです?」
 
訝しげにカミーユにシンは訊ねる。どこか信用を置けない、そんな声色だった。
 
「……」
 
シンの問いかけにカミーユは応えない。シンはそんなカミーユの態度に鼻を鳴らす。
 
「そういえば、あんたとこうして二人の状況になるのはオーブ出た後以来でしたね?」
「そうだな」
「俺はあんたを絶対に認めないですからね。怪しすぎる」
「……シン、少し話をしないか?」
「いいですよ。あんたが何を考えているか、今度こそ聞かせてもらいましょうか?あの時は
上手くはぐらかされて逃げられちゃいましたからね……!」
 
明らかに敵意の籠もった口調でシンはカミーユに食い掛かる。
しかし、そんなシンに対してもカミーユは冷静になろうと我慢する。
 
「シン、お前は戦争で家族を亡くしたって前に話してたよな?」
「そうですけど、それがどうかしたんです?」
「いや……俺ももう家族は居ないからな……
…お前の気持ちも少しは分かる気がするんだ……」
「それはここがあんたの居た世界とは違う世界だからでしょう?帰れば家族が居るくせに、
白々しい事を言わないで欲しいですね」
「俺の世界にも家族は居ないんだ。……お前と同じで目の前で殺された」
「……!」
 
カミーユの両親は既に居ない。軍の衝突に巻き込まれて、彼の目の前で無残にも散って
いったのだ。
 
「俺の父も母も仕事ばっかで、家庭の事なんて碌に顧て無くてさ……それでも死んで
しまった時は悲しかったよ」
「……」
「だから、お前が戦争を憎む気持ちが人一倍強いのは解かるんだ」
「その割にはインド洋の時は随分厳しくされましたけど?」
「いくら戦争を憎んでいたって、やっていい事と悪い事の区別がある。あの基地の人達を助け
たかったんなら威嚇するだけでよかったんだ。殺す必要までは無かった。
…区別出来ない戦い方では勝利は出来ても戦争を終わらせる事はできない」
「俺がまだヒヨッ子だって言うんですか?残念ながら俺はこの艦のエースですよ。あんたや
アスランなんかよりも何倍も成果を挙げている」
375カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:23:22 ID:???
「人殺しを自慢にするつもりか?」
「誰がそんな事を言った!?俺は戦果の話をしてるんだ!」
「そうだよな?戦果を挙げる為なら無抵抗の人間でも平気でお前は殺せるんだもんな?」
「あんた、俺をおちょくってるのか!?いい加減にしろ!」
 
ここまで話して、カミーユは自分が少しヒートアップしている事に気付く。
 
「……すまない、言い過ぎたな……けど、戦争にだってルールがある。あまり人として外れた
戦い方をしていると戦いに取り込まれるぞ」
「言われなくたって……!」
 
ここまで話してカミーユは、駄目だな、と思った。先程マッドに言われた通りにしてみようと
思ったが、シン相手ではどうしても意見の衝突になってしまう。彼は昔のカミーユに似ている
所があるからだ。
そんな所がまるで自分を見ているようで、カミーユにとって気恥ずかしいのだ。
これ以上は余計に話がややこしくなる、と踏んだカミーユはこれで話を終わらせる為にその
場を離れた。
日が殆ど沈んで、宵闇が辺りを包む中、残されたシンは拳を握り締めていた。
 
 
日も沈んで辺りがすっかり暗くなった頃、MSデッキに一人の影があった。セイバーの
コックピットでシミュレーターを起動させて訓練をしているアスラン=ザラであった。
自らの不甲斐無い実力を、少しでも現役であった頃に戻そうとしているのである。
カミーユの神業とも云える戦闘を目の当たりにして受けた刺激の結果であった。
 
「くそっ!実戦じゃなきゃ駄目か……!」
 
映像の中での戦闘は確かにリアルに体感する事も出来るが、実戦でのみ感じる重力移動や
衝撃なんかは感じられない。更に言えば"空気"が違うのだ。
それが無ければ訓練した技術も実践で役に立たない場合が多い。
アスランはその事に焦っていた。
 
「アスランさーん!何なさってるんですかー!?」
 
下の方からルナマリアの声が聞こえてきた。
ずっとセイバーのコックピットに篭りっきりだったアスランは、取り合えず一旦シミュレーターを
止め、外に出る。
 
「何か用か?」
「いえ、用って程じゃないんですけど……こちらにいらっしゃるって聞いたものですから……」
「悪いけど用が無いなら構わないでくれないか?今、手が離せないんだ」
「シミュレーター訓練していらっしゃるんですよね?それならいいものがあるんですけど……」
「いいもの……?何だ?」
「まぁ、取り合えず降りてきてくださいよ。参考になるかと思ってある人の戦闘データを借りて
きたんです」
「誰の?」
「観てからのお楽しみです。早く降りてきてくださいよー?」
376カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:25:57 ID:???
ルナマリアに急かされるようにセイバーから降ろされるアスラン。
MSデッキの隅にあるコンピューターを起動し、ディスクを挿し込む。
そしてディスプレイにデータが映し出された。
 
「これは……カミーユの……?」
「はい、そうです。あの人、まだ一回も被弾して無いみたいなんですよね。
だから、アスランさんに何かヒントになるものがあればと思って……」
「被弾数ゼロ……回避率100%か……撃墜数12、命中率も60%近くを弾き出している……
…彼は本当にナチュラルなのか?」
「この艦の検査では100%ナチュラルであると出たみたいですよ。あたしもこれを見るまでは
信じていましたけど……このデータを見る限りその検査結果を疑ってしまいます」
「常識では有り得ない何かがカミーユにはあると言うのか……?」
「映像の方、出しますね」
 
ルナマリアが戦闘中にカメラが捉えた映像に画面を切り替える。
 
「……」
「……あのぉ、どうですか?」
「……」
「アスランさん?」
「……君はこれを観て何も感じないのか?」
「へ?」
「よく見てみろ、この動き、次に何が来るか分かってなければ出来ない動きだ。操縦技術も
さることながら、後ろからの攻撃にも完璧に対応している」
「言われてみれば確かに……
でも、警告音とかで判断して適当に避けてるんじゃないですか?」
「それだけで回避率100%を証明する根拠になるか?」
「ぅ……」
 
アスランはまだ気付いていないが、カミーユは警告音がなる一瞬前に回避行動を取り始めて
いる。余りにも僅かなタイムラグであるが故に、二人とも全く気付かないのだ。

「ほら、あの人のMS、全面モニターになってるじゃないですか?それで見えていたんじゃない
ですかね?」
「カミーユの目は後ろにもあるのか?」
「ぇ……いや……」 
「驚異的だな……カミーユの勘は……」
「勘……ですか……?」
「そうだ。そうでなければ説明がつかない。……信じたくは無いが……」
「でも、アスランさんもこの位は出来ますよね?」
「馬鹿を言うな。これ程にまで相手のやる事為す事を全て見通した戦いは出来ない」
「そ、そうなんですか……!?」
「おう、お前等、何二人で見てるんだ?」
377カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:27:55 ID:???
コンピューターのモニターに釘付けになっていた二人の背後から声が掛かる。
豪快な声の主はマッドだった。
 
「あっ、マッドさん……あの、カミーユさんのデータを借りてきて見てるんです」
「ほぉ……で、感想は?」
「並みのコーディネイターとは比べ物にならないですね。正直、こんなの見せられたら自信を
無くしますよ」
 
若干疲れた顔でアスランが応える。
 
「そんなにか?」
「ええ。戦闘勘が凄いんです。何もかもお見通し、みたいな……」
「ふぅん、お前さんでも勝てないのか?」
「今の俺では勝てる気がしないですね……」
「そりゃあたいしたもんだ。ヤキンのフリーダムと、どっちが強ぇかな?」
「えっ?」
「お前さんなら知ってるんだろ?奴の実力は」
「さあ……あいつも強いですからね……どちらが勝つかなんて比べられないですよ」
 
フリーダム……圧倒的な性能で前大戦を終結に導いたMSである。
殲滅戦が主目的のMSであり、その扱いの難しさから乗り手を選ぶマシンであった。
そのMSのパイロット、キラ=ヤマトはその類稀なる操縦センスによって、正にbPと呼ぶに
相応しい地位を確立させていた。
 
「あいつの強さは操縦の早さが特徴ですからね……カミーユの強さとはまた別物ですよ」
「なら、カミーユの強さをどう見る?」
「これだけのデータでは不足していますが、敢えて言うなら……戦いを読む強さですかね?」
「なんだそりゃ?それは艦長の仕事だろうが?」
「それとは又別物です。カミーユの場合、敵の動きを読んだ上で対応しているんです」
「だから、それが艦長の仕事と何が違うんだ?」
「考えたくは無いですが、カミーユは相手の考えてる事が分かってしまうような気がするん
です。それも、かなり正確に……」
 
モニターを見つめたまま、アスランは二人に聞こえないような音で歯軋りをした。
こんな常識を逸した現実を突きつけられ、歯痒い気持ちになっていた。
胸の奥で何かが沸々と沸き上がる感覚がする。
378カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:30:03 ID:???
「ちょ、ちょっとアスランさん!あの人がエスパーだとでも言うんですか!?」
「そうだぞ、アスラン。そんな馬鹿な話があるわけが無い」
 
アスランの見解に二人が口をそろえて抗議する。
ニュータイプの概念の無い彼等には当然の反応だが、突然アスランは目を見開いて二人に
向き直る。
 
「俺だって認めたくは無い!でも、そうとでも考えなければこの動きは説明がつかないんだ!
…なら、認めるしか無いじゃないか!」
「ア、アスランさん……?」
「……」
 
急に激昂するアスランに、二人は唖然とする。瞬間、ハッとしたアスランは深く息をつく。
 
「すまない……少し風に当たってくる……」
 
そう言い残し、アスランはMSデッキを出て行った。
それを追いかけようとルナマリアも出て行こうとしたが、マッドがルナマリアの肩に手を置き、
それを止めた。
 
「一人にしてやりな。これは誰かがどうにか出来る問題じゃねぇ」
「でも……」
「アイツのプライドの問題だ。奴は自分の存在意義に疑問を持ち始めている」
「そんな事無いですよ!アスランさんは立派な隊長です!」
「本人がそう思ってないんだ。お前さんがいくらそう言っても逆にアイツを追い詰めるぜ?」
「どういう事ですか、それ!あたしは本当に……!」
「それが返ってアイツのプライドを傷つけるって言ってんだよ、俺は。
実力を発揮出来ない上に、化け物の様な新顔のパイロットが既にこの艦にいたんだ。それで
お前さんのような慰め方をされたんじゃ、裸の王様かただのピエロだぜ」
「そんなの…やってみなければ分からないじゃないですか!」
「じゃあお前さん、何て声掛けるつもりなんだ?」
「そ…それは……」
「ほれ見ろ、中途半端な情けが一番へこむんだぜ?」
 
マッドの突っ込みにルナマリアは表情を落とす。アスランに気に入られる事ばかりを考えて
いて、肝心の彼自身の事を蔑ろにしていた事に気付く。
379カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/09(月) 16:31:58 ID:???
「そんな……アスランさんの手助けになると思ってあのデータを借りてきたのに……それが
返って逆効果だったなんて……」
「そいつぁ、残念だったな。だが、これを乗り越えてもらわなきゃこの艦が沈む。
……それと、あと一人……」
「……?」
「シンの坊主にも成長してもらわなきゃな……」
「シンが!?」
「何もそんなに驚く事ぁねぇだろうがよ?あいつも立派なエースだぜ、実力だけならな」
「あの子が?」
「そうさ。ああ見えて中々大したものだよ、あいつは。見所がある。
お前さんはしっかりシンを見ておくんだな。きっと化けるぜ!」
 
マッドの話を聞いたルナマリアはマッドを軽蔑するかのような目で見つめた。
 
「ふん、疑うんなら構わねぇが、後で後悔しても知らねぇぞ!」
 
吐き捨てるようにそう言ってマッドはその場から離れていく。
残されたルナマリアは今の言葉を冗談にしか受け取っていなかった。
しかし、この時のマッドの言葉は後々現実のものとなる。
ルナマリアが想像する以上に速く、シンは大人への階段を駆け上っていく……
                                              〜つづく〜
380通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 16:38:30 ID:???
超GJ!!
381通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 16:46:19 ID:???
こうやって噛み付くシンがなんだか新鮮だw
GJ!
382通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 16:46:56 ID:???
GJ!
カミーユ・シン・アスランの人間関係が面白いですな。
整備のマッドさんが実にいい味を出してるのもGOODです。
こう言う人が種死にもいたらなぁ。
383通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 16:47:04 ID:???
GJ

いやあシンの増長が笑えるw
気のせいかカツとダブるんだが。。

カミーユはうまくシンを導いてやれるのかね??
384通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 17:02:04 ID:???
なんてこと言うんだ!もうカミーユVSカツの口喧嘩にしか見えねぇ。
カツ「僕は間違ったことはしてませんよ!」   うわっ殴りてぇ
385通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 17:30:31 ID:???
マッドさんが大人だ……
386 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/09(月) 17:53:55 ID:???
カミーユinCE氏GJ!
人間模様が面白い!

俺も負けてられないな……

では今日の投下いきますね
387 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/09(月) 17:55:59 ID:???
《カミーユ》
《何だい?》
《もう……行っちゃうの?》
《ああ。そろそろ行かないと、ミネルバを降ろされてしまうからな》

端正な顔立ちで、エキゾチックな服装をした女を一瞥すると、カミーユは踵を返して歩き出した

《何で……?》

紫のルージュから溢れた問掛けに、カミーユは振り返った

《何でそんなにあの艦にこだわるの……?》
《放っておけない奴がいるんだ》
《……》

悲痛な面持ちになる女――カミーユを送り出していいものだろうか、
ここにいた方がいいのではないかという思いが頭をよぎった

《……気を付けて》

止めることは出来なかった
カミーユはそういう人だという結論に至ったのだ

《ああ、ありがとう。フォウ》

歩を進めていくカミーユの姿を、女――フォウ・ムラサメはなるべく悲しみが滲まないように、にこりと笑った

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第11話『帰還』

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388 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/09(月) 17:57:28 ID:???
カーペンタリア基地から少し離れた区域
――ザフト軍が所有する演習場がである

そこには4機のMSが佇み、その足下にはパイロットスーツに身を包んだ4人の男女がいた

「当初はシンのみの予定だったが、艦長たっての希望によりパイロット全員での訓練を行う。
訓練といえども、真剣に取り組むように。以上」
「「「了解!」」」

集団を取り仕切る者のお決まりの台詞に対して
敬礼を取る部下達の姿がそこにあった

「先ずはシンからだ。後ろに乗れ」
「はい!」

シンは、セイバーのコックピット裏に急ごしらえで作られたシートに腰をかけ、がっちりと体を固定させるベルトを締めた

「じゃあ、行くぞ」

ドゥゥゥ!
バーニアが爆音を立て、セイバーを空に駆け上がらせる
適当な高度まで機体を押し上げると、セイバーは四肢を曲げてMA形態へと形を変えた

「舌を噛みたくなかったら、喋るなよ!」

その言葉が合図となり、急速に空を舞い始める

「うわぁあぁぁ!!」

アスランの言葉も忘れてシンは絶叫した
凄まじいGで体が強張りながら目の前のシート越しにモニターを見た
その光景は自分が限界ラインを引いていた地点をあっさりと越えていたのだ
389 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/09(月) 18:00:41 ID:???
「喋るなと言っている!!」

そんなシンに怒鳴りつけるアスラン

急降下、急上昇を繰り返しながらも、時折、制動をかけてMS形態へと変形する
何回かその動きを繰り返して地上に降り立つと、シンの目は虚ろになっていた

「うぇぇぇ!」

コックピットから降りた途端に吐気をもよおすシン
――苦痛には耐えられても、吐気には耐えられなかったのだ

「もし吐いたらもう一度だ」

非情とも取れるその言葉にシンは怒りさえ感じたが、
先程の恐怖体験はしまいと必死で吐気をこらえた

「これが正しい内臓の鍛え方だ。ったく、艦長からお前の特訓を聞いたときは耳を疑ったぞ」

しかし、アスランの言葉はシンには届いていない

「……何でアスランさんは平気なんですか?」

ルナマリアの素朴な疑問に対して、アスランは頭を抱えた

「俺がアカデミーにいた時は、これを一日中やらされていたぞ」
「似たようなことはしましたけど……」

アスランの言葉に軽いショックを受けるルナマリアだった

「まあ、お前達は平時に入学したから無理もないか……
次はルナマリアだ」
「ええっ!!」
「これに耐えれるようになって初めて一人前なんだ」

涙目になりながら後部シートに座るルナマリアの姿に、レイは捨てられた子猫の姿を思い出した

――三人の名誉の為に言っておくが、エースパイロットとして名を馳せたアスランの機動は異常である
彼は手を抜くという言葉を知らない――

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390 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/09(月) 18:03:12 ID:???
訓練を終え、三人はボロ切れのように横たわった

「よし、次は……」
「「「えっ!」」」

それを気にも留めないアスランの言葉に過剰に反応する――あれは『最初の』訓練だったのだ

「安心しろ。次は吐くような思いはしない
各々の機体に乗り込め」

指示に従い、重い体を引きずりながらコックピットに乗り込むと、通信が入った

『次は鬼ごっこだ。鬼の役は俺だ
俺に接触された奴は……分かっているな?』

身震いする面々――合図も聞かずに散々になる

『おい!……まあいい』

アスランは標的を決め、それに向かって飛び出して行く

「俺かよぉぉぉ!?」

不幸な星に恵まれたのはシンであった

必死でバーニアを吹かすが、じわじわと距離が縮まる
391 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/09(月) 18:04:18 ID:???
『セイバーの方が素早いんだ!どうすればいいかよく考えろ!』
「……はっ!」

シンは足を止め、セイバーに対して向き直った

――振り上げられるセイバーの腕部――

「触られなきゃいいんだろ!!」

その脇をかいくぐり、一気にバーニアをフルスロットルまで押し上げる――!

『それだ!!今の感覚を覚えておけよ!!』
インパルスはそのままセイバーの背後を後にする

――敵の近接攻撃をかいくぐれば自ずと敵に隙が生じる
MSの白兵戦において隙を取るのは勝ちに等しい
つまり、この訓練の目的は回避と反撃の連動性を高めることにあるのだ――

『次はルナマリアだ』
『いやっ!来ないで!痴漢っ!』
『……なんだそれは』
『だって触りにくるんでしょ!?』
『語弊がありすぎるぞ!!』

アスランが執拗にルナマリアを追い掛け回したのは言うまでもない

=======================
392 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/09(月) 18:08:10 ID:???
訓練に疲れ果てたシンはミネルバへの帰路についた

自室への道中には医務室があり、
ふと気が向いたシンはカミーユを見舞うことにした

「失礼します」

何時ものようにドアを空けた
たが、そこには違和感があった。普段は挨拶をしても静寂の中に吸い込まれていくだけだった

しかし、この日は違ったのだ

「やあ、シン」

窓際に佇んでいた青年が振り返って挨拶を返してきたのだ

「……えっ?」

何が起きているのかよく理解出来ない――訓練のせいで頭が鈍っているのだろうか、いや、違う

「どうしたんだ?そんな顔して」

どんな顔なんだ
そんなに面白い顔をしているのか
ああ、もうどうでもいい

「カミーユさん!」

シンはカミーユに駆け寄り、その胸の中でさめざめと泣き始めた
カミーユが本当の意味でユニウスセブンから帰ってきたのだから

「心配かけて済まなかったな。ほら、泣くなよ。男だろ?」
「……すみません……うっ、ううっ……」

泣かないほうが無理な話だと、シンはそのまま泣き続けた
嬉しさで涙したのはこれが初めてだった

〜つづく〜
393通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 19:00:35 ID:???
カミーユ戻ってきたーーー!!!!
GJ!!
394通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 19:21:23 ID:???
オオ、戻ってきたぞ…
はや!!
395通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 19:22:03 ID:???
だがそれがいい
396通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 20:01:26 ID:???
GJ。カミーユが帰ってきたぞ〜(´;ω;`)ウッ…。
そして見える、見えるぞ!!カミーユからIMPCの存在を聞いて今までの訓練が無駄だったことを知るシンが。
397通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 20:26:39 ID:???
アスラン・・・漢すぎる。本編でもこんなキャラだったら良かったのに・・・
398通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 21:21:28 ID:???
両氏GJです
いつかカミーユのZZでの大規模テレパス演出がみたいです
399通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 21:40:50 ID:???
IMPCってなんだ?
400通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 21:57:31 ID:???
連邦軍が一年戦争から使っている学習型コンピューターとそのデータの事。
これにより、MSの基本歩行・着艦・発着・制動などをコンピュータが自動的に行ってくれて、パイロットは緊急時にマニュアルで行動するだけでいいようになった。
一年戦争後はペズン等の教導隊であらゆる場面に対応できるように運用データを集積していた。
本来連邦軍の一派閥であるエゥーゴ・ティターンズのMSには両方これに基づいたOSが入っている。
本来はパイロットの負担を軽減させる為のものだが、熟練パイロットからはパイロットを堕落させるものとして「IMPC(インプ)」と揶揄されていた。
401通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 22:24:29 ID:???
カミーユの女難シーンはマダ〜〜?
402通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 10:07:44 ID:???
GJです
アスラン達がカミーユのNT能力に気づき始めてるな
ニュータイプの概念とか説明するようになりそうだな
コーディネータとナチュラルの確執に絡んできたら面白いな
403カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:10:03 ID:???
作戦遂行の為、ミネルバは連合のガルナハン基地近くのレジスタンスと現地軍に合流する。
通称ローエングリンゲートと呼ばれる谷間の難所は、一本道故に中々奇襲攻撃を仕掛ける
事が出来ない。
しかし、レジスタンスから派遣されてきたコニールによると、地元の人間しか知らない坑道跡
が存在していると言う。そこを抜けられれば、丁度ローエングリン砲台の裏側から奇襲が
成立する訳であるが、そこは光が差し込まない上に極端に狭い構造をしているため、進入
が困難な所であるらしいのだ。
そこでアスランが白羽の矢を立てたのがシンであった。シンのインパルスなら、分離した
状態でならその坑道を抜けられる事が分かったからだ。
勿論、技術的にも、視界が殆ど利かない為、ルートを示すコンピューターのみが頼みの綱
なのであるが、そんな所を不安に感じたコニールが若いシンに疑問を投げかける。
 
「あんたがやるのかい?本当に大丈夫なんだろうね?」
「どう言う意味だよ?」
「あんたじゃ不安だって言ってるのさ。これが失敗したら今度こそあたし達の町が焼き払われ
てしまうかもしれない。連合に好き勝手やられるしか無くなる」
「そんなに不安なら隊長に頼めばいいだろ?悪いけど、軍人は上官の命令には従わなくちゃ
ならないんでね、隊長が変えない限り俺がやらなくちゃならないんだよ」
 
シンは先日の件もあってか、アスランを横目で伺いつつ厭味を込めて言い放つ。
それに気付いたアスランはシンに告げる。
 
「……今回の作戦、勝利出来るか出来ないかの鍵はお前が握っている。彼女の言った通り、
今回が失敗すればもう後が無い。故にお前に失敗は許されない。」
「ヘッ、プレッシャーを掛けようって寸法かい?もし不安なら代わってやってもいいんだぜ?」
「フン、自分じゃどうしても出来ないと言うんなら代わろうか?自信が無いんだろ?」
「何!?あんたが言えた事じゃないだろう!
……まぁいいか、やってやりますよ。洞窟抜けて、砲台をぶっ潰せばいいんでしょ?簡単で
すよ」
「……」
 
シンは早々にミーティングルームを出て行った。
404カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:12:44 ID:???
「あの、本当に大丈夫なんですか?あんな奴で……」
「……腕は確かです。多分大丈夫でしょう。彼が失敗しても責任を取って俺が何とかしますの
で」
「そ、そうですか」
 
本人は平静を装っているつもりだが、やはり空気は怒りのそれが醸し出されていて、コニール
は少し戸惑う。
脇からやり取りを見ていたルナマリアは昨日のマッドの言葉を思い出して、やっぱりシンは
駄目だ、化ける筈が無い、と眉間に指を当てた。
 
 
 
何度目かになるザフトとレジスタンスによるローエングリンゲート突破作戦が展開される。
まず、カミーユとアスランが出撃する。それに続いて、地上部隊に対してはレイとルナマリア
が配置に就いた。
カミーユとアスランは敵の注意を引き付ける為に最前線で囮になる。
そして、作戦通りに、シンがその隙に坑道へと突入していった。
 
「ここがそうなのか……って、何だよ、これ!?真っ暗で何も見えやしないじゃないか!
本当にルートマップ頼りかよ!?」
 
文句を言いながらもシンは、慎重且つ迅速に幅がギリギリの坑道を突き進む。
時折機体の端が岩に掠るが、それを細かく調整して安定を図る。
紙一重の機体操作を目まぐるしく行い、シンは必死になっていた。
 
「くそったれぇぇぇー!」
 
コアスプレンダーのコックピットの中でシンの叫び声が響いた。
 
 
シンがローエングリンへの裏道を行っている頃、外では激しい戦いが繰り広げられていた。
取り合えずローエングリンの破壊が最優先事項のザフトは砲台に砲撃を集中させる。
しかし、それを守る鉄壁のシールドを持つ大型MA・ゲルスゲーの前に、全ては無意味なもの
であった。効果的な打撃が与えられず、お互いに戦力を消耗していく。
そんな中、カミーユはこの世界へ来て始めての苦戦を強いられていた。
  
「くっ、この地形じゃ戦いにくい……!」
 
アスランと共に空中戦を担当するカミーユ。
MS形態では自力飛行が出来ない為に通常より長い時間ウェイブライダーに変形していなけ
ればならないΖガンダムにとって、この細長い谷間の地形は非常に不利なものであった。
ウェイブライダーはノズルが後方へ集中するため、小回りが効かないのだ。
その為、カミーユは中々思うように敵の動きに合わせる事が出来ない。
仕方なくカミーユは空をアスランに任せ、MS形態の時間を長くする事でこれに対応すること
にした。そして、空ではアスランのセイバーが孤軍奮闘している。
405カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:15:02 ID:???
「カミーユは下に降りたか……こちらのサポートに回るんだな?」
 
カミーユはΖガンダムのバーニアを蒸かし、飛び跳ねるような動きで下からアスランの援護を
する。Ζガンダムのビームライフルが敵MSを墜したり、動きを散漫にさせたりする。
その隙を縫ってアスランが次々と敵MSを墜していく。
 
「カミーユ……あんな戦い方も出来るのか……」
 
戦いには集中しているが、アスランの関心はカミーユの戦い方に向いていた。
 
かつてカミーユがエゥーゴに在籍していて戦っていた時は、彼自身が先に立って戦闘をして
いる事が多かったのだが、エゥーゴの真のエースはクワトロであった。
その為、カミーユは彼の援護にも付く事があったので連携を取る事にも慣れていたのだ。
ニュータイプの勘から発するイメージは、アスランとの連携を初めてとは思えない巧みさで
マッチしていく。
 
『アスラン!敵の数は多いんだ!突っ込みすぎは迂闊だぞ!』
 
通信でカミーユの声を聞き、アスランはハッとする。カミーユに気を取られていて、気付いたら
戦闘空域がローエングリンの近くまで来てしまっていたのだ。
冷静になって周囲を見渡すと、既に自分達は敵MSに囲まれてしまっている状態であった。
 
「こ…ここは……!カミーユ、何故知らせてくれなかった!?君まで付いて来て……!」
『しっかりしろ!動揺が表に出てるぞ!』
「なっ!?」
 
状況に愕然として集中が途切れたアスランの動きは明らかに浮き足立っていた。
そこを付け込まれ、懐に潜り込まれてしまう。
ダガーLの持つサーベルの色がアスランの目に映る。
 
「やられる……!?」
 
そう観念した時であった。Ζガンダムのビームライフルが間一髪間に合い、目の前の
ダガーLは火を噴きながら下へと落ちて行く。
 
『どうしたんだ、アスラン!?それじゃあ死ぬぞ!』
「くっ!」
 
何とか持ち直そうと、気持ちを落ち着かせるアスラン。しかし、一度切れた集中を取り戻すの
は容易でなく、ひどくまとまりの無い動きで敵へと向かっていく。
それでも、かつての英雄は並みの一般兵とは一線を画す強さを見せ付ける。
但し、前回の戦闘で接触したネオが相手であれば即座に撃墜されていたであろう。
406カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:17:07 ID:???
『一度後退だ、アスラン!ここでは囮が成立しない!』
「シンは何をやっている!?」
『アスラン……?混乱しているのか!?』
「くそっ!このまま突っ込むしか……!」
 
急にセイバーがローエングリンへ向けて加速を始める。
いきなりの展開に流石のカミーユも度肝を抜かれる。
 
『何やってんだアスラン!?ローエングリンはシンが奇襲で叩く手筈になってんだろ!?』
「俺がやるんだ……俺がやらなくちゃ……!」
『何を焦っているんだ、アスラン!作戦はどうしたんだ!?』
 
明らかに様子がおかしいアスランを追って、周りが見えていないアスランの代わりに敵を
落としながらカミーユもローエングリンへ向かう。
 
  
「そろそろか……?」
 
坑道へと潜ったシンは光無き道をひたすら進んでいた。
ルートマップに拠ればそろそろ出口である。
 
「見てろよ、アスランの奴め……俺が必ずローエングリンを潰してやる!」
 
ルートマップに視線を向けると、丁度ローエングリン砲台の地点であった。
いよいよか、と思い、操縦レバーを握る手に更に力を込める。
 
「行くぞぉー!」
 
壁を突き破って勢いよく坑道から飛び出し、インパルスをMSへと合体させる。
そして、ローエングリンの背後から奇襲を仕掛けようとバーニアを蒸した。
だが、そこには未だ多数の敵MSと、居るはずの無いセイバーとΖガンダムの姿があった。
 
「な、何だコリャ!?」
 
シンが素っ頓狂な声で状況を把握しようと努める。
 
(囮として出た二人がここに居て、敵もまだここに居る……ローエングリンは……まだある!
あのMAも居る……無茶苦茶だ……!)
 
セイバーはゲルスゲーに攻撃を仕掛けていて、Ζガンダムは近くでその他の敵MSを相手に
している。
 
「どうなってんだこれ……!」
 
いまいち状況の飲み込めないシンも取り合えず戦闘に参加する。
407カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:19:44 ID:???
「隊長、どうなってんです!?何であんた達がここに居るんですか!?」
『シン!今更……!』
「!?」
 
普段とまるで様子の異なるアスランの声に、シンは一瞬戸惑いを見せる。
そこへインパルスの到着を確認したカミーユが通信を繋げてくる。
 
『シン!済まない、作戦は無駄になった!このまま力で押し切るしかない!』
「はぁっ!?ど、どう言うんだよ!?さっぱり……だ!」
 
喋りながらも戦闘を継続するシン。
 
『アスランの様子がおかしい!ここは俺達で何とかするしかない!』
「何とかって……!……!?あいつら、ローエングリンを撃つつもりか!?」
『何っ!?』
 
ゲルスゲーがローエングリンの防御に入り、敵MSの群れが射線軸から離れていく。
ローエングリンの砲身が発射態勢へと変化する。
 
「くっ、まずいぞ……今撃たれたら敗北は必至だ!」
「くそったれぇー!」
 
 
一方、進行してきた敵を相手に奮戦しているミネルバ。
次第に戦況が落ち着いてきた頃、敵の動きに変化が現れた。
 
「……」
「艦長、敵の動き、妙じゃありませんか?」
「アーサーもそう思う?
…わざと本艦から距離をとって仕掛けているようにしか見えないわね……」
「敵はローエングリンの発射体制に入っているのではないでしょうか?本艦をここに固定する
ためにわざと離れた距離から取り囲むように攻撃しているとしたら……」
「……!? それよ、アーサー!直ぐにレイとルナマリアに知らせて!
本艦を護衛しつつ後退するように!」
「りょ、了解!友軍にも伝えます!」
「抜かりなくね!」
 
アーサーの隠れた戦術眼の良さを知っているタリアは、自分の考えを示す間も無くミネルバを
後退させる。タリアが頼りなさそうなアーサーを自らの側近に置いていたのはその為であった。
408カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:21:33 ID:???
そして、発射態勢に入ったローエングリンにシンは仕掛ける。だが、時既に遅し、
ローエングリンは地獄の業火とも取れる赤い光を撒き散らして発射されてしまう。
 
「あぁっ!」
 
シンの諦めにも似た叫び声も空しく、その一閃はミネルバへ向かって瞬いた。
絶望を感じるシンは怒りに身を任せる。
 
「うおおぉぉぉー!」
 
獣の様な叫び声を上げ、ローエングリンへ向け突貫するシンに、残った敵MSがそれを制止
しようと攻撃を仕掛ける。シンはそんな仕掛けてくる内の一機のダガーLの事をまるでハエを
追い払うかの如く薙ぎ払う。
そしてその残った残骸をローエングリン目掛けて投げ飛ばした。
 
「消えてなくなれぇー!」
 
爆散を始めたダガーLの残骸が爆弾の代わりとなり、ローエングリンを巻き込んでいく。
その時、守るべき筈のゲルスゲーは既にアスランによって落とされていた。
ローエングリン発射の際に出来た一瞬の隙を狙い撃ちされていたのだ。
 
「ミネルバは……!」
 
目的を果たしたシンは先程のローエングリンの行方とミネルバの安否が気に掛かっていた。
 
『シン、ミネルバは無事だ。間一髪回避が間に合ったようだ』
 
狼狽するシンにカミーユが通信で告げる。ホッとしたシンは溜飲を下げる。
 
「良かった……本当に良かった……!」
 
緊張感が解け、敵の居なくなった状況にシンはそのまま機体を下ろす。
その横で、空に浮かんだままのセイバーを、カミーユは見つめていた。
そのセイバーのコックピットで、アスランはただ茫然としていた。
 
こうして、歯車が噛み合うことなくローエングリンゲート突破作戦は終了した。
何とか勝利を得ることが出来たとはいえ、何時までもこんなバラバラの戦いを繰り返していた
のではいつかミネルバは沈んでしまうだろう。
そんな中でも、アスランの思惑は重くなるばかりであった……
409カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:24:10 ID:???
ローエングリンゲート攻略作戦は何とか勝利したものの、アスランの独断先行は作戦に大き
な影響を及ぼした。
アスランがミネルバへ帰還すると、そこにはシンをはじめ、パイロット連中が彼を待ち構えて
いた。アスランは一つ大きく深呼吸をしてセイバーのコックピットから降りる。
 
「英雄様のお帰りか!」
「……」
「ちょ、ちょっと、シン!止めなさいよ?」
「ルナは黙ってろよ。こっちはせっかくの作戦をぶち壊しにされたんだ」
「で、でも、勝ったじゃない?結果オーライって事で……」
「冗談じゃない!今度又同じ様な事されたら俺が死ぬかもしれないんだぞ!?
…黙ってられるかよ!」
 
何とか場を収めたいルナマリアの制止を邪険に扱い、シンはアスランに詰め寄る。
 
「隊長、あなたの作戦では、あなたとこの人が囮となってローエングリンの周りの敵を引き付
けておき、その間に俺が奇襲するものでしたよね?」
 
アスランとカミーユを順に指差し、シンは語る。口調こそ穏やかなものだが、その奥には憤り
と軽蔑が入り混じっている。
 
「それなのに、何です、あの体たらくは?あれじゃあ、作戦もへったくれも無いですよね、
あなた達まであそこに来ちゃ」
「……」
「結局は唯の力押し、おかげで酷い目に遭いましたよ。ミネルバも沈みそうになったし」
「……」
 
シンの言葉にアスランは何も応えない。唯目を伏せて聞いているだけだ。
その様子に業を煮やしたシンはアスランを怒鳴りつける。
 
「何とか言ったらどうなんだ、あんたは!?ダンマリ決め込んで又同じことを繰り返そうって
のか、あぁ!?」
「……そんな事は……無い……」
 
搾り出すように応えたアスランであったが、余りにもの自らの不甲斐無さに、内心は憤って
いた。
410カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:27:12 ID:???
「シン、それくらいでいいだろう?アスランも十分反省している」
「隊長を止められなかったあんたが偉そうに言うな!」
「……っ、何?」
 
苛立ちを抑えきれないシンはカミーユの制止も振り切る。
そんなシンの態度にカミーユの表情も険しくなる。
 
「あんたにだって責任はあるんだからな!」
「俺は!……自分に出来る事はやったつもりだ!」
「そうかい?隊長に振り回されていたようにしか見えなかったぜ!」
「貴様……言わせておけば……!」
 
元々感情的になりやすいカミーユは今のシンの言葉に憤りを感じる。
一方、険しくなったカミーユの表情を見ても一切引く気が無いシン。
二人は一触即発の空気を醸し出していた。
 
「ちょ、ちょっとちょっと、ストーップ!二人とも止めてよ!」
 
二人を見かねたルナマリアが抑えに入る。
 
「今は喧嘩なんかしないで、次に同じ事が起きないように気を付けましょ、ね?」
「ルナ……だけどさぁ!」
「カミーユさんも、アスランさんも、それでいいじゃないですか?いつまでも引きずるのは良く
ないですよ」
「ん……まぁ、そりゃあ……」
「……」
 
多少強引とも言えるルナマリアの言葉に、何とかその場は収まる。それでもシンは納得でき
ないでいたが、これ以上は無駄だと悟り、渋々と自室へと戻っていった。
 
「流石だな、ルナマリア」
「レイ、あんたも茶化す位なら止めなさいよ!」
「俺は趣味が悪いからな」
 
ルナマリアはレイに怒りを露わにするものの、彼が邪悪な微笑を見せると、諦めた様にその
場を離れた。続いてレイも戻っていき、そこにはカミーユとアスランだけが残された。
 
「あまり気負いすぎるなよ、死相がでるぞ」
 
少し冗談っぽく言い放つカミーユの言葉にも、アスランは力なく応える。
 
「カミーユ……君みたく上手くいかないな……」
「よぉ、お疲れさん。整備、やっといてやるから休めよ、疲れてんだろ?」
 
二人の下へマッドがやって来る。
411カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/10(火) 18:29:24 ID:???
「あ、はい……お願いします……」
 
うな垂れた表情のままアスランはその場を後にする。
その様子を怪訝に感じたマッドはカミーユに訊ねる。
 
「どうしたんだ、隊長さんは?元気ねぇみてぇだが……」
「今回の作戦、どうも様子が変だったんです。最初っから……」
「ふーん……?」
「何か、焦っているような感じでした」
「そうか……ま、気持ちはわからねぇでもねぇけどよ?ちと心配だな、こりゃ」
「何か思い当たる節でもあるんですか?」
「お前さんが気にする事じゃねぇ。唯の面倒くせぇ男の性さ」
「性……ですか?」
「そうさ。それにしてもルナマリアが何とかするたぁな?いくらパイロットっつっても女だな?」
 
マッドの直球な言い方にカミーユは少し引っ掛かる。
 
「何か下品ですね、その言い方」
「何言ってやがる!男ってのはなぁ、助平な位が丁度いいんだよ!」
「そうですか?」
「逆にあの隊長さんやレイの様なタイプは上辺はモテるが、ムッツリが判明した途端に女は
離れてくぜ!」
「やっぱ下品ですよ、マッドさんは」
「うるせっ、小僧がナマ言うんじゃねぇ!」
 
軽口を叩くカミーユにマッドは拳を振り上げる。それをみてカミーユも身構える。
軽い感覚でマッドはカミーユの頭を小突いた。
 
「ったく、さっさと休めよ?お前さんのMSの整備もやっといてやるからよ」
「すみません、頼みます」
 
そう言ってカミーユはデッキを後にする。
 
「この艦、もう少し素直な奴はいねぇものかね」
 
整備に取り掛かるマッドは若いミネルバのパイロット達を総評してそう呟いた。
 
「親方ー!このレーザートーチの予備って何処でしたっけ?」
「ばっかやろー!この前教えたじゃねーか!しっかりしろぉ!」
 
MSデッキにマッドの怒鳴り声が響いた。
                                           〜つづく〜
412通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 18:35:24 ID:???
う〜んGJ!!
413通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 18:37:32 ID:???
GJ!
本編で完全に空気だったマッドのおっさんがどんどん名脇役にw
やっぱ精神的に大人のキャラが入ると話に深みが出るな。
414通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 18:53:57 ID:???
相変わらず更新が早いっすね。
GJです!!!
415通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:11:51 ID:???
マッドのおっさんがアストナージみたいだww
416通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:14:02 ID:???
死亡フラグじゃねえか
417通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:20:02 ID:???
>>415
むしろ「Z」本編にさえも案外いなかったポジションの人という事で
ファーストのリュウ的というか、


って死亡フラグ補強してどうする!?
418通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:21:20 ID:???
大丈夫だサラダを一緒に食べる奴がいないから!!
419通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:30:47 ID:???
年配のメカマンが自爆特攻寸前の甲板に半壊したMSを砲台代わりに据え付けて(ry
420通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:33:10 ID:???
アスランが裏切るなら多分ファトゥム01がミネルバに突き刺さる事になるんだぜ?
その前にはタンホイザーを撃ち抜く自由もある。
……逃げてー、エイブス班長逃げてー。

しかし嫁脚本の時より戦力が増強されたのに上手くいかないってのは初めて見た気がする。
GJ!
421通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:33:37 ID:???
マッドのおやっさんだけだな頼りになる大人は。
422通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 20:39:56 ID:???
>>420
最初から上手くいくより、互いの悪いところを認め合った上で構築された信頼関係の方がいざって時には強いもんさ
423通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 20:46:10 ID:???
正論ではあるが、ラクスやキラとは別の意味で『おまえが言うな』なセリフが多かったなーシン(w
424通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 21:34:16 ID:???
マッドのおっさんに惚れそうです…
425通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 21:59:22 ID:???
アスランがダメでもエイブスのようなキャラを上手く生かせないから
駄ノメのシンは成長できなかったんだろうな・・・・・

しかし、密かに優秀なアーサーも実は見逃せない?
426通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 22:08:10 ID:???
GJです
今の状況ってサッカーでいうとレアルみたいに凄い選手バッカ集めたけど
みんな俺が俺がになってる状態だからまとまりがないんだよな
これをまとめるにはいい大人パイロットがいればいいバランサーになるんだけどね
427通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 22:28:09 ID:???
>>426
例によってハイネに期待!
428通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 22:58:05 ID:???
てっきりアスランにも修正はいるんじゃないのかと思ったよ
とにかくGJ
429通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:06:17 ID:???
>>428
フェイスだからな……殴れる上官というとタリア艦長ぐらいしかいない。
430通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:20:36 ID:???
>>429
そう考えるとますますハイネの登場が待ち遠しいな。
奴なら同格だからアスランだろうがぶん殴れるぜ。
431通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:27:18 ID:???
だが、カミーユは上官のクワトロを殴っていたんだが…
流石にしないか…
432通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:30:41 ID:???
上官も殴れば女(サラ)も殴る、それがカミーユ・プッツンモード。
433通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:35:42 ID:???
>>403-411
面白くないよあんたの作品。
種キャラ、能無しばっかりじゃんw
434通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:35:55 ID:???
まだ大丈夫だろう
だがしかし、アスランが目の前の現実から逃げるようなことをしたら・・・

カミーユ「歯ぁ食いしばれ! そんな大人(?)修正してやる!」
アスラン「う、うわああああああああ前髪は(ry」
通りすがりの傭兵「ン、カクリコン!?」
435通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:39:17 ID:???
カミーユにはギナを真っ先に修正して欲しいんだが・・・・・
436通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:41:13 ID:???
だって種キャラって能無しばっかじゃん
437通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:51:03 ID:???
うーむ、種世界でカミーユ+ウォンの無秩序な修正が
行われるのなら、本編キャラほとんどがもらうことになりそうだ

というか修正ネタでヘンにスレが伸びているな…保守代わりにこう言おう
修正!!!
438通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 23:54:40 ID:???
欧米の軍隊では、部下に鉄拳制裁をやったら大問題になるんだがな。
439通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 00:19:58 ID:???
>>435
何その中の人が演技大変そうな構図はwww
440通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 00:28:23 ID:???
飛田だから大丈夫さ
441通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 00:48:28 ID:???
ギナ…ビギナ・ギナしか心当たりない…
種死見たんだがな…
442通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 00:53:18 ID:???
もしも種・種死の世界にカミーユとウルベ少佐が来たら

スーパ飛田大戦
443通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 00:55:31 ID:???
ケリィもいれて
444通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 01:01:40 ID:???
ちげぇカリウスじゃんorz
445通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 01:11:10 ID:???
GJ!

マッド・エイブス・・・
このSSの影の主人公だな。
446通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 01:26:52 ID:???
>>441
アストレイの人、アニメには出てないよ
『ロンド・ギナ・サハク』
オーブ五大氏族の一人でコーディネイター
ウズミの自爆で五大氏族はカガリとギナ、ギナの双子のロンド・ミナ・サハクだけになったらしい
赤いジャンク屋にやられて青い傭兵に殺された
447通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 01:44:15 ID:???
ユウナ…
448通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 03:16:46 ID:???
>442
毒電波な生徒会長も入れて
449通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 08:13:15 ID:???
種の連中は能はあっても脳が無い
450通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 08:41:35 ID:???
ここや他のクロスオーバーSSスレならともかく、同人アヌメにおいては
百歩譲って脳や能がある事はあるかもしれんが、性根が絶対的致命的に…ね。
先人の名言を挙げとこう。

 『神なき知恵は、知恵ある悪魔を産むだけである』
451通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 12:28:48 ID:???
>>433
種厨乙w
ぼくのキラキュンが活躍しないと駄目ですかw
452通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 13:04:04 ID:???
>>433
つまらないと思うなら見なきゃいいじゃんW
そのかわり、ああいう事は書き込むな。失礼な種厨め
453通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 14:47:38 ID:???
>>433はツンデレw
454通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 00:45:02 ID:???
>>448
変態医者も入れろよ
455通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 18:17:16 ID:???
それガンキャラじゃねぇだろうが
456カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:24:32 ID:???
ローエングリンゲートを突破し、この地方での優位性を確保したミネルバはディオキアのザフト
軍基地に寄航していた。そして、そこにはデュランダルとラクス=クラインが兵士達の慰問の
為にやってきていた。
プラントのアイドルのラクス=クラインがライブをやる事を聞き付けたミネルバのクルーは、
殆どがそこへ観に行ってしまった。
ライブへやって来た観客は盛り上がり、皆楽しそうにしている。
しかし、そんな中、ルナマリアに連れ出された形でライブにやって来ていたアスランは一人複
雑な表情で歌うアイドルを見つめる。
前回プラントへ戻ったアスランはそのラクス=クラインに会い、そして、その彼女が偽者であ
る事を知っていたのだ。
本物の彼女はオーブに居る。その事はオーブでカガリの護衛に就いていた時分より知ってい
た事実である。
 
やがてライブも終わり、観客達はまた其々の場所へと戻っていった。
そして、ミネルバのパイロットとタリアはデュランダルの元へ招待された。
 
「やぁ、諸君。色々大変だった様だが、よくやってくれた。ささやかなものだが、日頃の疲れを
癒してくれたまえ」
「ありがとうございます」
「カミーユ=ビダン君、こうして直に会うのは二度目だな?尤も、最初の事は覚えてないと
思うが」
「僕をミネルバに乗せて頂き、ありがとうございます」
「そう硬くならなくていい。皆も楽にしてくれ」
 
バルコニーに設けられた会談の場。そこには細長いテーブルの上にもてなしのお茶が用意
されていた。
 
「で、何か私達に用でも?」
 
疑り深く訊ねるタリアにもデュランダルは柔らかな物腰を崩さない。
 
「そうだな……君たちは本当に良くやってくれている。先ずはその感謝の意を述べたい。
……シン=アスカと言うのは君か?」
「は、はい!」
 
名前を呼ばれたシンは少し照れたように返事をする。
 
「中でも君の活躍は凄いみたいじゃないか。これからも期待しているよ」
「はい、期待に応えられるよう、頑張ります!」
 
デュランダルに褒められたシンは、年相応の笑顔を浮かべて喜んだ。
そこで少し神妙な顔つきをしていたアスランが口を開く。
457カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:27:22 ID:???
「デュランダル議長、宜しいでしょうか……?」
「何だい?」
「議長は、何故あんな事をされたのですか?」
「何の事を言っているのかね?」
 
急な話の展開にその場の空気が変わる。
 
「あの……ライブの事です」
「楽しんでもらえたかな?」
「そういう事ではなくて……」
「あれは前線に出て疲れ切っている兵士の慰労の為にやったことだ。
何がおかしいのかね?」
「ですが彼女は!」
「あぁ、そうだったな。うむ、君の婚約者を勝手にあのように連れてきてしまった事は済まない
と思っている。しかし、彼女はプラントの歌姫だ。ラクス=クラインと言う名前の持つ意味は大
きいし、彼女も何か役に立てるなら、と思ってやってくれている事だ。
君も婚約者として彼女の決意を汲んでやってはくれまいか?」
「……彼女は……」
 
今のアスランにはこれ以上の言葉が出てこない。
精神的に不安定な彼は、この場であのラクスが偽者である事を公表しようかどうしようかの
判断がつかないのだ。
しかし、後にこの時のアスランの判断は微妙に間違っていなかった事になる。真実を口にす
ることがいつでも正しいとは言えないのだ。
 
「デュランダル議長、僕も一つよろしいですか?」
 
カミーユが唐突に話し掛ける。
 
「ん、なんだい?」
「デュランダル議長はこの戦争をどのようにお考えでしょうか?」
「どのように……?」
「僕の世界ではアースノイドとスペースノイド……つまり、地球に住む人と宇宙に住む人との
衝突がそのまま戦争になりました。そして、僕の見たこの世界にはナチュラルとコーディネイ
ターという隔たりがある様に感じられます。この隔たりがこの戦争の根底にあるような気が
するのですが」
「フム……」
 
カミーユの説明にデュランダルは少し考える。
確かにナチュラルとコーディネイターの間の溝は深い。それはカミーユの言うような言葉で
人間を区別する上で生じた遺恨なのかもしれない。しかし、デュランダルはその遺恨を取り
払いたいと考えていた。その為の方策も、ある程度考えてある。
デュランダルが口を開く。
458カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:30:10 ID:???
「君の言う事もある意味で真理だ。元々人と言う種族は争って生きてきた。お互いに違う物を
否定し、それを排除する事でより優良な者達が歴史を築いてきたのだ。
だが、私はもう人がそのような蛮行を繰り返す段階ではないと思っている。分かり合えないか
ら排除する、そのような考え方は最早時代遅れなのだ」
「……」
「無論、その事に気付いている人も既に居よう。前大戦で示されたとおり、コーディネイターと
ナチュラルは最終的に話し合いで戦争を終わらせたのだ。それなのに今こうして戦争が再び
起こったのは一部の心無い者達による愚行が生んだ産物であると私は認識している」
 
その席に居合わせた者は一様にデュランダルの語りを聞いている。
其々が其々の立場に立ってデュランダルの言葉を噛み締める。
 
「では、デュランダル議長はこの戦争はどの様にすれば終わるとお思いですか?」
 
皆が聞きたいであろう質問をタリアが投げかける。
 
「先程も述べたように世界は確実に変わり始めている。多くの人々はこのような愚行は望ん
ではいまい。そう……この戦争を裏で煽っている連中が居るのだ。彼等は戦争をビジネスと
しか考えておらず、人の不幸を私腹を肥やすための手段にしているのだ」
「と、言う事は……」
「その連中を止める事が出来ればこの戦争は終わらせる事が出来ると私は確信している」
 
デュランダルの言葉には重みがあった。
それは今述べた内容が素晴らしかったという意味ではなく、その信念の篭った真っ直ぐな
口調が、その場に居る全員にそう感じさせたのだ。
 
(世界の変革……この人もクワトロ大尉と同じなのか……?)
 
かつてカミーユに人類の変革こそがより良い未来を築けると語ったクワトロに似た考えを
示すデュランダルにカミーユは何となく心を許す。
それはカミーユの心の隙であったのかもしれない。
真っ直ぐ過ぎるが故に危険であるかもしれないという事を、かつて女である事に正直すぎた
レコア=ロンドを知っていながらもカミーユは忘れていた。
その事は後々になってカミーユに大きなツケとなって返ってくる事になる。
 
「さて、君たちを呼んだのは唯こうして君たちの苦労を労う為ではないのだよ。酷な言い方か
もしれないが、これからは更に過酷な任務を君たちに課す事になるだろう。
そこで、ミネルバに新たに補充人員を加えることになった。紹介しよう、ハイネ、こちらへ」
 
ハイネと呼ばれた人物がバルコニーに姿を現す。
オレンジのセミロングの髪を横で分け、その表情は親しみのある表情をしていた。
軍人然とした姿勢の中にも、どこか柔らかな印象を受ける感覚をハイネは持っていた。
彼の赤服の襟にはフェイスの称号が光っている。
459カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:32:56 ID:???
「ハイネ=ヴェステンフルスです。今回ミネルバへの配属が決まりました。以後よろしく」
 
ややハスキーな声で自己紹介を行ったハイネはそのまま軽く一礼をする。話し方にも独特な
柔らかさを持ち合わせた人物である事が、ミネルバのパイロット達に伝わった。
 
「そういうことだ。彼のMSも後でミネルバに搬送させるから、以後のことは他の者に任せる。
…私からは以上だ」
 
デュランダルが語ったこの戦争の終わらせ方…それが正しい事であるかは誰も分からない。
ミネルバはその言葉を信じて己の使命をまっとうさせるだけであった。



デュランダルとの会談のあった翌日、気分転換のつもりで休暇を貰ったシンは外に出ていた。
海岸沿いの海が良く見える岬にバイクを止め、彼なりにリフレッシュを図っていた。
 
「ん……?」
 
シンが背伸びをして深呼吸をしていると、ふと左手に見える岬に人がいるのが目に入った。
 
「何だ、あれ……?踊っている……?」

何故そこに人がいて、訳も無く踊っているのかは分からない。傍から見れば唯の不思議な
光景である。しかし、シンはその様子を見ていると、不思議と心が落ち着いてくるのを感じた。
その少女の余りにも楽しそうに踊っている姿が、シンにとって戦いを忘れさせてくれる映像
のように映ったからだ。
 
金髪ショートヘアのクセッ毛は少しタリアに似ていて、服装は薄くひらひらとした軽さを感じさ
せた。その姿にシンに幼くしてこの世から消えてしまった妹の姿が被る。
ステラ=ルーシェ。ファントムペインに所属するガイアのパイロットであった。
シンとステラ、この二人の接近は偶然か、はたまた運命であったのか。敵同士の二人が出会
うべきではない邂逅をみせる。
 
「あの子……」
 
シンが呟いた瞬間だった。ステラは急にバランスを崩し、岬から海に転落してしまったのだ。
慌ててシンはステラが転落した場所に近づいて崖から下の様子を覗いてみると、ステラが
もがいているのが見えた。
 
「あ、あの子泳げないのかよ!?」
 
言うが早いか、シンはすぐさま海へ飛び込む。そしてステラの元へ泳いで行き、気を失って
沈みかけたステラを海面に引っ張り出す。
460カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:35:39 ID:???
「おい、大丈夫か……!?」
 
目を閉じたままのステラをゆすって水を吐かせる。それでもまだ目を覚まさないステラをシンは
背負って海岸へ向かう。背中から気を失っていても震えているのが伝わってくる。
余程怖かったんだろうな、とシンは思った。
 
やがてステラを背負ったシンは無事に海岸に辿り着く。そこは周囲を岸壁に囲まれた砂浜で、
そこから上へ昇るのは不可能だった。
シンはステラを浜辺に横たわらせてからポケットの中から救難信号を発する装置を取り出し、
救助が来るのを待つことにした。
 
「とんだ事になっちまったな……」
 
ステラの寝顔を見て呟く。全く似ていないのに、何故か妹を思わせるステラが気になって仕方
なかった。
 
「う…ぅうん……」
 
ステラがうめき声を上げて意識を取り戻す。
 
「君…大丈夫……?」
 
その様子に気付いたシンが心配そうにステラに語りかける。
ステラの方はまだ意識がハッキリとしないのか、ぼんやりとした瞳でシンを見つめた。
 
「誰……?」
「あ…俺はシン=アスカ」
「シン……?」
「そう。君は?」
 
偶然会っただけなのに直ぐに名前を尋ねる自分の軟弱さに軽い嫌悪感を覚える。
しかし、何だか無性に彼女の名前を知りたかった。
 
「ステラ……」
「ステラっていうのか。ステラは親は?」
 
何を聞いてるんだろうとまたもや思う。自分はこんなに軟派な人間だったのだろうか。
とにかくステラの事を何か聞きたかった。
 
「親…何それ……?」
「え……?」
 
瞬間シンは察する。きっとステラにも両親は居ないのだろう。
何となく自分と同じ身の上の人間なんだろうと勝手に解釈した。
 
「……」
「ご、ごめん!俺は…べ、別に怪しい者じゃないんだ、君が海で溺れてたもんだから……」
461カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:37:39 ID:???
何を焦っているんだろう、とシンは思った。別段何をしたわけでもないのに、言い訳をする自分
が幾分か情けなく思える。
しかし、ステラの沈黙が何となく責められているようで居た堪れなかった。
 
「ほ、ホント、もう少しで危ない所だったんだ。俺が助けなきゃ君は"死"んでたかもしれない
って…いや、ホントに!」
「……!」
 
シンが発した"死"と言う言葉。それがステラの情緒を激しく揺さぶる。
 
「救難信号は出したから直に迎えが来ると思うけど……ん?」
 
取り繕うように話すシンはステラの異変に気付く。
急に体を震わせ、両腕で自分の肩を抱くようにして歯で音を立てる。
瞳孔は開き、シンの顔もまともに見えていない。
 
「ぃ…嫌……!」
「…嫌……?」
「死ぬのは嫌ぁぁぁぁ!」
 
唐突に発狂したように叫び声を上げ、大粒の涙を流して泣き始める。
その様子にぎょっとしたシンは何も言う事が出来なかった。
そして、そのままステラは泣き叫びながら海の方へと歩いて行ってしまう。
 
「あああぁぁぁ!いやぁぁ!死ぬのは嫌ぁぁぁぁ!」
「はっ……!」
 
少しの間呆然としてしまったが、ステラが泳げない事を思い出すと、急いで駆け寄って後ろか
ら羽交い絞めにして押さえつける。
 
「バカッ!泳げもしないのに海に入ったら今度こそ本当に死んじゃうぞ!」
 
追い討ちをかけるシンの言葉。
ステラは連合のエクステンデッドである。
ナチュラルでありながらコーディネイターと比肩し得る力を持たせるために、薬物投与などで
人工的に強化された生体兵器とも呼べる人間である。
しかし、その力を得る代償に彼等には"ブロックワード"と言うものが存在している。
条件は個々人によって違うが、その条件が発動すると精神に異常をきたし、情緒が限りなく
不安定になってしまう。ステラにとってその条件こそ、正に"死"という言葉だった。
無論そんな事を知らないシンに分かるはずも無く、自然と口から"死"という言葉が出てきて
しまう。
462カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:42:26 ID:???
余計に混乱するステラ。押さえつけるシンを振り解こうと暴れる。
振り回された腕がシンの頬を掠め、爪による傷が赤い三本の線を引く。
 
「く……!」
 
何とか落ち着かせようとするが、華奢な体の何処にこんな力が隠されていたのか、
コーディネイターであるシンの力を以てしても難しい。
ステラの形相も、女の子がする顔ではなかった。
 
(この子…よっぽど怖い目に遭ったんだろうな……)
 
尋常ではない暴れっぷりから、シンはそう思った。そして、そんな戦争をしている自分を認識
すると、とてつもなく申し訳ない気持ちになった。
 
「俺が!…俺が君の事を絶対に守るから!だから大丈夫だ!」
 
そんな贖罪の気持ちの中でシンが選んだ言葉は"守る"という言葉だった。
そして、それを表現する行動は少しでも安心を与える為に抱きしめてあげる事だった。
 
「俺が…俺が守るから……だから、落ち着いて……」
「……」
 
シンに急に抱きしめられたステラは不意を突かれた様に固まっている。
しかし、シンの言葉と抱きしめていてくれている事で安心を覚える気がした。
そんなシンの行為に優しさを感じ、ステラは落ち着きを取り戻す。
 
「ん……?」
 
ふと、シンが何かに気付く。手に付いた感触が、海の塩水ではない別のものを感じた。
何となくべた付いた感がする。
 
「怪我…してるじゃないか!」
「え……?」
 
ステラの二の腕から出血している。恐らく暴れた時に岩の角で擦ったのだろう。
それを見るや否や、シンは自分の服を千切って応急処置を施す。
 
「これでよし……」
「……」
 
ステラはその様子を成されるがままに呆然と見つめているだけだった。
 
その後、二人は濡れてしまった服を乾かす為に、大きな岩を挟んで背中合わせに座ってい
た。服の乾燥と多少なりとも救助隊が見つけ易いように薪を焚く。
あたりはすっかり暗くなってしまっていた。
463カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:44:00 ID:???
「シン…ステラ守るって…ホント?」
「えっ?」
 
岩の向こうからステラの声が聞こえてきた。急に話し掛けられたシンは驚く。
 
「さっき、シンはステラ守るって言った……」
「あ、あぁ…本当さ。絶対に君を守って見せるよ」
 
何となく照れくさい。ルナマリアなんかには絶対に言えない台詞だった。
そんなシンを余所に、ステラは何やら乾きかけの服から取り出す。そして岩陰からシンの方へ
ひょっこりと顔を見せる。
 
「これ……綺麗だから拾ったの」
 
そう言ってシンに差し出したのは淡いピンクの色をした貝殻だった。
 
「シン、これ持つ…ステラとの約束……」
「えっ!?これ、何か大事そうな物だけど……」
「これがステラとの約束…シン、覚えていて」
 
ステラはシンに強引にその貝殻を渡す。
 
「本当に俺が貰っていいの?」
「うん、シンがステラを守ってくれるって言ったから」
「……わかった、大事にするよ!」
 
貝殻を受け取ったシンはそれを服の中にしまう。

 
それから程なくしてミネルバからの救助がやってくる。
迎えに来たのはカミーユとその他数名。
 
「元気があるな、お前は。こんな所で女の子とデートか?」
 
シンに不満のあるカミーユはワザと皮肉に聞こえるように話しかける。
 
「別に遊んでたわけじゃない!この子が溺れているのを見かけたから助けただけだ!」
「ふーん」
 
妙にむきになるシンに違和感を感じながらもカミーユは何となく返事を返す。
464カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:45:24 ID:???
「で、この子の身元は?」
「知るわけ無いだろ」
 
その時、道路の方から一台の車がやって来た。その車にはスティングとアウル、ステラの
同僚が乗っていた。
 
「どうもすみません、ザフトの方々。その子は僕らの知り合いでしてね?」
「ちょっと目を離した隙にはぐれてしまったんですよ」
 
ステラを発見したスティングとアウルは身分を隠してカミーユ達に話しかける。
 
「スティング、アウル!」
 
二人を確認したステラが駆け寄る。
そのステラの嬉しそうな様子を見てシンは少し複雑な気持ちになる。
 
「捜したぜステラ。ネオが心配してるぞ」
「全く、お前はすぐに一人で居なくなるなよな!迷惑すんのはこっちなんだぜ!」
「ま、見つかったし良しとするか。帰るぞ」
 
車へ向かう二人をステラが引き止める。
 
「んだよ?」
「シンも……」
「あ?」
「シンも一緒に……シン、ステラ守るって約束してくれた」
「えっ?」
 
余り聞くつもりは無かったが、ステラの言葉がシンの耳に入ってくる。
そしてステラは再びシンの元へ歩み寄る。
 
「シンもステラと一緒に行く」
「えっ……いや、あの…」
「シン、行けない?」
「あ、あぁ…俺は軍人だからステラとは行けないんだ…」
「シン、ステラに嘘ついた……?ステラ守るって言ったのに……」
 
ステラの表情が曇る。
その目には今にも零れてしまいそうなほどの涙が溜まっていた。
 
「いいいいや、嘘じゃない、嘘じゃないんだ!君を守るって言ったのは本当だよ!俺が絶対に
君の住んでいる所に危険が行かない様にするから!だから…その…君が安心して暮らして
行ける様にするから!」
「でも……」
「おい、ステラもう行くぞ!早くしねーと置いてくかんな!」
 
渋るステラを見かねてアウルが囃し立てる。
その言葉に流石にステラも車へ向かう。そして車に乗り込み、そのまま車は走り出す。
465カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:48:20 ID:???
「ステラー!約束は絶対に守るからなー!」
 
走り行く車の背にシンは力一杯の声でステラに告げる。微かに聞こえたシンの声に内心複雑
ながらも、今はシンの言葉を信じようとステラは思った。
後部座席で塞ぎ込むステラの様子を見て、スティングとアウルは小声で話をする。
 
「こりゃあネオに報告だな」
「あぁ、大分余計なもんが入り混じったみたいだからな」
 
何やら不穏な雰囲気の会話をしつつスティングは車を走らせて行った。
 
 
その頃、残ったカミーユ達はシンのバイクを回収してトラックに乗り込んでいた。
カミーユは先程のシンとステラのやり取りを見ていてデジャヴュのような感覚を味わっていた。
 
「シン、彼女と何があった?」
 
いかにも何かあったんだろうと言いたげなカミーユの言葉に、シンは反発感を覚える。
 
「あんたに言う必要はないだろ」
 
そっけなく返されたシンの言葉にカミーユは益々疑念を持つ。
 
「お前、あの子に引っ張られてるぞ」
「そんなわけあるかよ!」
466カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 18:49:26 ID:???

そのままの意味で捉えたシンは思春期の少年らしく咄嗟に否定をした。
実際シンはステラに惹かれていたのかもしれない。不安定なステラは、シンにとって死んでし
まった妹の思い出を連想させていた。
彼女は自分が守ってあげなければならない、今度こそ戦争と言う魔の手から自分が守るんだ
…シンにとってステラの存在は運命とでも言えるような存在になっていたのかもしれない。
そんな予感がしたからこそ、シンはその事を表に出さないように何でもないようなふりをした。
 
カミーユの思惑は的を射ていた。
かつて自らが体験したフォウやロザミィとの出会いと別れ。それを知っているカミーユにとって
シンとステラの出会いは辛かった。
先程のステラの不安定さからカミーユは彼女が連合のパイロットであるという事は分かってい
た。ファントムペインの奇襲を受けたとき、カミーユはステラと交戦し、その時感じたステラの
波動を覚えていたからだ。
その事をシンに告げることが果たしてどの様な結果に結びつくか判断しかねていた。
出来ればシンを同じ運命から逃がしてやりたい。自分の体験からシンをサポートする事が
自分に出来る事ではないだろうか、とカミーユは考える。
しかし、今はシンをいたずらに動揺させるわけにはいかなかった。
 
「…またあの子と出会う事があるかもな……」
「……?」
 
ぽつりと呟いたカミーユの言葉に、シンは不思議に思った。
そのときのカミーユの表情の意味をシンは後に知る事となる……
                                           〜つづく〜
467通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 19:00:28 ID:???
GJ!!
468通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 19:19:50 ID:???
考えたらタリア艦長って役に立ってねえな。
469通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 19:32:21 ID:???
GJ
470通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 19:41:43 ID:???
>>468
種死の登場人物で役に立ってる奴なんか数える程しかいねえ
471通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 19:44:44 ID:???
こちらの議長はほぼTVまんまかな?
しかもカミーユ籠落されつつあるしかなりヤバス?まさか反動でラクシズにつくなんてのだけは勘弁ですぜ…
472 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 19:51:30 ID:???
カミーユinCE氏GJ!

投下行きまーす!
473 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 19:52:28 ID:???
暫しの休養を終えたミネルバは、一路、ジブラルタル基地へと赴くことになった

「アスラン、あの子達はどう?」
「最初は付いていくのがやっとでしたが、
最終的には軽々とメニューをこなせるようになりましたよ」

ブリッジではタリアとアスランが訓練状況について話していた

「鍛えがいがあったわね」
「ええ、三人とも『赤』だけあって、センスはいいようです
……ところで」

満足気に語ったアスランは一転して表情を厳かにし、
タリアもそれに釣られた

「カミーユ・ビダンは大丈夫なのでしょうか?」
「……大丈夫だと思うわ」
「……しかし……」

アスランは納得行かないようである
それもそのはず、茫然自失のカミーユが劇的に回復したとはいえ、
精神を患ったという事実を抱える兵士を再び戦場に出していいものかとアスランは考えたのだ

「……以前は……いえ、何でもないわ」
「……?」
「とにかく、彼は大丈夫。私が保証するわ」
タリアは仕事に戻り、居場所を無くしたアスランはブリッジを出た
アスランの頭には歯切れ悪いタリアの言葉が何時までも引っ掛かっていた

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第12話『憤り』

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474 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 19:53:35 ID:???
「コンディションレッド発令!パイロットは機体に搭乗して下さい!」

けたたましい警報と共に、スクランブルエッグのように混沌とする中をレイは走り抜けた

「こんなところで……」

カーペンタリア基地を出てからそれほど経たないうちの敵襲である
やっとの思いでパイロットルームにたどり着くと、そこにはアスランとカミーユの姿があった

「カミーユさん。戦闘指揮は俺でいいのですか?」
「ええ。俺は元々、戦術は不慣れなんです
それと敬語は結構ですよ」

パイロットスーツに着替えながらその会話を耳にしていたレイは
、カミーユの言葉に驚愕した
カミーユの指揮の的確さはミネルバで誰もが認める所であったからだ
もちろんフェイスであるアスランを立てる意味も有るのだろうが、
それを『戦術は不慣れ』と言わしめる理由とするには少し弱い

「(やはり……彼は……)」

確信とまではいかないが、今までの疑惑という地点は過ぎ去った

「(……彼は俺達と同じ力を持っている……)」

自分の微少な能力では足元にも及ばないが……と付け足して、レイは考えるのを止めた
今は戦闘に集中しようと思ったのだ

=======================
475 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 19:54:51 ID:???
パイロットたちは各々の機体に乗り込み、出撃準備をしていた

『ウィンダムおよそ30とカオスを確認しました!』

メイリンからの通達に戦慄が走る
これだけの部隊を差し向けるとは思ってもみなかったからだ
とはいえ、カーペンタリアを落とすには戦力不足であり、敵の意図は読めない

『シンと俺で制空権を取る!ルナマリアは水中で敵を遊撃!敵艦への攻撃も視野に入れとけ!
レイはミネルバの護衛!カミーユは……』
『Zは変形しないと飛べませんよ』
『よし、じゃあレイと共に護衛を。状況によって臨機応変に動いてくれて構わない』
『了解』

――アスランの指示に従って出撃して行くパイロットたち――
シンのインパルスはトリガーを引き、ウィンダムの一団を牽制すると、それらは散開して行った
少しはぐれた一機に対して接近戦をかける――!

それに対応したウィンダムはサーベルを引き抜いて降り下ろした

「遅い!」

インパルスを急降下させ、海面間近で制動をかけた後に隙だらけのウィンダムを撃ち抜く
――インパルスの動きに淀みは無かった

爆発していくウィンダムを見て、シンは喜色を浮かべた

「やった!」
『油断するな!』

分断したウィンダムたちがインパルスを落とさんと接近しいたのだ
しかし、間に入ったセイバーのプラズマ収束砲によって再び分断されてしまう
476 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 19:58:06 ID:???
「……あっ、すみません!」
『そっちにウィンダムがいったぞ!』

謝罪の言葉に耳を貸さず、ミネルバに通信を入れた
分断された半分は見切りを付けてミネルバに向かったのだ
残りの半分は此方を向いている
――そしてもう一機

『新顔ォ!見せてみろ、力を!』

スティング・オークレのカオスであった

『シン!カオスは俺がやる!』
「了解!」

シンはウィンダムの一団へ、アスランはカオスへと飛び出して行く

『喰らえ!』

先制したのはカオス。変形したまま兵装ポッドからランチャーとビームを発射した

「温い!!」

アスランはセイバーをMA形態に変形させ、それらを回避するために急上昇した
それに対応したカオスも上昇し、セイバーの後方に付けた

『簡単に後ろを取らせるとは、死にてぇみたいだなぁ!』

スティングは勝利を確信し、腹部ビーム砲のトリガーに手をかけた
477 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 20:01:36 ID:???
――その時だった

『なにぃ!』

セイバーがバーニアを吹かすのを止め、急制動をかけたのだ
反応が遅れたカオスはそのまま前進してしまう

「まさかこんな古い手に引っ掛かるとは……
軽率な奴……!」

ドゥゥ!ドゥゥ!

『うぉぁあぁ!!』

セイバーから放たれるビームの雨に撃たれたカオスは落下して行く
致命傷は避けたのか、エンジンの誘爆はなく、コックピットも損傷した様子もなかった
カオスは近くにいたウィンダムに回収されると、そのまま帰投していった

「シン!無事か!?」

思考を切り替えて、仲間の安否を確認した

『無事ですけどね!!数が多いんですよ!!』

シンからの怒鳴り声で随分と苦戦しているのを察したアスランは、そのまま援護へと赴いた
=======================
478 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 20:03:36 ID:???
一方、ミネルバでは――

『落ちろぉぉ!』

カミーユが獅子奮迅の働きをしていた
手近なウィンダムにバーニアを吹かせて接近し、足場代わりにして噴射剤を温存させる
そしてバランスを崩させた敵に大火力であるハイパーメガランチャーを撃ち込む
さらに、その推進力を利用して次の敵に向かって行くという離れ技をしていたのだ

「なんて戦い方だ……」

まるで彗星の様に敵から敵へと移って行くZを見て、レイは驚嘆していた
――みるみるうちに海の藻屑と化して行くウィンダム――

『レイ!俺はこのままルナマリアの援護に出る!ミネルバを頼むぞ!』
「了解」

あらかたの敵を片付けたZは、ウェイブライダーに変形して戦場を突き抜けて行く――
その時、レイにある感情が、押し殺していた感情が湧き出てしまった

「……俺は……所詮、偽物なのか……?」

――劣等感――
同じ能力を持ちながら、鬼人のような活躍をしたラウ
同じような能力を持ちながら、小覇王のような活躍をするカミーユ
では自分は何なのか?ミネルバに乗ってから大した活躍も出来ていない
今の戦闘も、カミーユの活躍によって切り抜けたに過ぎない

「……止めよう……」

レイは考えるのをや
479 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 20:07:31 ID:???
めた。これ以上考えたくもなかった
そして彼は気が付いていない。その劣等感が、シンの成長にも影響されていたことを
=======================

その時、ルナマリアは困惑していた
なぜなら、敵を遊撃しているうちに、秘密裏に建造されていた連合の基地を発見してしまったからだ

「どうしよう……」

殲滅か、指示を待つか
答えは一つだった

「隊長!敵の基地を発見しました!」

アスランへの通信回線を開いた

『何だって!?こんなところにか!?』

カーペンタリアの鼻先なのだから驚くのも無理はない

「ええ、造りかけのようですが……」
『……よし……偵察してみてくれ
こっちは殆んど片付いたからな』
「了解!」

指示通り、基地へと偵察に向かう
きっと、ここの防衛のためにあれだけの部隊を裂いたのだろうと考えた
接近して様子を伺うと、ルナマリアはとてつもないものを見てしまった

「こんなことって……!!」

近隣で行われていた戦闘に恐れ逃げ惑う捕虜と思しき労働者たち――
そして彼等を逃がすまいとアサルトライフルで殲滅する連合兵の姿があったのだ

ふとルナマリアの頭に先の強奪に荷担したアウルの顔が浮かんだ
彼は生きるためにあのようなことをしたと言っていた
それは誰も責められることではないのだろうか
そして目の前で虐殺を受けている人々もそうなのではないのだろうか
こんなことまでされる謂われは無いのではないか
480 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 20:11:36 ID:???
「ええぇぇい!!」

ルナマリアは我慢出来なかった
躍り出て手当たりしだいに基地を破壊することで連合兵達の目をこちらに向けさせ、逃亡者を援護した
ああ、きっと軍法会議ものだなと何処か醒めた考えも残っていたが、
荒れ狂う憤りの方が強かった

『ルナマリア!』

カミーユの声だ

『憎しみで戦っちゃいけない!』

それは違う

『……憎い訳じゃ……憎い訳じゃないんですよぉぉぉ!!』

戦争の不条理が心を締め付け、いつの間にかルナマリアは涙していた
MS戦では気付くことはなく、十代の少女には耐えがたい現実がそこにはあった
そしてユニウスセブン落下騒ぎの時、面倒だと言っていた自分がどれほど恐ろしいことを言っていたのか、
今になって気が付いた
=======================
481 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 20:13:27 ID:???
パシィィ!
乾いた音がMSデッキに響いた
ルナマリアはアスランによる修正を受けたのだ
――ミネルバは何とか襲撃をやりすごし、パイロットたちは既に帰投していた――

蹲るルナマリアと、体を震わせるアスラン。しかし、殴られた方より、
殴った方が痛々しい顔付きをしていた。本来、彼はフェミニストなのだ

「ルナマリア……少し頭を冷やせ。上層部へは上手く言っておいてやる」

ルナマリアはアスランの言葉をうつ向きながら聞いた

「……戦争って何ですか……?」

ルナマリアはそのまま呟いた
それを聞いたアスランは顔をしかめた

「……俺にも分からない
俺は哲学者じゃないからな」

アスランの表情はどこか寂しげだった
前大戦から追い求めている問題の一つであったが、まだその答えは出ていない
482 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 20:16:02 ID:???
「私達……人殺しじゃないんですか……!?」

語勢を強めて問い続けるルナマリアを見ると、アスランにはその姿が友人――キラ・ヤマトとだぶって見えた
彼も戦争に苦悩していた
――ルナマリアの言いたいことは痛い程に解る。しかし、この言葉を容認する訳にはいかない
周りには他の兵もいて、士気を下げるようなことは避けたい――
アスランは考えをまとめて、ルナマリアに近寄った

「そんな口が利けるとは、まだ修正が足らないようだな」

アスランは手に持っていたヘルメットのバイザーを近くに置いてあったレンチで叩き割ると、
その破片を握りこんだ

「さぁ、立て。今度は拳が飛ぶぞ。歯を食いしばれ」

バキッ!
ルナマリアを立たせて、手加減しつつも頬を殴りつけた
ルナマリアは尻餅をつき、頬を押さえて涙目になっていた
こちらの問いに答えもせず殴るなんて野蛮だと言わんばかりにアスランを睨みつけた
――その拳には血が滴っていた
自分の頬を確かめたが、血はついていない
あれはアスランの血潮なのだ
きっとあの血は、答えることの出来なかった自分への戒めなのだろう
なんて無器用な人なんだと思うと、アスランへの憤りは消え失せていた
しかし、戦争への憤りは消えていなかった

〜つづく〜
483 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/12(木) 20:17:36 ID:???
投下ミスによるお見苦しい点はご容赦下さい……
(´・ω・`)
484通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 20:19:13 ID:???
>>470
数えられるほどいるのお!?

そしてカミーユ In C.E. 73、アスランがGJ!
485通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 20:34:58 ID:???
お二人ともGJ!
486通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 21:30:21 ID:???
アスラァァァァァン


まとめサイトが欲しい今日この頃
487カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/12(木) 21:31:39 ID:???
うおおおおぉぉぉぉぉ…GJ!!

うちのへたれまっしぐらなアスランも修正して欲しいです……
488通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 22:23:42 ID:???
カミーユ In C.E. 73のアスランとシンはそれぞれ別のベクトルで苛つきますね。

人間臭いから良いと思いますけど。
489カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/13(金) 18:32:00 ID:???
新たに積まれるオレンジカラーの一つ目……グフ・イグナイテッドはハイネのMSである。
整備の仕方が、同じ一つ目のザクとは若干異なるようで整備士連中にそのマニュアルが
配られる。
 
「よーし、全員に行き渡ったな!各自直ぐに中身を確認しておけよ!」
 
マッドは配られたデータチップを手前に掲げ、他の整備士達に言い聞かせた。
 
「うへぇ、ただでさえ厄介なMSがあるのに又増えるのかよ……」
「ホントだよな、こりゃ時間喰うぞ?」
「給料あがんねーかなぁ……」
 
愚痴を零しているのはヨウランとヴィーノだ。インパルスやセイバーの整備だけでも大変
だが、更に厄介なのはカミーユのΖガンダムだった。
同じ人型とはいえ、変形機構を有している上に、装甲と基本フレームが独立したムーバブル
フレーム機構である。ムーバブルフレームは、単にMSの可動域を増やす為のモノではなく、
整備効率の向上をも目的としていた。
最初はカミーユの説明と実演も兼ねた共同作業だったが、最近は一通りマスターしたので
彼らのみで整備する事になっている。
しかし、いくら手順を覚えたと言っても如何せん勝手が違うので整備には時間が掛かる。
そこへ追い討ちと言わんばかりに新型機の搬入である。彼らの落胆は必然的であった。
 
 
そんな風にして整備士達がショックを受けていた頃、当のハイネはラウンジでパイロット
同士のレクリエーションに興じていた。
 
「お前、カミーユ=ビダン?」
「そ、そうですけど……」
 
ハイネがカミーユの名を呼ぶ。
 
「シン=アスカ、ルナマリア=ホーク、んでレイ=ザ=バレル?」
 
順に指差し、名前を呼んでいく。それに応えて三人も頷く。
 
「そして、アスラン=ザラ……か」
「はぁ……」
 
一同を見回してハイネは満足そうに深く頷く。
 
「あの、用事と言うのは俺達の名前の確認だけでしょうか……?」
「何言ってんの、お前?せっかくこれから共に戦って行こうって事になったんだからさ、
仲良くしておきたいじゃない?」
「……」
490カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/13(金) 18:33:45 ID:???
アスランと全く印象の異なるハイネの言葉にシンの口が開きっぱなしになる。
自分の想像していた軍人像とは余りにもかけ離れていたからだ。
 
「ははっ!何か間抜けな顔してるぜ、シン!」
 
言われて気付いたシンは慌てて顔を引き締める。
 
「す、すみません隊長!」
「あー、その"隊長"って言うの、無しな。俺の事は名前で呼べよ」
「え、でも……」
「俺、そういう堅苦しいの駄目なんだよね。話しかける時ももっと気楽にしてくれよ」
 
冗談ぽくはにかんだハイネであったが、アスランが一歩前へ進み出る。
 
「ですが、それでは軍としての示しがつきません」
「流石は英雄、真面目君だね」
「茶化さないで下さい!」
「怒るなって」
 
怒るアスランにハイネは顔をしかめて低い声で唸る。そして何か思いついたのか、急に顔が
明るくなる。
 
「よし、こうしよう。これはフェイス命令だ。フェイス命令だからお前達にはちゃんと従って
もらうぞ」
 
これでどうだ、と言わんばかりにハイネは一同に提案を投げかける。
しかし、それを聞いたらアスランも黙ってはいない。
 
「私もフェイスです。その命令は聞けません」
「あのな、アスラン。俺はお前の上司な訳、わかる?じょーうーし!
上司の言うことはきっちり聞いてもらうよー?」
「ミネルバでは私の方が先輩です」
「お、お前な……」
「別にいいじゃないですか、その位。俺は構いませんよ。
あんた一人だけ意地張ってればいいんじゃないですか?」
「!?」
 
ハイネが困った表情を見せたとき、シンの言葉がやり取りを遮った。
それを聞いたアスランの表情に険しさが増す。
 
「私も構いません。ハイネがその方がやり易いと言うのであれば、私はそうします」
「僕もいいですよ」
「おっ?いいね、君たち!そうしてくれると俺も気が楽になるんだよな。で、彼女は?」
491カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/13(金) 18:35:45 ID:???
レイとカミーユが続けて同意したのを聞いて、今まで発言を控えていたルナマリアにハイネが
尋ねる。

「あ、あの……私は……」

ルナマリアは目でアスランを気にしつつ、曖昧な返事をする。それに気付いているのかいない
のか、アスランは目を余所に背けている。
 
「ルナの好きにすればいいだろ?その人の事なんか気にするなよ」
「シ、シン……!」
 
シンの声が聞こえたアスランは目を見開いてシンを睨み付ける。しかし、すぐに顔を伏せ、
肩を震わせたかと思うと早足にその場を出て行ってしまった。
 
「ア、アスランさん……」
 
それを見たルナマリアも後を追ってラウンジを出る。
その様子にハイネはポカンとした表情でシンに訊ねた。
 
「……何?お前とアスラン仲悪いの?」
「別に……」
 
そう一言だけ呟くとシンもラウンジを出て行ってしまった。
 
「では、私も失礼します」
 
続けてレイも一言口にして出て行く。
 
「……なぁ、何か大変じゃね?」
「色々あるみたいですよ?僕は知りませんけどね」
「お前も何かドライな奴だな……」
「こういう事、余り深く関わると碌な目に遭わないんです。特に女がらみは……」
「経験ある様な言い方じゃないか?」
「ありますよ。あるから言えるんです」
「ふーん……にしても、よくも今までやってこれたもんだ」
 
呆れたようにハイネは誰に言うわけでもなくそう言い捨てた。
同じ年齢同士のパイロットが配属されていると聞いていたハイネは、もっと彼らの関係がいい
物だと思い込んでいた。そこに年齢では少し上の自分が配属になるという事で、早いうちに
打ち解けようと彼等を呼んだのだ。
しかし、蓋を開けてみれば自分が思っていた以上にややこしい状況に、怒れるよりも呆れて
しまったのだ。
戦闘に於いてチームワークは重要である。にも拘らずこの有様に、ハイネにとってこれから
先の事を考えると頭の痛い問題であった。
492カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/13(金) 18:39:06 ID:???
「きっと大変ですよ、この先」
「?」
 
今しがた自分が考えていた事が聞こえていたかのようなカミーユの言葉に、ハイネはハッと
する。
 
「どうしたんです?」
 
カミーユには当然ハイネの考えていた事など分かるはずもなかったが、カミーユの声には
偶然では片付けられない何かがある事をハイネは直感した。
 
「い……いや、何でもない……。
…ところで、カミーユは別世界からやって来たんだろ?お前の世界の話を聞かせてくれよ」
「いいですけど……この世界と比べれば特に珍しい事も無いですよ。
僕の世界じゃ、遺伝子工学なんかは一般的ではないし……」
「いいから聞かせろよ。違いを捜すのも楽しみの一つだろ?まずはなぁ……」
 
取り残されたような形になった二人のやり取りがラウンジに響く。
カミーユの世界にも興味はあるが、他の連中がラウンジから去っていってしまった今、
カミーユとだけでも親睦を深めておこうとハイネは思っていた。
 
 
同じ日の夕刻、アスランは海が見える甲板で一人物思いにふけていた。やんわりと撫でる
様に吹く潮風が心地よかった。
ミネルバへ配属されて来てからというもの、どうも自分の調子がおかしい事をアスランは
痛感していた。その最たる例が前回の独断先行である。
作戦の立案が自分であるのにも関わらず、それを台無しにしたのが他ならぬ自分自身で
あった。そのせいで艦を危険に晒した事をアスランは深く後悔していた。
何故こんな事になってしまったのか、考えるアスランの頭の中にシンの顔が浮かび上がる。
あの生意気な部下のせいで苛ついているのか、そもそもシンが自分に突っかかってくるの
がおかしいのではないか……考えを巡らせている内に不調の原因を他人のせいにしよう
としている自分に気付く。
そんな自分に嫌気がさしたのか、アスランはそんな自らの小ささに対し自嘲気味に鼻で
笑った。
アスランは手すりに両腕を置き、前のめりに体を預け、そのまま目を閉じる。
吹き付ける潮風がアスランの髪を揺らし頬を撫でた。
 
《コーディネイターにとって、パトリック=ザラが取った道が唯一正しい物であった事が、
何故分からん!》
 
無意識から呼び覚まされたその言葉にアスランは目を開く。
自分は父に加担はしなかったが、身内の暴走に囚われていたあのテロリストの言葉は
アスランにとって重い物であった。
そして、その言葉こそがアスランに再びザフトの制服を着ようと思わせたきっかけでも
あった。
493カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/13(金) 18:41:39 ID:???
「よう、こんな所に居たのか」
 
甲板の入り口の方からハイネの声がした。
 
「……」
 
それを沈黙を以って返事にするアスラン。ハイネはそれでもお構いなしにアスランの方へ
寄ってくる。
 
「さっきは悪かったな、何か無理やり従わせようとしたみたいになっちまって」
「いえ、こちらこそ……」
 
何となくアスランは気まずい空気になっていた。
ハイネは気にせずに続ける。
 
「でもな、俺に対してだけは気楽にして欲しいわけよ。別に艦長の前でもそうしろって言って
るわけじゃないし、出来れば俺はそんな付き合いをお前達としたいんだよ。
…ま、強要するつもりは無いし、お前が凄く真面目な奴だって事も分かったからな、アスラン
の好きにすればいい」
「……」
 
ハイネの気遣いがアスランには痛かった。これからはハイネが隊長になるとは言え、
今まで指揮してきた自分の情けなさが辛かった。
 
「……アスラン、お前、戦う事を迷ってるだろ?」
 
投げかけられたハイネの言葉にアスランは、ハッとしてハイネの顔を見る。
 
「ビンゴ……か」
「あ……」
 
思わず見せた自分の表情にアスランは恥ずかしくなる。
 
「お前が戦後、オーブに居たのは知ってるよ。確かにあの国の理想は高いよな、お前が悩ん
でいるのも頷ける話だ。けど、お前が今その身に纏っているのはザフトの制服だ。
……それもエリートの…な。俺達が戦わなくちゃ、プラントは連合に支配されちまう。
何の為に自分がザフトに居るのか考えろよ」
 
ハイネの言葉はアスランの耳に痛かった。
ハイネは続ける。
 
「そりゃあさ、戦わなくて済むのなら俺だってそうしたい。けど、相手はテロリストのユニウス
落としを勝手にプラントのせいにして、問答無用で核を撃ってきたんだぜ?そんなのが仕掛
けてきてるんだからさ、こっちだって戦わなきゃならんだろ。
……戦争なんだからって事でもっと割り切れよ、でなきゃ、いつか死ぬぜ?」
494カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/13(金) 18:44:17 ID:???
"割り切れ"と言うハイネの言葉にアスランは少し考える。自分は今までどんな覚悟で戦って
きたのだろうか……その答えは分かりきっている事であった。
それは、戦争からプラントを、オーブを、カガリを守ることに他ならない事。
その為には自分が身を削って戦わなければならない。アスランにとってごく自然で当たり前
の事なのだ。人間関係で悩んでいたアスランはその事を忘れていた。
しかし、その事を思い出す……と言うより再確認したアスランの目に先程まで無かった決意
の光が灯る。
 
「その目だぜ、アスラン。決意が鈍れば動きも悪くなる。だが、もう大丈夫そうだな」
「あ、ありがとうございます、隊長。わざわざ俺なんかの為に……」
「ノンノン?」

他人行儀なアスランの言動にハイネは違う違う、と言った感じでアスランをたしなめる。
そしておもむろにアスランの顔面を殴りつけた。
 
「な、何を!?」
 
吹っ飛ばされて驚いたアスランは信じられない、と言った顔でハイネを凝視する。
 
「知ってる、これ?修正って言うんだぜ。言う事を聞かなかったり、気合が足りなかったりす
る奴を殴って引き締めるんだってさ」
「…カミーユから聞いたんですか……」
「お、アスランも知ってたのか」
 
自分を殴っておいても何にも悪びれる様子のないハイネに、カミーユめ、余計な事を吹き込
んでくれたな、とアスランはカミーユを恨んだ。
 
「でも、さっきは俺の好きにしていいって…」
「ん〜…あれは撤回だ。やっぱ俺には堅苦しい空気は耐えられん」
 
無邪気に笑うハイネにアスランは何故か心を許せる気持ちになった。ハイネの柔らかな雰囲
気がアスランをなだめている様な気がした。
 
「ほれ、もう一度」
「あ……ありがとう、ハイネ……」
「そうそう…どういたしまして、だな!」
 
アスランの態度に満足して微笑んだハイネは拳を突き出す。少し痛む頬を片手で押さえなが
ら、捉えようのないハイネの性格に口元を緩めるアスランもそれに拳を軽くぶつけた。
日も大分沈んできていて、海面に反射する鮮やかな夕焼けの光が目に優しかった……
                                           〜つづく〜
495通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 18:51:26 ID:???
カミーユは、少しはファの事を思い出してもいいと思うのだが・・・・・
(近くに類似キャラだっているわけだし)
496カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/13(金) 18:56:38 ID:???
もうちょっと先まで待って……
497通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 19:08:05 ID:???
GJ!
さあこれでアスラン再起なるか!?
あ、でもシンが今のままだとそう簡単に状況は好転してくれないか・・・
498通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 19:21:30 ID:???
>戦闘に於いてチームワークは重要である。にも拘らずこの有様に、ハイネにとってこれから
>先の事を考えると頭の痛い問題であった。

原作と逆だなw
499通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 19:25:47 ID:???
GJ!ハイネが主役に見える…。
500通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 20:05:56 ID:???
GJ!
ハイネを兄貴と呼ばせてくれ!
501通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 20:12:56 ID:???
どこのSSでもハイネは「殺伐としたミネルバ隊に救世主が!」
ってポジションだなあ。
しかしここでのギスギス具合はTV並だから心配だ…
502通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 20:18:43 ID:???
ハイネいじりやすいしね。
ハイネが駄目キャラになったSS見たことないよ。
読者受けも大抵良好だし、ある意味すごい。
そのハイネを後方不注意のウッカリ君にして潰してしまう、
さらにモノスゴイヒトもいるのだが……

なにはともあれGJ!
ミネルバのみんなを成長させてやってくれ、ハイネ。
503通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 21:13:47 ID:???
カミーユはハイネに敬語使ってるけど、アスランとハイネが同い年なら
カミーユも一緒じゃないの?
504通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 21:58:56 ID:???
>>503
歳とか関係ないんジャマイカ?階級とかじゃね?
505通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 22:06:49 ID:???
>>504
ザフトに階級はないぜ!
506通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 22:46:18 ID:???
アスランとはタメ口だし
507通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 22:47:44 ID:???
>>504
フェイスとか隊長とかの役職で上下を作るしかねえべ?
508通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 22:52:26 ID:???
この辺が民兵組織の限界だな。
509通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 22:54:08 ID:???
同じ民兵組織のはずのディアナ・カウンターでも階級はちゃんとあるのにねえ。
510通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 22:54:17 ID:???
エゥーゴも階級自体はあるけど、上下関係事態はけっこう希薄だったような気がする。
同年代のキャラもファぐらいしかいなかったしね
511通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 22:57:07 ID:???
と言うか「エウーゴ内」には階級無くて、すべての階級は
「地球連邦軍」としてのもの。
さらに言うとカミーユは地球連邦軍としての身分を持ってないので
少尉待遇の民間人協力者という立場になってる。
512通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 23:59:41 ID:???
>>503
あの時点だとハイネ→21、アスラン→18、カミーユは16だから流石に敬語使わにゃ
イカンのでは?原作ではファ、カツ、トーレス以外は皆年上だったし
(エマさんは24で、アポリー・ロベルトも30間近だったし)必然的に年上に
自然と敬語使うのも処世術として身に付けていたんだろうねwww
513通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 00:05:20 ID:???
>>512
カミーユはΖ開始当時で17、本編中で約1年経過してるから18になってるはず。
ハイネの歳は知らん。
514通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 00:58:49 ID:???
ハイネは普通にいいキャラしてるからな
515通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 07:54:09 ID:???
>>513
いやまだカミーユは17歳だよ
グリプス戦役時は高校2年だし
11月がきたら18歳
516通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 08:04:02 ID:???
0069.11.11生まれだから、グリプス戦役終了時の0088.2.22には18になってる
517通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 09:22:16 ID:???
>>514
余りにも短い登場期間のおかげで遺作や痔悪化のような醜態を晒す事がなかったからな。
518通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 09:43:37 ID:???
最終回付近でディアッカとイザークを出演させなかったら人気は落ちなかったのに。
519通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 09:54:00 ID:???
>>516
UC0070生まれ説もあるんだけどね
ハイスクール2年だとこっちが正しいし
520通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 09:59:31 ID:???
>>519
高校2年生ならそうかもしれんが、「ハイスクール2年生」なら年度切替は9月なので0069生まれで正しい。
521通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 22:47:50 ID:???
修正の嵐!
次回あたりにレイとカミーユが修正を受ければパイロットはコンプリートだな。
もちろんギルにも修正
522通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 22:52:02 ID:???
種世界の住人全員に修正が必要。
523通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 22:53:40 ID:???
でも本当に一番修正が必要なのは『負債』
524通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 22:58:58 ID:???
竹田のキチガイ左翼思想もだ
525通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 00:19:21 ID:???
?「戦争はファッション」カミーユ「遊びでやってるんじゃないんだよ!!」


修正
526通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 00:24:06 ID:???
タケミカヅチも3回ぐらい乗ったことあるんですよ。
527カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 00:27:54 ID:???
ディオキアの基地での補給を終え、出航したミネルバをダーダネルス海峡で待っていたのは
連合軍とオーブ軍から成る同盟艦隊であった。
相手の数は尋常ではない。空母から次々と飛び立つMSの群れをミネルバのクルーは呆然
と見ていた。
 
「皆、何やってんの!敵が来ているのよ!しっかりなさい!」
 
士気の下がったクルーをタリアが奮起させる。
 
「す、すみません!」
「謝る暇があるならミサイルの一つでも撃ちなさい!」
 
慌てるクルーを尻目にタリアも苛ついているのか怒鳴り声を上げる。
 
MSデッキでは浮き足立ったクルーの中で一人気を吐くマッドの姿があった。
 
「落ち着けお前等!敵の数が多かろうがこちらの戦力でも十分戦えるぞ!」
「で、でも親方……」
「うちのパイロットは精鋭揃いだ!信じるんだよ!」
 
何とかしてクルーを落ち着かせているマッドを尻目にアスランを筆頭に次々とMS部隊が
発進していく。
 
「ブリッジ!敵の数は!?」
『あ、シン!ごめん、まだ……』
「何やってんだ!仕事が遅いんじゃないか!?」
 
メイリンからの報告が無意味な事に愚痴をこぼしながらもシンは発進する。
 
「こうなりゃ、また片っ端から落としてやる!」
 
部隊のエースの自覚を持ってシンは敵部隊に突撃をする。
 
「いきなりの実戦にしちゃ随分と大変な事だな!こりゃ貧乏くじ引いたかな?」
「何言ってんです!ハイネ隊長殿ならこの位一ひねりでしょう?」
「ははっ、そーかもな!」
「よし、ハイネ機、出すぞ!」
 
軽口をマッドと叩き合った後、グフをカタパルトに移動させる。
 
「…なんて景気の良いこと言っちゃたけど、こりゃ骨が折れそうだぞぉ……!」
 
パネルを弄りながらもハイネは不満を口にする。
そして、各種装備を整えたグフの一つ目が光る。
 
「ハイネ=ヴェステンフルス、グフ出るぞ!」
 
ハイネのパーソナルカラーのグフがオレンジを見せびらかすかの如く勢い良く飛び出した。
528カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 00:30:48 ID:???
一番最初に出撃をしたアスランは順調に連合軍のMS部隊を撃墜していた。
これまで不甲斐無かったアスランであったが、前回の事もあって冷静に事を成そうと心掛け
ていた。
 
「単純な防衛戦なら!」
 
ザフトに復隊してから何度かの戦闘を経験したせいか、アスランの動きも良くなってきてい
る。二、三機に囲まれた程度では苦戦することなく切り抜けられる状態になっていた。
その事がアスランの自信になり、より動きを良くしていく。
 
「よし、これなら行ける!」
 
余計な事を考えずに戦闘に集中しだしたアスランは次第に"英雄"の真の姿を現していく。
そこへカミーユのΖガンダムに似た形状の戦闘機が突撃してくる。カラーリングこそ全く違う
オレンジとホワイトとブラックの配色であるが、その形状はウェイブライダーのそれにそっくり
であった。
 
「ムラサメ!?」
 
それはオーブの次期主力MS。
MS形態のままでも単体で飛行できるが、高速で移動する際には戦闘機形態になるという
可変形MSだ。コンセプトとしてはアスランのセイバーの量産型と言ったところだろうか。
オーブに思い入れのあるアスランにとっては、戦場では雑念以外の何ものでもなかった。
  
「くっ…オーブはなるべく撃ちたくは無い……!」
 
そのアスランの呟きは、彼の傲慢であるのと同時に差別であった。
連合製であるウインダムはアスランにとって落とすべき敵であるが、オーブの人間が操縦し
ているであろうムラサメには私情を挟んでしまう。現に今襲ってきているオーブに対するこの
発言は、聞く人によってはザフトに対する背信と同列に捉えられてしまってもおかしくない。
ハイネと語った時の決意がこの時は裏目に出たのだ。割り切っている筈のアスランでも、
やはりオーブに関しては別件だ。もしもシン辺りがこれを聞いていたらきっとその左頬に鉄拳
がめり込んでいただろう。
だが、今のアスランにそんな事が気付けるはずも無く、ムラサメをやり過ごしつつ連合製の
MSのみを撃墜していった。
529カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 00:34:15 ID:???
ミネルバの上で襲い掛かってくるMSの群れを毎度の如く迎え撃っているのはレイとルナマリ
アだった。潜り抜けてきた戦場がほぼ毎回海上戦の為、ミネルバの甲板は彼らのお決まりの
ポジションになりつつあった。
そして、その上空には同じ一つ目でありながらも単独飛行の出来るハイネのグフがいた。

「ほうら、お客さんがやって来たぜ!」
 
続々と押し寄せてくる敵MSの群れに、ハイネはおちゃらけた様に言い放つ。
 
「毎度毎度やってくれるわねぇ!こっちが…空飛べないのをいいことにさ!」
「敵がこちらの都合を考えてくれると思うか?来た敵を落とす、それが俺達の任務だ」
「…にしても今回はいつもより敵が…多いわね!」
「連合とオーブの混成部隊だからな」
 
ある意味ミネルバのおまけ的な配置の二人だが、実際にはかなり良くやっている。
ルナマリアが高火力のランチャー"オルトロス"で敵を散らして敵の火力を分散し、その散った
敵をレイやハイネがレスポンスの良いビームライフルや四連重突撃銃で狙撃していく。
レイとルナマリアに関しては、ここ数回の戦闘でそんな役割分担が出来つつある二人である
が故に、戦闘中の会話もどこか余裕がある。ハイネの性格がそうであるからなのか、若い彼
らには無言で対応しきるよりはそれくらいが丁度良かったのかもしれない。
勿論、その余裕も前線で活躍している三人や上空のハイネの活躍の賜物でもある。
 
 
各パイロットそれぞれが善戦を繰り広げる中、カミーユは何ともいえない不快感を感じていた。
どこか遠い所から何かが近づいてくる…そんな気がしていたのだ。
いつものように変形を繰り返しながらウインダムを相手にしていると、ムラサメがやってくる。
それを見たカミーユは余りにもウェイブライダーそっくりな形状を見て素っ頓狂な声を上げる。
 
「な、何だぁ!?」
 
一瞬不意を突かれた状況になり、カミーユは慌てて集中砲火を切り抜ける。
 
……自分の世界とは違う世界だと言う事は分かっていた。しかし、このパクリとも言える
ムラサメのフォルムを見たとき、カミーユは驚かずにはいられなかった。
 
「ゆ、油断した…あんな物が出てくるなんて……出来の悪い映像ディスクを観てるみたいだ…!」
 
首を振り、気を取り直してカミーユはムラサメに仕掛ける。
似たような形状、似たような使用用途のMS同士であったが、カミーユのΖガンダムは
ワンオフ機である。プロトタイプMSと言えども、そこにはアナハイムの技術の粋が集まってい
るのだ。簡易量産型のムラサメに遅れを取る事は無い。
530カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 00:36:27 ID:???
「こいつら…猿真似でΖとのドッグファイトに勝てると思うなよ!」
 
そのカミーユの叫びは全くの的外れではあるが、長いことΖガンダムのパイロットをしていた
せいで誇りを持っていたカミーユにとってムラサメの存在は面白い物ではなかった。
お互いMA形態のまま追いかけっこ紛いの事をしていたが、カミーユはすぐさま急旋回を行い、
そのままムラサメの後ろを取り、これを撃墜した。
しかし、それでもカミーユの不快感は消えることは無かった。
 
「この感覚…まだ大分距離があるけど段々近づいてきている……」
 
カミーユはそのまま次の相手の下へΖガンダムを向けたが、その不快感に向けて感覚の
センサーは鋭くさせたままであった。
 
 
『ユウナ指令?なかなか突破が出来ないようですな』
 
オーブの旗艦空母タケミカヅチのブリッジにファントムペインのネオ=ロアノークからの通信が
入る。
 
「さぁ…こちらは精一杯やってますけどね。何分オーブはそちらと違って実戦には慣れてない
ものでして…精鋭と呼べる部隊は存在していないのですよ」
『ほぉ…?ではあなた方と同盟を結んだのは失敗でしたかな?』
「とんでもない、数は増えたじゃないですか?これではご不満ですか?」
『ふっ…ま、いいでしょう』
「そちらこそ精鋭を出してもらいたいものですけどねぇ……?確か、ザフトから奪った三機のG
があったでしょう?一機は陸戦用で使い物にならないかもしれませんが、後の二機は使える
んでしょう?それを出してくださいよ」
『もう出ましたよ』
「は?」
 
ネオの言葉を受けてユウナは慌てて望遠鏡を取り出す。レンズ越しに戦闘空域に目を凝らす
と、何やらミネルバの辺りが慌ただしい。
 
「成る程……」
 
望遠鏡を下ろし、ユウナは画面のネオに向き直る。
 
「これは失礼。何分僕も戦争は素人でしてね」
『勿論、承知しておりますよ、ユウナ艦隊総司令殿?」
 
ワザと厭味に聞こえるように言った後、ネオは通信を切った。
その言葉を余裕の表情で受けたユウナであったが誰にも聞こえないような声で一言呟く。
 
「戦争屋風情が……お前達は死ぬまで戦争をやっていろ……」
 
まるで自分はそうではないかのようなユウナの言い草。大西洋連合と同盟を組み、その戦い
にオーブを加担させながらも、ユウナは父・ウナトとは違う思惑で何かを待っていた。
531カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 00:38:56 ID:???
ユウナが確認したミネルバの騒動はアビスの急襲によるものだった。水中戦に特化した
アビスは水の中からミネルバに砲撃を加える。
ハイネは空中の敵を相手にしている為、甲板の上のレイとルナマリアが対応してはいるが、
状況は圧倒的に不利であった。
敵は一機とは言え、ミネルバは埒があかない状態であった。
 
「ルナ!そっちに行ったぞ!」
「嘘!?どこから……きゃっ!」
 
海面から突如現れるアビスにルナマリアは不意を突かれる。それでも最初の一撃を何とか
かわし、反撃の一発をお見舞いするが、その時には既にアビスは海中に潜ってしまった後
だった。
強力だが隙の大きいガナー・ザク・ウォーリアのオルトロスでは素早く現れては消えてゆく
アビスを捉える事は出来なかった。
 
「換装は出来ないの!?」
「上からも来ている!そんな時間は無い!」
「そんな…こんな命懸けのもぐら叩きなんてごめんよぉ!」
「チィっ!」
 
いつ現れるのか分からない敵を警戒している間にも、ミネルバの底は段々と削られていく。
ミネルバはピンチを迎えていた。
 
 
一方、同じ頃にシンはカオスと交戦していた。
お互いに空中戦に特化している分、戦いは互角であった。
 
「ザフトの新型だぞ!勝手に使ってんなよ!」
『あぁ!?何言ってんだてめぇは!』
 
お互いがお互いを罵りながらも周りのウインダムやムラサメが近づけないほどの激闘を繰り
広げる。
 
『俺達が貰ってやったんだからよぉ!ちゃんと整備して大事に使ってやってる所を見せてや
るよ!』
「ふざけんな!誰がお前達なんかにMSをプレゼントするもんか!」
『遠慮するなって!新型の性能、身をもって知れ!』
 
カオスが機動兵装ポッドから弾をばら撒く。しかし、フォースシルエットはそう易々と攻撃を受け
るような機動性ではない。
 
「喰らうかぁー!」
『ははは!やるじゃねぇか!いつまでもつかぁ!?』
「くっ!……調子に乗るなぁー!」
 
ビームサーベルで切りかかるインパルスだが、その攻撃もカオスは右に避ける。しかし、
そのまま左腕を伸ばしたインパルスのシールドにド突かれ、カオスは衝撃で態勢を崩した。
532カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 00:42:09 ID:???
『うおっ!…このやろぉ…やりやがったな!?』
 
慌ててスティングはカオスの態勢を立て直し、インパルスを警戒して向きなおる。
 
「はんっ!性能に頼ってるだけの癖に!」
『そりゃ、てめぇだろうが!』
 
シンの言葉に苛立ち、カオスはビームサーベルを引き抜いてインパルスに躍りかかる。
それに対してインパルスもビームサーベルで応戦する。
ビームサーベル同士の鍔迫り合いになった。
 
「何だと!?」
『何だよ!?』
 
まるで子供の喧嘩の様な罵倒のし合いであるが、やっている事は互いの命の奪い合いであ
る。その自覚があるのか無いのかは不明だが、お互いの実力が拮抗したまま長期戦の様相
を呈していく。
  
窮地に立たされたミネルバのブリッジでは、タリアが必殺の兵器の使用を考慮していた。
 
「……アーサー、タンホイザー起動!」
「はっ!目標は!」
「前方の敵艦隊のど真ん中に打ち込みなさい」
「は?し、しかし…あれはオーブの艦です!
…かつての恩ある彼らにタンホイザーを撃ち込むので…」
「何を寝言を言ってるのよ!撃たなければ私達が死ぬのよ!?
…タイミングを逃す前にさっさと準備なさい!」
「はっ、はい!了解であります!」
533カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 00:43:10 ID:???
(この感じ…もう近くまで来ている……!)
 
少し落ち着いたカミーユは先程の不快感が直ぐ其処まで来ているのを感じていた。
そして、それが何処からやって来るのかを感知する。
 
(少し離れた所に大きなプレッシャーを感じる……いや、違う!)
「ミネルバの上!?」
 
咄嗟にミネルバの方へ視線を向けた時、ミネルバは丁度タンホイザーの起動が終わって
エネルギーのチャージを開始した所であった。
そこへタンホイザーの砲身を貫く一筋の光が奔る。チャージ中のタンホイザーは大きな爆炎と
共にその機能を停止した。
 
「やられた!?」
 
カミーユは急いでΖガンダムをミネルバへ向かわせる。
 
その様子は各所で戦闘を繰り広げるパイロット達にも確認されていた。
ミネルバの起こした謎の爆発……その不可解な出来事に、戦場は一時その動きを止めた。
そして照りつける太陽を背負い、高空から舞い降りてくる一機のMS。
白を基調としたカラーリング、背に青い六翼を持つGタイプのヘッド。
それは、"ヤキンのフリーダム"であった。
                                              〜つづく〜
534通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 00:51:59 ID:???
GJ一番乗りだぜ
535通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 00:52:28 ID:???
GJ!!
ムラサメを見たカミーユの反応がいい。
正式名を聞いたらさらに頭痛を起こしそうだ。

…というか、ムラサメとのドッグファイトをやりすぎてミネルヴァ忘れてる…なんてことないよ…ね?
536通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 00:57:57 ID:???
種系では鍔迫り合いは・・・まあいいかGJ!
537通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 01:02:48 ID:???
>>535
GJ!
気付いていながらミネルバ狙撃を許してしまったカミーユは何を思うのか?
そしてユウナの『待っていたもの』とは果たして?
次回はついに自由vsZの初対決か!?
シンとスティングがディオキアで遭遇するところも楽しみだな。

>>535
>正式名を聞いたらさらに頭痛を起こしそうだ。
何でか聞いていいか?
さっぱり分からん。
538537:2006/10/15(日) 01:03:39 ID:???
しまった一番上の行消し忘れてたorz
539通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 01:05:50 ID:???
名前に虎馬あるからなぁ>村雨
正直、頭痛で済まないんじゃないか?
540通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 01:23:07 ID:???
GJ。

しかしまだまだ煮え切りませんねこの凸は。
541通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 01:26:11 ID:???
永遠のムラサメですか・・・
542通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 02:29:14 ID:???
Z自身のパワーアップができないとおもうけど終盤どうするの?両作品とも
ハイパー化だのみ?
543通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 07:19:22 ID:???
いや、だからパワーアップする必要は全く無いだろ。
Z>>>ストフリなんだし。
544通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 07:33:06 ID:???
Zはムーバブル・フレームの為に、ストフリに比べて機体の稼動範囲(動かせる部位ね)が広い。
そのため、運動性は圧倒的にZの方が上だろうし、バイオセンサー装備で追従性も上。
キラの操縦が驚異的な速さといっても対抗できそう。

武器の手数と、MS状態での滞空性能はストフリに軍配が上がるがカミーユならなんとかするでしょ。
545通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 08:00:20 ID:???
やはり、MS形態でも空が飛べて凄いビームが打ててドラグーンが使えるようになるですよ。
これこそΖガンダムデスティニーだー、って感じで。
それかミーティアがつく。
546通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 09:14:10 ID:???
職人さんGJです

>>542
Ζは宇宙に上がってからが勝負でいいんじゃないか?
それまではハンデを持ちながら戦うカミーユというのがいいし
奥の手には最強のハイパー化もあるんだしカミーユは
547通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 09:28:06 ID:???
つかそれ以前にハイパー化できるのか疑問
548通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 09:29:27 ID:???
多分この後、キラはCCAアムロスレみたいに
とてつもない恐怖を味わう事になるんだろうな・・・w
549通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 09:41:01 ID:???
>>547
それは問題ないだろ
ミノフスキー粒子がないというのはあるが
550通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 10:09:15 ID:???
まぁハイパー化しないカミーユなんてカミーユじゃないだろとは思う
551通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 10:33:22 ID:???
フルアーマーZの登場です。
552通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 10:49:29 ID:???
>>548
そうだないくら反応が早いといっても、みてから行動するのと。
ハンパない予測能力で回避・戦闘をこなす人間との勝負だからな。

種世界では背中に垂直に伸びる翼が有れば空を飛べるので
Zは背中にある翼を機体に対し垂直に立てれば種世界では空を飛べると思う
などと考えている俺は変かな…
553通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 10:55:12 ID:???
フルアーマーZって、Zのコンセプトである機動戦から著しく外れてるぞw
554通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 10:56:24 ID:???
本来のウェイブライダー型のΖだと翼の向きが逆になるからな
ウェイブシューター型ならなんとなく飛べそうなイメージ
555通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 10:57:21 ID:???
>>552
例えできたとしても、それはZに対する冒涜だと思う。
556通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 11:00:26 ID:???
>>553
何言ってんだ!アーマーが分離合体してフライトモードになるんだぜ?
ビームナギナタもある。
557通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 11:07:16 ID:???
それより、レイやルナマリア用の繋ぎ機体としてザフト版Z+がでないかなと思ってたり。
558通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 11:07:30 ID:???
タリアがキ印で乙
559通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 11:09:08 ID:???
>>557
鹵獲ムラサメで
560通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 12:49:57 ID:???
まぁ、後半は宇宙だし
561通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 15:02:05 ID:???
>>553
だよね
まぁ普通にボツにするだろうな俺でも
562通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 15:17:52 ID:???
>>561
貴様はガンダム野郎を舐めた!
563通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 15:40:51 ID:???
ガンダム野郎懐かしいなwまあ改造はガンプラの醍醐味だからなあ。

でもさ、実際火力重視のZZなんかと違って、Zってあんまりゴテゴテする必要ってないんじゃない?
ウェイブライダーの機動性を重視する造りなわけだし、事実武装はビームライフルにグレネードと
ビームも実弾も揃ってる訳だし。対艦兵装のハイパーメガランチャーもある。

それともνのHWSみたいに追加スラスター込みで付けてみる?
564通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 17:59:40 ID:???
ミーティア改造してデンドロビウムみたいにすればいいんスよ
「でかい兵装にはこういう使い方もあるんだ!(体当たり)」
565通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 18:19:43 ID:as5YI3MW
>>563
ZZはイメージのせいで勘違いされてるが
機動性や運動性でもZより上なんだがな…
砂漠や大気圏といった特殊な場所ではZのが有利だが
566ハリソン・マディンもどき:2006/10/15(日) 18:28:01 ID:5oRz3XF6
はっきり言ってガンプラで遊ぶならF91以降の小型MSのみにすべき。
これならMG化の心配や期待がそこに集まること請け合い
どうしても在来サイズをご希望ならHCMPROにすべし。
567通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 18:28:01 ID:???
ZZの機動性や運動性が低いって言ってる奴は間違いなくスパ厨
568通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 18:30:45 ID:???
ZZの弱点は機動性じゃない。燃費の悪さと戦闘継続時間の短さだ
569通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 18:31:08 ID:???
>>567
家庭用エゥティタにも微妙機体として登場してるわけだが
マイナーすぎ?
570通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 18:33:03 ID:???
ZZは重量もZと大差なく
制御バーニアの数はΖの四倍
後半はスラスターもΖ以上の
超性能
571通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 18:47:07 ID:???
ZZが遅いと感じてるやつは、みんなスパロボやってるからだろw
572通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 21:20:42 ID:???
デザイン的に鈍重そうに見えるってのもある
573通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 21:57:51 ID:???
それは同感。個人的にZZの方がZより速いっていわれたら心情的になんか悔しい
やはりZの方がMSのデザインとしてはスマートで好き、ZZはごてごてしとってなあ。
574通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 22:04:03 ID:???
ZZは分離した状態でも戦闘を継続できるから、随分と運用に幅が出るよね
575カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:27:10 ID:???
「フリーダム!?キラ……なのか……?」
 
フリーダムを確認したアスランは驚愕する。カガリを連れ去って行方不明の筈のキラが何故か
戦場にいるのだ。その後方から近づいてくる戦艦アークエンジェルを見て更に驚く。
 
「アークエンジェルまで…!どうなっている!?」
 
混乱するアスランは状況を何とか把握しようと試みる。しかし、結果を出すのには判断材料
が少なすぎる為、余計に混乱する。
そして、その混乱するアスランから離れた場所でカオスと交戦するシンは、その状況に込み
上げてくる感情を抑えられずにいた。
 
「あ……アイツは……アイツは……!」
 
シンの脳裏に二年前のオノゴロ島での悲劇が映し出される。
あの時、流れ弾がシンの家族を奪った時、目に飛び込んできたのはビームを乱射する
フリーダムとそれを弾くフォビドゥンの姿であった。
 
「よくも抜け抜けと俺の前に出て来れたな……!」
『ん…?テメエ、何処行くんだよ!』
 
その場で戦っていたカオスを無視して、フリーダムへとインパルスを向ける。
 
「お前に殺された父さんや母さん、マユの仇だ!俺がこの手で落としてやる……!」
『待てっつってんだろうがこの野郎!』
 
スティングの言葉を無視してインパルスが飛んでいく。
レバーを握る手にも力が入る。この時、シンの心は復讐に満たされていた。
 
 
タンホイザーを無力化されたミネルバは大騒ぎになっていた。
チャージ中の爆発でタンホイザーの周りの被害が大きくなっていた。
 
「負傷者の手当てが先だぁー!動ける奴は手を貸せ!」
「火の出ているブロックは隔壁を下ろせ!他に火をやるなよ!」
「くそっ!いきなり何だってんだ!?消化剤、まだか!」
 
クルー達は必死になって被害を食い止めようとしている。
そして、ブリッジでは更なる情報が入ってくる。
576カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:29:53 ID:???
「よ、四時の方向に新たな機影です!これは…戦艦クラスです!」
「何ですって!?」
「識別…そ、そんな……アーク…エンジェル……!?」
 
索敵のバートからの報告にブリッジがざわめく。
 
「あのフリーダムと言い、アークエンジェルと言いどうしてこんな接近されるまで気付かなかっ
たの!?」
「そ、それが…強力なジャミングがかかっていたみたいで……ニュートロンジャマーの濃度
が……」
「目の前の敵に集中しすぎたわね…こんなのいつもなら気付く事なのに……!」
 
不注意が招いた思わぬ損害にタリアは唇を噛み締める。これまでどんな戦闘も乗り越えて
きたと言う自信が、今回に限っては驕りという形で姿を見せたのだ。
この事にタリアは怒りを露わにした。
 
「し、しかし、あんな物二年前の骨董品ですよ!我々の最新鋭の兵器なら何でもないです
よ!」
 
後ろからアーサーが軽口を叩く。そんな生温い相手ではない事を分かっているタリアに、
アーサーの言葉は癇に障った。
 
「冗談じゃないわよ!そんな目で見てたらあっという間に沈められるわよ!」
 
普段は余り見せないタリアあの凄まじい剣幕に、アーサーは少したじろぐ。
 
「艦長、アークエンジェルより新たなMSが発進されました!」
「!?」
「これは…ピンク色ですがストライクです!」
 
アークエンジェルより出撃したストライクはピンク色の派手な見た目と、その右肩にはオーブ
国家元首の証である獅子のエンブレムが刻印されていた。
ピンクのストライク……ストライク・ルージュにはカガリ=ユラ=アスハ本人が乗っていた。
 
オーブの空母タケミカヅチのブリッジでそれを確認したユウナは何一つ変わらない表情で
見つめていた。
 
(やっぱり来たんだね、カガリ…さぁ、今の君にどの程度の事が出来るのか見せて貰うよ)
 
ユウナがカガリに期待の目を向けた時、ルージュから全周波通信による呼びかけが聞こえ
てきた。
577通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 22:31:50 ID:???
>>574
分離状態で戦闘継続は実質無理なのでは?(汗
MS形態でのコックピットはコアファイターのみなので、上半身・下半身どちらかは木偶の坊と化すと思います。
上半身はビームライフルが一応コックピットになるはずですが・・・
そこに乗っているパイロットはMS形態の戦闘でぶん回されて死ぬぞ(汗

Sガンダムなら分離形態三機ともパイロットが居るんだけどネェ
578カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:32:39 ID:???
『オーブ国家元首、カガリ=ユラ=アスハの名に於いて勧告する!オーブ軍は直ちに
戦闘行為を停止しろ!この戦闘はオーブの理念より外れた行為だ!』
 
この声明に戦場は騒然とした雰囲気が包み込む。特にオーブの部隊はこの声明に混乱した。
 
『我々オーブは中立の為の三つの理念がある!お前達はその理念を違えているんだぞ!
オーブに対する裏切りじゃないか!』
 
タケミカヅチのブリッジでそれを聞いていたユウナは不愉快な顔をする。
理想だけを掲げた言葉でこの場を収めようとしているカガリに怒りを露わにしているのだ。

『これはどういうことですかな、ユウナ司令?』
 
事態の不透明さに疑問を感じたネオが通信で語りかけてくる。
 
「どういうことも何も、我々にもさっぱりですよ。ですがあなた方を裏切ったりはしませんので
ご心配なく……」
  
(がっかりだよ、カガリ。今更この程度の茶番で何とかできると思っているのなら、君は何も
成長していない証拠じゃないか?せっかくオーブから出て世界を周っていると言うのに……)
 
「おい、ミサイルをあの所属不明の一団に撃ち込め」
 
ユウナの発言にブリッジが騒然とする。
 
「う、討つのでありますか!?」
「そうだよ?それ以外に何があると言うんだい?」
「し、しかし、あれは間違いなくカガリ様のストライク・ルージュです!先程の声もカガリ様の
ものに似ていますし……何よりあの肩のエンブレムがそれを証明しています!」
「馬鹿を言っちゃいけないよ、君?何処の世界に国家元首自らがMSに乗って出てくる国が
あるんだい?あのMSだってよく出来た模造品かも知れないし、声だって機械が代わりに
しゃべっているだけなのかも知れないじゃないか。確たる証拠もないのに信じるわけには
いかないよ。撃ちたまえ」
「その通りですが、攻撃を加えると言うのは……。せめて真偽の確認が取れるまでは……」
「君、あのMSが見えているかい?」
 
中々命令に従おうとしない艦長に、業を煮やしたユウナはフリーダムを指差す。
579カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:35:52 ID:???
「あれは"ヤキンのフリーダム"だ。二年前のあれの活躍を君も知っているだろう?あれはね、
核って言うとんでもない代物を動力にして動いているんだ。その気になれば僕らの戦力ぐら
い簡単に全滅させる事が出来る力を持っている。ユニウス条約を堂々と無視する連中のする
事だ、そんなのがすぐそこに居るんだよ。先手を打たれたら僕らもただじゃすまないかもしれ
ないよ?それでもいいのかい?」
「そ…それは……」
「あんな脅迫に屈するわけにもいくまい。分かったら、さっさと全軍に攻撃命令を出したまえ。
今ならミネルバの戦力を気にせずに戦える」
「……分かりました」
 
観念したように艦長は攻撃命令を出す。
無数のミサイルがカガリのルージュに向かって襲い掛かる。そしてムラサメの部隊も動き
出し、それと連動するようにネオが命令を下したウインダム部隊も同じ方向に向かった。
 
「なっ!?」
 
突如襲い来るミサイルの雨にカガリは硬直してしまった。まさかオーブが自分に向けて攻撃
してくるとは思わなかったのだ。
 
(君は甘すぎるよ、カガリ……色んな意味で…ね……)
 
MS越しでも伝わってくるカガリの動揺にユウナは心の中で呟く。
 
「カガリ!」
 
動かないルージュの前にキラのフリーダムが躍り出る。
そして、腰のクスィアフィス・レールガン、肩のバラエーナ、携行武器のビームライフルを全て
前面に構え、ミサイル群をロックオンする。
フリーダム必殺のフルバーストアタックが火を噴いた。その攻撃は全てのミサイルを叩き落す。
 
「何てMSだ……あれじゃ、戦略級じゃないか……!」
 
ミネルバへ戻っているカミーユはその凄まじいフリーダムの火力に目を見張る。
 
「ど、どういうことなんだ、これは……」
『カガリ、戻って!このままここに居たんじゃ君が危険だ!』
 
いまだオーブが自分に仕掛けてきた事に信じられない、といった心境のカガリを、キラが
アークエンジェルに戻す。
カガリがアークエンジェルに帰還した後、続けて襲い来るウインダムやムラサメを、キラは
武器やバックパックを破壊するだけで次々に無力化させていく。
580カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:38:22 ID:???
「あのMS、敵の戦闘能力だけを間引こうってのか!?こっちは戦争をやってるってのに
子供の遊びをするつもりかよ!」
 
ようやくミネルバの近くまで戻ったカミーユは、タンホイザーに消化剤を吹きつけながらもその
様子を見ていた。まるでシューティングゲームを楽しむかのようなフリーダムの行為にカミーユ
は憤りを示す。
そのすぐ横をインパルスがフリーダムに向かって駆け抜けていく。
さらに後ろからカオスがそれを追うようにミネルバを無視して通過していく。
 
「シン!カオスも!?あれに仕掛けるのか!?」
『カミーユ!タンホイザーは鎮火した!シンに加勢するぞ!』
 
ハイネが接触回線でカミーユに話しかける。
 
「了解!アスランは!?」
『アスランはアイツに因縁がある!ほっとけ!』
「えぇっ!?」
『レイとルナマリアは引き続きミネルバの護衛だ!』
『『了解!』』
 
急を要する為、吐き捨てるようにそう言ったハイネはグフをフリーダムの方向へ向ける。
カミーユもそれに続く。
 
フリーダムはウインダムやムラサメを何もさせない内に次々といなして行く。
その手の付けられない動きに他のMS達は浮き足立つ。
 
「あなた方は、カガリの声が聞こえなかったんですか!?
オーブを戦争に介入させるなんて……」
 
憤るキラがウインダム狙ったその瞬間、後方からのアラームが警告する。
キラはフリーダムを上昇させ、後方からの攻撃をかわした。
 
「避けたな……!当たって落ちろよ!」
『テメェ!俺の事無視すんじゃねーよ!』
 
キラがビームの飛んできた方向に目をやると、インパルスとカオスがこちらへ向かって来て
いるのが見えた。
スティングは自分の相手をしないシンに憤り、インパルスに攻撃する。しかし、インパルスは
相手にしてられないとばかりに、あっさりその攻撃をかわす。
すぐ目の前に迫ったフリーダムを確認したシンは、インパルスにライフルを捨てさせ、
ビームサーベルを構えさせた。
 
「おぉちろおおぉぉぉー!」
 
獣のような本能剥き出しの叫びを上げ、シンはフリーダムに切りかかった。しかし、その
攻撃もフリーダムはあっさりとかわし、ビームライフルでインパルスの腕を破壊した。
581カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:41:32 ID:???
「こいつぅ!」
 
尚もチェーンガンでフリーダムを撃つが、それも全く無意味な事だった。
フリーダムはついでといわんばかりにカオスのバーニアを破壊して飛び去っていく。
カオスはそのまま海へと落ち、インパルスはフリーダムを追撃して行った。
 
「くそっ、何だあいつはよ!……飛べなくなっちまったか…
…アウルでも呼んで運ばせるか……」
 
戦闘の継続が不可能だと判断したスティングは、味方の救助がやって来るのを待つ事に
した。
 
 
「まだやるつもりなのか!?」
 
後方から付いて来るインパルスにキラは半ば呆れる。このまま仕掛けてくるようなら徹底的に
やるしかない、とキラは決心した。
インパルスはシールドを前面に構え、体当たりしようとしていた。
 
「相打ちでもお前は俺が落とす!」
 
シンがスロットルを最大にして加速を掛けた時、フリーダムの横から新手の攻撃が飛んで
くる。これもフリーダムは当たり前のようにかわしたが、それが誰の仕業であるのかをシン
は分かっていた。
 
「ハイネ!ジャマをするな!」
『何言ってんだ、シン!お前じゃ奴には勝てない!冷静になれよ!』
「勝てなくてもいい!アイツを落とせるなら……!」 
 
完全に頭に血が上っているシンにハイネの言葉は届かなかった。
何とかシンを止めようと四連重突撃銃でフリーダムを牽制していると、フリーダムの矛先は
ついにハイネの方へ向けられた。
 
「あなたも邪魔をするのなら!」
 
フリーダムの正確な射撃がグフの右腕、右足を破壊する。
 
「な、何ぃー!?」
 
バランスの崩されたグフはそのまま下へと落下していく。
そこへ容赦なくフリーダムがライフルの照準をつけた時だった。再びフリーダムを別方向から
のビームが襲った。
今度の攻撃は射撃の時の一瞬の硬直を狙われたらしく、キラはそれをシールドで何とか防ぐ。
ハイネのグフはそのまま岩場に叩きつけられてしまった。
  
「まだ新手が居るの!?」
582カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:43:37 ID:???
ビームが飛んできた方向に目をやると、ムラサメそっくりなフォルムのMSが見えた。
しかし、色がトリコロールカラーで纏められている上、細部の形状が違うので別物であると
いう認識は出来た。
Ζガンダムである。
 
「そこのMS!お前は一体何がしたいんだ!?」
 
遊んでいるようなフリーダムの動きに怒りを露わにしたカミーユはウェイブライダーで接近を
試みる。それに対してキラは素早くノズル部分に照準を合わせ、迎撃する。
フリーダムの戦い方を見ていたカミーユはそれを直感で察知し、砲撃をすり抜けてフリーダム
の近くまで接近する。
そして変形を解いて後ろから組み付いた…かに見えたが、キラの超人的な反応速度が
それを許さず、素早い操作で反転しようとした所にΖガンダムが横から組み付くという形に
なった。
 
「何てことしてくれてんだ、あの人は!?これじゃ手が出せないじゃないか!」
 
近くで機を窺っていたシンは不平を口にする。
 
『貴様、戦場を混乱させておいて何を企んでいる!?』
「何をって……!?」
 
接触回線からカミーユの声が聞こえてくる。これならわざわざ周波数を合わせる必要は無い。
 
「あなた達がオーブを討とうとしているから、それを止めたいだけだ!」
『なら何故MSで出てきた!?そんな物振り回してるからオーブに誤解されるんじゃないか!』
「あなた達だってMSを使っているでしょう!僕達はただこの戦いを止めたいだけなんだ!」
 
そう言うとフリーダムはΖガンダムを無理矢理引き離し、腕や足を目掛けてビームを放つ。
 
「まだ戯れるか!」
 
分かりきった攻撃に、カミーユはあっさりと攻撃をかわす。
今までの敵と違い、全く攻撃の当たらないΖガンダムにキラは驚愕する。キラがここまで手こ
ずった相手は、二年前のラウ=ル=クルーゼ以来だったからだ。
カミーユは先程のやり取りだけではまだ足りてないらしく、再度フリーダムへと接触を試みる。
 
「まだ来るの!?うわっ!」
 
意表を突いたように今度は正面からぶつかってくる。
583カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:45:19 ID:???
『貴様がこうして戦っているのはオーブのためだって言うのか!?』
「くっ……そうだ!カガリがそうしたいから…僕もそれに協力したいから戦ってるんだ!」
『なら、ザフトと連合なら戦争してもいいって言うのかよ!』
「そんなことは言っていない!」
 
フリーダムは再びΖガンダムを引き離す。
しかし、Ζガンダムが三度フリーダムに組み付く。
 
「何なんですか、あなたは!?このままずっと纏わり着くなら、本当に撃墜しますよ!」
『出来る物ならやってみろ!こっちは遊びでやってんじゃないんだよ!』
「僕達が遊びだって……!?僕もカガリも遊びでやってるつもりなんて無い!」
『ふざけるなよ!オーブの事ばかり気にして、女の名前も出して……!』
 
カミーユが言い終わる前にフリーダムのクスィアフィスが前方を向く。
それを直感したカミーユが最速でフリーダムから離れると、放たれたレールガンが空気を震わ
せて明後日の方向に飛んでいった。
これもかわされたキラは仕方ない、と精神を集中させる。キラの潜在能力が覚醒し、本格的な
戦闘モードに入った。
 
……以前シンがこの覚醒に成功しているが、彼には無意識のうちにやっていた事なので
自在に行う事は出来ない。
更にはアスランも以前は出来ていた事であったが、これまた彼も自在に出来ない。
この現象はキラだからこそ自由に出来る事で、それがキラが最強と謳われる所以であった。
 
フリーダムがカミーユに向けて攻撃を仕掛ける。
その動作は組み付く前とは全然違うスピードだった為、カミーユはこの世界に来て初めて
シールドで攻撃を防いだ。
 
(こいつ……さっきまでと明らかに動きが違う!今までは手加減していたのか!?)
 
いきなり変貌を遂げたフリーダムの動きにカミーユはすぐさま対応できなかった。
しかし、キラの勝手とも思える言葉を聞いてしまったカミーユは、その怒りをプレッシャーに
して撒き散らし始める。
それを感じたキラも一時動揺する。
 
(な、何だ…この感じ……息苦しい……!?)
 
その一時の動揺はカミーユがキラの動きに慣れる時間には十分であった。
二人の戦いは再び五分に戻った。
584カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:48:02 ID:???
(こ、この感じ……あの人か……!?)
 
忘れようの無いカミーユのプレッシャーを感じたシンは二人の戦いに近寄る事が出来ず、
ただ眺めているだけになってしまっていた。
 
(くそぅ……俺にもっと力があれば……)
「……!?」
  
ふとモニターの片隅に何かの影が目に入る。
 
「あれは…アスラン!?何だって今更ノコノコと……!」
 
そちらへ目をやると、アスランのセイバーがいつの間にか近くまで来ていた。
 
「周波数はいくつだ…!?くそっ、キラと連絡さえ取れれば……!」
 
この時、アスランが取るべき行動はフリーダムの通信機に周波数を合わせる事ではなかっ
た。本来ならカミーユに繋げて間接的に連絡を取ってもらえば済む問題だったのだ。
しかし、フリーダムの登場に、カガリが出てきた事がアスランを焦らせていた。
ハイネとの語りなど何処吹く風状態である。
だが、アスランの決意の中にオーブの事が含まれていた時点でこれは仕様がない事だった。
 
『オーブは俺達に仕掛けてきたんだぞ!それを迎撃して何が悪い!』
「だから僕達はそれを止めたいだけだって言ってるでしょう!」
 
中距離からの砲撃戦では決着がつかないと踏んだ二人はサーベルによる接近戦に切り替え
ていた。
 
『お前のやり方で戦争を止められるものか!お前のやっている事はただ余計に被害を大きく
しているだけだろう!?あんな中途半端に攻撃しておいて……!』
「僕は誰一人死んで欲しくないだけだ!」
『お前が落とした奴らが戦場でそのままで済むわけがないだろ!』
「!?」
 
キラはハッとした。
ちらっと周りを見回してみると、そこかしこから煙が上がっているのが見えた。
キラが落としたMSが海面に衝突した際に、打ち所悪く爆発したものもいたのだ。
それはオーブのムラサメも例外ではなかった。
キラの心に迷いが生じる。
 
「でも、僕がこうしなきゃもっと多くの人が死んでいたかもしれない……!
仕方が無かったんだ……!」
『人の命に多いも少ないも無いだろう!貴様は仕方ないで済ますつもりなのか!?』
 
ミネルバのタンホイザーからは未だに白い煙が上がっている。火災は何とか防げたとはいえ、
その爆発に巻き込まれて命を落とした者もいるだろう。
585カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:50:05 ID:???
『じゃあ、あなた達なら人の命を奪ってもいいって言うんですか!?それこそ襲われたから
仕方ないって…そう言うんですか!?』
「俺達は死ねば良かったと言うのか、貴様は!?人の命を何だと思ってるんだ!」
『ち、違う!』
「何が違うんだ!そう言うことだろう!お前達はこの戦闘に直接関係無いのに、勝手に乱入
しておいてふざけた事を言うな!」
『関係はある!カガリはオーブの国家元首なんだ!だから、それに協力している僕にもこの
戦闘に介入する権利はある!』
「そうやって自分以外に理由を求めるんじゃないよ!」
 
その時であった。これ以上の戦闘は連合、ザフト双方に無理があると判断したネオが撤退
信号を上げたのだ。
 
「くっ!」
 
それを確認したフリーダムはΖガンダムを振りほどき、アークエンジェルへと戻っていった。
残ったウインダムやムラサメも撤退していく。
 
「……何とか…なったみたいね……」
「よ、よかった〜……」
 
ミネルバのブリッジは安堵感に包まれていた。
 
「艦長、タンホイザー…使い物にならなくなっちゃいましたね……」
「確かにそれは痛いことだけど、命あってのモノダネよ。今は無事乗り切った事を素直に
喜びましょう……」
 
これまでミネルバの危機を幾度と無く救ってきたタンホイザーを失った不安はあるが、
今はただ体を休めたかった。
                                             〜つづく〜
586カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/15(日) 22:53:15 ID:???
言い忘れてた……トダカさんは都合により出演無しです……
587通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 22:53:29 ID:???
GJ!ハイネは・・・・
588577:2006/10/15(日) 22:55:46 ID:???
577です。
ぶった切ってスマンカッタ
ゼダンの門とともに砕かれてきます。
589通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 22:56:38 ID:???
今回カミーユはシンが逆上したことは理解できるだろうから、ここから和解か?
キラに家族を巻き添えでぶっ殺されましたって聞けば、カミーユはどんな反応を……
590通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:07:17 ID:???
GJ!
カミーユ!よく言ってくれた!
改めて、キラが中身の無い奴と言うのがよく分かった。
こいつには、「自分の意思」と言う物が無いのだろう。
戦闘にも完全に対応してたし、キラに負け犬フラグが立ったな。

アスランには何にも言うこと無いな、呆れてね。
駄目だ、こいつは。

ハイネの安否が気になるぜ・・・
無事だといいが。
591通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:09:42 ID:???
一番キラが仕方ないで済ましてるよな
相手にも理由があることを認めてないし
592通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:28:13 ID:???
キラ・・・プギャーwwww
なんでも人のせいにしてりゃ成長しない罠
593通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:30:59 ID:???
いいね
カミーユの若さから来る真っ直ぐな正義ってのとキラの独りよがりで空虚な正義っていう自分のイメージがそのまま出てたw

究極のNTと最高のコーディネイターっていうお互いある意味対極の存在だし今後の絡みが楽しみだね
594通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:33:38 ID:???
交信を試みるために三度も組み付いたカミーユスゴス!
種割れすらあっさり見切られたキラワロスw
595通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:36:53 ID:???
Z勢の組み付き癖だけはここに来ても直らんねぇww
596通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:38:06 ID:???
GJ!!

ユウナがまともだ…普通政治家ならこうするだろなアニメはなんだっただか
凸派へたれに拍車がかかってまあ…
それにしてもZはほとんどウェブライダー状態で立ち回ってんだよな…
それでいてシールドガードのみがダメージなんだからすごいな

まあいろいろと楽しみです 
ただカミーユがキラ達にシロッコと共通するものを見出して
特攻かけるのではないかとちょっと心配
597通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:41:30 ID:???
GJ!!
598通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:42:51 ID:???
次回こそアスラン修正受けるだろーなー
599通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:44:25 ID:???
オレは真の黒幕ラクスを何とかして欲しいよ・・・
600通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 23:52:39 ID:???
MS形態だと滑空程度しか出来ないZで自由飛行可能なフリーダムを抑えるカミーユテラスゴス。
手数の少なさで結局ドローになったがな。
しかし、改めてキラって「戦う理由」を外に求めて無理矢理自分を正当化するという
軟弱モノを地でいくヤツだったな・・・まだ憎悪とか怨念で戦っているシンとレイ
のほうが正しい姿勢ダゾwww

しかし、同人原作ではヘタレなキャラだった二人がここでは明暗が分かれたな
ユウナは「政治家」として当然の行動(しかも毅然と)
凸は空回り・・・ま、まあこっちにはカミーユとハイネ(死んだ描写が無いから
生きているか?でも衝撃でパイロット生命がピンチ?)が居るから何とか軌道回復できるでしょ?
そう信じていたいorz
601通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 00:01:29 ID:???
>>600
どうだろう? 
カミーユとハイネがいるなら戦力的にはアークエンジェル行った方がバランスが取れるとも言える
602通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 00:07:37 ID:???
凸、まさにレコアさんがヤザンに言った「日和見主義者が命令するのか!?」状態になりそう
603通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 00:07:39 ID:???
それでもカミーユ・ハイネ・シン・レイそしてルナ…
なんかアニメ並みの戦力が電波に行っても
電波が勝てる気がしない
カミーユ一人で凸+吉良を宇宙なら倒せそうだし
604通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 00:08:59 ID:???
出た!
富野節・あげ足とり!

こういうのを待ってた!!
605通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 00:30:34 ID:???
GJです
さすがNT能力最高のカミーユ
キラを論破して最高でした
アークエンジェルの連中がやってることは
シロッコとジュピトリスがやってたことと同じことなので
もっと説教してやって欲しい
606通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 01:25:31 ID:???
>605
無差別攻撃上等なテロリストと同類にされちゃジュピトリスがかわいそうだ。
ジュピトリスのシロッコは親ティターンズの第三勢力としてティターンズやアクシズ相手にちゃんと外交活動やってるのに。
607通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 01:37:51 ID:???
GJ!!

正直ガンダムバトルロワイヤルでのZの化け物性能を味わうと
フリーダムが瞬殺されても違和感がまったくわかない
608通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 01:44:09 ID:???
>>607
となるとサイコならパンチ一撃で終わりだな
609通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 05:58:18 ID:???
デストロイ同様の重装甲の巨体だけで凶器になるよな>サイコ
610通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 07:15:58 ID:???
ここのカミーユはすごくカミーユだ、原作とぶれてない。職人さんGJ!
この流れならシンはデストロイからステラを助けるかも試練、できなかったら
カミーユがハイパーになる気がする。
611通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 07:40:26 ID:???
職人さんGJです
アムロスレでもアムロに説教食らってたな
キラ
しかもあっちではトラウマまで植え付けられたっぽいし
612通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 08:32:27 ID:???
そのトラウマを踏み台にしてかつてのアムロやコウがなったみたいに
個人としても戦士としても成長してくれれば良いんだが・・・逆恨みするかもしれん。
カミーユの事をいつまでも恨んで戦い続けるようだったら命がいくつあっても
足りんぞ・・・キラの命がなw
613通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 08:40:03 ID:???
ttp://lcla.web.fc2.com/zseed/z_seed.htm
作者別に置いといた。
まとめサイト作成する方いたら持ってって。
614通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 08:41:06 ID:???
やはりこの後ラクシズは『あの機体(+パイロット)の力は危険です』とかいいだすんだろうか?
615通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 09:23:54 ID:???
(短絡的に)クルーゼと同じ力を感じる→あいつは危険だ
616通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 09:40:18 ID:???
キラは人間の屑でFA?
617通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 09:51:24 ID:???
人間の屑ってほど酷くないだろ
上手く言えないけど、自分で考える事をやめた駄目人間?
618通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 11:09:49 ID:???
>>613
乙です
619通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 11:51:19 ID:???
ttp://moepic3.dip.jp/gazo/fire/files/fire1216.jpg

とりあえずこれおいときますね


|ミ
620通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 11:54:45 ID:???
一瞬「バーザム?」と思ったが、よく見たら基本構造はセイバーか。
量産型セイバー?
621通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 11:55:10 ID:???
>>619
ちょっwバーザムwww
622通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 12:20:28 ID:???
>>617
一応、善意で動いてるからなあ。
まあ、周りどころか直ぐ近くにあるものすら碌に見えていなそうな盲目的な人間って言う所か?
623通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 12:29:12 ID:???
本人が善意で動いてる分、始末に終えないんだよな。
624通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 12:57:39 ID:???
>>613のURL
ttp://lcla.web.fc2.com/zseed/z_seed.html
こっちでよろしぅ
625通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 12:59:21 ID:???
キラを説得しようと思った辺りカミーユは大人になったのか甘くなったのか・・・
626通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 13:21:21 ID:???
有能な頑張り屋よりも
有能な怠け者よりも
無能な怠け者よりも
無能な頑張り屋が一番恐ろしいってバッチャが言ってた

まぁ、無能って訳じゃあ無いと思うけど、頑張る方向、信じる方向が間違ってしまってるんだから恐ろしいわな
627通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 13:44:28 ID:???
カガリは無能な頑張りや
628通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 15:20:08 ID:???
>>625
カミーユって後半に関してはあんなもんでしょうTV版でも
それでもみんなエゴとかばっかで解ってくれないから最後は疲れきってしまったけど
629通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 15:52:34 ID:???
まあカミーユは人を説得できるようなキャラじゃないがな
生の感情をぶつけていくだけだから
630通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 16:03:22 ID:Jc/XvrOo
GJ!!職人さんスゲー面白かった。
これからもがんばって!!
631通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 16:42:38 ID:???
>>629
生の感情をぶつける事しかできない不器用さと準素さがカミーユの魅力とは思うけどね
こいつはいつもいっぱいいっぱいで余裕がないし
632通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 16:46:01 ID:???
いっぱいいっぱいだからこそ訴えるものがあるんだけどね。
633通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 17:43:22 ID:???
純粋すぎていっぱいいっぱいのカミーユだから最後は崩壊するしかなかったんだけどね
634カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/16(月) 18:26:14 ID:???
「よし、開けるぞ……」
 
地表に落とされたハイネのグフを回収できたはいいが、フリーダムにやられた破損箇所や
地面に叩きつけられた時の衝撃でボロボロになっていた。
あちこちがショートしているらしく、ハイネの無事を確認する事が出来ない。
MSデッキで開かなくなってしまったコックピットハッチを無理やりこじ開ける。
 
「ぬぐっ……固い……!おい、誰か手伝え!」
 
マッドが歪んだハッチの隙間に指を差し込み、力いっぱい引っ張ったが予想以上に
固かった。他の整備士達が何人かそれに加わり、やっと開ける事が出来た。
 
「ハイネは大丈夫なんですか!?」
 
近くでパイロット達が見守る中、アスランがマッドに訊ねる。
 
「……すぐに先生を呼んでくれ」
「……!」
「早く医者を呼べ!手遅れになっちまうかも知れんぞ!」
 
それを聞いたルナマリアがすぐさま医務室へ向かう。
 
「隊長さんを引きずり出すぞ、もっかい手を貸せ」
 
騒々しくなるMSデッキの中、シンはその様子を沈痛な面持ちで観ている事しか出来なかっ
た。ハイネの負傷は、彼の言う事も聞かずに無謀にもフリーダムに仕掛けた自分のせいだと
思っていた。
 
ハイネが運び込まれてから数時間経った頃、医務室から医者が出てくる。
ドアの前で待っていたアスランたちは皆不安そうな顔をしている。
 
「あの…ハイネの容態は……?」
 
医者が眼鏡を指で上げて口を開く。
 
「大丈夫だ、安心したまえ。命には別状は無い。意識ももう回復しているよ」
「そ、そうですか!」
「ただ、数箇所骨折をしていてね、完治するまでは戦闘は出来ん」
「あ……」
「まぁ、彼の自然治癒能力ならそう長い事は掛からないとは思うが……」
「あの、中に入ってよろしいでしょうか?」
「構わんが他の患者も居る、安静にしてやってくれよ」
「はい、もちろんです」
 
医務室の扉を開ける。
635カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/16(月) 18:27:35 ID:???
「ん…?おぉ!皆できてくれたのか、嬉しいじゃない」
 
其処にはベッドに横たわり、いつものように軽口を叩くハイネが居た。
しかし、その体には所々に包帯が巻かれていて、顔にも細かいあざができていて痛々しい。
 
「すまないな、皆…初陣でいきなりこんなことになっちまって……」
「そんなことないさ。死ななかっただけでも儲けものだ」
 
アスランは申し訳なさそうにするハイネに慰めの言葉をかける。
 
「ハイネ隊長…申し訳ありません、俺のせいで……」
 
シンがハイネの横に来て深々と頭を下げる。 
 
「気にするなよシン。お前にも事情があったんだろ?
…ってゆーかその他人行儀な言い方、止めろって」
「でも俺…しっかりと謝りたいんです。本当に申し訳ありませんでした!」
 
シンはもう一度ハイネに対して頭を下げる。
 
「そうか…なら、あれやるか……。カミーユ、俺は手がこんなんで、あれが出来ないから
代わりにお前がやってくれよ」
 
ハイネがシーツの中から包帯でぐるぐる巻きになった腕を見せる。
 
「あれって…まさか!?」
「そう、そのまさか」
「けど……」
「ここで問題だ。俺の制服の襟についているバッジは何のバッジでしょう?」
「……!」
「回答時間は十秒、答えられなかった場合は夕飯は抜きです」
 
ニヤニヤするハイネの顔を見て、カミーユは内心卑怯な、と思った。
馬鹿らしい位簡単な誘導。しかし、疲れきった体に夕飯抜きは辛かった。
 
「…5…4…3…2…」
「フェ、フェイス……」
「ピンポンピンポンご名答〜!だから、はい、やって」
 
カミーユは開いた口が塞がらなかった。
しかし、隊長でありフェイスであるハイネの言う事は聞かなければならない。
職権濫用じゃないの、と思いながらもカミーユはシンの肩に左手を置いた。
ハイネの"あれ"に気付いたアスランは必死に笑いを堪えている。
その様子を隣でルナマリアが不思議そうに眺めていた。
636カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/16(月) 18:29:19 ID:???
「シン…これから俺がする事はハイネの命令だからやる事だからな?俺を恨むなよ…」
「は?……グハッ!?」
 
訳も分からずにシンはカミーユに殴られてふっ飛ばされる。床に倒れた音が思った以上に
響き、ドアの外で待っていた医者の耳にも聞こえてくる。
何事かと慌てて医務室に入ると、すぐ其処に涙目でキョトンとしているシンが床に座っていた。
 
「これ…は……?」
 
混乱する医者は医務室の中を見回す。
ルナマリアは目を丸くしている。レイも顔に驚きの色を浮かべている。
珍しいのは、アスランが腹を押さえ、片腕を壁に突き、堪えきれずにクックックと笑っている事
だった。
ベッドの上のハイネはニコニコした顔で複雑な顔をしたカミーユとハイタッチをしていた。
ハイネが男前の顔をしてシンを指差して一言告げる。
 
「修・正!」
「なっ…なっ…」
 
ハイネがカミーユに彼の世界の話を聞いた時、一番食い付いたのがこの"修正"の件であっ
た。アスランが若干引いていたのとは逆にハイネはその話を嬉々として聞いていたのだ。
どうやらハイネは修正が気に入ったらしく、何かある度にやろうと画策していたのである。
未だポカンとした表情のシン。
 
「これでチャラにしてやるよ。お前も気が済んだろ?」
「アハッ…クッ…クフッ……」
 
余程この状況が気に入ったのか、アスランの笑い声が段々大きくなってくる。
当然シンにもその声が聞こえてくる。
 
「なっ…何笑ってんだアスラン!あんたに笑われる筋合いは無いだろう!」
「プフッ!わ、悪いな、シン…でっ…でも……アハハ…!」
 
シンに対する日頃の鬱憤が溜まっていたのだろう。どうやら笑いのツボに入ったらしく、
アスランはその後も暫くは笑い続けていた。
 
「ぷっ!シン、かぁっこいい〜!」
「ふっ、いい顔になったじゃないかシン」
「ルナとレイまで……!」
 
シンが一人おどけた様な格好をしているのを二人が茶化す。それに対してシンはむすっとした
顔をする。
637カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/16(月) 18:31:12 ID:???
「その頬の腫れは名誉の負傷ですか〜?」
「ブッ!アッハハハハハハハ…は、腹が…腹が痛い…ハーハハハハハハ!」
「そんな訳はないだろう。それを言うならインパルスに言ってやれ。あいつの方が頑張ってた
ぞ」
「あっ、そ〜か〜!そうだよね〜?」
「ルナ…レイ、それにアスラン……!」
 
シンの顔が痙攣を起こしたようにひくつき、全身を震わせる。
彼の怒りは頂点に達した。
 
「お前等全員其処に直れ!お前らも修正してやる!」
 
おもむろに立ち上がると、シンはアスランたちへ突撃の態勢をとった。
 
「やばっ、逃げなきゃ!さっ、アスランも!」
「お、俺もか!?」
「当然でしょ!逃げないと真っ先にアスランを狙いますよ〜?」
「おっと、くわばらくわばら」
「レイ、あんたはあっちに逃げなさいよ。分散してシンを撒くわよ!」
「了解した。では俺は先に行かせて貰うぞ」
「OK、気を付けてね!」
 
突っ込んでくるシンをヒラリとかわし、三人は蜘蛛の子を散らすように医務室から出て行った。
逆を突かれたシンはバランスを崩して転びそうになったが、すぐさま態勢を立て直して三人を
追っていった。
 
「全く、医務室では静かにしろと言ってあった筈なんだがね……」
 
医者は呆れたように文句を口にする。
 
「すいませんね、騒がしい部下達で」
「何を言うのかねハイネ君。原因を作ったのは君だろうに……」
「それは違いますよセンセ。殴ったのはこいつですもん」
 
ハイネに指差されたカミーユは腰が砕けそうになるのを何とか堪える。
 
「な、何言ってんだ!自分は出来ないから代わりに殴れって言ったのはハイネだろう!?
勝手に俺のせいにするなんて……!」
「静かにしなさいと言っているでしょう」
「あっ、すみません……」
「俺は殴れなんて言ってないぜ?俺の言葉を勝手に修正だと解釈したお前が一番責任がある
んだからな」
「そんな屁理屈…ハイネが俺に頼む"あれ"って言ったら修正しか無いじゃないか!」
「ま、そうなんだがな?いや、まさか本当に殴るとは思わなかったからな。
…けど、おかげで面白い物が見れたぜ」
「あんたって人は……」
638カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/16(月) 18:32:42 ID:???
カミーユは頭を抱える。
先程まで虫の息だったくせに、ここまでバイタリティのある人だとはカミーユは思わなかった。
 
一方、シンから逃げるルナマリアは久しぶりに心が充実していた。これまで衝突の
絶えなかったパイロット達が、初めてと言って良い程和気藹々としていたからだ。
この原因がハイネによる物である事を、ルナマリアは知っていた。
 
「待てよそこの二人ぃ!俺の修正パンチをおとなしく受けろぉ!」
「ほら、アスラン早く!シンに追いつかれちゃいますよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!さっき笑いすぎたせいで…は…腹が……」
 
シンが真っ赤な顔をして二人を追いかけてくる。そうはいきませんとばかりにアスランの手を
引いて逃げるルナマリア。
今はこの楽しい一時を精一杯楽しもうとルナマリアは思った……
 
 
「戦闘があった後だと言うのに元気な事だな」
 
その頃、レイは自室で水を飲んでいた。
                                              〜つづく〜
639通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 18:34:43 ID:???
GJ

>>633
純粋すぎるが故に悩みすぎて、精神だけの世界に行ってしかったからな。
だが新訳では周りの受け止め方を少し変えて、肉体による体感を感じることができ、見事崩壊せずにいけたからね。

てか、だれか新訳カミーユSS希望w
640通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 18:35:07 ID:???
リアル更新キタァー
641通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 18:38:14 ID:???
GJ!!
今回はなごむなぁ
642通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 18:40:10 ID:???
修正が流行りなのか?
643通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 18:56:57 ID:???
>>639
新訳カミーユは究極ニュータイプだからな…
あのNT力を制御できるのはすごいよ
644通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 18:59:15 ID:???
GJです
たまにはこういうのも良いですね
カミーユはアーガマにはこういう同世代の仲間との触れ合いがなかったし
和みます
645通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 19:17:56 ID:???
ホントハイネがいい味出してるなぁ
646通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 19:31:38 ID:???
>>643
でも対シロッコ戦でのNT能力はいくら新訳カミーユでもそうポンポン発動できないだろうな
さすがに耐え切れないだろう
新訳ラストでも「はぁ…戻れた…」だから
647通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 19:53:11 ID:???
>>646
確かにあれは頻繁にはできないだろうな。
しかしヤザン戦のぐらいならなんなくやれそうだがw
648通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 20:01:18 ID:???
>>646
バイオセンサーを完全起動させたのはカミーユただ一人という記述があるけど
完全起動させるには精神崩壊する危険性があるほどのNT能力を必要とするしね
あの力はある意味諸刃の剣だからね…
649通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 20:50:50 ID:???
GJ!
ハイネの軽さと優しさにカミーユもシンもどこか救われている気がする……
650 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/16(月) 20:52:23 ID:???
大きな矛盾に気が付いてしまって、今現在、大幅に書き直し中……
投下遅れてすみません
651通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 21:44:28 ID:???
ゆっくり待つから気にせず頑張ってくれー。
652通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 21:53:53 ID:???
>>650
気にせずマターリとやっちゃってくださいね。
653通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 22:11:10 ID:???
GJとしか言いようがない
カミーユ抜きにしても、原作よりキャラが活きてるな
654 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/16(月) 23:24:36 ID:???
晴天の空はまるで二人の新しい門出を祝っているかのようであり、
街頭では、新郎と新婦を乗せた黒塗りの車の中を一目見ようと、
立入禁止と書かれたテープから身を乗り出す人々で溢れかえっていた。
その姿を映し出すTVのモニター
――それを憂いの目で見つめる者がいた。

「カガリ……自分が何をしているのか分かっているの?」

キラは座っていたソファから立ち上がり、
TVの電源を切るとそのまま部屋を退出した。
「……やるしか……ない……」

何処か寂しげな背中が、カガリへの失望を暗示していた。
しかし、キラの目の光は失われていなかった。
=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY

第13話『敢えて汚名を』

=======================
655 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/16(月) 23:25:32 ID:???
結婚式場は混乱の極みであった。
突然現れたMSが花嫁を拐っていったのだから無理もない。
白いタキシードを着た新郎は、がっくりと肩を落として事態を把握出来ていないように見える。
キラはフリーダムのモニター越しで、その次第に小さくなっていく光景を見つめていた。

「キラ!降ろしてくれ!」

キラが腕に抱いている花嫁、カガリが怒鳴り声を上げた。

「駄目だよ。こんな結婚、許す訳には行かないからね」

キラの冷静な対応が気に障ったのか、
カガリはますます顔を紅潮させた。

「こんなことをして、只で済むと思っているのか!?」

その言葉に、キラは明らかに苛立った。
何のために、誰の為にこんなことをしたのかカガリは全く理解して居なかったからだ。

「……話は、アークエンジェルでしよう」

苛立ちを腹に収め、キラはスラスターを一気に吹かした。
もう、結婚式場は見えなくなっていた。
=======================
656 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/16(月) 23:32:02 ID:???
「ちゃんと説明してもらおうか!?キラ!!」

アークエンジェルの艦橋にて、軍服に着替えたカガリがキラを忌々しげに睨みつけた。
しかし、キラはうろたえもせずにカガリの瞳を直視した。

「僕は、カガリを止めるためにこんなことをやったんだ」
「……?」
「この結婚を機に、連合と同盟を結ぶつもりなんだよね?」
「……そうだ」
「何故、反対しなかったの?」
「……何が言いたいんだ!?」
「何故、反対しなかったと聞いているんだ!!」

普段は、温厚な性格ゆえに怒鳴ることなど滅多に無い。
そのキラが声を荒げているのに、カガリは只ならぬものを感じた。

「オーブを再び焼く訳にはいかないから……」
「……それだけ……?」
「それだけとは何だ!!」

自分の苦渋の決断を軽ろんじられたのに腹を立てたカガリは、キラに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。
その途端、キラの顔付きが義憤に満ちていった。
パァン!
キラの平手がカガリの頬を打ち付けたのだ。
カガリは唖然とし、鋭い痛みによって、瞳に涙を浮かべた。

「オーブを焼かせないためだったら、いくらでもやりようはあった筈だ!
プラントとの同盟をちらつかせるとか、
かつて連合がオーブを支配したという落ち度を突くとか……。

それなのに場当たり的な対応をするなんて……がっかりだよ……。
今のはね、ウズミさんの代わりに殴ったんだ……。
自分が進めなかった道を託した娘が、情けないことをしているなら、きっとこうした筈だからね」
657 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/16(月) 23:34:50 ID:???
痛みを堪えながら気を取り直して、カガリはキラを睨みつけた。

「この二年間、安息を貪っていただけのキラに何が分かるんだ!」

その言葉に、キラは激昂した。

「僕だって、何かしたかったさ!
この二年間、世界を平和のままにしておきたいと、政治や経済、法律の勉強もした!
でも、僕には何も無かったんだ!
カガリのような血筋も、
アスランのようなザフトのコネも、
ラクスのような派閥も!
僕に出来ることはこんなことしか無かったんだ!」

キラの血を吐くような言葉に、カガリは閉口した。

「その辺りにしておきましょう。論点がずれていますわ。
今は、これからどうするか考えましょう」

そんな二人のやり取りを見かねたラクスが仲裁に入ると二人は口論を止めた
======================
658 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/16(月) 23:36:03 ID:???
一同はマリューとバルトフェルドを加えて議論を交し始めた。
その結果、もしオーブ軍が遠征に出た場合は、撤退を呼び掛けることにした。
下策だが、そうするほか無かった。
今更同盟を白紙にすることは他国との信用問題に発展してしまうし、
連合の侵略に対して徹底交戦する国力もオーブには無かった。
つまり、交渉の段階を過ぎてしまった時点で、正攻法は消えてしまっていたのだ。

「汚名を着ることになるでしょう……」

キラが呟いた。

「だけど、オーブの理念は守らなければなりません……
理念無きオーブは既にオーブではありませんから……」

キラの言葉に、カガリは自分が恥ずかしくなった。
自分がすべきことは、理念に背くことでも、理念を強いることでもなく、
理念を守ることであったと、今更になって気が付いたのだ。

〜つづく〜
659通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:38:44 ID:???
この板のSSとしてはすげー珍しいタイプのキラだな
TV版の流れを守りつつもまともに物を考えてる
660通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:42:30 ID:???
え…とやっぱりラクシズってヘンだ…
国の代表が同盟軍と従軍するのに対し撤退を呼びかける
ということがそもそも信用問題に発展するってことには頭が
回らないってどうゆうことなんだろう????
…理念も信用で成り立つのに

とにかくお二方ともGJです
続きが楽しみです


661通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:43:50 ID:???
しかし当の行動自体はMSで花嫁強奪だからなぁ
場当たり的なのはどっちやら
『考えました』と主張すればいいってもんじゃないよな、やっぱり
662通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:47:04 ID:???
キラは馬鹿か?
政治、経済、法律を勉強した、といってもあれじゃあ勉強して知識は増えても何も理解してないな。

経済を学び企業し、経済力をつければ政治に影響を与えられる。
政治や法律を学んだのなら、政治活動がコネや派閥、血筋がなければ何もできない、だなんて結論に
到底いきつくわけがないんだが?
それにコネ、血筋、派閥がなければ何もできない、ってどれだけ他力本願なんだよ。
それこそ何もしないやつの言い訳そのものだろ。
ハイネだってレベルEで歌ってるだろ、
「力もない、お金もない、ないばかりでキリがない、現状そんなんで」って。

今回ばかりは頭にきてしまった…
663通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:48:37 ID:???
そもそも理念自体がアスハ家とかキラなんかの理想主義者が作ったエゴじゃないか。
それに他人を巻き込んで犠牲を出したら本末転倒だわ。
664 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/16(月) 23:51:00 ID:???
キラ達も一応、成長する予定なので、
矛盾だらけの言動は多目に見てやって下さい……
正直、俺も書いていてイラッとしてしまったのは内緒だ……
665通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:52:18 ID:???
種死の時点でプラントととの同盟をちらつかせるのは無理ないか?
プラントからすれば同盟する意味ないし。そもそも無印でオーブが燃えたのウズミが原因だし。
キラの理屈破綻しまくりじゃね?
666660:2006/10/16(月) 23:52:25 ID:???
これほどイラつかせるやつらを書いた職人様に再び
GJを贈るGJ!!!
667通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:52:52 ID:???
>>662
いや努力すれば結果はついてくるが、何もない所から2年程度ではどうしようもないだろ
それこそコネや血統でも無い限り
668通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 23:59:01 ID:???
そうか?二年あれば
最高のコーディネーター様の最高の能力ならカレッジや戦場などで学んだことを基礎にして
ベンチャー企業を起こして経済力をつけ、世間に顔と名前を売り、
社会に影響を与え、世論形成に器用することくらいできるだろ。
669通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:07:25 ID:???
>>665
いや、プラントとの同盟をちらつかせる意味はあるぞ
近くにカーペンタリア有るし、プラントの災害援助は及第点は付けられる
ユニウス7管理能力を問うてしまえば間違いなくマイナスだけど

おバカなことを言っているサイコーのコーディに
「勉強して人が救われるのならね。人はもう数千年前にきっと救われているはずだ。
それでも救われないから救世主なんて求めるんだよ。わかる?」とにこやか言いたい
670通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:09:45 ID:???
というか、それくらいが出来なきゃスーパーコーディの成功体とはいえないよなぁ
……つまり、実はキラもスーパーコーディとしては失敗作であったという予想を立てるよwwww
スーパーコーディ計画的に見て、後天的努力も合わさってこその成功体であって
そのための後天教育がバイオハザードによって中途どころか初っ端からつまずいていたと予想
671通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:12:59 ID:???
最高のコーディネータのキラと最高のニュータイプのカミーユって
どっちが戦闘では上なのかな?
672通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:25:59 ID:???
政治力や経済力を築く時間がなければ、確かにテロが唯一の有効な手段かもしれない。

でも、どれだけオーブ軍を無力化しても――どれだけオーブ軍を殺しても、それで戦争は止められない。最後はオーブ指導者を翻意させるしかない。
カガリは、キラ達と個人的関係があり、また内心では戦争を避けたがっている。交渉すべきオーブ指導者としては、(少なくともユウナ等よりはずっと)停戦させやすいはずだ。

それをしなかったのは単なる戦略ミス? それとも・・・

それとも、「最強の戦士」としての知名度を広めるために、乱入して戦闘力をアピールするための戦闘を必要としていたとか?
673通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:26:29 ID:???
カミーユは技量が凄いとかそういうんじゃなくて
超能力的な能力だからな
キラは逆に技量や常識の範囲内では最高スペックだが
674通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:27:31 ID:???
最高のコーディ→資質が最高(その資質を磨き続ければUCの最高位(ヤザン)にも到達しうる)→磨いてないキラ自身はただのクズ(設定的にいかに優性遺伝子持っていようと努力しないコーディはナチュラル以下)
最高のニュータイプ→能力が最高(使い手に多大な負荷がかかるが新訳設定なら耐え切れる)→使いこなして戦い続ければ戦士として桁外れの能力誇る→その辺をクリアしたカミーユは戦士としても格上
675通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:28:49 ID:???
>>667
確かに0から初めて2年で何かを成し遂げる事は難しいかもしれない。
けど、キラは2年しかないと分かっていた訳じゃないからな。
やる気があるなら何かを始める事位はできた筈。
676通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:29:51 ID:???
反応速度と対Gはコーディの方が上みたいだが、
ニュータイプの勘は予知能力レベルだからなー。分からん。
677通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:32:20 ID:???
キラは素質だけに頼ってる気がする。
678通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:33:38 ID:???
そうだな
資質に頼りきってそれを生かすための特訓をしていない
それだけであれだけやれるストフリやキラ自身の能力も脅威っちゃあ脅威なんだがいい加減目を覚ましてマジメに戦えといいたい
679通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:35:20 ID:???
つか、キラの元の遺伝子ってあの親父におかんだろ?
いくら弄くろうが下種は下種ってこった
680通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:50:46 ID:???
>あの親父におかん
負債のことか?
681通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 00:59:20 ID:???
キラが世界のためとか言っても、ラクソのスピーカーにしか見えない
682通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:01:17 ID:???
>>675
逆に言えば、2年しかないと分かってたわけじゃないから、
長期計画でその準備期間中だったという考え方も出来る。

散々ニートニートと言われてるけど、実際の所は2年の間に
何をしてたかという描写も無いわけで、ロースクールに通ったり
各種資格を取得してたという可能性もある。

まあTVのキラはただのニートだろうけど、ここのキラは
比較的まともだという仮定での話なんだけどね。
683通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:02:13 ID:???
>負債のことか?
あーそっちもあるわな。じゃ、両方。
つか、育ての親とかどうなのかねえ? フォローねえし
…全部負債が悪いでいいよもう
684通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:14:53 ID:???
仮に、各種資格を取ってたなら、その先に見えてくるものはあったはず。
だとすれば、あんなふざけたセリフは吐かないかなと。

仮に、ロースクールに通ってたとすれば、血筋やらコネやら派閥やらがなくても、
オーブを良くしていきたいと思うなら、できることがそれなりに見えてきて、
具体的なビジョンを形成することもできるはず。
政治活動や政治ってのは確かに血筋やらコネは重要だが、それだけじゃない。
それくらいロースクール通えばすぐわかる、と実際にロースクールに通ってる人間が言ってみるテスト
685通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:16:56 ID:???
あー、つまりここのキラは
なまじ周りが凄すぎただけに理想の高さが上過ぎてやる気が空回りし過ぎたと言う事か?
686通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:20:57 ID:???
>でも、僕には何も無かったんだ!
>カガリのような血筋も、
>アスランのようなザフトのコネも、
>ラクスのような派閥も!

この三人との繋がりは立派なコネクションだと思うんだが
本編じゃ三つ目あたりバリバリ利用しまくってるし
間違った方向でだけど
687通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:20:58 ID:???
コネがないって言うがも、カガリっていう最大のコネがあるじゃないか。
覚悟があるなら、フリーダムのパイロットだった事を自ら暴露して、それ故戦争に憂慮してることを訴えてもいい。
知識ばっかり先行して、行動が付いていかない当たり、キラの限界を感じる。
688通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:22:54 ID:???
つまり、プライドを捨て去ることが出来なかったんだな
プライドを捨て去る事が真のプライドですとハカセさんも言っていた
689通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:24:02 ID:???
とりあえずその他力本願な根性が気に喰わん。
結局、何もできない言い訳だし。
690通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:26:12 ID:???
一歩間違えば勝ち組に対するニートの妬みだな
引きこもりが「たけしのTVタックル」見ながら
「お前ら政治家がちゃんとしないから俺たちがワリ食うんだよ」
とかグチグチ言ってるみたいなもん
691通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 01:59:39 ID:???
GJ!
・・・キラ君、本当に学んだの?
というか、何で「過去」から学ばないの?一番の教材だぜ。
君の行動は、どう贔屓目に見ても「ただ単に気に入らないから暴力に訴えた」にしか見えないんだけど?
君本当に二年の間に、何か行動しようとしたのかい?

>「だけど、オーブの理念は守らなければなりません…… 理念無きオーブは既にオーブではありませんから……」
こいつらの中では、オーブとは一体ナンなんだ!?人が住んでいない国のことか?
国というのは人が集まって出来る物です。 理念だけで、出来る物ではありません。
また、国民を見捨て国を焼く事がオーブの理念なら、そんな理念は即刻捨ててください。
国民あっての理念です。

こいつらが今回オーブに与えた不利益というのは、かなりでかいと言えるでしょう。
カガリの価値が大きいのではなく、国際的なオーブの立場を崩した事にです。
「公式の場でテロリストの襲撃を許し、あまつさえ国家の代表が何処の誰とも分からん輩に攫われる国」
これが今のオーブの国際的な評価でしょう。
それに加え、襲撃に使用された機材が前大戦で「とっても」有名になったものですからねぇ。
連合・プラントから追及があるでしょう。オーブ側も知らぬ存ぜぬでは流石に通らんですよ。

前大戦時、ウズミが自己満足のために自爆し国を焼いて、こいつら好き勝手に宇宙に上がった後、
その燃えた国を建て直し国民を保護してきたのは、一体何処の誰なんだろうね?
壊す事より、立て直す事の方が遙かに難しいと言うのに・・・

作者様、色々駄文スイマセン。
聞き流しちゃってください。
692通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 02:11:03 ID:???
つまりさ
これからキラは、中途半端にそういう政治の基本を学んじまったから
自分達がどー言う愚考犯したのかをリアルタイムで理解していっちまうわけだwwwww
血反吐はきながらリアルタイム更新で自分の行動に苦しんでくれよキラさんwwwww
693通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 07:00:29 ID:???
>>691
キラが「過去」から学ぶものはないと思っているんじゃないかな?
ファイナルエディションだっけ?そこでいったように
"シードを持つもの"なんていうもので自分をくくっているから
何やってもいいって考えているように見えるし

それこそ過去幾度と起こされた人の過ちそのものなのにな…
694通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 07:32:36 ID:???
汚名を着る気があるなら、最終的に都合悪いこと全部請け負って処刑されてくれりゃいいけどな、マフティー見たいにw
695通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 07:50:30 ID:???
>>673
技量もカミーユの方が上だろ。
キラが勝っている点は、肉体の耐久性ぐらい。
696通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 08:58:19 ID:???
キラって、基本性能が高いからどんな場面でも正攻法で切り抜けてしまえるのが
欠点だとどっかで言われてたな。奇策が必要ないから、それらの土壌である創造性
が皆無。そら未来なんてあるわけないw
697通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 09:40:17 ID:???
×:正攻法
○:真正面からの力押し

なまじ資質だけのド素人が戦えてしまったので、
キラはむしろMS戦闘の基本がなっちゃいない
奇策もそうだけど正攻法にも弱いという駄目仕様
というかキラは速度についていけさえすれば戦術と連携に極端に弱い
698通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 10:30:28 ID:???
◆XdXnStWCJQ氏、話数かぶってる。黒歴史修正の9話と違ってこっちは純被りだよね?
>>87
第06話『修正』

>>132
第06話『解逅』
699通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 10:34:13 ID:???
・・・!
そうだ!ここのキラは何かに似てると感じたが・・・
『 日 本 赤 軍 』だ!
中途半端に賢いもんだから共産主義やカルトにドップリと・・・
700通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 10:41:28 ID:???
◆XdXnStWCJQ氏、7話以降ずらしてこれでいいのかな?次14話かも。
第01話『謎の機体』
第02話『強敵』
第03話『対立』
第04話『イミテーション』
第05話『嫉妬』
第06話『修正』
第07話『解逅』
第08話『喪失と決意』
第09話『向上心』
第10話『覚醒』 >>(黒歴史、没版)第10話『招かれざる客』
第11話『再会』
第12話『帰還』
第13話『憤り』
701通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:07:18 ID:???
>>695
俺が言いたいのは
カミーユは技量が高いとかそういうことでなく
最高のNT能力からくる超常現象が長所だから
キラとかとはベクトルが違うだろということなんだ
カミーユの技量が低いというつもりはない
702通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:10:57 ID:???
シューティングゲームに例えると、

出現パターンを予め知ってるかのごとく先読みして移動するのがNT
目で見てから超絶反射神経とレバーさばきで鬼のように避けまくるのがスーパーコーディー

という感じ?
703通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:17:55 ID:???
兎に例えると、

危険牌察知能力がNT
超効率打牌がスーパーコーディー

という感じ?
704通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:18:58 ID:???
ストツーに例えると、

小パンチ見てから昇龍余裕でしたがNt
人生ダルシム待ちガイルがスーパーコーディ

という感じ?
705通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:20:07 ID:???
まあカミーユは最高のNTと言われてるが
NT能力って本来は戦闘能力じゃないからな
隣人愛や人とわかりあうための能力なんだし
ただその洞察力や認識力が戦闘利用されてるだけで
だからその力を戦闘につかうとカミーユみたいに崩壊する可能性もあると思う。
706通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:20:41 ID:???
>>704
それは違うと思う
707通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:21:57 ID:???
あれ?正式な所でお禿げ様がアムロ>カミーユ>ジュドーって言ってなかったっけ?
708通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:23:59 ID:???
レーシングゲーに例えると、

ここでブレーキタイミングが合えば0.2秒縮まるがNT
ここでインド人を右にがスーパーコーディ

という感じ?
709通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:24:17 ID:???
NT能力最高:カミーユ
パイロットとしての能力最高:アムロ
素質としては最高:ジュドー

じゃなかったっけ?
710通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:25:09 ID:???
>>707
NT能力はカミーユが究極とか最高とは富野は言ってるな
ジュドーは木星で訓練したらアムロカミーユのようなNTになれるとも
あと富野曰くアムロはカミーユと比べたら学習できてないからOTらしい
711通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:26:05 ID:???
>>709
パイロット最強のアムロ
NT能力最高のカミーユ
総合バランス最高のジュドー
でしょそれは
712通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:26:23 ID:???
>>710
そうなのか、どこで勘違いしてたんだろう
713通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:26:58 ID:???
ストIIIに例えると、

相手の行動に合わせてことごとくブロッキングするのがNT
一瞬の隙を見つけてオリコンで叩きのめるのがスーパーコーディー
714通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:27:28 ID:???
テンプレサイト
http://28.xmbs.jp/uc/

富野発言
アムロは最強の兵(シャアの言葉)
学習できないCCAのアムロ、シャアはオールドタイプとして死んでいった
カミーユはNT能力最高だから気が触れるしかない
カミーユは隣の人を大事にする究極のニュータイプ
ジュドーは木星で訓練したらアムロ、カミーユのようなNTになる
ハマーンは漁夫の利を狙う小悪党、女帝でエリザベスのような女
ウッソは嘘みたいな少年、こんな少年いるはずがない
シーブックは見本となるべき少年として生まれた
シャアは悩むことをやめたらアムロを瞬殺、しかし最後には負けていく男だろう

ハゲ発言と最強スレのまとめ
715通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:29:17 ID:???
ロランはどうなんだろう
∀つかいこなせなかったからOTか?
716通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:29:18 ID:???
>>707
戦闘パイロットとしてはアムロが最強だろ
NT能力だけはカミーユが最高というというのは公式
アムロも劇中自分以上に見込みがあるとカミーユのNTの資質を褒めてるし
717通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:30:01 ID:???
>総合バランスのジュドー
これはジュドー厨の捏造ですから。
718通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:30:06 ID:???
おまいらスレ違い。
誰が強いかは別スレで腐るほどやってるからそっちへ
719通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:30:43 ID:???
>>715
ロランは行動や思想は一番NTだったと思うよ
ただNTの能力はないが
新訳カミーユはTVカミーユにロランの行動や思想を足した感じがしたな
720通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:32:54 ID:???
>>717
そうなのか…
でもパイロット最強のアムロと
NT能力最高のカミーユは間違いじゃないはず
富野の中では劇中見ても発言見ても
721通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:34:41 ID:???
でも実際ジュドーはバランス良いんじゃね?
最高かどうかは知らんけど
(TV版)カミーユみたいにNT能力で潰れることもなかったし、
アムロみたいにどうせ自分には何も出来ないと諦める事もなく、
何十年もかけてNT集めて恒星間移民してしまうくらいの行動家
722通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:36:16 ID:???
>>721
これ以上やるとスレ違いなるが
ジュドーは精神的な強さはアムロカミーユよりはあったとは思う
でもNT能力がアムロ、カミーユには劣るから木星での訓練だからな…
723通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:37:58 ID:???
>>721
カミーユが潰れたのはNT能力が高すぎたからというのもあるでしょ
人間の許容範囲超えたNT能力と富野は言ってるわけだし
724通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:39:03 ID:???
そういえばこの板にはクロス物のSSスレが多数あるけど、ジュドーがCEに来るスレって見たことないな
それとも既にある?
725通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:40:06 ID:???
>>724
ジュドーものはないと思う。
何気にこのSSに出てくるハイネはジュドーぽいなと思った
726通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:42:18 ID:???
いくらカミーユのNT能力が最も凄くても人間の限界なんてそんなもん
だからカミーユは気が触れるしかないんだよね
これがΖ終了時のカミーユの崩壊の当時の富野の説明だったけど
新訳で覆されたからなカミーユ大丈夫だったし
727通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:47:35 ID:???
>>726
その力を体感や触れ合いがあったから新訳カミー湯は制御できたんだと思う
だから隣人を大事にする究極的ニュータイプなんだろ禿いわく
728通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:50:29 ID:???
>>721
低次元でのバランスはいいな。

>>722
精神力というよりバイタリティーだな。
精神力はウッソがダンチ。

アムロ≧カミーユ>ウッソ>シーブック>ジュドー
これが最強スレの毎度いきつく結論


まあこれ以上やるのはスレ違いだな
729通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 11:54:39 ID:???
ジュドーは確かに精神的にそれほど強いとは思わないな
ただ、挫けても立ち直りが早い
NT能力を持ってるだけで、精神構造は一番普通の人っぽい

ウッソは最初から挫けることを知らない感じ
730通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 12:13:57 ID:???
ジュドーがCEに来たら軍人よりもジャンク屋とかを選びそうな気がするな。
731通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 12:31:27 ID:???
元々ジャンク屋だった、よな?
732通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 17:25:17 ID:???
30レスほどついてたからSS投下されてるかと期待してみれば・・・
流石に、そういう議論は別スレですればいいだろ
733通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 17:57:47 ID:???
>>732
まあたまにはいいんじゃないか
カミーユのキャラを掘り下げる意味が最強スレぽくなったが…
734カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:27:30 ID:???
個人的に新約のカミーユはTVとなんら変わってないと思った
寧ろ変わったのは周りの方で、カミーユに対する扱いがTVよりマイルドになった気がします
その変わり方が、新約のラストに繋がったのではないかと思いますが……

そんなわけで投下します。ちょっと長いです↓
735通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 18:28:20 ID:???
バッチコーイ!
736カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:28:44 ID:???
連合とオーブとの激戦から数日後、ミネルバは連合の、ある研究施設に調査に来ていた。
そこはエクステンデッドの研究施設。連合がザフトのコーディネイターに対抗する為に作られ
た施設であった。
 
「なぁ、レイ…気味悪いな…ここ」
「……」
 
丁度手の空いていたルナマリア以外のパイロット達が施設の調査にやって来ていた。
薄暗い施設の中をシンはレイと、アスランはカミーユと共に二手に分かれて調べていた。
 
「事故でも起こったのかな?色々な資料やガラスなんかが散らかっているけど」
「さあな…だが、ここで育てられた奴の何人かはどこかで生きているだろう」
「……?何で?」
「……いや、何となくそんな気がしただけだ」
「……」
 
レイの意味深な台詞に引っかかるシンであったが、レイの秘密を知らないシンにその意味
は全く分からなかった。
 
「うっわ〜…何だよコリャ?気持ち悪いな……」
「……」
「見てみろよレイ。これ、何だと思う?」
「……」
「……レイ?」
 
呼びかけるシンの言葉にレイは返事をしない。そればかりか、ある資料を手にしたまま
固まっている。その手は震え、髪で隠れた顔からも苦痛の表情が読み取れる。
 
「あ…あ…ぁ…」
「レ、レイ!どうしたんだ!?」
 
レイに駆け寄るシンであったが、その前にレイはその場に倒れてしまった。
 
「お、おい!しっかりしろ!レイ!」
「……」
 
目を開けないレイを揺さぶりつつ、シンはレイに呼びかけるしか出来なかった。
 
 
「何か嫌な予感がする……。ここは…何の研究をしていたんだ……?」
 
アスランと行動を共にしたカミーユは、あるブロックを歩き回り、その異様な雰囲気を感じて
いた。正体不明の謎の異臭がカミーユの警戒感を促進させる。
 
「カミーユ、これを見てみろ」
 
散らばっていた資料に目を通していたアスランがカミーユを呼ぶ。
737カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:31:26 ID:???
「これは……」
「エクステンデッドの研究資料だ」
「エクステンデッド?」
「ああ。身体能力をコーディネイター並に引き上げたナチュラルの事だ。無理やりに強化され
ているせいでかなり不安定な性格になってしまうが……大半は戦う為だけに生み出された
者だろう。俺も以前に似たような連中と戦った事がある」
 
カミーユの頭の中でエクステンデッドと強化人間のイメージがダブる。
コーディネイターと同じ戦闘力を持たせる為に生まれたエクステンデッド、ニュータイプ能力を
人工的に植えつけられた強化人間……どちらも人の手によって生み出された悲劇の存在で
ある。かつて二人の強化人間を救えなかったカミーユにとってエクステンデッドの存在は
許せなかった。
 
「ん…あれは……」
「どうした、カミーユ?」
「足…?…あ…頭が……!」
 
急に頭を抱えて膝をつくカミーユ。その様子にアスランが慌てて駆け寄る。
 
「大丈夫か、カミーユ!」
「く…この先に……」
 
虚ろな瞳で視線の先を指差す。その先をアスランも見てみると、人間の足のようなものが
微かに覗いていた。銃を構え、眉間に皺を寄せてアスランはそこへ向かう。
 
「……!」
 
銃を突き出し、躍り出たアスランの目の前に広がった景色は、無残な死体が散在している
地獄絵図だった。
 
「これは……!」
 
白衣を着たこの施設の研究員らしき大人と、まだ年端も行かない子供も混ざっている。飛び
散った夥しい量の血痕が、その惨状を物語っていた。
恐らく事件が起こってから大分経過していたのだろう。腐乱している死体の肉と、そこから
発せられる死臭が鼻の奥の粘膜を強烈に刺激する。
 
「う…うぅ……」
 
カミーユが手を壁に突きながらおぼつかない足取りでやってくる。その表情は青ざめ、額に
汗を浮かべている。
 
「カミーユ、体調が悪いのか!?」
「それより…アスラン……この目の前の現状は何だ……?」
「それよりって…バイオハザードが起こっていたのかもしれないんだぞ!コーディネイターの
俺はともかく、ナチュラルの君には…」
「教えてくれアスラン…これがエクステンデッドの成れの果てなのか……?」
「カミーユ……?」
738カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:34:41 ID:???
雰囲気の違うカミーユにアスランは戸惑う。血の気が引いた顔で真剣に訊ねてくるカミーユ
にウイルスが感染しているのではないかと危機感を持った。

「大丈夫だ、アスラン……」
「本当に大丈夫なんだな?」
「ああ……」
 
意固地になるカミーユに、アスランは仕方なく説明することにした。説明しなければ梃子でも
動きそうに無かったからだ。
 
「…分かった」
「……」
「これはきっとカミーユが想像した通りなんだと思う。ナチュラルを後天的にコーディネイター
以上にするには何パターンもの実験を繰り返し、そして成功を得るまでに何回も失敗を重ね
た結果だろう……」
「やっぱり……」
「その中で何らかの事件が起こったのか……それは分からないが、この惨状を見る限り
多分そういう事なんだろうな……」
「くぅっ……!」
 
髪を掻き毟り、激しく首を横に振る。明らかにカミーユの様子がおかしかった。
 
「どうしてこうも簡単に人の体をいじる事が出来るんだ……!こんな事したって、悲しい事しか
起こせやしないのに……!」
「連合もコーディネイターに対抗するにはこれしかないと思ったんだろう……。悲しい事だが」
「そんなふざけた理由があるものか!強化された人の身にもなってみろ…その先には……
その先には悲劇しか残ってないんだぞ……!」
「カミーユ……?」
 
カミーユは肩を震わせて両の拳を固く握り締める。
 
「こんな事…間違っている……!人が人の運命を決め付けるなんて……!その人にだって
自分の人生を選ぶ権利があるのに……」
 
感情的になるカミーユに、何かあるんだろうとアスランは気付く。しかし、それがカミーユに
とって、とてもナイーブな問題である事をアスランは感じ取り、詳しい理由は聞かないことに
した。
 
「……取り敢えずカミーユはミネルバへ戻って医者の先生に診てもらえ。さっきも言ったが、
ここはバイオハザードが起こったかもしれ…」
「おい、手伝ってくれ!レイが……!」
 
話題を逸らそうとカミーユをミネルバに帰らせるように促していると、シンがレイを担いで
やって来た。担がれたレイは気を失ってぐったりとしている。
739カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:36:22 ID:???
「どうした、シン?何があった?」
「そ、それが……俺にもよく分からないんだ!とにかく何かの資料をレイが読んでいて、
そしたら急に倒れて……」
「分かった。取り合えずレイをミネルバに運ぼう。カミーユは先に戻ってろ。レイは俺とシンで
運ぶ」
「分かった……」
 
表情の優れないカミーユを先に戻らせ、アスランはシンと共にレイを担ぎ上げた。

「……あの人、どうしたんです?随分顔色が良くなかったみたいですけど」
「お前は余計な事を心配しなくていい。今はレイを運ぶ事が先だ」
「そうですか、俺は仲間外れですか」
「……俺だって何も分かってないんだ、そう言うわけじゃない。…ただ……」
「……?ただ?」
「いや、よそう。どうも難しい問題みたいだからな……」
 
その時、シンはステラを救助して迎えに来た時のカミーユの横顔を思い出した。
もう一度会える…そう言ったカミーユの声が何かをシンに予感させていた……
 
 
シンとアスランがミネルバへ戻ると警報が鳴っていた。周囲のクルーの喧騒を聞くと、どうやら
MSが一機こちらへ向かって来ているらしい。
 
「アスラン、シン!」
 
カミーユから事情を聞きつけたルナマリアが二人を見つけて駆け寄ってくる。
 
「聞いたわよ!レイが急に倒れたって……」
「ああ、準備は出来ているのか!?」
「ええ、それは大丈夫です。すぐに連れて行きましょう!」
「ルナ、状況はどうなっているんだ!?」
 
レイをルナマリアに預けつつ、シンが訊ねる。
 
「相手はガイア一機よ!こっちへ真っ直ぐに向かってきてるみたい!」
「カミーユは?」
「もうMSの中よ!」
「MSに!?」
 
アスランが驚いた時には既にΖガンダムはカタパルトに両足を乗せ、発進していく瞬間
だった。
 
「大丈夫なのか、カミーユは!?」
「え…カミーユ、どうしたんです?」
「体調不良だってのに……!ルナマリア、君はこのままレイを医務室まで運んでくれ!」
「りょ、了解しました!」
「シン、スクランブルだぞ!」
「了解!」
740カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:37:51 ID:???
アスランとシンはルナマリアにレイを預けると、そのまま自分のMSの下に向かって行った。
 
「ヨウラン!運ぶの手伝って!」
 
ルナマリアは近くに居たヨウランを呼び止め、レイを医務室へ運んでいった。
 
 
「この感覚……!」
 
いち早く出撃したカミーユはガイアの不審な行動に疑問を持っていた。
 
「あの子が乗っているのか……!?」
 
ガイアのパイロットがステラであるという事をカミーユは知っている。
しかし、今回に限って別のパイロットが乗っているかもしれない可能性もある為、断定は避け
ていた。いや、もしかしたらステラで無い事を祈っていたのかもしれない。
あの研究施設でエクステンデッドの話を聞いたカミーユは、ステラがこの世界における強化
人間と同じであるという事に確信を持っていた。
敵襲があったという事は当然シンも出てくるだろう。
カミーユは二人を接触させたくはなかった。
 
「……下?……あれか!」
 
カミーユは暗い夜の林の中を駆けるガイアを発見した。
そのパイロットが誰であるかを確かめる為に、カミーユは感覚を尖らせる。
 
「……!この感じは…やっぱりそうなのか……!」
 
一番厄介な事態になった事を悟り、カミーユは愕然とする。
何とかしてシンと接触させたくないカミーユは、シンが到着する前にガイアを追い払おうと試
みる。
今回は相手も陸戦仕様のMSの為、こちらも必要以上にウェイブライダーで戦う必要は無い。
その為、シンが到着する前にステラを追い返す事は可能だろう、とカミーユは思っていた。
しかし、そのカミーユの読みは甘かった。頭痛による体調不良に加え、四本足で動き回る
ガイアの独特な挙動にカミーユは予想以上の苦戦を強いられる事になったのだ。
 
「こっち……!いや、違う!?」
 
更に林の中での視界の悪い状況に、カミーユは振り回される。
 
「くそっ!捉える事が出来ないなんて……!」
 
状況を焦るカミーユは上手く行かない事に苛立ちばかりを募らせる。早くしなければシンが
来てしまう…その焦りがΖガンダムの動きを散漫にさせる。
741カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:39:42 ID:???
一方のステラも自分が有利な状況にあることを肌で感じていた。
カミーユのΖガンダムの挙動が安定していないのを見て、一気に接近戦に持ち込もうとする。
 
「!?」
 
それでも特別なセンサーがあるかのような急な射撃に、あと一歩という所まで詰め寄りなが
らも間合いを再び離さざるを得なかった。
 
「あんた達なんかにぃ!」
 
ステラにとってあの研究所は自分が育ってきた場所であった。今回の独断による単機出撃
も、ミネルバがその近くに停泊しているのを聞きつけたからであった。
 
「……!」
 
カミーユに的を絞らせないように軽快なフットワークで掻き乱していると、上空からビームが
注がれた。それを間一髪でかわしたステラであったが、三機に囲まれた状況に自らの不覚
を意識する。

(シン……来てしまったのか……)
 
シンの到着に、ついに間に合わなかった事を知ったカミーユは気を落とす。 
 
「てえりゃぁぁぁぁ!」
 
Ζガンダムとセイバーの二方向からの射撃の中からインパルスがビームサーベルを片手に
飛び出してくる。よりによって接近戦を仕掛けるシンを見て、カミーユは二人の接触を避けら
れない運命を呪った。
 
「うっ…こんなの!」
 
砲撃を潜り抜けて何とか起死回生を狙うステラだったが、シンのしつこい接近戦に押されて
いた。
 
「貰ったぁ!」
 
シンの渾身の一撃がガイアのコックピットを掠め、中身が剥き出しになる。
次いで放たれるセイバーからのビームライフルの一撃がガイアの右腕を破壊し、態勢を崩し
てそのまま後ろの崖を転がり落ちていってしまった。
手ごたえを感じたシンはそのまま止めを刺そうと追撃する。
しかし、そこから見えたのはガイアのコックピットで気を失っている見覚えのある少女だった。
 
「ス……ステ…ラ……?」
 
インパルスが動きを止める。
 
(ステラがどうして……何でガイアに乗ってるんだよ……?)
742カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:41:25 ID:???
『シン、どうした?見失ったのか?』
 
不思議に思ったアスランがシンに訊ねる。
 
「いえ……ガイアはどうやら戦闘続行は不可能のようです…このまま捕獲します……」
『あ、ああ……?』
『アスラン、シン…俺は先に戻らせてもらうぞ……』
「え?」 
 
アスランの許可を聞く前にカミーユは勝手にミネルバへ戻って行ってしまった。
 
「お…おいカミーユ……?」
『隊長、手伝ってください。インパルス一機ではバランスが悪いです……』
「あ…済まない……」
 
カミーユは元より、シンの様子の変わり様にアスランは困惑する。特に、普段から気性の激し
いシンのおとなしさに心配になった。
 
「なぁ…シン、どうしたんだ?急におとなしくなって……」
『……』
「カミーユは体調不良だとしてもお前は……」
『何も話したくありません……』
「……」
 
いつものシンらしからぬ受け答えと声のトーンに気味の悪さを感じながら二機はミネルバへ
帰還した。
 
 
 
「アスラン…あの二人どうしたんです?カミーユは部屋に戻ったっきり出てこないし、シンは
医務室の前で落ち込んでるし……」
「さぁ…どうしたんだろうな……?その場に居合わせても俺には何も分からなかった……」
 
ミネルバに帰還してから、カミーユは何も言わずに部屋に籠もり、シンはステラの事を心配
して医務室の前に待機していた。
あまりにもの様子の変化にアスランとルナマリアは二人を心配した。
 
「ハイネに続いてレイもダウンしちゃったし、あの二人まで戦えなくなっちゃったらMSの
パイロットがあたしとアスランだけになっちゃいますね……」
「え……?」
 
心配そうにしながら、しかし少しだけはにかんだようにルナマリアが呟く。それに対し、
アスランはこのような状況のときに何の冗談を言っているのかと思った。
743カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:43:20 ID:???
「その心配は無い。俺はもう大丈夫だ」
 
聞き覚えのある厭味ったらしい声。後ろから聞こえた声に二人は振り向いた。
 
「レイ!もういいの!?」
 
レイを目にし、驚いたルナマリアは思わず声を大にして叫ぶ。思ったよりも早いレイの復帰に
少しだけ残念そうな顔をする。
 
「ああ。それとも、ルナマリアにとっては二人きりの方が良かったか?」
「そ、そう言うわけじゃないわよ!たった二人でミネルバを守りきれるわけないじゃない!」
 
レイの見透かしたかのような言葉に、ルナマリアは慌てて否定する。
しかし、アスランに憧れているルナマリアは口では否定するものの、本心ではそれはそれで
悪くないかも知れない、と不謹慎ながら思っていた。
それでも本人が言うようにたった二人だけでミネルバを守ることは現実的ではない。そこの
所は一応理解はしていた。
 
「ふっ、それもそうだな。特にルナマリアは心配だからな」
「ちょっと、聞き捨てなら無いわね…あたしがヘタクソって言いたいわけ!?」
「そう聞こえたか?」
「あら、それ以外に理由があるのかしら?」
「いや、ルナマリアがそう聞こえたのはその自覚があるからだと思うが?」
「……厭味な奴」
 
(あたしだってもう少し射撃が得意なら……)
 
ふてくされるルナマリアであったが、確かに自分がミネルバのパイロットの中では一番戦力
的に心許無い事は分かっていた。
それでも一応は自分は戦う力がある事を知っている。少しでも役に立てるなら、その力を
ミネルバの為に使おうという意思をルナマリアは持っていた。
しかし、それは自ら死に急ぐ事だと言う事を知らない彼女にとって、これからの戦いに不安を
暗示する物であった。
 
 
ガイアの中から運び出されたステラは取り合えず捕虜という形でミネルバに乗せる事と
なった。気を失っていた彼女は医務室へ運ばれ、今は身体検査をしている所である。
ステラが気がかりなシンは扉の前で何をするわけでもなく佇んで居るだけだった。
744カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:45:55 ID:???
ひょんなことから出会ったステラ。
たどたどしい喋りが、シンに妹のマユを思い起こさせた。
その出会いは決して劇的なものでなかったが、たった数時間しか共にしなかったステラがシン
にとってとても大きな存在に感じられた。
自分はステラに運命を感じているのか……?自問自答に高鳴る鼓動はその答えを知ってい
るようであった。
 
どのくらいそうしていただろうか、物思いに耽っていたシンの前の扉が開く。
カーテンの向こう側にはおそらくハイネが居るのだろう。医務室を見渡す目が自然と別の方
へと向き、ステラを捜した。
そして、シンは部屋の片隅に特別な台に横たわるステラを見つけた。
 
「ステラ!」
 
シンは医務室へ飛び込む。
脇から静かにしなさいという医者の声が聞こえたが、シンはそんな事は全く気にしなかった。
 
「ステラ……」
「急に何だね?この子を知っているのか?」
「……」
「連合のパイロットだろう?」
「……」
 
ステラの顔を覗き込み、不安そうな顔をするシンは医者の言葉に何も応えない。
 
「聞いているのかね?」
「あ……何でしょう……?」
「聞こえていなかったのかね…?君は何故この連合のパイロットの名前を知っている?
…事と次第によっては君の立場も危ないぞ」
「ち…違うんです!ステラは連合に居たけど違うんです!」
「何が違うと言うのかね?現にこの子はガイアから…」
「ステラは本当はそんな事する子じゃないんです!戦争なんか出来る子じゃないんです!」
 
出会った時に交わしたステラを守ると言う約束。あの時のステラの震えは本気で死ぬのが
怖いという感じだった。そんな彼女がMSに乗って来るということは、誰かに強制的にやらされ
ている事だとシンは思い込んでいた。
 
「はぁ…もう分かったから自分の部屋に戻りなさい。この子は今は麻酔薬で眠らせてあるから
暫くは目を覚まさないよ」
「……」
「後、君とこの子の事は身体検査の結果と共に艦長に報告させてもらうから。いいね?」
「……はい……」
745カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:48:40 ID:???
何も考えられなくなっていたシンは医者の言葉にやっと聞こえるような声で返事をした。
力なく肩を落としたシンは医務室を出る。
足元を見つめながら通路を歩いていると、誰かの足元が目に入った。シンは顔を上げ、その
足が誰の物であるか確認する。
そこに居たのはカミーユだった。
 
「シン……」
「何です……?今は誰とも話したくないんです、どいてもらえませんか……」
 
カミーユに対していつも乱暴に話していたシンのしおらしい言葉遣いを聞いて、カミーユは
決心する。
 
「お前に話しておきたいことがある……時間をくれないか?」
「……」
 
悩めるシンは何も言わずにその場を離れようとした。通路の真ん中に立つカミーユの横を
すれ違おうとする。
 
「俺はガイアのパイロットがあの子だと言う事を知っていた……」
「……!」
 
カミーユの衝撃発言にシンはその場で歩みを止める。
 
「ここじゃなくて別の場所で話そう。この話は誰にも聞かれたくない……」
 
 
場所を移動したシンとカミーユはミネルバの甲板に出ていた。時間も深夜を回っており、誰か
がやって来るような気配は無い。
吹き付ける風が森の木の香りを運び、そして少し冷たかった。
 
「それで、何でステラがガイアに乗ってるって事をあんたが知ってたんだ?普通知らないはず
だぜ?」
 
いつもの口調に戻ったシンに安心しつつ、カミーユはゆっくりと語り始めた。
 
「インド洋でガイアが襲って来た時の事、憶えているか?」
「勿論だ。あんたとアスランにぶん殴られたからな」
「……その時にあの子のプレッシャーを感じた」
「プレッシャー……?何言ってんだあんたは?」
「まだ説明は出来ない。けど、俺はあの子の存在を感じたんだ」
 
真っ直ぐに語るカミーユの口調にシンは悪寒を覚えた。その様子から嘘をついているようでも
なく、かと言ってとてもではないが信用できる話ではなかった。
746カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:50:22 ID:???
「…わ…わからねぇ……!わかんねぇよ、あんたの言ってる事が!仮にそうだとしても何で
あんたがステラの事を!」
「お前がステラと遭難した時が決め手だった。直に会って確信したよ、この子はガイアのパイ
ロットなんだって……」
「だったら何で……!」
「……」
「答えろ!知ってたんなら何で俺にその事を教えてくれなかったんだ!俺がそのことを知って
いたら、あの時ステラを連合に返さなかった!」
「……すまない…お前に言うべきか迷っていたんだ……。伝えることでどうなるか…俺には
何となく分かっていたから……」
「な、何だよそれ…どういう事か説明しろよ!」

自分の常識を超えるカミーユの言葉にシンは焦りを隠せなくなる。事の真偽はどうあれ、
普通に考えたらステラがガイアに乗っている事などカミーユが知るはずが無いのだ。
しかし、カミーユの口から紡がれる重い声がシンの鼓動を高鳴らせる。
 
「その前に俺の話を聞いておいて欲しいんだ……」
「話ぃ?」
「そう、俺が自分の世界に居た頃の話だ……」
「それがどう関係が…」
「お前には聞く義務がある」
 
いつになく真剣なカミーユに、シンは言葉を飲み込んだ。その言葉に込められた何かが、
時折感じるあの不思議な感覚に似ている様な気がした。
 
「俺が自分の世界に居た時、今と同じ様に戦争をしていた事は前に話したと思う。その中で、
俺はある二人の女の子と出会ったんだ。……その子達は俺の敵だった」
「……それで?」
 
カミーユの話にシンは引っかかる物を感じた。自分とステラも敵同士である。
それが何を意味するのか、カミーユは続ける。
 
「どちらも敵の研究所で調整された強化人間だったんだ。記憶を弄られて、色々な薬で肉体
を強化されていたから二人の体はボロボロだった」
「……」
「彼女達と出会って、俺はそんな事を許せないと思った。何とか二人を救えないかと色々と
した」
「……」
「でも、二人共過度の強化によって最後には精神が崩壊しかかっていた。自分さえ取り戻せ
ない彼女達は自分の記憶を欲しがっていた事さえ忘れていたんだ……」
「……で、結局どうなったんだ?」
747カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/17(火) 18:51:42 ID:???
「……一人は俺をかばって、もう一人は…俺がこの手で殺した……もうそれしか方法が残さ
れていなかったんだ……」
 
そこまで話すと、カミーユは俯き、肩を震わせた。相当無念だった事がひしひしと伝わってくる。
 
「……」
 
想像以上のカミーユの体験談にシンは絶句する。
 
少しの間、二人は黙ったままで居た。甲板に吹く風が少し強くなり、雲がその体で優しい光を
照らす月を隠した。
暗闇でお互いの顔もよく見えなくなった頃、シンが口を開いた。
 
「……ステラが…俺とステラの関係がその二人とあんたの関係と同じだと……?」
「……ステラは連合のエクステンデッドだ」
 
瞬間シンは目を見開く。
 
「俺は!……ステラを絶対に死なせない!あんたと同じにはならない!」
「そうだ、シン、それでいい。お前まで俺と同じ道を辿る必要はないんだ」
「えっ……?」
「俺も出来るだけ協力する。だから、お前はあの子を全力で守ってやれ」
「……」
「その為に俺はこの話をお前にしたんだ。……悲劇を繰り返さない為にも」
「カミーユ…ビダン……」
 
風は相変わらず同じ強さで吹き、再び月が雲の合間から顔を出して二人を優しく照らす。
シンは初めてカミーユの事を名前で呼んだ。
それは少しだけカミーユに心を許した証、疑いから信頼へと少しだけ傾いた瞬間だった……
                                             〜つづく〜
748通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 18:53:08 ID:???
リアルタイムGJ!
749通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 18:56:23 ID:???
グッドジョブ
750通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 19:10:06 ID:???
リアルタイム更新キター!!

ベルリンで悲劇は繰り返されるのか……!?
ワクテカして続きを待ってます
751通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 19:19:51 ID:???
GJ

>>734
いやいや。
物の受け止め方を少し変え、体感を得る事によって崩壊しなかったって富野がインタで言ってたぞ。
そういうものも含めての最高のNTだ。
752通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 19:24:20 ID:???
職人さんGJです

御大が言うにはカミーユが受けとめ方を半歩ずらしたから
周りの反応の変化を生み出したとは言ってましたね
あくまでカミーユの受けとめ方を変えただけだと強調してたし
753通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 19:36:21 ID:???
GJ
カミーユは熱いな…
フォウとロザミアを救うことができなかったカミーユだから
すごい切なくなったよ…
754通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 19:45:34 ID:???
GJ!!
また同じか・・・。人は同じ過ちを繰り返す。
にならんとエエんだが・・。
755通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 19:49:20 ID:???
今度はなんとか救ってやりたいけどね
ララァ、フォウ、ロザミア、プル、プルツー、クエス
みんな戦闘に利用され死んでいったNTや強化人間
シンがこの悲劇を連鎖を断ち切るにはカミーユがキーだろうね
だれよりもその哀しみを知ってる人間だから
756通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 19:58:21 ID:???
GJ!!
なんかマジで泣きそうになったよ!カミーユとシン頑張れ!!
757通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 20:01:58 ID:???
カミーユはアムロやシャアと違った対応してるね
アムロやシャアはカミーユとフォウをできるだけ遠ざけることで
悲劇を回避させようとしてたけど
カミーユはシンに協力しようとしてるこれがいい方向にいけばいいと思うけど
758通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 20:03:53 ID:???
まぁ、想ってくれる相手がいただけララァ、フォウ、ロザミアクエスやステラは幸せかもしれん。
プルなんて病気押して必死に戦って死んだのに「プルがプルに殺された・・・」だけですやん
759通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 20:07:44 ID:???
だが鉄仮面さまのような強化人間もいるぞ。
強化人間だから不幸というのはおかしいのではないか。
760通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 20:12:49 ID:???
>>759
自ら望んで強化されたのと、実験台にされたのとでは違うと思うぞ(汗
761通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 20:19:20 ID:???
「人類の十分の九を抹殺しろと命令されればこうもなろう。」
762通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 20:22:29 ID:???
カテジナさんは?
763通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 20:23:36 ID:???
マシュマーさんは幸せな最後だったんじゃないかな? かな?
764通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 21:04:48 ID:???
う〜ん…人は自分が幸せだと思えば幸せになれるのかねぇ。
765通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 21:27:38 ID:???
じゃあ、キラの場合は?
766通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 21:42:45 ID:???
>>761
つAWのコロニー落とし
767 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/17(火) 23:20:23 ID:???
=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第15話 『アスランの手』

=======================
ガルナハンでは、火力プラントを巡って、ザフトと連合の攻防戦が繰り広げられていた。
マハムール基地の戦力と共に、ミネルバもこの作戦に参加していた。
艦上ではレイのザクとルナマリアのアビスが護衛に、
空中ではアスランのセイバーとカミーユのZが制空権の確保に勤しんでいる。
しかし、彼等の奮戦にもかかわらず、ザフト側の状況は芳しく無いように見えた。
その証拠として、じわりじわりと連合によって戦線を押し上げられていることが挙げられる。
だが、ザフト側に焦りの二文字は無かった。

「そろそろ頃合だ!」

アスランも焦燥に駆られてはいなかった。
その手には、パイロットスーツによって隠れてはいるが、
ルナマリアの修正の際に負った傷を塞ぐ包帯が巻かれていた。

『うおおおお!』

アスランの言葉に応えるかのような雄叫びと共に、ローエングリンゲートと守備隊の間隙に三つの飛行物体が飛び出した。
軸合わせをそつなくこなし、ドッキングした物体群は一つの個体を形成した。
それは『衝撃』の名を冠するMS――インパルス――!
768 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/17(火) 23:22:00 ID:???
――ザフト側の狙いは、インパルスが奇襲を掛ける為の陽動であったのだ。
この作戦を成立せしめる奇襲のルートは、地元レジスタンスによってもたらされたものだった――

シルエット装備を行わないにも関わらず、
軽快な足取りで敵の最大火力の破壊に取り掛かったシンを援護するかのように、
ザフト軍は戦線を急激に押し上げ始めた。

『冗談ではない!』

連合軍のMA――ゲルズゲーのパイロットはいち早く奇襲を察知し、
ローエングリンを灰塵に帰さしめようとするインパルスに向かって行った。

『させるかよぉ!』

高高度からの光熱元体がゲルズゲーの鼻先を霞める――!
MA形態のZが、急降下しながらビームガンを乱射したのだ。
ゲルズゲーはライフルで弾幕を張ったが、旋回するZはかすらせもしない。

『な、何者だ!』

カミーユのでたらめと形容してもよい動きに、ゲルズゲーのパイロットは混乱した。
そして、もたついている間に、砲台から狼煙が上がってしまったのであった。

『おのれぇぇ!!』

ゲルズゲーは激昂しながら、Zを狙い続けた。

『……覚悟はいいな?』

後方からの通信によって、ゲルズゲーのパイロットの背筋に戦慄が走った――!

『しまった!』

Zに気を取られていたゲルズゲーは、セイバーの接近に気が付かなかった。
セイバーはMS形態で懐に入ると、サーベルでコックピットを突くと、
ゲルズゲーは動かなくなった。

=======================
769 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/17(火) 23:33:38 ID:???
ローエングリンとゲルズゲーを失った連合軍は総崩れになっていた。
撤退せずに徹底的に戦った者もいたが、
その末路は決して穏やかなものでは無かった。
ミネルバが羽を休めに戻ったディノキアの街でも、
市民による連合の迫害が始まっていた。

「あれは……!?」

偶然、その現場を目の当たりにしたルナマリアは憤りによる体の振るえを感じた。
アスランは戦争が何たるかを答えてはくれなかった。
しかし、目の前に最も拒絶すべき回答の一つが横たわっていた。

――戦争とは、単なる殺し合い――

「止めなさいよ!」

ルナマリアはアビスを降り、連合兵に私刑を加える市民達の間に割って入った。
自らも戦争をしている身ゆえ、傍観することは出来なかった。
そうしてしまえば、自分達も同類になってしまうからだ。
ルナマリアの制止にも関わらず、市民達の怒りは収まらなかった。
770 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/17(火) 23:34:51 ID:???
「……ザフトには感謝してるけどな!
こいつらには長いこと肝を舐めさせられて来たんだ!
退いてくれ!」
「きゃあ!」

ルナマリアは押し退けられ、地面に突っ伏した。
その瞳は、暴行を加えられ力尽きて行く連合兵を見つめていた。

「……結局、何も出来ないじゃない……」

考えるから、辛くなる。
考えなければ楽になれる。

甘い誘惑のような言葉がルナマリアの頭をよぎった時だった。

「よさないか!!」

何処からともなくアスラン・ザラが現れたのだ。

「あんたも止めるのか!?コーディネイターのくせに!!」

暴徒と化した市民の反論を捨て去るように、
アスランは鬼のような顔付きで睨んだ。

「そんなことは関係無い……!
一つ忠告してやるが、こんなことをすれば次は貴様らが撃たれる番になるぞ……!」

冷たいナイフのような一言が市民たちをえぐった。
今のアスランには、言葉では言い表せない凄味があったのだ。
彼等は怖じけづいたのか、暴力に訴えるのを止め、散々になっていった。

「さ、手を貸そう。ルナマリア」

普段の雰囲気に戻ったアスランは、
這いつく張りながら一部始終を眺めていたルナマリアに手を差し出したが、
ルナマリアは手を取ろうとはしなかった。

「……私は……何も出来ませんでした……」

無力さに嘆いているのだろうか。
今にも泣き出しそうな様子である。
771 ◆XdXnStWCJQ :2006/10/17(火) 23:40:02 ID:???
「お前は間違っちゃいない。
少しだけ胆力が足りなかっただけだ」
「……」

その慰めの言葉に、ルナマリアは救われるような気がした。
そして、ルナマリアが差し出された手を握り締めた。

「痛っ……」

腕を引いてルナマリアを起き上がらせると、
アスランが苦痛に顔を歪めたのだ。

「……どうしました?
……あっ……」

ルナマリアの脳裏に、拳に鮮血を滴らせるアスランの姿がよぎった。
破片で切った傷は未だ癒えていないのだ。

「……何をしている?」

ルナマリアはアスランの手を離さず、そのままじっとそれを見つめていた。

「いえ……何でもありません……」

そして手を離した。
思い悩み続けることは間違っていないと、
アスランの手が語りかけているような気がした。

〜つづく〜
772通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 23:42:01 ID:???
GJ!!
773通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 23:42:25 ID:???
GJ!!
みんな、人間臭くて良いな〜
アスランがすごく男前に見えるのはどうしてかしら?w
774通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 23:44:09 ID:???
GJ!!
なんかアスランの話だな今回
アスの変化が面白い
775通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 23:45:33 ID:???
あれっ…カミーユ何処?
776通常の名無しさんの3倍:2006/10/17(火) 23:48:47 ID:???
カミーユの光を見たせいか、アスランも前向きになってるんだろうな。
今更だけど、ユニウスセブンで家族の霊?を見たのはテロってた連中だけなんだろうか?
アスランもあそこに母親が眠っていた以上、母親の霊?を見てもおかしくはない気もするんだが。
777通常の名無しさんの3倍:2006/10/18(水) 05:56:20 ID:???
777
778通常の名無しさんの3倍:2006/10/18(水) 23:22:33 ID:???
ええい!!今日は新作なしかよ!!!
779通常の名無しさんの3倍:2006/10/18(水) 23:56:00 ID:???
書くの結構つらいからな、2日3日で更新してたのがすごいしママーリ待とうじゃないか
↑で纏めてた者だけど、今度ガンダムXのSSスレと一緒にwikiで半永久保存化(?)しようかと思ってる。
ttp://wiki.livedoor.jp/arte5/d/FrontPage
おまいさん方、wikiの構成複雑かもしれんが新作出たら保管よろしく。他意見等あればよろしぅ。
でもって作者さんガンガレ
780カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:07:07 ID:???
>>779
纏めwiki乙です。
自分のSSが纏められる事になるとは思わなかったので驚いています。
しかも、XスレのSSと一緒とは……きょ、恐縮です。

取り敢えず投下しときます↓
781カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:09:33 ID:???
ステラが捕虜となってから数日後、補給のためにミネルバはマルマラの街に寄航していた。
そして、ある街でアスランは独自にアークエンジェルの行方を調査していた。
そんな折、偶然にも戦後"戦場カメラマン"をしていたミリアリア=ハウと再開し、キラとの接触
を取り持ってもらう事に成功する。
彼女は戦場の現実をカメラに収めていて、そんな時にアークエンジェルが現れた戦場にも
取材で来てたのだ。
 
アスランはその待ち合わせ場所へとセイバーで向かう。勿論偵察と言う名目付きでだが。
MS隊の隊長自らが雑用とも言える任務を申し出た事に疑問を感じたタリアであったが、
ステラの強襲の件もあったばかりなので取り敢えずの許可を出した。
 
待ち合わせの場所へ辿り着き、アスランはセイバーから降り、岩場の影にそれを隠してキラ
を待った。
海に程近い岩場の所だった。
アスランは岩に背を預け、腰を下ろして暫く海を眺めていた。
日が少し傾きかけた頃、アスランは岩場の影から人の気配を感じた。
 
「そう言えばディアッカとはどうしたんだ?アイツは今もザフトに居るぞ」
「フフ、あんな奴、振っちゃった」
 
それがミリアリアとアスランの交わした合図だった。岩場の影からキラとカガリがミリアリアに
連れられて出てくる。
 
「キラ……」
「ゴメン、アスラン待たせて……。少しの間君を見張らせてもらった」
「いや、いい。ミネルバじゃお前達の事を怒ってる奴が殆どだから…懸命な判断だよ」
 
そう言うとアスランは立ち上がり、キラ達の方を向いた。

「ラクスはどうした……?」
「ラクスは今宇宙に上がっている。プラントの情勢を調べる為に……」
「プラントへ……?」 
「アスラン…なんでお前がまたザフトに居るんだ?まさか…あの時の事を気にして……」
 
目の前にはザフトの制服を着たアスラン。その姿に疑問を感じ得ないカガリが話を切り出し
た。
 
「カガリ……そうだ。俺は未だ父の妄執が絡むこの戦争を止めたいと願った。その為に俺は
イザークやディアッカに誘われてザフトに戻った」
「でも…オーブの敵にならなくても……」
「ザフトがオーブの敵になったんじゃない。オーブがザフトの敵になったんだ。カガリ、そこは
履き違えないで欲しい」
「そ…それは……でも、私は反対した!大西洋連合と同盟を結ぶなど、オーブの理念から
外れた行為だ!」
「それを止められなかった君が言う台詞じゃない」
「アスラン……」
782カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:11:57 ID:???
懸命にアスランを説得しようというカガリの意気込みは分かる。しかし、アスランの言っている
事も又正論だった。
カガリには政治家としての能力が圧倒的に不足している。
そんなカガリだからこそ、あの時ユウナは怒り、今もアスランは冷たく突き放しているのだ。
オーブの事を一番気に掛けているカガリであったが、口を開けば理想しか口にしない彼女は
あまりにも未熟であった。
 
「キラ、この戦争はお前達だけで何とか出来る物じゃない。あんな馬鹿げた事はすぐに止めて
オーブへ戻るんだ。今ならまだ間に合う」
「アスラン…それは出来ないよ。僕にはどうしても納得できない事があるんだ……」
「納得できない事……?」
「あのミネルバがオーブを離れた後、ラクスがコーディネイターの特殊部隊に狙われたんだ」
「なっ……!」
「そのすぐ後連合とザフトが戦争を始めたから、僕はカガリを雲行きの怪しくなったオーブ
から連れ出したんだ」
「お前がカガリを!?」
 
アスランはずっとカガリが自分からアークエンジェルに乗り込んだんだとばかり思っていた。
それは彼が彼女の行動力を知っていたからでもある。
しかし、それが実際にはキラの意思によって連れ出されたことに驚愕する。
 
「僕も最初はザフトの方が正しいと思っていた。でも、ラクスが襲われた今、僕にはどちらが
本当に正しいのか分からないんだ」
「待て、キラ!そんな証拠も無いのにザフトのせいにするな!議長はそんな人じゃ…」
「じゃあ、あのラクスは何?偽者を仕立て上げて議長は何を考えているの?」
「そ、それは……」
「連合は信用できないけど、あのデュランダル議長って人も僕には信用できない。だから、
僕達は僕達なりのやり方でやらせてもらう」
「キラ……」
 
決意の固いキラの表情にアスランは何も言えなくなってしまった。
 
「ア、アスラン…せめてお前だけでも私達の敵になるのを止めてくれ!それで出来れば
私達と一緒に……」
「カガリ……」
 
カガリの誘いにアスランは悩む。互いに想い合う同士、出来れば一緒に居たいと思う気持ち
は同じだった。
783カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:14:17 ID:???
「俺は……」
 
そのカガリの誘いに返事を返そうとした時、アスランの頭の中に浮かんだのはハイネの言葉
だった。
 
(自分が何の為にザフトの制服を着ているのか、考えろよ)
 
「俺はやっぱり一緒には行けない。俺はザフトの兵士だ。二度もプラントを裏切るわけには
いかない……」
「そんな…アスラン!」
「行こう、カガリ」
「キラ…でも!」
「きっとアスランにはアスランなりの考えがあるんだよ。だから今は……」
「……」
 
キラに説得され、カガリは背を向ける。
 
「アスラン、僕も正直君とは戦いたくない。もう…二年前のような事は嫌なんだ。だから僕に
君を討たせないで……」
「キラ…それはお前の傲慢だ。例え俺を倒せてもお前にカミーユは倒せない」
「カミー…ユ?」
「一度戦っただろう?ムラサメに似た可変型のMS……」
 
キラの頭の中にΖガンダムが映し出される。
不思議な感覚を放つ癇に障る声をしたあの戦場で唯一苦戦したパイロット…それが

カミーユ=ビダンだった。
 
「……アスラン、彼に伝えておいて。僕はあなたの様に戦いたくて戦ってるわけじゃないって」
「……わかった。だが、俺からもお前に言っておく。カミーユはきっと戦いたくて戦ってるわけ
じゃない。昔のお前と同じで巻き込まれたんだ」
 
カミーユが別世界の人間である事は敢えて説明はしなかった。言っても簡単に分かる問題
ではないからだ。
 
「……覚えておくよ……」
 
それだけ口にすると、キラ達はその場を離れる。
アスランはその姿が見えなくなる前にセイバーに乗り込み、その場を去った。
 
「あれが…アスランのMS……」
 
帰り際、飛び去っていく真紅に彩られたセイバーを見つめて、キラは一言呟いた……
784カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:15:48 ID:???
シンはステラが医務室に寝かせられるようになってから、毎日のように殆どの時間をそこで
費やしていた。
カミーユの告白を聞いてからというものの、シンはずっとステラの事ばかりを考えていた。
いつもの様にシンが医務室に入り浸っていると、そのカミーユ本人がやって来た。
 
「まだ目を覚まさないのか?」
「……」
 
カミーユの問いかけに振り向く事も無くシンは黙って頷いた。
 
「少し休んだ方がいい。酷い顔をしているぞ」
「カミーユの話を聞いたからには、そんな訳にはいかない」
「シン……」
 
体が資本のパイロットにとって疲れを残しておくのは良くない事だ。カミーユは少しだけシンに
話をした事を後悔した。
二人を重い空気が包み込む。
 
「う…うぅ…ん……」
「ステラ!」
 
そんな時、ステラが目を覚ます。シンにとって気の遠くなるような時間を待っていた所へ喜び
の瞬間が訪れたのだ。
 
「ステラ!俺だ、シンだ!分かるか!?」
「シ…ン……誰?…ここは?」
「ステラ!?俺が分からないのか!?ほら、君から貰ったこの貝殻…」
「ネオは…ネオは何処……?」
 
シンの見せる貝殻を無視して知らない男の名前を呼ぶステラ。その様子にシンは愕然とした。
 
「そ…んな……ステラ……」
「ネオは…ネオ…は……」
「ステラ……?ステラ!」
 
シンの呼びかけも空しく、ステラは再び眠りについてしまった。
 
「くそっ!何でだよ、ステラぁ……!」
「シン…この子はきっと記憶を操作されて……」
785カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:18:06 ID:???
悔しさを隠せないシンをカミーユが慰める。
 
「そんな…そんな事って……!」
「ああ、許しちゃいけない。こんな事をしたネオって奴を放って置いてはいけないんだ。だから
その時の為にも今は体を休めるんだ」
「カミーユ……くっ!」
 
シンは医務室を飛び出す。
その時、偵察から戻ってタリアに報告を済ませ、ハイネの見舞いにやって来たアスランと丁度
入れ違いになるようにすれ違ったが、シンはそれを無視して走っていった。
 
「シン……カミーユ……?」
「すまない。そっとしておいてやってくれ」
 
それだけ言うとカミーユも医務室を後にした。
二人とステラの間に何かある事は分かっていたアスランだったが、今はカミーユの言う通り
何も言わないで置こうと思った。それも、自分もキラ達と秘密裏に会っていたという隠し事が
あったからでもあった。
アスランは眠るステラを横目で見つつ、別室のハイネの下へ向かった。
 
「ハイネ、入るぞ」
 
コンコンと二回ドアをノックし、アスランは個室へ入る。するとそこには仰向けになって雑誌を
読んでいるハイネの姿があった。
 
「アスランか…お、今週号?」
「ああ」
 
そう言ってアスランはハイネに雑誌を渡した。
 
「お前、偵察に出たんだって?相変わらず真面目だねぇ…そんな事、他の奴にやらせれば
いいのに」
「いや、まぁそうなんだがな…気分転換も兼ねて空のドライブでもしようかな…なんてな?」
「ふーん……」
 
たどたどしいアスランの話にハイネは不審に思う。きっと偵察というのは建前で、本当は別の
目的があったんだろうと思った。
ハイネは一つカマを掛けてみる事にした。
 
「で、女には会えたのか?」
「それが…ハ、ハイネ!?違うんだ、そんなんじゃなくて……!」
786カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:20:11 ID:???
言いかけてアスランは口を押さえる。しかしもう遅かった。
ハイネの中のアスランの印象に"馬鹿が付くほど正直者"が追加された。
 
「ははっ、分かりやすい奴だな、お前は。冗談だよ。けど、その様子だと連中と接触する事は
出来たみたいだな?」
「いや、それは……」
「お前は単純すぎるんだよ。で、塩梅はどうだったんだよ、ここだけの話?」
「……」
「大丈夫だって。誰にも言わないからさ」
「詳しい話は出来ないが、説得に失敗した……」
「だろうな。あれだけの力を持ってるんだ。そう簡単には引き下がるまい」
「ああ……」
 
キラの言葉を思い出す。
キラはザフトを信用していなかった。それに一瞬でも傾きかけた自分の気持ちの弱さが気に
入らなかった。
 
「お前、それでどうするんだよ?このままザフトで戦うのか、それとも…」
「止めてくれ、ハイネ。俺はザフトを離れる気は無い」
「そうか…ならいいんだが、覚えておけよ?お前にとって帰るべき場所はここだって事を」
「ハイネ…何を……?」
「俺達は共に戦う仲間だ。シンもルナマリアもレイもカミーユもこの艦の皆も…勿論俺もな」
「……」
「だから、何があっても必ずこの艦に戻って来い。これは命令だぜ、アスラン」
 
真剣な眼差しで、しかし口元は穏やかに曲線を描き、ハイネはアスランに告げる。
そんなハイネの視線にアスランはハイネに信頼を寄せる。
 
「分かった。その命令は必ず遵守すると約束する。だから、ハイネも早く治して戻ってきてくれ
よ?俺じゃ、あいつらの面倒は看きれないからな」
「ははっ、確かにそうかもな!じゃ、俺はお前が苦労している間にゆっくりさせてもらおうな」
「おいおい……」
 
気楽なハイネの言葉にアスランは苦笑する。しかし、悩んでいたアスランもハイネと話したこと
によって少しだけ気持ちの整理をつける事が出来た。
後に、この時交わした会話がお互いを苦しめる事になろうとは今の彼等には知る由も
無かった……
787カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:25:06 ID:???
ミネルバはジブラルタル基地へ向かって航行を続ける。
シンはステラの事がショックで部屋に籠もりきりになっていた。ベッドに横になり、妹の形見の
携帯電話をぼんやりと眺めていた。折りたたみ式のその電話を開くと、そこには少し幼い自分
と妹の写真が待受画面に映っていた。
薄暗い部屋で時間の感覚も分からなくなってきた頃、誰かの足音がシンの部屋にやって来
るのが聞こえた。
 
「シン!あの子が目を覚ましたみたいよ!」
 
おもむろに扉を開けたルナマリアはシンに吉報を告げる。その言葉にシンは跳ね起きる。
 
「ステラが!?本当なのか!?」
「ええ、でもすごい混乱しているみたい!んで、カミーユがあんたの事呼んで来いって言う
から…」
 
ルナマリアが言い終わる前にシンは部屋を飛び出していた。
 
「あっ、待ってよシン!」
 
全力で駆けて行くシンを追ってルナマリアも医務室へと向かう。
 
 
「ステラ!」
 
勢い良く扉を開けたシンはステラの元へすぐさま駆け寄る。ステラの周りに居た医者やカミーユ
の視線がシンに注がれる。
ステラは拘束器具で押さえつけられたまま何とかそこから逃れようと体を動かしていた。
 
「ステラ、分かるだろ?シンだ!」
「知らない…あんたなんか知らない!」
「これを見て!思い出さないか!?」
 
シンはポケットの中からピンク色の貝殻を取り出してステラに見せた。するとステラは動きを
止めてそれに見入る。
やがてシンの顔に目をやり、何かに気付いたように険しかった表情が穏やかに変化する。
 
「……シ…ン?」
「ステラ……!」
 
ステラがシンの事を思い出したのだ。
そこへ遅れてルナマリアがやって来る。
 
「シ、シン……どうなったの?」
 
息を弾ませてルナマリアは訊ねる。
しかし、その様子を見ていたカミーユが皆に退室を勧める。
788カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:28:50 ID:???
「すみません、他の人は一度この部屋から出て貰えませんか?」
「えっ?何で……」
「今は二人きりにしてあげたいんだ……」
 
不安そうな顔をしながらも落ち着いたステラの様子を確認した医者達は部屋を出て行った。
納得できないルナマリアもカミーユに背中を押されて退出していった。
ステラを気にしながらもその様子を見ていたシンは、心の中でカミーユの気遣いに感謝した。
 
 
「何か納得いかないな……」
 
医務室を追い出される形になったルナマリアはポツリと呟いてカミーユの顔を見つめる。
 
「えっ?」
「カミーユとシンって何かあったでしょ?」
「ど、どうしてそう思うんだ…?」
「だって、おかしいじゃない!?ちょっと前までは全然親しくしてるとこなんて見なかったのに、
ここ最近は嘘みたいに打ち解けたみたいになっちゃってさ!どう考えても不自然よ!」
「別にそんな事無いだろ?俺とシンがいつまでも仲悪いままでいるわけにもいかないし…」
「これはあたしの勘なんだけど、あのステラって子が絡んでるんじゃない!?あの子がここに
来てからシンとカミーユの態度が変わった様な気がするんですけど!」
 
ルナマリアの指摘に、これだから女の勘って奴は怖い、とカミーユは思った。思わずニュータ
イプなんじゃないの、と言ってやろうかと思ったが、そんな言葉など知らない彼女に言っても
余計にややこしくなるだけだと思い直し、言葉を飲み込んだ。
窮するカミーユを見てルナマリアが詰め寄る。
 
「どうなのよ!」
「いや、だから、その……」
「答えなさいよ!」
(た、助けてくれ……)
 
789カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/19(木) 18:30:29 ID:???
その後約十分間程ルナマリアに問い詰められたカミーユはなんとかはぐらかしつつも、やっと
解放された。まだ据わった目でカミーユを睨みつつも、頑なに説明しようとしないカミーユに
一瞥をして去っていった。
 
(シンの世話を焼くルナマリア…か……)
 
これまで何かとシンに世話を焼くルナマリアを見てきて、カミーユはファ=ユイリィの事を思い
出していた。
元の世界に居た頃、カミーユにとってのルナマリアはファだった。自分の家のお隣さんで、
両親が不在がちなカミーユにとって、ファは母親代わりといっても過言ではない存在だった。
いつも口うるさく文句を言っていたファを思い出し、懐かしい気分に浸る。
ふと、今のシンとステラ、ルナマリアの様にもしフォウとファがお互い出会っていたらどうなって
いただろうかと想像してみる。
ロザミィの時と同じ様に忠告をしてくるだろうか、先程のルナマリアの様にやっかみを入れて
くるだろうか、それとも又違ったリアクションを取るだろうか……
しかし、そんな事を考えてみても、いつも側に居て自分を気遣ってくれたファとは今は会えな
い。他愛の無い話も出来ないし、下らない事で喧嘩も出来ない。
それが今になってカミーユは寂しく思えた……
                                        〜つづく〜
790通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 18:32:11 ID:???
一番乗りGJ!!
791通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 18:33:04 ID:???
q(≧∇≦*)
792通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 18:38:58 ID:???
GJ。

カミーユ・・・・哀しい存在だな。
793通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 18:40:10 ID:???
職人さん灯火お疲れ様です。ようやくファの名前が出てきましたね、今頃メタスで漂ってる
かもしれないけど、アスランがハイネとの関わりでザフトに対して忠義が増してるようで、
個人的に嬉しい、本編へたれな裏切り者にしか見えなかったんで。
ステライベントをどう消化するのか楽しみにしてます、頑張ってください。
794通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 18:41:06 ID:???
GJ!
今回もハイネがカコイイね!!
795通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 18:42:43 ID:???
GJ!!
キラの野郎開き直りやがって・・・!
796通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 19:09:10 ID:???
GJ!
相変わらずの能無し姉弟だ!
797通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 19:42:25 ID:???
GJ!

ハイネの台詞がなんとも生活感があっていいな
今週号ってことは週刊誌か、何読んでんだろ?
798通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 20:57:42 ID:why98j3z
木曜だからヤングジャンプではないかな?
799通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:00:25 ID:???
GJ
キラ…人づてに仕返しすんなよ…つーか今は(仮にも)自分の意志で戦ってるのに戦いたくて戦ってるんじゃないとかいうな
議長がミーア用意するのも自身の影響力のなさを考えれば真っ当とはいえなくてもベターな手段だし
原作もだが、何故にコイツ(ら)は疑わしきは罰せよ思考なんだ、自分らのほうがよほど疑わしいのに
しかしアスラン&ハイネの関係が良好になる中、微妙に嫌な予感フラグが
あのフラグを見る限り、アスランが裏切る可能性は普通にまだ残ってるということか…
800通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:03:57 ID:???
GJです
801通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:06:55 ID:???
カミーユとルナマリアが出来そうな予感…
カプ厨みたいですまん
802通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:23:43 ID:???
GJ!
>「……アスラン、彼に伝えておいて。僕はあなたの様に戦いたくて戦ってるわけじゃないって」
キラよ・・・なんで勝手にカミーユを悪人扱い出来るんだ?「何のために彼は戦っているんだ?」
とかいうのなら分かるが・・・・・・
803通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:33:01 ID:???
>801

そして遅れて登場したファが出てきて修羅場に・・・・・(w


804通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:33:38 ID:???
軍人はすべからくみな戦いたいから戦ってる人種なんでしょうね
805通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:33:43 ID:???
戦いたくて戦ってるヤザン(軍人としてはキラよりまともだろう)や
ニムバスみたいな戦闘狂なんて広い戦場の中の連合やザフトの
無数の兵士達のほんの一握りだぞ
806通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 21:36:14 ID:???
カミーユって一番戦いを否定してると思うんだけどな…
キラはむちゃくちゃだ
807通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:08:30 ID:???
>>804
阿呆か
戦いたくて軍人やってる奴などそうそういない
基本的に他の職業と同じで食うために軍人やってるやつが大多数だ

と、リアル軍人の俺がいってみる
808通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:19:44 ID:???
人殺しも確かに仕事にはなるんだが、普通国防という正義がある訳なんだからネガティブ
な存在にするのは間違っていると思うぞ、災害救助も自衛隊やってるし、あそこまで規律の
ととのった集団は貴重だし。種死スタッフだって地震にでも巻き込まれたら助けてもらうだろ
うに、不条理な連中だよ。まあ戦争はファッションですと言う連中だからなあ・・・
自分の国を自分達で守ろうという考えを持たない日本人は世界の非常識です。
809通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:19:58 ID:???
>>807
何処の軍人だよ
810通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:22:47 ID:???
>>809
この日本の軍人だよ

ちなみに陸自
811通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:25:01 ID:???
隊員でしょ?
812通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:25:14 ID:???
自衛隊員って若いうちに資格とかとりまくって民間の警備会社とかにうつっちゃうもんなんだっけ?
813通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:26:56 ID:???
途中で送信しちまったorz

>>808
ありがとう
あなたのように理解のある人がいると非常にうれしい

……最近は左が多くてなぁ

>>812
そういうやつもいることはいる
今年の新隊員はヘタレが多くてうちにきたやつはみんなやめちまったよ
高射特科だからそんなにつらくないはずなんだが
814通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:33:16 ID:???
>>810
軍人じゃないじゃん
815通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:36:53 ID:???
>>814
憲法上では認められてないが国際的にみればまちがいなく自衛隊は軍隊
そんなこともわからんのか?
つか、軍隊無い国なんて攻め込んで下さいといってるようなもん
816通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:38:49 ID:???
日本は敗戦国だから軍隊って名乗っちゃいけないんだよ、ついでに今の自衛隊の原型を
つくったのマッカーサーです。他の国では自衛隊は軍隊扱いされてます。
日本の軍備は世界でも有数、アメリカ製輸入しなくちゃいけないし。
817通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:39:19 ID:???
>>815
おおむね同意だけど国内左翼の妨害があるから軍隊としてギリギリなりたってる感じだな
自衛隊入ってほんとにこれで国が守れるのかと不安になったよ
818通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:42:07 ID:???
リロード忘れたorz

>>816
あくまで建前上はだけどな>日本の軍備は世界でも有数
実際、金がないから稼働率とかやばいのよこれが
819通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:44:58 ID:???
>>818
どうゆうこと?
820通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:45:03 ID:???
MSなんて実際に稼動率の保つにはどれくらい金が掛かるんだろうな。
821通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:47:13 ID:???
>>819
装備は豪華だけど弾薬が戦闘1.5回分しか無い
822通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:47:13 ID:???
>>819
維持するにも動かすにも金がかかるって事じゃね?
823通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:51:56 ID:???
負債に教えてやりたいぜ、戦争はお金がかかるんだって、スポンサーのアナハイムが
いなければエゥーゴは戦えなかったんだって、怪しげな信者だけでは戦争はできない
んだって。種のモビルスーツはジャンク屋がぽんぽん作ったり売ったり、活用したりす
るのを考えると、サラリーマンの平均年収くらいで一台作れるのかもしれないが・・・
824通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:53:19 ID:???
>>819
基本的に日本は徴兵制じゃないから軍事費のほとんどは人件費なわけだ
で、日本製の兵器は日本国内しか流通してないからバカ高い
だから数そろえるのはすごい大変で、数がそろっても予備品(ようは補修物品な)が無い
だもんで部品の使いまわしとかやってなんとか稼働率たもってる
あげく自衛隊の人数削減されたんで整備員足りなくてさらに今は悪化しちまってる

>>820
少なくても90式以上に金かかるだろうな

>>821-823
そのとおり
ちなみに自衛隊がアメリカの支援なして作戦行動したら弾薬が2日持たない
825通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:55:15 ID:???
>>824
……マジで?
もしかして日本てヤバイんじゃないの?
826通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:57:56 ID:???
>>824
聞いちゃいけない事を聞いてしまった気が…
827通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 22:58:37 ID:???
>>825
陸自の俺がいうのもなんだがやばいよ
航空、海上戦力が勝負
上陸されたらその時点で日本の敗北はきまったといっていいし
828通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:00:59 ID:???
>>824
弾薬うんぬんはちっと調べれば一般のひとでもわかる
実際はそれより悪いんじゃないかって話だけど
829通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:03:40 ID:???
winnyをどう思いますか?
830通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:04:47 ID:???
そろそろウザイからやめてよね
831通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:07:04 ID:???
いいじゃん。おもしれーよ。
実際にZではスポンサーがエゥーゴで一番偉かった。
金無しじゃ戦争はできねーんだ。電波宗教で戦争が出来るほど甘くねーということだよな。
832通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:07:29 ID:???
>>823
ついでに言うと現在もし戦争がおきても軍需景気ってのは起きない
ここまでインフラが発達してると貿易メインで経済が動いてるからかえって市場が混乱してきつくなる
だから本編でロゴスが儲けたって描かれてるけど他の分野で打撃くらってるはずだから話がなりたたない

>>830
すまん、思いっきりスレ違いだったな
退散するよ
833通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:07:41 ID:???
そろそろ手首捻られるよ!
カミーユ氏乙。今回もGJ
834通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:08:32 ID:???
容量オーバーするかは分からんが、次スレって何時頃立てるかね?
加えてテンプレみたいなのも作成しないとな
835通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:13:03 ID:???
>>818
コピー用紙自腹乙。

>>832
>他の分野で打撃くらってるはず
極端な話、世界規模の戦争→物流が逝く(迂回ルート無し)→経済オワタだからな
836通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:15:52 ID:???
>>835
まだいい方だ
最近はプリンタ自体も自腹だぜ

>経済
UCならともかくCEはまだ国家が存在するからよけいにね
837通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:16:44 ID:???
新シャアでZガンダムについて語るならここでよろしく
現在SS連載中!

・投下が来たら支援は読感・編集の邪魔になるからやめよう
・気に食わないレスに噛み付かない、噛み付く前に天体観測を
・他のスレに迷惑をかけないようにしよう

前スレ もしカミーユが種・種死の世界に来たら
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1159433004/

まとめサイト http://wiki.livedoor.jp/arte5/d/FrontPage

荒し、粘着すると無駄死にするだけだって、何でわからないんだ!!
分かるはずだ、こういう奴は透明あぼーんしなきゃいけないって、みんなには分かるはずだ!

================================================================================
Xスレぱくりw 最後の台詞は微妙か、俺ではこれが限界だ
838通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:17:33 ID:???
>>832
そういえば、本編でも実はロゴス連中戦争にはあんま積極的じゃねーんだよな
ジブリールに強引に説得されて炊けどその直後内戦に入るし、、、
やっぱ、そーいう裏があったのかな?



っていうかさ、スタゲ第一話で軍隊がおもっくそブレイクザワールドの戦災復興してたよね?
その直後プラントからも復興の手が来るし
839通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:24:35 ID:???
>>838
武力行使はあくまで最後の手段だからな
抜いちゃいけない伝家の宝刀であるのが理想
ただし抜いたとき切れなきゃ意味がないけど

ともかく人間には口があるんだから基本は話し合い
話し合ってもどうしてもわからない某北とかの場合はぶん殴るしかない
840通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:27:42 ID:???
>>839
ラクシズは話し合いすっとばしていきなり殴りつけるからなぁ
841通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:32:25 ID:???
>>840
正確に言うと一方的にくっちゃべって、わがままが通らないと知るとキレるって感じか?
842通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:34:41 ID:???
>>841
どうしようもない餓鬼だなホント
843通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:37:18 ID:6IabMExy
自分達だけ綺麗でいいところにいようとする・・・
844通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:42:25 ID:???
そこがカミーユにとっては最も嫌うタイプの人間だ
845通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:43:23 ID:???
しかも自覚がないってのがさらに救えんな
846通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:47:10 ID:???
ラクスとキラってマジでシロッコとやってることは同じだからな…
逆に偽善者ぶってるからさらにたちが悪いし
「あなたはいつも傍観者で人を弄ぶだけの人ではないですか
その傲慢は人を家畜にすることだ。
それは人間が人間に一番やっちゃいけないことなんだ」
の台詞はまさにラクスを罵るのにピッタリ

847通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:51:26 ID:???
漫画だけでしか種死は知らんが
とりあえずラクシズってのはプライドをなくしたシロッコ(キラ)と
ハマーン(ラクス)を足して三乗した様なやつら
という印象しかないんだがどうだろう?

>>846
シロッコが種死世界にきたら確実に
『貴方こそ世界を束ねるべき女性だ』
などといってラクシズにつくのが想像してしまう
848通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:52:49 ID:???
っつーかラクシズは軍隊ではなくテロ屋。国家ではなく宗教団体

ホントなら戦争なんて不経済な事せず、外交とかで有利に持っていくのが勝ち組なんだよな。


話巻き戻して本当に済まないが、自衛官な方も居る様なんで言わせてくれ。

自衛隊は軍隊で間違い無いんだよ。
ただ、軍隊が悪いもんだって誰かが言い始めたから皆誤解してるだけ。
そもそも国家ってモンには国民を護る義務ってのがある。
その義務を全うする為に軍隊を持つ権利を行使する訳だ。
左な連中とかが喚いてるせいで肩身狭くなってるけど、
自衛隊の人にはモチベーション上げて貰わないとこっちが困る事になるぞ、本当に。
849通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:55:05 ID:???
>>847
シロッコは女性が支配する世の中を考えてたのは
自分が裏から女を操る存在と考えてたから
850通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 23:55:58 ID:???
自衛隊は実態としては軍隊と同じ物かもしれないが、
とりあえず軍隊ではないという事になってるんだからそういう事にしとけ
851通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:01:35 ID:???
正直コミックボンボン版に種死が俺の中で原作

シンがしっかりとした意思をもって戦いに臨む立派なキャラ
852通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:04:14 ID:???
憲法上軍隊はもたないってなってるからな
853通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:08:07 ID:???
>>852じゃあ日本て国は国民を護る事しないんだ。

街で喧嘩売られても身を守る(逃げる、戦う等)事は個人で出来るじゃん。
ただ、空から爆弾降ってきたら身を守るって個人じゃ無理だろ。
そのための自衛隊なのに、なんか事あるごとに悪役にされてるのは納得いかん。
854通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:10:41 ID:???
>>853
そういうことをきちんと言ってくれる人は少ないのがこの日本
なんせ軍隊は悪いものと小学校から言われ続けてるからな
855通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:11:09 ID:???
>>853
名目上って言ってるのがわからんか
856通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:13:04 ID:???
てかニュースとか討論番組見てりゃ判るだろ
自衛隊とか国防の問題
857通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:13:53 ID:???
てめえら巣に帰れ
858通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:14:47 ID:???
自らを衛(まもる)隊で何が不満なんだ?
実態が同じなら無理に軍隊と呼ばなくてもいいだろうに
859通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:23:01 ID:???
名前どうこうの問題じゃねーんだって。
その自衛隊すら無くそうっつーヴァカ供が政治家なんぞやってるせいでな、人員削減なんか罷り通るってんだよ。
まじ北が攻めてきたら在日米軍はトンズラ、自衛隊は2、3日しか動けないって状況になんぞ。

たまにでいいからこういった事も考えようや。
ただ、いい加減スレ違いなんで終了する。
熱くなりすぎた、スマン
860通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:24:28 ID:???
コストダウンに協力したいが……と、某企業のQA課員がほざく。
製造規格緩めりゃちったぁ楽なんだがなw
861通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:25:58 ID:???
誤爆かな
862通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:29:23 ID:???
>>859
四六時中考えててもいいから金輪際ここでやんな、な?
863通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:55:15 ID:???
>>859
軍板で論破されてろ。
帰ってくるな。
864通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 00:57:53 ID:???
詫びを入れている相手に追い討ちをするのはエレガントとは言えないな
865通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 01:47:44 ID:???
スレが伸びていて「また投下きたかな?」と思ったら自衛隊談義か。
現役の自衛隊の人にはがんばっていただきたいが
そのままずるずる語っているのはスレ違いどころか板違いだろ。
866通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 04:26:26 ID:???
だな。日本地震や水害多いからJ隊の皆さんにはお世話になる日が来るかもしれないし。
だけど侵入されたら終わりとは言うが既に大量に侵入されてるからなぁ、いざという時は頑張ってくれ。
……さて某板に帰るか。
867通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 06:15:00 ID:???
捨てぜりふ乙。さっさと黙って帰れ。
868通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 08:02:38 ID:???
煽りうぜーな。てめーも、もうここ来るなよ。折角スレが伸びてると思ってたのに
869通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 09:23:08 ID:???
去るなら黙って去れ。
dexiosuかお前は。
870通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:22:13 ID:???
自衛隊談義じゃねぇ
何故ラクシズは糞なのか談義だ
良く見ろ、特に>>832-851あたり
871通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:26:57 ID:???
煽るのも勝手だがせめて感想の一つ位付けとけ。
スレの無駄だ。

作者様GJです。

カミーユが間に入ることによりシンとステラに微妙な光明が出てきました。
このままいけばアスランが蝙蝠にならなそうなのでつね.
872通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:29:23 ID:???
でもアスランこのままだと戦力的にバランス取れないのがなぁ・・・
どこのクロススレも同じ問題を抱えてるけど
873通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:37:06 ID:???
>後に、この時交わした会話がお互いを苦しめる事になろうとは
>今の彼等には知る由も無かった……

この一文が不安を掻き立てる…
もっとも同人アヌメでは脱走のはるか以前の時点でハイネの事なんか
忘却の彼方、つかキレイに消去されてたようだが。
874通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:42:35 ID:???
ハイネ復活時のMSはギャン・○○○を希望
875通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:43:01 ID:???
ここまで前フリが強調しているとむしろ逆にどういう神展開が来るかとドキドキしてしまうのは俺の悪い癖だ
GJ!!
876通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:49:51 ID:???
>>874
ギャンかい!!ガルバルディ・○○○にしようぜ!
877通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 10:52:00 ID:???
ケンプファー・○○○でもいいな
あとグフに近いところでイフリート・○○○とか
878通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 13:57:01 ID:???
ガルバルディはむしろゲルググ寄りのイメージが強いし、
グフ系やケンプファーはいい意味泥臭い戦士タイプの機体との感が強い。
さりとてギャンでは些か線が細いとすると…
その流れを汲むR・ジャジャ○○○とかではどうかと。
879通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 13:58:53 ID:???
>R・ジャジャ

それはあんまりだ
880通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 14:06:02 ID:???
せめて種・種死のMSVとかの方から取って来てやれよ、、、、orz
881通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 14:06:31 ID:???
R・ジャジャまで行くと、名前の語呂も悪いし洗練されすぎてる感がある。
もっと無骨な感じが出てないと。
882通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 18:01:39 ID:???
ゲゼ・スナイパーカスタム
883通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 18:31:31 ID:???
グフクラッシャー
884通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 18:34:36 ID:???
ハイネクサス
885通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 19:03:56 ID:???
ゲルググインヴォークでいいじゃん
886通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 19:11:00 ID:???
Zガンダムのデータから得たノウハウと、バビのデータの流用でCE版ハンブラビとかどうだ?
887通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 19:54:25 ID:???
>>886それにギャンも少し入れるんだ!
888通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 19:55:33 ID:???
つまりバビか
889通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 20:13:35 ID:???
水中用MS(アッシュとかグーンとか)を宇宙で使えばいいんだよ
登場時の効果音は「ガオオオン」ね
890通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 21:13:28 ID:???
いっそ素直にザフト版コピーZということでバウ○○○とか
891通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 21:15:31 ID:???
ええい、なぜ誰もヅダ○○○と言わん!?
892通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 21:20:13 ID:???
アッガイ・ビリーバー
893通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 22:16:49 ID:???
○○○にハイネが入るのはデフォでおk?
894通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 22:26:56 ID:???
アルプスノショージョ・ハイネ
895通常の名無しさんの3倍:2006/10/20(金) 23:06:36 ID:???
頼む、投下来てくれー
896カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/21(土) 00:54:43 ID:???
投下したいが残りの容量を考えると投下していいものかどうか悩みどころだったりする……
ぶっちゃけ今回は区切りが微妙なんで次スレにしようかと思ってるんですけど、どうですかね?
897通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 00:55:00 ID:???
>>891
これ以上死亡フラグ立てるなよ・・・。
898通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 00:59:29 ID:???
>>896
大丈夫マダ100レス分もアル
899通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:02:11 ID:???
>>896
次スレでいいんじゃない? 
区切り悪いと気持ち悪いもんね〜

こっちは適当に埋めましょう
900カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w :2006/10/21(土) 01:03:48 ID:???
>>898
いや、レス数じゃなくて500KB超えたら一杯じゃなかったんでしたっけ?
ちなみに今490KBなんですけど
901通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:03:55 ID:???
>>898
いや、容量の方は後11KBしかない
902通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:05:38 ID:???
ああそういや容量もあったんだっけ・・・・
うめ
903通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:07:06 ID:???
埋める前に次スレ立てないとな
まだ立ってないよね
904通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:11:50 ID:???
マジかよ昨日の自衛隊バカのせいで…
905通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:15:11 ID:???
もしカミーユが種・種死の世界に来たら2
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1161360864/l50
次スレ
立てました投下お願いします
906通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:16:30 ID:???
>>905
乙乙
907通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:16:52 ID:???
ume
908通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:18:38 ID:???

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909通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:19:26 ID:???

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埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ
埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ
埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ
埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ埋めるぞ
910通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 01:20:13 ID:cKA1ZIgq
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911通常の名無しさんの3倍
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