いや。なんかあの世界ならシンも格好良く描いてもらえそうだと思った。
面白そうな予感
悪魔の実は食べさせない方向でひとつ。
いや、食べろと言われたら食っちまいそうだけどさ。
シンは……食わさないとしたら、いったいどんな能力がいいかね。
正直思いつかん。コーディネーターの体力生かして、格闘戦や刀使わせるか?
食わすとしたら、エネエネの実のエネルギー人間あたりが妥当かと。
素でパルフォマキーナ撃てるし。
・いつも敵を倒す時は「どん!!」になる
・生身で戦艦を軽く沈める程度の力がなければ活躍できない。ウソップなんか特異な例
・肉食ったら治らなければならない
・やっぱ悪魔の実はデフォ?
・修業シーンなしでもパワーUPできなければならない
・尾田絵になるため純粋な美形ではいられない
・雑魚兵1000人を一人で蹴散らせなければならない
あとは?
泣くときは大口開けて鼻水垂れ流し
運命に乗っててもミホークあたりには負けそうなのが恐ろしい
モビルスーツに乗る=負けフラグ
に見えなくもないから困る。
,..-――ー-..,, ,/゛.,./ ./ ‐
.,..=> . ,゙;;i、 ___. .-゙.,..;;,'>~^゙',
./ | l i!;;゙lrl'"´ `''-_!'´ { ,.. |;;、
,' .i', ,', ..l,'!l「| ゙l, ヽ `゛
!.ゝ-'" .`^^゙゙゛ ゙ー'゙ l , ― 、 .l"''ー'''''"
! | ./ .、 .| | .,,,,,,..-‐
.ヽ |ノ゛ .`''" !
. ヽ ,', _ノ゙-.... -‐'゙ < シンちゃん迎えに来たよ
. ヽ、 / `!i.... -'''./
.`'''ー- ....,,,,,,........-''''ヽ. ヽ .\
/'、 ! l .`'―ー‐'''
l l._,,,.. -‐.l''''''''''.l
/ . l ', !
/ l _..-ー'''l''''―'iゞ
/ .゙'! .l l _,.. -‐
./ | | | ..-'"´ ___、
/ ./ . ̄''!i`-`-`-`-r‐-i
l .,/゙´ \ \ !/ /
. ! . / . _,,........、 ヽ ゙l、 . !.i
| / /´ .,,,ミi、 ...l. ゙ッ-!ヾ
゛
・戦闘中、もしくは緊迫した状況で過去の回想。
・ステラが登場する場合、燃えるシチュエーションで『ステラは俺が守るん
だぁぁぁぁぁっ!!』
メリー号が喋った件について
運命もしくはミネルバ「迎えにきたよ」
そして何も不思議がらないシン
シンも海賊王目指すの?
>>4 みんなスルーしてるが、パルマ フィオキーナな。
>>13 シンは海賊王目指すよりも、もっと別の動機のほうが似合う気がする。
冒険家になってステラやマユを生き返らせる為の何かを探すとか
力を手に入れるためとか
ワンピの世界では姓が先に来るからシン・アスカがアスカ・シンになる
シンが最初それを知らずにシン・アスカを名乗って、アスカアスカ呼ばれる
シーン考えたらちょっと面白かった。
懸賞金がつくとして、そのときのニックネームは、『赤目のシン』か?
もしくは、『赤服のシン』か。どの道赤いな。
後、シンの旅の動機だが、元の世界に戻るためというのもありかも。
あほ毛のシン
戦闘スタイルはどんなんだ?
やっぱ剣と格闘か?
剣だったらゾロとの絡みが面白い事になりそうだが。
ミラコロの実
言いたいことはわかる。それだったらスケスケの実だろう。
『俺の攻撃も存在も誰にも認識出来ない……そう。俺はスケスケの実の透明人間だ!』
とかいうノリで。それこそ研ぎ澄ませば音や気配も完全に消せたりして。
けど、こういう能力って、話にいかしにくいよなぁ。どっちかといえば、ニコル
あたりが使ったほうが納得できるし。
突き詰めてシリアスに考えると結構強力な能力ではある。
シンなら火とか、インパルスからとってやられても元通りみたいな感じの実しか…
でもこういうのもうあるしな
能力者じゃない方がいいかも
いくつかネタは考えたんだが。
・剣士
アロンダイト繋がりで大剣振り回す一刀流。
・ナイフ使い
ザフト時代に習ったものの応用。
・六式使い
大穴。世を儚んで引退した元CP9のおっさんに教えられたとか言うネタで。コーディ
ネーターの身体能力なら、使えても不自然じゃない?
>>17 『赤目のシン』だと、某ドラまたがいる世界の魔王みたいだな;(っていうか
このネタわかる人いるのか)
>>25 今、別スレでそのドラまた嬢と一緒にいて、ツッコミを華麗にスルーされてんよ。
ところで拳銃使いってのはないの?と、思ったがイメージが違うか
27 :
25:2006/09/27(水) 13:01:06 ID:???
>>26 自分もそのスレ見てるが、もしや同志!?w
拳銃使い……どっちかって言うと、イザークのイメージなのは……
……自分だけか。スマソm(__;)m
俺はアスランの…って
ってかシンはナイフの扱いがうまかったらしいしやっぱ剣かね
メカメカの実
体の性質を変化させ、自身を機械化させることができる能力。
これにより常人よりも遥かに優れた敏捷性と耐久性を持ち、
サーベルや銃等の攻撃にも耐えることが可能。
また、この世界では未知の力であるビーム兵器が使え、
その力は一人で敵海賊船を破壊してしまう程である。
高機動タイプの「フォース」、近接格闘タイプの「ソード」、遠距離戦闘タイプの「ブラスト」に加え
その三つの特性を併せ持つマルチ戦闘タイプの「デスティニー」がある。
書いてて思った。俺キモスorz
>>31 いや、アイデア自体はいいと思う。流石にこのまま使ったら厨スメル抜群だが
『トリトリの実』と同じようにモデル複数のカテゴリにしてはどうだろう?
モデル『フォース』モデル『ソード』など数多くのモデルが存在し、
名称に見合った体の一部だけが機械化して使用できるというのは?
超人がひしめくワンピの世界で揉まれたら和田や隠者なんて生身で倒せそうなんだが。
つーかもはや運命に乗るより生身の方が強かったりして。
一人で種世界全軍を相手にできそうじゃね?
34 :
32:2006/09/27(水) 22:01:35 ID:???
>>33 種世界全軍相手というのはいきすぎかもしれないが、生身だったら確かに
相手にならないかも。コーディネーターの身体能力も、六式使いとかの前だと無力
だしなぁ。
一番の近道は悪魔の実なんだが安易にそれに頼るのもなんだし。まあ、もし食わせ
るとしたらパラミシアだろうな。ロギアは強すぎる。
とりあえず、ステラはイヌイヌの実でファイナルアンサー。
今TOAやってるから『鮮血のシン』という通り名が浮かんだ。
紅蓮でもいいかも。
36 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 00:44:57 ID:3GCN/X5m
赤足のゼフのように、敵の返り血で真っ赤に染まるって意味の『赤服のシン』
ではどうだろう?
上げてしまった……スマソ
どれもいいなw
接近戦メイン、ってポイントには皆異論がないようなので、そういう方向で。
それだけだと影が薄くなるから、もう一味個性がほしいところだなぁ。
ゾロは三刀流、サンジは足技オンリーで技名が料理……敵キャラも各々強い個性があるし、
ここに普通の剣士やナイフ使い放り込んでも霞むだけ。
なにか、シンならではというネタは無いものか。
刀剣類は既にゾロがいるから、シンには槍とか使ってほしい
そんな俺はブラスト厨
いっそ大剣(ソード仕様)、槍(ブラスト仕様)、銃(フォース仕様)
の三種類の武器を使うキャラはどうだろうか?
どの武器を使うかは某漫画みたいに完全にランダムで決まるとか
ピンクの携帯電話が武器
パラミシア系悪魔の実を携帯に食わせる
あるいは携帯から槍だのなんだのが出てくる
どこぞの組織が作った人工悪魔の実『ブキブキの実・モデルランス』。文字通り
体を武器に変えることが出来るようになる。
携帯にそれを食わせて槍として振り回す……は、無理がありそうだな。どちらかというと、
ハンターっぽい。
ただ、槍っていうのはいいアイデアだと思う。前例が一人もいないし。
ど ん っ
ワンピのお約束過去話
海賊に家族を殺されたとか
異世界から来た、系のネタじゃなくていいのなら、ネタがある。
今まとめてるので一寸お待ちを。
楽しみにしてまつ(`・ω・´)
49 :
47:2006/09/28(木) 22:55:33 ID:???
プラント
グランドラインに存在する小規模国家。保有する国土の規模は世界政府に参加する15
0カ国の中でも最小だが、きわめて高い技術レベルと軍事力でそれを補い、列強各国に対
しても極めて大きな発言力を持っていた。
ワンピース世界において天文学や遺伝子工学を学問として確立させる程に卓越した学力
を誇り、グランドラインの科学技術の向上に最も貢献している国家。船全体を鉄で作った
鉄鋼艦を世界で始めて完成させ、実戦配備した国でもある。
以前は世界政府の加盟国だったが、『人工悪魔の実』と『人工島コロニー』の二つの技術
が完成した事により状況は一変。余りに大きな力を持つに至ったプラントはおごり高ぶり
世界政府と関係が悪化。現在は国交も断絶してしまっている。
本来保有している国土は、豊富な鉱脈が地価に眠っていて、領海全てが鉱脈といっても
差支えが無い程の規模。
正式名称は『Peoples Liberation Acting Nation of Technology" (テクノロジーに立脚し
た民族解放国家)』であり、プラントとはその頭文字を繋げた略称だが、正式名称を素で諳
んじれるものは国民にも少ない。
種本編のように戦争寸前という緊迫した状態ではなく、あくまで嫌いあっているという
程度。
元々の島の名前は『コーディネ』であり、その名前からプラントの住民は『コーディネ
ーター』と呼ばれている。
人工島コロニー
プラント原産の金属を使って作られた人工島であり、元々は海底にある鉱脈を発掘する
ための施設である。それが進化、発展の末に『金属で出来た島』という異様な姿に変質し
たもの。その保有する機能も食糧生産から武器の増産まで多岐に渡っているが、原則とし
て一つのコロニーは一つの作業に特化されている。
国土の少ないプラントが高い生産力を支える屋台骨であり、世界政府との関係悪化の要
因の一つ。というより、コロニー技術の場合は他国がこの技術を優先的に得ようと他国と
いがみ合い、戦争が起きそうになったというのが理由(世界政府の秩序を乱すとして、忌
避された)。この一件に関してはプラントは被害者だといえる。
50 :
47:2006/09/28(木) 22:57:50 ID:???
人工悪魔の実
プラントがその技術の粋を尽くして作り上げた、最高最悪の技術。海の秘法といわれる
悪魔の実を人工的に作り出す技術である。その製造スキルは謎に包まれており、現存する
悪魔の実の種から悪魔の樹を作り出しただの、海の悪魔と契約を交わしただのと言われて
いるが、詳細は不明。
現存するパラミシア、ロギア、ゾーンの三体系に加え、空想上の生物に変形するゾーン
系の亜種『モンスタジア』、虫に変形する『インセクター』、体の一部を武器に変形させる
『ウェポナー』の三体系が存在する。
余りに圧倒的な軍事力をもたらすこの技術は世界政府の不信を買い、国交断絶の最も大
きな原因となった。
プラントの軍事力の基盤的な存在だったが、最近になって『生殖能力の低下』という深
刻な副作用が確認された。現在対策が立てられている真っ最中。
幼児に悪魔の実のエキスと海のエキスを同時に注入したり、ゾーン系の因子に魚の遺伝
子を選んだりして『カナヅチにならない悪魔の実の能力者』を作り出そうという研究も進
められている。両方とも目的に見合う能力者が完成したものの、前者はテロメアが短くな
り、後者は海陸が逆転しただけで水や海牢石がないと、普通の能力者が海に落ちたのと同
じ状態になってしまうなど、副作用が多発しており、現在も研究が進められている。
ザフト
プラントの保有する軍隊。国交断絶と同時に作られたために意外と歴史が浅かったりす
る。
プラントという国そのものが小さいために軍隊も必然的に小規模。だが、特筆すべきは
その豊富な武装と、その知識によって施される高度な戦闘教育。赤服以上の仕官全員が人
工悪魔の実の能力者であるという、個々の戦闘能力の高さである。
特にフェイスと呼ばれる特無体の戦闘能力は海軍本部の将官に匹敵するといわれている。
ザフト(Z.A.F.T:Zodiac Alliance of Freedom Treaty=自由条約黄道同盟)が正式名称だが、
名前の由来は諸説あるが、実際のところは天文学を大して知らない他国民に対する優越感
の表れでしかないらしい。
余談ながら、ザフトの軍人はとにかく他国の人間を『凡人(ナチュラル)』蔑み見下す傾
向がある。
オーブ首長国連邦
グランドラインに存在する、世界政府に所属しない永久中立国家。
『他国を侵略せず、させず。戦争に関わらず、関わらせず』を国是としている。現状で
唯一プラントとの国交を行っている国家でもある。
その独特の政治体制から、プラントに対しても決して敵対しようとしなかったのが災い
し世界政府のから攻撃を受けた事もあった。
人工悪魔の実やコロニーの技術を除くのならば、プラントにも引けをとらない技術力を
持っており、オーブの重火器といえばグランドラインでも評判の高品質を保っている。
ネタっていうより設定だなこりゃ。
プラント早くぶっ潰せw
>>49-50GJ!!、なかなか良い設定だけに小説も読みたかった…。
書く気は無いかな?
>>49-50 こりゃまた、凄まじいオナヌー妄想ですね
プラントなんてすぐさまバスターコールの対象じゃんwww
55 :
47:2006/09/29(金) 13:40:40 ID:???
>>52-53 ありがとう。けど、何分推敲中なもので欠点も多く、そのまま使ったらかなり
痛い作品が出来上がりそうで怖い。
>>54 ナルホド。確かに……けど、このくらいしないと、種のキャラクターの存在感が
なくなるヨカーン。いっその事、プラントをバロックワークスみたいな秘密結社
二デモしたほうがいいのだろうか。
うちの姉にこのスレの事言ったら「シンみたいな存在の薄い子。曲者ぞろいのワンピで目立てるわけなじゃん」って言われた・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・ねーちゃんヒデーよ・・・・・・・
>>41 烈○の炎に出てくる鋼金○器みたいなやつは?
1つの武器が3つの形態に変形するとか
>>47 バスターコールで滅んだことにして、ザフトの残党が大規模な
海賊になったって事にしたらどうだ? ザフト海賊団とかで。
>>57 硬い金属の塊にドロドロも実とかの液体系悪魔の実食わせて
液体金属の武器ってのもありだな。金剛アンキ系統だとかなり硬い金属に
しないといけない。鉄だとすぐぶっ壊されるイメージがあるし。
……いっその事、普通の武器を壊してウソップに直させるって流れもいいか。
ここで素朴な質問
シンはどこの勢力なの?
・ルフィ一味
・普通の海賊
・海軍
これまでの流れだとルフィ一味なのかな?
まずはどこにも所属せずに…
でもその中ならイメージ海軍かな
無所属からルフィ一味に一票
あのー、ほらー、あれだよほらいたじゃん
二話からしばらくルフィと一緒にいた雑用係長のメガネと元海軍大佐のドラ息子のコンビ
あいつらとしばらく海軍やって、政府の正義に疑問抱いてサウロみたいに脱走すりゃいいんじゃね?
基本ヘタレてんのと絡めるとシンのキレキャラが出やすくて良いと思うんだが
もしくは海軍で通すならスモーカー&たしぎ辺りと組ませると個人的にマッチしてると思う
まぁこれは異世界から飛んできたならの場合な
俺の名前はシン・アスカ。いや、この世界に合わせるとアスカ・シンか?
今はそんなことどうでもいい、誰か俺を助けろ、このヤロー!!
―――回想開始―――
「逃がさないと言ったろ!!」
↓
「メイリン、ソードシルエットを!」
↓
フリーダム撃墜
↓
大 爆 発
↓
平和そうな島にいた(パイロットスーツは軍服になってた)
↓
とりあえず叫ぶ「此処は一体、何処なんだーーーッ!!」
↓
街らしき所に行く
↓
変なおっさんが女の子泣かしてた
↓
「アンタって人はァァァッ!!」
↓
おっさんに名前聞かれたから一応名乗る
↓
おっさんは海軍だかのお偉いさんらしい
↓
写真撮られた
↓
おっさんに逃げられる
↓
その日は野宿
↓
翌日 指 名 手 配
―――回想終了―――
「どうしようorz」
続かない
64 :
63:2006/09/29(金) 23:45:43 ID:???
スマン、酔った勢いで馬鹿なことを書いた。
とりあえずザクでレクイエムの発射を阻止してくる
>>63 いやいやGJ! シンならこーなるだろーなーととんとん拍子に話が進む
様が目に浮かぶようだ!
続けてみる。武装に関してはまだ決まってないのでスルーで。
相手がお偉いさんだったせいで明らかに分不相応の賞金をかけられる。(500万くらい?)
↓
自分の置かれた状況が分からないうちに島を脱出。
↓
方々逃げ回っているうちに自分が異世界に来た事を悟り、orz
↓
懸賞金が高いくせに弱いという噂が広まり、やたらと狙われるようになる。
↓
自衛のために自分を鍛え始める。
↓
鍛えすぎてルフィ達みたいに人間離れし始める。種付きコーディネーターは伊達じゃない。
↓
パイロットとしての経験から、操舵の能力に才能を発揮し始める。
↓
怪我をして倒れているところをプードルに拾われ、助けられる。
↓
その後、オレンジの村に滞在していた所にバギー海族団の襲撃。
↓
恩人である村長を守る事を優先し、戦わずに村人の逃走を助ける。
↓
その後ルフィと遭遇。気 に 入 ら れ て し ま う。
↓
「お前仲間に入れ!」
「断る! なんで俺が家族なんかに……」
「うるさい! 入れったら入れ!」
「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇっ!!」
↓
とはいえバギーを撃退してもらった恩があるので、イーストブルーを出るまでという条件付で仲間入り。
↓
が、アーロン海賊団との一件で麦わらの一味と断定されてしまう。
↓
結果、懸 賞 金 U P 。1000万の大台突破!
そして現在。
シン「…………orz」
ルフィ「?
どーしたんだシンの奴。四つんばいになって」
ウソップ「今はそっとしといてやれ……」
シンにはワンピのキャラに色々突っ込みいれてほしいな
67 :
65:2006/09/30(土) 00:59:02 ID:???
家族→海賊でした。
吊ってくる。
操舵手か。確かにあの一味にはいないからなぁ。
そのシンはきっと、賞金が上がるたびにorzってなるんだろうなww
70 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 18:43:06 ID:AIm8JyM7
あげ
71 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 19:06:44 ID:1bSeHmpx
いっそ六式使わせりゃいいよ
指銃→パルマだから指全部使って
嵐脚→剣から斬撃
剃→残像バージョン
3年ぶりくらいにコビー思い出した
シンの能力、『タネタネの実』。
これは特殊な悪魔の実で、食べた者の潜在能力を100%引き出す事が出来る。
一定の条件下ならばそれ以上の力を引き出す事も可能。
パラミシア系か。使った後に体がボロボロになりそうなヨカーン。
それだとキラやアスランも同じ悪魔の実になってしまうのだが。
個人的には、キラは青キジ級のラスボスとしてロギア系の能力者であってほしい。
いっその事、青キジ直属の部下にしてあの考え方叩きなおしてもらうか?
実を食べなくても、敵も味方も化物の中で戦い続けていれば、
そのうち、燃えるキックを撃てるようになったり、阿修羅のスタンドを出せるようになります
>>75 阿修羅のスタンドって、作品違うんじゃないか?
ゾロが出してたアレの事だろ
CP9戦でカク相手に出してた技だな。
気迫で三面六臂の鬼神の幻影を見せてたんだが、それがスタンドっぽかったと
76は言いたかったんだろう。
ところで、ワンピースのキャラクターに関わらせるには、やはり強い個性が必要だと思うのだが
どうだろう? 俺としては、69の意見をとって賞金が上がったり騒ぎに巻き込まれたり
する度に落ち込むナミの同類みたいな扱いがいいとおもう。
後、ルフィやゾロ達の誇りとか信念とかに感化されて一回り大きく成長するとか。
うん、俺もその流れはワンピっぽくて好きだ
ただ現状の命題はシンの戦闘スタイルだよな・・・
どんなにガンバってもワイパーやパウリー級にしかなれない気がする俺
変に奇をてらっても麦わら一味としては影が薄くなるし・・・
よし、ちょっとワンピ1巻から読み直してくるわノシ
シンって自分が一番不幸だって思っているとこあったよな
そういうとこも使えそう
あと弱者には弱いとことか、信じやすいとことか、流されやすいとことかw
>>80 >シンって自分が一番不幸だって思っているとこあったよな
というより、周りが見えないくらい頑張らなきゃいけなかったんだろう。
でなきゃ生粋のプラント人でもないのに、赤服にはなれなかったろうし。
第一、プラントとオーブとは環境も社会通念も違うんだから、そんな中
で生きてくには、つっぱてなきゃやってけなかったんジャマイカ?
>>63のネタを生かして投下してみる。
>>64のは人間離れ〜まで一緒。
「貴様、アスカ・シンだな?」
「なんだ? おっさん」
「――はぁ」
首を傾げるルフィをよそに、シンは一瞬、『人違いです!』と誤魔化そうかと思ったが、
すぐに諦めた。問いかけてくる男の手に、見慣れた手配書の束があるのを見つけたからで
ある。
いつの間にか撮られていたあの顔写真。アレと見比べられては、到底言い逃れは出来な
い。
身の丈2メートルはあろうかという大男は、槍を二本両手に持って、耳障りなしゃがれ
声で吼えた。
「年貢の納め時だアスカ・シン! この『二槍流のジェラード』が、貴様の賞金800万ベ
リーを貰い受けるぞ!」
ウエストブルーの片隅にある無人島の砂浜……
先程まで彼が堪能していたのは、背中に厚く感じる砂の感触。潮の香りと果ての無い水
平線。そして、耳にささやく健やかな波の音だった。自分と同じようにタマタマこの島に
立ちより、今傍らで寛いでいる、陽気な海賊との語らい。
謂われない罪で追われる彼にとっては、久方ぶりの安息だった。
それがどうだ? このぶしつけな闖入者のせいで全てがぶち壊しである。
水平線は見苦しいブ男に。波の音と語らいは怪獣の雄叫びにそれぞれかき消されて、台
無しである。潮の香りも、ジェラートとか言うおっさんから漂ってくる体臭で相殺されて
しまっている。
離れたところからルフィとは別に寛いでいた二人の船員は、いきなり響き渡った声に驚
いて船長の方向に目線を投げる。
それを背中で感じながら、シンは嘆息して傍らに立てかけてあったものを手に取った。袋に包まれた棒状のなにか。彼が肌身離さず持ち歩いている『相棒』だ。
「赤服のシン。初頭金200万ベリーから、値上がりしてって800万」
「800万って……50人くらい殺さなきゃつかない金額よね」
「賞金? シン、お前海賊なのか?」
「断じて違う! ついでに犯罪者でもない!」
賞金稼ぎ時代の性か律儀に説明するゾロ、あからさまに軽蔑のまなざしを向けるナミ、
暢気に首を傾げるルフィの三人に、そこだけは断言しておくシン。当たり前である。彼が
賞金首になったのはあくまで不幸きわまる事故なのだから……!
「何をほざく! 海軍の将官に対する暴行が、犯罪でなくてなんだというのだ!」
「町で女の子泣かせてヤラシイ笑い浮かべた変態ジジイが海軍将官だなんて、誰がわかる
かぁっ!!」
突っ込みいれる大男に、シンさらに突っ込み返す。
……正直、『あんた一体なんなんだーっ!』だの、『アンタって人はー!』だのの勢いで
ボッコボコにしたのだから、懸賞金くらいついて当たり前だと思う。泣かされてた少女が
マユに似ていたのも無関係ではないのだろうが。
助けられたはずの少女が泣いて逃げ出した事と、この一件だけで『赤服』なんて二つ名
がついた事から、どんな有様だったかは読者の想像にお任せする。
(きっかけになった将官、確か再起不能じゃなかったか?)
ふとゾロの脳裏に昔聞いた話がよぎったが、彼は口に出さなかった。
「……やるか?」
代わりにゾロの口を突いて出たのは、そんな言葉。見たところ、あのジェラードという
槍使い、口先だけの手合いではない。並の男なら持ち上げられないであろう鉄鋼製の三叉
槍を片手で軽々と扱い、なおかつ様になっているからだ。賞金稼ぎとしては中堅どころと
いった所か。
食料がつきかけていたルフィ達に食料を分けてくれた恩返しのつもりで聞いたのだが、
「いや、いいよ。俺でも何とかなりそうだ」
意外な事に、シンは断った。こう言われては傍らにいるルフィも手の出しようがない。
彼は手にした『相棒』の紐を緩めて、袋を捨てる。
『相棒』の全貌を目にしたおっさんとゾロの反応は正反対。おっさんは鼻で笑い、ゾロ
は思わず目を見張る。
袋の中から出てきたのは一本の槍だった。
ただ……それは、明らかに普通の槍より細く、頼りなく見える代物だったのだ。すたす
たと自分に向かってくるシンに、ジェラートは嘲りの言葉を投げかける。
「ふん! 槍一本でわが二槍流に勝てると思ってるのか!? しかもそんな細くもろい槍
で」
「思ってるから言ってるんだろ」
「ならば来るがいい! 戦いの極めるのはパワーだという事を教えてやる!」
構えるジェラードに、シンは黙々と歩み寄っていく。
ヒュンッ……と風きり音をたてて槍が新円を描き……
ぼとっ!
何かが、砂浜に落ちた。
「……へ?」
マヌケな声を上げたのは、ジェラードだった。
視線の先に落ちているのは、見覚えのある三叉の物体。
……彼の槍の、穂先だった。ジェラートから見えるそれは、鋭利な刃物で切られたであ
ろう断面を彼に見せ付けていた。
ヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッ!
ボトボトボトボトボトボトボトボトボトッ
「! !? !! なっ!? なにがっ!」
シンの槍が円を描くたびに、ジェラードの豪槍はその丈を削られていく。
わけが分からず呆然とするナミを尻目に、ゾロとルフィはその凄まじい技に驚いた。い
や、これを技と呼んでいいものか……
技もヘッタクレもないのだ。シンの繰り出す槍の速度が速すぎて、ジェラードとナミの
動体視力では捕らえきれないのである。
すちゃっ
槍を切り刻んだのと同じように、目にも映らぬ速さでシンの槍の穂先が喉元に突きつけ
られた。ジェラードは呆然と、両腕の中に残った金属……もち手の部分だけになってしま
った槍の慣れの果てを落とす。
「これ以上やるなら、指ももらうぞ……」
この調子で賞金稼ぎを撃退してきたというのなら、賞金が上がるわけだと、ゾロは呆れ
た。はっきり言って、下手な800万級の賞金首よりも強いだろう。
いや、それよりも。
目下の問題はそれではなく。
「すっげーっ!!!!」
逃げ出していくおっさんを忘却の彼方に押しやり、両目を輝かせるルフィのほうが余程
の大問題なのだが……その、余りに輝きすぎる両目を見た瞬間、二人の船員は思った。
――駄目だ。もう止まらない。
――いらっしゃい新入り君。
シンとルフィの『仲間になれ』『嫌だ』の大論争開始まで、後30秒。
とまあ書いてみたわけだが、いかがなものか。パワーはゾロがいるからシンは
スピード形にしてみたのだが。
GJ!
そのまま突っ走るんだ
>>82-85 どうしよう……シンがちょっぴしカッコよくみえた(笑)
シンは『相棒』をどこで手に入れたんだろ?
なんかワンピを文章にするって難しそうだが、しっくりきてるしうまいなw
なんか最近のワンピ読んでたら操舵手とかいらなそうな気がしてきた・・・
・船長
・副船長
・航海士
・狙撃手
・料理人
・船医
・考古学者
・船大工
これ以外になんかあるか?
93 :
47=82:2006/10/03(火) 14:06:12 ID:???
皆さん褒めてくれてありがトン。
俺が書くシンは今後この『高速槍使い』の設定で行こうと思う。
こっからクロネコ、クリーク、アーロンと戦闘時の見せ場だけピックアップして
書いていくつもりなのだが……そこで皆に聞きたい事がある。
基本的に一対一を複数描くワンピースにおいて新キャラを出すという事は、
敵の数も増やさなければならんわけだが、この場合敵キャラはオリジナルがいい
のだろうか? 意見求む!
>>82-85さん GJ!!続きWktkっす
敵キャラは他に種世界から呼び込むのはいかがですか?
>>93、敵はワンピの海軍キャラはどうだろう…?。でも作るのは職人さんなんだから職人さんの心に従えば良いと思うよ。
種世界からはシンだけとするならオリジナルに出した方がいいかもな
しかも種から敵キャラを出すのはちょっと荒れそうかもw
98 :
94:2006/10/04(水) 11:17:36 ID:???
そっかー、荒れる可能性あるかー
>>98 それに、シンの時と同様、攻撃パターンなどの構成を練らなければならなく
なる。
元々“シンを”放り込むんだし……
ただ、
>>95の発言もわかる。
……まぁ、あまり討論を続けても、職人さんがやりづらくなるし。この辺に
しようじゃないか。
敵としてではなくライバルとして来て所属するところが違って…とかならいいかも知れんが
ヨウランとかヴィーノとか来てほしかったりw
でも職人は好きなように書いていいからな!
じゃ100
>>100 もしくは、きちんとした信念を持つ敵として登場させるべきか。
アスランなんかいいかもな。スモーカーにあの主体性の無さを鍛えなおし
てもらって、今度は二度と裏切らない人間に成長するとか。
キラは青キジや海軍上層部のある意味覚悟の座った『正義』を目の当たりに
して開き直らせるとか。
……そうなるとしたら、二人はどんな戦闘方法がいいのだろうか? せめて、
俺たちで職人さんを援護したいのだが。
とりあえず、キラはロギア、アスランはゾーン系がいいと思うのだが、どうだろう?
シンが食うならPS装甲的な能力の実はどうだろう
肌の色が変わ……ったら流石に怖いが
武装連金思い出した
104 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/05(木) 14:04:33 ID:IoGb28NG
あげ
カゴリはゾーン系
ゴリゴリの実か
悪魔の実って二つ食べたらどうなるんだっけ?
死んじゃう的なことをCP9の人が言ってた気がする
110 :
47=82:2006/10/06(金) 00:44:37 ID:???
SIN IN ONEPIECE キャプテンクロ編、完成しました。
大筋は本編と同じなんで、シンの見せ場だけピックアップしていきます。
1
早朝の森というものは、いつも湿った、しかし心地よい涼しさをはらんでいるものだ。
森の中を槍を片手に走りながら、シンは昔の事を思い出す。
この世界に来る前。コズミック・イラの世界の記憶。この世界では決して戻れない場所の事。
自分はわなの仕掛け方が余りうまくなかった。よく、アカデミーのサバイバル実習でレ
イにそこを突っ込まれ、ルナに笑われたものだ。
それが悔しくて、シンは必死になってワナの勉強をした。森で有効なワナや、ワナに使
う道具の現地調達、殺傷能力を高める術……寝る間や自由時間といった訓練にかかわらな
い全ての時間を惜しんで本にかじりつき、レイに教えを乞うたものだ。そんな努力が実り、
『へたくそ』だったシンのワナの腕は『人並み』にまで上達したのであった。
『通り抜けられたときのために、森にも罠を作ってくる』
村に一つしかない海岸の入り口で迎え撃つというウソップの作戦に、シンがそう提案し
たのはある意味当然の流れだったのかもしれない。しかし……逆側にも同じような坂があ
ったらしい。
(まさか、逆側から来るなんて)
せっかく作った全ての罠が無意味となってしまったのには、少し落胆した。時間と村人
達の身の危険を考え、単純で査証能力の無い罠しか作らなかったので、予定通りだったと
しても、どれだけ効力があったかは分からないのだが。
自分の努力が無にされるというのはいい気分ではない。
そんな緊迫した状態でシンが森の中にいる理由は、単純至極。
……自分で自分の仕掛けた落とし穴にはまり、脱出に時間がかかったからであった。し
かも、一番深くてねずみ返しまで着けた奴。
まるっきりアホである。
「アホか、俺はぁっ!」
111 :
47=82:2006/10/06(金) 00:46:51 ID:???
2
情けない事この上ない自分の姿を思い出し、叫ぶシンちゃん。
いくら慌てていたとはいえ自分の仕掛けた罠の位置を忘れるとは情けない限りである。
どーやら、せっかく努力して身に着けた人並みの罠の知識も、長い宇宙生活と始まったば
かりの海賊生活ですっぽり抜け落ちてしまったらしい。
(間に合うか!?)
間に合わないかもしれない。そんな思いが脳裏によぎったそのときだった。
見えたのだ。道の先に、黒いバックを担いだ黒い背中が。見覚えがあると断言できるほ
ど、シンは『そいつ』の姿を見たわけではなかったが、その姿に双眸が鋭く引き締まり、
足の回転が上がる。
(まさか!? なんでこいつがここに!)
手にした槍を構え、速度をなおも上げながら、シンは叫んだ。
「キャプテン・クロォッ!」
ぴたりと。
道の先を歩いていた男が立ち止まる。
もはや是非も無かった。災い転じて福をなすということか、この場でこの男を倒せば全
てが終わるのだ。思考する時間すら惜しみ、シンは意識を戦闘モードに切り替える。
全力疾走の状態から槍を構え、体にかかった勢い全てを両手にこめて……突いた!
「デ フ ァ イ ア ン ト !」
ゴウッ!
全力疾走の勢い全てを槍に預け、全身を使った渾身の刺突を放つ、高速の一閃。
目にも留まらぬ速度で放たれた槍の穂先は、クロの背中を貫いてその命を奪うだろう。
シンはそう確信し、この技を放ったのだ。
しかし、現実は甘くなかった。
ヒュッ!
「!?」
完全に不意を突いたはずの最速の一撃は、実にあっさりとかわされ。ここで始めて、シ
ンは攻撃直前に相手に声をかけてしまった自分のうかつさに気が付いた。
112 :
47=82:2006/10/06(金) 00:47:40 ID:???
3
しかも驚くべき事に、クロがとった回避行動の速度は速く、麦わらの一味一の速力を誇
るシンですら、補足しそこないそうな程だった。
クロはその速度のままシンの後ろに回りこみ、シンは後ろに回りこんだクロに向かって、
振り向き様に槍をたたきつける。
その一閃をさらにバックステップで回避し、二人はようやく、お互いの顔を見合わせる
に至った。
「『はじめましてキャプテン・クロ』」
「……『赤服のシン』か」
白々しさ爆発のシンの前置きに、クロはマユ一つ動かさずにバックに手を入れた。
「俺の『抜き足』についてくるとは大したスピードだ」
「たいした事ないさ」
「……お前は今、俺の名を呼んだ。それでもあえて問おう。『なんのつもりだ?』」
「アンタの計画をぶっ壊しに来たのさ。……お気に召したかな?」
「ああ。最 悪 の 気 分 だ よ 」
言いつつも、シンは自分の頬に流れる汗を止める事が出来なかった。疲れによるもので
はなく、冷や汗だ。
相対してみて始めて分かる、クロの威圧感。自分は全て出し切っての攻撃だったという
のに、相手に漂うあの余裕……底の見えないクレバスを前にしているような感覚を覚え、
シンは『百計のクロ』が予想以上の難敵だと悟った。
クロはバックから奇妙な武器らしく物を取り出した。黒い毛皮に包まれた猫の手らしき
もの。ただし、その爪は物騒な刀……
「あの世で自慢するんだな。800万の分際で俺に『猫の手』を使わせた事を」
「舐めるなぁっ!!」
目の前でのうのうと武器を装着し始めるクロに、シンは吼えた。構えた槍を正面にかざ
し、高速で回転させ……その遠心力をそのままに、高速でクロに向かって打ち込む!
それは、ルフィたちと始めて出会った海岸で放った、目にも映らぬ乱撃……
「ヴ ァ ジ ュ ラ !」
「――!」
113 :
47=82:2006/10/06(金) 00:48:40 ID:???
4
その一撃目が放たれるのと、クロが猫の手を装着し終えるのとは全くの同時だった。
ギギギギギギギィンッ!
そこから、常人には理解できない世界での駆け引きが始まった。
シンが凄まじい速度で打ち込めば、クロが猫の手で受け流し、クロが猫の手を振るえば、
シンは紙一重で回避する。クロが横へ飛べばシンもその方向へ向き直り、シンが間合いを
離せばクロが詰める。
相手の反応をさらに返す。行動自体は単純事にもかかわらず、そこは常人の領域ではな
い。
(((な、何やってんだあの二人!?)))
背後の茂みに隠れているウソップ海賊団の三人組は、目の前の光景を理解する事が出来
なかった。ウソップの様子が可笑しい事を村の道端で相談していた矢先、様子の可笑しい
クロを見かけ後を追ってきたのだが……こんな場面に遭遇する事になるとは。
二人の間を高速で『なにか』が行きかっているのは分かるが、余りにも高速すぎて理解
できないのだ。
背後の驚愕の気配に気付きつつも、シンは彼らを気遣う余裕など無かった。
(攻撃の速力は、完全に互角! しかし……)
実に単純なロジックだ。
速度が同じならば、それ以外の要素が勝っているほうが勝つ。そして、それらの優位性
をもっているのは……
高度な駆け引きが始まってからおよそ三分。
ざざっ!
高速で行われていた応酬と、それを行っていた双方の動きが止まる。そこで始めて、三
人組は二人のまともな姿を視認することができた。
シンは二つ名の由来になった赤服の所々を切り裂かれ、血は垂れ流し。槍にもたれかか
るようにしてやっとこさ地面に立ち上がっている。
クロは……完全な無傷だった。
呼吸もきれいなもので、肩で息をしているシンとは雲泥の差だった。
114 :
47=82:2006/10/06(金) 00:49:31 ID:???
5
「……わかるか? これが俺と貴様の差だ」
「…………」
クロの言葉に、シンは無言だった。
言い返せるわけが無い。猫の手による手数の差1対10。体力や持久力にも大きく差を
つけられ、速度も移動力まで含め総合的に見れば差がある。この有様……誰の目にも勝敗
は明らかだった。
(あーあ、無様だな、俺)
槍に体重をかけながら、シンは自嘲した。調子に乗ってイーストブルー最速を名乗り、
海賊なんかに遅れを獲るかと挑みかかってこの結果。
思えば、自分は昔からこんなだった気がする。己の感情にしたがって生きてきて、衝突
しては相手を殴り倒し、気に入らなければ喧嘩を吹っかけ。相手は勿論選ばずに怒りの赴
くまま直進し……国家元首に食って掛かった事さえあった。『もう少し分別をつけなさい
よ』とルナマリアに釘を刺されていたことすら今は懐かしい。
えらそうな事を言っても、単に子供のように自分の感情をもてあましていただけだった。
ルナマリアに子ども扱いされるわけである。その傾向は今も余り変わらないだろう……そ
の結果が、これだ。
もういいだろう? シン・アスカ。
お前はこの世界の人間じゃない。ゾロやルフィみたいな化け物じゃない。こんな馬鹿げ
た世界から逃げ出したところで誰も文句は言わない。さっさと膝を折っちまいなよ。
心の中の声を裏切るように、シンはゆっくりと槍を構えた。それは、自分の闘志が折れ
ていないことへの意思表明。
「……無様だな。何をそこまで足掻く?」
「アンタにゃ関係ない」
「命を欠ける理由が、あの村にあるのか?」
けど。もし、もしもだ。
『あいつ等』だったら……今の俺の立場に立ったらどう考えるのだろう?
俺と同じように故郷を焼かれたとしたら、あいつらは……
115 :
47=82:2006/10/06(金) 00:50:33 ID:???
6
『海賊王に、俺はなる!』『うるさい! さっさと仲間に入れ!』
俺と同じように、
『俺の夢? そりゃあ、世界一の大剣豪さ』『俺はこんなところで終われねえ!』
家族の無念を叫びながら、
『俺はウソーップ! 勇敢なる海の戦士だ!』『俺はこの一件を嘘にする!』
八つ当たりに近い世界への怒りを見せるのだろうか。
……あぁ、駄目だ。
とてもじゃあないが、あいつらのそんな姿なんて、逃げ出す姿なんて思い浮かばない……!
「……『信 念』」
「?」
シンはこの世界に来て、彼らと旅をして……短い時間で分かった事があった。カルチャ
ーショックの影響か、ルフィたちと比べて自分の行動概念が驚くほど幼稚だった事を悟っ
たのだ。
アスランが以前に俺にかまってきたのも、叱りつけたのも、きっと、自分に『信念』が
無かったからだ。幼稚な怒りに全てを任せていたからだ。
それ故に、シンの目には彼らが……輝いて見えた。自分には無い、決して折れ曲がらな
い信念、譲れない誇り。大いなる『夢』、犯罪者と呼ばれようが突き進む『道』。
彼らと並んでいると、シンは自分の存在が恐ろしくちっぽけなものに思えてならなかった。
「俺の…… 信 念 の た め だ !」
彼らと同じ視点に立ちたい。同じ場所に並んでいたい。
彼 ら の よ う で あ り た い。
それが、シンの信念。
その為にも、ここで引くわけにはいかないのだ。
クロはシンのその姿を見て舌打ちした。追い詰められても諦めない信念馬鹿というのは、
吐いて捨てるほどいる。だが、自分が少し、ほんの一ミクロン程、『速度』のみとはいえ認
めた相手がそうだった事に、苛立ちが隠せないのである。
116 :
47=82:2006/10/06(金) 00:52:55 ID:???
7
「余程死にてぇらしいな……」
「……死にたく、ないさ……」
シンは呻く、
「ただ、守りたいだけだ……!」
自分の故郷と同じように踏みにじられようとしているウソップの村。自分より遥かに弱
いはずのウソップが、必死で守ろうとするその場所。
シンはそれを守りたいのだ。
彼に自分と同じ絶望は似合わない。
(俺とマユのような不幸は、二度と繰り返させない!)
今手元にコミックが無いんで、描写はここら辺が限界。スピード系ファイター、個人的に
オリキャラと絡めにくいストーリーなどからクラハドール相手に完敗させてみた。
後は、この後クロにズタボロにされたシンがウソップと一緒に投げ捨てられたときに、ル
フィの切れ方2倍。
それに書き上げてみたら全然ワンピっぽくなくてorz
『シンがルフィたちの影響で考え方が変わる』的な描写も入れようか悩んだのだが、結
局入れてみた。
……なにやら議論を呼んでいるガン種キャラについては、出す事に決めました。それにつ
いては、いろいろ考えてあるんで、期待しててくださいな。
GJ!
シンカッコヨスw
おおう、少年マンガっぽいノリがGJ
種死キャラを出すとなると扱い次第じゃ荒れる地雷になるが
そう決めたなら是非とも貫いてくれ!
>>116 GJと言わせてくれ!!
シンの成長がこれからも楽しみだ!
ときに、俺もシンが「ワンピの世界に放りこまれたら」でプロットたてて
冒頭だけ書いてみたんだが投下してもよろしいだろうか?
守りたかったものがあった…救いたかった人がいた
「ステラ…」
ベルリン郊外の森の中、雪深い湖のほとりにインパルスを着陸させていたシンはそのまま湖
の中央まで歩かせ、差し出されたその機体の左手の上でステラの亡がらを抱いていた。
戦いの日々。戦争で家族を失い、誰かを守ると誓いザフトへの入隊を決めた時から駆け抜
け続けたこの世界で巡り合った……「守りたかった」人の体を。
守りたかった…守ろうとした…なのに
「もう…大丈夫だよ。怖いことなんかない…苦しいことも……」
『死ぬのはいや』初めて会ったときそう彼女は泣き叫んだ
怖がりなステラ、死をなにより恐れていたステラ
彼女はずっと逃げ続けていたのだ、自分を追ってくる「死」から
戦わなければ、敵を殺し続けなければ生きられない…エクステンデットの運命から
「もう誰も…君をいじめに来たりなんかしないから…だから…!!」
しんしんと降りしきる雪が、ひらりとステラの頬を撫でる
ステラに触れても溶けることのない雪は彼女との拙い思い出の全てを包み込んでいるようで、
いっそこのまま全て何もかも白く染まってしまえばいいのにとシンは思ったが、自分の涙だけが
雪の白を溶かして行き、あぁ、自分はまだ行けないんだなと頭の隅でどこか冷静に思った。
「だから安心して…静かにここで……おやすみ…」
水面にステラの体を預けると、ゆっくりと湖の底へ沈んで行く
涙で滲んだ視界、首飾りにしていた彼女の好きだった貝殻がきらりと光り
やがて冷たい水の闇に消えていった
「守るって言ったのに……!俺っ…守るって!!」
どうしようもないなんて思いたくなかった、なにか出来ると信じていたかった
正しくなくてもよかった、それで彼女が救われるなら……そう思っていた
自分がしたことはなんだったのだろう…インパルスの左手の上
「ごめんステラ…!俺ぇ……っ!!ぁぁ…うぅ…!!」
一人残されたシンは感情を抑えることなく泣き続けた。
125 :
121:2006/10/06(金) 11:51:34 ID:???
「…………」
どれだけの時間が経っただろう
雪だけが優しく、やがて泣き声すらも静寂に溶けて消えて行き
「キラ…ヤマトぉ……!」
そ し て 、 紅 い 瞳 が 怒 り に 燃 え た
++++++++++++++++++++++
「逃がさないと言っただろぉおお!!」
「くっ…!頼む、ボクらを行かせてくれ!!」
先日ベルリンでの所属不明巨大MSの破壊で共同戦線を張ったミネルバとアークエンジェルで
あったが、その後デュランダル勅命で正式なアークエンジェルの討伐が下された。
ミネルバが地球に降りてから何度となく苦汁を舐めさせられた因縁の敵でもある。今まで目的
も定かでなく、ただ戦闘中の両陣営に攻撃をしかけては去って行った。この前大戦の英雄とも言
える戦艦がどうしてこうも誰の利にすらならない戦闘への乱入を繰り返していたのか、終にはわか
らなかったが、ザフト軍の別艦と共同でミネルバはアークエンジェルを渓谷で捕らる
シンは単機でザフト軍のMSから艦を守り続けていたフリーダムに猛攻をかけていた
「この機体…どうしてっ」
(見える!レイの言った通りだ)
フリーダムの、このキラ・ヤマトの攻撃は全て武装やメインカメラなどに絞られている。コクピット
に直接的な攻撃を加えて来ないことを前提に立ち回りさえすれば、ぎりぎりの所で反応できる。
キラは今までと何度となく退けていたインパルスの動きがまるで違うことに驚きを覚えながら、手
薄になったアークエンジェルがじりじりとザフトの攻撃につかまり始めたのに焦りがこみ上げていた。
「あんたがステラを殺したああああ!!!!」
「くっ」
インパルス、フリーダム、互いは均衡していた
総合的な火力の面で言えばフリーダムが圧倒的に有利なのだが、相手は接近戦に自信があ
るのか、距離を取ってもすぐに張り付いて離れない。それ故追うもの、追われるもののミドルレンジ
の刺し合いではことごとくライフルの狙いが読まれているのが全て防がれてしまう。そうこうしてる間に
もアークエンジェルが砲火に晒され船体に何度も着弾を繰り返している
「止めようとしたのにいいいいい!!!」
「っ…!アークエンジェルが!!」
「キラ様!ムラサメ隊も出ます!!」
「駄目です……なんとか海まで持ちこたえて。そこまで行けば逃げ切れる」
ここでこのインパルスを落とさなければアークエンジェルが落ちる
討たなければ!!目の前のこいつを!!今ここで!!!
126 :
121:2006/10/06(金) 11:53:00 ID:???
「このおおおおおおおお!!!」
「つぁあ!!」
「くそっ、しまった!」
インパルスのビームの一筋がきわどくかすり、一瞬フリーダムが体勢を崩した刹那
サーベルを抜き向かって来たインパルスの斬撃をくぐり、針の糸を通す穴のような微かな隙にこ
ちらもサーベルを抜いてインパルスの頭部をなぎ払って今度こそ討ち取った、はずだった。
「メイリン!チェストフライヤーとフォースシルエットを!!」
「なっ!?」
頭部を失った相手のMSが突然分離して、破損した上半身がスラスターを吹いて突っ込んできた
のだ。思わず受け止めてしまったそれを跳ね除けようともがくフリーダムに、シンは分離したコアスプレ
ンダーからバルカンの掃射を浴びせチェストフライヤーを誘爆させた。
「ぐあああああっ」
予想だにしない攻撃に完全に体勢を崩し落ちて行くフリーダム。その間にミネルバから飛んでき
たチェストフライヤーとフォースシルエット、分離させておいたレッグフライヤーを連結させて再びフォー
スインパルスでたたみ掛けようシンはと落下していったフリーダムに迫る
コイツは…コイツだけは……!!
始まりは、故郷だった
オーブのオノゴロ島、ナチュラルとコーディネーターが入り混じり暮らす平和な中立国
そこに自分は平凡な家庭に囲まれ退屈な、暖かい日々を過ごしていた
戦争なんかない、そんなものはテレビの向こうの現実なのだと……
そうして平穏に少年時代は過ぎて行くはずだった
今でも思い出せる
突然の開戦、避難勧告
空に幾重と交錯し、時に弾ける光の数々
非難船へと走る家族の姿、坂の下に落ちていったマユの携帯
突然響く爆音、宙に放り出される浮遊感、地に叩き付けられる痛み
それとなにか沢山のものが燃えている臭い
呼吸……呼吸の音、俺の………
耳がキーンとして何も聞こえない…ただ俺の呼吸の音だけが……
そして……今でも思い出せる
ついさっきまで、「マユだったもの」
それは本当に、暖かさに包まれていた少年時代の全てからの決別
フリーダム……俺は頭上で戦闘を続けていたその姿を今でも覚えている
127 :
121:2006/10/06(金) 11:54:32 ID:???
それからは本当に、戦いの日々だった
プラントへ難民として移住し、ザフトへの入隊を決意する
力がないのが悔しかった…それさえあれば全てを守れると思った
そうしてザフトのトップエリートの証である赤服を獲得し、最新鋭機インパスルも与えられた
アーモリーワンでのガンダム強奪事件を皮切りにユニウスセブンの落下、連合の核攻撃
日々加速して行く戦いの奔流、その中でも自分は常に先頭を切って戦い続けた
カーペンタリア近海では、連合軍に強制労働を架せられていた現地住民を助けたりもした
ガルナハンでもまた、連合の理不尽な圧力に苦しんでいた人たちを助けたりもした
そこには、あの日オーブの空へ叫び続けた自分が求めたものがあったはずだった
俺は強くなった、誰かを守ることのできる人間になったんだと
そう……俺は強くなったんだ、あの日無力だった自分と同じ…
全ての力ない人を守るために強くなった…
『シン…好…き……』
はずなのに!!
「くっそおおおおおおお!!!!」
俺の手は、また守りたいものに届かなかったんだ!!
約束したのに!守るって……俺は…俺はあああ!!!
フリーダム…キラ・ヤマト……こいつさえいなければ止めることができたのに!!
こいつはいつも、いつでも……俺の大切なものを奪っていく!!!
「アンタって人はあああああ!!!!」
「くっ」
この機体、明らかに今までとは違う敵だ。キラはインパルスに対する認識を改め始めていた
雪の山岳地帯はまだまだ続く。このまま自分が負ければアークエンジェルは逃げ切れないだろう。
そうすればきっとこの混迷の世界は、何を企んでいるかわからないデュランダル議長の思い通りに
なってしまう。この傷ついた世界の人たちを優しく導いている男。しかしラクスの偽者を従えて、本
物のラクスを暗殺しようとしたあの男が何を考えているのか、きっとこれから取り返しの付かないこと
が起きる予感がしてならなかったのだ。
そして今、自分たちはそのデュランダルの手によって有無を言わさず消されようとしている
負けるわけにはいけない。ここで僕たちが消えるようなことはあってはならない。全てがおかしくなっ
て行くこの世界を、自分たちはこのまま放っておくわけにはいかないのだ!
このインパルスを行動不能にさせるにはどうすればいい。武装を破壊する、そんな方法ではまた
破損箇所を換装して襲ってくるだろう。ならどうすればいい。
コクピットを貫く…しかないのだろうか。出来ればそんなことはしたくない。本当はこのまま逃げ切る
ことが出来ればそれに越したことはないのだ。いや、それ以前に戦いを仕掛けてこなければ誰も傷
つけなくて済むのに…。だが、これはもう自分だけの問題ではない。今砲火に晒されているアークエ
ンジェルには、想いを共にする、守りたい人たちがいるのだ。
128 :
121:2006/10/06(金) 11:58:20 ID:???
「ごめんっ…。だけど僕は負けるわけにはいかないんだ!」
「っ、このぉ!!」
「なに!?」
意を決してインパルスの胴体をサーベルで一閃
その瞬間、インパルスがまた分離したのだ。殺意をもって放った一撃が空を切り、キラは呆気に
取られた。『出来れば殺したくない』そんな迷いがもたらした一瞬の隙ではあったが、それが命取り
となる。
インパルスが分離してフリーダムの一撃からコクピットを退けると同時、すれ違う形になった両者で
先に行動を起こしたのはインパルスだった。空中に胴体だけになった状態で振り向き、フリーダムの
背中にライフルを見事命中させた
「うああああっ!!!」
「このまま決める!!」
その一撃がフリーダムの片翼をもいだ。そしてハイマットモードを維持できなくなり、機動力が半
減したフリーダムをインパルスは容赦なく追い詰める。
「アンタは俺が討つんだ!!」
「くっ」
「今日ここで!!!」
「……海だっ!!」
永遠に続くかと思われた逃走劇、遠くにバルト海が見え始めた。あそこまで逃げ切れば潜水機能
のあるアークエンジェルならば追っ手を振り切ることができるだろう。後はゴールまで駆け抜けるだけだ。
シンもそれを理解していたのか、最後の攻撃に出る。
「メイリン!ソードシルエットを!!」
ミネルバから射出されたソードシルエット、自動飛行でインパルスに並んで来たそれからビームブー
メラン「フラッシュエッジ」を引き抜きフリーダムへ投げつける。それと同時にレーザー対艦刀「エクスカリ
バー」を右手に携えた。
「っ、しまった!!」
「うおおおおおおおお!!!」
地中海までたどり着き、低空飛行していたフリーダムへフラッシュエッジが迫る。
機動性が失われたフリーダムはそれをかわすことが出来ずにシールドで弾くが、無理な体勢でそ
れを行ったために機体が揺れて海面へと叩き付けられながら吹き飛んで行く。そしてエクスカリバー
を構えたインパルスがスラスターを吹かして突撃してきた。
「ここからいなくなれええええええ!!!」
129 :
121:2006/10/06(金) 12:00:38 ID:???
もうかわすことは不可能だった
実体剣ならば、とシールドを構え、こちらもビームサーベルで反撃に出る、抜きさったサーベルが突
進してきたインパルスの頭部から肩にかけて突き刺さる、が、戦艦を潰す質量とその名の示す「衝
撃」の速度を伴った一撃は、その攻撃で止まることなくフリーダムをシールドごと貫く。
「うわあああああ!!!」
エクスカリバーに貫かれたフリーダムが、破損部から火花を散らしながらそのまま飛行を維持でき
なくなり、海へ落下していく。そして海の底から大爆発が起きた
「ぐううううっ!!!!」
半壊状態の機体でフリーダムの爆発に巻き込まれ、コクピットの中のシンはすさまじい衝撃に襲
われる。辺り一面をとりまく光りが止んだ頃、弾けた海面の水滴が雨の様に降り注いでいた。
「た…倒したのか?」
海の上には頭部をサーベルで破壊され、爆発に巻き込まれて腕も吹き飛んだぼろぼろのインパ
ルスしかいない。
「たお…した?ははっ…ははは…やった…」
終にあのフリーダムを倒したんだ
家族の仇、ステラの仇、憎むべきキラ・ヤマトをやっとこの手で殺したんだ
「やったよ…ステラ……あはは…これで…」
…………
これで…なんなのだろう。 ふいに疑問が頭を過ぎる
いや、今は喜べ。喜んでいいんだ。あの「フリーダム」を自分は倒したのだから
そう自分に言い聞かせて乾いた笑い声を上げていた
嬉しさなんてこれっぽいっちも浮かばない…。だけど喜べ、喜ぶんだ、でなきゃ
「あははははっ、ははは…は…はは…ぅ…ぁぁ…」
俺が何をしているのか、本当にわからなくなってしまう
「ぅぅ…くっ…あぁ……ちくしょ…ちくしょう!!!」
俺は…なにが、したかったんだろう……
自分に問いかけてみたが、答えなんてわかるはずもなく、ただステラの笑顔が遠くなった気がした
虚しさだけが心を埋めて行く感覚、バッテリーが切れてVPS装甲が解除され、鈍い鉛色になっ
たインパルスのコクピットの中でシンは泣き続けた
130 :
121:2006/10/06(金) 12:01:58 ID:???
パリッ
と、ふいにコンソールに火花が走る
「っ!?」
異変に気づいたと同時に半壊状態だったチェストフライヤーが火を噴いた
ボンッ、と爆発を始め、コアスプレンダーの中のコクピットまで衝撃が伝わる
「しまった!!早く分離をっ……くそっ、なんで動かないんだよ!!」
緊急離脱ボタンを押すが反応がない
どうにか脱出をしようと試行錯誤する内に火の手がコクピットにまで回る
爆発でモニターが割れて破片が体に刺さり、思わずうめき声をあげた
「くっ…こんなところで……俺はっ!!」
『シン……』
「!?」
ふいに、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。とてもか細い、けれど心を揺さぶる懐かしい
声。自分はその声の主をよく知っている気がした。
『シン……』
「ス…テラ……?」
また聞こえる
あぁ、とても優しい声。胸に空いた穴がじんわりと癒されていくような気持ちになる
ステラ、ステラ…。もう会えないと思っていた。もう一度頭を撫でて上げたかった、もう一度抱きしめ
たかった、俺も好きだよと言ってあげたかった。ずっと戦争のない世界で、二人……
「あぁそっか…ステラ……、俺は…もういいんだね」
ボンッ、とまた爆発が起きた。衝撃で再びシートに叩き付けられる。
霞んだ視界、メットの向こうでコクピットに電気が走りながらコンソールが吹き飛んでいくのが見える。
パイロットスーツごしにも炎の熱が感じ取れる。体中が痛い。けれど、不思議と怖くはなかった。
「行くよ…、行こう……戦争なんてない、優しい世界…ステラ、キミとだったら……」
どこでだって、生きていけるから…と
最後の言葉は爆発にかき消され、声にならずに消えていった
131 :
121:2006/10/06(金) 12:04:46 ID:???
クゥー、クゥー
「…………ん」
カモメの鳴き声が聞こえる
閉じたまぶたの上から指す日の光が感じられた
いつのまに眠ってしまっていたんだろう、とうっすら目を開く。
「ふあ…」
まだ覚醒しきれない頭を持ち上げあくびをかみ殺した。頭上では青空が広がり、暖かい風と共に
潮の匂いがはこばれてきた。とてもいい天気だった。柔らかな芝生の上、このまま二度寝してしまう
のもいいかもしれない。あぁ、それはとてもいい提案だ。よし、今日は日が暮れるまでごろ〜っと
「って、ドコだここはあああああ!?」
今は冬じゃなかったのか?なんでこんなに暖かいんだ?
いやそもそも俺はさっきまでインパルスの中で死にそうに……、なんで軍服になってるんだ?
自分の体を見ると、ケガなんて全然なく、パイロットスーツではなくザフトの赤服を着ていた
「夢……だった…?なんてな、はは……」
自分の今の状況を把握できずに思わずそんなことを思ってしまう。
頭上で白いカモメが飛んでいった。それを目で追っていくと空と同じくらい青い海が広がっていた。
どうやら自分はどこかの港町の丘の上にいるらしい…けれど
「どこなんだろうなぁここ……随分田舎みたいだけど」
ポリポリと頭を掻いてみるものの、全然記憶にない場所だった
彼はまだ知らない。ここが自分の知らない世界であること
「イーストブルー」と呼ばれる海に点在する島のひとつであること
そして、この先出会う仲間たちと、とんでもない冒険をすることになることを
リアルタイムktkr
っつーかクオリティたけええええええ!!
あの、なんだその、ほら
あんま俺を泣かせるんじゃねぇよw
133 :
121:2006/10/06(金) 12:15:34 ID:???
と、書いてたら冒頭がアホ長くなった罠
改行規制全然考えないで書いてたよ…
長編SS初挑戦な上全然ワンピ世界入れてねぇし、お目汚し失礼orz
>>63>>65氏の流れを辿ってこれからぼちぼちシンをワンピ世界でいじれたらなぁって思ってます
リジェクトダイヤル持たせてパルマフィオキーナ
>>133 いや、GJだぞw
神降臨だな……
がんばれ!!
ワンピ世界だと、流派東方不敗みたいな武術があっても全くおかしくないな
ラブラブのピストル
とかか?
GJ!
シンの一番危険な精神のときに送りこまれるんだなw
シンの変化に期待してます
ワンピと種キャラとか絡ませるのテラ高度な気がするw
難関SSスレですね
激しくGJ! 最初はすぐに廃れると思ってたが、
まさかこんな神ssが投下されるとは!
wktkしながらお待ちしておこうか!
>>139 そもそも絡むべき要素ってのがないからな
種キャラをどうワンピの世界に馴染ませるか
シンなら特に「成長」ってのがキーになると思う
121氏のシンはどういうタイプの戦闘キャラになるか期待
とにかくGJ。
今後の展開がもの凄く楽しみだが、フリーダム戦部分だけでも良作だよ。シンの心理描写が凄く上手いし、飛ばされる直前のシンの台詞が泣ける。
143 :
47=82:2006/10/08(日) 09:33:03 ID:???
>>121氏に触発されて、書き上げちまった俺が着ましたよ。
時期としては、ウソップ編とバラティエ編の間で起きたジョリーロジャー
イベントの時の話です。
潮風がやさしく前髪を弄び、かもめの鳴き声が子守唄となって鼓膜を揺らす。
波による揺れは赤子にとっての揺り篭のそれのように、ヒュプノスの誘惑をより強く逆
らいがたいものにしていた……が。
海原を進むゴーイングメリー号。そのマストの上の見張り台。そこに寝転がる男は、『眠
り』という事象を一切拒否し、ひたすら思考の海にもぐっていた。
彼が片手で弄んでいるのは、一本の短い棒切れにしか見えない物体だった。これがかつ
て、槍だった物体だ。それもあまたの賞金稼ぎを返り討ちにし、イーストブルー最速と謳
われた男の、『相棒』の成れの果てである。
……先日の戦いで、キャプテンクロに無残に砕かれてしまったそれ。店で安く買った槍
を自分で削って軽量化したという安上がりなものだった。武器としての勝ちならば恐ろし
く低いが、賞金首になってからずっと共に戦ってきた相棒だけに、感慨がある。
一応、ウソップに見てもらったのだが、専門家ではない自分には修理できないと、にべ
も無い返事をいただいた。肝心要の刃の部分が砕かれたのが痛かった。
『勺死!』
思い浮かぶのは、あの海岸であの男が見せ、シンの相棒を砕いたあの技。
シンの遥か高みを行く、攻撃対象すら判別できないほどの超高速無差別攻撃。
そして、
『ゴムゴムの鐘!』
それをぶっ倒した。ルフィの勇姿だった。
余りに圧倒的な戦闘だった。対するルフィも攻撃の瞬間相手の位置を見極め、その体を
捕らえ、その後相手の体を捕らえてあの高速移動術を不意自他のだ。
それに比べて自分はどうだ? ろくに身動きも取れない状態では身をかわすのがやっと
で、ナミと共に傍観者へ徹するしか出来なかった。
(俺は……弱い)
144 :
47=82:2006/10/08(日) 09:35:06 ID:???
強くなると決めたのは、いつの事だっただろう?
マユを失ってからが始まりだった。長い年月で想いを高めていった。ステラを守りきれ
なかったあの瞬間から、想いはよりいっそう強いものになった。
それでも……
(まだ、足りない……!)
彼らに比べて、圧倒的に『何か』がたりない。
実力もそうだろう。だがそれ以上に、自分には気迫のようなものが欠如しているのだと、
シンは自覚していた。
ルフィには『海賊王』という夢がある。ゾロには『世界一の大剣豪』という野望がある
……だが、シンには何がある?
そもそもが、偶然の事故でこの世界に降り立った身だ。それですら、元の世界という枠
に対する執着がシンにはないのだ。シンにとって、あの世界での出来事は全部終わってし
まった事なのである。
(元の世界に戻る方法ってのも、なんかなぁ)
ルフィ達という仲間に出会い、彼らに憧れ。
そんな仲間達と海に漕ぎ出す事のほうが、元の世界にいた頃よりも何倍も愉しかったり
する。
この世界に来たときの状況……あの爆発では、いくらセーフティシャッターが下りたと
しても助からないだろう。元の世界に戻る方法も、想像すら付かない。自分はもう、あの
世界では死んだも同然の人間なのだ。
(レイやルナには悪いけど、俺はこいつらと一緒にいるほうが楽しいし……けど)
「どーだぁ〜!」
「ん〜……?」
シンの思考をぶった切ったのは、真下から聞こえてきたルフィの雄叫びだった。ひょい
と起き上がって覗き込んでみると……なんというか、デッサンが崩壊した奇怪なマークが
視界に飛び込んできた。
「……ジョリーロジャー?」
思わず、クエスチョンマークをつけたくなる気分。
145 :
47=82:2006/10/08(日) 09:35:59 ID:???
「あ、シーン! お前も作るの手伝え!」
「っていうか、まだ作ってなかったんだな……」
ルフィに呼ばれ、やれやれとシンは立ち上がり、見張り台から飛び降りた。常人ならば
ケガ必死の高さから、シンは軽やかな身のこなしで着地する。シンが見張り台から降りる
際に見られる、いつもの光景である。
最初は見るたびに悲鳴を上げていたウソップとナミも、今では慣れたものだ。
「あれ? シン、あんた服は?」
ナミが気にしたのは、むしろシンの服装のほうだった。トレードマークの赤服ではなく、
白いシャツにルフィの短パンという出で立ちだったのである。
今まで赤服姿しか見た事のないナミの網膜に、その姿はやたらと新鮮に映ったのだった。
「ん? ああ……」
ウソップがジョリーロジャー製作に取り掛かるのを尻目に、シンは自分のシャツをつま
み、
「ウソップの奴が服の構造知りたがってんだよ。それで、調べさせるついでに修繕中」
「そっかぁ、クロにボロボロにされてたもんね……修繕ならあたしがやってあげるのに」
「優良だろどーせ。その点ウソップなら無料だ」
「そういやあ、アンタのあの服って、見た目の割りにやたら動きやすそうよね」
自分が着たわけではないが、日頃のシンの動きを見ていれば、動きやすさなど一目瞭然
だ。スーツのような見た目から受ける印象とは大違いの動きやすさなのだろうと、ナミは
予想して質問したのだ。
「まあ、まがなりにも軍服だからな。薄くて軽くて丈夫だぞ」
「そうそう! 俺もびっくりしたんだけどよ!」
旗を染め抜きながら、ウソップが二人の会話に割り込んだ。
「なんか、見た事もない素材で出来ててな……正直、どう修繕したもんか悩んでる真っ最
中だ」
「なんでよ」
「そりゃあお前、変な素材で修繕したら、質が落ちるだろ」
146 :
47=82:2006/10/08(日) 09:37:09 ID:???
ウソップの言いたい事はわかる。シンの赤服はCEの科学力によって生み出されたもので
あり、この世界では作る事すら出来るかどうか曖昧な生地で作られている。それを普通の
布で張り合わせるという事は、服を紙で修繕するのと同義だ。
「防御力はこの際気にしなくて良いんだ。とにかく機動性を重視してくれ。軽くて動きや
すければそれ以上何も言わない」
「それは分かったけどよ。一番いいのは、同じ素材で作る事だぜ。本当に思い当たる節な
いのか?」
「……ああ。多分もう、手に入らない」
修繕に入る前に交わされていたやり取りを、今再び交わす二人。
ウソップの問いに答えるまでに一瞬間が空いたが、ゾロはそこに突っ込まなかった。相
手のほうから口にしだすまで言及しないのが礼儀だと考えたからである。
「あ、そうだ。ついでだからよ、あの服についてるマーク、全部ジョリーロジャーにしね
えか?」
「え?」
それは、余りにも唐突で予想外の申し出だった。
「修繕してて思ったんだが、あのマークの位置にジョリーロジャーつけたら、映えると思
うんだよなあ」
「お!? いいなぁそれ! カッコイー!!」
何故かルフィまでノリノリの乗り気だった。
……確かに、今シンが着ている赤服のマークはこの世界では無意味だ。ザフトなどどこ
にも存在しないし、マークを残しておく意味も無いだろう。
しかし……
(本当にいいのか?)
ザフトのシンボルのを海賊旗で塗りつぶす。
それは、シンが『ザフトの赤服』である証拠を消し、本当の意味で『麦わらの一味の赤
服』になるという事。
あちらの世界に未練は無い。しかし……今までの自分を否定するようで何かが嫌だった。
147 :
47=82:2006/10/08(日) 09:38:37 ID:???
……結局のところ、マークなどに頼らねばならないほど、自分のザフト時代の記憶は軽
かったのか?
答えは…… 否 だ 。
「ああ。わかった」
人間の過去は変わらず、覚えていけばいい。決して忘れず、心の中に秘めておけば。
何より……今のままでは駄目なのだ。
今の自分では、永遠にルフィたちと同じ高みへはたどり着けない。
『前の世界』などという逃げ場があっては、自分は永遠に成長できないだろう。
「ウソップ、上手く縫い付けてくれよ? つぎはぎのジョリーロジャーは嫌だからな!」
覚悟を決める、そのために。前の世界という逃げ場を無くすため。
シン・アスカは、ザフトのシンボルを捨てた。
「……よし! 出来た! ってあー、話してるうちに手が滑ってしまったー」
『マーク変わってんじゃねえか』
「棒読みだなオイ」
叫んでウソップがかざした海賊旗は、なんというか、鼻も長く骨もパチンコと、いかに
も『ウソップ海賊団』なシロモノで。
それを見て、シンは先程の自分の決意を早くも後悔していた。
(これを服につけるのは嫌だなあ)
と。
結局、このシンボルはゾロとルフィに二人係で突っ込まれ、しぶしぶ書き直す羽目になったのだった。
148 :
47=82:2006/10/08(日) 09:40:56 ID:???
とりあえず、今回はシンに『明確な覚悟』を決めさせるための前フリその1
GJ!
ナミも大分強いんだぞツンw頑張れ
これからが楽しみw
151 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 04:51:30 ID:Ty+bEg/u
GJついでにアゲ
152 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 16:01:29 ID:Ty+bEg/u
age
つまんない。
自分じゃ面白いつもり?
読んでてこっちが恥ずかしくなるわ。
>>153 おまえ、思い切ったツラしてんなー
何類だ?
海王類
まぁ言いたいやつには言わせとけ
そんなことより今週のジャンプでメリーが喋りすぎな件について
迂闊にも泣いたやつ挙手ノ
158 :
47=82:2006/10/09(月) 23:27:27 ID:???
泣きはしなかったが、けっこうぐっとは来たなあ。
これだけじゃあなんなんで、話題をば投下いたします。
シンとビビ、ワポルって、かなり激しく衝突しそうじゃね?
メリー・・・
(´;ω;`)ノ
>>158 ワポルは論外として、ビビもかなり不味いな
ぶっちゃけ、やってる事がカガリとあんまり変わらんし
だけど、ビビはカガリと違ってちゃんと自分の信念とか、
伝える事が出来る分シンの反応は違うと思う。
それに「国」と言うものについての考え方もカガリよりはましだろう。
それにシンが納得するかしないかは別としてね。
一応、衝突した上で得る物はあるだろう。
ビビはヤバげだよなあ
てか、アーロンはどうかな?
衝突しないにしても奴ぁ種族至上主義者だし
種世界に居たシンには何か思うところが出てくるんジャマイカ
メリー…サークルKで泣かすんじゃねえよ………
>>157 土曜発売で助かった…
朝コンビ二で立ち読みなんてした日には…
>>165 とてもじゃないが、そんな顔見られたくないよな…
ところで、アニメ版ではメリーは誰がやるんだ?
人によっては、感動のシーンもシラケちゃうよな?
メリーがしゃべったのって初めて?
168 :
47=82:2006/10/11(水) 19:04:55 ID:???
いや、空島編で喋ってる……筈。
アニメはそこら辺から見てないから分からん。
ところでみんな、シンがあの場に居合わせたとしたら、メリーに対してどんな
リアクションをとると思う?
169 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 14:04:04 ID:o21kHqaa
泣き喚くに一票
ついでにあげてみる
>>168 シンがメリーにどの程度の愛着を持つかによるな
原作だとインパや運命、ミネルバにもさして愛着を持ってるようには見えなかったし
そこを利用して自分があまり機体に愛着を持ってなかったことを
実感するエピソードなんかが作れてしまうわけだ
いいなぁそれ。
自覚するとしたら、アイスバーグとの初対面あたりかな? 残酷な査定に
ルフィが吼えるよりも早くシンが切れて、シン自信が一番それを意外に思う、
とか。
最大の違いは、メリーは兵器では無いってこと、これに尽きる
シンにとってはインパも運命もミネルバも、ただの力に過ぎなかったわけで、それ以上の意味を持つものではなかった
174 :
47=82:2006/10/13(金) 06:29:30 ID:???
うーん。自分は泣き咽ぶ、位しか想像できなかったな。
書き手として少しは想像力を磨かねば。
『戦闘シーンだけじゃなく、少しは日常も書け』と友人に突っ込まれましたので
バラティエ編はちと長いです。
海の上に、奇妙な物体が一つ、浮かんでいた。
巨大な魚を模した、一艘の船だ。船、と呼ぶには形がいささか個性的に過ぎ、海上建造
物と呼ぶには形が船により過ぎている、表現にこまる物体である。船首に当たる部分に板
ってはデフォルメされた魚の頭部が取り付けられ、尻尾まである始末。船にしては船縁が
水面に対して低すぎるし、本当に表現に困る物体だ。
なにやら、こう表現すると単なる珍妙な船に聞こえるが、この船体の形にはきちんとし
た理由があった。この船、東の海のグルメ達の間では、海上レストラン『バラティエ』の
店舗なのだ。船縁が低いのも、店にやってくるお客様が入りやすいようにと考慮してのこ
とだし、やたらファンキーなつくりは客に慣れ親しんでもらおうという、経営戦略なので
ある。
さて、そんな船体の傍らに。
羊の船首に麦わらのジョリーロジャーを掲げた一隻の船が停泊していた。
食事をしにきたのだろうか? いいや、この船に限って言えばそれはない。
……肝心要の船長がバラティエの船体をぶっ壊してしまい、それを謝りに店内に入って
しまったのである。動く動けないのだ。
「ルフィの奴、大丈夫かよ……雑用ただ働きとかじゃないだろうな」
ゴーイングメリー号の甲板の上で、シンは心配そうにバラティエを見やる。傍で刀に打
ち粉を振るっていたゾロは、そちらを見もせずに、
「大丈夫だろ」
「そうそう。いくら荒くれの集まる海上レストランでも、ルフィがそうそう痛めつけら
れるわけが……」
「いやいや、ルフィの心配じゃなくて」
パタパタと手を振ってゾロとウソップの言葉を訂正するシン。続けて放たれた言葉は、
二人どころか、離れた場所で海図とにらめっこしていたナミすら凍らせるほどに真実味に
あふれていた。
「『ルフィを雇った場合のバラティエの方々』の心配をしてるんだ」
『…………』
175 :
47=82:2006/10/13(金) 06:31:00 ID:???
一同、沈黙。
……今までのルフィの言動を思い返してみればどれだけ無謀か分かろうというものだ。
いや、無謀というか、自殺行為である。下手すりゃバラティエ営業停止だ。
「……仲間になってくれるのかしら、ここのコック」
ナミ、鮮やかに話題を転換するの図。その薄情とも言える姿を、ゾロやウソップはおろ
か、言い出したシンですら鮮やかにスルーした。
……考えすぎるとストレスになる事柄というのは、往々にしてあるものなのである。特
にこの一味においては。それ以上に差し迫ったストレスの原因が存在する、という理由も
あるのだが。
「今の私たちにとっては、そっちのほうが重要よ」
「あー、確かに切実だよなー。俺はもう嫌だぞ、シンの不味いレーション食うの」
「……拷問だろ、あれは」
「仕方が無いだろ」
臨時の食事係であるシンが、ウソップの苦情に顔を顰めた。
始まりは、食事の配分で悩むナミに、シンが食事係として名乗り出た時だった。
曰く『昔、レーションの作り方を一寸習った事がある』との事。ナミは『レーション』
というものを知らなかったが、(この世界には存在しない概念らしい)軍用食物であり保存
性と栄養性は抜群であるというシンの言葉に飛びついた。アカデミー時代のシンは食事を
作る時間すら無駄だと感じるほどに張り詰めており、大量に作りおき出来るこの手作りレ
ーションが常食だったのである。こちらの世界の調味料でも、同じものを作るのは簡単なのだが……
そうして出来上がった物体は……なにやら、どろどろに煮詰められたブルーベリージャ
ムのような物体。言っておくが、シンが調理したものの中にそんな色の物体は存在しない。
味の方は各々の反応と、あのルフィがかなり無理をしなければ食べられなかったという
事から察していただきたい。
基本的に、シンのレーションはお金の無いアカデミー時代において安上がりで長期保存
の利くものというコンセプトで作られたため、保存性と栄養以外の配慮が一切なされてい
ないのである。
176 :
47=82:2006/10/13(金) 06:31:51 ID:???
「ま、確かに栄養バランスはいいみたいだけど……やっぱり、どうせ食べるなら美味しい
方がいいわよねぇ」
「そうは言っても結構量作っちゃったからなぁ……」
「あれって、どのくらい持つの?」
「チーズとかと同じ発酵食品だから、理論上は十年単位で大丈夫だ」
「……食料がなくなったときの非常用にしましょ」
言い切るナミ。正しい判断である。
シンが仲間になってからこっち、麦わらの一味と『食糧不足』の間に築かれた強い縁は、
すっぱり断ち切られていた。というのも、シンが銛もって海に飛び込めば、四人分程度の
魚くらいは軽く獲ってくるので、『食料』そのものには困らないのである。
そうなると問題になってくるのが栄養バランス。美味しくて栄養バランスの優れた料理
を限られた材料で……この全てを満たすとなると、これが中々侮れない難易度である。
そもそも、ナミが悩んだのもシンがクソ不味いレーションなんぞ作り出したのも、先日
起きたトラブルで危機感に煽られたのが原因だった。壊血病になった男の姿を肉眼で目撃
し、海の過酷さを再認識したのだ。
ちなみにその壊血病になったのはゾロの昔なじみの賞金稼ぎ二人、ヨサクとジョニーで
ある。航海中のトラブルで同行する事になったのだがこの場にはおらず、けが人のため船
内で待機だ。
……『栄養バランスと吸収効率は良いんだから』と口にレーション押し込まれて、涅槃
の彼方に旅立っているのが、待機と呼べるのか微妙なところだが。
「それより、今日のお昼だけど……どうする?」
「せっかく目の前にレストランがあるんだから、食べなきゃ損だろ!」
「まあ、シンのレーションよりかはマシだろうな」
「当たり前でしょ!」
口々にレストラン行きに賛成する一同に、シンは引きつりながらも突っ込みを入れよう
とはしなかった。彼自身、自分のレーションがクソ不味いという自覚はあった。
「ちょっと様子見てくるよ」
逃げ出すように船を飛び降りるシン。その右手には、台不評だったレーションのビンが
握られていて。
(ついでだから、これの改良について相談しようかな……)
こっそり服の中に潜ませながら、傷ついたプライドを慰めるのだった。
……彼は知らない。
その行為が、彼のガラスのプライドを粉々にぶち砕く原因となることを。
177 :
47=82:2006/10/13(金) 06:32:38 ID:???
たったったっ、とシンは超人的な脚力で跳躍し、桟橋から店の入り口まで3歩で到着す
る。そのまま店内に顔を出そうとして……
「嫌だ! 仲間になれ!」
「だから! 人の話聞けてめーは!」
……ひっじょーに聞き覚えのある内容の掛け合い漫才がその耳に届いたのは、ちょうど
その時だった。
そして訪れる既視感……
(ああ、そういえば俺もああやってスカウトされたんだったなぁ)
つい最近のことなのに、随分と昔の事のように思えてしまうのは、それから今日に至る
までの激動の日々が原因だろう。戦争という非常事態で青春を過ごしてきたシンにとって
すら、海を渡る旅路は険しくそして愉しいものだった。
すたすたと言い争う声が聞こえてくる方向へ歩を進めてみれば、三人の男が甲板に座り
込んで顔を付き合わせていた。見た限りでは、二人の会話をひとりが傍観しているようだ
った。
一人は言うまでもなく、船長のモンキー・D・ルフィだ。シンはその後姿に気楽に声をか
けた。
「ルフィ、コック見つかったか?」
「おう! 見つかったぞ! こいつだこいつ! サンジって言うんだ!」
「請け負ってねえだろーがッ!」
元気よく答えるルフィに力強く突っ込んだのは、黒服の男だった。さらりと流れるよう
な金髪は、シンのかつての戦友を思わせるものあったが、その下の眉毛はくるりと渦を巻
いて中々に個性的だ。
くわえたタバコから紫煙を漂わせる姿が妙に板についており、喫煙暦が長い事がうかが
い知れた。
タバコを吸うコック、というものに違和感を感じたシンだったが、あえてそこには突っ
込まずに、
「へー、アンタがそうなのか。
俺はシン。一応、一味の中じゃ操舵手やらせてもらってる。以後よろしく」
178 :
47=82:2006/10/13(金) 06:34:44 ID:???
「って、一寸マテコラ。俺は入るとは一言も……」
「……いやー、抵抗は無駄だと思うけどなー」
「テメーら、芸風か? その話しを聞かねえのは芸風なのか??」
明らかに『仲間になった人間』に対する自己紹介を始めるシンに、サンジはこめかみを
引きつらせる。
シンは、そんな彼の前に跪き、ぽんっとその肩を叩くと、優しい目で諭した。その目と
声にこもった感情は、かつて同じ目に会ったものしか出来ない代物であった。
「あきらめろ。ルフィは一度言い出したら止まらない」
「諦めてねぇで止めろ! オロすぞこのクソ赤服!」
「……って、なんで知ってんだ??」
掛け合いの中で鼓膜に響いた一つの単語。それが、真の目を丸くした。
何故、自分を赤服と呼んだのか……シンの今の格好は、白いシャツにルフィのズボンと、
『赤』が連想できるような姿ではないのだ。それでも赤服と呼ばれる理由としては、手配
書くらいしか思いつかない。
『赤服のシン』800万ベリー。それが、彼にかけられた『法の枷』なのだ。
サンジはフンと鼻を鳴らすと、
「アホか。うちは海のど真ん中で店やってるんだぜ。今日日危険な相手くらい把握しとか
なきゃ、商売も出来やしねえ。手配書くらい最新の奴がそろってるぜ。900万ベリー」
「へー、そうなの、か……」
答え、寒心しようとしたシンの動きが、止まった。その姿は、さながら壊れた機械のよ
うなカクカクとしたもので。
「きゅうひゃくまんべりー?」
「おう」
「……アガッタンディスカ?」
「なんだ、知らねえのかよ」
今度は、サンジのほうが目を丸くしてシンを見た。そして、彼にとってはこの上なく残
酷な宣告を行う。
「『二槍流のジェラード』返り討ちにしたんで、危険度が上がったって話だが」
……どーやらルフィのとのファーストコンタクトで吹っ飛ばしたおっさんが、予想以上
の大物だったらしい。
179 :
47=82:2006/10/13(金) 06:36:11 ID:???
「おおっ!? シン、賞金上がったのか!? スッゲーなー!」
「…………orz」
無邪気に喜ぶルフィをよそに、シンは、地面に手を付きうなだれて、人生の困難さを体
感している真っ最中。
ことんっ、ゴロゴロ……
その拍子に、ポケットに入れておいたレーションが落下し、甲板の上を転がっていく音
でようやく、シンはその存在を思い出した。ルフィはといえばその物体を口に含んだ記憶
がよみがえったのか、文字通り苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「……なんだこりゃ?」
それを拾い上げたのは、脇ほどから会話に取り残されていた三人目の男であった。バン
ダナを締めた、目の下に隈のある男だ。
たまたまこの店に食事に来ていた海軍の船に交流されていた海賊で、名前はギンという。
飲まず食わずの兵糧攻めの末に捕らえられた上、捕らえられている間も水すら飲ませても
らえなかった。
脱走し、食事にありつこうと店に入ったがコックに撃退され、外で飢えているところに
サンジが施しを与えた……それが、彼がこの場に至るまでに歩んだ経緯だ。
皿一杯のピラフと水だけでは飽き足らなかったのか、ジャムらしきその物体の栓を開け
て、中を覗き込むギン。
「……シン、お前なんでこんなの持ってきてんだ?」
「いや、ここのコックに味の改良してもらおうと思って」
「するってぇと、こりゃジャムかなんかか」
ギンが手にしたそれをひょいと摘み上げ、サンジはまじまじと眺めた。目の前の食物を
取り上げられたというのに、ギンは一切抵抗せずにビンをサンジに渡す。
ブルーベリー色のそれは、確かにジャムに見えなくも無い。というか、ジャム以外には
見えない。
「い、一応、魚とか野菜とか保存料で煮込んだものなんだけど……」
「は?」
「さ、魚と野菜?」
180 :
47=82:2006/10/13(金) 06:37:07 ID:???
心外そうに口を開くシンの言葉に、二人は目を丸くしてから、改めてその物体を見た。
……よくよく見てみると、ジャムのようなその物体には、魚の痕跡らしき小骨やら何や
らが浮かんでいる。ブルーベリーカラーというのは、ジャムであるという前提があればこ
そ美味しそうに見えるのであって、ジャムでないブルーベリーカラーの食品など、不気味
な物体でしかない。
「食えるのかこれ?」
「失敬な!」
実に率直な感想を述べるサンジに、シンは思わず叫んだ。アカデミー時代をこの物体で
食いつないだ彼にとって、これは青春の思い出であり、それなりに愛着があったのである。
「ホンオ・フェやシュールストレミングを参考にして、香料を使い分ける事で臭みを抑えた、理想的な発酵栄養保存食だぞ! 理論上は10年持つ!」
『…………』
一同、沈黙。
ちなみに引き合いに出された二つの食品は、それぞれが魚を原料にした発酵食品であり、
激・臭い事で有名な代物。
思わず反射でC・Eでもマイナーなネタを出してしまったシンだったが、彼にとって幸運
だったのは、それらの料理がこの世界にも存在していた事だろう。
「く、腐ってたのか、これ」
「あ、だから不味かったのか」
ギンとルフィの反応はにべも無い。
「それにしちゃあ、匂いがしねえな」
流石海のコックといったところか、サンジは発酵食品に対する偏見を一切持たずに、冷
静にその物体を評価した。シンはそのお言葉ににやりと笑って、
「ああ。元々の奴は最初は臭くて不味くてはら壊すしで三重苦だったんだが、なんとか味
以外の点を克服できたんだ!」
「へー。じゃあ、これお前が作ったのか」
「ああ」
「味のほう改良しろよなー」
「そこうるさい」
181 :
47=82:2006/10/13(金) 06:38:00 ID:???
不満だらだらのルフィに突っ込みいれて、シンは胸を張った。
「お前、コックもやるのか?」
「……必死で断る理由探してるのは分かるが、こいつは理由とか関係ないから」
意外そうなサンジに、シンはルフィを指差して、肩を叩く。
「もう一度言う。あ き ら め ろ !」
「断る」
はっきり言い切ってから、サンジは手にしたビンに指を突き入れた。それを見ていたル
フィの口から吐き気をこらえるような呻きが漏れる。
それは、サンジの中に根付く料理人としての本能だった。シンが引き合いに出した料理
はその匂いから一部の人間には忌避されがちだが、アレにはアレで中々味があるのだ。こ
れはどんな味がするのだろうか? そんな好奇心が彼を愚公に走らせた。
指を口に入れたまま、止まる事数秒。わくわくしながらコメントを待つシンに向かって、
賛辞はすぐさま行動に出た。
そこからは本当に迅(はや)かった。
「 こ の ク ソ ヤ ロ ウ ! ! ! ! 」
どごしゃぁぁっ!!
「!!!!!!」
電 光 石 火 。
真上からの衝撃で、真の頭は地面に叩きつけられ、木造の板を突き破る。首を支点に逆
立ちする羽目になったその姿は、まさに犬神家の人々で。
完膚なきまでに打ちのめした高速の攻撃……その正体は、垂直に振り上げられた長い足
を高速で振り下ろす、美しいネリチャギだった。
シン君、衝撃で飛びかける意識を必死で保ちながら、突き刺さったままで問うた。
「……な、なぜ……?」
「……クソ不味い物体に加工された食物の恨みだ」
182 :
47=82:2006/10/13(金) 06:39:01 ID:???
返すサンジの目はとことんまで据わっていた……どうやら、余りに不味すぎるレーショ
ンの味が、彼の逆鱗に触れたらしい。突き刺さったまま呻くシンの足をつかみ、引っこ抜
くと、その顔をにらみつけた。
サンジにここまで言わすほどに不味いジャムもどき、その光景を見ていて、一寸食べた
くなってしまったギンだったが、自重した。
いや、そんな事口走ろうものなら問答無用で攻撃されそうな空気だったから。
「おい雑用……クソジジイに話して、雑用の期間半分にしてやるぜ」
「! 本当か!?」
「その代わり、こいつにも働いてもらうぞ! こいつに、料理のイロハって奴を一から叩
き込んでやる!!」
完全に当人であるシンを放置して進んでいく話の内容。
シンは、消えていく意識の中でサンジに対してこう思ったという。
あんた、一体何なんだ……と。
クリーク戦でシン関わらせるために、結構無茶してしまった(汗)
ワロタwシンがワンピキャラしてるw
>あのルフィがかなり無理をしなければ食べられなかった
シンおめーなんつーもん作るんじゃw
すでに俺の脳内ではシンが尾田絵に変換されてるぜw
尾田絵のシンw
ヒョロッとしてチビなイメージ
ルフィとほとんど見分けつかないと思うんだ
尾田絵だと美形というより男前系になるな。背は低そうだけど。
>>187 そうか? シンのほうが髪の量が多いような気がするんだが。
……もし似てしまったとしたら、それこそ服装がものを言うんだろうな。
後は、こっちの世界に着てから目立つ特徴が出来たとか。
邪道かね?
眼が赤いって十分な身体的特徴だと思うが、変態揃いのワンピ世界では目立たないだろうな
しかも読者的にもカラー絵じゃないと分かりづらい
ディスティニー出ます! ドン!!!
くらえぇビームサーベル! ドン!!!
ぐぁあああ!!! ドン!!!!!
きみは おれが守るから!!! どんっ!!
途中でふきだしを変えるのがポイント?
負債は尾田に、キャラの掘り下げ方とか、演出とかを学んだ方がいいんじゃないか
表面だけだがマネした所はある
長い回想を利用して過去を語りキャラに厚みを付けようとしたりな
それが総集編もどきだったり長いバンクだっただけで内容が薄っぺらだっただけ
ワンピースキャラには信念というか、動機付けが暑苦しいくらいにしっかりしてるからなぁ。
種はそこらへんの動機付けがいけなかったんだと個人的に思うのだが。
元SS書きとしては、あんな表現しかしてもらえなかったキラ達が不憫でならん。
……ところでみんな、話は変わるが、キラとルフィが戦う事になったら、どんな
会話が交わされると思う? いや、前にも話題になった、キラ=海軍のロギアって設定でだが
エニエスロビーを想定してくださいな。
キラ「本当は、戦いたくなんかないのにぃっ!」
ルフィ「……馬鹿かお前?」
キラ「!?」
ルフィ「だったら、なんで戦ってんだよ」
キラ「それでも守りたい世界があるんだ! 君達を進ませたら、世界が滅ぶ!
ニコ・ロビンがどれだけ危険な存在か君は知らないんだ!」
ルフィ「……」
キラ「彼女が古代兵器を復活させれば、また戦争が始まる! それを何故!」
ルフィ「……ふざけんな」
キラ「……え?」
ルフィ「お前みたいな覚悟の無い奴が……
俺 の 仲 間 を 馬 鹿 に す ん な ぁ っ ! ! ! ! 」
駄目だ! これが限界だ!
むしろ キラの場合は、番外編的にワンピースの表紙ストーリーみたいな感じで、ルフィーと出会う以前に成長の過程を踏ませてやらないとキツイかも。
もしくは、「モーガン編」あたりで顔見せ程度に出てそこで挫折、その後 コビーかフルボディーと合流して海軍入りして中身成長とか。
って、ふと思ったケド、基本的にルフィーに負けた奴はしんでないんだよなぁ・・・。
逆にキラの場合、種世界より生身で戦うワンピースの世界の方が馴染めるかも。(精神的に成長できれば)
いやー、でもキラを出すのなら
ぽっと出てきて激強だけど綺麗言にすがってるっていうオリジナルに忠実のがよくないかい?
このスレじゃシンが主人公だし、そういったところじゃいいアンチテーゼになると思うんだが
ワンピ世界に揉まれ染められ想いも力も日々強くなっていくシン
スパコディ補正と悪魔の実で強くなったが、海軍で借り物の正義を疑わないキラ
想いだけでも、力だけでも
この言葉をワンピ的シンなら少年誌のノリで体言してくれそうだ
過去の復讐心を捨てて、今の仲間のためにもう一度この男を倒す!!みたいな
ぶっちゃけ叫んだもん勝ちみたいなトコあるしw
まぁ書き手さんの自由だよなって言っちゃったらそこまでだけどさ
甘っちょろいことグダグダ言ってたらルフィのワンパンで吹っ飛ばされて終わりだよな
ガンダムが出る時にドン!が入ってるの想像したらワラタ
>>198 そこで悪魔の実発動→回避ですよ。
むしろ、それと195を混ぜても良いかもしれない。
201 :
196:2006/10/16(月) 04:39:34 ID:???
>>198 なんかワンピ的にそんなノリになりそうでこわかったんだ。
故に多少の成長は敵役として使うにせよ必要だとね。
でも今ふと思ったのさ。ラクスと二人でバロックワークスってのもいいかなと
ミスター1000(サウザント)とミス・ハッピーバースデー……
いかん、実にあっさり思い浮かんでしまった。
けどこの場合、ラクスはやっぱ『ウタウタの実』とかそういうノリになるんだ
ろうか。
扉のアフターストーリーでクロコダイルがバロックワークス再結成を拒んだ後、
他のメンバーに推戴されてワンピ世界でラクシズ結成したりして・・・…
204 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 16:52:12 ID:0s44pNRX
あげ
お前ら…
たまには凸のことも思い出してやってください
街角でナミのおっぱいを業とらしく触る(握る)
死亡フラグw
ナミはおっぱい握られたくらいじゃ激怒はしない
慰謝料と称して有り金全部ふんだくるくらいのことはするだろうが
これがアンラッキースケベってやつか
むしろサンジによる惨殺フラグw
あるあるw
ロビンに髪を全部抜かれるんだろ?
むしろルフィにエライあだ名つけられそうだな、アスラン。
ルフィ「あ、ズラァ!」
アスラン「ズラじゃない、ザラだ!」
キラ・ヤマト
食べた実・・・キラキラの実
能力・・・キラキラしたオーラを出し、相手を魅了する
必殺技・・・キラキラボンバー
昔、ジャンプで見たような設定だぜ・・・orz
最近ワンピ読んでなかったからバイトにあるの読んでみた
メリー号がいつのまにかあんな状態になっていてショックだった・・・
>>205 凸は海軍に入ってシンの正統派ライバルになるってほぼ確定しとるやん。
ちなみに個人的には青キジの部下になってほしいな凸は
青キジの部下にどーやってなるか…
噛み合わなさそうだ凸と
スモーカーの部下になってカガリと一緒に鍛えなおされるに一票!
そうなった場合、アスランの能力はどうなるのか……やはり、無難に能力者にすべきか?
体毛を自在に操るモサモサの実なんてのはどうだ? 鉄も貫く剛毛に出来たり、相手の攻撃をうけとめる柔毛に出来たり。
反動が……大きすぎるッ!
>>217能力を発動した後は一時的に毛がごっそり抜け落ちて生え代わるとかプラスしてはどうだろう。
>217
ハンタにそんなやられキャラいたな
凸は白兵戦最強とか聞くけどCP9とかじゃダメなんだろうか
「よせシン!お前も一緒にこい!!俺たちが戦い合う必要なんかないはずだ!!」
とかエニエスロビーで言いそうだがw
シン「な、俺の攻撃が!?」
?「いくら速い、速いと喚いても・・・所詮はイーストブルーレベル・・・
君はもっと世界を知った方がいい。でないと・・・死ぬよ?」
シン「うわあああぁぁぁッ!」
ルフィ「やめろォ!俺の仲間に何しやがるッ!!」
?「フフフ、安心してよ。彼は殺さない。例え、どんな大悪人だろうと殺さない。
それがボクの正義・・・」
?「相変わらず、お優しいのですね」
ルフィ「何なんだ?お前ら!!」
キラ「紹介が遅れたね。ボクは海軍少将・キラ・ヤマト。そして彼女は・・・」
ラクス「同じく、海軍少将ラクス・クラインですわ」
海軍少将キラ・ヤマト
通称”不殺のキラ”
海軍少将ラクス・クライン
通称”平和の歌姫”
ナミ「キラ・・・それにラクスですって!?」
ルフィ「知ってんのか?」
ナミ「海軍の中でも、独善的ともいえる正義を振りかざし、
自分達以外の意見を一切認めない狂人・・・それがあの2人よッ!」
流れも無視して勢いで書いてしまったorz
キラ達が名乗るところには「ドドン!!」と脳内BGMをかけてください。
もちろんこの場合のキラの不殺は「ころさず」って読むんだよな?
>>221 オーブのような縁故人事じゃないんだから少将は無理があるかと。
相変わらず〜で吹いた
いいなこれ
キラ「”やめてよね”」
ど ん っ ! !
これでおk
キラ達は全員まとめてドラゴンに協力してるんじゃないかって気がする
シン「もう、槍もインパルスもねえんだよ………。どうせ俺なんか」
ルフィ「あいつ何黄昏てんだ?」
ウソップ「クロ相手に噛ませ狗にされたり、スレの流れが元居た世界?みたいに前の主人公の話ばっかで凹んでんだとよ」
サンジ「糞ウゼェ」
ドラゴンは何してる人ですか?
再登場はいつですか><
第××話 「やめてよね」
扉絵シリーズ コニールの大冒険
>>226 ナルホド、革命家つながり。確かに、平和を願いながら武力振りかざすってところがぴったりかも。
ただ、ネタにするとなるとどうだろう? ドラゴンってキャラクターが本編にあんまり登場してないし、
どういう思想に基づいて行動してるのかまるっきり不透明だしなぁ。
>>227 大丈夫だシン! アスランやキラの話題が多いのは彼らの身の振り方が全く見えないからであって、君の存在が薄いわけじゃない……と思う。
アスラン出すなら海軍脱走イベントは外せないだろ
ドラゴンはDの名を持つものと関係あるんじゃ?
初登場時「海賊か、それもよかろう」
とか言ってるあたりルフィを一方的に知ってるカンジだったし
多分グランドラインのポーネグリフにロジャーが残した
空白の100年の真実を明るみに出すのが目的とかじゃ?
それやったら政府転覆すらしかねないし、革命家の中でも危険視されてるとか
まぁワンピも未だに数年越しの複線が何個もあるからなぁ・・・
単行本買い戻すまで忘れてたもんいっぱいあったよw
233 :
47=82:2006/10/19(木) 04:08:08 ID:???
SIN IN ONEPIECE・バラティエ編の続きです。
ゆらり、とワイングラスの中で、真紅の水面が波打つ。並みの白魚のような細い指がグ
ラスを静かに揺らすたび、答えるようにワインは踊り、その芳香を鼻腔に届けていた。
いや、自分の職業からして、水面とたとえるべきだったかしらと、ナミはふとどうでも
いい事を考えた。
しかし、すぐに思い直す。本来海の水というものは雄大であっても寛大ではなく、美し
くあっても美味ではない。
彼女とて海で生きる女だ。海の上で飢えた苦い経験くらい、腐るほどある。そのときの
海水の憎たらしい事といったら……ふんだんにあるくせに飲めないときている。芳醇な香
りと味わいを持つこの液体に、海水をたとえるのは気が引けた。
気を取り直すように、ぐっと一口。
――美味い。
飢えと渇きの苦い記憶を、洗い流すような真紅の美酒。
彼女は、この海上レストランの味を存分に楽しんでいた。
「うーん。いいお酒ねぇ」
「……なあ、殴っていいか??」
目の前で、見せ付けるように美味しそうな料理を口にするナミに、シンはジト目で睨みすえる。
状況に流され、ルフィと二人無理やりウェイターにさせられて精神的に疲れながら店に出てみれば。
迎え入れたのは船にいるはずの仲間達。しかも、自分達を差し置いて美味い飯を食らっていたりする。
……むかつくな、って言うほうが無理だろう。
傍らで黙々と食べていたウソップは、そんなシンの様子に頬に汗一筋たらし、
「なんでお前がウェイターなんかやってんだよ」
「聞くな……」
234 :
47=82:2006/10/19(木) 04:08:54 ID:???
白いワイシャツに黒いベスト。
今のシンの格好は、いっぺんの非の打ち所も無い完璧なウェイター姿であった。服装そ
のものはありふれているのだが、コーディネーターであり、容姿も整っているシンがきる
と嫌に映える。この世界に来るまではいかにも女性受けしそうな優男だったシンだが、今
ではその容姿に海でもまれた精悍さが漂っており、女性の注目度を上げていた。
現に、店内にいる妙齢の女性の何割かは、シンのその姿に見惚れていたりする。
「いやー、シンの缶詰があんまり不味かったから、ここのコックが怒ってさぁ」
やたらとリラックスしてゾロ達と同じテーブルに座るルフィが、ここに至るまでの経緯
を説明する。こちらはシンとは対照的に、いつもの格好に前かけつけただけという格好である。
そして、あくまで堂々と手にした茶を啜り……
「缶詰じゃないし他人事じゃないだろーが!」
「つーかテメーは何やってんだ雑用!」
「ぶへっ!?」
そこまで来てようやく、シンのモップとサンジの踵が振り下ろされ、ルフィの後頭部に
突き刺さった。テーブルに打ち付けられ、一瞬動きの止まるルフィの両側にシンとサンジ
は回りこみ、腕を引きずっていく。
「オイクソウェイター、注文取ったらとっとと厨房もどれ」
「……はいはい」
「てめぇもだ雑用!」
「うぃ」
柳眉ならぬ、素敵眉毛を吊り上げて怒鳴るサンジに、二人はしぶしぶながら、応答する
のだった。
その姿を遠くから見つめる人影の存在に、その場にいた人間は誰一人として気が付かなかった。
235 :
47=82:2006/10/19(木) 04:10:25 ID:???
突然話はそれるが。レストランという業務形態ならば、昼飯時と夕食時の間に、下拵え
兼休憩をかねて休業時間を挟むのが普通なのだが、バラティエは違った。基本的に一度店
を閉めたら閉店までずっと営業を続けるのだ。
立地条件が海であるというところに問題があるのだ。女心は海の空……ではないが天候
によって極端な制限を受け、どうしても正確な時間に店を訪れようとしても、中々出来る
事ではない。中には3時間近く遅れてやってくる客もいるのだ。苦労してやってきても店
が閉まってた、ではお客様に申し訳がたたない……故に、バラティエに休業時間は存在しないのだ。
無論、そこで働くコックにも明確な休憩時間というものが存在せず、ローテーションで
休憩を取り、食事を取り……賄(料理店において料理人たちが店の裏で食べる食事)を作る。
「ほら、ここでタレだ」
「……はぁ〜」
サンジにあれこれ言われながら、シンは鍋の中身に液体をたらしていく。お玉でかき回
される鍋の中はやたらと粘度が高いうえ、色合いが茶色とカレーのようにも見える……が、
匂いの方が凄まじいことになっていた。なんと言うか、魚や肉の生臭さだけを抽出して圧
縮し、香水にしたようなそんな匂いだ。
本来ならコックが作るべき賄飯。
それを何故か、シンが作っていたりする……理由は簡単だ。サンジが、不味いなりに栄
養価の高いレーションの作り方に、海の一流コックの面々が興味を持ったのである。
料理の過程を見て、その改善点を指摘してやろうと思ったのだが……
「最後に香辛料を入れてかき混ぜて……後はこれをビンに詰めて、発酵させるだけさ。
大体が、2,3日で出来る」
「……なんとまあ」
どうだといわんばかりになべの中身を指差すシンに、サンジはなんともいえない表情で、
コメントに困っていた。後ろに居並ぶコック達も、サンジと同じくコメントし辛そうだ。
……これは料理ではない。
それが、サンジの率直な感想だった。味に対する配慮が一切なされず、栄養価や吸収性、
保存性が最優先……その加工過程はまるっきり薬品のそれであり、『料理』というカテゴリ
にはありえない代物だった。
ちなみに、不味さの原因と思われるのは、発酵食品のにおい消しに大量にぶち込んだ、
香草や香辛料だろう。本当に、匂いを消すためだけにありえない配合で混入されていた。
これでは、食事にトイレの芳香剤をぶちまけるようなものだ。
236 :
47=82:2006/10/19(木) 04:11:26 ID:???
「大量に作れて手間がかからず、長持ちする。保存食としては最適だろ?」
「……せめて、もう少し味を調える努力をしろ、クソ赤服」
いつものサンジならば、食品に対する冒涜とも言えるこの料理に対し、高速で蹴りを叩
き込んでいただろう。レーションの製造過程を間近で見続け、ショックで憔悴すらした彼
に、それを求めるのは酷というものだ。
「いやあ、下手に味調えようとすると、匂いが凄くなるんだよなぁ……一度それやって臭
くて死に掛けたし」
「……俺としては、なんでこんなモン作る事になったのか知りてーんだが」
「昔、常食だったんで」
「…………テメーの味覚は人外魔境か」
もはや突っ込む気力も無いらしく、サンジはふらふらとシンから離れる。
「? どこ行くんだよ」
「賄作るんだよ。そんなもん賄に出したら、クソジジイに殺される」
「じゃあ、これは……」
「一応完成させとけ……でもって、お前が全部食え」
「げ」
思わず、うめいて鍋を見てしまうシン。目の前の鍋では、かなりの量のレーションが煮
立っており、なんともいえない異臭を放っている。
勘違いしないでほしいのは、シンはこのレーションが好きというわけではない、という
事だ。彼自身も言ったように味は二の次三の次であり、製作者であるシン自身余裕がある
のなら食べたくは無いような代物だ。
慌てて辺りを見回すも、辺りにいたコック達は雲の仔を散らすように去っていく。製造
過程から味を予想し、逃げ出したらしい。
そして改めて視線を鍋に戻せば……煮え立つ怪奇物体A。
「……お、俺一人でこれを食えと??」
捨てる、という選択肢は存在しない。
この店ではどんなに悪い食材であろうと、食べれるものは食べる決まりがあると、レー
ションを作る前にサンジから聞かされている。お客様に出す食材は流石に一級品の新鮮な
ものを使うが、それ以外は賄で消費するとの事。現に、シンがレーションに使った食材も
店で使う材料に比べて明らかに見劣りするようなものばかりだった。
喧嘩しようが何しようが自由、というバラティエにおいて唯一絶対の取り決めらしく、
これを破ればどんなに腕が良かろうと問答無用でたたき出されるとか。
賠償としてウェイターやってるシンがこれを破ればどうなるか……想像に難くない。
237 :
47=82:2006/10/19(木) 04:12:23 ID:???
「……はぁ……船の倉庫に保存するかなぁ」
ナミに聞かれたら船からたたき出されそうな事をのたまい、シンは辺りを見回す。とり
あえず、完成して『しまった』これをビンにつめ、発酵させる必要があるのだ。
流石海の一流レストランというべきか、キッチン内の調理器具は理路整然と整頓されて
いるのだが……肝心の、これを詰めるための空き瓶が見当たらない。
完全密閉する型のビンならばあるのだが、それでは駄目なのだ……発酵食品という性質
上、ガスが発生してしまい、密封してしまうと容器が耐え切れず 爆 発 するのである。
……サンジが食品じゃないと感じたのも、頷けるというものだ。
蓋がプラスティックのものが理想的なのだが……
「ほれ」
「あ、サンキュ」
ビンを探してきょろきょろしているシンの肩越しに、大きめの瓶が差し出された。視界
に移ったそれと背中にかかった声に、軽くこたえつつ瓶を受け取る。
都合よく蓋はプラスティック製、大きさもかなりのものであり、今作ってある鍋の中身
なら全部入りそうだった。
ふって沸いた最適な陽気に、重ねて例を言おうと振り返り……その体勢のまま、固まってしまった。
「……なにやってんだウェイター。とっとと『それ』を詰めちまえ」
シンの背後にたたずみ、苦々しい表情でシンに言い放ったのは……長い髭を三つ編みに
し、やたら長いコック帽をかぶった、義足の男だった。
オーナーシェフ・ゼフ……この店の主である。
荒くれ者揃いのバラティエにおいて絶大な影響力を誇り、コック達が、この男の前では
赤子のようにおとなしくなる。
それだけに、まとう雰囲気はただならぬものがある。コックとしての自信に裏打ちされ
たその威厳は、シンが今まで体感した事のない類のものだった。対抗できそうな人間とい
えば、議長ぐらいしか思い浮かばない。
その空気ゆえ、馴染み難いものがあり……はっきり言えば、シンはこの人物が苦手だった。
「わ、わかりましたオーナーゼフ」
その雰囲気に推されてか、思わず敬語で答えてしまう。ルフィはこの男を前にしても全
くかしこまることなくタメ口を貫いていたが……そういうところは本当に凄いと、シンは
思う。どんな相手にも物怖じせずに平常心を保つあの胆力は、ルフィの大きな長所の一つだろう。
そんなシンの内心を知ってかしらずか、ゼフはひょいと鍋を覗き込んで……
238 :
47=82:2006/10/19(木) 04:13:31 ID:???
「におい消しの配合がでたらめだな」
「え?」
「多少匂いがきつくなってもいい。カレーならカレー系統、中華なら中華系統で香草を統
一してみろ。そうすりゃあ、もう少しマシな内容になるはずだ」
「は、はぁ……ありがとうございます」
意外な人物からのアドバイスに、シンは面食らってしまい、単純な礼しか言えなかった。
てっきり、サンジと同じようにマジギレするものかと思っていたのだが。
「……怒らないんですか?」
「なにがだ」
「いや……」
「フン。ケツの青いチビナスと一緒にすんな」
おずおずと問いかけるシンを、ゼフは鼻で笑った。シンが内心で感じていたサンジとの
差異もお見通しのようだった。
「栄養価や吸収率、保存性は中々のもんじゃねえか。お前のこいつが商品かされりゃあ、
海の上で飢えるやつは大分減るだろう。
コンセプトは悪くねえし、テメーはコックじゃねぇんだからな。怒鳴り散らす必要もねぇ」
「はぁ……」
「それとも……」
思わぬ褒め言葉に呆然としていたシンの脳裏に。
続けられたゼフの言葉は、これでもかというくらいに深く、突き刺さった。
「ザ フ ト じ ゃ あ 違 う の か ?
コ ー デ ィ ネ ー タ ー 」
「! ! ! !」
239 :
47=82:2006/10/19(木) 04:14:24 ID:???
不意打ちのようにたたきつけられた言葉。
アスカ・シンが、シン・アスカだった頃の記憶を刺激する単語の群れ。
ザフト。
コーディネーター。
どちらも、この世界には存在しない概念のはず……!
ここでうろたえてはいけない――!!
シンは必死で自分に言い聞かせ、ゼフに対する対策を考え、導き出す……が、結果はじ
き出された答えは、この上なくうろたえまくった最悪の代物だった。
「……!」
傍にあったモップをつかみ、
「っ!!」
持ち前の超スピードで、ゼフに向かって振り下ろ
が ご っ ! ! ! !
「!」
そうとした、その瞬間に、勝負は付いた。
……信じがたい事に、シンが振り下ろしたモップに対し、ゼフの義足が高速で跳ね上が
り、その柄頭を押さえ込んだのである。
靴を履くタイプではなく、この上なく原始的な棒状の義足で、同じく棒状のモップを押
さえ込む。それが、どれほど困難な事か、考えるまでも無い。しかもこの老人、明らかに
シンの動きを想定し、うろたえもせず迎撃したのだ……!
(こ、この爺さん……! 俺と同等のスピードなのか!?)
「片足がないとは言え、このくらいは造作もねえ」
「爺さん……あんた、何を知ってる!?」
「お前が異世界から来た、って事ぐらいか」
「……!」
「まあ落ち着け。別にとって食やしねえよ……店の馬鹿供もしばらく入って来ねえ。安心しな」
モップを止められ、うろたえるシンに対し、ゼフの言動は貫禄と余裕が漂っていた。
義足を下ろし、そばにあった椅子に腰掛けるゼフ。いまだ警戒を続けるシンは、モップ
を手放さずに、
「……舐めてるのか?」
「舐めちゃいねえよ。ただ、俺は手前に耳寄りな情報をくれてやろうと思ってるだけさ」
「情報?」
240 :
47=82:2006/10/19(木) 04:15:46 ID:???
ゼフの言葉に、シンの構えていたモップの先端が少しだけ下がった。それを見て、ゼフ
はようやく、シンが知りたいであろう『本題』に入る。
「……グランドラインには、『三大勢力』って呼ばれる連中が君臨してる。そして、その連
中の存在があの場所を『最強の海』にしてると言われてるんだが……依然、これが妙な事
になった時期があってな」
「妙?」
「なんて事はねえ。三大勢力にけんか吹っかけて、叩き潰された馬鹿共がいたのさ」
「……それがどうした」
「その勢力が、『ザフト』でも同じ台詞が言えるか?」
まじめに聞いていたのにとんだ肩透かしを食らったシンは、再びモップを構えなおそう
としたが……続く言葉にそれを取り落とした。
よくよく、この老人はこの手の不意打ちが好きなようで。
「ザフトに関しちゃあ色々ときな臭い噂が絶えねえが、非合法な研究者の組織だと思って
間違いはねえ。設立そのものは400年前に原型となる組織が確認されてるが、ザフトを
語るにおいて、最も重要なものは特異なその技術」
「……」
「常に時代の一足も二足も先取りする超技術は有名だったがな。
武力をもたぬ身の研究者が、武力がものをいうグランドラインでのし上がっていくのは
不可能だった……それでも、政府の警戒心を呼び起こすには十分だ」
まさか。
そう、シンは思った。自分と同じように、この世界に飛ばされてきた奴らがいるのか!?
「その技術の中で最も特徴的なものが『 悪 魔 の 実 の 人 工 精 製 』」
「…………」
「政府もその技術を真似ようと必死で研究してるらしいが、成功したって噂は聞かねえな」
不思議と、ゼフの口から飛び出した超技術に対して、シンの心の水面は凪いでいた。
コズミックイラ、ひいてはコーディネーターの技術でも、悪魔の実の精製は難しい……
だが、決して、不可能ではないだろう。
「余りに危険な技術から、政府から警告まで受けるようになったが、奴らは全部突っぱね
た上に、人工悪魔の実の能力者で作られた私兵集団まで作りやがった。そのせいで政府の
攻撃目標にされ壊滅。
余り有名な話じゃねえな。政府の関係者でも知ってるのは一握り。
どうだ? 面白い話だろう」
「…………なんで」
ぽつりと。
シンは、ゼフの言葉をぶった切り、口を開いた。そこから飛び出してきたのは、疑問の言葉。
241 :
47=82:2006/10/19(木) 04:17:30 ID:???
「なんで、俺にそんな事を話すんだよ。アンタは一体……何なんだ?」
「元海賊のシェフだ……なに、昔の仲間に、お前と同じのがいたのさ。
死んだと思ったら変な世界に飛ばされてきた、気のいい馬鹿がな。そいつも、手前がさ
っきまで来てたのと同じ、変な素材の赤い服を着てた」
「俺があんたの言う『ザフト』の一員だとは考えなかったのか?」
「ほざけボケナス」
シンの最もな疑問に、ゼフは鼻で笑い、立ち上がる。
「こっちのザフトは、そもそもそんな格好してねえよ。
それで思ったのさ。ひょっとして、ラスティと同じで右も左も分からずこの世界で海賊
やってるだけなんじゃねえのか、ってな」
「……ラスティ?」
「俺のところに来たコーディネーターの名だ。テメーと同じでマークを髑髏に差し替えてた」
自分に背をむけるゼフの言葉を聴き、シンはようやく事の次第を全て理解した。方を落
とし、嘆息して、
「カマかけただけか? ひょっとして……」
シンからは見えないが、その呟きにゼフの口元は綻んでいた。
そう、ゼフは『ラスティと同じかもしれない』という予測に基づき、ちょっとした話の
種のつもりで話しかけただけなのだ。それを、シンが実にド派手に過剰反応を示し……あ
あなったと。
よーするに、話をややこしくしたのはシンのうろたえまくった反応なのである。情けな
くもなるだろう。
そしてもう一つ分かった事。
赤服=ザフトという事を知る者も、ザフト=異世界から来たという事実をしる者も、く
この海には一人もいないだろうという事だ。ラスティという赤服の証言から情報を得た、
ゼフ以外には。
当たり前である。こちらの世界のザフトが赤服を着ていない以上、ザフトと赤服を関連
付けるものは、肝心の当人による証言しかなくなるのだ。
「……もう一度聞かせてくれよ。なんで俺にこんな事を」
「雑用が終わったらグランドラインに行くんだろう? 知っといて損はねえ筈だ」
「あんたは、そのラスティって人の言う事、信じたのか? 異世界から来たっていう、荒
唐無稽な話を」
242 :
47=82:2006/10/19(木) 04:18:49 ID:???
「普通は信じねえだろうな。だが……あそこなら、それがありえても不思議じゃない。
そう思わせるような場所だぜ。『偉大なる航路』は」
確信に満ちた物言い。
この男にそれほどまで言わせるグランドラインとは、一体どんな場所なのか……?
言い放ち、歩みさるゼフの背中を見送って、シンは物思いにふけっていた。
そして、気が付く。
『死んだと思ったら』
この発現が意味するものは、ラスティという人間も死に掛けるような目にあったという事。
それは、大胆な仮説だった。馬鹿馬鹿しい妄想でもある。
しかし……異世界からきたことすら肯定できる場所の存在を示唆されたシンにとって、
その妄想は非常に現実味のあるものに思えた。
死人が全員この世界にやってくるわけではないだろう。もしそうならば、今頃この世界
の人口は爆発しているはずだ。それ以外の条件が存在するのは確かだが……
『死』が世界を移動するトリガーたりえるのならば。
(ステラやマユも、この世界にいるのかもしれない……!?)
そのIFは。
シンの心に、一本の『槍』を作り出すきっかけとなった。
243 :
47=82:2006/10/19(木) 04:20:50 ID:???
今日の分はこれで終わりです。
シンの『目標』を明確に決めるターニングポイントとして書いたのですが
……コミックが手元にないからゼフの口調が変だ。しかも話の展開無理やりすぎる。
次は話は飛んでシンのクリーク戦での戦闘シーンから始めます。
GJ
凄まじい展開
ってかラスティこっちにきてたのかw生きてるのかな…
ワンピの世界と時系列とかどーなってんだろー
続きに期待してる
GJ!普通におもしろかった!!
つーかラスティーーーーーー!!
お前よりによってゼフの現役時代に飛ばされてたのかよ!!
GJ!
ハイネかと思ったらラスティかー
取りあえず『C.E.世界のザフト』≠『ワンピ世界のザフト』ではあるが
『C.E.世界のザフト』が『ワンピ世界のザフト』ができる基盤になっているのだな・・・
よく考えますな〜
GJッ
とりあえず叫ばせてくれ。
ラスティィィーーーーーーーーーッ!!
ところでグランドラインの三大勢力って、「世界政府」「七武海」「白ひげ海賊団」でいいのか?
確かそーだったような
単行本持ってないんで確かめられんが
250 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/19(木) 19:33:56 ID:hSzIVC8V
一瞬
北斗のシンかと思ったwwww
シャンクス達は、どのぐらいの勢力なのだろう
252 :
47=82:2006/10/19(木) 22:21:21 ID:???
GJコールサンクス。
ラスティは『海難事故』で既に故人ですが、これからの展開にかなり深く関わることになります。
これだけじゃなんなので、話題に乗って。
少なくとも五老星が重視している事から、シャンクスや白ひげはなみなみならぬ勢力である事は分かるな。
けど、白ひげを三大勢力に分けるのには無理があると思うのだが。大きかろうが一海賊団に過ぎないわけだし。
三大勢力のうち二つは『七武海』『海軍本部』で決定事項として、後の一つがどうかだなぁ。
……三大勢力にザフトを加えて四大勢力にしようとして、余りの厨臭さに思いとどまったのはここだけの秘密だ。
だが白ひげは現状で「世界最強の男」らしいぞ?
俺もてっきり白ひげ一味だと思ったが
ワンピの少ない登場の際の会話から見るに
シャンクスはミホークと渡り合える程だったことから七武海レベルだった
んで白ヒゲはそれをガキ扱いするが、シャンクスも力の差はわかってるような態度を見せる
つまり
白ひげ
↓
七武海+ミホークのライバルだったシャンクス(多分片腕なっても弱くはなってないはず
↑↓
新たな七武海の一人になろうと白ヒゲ海賊団から抜ける黒ヒゲ+それを追うエース
こういうパワーバランスになってくると思うが
以外と白ひげの身内ってワンピ界の上位のやつらに多いんだよな(バギーはともかく
これに海軍の青キジ赤イヌ黄ザルが絡んでバランスとれてると思うんだが
思ってるより白ひげ一味ヤバイらしい
そりゃ頭数で言えば一海賊なんてって思うかもしれんが
あの世界じゃ一騎当千を上回るやつらがウジャウジャいるわけだしなやっぱ質じゃね?
そう考えると、ザフトを三大勢力から外すのは正しい判断だな。
いくらなんでも、白ひげ級がいきなりザフトにいたら白けるし。
上半身のバネをフルに使い、高速で突きを繰り出す「ヴァジュラ」
特殊な歩法で一気に間合いを詰めて薙ぎ払う「エクスカリバー」
素早く全身の重心を移動させることによって、破壊力を最大限にした「ブラスト」
>>255 ブラストの最強装備はケルベロスだな
ちなみにあのビームジャベリンは、デファイアントと言う
>>199 ガンダム登場→負けフラグ?
ってのをどっかで見たな。
自分的に、世界観が合わないから、出てほしくないが……
……書き手さんが困るから、この辺にしようよ。
>>256 いや、それは知ってるけどさ
ブラストが一番しっくりくるかなって思った
素直に無理があるなと思った
必殺技の名前としてはいいんじゃねーか?ブラスト
種訳だと爆風って意味だし
既にヴァジュラは出ているからいいとして、
>>255の案の
場合の問題点はソードの方だと思うぞ
シンの武器は今んとこソードじゃねーし、エクスカリバーは聖剣・・・
フラッシュエッジ?
槍をぶん投げてブーメランみたく戻らせる奇襲攻撃か?>フラッシュエッジ
大・車・りぃぃぃんって叫びながらか?
ちょwそれどこのゼンガーw
槍をブン投げた後超スピードで距離を詰めて、超高速の掌打or貝で「インパルス」!
なんて妄想してみた。
265 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 00:27:55 ID:Vp46rjg2
ドラゴン!!D??
266 :
39:2006/10/21(土) 01:17:39 ID:???
>>264 それならむしろるろ剣の牙突の要領で、槍の柄の後ろを超高速の掌打+貝で「インパルス」!
>特殊な歩法で一気に間合いを詰めて
そうそう、シンの脚力を最大に活かして・・・って
縮地じゃん!!
俺的には、ブラストはゾロの『煩悩鳳』のような飛び道具形だと思った。
理由・W7編のアクアラグナ越えにて、
ルフィ「ゴムゴムのぉっ!」
ゾロ「三百煩悩(ポンド)……」
シン「ブラスト……」
三人『攻城砲!!!!』
これが見たい!
>>267 それで思いついたが、CP9にぼこられたシンが「剃」を自分なりに改良した技にすればいいのでは?
270 :
47=82:2006/10/21(土) 20:02:25 ID:???
SIN IN ONEPIECE バラティエ編が完成しましたので投稿をば。
「ヒレ開くぞぉー!」
バラティエの船べりに立つと、シンは一人双眸を閉じた。
潮風が頬をなぎ、波が体をゆだねる船体を揺らすのが、全身の感覚で理解できる。マス
ト上の見張り台を特等席に、よく昼寝をしているシンにとっては慣れた感覚。だが、目を
瞑ればいつもと同じ……とはいかなかった。かもめの鳴き声は船体が上げる駆動音にかき
消され、子守唄にはなりえない。鼻腔を突き抜ける潮の香りには、無粋な闖入者が居座り、
彼の平穏を破壊する。
それは、濃厚な火薬の臭いと、僅かに残る血の匂い。
流された赤い命のエキスは、彼の仲間であるゾロのものだった。
『背中の傷は、戦士の恥だ……!』
たった今見せ付けられた、重い覚悟。
『世界一の大剣豪になる』というたった一つの夢にかけた男の信念に、シンは改めて衝
撃を受けた。傍目から見れば黙祷しているだけに見えるかもしれない。だが、来ているウ
ェイター服の下は鳥肌で埋め尽くされているのだ。
(……これが、信念って奴か。これが、野望を持つって事か)
王下七武海であり、世界最強の剣士を前にしても鈍る事のなかった決意。そして、世界
最強の剣士に認められるほどの心力。
この広い海で、たった一つの『何か』を目指す事は、こんなにも重いものなのか。全て
をかけて目指す道は、こんなにも険しいものなのか。
ルフィたちに出会ったばかりのシンならば、その光景に憧憬と尊敬の眼差しを向けるだ
けだっただろう。
しかし、今の彼は違う。
「やってやろうじゃないか」
雄雄しく、雄雄しく。ただひたすらに雄雄しく、彼は誓う。この海に。仲間に。
『武器』を片手にしたシンの瞳に迷いはない。
ざばぁっ!
271 :
47=82:2006/10/21(土) 20:05:06 ID:???
船の下、海中から『なにか』が競りあがってくると同時に、駆動音が止まる。バラティ
エの選定から競りあがってきたそれは、半円形の大きな『足場』だった。
「ナルホド。だからヒレか」
ばらばらと足場に飛び出していく船員達を尻目に、シンはとんとんと足を踏み鳴らし、
敵を見据えた。
シンの正面……バラティエの船体の側面には、崩れ落ちたガレオン船。その残骸が横た
わっていて。その上には、殺気を漲らせる海族の群れ。
『東の海』の覇者、クリーク海賊団。50隻の大艦隊で、『東の海』を制した大海賊団。
……グランドラインに入った早々七武海の一人に出くわし、50隻の大艦隊が全滅。命
からがら逃げ出すも、ここまで追いかけられて船ぶった切られたという、中々に不幸な連
中、という言い方もある。
「ルフィー!」
「ん?」
早とちりして敵陣に飛び込み、残骸の中のマストにつかまった船長に、シンは大声で呼
びかける。
「そっちの恩知らずの相手は任せて良いんだよな!?」
「おう! むしろ手ぇ出すな!」
「成る程……」
元気のいい船長の声に応え、シンは首もとの蝶ネクタイを緩め、吼えた。
「じゃあ、その他大勢は俺に任せろ!」
「ってオイコラウェイター!」
……と。
格好良く決めたところに、隣に立ったコックからいきなり怒鳴られて、格好良さ半減。
余りにいきなりなことに、がくっと体勢を崩し……
「なんだよ!? ようやく見せ場だってのに!」
「見せ場じゃねえだろーが! 戦うんだったら、武器もて武器!」
「持ってるだろーがっ!」
「アホかてめーはっ!」
手にした『武器』をかざすシンに、今度は別のコックが力の限り怒鳴りつけた!
272 :
47=82:2006/10/21(土) 20:06:08 ID:???
「 モ ッ プ じ ゃ ね え か そ り ゃ あ ! 」
しかもトイレ掃除用である。
「テメーが槍の腕に自信があるのは知ってるが、相手はクリーク海賊団だぞ!? せめて
これを使え!」
「……いやぁ」
差し出されたのは、食事用のそれをそのまま大きくしたような形状の、巨大ナイフ。こ
れに限らず、バラティエの連中が手にしている武器は、全部が全部食事用の道具を巨大化
させたものだ。
それだけではない。敵であるクリーク海賊団達の武器も、戦闘用にしか見えない物々し
い代物であり、掃除用でしかないシンのモップは力の限り場違いであった。
シンは頬をぽりぽりかいて、
「槍じゃないだろ、それ」
「この期に及んで贅沢抜かしてんじゃねえ!」
「いや、贅沢とか言う以前に。多少の差ならともかくそこまで重心が違うとなぁ」
「モップ振り回すよりマシじゃねえか! そんなもんに殺傷能力なんぞあるかぁっ!」
「オーナーからも何とか言ってやって下さい!」
コック達の上げる悲鳴を聞きつけ、ゼフはシンを睨みつけ、
「おいウェイター」
「はい?」
「テメー、トイレ掃除用のモップ持ち出してんじゃねえ! 店内が汚れるだろ!」
『そーじゃないでしょうが!』
非常事態だというのに、コック一同の突込みがシンクロした。それらを他人事のように
聞き流し、シンはおもむろに槍を握りなおし……
「てめー! 俺たちを舐めて」
ど が ぁ っ ! ! ! !
「ぶふぉぁっっ!」
273 :
47=82:2006/10/21(土) 20:07:14 ID:???
正面で叫ぼうとした海賊の一人を、殴り倒した!
いや、殴り倒したのではなく吹っ飛ばしたというほうが正しいか。殴られた海賊はその
まま吹っ飛んでいき、船の残骸に居座るクリークの真横に『着弾』する。
「は……!?」
「んな……!?」
それを見た両陣営の人間達の反応はほぼ同一といってよかった。クリーク海賊団の戦闘
員が、モップで吹っ飛ばされたという事実に、目を丸くしていたのである。
「モップには殺傷能力が無い……そんなのは違う」
「て、てめー! 何しやがった!」
「まさかお前も能力者か!?」
わめくクリーク海賊団を無視し、シンはコックの一人を見て言った。『モップに殺傷能力
が無い』と言い放ったコックを。
同様もそこそこに、シンを覆い包むように展開し、武器を構える海賊たち。彼らを歓迎
するかのように、シンの右手でモップが廻る。
ヒュンッヒュンッヒュンッ……
「どんな物体だろうとある程度の『重さ』があるのなら……」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ……
廻る。廻る……加速しながら、高速でモップが回転する。
「大道芸でもするつもりかぁっ!」
「全員でやっちまえぇっ!」
その姿を好機と見たのか、一斉に飛び掛る海賊達。
「『 速 さ 』 が 『 重 さ 』 を 『 強 さ 』 に 変 え る 」
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ!
274 :
47=82:2006/10/21(土) 20:08:04 ID:???
あわてず騒がず、シンは静かに海賊たちを睨み吸えた。
加速を続け、速度をさらに上乗せされたモップは……凶器となって牙を剥く!
「 ヴ ァ ジ ュ ラ ァ ッ ! ! ! ! 」
ドガガドゴガゴガゴガゴゴガァンッ!!!!
『っぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!?』
十分な遠心力で加速したモップが、超高速で海賊たちを打ち据え、叩きのめす。ウォー
ハンマーのごとく振り回されたモップの先端が、海賊たちの顔を、わき腹を、腰を直撃し、
四方八方へと吹き飛ばした!
「グランドラインで名を鳴らしたさる武道家が、こんな事を言った」
呆然とするコック達に対して、海賊たちの着水音をバックミュージックに、ゼフが言葉
を紡ぐ。
「拳の威力には計算式が存在する。それすなわち、『体重×速度×握力=破壊力』だ、と。
拳じゃあねぇが、攻撃において速度とは威力に付随する重要な要素。あれほどの速度なら、
モップも立派な凶器……そういうこった」
ひゅんっひゅんっひゅんっ
「ま、こんなもんか」
モップの回転を下がり、ようやく目で終える程度の速度になってから、シンはモップを
肩に担いだ。血が滴り落ちるそれを見たゼフのコメント。
「ウェイター。事が終わったらそのモップは捨てとけ。汚くてトイレ掃除にも使えやしねえ」
「おーけー。オーナー」
気楽に関係の無い会話をする二人を見てようやく、コック達はゼフの不可解な言動の意
味を理解した。なんと言うことはない、彼らのオーナーは最初からシンならばモップでも
敵を倒せると、分かっていたのである。
275 :
47=82:2006/10/21(土) 20:09:11 ID:???
「ひ、ひるむなぁっ!」
「相手はモップだ! 打ち合ってりゃそのうち壊れる!」
「そうだ! あんなモンが戦闘で持つわけがねえ!」
一方のクリーク海賊団はといえば。流石百戦錬磨といったところか、相手の武器がモッ
プである事と、その耐久性に目をつけて、武器破壊を決意した。頑丈さとは武器にとって
重要な要素の一つであり、シンが持つモップにはそれが致命的に欠けていた。
そうと決まればと、今度は金棒や斧といった、重量級の武器を手にした連中が前に立ち、
身構える。
「打ち合う?」
彼らの雄叫びを聞き、シンは笑った。
本人は気付かなかったが、それは明らかに、今までの彼の笑顔とは趣が異なる笑顔だった。
『決意』をして譲れないものが出来た男の、不適きわまる笑み。
「あのモップぶっ壊せぇぇぇっ!」
「前提からして間違ってるな」
正面にハンマー使い、右前に棍棒使い、左前には斧使い。明らかにパワーファイター然
とした男達が同時に飛びかかろうとしたとき、シンは敵を屠るために動いた。
「ぶっころっ」
どごぉっ!!!!
まず最初は、ハンマーを振り上げ突撃しようとした正面の男。
シンはその場を動かずにがら空きになった腹部に向かって、強烈な打突を見舞う。
「お前らは」
左右からは、斧使いと棍棒使いが飛び掛ってくる。
シンはあわてず騒がずモップを横に構え姿勢を低くし、横なぎに振り回された斧を回避し、
どごしゃぁっ!
逆側に立つ棍棒使いの武器が振り下ろされる前に、その顔面を一突き。
そして、モップを引く勢いをそのままに、反対側の斧使いのみぞおちに柄による強烈な
一撃を打ち込んだ!
どごっ!
「俺の武器に触れる事さえ出来ないで終わる……!」
「……っ!!?」
276 :
47=82:2006/10/21(土) 20:10:02 ID:???
文章にすれば長いが……シンの一連の動きは文字通り一瞬で行われた事。余りの速さに
クリーク海賊団の戦闘員達は、そのモップの動きを捉えることすら出来なかったのだ。最
後の棍棒使いと斧使いを倒したモップの動きにしても、モップがかすんだようにしか見え
なかった。
続いて飛び掛るつもりで後ろに控えていた連中も、余りの事にしり込みし、動きが止まっていた。
「す、すげぇ……モップ一本でクリーク海賊団を圧倒してやがる!」
「いいぞー! ウェイター!」
「ま。相性の問題もあるんだろうけど」
コック達の歓声に内心ガッツポーズをとりながら、シンはあくまで表面上はクールに決めて、
「お前ら、揃いも揃ってパワー型だろ? 相性が悪すぎるんだよ」
「貴様ら! モップ一本に何手間取ってやがる!」
部下の余りのふがいなさを見かねたのか怒声を発するクリーク。
(モップ……? 違うさ)
内心で嘯きながら、シンはモップを改めて構えなおす。
(俺が今構えてるのはモップじゃない! ゾロの刀と同じ、ルフィの拳と同じ……引く事
を知らない海の戦士の、決意の『槍』だ!)
この広い海のどこかに、ステラとマユがいるかもしれない。失ったと思ったかけがえの
無い大切な人たちが、生きていてくれるかもしれない。
(お前らの世界で死んだ奴が、グランドラインに現れる……? 可能性としちゃあ、ゼロ
じゃあねえな。むしろ、あの海ならそんな事が起きても納得出来ちまう)
先日ゼフに対して放った問い、その答えはシンの中に芽生えかけた想いをより強固なも
のへと変えた。
シンがこの世界に現れたときに踏みしめた島は、世界で最もカームベルトに近い島だっ
た。ゼフがラスティを拾った場所も、グランドラインだったという。
グランドラインが死者を引き寄せる? ならば……
(俺はあの海で……マユやステラを探し出す! そして!
今 度 こ そ あ の 二 人 を 守 る ん だ ! ! ! ! )
構えたシンの放つ気配に、海賊達は悲鳴を上げて後ずさった。
シンの腹に括られた一本の槍が、今イーストブルーで産声を上げた。
277 :
47=82:2006/10/21(土) 20:13:01 ID:???
今回は以上です。シンにとうとうあの台詞を叫ばせられましたw
一応、幹部との戦闘ネタも考えてはあるので……多分、次でバラティエ編は終わると思います。
GJ!改めて思ったがよくツンいきてられんなーwワンピ世界でw
>グランドラインで名を鳴らしたさる武道家が、こんな事を言った
>拳の威力には計算式が存在する。それすなわち、『体重×速度×握力=破壊力』だ、と
糞ワロタw
確かに、あの漢ならばグランドラインでも通用するなw
GJ!っす
某格ゲーのキャラの隠し武器(ありゃデッキブラシでしたが)を思い出してしまいましたぜ
281 :
47=82:2006/10/22(日) 19:20:58 ID:???
GJコールありがとう。
剃を体得してシンがレベルアップっていうのは、いい案だな。
剃体得以前→技名がインパルス関連
剃体得後→技名がディスティニー
っていう流れにすれば、燃えそうだ。
後、エクスカリバーに関しては作者の頭の中できちんと形になっていたりするのだが……反応がちと怖い技だったり。
先にばらしておくと、嵐脚みたいに鎌風引き起こす業なんだが。イーストブルーの時点で使わせるにはちとつらいかも。
最初はひたすらコマよろしく回転して勢いつけないと使えないって設定なんだが、どう思う?
つまり周断か>>エクスカリバー
284 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/23(月) 10:41:55 ID:iZHEvlP7
>>281 周断レベルの破壊力なんて持たせたら、いくらなんでもあれだろ。
最初はせいぜいちょっと強力な嵐脚程度か、普通の嵐脚くらいの威力にしないと。
>>284 むむぅ。それは自分も思ったが……
職人さんに任せようよ。あまり討論してても、書きづらくなるだろうから。
今週の扉絵で槍の絵があったな。
見たのはエネル以来だ。
そういえば彼も槍使いだったのを忘れてたw
>>286 ああ、そういえば……
すると、最初にやつにくってかかるのはシンか?
……やられフラグじゃん(ry
288 :
47=82:2006/10/24(火) 10:48:27 ID:???
思ったよりも完成が早かったんで、昨日書き込もうとしたら
アクセス規制に巻き込まれたorz
とりあえず、バラティエ偏のラストです。幹部との先頭はいろいろ考えて省略しました。
広い海のど真ん中に、珍奇といっても差し支えの無い形の船が、波にゆられていた。
魚を模した船体に、異様に低い船縁。マストはあるものの、『船』というより『海上施設』
というほうがしっくり着そうなつくりだ。船体の両側に展開した、半円形の物体は、さな
がらひれのようである。
海上レストラン・バラティエだ。
その船べり……ヒレが砕かれ、破壊の爪あとも生々しい側に、包帯まみれの男が一人、
表情をゆがめながら佇んでいた。
体を少し動かすたびに、全身が過剰反応を起こしてギシギシと悲鳴を上げ、体に受ける
潮風すら傷口に染みるようなむず痒さをもたらしている。
両足が自分の体重を支えているという当たり前の事実すら感動的という、矛盾な喜びを
感じるほどに、シンの体はボロボロなのだ。
当たり前といえば当たり前である。ドン・クリークの振り回したモーニングスターから
ゼフをかばって、代わりに直撃を受けたのだから。骨という骨は砕けていたし、戦闘終了
直後はパティやカルネの手を借りなければ歩く事もままならないほどだったのだ。
……それが、僅か数日でここまで回復してやがるし。
「……あれが肉食ってりゃ直るんだから、凄いよなー。こっちの物理法則」
自分の化け物ぶりをこの世界の物理法則のせいにして現実から目をそらすシン。言っち
ゃ悪いが、今の時点で君は十分人間やめてるぞ。
……まあ、遠い目をして、わざわざこんな場所で黄昏ながらのたまうあたり、自覚症状
はあるのかもしれないが。そこは突っ込まないのが武士の情けである。
「おいウェイター」
「……もうウェイターじゃないんだけど」
店のドアが開くと同時にかけられた声に、シンは眉をひそめながら振り向いた。扉から
顔を出したのは、シンと親しくしていたコックの一人である。
「オーナーがお前に話があるそうだ」
「オーナーが?」
289 :
47=82:2006/10/24(火) 10:50:12 ID:???
それこそ、ウェイターを辞めたのならオーナーと呼ぶ必要も無いのだが、シンは反射的
にそう呼んでしまった……それに気付いて、シンは表所をゆがめ、嘆息した。
シンはゼフが苦手である……元々威圧感を感じるというのもあったが、以前に赤服関連
の事でからかわれてからというもの、その傾向はいっそう強くなった。
(……一体何の用だ?)
これといって呼び出される理由が無いはずのシンは、首をひねるしかない。とにかく、
託どおりにオーナーの自室に向かうため、店内に入る。
潮風が支配する外界と違い、店内を支配している音は海のコック達の荒っぽい怒号と罵
声であった。戦いの余波で故障した部分を修理する音も、それに追従していた。今この店
で働いていないのは、まだ眠っているルフィと、戦いの功労者のシンの二人だけだ。サン
ジですら厨房の火元のチェックに借り出されているのだ。
一度しか行ったことの無いゼフの部屋だったが、案内は必要なかった。一週間以上働い
た店だというのもあるが、ゼフの部屋には特徴的過ぎる目印があった……ルフィいわく、
『正当防衛の流れ弾』でぶちあけられた、巨大な事この上ない穴である。
「……おう。来たか」
ノックをして、本人の意思を確認するという通過儀礼を経て、シンは室内に侵入する。
バラティエに着てから二度目の、そして最後の訪問になるはずであったが……それでも、
シンは室内に入った瞬間に、眉をひそめざるを得なかった。
誰もが眉をひそめるような光景があっただけではなく、原因はシンの持つ記憶に由来し
たものだった……ベッドの上に腰掛けるオーナーの手に握られた、白く細長い包みに、強
いデジャヴュを感じたのである。
……それが、自分の昔の相棒を持ち運ぶときの包みにそっくりなのだと気付くのに、一
瞬の時間が必要だった。
「なにぼけっと突っ立ってる。とっとときやがれボケナス」
「あ、はい」
シンはゼフと向き合う形で勧められた椅子に座ると、改めてゼフと目線を合わせた。
290 :
47=82:2006/10/24(火) 10:51:07 ID:???
「テメーを呼んだのは他でもねえ……頼みがあったからさ」
「頼み?」
実に簡潔かつ率直に話題を切り出すゼフに、シンは眉をひそめる。正直、目の前の老兵
が自分に対して頼みごとをするような懸案が思い当たらない。
「何、ちょいとした昔話に付き合ってくれりゃあいいのさ」
「……ラスティ、って奴の事ですか」
「……ああ」
「そういえば、詳しく聞いてませんでしたね」
つぶやいてシンを見返すゼフの瞳は、完全にここではない場所……過去の情景を映し出
し、見つめていた。
「何、酔っちゃあテメーの故郷の話を高々とのたま大馬鹿野郎だよ。
本人が言うには、『ヘリオポリス』とかいうコロニーを攻撃してる最中に死んだらしいがな」
「ヘリオポリスぅッ!?」
思わぬところで飛び出した単語に、シンは素っ頓狂な声を上げてしまった。ヘリオポリ
ス攻略といえば、アスラン・ザラがクルーゼ隊にいたころに行った作戦であり、『あの』ア
ークエンジェルやストライクの伝説的活躍が始まった場所なのだ。
シンにとって、なじみはまったく無くとも、記憶容量を占める割合は大きい重要な事件である。
「なんだ。知ってんのか」
「知ってるも何も……こっちじゃあ有名な事件ですよ。そんな重要な作戦に参加してるなんて」
自分とアスランは親しかったわけではなく、むしろ敵視し反発していたと言っていいが、
それでもこんな状況になるといろいろと思い出されてしまう。反発した事とか反発した事
とか反発した事とか……かつての自分の餓鬼臭さぶりに、穴があったら埋まりたい気分な
るシンであった。
(う、うっわー。あ、アスラン御免。本ッ当に御免)
世界の壁を突き抜けろとばかりにシンはかつての上官に誤ったが、ゼフはそんなシンの
内心など露知らず話を続けた。
291 :
47=82:2006/10/24(火) 10:52:27 ID:???
「……俺が知りたいのは、そこなんだ」
「え?」
「俺は、ラスティの馬鹿から大方の事は聞かされてる。『いでんしぎじゅつ』とかはちんぷ
んかんぷんだが、お前らの世界の大方の情勢は知っているつもりだ。
だからな……ラスティが命を懸けて成し遂げようとした作戦が、どんな結果を生んだの
か。その後の情勢はどうなったのか……
覚えてる限りでいい。詳しく教えちゃあくれねえか」
「……は?」
「あの馬鹿はな、吟遊詩人なんぞやってやがってなぁ」
馬鹿、馬鹿、馬鹿……次から次へと飛び出す同じ種類の愚弄の言葉。本来ならばつかみ
掛かってでもやめさせるべきそれらを、シンは止めようとは思えなかった。
その単語を口にするときのゼフがいかにも陽気で楽しそうで、陰に篭ったものが無かっ
たからだろう。
「いつも町で拾った愚に持つかねえ怪談や御伽噺を、いかにも面白おかしく語るんだ……
『退屈な航海で皆が楽しめるように』。それが、あいつの信念みたいなもんだった」
「…………」
「そんな信念からなのか。他の馬鹿共がまるっきりあいつの過去話を信じねえからなのか。
あいつは特に、コズミックイラの話をよくしたよ。
この話し方がまた上手くてなあ。ジョージ・グレンの演説のくだりなんざ、馬鹿共全員
がこぞって聞きたがった。
かつての同僚の話も大人気だった。物事を深く考えすぎて将来の禿げが心配になっちま
うアスラン・ザラ。ピアノがうまくてよく男色の兵隊に襲われて泣き付いてきたニコル・
アマルフィ。プライドが高すぎてアスランに噛み付いちゃあ騒ぎを起こすイザーク・ジュ
ール。皮肉屋で真剣みっつーもんが全く無いくせにそつのないディアッカ・エルスマン。
歌がうまくて隊内でも評判だったミゲル・アイマン。いつも仮面をつけてて何を考えてる
か分からないラウ・ル・クルーゼ。そんな隊長を無言でさせたアデス艦長……くだらねえ
知り合いの日常話も、あいつにかかりゃあ人気の物語よ」
ゼフの脳裏に浮かぶのは、実に愉しそうに故郷の話をするラスティの姿。ゼフの部下達
は誰一人としてラスティの故郷の話を信じようとせず、彼が作ったフィクション話の類だ
と思っていたが……決して、ラスティを差別しようとはしなかった。文字通り『気のいい
馬鹿共』であり、ラスティはその馬鹿たちの中に溶け込んで、いつも愉しそうに笑っていた。
292 :
47=82:2006/10/24(火) 10:53:18 ID:???
「俺も、そんな聴衆の一人だった。それでつい、気になっちまったのさ。
あいつが話した、嘘みたいな世界の話の続きがな」
「そんなに、話すのうまかったんですか?」
「ああ。どこぞの酒場に住み着きゃ、それだけで酒場を潤わせるだろうよ」
笑うゼフの表情はどこまでも誇らしげだった。いや、彼は本当に誇っているのだろう……
『赫足のゼフ』にそこまで言わせるほどの男だったのだ。ラスティという男は。
「……ろくでもない世界の話ですよ?」
自分では、とてもじゃあないがその人のようには話せないだろう。そんな思いがこもっ
た言葉だったが、ゼフは笑って答えた。
「ああ。知ってる。
ラスティの野郎があんなに『物語』に執着したのも、それに関わってんだろう」
「現実逃避ですか」
「いいや。あいつは、あの世界でこそ語りたかったんだよ」
「?」
「いつか、あの馬鹿が酔った拍子にこんな事を話してくれた事があった。
『俺がいつかもとの時代に変えることが出来たなら、その時に艦長達の事を話しにして
もいいですか? あんな世界だからこそ、俺は俺の話で皆を楽しませたいんです』
元の世界で嘘見てえなこの世界の話を伝えて、戦争を終わらせ人々の笑顔を取り戻す。
それが、あいつの『野望』だったのさ。大それた野望じゃねえか。種族間での憎しみあい
から始まった戦争を、話一つで終わらせちまおうってんだからな」
「ナチュラルとかコーディネーターとか……その人の中には垣根がなかったんですね」
「それは、俺も気になって聞いてみたのさ。
なんでも、最初はあったらしいがな」
「?」
「全員ナチュラルのはずなのにコーディネーターを余裕でぶっちぎるこの世界の連中を見
てるうちに、そんな事にこだわるのが馬鹿らしくなったんだとよ」
「ぶっ!?」
ゼフの発現は、真の笑いのツボをジャストミートし、その口から唾液交じりの息を噴出
させる。ゼフもその時のラスティの話しぶりを思い出したのか、笑いをかみ殺す羽目になった。
眩いほどの青空が見える、大穴の開いた室内で。
男が二人、笑いの衝動と必死に戦っていた。
293 :
47=82:2006/10/24(火) 10:54:55 ID:???
それから、シンは今までの人生……オーブで運命が変わってから最も長く、声帯と唇を
動かした。つたない表現と知識をフルに使い、己の住んでいた世界の話を伝えた。
殺し合いと憎しみあいの続くろくでもない世界の話。気がめいってくるようなネガティブな話。
ゼフが褒め称えるような男には到底及ばないだろうが、シンはそれでも必死で己の生き
てきた世界の姿を必死に表現した。
極力表現が偏らないよう、アスハやブルーコスモスについても平等に表現した。ついに
は関係ないはずの自分のみの上話まで始める始末。
コックが達が部屋に持ってきた食事をぱくつきながら、悲鳴を上げる体をなだめながら、
ぶっ通しで話を続け……話が大方終わる頃には、シンはぐだぐだに疲れ果てていた。
「……っは〜」
「やれやれ。ろくでもねえ世界だな」
分かっていた事だがよ、と付け加えて、ゼフは嘆息した。シンはがらがらになった喉を
水で潤すのに夢中で、そんな評価など聞いていなかったが。
「……ウェイター」
「なんですか?」
喉も潤い、ひと段落したとばかりにリラックスするシン。そんな彼に投げかけられたゼ
フの問いは不意打ちだった事もあって彼の耳に必要以上に重く響いた。
「手前の『 野 望 』はなんだ?」
「…………」
ぱ り ん っ !
荒っぽいコック達がいくら暴れても壊れないように、頑丈に作られたはずのガラスのコ
ップが、シンの手の中で砕けた。砕けたガラスが手のひらの皮を突き破り、血が流れ床板
に小さな池を作ったが、流した側も流させた側もその赤い命のエキスを一切気にすること
はなかった。
流す側は猛る。
294 :
47=82:2006/10/24(火) 10:57:09 ID:???
「今度こそ。俺の大切な人を守りぬく。
この海のどこかにいる、ステラとマユの二人だ。俺を受け入れてくれた、ルフィ達だ」
「妹達のほうは……いねえかもしれねぞ」
「いるかもしれない。そして、今この瞬間も泣いているかもしれない」
流させる側の正論を封じ、流す側はそれでも猛る。
おのが心につきたてられた一本の槍が示す『野望』のため。
「たとえ二人がどんな場所にいようとも。この海にいるのなら、俺は探し出してみせる。
そして、今度こそ二人を守り抜く。
もう二度と、俺の大切な人達を傷つけさせはしない…… 絶 対 に だ !」
「それが、テメーの信念か?」
「ああ! 麦わらのジョリーロジャーに誓ってもいい!」
「海賊船の船員が海賊旗に誓うって事は、『命を誓う』って事だぜ」
「 当 た り 前 だ !」
命を懸ける。その事にためらいは無く、むしろ望むところである。
昔の自分ならばしり込みするであろう誓いに、シンは一切抵抗を感じていない……何故か?
簡単だ。同じ事を平然とやってのける、 最 高 の 馬 鹿 野 郎 を知っている
からだ。自分達の時代では考えられないその生き方に憧れたからだ。
その憧れたルフィ達とかなり近い場所に自分が立っていると、シンは気付いているのだろうか?
ゼフは、シンの話を聞き、その言葉に見え隠れする感情とその身の上を総合し、昔のシ
ンを『餓鬼』の一言で簡潔に評価したのだが。その相貌は、間違っても『餓鬼』のもので
はない、一人の海賊の顔だった。
憧れが、こうも人を強くするものなのか……値踏みするようにシンを眺めていたゼフは、
その言葉に深い笑みを浮かべ、
「俺がすぐにてめえとラスティをつなげられたのは、戦闘スタイルが似てたせいもあって
な。お前と同じ、速度重視の槍使いだった」
シンの眼前に、ようやく登場したのは白く細長い包みだった。彼にデジャヴを与えた現
況ともいえるそれは、よくよく見るとかなり古びていた。
「さて、こっからが本題だ……」
295 :
47=82:2006/10/24(火) 10:58:21 ID:???
シンが見つめるその前で、色あせた布包みがゆっくりと開かれて……あらわにされたそ
の中身を見て、シンは息を呑んだ。
「こ、これって……!?」
そこに現れたのは、一本の槍。
青い柄に赤い柄飾り、白銀の刃を持つ、鋼作りの槍だった。よくよく見れば柄や飾りに
は細かい傷が目立ち年季を感じさせるが、白銀の刀身は新品の如き輝きを放っている。
「ラスティがグランドラインで暴れてた時に、ザフトが接触してきてな。こいつは、その
時に連中がよこしたもんだ……時期的に見て、ラスティを私兵集団に加えたかったんだろ
う。間に合わずに壊滅しちまったが」
「……まるでガンダムだな。このカラーリング」
「持ってみろ」
いわれて、シンは反射的にその槍をつかみ……その表情を、さらに驚愕でゆがめることになる。
「!? か、軽い!」
「ザフトの研究過程でできた極軽量の金属で出来てるそうだ。強度はそこまで高くねえが、
軽さは折り紙付よ……これをてめーにくれてやる」
「な!? 何言ってんだあんた!」
あれほど誇らしげにしていた仲間の形見ともいえるものを譲る……信じがたい、理解し
がたいその言葉に、シンは思わずタメ口になってゼフを問い詰めた。
「勿論ただじゃねえ」
貫禄が違うというべきか、シンの詰問に対してゼフは冷静に対処する。
「こいつは、ラスティの魂とも言うべき代物だ。グランドラインの長い航海を、俺や仲間
達と渡り歩いてきた『信念』の槍だ」
ゼフは言わなかったが、彼が信念の強さを『槍』にたとえたのは、この槍の存在があっ
たからこそだった。誰にでももてるほど軽く、しかし振るうものによっては凄まじい力へ
と変貌するこの槍は、ゼフの中では信念の象徴だった。
296 :
47=82:2006/10/24(火) 10:59:19 ID:???
「俺の故郷にはこんな言い伝えがある。
『海で散った命は、海を流れて生まれた島へと必ず帰り着く』
他の船員達はこの世界に故郷がある。だが、あいつはこの海のどこを探しても、故郷に
ゃがねえんだ。
あいつの魂は、今もこの槍に宿ってる。俺はそう信じてる」
「…………」
「故郷に返そうとは思わねえが、今の俺じゃあこいつの魂に満足な物語の材料を提供する
事が出来ねえ」
「…………」
「壊れてもいい。欠片でもいい……そいつを、お前達の『物語』に連れて行くことが条件だ」
海賊王になる男。
その仲間の傍にいてみる事の出来る『物語』。
いかにもラスティが喜びそうな事だとゼフは思う。
「わかった」
答えは、簡潔。
シンはそれ以上は何も言わずにラスティの槍を手にし、立ち上がった。
そして……
ひゅっ!
槍の軽さを確かめるかのように、それを振るう。
「オーナー。こいつの銘は?」
「『ネバーエンディング』……ラスティの奴は、そう呼んでいた」
何気ないゼフの返答は、シンに運命を感じさせずにはいられない。
言い方を変えれば『エターナル』。こじつけかもしれないが、フリーダムと縁のある名前
に思わず笑みを浮かべて、言った。
「悪いがオーナー。銘を変えさせてもらうよ……こいつは今日から、
『 イ ン パ ル ス 』だ」
297 :
47=82:2006/10/24(火) 11:01:20 ID:???
以上で、バラティエ編は終了なのだが……
うわあ、ゼフの口調がところどころおかしいし。
次のアーロン編こそは、幹部クラスとの本格戦闘を想定しています。というか、
幹部のキャラクターおおむね固まってます。
GJ!
『ザフト』に関わる情報はグランドライン突入までお預けかな?
しかしザフトの開発した実ってどんなんだろう。
マネマネの実モデルMSとかかね。
シンパパとシンママもいるぞ。
GJ!!
じ、GJ!!
シン、がんばれ!!
ところでこっちの世界にはいずれ議長とかもくるんだろか?
>>305 うーん、自分は来てほしくない派だな。なんか、ややこしくなりそうだし。
307 :
305:2006/10/25(水) 20:04:19 ID:???
黒幕候補が何人もいると大変だからな…やっぱ無理か
議長好きだから残念だが仕方ないな
倉庫からきますた
な ん だ こ の 良 ス レ
>>305 俺は登場してほしい派だなぁ。五老星との渋い政治的駆け引きが見たい。
ザフトの現在の最高責任者として登場させても面白いかも。
ユウナがドラム王国に拾われているのを想像したさ。
あの国ってマトモな文官が居ないから重宝されそう。
オーブにつづき、この世界で携わったドラム王国までもが黒ひげの襲撃で燃やされ、さらにアスハ家同様に身勝手なワポルに激怒して血涙を流すわけさ。
ワポル帰国時にはワポル達に逆らって殺されかけ、そこを旧敵であったシンに救われるとか。
そういやシンのレーションだけど、ワポルとの初遭遇時にワポルに喰わせて始末するとかどう?
シンのレーションはある意味武器になるよな…
>>311 ルフィすら食うのに苦労したシロモノだからな;
自分はその件をみて、某アニメの謎の神官の料理をおもいだしたよw
……このネタわかる人いるかなぁ……on_
アスランな。
314 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/26(木) 17:20:38 ID:eOvv+GMw
秘密ですの人か?
315 :
305:2006/10/26(木) 18:24:29 ID:???
>>309 それもいいが、彼が政治に関わらなかったら…というのも気になる
ワンピの世界じゃプランは実行できそうにないし
プランが無かったら、政治的に関わっていく必要はないんじゃないだろうか?
ワンピの世界で、議長がどんな生き方を選択したのか…
ってそれじゃまさに出てくる意味がなくなっちまうな;
忘れてくれww
>>252 エネルなら五億以上の賞金首、だけど天下は取れない、
ルフィのじいちゃんはルフィより強そう、でも海軍中将、
相性の問題で勝ったのであり、ルフィの現在の実力は七武海の下位レベルで二億台の賞金首並としても、
準エネル級〜エネル級で海軍中将並、エネル級〜超エネル級で海軍大将並?
そんな世界の最強なら部下にも七武海レベルがいるかもしれないので、白ひげ海賊団が三大勢力の一つとしてもいいのですが、
原作にもっとすごい連中がでてくるかもしれないので、未定にしておいた方がよいかもしれません。
ふと気が付いたのですが、ここのシンはデスティニーに乗っていないんですね。
技名などはインパルス絡みのみ?
317 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/26(木) 20:58:26 ID:2eWC5i3s
シンの種割れはCP9編辺りで良いと思う
他のキャラ達も格段にパワーアップしているからね
ワンピのネタバレスレによると
白ひげは三大勢力の(ry
>>315 なにげにヒルルクに拾われてチョッパーと一緒に桜作りをやってたり。
もしくは嫌々イッシー
ヒルルクの『感動が病を治した』なんて話はディスティニープランの天敵みたいな話しだしなぁ。
絡めて見るとも面白そうだ。
議長自慢の遺伝子工学で冬に咲く桜の木を…
>>320 ただ47=82氏の話だと、シンが召喚されたのは自由撃墜時だから、まだDプランの存在を知らないぞ
いや、だからこの際シンがディスティニープランを知ってるかは関係ないだろう。
だってデュランダル自身がヒルルクの話を聞いて、ディスティニープランについてどう考えるかって事なんだから。
324 :
47=82:2006/10/28(土) 05:59:19 ID:???
SININONEPIECE
アーロン編序章完成しました。
短くて走りもいいところですが、切りのいいところで分けます。
晴れ渡った空の下に広がる光り輝く大海原を、一隻の船が進んでいく。
それ自体は、これといって不思議な事柄ではない。風を受けるために大きく展開された
帆や天を突くマスト。長旅をするには少し苦しい小船だが、短い距離ならば余裕で走破で
きるだろう。
……問題なのは、明らかに帆船なこの船が、風邪もなくオールも下ろしていないのに前
進しているという事実だった。加えて、速度が不自然なほど速い。
「うっひょー!」
「おー、こりゃ楽でいいな」
「もっとしっかり泳げよ牛くん!」
『も゛〜』
船の上でのんきに寛いでいた男達が声を上げると、船の先端から低い泣き声がそれに応
える。よく見ると、その船は先を進む『何か』に縄で括り付けられ、牽引させられていた。
それは、人魚といわれる生き物の人間部分を、丸ごと牛に置き換えたような奇怪な生物
だった。ただ、その体躯はちょっとした鯨ほどはある強大なものだったが……何故かたん
こぶこさえて傷だらけ。心なしか、船の中の男達におびえているようにも見える。
『海獣』と呼ばれる大型の海洋生物だった。海がその地表の大半を占めるこの世界にお
いては絶大な力を誇っているはずなのだが……どうも、船の上のルフィ、サンジ、シンの
三人にはかなわなかったらしい。
「……くっ」
「? どーしたヨサク」
「聞かねえで下せぇ。あっしは、あんたら三人がかりで袋にされたあいつが哀れでならねえんです」
四人目の男であるヨサクが、その余りに哀れな姿に涙をこらえた。予断だが、ヨサクは
この牽引している海獣が三人に襲いかかった瞬間『あ、終わった』と思ったという。自分
達ではなく、相手がだ。
元々は海獣のほうから一方的に食べ物をたかってきて、素直に食わせようとしたサンジ
ごと食おうとした挙句に遅いかかってきたのだが……そっからは一方的だった。そりゃあ
もう、虐めか? ってくらいに。シンにいたってはバラティエから拝借してきたという便
所掃除用モップ使用だ。
325 :
47=82:2006/10/28(土) 06:00:20 ID:???
『も゛〜』
同情してくれたヨサクに、ありがとうとばかりに泣き声を上げる海獣。その後姿を見つ
めていたシンが、ふと漏らした。
「にしても、すっげー怪物がいるもんだなぁ。この海には」
感慨深いシンの台詞……確かに、強大な牛のような半漁生物はコズミックイラにはいな
かった生き物だ。あえて近い系統を上げるとしたら宇宙鯨がいるのだろうが、少し違う気がする。
『この世界』に対する無知から着たその台詞を、知識が前提にあるものだと勘違いした
らしく、詳しい薀蓄を披露する。
「海に住む大型生物の中でも、獣に近い特性を持つ奴を海獣、魚に近いものを海王類って
言いまして……まぁ、海の怪物っていやあたいていこのどちらかですね。
シンの兄貴が知らなかったのも無理はないッスよ。グランドラインの生物ッスからね。
こいつらは」
「グランドライン? なんでそれがイーストブルーに……?」
グランドライン。
海賊たちの憧れとしてじられるこの『偉大なる航路』はその知名度とは裏腹に内部の状
況に関してはろくな情報が無い。些細な情報ですら手に入れられないほどに行き来が困難
な場所……それが、グランドラインなのだ。そんな場所である、たとえ海中の生き物だっ
たとしても、生き物がたやすく行き来できるとは考えにくい。
ましてや、相手はルフィたち一人でも余裕で瞬殺出来るような手合いである。
「勝手にこっちにやってきたんじゃねーの?」
「いや、そんな筈はないッスよ。海王類や海獣は巣を持つタイプが多いし……第一、こん
なのが自由気ままに行き来できるんだったら、もっと大騒ぎになってますって」
ルフィの発現に釘を刺すヨサク。その一本の釘がシンの脳細胞を刺激して、ひとつの答
えをはじき出した。
「なあヨサク」
「何スか?」
「こいつ、ひょっとして『アーロンの戦闘員』とかってオチじゃないのか?」
326 :
47=82:2006/10/28(土) 06:01:29 ID:???
ぴ し っ !
……はじき出された答えがヨサクに与えた影響は計り知れなかった。彼は返事をしたそ
のままの体系で白くなって固まり、だらだらと冷や汗を流し始める。
「戦闘員?」
「ああ。だって、アーロンって奴はグランドラインから帰ってきたんだろ? だったら、
手土産に化け物の一匹二匹つれて帰っても可笑しくない」
「手土産って……海王類は手懐けるだけで一苦労だぜ。わざわざ戦力にするために連れ帰
るかフツー」
「いいや。する」
自然の動物を、自分の戦闘のために持ち帰る事に懐疑的なサンジに対し、シンは断言し
た。垣間見えたシンの表情が思いのほか真剣だったのに呑まれ、サンジは絶句してしまう。
シンの両目が見据えているのは今の世界ではない。以前の世界……それも、彼が守りき
れなかった少女達と、それを奪った機体に乗っていた男達だ。
「人間……とりわけ、独善的な輩ってのはありとあらゆるものを犠牲にする。
たとえそれが『人間』でもな」
「人間……って」
「俺の元いたせか……いや、国じゃあ人間を『平気』で『兵器』にする奴らがいるのさ」
寒い駄洒落になることを承知で、強調するために繰り返した。
脳裏に浮かぶ、自分自身で調べた敵たちの記録。
ブルーコスモスのエクステンデット達や、あきらかに戦闘用のコーディネートを受けて
いるであろう、フリーダムのキラ・ヤマト……そして、ステラ。彼らはある意味、『作られ
た兵器』なのだ。
暴走したエゴがモラルを食いつぶし、ついには第三者にまで類を及ぼす……そんな事が
延々と繰り返されているのが、彼が元いた世界のあり方だった。
(ろくでもない世界、か)
元いた世界の記憶から、芋づる式に引き出されたゼフの言葉が重くシンの心に圧し掛か
る。彼の手は無意識に、ゼフから手渡された一本の槍へとのび、それを握り締めていた。
……シンの纏う重い雰囲気に気を使い、サンジはそこには深く突っ込まなかった。その
代わりに、シンが手にした槍について口を開く。
327 :
47=82:2006/10/28(土) 06:02:57 ID:???
「そういやお前、うちのクソジジイからもらったそれ……『ネバーエンディング』だろ?」
「今は『インパルス』だよ」
「どっちでもいいさ……あのジジイ、一体どういう風の吹き回しだ?
大切にしてたそいつをあっさり他人に渡すなんて……」
「ればー? 肉の話か!?」
「レバーじゃなくてネバー! ……前の持ち主と俺が同郷だったのさ。それで、俺が故郷
の話をした礼だって」
「俺、骨の付いた肉のやつ!」
「聞けよ人の話! ……それにしちゃあ」
「 う、う わ あ あ あ あ あ あ っ ! ! ! ! ! 」
交わされていた麦わら一味の会話を引き裂くように、ヨサクが絶望したといわんばかり
の悲鳴を上げる。その余りの声量に、話に花を咲かせ始めていた三人がぎょっとそちらを
振り返る。
話に水を差されただけではなく、不意打ちだった事で驚かされたサンジは、いらだたしげに、
「おら、何叫んでんだよ」
「だ、だって! この状況どう考えてもヤバイじゃないッスか! アーロンっていやあ、
極端な種族至上主義者で、少しでも一味に逆らう人間がいたら、村ごと皆殺しにするよう
な奴ですよ!? このままアーロンパークに向かったら……!」
種族至上主義――その下りでシンの表情が少し変化したが、ヨサクはそれに気付かずに、
必死でまくし立てた。
「それに! 思い出したんですよ!」
「何を」
「アーロンは、確かにシンの兄貴の言うとおり海獣を戦闘員にしてやす……けど! それ
は一匹じゃなくて二匹! しかも、常に二匹ワンセットで動き回ってて、片方を傷つける
と片方が怒り狂う!
特に危険なのは赤い蟹の海獣『ブローム』! こいつは凶暴すぎて専属の飼育員にしか
懐かず、アーロンにすら牙をむいたことのある化け物なんです!」
いわく、町ひとつを立った一匹でつぶした。
いわく、グランドラインでは海軍本部の佐官相手に圧倒した。
いわく、戦いが終わると、その両手が必ず返り血で真っ赤に染まる。
覚えているほうが褒められそうな量の逸話が、次から次へとヨサクの口からこぼれる。
そんな彼に対し、シンはとりあえず一言、
328 :
47=82:2006/10/28(土) 06:04:30 ID:???
「ヨサク、蟹だとどっちかっていうと海王類……」
「 揚 げ 足 取 ら ん で よ ろ し い !
ともかく! アッシ達がこいつをぶっ飛ばした事が敵に知れたら……!」
「その、『ブローム』ってのが黙ってないと?」
「そう! こんな小船なんて、一撃で、沈め、られ……」
断言するヨサクに、シンは無言で手にした槍を置いた。そして、立てかけてあったモッ
プを手にし、立ち上がる。
無言で立ち上がったその姿に気おされ、尻すぼみになってくるジョニー。そんな彼をよ
そに、シンはそのまま船首に立つと、
「なら、見つからないよう急がないとな」
「へ?」
「おい牛くん」
シンがささやきかける。異常なほどに迫力のある声で。
「 便 所 ブ ラ シ で 歯 磨 き さ れ た い か ? 」
……どう聞いても嫌がらせだった。海獣のサイズならありえないとも言い切れないとこ
ろがまた微妙な嫌がらせである。抵抗しても無駄な事は、先の戦闘で既に分かっている。
海獣君、あんまりなその言いように急停車してしまう。
冷たい、余りにも冷たい間をおいて……
ずばばばばばばばばばばっ!!
そして、恐ろしいほどの急加速だった。
呆然とするヨサクに向かって、シンは親指を立てて、
「加速させてみた」
「鬼かあんたぁっ!!?」
確かに方針としては間違ってはいないが、手段が余りにあれである。ヨサクは全力前回
で叫んで突っ込んだが……生憎と、この船に彼と海獣の味方はいなかった。
サンジに同意を得ようと振り返ったヨサクは、それをまじまじと実感する事になる。
329 :
47=82:2006/10/28(土) 06:28:23 ID:???
なぜなら、彼はヨサクが振り返ると同時にこう切り出したのだ。
「ルフィ。レバーってのは新鮮じゃねえとうまくねえ。逆に新鮮なら、この上なく美味い部位だ」
「おおーっ! ホントか!? サンジ!!」
「ああ。特に、牛のレバーはな」
サンジさん、恐ろしいほどに冷徹な、『食材』を見る目で海獣を一瞥し、
「 な ぁ、牛 」
ズ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ ッ ! ! ! !
哀れ海獣。更なる恐怖に目をナルトにしながら超加速開始。
「どーせ加速させるなら、このくらいやれクソ赤服」
「おお。料理人ならでは」
「サンジー! レバーまだか〜!?」
『も゛、も゛〜!!』
しかも、船長が無邪気に追い討ちかけるもんだから溜まったもんじゃない。
グランドラインでアーロンにボコられ無理やりつれてこられて、その果てに捕食の危機
に晒された哀れな海獣。彼の悲痛な叫びが、イーストブルーの空に吸い込まれて消えていった。
330 :
47=82:2006/10/28(土) 06:34:06 ID:???
以上です。オリキャラも登場してませんが、これ以上引っ張ると無駄に
長くなりそうだったので。
議長登場は考えてもいませんでしたが、予想以上に面白そうですね。
そうすると、チョッパーとも絡むわけですが……うはw夢が広がりんぐww
GJ!
シン、いい感じに染まってるなぁw
GJ!!!!!!!!!!
なんかいいぞ、このシン。
先の展開として『アーロンのエゴのせいで道具として利用されている人間』であるナミについて、
シンがどのような感情を抱くのかも気になる。
そうそう、遅レスなのだがキラとラクスがバロックワークに居た場合、
ビビVSラクスの対決も見所になるかも、そしてその時シンは何を思うのか。
47=82氏、期待してますぜ。(特に上のナミの事)
333 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/28(土) 10:07:42 ID:22fHwFhn
GJ!
シン、逞しくなったっつうか…。
逞しくなりすぎだw
シンすげーwwwww
ワロスw
っていうか、何でシンはまだ便所掃除用モップ持ってんだw
ボンボン版の、シンが便所掃除やってたエピソードを思い出した
336 :
47=82:2006/10/28(土) 23:16:06 ID:???
GJコールありがとう!
確かに読み返してみると、めっちゃ逞しすw
>>332 キラとラクスは……本当に、どう扱っていいのか迷っていたりします。
この世界にカルチャーショック受けて、『必要悪としての正義』に目覚めて
すがすがしいほど開き直るってアイデアは確定してるんですけど……
古代兵器の存在を知る→『こんなものこの世にあっちゃいけないんだ!』→古代兵器探索へ
そんな流れで。
海軍→そのまんま。
BW→古代兵器破壊のために奮闘。
海賊→アークエンジェル海賊団として。
……三つある案のうちどれにしたものか。
キラとか凸は出さなくていいと思う
スレが荒れるかもしれんし、ラスティ
キラとか凸は出さなくていいと思う
スレが荒れるかもしれんし、ラスティみたいな死んだキャラだけでも十分面白いと思う
連投スマソ…
340 :
305:2006/10/29(日) 06:21:11 ID:???
GJ!
そして議長登場が加味されはじめた。やったぜ!(素直に喜んでみる)
言ってみるもんだなー
それにしてもここのシンはかっこいいなww
GJ!
GJ!
自分も
>>337と同じでキララク凸イラネと思う
もしくはゼフの昔話で出てきたザフトを牛耳ってたのがキララクで良いんではないかと
政府にケンカ吹っかけたっても凄まじいほどに納得できるしねw
俺は職人次第でって感じ
荒れたらまぁそん時はそん時だ
344 :
312:2006/10/30(月) 10:04:33 ID:???
>>314 当たりw
わかってくれる人が居て嬉しいよ。
では、名無しに戻るよ。
ザフトを牛耳ってたのは、パトリックかクルーゼじゃないのか?
パトリックは言わずもがな、クルーゼは世界を滅ぼす、っていう動機があるし。
コビーが1年足らずで剃を修得できるんだから、シンが覚えられてもあまり違和感がないな
やっぱあの世界の人間は身体構造から違うんだろうな。
>>345 つーか、パトリックはCEで死んだ奴がワンピ世界に来るってんなら奥さん探し回るんじゃね?
ナチュ滅ぼせとか喚き出したのユニウスに核ぶち込まれてからだろ?元々はプラント独立目指してた奴だし
変態仮面はワンピ世界への復讐とか滅ぼすとか意味あるのかと…
それでも世界の破滅を願うならバロックワークス辺りにくっついて古代兵器探しでもしてんじゃなかろーか
あ、パンダにくっついてくのもアリか
確かに、スパンダに古代兵器なんて持たせたら、世界が破滅に一直線だしな。
そこら辺、クルーゼがひたすらに暗躍してスパンダの無駄に大きな野心をさらに肥大化させるとか。
350 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/30(月) 21:17:14 ID:eZBr32TP
あるいはキラたちを
世界三大勢力にしてしまうのもいいのでは、
と思ってしまったよ俺・・・どうしよう
おいおい三大勢力は既に今週で決定してるぜ
それとも四皇の間に割り込むのか
やはり能力者になるのだろうか
六式みたいな体術があるんだから素でいいんじゃね?
つーか三大勢力とかドラゴンとかガープとかコビーとか話題が出たと思えば連載で出てくるって
最近このスレに原作の関係者でもいるんじゃないかって位シンクロニシティだな
まあ、もうかれこれ50巻いくからな
いい加減本筋を進めないと、下手すりゃ200巻くらいいっちまう
シンには悪魔の実よりも六式などの体術が一番よくね?
コーディだから覚えるのも早いだろうし。
むしろコーディが六式の祖で・・・
ムリだな
ところで、指銃・剃・嵐脚・鉄塊・月歩
あと1つなんだっけ?
紙絵じゃなかったっけ?
>>348 変態仮面はドラムで桜見て改心とか?
あとパトリックはサトーとかとつるんで血のバレンタインの被害者との再会を目的とした集団を作ったら、
世界政府に戦闘力を危険視されてそのまま海賊化とか
六式
剃:(おそらく)六式の基礎。瞬間的に何度も地面を蹴る事によって、通常を遥かに超えた速力を出す
月歩:剃の応用技。剃を空中で行い、空中移動を可能にする
嵐脚:並外れた速度の蹴りによって、全方位に真空刃を繰り出す
鉄塊:全身の筋肉を鉄のように硬質化させ、相手の攻撃を受け切る防御技
指銃:鉄塊の応用技。鉄塊の効果を指先に集中し、銃弾のごとく対象を穿つ
紙絵:鉄塊の対極に位置する防御技。全身を紙のように柔らかくして相手の攻撃を受け流し、その副次効果として相手の攻撃を躱し易くなる
なお、これらはあくまで六式の基本技であり、熟練者は自身の性質と合わせて様々な応用技を持っている
>>346 週ジャン見れてない自分がここにいるんだから、あまりネタバレするな(ry
>>356 それはそう思う
悪魔の実の能力者になるより、体術極める方がいい
>>357 コーディネーターの肉体的優位なんぞ、この世界じゃ通用しないって。
やっぱり、技術的なもの、悪魔の実をものに食わす技術とかの大元ってのが一番いいと思うが。
ルフィ一味はほとんど全員コーディ以上の肉体能力持ってそうだもんなあ・・・
365 :
348:2006/10/31(火) 20:12:21 ID:???
>>359 >変態仮面はドラムで桜見て改心とか?
改心…できっかなあ?
つか、議長と一緒に寿命尽きかけのレイも一緒に来ててサクラ見て復活とか思ってしまったw
>あとパトリックはサトーとかとつるんで血のバレンタインの被害者との再会を目的とした集団を作ったら、
世界政府に戦闘力を危険視されてそのまま海賊化とか
それはあるかもね。別世界に来て生きてくにゃ奪うのが一番手っ取り早いし、連中ナチュ相手にモラルと言う言葉はねえし
つーか、職人様のSSでキララクワンピ世界に入れるみたいな話出てるが、よくよく考えると、奴ら、負債に守られたCEで
死 ぬ 事 な ん て あ る の か ?
あ、俺もシンには肉体鍛えてますからの方向で言って欲しいなあ
>>363 悪魔の実を物に喰わすって今想像して見たが100%搾りの悪魔の実ジュース作ってそれに剣とか漬け込むの想像しちまった
実際は逆で象に実を喰わせて剣にしたんじゃないかと思うんだが.....
その実を女に喰わせたら即席エレメンタルジェれ(ry
>>365 一瞬某鬼の人っつうか響さんが…
>>366 エレメンタルジェ●イドとか言うから一瞬「ヤリの実」だの食べてシンの武器となるステラ思い浮かんだ。
>>366 物に食わせる、ってのとはちょっと違うが、Mr.4の犬銃はそんな感じだ。
そういうのは
アムアムの実 モデル"突撃槍"とか
ガンガンの実 モデル"ライフル"
とかいう名前になるんだろうか。
とりあえずこっちに来ていそうな死亡種キャラを整理してみんか?
上の方の凸やキラがこっち来たらって言うのは、シンがぶつかれるための敵役を用意しようってのが目的だったわけだし。
>>369 突撃槍でサンライトハート思い出した
>>370 サトーと新旧参莫迦とアズラエル・ナタル・フレイ・アストレイ三人娘?
おちつけ、トダカ一佐を忘れてるぞ。
ニコルを忘れてないか??
自爆したアスハ父
無印は
フレイ、トール、ナタル、アズラエル、ニコル、クルーゼ、ミゲル、ハルバートン、アイシャ、モラシム、
アフメド、マユラ、アサギ、ジュリ、ウズミ、オルガ、クロト、シャニ、パトリック、シーゲル、エル
種死は、
マユ、議長、タリア、レイ、ステラ、スティング、アウル、ジブリール、ミーア、サトー、ユウナ、トダカ、
ハイネくらい?
抜けがいっぱいありそ
シンが抜けたのがフリーダム戦ならミネルバ連中が他に来ててもおかしくは無いかな
前線立ってるルナとか。来てたらシンを殴りに来るのかね
「何犯罪者やってんの!」
なんてな
無印
レノア、オロール、マシュー、ハマナ、ブライアン、アデス、ユウキ
種死
ショーン、ゲイル、ジブヌコ、サラ
あたりもパッと思い浮かんだ
巨悪キャラとしてアル・ダ・フラガも是非加えたい。
アレも自然死じゃないから来ていておかしくないと思うんだ。
対アル・ダ・フラガだったらきっとクルーゼとレイは味方になってくれるとおもうし。
そもそもスーパーナチュラルだから戦闘力もすごそうだし。
!?
そうだ、扱い微妙だろうが凄いコーディ来れるじゃん!
つジョージ・グレン
リ・ホームに居るけど一応殺されてるから.....
他にもリ・ジェネレイト載ってた人とかも来れるか
あとスタゲ勢も来れそうなの多い
400年前こちらに来たのがジョージ・グレンで、こっちのザフトの原型になった組織を作ったのもこいつ……
ってなオチはどうでしょう?
逆にルフィをCEに放り込んだらどうなるかな
381 :
47=82:2006/11/02(木) 02:17:09 ID:???
ルフィがCEに着たら、真っ先に外宇宙目指しそうですね。新しい冒険求めて。
これだけじゃあなんなんで、完成した品をどうぞ。
アーロンパーク。
東の海に暮らす者達ならば、この単語を聞いただけで震え上がり、ある者は支配された
村の人間達に同情し、ある者は平穏無事な己の身に安堵するだろう。
他の海賊に支配されている地域に比べ、種族の違いから支配階級による婦女暴行事件が
全く起きないが……そんなものは、常に晒され続ける命の危険に比べれば、鼻で笑ってし
まうほどの差でしかなかった。
他の支配地域は、まだ抵抗すれば倒せるという『希望』があるが……ここには、そんな
希望すらないのだから。魚人と人間の能力差は、それほどまでに圧倒的だった。
『一番弱い』と噂される、ある男にすら勝てない程に。
その男は、ある女と連れ立ってココヤシ村の中を歩いていた。
何故か満面の笑顔を浮かべ……まさに、『ホクホク』といった装飾後が似合う姿で。
肌の色は銀色で、目のふちに赤い妙があるが、世界が白黒ならば、魚人ではなく人間な
のではと思えてしまうほど、見た目が人間に近い。他の魚人たちが人間と比べてとてつも
なく『デカイ』のに、人間と比肩しても小柄な体格も、迫力の無さに拍車をかける。
アロハシャツにハーフパンツと、アーロン一味の魚人の例に漏れないラフな格好だ。こ
うして書くと、いかにも下っ端という風情だが……この男、一応はアーロン一味の幹部であった。
海獣『ブローム』の飼育係、ニシンの魚人・ドニールである。ブロームの存在がなけれ
ば一味の末席にすら席を置けないと評判の男だ。
抱えたかごには満載のみかん。連れている女は……
「いやぁ、悪いなナミ! いつもこんなにもらっちゃって!」
ルフィたちの探す、航海士・ナミだった。
からからと笑うドニールに対し、ナミは冷笑を浮かべた。それは、とてもではないが麦
わらの一味にいたころには連想できないほどに冷たく、感情が無い。
「無料じゃないわよ」
「わーってるよ! 金なら後で払うさ!」
凍えるような言葉に気分を害した風もなく、ドニールはよっこらしょとみかんかごを持
ち直した。この程度の荷物を両手で運ぶなど、他の魚人では考えられない事だが……なに
せこの男、一味一の非力野郎である。それでも人間に比べれば強いが。
「いやー、うちのブロームがお前さんのとこの蜜柑が大好きでねー」
にしても。
いつもの事ながら、ナミはうんざりとした目つきでドニールを見た。
382 :
47=82:2006/11/02(木) 02:18:00 ID:???
「そのくせ皮が嫌いときてるから、一々俺が剥いてやらないとならん。けどまあ、これも
俺の義務みたいなもんだし、あいつが喜ぶの見てると俺もうれしいからねー」
喋る。
この男、やかましいくらいに、やったらとフレンドリーに喋る。
ドニールがやたらとフレンドリーなのは今に始まったことではない。一味の幹部である
ナミどころか、他の人間達にも終始こんな感じである。
それでいて、人間達の意見や悩みにもやたらと親身になって接するのだ。魚人を憎みき
れないほど憎んでいるナミも、この男に対しては正直……憎しみよりも、うざったさが先
立つ。ブロームが蜜柑が好物とかで、接する機会が多いだけに特に。
間違っても親しみは感じていない。彼女にとって、魚人海賊団は親の敵であり、近隣の
住民にとっても憎しみの対象なのだ……ただ、余りにフレンドリーすぎて、憎む事が出来
ずに、苛立ちだけが募っている状態だった。
なんで魚人海賊団なんぞに入ったのかよく分からない奴ではある。
「蜜柑の汁って目に染みるよなー。俺、こないだ目に入っちまってのた打ち回ったぜ。お
前さんとこの蜜柑じゃないからブロームもへそ曲げちまうし、散々だったなありゃぁ。
お、そうだ! 今度ブロームに蜜柑やってみるか!? 可愛いぞー」
「遠慮しとくわ」
「あ、そ、そう……俺はこのままアーロンパークに戻るけど、お前さんはどうする?」
「……アーロンのところに戻るわ」
「そ、そっか。じゃあ一緒に」
「必要ない」
「あ、さ、さいですかー……」
取り付くしまも無いナミの返事に、ドニール意気消沈。
立ち去っていくナミを前に地面にうなだれるその姿は魚人の威厳もヘッタクレも無かっ
た。そうしてうなだれる事しばし。
「俺、ひょっとして嫌われてんのかなー」
当たり前です。
「はぁ……なんで仲良く出来ないかね」
グチグチともらしながら、ドニールは立ち上がろうとして空を見上げたその時。
383 :
47=82:2006/11/02(木) 02:19:44 ID:???
どぉぉぉぉぉんっ!!
「!?」
重い衝撃が地面と空気を揺らし、ドニールの足元を救い上げた。中途半端な体勢を襲っ
た振動に、彼の体が大きく傾ぐ。
「わたっ!」
しりもちをつくまいと、慌てて体勢を立て直すさなかに、
『ぎゃぁぁぁぁぁっ!?』
「うっほほー!」
……ドニールは、悲鳴と感性が入り混じった音を上げながら、『何か』が空を飛んでいく
姿を見た。
どう見ても帆船であった。
「…………は????」
アーロンパークの方角、村とパークの間に広がる田園地帯上空に、空飛ぶ小型船。
余りに白昼夢じみた映像だった。ドニールは呆然と、弧を描いて空を飛ぶその船を眺め
る。その小型船は、滑空しながら森へと吸い込まれていき……
どぉぉぉぉぉんっ!
豪快な着地音を最後に、空から姿を消ず。
しばし、その場で固まってから、彼は気付いた。
……このままアーロンパークに帰ったら、間違いなくあの飛行物体に関わる事になるだろう。
「……泳いで帰ろっと」
ドニールは、全てを見なかったことにして、港への道を歩き出した。
賢明な判断である。
ドニールを現実逃避へといざなった怪現象。
そのあらましを説明するのに、しばし時計の針を逆に回そう。
384 :
47=82:2006/11/02(木) 02:21:24 ID:???
見渡す限りの大海原。
風も少ないその海を、一隻の船が疾走していた。
進む、ではない……まさしく、疾走である。爆走と言い換えてもいいかもしれない。余
りの勢いに船体が海を離れたり着水したりを繰り返し、飛び石のごとく上下にせわしなく
動くくらいに。
原因は、その船体を牽引する生物にある。グランドラインに生息する、海獣と呼ばれる
その生物だ。
その船の乗組員のために、命を懸けるといわんばかりの形相で泳ぐ海獣。そんな彼の背
中に、笑顔をたたえた船員からの励ましのエール。
「遅いぞ牛。コレで角磨いてやろうかー?」
「……牛のレバーは血なまぐさく、それを取り払うには下拵えが重要だ。脂肪や血管を抜
き取り、水にさらして……」
「俺ー、レバーより骨付き肉のほうがいいなー。あ、けどレバーもいいかもなー!」
『も゛、も゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!』
「お、鬼が……鬼が、三人いる」
……まあ、そういう事である。仔細は聞くな。あえて言うなら、海獣のほうは本当に命
と名誉がかかってる。切実な意味で。
海獣のほうも情けかけてくれた相手を飯ごと食おうとしたり、船沈めようとしたりで潔
白というわけではないのだが……傍から見てる分にはかなり哀れだった。頭の上に載って
るシンに、今にも角を磨かれてしまいそうなあたりが特に。
「お! 陸地が見えてきたぞ」
「ホントか!?」
モップ片手にモームの頭の上に座っていたシンが声を上げると、ルフィがその後ろから
通り首を伸ばして、そちらを覗き込む。
文字通り、片腕で頭をつかみ、引っ張り上げて首を引き伸ばして……ゴム人間でなけれ
ばできない芸当だ。
「うっひょー! あれがアーロンパークかぁっ!」
「……随分とまた、『人』を舐めたつくりだな」
はしゃぐルフィと対照的に、シンは目の前に広がる光景に眉をひそめた。
海岸線に沿うようにつけられた防壁と、その中に建造物が見えるのだが……シンが苛立
ったのは、その造りだった。彼の中の軍人としての知識と照らし合わせると、余りにも理
に適っていないのである。
砲台はないし、建造物の高さは壁より高いし……要塞としてのあり方をありとあらゆる
意味ではみ出しており、攻める側としては楽な事この上ない。この距離からでは分かりに
くいが、防壁も基礎から強化したわけではなく、元々あった岩礁に壁を載せただけのよう
に見えた。
385 :
47=82:2006/11/02(木) 02:22:19 ID:???
「この距離から大砲撃てば、そのうちぶっ壊せそうだな……砲台一つないっていうのはど
ういうつもりだ?」
「必要ないんだろ」
シンの至極最もな感想に、サンジが返した。
「海側から攻められる分にゃ魚共はめっぽう強いからな……人間侮ってるってのもあるん
だろうが、今まで墜ちてないっていう実績のほうを考慮すべきだと思うぜ」
「…………凄いな」
こんなザルみたいな居城を、難攻不落に変えてしまった魚人の能力が。
そういうニュアンスをこめてつぶやくシンに、サンジはふと思い立ち、
「お前、元海軍なんだろ?」
「海軍じゃないよ……『国軍』だ」
「どっちでもいい。お前さんならアレをどう墜とす?」
「俺なら……」
本来ならサンジの質問は戦術・戦略に分類される質問であり、『戦闘』に特化したMSパ
イロットであるシンからすれば、畑違いもはなはだしい例題である。
自分が攻める側に立った今、専門じゃないからと逃げてはいられない。
「そうだな」
だんだんと近づいてくるアーロンパークを見据えながら、シンは双眸を細めて、
(海に面してるのは、魚人たちが即座に海に展開できるようにか? 成る程、自分達の能
力に自信を持ってるわけか。今までの襲撃は、その自信の源を打ち崩す事が出来なかった
……ネックは魚人の海中戦闘だな。さて、どうすれば……?????)
そこまで考えたところで。
シンはようやく、船に起こっている異変に気が付いた。
視界の中にあるアーロンパークが、左へ左へとずれていく……船の針路が、それているのだ。
「って、オイ牛! 逸れてる! 逸れてる!」
慌てて、手にしたモップの柄で海獣の頭部をトントン叩くも、反応が無い。さっきまで
は頭を叩くと面白いぐらいに加速したのだが……全くといっていいほど反応が無い。
(おい、まさか……)
脳裏をよぎった可能性に、背筋が凍る。事実を確かめるべく、身を乗り出して海獣の表
情を伺ったシンだったが、その視界が捉えたのは安上がりな希望ではなく無常な現実だった。
386 :
47=82:2006/11/02(木) 02:23:38 ID:???
海獣君……目が、 逝 っ て ま し た 。
そんな遠い目してどこを見つめているのやら……どうやら、体験した事のない恐怖と過
剰な長距離全力疾泳のせいで、意識があっちに飛んでいってしまったらしい。
恐怖のせいで意識を失っても体は泳ぐのをやめないという皮肉……! そうこうしてい
る間にも、舟は陸地へと近づいているのだ……猛烈な勢いをそのままに。
今の海獣は、ブレーキの欠如した暴走特急。そんなものに乗っていればどうなるか……!
「ルフィ! サンジ! 縄切れ縄ぁっ!」
このまま海獣が壁に突っ込めば、最悪船はばらばらだ。船の破損は免れないまでも、そ
れを最小限にとどめるための指示をシンは出した。海獣と船を繋ぐ縄を切れば、道連れは
免れるはずだ。
急げとばかりに、後ろにいるルフィたちに向かって声を張り上げ、自分も船に戻ろうと
身を翻すも……間に合わなかった。
ど ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん っ ! !
鼓膜を劈く轟音とともに、シンの体を衝撃が襲い――慣性の赴くまま、その体が投げ出される!
とっさに身を翻し、体勢を整えてから着地するシン。目の前に立ち上った巨大な水柱か
ら、小船の沈没という最悪のシナリオを連想してしまう。
カナヅチのルフィにとって、海に落ちることは致命的だった。
「――くっ! ルフィぃぃっ!」
ともかく船長を助けるため、駆け出そうとして……
ざっぱぁぁぁぁぁぁんっ!
「いやっほー!!!!」
その頭上を、水柱を突き破った『何か』が飛び越えていった。
「は?」
その物体から聞こえてくる我らが船長の愉しそうな声に、シンは思わず素っ頓狂な声を
上げてしまった。
破壊されていないということは、縄を切るのは間に合ったようだが……慣性の法則に逆
らえず、空を飛んでしまったようだ……投げ出されたシンと同じように。
仲間の無事を確信し、ほっとするシン。海に落ちたのならばともかく、空に投げ出され
たくらいで自分の仲間がどうにかなるはずが無いと、彼は知っていた……ヨサクが一寸心
配ではあるが、そこはルフィが何とかするだろう。
387 :
47=82:2006/11/02(木) 02:25:15 ID:???
(あーもー、この船長は!)
心配が晴れたら晴れたで、今度は能天気な船長に対する怒りが湧き上がってきた……自
分のこの感情を理不尽と言い切れる人間は、多分いないだろう。
「俺はやる事がある! 先に行け!」
こちらに手を伸ばして回収しようとするルフィに、シンは声を張り上げた。船長は満面
の笑みとともに手を下ろし、引き続き空の旅を楽しみ始める……空飛ぶ船を見送って、シ
ンは背負った『インパルス』を手にし、海岸線へと歩いていった。
「さて、と」
置いて行かれた……いや、自分から残ったのは、サンジからの宿題を片付けるため。
海岸線に立つシンの視界に、アーロンパークが異様な迫力を放っていた……
以上が、ドニールがみたUFOの正体である。
……一連の現象で一番悲惨だったのは、やはり海獣君だろうな。
388 :
47=82:2006/11/02(木) 02:27:02 ID:???
本日は以上です……なんというか、書いてるうちにドニールが想像以上に個性的になってしまいました。
書いてて、やっぱり敵は種がいいなとしみじみ感じましたよ。
後、シンの言った『国軍』っていうのは、海軍と各国の軍隊を分けるための単語です。海軍に対するアラバスタ軍みたいに。
もしかしたら、シンとトダカの再会なんて期待できるか?
47=82氏GJ!!
そか、そういや前回分開始以前にナミは脱退してたか。
こういうのって、但し書き無いと忘れ気味ダネエ、
さてさて、こっち来てそうなキャラの話題で1つ。
そういやヨウランって死んでるらしいね。
なんか電磁推進機関のバックパックを作ってエネルに取り付けてたら楽しいとかおもた。
>>388 GJ!!
自分的には、ぜんぜん嫌いじゃないぞ、ドニール。
>>390 >そういやヨウランって死んでるらしいね
FPでいなかったからそういう噂あるけど確定なの?
ヨウランって二人組のどっちだっけ?
GJー!
396 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/06(月) 03:31:13 ID:bmpYOAbE
ひょっとして住民の皆さんや47=82氏規制巻き込まれてる?
398 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/06(月) 21:41:43 ID:bqT/Wt/V
マジかよ?
399 :
47=82:2006/11/06(月) 21:54:31 ID:???
GJコールありがとうございます。
今まで顔が出せなかったのは
>>396氏のいった理由です。
さて、淀んでしまった流れを戻すために話題を投じましょうか。
トダカが再登場するとして、一体どんな立場だと思います?
トダカはシンにとっては恩人のはずだからなぁ
ワンピ世界に飛ばされた拍子にトダカが記憶なくす
↓
敵としてシンと再会。だが覚えていない
↓
シンが何らかの形で、CE世界で自分が知らずにトダカを殺した事に気付く
↓
今度こそ救う!
みたいなのを妄想した
401 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/07(火) 03:01:05 ID:WhaF1Hcr
CP9に虎とカガリとイザークがいる件
どーでもいいな…
誰もが思ったことだろw
種外ならカテジナさんも
>>402 そんなこと言い出したら、収拾つかなくなるだろ。
ここは元々、シンを放り込むってスレなんだから。
基本は「シンを放り込む」だよね
で、それ以外を引っ張ってくるのはやっぱ種系から限定でしょ
で、放り込まれたシンの物語と関わるってんなら種世界でシンとなんかしらの関わりを
持った人か種世界の物語を動かす位置にいた人物に極力すべきだと思うけど
まあ、その判断は職人さんにおまかせですな
アニメに対する映画みたいなスタンスなら色々放り込む事も出来るんじゃないかとオモタ
>>405 あんまり放り込みすぎると、わけがわからなくなるからよせ。
・・・・死んだらこっち来ると考えて・・・
・・・・・・こういう時はキラも?
死ぬのだとしたらな。もしくは、職人さんしだい。
409 :
47=82:2006/11/09(木) 17:44:30 ID:???
『彼』は喜びをかみ締めていた。
ポカポカとしたいい陽気……というものは彼の暮らす海中には存在しない概念だが、そ
れでも光という概念は存在する。場を満たす海水によって、光をより直接的に見る事が出
来るのだ。
『下等な人間達には想像も出来ねぇ、海中の光の帯……コレが見れるだけでも、魚人は
至高の種族だ』
そう騙っていたのは、『彼』の保護者の上司だったか。ノコギリな鼻をさらに伸ばして誇
らしげに語っていたが……『彼』には難しいことはわからなかった。
今も、彼が絶賛した光の帯が海中を満たしており、幻想的な海中世界を形作っていたが
……あいにくと、今の『彼』にとっては、一ミクロンの魅力もない無用の代物だった。
彼の意識を占めているのはダイヤモンドを細く伸ばして織り込んだような光のヴェール
ではなく、ごつごつとしたオレンジ色の丸い果実である。
もうすぐだ。
もうすぐ、彼の保護者が、あの美味しい美味しい蜜柑を彼の元へ持ってきてくれる。こ
の間の不味い奴とは比べ物にならない、とても甘いベルメール印の蜜柑。
かの蜜柑は彼にとってどんな宝にも勝る物であり、甘くて美味しいオレンジ色の宝石なのだ。
そこまで考えて、彼の脳裏に浮かび上がってきた者があった。現れたのは、何故か自分
を見ると逃げ出す、同じ境遇の同僚の記憶。
――そうだ。彼にも蜜柑を上げよう。
そうすれば、きっと仲良くなれるはず。
二人で蜜柑をつついて笑いあっている姿を想像し、彼は思わず笑みを浮かべる。傍から
見たら何の変化もなく、彼の飼い主でも判別が難しい小さな笑みだが。
まだかなまだかな。
ウキウキ気分を抑えきれず、水面を見上げた彼の視界に……
傷だらけでボロボロな『同僚』が、海底に向かって落下する姿が映った
410 :
47=82:2006/11/09(木) 17:46:06 ID:???
「……こりゃあまぁ」
見張りの魚人に気付かれないよう、人間離れした脚力で海岸線を跳ね回りながら、シン
は嘆息した。
吐かれた息の主成分は、呆れと憤り、畏怖の三種類。対象は、彼自身が跳ね回っている
海岸線、そこに設置された防御壁だ。
いや、これを防御壁と読んでいいものか。
サンジからの宿題をこなすため、アーロンパークの状態を偵察して回っていたシンは、
今更ながらその桁外れ加減に愕然とさせられる。
(まるっきりコンクリートだけじゃないか)
鉄による補強すらされておらず、不必要な装飾すらなされているその防壁。軍事的には
考えられない代物である。普通、こういった要所の防壁は考えられる限りの補強措置がな
され、装飾する暇があるなら補強をさらい強め、内部の建物は壁よりも高くせず、するな
らば各所に砲台を設置し……ともかく、死角を埋め尽くすことで成り立つものだ。
ところがどっこい、このアーロンパークは違った。砲台内わ装飾あるわ補強は無いわ…
…はっきり言えば、正規の訓練を受けた軍人ならば開いた口が塞がらなくなる種類の、規
格外な建築物なのである。
肝心なのは、にもかかわらずここが難攻不落で、海軍の攻撃を幾度となく退けてきたと
いう事だ。要塞というハードウェアではなく、ソレを運営する人材というソフトウェアが
優秀なのだという、いい証明だった。
(魚人、ね)
人間の数倍近いパワーを持ち、海中で自由自在に行動出来る。世界の大半を海が占める
この世界において、これらの能力は大きなアドバンテージだ。
魚人たちが振りかざす種族至上主義に同調するつもりはさらさらないが、コレでは天狗
になってしまうのも仕方が無いかなとも思ってしまう。
シン自信、かつてはそうやって思い上がった集団にいた経験のためなのか……
(似てるな)
魚人と人間……コーディネーターとナチュラル。その種族間のあり方が、である
特に、魚人たちの思想や傲慢さなどはコーディネーターと瓜二つだった。シンもそこま
で強烈ではなかったものの、コーディネーターはナチュラルに勝るという優越感を持って
いた時期があったものだ。
直接見たわけではない。判断材料は、ヨサクから聞いた話だけである。
それでも……
411 :
47=82:2006/11/09(木) 17:47:47 ID:???
「似てる、よなぁ」
内心で思ったことと同じことを、今度は口に出して紡ぐ。
人間のほうは、余り似ていない。魚人に対する差別どころか、相手を恐れているくらいだ。
この際、小さな差異は全くといっていいほど慰めに張らなかった。彼が気にしているの
はそんな細かい事ではなく、もっと大局的なこと……
(このままじゃあ……)
「やばい事にならなきゃいいけど」
脳裏に浮かんだ、浮かび上がってしまった『最悪』の可能性。人間が、魚人たちが考え
ているよりも更に醜悪で凶暴的な選択肢をとりえる事を、シンは知っていた。
宿題の答えとしては最悪に近いそれを打ち消すため、首を左右に振りながらシンははね
ながら進んでいく。
「ん?」
しばらく海岸線を走ってから、シンは立ち止まった。正面に人だかりと、海岸線をえぐ
るようなクレーターが視界に入ったからだ。
一心不乱に走りこんでいた彼は、気が付けばスタート地点……海獣が衝突して沈んだ地
点に逆戻りしていたらしい。
「なんだ!? この後は! 砲撃か!?」
「ソレにしては硝煙が……」
まさか、海獣が高速ヘッドパッドぶちかました痕跡だとは誰も思わないようで、口々に
そのクレーターについて話し合っている。会話から察するに、ヘッドパッドの轟音と水柱
が気になってここにきたようが……
(ふむ)
シンはその様子を見ながらふと考える。向こうの世界での経験や知識からして、魚人が
この村でどれだけ横暴な振る舞いをしているか安易に予想が付く。ナミのこともあるし、
ルフィの性格から言って見過ごすというのはありえないだろう。
「情報集めといて損はない、か」
海獣がここにぶつかった時間と人の集まり具合から推測すると、ココヤシ村の住人だろ
う。そう判断したシンは、ゆっくりと森の中から姿を現し、
「うわぁ。凄いなー」
と、白々しさ爆発の台詞をのたまいつつ、人だかりに近づいていった。その中の一人…
…水色の髪と刺青が特徴的な女性が、シンに振り返って、
412 :
47=82:2006/11/09(木) 17:48:44 ID:???
「……あんたも、音につられてきたのかい?」
「ああ。盛大な音がしたからな。でっかい水柱も見えたし」
「見かけない顔だね」
「まあ、色々あってね」
「火薬の匂いもしないし……一体何があったんだ?」
「また、ブロームが暴れたんじゃないか?」
……来た。
女性と会話しながら聞き耳を立てた村人達の会話の中に、早くも確かな手ごたえを感じ
て、シンは表情を引き締めた。
「ブロームが暴れたら、こんなんじゃあすまんだろ」
「そうそう。うちのブロームはむやみやたらと暴れたりしないぞ」
「そりゃそうか……ほっときゃ意外とおとなしいしな」
「この間、うちの子供たちが餌やってたぞ」
「げ。マジ!? 参ったな。間食させないように気をつけてんのに」
……なにやら、ブロームという海獣に対するイメージがボロボロと崩れていきそうな会
話だった。おとなしく子供が懐く滅茶苦茶強い海獣……一寸イメージが追いつかない
更なる情報を求めるため、シンは更に口を開き、問いかけた。
「コレやった奴に心当たりがあんのか?」
我ながら演技はだな、とシンは自分自身の行動を評した。その演技にだまされたのか、
一段の中の一人が振り返り、
「ん? ああ、少なくともブロームじゃないよ。待ちに待った蜜柑の前に暴れるほど馬鹿
じゃないし」
さてはて、その言葉に対する一同の反応は、たったの二文字で表現できるも、酷く素っ
頓狂なもので。
絶句。
正確には、放たれた言葉にではなく、発言者の存在そのものに問題があったのだ。
いきなり辺りを覆った沈黙に、男は眉をひそめて、
「ん? 何よ??」
『ど、どにーるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!?』
中身満載の蜜柑籠背負っていつの間にか会話に参加していたのは、魚人海賊団幹部(末
席)のドニールだった。
そりゃあもう、不自然なくらいに自然に。場にいた人間誰一人、魚人だと気付かなかっ
たくらいに。まあ、肌の色以外は人間そのものの男だから、人ごみに紛れたら気付きにく
いのかもしれないが……
413 :
47=82:2006/11/09(木) 17:49:29 ID:???
(魚、魚人!?)
シンはシンで、いきなり現れ、始めてみる魚人に動揺していた。
「や! ノジコ」
「あ、あんたなんでここに!」
「なんでって、騒ぎがあったからさ。俺が来てもおかしくないだろ??」
シンの傍らにいた女性……ノジコにしゅたっと片手を上げるドニールだったが、声をか
けられた当人はとことん疑わしげな目で、
「本当にブロームじゃないんだね?」
「ああ。うちのブロームだったら、そうだな」
ドニールの目線がちらりと陸地側の森へと流される。
「あの森の辺りまで丸ごとクレーターだ。ナミが帰ってきて、蜜柑やるって言っておいた
し、暴れる事はねえよ」
――ナミが『帰ってきた』?
言葉の中に出てきた仲間の名前に驚くよりも、その用法に疑問を持って、シンは眉をひ
そめた。それではまるで、ナミが彼らの仲間のようだが……
事実その通りなのだが、シンはそのことを知るはずも無いのだ。彼が知っているのは、
ナミがバラティエ騒ぎのドサクサに紛れて船を盗んだという少なすぎる事実だけなのだから。
「蜜柑ねえ」
「蜜柑と子供が関わると、全然癇癪起こさないんだよ、あいつ。命じない限りは、絶対に
ありえない」
なおも疑わしげなノジコに、自信満々なドニールが返す。
再び、シンの胸に到来する違和感……それは、ドニールという男の気安さと、ノジコの
言葉の端々に見え隠れする『嘲り』の気配だった。
「……なあ」
「ん? なんだ?」
やったらとフレンドリーな笑顔を浮かべるドニールに、シンは戸惑ったように問いかける。
414 :
47=82:2006/11/09(木) 17:51:00 ID:???
「あんた……魚人の割にはやたらと扱い軽くないか?」
「弱いからだよ」
「は?」
目を点にするシンに、ドニールはにやりと笑って、
「俺はな、魚人海賊団の中で一番力が弱いんだよ。そうでなくとも、アーロンさん達みた
いな『大型』『中型』と違う、『小型魚』の魚人だからな。
正直、ブロームがいなきゃ一味にいられる筈が無いんだよな。一味の同胞達も、俺の事
侮ってる節があるし……はぁ、気安く話しかけてくれるのは人間くらいのもんさぁ」
ほろりと涙をぬぐう動作をするドニール。……本気で、何ゆえコノ男は魚人海賊団にい
るのだろう??
というか、あの侮り抜群の声を気安いって言うのは……
そんなシンの内心を露知らず、ドニールは無意味に胸を張り、
「あいつが暴れだしたら、俺が説得するかアーロンさんが力ずくで止めるかの二択しか対
処法ないからな! 後者はアーロンパーク跡形もなくなるし、俺は一味に必要不可欠な人
材ってわけだ!」
えらく自慢げだが、要するに言っている内容は、情けない事実を示しているだけである。
「胸張っていうことかよ」
「……突っ込んでくれるな」
言われた途端に地面にしゃがみ、ののじを書き始めるドニール……情けない事言ってる
という自覚はあったらしい。
その姿が余りにマヌケだったからだろうか?
一同は未だに、水平線に現れた海軍の船の姿に気づく事が出来なかった……
415 :
47=82:2006/11/09(木) 17:52:05 ID:???
本日分はコレで終わりです。
トダカのことですが、自分の中ではイツ登場させるかというアイデアが固まってたりします。
というか、アーロン編の終盤に出てくる予定です。
残業明けで帰ってみれば上がってるし、GOODJOB!
つか、俺がGJ一番てなんか間違ってるOrz
GJ!
やべっ、ドニールイイ
うわああああ、なんてGJなんだw
GJ!!
そのタイミングでトダカが出てくるって事は……ひょっとしてネズミの部下か?
理不尽な上司の行いに歯噛みしてるみたいな。
421 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/11(土) 04:40:54 ID:TEXREAho
アゲ
GJ
職人さん頑張ってくれー
トダカは再構成物とかだと良キャラになってるが、本編からのキャラだとただのアスハ狂信者だからなあ……
最初は再会を喜ぶも、アスハ嫌いのシンと最終的には決裂しそうな悪寒がする
エースやばいよ
あの世界はトップクラス同士がぶつかり合うと、天が割れるのかw
もはやDBや北斗の領域だな
神氏また規制か?
GJ!!!
職人さんすごいよ。
シンとドニールに惚れる
ココくると別にシンは自分の子じゃないのに
「うちの子がこんなにたくましくなって」って母親のような気分にちょとなる
>>429 それは自分も同感。
思わず感涙、ってことはないが、すごく微笑ましいよね。
禿同。
是非ともシンには、苦労しつつも千尋の谷を見事這い上がる獅子になって欲しい。
432 :
47=82:2006/11/15(水) 19:14:34 ID:???
なんで?
海底で目を回す『同僚』を揺り起こし、巣穴に運び込み、寝かされるに至るその道程。
その間ずっと、『それ』の脳裏には疑問の言葉が無数に飛び交っていた。
なんで? なんで? なんで?
なんで、自分の同僚はこんな大怪我をしているのか。そりゃあ、一方的に怯えられるだ
けで親しかったわけではないが、それでも『それ』は彼のことを友達だと思っていた。
誰がやったのか。誰が、自分の友達をこんな風に痛めつけたのか。
怒りで、『それ』の瞳が真っ赤に染まる。比ゆ揶揄ではなく、本当に紅く染まっているのだ。
許さない。友達を苛める奴は許さない!!
今『それ』の脳裏にあるのはその一つのみ。蜜柑の事も、滅多に暴れるなという注意も、
もはや遥か彼方に吹っ飛んでいる。
どこだ。どこにいる!? 友達を苛めた奴は!
怒りで灼熱した『それ』が海面を見回し……
海面に、船の船底を発見した。
「海軍だ! 海軍が来た!」
「……なんだって??」
本来ならば真っ先に気付くべき海岸に屯した人間達は、その歓喜の声で始めて海に現れ
た海軍線の存在に気が付いた。
……人間達はともかく、魚人であるはずのドニールまで今更気付くあたり、本当にこの
男、アーロン一味の幹部とは思えない。緊張感なさすぎである。
ドニールが眉をひそめて水平線を見ると、確かにそこには、海軍旗(カモメ)のマーク
も眩しい一隻の軍艦がこちらへ向かっているのが見える。
続いて声の発生源を見る。そこにいたのは、ニット帽をかぶった一人の少年だったが
……その顔を見て、ドニールははたと気が付いた。
433 :
47=82:2006/11/15(水) 19:23:32 ID:???
「お前、ゴザの……?」
ドニールの記憶のそこに、その少年の顔は確かにあった。アーロンパークの前で、ナミ
にぶっ飛ばされたところを、ドニールが助け起こしたのだ。
立ち聞きしたところによれば、先日のゴサの町の生き残りで、魚人に殺された父親の敵
討ちをしにきたとかなんとか。
生憎と、そのとき差し出された腕は叩かれた挙句、無視されてしまったが……今回浜反
対だった。少年は、傍にいたドニールを見つけると、勝ち誇ったように胸をそらし
「ザマぁ見ろ魚人め! これで、お前らやあの魔女も終わりだぞ!」
(見当違いもいいところなんだけどなあ)
相手の言葉にさしたる恐怖も抱かず、ドニールはただ嘆息した。本当に、色々な意味で
見当違いな少年だと思った。
まず、ナミが魔女だというのがいただけない。
この少年は、ナミが自分を嘲笑いただぶっ飛ばしたと思っているようだが……否である。
彼女は、倒れた少年に対して、少なくない量のお金を渡しているのだ。彼女にとって、村
をアーロンから買い取るための大切なお金の一部を、である。その血肉すら分け与えてく
れたというのに……そのお金を、この少年は受け取らずに放り出していった。
訓練もしたことのない少年がアーロンに挑んでも殺されるだけだったろう事を考えれば、
少年にとってナミは命の恩人である。その恩人を、少年は知らずに罵っている……
ポケットの中にある札束を取り出して渡し、真相を教えようかと思ったが、やめた。ナ
ミが少年に感謝など求めていない事は明白であったし、自分よりも更にナミに深いかかわ
りのあるノジコが黙っているのに、自分がどうこう言う事はない。このお札は、蜜柑の代
金と一緒に還しておけば良いだろう
……本当にアーロンに魂を売ったのならば、何度も暗殺騒ぎなど起こさないだろうに。
これは、アーロンと本人、居合わせることの多かったドニールしか知らなかい事実である。
第二に見当違いなのが、彼の父親の死の真相だ。
ぶっちゃけ、彼の父親を殺したのはアーロンではない。彼がアーロン以外の魚人に殺さ
れるのを、ドニールは誰よりも間近で目撃していたのだから、確かな事だ。
第三に、あの海軍船がアーロンを倒せると思っていること。
これが、最も大きな見当違いだ。
「あの位置なら、岩礁動かすだけで終わるな」
ぽつりともらされたドニールの言葉を、シンは耳ざとく拾い、推測した。
434 :
47=82:2006/11/15(水) 19:25:48 ID:???
――岩礁を動かす?
生憎、海洋学については無知きわまるシンだったが、ドニールの口調から彼が海軍を脅
威と感じていないのはよく理解できた。まさか、岩礁でどついてあの舟を破壊するわけで
もないだろうが……そもそも、その手段じゃ岩礁とは言わない。
……そうこう考えている間に、海面にはシンが必死で推測しようとしている手段の、そ
の結果が現れようとしていた。
前進する海軍船の正面に、小さなくぼみが出来たかと思うと……くぼみは貪欲に周りの
水を吸い寄せその体積を増していき、巨大な渦潮へと成長した!
「渦潮!?」
「ほら、な」
まさか、渦潮が起こるとは思っていなかったシンは、思わず演技を忘れて叫んだ。ドニ
ールは肩をすくめて、
「強い流れの中に岩礁を動かすと、渦潮が出来るのさ」
――アーロンパークの難攻不落の正体はコレか!
アーロンパークを偵察したシンの脳裏に出来上がった、疑問という名の巨大な氷河。そ
れが氷解すると、中から飛び出したのは予想も出来ない、出来るはずのない突飛な真相だ
った。
可笑しいとは思っていたのだ。いくらマンパワーが絶大だといっても、限度というもの
がある。軍事的に非合理極まりないアーロンパークを、ソフトウェアの力だけで持たせら
れるはずがない……何か、他に要因があるはずだと、シンは予測していたのだが。
魚人達は、その肉体ポテンシャルだけではなく、付近の海そのものを防衛兵器としてつ
かっているのだ! 何の備えも必要ないわけである。建物ではなく、海が防壁であり、城
砦であり、大砲なのだから。
しかも、相手はその海面の状態を自在に操れる……!
「舵も破壊済みみたいだし、こりゃあいつら沈むなあ……仕事の速さからして、やったの
はクロオビ達か。あ、クロオビってのはうちの幹部の名前ね」
愕然とするシンを尻目に、ドニールの説明は続く。
「うちの海賊団には、幹部が三人いるんだよ。チュウ、クロオビ、ハチって言ってな。そ
れぞれがキスの魚人にエイの魚人、タコの魚人だ。チュウは水鉄砲の名手で、クロオビは
魚人空手の使い手! ハチに至っちゃあ、人間には不可能な六刀流の使い手だ。
チュウとクロオビとはウマが合わないんだが、ハチとは気が合ってなー」
続く。
435 :
47=82:2006/11/15(水) 19:28:07 ID:???
「いい奴だぜーハチは。ドニールのえさ一緒に調達してくれたり、あいつの甲羅磨くの手
伝ってくれたり。何より、他の連中みたいに俺のことを軽く扱わないのがいい!
この間、あいつが作ったたこ焼き食わせてもらったんだが……いや、絶品だったね」
……続く。
「他の二人は……ま、それなりだな。親しくもねえし、あんまり話せる事ないんだわ。あ、
そういえば! クロオビの奴、初対面でブロームに吹っ飛ばされてなー。それ以来、あい
つの前に出るたんびに身構えてやんの! 笑えるぜー!」
……よく喋るやっちゃなぁ、オイ。
上記のはっちゃけたコメントが、シンがドニールに抱いた印象である。シンでなくても
大多数の人間ならば同じ感想を抱いただろう。しかも、話が明後日の方向に脱線し始めている。
「あ、そうだ! お前さんがた、魚人が魚食わないとか先入観持ってるだろ? ところが
どっこい、俺たちゃどっちかといえば魚のほうが好きでなー。ハチがたこ焼きや久野が得
意なのも、そういう関係さ」
ドニールの無駄口が同僚達の食事の好みに流れ始めてから、シンは彼の口から有益な言
葉が飛び出す事はないと確信した。放っておいてアーロンパークの機密でも聞き出そうと
思ったのだが、この調子ではろくな情報は得られないだろう。
「……姉ちゃん、何、この魚人」
先程大げさにタンカを切った少年が、いぶかしげにノジコに問うた。なんと言うか、抽
象的に過ぎる問いだが、それもしかたがないだろう。
彼の中の魚人という生き物は、人間を見下し蔑んで虫けらのように扱う輩なのだが……
ドニールはその先入観の枠を踏み外しまくっていた。
やったらフレンドリーな上におしゃべり。こんな魚人見た事が無い。そんな戸惑いが、
そのまま形になったのがこの質問だった。
少年のあいまいな質問の意味を察し、ノジコは嘆息して、
「人畜無害なニシンよ……うざいけど」
本当にそうとしか言いようが無かった。
436 :
47=82:2006/11/15(水) 19:28:53 ID:???
「ドニール、あんたは行かなくていいのかい?」
自分はその会話には関係なく、聞き手であるシンはあくまでおとなしく無駄口に付き合
っている。それが分かっていてあえて、ノジコは話に口を挟んだ。
ナミつながりで少なくない親交がある彼女の経験上、放っておいたら夕暮れまで喋り倒
しかねない。
「ん? 大丈夫だよ。俺これから餌やりだし」
ひょいと背中の蜜柑籠を上げる事で、ドニールはノジコの問いに答えた。そして、にか
っと笑って少年の前にしゃがみこみ、
「坊主もどうだ? うちのブロームに餌やってみないか?」
「……ばっ、馬鹿にすんな!」
父親の死と故郷の壊滅でささくれ立っていた少年の神経に、ドニールの笑顔は少々刺激
が強すぎたらしい。激昂して海を指差して、吼えた。
重要かつ、異常極まりないことを。
「海軍の船はまだ沈んでないんだ! まだ終わってない!!」
――は?
海岸に集った全員が違和感を覚えるような言葉だった。魚人たちが渦潮で海軍の船を沈
めるのは初めてのことではなく、ある意味で場に集った者たちはその光景を見慣れている。
その経験から言えば、渦潮が出来てからドニールの軽口までで、船が沈むには十分すぎる
時間が経過していたはずなのだが。
全員が思わず海に視線を投げたその瞬間。
ぶ ろ お お お お お お お お お お お お お お む っ ! ! ! !
怪物の咆哮が、大気を振るわせた。
時は少し遡る。
――おかしい。
ドニールが海岸線で無駄口を叩いていた頃。
海軍の船上で陽動役をしていたチュウはも、事の異常さに気が付いた。
三人で組んで海軍船を沈めるのは初めてのことではない。いつもならば、もう沈み始め
ても可笑しくない頃合だというのに……船は揺れる事をやめて静かに静止している。
(何かあったか?)
437 :
47=82:2006/11/15(水) 19:30:11 ID:???
船べりに座り込み、自分を取り囲む船員達を眺めながら、チュウの脳細胞は化学反応を
起こす。渦潮を前に船が静止しているというこの異常な状況が、何を示すのか。
チュウが船上の船員達の気を引いている間に舵を破壊し、クロオビとハチが海底の岩礁
を動かす。アーロンパーク防衛を繰り返すに当たって完成した黄金のパターンに、初めて
入ったヒビ。
ありえるとすれば、船が何者かに支えられている場合だが……この規模の沈もうとする
船を支えるなど、人間には不可能だ。
(海軍に、魚人が?)
ありえない話ではないが……実際に見たほうが早い。
ひょいと船べりから身を乗り出し、船底を確認しようとして……
「んがっ……!」
その表情が、こわばった。
……チュウの立ち居地から見えたのは、紅く、巨大な腕が船底をつかんでいるという、
アーロン一味にとっては慄くに値する光景だったのである。
「ま、まさか……!!」
元々青い顔を更に青くするチュウの想像を証明するかのように、『それ』は海中から姿を現す。
ざ ば ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ ! !
ぐらぁっ!
突如盛り上がった海面に、船が大きく揺れた。余りの揺れの大きさに、船べりに座って
いたチュウまでもが体制を崩し、甲板にひざを着く。
姿勢を立て直そうと、顔を上げたその先に……
化け物が、いた。
赤い甲羅に身を包んだ、巨人という表現が最も適切であろう。赤い二つの目に、ひとつ
のクチ。腕に付いた五本の指と、海獣というよりは人間に近い形をしている。
モームと同じサイズなのだが、その体に秘められたパワーは比べ物にならないレベルな
のだと、チュウは知っている。
紅く、怒りで染まった相貌で海兵たちを睨みつけるその怪物の名は……
438 :
47=82:2006/11/15(水) 19:31:07 ID:???
ぶ ろ お お お お お お お お お お お お お お む っ ! ! ! !
突如現れた怪物にパニックに陥る海兵達の悲鳴をかき消して。
海獣『ブローム』の咆哮が、天地を揺るがせる。
ブロームは、怒っていた。
こいつらが。
こいつらが、モームを苛めた奴ら!
確信も何もなく、思いつきだけでそう決めつけて。ブロームは、友達の敵を討つべく海
兵達を睨みつけた。
そして、時は現在に戻る。
「ぶ、ぶろーむぅっ!?」
いきなり現れた相棒の姿に、ドニールは思わず素っ頓狂な声を上げる。ココヤシ村の住
人達もその光景に目をむき、シンも思わず身構えてしまった。
「おい! 大人しいんじゃなかったのか!? どう見ても猛獣っぽいぞ!」
「猛獣言うな! ……一度癇癪起こすと手に負えないところがあるからな。あいつ、人間
で言うと10歳児くらいだし」
「じゃあ、お前はその子供におんぶダッコの情けない奴か?」
「突っ込むなそこには! ともかく!」
ドニールは蜜柑籠をノジコに押し付けて、
「止めてくる! 預かっててくれ!」
叫び、海に向かって駆け出して、その勢いに任せて飛び込んだ。
瞬間……ブロームが動いた。
439 :
47=82:2006/11/15(水) 19:31:57 ID:???
「お、おいっ!? 何する気だ!」
チュウの目の前で、状況は最悪の坂道に向かってどんどん転がり落ちていった。
自分の声が裏返っているのにも気付かないほどに、彼は動揺していた。
ブロームが怖いのではない、ドニールというブレーキのいないブロームが怖いのだ。
特に、目が赤いときは……! ブロームの目の色は感情によってころころ変わり、真紅の
眼は怒りで我を忘れている証拠である。今まで、この状態のブロームのせいで何人の船員
が吹っ飛ばされた事か。
チュウの裏返った声に反応したのか、ブロームはゆっくりと右腕を振り上げる……そこ
から想像できるブロームの行動は、唯一つ。
(お、俺ごと船叩き割る気かぁっ!?)
「じょ、冗談じゃねえ!」
「あ、紅い海獣……!? こいつがブロームかっ!」
「う、撃て! 撃てぇっ!!」
海兵の悲鳴と、指揮官の混乱した支持を尻目に、チュウはさっさと海に飛び込んだ。ブ
ロームに対する心配は全くしなかった。
魚人でも全く歯が立たないあの怪物を、人間風情にどうこう出来るはずが無いのだから。
「――な、なんなんだよ!? あれ!」
「海獣だよ」
悲鳴を上げる少年に、ノジコはあくまで冷静に言い返した。
「ゴサをつぶしたモームと同じで、アーロン一味に飼われてる奴さ……さっきの人畜無害
は、あいつの専属飼育員ってわけ」
「あの牛と、同じ……!?」
「そ。それでもって、あいつより強い」
モームというのは、少年の故郷であるゴサを叩き潰した海獣の名だ。それより強いとい
われて、少年は思わず身震いしてしまった。あの、圧倒的なパワーをもつ怪物よりも、強
い!?
440 :
47=82:2006/11/15(水) 19:32:52 ID:???
どぉんっ!!
海軍の船から轟音が響き渡り、海岸に屯した人間達の耳にまで届いた。無論、恐怖に負
けそうになっていた
――そうだ! 大砲なら!
いくら怪物でも、大砲の直撃を受ければ無事ではすまないはず……!
ゴサには大砲が存在しなかったという事実が作り出した、少年が作り出した希望。
どんっ!
どぉんっ! どぉんっ! どぉんっ!
連続する大砲の発射音と、炸裂音。追随して発生し、ブロームの赤い甲羅を覆い隠す砲
煙……少年の心に歓喜と開放感が到来するが、実に儚く一瞬で崩れ去る。
「え?」
風に煽られて煙が晴れても、その向こうにある光景は変わらなかった。
それらを一身に受けているにもかかわらず、こちらから見える赤い背中は小揺るぎもしない。
「大砲の直撃に耐えた……!?」
(防御力か!)
対照的にシンは驚きつつも状況を判断し、ブロームという怪物の特徴を把握した。あの
甲羅の防御力は、確かに脅威だ……モームのほうが防御すらなっていなかったのを考える
と、差は歴然だろう。
(盾は十分でも、矛はどうなんだ?)
ぶ ろ お お お お お お お お お お お お お お む っ ! ! ! !
シンの疑問は、すぐさま証明された。振り上げられていたブロームの右腕が、咆哮とと
もに振り下ろされ……
ど お ん っ ! ! ! !
叩き割った。
頑丈な海軍の船を、一撃で。
「…………!」
「チョップ一発かよ」
441 :
47=82:2006/11/15(水) 19:36:19 ID:???
飛び散る破片と海に投げ出される海兵達を、呆然としながら見つめる少年。ようやく見
えた希望を砕かれたその心境は、いかばかりのものか。シンは慰めの言葉でもかけたほう
が良いのかと思ったが、すぐ思いなおした。自分はこの少年の名前も事情も何も知らない
し……それどころではないのだから。
凄まじいパワーだった。モームでは、あそこまで綺麗に粉々には出来ないだろう……最
強の盾と矛を兼ね備えた相手というわけだ。
いや、それ以上に……
「厄介な敵だな……」
誰にも聞こえないほどの小さな声でつぶやき、シンはその場を後にした。
船長や仲間達と合流するために。
442 :
47=82:2006/11/15(水) 19:39:13 ID:???
ようやく規制が解けたので、今回は心なしかちょっとボリューム大目です。
激乙!
だんだん事態が動き始めたなー
しかし今回で一番注目すべきはブロームの化物ぶりよりも、その化物を見て
>「厄介な敵だな……」
で済ましちまうシンだと思うw
最早完璧にワンピ世界の住人になっちまってるな
>>443 激しく同意w
へたすりゃ……いや、多分間違いなくパワー比べならMSに勝てるだろ、ブローム。
それを
「厄介な敵だな……」
で済ましちまうとは……成長したな、シンw
周りの少年やドニールとの会話も楽しめたし、作者さん、GJです!
いい感じのワンピキャラですなシンw
投下乙です。
いや、「朱に交われば赤くなる」どころか染まりまくって血みどろのクリムゾンですな。
生きた『羽クジラ』に出会っても喰えるかどうかを気にしそうですね。
447 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/16(木) 02:15:13 ID:AWm4rEYo
GJあげ
GJ!
すっかり朱に染まってますな。
怒れる深紅の瞳と言えばシン。
そんなシンに親近感抱いてグランドラインまでブロームが着いてきたら、
まさしく第二のくじらさん。
ふとイイ友達になれそうだとか、アホな事思い浮かんだ。
449 :
47=82:2006/11/17(金) 05:05:11 ID:???
GJコールどうもです。
まあ、シンがこの世界に染まっているのは、とっくの昔にという事で(笑)
もしもルナがシンと合流したら、染まったシンについていけないんだろうなー。
あールナですか…
自分は始めはついていけなくて色んなことに、ツッコミまくりだったけど
いつの間にか自分も染まってて、頭抱えるって気がスるです
レイは「気にするな俺は気にしない」で馴染んだように見えて
実は少しも馴染めないとかありそう
ふと頭にうかんだ人
微笑みのキラ
その笑顔を見たものは動きを止められ
その間にゆっくりと嬲り殺される。
>>451 嫌過ぎるな、ソレ。
『カラーズ・トラップ』みたいな暗示系能力か?
そんな能力者だとしたら、ルフィとキラが戦う必然性も出来るな。
454 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/19(日) 20:32:13 ID:8TZjz5Eh
「麦わら」のルフィ
「海賊狩り」のゾロ
「黒脚」のサンジ
「泥棒猫」ナミ
「狙撃の王様」そげキング
「悪魔の子」ニコ・ロビン
「鉄人」フランキー
わたあめ大好き」チョッパー
その頃になったら、シンにはどのくらいの値がつくのやら
既にして賞金首だから、サンジ以上ゾロ未満ってところかなあ
せいぜい50ベリー未満
現時点で900万ベリーだったか
ルフィに初めて賞金がついたのがアーロン戦後だから、とばっちり喰らってまた賞金上がりそう
1000万位と言った所か。
海軍内で、ブロームがどれだけ評価されてるかによるだろ。
アーロン並みの脅威だと判断されたら、2000万いくんじゃないか?
と言うことはシンVSブロームとなるわけだな。
アーロン倒した時って、ルフィの懸賞金はいくらだったっけ
アーロン倒して3000万、クロコダイルで1億でなかった?
ブロームに勝つって事はMSと生身で互角以上に渡り会えるって事だよな。
もしもこのスレのシンが元の世界(種死の第一話当たり)に戻ったら・・・考えたくもないや。
戻しちゃ駄目だろ、戻しちゃ。
466 :
47=82:2006/11/20(月) 23:58:33 ID:???
自分としてはブロームはMSより大分弱いつもりなんですが。
コレだけじゃなんなので、続きです。
467 :
47=82:2006/11/20(月) 23:59:51 ID:???
「おーいたいた」
幸いというか……シンの探していた仲間達はさしたる苦労もなく実にあっさり見つかっ
た。ブロームに叩き壊された海軍船ほどではないものの、原形をとどめない程度に破壊さ
れた船の残骸の前で、ゾロとサンジ、ルフィが思い思いの姿勢で休息を取っている。
見つかった事自体に安息を感じつつ、見つかった場所に関して疑問を抱いてしまう。シ
ンは、合流のためにまず船の落下地点に向かい、そこを中心にルフィたちを捜そうとした
のだが……彼の仲間達は、船の落下した場所から全く動いてなかったのである。
ルフィの性格を考えれば、すぐさまナミを探しにいってもよさそうなものだが……その
本人が、道の真ん中で爆睡している有様だ。ヨサクとジョニー、ウソップの姿も見えない。
「……何があったんだよ一体」
陸地で、粉々になった船の前で休む男たち。無関係の人間が見ても奇想天外なその光景
は、事情を知るシンにとっても予想外だった。
「おーい、ゾロー」
「ん? シンか……」
シンが声を上げると、地面に胡坐を書いていたゾロが視線を向けた。サンジも振り返っ
てその姿を確認する。シンは二人に近づきながら、
「なあ、ルフィの奴一体どうしたんだ? 何で寝てんだよ」
「ああ」
事情を説明しろとばかりのシンの態度に、ゾロはきわめて簡潔に答えた。そう、簡潔す
ぎるくらいに簡潔に。
「ウソップがナミに殺されてな」
「……は??」
目を点にするシンに対し、サンジが情報を補足する。
「ジョニーの話だと、アーロンたちに捕まって煙幕で逃げようとしたところを、ブスリ!
だったらしいが……」
「……それで何でルフィは寝てるんだ」
サンジのおかげで不完全ながら状況を作り出した背景を推測する事が出来たが、疑問は
残った。最も不可解なのは、道の真ん中で熟睡してるルフィなのだが。
『知るか』
468 :
47=82:2006/11/21(火) 00:01:36 ID:???
二人がハモらせた返事は、にべもなく。
そういわれてようやく、シンは思い出したのだ。ルフィの思考が、時々仲間でも読み違
えるほど不可思議なのだという事を。
「ナミ本人がウソップを殺したって聞いた途端、眠り始めやがった」
「ヨサクとジョニーは、呆れてどっかに行っちまったよ。それで、お前は今まで何やって
たんだ?」
「ん。まあ……」
ルフィの不思議行動は今に始まったことでないし、アレはアレで筋が通っているので、
一同全員で放っておく事にしたらしい。
サンジの質問に、シンは髪をガシガシ掻いて、
「お前から出された宿題を、な」
「宿題……ああ、アーロンパークの」
「ああ。海側から攻めたら、魚人達の餌食だよアレは。連中、海流や渦潮を武器に使って
くるんだ……海岸線に防壁なんて要らない筈だよ。
攻めるなら陸路だな。最も、海軍の船じゃあ上陸する前に沈められるか」
「となると」
他にも答えはあったのだが、口に出す事すら憚られる外道な策の為、割愛した。
シンの提出した宿題の答えを、サンジは痛く気に入ったらしく、にやりと獰猛きわまる
笑みを浮かべ、
「俺たちがまさにうってつけってわけか」
そう……シンが並べた条件は、彼らにとってはまさにうってつけで。本来なら届かない
はずのアーロンパークの懐深く。海軍が欲してやまない立ち居地に、ルフィ海賊団はいる
のである。
「……というか、お前はウソップの心配はしてないのか?」
「全然」
ゾロの疑問に対して、今度はシンのほうがあっさりと返した。
「理屈云々以前に、ルフィはナミを信じてんだろ?」
「ああ。ジョニーの胸倉つかんでたからな」
「だったら、ウソップは生きてるさ。なんていうか、こいつ野生の感っていうのかな? そ
ういうの、やたら鋭いし」
「わからねえぞ」
応答するゾロだったが、その口調に仲間を失った悲壮感は無い。彼もまた、ルフィとナ
ミを信じているのだろう。仲間達には話していなかったが、ゾロもナミに助けられたのだか
ら……
469 :
47=82:2006/11/21(火) 00:02:46 ID:???
「おーい!」
「あ」
「俺ぁ、あいつに小物って言っちまったからな。カッとなってやっちまったかも知れねえ」
「小物だと……」
ゾロが言い切ったその瞬間だった。
ピクリと。
サンジの渦を巻いた眉が跳ね上がって……
「ナミさんの胸の、何処が小物だコラァッ!!!!」
サンジの右足が唸り、ゾロの喉元を殴打せんと襲い掛かる!
「なんでお前はそう……!」
常人なら反応すら不可能な高速の蹴りを、ゾロは驚くべき反応速度で防御しようと、一
本しかない刀を掲げ、受け止めようとする。
そう、全ては一瞬の事だった。
「お、おいお前らウソップが……!」
……遠くから走りよってくるウソップに気付いたシンが、止める暇も無いくらいに。
どごんっ!
「ぐげぼっ!?」
「う、ウソップー!?」
「い、生きてたよ……」
「い、いや……死んだぜこりゃあ」
芸術的なまでのタイミングで。
仲間に無事を知らせようと走りよってきたウソップは、サンジの蹴りとゾロの刀の間に
挟まれて、意識を涅槃の彼方に飛ばす事と相成ったのだった。
ココヤシ村の外れに、蜜柑畑がある。青々としたその葉に包まれて一軒の家がある。
この家の存在を知らないものは、近隣住民には一人もいない。同時に、その家に近づく
ものも、誰独りいはしない。その家に暮らす住民以外は、ろくに近づきもしない場所だ。
魚人海賊団の魔女、ナミと、その義姉ノジコの暮らす家だった。
『親を殺されても金に走った女』であるナミを近隣の住民が嫌いぬいている『という事
になっている』以上、好き好んで近づくはずは無い。魚人たちも、この家に近づく事は無
い……たった一人を除いては。
470 :
47=82:2006/11/21(火) 00:03:48 ID:???
――やれやれまいったねー。
後頭部で己の存在を自己主張するたんこぶをさすりながら、その唯一の存在。ドニール
は深くため息をついた。
後頭部のそれは、ブロームを制御しそこなったミスによって、クロオビから頂いたもの
だ。いつもならば反感のひとつも覚えるところだが、今回ばかりはそうはいかなかった。
なんせクロオビ、件の騒ぎの折にハチと一緒にとんでもない目にあっているのである。
……ブロームに踏み潰されて、海底で押し花やる羽目になったのだ。怒りもするし、罪
悪感も沸くというものだ。ハチのほうは、まあしょうがないと許してくれたが、クロオビ
はそうはいかなかった。
ブロームから特に嫌われていた為に、踏まれた上にぐりぐりと踏みにじられたのだそう
な。
「痛つつつ……」
まあ、百枚瓦正拳ですんだだけでもよしとしよう。
今のドニールには、それよりもずっと気にかかる事があったのだ。
「モームを苛めた奴、ねえ」
ブローム専属の飼育員なんぞやっているだけに、ドニールはかの海獣との間で、高度な
意思疎通が可能だ。暴れた本人に聞き出したところによれば、ブロームがあっさり暴走し
たのは、友達であるモームがボロボロにされて帰ってきたからだという。
んでもって、ブロームがモームから聞き出し、ドニールに伝えた犯人の人相は、
「麦わらの男に、黒い服のコック……紅い服の、槍使い」
ドニールが気にしているのは、最後の男……自分が、あの浜辺で話をしたシンの事だった。
「戦り辛いなあ……一旦和んじまったからなあ」
……こいつにとっては、一方的なおしゃべりですら『和んだ』事になるらしい。
ともかく、シンの姿をブロームが目にしようものなら、場所が何処だろうと即暴走開始
だろう。ブロームが陸上で暴れたらどうなるか……考えれば考えるほど寒気が止まらない。
無意味な崩壊を阻止するために、ドニールが指揮を出して戦う事になるだろう。
そうなると、ドニールからすれば和んだ相手を殺す事になるわけで。
相手は、あのモームを倒すような奴だ。ブロームは完璧に見えて意外なほど弱点が多か
ったりするので、暴走するままに戦わせてたら返り討ちになる可能性も低くない。指揮し
ないという選択肢は存在しなかった。
471 :
47=82:2006/11/21(火) 00:04:45 ID:???
「あー、あいつ逃げててくんないかな?」
その方が楽なのだ。彼にとっては。相手がブロームの視界に入らなければいい事だし、
少なくとも、和んだ相手を殺さずにすむのだから。
(と、それより今は蜜柑だな)
気を取り直して、ドニールは視線を正面の家に戻す。そこの家の主に預けた、ブローム
用の蜜柑を引き取るために。
刹那、
がしゃーんっ!!!!
ガラスを突き破って、椅子が飛んできた。
「うおっ!?」
間一髪で飛んできた椅子を交わしたものの、無様にしりもちをつくドニール。つくづく
情けない魚人の鼓膜には、家の中から響く破砕音が未だに鳴り響いている。
割れた窓から見えるのは……鬼気迫る形相のナミが、あたりの家具に八つ当たりしてい
るその姿だった。
たっぷり十秒ほど固まったドニールは、やおら立ち上がって、
「よ、よおく考えたら、ブロームにもたまにはお仕置きしたほうがいいよなあ。おやつ抜
きとか適当だよなあ。それじゃあ、あの蜜柑はノジコに預けっぱなしでいいかなあ。あっ
はっはっはっはっはっ」
わざとらしさ炸裂の台詞をしゃあしゃあと吐いて、後ろに向かって全速前進を開始した。
女のヒスが怖くて逃げてるんじゃないぞー、と自分自身に言い訳しながら。
つくづく情けない奴である。
「と、言うわけなんだ」
ウソップは、自分のみに起きた事……ナミが、ウソップを刺すフリをして自分の左手を
刺し、殺したように見せかけてくれた事……に関する報告を、そう締めくくった。
あの後。シン達は急いで二人……ウソップとルフィを起こして、説明を求めたのである。
話を聞いたルフィは、にっかりと笑って、
472 :
47=82:2006/11/21(火) 00:06:30 ID:???
「な!? 俺が言ったとおりだったろ!」
「自分の腕を、ねえ」
確かに……ナミが、ヨサクやジョニーたちが去り際に言い捨てていったという『魔女』
という表現に当てはまる人物だったとしても。
とてもじゃあないが、自分がだました相手を、自分の手を刺してまで救いたいと思わな
いだろう。その点においては完全に、ルフィの主張が正しかったわけだ。
「俺は、あいつが魚人海賊団にいるのには、深い事情があると踏んでる!」
「ナミが魚人の仲間らしい話は、俺も聞いたよ」
ドニールの、『帰ってきた』発言の事だった。あの言葉も、ウソップの説明や前後の情報
を総合すれば、おのずと納得できようというものだ。
「けど、事情までは分からなかったな」
「なんなら教えてあげようか――?」
……背後から声がかかったのは、その時だった。
「?」
声の発生源……シンのちょうど真後ろに一同の目線が集中する。そこには、シンにとっ
てもウソップにとっても見覚えのある女性が一人、興味深そうな目でルフィ達をながめて
いた。
シンとウソップ。戦闘能力と速度に大きく開きのある二人だったが、その女性が何者か
連想するのはウソップのほうが早かった。
「ノジコ」
「あんた、海岸にいた……」
「誰だ?」
いきなり現れた第三者の存在に、ルフィが警戒心まるで無しの態度で彼女を指差した。
「ナミの姉ちゃんだ」
「ナミさんのお姉さま!? 成る程お綺麗だ〜!」
「俺は、アーロンパークを調べてる最中に一寸な……名前知んないけど。そうか、あんた
ナミの姉さんだったのか」
「あんたも、こいつらの知り合いだったんだね」
瞳をはぁとにして興奮するラブコックを華麗にスルーして、シンは改めてノジコと向かい
合った。
473 :
47=82:2006/11/21(火) 00:07:46 ID:???
「言っとくけど、たとえ事情を知ったところでムダだよ?」
「無駄? どういう事だ?」
「簡単だよ。あんたらにアーロンの支配は崩せない、ナミの事情を話したげるから、早く
帰って頂戴」
警戒するゾロに向かって、ノジコは断言した。そんな彼女に対する、ルフィの反応は、
「俺は、別にいい」
『え!?』
ウソップとシンの上げた声が唱和したのと同時に、ルフィはノジコの横をすり抜けて歩
き始めていた。
「ちょ!? おい、ルフィ!」
「何処行くんだよお前!」
「 散 歩 」
言い切った。
コレにはノジコも拍子抜けしたのか、目をぱちくりさせて、
「何、あいつ?」
「気にすんな、ああいう奴だ。で? 崩せない理由ってのはなんだ?」
「……アーロンの実力もあるけど、分かりやすいたとえを出そうか」
そして、その思いの理由を、一同を見渡して話し出した。
「あんたら、『鮮血のニードル』って殺し屋を知ってるかい?」
「『鮮血のニードル』? 知ってるか?」
聞き覚えの無い名前だった。シンは思わず、仲間達の方を見た。こういう実力者の話な
ら、ルフィ以外の仲間達が詳しいと思ったのである。
シンの説明を求めるような視線に、ウソップは目を丸くして、
「お、お前! 『鮮血のニードル』知らねえのか!?」
「有名な奴なのか?」
「知ってるも何も……」
「一匹狼の殺し屋だ」
474 :
47=82:2006/11/21(火) 00:09:40 ID:???
説明しようとしたウソップの言葉を阻害して、事実はゾロの口からもたらされた。
「暗殺成功率100%を誇る、東の海最強の殺し屋。高い成功率と能力故に姿を見たものすら
なく、男なのか女なのかもわからねえ……その余りの厄介さと賞金すらかけられ、その額
は個人としては破格の1500万ベリー」
「1500万……!?」
余りの高額賞金に、シンも言葉を失ってしまう。
今の時代、賞金首というのは対外が何らかの集団に属しており、賞金はその頭目や幹部
にかけられるのが常だ。そもそも、世界政府がかける賞金とは政府に対する危険性を表し
た額であり、かけられる賞金の額は、所属する集団の危険性を加味されたものとなる。個
人単位の犯罪者など危険性は低いと判断され、高くても1000万を超えることはないのだ。
それを考えれば、1500万という額は破格中の破格と言って間違いは無いだろう。
「海に出てる奴は当然知ってる名だぞ……お前、一体何処の軍に入ってたんだよ」
「え? いや、まあ、あ、あはははははははは」
まさか、『異世界の軍隊です』と返すわけにも行かず、シン空笑い。ノジコはそんなシン
に呆れ交じりの視線を向けると、気を取り直してゾロに向き直った。視線の構成物は呆れ
から、関心へと切り替わっている。
「随分と詳しいね」
「まあ、昔少しな」
「……けど、そんなあんたらでも、『鮮血のニードル』が海軍に雇われる事があったなんて、
知らないだろ?」
「は?」
コレには、ゾロの動きも一瞬止まった。
「又聞きの又聞き、ドニールから聞いた話しだけどね。
『鮮血のニードル』の余りの強さに、東の海の海軍は、利用価値を見出したんだってさ。
で、表じゃあ賞金かけてるくせに、裏じゃあその賞金と同額かそれ以上の金を払って、海
賊殺しを依頼してたんだ」
「ドニール? あいつから!?」
意外な単語に反応したのは、ウソップだった。シンは驚いて、
「ウソップ、あいつを知ってるのか?」
「ああ。ノジコの家に行った時に、たまたま居合わせたんだ……なんであの人畜無害のニ
シンがそれ知ってるんだ?」
最強の暗殺者とうだつの上がらない最弱ニシン。この二人のつながりが見えず、ウソッ
プは眉をひそめる。その疑問に対してノジコが提示したのは、単純きわまる驚愕の事実。
475 :
47=82:2006/11/21(火) 00:10:58 ID:???
「ああ……そりゃあね、『鮮血のニードル』殺したのが、ドニールだからだよ」
「はあ!?」
「本人じゃなくて、ブロームがやったんだけどね。誰よりも近くで目撃してたそうだから
……非公式だけどね。
まあ、ドニールはうそつけるような奴じゃないし。名前が似てるから、なんとなく気に
なって調べたんだってさ」
ノジコの説明をよそに、ゾロは近くにあった林の、木の幹に向かって歩き出す。そして、
シンとすれ違いザマに、言葉を置いていった。
「それが事実なら、スピードでかく乱するって手段はとれねえな」
ゾロの言うとおりだった。最強の暗殺者などといわれるくらいだから、技量はずば抜け
ていたのだろう。それを殺したあの大海獣を倒すのならば、別の手段をとるか、あるいは
……ニードルを上回る技量で圧倒するかだ。
ルフィ一味で、最も的確な男といえば……
「 上 等 だ よ 」
にやり、と笑みを浮かべてシンは背の槍に触れる。
自分しか『あれ』の相手が出来ないのなら、立派に勤めて見せようという気概が、その
双眸に満ちていた。
それを聞いたゾロは、真に負けないくらい獰猛な笑みを浮かべて、木の幹に座り込み、
「Zzzzz」
「って、寝るのかよ!?」
寝た。
そりゃあもう、シンの突込みが鮮やかに決まるほどに。
「……こりゃ、あの子がてこずるわけだ」
そんな二人のやり取りに、ノジコは呆れ交じりの笑みを浮かべた。
476 :
47=82:2006/11/21(火) 00:12:03 ID:???
本日は以上です。
そして、ブロームの弱さが分からない人にちょっとしたヒントを。
つ矛盾
GJ!
シン、立派になって・・・
最後のつっこみとか容易に絵が想像できるヨw
シンはツッコミ気質だから、ナミが味方側に不在のアーロンパーク編では貴重な存在だなw
>>476 ぐっじょーぶ!
もお、これからの活躍に期待大ですw
480 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/22(水) 06:17:09 ID:Nnf4RK9U
GJアゲ
GJついでに一寸気になったんだが。
まとめサイトに47=82氏の作品が上がっていないんだが。ひょっとして職人さんやり方知らんのか?
誰か、代わりにやってあげる奴おらんのかね。
482 :
47=82:2006/11/23(木) 06:14:37 ID:???
GJコールどうもです。
>>481氏のご心配したとおり、やり方を知らなかったのですが……たった今、やってみました。
他の職人さん達の到来を刺激するために、ここで話題を一つ。
私の作品を無視して考えるとして、シンに悪魔の実を食べさせるとしたら、どんなものがいいと思う?
んー、とりあえずロギア系は強力過ぎるから違うな。
鍛錬を積めばその分だけ効果が現れるっていう、ゾオン系がイイのでは?
ゾオン系なら目赤いし兔の能力でヴォーパルバニーへの道をw
ワンピの戦士系は素で超人だから、ゾオン系だとイマイチ能力の有効性が判り難いんだよな
まあトリトリの実とかなら違うんだろうが
レギュラーとして使うメンバーならやっぱパラミシア系がいいと思う
俺的にはシンは使う武器を選ばない万能戦士って印象あるから
バクバクの実とか案外相性いいかも試練
>万能戦士
本来の設定を考えればあながち間違いでもないんだよなあ
インパに選ばれたのだって、どんな機体にもすぐに適応できるという極めて高い順応性ゆえだから
じゃなければ、武装も射程も運用法もシルエットによって全く別物になるインパを使いこなせないだろうし
なんで後継機のディスティニーがゴッチゴチの対艦兵装搭載機だったんだろ?
連合のMAに対抗するためじゃないか?
ザムザザー出てきた時、連合の兵士がこれからはMAの時代だと言ってたし、連合はMAの巨大化・怪物化が進んでいたと思う
その代表的なのがデストロイなわけで、その情報を知っていた議長ならそれら対策の為に作ってもおかしくない
バクバクノ実と同じく、既出の悪魔の実だが、アメアメの実というのもいいかもな。
ガスパーデ将軍の能力なんだが、飴を溶かしたり固めたりでかなり応用性のある能力だった。
武器を生物(逆か?)に変える実三つとかでも良い気がする
で、生物化する剣・槍・銃(各シルエット準処)とかで
>>491 まて、実を二つ以上食うと体が爆発する。
身体武器化よりも純粋に身体能力強化する…
>>484であげられているのは、やっぱりいい気もするぞ。
ゾオン系「ラビラビの実」とか
ウサミミ生えて聴力アップ、脚力もアップして速さが強化されるとか。蹴りの威力も上がるな。
ロボロボの実
身体をロボットに変身する能力。
ガチガチの実。やたら堅くなるw
>>492 いや、三種の武器に実を食わせ(染込ませ?)て武器を生物化と書いたんだが.....
所有者も爆発するのか?
>>492そうすると、シンがウサミミになるわけですな。
……バニーガールのシンを想像して吹いた俺がいる
// // / ヽ ! |
/,.' // / 、 l | l
r',.ニニ、 ヽ、 l l // ( _,. -‐ ´`ヽ l | ,'
ヽ、_ 丶 丶、 !j____j/ ` ̄´ \ ! ! /
` '' 丶 `ゝ丶;:r==;;:`''‐-.、 ヽ,,__|_j_,, / ノ}
,∠-‐:::::::`:::::::::`゙ヽ:::::::::\ __,.:=="、 ̄:.:.:.:.:.:.`v':.:r-、
/フ;:-:::::i::::/:::'、::ヽ::::::::::::::::::::` r、 _l_ ,、_ // ,.-''":.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.く^ヽ
/7:.. :::;:l:::;l:l::l、',ヽ、\:::::::::::::::: fヽ`Y、,.-V/ /.:.:.:.::.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.::.:.:.:.ヽ、 っ
{:.;::::::{l'l/ミl,';l ヾz;ミ、ヽ:::::::::::: `r‐_ニニ_┐ ,/.:.:.:.::.:.:.:.:,ハ;:.:.:.:.:.:.l:.:.ヽ:.:.:.:.', っ
んじゃ 、_yノ::;:',_ヒソ ` '_ヒj`7:::::i、:::l l'´:;:;:;:;:;:; | -='ィ:.:.:.:.:.:.ハ.;r;=、}:.:.:.:.:.|-、:.:.:.:.:.:.', っ
それは フ/::::::;ヾ` _'_ __ノ::::::::l }::l ! :;:;:;:;:;:; ! /.:.:.:.:ハ:{ リ弋リ l:.:.:.:.:.!ヽ}:.:.:.:.:ハ;!
ラクス様まで /''7::;イ{,ヘ Y ノ _フ_/:::::ノ'ル' ! ;:;:;:;:;: l rツ;:.:.:.:.t=、 "" ク;.:.:.:lノ∧:.:.iリ
よろしくっ! l:/ //´l;iヽ `´ _,.フ:::::/;;:/ ,. -- ‐┴―‐┴‐ -- 、7:.:.:.! _ _ /イ;/〇 ',:ハ! 自分の客だろっ!
r;7='-/-イヲ´ i{、 / __ l´| \ィ:;ヽ ノ'--、-‐ ', この格好でかよ!?
,. -'´‐'""""´ ̄ `''‐- _ 、_ ヾニ_ー-` ̄ ー―' ヽ__ノ ノ' `ニァ´ ``ー ヽ
,.'- ,._,.._,.、 ヽ  ̄ ̄ `モ_ー __ | (:::/ ヽ
, '´ , ,.'".:::::. ヽ ヽ l `ヽ-/ ``ヽ 7 / , \
l丶、 /,':::::::::::::. .:ヾ ヽ ,.r、.l / l / / ヽ! ヽ,
l :::::.`ヾ'.::::::::::::::::::......:::::ヽ / ゝ ::. ! 〈 r'oヽ , -〈 / / l Y
!.::::::::....::::::::::::::::::::::::::....::.::`''7´ ヽ ::. ! ヾ'´_Y ヽ / /Y ノ, / }
! .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...: / l :. l l V / ヽ / l / |
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>>497 こんなAAがあるわけだが
16歳の少年にうさみみが生えたら本人は素で落ち込むだろうな・・・
ビリビリの実とかどうよ
能力的にはかなり弱めのゴロゴロの実だけど
どっかで「ザフト」が作ったかもしれんVPS装甲の槍に対してビリビリの能力を使うと世界最強クラスの槍になる
こんなの妄想してしまった
何かの劣化能力ってのは激しく微妙だと思うぞ
なんかもうシンが立派になってくれて
お母さんうれしいよ
それこそ、「ザフト」が作り出したってことでいいだろう。
能力者の遺伝子から複製したが、不完全な能力しか身につかない、みたいに。
インパルスを手に入れたばかりのシンだけど
武器持ち替えの次期は何時だろうか
アラバスタとか空島辺りか?
時期も大事だが、持ち替えのエピソードもよく練らんといかんな。
ゾロの『和同一文字』並みのが欲しい。
「持ち替え」じゃなくてパワーアップとか改造だろ。
最後まで一緒に連れて行くって約束したじゃないか。
武器に悪魔の実を食わせるのって具体的な方法は明かされてないけど幾つか例はあるし
トリトリの実食わせて某なのはさんのアレっぽい羽の生えた槍になったら面白いかも
トリトリの実は二種類出てたな
「ザフト」特製モビルスーツの実モデルデスティニーをインパルスに食わせてパワーUP
ザフトの連中のことだから核とか作らんのかね
ウランが無いから駄目かな?
物理法則自体違うかもしれんが
モビルスーツとかそのまま出すのは難しいんじゃないかな・・・
古代の戦艦一つでパワーバランス崩れる可能性あるんだし
>>510 核か…。
あの世界だと放射能で海王類が突然変異してゴジラになっちまいそうだな。
シン強化案、空島以降なら貝使わせるのもありじゃない?
衝撃繋がりで衝撃貝は外せないとして絶滅種じゃない斬撃貝や熱貝なんかも譲ってもらえそうだし
514 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/25(土) 23:02:37 ID:JEuPEYcf
47=82氏に触発されて、少し短いけどプロローグを書いてみた。
>>63や
>>65とは違う独自のネタにする予定。
一体なんだったんだ、とその時シン・アスカは心の中で嘆息した。
それは何か特定の事柄に対してではなく、今まで過ごしてきた自分の人生を振り返って
みてみたときに、不本意ながらも浮かんできた感想であった。
なぜなら、彼はここ一番というときに限って、いつも無力だったからである。
自分が守らなければならなかった(当時のシンにその意識があったかは別ではあるが)
妹のマユや、自分しか守ろうとしていなかったステラ。二人のことを思い出すたび、もっ
と力があったならと思わずにはいられない。
また、ザフトの一軍人としては勿論、彼女達のためにも、今度こそは確実に倒そうと誓
ったフリーダムも、ふたを開けてみれば、フリーダム以前に元上司のアスラン・ザラによっ
て逆に自分が撃墜されてしまったのである。しかも、そのせいで機体は今にも爆発寸前、
システムも停止してしまい、脱出不可能なこの鉄の棺桶の中でその瞬間を待ち続けている
だけという、なんとも情けない有様。
一人で盛り上がって突っ込んで、結局何もできてやしない。
これじゃあまるで、
「かませ犬か道化じゃないか」
いつものシンなら、つぶやくだけでは終わらずに八つ当たりの一つもしそうなものでは
あるが、さすがにこんな状況ではいつもほど感情は高ぶらないらしい。それどころか、徐々
に心が落ち着いていく。
走馬灯にしてはやけに自主的な回想はまだ続いた。
今度浮かんできたのは仲間達のことだったが、一緒に戦った人たちのことを落ち着いて
思い出すに、自分にとって本当に『仲間』と呼べ、また呼んでくれるような人間がどれだ
けいたのだろうかという疑問も浮かんできた。アーモリーワンからずっとともに戦ってき
たレイ・ザ・バレルとルナマリア・ホークの二人には、確固たる絆のようなものを感じてはい
る。レイは親友であるし、ルナは恋人だった。
しかし、自分が彼らに対して、胸を張って仲間であるといえるほど何かをしていただろ
うか。一方的によりかかっていただけなのではなかったか。
「はあ・・・」
ため息がひとつ漏れる。
時間にして十秒と少し。そこでシンは多大な反省と悔恨を残しながらも、人生の総括を
終えた。
しかし、このときの彼には知るよしも無かった。ここで終わりではないことを。今まで
の十六年など、ほんの序章にしか思えに様な物語がいまから始まるということを。
彼の目の前には、あの『偉大なる航路』が広がっているのだ。シン・アスカの物語はよ
うやく本番を迎えるのである。
そして、それから数秒もせぬうちに、彼を乗せたままデスティニーは爆発する。それは
まるで主の新たな門出を祝うように、誇らしく宇宙に咲いたであった。
515 :
47=82:2006/11/26(日) 02:35:27 ID:???
GJです!
文章からして、始まりはグランドラインからですか……wktkしながらお待ちしています!
>>510 ザフトはプルトン関連で出張ってくれんじゃねえかなと思う
あれ、プルトンって兵器じゃなくて船とかだったっけ?
プルトンとポセイドンの内どっちかは戦艦だったと思うが
514氏GJ。
しかし、いきなりグランドラインってキツそうですね。
予備知識&仲間無しで(ワンピ世界基準で)もやしっ子のシンは生き残ることが出来るのか?
>>514殿
GJ!
えーと、コレはシンが飛んでくるのは最終回でインジャに落とされたとこ?
>>513 要するに、貝の付け換えによって様々な状況に対応出来るようにするという事か。
これじゃあ【デスティニー】というより【インパルス】だな。
GJ〜!
522 :
519:2006/11/26(日) 16:13:37 ID:???
コレ描き込んだ後、禿げしく凸をブチ殺したくなった………
>>520 燃焼砲背負って両手に空の騎士みたいな衝撃貝仕込んだ篭手
大剣の代わりに今の槍持てばデスティニーっぽいスタイルにならんかね?
今の軽量高機動ってスタイルとは別物になっちまうけど
ウソップじゃ駄目だ、あんなの糞の役にも立たん
やはりそげキング様じゃないと
天候棒を作ったあの男なら燃焼砲や、衝撃貝を仕込んだ篭手を小型軽量化してくれると信じてる。
527 :
47=82:2006/11/27(月) 04:33:04 ID:???
「と、言うわけさ」
長い、長い話が終わって。
ノジコの話を全て理解したシンが抱いた感情は、ナミという少女に対する尊敬の念であった。
もしも、自分が彼女くらいの時に同じ境遇に置かれたらどうするのだろうか? とても
ではないが、彼女のような賢い選択はできないだろう。ただ、年相応の子供らしく、泣き
喚き、後先考えずにアーロンを殺そうとしたはずだ。
自分の故郷を買い取るために、自分の親を殺した男の部下になる。それが、どれ程つら
い事だろうか。しかも、その金額は1億ベリーという高額だ。
何度、彼女は絶望しただろう。何度、彼女は逃げ出したいと思っていただろう。
10になったばかりの童が抱くような決意ではない。抱いていい種類の決意でもない。
村人達は、ナミの事情を既に知っているそうだ。運命の日に余りに可笑しいナミの様子
に、周りの大人たちがノジコを問い詰め白状させたのだという。
しかし、彼女はそのことを……事実が知られている事を、知らないのだ。彼女は村人達
が『母親を殺した人間に金で従う魔女』として、自分の事を忌み嫌っていると思い込んでいる。
どれ程つらい日々だっただろう。幼い子供にとって、それは生半可な日々ではなかった
はずだ。
当然の幸せを、個人のエゴで奪われて、非常識な苦痛を強いられる。そのあり方は、まるで――
『シン……守ってくれる?』
あの、少女のようで。
『シン……好き』
自分を好きだといってくれた、守りきれなかった儚い少女のようで。
『シン……』
『シン……!』
528 :
47=82:2006/11/27(月) 04:35:05 ID:???
「今あんたらが魚人たちに逆らったら、あの子の8年の戦いが無駄になる!」
思考に没頭していたシンが我に返ると、サンジがノジコに殴り飛ばされていた。大方、『ナ
ミさんを泣かせる奴はゆるさねえ!』とかわめいたのだろうが。
「一人で戦わなきゃ行けないあの子にとって、仲間と呼んでくれる奴らの存在が一番辛いんだ」
「…………」
確かに。
ノジコの言うとおり、この場で騒いではナミは魚人たちから疑われ、全てが無駄になっ
てしまうだろう。アーロンの元で耐え忍んできた八年間の蓄積が、一気に砕けてしまうわけだ。
訴えを続けるノジコを放置して、シンが何かを押し殺した声で言い放ったのは、ちょう
どその時だった。
「そういうのは、船長のルフィが決めることだ。俺たちが決めることじゃない」
「なっ!」
みしりと。
腕組みをしていたシンの、腕の骨が軋んでなった。余りの突き放したいいように、何か
言おうとしたノジコは、垣間見たシンの表情に息を呑む。
アスカ・シン……いや、シン・アスカの紅い瞳が、怒りを結晶化させたルビーに見えた
のだ。余りにも美しく、そして、激しい感情の流れだった。
「おいおい、どうする気だよシン。あんな事言って」
シンの余りの言い様に、怒気を撒き散らしながら帰っていくノジコの背中を見送ってか
ら、ウソップは口を開いた。サンジも、その通りだとばかりに、
「まったくだ。ナミさんのお姉さま相手にあの言いようはねえだろう」
「そうかな」
くしゃりと、シンは己の前髪を握りつぶした。怒りで我を失いそうになるのを必死で抑
えながら、それでも言葉を選んで紡いでいく。
「魚人アーロンって奴が、俺の思っているような奴なら……ナミとの契約は多分、守られ
る事は無い」
「なんだと?」
「エゴの塊みたいな奴は、自分のために何処までも他人の心情を踏みにじれるもんだ」
『彼女』を作り上げた輩が、そうであったように。
「何処までも身勝手に、な」
529 :
47=82:2006/11/27(月) 04:36:31 ID:???
「あ た り ま え だ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ ! ! ! !」
ルフィの咆哮が、大気を揺らして仲間達の耳朶を打つ。
それは、先刻シンが抱いたものと全く変わらない感情の流れ。激しい怒りの発露……!
後ろでその声を聞きながら、シンは手にした布包みを握り締める。
状況は……正直に言えば、さっぱり分からなかった。
ルフィと合流するためにココヤシ村についてみれば、村人達が大挙してアーロンパーク
へ向かうのとすれ違い。行き着いてみれば、ナミが腕から血を流しながら泣いていた。
経緯や事情など、ルフィにとってはどうでもいい。問題なのは、ナミが泣いていたとい
う事実のみ。
シン達に理解できるのは、ルフィが殴りこみをする決意を固めたのだという事実。
「行くぞ」
『応っ!』
静かに、激しい怒りを燃やす船長に応え。四人の仲間達は立ち上がった。
ココヤシ村を初めとしたアーロンの支配地域一体における、魚人に対する印象は、憎し
み一色で染まっている。同じように、魚人ドニールに対する認識は、『うざったい魚人』の
一言で完結してしまう。
余りにフレンドリーすぎるのに加えて、アーロンパーク完成当時からの構成員ではない
からだろう。加えて、魚人とトラブルを起こした時によく間に割って入ってくれるのもある。
魚人の癖に差別意識が無いという、変な奴だった。そういう事情からか、ドニールはよ
く、近隣の村を散歩したりして時間をつぶす。
パークのほうにいても、話し相手がハチぐらいのものなの上、やる事はブロームの世話
ぐらいしかない。ぶっちゃけ、暇極まりないのである。
その彼が、珍しく今日はアーロンパークで詰めていた。
アーロンパークの中央、アーロンの指定席の前で、ただ黙々と手にした『たわし』の手
入れをしている……ブロームの甲羅を磨くための、大事な小道具だ。甲羅の強度が強度な
ため、手入れを欠かすとすぐに壊れるのだ。
ブロームはアレでいて中々賢く、飼育係のドニールがすることといえば、三日に一度の
甲羅磨きと餌やりくらいのものだ。それ以外の唯一の作業……鼻歌を歌いつつ、陽気にや
るのが常なのだが、
本当に珍しいことに、今のドニールは不機嫌であった。
場所も場所である。いつもなら隅っこのほうで細々とやるものをパークのど真ん中で見
せ付けるようにやっている。
「おうドニール。随分と機嫌が悪そうじゃねえか」
530 :
47=82:2006/11/27(月) 04:37:57 ID:???
怒っていても大して迫力が無いからか。そんなドニールに、背後から気安い声がかかる。
「今さっき、最悪になったところッスよ」
「ドニール! 貴様!」
背後からかかった声に、振り向きもせずに答えるドニール。それが気に入らなかったの
か、声の主の横に着きしたがっていた魚人がいきり立つが、声の主が片手でそれを制した
「まぁ、落ち着けクロオビ」
水色の肌に、特徴的なノコギリ状の鼻。魚人海賊団の中でも、大柄な体格……この主は、
名前をアーロンといった。
ココヤシ村一体を支配する、東の海最強の魚人……
「何か、含むところでもあるのかドニール? この俺の判断に」
「ありまくりです」
一味のものならば震え上がるであろう、威圧感を含んだアーロンの問い。しかし、ドニ
ールはためらうことなく言い返す。その様子を見て、クロオビは忌々しげに舌打ちした。
別にこいつが凄いのではなく、弱すぎて声に潜む威圧感にすら気付けていないというの
が、魚人一同の見解だ。それでもなお、アーロンと対等だといわんばかりのドニールの態
度が、クロオビには腹立たしかった。
(化け物の寄生虫がっ!)
化け物呼ばわりされるとブロームが切れるという前情報がなければ、本気でそう口にし
ていただろう。
アーロン一味の中で、ドニールを最も忌み嫌っているのが、クロオビであった。ある意
味では、人間に対するそれよりも、嫌悪感は深いかもしれない。己の体を鍛え、高める空
手家であるクロオビにとって、自分以外の力に頼りきるドニールの生き方は到底許容でき
るものではなかい。
そんなクロオビの内心に気付かないのか、ドニールはなおも言い募る。
「途中からしか聞いてませんでしたけど、要するにナミの溜め込んだ金を、海軍使って横
取りしたんスよね」
「ああそうだ! あいつには、アーロン帝国のためにもっと働いてもらわねえとなあ」
「やり方があざとすぎませんかね? こんな扱いじゃあ、ナミやココヤシ村の連中に喧嘩
の特売してるようなもんでしょ」
「はっ! 下等な人間に何が出来る」
ドニールへの反感からクロオビが言い返すが、ドニールはそれを綺麗にシカトして、
「やるんだったら、別の条件にすりゃあよかったんですよ」
「別の条件?」
「ええ。ココヤシ村じゃあなくて、よその村も解放するって言う交換条件です」
「ほぅ……?」
531 :
47=82:2006/11/27(月) 04:39:04 ID:???
ドニールの言葉に検討する価値を見つけたらしく、アーロンの双眸が細まり、瞳に興味
の光が宿る。ドニールはそんなアーロンの反応に関係なく、言葉を続けていった。
「どーせ、ナミが溜めるより俺たちが島支配するほうが早いんですから……
ひとつの集落を一億とすれば何とかなるっしょ」
「確かにいい案ではあるが、使えねえな。ナミの奴が、よその村の為に命をかける理由がねえ」
「ナミはそこまで冷酷になれる女じゃありませんよ……まあ、どの道手遅れですがね」
事態がこうなったからには、ナミに今まで通り働いてもらうというわけにも行かないだ
ろう。最悪、村人達と示し合わせて、ナミ一人だけでも逃げるかもしれない。
最悪の選択肢だろう。選べば、村人全員皆殺しという、ナミがそれを望むはずも無い選
択肢だが、村人達から言い出す可能性は捨てきれないのだ。
おかげで村でいたたまれなくなり、気持ちのいい散歩を中断する羽目になった。
生意気な言いようだと、クロオビは更に不機嫌になった。分からないのは、この寄生虫
をアーロンが必要以上に気に入っており、こういう無礼な言動を許容している事である。
一度など、ゴサの町の人間の助命嘆願をしてきて、なんとそれが通ってしまった。これ
によって、本当ならば生き残りを一人も出さない予定が、かなりの数の生き残りが発生し
てしまったのだ。
そこから派生した結果が、先程の海軍の救出騒動であり、さらにクロオビが踏みにじら
れる原因にもつながる……ここまでくると逆恨み臭いが。
先程の一軒……賞金稼ぎらしい二人組みも、ドニールの口利きで生かして返したのだ。
「シャハハハハハハッ! 深く考えすぎだドニール! 手前とブロームがいりゃあアーロ
ンパークはさらに磐石だよ!」
「へいへい。そいつぁどーも」
(寄生虫が!)
再び内心で吐き捨てて。
クロオビは、その場を動こうとしないドニールの襟首をつまみあげようとして……
ど ご ん っ !
扉の咆哮から響いた轟音に、動きを止めた。
『!?』
「なんだっ!?」
532 :
47=82:2006/11/27(月) 04:41:13 ID:???
余りの轟音に、魚人海賊団一同思わず音源を注視する。
そこは、ある意味でナミ専用に作られたといっても過言ではない、アーロンパークの陸
路側の入り口。魚人たちは常に海側から出入りしているので、この扉を開けるのは人間だ
けである。
とち狂った賞金稼ぎや、反乱を起こした人間達……ナミ以外でこの扉をくぐるものは、
ほぼ例外なくアーロン一味の敵であった。先程も、殺す価値も無いような弱すぎる人間が
殴りこんできた時に、この扉をくぐってきたものだ。
しかし。
今までの、どんな場合においても、こんな轟音が響き渡った事はなかった。石製の扉を、
殴り割ろうとしているかのような音など……!
加えて……
(――違う!?)
小型魚の魚人は、魚人の中ではとりわけ非力である。
それゆえに、力以外の五感……得に、気配を感じる感覚発達しているのだ。敵意から身
を守るため、逃げ回るための力。
ドニールは小型魚人から見てもずば抜けた感覚を誇っていた。クロオビなどは狡いだけ
だと嘲笑うこの感覚が今最大限に警鐘を鳴らしている。
今までその扉から踏み入ってきたものたちは、様々な虚勢を張った。二つ名を叫ぶもの
もいた、叫びながら突撃するものもした……彼らの気配に共通するのは、気配から滲み出
る恐怖、畏怖、怯えの感情だ。それらが交じり合って、えもいえぬ哀れな気配を放ってい
たものだ。
東の海最悪の男、アーロンの居城を攻めるのだ、恐怖が無いはずが無い。
なのに、
(こ、この気配―― 恐 怖 が 無 い ! ? )
全くアーロンを恐れないという、闖入者達の内心の証明。
その正体が無謀なのか、勇気なのか、ドニールに理解できるはずもなく。
533 :
47=82:2006/11/27(月) 04:42:42 ID:???
ど ご ぉ ん っ ! ! ! !
ドニールが違和感の正体に気付いた刹那、再度の轟音とともに、扉は粉々に砕け散った!
粉々にされ、ぶちまけられた門は、もはや門と呼べるものではない、ただの破片だった。
破片とその破壊による衝撃が巻き起こした土煙が立ち込めて、晴れた後には……ドニー
ルが目をむく光景があった。
「アーロンってのは、どいつだ?」
怒りに燃える麦わらの男と、同じ規模の憤怒に身をやつす赤服の男。二人の男が、手に
武器らしきものを持ったココヤシ村の住民達を引き連れて、佇んでいた。
534 :
47=82:2006/11/27(月) 04:47:04 ID:???
本日は、少々短いですが切りのいいところで以上です。
乙っ!
G(神)・J(ジョブ)ッ!(どんっ!
アーロン編は初期のワンピで名エピソードの一つ。
それにシンが入る事で、さらに熱くなってます。
憤怒のダブル主人公の見開きエンドが浮かびましたわ。
>>536 確かに。
ワンピって悪党はお約束的な奴ばっかだけど、「燃え」やら「泣かせ」シーンは突き抜けたのが多いんだよな。
538 :
514:2006/11/27(月) 23:59:10 ID:amztIoAH
GJ!
初期最大の山場なだけあって、シンのいい具合に燃え上がっております。
カッコいいぜ、シンちゃん!!
>>537 逆に敵がお約束ゆえに、そういったシーンが映えるのでは。
では自分も47=82氏に続き、早速投下したいと思います。
539 :
通常の名無しさんの3倍:2006/11/28(火) 00:00:15 ID:Bi/2uQb9
※謝罪と訂正
前回『プロローグ』の中で、偉大なる航路という言葉を用いましたが、これはあくま
でワンピース世界全体を比喩するという意図で用いた表現で、シンが最初からグラン
ドラインにいるということではありません。
誤解を招くような表現をしてしまい、すみませんでした。
以下からシンの冒険が始まりますので、どうぞ温かく見守ってやってください。
イースト・ブルーに浮かぶある島にフーシャ村という港町がある。特に有名なもの
があるわけでもなく、そのおかげで海賊もめったにやってこない、大海賊時代の只
中にあってなかなか平穏な田舎町である。
その村の港の近くにある酒場が、最近、人々の話題になっていた。元々評判は良
く夕暮れからは相応の賑わいを見せるこの店にある異変が起こったのだ。
酒場という形態をとる以上、食事をとるにしてもお酒とセットになるため、どう
しても客層は男に限られてくることになるのだが、最近は昼からの客、しかも女性
客が一気に増え始めたのだ。勿論、それにはちゃんとした理由がある。
現在の時刻は午前11時。そろそろ最初のお客さんがやってこようかという時間で
、店主のマキノは店の中で開店の準備を始めていた。
するとそこに、二人の少年がやってきた。
「おっす、マキノ」
元気な声で挨拶をしたのは麦藁帽子がトレードマークの海賊王を目指す少年、モン
キー・D・ルフィ。
そしてもう一人は、
「・・・こんにちは」
黒髪赤目の美少年。そう、皆さんご存知、我らがシン・アスカその人である。こち
らはルフィに比べると明らかに元気が無い。
「こんにちは、二人とも」
挨拶を返しながら、二人の様子の差にマキノは苦笑した。席に座った二人に水を
差し出すと、ルフィはそれをゴクゴクと一気に飲み干したが、シンはテーブルにへ
ばりついたままわずかに目を向けるだけである。
「ねえ、シン君、疲れてるならお昼は休んでていいのよ?」
「いえ・・・ご心配なく・・・・・・」
「なさけないぞ、おまえ。そんなんで海に出られと思ってんのかあ?」
「そっちが異常なんだよ・・・・・・バカ野郎・・・・・・」
体の中に残ったなけなしの体力と気力をかき集めて水を飲み干すと、シンはゆっ
くりと立ち上がりフラフラしながら店の奥へと入っていった。
540 :
514:2006/11/28(火) 00:01:08 ID:amztIoAH
仮にもザフトのエースだった男が情けない、とかつてのシンを知るものなら思う
かもしれない。実際、彼自身もそう思って肩を落とすことが多々ある。しかし、彼
が過ごしている一日のスケジュールを見れば誰もが納得するだろう。
まずは太陽が昇るとともにやってくるルフィに叩き起こされ、一緒に朝食を食べ
終わると、地獄の訓練が始まる。ルフィ曰く、海賊になるために必要な訓練だそう
だが、シンからすれば海賊どころか怪物になってしまうようなハードワークである。
それを早朝から昼前までの朝錬と、昼過ぎから夕食の直前までの昼錬、合わせて一
日二回行う。
ルフィはこれで終わりだが、シンの場合はさらに、お昼時にはマキノの酒場でお
手伝い(最近増えた女性客はもちろん皆シンがお目当てである)、夜は楽器の練習
と海で必要な知識の習得に費やしている。これらがすべて終わるのが午後8時から
9時までであり、10時には床に就き、また翌日、朝日とともに起こされて、を繰
り返しているのだ。
おそらくザフトの訓練生時代はおろか、ミネルバに乗って過ごした戦時中をもは
るかに凌ぐ過密スケジュールであろう。彼が赤服ではなく普通のコーディネイター
だったら一日でダウンしている。
では、なぜこんなきついことをシンは毎日やっているのかというと、ちゃんとし
た理由がある。本来なら本人に回想でもやってもらいたいところではあるが、今の
彼にはそんな余裕も無さそうなので、こちらでさっさと説明してしまうとこういう
ことになる。
541 :
514:2006/11/28(火) 00:02:59 ID:amztIoAH
事の始めは今から約一ヶ月前、その日、朝の訓練を終えたルフィは、なんとなく
寄った海岸でもうすぐ自分が旅に出ることになる大海原を待ち切れないという風に
眺めていた。だが見慣れているはずのその景色の中に、おかしな物を発見した。
海と空の青、砂浜と雲の白に埋め尽くされる筈の視界の中に、赤い何かが映って
いたのだ。
彼にとって赤とは理想の海賊『赤髪のシャンクス』を連想させる色。つられるよ
うに近づいてみれば、それは見たこともないような赤い服を着た男、すなわちシン
が倒れていたのである。
見た目の年は自分と同じくらいだがあきらかにあやしい服装の怪しい少年を、そ
んなことはお構いなしに、ルフィはなぜか病院ではなくマキノのところにその男を
担ぎこんだのだった。おそらく、見たところ目立った怪我もないことから、きっと
腹が減って気を失っているのだろう、なら飯屋に連れて行けばいい、とでも考えた
に違いない。
マキノとしては、いきなり行き倒れをつれてこられても困惑するばかりだが、店
の奥に彼女が寝泊りしている部屋があるので、ひとまずそこに寝かせておくことに
した。勿論あまり長く目を覚まさなかったら病院に連れて行くところだが、幸いシ
ンはすぐに目を覚ました。
大変なのはここからである。
シンにしてみれば、自分は宇宙で爆死した筈。それが気づけば見知らぬ部屋で寝
かされていたのだ。ここはどこだお前ら誰だ、天国か地獄か天使か悪魔かと混乱し
て騒ぐシンをルフィが実力行使で黙らせたり、そのせいで本当に病院行きになった
りと、いろいろ騒ぎが起こったのだが、それ自体はあまり本筋とは関係ないので割
愛させていただく。
重要なのは、この世界においてシンとファーストコンタクトをとったのがモンキ
ー・D・ルフィであるということである。
それから数日、行き倒れていてこととルフィにぼこられたということで、医師の
判断では入院させられていたシンは、その間に自分がどういう状況に置かれている
かを把握し、すんなりとその事実を受け入れていた。やはり、一度死んだというこ
とが大きかったらしい。彼に残ったのはなぜか着ていたザフトレットの赤服のみ。
マユの携帯すらなかったが、それが余計にこの世界で生きていかなければという思
いを喚起させた。
退院した後は、身の振り方を決めるまでと言うことで、多少なりとも恩のあるマ
キノの手伝いをしようと考え、彼女も男手が増えることを歓迎した。これが酒場の
看板娘ならぬ看板男子シン・アスカが生まれたいきさつである。
542 :
514:2006/11/28(火) 00:04:37 ID:amztIoAH
では、未来の海賊王の仲間シン・アスカはどのように生まれたのか。
シン・アスカと言う人間が、良く言えば純粋で直情的、悪く言えばガキっぽいと
いうことは周知の事実だが、簡単に言うと、そんな性格のゆえルフィに感化されて
しまったのである。
先に述べたようなこともあり、最初こそ二人の仲は険悪だったが、顔をあわせる
うちに言葉を交わすようになり、一言二言が文になり、会話のキャッチボールが始
まる頃にはすっかり意気投合していた。
その頃にはこちらの世界の情勢をほとんど飲み込んでいたシンにとって、ルフィ
の海賊王になるという夢とそれを叶えるための覚悟はあまりにも衝撃的だった。自
分は死の間際、己の不甲斐なさに悔恨さえ感じたというのに・・・。この思いが憧れ
や憧憬に変わるのにそう時間はかからなかった。
今度こそ守れるものを守れるように、心から信頼しあえる仲間といられるように。
ただ、仲間にして欲しいと言った後、じゃあお前は音楽家な、と返されたのはさす
がに予想外だったが。
この日から、シンの地獄のように過酷で今までにないくらい充実した日々が始まっ
た。
そして、さらに時は流れてシンがこちらにきてから一年がたった。
543 :
514:2006/11/28(火) 00:07:34 ID:N+LVQdGt
「やー、今日は船出日和だなー。なあ、シン」
「ろくに計画も立てずにこんな小船で海に出ることを船出と言っていいならな、ルフィ」
「そう言うなって。過ぎたモンはしかたがねえだろ。何とかなるって」
「ホンットお前ってそれしか言わないよな」
ついに二人は船出の日を迎えたのである。ルフィはもちろん、一年でしっかりフーシャ
村に馴染んだシンも村人達の声援を受け海へと旅立った。しかし、それが万全の船出かと
言うと、まあ、二人の会話を聞いていただければ分かるだろう。
「そもそもお前は計画を立てなさすぎなんだよ。こんなんじゃ、イーストーブルーを抜け
られるかも分かったもんじゃない」
「お、それは心外だぞ、お前。俺だって計画くらいあるさ」
「へえ、じゃあ言ってみろよ」
「まずはなあ・・・」
ザバアアン!!
「グルルルル・・・」
ルフィが喋り始めたのをさえぎるように、人間なんて簡単に飲み込んでしまえそうなほ
ど巨大な魚が顔を出した。いかにも肉食ですといった顔をしている。普通なら出会ったこ
とが即死につながるような怪物であろう。
しかし、
「出たか近海の主!」
「知ってる相手か」
「ああ、こいつには借りがあるんだ。手は出さなくていいぞ」
「了解、キャプテン」
二人の会話に緊迫感は一切ない。シンは昔だったらこれも十分命の危機だったろうな、
などと考えながら、ルフィの相手をするはめになった魚に哀れみさえ感じていた。
事実、次の瞬間、
「ゴムゴムの銃!!」
ルフィの必殺技が見事に決まり、一撃で主は海底へと沈んでいった。
「思い知ったか、魚め」
台詞も決まっている。
544 :
514:2006/11/28(火) 00:08:27 ID:N+LVQdGt
「おい、そんなことよりさっきの続きを話せよ」
「ん? さっきの続き?」
「だから、お前の計画だよっ」
「ああ、その話か。まずは仲間集めだ。俺とお前と、そうだなあ10人は欲しいなあ!
そして海賊旗だ!!」
「ハア・・・そんなんだろうと思ったよ」
ため息をつくシン。ルフィが言っているのはせいぜいが希望であって、計画といえるよ
うなものではない。彼らの前途は多難なようだ。ここはちゃんと先の見通しを気にするよ
うになったシンの成長だけでも喜ぶことにしよう。
「海賊王に俺はなる!!」
一人盛り上がっているルフィにもう一度ため息をつく。しかし、その夢にのっかている
のは自分も同じ。元の世界では感じたこともないような興奮が湧き上がってくるのを感じ
つつ、シンはルフィと同じ方向を見つめた。先に待つは偉大なる航路『グランドライン』、
ひとつなぎの大秘宝『ワンピース』。
今まさに大冒険の火蓋がきって下ろされたのである。
とりあえずGJ。
シンの役割とか戦闘法とかが未だ解らんけど今後に期待。
でも改めてワンピ読み返すと、シンの相手役を誰にするか想像も付かないな。
オリキャラや種キャラを出すしかないだろうか。
あ、相手役ってのは各エピソードにおける戦う相手の事ね。
どうも。まとめサイトの方、誤字などを修正していきたいと思ってますので、よろしく。
ぐっじょぶ!
早く続きが見たいねW
ぉー、職人さん増えてきたなぁ
それぞれ違うエピソードっぽいからwktkしてますよ
47=82氏はオリジナル要素大盛りのアーロンパーク編が脂に乗ってるし
みんなガンバれ!!
投下GJ。
たしかに能力有りとは言え、あそこまで強くなるにはルフィも相当鍛え込んでいた様ですからね。
着いていけただけでも御の字でしょう。
551 :
121:2006/11/28(火) 14:56:11 ID:???
ここで空気を読まず流れに乗って引き続き俺がいきますよ
前回の投下後ちょっと多忙でして忘れ去られてたと思うけど行きます
ONE PIECE DESTINY第二話「大海賊時代へようこそ」
「へいらっしゃい!安いよ安いよぉ〜!」
「あら奥さんお久しぶり、このあいだはどうも」
「はいはいちょっとごめんよー、馬車を通してくれー」
「よーし今日はどこで飯食うか〜」
「ママーどこー!?」
(…………平和だなぁ)
がやがやと活気のある喧騒をすり抜けながら、シンは町を見回っていた。
それなりに栄えている町らしく、町には人が溢れそれぞれの日々に追われているように忙しなく自分
の脇を風景と一緒に流れて行く。その空気はどことなくテレビや教科書で見たような昔の地中海の町
並みを思わせるのだが、はて、自分はいったいどこにいるのだろうと実感の沸かない疑問を浮かべなが
らのどかな町の中、充てもなくシンは歩いていた。
自分の居場所を記憶に任せて仮定するなら、ドイツのバルト海近郊の港町ハンブルグが思い当た
るのだが…暖かな風、白い石造りの建築、冬とは思えない日差し。どう考えても時間軸さえ合わない
場所に自分はいるのだ。とてもじゃないが思考が追いつかない。
例えば、それはなにかの三文小説のように自分が異世界に飛んできてしまったかのような感覚である。
『あんたがステラを殺したあああああ!!!』
『ここからいなくなれええええええ!!!』
『くっ…こんなところで……俺はっ!!』
『行くよ…行こう……戦争なんてない、優しい世界…ステラ…キミとだったら……』
ぼんやりと、思い出す
あれは…現実だったのだろうか
さっき目が覚める瞬間まで繰り広げていた死闘
虚しい勝利、逃れられない死……
いったいどこまでが現実で…どこからが……、もしや全て夢だったんじゃないだろうか
今の自分には、どんな妄言ですら否定するだけの自信がまるでない
「ステラ……」
ぽつりと声に出すと、帰ってくるはずのない返事の変わりに胸の奥の傷跡がジワリと痛んだ気がした。
馬鹿なことを言うな、あの喪失も、この痛みも、全て現実だ。あの雪の冷たさを、俺は今でも鮮明
に思い出せる。と、シンは自分の体をかばうように両肩を握り締めた。
「ぁ…」
そして今更のように、自分が身に纏っている赤い服の肩に刺繍されているものに気づく。
『ZAFT』のマーク……。そうだ、自分は間違いなくザフト軍所属、戦艦ミネルバのMSパイロットの
シン・アスカなのだ。
ならやるべきことは一つだろう。
「ミネルバに戻らないとなぁ」
自分の口から出ておきながらなんてマヌケな響きなんだろうと思う。
しかし、軽く街を見回ってみたものの軍事拠点らしき所も見当たらず、連合のMSが出入りしてい
るような風景も見られないのだ。それはザフト軍に籍を置いている自分には好都合ではあるのだが、
逆に言うならばザフト経由でミネルバに連絡を取る手段すらないということになる。
「いやでも、連絡とれたとしてもなんて言えばいいんだろうなぁ…」
『記憶喪失して気づいたら知らない街にいた』
なんて言おうものなら、またあのアスランがしかめっ面で怒鳴り散らすのがすぐ目に浮かぶ。
「ていってもほんとにドコかわからないし、エマージェンシーでも出した方が早かったりしてなぁ。ははは」
なんて冗談紛れでそんな事を思う
『記憶喪失で知らない街にいて、しょうがないから救難信号を出した』
あぁダメだ。絶対殴られる。
「そういえばステラと初めて会ったときも救難信号出したんだよなぁ。 あんときは呆れられてたけど、こん
なんじゃ顔真っ赤にして怒るだろうなぁ。いっつもそんなカンジじゃそのうちハゲるんじゃないか?」
そういえばいつも頭を気にしてる様だったし、ヘルメットを嫌がってるそぶりもしてるし…。
まぁ上官ってのはストレスが溜まるものなんだろう。ともあれ本気で救難信号を出すのを考慮した方
がいいかもしれない。事情はどうあれ今はミネルバに戻ることが一番重要なことなのだから。
折るかどうかは別として、とりあえずは最終手段がきちんと残っているかどうか確認するために、自分の
首に下がっているドッグタグ…認識票を取り出そうと胸元を探った。
「なっ!?」
しかし、その手は首に下がっていた物に触れた瞬間凍りついた。
「そんな…、どう…して……?」
そこにあったのは硬質な金属のプレートではなく、なにか小さな…欠けらの様な物。
恐る恐るそれを指でつまんで、目をやるとそこにあったのは。
淡いピンク色の、貝殻だった
「これステラの…なんで…ウソだろ…?」
あの暗い水の底へ、彼女と共に沈んでいった首飾りの貝殻。
どうしてこんなものが自分の手元に残っているんだ?
意味がわからない。本当に、自分が今どこに立っているかさえもわからなくなる
ぐらりと、平衡感覚を保っていられずに視界が揺らいでいくのがわかった。
「は…はっ……どうかしてる…ほんとに夢じゃないのかこれ……」
『……シ…ン……………』
「くっ!?」
キィィィィ…ンン
やめろ、やめてくれ
彼女はもうどこにもいないんだ
世界中どこを探したってもういないんだ!!
だからこんなものが残ってるわけがなくて…だからこれは…
『……シ……ン……………』
「う…あぁ……」
耳鳴りが酷い、なにも聞こえない
容易に鎌首をもたげた忘れようのない記憶が自分の心を包む
あぁ、これは雪だ…そう、冷たく、白い雪の記憶
何もかもを白く染めて、やがて深く沈んでいくんだ
何も見えない、何も聞こえない
通り過ぎてゆく人たちも、街を包む喧騒も、何もかもが白く染まって行く
何も…何も……何も聞こえないはずなのに、どうしてこんなにもあの声が聞こえるんだ!!
『…ぁぁ………シ…ぅぁぁぁ…ン………ん……』
(違う…違う……こんなのは…)
『うぁぁぁ…ん……うわぁぁ…ああん…』
泣いている…?誰が…?
ステラ…?どうして泣いてるんだ…どうして…
「うわああああん!!」
「あぁっもーうーるさいガキだなぁ!!!」
(ハッ)
そこで霞みかけた意識がふっと舞い戻った。
ゲシッ!
「うっ、えっぐ、ごめんな…さ……」
「チチチ、おいおいおチビちゃん、ぶつかってきたのはお前だろぉ?ほらアイスが軍服にべっとりつい
ちゃってまぁ〜、どーするんだよこらぁ!!」
耳鳴りが止んだと同時に飛び込んできたのは耳をつんざく子供の泣き声だった。
見慣れない軍服に身を纏った男がなにやら怒鳴り散らして子供を足蹴にしている。
周囲は静まり返り、誰もがおびえているかのように男の暴行を止めるものは誰一人としていなかった。
「うぇ…ママぁぁああ!!」
「あぁーもう泣くんじゃないって言ってんだろうが!!」
「な に や っ て ん だ ア ン タ は あ あ あ あ あ!!!」
バキィッ!!
ただ一人、赤い瞳を怒りで紅に燃やした男を除いて。
ぶつかってきた?アイスが付いた?そんなことで暴力を振るうなんて軍人見たこともない!止め
ようとしない周りの人間もどういう神経してるんだ!!と、彼の怒りが沸点に達するのは一瞬の事
だった。殴りつけた拳を更に固く握り締めシンは男を睨みつける。
「チチチチ…なにをする小僧!!」
「なにかしてんのはアンタだろ!!いい年こいた大人がこんな小さい子に…それでも軍人か!!」
「ほほう、随分なまいきな口を利くじゃなあいか。この私が第16支部大佐であるとしらんのかね?」
「知るかよそんなこと!変なヒゲ生やしやがって!!」
「ぐっ、貴様ぁ!ドコの所属だ!!」
「見ればわかるだろ、ザフトだよ!!」
言ってから、しまったとシンは思った。
いくら軍施設がないような街でも、目の前にいるこのネズミのような被り物とヒゲをした男は軍人であ
ると名乗ったのだ。連合軍の権力化ではなくても、ここで自分がザフトと名乗るのはまずかっただろう。
だがシンの怒りがそんなコトを頭の隅に追いやる。地球の軍人ってのはドコも軍の権威を振るって好き
勝手をするこんなヤツしかいないのかと。
だが、男の口から次いで出たのはそんな激情を一瞬で吹き飛ばすものだった。
「ザフト?…チチチ、聞かん名前だなぁ……さては海賊か貴様ぁ」
「なっ!?」
ザフトを…知らない!?
「なら海軍として本分をまっとうしなければいかんなこれは、チチチ。おいお前ら!手出すんじゃないぞ!」
「おいちょっと待てよ!なんだよ海賊ってアンタいつの時代の人間だっておわっ!!」
ビュンッ
混乱しているシンを他所に男はサーベルを抜いて斬りかかってくる。
切っ先がきわどく頭をかすったが、アカデミー時代ですっかり体に染み付いた動きでシンは咄嗟にナイフ
を抜き、再び剣が振り下ろされた瞬間を狙って男の手を捻り上げた。
ギリッ
「あででででで!!!」
「やめてよね…じゃなくて!!なんなんだよアンタはいったい!!」
「ママー!!」
「あぁっ、はやくいらっしゃい!」
「ごめんなさい…ごめんなさいママ…」
男の注意がシンに逸れた隙に、どうやらあの子供は理不尽な暴力から逃げ出せたらしい。
母親と共にシンにお礼を言うこともなく逃げ出すように野次馬の輪をくぐり視界から見えなくなった。まぁ
無理もないだろうとシンはため息を付くが、さてこの状況はどうしたものだろう。
とりあえずこの男の腕を極めて手からサーベルは奪ったものの、よく見るといかにも「海兵です」とでも言
うようにセーラーを着込んだガタイのいい男達が集まってきているような気がする。
「きっさまぁ、何をするか!」
「先に抜いたのはアンタだろ」
「いだだだだだだ!!…よぉし、名前を聞いておいてやろうじゃないか」
「シン・アスカだよ!そ・れ・が・ど・う・し・た!!」
「あががが!だから痛いと…おいお前らぁ!いつまで見てるんだ!!早く助けろ!!」
「へ?」
チャキッ
「ぉ…ぉぃ?うそだろおおおお!!!!」
ドンッドンッドゥンッ!!
「ほっ、本気で撃ちやがった!軍人がそんな簡単に撃つなよ!!」
「バッカもおん!!私ごと撃つつもりか貴様らはぁ!!」
「は、申し訳ありませんネズミ大佐。密着していたのでそのまま撃った方がてっとりばやいかと」
ど…どうかしてる。本当にこいつらどうかしてる。
咄嗟に男を突き飛ばしてその場から飛び離れたから当たらなかったものの、上官をなんの躊躇もなく
撃とうとするなんて頭おかしいのかこいつらは!…いやまぁ、こんな小悪党を絵に描いたようなのが上官
なら隙あらば撃ちたくなるのもわかるけど…。そりゃまだアスランの方がマシだけど。絶対マシだけど!!
「ほれ逃げるぞ!とっとと捕まえんか!!」
「げ」
呆れ返っていたシンはソコではっとした。よく考えたら今の男を離して右手にナイフ、左手に奪ったサー
ベルを構えて固まったままだったのだ。こんなの「自分は犯罪者です捕まえてください」と言ってるようなも
のじゃないか。あぁ、だけど聞いてくれないか。これには海よりも深くてなんかもう色々投げ出したい事情
とか偶然とか話せばきっとわかってくれる理由があるんだ。だからまず話そう、人間には言葉っていう素晴
らしいものがあるんだ。だから…だから…!!
と、一人パニくっているシンを他所に海兵達がにじり寄ってくる。
「えーっとほら、その…なんていうか……アレだよ」
な ら 逃 げ る し か な い じ ゃ な い か ! !
「追えーーーーー!!!!」
「くっそおおお!!なんでこんなことになってるんだよおおお!!!」
一目散に人ごみをすり抜けて市場を闇雲に逃げ回る。
土地勘もクソもなく、ただ視界に白い海兵の制服が見えない方向へシンは走り続けていった。
「チチチ、どこの馬の骨ともわからんヤツが一人前に暴れてくれよって。まったくココヤシ村の帰りに羽を伸
ばしに行こうという時に仕事を増やされちゃたまったもんじゃないって…うわあああああ!?」
「大佐、どうなされました?やはりさっきの銃弾がちゃんと当たっていたでありますか?」
「ちゃんとってなんだお前おい!?いやそうじゃない!!俺のサーベルがああああ!!」
「は?」
「准将殿から頂いたサーベルがないんだ!!ハッ、さっきの小僧か!!!」
「はぁ…そういえば大佐が簡単に捕まって奪われたでありますね」
「なんてこったーーー!!俺が大佐にまでなれたのは今まであの若造にゴマすってすってすり尽くしたお陰
だっていうのに、ええい!特注品だぞあれは!?信頼の証に授かったものだっていうのに無くしたなんて
ことになったら俺の本部行きはどうなるって言うんだ!ああ!?」
「はぁ…」
「なんっとしてもあの小僧を捕まえろ!!そしてサーベルを取り戻せ!!俺の栄転のためだ!!!」
上官として、いや軍人として、いやいや人間としてここまで露骨に小悪党を貫けるこの男を上官に持っ
てしまった海兵は呆れ返って物も言えなかった。やはりさっき本当に当てておけばよかったのかもしれない
と心の中でつぶやくが、第16支部のネズミ大佐の船に派遣されたのが運の尽きと何度も繰り返した諦め
を心に決めて、先ほど逃げていった少年を自分も追おうと駆け出した。
ド カ ー ン ! !
瞬間、どこからともなく轟音が響き渡る。
「なななんだ一体!?」
『海賊だああああああ!!!』
「海賊だあ!?このネズミ大佐率いる第16支部の船が港にいるとわかって攻めてくるのはドコのバカだ!?
…さてはさっきのシン・アスカとかいう小僧の一味か!!!」
「大佐、出撃でありますか?」
「あぁ!さっさと走っていったバカ共を集めろ!!ヤツはきっとあの船だ!!」
「なんだいきなり!?今のスゴイ音は…」
『海賊だああああああああ!!!』
「へ?海賊う!?」
市街地を逃げ回っていたシンは、突然の砲撃音と共に港の方角から逃げてくる人の波に圧倒されな
がら、もう何度目かわからないパニックに陥っていた。さっきまで自分を追っていた海兵達の姿もなく、人
々は皆「海賊だああ!!逃げろおおおお!!」と叫びながら避難していく。
「よくわからないけど…今がチャンスか」
逃げるなら今のうち、と人ごみに紛れ街の外へと逃げて行くことにした。
「ひゃはははは!でっかい街は久しぶりだ!!野郎ども!奪え奪ええ!!」
「チチチ、暴れるしか脳のない海賊が。迎え撃てーー!!!」
お お お お お お お お お ! ! !
「な…なんなんだコレ……」
住民に紛れて街の外れの丘まで避難していったシンは、遠めに信じられないものを見ていた。
時代劇に出てくるような帆船、レトロな大砲、シンプルだが印象強いドクロマーク。そして船から次々
と降りてきて暴れだすそれらはまさに「海賊」としか言いようのないものだった。映画なんかでしか見たこと
のない風景を目の前に、ただ呆然とするしかなかった…。
「いったい俺…どこに来ちゃったんだろうな…」
チャリン、と首にぶら下がっている貝殻に触れた。
貝殻はただ沈黙を守り何も返してこなかったが、なんとなくステラがここにいるような気がして呟く。
「俺…これからどうすりゃいんだろ……ステラ」
「大佐、制圧完了しました」
「チチチ、そうか。それでさっきの小僧はみつかったか?」
「いいえ、それらしき人物は海賊の中には見当たりませんが」
「なぁにぃ!?バカ言うな、あんな真っ赤な服きて真っ赤な目のヤツだぞ!見つからないワケがあるか!」
「はぁ…ですが大佐……。あの少年は海賊と無関係だったのでは?」
……………
「なーんてこったーーー!!!あぁどうすりゃいいんだ!!こうなりゃ指名手配だそれしかない!!!
賞金首だな、うむ、海軍将校に暴行を働き盗みを働いた。シン・アスカ…そうだなぁ…賞金は100…い
や…200…んんー、なんとしても捕まえなければなぁ〜。よし!!」
3 0 0 万 ベ リ ー だ ! !
こうして見事賞金首になったシン・アスカ
本人はそんなことは露知らず、これからの身の振りに頭を悩ませていたのだった
「どうにかしてミネルバに戻らないとなぁ……とりあえずもっと大きな街に行かないとなぁ…全然どこか分からな
いし。情報収集しないと。あぁだけど街ったってどうすりゃいいんだろ…歩くにしろ野宿にしろ金が…」
ぐううぅぅぅ
「よし、まずはこの剣質屋にでも売って飯食うか」
つづく。
「やめてよね」でモニターにコーラ噴いたw
「にげるしかないじゃないか!」といい転移のさいに他の種持ちの遺伝子でも混ざったのかね?ww
ちょwwwネズミよりによってお前かよwテラナツカシスwwwww
そりゃ撃つよな、うん撃つよ
このバタバタ感はワンピだわw
つーかホントこのスレ職人充実してるな
「やめてよね」にも「にげるしかないじゃないか!」にもワラタが
>「よし、まずはこの剣質屋にでも売って飯食うか」
さり気なくしたたかなシンがイイ(・∀・)!!
現段階で三人か
このスレのアイドルことドニールの活躍を描いてる47=82氏と
フリーダム破壊→ワンピ世界のまだルフィ達と出会う前を描いてる121氏と
メサイア攻防戦の後飛ばされて、最初からルフィとツートップ主人公を描いて行く514氏か
こ れ が 通 常 の 3 倍 っ て ヤ ツ だ な ! !
それよりも爆死>転移フラグがこのスレの常識になりつつある件について
蘇っちゃいけないヤツらも出てきたらどうしよう
ツンデレの実
>563
いや、他クロスーバーSSとかに準じちゃったらMSごと来ることになるんだぞ?
ぶっちゃけクロスオーバーなんかスパロボみたいに不思議な力で飛んでくるのがほとんどだし
どっちかっていうと飛んできてからの内容が重要なんだから転移フラグなんてあって無いようなもんだろ?
だからこれから先種からどんなキャラが出ようとも面白けりゃ俺はいいよ
べ、別に(ジャンプコミックス×種)+そこはかとない劣情÷ほとばしる情熱=変態仮面とか期待してるワケじゃないんだからねっ!
>>565 白&黒「「それは私のおいなりさんだ」」
こうですか、わかりません!!
このスレの主人公のシンはともかくとしてだ
他の種キャラも死んだらワンピ界に来るって言ってるのは47=82氏だけじゃないのか?
しかもそれもあくまで「可能性」であるワケだし、結局は書き手のチョイス次第ってことだろ?
個人的には種本編で不憫だったヤツらにガンバってもらいたいもんだが…
ところでヨウランっていつ死んだの?
>>566 そもそも死んだのか?ヨウラン。
漏れの記憶では、死んでなかったと思うが。
リフター食らってあぼんってのはガセか?
個人的には、ヴィーノとせっとで居て欲しいが……
まあ、そこは職人さんに任せるしかないだろう。
ヴィーノが持っていた手袋がヨウランのだとか
ところで各シルエットだけど
フォース:速度を上げるスピード攻撃
ソード:槍を巧みに扱うテクニック攻撃
ブラスト:爆発的加速力による一撃のパワー攻撃
デスティニー:
各シルエットの特徴を揃えた最強の攻撃法,ただ
能力を上げすぎる代わりに使用者の肉体に負担をかける
技はどうだろう?
デスティニーモードは、身体に著しい負担がかかり、使用の度に毛細血管が切れて血涙が流れる、とか?
となると出てくるのはCP9戦以降だな。
まあ、そういったリスク付きの技は実に燃える
570みたいに技の系統を分けるんなら
フォース:抜き足や剃、紙絵みたいな体術の系統
ソード:円運動から繰り出す薙ぎ、払いなどの斬撃、打撃の系統
ブラスト:直線運動から繰り出すリーチ、破壊力に優れる刺突の系統
デスティニー:基本3系統を統合して繰り出す奥義の系統
こんな感じになるのかな?
ワンピースは空島までしか知らなくて、種死に至っては全く知識のない俺でもすごく楽しめた。
おもわずお気に入りに入れちゃったぜw
>>568 そうか、いやなんかヨウランは死亡してるって話はたまに聞くんだけど
整備班のヨウランが死ぬようなイベントってあったかなぁって思ってさ
そういや最終回で凸がファトゥムでミネルバに大穴開けてんだよな…そんときか
ヨウラン死亡説については
凸がファトゥムでミネルバに大穴
↓
ミネルバ脱出艇内にヨウランおらず
↓
ヴィーノが泣きながら手袋握り締めてる
↓
きっと、死んだんだ
というカンジで噂が出た
ただ、以前に色白のヨウラン・ケントっぽいキャラを
後半(レクイエム1回目の発射前後)見たような気がする自分としては
ただ単純に書き忘れではないかというセンも捨てきれない・・・
槍以外にも
ブーメランとかでも合いそうだ>シンの武器
ブーメランを投げずに斬り付けるとか
デスティニーにもそんな武装あったし
578 :
514:2006/12/01(金) 00:41:20 ID:g6VGAaeZ
えー、うっかりしていて1話で入れなきゃならなかったエピソードを飛ばしてしまいましたので、これから投下します。
2話は、まあ今週中にはなんとか仕上がると思いますので、よかったら楽しみにしていてください。
579 :
514 『ONE PIECE』 VS 『SEED』!!第0.8話:2006/12/01(金) 00:42:33 ID:g6VGAaeZ
フーシャ村はその日、昼間から村中がお祭り騒ぎのようだった。
なぜかと言うと、ついにルフィとシンの旅立ちが翌日に迫っていたのである。
村から海賊が出ると言うのに騒ぐとはなにごとじゃと村長はご立腹の様子だったが、それほど大きく
はないこの村において、この二人は知らぬものがいない有名人であった。二人との別れを惜しむ者、特
にシンをご贔屓にしていた女性陣を中心に、この村をあげた送別会は半月ほど前から企画されていたの
である。
ルフィは幼い頃からの友人達と騒ぎあい、シンもこの村で過ごす最後の一日を楽しんでいた。
するとそこにマキノがやってきた。
「どう、シン君。楽しんでる?」
「はい、おかげさまで」
シンがこちらの世界に来てからと言うもの、住む場所や働き口など生きていく上で必要なもののほ
とんどを提供してくれたのがマキノだった。そのため同盟国の首長だろうが直属の上司だろうが、気
に入らなければ誰にでもタメ口をきくシンも、彼女が相手のときは敬語の知識を総動員して喋ってい
たりする。
いくらか二人で談笑すると、彼女は持っていた袋をシンに手渡した。受け取ってみるとなかなか重い。
「なんですか、これ」
「今まで働いてくれた分のお給料。無一文じゃ冒険もできないでしょ」
「そ、そんなのいいですよ。俺もルフィもしぶといんですから、魚をとって食いながらでも航海します。
これ以上迷惑かけられませんよ」
「あなたのおかげでお客さんがいっぱい増えたんだから。こっちがお礼をしたいくらいなの。だから受
け取ってちょうだい。ね?」
「いや、ですけど・・・・・・」
「いいから、いいから」
結局、押し切られてしまった。
「あ、これも渡さないと」
マキノはさらに包みを取り出した。こちらは今の袋に比べるとかなり軽い。開けると中には刃渡り20
cm程度と思われる折りたたみ式ナイフが二本入っていた。
シンは一本を取り出してみる。
重すぎず軽すぎずよく手に馴染む。柄には作者のイニシャルだろうか『Y.V』と彫ってあり、つく
りの確かさから考えても大量生産されたものではなく、職人の手により作り出されたことは間違いない。
熱心にナイフを観察しているシンの様子にマキノは微笑んだ。
「気に入ってくれたみたいね。どう? いいナイフでしょう」
「はい。でも、なんでマキノさんがこんな・・・?」
580 :
514 『ONE PIECE』 VS 『SEED』!!第0.8話:2006/12/01(金) 00:43:23 ID:g6VGAaeZ
シンがそう尋ねると、マキノはフッと目を細めた。
「今から十年位前にある海賊がこの村を拠点にして冒険をしていた時期があったの。『赤髪のシャンク
ス』ってルフィから聞いたことないかしら」
「ああ、何回かありますよ。たしかあいつの理想の海賊で、麦藁帽子はその人からの預かりものなんで
すよね」
「うん。それでね、その人たちは海から帰ってくるといつもうちの酒場で宴会をしててね。この村から
いなくなるときに、今までのお礼って言って船長さんからもらったのがそのナイフなの」
「じゃあ、そんな大事なものいただけませんよ。シャンクスって人がマキノさんにあげたものなんです
から、俺が勝手にもらうわけにはいきません」
「でもね、シン君。もともと海賊が持ってたナイフだもの、私なんかが持ってるより、あなた達といっ
しょにまた海にでたほうがこの子達もうれしいと思うわ」
それでもシンにはこのナイフを受け取る決心がつかなかった。彼女がシャンクスのことを話すとき、
そこに何かしらの特別な感情が表れているように見えたからだ。一体それが何なのかまでは人生経験の
乏しいシンには見当もつかないが、自分が簡単に手にしてしまっていいとは思えない。
「ならこうしましょう。ルフィが帽子を返すときに、あなたもこのナイフを自分が使っていいかあの人
に聞いてみる。それでお許しが出たら晴れてあなたのもので、それまでは私が貸してるだけ。それなら
いいでしょ」
さすがにそこまでいわれると受け取るしかない。
「わかりました。大切に使わせてもらいます」
「ええ」
刃を開くと、美しさすら感じさせる刀身の表面に、今度は『レイザー』と銘がうってあった。もう一
方を見てみると、やはり同じ装飾が施されている。
(フォールディングレイザーナイフ、か)
それは奇しくも彼の愛機だったMSインパルスに装備さていた対装甲ナイフと同じ名前である。たし
かに、自分が使うには丁度いいかもしれない。
そしてシンはマキノに礼を述べると、新たに増えた荷物を整理するため家に帰っていった。
この時、後に自分が巻き込まれることになる『運命』の一端が、すでに目の前に現れていたことをシ
ンはまだ知らない。
職人これを飛ばすなんてうっかりしすぎだぁww
582 :
47=82:2006/12/01(金) 18:20:31 ID:???
ふむY.J……ひょっとして、他にこちらの世界に来た種キャラが作った武器なのでしょうか?
ともかく、514氏のシンはナイフ使いで確定のようですな。
GJです。
×Y.J
○Y.V
いや、YZAK.JULEがワンピース世界に来たらも見てはみたいがな。
Y.V…くっそ、気になるじゃないか
Y=ヨウラン
V=ヴィーノ
だと思った漏れは多分頭が死んでいる
実は本当に刻まれていたのは、Y.V.A
つまり、Y=ヨップ V=フォン A=アラファス
いやー、なんだか話題になってるみたいで、作者としては嬉しい限りです。
『Y.V』の正体が明かされるのは、エニエスロビー編のさらに後を予定しているので気長に待っていてください。
けっこう重要な人物に関連してきます。
あと、予告していた2話が完成したので投下します。
ルフィには常識が通用しない。シンにとっては、いやというほど体でおぼえさせられた正しく鉄則
である。
しかし、
「こいつはコビー。さっきまで海賊船の雑用だったんだけど、これから海軍に入りにいくんだ」
「よろしくおねがいします」
「俺たちもいっしょに海軍基地まで行くからな」
何も海兵志願者と友達にならなくったっていいと思う。
フーシャ村を出発し一日もたたないうちシンとルフィは大渦に巻き込まれてしまった。なんとか同
じ島に流れ着いたものの、場所が少し離れていたため、合流までに少し時間が空いたのである。
その間に何かあったようだ。今三人が乗っている船もその過程で手に入れたらしい。
「まあ、お前が船長なんだし、お前が決めたことに反対はしないけどさ・・・」
基本的にシンの感覚は元の世界にいた時とさして変わっていない。あくまで敵は敵、味方は味方で
あり、いまだに連合やブルーコスモス、ロゴス、アスハなどには憎しみとまでは言わないがあまり良
くない思いを抱いている。
まして海賊と海軍など、絶対に交わることない天敵同士。それが相手は志願者とはいえ(こちらも
二人だけで海賊とは言いがたいが)、同じ船に乗っていいものだろか。
ただ、事情を聞いてなんとなく納得してしまうあたり、彼もだいぶ丸くなったと言えるだろう。そ
れに、まったくの無計画で海に出てきてしまった二人に、一応の目的地が出来たことは歓迎すべきで
あろう。シンの楽器も新しく手に入れなければならない。
音楽家をやれとルフィに言われたとき、音楽的素養のないシンにとってそれはほとんど無理難題の
ように思えたが、そこはコーディネイターの本領を発揮、ほぼ一ヶ月に一つの割合で楽器の弾き方を
マスターし、今ではすっかり『音楽家』シン・アスカになっていた。
それが大渦のせいでフーシャ村から持ってきた楽器がすべてなくなってしまったのである。このま
まではこの一年間の努力の意味がない。
(使える楽器を一通り揃えようか、いやそういえばフォーナーがハーモニカの新モデルを出したって
言うし。あ、前から欲しかったゴーンのアルトサックスがあるかもしれないな。他にも・・・・・・)
訂正。どうやら『音楽家』と言うより『楽器マニア』のようだ。
となりでは海賊狩りのゾロを仲間にしようと言うルフィをコビーが止めようとしているが、それを
尻目に、シンはまだ見ぬ楽器たちに胸を躍らせていた。
その町シェルズタウンの特徴は、なんと言っても港からでも見ることが出来る巨大な海軍基地であ
ろう。まるでちょっとした山で、村の中心にポツンと駐在所があるだけだったフーシャ村とはえらい
違いである。コビーによるとこの辺一体の海域を統括しているらしい。
港につき、ご飯を食べた後、シンは海軍基地に用がある二人とわかれ、食料などの補給と楽器の購
入ため町の中心街へと向った。お金はあると言っても無尽蔵ではない。いろいろな店を回り最低限の
必需品を出来るだけ安く買い、楽しみにしていた楽器も中古のギター一本だけにとどめる。
見知らぬ町での初めての買い物にしては上々の戦果にシンは満足し、荷物を置くために船へと向っ
ていた。
「おい、おまえ!」
「・・・・・・・・・」
「おい!」
「・・・・・・」
「こっちを見ろ!!」
「・・・俺?」
「そうだよ!」
気がつくと変な髪型の男に呼び止められていた。見るからに生意気そうで世の中をなめきっている
ような顔をしている。まだ昔の自分のほうがましだろうとシンは思った。なんにせよ進んで友達にな
りたいような人間ではなさそうだ。
「俺に何か用でもあるのか」
「聞こえてなかったのか! 頭が高えって言ってんだよ!」
何のことだと思って辺りを見回すと、なぜか自分以外の人たちは皆その男に向って土下座のような格好
をしている。そういえば、買い物の途中でここの基地の大佐の息子が威張り散らしていると聞いたが、お
そらくこいつがその息子だろう。
「そんなこと知るか。なんで俺がお前なんかに頭下げなきゃならないんだよ」
「なんだと! 貴様、親父に言いつけてゾロのやつと一緒に死刑にしちまうぞ」
「は? お前なに言って・・・」
「ちょっと待て!」
「ルフィ?」
いきなり後ろからルフィの叫び声が聞こえた。声の調子になんだか穏やかではない気配がある。
「一ヶ月の約束はどうしたんだ」
「なに? 誰だ貴様、どこで聞いた。お前も頭が高えな」
そう言うとヘルメッポは笑い始めた。人を馬鹿にしたようないやな笑い方である。
「そんな約束ギャグに決まってんだろ! それを本気にするやつもまた魔獣的にバカだけどな!!」
ドカッ!!
鈍い音があたりに響いた。喋り終わった瞬間、ヘルメッポがルフィに殴り飛ばされたのである。
それまで固唾を呑んで見つめていた町の人々は、ルフィの行為に恐慌をきたしたように騒ぎ始めた。
「ルフィさん! やめてください、落ち着いて!!」
「こいつクズだ」
「海軍を敵にまわす気ですか! シンさんも黙ってみてないで、止めてください!」
「なんで?」
「なんでって・・・」
ルフィもシンも一応は海賊を名乗っているのである。海軍と戦うのは当然のことだし、それを避け
ようとはまったく思っていない。それにヘルメッポがクズであるということに関しては、シンも大い
に賛成である。いまいち経緯がわからないが、ルフィを止める理由はない。
「決めたぞ、シン、コビー。俺はゾロを仲間に引き込む」
シンはまだゾロという男には会っていないが、ルフィは死刑になるのがかわいそうなどと言う理由
で仲間を決めるような男ではない。それがここまで入れ込んでいる以上、十分信頼に値するような人
物であるらしい。
一方、殴られたヘルメッポは連れていた海兵に抱き起こされるように立ち上がった。足に来てい
るようで一人ではまともに立つことも出来ない。
「殴りやがったな・・・親父にだって一度も殴られたことねえのに! 俺は海軍大佐モーガンの御曹司
だぞ!! 親父に言いつけてやる!!」
「お前がかかってこいよ」
「俺も一発殴ってやろうか」
「やめてください!」
さらに捨て台詞をいくつか残してヘルメッポは去っていった。それ合図にしたように人影がなく
なっていく。二人と関わりたくないのだろう。唯一ルフィに話しかけた少女も母親に連れられて家
の中に入っていってしまう。
「やっぱりただじゃ済みそうにありませんよ! 例の大佐が怒って、下手すれば海軍が動く恐れも
・・・」
「その時はその時だ。シン、ゾロのところに行くぞ」
「わかった。じゃあ俺は先に荷物を船に置いてくるから、お前は一人で基地のほうに行ってろ」
「ああ」
「ちょっと、二人とも!!」
二人はそれぞれの目的地に向った。
シンは急いで船へと戻ると、すぐさま基地へ走った。ルフィのことだから心配要らないだろうが、
不測の事態というものはいつでも起こりうる。それに、ついてみたらもう全部終わっていたと言うこ
とにでもなればカッコ悪いことこの上ない。
プラントの中距離走のベストレコードも更新できるのではないかと言うほどのスピードで疾走して
いると、案外すぐに基地にたどり着いた。
外からの様子を見るに、なんだか騒がしい雰囲気になっていた。こりゃヤバイと思いつつ、シンは
防壁に登って中を覗いてみる。すると驚くべき光景が見えた。
広場に男が磔にされているのだが、そのすぐ横に先ほど別れたコビーが肩から血を流して倒れてい
るのだ。
シンは急いで中に入ってコビーに駆け寄った。
「コビー、しっかりしろ! 何があったんだ!」
「シンさん・・・」
「俺の縄を解こうとしたら屋上から撃たれちまったんだ。お前そいつの仲間か? だったらさっさと逃
げろ。海兵たちが下りてくるぜ」
「だったら余計にその縄を解きゃなきゃな。あんたがロロノア・ゾロだろ。俺はルフィの仲間のシンだ」
「あいつの仲間か・・・。俺はいいんだよ。あと一ヶ月で助かるんだから。早く行・・・」
「シンさんの言うとおりです、助かりませんよ! あなたは三日後に処刑されるんです!!」
「何言ってやがる。ここで一ヶ月生きのびれば助けてやるとあのバカ息子と約束を・・・」
「そのバカ息子が約束なんて守る奴だと思うのか」
「なに?」
「そんな約束、はじめから守る気なんてなかったんです。だからルフィさんはあなたに代わってあいつ
を殴った。真剣に生き抜こうとしていたあなたを踏みにじったから!」
「な・・・何だと・・・・・・!?」
「もう海軍はあなた達の敵に回ってるんです。お願いです、この縄を解いたらシンさんといっしょにル
フィさんを助けに行ってください! 海賊になれとまでは言いませんが、みなさんが手を組めばこの街
からだって逃げ出せる筈です。逃げてください!」
「どうやらそんな悠長なこと言ってられないみたいだぞ、コビー」
「え?」
「そこまでだ! モーガン大佐への反逆につき、お前たち三人を今この場で処刑する!!」
十数人の海兵が自分達に銃口を向けている。一人だけあるいはゾロが自由に動けたのなら物の数では
ないだろうが、今の状況で動けばコビーとゾロが無事ではすまない。ナイフで銃弾を防ぐにしても、三
人分ともなるとさすがに荷が重い。
「基地を取り囲め! あの麦わら小僧は絶対に逃がすんじゃねえぞ!!」
一人の男がひときわ大きな声で命令を出す。筋骨隆々を体現したようなその男は、右手の手首がある
はずの場所から斧が生えているという、まるでモビルアーマーのような腕をしていた。海軍第153支
部大佐、通称『斧手のモーガン』。
「面白ぇ事やってくれるじゃねえか。てめえら四人でクーデターでも起こってのか? ロロノア・ゾロ、
てめえの評判は聞いてたがこの俺を甘くみるなよ。貴様の強さなど俺の権力の前ではカス同然だ・・・!
構えろ!!」
海に出て早々、正に絶体絶命のピンチである。助かる見込みはほとんどなさそうである。
「射殺しろ!」
銃弾が彼らに向けて発射される。
しかしその時、突然空から何かが飛来した。
「お前っ!!」
「ルフィさん!」
「麦わら・・・」
現れたのはルフィだった。彼はゾロとコビーの前に飛んでくると銃弾をうけ、それらを逆に跳ね返
した。
「効かーん!! んなっはっはっは!!」
「遅いんだよ、バカ」
「わりい、わりい。でも、間に合ったからいいだろ」
「それにお前、盾になるならちゃんと俺もカバーしろ。はみ出てたぞ、今」
「んー、でも、問題あったか?」
「いや、ないけどな」
ルフィが飛んでくるのを捉えた瞬間、自分以外のことはルフィに任せ、シンは懐にしまってあった
ナイフを取り出し自分に向ってきた銃弾だけをすべて打ち落とした。シンの反射神経をもってすれば
可能なことであり、ルフィもシンならば一人で何とかできるだろうと考え、それ以外の二人の分を防
ぐことに専念したのである。
勿論、事前に打ち合わせのようなものはおろか、アイコンタクトさえ行ってはいない。
二人がやってのけた芸当は、コビーや周りの海兵たち、それどころか腕っ節だけで大佐にまで登り
つめたモーガンや賞金稼ぎとして名を馳せているゾロでさえ驚愕させるものだった。
「てめえら・・・一体何モンだ!?」
「俺は海賊王になる男だ」
「俺は・・・・・・特に無いな」
ルフィはゾロに背負っていた刀を差し出す。
「ほら、お前の宝物どれだ。わかんねえから三本もって来たぞ」
「三本とも俺のさ。三刀流なんでな」
「ここで俺たちと一緒に海軍と戦えば政府にたてつく悪党だ。このまま死ぬのとどっちがいい?」
「そんな勧誘の仕方があるかよ・・・・・・」
「テメエは悪魔の息子か。まあいい、ここでくたばるくらいなら、なってやろうじゃねえか、海賊に」
「やったァ! 仲間になってくれんのかよ!!」
「わかったら、さっさとこの縄を解け」
「ああ。シン」
「了解」
そう答えると、シンはゾロの体に巻きついた縄を一瞬で切り裂いた。無造作にやったように見えて、ゾロ
の肌や服には一切傷を残していない。
「たいした腕だ」
「そうか?」
「ああ。勝負したいくらいだ」
ゾロがニヤリと笑う。
シンも苦笑いをするが、一流の剣士にほめられれば悪い気はしない。事実、ナイフ自体の性能の良さ
もあるが、つい数日前から使い始めたとは思えないほど使いこなせている。案外性に合っているらしい。
「お前らなにをぼさっとしてやがる! 銃がダメなら斬り殺せ!」
目の前の化け者達に怖気ついた部下達をモーガンが一喝する。
とても戦いたくなるような相手ではないが、今までに染み付いたモーガンへの恐怖が彼らに逆らうこ
とを許さなかった。
海兵たちが雄叫びを上げて突撃してくる。
しかし、ゾロは彼らに背を向けた。
「海賊にはなってやるよ。こいつらと戦るからには俺も晴れて悪党ってわけだ。だが、いいか、俺には
野望がある!!」
「三人とも危ない!」
コビーが叫ぶのとほぼ同時に、迫ってきた海兵たちがゾロにサーベルを振り下ろす。
ガキン!!
気配だけで太刀筋を見切ると、三刀を構えたゾロがそれらをすべて受けきった。一本を口にくわえる
という、見方によっては滑稽な構えだが、気迫だけで海兵たちを圧倒し、硬直させる姿はまさに鬼神で
ある。
「世界一の剣豪になることだ! こうなったらもう名前の浄不浄も言ってられねえ。悪名だろうがなん
だろうが、世界中に俺の名をとどろかせてやる! 誘ったのはてめえらだ、もし野望を断念するような
ことがあったら、そのときは腹切って俺にわびろ!!」
世界一の剣豪。そこに至るまで、一体どれほどの敵を越えなければならないのか見当もつかない。普
通なら見ることすらバカらしくなるような夢である。
しかしバカな夢ならこちらも同じ。
「やっぱりあんたを仲間にして正解だったよ」
「いいねえ、世界一の剣豪。海賊王の仲間ならそれくらいなって貰わないとおれたちが困る」
「けっ、言うね」
一連のやり取りにシンは背中がゾクゾクするような感覚をおぼえた。
覚悟、野望、信念。昔の自分に果たしてそんなものが備わっていただろうか。自分の進む道に誇り
を持つことが出来ていただろうか。いや、違う。ただ流されて、抗おうとしても結局できずに、見当
違いな八つ当たりを続けていたに過ぎなかった。そんな自分が目の前の男達と同じ場所にいる。それ
だけで嬉しくなった。
だが、まだまだだ。こんなところでは終わらない。
「とっととそいつらを始末しろ!」
モーガンの叫び声が響いた。
それに反応してルフィも動く。
「しゃがめ、シン、ゾロ! ゴムゴムの鞭!!」
直後、二人の頭上を伸びたルフィの脚が通過し、そこにいた海兵全員を吹き飛ばした。
「やった、すごい!」
「てめえは一体・・・」
「俺はゴム人間だ」
ゴム人間とはすなわち悪魔の実の能力者。普通ならはったりと考えるところだが、二度もその目で
見てしまった以上、疑う余地はない。伝説とまで言われる存在が敵として現れたことに、いく人かの
海兵が思わず弱音をこぼしてしまうのも無理もないことであろう。
彼等の不運は同じ場所にモーガンでいたことである。
「大佐命令だ。今弱音を吐いた奴はァ、頭撃って自害しろ。この俺の部下に弱卒はいらん」
「なに言ってんだ、あんた!!」
しかし、その言葉に一番反応したのは、言われた海兵ではなくシンだった。
シンとて元はザフトという軍隊の一兵卒であったし、正義感は強いほうである。ルフィと出会わな
いまま海賊に人々が蹂躙される光景でも目にしていたら、海軍に入っていたことは間違いない。ゆえ
に、こんな横暴は許すことも見過ごすことも出来ないのだ。
「あんたにどんな権利があってそんな命令が出せるんだ!」
「権利? 権利だと。俺は大佐で、この基地で一番偉いのも俺だ。よってここにいる誰よりも俺は優
れている! 誰にどんな命令を出そうと俺の勝手! 身分は低い称号もねえようなてめえらこそ、俺
に逆らう権利すらないことを覚えておけ!!」
プッツンと本当に何かが切れるような音がシンの脳裏に響いた。
いつの間にか勝手に始まった戦争のせいで死んだマユ。ブルーコスモスに利用され続けるしかなか
ったステラ。彼女達の死に様が、入れ替わりながら何度も浮かんでくる。
そして次第にそれが一点に収束していくと、シンの中で何かが割れた。
「うおおおおお!!」
シンは全力で駆けると、全体重を乗せたドロップキックを放つ。斧で受けたにもかかわらず、モー
ガンは体勢を崩してしまう。
「俺は海軍大佐『斧手のモーガン』だ!!」
「知るか!!」
モーガンが振り下ろした斧を両手のナイフで止めると、そのまま刃を伝って懐に入った。今度はシ
ンの中段蹴りが腹に刺さり、モーガンは吹っ飛ぶ。
「大佐なんて言って、散々威張っておきながらこの程度かよ」
「シンさん! こんな海軍つぶしちゃえ!!」
「当然だ!!」
コビーの声援にシンが答える。
モーガンは起き上がったが、ダメージが大きいことは明らかだった。
「小僧、死刑にしてやる」
「やれるもんならな」
シンは右手のナイフを持ち替えると投擲。モーガンが斧でそれを防ぎ視界から自分が消えた隙をつ
いて接近するとジャンプし、モーガンの顔面に膝蹴りを叩き込んだ。さすがのモーガンもこの一撃に
はダウンする。
「なにが海軍だ。あんたみたいなやつより、コビーのほうがよっぽど立派じゃないか」
「おい、お前ら!」
「ん?」
シンが振り返ってみると、ヘルメッポがコビーに銃を突きつけていた。
「ルフィ、ゾロ、何やってんだよ」
「仕方ないだろ。お前のほう見てたんだから」
「ああ。なかなかの戦いっぷりだったぜ」
「喋ってんじゃねえよ! こいつの命が惜しかったら動くんじゃねえ! ちょっとでも動いたら撃つ
ぞ!!」
ヘルメッポにそんなことをする根性がないことは三人ともわかっている。さて、どうしようかと考
えていると、当のコビーが口を開いた。
「ルフィさん、シンさん、ゾロさん! 僕は皆さんの邪魔をしたくありません。死んでも!」
それを聞いてルフィはニヤリと嬉しそうに笑って、右腕を構える。
「ああ、知ってるよ。諦めろバカ息子、コビーの覚悟は本物だぞ」
「おいてめえ、動くなっつたろ! 撃つぞ! よし撃つ!」
同時にシンの背後でも何かが動き始める。
「シンさん後ろ!」
だがシンは振り返りすらしない。
「俺は海軍大佐だ・・・」
モーガンがシンを殺そうと斧を振り上げる。しかし、それはやってこなかった。
シンは、ルフィのゴムゴムの銃がヘルメッポを吹っ飛ばし、後ろでモーガンが倒れたのを確認し
てからこう言った。
「ナイス。ルフィ、ゾロ」
「「お安い御用だ」」
かくして、シェルズタウンはモーガン大佐の支配から解かれたのである。
GJです こっちのシンはいきなり種割れしましたね。 それにしてもまったく違和感ないのは流石と言うか
違和感ないってのも、ワンピキャラに改変済みって事だしなー。
種割れ後のナニかがかわったっぽい描写とかも欲しいかも
しかし今回のシンのキレっぷりはGJ
GJ!
で、前にあった「引退したCP9のオッサンに六式を習ったシン」てのをやってみた。
全体に前置きやら何やらが長くなりすぎてアレなんだけど。とりあえず投下します。
青い、青い海のただ中に、その島はあった。イーストブルーのはずれに位置し、周囲を渦潮に囲まれた、小さ
な、小さな島だった。
その島の、南側の岩礁に、赤い服を着た姿があった。シン・アスカ。
月面での最後の戦いの後、気がつけば、彼はこの島にいた。
響く潮騒の中、シン・アスカは、波間に洗われる巨大な金属の手に座り込んでいた。視線を波の下へと向けれ
ば、そこには、かつての相棒――今はもう動かぬデスティニーガンダムの姿があった。
右腕を除く四肢はもがれ、残った部分も傷だらけで、海中に浸かったその姿は、無残とも言えるものだった。
もし海中から彼を引き上げる事が出来たとしても、二度と蘇る事はないだろう。それが、シンにはとても、と
ても。
「シン。またここだったか」
「ああ、ビフ」
かけられた声に振り向けば、そこには、鍬をかついだ中年男性が立っていた。黒いシャツに黒いズボン、
シャツの右袖は、肘のあたりから先が、まるで吹流しのように微風に流れていた。
「悪い。そういや、畑仕事があったっけな」
「ああ。ま、とりあえずは良いがな。お前さんのおかげで、だいぶ楽にはなってるからな」
「何。こっちも世話になってるんだし……修行つけてもらってる身だからな」
言いつつ、シンは立ち上がり、ビフと並んで岩礁を離れた。
「また来るよ、デスティニー」
602 :
601:2006/12/04(月) 00:57:58 ID:???
遡ること一ヶ月あまり。はじめてこの島で目を覚ました時、シンが目にしたのは、青い空だった。自分が、海
面に突き出した岩礁の上に横たわっているのだと気付いた所へ、この島唯一の住人であるビフが海岸まで降り
てきたのだった。岩礁のすぐわきには、デスティニーの手が見えていた。
最初は、自分に起きた事態が全く飲み込めなかったシンだったが、ビフに見せられた本や海図、また時折海面
上に常識はずれに巨大な魚とも獣ともつかぬ奇妙な生き物が現れたり、あるいは島に生える植物や動物類が、
シンの見聞きした事のないものばかりだったりといった傍証が、シンにビフの話を受け入れさせたのだ。
ビフの人柄、と言うものも、そこにはあった。島唯一の住人――正確には、ビフが飼っている牛の親子もいる
のだが――であるビフは、シンがこれまでに出会った大人の中でも、屈指の落ち着きと威厳を備えていた。
片腕で、それ以外の体のあちこちにも多くの傷跡を持ったビフは、見かけだけならまだ40代そこそこなのだ
が、すでに老境にあるかのような落ち着きを見せていたのだ。
この奇妙な世界に来てから数日目の夜の事だった。ようようビフの話を受け入れたシンは、最初に目を覚まし
た場所、すなわち、海に沈んだデスティニーの所へ来て、ぼんやりと、夜の海を眺めていた。
果たして、これから自分はどうすれば良いのか。元の世界には帰れるのか。いや、帰った所で、自分に居場所
はあるのだろうか、などなどと。
あの戦いは、ラクス・クラインとキラ・ヤマト一派の勝ちに終わった。自分は、キラ・ヤマトはおろか、アス
ラン・ザラにすら勝てず、みじめな敗北を喫してしまった。
あの時、ステラの幻を見たような気もする。だとしたら、自分はステラと同じ場所へ――死後の世界に来たの
ではないだろうか。そんな風にまで、シンは考えていたのだ。
だが、それを打ち破ったのも、またビフだった。
603 :
601:2006/12/04(月) 00:58:21 ID:???
「風邪引くぞ」
何時の間にか、ビフがシンの横に並んで立っていた。ぶっきらぼうな中にも、確かに気遣いを感じさせるその
声に、しかし、シンはぼんやりとした言葉しか返せなかった。
「良いよ、別に」
「良いわけねえだろう。働かざる者食うべからず。明日からはお前にも畑仕事手伝ってもらわなきゃならねえんだ」
「どうなったって良いんだよ、もう。俺の事は放っておいてくれよ」
気力の一切を持たないその言葉がはいた途端、ビフが右腕だけでシンの胸倉を掴んで、無理矢理ひきずり挙げ
た。
「こら。てめぇ今何つった? どうなったって良いだ? てめぇが良くてもな、オレはそうはいかねえんだよ」
「ぐっ……な、何だよ?! アンタは関係ないじゃないか!」
「ああ、関係なんざねえよ。てめぇ見てえにひねくれたスネガキなんざ、構いたくもねえ。けどな、オレは見
ちまったんだよ」
「な、何を」
「お前をかばって、海に沈んで行ったこいつをだ!」
「え――」
ビフが顎で指し示すさきを見れば、そこには。
ど んっ
ずたぼろの姿で、右手だけを海面に突き出した、デスティニーの姿があった。
604 :
601:2006/12/04(月) 00:58:44 ID:???
「デスティニー……が? だ、だって、デスティニーは、モビルスーツだぞ?! 生き物じゃない?!」
「そんな事オレが知るか! 良いか、お前達がここへ現れた時、オレは見たんだ。突然雲を破って落っこちて
きたこいつが、お前が入っていた腹を、残った腕一本で必死に庇おうとしながら海に落っこちる所をな!!」
「な――え?」
「それだけじゃねえ! オレがここに来た時こいつはな、自分の腹からお前を引きずり出して、何とか岩の上
へ上げようとしていたんだ! 自分が岩に掴まれば、こいつ自身は沈まないですんだ筈だろうによ!」
「そんな――そんな、事」
「ある筈ねえってか? けど、オレは見たんだ。オレがこいつの手からお前を受け取ったのを見て、こいつが
満足そうに海の中に沈んでいく所まで、全部見たんだよ、オレは!」
『助けるよ』
そんな事、あるはずはなかった。デスティニーは、どれだけ優れていても、モビルスーツなのだ。意思なんか
ない。自分で何かを考えるなんてあるはずがない。まして――パイロットを自力で助けようなどと、するはず
がない。
『君だけでも助かって。君だけでも、どうか生き延びて』
シンの中の常識が、それを否定する。だが――シンの耳には、意識には、確かに、その声が――残っていた。
『ボクはここで終わる。でも、君だけは助かって欲しい。ボクが助けるよ。だからどうか、生き延びて――シ
ン』
「あ……う……ぐっ……」
「細かい理屈なんざ、オレは知らねえ。こいつが機械のかたまりなんだって事ぁ、オレにだって見れば解る。
けどな、それでも、こいつはお前を助けようとしてたんだ。オレにお前を託して、沈んで行ったんだよ。ずた
ぼろになっても、お前だけは助けようとしてたんだ」
ビフの腕から解放されたシンは、その場にひざまづき、海を覗き込んだ。夜の海は暗かったが、その奥に沈む
デスティニーの姿は、月明かりの下、ぼんやりとうかがう事が出来た。その水面に、ぽつぽつと波紋が広がっ
ていく。
605 :
601:2006/12/04(月) 00:59:26 ID:???
思い入れなんかなかった。ただのモビルスーツ。ただの道具。そう思っていた。だのに。
「うっ……ぐっ……デスティニー……」
「オレはこいつからお前を託されたんだ。こいつが、自分は沈んでも助けようとしてたお前を。そのお前が、
どうなっても良いだなんて事、オレが勘弁できるわけねえだろうが!」
だのに、彼は。デスティニーは、自分を。
「うぁぁあああーっ! デスティニーーーーーっ!!」
月光の海に、シンの号泣がこだました。
シンが泣き止むのを待って、ビフが静かに話し始めた。
「なあ、シン。お前が前いた所で何があったかは、詳しくは聞かねえ。だが、たいがいロクでもない目にあっ
て来たんだろうって事は、察しがつく」
「うん……」
「こう、考えてみたらどうだ。お前は、前の場所での歪んだ運命を、振り切ったんだって」
「運命を……振り切った?」
「そうだ。ここがあの世かどうかってのはともかくだ。お前は、ここに来て生まれ変わった。そう考えちゃど
うだ。そいつ、デスティニーだったか……奇遇だとは思わねえか、『運命』って名前のヤツが、命がけでお前
をここまで連れて来てくれたのも、自分と同じ名前の、だが、ひどく歪んじまったそれから、お前を抜け出さ
せる為だったと、そう考えちゃどうだ。なあ」
「デスティニーが、俺を」
「シン……お前、この島を出ろ」
「え?」
「今すぐってわけじゃねえ。この海に出るには、力がいる。それも、並大抵じゃない力が。どこでどう暮らし
ていくのか、それを決めるまでにも、色んな面倒があるだろうからな。それをかいくぐるだけの力を、俺が教
えてやる。」
「あんた……が?」
「オレはな……シン。昔、殺し屋をしていたんだ。政府に飼われる、殺し屋をな」
606 :
601:2006/12/04(月) 01:03:40 ID:???
とりあえず、ここまで。
前置き長すぎですまん。次回戦い方の伝授とか、出航とか、出来ればルフィ一味との出会いまでは
やりたいかなー。
>>601 GJ
なんだかメリーを彷彿とさせるなぁ・・・だがそれがイイ!
やべえ。マジで泣けて来た。
運命の行動がまじで心を振るわせやがった。
ここへ来て、自らの意志を伝える術を持ったからこそ、
今まで出来なかった事をやったのかなぁ…と、妄想してしまう。
神・仕事(ゴッド・ジョブ)ッ!!
>>601 とにかくGJ!
このディスティニー、Sガンダムや初代680を思い出すわ・・・
GJ!
>>601 メリーの真似してんじゃねぇよ。
……一瞬画面が見えなくなっちまったじゃないか、gj。
GJ。
いや、なんでこう本来意思無く。有っても伝える術を持たない筈の無機物が持ち主の為に動くと凄まじい感動をもたらすんだろう?
613 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/04(月) 18:14:45 ID:6uiKydd8
ゾロと会ったら……(声優ネタ)
>>601 ちょ、マジ泣きさせるんじゃねえよコンチクショウ!
この手の話は反則だ。
負けることを約束された哀れな道化にも譲れないものはあるよなあ。
615 :
514:2006/12/04(月) 20:41:05 ID:???
>>601殿
GJです。
きっと、デスティニーはシンを助けることで意地を通したのでしょうね。
搭乗者は必ず生きて返すという、兵器としての最後の意地を。
さて、自分はどうやってこいつを登場させてやろうかな?
616 :
47=82:2006/12/05(火) 01:47:22 ID:???
601殿GJ! 感動しました。
この話の流れから、シンがメリーの炎上に立ち会った時、何を思うのかが興味深いですね。
これだけじゃあなんですので、完成した話を投下しませう。
617 :
47=82:2006/12/05(火) 01:50:55 ID:???
犯罪者の心理というものを考えた事があるだろうか? 先に言っておくと、今から例に
出す魚人海賊団……彼らに、人間を殺した事に対する罪など存在しない。あるとすれば、
害虫を駆除した時に似た安堵感だけである。『海賊』という『悪』としての自覚はあっても、
『道徳』における『悪』としての自覚は無い。彼らにとっては種族の優劣の名のもとに行
われる、正義でしかないのだ。
シンは無論のこと、そんな魚人達の思想など知る由も無い。そもそも、この世界に来た
事自体つい最近なのだから、知っているはずも無い。
『シン……』
それでも。
彼には、魚人達のそんな『本性』が手に取るように分かるのだ。
『シン……守ってくれる?』
かつて、彼が守ろうとしたあの少女の運命を蹂躙した、クソヤロウ共と同類なのだと。
(もう二度と、傷つけない)
シンは、決意を固めながら己を嘲笑った。ゾロやルフィたちはあくまでナミのために戦
うのだろうが、シンの動機は彼らのそれとは趣が異なる。ナミの為である事には間違いな
いが、幾分かの不純物が混ざっていた。
(もう二度と、ステラのような人間はださない!)
他人のエゴのために全てを踏みにじられるような人間を、二度と出さないため。
踏みにじる人間を、絶対に許さない為に。
己が胸に掲げた信念の槍、そのために。
彼は怒る(イカル)のだ。
「アーロン? アーロンってのは、俺の名だが?」
居並ぶ魚人たちが身構える中、アーロンの態度はふてぶてしい事この上なかった。専用
のチェアーに座ったまま、顔すら向けずに応える。問う側も、そんな細かいことなど気に
する事もなく、会話は進む。
「俺は、ルフィ」
「……アスカ・シンだ」
二人は、肩を並べてアーロンに向かって歩いていく。
618 :
47=82:2006/12/05(火) 01:57:31 ID:???
「ほう? で、テメーらはなんだ?」
『 海 賊 ! 』
二人の声が唱和し、居並ぶ魚人達の鼓膜を揺らす。
「その海賊が、何のようだ?」
「おいおい、何処行くんだ? オメー」
「アーロンさんに、話したきゃあ、まず俺たちに……」
話を通せ、とでも言いたかったのだろう。
二人の魚人が、ルフィの前に立ちはだかり、その進行を止めようと……『した』。
未遂に終わった理由は、簡単だ。
「邪魔」
ドガゴッ!!!!
『ぐぎぇぁっ!?』
次の瞬間、二人の体は宙を舞っていたのだ。
本当に、一瞬の事だった。二人の手がルフィに届く直前に、その体はなんの予兆もなし
にぶっ飛ばされたのである。
『――ッ!』
一瞬にして動いた事態についていけず、魚人達の大半はあっけにとられ。例外である幹
部達は一様に息を呑む。
幹部達には、『見えた』のだ。
シンの手にした布包みが高速で振るわれ、二人の魚人を強かに打ち据えた、その光景が。
あの速度で首筋をぶん殴られては、意識など残っていないだろう。
東の海最悪の男は狼狽しなかった。ただ、『同朋』を傷つけられた怒りに目をむいて、迫
る二人の姿を睨む。皮肉な事に、今アーロンが抱いた感情は、向かってくる二人が抱いて
いる感情と、同質のものであった。
すなわち、『仲間を傷つけられた怒り』
619 :
47=82:2006/12/05(火) 01:59:25 ID:???
――吹き飛ばされた二人の体が落下し水面に着水した時には、二人とアーロンの距離は
かなり近づいていた。
この期に及んでも、アーロンはチェアーから立ち上がろうとしなかった。この男は自分
が東の海でどう思われているか知っていたし、人間風情の攻撃で傷つかない事も知ってい
るのだ。魚人の中でも重量級のアーロンに、ルフィのような小柄な人間が、素手で接近し
ても脅威でもなんでもない、そう考えたのである。
そして、アーロンが二人の間合いに入った瞬間。
ルフィは、こぶしを握り締め、
シンは、手にした布包みを振り上げて、
ど ご お っ ! ! ! !
ふてぶてしい、魚人アーロンの顔面に、たたきつけた!
――正直、ここまではアーロンも予想していたのだ。
敵意むき出しの相手に無防備な姿を攻撃させるのは、アーロンの戦術上の駆け引きの常
套手段である。素手の相手には特にそう。相手の攻撃を受けることで、ことさら相手と魚
人の力の差を見せ付けるのだ。時々歯ごたえのあるクソ人間がいるが、そんな奴の攻撃も
同じように受け止めて見せた。
(人間風情に殴られようが、痛くも痒くもねえ)
アーロンの偽らざる本心である。素手の人間相手に身構えるなど、彼のプライドが許さ
ない。無防備な相手にダメージを与えられないという現実は、相手が使い手であればある
ほど、己の技に対する自負が高いほどに闘争心とプライドにダメージを与えるのだ。
後は、闘争心の揺らいだ相手をたっぷり嬲って料理するだけ……今回も、それで終わる
『ハズ』だった。
しかしだ。
二人の放った一撃の威力は、アーロンの予測をはるかに超えていた!
信じがたい事に、二人の攻撃はアーロンの巨体を揺るがし、チェアーから吹っ飛ばした
のである!
(何だと!?)
どしゃぁぁっ! どがぁぁぁぁんっ!!!!
予想外の衝撃の強さに、アーロンは受身を取ることすら忘れて吹っ飛ばされ――アーロ
ンパークの、反対側外壁までたたきつけられた。アーロンの体を受け止めた外壁はその衝
撃に耐え切れず、粉々に粉砕される。その吹き飛ばされる姿は、まるで子供が吹き飛ばさ
れたかのように無防備で。
620 :
47=82:2006/12/05(火) 02:01:08 ID:???
信じがたい事だった。自分の身に起こった事が。
長くこのアーロンパークを居城とし、何十人もの賞金稼ぎを返り討ちにしてきた……中
には、クロオビたちを倒してアーロンの元に辿り着くほどの猛者も居た。が、一切の例外
なく、アーロンの前に敗れてきたし、アーロンの戦術ロジック……攻撃を受けて無傷で済
ますという戦術を崩せたものも居なかった。
傷を負ったわけではない。ダメージはほぼ0といっていいだろう。
それを差し引いても、魚人アーロンの体が吹っ飛ばされるなどという事態は『異常』だった。
これでは、相手の闘争心は折れるどころか、煽られるだけだろう。それ以上に、目の前
に居る男達は今までのどんな相手よりも厄介な手間ということになる……たかが人間風情が!
「てめぇら……一体……?」
自分自身と相手に対する怒りで、アーロンの意識はギンギンに冷え切っていた。静かな、
恐ろしいほど静かな問いを投げられた二人組はというと……思い出していた。
改めて、『何故』自分達がアーロンに喧嘩を売ったのかを。
『ルフィ……助けて……』
『いやぁっ! 死ぬのは嫌ぁっ!』
二人の脳裏に浮かぶのは、涙を浮かべる少女の姿。二人それぞれ思い浮かべる少女は全
くの別人だったが、思いは一つ。
「 う ち の 航 海 士 を 泣 か す な よ ! 」
「 あ ん た に 引 導 渡 し に 来 た ん だ よ ! 」
大切な仲間を、守るべき者を踏みにじった奴をぶっ飛ばす!!
「……っちゃー」
一方。
アーロンが殴り飛ばされるのを誰よりも近くで眺めていた男……ドニールはといえば。
彼がシンと並んでる姿を見て、頭を抱えたくなった……寄りにもよって、モームをぶっ
飛ばした奴らの一人である。
こそこそと四つんばいでルフィたちと距離をとり、一味のほうへと下がりながら、内心
頭を抱えたくなった。一番痛かった事実は、シンが傷らしい傷も負っていないという事実
である。モームは一味でも幹部級の主力であり、それを、三対一とはいえ無傷に近い状態
で撃退したとなれば……少なくとも、モーム以上の戦闘力がなければお話にならないとい
う事だ。
「こ、こいつら! アーロンさんに何をぉっ!」
「やっちまぇっ!」
「あ゛」
621 :
47=82:2006/12/05(火) 02:03:06 ID:???
止める暇もなにもあったもんじゃなかった。アーロンの周りで屯していた連中は勿論、
海中に居た魚人たちまで地上に這い上がり、いっせいにルフィたちに向かって襲い掛かる。
当たり前の話だが、彼らは幹部やモームと比べると一山いくら程度の連中でしかなく、
「鬱陶しいっ!!!!」
どがががごごぎゃがごがっ!!!!
『ぎゃぁぁぁぁっ!?』
「ぎゃーす……」
……モームを無傷で倒すような奴相手に、敵うはずが無いのである。
件の二人と同じようにぶっ飛ばされる大量の魚人の姿に、ドニールは今度こそ本当に頭
を抱えた。こんな光景を見せられて、アーロンがどれ程怒り狂う事やら……出来る事なら
止めたかったのだが。
「おーおー、勝手に突っ走ってくれちゃってまあ」
「げ」
ルフィ達の後ろに見えた連中を見て、頭痛は更に酷くなった。モームの一件と、ここ最
近アーロンパークで起きた騒ぎを全て知るドニールからすれば、とんでもない面子だった
のである。
黒い服のコックに、三刀流のロロノア・ゾロ。そして、死んだはずの長っ鼻。
どいつもこいつも、ドニールにとっては頭の痛くなる奴らだった。
「あー! あいつだー!」
「あの長鼻、生きてやがったのか」
いつもはのんきなハチがゾロを指差して叫び、チュウはウソップの生存を冷静に受け入
れて、最後に、クロオビがこう締めくくった。
「あいつが生きていたという事は……やはり、ナミは裏切り者か! 俺の思ったとおりだ!」
(……な、ナミの立場が加速度的に悪くなっていく)
622 :
47=82:2006/12/05(火) 02:05:46 ID:???
一方、最後に残ったアーロン一味幹部のドニールは、地面に手を突いてうなだれていた。
クロオビの言う事も当たり前で、ウソップはナミが殺したはずだし、そもそもその原因
は、ゾロをナミが逃がした事によってかかった『裏切り者』の疑いを晴らすためなのである。
いわば、ここに並んでいる雁首は、ナミがアーロン一味に対して明確な敵意を持ってい
るという証拠も同然で。まあ、そんな事ははなから分かりきっているのだが、証拠がある
とないとでは扱いの落差は明らかだ。
アーロンがああいう手段に出て、ナミの一味残留が決まった以上、仲良くできるのが一
番いいはずなのに……
「ナミ……成る程、そういう繋がりか。最初からナミが狙いだったわけか」
「やり辛い」
「……?」
「やり辛い、ああやり辛い。やり辛い」
「……俳句のつもりか?」
575で纏めてあるが、季語もクソも無い妙な句だった。いいたい事はおおよそわかる。
ドニールは重ねて嘆息し、シンを真正面から見据えた。
「やりづらいに決まってるだろ。一旦は和んだ相手、それもナミのお仲間だ……あいつが
積極的にこの騒ぎに参加するとは思えないがな」
「……一方的にお喋りされた記憶しかないんだが」
「それでも和んだの! ……ナミって、怒りは発散するよりも溜め込むタイプだしな。ク
ロオビが言うような裏切りもありえんし、大方、ナミの扱いに耐え切れないでやってきた
とか、そういう話なんだろ?」
「なんだと? 何故そういいきれる」
以外に的確に状況を判断しているドニールの言葉は、シンだけではなく他の魚人たちに
も意外さを抱かせたらしい。マユを跳ね上げただけのシンとは正反対に、クロオビは発生
した感想をそのまま言葉に代えて投げかける。
「ナミは頭のいい女だ。あいつが本当に裏切ってこいつらをここに呼んだんなら、もっと
スマートに事態を進めるはずだろ。第一、人選が良くない……本気で裏切るんなら、ロー
グタウンに居るって言う海軍本部の『白猟』と『点炎』あたりを上手く誘導するんじゃな
いかなと。
多分、こいつらはナミの獲物だったんだ。ナミが裏切ったのが信じられなくて、ここま
で追ってきたのが真相なんじゃないか?」
「――随分と、ナミの事を理解してるみたいだな」
「まぁ、親しくしてるしね」
ひょいと肩を竦めるドニール。にらみ合う二人を放置して、事態は進んでいく。
623 :
47=82:2006/12/05(火) 02:07:36 ID:???
「馬鹿めぇっ! お前らなんか、アーロンさんが相手にするかぁっ! こいつで十分だぁ!」
何故かえらそうに胸を張り、ハチは手を己の長い口に添えて……吹いた。
ぱっぱらっぱぱっぱらっぱぱっぱぱらっぱっぱー!
ハチの行為がモームを呼ぶ合図だと気付いたドニールは、慌ててそれを止めようとした
が、思いなおした。
(他の皆と連携すれば、一人ぐらいやれるかな?)
驚いた事に、その口から漏れてきた音はまるでラッパの音色で。それを聞いたシンは、
半眼で魚人たちを眺めて、
「どういう体の作りしてんだあいつ……」
口吹くだけでラッパの音色なんて、普通の人間には出来ない。上級種族云々以前に、や
りたくもない。呆れ眼のシンに対し、ドニールはため息をついて、
「あれはハチの特技みたいなもんさ……ほれ、人間にもいるだろ? 奇人変人って奴。あ
の類だよ」
ざばぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「モームだと!? ゴザの町をつぶした怪物か!」
「グランドラインの、海牛……!」
告げる声とともに海が波立ち、海面が隆起していく。その有様にシンの後ろに居並んだ
ココヤシ村の人々は、恐怖と恐慌を声にして発する。
「いくらモームに勝ったからって、今この場でも勝てると思わないことだな。今度はモー
ム一体じゃないし、魚人と人間じゃ悲しい事に体の仕組みって奴が違う」
「体の仕組みが変わってるねえ……うちにもいるぜ、そういう奴」
「?」
ココヤシ村の人々と違い、シンは海獣モームの出現に、全くといっていいほど動じてい
なかった。
「宣言してやるよシュールストレミング野郎。
あの海牛と魚人の雑魚共は、今から五分以内にうちの船長にぶっ飛ばされる」
朗々と告げられたその予言よりも、死ぬほど臭い発酵食品扱いされた事に、ドニールは
頬を引きつらせた。
追記・シュールストレミングは、ニシンの発酵食品である。
624 :
47=82:2006/12/05(火) 02:08:28 ID:???
本日は以上です。
……投稿してから、最後の台詞はサンジ臭かったかなと後悔したのは秘密です。
625 :
601:2006/12/05(火) 02:15:42 ID:???
47=82殿、GJです。
何かもう、ドニールの胃に穴が開きそうですな。シュール扱いはねえだろ、シンw
GJコール下さった方々、ありがとう御座いました。出来れば今週中には次を投下したいと思います。
>>47=82氏
笑わせていただきましたw
シュールストレミングって……w
627 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/06(水) 01:08:25 ID:v5LuG5TI
>>47=82殿。
すばらしいです。
他の方々のssもかなりの面白さ。
目が離せませんな
ちょっと待ってくれ、
シンがアカデミー時代に命をつないだ『レーション』は、そのベースに多種の発酵食品を含んでいた。
そしてそのベースのひとつにシュールストレミングがあると明言されている。
つまりシュールストレミングとはシンにとってその命を託すにたる重要なもの、
すなわちこれはドニールの仲間フラグだったんだよAA略!
ていうか「ニシン野郎」の方が余程言いやすいのにシンときたらw
>>628 サンジに本物のシュールストレミングにされるんじゃなかろーか。
>>630 かわいそうだからやめてやってくれって(ry
なんだ? また住民の皆さんアク禁巻き込まれたか?
そういや今まとめにうPしてるのって47=82さんと121さんの分だけだけど
他の方の分はうPされないのかな・・・
ためしに、別の職人さんの作品うPしようとしてみたんだが、
なんか、パスワード請求されて出来なかった……ひょっとして、47=82氏もうpできてないのではなかろうか
自分、ライブドアに登録してるから、うpしてもいいんだが。
636 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/08(金) 02:58:52 ID:PQ7e3Am2
age
637 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/08(金) 04:07:19 ID:DdJW5Iqh
GJ!
と言うか、「点炎」が気になって気になって・・・
>「点炎」
シンを探すために海軍に入ったマユと成り行きで戦う訳ですな。
と、勝手に予想してみる。
>「点火」
ラクスだったらどうしよう
、と勝手にガクブルってみる。
多分『点炎』はハイネ・ヴェステンフルス
641 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/09(土) 00:13:37 ID:49VUZcGA
そうか!イグナイテッドか!?
てっきり キラだと思ってた俺はど阿呆。
642 :
601:2006/12/09(土) 00:41:56 ID:???
点炎……うむ、何故かは知らんが「着・火!」とか叫ぶ姿が浮かんだけれど、まあドハズレでしょうな。
では、これより「六式シン」2本目投下します……まだ出航してねえ orz
643 :
601:2006/12/09(土) 00:44:02 ID:???
あの夜、ビフから聞かされた「政府に飼われる殺し屋」と言う境遇の話は、シンに複雑な怒りを抱かせる
ものだった。
『正義の名の下に民間人を……って、何だよそれ! そんな正義があるか!』
サイファーポールナンバーナイン、CP9とも呼ばれる世界政府直属の諜報機関。それが、ビフの古巣だった。
CP9は、政府に非協力的な民間人を暗殺する権利を、政府によって保証されている。
そのメンバーは、皆「六式」と呼ばれる体術を会得し、それにより、圧倒的とも言える戦闘能力を得ているの
だと。
『オレも同感だ。だから、オレは抜けたんだよ、CP9を』
激昂するシンに、ビフはそう言って聞かせた。左腕を失ったのは、その時、追手となったかつての同僚との戦い
の最中だったそうだ。そして、更にこうも言った。
『六式は、所詮ただの技術だ。まあ、普通に使えば壊すか殺すかの役にしかたたねえが、使うヤツの根性しだい
で、何かを守る役には立てるはずだ。使いどころさえ間違えなきゃな』
そして、号泣の夜が明けた翌日から、シンの新しい生活が始まった。
午前中は農作業と親子牛カマンとベールの世話、昼食を挟んで、午後はビフによる六式の鍛錬だ。
最初こそ、基礎体力の面で問題があったが、しかし、シンは驚異的とも言える速度で成長していった。
一ヶ月が経つ頃には、体力面ではビフに並ぶとまでは行かずとも、苛烈を極める鍛錬には充分付いていけるほど
にまでなっていた。
鍛錬の中で、ビフが着目したのは、シンの反射神経と動体視力、適応能力の高さだった。もともとがザフトの
赤服として、モビルスーツでの高速戦闘に慣れているシンだ。コーディネイターとしても、反応速度に関しては
群を抜いていたのだ。
そして、思考速度の異常とも言える速さと、適応力の高さは、ビフでも目を瞠るものがあった。
3種のシルエットを駆使し、あらゆる状況に対処可能とされたインパルスのパイロットに抜擢されたシンだ。
それもまた、当然と言えはしただろう。
やがて、シンとデスティニーがこの世界に現れてから、3ヶ月余りが過ぎた。
644 :
601:2006/12/09(土) 00:46:50 ID:???
ビフとシンは、二人が暮らす小屋の裏手にある広場で、10メートルほどの距離をとって向かい合っていた。
ビフは普段どおりの姿だが、シンは、自分の身長ほどもある、長い剣を携えていた。鞘も柄も丸いソレは、鍔
も大きせいで、一見いびつな十字架のようにも見えた。
広場とは言っても、せいぜいが20メートル四方、更に言えば、もともとビフ以外に住む者もいなかった島で
あるから、当然舗装などもされていない、ただの空き地だ。二人から離れた所では、ビフの飼う親子牛、カマ
ンとベールがのんびり草を食んでいたりする。
「さて……準備運動は済んだな?」
「ああ、いつでも良いぜ」
「ぶもー」
「もー」
不敵に笑う二人と、声援を送る二匹。緊迫しているのやら、いないのやら。その微妙な空気も意に介さず、
ビフがぽつりと口を開く。
「『剃』」
刹那、土煙を残し、ビフの姿が掻き消える。だが、シンは意に介さず、手に持った剣を鞘に収めたまま眼前に差し上げる。
が き ん っ
衝撃音が響き、突如ビフの姿がシンの目の前に現れる。ビフは右拳をシンに向けて突き出していたが、剣の柄がそれを受け止めていた。
ビフは口の端を歪めて笑った。
「ふん。『剃』は見てとれるか。なら、これはどうだ? 『剃刀』」
またもビフの姿が掻き消える。今度はシンもその場を跳んで離れると、素早く視線を辺りにめぐらす。
常人の目には捉えきれぬ速度で、ビフが剃と月歩を繰り返しつつ、かく乱するようにジグザグに辺りを乱れ飛ぶ。
「『指銃』!」
ビフの声が響き、鋼の指先がシンの背後から迫る。だが。
「フォース!」
今度はシンの叫びが響き、剃ほどの速度ではないが、しかし、まるでホバリングでもするかのように、シンの体
は高速で地を滑ってビフの指銃から逃れる。シンはそのまま滑らかな曲線を描きつつ、剣の柄を掴んで取り外し
た。そこは、まるで槍の穂先のように、鋭く研ぎ澄まされていた。
ビフはまたしても剃でその場を離れるが、シンはそのままビフが跳んだ先へと進路を変え、ビフの姿が現れると
同時に「『剃』!」ビフめがけて突進した。
「ケルベロス!」声と同時に、上中下段に向けて、三連続の鋭い突きこみが入れられる。が。
「『鉄塊』!」
ご き ぃ んっ
金属同士の衝突音にも似た音が響いた。
645 :
601:2006/12/09(土) 00:48:53 ID:???
「ぶも……?」
「も……?」
カマンとベールが目を覆った前足をそっとどかすと、そこには、槍を突き出したシンと、その穂先を鉄塊で固めた
胸板で受け止めるビフの姿があった。
「ぶもー」
「もー」
揃って胸を撫で下ろす、器用な親子牛であった。
「ふん。大体『剃』はものにしたみてえだな」
「何とかね」
「フォースっつったか。アレは中々面白えな。『剃』に比べりゃ全く遅えが、方向の操作はかなり楽そうだしな」
「まあね。勢いを殺した『剃』を連続してるだけなんだけど、俺には合ってるかな。その代わり、俺にはまだ
あんたが使ったみたいな月歩や鉄塊、指銃はまだまだだけど」
半ば悔しそうに言うシンを見下ろしつつ、ビフがぽつりと呟いた。
「頭銃(ずがん)」
ご い んっ
鉄塊で岩をも砕く堅さとなったビフの頭突きが、シンの頭頂部を直撃した。
「っか〜〜〜! 何なんだよアンタはっ!」
「頭銃くらって『何なんだ』ですますなよ……贅沢ぬかしてんじゃねえ、このクソガキ。たった3ヶ月で『剃』を
ものにしたってだけで、胸張って良いんだぞ。ったく……普通なら1年以上はかかるってのに」
「そういうもんなのか……あとさあビフ。これ、ホントに貰って良いのか?」
シンは、槍として使っていたそれをビフに指し示した。今は、柄――槍の鞘をかぶせられている。
「ああ、その剣『両面宿難』はもともとオレがCP9で使ってた得物だが……今のオレには用無しだ。もともと、
オレはそんなに使わなかったしな。くれてやるよ」
「解った。でもすげえ発想だよなあ……長い鞘を外せば剣に、短い鞘を外せば槍に……か。局面ごとに使い分け
が出来るってわけだ」
「お前の特質を生かすにゃ、持って来いだろ? まあ、オレはあまり道具に頼らなかったが……お前なら使いこな
せるだろうよ」
「ああ、やってみせるよ」
デスティニーに助けられた命、絶対無駄にはしない。この世界で、自分が何を目指すのかはまだ解らないが、
新天地を生き抜こうと言う決意だけは、しっかりとシンの胸に刻まれていた。
646 :
601:2006/12/09(土) 00:50:44 ID:???
シンがビフから学んだのは、何も戦い方ばかりではない。この世界の基礎的な知識や、簡単な航海術もまた、
ビフから教わり続けていた。
「海軍、海賊、賞金稼ぎ……がらっと変えて、どっかの街で腰落ち着けるんでも良い。が、いずれにしろだ、
海賊にでもなろうってんじゃあない限り、海軍に喧嘩売るのはやめておけ」
「やっぱ、まずいか」
「当たり前ぇだ。下手に海軍将校辺りと揉め事起こしてみろ。すぐさま懸賞金が掛けられて、お尋ね者だ」
そうした講義の中で、ビフが重点的に教えたのは、身の振り方と、それに関する注意点についてだった。
「一度賞金首になっちまったら、そいつをチャラにするのは並大抵の事じゃねえ。とっ捕まってきっちり『オツ
トメ』を果たすか、さもなきゃ、死ぬまで逃げ続けるかだ……まあ、中には『王下七武海』なんてのもあるが、
ありゃあなろうと思ってなれるもんでもねえからな」
「まあ、当座はあっちこっち見て回るつもりだからね。俺も。そうそう面倒は起こすつもりもないよ」
「なら良いがな。オレは、海賊が悪いとは言わねえ。中には単純に悪党と呼べない奴らもいるからな。海軍にも
善玉悪玉色々揃ってるように、海賊だって同じだ。やむにやまれぬ事情から賞金首になっちまったヤツもいる」
「そういうもんだよな、やっぱり」
シンの脳裏には、前の世界で出会った人々の姿が浮かんでいた。思い出すたびに腹の立つ顔もあったが、しかし、
今となってみれば、彼らにも彼らなりの理由があったのだろうと、思わぬでもなかった。
それに賛同出来るかどうかは、全く別の問題だが、少なくとも、慮る事は出来た。
彼等は、多分彼等なりに、何がしかを考えてはいたのだろう。今にして思えば、デュランダル議長の掲げた
デスティニープランは、シンにしても疑問に思わぬではないが、少なくとも、デュランダルが世界の状況を憂えて
いたのは確かなのだ。
ならば、多分彼等も。そういう事だったのだろう。
ビフから話を聞かされる内に、シンは、かつての自分が思慮の足らぬ小僧であったという事を、想像できるように
なっていた。
裏切りと言う行動そのものは今尚許せないが、それでも、アスランが自分を叱咤した理由ぐらいは、理解出来る程に。
647 :
601:2006/12/09(土) 00:53:04 ID:???
更に一月あまりが過ぎた。その間にも鍛錬は続けられたが、剃の他には、月歩はあやふやな状態で、嵐脚は肝心の
衝撃波を中々出せず、鉄塊、指銃、紙絵に至っては入り口にも立てぬという状態が続いていた。
「お前……才能あるんだか無いんだか、良く解らんヤツだなあ」
呆れたように言うビフに、シンは面目ないと叩頭するよりなかった。
「まあ、嵐脚は衝撃波が出ないが……その状態でも、単純な蹴りとしちゃあ、まあそこそこ使えるだろうけどな」
「どうも、鉄塊や紙絵って、コツがつかめないんだよなあ」
「向き不向きってもんもあるしな。六式全部満遍なく極めたヤツなんざ、滅多にいねえ……と」
ごろごろと、肉食獣が挙げるうなりのような音が、空から響く。見れば、南の方で黒い雲の塊が湧き上がっていた。
「ちっ……こりゃ嵐になりそうだな……仕方ねえ。今日はこれまでだ。オレは畑の方を片付ける。お前はカマンと
ベールを小屋に連れてけ」
「OK。でも、最近嵐が増えたなあ……台風シーズンってヤツなのかな」
「……」
何気のないシンの言葉に、ビフは眉間に皺を寄せ、湧き上がる黒雲をじっと見詰めていた。
To be continue
648 :
601:2006/12/09(土) 00:54:30 ID:???
と言う事で、投下完了です。中々話が進まんで全くスマヌ。
いつもながら職人さんGJであります!(`・ω・)ゞ
胸を撫で下ろす親子牛ワロタwwwwww
650 :
47=82:2006/12/09(土) 07:45:49 ID:???
GJコールサンクス!
そして601氏GJ!!
成長したよなあシン……彼がCP9と摂食した時の反応が今から楽しみですw
>>635 非常に厚かましいお願いですが、お願いできますかね?
アップしようにも、アレではお手上げなのです。(汗
十字架の横部分がナイフってことなのかー
652 :
635:2006/12/09(土) 22:47:32 ID:???
まとめに、47=82氏のと121氏のと514氏のをアップしました。
何か問題点等あれば言ってください。訂正いたします。
で、ちょっと質問ですが。
514氏、0.8話と言うのもなんだか変なので、1話前編、後編と言う形でのアップになっています。
これでいいでしょうか。
それと、両方ともここにアップされたままの形になっています。
前編と後編の辻褄があうように変更した方がよければ、言ってくだされば変更します。
その時、ただのコピペでは繋がりがおかしくなりますが、コピペでいいのか、それとも内容変更までした方がいいのか等もよければお教えください。
それから、601氏。
題名等ありましたら、よろしくお願いします。
その名前でまとめの方にアップさせてもらいますので。
653 :
514:2006/12/09(土) 23:20:29 ID:???
>>635殿
0.8話は、
「1話の話の流れでは入れることが出来ないけれど必要なエピソード」
という感じなので、第1話の補完的意味合いが強いんです。
なので第1話(補注)とでもしていただけるといいと思います。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。
>>47=82殿
シンよ、シュールストレミングだって頑張って発酵してるんだぞ。においだってその過程で仕方がなく
発生したものであって、それを罵倒の言葉に使うなんて、なんて奴なんだ。
>>601殿
剃を使えると言うことはクロ戦じゃ大活躍かな? 専用武器も手に入れて、冒険の準備は万端ですな。
しかし、MS乗りだったシンが技の名前を叫ぶなんて成長したと言うかなんというか・・・w。
654 :
601:2006/12/10(日) 01:00:06 ID:???
>>635殿
まとめへのアップ、乙です。
で、自分の書いてるヤツですが、特にタイトルは決めてませんでした。
えー、とりあえずは、「ONE PIECE Destiny」とベタな方向でお願いします。
>>514殿
あー、とりあえず麦わら一味への合流は、ローグタウン辺りで考えてました。
やっぱり、剃だけでも敵とのバランスが難しいですから。ですから、VSクロ戦てのは無いです。すんません。
655 :
47=82:2006/12/10(日) 07:17:25 ID:???
>>635氏
まとめへのアップ、ありがとうございます。お手数おかけしました。
656 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/11(月) 03:15:46 ID:I1kB/URK
なんか、流れが止まってるんで話題投下!
シンをゾーン系悪魔の実食べたらッて話があったが、あれって素で3タイプいけなくない?
獣型=フォース
人型=ソード
獣人型=ブラスト
みたいに。
658 :
601:2006/12/11(月) 20:34:51 ID:???
とりあえず出航まで書けましたんで、投下します。
あ、タイトルは「機動海賊ONE PEIECE Destiny」です。 我ながらベタも良い所ですが。
659 :
601:2006/12/11(月) 20:36:33 ID:???
機動海賊ONE PIECE Destiny 第三回
「ぶはぁっ!」
海面を割って浮上したシンは、粗末な茣蓙が敷かれたデスティニーの掌の上にあがると、持っていた網から貝を取
り出し、幾つかは脇に置いた桶に、幾つかは海へと投げ戻した。
「ひのふのみ……と。こんだけあれば、晩飯には充分かな……ふう」
一つ溜息をつき、空を仰げば、抜けるような青空と、はぐれ雲がいくつか、そして、中天に輝く太陽が目に入る。
この世界に来て、はや半年近くになるが、その間、退屈などしている暇は、ほとんど無かった。出会った人間と言
えばビフただ一人だが、そのただ一人が、ビフであった事は、きっと幸運だったのだろうと、シンは思っていた。
「なあ、デスティニー」パイロットスーツを切って作った水着姿のまま、シンは膝を抱え、茣蓙ごしにデスティ
ニーの掌をなぜた。「俺、こっちに来れて、良かったと思うよ。お前のお陰だ。有難うな、相棒」
――どういたしまして、相棒。
そんな声が、聞こえた気がした。
シンが岸辺を離れて小屋の方に戻ると、畑にビフの姿はなかった。たいがい、昼前のこの時間は、右腕一本で畑仕
事をする姿が認められたのだが。
さて、一体どうしたのかと見回せば「おう、戻ったか」上から声がかけられた。何事かと見上げれば、小屋の屋根
に登ったビフが、望遠鏡を覗き込んでいる姿があった。
「ただいま。晩飯になりそうなのが見つかったよ。後、仕掛け網の方は直しといた」
「おう。ご苦労さん」
そう答えるビフは、相変わらず望遠鏡を覗き込んだまま、動こうとしなかった。
「どうしたんだよ、何か見えるのか?」
660 :
601:2006/12/11(月) 20:37:24 ID:???
「ああ、まあ、な」言ってから、ビフは初めてシンの方に視線を向けた。「とりあえず昼飯にしようや。カマンとベールの方は、
俺がやっとくから、お前は着替えて来い」
「はいよ」
シンが小屋に入ると、ビフは腰を上げ、右手だけで器用に望遠鏡をしまい、ぽつりと呟いた。
「大して、時間は残ってねえな」
その視線の先では、島を取り囲む巨大な渦潮が、いつもと変わらぬ勢いで波飛沫を上げていた。
−−−−−
夕食後――普段ならば、航海術やこの世界についての基礎知識の講義にあてられる時間だが、その日ビフは、シンを
小屋からやや離れた所にある物置へと連れてきていた。
扉を開けたそこには、一艘の船――ボートと言うよりは、ヨットに近い――があった。
「これは?」
「オレがここに来る時に使った船だ。これで出発すると良い。一本マストで三角帆だが、これでも外洋を渡るのは
可能だ。本当なら、こいつの扱い方もみっちり教えたい所なんだが」
「……だけど?」
「時間がねえ。もうじき、嵐壁(ウォールストーム)が来る」
「嵐壁……?」
ビフの説明は、次のようなものだった。
この島のある海は、東西南北、あちこちから来る海流がぶつかる辺りに該当する。事に、「凪の帯」や「赤い土の
大陸」にさえぎられて帰ってくる海流までもが、この辺りで一度合流している為、非常に複雑な潮を形成している。
島を囲む渦潮は、その複雑な潮目が生み出しているのだ。
だが、この時期、その複雑な潮目が、一時ゆらぐ事がある。「凪の帯」にぶつかった海流が、この辺りの海域で嵐
を生んでいる海域にぶつかると、水温の次第によって、複数の台風が一列に並んだ巨大な嵐――嵐壁が発生するのだ。
「嵐壁の発生するのは、毎年って訳じゃねえ。が、今年の嵐の量からすると、来る確立が高い。そして、嵐壁が発生
する時は、あの渦潮が、僅かな時間だが治まるんだ。オレがこの島に辿りついた時もそうだった」
661 :
601:2006/12/11(月) 20:38:41 ID:???
「じゃあ……」
「次、何時嵐壁が来るかはまるで解らねえ。実際、オレがここに来てからの5年間、嵐壁が発生したのは最初の一
回と、3年前の一回だけだからな。こんなチャンスは、次いつあるか」
「でも……俺、まだ……」
まだまだ、自分は弱い。まだまだ、自分は未熟だ。そう、シンは思っていた。こんな事で、本当にこの新しい世界を
渡っていけるのだろうかと。そんな、臆病とも言える心理が、シンを支配していた。だが。
「『頭銃』」
ご い んっ
鋼の額が、シンの頭頂部にぶつけられた。
「ったぁ〜〜〜! 何すんだよ!」
「アホ。お前、何時までもこの島にくすぶってるつもりか? 冗談じゃねえ。『アイツ』は、そんな事の為にお前を
ここまで運んで来たわけじゃねえだろうが」
「あ……」
「おっかねえってのは解る。所詮、お前にゃまだ見たこともない世界だ。けどな。お前は探すんだろ? この世界で
自分に出来る事を。本当にやりたい事を。だったら」
「そ……っか」
「明日からすぐ、こいつの扱い方も講義の中に入れる。やる事ぁ一気に増えるぞ」
「ビフ……」
「あん?」
「もう一発、『頭銃』頼む。気合、入れてくれ」
見上げるシンの目に、もはや臆病さが無いのを見て取ったビフは、口の端を大きく歪めて笑った。
「よおし……歯ぁ食いしばれ!」
ど ご ん っ!!
「ぶも……?」
「も……?」
響き渡ったその音に、カマンとベールが迷惑そうに眠い目をこすっていた。
662 :
601:2006/12/11(月) 20:39:27 ID:???
翌日から、ビフの宣言どおり、操船術の講義が始まった。更に、六式の鍛錬、航海術、基礎知識の講義にも、これま
で以上の集中力をもって、シンは打ち込んだ。
この新しい世界で、自分が何をするのか。それはまだ解らないが、それでも、自分をここまで運んでくれた相棒に、
顔向け出来ないような事には、決してなるまいと、必要だと思われるものは全て吸収しようと。
やがて――吹き荒れる嵐の量も増え、明日にも巨大嵐、嵐壁が発生するだろうと思われる日がやって来た。
シンは、一人海に潜り、デスティニーのコクピットへと来ていた。ここに来て早半年以上経過したそこは、蟹や小魚
達の、格好のすみかとなっていた。今の住人達を驚かせた事を心中詫びつつ、シンは、久しぶりにシートについてみ
た。
不思議と、あの最後の戦いの記憶は、蘇っては来なかった。それで、良いのだろうとも思った。あの時、自分は一度
死んだようなものなのだ。自分が考えるべきは、この相棒が連れてきてくれた世界で、どう生きて行くのか。それだ
けなのだろうと。
息苦しさが感じ、そろそろ戻ろうとした時、視界の端に、ゆらりと漂うものがあった。それは、デスティニーのメイ
ンモニターの破片だった。最後の戦いでひびわれたそれから、落ちたものだろう。シンは、ふと思い立って、それを
掴むと、一気に海面まで上がって行った。
−−−−−
そして、翌日。とうとう、南の海で、嵐壁が発生したのを、ビフが望遠鏡で確認した。
シンは、あの船に、ビフはカマンやベールと一緒に、急ごしらえの筏に乗って、北側の渦潮の近くまで来ていた。
「やっぱりだ。潮目がだいぶ変わってる。後数分もすりゃあ、渦が一度消えるだろう。その時一気にここを突っ切れ
ば、外の海に行ける」
「ああ……なあ、ビフ」
「あん?」
「これを、後でデスティニーのところに、持って行ってやってくれないかな」
シンが差し出したのは、ピンク色の、携帯電話だった。
663 :
601:2006/12/11(月) 20:41:49 ID:???
「これは……?」
「妹の、形見なんだ。こいつを、デスティニーのコクピット……腹の中に、置いて来て欲しい」
「良いのか?」
「ああ。俺が、本当にこの世界で生きて行く覚悟の為に。これは、持って行っちゃいけない気がするんだよ。その代
わり、俺はこれを持っていく」
シンは、赤服の襟元から、ネックレスのように首にかけた革紐を引っ張り出した。そこには、小さな皮袋が下がって
いた。
「デスティニーの、破片だ。ほんの小さなかけらだけど……そのかけらだけでも、俺は、アイツを連れて行ってやり
たいんだ。俺の見るものを、アイツにも、見せてやりたいんだ」
「解った」
ビフは、携帯を預かり、懐へとしまいこんだ。その脇では、カマンとベールが寂しそうに鳴き声を――否、泣き声を
挙げていた。
「カマンとベールも、今までありがとうな。カマンのミルクで作ったチーズやヨーグルト、美味かったよ。ベールも、
遊び相手になってくれて、ありがとうな」
「ぶもー……」
「もー! もー!」
カマンとベールの頭を撫でつつ、ビフが口を開いた。
「シン。俺からも頼みがある。とは言っても、無理にじゃねえ。会えるかどうかも解らねえ相手だからな」
「どういう事だ?」
「この世界のどこかに、ニコ・ロビンって名前の女がいる。CP9が、海軍が、政府が何もかもを奪い、罪を被せた
女だ」
664 :
601:2006/12/11(月) 20:44:27 ID:???
「ニコ・ロビン……?」
「生きてるかどうかも解らねえ。だから、無理に探せとは言わねえ。ただ、もしその女に会ったなら、伝えて欲しい
んだ。一言、『済まなかった』ってな」
「ビフ」
「解ってる。謝った所で、何一つ償いになんざなりゃしねえ。そもそも、アイツはオレの事なんざ知りもしねえだろ
う。でもな……オレがあの時、あのクソ野郎のそばに居られたら、あのクソ野郎をぶっ殺してでも止めていたら。そ
う、思ってな」
「良くは解んないけど……解った。伝えるよ」
「頼んだぜ」
二人が笑みを交わすのとほぼ同時に、ぴたりと、風が止んだ。そして、目の前の渦が、次第にその勢いを止め、やが
てはついに、完全に消え去っていた。
「よおし! シン、構えろ!」
「おう!」
「良いか、渦が消えてるのはほんの数分、その間、風も止まる! だから、オレ嵐脚とお前の剃、同時に蹴りを出し合って、
ぶつかった衝撃で、そっちの船を外洋にまで飛ばす! 良いな!」
「いつでも良いぜ!」
シンが帆柱に体を縛りつけ、足元を踏み固める。筏では、カマンとベールが錨を投げ下ろしていた。
「一発勝負だ。覚悟は良いな?」
「任せろ。のるかそるかってのは、慣れっこだ」
「行くぜぇぇぇぇぇえええ!!」
「来ぉぉぉぉぉおおおい!!」
二人の蹴り足が同時に繰り出される。空を切り裂く勢いで打ち出された蹴り足の、靴底同士が激しく衝突し、やがて。
「「おぉぉぉぉおおりゃぁぁぁぁぁあああっ!!」」
撃ち出すビフの蹴り足と踏み下ろすシンの蹴り足が生む衝撃は、一陣の風となって、船の帆を大きく膨らませた。
665 :
601:2006/12/11(月) 20:45:50 ID:???
ば んっ !!
膨らんだ帆に衝撃をはらんだまま、シンの乗った船は、宙を舞う。眼下では、再び動き出した渦潮がゆっくりと、そ
の勢いを増していく。
「行って来ぉーい! シーン!!」
「ぶもーーーっ!!
「もーーーーっ!!」
「行って来るぜー! みんなーっ!!」
波濤の中、筏の上でビフとカマン、ベールが叫ぶ。シンがそれに叫び返す。視線の先には、半年を過ごした島と、そ
の岸辺に覗く、デスティニーの右手。
行って来るよ、デスティニー。そして、一緒に行こう、デスティニー。お前が連れてきてくれたこの世界で、色んな
ものを見よう。色んな事を聞こう。一緒に、体験しよう。なあ、相棒。
衝撃と共に、船が着水する。渦潮も、筏も、島も、すでに遠い。突如、起こった風が、帆をさらに膨らませる。
シンは、振り返らずに、帆を操作した。船は勢いを増し、シンを大海賊時代と呼ばれる、波乱の海へと、誘って行った。
To be continue...
と言う所で、まずは「旅立ち編」の終わりとします。
以後は、表紙連載風にダイジェストで行って、ローグタウンで麦わら一味との出会い、合流にしていこうかなーと。
んでは、連投失礼しました。
666 :
47=82:2006/12/11(月) 21:55:44 ID:???
GJです! 601氏!
シンにマユの携帯との決別をさせますか……そしてビフ、ロビンの事知ってたんですね……
ロビンとの接触も含めて、これからの事がますます楽しみです。
667 :
635:2006/12/11(月) 22:34:21 ID:???
601氏、GJです。
では、機動海賊ONE PEIECE Destiny第1話、2話でまとめの方にアップしておきます。
>>601氏
うおおおおお!GJ!!
続きが楽しみだw
相棒とガンガレツン
シェルズタウンでコビーと別れた三人は、グランドラインに向けて海を進んでいた。
と言っても、直接向っているわけではない。シンが買っておいた物の中には確かに海図があったが、
いくらなんでもグランドラインまでの航路は記されていなかった。とりあえず、近くにある島々を巡り
ながら、噂に聞く『始まりと終わりの町』ローグタウンに向かうということになっていた。
しかし、
「あれー? おっかしいな」
海図とコンパスを見ながらシンは首をかしげた。出発してから数日、そろそろ陸地くらい見えてもい
い頃なのだが、相変わらず360度、どこを見渡しても海ばかりである。すなわち麦わら海賊団、目下
遭難中。
「あー、腹減ったー」
すでに本日数度目となる台詞をゾロがつぶやく。予定なら一日か二日前に島についている筈だったの
で、食料は一昨日の昼ごろには食べつくしてしまっていた。魚を獲ろうにも、時期が悪いらしい。
少しばかり非難めいた響きが混じっているのはシンの気のせいではないだろう。
「俺に任せろなんて言ったのはどこのどいつだ」
「スイマセン・・・」
「だいだいお前が船長だろ、ルフィ。航海術を持ってねえってのは、おかしいんじゃねえか」
「おかしくないよ。俺たち漂流してたんだから」
「だからさ、はやく航海士を仲間にしようって言ってんだよ」
「普通そんなもんは海に出る前に何とかするもんだろう」
正確に言えば、シンにはすこし航海術の知識はあった。しかし、それも所詮経験の伴わないものであ
り、その程度で渡れるほどこの海は甘くはなかったのだ。そもそもシンはルフィに音楽家になれと言わ
れたので、そっちの練習に多くの時間を割いてきた。ルフィがそういった技術を持っていないと知った
のは、船に乗ってからである。
なんにせよ、無計画に海に飛び出して、自分の村にすら戻れなくなったゾロが言えたことではないが。
「「腹減った」」
「しょうがない。もう一回潜ってくるか」
バタッと倒れこんだ二人を見て、シンはため息混じりにつぶやく。コーディネイターのおかげか、二
人と比べてシンの燃費は格段に良い。魚を獲るのはシンの仕事になっていた。
ついでに言うと、シンは二人に自分の境遇を話してはいないし、そうする必要も感じていない。彼ら
はあくまで今の自分を仲間だと思ってくれている。だからシンも特に二人やこれから仲間になるだろう
者たちの過去を詮索する気はなかった。
赤服の上を脱いで潜る準備をしていると、空を見上げていたゾロが何かを見つけた。
「お、鳥だ」
「でけえな、わりと」
つられてシンも上を見る。
「マキノさんのから揚げ旨かったなあ・・・」
「そうだなあ・・・・・・よし、食おう! あの鳥!!」
「どうやって」
「銃なんてないぞ」
「俺が捕まえてくる。まかせろ! ゴムゴムのロケット!」
ルフィは腕を伸ばしてマストをつかむと、鳥に向かって飛んでいった。
「なるほどね」
「俺も負けられないな」
あの鳥より大きい魚を獲ってこようとシンが気合を入れて海に飛び込もうとする。
しかし、
「は!」
「は!?」
変な声にもう一度上を見ると、ルフィが鳥に頭をくわえられていた。しかも鳥はそのままどこかに
飛んでいく。
「ぎゃー! 助けてー!」
「「あほー!!」」
二人は空腹も忘れて、鳥を追いかけ始めた。オールは一組しかないため、力が残っているシンが船
をこぐ。
「あのバカ!!」
「何やってんだ、てめえは!」
普通、手漕ぎで鳥に追いかけるなんて無理な話だが、さすがはシン、追いつかないまでも一定以上
の距離を開けずに進んでいる。だが事はそう簡単には進まない。
二人の行くてに助けを求める人影が見えた。
「遭難者か、こんな時に! どうする、シン」
「見過ごせるわけないだろう! 引きあがられるか?」
「このスピードじゃ無理だな」
「じゃあ落とす」
「わかった。おい、船は止めねえ。勝手に乗り込め!」
そうして常識的な速度になった船に遭難者達が乗り込んだ。人数は三人。なんだか一般人らしから
ぬ格好をしている。案の定、彼らは礼を言うどころか懐から刃物を取り出してこう凄んだ。
「船を止めろ。おれたちゃ、あの海賊『道化のバギー』様の一味のモンだ」
もちろん、シンとゾロにそんな脅しが通用する筈もない。恩知らずな言動に、特にシンがきれて、
遭難者改め海賊の三下たちをぼこぼこにする。
このロスタイムがいけなかった。
一通りやり終わって、二人が追走を再開しようと思った頃には、もう鳥とルフィの姿は消えてしま
っていたのだ。
シンとゾロは口論を始めるが、最終的にはこんなところで遭難している奴らが悪いという結論に達
するまでそれほど時間はかからず、二人して彼らをもう二三発ずつ殴ることで決着がついた。もちろ
んこの間にもルフィとの距離は確実に離れていってしまう。
とりあえず、彼らが所属する海賊団の拠点である島がすぐそこにあり、鳥も方向から考えてそこ
に向っていったのは間違いないらしいと言う話なので、そこに向うことにした。もちろん、船を漕い
でいるのは拾われた海賊達である。
「あなた方があの『海賊狩りのゾロ』さんとそのお仲間だとはつゆ知らず失礼しました!」
「いいからさっさと漕げ」
「ホントにお前らの言ったとおりで間違いないんだろうな」
「そりゃ間違いなく。そのでけえ鳥なら何度か見てやすから」
「――で? なんで海賊が海の真ん中でおぼれてたんだ」
「それだ! よく聞いてくれやした!」
ゾロの疑問に海賊達は待ってましたとばかりに話し始めた。なんでも、商船から宝を奪った帰りに
、今度は自分達がその宝を女に奪われたらしい。
注目すべきはその女の手口である。
海賊相手に盗みを行える根性はもちろん、あらかじめスコールが起こるギリギリの場所・時間を選
択できなければこの犯行は成立しない。温度・湿度・気圧・風向き・海流などのさまざまな情報を総
合的に処理する必要がある。C.Eの技術でさえも天気予報の的中確立は100%には及ばないのだ。
「海を知り尽くしてるな、その女。航海士になってくれねえかなあ」
「そんなに正確に天候を予測できるのか・・・。しかしお前ら情けないなあ。海賊がそんなんでいいの
か?」
「あいつ、絶対探し出してぶっ殺す!」
「それより宝をどうする」
「このまま帰ったらバギー船長になにされるか・・・」
「そのバギーってのは誰なんだ」
「ゾロ、お前賞金稼ぎだったクセに海賊の名前知らないのか」
「俺は賞金額しか見なかったからな。わざわざ名前なんか憶えねえ」
「二人ともホントに知らないんで? 俺たちの海賊船の頭で『道化のバギー』。『悪魔の実シリーズ』
のある実を食った男でね、恐ろしい人なんだ」
「悪魔の実を?」
悪魔の実。その言葉を聞いたとき、シンはなんだかいやな予感がした。なぜなら、自らやっかい事
を拾って歩くような男であるルフィがその男がいる島に向って独走を続けているのである。
(何もなきゃいいんだけどなあ)
心の中で呟きながら、どう考えてもそれが叶うわけないことをシンは確信してしまっていた。
そしてこの状況である。
数人の海賊達が女に襲い掛かろうとしていた。別に知人ではないが、シンとゾロは当然のように
助けに入る。
ルフィは仲間達の登場に歓声を上げるが、なぜだか檻の中にいる。
島に到着した後、シンとゾロはとりあえずバギーのところに向うことにした。何か手がかりを得
ることが出来るかもしれないと思ったからである。
「やーよかった。よくここがわかったなあ! 早くこっから出してくれ」
「なに遊んでんだ、ルフィ。鳥につれてかれて、見つけたと思ったら今度は檻の中か、アホ!」
「思ったとおりにしたって限度があるんだよ、バカ!」
これで一安心とばかりに三人は言葉を交わすが、ゾロという名前に周りでざわめきが起こってい
る。
ゾロがルフィとシンの仲間になったのはたかだか数日前の話であり、シェルズタウンの海兵たち
がルフィたちのことを本部に連絡しないと言っていた以上、かの『海賊狩りのゾロ』が海賊の一味
になっているという事実はまったく知られていない。それがある程度名の知られた海賊団の本陣に
現れたとなれば、想像されることは一つである。
その証拠に、一人の男がゾロに近づいてきた。ピエロを連想させるような風貌と他の雑魚たちと
は一線を画す雰囲気が、そいつこそが『道化のバギー』であると物語っている。
「貴様、ロロノア・ゾロに間違いねえな。俺の首でもとりにきたか」
「いや、興味ねえな。俺はやめたんだ。海賊狩りは」
「俺は興味あるねえ。てめえを殺せば名が上がる。なんならそこの赤服もどうだ?」
「やめとけ。死ぬぜ」
「俺も同じだね」
そう返したものの、シンは微妙な違和を感じていた。
ゾロと自分の強さは対峙しているバギーも十分に理解できているはずだ。それが、これではまる
で戦いたがっているようにすら思える。悪魔の実を食べているとしても、二人を同時に相手に出来
るとは思えない。
事実、襲い掛かってきたバギーのゾロは右腕、胴体、右太ももの三ヶ所、シンは左腕を切断し、
簡単に返り討ちにしてしまった。
ゾロはもちろん、ルフィも先ほど助けた少女ナミもバギーのあまりのあっけなさに驚くが、周り
の海賊達はその光景を見て薄ら笑いすら浮かべている。
その様子にシンの中で先ほどの違和が像を結び、ある可能性が脳裏をかすめる。
その時、
ザン!!
「!!」
背後に気配を感じたシンはとっさに上体そらすが、短刀を持ったバギーの腕にわき腹を斬りつけら
れてしまう。
目の前ではゾロも同じくバギーの腕に攻撃を受け、こちらは自分以上の傷を負ってしまっている。
「ゾロ、シン!?」
「なに、あの手!」
予測すらしていなかった事態にルフィとナミが声を上げた。
シンは傷口を押さえながら構えるが、ゾロはひざを突いたまま立ち上がることさえ出来ない。逆に
バギーは斬られた部分が元に戻り、何もなかったように立ち上がっていた。
「ほう・・・赤服、よく俺の攻撃に反応できたな」
「あんたが悪魔の実を食ったってのは聞いてたからな。あとは周りの反応と出血していない切断面を
見れば、生きてるかもしれないってくらい思いつくさ」
「ぶわっはっはっは! どうやらおめえも只者じゃねえらしい。その通り! 俺の食った悪魔の実の
名はバラバラの実。俺は斬っても斬れないバラバラ人間なのさ!」
「ホント、何でもありだなこの世界・・・」
時空間転移のすえに最初に出会った人間がゴム人間という経験をしていなければ、シンとてこんな
ことは考え付きすらしなかっただろう。なにが起こってもおかしくないという思いは元々の住人達よ
りも強いといえる。
「急所ははずしちまったか、ロロノア・ゾロ。だが相当な深手だ。勝負あったな!」
相手はノーダメージ、こちらは一人はほぼ戦闘不能、自分も浅い傷ではない。
現時点において、シンは自分の中にブーストモードとでも言えるものがあることは理解しており、
以前のように発動中であっても我を失わないように訓練も積んでいる(発動させると種が弾ける様な
イメージが浮かぶため、シンはその現象を『SEED』と呼んでいる)。
ただし、自然に発現する場合とは異なり、自分の意思で無理矢理発動させると神経にかなりの負担
がかかるので、完全に使いこなせていると言うわけでもないのだ。進んで使いたいようなものではな
い。
もちろん今この場で戦うことが出来そうなのが自分しかいない以上、そんなことは言っていられな
い。しかも、ルフィがバギーを怒らせてしまった。シンは覚悟を決めて、精神を集中させる。
すると、
「逃げろ!! シン! ゾロ!」
「なに!?」
「ちょっ! せっかく助けに来てくれた仲間に逃げろって、あんたはどうするのよ!!」
シンはゾロと顔を見合わせて、ルフィの方を見た。何も考えていないのか、また助けに来ると信じ
ているのかよく分からないが、たしかにここはいったん退くのが良さそうである。
「「了解」」
「バカたれが、逃がすか!! バラバラ砲!」
二人で下がろうとしたところに、バギーが追撃を加える。飛んでくる両腕をシンがはじき返すと、
シンのナイフを見たバギーが表情を変えた。
「おい、赤服、それをどこで手に入れやがった」
「なんでそんなことあんたに言わなきゃならないんだ」
「そいつはてめえなんぞが持っていい代物じゃねえ。俺様が使ってやるからありがたく渡せ!」
どうやらバギーはこのナイフの来歴を知っているようだ。もちろん、だからと言って渡せる訳が
ない。
「おい、シン! さっさと来い!」
「そいつを置いてけ!」
「断る!!」
襲い掛かる両腕をなんとか防ぎながらシンが三人のところまで行くと、ゾロがルフィに向いてい
た大砲をひっくり返した。
ドウン!!
「無理するなあ」
「今のうちだ・・・。ところでお前誰だ」
「私・・・泥棒よ」
「そいつはウチの航海士だ」
「お、仲間にしたのか」
「バッカじゃのないの、まだ言ってんの!? そんなこと言うひまあったら自分がそこから出る方法
考えたら!?」
「いや問題ない。てめえは檻の中にいろ」
ゾロが鉄格子を掴もうとするのをシンがさえぎる。何も言わないので、そのまま檻を持ち上げよう
とするが、わき腹の傷のせいで上手く力が入らない。出血もひどくなる。
「おい、シン、いいよ。血が吹き出るぞ」
「ゾロがやるよりはましだ! 仲間を置いてなんていけるか!」
「なんでそこまで・・・」
深く息を吐いて集中し、SEEDを発動させると、今度は一気に檻を持ち上げて肩に担いだ。
「いくぞ」
GJ。
601殿は小物の使い方が上手いですね。
シンがロビンとの係りをもつということは、やっぱりアラバスタはけっこう原作と変わってきますかね。
シンのエニエス・ロビー編での大活躍も決まったようなものですし。
678 :
601:2006/12/13(水) 23:41:27 ID:???
GJコールありがとうございました。
で、
>>514氏も、またGJです。
ナイフにバギーが反応してるって事は、出所がシャンクスだったと考えると……ロジャーに関わる一品なのか。
しかし、SEEDってやっぱ反動大きそうだよなあ。
しばらく見ない間に素晴らしい作品がっ・・・・・・!
職人様方、いつもながら超GJであります(`・ω・)ゞ
680 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/15(金) 19:43:37 ID:pkCnlCXa
GJ!ついでにアゲ
681 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/16(土) 06:50:58 ID:5NTeYvpM
キラをワンピースの世界に投入したら、おそらく2刀流剣士で、背中のマントが分離したり、マントから武器が現れてビーム発進しそうー
オルガは背中に大砲かついでいて、その上バズーカも右手で持っている
クロトは鳥人
シャニは仮面を付けていて、サイズを構えている死神みたいです。アウルは魚人、ステラは獣人スティングも超人でいいと思う。
ウソップ涙の土下座
ここまでの話をやっとまとめにアップ。
遅れてスマン。
仕事が年末進行で忙しくて、余裕がなかったんだ。
乙
685 :
601:2006/12/19(火) 02:00:53 ID:???
>>683 乙です。
自分も今週はちょいと忙しいんで、次の投下は週末以後になるかと思います。
686 :
47=82:2006/12/19(火) 07:27:29 ID:???
乙です。
誤ることはありませんよ。私も、忙しくて投稿が遅れてしまいましたし。
……密かに週間投稿とかもくろんでたんですけどねえ(泣
じゃ、遅れ多分行きます
687 :
47=82:2006/12/19(火) 07:28:52 ID:???
人と魚人は根本から違うのだと、アーロンは言う。人間は下等であり、魚人は至高の種
族なのだと……一味に入ったその非から今日に至るまで、耳にタコが出来るほどにいわれ
続けていた理論である。ドニールとしては、コレに異を唱えたい。
アーロンの理論が事実だとすれば、人間と魚人には、共通する点が全くないことになっ
てしまうではないか。現実には、共通する特徴や要素が山ほどあるというのに!
そう、たとえば……
「 ゴ ム ゴ ム の 風 車 ぁ っ ! ! ! ! 」
信じがたいものを見た時に見せる反応とか。
『……!!!!?』
襲い掛かってきた巨大な海牛と多数の魚人たちを、たった一人の人間が一瞬で撃退する。
信じがたいその光景に度肝を抜かれ、目を見開くその姿は、魚人も人間も何一つ代わらな
かった。
しかも、方法が方法である。
地面に足ぶっ刺して、胴体を一回転移上ねじった後、腕を伸ばしてモームの角を引っつ
かみ、そのまま勢い任せにぶん回す。
……突っ込みどころが多すぎて、何処から突っ込めばいいのやら。不条理すぎて、普通
の人間の理解を超えてしまっている……ただ、たった一つだけ、全ての不条理を解決して
しまう答えがあった。
「あ、悪魔の実の能力者か――!?」
思わず漏れたクロオビのつぶやきこそがその答えだった。
海の秘法にして悪魔が姿を変えた魔性の実。口にしたものの体を変質させ、強大な力を
与えるといわれる果実……その種類は体がバラバラになるものや、獣に変身できるように
なるものまで、多種多様。
「ゴムゴムの実の、ゴム人間とかそんなのりか……? こりゃ、確かに体が変わってるな」
うろたえるクロオビに対して、ドニールの態度は平成そのものだった。腕組みして堂々
と構え、感心したようにあごを撫でる……その姿には貫禄があり、余裕の笑みすら浮かべ
ていて。
「だがなお兄ちゃん。いいか? 悪魔の実の能力者なんてものはな、グランドラインじゃ
ゴロゴロいるんだぜ? そこからやってきた俺たちが、能力者風情にしり込みするとでも
思ってんのかい?」
ぴっと、人差し指を立てて、格好をつけるドニール。
(決まったぜ! 俺!)
688 :
47=82:2006/12/19(火) 07:29:56 ID:???
……己の姿が光り輝いている事を信じて疑わないドニールだったが、周囲の反応は冷や
やかだった。
冷たい視線や呆れた目線、怒りのあまり血走った目線など、様々な目線に突き刺される
ニシンの魚人に対し、クロオビは怒号一喝。
「そういう事はもっと近くで言えこの腰抜けぇっ!!」
ドニール君、ルフィがモームを振り回すと同時に凄まじい気負いで逃げ出して、めっち
ゃと奥の安全地帯で踏ん反り返っていた。その逃げ足の速さといったらまあ、逃げ足の速
さに自身のあるウソップが、思わず目を丸くしたほどだった。
「あ、あいつ俺より逃げ足速いんじゃねえか!?」
「あー、確かに早かったなー」
シンも、逃げ出すドニールの姿を回想し、嘆息する。ココヤシ村の皆さんも、予想以上
にへたれたその姿に、コメントの使用が内容で、形容し難い表情を浮かべて沈黙を守って
いた。程度の差はあれど、その場に居た全員が、逃げ出したドニールに対して何らかの感
情を抱いていた。
ただ一人、この男を除いて。
「――ドニール、手前一体何やってやがる?」
低い、確認の言葉だった……発言者は、ノコギリのアーロン。
クロオビたちが意外に思ったのは、本来ならば一番怒り狂うべきである立場にあるアー
ロンの言葉に、何の感情も篭っていない事だった。放たれた言葉はドニールの行動に対す
る『確認』だ。
真剣に問われた事で、ドニールは眉をひそめて、
「うわ、酷え。アーロンさんまで俺が逃げたと思ってんの?」
「そう思ってねえから、聞いてるんだが?」
「あー」
そっけなく返されて、ドニールはがしがしと後頭部を掻いて、
「距離とって、全体を把握したかったんスよ。『あいつ』好き勝手が暴れちゃ、アーロンパ
ーク建て直しなんて事態になりかねない」
「呼んでもいねえってのに出てくるってのか?」
「そりゃあねえ」
689 :
47=82:2006/12/19(火) 07:30:44 ID:???
アーロンとドニール、鮫と小魚という、本来ならば捕食する者される者であう二人の会
話が途切れた、その刹那――
ぐ ら ぁ っ !
海面と地面が、揺れた。
『うわぁっ!?』
不意打ち気味に地面から襲い掛かる振動に、海賊達の背後に居並んでいたココヤシ村の
人々は、体制を崩し尻餅をつくものや倒れるものが続出する。魚人海賊団や麦わら海賊団
の一同も、腰を落としこそしなかったものの、立っているのがやっとという状態だった。
「な、なんだぁっ!?」
「地震か!?」
「違う!」
地面に腰を落とし、恐れ慄くヨサクとジョニーを、シンは一喝した。
「こいつは、俺に任せてもらうぜルフィ!」
「ああ。別にいいぞ」
立っているのもやっとな酷い揺れの中、シンは背中のインパルスをつかむと、それを覆
う包み布を取りはずした。布が風に煽られ飛ばされて、日の光に晒された三色の槍を構え、
彼は不敵に笑った。
「さあ……初陣だ『インパルス』!」
場を文字通り『揺らす』その現象を前に、魚人海賊団の面々は思いっきりうろたえてい
た。地震そのものにではなく、地震から連想できるある化け物の存在に……
「ど、ドニール! 貴様まさか、『呼んだ』んじゃあるまいな!?」
「呼ぶわけないだろ」
狼狽を隠そうともせず問い詰めるクロオビに対し、ドニールはひょいと肩を竦めて、
「勝手に来たんだよ。
『巣』からでもはっきり見えたはずだからなぁ……お友達が海に向かって投げ飛ばされ
る姿がさ。あいつ、義理堅いんだよ」
――化け物に義理堅いもクソもあるか!
全くといっていいほど事態を把握しているように見えないニシンの魚人の姿に、クロオ
ビは怒りで視界が真っ赤になった。奥歯と奥歯が力の限りかみ締められて、今にもドニー
ルに殴りかかりそうである。
690 :
47=82:2006/12/19(火) 07:31:36 ID:???
彼の行動を押しとどめたのは、彼の中に辛うじて残った理性が行動に伴うリスクに対し
て鳴らした警鐘だった。
あの化け物が近くに居る状態でこいつに手を出せば……自分は間違いなく、死ぬ。
「な、なんなのだっ! この地震は!」
「そりゃあ簡単な話だ!」
何とか立ち上がろうともがくココヤシ村の駐在……ゲンゾウの叫びを聞き、ドニールは
単純明快に説明してのけた。
「ブロームが海底走ってんだよ! その振動さ!」
その瞬間、
ざばぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
ぶ ろ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ む っ ! ! ! !
海面を割り、名の由来になった独特の咆哮で大気を揺るがして。
真紅の海獣『ブローム』はその姿を現した。
「ま、また来たぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
いきなり現れた敵の姿を見て、ウソップは悲鳴を上げて腰を抜かした。
モームと同サイズながらも、若干の愛嬌があったあちらとは違い、蟹独特のとげとげが
そこら中から生えた紅い甲羅に、鎧兜のような頭部。目は落ち窪んだ穴の奥で光る紅い光
としか表現しようがない。
間近で見れば見るほど、ドニールの言う『おとなしい』という形容詞とかけ離れたもの
を感じる。その迫力に度肝を抜かれたらしく、ヨサクとジョニーは腰を抜かしたまま、
「あ、紅い海獣……まさか、こいつが『ブローム』!?」
「で、でけぇ……!」
実際には、大きさにおいてはモームと然程変わらないのだが……モームが自分を倒した
人間を前に萎縮しまくっていた上に、モームにはない迫力が相手に大きさを錯覚させるた
め、一回りほど大きく感じるのだ。
不気味に明滅する赤い瞳は、ゆっくりと探るように海賊たちを見回し始める。
691 :
47=82:2006/12/19(火) 07:33:20 ID:???
ブロームにとっての敵は、魚人海賊団の敵ではない。
彼は、飼育係であるドニールに良く懐いていたので、その彼を冷遇する魚人海賊団が余
り好きではなかった。ドニールが命じるので仕方なく暴れたりはするが、本心から言えば
魚人海賊団の方を叩き潰したいのである。何かにつけてドニールに絡んでくるクロオビな
どは、その筆頭だ。
彼の敵とは、彼に近しい者達の敵である
ドニールや、自分に蜜柑をくれるナミとノジコ……同じように海底で暮らすモームたち
を傷つけるものだ。
彼には確かに知性が存在し、その知性は子供のような純粋なやさしさと残酷さを内包し
ていた。
『ぶろ……』
彼は今、その『敵』を探している。先ほど、傷だらけのモームを投げて苛めた、最低な奴を。
ここで一つ言っておくと、ブロームがモームから聞き出した情報は、非常にあいまいだ。
なぜぶっ倒される羽目になったのかと言う理由すら知らないし、相手の容姿についても『麦
わらの男』『黒いコック』『紅い服着て槍持った奴』という抽象的な情報しか持っていない。
ただ、『友達がぶっ飛ばされた』という事実だけがブロームの感情を刺激し、怒りの火種と
なっているのである。
赤い瞳がゆっくりと麦わら一味の顔を眺めまわし……ある一点で停止する。同時に赤い
瞳はその輝きを強くして、怒りで歪んだ。
ルフィはトレードマークの麦藁帽子をナミに預け、サンジはパッと見コックには見えな
い……この状況でブロームがシンに注目するのは、至極当然の事だった。
この場にモームを苛めた奴がいる。先ほどモームを投げ飛ばしたのも、こいつの仕業に
違いない!
おいおい一寸待てと突っ込みどころ満載の理論展開であるが、ブロームにとってはそれ
が事実だった。あながち間違っても居ないのだが……
『 ぶ ろ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ む っ ! 』
「やっぱこうなっちまうか……やり難いな」
傍から見たら吼えるだけのブロームだが、飼育係であり子供の頃から付き合いのあるド
ニールには、ブロームが誰に対してどうして起こっているのか、どうしてそう考えたのか
という過程にいたるまで、正確に把握する事が出来た。
692 :
47=82:2006/12/19(火) 07:35:21 ID:???
確かにやり難いが、それ以上ではない。
ドニールは静かにシンを殺す事を決意すると、軽い足取りでブロームに歩み寄り、
「そういうわけだ兄ちゃん。アンタのお望みどおり、あんたの遊び相手は俺とブロームで
する事になった」
「にゅ〜? ブロームでたった一人しか相手にしないのか?」
「こいつら全員相手にしてもいいんだが」
ハチの最もな疑問に、ドニールは居並ぶ麦わら海賊団を一瞥して、
「……んな事した日にゃ、アーロンパークを基礎から作り直す羽目になりかねん」
「人間相手に何を臆病な……一方的に叩き潰して終わりだろ?」
「モームぶっ飛ばした奴相手にか? 少なくとも、苦戦はすると思うがな」
チュウの言葉を聞き流し、ドニールは片手を上げて、
「ブローム」
『ぶ ろ ぅ !』
「スイング」
ブロームが自分に注目するのを確認して、上げた片手をおもむろに横に振りぬき。
「!? 不味い! 伏せろ!」
ゾロが叫ぶのと、ブロームが右腕を振りかぶるのは、全くの同時だった。
『 ぶ ろ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ む っ ! ! ! ! 』
ぶ お ん っ ! ! ! !
豪腕一閃。
ドニールの腕の動きを模倣するかのように振りぬかれたブロームの紅い腕は颶風を伴い、
伏せた麦わら海賊団の頭上を通り過ぎる!
アレだけたっぷりと狙いを定める間があったにもかかわらずはずしたのはマヌケとしか
言いようがなかったが、交わした当事者達は笑う気にはなれなかった。
ふりぬかれた速度といい質量といい、笑っていられるレベルではなかったのだ。戦艦を
粉々にするほどの一撃は、間違っても人間に対して使用を許される範疇を超えていた。ゾ
ロやサンジ、シンは頬に汗を流し、ウソップにいたってはゴキブリよろしく地面にへばり
つき、失神寸前だ。
「条約に引っかかるぞ、これ……」
思わず前いた世界の常識を口走り、シンは視線を仲間達のほうへ走らせて……固まった。
693 :
47=82:2006/12/19(火) 07:36:53 ID:???
視線の先には、ルフィ……が、居たはずの場所。
そこにルフィの姿はなく、代わりにルフィが足を突き刺した穴から、肌色の何かがブロ
ームに向かって生えていた。
嫌な予感が胸を満たす中、シンは伸びるその物体を目で追って……その正体を知った。
降りぬかれた後のブロームの指に引っかかって、全身伸びきったルフィだった。足首は
ゴムゴムの風車発動時に突き刺さったままであり、そこからブロームの指先まで、肌色の
細長いものが不気味に伸びている。指先の、蟹独特の突起物の隙間に首が挟まったらしく、
胴から首から手足から、全部が力の限り引っ張られていた。
「ん、んぎぎぎぎぎぎっ!」
「何やってんだお前はぁっ!? 伏せろよ!」
うめくルフィに、突っ込むシン。状況からして、ルフィがブロームの水平チョップをよ
けることもせずに食らったのは明白だった。
「そ、それが困った事に……」
ゴムゴムの腕を伸ばし、必死に首を抜こうともがきながら、ルフィは絶望的な事実を告
げた。
「なんと動けねえんだ。足が抜けなくて」
『は?』
「なんでお前は……」
「てめぇ自分で足突っ込んだんだろうが!!!!」
思わず声をハモらせるサンジとシン。呆れるゾロに叫ぶウソップ……
殴りこんでぶっ飛ばす。困難ながら単純な行動で終わるはずの事態が、ややこしく絡ま
り始めた瞬間だった。
694 :
47=82:2006/12/19(火) 07:38:27 ID:???
本日は以上です。
GJ!!
ドニールって色々見えてないようで肝心の部分ってのがちゃんと見えてるヤツなんだな
696 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/20(水) 00:37:11 ID:3cyoQPn+
GJアゲ
GJ!
ドニール゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!
698 :
601:2006/12/21(木) 02:05:50 ID:???
GJ! ドニールはホント良いキャラだなあ……しかし、そう言えばルフィはしばらく足が抜けなくて苦労したんだっけw
で、これだけだと何なので、とりあえず「表紙連載風」に書いたもののさわりをば。
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風
シンの何なんだ見聞録 その1 「やべ! 北極星ってどれだっけ?!」
夜の海、六文儀を片手に海図や羅針盤とにらめっこ。ここは一体どこなんだ?船の横にはイルカが数頭顔出して、興味深げにこっちを見てる。
シンの何なんだ見聞録 その2 「女の子が泣いてる。一体何なんだ?」
イルカたちに案内されて、辿り着いた最初の島、久しぶりの大地の感触に感激する間もあらばこそ、耳に入るは幼い泣き声。
見れば波止場のその隅で、小さな女の子が二人して泣いている。黒い髪の女の子と、金髪の女の子。
……何だか少し、気にかかる。
シンの何なんだ見聞録 その3 「そんな無茶があるもんか! でも……」
「パパが海軍につかまっちゃったの! 何にも悪いことしてないのに!」
「ウチのパパもつかまっちゃった!」
「「きっとあしたはしばり首!」」
聞けば立ったよむかっ腹。けれどもビフの忠告が、頭の中に蘇る。
「見てみぬ振りは出来ないけど、どうしよう……」
シンの何なんだ見聞録 その4 「アレが海軍?」
とりあえず女の子達が泣き止むのを待って、宿は何処かと聞いて見る。
「あたしのお家がお宿だよ!」
黒髪の子に手を引かれ、宿屋の前まで来て見たら、部下を連れた海軍将校、丁度宿屋を出て行く所。
「顔は似てないけど、あの生え際のさがった髪型……何だか無性に腹が立ってくるなあ」
シンの何なんだ見聞録 その5 「おかみさんの説明」
若くてきれいなおかみさんの手料理はめちゃくちゃ美味かった。けれど、おかみさんはうかない顔……やっぱり、何かあるのか。
ついつい聞いて見れば、おかみさんが言うには「悪い事は言いません。早く、この島を出てください」
「あの海軍中佐、島の男達が海賊と内通してるなんて言い出して、投獄したんです。でも、そんなの嘘っぱち。
海賊と繋がってるのはアイツの方なんです。人買い海賊『大口のガバン』とつるんで、島の住民を他所に売り飛ば
そうとして、それを知った村長はじめ、島の男達を処刑するって!」
握った拳に血が通う。
シンの何なんだ見聞録 その6 「海軍基地」
翌朝、海兵達が街の人間――シン以外は女子供しかいないが――を海軍基地に呼び集めた。
基地の広場には、急ごしらえの絞首台に並べられた街の男達。海兵たちが取り囲むそれの前に、例の海軍将校が大笑いして立っていた。
「さあ。これが今生の別れだ。存分に惜しめ。処刑が済んだら、今日はガバンが来るからな。何人か『出荷』せんといかん」
村人が叫ぶ「あんた……それでも海軍か?!」と言う声にも、将校は薄ら笑いを浮かべるばかり。
「そうとも、俺は海軍将校だ。最近このイーストブルーも騒がしくなっててな、あちこちに配る賄賂も増やさな
きゃならんのだ。お前らみたいなクズでも、俺の出世の役に立てるんだ。有難く思え」
シンの何なんだ見聞録 その7 「アンタは一体何なんだぁーっ!!」
「ソードシルエット、エクスカリバーぁぁあっ!!」
気がつきゃ吼えてた抜いていた、大剣モード両面宿難を振りかざし、首吊り台を真っ二つ。返す刃で縄も切り、おまけとばかりに蹴り飛ばす、海軍将校青い顔。
早く逃げろとせかす中、海兵達が遮るが、銃を構える隙もなく、突如割り込む赤い影。
目にもとまらぬその踏み込みで、あっと蹴散らすアスカ・シン。
と、まあこんな感じで。続きはまた週末以後に。
699 :
47=82:2006/12/21(木) 16:08:04 ID:???
GJコールサンクス
そしてGJ! とんとん拍子に事態が悪化していくのが分かりやすいです。
海軍将校……後退した生え際というのがなんとも。シン、アスランと重ねたんだろうなあ
このスレ的に、種世界にワンピ世界の物理法則を持ち込むのはありなのか?
たとえば、オーブに古代兵器存在させたりとか
>>700 一応有りなんじゃない?
でもワンピ世界から見ると種世界自体が古代兵器クラスの物の塊にしか見えないから
干渉させるのは難しいかもしれない
グレン=ロジャーでSEEDキャラをワンピース世界に当てはめてみるとか
MSの開発を悪魔の実の開発にして、その場に居合わせた少年キラが
悪魔の実(SEEDだし種か? 実験物という意味で実よりも不完全な感じがしていいかも)を食ってしまう
また、同じく製造されていた海軍の新型艦大天使号に乗り込むことになって……みたいな
キラの性格で拾い食いはしないような…
と、ネタにマジレス
きっと金がなくて5日ばかり水しか飲んでなかったんだよ
サイたちと一緒にいるとき間違って飲んだとか
キラの性格上、自分は食べずに友達に食べさせそうだから、
仲間が天然で腹減らしてるキラのために食べさせたってのは無しか?
707 :
601:2006/12/23(土) 23:51:15 ID:???
>>700 そのまま持ち込むのは、ちょっと難しそうすな。ジェネシスやらレクイエムやらがある世界だと、古代兵器と言っても……。
改変次第でしょうね。
で、こないだの「表紙連載風」の続きをば。
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風
シンの何なんだ見聞録 その8 「お前が一体何なんだぁーっ?!」
蹴られた顔も腫れあがり、尻餅ついてそう叫ぶ、海軍将校赤い顔。
住民達を外へと逃がし、知った事かと大暴れ。多勢に無勢も何のその。フォースで駆け抜け剃で消え、両面宿難で
なぎ払う。
赤い瞳が輝く様は、夜叉か羅刹かはたまた修羅か。
シンの何なんだ見聞録 その9 「どーしよう……」
あっと言う間の立ち回り、気がつきゃ海兵皆倒れ、海軍将校踏みつけて、仁王立ちするアスカ・シン。
両面宿難片手に握り、眦決したその心中は、けれど冷や汗たらたらだった。
「やっちゃった……」
シンの何なんだ見聞録 その9 「どーなってんだ?」
逃げたはずの住民達が、何故かこちらに戻って来てる。どうした事かと見てみれば、白いコートに白帽子、
海軍制服きっちり着込み、タイトスカートもあでやかに、女性将校ずかずかと、肩で風切りやってくる。
喜びいさんだ海軍将校、けれどすぐさま青い顔。令状かざした女性将校、あっさりきっぱり言い切った。
「海軍第19支部中佐シグナル。元第153支部大佐『斧手のモーガン』に対する贈賄容疑、及び海賊『大口の
ガバン』一味と結託した人身売買容疑により貴官の身柄を拘束する」
シンの何なんだ見聞録 その10 「『堅物』ナタル」
「貴様……か、か、『堅物ナタル』?!」
女性将校眉毛がぴくり、声も一段低くなる。
「私がそのあだ名を嫌っている事を、知った上での発言だな? 良い、覚悟だ。君、すこし、どいてもらえるか」
「あ、はあ」
ひょいとどかしたシンの足、けれどすぐさまナタルの足が、海軍将校踏みつける。ぐりぐり食い込むハイヒール。
たまらずのけぞるその頭から、ずるっとずれたよ帽子とカツラ。
「ああ……やっぱ、ヅラだったんだ、ソレ」ぽつり呟くシンだった。
ナタル!
名前・外見・性格が同じだけど別人?
それともドミニオン撃沈の際に転移した本人か
709 :
514:2006/12/24(日) 02:33:12 ID:8r3Zcqnz
大砲の煙が晴れないうちに四人は移動を開始した。
ルフィ、シン、ゾロの三人は隣の家の屋根を伝って移動し、数軒先で自分達を追ってくる様子がな
いことを確認してから地面に降りた。ナミは別のルートをいったらしい。
二人でルフィが入った檻を引きずりながら歩いているわけだが、どちらも血は出っ放しで、傷の深
さではゾロのほうが上だが、シンもSEEDを無理矢理使ったせいか目眩や頭痛が襲ってきている。
「もうだいぶ酒場からは離れた。とりあえずすぐには追っちゃ来ねえだろう。しかし、いったん退い
たはいいがこの檻は厄介だな」
「そうなんだよ。これが開かねえいとあいつが来ても何もできねえよ」
「おまえさ、ゴムなんだから引っ張れば間から出てこれるんじゃねえか?」
「じゃあやってみてくれよ」
「いや・・・今は無理・・・」
「ダメだ、血がたりねえ。これ以上歩けん・・・」
そこで二人は倒れこんでしまった。
ゾロとルフィが犬がどうしたと騒いでいるが、シンはそれに参加せず道の真ん中にへばりつく。
今から考えればMSの戦闘なんて楽なものだった。どんなに戦ってもダメージを負うのは機体のほう
で、パイロットなんてせいぜい疲れるだけ。少なくとも、こんなに死にそうになった経験なんてない。
改めてシンは自分の代わりなって傷ついていったインパルスやデスティニーに感謝の念を送る。
そこに先ほどはぐれたナミがやってきた。
「あんた達いったい何やってんの、三人して。こんな道端で寝てたらバギーに見つかっちゃうわよ」
「「「よお、航海士」」」
「誰がよ!! お礼をしに来ただけよ。助けてもらったからね」
「礼?」
そう言ってナミは何かを投げた。
「鍵! 檻の鍵取って来てくれたのか!」
「まあね。われながらバカだったと思うわ。他に海図も宝も何一つ盗めなかったもの、そのお陰で」
「はーっ、どうしようかと思ってたんだ、この檻!」
「手間が一つはぶけたよ」
「これで一応逃げた苦労が報われるな」
「あ」
パク・・・ゴクン・・・
シーーン・・・・・・
犬が目の前に合った鍵を飲み込んでしまう。
710 :
514:2006/12/24(日) 02:34:56 ID:8r3Zcqnz
いくらなんでもベタ過ぎるだろうと思ってみても現実が変わるわけでもなく、シンは今まで何とか
座っていたが、気力が尽きたように崩れ落ちた。
ルフィが犬と喧嘩を始めるが、もちろんそんなことで鍵が出てくるわけがない。
「くら、小童ども! シュシュをいじめるんじゃねっ!!」
突然、怒鳴り声が響いた。聞こえてきた方に目をやると、武装をした老人がこちらに向ってくる。
「シュシュ?」
「誰だ、おっさん」
「わしか。わしはこの町の長さながらの町長じゃ。おまえたちこそ何者じゃ」
プードルと名乗ったその老人は、事情を話すとあっさりと警戒心を解いてくれた。バギーの一味で
はないと言うことが大きかったようだ。
怪我人がいるのを見て、プードルは彼らを医者がいる避難所に連れて行こうとしたが、ゾロは寝れ
ば治ると主張し、シンもケガ自体より後遺症のほうが重大であると判断しているため、結局プードル
の自宅で休ませてもらうことになった。
簡単に手当てをした後、特にやることもなく、正確に言えばなにもやる気が起きずにボーっとして
いたシンの耳に猛獣の雄叫びが入ってきたのは、それから十分も経たなかった頃である。
外にいる人間でまともに戦えそうな者がいないことを思い出したシンが重い頭を抱えながら外に出
ると、目の前を通り過ぎようとしたナミとプードルに腕をつかまれ、数軒先の曲がり角まで引っ張ら
れた。
「何すんだよ」
「あんた状況わかってないでしょ! やばい奴がこっちに来てんのよ!」
「やばい奴?」
「『猛獣使いのモージ』というバギー一味の副船長じゃ。見つかったら殺されてしまうぞ!」
「猛獣使いねえ」
どんな奴かと角から顔を出して覗いてみれば、たしかにライオンに乗った男が見える。置いてけぼ
りにされたルフィの前で止まりなにやら話しかけたが、二三言言葉を交わすとモージは怒り始めてし
まった。バギーのときもそうだったが、ルフィは基本的に何も考えていないので、挑発とも取れるよ
うな発言を多々行う。今回もそうらしい。
711 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/24(日) 02:36:39 ID:8r3Zcqnz
「あいつなんだか挑発してるんじゃないの・・・・・・」
「バカか、あいつは・・・」
横にいる二人はその様子に驚くが、思い返せば、旅の一番最初でルフィが倒したフーシャ村の近海
の主は間違いなくあのライオンの何倍も大きかった。乗っている男の方もそれほど戦闘能力が高いと
いうことも無さそうだし問題はないとシンは考えた。
結局、耐え切れなくなったモージがライオンをけしかけさせ、檻を破壊した後ルフィを吹き飛ばし
はしたが、ゴム人間に打撃が通用する筈もなく、逆にこちらの厄介ごとを解決してくれたことになる。
「ほら、わかったでしょ! あんな奴に敵う訳ないんだからさっさと逃げるわよ!」
「仲間が殺されて悔しいかもしれんが、お前さんまで死んじゃあどうしようもないわい!」
「でもさ、あいつは俺たちを追ってきたんだろ? だったら早いほうがいい」
「は!? あんた、自分がなに言ってるか分かってる? バカじゃないの!」
「ハハ、昔からよく言われる・・・・・・逃げたくないから海賊になったんだ。敵に背を向けるなんて絶対
に嫌だね」
「ちょっと・・・」
引き止められるのを無視したシンが角を曲がろうとして急に立ち止まった。ナミとプードルもシン
と同じ方を見て言葉を失う。
「え・・・」
「シュシュ・・・?」
その先ではシュシュがペットフード店に入ろうとしているモージとライオンに何度もたち向ってい
た。もちろんただの犬がライオンに勝てるわけがない。軽く払われるだけで吹き飛ばされ、足にすが
り付いても壁や地面にたたきつけられる。しかし、あっという間にボロボロにされながらもシュシュ
は諦めようとはしない。
「あいつ、なんであんなに・・・」
「あの店は死んだ飼い主の形見、シュシュの宝なんじゃ。でも、あんなになるまで守ろうとするとは
・・・」
自分の大切なもののために戦う姿にシンは昔の自分が思い出す。さっきまで確かにあったはずのそ
れが突然フッと消えてしまった時の、あの心の中を覆いつくすような苦しみや悲しみ、それらの激情
が去った後のどうしようもない無力感。
もうあんな事は他人が経験するのだって見たくはない。
第一、ここであの犬の命をかけた心意気に何も応えることが出来ないのであれば、それでは、
(男がすたるだろ!!)
712 :
514:2006/12/24(日) 02:38:34 ID:8r3Zcqnz
そう思うや否やシンは走り出した。先ほどとは違い、感情が高ぶっているためSEEDも自然に発
動し、怪我をしているなど嘘のようなスピードに達する。
今まさにライオンの腕がシュシュに振り下ろされようとしている。猛スピードで迫ったシンがスラ
イディングの要領で滑り込むと、シュシュを抱き上げてその一撃をかわした。
さらに、相手が自分に反応し切れていないとみると、空いているほうの腕を軸に独楽のように一回
転し、勢いをつけてライオンの顔面に両脚で二連蹴りを叩き込んだ。
完全に不意を突かれたライオンは簡単に吹っ飛びダウンし、その背に乗っていたモージも地面に投
げ出された。自分とリッチーのコンビに絶対の自信を持っている彼には、そのリッチーがいとも簡単
に倒されるなどありえないことだった。
あまりのことに混乱してしまうが、目の前の男の風貌があらかじめ聞いていたものと一致している
ことに気づく。
「お、お前!! コソ泥の一味の仲間だな!!」
「それがどうした」
「何しにきたんだ!? 死んだ仲間の復讐か!!」
「復讐? 俺はただこいつの代わりにこいつの宝を守るために来ただけだ。それにルフィなら生きて
るぞ」
「なに言ってるんだ。あれで生きてる奴なんているわけ・・・・・・」
「あいつはゴムゴムの実を食べたゴム人間だからな。どんなに強くったって、打撃は全く効かないん
だ」
「な! 悪魔の実だと・・・!?」
「まあ、信じる信じないは自由さ。それよりどうする」
「え・・・?」
「言っただろ、俺はこの犬の代わりだって。どうせ、あのライオンがいないんじゃあ何もできないだ
ろうから、お前がこれ以上何もしないって言うなら俺たちも何もしない。さっさとそこのライオンを
連れて帰れ」
シンはそう言うと抱いていたシュシュを地面に下ろした。
もちろん、その瞬間、シンの視線はモージから外される。
モージとてこの大海賊時代において野望を持って海に出て、リッチーとともに腕っ節だけで海賊の
一団の副船長になった男である。そんな自分になめきった態度をとる目の前の男に猛然と怒りが込み
上げてくる。相手がいかに得体の知れないやつだろうと名もないコソ泥から逃げることなど、彼の海
賊としてのプライドが許しはしない。
それに、言われたことも何も出来ずにおめおめと帰ってきたことが知れれば、バギー船長からどん
な罰を受けるかもわからない。
思い知らせてやるとばかりに彼はシンに殴りかかった。
しかし、次の瞬間、
バキッ!
シンが振り向き様に斜め下からアッパー気味に放ったカウンターがモージに命中すると、そのまま
彼は空中に放物線を描き、裏の通りへと飛んでいく。
さらにシンは気を失ったままのライオンに駆け寄り、両足をつかむとジャイアントスイングを行い、
モージと同じ方向に放り投げた。
713 :
514:2006/12/24(日) 02:41:36 ID:???
ドスンという音があたりに響き、シンはSEEDを解除して座り込む。すると、安全を確認したの
かナミとプードル、さらに後ろからルフィがこちらにやってきた。
「よう」
「あんた・・・ホントに勝っちゃったのね・・・」
「あたりまえだろ。俺の仲間があの程度に負けるか」
「おぬしが威張ってどうするんじゃ・・・・・・小童、シュシュはどこじゃ?」
「ん? あいつなら、そこさ」
シンがさした方を見ると、シュシュが先ほどまでと寸分違わぬ様子でペットフード店の前に座って
いた。違うのはライオンと戦って増えた傷くらいのものである。あれほどの目にあってもシュシュは
この店から離れようとは思わないようだ。
その姿にプードルが何も言えないでいると、ルフィが突然店の中に入り商品の一つの持って出てき
て、隣に座りそれをシュシュに差し出した。
「腹減っただろ? お前が守ったお前の宝だ。腹いっぱい食え。お前はよくやったよ。よく戦った。
まあ、見ちゃいねえけど、大体わかる。そうだろ、シン」
「ああ。お前は自分のできることを精一杯やった。俺たちは今からあいつら全員ぶっ飛ばし行く。そ
うすれば、一件落着だ。だから後は俺たちに任せて、お前はゆっくり休めばいいさ」
シュシュはそれでも考え込むように黙っていたが、やがてペットフードの箱をくわえるとスタスタ
と歩き始め、数歩歩いたところで振り返りこちらに向けて幾度か吼えた。
「おう!! お前も頑張れよ!!」
何かを感じ取ったのか、ルフィが応える。ついでにシンも言葉は出さなかったが、シュシュに手を
振り返事を返した。
この後、麦わら一味はバギー海賊団に殴り込みをかけることになるのだが、さすがに一日のSEE
D連続使用がたたったのか、シンは頭痛とめまいでフラフラになってしまう。せめてザコの相手くら
いはしようと息巻いたが、ルフィがゴムゴムの風船で特製バギー玉を跳ね返したせいでその役も必要
なくなり、結局、シンは一番最初にダウンしてしまうのだった。
714 :
514:2006/12/24(日) 02:42:42 ID:???
>>47=82殿
いよいよシンVSドニール・ブローム戦が始まりましましたね。
ただの飼育係かと思いきや、なかなか的を得た状況分析を行うドニールとブロームのコンビはなかなか厄介そうです。
気分は一寸法師といったところでしょうが、さて、どうやって戦うのやら。
>>601殿
これまた懐かしい方が出てきましたな。
堅物とあだ名されるあたりは変わってないようですが、人をハイヒールで足蹴にするなんていい感じで染まっています。
階級も気になりますが、スモーカとかと知りあいだったりして。
715 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/24(日) 16:43:07 ID:2XxSJqXU
GJ!
なんだこれ…
このアニメ、シャアとジュドーを侵しているし…
>>716 割り切ったり許容したりできないなら旧シャアに帰った方が、多分精神衛生上とてもいいと思うの
主に貴方のために
718 :
601:2006/12/24(日) 23:11:53 ID:???
514氏、GJですた!
そりゃー未使用領域の活性化とかしてりゃあ、へろへろにもなりますわなあ。
が、ワンピ世界のキャラに染まっていくなら、その辺勘定入れてちゃいかんのでしょうかね、やっぱ。
719 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/25(月) 01:06:27 ID:ChOeZ591
うひゃぁお、なんだかワクワクしそうな展開がたくさんだぁ……
周囲の皆はワンピ悪く言うけれど、自分はやっぱり好きだなぁ……
とりあえず、601さんに便乗して扉絵をやってみたくなった私がいる
思いつき書くから少しずつになってしまいそうだけれども……
なお、組み合わせ方によってはどれとも組み合わせられるかもしれません
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風 (偽)
ステラのうぇ〜い冒険日記 その1
「うぇ〜い 海だ カモメだ ここはどこ?」
キラによって討たれ、シンの腕の中で息を引き取り水葬されたはずのステラ
本来なら永遠に海の中で眠り続ける彼女が再び目を覚ましたのは見た事も無い浜辺であった
状況は座り込んでここはどこ?って周囲を見回している感じ希望
ステラのうぇ〜い冒険日記 その2
「うぇい ステラが出会ったヘンなヤツ」
とりあえず島の森の中へ入っていったステラ
そこで彼女が出会ったのは、見た事も無いヘンな珍獣達
ステラも珍獣もお互いを見つめている感じ
ステラのうぇ〜い冒険日記 その3
「うぇい? 島の番人は箱入り息子?」
動物達と遊んでいたら突然変な声が聞こえてきた
声のする方に言ってみたら、箱に入ったガイモンが
ビックリするガイモンに、ステラは頭に?マークつけたような顔を
とりあえず3話ほどマネをして作ってみました
考えてみれば、シン以上にこっちに来やすいんじゃないかなぁと思ったり
他の作品でも使おうと思えば使いやすい状況を選んでみました
行けるようでしたらまた次回、それではお目汚し失礼しました
720 :
47=82:2006/12/25(月) 08:19:57 ID:???
>>514 おお、オリジナルを戦わせるのではなく、既存のキャラと戦わせるのですね。
GJです。SEEDの副作用もそれらしくていいですな。
>>601 ナタルー!? しかも、なんかいい感じに染まってらっしゃる!?
回りの皆から恐れられてそうですね……しかし、やっぱりヅラだったんだなぁ。
>>719 おー、言われてみれば、皆がステラの事取り上げてるのに、こういう視点は考えた事
がありませんでしたな。
GJです!
さて、では今年最後の投稿を。
721 :
47=82:2006/12/25(月) 08:21:01 ID:???
足が突き刺さって動けない。
その事実がルフィの口から告げられた時、衝撃を受けたのは仲間達だけではない。魚人
海賊団の幹部一同も同様だった。もっとも、『戸惑い』の性質は大きく異なり、仲間達が抱
いたのが諦めのと納得の混じった諦観であるのに対し、魚人達のそれは九割がた事実に対
する戸惑いで構成されていた。
自分で足突き刺しておいて、抜けない?
彼らは等しく人間を見下し、稼動な種族だと思っている。思っているが……いくらなん
でも、そんな度し難い馬鹿が居るとは思っていなかったし、想像もしていなかったのだ。
「……はっ! 馬鹿が!」
一番早く事実に『納得』したのは、クロオビだった。今の状況を考えれば、とるべき行
動はたった一つだ。
クロオビはいち早くその衝撃から立ち直ると、あからさまな嘲笑を浮かべて、ブローム
を見上げる。そして、腕に引っかかったルフィの首を興味深げに眺める巨大な幼児に対し、
命じた。
「ブローム! その馬鹿の首をねじ切ってしまえ!」
『……』
「なっ!?」
「ゴムといえども、限界まで引き伸ばせば引きちぎれるはずだ」
余りに残酷な物言いに、麦わらの一味は顔色を変えて絶句する。人間の首をねじりきる
など、まともな輩に出来る発想ではないのだから。
当たり前である。サンジがクロオビの発現を残酷と感じたのは、それが自分と対等の存
在に向かって放たれた言葉だという前提があったからなのだが……魚人達にはそんな前提
は存在しないのだ。人間という生き物は下等生物であり、料理人にとっての食材のような、
いや、それよりもなお格下の存在なのである。サンジのようなコックは、調理する食材に
対して必ず感謝の念を抱くものだが、クロオビにはそれすらないのだ。
その証拠に、愉しそうに言うその表情に浮かぶのは、愉悦と優越感の混合物であった。
「てめえ! このサカナ野郎!」
「さあ! 早くやれブローム!!」
サンジは目の色を変えてクロオビに向かって突進した。クロオビの体が間合いに入った
瞬間に、突進の勢いを足に載せ鋭い蹴りを放つ。
がしぃっ!
体重も勢いも申し分のないその蹴りを、クロオビは腕から生えた『鰭』で受け止めた。
鰭というより、翼といったほうがいいのだろうか。肩から肘にかけて生えたそれは、黒い
靴底との接触によって重い音を立てる。
722 :
47=82:2006/12/25(月) 08:21:47 ID:???
(うわ、すげえ音)
響いたその音を聞き、ドニールは片眉を跳ね上げてサンジを見た。クロオビの鰭が硬い
事については、それほど驚くべき点ではない。エイの魚人の鰭は鍛えればいくらでも難く
なるものだし、鍛えぬいた魚人のそれは、下手な鉄砲の弾ならはじき返せる程度の強度が
あるという。
注目すべき点は、一般人には聞き分けられない音の性質だった。小型魚の魚人ゆえに五
感の発達したドニールには、今の重低音を発した蹴りが生半可な重さでない事が分かったのだ。
「人間にしちゃあ少しはやるようだな」
人間差別主義で凝り固まったクロオビも、鰭から伝わる重さに考えを改めたらしく、そ
んな事を口にする。
「ちっ!」
「おおっとぉっ! お前の相手はこのタコのはっちゃんだぁっ!」
ゾロも舌打ちしつつルフィを救出しようと駆け出すが、その進路をさえぎるものが居た。
六本の腕を持つ蛸の魚人、ハチだ。
「このタコ……!」
「間に合うか……!?」
「くそっ!」
シンは駆け出しウソップはパチンコを構え。
それぞれがそれぞれの思惑でルフィを救出しようとする中。
ブロームは……
「何をしてるブローム! さっさとやれぇっ!」
「お!? お前、いい奴だなー」
『…………ぶろぉ〜♪』
……何故か引っかかったルフィの首を丁重にはずしていた。
「んがっ!?」
「にゅ!?」
「は?」
「へ?」
クロオビ、ハチ、チュウ、ウソップのマヌケな声が唱和して。後の船上に居たものたち
は、絶句してブロームとルフィの二人を眺めやる。
723 :
47=82:2006/12/25(月) 08:23:21 ID:???
「あ、そっか」
しばし固まってから、ドニールはぽんと手を打って、つぶやいた。
思い当たる節があったのだ。ブロームが力の限り命令違反やらかす理由に。基本的にド
ニールのいう事しか聞かない奴が、嫌いな奴の命令なんぞ聞くわけがないわけで。
「クロオビが命令したから逆の事やったのか」
「なんじゃそりゃぁっ!?」
チュウ、思わず力の限り突っ込みいれるの図。
いくら相手が嫌いだからって、こんなあてつけのような事をやるとは……飼育係のドニ
ールとしても、頭の痛いことでは合ったが……正直な事を言えば、ブロームが人間引きち
ぎる場面なんぞ見たくもないしやらせたくもなかったので、ほっとしていたりする。
「ビビらせやがって……!」
「ったく」
「ウソップ!」
「わ、わかった!」
サンジは苛立ちを、ゾロは呆れを声ににじませ吐き捨てて、それぞれの相手を睨み吸え、
シンはウソップにルフィの回収を託した後、ブロームの眼前に立った。
ゾロとハチ、サンジとクロオビの間に起こる殺意の衝突、それによって起こされる緊迫
感を肌に感じながら、シンは槍を握る手に力をこめた。
「足速いなあ兄ちゃん」
いつの間にそこに居たのか――ブロームの肩の上で首の甲羅から突き出した突起につか
まりながら、ドニールが言葉を投げた。あの一瞬でブロームの前まで移動したその脚力に、
純粋に感心しているようである。
「鍛えてるからな」
「いやいや、謙遜はするもんじゃねえよ。じゃないと、俺みたいなのはたつ際がなくなる
ぜ。俺なんか、子供の頃は腕力がないのがコンプレックスでねえ。色々鍛えて試したんだ
が全く実らなくて……」
「悪いが、あんたの自分語りに付き合うつもりはないんだよ」
「あら」
にべもなく言い切られて、滑り落ちそうになるドニールだったが、シンはそれすらも無
視して槍を構える。
なんとか体をブロームの肩に残し、ドニールは気を取り直して言葉を紡ぐ。
724 :
47=82:2006/12/25(月) 08:24:37 ID:???
「一つ聞いていいかい? いや、自分語りとかじゃないんだけれども」
「…………」
「沈黙は肯定ととるけど、いいか?」
「…………」
「気のせいなら誤るけどさ、なんかあんたの方からそこはかとなく俺に対する嫌悪感が……
そこまで嫌われるような事したか?」
「アーロン一味はすべからく嫌いだけど、どうかしたか?」
「いや、俺はアーロンさんたちとは大分違うつもりなんだけれど」
コレは恐らく、ノジコやゲンゾウ達ですら認めることだろう。
ノジコしか知らない事だが、一味でへまをやって殴られそうになったナミをかばった事
もあるし、蜜柑を法外な値段で買うという形で彼女の借金返済にも一役買っている。今回
の発端となった海軍の一件にもかんでおらず、アーロン達とは一線を画しているつもりだ
った。
にもかかわらず。
シンからドニールに対して向けられる嫌悪感はドニールにしか分からないながらも、か
なり深刻なものだった。下手をすれば、アーロン達よりも深い憎しみを感じる。
「こんな話がある」
それに返ってきた言葉は、昔話。
「一人の少女と一人の男が居た。少女は周りの大人の手で体中を弄繰り回された戦闘のた
めの『道具』、男は少女と敵対する軍の人間」
彼が体験した、この世界の人間にとっては夢の話でしかない、そんな話。
「男は少女と出会い惹かれあい、何とか少女を周りの大人たちから助け出し、保護した……
だが、少女の体は弄られ過ぎてた。特定の薬がないと生きていけない程に、周りの大人の
悪意は少女を蝕んでた」
けれども……シンにとっては、たった一つの真実。
「少年は悩んだ末に決断する。少女を、元居た場所に返して生かす事を。
少年は、少女がいつも口にしていた少女が唯一信頼できる大人と直接交渉して、少女を
二度と争いのない世界へ導いて欲しいと約束してもらった」
シンはネオ・ロアノークという男を深く知っているわけではない。ネオも、シン・アス
カという男を知らないだろう。
「そして、少年と少女は再会することになる……戦場の敵味方という、最悪の形で。
少女が信頼した男は、少女を裏切って約束を破ったんだ……いいや、違う。その男にと
って、少女は確かに大切だったんだろうが、そこまでして守るほどの存在でもなかった。
ペットの子猫かなんかと同じで、命を欠けて守るほどでもなかったのさ」
725 :
47=82:2006/12/25(月) 08:25:29 ID:???
シンはネオの葛藤を知らない。ネオの心を知らない。その思いを知らない。
見もふたもなく行ってしまえば、シンの論理はただの八つ当たりであり、逆恨みという
ほどではないにしろ、状況が見えていない事には代わりがないという、そういう類の代物
である。少なくとも、ネオと同じ軍という組織に所属し、その体質や非道徳性を知る人間
が抱いていい感情ではなく、『割り切らなければならない』事なのである。
シンはルフィたちと合って確かに成長したが、それでも、割り切れない思いというもの
がある。
「あんたと同じだよシュールストレミング野郎」
シンの槍の穂先が持ち上がり、ドニールに……正確にはその首筋に向かって突きつけられた。
「……」
「本当にナミを思いやってるんなら、何でアーロンに逆らわない? 何でナミを助けよう
としない? なんで、『かわいそうだけど仕方がない』で済ませようとする?
……あんたは、ナミや足元のそいつをペット扱いしてるだけだ。他の魚人と、何一つ変
わらない」
昔の彼ならば、数十倍の音量と感情、数十分の一の理性で紡がれたであろう言葉の羅列
だ。シンの放った言葉と、その内容……それらは無論、背後に居並ぶココヤシ村の人間た
ちにも届いていた。
水を打ったように静まり返るココヤシ村の住民達をよそに、ドニールは、傷ついた様子
をみせなかった。ただ、こう返しただけだ。
「――そいつは、体験談って奴かい」
「……ああ、そうだ。だから俺は、お前をぶっ飛ばすんだ」
「んー、泣ける話だ。が、訂正しておこう」
ドニールはぽんっ、と自分がもたれかかっているブロームの肌を叩き、
「俺は今までの人生でブロームをペットだなんて思ったことはないし、これからもありえ
ない。こいつは俺の大事な、『弟』だ」
「どうだか」
「わー、傷つく物言いだね」
言いながら、ドニールは右腕を動かす。右腕を曲げた状態で腕の前にかざし、人差し指
と中指だけを接触させて、でこピンのような形を作る。
726 :
47=82:2006/12/25(月) 08:26:47 ID:???
「それともう一つお前に言っておく事がある」
「なんだよ」
「ナミの事はいい。俺にとっても反省すべき点だからな。だが、ブロームのことは余計だ
ったな」
嘆息して、ドニールにしては珍しい動作をした。
ナミやココヤシ村の住民はおろか、アーロン一味でさえ認める人畜無害のニシン男が。
とことんヘタレで争いが嫌いな腰抜けが……シンを、睨みつけたのである。それに伴うよ
うに、ブロームもシンを睨みつける。
それを見たシンの率直な感想は、こうだ。
「うちのブロームはペット扱いが大嫌いなんだよ」
(あ、こいつ『キレ』てる)
『 ぶ ろ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ む っ ! ! ! ! 』
ブロームの咆哮が大気を揺るがし、ドニールが何かをつまみ出す動作をした瞬間、
ざ ば ん っ ! ! ! !
水しぶきを上げて突き出されたブロームの腕が真の目の前にかざされ、その指は……で
こピンの形をしていた。
「――っ!」
シンはブロームが指をかざした瞬間には既に動いていた。シンが横っ飛びに回避した瞬
間、この上なく乱暴にでこピンをぶちかまされる!
ず ご ん っ ! ! ! !
押さえつけられた力に抵抗し、解放された指先は……比喩揶揄抜きで、洒落にならない
破壊力を発揮した。
地面は衝撃の余波でひび割れ、空中にはかき乱された空気が暴風を作り、指先に接触し
た瓦礫の破片がふっとばされて、大砲の弾のように壁を粉砕する。
「〜っ!! 〜っ!!!!」
ウソップが表記不能の悲鳴を上げるのも無理はない。そのせいで、今まで引っ張ってい
たルフィの体を手放してしまったが……
ざっ!
(まるで拳銃のクイックドロウだ!)
727 :
47=82:2006/12/25(月) 08:27:51 ID:???
海中から腕が現れてから攻撃までのタイムラグの少なさに、シンは学生時代に教官から
見せられたブラスターの早撃ちを思い出した。早い割に命中精度が低く、宴会芸にしかな
らないようなお粗末な技だったが、こちらは破壊力正確性共に比べ物にならない……!
「ブローム、スイング!」
『ぶろぉっ!!!!』
肩の上のドニールが右腕を横に振り、ドニールもそれに応えて右腕を振りぬいた。
ぶ ぉ ん っ ! ! ! !
既に一度見た上に、肩に載ったドニールの動きで予測が出来るため、シンは危なげなく
伏せて回避し……
「っ!」
豪腕が過ぎ去った直後、伏せた体勢のまま、すばやく真横に転がった。
瞬間……!
ど が ぁ ぁ ぁ ぁ ん っ ! ! ! !
数瞬先までシンのいた場所に、ブロームの左のでこピンが炸裂し、足場を粉々に破壊し
た! 破片がシンの体を打ち、砂埃を巻き起こして視界を覆う。
「……あーんどでこぴーん」
右腕を開き、左手をそれに添えるような形で保ちながら、ドニールはにやりと笑った。
彼は自分の動作が敵に攻撃を悟らせる事は十分に知っている。だからこそ、罠にも嵌め
易いのだ。たとえば、先ほどシンの位置からは見えない位置ででこピンをしたのだが、普
通の奴ならスイングをよけた時点で安心して、でこピンで粉々になる。
「いやー、凄い凄い。
まさか、よけられるとは思わなかったな」
土煙の向こうにいるであろうシンに向かって賞賛の言葉を吐くドニール。土煙でさえぎ
られて見えないが、彼はシンの無傷を疑っていなかった。
「けど、もう『積み』だ」
「なんだと?」
「状況を良く見ろよ」
ドニールの側から土煙の中のシンが見えないように、シンのほうもドニールたちの姿が
見えない。ウソップの悲鳴やら走り去る音やらを聞き流しながら、何処から攻撃されても
いいようにと槍を握り締めて身構える。
728 :
47=82:2006/12/25(月) 08:28:49 ID:???
警戒しているうちに、辺りを包む煙が晴れて……
「――っ!」
シンは思わず息を呑んだ。
シンが立っていた場所は、アーロンパークのプールに船の停留所のように突き出した突
起の一つ。ルフィたちが居る建築物側へ続く道はブロームのでこピンによって砕かれ、そ
こに水が流れ込んで……
(って、おいまさか!)
「そして追い討ちっと……ブローム」
ドニールの狙いに気付き、絶句するシンを更に追い詰めるべく、ドニールは右手を振り
上げ……振り下ろす。
「ハンマー」
『 ぶ ろ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ む っ ! ! ! ! 』
ブロームはその動作を忠実に再現し、右手を振り下ろして……
ど が ぁ ん っ ! ! ! !
陸地側に続く土台をさらい打ち砕いた!
「わざと外した……なんのつもりだ!?」
「くそっ!」
この状況でシンを攻撃しないという判断に、ヨサクがついていけずもらしたつぶやきを
背に、シンは海側に向かって走り出す。
「ほい、はんまはんまはんまはんまー!」
『ぶろっぶろっぶろっぶろぉぉぉぉっ!!!!!!』
がぁんがぁんぐしゃぁぁっ!!
「あ、あの野郎……! シンの兄貴で遊んでやがるのか!?」
「シンの兄貴ぃっ! 」
そのシンの後を追うように、ブロームの腕が次々と土台をぶち砕き、シンを追い詰めていく。
……轟音と粉砕の重奏が終わった時には、シンは足場の先端まで追い詰められていた。
(不味いな)
729 :
47=82:2006/12/25(月) 08:30:13 ID:???
槍を構え、ブロームから目をそらさずに、シンは歯噛みした。今、自分が置かれた状況
は、想像以上にヤバイ。
自分を侮って遊んでいたとヨサクとジョニーは叫んでいたが……真相は真逆の位置にあ
った。シンを過小評価していないからこそ、こんな手段をとったのだ。
ドニールは、シンの戦闘スタイルを見破り、そのスタイルを封じるために最適な方法を
とったに過ぎない。
回避して攻撃を当てるスピードファイターであるシンを拘束するために、ドニールは足
場の少ない場所へとシンを追い詰めたのである。足場が少なくなれば、スピードを生かし
た回避という持ち味は半減してしまう。
ならば、攻撃してでも相手の行為を妨害すべきなのだが……
更に奥歯をかみ締め、歯の軋む音が頭蓋を通して鼓膜を揺らす。
ドニール、ブローム両名の体は足場を削っている足中ですらシンの間合いの外にあり、
届く範囲に存在するのは高速で振り回される腕のみという状態だったのだ。巨体のリーチ
を生かしたのである。高速で迫ってくる大質量に攻撃するなど、シンにとっては自殺行為
だった。
では、回避する方向を変えるという選択肢はどうか。
答えは不可能……いや、可能ではあったのだが、シン自身が罠に嵌る選択肢を選び取っ
てしまったのである。理由は、ブロームのでこピンと、ドニールの指示の巧妙さにあった。
でこピンという攻撃は、あえて分類するならば奥に向かって突き抜ける打突系の攻撃に
近い。後ろに飛んで回避する選択肢は確かに存在するのだが、ここに思考の落とし穴があ
る。100%の確立で無傷ですむ回避と、致命傷にはならないがダメージを受ける回避。どち
らを選ぶかといわれれば自明の理だろう。
加えて、ドニールはブロームに、でこピンを放つ時に『回避させたい方向と逆側寄りに
でこピンを打て』と指示を出していたのだ。コレによって、シンは無意識のうちに打点の
存在しない方向へと誘導されてしまったのである。
飛び移るなんぞ論外。無防備な空中ででこピン食らっておしまいである。
シンには、ドニールがどうやって自分を陥れたのかまではわからない。だが、相手が意
図的に自分を足場の少ない場所に誘導し、追い詰めた事は感覚で理解できた。
たとえ気付いて対策を採っていたとしても、ドニールは二の手三の手でシンを追い詰め
ていただろう。事は才能ではなく経験や蓄積の問題であり、ドニールの頭脳に展開された
戦術は、余りにも老獪な代物だった。
この老獪さこそが、ドニールをして一味の幹部に押し上げたのである。
「さて。チェックメイトは目前だ。気楽に行こうぜブローム」
『ぶろぉっ!!!!』
余裕をにじませて語り合う二人に、歯噛みするシン。
「――じゃあ、こういうゲームはどうだ?」
「うおっ!? なんだなんだ!」
ルフィの状況が激変したのは、ちょうどその時だった――
730 :
47=82:2006/12/25(月) 08:34:01 ID:???
本日はここまでです。
日程との関係で、今年はコレが最後の書き込みになると思います
リアルタイムキタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!
職人様GJであります!(`・ω・)ゞ
前々からずっと言いつづけてたけど、ドニールやっぱすっげえいいキャラだ。
GJ!お人よしなとこだけじゃなくてこう言う凄みも見せてくれるとはまさにGJ!
733 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/25(月) 20:49:21 ID:ChOeZ591
>>47=82
感想どうもです、おかげでやる気出てきました
大体3話くらいがキリいいかなと思ってたり
スパロボに参戦したら生き残ってほしいものですが
種死のラスボス役はだれになるんだろうなぁ……?
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風 (偽)
ステラのうぇ〜い冒険日記 その4
「うぇ〜い! ステラは珍獣の王者」
島の珍獣たちとすっかり馴染んで、今日も皆と島を探検
強化の苦しみはどこへやら、棒切れ片手に大行進!
島の中を元気に走り回ってる状況で
ステラのうぇ〜い冒険日記 その5
「うぇ〜 すべってころんですりむいた」
走りすぎてスッテンコロリン、膝を抱えて大号泣
元気になったのは良いけれども……
泣いているステラとオロオロしてる珍獣たち
ステラのうぇ〜い冒険日記 その6
「うぇい? どうして なんで なつかしい」
泣いてるステラの元に現れたのは、最近島に現れた
ワシヘビとネコペンギンの二匹
他の珍獣に懐かぬ彼らが、何故かステラに手当てした
薬草を貼り付けるネコペンギンと、ステラをあやすワシヘビ
ステラのうぇ〜い冒険日記 その7
「うぇい♪ ともだちできた なまえもつけた」
手当てしてもらった事がきっかけで、仲良くなったステラと2匹
ステラはお礼に2匹に名前をつけることに
名前はモチロン……スティング(ワシヘビ)とアウル(ネコペンギン)
なんか雰囲気が『南国少女ステラちゃん』になってしまいそうな……
一応、次回は船出にしようと思っていたり……
スティングとアウルは……珍獣は割りと早く決まりましたが、
何と何を合わせるかで、相当適当にやってしまいました
イメージに合わなかった方、どうもすみません……
734 :
601:2006/12/26(火) 22:24:32 ID:???
>>47=82氏
うむ。相変わらずのGJです。思わずドニールを応援しそうになりますな。
こっからシンがどう反撃に転じるかってのも、楽しみですし。
>>719&733氏
おお、ステラがかわえーですなあw こっから出航となると珍獣海賊団すか。
ルフィ辺りはすげー面白がりそうです。
こちらは現在書いてる最中でして、年末までにもう一回ぐらい扉集中連載風でやってから、ローグタウン編に入る事に
なりそうです。
735 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/27(水) 11:50:28 ID:GcGoNAOe
GJ!
ここはいいスレだW
736 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/27(水) 23:28:33 ID:qQzr43v0
GJ!
職人さんの読んでると書きたくなってくるな。
737 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/27(水) 23:30:26 ID:GmUHZSTP
>>601氏
はじめまして、ご本人からそう言っていただけると、とても嬉しいです
いやー、普段はSRCで(悪名高い)シナリオ書いているのですが
やっぱり自分はこういうほのぼの名雰囲気、特に女の子が主軸なのを書くのが
とっても好きなんだなぁ……とか思って居たりします
なおステラですが、出港はしますが海賊団を結成したりはしません
ワンピースでは良くも悪くも、旗揚げする奴は野望を持っているので
ステラだとその野望に欠ける為、海賊団結成は出来ませんでした
ですが、実はもう一つ別方面でサプライズ狙っていたりします
詳しい話は連載途中となりますが、よろしければご期待してくださいませ
>>47=82氏
すみません、前回敬称付け損ねてしまいました
どうも申し訳ありませんでした
byシナリオ書き修行しなおし中(略して)将軍
738 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/27(水) 23:53:03 ID:GmUHZSTP
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風 (偽)
ステラのうぇ〜い冒険日記 その8
「うぇい……何故か悲しいあの夕陽」
珍獣スティングとアウルと共に海岸で夕陽を見つめるステラ
とっても楽しい毎日だけれど、ここには何かが足りなかった
切ない表情で夕陽を見つめている1人と2匹
ステラのうぇ〜い冒険日記 その9
「うぇい……うかんでくるよ あの笑顔」
浜辺の砂をつかむと、その中には思い出の品とよく似た貝殻が
途端に彼女の心の中にどんどん浮き出てくる彼への思い
砂の中にある右手の貝殻を見つめるステラ
ステラのうぇ〜い冒険日記 その10
「うぇい……ステラ、会いたい……だから」
ぎゅっと、貝殻を握り締め、もう一度彼に会いたい
そう強く願いながら決意を感じる顔になったステラ
その横には、顔を見合わせながら納得したようなスティングとアウルが
ステラのうぇ〜い冒険日記 その11
「うぇい! じっとなんかしていられない!」
会えるかなんてわからないけれど、じっとなんかしていられない
ガイモンや島の珍獣たちに別れを告げて、友達2人をお供に連れて
イカダに乗って島を出る、もう一度彼に会うために!
10と11の間がちょっと急展開だったかなぁ……と思ったり
最近ボキャブラリーが上手く働かなくて、いい表現が出来ない事があったり
本日もお目汚し失礼いたしました
GJ。ステラ旅立ちましたかー。
ところでステラ、仮面の人のこともたまには思い出してあげてくださいw
740 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/28(木) 21:30:09 ID:N2+9kQQ9
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風 (偽)
ステラのうぇ〜い冒険日記 その12
「うぇい たどりついたよミラーボール島」
ミラーボール島へとたどり着いたステラ達
長旅の疲れを癒しておきたい所だけれども
島の港といかだに乗っているステラ達
ステラのうぇ〜い冒険日記 その13
「うぇ〜い……おなかすいたよ ちからがでない」
航海で島から持ってきた食料は食べつくしてしまった上に
一文無しで食べ物を買うお金も無いステラ達
みんな揃って路上でぐったりとしている所
ステラのうぇ〜い冒険日記 その14
「うぇい? 音楽が聞こえる」
グッタリとしてるステラ達の下に、どこからとも無く楽しそうな音楽が
当たりをきょろきょろ見回すステラ、その先には人だかりが
人だかりの方を見つめているステラ、相変わらずグッタリのスティングとアウル
ステラのうぇ〜い冒険日記 その15
「うぇ〜い♪ ステラもおどるよ ダンスコンテスト」
ステラの飛び入り参加で会場騒然
スティングとアウルを振り回し、元気に踊るステラ
元気よく踊ってるステラと、振り回されて目を回してるスティングとアウル
結構展開に迷ってたりしました、ダンスコンテストにしようか、シロップ村に行こうかなぁと
順調に行けば次回ビックサプライズが起こる……ハズです
私が下手な文章にしてしまわなければ
>>739氏
応援どうもです
仮面の人……私の方がすっかり忘れていました(何
G種みてたからかなぁ……ごめんなさい
GJGJGJ!!
ステラ、種見てないから知らなかったけど超萌える(*´д`)
面白いけどなんで皆ageてるのかが気になる
743 :
601:2006/12/29(金) 23:11:57 ID:???
>>738&740氏
GJ。こんぐらいのテンポの方が、やっぱり表紙連載の味わいには近いですな。
しかし、ミラーボール島のコンテストて……ジャンゴとフルボディに出会うのかしらん。
で、こちらは今年最後(たぶん)の投下になります。
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風
シンの何なんだ見聞録 その11 「早く逃げて!」
後からやってきたナタルの部下達が、踏まれ蹴られてぼろぼろになったシグナルと、その部下達をまとめて
ふん縛り連行していく。
それをわき目に、ナタルがシンの方を向き直ると――二人の幼い少女が手を広げて立ちはだかっていた。
「お兄ちゃんを捕まえちゃだめ!」
「お兄ちゃんはパパ達を助けてくれたの!」
シンの何なんだ見聞録 その12 「助かったの……か?」
しばしナタルはシンと少女達を見比べていたが、ふと、ため息を漏らした。
「少佐、全員捕縛完了しました」赤い髪をポニーテールにした若い女性が、書類を片手にナタルに報告する。
「わかった……島民の皆さん。私は海軍本部少佐、バジルール・ナタルです。シグナル中佐はこれより軍事法廷に
護送の上、罪を裁く事になります。なお、彼と結託していた『大口のガバン』はすでに捕縛しており、ガバンの船
に捕らえられていた人々も、順次島に戻る手はずになっています。ご安心ください。それと」
ちらりとナタルの視線が、シンへ向く。
「協力、感謝する」
一言だけ漏らして、ナタルは港へ去っていく。
シンの何なんだ見聞録 その12 「良かったんですか?」
船に乗り込むナタルと部下達。ポニーテールの女性が、ナタルに小声で聞いた。
「放って置いて良かったんですか? 彼、どう見ても」
「構わん。義憤に駆られての行動だろうしな。それに、あそこで下手に彼を連れてこようとでもすれば、今度は
我々が悪役だ」
「そういう事じゃなくて」
「それならなお更構わんだろう。それとも、君は今でもコーディネイターに含むところがあるのか、フレイ?」
「流石にそうは言いませんけど」
744 :
601:2006/12/29(金) 23:13:27 ID:???
シンの何なんだ見聞録 その13 「宴会だーっ!」
憂いは去った。家族が戻った。だったらやる事は一つだけ。大いに飲んで大いに騒げ。ご馳走酒盛り歌えや踊れ。
シンも呼ばれて一緒に騒ぐ。
今まで、こんなに楽しい宴会なんて、あったかな。こういうのも良いもんだな。なあ相棒。
そんな風に思っていたら、あの二人の女の子、シンの両脇に。揃って頬にチューされた。
シンの何なんだ見聞録 その14 「さあ、出発だ」
飲んで騒いで浮かれて一夜、明ければ来るのは旅立ちだ。
風をはらんで膨らむ帆、待つはいかなる運命か。港で手を振る人々に、手を振り替えしつつ胸元の、相棒のかけらを
握り締め、おぼろげながら見えた道。まずは目指そう次の島。
その後、シンは成り行きによって、「アンタは一体何なんだ」と小規模ながらも4つの海賊団と、2人の不良将校
をぶちのめしつつ海を進み、あっと言う間に800万ベリーの見事な賞金首となっていた。その事を彼が知るのは、
ローグタウンに至ってからであった。
と言うところでひとまず扉集中連載風は終了。ローグタウン編以後は、通常に戻ります。まー年明け以後になるでしょうが。
745 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/29(金) 23:41:51 ID:I5v81VGq
>>741氏
応援どうもです
実の所を言うと、自分も種死はあんま知らないんですよね……
ほとんど知識は二次創作から得ています
故に、本家と全然違うぞとか言うツッコミ入れられるかもしれません
その時は容赦なく突っ込みをどうぞ
>>601氏へ
度々どうもありがとうございます
展開に関しては、今回の分を参照してください
最も、さほど関わりがあるかは保証できませんが>フルボディとジャンゴ
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風 (偽)
ステラのうぇ〜い冒険日記 その16
「うぇ〜い♪ ステラとったよ 3等賞」
優勝は出来なかったけど、それでも堂々第3位!
1位のジャンゴと2位のフルボディと共に、皆から賞賛されるステラ
それぞれがトロフィー持ちながら喜んでいる所と
ステラの湧きで息を切らしているスティングとアウル
ステラのうぇ〜い冒険日記 その17
「うぇ〜い♪ ステラおやすみ 1・2・ジャンゴ」
賞金ももらい、ジャンゴとフルボディと意気投合したところで、近くのオープンカフェで食事を取る一同
ジャンゴがかけた催眠術で、ジャンゴもステラもグッスリと
食べてる途中で寝ているステラ、お約束どおり自分もかかったジャンゴ
その横で酔っ払いながら大笑いしているフルボディと、テーブルの下でガツガツ食べてるアウルとスティング
ステラのうぇ〜い冒険日記 その18
「うぇい!? 頭の上にチューリップ!?」
部下がジャンゴの情報を持ってきたところでチューリップ海賊団来襲
ステラに避難を命じるフルボディ、この隙にと逃げるジャンゴ
フルボディに命じられるままに逃げるステラ、けれどその先には……
746 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/29(金) 23:43:09 ID:I5v81VGq
ステラのうぇ〜い冒険日記 その19
「うぇい! みんなはステラが護るんだ!」
待ち伏せしていた海賊達が、スティングとアウルに目をつけた
2匹を狙う海賊たちを、樽や花瓶で退ける
かつて彼が自分を護ると言ってくれた様に、ステラも大切な者を護る為に戦う!
ステラのうぇ〜い冒険日記 その20
「うぇい…? どこかでみた あなたの目」
百戦錬磨の海賊達に、ついに追い詰められたステラ達
絶体絶命のその時に、煌めく刃が敵を切り裂く!
彼女が振り向いた時、ステラが懐かしさを感じたその目の持ち主とは……
ついにサプライズ来ました、と言ってもまだ正体明かしていませんが
とはいえ、この書き方だと正体分かる人は分かっちゃうでしょうね
ヒント……って言うか、余計な事を言うと絶対ばれてしまうので
とりあえずは皆さんの反応お待ちしたいと思っております
それでは、本日もお目汚し失礼いたしました
747 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/30(土) 22:34:14 ID:iuMsxgq5
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風 (偽)
ステラのうぇ〜い冒険日記 その21
「うぇい 隻腕の賞金稼ぎ 閃光の”マユ”」
海賊達を倒し、大丈夫かと言葉をかけた隻腕の少女
マユと名乗った彼女の目は、やっぱり彼に似ている……
ぼーっとしてるステラと、微笑みかけるマユ
ステラのうぇ〜い冒険日記 その22
「うぇい! マユ 対 双剣のゴーシュ」
その時背後からやってきたのは、チューリップ海賊団に雇われた、双剣の使い手ゴーシュ
片手で二本の剣に勝てるものかと、マユに襲い掛かるゴーシュ
襲い掛かるゴーシュと、それを睨み付けるマユ、その背後でマユの方を見ているステラ
ステラのうぇ〜い冒険日記 その23
「うぇい 1が2に負けるとは限らない」
切りかかろうとしたその前に、マユの一撃がゴーシュに炸裂
剣を構えて無かったけれど、その速さは圧倒的!
いともあっさりゴーシュを撃破!
ついに出してしまいました……このマユは無論、あのマユちゃんで〜す(何
シンより早く来てれば、更に強くなるんじゃないかなぁと思って賞金稼ぎにしてしまいました
海軍だと後々争う事になってしまいますからね……
それでは、本日もお目汚し失礼いたしました
マユは意外だったw
GJッ!
まずはGJ!
あ、腕無いんだ。
てっきりステラが健康体になってるぐらいだから再生してるかとも思ったけども。
パターンとしては、
「病気等のみ完治」
って感じかな?
んで、ふと思う。
健康体になったクルーゼとレイが再会して海賊団結成。
名づけて「仮面海賊団」・・・・・・って、クルーゼまだ仮面かぶっとるんかい!!
おそまつさまでした。
750 :
514:2006/12/30(土) 23:45:27 ID:???
片腕の剣士! 丹下左膳だ! いやぁ、渋い!
どんな戦い方をするのかが非常に楽しみですね。
しかし、マユとステラがいっしょに合流したら、シンなんて号泣どころじゃ済みそうになさそうだ。
かっこいいwどのキャラも!
752 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/31(日) 00:44:33 ID:i9SC1GH6
ご声援どうもありがとうございます、(偽)日記の人です
>>748氏
書き始めてた時から考えてました、引っかかってくれてどうもありがとうございます(何
実は初対面でステラが信用できそうな人物となると、彼女しか居なかったのですよ
私自身に伏線をうめておく堪え性が無いという所もあったりしますが
>>749氏
いや〜、そこら辺しっかり失念していました
しかし、マユと言えばあの腕がとことん他の所でも使われているので
隻腕剣士はもう書き始めから決定事項の1つでしたね
あの世界の海は神秘も多そうだし、ステラの治った理由そこにあるかもしれません(何
そして仮面海賊団……うーむ、見るからに怪しげだ
>>514氏
いや、自分的には頭の中に入ってた伊庭八郎イメージだったんです……ごめんなさい
ちなみに裏設定では、マユはゾロに関係のある人物とか考えてました
ゾロの村で剣の先生に助けてもらい、旅立ちの日に先生から
ゾロによろしく伝えてくれと頼まれるとか……
一緒に合流……これだけの感激、どのタイミングなら一番感動的だろう……?
>>751氏
自分の作品にもその言葉をかけてもらえると自惚れて書きます
ご声援どうもありがとうございます
投下乙。GJ
あとメール欄にsageって入れるといいと思うよ
754 :
601:2006/12/31(日) 03:43:51 ID:???
GJ! いやーこれは読めませんでした。
まさかマユとはねえ。この調子で頑張って下さい。
755 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/31(日) 06:33:12 ID:Mkk2Ksu/
>601氏
キラの救済にもなるのでは
と読んでいて思ってしまいました。
キラのことだから、絶対罪悪感に苛まれてるだろうし
いいねぇ、やっぱり野郎キャラだけじゃなく女性キャラも入るべきだよなぁ
>>753氏
ご声援、どうもありがとうございます
ところで、メール欄にsageと入れるのって、IDを???にする為なのでしょうか?
2ちゃんねる使い慣れていないので……どうもすみません
>>601氏
そう引っかかっていただけると、とても嬉しいです
結構ばれそうな気がしてたんですけどね……
そのうち続編のマユ視点書いちゃうかもしれません
>>756氏
そうそう、ワンピ世界と言えば女性の胸がやたら強調されてますからねぇ(何
やはり華が無ければ……
そこら辺のネタ、次回作でやってみたいと思います
それでは本日の偽日記へ
機動海賊ONE PIECE Destiny 扉集中連載風 (偽)
ステラのうぇ〜い冒険日記 その24
「うぇい 遠い世界から来たマユ」
海賊騒ぎが収まった後の皆とで、2人で話し合うステラとマユ
聞けばマユも2年前に、ステラと同じ世界からこちら側へ来たと言う
謎のMSの攻撃で離れ離れになった家族と出会う為、腕を磨いて賞金稼ぎになったと言う
港の柵に寄りかかって海の方を見つめてるマユと、それを見ているステラ達
ステラのうぇ〜い冒険日記 その25
「うぇい 逢いたい想いは ステラと同じ」
そんなマユに、ステラも逢いたい人がいるから旅に出た事を告げる
護るといってくれた彼の笑顔にまた逢う為に、上手くいえないけど一生懸命
真剣な表情でマユに話しかけるステラと、それを聞いているマユ
ステラのうぇ〜い冒険日記 その26
「うぇい!? 見覚えのある後ろ姿……」
とりあえず、マユと一緒に夕食をとる事になったステラ
その時、海軍が貼り付けた3000万ベリーの手配書に飛びついた
気楽な笑顔の後ろに居るのは、忘れるはずが無い彼に良く似た……
ステラのうぇ〜い冒険日記 その27
「うぇ〜い! とっても逢いたい! 今すぐ逢いたい!」
意外に早く見つかった彼の手がかり、マユと一緒にポスター見つめる
急かすステラと考え込むマユ、果たしてマユはどうするのか……
その下でスティングとアウルが見つめる先ほど海兵達が剥がした前の手配書の主役
……あのー、マユさん、ステラさん、そんな後姿よりこっちの方がわかりやすくありませんか?
……赤服、再び主役転落
ステラのうぇ〜い冒険日記 その28
「うぇい…… 月夜にたたずむ 寂しげなマユ」
マユと同じ部屋に泊まって、グッスリ寝ているステラ達
ふと目を覚ますと、ベランダにたたずんでいるマユの姿が
寝ぼけ眼を擦って見つめているステラと、ナイトキャップつけて寝ているスティングとアウル
ステラのうぇ〜い冒険日記 その29
「うぇい! ミラーボール島に 別れを告げて」
マユと共に行く事になったステラは、いよいよ楽しかったミラーボール島から出港する
何時の間にやら雑用になっていたジャンゴとフルボディと握手する
笑顔で手を握るステラ、泣きながら別れを惜しむジャンゴとフルボディ
そして船にはステラを読んでいるマユ達の姿が
ステラのうぇ〜い冒険日記 最終話
「うぇい! 笑顔が待ってる あの海へ!」
ジャンゴとフルボディがお別れダンスで見送る中、ついにステラ達は海に出る
舵を取るマユ、海図を見ているスティングとアウル
船首に座るステラの見つめる先は……もちろん彼が居る海へ!
ふ〜、今年最後の日と言う事で、残る話数全部作ってしまいました
なんか最後の方流れ的にちょっと疑問が残ってしまったかもしれませんが
とりあえず、うぇ〜い冒険日記、これにて閉幕です
さて、そんな一方で今度はこの続きとなる話を作りたくなったり
長編でマユ視点で、なおかつステラに何かの特殊能力を持たせたりとか……
ステラの場合、技術的なものよりは悪魔の実の方があってそうなんですよねぇ……
イヌイヌの実のモデルバリエーションの1つとか、超人系とかもいけるかも
そしてその一方で、この設定使ってくれる人が居ればなぁとか思ってみる
一応被らないように書いてみましたが、そりゃ流石に図々しいか
それでは、本日もお目汚し失礼いたしました
761 :
601:2007/01/01(月) 04:28:58 ID:???
ども、601です。謹賀新年ー。
まずは
>>760氏、GJです。
何気にジャンゴとフルボディが良い味出してるなあw
むしろ、マユとステラの冒険記を読みたいですね、こうなると。
こないだライブドアのID取ったんで、今までまとめにアップされてなかった分を、
他の方のも含めて上げさせていただきました。
なお、760氏の作品については、とりあえず、初出のレス番で「719氏」としてまとめてさせていただきました。
何か、問題ありましたら修正しますんで。
GJです!
ステラかわええです
寄らば斬る
764 :
719:2007/01/02(火) 23:04:28 ID:???
>>601氏
少々遅れましたが、あけましておめでとうございます
今回から719を名乗らせていただく事にしました
(偽)日記の方、アップどうもありがとうございました
問題、全然ありません、感謝感激雨アラレです
さて、問題の次回作ですが……多少作り難い所もあったりします
あくまで外伝的な流れなので、どこかで本流と合流しないとちょっと薄れるかなぁなんて……
アラバスタでの合流を希望して、コラボ願いだしてみたいなどと勝手な事を言って見ます
ちなみに、主な舞台は決まってます、黒ひげが襲撃するあたりのドラム王国です
海賊に襲われて国捨てて逃げたバカ王、マユには結構絡ませやすいんじゃないかなぁと思ったり
>>762氏
ご声援、どうもありがとうございます
とりあえず、次の作品でもビッグなサプライズを……狙えるかな?
(流石にマユ以上は難しいからなぁ……)
うぇいステラかわいいw
>>764 なんかブリキング海賊団に拾われてチェスとマリモに言いくるめられて
ワポルを支持しちゃってるウズミの姿が脳裏に……
767 :
719:2007/01/03(水) 23:27:41 ID:???
>>765氏
ご声援どうもありがとうございます
やっぱり、私は女性キャラ書いてる方が性にあうなぁ……
>>766氏
うーむ、あのレベルに言いくるめられるって……頭が痛くなりそうだ
まぁ、実際には黒ヒゲが襲ってくる前からなので、ブリキング海賊団とは戦わないかもしれませんが
……いかん、ここでもう一人加わって3人組になりそうな予感が……(チョッパーは入れられませんし)
で、とりあえず書き始めてみました
要点だけ書いて後で肉付けしていく方法なのでまだ公開できませんが
近い内に序章公開できるかもしれません
進行速度はやる気任せなので、期待しないで待っていてくださいませ(何
むしろウズミにはコブラと絡んでもらいたいのは、俺だけか?
769 :
514:2007/01/06(土) 00:56:18 ID:???
ウズミならエネル襲来前のスカイピアで、それこそ中立にたって両陣営の調停役をやるってのもありじゃないですかね。
ワンピースって少年漫画だけど取り扱ってるテーマはガンダム並だから、どこにはいっても面白いと思いますよ。
770 :
601:2007/01/06(土) 21:22:37 ID:???
>>719氏
あ、OKですか。じゃあとりあえず以後はこう呼ばせていただくと言う事で。
コラボは……どうかなあ、むしろこの路線で自由に書いていただいた方が、
面白くなりそうな。
しかし、ウズミかあ……いや、アラバスタ編と言うか、バロックワークスではまた
別のキャラを交えるのを考えてたもので。
あ、因みに当座自分の方ではキラや凸や出番ナッシングです。
さて、と言うだけなのも何ですので、ローグタウン編の1本目を投下します。
771 :
601:2007/01/06(土) 21:24:05 ID:???
機動海賊 ONE PIECE Destiny 第4回
イーストブルーの名所を挙げろと言われた場合、たいがいの人々は、水上レストラン「バラティエ」とともに、
ローグタウンの名を挙げるだろう。
始まりと終わりの街――海賊王、ゴールド・ロジャーが生まれ、処刑された土地であるが故の別名だ。
「俺の財宝か? 欲しけりゃくれてやるぜ…探してみろ、この世の全てをそこに置いて来た」
またそれとは別に、ロジャーが処刑に際して笑いながら口にしたこの言葉から始まった「大海賊時代」と呼ばれる
今日、ローグタウンはイーストブルーから「偉大なる航路」へ向かう入り口に最も近い街であるため、ここから
「偉大なる航路」へ向かおうと言う冒険心にあふれた者達と、彼らを見込んだ商人たちなど多くの人々が集う、
旅立ちの街と言う顔も持っていた。
そして、海軍本部はこのローグタウンをイーストブルーでも最も重視している事の表明として、支部ではなく本部
直轄とし、戦力を派遣していた。
その戦力を預かるのが、「白猟」の異名を取る本部大佐、スモーカーだった。
今、そのスモーカーのオフィスに、一人の女性将校が、従兵をしたがえて報告に訪れていた。
「スモーカー大佐。バジルール・ナタル少佐、巡回査察任務を完了し、ただいま帰頭いたしました」
ぴしりと背筋を伸ばし敬礼する姿は、「堅物」と言う彼女の異名――実際には、そこにはまた別の背景があるのだ
が――を、彷彿とさせるものだった。
それに対するスモーカーは、葉巻2本をいっぺんにくわえ、デスクに足をでんと乗せたぞんざいな格好だった。
「おう、ご苦労」
772 :
601:2007/01/06(土) 21:25:36 ID:???
スモーカーは、ナタルから事前に送られていた報告書をめくりながら、顎で椅子を示した。
それを受け、ナタルは、室内に据えられたソファに腰を下ろした。彼女の従兵――赤みがかった髪をポニーテイルに
した若い女性だった――は、その後ろに書類束を抱えたまま控えた。
「また手柄立てたみてえだな。シグナルはじめ不良将校に、小粒とは言え海賊団4つ……ま、お前さんにしちゃあ、
大人しい方か?」
「……自分は、任務を果たしたまでです。それに」
「あん?」
「ほとんどは、『彼』のした事です」
「ああ、このルーキーか」
スモーカーが、デスクの脇に置かれた束から、一枚の手配書を取り上げた。「赤服のシン」賞金800万ベリー。
そこには、そう書かれていた。言うまでもなく、シン・アスカ――この世界での呼び方に従えば、アスカ・シン
その人である。
「800万か。大げさな気もするがな。お前さんから見てどうなんだ?」
「さて、自分も、あまり彼が暴れている現場は見ていませんから」
嘘だった。あのシグナルを捕縛した後も、ナタル達はたびたびシンが暴れている現場に出くわしていた。そして、
その度シンの行動があくまでも義憤に駆られたものであると知り、ナタルともう一人――今ナタルの背後に控えて
いるフレイ・アルスターは、安堵にも似た思いを抱いた。
ナタルとフレイがこの世界に現れたのは、この世界の時間で、3年ほど前になる。ヤキンドゥーエの戦いで死んだ
と思った二人だったが、気がつけば、揃ってイーストブルーのとある島に流れ着いた形となっていたのだ。
以後、2人は協力しあいながらやがて海軍に入り、もともと軍人であり、ある事情によって力を得たナタルは、
とうとう本部少佐にまで昇進を果たしていた。フレイの方は、基礎から鍛えなおしと言う有様であった為、今も
伍長と言う階級でしかないが、ナタルが自身の権限によって従兵として自身の側に常に控えさせるようにしていた。
2人とも、この世界に来た理由などについてはまるで解っていなかったのだが、ここを新天地とし、過去の世界と
は決別しよう、と言う点についても、また共通していた。
たぶん、間違いなく状況からして、自分達はすでに死者として扱われているだろう、と言うのがまずあったし、
この世界で新たに得た知己や絆などもある。それらを振り切ってまで、戻るべきほどの魅力が、コズミックエラの
世界には、感じられなかったと言うのもあった。
そんな2人にとり、明らかにコズミックエラからの来訪者であろう――何しろ、服がザフトの赤と来ている――
シンの出現は、驚きと戸惑いを覚えさせるものだった。
773 :
601:2007/01/06(土) 21:27:18 ID:???
もし仮に、あのザフトの少年が、コーディネイター特有の根拠のない優越意識に溢れるような輩であれば。
もし仮に、あのザフトの少年が、ラウ・ル・クルーゼのごとき怪物であったなら。
2人は、何をおいてもシンの事を排除しようとしただろう。だが、シンは短気にすぎるきらいこそあったものの、
ナタル達が危惧するような人物ではないように思えた。彼が起こした揉め事は、全てが義憤にかられての行動で
あり、その刃が向けられたのは、全て無辜の市民を虐げる奴等に対してだったのだ。
何処で習ったのか、不可思議な体術を駆使し、一人で航海までしてみせる辺りから察するに、この世界についての
知識も、きちんと備えてはいるのだろう。
だから、ナタルはあえてシンの事を最初報告書には載せずにおいたのだが、何しろ行く島で必ずと言って良いほど
面倒に巻き込まれ、あるいは起こしと言う有様だ。ナタルが報告せずとも、その存在は海軍に知られる所となって
しまったのだ。
――出来るなら、彼も海軍に誘ってみたい所なのだがな
そんな風に思っていたナタルには、少々残念な話ではあった。
あの戦闘能力もそうなのだが、若いとも言えるあの義侠心が、正しく育っていくのを、見て見たいとも思ったのだ。
因みにフレイは、シンについて特に含む所はないのだそうだ。コーディネイター憎しの感情も、この世界に来てから
は、相当に和らいでいたせいであろうか。
だいたい、この世界に来て見ると、ナチュラルだのコーディネイターだのと言う分類が、ばかばかしくなってしまう
と言うのもあった。
774 :
601:2007/01/06(土) 21:28:53 ID:???
「まあ、コイツも問題は問題だが、どうやら、近いうちにもう一人ルーキーの手配書が来るらしい」
「ルーキー、ですか?」
スモーカーの言葉に、ナタルは意識を引き戻した。
「ああ、ノコギリのアーロン……アイツをぶっ飛ばしたらしい」
魚人海賊団のアーロンは、当然ナタルも知っていた。CE世界のコーディネイターもかくやと言う差別意識の
持ち主で、魚人王国の建設を目論んでいるとさえ言われる、イーストブルーきっての大物だ。
いつか、ナタルも対さねばならないだろうと考えていた相手だ。それを、撃破したと言う。
「他にも道化のバギーや首領クリークも、そいつにやられてるらしい……これまで辿った航路から、大方ここ
に来るだろう。そいつが『偉大なる航路』を目指すなら、間違いなくな」
スモーカーの言葉に、ナタルは自然に身が引き締まるのを感じた。
「まあ、実際この赤服も無視は出来んだろうがな」
「そちらは、私にお任せ願えませんか」
「あん……?」
スモーカーは、しばしナタルの顔を見詰め、ちいさく鼻息を漏らして目を閉じた。
「ま、良い。好きにしろ……」
「有難う御座います」
一方その頃、渦中の人物アスカ・シンは何をしていたかと言うと――ローグタウンの広場の一つで、ジャグリングの
大道芸を道行く人に披露していた。
775 :
601:2007/01/06(土) 21:29:44 ID:???
時間は、しばし遡る――
ローグタウンについたシンがまず赴いたのは、船大工の工房だった。ローグタウンの港に入る少し前あたり
から、あちこち浸水が激しかったのだ。シンとしてはなるたけ大事に乗ってきた積りだったのだが、いかん
せん船の年齢自体がかなり古かったのと、海賊達との立ち回りなどで少なからぬダメージを負っていたのだ。
船大工の親方は、一当たり船を調べると「これはもう、外洋を渡るのは無理だな」と診断を下した。
「見てみな。ほら、この帆柱と竜骨を繋げてる所だ。ここで、竜骨が歪んでるだろう。帆に加わる風の力が、
竜骨を曲げてるんだ。その歪みが、全体に影響して浸水を起こしてるんだな」
「直せないんすか、コレ」
「んー……ちょっとな。まあ、帆柱を外して、島の近海で漁に使ったり連絡船に使うぐらいならまだまだ行ける
だろうが」
「そっか……」
デスティニーの一件以来、シンは、ものを思いやると言う心を、深く自覚するようになっていた。そんなシンに
とって、親方の言葉は寂しいものだったが、しかし、それだけに、この船にとって、そうしてやる事が良いので
はないかとも、思えた。船として、静かな余生を過ごさせてやるのも、また一つの選択肢なのではないかと。
「何なら、ワシの所で引き取ってやっても良いぞ。適当な値段は払うよ」
「じゃあ、お願いします……今までありがとうな、お前」
船べりを手でさすりながら、別れを惜しむシンの表情に、親方は鼻を小さくこすり上げた。
結局、船はここで補修と小さな改造を受けて生まれ変わる事となり、シンは、中古船の代金としては少々多めな
額を手に入れた。シンも少し多すぎないかとは言ったのだが――
「なあに。お前さんが気に入ったからな。それに、客船に乗るにしろ新しく船を買うにしろ、元手は多い方が良かろう?」
親方は、笑ってそう良い、代金をシンの手に押し付けたのだった。
776 :
601:2007/01/06(土) 21:30:47 ID:???
とりあえず船と別れを告げたシンだったが、この後どうするか、少々迷っていた。
「偉大なる航路」の事はビフからも聞かされていたが、到底今の状態ではそこへ向かう事など不可能だった。
客船が行ってくれるはずもないし、一人で「偉大なる航路」へ行くなど、ほぼ自殺行為に等しいだろう。
腕が立つとか何とか言う以前の問題として、だ。
どこかの海賊団に入団するという手もあるのだろうが、今の所宛てはない。そもそも、これまでシンが出会った
海賊は、どれも正しく「ろくでなしのクズ」以外の何者でもなかったのだ。
さて一体どうしたものか――迷った挙句、シンはとりあえず、目先をそらして見る事にした。
島々を渡る上で、何がしかのたつきは必要だろうと、ジャグリングで、少し小銭を稼いでおこうと考えたのだ。
あの親方の言う通り、金はあって困るものではないのだし、と。
ジャグリングをシンに奨めたのは、ビフだった。もともと動体視力が高く、反射速度も人並みはずれたシンだ。
後は手先の訓練で、どうにか芸として通用するぐらいのものにはなれた。
芸の売りとして、ナイフとお手玉を同時に操ると言うものも考えた。
2つのお手玉と2本のナイフを器用に操り、時折わざとナイフの刃の方を掴んでみせるなど、客をはらはらさせる
ような演出などもこなしてみせた。
結果、最初はまばらだった観客も、やがて小さくはあるが人だかりを作るようになり、前においた空き缶には、す
でに結構な量の小銭が入っていた。
「よし。じゃあ次はもうちょっとレベルを上げよう。ええと、そこアンタ、その穿いてるサンダルを貸してくれな
いかな」
「え? 俺かっ?!」
シンが声を掛けたのは、観客の中でもとびきり目を輝かせてシンの芸を見詰めていた若者だった。その若者は、左目
の下に傷跡があり、麦わら帽子を被っていた。
To be continue...
777 :
601:2007/01/06(土) 21:32:01 ID:???
以上、投下完了です。
……スレのサイズがもう結構になってるな。
778 :
通常の名無しさんの3倍:2007/01/06(土) 22:06:21 ID:RQ0ViTOs
乙です。
投下乙です
そろそろ次スレのテンプレ考える頃合でしょうか
とりあえずまとめのリンクは必須としてローカルルールって何か必要ですかね?
780 :
719:2007/01/06(土) 22:31:13 ID:???
>>768氏
>>769氏
まとめてしまって申し訳ございません
うーん、コブラは使いやすそうだけれども、スカイピアは難しいなぁとか言ってみる
空島に行った海賊、ルフィ達の他にはロジャーくらいだし
他にも行ったと思われるけど、大体は帰って来なかったと思いますし……
>>601氏
いえ、単にこの設定使いたい方はご自由に、と言う意味だったので
なにせ、使い方間違えればシンの動機をごっそり奪いかねませんからね……
そして……ちょっと601氏のとは組み合わせにくいかなぁと思ってたり
……見事に被っちゃってます、次で出そうとしてる種キャラ、内容は秘密ですが
あー、時系列どうしようかなぁ……
シンと会わない、エースとも会うとヤバイ、手配書発行→黒ひげ襲撃だと時間がおかしい
コレに加えてアラバスタにも行かなきゃならないとなると……ボンちゃんとも組み合わせるかな
おもれーwよくこんなんかけますね…
スレタイはこのままでもいいですよね
テンプレも簡単なのがいいかな
GJ、遂にルフィとの出会いktkr
ところでCEって「コズミック・イラ」じゃなかったっけ…?
>>782 当たり前だーーーーーーっ!!
と、アーロン編のルフィ風に言ってみる。
ちらっと原作コミックを読み返したけど、
ここらへんの初期はマジで神だな…。
784 :
601:2007/01/08(月) 00:31:37 ID:???
GJコールTHX
次スレについては、スレタイはこのまま番号だけ入れて、
テンプレも前スレとまとめへのリンクぐらいで充分じゃないですかね。
>>719氏
なるほど、そういう事なら、やはり下手に絡めるよりお互い独自でやっていった方がよさげですな。
>ところでCEって「コズミック・イラ」じゃなかったっけ…?
あ、ホントだ……orz まとめへのアップ時にごまk(ry修正しよう
保守
やっぱり、ローカルルール作るなら、どこかよその板を参考にするのが一番いいのでは?
けど、問題も起きてないから、またーりいくのもいいかも。
やっと今週号読んだが……「闇」ってアリか……?
炎やら煙やら砂やら雷がありだからな・・・
良い実食ったヤツが基本的に強い世界だし。
闇の正体が何なのかによるなあ
闇自体は、他のロギア系みたいに物体でもエネルギーでもなく、単なる状況に過ぎないし
月並みだが、重力操作か?
ファンタジーでは闇を実体のある物質や元素として扱うのはわりかし定番なんだけどね。
悪魔の実のヒエラルキー上でルフィを明確に下位に置いてるのが非凡だな。
クロコダイルやエネル戦での苦戦っぷりはなかなか良かったし。
こう考えるとシンはやっぱ、悪魔の実抜きでがんがるのがいいよな。
791 :
通常の名無しさんの3倍:2007/01/10(水) 02:44:16 ID:wFpsbVrb
もしくは、ルフィよりもさらに地味ーな能力か。
反面、キラにはロギアが似合うと思う俺が居る。
闇がありなんだし、光関係の実かな? けど、原作のほうでやるかも……
ロギアは弱点があるにせよ、力押しには反則的に強いからな
敵キャラ向きだと思う
火だから照らせば、とも思ったが
それじゃあっさり勝ててしまうのでエネルギー吸収とかするかもな
>>791 このスレの場合、マユが光の実喰ってしまいそう。
んで、能力上妹に劣る兄。妹に負けてステラとのスキンシップはお預けとか。
>>794 せっかくシンは強くなったんだから、そんなことしたらかわいs(ry
796 :
601:2007/01/10(水) 18:51:15 ID:???
って、気が付いたら既に490行ってるな。
ナタルさんがカッコ良すぎです。シンよりも彼女を見に訪れますw
保守
>796
テンプレはそんな感じでよろしいのではないかと思います
埋めますか
おいら携帯なんで、PCの人埋め頼む。
埋めましょう
梅
埋め
うめもうそう
キラが此処にきたら絶対光の実の技能を持つと思うね
そして「カッコイイポーズ」で相手を止めてから
腕を切り落としたり頭を打ち抜くんだと妄想した
うは!光魔法!
梅
810 :
601:2007/01/15(月) 01:16:32 ID:???
梅ー
>>807 想像してふいたw
所で、ミーアに精神操作系の能力を持たせて「ミスエイプリルフール」なんて言うのは
どーだろうか。ある意味ひでー残酷で皮肉だけど。
一発変換だと、機動化遺族ってなって不謹慎だね!
と言いつつ埋め。
>>807 なんかあほっぽい行動とその後のエグさから黒髭のところにいそうなキラだな
“プリンス”キラとか言う名前で
814 :
601:2007/01/16(火) 01:38:01 ID:???
>>812 うん。それもそうなんだけど、そこをあえて影武者なんてのをやってたミーアに、
たとえば「ウタウタの実」とか言って、精神操作能力を持たせてね。
で、それに目を付けたクロコダイルに無理矢理バロックワークスに入れられて、
皮肉なコードネームを付けられたりってのはーと。
名目上ボンちゃんのパートナーとでもして。
まんまラクス出すよりは良いかなと思ったのですよー。
とゆ〜か ラクキラアスランの3人は殺しても死にそうにないし、
異世界に飛ばされるほどの爆発にすら巻き込まれそうにない。
>>815 シンに撃墜されたときに、ワンピ世界に飛ばされるキラ・・・。
死に物狂いで元の世界に戻ろうとするだろうな。
キラは自分を甘やかしてくれるラクスがいないと精神の安定が保てないからな
>>816 そしてやっぱりワンピ世界に来ていた、1人目や2人目の自分と出会って初めてラクスに疑問を抱き
砂漠の国でレジスタンスに参加して事態を悪化させたり、強力な武器を作ったはいいがそれが流出して量産されて世界的な混乱を巻き起こしたり
シンに殴られて改心したと見せかけて、元の世界に戻るためという大義名分のもとにマッドサイエンティスト化するのですな?
ぶっちゃけ、ラクシズは出てこなくて良いと思う。
つか、出す必要がなくね?
つーか楽死頭がワンピ世界に来る理屈は何よ。
>>820 悪魔の実を独占して、憎しみの連鎖を断ち切る力を得るため。
ロビンが追っかけてる古代の超兵器を手に入れて、平和な世界を築く力を得るため。
ワンピースを手に入れて、争いの芽を摘むため。
たぶんこんな感じ。
>>821うわぁ・・・ひでぇ・・・
確かに奴らが着たらワンピの世界観が変になる・・・。
出さなくて正解
ミーアなら世界一のアイドルを目指す女の子でまあいいが、ラクスは世界崩壊するな…
ステラはイヌイヌの実モデルドーベルマン辺りか?
ステラには戦いに役立つ犬だけじゃなく、かわいい子犬にもなってもらいたい
埋めるかわりに。
闇=引力だったか。
しかも、能力も接触限定で吸い取るとな。
……本気でやったら、大規模の艦隊でも吸い込んで全滅やわな…。
まあ、その前に射撃されて邪魔されるだろうから、奇襲が前提だろうが。
思ったんだが、あの闇に海楼石飲みこませたらどうなんのかね。
壮大なネタバレをしてしまった件について
もしシンとゾロがであったら…
南斗の文句は俺に言え
ゆっくり保守
ゆっくり埋め
ume
ume
うめ
ウメウメの…………ピストル!
バズーガ!
ムチ!
ガトリング!
海賊王に俺はなる!
ume
ume
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梅ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
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埋めよ埋めます埋める埋めた埋めれ
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