種・種死の世界にXキャラがいたら-コーヒー12杯目-
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770:2006/08/28(月) 02:49:01 ID:???
教えてくれた人サンキュ、参考になった!
でも今は敬礼アカツキを描いている俺
機動新世紀ガンダムX DESTINY 外伝
第四話 『時代外れもいいとこさ』
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「あー……」
誰もいない船倉の一室で、アカイとニレンセイは膝を抱え込んでいた。
「畜生……なかなか思ったようにゃ、いかねぇなぁ……」
前回の出撃騒ぎからは戦闘のような騒ぎも起こらず、艦内は一見、落ち着いているように見える。
が、時間が経つほどに、今の状況が厳しいものだと思えてきた。
艦内での振舞いには慣れて来たものの、やはりクルーとの接触は極力控えなければならない。
そのため食事もろくに出来ず、寝床に至ってはこうして人気のない倉庫などを探して潜り込むしかない状態が続いていた。
積み上げられたコンテナに背を預け、ニレンセイがぼやく。
「もう嫌ですよ、こんな生活……元の世界だってロクなもんじゃなかったですけど……
いつまでこうしてりゃ良いんですかあ……?」
「うるせぇな……俺だってウンザリしてんだよ、くそっ……」
流石のアカイも多少、弱気になっているのは否めなかった。
まだ二日程度しか経っていないというのに、体力的にも精神的にもかなり消耗が激しい。
もともと根気に欠ける性格もあるのだが。
プシュッ、とドアの開く音がした。同時に人の入ってくる気配がする。
「……またか。ほれ、隠れるぞ」
「はいはい……」
いそいそと貨物の間に身を隠す。いい加減、慣れきってしまって焦ることもない。
入って来た人影は、一人だけのようだった。ふらふらと夢遊病者のような足取りで、あたりをうろついている。
「おろろーん……どこにいるんだい、兄さん……寂しいよう、兄さーん……」
なにやらブツブツと呟き声も聞こえていた。どうやら人でも探しているらしい。
……と、唐突に携帯端末の鳴る電子音が響いた。
「――オルバ・フロスト。15分後にミーティングを行いますので、ブリッジまで集合して下さい」
「了解した。すぐに向かう」
ぴたりと泣くのを止めて、人影はさっさと貨物室を歩み去っていった。
来たときと同じく、気の抜けた音を立ててドアが閉まる。
……ふたたび静寂が戻った部屋の中で、アカイたちはひょこりと荷物の隙間から顔を覗かせた。
「……ここも長居できそうにねぇなぁ。もっと人気のない隠れ場所を探さんと……」
「ですね……見つからない内に移動しますか……」
示し合わせたようにため息をつくと、二人はのろのろと貨物室を後にした。
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幸運なことに、ミネルバは大型艦かつ、新造艦である。
詰まるところ使用されていないデッドスペースは多いし、急な出撃だったためか、各所のセキュリティも万全ではないようだ。
探せば隠れられる場所はある……とは言え、どこもかしこもそうとは言えないが。
通路の一角に適当な部屋を見つけ、アカイは周囲を見回した。
どうやら営倉らしき箇所で、通路に人気もない。あまり利用されることはなさそうに見えた。
「この辺にするか……」
何度かタッチパネルを操作して――しかしアカイは舌打ちした。
「ち、ロックがかかってやがる。……使えねーな、くそ!」
腹立ち紛れにドアを蹴り飛ばす。ガツン、と派手な音が響いた。
扉に当たってもどうしようもなく、別の場所を探そうと、その場を去ろうとした――その時だった。
「……やかましーなぁ。何の騒ぎだよ、さっきから」
部屋の中から聞こえてきた声に、ぎょっとして身を引く。
「だ、誰だ!」
「誰だじゃねーっての。そっちで人のコト押し込めといて忘れてんのかよ」
声は子供のものだった。……クルーという雰囲気でもない。
恐る恐るドアの覗き窓に近づき、アカイは中を覗き込んだ。薄暗く、何もない空っぽの部屋の中に
小柄な少年が寝転がっている……と、その顔を見て、思わずアカイは目を丸くした。
「あれ? お、お前……あんときのガキじゃねえか」
「あぁ? 誰だよ、オッサン」
「オッサン言うな! 俺だ! あのプラントで会ったろうが!」
「プラントお? ってアーモリーワンの事? 覚えてね―し、そんなの」
「どこまでもムカつくな、お前……」
こめかみを引きつらせながら、アカイは腕を組んだ。
「大体、なんでお前がこの艦に乗ってんだ。後の二人の連れは一緒じゃねぇのか?」
部屋の中を見回すが、居るのは少年一人らしい。
この艦に少年兵が多いことは分かっていたが、どう見ても、この少年は兵隊と言った雰囲気ではない。
「ステラもスティングもいねーよ。捕まったのって俺ひとりだけだもん」
「捕まったぁ?」
すっとんきょうな声を上げ、まじまじと少年を見詰める。
「……はっはぁん、分かった。大方、積荷でもちょろまかそうとしたんだろ。
まったく近頃のガキときたら手癖の悪い。ちったぁそこで反省してりゃいいんだ。だはははは」
「…………」
何も言わず、深々と頭を抱えるニレンセイ。
だが一方の少年は、さほど気にした様子も無く、欠伸をしながら退屈そうに答えた。
「へぇ……当たり。よく分かったなぁ。ま、ちょろまかそーとしたのはMSだけどさ」
その時。アカイたちの周囲で、確かに空気の凍る音が響いた。
「オイ……今、なんつった」
「だからぁ、アーモリーワンで造ってた新型ぶんどろうとして捕まったっての。
ったく、あんなのが後三機もいたなんて聞いてねぇってんだよなー。
帰ったらネオに文句言ってやんねぇとマジ腹立つ」
がらがら。
今度は凍った世界が崩壊していく音だった。
眩暈に足元をふらつかせ、アカイは自問自答した。――待て。ちょっと待て。
「じゃ……じゃあ何か。あのプラントを襲撃した地球軍てのは」
「俺らだよ。スティングもステラも上手く逃げられたんなら助けに来てくれりゃいいのにさ。
……ま、あんなMSが守りについてんじゃキツイか。やっぱ自分でなんとかしねーとなあ」
なにやら少年がぶつくさ言い出すが、アカイの耳には入らなかった。
(ほ……本当に、あの時のガキどもが、あんなテロを……? おいおい、冗談じゃあねーぞ……
どうなっちまってるんだ。ザフトってのも、地球軍も……)
「……サン。おい、オッサン。聞いてんのかよ」
「あ?」
少年の辛辣な声が、アカイを現実に呼び戻した。
「あ、じゃねーよ。ちょっとここから出るからさ、お前ら手伝えよ」
「な、なんだとお!?」
少年はどうということもなく、ひょいっと身軽に飛び起きた。
「流石に一人じゃ手こずりそーだしさあ。アビスがどこにあるかも調べなきゃなんねーし」
「ままま、待てコラ! わ、訳がわからんぞ! なんで俺たちが捕虜のお前を逃がしてやらなきゃならねーんだ!」
ますます意味が分からないのか、少年が目をぱちくりさせる。
「何だよそれ。俺をダシに使おうっての? なんか立場が逆な気がすんだけど」
「生意気言うな。いいか、助けるのは俺。助けられるのはお前。この図式は大事だぞ、解るな?」
アカイはここぞとばかり威厳を持たせようとふんぞり返った。
交渉事は最初が肝心である。どちらが上か、はっきり分からせておかなければならない。
「俺はお前をボスのところへ連れて行く。お前はボスに頼んで、俺たちが軍に雇ってもらえるように取り計らう。
どうだ? 取引としちゃ悪くねぇだろうが」
「ふーん。ま、いいけど? 無事に逃げられたらな」
軽く請合う少年の態度が、逆に不安だった。
(本当に分かってんだろうな、このガキ……)
と、顔を押さえつけられてもがいていたニレンセイが、ぶはっ、と息を吐いて掴みかかってきた。
(な、なに考えてんですかアカイ! 私ゃこれ以上ヤバい橋渡るのはゴメンですよ!)
(るせぇ! お前だってネズミみてぇな潜伏生活はイヤだって言ってただろうが!)
(それとこれとは話が別でしょ! この子供、ゼッタイ普通じゃないですよ! 見てたでしょう!
あんな爆破テロみたいなコトやらかした上に、コロニー内でMS暴れさせて、何人殺してるか分からないような奴ですよ!
この子を逃がしたら、私ら共犯扱いじゃないですか!)
(んなこたあ分かっとる! だが地球に行くにゃ、俺たちだけじゃどうしようもねぇんだ!
このガキは確かにヤバい奴だが、それだけ利用価値もあるって事なの!)
「だってお前ら、この艦の人間じゃないだろ。そんな格好しててもバレバレだぜ。
普通の乗員は、用もないのにここに近づいたりしなかったからな。
おまけに部屋のロックナンバーも、ここに俺が監禁されてる事も知らされてないなんて怪しすぎるっての」
「うっ……!」
思わずアカイは言葉に詰まった。
そこに、一方のニレンセイが後ろからわめく。
「じょ、冗談じゃないですよ! だからって、なんでこっちまで巻き込まれる必要があるんです!?
き、君がどうなろうと、私らにゃ関係ない話じゃないですか! ねぇ、アカイ!?」
同意を求めてくるニレンセイ。
アカイは無言のまま、じっと考え続けていた。しばらくして腕を解き、おもむろに口を開く。
「……分かった。手伝ってやる」
「な……なんですとおー!?」
掴みかかってくる相棒の顔をむぎゅっと平手で押さえ込む。
「ただし! 条件付きでだ。ここから逃げ出せたら、お前らのボスの所へ連れてけ」
少年の顔が、きょとんと年相応の物に変わった。
「はぁ? ネオの所へ? なんでだよ」
「俺たちを雇ってもらえるように頼むんだよ。
――いいか、お前の言うとおり、俺たちもこの艦に潜り込んでた密航者だ。
さっさとここからオサラバしたいのはお前と一緒だが、艦を降りても行く当てがねぇ。
そこでお前の出番ってワケだ」
やらかしちまったorz……
>>792は
>>791の前です
「なに男同士でコソコソ密談してんだよ、気持ち悪ぃ。どうすんのかさっさと決めろよな」
前にもこんな事を言われたような気がするな……とどこかで考えつつ、
まだ何か言おうとするニレンセイを遮って、アカイは大げさに咳払いした。
「よ、よし。それじゃ交渉成立だな。で? 逃げ出す算段は出来てんのか」
「ああ、ちょっと待ってな」
と何かを探る気配がして、食事の差し入れ口から何かが転がり出た。
「なんだ、こりゃ?」
「爆薬だよ。そいつをロックに仕掛けんのさ。スイッチは僕が入れるから、設置すんだら言えよ」
「……どこに隠してやがったんだ。ったく物騒なガキだぜ」
ぶつぶつと呟きながらも、言うとおりに作業を始めた。
粘土のような爆薬をパネル付近に盛り付け、信管を差し込む。
「よし、いいぞ」
ドアから離れ、耳を塞ぎながらアカイは合図を送った。ややあって爆音と共にロックが爆発する。
破損したドアをアカイとニレンセイがこじ開けると、中から少年が悠々と歩み出てきた。
「へへ。さーて、まずは……」
と、そこに鋭く制止の声がかけられた。
「おい! そこで何やってる!」
「げっ!」
振り向くと、通路の角からザフト兵が一人、こちらに銃を向けていた。
一瞬でこちらの状況を見て取ったらしい。
「動くな! 両手を挙げて――」
「へ、やなこった!」
嘲り笑ったアウルの身体が、ばね仕掛けのように跳ねた。俊敏な動きで壁を蹴りつけ、狼のように飛び掛る。
「グッ!?」
首筋に足刀を打ち下ろされ、ザフト兵は呻き声を上げてくずおれた。
気絶した兵から悠々と拳銃を拾い上げる少年に、アカイたちは唖然としながら近づいた。
「お……お前、どういう運動神経してんだ。ホントに人間か?」
「どーでもいいだろ、ンなこと。さっさとMSデッキまで案内しろよ。モタモタしてるとアンタたちだってヤバイんじゃねぇの?」
「お、おう。こっちだ。えーっと……」
「アウルだよ。アウル・ニーダ」
「よ、よし、アウルだな! 案内は任せとけ! その代わり約束は忘れんなよ!」
アカイの気合の下、三人はその場を走り去った。
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MSデッキに繋がる通路を走っている途中、けたたましい警報が鳴り響いた。
「嘘だろ!? もうバレちまったのか!?」
「んなわけねーじゃん。バッカみてぇ。これってMSの出撃コールだろ」
「……ってことは、また戦闘になるんですか!?」
「さーね。そんなの僕の知ったこっちゃないし……あ、待てよ。
戦闘ってことは相手はウチの艦かも知れないんだった。なら好都合なんだけど」
三人揃ってゲートをくぐり、MSドックに飛び込む。アカイは息を切らせて声を上げた。
「あ、あそこだ! アレだろ、お前の目当ては!」
青いガンダムタイプ、アビスがそこにあった。やはりパイロットがいない為か、以前見たときのまま放置されている。
機体を捉えた少年の目がさっと鋭いものに変わった。
風のようにコクピットへと走り寄り、中を調べだす。が、すぐに舌打ちして立ち上がった。
「あーぁ。やっぱ起動プログラムもロックされちゃってら。めんどくせぇなぁ、もう」
それだけ言うと、何を思ったのか――アウルはコクピットシートの背面に身を潜り込ませた。
寸前で、思い出したように二人の方を振り向く。
「んじゃな。あとはオッサンたち自分で何とかしろよ」
「お、おい! どうする気だ!?」
うろたえたアカイが声を上げた。
少年は馬鹿にしたような表情を浮かべ、
「隠れるに決まってんじゃん、で、こいつが出撃したらパイロット殺して機体ごと頂くわけ」
「そういう事じゃねぇ! 俺たちはどうすりゃいいんだよ!? そんなとこに二人も三人も隠れられるわけがねぇだろうが!」
「そりゃそーだろ。こいつ一人乗りだし」
にやりと笑って、アウルが銃を突きつけてくる。
黒光りする銃口と間近に接し、アカイは思わず生唾を飲み込んだ。
「だ、騙しやがったな!」
「るっさいな。いいからさっさと消えろよ。お前らのせいで僕まで見つかっちゃうだろ」
「そんな! や、約束が違いますよ!」
ニレンセイもさすがに必死の様子で抗議するが、少年はあくまで嘲笑を消さなかった。
「知らねーってば。つーか取り引きってさぁ、何? 頭古いんじゃねぇ、そーゆーのって。……時代外れもいいトコさ」
無情な音を立ててコクピットハッチが閉まる。その前に、皮肉っぽいアウルの声が残された。
「逃げたきゃお前らもMSくらい奪えばいいじゃん。出来もしないのに人に頼んなっての。バーイ♪」
「くっ! このガキ……!」
どうしようもなく身を震わせるアカイたちの耳に、背後から叫び声が届いた。
「いたぞ! 脱走犯と一緒にいた二人だ!」
「や、やべぇ……!」
じわじわと後ずさり、アカイは身を翻してその場を逃げ出した。その後ろにニレンセイも続く。
MSデッキを飛び出すが、どこかに逃げ込むあてがある訳でもなかった。
「ど、どうしましょう、アカイ……!」
並走するニレンセイの顔は真っ青だった。
状況は、もはや危険を通り越して絶望である。アカイは歯を食いしばってうめいた。
「……あのガキが言った通りにするしかねぇ」
「モ、MSを奪うって言うんですか!? 無理ですよ、いまさら!」
「わぁっとる! ガンダムは諦めるしかねぇ。だがこういう戦艦なら、非常用の脱出ポッドか何かがあるはずだ。
そいつを頂くんだよ」
いきなり足を止めると、アカイはニレンセイの胸倉を掴んだ。
まるで自分に言い聞かせるように唸る。
「いいか、こいつはチャンスなんだ。戦闘時のゴタゴタにまぎれて逃げれば、追っ手の目も晦ませる。
ホントなら行きがけの駄賃にMSをかっぱらいたかったが、もう四の五の言ってられん」
アカイの迫力にたじろぎながら、なおニレンセイは抗弁しようとした。
「で、ですけど、それじゃ連合に雇ってもらうも何も……!」
「顔を見られちまってんだ! どの道もう、この艦にいるのはヤバすぎる! 今はとにかく逃げる事だけ考えりゃいい!」
ぱっとニレンセイから手を離し、アカイは通路を見回した。
艦内に自分たちの存在が知れ渡るのは時間の問題だろう。逃げられるとすれば、この出撃が最後にして最大のチャンスなのだ。
「……いいから行くぞ。ここに来る途中、非常連絡口があったろう。多分、ポッドがあるとしたらあの先だ、急げ!」
嫌な想像を振り払うようにして、アカイは再び走り出した。
――誰も居なくなった通路の壁に、艦内放送だけが反響していた。
『全MSに通達。モビルスーツ発進3分前。
各パイロットは搭乗機にて待機せよ。繰り返す、発進3分前。各パイロットは搭乗機にて待機せよ。
なお、ユニウスセブン到着後は、先行して破砕作業を行っているジュール隊の指示に従うこと
繰り返す・・・・・』
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所属不明のジン部隊が次々にライフルを射掛けてくる。
ルナマリア・ホークはザクウォーリアを操りながら、疑問と怒りの混じった声を上げていた。
「こいつらがユニウスセブン落下を仕組んだっていうの!? 一体、何がどうなって――」
反撃のビーム砲が、ジンの一機を貫き爆砕させる。
次の目標を探してレーダーに目を走らせ――ルナマリアは、ミネルバから何か小型艇らしきものが射出されたのに気付いた。
「なに? 今の脱出艇? ――きゃあっ!」
隙の出来た瞬間を狙って、ビームがルナマリア機の肩を掠めた。
「余所見をするな、ルナマリア!」
レイの叱咤が飛ぶ。幸いにも損害はほとんどなかった。機体の姿勢を立て直し、ルナマリアは腹立たしく毒づいた。
「まったくもう、何なのよ! レイ! ねぇ、今ミネルバから――」
「話なら後にしろ。アスラン・ザラのアビスが先ほど所属不明機と交戦して大破したらしい」
「え……!?」
「現在DXがその所属不明機と交戦中だ。インパルスとアシュタロンも、強奪されたGに足止めを食っている。
ユニウスセブンの破砕は俺たちだけでやるしかない。ジンごときにてこずっていたら、すべてが手遅れになるぞ!」
「冗談じゃないわよ……もう!」
ふたたび砲を構えて、ルナマリアは戦闘に集中した。
その脳裏からは、今レーダーに捕らえた小型艇のことなど、すぐに消え去っていった。
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ノーマルスーツの装着もそこそこに、アカイたちは脱出ポッドの中で悲鳴を上げていた。
脱出口からはじき出されたポッドが、勢いよく加速を続けながら、飛び交うビームの閃光や爆発の中を駆け抜けていく。
「そ、操縦できるんですかあ!?」
「気合だ! 気合で何とでもなる!」
備え付けのマニュアルに必死で目を通しながらアカイが怒鳴る。
ニレンセイはシートにしがみ付き、震えながら外の様子を見た――と、そこに何かが見えた気がした。
(え……? い、今のって……!?)
思わずばんばんとアカイの肩を叩く。
「アカイ! あそこ!」
「な、なんだ! このくそ忙しい時に……!」
怒鳴りつつ、アカイもちらりと窓の外に目を走らせる。
窓の外は深遠の闇が広がっている。その向こうに、遠目にではあったが、見覚えのあるMSが漂っている姿が見えた。
青いガンダムタイプである。損傷でも受けたのか、動く様子もない。
(ア、アビス? あのガキが潜り込んだヤツか……それになんだ、もう一機は!?)
アカイの目が捉えたのはアビスだけではなかった。
身動き一つしないアビスを、もう一機、黒いMSがガラクタのように牽引している――
はっとして目を凝らすと、もう既に二機の姿は消えていた。忽然と。
脱出ポッドがあっという間にその場を通り過ぎていく。どの道、目で追うことはもう不可能である。
アカイは激しくなる動悸を抑えて、ポッドの操舵に注意を戻した。
(どうなったんだ……あのガキ、死んじまったのか……?)
答えの出ない疑問だけが、いつまでも頭の中に残っていた。
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広く、暗い宇宙の中で、さまざまな人間たちの思惑が渦を巻く。
ユニウスセブンを巻き込み、その思いはさまざまな方向へと飛び散っていった。
青い星へ向けて落下していくインパルスとDX。
底のない宇宙の闇へと流れていく脱出艇。
二つの物語が交差することになるのは、いつの日の事か――それを知る者は、今はまだ居ない。
そして数十分後――
ユニウスセブンからだいぶ離れた宙域を、一機のMSが泳いでいた。
ミネルバとの戦闘から離脱したカオスである。片腕片脚は失われ、動きはひどくぎこちない。
「くそっ、スラスターもヤバいか……あのカニの奴が、よくも……!」
コクピットでスティングは忌々しそうに毒づいた。
ユニウスセブン落下の調査に乗じて、ミネルバに奇襲をかけたまでは良かったが、やはりザフトの新型はあまりに強力すぎた。
アシュタロン一機に迎撃され、一方的にダメージを受けて逃げ出すのがやっとだったのだ。
一緒に出撃したはずのガイアとも、いつの間にか交信が途絶えている。
M I A
(アウルも助け出せてねぇ上、今度はステラが戦闘中行方不明かよ
これじゃ何しにいったのかわからねぇじゃねぇか……ン?)
ふと、スティングはレーダーに小さな反応があることに気付いた。
「なんだ……救難信号?」
距離は近い。
反応から推測するに小型の脱出用ポッドか何かのようだが、ミネルバから発射されたものと見て間違いなかった。
……ひょっとしたらアウルかもしれない。打ちのめされた状況が、そんな期待を抱かせる。
半壊した機体をどうにか操り、スティングはポッドへと近づいていった……
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一時間あまり真空の中を漂った末――アカイたちの前に、それは現れた。
「で、で、出た……!」
ニレンセイがこちらにしがみつくようにして声を震わせる。そのアカイも、抑えようの無い冷や汗が全身を濡らす感覚を覚えていた。
ちっぽけな救命ポッドの中から見上げるMSというのはそれほどの迫力があった。
緑色の巨体が、窓の外一杯に接近している。
(ご、強奪されたガンダムの一機か……)
ニレンセイがひっ、と悲鳴をあげた。ガンダムがずいと腕を伸ばし、ポッドを鷲づかみにしたのである。
船体の軋む音に、心底から生きた心地が消しとぶ。アカイは震え声を抑えてわめいた。
「つ、通信だ、ニレンセイ! 向こうとの回線開け! 早くしろ!」
「わわ、分かってますよ!」
泣き出しそうな顔でニレンセイがコンソールを操作する。ほどなくして、マイクから冷たい声音が流れ込んできた。
『……お前ら、ミネルバの乗員か』
「い、いや! 違う! 俺たちは密航者で、さっきの戦闘に紛れて逃げてきたんだ!」
反射的に、アカイは叫び返していた。
下手な知恵を回すほどの余裕などない。とにかくその場を取り繕おうと、ひたすら大声でまくしたてた。
「お、お、俺たちは連合の味方だ! ミネルバの情報を色々と持ってきた!
ガンダム――ええと、お前らが欲しがってる新型のMSについても知ってる!
パイロットの事もだ! ええと、それから、ええと――!」
「…………」
ガンダムのパイロットからは何の返答もない。
船内に真空を流し込まれるような沈黙がなおさらに恐怖を煽った。ただ助かりたい一心、アカイはやけくそに声を張り上げた。
「ア、アウルって奴にも会ったぞ!」
「……アウルと?」
声の中にわずかながら反応があったのを、アカイは聞き逃さなかった。
「そ、そうだ! 船の中で、捕まってたあいつを助けたのは俺たちだ!
お前らの事もあいつから聞いた! スティングに、ステラってんだろ!?
無事に逃げられたら、ネオって奴に会わせて貰えるって約束してたんだ!
な? 殺したり放っといたりしたらマズいだろ? な、な!?」
身振り手振りまで交えて訴える。
もはや祈るような心地で、アカイたちはパイロットの反応を待ち続けた。
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スティングはしばらく脱出ポッドを睨みつけていた。
得体の知れない相手の言葉を、すぐに信用するほど馬鹿ではない。
が、相手の漏らした情報は、捨てて置くにあまりに抵抗があった。
どうするべきか迷う……が、悩んでいる時間はあまり無かった。カオスの受けたダメージは深刻である。
すぐにでも母艦に戻らなければ、いつ身動きがとれなくなるとも分からない。
(……どうもこうもねぇ。アウルの事を知ってるんなら、洗いざらい吐かせてやるさ。
どんな手を使ってもな……)
脱出ポッドを掴んだまま、カオスがゆっくりと宇宙の深海を泳ぎだす。
ナビコンの指示に間違いがなければ、その先にはファントムペインの母艦であるガーティ・ルーが待っているはずだった。
つづく
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NEXT EPISODE ・・・ 「ダガーL、行くぞ!」
うぉぉぉ、GJ! 大作乙!
つーか、本当にうまく本編と話をまとめている上に、面白い!
そしていよいよ次は実戦なのか・・・うぉぉ、wktk!
いやー、うまく連携させてるなぁ…。
そうか、こいつらはこうやって連合に行ったのか。
GJ!
乙!
やっべー、次回からの戦闘シーンとNT覚醒が蝶楽しみだ
寝る前にもうちょっと……
次回で赤いニ連星のフルネームが必要なんだけどどうしよう
とりあえず今のところ
『アカイ・ニュー』
『ニレンセイ・タイプ』
とか安直に考えている俺ガイル
それとX運命氏様、もし出来れば6話目くらいで、
本編未登場のニタ研関連キャラ出してみたいんですがマズいでしょうか?
ネタバレになってしまうのを承知で伺います……
今更だが、ノイマンの名乗り口上、ゼンガーかw
凸にやられて海に沈んでいくときのはシンの初種割れ台詞だった名
>807
いっそ、『アカイ・ザビ』とか
『ニレンセイ・レム・ダイクン』とか、
由緒正しそうな偽名にするとか。
シュウイチ・アカイ
『ニレ・N・セイ』とかどうだ?
Nってつけただけで何となく名前っぽい
嗚呼、スティングに出番が…
オオワシパックとシラヌイパックを一緒に付けたオオワシラヌイはちょっとカッコいいぞ
厨臭いけどね
ふと思ったが、サザビーネグザスって見た目はまんまサザビーなのかね?
>>815 微妙にCEっぽいんじゃない?何か白いパーツとかってそれ剣豪武将漣飛威やん
リアル体系のコマンダーを想像してた
いや、ほらスキュラみたいなビーム砲があるし
>>807 アカイ=アラタ(新→新たなる→アラタ)
K・ニレンセイ(系→ケイ→K)
こんなんどっすか?
そう言えば大鷲は分離してリフターと言うかピクミン的運用出きるの忘れられてるんだよな……
宇宙でも使えんのに。
>>819 で、ピクミン的運用ってなんだ?喰われるのか?
821 :
819:2006/08/28(月) 12:16:01 ID:???
>>820 いや、そう詳しくは知らんが大鷲はリフターと同じく遠隔操作出来るしAI積んでるとか言ってた奴も居る。
だから不知火背負って大鷲と連携とかも出来る筈何だよ設定的に
HGオオワシアカツキの説明書には遠隔またはAI自律操作によって単独飛行可能とあるな。
但し、オオワシは“大気圏内航空戦闘装備”としか書かれてないので、宇宙で使えるかは説明書からはわからん。
あ、4基のジェットエンジンと2基のロケットブースターを装備と書いてある。
ロケットブースターとやらはともかく、ジェットエンジンって宇宙で使えるっけ?
>>723 何を取り込んで圧縮して噴出、推進するのかがわかればって
種宇宙エーテル宇宙説
825 :
824:2006/08/28(月) 12:45:33 ID:???
大鷲が大気圏内専用ってのあんま信じられないんだよな、俺。
本来宇宙専用装備で空飛んでる世界たから特に。
それに大鷲のエンジンユニットとか宇宙用に換装すれば…って言っちゃだめか。
困った時はキッドの魔改造
つか、ここのアカツキはアメノミハシラ製だろ
だったら大鷲が宇宙でも運用できるようにできてるんじゃない?
アメノミハシラで受領して地球まで降りてきたんだろうから普通に飛べると思われ
アカイ・トミノ
ニレン・セイ・ヨシユキ
それ以前にさ、オオワシアカツキ、第四期のOPで普通に宇宙で動いてるんだが・・・
!?!?!?!?
そんな設定すら忘れてやってたのかあの負債.....
てことは映像こそが公式の日登は大鷲の宇宙使用可を認めたようなもの!
過去改変、設定捏造強要ばっかの負債に適用されるかは解らんが。
すごく伸びすぎです
ラ・メェンが?