シンは仮面ライダーになるべきだ 3回目

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498通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 11:24:33 ID:m316yqMZ
499通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 12:12:30 ID:ORpPt/jp
タイトルは『神・仮面ライダー Destiny運命』
主人公神飛鳥は2年前に家族をブルーモッコスに殺され、復讐のために仮面ライダー1号(透)、2号(数井)により改造手術を施してもらい自身も仮面ライダーになることを誓うのだった
500通常の名無しさんの3倍:2007/02/16(金) 14:37:02 ID:???
相手が邪神様じゃ勝ち目ねーな
501通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 11:17:42 ID:???
>2号(数井)

苗字?
502通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 13:00:31 ID:???
一威(カズイ)ってのは?
503通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 13:00:43 ID:???
流れ読まずにイラスト投下
↓仮面ライダーインパルス
http://d.pic.to/ae62r

汚くてスマソ
504通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 13:39:00 ID:???
うまい!スッキリしてて好きだな
505通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 13:39:28 ID:???
>>497
響鬼や電王もね
506491-492の続き:2007/02/17(土) 15:38:37 ID:???
心地よい風、温かい日差し、木々がざわめく音。こういうところで寝っ転がるとぜったい眠くなっちゃうんだよな。)
そんなことを考えながらうとうとしていると急に乾いたものが顔にかかった。シンは驚き払いのける、たくさんの落ち葉が回りに散らばっている。
目の前にはニヤニヤと一人の少女が自分を見ながら微笑んでいる。妹のマユだ。つまり妹のいたずら目寝を覚まさせられたわけだ。
「こらっ!マユ!」
「へへ〜ん♪ピクニックに来てるのにごろごろ昼寝してるほうがいけないんだよ〜」
そう言ってマユ走って逃げていった。
「この、待てマユ!」
彼も彼女を追いかけ走り出す。口では怒っていながら表情は笑っている。
「毎日遅くまでゲームしてるオタクさんには捕まえられませんよー」
「言ったな、このっ!」
そんな感じで兄妹ではしゃぎあっている時間、シンはこんな時間が何よりも好きで幸せを感じていた。
そんな幸せもすぐに消えて無くなってしまう。急に足元が崩れだしシン真っ逆さまに落ちていく。
「いてて・・・ったくどうなってんだよ」
落ちた衝撃でぶつけた頭をさすりながら見上げると父と母、そして妹のマユが自分より高い場所の崖から見下ろしていた。
「みんな」
声をかけようとした瞬間、黒い影が自分の家族に忍び寄る。そして手に持った拳銃で家族を一人一人撃ち抜いていく。
血飛沫がシンの顔にかかる。顔についた血を手で拭いその手を見つめる。赤い、引き込まれそうになるくらい赤い。
気がつくと目の前に黒い影が立っていた。その影はニヤッと笑みを浮かべシンに向かって囁きかける。
「お前は生かしてやるよ、誰もいないこの暗い世界で、たった一人で生き続けろ。」
「な、なんなんだあんたは!!」
「ふふふ・・・一人だけおめおめと生き延びて何がしたい?自分で死ぬ勇気もないくせに、何かを変える力もないくせに」
「黙れよ!なんなんだよ・・・なんだってんだよぉ!!!」
「また新しい大切なものを見つけるのもいいだろう。そしたらまた一つずつ壊してやるよ・・・こんな風にね」
影は消えて目の前に三人が立っていた。いつの間にか影は三人の後ろに移動していて再び拳銃で頭を撃ち抜いていく。
「やめろ・・・やめてくれ・・・やめろぉぉぉーーー!!!!!!!」
507491-492の続き:2007/02/17(土) 15:40:26 ID:???
「やめろぉぉぉーーー!!!!!!!」
気がつくとみんなの視線が自分に注目していた。全員目が点になっている。教壇の上に立っているオレンジ色の髪の若い男の
教師が呆れ顔でこちらを見ている。
「何だシン。そんなに俺の授業がつまらないか?叫びたくなるほど止めてほしいのか?」
ーーーしまった・・・今は授業中だった。教室全部の視線の的になりながらシンはしどろもどろになりながら答えた。
「あの、すいません。寝ぼけてました。」
教師はため息をつきながらやれやれといったように両手を広げた。
「まったく、居眠りもいいけどな。黙って寝とけよ?五月蝿くされたらいくら俺でも見逃すわけにはいかないからな。
それとヨダレもふいとけ、そんなんじゃ彼女ができてもみっともなくて振られちまうぜ?」
そう言うと教室からドッと笑いが溢れてきた。シンは顔を赤くして縮こまっている。
ここはプラント本国にある「ミネルバ学園」男女比半々の高等学校である。どこにでもあるいたって普通の学校だ。
家族を亡くしたシンはその後トダカの進めによりプラントへと入国した。その後戦災孤児としての手続きもトダカにしてもらい
こうして学校に通っている。初めの内は家族を失ったショックで自分の殻に塞ぎこみ周りと打ち解けようとしなかったが
時間が経つにつれ完全にとまではいかないが徐々によくなっていき、学校にも馴染める様になった。それもみんな
周りの仲間のおかげだ。シンは口には出して言わないがそんな彼らや面倒を見てくれたトダカに感謝の気持ちを抱いている。
「さて、どこまでやったんだっけ?そうだ!血のバレンタインからだな。・・・」
教師はそのまま授業を再開するが、六限終業のチャイムが鳴り号令係が号令を掛け教師は退室していく。と同時に各々が部活の準備や
帰りの支度をしている。その中でシンは席に座ったまましばらく考え込んでいた。
(あれから二年か・・・)
508491-492の続き:2007/02/17(土) 15:46:03 ID:???
よく夢を見るようになった。目の前で家族が殺される夢だ。あの影は一体何なんだろう。いくら考えても答えは出ない。
最初の頃は見るたびに思い出し嫌な気持ちになったものだが今では慣れてきた。今では悲しみより怒りの感情のほうが強い。
戦争に全てを奪われた。残ったものといえばマユの携帯と銀色のベルトだけだ。爆発に巻き込まれたときに残っていたものである。他の荷物は爆発に
巻き込まれ無くなってしまった。シンはそんなベルトを見たこともなかったが家族の所有物である事に変わりはなかったので
携帯と同様形見として常に身に着けるようにしている。シンの怒りは様々なところに向けられる。戦争に対して、民間人を巻き込んだものに対して、
戦場にさせ国民を裏切ったオーブに対して。そんな事を考え体が真っ赤な熱い感情に満たされているところで頬に
冷たい感覚が襲った。びっくりし横を向くとそこには缶コーヒーが頬に押し付けられていた。さらに缶を押し付けていた人物は
赤い短髪の瞳の大きな少女、腰に手を当てて呆れ顔でこちらを見ている。同じクラスのルナマリア=ホークだ。
「ちょっとシン、まだ寝足りないっていうの?あんな寝言を大声で・・・恥かしいったらありゃしない。これでも飲んで目を覚ましなさい」
そういって買ってきたばかりのコーヒーをシンに手渡した。
「うるさいなぁ、こっちは寝不足なんだよ。でもまぁサンキュ」
一応お礼を言ってシンはプルタブを開けコーヒーを一口飲んだ。ちょうど喉が渇いてたところでとても美味しかった。
シンがコーヒーを飲んだのを確認してルナマリアは右手の手のひらを上に向けてシンに差し出した。
「はい飲んだね?150えんになりま〜す」
「は?だってお前が飲めっていったんだろ!?」
「誰も奢りなんて言ってないけど〜?は・や・くっ〜」
ルナマリアが催促してくる。こうなるとルナは強い。シンは交通事故にでもあったような感覚に陥り代金を払うべくポケットの中を探った。
が、でてきたのは200円でありちょっと多い。お釣りはあるのかと聞こうとした矢先、ルナに200円を奪われた。電光石火の早業だった。
「ふふっ、毎度あり♪」
「な!150円って・・・それにこのコーヒー120円だろ!?」
シンの正当な抗議もルナマリアは聞いてはいない。話題を変えるようにしてルナマリアが切り出した。

509491-492の続き:2007/02/17(土) 15:48:12 ID:???
「ねぇ今日街に遊びに行かない?メイリンやヨウランもヴィーノも行くんだ。ねっ行きましょうよ!」
メイリンとはルナマリアの双子の妹で同じクラスだ。姉妹でとても仲がよくいつも二人でいる。しかし性格は正反対で勝気で行動派の姉に比べ
メイリンは大人しくて天然。変なマニアがつきそうな雰囲気を醸し出している。(現にファンクラブが存在する、まぁルナマリアにも存在するのだが)
ヨウランとヴィーノはシンの悪友であり、よき理解者である。一緒にエッチな本を買いに行ったり更衣室を覗いた事もある。
ヨウランは浅黒い肌でナンパに命を掛けている。高校在学中全ての女のアドレスを聞くと意気込んでいるが達成まではまだまだ時間がかかりそうである。
ヴィーノは赤いメッシュが入った少年。身長は低めであるが機械いじりが得意。最近メイリンのことが気になってるみたいだ。
「そうだなぁ・・・そういえばレイは?」
楽しそうだ、と思いつつもいつものメンバーに一人足りない、シンは不思議に思いつつ聞いてみた。
「ああ、レイね。誘ったんだけどなんか家の事情でこれないみたい。残念ね〜」
レイに家の事情などあったのか。というかレイの家庭事情はまったくといっていいほど知らない。もともと無口な奴だし誰も聞こうとはしない。
それでも仲良くしてるのはある事がきっかけになったからである。ここぞと言う時に一番頼りになる、レイはそんな人物だった。
「そっか・・・てかごめん。俺バイクの修理に行かなきゃならないんだ。その後でもいい?」
「あら本当、オッケー!でもバイク見つからないようにしなさいよ?」
「わかってるよ、じゃあまた後でな」
このミネルバ学園ではバイクは校則違反であり発見された場合は三日間の停学と二週間担任教師と楽しい交換日記をする事になる。
そう言ってシンは教室から出て行った。
「さて、じゃあ私達も行きますか。」
かくして四人は先に街に向かう事になった。行く先で今までにない恐ろしい体験をする事はまだ誰も知らない。
そしてシンも、この日を境に自分の運命が大きく動いていく事を、今はまだ気付いていなかった。
510491-492の続き:2007/02/17(土) 15:50:02 ID:???
街に繰り出してはしゃぐ四人。放課後の寄り道とは休日に遊ぶよりも何故か楽しいものでその日も例外ではなかった。
「お姉ちゃん!見て見てあのクレープ!美味しそうじゃない?」
円らな瞳をキラキラ輝かせながらメイリンが言った。対照的にルナマリアは呆れ気味に
「あんたまだ食べるの!?さっきたこ焼き食べたばっかじゃない・・・太るわよ?」
「うっ・・・・!」
特に最後の一言がメイリンのハートにグサリと来た。確かに最近体重計に乗るのが怖い。それに比べ姉は・・・まじまじとルナマリアを眺める。
形のいい大きすぎないバスト、しっかり括れたウエスト、引き締まった小ぶりのヒップ。すらっとした脚。毎日一緒の家で生活していて
そんなものを見せ付けられれば、乙女心に不平等を感じる。なぜ神様は姉と同じプロポーションにしてくれなかったのか・・・と。
そう思いつつ姉に恨めしげな視線を送るメイリンであった。だが一般的に見ればメイリンも十分細い体型に入っている。ルナマリアが異常なのである。
「まったくいつまでも子供なんだから・・・これで彼氏とかできればいくらかは変わるんでしょうけど。」
そういいながらルナマリアは赤いメッシュの少年、ヴィーノに横目をやる。それに気付いたヴィーノは飲んでいたオレンジジュースを噴出す。
「ゲホッ!な、なんだよ?」
『べつにぃ〜〜??』
ルナマリアと浅黒い肌の少年、ヨウランは同時に言った。ヨウランはヴィーノ首に手を回し意地の悪い笑みでささやくように言った。
「このチャンスをものにしろよ!今日はヴィーノ君メイリンGET大作戦なんだからな?しかも姉公認ときたもんだ」
「そうそう、あんたが頑張って少しは私の肩の荷を減らしてよ。頼りにしてるわよぉ〜?」
と意地の悪い笑みを浮かべてルナマリアが続いた。そんな事も知らずに当のメイリンは遠くでアイスクリームを食べるか食べまいか云々と唸っている。
友の声援を受けてヴィーノ少年はメイリンの元に向かった。緊張で手と足が同時に出ている。その上進むペースが遅い。それを見守るルナマリアとヨウラン。
どこにでもある風景。のんびりとした時間が過ぎていった。しかしそんな幸せも一瞬にして崩れるものである。メイリンはふと近くのビルの屋上に目をやった。
すぐ近くのビルの屋上に人影が見えた。人間にしてはシルエットが歪であり手が長すぎる。それに服を着ていない。
その奇妙な【モノ】は屋上からルナマリアたちがいる通りへと飛び立った。手には鋭い爪、甲羅のような真っ黒な肌。肉食獣のような鋭い眼に牙。
その【モノ】は紛れもなく、怪物と呼ばれる範疇の生物だった。

511491-492の続き:2007/02/17(土) 15:52:01 ID:???
怪物はまず近くにあったクレープ屋の屋台を左手で振り払い破壊した。紙くずを引き裂くように、いとも簡単に破壊した。そして店を破壊されて
呆然と立ち尽くす店主の頭を掴み、あっけなく握り潰した。糸の切れた人形のようにだらしなく弛緩した元人間は無造作に通りに捨てられる。
その間約三秒。その惨劇の後、遅れて悲鳴が聞こえてきた。ルナマリアとヨウラン、ヴィーノはその様子をポカンとした様子で見つめていた。
ホラー映画の撮影かな?と思うほどはじめてみる人の死はあっけなかった。殺された店員の頭だった部分は潰れたトマトみたいになっていた。
気がつくと三人とも悲鳴を上げていた。しかし自分達の悲鳴は三人の耳には届かなかった。自らの悲鳴さえも周りの悲鳴でかき消されていた。
三人はがむしゃらに走った。息が切れても走るのをやめられない。後ろを振り向いて怪物が来てない確認したい、けれど怖くて振り向けない。
そんなジレンマを抱えながらも三人は走り、逃げ続けた。
その頃シンはバイクの修理を終えて店から出るところだった。待ち合わせしようとルナマリアに電話を掛けたが一向に繋がらない。
仕方がない、とりあえず街に行ってみてそれからまた連絡を取ろう、と考えバイクを発進させようとした時他の客とバイクショップの店員の
会話が耳に入った。
「今街に変な化け物が出てきたらしいんだってさ!パトカーがバンバン走ってるし本当なんだねぇ」
「そいつは大変だなぁ、こりゃこっちも大丈夫かねぇ」
(怪物?なんだそれ・・・ルナ達は無事なのか?)
嫌な予感がして、シンは街へと向かって走り出した。その時携帯にメールが入っていたがシンは気付いていなかった。
ルナマリア達三人は街のはずれに避難していた。すでに街は封鎖され警察に包囲されていた。他にも非難してきた人々が不安そうに警察を見つめていた。
「そうだ!メイリンは?」
ルナマリアがハッとした。辺りを見回したが妹の姿は見当たらない。混乱して頭が回らないながらもルナは考えた。
(もしかしてメイリンは逃げ遅れた?十分にありえる。あの子なら気を失ってもおかしくない。助けに行かないと!)
そう考えるやいなや、ルナは街のほうに向かって走り出した。ヨウラン達や警官の制止を振り切って。たった一人の妹を守るべく一人で死地へと飛び込んでいった。
512491-492の続き:2007/02/17(土) 15:53:30 ID:???
ルナマリアは怪物と遭遇した場所まで来ていた。人の気配はない。辺りの建物もめちゃくちゃになっている。それに、むせる様な血の匂い。所々に怪物にやられていった人々が
倒れていた。素人でももう事切れている事がわかる。凄まじい出血、おそらくあの鋭い爪にやられたんだろう。中には体が部分部分欠けている者いる。
ルナマリアは恐怖で泣きそうになるのを堪え、メイリンを探した。メイリンだって今きっと怖い思いをしてるに違いない、自分が守らなきゃという思いが
彼女を突き動かしていた。あたりを注意深くうろつきながら妹を探す。怪物に見つかる可能性もあるので大声は出せない。
ガタンーーーーーーー
アイスクリームの店の中から何か物音が聞こえた。ルナマリアの心拍数が一気に高まる。怖くて足が進まない。今すぐその場にへたり込んでしまいたかったが
意を決して店のドアを勢いよく開け中の様子を伺うとテーブルを盾にして半泣きにながらこちらの様子を伺っている少女の姿が。メイリンだった。
「メイリンっ!!」
「おねぇちゃんっ!!」
メイリンはルナマリアにしがみついてワンワンと泣いた。やはり怖かったんだろう。痛いくらいルナマリアを抱いて離さなかった。それはルナマリアも
同じであり、ルナマリアも泣いていた。可愛い妹の無事を確認できると一気に緊張が緩んだ。しばらくして落ち着いた後
「とにかくここは危険だから脱出しましょう、建物の間を縫って進めば怪物にも見つからないわ。」
ルナマリアの提案により多少遠回りでも裏路地を使った方が見つからないだろう、との事で慎重に辺りを確認してから二人で街から出る事にした。
しかし入り組んだ道はその他障害物も多くなかなか進めなかったがその代わり怪物にも出くわさなかった。いくつか大きな通りにでなくてはいけなかったが
慎重に渡り難を逃れた。
「ここを渡れば大丈夫よ、みんなや警察がいる避難所まで行ける。あと少しだから頑張って」
「うん!ここを渡ったら家に帰れるんだよね・・・私頑張るよ!」
互いに頷き合いせーので走り出す。距離にして約50メートル程か、残り10メートルというところで何か細長いものが二人の地面に投げつけられた。
急に飛来してきたものに驚き立ち止まってみてみると、それは人の腕だった。切断面がこちらに向いている。皮肉にも指先が出口を示すように案内している
ようでもあった。ぎこちない様子で横を見ると黒い悪魔がこちらに向かってゆっくりと歩いていた。
513491-492の続き:2007/02/17(土) 15:56:09 ID:???
「ここまで来たのに・・・」
ルナマリアは思わず口にした言葉がこれである。最後の最後でどん底に叩き落される、そうなると人間はどうなるか。気持ちが折れるのだ。
超緊張状態にあり二人の体力は既に空であり気力だけで動いていたと言っても過言ではない。メイリンはぺたんと座り込んでただ怪物を眺めている。
円らな瞳にもう輝きはなかった。ルナマリアも座り込んでしまい、死を覚悟した、この場合死を受け入れたのだ。涙は出ない。
死ぬ前ってこんなに穏やかなんだ、とルナマリアは思った。もっと泣き叫びながら殺されるんだと考えたが実際頭の中は結構冷静だった。
怪物が目の前に近づいてくる。具現化した【死の象徴】である怪物。その容貌はどことなく邪悪な笑みを浮かべる悪魔のようにも見える。
二人はもはや何も考えてはいなかった。ただすぐ目の前に来ている死を受け入れるのみ。逃げ惑う事に疲れていた。逃げても無駄、
救いはないんだ。と悟ったのだ。怪物が鋭い爪を空高くに振りかぶり振り下ろそうとした瞬間、ホーク姉妹の頭上を飛び越え巨大な物体が
怪物にぶつかった。さすがに怪物の衝撃に耐えられなかったのか見えないゴムに引っ張られたように後ろへ吹き飛んだ。二人はその光景をぼんやりと見つめていた。
ぶつかったものはバイクでありそれに乗っていたのはクラスメートであるシン=アスカだった。着地に失敗したのかシンはバイクもろとも派手に転んでいる。
「ルナ!メイリン!無事か!?」
なんとか起き上がり二人に駆け寄る。二人には聞こえていないようだ、目の前にあんな非常識な存在がいるのだ、無理もない。シンはそう思った。
そうこうしているうちに視界の端で怪物が立ち上がったのが見えた。ゆっくりしている暇はないようだ。
「二人とも逃げるぞ!!!立て!早くしろ!!!」
そういいながらシンはルナの頬を軽く叩く。ようやく気が戻ったのかルナはメイリンを連れて頼りない足取りで出口へとよろよろと歩いていった。
二人が逃げたのを確認して、シンは改めてこの状況を認識した。
(最悪の状況だな・・・)
目の前には得体の知れない化け物。かたやこちらは普通の高校生。どうあがいても勝ち目はない。絶望という状況を辞書に載せるならこういう事だろうな
とシンは頭の片隅で考えていた。その時後ろから声が聞こえた。警官隊の声だ。
「少年!!ふせろーーーー!!」
シンは言われるままに地面に伏せた、何人かの警官が上官の合図で怪物に拳銃を発砲している。断続的に響く発砲音、怪物は煙に包まれた。


514491-492の続き:2007/02/17(土) 16:00:01 ID:???

鼓膜を直接刺激するような銃声も鳴り止んだ。全弾打ち尽くしたんだろう、煙が晴れてくる。怪物はそのままの姿で直立していた。
効いていない。警官隊も明らかに動揺している。これだけなのか?と言わんばかりに怪物は警官隊の目の前に飛び立ち怯え逃げ出そうとする警官隊を
一人残らず殺した。絶対的に埋まらない力の差、生き物としてのスペックが違う。
(逃げるしかない・・・。逃げられるのか?)
戦って倒す事など不可能だ。急いで倒れたバイクを起こし逃げ出そうとするが怪物はそれを見逃さない。すぐさまシンに近寄り無造作に手を
横殴りにしてシンをバイクごと吹っ飛ばした。そのままブティックの中に突っ込み、その衝撃でショーケースのガラスがめちゃくちゃに割れた。
視界が赤く染まった。自分の血なのか瞼がやられたのかはわからない。何とか立ち上がるも激痛でよろめく。肋骨の2,3本は折れている。
修理したばかりのバイクも不自然に火花を散らしている。もう修理しても前のように走る事はできないだろう。
店の中に怪物が入ってくる。ゆっくりと勝ち誇るかのように近づいてくる。怪物は一定の間合いを保ち左手の爪でシンを襲う。がシンは身を捩り間一髪これをかわすが、
受身を取り損なう。一瞬息ができなくなるほど胸が詰まった。よろよろと立ち上がり逃げようとしたが怪物はこれを見逃さず振り向きざまに
右手の爪を振り下ろした。振り下ろす軌道上にあるシャンデリアが根元から崩れ、それごとシンに向かって襲い掛かる。直撃こそしなかったものの
余波は凄まじく、今度は店の外に向かって吹っ飛ばされた。その際頭を強く打ち頭部からの出血があったが、シンはそれに気付く余裕がなかった。
もはや、体の部位で健康な部分がない、というところまで来ている。歩く事もままならない。
「がっ・・・!ぁぁ・・・」
シンが痛みに苦しんでいると目の前に自分の携帯が落ちていた。メール受信のランプがついている。こんな状況でも人間は無意識に
してしまう行動がある、思わずシンはいつもの様にメールをチェックした。そこには差出人不明のメールが届いていた。怪訝に思いながらメールを開けると
奇妙な文章が書かれていた。いつもなら迷惑メールは処分してしまうのだがこのメールはそれとも違う様子だった。
題名:緊急連絡
やぁ、シン=アスカ君。細かい挨拶は抜きにしよう。君がこのメールを読んでいるという事は君の身に危険が迫っているという事だ。
このメールはその状況を打破するためのメールなんだ。このメールは冗談ではないという事を頭に入れて欲しい。
やるべき事は一つ、君の持っているこの携帯を君の身に着けている銀色のベルトにかざすんだ。何を言っているのかわからないと思うが
君が困った時はこの通りにして欲しい。そうすればどんな事でもきっと乗り越えられるはずだ。
P.S. 運命は自分の手で掴むものだ
515491-492の続き:2007/02/17(土) 16:03:08 ID:???
そこにはそう書かれていた。誰の悪戯だ?そう思ったもののどうやらこのメールの差出人は自分がこんな状況にあるという事を
知っているらしい。適当な悪戯ではないようだ。それでも信じる事はできないが最後の文が気にかかった。
『運命は自分の手で掴むものだ』
今まで自分は翻弄されっぱなしだった。家族を失った事、住む場所を失った事。それが自分の運命ならどんなに悲惨な事か。
実際そう思っていた。この先生きていたって家族は生き返らない、新しい友達もまた失ってしまうかもしれないという恐怖。
そして今目の前にいる怪物、こいつはなんだ?こいつまでも俺に何かしようとしている。そう考えると怒りがこみ上げてくる。
まだ死ねないーーー自分をこんなにまで陥れた元凶に、自分を脅かすものに一発食らわせるまでは死ねない。そのためなら
どんな事だってしてやる。必ず生き延びてやる。そんな強い衝動がシンを突き動かした。
シンの目に迷いはなかった。たとえメールが悪戯でも構わない。何か起こるとも思っていない。ただこれは儀式なのだ。
生まれ変わるための儀式。生きてる様で死んでる自分から抜け出すための。悲鳴を上げる体を何とか起こし立ち上がる。
制服を振り払い銀のベルト露出させる。
ベルトはバックル部分が黒の板に覆われているシンプルなベルトである。そうこうしている内に怪物が建物から出てきた。
あまり時間もない。シンは携帯を右手に持って顔の高さにまで持ち上げた。横目でピンク色の携帯を眺める。
マユが残した携帯、家族が残したベルト。残ったものはこの二つ。偶然ではすまない何かがあるのだろう。
怪物を真っ直ぐ見据えてゆっくりと携帯をベルトのバックル部分にかざした。
ーーーー認識完了 コンディションレッドへ チェンジ インパルスーーーー
するとベルトから聞きなれない音声が聞こえた。その直後シンの体はベルト中央から放射状に光に包まれた。その眩さで怪物は
眼を庇い視線をシンからそらした。閃光がおさまった時にはシンの姿は異様な姿に変わっていた。
中世の鎧の様なプロテクターに身を包み、さらにはベルトの形も大きく変わっていた。
黒い板状だったバックル部が白い電子機器の認識端子のようなものに変化していて、なおかつその横には
縦に赤、青、緑の順のボタンが並んでいる。頭部には全部分を覆うような兜。昆虫を思わせる大きな複眼に
アルファベットのV字型のアンテナが額に取り付けられている。
その日から、少年シン=アスカは仮面ライダーインパルスとして生まれ変わった。
516491-492の続き:2007/02/17(土) 16:08:46 ID:???
前のとあわせてようやく第一話終了です。遅くなって申し訳ありません。
変身シーンについてなんですが最初はカブト風にいこうと思ったのですが
うまくまとめる事ができず電王風にしてしまいました・・・ベルトが喋るのはその名残です
妹の形見の携帯で変身とはロリコンチックではありますが今のところ王道ヒーローにしようと画策しているので
生暖かく見てやってください。

>>503
素晴らしくカッコいいですね!僕のイメージしてた仮面ライダーインパルスと
ぴったり一致します。絵が書けて羨ましい。
517通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 18:35:03 ID:???
GJです
シンが俺は最初から徹底的にクライマックスだぜって言い出しそうだ
メールに導かれて変身って流れが武装錬金を思い出した
518通常の名無しさんの3倍:2007/02/17(土) 18:42:56 ID:???
GJ!
ミネルバ学園とかの設定にワラタ

携帯で変身だったら、やっぱりファイズだなあ
519通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 00:44:17 ID:???
GJ!熱くていいなあ、燃える。
仮面ライダー・デスティニーもマユの携帯で変身だし
555と繋げて誰もが考えることかもしれんね。
520通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 02:39:14 ID:???
なんかもうここまでくると種キャラじゃなくて
マジモンの仮面ライダー作品のキャラに思えてくる
いい意味で
設定もうまいし、すごいや
521仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:46:41 ID:???
ようやくタイトル決めました。ではどうぞ。

第二話  嫌いな自分

強烈な閃光と共に現れたのは黒と灰色のスーツと甲冑に身を包んだ人物だった。
シンはまじまじと変化した己の体を眺めている。信じられなかった。確かに高度な技術は身の回りにごまんとあるがこのように
一瞬のうちに全身を変えてしまうような話など聞いたことがない。自分に起きている現実と自分の中の常識が大喧嘩している。
内部スピーカーから音声が聞こえる。
『起動完了。初期立ち上げのガイダンスを行います。このスーツはZGMF-X56S インパルス 対危険生物迎撃用スーツです』
(対危険・・・ってことはあの化け物と戦えるって事か?)
こちらを警戒しているのだろうか、怪物は先程の様に不用意に近づいては来ない。あれだけ主張していた怪我も何故か痛みが引いている。
「よし、やってやる!いくぞ化け物!!」
シンは怪物に向かって一直線に向かっていった。虚を突かれた怪物は反応が遅れシンの右ストレートがちょうど心臓部分にぶち当たった。
少し効いた様だが二三歩後退り体勢を立て直した。シンはそのわずかな隙を見逃さなかった。続けざまに左のフック、右中段蹴りを力一杯叩き込んだ。
しかし怪物はびくともしない。直立不動でシンを見下ろしている。連続攻撃の隙間を縫うように、お返しと言わんばかりの怪物の鋭い爪のフルスイングが
シンを襲う。紙一重でそれをかわす。しかし爪が胸の装甲に掠った様で火花が散った。バック転で怪物との距離をとる。
「攻撃が通用しないなんて・・・どうすりゃいいんだよ?!」
負けはしないが、勝てもしない。こうなったら消耗戦だ。それでは分が悪すぎる、次第にシンの心は焦っていった。
するとまたしても内部スピーカーからの音声が聞こえた。こんなとき耳元で!苛立ちによりシンはスピーカーに当たるようになっていた。
『インストール完了。フォースシルエットが使用できます。戦闘行動を行う場合はベルトの青いボタンを押してください。』
「フォース?つまりこれ戦闘用じゃないって事か?・・・ってか早く言えよ!!!」
言われるがままにシンはベルトのボタンを探す。縦に並んだ赤、青、緑の三つのボタン。真ん中のボタンを押した。
ーーーーチェンジ  フォースシルエットーーーー
ベルトからの機械的な音声と共に灰色だった装甲部分が鮮やかに色付いていく。全体的に白と青を基調にしたカラーリング。額のV字アンテナは黄色だ。
ZGMF-X56S/αフォースインパルス。別名:蒼い閃光の誕生であった。
522仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:48:25 ID:???
シンは二度目の変化に特別驚きはしなかった。目の前の怪物、自分自身の変化で驚くことすらも疲れたのだろう。
怪物は空高くジャンプしシンの背後に降り立った。振り向きざまにまるで居合い抜きのように腕を一閃させた。シンはしゃがんで難なくかわす。
外したその勢いで逆腕で地面を抉りながらの突き上げ攻撃、シンはこれも易々とかわす。一息おいてからの怪物の連続攻撃、突き、薙ぎ払い、振り下ろし
その全ての攻撃をシンはしっかりと見切ってかわす。もはやシンに触ることさえ困難であった。
(怪物の動きが鈍くなった?さっきほどのスピードは感じない・・・よし、これなら!!)
怪物の鋭い矢のような突きをギリギリでかわしシンは怪物の懐に飛び込む。左のパンチが肝臓あたりにめり込む。怪物の動きが鈍くなった。
(今度こそ効いてる!さっきとパワーが桁違いだな・・・。)
実際パワーは上がっているが本当に上がったのはそれではない。フォースの一番の武器はその【スピード】である。
体を動かす運動性能、拳を振るう速度、蹴りの鋭さ、それら全ての能力が怪物を遥かに凌駕している。怪物の動きが鈍くなったのではなく
シンのスピードが尋常ではないものになっていた。一般人であればただ青い残像が見えているだけにしか見えない速さだ。
シンの攻撃のリズムも上がっていく。ワンツーのコンビネーションブロー、続けて後ろ回し蹴り、追い討ちをかける飛び膝蹴りが
容赦なく怪物に襲い掛かる。あんなに硬く苦戦していた甲羅のような肌も今ではボロボロに割れている。
怪物の足取りももうおぼつかない、今にも倒れそうになっている。止めを刺すべくシンは地面を蹴り一気に間合いを詰めた。
それを見るや否や怪物は腰だめに構えシンを迎撃するように右手を力一杯振り回した。そこにある空気を削り取るような一撃。
だがそこにシンの姿はなかった。辺りを見回してもどこにも気配がない。と、同時に怪物の左上半身に凄まじい衝撃が走る。
目の前には青い戦士の姿。シンはあの一撃を上空にジャンプする事でかわしさらにはその落下エネルギーを使い怪物に渾身のエルボースラッシュを
お見舞いした。流石の怪物もこれには耐えられず二三歩後退り盛大に爆散した。その赤橙の炎はインパルスの装甲を赤く染め上げている。
直後にシンの変身もとかれた。先程感じたように体の痛みも出血も引いている。あのスーツのおかげなんだろうか?
バタバタと遠くから足音が聞こえる。この爆発音を聞いて再び警官が突入してきたんだろう。この状況をうまく説明できる自信も無く、
またただ単にめんどくさかったのでシンはその場を後にした。
523仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:50:17 ID:???
シンはくたくたになりながらも自宅のアパートに戻ってきた。あれだけ盛大に破壊されたと思われたバイクも不思議とまだ動くようだった。
(今日は不思議な事だらけだな・・・まるで奇跡のバーゲンセールだ。)
今日一日であんなに信じられない体験をしたシンにとって、バイクが一台直っていた位ではもうさほど驚かなくなっていた。
色々知りたいことは山程あった。ルナマリアたちは無事なのか、あの怪物は一体なんだったのか、そして・・・シンはベルトと携帯に目をやる。
ただの形見の品だったのに何でこんな事ができるようになったのか。誰もそれを教えてくれないし調べる術も無い。
ベットの上で寝転がりながらそんなことを考えているとシンは眠りに落ちていった。
翌朝、シンは普段通り学校へ行った。教師に見つからないよう学校から少し離れた空き地にバイクを停めそこから歩いて学校まで行く。
教室の扉を開けると赤い髪の毛の女の子が二人こちらに振り向いた。
『シンッ!!』
シンに気づくとルナマリア、メイリンの二人がこちらに近づいてきた。どうやらあれからうまく避難できたらしい。二人と昨日はあんな目にあったのに特に変わった様子が無い。
「ちょっとシン!大丈夫だったの?あれからどうやってあの怪物から逃げたの?」
髪の短い方のルナマリアがずぃっと顔を近づけて質問してきた。まさか不思議な光に包まれてその力で怪物を退治しました。
何て言っても信じてもらえるはずも無い。当然自分がそんな事言われても信じるわけないし本人の頭を心配してしまう。
「ああ、あの後すぐに警官隊が駆けつけてくれてさ。そのドサクサでうまく逃げ切れたんだよ。」
シンはとっさに嘘をついた。警官隊が助けに来てくれたことは嘘ではないしまた逃げ切ったことも嘘ではないからだ。(ただしこの場合警官から、だが)
「そうなんだ・・・あの、シン。本当、その・・・ありがとう」
髪の毛を二つに縛ったツインテールの少女、メイリンが控えめにシンにお礼を言った。どこと無く気まずそうだが。
「それよりあんな派手なバイクスタント決めておいて怪我は大丈夫なの?まったく無茶するんだから・・・」
今度はルナマリアが質問してきた。口うるさく言いながらやはり助けてもらった恩があるのだろう。姉御肌のルナマリアらしい心配の仕方だった。
「ご心配なく。幸い掠り傷さ。」
その瞬間後ろから首に腕を回される感覚、こんな事するのあいつしかいない。
524仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:51:07 ID:???
よぉ〜白馬の王子様♪かっこよかったらしいじゃんか〜」
軽い口調で話しかけてくる。浅黒い肌の自称ナンパ師、ヨウランだ。その横には赤いメッシュのヴィーノの姿もある。二人も無事に避難できたようだ。
「よっシン。体の具合はよさそうだけどバイクの方は大丈夫なのか?今度様子見てやるよ、メイリンを助けてくれたお礼代わりだ。」
ヴィーノもいつもの調子でシンに話しかけてきた。機械いじりが得意なヴィーノはバイクも守備範囲内でシンはよくヴィーノにバイクの調子を見てもらってる。
昨日修理に行ったのはヴィーノが専門の道具が無いと修理できないという事で行ったのであり普段はまずヴィーノに修理を頼んでいる。
「サンキュ♪でも今のとこは大丈夫だけど、暇があったら頼むよ。」
そんな他愛も無い会話、やはり自分の日常はこっちなんだ。とシンは強く思った。昨日あんな事があっただけにこの時間はとても貴重に感じられた。
そんなこと思っていると一人気に入らないのかルナマリアが目を三角にして怒っていた。
「ちょっとヴィーノ!聞き捨てならないわねぇ、メイリンを助けたお礼って私は?数にも入れられてないじゃない!」
ヴィーノに詰め寄る。しまったという表情で周りに助けを求めている。やれやれといった感じでシンが言った。
「まぁ落ち着けってルナ。ルナはほら!死んでも死なない様な子だからだよ。」
火に油を注ぐ。シンとしては褒めたつもりだったのだがそれはルナの心には響かなかった。逆鱗に触れる言葉、ここからルナマリアの説教タイムが始まった。
一度始まったらしばらく止まらない。みんな思わず正座してしまっている。それほどルナマリアの説教は恐ろしい。いつもならレイが中間に
入って止めてくれるのだが今日はまだ来ていない。いつも同じ時間に来るレイだからそろそろ来てもいいころなのだが。
ルナマリアが政治家の税金の無駄遣いについて説教しているとルナマリアの携帯が鳴った。しぶしぶ説教を中断して携帯を見る。
「レイ、今日は休むって。」
『ええぇ!!』
皆異口同音に驚きの言葉を述べた。あのレイが・・・レイが学校を休むなんてことは今までに無かったので何かあったのかな?と思ってしまう。
そんな事をしてるうちに担任教師が入ってきて朝のホームルームが始まった。こうしてシン達はルナマリアの長く脱線しがちな説教から開放されたのである。


525仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:52:05 ID:???
レイが学校を休んだこと以外は取り立てて代わったことも無かった。強いて言えば昨日の事件の影響で今日の部活は全面禁止。全校生徒即座に下校しろとの事。
六限の授業も終わり皆帰宅の準備を始める。シン達も昨日あんな目に遭ったので寄り道をしようとは思わない。シンが下駄箱で靴を履き替えている時
携帯が一通のメールを受信した。そこには
題名:君の知りたい事を教えよう
やぁシン。昨日はうまく切り抜けられたみたいだね。今日四時にポイントX−103まで来てくれ。
君に教えなくてはいけないことがある。では待っているよ。
あの時の人物だ。シンにメールを送り不思議な力へと導いた者。どうやら姿を隠すつもりは無いらしい。
シンは急いでバイクに向かい、指定のポイントへと向かった。罠かもしれない、だがそうなったらまたあの力を使えばいい。あまり気は進まないが
それに・・・知りたいことが多すぎた。何故こんな力が使えるようになったのか、メールの人物の正体は、目的は?
バイクを走らせながらずっと考えていた。行けば何かがわかるかもしれない、そう信じてシンは更にバイクを加速させた。
四時十分前、シンはポイントX−103に到着していた。そこにあるのはとても大きな古い洋館。壁にツタが茂っていて不気味な演出を施している。
(気味の悪い髭の生やした執事でも出てきそうだな)
そんなくだらない事を考えていると突然鉄格子のような門が開き始めた。どうやら入れということらしい。そこから館の玄関までは30メートルほどあり
庭には意外にも綺麗な池、立派な錦鯉が悠々と泳いでいる。しっかりと切りそろえられた植木、今は咲いていないが桜の木も植えてある。
玄関までたどり着く。扉には獅子の彫刻が彫ってあり、家に上がる前に食べられてしまいそうなほどリアルに作られていた。
そんな事をしていると扉が開いた。中から何が飛び出てくるかわからない。シンは体を半身にずらし警戒した。わずかに開いた扉の隙間から何かが
飛び出してきた。速い。認識した瞬間、その何かはシン目掛けて飛び掛っていた。勢いで後ろに倒れるシン。顔に感じる生暖かく柔らかい感触。
犬だ。かなりの大型犬である。はふはふしながら尻尾を振っている。シンの顔をベロベロと舐め回している。そんな事をしている間に扉から背の高い人物が出てきた。
「こらこら、やめなさい。ララァ。その人は私の大事な客人だよ。」
そういうと犬はシンから離れその人物の足元で行儀良くお座りの姿勢をとった。ララァと呼ばれる犬の頭を優しく撫でた。
「すまなかったねシン=アスカ君。はじめまして、私はデュランダル、ギルバート=デュランダルだ。知ってのとおりメールの送り主だ。」
男はそう言ってシンを中に入るよう促した。
526仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:53:00 ID:???
館の中は思ったよりも綺麗だった。それよりも由緒正しい雰囲気に満ちていてシンを圧倒した。ドラマの舞台になりそうなホール、値段がつけられないような
シャンデリア、今にも動き出しそうな騎士の彫刻。むしろ博物館といったほうがしっくりくるかもしれない。
そんな事を考えながらデュランダルの後ろを歩いていると客室に通された。そこには既にお茶が用意してあり見たことの無いようなカラフルな
クッキーやチョコレートが豪勢においてあった。デュランダルに促されるままにソファに腰掛けるシン。埋まりそうになる位ふかふかだ。
デュランダルはシンの正面に座り一口紅茶を飲んでから話を切り出した。
「さて、もう一度自己紹介をしておこう。私はギルバート=デュランダル。プラント中心部の国立大学で教授をやっている。専攻は遺伝子学だよ。」
世間に疎いシンでもその名は聞いた事がある。遺伝子学の第一人者であり、よくテレビにも出演したりしている。著作も有名でベストセラーになったりした。
長い黒髪、鋭い目つき、だがそれは攻撃的ではなく、どこか誇り高き鷹のようなイメージを与える。立ち振る舞いも気品にあふれていて
教授というよりどこかの国の王様のようなイメージをシンは抱いた。現にこの家の一部分なんじゃないかってくらい彼はオーラを放っていた。
シンははっきり言って面を食らっていた。まさかこんな感じで招待するとは、もっとこう、殺伐とした雰囲気だと思っていたのだがこうも高貴な
感じだと非常にやりづらい。それを見透かされたのかデュランダルは
「ははは、そう硬くならないでいいよ。楽にしてくれたまえ。それともあれかい?私の事を警戒しているのかね?」
いきなり核心を突いてきた。シンは意を決してデュランダルに質問をした。
「あの・・・あの力は一体何なんですか?それにあの怪物は・・・何故あなたがそんな事を知っているのですか?」
「ふむ・・・それを説明する約束だったからね。では本題に入ろうか。」
そう前置きをしてデュランダルは話を始めた。
「まずはあの怪物。あれはMonster Slaveと呼ばれるものだ。通称MS。基本的知能は低く言語を操ることはできない。その代わりに
高い身体能力、五感を有する。能力は各個体によってバラつきがある。目的は破壊活動、建物や重要資材を破壊したり、人の命をも奪う。」
「MS・・・。なぜそんな怪物が生まれてきたんですか?突然変異とか?」
シンがそう聞くとデュランダルは目を瞑り深く息を吐いてから重々しく呟いた。
「あれを作ったのは・・・私達人なのだよ。」
527仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:53:54 ID:???
デュランダルはそのまま話を続ける。
「ある時、生命の中に発見されていなかった新種の遺伝子を発見してね。その研究を進めていた。それはうまく使えば人類にとって
大きな利益となるものだった。それを利用したものがコーディネイターだ。それにより人類は類を見ない、目覚しい進歩を遂げるはずだった。」
「だった・・・?」
「ある一人の科学者がその遺伝子を悪用してね・・・。結局その計画は凍結される事になった。コーディネイターを作る技術だけは
今も受け継がれているが。コーディネイターを作るのは人工的に遺伝子を並び替え望むような結果を得る事は知っているね?
しかしそのある科学者は遺伝子をとんでもない形に作り変えたんだ。それによって生まれたのがMSという訳だ・・・。」
本当はもっと難しい話だったが専門用語を使って説明せずにわかりやすい言葉でシンに説明した。
「なるほど・・・その科学者のせいでそんな怪物が世に出てきたって訳だ。しかしどんな目的でそんな事をしたんですか?」
「それは・・・私にもわからない。ただ、そんなモノ共を放って置く訳にはいかない。しかしMSの力は凶悪すぎる。既存の兵器では太刀打ちできない。
そこで利用したのが軍事に使われていた強化スーツを改良したもの。それが君の持っているそのベルトの力だ。」
「これが・・・?」
「そうだ。それは私の知人が開発したものでね。それを君の父上がある経緯を通じて持っていたと言う訳だ。そのベルトはMasked Rider計画の雛形だ。
通称は仮面ライダーと呼ばれているものでね。MSはそのMRで無いと倒すことができないんだ。それにその力は誰にでも扱えるものではないんだ。
今MSに対抗できるのは君しかいないんだ。」
「ちょっと待ってください!いきなりそんな事言われてもわかりませんよ!MSとかMRだとか・・・」
戸惑うシンにデュランダルは言葉を続ける。
「MSを生み出した科学者もそれ実用化するまでに多くの時間をかけざるを得なかったらしい。現にMSが出没するようになったのはごく最近だ。」
「それなら・・・その人を警察に突き出すなりなんなりしてMSって奴を作らせなきゃいいじゃないですか。」
「それがそうもいかなくてね・・・その人物の行方が掴めないのだよ。わかるのは唯一つ、MSを操っているのは組織ぐるみで行っている。
そしてその組織の名前は、ファントムペイン。」
528仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:55:30 ID:???
「あるはずの無い痛み・・・。」
シンはそう呟いた。ここまで話を聞いていたが、ハッキリ言って信じられない。MS?対抗?開発?ベルト?MR?ファントムペイン?
しかし現実に見てしまっている。この世のものとは思えない恐ろしい怪物、それを倒してしまった未知なる力。どちらかが夢でどちらかが現実なのか?
違う、どちらもれっきとした現実なのだ。
「いきなりこんなことを言われて信じられないのは無理も無い。この事実を知っているのは世界でもごく一部の人間だからね。」
さらっととんでもない事を言ってのける。しかしデュランダルはもっととんでもない事を言い出した。
「無理を承知でお願いしたい。シン君、これからMSと戦ってはくれないだろうか?」
「えっ!!?」
いきなりの戦闘依頼である。冗談ではないみたいだ。デュランダルの目は真剣そのものだ。
「君のような若者を戦わせるのはつらい・・・。だが他にできる者がいないんだ。やってくれないだろうか?」
このような威厳にあふれた人物がたかが高校生である自分にお願いしている。きっとプライドをかなぐり捨ててまでやっているのだろう。
デュランダルの本気の気持ちというものがシンにひしひしと伝わってきた。しかしシンの口から出た言葉は意外な一言だった。
「俺、やりません。」
デュランダルは予想していたのだろうかそう落ち込まずシンの言葉を聞いていた。シンは続けて
「いきなりそんなこと言われて、勝手に人を巻き込んで・・・なんなんだよ、あんた達は!またあんな化け物と戦うなんて二度とごめんだ!」
徐々に熱を帯びた調子になった。積もり積もったストレスをデュランダルにぶつけてしまった。
しまった・・・言った直後に彼は猛烈な自己嫌悪に陥った。そんなシンの言葉に気を悪くするでもなくデュランダルは言った。
「それは本当にすまないと思っている。全てこちらの勝手な言い分だ。君には何の責任も義務も無いのだから。本当にすまなかった・・・。」
そう言ってデュランダルは頭を下げた。そんな事をされてシンはどうしていいかわからなくなった。
「頭を上げてください。・・・俺、もう帰ります。」
そう言って扉に手をかける。その背後からデュランダルが声をかける。それでもシンは振り向かない。
そのままデュランダルは続けた。
529仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:56:21 ID:???
「MSも正しく使えばコーディネイターのように素晴らしいものになる。だから全ての力は正しく使わなくてはならない。
君の力はみんなが必要とするものなんだ。決して平坦な道ではないかもしれないが、それは君にしかできない事なんだ。
その力で多くの人々を救えるという事は知っておいて欲しい。勝手なことを言ってすまなかった。」
シンは背を向けたままだったがデュランダルはもう一度シンに向かって頭を下げた。シンは何も言わずに黙って部屋から出て行った。
デュランダル一人が部屋に残された。ぼふっとソファに座り
「・・・私は。これで正しいんだろうか・・・なぁ・・・アスカ」
誰もいない部屋で自嘲気味に独りごちた。
部屋を出て、玄関まで歩いていく。玄関にはララァが座っていた。シンの姿を見るなりララァは尻尾を振りながらシンの足元をぐるぐる
駆け回っている。シンはそんなララァの頭を優しく撫でてやり、玄関から出て行った。
バイクにまたがりシンは行くあても無く走り回った。心が落ち着かない。先程のデュランダルの言葉が頭から離れなかった。
ーーーーー力は正しく使わなくてはならないーーーーー
頭の中で何度もリフレインする。
(そんなことない!俺には関係ないんだ!!)
頭を振ってもう考えないようシンはさらにアクセルを吹かした。まるで館から逃げ出すかのように。
気が付くとシンは郊外にある遊園地の前まで来ていた。だいぶ前にヨウランたちと一緒にナンパに行った場所だ。
その時はヨウラン一人が張り切ってシンとヴィーノはベンチに座っていろんな女の子に声をかけてはことごとく断られるヨウランを
ただ眺めていた。気が付くとシンは遊園地の中に入っていた。何をするわけでもなくただ賑やかな場所にいれば
こんな気分も晴れるかな、とそんな事を考えながらシンはベンチに座り行き交う人々を眺めていた。
やはり先程のデュランダルのことを考えてしまう。
(俺にしか・・・できないか・・・)

530仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:57:21 ID:???
思わず断ってしまった。本音を言えばあんなに必要とされるのは正直悪い気はしなかった。
デュランダルも悪人には見えなかったし、何にせよ一人の大人として扱ってくれるのは素直に嬉しかった。
しかしMSと戦うとなると話は別だ。もちろん恐怖もある。だが一番の理由は自信が無かった。戦って皆を守ることができるのか?
大事な家族をも守れなかった。自分は惨めでちっぽけだ。昨日だって後ちょっと運が悪かったらルナ達も守れなかっただろう。
そんな事を考える・・・この二年間でシンはすっかりマイナス思考になった。大切なものを全て無くす・・・
またそんな事があったら今度こそ耐えられない。シンはそう思っていた。
(やっぱり・・・デュランダルさんにベルトを預けに行こう。)
そんな決意が固まっていた。実際メールが来た時もチャンスを見計らいベルトを返そうという気持ちもあった。
しかしあんな事があってはタイミングも失いそのまま帰ってしまった。しかしもうあそこには行きづらい・・・
そんな葛藤を何度か繰り広げているうちに辺りの風景が夕日に染まっていた。
そろそろ帰ろうか、とシンが思っているころ大きな爆発音が聞こえ、振動で大気が揺れた。すぐそこのメリーゴーラウンドから火柱が上がっている。
楽しそうにしていた人々が蜘蛛の巣をつついたように逃げ惑う。その中心部には灰色の体、手には斧のような物が握られている。頭部には一つ目の異形の生物が立っていた。
間違いない、先程デュランダルから説明を受けたばかりのMonster Slaveだった。
「マジかよ・・・ついてなさすぎだろ・・・・!」
最近の自分の運の悪さに悪態をつきながらシンはとりあえず人の流れに沿って逃げ出した。もはや彼に戦う意識は存在しなかった。
走り出した瞬間、小さな女の子の泣き声が聞こえる。人の波に押され膝をすりむいて泣いて座り込んでいる。
少女の近くには徐々にMSが近づいてきている。するとそこにその子の兄らしき小学生くらいの少年が彼女に駆け寄ってきた。
二人とも背後の怪物には気づいていない。兄が少女の体を起こし逃げ出そうとする時、MSは既に彼らの目の前まで来ていた。
彼らは何をするまでもなくただ立ち尽くしている。恐らくこの状況が飲み込めないだろう。
MSが斧を振り上げ兄妹もろとも、と襲い掛かる瞬間。二人の体は宙に浮きそのまま横の植木に突っ込んだ。
531仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:58:33 ID:???
ガキンッッ
MSの斧がコンクリートの地面を叩いた。間一髪、幼い子供達はシンの手により、間の手から逃れる事ができた。
「危なかった・・・」
心臓がバクバクいっている。危ない、と思って気が付いたら彼らを助けていた。無意識の内の行動であった。
「逃げるぞっ!」
MSはゆっくりと近づいてきた。シンは二人を立ち上がらせてを引いて急いで走り出した。
しばらく走ったのだろう、子供達の体力も限界だったので公衆トイレの陰に隠れ少し休憩をした。
シンは肩で息をしながら辺りを見回し警戒している。そんなシンに少年が話しかける。
「お兄ちゃん・・・助けてくれてありがとう」
「えっ・・・あぁ。」
素直にお礼を言われて照れてしまった。紛らわすために今度はシンが少年に尋ねる。
「それより、二人は兄妹なのか?お父さんとお母さんは?」
「うん。・・・皆で来てたけど途中ではぐれちゃって・・・」
「そうか・・・心配するなよ。お兄ちゃんが必ずお父さんとお母さんに会わせてやるから。」
「本当に?」
少女の方がそれに答える。
「ああ!任せときな!!」
「ありがとう大きなお兄ちゃん。マユミお兄ちゃんの事大好き!」
「マユミ、僕の事も忘れるなよ。マユミは僕が絶対守ってやるんだから!」
マユ、ミ。今は亡き自分の妹に似た名前の少女、それにその子の兄。シンにとってその兄妹は他人に思えなかった。
532仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 18:59:34 ID:???
ーーーーー僕が絶対守るーーーーー
純粋に羨ましかった。そんな事を言える、その心が。自分にはそんなものはない。
そんな少年の台詞がほんの少しシンの心のどこかを温かくした。しかしすぐにその気持ちも吹き飛んでいく。
MSがこちらに向かってやってきた。徐々に近づいてきている。幸いまだ気づいてはいないが三人で同時に逃げ出せば
確実に見つかる。それに二人とも体力の限界が近い。二人を抱えて走るのも無理そうだった。
(くそっ・・・どうすりゃいい・・・?)
シンの緊張が二人にも伝わったのか険しい表情でこちらを見ている。マユミは兄の腕にしっかりと捕まり後ろに隠れ
兄も必死で妹を守ろうとしている。その光景を見てシンに一つの決意が芽生えた。
「二人とも、俺が合図をしたら全力で逃げ出すんだ。あの怪物はお兄ちゃんがなんとかするから。」
二人の肩を掴んで二人の眼を見る。二人とも不安そうだ。
「大丈夫!お兄ちゃんこう見えても強いんだから!!だから、二人で逃げるんだ。いいな?」
シンの気持ちが通じたのか二人は頷いた。シンも力強く頷き返した。シンが立ち上がりMSの方へ向かう瞬間。少年が尋ねた。
「お兄ちゃん、名前、なんていうの?」
シンは振り返り、優しく微笑んで言った。
「シン。シンって言うんだ。」
その言葉に妹が反応した。にっこり笑って
「お兄ちゃんと大きいお兄ちゃん、名前がそっくりだねっ」
「本当だ。シン兄ちゃん、僕はシンジって名前なんだ。」
思わぬ偶然にシンは思わず笑ってしまった。シンジとマユミ。まさかここにも自分達がいたなんて。
子供達は笑っているシンを不思議そうに見ていたが次第に二人もつられて笑った。
「シンジ、マユミの事お前が守るんだぞ。よし・・・行け!!」
533仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 19:01:12 ID:???
その言葉で二人は出口の方向へ走り出して行った。遠くまで逃げたことを確認してシンはMSの前に立った。その距離約30メートル。
「さて、と。おい化け物。お前らは一体何がしたいんだ?」
シンが尋ねてもMSは答えない。MSに言語を操るほどの高度な知能は無い。それを知ってて尋ねたのだ。
さっきまで自信が無かった。皆を守れるかどうか。それに対する恐怖があった。しかしそれより恐れている物があった。
自分が傷つく事だ。大切な物を失い傷つく、シンは過敏に反応していた。それは無意識のうちに他人との接触を避けることに繋がっていた。
他人と関わらなければ失っても自分は傷つかない。一種の自己防衛だった。だが今は違う。大切な仲間がいる。それを無くすのは何もよりも耐え難い事だった。
それに気づきシンは同時にこの二年間の怒りの原因にも気づいた。それは戦争でも、オーブ本国でもない。自分自身だ。
何もできない弱い自分。家族を守れなかった弱い自分。力も無い弱い自分。変わる事を恐れる弱い自分。全てはそれに対する怒りだった。
確かにそれは今も変わってない。大嫌いな、弱い自分のままだ。守りたい、けど怖い。変わりたくない、けどあの兄妹を見て自分の惨めさに気づいた。
自分の事しか考えていなかった。それに比べてあのシンジって少年は自分より数段立派に見えた。
力があるのに何もしない自分と、力は無いけど妹を守るという決意がある少年。同じ男でもとてつもない差だ。
ハッキリ言うとまだ自分の事が大嫌いだ。けど・・・何もしない自分はもっと大嫌いだ。
人類全部を救う事なんて自分にはできない。そんなもんできる人間なんて人間じゃない。だったら自分にできる事は何か?
シンは自分自身に問いかけてみる。答えは決まっていた。
「俺が今できる事は・・・お前を倒す事だ。それが、皆を守る事になるなら・・・!」
シンは携帯を取り出す。だらしなく出した制服のシャツを後ろに振り払い、銀色のベルトが出てくる。
シンは眼を瞑ったまま考えた。ルナ、メイリン、レイ、ヴィーノ、ヨウラン、そして・・・シンジとマユミ。守らなきゃいけないものはたくさんあった。
ゆっくりと眼を開ける。目の前には異形の怪物がこちらに近づいている。大切な物を脅かすもの、倒さなきゃいけないもの。
決意はできた。あとはもう、実行に移すだけだ。
「変身っ!」
携帯をベルトのバックルにかざし、青いボタンを押す。瞬く間にシンは眩い光に包まれて青き戦士へと変わっていた。
534仮面ライダーD+:2007/02/18(日) 19:02:56 ID:???
以上第二話終了です。戦闘シーンまで書きたいのですがなかなかキリがいいところで
終わってくれません。かなりベタな展開になってしまいましたどうか見逃してください。
535通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 20:20:58 ID:???
GJ!熱い引きだ。
536通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 22:16:37 ID:???
GJ!ララァワロタ
537通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 01:27:30 ID:???
タイトルカッコヨス!!ララァワロタw
レイ謎だな…シンは王道ヒーローキャラで気持ちよく読んでいけそうだ

ヴィーノの活躍に期待!メイリンの前でいいとこ見せる感じのをw
538:2007/02/19(月) 04:19:01 ID:???
539通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 04:30:34 ID:???
流れ断ち切ってスマソ
種、種死ごちゃ混ぜでSS書こうと思うんだけどシン主役じゃなくてもいいんでしょうか?ちなみにキャラの立ち位置は
キラ=天道
凸=加賀美
シン=剣崎
レイ=始
みたいな感じにしようかと…SS書くの初めてだから職人の皆様に比べて誤字脱字てんこ盛りの駄作になるだろうとオモ
540通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 10:30:12 ID:???
いいかい?
そういう場合は「こういうのを書きたい」とだけ書きなさい。

初心者だの誤字脱字が酷くなるかもだの書くと「カエレ(・∀・)」ってレスりたくなるから。
541通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 14:08:03 ID:???
誰か過去ログ持ってない?
自分にくちゃん閉鎖前に保存するの忘れちゃって、今見れんのよ
542通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 14:50:22 ID:u9IizGPh
>>539
本気で書く気ならいいんじゃない。
>>541
>>479でwikiにアップしてくれてるよ。
543541:2007/02/19(月) 14:57:55 ID:???
うをっ、ホントだスマソ・・・
544通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 15:23:55 ID:???
ガタック「嫁補正を使え!キラ!それでも俺は負けない!」
545通常の名無しさんの3倍:2007/02/19(月) 19:11:06 ID:???
>>539
当てはめる役柄がそれだと、凸だけ最強フォームがないな
まあそれもある意味奴らしいがw
546仮面ライダーD+:2007/02/19(月) 22:22:16 ID:???
この話でとりあえず一区切りつきます。

第三話  気持ちの強さ

黒のボディスーツを下地に堅い装甲で体の部分部分を覆った姿。特に頭部のプロテクターには特徴的なV字型のアンテナに
昆虫を思わせる複眼。色は偶然にもシンと同じである、炎を思わせるような真紅。日の沈みかけた夕方時に異形の怪物、MSは
シンの前に再び現れた。ゆっくりとシンとの距離を縮める灰色のMS。10メートルというところまで近づいたところでMSは一気に間合いを詰めた。
それと同時に手に持った斧を横一閃、シン目掛けて襲い掛かる。しかし凶器はシンがいた空間を削っただけであった。
間合いを詰めた分だけ後ろに飛んだシンは、空振りした隙を見逃さず、MSに飛び込んだ。
右のパンチがMSの顔面を捉える。多少よろめきはするもののそれに構わず斧を両袈裟に振り回した。シンは難なく攻撃を見切り合間を縫って
ハイキックをお見舞いする。あまりの衝撃にMSは横なりに吹っ飛びアトラクションのコーヒーカップに突っ込んでいった。
MSがうなり声のようなものを上げながら破壊されたコーヒーカップの破片をどかしながら立ち上がった。
「へぇ、お前らにも痛みってものがあるのか。」
MSがこの台詞を聞いた瞬間には目の前にシンの姿があった。フォースの特性の超スピードを生かし一気に距離を縮めていた。
それと同時に落雷のような手刀がMSを襲う。斧を持っていた右手が地面に落ちている。数秒遅れて切断面から緑色の液体が止め処なく溢れ出た。
曲りなりにもMSも生命体の一つである。こいつは危険だ、と判断し本能で青い戦士から距離をとろうと後ろに大きく下がる。一気に15メートルほど飛んだ。
着地と同時に腹部に衝撃が走る。遠ざかったはずなのにすでに後ろを取られている。ライダーのスピードはMSのそれとは比べ物にならなかった。
さすがのMSも確実に急所をついた連続攻撃に思わず膝を突き土下座するように体を折った。その視界には自分をここまで追い詰めた青い戦士の脚が見える。
シンはその体勢のMSの首を思いっ切り蹴飛ばした。まるでサッカーのフリーキックのようなフォームで。
灰色の怪物はそのまま後方へ飛んでいく。美しい放物線を描き着地、それと同時に盛大な音を立てて爆散した。
戦場となった遊園地ではちょうど今の時間帯美しい夕日が拝めることで有名であり、デートスポットにもなっている。皮肉にも怪物の放った爆炎は
夕日の色とよく似ていた。シンの二度目の戦いはあまりにも圧倒的であった。
(何だ…昨日より、体が軽く感じたのは気のせいか…?)
決意を固めたとはいえまだこの力はわからない事だらけであった。このままデュランダルのとこへ行き説明をしてもらおうと考えていた矢先
同じタイプのMSがシンの目の前に現れた。それも一体ではない。確認できるだけで五体はいた。
547仮面ライダーD+
なにっ!五体も!?」
一箇所に固まっていたMSが一斉に散開し、シンを中心として五方向に分かれた。みな、訓練でもしたかのようにじりじりと同時に間合いを詰めてくる。
いくらスーツの性能が圧倒的とはいえ多数を相手にするのは分が悪い。集団を一人で相手をするというのはよほど特殊な訓練をつんでいない限り
ほぼ不可能に等しい。ましてや戦闘に関しては素人のシンが五体全員倒すのは無理な注文である。
「くそっ…どうする!?けど、やるしかないんだっ!!!」
覚悟を決め目の前にいたMSに飛び掛るシン、圧倒的なスピードで詰め寄り丁度顎辺りに飛び膝蹴りが決まる。しかし決定打ではなかったのか多少よろめいただけだった。
シンは効いていない事を悟るとMSの肩に脚をかけて蹴飛ばし、その反動を利用してMSから距離をとった。空中で二三回転して着地するやいなや背中に鈍い衝撃が走る。
MSの斧でのきつい一撃。たまらず前方へと転がるシン。追い討ちをかけるようにたくさんの斧がシンに降り注ぐ。まるで斧のスコールだ。
集団の有利な点はここにある。相手が体勢を立て直す前に攻撃をしかけ相手のペースにさせない。いくら強い相手でも自分の力が出せなければ
戦いに勝つことはできない。この五体のMSは図らずともこの利を最大限活用していた。
何とか立ち上がったシンだが決定打となる攻撃が与えられない。どれも背後や死角からの攻撃を気にして攻撃も疎かになってしまうのだった。
(まずい…このままじゃいずれこっちが疲れてジリ貧だ…何か手を打たないと…!)
何か有効な手はないか、シンは嵐のような猛攻を耐えながら頭をフル回転させた。しかしちっとも浮かばない。テレビの様に上手くはいかないようだった。
次第に攻撃もさばき切れなくなってくる。徐々に相手の攻撃が当たる様になってきた。斧が装甲をかする度、火花が散る。
(一体ずつなら楽勝なのに!)
それでも彼は諦めなかった。必死に考えた。決して学校の成績も優秀とは言えない彼だが誰にも負けない個性があった。それは集中力である。
MSには話が及ばないが人間であるシンにとっては大事な事である。人間である以上【感情】というものは必ず付きまとう。
それは常に戦いの中に存在し、感情は戦いを大きく左右する。焦り、油断、快楽等、意外かもしれないがこれをコントロールする事は
次元が高くなるにつれて重要になってくる。特に命を掛けるような場合は顕著であるが、それは至難の業だ。しかし、それらを排除する術も存在する。
それは集中することだ。相手を倒す、という事に集中する。真に集中すればそこに自分の感情が入り込む余地はなく、自分の能力を十分に引き出しす事が可能になり
どんなことも冷静に対処することができる。ビジネスなどにも通用する概念である。口で言うのは簡単だが真の意味でこれを使いこなせる者はそういないだろう。