アムドライバー>(ヒーローの壁)>種系 stage2

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1通常の名無しさんの3倍
マリー「ハロー、ピーポー!ついにアムドライバーたちの反撃が始まったわ!
     今回の見所は帰ってきた主人公、シーン・アスカー!!」

新シャアで時に種の話題も交えつつ「Get Ride! アムドライバー」を語るスレです。

次スレは>>960がファインに決めな!
無理なら申告して>>980が、踏み逃げするような不届き者は・・・・・

       l   !   ト、| |  \         :::ヽ l l       /  /
      l::::.. l   l:.l:.ヽ!\ | \:::::::..  .:::::::::ヽ l !    /  /
       !:::::::!  |.:l\.:.:T \  ヽ:::::::::::::::::::::::::ヽ!l―┐/   /
, - 、    ヽ:::::l   ヽヽ:.ヽ:.`:ー-`ヽl::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::|'  / てめぇぇぇぇぇ!!!!
   \ -― \ \  lヽヽヽ:.:.:.:.:.:.:.:;`ニ=- ;_::::::::::::::l::_L - _ 二
   ,.-\:::../ ヽ:.:.:\!. ヽヽ`ヽ、ー/ ̄!/lヽTl 7 ー'‐‐‐ -/ -‐
:.:.:/_,. -‐ \  \:.:.::\l l` ー-<::: l  |ト\|\'.............:::// :::::::::::    

`ー‐-、._ `ヽ、 /,/''`゙ ': :,r 一-、゙ヽ,  ゙ヾヾ: : : : : : : : : : : : /
: : : : : : :`ヽ、_<ヽ/{:::  、::ヽ. @ ゙、. !、   ゙:, `ヽ、: : : : : : : : :|
: : : : : : : : : : :゙ヽ'、::     ミ=、;;;;jェ,::`-, ,ノ_,ィ,ノ゙ヾ、 : : : : : | 抹!殺!
|: : : : : : : : : : : : `:、       ̄""´ ニ、r、,ノ,.._゙、 ゙、 : : : : |
`7¬ヽ、: : : : :|\: :\           ゙、:f"eヽ`゙; }| : : : /
/    ,>、: :.|  ヽ、゙、     ,. _    ,/::ヽ_,..!リ'ノリ: : : :/
2通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 16:49:23 ID:???
○テレビ東京公式
http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/amdriver/
○コナミ公式HP
<http://amdriver.konami.jp/>
○前スレ
アムドライバー>>>(ヒーローの壁)>>>種系
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1146698104/
○まとめサイト
カゲキにオサレなアムドラまとめサイト
http://www.geocities.jp/nasudriver/
http://allonsy.hp.infoseek.co.jp/

○関連スレ
アニメ2板現行本スレ
[毎日が]アムドライバー42人目[月曜日]
<http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1149172548/>
アムドライバーの主題歌について
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/asong/1100141402/
Get Ride!アムドライバーのTOY stage34
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/toy/1136828820/
3前スレ952:2006/06/14(水) 16:52:57 ID:???
よかったよかった。俺も糞スレ二つばかし立ててたんで確証無かったんだよねー。
4通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 16:55:25 ID:???
一応こいつも貼っとくか。啓蒙活動としてはちょうどいいし。
http://movie.i-revo.jp/ice/special/060517/amdriver/
5荒神404 ◆BNvrzUJgxo :2006/06/14(水) 17:05:39 ID:???
>>1に乙集中システム
6358 ◆KILLER/duk :2006/06/14(水) 17:19:39 ID:???
>>1
マジェスティックな夜に乙
7通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 17:23:55 ID:???
>>1
これが乙EAM解放モードか!
8通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 20:04:05 ID:???
ドラスティックな>>1
9通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 21:25:00 ID:???
聞こえてるか>>1を呼ぶこの乙

このスレ的にはSSの需要はあるのだろうか、例えばシンがアムドラ世界でスタート・アゲインなのとか
10通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 01:14:21 ID:???
グラマラスに>>1乙
11通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 07:03:14 ID:???
>>9

俺は是非読んでみたいっす。
個人的に話題作りと職人さん大歓迎。
12通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 11:33:06 ID:???
無理に捻らなくても普通にアムドラのSSが読みたい俺ガイル。
13通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 02:46:22 ID:???
前スレ>>1000
OTL
14通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 08:07:08 ID:???
前スレ>>1000
てめぇぇぇぇぇ!!!!
(手の込んだ事を(苦笑))
15通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 14:09:52 ID:???
>OVA Get Ride!アムドライバー外伝〜孤高の戦士〜
>第一巻・地下組織設立編
>第二巻・真実告発までの軌跡編
>第三巻・ニルギースの行方と各メンバーの後日談

>>9ガンガレ超ガンガレ!
16:2006/06/16(金) 20:06:35 ID:???
応援キテルー(色々略)ー!!
今現在、ない脳ミソを必死に絞ってネタ考えてます。世界から価値観からマジェスティックに違ってるものを交錯させるのは、ムズい!!
取り敢えずどの時点のシンをどの時点のアム世界に送り込むかが問題…………

前スレ>>1000
ロシェの野郎、無茶しやがってorz
17通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 12:10:21 ID:???
シンは知らないが幸いあることを望む
まぁガンバレ
18通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 20:05:11 ID:???
キャラネタ板ではシーンがあの世からレスしてるけど、あの世の生活編とかも読んでみたい
エーリック兄弟やジノベゼやシシーやシーンがどういう冥土ライフを送ってるかとか

>>9
ガンガレ超ガンガレ
シンは本編じゃカワイソスだったからなー、アム世界での活躍に期待する
19通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 20:25:29 ID:???
でもあの終わり方がシンなんだと思ってる俺がいる・・・・・・
>>9
何はともあれガンガレ!
20通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 20:32:21 ID:???
シンがアム世界にいたら・・・生意気なジェナスって感じか?
妄想が膨らんで俺もなんか書きたくなってきたお
21通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 21:30:28 ID:???
>>20
さあ書くんだ!妄想のたけを文章にしてぶつけるんだ!(´・ω・`)
22358 ◆KILLER/duk :2006/06/17(土) 21:35:43 ID:???
遊佐さんってアギトに出てたのか
23通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 21:49:55 ID:???
遊佐さんはナレーターから特撮まで手広く仕事してるよね
ただ最近メインキャラで見かけたのがシーンくらいなんだけどね(´・ω・`)
24通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 23:38:15 ID:???
キャラソンはいろいろ出てたけど、一曲ピュアム勢揃いの歌が欲しかったなあ
25:2006/06/18(日) 00:03:18 ID:???
 >>20
 オゥケイフレンズ、その熱いアムエネルギーを解き放てば良いじゃないか!(´・ω・`)

 応援して頂き誠に感謝です。
 冒頭が出来たので、投下しに来ました。

――――――――――――――――――――

 天使を堕とす。
 『エンジェルダウン』なる作戦の元、インパルスのパイロットであるシン・アスカは【自由】の名を冠した蒼い翅のシニガミに猛攻を加えていた。
 遠間に映る、黒煙と悲鳴に塗れ無惨な姿を晒した大天使。
 まだだ。
 まだ終わらない。
 胴を薙ぎに来たラケルタ・ビームサーベルを、胸部と脚部の連結を解除すると言う荒技で回避。
 拍子が外されたその背中に、再度チェストとレッグを結合し直し容赦なくビームライフルの雨を叩き付ける。
 急な動きが祟ったか狙いが逸れ、その成果はフリーダムの足をもぎ取っただけに留まった。
 しかし敵もさる者。すぐさま体勢を立て直し、やや無理矢理な姿勢からクスィフィアス・レールガンを展開して射ち出す。
 ゴツリ、振動が全身を揺らした。
「っがァ!!」
 幾らVPS装甲が実体弾のダメージを減らすとは言え、流石に着弾のインパクトまでは殺し切れない。
 胸肺から息の塊を吐き零しながら、けれどシンの心は萎えない。
 堕とす、
 倒す、
 父さんの、
 母さんの、
 マユの、
 ステラの
  仇!

「フゥリィィィィダムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥっ!!!」

 吼える。魂の底から。
 ヴァジュラ・ビームサーベルを握りしめた【衝撃】が、【自由】の腹部を一気呵成に貫いた。
 衝突、手応え、装甲が灼ける音。
 フリーダムの姿が、グラリ、傾ぐ。
 勝った。
 仇を、討てた
 ハジケタ何かが収束していくような感覚を覚えながら、シンは虚ろに笑った。
 致命的なダメージ、そう思い込んだが故か。
 彼は気付いていなかった、墜落するフリーダムのPS装甲が未だに堕ちていなかった事に。
 彼は気付いていなかった、その翅に隠された恐ろしき爪バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲の矛先がこちらを向いている事に。
 彼は、最後の瞬間になるまで気付かなかった。
 アラート。
「っ!?」
 それが、シン・アスカの“CEで”聞いた最後の音――――

26通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 17:32:47 ID:???
27通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 21:45:10 ID:???
宣伝乙
ウザイよ
28358 ◆KILLER/duk :2006/06/20(火) 20:42:18 ID:???
アムエネルギー枯渇
29通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 03:11:46 ID:???
みんなの気に入ってるシーン(ピry)や台詞は何だぜ?

自分は、
「これがシーン・ピアースだ!」ほか一連のシーン成長とか、
ザリガニさんとか(この直前の羊さんはメーメーだ、もw)、
セラが議長ビンタして「大人の癖に…自分のしたことの責任も取れないの!?」
ってトコとかが好きだ。
キャラづけや過去の積み重ねがしっかりしてるからグッとくるんだよなあ。
他にもたくさん良い場面あって挙げきれないZe!
あと何故か印象に残ってるのが、アレンがアイス食ってるあたりw
30通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 04:28:47 ID:???
それでも、また世界中にアムエネルギーが降り注ぐ日が来ると信じている!
31通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 07:55:32 ID:???
テンメェェェェ!
32通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 00:28:49 ID:???
>>29
俺は何と言っても、
「これがシーン・ピアースのやることかよ!」
だな。こんな台詞種キャラには吐けまい。重みが違うんだよ重みがあ!
33通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 17:36:34 ID:???
近所のリサイクルショップに念願のエッジバイザーが入荷していた。
でも肝心のシーン鮭を持ってない・・・orz
34通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 17:38:39 ID:???
エッジにはクリアジェナス
それが俺のジャスティス
35通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 19:25:33 ID:???
ん?エッジはセラに着せてるよ?

・・・・・・・・シーン死亡の日からずっとなorz
36通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 02:14:22 ID:???
>>35
泣けるぜ・・・・

それはそうと、今日は俺たちの!!
37通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 10:39:03 ID:???
月  曜  日  !  !
38通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 23:55:54 ID:???
俺達の月曜日!
39通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 01:13:25 ID:???
>>35
シーンの魂はきっとずっと受け継がれていくのさ…
40通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 02:20:17 ID:???
享年17歳だっけ
シシーもそうだけど
若いな。
もし死ななかったらどんな未来が、とか考えちゃうなあ。

あー種も少年少女がバタバタ氏んだけど、あんまり感慨湧かないのは何故だろ
41通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 18:13:44 ID:QkucWHS1
タフトさん=キサカに凄く驚いた記憶が(笑)

>>40
>あー種も少年少女がバタバタ氏んだけど、あんまり感慨湧かないのは何故だろ
感情移入できないってのは確かですな。
無印種の二コル&トールにしても、種デスのハイネ&ステラにしても「人死に」が
その後の対決の理由付けにしかなってない気が。

むしろ「主人公に正面切ってモノ言える年長者がいない」ほうが問題の気が。
キサカはカガリ専属な感じだったし。
アムの場合、ダークさん・シーン・ニルギース等そっち方向のキャラには事欠かなかったなあ。
42通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 18:49:15 ID:???
脇キャラの個性をうまく引き出せてたからなぁ>アム

擬音の人になったりとか犬化したりとか落ちる人になったりトチ狂った個性付けばかりだがw
だが、ゆえに大好きだ
43通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 20:36:20 ID:???
種だと死んだと思ったらセーフティシャッターのおかげで生きてましただからな
そりゃ感慨湧かなくてもしょうがないよ
おまえはどこの王大人だっての
44通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 20:54:16 ID:???
>>43
確かにダークユニットが復活したり先生が不死身でも、アムドラ全体で脇役の見せ方が
良かったから別に種程気にならなかった。
種の場合主役級は絶対死なないくせに、脇役は紙クズ同然だったからすげえ腹が立った。
種はもういっその事虎田功にリメイクしてもらえよw
45通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 23:22:54 ID:???
>>41
ニルギースっていうと、最初は冷徹で偉そうな感じだったのが、だんだんと本当の「仲間」になっていったのが好感持てた
46通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 00:27:58 ID:???
アムドライバーってジェナスが主役と見せかけてシーンが主役
と、思いきやニルギースこそが真の主人公だと思うんだ
47通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 03:20:41 ID:???
>>44
恐ろしく理不尽っていうか理解できない理由でバタバタ死んでいくのにあのキラの生き延び方は何の説明も無かったからなあ。
セーフティシャッターだって監督が認めてないような外伝で取ってつけた設定だし・・・
やっぱり作品の価値を決めるのは作画や脚本よりもキャラへの思い入れやスタッフのやる気かね?
48通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 19:10:26 ID:???
種デスのスティングもうまくやればディグ先生みたいなネタができたのになあ。
デストロイ登場の時に落とされて、後の回でデストロイ乗って出てきたときはマジで先生思い出した。
「お前生きてたのかよ」つう感じで(笑) 
「落とされる」→「何事もなかったように再登場」を何度かやればネタキャラとしては印象に残った気が。

種のMS戦も、時々「スゲェ」と思わせる事はあったが。中盤(35話くらいか?)のフリーダムVSインパルスとか。
で、人間ドラマでその興奮も遥か彼方に吹っ飛ぶ訳だが(笑)
個人的には脚本以外は「言われるほどひどくもねぇな」つう感じだったんだけどね。
突っ込み所は腐るほどあったけど。

49通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 01:30:46 ID:???
>>48
俺は投げたシールドでビーム反射した時萎えたがな。あんな事したら普通物凄いスピードでシールド吹っ飛ぶだけであんな上手いこといかんってw
50通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 12:21:08 ID:???
叩かれることもないマイナーアニメがうらやましい
51通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 18:18:54 ID:???
>>50
クラッシュビーダマンとか、残ったファンまでもアンチ化していってる作品もあるがな
52通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 19:05:19 ID:???
>>51
どゆこと?
53通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 20:19:22 ID:???
>>52
少ないファンまでも、アンチになっていくほど駄作ということ
54通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 20:50:38 ID:???
>>53
何があったんだ・・・
まあアムドラサポーターがJA側につくことはありえないかな
55通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 23:01:19 ID:???
続編が自分の望んだ形じゃないと儲は簡単にアンチ化するからなー
56通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 23:34:23 ID:???
>>55
ある意味シリーズ物の宿命ではあるな。
個人的には下手な続編作るなら、かえって作らない方が良いような気も。
種の場合、「前作キャラが目立ちすぎた」どころか「主役の座」まで奪ってしまったしなあ。
57通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 23:54:28 ID:???
メダロットの続編は全く逆の意味で叩かれてたよな
前作の意味無えw
イッキよりギンカイやユウズルやコクリュウの方が活躍してた気がしないでもないし
58通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 15:24:47 ID:???
ロックマンエグゼは話の展開が二作目から無闇にインフレいていったけど、
メダロットって続編の方が話の規模がちっさいよな。
59通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 19:10:35 ID:???
ロックマンエグゼは舟子さんの存在だけで許せる
60通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 20:15:52 ID:???
ケロたんかわいいよケロたん
61358 ◆KILLER/duk :2006/06/30(金) 20:21:59 ID:???
早くDVDBOX出して欲しいな。5分位特典映像の後日談を入れてくれれば、
続編なくても許す。
62通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 11:58:50 ID:???
連座2の無限正義がカゲキにアムドラっぽくてワロタ
リフターの使い方がw
63通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 12:02:18 ID:???
連座2やってくる。テスト終わったらな
64358 ◆KILLER/duk :2006/07/02(日) 12:28:22 ID:???
隠者のブーメランってなんかエンジェルウイングっぽいな
65通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 12:58:21 ID:???
戦争を劇中でショーに見立てて余興を楽しむって考え方はどうかと思うんだがw

911テロ〜イラクへの米軍派遣の流れを見てもわかるとおり、
テロ行為も軍隊派遣も、国民やマスコミの大半は
自分の国または組織の「外側の出来事」として見ているから
攻撃する側(とその支持者・属者)は熱狂できるわけで…

これで自分達が常に(仮想敵の)攻撃に晒されていたら
防衛組織やヒーローの人気投票なんてやってられないと思うんだがな
なぜ市民が騒ぐのか、その意味を大きく履き違えてるような気がしないでもない…
66通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 01:47:49 ID:???
>>65
アムドライバーが居るから安心だぜ
67通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 12:38:32 ID:???
初期型バグシーンは、市民を攻撃出来ないよう設定されてたらしい
おそらくアムドライバーに対しても命を奪うまでは出来ないようになってたんだろう
(セラ兄やニルギ兄は知りすぎて消されたが)

だから8話の「アムドライバーが・・・死んだ」という台詞が生きてくるんだな
68通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 14:58:48 ID:???
アムドライバーが全世界の絶対の正義だと信じられていたからな。
それにアムドライバーだってすぐに出てきたわけじゃない(といっても十数年程度だが・・・
第一アムドライバーをマンセーしてる人たちばかりじゃない。アムドライバーを快く思わない人たちや、
今のファッションのような戦いを批判してる人だっていたわけで。
だから意外にリアルな作品になったんだとオモ
69通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 18:50:11 ID:???
戦争賭博という名のニューウェーブ・エンターテイメント、それがアムドライバー



最初のうちは害虫駆除や民家に現れたイノシシやクマを狩る感覚だったな
他の業者とどっちが先に獲物を片付けるか勝負するわけだ
組合(ギルド)がスポンサーになっているから派手に暴れてもいいのがうらやましい
70通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 19:36:12 ID:???
つか戦争集結後、アムドライバーはどうなったんだろうか・・・
スポーツとしとその後発展していったのか
ただの殺し合いの道具に成り下がってるのか
そこら辺、非常に気になる
71通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 19:47:36 ID:???
こだわりすぎず!かんがえすぎず!
72通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 21:23:20 ID:???
アムドライバーの元々の目的は戦争(内戦?)が長く続いたんで、「他に外敵作ってそっちに目を向ける」
事で「戦争やめて一致団結して共通の敵を倒そうや」つう事だったかと。
悪く言えば「壮大なヤラセ」かと(戦ってる本人すら気付いてない)

政府直属と言うかヒモつきのヒーローにはイメージ戦略はつきものかと。
ヒーローが活躍する→政府のイメージも上がる、てな具合で。

とあるアメコミで子供の頃憧れたヒーローの復活に対する現役ヒーローの台詞で、
「ガキの頃さんざん憧れたぜ『コルトに任せろ』って台詞にな」てのがあったのをふと思い出した。
73通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 14:14:45 ID:???
>>72
気付きかけた奴はバグシーンに容赦なく殺らせるからな・・・
74通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 19:34:05 ID:???
ゴルドに任せろ
75通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 21:44:48 ID:???
あいつ案外へタレだからなぁ
76通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:03:08 ID:???
え?ゴルドさんに任せろ?
77通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 23:15:10 ID:???
OK,kantyou.
78通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 23:29:09 ID:???
OK奥さん
79通常の名無しさんの3倍:2006/07/06(木) 20:29:11 ID:???
どいつもこいつもスーパーヒーロー大好きだな
80通常の名無しさんの3倍:2006/07/06(木) 20:30:28 ID:???
ヒーローに憧れるのは日本男児として当然だろ?
81通常の名無しさんの3倍:2006/07/07(金) 00:00:29 ID:???
アムドライバーはただのヒーローじゃない!
アムドライバーはアムドライバーという新しいヒーローなんだ!
82通常の名無しさんの3倍:2006/07/07(金) 05:02:42 ID:???
確かに。ウルトラマンやスーパーマンと違って、ただの人間だからな。どっちかというと最近の仮面ライダーに似てるか?
83通常の名無しさんの3倍:2006/07/07(金) 10:55:08 ID:???
仮面ライダー+可変MSみたいな感じだな
84通常の名無しさんの3倍:2006/07/07(金) 11:23:31 ID:???
ネオラグナの武器はなんとなく特撮に出てきそうな武器だと思った
85通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 10:21:33 ID:???
ネオアムドライバーの武器を皆纏めて1つにするのは仕様

ネオロシェとネオモフ武器を合体させようとしたら挫折した
86通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 11:41:41 ID:???
モト…メタス
エア…アッシマー
エッジ…メッサーラ
ランス…ギャプラン(ブースターまで一緒)
バースト…パラス・アテネ
モノクル…バウンドドッグ
トライク…ボリノーク・サマーン(ツメ以外面影はないように見えるが…)
クロス…ZZ
ネオクロス…スペリオル(肩に注目)
ジャイロ…Gディフェンサー
ランド…ガンタンクG2
ストーム…バウアタッカー
バグブレイム…デビル+イージス
ソードダンサー・ガンシンガー…Zプラス
スパイラルバンカー…ブリッツ(←ガンダム以外でもよく見かける武器なので別に問題は…)
ガトリングブレード…メガバズーカランチャー
ダブルブラスター…F91
フローターキャノン…メガライダー
バリアブルランチャー…F97(クロスボーン)
ボルテックライフル…V2バスター

ボードバイザーはビッグバイパーを意識してデザインしたそうだが他は…
87358 ◆KILLER/duk :2006/07/08(土) 12:45:06 ID:???
>ボードバイザーはビッグバイパーを意識してデザインしたそうだが
それには気付かなかった、アムドライバーデッキに3積み決定
88通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 19:16:32 ID:???
>>86
バーストの元ネタはパブリクだよ
つーかどれも似てるてと言うには無理がある気が・・・
89通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 19:35:19 ID:???
ちょwwwwwww

181 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2006/07/06(木) 16:18:19 ID:QM4BjMDX
だんだんヘタレてるな兄さん

ここは一発服装を緑にして十代からエッジマン借りてデュエルに挑み
「これが!これが!これが!天上院吹雪だぁぁぁっ!!」
って叫べばファインなデュエリストとして返り咲けると思うんだ
90通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 19:36:57 ID:???
うん




うん?
91通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 19:41:40 ID:???
ああ
92通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 22:45:13 ID:???
>>89
ちょwwwシーンwww
93通常の名無しさんの3倍:2006/07/09(日) 12:14:31 ID:???
ソードダンサーがタクティカルアームズと被ったって話はデザイナー自身がいってた気が
94通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 17:08:28 ID:???
劇中で見世物としての戦争を描くことによりファッションとしての戦争を否定したのがアムドライバーで、
劇中でリアルな戦争を描くことにより戦争はファッションだと視聴者に訴えようとしたのが種なんだな。

結構正反対に位置する両者だが、アムドライバーの方が好感もてるな・・・戦争がファッション?馬鹿か福田は
95通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 17:13:17 ID:???
俺、パフがいれば良かった。

ラクス?あんなのいらない。
96358 ◆KILLER/duk :2006/07/12(水) 17:23:59 ID:???
種世界にアムドライバーがいたら
97通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 17:35:33 ID:???
俺、俺!!
98通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 17:39:29 ID:???
>>96
仲間と共に活躍し続けるが、決して大局を変える事は出来ずないからな・・・種よかリアルな話にはなるが
種のまんまのストーリーを当てはめるのは無理だなやっぱりw
99358 ◆KILLER/duk :2006/07/12(水) 18:19:35 ID:???
キラはダークさんかシーン辺りに本気で殴られそうだなw
100通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 18:33:59 ID:???
>>96
キラやシンが破壊の限りを尽くしてる陰でピープルを助けてる構図がしっくりくるかと。
デスティニーだとベルリンとかオーブ辺り。
ふと「ハンマーでMS軍団を蹴散らすディグ先生」が頭をよぎった(笑)
東方師匠やスパイダーマン(昔巨大ロボぶっ壊したりしてるんですわ)の例もあるし。

>>99
むしろディグラーズ先生にボコられるかと。
101通常の名無しさんの3倍:2006/07/13(木) 20:36:53 ID:???
っていうか、キラ=ザルディ?
102358 ◆KILLER/duk :2006/07/13(木) 21:30:07 ID:???
ニルギ=凸か?
103通常の名無しさんの3倍:2006/07/14(金) 00:11:32 ID:???
>>101-102
やめてよね
104通常の名無しさんの3倍:2006/07/14(金) 17:51:26 ID:???
立ち直り後シーン、紫コンビ、先生はコーディネーターでいいと思う
105通常の名無しさんの3倍:2006/07/14(金) 18:04:45 ID:???
先生はいろんな意味でスーパーコーディネイター
106通常の名無しさんの3倍:2006/07/14(金) 19:09:14 ID:???
ていうか先生は人間じゃない
107通常の名無しさんの3倍:2006/07/14(金) 21:58:44 ID:???
前スレで誰かが先生を「餓狼伝」の長田に例えてたけど、俺は文七と言う気ガス。





・・・・・・文七は文七でも天上天下の文七と言う気がするけどw
108通常の名無しさんの3倍:2006/07/17(月) 15:37:00 ID:???
スタゲ見たが面白かったな
アムドライバーの監督に種の外伝作らせてみたらどうなるんだろうか
109通常の名無しさんの3倍:2006/07/17(月) 16:59:29 ID:???
ワイルド7のOVAで平井とアムドラの監督が組んでるね
110通常の名無しさんの3倍:2006/07/17(月) 20:21:06 ID:???
俺たちの月曜日っすよ〜!
111通常の名無しさんの3倍:2006/07/18(火) 16:54:33 ID:???
スタゲってシーンが主人公なんだっけ?
112通常の名無しさんの3倍:2006/07/18(火) 20:05:14 ID:???
>>111
違う
113通常の名無しさんの3倍:2006/07/18(火) 20:40:10 ID:???
シーンをあんなのと一緒にすんなよ
114通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 09:27:49 ID:???
遊佐浩二さんではなかったのか
115通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 15:20:05 ID:???
>>114
小野大輔
116通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 15:36:51 ID:???
>>108
シンがやっちゃるになる
レイがやたら軽くなる
ルナが無口になってぬいぐるみに話しかける
アスラン女装
ハイネがタンクローリー
キラが動かない
ラクスが電波・・・あ、これは元からか
117通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 17:12:18 ID:???
ちょwww見てみたいwww
あとキラはガンちゃんじゃね?
118通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 17:17:12 ID:???
シーンのポジションには誰がつくんだ?無難にディアッカさんか?
119通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 17:50:44 ID:???
ハローピーポー!!なマリュー
カメラマン虎
アーサーがファインに決めるぜ
アヒャるイザーク空気なディアッカ
ステラエーゴルァー
ネオケケ
中盤で次々戦死のアウルとスティング
悪女カガリ
デュランダルin風雲ゼアム城

120通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 18:09:53 ID:???
そういえば種にはシーンのように器用なキャラがいないような・・・
機体でいえば運命(今までの全部ぶち込んでみた)だろうけど
121通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 18:12:28 ID:???
>>119
バロスwwwwしかもアウルとスティングそのまんまだしw
122通常の名無しさんの3倍:2006/07/19(水) 18:23:49 ID:???
ヘタレ先輩→立ち直り、の流れだけならアスランといえなくもないんだけど
その立ち直り方が裏切って迷いなくなりました、だからなぁ
123通常の名無しさんの3倍:2006/07/21(金) 21:34:33 ID:???
シャムスは確かタフトさん
124通常の名無しさんの3倍:2006/07/21(金) 22:19:19 ID:???
裏切ったことは裏切ったよなシーンも。ただ種にするならキラたちを裏切ったことになるな
125通常の名無しさんの3倍:2006/07/22(土) 12:31:27 ID:???
Get Ride!
126通常の名無しさんの3倍:2006/07/22(土) 18:26:57 ID:???
アムドライバー!
127通常の名無しさんの3倍:2006/07/24(月) 19:03:48 ID:???
RIDE ON MINDがカラオケに入るのはまだだろーか
相方のセラのWild Windはあるのによう
128通常の名無しさんの3倍:2006/07/26(水) 19:59:15 ID:???
アムドライバーのおかげで友達が増えました
種のおかげで友達が減りました
129通常の名無しさんの3倍:2006/07/28(金) 14:39:00 ID:???
SS職人の降臨を待つスレはここですか?
130通常の名無しさんの3倍:2006/07/29(土) 16:27:48 ID:???
>>128

    何    が    あ    っ    た  

131通常の名無しさんの3倍:2006/07/30(日) 10:21:22 ID:???
>>128
気になる
132通常の名無しさんの3倍:2006/07/30(日) 12:42:50 ID:???
>>128はきっとアムドラと種の両方が好きで
アムドラ好きな人がいた⇒友達になった⇒しかし種アンチだった⇒絶交
かと
133通常の名無しさんの3倍:2006/07/30(日) 13:47:02 ID:???
>>132
いや、アムドラは友達と一緒に玩具から入ってアニメも観始めた→アムエネルギーry
しかし続けて種死もガンプラから入るもアニメのグロや糞展開、そして傷口に塩を塗る
ように閣下登場→('A`)
となったのでは
134通常の名無しさんの3倍:2006/07/30(日) 21:53:00 ID:???
ss、すんげー強引な設定でよければ書くよ?
多分アムメンバーが種世界に行くやつになると思うけど、それでよければ。
135通常の名無しさんの3倍:2006/07/30(日) 22:38:29 ID:???
>>134
降 臨 大 歓 迎 !!
136通常の名無しさんの3倍:2006/07/31(月) 16:31:04 ID:???
>>134
それでおk!
137通常の名無しさんの3倍:2006/07/31(月) 20:48:17 ID:???
アム種(仮)


第一話 怒れる瞳に映るもの


ガン・ザルディという男がいた。
平和を願い、己が手を汚し。自らの命を狙われて。
いつしか彼は力を欲し、やがて手にしたその力へと溺れていった。

彼に、憧れた者がいた。

ジェナス・ディラ。
ザルディの功績を知り、彼を畏敬し、彼を目指したジェナスは、
幸か不幸か、彼と同じ力を得るに至った。

そして彼は、力へと溺れたザルディの前に立ちはだかることを選択した。
己が理想であった彼の暴走を、止めるために。

多くの仲間を失った末、ジェナスとザルディは遂に一騎討ちにて対峙する。
共に強大な力を持つ者同士、勝負は拮抗し、幾度となく彼らは互いを追い詰め、追い詰められる。

双方は際限なく、その力を肥大化させていった。
結果、彼らの世界は光に包まれた。

何故か。
そんなことが、彼らにわかろうはずもない。
どうなるのか。
それは、神のみぞ知る。

光が晴れたそこに残っていたのは、戦友の形見の剣のみ。
ジェナスも、ザルディも。ジェナスに全てを託し傷つき倒れていった仲間達も。
彼らの持っていたその、力も。
すべて、光の中へと消えていった。

彼らの持つ力は、ゼアム。アム・エネルギー。
彼らの名は、『アムドライバー』。


   *****
138アム種2:2006/07/31(月) 20:49:31 ID:???


──C.E73年、スペースコロニー「アーモリー・ワン」宙域──


「ミネルバを、出航させる!?」

ザフト軍所属・MSパイロット、シン・アスカは乱戦の中母艦より送られてきた通信に愕然とした。
戦闘の真っ最中であるというのに思わず声をあげ、おそらくはその通信の送られてきたであろう、
宇宙へと浮かぶ砂時計型のコロニーのほうをみやる。

「そんな、まだ進水式すら終わってないんだぞっ!?」

毒づいた彼の乗るコックピットを、着弾の衝撃が襲う。
現在の彼は、ザフトの軍施設から強奪された三機の新型MSを追って、僚機とともに追撃の途についている。

『余所見している場合か!!やられるぞっ!!』
「わかってるよっ!!っけど、こいつ……!!」

僚機・ザクファントムからの叱責を受け、シンも苛立って言い返す。
ザクのパイロット、レイの言うように、確かにこの相手は余所見していて勝てる相手ではない。

「モビルアーマーのくせにっ!!!」

彼の駆るMS──インパルスはザフトの誇る、最新鋭の機体。
セカンドシリーズと呼ばれる様々な新規格の機能が組み込まれている。
そんじょそこいらのMSにはまず性能でひけをとることはないし、
パイロットのシンだっていわゆる赤服、ザフト軍におけるトップエースの証たる
紅いパイロットスーツを着用することを許された身だ。
実戦経験がないとはいえ、それなりに腕に覚えはある。

──だというのに。

「なんなんだよ、こいつはっ!!」

叫びと同時に、インパルス──フォースと呼ばれる、空間戦闘用のバックパックを装備した
高機動使用の装備である──の右腕に保持したビームライフルを撃ち放つ。
だが標的となった敵MAはいともたやすくそれをかわし、
円筒状の分離砲塔、ガンバレルを展開して反撃をしかけてくる。

「くっそおっ!!」
『シン!!後退だ!!』
「はあ!?」
『ミネルバが来ている!!』
139アム種3:2006/07/31(月) 20:50:22 ID:???

レイの通信に機体のカメラを振り向かせると、確かにコロニーの方からグレーの
アーチ状の翼を持つ巨艦が出てくるのが見える。
MSだけでの追撃より、艦ごと向かったほうがはやい……そんなところだろう。
そうしているうちに一基のガンバレルがレイの放ったビームに撃ち落され、
MAが後退をはじめる。

「あ、この!!待てよっ!!」
『シン、戻れ!!』
「……くっ……了解」

屈辱だった。
実力でモノにしたこのMS、インパルスの力。
それを以ってして、たかだかMA一機、落とせなかったとは。

「シン・アスカ。これより帰頭しま……ん?」

オペレーターのメイリン・ホークへと帰還する旨告げようとするシンの目に、
メインカメラのとらえた映像の端に漂うものが映る。

コロニーの破片や、MS、機械の残骸。
先ほどコロニーに開いた穴のことを考えれば、無理のないそれらのデブリの群れ。

その中にそれはあった。
いや、いたと言うべきか。

黒と青を基調としたノーマルスーツに、尖った二本のサイドアンテナらしきパーツのついたヘルメット。
どちらも軍で使用されているものではない。
胸部や腕部、脚部へとはなにやら、ごてごてとしたブルーの装飾がつき、宇宙空間をそれは漂流している。

「……人?」

一瞬、その光景に唖然とし、呆けたようになるが、すぐさま首をぶんぶん振って我に返る。
こんなことをしている場合ではない。あれが人ならば、すぐに救助しなくては。
コロニーの大気流出に巻き込まれて長時間放置されていたならば、エアーの残りも心配だ。大怪我している可能性もある。

「おい!!大丈夫か!?そこのノーマルスーツ!!おい!!」

通信を全周波数に切り替えて交信を試みる。返事がなくとも、
あちらの呼吸や音声を拾って、生死を確認できれば。

『……う……』
140アム種4:2006/07/31(月) 20:52:15 ID:???

──よかった。生きていた!!

通信機を再度切り替え、母艦のオペレーターへと繋ぐ。

「ミネルバ!!コロニーの損壊に巻き込まれたと思われるノーマルスーツを発見した。医療班の待機を頼む!!」
『え!?ちょっと、シン!?』

突然の通信を受けうろたえるオペレーター、メイリン・ホークの声を無視して短く用件のみを通信し、
シンは発見したノーマルスーツの元へとフォースシルエットのバーニアをふかし機体を急がせる。

「待ってろ、今助けてやるからな……!!」

彼が見つけたもの。
それこそがはじまり。

ジェナス・ディラとこの世界との、ファースト・コンタクトであった。



・・・・・・───第一話終了
141358 ◆KILLER/duk :2006/07/31(月) 20:53:49 ID:???
>>137-140
GJ!しかし茄子だけか
142134で言った人:2006/07/31(月) 20:55:56 ID:???
タイトル思いつかない
この設定だとシーン出せない
完全に見切り発車

三重苦だがはじめてみた、しかし後悔はしていない
シーンごめんよごめんよシーン

とりあえず説明のつかない部分は「アムエネルギーの(ry」で逃げる可能性大

目標
シ ン が 種 側 主 人 公 
143358 ◆KILLER/duk :2006/07/31(月) 20:57:20 ID:???
>>142
シーンは仕方ないがニルギースじゃ駄目だったのか?
144134で言った人:2006/07/31(月) 21:00:19 ID:???
ニルギやガンちゃんあたりには出てきてもらう予定です
あと他のピュアムメンバーは流動的
145358 ◆KILLER/duk :2006/07/31(月) 21:18:24 ID:???
>>144
成程。期待してるよ。
146通常の名無しさんの3倍:2006/08/01(火) 01:14:20 ID:???
>目標
>シ ン が 種 側 主 人 公

最後まで諦めず、頑張って書いてくれ!
ジェナとシンの会話に期待w
147通常の名無しさんの3倍:2006/08/01(火) 21:47:58 ID:???
降臨期待アゲ
148通常の名無しさんの3倍:2006/08/02(水) 05:21:25 ID:???
ただの不等号スレかと思いきや…
あげてくれたやつに感謝
149通常の名無しさんの3倍:2006/08/02(水) 10:02:15 ID:???
:.! !:/:ヽヽ:|  / ̄`丶、   ::.      _/ ̄/     ヽ'、
:.!:l :V: \ヽ.〃 <`ヽ。ミュ、  ::  ノ_‐ニ。=ア /、     ヽ、
:.、:\: : /:.//|!    `ー‐_'...ヽト 、,イ/..―- '^  ' ヾ,       ヽ
150通常の名無しさんの3倍:2006/08/02(水) 15:37:03 ID:???
いつの間にかキテルー!この調子でたのんます!
151アム種(仮)二話:2006/08/02(水) 17:16:04 ID:???
第二話 戦いに呼ばれ来るもの

「───……に、……です、幸いに……──」

何だ。何を、話している。

「身元は──……はい、名前は所持品から……──」

お前達は、誰だ。何のことを言っているんだ。


───そんな夢を、幾度か見たような気がする。
今の気分は、そんなに悪くない。丁度今は目覚める前のわずかなまどろみに意識があって。
次第に暗かった世界が、明かりを取り戻していくのが無意識に実感として感じられた。
その感じは、人にとってけっして嫌なものではない。

「ここ、は───……?」

眼前にうっすらと広がっていくのは、白い明かりの点いた天井の、青いタイル。
そして、こちらを覗き込む、一人の少年の顔。

「気が、ついたか?」

彼──ジェナス・ディラがこの世界へとやってきて、はじめて目にしたもの。
それは彼を救った、命の恩人とも言うべき人間──シン・アスカの、紅い瞳であった。


    ****


「気がついたか?気分はどうだ?何か、欲しいものはあるか?」

少年の紅い瞳は、こちらをほっとしたように見ていて。
矢継ぎ早に浴びせかけられた質問に、ジェナスは戸惑い目を泳がせる。

「あ……えっと……」

ここは一体、どこなのだろう。自分は、どうしてここに。
彼は見慣れない服装だが、どういった勢力の人間なのか。
様々な疑問が、ジェナスの脳内に浮かんでは消えて──……いってはくれず、ぐるぐると回り続ける。
152アム種(仮)二話2:2006/08/02(水) 17:17:30 ID:???

「っく……」
「あ、おい。まだ起きるなって。あんた、丸二日も寝てたんだぜ」

ひとまず起きて状況を把握しようと、無理にも上体を起こそうとしたジェナスだったが、
目の前の少年に諌められ、押し留めてシーツをかけられる。
両腕には暴れ出すのを防ぐためか、ある程度自由は確保できる程度に拘束がなされていた。
だがそれを抜きにしても、まるではじめてゼアムジャケットを装着し、起動に失敗したときのように体が重かった。

「ここは、どこだ……ガン・ザルディはどうなったんだ……」
「ガン……何?ここはザフトの軍艦の中だよ。あんたもアーモリーワンにいたんなら知ってるだろ?『ミネルバ』の」
「ミネ……ルバ?ザフト?アーモリー、ワン?」

いずれも、聞いたこともない名前だった。
自分や仲間達がガン・ザルディの勢力と戦っている間に、また別の新たな勢力が生まれていたとでもいうのだろうか。
いや、そんなはずはない。ガン・ザルディにすべてのエネルギーを奪われた世界に、
そのような余裕を持っていた対抗勢力など、あるわけがない。

まだ半ば朦朧とした意識に、妙な違和感が広がっていく。
自分は今一体、どうなっているのだ?

「ちょっと、シン。こんなとこいたわけ?」
「わ、なんだよルナ」

と、彼の思考を遮るかのように、少年の隣に、一人の赤毛の女の子が姿を現す。
シンと呼ばれた彼と同じく彼女は、赤い色の制服らしき服を身にまとっていた。

「……あ、目、覚めたんだ」
「うん、さっきな。ちょっと記憶が混乱してるみたいだ」

何やら彼に言いにきたのであろう彼女はこちらが見上げているのに気付くと、
人懐っこい笑顔を浮かべて声をかけてくる。

「ミネルバMS隊所属、ルナマリア・ホークです。お体の具合、大丈夫ですか?」
「あ……あぁ」

モビル──スーツ?
153アム種(仮)二話3:2006/08/02(水) 17:18:21 ID:???
またもやわけのわからない単語を出され、ジェナスは曖昧に頷く。
自分と同年代かやや上程度の見かけに比べて、随分しっかりした口ぶりの女の子だな。
第一印象としてはそんな風に感じた。

「簡単に事情を説明しますと、あなたはコロニーから放り出されて漂流している所を、
 彼──シンによって救助されました。失礼ながら、気を失っている間に身体検査も
 させてもらっています。本来ならば民間人と思しき人間をずっと軍艦に乗せておく
 わけにもいかないのですが、なにぶん作戦行動中のため、ご了承ください」
「はぁ」

コロニー、ね。基地か何かか?
漂流って、どこをさ。それにやはり、ガン・ザルディのことが気にかかるが──。
さっぱり、何が何やらわからない。
それでもとりあえず助けてもらったことには感謝せねばと、
ジェナスはシンと呼ばれた少年のほうへと顔を向ける。

「ありがとう、助けてくれたんだな。えっと、シン……だっけ?」
「ああ、いや。そういや自己紹介してなかったっけ。シンだ。シン・アスカ」
「そうか……。シン、助かった」

未だ自分の置かれている状況はよく飲み込めていないが、ここは素直に感謝の意を示す。
ジェナスからお礼の言葉を言われたシンは、そういったことに慣れていないのか、
くすぐったそうな表情で下手糞に笑った。

「そういやルナ。俺になんか用だっけ?」
「あー!!そうよ、あんたまだ副長にこの前の戦闘の報告書、提出してなかったでしょう!?
 おかげでレイもあたしも艦長から大目玉食らったんだからね!!」

さりげなく、切り出したつもりだったのだろうシンの言葉に、ルナマリアは声をあげ。
大げさに彼を指差しながら、怒ったように非難する。

「……ごめん、忘れてた」
「あっきれた!!大体シンはアカデミー時代からそうじゃない!!そもそもね……」
「はい、はい。わかりました。ちゃんと提出しに行くから、今は患者の前だし、な?」
「……ぷっ」

二人のやりとりに、思わず見ていたジェナスが吹き出す。
なんだ、随分しっかりしているように見えたルナマリアって子も、
シンとこうやって言い争ってるところをみると、やっぱり年齢相応の子じゃないか。
もっとも、その年齢も外見で判断したものでしかないが。
154アム種(仮)二話4:2006/08/02(水) 17:19:19 ID:???

「……そうだな、もう少し静かにしてもらえると嬉しいかな」
「なっ……」

口の端に笑みを堪えきれなくなりつつも、ジェナスはシンへと助け舟を出す。

「それにここ、見た感じ医務室だろ?医務室、病院では静かにするもんだ」
「ちょっと、あなたね……」
「ジェナス、だ」
「「え?」」

片目だけ開けて、いたずらっぽくシンへと視線を送り、ジェナスは言う。
彼が自分をフォローしてくれたことに気付いたシンも、苦笑してアイコンタクトを返してきた。

「ジェナス・ディラ。それが俺の名前だよ」
155134で言った人:2006/08/02(水) 17:22:11 ID:???
本編並みに牛歩で申し訳ないです、はい。
ジェナスが意外に冷静なのはまだ意識が完全に起ききってないからです。
シンは本編に比べて多少快活にしたいと思っています。
多分このくらいのペースでならなんとかやっていけると思われ。
156通常の名無しさんの3倍:2006/08/02(水) 17:25:16 ID:???
この程度でも全然構わないよ。他のスレのは早すぎるだけだし
157通常の名無しさんの3倍:2006/08/02(水) 17:27:10 ID:???
イイヨイイヨー
158通常の名無しさんの3倍:2006/08/02(水) 18:22:26 ID:???
いい流れでGJ!!
投下のペースは人によるものだから気にする事無しだね
頑張ってくれ!
159通常の名無しさんの3倍:2006/08/03(木) 02:32:05 ID:???
GJ!!
SSにいやされたw
まぁこれからは波乱な展開になってくんだろうけど
こういうジェネシンルナの和み系会話もまた入れて欲しいw
160通常の名無しさんの3倍:2006/08/03(木) 18:37:16 ID:???
程よく下がってたので
保守アゲ
161通常の名無しさんの3倍:2006/08/03(木) 21:15:43 ID:???
俺もピュアムが種世界へ飛ばされる妄想してたんだが、あるところで行き詰まった。
アムエネルギー無い世界に行ったんだから戦うの無理じゃね?

でもこの場合はゼアムジャケだから何とかなるのかな…。
兎に角今後に期待!
162通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 02:25:36 ID:???
ビックバイパー保守!
Get Ride!
163通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 10:41:18 ID:???
ダークとタフトと先生がいればいくらでも沸いてくるよそんなもの
164通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 14:29:19 ID:???
シーンが出ないのが惜しいな
誰か書いてくれんか、あの世に行った後のシーンの話
165通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 20:48:20 ID:???
それは流石に少し引く
166アム種三話:2006/08/05(土) 13:48:54 ID:???
第三話 戦火の予兆

「奇妙なエネルギー反応?プラント周辺でかね?」

オペレーターよりもたらされた、プラント本国からの報告。
不可思議といえば不可思議極まりないその内容に、
プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルは怪訝そうな表情を傍らの女性へと向ける。

「プラント周辺というよりも、月、地球軌道上……その他、ある程度軌道の安定したポイント、全般のようですわね」

パネル上のデータを指し示して応える女性は、彼と同年代くらいであろうか。
軍服を着込んだその姿、動作はきびきびとしていて、
事実そうなのだから発散していて当然の、油の乗りきった仕事適齢期真っ盛りの女が放つオーラのそれを窺わせる。

ザフト軍戦艦・ミネルバ、そのブリッジ。
艦長のタリア・グラディスは艦長席の右後ろの席に座るデュランダルとつき合わせているこの状況を
あまり好ましく思っていない。けれどこのような珍妙な報告を受けては、そうせざるを得なかった。
奇妙なエネルギーとは一体、何なのだ。その要領を得ない報告は。

「本国からは他に何も言ってきていないの?」
「ええ……調査中とのことで、何も」

副長のアーサー・トラインも首を傾げる。
そんな折、艦内通話をオペレーターが受けて、艦長たる彼女へと伝えてきた。

「艦長、医務室からです。アーモリーワン宙域でシンの救助した民間人が目を覚ましたそうです」
「そう。……それもあったわね」
「はい?」
「いいえ、気にしないで。巻き込んだこっちとしても、一応会いにいかないとね。応対はできそう?」
「起き上がるのは無理だそうですが、意識ははっきりしているようです。今はシンが彼と話していると」
「そう。応対はできるのね。時間を見つけてこちらから説明に向かいます」
「艦長自らですか?」
「ええ、そうよ。少なくとも彼を乗せっぱなしにしてる事情を、説明しないとね」

軍規違反の常習犯のシンなんぞに任せておいたら、どんな機密をしゃべるかもしれない。
巻き込んだ張本人として、会っておく礼儀もある。
つらつらと理由を並べ挙げてみせながら、タリアは心中で、全く別のベクトルのことを考えていた。
シンが拾ったという、少年の正体。
無論それは彼女の予想を良くも悪くも、とんでもない形で裏切ってくれたのだが、
少なくとも彼女の脳を占めていたのは二択しかなく。

ただの民間人があのような場所で、救助されるだろうか。

彼が敵か。否かということだけだった。
最悪の事態を思い浮かべ、彼女は嘆息し索敵の行われている上部モニターへと視線を戻した。
167アム種三話2:2006/08/05(土) 13:50:19 ID:???

    ****    


「……『地球連合』?」
「ああ、艦長たちはアンノウン扱いしてるけど、専ら襲撃犯は地球連合の奴らって噂」

ジェナスがあげた疑問の声を、シンは確認のニュアンスとして受け取ったらしく。
その地球連合とはなんなのかも、それらが一体どこを襲撃したのかも彼にはわからない。
いや、それだけではない。
シンの話すことの端々に出てくる様々な言葉、用語が完全に、彼の持っていた常識の範疇には
存在しないものばかりであったのだ。
ただ、自分達がガン・ザルディと戦っていて知らなかったというには、あまりに多すぎる。
はぐれたらしい、あの城へと残してきた傷つき倒れた仲間達のことも心配で、
少しでも情報が欲しいところだというのに。

「だからゴメンな、今そいつら追ってて──……見失ったけど、とにかく追撃中で。しばらくプラントには戻れないと思う」
「あ、ああ……そうか……」

すまなそうに言うシンに対し、あまり強く出ることができないジェナス。
そのせいもあって、目を覚ましてから結構な時間が経っているというのに、
シンとの会話から得る情報はいまいち要領を得ていなかった。

「でも、珍しいよな。ジェナスの着てたノーマルスーツ。民間じゃあんなテレビのヒーローみたいなの使ってるんだな」
「……は?」
「いいよなー。軍のやつなんてせいぜい色の選択ができるくらいで、首元息苦しいし。装飾もできねーし」

俺の着ていた──何?
また耳慣れぬ言葉を受けて一瞬思考が停止するが、すぐに自分の着用していたアムジャケットのことを
彼が言っているのだと理解する。

「……ああ、アムジャケットのことか」
「アム……何?ジャケット?あのノーマルスーツ、そんな商品名までついてんの?」
「?アムジャケットはアムジャケットだろ。まあそりゃ、独特のチューンはしてあるけど……」
「?」

───まさか。アムジャケットを、知らない……?
考えられなかった。少なくともジェナスの知る限り、アムジャケット……少なくとも
その形状を見てそれがなんなのかわからないというピープルなど、聞いたこともない。
168アム種三話3:2006/08/05(土) 13:51:35 ID:???
まして、軍の関係者ともなればなおさらだろう。どの陣営にも属さず一歩間違えば
テロリスト集団として扱われかねなかった自分達は、各陣営の軍に対して
それなりに有名であったという自負はある。ジャケットのデザインを見て気付かぬことなど、ありえまい。

だというのに、彼は知らないと言う。
少なくとも、ジェナス達のいた世界では、まずありえないことだった。

(!?……俺、今。なんて思った?世界?……俺達のいた?「世界」?)

何故、そのようなことを思う。
まさか、そんな。
あまりに荒唐無稽で、現実離れしすぎている。
自分の頭がおかしくなったか、夢でも見ているのではないかとすら思えてくる。
大体、だとすれば自分は今、どうやってこの場にやってきたというのだ。
ラグナあたりが聞けば、鼻先で笑いとばすことだろう。

(あの、時?ゼアムの光……か?)

しかし、ジェナスの脳内では想像が進んでいく。
フルパワーを開放した、ゼアムとゼアムのぶつかりあい。
それは常識をはるかに超えた衝撃と力を生み出していたはずだ。
今このときも、自分があのような力を行使していたなど、信じられないほど。
自分が目覚める前、最後に見たものは何だ?
対峙することを決めた、歪んでしまったかつての憧れ。
戦友の形見と、それに浮かび上がる彼の幻影。彼の声。
そして視界一面に広がりゆく、眩しく暖かくも、強大すぎてどこか危うさを感じさせる──ゼアムの光。

すべてが消え失せたとき、自分はここにいた。

(ゼアムの仕業だってのか……?俺が「ここ」にいるのも)

異世界に飛ばされた、なんて。
冗談だろう、よしてくれ。そんな子供じみた想像、ほとんど妄想も同然じゃないか。
あまりに幼稚で短絡的で、馬鹿馬鹿しい。
懸命に──知らず知らず懸命になっていた──自身の想像を否定する、ジェナス。
それはある意味で当たり前の常識を持つ人間として当然であったけれど。
その実、彼の両掌は確かにその予想に対して、嫌な汗をじっとりとかいていた。
169134で言った人:2006/08/05(土) 13:56:59 ID:???
三話です。亀の歩みですね、まさに。
一応時間軸を言うと、もうアスラン正体バレやガイアの宇宙疾走は
済んでる、丁度ユニウス落としの前ということで書いています。
もう少ししないとファントムペイン御一行は出てこないかな?
アムジャケットやバイザーを種世界で使えるかどうかということに関しては
(バレバレですが)一応今回の内容からつなげていくつもりです。
この方法しか思いつかなかっただけなんだけどね。
170通常の名無しさんの3倍:2006/08/05(土) 16:17:49 ID:???
GJGJ!!
171通常の名無しさんの3倍:2006/08/05(土) 16:36:39 ID:???
GJ
これからが楽しみ

俺もシーンが出てくる話書きたいんだけどさ
この板で言っちゃいけないのかもしれないけどさ
 種 よ く 知 ら な い ん だ、俺

関連スレで盛り上がってたから来てみただけで、このスレがなかったら一生新シャアには縁がなかっただろう
いまさらDVD借りて観る気も起きないしなー、評判聞いてると
スパロボくらいの知識でいいなら書くけど、それは流石にまずい気がする
172通常の名無しさんの3倍:2006/08/05(土) 23:13:28 ID:???
>>171
書いては欲しいが種を見てないとなるとまずいな
スパロボでの知識で書くと言う事になると難しいところだな
173通常の名無しさんの3倍:2006/08/06(日) 02:30:22 ID:???
今回もおもろかった!
1741:2006/08/06(日) 20:42:57 ID:???
>>171
個人的には、高山瑞穂先生のコミックボンボンの単行本をお勧めしたい所ですね・・・。
正直、種と言う存在は知らないで済めば越した事の無いような出来な訳で・・・・。
175134で言った人:2006/08/06(日) 21:58:15 ID:???
ちょっとスレのみなさんに御質問。
これからの展開について、かなり本編を改変する可能性があるのですが、
かまいませんかね?もちろん本編をそのままトレースしていって、
問題のある部分(明らかにおかしい部分)のみをいじることも可能ではあるのですが。
前者の場合はラクス襲撃やらユウナやら、無茶苦茶変わる部分が出てくると思いますので…。
どう考えてもあのアークエンジェル陣営の行動、思考はまともな人間のすることでは
考えられないもので…。
後者の場合はthe edgeのような改変程度で済むと思います。

どうしましょ?
176通常の名無しさんの3倍:2006/08/06(日) 22:04:16 ID:???
いいよ、別に大改編しちゃっても。
それがアムエネルギーが、コズミック・イラの人々に見せた相克の真実って奴だから。

ユウナがウィルコット議長ばりに死んだらケツを捧げてもいい。
177通常の名無しさんの3倍:2006/08/06(日) 22:58:10 ID:???
展開は大改編の方に一票入れます
178通常の名無しさんの3倍:2006/08/07(月) 02:00:00 ID:???
大改編でいいっすよ!頑張れ
179通常の名無しさんの3倍:2006/08/07(月) 07:30:03 ID:???
大改変賛成っスよ!うっほほーい
180通常の名無しさんの3倍:2006/08/07(月) 16:02:58 ID:???
そういや、今日は俺達の月曜日!

大改変に賛成
181通常の名無しさんの3倍:2006/08/07(月) 19:10:00 ID:???
俺たちの月曜日!
やっちゃる!
182通常の名無しさんの3倍:2006/08/07(月) 22:41:18 ID:???
降臨期待上げ
183通常の名無しさんの3倍:2006/08/07(月) 23:12:40 ID:???
大改編おk!
184173:2006/08/07(月) 23:21:30 ID:???
>>174
そういえばボンボン版は評判よかったみたいだね
なんだっけ、シンがちゃんと主役として扱われてたとか

>>175
大改編上等!これからも楽しみにしてます
185通常の名無しさんの3倍:2006/08/07(月) 23:37:55 ID:???
>>184
大まかなストーリーを掴むならボンボン版。
ちゃんとシンが最後まで主人公してるし。
凸視点の話が読みたいならジ・エッジ。
漫画ならこの二つが良いと思う。
186ヴァイオレット ◆BNvrzUJgxo :2006/08/07(月) 23:54:20 ID:???
ラグナの中の人とサーフィンしようぜ♪光るネットの波をくぐって♪
187134で言った人:2006/08/08(火) 09:02:57 ID:???
第四話 星屑の動く時


部屋の中の空気は、重苦しかった。胃がきりきりと締め付けられるような、殺伐とした空気。
本来、傷つき癒しを求める者がやってくるはずの、医務室という場所であるにも関わらず。
対峙する二人の人間によって、静謐そのものであった空気は一転して、
刺々しい、息苦しささえ感じるそういったものへと変わってしまっている。

「堅苦しい前置きは、よしましょう。ジェナス・ディラ……だったわね」
「ええ。……何が言いたいんです、艦長さん?」
「あなたは一体……何者?何の目的で、この艦と接触したのかしら?」
「っ……!!」
「それを……ぜひとも聞かせて、もらいたくてね。話してもらうわよ?」

女性の右手には軍用の自動拳銃が握られて、ジェナスのほうへとその銃口を向けていた。
穏やかな口調とは裏腹に、彼女の声も、目も、表情も。
一切は笑うことをやめた、冷え切ったものだった。



   ****



ずいぶんとまあ、不躾な質問だ──……ジェナスは、そう思った。
シンとあれから、話し込んでいて。そこにやってきた、白い軍服の女性。
二言、三言自己紹介や、体調を気遣ってくる言葉をかけてきたとおもったらこれか。
彼を鋭い目つきで睨むように見据えてくる目の前の女性は、この部屋に入ってきてすぐ、態度を豹変させたのだ。
食えない人なんだろうな──あるいは、気を張っているか。根がまっすぐなのかもしれない。
脇に追いやられた形のシンが唖然と目を瞬かせているところを見るに、
普段からこういう態度の人というわけではなさそうだが。悪い人というわけではないようだ。

彼の目には、そう映った。
ジェナスが行った短時間での人物評は、目を覚ましてから何度目になるだろうか。
彼女でもう既に、二桁に達している気がする。
ミネルバ艦長、タリア・グラディス──……自分の半分も生きていないような子供にそのように品定め
されていると知ったら、彼女はどのような反応をするだろう。
188アム種4話2:2006/08/08(火) 09:05:01 ID:???

「プラント本国に問い合わせた結果、ジェナス・ディラという戸籍は存在しない……。
 パスポートやビザが通過した形跡もなければ、あなたの着ていたあのノーマルスーツ、
 あれも市販すらされていないもの。また、あなたが気を失っている間にさせてもらっ
 た身体検査の結果を見る限り、その身体能力はとてもナチュラルのものとは思えない
 ほど高い。かといって、プラントに住むコーディネーターでもなければ体内から薬物
 の反応があるわけでもない。つまりエクステンデッドとも違う───あなたは、何者?」
「か、艦長……!!なんで……」
「管理社会のプラントで、不法入国者や無許可労働者など、有り得ない。となると……」
「艦長っ!!何言ってんですか!?」
「お前は黙っていろ、シン」
「っ!?レイ!?ルナも!?」

医務室の自動扉が開き、銃を構えた金髪の少年が入ってくる。
レイ──シンがそう呼んだところを見るに、彼の話の中で出てきた、同僚という少年だろう。
そしてそれに付き従うように、あのルナという少女──赤髪の少女も、心配げに眉根を寄せて、
こちらへと照準を向けた銃を片手に一同を見比べている。

「そいつは、強奪犯の一味かもしれないんだ。離れろ、シン。……艦長、遅くなりました」
「いいえ。これから話を聞こうとしていたところよ。さあ、聞かせてもらえるかしら?」
「おいおい……聞かせるもなにも、こりゃ脅しだろ」

冗談めかすようなジェナスの調子にも、不敵に笑うタリアは、その通りだとこともなげに言ってのける。
そんなことは、百も承知らしい。どうしても、彼女はジェナスに口を割らせたいようだ。
彼女は十中八九、ジェナスのことを敵だと思っている。
異質であることを、感じている。敵かどうかは別にしても、その点に関しては、グラディスの読みは当たっている。

「仕方、ないな──……。けど、ひとつ前提があるのと。あと、こっちからもひとつ聞いていいか?」
「……言ってごらんなさい」
「一つ目。俺が何を言っても、驚かないで欲しい。……無理かもしれないが。少なくとも、俺は真剣だ」
「?……何を、今更」

ごまかしたり、ふざけたり。
妙な真似をすれば、向けられた二つの銃口からズドン、というこの状況であるというのに。

「かもな。でもな、多分俺の言うことはあまりに非常識で非現実的だ。それでいいのであれば、答える。次に、質問だ。いいか?」
「……こちらが答えられる範囲でなら」
「そうか」

こちらの真意を計りかねたようなグラディスの答えに、一瞬ジェナスは息を吐いて呼吸を置いた。
彼自身、確証のない現在の状況。信じたくはない、己が立てた仮説。
それが立証されてしまった際の、ショックの大きさは彼自身、どれほど大きいものなのかは
皆目見当もつきはしなかったから。
そのための、心の準備だった。少なくとも数秒間はそのために必要とした。
189アム種4話3:2006/08/08(火) 09:09:39 ID:???

「……ここは。いや、こう言ったほうがいいか。……『この世界は』、俺のいたところなのか?」
「……は?」
「この世界は、一体どこなんだ?」
「何を、言って───……?」

ベッドサイドに座る女性の眉が、ぴくりと動いたような気がした。
挑発にとられたかもしれないな、と、ジェナスは彼女の返事を待った。



   ****



──ゆっくりと、それは動き出す。

幾条もの光の尾を引いて、落着すべき地を求めて。
男達の怨念を載せて、ゆっくりと暗黒の中を進んでいく。

「行け……我らの想い、吐いた悲しみ、無念。そして命。すべてくれてやる……!!」

ひび割れ、砕け。周囲にデブリや小惑星と化した岩塊を数多く漂わせた、
スローモーションで進んでいく巨大な大地。

その名を「ユニウスセブン」と言う。
動くはずのないもの。動いてはならないはずのもの。
コーディネイターとナチュラルの憎悪が最も目に見える形で、顕現した場所。

静かに動き出したそれが目指すのは、地球。
男達から、安寧に身を委ねた裏切り者たちの元へと送られる、
死という付属品を伴ったあまりにも大きすぎる贈り物。
黒き騎士達が、それを護るために付き従っていた。
この大切なプレゼントを、しっかりと咎人達のもとへと送り届けるために。

「それら」は「そこ」で待っている。
己が刃を振るうべき、蒼き戦士を。
己を纏い駆るべき、まっすぐな少年を。

誰にも気付かれず、知られぬまま。
崩壊した大地を動かした、その者たちさえも知ることのないままに。
密かに彼のことを、待っている────……。
190134で言った人:2006/08/08(火) 09:15:24 ID:???
いくらゼアムジャケットでも、丸腰なんですよね。
今のジェナス。四話目です。次回多分凸たち登場。
んー、ジェナス中心だとシンたちの描写が薄い…。
その辺は追い追い改善していきます故。

大改変おkのようなので、お言葉に甘えてさせていただきます。
多分最初のほうだと大きな変化はユニウス破砕とセイバー登場あたりかな?
191通常の名無しさんの3倍:2006/08/08(火) 16:01:55 ID:???
頑張ってくれ!!
192通常の名無しさんの3倍:2006/08/08(火) 18:17:21 ID:???
GJ
早速違う世界だと気づいたのか
193358 ◆KILLER/duk :2006/08/08(火) 19:33:05 ID:???
GJ!アムエネルギーに満ちたSSだな
194通常の名無しさんの3倍:2006/08/09(水) 12:39:47 ID:???
こっちの世界にはアムエネルギーが存在するのだろうか?
195通常の名無しさんの3倍:2006/08/09(水) 12:50:39 ID:???
別に特定の物質、宇宙から飛来した隕石とかから得られたエネルギーじゃないしな<アムエネルギー
196通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 14:32:17 ID:???
定期上げ
197アム種5話:2006/08/10(木) 17:54:47 ID:???
第五話 傷跡は少年達に

「これは……確かに、同じものね……」

ミネルバ格納庫内。
慄然とした表情で手元の端末を見つめるタリアには、そう搾り出すのがやっとだった。
端末の先は、ケーブルを通してブルーのラインが入った独特の形状のノーマルスーツ、
あの少年は「アムジャケット」と呼んでいた代物に繋がり──、
彼女の空いたもう一方の手には、プリントアウトされた何かしらのデータが握られていた。

「……どうです。信じてもらえましたか」

彼女の部下──シンの肩を借りて、立ちながら。
これまた彼女の部下、レイとルナマリアに銃を突きつけられた状態で聞いてくる彼に、
タリアは頷かざるを得ない。

「……議長、どう思われます?」
「ふむ、そうだね。私も研究者の端くれとして、エネルギー工学をかじったことはあるが──、確かにこれは見たことがない」

のこのここの艦に乗艦してきたときには、やっかいな人を乗せる羽目になったと思ったが、
今このときばかりは、彼がいてくれてよかったと思っている。
スパイ容疑のかかった少年の主張が、あまりに荒唐無稽で。
彼の言うことが信じられないにも関わらず。
目の前に出されたデータがそれを、裏付けるかのように数値を示しているのだから。

格納庫へと場所を移したその時に、まるでタイミングを見計らったかのように
デュランダルがエレベーターからオーブのお姫様を連れて出てきてくれたことに、
タリアは心底感謝する。
個人的感情としても、専門知識を持たない一人の人間としても、
混乱する頭をフォローしてくれる彼の存在は、ありがたい。

「……どうされますか?」
「……。ジェナス君と言ったね」

その彼は暫し思案した後、赤服に囲まれた入院着の少年へとその穏やかな目を向ける。

「詳しく、話を聞きたい。私と一緒に……来てくれるかね?」

デュランダルの手にある、端末と記録用紙。
そこに表示された、unknownと表記されたエネルギーの波は。
寸分たがわず、同じ波形を描き出していた。

「アムエネルギー」……、彼は、そう呼んだ。
198アム種5話2:2006/08/10(木) 17:56:05 ID:???


 ****


「しっかし、驚いたよなぁ。まさかジェナスがねぇ」
「言うなよ、俺だって未だに信じられてないんだから」

数刻後、休憩室に二人の少年の姿があった。

ギルバート・デュランダル議長に呼ばれ、艦長室にて尋問を受けたジェナス。
そんな彼に付き添い、彼の話した全てを聞いたシン。
缶のドリンクを片手に、二人は解放されたお互いを労いあう。

「びっくりしたよ、こいつ酸素欠乏症にでもかかってるんじゃないかと思った」
「ははっ」
「もう、笑い事じゃないでしょ。自分のことなんだから」
「まったくだ」

笑う彼に突っ込むのは、同じように缶を手にしたルナマリアとレイ。
ジェナスにはもう、彼らから銃口は向けられてはいない。

「ほんと、SFの世界だよな。平行宇宙──……なんて、さ」


 ****


「やれやれ、まいったわね。──平行宇宙、なんて」

銃を突きつけられながら、彼が語ったのは己の出自。
自分が「アムドライバー」であること、激しい戦闘の中、光に包まれたと思ったらこの世界に漂流していたこと。
シンたちの話す単語の意味が、ほとんど何一つ、耳慣れぬものであったということ。

聞いていたタリアたちがあっけにとられるほど、
彼の言葉のひとつひとつが、嘘にしてもあまりに不可思議。
ドクターからのお墨付きがなければシンの言うとおり、酸素欠乏症とでも判断されたことであろう。

「なんなら、俺の着てきたアムジャケットを調べてくれてもいい。あんたらの技術体系とは似ていても、微妙に違うはずだ」

しかし彼は自信たっぷりにそう言った。少なくとも、タリアには彼に自信があるように見えた。
その時点で彼女の中では、彼が連合の工作員であるとする考えは消えた。
もし彼がそうならば、自分の着てきたものを積極的に調べさせるわけがない。
かといって彼女は彼の主張──「平行世界からやってきた」などとする言い分も、信じてはいなかった。
オカルトか、SFか。
そんなものじゃああるまいし、一体誰が信じられるというのだ?
199アム種5話3:2006/08/10(木) 17:57:16 ID:???

だが、彼女はそれを信じざるを得ない事態に直面する。

ジェナスを立ち合わせ、行ったノーマルスーツもどきの解析の結果。
彼がアムジャケットと呼んだそれは、確かに間違いなくこの世界のノーマルスーツとは別物でありまた、
駆動に使用されているエネルギーは、この世界では存在しない、少なくとも発見されていないものであったからだ。

「彼の処遇……よろしいので?議長も、カガリ代表も」

更に彼女達を驚かせたのは、そのエネルギーの性質。
それは先刻プラント本国から送られてきた、地球圏各地で観測された謎のエネルギーの持つ波形と、
完全に一致していたのである。

「ああ……我々はやっかいになっている身だ。デュランダル議長がいいというのならば、口出しはできん」

プラントからの報告によれば、エネルギーが観測され出したのは数日前──、それはアーモリーワンが
襲撃され、またジェナスが発見された、まさにその日であった。
奇妙に、符合していた。偶然とは、思えない。

「仕方あるまいよ。怪我人を放り出すわけにもいかんし、何より彼が望んだことなのだから」

対話の場を艦長室に移し、全てを話し終えたあとでジェナスは言った。
元の世界に戻る方法がわかるまで、この場に置いて欲しい、と。
シンから聞いた話では、今現在この艦は強奪犯たちを追っていると聞いた。
また軍であるならば、あちこちに行くことになるのだろう。
これでもあちらの世界で戦場は経験している。
この世界を見て回って、少しでも情報が欲しい、と。

「戦場での経験があるのならば、この艦に乗っていてもパニックになることはあるまい」
「それはそうですが……」
「どうしても無理だというなら、オーブで亡命者として引き取るが……」

それをデュランダルは承諾し、彼らは今、ジェナスたちの退出した艦長室で話し合っている。
カガリの提案がベストのようにも思えたが、デュランダルは首を振る。

「アレックス君のときと同じように、ですか?姫」
「な……っ、それは!!」
「失礼、怒らせるつもりで言ったのではないですよ。ただ……」

デュランダルは立ち上がり、船窓から外を見つめながら言う。

「戸籍の捏造は、けっして褒められたことではありません。政治家とはいえまだ若いあなたが、口に出すことではない」
「っ……」
「無論、大人の勝手な正義感かもしれませんが」
200アム種5話4:2006/08/10(木) 17:59:02 ID:???

矛盾していることを、デュランダルは自覚する。
戦争の経験があることを理由にミネルバで彼をひきとることを許可し、
戦争という最も汚い世界に彼を──いや、若者たちを置いておきながら。
若いカガリに、政治の汚さには染まるなという。
彼にしては珍しく、忸怩たる思いがあった。
この世界の現状を知り、またジェナスの話を聞いた者として、二つの世界を重ね合わせながら。

「彼の世界にも、戦争があったというが。今我々の世界も非常に不安定だ。いつ、戦争になるかもしれん。
 皮肉だね、実によく似ているじゃないか。人はどのような世界にあっても、争うものなのだろうか……?」

201134で言った人:2006/08/10(木) 18:09:20 ID:???
とりあえずこれでジェナスと種世界の接触編は終了です。
次回からユニウス落としです。
カガリが落ち着いてるのはまだジェナスのことに実感が湧いていないから。
まああんな本編みたいに騒がしい子にするつもりはないけど。

と、ここで皆さんにまたご相談。
ユニウス以降、ジェナス用にバイザーを登場させようと思っているのですが、
どれにしようか悩んでいます。まだややそれまで時間があるので、
皆さんの意見を反映したいなぁ、と。
候補は
1、ボード
2、ファーブニル
3、ソダン
あたりで考えているのですが。皆さんの意見が聞きたいです。
202通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 18:13:07 ID:???
4のネオエッジで。
203通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 18:30:38 ID:???
>>202
ねーよwww
でもそれもいいかも
じゃあ俺もネオエッジで
204通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 18:33:28 ID:???
じゃあ俺もネオエッジ。
ある意味シーン(の魂)登場になるような。
205通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 19:12:38 ID:???
じゃあ俺はソダンに形見のデュランダル付きで
206通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 19:17:42 ID:???
俺はボードに形見でエッジを(初期バイザー系統を希望
207通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 19:21:51 ID:???
>>201
グッジョブ!!!
意見として3のソードダンサーは早すぎるから初期でも十分強い1のボードバイザーを選択させていただきます。

・・・ん〜ネオエッジの意見も出てるようだけどそれは中盤付近で登場させたほうがいいかなと俺は思っている。
208通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 19:29:00 ID:???
おいらはソダンがいいな〜。
ファーブニル(つかネオクロス)もいいけど、もう一人(ラグかニルギ辺りか)
いないと真価を発揮できないかと思うし。

このSS読んでて「別の場所でニルギが種世界に漂着している」妄想が頭に浮かんでます。
ラクス&キラに保護されてるとか(この時期だとオーブに隠棲中だったっけ?)
209通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 20:52:51 ID:???
>>208
キララクについてはその通り
でもソダンは強すぎると思うがなぁ・・・
SSは試しに投下するとかかな?
ニルギがキララクに保護されるところはさらに戦争をかき回すだけだと思うYO
それ以外だと何処が候補になるだろう?
210通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 21:12:02 ID:???
ジョイが拾われて、マリューと一緒にモルゲンレーテ勤務を提案。
211208:2006/08/10(木) 22:42:40 ID:???
>>209
ソダンは単なる好み(笑) 何か久々に玩具引っ張り出したくなったな。
ま、SS投下するほどまとまった想像でもないし。
基本的に俺の種デス知識は小説版のモノだし(本編見たのはデストロイ登場ちょっと前から)
せいぜい、キララクの元で静養→暗殺部隊をボコった後一人旅立つ…程度の考えだったし。
ニルギが影響与えそうなのは、むしろカガリの気も。御輿状態で諦めモードのカガリに
「できるかできないかではない。やるかやらないかだ」(この台詞すっげえ好き)と、積極的
な行動を促すとか。側近にタフトさんもいるしね(違)

マリーさんやジョイならジャーナリスト&メカニックとしてどこにでも潜りこめそうな気が。
212通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 23:04:09 ID:???
ジョイの「こんなこともあろうかと〜」は炸裂するだろうか
213通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 23:04:52 ID:???
劇中で出番の少なかったソダンでたのんます
214209:2006/08/10(木) 23:22:57 ID:???
>>211
ふむ、ソダンは好みだったかw
ニルギはアムジャケの無い状態でも暗殺部隊は倒せるかなぁ?(^^;
>「できるかできないかではない。やるかやらないかだ」(この台詞すっげえ好き)と、積極的
な行動を促すとか。
確かにニルギのセリフでカガリが変わる可能性は高いな

ジョイは何でもこなすところが凄いw、バイザーと飛行機(名前忘れたw)も平気でパクってるしw
215通常の名無しさんの3倍:2006/08/10(木) 23:50:47 ID:???
ネオエッジというかデュランダル出せばシーンの亡霊も出せるぜ
あの刀身に浮き上がってジェナスを叱咤するやつ
216通常の名無しさんの3倍:2006/08/11(金) 02:10:39 ID:???
シーン……出して欲しい……セラの為にも……
217通常の名無しさんの3倍:2006/08/11(金) 02:11:22 ID:???
>>214
キクロプスな<飛行機の名前
218209:2006/08/11(金) 02:58:13 ID:???
>>214
お、そうだったキクロプスだw
サンクス!
219358 ◆KILLER/duk :2006/08/11(金) 07:00:00 ID:???
やっぱソダンでよろ。
>キクロプス
ガンペリーもどきのあれ?
220アム種6話1:2006/08/11(金) 08:43:14 ID:???
第六話 世界の終わる時−@


「へえ、んじゃ補給いらねーの?それ」
「いや、いらないわけじゃないが……まあ、当面は大丈夫だろうけど」

格納庫の一角に設けられた、ジェナスのアムジャケット用のハンガー。
もともとはノーマルスーツの更衣室につくる案もあったのだが、容量の関係でこの場所に設置された。
興味深げに見つめるシンを横に、ジェナスは格納庫内に立ち並ぶMS達を見渡していく。

「MSってのも……すごいんだな。こんなでかい機体を操縦するなんてさ」
「そうか?でもジェナスって生身でコレ着て戦ってたんだろ?そっちのほうがすごいと思うけど」

15歳っていったら、やっとプラントでも成人したばっかの年齢だぜ?と
言ってくるシンも、軍人と言うよりは年齢相応の少年の顔に純粋な好奇心を浮かべていて。

「『ザクウォーリア』に『ザクファントム』だっけ?俺を回収した、シンの乗ってるやつってのは?」
「ああ、インパルスは分離した状態で格納されてるからこっちにはないよ。専用のカタパルトがあるんだ」
「なるほどね」

クロスバイザーや、ネオクロスバイザーのようなものか。
ジェナスの脳裏に、かつてそれらを開発し、勝利を今も待ち続けてくれているであろう
少年の、屈託のない表情が浮かんでくる。

(……ジョイ、みんな……どうしているだろうか)

傷つき、倒れていった仲間達。
特に気がかりなのは、自分達を裏切ってみせてまでチャンスをつくってくれた、彼のこと。

(無事だよな……ニルギース……)

「おい、みんな大変だ!!」

ネガティブになりかける彼の思考は、駆け込んできた整備兵の慌てた叫び声に掻き消され、
隣のシン共々我に帰る。あれは、赤メッシュの──そう、たしかヴィーノ。

「ユニウスセブンが……地球に落ちるっ!!」


   ****


ユニウスセブン。それは前大戦時にその引き金となった、「血のバレンタイン事件」の起こった場所である。
二年前の大戦が終結した際の休戦協定、「ユニウス条約」の調印された地でもあり、
安定軌道にあったことも手伝って、祈念碑的な意味合いも込めて管理されていた、コロニーの残骸である。
221アム種6話2:2006/08/11(金) 08:44:53 ID:???

──そのユニウスセブンが、動いている。その軌道は、地球への落着コース。
万が一地球へと落下してしまえば、その質量によって未曾有の大惨事が起こることは明らかであり。

「なんて、ことだ……!!なんでこんなことがっ……!!」

この事態をいち早くキャッチしたプラント政府より連絡を受けたデュランダルは
落着阻止が可能な位置にいる艦隊にその破砕作業を命じ、地球の各国にその危機を通達すると共に、
自らもミネルバで現場へと直行する判断を下して、
同艦に同乗しているオーブ代表、カガリ・ユラ・アスハにその旨を説明しているところであった。

「我々も、全力を尽くします。本国は心配でしょうが、お気を確かに」
「……申し訳、ない……。こんなときこそ、冷静であらねばならないというのに……」

デュランダルになだめられ、額をごしごし擦ってなんとか落ち着こうとするカガリ。
サングラスをかけた側近の男──アレックス・ディノが寄り添い、
心配するように肩を抱いた。そんなやりとりを見て、デュランダルは続ける。

「大丈夫です。アレックス君……いや、アスラン君ならわかると思うが、イザーク・ジュールの部隊が向かっております」
「イザークが……なら」

旧知の男の名を聞いて、アレックス・ディノ──いや、アスラン・ザラは安堵する。
と同時に、自分の目の前で狼狽するカガリの様子に心が痛む。

彼は、かつての大戦で「英雄」と呼ばれた男だった。
当時の最新鋭機、イージスとジャスティスを駆り、戦場を駆け抜けた男だ。

しかし戦後、彼はその力を捨てた。
兵士であることをやめ、愛する女性──カガリの支えとなることを選んだのである。
政治の世界に身を投じた彼女の身案じ、戦うことだけで解決することの限界を感じたためである。
それから二年、まだ若い二人にはその道は険しく、困難なものであり、
思うようにならないことばかりだった。
まだ、未熟なのだからやむを得ない。ひとつひとつ、成長していっているはずだ──……。
そういって自分やカガリをごまかす日々が続いていた。

ある意味では、無力感にフラストレーションが溜まっていたのだろう。
安堵し、心を痛めた彼はまた、旧友の名を反芻し、どくりと鼓動が脈打つのを感じた。
力が欲しい───そう願う衝動が、身体を駆け抜けているのがわかる。

カガリの助けになる。そう言い聞かせて、今までお前は何をやってきた?
222アム種6話3:2006/08/11(金) 08:48:15 ID:???

かつてあった力を捨て。かつてはできたことさえもできなくなって。
一体、何が出来た?何をやった?何をやろうとした?
イザークたちはその力で、皆を救うために動いているというのに。
力を捨てたお前に、何を皆が望むというのだ?

お前は何をしている、アスラン・ザラ───?

一人自問するアスランの心に、拍車をかけるように。
艦長室に来訪者を告げる電子音が鳴る。

「誰?今はちょっと……」
『ジェナス・ディラです』
「ジェナス?何の用かしら」
『頼みがあってきました。聞いてはいただけないでしょうか』

陳情?今このときになって、何を。
怪訝そうな顔を向けたタリアにデュランダルが頷いたことで、
彼女は手元のキーを叩いて施錠を解除する。アスランはただそれを、見ているしかできない。

「開けたわ、入りなさい」

インターホンの通話機に向かってタリアが話すと、扉が開いた。

「失礼します」
「失礼しま……あっ」

ブルーのごてごてした装飾のついたノーマルスーツ……例の「アムジャケット」とかいう代物に身を包んだジェナスが、
赤服の制服姿のシンを伴い入ってくる。
シンのほうはカガリとアスランの姿を室内に認めるやいなや、あからさまに不機嫌そうな顔になった。
やはりデュランダルに聞かされた通り、また彼が以前吐き捨てた言葉通りに、
カガリ……というよりもオーブには良い感情を持っていないらしい。

「何の用かしら、シン、ジェナス。特にあなたは、そんな格好までして」
「俺にも発進許可をください」
「……なんですって?」
「じっとしてられないんです、協力させてください。助けられた借りを、少しでも返したい」
「……本気?」
「はい」

困惑の表情で座るタリアに見据えられながら、ジェナスはその視線を逸らすことなく、
まっすぐに彼女を見返して告げる。

「俺に、破砕作業を──……手伝わせてください」

彼は、捨てた力を欲することに躊躇うアスランの前で、
躊躇なく自身の力を使いたいと宣言した。
その姿は、言葉は、見ているアスランにとってなんとも、苦々しいものに映った。
223134で言った人:2006/08/11(金) 08:53:55 ID:???
今回から2〜3回はタイトルは同じまんまの予定です。
だから番号が@。ジェナス出撃フラグでここからちと
本編から内容がじわじわとズレていく予定。

なんだかエッジが人気ですなぁ。
……一話でデュランダル片方アム世界に置いてきちゃったんだよね(^^;
まあ、なんとかその辺はするとして。
皆さんの意見は概ね把握致しました。他のバイザーについても、参考にさせていただきます。
224209:2006/08/11(金) 10:17:36 ID:???
GJGJ!!
次回はとうとう戦闘か〜
ジェナの戦いがシン達にとってどんな印象を与えるのかが楽しみだ
次回を待ってます!!

>>219
>ガンベリーもどきのあれ?
その通りw
225通常の名無しさんの3倍:2006/08/11(金) 11:02:35 ID:???
GJ!
次が楽しみだぜ
226通常の名無しさんの3倍:2006/08/11(金) 19:32:07 ID:???
続きにwktk!
227通常の名無しさんの3倍:2006/08/11(金) 22:28:22 ID:???
GJ!
228通常の名無しさんの3倍:2006/08/12(土) 18:47:22 ID:???
ををっ、ついにMS対鮭か・・・・・。
どんな闘いになるのか非常に楽しみ。
229アム種七話:2006/08/12(土) 20:26:27 ID:???
第七話 世界の終わる時−A

衝動を、止めることはできなかった。

「君は、自分が何を言っているのかわかっているのかね?」

MSよりもはるかに危険性の高い、ノーマルスーツを用いての、内部からの破砕作業。
ユニウス内部に残されているであろう、コロニー時代からの推進剤を使った爆破。

「重々、承知しております。それでも」

自分よりも年若い少年がそのような危険へと、敢えて臨もうとしている。
そんな光景を、目にしてしまっては。
彼とデュランダル、タリアのやりとりを眼前で繰り広げられてしまっては。

「私にどうか、MSを一機、お貸し頂けないでしょうか───……!!」

耐え切れるものではない。
アスラン・ザラには、己の無力を容認するだけの我慢強さも、卑屈さも。
到底、備わってはいなかった。
故に彼は───力を欲していた。


 ****


「戦闘、だって!?」

アムジャケットを装着し、待機所にて作戦の開始を待っていたジェナスは、
一足先にカタパルトの愛機のもとへと向かったシンからの通信に驚愕の声を上げる。

「破砕作業じゃなかったのかよっ!?」
『俺に言うなって!!とにかくこっちの作業を邪魔しようとしてるやつらがいるってこと!!』
「っく……」

馬鹿な。あれが落ちれば、多くの人命が失われてしまうのだろう?
なのにこの世界の人間たちは、どうして一丸となれない!?

『MS同士の戦闘に巻き込むわけにもいかないし、ジェナスは残っててくれ』
「いや、行く」
『馬鹿!!危ないんだぞ!?』
「戦闘があってるならなおのこと、別働隊の爆破作業が必要になるかもしれない。俺も行く」
『……お前さぁ、命知らずだよな』
「へへっ、これでもそれなりに修羅場はくぐってきてるんでね──……」

ひとしきり笑いあってから、互いに表情を引き結ぶ。
230アム種七話2:2006/08/12(土) 20:27:38 ID:???

「気をつけて、な。シン」
『お前もな、ジェナス。またあとでな』

通信を切り、シンを送り出したジェナスはテーブル上に置いていたヘルメットを手に取る。
装備を確認、推進剤を爆発させるための時限式の爆破装置に、
無重力下でも使用可能な護身用のサブマシンガン。
後者はできる限り使いたくはないが、これで全部だ。

「おっと、お前もだったな」

壁に立てかけてある「それ」を見つめ、頬を緩ませる。
アムジャケット以外で唯一、彼と共にこの世界にやってきた「仲間」。
この世界に飛ばされた際、これを携行していた記憶はないのだが───、
自分と一緒に回収しておいてくれたシンと、整備を行っておいてくれた整備班の皆には、感謝せねばなるまい。

───と。
彼のすぐ横で自動ドアが開いて、赤いパイロットスーツ姿の男が、室内へと入ってきた。

「……え?」

意外といえば、意外な顔。
彼は無言のままそこを素通りし、格納庫のほうへと歩を進めていく。

「アレックス……さん?」

それは、自分と同じように議長や艦長へと出撃を志願し。
彼らと共に通路の向こうへと姿を消した、年上の少年の姿であった。


 ****


整備兵たちの説明を聞き、
計器に目を走らせながら、アスランは彼らとのやり取りを脳裏に思い出していた。

「MSを貸して欲しい」、「作業を手伝わせて欲しい」。
あまりに非常識で無茶な彼の頼みに、タリアは困惑し、言葉を濁しながらも不可能である旨告げた。
当然だった。かつて所属していたとはいえ、裏切りという恥知らずな行為を行った挙句。
今のアスランはただの民間人なのだから。

だが、彼やタリア、話を聞いていたカガリやシンにジェナスの予想とは裏腹に。
デュランダルは首を縦に振って、ついてくるようタリアとカガリ、そしてアスランに言った。
231アム種七話3:2006/08/12(土) 20:29:14 ID:???

案内された先は、出撃準備で慌しい左舷の格納庫とは対照的な、ひっそりとした右舷の格納庫。
そこには、一体の機体が佇んでいて。
「貸すのが駄目だというのならば、このMSを君に託そう」────。
彼はまるで、なんでもないことでもあるかのようにそう一同の前でアスランに告げた。
そしてアスランの隣で唖然と事の成り行きを見守っていたカガリへと向き直り、こう言った。

「この機体には、オーブ系の技術が多く流れている。姫、貴女の言われていた流出技術、このような形ですが返還したい」

民間人に与えるのが駄目だというのならば、政治的取引。
オーブとの友好関係の一環としての技術供与────、
そういうことで彼は通そうとしているようだった。

それでも、正気の沙汰ではない。あるいは、最大級の愚か者とでも言うべきか。
なんとも苦しい言い訳を思いつくものだ。
普通技術供与なんてのは後進国へと先進国が使い古した技術を払い下げるか、
同格の国同士でもせいぜい、なんらかの形での共同開発がいいところなのだから。
軍事機密の塊たる最新鋭のMSを一機、気前よく他国に譲り渡す話など聞いたこともない。

案の定、艦長は猛烈な抗議をし、デュランダルはなだめすかしていた。

作業の性質上、一人でも手は多いほうがいい。彼ならば腕は確かだ。
彼の乗ってきたザクは、まだ修理が終わっていないのだろう?
私が彼に与えたのではない、私はオーブに寄贈したに過ぎない。

そのような詭弁を、彼は並べ立てていた。

「なにより、この機体は既にオーブのものだ。プラントの代表である私に、どうすることもできんよ」

何、書類上の記録など後々、どうとでもなる───。彼の自信に満ちた顔には、明らかにそのような考えが書いてあった。
全くもって、食えない男だ。
カガリがこのようにされて、後々プラントのことを軽視できない性格であることまで見抜いている。

(──だが、それが今はありがたい……!!)

インパルスや強奪された三機と同じ、セカンドシリーズMS、最後の一機。
まともでない形で与えられたとはいえ、この機体を託されたということは、
自分が──、オーブが信頼されているということ。

「応えてみせるさ。使わせてもらう」
『カタパルトエンゲージ、進路クリアー』

巨大な二本のアームに掴まれてカタパルトへと移動を完了した機体の中で、アスランは呟く。
やってみせる。たとえ戦闘があったとしても、邪魔者がいようと。
ユニウスセブンを地球に落とさせはしない。
232アム種七話4:2006/08/12(土) 20:31:06 ID:???
『発進、どうぞ』

メイリンといったか、赤髪の女性オペレーターの声がコックピット内に響き渡る。

「……アレックス・ディノ」

今この瞬間は、アレックスだろうと、アスランだろうと関係ない。
一人の人間として、このMSを駆って期待に応えるだけだ。自分達の働きに、人々の命がかかっているのだから。
操縦桿を握る両腕に自然と力が入る。
パイロットである者ならば誰でも感じる、コックピットの中の心地よい緊張感と一体感が、彼を包んでいた。
充実しているのが、わかる。戦士としての自分が、高揚している。
左右のレバーを力強く押し出しながら、彼は気合いとともに叫んだ。

「『セイバー』、発進するっ!!」
233134で言った人:2006/08/12(土) 20:41:04 ID:???
大改変ポイントの1番最初、本編よりかなり早いセイバー発進です。
放送最初に見たときはアスランの「MS貸してください」&どうも地球降下
するくさい雰囲気でセイバー登場→インパ助けて降下を踏んでいたんですがね。
なんであそこでザクだったんだろうねorz大気圏突入しやがるし
理由こじつけてあのタイミングで出撃したほうが絶対尺としても良かったと思うんだけど。
セイバー相手なら三馬鹿を弱体化させることもなかったし。
・・・・というわけで今回こういう話になりましたとさ。
どう見てもセイバー厨です本当に(ry

ジェナスは次回出撃です。あとファントムペインも初登場の予定。
234通常の名無しさんの3倍:2006/08/12(土) 20:48:38 ID:???
GJ!セイバーは出来れば活躍させて欲しいです。本編の扱いはあまりにも不憫なもので・・・
235358 ◆KILLER/duk :2006/08/12(土) 20:53:11 ID:???
GJ!てかこのまま種死をアムエネルギーで作り替えてry
236通常の名無しさんの3倍:2006/08/12(土) 20:54:53 ID:???
GJ!!!!
セイバーは出すタイミングを外したからこそあんな結果になってしまったんだよなw
しっかり活躍して、壊されずにしてくれれば嬉しいかなぁ・・・出来ればでお願いしますw
次回はジェナの出撃か、ワクテカして待ってます、頑張ってください!
237通常の名無しさんの3倍:2006/08/12(土) 21:22:51 ID:???
>なんであそこでザクだったんだろうねorz大気圏突入しやがるし
思い出したorz
ロクな装備も無いままの有耶無耶大気圏突入で、大気圏突入前後の攻防は
ガンダムのお約束だろうがぁ!と失敗スレ全員が激怒したんだっけ。突入用装備
無しなのに助かった理由付けすらなくて。

てか職人さんはやっぱメカ燃えな方なのねw
238通常の名無しさんの3倍:2006/08/12(土) 21:24:43 ID:???
ボードの代わりに予備のシールドでGet Ride!してくれたら燃え死ぬね!
239通常の名無しさんの3倍:2006/08/12(土) 21:55:48 ID:???
お見事!

今回はその相手が凸だった訳だけど、ひたむきさでもって周りの人間を引っ張る
ジェナの姿を描き、凸参戦までの要らんグダグタをまとめてぶった斬り、更に新メカの
登場まで成し遂げるとは・・・・まさに一石で二鳥も三鳥も狙う見事な改変ですな・・・。

今後がますます楽しみ♪
240通常の名無しさんの3倍:2006/08/13(日) 22:04:15 ID:???
亀だけどGJ
241通常の名無しさんの3倍:2006/08/13(日) 23:35:14 ID:???
定期アゲ
そう言えばゼアムジャケットはゼアムジャケットでもフルゼアムだったような気ガス
242通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 00:00:23 ID:???
フルゼアムはやばすぎだよな。普通に宇宙戦できるしw
243通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 01:12:58 ID:???
ファーブニルでラグと合流して完成!ネオクロスバイザーな展開もいいと思うがな。
244通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 01:19:01 ID:???
クロスバイザーはラグが不憫すぎるからクロス2がいいなあ
245通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 01:43:48 ID:???
>>238
それなんてエウレカ
246通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 07:06:19 ID:???
エウレカの方がアムエネルギーに溢れてると言われてたぞ、アムスレでは
ボードに乗ってGetRideしたいのは皆一緒
247通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 07:39:56 ID:???
エウレカは展開がグダグダでアムエネルギーの枯渇が激しすぎる
248通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 08:07:27 ID:???
あと、撃墜されたゲイツRのシールドとかでユニウスセブンにボーダタックとかな!
249通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 09:25:05 ID:???
そーいやアムジャケは宇宙での活動が可能とかいう設定があったよな
いつか戦場が宇宙に移るんだと思ってた時期が私にもありました
250アム種8話:2006/08/14(月) 12:26:10 ID:???
第八話 世界の終わる時−B

「ジェナス!!本当にそんな装備でいいのか!?戦闘は無理だが移動用にザクが一機───」
「大丈夫です!!ありがとうございます、エイブスさん!!」

発進位置へと己の装備を持って向かうジェナスに、
彼の身を案じた技師長が声をかけてきてくれた。
ヘルメット越しでこちらの顔は見えていないだろうから、大きく頷いて返事を返す。

シンのコアスプレンダーが飛び立っていった滑走路に到着すると、
右脇に抱えていた「それ」を彼は下ろし、ヘルメットのスイッチを操作して
ブリッジのオペレーターとの回線にチャンネルを合わせる。

「こちら、ジェナスだ。いつでもいけるぞ」
『あ、は、はい!!メイリンです、よろしくお願いしますっ!!』
「ああ、ルナから聞いてる。こちらこそ頼む」

不意を衝かれたのだろう、慌てた少女の声が返ってきたのに苦笑し、頬を緩ませる。
だがそれも一瞬のこと。表情を引き締め、
いくつもの光点が瞬く、眼前に広がる漆黒の宇宙をまっすぐ見据える。
はじめての宇宙──。ガン・ザルディとの死闘の際に、そのフィールドの一つとして戦闘の場にはなったが。
こうして静かに眺め身を置くのは、はじめてだった。
だが不思議と、恐れや戸惑いはない。

『進路クリアー。発進、どうぞ!!』
「よし!!───get!!ride!!」

発進許可が出るとともに、彼を載せた「それ」が浮揚し、一気に加速し飛び立っていく。

「久々だけど……悪くない!!」

アムドライバーの移動用に開発された、サーフボードにも似た純白の整流板。
ライドボードと呼ばれるそれは、ジェナスとともにシンによって回収されていたもの。
どうやってこの世界にやってきたのかも、なぜジェナスと共に漂っていたのかもわからないそれは、
しかしながら間違いなく、ジェナスが「あちらの世界」で愛用していたもので。

「こんなの、見たことも扱うのもはじめてだろうに……感謝するぜ、エイブス班長!!ヨウラン!!ヴィーノ!!」

万全の整備を受け、軽快なレスポンスの伝わってくるライドボードにジェナスは快哉をあげる。
時たま眼前に現れる、コロニーから離脱した破片を、右へ左へ全く危なげなくかわしながら、
彼を載せたライドボードは一路、星屑舞う崩壊の大地を目指す───。


 ****
251アム種8話2:2006/08/14(月) 12:28:32 ID:???


「こいつらっ……邪魔、するなあああっ!!」

雄叫びとともに、すれ違いざまビームジャベリンを一閃。
それは近接戦闘には向かないブラストシルエット装備での、シンのできる精一杯の接近戦術だった。
白兵の得意な彼とはいえ、さすがにきつい。

「こんのおぉっ!!」

続けて振り向きざま、背部に装備されたミサイルポッドから、多数のミサイルをばら撒く。
膨大な数のミサイルが形成した濃密な破壊の「網」へとひっかかった黒色の機体は、
かわしきることも逃げ切ることもできず、身体の各所をもがれて直撃を受け、爆散する。
これでやっと、三機目。

『なんなのよ、こいつらっ……!!旧型のくせして……!!』
『わからん、だが強い、手練れだ……!!ジュール隊の人々と連携して、複数で一体を相手にするしか……!!』

通信機ごしに仲間たちが苦戦に気を吐いているのが、聞こえてくる。
だが一番の激戦区───数機のメテオブレイカーを護りつつ多数のジンを相手にせなばならない状況の
シンに、ゆっくりと耳を傾けている余裕などあろうはずもない。

「くそっ……三時の方向!!また四機……!!」

せめて対MS戦における高速戦闘用の、フォースシルエットに換装できれば。
拠点防衛ということもあり出撃時にブラストシルエットを選択したのだが、あまり旗色はよくない。
漆黒に染め上げられた敵の、ジンハイマニューバ2型の斬撃をサイドステップで避け、ジャベリンの柄で
いなしながら、シンは歯噛みする。
なんとしても、メテオブレイカーを守らなくてはならない。
ユニウスセブンを砕くためのこの一縷の希望を、潰されるわけにはいかないというのに。
さばききれないジンのビームカービンが、ブレイカーの入力作業を行っていた無防備なゲイツRを貫き、破壊する。

「くそおぉっ!!」

苛立ちで、操縦が荒くなる。
こちらもプロだが、相手もおそらくはプロ。しかも熟練の。
当然彼の見せた隙を、見逃してくれるわけもなく。

「しまっ……」

背後に回りこまれ、ビームカービンのロックオンにコックピットが耳障りな警告音を発する。
鈍重なブラストシルエットでは、対処できない。
やられる───。死の予感に、背中を嫌な汗が流れ落ちた、その時。

「!?」
252アム種8話2:2006/08/14(月) 12:29:38 ID:???

ジンの銃が、頭部が。
次々に撃ち砕かれ、無力化され。
戸惑いながらもシンはバックパックのビームランチャー、ケルベロスを引き起こし、それを撃ち抜く。

『大丈夫かっ!?』
「───え?」

振り返った先にいるのは、こちらにビームライフルの銃口を向けた真紅の見慣れぬ機体。
聞こえてくるのは、予想だにしなかった男の声。
そりゃあ、出撃を希望していたのは聞いていたけれど───……何故!?

「あ、アスラ───アレックスさん!?なんであんたがこんなとこに──」
「今はどっちだっていい!!それに話はあとだ!!くるぞ!!」

怒鳴りつけるような言葉は、きつかった。理不尽にも思えるそれに内心怒りがこみあげる。
いきなり出てきて頭ごなしに命令するなんて、何様だ。
しかし反論する間もなく、敵が押し寄せてくる。

「メテオブレイカーを守るんだっ!!」
「わかってますよっ!!」

真紅の機体が背中の砲を跳ね上げると同時に、
シンもケルベロスをせり上げてインパルスに構えさせる。
図らずも、二人の呼吸は合っていた。

「いけえぇっ!!」

二組、四門の大砲が同時に火を噴き、四本の光条が地表を這うように突き進む。
高い威力を持つ四筋のビームは敵を捉え、さらに後方から迫り来る数機のジンを巻き込んで爆散させた。


 ****


仮面の男は、モニターを見上げながら、ヘルメット状の仮面に覆われたその頭を抱えていた。
一体どういう状況なのだ、これは。

「どうなさいますか、ロアノーク大佐」
「……」
253アム種8話4↑は3:2006/08/14(月) 12:30:30 ID:???

どうするもこうするも、ないだろう。
ユニウスセブンが地球に落ちそうになっていると連絡を受けたから道中がてら、調査に赴いたものの。
ザフトのMS同士が──片方は破砕作業を行い、片方はそれを邪魔し──戦っているなど、
想定してすらいなかったのだから。
副官というものは楽だ。こちらの命令にだけ従っていればいいのだから。しわ寄せは皆こちらにくる。
ロアノーク大佐と呼ばれた男は仮面であちらから見えないことをいいことに、副官のリー艦長を
正面からおもいきり、睨みつける。

「我々の目的はあくまで、調査だ。だが状況が混乱していてよくわからん。MSを出して調べさせる」
「はっ……。と、いいますと」
「カオス、ガイア、アビス、発進。だがけっして無理はするなと伝えておけ。状況判断は柔軟に、ともだ」
「了解しました」
「せっかくいただいた大事な機体……早々にぶっ壊すわけにもいかんからね?」

彼らの部隊、その名はファントムペイン。
彼らこそ、シンたちの追っていた強奪犯の正体。
発進していく三機のMSこそ、ミネルバが奪還に失敗した、新型のMS───……。
254134で言った人:2006/08/14(月) 12:36:07 ID:???
ごめんなさいセイバーも好きだけどブラストも好きなんです。
というわけで今回はダブルバーストさせてみたり。
ていうか本編でかわいそうな扱い受けてる子が総じて好きだorz
そんな私が三馬鹿で1番好きなのは50円のあの人です。

ライドボードは最初予備シールドも考えたんですがね。
サイズ的に合わない気がしたもので……。
ゼアムはフルゼアム状態だからこそこの話を思いつくことができたわけで。
255通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 14:36:13 ID:???
GJ!!
俺は別に気にしないぞ!
ライドボードはちとでかいからね〜、シールドとしては確かに合わないと思う^^;
次回はファントムペインの3人組か、戦闘場面を書くのは辛いと思うが頑張ってくれ!




PS:定期アゲをしている者なんですけど、スレタイが350より下に下がったらでもいいかな?
256通常の名無しさんの3倍:2006/08/15(火) 00:12:56 ID:???
キテタ!GJ
ブラストの活躍は嬉しい
257アム種9話:2006/08/16(水) 13:06:54 ID:???
焼け石に水でも、やらないよりはましだ。
そして弾の尽きたシルエットを排除、
シルエットフライヤーの運んできたフォースシルエットへと換装する。

「よし……これでっ……」

アスランが駆けつけてくれたのが幸いだった。
彼がジンの部隊を引き受けてくれたおかげでシンは一時戦域を離脱し、
インパルスを高速戦闘用のフォース装備へと換装することができたのだ。
オーブの民間人に助けられたということが癪ではあったが、感謝していた。

「はやく戻らないとっ!!」

いくら彼が前大戦の英雄と呼ばれる名パイロットとはいっても、やれる限度はある。
ゲイツ部隊の作業が佳境に入っている今ならなおさら、守りきるには手は多くなければ。

「……ん?二時の方向、三機……?っ!!こいつらは!?」

だが、彼らの戦う場所へ戻ろうとバーニアを噴射しかけたその時、
センサーが三機の新たな機影を捉えシンへと警告する。
計器によってはじき出されたその三機の正体、そしてメインカメラが画面の隅に捉えたその姿は──…・…、

「カオスにガイア、アビス!?なんであいつらがっ!?」

邪魔しにきた?いや。決め付けるのは早計だ。
もし奴らが当初の予想通り地球軍なら、目的は同じということになる。
しかし。

「あっちにとってはどっちもザフト機ってか?くそっ」

見分けなど、つきはしないだろう。もし奴らがこれを止めにきたとして、
逆に自分達が落とそうとしていると思われかねない。そうなれば、間違いなく戦闘になるだろう。

「……ここで俺が、抑えておくしかない……!!」

破砕作業の完了まではまだ、幾許かの時間がかかる。
せめてそれが完了するまでは、奴らを現場に近づけるわけにはいかない。
そして迎撃が可能な位置にいるのは、今はシンただ一人。
三対一、かなりきついが───、それでもやるしかない。
時間さえ稼げば、ミネルバが近くにいるであろう奴らの母艦に話をつけてくれるかもしれないのだ。

「落とさせるわけにはいかないんだ、こいつをォっ!!」
258アム種9話2:2006/08/16(水) 13:07:40 ID:???

幸い大気圏に近づいていることによる電波障害で、あちらはまだこちらに気付いていない。
フットペダルを踏み込み、フォースシルエットのバーニアを全開にしながら。
シンは三機の旧敵へと向かいインパルスの機体を飛び込ませていった。


 ****


『片方は落とそうとしてて片方はドリル打ち込んで!!こいつら一体、何がしたいってんだよ!?』

同僚のアウル・ニーダの耳障りな罵声が、通信機越しに聞こえてくる。
気持ちはわかるが、少し黙れ。地球連合軍特殊部隊『ファントムペイン』少尉、スティング・オークレーは
強奪したグリーンの愛機、カオスのコクピットで一人そう思った。

『落とす……だめ……させない……』
『どーすんの、スティング?ドリル打ってる方援護したほうがよくない?』
「わかってる!!かといってあっちがこっちを歓迎してくれるわけも……!?横!!ステラ、来るぞ!!」

センサーの警告音が、敵機の襲来を告げる。スティングは同じく同僚のステラ・ルーシェへと
叫び、彼女は俊敏に機体を操ってそれに応える。

「ちっ……!!」

無理もない。
こちらにどちらかを援護する意図があったとしても、あちらにしてみれば強奪された新型なのだ。
親の敵のようなもので、問答無用で攻撃を受けてもしかたがない。
まして、攻撃をしかけてきたあの機体は───!!

「こいつは……あの分離するストライクもどきかっ……!!」
『ちょーどいいじゃん、やっちまおーぜ!!』
『これ落とす……悪い奴……ステラ、倒す……!!』

ブルーの肉厚な機体、アウルの駆るアビスが変形し、回り込み。
漆黒に染め上げられた細身の機体、ステラの操縦を受けるガイアがビームライフルを乱射する。

───お前はこのでかい石ころを、どうする気だ──……!?

スティングもカオスを変形させ、二機に続く。
因縁浅からぬ機体はたった一機でありながら、彼らを相手に一歩も引かない大立ち回りを演じていた。


 ****

259アム種9話3:2006/08/16(水) 13:09:30 ID:???

ユニウスセブン表層部において、そのような激戦が繰り広げられている最中。
その内部へと侵入したジェナスはマップによって指示されていたポイントを周り、
あらかたの時限装置の取り付けを完了していた。

「よし……あとはこの先だけだな……。っと、これは……」

最後の一箇所。そこさえ取り付けてしまえばあとは脱出するだけ。
そんな状況で彼の目の前に現れたのは、広い通路を塞ぐ瓦礫の山。
とても通り抜けることは不可能で、またいちいち除けたり、別のルートを探している余裕もない。

「まずいな……。時間もないってのに」

悠長にことを構えていては、この巨大な宇宙を舞う廃墟ごと、地球に落ちてしまう。
はて、どうしたものか。

「……やっぱ久々に、アレをやるっきゃないか」

通路はここまで一本道で、加速をかける距離としては十分。
これならばおそらくいけるだろう。
来た道をわずかに引き返し、少しずつ振り返りながら瓦礫までの距離を図る。

「よし」

結構な距離をとってから、脇に抱えていたライドボードを下ろしその上に騎乗する。

「やっちゃる!!」

ライドボードを発進させ、一気にスピードを最高速に。
ぐんぐん目前に迫ってくる瓦礫を目の前に、タイミングを計り爪先のスナップを使ってボードを跳ね上げる。
回転し宙を舞うボードは無重力ということもあってかその動きが不安定だったが、
ジェナスはがっちりとその後部に設けられたグリップ部分を握り締め、前に突き出す。
彼の身体はボードの速度を維持したまま一発の弾丸となって突き進む。

「これでぇっ!!ブチ抜くっ!!」

ボーダ・タック。
ライドボードの加速力を生かした、アムドライバーのボードテクニックの中でも最高峰に位置する高難度の技。
彼の知る限りで彼を含め、たった二人しか使用することのできない、ひとつの奥の手だ。
その破壊力を以ってして、この瓦礫の山を突き抜ける。
彼の狙い通りボーダ・タックの衝撃は瓦礫を貫き、その勢いで彼は向こう側にあった広間へと身を躍らせる。

「───え?」

そして、着地した彼は目撃した。
260アム種9話4:2006/08/16(水) 13:10:20 ID:???
深々と大地に突き刺さる、自らの相棒ともいうべき一本の剣を。

「そんな……嘘だろ、おい……こいつらまで、この世界に?」

まるで彼を待っていたかのように静かにそこに佇む、今は亡き友の形見たる鎧を。
彼と同じくやってきた、二つの存在に、彼は目を奪われていた。

「いや、けど……。こいつらがあれば、あるいは……!!」

ジャケットから内蔵されたチャージングチューブを伸ばし、それらへと接続する。
血を分け与えるように、フルゼアムの膨大な量のエネルギーが注ぎ込まれていく。
もの言わぬ鉄塊のようであったそれらに、生命の息吹にも似た何かが戻っていくのが、感じられた。

「よし、いけるぞ……っ!!」

思わず拳を握り快哉をあげたジェナスは、地面からそそりたつ剣を引き抜き、腰へと納め。
蒼く染まった流線型の機体へと跨り、操縦桿を握り締め、起動スイッチを力強く押し入れた。
これであのデカ物たちとも、やりあえる。
「借りるぜ、シーンっ……!!」

目指すは、ユニウスセブン地表。待っていろ、シン、みんな。
一筋の蒼い稲妻が、飛翔する。
261134で言った人:2006/08/16(水) 13:14:58 ID:???
フルゼアムのゼアムジャケなら、それだけでmsと渡り合えると
思うんですけどね。そこはまだこちらの世界のmsの性能を、
ジェナスがよく知らないということで。

とりあえずまず登場したのはあのバイザーになりました。
262通常の名無しさんの3倍:2006/08/16(水) 13:17:37 ID:???
GJ!蒼いエッジか・・・中々映えそうだな!
263通常の名無しさんの3倍:2006/08/16(水) 16:29:58 ID:???
GJ!続きが気になる
264通常の名無しさんの3倍:2006/08/16(水) 16:44:24 ID:???
シーンの形見登場か・・・燃える展開だ
265このスレの定期アゲ担当者:2006/08/16(水) 16:53:48 ID:???
GJ!!
蒼いエッジか〜良いね良いね〜ミネルバクルーの驚く顔が目に浮かぶぞ〜w
次回も期待して待ってます!

定期保守アゲ
266通常の名無しさんの3倍:2006/08/16(水) 18:08:05 ID:???
エッジバイザーktkr!
そして三人組の丁寧な描写で俺の中でやつらの好感度上昇!
これからも期待してます
267通常の名無しさんの3倍:2006/08/16(水) 20:01:13 ID:???
>>265
>蒼いエッジか〜良いね良いね〜ミネルバクルーの驚く顔が目に浮かぶぞ〜w
オーブ近海でのシン種割れ大暴れ以上の( ゚д゚)ポカーンが見れそうな予感♪
楽しみ楽しみ。
268アム種10話:2006/08/17(木) 08:37:58 ID:???
第十話 混迷の戦場

「インパルス、苦戦しています!!被弾によりVPS装甲の電圧、低下!!バッテリー危険域ですっ!!」

オペレーターのメイリンの声がブリッジに響く。
彼女の切迫した報告を聞きながら、タリアが苦々しい思いでインパルスの戦う三機のMSを見つめる。
まさかここにきて、あの三機を奪った連中がしゃしゃり出てくるなんて───!!

「アーサー!!彼らの母艦からの返答は!?」
「あ、ありません!!依然、一定の距離を維持したまま沈黙を保っています!!」
「ちっ……メイリン!!ソードシルエットの射出、できる!?」
「整備は終わっていますが……シンがあの状況では、発射したとして換装する余裕はとても……!!」
「ぐ……!!」

なんとか他の戦域──、ディアッカ・エルスマン率いるガナー隊とともに砲撃を続けるルナマリアや、
果敢に近接戦闘を挑みジンたちを切り捨てていくイザーク・ジュールの支援にまわっているレイ。
あるいはメテオブレーカー隊の直衛に回っているアスラン達は戦線を維持し、辛うじて持ちこたえている。
数自体は拮抗、MSの性能ではこちらが上。しかしパイロット技量の平均値はあちらのほうが上。
なんとも危ういバランスの上ではあるが徐々に破砕作業は進んでいる。
内部の爆破作業を行っているジェナスからも、先ほど最後の爆破装置の設置を完了したと電文があった。

ただ唯一の苦戦が、シンのインパルスだった。
三機の奪われたMS──ガイア、アビス、カオスの突然の乱入を受け、
邪魔はさせじとたった一機で彼らを食い止めているのだから無理もない。

「構わないわ、出して!!シンにその旨、連絡を!!彼の腕を信じましょう!!」
「りょ……了解っ!!」

そう、どの道信じるしかないのだ。ただ見ているしかできない我々は。

このまま放っておいても、いつかバッテリー切れでシンはやられる。
耐え切ったとしても艦に戻るだけのエネルギーを失いVPS装甲のなくなった彼の機体はそのまま、
大気圏を振り切れず燃え尽きるだろう。分が悪くても、ここは賭けに出るしかない。

「シルエットフライヤー……ソードシルエット、射出!!」

二振りの剣を携えた無人戦闘機が、飛び立っていく。
クルー達が祈るようにその後姿を見つめる中、モニター端に映された高度計が刻一刻とタイムリミットを刻んでいた。

 ****
269アム種10話2:2006/08/17(木) 08:40:17 ID:???
「ああああああああああああっ!!」

こいつが、こいつが、こいつが。こいつがこんなものを地球に落とそうとしている。
許せない。みんなに「こわいこと」をしようとするこいつは、悪いやつだ。だから、倒す。

「こんのおおおおぉぉっ!!」

こいつが、こいつが、こいつが。こいつが皆の頑張りを邪魔しようとしている。
させるものか。この石ころが地球に落ちたら、たくさんの人が死ぬことになるんだ。やらせはしない。

漆黒の機体、ガイアと白亜にブルーの機体、インパルスがサーベル同士をぶつけあい、
パイロットは互いに激した叫びをあげて立ち向かう。

「こわいこと、させない……!!」
「アーモリーワンといい、今度といいっ……そんなに人殺しが楽しいのか、このおっ!!」

互いの叫びは、互いに聞こえず。
背後からの殺気に反応し、シンは放たれたカオスのビームライフルを避け、背中のブースターをふかす。
左足を振って慣性で方向転換し、バルカンを乱射して牽制し、再度ガイアへと向き直る。
アビスの放ったミサイルが迫り、シールドを向けてこれを防ぐ。
着弾の勢いに吹き飛ばされながらも反撃のビームライフルを放ち、
岩盤上へとサーベルを突き立てて衝撃を殺す。シートベルトの食い込んだ肋骨が、みしりと鳴った。

「っく……!!」

まさに、全身全霊。持てる技量と機体性能の全てを駆使してシンは、
ぎりぎりのところで三機のMSを食い止めていた。
既に機体はビームの焼け焦げで傷だらけ、間接やフレームはは無理な機動で
シャフトというシャフトが悲鳴を上げている状態で、操るシン自身の身体も精神力も限界に近い。

「はぁ、っ、ハァッ……く、そおぉっ!!」

───何より、エネルギーがやばい。
今だってやっとのことで持ちこたえているが、
それにしてもVPS装甲の堅牢さ、実弾に対する耐性がなければ既に何度死んでいることだろう。
エネルギー切れはVPS装甲の喪失を意味する。そうなれば彼に勝機も離脱するチャンスもなくなる。

「あー、もうなんだよこんな時に!!ミネルバから通信!?」

全身汗みずくになりながら神経を尖らせる彼の耳に、癇に障る耳障りな音が響く。
電波障害を見越しての、文章による電文通信。今はそれどころじゃない──……そう思いつつも
キーを操作し、内容に素早く目を通す。
残弾の少ないビームライフルをオートで乱射し、敵機の接近を防ぎつつ。
270アム種10話3:2006/08/17(木) 08:41:46 ID:???
「ソードシルエットを……?ありがたい!!けど……っ!!」

この状態で一体、換装する隙をつくることができるのか?
一対一ならともかく、三対一で波状攻撃をしかけられては──。
初陣のときと違いやつらもこちらの特性を知っているからには邪魔をしてくるに違いない。

「くそ……!!」

アビスのフルバーストを避けたところで、体勢がわずかに崩れた。
ビームで砕かれた岩がイレギュラーな軌道で膝関節へと激突し、予期せぬ衝撃に機体がバランスを崩したのだ。
残りの二機がすかさずそこへつけこみ、変形したガイアのビームブレイドがライフルを切断。
頭上にまわっていたカオスのビームライフルが、フォースシルエットを襲う。

「まずいっ……!!」

とっさにライフルを投げ捨て、フォースシルエットをパージ。
前と後ろで起こった爆発は機体に深刻な被害を与えはしなかったものの、彼の視界を奪う。

「うわああぁっ!?」

鈍い金属同士が擦れあうような感触があった後、シンの身体を浮揚感が包む。

『ステラ、アウル!!やっちまえ!!』

爆発の中、急接近したMA形態カオスのクローがインパルスの機体をがっちりと銜えこみ、
捕らえていた。そしてタイミングの悪いことにエネルギーが尽き、VPS装甲が落ちて
機体の色が白とブルーであったものが、灰色の無機質なものへと変化していく。
接触回線で聞こえてきたカオスのパイロットの声に、計器を見回して慌てていたシンはハッとして前方を見る。

『はああああああああっ』
『これで、終わりいいぃぃっ!!』

サーベルとランスのビーム刃を手に迫る二機のパイロットの声が、カオスの機体を介してシンの耳にも届く。
操縦桿を動かすが、殆どのエネルギーが枯渇し、シルエットまでも失ったインパルスの出力では
カオスのクローを引き剥がすことはできない。

「くそっ……動け、動けぇっ!!」

焦り喚き散らし、レバーを無茶苦茶に操作する。
しかしインパルスは動かない。二条のビーム刃の光が、彼を焼き尽くさんと迫る。
だが。

『うおおおおおおぉぉっ!!やっちゃるっ!!』
271アム種10話4:2006/08/17(木) 08:42:53 ID:???
視界を蒼い影が横切ったかと思うと──鈍い衝撃がコクピットを襲い、インパルスの各部が自由になる。

「っ!?」
『シン!!今だ!!』
「ジェナス!?」

メインカメラに映るブルーの機影と、その上に跨るノーマルスーツ──アムジャケットを着込んだジェナスの姿に、
彼は驚きつつも。ジェナスの言った言葉にすかさずレバーを押し込んでインパルスの機体を上昇させる。

「何なんだよ、その機体は!?」
「いいから!!ミネルバから荷物きてるぞ!!」

カオスへと体当たりを敢行した蒼い機体がパーツを分解し、ジェナスの全身を覆っていくのを横目で見ながら。
目指すは、上空に迫る一機の戦闘機。それのパージした二振りの剣の装備された後部を
ガイドビームに乗せ、インパルスとドッキングさせる。
──あれもまた、アムジャケットとかいうものの装備品か何かなのだろうか。
そんなことを考えながらも、彼の操作は正確だった。

現れたのは、真紅の二刀流剣士──ソードインパルス。
回復したエネルギーと、装着したパーツの機体への一体感に、シンは安堵の溜息をつく。
分解した機体のブルーのパーツに身を包んだジェナスが、インパルスの肩部ブロックほどの大きさの
その姿を、シンと同程度の目線の岩の高台の上に屹立させていた。

「サンキュー、助かった。危なかったよ、ジェナス」
『いや……間に合ってよかった」
「───で?話はあとで聞くけど、なんてーんだ、その機体?」
『ああ───……』

大と、小。紅と、蒼。

『──ネオエッジバイザー。大切な仲間の形見だ。どうやら俺のことを、待っててくれたらしい……!!』

色も大きさも対照的な双刀の剣士が、同時にその剣を引き抜く。

シンの操縦するソードインパルスは、光の剣。レーザー対艦刀・エクスカリバーを。
ジェナス駆るネオエッジバイザーは彼のアムマテリアルを反映した、ブルーに輝く巨刀・デュランダルを。

突然の見慣れぬ敵の出現にうろたえる三機めがけ、切りかかっていく。
彼らの飛び立ったその後ろで、地面が爆発し。
いくつもの破片、ジャンクを撒き散らしながら閃光を放ち、真っ二つに割れていった。
ドリルに穿たれた大地が地響きを立てていた。
眼下には、蒼い星。
限界高度は、近い。ユニウスセブンの崩壊も、近い。
272134で言った人:2006/08/17(木) 08:54:23 ID:???
ネオエッジを出すと決めたときからやりたかったんだ、
ソードインパとの二刀流ブラザーズ。だが反省はしていない。
ジェナスが着たネオエッジ、カラーは素のエッジより濃い目のブルーです。
ネオバイザーは色が変わるということで。

次回次々回あたりでユニウス編は終ります。降下の際にまたけっこうな変更がある・・・はず。
273通常の名無しさんの3倍:2006/08/17(木) 10:31:07 ID:???
GJ!俺はデス種よく知らないのだが二刀流コンビの誕生か
つーか、あなた戦闘描写ウマス
274通常の名無しさんの3倍:2006/08/17(木) 12:03:57 ID:???
乙っちゃる!
いやいや本当いいわー
どうみてもシンが主役です。本当にありがとうございます
275通常の名無しさんの3倍:2006/08/17(木) 17:50:40 ID:???
GJ!!!
276通常の名無しさんの3倍:2006/08/17(木) 18:21:24 ID:???
>ソードインパとの二刀流ブラザーズ。
もしかして、スパロボはお好きですか?
277アム種11:2006/08/18(金) 17:26:58 ID:???
第十一話 少年は大地へと向かう

「何なの……あれは一体……」

窮地に陥ったインパルス。
モニタリングしていたその光景に、思わずタリアが腰を浮かせかけた時、「それ」は現れた。
薄く、全てを切り裂くような流線型のフォルム。
海のように深い蒼の機体色。
MSなどより遥かに小さなサイズでありながら、インパルスを捕らえたカオスを
体当たりで吹き飛ばすほどの出力を「それ」は持ち合わせていた。

「あれは……ジェナス君のようだね……?」

「それ」を駆るのは、異世界からきたなどと未だ半信半疑の自己紹介をした少年。
インパルスの──シンの危機を救った機体は、刃のような戦闘機としての本体を分解し、
彼の身体を覆う装甲となっていった。
さきほどまでとは違った意味で、タリアは思わず立ち上がってその光景に目を奪われていた。

「なるほど……。たしかにあのような機体は、我々の世界には存在しない……少なくとも、私の知る限りは」

外見からいってしまえば、マッシブなシルエットの、重装甲が施されたノーマルスーツ程度でしかないというのに。
「それ」は二振りの対艦刀のような剣を手に、体格差をものともせずカオスと互角に斬り結んでいる。
対ビームコーティングでもされているのか、はたまた特殊な素材が用いられているのか、
ビームの刃をその巨大な刃は防ぎ、跳ね除けている。同様に、その装甲も。

「なんにせよ、これでシンのほうもなんとかなりそうね……アーサー、破砕作業の進行は?」
「はぁー……すごいなぁ……」
「アーサー!!」
「は、はい!!現在───」
「ユニウスに亀裂!!内部からの爆発を確認!!四つに割れます!!」

呆けたように見ていた副長、アーサーへの叱責が飛ぶと同時に、メイリンの報告がブリッジに響く。
砂交じりのモニターが捉えた岩塊は彼女の報告通り、
十文字に爆発を伴い、砕け割れていくところであった。

 ****

「こんのっ……せっかく、割れたってのに!!こいつら、退けよっ!!」

シンがビームブーメランを抜き、ガイアへと向けて投げ放つ。
MA形態へと変形したガイアはそれをかわし、インパルスへと飛び掛ってその四肢で岩盤へと
両腕を押さえつける。
278アム種11話2:2006/08/18(金) 17:28:55 ID:???

『お前えええぇぇーっ!!』
「っく……!!」

接触回線で聞こえてくる声は、ひどく幼い女の声だった。
こんな奴が、ガイアのパイロット?こいつ、自分が何をしているのかわかっているのか?
自分の行動で地球が、どうなるのかを。

「この、やろうーっ!!」

巴投げの要領でインパルスの全身を使い、ガイアを投げ飛ばす。
即座に起き上がり、無重力下で体勢を崩しているガイアへとバーニア噴射で追いつく。
そしてレーザーを切った状態のエクスカリバーを喉下へと押し当て、ブースターを全開にして
大地へと叩きつける。
女の呻き声が聞こえたが無視して、接触回線で語りかける。

「お前!!こんなのが落ちたらみんなが『死んじまう』んだぞ!?もっと細かくしなきゃいけないのに、邪魔すんなっ!!」
『!?』
「手伝えとは言わないから、作業の邪魔、するなっ!!退けっ!!」

───シンの言葉が、届いたのだろうか。もがいていたガイアの動きが一瞬、ぴたりと停止する。
いや。停止したかと思うと、更にじたばたと無茶苦茶な動きで暴れ、インパルスを無理やりに引き剥がす。
引き剥がしてあらぬ方向へビームを乱射したかと思うと、明らかに落ち着きをなくした動きで
インパルスとは正反対の方向へ飛び去っていく。

「あ……おい!?」
『シン、行ったぞ!!』
「っ……ええいっ!!なんなんだよ、あいつっ!!」

カオスと斬り合っているジェナスからの通信。
突き出されたアビスのビームランスを受けると共に、エクスカリバーのレーザーをオンに。
ランスをレーザーによって真っ二つに断たれたアビスは肩のキャノンを撃ち込むと、
二本になってしまったランスを投げ捨てる。

そうだ、まずはこいつら……!!戦う気がないなら、放っておけばいい。
余計なものに、構ってられない。限界高度までに作業を完了しなければならないのだ。
既にユニウスの底面部は、赤熱化をはじめていた。時間はない。

 ****

「何ィっ!?ステラがどっか行ったぁ!?何やってんだよ!!」
『しらねーよ!!大方相手からの通信でうっかり、ブロックワード聞いちまったんだろーよ!!』
「ぐ……マジか……」
『ネオ!!正直こっちもやばい……!!エネルギーの残量がガーティに戻るまで持ちそうにない……!!』
「おいおい……勘弁してくれよ……。俺、始末書書きたくないぜ?」
『こいつら、冗談抜きでやる……。このままじゃ大気圏までに落とせねぇ……!!』
「だーもー!!わーかった!!お前ら、なんとか持ちこたえろ!!迎えに行ってやっから!!いいな!!」
279アム種11話3:2006/08/18(金) 17:30:03 ID:???

通信を切って、ネオは頭を抱えた。
余計なことに首をつっこんだ報いだろうか?

「いかがなさるので?」
「行かなきゃ、しゃーないだろが。ミラージュコロイド維持したまま、全速前進。三人を回収する」
「は?ですが……」
「最悪、そのまま大気圏に突入する!!やばそうな石ころがあったらついでにローエングリンで叩き割る!!異論は!?」
「本気ですか?」
「あー本気だよ、悪いか!?奪った機体も、貴重なパイロットも失うわけにはいかんだろうが!!」
「……いえ」

リーの胸倉を掴んで、喚きたてることで無理矢理に説得する。
上官の立場を最大限に利用した恫喝だ。
すごすごと引き下がるリーに溜飲を下げるネオ。
あとは、もう一つの懸案事項だけ。

「さーて……こっちの説得もうまくいくと、いいんだがね……?」

 ****

『各機!!限界高度だ、後退しろ!!』

3つ目の岩塊が砕けたところで、無情にもその命令は下された。
MSの推力では大気圏に捕まり、振り切ることができない──これ以上の作業は自殺行為を
意味する、限界高度がやってきたのだ。
各々にユニウスから退いていくMSたちを、シンやジェナスも確認していた。

「そんなっ……!!」
『まだでっかいのが残ってるってのに!?』

顔を見合わせる二人の機体へと、カオスとアビスのミサイルが降り注ぐ。
顔を背け、岩の飛礫が晴れたそこに、二機の姿はなかった。

「逃げたか……。でも、このままじゃ地球が……」
『こんなとこで戻れるかよっ!!』
「あ、おいジェナス!?」

一応の小康に、安堵するシンを尻目に、ジェナスのエッジバイザーが飛び立つ。
殆どMSか、それよりわずかに大きい程度の石ころばかりになった足元の流星群から離れ、
未だ威容を湛える巨大な岩塊へ。その表面には、いくつかメテオブレイカーが設置されたまま
放置されている。
280アム種11話4:2006/08/18(金) 17:30:50 ID:???

「ジェナス、死ぬ気か!?」
『大丈夫だ、ゼアムジャケットとネオエッジなら!!大気圏の熱にも耐えられる!!』
「おい、待て!!なんでそんな───」
『ピープルを守るのが、アムドライバーの仕事だっ!!』
「はあ!?ピープ……あ、おい!!ジェナ───え?」

センサーがもう一機、ユニウスへと向かう機影を捉える。
追わせたメインカメラに映るのは、鋭角的なフォルムに、真紅のボディの戦闘機。あれは──……。

「アスランさん!?」

アスランの駆る、セイバー。
彼もまたジェナスと同じように、ユニウスの破片へと、推力を全開にして突き進んでいく。

「本気かよ!?いくらVPS装甲があるからって……!!」

エクスカリバーを背中に戻し、ちらりと豆粒のごとき後方のミネルバを見る。
───生きて、帰ってこれるかなぁ。戦場ならともかく、こんなことで死ぬかもしれないなんて、
覚悟は、決めてはいなかった。

「もう、知らねーぞ、俺は!!死んだら恨むからなぁっ!!」

でも、放ってはおけない。一応、VPS装甲のエネルギー残量を確認して。
シンもまたレバーを押してインパルスを発進させる。
二人が向かったユニウスセブン、地球へと落ちていく最後の岩塊へと、全速力で───。
281134で言った人:2006/08/18(金) 17:35:30 ID:???
本編とずれまくってますね。きっとアムエネルギーが(ry

>>276
リア小の頃F&F完結編の難易度にあぼんして
αシリーズのやさしさに癒された程度には好きですが。
282358 ◆KILLER/duk :2006/08/18(金) 18:14:29 ID:???
GJ!しかしガーティにローエングリンは付いてないんだなこれが…
283通常の名無しさんの3倍:2006/08/18(金) 18:36:12 ID:???
お疲れ様!
>本編とずれまくってますね。きっとアムエネルギーが(ry
・・・・いや、ある意味嫁以上に各種キャラが「らしく」見えますね。
ブロックワードって設定ををここで使うか!とか・・・・。
284通常の名無しさんの3倍:2006/08/18(金) 18:42:01 ID:???
GJ!相変わらずクオリティタカス。
ここまで来るとユニウスセブン喰い止めそうな勢いだなw
285このスレの定期アゲ担当者:2006/08/18(金) 19:24:57 ID:???
相変わらずいい仕事をしていますね〜GJ!!
>本編とずれまっくてますね
コレが本当の流れと言う事にすれば良いじゃない!
アムエネルギーの力は無限大だ!よりよき道へと導いてくれている
次の投下にワクテカして待ってます!


明日アゲるので保守
286通常の名無しさんの3倍:2006/08/18(金) 22:58:46 ID:???
GJ
287アム種12話:2006/08/19(土) 10:54:18 ID:???
第十二話 選択肢

ユニウスセブン上には、三機のメテオブレイカーが残されていた。

「あれか……よし、これなら……」
『君は?ジェナスか?』

岩盤上へと辿り着き、作業を開始しようとしたジェナスへと、背後から呼びかける者がある。
その真紅の機体は───……。

「アレックス……じゃなくてアスランさん?」
『どっちでもいい。君も破砕作業を続けにきたのか?だが……』
「はい、一応大気圏に耐えられる装備はしてますから」
『そうか……なら、支えててもらえるか?こっちの機械はまだあまりよくわからないだろう』
「あ──はい、すいません」

エッジを纏ったジェナスは支柱を支える側へと周り、キーパネルの側をアスランのセイバーへと明け渡す。
が、アスランがコントロールキーを操作しようとしたその刹那、飛来したビームによって
メテオブレイカーが撃ち抜かれ、破壊される。
とっさに二人は飛び退き、背中合わせにそれぞれライフルと剣を構える。

『───どこだ、どこから撃ってきた』
「……」
『ここだ、裏切り者共よ』

野太い、男の声。
反応すると同時に散開した二人を、ビームの火線が追う。
射撃が放たれたほうへと目を向けると、そこには三機の漆黒に染め上げられた機体があった。

『……また奴らのジンか……!!く、時間がないというのに……!!』
「アスランさん、あなたは作業を!!俺があいつらを食い止めます!!」
『な……その機体でか!?だいじょ───ぐっ!?』

更に、もう一機。メテオブレイカーが落とされる。
最後の一機、これだけはなんとしても死守しなくては。
たとえこれで割れなくても、その一撃で大気圏の摩擦で割れるようになるかもしれないのだ。

『わかった!!だが無理するな!!』
「はい!!」

左肩の大剣も抜刀、二刀流でジンへと襲い掛かるジェナス。
ジンの抜いた剣と打ち合わせながら、問う。
288アム種12話2:2006/08/19(土) 10:55:38 ID:???

「なんでだ!!なんでこんなの地球に落とそうとするんだ!?」
『決まっている!!これは復讐!!報いよ!!』
「何!?」
『我が娘の墓標……落として焼かねば、報われぬ!!』
「復讐、だと!?んなことで……」
『そんなことではない!!義は我らにあり!!因果を奴らナチュラル共に巡らせねばならんのだっ!!』

叫ぶ男の気合いは、ジェナスの太刀さえも撥ね退ける。
この世界に来たばかりのジェナスが、「血のバレンタイン事件」など知っているわけもなかったが、
男の声はそんな事情を知らない彼さえもを押しのけるほどに激していた。

『パトリック・ザラの道は正しかったのだ!!何故あのような……ナチュラル共と馴れ合っていられる!?』
「く……」

最上段からの振り下ろしに弾かれ、右の刃を跳ね飛ばされる。
だが、その刃と入れ替わるようにして入ってくる、一つの赤い影。

『ふざけんなあっ!!その「義」とかいうのでどれだけ人が死ぬと思ってんだ、この野郎っ!!』
「シン!?」

赤き剣士、ソードインパルスが連結させたエクスカリバーで二体のジンを同時に切り裂いていた。
ジェナスと切り結び、吐くような叫びを彼に聞かせていた男のジンも一瞬、呆然としたように固まる。

「そこだっ!!」

右腕を叩き斬り、重斬刀を使用不能にさせる。

「アスランさん、急いでください!!」
『……』
「アスランさん!?」
『!!あ、え……あ、ああ!!』

呆けたように反応の鈍かったアスランに、怪訝に眉を顰めるジェナス。
彼の動きは何故だか、どこかぎこちなかった。

『ナチュラルだろうとコーディネーターだろうと関係ない!!勝手やって無関係の人間殺す正義なんて、認めない!!』
『ぐ……だがっ!!』
『お前も一緒だ!!理念とか、理想とか、義とか!!巻き込まれる側はたまったもんじゃないんだよ!!』

片腕のジンの両足が、エクスカリバーに斬られ失われる。
胴体からは左腕と頭部、そして羽だけになったジンが、宙を漂う。
289アム種12話3:2006/08/19(土) 10:56:49 ID:???

『だがそれでも……それでも退けんのだっ!!』
『う!?こいつ!?』

止めの一刀を、バーニアを全開にして避け、メテオブレイカーへと突進していく隻腕のジン。
インパルスが振り向き、追撃する。
ジェナスにはその二機の動作がスローモーションの映画のように見えた。
二機に向かって伸ばす自身の手までもが、そのように見えた。

『させ、るかあああっ!!』
『我々の……勝ちだっ!!』

シンの投げたエクスカリバーが、ジンを貫くと時を同じくして。
左手に残されていたビームカービンから一筋の光が放たれる。

『……え?』

作業に集中していたアスランが気付き、盾を差し出す暇もなく。
その光はメテオブレイカーへと吸い込まれていく。
そして、爆発。串刺しとなったジンと、同じように。
爆発は、二つであった。
最後のメテオブレイカーが、失われた。

 ****

「アスランたちが戻ってない!?」

帰還命令を出したミネルバのブリッジでは、戻らぬ三機の情報に騒然となっていた。
命令を無視し、破砕作業を続けるためユニウスに残った者がいる、と。
その中にアスランが含まれていたことに、カガリも愕然とし、与えられたシートから腰を浮かす。

「……アスラン君とシンはVPS装甲の機体に乗っているから最悪でも、燃え尽きることはないと思うが……」
「ええ、問題は彼──ジェナスですわね、議長」

カガリを座らせ、安心材料となるようなことを言いつつ目をこちらに向けてきたデュランダルに、
タリアも頷く。頷いて、あの変わった少年の顔を思い浮かべる。
どうする。あの少年を見殺しにしていいものかどうか。
シンやアスランを回収するには───。

降下するしかない。だが、しかし。思案するタリアへと、レーダー手からの
切迫した報告が届く。

「前方、距離3000に───ボギーワン!!かなりの高速で、ユニウスに向かっています!!」
「なんですって!?」
「映像、出ます!!」
290アム種12話4:2006/08/19(土) 10:58:23 ID:???

モニターにノイズ交じりの不鮮明な画像ながら現れたのは、まさに「あの船」だった。
三機のMSを強奪し、辛酸を舐めさせられた、あの──。

「て、敵主砲!!こちらを向いています!!艦長、回避命令を!!」
「待ちなさい!!」

慌てるアーサーを一喝。
じっと彼女が見つめる敵艦は、主砲の射軸をこちらからはずすと、
何事もなかったかのように前方のユニウスへ向けて前進していく。

「……あれ?」
「戦うつもりはない。だから来るな。邪魔はしないでくれ───、といったところかしら?」

だが、いよいよもってこれで三人の回収は困難になった。
既にユニウスはMSの推力で離脱できない位置にある。
回収するにはミネルバそのものが降りていく必要があるが……。

「……全艦に通達。後退します」
「え!?」
「そんなっ……あそこにはまだアスランたちが!!」

やむを得ない決断ではあった。こうして抗議の声があがるのも予測していた。

「三人の命とクルー全員の命を、引き換えにはできません。それに彼らなら、無事に降下できるはずです」
「だがっ……」
「それに……万一あの艦と衝突があれば、この艦自体が保ちません。突入すら、今の修理状況では危ういのですから」

やりあえばやられるのはおそらく、こちらだろう。

「く……」
「ご理解ください、アスハ代表。……議長も、よろしいですね?」
「ああ。だが念のためだ。カーペンタリアやプラント友好国に、彼らのことを報せておいてくれ」
「はっ」

非情な選択ではあると思う。私は三人の命より、クルー全員の命をとった。
それを行ったのは自分だ。
しかしタリアは、虫のいい話だと思いながらも内心、祈った。
願わくば、彼らの破砕作業の成功と。彼らの無事を。
291134で言った人:2006/08/19(土) 11:02:20 ID:???
ガーティにローエングリンついてなかったのかorz
皆さんの脳内アムエネルギーでゴッドフリートと読み替えておいてくださいorz

私は応急修理しかされていない艦で大気圏に突入したくありません。
292通常の名無しさんの3倍:2006/08/19(土) 12:06:28 ID:???
仕事速っ!乙です。

流石のジェナもユニウス落下までは止められなかったのね。
それにしても、
>作業に呆けたように反応の鈍かったアスランに、怪訝に眉を顰めるジェナス。
>集中していたアスランが気付き、盾を差し出す暇もなく。
新鋭機で出撃して最後の最後にセーブミスとは素敵なヘタレぶりでつねアスランw
地上に降りたら特にシンにはまるで立場無いやん。

・・・・ん?「第一クールで新鋭機で出たはいいがどん底まで叩き落される元英雄・・」
・・・こ、これは・・・・。
293358 ◆KILLER/duk :2006/08/19(土) 15:45:55 ID:???
GJ!ところで地上に降りる訳だが、他のアムドライバーやローディーも登場可能?

>>292
ちょwwwwwwww
294通常の名無しさんの3倍:2006/08/19(土) 16:13:00 ID:???
仕事早いなぁ、乙!

ん?……ちょwwwww
よ、容赦しないっすかwwww
295通常の名無しさんの3倍:2006/08/19(土) 16:31:30 ID:???
GJ!タリアもいい感じ
296定期アゲ担当者:2006/08/19(土) 18:10:56 ID:???
GJ!!
さすがヘタレのアスランw
>私は応急修理しかされていない艦で大気圏に突入したくありません
確かに突入させたくないね、つか普通したら途中それが原因で爆発するだろう。
頑張ってくれ!!

定期保守アゲ
297通常の名無しさんの3倍:2006/08/19(土) 19:42:04 ID:???
>>291 >>296
>三人の命とクルー全員の命を、引き換えにはできません。
増してやそれが上官の命令違反の結果とあっては軍規に照らし当然の判断でしょうね。
それこそ「戦争はヒーローごっこでは無い」訳で。
その辺まるで考慮しないのもデス種の汚点の一つでしたからね・・・。
298通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 01:33:30 ID:???
>>291>>296>>297
っと、いうか種の時点でマリューがやっちゃってますね。
一人の命とクルー全員の命を引き換えにする事を。
しかも、あの時のキラは独断で出撃してますしw
ストライクを失う訳には行かないって言ってますけど、明らかにあれは言い訳でしょう。
299アム種13話:2006/08/20(日) 11:09:11 ID:???
第十三話 カムバック・ホーム

「そんな……メテオブレイカーが……」

守り、きれなかった。
シンはコクピットの中で愕然としていた。

「くっそおっ!!」

せめて、もっと細かくしないと地球が大変なことになるというのに。
それを可能にする手段が、潰えた。

『まだだ』
「……ジェナス?」
『まだ、手はある!!』

シンや、アスランと同じように呆然としていたジェナスが顔をあげる。
身体に装着したパーツをパージし、元のアムジャケットと例の流線型の機体へと分離する。

「何する気だ?」
『決まってる。───こいつで、叩き割る』

そう言ったジェナスは、腰から一振りの剣を抜いて、シンへとその輝きを見せた。

 ****

───こいつと、ゼアムジャケットのフルパワーならやれるかもしれない。

その剣の名は、アブソリュートソード。
ジェナスのゼアムジャケット用に作成された、世界に一本しかない専用の装備。
同じ被害を防ぐことができないのならば、できる限りそれを小さくする必要があった。

『おいおい、そんな剣なんかで何が……』
「できる」
『……マジ?』
「ああ……やれる。というか、今はこれしか方法が思いつかない」

ソードへととりつけられたリミッターとしての役割も兼ねるカバーを外し、
エッジの側面へと据え置く。
チャージングチューブをソードへ接続し、準備完了。

『本当、なんだな』
「ああ。離れていてくれ。俺も一撃ぶち込んだら離脱する」
『……わかった、気をつけ──』
『待て、上空!!二時の方向!!』
300アム種13話2:2006/08/20(日) 11:10:02 ID:???

二人のやりとりを見ていたアスランのセイバーが、突如上空を見上げる。
そこには四足の、黒いMAが滞空していた。
滞空して重力に逆らいつつ、こちらへ。いや、ユニウスへと向けて背中のビームを乱射している。

『ガイア!?あいつ、なんで……』
「破壊……しようとしている?」
『だが……あんなに乱射していては、すぐにバッテリーが尽きるぞ。大気圏で燃え尽きるのがオチだ』
『っ……あー、もう!!』
「あ……おい、シン!?」
『今は戦ってるわけじゃないし、ほっとけないだろ!!ユニウスのこと、頼むぞ、ジェナス!!』
「あ、ああ──……いいんですか、アスランさん?」
『ほっとけ。俺も一旦離れておくよ。頼む』
「はい」

ガイアへ向かうシンと、その場を離脱するアスランを確認し、ジェナスはアブソリュートソードを構える。

「さあ……たのむぜ、フルゼアム……!!」

できることならば、この力は使いたくはなかった。
この力は強大すぎる。使う自分が、恐ろしい。
いつ自分がガン・ザルディのようにこの力に溺れてしまうかもわからない。
だが、今は。この力が必要な時だと思う。

「いくぞ……!!」

アブソリュートソードが、蒼く輝く。
辺りを包み込むほど、眩く。エネルギー充填、完了。

「はああああああっ!!撃!!」

光を、エネルギーをほとばしらせるソードを大地へと突き立て、一気に放出。

「割れろおおおおおおおおおおおっ!!」

渾身の力、フルゼアムの無尽蔵に近いエネルギーを、岩盤へと注ぎ込む。
徐々に岩盤へと蜘蛛の巣状のヒビが走っていき、隙間からエネルギーの生み出す光が
次第に漏れてくる。

「よし……っ!!離脱する!!」

エッジバイザーへと飛び乗り、ブースト全開。
離脱するジェナスの背後で、ユニウスセブンの最後の一かけらが爆散していった。

 ****
301アム種13話3:2006/08/20(日) 11:11:52 ID:???

「何ィっ!?ユニウスが砕けたあっ!?」

大気圏へと突入を開始したガーティ・ルーのブリッジで、
ネオは叫んだ。もはや手遅れ、自分達が砕くしかない、そう思っていた矢先の出来事であるから無理はない。

「どうやら、やりおったようですな。コーディネーター共は」
「……らしいな。ステラは?」
「無事、回収を完了しました。ブロックワードが発動した割りには、落ち着いているとのことです」
「ほう……?まあ、いい。無事ならそれで」
「前方にザフト機、三機!!大気圏に突入する模様です!!」

安堵する彼らに、索敵要員が双眼鏡を下ろして報告する。
大気圏の熱でレーダー類が不安定な以上──特に、この艦は様々な機能が付加されている分
そういった点でやや脆弱な部分がある──、絵に描いた餅のような話だが、目に頼るのが一番確実なのだ。
一瞬、敵機発見の報にブリッジがぴりぴりとした空気に包まれるが、ネオは首を振る。

「行かせてやれ。お互い、燃え尽きて死にたくはないしな」
「はっ」
「ただし、そいつらの落ちてく軌道を計算しろ。地上の友軍に教えてやれ。ザフトのヒーローが行った、ってな」

錯乱状態のステラを、撃たないでいてくれたわけだしな。
ネオはネオなりにこれで、貸し借りをゼロにしたつもりだった。

 ****

『シン!!無事か?』
「あ、アスランさん!!えっと、お、この──」

重力に引かれ落下しながらの姿勢制御に、シンは四苦八苦していた。
シュミレーターでなら何度もやっているが、大気圏突入の経験など、これがはじめてなのだ。
心配したアスランが推力を全開にして寄ってくるほどその操縦は危なっかしい。

『シールドを前にして、姿勢を保つんだよ!!』
「やってますって!!お、お?うわぁっ!?」
『───はぁ。仕方ないな……』

苦戦しているのはどうやら、シンだけのようだった。
ジェナスは例のエッジとかいう機体に跨って、危なげなく安定した姿勢を保っているし、
アスランに至ってはこちらを心配する余裕まである。

『ほら。乗れ』

セイバーをMA形態に変形させたアスランが、わずかに下方を降下していた。
その背中にインパルスを載せろ、と指示している。

302アム種13話4:2006/08/20(日) 11:12:49 ID:???

「え、ですけど」
『どの道大気圏を抜けてもその機体は飛べないだろう。海面なり地面に叩きつけられるぞ、さっさと乗れ』
「──す、すいません……」

インパルスをセイバーに寄せ、両腕を使って固定する。
彼の好意に感謝しつつもシンは、この人こんなだったっけ?と首を傾げる。
ミネルバにいたときはとっつき辛くて、常に小難しい表情をしていたように感じるのだが。

『──はじめてか?大気圏は』
「は、はい」
『そうか……。ま、気にするな。ぶっつけ本番だったしな。ちゃんとした降下作戦ならできてただろ』
「はぁ」

ああ。この人は今、一人の先輩として話しているのだな。アスハの護衛ではなく。
かつてのザフトレッド、アスラン・ザラとして。
なんとなくシンは理解した。彼に対する印象が、少し変わった。

『……すまなかった。メテオブレイカーの一番近くにいたのは、俺なのに……』
「いえ、そんな。守れなかったのは……俺も一緒です。それにジェナスがやってくれましたし」
『そう……だな』
「結果は同じだったんだし、やめましょうよ。……できることはやったんです、俺たち」
『ああ……』

同じ任務で命をかけたからだろうか、アスハの護衛であった彼に対して、妙に素直であれる自分がいた。
それがなんだか、無性におかしかった。

「……でも、地球かぁ……」

こんな形で帰ってくるとは思わなかったなぁ。
シンは眼下に望む故郷たる蒼い星へと目を落とす。
インパルスを載せたセイバーは、赤熱化するボディの体勢を崩すことなく地球へと降下していった。

 ****

「……」

流星が、降り注ぐ。
世界各地に、無作為な軌道で。
それは触れるあらゆるもの、建造物を粉砕していく天然の弾丸。
しかし、幸いにしてその軌道から外れていた者たちにとっては、
それは単なる、夜空の美しい芸術でしかない。
ここ、ガルナハンの民たちもそういった、幸運な者たちの一部であった。
303アム種13話5:2006/08/20(日) 11:14:29 ID:???

「入れよ、飯だぜ」
「……コニールか」

青年が、星降る夜空を見上げていた。
彼を呼びにきた少女は髪を後ろで、ひとつにまとめている。

「願い事でもしてたのか?」
「……たとえば、どんな?」

少女に手を引かれる青年の声は低い。尋ねながら、目は上空へ向けられている。
開け放たれた扉に片足を踏み入れて、それでもまだ見つめている。

「あたしが知るかよ。でもこの辺は被害なさそーだしよかったよかった」
「……ああ」
「ほんとーにそう思ってるのか?感情がこもってないぞ、イヴァン」
「……ふん」

蒼い髪の青年は強く袖を引っ張られ、ようやくにして扉を静かに閉めた。
まるで流星が、雨のようだった。
青年が全てを失った、あの雨の日のように。絶え間なく降り注いでいた。
戸口に止められた一台の大型バイクが、星の光を反射していた。
304134で言った人:2006/08/20(日) 11:17:45 ID:???
次回からオーブ編。
さーピンクたちをどう料理するか
そこが問題だ
305通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 11:41:56 ID:???
GJ!
やはり撃!がきましたか、さすがフルゼアム!
そしてなんか動かない人きてるーーっ!バイク?バイクというとモトバイザー?
これからも楽しみに待ってます
306通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 13:11:59 ID:???
GJ!今回も面白かった
307358 ◆KILLER/duk :2006/08/20(日) 15:17:56 ID:???
GJ!そして不動さんキターーーー
308通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 17:42:15 ID:???
ゲリラの嬢ちゃんだったっけ<コニール
ニルギが出るならキラ&ラクスの所だと思ってたんでちと意外っす。
309通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 18:11:30 ID:???
グッジョブ!

なんとなく、マルキオ導師のとこに居るのはシシーの想いを受け継いだラグナなんじゃないかと夢想。
310通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 18:12:15 ID:???
乙!
二人仲良くGet Ride!で大気圏突入かぁ>シンとアスラン
ストフリと隠者のおててつないではムカついたけどこっちはいい感じですな。
311通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 19:59:44 ID:???
>>308
更に、あのニルギがついにバイザーを・・・と言うのも入れるとダブルサプライズですね。
それがアムドラ本編初登場のバイザーであるあれ、と言うのも何かの因縁を感じさせる
組み合わせ。

もっとも、職人さんがこの選択をするにあたって注目したのは多分「あれ」の晩年の
不遇さと言う気もしますけどねw
312358 ◆KILLER/duk :2006/08/20(日) 20:59:41 ID:???
てかこのスレ見てSILENTMOON種版誰か作ってくれないか・・・
313通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 18:09:20 ID:???
ゼアム鮭Withエッジのブリガンディモードの実物も見てみたい気ガス。
と言う訳で今日は俺たちの月曜日!
314通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 20:42:48 ID:???
月曜日!!
315通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 20:59:34 ID:???
GJ!


なんかこれ見てたら、やがてミネルバ対AA戦時にジェナスを見たノイマンにタフトさん乗り移って、
マリュー「回避ぃぃーっ!!」
ノイマン「ワオーン!!」

ブリッジクルー「「「「  !?  」」」」

マリュー「あ、あの…ノイマン少尉?今のはなに?」
ノイマン「何でしょう?」
みたいなのが頭に浮かんでしまった。
316通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 21:29:46 ID:???
>>315
声優ネタだとアーサーが何か命令されて「え、俺?」とか言いそうだな(笑)
317通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 22:39:22 ID:???
えー、とりあえず鯨井くんは仕方ないとして
種に出てないのは遊佐さん、水野さん、小川さんあたりか
小川さんは元々特撮の人だからいいとして、前の二人のネタがないのが惜しい
318通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 22:47:17 ID:???
GJだが、この作者は大気圏をなにか勘違いしてると思う。
319通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 22:52:37 ID:???
>>317
松風さんだって特撮出身だぜ!?

小川さんは小川さんでモーションキャプチャー役者まで始めて、鬼武者とかバイオ4で活躍されてるようだし。
320通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 23:03:27 ID:???
そんな小川さんも今もある意味アムエネルギーだだこぼれの財前をやってるな。
321通常の名無しさんの3倍:2006/08/21(月) 23:46:49 ID:???
>>318
アムエネルギーだ、アムエネルギーの力を信じるんだ…
と書こうとしたがここシャア板だったな
まぁ、アムエネルギーのある世界に大きなツッコミは無用だ
322アム種14話:2006/08/22(火) 17:23:08 ID:???
第十四話 ロンリー・ボーイ

──ユニウスセブン落着より数日後、オーブ行政府──

「ふーん、ザフトの新型のパイロットに、異世界から来たっていう少年ねェ。妙な組み合わせが来たもんだ」
「……申し訳ありません」
「ああ、責めてるんじゃないよ。なかなかに興味深い。新型にはオーブ系の技術も使われてるようだし……」
「あの……ユウナさま?」
「ん、なんだい。アス───もとい、アレックス」

広い廊下を歩きながら会話を交わす、二人の男がいた。
アスラン・ザラ──アレックス・ディノと、カガリ不在のオーブ政府を取り仕切る
首長会のリーダー格にして、若き宰相の一人、ユウナ・ロマ・セイランの二人である。

「アスハ代表は……」
「あ、カガリね。今日の夕方の便でこちらに戻ってくるそうだ。プラントから連絡があったよ」
「そうですか……」
「何、そんなにカガリが恋しいかい?この許嫁泥棒め♪」
「──な、ユ、ユウナ様!?」

ほっと溜息をつくアスランに、ユウナは意地が悪そうな笑みを浮かべ、
皮肉混じりに茶化してみせる。悪気があるわけではないのだが、この男。根っからの皮肉屋なのだ。

「なーんてな。一族や親が決めた許嫁なんて今どき流行らないさ。冗談だよ」

大仰に肩をすくめるユウナ。
何を隠そう、彼とカガリは幼少の頃から兄妹のように育った仲。
オーブ五大氏族の中において将来的には結婚することを義務付けられた、許嫁同士なのである。
本人同士にその気がないのが、問題ではあるが。

「はぁ……ですが」
「君だってそうじゃない。あの『歌姫』のことだって」
「そ、それはっ」
「そーいうもんでしょ?」

アスランはこの男とやりあうのが、どうも得意ではなかった。
生来生真面目すぎるが故に、正反対の性格で掴みどころのないユウナを、捉えきることができない。
もっとも、それなりに嫌いではない。
アスランのオーブ定住をカガリが根回しする際、手を貸してくれたのは彼だと聞いているし、
感情論、道徳論に走りがちなカガリの執政を冷静に一番近くで律してくれている。
その政治のやり方がシビアであるが故に国民からの人気は低いし、
カガリと方針をめぐってしばしばぶつかることもあるが、結局のところそれでバランスがとれている。
323アム種14話2:2006/08/22(火) 17:24:35 ID:???
最初にカガリから許嫁だと紹介されたときは警戒し、反感も持ったが、彼自身は乗り気でないらしく、
その点二人で頷いているのを見て、すぐに打ち解けることができた。
曰く、「妹同然に育ってきた子を相手に結婚しろったって、そんなの無理無理」だそうだ。
ただしカガリのことは溺愛しているらしく、彼女を会議でやりこめたりした後は
深夜であっても屋敷まで弁解の電話をかけてきて、疲れきって寝てしまいたい彼女を辟易とさせているのだけれど。

「正直、今回のこの事件で世界がどう転ぶかはわからない。オーブの立場も微妙だ。幸い、被害は沿岸部だけだが──……」
「……」
「ほぼ間違いなく大西洋連邦は──プラントに難癖をつけるだろう」

それは近いうちいずれまた、戦乱がやってくるということ。
階段へと差し掛かったところで、半笑いだった彼の顔が突如、真剣なものになる。
声のトーンも低く、潜めるようなものに。
この時の彼は完全に「政治家」だ。言わば裏の顔であり、
大部分の国民から嫌われているユウナにとっての、表の顔でもある。

「彼らは……二人の「お客さん」はどうしている?いずれ処遇を決めねばならないが」
「あ……はい。旧アスハ別邸──ベルネス邸に。今はキラと出かけているようですが」
「ほう、弟くんと?それはそれは。ならば──いいか。しばらくは任せるよ、そっちに」
「はい」
「頼む」

階段を下りきったユウナは、小さく溜息をつく。
その顔は元の緊張感のないそれへと、戻っていた。
執務室のドアを開きながら、首だけこちらに捻って向ける。

「あ、カガリの迎えよろしく。僕も父上も、他の首長たちも問題山積みでいけそうにないからさ」
「わかりました、夕方ですね?」
「そう。細かい時間は港に───……って、言わなくても自分で訊いて迎えに行くか」
「は?いえ、そんな」
「マスコミ来るだろうからそれなりの格好してくように──……んじゃ」

困惑するアスランの目の前で、木製のドアが閉じられた。

 ****

シン、ジェナス、アスラン。
三人が落下した先は、オーブ近海の小島が並ぶ穏やかな海域だった。
幸い、本島からもそこまで離れておらず、通信の中継施設が付近の島に設置されていたおかげで、
アスランからの連絡を受けてオーブ海軍が回収しにきてくれた。
デュランダルのほうからも、プラント本国を通じて三機が降下する旨が友好国に伝わっていたらしい。

「───ただいま、父さん、母さん。──マユ」
324アム種14話3:2006/08/22(火) 17:25:51 ID:???
回収された三人の機体はモルゲンレーテへと回され、整備を受けられることとなり。
アスハ代表の代行をつとめているという青年、ユウナとの会見を経てシンとジェナスは、
ユウナやアスランの知人という女性、マリア・ベルネスに紹介され、
彼女の住む屋敷に世話になっている。
一国のトップとは思えないほど、ユウナはフランクに彼らへと接した。
元々このオーブ出身のシン曰く、二年前まで彼はスカンジナビアの法律系カレッジへと留学していたらしい。
出発するところをテレビで特集していたのを昔、見た記憶があると言っていた。
その後戦火に見舞われたオーブの復興に際して、人材不足の折に呼び戻されたらしいが、
ほんのつい最近まで学生をやっていた人間だというならば、その雰囲気の軽さにも納得がいった。
あれでいてアスランによるとなかなか優秀な人物とのこと。
政治家というなら裏の顔があるのかもしれない。

「俺、戻ってきたよ。急だけど」

シンとジェナスは、海に面して建造された戦没者慰霊碑へと向かい、立っていた。
それぞれにアスランから渡された私服を着て、シンの手には花束が。
ここまでは、ベルネス邸で出会った『キラ』という青年が車で送ってくれた。
アスランの親友と紹介された彼は、車のところで待っている。
広いベルネス邸には、マリアとその愛人らしいアンディという隻眼の男が住んでいて、
他に小さな子供達も多く、その世話をする人間が何人も住んでいた。彼もその中の一人だった。
二人で車を降りる際にジェナスは一緒にどうかと誘ったが、彼は、

『……ごめん。僕は行けない。行く……資格がない。行ってはいけないと、おもう』

──そう言って静かに拒否して車に残った。
資格などといえばそもそも別世界の人間の自分はどうなるのかとジェナスは思ったが、
強制もできず、彼を置いてただシンについていった。
拒否した際の悲しい目を見るに、なにか思うところがあるのだろう。

「俺、守りきれなかった。精一杯やったけど……足りなかった」

慰霊碑に供えられた膨大な量の花は、ユニウス落着の影響による津波で潮を被って、
ことごとくが枯れていた。被害は少なくなったにしろ、確かに目に見える形でこうやって存在している。

「ごめんよ……まだ、足りなかったよ、俺……」

慰霊碑へとひざまずき、献花するシンは語りかけていた。
そこに眠る、今は亡き家族に。
ジェナスは彼の仕草を、沈痛な面持ちで見つめるしかできず。

『両親が───……妹が、眠っているんです』
325アム種14話4:2006/08/22(火) 17:27:54 ID:???
ベルネス邸でキラから気晴らしにどこか行きたいところはないかと尋ねられた際に
この場所を希望した彼の言った言葉を、その表情を、反芻していた。
彼は向かう車の中でも、ぽつりぽつりと吐き出すように語り、
おおまかな事情はジェナスも、それで理解した。

「俺……強くなる。もっと、皆を守れるように」

ウミネコの鳴き声が、すぐ近くの港から聞こえてくる。
夕日の色が、限りなくオレンジ色に近くなって水面に反射していた。
それが眩しくて、シンがどんな顔をしているのかどうかは、彼が立ち上がっても見えなかった。

「花を、植えに来るよ。吹き飛ばす奴が……いなくなったら」

植えてもまた、吹き飛ばされるのなら。
吹き飛ばされぬようになってから。

「強くなって……植えに来るよ」

植えた花を、守れるように。
植えた花が、焼かれぬように。

焼かれた花は、もう二度と返ってはこないのだから。
326134で言った人:2006/08/22(火) 17:39:20 ID:???
はい、多分本編と1番キャラが違う人です、ユウナ。
ていっても
・カガリ大好き
・現実的な政治家
・変
の基本は変えてませんが。アホになりすぎなんだよ本編。
無印種で影も形もなかったことを説明しなきゃ→留学かなやっぱ
→異なる価値観に触れてきてるんだし丸くなってるだろうそこは
といった流れでこんなキャラに。
ラクスはちとキラの元を空けています。すぐ出てくるけど。

>>318
ごめん、kwsk。根が文系な人間なもんで。
ただ言われる前に言っておくと、通信がクリアすぎなのはわざとです。
三点リーダや句読点を多用してノイズ交じりにしても良かったのですが、
読みにくい気がしたので。
327通常の名無しさんの3倍:2006/08/22(火) 18:11:06 ID:???
ジュッテ〜ム、まってたZE!
今回もグッジョブってかぁ♪
ユウナの弁護がしっかりされて俺っチは好感持ったゼー
んじゃ、また次回も頼むぜ。できれば、ラグナ・ラウレリアの名前もお忘れなくってな!
328358 ◆KILLER/duk :2006/08/22(火) 18:23:46 ID:???
GJ!元の種死がゴミのようだ・・・
つまり、本編に足りなかったのはアムエネルギーだったんだよ!
329定期アゲ担当者:2006/08/22(火) 18:25:03 ID:???
今回もGJ&降臨乙!!
うん、ユウナは本編じゃ馬鹿すぎ、バカじゃない姿がコレだと思うね
はてさてラグとニルギは一体何処でジェナと再開できるのか、楽しみですね
次回の降臨をお待ちしております!!・・・え?ラクス?・・・ダレデスカソレハ

定期アゲ
330通常の名無しさんの3倍:2006/08/22(火) 18:50:28 ID:???
乙!第一部→第二部みたいに一旦間が空くのかナァと思ってたので嬉しいです。
>無印種で影も形もなかったことを説明しなきゃ
その結果、「ラクシズご一行様のオーブ在住はユウナの公認」となった訳ですね。
前大戦の重要人物の足取りを、その国の首脳クラスが知らないなんてどう考えても
おかしい訳で自然でもあれば、改変と言っても皆必然性あっての事なので凄く明確だと思います。
相当苦労されたみたいですね

・・・・と、「旧アスハ別邸──ベルネス邸」に何があって、その住人どもがどんな無責任な
馬鹿をやらかしてユウナに大迷惑をかけるか知ってる原住民が言ってみるテスト
331通常の名無しさんの3倍:2006/08/22(火) 18:53:38 ID:???
>「君だってそうじゃない。あの『歌姫』のことだって」
麦茶吹いたwwwww
332通常の名無しさんの3倍:2006/08/22(火) 18:55:26 ID:???
つーかなんかハイネみたいなユウナだなw
333通常の名無しさんの3倍:2006/08/22(火) 21:35:17 ID:???
>>326
大気圏ってのはその名の通り大気の存在する範囲のこと。つまり地表付近もそれに含まれる。
だから、大気圏突入後に大気圏を抜けるとかありえないし、シンが大気圏ははじめてっていうのも矛盾する。
それと、大気圏の熱っていう言い方もおかしい。これでは大気圏自体が熱をもっているように見える。
大気圏突入時に物体が加熱されるのは、物体に押された空気が圧縮され高温になるためであって
大気圏自体が熱をもっているからじゃないのね。

何かその辺勘違いしているように見えたんだけど、ちゃんとわかってたんならスマン。
334アム種15話:2006/08/23(水) 09:16:32 ID:???
第十五話 砥がれし牙

青年は車に寄りかかり、茜色に染まる夕空を仰いでいた。
その両目は、薄い色のサングラスに守られたその奥で細められ、
悲しげな光を湛え虚空を彷徨う。
心の中を、紅い瞳の少年の声が反響し続けていた。

『父も、母も、妹も。オノゴロで……殺されたんです。青い羽のMS───フリーダムに』

知らなかったわけではなかった。考えないようにして、逃げていただけだ。
戦争に巻き込まれた自分を被害者だと思い込み、正当化することで、
自分が戦争へと巻き込み、犠牲とした者たちのことを。

『今でも、覚えてます……。父や母の、焼け焦げた匂い。マユの遺した……片腕』

彼らを、後部座席に乗せていてよかったと思う。
どちらか片方でも助手席にいたならば、シンの語る過去に対し、
苦悶し顔を歪める自分がいるということを、知られてしまっていた。

「僕も立派に加害者で……罪人なんだ……」

ひとりごちた彼の心は、冷たく冷え切って。
撃ちたくなかった。でも、撃ってしまった。撃たざるをえなかった。
だが、何のために?
守るために撃って、その撃った弾が彼らを殺めて。
彼らのように何の罪もない者を殺しておいて、一体、何を守ろうとしていたのだ?
何ら明確なビジョンのなかった自分達に、その資格があったのか?
自分達は、力を持つべき人間ではなかったのではないだろうか。

「僕らは……僕は。どうすればよかったんだ……?どうすれば、彼らを守れた……?」

青年──キラ・ヤマトの呟きが、空に消えていった。
彼の空虚な問いに答えてくれる者は、いなかった。

 ****

「やはり……状況は芳しくないのですね」

特徴的なピンク色の髪は、アップにされていても非常に目立つ。
おまけに彼女の着込んでいるタイトスカートのスーツも、ピンク色。
ここが外から中を窺い知ることのできない、カーテンを引いた安ホテルの一室でなければ、
人目をひいてしかたなかったろう。
335アム種15話2:2006/08/23(水) 09:17:37 ID:???
ザフト軍・カーペンタリア基地近くに位置する路地裏のホテル。
そのうらぶれた場所には不釣合いな美女が、何枚もの書類を手に難しい顔をしていた。
彼女の名は、ラクス・クラインという。
かつてのプラント評議会議長、シーゲル・クラインの忘れ形見であり、今なおクライン派と呼ばれる
プラント議会の一大勢力に強い影響力を持つ少女である。
前大戦中は自ら艦隊を率いて戦った彼女は、戦後オーブへと移住。
政治の表舞台から姿を消すとともに、時たまこうして軍内部のクライン派とコンタクトをとって
最新の「生きた」情報へと目を光らせている。

(とはいっても、今回のユニウスを察知できなかったのは、不覚ですわね……)

連合による廃棄コロニーの移設作業の進展、アーモリーワンの被害状況、
プラント企業の株価変遷や、プラントにおける事件に対する反応、などなど。
アナクロな紙資料としてではあるが、それはより確実に彼女のもとへ情報を届けるための配慮。
こうして得た情報は大抵の場合が彼女のもとで眠るだけに終わるが、
時と場合によってはあるいは婉曲に、あるいは直接、カガリへと伝えられる。
ラクスなりに、その情報でカガリが少しでも動きやすくなれば、といった配慮だった。
未だ立ち直れず、彼女のことを手助けすることのできないキラに代わって、という思いもある。
スパイの真似事ではあるが、らしくないこと、汚いことをしているという自覚はあった。

「『ミーア』はどうなっていますか?」

その単語に、情報を持ってきたクライン派兵士はぴくり、と反応した。
あまり訊かれたくない話題のようで、わずかに眉を動かして、ただ一言「順調なようです」とだけ答える。

「そうですか……。彼女にも、苦労をかけますわね」

この情勢では、自分が直接プラントへ赴いて、議長と話し合う必要性があるかもしれない───。
頬杖をつくラクスは、思案に暮れる。どうしても、悪い方向に進んでいくようにしか思えない。
最悪、もう一度ラクス自身が偶像を演じる必要が出てくるだろう。

「例の、奇妙なエネルギーについてはもう少しかかるのでしょう?」

ラクスが書類をまとめながら訊くと、兵士は頷いた。
ドアのすぐ側にいた護衛の男が腕時計に目をやったのが、電源の入っていないテレビの画面に映っていた。
ラクスの顔も、書類を収めたブリーフケースの表面に、逆さになって描き出されていた。
それを見て、ラクスはあこぎさを身に付けた自分に向けて苦笑した。

 ****

そこは、モニターがいくつも並び、ケーブルが何本も走る、薄暗い奇妙な部屋だった。
336アム種15話3:2006/08/23(水) 09:20:02 ID:???

「どうだね?うちの諜報部の編集の腕は」

男は部屋の真ん中に据えられた豪奢な椅子に陣取り、膝に乗せた猫を撫でてやっていた。
自身に満ちた、さも愉快そうな声が閉鎖された空間によく響く。

「これで、いい。これで奴らを絶滅させる口実ができる」

ロード・ジブリール。
軍需産業から駄菓子の製造販売に至るまで、あらゆる部門を内包する一大企業グループ、
ジブリール・グループの総裁にして、過剰なコーディネーター排斥を唱える団体、『ブルーコスモス』
の二代目理事である。痩せ型で、銀髪。色白の肌と薄い色の唇が不健康そうな印象を与える。
彼は今、出来上がった「映像」の完成度に、高笑いが止まらなかった。
地球連合軍上層部にに強い影響力をもつブルーコスモス、その子飼いたる部隊、
『ファントムペイン』の功績によるところが大きい。

「彼らは実にいい仕事をやってくれたよ……そう思わんかね?」

ジブリールは上機嫌で、後ろに無言で立つ男へと語りかける。
肩幅の広いその男がみつめる先には、様々なMSが宇宙を駆けていた。

「別に、どうでもいい。その「コーディネーター」どもと戦うことができるならな」

それは、ユニウスセブンで撮影された映像を編集したものに他ならなかった。
カオスとインパルスの戦闘が、拡大される。

「それより、大丈夫なんだろうな、俺のギアのほうは」
「ああ、そのことか。それなら問題ない。例のエネルギー、『アムエネルギー』だったか──」

言葉を切り、サイドテーブルのワインを一杯口に含む。
上物のそれを、彼はゆっくりと嚥下する。

「───ミラージュコロイドの応用で、代用できるものがひとまずつくれそうだ。君一人分くらい問題ない」
「そうか」
「それと、先日から各地で観測されるようになった謎のエネルギー……あれもアムエネルギーらしいのだが、ね?」
「……ほう?」
「ひと月ほど前だったか、君が現れたのは。……君の他にもやってきた者がいるということかね?」
「……知るか」

値踏みするようなジブリールの言葉を、男は一蹴する。
全く以って無愛想な男だ。
しかしよほど機嫌がいいのかジブリールは無声の音を喉から出して笑い、モニターを一旦停止させる。
画面は、漆黒のジンが重斬刀を振り上げたところで止まっていた。
337アム種15話4:2006/08/23(水) 09:21:27 ID:???

「まあいい。君にはファントムペインに合流してもらう。何かとそのほうが融通もきくだろう」
「本当にその「コーディネーター」共は、貴様が言うほど強いんだろうな」
「ああ、その点は保証しよう。あの化け物たちに、どれだけ悩まされてきたことか」
「ならいい」

男は長髪を揺らして首を曲げ、肩の関節をごきりと鳴らした。
軍服の上からでも、その筋肉がわかる。
期待している──そう言ったジブリールに男は一睨みして言葉を返す。

「言われなくても、わかっている。そいつらが強いのならば問題ない」
「ならば、吉報を待っているよ。見合った対価を用意しよう。当面は少佐待遇で我慢してもらうが」
「……ふん、そんなもの、いるか」

意外そうな顔をするジブリールに、男は吐き捨てる。
心底、不用だと言わんばかりに。

「俺は強い奴と戦えれば、それでいい。強い奴を倒す、それだけだ」
「そうか──ま、いい。せいぜい頑張ってくれたまえ」

再びモニターの映像に集中しだすジブリールを意に介さず、
男は挨拶もせず踵を返す。

「ジェナス・ディラ……あいつがいないのなら、この世界の最強を、倒すまで……」

部屋を退出した男のもとに、小さな鳥のようなものが飛んできて、
その肩へと羽を下ろした。
338134で言った人:2006/08/23(水) 09:35:13 ID:???
この世界では一応キラ以外はなんかやってます。
ぶっちゃけキラはニルギース以上に動いてません。
ラクスはやっぱクライン派のコネということで。
ちゃんとスーツ着て働いてもらいました。意外にさくさく行って不思議。

>>333
ああ、こちらの説明不足だった、てことですか。
フィクションでよく使われる「大気圏突入」に関連した語を説明する比喩表現(?)
としての意味で「大気圏」という語を使っていたもので。
「大気圏で燃え尽きるザク」とかのアレです。
地表から十数キロ存在する大気の層が大気圏というのはこちらも把握しておりますゆえ。
ですから
>大気圏を抜ける→大気圏(の突入で危険な層)を抜ける
>大気圏ははじめて→大気圏(突入)ははじめて
>大気圏の熱→大気圏(突入時に起こる)の熱
といった具合に。
339通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 09:38:37 ID:???
GJ!!!
最後の人物はまさか……
340通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 09:42:23 ID:???
……ケケ対トリィWithハロか……
341通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 12:19:52 ID:???
ディ、ディグラーズ!?とうとう登場か!?
こういう時こそシーンが出てこないのが惜しい・・・
342通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 12:36:54 ID:???
キャラネタのスレ落ちたのか・・・
まあネタもなかったしなあ
343通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 12:52:11 ID:???
でぃ、ディグラーズ先生来たーーっ!
そうか、最後に落ちたときに種世界まで落ちてたんだな、アムエネルギー万歳

シーンがいなくても、アスランなら、アスランならきっと容赦しないでくれる…
344通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 13:28:12 ID:???
アスランか・・・シーンの代役務まるかな
ここまできたらゼアムエネルギーの暴走とかでシーン復活とかやってもいいと思う

ダメか(´・ω・`)
345通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 18:35:52 ID:???
GJ!
346通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 18:37:52 ID:???
ジュッテーム!!!!
347358 ◆KILLER/duk :2006/08/23(水) 21:12:37 ID:???
GJ!そして先生キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
348通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 21:32:49 ID:UjSyN5Vj
最強!最強!ディグラーズサイキョー!
ネオケケッ!
349通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 21:47:48 ID:???
フクロウ先生 KITA!!
350通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 22:04:32 ID:???
分かってるよな!作者様!
先生はアム種でもやっぱり「落ちる」んだよな!?な!?w
351通常の名無しさんの3倍:2006/08/23(水) 22:28:38 ID:???
やっぱ、先生は崖を背にしてバトルしないと
352通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 00:04:13 ID:???
このスレ始まって以来の活気があふれている
これも134の人のおかげだ!
しかしディグラーズ人気高いなおい
353通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 01:05:34 ID:???
だって月をバックに
「恨みはらさでおくべきか…えぇーーーゴルァーー!!」とか「まぁーーーた落ちるのかぁーーー!」とかアムエネルギーに満ちた言葉を発しまくるお方ですから
354通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 07:32:44 ID:???
更には、種に決定的に欠けていた「主人公勢にマジもんの挫折を与えうる魅力的な敵」としての役者と
しても充分過ぎるくらいだし。で、その一人だけど

>「僕も立派に加害者で……罪人なんだ……」
本編に比べればまっとうな悩み方とは言え、自分ひとりの想念に沈み込んでウジウジ悩んで
>ぶっちゃけキラはニルギース以上に動いてません。
で、結果として主体的なアクション起こさないでそのしわ寄せで女の方に迷惑、負担をかける
甲斐性なしっぷりは健在ですな、キラも。

しかし先生も
>「本当にその「コーディネーター」共は、貴様が言うほど強いんだろうな」
>「ああ、その点は保証しよう。あの化け物たちに、どれだけ悩まされてきたことか」
ジブ公なんぞに見事に騙されててクソワロタ。最後は喧嘩別れになるんだろーけど。
「俺のバトルの邪魔をする奴はオカマだからと言って容赦はしない!!」
と先生に罵倒されてヒステリー起こして親指の爪を噛み切るジブ公の姿を想像しちゃったよw
355通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 10:02:33 ID:???
いかにも先生の逆鱗に触れそうな姑息な策を巡らすタイプだからな
ジブリールは
356アム種16話:2006/08/24(木) 11:18:04 ID:???
第十六話 連合の驕り

アスランは、自室で一人思案に暮れていた。
眼前のデスクには、戻ってきたカガリから渡されたアタッシェケースが開かれ、
その中身を晒している。

───デュランダル議長から、お前に渡してくれるよう頼まれた。何が入っているのかは訊いてないが……。

アスランに渡すとき、カガリは首を捻りながらそう言っていた。
彼女の言うことに間違いはないだろう。知っていれば、彼女は渡さなかっただろうし、
あるいはその場で断っていたかもしれない。最低でも、顔に出ているはずだ。

「議長……あなたは……」

アタッシェケースのすぐ横に、開かれた便箋と、一通の手紙が読み終えたときの状態のまま、
乱雑に置かれていた。大振りの茶封筒もあった。
そして、アタッシェケースの中に納められた「それ」が、アスランの目を捉えて放さない。
懐かしくもあり、忌まわしくもある「それ」は、かつて彼にとって慣れ親しんだもの。

「俺は……どの道をゆけばいい……?」

白銀に光る徽章を納めた小箱を頂に、折り畳まれ収納された真紅の軍服。
いわゆる「ザフト・レッド」と呼ばれるエリート軍人の証。
二年前まで彼が袖を通していた一揃いの軍服が、皺ひとつなくそこに存在していた。

ザフトに、戻れ───……。これを贈った者の意を、代弁するかのように。
部屋の明かりを受けた軍服は、アスランの瞳に布の光沢を映し出していた。

 ****

ジェナスは、空腹を覚えて目が覚めた。
枕元の時計は、深夜を指している。
屋敷の中は基本的に自由にしていい──そう、家主のマリアからは言われていたので、
軽く何かつまもうとあてがわれていた部屋を出る。

「……あ、シン。起きてたのか?」

出たところで、暗い廊下でばったりとシンと出会った。
寝間着姿の彼は俯きながら、ゆっくりと歩いていた。

「ジェナスか。どうしたんだ、こんな時間に」

こちらに気付いて顔をあげたシンは、どこか元気がなかった。
357アム種16話2:2006/08/24(木) 11:19:11 ID:???

「ああ、ちょいと小腹が空いたもんで、なんか食おうと思って。シンは?」
「……なんか、眠れなくて、さ。居候の身で悪いけど、飲み物でも飲もうと」
「そっか」

ならば、行き先は同じというわけだ。
並んで足音を忍ばせながら歩いていく。
既に寝ているであろう他の住人を起こしては、申し訳ない。

「眠れないって言ってたけど、やっぱり例の核攻撃のことか」
「……ああ」
「だよな。やっぱ気になるよな」

その報せは、皆で食卓を囲んだ夕食のときにやってきた。
マリアやキラの母、カリダが料理を運び、男達が子供達の相手をしてやっている中で、
つけっぱなしになっていたテレビから、速報が飛び込んできた。

大西洋連邦の擁する地球連合軍により、プラントに対する宣戦がなされ、核攻撃が行われたこと。
プラントの新型兵器が使用され、核ミサイルはすべて撃墜されて、攻撃が失敗に終わったこと。
テロップだけのわずか数秒に満たないニュースだったが、数時間も経てば殆どのチャンネルは
この突然の開戦についての緊急特番で一色になった。

ザフトの兵士であるシンが動揺するのも、無理もない。

「ミネルバのみんな……無事だといいな」
「ああ」

彼らに世話になったジェナスとしても、気がかりではあった。
けれど核ミサイルとはいっても、旧世紀に製造された強力な威力を持つ兵器、と
スクールの授業で教わった程度でしかない彼は、どこか加熱する報道を見ても実感が湧かなかった。
核の威力を知る者と、知らない者。その差とも言える。
むしろ、開戦したという点のほうに目が行っていた。

「あんまり……考えすぎんなよ」
「わかってる……ありがとう───ん?」

キッチンとダイニングに、明かりが点いていた。
なにやら、人の気配もする。ぷんと漂ってくるいい匂いも。

「マリアさんあたりが起きてるのか?」
「さあ……?」

ドアノブを捻って、そっと開け放つ。
中にいた人物が、物音と気配に気付いてこちらを振り向いた。
358アム種16話3:2006/08/24(木) 11:22:37 ID:???

「───?」
「はっ?」
「へ?」

擬音でいうならばまさに「きょとん」。
互いが、互いの姿を見つめたまま硬直していた。

ダイニングにいたのは、派手なピンク色の長い髪の女性。
顔立ちは少女と言っていいかもしれない。
髪と同じくピンク色のスーツを着たその女性が、湯気の立つカップのインスタントヌードルを頬張り、
今にもすすりあげようかという姿勢のままこちらを振り返り、驚いたように硬直していた。

 ****

「お疲れ、カガリ」

ようやく終わった会議にカガリが安堵していると、ユウナが紙コップに入ったコーヒーを差し出してきた。

「───すまない。けど、もう夜遅いぞ。こんなの飲んだら眠れなくなるだろ」
「まあ、そうかもしれないけど。どっちみち、今の気分じゃ眠れないでしょ?」
「……」
「困ったもんだよねぇ。さて、どーしたものか、と」

こんな深夜おそくまで首長会議が紛糾したのは、当然のことながら今後の外交方針について。
大西洋連邦がプラントへの宣戦と同時に各国に向けて発表した同盟、
「世界安全保障条約機構」に加盟するか否か、という件についてである。

「反対なんだよねェ、カガリは」
「……ああ」
「僕も正直、あの内容はどうかと思う。『地球に害を及ぼす敵と戦う』なんて露骨すぎる。だけど───」
「ユウナ」
「ん?」
「前振りはいい。お前の意見を聞かせてほしい」

カガリのコーヒーを握る両手が、震えていた。
今にも握りつぶしてしまいそうだ。
だから、ユウナもお気楽ないつもの口調はやめて、真剣な表情になる。

「……同盟は、受けざるを得ないだろう。オーブの理念に反するとしても。残念だが、拒めないよ」
「……そうか」
「ただし」

顔を歪め俯くカガリ。
だが、ユウナは片手を肩に置き、続ける。
359アム種16話4:2006/08/24(木) 11:25:07 ID:???

「ただし、だ。加盟するなら、なるべく迅速にやるべきだ」
「?お前、何を──」
「早ければ早いほど、いい。それならばまだいくらでも、こちらから条件をだすことができる」
「あ───……」

例えば、資金援助や、被災者支援などの後方での協力への限定。
例えば、軍の派遣要請を受けた場合の、オーブ軍の理念に則った、非戦闘地域のみへの派遣。
オーブの理念、中立性を保つための「同盟国としての」要求。

返事が遅くなればなるほど、あちらの要求は細かくなり、縛られ、断りづらくなる。
こちらからも条件は出しづらくなるだろう。
だがここで折れておけば、名では理念を失おうと、実で維持することができるかもしれない。
内部において独自のスタンスを貫く───、ユウナはそう言っているのだ。
たしかにそれは、ひとつの道ではある。国民の人気よりも実益をとる政治家である、彼らしい意見だった。

「それに、内部から講和に向けて各国に働きかけることもできる。やり方次第、ではあるけどね」
「……そうか。同盟を受ける場合の問題点は?」
「まずはプラント。うちの国からはカーペンタリアも近いし、危険は増す。
 もっとも、これに関してはうちには二枚看板がいる。君は気が進まないかもしれないが」

アスラン・ザラとラクス・クライン。
敢えてユウナは「二枚看板」として明言を避けたが、カガリにも彼が二人のことを言っているのだとわかった。

「最悪の場合、彼らを特使に立てるなりして、断絶を防ぐ。あとは外交努力を続けるしかない」
「他には?」
「第二に、国民感情。二年前国を焼かれて、今でも大西洋連邦にはいいイメージを持っていない者が多い。
 焼かれたからこそ、あの国を恐れている者も多いが。積極的な支持は殆ど望めないとみたほうがいいだろうね」
「……」

どちらの道を行っても、茨の道。
ユウナの宣告は、そう言っているに等しかった。
国を焼かぬことと、中立性の維持。それは口で言うよりはるかに難しい。

「ユウナは、どうすべきだと思う」
「……うーん、難しいね。一応、これら二つをなんとかする裏技が、ないわけじゃないんだけど」
「なに!?本当か!?」
「うん、アレックスと、あとインパルスのパイロット──彼がいる今なら、なんとか」
「どうすればいい!?教えてくれ!!」

ユウナの言葉に、驚いたカガリはいきり立ち、掴みかからんばかりの勢いで椅子から腰を跳ね上げる。
どうどう。ユウナは彼女の興奮を抑えつけるかのように肩を叩き、なだめて椅子に座らせる。
国を焼くことなく、できるかぎりの中立性を保つ──そのためにどうすればいいか、彼女は必死だった。
360アム種16話5:2006/08/24(木) 11:26:58 ID:???

「あくまでうまくいく保証はないんだけどね。楽観的に見てうまくいくかどうかは半々──ってとこかな」
「それでもいいから、言ってみろよ」
「……うーん……でもこれ、僕も正直、あんまりやりたくないっていうか。カガリも多分嫌がるよ?」
「いいから!!ほら!!」
「あー……じゃあ。その、なんだ」

もったいぶってないでさっさと言ってくれ。苛立った目を彼女は向けてくる。
きっと、藁にも縋る思いなのだろう。
カガリに促され、ユウナは頬を掻きながら渋々と言葉に出す。
目は背け、本来であればそのようなあからさまに困ったような仕草で言われるべきでない台詞を。

「結婚しようか、カガリ」
「───は?」

カガリは目を丸くし、コーヒーを思わず取り落としそうになった。
361134で言った人:2006/08/24(木) 11:30:47 ID:???
あの子だって人間なんです、カップ麺くらい食べたっていいじゃない。
ユウナの言葉の真意についてはおいおい話の中で説明していきます故。

あと、この話は大体二話で一話分の内容、と考えて書いています。
だからおおよそ今は本編だと8話くらいと思っていただければ。
362通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 12:14:06 ID:???
ちょ、ラクスwww
相変わらず場面展開がお見事
アムドライバーだけに頼らぬ構成が素晴らしい
次回も期待してます
363通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 13:05:53 ID:???
乙!
「人間だから」云々と言うより、なんかほんとに仕事帰りの疲れたサラリーマンみたいなラクスですなw
キャラの描写の向こうに職人さんの日常が垣間見えそうw

と言うか、この時点でシンとラクスに面識を持たせますか・・・・・。
幾らなんでもシンがラクスの顔を知らないって事はありえない訳ですが。

>>350>>351
つか現時点で先生を崖に落とせる奴は存在するのだろうか。
何せジェナ自身もフルゼアムとは言え、「フォーギブン」を経てるんだし・・・。
364通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 13:12:06 ID:???
逆に考えるんだ、先生を落とすんじゃなくて飛行手段を奪った上で崖を崩してもいいと考えるんだ。
365通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 13:12:38 ID:???
>仕事帰りの疲れたサラリーマン
そう言えばアークエンジェルには温泉が付いてるんだよなwwwww
366通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 13:17:49 ID:???
>>365
同じやんけ!

まぁ現時点で先生に突っかかってボロクソな目に遭うとしたらまず間違いなくシンだろうなw
367通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 13:19:01 ID:???
×>>365
>>364
・・・・orz
368通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 21:47:43 ID:???
「もう容赦しない!!これが…これが…これがぁっ!これがっ、シン・アスカだぁぁぁっ!」
369通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 22:15:08 ID:???
てか何か足りねーと思ってたらアムドラレポートねえじゃん。
んじゃま失礼して

ジョイ「今回ご紹介するのは主役機『インパルスガンダム』っす」
ラグナ「アムドラレポート出張版!」
ジョイ「本機の最大の特徴はフレキシブルに武装を変更する『シルエットシステム』っす〜」
ラグナ「スピードズバットGUNGUNGUN〜ッてか」
ジョイ「お約束っすけど造ってくれなんて〜」
ラグナ「イワネーヨ。大体からバトルに必要なのはギアじゃなくてバイザーだろーが。
    ちゃんとメンテしとけよ〜。今後のオレっちの見せ場のために!!」
ジョイ「あっは〜ん………」

インパルスガンダム

攻撃力:シルエットによって変動
防御力:シルエットによって変動
スピード:シルエットによって変動
出力:電池
主人公度:MINIMUM
370通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 23:38:23 ID:???
>>369
ソレダ!
だが、毎回これを作れって厳しいぞw
そしてテラカワイソス>主人公度:MINIMUM
371通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 23:51:55 ID:???
バルドフェイドにうどんすすらせても面白くも何ともないが、ラクスにカップラーメン食わせた
だけでこんなにも魅力的になるんだな。
職人さんGJ
372アム種17話:2006/08/25(金) 16:33:37 ID:???
第十七話 過去の呪縛

「へえ、じゃあシンたち、無事に降下できたんだ」

シンが彼の家族の眠る場所へと、対面を果たしていた丁度その頃。
ザフト軍月軌道艦隊の拠点衛星、そのドックに、ミネルバの姿があった。
ユニウスセブンの破砕作業に従事し、デュランダルとカガリを本国へと送り出してから、
傷ついた艦体を休め、癒すためにこの基地へと寄港していた。
クルーたちには休養命令が出され、各々基地内で各自の休暇を楽しんでいる。

「うん、そうみたいだよ。オーブの近くに降りて、今はオーブにいるんだって」

艦のレクリエーションルームに集まって談笑していた若いクルーたちのところに
メイリンが持ってきたのは、ひとつの吉報だった。
破砕作業を行ったまま帰還せず、そのままアスランたちと共に降下していったシンの行方は、皆が心配していた。
レイが無表情ではありながら、小さく頷き。ルナマリアやヨウランたちが顔を見合わせ、ほっと息をつく。
情勢が微妙とはいえ、中立国のオーブならば当面は安心だ。
明らかに反コーディネーターの姿勢を打ち出す大西洋連合の地域に落ちるよりは、ずっとましだろう。

「──あ、あと。MS隊に今度、隊長さんがくるって。艦長が副長と話してたけど」
「隊長?……なるほど、シンの代わりの補充要員か」
「誰、どんなヒト?」
「ちらっと小耳に挟んだだけだから、そこまでは……」
「もー、メイリンってばやっぱり、肝心なとこで抜けてるのよねー」
「あ、お姉ちゃんひどーい」

仲間の安否が確認できたということが、彼らを朗らかにさせる。
艦も修理中で、任務も未だ特に出ていない。下士官がほとんどの彼ら若い兵は殆どすることを終えてしまっていたから、
休暇を満喫できるし、お気楽なものだ。

そして数日後、補充のMSパイロットの着任とともに、ミネルバへと新たな任務が与えられる。

パイロットの名前は、ハイネ・ヴェステンフルス。
任務内容は───地球への降下。作戦名『スピア・オブ・トワイライト』の一環としての、各地での遊撃任務である。

 ****

「ら、ら、ら、らっ……!?───ラクス・クラインんっ!?」
「?」
「はい、なんでしょう」

硬直が解けたと思ったのも、束の間。
テーブルに腰掛ける女性に向かい指差しながら狼狽するシンの声が、
夜のベルネス邸のダイニングへと響き渡った。
今の大声で、起こされてしまった者がいなければいいのだが。ジェナスはシンの慌てぶりを見て、
どうでもいいことを心配する。
373アム種17話2:2006/08/25(金) 16:36:02 ID:???

「ほ、本物なのか───いや、なんですかっ!?」
「はい、そうですけれど。えっと……あなた方は……どちら様?」
「あ、そうか。おい、シン」

まだぱくぱくと口を開閉させているシンを肘で小突いて、自己紹介を促す。
彼女がこの屋敷の住人であるならば、少なくとも自分達もここで世話になることになった旨、
報せておいたほうがいい。説明するなら「異世界の住人」なんて存在のジェナスよりも、シンのほうが適任だ。

「───あ、俺たち、しばらくこの屋敷に世話になることになって……」
「まあ、それは。2日ほど前から出かけておりまして、知らなかったものですから」
「俺、シン・アスカっていいます。こいつはジェナス・ディラ」
「改めて、はじめまして。よろしくお願いします、シンさん、ジェナスさん。──ラクス・クラインですわ」

女性、ラクスは柔らかい笑顔で二人へと小さく頭を下げる。
二人もつられて頭を下げる。ユニウス落下の際に降りてきたことや、ユウナの世話でここにいること、
シンがプラントから来たといったことなどを二人は説明した。
警戒されるかとも思ったが、幸い彼女はそうした様子もなく。
食事がまだなので食べてもいいか、と尋ねる彼女に二人は頷き、
ラクスがインスタントヌードルをすすっている間を利用して、シンが彼女のことをジェナスに教えてくれた。

ラクス・クライン。プラントの象徴的アイドルであった人気歌手で、
デュランダルの二代前(臨時評議会議長、アイリーン・カナーバも合わせれば三代前)の
プラント最高評議会議長、故・シーゲル・クラインの一人娘。
前大戦では主戦派との対立からプラントを一時離れるも、
三隻から成る機動艦隊を指揮し、迫り来る核ミサイルの脅威からプラントを守り抜いたことから、
救国の英雄として今も称えられている。

「一時期、裏切り者扱いされてた時期もあったらしいけど……。でもそれも、当時の主戦派の陰謀って話だし」
「へぇ……」
「いえ……裏切り者といえば、裏切り者だったでしょうね、私は。目的のために多くの犠牲も出しましたし……」

責められこそはしても、褒められるようなことは何もしておりませんから。
もっと良いやり方もあったでしょうし。
ラクスはそう言って、シンの興奮した物言いに対し、困ったようにその顔に微笑を浮かべる。

「確かアスランさんの婚約者……でしたよね?」
「へ?マジ?あの人、そんなに凄いのか?」
「昔の話ですわ。親同士が決めたものでしたし……その親同士が、主戦派と休戦派に分かれてからは何も」

それでも、行動は共にしていたらしい。
プラントを離れたラクスに、アスランは合流し。
当時の新鋭機・ジャスティスを駆る彼はもう一機のエースであったフリーダムと並び、
多くの戦果を挙げていったという。
フリーダムの名前を出した際に、シンの表情は僅かに歪んでいた。
けれどそれがラクスや、アスランの駆っていたジャスティスに対してまで向けられることはなく、
あくまでフリーダムのみに向かってのものであることを窺わせる。
坊主憎けりゃ袈裟まで───、というわけでもないらしい。
374アム種17話3:2006/08/25(金) 16:36:57 ID:???

「それよりも……プラントでは『そういう風に』伝えられているのですね、私達のことは」
「?」
「いえ。気にしないでください。こちらの話ですわ」

箸を置いたラクスはどこか、自嘲するような笑顔を浮かべて呟いた。
即座に変えられ、煙に巻かれたその表情は、まだ20歳にもならぬ若者がするものとしては、
ひどく物憂げで大人びたものであった。

「……ん?」

窓の向こうで、何かが一瞬光ったように見えた。
絶壁の上に立っているベルネス邸だから、あの方向は海のはず。
航行する船の、ライトか何かだろう。
ほんの少し目をやっただけでジェナスは、視線を会話する二人へと戻した。

 ****

──同時刻・オーブ領海線上にて──

「やーれやれ。残念だったねー、この日の当番だったなんてさ」

数人乗りの巡視船が、炎上し沈んでいく。
入れ替わるようにして水面が盛り上がり、姿を現したのは一体の重厚なフォルムをもつMS。

「ま、こっちも任務だから、悪く思わないでよね」

定期パトロールのためやってきた巡視船を襲撃、ランスの一撃によって沈めた犯人、アビスのコックピットで、
パイロットのアウル・ニーダは大袈裟に手を合わせながらひとりごちた。
沈没していくのを見届けてから通信を切り替え、周囲に潜む「部下」たちに指令を送る。

「ん、オッケー。楽勝、楽勝、っと。お前ら行ってきていいよ」
『ハッ。アウル様はこの場にて待機を』
「りょーかい。頼むよー、『ソキウス』さんたち」

───アウル「様」、ねえ。
明らかに柄ではないと思いつつ、月の光を受けて水面を走っていく十数条の航跡を見つめる。

「ま、さっさと帰っても変なロン毛のおっさんは増えてるし、つまんねーし?暇つぶしにはなるわなー」

ナチュラルに対しての絶対的服従を義務付けられた、戦闘用コーディネーター・ソキウス。
そのお手並みをじっくり拝見させてもらうことにしよう。
作戦の内容は、暗殺だ。何故その人物が狙われるかなど、アウルの知るところではない。
命令された任務だから、やるだけ。命令されたから殺す。
受けた命令の通り、今回のターゲット───『歌姫』、ラクス・クラインの命を、奪ってくるだけだ。
375134で言った人:2006/08/25(金) 16:42:27 ID:???
正直、難産なのは今回が1番難産だったかもしれません。
・戦中にラクスたちの行ったことに対する戦後の細かい評価
・シンのフリーダムとカガリ以外に対するラクシズメンバーへの気持ち
この二点が本編でさっぱりだったもんで参った参った。
こういう形になりましたが、正直説明不足感が否めない(汗

ラクスの襲撃者はコーディから連合へ。襲撃してメリットのある勢力を考えていくと
消去法で連合しか残らないんです……。
376通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 16:52:57 ID:???
難産乙!
種死はあんまり見てないから半端な知識しかないからわかりませんが、この先も頑張ってください
ここで、襲撃があるということは…
そして先生がいるということは……

も り あ が っ て ま い り ま し た !
377369:2006/08/25(金) 18:51:58 ID:???
職人さんGJ
何故だろう? 普通の会話してるラクスが新鮮だよw

>>370
いやいや、職人さんに負担かけよ思って言った訳ちゃうよ。
ただ、冒頭のジョイとラグナの掛け合いとアムドラレポートがあって当たり前になった頃から
アムドラ見だしたから落ち着かんなあと。


でまた考えた


ジョイ「今回ご紹介するのは『セイバーガンダム』っす」
シーン「凸広い奴のか」
ジョイ「飛行形態に変形出来る他、固定ビーム砲も計四門もついてるっす」
シーン「ほう」
ジョイ「インパルスと同じくデュートリオンビームエネルギー供給システムも備え長期戦闘にも対応してるっす〜」
シーン「でも顔が犬っぽいな」
ジョイ「え?」
シーン「こんなんじゃピープルのハートは掴めねえ。ジョイ適当に改造しといてくれ」
ジョイ「え? ちょ、改造って、シーン乗るつもりっすか〜? だってあんた…」
シーン「ディグラーズが出てきたんだ。俺が生きてて何の不思議がある!?」
ジョイ「職人さん出せないって言ってるのに〜!?」

セイバーガンダム

攻撃力:それなり
防御力:まあまあ
スピード:結構速い
出力:田宮さん
頭髪ヤバイ度:MAX

つか、続けても良い?
378通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 19:09:58 ID:???
>369
いいんじゃない?
続けてもらえたほうがいいやつがとりあえずここに一人
379通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 19:35:57 ID:???
あんたガッツリ埋葬されてたじゃないかーーーー!!www
でも御二方GJ!
380369:2006/08/25(金) 20:52:32 ID:???
おk。じゃ、ちょっくらがんがってみるさ

アム種に追いつく意味も込めてもういっちょ投下

ジョイ「今回は『ザクウォーリア ルナマリア・ホーク仕様』」
セラ「ミニスカなんかはいちゃって」
ジョイ「主に高エネルギービーム砲『オルトロス』を装備してのバックアップを担当してるっす」
セラ「当たらないのにね」
ジョイ「なんかトゲっちくないっすか?」
セラ「は? うるさいわね。何? アンタも私に挑戦してんの?」
ジョイ「ええ? 挑戦って何言ってんすか?」
セラ「そ。なら黙ってて私この子ムカツクの」
ジョイ「………トゲっちぃ」

ザクウォーリア ルナマリア・ホーク仕様

攻撃力:命中率なんて単なる目安です。あとは負債補正で補えばいい
防御力:PS装甲じゃありません
スピード:遅そうで速そうで実はそれほどでもない
出力:一番世に出てるゲーム機作ってるところ製電池
アホ毛の角度:約120゜


セラはとげっちくなきゃセラじゃないやいってことでシンの代わりにちょいと突っかかり気味
今後の課題としては種連中をどう使うかだなあ
アムドラメンバーと違って奴らの台詞が浮かばねえ…おかしいな脳内ZEAMはフル稼働してるのに
381通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 20:53:22 ID:???
確かにセイバーはシーン向きかもwでも顔が犬っぽいってあんたwww
382通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 20:56:17 ID:???
胸か、それとも尻に対抗意識かセラ!?
383通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 20:58:35 ID:???
いいからシーン出してくれYO!

ごめんなさいすいませんムリだってのはわかってますこれからも頑張ってください
384通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 21:30:47 ID:???
乙!
>正直説明不足感が否めない(汗
しょうがないですよ。
そもそも、「前大戦を(それも力で)終結させたキーマンが(ミーアみたいに政治的にも利用価値があるのが
明確なのにも関わらず)揃いも揃って表舞台から隠蔽されている」と言うデス種本編の状況設定そのものが
狂っているのですから。
結局の所それは、
彼らを本格的に稼動させると一クール保たない
と言う「必然性」では無く「作り手の都合」によるものなのはあの第四クールのテイタラク見れば子供の目にも
明らかなわけで。
続編なんてもんは、だから前作の人物にどう枷かけるかで頭捻るわけですが、それを見て見ぬ振りするのが
負債の負債たる所以。

>そして先生がいるということは……
そう言えば先生ファントムペインなんだっけ。
アムドラのいつものパターンで行くと、連合3馬鹿がしくじった後に「ガキなんぞに任せるからだ・・・俺一人で
充分!」とネオに大見得切って出撃になりそうですけどね。





・・・・・・大体そう言う時は決まって崖から落とされるんだけどw
385通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 21:53:20 ID:???
>あんたガッツリ埋葬されてたじゃないかーーーー!!www
>シーン「ディグラーズが出てきたんだ。俺が生きてて何の不思議がある!?」
>いいからシーン出してくれYO!
コラポレーションする作品がデス種じゃなくGガンなら、
ジェナス「シーン!あんた死んだ筈では!?」
シーン「俺は現にここにおる、それに何の不思議があろうか!」
で楽勝で通用するんだけどねぇw
386通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 22:03:06 ID:???
シーンとジェナスしか使えない技といえば、もう一つはエッジバイザーの「クロスアタック」だね。
スパロボやったらキラが普通にやっててちょっと凹んだけど。
387通常の名無しさんの3倍:2006/08/26(土) 00:47:08 ID:???
ジョイ「今回紹介するのはザムザ・ザーッス!」
タフト「カニかカニかカニかカニカカカカ!?」
ジョイ「機長・操縦士・砲撃手の3名で操縦する機体で、重力下での単独飛行も可能ッス〜♪」
タフト「飛ブノカ飛ブノカ飛ブノカ!?ビュンビュンビューン!!ビュゥーーーン!」
ジョイ「最大の特徴は戦艦クラスの陽電子砲をも跳ね返す陽電子リフレ…」
タフト「ビューン!ビュビュッビューーーンってイッテ、ガーーーッて撃ってカキーンカキーンカキーン!」
ジョイ「更に武装も…『ドッカンドッカン!バルバルバルバルーーン!!』ってああぁぁあ〜!」
タフト「ハサミデチョッキンチョッキンチョッキンナー!!」


ザクウォーリア ルナマリア・ホーク仕様

ザムザ・ザー

攻撃力:登場した第一話は高いよ 。
防御力:登場した第一話は固かったよ。
スピード:goodspeed
出力:高め。
やられメカ度:MAX

388369:2006/08/26(土) 22:24:04 ID:???
>>382
残念、脚よ。
アムドラじゃあ露出すくなかったしなあ…

てか、ザムさんヤラレタorz
アム種本編で出てくるまで投下待ちしよと思ってたのが仇となったか
ま、多分気にせず投下するがなw
じゃ、ガイア逝っとこ

ジョイ「今回ご紹介するのは『ガイアガンダム』」
虎「おう、最近のバクゥは変形するのか」
ジョイ「そうっす。四足の獣型に変形し機動力で敵機を翻弄するっす」
虎「いいねえ〜」
ジョイ「それはそうと何飲んでるんすか?」
虎「コーヒーだ」
ジョイ「はあ」
虎「実は最近新しい世界が見えてな。コーヒーにいろんな種類のヨーグルトソースををだな」
ジョイ「ああ、長くなりそうなんで今回はここいらで〜」
虎「俺のオススメは木苺にイシャイラズだ」

ガイアガンダム

攻撃力:非力
防御力:どうだろ?
スピード:犬
出力:ゾイド
パタパタ犬度:シルバーボルトじゃねえって
389定期アゲ担当者:2006/08/27(日) 01:20:31 ID:???
結構下がったので定期アゲ
390アム種18話:2006/08/27(日) 17:57:56 ID:???
第十八話 テル・ザ・トゥルース

警報が、鳴り響いていた。
ばたばたと逃げ惑う人影が、いくつも連なり。
繰り返される発砲音が、この騒ぎが死を伴った危険なものであるということを、
聞く者へと嫌が応にも教える。

「でええーいっ!!ったく、いつかこんな日がくるんじゃないかと思ってたが、ついにきやがった!!」

倒したテーブルを盾代わりにし、放たれる銃弾を防ぎながら毒づく男が一人。
弾の無くなった拳銃のマガジンを代えるその男は、片目をつぶす大きな傷を顔に持ち。

「なんなんですか、あいつらっ!?いきなり撃ってきて!?」

もう一方のテーブルの影で同じように弾層交換をする少年が、これまた同じように愚痴る。
深夜、ベルネス邸を突然に襲った襲撃者たちに応戦を続ける、シンとアンディであった。

「十中八九、ラクス狙い……大方、連合か、プラントだろうよっ!!」
「そんな……でも!!プラントが……」
「ザラ派は、彼女を恨んでるからな!!まあ、僕は──っと、連合の連中と見るがねっ!!」

銃撃の切れ目をかいくぐって、反撃の一射。
その射撃の腕は、軍人であるシンから見ても驚くほど正確で、
黒衣に身を包んだ襲撃者たちを次々と撃ち抜いていく。

「何ぼさっとしてる!!今のうちにマリアたちと合流するぞ!!」
「え、あ──は、はい!!」

すごい。正直、その言葉しか出てこなかった。
見とれていたシンはアンディから怒鳴られ、我に返り後に続く。
一体この人は何者なんだろう───、そんな風に疑問に思いながら。

 ****

「はあ!?シェルターに逃げ込まれたぁ!?なにやってんだよ、あんたら!?」

任務をソキウスたちに任せ、アビスのコックピットで居眠りしていたアウルは、
報告のために戻ってきた一人によって(隠密行動のため通信は使用不可)、たたき起こされた。

『申し訳ありません。ラクス・クラインの周囲に、予想外にナチュラルの人々が多く──』
「あー、はい、はい。安易に撃てないってか」
391アム種18話2:2006/08/27(日) 17:59:31 ID:???

『ソキウス』。それは、ナチュラルへの絶対服従を課せられた、ナチュラルを「絶対に傷つけてはならない」、
ナチュラルのためだけに存在する戦闘用コーディネーター。「ブルーコスモス」がその存在を許容する、
唯一のコーディネーターという人種である。
そういう仕様で生み出されているのだから、納得するより仕方が無い。

『現在ターゲットの立てこもったシェルター外壁に攻撃をしかけておりますが、破壊に成功したとしても』
「りょーかい。みんな下がっててよ、破壊したあとは僕がやるからさ」
『はっ』


報告に来たソキウスが彼の乗ってきた機体、ディープフォビドゥンを転進させ、
爆発と光の見える陸地のほうへと向かっていく。
馬鹿正直な連中のことだから、本当に外壁のみ破壊して、後退するはずだ。

「ほんじゃ、まー。いきますかね……っと。ほんと、面倒な任務だこと」

彼は愚痴りながら、アビスの機体をゆっくりと陸地に向けて進めていった。
もういいから、終わらせて帰ろう。
この時点の彼は邪魔者が入る可能性など、全く心の片隅にも持っていなかった。

 ****

「『ソキウス』!?」
「ああ。おそらくな。マリュ……失敬、マリアが全く発砲を受けてないところを見るに、間違いなかろう」
「そのおかげで、なんとかこうやってシェルターに辿り着けはしたんだけど……」

マリアが天井を見上げると、他の一同も釣られて上を見る。
地響きに揺られ、電灯が時折点滅するそこからは、振動に合わせ付着した埃が舞う。

「MSまで持ってきてたとはなぁ……」
「……どうあっても私を、殺したいようですわね?その方々は」

しまった、とばかりに髪をかき上げ、額を押さえる隻眼の男に、
自嘲気味にこの状況を皮肉るピンク髪の少女。
談笑中に襲撃を受けたせいで、彼女はあいかわらずのスーツ姿だった。
キラはさきほどから俯いたまま。ジェナスもシンも拳を握り締めて立ち尽くす。
部屋の隅では、他の二人の年長者──、キラの母・カリダと、マルキオという盲目の男が
不安がる子供達を集めて、安心させようと心を砕いている。

「なんとかせにゃあなあ。いくらここが頑丈とはいってもMSの火力はちと厳しいぞ」
「……くそっ!!インパルスさえあれば、あんなやつら!!」
「そう自分を責めるなよ。俺だって同じだ、アムジャケットがあればやつらが
 MSなんて持ち出してくる前に取り押さえて、無力化できてたかもしれないってのに」
「今は後悔してる場合じゃないわ。なんとかすることを考えましょう」
392通常の名無しさんの3倍:2006/08/27(日) 18:00:16 ID:???
>>389
今回は降臨なしだったし、それにやっぱりスレの性質上、

アムキャラのカゲキな大立ち回り>(このスレのピープルの盛り上がりの壁)>(特に戦闘の絡まない)四馬鹿描写

と言う図式が成立するのはしょうがないのかも知れませんね。
デス種本編知ってると134さんが如何に努力されてるのかが相応に理解出来る部分はあるのですが・・・・。

と言う訳で保守。
393アム種18話3:2006/08/27(日) 18:00:31 ID:???
壁を殴りつけ、追い込まれた自分達の立場に憤るシンを、ジェナスが諭すように言う。
マリアも続き、二人をなだめる。
シェルターという密閉空間に追い込まれた彼らは、いわば袋の鼠。
なにか打開策を考えない限り、このままやられるのを待つだけだ。

「……『扉』を開けよう」
「キラ!?」

考え込む一同の中、発言したのは、逃げ惑う最中からずっとだまりこくっていた、キラだった。
静かに、はっきりとした口調で。なにかを、決意したような目つきで。
ラクスに向かい手を差し出す。

「キラ、お前……いいのか。俺が乗ってもいいんだぞ」
「……はい。大丈夫です。ラクス、『鍵』を」
「え……でも、それは……っ」

───『扉』?『鍵』?
話が飲み込めないジェナスやシンを取り残し、
キラはラクスへと詰め寄っていく。

「大丈夫、だから。僕はみんなを……死なせたくはない」
「───っ……」
「ユウナさんがカガリに黙ってまで、あの機体を用意してくれたのは、こんな時のためだと思うんだ」
「……キラ……」
「さあ、時間がない。はやく」

にじり寄るキラにラクスは狼狽し、助けを求めるようにマリアやアンディ、
シンやジェナスのほうへと視線を向ける。
だが、彼が一体何をしようとしているのかがわからないジェナスたちが傍観に徹するのはもちろんのこと、
意志の固いキラの様子に、マリアやアンディたちまでもが頷きラクスを促す側に回り、
迷い躊躇う彼女はじりじりと追い込まれていく。

「……わかり、ました」

遂には、観念したようにラクスは嘆息し。
そのピンク色のスーツの懐から、一枚のカードキーを取り出し、キラへと渡す。
渡す瞬間も躊躇いは続いているようで、キラに渡したキーから彼女の指が離れていくには、
しばしの時間を必要とした。

「ありがとう……。それと───シン」
「えっ!?は、はい!!」

キーを受け取った彼は、軽くラクスの肩を叩いて抱き寄せ、感謝の意を表し。
踵を返し壁の一角に設けられたキーボード式のコントロールパネルへと向かう。
394アム種18話4:2006/08/27(日) 18:01:46 ID:???

「銃に……弾は、まだある?」
「え…?あ、はい。あと二発……」
「そう。なら十分だ。それは、残しておいて」
「へ?」

カードキーをリーダーへと噛ませ、ディスプレイにパスワードを入力する。
彼が叩き操作した文字は六文字。
「G・U・N・D・A・M」──ガンダム。横から見ていたジェナスには、そう読むことができた。
ゴゥン……と、重厚な音を立てて、キラの正面にある壁の一部がスライドし、開いていく。

「君に、判断は任せる」

開ききるのに、そこまで時間はかからなかった。
また、開ききっても、その幅は人が一人やっと通れる程度といったところ。
その向こうには、何か広い空間らしきものが見える。

「どうしても赦せなかったら───そのときは撃ってくれていい」

キラはその隙間へと身を滑り込ませ、こちらへと背を向けたまま語る。
左手でなにやら壁を操作すると、彼の姿を覆い隠すかのように扉が再び閉じていく。

「?……何が言いたいんです?」

撃て、と言われても。誰を?何を?
わけがわからない、といった様子で彼の後姿を見送るシンは、
殆ど閉じかかった扉の向こうのキラに尋ねた。

「───君の家族を殺したMS。フリーダムのパイロットは、僕だ」

キラは言い残し、扉の向こうに消えた。
突然の告白に伸ばしかけた右腕を硬直させ絶句するシンと、
彼を心配げに見守る一同が、その場に残された。
真実を告げた瞬間、キラがどんな顔をしていたのか。
それは、誰にもわからない。
395134で言った人:2006/08/27(日) 18:06:36 ID:???
これ、三回くらいイチから書き直してます。
これでも微妙に納得いってなかったり。
最初はMS、ザフトからかっぱらったアッシュだったんだけどなぁ。
ジェナスの影が薄い……。今は焦点がキラとシンに向いてるので
仕方ないといえば仕方ないんですが。ここ切り抜けたらぼちぼち目立ってくる
予定なので……。
396通常の名無しさんの3倍:2006/08/27(日) 18:09:34 ID:???
乙!
職人さんの投下の邪魔をしてしまうとはorz
これが392のやる事かよ・・・・・。リロードしときゃよかった。

>「どうしても赦せなかったら───そのときは撃ってくれていい」
そうか・・・・キラにはKKの生霊が取り憑いたか・・・・・。
397392:2006/08/27(日) 18:11:12 ID:???
乙!
職人さんの投下の邪魔をしてしまうとはorz
これが392のやる事かよ・・・・・。リロードしときゃよかった。
ジェナのゼアム鮭のグラン・インパクト喰らって来るorz

>「どうしても赦せなかったら───そのときは撃ってくれていい」
そうか・・・・キラにはKKの生霊が取り憑いたか・・・・・。
398392:2006/08/27(日) 18:11:58 ID:???
しかも2重カキコorz
399通常の名無しさんの3倍:2006/08/27(日) 18:24:28 ID:???
毎度GJであります。自分はデス種本編知らないのですが楽しんで読ませていただいてますよ

>>396
あーそのセリフどっかで聞いたと思ったらKKかあ
400369:2006/08/27(日) 19:40:40 ID:???
職人さん乙&GJ!
キラ>>つか何かカコヨクなってね?
用意しといたアムレポフリーダムとキラのキラのキャラに違いがありすぎるやんけ…
でも気にせず投下


ジョイ「今回h」
キラ「やあ、皆待たせたね。いよいよ真の主役の登場だよ」
ジョイ「あの、ちょ」
キラ「もちろん今回の紹介は『フリーダム』だよね?」
ジョイ「そうっす。やっとしゃべらせてもr」
キラ「言う事なんて無敵しかないでしょ? じゃこれで終わりだね。今日はこれから脳内フレイとにゃんにゃんするんだから」
ジョイ「え? ちょ、ま」
キラ「やめてよね。君みたいな脇役に僕の壮大な妄想を止められると思ってるの?」
ジョイ「………あ…はぁ………(小声)あんたはいったいなんなんだーっす………」

フリーダムガンダム

攻撃力:ふるばーすと
防御力:やめてよね。僕が被弾なんてするわけ無いじゃないか
スピード:はいまっと&瞬間移動装置
出力:核
負債補正度:計測不能
401通常の名無しさんの3倍:2006/08/27(日) 19:42:05 ID:???
>>400
テラワロスw
流石キラwww
402通常の名無しさんの3倍:2006/08/27(日) 20:20:16 ID:???
負債補正がなければ、シンたちはこうなれたんだと思いますよ
ともあれGJ!
ここで早めに二人のわだかまりへ布石を作っておくことで
わけのわからないことにはならずに済むかなーとか

しかしどのキャラクターも実に生きてますね。見習いたいです
403通常の名無しさんの3倍:2006/08/27(日) 20:29:42 ID:???
というか負債に見習わせたい
404定期アゲ担当者:2006/08/27(日) 21:37:50 ID:???
>>403
全くだ
405アム種19話:2006/08/28(月) 07:56:00 ID:???
第十九話 咎人の翼

瓦礫と化した建物が、音を立てて崩れ落ちていく。
炎があがり、完膚なきまでに破壊しつくされた豪邸と、
それを破滅させた襲撃者達の巨躯を、明々と照らし出す。

「あれっぽいな」

アウルは瓦礫の中に現れた白いシェルターの壁面を見て、
簡単すぎるこの任務に内心つまらなさを感じつつレバーを引き、
アビスへと一斉砲火の構えをとらせる。
いくら頑丈なシェルターとはいっても、あとはこの一射で終わるだろう。

「!?」

緊張感も何もなく引き金に彼が指をかけたその刹那、瓦礫の中から二条のビームが伸びて。
アビスの両サイドにいた二機のディープフォビドゥンのコックピットを正確に貫く。
左右からの爆発に包まれながらも後退をかけ、各機へと散開を命じるアウル。
動きにくく狭い陸地から、各自機体の特性にあった海へとMSを操作し、移動させ。
ビームの放たれた瓦礫の山を遠巻きに取り囲み、何らかのアクションが起こるのをじっと待つ。

「なんだよ一体っ!?」

機能を停止し、燃え盛り膝を折る二機のディープフォビドゥン。
その先、シェルターの前にうずたかく積まれた瓦礫が、突如として弾け、黒い影が飛び出す。
───速い。ゲシュマイディッヒ・パンツァー……ビーム偏向機能を、展開する暇さえもなかった。
さらにもう二機、撃ち抜かれ。その戦闘力を失いスクラップに姿を変えられる。

「MSぅっ!?」

着地した影の持つ、小型の二丁拳銃のようなビームライフルが、彼らを屠った正体だった。
あっという間に四機ものMSを行動不能に陥れたそのMSは、
背後のシェルターを守り、彼らの行く手を阻むように立ちふさがり、
二丁の銃をつきつける。

楽勝すぎて退屈と思われた仕事───……その状況が急速に変化した、その瞬間であった。

 ****

「……ごめん」

コックピットの中で、自身の手にかけたパイロットたちに対しキラは、そっと呟いた。

機体の乗り心地は、悪くなかった。
各部のレスポンスは良好、機動性、運動性も申し分ない。
まるで操縦桿やフットペダルが、自分の両手両足に吸い付くようだ。
さすが、「あの機体」をメインの素体として使っているだけのことはある。
406アム種19話2:2006/08/28(月) 07:56:50 ID:???

───ストライク『ノワール』。
彼は今、かつての愛機と同じ、ストライクの名を冠するこのMSのコックピットにいた。
はじめてこの機体を見た日のことが、昨日のことのように思い出される。

かつてのアスハ邸別宅地下に、シェルターと共に建造されたMS格納庫。
ある日彼はユウナに呼ばれ、マリュー……マリアたちと共にそこを訪れ。
直立不動の姿勢で静かにたたずむ、二機のMSを見ることになる。

『情勢が、キナ臭くなってきている。いつ君たちに危険が迫るともわからない』───、
ユウナは、二機のMSを見上げながらそう説明した。
カガリはこのことを知らない、こちらの一存だ、とも言った。
彼はわずかにそれらの機体を見上げただけで、碌に細部を見ようともせずに背を向けた。
『僕はもう、MSには乗りませんよ』、そう一方的な拒絶の言葉を投げつけて。
背中越しでも、マリアやバルドフェルド……アンディが諦めたような目でこちらを見ているのがわかった。

『それでも、いい。ここの鍵は君たちに預ける。定期的に整備の人員もよこす』

いつも軽薄そうにしている青年の声は、笑っていなかった。

『カガリの悲しむ顔は……見たくないからね』

そのときは、それっきり。答えもせずにキラはその場を、逃げるように立ち去った。

「……でも、もう逃げない」

結局のところ、自分は逃げていただけなのだ。
守ることから、自分の手を汚すことから。
被害者になりきることによって、自身の犯してきた罪と、その意識を封じ込めていた。

平和のため、戦争を止めるため。
いくらコックピットを外して戦闘しようと、それはあくまでも「極力」の話でしかない。
自分の手をなるべく、汚したくなかったというのもある。
大層な理想を掲げ、そのために切り捨てられてきた者たちに対する罪悪感を、
キラはずっと見ないようにしていたのだ。

「シンも……ごめん」

今頃、戸惑い、苦悩していることだろう。
赦しては、くれないかもしれない。その場で撃ち殺されるかもしれない。
でも、そうなったとしてもかまわない。
それが彼の下した答えだというのなら、受け入れよう。

「でも……もし。もし、君が赦してくれるのなら」
407アム種19話3:2006/08/28(月) 07:57:57 ID:???
もう一度、戦おう。
力なき者たちを守るために。この国の眠くなるような安寧を、保つために。
守れなかった者たちや、この手にかけた者たち。彼らに対する責任として。
一度掲げた理想を、改めて貫き通す。
はじめは、この国から。できることから、はじめていく。
二度ともう、シンのような者をこの国から出しはしない。

守りたいものは多かった。
守れなかったもののほうが、遥かに多かった。
この手にかけたものは、数知れない。

自分は被害者なのではない。加害者なのだから。
この命をもって、償っていかねばならない。
いくら血にまみれようと、この手が汚れようと。
既に汚れているのだ、自分は。
平和を望む者たちの剣となって、戦い続けよう───!!

「ラクスは、殺させない。みんなも。誰一人、殺させるもんか」

漆黒のこの機体は、咎人たる自分にふさわしいと思う。
自由の名を持つ蒼き翼を駆る資格は、今の自分にはない。
この禍々しき、漆黒の翼がお似合いだ。
この黒き鋼の剣をもって、愛すべき者たち、守るべき者たちのために戦い続ける。
犠牲となるのは、自分達のように血に染まった者だけで十分だ。

「降りかかる火の粉は……払うっ!!」

二枚の翼から、二振りのレーザー対艦刀・フラガラッハを引き抜く。
同時に、頭の中を植物の種子が弾けるようなイメージが駆け抜けていく。

「容赦は、しない!!」

三叉の銛を突き出してくるフォビドゥンの動きは、スローモーションのようだった。
流れるように背後へと回り、対艦刀を薙いでそのボディを三つに裁断する。
慌てたように飛び掛る二機へは、羽のレールガンをそれぞれ一射。
衝撃によろけたところを輪切りにした。

「これが───……僕の覚悟だ」

意図的にコックピットを外したりはもう、しない。
左手の刃を大地に突きたて、右を肩に背負い。
漆黒のストライクがゆっくりとアビスたちに向かい首を捻る。
燃え盛る炎に浮かび上がるその光景は、まるで戦場に佇む死神。
408アム種19話4:2006/08/28(月) 08:01:14 ID:???

「退くのなら……退いてくれ。来るのなら……全力で、僕は撃つ」

声が、聞こえているはずもないというのに。
気圧されたのか、襲撃者のMSたちはたじろぎ、何一つ行動できずにいる。

「なるべくなら、撃ちたくない」

右端のやつが、我に返ったらしい。
一人で猛然と飛び掛ってくるのを、キラは冷めた目で見ていた。

「……撃たせないで」

左腕からワイヤーアンカーを射出。
予想外の攻撃にフォビドゥンは反応が遅れ、四肢をからめとられる。
力任せにレバーを引き、そのまま身動きのとれない機体を引き寄せる。
対艦刀を翼に収めた右腕は、拳銃を握っていた。
頭を掴み、コックピットに銃口を押し当てる。
真っ暗で底の見えないその穴に、パイロットは怯えていただろうか。
ソキウスというのなら、そういった感情もないのかもしれないが。
なんの躊躇いもなく、引き金を引く。
呪われたスーパーコーディネーターと、笑いたければ笑え───……。
キラはあの世のどこかで、かつて自身に出生の秘密を教えた男が嘲笑しているのではないかと思い、
僅かに顔を顰めた。

これで、八機目。
当初、隊長機であるアビスを除き10機いたディープフォビドゥンの部隊は、この短時間において。
わずか二機にまでその数を減らしていた。
409134で言った人:2006/08/28(月) 08:07:03 ID:???
シンもジェナスも出ない回がついに来てしまった……orz
ただ書いてる方としては恐怖心克服した橘さん状態のキラは書いてて非常に
楽しかったです。不殺を捨てさせるのが一応今回の目標だったり。
出て来たノワールはまんまスタゲに出て来たアレ。
顔のみノーマルストライクが黒くなったやつってことで。
410通常の名無しさんの3倍:2006/08/28(月) 12:05:02 ID:???
わーい、殺しまくるキラー
決意と裏腹にここで乗るノワールコエー
しかし、ここで自由に乗らない選択をするキラはよいとして
コノ後どうなるのかが気がかりです
…どうせならラクスが自由に乗ると面白いのに、とか言ってみる
411358 ◆KILLER/duk :2006/08/28(月) 17:08:41 ID:???
GJ!いい意味でキラのキャラが崩れた・・・
しかし個人的にノワールよりIWSPの方が良かったかな、オーブだし
412通常の名無しさんの3倍:2006/08/28(月) 18:53:54 ID:???
キラ「死ぬぜぇ、僕の姿を見た奴は、みんな死んじまうぞぉ〜」
な訳ですな。
413通常の名無しさんの3倍:2006/08/28(月) 19:13:26 ID:???
乙!
成程、アム種ワールドで容赦しない度MAXなのは、アスランではなくキラだった訳ですな。

>>412
Wで言うならカトルが近いのかも。
「殺したくは無いけど向かってくるなら容赦しないからねっ!」
・・・・・・・・そのうちキラも精神崩壊して「だぁめなんだよぉう!」と絶叫しながらハイマットを
ぶっ放したりするんであらうか。
414通常の名無しさんの3倍:2006/08/28(月) 20:07:16 ID:???
>>410
>わーい、殺しまくるキラー
>決意と裏腹にここで乗るノワールコエー
真面目な話、勿論アンチヒーローと言う人種も存在するけど、

>既に汚れているのだ、自分は。
>平和を望む者たちの剣となって、戦い続けよう───!!
それが自身の良心に反してるのに、その言い訳に何らかの理想を持ち出す人間って言うのは
、実の所、ステレオタイプな「悪役」の代表的なパターンなのよね。
自分が殺される覚悟をしてるから殺していいんだって事にはならないんだから。

デス種本編でも本当はラクシズの行為はそうして断罪されるべきものなのに、それが嫁の
えこひいきで正当化されてしまうから話が滅茶苦茶になったんだと思う。
415通常の名無しさんの3倍:2006/08/28(月) 20:54:22 ID:???
>>375
>正直説明不足感が否めない(汗
多分それは、キラの目的意識が、
・自分達を迫害する存在から自分達を守る(ある意味正当防衛)
・自分は力のある存在なのだから平和を守ると言う理想の為それを行使する
と言う二つあるのにそれが混同されちゃってる事が原因だと思います。

その辺が曖昧になってしまってる部分がユウナの行動にも出てしまっていて、ユウナ自身が
ラクシズをどう捉えてるかが曖昧になってるような気がします。
ラクシズはオーブ国民として保護すべき対象なのか、正直自国の戦力として戦って欲しいのか・・・・。
前者に徹するなら、証人保護プログラムよろしくオーブと言う国家に守ってもらう路もあるのですが
ユウナは一方でノワールも用意している・・・・と言うのは明らかに後者を意識してる訳で。
>『情勢が、キナ臭くなってきている。いつ君たちに危険が迫るともわからない』───、
だって、戦時中だからと言って、「強盗が来るかも知れないけれどウチの警察じゃ手が回らないから
これで身を守ってくれない?」と言って自国の国民にピストル渡す為政者なんてありえないですから。
416369:2006/08/28(月) 22:32:37 ID:???
ジョイ「今回ご紹介するのは『ストライクノワール』」
キラ「僕はもう逃げないよ」
ジョイ「ビームライフルショーティーや砲身を短縮したリニアガンなど近接戦闘を主眼に置いたストライクのバリエーションっす」
キラ「このガンダムで皆を守ってみせる」
ジョイ「っていうか前回とキャラ違くないっすか?」
キラ「前回? 何のこと? 僕がこのコーナーに呼ばれたの初めてだと思うけど」
ジョイ「ええ!?」
キラ「う〜ん、でも記憶が抜けてるときとかあるからそのときなのかなあ?」
ジョイ「…あんた頭危ない人っすか?」
キラ「ちがうよ! 種・種死本編出てラクスに会ってるときとかそうなんだけどって話」

ストライクノワールガンダム

攻撃力:近接戦闘ツヨス
防御力:このたび皆さんのおかげでストライカーパックまでPSできる運びとなりました
スピード:ヌタゲ見てないからわがんね
出力:核は条約違反です。偉い人はそれが解ってるので電池の僕を寄越したとです
キャラが違う度:MAX
417アム種20話:2006/08/29(火) 12:52:09 ID:???
第二十話 アンフォーギブン

「あなたは、本気で言っているのですか、ユウナ様」

なんともきつい目を向けてくれるねぇ。
夜中に叩き起こして呼びつけたせいかな?
ユウナはテーブル越しに睨んでくる二つの刺すような視線に、
コーヒーを口に含み内心思う。

「確かに、今の情勢でどちらからも攻められないためには、それしかないかもしれませんが───……」
「カガリなら、大丈夫。既にこの計画のことは伝えてある。すぐには納得できないだろうが……。
 『彼ら』の扱いについても、はじめに受け入れる段階で念を押してあるしね。その点も確認済みだ」

大きな懸念事項といえばあとは、君や彼らがこの案を受け入れてくれるかどうか。
彼の言葉に二の句が継げず黙り込むアスランは、深く思案しているようだ。

あの日交わした約束は、彼としては最大限譲歩したつもりだった。
一つ。
オーブの民として、キラ・ヤマトをはじめとするゲリラ艦隊(通称・三隻同盟)メンバーを受け入れる。
一つ。
彼らの身の安全を保障し、ある程度の便宜を図る。
一つ。
彼らの心身の状態が防衛行動に可能な程度にまで回復したと判断した場合に限り、
ユウナ・ロマ・セイランは前述の三隻同盟軍メンバーをオーブ国防力として徴用することができる。

それはカガリがオーブへと帰還し、ユウナのもとを訪れた際に交わされた密約。
彼女の「兄代わり」であった彼が、「政治家」ユウナ・ロマ・セイランとして
辛うじて渡る事を承諾することのできたぎりぎりの危ない橋のラインだった。
二人はこの条件のもとに握手を交わし、遵守することを誓った。

カガリは当然、この約束を守り、ユウナも同様に従った。
彼らに岬に建設された旧アスハ別邸を与え、戸籍も与えた。
一方で彼らの復帰に備え、大破していたフリーダムの修復も命じた。
核エンジンのユニウス条約への抵触も考え、『彼』のかつての愛機をベースとしたストライクノワールを
アクタイオン・インダストリーから購入した。
競合相手のモルゲンレーテを擁するオーブに新型は売れないと断られたが、
おがみ倒し、ごね倒してテストベッドとしてドックに残っていた試作の一号機を回してもらった。
そうやって手に入れた機体を、敢えて彼らのもとに預けた。
彼らに対し信頼を示し、抱きこむために。

全ては、オーブを守るためだった。
カガリの愛するこの国を、一度は焼かれたこの国を、二度と蹂躙されないために。
418アム種20話2:2006/08/29(火) 12:53:28 ID:???

「……俺は、反対しません。というか、丁度いいきっかけなのかもしれない」
「へ?何が?」
「結局俺は、背中を押してもらわないと何もできない男ってことですよ」
「よくわからないけど、受けてくれるんだね?」
「はい。キラたちにも俺のほうから───」
「ゆ、ユウナ様っ!!」

二人の間にあった緊張が解きほぐれたその間隙を縫うように、執務室の木製扉が乱暴に開け放たれる。
転がり込んできた眼鏡の秘書官は、反対側に座るアスランには目もくれずユウナへと駆け寄る。

「どうしたんだい、そんなに慌てて」
「ぽ、ポイント202の岬において、戦闘です!!レーダーによってMSを数機確認!!爆発も目撃されていますっ!!」
「「!!」」
「み、民家を攻撃している模様で……」

ポイント202の岬。そこにはベルネス邸がある。
キラが、ラクスが。シンが、ジェナスが、皆が危ない。
ユウナは彼らの利用価値を知る者として。アスランは彼らの仲間、友人として、
直感的に狙われたのが彼らだと思い至る。
アスランと顔を見合わせ、ユウナは秘書官へと即座に指令を下す。

「近くの基地のムラサメ部隊にスクランブル要請。防衛出動!!急いでよ」
「は、はいっ!!」

入ってきたときと同じように泡を食って秘書官が出て行ったところで、
ユウナはアスランに対しても命じる。

「君もセイバーで現場に。ムラサメ隊と合流したら現地視察ということにしてくれればいい。僕の名前も使って」
「はい」

こういう時、腕前の確かな彼の存在は、
配備が始まったばかりで訓練不足の機体を駆る兵を、生半可に派遣するよりよっぽど役に立つ。
アスランはソファに掛けてあった上着を羽織ると、早足で執務室から退出していった。
ユウナもまた自分のデスクに戻り、ムラサメの出動や広報への対応に関する書類を作成するため、
ペンをとった。今日もまだ、眠らせてもらえないようだ。

 ****

「……そだろ」
「シン」

だらりと両腕を垂らし、閉じた扉の前で立ち尽くしていたシンは、ようやくそれだけ、絞り出した。
気遣おうと手を伸ばすジェナスの肩をアンディが叩き、軽く首をふり、
お前は下がっていろ、と顎で示す。
419アム種20話3:2006/08/29(火) 12:54:15 ID:???

「嘘だろ、あいつが、キラが父さんたちを……」
「残念ながら、事実だ。シン」
「……」

急激に、シンの身体が動いた。
ふらり、と一瞬揺れたかと思うと、その左腕は隻眼の男の胸倉を掴んでいて。

「俺を……だましてたんですか!!あんたらも!!キラも!!」
「黙っていたことについては、謝ろう。だが、言って何になったね?」
「なんだと!?」
「シン、やめろよ」

シンの剣幕に、ジェナスが見咎めるが、
当のアンディは構わないという風にジェナスに向かいジェスチャーする。

「望んで人を殺すような性格破綻者なんて、兵士全体の中のごく一部ってことだよ」
「!?」
「戦争ってのは、撃つほうも撃たれるほうも、多くのものを失うもんだ」
「……何が言いたいんですか」
「そのことを知らず、そういった覚悟も持たずに戦場に立っていたのが昔のキラだ」
「……」

───まあ、これは元々正規の訓練を受けた軍人でもない彼には、無理もない部分ではあったんだが。
俺だってんな素人同然だった彼に手加減なしに攻撃を仕掛けたわけだし。
アンディの言葉に、シンは目を丸くした。

「軍人だったんですか!?アンディさん!!」
「お?──おいおい、それ本気で言ってるのかね。君、ザフト軍人だろう?」

砂漠の虎、ってアカデミーで習わなかったかね。アンドリュー・バルドフェルド。
聞いたこと、あるだろう?それ、俺。アンディってのは偽名な。

「あ、ええっ!?でも、顔!!傷とか……」
「あー、成程。キラにやられる前の写真しか教練本には載ってなかったわけね。……で、だ。話を戻すぞ」

そんな彼を艦隊のトップ・エースに仕立て上げた俺達、周囲の人間にも問題があったのだろうが。
彼は周囲の人間が考えていることが何か、噛み砕くことなくわかったつもりで平和を目指しはじめちまった。
アンディ……アンドリュー・バルドフェルドの独白は続いていく。

「あくまで明確なビジョンのない、コーディネーターとナチュラルの融和による平和、なんていう甘い理想でな」

どうやればいいのか。どうすればいいのかも知らなかったくせに、な。
バルドフェルドは笑う。その笑いは傍から見ているジェナスにはキラに向けたものではなく、
彼ら自身をせせらわらっている侮蔑のものであるような気がした。
420アム種20話4:2006/08/29(火) 12:55:07 ID:???

「赦してやってくれ、なんて口が裂けても言えんよ。無論、お前さんに撃ち殺されても仕方がない。だがな」
「……」
「彼が戦後苦しみ、悩み続けていたことも事実だ。今でこそああだが、自殺を図ったのも一度や二度じゃない」

自身の右の手首に、人差し指でラインを引いてみせるバルドフェルド。

『……ごめん。僕は行けない。行く……資格がない。行ってはいけないと、おもう』

慰霊碑前での車でのやりとりが、シンの頭へと蘇ってくる。
あれは他の何ものでもない、自身の加害者性に対する実感から出た言葉だったのかもしれない。

「ある意味、彼も被害者だ。そしてそれ以上に加害者だ。キラ自身、心のどこかでそのことは、自覚している」
「……けど」
「そんな彼がまたMSに乗った。どういった心境の変化かはわからんが。彼なりに答えが出たのかもしれん」
「何の、ですか」
「……償いの、方法。いや、一生背負い続ける十字架の、かな」

もっとも、償って償いきれるものでもないが。
君も兵士なら、自分が奪う側であることを理解しておいたほうがいいぞ。
溜息交じりに言って、バルドフェルドは締めくくった。

「撃ちたければ、撃て。キラも納得しているだろう。あとは───君とキラとの問題だ」
421134で言った人:2006/08/29(火) 12:58:09 ID:???
正直、こっちを前回より先に投下しとくべきだったかなと今更に後悔orz
どっちを先に回すかで悩んだ末にミステイクする俺万歳

んで更にもう一話投下。
422アム種21話:2006/08/29(火) 13:00:40 ID:???
第二十一話 明日は何処へ

「アウルはっ!?アウルのやつは大丈夫なのかよっ!?」
「アウル……ステラ、心配……」
「だーいじょうぶだっ。あいつはそんなヤワなやつじゃない。ちっと強いストレスがあったから最適化やってるだけだ」

ネオは、『調整室』と表示をされた部屋の前で詰め寄ってくる
二人の部下を、必死になだめていた。

「本当なんだろうなっ!?」
「信用してくれよー……。別に怪我とかしてるわけじゃない」
「……」
「ステラも頼むからそんな目で見るのやめてくれ……」

ほとんどが息子・娘の相手をする父親状態だ。
そこまで歳をとっているわけでもないのに、非情に不本意ではあるが。

「どけ」
「あっ!?」
「スティング!?」

スティングが更に問い詰めようとしたその時、彼の襟首が掴まれ、
そのまま通路のほうへと放り投げられた。
壁に激突し、息を詰まらせる彼のもとへ心配そうにステラが駆け寄っていく。

「……あんたか、客人」

彼を放り投げ、ネオの前に立ち塞がったのは長髪の男だった。
身に着けた連合軍の制服は、その筋肉ではちきれそうになっている。

「聞いたぞ。オーブとかいう国に、強い奴がいるそうだな」
『強イ奴、ケケッ』

肩に止まった鳥が、見ているだけで鬱陶しい。

「あ?ああ。ディープフォビドゥン隊が全滅だからな……。しかも一機で」
「いくぞ」
「は?」
「そのオーブとかいう国に行くと言っているんだ」
「いや、しかし───」
「俺が倒してやる」
『倒ス、倒ス、ケケッ』
423アム種21話2:2006/08/29(火) 13:01:42 ID:???

オーブは今のところ中立、と言い掛けてネオは止めた。
直属の上司であるジブリールから受けた命令は、絶対。

『彼の言うことに従え。そうすれば厄介な敵は減っていく』

───こちとら、隊長だってのに。
内心面白くはなかったが、仕方ない。

「わかった。ひとまず補給に戻ってから───というのであれば」
「それでいい」

男は満足そうに頷くと、彼らにはもう一瞥もくれずにそのまま歩いていった。
彼の姿が通路の角に消えたところでようやく、スティングは立ち上がることができた。

 ****

「呼んでいる?ユウナさんが私達を?」

瓦礫の山の側。
VPS装甲の電源が切られ、灰色に変色したセイバーの足元で、マリア……マリューは言った。

「はい。バルドフェルド隊長に、ラクスも。頼みたいことがあるそうです」

もちろん、キラにもだそうですが───……。
そう説明するのは、戦闘が終わった直後現場に到着し、事情を聞き終えたアスランだった。

朝日が、昇りかけていた。
セイバーから幾分離れたところでは、これまた灰色に染まったストライクノワールが
肩膝をついて、その機体を休めている。

「ジェナス、それにシンにも話があるそうだ。一緒にきてほしい」
「俺にも?」
「ジェナスにーちゃん、シノビレッド壊れちゃったー」

彼らに替わって子供達の相手をしてやっていたジェナスが、名前を呼ばれ振り向く。
と、同時に子供の一人が全身真っ赤なテレビヒーローを模した人形を手に寄ってくる。

「ああ、はいはい。どうした?」
「声、でなくなっちゃった」
「どれどれ?」

背中の電池ボックスを開くと、電池が片方ずれていた。
はめなおし、蓋を閉じてから、音声を出すためのボタンを押してみる。
424アム種21話3:2006/08/29(火) 13:02:40 ID:???
<<忍大将軍がドーン!!>>

結構なボリュームで録音音声が辺りに響いた。
……なんかどこかで聞いたことあるような声じゃなかったか?今の。

「……いいみたいだな。ほら」
「ありがとー。あ、あとこれもー」
「オーケー、やっちゃる」

今度は、青い人形に、ライドボードのようなものを模したプラスティック製の玩具。
こちらは手足が白い。

「ギガブルー、外れちゃったの」
「ん。……よっと、ほら」

ボードの凹凸に、クリア素材の銃を持った青い人形をはめこんで渡してやる。
少し自分達アムドライバーっぽいな、とジェナスは思った。

「さ、カリダさんたちのところへ行ってろ」
「はーい」

男の子の背中を押してやってから、立ち上がる。
ラクスやバルドフェルドたちは、アスランと話し込んでいる。

「大丈夫かな、シンのやつ。キラと二人で」

膝をついて待機している、ストライクノワールのほうに目をやる。
丁度その足元は瓦礫や岩で視界が遮られ、見ることはできない。
あの辺りに二人はいるはずだ。

───「少し、キラと二人にしてほしい」。
一同に告げてあちらへ向かったシンと、黙って頷いて彼についていったキラ。
あの二人はあの機体の足元で、一体どんなやりとりをしているのだろう。
アスラン共々止めようとしたところをバルドフェルドに放っておくよう言われた彼としては、
いささか気がかりであった。

 ****

「ただいまー」

ヨーロッパのとある国の、とある町。
ミリアリア・ハウは宿泊先の安ホテルの部屋に入るなり、ベッドへと突っ伏した。

「あー、しんど……」
425アム種21話4:2006/08/29(火) 13:03:56 ID:???

二年前、戦場に身を置いた彼女は現在、報道カメラマンとして世界中を飛び回っている。
オーブに戻ったあととある賞に送った作品が、入賞こそしなかったものの、
主催する新聞社の目に留まったのが切っ掛けだった。
あちこちを回っては、スクープとなる素材を探し、ファインダーに収める。
まだまだ未熟ではあるが、ジャーナリストの卵である。
一人で世界を旅する生活にも、もう大分慣れた。

「お疲れさま。おかえり」
「あー、セラぁ」

いや、今は一人ではなかった。
備え付けのポットのお湯で淹れたインスタントのコーヒーを差し出してくる少女。
セラ・メイ。旅の途中で出会い、現在は行動を共にする相棒だ。
知り合ってごく間もないけれど、人当たりのいいミリアリアと無口な彼女は
正反対な性格でありながら、妙に気が合った。

「そっちはどうだった?元の世界……だっけ。戻れそう?」
「駄目ね。収穫ゼロ」
「そっかあ……。こっちも取材ドタキャンされちゃうし、最悪」

何より、彼女の言う素性にミリアリアは興味を惹かれていた。
「ここは、私のいた世界じゃない」「私はどうやら違うところからきたみたい」
普通の人間が聞けば、んなアホな、と思うようなことでもミリアリアは違った。
非常識上等、空想夢想上等。既存の価値観にとらわれていてはスクープなんてモノにできはしない。
だから、彼女のほうからセラに一緒にこないかと誘った。
行く当てのないセラも、ミリアリアの申し出を断る手はなかった。
かくして、女二人のコンビが出来たわけである。

「ご飯……どうする?」
「あー……少し寝るわぁ。六時になったら起こして。一緒に食べにいこ」
「わかった」
「ん、おやすみ……」

無性に、眠かった。昨日徹夜で写真の整理をしていたのに加え、
取材の気疲れが溜まっている。頭の固い相手の取材がこのところ多かったせいだ。

「……」

セラが騒がしくするタイプの人間でなかったおかげで、すぐに眠りに落ちることができた。
426アム種21話5:2006/08/29(火) 13:05:16 ID:???

夢の中には、見知らぬ男の人と───、今は亡き、トールが出てきた。

……ああ、またこの夢か。ミリアリアは笑う。
セラと出会ってから、見るようになった夢だった。
二人はセラとミリアリアについてなにか、話しているように見えた。
トールもその見知らぬ彼も、実に楽しそうで。
ひょっとして彼はセラの知り合いなのかな、と思った。
具体的に何を話しているのか、少し気になったけれど。
その内容を聞き取るより先に、ミリアリアはノンレム睡眠へと入っていった。

「?」

着替えもせずうつ伏せになったミリアリアに、セラは毛布をかけてやった。
彼女の顔が微笑んでいるのを見て、首を傾げた。
427134で言った人:2006/08/29(火) 13:06:54 ID:???
明日は多分投下できないと思います。
次回の分はほとんどキラとシンのやりとりで埋まると思われ(汗
428通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 13:08:52 ID:???
あー、確かに前後したかもしれないですね。それでもちゃんとフォローになってるあたりGJ!
玩具の声ワロタw
>明日は投下できない
一挙二話投下お疲れでしょう。
明後日以降の投下期待してます、やっちゃれ!

429通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 14:18:15 ID:???
セラ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!! 

カクレやハリケンとは違うものなのかw
430通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 14:50:37 ID:???
トールと話してんのって、もしかしなくてもSCENEさん?
431通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 19:30:02 ID:???
>忍大将軍がドーン
赤いお猿さんとか黒い兄貴とかの、あの人のネタか(笑)
「でっかい牛もドーン!!」・・・・なんちゃって。
432358 ◆KILLER/duk :2006/08/29(火) 19:38:00 ID:???
GJ!カクレってケインの片言と城型のロボしか覚えてねえや・・・
そしてあの人キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
    ヽヽ
   彡/ノノ彡 
  彡 ゚ヮ゚ノミ   <
 _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
   \/ゼアム /
    ヽヽ
   彡/ノノ彡 
  彡 ;゚ヮ゚ノミ   <おっとと誤爆誤爆。「職人さん頑張れ!」と言いたかったんだ
 _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
   \/ゼアム /
435通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 20:17:34 ID:???
本人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!
436通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 20:21:30 ID:???
いきなりポカやらかすのがシー・・・SCENEさんらしいw
437定期アゲ担当者:2006/08/29(火) 21:41:34 ID:???
うし、上げるべ!
それと職人さんお疲れ!
次の投下、待ってますので無理せず頑張ってください!!
438通常の名無しさんの3倍:2006/08/30(水) 10:36:31 ID:???
お疲れ様です!
>>417
やはり彼らに関しては御礼奉公付きの囲い込みな訳ですが、
>辛うじて渡る事を承諾することのできたぎりぎりの危ない橋のラインだった。
決して揚げ足取り、と言う訳では無いのですがこの密約に実効性を持たせるなら、

・ラクシズが規約違反した場合の実効性のある罰則規定
・ラクシズをオーブ国防力として徴用した場合、その経緯をオーブ国民にどう説明するか。
この2点が必要ですね。

前者に関しては、(特にフリーダムを受け取った時のキラがマリューにそういう態度示して
たのですが)「彼らの心身回復時」にそれこそピュアムみたいに「いや、我々はやはり
いかなる国家権力にも加担しません」と掌返されたら完全にユウナは取られ損になるし、
後者に関しては、(ヘリオポリス在住のキラがどこに属するかは失念したのですが)特に
ラクスに関しては亡命って形になりそうな気配な訳で、SS設定上でもザラ派、連合双方の
お尋ね者な上、ラクスの行為もともすれば双方にとっての利敵行為になりかねず、その辺
鳴らされて戦争ふっかけられた日にはもう最悪な訳で、下手したらユウナ一人の責任じゃ
済まない・・・・・、と。
439通常の名無しさんの3倍:2006/08/30(水) 10:38:51 ID:???
もっとも、そうでなくとも基本単一国家の内紛、しかもアムドライバーが全世界に
認知されてるアムドラと違い、複数の国家、種族の存在する種世界で武力を
有する第三者、それもアムドラではフルゼアムのガンちゃんクラスの香具師に
鈴つけようってんだから無理難題な訳で、ほんとラクシズが設定上いかに煮ても
焼いても食えない素材かよく分かると言うもの・・・・137氏の苦労が偲ばれますね。

色々書きましたけど、めげずに頑張って下さいね、応援してます。
440通常の名無しさんの3倍:2006/08/30(水) 10:45:34 ID:???
くだらねぇぜっ、そんなことっ!
俺の歌を聴けぇぇぇっ! 

ところでSILENTMOONの出だし忘れたんだけど、なんだっけ。
441通常の名無しさんの3倍:2006/08/30(水) 18:28:52 ID:???
離れない 最後の愛を見つける 旅へ飛び立とう
442369:2006/08/31(木) 01:30:44 ID:???
ジョイ「今回ご紹介するのは『エグザス』っす」
ダーク「何だこのけったいなマスクマンは?」
ジョイ「MSに劣らぬ性能を持ったMAで、有線式ビットを実装しオールレンジ攻撃が可能っす」
ダーク「触手?」
ジョイ「そっすね」
ダーク「なるほどトパスか!いくらでも来い!トパスがどーん!!」
ジョイ「トパスじゃ無いっすよぅ…」

エグザス

攻撃力:キュピーン
防御力:紙じゃねえ?
スピード:はええ
出力:バッテリー?
マスクが痛い度:MAX
443アム種22話:2006/08/31(木) 10:24:08 ID:???
第二十二話 ヘイト・ミー

銃口が、鋭い眼光と共にこちらを睨みつけていた。
撃鉄は降り、引き金には指がかけられ。いつ弾が発射されてもおかしくない状態で、
キラの顔面へと向けられている。

「……本当に、あんたが殺したのか。キラ・ヤマト」

真紅の瞳は、怒りに燃え。
それだけで人が殺せそうなほどにぎらついていた。

「……そう、だね。フリーダムに乗っていたのは、僕だから」

シンの詰問調の問いに、キラは悲しげに目を伏せて答える。
この手で、やった。フリーダムが殺したというのなら、そういうことだ。
操縦桿を握っていたのは、引き金を引いたのは紛れも無い彼自身。
キラ・ヤマトは、シン・アスカの家族をその手にかけた。

「っ……」

ガァン、と銃声が朝日の中に木霊する。木にとまっていた鳥達が、驚いて飛び去った。
銃弾が放たれたのはキラに対してではなく、上空。
発砲の直前で天高くあげられた右手の銃から、硝煙が立ち上る。
銃を握るその右腕は強く握りしめすぎて、震えていた。

「……知って、ッ、たのか……?」
「…………君と会うまで、知らなかった。ううん、違うね」

言葉を詰まらせながらようやく絞り出したシンへと、キラは頭を振り近づいていく。
この距離で撃たれれば、もう避けようもない。
わかっていながら、キラの足はまっすぐにシンを目指す。

「知ろうともしなかった。…………自分の罪を知り、認めるのが怖かったんだと思う」

シンの右手へと手を伸ばし、掴み上げる。
そして銃口を、自身の心臓の上へと押し当てる。

「……救えないよね、本当に」
「っ……!!この、おおぉぉっ!!」

銃弾ではなく、左の鉄拳が飛んだ。
力任せに右頬を殴られ、キラはよろめくが倒れない。
口の中に鉄の味を感じるも、耐えて踏みとどまる。まだ、倒れることは許されない。
堪えた彼の胸倉が、掴まれた。
444アム種22話2:2006/08/31(木) 10:25:02 ID:???

「あんたのせいで、父さんが、母さんが!!マユが!!」
「……うん。……ごめん」
「今更っ……謝るなぁっ!!」

鼻っ柱に、鈍い痛み。
ヘッドバッドを叩き込まれ、目の中に星が舞った。
幸い胸倉を掴みあげられているおかげで、頭がくらくらしても倒れることはない。

「くっそおおおぉぉぉぉっ!!!!」

銃を投げ捨て、固めた拳で何度も何度も殴りつける。
掴みあげる体勢から、いつしかシンがキラを組み敷く体勢に変わっても、
ただひたすらに右の拳を振り下ろす。

「赦さない!!俺、絶対あんたを赦さないっ!!赦さないからな、くそ、くそおぉっ!!」

シンは幼い子供のように泣き喚きながら、キラを殴打していた。
殴るたびにシンの顔からは涙が散り、殴られる度にキラからは切れた唇の流血が散る。

「なのに、なんで、なんで!!なんであんたは人間なんだよ、くそっ!!」
「……」
「俺はずっとフリーダムを憎んで、そのパイロットは最低のろくでなしと思ってて!!」

がつん、がつん。
襟元を掴まれ、後頭部を地面へとぶつけられる。
それでもキラは一切抵抗はしなかった。

「人殺しを何とも思わない最低のクズ野郎で、殺されて当然のカスみたいな奴だろうと思ってたのに!!」
「……」
「なんであんたは悩んでるんだ、後悔してるんだ!!ならもっと早く気付けよ!!気付いてれば……」
「……ごめ、ん……」
「謝るなっつってるだろぉっ!!もう、謝ったって何も戻ってこないんだぞっ!!」

再び、殴打。今度は左右の連打。
殴り続けるシンも、肩で息をしていた。
素手でずっと殴っていたせいで、彼の両拳にはキラのものではない、
自分自身の血が滲んでいた。

「それができないならせめて、俺が撃ち殺しても心が痛まないような最低の人間になれよっ!!
 悔やんでる人間を撃ったって、悩んで自分を責めてるやつを撃ったって、俺は、父さんたちは……!!」
445アム種22話3:2006/08/31(木) 10:26:53 ID:???

最後のほうはもう言っていることも呂律もぐちゃぐちゃで、まともな言葉にならなかった。
身体をくの字に曲げ、キラを組み伏せたまま、熱くなりすぎた思考が、身体を焦がしてゆく。

「くそ……畜生……畜生……!!ちくしょおおおおぉぉっ!!」

彼の黒い服に顔を押し付け、シンは声をあげて泣いた。
仇を討つことのできぬ自分にと、その相手のことを知ってしまった自分の運命に憤って。
家族を殺した男の、自分を助けた男の身体にすがり、まるで、赤ん坊のように。
情けないくらいに、激しく。

「……最低の人間だよ、僕は。生きていてはいけないくらいに」

腫れ上がった顔で四肢を投げ出し、天を仰ぐキラがぽつりとそう言った。
シンの紅く染まった拳が、地面を叩いた。
電源の落ちたストライクノワールの、灰色をした機体が二人を見下ろしていた。

ジェナスとアスランが痺れを切らし呼びにくるまで、ずっと二人はそのままだった。
放心し、嗚咽を漏らし。朝日を受けていた。

 ****

「んー、そうそう。指揮官用のムラサメを一機、第八ドックへ回して。うん、例の二機もそう、インパルスとエッジバイザーだっけ」

朝早くから、この人は元気なことだ。
方々に電話をかけ、書類にサインしまくる青年の姿をみて、トダカはつくづくと思う。

「搬入はドックの担当官に任せて。中は機密だから、決して入らないように。首が飛ぶよ?……ふふ、なァんて、ね?」
「……」

呼びつけられた格好でこのように放置されるのは面白くないが、
仕方あるまい。トダカは秘書官の淹れてくれた緑茶をすすり、彼の作業が一段落するのを待つ。

「んじゃよろしくネ、と。……ふう。ごめん、こっちが呼んだのに悪かったね。トダカ一佐」
「いえ」
「朝早く呼びつけたのは、他でもない。今度の演習スケジュールについてなんだけど」

トダカは、オーブ軍において一佐という比較的高い地位にいる人間だ。
ほぼ主力といっていい、第一艦隊の指揮を任されている。当然、演習の予定やメニューを組むのも
仕事の一つだ。軍のトップを文民である五大氏族が占めるという、ある意味極端な文民統制ともいえる
独特の構造を持つオーブ軍において、彼の担う割合はかなり大きい。
446アム種22話4:2006/08/31(木) 10:27:57 ID:???
「演習……ですか?」
「そ。できれば、日程と時間、海域をずらしてもらいたいんだけど」
「はあ……それは可能ですが」

たったそれだけのために、呼んだというのだろうか。
自分が呼ばれたからには、ユウナからはもっと重大な通知があるのかとでも思っていたのだが。
渡された用紙には確かに日時と海域が指定されている。

「それだけですか?ご用件は。一応、理由をお聞かせ願えるとありがたいのですが」
「ん?ああ。結婚式、するんだョ。僕とカガリで」
「……は!?」
「んで、僕とカガリの結婚を見たくない、って兵も多いだろうから、そういったコ達を中心にお願い」
「ああ、はい。そういうことですか」

オーブ軍の兵たちにも、ユウナは正直好かれているとは言い難い。
そんな男と絶大な人気の国家元首との結婚なぞ、見たくない者も多かろう。
見たくないのなら、身体を動かして忘れさせてやれ、ということだ。

「護衛もちゃんとつけてもらわないとだから大変だと思うけど……頼む」
「いえ。……しかしまた、急ですね」
「情勢が情勢だからねェ。ま、しっかりとした国の体制を示さないと」
「ご苦労様です」

かくゆうトダカも元々ユウナのことを嫌っていた口だ。
さすがに二年間も共に仕事をするようになれば彼の人となりも掴めてくるが。
常々カガリの許嫁である自分の身を嘆いていたユウナを知っているからこそ、納得ができた。
メディアや知識人はこぞって、彼の国家元首の夫としての不適格性を叩くことだろう。
大衆というものは、常に非難の対象を求めるものだ。

「あ、演習中のことでひとつ」
「はっ」
「『何が起こっても、驚かないように』」
「は?」
「あと、できるだけ『当てないように』してくれるとうれしい」
「……何に、ですか?」
「『大天使』に……さ」

軽薄に笑う一回りほど年齢が下の男に、トダカは首を傾げた。
ひとまずわかるのは、彼が何かを企んでいる、ということ。

「『大天使』が……舞うのさ。再び、大空に」

あくまで、予定(仮)なのは、内緒である。
外堀は埋めた。あとは、ユウナが彼らを説得しきれるかどうか。
そういったことになる。
447134で言った人:2006/08/31(木) 10:37:09 ID:???
こんなんなりました(汗
まだ二人にはわだかまり残しておいててもらいたいもので……。
んで。
今のところ登場方法が確定してるのはダークユニットお二人さん。
シャシャもある程度は。
問題はパフユニットとラグですよ……。
448通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 10:46:47 ID:???
キラに対するシンの葛藤乙です!
そしてエッジバイザーは一応MS扱いなんだろうか…?
>ダークユニットお二人さん
ダークたちクルクルクルゥゥゥ!
>シャシャもある程度は
Trrrrrrrrrrr!
>問題はパフユニットとラグですよ……
ラグナorz
終盤になってもいいので、どうか、どうかアロンジーをお聞かせくださいっ(血涙
449通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 11:16:30 ID:???
GJ!これからのアムキャラ登場が楽しみ
なんかこれ保存しとくまとめサイトとかあった方がいいような気がするけど自分には作るスキルが・・・orz
450通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 11:39:25 ID:???
お疲れ様!
>>447
ひとの怨恨が、当事者同士で一度話し合った位で解決する事なんて
、まずありえないですからね・・・・。むしろ悪化のリスクの方が高い訳で。
消化し切れない恨みを抱えたシンがジェナ達と接してどう変わっていくのか、
非常に楽しみです。
ピュアムのメンバーも、彼には先輩たりえますし。
451通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 15:59:54 ID:???
GJ!ラグはローエングリンゲート辺りで是非ジャイロマンをry
452通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 18:50:34 ID:???
乙!
今のキラとシンを見てると、まるでディアナとソシエみたいな関係ですな。
つかユウナの策謀の全貌にワクテカ。
453通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 19:44:31 ID:???
マジで面白いですGJ!
シンとキラのシーン(ピry)ちょっと泣いちゃったよ

しかしこのユウナには死んでほしくないな
454通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 19:52:35 ID:???
乙ドライバー!
難しいと思うけどラグと紫組をぜひ登場させてくれ・・・
455通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 20:06:15 ID:???
>>453
>しかしこのユウナには死んでほしくないな
禿同。
このスレ以外にもクロスオーバーもののSSスレはあるけど、不思議とどのスレでもユウナは
すげぇ人格者なんだよなぁ・・・・・。

本編での扱いがアレな反動なんだろうかw
456通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 20:55:21 ID:???
お疲れさまです!! 毎回楽しませてもらってます。
第一印象は「みんなマトモだ」だったりして(笑)
この時点でアムキャラが登場できそうな場所っつーとイザーク&ディアッカの
所くらいしか残ってないような気も。

>ギガブルー
描写を見るとパワレン版みたいですな。そう言えば小川さんパワレン版ギンガマン
にも吹き替えで出てましたな(こちらはレッドでしたが)
何気に小ネタが効いてますね。
457通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 22:16:25 ID:???
そういやジェナスの
クスッ→テンメェェェェェェェェェッ!!→KK登場
→邪魔するならお前もぶっ殺す!!→エッジのかけら→「これは…誰だ…」
の流れは神だった。
458通常の名無しさんの3倍:2006/09/01(金) 05:20:13 ID:???
>>457
同意。やはりジェナスを止められるのは(死んでても)あの男しかいないんだなーと思ったね
459アム種23話:2006/09/01(金) 18:18:56 ID:???
第二十三話 ready?

「こんなところにいたのか」

頭上から、アスランの声が聞こえた。
ジェナスは起き上がり、声のしたほうを見る。

「……アスランさん」
「アスラン、でいいよ。歳は3つしか違わないだろう」

割とかっちりとした服装の多かった彼は、
今は珍しくグレーのつなぎを着ていた。右手にはなにやら、紙袋。
ジェナスの横に、膝を立てて座る。

「すまないな。巻き込んでしまって。……未だに君が異世界から来た、なんて信じられないが」
「……俺だって、そうですよ。でもたしかにこの世界は、俺のいた世界とは違うんです」

アスランが隣に座ったことで、
ジェナスは改めて床へと四肢を投げ出し、寝転がった。

「何か、考えてたのか」
「……ええ、まあ」

ぼんやりと屋根に覆われた空を見上げながら。
天使の膝の上で、二人は語らいあう。

「この世界の『戦争』って、俺達の経験したものとは、随分違うんだな、って」
「……違う?」
「シンとキラのこと見て、話を聞いてたら、そう思ったんです」

人々を守るための存在であったアムドライバー。
政府によって仕組まれていた虚構の真実。
権力をめぐり開かれた戦端。
人々を守るべきアムドライバーとアムドライバーが戦いあう戦場。

ジェナスは、ひとつひとつ噛み締めるようにしながら、アスランに聞かせていく。

「……そうか、たしかにこの世界とは状況が違うみたいだな」
「世界そのものは、もともとひとつだったんです。だけど……」
「それが割れてしまった、か。権力の魔力、ってやつか」
「……はい」
460アム種23話2:2006/09/01(金) 18:21:21 ID:???

歪ながら構築されていた平和は崩れ去り。
世界は戦乱に包まれた。
互いの戦力が標的であったが故、民間人が戦闘に巻き込まれることはあまりないものの、避難を強いられ。
アムドライバー同士の戦いは激化していった。
コーディネーターとナチュラルの民族対立によるこの世界の戦争とは、根本が異なる。

「……正直言って、俺にもよくわからないよ。何が駄目で、どこですれ違っているのか」

いつからナチュラルはコーディネーターを憎み、戦い。
コーディネーターは彼らを蔑み、離れていったのか。
それを暴発させた契機となったのは、血のバレンタイン事件なのだろうが、
その大元の部分については、互いが感情的になっているという以外の説明を、アスランも思いつけない。
双方、「気に食わない」、「受け付けない」。それ以上の理由が、見つからない。
権力がらみというもののほうが、よっぽどわかりやすい。
感情でどうこうなってしまったものを論理で解決するのは、難しい。

「……」
「多分、多くの人はそうなんだと思う。だから、答えが出ない。戦争が起きる。気がつけば相手を憎んでいる」
「なんですか、それ」
「滑稽で、情けない話だよな。理由もわからない、解決法もわからない。あるのは偏見だけ。なのに戦争をする」

そういった点でいえば歪んだ形とはいえひとつにまとまっていることのできた
ジェナスたちの世界を、アスランは不謹慎とわかっていながらも少し羨ましく思う。

「シンとキラは、どうしてます?」
「……冷戦ってとこか。二人とも顔を合わせれば気まずいだけだから、互いを避けているよ」
「そう、ですか」
「あの二人のことも───……難しいな。よ、っと」

家族を殺した者と、殺された者。
アスランが腰をあげる。
手に持っていた紙袋を投げてよこし、方向転換。

「これは?」
「ああ、お前のだよ。出航までに着替えておくように」
「?」

袋の中には、白い軍服がきれいに畳まれて入っていて。

「しばらくいるのなら、必要だろ?」

アスランはじゃあな、と右手をあげて戻っていく。
白い床───甲板デッキ上には、ジェナス一人が取り残された。
大天使は、再び動き出す時を今か、今かと待っている。
眼下には、搬入されるインパルスとネオエッジバイザーが。
ドックの屋根に設けられた天窓からは、一機のシャトルが宇宙へと上っていくのが見えた。
461アム種23話3:2006/09/01(金) 18:22:44 ID:???
 ****

「そうか、それじゃあ大体メンバーは揃ったんだな?」

珍しい部屋着姿のカガリが、窓枠にもたれかかって言った。

「……うん。サイやミリィみたいに、今海外に言ってる人たちはいないけど……クサナギの人たちもいるしね」
「ああ、そっか。なら十分か。……しかし、キラ」
「ん?」
「お前、よかったのか、本当に」

カガリに問われ、一瞬目を瞬かせたキラ──顔には白い絆創膏や包帯だらけだ──は、こくりと頷く。

「うん。できることからはじめようと、思ったから。守れるものから、守っていこうって」

それくらいはやるのが、筋だと思う。キラは言った。
二年前自分がやったことや、この二年間なにもやらずにきたことを考えれば、しなければならない。
守れるものから、ひとつずつ。自分にはそれをやる力があるのだ。
そうすることが、自分にとっての贖罪だと思うから。やるのは、義務だ。
平和を望むなら、オーブ一国くらい守れなくてどうする。
「守る」ために戦う。そう、決めたのだ。

「そうか……」
「うん。だから、僕は平気。……カガリはいいの?」
「へっ?何が」
「ユウナさんとの結婚」
「……思い出させないでくれ」
「ご、ごめん」

柔らかかったカガリの顔が、一気に苦虫を噛み潰したような表情になる。
どうやらこの縁談、カガリにとっては(ユウナもであるようだが)気の進まないものらしい。

「そ、そんなに嫌なの?」
「ユウナのことは嫌いじゃないんだけどな。どうしたってそういう対象としては見れないよ。それに」

最大の問題として。

「私は芝居が下手糞なんだ、昔っから」
「あー……」
「納得するな、そこ。台本まで作りやがって、ユウナのやつ……」
「……ははは……」
462アム種23話4:2006/09/01(金) 18:23:44 ID:???

キラの乾いた笑い。
『カガリは大根なんだから、気をつけてよ?』、ユウナの声が鼓膜の内側にリフレインする。
ええい、腹立たしい。小さい頃から学芸会での定位置が背景の木ということを知っていて、あの男はよく言う。

「私だって一回くらいお姫様役やりたかったさ!!」
「は?」

もっとも、それはそれでユウナなりに注意を促すよう気を使った結果ではあるのだが。
カガリとしては腹立たしく、不満なようである。
傍から見ているキラから言わせてもらうと、芝居の下手な政治家もどうかと思う。
その辺はユウナのフォロー次第ということになるか。

「そうだ!!お前がかつら被ってドレス着れば……」
「あ、それじゃあ僕帰るから」
「こら!!嘘だ、冗談だ!!逃げるなよ!!」
「っと、と」

速攻で回れ右した弟の肩をひっつかんで、引き留める姉。
まったく、姉弟なのか兄妹なのかこれではわからない。

「まあ……がんばって。ぼくらもやれるだけ、やってみるから」
「……ああ。気をつけてな。お前も、みんなも。ちゃんとシンたちを届けてやってくれ」

姉と弟は抱擁を交わし、ひとまずの別れを告げる。
次にこうして会えるのは、いつになるだろうか。

「あとで、アスランも来ると思うから」
「わかった」
「それじゃ」

キラがドアを閉め切るまで、カガリは肩の上で手を振っていた。
そして二日後、遂にオーブは運命の日を迎える────……。
463134で言った人:2006/09/01(金) 18:29:07 ID:???
少しでもキラを「限界のある人間」と見せられたらいいな、と
思いながら書いている今日この頃。まあ、それ言ったらシンもアスランも
ジェナスもそうなるように注意はしているわけですが。
あの子は本編で無敵のリミッターなしなお方だったからね。

てかこの世界の戦争の説明が無茶苦茶説明しにくい(汗
464定期アゲ担当者:2006/09/01(金) 23:32:43 ID:???
上げるべ!
そして、>>463GJ!!!!
確かに戦争の説明難しいですね(滝汗
無敵リミッターが無いのは補正がついていましたからね〜
これからの展開に期待しております、頑張ってください!!
465通常の名無しさんの3倍:2006/09/01(金) 23:57:09 ID:???
>>GJ!!!!
今回もよかったです。
次回はついに……
466通常の名無しさんの3倍:2006/09/02(土) 06:20:53 ID:???
戦争の説明、乙!
根っこにあるのは優れたものへの嫉妬という気はするけど、
それで済まないナチュラルがいるし、色々変なんですよね…
次回もお待ちしてます
467通常の名無しさんの3倍:2006/09/02(土) 09:52:49 ID:???
乙!
>袋の中には、白い軍服がきれいに畳まれて入っていて。
別スレでちょうど話題に上がってたのですが,

白:指揮官or艦長
黒:艦長or副指揮官
赤:エリートパイロット
緑:一般兵

ジェナSugeeeeeee!!!!

>>464 >>466
Nジャマー投下によるエネルギー危機から来たナチュラルの飢餓云々とか経済制裁云々とか・・・・
設定だけされてて嫁に使いこなせてない設定が山程あるみたいですよ。
戦争論絡みは深入りするときりがないので程々でいいのかも。

つかカガリの言動でここまで和んだのは初めてだw
>「そうだ!!お前がかつら被ってドレス着れば……」
自分がキラと顔の造型似てるのに自覚症状あるのかよ!とか
>「私だって一回くらいお姫様役やりたかったさ!!」
ドレス着るのはあんだけ嫌がってたのにwwww
468通常の名無しさんの3倍:2006/09/02(土) 09:58:25 ID:???
丁度そのスレでWのヒイロが「アスランの額を見て五飛を思い出した」なんていう凄いのがあったなwwww
    ヽヽ
   彡/ノノ彡 
  彡 ゚ヮ゚ノミ   < 職人さんGJ!しかし、トール君は話のわかるいい奴だな!
 _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
   \/ゼアム /
470通常の名無しさんの3倍:2006/09/02(土) 10:10:24 ID:???
GJ!次回はついに先生とジェナの邂逅か・・・
471通常の名無しさんの3倍:2006/09/02(土) 10:10:39 ID:???
アムドラしか知らない人用に「かつらを被って」の元ネタでつ。
http://www.youtube.com/watch?v=xb22P1Hh3DI
これでカガリとキラが姉弟と言う設定がどさくさに紛れて出来たのである。後付で。
472通常の名無しさんの3倍:2006/09/02(土) 10:25:16 ID:???
>>469
恋人現世に残してあの世行き・・・・・と言う点でそりゃー凄く話が合うでしょうなぁ(苦笑)
473通常の名無しさんの3倍:2006/09/02(土) 10:31:48 ID:???
>>467
オーブ軍服かもしれんぞ?
474467:2006/09/02(土) 10:40:33 ID:???
それがあったか!
制服の色で階級示すって言うとザフトが定番だからそれ考えなかったorz
475アム種24話:2006/09/02(土) 22:34:23 ID:???
第二十四話 出航の日

街は、華やいでいた。
今日は国家元首たるカガリ・ユラ・アスハの結婚式が執り行われる日。
同時に発表された連合との同盟や、その相手については不満を持つ者も多かったが、
大勢としてはやはりお祭りムード、カガリに対する祝福の空気が出来上がっている。

新郎と新婦が屋敷から婚礼の儀が行われる会場へと向かう車を一目見ようと
人々は集まり、道路に列を成し。
今ゆっくり祭壇に向かい歩を進める二人の姿を国民達は
あるいはテレビで、あるいは押し合いへし合いしながら警備員に阻まれた
会場の予防線の外から見つめている。

「───汝。ユウナ・ロマ・セイランは、カガリ・ユラ・アスハを生涯愛し、
 いかなるときにおいても変わらぬ愛をささげ慈しみ続けることをここに誓うか」

静まり返ったオーブの守り神・ハウメアの神殿に、神官の問う声が残響する。
あとは宣誓を互いに済ませるだけ。二人の婚礼は、まさにクライマックスを迎えていた。
永遠の愛を二人が誓いさえすれば、彼らの結婚はここに成立する。

───だが、そのとき。

「はい、誓いま───……っ!?」

耳障りな警報が、神官の声もユウナの回答も、かき消した。
会場がざわめき、出席者たちも傍観者たちも騒然と周囲に目を巡らす。

爆発。

会場の四方へと、上空高くからビームが降り注ぎ、
後夜祭で盛大に打ち上げられるはずであった花火を暴発させる。
神殿の左右に屹立していたM1アストレイの頭部が撃ち抜かれ、倒れこむ。
突如起こった異変に人々はパニック状態に陥り、雲の子を散らすように逃げ惑った。
そのうち、一人が何かに気付いた。
また一人、また一人と。気付き、空を指差す。
彼らが見たのは、一機の真紅に塗り上げられたガンダムタイプのMSであった。

 ****

『オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハに告げる!!』
476アム種24話2:2006/09/02(土) 22:35:19 ID:???

───いいね。最高のタイミングだよ、君は。一番盛り上がるところを潰してくれた。
混乱する民衆や参列者に混じり、カガリとともに護衛の軍人達にその身をかばわれつつも、
ユウナは顔を伏せてほくそ笑むのを止めることができなかった。
もとより宣誓をする気など、彼にもカガリにも、さらさらなかった。

『私はザフト軍・特務隊『フェイス』所属、アスラン・ザラ!!』

観衆のどよめきが、その名に一層増す。
アスラン・ザラ。悪名高い、パトリック・ザラの息子───!!

『連合に組することを決めたこの国より、わが国のMS、
 およびそのパイロットは返してもらう!!我々の信用を裏切った報い、受けるがいい!!』

うまい。実に堂に入った演技だ。ユウナは感心する。先程はなったビームも、
指示しておいた着弾地点から寸分の狂いも無い。積まれた火薬も花火も、
爆発が派手なだけで民衆には一切被害を出してはいない。

高空に浮かぶ真紅のMS……セイバーが銃口を、
民衆や軍人たちにかこまれたカガリとユウナのほうへとロックオンする。
これもまた、手はず通り。ユウナもカガリもばれないように、アイコンタクトで頷きあう。

『させん、ぞおおぉぉっ!!』
『ぐっ!?』

突如割り込んできた声の主が、シールドを構えそちらを向いたセイバーを蹴り飛ばした。
オーブ軍の量産型可変MS、ムラサメである。後続に、二機の同型機が続く。
緊急時に備えて近場の基地に待機させていた護衛用部隊が、今到着したのである。

『カガリ様には、指一本触れさせぬ!!ザフトMS、観念せよっ!!』

三機が同時にビームライフルをセイバーに向かい撃ち放つ。
相手は高空だ、地表を撃ってしまう心配も無い。遠慮なしに三機のムラサメはライフルを乱射した。

(おいおい、大丈夫か……?)

その射撃が本気で撃っているように見えて、カガリは内心焦った。
三機のパイロットも抱きこんだ「こちら側」の人間だが、やりすぎではないか。
しかしそんな心配も、杞憂に終わる。
セイバーは変形し、距離をとり。
カガリやユウナとの間にムラサメ隊を挟む格好になったところで再度MS形態へと変形し、銃を収めた。
477アム種24話3:2006/09/02(土) 22:36:36 ID:???

『ち……だが!!インパルスは頂いていく!!帰国に預けておいたぶんの『利子』をつけてな!!』

捨て台詞を残し、MA形態で飛び去るセイバー。
その先には雲の合間を縫って白亜の巨艦が翼を広げ、
群衆の前に有名といえば有名すぎるその姿を晒け出していた。

その艦の名は、アークエンジェルといった。

 ****

議長室の大モニターに映る事の顛末を、デュランダルは向かい側に座る女性と共に見ていた。
丁度今、アークエンジェル甲板上へとセイバーが帰還し、続けて発進した黒と黄色の二機のMSとともに
演習中であったオーブ艦隊との突破戦に入ったところである。


「……参りましたな。これでは、悪役ではありませんか」
「ええ……そうですわね。オーブにとっては。ですが、義はプラントにあります」

裏切りに対する、報いだと───……。アスランも言っていたでしょう?
ラクス・クラインはしれっと答えた。

「あなたがミーアの名を使ってまでやってくるから何事かとは思いましたが……まさか、ね?」

このような茶番劇を見せられるとは。

「ですが……オーブの意思はこれでわかってもらえたでしょうか」
「ええ、それはもう。表向きは完全に敵対国家として接するつもりだ、と」

しかしその内では交流の継続を望んでいる。この芝居は国民を同盟に納得させるための方便だということも。
その代償として、インパルスを返還し。アスランを、ラクスを。
彼女の運んできたフリーダムや、あの白亜の艦をはじめとする戦力をザフトに提供するということも。
全ては中立公平を保つための二枚舌。連合からもザフトからも国を守るための、苦肉の策。

「連合との交渉の窓口を持つことも、我々の戦力を得ることも、けっしてザフトにとって悪い話ではないと思いますわ」
「ふむ」

確かに、悪くない。
アスランをはじめとするあの艦───アークエンジェルの戦力は魅力的だし、
かつての戦争を終結へと導いた艦ともなればそれが戦列に加わるだけで士気もあがる。
加えて、クライン派に強い影響力を持ちカリスマ性を備えたラクスも、国民を纏めるのにうってつけだ。
万が一の場合、戦争の早期終結に向けてオーブに動いてもらうこともできるだろう。
ただし───……。
478アム種24話4:2006/09/02(土) 22:37:28 ID:???

「彼女は?『ミーア』のことはどうします?君が戻ってくるとなると……」
「なんとでもなりますわ。あの父のことです、私も知らない姉妹だって、いるかもしれませんし?」
「なる……ほど。さて、どうしたものかな」

カップを手にする少女は、どうやらただの歌姫ではなく、食えない歌姫であったようだ。
だがデュランダルは既にこの話に乗る気になっていた。

「事後承諾ではあるが、アスランには私から任務を与えていたということにして───……」
「はい。それでよろしいかと思われますわ」
「数日中には彼らを受け入れるべき基地を、手配しましょう。せっかくの戦力です、使わせてもらいますよ」
「……願わくば、早期の戦争終結に彼らの力が役立てられんことを」
「無論です。こんな戦争などという下らないことは……はやく終わらせてしまいたいものです」

彼らの運用はどうする。扱いは。ミネルバと組ませてみるか、あれなら元々インパルスの母艦だし、
設計思想も似ている。監視もつける必要がある。様々な考えがデュランダルの脳にはあった。

「……あなたにも、働いてもらいますよ?ラクス・クライン」
「ええ、もちろんですわ」

二人の男女は、内心に思うことを隠し。
がっちりと握手を交わした。
479134で言った人:2006/09/02(土) 22:42:49 ID:???
本編をある程度トレースしようと思ったら、
大天使が出航する理由はこれしか思いつきませんでした。
言ってみれば運び屋みたいなもんです。で直後にザフト編入みたいな感じで。
どーせオーブいても員数外の火消ししかやれないでしょうし、
ザフト行ってもその辺は一緒。存在自体がグレーゾーンなんだから。
480438:2006/09/03(日) 11:19:24 ID:???
ユウナと134さんSugeeeee!!!!!!!
ラクシズの無駄に万能な設定をこうも見事に逆手にとられると笑うしかないですなwww
481通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 11:42:09 ID:???
ここのラクスは好感が持てるな。
自分の政治家としての部分に辟易したり、ラーメン啜ったり人間味がある。
ラクスにアンチが多いのは、原作での行為以外にもそういった人間らしさがなく、
超越者みたいだったからなんだよな。
482通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 12:18:11 ID:???
乙!
「つ、つるんでやがる、つるんでやがるぅぅぅ!!」と言う某エルガイムの
13人衆の誰かさんの台詞はこういう時に使うのですな。

>>481
やる事も、地道な根回し、話し合い・・・・・。
でもって策略で血を流さないように考える・・・・。

無駄に暴力を行使してた本編ラクシズとは雲泥の差ですね。
483通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 12:53:53 ID:???
>>482
マクトミン乙
484通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 17:25:31 ID:???
乙!
何だかこのプロット、種よりはアムドラの方にありそうなお話ですね。
色々な意味で。
485通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 17:39:49 ID:???
>>482
ラクシズの武力を前面に出すんじゃなく「取引材料」として考える発想の転換の勝利だな。

なかなか出来る事では無いぞ・・・・・・・・。
486アム種25話:2006/09/03(日) 18:57:33 ID:???
第二十五話 再会の海

『アスランとキラが前衛!!俺は航空支援!!ジェナスとシンは艦に近づく奴や弾をやれ!!』

バルドフェルドの怒声が、通信機越しに届く。
インパルスのコックピットでシンは、軽く舌打ちした。

「ちっ……フォースシルエットさえあれば……」

飛行して、自分ももっと動き回れるのに。
ソード装備しかない今では艦上からの迎撃に回るしかない。

『おい!!ザフトの坊主!!』
「あ!?えー、っと、マードックさん!?」

だったっけ、と、うろ覚えな記憶を探り、
サブモニターに現れた顔の人物の名前を思い出す。
この艦──アークエンジェルの整備班長だったはずだ。

『ビームライフルとアグニの調整が終わった!!その装備よかマシだ、持ってけ!!』
「本当ですか!?」

艦上のみの戦闘でも、飛べる相手──ムラサメを相手に飛行できず、近接武器しかないソード装備は
厳しいものがあった。だが、これで少しは楽になる。

『アグニ……ビームランチャーはコネクタの規格変更が終わってねぇ!!艦のソケットに直結させてトリガーで撃て!!』
「了解っ!!使わせてもらいます……シン・アスカ!!インパルス、行きます!!」

ハンガーからビームライフルをひっつかみ、腰にマウント。
オーブ軍から横流しされたムラサメのものを、コネクタを改造しインパルスでも使用できるようにしてある。
左手にランチャーを持ち、発進。甲板上に着地し、エネルギーコードとランチャーを接続する。

『いいか、無理はするな!!あくまで俺達の目的は突破だ、近づく奴以外落とす必要はない!!つーか落とすな!!後々面倒だ!!』

当然だ。国を……オーブを守るため戦っている彼らを殺してなるものか。
かつて焼かれた母国を、再度焼かないために自分達は出て行く。
彼らは守る。これはそのための戦いだ。余分な血など、流しはしない。
当面の目標は、オーブ領海からの脱出。目指すは、ザフト勢力圏。
ソードインパルスの手にしたアグニが飛来するミサイルに向かい、火を噴いた。
水上をかけるジェナスの起こした水柱が、幾多の砲弾を巻き込み、誘爆させた。

 ****
487アム種25話2:2006/09/03(日) 18:58:28 ID:???

───なるほど、な。ユウナ様はあの艦のことを言っていたわけだ。

演習中だったオーブ軍旗艦・空母タケミカヅチの艦橋で一人、
トダカは現れた白亜の大天使の姿へと嘆息していた。

「か、艦長っ!!このままでは奴らに……」
「行かせてやれ」
「はっ!?しかし……」
「あの艦の戦闘力は貴官も聞き知っているだろう。演習中で碌な弾薬も残っていない状態で深追いしてみろ、やられるぞ」

ペイント弾装備のMSばかりで、何ができる。
口角から唾を飛ばし慌てる副官を、トダカは冷静な指揮官という仮面を被ったまま諌める。
内心、あのやり手の若者に一杯食わされた感でいっぱいだったけれど。

「それよりも推進剤の残り少ない機体、損傷した機体の収容急げ。海に落ちた奴はさっさと拾ってやらんと溺れるぞ」
「はっ」

代わりに機体の回収を命じた彼は、水平線の向こうに小さくなっていくアークエンジェルの
後姿へと、目礼を送った。いわば人身御供となった彼らに対して、すまないという思いがあった。

 ****

『オーブ軍、撤退していきます。追撃はこれ以上ない模様です。各機帰艦後、待機して下さい』

CICからの連絡を受け、艦内へと帰還したジェナスはヘルメットを脱ぎ息をつく。
ハンガーに戻ってきた各自の機体から、シンやアスラン、キラにバルドフェルドが降りてくる。

「ひとまずみんな、お疲れさん。とりあえず第一の難所はクリアできた……といったところかな?」

虎柄の派手なパイロットスーツに身を包んだバルドフェルドが、一同を労う。
彼の乗機は、黄色に塗装されたムラサメだ。シンや本人から聞いた話通りの腕前らしく、
その機体には傷ひとつついていない。
整備兵が持ってきてくれたドリンクを飲みながら、5人は疲れた身体を休める。

「ジェナス、本当によかったのか?いくら戦場にいたとはいえ、あくまでこの世界では君は民間人だ」

ミネルバにいた頃ならともかく、このアークエンジェルに乗ってまで戦闘に出ることはないんだぞ。
バルドフェルドが尋ねるが、当然断る。

「いや。居候の身なわけですから……。俺にできることっていったら、これくらいですし」
「そうか。ならいい。助かるよ。さて、これからだが……念のため常時二人待機でいこうと思う」

連合の部隊がさっそく動いている可能性も考えれば、そう気を緩めてもいられない。
バルドフェルドの提案に、一同頷く。が。
488アム種25話3:2006/09/03(日) 19:00:55 ID:???

「はじめは、シンとキラ」
「はい」
「えぇっ!?なんで!!」
「仕方なかろう。俺はブリッジの仕事もあるし、アスランはさっき一仕事終えたところだ。
 ジェナスの機体はうちの整備班が不慣れで完全に整備ができるまで時間がかかる。消去法だよ」
「っ……」
「いいな」
「わかりましたよっ!!」

シンは吐き捨て、キラを一度睨みつけてから待機所へと向かった。
ジェナスの視線に、キラは困ったように苦笑し肩をすくめる。
やはり二人の間はそうそう、うまくいくようにはならない。

「───ま、とりあえずは二人に任せて俺達は───……」

刹那、敵襲を告げるレッドアラート。
耳障りな音にバルドフェルドもアスランも目つきを変え、
シンが待機所から飛び出してくる。

「どうした!!追撃か!!」

手近な通話機を手に取り怒鳴るバルドフェルド。

『違います!!前方に……艦影、二!!うち片方は空母、地球軍のものと思われます!!』
「っち……さっそくおいでなすったか!!わーかった!!出る!!……っと!?』

と、突如として艦が大きく揺れる。
二度、三度。

「何事だ!!砲撃か!!」
『ち、違います!!か、甲板上に……!!』
「甲板上に、何だ!?」
『人が……!!でっかいハンマーを持って……』
「はあ!?何言って……」

こんなときに、何をふざけているんだ。
そう怒鳴ろうと、バルドフェルドが息を吸い込んだところで
ハンガーに設けられたモニターが光る。
艦橋のカメラから捉えられた映像が、そこには映し出される。

「……はぁ?おいおい」

白い船体の上に立つのは、ノーマルスーツを着たと思しき、人間の姿。
ブラックとライトグリーンの重厚なパーツに彩られたそれは、特注品だろうか。

489アム種25話4:2006/09/03(日) 19:01:55 ID:???

「冗談だろ、こいつぁ……」
「───ディグラース!!!!」

MSならともかく、ノーマルスーツでたった一人艦に取り付くなど、正気の沙汰ではない。
呆れというか、唖然というか。表現に困る事態に
彼が言葉を詰まらせたとき、ジェナスの驚愕の声がハンガーを通り抜け、残響した。

「そんな……生きてたっていうのか……しかもこの世界で……!!」

一同の視線が、ジェナスへと集まる中。
映像中の男は跳び上がり、宙を舞い。
収納状態の対空機銃のひとつへと取り付くと、手にした大鎚を振り下ろし、粉々に粉砕した。
再びその衝撃で、艦が大きく揺れた。


490134で言った人:2006/09/03(日) 19:05:38 ID:???
次回、先生+ファントムペインとジェナス&キラトラヅラシンの戦闘です。
・・・が。三日ほど明日から家を空けるので投下できませぬ(汗
スマソ
491定期アゲ担当者:2006/09/03(日) 19:38:56 ID:???
定期上げは明日にするとして、>>490GJです!!
さぁさぁいよいよ先生とジェナの戦いですね
次回にワクテカ!!
>三日ほど明日から家を空けるので投下できませぬ(汗
>スマソ
謝る必要は無いですよ、むしろ休憩を入れたほうが良いのでは?と思っていましたから^^;
帰ってきた時の投下を期待しております!
それとジェナの「───ディグラース!!!!」ですが
「ディグラース」では無くて「ディグラーズ」が正しいようですので報告させていただきますm(_)m
それでは、頑張ってください!!
492通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 19:50:36 ID:???
>>491
>謝る必要は無いですよ、むしろ休憩を入れたほうが良いのでは?と思っていましたから^^;
禿同。
でもめっちゃ地獄のヒキですね、またいいとこで切るwwww
493通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 19:52:38 ID:???
>定期上げは明日にするとして
そう言えば明日は俺達のアレですねw
494通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 20:35:00 ID:???
>収納状態の対空機銃のひとつへと取り付くと、手にした大鎚を振り下ろし、粉々に粉砕した。
再びその衝撃で、艦が大きく揺れた。
流石先生だ、相手が至近距離でビームライフル連射されてもびくともしなかった無敵戦艦の
装甲でも何ともないぜ(aa略
495通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 20:49:34 ID:???
つかこの世界のアムギアはゼアムじゃなくても強いんだな・・・・。
中の人が別格という事はあるが。
496358 ◆KILLER/duk :2006/09/03(日) 21:06:41 ID:???
GJ!そしてついに先生が・・・
ところでハンマーはVPSに無力なのだろうか?
それともアムエネルギーによる干渉を起こしてダメージ与えられるとか?
497通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 22:00:54 ID:???
アークエンジェル揺らしちゃう先生すげぇw
なんかスパロボJの16話あたりの東方不敗を思い出した
498369:2006/09/03(日) 22:28:14 ID:???
ジョイ「今回ご紹介するのは『ザクファントム レイ・ザ・バレル仕様』」
シャシャ「うぃ〜」
ジョイ「ザクウォーリアの上位機種で一部のエースに優先配備されているっす」
シャシャ「何が違うの?」
ジョイ「え? えーと、角とか盾が二つ付いてるとか」
シャシャ「それだけ〜?」
ジョイ「あとは〜あとは〜?」
シャシャ「知らないんだ」
ジョイ「………あっは〜ん」

ザクファントム レイ・ザ・バレル仕様

攻撃力:背負ってる荷物による
防御力:盾二つ
スピード:オールレンジ攻撃はピキピキキュピーンで避けれます
出力:プロトタイプのように核だったらよかったのに
Get ri度:グゥル(ギルと書かなかった自分を褒めてやりt(ry
499369:2006/09/03(日) 22:30:55 ID:???
久々
134氏GJ!

あ〜何かやってみるさと入ったもののアムレポ本編ほどぶっ飛んだ物が思い浮かばんなあ
改めて本編アムレポの凄さを思い知ったさ
500通常の名無しさんの3倍:2006/09/03(日) 23:56:36 ID:???
GJ!
紫組が一番すきなんだがどこに居るんだろなぁ。
妄想の中ではサーペンテイルとかに居てほしいが、まあどこに居ようと今日も元気に
「いくぜぇ!ウィンダムがぁ!ドガーーン!!」
「ワオオオオオオォォォーン!!」 してる姿しか思い浮かばんがw
501通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 09:58:30 ID:???
俺たちの月曜日!
>>496
先生の場合、素手のパンチ一発でPSのバッテリー落としそうだから怖い。
502通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 12:04:15 ID:???
アムドラって敵に回すと相当な難敵だな
パワーやスピードは互角以上なうえ、サイズが小さいので捕捉すら至難
503通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 12:08:49 ID:???
俺たちの月曜日!
>502
まぁ、アムドラ世界ではそれが一般的だったからなぁ。
でも、パワーはともかくスピードは小回りが効くくらいで負けてるよーな…
ブースター吹かしてジャンプとか、ライドボードでジャンプとか、ホバーとかはできるけど基本的に空は飛べないしね。
だから先生は崖から(ry
504通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 12:24:16 ID:???
>>503
ギアのデザイナーさん自ら「アムド世界では飛ぶ敵がいない」と言ってた位だしね。
バイザーバグの登場までは。
>だから先生は崖から(ry
先生は「リセット」でニルギに海にも落とされているんだよねw
505通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 12:29:48 ID:???
>>502
バグシーン(バイザーバグ)なんかは数も凄いし。
バイザーバグに群がられて大苦戦するAAやミネルバとか思い浮かべるとなんか
「スターシップ・トゥルーパーズ」っぽいw
あれも敵は「バグ」だし。
506通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 12:42:54 ID:???
>>503 >>504
ふと思ったのだが、もしかして先生って、宇宙に行ったら無敵じゃね?
だって、宇宙じゃ無重力だから

落  ち  る  場  所  無  い  じ  ゃ  ん
507通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 12:55:11 ID:???
もうブラックホールにでも落としとけw
508通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 14:58:36 ID:???
つまりディグラーズが宇宙では無敵と判明したのでどうにか重力圏内に誘いこもうとするわけですね
509定期アゲ担当者:2006/09/04(月) 15:21:52 ID:???
俺たちの月曜日!!
っと言うわけで定期上げ〜
510358 ◆KILLER/duk :2006/09/04(月) 16:56:23 ID:???
>>506
つ月か地球の引力に引かれる

つ落ちはしないがリジェネレイト同様宇宙の彼方に飛ばされる
511通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 17:52:59 ID:???
ディグ先生なら大気との摩擦熱にも耐えきれそうだw
512SCENEさんとトールくん ◆SCene3TGwc :2006/09/04(月) 18:11:16 ID:???
    ヽヽ
   彡/ノノ彡 
  彡 ゚ヮ゚ノミ <SCENEさんと!

 〃⌒`⌒ヽ  
 ((((((`')从)
  ヽd ´_ゝ`)<トールくんの!

S「職人さんがいない間トークショーでもやろうか企画ー!」
ト「ぱちぱちぱちぱち〜」
S「えー、これは種キャラ(ただし死人に限る)と俺の友好を深めてみようか!という企画だー」
ト「アム種にもミリィの夢で出ましたもんね、俺たち」
S「えーと、俺は実は種シリーズをよく知らないので・・・」
ト「え!?」
S「まあ俺も>>171さんみたいなもんだな、トールくん。スパロボと・・・あといろいろ資料を漁ってみてはいるんだが・・・やはり本編を観るのが一番なのか?」
ト「いやー・・・多分皆オススメしないと思いますよ。>>171さんも漫画版は薦められてたみたいですけどね」
S「そんなわけで、ここに出てくる種キャラは全部俺の主観によるイメージです。ツッコミ所などあったらどしどし言ってくれよ!」
ト「で・・・まずはどうします?」
S「質問でも募集してみるか?種関連だと俺の答えられる範囲は狭くなるが・・・」
ト「そうですね。そんなわけで第一弾は俺とSCENEさんへの質問募集ー」
S「もちろん、俺らが勝手にやってる企画なので普通に雑談しててくれてもOKだぜ」
ト「雑談ついでに質問とか入れてくれると嬉しかったり」
S「それではパーティの開始といくか!ファインに決めるぜ!」
513通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 22:09:50 ID:???
んじゃ
種女性陣でタイプなのは?>SCENEさん
アム女性陣で同じ質問>トールくん

お二人とも、彼女のことは一時おいといてw
回答よろしくお願いします
514通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 23:03:50 ID:???
なんでSCENEさん、わざわざ偽名なんで?
515:2006/09/05(火) 06:43:04 ID:???
ネタにマジレスするのもアレですが、ロハで済ますなら感想サイトで、全話の台詞全文うp
してるサイトが結構あるのでそれ使うのも手かも。


・・・・・まさかこういう形で需要が出るとは思わなかったのでアドレスは忘却の彼方ですがorz
516通常の名無しさんの3倍:2006/09/05(火) 13:28:23 ID:???
517通常の名無しさんの3倍:2006/09/05(火) 18:19:13 ID:???
>>512
種に限定しないとして、乗れるとしたら乗ってみたいMSは何ですか?
518通常の名無しさんの3倍:2006/09/05(火) 18:43:18 ID:???
世界が平和になったら、まず真っ先にしてみたい事を教えて下さい。
5191:2006/09/05(火) 18:46:30 ID:???
アム世界の政治家・・・と言うとシムカやらジノベゼやらと碌でも無いのばかりでしたし、
確かSCENEさんは、ウィルコットに関しては「生きて責任を果たすべきだ」と苦言を呈して
いらっしゃられていたのを記憶しております。
そこで、アム種のユウナをどう思われますか?
520通常の名無しさんの3倍:2006/09/05(火) 19:09:19 ID:???
ところでトールは知ってる?シーンはね、生前、26の熟れ杉なババァなのに
金と権力と男が大好きと言うすんげぇ強欲な
http://image.blog.livedoor.jp/tkyagito/6e41d987.jpg
こんな女に粘着されてさんざ苦労したんだって・・・・。

どう思う?
521通常の名無しさんの3倍:2006/09/05(火) 20:44:44 ID:???
>>499
>あ〜何かやってみるさと入ったもののアムレポ本編ほどぶっ飛んだ物が思い浮かばんなあ
基本的にあのバイザーは本編の風刺と言う色合いが濃いのですが、正直種キャラはそれやるには
ウス過ぎるきらいがあるのは事実な訳で、主観でカリカチュアしてみた上で
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757301782
こう言う資料で勉強なさるといいのかも知れません。
522通常の名無しさんの3倍:2006/09/06(水) 05:55:32 ID:???
アム種ではジェナスがシンらとともに活躍してたり先生がアークエンジェル揺らしたりしてますがやはり出てみたいなーと思われますか?>SCENEさん
523SCENEさんとトールくん ◆SCene3TGwc :2006/09/06(水) 19:03:13 ID:???
    ヽヽ
   彡/ノノ彡 
  彡 ゚ヮ゚ノミ <SCENEさんと!

 〃⌒`⌒ヽ  
 ((((((`')从)
  ヽd ´_ゝ`)<トールくんの!

S「ネタ企画トークショー!」
ト「ぱちぱちぱちぱち〜」
S「えー、わりと質問が来たなあ」
ト「嬉しい限りですね」
S「そんじゃまあ、答えていこうか!」

>>513
>種女性陣でタイプなのは?>SCENEさん
>アム女性陣で同じ質問>トールくん
ト「これまたいきなり急所を突いてくる質問ですね」
S「そうだなー。ラクス・クライン」
ト「え!?SCENEさんもあの毒電波にやられちゃったクチですか!?」
S「いやいや流石にそれはねぇよ。単純に歌手としての彼女のファンなんだよ」
ト「ほー」
S「『水の証』とか『静かな夜に』とかいいよなあ」
ト「本編知らないのに、音楽に関しては詳しいんですね」
S「種は本編は置いておくとしても音楽には定評があるからな。いろいろ耳に入ってくるんだよ。
  ときに、トール君はアムドライバー女性陣の中で誰が好きなんだ?」
ト「セラさんですね」
S「ほう」
ト「ミリィとはまた正反対なところに惹かれるんですよー」
S「(ガシッと肩を掴む)流石トール君、わかってるなあ、わかってるわかってる」
ト「は、はぁ・・・」
S「でもセラは俺のもんだ。渡さないぞ」
ト「死んじゃってますけどね俺ら」
S「それを言うな・・・」
524SCENEさんとトールくん ◆SCene3TGwc :2006/09/06(水) 19:06:30 ID:???
>>514
S「ほら、これって一応キャラネタ板からの出張って格好だからさ」
ト「理由ってそれだけなんですか?トリップとかでバレバレなんじゃ・・・」
S「真のヒーローってのは、正体を明かさないもんだぜ!」
ト「それはアムドライバーとしての基本理念に反するんじゃ・・・つーか、キャラネタのスレ落ちちゃってますよね」
S「これまたそれを言うなよ・・・(涙)」

>>515-516
S「ほう、こんなサイトがあったんだな」
ト「これは驚きラッキーですね」
S「だが、全部読むとなると半日じゃきかないだろうな。後でじっくり読ませてもらうとするか」

>>517
S「νガンダム」
ト「種じゃないですね」
S「いやほら、フィンファンネル!とか叫んでみたいんだよ。トール君はどうなんだ?」
ト「うーん・・・俺はスカイグラスパーで限界でしたからねえ・・・。SCENEさん、種だったらどうです?」
S「そうだな・・・フリーダムかな」
ト「遠近ともに戦えるっていう点ではSCENEさんにピッタリですね」
525SCENEさんとトールくん ◆SCene3TGwc :2006/09/06(水) 19:10:09 ID:???
>>519
S「クセ者・・・って感じだな。ジノベゼもシムカも基本的には阿呆だったがあのユウナって奴はなかなかのやり手っぽい・・・気がする」

>>520
S「ギャース!(ガバッ)」
ト「あ、SCENEさんが自分の殻に閉じこもっちゃった・・・うーん、モテるのは羨ましいけど限度ってものもあるよねえ・・・
  やっぱり普通に生きて普通に彼女作るのが一番!かなー・・・」

>>522
S「そりゃまあ、出てみたいなあ」
ト「夢の中だけの出演ですもんね」
S「でももう俺の遺品をジェナの奴が使ってたりするしな。それこそGガンの世界とかじゃないと無理そうだ」
ト「DG細胞とかで生き返りたいと思います?」
S「いや・・・それは思わない」


S「えー、そんなわけでトークショー第一弾終了。明日には職人さんも戻ってくるしな」
ト「なかなか楽しかったですね」
S「次までには>>516のサイトなど読んで種シリーズに関する知識を深めておきたいと思います」
ト「今回は俺でしたけど、次は誰を呼ぶおつもりで?」
S「ニコル君あたりか・・・ミラージュコロイドで隠れてるって事でAA探さなくてもよさそうだし」
ト「いやそれはダメだろ」
S「そんなわけで皆さんまた次回ー!(サッ)」
ト「無視して帰った!?」

・このネタ企画は、KONMAIと番台の共同提供でお送りしました・
・次回もよろしく!bySCENEさん 俺の出番これだけ!?byトールくん・
526134で言った人:2006/09/06(水) 22:41:41 ID:???
ただいま。
それでは続きを投下いたします。眠い……。
527アム種26話:2006/09/06(水) 22:46:26 ID:???
第二十六話 重ならぬ道

何故だ。何故、「あの船」の姿がこんなにも自分の血を滾らせる。
憎しみか、それとも悦びか。わからないが確かに自分は今、興奮している。
アークエンジェル。伝説とすらなった白亜の戦艦。
連合の憎き裏切りの船にして、多大な被害をもたらした疫病神。

見たことも、戦ったこともないはずなのに。
どうしてこんなにも血が騒ぐ。

ネオ・ロアノークは自身の乗機、マゼンタカラーに塗装された最新鋭量産MS・ウインダムの
コックピットの中で顔を歪め笑っていた。

 ****

───飛行する敵MSのパイロットたる、指揮官の考えることなど知る由もなく。

「敵艦隊からMS、発進!!数、18!!」
「機種は!?」
「飛行する黒いダガーが15、ウインダム、1!!それにこれは……アスランから報告のあった3機のうちの二機です!!」
「なんですって!?ザフトから強奪された!?」
「カオス……アビス!!そう呼称される二機と思われますっ!!」

艦橋には、緊迫した空気が流れていた。
アークエンジェル艦長、マリア・ベルネスであった女性こと、マリュー・ラミアスは
水平線近くに浮かぶ二隻の艦と、そこから発進してくるMS部隊を睨んだ。

『艦長!!発進する!!シンとジェナスに艦上のアホを当たらせて、残りを俺とキラとアスランでやるが、いいな!!』
「ええ……バルドフェルド隊長、お願いします」
『ああ、行ってくる!!』
「気をつけて」

黄色にカラーリングされた、バルドフェルド駆るムラサメが飛び立っていく。
アスランのセイバーがそれに続き、更にはキラのストライクノワールが水中へ飛び込み、
各自の充てられたポジションへと向かう。水中戦に対してはこの艦の艦載機では接近戦に持ち込むしかない。
そうなると、インパルスかストライクノワール。
ソードインパルスでも不可能ではないが、経験もふまえバルドフェルドはシンではなく、キラをそちらに割り当てたのだ。
彼らの無事を願いながら、彼女はクルーに対空戦闘の準備を命じた。

 ****
528アム種26話2:2006/09/06(水) 22:48:12 ID:???

「ディグラーズッ!!何故、お前がこの世界にいるっ!?」

発進するなり、ジェナスは身に纏ったエッジバイザーの二刀を振り下ろし叫んだ。

『っぐっ……ジェナス・ディラ……エッジバイザーだとっ!?』

頭上にそれを受けた漆黒のアムジャケットは、一瞬驚いたようなぎこちない動きを見せ。
すぐさまジェナスの渾身の太刀を押し返し、高笑いを電波越しに放つ。

『くっ……そうか、そうか、そぉぉぉーかぁぁぁぁっ!!!!貴様も来たのか、ジェナス・ディラあっ!!』

ハンマーを、一閃。
二刀流の大太刀と大鎚がぶつかり合い、火花を散らし。
二人はそれぞれ、アークエンジェルの両足に設けられた主砲、ゴッドフリートの
二門の砲の上へと着地する。

『あのときの決着……これでウジ虫どもの邪魔なくつけられるわっ!!』
「く……やめろっ!!俺達がこの世界で戦って何になる!!無意味だろうがっ!!」

数度に渡り、互いの得物が交差し、上空を飛び交いながら言葉が応酬する。
しかしながらそれは、水掛け論。
自分の強さのために戦う者と、自分以外の何かのために戦う者とが繋がるわけもなく。

「戦ってる暇があったら、帰る方法をさがすべきだろうっ!?」
『知ったことかぁごるあぁぁっ!!俺はお前のような強い奴に勝てれば、それでいいのだぁっ!!』
「ぐっ……このっ!!」
『戦ええぇっ!!ジェナス・ディラぁぁぁっ!!』
『ジェナス!!』
「シン!?だめだ、こいつは……」

援護のためシンのソードインパルスが薙ぎ払った対艦刀は、いともたやすく身軽なディグラースにかわされ、
反撃のハンマーを肩部に受けたインパルスの機体は、艦最後部まで吹き飛ばされる。

『目障りだ、どけえぇぇっ!!』
『わあああぁっ!?』
「シン!!」
『いいくぞおぉぉっ!!俺は……貴様に、勝つのだあぁぁっ!!』

フォローに行く暇もなく、大鎚の波状攻撃にジェナスは晒された。

 ****
529アム種26話3:2006/09/06(水) 22:49:25 ID:???
「くそ……っ!!なんてパワーだよ、あいつは……!!」

シンは、くらくらとする頭を振って、インパルスの機体を艦に激突する前に辛うじて立て直した。

「ん……右肩部VPS装甲、動作不順?うそだろ、そんな……!!」

立て直しておいて、計器の告げる異常に驚愕する。
真っ赤に染まっていた肩のVPS装甲が色を失い、くすんだディアクティブモード時の灰色に戻っていたのだ。
わずかに時間を置いて、再び肩部に電圧が復帰し、色が染まっていく。
障害は、ハンマーの衝撃による一時的なものであったらしい。

「マジかよ、あんな小さいハンマーの一撃で……」

そこまで言って、シンはユニウスセブンを割ったジェナスのことを思い出す。
そう考えれば、この程度不思議もないのかもしれない。
一撃なら電圧が落ちるだけで、なんとか耐えられる。だが二連続で食らえば
さしものインパルスの頑丈な装甲とはいえ───……。

「……同じとこに二発は食らえないってことか……なんなんだよ、あいつは!!」

毒を吐き捨て、シンは己の戦うべき相手を探す。
海中のアビスとは、キラが。
高空ではアスランが、ダガーの射撃を避けつつカオスとドッグファイトを繰り広げている。
残りのダガー部隊と赤紫のウインダムをかき回し、ヒット&アウェイを繰り返すのはバルドフェルド。
ジェナスはあのハンマー野郎とやりあっている。
状況は膠着状態といっていいだろう。

(艦の直衛だけやっててもっ……!!)

───と、なると。突破口を開くには、やはり。

「母艦を、叩くっ!!」

ペダルを踏んで、バーニア全開。
飛行能力のないソードインパルスだが、この海戦を行っている程度の距離ならば、飛び移れないこともない。
がら空きの母艦を、叩き斬る。

『おい、シン!?お前の役目は艦の直衛だろうっ!?』
「このままぐだぐだやってても埒が開かないでしょう!!俺が母艦を落とします!!」
『馬鹿!!無理に落とす必要はないだろうが!!あくまでこっちの目的は突破だ!!』
「だから───突破するんですよっ!!そいつら、ひきつけといてくださいっ!!」

シンの不穏な動きに気付いたアスランとバルドフェルドから、怒声が飛ぶ。
だがシンは聞く耳を持たず、アンビテクストラス・フォームへと連結させた剣を手に
二隻の艦へとインパルスを飛ばす。
突破するというのなら、こうすればいいのだ。
無駄に労力を使うよりよっぽど味方にも敵にも犠牲が少なくて済む。
530アム種26話4:2006/09/06(水) 22:50:12 ID:???
「うおおおおおっ!!」

連結刃状態のエクスカリバーを振り上げ、空母の艦橋目掛けて突き立てる。
その距離はもう数メートルとない。砲台を向けるのも間に合わず、邪魔するものは、何も───……、

「何っ!?」

いや、あった。
インパルスと空母の間を遮るように割り込み飛び去っていく黒い影。
バーニアをふかしUターンし、空母上に着地するそれは、大天使への攻撃へと参加していなかった
強奪機体最後の一機、ガイア。

「こいつがいたか……っ!!」

この狭い足場でのガイアの相手は、きつい。
相手は変型のおかげでこの狭さでもいくらでも戦術の幅がある。
一方こちらは飛べない上に大振りの剣しかない。奴を捉えるのは困難だ。

『馬鹿っ!!早く下がれっ!!』
「できりゃ苦労はしませんよ!!大丈夫です、やれます!!」

アスランに怒鳴り返したはいいが、明らかにシンのそれは強がりや反発以外のなにものでもなく。
自信ではなく過信を持った経験の浅い兵士の、上官に対するそれであった。

「さあて、どうやって……え?」

だが、シンはさっそくそれを後悔することになる。
俊敏な動きを身上とするガイアが特にライフルを構えることも無く、盾をこちらに向けてただ立っているのには
わけがあった。彼らのいる空母の後部甲板が、徐々に開いていく。

「でかい……モビル、アーマー……?」

言葉を失い、唖然とシンが見上げたそこに浮上したのは。
深緑色をしたずんぐりとしたボディーの機体、連合軍の名づけた彼の知らない名称は、『ザムザ・ザー』。
よりにもよって彼は、火中へと飛び込んでしまったのである。
531134で言った人:2006/09/06(水) 22:59:04 ID:???
酒かっくらって寝ます。
最初の段階ではディグ先生にシンが蹴り落とされる予定でした。
ダガーの数ももっと多かったのですが、そこまで極端なキルレシオにしても
アレだなぁということでこの数に。
532369:2006/09/06(水) 23:34:05 ID:???
ジョイ「今回ご紹介するのはきっと背景で出てる『トリィ&ハロ』」
ネオケケ「ネオケケッ」
ジョイ「ペットロボットっすね」
ネオケケ「ケケのほうがツヨイ!」
ハロ「ナラヤルカーテヤンデー」
ディグラーズ「よし、行けケケ!」
ラクス「しかたありません。ならばこんな事もあろうかとファクトリーに造らせた
    ミ  ー  テ  ィ  ア  (トリィ・ハロ用)を!!」
ディグラーズ・ケケ「「何ィィィーーー!!?」」
ジョイ「………つか何すかこの最多参加のアムレポ」

トリィ&ピンクハロ

攻撃力:某所のハロ>(俗物の壁)>ネオケケ>(ディグラーズ唯一の射撃武器の壁)>以下略
防御力:アッハーンなレンコンガン>ネオケケ>トリィ>(何だかんだで五年くらい保っているボデーの壁)>ピンクハロ
スピード:onディグラーズ>耳か羽
出力:アムエネルギー>(超えられない謎の動力の壁)>何の変哲も無い電力
ネオケケとのバトルが期待されている度:MAX
533369:2006/09/06(水) 23:35:19 ID:???
>>521
>基本的にあのバイザーは本編の風刺と言う色合いが濃いのですが、正直種キャラはそれやるには
ウス過ぎるきらいがあるのは事実な訳で

そんな気付いちゃいたけど必死に目を背けていた事実をw

>ウケる技術
何か普通におもしろそうな本ですな。今度立ち読みしてくる

134氏GJ!
フクロウ先生はやっぱいいなあ
ラスト、ザムザ・ザーの引きにもwktk
534通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 05:49:59 ID:???
>>525
会社つながりで

シーン「俺は、死んだんじゃないのか」
ジョイ「シーンは今、失った心肺機能をアムマテリアルで補ってるっす。
そのマテリアルはバイザーから供給されているっす。つまり、バイザーを降りたら死ぬっす」

とか、バイザーじゃなくてジャケットでもいいけどそれだと制約少なすぎる気も


・・・まあ埋葬さえされてなければの妄想だがorz
535通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 06:50:51 ID:???
ところで今更なんだが、ソードインパって飛べなかったっけ?
536通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 13:30:57 ID:???
お帰りなさい&乙!
>>535
基本的にフォースシルエット以外は飛べないよ。
そのせいか、今アム種でやってる話で本編に該当する回で、「空に山ほどいた筈のウィンダムと
ダガーLが唐突に消滅する」と言うアホらしい事件が起きたからね。
戦艦斬ってる間連中何やってたんだよ、みたいな。
537通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 14:08:19 ID:???
>>532
ケケとモロにマッチしてるピンクハロのガラの悪さに100000回クソワロタwwwwww
538アム種27話:2006/09/07(木) 15:07:16 ID:???
第二十七話 激情に染まる海

──ステラは、ザムザ・ザーと対峙する赤いMSを見ながら思った。

あの人と戦うの、嫌。
あの人、大丈夫ってステラに教えてくれた。
みんなが死なないよう、おっきな石、割ってくれた。
けど、あれは敵。戦わなきゃいけない。

『ステラ!!ザムザと連携して、そいつを落とせ!!』

ユニウスセブン上でビームを乱射していたガイアを押さえつけて、
大丈夫だからといってくれた。でも敵。
最適化は嫌なこと、忘れさせてくれる。だからどうしてあの時あんなに嫌だったのか、
覚えてない。だけど、あのMSのやったことは嫌じゃない。嫌じゃないことだったから、覚えてる。

「……わかった」

でも、ネオが言うなら戦う。
戦わなきゃいけない。じゃないと、ネオやステラやスティング、アウルが怖い目に遭う。
そんなの、だめ。
せめて、前スティングが教えてくれた殺し方で、殺す。
「一瞬で、楽にしてやる」。スティングはそう言っていた。
ステラもそれ、やる。

「ステラ……一瞬で楽に、してあげるね……」

 ****

「うっそ、だろ……これ?マジ?かよ……」

眼前に浮かぶMAの威容に、シンは息を呑む。
つい調子に乗って一人でつっこんだら、これだ。

「く、ここはアークエンジェルに一旦……っ!?」

放たれるビームをかわし、ここは逃げるが勝ちとばかりに背を向ける。
しかしそこには変型済みのガイアが既に回り込んでいて、
構えたシールドごと体当たりでMAめがけて吹き飛ばされる。

「ぐううぅぅぅっ!!こん、のおぉっ!!」

衝撃に胃の内容物が逆流しそうな衝動に駆られつつも、シンは必死で機体を建て直し。
後腰からビームライフルを引き抜いてガイアへと連射する。
539アム種27話2:2006/09/07(木) 15:08:01 ID:???

『シン君!!そのMAの前から退きなさい!!ゴッドフリートを集中させて墜とします!!』
「り、了解っ!!」

ブリッジからの通信に、慌てて射軸上からインパルスを退避させるシン。
直後、4条のビームが彼のもといた場所を横切り、敵MAへと突き刺さり爆煙を起こす。
あの見るからに鈍重そうな機体で、避けられるはずもない。

「やった!!どうだ!!あとはガイアを───……」

自分がやったわけでもないのに快哉をあげるシンも、
ブリッジから煙を見守るマリューも、MAの撃墜を信じて疑わなかった。
いくら大型のMAとはいえ、その程度の大きさではラミネート装甲を積んでいたとしても
艦砲レベルのビームでは廃熱が追いつくはずもないからだ。
なのに。

「ええっ!?そんな!?」

煙の中からそれは、無傷で姿を現した。
砲撃に向けて背中を向けるような形で、
光り輝くビームのような膜を展開して。

「ビームの、シールドっ!?」
『気をつけろ、シン!!光波防御帯……ち、邪魔を……『アルテミスの傘』だ!!……横!!ガイアがくるぞ!!』
「っく!?」

援護に向かおうと飛翔するセイバーがカオスに行く手を遮られ、アスランの舌打ちが
通信機から聞こえる。半ば呆然としていたシンがガイアのビームブレイドをかわすことができたのは、
彼の言葉のおかげに他ならなかった。

「これ……ちっとばかしまずいんじゃないか!?」

前方には、戦艦のビームすらはじく、巨大MA。
後方には、地上戦を最も得意とするガイア。
前後を塞がれて、シンはごくりと乾いた喉に唾を鳴らした。
ガイアの始動と同時に、ブースター全開で飛び上がった。

 ****

「キラは!?どうなっている!?こっちは雑魚どもの相手で一杯だ!!アスランも緑に取り付かれてて動けん!!」
『駄目です!!海中でアビスを押さえ続けてはいますが、突破するには……!!』
「ちいぃっ!!あんのシンのアホたれがっ!!」
540アム種27話3:2006/09/07(木) 15:09:10 ID:???

戦況は不利に傾きつつあった。
シンの独走に、MAの出現。
最悪、雑魚を全て落とせばあちら側も退くだろうと考えていたが、甘かった。
おそらくあのMAには、戦艦クラスの砲が備わっているだろう。
あれだけのでかぶつなのだ、当たればアークエンジェルとて危うい。
雑魚を落としたところで、奴らが退く可能性は殆どなくなってしまった。

「この、紫の!!こいつ……邪魔をするな!!」

ムラサメをMSへ変形させ、ビームライフルを放つ。
赤紫色の隊長機であろうウインダムは、機敏にそれに反応すると盾で受け、
ビームをやり返してくる。

「その動き、その射撃……!!死人を思い出させるんじゃない、この!!」

ナチュラルが乗っているとは思えないその動きに、
バルドフェルドは苛立ちを抑えきれなかった。
かつての敵にして、喪われた戦友。
金髪のあの軽い男を連想させられて、神経がぴりぴりと逆立っていくのがわかる。

「あの男の分も……俺は彼女を、アークエンジェルを、守ってやらなくちゃならんのだっ!!どけ!!」

こいつは、俺が墜とす。
バルドフェルドは彼にしては珍しく、
敵に対して理由の無い激情に駆られていた。

 ****

「は、あああぁぁっ!!」
『でえええぇぇぇいっ!!』

数え切れぬ交差の、新たな一回が、二人の間にまた刻まれる。
アークエンジェル艦上でのジェナスとディグラーズとの戦いは、拮抗していた。
不意に、ディグラースが構えを解き、対峙するジェナスへと尋ね出す。

『……そういえばそのバイザー、シーン・ピアースのものだな?何故貴様が使っている?あの軟弱男はどうした』
「……」
『あの男も、なかなか楽しめたがな……。やはり貴様を倒さねば俺の最強は───……』
「……死んだよ」
『ぬ?』
「シーンは……死んだ。ロシェットに、刺されて……」
541アム種27話4:2006/09/07(木) 15:11:10 ID:???
『……ほう?あの糞餓鬼にか?それはまあなんとも情けない最期を遂げたものだ』
「なん、だと……?」
『所詮あの男も、弱かっただけのことよ。だが俺は違う。俺は……最強なのだっ!!』
「てめえ……!!」
『それを、証明させろおぉぉっ!!』

お前に、何がわかる。何も知らないくせに。
シーンがどんな想いで死んでいったのかを。
彼の遺した言葉を。
狂ったロシェットも、全ての責を負ったKKも。
セラや皆の流した涙も、何も見ていなくて、どうしてそんなことが言える。
彼の死についてとやかく言う資格など、貴様にあるというのか。勝手なことを言うな。
ジェナスのうちに滾りはじめた怒りに気付くこともなく、
言うが早いかディグラーズはハンマーを手に最加速で突進してくる。

「てめえええぇぇぇっ!!!!」

ありったけの力を込めてクロスさせた二刀が、それを受け止める。
生前、シーンの必殺であった技、クロスアタック。ジェナスもまた、その使い手であった。
その技を持って、重いハンマーの一撃をしっかりと防ぎきる。

『ぐ……ぬ……!!』
「赦さ、ねええぇぇっ!!この、シーンの形見で!!俺はお前をっ!!」

いや。防ぎきるどころか、弾き。ディグラーズを仰け反らせる。
隙だらけになったアムジャケットに対し、ジェナスは右のデュランダルを振りかぶった。

───駄目だ、ジェナス───

……が。
どこかで。
誰かが自分に向かって、囁いたような気がした。
ハッと我に返り、寸前で刃を止めたジェナスは、代わりに左の拳を渾身で
ディグラーズのボディへと叩き込む。
その衝撃は、バランスを崩したディグラーズをアークエンジェル上からはじき出すのには十分であった。

『何いィィィっ!?ぐ、落ち……またか、またなのかあぁぁぁっ!?」

放物線を描き、ディグラーズは水面へと落ちていった。
肩で息をしながらジェナスは、周囲を見回し、大剣の刀身に映る自身の姿を見つめる。

「今の、声は……?」
542アム種27話5:2006/09/07(木) 15:12:31 ID:???

シーン、だったのだろうか。
だとすれば、また。彼とこの機体には助けられたことになる。
死してなお、彼はジェナスたちのことを見ているのだろうか。

「くそっ……悪い、シーン……。俺、まだでっかくなれてない……」

自責の念に、頭をデュランダルの白い刃へと預け呟かずにはおれなかった。

「……ブリッジ。ディグラー……いや、艦上の敵は撃退した。引き続き迎撃を続ける」

だめだ。もっと、しっかりしなくては。
彼が安心して眠っていられないではないか。
通信を切ったジェナスは、飛来するミサイル群の迎撃へと向かった。
苦々しく、心は染まっていた。
543134で言った人:2006/09/07(木) 15:19:20 ID:???
シーンさん登場希望の声が多いようなので、というわけでもないですが
こういった形ではありますが登板となりました。
ステラに関しては「最適化」についての基準が本編曖昧すぎ。
忘れることと忘れないことの基準がわからない。
脚本の都合次第で忘れたり忘れなかったりなんだもん。
というわけでこの話では「最適化」は記憶消すものじゃなく
その記憶に対しての感傷・思い入れをなくすもの、と位置づけてます。
どうか、あしからず。
544定期アゲ担当者:2006/09/07(木) 15:38:04 ID:???
>>543GJ!!
落ちたーやっぱり先生落ちたー!!www
やはり先生はこうでなくてはww
次回も頑張ってください!!
明日上げるので保守
545通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 16:21:37 ID:???
ぃいやったぁぁぁぁっ!先生落ちたぁぁぁっ!
いやもうホント、読み手へのサービスありがとうございます。
シーンはやはり見守ってくれてるのですね。
あと
>お前に、何がわかる。何も知らないくせに。
>シーンがどんな想いで死んでいったのかを。
>彼の遺した言葉を。
>狂ったロシェットも、全ての責を負ったKKも。
>セラや皆の流した涙も、何も見ていなくて、どうしてそんなことが言える。
>彼の死についてとやかく言う資格など、貴様にあるというのか。勝手なことを言うな。
この部分、激情がすごい伝わってきました。 改めて職人様GJ!
546通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 17:18:15 ID:???
乙!
今回の先生は「キックボクサー」に出てくるトン・ポー状態ですなw

「無駄に主人公を怒らせてはいけません」

>放たれるビームをかわし、ここは逃げるが勝ちとばかりに背を向ける。
でもジェナがしっかりしてる分今回シンが禿しくカッコわる(苦笑)
つーかシンって自分を過信するほど活躍してたっけ?w
ユニウス戦の最大功労者はジェナだったし、先のAA狂言強奪の時はなんも
やってないし。
547通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 18:41:49 ID:???
乙!
シンが蹴り落とされる予定が変更になったのは、落ちる先生のお約束の為だったのですねw
職人さんにジェナが乗り移ったが如き筆致にただただ感服。
どうやらジェナのブロックワードはシーン関係みたいですな。
548通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 20:04:01 ID:???
住人のテンションタカスwww
やはり先生とロンドン橋は落ちると祭りになるのは仕様らしいなwwwww
549通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 21:05:58 ID:???
先生オチタワァ!
550通常の名無しさんの3倍:2006/09/08(金) 09:41:36 ID:???
うーん、流石はシーンとしか言いようがないですね
ジェナス、頑張ってあの男くらいでっかくなれ!
551通常の名無しさんの3倍:2006/09/08(金) 18:34:25 ID:???
>>525
>S「ニコル君あたりか・・・ミラージュコロイドで隠れてるって事でAA探さなくてもよさそうだし」
流石、発想としてはいいとこ突いてますね。実際ニコルの定番ってこれだったりしますw

  ・Д・
552アム種28話:2006/09/08(金) 18:58:47 ID:???
第二十八話 シード

─ドイツ・ベルリン―

一台の車が、さほど渋滞していない街を走る。
乗っているのは、二人の女性。

「まったく、なんなのよ、キラも艦長も……!!アスランも!!一体何考えてるのよー……」

ハンドルを握りぶつくさ愚痴を連ねるミリアリアとは対照的に、
助手席のセラはおとなしくシートベルトを締めて黙って座っている。

「まずダコスタさんあたりに連絡とって……それから……」

明らかにスピード違反ではあるが、警察が見ていないのをこれ幸いとばかりに
ミリアリアは飛ばす飛ばす。車線変更を繰り返し、次々と別の車を抜き去っていくそれは
他のドライバー達からしたら迷惑以外のなにものでもない。
クラクションを鳴らして抗議してくるものも一台や二台ではなかったが、ミリアリアの眼中にそれらは
一切無かった。

「……ミリアリアって、スピード狂だったのね」
「何!?なんか言った!?」
「何も」

ぽつりと呟いたセラの身体が、右に傾く。
急激な右折をして、二人の乗る車は走り去っていった。

「……アン?What?うわ、すっげーなー、とばしスギじゃネーの?あれヨ〜」

彼女達の残したエンジン音とタイヤの音に振り向く者が、ここにひとりいた。
ベースボールキャップを被った金髪の少年は、両腕に抱えたダンボール箱の横から顔を出して、
遠ざかっていく車の後姿を見送る。

「ワッチャ!?いっけね、せっかくみつけた食い扶持だってのに!!追い出されちまう!!」

広場の時計台を見た少年は、慌てて駆け出した。

「タマンネーなぁ……。バジェットゼロだった頃を思い出すぜィ、この状況。んとに情けねーこって」

両者の距離は、遠く離れていった。
旧知の存在とニアミスしたことに、彼もセラも、全く気付くことなく。

 ****
553アム種28話:2006/09/08(金) 18:59:34 ID:???

「どけぇっ!!僕達を……行かせてくれっ!!」

海上では、シンたちが突破を試みて激しく戦っている中。
キラもまた水中でアビスと戦闘を繰り広げていた。
レーザーをオフにした対艦刀が甲殻状の肩シールドに弾かれ、
キラは舌打ちする。

「ぐっ……!!」

首元を掴まれ、コックピットを激しい振動が襲う。
海底の岩盤に激突し、鞭打ちになってしまうかと思うほどににキラは揺さぶられた。

「こ、のおぉっ!!」

それでも、意識は途絶えない。
止めの一撃としてアビスが繰り出してきたランスを、ノワールに避けさせると、
後ろの岩に突き刺さったその柄に拳銃状のビームライフルの銃口を押し当て、発射。
ビームの拡散してしまう海中でも、この零距離ならば問題はない。
最大出力で放たれたそれは、対ビームコーティングを為されたランスの柄を
真っ二つとまではいかないまでも、使用が不可能な程度にまでは溶解させた。
相手がうろたえたところで、コックピットの辺りに蹴りを入れて引き剥がす。

「水中では……やっぱり不利だ……!!どうする!?」

このまま、抑え続けるしかないのか。
あの夜はこちらの奇襲であったから、有利に戦闘を進めることができたのだけれど。
やはりアビスとてザフトの最新鋭MS。パイロットも手強い。
海中というフィールドを十分に生かしてくる。
相手のエネルギー切れを待つ、それが一番の手ではある。
だが。

「上は……アークエンジェルは持つのか?」

普通の相手であれば信頼するアークエンジェルクルーの面々が
どうこうされるなどと心配することはない。
しかし相手はザフト製の最新型が三機に、パーソナルカラー持ちの隊長機。
加えて先程電文で巨大MAまで現れたと連絡があった。
耐え続けるか、打って出るか。
そろそろ、キラは決めねばならなかった。

 ****
554アム種28話3:2006/09/08(金) 19:00:28 ID:???
こんなにも、海上の一対多数戦闘がやりにくいものであったとは。
シンは自分の行動の迂闊さに、今更になって歯噛みしていた。

「このっ!!さっきからすばしっこく動きやがって!!当たれよ、こいつーっ!!」

せめて、空戦が可能なフォースシルエットがあればもう少し、なんとかなったのかもしれない。
だが今彼が操っているのは大振りの対艦刀二本しかない、ソードシルエット。
加えて相手は素早いガイアであり、隙あらば上空からMAが射撃・砲撃を加えてくる。
足場も空母と戦艦だけで、乏しいことこの上ない。

『シン!!』

MAの射撃に気を取られ振り返り、ガイアに向けた背面が疎かになったところを、
カオスに追いかけられながらアスランの放ったビームがガイアのライフルを撃ち抜き救った。
───今のうちに。あの図体だ、懐に入り込んでしまえば……!!

「は、あああっ!!」

ブースト全開のジャンプで、MAに飛び移らんと跳躍する。
彼としては一つの勝負に出たわけだ。が、それでも。
MAの対応は、予想外に早かった。

「何!?爪!?」

今まで砲撃を加えるばかりであったMA──ザムザ・ザーが、左右の着陸脚の部分に
収納し、隠していた二本のクローを展開し、その大質量を以って飛び掛るインパルスを打ち払ったのだ。

『シン!?危ない!!』
『後ろ!!』

捕らえようと迫る左の爪をかわしたところを、後ろから大質量の壁のような右の爪が一撃。

「うわああぁぁっ!?」

質量差が、ありすぎる。
インパルスは叩き落とされ、空母の甲板へとしたたかにその身を打ちつけた。

「っぐ……」

機体を上半身だけでも起こすのに、幾許かの時間が必要だった。
そして彼は見る。
こちらのコックピットに的確に背中の砲塔を向け、滞空する変形したガイアと、
避けられた場合に備え彼の退路を絶つように機体のビーム砲をチャージするMAの威容を。
完全な「詰み」だった。
555アム種28話4:2006/09/08(金) 19:02:04 ID:???

──ここで、終わりなのか?俺は、死ぬのか?

背中を、冷たい汗が伝う。
せっかくの大芝居をアスランやカガリが打って、こんなところまで出てきたというのに。
自分はそれに応えることもなく、終わってしまうのか。

「まだだ……」

嫌だ。死んで、なるものか。
慰霊碑に、もう一度帰ってくると約束したのだ。
皆を守れるようになるまで、死ねない。

「まだだ!!まだだっ!!」

死を実感したその瞬間、彼の心にあったのは、
恐怖でも、諦めでもない。ただ一途な「否定」。
瞬間、頭の中が急にクリアになり、感覚が一変する。
例えて言うならば、植物の種子が弾けるようなイメージ。
シンは先程までとはうってかわった冷静さで、計器を操作しはじめる。

「……」

驚いているMAや、ガイアのパイロットが聞こえたような気がした。
コアスプレンダーと、チェストフライヤーとの接続を解除。
レバーを引き、胴体部以下を下に、上半身を上に発進させる。
ガイアの放ったビームは空を切り、空母のラミネート装甲を撃つだけで。
この予想外の動きにMAのほうも狼狽し、対処できず、
インパルスをシンは再度ガイアの背後で合体させる。
対艦刀を振り下ろし、ガイアの両腕を斬りとばす。
振り向くことなく跳び、空中で体勢をザムザ・ザーのほうへと向け、機体上に着地。
対艦刀の代わりに引き抜いたビームブーメランをナイフの要領で突きたて、引き裂き。
ずたずたに装甲を切り裂いた。
隙間にビームライフルとバルカンを注ぎ込み、離脱。
巨大MAはワンテンポ遅れて、大爆発を起こした。
556134で言った人:2006/09/08(金) 19:04:52 ID:???
悩んだわりに意外にあっさり出せました、あの人。
再登場はだいぶんあとになりそうだけど。

>>546
戦場を数回経験して生き残った兵士が
「俺ってできるじゃん」って勘違いするアレみたいなものと思ってもらえれば。
557通常の名無しさんの3倍:2006/09/08(金) 20:51:40 ID:???
おお、赤い瞳
職人さんGJ!
そして、あいつがいたーーっ!ちょ、ミリアリア、バックバック!
558通常の名無しさんの3倍:2006/09/08(金) 20:58:15 ID:???
乙!
今回は中の人の性能で何とかなったものの、

>艦上のみの戦闘でも、飛べる相手──ムラサメを相手に飛行できず、近接武器しかないソード装備は
>厳しいものがあった。

>援護のためシンのソードインパルスが薙ぎ払った対艦刀は、いともたやすく身軽なディグラーズにかわされ、

>この狭い足場でのガイアの相手は、きつい。
>相手は変型のおかげでこの狭さでもいくらでも戦術の幅がある。
>一方こちらは飛べない上に大振りの剣しかない。奴を捉えるのは困難だ。

>せめて、空戦が可能なフォースシルエットがあればもう少し、なんとかなったのかもしれない。

物凄い勢いでソードシルエットが駄目な子である事が証明されつつある件についてw
「シンが種側主人公」という公約達成にあたり思いもよらぬ障害がwwww
559通常の名無しさんの3倍:2006/09/08(金) 21:00:52 ID:???
そして、ラグキターーーーーー!!!!はいいいが、よりにもよって現住所が・・・・
>─ドイツ・ベルリン―
ここかいっ!!!!!wwwww
あーこれでアム種に登場するアムキャラの中で最もついてない場所に飛ばされた人
ランキングの一挙トップに躍り出ましたな!!!!
生き残れよぉ〜w
560通常の名無しさんの3倍:2006/09/08(金) 22:15:40 ID:???
>>558
・・・・・おい・・・・・
・・・・まさか、職人さんがキラをノワールに乗せた理由って・・・・・
561通常の名無しさんの3倍:2006/09/09(土) 08:05:30 ID:???
>>560
職人さんはスタゲ見てないらしいし、機体の設定無視でただかっこいいから登場させたのかと思ってた。
オーブにはモルゲンレーテがありながら、技術的に劣るアクタイオン製のノワールを使う事はないと思うし。
マジレススマソ。別に職人さん叩いてる訳じゃない。かっこいいからこのままでいいんだよ。
562560:2006/09/09(土) 08:54:14 ID:???
OK、俺も表現が紛らわしかったと思う。
それにあんまやりすぎると職人さんもやりにくいだろうから、邪推は程ほどにしとくノシ
563134で言った人:2006/09/09(土) 12:05:34 ID:???
え?俺スタゲ見てるよ?
一応ノワールに関しては
・フリーダムの核エンジンが二年前の機体のくせしてバッテリー機ばっかの
 この世界ではちと反則
・キラの戦闘力にリミッターをかけておきたい
という話の都合と
・オーブ軍として使うという本来の目的の場合いざというときしらばっくれるため
 にもオーブ製の機体使用はNG
というユウナの都合(妄想)から採用したのですが。
本来の目的で大天使一行が戦場に戻った場合虎にあてがわれていたのは
流通量の多い言い訳のしやすいM1になっていたでしょうね、きっと。
564通常の名無しさんの3倍:2006/09/09(土) 21:31:39 ID:???
アムドラはシャシャが可愛かったな
565通常の名無しさんの3倍:2006/09/09(土) 23:07:10 ID:???
頭、取る。には吹いた。
566アム種29話:2006/09/10(日) 09:43:27 ID:???
第二十九話 ジャンクション・ポイント

「……撤退、していく……?」

後退したアビスを深追いせず機体を浮上させたキラが見たのは、
海中へと泡を立てて沈没していく巨大なMAの残骸と、
撤退していく二隻の艦体、そして呆然と滞空するセイバーやムラサメを尻目に
ゆっくりとアークエンジェルへと着艦する、インパルスの姿であった。

「これは……誰が?アスラン?」
『いや、俺じゃない……シンだ』
「シンが?これを?」

セイバーから返ってきた答えに、キラは耳を疑った。
アスランがこの状況に持ち込んだというのならわかる。
しかしいくらザフトレッドとはいえ、新兵でかつ実戦経験の乏しいシンがやったとは。

『あいつも……俺やお前と、『同じ』なのかもな』
「……」

土壇場になると意識がクリアとなり、突如として戦闘力が増加する……。
いわば火事場の馬鹿力の極端なものともいうべき不思議な力、それの存在は、
コーディネーター、ナチュラル関係なく彼の知る限りキラとその周囲の人間に、
ごくわずかながら存在していた。
スイッチが切り替わる、とでも言えばいいのだろうか。
キラ自身完全にその力を制御できているわけでないそれは、アスランにもその兆候があった。
アスラン曰く、シンもその一員かもしれないのだという。

『ストライクノワール、帰投してください。この海域を離脱します』
「了解、帰艦します」

通信のチャンドラの声に、キラは従いノワールを離水させる。
自らがあまり好ましいと思っていない力を、シンも持っているかもしれない。
その推測に、キラは複雑な思いだった。

 ****

「……え?じゃあ直接カーペンタリアに向かうんじゃないんですか?」

出撃に備えての待機の順番を終え、バルドフェルドとキラにその任を任せブリッジにあがったシンは
意外なアスランの言葉に目を丸くして言った。
ザフト軍の赤服に着替えた彼の横には、オーブの白い軍服を着込んだジェナスが腕を組んで立っている。
アスランもまた、赤服。シンと違うのは、胸元に銀色に輝く特務隊「フェイス」の証たる
徽章をつけているということだった。
567アム種29話2:2006/09/10(日) 09:44:25 ID:???

「そうしたいのはやまやまだがな……。万一、交渉が失敗したら、ということもある。ひとまずはラクスの結果待ちだな」

遅めの昼食だろうか、アスランはハンバーガーの最後の一口を咀嚼し、飲み込んでからシンの質問に答えた。
話が行ってないところにのこのこ行って、問答無用で撃たれたくはないだろう。
確かに、アスランの言うとおりだった。シンは頷く。

「三日後に、赤道連合に潜入してオーブからの諜報員と接触して進行状況を聞く手筈になってる。それ次第だ」
「はあ」
「……で、だ」

あまり問題を先送りにしたくないから、今のうちに言っておくぞ。
アスランは前置きをそう言ってから、切り出した。

「ジェナスとキラと一緒に、その諜報員に会ってこい。場所や時間はキラが既に知ってる」
「はい。……ってえぇっ!?」
「いいな。『フェイス』としての命令だ。拒否は許さんぞ」
「……」
「返事は」
「……了解」

渋々、シンは了承した。
ジェナスとアスランがやれやれといった風に顔を見合わせるのが、面白くなかった。

「まあ、せっかくの上陸だ。ついでに少し羽も伸ばしてくるといい」

そんな自分の心情をわかっていながら(わかっているからこそ、なのだろうが)そういうことを言うアスランを、
シンは恨めしげに見返していた。

 ****

ファントムペイン艦隊こと、
空母J・Pジョーンズとガーティ・ルーが傷ついた船体を赤道連合の基地へと入港させたのは、
二日後。東の空が白みだした頃だった。
戦力の多くを補給する必要があった。

「休……暇?」

「三人」のうちもっとも遅く目覚めたステラは、
あいかわらずの無気力で無感動な反応の中にも、少しばかり驚いていた。

「……や。ネオといっしょ、いる」
「だとさ。どーする、ネオ」
568アム種29話3:2006/09/10(日) 09:45:39 ID:???

ある意味、予想通りといえば予想通りの答えを聞いて、
スティングは上官のネオへと振り返り尋ねる。
アーモリーワンに自分達だけで潜入するとなったときも、ステラはネオから離れることを嫌がった。

「困ったな……せっかく休みがもらえたんだぞ?一泊二日もだ。アウルやスティングと一緒に出かけてこい、な?」
「や。ならずっとネオといる」
「行くんならはやく行こーぜー。河岸、干上がっちまうぜ」
「お前はゲーセン行きたいだけだろうが……ちょっと待て」

だだっこのように嫌がり、幼くないその身体を押し付けてくるステラ。
ネオと彼女を急かすように、既に私服に着替えたアウルが手元のコインを玩びながら足をぶらつかせる。
頭を抱え、ネオはなんとかステラをなだめすかそうと試みる。

「ああ、ほら。休暇で行くとこには海があるぞ、海」
「……ここにもある。ネオ、ステラと見れる」
「そうじゃなくて、砂浜だよ。真っ白な砂浜」
「すな……はま?」
「そうそう。こんな基地の味気ない湾より、ずっときれいで楽しいぞ?」
「……」
「俺は仕事で行けないから、土産話……どんなだったか、聞かせてくれ、な?」

白い砂浜。
今まで見てきた海より、ずっときれい。
ネオの言に一瞬、ステラは考え込むように俯く。そして。

「……わかった、行って、くるね」
「ああ、楽しんでこい」

ようやく頷き、スティングたちについていくステラに、ほっとするネオだった。
これでは、軍人なのか保父さんなのかよくわからないくらいだ。
一旦部屋に帰って着替えて、荷物をまとめてから三人は出かけていくことだろう。
宿泊も宿だけはこちらで指定してあるから、問題ない。

「ったく……さて、仕事仕事」

だがネオ自身、彼ら三人の「エクステンデッド」……不憫な子たちに対して
父親のような役回りをさせられる自分の立場が、さほど嫌いではなかった。
彼らの「管理」を担当する技術者たちからは、情を移すなと釘を刺されるけれど、それでもだ。

「あの客人が起きてくるまでに、色々済ませちまわんとなぁ」

さしあたってすべきは、中破したガイアや、アビス、カオスの小破した部分の修理。
損耗したスローターダガー隊に代わる戦力の補給も要る。
569アム種29話4:2006/09/10(日) 09:48:06 ID:???

「盟主から……どやしつけられそうだな」

苦々しい口調と裏腹に、ネオのマスクから見える口元は歪んでいた。
何、補給など言えばどうとでもなる。
それよりも、思い通りの戦果が得られなかったことで歯軋りして癇癪を起こすあの男の姿は
想像するに、実に滑稽で愉快だ。胸がすくとはこのことだ。
そう思うと、敗戦もなかなかに悪くない。散っていった部下達には申し訳ないが。
彼はそのくらいに、上司であるロード・ジブリールのことがいけすかなかった。

「ほんじゃ……いっちょ叱られてきますか」

修理中のガイアたちや、ダガー。
そして灰色の天使たちが並び立つその足元で、ネオは一人笑んでいた。
570134で言った人:2006/09/10(日) 09:51:18 ID:???
本編トレースしてったら
本気でステラとシン接触させられる機会が少ないorz
というわけでまたも色々変更。次回色々と会ってもらいます。
彼と彼女の二人に限らず。
571通常の名無しさんの3倍:2006/09/10(日) 10:55:35 ID:???
お疲れ様!
>>570
正直、単なる本編トレースより、134さんの補完部分や、オリジナル展開の方が圧倒的に面白いですし。
572通常の名無しさんの3倍:2006/09/10(日) 19:43:34 ID:???
乙!
こちらは改善の見られないジブ公や、親父臭いネオにはほのぼのするけど、
>「あの客人が起きてくるまでに、色々済ませちまわんとなぁ」
ちょwwwwwww
先生あの状況でちゃっかり戻ってるyo!
573通常の名無しさんの3倍:2006/09/10(日) 19:49:39 ID:???
まぁ世の中には鮭どころかバイザー付けて泳ぐ香具師がいる位だしw
574通常の名無しさんの3倍:2006/09/10(日) 21:19:56 ID:???
紫組がどこにいるのかが一番の関心ごとだ…w

戦闘ジャンキーと見せつつ、シーンと同じくジェナたちの支えのダークさんとか
話の根本には絡んでこないけど、キャラ濃杉でガンガン前に出てくるタフトさんとか
種、種死には無い脇役だよなぁ。
575アム種30話:2006/09/11(月) 15:40:12 ID:???
第三十話 ブルー・シー

ひとまず、交渉は成功した。
ラクスはそのままプラントに留まり、国民達の感情を抑えるために動く。
アークエンジェルはさしあたってはカーペンタリアに向かうように。
以上、会見によって諜報員より告げられた概要。

「……さて、これからどうする?」

レンタカーのハンドルを操りながら、キラが言った。
赤道連合領に潜入しての諜報員との接触は、あっけないほど何事も無く終わり。
夕方に予定していた帰還時刻までは、まだかなりの時間をキラ、シン、ジェナスは残していた。

「終わったんなら、はやく帰ったほうが───……」
「そういうわけにも、いかないんだよね。『迎え』がくる時間、決まっちゃってるし」

信号待ちで止まったところで、キラは振り向いてジェナスに苦笑する。
助手席のシンは二人のやりとりも見ずにぶすっと前方を眺めているだけだった。

「……なら、俺は勝手にやらせてもらうからな」
「え?」
「シン?おい」

──と思いきや、突然にシートベルトを外し、ドアを開けて車外へと降り立つ。
彼は、うんざりとした顔を二人に向けた。

「時間に間に合うように行けばいいんだろ?一人でその辺ぶらついてくる」
「あ……おい、シン」

ばたんと音を立ててドアを閉めると、
返事さえすることなく、彼はすたすたと歩いていった。
もう信号が変わろうかというところで、降りて追いかけていくわけにもいかない。
見送るしかなかった。
だが、その代わりに。

「───やーっと、見つけた、わよぉ……キラ」
「え?」

歩き去っていった彼と、入れ替わるようにして、
開け放たれた車の窓へと少女の手がかけられる。
一瞬きつい目で警戒しそちらを見たキラは、拍子抜けしたように表情を崩した。
少女が一人、肩で息をして立っていた。
576アム種30話:2006/09/11(月) 15:41:30 ID:???

「ミリアリア!?」
「よかった、丁度信号で止まっててくれて……探したわよ」
「どうして君がここに?」
「あー……ききたいのはこっちなんだけど。ま、いいわ。そこの喫茶店に連れといるから、車止めてきなさい」
「う、うん?」

知り合いか。随分、押しの強い子だな。
彼女とキラとのやりとりを見てそう思ったジェナスを乗せて、
キラの運転する車は近くの駐車場へと曲がっていった。

 ****

「くそっ」

無性にむしゃくしゃしながら、シンは街を一人歩いていた。
角を左へ行き、少しすると海岸線へと出た。
穏やかに凪いでいる海面を見て、彼は色々と思うところがあった。
それはキラとともに行動させられているから、だけではない。

「俺は……」

自分の、オーブに対する気持ち。
やっぱり、守りたいとは思う。
だから、ユウナ・ロマ・セイランの示した選択肢に従った。
それ以外にとりようもなかったというのもあるけれど、
少なくとも一番心のうちを占めていたのは、オーブに中立であって欲しかったから。
プラントと戦って欲しくなかったからだ。
けれど。
今はこうして戦わずに済む道を、オーブとプラントは採ることができた。
しかし、もしも。
もしも、どうしようもなく戦わねばならぬ状況へと追い込まれてしまったら。
自分は一体どっちにつくのだろう。
家族を殺したあの男……キラは、オーブを守るだろう。今度こそ、という決意と共に。
アスランも、カガリのためにオーブ側につくと思う。
アークエンジェルのクルーもほぼ全員がそうするのだろうが。
自分は一体、どうするのであろうか。わからない。
オーブ出身でありながらザフトの兵士である自分は。
そのもやもやに、シンはむしゃくしゃする。
オーブでのことや、この街で受けた諜報員からの話といい。
政治の裏側というものを見せられて、嫌が応にも考えざるをえないのが、腹立たしい。
自分の中にある「力」に対する迷いに、いらついて仕方がない。

「ちっ……」
577アム種30話3:2006/09/11(月) 15:42:49 ID:???

守るための、力が欲しい。
そう思って得た力の矛先に、シンは今悩んでいる。
「何を」守るための力だったのだろうか、それは。
オーブ?プラント?仲間?わかったつもりになっていたそれは、
儚くもすぐに裏返ってしまうようなものでしかなかった。
誰を撃ち、誰を守るか。それがわからない。
わかったつもりで、戦う。これではあの男、キラを非難などできないではないか。

「わかんねーよ、ったく…………」

ほんのわずかに垣間見ただけの汚い世界を理解し、それが自分に迫るかもしれない選択肢について
きちんとした答えを用意しろというほうが無理な話だが───……。
シンはそのことに気付けるほど、経験値が豊富ではない。

「……ん?」

海鳥の飛ぶ先をぼんやりと追っていた彼は、砂浜のはずれに一人の少女が座り込んでいるのを見つけた。
金髪に、ブルーと白のドレスのかわいらしい少女は、どこかで見覚えがあった。

「あれ、あの子どっかで……」

少女はシンに見られていることも知らず、なにか──おそらくは蟹かなにかだろう──を
見つけ興味を持ったらしく、四つん這いの姿勢で地面を這うようにして動き出した。
幼げな感じだが、胸は大きい。

「──っあ!?あの時の!?」

彼女に覚えた既視感の正体に思い至り、シンはその姿を目で追いつつ赤面した。
あの日──、ミネルバの進水式が行われるはずだった、三機のMSが強奪されたあの日に
街でぶつかって、うっかり彼女のおっぱ……失礼、胸部を触ってしまってきつく睨んできた子だ。

「そっか、地球の。この辺の子だったのか」

無事だったのか、と安堵すると共に、ユニウスの被害は大丈夫だったのか、と思う。
一番心の中を占めるのは無論、ご馳走様……もとい、すいませんでした、なのだが。
あのときのきつい目線が嘘のように、彼女は今天真爛漫な様子で地面の何かを、
岩場のほうにまで目を輝かせて追って行っている。
それを見て、次第にシンの心も和んでいった。
出て行ったら、覚えているだろうか。
覚えていたら多分、逃げられるか張り手の一発も食らうだろうけれど。
海と美少女というありがちな組み合わせに、シンは惹かれていた。
578アム種30話4:2006/09/11(月) 15:43:56 ID:???
が。

「っと……時間時間」

まだまだ時間はあるとはいっても、きちんと把握しておくべきだろう。
一瞬視線を外して、腕時計へと視線を落とした、そのときだった。

────どぼん。

「へ?」

顔をあげてみると、少女の姿はどこにもなかった。

「あれ?」

少し視線をずらすと、海面から水しぶきがあがっている。
どうやら、うっかり落ちたらしい。
天然というやつなのだろうか。微笑ましく思いながらもシンは
再び彼女が岩場の上に姿を現すのを待つ。

「……おい」

しかし、待てど暮らせど、少女はあがってこなかった。
それどころか、ばしゃばしゃとはねていた水とその音が、次第に小さくなっていく。

「ええ!?溺れたのかよっ!?」

シンは走る。
岩場の辺りは突然深くなっている場所もあるし、足のつかないそこにはまってしまったのかもしれない。
たどりつくと、波に身体を持っていかれたのか、少し岩場から離れたところで沈みかかった少女の金髪が浮いていた。

「あーもう!!待ってろ!!」

上半身の服を脱ぎ、シンは迷わず青い海へと飛び込んだ。
579134で言った人:2006/09/11(月) 15:47:05 ID:???
ようやく一人目合流(汗
紫組については前回の話が少し(ほんとに少しだけ)関係してきます。
580通常の名無しさんの3倍:2006/09/11(月) 18:38:36 ID:???
GJ!ジェナとセラはそろそろ邂逅ですか

そして
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡
581通常の名無しさんの3倍:2006/09/11(月) 18:46:10 ID:???
乙!
イの一番の合流はニルギの方が先かと思ってたんでちと意外。
ジェナがエッジ使ってると知ったら、セラはどんな感慨を持つんでしょうね・・・・。
582定期上げ担当者:2006/09/12(火) 00:40:47 ID:???
お疲れー次回はいよいよセラとジェナの再会かぁ
紫組の登場もそう遠くは無いですね
頑張ってください!!

定期上げ〜
583定期上げ担当者:2006/09/12(火) 00:41:39 ID:???
スマソ上がってなかったO.....TL
584アム種31話:2006/09/13(水) 10:52:34 ID:???
第三十一話 ミス・アンダースタンディング

「っは、はぁ、はぁ」

二人とも、全身濡れ鼠だった。
なんとか海岸へと少女を引き上げ、シンは荒い呼吸を整える。

「大丈夫か?」
「……こほっ」

金髪を海水で顔に張り付かせた少女は、返事するでもなく、
飲んでしまった塩水にむせていた。
察したシンが背中をさすってやると、少し楽になったのかこちらを見上げ返してくる。

「……?」
「あ、えーと」

これでアーモリーワンでの粗相は、流せただろうか。
不思議そう、というかぼんやりとした表情の少女が、シンのことを覚えていた場合に限るが。

「だれ?」
「って、覚えてないか」

それもそうだ。アーモリーワンからこっち、この少女も色々と大変であったろう。
ほんの一瞬顔を合わせた(しかも不快な思いをさせた)相手のことなど、
覚えているわけもない。
シンは一人で、勝手に納得した。

「俺はシン。シン・アスカ。きみは?」

出来うる限りの屈託のない笑みを浮かべて、シンは少女へと尋ねた。
しばらくして少女は小声で、ステラと名乗った。

 ****

「セラ!?」

ジェナスは我が目を疑った。

「ジェナス!?」

同様に、セラも疑った。
互いが、相棒とともに現れた相手のことを。
この世界にいるはずのない人間であると思っていたから。
585アム種31話2:2006/09/13(水) 10:53:30 ID:???

「えっと……二人とも」
「お知り合い?」

傍から見ているキラとミリアリアも、二人の様子にぽかんとしていて。

「どうして、ここに!?」
「セラこそ、無事だったのか!?いや……この世界に!?みんなは!?」
「ジェナス、落ち着いて」
「とりあず二人とも、座らない?」

他人事だからだろうか、一足先に落ち着いた連れの二人から促され、
ジェナスもセラも動揺しつつ席へと座る。
目の前に座る仲間が、今自分と同じこの世界にいるということが、
こうして実際に見てみても信じられなかった。

「んじゃ、まあ。どうしよっか。順番に話したほうがいいかもね」
「そうだね。じゃあ、僕から」

こうして四人の、奇妙な会見がはじまった。

 ****

岩場の奥まったところに、小さな洞穴があった。
自分はともかく女の子のステラに、砂浜で服を脱いで乾かせというわけにもいかなかったシンは
この場所をみつけたおかげで焚火を焚いて、二人分の服を乾かす作業を行うことができた。

「そっか……じゃあ、ステラはそのスティングとアウル、だっけ?二人のお兄さんたちと一緒に来たんだ」

シンが言うと、ステラはこくりと頷いた。

「スティング……海岸でまってろ、て……ステラ、海好きだから……」

ぼそぼそとしゃべる、ひどく幼い口調だった。
背中合わせで見えないけれどその体は、十分に立派なものを……いやいや、成熟しているというのに。
一人称が自分の名前というのもその印象に拍車をかけている。

「海、好きなんだ?きれいだもんな、ここの砂浜」
「うん……でも、ネオはもっとすき」
「ネオ?」
「ネオ、いつもやさしい」

父親か、誰かのことだろうか。
先程からのステラの口調にも、次第に慣れてきていた。
だからさほど気にせず、ついシンは「言ってしまった」。
彼が知る由もない、ステラにとっての禁句を、たしなめるように。
586アム種31話3:2006/09/13(水) 10:55:15 ID:???

「けど、もっと注意しないとだめだぞ?ネオが心配するだろ?」
「うん」
「俺が見てたからよかったけど、誰もいなかったらあのままステラ『死んじゃってた』かもしれないんだぞ?」
「!?」

『死ぬ』。そのシンの吐いたフレーズに、ステラの体が凍りついたように硬直する。
シンは気付かず、言葉を続けるが───……。

「塩水まみれで戻ったら、お兄さんたちも心配するだろうし……」
「『死ぬ』……『死ぬ』……」
「ん?ステラ、どうし───」
「いやぁっ!!死ぬのは、いやっ!!いやあぁっ!!」
「ステラ!?」

突如として立ち上がり、髪を振り乱して泣き叫ぶステラに、シンはぎょっとする。

「危ない!!」

暴れ錯乱するステラの足がもつれ、海水で滑りやすくなっている洞穴の岩を
踏み外し、後頭部から落ちそうになる。慌ててシンが受け止めてやるも、
彼女はシンのことなど見えていないかのようにじたばたと腕の中でもがき、振りほどかんとする。

「いや、いや、いやああぁっ!!!」
「ス、ステラ!!どうしたんだよ!?落ち着け、大丈夫だから!!」
「死ぬの、いやああああぁっ!!」

ステラの発し続ける叫び声に、ようやくシンはあることに思い至る。

(死ぬのが、嫌?にしてもこんなに怖がるなんて?なんで……)

もがき暴れるステラの力は、女の子のものとは思えないくらいに強かった。
訓練された軍人であるシンでも、抑えるのに必死になるほどだ。

(死ぬのを、間近で見たからか?あるいは、自分が死にそうに……どこで?アーモリーワン、か?やっぱり)

それは、事実関係だけを見れば間違いではない推測(ステラが加害者か、被害者かという違いはあれど)
ではあったのだが。シンはそのように勘違いし、認識した。

(だとしたら……俺のせいだ。俺があの三機を止められなかったから……この子を傷つけてしまった)

この子を傷つけたのは、自分の責任だ。
ステラがこんなにも怯え、怖がっているのは自分が、怖い思いをさせてしまったから。
なおもシンを引き剥がそうと暴れるステラのことが、急にいとおしく切ない存在であるように思えてくる。
587アム種31話4:2006/09/13(水) 10:56:31 ID:???
(ごめん……ごめん、ステラ)

衝動に衝き動かされるように、ステラのことをきつく、きつく抱きしめていた。
背中を何度も拳で叩かれても、放さない。放すものか。

「……大丈夫、だから」

アーモリーワンのようなことはもう、させない。
君を怖い目に遭わせたりはさせない。

「君は死なない。死なないから」
「……!?」

びくり、とステラが身を震わせ、暴れるのをやめる。
抱き寄せた彼女は今一体、どんな顔をしているのだろうか。

「俺が、君を守るから」

ステラだけではない。
彼女のような子たちを、守る。
あの強奪犯たちのような卑劣な連中から、守ってみせる。
それはシンの誓いでもあった。

「まも……る……?」
「そう。だから、君は死なない。そんなに怯えることはないんだ」
「シン……ステラ、まもる……?」
「ああ、絶対に、守るから。だから死なない」

そうだ。
自分は、これでいいのだ。
何もわからぬままなんかじゃない。
ステラのような子たちのために。力のない者たちのために戦う。
それでいいではないか。
力を以って彼女達を傷つけるような者、それが俺の敵だ。
彼女のような存在のためならば、どんな相手であろうと自分は躊躇いなく引き金を引くことができる──!!
プラントか、オーブか。それはそのとき考えればいい。
弱者を傷つける者がいれば、どちらであろうとそれは自分の敵だ。

「シン……?」
「守るよ。絶対に。絶対……!!」

決意を込めて、ステラを強く抱きしめる。
小難しい正義や考えはいらない。
何を迷うことがあったのだ。
彼女の身体から感じるぬくもり、それさえあれば。
そのぬくもりを守るためであるならば、それだけでいい。
彼の若い心は、決めた。
588134で言った人:2006/09/13(水) 11:02:27 ID:???
尺の関係で詳しいジェナとセラの再会は次回(汗
いや、はじめは書いてたんだけど冗長になってしまったもので。
シンとステラについてはね、一話での出会いを二人とも忘れてるって
なんじゃそら、と。いくらでも使いようがあるのに。というわけで
シンは覚えているということで。

地味に話自体は2クール目に入っているわけですが(前に言ったとおり二話で一話ペース)
脳内では一期はSILENTMOONが流れてましたが、二期はなんだろう?
多分IGNITEDか僕達の行方。
589通常の名無しさんの3倍:2006/09/13(水) 11:33:15 ID:???
職人さん乙です!
セラとの邂逅と情報交換も楽しみですがあまり長くなるのもアレですね。
そしてシンはこれで一本芯が入った感じでますます主人公・・・・・・に、なれる、のか?
そのへんも楽しみです。

> 脳内ソング
種死は知らないですが、やる気まんまんだということがわかって安心しました
590通常の名無しさんの3倍:2006/09/13(水) 15:53:59 ID:???
>>588
トーンダウンするけど俺の脳内じゃRIDE ON MIND!
591通常の名無しさんの3倍:2006/09/13(水) 17:39:40 ID:???
なぜステラに拘るのかが描かれていていいっすね
GJ
592アム種32話:2006/09/14(木) 18:15:40 ID:???
第三十二話 紫電の剣

「───ん?これは」

バルドフェルドと共に艦に残ったアスランは、メニューを終えたシュミレーターの中で
怪訝に眉を顰めた。

「『J・D』……ジェナス・ディラ?」

戦闘訓練をコックピットを模したシートに座り画面上で行うそれが表示するのは、
トップスコアー10人の名前。アミューズメントセンターにあるゲームのようなものだと思えばよい。
そこに並ぶイニシャルの殆どがアスランを示す「A・Z」。
もしくはキラの「K・Y」で、僅かにシンの名がその中に混じる程度であったのだが。
ちなみにバルドフェルドは映像での訓練など意味がないと思っているらしく、シュミレーターに座るところなぞ
ついぞ見たことがない。

「マードック技師長」
「あん?」

シュミレーターから顔を出し、インパルスの整備に指示の怒声を張り上げていたマードックに声をかける。
画面上に出たイニシャルについて問うと、案の定と言うべきか、むしろ意外と言うべきか、
頭に浮かんだ人物の名を常に格納庫に詰めている彼は答えた。

「ジェナスが?」
「ああ、本人はあんまり乗り気じゃないみたいだったがな。覚えといたほうがいいって、シンに教えられてたな」

───それで、この数値か。
アスランは半ば唖然とそこに記されたスコアを見つめる。
もちろんこの艦のパイロット、どのメンバーにも及ばないとはいえ。
彼のそれは、素人のものとは思えないほど高く。
ヘタなコーディネーターよりも優秀な数値を納めていた。

「これも、『アムドライバー』とかいうやつだからなのか?」

シュミレーターのスイッチを切りながら、一人ごちる。
あるいは、この世界の人間と彼らとでは根本的に身体能力に差があるのかもしれない。

「でも、だとしたら」

コーディネーターでなくとも、これだけの能力を持つ者がいる。
それはこの世界にとって、二つの人種を懐柔するための手段になるかもしれない。
漠然とした考えではあったが、アスランの脳内にはおぼろげにそんなことが浮かんでいた。
電源が落ちたのを確認して箱状の機械から足を踏み出すと、その瞬間、敵襲を告げる警報が鳴った。

 ****
593アム種32話2:2006/09/14(木) 18:17:00 ID:???

「よーしよし、いたな、子猫ちゃん……いや。天使様というべきか?」

機体のメインカメラが捉えた映像には、アークエンジェルが映っている。
MSは……まだ、発進してきていない。速攻で先制をすべきだろう。

「ったく……盟主も無茶言うぜ、ほんとに!!」

彼の機体に続くのは、十数機のスカイグラスパー。それぞれにエールとランチャーのストライカーパックを
装備した機体が、半々。そして、母艦のJ・P・ジョーンズが一隻。これだけである。
これでも寄港した基地にあった航空戦力を防衛が最低限可能なラインで、かき集めてきたのだ。

「よりによってあの艦を相手にするのに、増援がたった二機とはね!!」

ディグラーズは、いない。
ステラも、スティングも、アウルもいないというのに。
映像通信によって盟主が命じたのは、一刻も早いアークエンジェルの撃破。
どこにその根拠があるのかというような満面の自信で、撃墜をジブリールは要求してきたのだ。
今頃アウルの夢中になっているであろう、ゲームとは違うのだ。
盟主はまったく前線のことなど、わかっていない。

「さっさと出撃してくれよぉ、被験体のお二人さん!?」

要請した増援MS部隊に対し、ジブリールがよこしたのはMSがわずかに二機だった。
それらも調整が遅れているとかで、未だJ・P・ジョーンズから発進はしていない。
指揮官でありながら搬入するところさえ見せてもらえなかったネオとしては、
ちょっとやそっとの働きで満足もできそうにないというのに。
新型のエクステンデッドという二人のパイロットはどちらも屈強そうな男であったが、
本当に役に立つのだろうか。

「……くるぞ!!各機散開!!エール装備のやつらでMSの相手はしろ!!ランチャー部隊は構わず艦を狙え!!」

真紅の機体が発進してくる。
無理矢理に集めてきた部隊で、はたしてどれほどが生き残れるだろうか。
ネオはガンダム顔の赤い機体の相手をしながらも、部隊員たちに対し慙愧に絶えない思いを抱いていた。

 ****

「敵襲!?そんな、赤道連合に見つかったってことですか!?」

ミリアリアの運転する車の助手席で、キラが通信機に向かい怒鳴った。
万一に備えてということでアスランから携帯そっくりに改造されたそれを持たされていたものの、
傍受されることも考え緊急時以外は使うなと念を押されていた代物だ。
一台はシンに持たせ、もう一台は手元にあるこれだ。
594アム種32話3:2006/09/14(木) 18:19:42 ID:???

『いや、例の空母の部隊だ!!』
「!!あのガンダム三機の!?」

彼ら四人はそれぞれの事情を互いに話し終えるとほぼ同時に、アークエンジェルからのコールを受けていた。
艦が危ない、直ちに戻ってくれ───……、チャンドラの緊迫した声が、ノイズ混じりに伝わってきた。

「あー、くそ!!シンのやつ一体、どこいるんだよ、海岸って!?」
「白の袖なしのパーカー、でいいのよね!?」

ミリアリアが運転、キラが状況把握。
ジェナスとセラが残るもうひとり、シンの姿を探し、車は走り回る。
話もそこそこに喫茶店を出たが、なかなか見つからない。
海岸にはまばらに人が歩いていて、探すのもやや面倒だ。

「いた!!あれじゃないの!?白パーカーに、黒髪!!」
「あれだ!!ミリアリア、止まってくれ!!」

ジェナスの言を受け、海岸沿いの道路に車が急停止する。
がくんと大きく揺れた際の揺れで思い切り頭を打ったキラは無視。
駆け寄ってきたシンにドアを開けてやる。

「うわ、磯臭いぞ、お前!!」
「わり、ちょっと落ちちゃって……それより、敵襲って!?」
「く、詳しい話はジェナスから……急ごう、ミリィ」
「オッケェー、飛ばすわよぉっ!!」

額をさすりながら言ったキラに従い、ミリアリアは車を発進させた。
今度は彼の後頭部をシートへと思い切りめりこませて。
ちらりとシンが後ろを見たのに、ジェナスもセラも気付かなかった。
遠くのほうで三人組の男女が、こちらのことを見ていた。
それを見るシンの目はいつになく、優しかった。

 ****

「6つ!!」

大気圏内において、MSにとって戦闘機はたしかに厄介な相手ではある。
だが、熟練したパイロットからすれば別だ。
かつてのムウ・ラ・フラガのような腕の持ち主が乗っているのならともかく、
アスランやバルドフェルドにとって一般兵の乗るそれは、単に地上を這うMSに比べ小さく早い、
少しばかり当てにくい的でしかない。

出撃して僅かな時間で、スカイグラスパーの部隊をアスランたちはたったの二機で、
ほぼ壊滅状態へと追いやっていた。
残るはエール装備が数機、そして指揮官機のウインダムだ。

「……いける」
595アム種32話4:2006/09/14(木) 18:23:08 ID:???
これからカオスやアビスが出てきたとしても、キラたちが戻るまでは十分に耐えられる。
煙をあげて海面に落ちゆく最後のランチャー装備の機体を一瞥し、アスランは一息つく。
いっそ、このまま母艦を無力化しておくべきか。バルドフェルドがウインダムと斬りあっている今ならできる。

「!?」

攻めあぐね躊躇したようにセイバーの周囲を旋回していたスカイグラスパーが突如として、
一斉にその空域から離脱する。指揮官を放置して、だ。

『気をつけろ!!何かくるぞ!!』

その様子にはバルドフェルドも気付いたらしく、
ウインダムのシールドを自機のシールドで受けたムラサメからの通信が飛んでくる。

『アスラン!!聞いてるのか!!』
「……な」

しかしそれは彼の耳には、聞こえていなかった。
彼はただ、カーゴベイを開いた空母からスカイグラスパー部隊と入れ替わるように現れた、
二機のMSの姿に目を奪われていたのだから。

「まさ、か……?」

それは、彼らのはるか下、海面をモーターボートでジェナスたちとともに
アークエンジェルに帰還すべく急ぐキラも同様で。

「そんな……何故、あれが……」

二体の巨人が、空母から舞い上がる。
キラとアスラン、二人は信じ難いものを見る目で、それらを見上げる。

鋭角的なシルエットに、巨大な背面ユニットが特徴的なそれは。

「ジャス……ティス……?」

六枚の羽を広げた、流麗なフォルムの、その機体は。

「フリー……ダム……?」

自由の翼と、正義の剣。
フリーダムと、ジャスティス。
彼らのその姿は、以前の緋色と純白の機体色を失い、
堕ちた天使のように漆黒と暗い紫に染め上げられていて。

「なんで……あれがいるんだよっ!?」

かつて家族を奪った者と、かつての主たちの前へ、
禍々しきその姿で立ち塞がっていた。
596134で言った人:2006/09/14(木) 18:25:47 ID:???
ああ、ミス発見orz

×堕ちた天使のように漆黒と暗い紫に染め上げられていて。
○二機とも、堕ちた天使のように漆黒と暗い紫に染め上げられていて。
597通常の名無しさんの3倍:2006/09/14(木) 18:41:11 ID:???
乙!
久方ぶりの戦闘キター!!!!
主役(前作だけど)の偽者、と言うのも強敵のお約束ですね。正体が気になる・・・・。
ザフト製の機体を何故ロゴスが作れたかと言う件も含めて。

>戦闘訓練をコックピットを模したシートに座り画面上で行うそれが表示するのは、
>トップスコアー10人の名前。アミューズメントセンターにあるゲームのようなものだ>と思えばよい。
これってもしかしてMS用の?
と言う事はジェナがMSに乗る事もあるんだろうか・・・・・。

いずれにせよ続きが気になる展開、次回を楽しみにお待ちしてます!
598通常の名無しさんの3倍:2006/09/14(木) 21:49:19 ID:???
もしや、ドーンでワオワオワオーンな人たちくるーー!?
今回も楽しませてもらいました、乙!
599通常の名無しさんの3倍:2006/09/14(木) 22:01:16 ID:???
ドーンでワオワオワオーンな人たちがエラいのに乗ってきちゃった――――!?

ああ、タフトさんならバーストバイザーでハイマットフルバーストみたいなことしてたなw
MSで「空母がぁぁ!!ドカァァーン!!続けぇ!タフトォ!!」「キ〜アイだ気合抱だ気合だ気合だ!気合だぁぁーーー!!」してくれたら神だw
600通常の名無しさんの3倍:2006/09/15(金) 07:29:18 ID:???
>MSで「空母がぁぁ!!ドカァァーン!!続けぇ!タフトォ!!」「キ〜アイだ気合だ
>気合だ気合だ!気合だぁぁーーー!!」してくれたら神だw
船が揺れるどころか、AA自体が投げ飛ばされそうだwwwww
601通常の名無しさんの3倍:2006/09/15(金) 22:03:25 ID:???
>>587
>自分は、これでいいのだ。
>何もわからぬままなんかじゃない。
>ステラのような子たちのために。力のない者たちのために戦う。
>それでいいではないか。
改めて読み返してみると、
「目の前で傷つくピープルがいたとして、どちらの言い分が正しいかなんて意味が無い」
シンの台詞って、ダークさんのこの台詞ともろに被るんですよね・・・・。
戦う目標の見えてないシンや、今は自身の過ちに囚われているキラも、最終的にはこの結論に辿り着くのかな。

ある意味、この「アム種」は、シンやキラが「アムドライバー」になる話なのかも知れない・・・・。
最近、そんな気がします。
602通常の名無しさんの3倍:2006/09/15(金) 22:24:31 ID:???
「アスランの役割」と言うのも注目すべきトピックではあるな。
>それはこの世界にとって、二つの人種を懐柔するための手段になるかもしれない。
>漠然とした考えではあったが、アスランの脳内にはおぼろげにそんなことが浮かんでいた
種再構築系のSSだと、ラクス以上にユウナとアスランが種世界を導くキーパーソンとして
脚光を浴びてるんだけど、ここのアスランはどんな役割を果たしてくれるのかな。

これも凄い楽しみ。
603通常の名無しさんの3倍:2006/09/15(金) 22:50:10 ID:???
>>602
某スレのアスランはエレガントへの道を歩んでるしなw
604定期上げ担当者:2006/09/16(土) 02:24:19 ID:???
寝る前に定期上げ、お休み〜
605通常の名無しさんの3倍:2006/09/16(土) 04:02:14 ID:???
意外に早い展開でシンは気づくんだな、自由のこと
606アム種33話:2006/09/16(土) 14:12:29 ID:???
第三十三話 血涙の戦士

「いっちまったな、あいつ」
「……うん」

少し寂しげに俯いたステラの頭を、スティングがやさしく叩いた。
シンを乗せた車は、あっという間に小さくなっていき、見えなくなってしまった。

「いーじゃん、また。戦争終わったら、会いにこよーぜ。あいつけっこーいい奴だったし」

きちんとお礼、もう一回言わねーと。
頭の後ろで腕を組んでいたアウルも、ステラを励ますように言う。
彼の言に、ステラはこくりと頷いた。
短い時間であったがスティングたちの知り合った少年は、彼らにとって数少ない
同年代の友人、話し相手となっていた。

だが……と、スティングは思う。
アウルはああいったけれど、戦争は終わるのだろうか。
また、終わったとして自分達にそのような自由はまわってくるのだろうか。
どちらにせよ、生き延びなければはじまらない。
エクステンデッドたるこの身が、どれほど生きられるのかはわからないが。
戦死だけはしたくない、ステラたちにさせたくないと、密かに思った。

「さ、飯食いにいこーぜ。ネオからはたっぷり軍資金もらってるしな」
「あ、俺ハンバーガー」
「却下。なんでここまできてファーストフードなんだ、お前は。豪勢にいくぞ」
「……アウル、貧乏……?」
「ちっげーよ!!いーだろ、好きなんだからさ」

エクステンデッドの少年、少女たちは今このときだけは、歳相応の
笑顔と馬鹿話をしていた。
彼らは、知らない。自分達の知り合った少年が、旧敵であるということなど。

 ****

「ほほう?これはこれは……まさか、あの二機が増援とはね?」

盟主が自信満々によこすわけだ。
ほくそ笑んでネオは納得した。

「ならば……パイロットの腕も、確かなんだろうよっ!!」
607アム種33話2:2006/09/16(土) 14:15:29 ID:???
ビームサーベルを横薙ぎに。
黄色のムラサメは左手に保持していたビームライフルを切り裂かれ、
ネオの二撃目を避けるべく変形し離脱する。

「さて……踊れよ?『被験体D』、『被験体T』?悪いな、本名を知らなくて……」

かつて鬼神とよばれた二機のMSが、援軍として自分の側にいる。
そして、かつての母艦を討とうとしている。なんとも皮肉で、滑稽ではないか。
ネオは、頬が酷薄に歪むのが止められなかった。

 ****

フリーダムと、ジャスティス。
その設計そのものは大戦末期、既にプラントから連合へと流れていたという。
前ブルーコスモス盟主、ムルタ・アズラエルの手に渡った、Nジャマーキャンセラーのデータとともに。

『だが愚かにも、前盟主は核をプラントに撃ち込むことにこだわり、それらは二の次として扱ったのだよ』
「……」

赤道連合の基地に停泊する、ガーティ・ルー。
その薄暗い部屋の中で、ディグラーズはジブリールからの衛星を介した通信をつまらなそうに聞いていた。

『結果、完成する頃には終戦、ユニウス条約などという下らないもののせいでお蔵入りというわけだ』

やれやれ、と鼻で笑うジブリール。
少なくとも彼の中に前任者に対する尊敬の念などは皆無であるようだ。

『おまけに開戦したと思えばあの化け物どもは核を無効化する新兵器を出してくるわ……』

とてもじゃないが、正規軍に配備できるような代物ではなくなってしまったのだよ。
再現できない部分もあってオリジナルより性能がやや劣るとはいえ、
それでも扱えるほどの腕前をもつパイロットは、ごく限られているしね。
ディグラーズにとっては、それらはどうでもいい話でしかなかった。

『だが、ちょうどいいサンプルが君たちの世界からやってきたのでね?』
「……くだらん」
『まあ、そういうな。彼らは素晴らしいぞ?わずかな刷り込みと記憶の改竄、少量の投薬だけで……、
 並のコーディネーターどころか、ソキウス、エクステンデッドたちさえも凌ぐ!!実に優秀な肉体じゃないか!!』
「気に入らんと言っている……!!」
『フフ……いいではないか。君も含めて、彼らの戦果を期待しているよ』
608アム種33話3:2006/09/16(土) 14:18:01 ID:???

通信が、切れた。
ディグラーズはサイドテーブル上のグラスに入ったブランデーを一気に呷ると、
氷だけになったそれを思い切り、暗転した通信端末のモニターへと叩きつけた。
グラスと氷が粉々に砕け散り、水分が辺りに飛び散った。
眠ったように電源をオフにしていたケケが、驚いたようにその目に当たる部分に光を宿した。

 ****

「く……なんで、ジャスティスとフリーダムが……!!」
『落ち着け!!Nジャマーキャンセラーのデータは連合に渡ってるんだ!!
 あの二機のデータも一緒に渡ってたとしても不思議じゃない!!アスランも!!いけるな!?』
『は、はい……』
「はい……」

急ぎ艦へと戻り、ストライクノワールで出撃したキラであったが、やはりアスラン共々そのショックは大きかった。
捨てたはずの力。失ったはずの剣。自らの大罪の象徴。
目の前に浮かぶ二機は、二人にとって、それ以外の何ものでもないのだから。

『しかし、こいつぁ厄介だぞぉ……あの、二機が相手となると!!』

バルドフェルドが吐き捨てる。
まさに自分達は、あの二機の持つ性能を、身をもって知っている。
まさか、その力が自分達に向かいふるわれることになろうとは、思ってもみなかったが。

『無理に相手はしないで!!船のスピードで、なんとか振り切ります!!』
『了解!!シンとジェナスは!?』
『今、出します!!セラもジェナスから補給を受け次第、出れると!!』』

ブリッジとバルドフェルドのやりとりが、遠くのほうで聞こえる。
キラには、紫色に塗られたフリーダムしか見えなかった。
あれは、自分だ。かつての自分の亡霊だ。
力にのぼせあがり、多くの犠牲を生み出し続けていた頃の。

「なら、僕が……!!」

僕が、倒さなければならない。

『キラ』
「……アスラン」
『わかってるな?』
「……うん」
『あれは、俺達が───……』

倒す。皆まで言わずとも、二人の思いは同様だった。
あの二機は、自分達にとっての、大戦の亡霊なのだ。
この世に篭り、残ってしまった邪気は、自ら払わねば。
609アム種33話4:2006/09/16(土) 14:19:54 ID:???

けれど、それ以上にかの機体を倒さねばおさまらぬ者がいた。
だからこそ、アスランの言葉は途中で途切れた。

『うおおおおおぉぉぉぉっ!!!!!こいつうぅぅぅっ!!!フリーダムうぅぅっ!!』

滞空するセイバーとストライクノワールの間を、真紅の稲妻が一条、切り裂いて突き抜けていく。

「インパルス!?」
『シン!?』

カタパルトのハッチが開くなり、飛び出したシンのインパルスだった。
その機体色の赤は、いつになく彼の放つ怒気を孕んでいるように見え。

『お前は、お前だけはあぁっ!!』
『駄目だ、シン!!戻れ!!そいつは……』

制止するアスランの声も届いてはいなかった。
怒りの狂戦士と化した赤き剣士・インパルスが、操縦者たるシンの激した心を乗せて向かっていく。
仇敵、フリーダムへと、憎しみをこめた刃を握りしめ。

『死ねえぇぇぇぇっ!!!フリーダムっ!!』
「シン!!いけない!!」

剣の連結を解いたインパルスは、微動だにせぬ闇色のフリーダムの頭部へ、
そのレーザーの光刃を寸分の狂い無く振り下ろした。
610134で言った人:2006/09/16(土) 14:23:00 ID:???
投下してから思った。
・・・・・今回のタイトル、運命の初出撃までとっておけばよかった(汗
まあそれはそれ、これはこれ。
本編のシンのフリーダムに対する無反応っぷりはおかしいんですよ。
仮にカラミティが殺したかもしれない(この変更がもうアレなわけですが)
にせよ、主犯格のひとりであるわけですから、フリーダムは。
そこはシンの性格なら速攻向かっていくだろう、と。
611通常の名無しさんの3倍:2006/09/16(土) 14:28:23 ID:???
リアルタイムでGJ!
DとT、もう疑いようがないw
ここからどう展開していくのかが楽しみです。
612通常の名無しさんの3倍:2006/09/16(土) 19:45:13 ID:???
GJ!

>わずかな刷り込みと記憶の改竄、少量の投薬だけで
つーか洗脳されちゃってんですかあの二人
613通常の名無しさんの3倍:2006/09/16(土) 20:14:21 ID:???
>>612
むしろ後半仲間フラグ
614通常の名無しさんの3倍:2006/09/16(土) 20:40:16 ID:???
GJ!
なんかスティングが凄ぇ思いやりのあるしっかり者のいい奴に・・・・。
ユウナだけじゃなく、ファントムペインのこの三人にも死んで欲しくないなぁ・・・。
615通常の名無しさんの3倍:2006/09/16(土) 20:54:06 ID:???
洗脳されてるわけがねえどころか、ガイアを見て犬属性復活したタフトさんが正気に戻ったと同時に
何事も無かったかのように元に戻るダークさんしか想像できません。
616通常の名無しさんの3倍:2006/09/17(日) 05:57:59 ID:???
GJ!
617アム種34話:2006/09/17(日) 11:56:25 ID:???
第三十四話 ロスト・ライフ

「───は?おいおい、寝惚けてんのか?」

自機のコックピットの中で、彼はあざ笑った。
僚機……相棒の駆るフリーダムへと襲い掛かる赤い機体の動きは
彼から見れば、あまりにスローモーで隙だらけに見えたからだ。

「そんなんじゃ……タフトはやれねぇぜ」

だから彼は、その敵機の動きも、仲間の危機も捨て置いた。

 ****

「あああああああああっっ!!!!」

二本の対艦刀が、フリーダムの身を、今にも切り裂こうと振り下ろされる。
討ち取った───シンの、歪んだ悦びの確信とともに。

しかし。

フリーダムは刃が機体に到達する、そのわずかな時間よりもはやく行動を起こし。
両の羽に装備された二門のビーム砲、「バラエーナ」プラズマビーム砲を跳ね上げ、
それをインパルスの両腕へと押し当てる。

「何!?」

瞬間、発射。
両腕が灼熱のビームに焼かれ、二刀を保持したまま肘上から吹き飛ぶ。

『シン!!』

更には、腰のレールガンを展開、膝関節へと正確に狙いを定めたそれが直撃し、
VPS装甲に覆われていない関節部を破壊。
膝から下が重力に引かれ落下していく。

「そん、な……!?」

一瞬、何が起こったのか自分でもシンは理解できなかった。
今まで出会い戦ったMSの動きを、目の前の仇敵は遥かに越えていた。
呆然とモニターを見つめる彼の視界が、コックピットめがけて蹴り出されたフリーダムの足裏に
覆われていく。

直撃と同時に、シンの身体は激しい衝撃に襲われた。
四門の砲とビームライフルを展開したフリーダムがわずかに見えたかと思うと、
水の飛沫の中に消えていった。
バーニアを噴かすことも忘れ愕然とした彼を乗せたインパルスは、波間に沈んでいった。
618アム種34話2:2006/09/17(日) 11:58:22 ID:???

 ****

「艦長!!戦闘です!!距離……25000!!地球軍と、アークエンジェル!!」
「なんですって!?領海線は!?」
「なんとか、越えてはいますが……!!」

インパルスが落とされた丁度そのころ、彼らの元に急ぐ一隻の艦影があった。
通信士や索敵班の報告に、ブリッジは急激に慌しくなる。

「インパルス……落下します!!」
「!!く……各フライヤーの発進を!!」
「届きません!!艦からの無線誘導の範囲からは、わずかに足りません!!」
『艦長』

と、パイロットたちの詰める待機所から、内線が入る。

『俺が出ます。グフならば……』
『あたし!!あたしが行きます!!シンやアスランさんがピンチなんでしょ!?』

通話機をとった彼女──艦長の耳に届き、画像に映るのは二人の男女。
赤とオレンジのノーマルスーツを、それぞれ着込んでいる。

『はあ?おいおい、お前さんの機体は飛べないでしょーが』
『シルエットフライヤーで!!あれでいきます!!非常時は有人制御できるって、前シンから聞きました!!』
「本気なの?」

彼女は驚く。
戦闘能力のない機体で戦場に向かおうとする少女の蛮勇に。

『はい!!やらせてください!!』
『……艦長、私からもお願いします。ルナマリアで不満なら、私が行きます』

彼らの隣に、更に白いパイロットスーツの少年が割り込む。
驚いたように彼らを見たオレンジの青年は、やれやれと小さく溜息をついてから彼らに同調する。

『どうやら、これがうちのパイロットの総意のようですよ?俺も護衛につきますから、許可してもらえませんかね?』
「……」

ええい、どいつもこいつも。
しれっと言ってのける青年に、彼女は。
ミネルバ艦長、タリア・グラディスは手のかかる子供達を抱えた母親の気分になりながらも、
許可を出す方向に考えを進めていた。
619アム種34話3:2006/09/17(日) 12:00:57 ID:???
 ****

「何ッ!?」

アスランは、自分の目を疑った。
ジャスティスはかつての自分の乗機だ。
できることも、とるべき戦法も、熟知している。

なのに。

「宙返り……だとっ!?」

目の前の紫のジャスティスは、自分の考えつきもしなかった戦術を駆使してくるのだ。
分離したリフターでスノーボードよろしく、空中で一回転してこちらのビームライフルを避けつつ、
反撃の射撃を返してくるなど。見栄えはよくとも隙の大きい、そのような戦法、
正気とは思えない。

『あのトリックは!?』

驚く彼の耳に、ジェナスの声が聞こえた。
彼も艦の近くで護衛をしながらも、上空高く上下逆さに飛び上がったリフター騎乗の機体を見上げている。

「どうした、ジェナス!!」
『い、いや……。でも、まさかそんな……』

カットバック。大してボード競技に詳しくもないアスランがそのテクニックの名前を、知る由も無かった。
まして、かつてそれをジェナスに教えた者がいるということなども。
なんにせよ、キラがシンを救助してくるまでは彼抜きで、あの二機と対峙せねばならない。

 ****

「……負けた、のか?俺は」

四肢を失い、海底に沈んだインパルスのコックピットで、シンは目を覚ました。
それほど長い間気を失っていたわけではないようだ。

「くそ……」

真っ暗なコックピットで、わずかに光を放つコンソールを叩く。

「くそ、くそぉ……」

フリーダムを、討てなかった。
完膚なきまでに叩きのめされた。
なにもできなかった。恐怖すら感じた。
悔しい。

「!?」
620アム種34話4:2006/09/17(日) 12:02:49 ID:???

何度も殴りつけたコンソールの上から、何かが落ちてくる。

「これ……マユ……」

ピンク色の、妹の遺品たる携帯。
出撃の度にコックピットに持ち込み、コックピットにぶらさげている形見だ。
ちょっとやそっとで落ちることのないそれが、今落ちてきた。
まるで彼に何かを、訴えるかのように。

「マユ……俺……」

諦めるな、と言いたいのか?
奴を倒してくれ、と言っているのか?
果たして彼女が生きていたとしてそういうことを言うだろうか、ということはわからない。
彼には少なくとも、まだ終わっていない気がした。

「そうだ……まだだ」
『シン?生きてる?』
「死んで……たまるか」

ようやく彼を発見したキラの通信も、耳に入らない。

『無事なの?』
「まだ、終わってないぃっ!!」
『シン!?』

色を失ったソードインパルスが、胴体と頭部だけのその機体を急激に浮上させる。
ストライクノワールをおきざりに、海面めがけ勢いよく飛び上がる。

「たとえ、刺し違えてでも!!お前は!!……!?」

飛び上がった先に、フルバーストモードのフリーダムが待ち構えていた。
両肩を、両足の付け根を。そして唯一無事であった頭部を、
フリーダムの一斉射撃が粉々に撃ち砕いていく。
待ち伏せ?いや違う。フリーダムのパイロットはわずかな波の乱れでシンの奇襲に気付き、
フルバーストモードに機体を変型させて対応したのだ。
その反応は、理解の範疇を超えていた。

砲撃形態を解いたフリーダムは、サーベルを引き抜きインパルスへと迫る。
落下するスピードよりはやく駆けた機体は、あっという間に残骸も同然の機体に追いつき。
コックピットへと垂直に、サーベルを突き立てるべく腕を引く。
621アム種34話5:2006/09/17(日) 12:03:40 ID:???

(死ぬ、のか……!?)

ビーム刃の光が、彼にとっての死神の鎌であった。
刻一刻と迫るその鎌に、全身の毛が怖気立つ。

『シン!!脱出して!!分離するの、急いで!!』

死の世界にひきずりこまれようとする彼の意識をこの世に呼び戻すかのように、
久しく聞いていなかった勝気な少女の叫びが聞こえた。
622134で言った人:2006/09/17(日) 12:08:07 ID:???
ジャスティスがやってるのは第六話でダークさんがやってた「アレ」です。
覚えてない人はビデオ借りてみてね(ぉ

ちなみに連合版フリーダムとジャスティスのオリジナル版との違いは
自由→ハイマットフルバースト使用不可
正義→ブーメランのオミット
だったり。
623通常の名無しさんの3倍:2006/09/17(日) 12:12:20 ID:???
乙!
待望のジェットスクランダー(違)がついにキター!!!
>>622
>ジャスティスがやってるのは第六話でダークさんがやってた「アレ」です。
俺らがあれを忘らいでかw
ボドバ初登場の回じゃまいか。
624通常の名無しさんの3倍:2006/09/17(日) 12:36:03 ID:???
GJ!
絶対いつかやると思ってたよ>リフター付きMSでボードトリック
625通常の名無しさんの3倍:2006/09/17(日) 14:02:12 ID:???
カットバックといえば、エウレカもカットバックドロップターンが決まり手だったな。
マユとルナの中の人が同じことを念頭に読むとより燃えるぜ!
626通常の名無しさんの3倍:2006/09/17(日) 19:03:25 ID:???
>>622
乙!
>自由→ハイマットフルバースト使用不可
そもそも当初の設定では「ハイマットモードとフルバーストモードは併用不可」だったんだよね
それをどこかの無能豚がいきなり設定無視してかましちまったわけで
現に最初のプラモではどうやっても再現不可
627通常の名無しさんの3倍:2006/09/17(日) 21:55:30 ID:???
タフトさんはさすがに喋るとジェナスにモロバレだから一言も喋らないのかな?w
ミスター子供好きなタフトさんならアウルたちとも仲良くなれそうだ。
628アム種35話:2006/09/18(月) 13:57:12 ID:???
第三十五話 リセット・ザ・リレーション

指先が、自然と動いた。
迫りくるビームサーベルの光を見ながらも、彼は操縦桿とスイッチを操作し、
分離シーケンスを行っていく。

サーベルが五体を失ったインパルスの胸を貫くのと、
シンを乗せたコアスプレンダーが下半身を排除しつつ分離するのは、
ほぼ同時であった。
間一髪難を逃れた小型機は折りたたんでいた羽を伸ばし、
急速に紫の堕天使のもとを離れていく。

「ルナ!!ルナなのか!?」
『他に誰が……いるってのよ!!さっさとハイネからパーツを受け取って!!』
「ハイネ?」

彼が目指すもとには、一機の戦闘機と、更に一機のMSが飛んでいた。

『ザクが……とんでる?』

水面に顔を出したストライクノワールから、キラのもっともな台詞が飛んできた。
確かにルナマリアの乗っているシルエットフライヤーの横には、
インパルスのパーツ、チェストフライヤーとレッグフライヤーを抱えた、
橙色のザク(?)らしき機体が背部ユニットの翼を広げ飛んでいる。

『ちぃーがぁーうっ!!!ザクとは違うんだよ!!ザクとはっ!!グフ!!グフイグナイテッド!!』
『す、すいません。えっと』
『もーいい!!インパルスのパイロット!!はやくパーツ受け取れ!!』
「は、はい!!」

嘘だろう、あのキラがたじろいでいる。
少々驚いていたシンは、グフ──そう呼ばれた機体の投げたパーツにガイドビームを合わせ、
インパルスにドッキングさせていく。

「よし!!ルナ!!」
『オッケー!!射出するわよ!!」

シルエットフライヤーからフォースシルエットが射出され、インパルスの背に装着。
大半のパーツを失った彼の機体は、その設計思想どおりにこうして今、蘇った。

 ****
629アム種35話2:2006/09/18(月) 13:58:43 ID:???

「やった!!」

あたしだって、やればできるじゃない。
慣れない航空機のコックピットで、ルナマリアは快哉を叫んだ。

『ルナ!!危ない!!』
「───え?」

彼女が自分の成果に浸っている間に、紫のフリーダムがこちらに、二門のレールガンを向けていた。
やられる!?ルナマリアの背中に嫌な汗が流れ、全身が硬直する。

(うそっ!?)

発射を止める者はいなかった。たった今合体したばかりのシンや、他の機体も遠すぎる。
けれど、放たれた弾は横から割り込んだ別の砲撃によって撃ち落された。

「え?え?」
『大丈夫?』

彼女を守るように、漆黒の機体が間に割り込んだ。翼に装備されたレールガンからは、
硝煙が燻っている。彼のこの機体が救ってくれたようだ。
発射されたレールガンを撃ち落すなんて、すごい。

『アークエンジェルが収容してくれる。君は下がっていて』
「は……はい!!ありがとうございますっ!!」

繋がれた通信から聞こえる穏やかな青年の声に顔を赤らめ、
助けてもらったことを感謝しながら、ルナマリアは機首を白亜の艦へと向けた。

 ****

『アークエンジェル!!こちら、ザフト軍『ミネルバ』所属、特務隊「フェイス」。
 ハイネ・ヴェステンフルス!!これより旗艦を援護する!!ミネルバのところまで突っ走れ!!』
「援護に感謝します!!取り舵、10!!ザフトの戦闘機を収容後、最大船速!!」

援軍が、近くにいる。
その事実にアークエンジェルの艦橋は色めき、高揚する。
艦のレーダーで捕捉した一隻の味方に向かい、大天使のエンジンが唸りをあげる。
630アム種35話3:2006/09/18(月) 13:59:38 ID:???

 ****

「ダークさん!?ダークさんなのか!?」

ジャスティスの射撃を懸命にかわしながら、ジェナスはエッジバイザーを走らせ、
通信機の周波数を切り替えていく。どれだ、どれならば繋がる。
無駄だとわかっていても、あの機体の見せた動きが気になった。

『ジェナス!!艦から離れすぎだ!!無理に戦うなと言っただろう!!』
「く……アスラン!!けど!!この人は!!」

怒鳴るアスランがセイバーのシールドでジャスティスのライフルを受け、
彼に艦の側まで戻るよう促す。
至近弾すらないように避け続けていたとはいえ、
ジェナスはあまりに無防備に敵機へと近づきすぎている。
艦からも随分と離されてしまった。
ビームの粒子が散り、通信が乱れる。
その影響からか、微かに一瞬電波が混線し、
仲間達のものとは明らかに異なる声が通信機に割り込む。

『……べぶっ飛べぶっ飛べぶっ飛べぶっ飛べぶっ飛べぶっ飛べ……ぶっ……べぇえええっ……』
「!?」

違う。あのリフターに乗った機体じゃない。
ジェナスが目を向けたのは、キラやシンがフリーダムと呼んでいた、羽を持つ機体。
奴は今、四門の砲を一斉に開き、ばら撒くように砲撃を乱射している。
ノイズだらけで聞き取りにくく、か細い音声でしか入ってこなかったが、
戦闘スタイルの暴走ぶりといい、その声は間違いない。

「タフトさん!?なのか!?」
『ジェナス!!く!!』
「あ、おい!?アスラン!?」

海面に向けて、セイバーがビームを発射。起きた高波にまぎれて高度を下げ、
ジェナスの乗るエッジバイザーを彼ごとすくいあげて飛翔する。

「待ってくれ、アスラン!!あれは……」
『無茶言うな!!今は、ミネルバと合流して撤退するのが先決だ!!あの二機はそんなに甘くない!!』
631アム種35話4:2006/09/18(月) 14:00:41 ID:???

エッジバイザーを脇に抱え、変型。スピードを生かし、
フリーダムの乱射を受けつつも随分先に行ってしまっているアークエンジェルを目指す。
幸いなことに二機とも、深追いはしてこなかった。
追いかけたところで母艦や他の機体がついてこれないということをわかっているのだろう。
そういった状況判断の正確さもまた、ジェナスの中にあるあの二人のイメージを増大させる。

「く……ダークさん、タフトさん……やっぱり、そうなのか?」

紫色の二機が、どんどん小さくなっていく。
もはや周波数を合わせることができたとしても、声は届くまい。

「なんで……なんだ」

確証はないけれど。
いや、確証がないからこそあの中には、二人の戦友が乗っている気がする。
でも、何故。どうして。彼らが乗っているのであれば何故、自分に銃を向けるのだ。
蒼い空の上で明らかに目立つ不気味なカラーリングの二機を、
縋るような思いでジェナスは振り返り、みつめていた。
戻れるものなら、戻りたかった。
セラに、どういって説明すべきか。
皆にこの疑念を言ったところで、打つ手があるのだろうか。
苦々しい様々な思いがジェナスを満たし、彼は唇を噛んだ。
アークエンジェルの先に更にもう一艦、次第にその巨躯を近づけてくるグレーの艦が見えた。

『……来たか、ミネルバ』

歓喜する他のクルーたちとジェナスの心情は、対照的であった。
ほっとしているのに、素直に喜べない。
鬱陶しくなって、ジェナスはヘルメットを脱いだ。
632134で言った人:2006/09/18(月) 14:04:36 ID:???
はい今回の勝手設定。
シルエットフライヤーにコックピットなんてないよね(汗
まあいいんです。ああいう機体には得てして非常用の操縦席があるもんですから。
例えばライダーマンのプロトンロケットのように。
ハイネ&グフ登場に緊張感がいまいちないのは
シリアスモードであの台詞をかっこよく言わせる方法が思いつかなかったからです(汗
633通常の名無しさんの3倍:2006/09/18(月) 14:21:46 ID:???
ああ、、、つまり機龍なワケか
634通常の名無しさんの3倍:2006/09/18(月) 17:09:29 ID:???
ダークさぁぁぁぁんっ、タフトさぁぁぁんっ!

こう叫んでおけばきっとそのうち包帯まみれでひょっこり復活すると決まってます!
今回もGJ、まぁシルエットフライヤーはそういう使い方ができてもいいのでは。
これで大体でそ・・・はて?

・・・ゼアムな人を忘れてるような・・・まさかあの人きてるのか!?
635通常の名無しさんの3倍:2006/09/18(月) 18:50:11 ID:???
>>633
つーかGディフェンサー
636定期上げ担当者:2006/09/18(月) 19:48:49 ID:???
定期上げ〜
637通常の名無しさんの3倍:2006/09/19(火) 18:29:12 ID:???
保守〜
しかしジェナセラ込みでAA組とミネルバが合流かぁ・・・・・凄い大所帯w
638アム種36話:2006/09/20(水) 01:06:33 ID:???
第三十六話 レイ

ミネルバに先導されたアークエンジェルは、ザフト軍・カーペンタリア基地へと入港した。
白亜と、鉄灰。二色の巨艦が並び立つ光景は壮観ですらあった。

「特務隊、アスラン・ザラ以下アークエンジェルクルー五名、乗艦許可を」
「ああ、いいぜ。許可する。───っつっても、意味ないみたいだけどな」

アスランと赤みがかった金髪の男──ハイネ、オレンジ色のグフのパイロット。
アスランと同じく『フェイス』──が形式上のやりとりをしている向こうでは、
彼に連れられてミネルバへとやってきたアークエンジェルの乗組員たちが、
ミネルバクルーたちと交流を深めていた。

例えば。

「シン!!ジェナス!!よく無事だったなぁ、おい!!」

格納庫のややスペースの広くなったところで、
先程の声をあげたヨウランやヴィーノなじみの整備班クルーたちに
シンとジェナスがもみくちゃにされている。
戦闘中に暴走したシンや、なにやら知っている相手のようだったジェナスも、
ほっとしたように皆の手荒い歓迎に喚き散らしている。

「本当に、ありがとうございました!!キラさんがいなかったら私……」
「ああ、うん。気にしないで。大したことはしてないから」

キラはキラで先程の戦闘中助けたルナマリアから目を輝かせて詰め寄られ、
汗をかきかき、たじろぎながらなんとか応対し。
そのすぐ側ではメイリンと、ミリアリアとセラのコンビが話しこんでいる。

「インパルスのことなんだが……」
「大気圏内ではやはり……」

珍しく軍服姿のマードックが(それでも袖は例によって乱雑に捲り上げているが)、
エイブスとインパルスの大気圏内での運用について実戦でのデータをもとに話し合っている。
整備班長同士、通じる部分があるのだろう。

「なんか、問題なさそうだな」
「……そうですね。殆どが同年代ということもあるのでしょうが……」
「ま、仲がいいってことはいいことよ、ウン。お前もオーブからこっち、大変だったな?」
「いえ……そんな」
「しっかしまさか、消えちまってたと思ったら、あんな任務受けてたとはなー」
「ああ、はい、まあ」
639アム種36話2:2006/09/20(水) 01:07:35 ID:???

その点は、ユウナの悪巧みというか、外交戦術によるところなのだが。
わざわざ言うこともあるまいと、アスランは言葉を濁す。

(──ん?あれは)

軍艦とは思えぬ、随分と和やかなムードの中に一人だけ溶け込まずにいる人間に、
アスランは気付いた。わいわいと騒ぐ面々から少し離れたところに腕を組み、
壁に寄りかかって立つ金の長髪は、レイ・ザ・バレルのものだ。

「どうした?」
「あ、いえ。なんでもありません」

彼は、じっと一点を見つめていた。
ちょうど人の密集した部分であったために、それが誰に対するものであるのかまではわからなかったが。

「大体、お前堅苦しすぎ。もっと肩の力抜けよ、アスラン」
「は、はあ……」

割と強めの力で背中を叩かれ、アスランはハイネとの会話に意識を戻す。
彼は気付かなかったけれど、レイは確かに見ていたのだ。
赤髪の同僚と話す、一人の青年を。
アスランの親友、キラ・ヤマトを。
他の人間から見ればいつもどおりの無表情の仮面の下で、密かに彼は困惑していた。

 ****

「独立艦隊?」

ミネルバの艦橋に通されたマリュー・ラミアスは、怪訝そうな表情で聞き返した。

「ええ、そうですわ。正式の指令書が議長からきていますし───……」

コーヒーに口をつけながら覗き込む、二人の男女。
アンドリュー・バルドフェルドとマリューはアスランたちよりも一足先に
ミネルバを訪れて、艦の責任者であるタリアやアーサーとの会見を済ませていた。
そしてブリッジで今後のことについて、ということになったのだが……。

「ほう?遊撃……なるほど、便利屋というわけか」

口をつけたコーヒーの味は、悪くなかったらしい。
バルドフェルドが皮肉めいたようでありながらも茶化すような、機嫌のいい声をあげる。
640アム種36話3:2006/09/20(水) 01:08:56 ID:???

タリアが示したのは一枚の指令書。最高評議会議長の名で出されたものだ。
名目上オーブから奪取され、ザフト軍に編入されたことになっているアークエンジェルの
クルーには、従う義務が生じる。

ひとつ。
明朝0:00をもって、ミネルバ並びにアークエンジェルの二艦を
独立した遊撃艦隊として編成する。
ひとつ。
上記の遊撃艦隊は出撃が可能になりしだい、ジブラルタルへ向け出航。
各地の駐留軍並びに彼らの支援する独立運動を援護せよ。

大雑把に言えば、このようなところであった。
言ってみれば、員数外の火消し。あるいは使い走らされる、便利屋。

「独立運動というと……やはり?」
「ええ。連合の支配が長かった反動かしら……ここのところ、ね」

火種があったことは、マリューもバルドフェルドも知っていた。
連合の支配地域は広いが、その在りようはピンキリだ。
善政が敷かれ安定しているところもあるが、やはりどうしようもなく格差や差別のあるところ、
連合の役人が寄生しているところというのもある。露骨な虐殺や強制連行のなされているところさえも。
そういった部分の不満が噴出し、独立運動があちこちで活発になっているとタリアはいう。

そして、独立や解放が成功すれば、それはその分だけ連合の体力を減らしまた、
プラントに対し立場上友好まではいかないまでも恩義を受ける、
彼らのことをなかなか無下にできない中立国や国民たちを増やすことになる。

「ま、言ってみりゃ、戦争は世論と体力だからな」

地球の世論がプラント排除から退けばおのずと、戦争は続けられなくなる。
同盟国の戦力が裏返っても同様だ。
早期終結を狙うなら悪くない。戦後を睨むのならなおさらだ。
中途半端にヘタを打てば泥沼にもなりかねんが。
バルドフェルドはそう評した。

「でも、いいのかしら?プラントに領土的野心はないのでしょう?」
「ええ。ですから、私達が向かわされるんです」
「なるほどな。僕らはさしずめ黒子か」

表立っての大部隊は動かせないのなら、こっそり一騎当千を送り込めばよい。
どうやらプラントの議長殿とやらは、アークエンジェルの力をよっぽど買いかぶっているらしい。
641アム種36話4:2006/09/20(水) 01:10:19 ID:???

「よろしく……お願いしますわ、ラミアス艦長」
「ええ、こちらこそ。グラディス艦長」

二人の艦長は、握手を交わす。
この艦橋に入ってきたときとあわせて、これが二度目だった。

 ****

「話って、何かな」

ルナマリアの質問攻め、マシンガントークをなんとか凌ぎきったキラは、
ひとまずの息をつきながら手すりに体重を預けた。
夕日に染まるカーペンタリア湾を臨むミネルバのデッキからの眺めは、実に美しい。

「……」
「レイ、だったよね。きれいだよね、ここ。軍の基地とは思えないくらいだ」

彼は声をかけられ、話したいことがあると言われ、ここにいた。
彼から少しはなれ、どこか憂鬱そうな表情で目を細める金髪の少年によって。

「えっと」

金髪の彼、レイは無口だった。両手の指を絡めあわせ、
何かを思案し、顔を伏せている。何か会話を切り出そうかとも思ったが、
彼の考えを邪魔してはまずいと思い、いいかけたままやめる。

「キラ・ヤマト」
「?」
「私は」

決心したように顔をあげた彼は背筋を正し、ゆっくりと言った。
キラにとっては忌まわしき人物の名を、明確に。聞き違えようのないトーンで。

「……私は、ラウ・ル・クルーゼです」
642134で言った人:2006/09/20(水) 01:16:59 ID:???
今回しんどかった……。
が次回はもっとしんどいレイとキラ話。
明日明後日は投下できず。あしからず。もうしわけない。
643通常の名無しさんの3倍:2006/09/20(水) 01:36:16 ID:???
レイの話キタ!
644通常の名無しさんの3倍:2006/09/20(水) 01:40:08 ID:???
いきなり爆弾発言キタ!!
645通常の名無しさんの3倍:2006/09/20(水) 06:36:44 ID:???
GJ!
>明日明後日は投下できず。あしからず。もうしわけない。
今までが連投続きだっただけにむしろ休みを入れた方がいいんじゃマイカと思ってましたので。待ってますよー。
646通常の名無しさんの3倍:2006/09/20(水) 18:52:42 ID:???
本編で実現出来なかったキャラ同士の絡みが読めるのがここのSSの醍醐味の一つなのかも。
>>634
出来たら「斬!」が決まり文句のワカメにも出て欲しい、と無責任な事を言ってみるテストw
647通常の名無しさんの3倍:2006/09/21(木) 12:56:50 ID:???
>明日明後日は投下できず。あしからず。もうしわけない。
SCENEさ〜ん、出番ですよぉ〜!w
648SCENEさん ◆SCene3TGwc :2006/09/21(木) 20:15:10 ID:???
>SCENEさ〜ん、出番ですよぉ〜!w

    ヽヽ
   彡/ノノ彡 
  彡;゚ヮ゚ノミ   <すまねぇ、まだ>>516のサイトの台詞集読み終わってねぇんだ・・・
 _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
   \/ゼアム /

俺もあの世でわりと忙しくしてるもんでな、なかなか読む暇が見つけられねぇんだこれが。
少しずつ読んではいるから、トークショーは絶対にまたやるぜ。申し訳ねぇが今回はこれで乞うご期待ってとこだな。
649134で言った人:2006/09/22(金) 19:47:21 ID:???
そろそろ鳥つけたほうがいいんだろうか?
つか>>516のサイトで今回のためにキラたちの台詞を重点的に
読み返していったら気が狂いそうになったorz

んじゃ37話いきます。
650アム種37話:2006/09/22(金) 19:48:59 ID:???
第三十七話 メンデルズ・チルドレン

「くそっ!!」

カガリの拳が、机を打った。
ただ強く、強く。
彼女の思い感じている、憤りを込めて。

「カガリ、落ち着いて」

そんな彼女をいたわるようにユウナが肩へと手を置いて頭を振る。
カガリの憤りと同様に、ユウナの顔にはけっして薄くない疲労の色があった。

「こんな……こんな条件……っ!!」
「わかっている。だから落ち着いて。まだ大丈夫だ」

二人を追い込んでいるのは一通の書状、それはまぎれもなく同盟国たる
大西洋連邦から遣わされたもの。

「こちらの条件は加盟時に承知しているくせにっ!!」
「大丈夫だって。まだ跳ね除けられる。当面はまだ」

幾度目かになる、オーブ軍に対する今次大戦への派兵要請だった。
毎回、拒否する旨の回答を出してはいるが、その度に脅迫めいた色を強めて
連合は折り返すように次の書面を送ってくる。

「これ以上毟られることも、奴らのために血を流してやる義理もない」

激するカガリも、なだめるユウナも派兵は避けたかった。
前者は理念のため、中立性維持のため。後者は、国防力を削がれることを懸念して。
のらりくらりとした外交戦術で乗り越えてきてはいるが、それもそろそろ限界にこようとしている。
連合寄りの首長や、年配で連合の力を恐れる首長たち──そこにはユウナの父、ウナトも含まれる──からも、
派兵やむなしの声があがりはじめている。

避けたくはあったけれど、同時に。
ユウナはそろそろ、派兵したあとのことを、流す血を最小限にとどめるための手段を
講じなければならない時期にきていることを痛感していた。

 ****
651アム種37話2:2006/09/22(金) 19:50:13 ID:???

整備員たちに声がかけられ、ミネルバ内のドックの一角にあった、
幌をかけられ隠されていた場所が開放される。

「これは……!!」
「ストームバイザー……!!」

中から姿を現した一機の戦闘機に、エイブスから来るように言われ
立ち会っていたジェナスとセラは驚きの声をあげる。

「やっぱりそうか」

二人の反応をみたエイブスが、満足げに笑みを浮かべる。

「なんでも、アーモリーで奇跡的に無事だった格納庫の一角に、まるで最初からそこにあったみたいに
 放置されていたらしい。ザフト正規のもんでもないし、報告を受けた議長が気付いて回してくださったそうだ」
「……」

エネルギーが供給されていない、灰色のその姿にセラとジェナスは頷きあう。
やはりこの世界に来ているのは自分達だけではない。きっと他にも仲間達や
バイザーが送り込まれている。おそらくはフルゼアム同士がぶつかりあった力によって。

「セラ、どうする?」
「……使わせてもらうわ。ついていこうとしている以上、何かできることはしないといけないし」
「決まりだ、な」
「わかった。あとでアークエンジェルに搬入しておく。エネルギーの補給はジェナスに任せていいんだな?」
「ええ」

久々に触れたその機体は、冷たく。
硬いアムマテリアルの輝きを見せる時を今か今かと待っているようであった。

 ****

「ラウ・ル・クルーゼ?君が……?」

忌まわしき男の名を言った少年の声は、固かった。

「……はい。人類の夢、最高のコーディネイター。キラ・ヤマト。私も、彼なのです。
 あなたを作り出す過程で生まれた彼と同じ……アル・ダ・フラガの出来損ないのクローンです」
「……そう……」

レイの言葉に、キラは瞑目する。
自分が討った者。自分のために生み出された者。その彼と同じ存在が今、目の前に立っている。
やはり彼と等しく、不完全な命を持って。
652アム種37話3:2006/09/22(金) 19:52:30 ID:???

「クルーゼは……ラウは。世界に絶望していました」
「うん……知ってる」
「討たれる理由は、ありました。彼にはそれだけの理由があった」

自身の残された僅かな未来に絶望し。世界を道連れにしようとした。
それは生まれの特殊という同情すべき点を差し引いても、決して許されることではない。

「でも、それは彼が本当はこの世界に希望を望んでいたからかもしれません」

希望への執着が深かったが故に、
己の運命、行き着く先が見せた絶望もまた、あまりに深かった。
彼は自身と同じ存在であった先達を、そう分析した。

「……」
「私も、長くは生きられません。だから、軍に入りました」
「……?」
「ギル……いや。デュランダル議長のために。彼が作ろうとしている戦なき世界のために」
「戦争の……ない世界?」
「自分のように若くして命を落とす者がいないような世界をつくるために、私は戦っています」

誰かの都合で、誰かの命が若くして玩ばれることのないような世界を作れるように。
明日ある者たちが、よりよい世界に生きてゆけるように。
クルーゼが絶望し、無くしてしまおうとした世界を、変えていく。
その願いはあまりに壮大だ。しかし言ってのける彼の若さが、
かつての戦争を知ってしまったキラには少し羨ましい。

「それが、同じ存在である彼が絶望した世界に残された私の、義務だからです」
「……違うよ」
「……?」

彼が絶望した世界に、希望を。そう思う彼の想いは買う。けれど。
キラは、なにか違うと思った。
誰かと同じであるから臨んだのではない。それはきっと、彼自身であるのだから望んだのだと思う。
義務感ではなく、それは願いだ。

「彼にも、言ってあげるべきだったのかもしれない。すべての元凶である僕の口から」
「キラ?」

クローンであろうと、なんであろうと。
他の誰かになんて、なれやしないのだ。そんな簡単なことを、どうして言えなかったのだろう。
心はあくまでも、自分自身のものだと。
彼の願いがあくまでも、彼自身のものであるように。
コピーだろうとなんだろうと、同じものはひとつもない。
653アム種37話4:2006/09/22(金) 19:54:18 ID:???

「君は、君だ。彼じゃない。アル・ダ・フラガでもなければ、ラウ・ル・クルーゼでも」
「!?」
「もちろん、キラ・ヤマトでも。彼が絶望した世界を変えたいと臨むのは、君自身の想いだ。
 ならその意思は、命は。君自身のものだろう」

クルーゼは、自身を呪い、生い立ちを呪い。キラやムウを呪い、世界を呪って死んでいった。
常に他の人間、別の自分に囚われ続けていた彼と同じ徹を、
どういう形であれ目の前の少年に踏ませるわけにはいかない。
彼らを生み出したのは言ってみればすべて、自分の責任なのだから。

「誰かに、囚われる必要はないんだ。君が思ったことは、君自身にしかわからないんだから」
「……」

───それでも、守りたい世界があるんだ……!!───

ラウ・ル・クルーゼを手にかけた際に己の口から溢れ出た言葉を、思い出す。
そうだ。自分もあの時はそうだった。
彼と同じように、クルーゼが見切りをつけたこの世界を守りたいと願ったのだ。
なのに大層なことを言っておきながら一体、何をやっていたのだろう。
この二年間自分は、何もやってこなかったではないか。

「そうだ、ね。守らないと」
「守る?」
「僕はそれだけの犠牲の上に生まれてるんだ。生まれて……選んだ」

自分は、その道をあの時、選んだのだ。模索し、守っていく困難な道を。
レイがなんのために自分を呼び出し、正体を明かしたのか少しわかったように思えた。
彼はクルーゼを討った自分に、訊きたかったのだ。
なんのために戦うのかを。訊いて、確認したかったのだ。
同じ「メンデルの子」の覚悟を。

「……大丈夫」
「……」
「絶望、しない。絶望させたり、しないよ」
654アム種37話5:2006/09/22(金) 19:55:43 ID:???

まずは、戦争を終わらせる。オーブを、人々を守る。
けれど、それから先は。彼の行く末を見守りたい。
自分の手は汚れすぎているけれど、それでもできるなら、彼が求める先を見届けてみたい。
必要なときには、手を貸しながら。キラは、思った。
観念だけで戦争がどうこうできるものではないということも、重々承知していた。
655134で言った人:2006/09/22(金) 19:58:27 ID:???
目一杯クルーゼとレイについて好意的に解釈してみた。
やや後悔している。
かなり抽象的な話で書いてて何度も「なんじゃこら?」になりました(汗
その度に考え込むことしきり。ド低脳ですいません
656通常の名無しさんの3倍:2006/09/22(金) 21:28:43 ID:???
乙!
いや、分かり易かったよ
原作のキラにもこの責任感があればなあ…
そうすれば書き方次第では、サイボーグS―1のあの名台詞だって言える男になったかも知れないのに
657定期上げ担当者:2006/09/22(金) 21:30:23 ID:???
GJ!!
気にすること無し!!
でストームがここで登場か〜戦力がかなり強化されましたね〜
カガリとユウナは必死に派兵を抑えようと頑張りはするものの・・・頑張って欲しいです
乙でした!次回の投下をお待ちしております!!

定期上げ!!
658通常の名無しさんの3倍:2006/09/22(金) 21:39:35 ID:???
Get Ride!
659通常の名無しさんの3倍:2006/09/22(金) 22:25:14 ID:???
アムドライバー!!
660通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 01:25:32 ID:???
ふと思ったんだが、フルゼアム同士で戦ってた時期ってことは、セラ達のジャケット
はジェナスのジャケットへのエネルギー供給で使えなくなってるんじゃなかったっけ?
バイザーがあってもジェナス以外使えないという事態なのかな?
CEにもアムエネルギーがあるそうだから、何とかはなりそうだけど。
661通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 08:27:25 ID:???
>>660
>>608
>『今、出します!!セラもジェナスから補給を受け次第、出れると!!』』
この辺見ると、状況的にあの時の逆をやってるっぽ。
更にあの時は最終話のニルギのデータで完成された真のフルゼアムじゃ
無かったのでアム種本編のそれと事情が微妙に違う部分もあるし。

ディグ先生のギアはどうなんだろう?
662通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 08:31:37 ID:???
CEではアムエネルギーはまだ観測されてるってレベルらしいからな・・・・。
核の使えないこの世界でアムエネルギー、アムテクノロジーってのはまともに使われれば
新しいエネルギー資源として大勢の人間を救うんだろうけど、同時に新たな火種にもなる訳で。
それがどう反映されるのかも楽しみ、かな。

>>661
実は100パーセント中の人のパワーだったりしてなw
663通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 09:26:19 ID:???
>>656
これのこと?
「だが俺は拳法家である前にサイボーグS-1として生まれた
人の夢の為に生まれた
この拳‥‥この命はその為のものだ」
664通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 09:33:13 ID:???
お疲れ様!
───それでも、守りたい世界があるんだ……!!───
この台詞が、キラの「肉声」になってるのが素晴らしいですね。

>>649
トリップは、確かにあると検索等で便利な面はありますね。
それにしても、この連載が始まってもうすぐ二ヶ月ですか・・・・。
早いものです。

SCENEさん共々苦行お疲れ様w
良作を作る事、良キャラハンになる事も戦いですね。
665通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 14:24:37 ID:???
>>663
「だが俺は戦士、武人である前にアムドライバーとして生まれた
ピープルの夢の為に生まれた
この剣‥‥この命はその為のものだ」
こう書き換えてジェナが先生辺りに言ったらメチャメチャ決まりそうだなw
666通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 14:38:20 ID:???
6671:2006/09/23(土) 15:34:41 ID:???
>>657
>カガリとユウナは必死に派兵を抑えようと頑張りはするものの・・・頑張って欲しいです
同感。
「この世界の」ラクスも含め、アムジャケットもバイザーもMSも持たぬ者の意地を見たいですね、凄く。
668アム種38話:2006/09/23(土) 16:38:27 ID:???
第三十八話 さまよう心

「どう?ジェナ」
「……」

ミネルバ甲板上に、ゼアムジャケットを装備したジェナスが立っていた。
少し後方の離れた位置からはセラが見守っている。
こちらもアムジャケット装備だ。ヘルメットはしていない。

「……ある、な」

右手を掲げると、その掌が淡く光り出す。
と同時に緩やかな風がそれを中心に巻き起こり、細かな光の粒が彼の右腕全体を
包み込むように集まり、収束していく。
集まってきた光の粒たちの集合は、風が止む頃にはゼアムジャケットのアムマテリアルへと
すべて吸い込まれていった。
この世界に散らばるイレギュラーなエネルギー、アムエネルギーの蒐集作業だ。
フルゼアムジャケットがほぼ無尽蔵の出力を持つとはいえ、
万が一ということもある。補給を定期的にしてやるべきだろう。
とくにこの世界では、供給なんて碌にできないのだから。

「……ふう」
「どうだった?」

ヘルメットを取り一息つくジェナスにドリンクを差し出しながら、セラが尋ねる。
彼は頷くと、ドリンクを一口飲んで答える。

「やっぱり……この世界にもアムエネルギーがあちこち、拡散してる。それも結構な量」
「そう……それじゃあ」
「ああ、多分俺達が来たときに……飛ばされた時に一緒に、この世界に撒き散らされたんだと思う」

議長さんやエイブス班長が言うには、ついこの間まで観測されていなかったそうだし。
付け加え、ジェナスはセラから受け取ったタオルで顔の汗を拭いた。
ゼアムエネルギー。その散らばった力のおかげでこの世界でも当分は
アムジャケットやギアの運用には困らないものの、
やはり使っている彼ら自身にももてあます、謎の多いエネルギーである。
アムエネルギーを吸収するゼアムジャケットのシステムを完全に落としたことを確認し、
ジェナスは嘆息した。

 ****
669アム種38話2:2006/09/23(土) 16:41:14 ID:???

「何よォ!!いいじゃない、あたしがキラさんと話したいんだから!!」
「?」

着替えたジェナスたちが艦内に戻ると、通路の曲がり角から怒声が聞こえてきた。
声の主は……おそらく、ルナマリアだろう。

「なんだ?」
「さあ……?」

角から顔を出してみると、シンとルナマリアが言い争っていた。
二人ともえらく、感情が沸点に近づいているらしい。

「キラさん、大人だし教え方うまいし……何が不満なのよ?」
「いいだろ、ルナにはわかんねーよ!!」
「なによそれっ!!だったらキラさんのこと『あんな奴』なんて言わないでよね!!」

なにやら、キラについての接し方でもめているらしい。
余計な真似かとも思ったが、ジェナスとセラは二人の仲裁に入る。

「ま、ま。どーしたんだよ、二人とも」
「ジェナス。セラ」
「……」

ぱっと表情を明るくするルナマリアとは対照的に、
シンのほうは見られたくないものを見られたといった様子で顔を背ける。
そんな彼の様子にも気付かずルナマリアは、ジェナスたち二人に向かい
溜息まじりに事の次第を説明する。

「聞いてよー、シンったらひどいのよ?人がキラさんに海上戦のレクチャー受けに行こうと
 思ってたのに『あんな奴の教えなんているかよ』ですって。ひどいと思わない?二人とも」
「シン……」

どうも、あの合流時の戦闘で助けられて以来彼女はキラにお熱らしい。
キラとは複雑な関係にあるシンとしては、それが面白くないのだろう。

「あ、それとも何?妬いてたりするわけ?キラさんかっこいいし、大人だし。シンとは違うわねー」
「ルナ」
「MSの操縦も、うまいし」

やめておけと袖を引っ張るも、彼女の小馬鹿にした口調は止まらなかった。

「なにが気に入らないかしらないけどねー、敵わない人を一方的に嫌うの、ガキっぽすぎるよ?」
「ルナ!!」
670アム種38話3:2006/09/23(土) 16:42:44 ID:???

彼女のほうも随分感情的になっているようだ。
ジェナスに強く言われ、ようやく不承不承に口を閉ざした。
一方のシンは俯き、拳を握りしめて震わせている。

「……そんなんじゃ……」
「シン?」
「そんなんじゃねーよっ!!」
「あ、シン!!」

怒声を、ひとつ。
荒々しく三人に背を向け、乱暴な足取りで早足に歩き去る。
セラが思わず手を伸ばそうとしたが、ジェナスはそれを押し止め自分が前に出た。

「え?え?あ、あたしなんかまずいこと言っちゃった?」

おろおろとシンの背中とジェナスを交互に見るルナマリア。
彼女のこともまた制しながら、彼女たちにジェナスは言い置いてシンを追う。

「俺が行ってくる。二人はどっかで待っててくれ」

通路の向こうに消えたシンの背中を求めて、
追いつくべく彼は走った。

 ****

部屋には誰もいなかった。
レイはまだ帰っていないらしい。
暗い部屋のベッドに、シンは身を横たえる。

「シン?いるか?入るぞ」

ほぼ直後と言っていいタイミングで、ジェナスが入ってくる。
一瞬、鍵をかけておけばよかったかと後悔する。

「……」
「やっぱ、キラのことか」

わかりきったことを聞くな、と普段のシンなら怒鳴りつけていたところだろう。
ジェナスにとっては幸いなことに、今の彼にそれほどの気力はない。
来訪した少年は断りもせずに、向かいのベッドに腰を下ろす。

「まだ……ゆるせないよな、そりゃ」
「当たり前……だろ」
671アム種38話4:2006/09/23(土) 16:44:22 ID:???
ぶっきらぼうな返事を聞き、
色々な感情の織り交じった表情をジェナスはしていた。
まるで自分も、そういった相手がいる……あるいはいたかのように。
シンは彼の顔からも、そこから窺える心境からも目をそらし言う。

「色々……。色々、わかんないんだよ、最近……」
「色々?」

オーブからこっち、自らの目で見、耳で聞きしたことについて、
自分の思っていること、そのものが。

「アスハのお姫様のこと……理想ばっかで嫌いだったはずなのに……あいつなりに
 国のこと守ろうとしてるって知って……協力頼まれて……」
「……」
「キラのことも、憎くて。嫌いで。殺してやりたくて仕方なかったのに……やれなくて」

周囲の人間に対する自分の感情が、整理できていない。
それに。

「赤道で戦ったフリーダム……俺、あいつを倒そうとした……けど、勝てなかった」

自分の「力」に対する懐疑が生まれていた。
己が望み、得たはずの力が何一つ、通用しなかった。
果たして、自分は思っていたほど強くなったのだろうか。
悔しさとともに、自身の力が、シンは信じられなくなっていた。
そこにきて、先程のルナマリアの一言である。

「なんにもできなかったんだ……こんな……こんな力で……」
「シン」
「アスハやキラに、言う資格あったのかよ……ッ!!守れ、気付け、なんて……!!」

なにもできない弱い人間は、自分のほうであったのかもしれない。
守る、なんて綺麗事。ステラとの約束なんて、自己満足の勝手な安請け合いだったのだろうか。

『もっと、強くなる』……家族の眠る慰霊碑の前での誓った言葉が、あまりにも虚しい。
全然、強くなんてなれていない。自分はまだまだ弱い。
あのフリーダムは強い。それを差し引いても。
ジェナスが見ているのも気にせず、シンは自分のちっぽけさに埋没し。
全てを遮断するように、枕に突っ伏した。
出航の時は、近い。
672134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/23(土) 16:52:32 ID:???
シンには悩んで悩んで悩みまくってもらわないといけないわけですよ。
主人公だもの。

>>665
シンに

「その子はもう十分すぎるほど戦った」
「もうMSに乗ることもない」
「ステラはもうただの女の子だ」

あたり言わせてみようかしらオクレ兄さん率いる黒カオス部隊相手に(嘘)
673通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 17:37:23 ID:???
だったらラグにも「正義、アムドライバー」とか言わせてほしいナ!
674通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 17:53:29 ID:???
大いに悩んで成長しろシンよ、強さは自ずとついてくる
ジェナスの良い奴っぶりと対照的に、ルナマリアの空気の読めなさぶりに呆れた
最近色々な二次創作の影響で忘れかけていたが、確かに原作のルナマリアはこういうムカつく女だったと久々に思い出した
675通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 18:02:10 ID:???
ルナはまだ、キラがシンの家族殺した張本人だって知らないんじゃなかったっけ?
知ってたらいくらなんでも、こんなデリカシーの無い発言は出てこないはず
必死でシン達の救援に行こうとしたり、仲間意識は強いみたいだからな
676通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 19:05:49 ID:???
アム種の人、GJ。描写が丁寧な作品で面白いなぁ。
結局、原作でもアムエネルギーとは何なのかは語られなかったんだっけ?
ゼニス・アムテクノロジーの構築過程で解りそうなものだけど、ガンちゃんは
多くを語らなかったし。
677通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 19:41:24 ID:???
GJ!
そろそろ本気でまとめサイト作らないか?

ごめん、俺は無理ですスミマセンorz
678通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 03:47:16 ID:???
保守
679通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 15:16:36 ID:???
俺達の月曜日!
680通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 15:36:40 ID:???
Get Ride!
681134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/25(月) 18:05:01 ID:???
第三十九話 インド洋の基地に

戦闘配置を促す警報が、艦内に鳴り響く。
カーペンタリアから出航して数時間、もう敵と遭遇するとは。
アークエンジェルとミネルバ、そしてエスコート役のボスゴロフ級潜水艦『ニーラゴンゴ』。
三隻からなる艦隊が敵影を察知し、急速に戦闘態勢を整えていく。

「空母1、戦艦1.例の艦隊です」

索敵のバートに告げられ、タリアは即座に指令を発する。
「あの部隊」が相手ならばセカンドステージの三機が。
そしてフリーダムとジャスティスが出てくる。
この辺りは小島も多く、奇襲や伏兵にも気を配らなければならない。
やっかいな相手だ───、内心、そんな風に思いつつ。

「ニーラゴンゴに打電、『アビスを警戒せよ』!!以後、通信はアークエンジェルとのみに限定」
『グラディス艦長』

発したと同時に、件のアークエンジェルからの通信が入る。
通話機をとって受けたタリアにもおおよそ、その内容は理解できていた。

『MS隊の指揮の件ですが……』
「ええ。ちょうどこちらもそのことで話したかったところよ。総合的な指揮はバルドフェルド隊長にお任せしますわ」
『では、こちらの隊の指揮はアスラン君に』
「わかりました、ではうちはハイネが」
『了解です』

個々の戦力は、言うまでもなく高い。
しかし艦隊としては急造の我々だ。気合いを入れなければ。
通信を切ったタリアは決意も新たに、モニターの向こうの二隻の戦艦を見つめた。

 ****

『キラとハイネでフリーダム!!アスランとシンでジャスティスを抑えろ』

発進を待つ機体のパイロットたちに、バルドフェルドからの指示が飛ぶ。

『ジェナスとセラはあまり離れず、近づいてくる連中を迎撃。ルナマリアとレイは艦上から支援だ』
『バルドフェルドさんはどうするんです?』
『あん?僕は遊撃に回るよ。カオスや、例の趣味悪い色のウインダムも出てくるだろうしねェ』
『大丈夫ですか?ウインダムはともかく、ムラサメでカオスの相手は』
『ちょーっと、つらいんじゃないですかね?』
『なあに、無理はせんよ。少々、きついだろうが───』
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」
682134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/25(月) 18:06:15 ID:???

『お?』

アスランやハイネ、キラも混じっての歴戦のパイロットたちの会話に、シンは納得がいかず
思わず割り込んだ。どうして、そうなるのだ?

「なんで俺がジャスティスなんです!?フリーダムと───……」
『駄目だ』

やつと、戦わせてくれ。言いたかった言葉は、にべにもなく却下される。
納得がいかず、シンは声を荒げる。

「なんでです!!」
『機体の相性だ。フリーダムの火力はやっかいだからな。接近して乱射させんようにしたほうがいい』

つまり、機体の性能が接近戦向きのキラとハイネ。

『ジャスティスは逆だ。近・中距離のトリッキーさがあるから接近は禁物だ』

スピードを生かして距離をとり、砲撃・射撃を浴びせるべき。
それだけの加速力が見込めるのは、MS隊の中ではアスランのセイバーとシンのフォースインパルスだけだ。
反論の余地のない理由に、シンが言葉に詰まる。

『さぁ、来るぞ!!準備のできた機体から各自、発進してくれ』

一方的に打ち切られた会話に、シンは歯噛みしコンソールを殴りつけたくなる衝動に駆られる。
必死にそれを抑えつけ、メイリンの声が導くまま機体を発進シークエンスへと移す。
インパルスの機体は既に、合体していた。
大気圏内では宇宙と違い、チェスト、レッグの各フライヤーの航続距離が限られてくるため、
ミネルバ、アークエンジェルの両艦の技師長たちの間で話し合われた結果こういう措置がとられたのだ。

『フォースシルエット、射出。インパルス、発進どうぞ』
「……シン・アスカ、インパルス行きます」

甲高い彼女の声が、今日ばかりは勘に触った。
憮然と言い返しながら、シンは蒼いインパルスの機体をカタパルトから飛び立たせた。

 ****

───というやりとりがあったのが、ほんの数刻もたたぬ前。

『ルナマリア!!』
683134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/25(月) 18:09:18 ID:???

彼らは皆よく戦っていた。
ハイネがフリーダムへ切り込み、キラがビームガンで牽制し。
ルナマリアのオルトロスの射軸上へとフリーダムを追い込む。
もちろん、他の敵に目を向けるのも忘れない。
30機近いウインダム部隊を、レイやセラたちはなかなか艦へと取りつかせず、
ジェナスはあのディグラーズとかいうやつと互いの得物を激しく交差させ。
性能の劣るはずのムラサメでバルドフェルドはヒット&アウェイをくり返し、
カオスを翻弄している。
シンもアスランとともに、ジャスティスを相手によく戦っていた。
……が、いらついてもいた。
いくらあちらが核動力を搭載しているとはいえ。
二対一でやつを落とせないというこの事態に。

「くそォっ!!」

それも、的確にジャスティスを追い込んでいるのは皆、
アスランの放った攻撃だけのように思えてくる。
ジャスティスの弾を避けつつウインダムを墜とすのを見ると、なおさらだ。
当たらない。通用しない。それは単なる彼の錯覚にすぎなかったが、
焦燥が彼の心に蓄積されていく。

「当たれ……当たれェェっ!!」

彼が叫ぶと同時に、水中から水柱があがった。

「……え?」

一体、なんだ。戦闘中にもかかわらずつい振り返った彼の耳に
スピーカーから切迫したブリッジの混乱が聞こえてくる。

『ニーラゴンゴ、大破轟沈!!機影あり、アビスです!!』
『俺が行く!!バズーカを!!』

ブレイズウィザードを切り離したレイのザクが、言うが早いか
格納庫から搬出されたバズーカをひったくると海へ飛び込む。

『僕もいきます!!アスラン、ハイネ、シン!!ここを……』
『わかった!!』
『かなりしんどいが……やるっきゃねえか……ってシン!!後ろだ!!』

群島の上空近くを低空で飛行していたのがまずかった。
ハイネの警告に反応するより先に、身体を急激な横Gが襲う。
機体を立て直すこともできず、シンは海面へと叩きつけられた。
機体の腰ほどまである海上にインパルスを起こすと、漆黒の機体がこちらを睨むのが見える。
684134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/25(月) 18:11:39 ID:???
「……ぐ、う……!!ガイア!?」

空母上でミサイル等の迎撃に専念していたガイアが突如として跳躍し、
岩場をかけ。あっけにとられて動かないでいるインパルスへと体当たりを敢行したのだ。

「またお前か!!」

あの三機の中でも、この機体とは妙に因縁がある。大気圏突入時といい、オーブ沖といい。
相手がビームサーベルを抜いたのを見て、シンもまたフォースシルエットのビームサーベルを抜く。

「なら!!今日こそ終わらせてやる!!」

斬りかかっていくシン。
二機は互いの斬撃を、互いのシールドで受け火花を散らす。

『シン!!深追いするな!!』
「大丈夫です、やれます!!やってやる!!」

全開の出力でガイアに接近し、振り下ろすもそこに奴はいない。
水面の水をサーベルの高熱が蒸発させる。
振り向いたところにタックル、かわすもののシールドつきの裏拳に
コックピットをはげしく揺らしながら吹き飛ばされる。

「ぐ……う……?」

地面を転がってビームライフルの弾幕を避け、推進剤を噴射して後退───……、
したところでシンは、機体が妙な感触の場所に着地したことに気付く。

「ここは?」

立ち並ぶ燃料タンクに、格納庫と思しき建物の数々。
無骨な装甲車や、こちらを見上げる軍服姿の男達。

「基地!?こんなところに!?っく!!」

ガイアのビームを避けたそこには、一機の戦闘機が駐機されていた。
直撃を受け、それが爆散する。

「!!あれは!!」

そして、彼は見た。
銃を持った何人もの兵士たちと。
それに囲まれ労働に従事する人々の姿を。
そして彼らとの境目を仕切る金網フェンス越しにこちらを見上げる、女子供たちの様子を。

その瞬間、彼ノ中でなにかがはじけた。
685134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/25(月) 18:15:28 ID:???
今回の話、削ろうか削るまいかすごく迷いました。
んで結局採用。尺が……ort
あとど忘れしたことを一つ質問。
バイザーバグって何がいましたっけ?
ボードとエッジは覚えているんですが、どこまで機種がいたのかを
忘れてしまったもので……。
686通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 18:23:00 ID:???
>>685
ジャイロはいたような気が・・・・<バイザーバグ
クロスはジョイスペシャルだから除外としてストーム以降のネオジャケ対応のはいなかったかと。
6871:2006/09/25(月) 18:53:32 ID:???
http://allonsy.hp.infoseek.co.jp/bag.htm
・・・・・後ろの方にいる両肩が左右に張り出してる奴はエアバイザーっぽいですね・・。
688通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 18:58:20 ID:???
ストームはいた
…あれ? ジャイロとストームと、エッジにボードの4種か?
他のを見かけた覚えが…ちょっと戦車のりのじいさん見てくる
689通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 19:13:05 ID:???
確か、ランスもいたはず
6901:2006/09/25(月) 19:20:02 ID:???
>>689
http://allonsy.hp.infoseek.co.jp/kansou42.htm
モノクルの襟首掴んでる奴がそれですね。
・・・・・・サンプルがよりによってこの回かよ!と言うツッコミは無しねw
691通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 20:45:27 ID:???
乙!
>>683
流れぶった斬るけど、オールスター戦なのか・・・>ファントムペイン
ガーディ・ルーの艦内で先生と紫組がかち合ったらとんでもない事になりそうだが。
692通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 20:47:13 ID:???
>>691
実は催眠でダークとタフトと思わされていたマサキとフェイだったりしてなw>自由正義パイロット
693通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 23:42:31 ID:???
今日もSSが乙しいです。
うろ覚えだけど、そろそろ腰の重い人と再会かな。

>>692
ちょ、偽ラーゼフォンとプリケツフェイwww
個人的にはシャシャをどこで持って来るか気になる。
パフユニットは無難にジュール隊あたりかなあ。
694134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/26(火) 13:17:46 ID:???
第三十九話 戦いのあとに残るもの

『───ン!!シン!!もう、やめろ!!彼らに戦闘力はない!!』
「!?」

通信機のスピーカーから届くアスランの声に、シンは我へと返った。
ここは!?俺は一体何をしていた!?
戦闘中に我を忘れていたということに気付き、
敵の影を警戒しシンは身を硬くする。

「な……?」

視界は一面、火の海だった。インパルスの両腕には地面から引き抜かれた鋼製のフェンスが
ぐにゃりと曲がった無惨な姿を晒している。

「……あ……!!」

そうだ。
これは、自分がやったのだ。
例の艦隊と遭遇、戦闘に入り。ガイアとの交戦中にこの基地を発見した。
そして労働に従事させられ、脱走を図り射殺される人たちを見て。
逆上し、この基地を破壊した。

「っ……そうだ、働かされてた人たちは!?」

アスランへ返事も返さず、モニターを切り替え続け自分が解放したはずの人々の姿を探す。
幸いにしてほどなく、それは見つかった。
赤々と炎に照らし出される、何組もの家族がフェンスのあった場所から基地を見下ろしていた。

「え?」

───どこか、苦々しげで悲しい目で。
そこに喜ぶ様子は……他の連中はもっていたのかもしれないが、
シンの目に映った家族からは一切、感じることはできなかった。

『シン!!戻るぞ、奴らが撤退する!!』
「あ……はい!!」

何故。どうして。
そのことに思考が傾いてしまっているシンは、
アスランの声にわずかに含まれる怒気に気付くことができなかった。
695134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/26(火) 13:20:06 ID:???
 ****

ぱあん、と乾いた音が格納庫に響き渡った。
左頬に痛みを感じ、シンはようやく、自分が頬を打たれたのだとわかった。

「な……んで?」

二人の男が立ち並んでいた。
ハイネ・ヴェステンフルスと、本来の母艦のアークエンジェルではなくミネルバにセイバーを
着艦させた、アスラン・ザラ。彼を打ったのは、アスランのほうだ。

「自分が何をしたか、わかっているのか」
「なにって……俺はあそこにいた人たちを……」
「助けるつもりだったのか。だがなっ!!」
「ッ……!!」

再度、今度は反対の頬を打たれシンは呆然とする。
たまらず見ていたルナマリアが割り込んできて、彼をかばう。

「ま、待ってください!!そりゃシンは勝手な行動したかもしれません!!
 けどあの基地の人たちだって、シンのおかげで助かって……!!」
「戦争はヒーローごっこじゃない!!」

アスランからぴしゃりと言われ、ルナマリアはびくりと肩をすくませた。
シンも彼が自分の行為を評した言葉に、目を瞬かせ硬直する。

「ヒーロー……ご、っこ?」
「力を持つ者なら、その力を自覚しろ!!状況も、立場も!!自分ひとりで判断するな!!」
「まあまあ。そう熱くなるなって」

気圧されるばかりのシンたちに対し、アスランをなだめるようにハイネが肩を叩く。
けれどやはり彼の顔も笑ってはいない。

「……俺も、アスランとは同意見だ。シン、独断先行やスタンドプレーはあまり好ましくないな」
「……」
「あの基地、見るに完成は間近だったようだ。放っておいてももうすぐあの人たちは解放されたろう」
「そんな、でも!!あいつら、銃で……」
「お前の行為による民間人の犠牲が全くなかった、とでも言う気か?」
「そ、それは」
「基地内に残っていた民間人も多かったはずだ。それをお前はきちんと選別して撃っていたのか?俺にはできない芸当だがな」
「でも……!!」
「やつらが撃った銃とお前が撃った銃、何が違う?」
696134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/26(火) 13:21:31 ID:???

民間人の犠牲を出したという点においては、なにひとつ変わらない。
ハイネに言われ、シンの脳裏にあの「解放を喜ばない」家族たちの姿がよぎる。
そして、家族を失った二年前の自分の過去の情景も。
自分がやったことは───すなわち、自分から家族を奪っていったフリーダムと変わらないのだ、と。
キラがやっていたことと、同じなのだと認識させられる。
真っ向から否定したくても、できはしない。

「なんにせよ、お前の勝手な行動で艦の危機や他の皆の負担が無用に増えた。それはわかるな」
「……はい」
「よし。ならいい。営倉に入れとは言わないから、次の戦闘まで自室で謹慎してろ。いいな」
「はい」
「シン!!」

なおもハイネとアスランにすがろうとするルナマリアの背中を叩き、
もういいと簡単に目で示す。

「サンキュ。かばってくれてありがとな」
「……」

そういえば、出航前に喧嘩して以来、碌に話もしていなかったんだっけ。
それでもかばってくれて、嬉しかった。
けれど今は、一人でいたい。

「シン・アスカ。自室で謹慎に入ります」

 ****

「くっそォォっ!!あのストライクもどきがァ!!」

壁の向こうの通路から、スティングの叫ぶ声と壁を殴りつける音が聞こえてくる。
ネオはちらと聞こえてきたほうを振り返ると、小さく溜息をついて通信機のほうへ向き直る。

『ふむ?ではキミは現地徴用ではなく、ファントムペイン正規の部隊をまわしてくれと。そう言うのかね?』

さっきからそう言っているだろう。
人を完全に見下した言い様に、上司だとわかっていてもネオはむかむかしてくる。
先程の戦闘で毎度のように自分の前に立ちはだかってくる黄色いムラサメを墜とせなかったのと、
宇宙で出会った白いザクまでもがいたことも少なからず彼の苛立ちを増幅させる。

「ええ。急造の部隊ではやはり、錬度も士気も劣ってきます。できればきちんとした部隊を」
『そう言うだろうと思ってね、つい先程、完成したばかりの新兵器の部隊を送るよう仕向けたところだ』
「ハッ?」
697134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/26(火) 13:23:15 ID:???


いやね。だからこっちが欲しいのは新兵器じゃなくて、兵士。
別に機体は旧式でもいいから錬度の高い兵士なわけよ。わかってんのこのオカマもどき上司。
思わずネオは心底呆れた思いを抱く。これだから前線を知らない人間は。
そりゃフリーダムやジャスティスは役に立ってるけどさぁ。
パイロットの顔だって、未だに見たことないわけよ?指揮官なのに俺。
もし心の声が聞こえれば、一発で首が飛びそうなことをぽんぽん内心でぶちまけていくネオ。

『まあ……見てくれたまえ』
「?」
「ほう」

切り替わった画面に映る図面に、
今まで二人のやりとりを不機嫌そうに見ているだけだったディグラーズが立ち上がる。

『ガングリッド・ディグラーズ。キミの持っていたデータと遜色ない出来に仕上がっているはずだ』
「ふん……悪くない」
『これはその第一号になる……のかな。機体として一番汎用性が高そうなコレが最も開発がスムーズにいったそうだ』
「せいぜい、使わせてもらう」
『ひとまず、十機。動力こそ、バッテリーだが……十分だろう』

そこには、一つ目の奇怪な姿の機体と。ステルス戦闘機を模したような戦闘機が、
機体の詳細とともに表示されていた。

『ロアノーク』
「はっ」
『キミの要望にも、近々応えられるだろう。オーブ軍に出兵を求めているところだ』
「オーブ?ですか?」
『セイランのぼうやも頑張っているようだが……時間の問題だよ』

ネオの困惑をよそに、高笑いをはじめるジブリール。
歪んだその笑いが、室内を嫌な空気に染め上げていく。
698134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/26(火) 13:27:44 ID:???
軍隊向きの機体っていうとまあエアとジャイロだろうなぁ、ってことで。
はい。MSとNジャマーのおかげでバッテリー技術は高いでしょうし、
この世界。
699通常の名無しさんの3倍:2006/09/26(火) 14:44:13 ID:???
乙です!
バイザーバグ登場ですね!
まさか種世界に自律兵器が出るとは。……出していいんだろうか、自律兵器。
多分有人用になってるのだとは思うんですが、ガンダムですし完全自律兵器はまずいんじゃないかと思ったり思わなかったり。
今後の展開を待ちます。
700通常の名無しさんの3倍:2006/09/27(水) 08:57:49 ID:???
乙!
>>699
いいんじゃね?
色々テコ入れはしてはいるもののそれでも正直ジェナ達兵力大杉、強杉なような気がしてたし。
701通常の名無しさんの3倍:2006/09/27(水) 11:08:50 ID:???
>>699
モビルドールって知ってるかぁい?
702通常の名無しさんの3倍:2006/09/27(水) 11:41:23 ID:???
昔Wの戦場で派手に暴れまわってたって言うぜ。
今も世ん中荒れ放題、ボヤボヤしていると後ろからズガンだ。
どっちも どっちもどっちも どっちも!

>>700・701
そういやMDがあったか、と気づいた。
ただ、種の時代の自律兵器がどこまで戦えるかな、と思うわけだ
703通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 08:51:44 ID:???
乙!このエピソードが来たか
ハイネの指摘はとても的確だったけど、アスランの「ヒーローごっこ云々」の台詞は無かった方が良かったんじゃないかな
原作でも、「お前が言うなよ」って嘲笑の的だったぐらいの迷台詞で、シンよりも圧倒的にアスランが叩かれてたし
現に、他の二次創作でも、シンへの説教は基本的に別のキャラにやらせてるぐらいだしなあ
704通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 12:13:14 ID:???
>>703
むしろ期待したいのはこの後各キャラがどう動くか、かなぁ。
134さんのアスランの真意は何か・・・と言うのもそうだし、「正義感だけで
突っ走れない」と言う光景を見てピープルを救う自分自身の正義を常に
信じられたジェナやセラがどう考えるか、とか過去に「気持ちだけで(ry」と
言ってのけたキラがどう考えるか、とか・・・・・。

このスレだと種世界住人の常識的な感性が期待出来るからね、嫁と違って。
705通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 12:34:20 ID:???
>種世界住人の常識的な感性
これを補完すると言うある意味当たり前の事をしたが故に特にラクスが物凄く高く評価されてるからな‥‥‥。
706通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 13:13:46 ID:???
まあ問題は言った当人が一番出来てないって事なんだけどね>ヒーローごっこ発言
ここのアスランって、ジェナ・シン・キラといった面々に比べてイマイチ背負ってるもんが弱いんだよな
それでいて、カガリは浚われも殺されもせずオーブ本国で無事だし、キラともまた一緒に戦えるしと、
原作以上に恵まれているわけだが、それはラクスやユウナが頑張ったからであって、アスラン自体はまだ大した事したわけじゃない
ただでさえ人数多いから、「アスランじゃないと出来ない事」をしない限り、このままだと徐々に空気化していく危険大
707通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 22:02:59 ID:???
>「アスランじゃないと出来ない事」

あるのか?
708通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 22:13:06 ID:???
シンと反目しながら共に成長していく→キラ
過去の贖罪の為に戦う→キラ
頼りになる上司or先輩→ハイネ等
シンとキラの緩衝剤的な役割→ジェナ等
政治方面で活躍→ユウナ、ラクス


うん、今のままだと真剣に存在意義の危機だな凸
709通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 08:39:46 ID:???
134氏GJ
710通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 10:04:18 ID:???
>>706 >>708
裏を返せば、その存在の中途半端さがある意味凸の特徴なのかもね。
本編でもシンの上官、先輩然として振舞いながらキラ関係で私情を剥きだしにしたが
故に叩かれた側面も大きいから。
このアム種でも、
>>229
自分よりも年若い少年がそのような危険へと、敢えて臨もうとしている。
そんな光景を、目にしてしまっては。
彼とデュランダル、タリアのやりとりを眼前で繰り広げられてしまっては。

「私にどうか、MSを一機、お貸し頂けないでしょうか───……!!」

耐え切れるものではない。
アスラン・ザラには、己の無力を容認するだけの我慢強さも、卑屈さも。
到底、備わってはいなかった。
故に彼は───力を欲していた。

意欲はあるけど何をすべきかと言う方向性が見えてないと言う解釈になってる
とも取れるし。

>>703
>アスランの「ヒーローごっこ云々」の台詞は無かった方が良かったんじゃないかな
案外、次の回で「俺勢いでシンにエラソーな事言っちゃったけど、俺も人の事
言えないんだよな・・・・orz」と凸が凹む述懐から始まったりしてw
711通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 10:07:36 ID:???
ここのキラは「オーブの為、出来る事を実践刷る為敢えて手を汚す」と言う
明確な目標があるからな‥‥‥。
そういうキラが凸にはどう映るんだろう。
712通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 10:34:38 ID:???
>>709
心から禿同。
俺ら住人が134氏のセンスの良さ、クオリティの高さ故に期待し過ぎてしまう部分って多いけど、
それに押しつぶされず頑張る姿にはほんと頭が下がりますね・・・。

でも、あまり無理してくれるなよ。貴方とて人の子なのだから。
713134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/29(金) 16:20:05 ID:???
第四十一話 戦士の過去

「……お前さあ、もっと他になんかこう、アウトドアな暇の潰し方、ないわけ?」

部屋にやってきたハイネが、呆れたように言った。

「あ、いえ。まあ」

ひとまずの寄港地、ザフト軍マハムール基地へとミネルバとともに入港したアークエンジェル。
アスランの寝起きする士官室のベッドの上には、電源が一時切られた緑色の鳥型ロボットが
分解され、工具とともに細かい部品まで並べわけされている。
非番の時間帯ということもあり、部屋の主は動かしている手を休めることなく、
来訪者へと会釈するだけで歓迎する意を表する。

「大体さ、なにやってんの?」
「ああ、はい。キラから頼まれていたトリィのメンテと、ついでに……」
「ほー」
「パワーアップに、小型のレーザー砲あたりをつけられないものかと」

さらりと真剣な顔で言うアスランに、ハイネはずっこけそうになる。

「アホかっ!!してどーする!!んな物騒なもん、ペットロボに搭載すんなよ!!」
「いえ、ですが!!悔しいじゃないですか!!ジェナスが言ってたんだ!!
 あのディグラーズとかいうやつの連れていた梟のロボット、あれには
 搭載されていると!!ならこっちも装備するしかないじゃないか!!」
「むきになって張り合うなよ!!そんなことで!!」

真顔で言うアスランと、本気でつっこむハイネ。
一応この二人、トップエリートの『フェイス』である。念のため言っておくが。
並べられ再組み立てを待つパーツの中に赤い斑点を三つの赤が囲む核のマークが見えるのは、
きっと気のせいだ。うん、そうしておこう。

「……あー、もういい。本題に入るぞ」
「?」
「お前、なんであんなに怒ったんだ?」

どっかと腰を下ろしたハイネに尋ねられ、ドライバーを握っていたアスランの指が止まる。
彼の質問は、他でもなく。先の戦闘後にわざわざミネルバに着艦してまで
叱咤した、シンに対しての彼の態度についてであった。

 ****
714134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/29(金) 16:21:27 ID:???

「ねぇねぇ、キラさんも一緒に出かけませんかぁ?ジェナスやミリアリアさんも誘ってますし」
「あ、いや……僕はちょっと。まだ仕事も残ってるし」

未だ謹慎中の身であるシンは、入港後も基地へと降りることなく、
食堂で食事を終わらせて自室へと戻ろうとしていたところだった。
丁度交差路に差し掛かったところで、右側に伸びる廊下の先で
なにやらやりとりをしている二人を目撃する。

「?」

キラが来ている?話しているのはルナマリアだろうか。
大方、こちらの艦に用事で出向いてきたところを、上陸しようとしていた
彼女に鉢合わせし、強引に誘われているのだろう。
けれど一体、何の用で?
彼は僚艦に所属しているはずの人物がミネルバにわざわざやってきていることに、違和感を感じる。
ルナマリアが残念そうに向こうにいくのを見届けたキラは、こちらに気付く。

「シン……あ、いたいた」
「俺?」
「ちょっといい?」

シンはわだかまりの未だ消えぬ仇である男を、嫌そうな目で睨む。
今なお彼はシンにとって、あまり話したい相手ではない。
自然、表情が厳しいものになる。

「……別に」
「そんな目、しないでよ」
「すいませんでしたね、生まれつきこの目なもんで。用がないなら俺、戻りますよ?」

艦の中で、年長者に対する対応ということもあり丁寧語だが、
明らかに彼言葉はあちこち尖っていた。
シンなりに虚勢を張って威嚇のようなものをしたつもりだったのだが、
キラはそれもお見通しといった様子で苦笑交じりの微笑を返してくる。

「少し、話したいことがあるんだけど。いいかな」

右手に持った缶コーヒーを二本、顔の横で振ってみせる。
そのときまでシンは、キラが何かをもっていたことにすら気がつかないほど
散漫であった自分を知らなかった。
頷いてみたけれど、ものに釣られたと思われたかもしれない。
715134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/29(金) 16:23:18 ID:???

 ****

缶の中身は、口が曲がりそうなほど甘かった。
そういえば艦の自販機のコーヒーの中でも、一番甘いと噂のやつではなかったか、これは。
以前ルナマリアが飲んですぐ捨てていた記憶がある。反対にメイリンは
湯上りの中高年がビールを飲むごとくおいしそうにぐいぐい飲んでいたけれど。
よく飲めたものだ。
他に誰もいない休憩室で、二人はぽつりとコーヒーをすすっていた。

「聞いたよ。アスランと色々、大変だったんだって?」
「ああ。いえ。別に、大変とかじゃ……。殴られて、いい気はしなかったけど」
「それもそうだね」

笑うな。腹が立つ。
内心に湧き上がってくるむかつきごと、甘ったるいコーヒーを嚥下する。
一体この男は何をしにきたのだろうという、疑問も一緒に。

「……きみは、昔のアスランのことをどれくらい知ってる?」
「はあ?」

どれくらい、って。昔ってことは大戦中ってことか。
基本的にあの人はあまり自分のことを話したがらない。
それは今こうやって話しているキラも、そうなのだけれど。
言われてみれば、直に接して知った人柄以外には、アカデミー時代の教本で
読んだ程度のことしか知らない気がする。

「えと。元ザフトレッド、クルーゼ隊。戦争中盤で最強と言われたストライクを討ち、
 その後、国防委員会直属特務隊フェイス所属になって。……えーと。それから
 ZGMF-X09A、ジャスティスのパイロットとなった後、軍を裏切り、脱走……?」
「うん、まあそんなとこだろうね……当初彼が乗っていた機体のことは?」
「GAT-X303……イージス?」

たしか、ジャスティスによく似たカラーリングと、頭部デザインの機体だったはずだ。
でもそのようなことを今更何故、聞くのだろう?

「そう。ストライクを討ったMS……それにアスランは乗っていた」
「……なんなんですか、一体」
「そのストライクに乗ってたのはね、僕なんだよ」
「……はっ!?」

ごくごく自然に、キラは言った。
その頬に微笑みさえ浮かべて、遠い過去を懐かしむ老人のように。
716134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/29(金) 16:24:35 ID:???

「今、なんて?」

シンは聞き間違いではなかろうかとさえ思った。
キラが……先の大戦中、連合最強と言われた機体、ストライクに乗っていた───?
あのフリーダムだけでなく?ストライクにまで?

「なりゆきだったんだけどね。……僕とアスランは、何度となく殺しあった」

地球連合と、ザフトの兵士として。

「親友同士じゃなかったんですか!?」
「……うん。でも僕らは気がつけば、敵同士になっていた」

もともとは、友を守るためだった。
一方のアスランも、もともとは作戦のため。
戦いあい、撃ちあう最中、キラは、アスランの。
アスランはキラの親友をその手にかけて殺し。
互いは互いを憎しみあった。親友同士でありながら。
怒りに身を任せ、ぶつかりあった。
717134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/29(金) 16:32:17 ID:???
ちと私事が忙しくなってきております。ちとペースが落ちるかと。
本編において本来アスランがやる(はずであったであろう)ポジションが
ことごとくキラになっていく・・・。

バイザーバグについては、少しアム世界の機体とはやはり違います。
あくまで種世界の技術で「再現」されたものですから。
718134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/09/29(金) 16:33:11 ID:???
間違った40話だ↑orz
719通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 17:02:23 ID:???
GJ!
トリィを強化したがるアスランにハイネじゃないが飲みかけたコーヒー噴いたwww
まぁ、アスランのキャラはトリィとハロで活躍というところにおちついたからいいのではw
キラが語るあの話にワクテカしながら正座でお待ちしています。
ゆっくりとどうぞー
720通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 17:46:06 ID:???
乙!
>「……お前さあ、もっと他になんかこう、アウトドアな暇の潰し方、ないわけ?」
>まぁ、アスランのキャラはトリィとハロで活躍というところにおちついたからいいのではw
こぉんな事言われちゃうテイタラクだから前作でラクスに浮気されるんだよ、凸はwww
キラのせいでひたすらワリを喰うのはある意味凸の宿命なのかも。
721通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 18:00:59 ID:???

722358 ◆KILLER/duk :2006/09/29(金) 19:23:19 ID:???
>>713
ちょwwwwwww
あんたあのフラッシュ見てるだろwwwwwww
723通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 21:00:05 ID:???
凸を語る上でよく言われることではあるが……


凸よ、お前パイロット辞めて技術者になれ
宇宙空間でトリィ飛ばしたり、鍵開けや対侵入者警戒能力完備のハロ造れるぐらいの超技術力あるんだから、
将来的にはアムドライバーさえ再現できるかもしれんぞ
724通常の名無しさんの3倍:2006/09/29(金) 23:50:00 ID:???
乙っす。
725通常の名無しさんの3倍:2006/09/30(土) 16:03:29 ID:???
乙です
まさか凸の「だったら〜しかないじゃないか!!」
がこんな所で出てくるなんてwww
ちょっと凸鋤になりそうww
726通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 12:06:44 ID:???
>>725
「それでも、作りたいトリィがあるんだ!」とかw
使いまわしにはほんと便利だよね>種台詞
727通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 12:22:58 ID:???
>宇宙空間でトリィ飛ばしたり
んでもって今度はそれ知った先生の方が、
「アスラン・ザラ、お前の鼻っ柱をへし折りに来た」
とか何とか言って宇宙用及び大気圏突入可能なケケを披露しに来る訳だなwww
728134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/01(日) 20:30:36 ID:???
第四十二話 マイ・サクリファイス

「驚いた……あいつが、ストライクのパイロットだったのか……」

アスランの独白に、ハイネは珍しく神妙な顔で口を開いた。

「ヘリオポリスにいて……巻き込まれたそうです。だから……」
「ああ。わかってるよ。今は味方だしな」

アスランの言わんとしていることを理解し、ハイネは安心しろと
手をぱたぱた顔の前でやってみせる。元連合兵とは言っても、
わざわざオーブから離脱しここまで合流しにきた人間だ。それに「フェイス」の
人間がすぐ側についているのだから、疑うつもりはない。

「シンは……明らかに感情に任せて戦っていました。かつての俺と同じように」
「……」
「その爆発力がシンの強さであることも認めます。ですが……」
「いつか痛い目を見るかもしれない、ってことか?」
「……はい」

アスランの心配は、自分自身の経験に裏打ちされたもの。
それゆえにハイネも考え込まざるをえない。

「シンはまっすぐです。それ故に、周囲が見えない。自分の正義に、愚直すぎる」
「……それであの『ヒーローごっこ』か。確かに、な」

彼にとっては、過去の自分を見ているようで歯痒く思えたのだろう。
赤みがかった金髪を掻きあげながら、ハイネは分析する。
と、同時に。思ったことを今度は問いただす。

「そう言うお前はどうなんだ?アスラン」
「え?」
「今のお前は昔に比べて、どうなんだってことだよ」
「私は……」

一瞬視線を逸らし、躊躇うように俯いてから、
アスランは言う。

「俺はそれほど、自分を信じちゃいませんよ」

この二年間で、思い知らされたこと。
それは人には人の。それぞれの正義があって。
729134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/01(日) 20:31:55 ID:???

自分がかつて正しいと思っていたことも、無数にあるそれら、
ただちっぽけな星のひとつに過ぎないということ。
そしてそれらは現実の前にたやすく流されていくということ。

「俺は、やれることをやるだけです」

あいつのために、とは言えなかった。
愛する女が愛する国を守るために、だなんて。
事実そのためとはいっても、ザフトに復隊した身でその精神はここにないと宣言するのは憚られた。

「戦って、少しでも犠牲の少ないうちに戦争を終わらせて。平和のために手を汚していくだけですよ」
「アスラン……お前」
「あなたもそうでしょう?ハイネ」

けっしてプラントのためにとは言わなかったから、気付かれてしまったのかもしれない。
自分がザフト……プラントに、全幅で身を寄せているのではないということに。

『ハイネ・ヴェステンフルス、及びアスラン・ザラ両名は基地司令部への出頭要請が出ています。至急──』
「っと」

基地内のアナウンスが部屋にも流れ、
真剣な空気が崩される。ハイネもアスランも相好を崩して苦笑し、
頃合だと悟る。

「行くか」
「ええ」
「あ、小型レーザーは禁止だぞ」
「なにか別のものを考えますよ。ドラグーンとか」
「やーめーろって」

二人の同僚は連れ立って立ち上がり。
仕事を片付けるべく、部屋を出た。

 ****

───アスランは、きみに同じ道を歩ませたくないんだと思う。僕だって、そうだ───

缶を握ったまま、シンはキラの立ち去った休憩室で考えを纏めかねていた。
キラの言ったこと。彼の語ったアスランとの過去に思いをめぐらせながら。

───僕らは感情のままに戦い、勝手な理屈と正義でただ闇雲に力を振るう、ただの破壊者だった───

思いがあることは、罪ではない。
それは人が何かをなす際の立脚点であるのだから。
キラはそうシンの思いを肯定しつつも、釘を刺すように言った。
730134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/01(日) 20:34:29 ID:???

───けど、戦場でその思いを遂げるには、他の誰かを犠牲にし続けなければならない───

どうか、そのことを忘れないで。
自らの正義のために戦う力ある者ならば、その自覚を持っていなければならない。
そしてその犠牲を可能な限り減らせるよう、たゆまぬ努力をしていく必要があるということも。
犠牲という十字架を、戦う者はみな、背負っているのだから。

「シン?」
「……セラ。どうしてこっちの艦に?」
「こっちの機体のことで色々、わからなくて聞きたいことがあって。マードックさんがいなかったものだから」

エイブス班長を訪ねてきたらしい。
別にその辺の連中に聞いてもよさそうなものだが。
わざわざその道のプロに聞こうとするのがまた、律儀である。

「なんだか、元気ないわね」
「そりゃ、な。まあ」

女性用のオーブ軍服を来たセラが、休憩室へと入ってくる。
隣に座った彼女へと、シンは聞いてみる。

「なあ、ジェナスやセラたちって……あっちの世界?でも戦ってたんだよな」
「ええ……そうね」
「犠牲って、なんだと思う?」

しばらく考えて、セラは答えをシンによこした。

「出したくないもの。でもどうしても、出てしまうもの。……割り切りたくても、割り切れないもの、かしら」
「……」

どこか答えるセラの目は、ここではない遠いどこかを見ているようだった。
彼女達の前で失われていった人々か。はたまた、その状況が続いているのであろう
もといた世界のことを思い馳せているのか。それは読み取れなかった。

「……ー、ン……」

遠くを見る彼女の唇が、ぼそりとなにかの言葉を紡いだような気がした。
犠牲、それは背負う十字架。
犠牲、それは避けられず、割り切れないもの。
二人の人間から与えられた「犠牲」という意味は、シンの思いへと複雑に響いた。
731134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/01(日) 20:36:03 ID:???
 ****

「……すまない」

いつもの気丈な表情を歪めて、カガリは頭を下げた。

「やめてよ。これは僕の責任でもある……僕が落とし前をつけにいくのが当然だろ?」
「けど……!!」
「大丈夫。相手が『彼ら』なら犠牲を最小限にするやりようはいくらでもある」

オーブ行政府、ユウナの執務室。
大西洋連邦の圧力に屈し増援部隊としての軍の派遣を承諾せざるをえなくなったカガリは、
その司令官──とはいっても元々が政治家であるがためお飾り的なものにすぎないが──に決まった、
彼のもとを一人訪れていた。

「いいじゃない。ご丁寧に対戦相手まで指定してくれているんだ。こっちとしてもやりやすい」

派遣先は、スエズ。
そしてそれは連合の割り出したアークエンジェルとミネルバの推定航路と、ほぼ一致する。
強力な少数精鋭の艦隊のことを連合も、ただ手をこまねいて見ていたわけではないのだ。
やっかいな相手だからこそ、混乱した地域に投入されれば脅威になる。
多くの火種を抱えた地域に更なる油を撒くためにその二艦が移動を開始したことを、連合側も看破していた。
無論アークエンジェルを諜報員に逐次追わせているユウナたちも知っている。

「でも、アスランもいなくて……今度はユウナ、お前まで……!!」
「平気だって。僕のいない間は、父上を頼ってくれればいい」

ウナト・エマ・セイラン。連合に対してはいささか弱腰ではあるが、
経験でいえば当然ユウナよりもカガリよりも豊富だ。
カガリを彼の留守中も、十二分に補佐してくれるだろう。
だがそれでもカガリは、泣きそうな顔で彼を見上げ訴えるように見つめる。

「心配、しないで。こんな無意味な派兵に、多くの血を流してやる必要はないんだ」
「だって……アークエンジェルと……」
「言っただろ?やりようはあるって。それに僕は死ぬ気はないしね」
「ユウナ」
「きみのことが、まだまだ心配だし?きみに行政を任せておくのが不安でしかたないヨ」
「お、前……!!」

目じりに涙をうかべていたカガリが、顔をくしゃくしゃにして笑う。
いつもどおりのユウナの軽口に対する、泣き笑いだ。

「ま、行ってくるよ。情勢が情勢だから、ぐるっと大回りしてのんびりと船旅を楽しむことになりそうだ」

あんまりのんびりしすぎて、増援が間に合わなくなるかもしれないがね。
ぽんぽん、とカガリの頭を叩くユウナの目は、いつになく優しかった。
732134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/01(日) 20:41:10 ID:???
次回からガルナハン編です。
つか本気でイザークとディアッカの登場機会がない……。

話数が自分でも混乱していたので、あらためて。
第三十九話 インド洋の基地に
第四十話 戦いのあとに残るもの
第四十一話 戦士の過去
第四十二話マイ・サクリファイス
となります。
733通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 21:03:38 ID:???
乙!待ってました!!
毎日が月曜日と行かないのはしょうがないながらも残念でしたが、やっぱりイイ!

マイ・サクリファイスと言う言葉が、何となく「それぞれの犠牲」と言う意訳に見える俺。
まさかキラとアスランの過去がセラ達のそれに発展するとは思いもよりませんでした。
重い話ですね・・・・・。

>つか本気でイザークとディアッカの登場機会がない……。
これ以上キャラ増やしたら134さんが死んじゃうよぉうwww
734定期上げ担当者:2006/10/01(日) 21:52:23 ID:HvDginus
お疲れ!
>話数が自分でも混乱していたので、あらためて。
無理も無いですね・・・焦らずに頑張っていただきたいです
>つか本気でイザークとディアッカの登場機会がない……。
あいつらはやっぱり宇宙でしか出番が無いのかな?
地上に来ても空気な予感
>「あ、小型レーザーは禁止だぞ」
>「なにか別のものを考えますよ。ドラグーンとか」
アスランはまだ諦めてないのかよw
レーザーがダメならドラグーンを考えるなってww

いい加減上げないといけないなぁ〜・・・と言うわけでアゲ
735通常の名無しさんの3倍:2006/10/02(月) 11:01:52 ID:???
俺達の月曜日age
736定期上げ担当者:2006/10/02(月) 17:40:02 ID:???
俺たちの月曜日!!
737134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/03(火) 07:27:39 ID:???
第四十三話 フー・アムアイ

灰色のバイクが、乾ききった岩の大地を疾駆する。
乗るのは二人。
バイクに跨っていながらも長身であることを窺わせる男、
そしてその身体にしがみつくように後部に座る、小さな少女。
どちらも砂塵避けに、ゴーグルをその目に付けている。

「あれか?」

男に言われ、彼の背中から少女は顔を出す。
彼らの目指す先には白亜とグレー、特徴的な形の二隻の艦が迫っていた。
その下には数隻の陸上戦艦。

「ああ、あれだ。まちがいない」
「よし」

石と砂を巻き上げ、バイクはスピードをあげる。
作戦の準備は、着々と進んでいた。

 ****

「レジスタンスとの協力?」
「ああ。今回の作戦は現地の協力者が、情報をもってきてくれるらしい」

作戦前のミネルバ・ブリーフィングルーム。
ここには今、ミネルバとアークエンジェル、両艦のパイロット。そしてジェナスたちが集められていた。
セラの疑問符に、隣に座っていたレイが簡潔に答える。
そして落ち着かない様子のジェナスには、ルナマリアが。

「どうしたの?ジェナス。さっきから変だけど」
「いや……なんていうか。ほんとに俺、軍人みたいなことやってんだな、って」
「違和感?」
「ん、そんなとこだな」
「うーし、お前ら揃ってんなー。はじめるぞー」

そうこうしていると、ハイネがアスランとともに入ってくる。
更に後ろには、ぱさぱさした感じの髪を結った、小柄な少女も。

(……子供?あれが協力員?)
「……子供じゃん」

ジェナスが思ったことをほぼ同時にシンが口走り、少女から睨まれる。
小さく溜息をついたハイネが近づき、彼の脳天にチョップを一発落としてから戻る。
頭を抱えたシンを尻目に、ブリーフィングが開始された。
738134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/03(火) 07:29:10 ID:???
灯りの落とされた室内のスクリーンに、峡谷のマップが投影される。
ハイネの頷きを受けて、アスランが説明をはじめる。

「ではラドル隊と合同で行う、ガルナハン・ローエングリンゲート突破作戦の詳細を説明する。
 ……これが渓谷の状況だ。この断崖の向こうに街があり、その更に奥に火力プラントがある。
 こちら側からこの街にアプローチ可能なラインは、ここ。この一本道のみだ」

レーザーポインターでマップ上を指し示しながら、アスランの説明が続く。

「敵の陽電子砲台はこの高台に設置されており、渓谷全体をカバーしている。
 ここが『ローエングリンゲート』と呼ばれる所以だ。隠れられる場所もこれといってない」
「おまけにここには、MS以外に陽電子リフレクター装備のMAが数機、配備されてる。
 射程外から砲撃ぶちこんでも有効打撃は望めないわけだ。そこでだ」

アスランから言葉を繋いだハイネがリモコンを操作すると、
峡谷のラインのすぐ横に、別の細いラインが表示される。

「本隊とは別に、奇襲をかける部隊を用意する。本隊が陽動をしかけてMAを誘い出し、裸になった砲台を直接奇襲で叩く」
「このルートに、今は使われていない坑道がある。広さは、インパルスの分離形態でぎりぎり通れる程度」
「シン!!お前が作戦の鍵だ」

びしり、とリモコンを自分にむけられ、シンは一瞬固まる。そして。

「ええ!?俺ですか!?」
「そーだ。作戦の成否はお前にかかってる。責任重大だぞぉ?」
「インパルスのパイロットは、お前だからな」

大袈裟に驚いたシンへと、二人のフェイスは言い放つ。
ハイネはいたずらっぽい笑みで、アスランは淡々と。

「けど……いや!!ですが!!」
「セラもついていってやれ。坑道突破後のインパルスの援護に」
「はい」

シンの狼狽は完全にスルーされ。
アスランは少女のほうへと向かい、頷く。

「さあ、ミス・コニール。彼がパイロットです。坑道のデータを」
「……大丈夫なのか?」
「んだとっ!?」
「シン」

むきになるなよ。ジェナスが後ろから、立ち上がりかけたシンの両肩を押さえて座らせる。
相手が子供だと言ったのは自分だろうに。
ルナマリアとレイも止めこそはしないが、相変わらずだと言わんばかりの顔で額を押さえている。
739134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/03(火) 07:30:14 ID:???
「この前……ザフトの攻撃が失敗したとき。内通者狩りだっていって、町のひとたちがたくさんつれていかれた……」
「!?」
「今度は攻撃にあわせて、町でも行動を起こす。だから万が一にでも、失敗してもらっちゃ困るんだ!!
 それこそ、今度失敗すれば、なにをされるかわかったもんじゃない!!ほんとにこいつで……!!」
「こいつ、だとぉっ!!」
「隊長はあんたたちなんだろ!?なら……!!」
「大丈夫ですよ。彼なら。やってくれます。だから、データを」

ずっと年下の相手にこいつよばわりされて、シンは完全に頭に血を上らせていた。
今度は三人がかりで──レイが右腕、ルナマリアが左腕。ジェナスが両肩を掴んで──、押しとどめる。
対照的にアスランはやさしい表情で、コニールへとデータの受け渡しを促す。
少女は目を逸らし、しばらく戸惑い躊躇したあと。
恐る恐るといった様子でアスランの差し出した手にメモリーの入ったディスクを載せる。
ハイネに肩を叩かれるも、やはり完全に納得した顔はしていない。

「シン」
「……」
「シン!!」
「ハイネやアスランがやればいいじゃないですか。キラだっていいじゃないか」

一方でシンも、ふてくされて顔を背けていた。
目もあわせずに、アスランへと言い返していく。

「そいつの言う通り、俺よりそのほうが上手くやれる。あんただってどうせ、ほんとはそう思ってんでしょ?」
「お前……!!」
「失敗したら終わりだとか言って。どーせ俺は……」
「甘ったれたことを言うな!!」

アスランが、遂に怒鳴った。
びくりと身体を縮こまらせ、シンは彼を見上げる。

「生憎俺もハイネも、お前の心情とやらに配慮して、無理と思える作戦でもやらせてやろうと思うほど馬鹿じゃない」
「なっ……!!」
「無理だと思えば始めから俺たちでやるさ。だが、お前なら出来ると思った。だからこの作戦を採った」

ハイネもまた、静かに諭すように言う。

「この人選は、俺達二人の総意だ。しり込みして拒否なんて、ゆるさないぜ?」
「……!!」
「やるのか、やらないのか!!どっちなんだ!!」
「っ……やりますよ!!やってやる!!」

ディスクをひったくり、立ち上がり啖呵を切る。
ルナマリアとレイが、少し意外そうに顔を見合わせていた。

「よおし、ブリーフィングは以上だ!!作戦開始まで、一時解散、各自持ち場に!!」
740134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/03(火) 07:31:15 ID:???

同様にアスランとほっとしたような顔を見合わせていたハイネが告げると、自動ドアが開いた。

「コニール、うまくいったのか?随分と時間がかかっているようだが───……」
「ああ、申し訳ない。今丁度終わったところですので……」

そして入ってきた人間、その人物に、ジェナスとセラは我が目を疑った。
応対するハイネの声すらかき消すほどの仰天した声を、張り上げる。

「「ニルギース!?」」
「え?」

一同が二人と、入室してきた青年とを見比べる。
黒の上着を着た長身の彼は、だまってジェナスたちを見つめている。

「ニルギースだろ!?無事だったのか!?」
「あなたもこの世界に!?」
「あんたら、イヴァンの知り合いなのか!?」

二人の驚きようにコニールも唖然としていた。
しかしどうやら、その性質は彼らのものとは違うらしい。

「よく無事だったな、おい!!……おい?」

歩み寄り、ジェナスが肩を揺する。が、彼はあくまでも無反応だ。

「ニルギース?」
「きみたちは……私のことを知っているのか。なら、教えてくれないか」
「なんだって?」

言葉の意味を測りかね、首を傾げるジェナスとセラに、彼は言った。

「私は……イヴァン・ニルギース。覚えているのは、それだけだ。私は、何者なのだ?」
741134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/03(火) 07:37:31 ID:???
寝てません。眠いです。朝っぱらに投下。
アニメのあのローエングリンゲートのつっこみどころは色々あるわけですが。
ひとまずゲルズゲー増量という形で。
いくら無敵の盾とはいってもひとつしかないものを抜けないザフト軍は
どうかと思うわけですよ。同様にローエングリンも増量したかったものの、
それじゃノイマンのいないミネルバが落ちるなあ、ってことで泣く泣く割愛。
ニルギについては・・・まだノーコメントで。
742定期上げ担当者:2006/10/03(火) 14:38:13 ID:???
GJ!!
とうとう合流したと思ったらニルギースーーーーー!!
名前以外の記憶なくしてるーー!!
743通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 16:29:05 ID:???
GJ!
記憶喪失ktkr
744通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 19:26:41 ID:???
お疲れ様です!
でも、どうかくれぐれもお体だけはお大事に。
季節の変わり目で体調の崩れ易い時期ですし。
>>742 >>743
つーか、メット無しでフルゼアム使いにぶん殴られて山にめり込むような目にあって
記憶喪失だけで済んだ、とゆー方が凄いと思うのは俺だけであらうかwww
745通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 19:37:26 ID:???
紫組は最終一話前ではほぼ生身でバグっちとやり合うし。
もうピュアムの身体的能力はガンダムファイターと遜色無いんじゃね?

ジブリールが大喜びするのもよく分かる。
746通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 19:54:48 ID:???
んでもってそのうちジブリールも彼らに触発されて自分用の金ぴかな
アム鮭なんか作っちゃったりして最終話近くで出撃しちゃったりして・・・・・
747通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 20:54:51 ID:???
そして議長のゼアムに分解されるというわけか
そして「……うう、ジブリール、おしい金ピカをなくした」とレスる俺ら、と。
748358 ◆KILLER/duk :2006/10/03(火) 21:16:15 ID:???
ニルギ記憶喪失ktkr
ニルギ鮭はどうなったんだろ?
749通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 21:22:00 ID:???
似たようなシチュでフェードアウトした先生のギアはロゴス謹製だからな・・・。
750通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 21:24:59 ID:???
そこでアスランですよ
751通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 12:32:41 ID:???
>>748
補給して使えるようになったとしてニルギ本人が使える状態かも問題であるな。

ただ初めのうちはシンと色々ぶつかりそうな予感。
もろ正反対のキャラだし。
752通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 13:15:56 ID:???
>>741
作品によっては、ザムザザーが複数機追加なんて例もあるようですね。
>それじゃノイマンのいないミネルバが落ちる
・・・・って、ちょwwww
裏返せばこの世界のAAも相手の砲撃見て回避するんですかい!wwww
753通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 14:31:19 ID:???
この世界にはアムエネルギーが発生した

アムエネルギーは大体凄いことを起こす

ノイマンは凄いことをする

つまり、ノイマンはアムエネルギーを生身で操る生粋のアロン人だったんだよ!
754通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 14:34:01 ID:???
ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー!?
755134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/04(水) 14:54:07 ID:???
第四十四話 ローエングリン

──イヴァンと出会ったのは、ちょっと前のことだ。
月のきれいな夜で、あたしは父さんに連れられてレジスタンスの集会に出てたんだ。

そしたら。
集会が終わって戻ろうかってときに。
なにもない空から突然、イヴァンが降ってきたんだ。妙なバイクといっしょに。
なんかごてごてした宝石みたいなので覆われたノーマルスーツ着てた。
放ってもおけないからって父さんが連れて帰ったんだけど、目が覚めたら記憶がないって言うし。
記憶が戻るまでとりあえず居候させることにして、戦闘経験もあるみたいだし
レジスタンスの活動を手伝ってもらってたんだ。

 ****

『シン・アスカ、インパルス。いきます!!』
『セラ・メイ。発進するわ』

声とともに、シンのインパルスが発進していく。
久々の分離状態、三機のパーツとなって。
シルエットフライヤーは、ソード。ただしエクスカリバーは装備されていない。
坑道のサイズを通ることができるのは、それしかなかったからだ。
なにもないよりはましだろう。
続いて、アークエンジェルからセラが飛び立つ。
ストームバイザーの下部には、インパルスの予備ライフルが懸架されている。
つまり今回のインパルスの武装は、ビームブーメランのみのソードシルエットに、
二丁のビームライフルということになる。

「じゃあやはり、彼もジェナス、キミ達と同じ世界から来た人間なのか」
「ええ。乗ってきたバイク……見ましたけど、バイザーです、あれ」

パイロットスーツ姿のバルドフェルドが、窓から二機の発進を見送りながら言った。

「もっとも、駆動は燃料のアムエネルギーがない以上バッテリーが使われてましたけど」
「ふむ……しかし不思議だねェ、そのアムエネルギーとやらも。キミ達をこの世界に飛ばして、どうしろと言うのやら」
「さあ……俺にもそれはわかりませんけど」

記憶を失ってはいたが、その外見、性格。
そして現れた状況やモトバイザーを所持していたことなどから、
先程出会った男がニルギース本人であることに間違いはない。
だが──、ジェナスはキラやアスランも見ている中、疑問のある点をいくつか考えていた。
756134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/04(水) 14:55:59 ID:???

まずは、彼がモトバイザーとともにいたこと。
まあこれは、ジェナスもこの世界でエッジを発見しているし、たまたま同時に
同じ場所に落ちてきただけのことだろう。
次に、アムジャケット。
セラも同様だが、最終決戦において使用が不可能になっていたはずのそれらが、
アムマテリアルのクリスタル状パーツも含め、完全な形でギアを取り戻している。
少なくともコニールの話を聞く限りでは、ニルギースはその状態でこの世界にやってきた。
今は町のコニールの家に保管してあるという。

(フルゼアムによって……修復された……?この世界に、来る際に?)

フルゼアムを使いこなしていたガン・ザルディは、そのアムジャケットをゼアムの力によって
自由自在に再構築・変化させていた。そのことを思うと、あながちあり得ない話ではない。

『パイロット各員は搭乗機へ』

ミリアリアのアナウンスが流れ、一同は待機所を後にする。
ラドル隊と合同の、ローエングリンゲート突破作戦。もうすぐ、任務がはじまろうとしていた。

 ****

一方。
セラを連れ坑道へと進入したシンは───……死にそうだった。

「なんだよこりゃ!?真っ暗ぁ!?くっそー!!まじデータだけが頼りかよ!!」
『文句、言わないの。ちゃんと飛びなさい、こっちはあなたの軌道トレースしてるんだから』
「ずりーぞ、セラァっ!!」

通り抜ければ、砲台のすぐ真下に出られるという、隠された裏道。
しかしその実態は、あまりに狭く、暗く。
発進直前にアスランから通信で言われたことや、ブリーフィングでのやりとりを思い出しシンは罵る。

「なーにがお前になら出来ると思っただ!!データ通り飛べって、そういう問題じゃないだろこれ!!
 アスランも、ハイネも!!自分でやりたくなかっただけじゃないのか、あいつらー!!」
「シン!!前!!」
「くっそおーっ!!やってやるさ、あのハゲ!!畜生ーーっ!!」

悲鳴にも似た彼の叫びが、暗い坑道内に怨嗟となって空しく響く。
吐いた毒がこっそり、セラによって録音されていたということを、彼は知らない。
口は、災いのもと。

 ****
757134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/04(水) 14:57:11 ID:???

『『全砲門開け!!目標、敵陽電子砲台!!てえぇーっ!!』』

二人の女艦長の号令が、戦闘開始の合図であった。
幾筋ものビームと砲弾とが飛んでいき、同時に次々と機体が発進していく。

『アスラン・ザラ、セイバー、出る!!』
『キラ・ヤマト、ストライクノワール、行きます!!』
『アンドリュー・バルドフェルド、出るぞっ!!』
『いくぜ!!get!!ride!!』

バルドフェルドのみ、今回はラドル隊のバクゥ部隊の指揮を執るため、
基地にて貸与されたバクゥハウンドに搭乗している。
他はミネルバもアークエンジェルも、いつもとかわらぬ機体、編成だ。

『ハイネ・ヴェステンフルス、グフ、行くぜ!!』
『ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!!』
『レイ・ザ・バレル、発進する!!』

今回は、積極的に攻める。ただし、出すぎず。
攻めて、相手を誘い出す。
案の定というべきか艦の放った砲撃はすべて、出撃した敵MAの部隊によって受け止められ、有効打は
まったくなく。それすら予定のうちだ。

四本足にダガー系の上半身をもつ、異形のMA……ゲルズ・ゲー。
それが5機。
アスランやルナマリアの援護をうけつつキラのノワールや、ジェナスのエッジバイザー。
それにハイネのグフが接近戦を挑んでいく。砲撃や射撃では決定打を与えられないからだ。
バルドフェルド率いるバクゥ部隊も、その陸上での機動力を生かし駆け抜ける。
目的は、あくまで誘い出した相手の、足止め。
MA部隊に続くようにして集結してきつつある敵MS部隊の様子に、ハイネはコックピットの中で頷いた。

 ****

データ上のマップに記された、終着点が近付いてくる。

「ここか!?……よし!!セラ、抜けるぞ!!」
『了解!!』
「いっけえっ!!」

コアスプレンダー両翼のミサイルを撃ち放ち、出口を塞いでいた廃材の瓦礫を吹き飛ばす。
漏れ挿し込んできた光の中へと、シンは突き抜けた。

眼下には、数機のダガーによる守備隊と、戦闘機。
そして、発射を間近に控えていると思しき、撃破目標たる砲台。
758134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/04(水) 14:58:52 ID:???

『シン!!ライフルを切り離すわよ!!』
「おお!!」

インパルスに合体、セラの投下したビームライフルを受け取ると
上空からの彼女の牽制射撃の援護を受けつつ、とびあがる。
すれちがった戦闘機は羽根にセラの射撃を受け、パイロットが脱出していった。
既にライフルの照準は、砲台に向けていた。

 ****

「キラ!!」
「うん!!」

シンが坑道を突破し、攻撃を開始した───……その朗報は一射目のローエングリンを
辛うじてかわし、敵部隊を引き付け続けるミネルバ、アークエンジェルの両艦の部隊に届き。
一気に攻勢へと転じた彼らは、ぐいぐいと敵を押し込んでいく。
同時に、頷きあったキラとアスランは敵MAの懐に飛び込む。
二人の脳裏を、植物の種子が弾けるようなイメージが駆け抜けていった。

「でええええぇぇいっ!!」

懐から更に四本足をかいくぐり、機体下部に潜り込んで裏側からビーム砲を押し当てる。
さすがに機体下部までは陽電子リフレクターは装備されておらず、機体は二条の太いビームに
貫かれる。爆発に巻き込まれる前に変形したセイバーが離脱した。これで一機。

「はああああぁっ!!」

僚機の撃破にたじろいださらにもう一機を、ストライクノワールのワイヤーアンカーが絡めとる。
二本の対艦刀をもって両腕を斬り捨てると、PS装甲のパワーすらオフにし、その分の出力すら回し。
機体の持つ渾身の出力でキラはMAを振り回し、岩盤へと叩きつける。
コックピットと思しき場所に剣の実剣部をつき立てると、二機目もそれっきりだった。

三機目はレイのミサイルを防ぎ、
爆風で視界を失ったところを正面からハイネがリフレクター解除の隙をついて一刀両断。
バクゥ部隊の四方八方からの攻撃に晒された四機目はルナマリアに即頭部を撃ち抜かれ、
バルドフェルドのバクゥハウンドのビームファングを突き立てられて断末魔をあげている。

最後の機体はジェナスが足場を崩したところで体勢を乱し、ひっくりかえったところでメインのバーニアを
流れ弾のミサイルにより破壊され、そのまま起き上がれずコックピットを開いてあえなく白旗、御用となった。

砲台のほうから、爆発の煙があがった。
759134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/04(水) 15:03:03 ID:???
ぶつ切り感があるのは気のせいということにしておいてください(汗)
ゼアムが超便利アイテムなエネルギーと化してるなあ・・・。
でも本編でもかなりなんでもありなエネルギーだったし、ねえ。
760通常の名無しさんの3倍:2006/10/04(水) 16:11:41 ID:???
お疲れ様です!!
シンの「あのハゲ」発言…w
ラクスのカップラーメンと言い、アスランのトリィ改造計画と言い…
こういう細かい笑いポイント、凄く鋤ですw
761通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 11:30:43 ID:???
乙!
>>756辺りを見てると、実のところこの物語は、最終決戦時のジェナとガンちゃんの

壮 大 な 夢 オ チ

なんじゃないかと妄想する今日この頃w
夢オチじゃないとしたら、実はアムエネルギーは意思を持ったエネルギーで、何かの
意図があってジェナ達を種世界に送った、とかだったりして。

>でも本編でもかなりなんでもありなエネルギーだったし、ねえ。
本放送時でも「ベルゼルガ物語」のテスタロッサよろしく地割れドッカンでバグシーンの
群れを一発あぼーん、ガンちゃんに至っては人間ゴッドスラッシュタイフーン、パンチ
一発で相手を宇宙へ、そしてジェナは月光蝶・・・・何があっても驚かんよ、という
調子だったものですw
762通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 11:40:17 ID:???
乙!
>>760
>>758のゲルズゲーの殺り方一つとっても個性がよく出てるからな・・・。
単機で突っ込むキラアスと、チームワーク、集団戦のミネルバ組とバルトフェルド、
そして何気に不殺なジェナと。実に芸が細かい。
763通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 11:45:36 ID:???
インパルス用のBR吊るすと聞いて、「一体自分の何倍の質量のブツ
吊るしてるんだよ!」と一瞬びびったけど、
http://amdriver.konami.jp/products/bisar/storm.php
>全長3710mm
意外とでかいな・・・・・ストーム。
764通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 11:52:14 ID:???
>かなりなんでもあり
きっとジェナ以外の人間にゼアム鮭使わせたら、シンやアスランが自分が戦う意義を
見出したり、ニルギの記憶が戻ったり、原作で無能が公式設定になってしまったマリューが
ヤン・ウェンリーばりの名指揮官になったり、肩こりがとれたりご飯がおいしくなったり
するんだよ、多分www
765通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 22:00:01 ID:???
>>763
初めてアムドの玩具見たがなんか良さそうだな。変形もちゃんとするみたいじゃん
766763:2006/10/07(土) 22:10:34 ID:???
前スレで「アムトイってどんな感じですか?」みたいな質問を振ったら、濃ゆい先輩にこんなサイト
を教えて頂きました。
http://deathz.ii2.cc/toy/am/am.htm
ふんだんに使われたクリアパーツが美麗ですね。
2500円前後でこれだけ出来るのならなかなかいい出来なのかなぁ?と言う気がします。
767763:2006/10/07(土) 22:25:44 ID:???
個人的に凄いのは、あの複雑な合体変形プロセスを持ったネオクロスもちゃんと
キット化出来てる、という事ですね・・・・・。

流石にお値段もカゲキにスゴいですけどw
768通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 22:28:02 ID:???
変形できるのはいいけど可動範囲や連結部分が取れやすいのがアムトイの難点だよなあ。
ちゃんと頑張ればもっといい出来になるのに惜しい・・・
769通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 03:21:26 ID:???
つ旧ニルギース
770通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 03:24:11 ID:???
おっとバイザーの話かスマン
モトバイザーがなあ…
白バイVerで改善されてたのは素晴らしいがなあ…
771通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 15:58:19 ID:???
でもネオクロスの出来はガチだと思うんだ
772134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/08(日) 16:27:45 ID:???
第四十五話 ガルナハン・ピープル

インパルスからシンが降りていくと、町はお祭り騒ぎの状態だった。
作戦と同時に行われた蜂起も、無事成功したらしい。

「……すっげーな」

騒がしい町の様子に、圧倒される。
と、向こうのほうから見知った顔が歩いてくるのが見える。

「君のおかげだ。感謝する」
「あ。えーっと……ニルギース、だっけ?」

あのコニールとかいう子は、イヴァンと呼んでいたが。
ジェナスが出撃前に繰り返し連呼していた印象のほうが強かったので、そう呼んだ。

「ああ。これで町は開放された」
「そっか。あんたはどーするんだ?ジェナスたちはあんたのこと、知ってるみたいだったけど」

ちらりと目の端に、ハイネとアスランがMSから降りてくるのを見つつ、尋ねた。

「迷惑でなければ、同行したいと思っている、彼らや君たちに。……なにぶん、他に手がかりがないのでな」
「ああ……記憶、ないんだっけ……っと」

言ってから、自分の発言がやや無神経なものであったということに気付き、口を押さえる。
かまわないという風に、ニルギースは首を横に振った。
───のを見た直後。

「いでっ!?」

ごん、と後頭部を力いっぱい、誰かに殴られた。

「誰だよっ!?」

怒鳴り、振り向くとそこにいたのは二人の上司。
先程MSから歩いてこちらにやってくるのを見た、ハイネとアスラン。
青筋を立てて拳を握りしめているあたり、犯人はアスランであろう。

「何するんですかっ!?」
「……ハゲで悪かったな、ハゲで」
「い!?」
「全部、聞かせてもらったよ。ん?なかなか面白いこと、言ってたじゃないか」

スマイルのアスランは、気味が悪い。なにしろ、目が笑っていない。
一歩後ろで噴き出すのを堪えているハイネも、助けてはくれまい。
773134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/08(日) 16:29:04 ID:???

「ひとまずはお疲れ様、と言っておこう」
「あ、はは……あの、えっと」
「せっかく成功したことを褒めてやろうと思っていたんだがな。君とはじっくり話す必要がありそうだ」
(俺、地雷踏みました!?)
(ああ、それも特大のやつを)

ぽきぽきと指を鳴らすアスラン。それは一体、なんという肉体言語でしょうか。
話すよりも素直に褒めてほしいです、本当に。
ハイネとアイコンタクトで会話しながら、シンは思う。

「────やめろよっ!!!!」

だから一瞬、その叫びがアスランに向けられたものかと思ってしまった。
命知らずなやつもいるものだ、と。
だが、違うと気付いたその時、彼が見た先には───……町の住人たちと対峙する、
ヘルメットだけを外したジェナスが肩を震わせて。その怒りを露わにしていた。

 ****

「やめろよっ!!!!」

コニールを連れ、町に入り。
シンたちを見つけ合流しようとしたところで、
瞳に飛び込んできたそれに向かい、思わずジェナスは叫んでいた。

「ジェナス!?」

シンも彼の様子と、周囲の雰囲気に気付いた。
ジェナスが叫んだのは、住民たちの行動を見てしまったから。

彼らに蹂躙され、集団で暴行を受ける敗残の連合兵たちの姿がそこにあったから。
とても見過ごしてはおけなかった。

「そんなことやったって、意味ないだろっ!!」

彼の声に、一斉に住人たちが振り返る。
一瞬、驚き。そしてすぐに反論の声をあげる。
むしろ、非難と暴言といったほうが近い。
口々にジェナスに向かい罵詈雑言が飛ぶ。

余所者が口出しするな。自分達は連合によって散々な目に遭わされてきたのだ。
同じ目に遭わせてやって、何が悪い。報復は当然の権利だ。
そのような意味の言葉が、次々と悪口雑言とともに浴びせられる。

「お前ら、自分の顔見てみろよ!!!」
774134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/08(日) 16:30:14 ID:???

だが、彼は怯まない。
粗野な男達に囲まれ、女達に非難めいた目で睨まれながらも、
拳を握り説く。

「お前ら自分が、どんな顔して何やってるのかわかってるのか!?」

彼はかつて、復讐の激情に駆られたことがあったから。
そして、笑いながら人を殺め傷つける人間を知っていたから。
今彼らのしている顔が、行動が。以前見たものと重なって見えた。

「勝ったら何やっても、いいのかよっ!!」

だから、止めた。ジェナスの剣幕に驚いたコニールは、町の人々と彼とを、おろおろと見比べる。
けれど興奮した人々は収まらず、止まらず。激昂し、幾人かの男が掴みかからんと
拳を振り上げ向かってくる。

──避けるべきか、受けるべきか。それとも素直に、殴られてやるべきか。

ジェナスは躊躇しつつもコニールだけは突き飛ばし、離れさせる。
ひとまず身構え、男達を待ち受ける。

「そこまでにしといてもらえるかなァ、町人の皆様方?」
「ジェナスも。もう下がっていろ」
「!?」

ところが瞬きするほどのわずかな瞬間に、影が二つ、割り込んだ。
赤とオレンジのパイロットスーツ。
彼らの間には、ハイネとアスランが拳銃を片手に立ち塞がっていた。
もちろん、銃口を向かってきた男達に向けて。

「ザフトも、慈善事業でやってるわけじゃないんでね?ルール違反はダメってことよ」
「あなた方の気持ちもわかるが───……この連合兵たちは我々が然るべき場所にて監視させていただく!!」

さすがに銃を向けられては、屈強な男達も黙って下がるより他にない。
不満たらたらの顔で二人を睨みつけてくるだけだ。

「捕虜は国際法に則った扱いをする。異論があるのならば俺達が聞く。ザフトはリンチに加担する気はない」
「これ以後、捕虜たちに暴行などの狼藉をした者がいた場合、プラント本国に報告させてもらう」

ルナマリアやレイのザクも、見下ろすモノアイを光らせる。
キラのストライクノワールが、拳銃を引き抜いた。
MSの威容に圧倒され、町の人々がたじろぐ。
彼らに同調するように、ゆっくりとニルギースが町人たちに歩み寄り、言った。

「もう、いいだろう。町は解放されたのだ。連合のことなど、覚えていても気分を害するだけだろう」

そう言って、受け止めたコニールの頭をやさしく撫でた。
775134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/08(日) 16:31:08 ID:???

 ****

『それではこれよりジュール隊、護衛の任を第三軌道艦隊に引継ぎ後退いたします』
「うむ、ご苦労だったね。ジュール隊長。隊員の皆を労ってやってくれ」
『はっ。議長閣下や、ラクス様方もお気をつけて』

デュランダルが秘書官に無線機を返すとほぼ同時に、船窓から大きく見えていた
青いザクがバーニアを吹かし、遠ざかっていく。
それを見届けてからデュランダルは、並んでシャトルの座席に座る二人の少女へと向き直る。

「そういえば、ジュール隊のジュール隊長やエルスマン君とは確か」
「ええ。よく存じ上げておりますわ」

ピンク色の髪の少女、ラクス・クライン。そして彼女の隣に座るのもまた、
瓜二つ……というよりも、まったく同じ顔の少女。
服装の違いがなければ、区別がつかないほど、二人の顔はあまりに類似している。

「どうなさいました?ミーアさん」
「あ!!あの、いえ。あたし、地球に降りるのはじめてなものですから……」

ラクスそのものの顔でびくびくと、緊張の色を隠せないでいるのは見ていて実に新鮮だった。
同じ顔の持ち主である、ラクスとしても。
このように表情が豊かであるのを羨ましくさえ感じる。

「大丈夫ですわ。地球はよいところですし」
「ラクス嬢の言うとおりだ。ミーア、気を楽にもちなさい」
「は、はい……」

二人からやさしく諭されて、ミーア・キャンベル──それが彼女の名だ──は頷いた。

「さあ、参りましょう。私たちにできることを、するために」

ラクス・クラインとミーア・キャンベル。
二人の「ラクス」、同じ顔を持つ少女達は、地球を目指しシャトルに揺られていた。
776134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/08(日) 16:36:59 ID:???
遅くなりました。
さあイザークは一瞬でたけどディアッカでないぞorz
シャトルの近くをザクで飛んでるんだろうけど、きっと。
777通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 16:48:18 ID:???
こ、これはラクスとミーアのコラボが実現するのか!?
778通常の名無しさんの3倍:2006/10/08(日) 21:41:02 ID:???
「かがやくラクス!」
「きらめくミーア!」
「「コズミィ〜ック・プリンセス!!」」
「「これぞ、宇宙が与えた運命のこたえ」」

こうですかわかりませn(ry
779通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 01:20:12 ID:???
>>771
ネオクロスはまさに神の出来栄え。

いやー、しかし劇場に駆られて鬼になった自分を見たことのあるジェナなら確かに群集にこうするだろうなぁ。
フォーギブンは本当にいい回だった、アムエネルギーの濃さならテイク・オフが最高だったがw
780通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 06:08:32 ID:???
シーンの生前の存在感が存分に溢れてた回だったな>フォーギブン
781通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 07:00:48 ID:???
>>134
GJ!毎度楽しませてもらってます。
ジェナスのセリフはええですなあ>顔を見ろ

なんとなくシンの地雷云々がジョジョネタに見えてしまった……。
(もしかして地雷ですかー!yes yes yes yes yes!!!!)
782通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 15:18:00 ID:???
連合兵リンチ・・・そういうネタがあったとは耳にしてたがここでしたか。
当時種運命見てない上に小説版でも少し削ってあったからなあ。
783通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 15:38:45 ID:???
リンチっていうか捕虜虐殺だよな。しかも民間の手による。
ほんと種死は(ry
784定期上げ担当者:2006/10/09(月) 23:00:22 ID:???
俺たちの月曜日だってことをすっかり忘れてたぜ!!
そして定期アゲ!
785通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 23:05:42 ID:???
そうだ、俺たちのシャシャとルナマリアとトパズの触手月曜日!
786134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/10(火) 16:56:19 ID:???
第四十六話 見えぬ真実

──ミネルバ・航海日誌のある一ページ──

堅牢な守備を誇った連合の要塞、ガルナハン・ローエングリンゲートは
我が艦隊所属のMS・インパルスとそのパイロットであるシンアスカの活躍によって無事
陥落に成功した。

一撃でも加えられれば壊滅は免れないというぎりぎりの状況の中、
他のMS隊や共に戦線を構成したマハムール基地・ラドル隊の奮戦もめざましいものがあり、
各員の力が一つになった結果としての勝利といえるだろう。
だが、基地陥落後の混乱において、現地住民による連合軍敗残兵たちへの無法行為が行われ、
咎めた部隊員たちとの小競り合いが発生。なんとも後味の悪いものとなってしまった。
また目撃した各隊員たちの心に及ぼした衝撃も、けっして少なくはない。

次の寄港地、
ディオキアではある程度まとまった休暇(といってもこの戦況では微々たるものであることを覚悟せざるをえないが)
を得られると聞いている。
若い隊員たちの受けた心理的ダメージが少しでも癒されんことを願う。

ミネルバ副長 アーサー・トライン

 ****

「えー……と。未だによくわかってないんだけど」

ガルナハンでの作戦を終えて、はや三日。加えて幾許かの時間が経つ。
ディオキアのザフト軍駐屯基地を間近に見下ろす、街の高級ホテル。
そのテラスにある屋外レストランにて、シンはつぶやくように言った。

「俺達が今待っているのが、議長と『ラクス・クライン』なんだよな?」
「ええ、そうよ」

アスラン、レイ、ジェナス。そしてキラに、タリア。
彼ら、彼女らとともに待ち人の到着を待つルナマリアが、シンの疑問に頷く。

「じゃあ、あれは?基地で今ハイネとライブやってんの」
「あれは『ミーア・キャンベル』」
「……顔、同じだったぞ?」
「あんた、ヨウランやヴィーノにそれ言ったらぶん殴られるわよ?いい、だから───……」

丁度あんたはオーブにいたから、知らないのも無理もないのかもしれないけどね。
もったいをつけてルナマリアは、えらそうにシンへと説明をはじめた。

このディオキアにいる、二人の「ラクス・クライン」について。
787134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/10(火) 16:57:36 ID:???

開戦直後、プラントの国民感情は最悪だった。
いきなり核を撃たれたのだから、無理もないのだけれど。
激昂する国民達をなだめるように、突如として彼女はプラントに舞い戻ってきた。
ラクス・クラインが。瓜二つの顔の、彼女曰く腹違いの妹を連れて。

「それがあの、ミーアなんとかさん?」
「ミーア・キャンベル!!彼女、人気なのよ?おしとやかなラクス様とは逆に、元気で溌剌としてて。
 互いを補いあうっていうか、陰と陽って感じがして、あたしもあの二人のコンビ、好きだなー」
「ふうん……いたんですか?妹、って」

オーブにいた彼女をわずかながら知っているシンは、一応(?)元婚約者のアスランのほうへ
首を曲げる。

「さあな?いたって不思議じゃないと思うが?異母妹……仲がいいのはいいことじゃないか」

微笑を意味ありげに浮かべながらのアスランの答えは、微妙にはぐらかすものだった。
言外にそれ以上の詮索はするな、と言っている。そんな感じに受け取れた。

「ほら、シン。それくらいにしておきなさい。もうすぐ議長たちがお着きになるわ」
「あ、はい」

母親のようにタリアが言って、シンは身を正した。

 ****

「やあ、おそくなってしまったかな?」

ほどなくして、ラクスと、護衛らしき三人の兵を連れたデュランダルが姿を現した。
一同の敬礼──ジェナスやセラはややぎこちないが──に、楽にするよう言って返すと、
席に腰を下ろす。流れのまま、その場は食事会へと進んでいった。

「皆、頑張ってくれているようで……感謝の言葉もないよ、本当に」
「戦況は、どうなっていますの?宇宙……月など」

とはいっても話の内容は主に、戦争のことに自然となってしまう。
その話題になるとデュランダルもラクスも、憂鬱そうな顔にならざるを得ないようだ。

「相変わらずだよ。時折小規模な戦闘はあるが、それだけだ。連合側は何一つ譲歩しようとしないし……」
「戦いを終わらせる、戦わない道を選ぶということは、戦うと決めるより遙かに難しいものですが……これでは」

デュランダルと、ラクス。政治の世界に生きる二人の人間の言葉は、
喜ばしいものではなかった。一同の空気が沈みかけたとき、察したデュランダルが
ジェナスへと話題を振り、話を変える。

「どうだね、ジェナス。なにか、てがかりとなりそうなものは見つかったかね?」
「……いえ」
788134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/10(火) 16:58:56 ID:???
ジェナスたちは表向き、オーブからの離反兵という扱いになっている。
艦隊メンバー以外でそのことを知り話すことができるのは、彼らだけだといっていい。
だが、これといって成果もなく。せっかくの問いにジェナスは首を振る。

「そうか。……横のきみ、セラといったか」
「はい」
「きみも、ジェナスも。この世界のことはどのように感じた?」
「どのように、と言うと?」
「この世界の紛争……その性質、原因。色々さ」

第三者の立場として、率直な意見を聞かせて欲しい。
タリアのほうを見ると頷き促してきたので、ジェナスはデュランダルの問いに
ぽつぽつと答え始める。

「……まだ、うまく考えがまとまっているわけじゃないんですけど」

もとより、考えるより行動に起こすタイプだという自覚もある。

「この世界の戦争は、いろんなことが混ざり合ってて、ごちゃごちゃで。
 単純に権力争いだった俺達の世界の戦争より……ずっと複雑な気がします」
「……ふむ」

記憶さえ戻っていれば、ニルギースを連れてきたのだが。
こういったロジックの面では彼のほうが遥かにジェナスやセラたちよりも成熟しており、
説明が上手い。

「こんなことを知っているかね?戦争には種類があるということを」
「種類?」
「ああ、そうだ。戦争──いや。戦争を行う、目的の種類というべきかな」

ひとつは、己の主義主張のため。これは宗教や意見の決定的な相違によるものだ。
ブルーコスモスとコーディネーターの戦争も、これにあたる。

「二つ目は、利害関係の摩擦」

戦争をやらぬより、戦争を行ったほうがより利益になると判断した場合の戦争。
この場合は大抵において、国家間の争いになる。
核攻撃という最大の損害、被害の危機に晒されたプラントが連合と戦うことになったのも、これだ。
戦争によって10犠牲を出しても、プラントの100を生かす道を選んだということ。

「石油とか、技術力とか。そういった具体的な物的利害が原因の場合もあるがね」
「此度の戦争が複雑になっているのは……これら二つの戦争が、様々に絡み合っているからでもあります」

加えて、地球各地の反連合地域のもつイデオロギー、利害関係も絡んでくる。
あくまで評議会のトップというひとつの席をめぐって争われていたジェナスたちの世界の戦争とは、
様相が明らかに異なってくるのも無理はない。続いて言うラクスも、沈痛そうな面持ちだ。

「……ちょ、ちょっと、待ってください!!」
789134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/10(火) 17:00:01 ID:???
シンが、声をあげた。

「なんだね?」
「それじゃあ、なんです?利益のために戦争が起こって?人がいっぱい死んで得するやつらがいるってことですか?」
「……国家間、ならな。極論、相手国が復興に時間がかかればかかるほど、
 もう一方の国が得る利益も、つけることのできる技術格差も大きくなるんだからな」

相手が、死ねば死ぬほど────……。
デュランダルやラクスに代わり、アスランがシンに返す。
シンは激昂し叫ぶ。

「そんな!!消費されるのは金でもない、人の命なのに!!利害だなんて!!」
「そう、なのだ。それが人の社会のやむをえない点であると同時に、救いがたい部分でもある」

国家は、国民のためにある。
そのためには最悪、他国民を犠牲とすることすらさえも選択肢に入れておかねばならない。
そしてその血によって得た恩恵を受けるのは最終的に、国民だ。物的にしろ、人的にしろ。
理屈の上では、それは間違ってはいない。

「平和っていったい、なんなんです!?そしたら!!」
「……全ての人々が、ある程度の我慢をし、妥協ができている状態、といったところか」
「そんな……」

平和とはそれほどきれいなものではない。
それは若く、純粋なシンには酷であったかもしれない。
だが若いうちだからこそ、知っておいてもらいたいとデュランダルは思い、
さらに畳み掛けるように言う。

「だがしかし、世の中にはどうしてもその妥協が、我慢ができない者というのもいてね」
「!?」
「利害のため、政治によって生まれる戦争。戦争によって生まれる利益がある。
 ならば政治をコントロールすれば、うまく立ち回れば自分達が利を手に入れることができる───とね」

言ってみれば、戦争屋。くすぶる火種を煽って回る、放火犯。
国家間に争いを生み、それを産業、生業とするものたち。

「ブルーコスモスの活動母体でもある。彼らの名は───『ロゴス』」
790134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/10(火) 17:06:35 ID:???
本編のネタは極力使う。本編にないものは設定にこじつけられる程度で捏造する。
というわけでロゴス問題にようやく行き着いたわけですが。
死の商人同盟というのにちと無理がある。
ということで自演した勝ち馬に乗って甘い汁をすするフィクサー集団ということに。
性質上、軍需産業からの参加者が多いでしょうが。
これでも色々無理のある設定なんだけどねorz
791通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 17:25:33 ID:???
乙!
なんだかミーアたち含めて正義の集団に見えてきたから困る。
ミーアとラクスはそうきますか…。頑張れミーア。
ジェナスやシンの行方に期待するとともに、行く末に幸多からんことを。
792通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 19:55:46 ID:???
乙!
>──ミネルバ・航海日誌のある一ページ──
>ミネルバ副長 アーサー・トライン
・・・・・エ、エロゲ好きと空気読まな杉しか印象の無いアーサーがこんなに凛々しく・・・
793シャシャ ◆TrrK47ROuI :2006/10/10(火) 20:52:43 ID:???
>785

≡≡≡≡☆† Trrrr
794通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 21:10:09 ID:???
マーダーライセンス牙の「WHO」みたいなもんだと理解してたけどね>ロゴス
つまり「武器商人・権力者・闇社会の連合体」と。
795358 ◆KILLER/duk :2006/10/10(火) 21:24:52 ID:???
>>792
名前見て一瞬違うスレ開いたかと
796通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 06:31:37 ID:???
保守
797通常の名無しさんの3倍:2006/10/11(水) 22:33:52 ID:???
GJ、次回が楽しみだ!
798通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 19:23:35 ID:???
>>791
というより普通に、
>それは若く、純粋なシンには酷であったかもしれない。
>だが若いうちだからこそ、知っておいてもらいたいとデュランダルは思い、
デュランダルどころか
>「戦いを終わらせる、戦わない道を選ぶということは、戦うと決めるより遙かに難しいものですが……これでは」
ラクスまでまともですからね・・・・プラントが崩れる要素が見当たらないのですが、もし前者がおかしくなるとしたら、
まだ登場していないあの「神」がその起爆剤になるんでしょうかねぇ・・・。

いずれにせよ、先が楽しみな展開。
799通常の名無しさんの3倍:2006/10/12(木) 19:33:40 ID:???
>>797
次の戦闘回でいよいよバイザーバグが出ますが、十機と言うえらく半端な数が気になりますな。

>バイザーバグについては、少しアム世界の機体とはやはり違います。
>あくまで種世界の技術で「再現」されたものですから。
実はバイザーバグはバイザーバグでも、MSサイズの馬鹿でかい奴だったりしてw
800134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/13(金) 14:50:46 ID:???
第四十七話 人の夢、人の業

「ああ、キラくん。きみは少し残ってくれないか」

食事も終わり、デュランダルから直々に3日間の休暇の辞令をうけとったあと。
敬礼を交わし立ち上がった一同の中から、キラは呼び止められた。

「僕ですか?」
「そうだよ。少々、見て欲しいものと、頼みたいことがあってね」
「はあ。構いませんが……?」

横目で、彼の隣に座っていたラクスに視線を移すと、彼女は微笑んだ。
彼女も納得の上でのことのようだ。ならば問題ないだろう。

そう判断し、キラは足を止めてその場に残った。

 ****

せっかくだからと、ミネルバ、アークエンジェルの両艦のMSパイロット達、
それにジェナスとセラには、今日はホテルに泊まっていくよう言い渡されていた。

平時であっても滅多に泊まることのできない、高級ホテルである。
ルナマリアははしゃぎ、メイリンも呼ぼうかと言い出したがそれはアスランに止められた。

タリアは一足先に帰っていたし、いざというときにはバルドフェルドとハイネがそれぞれ残っている。
押し付けるような形になってしまうが、ハイネはこの基地に親しい友人がいると言っていたし、
夜のライブもある。バルドフェルドも、アスランたちがいないほうがマリューとよろしくやれるだろう。

「うわ、なんだこのだだっぴろい部屋は」

かくして、シンとともにツインの部屋に通されたジェナスは、その豪華さ、広さに圧倒されていた。
同じくツインルームだったルナマリアとセラも(主にルナマリアが)、驚いていることだろう。

ベッドに腰を下ろしてみると、明らかに艦のものとは違う感触が伝わってくる。

(……シムカのとこにいたときよりいいベッドなんじゃないか?これ)

まあ、あれは基地であったから比べるほうが間違いな気もするが。
少しショックだった。

「?」

振り向くと、背を向けてシンももうひとつのベッドの反対側に座り込んでいた。

「シン?」
「……」
801134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/13(金) 14:52:53 ID:???
けっして付き合いが長いわけではないが、シンが色々と考え込んでいるということが、
俯いたその背中からジェナスにも汲み取れた。
おそらくはそれがデュランダルの言っていた「平和」や、「ロゴス」のことについてであるということも。

「『ロゴス』……、ジェナス。俺、本当にそういう奴らがいるなら、赦せないよ」
「……シン、お前?」
「またアスランたちには熱くなるな、私情を戦争に持ち込むなって言われそうだけど」

言葉を切るシンの表情は、俯いていて窺い知ることはできない。

「そいつらを前にしたら、冷静でいられる自信がない。マユたちは、家族はやつらに殺されたようなものだから」
「シン」
「だから……暴走しそうになったら。お前が……止めてくれ。ルナや、レイたちと一緒に」

 ****

「これはっ!?」

キラの通された基地の格納庫には、二機のMSが佇み、二人を待っていた。
そしてそのうちの一機に、キラはたしかに見覚えがあった。

「……ZGMF-X666S、『レジェンド』。ZGMF-X42S、『デスティニー』。共に工廠から出てきたばかりの機体だ」
「デュランダル議長、これは。このデザインは……?」
「やはり、わかるか。かつてラウ・ル・クルーゼが乗った機体……『プロヴィデンス』の後継機だよ」
「キラ」

彼の予想は、当たっていた。円形の大型バックパックに、ドラグーンと思しき
いくつもの突起状のパーツ。それはかつて自分が傷つけ、守ろうとした人を
奪っていった機体に酷似していたのだから。
自然、彼の目は厳しいものとなる。

「デスティニーは、インパルスの後継機にあたる。どちらも連合のフリーダム、ジャスティスとの
 戦闘に備え急ピッチで組み上げられた機体だ」
「……それで、何をさせようというんです?僕にパイロットになれと?」
「いや。そうではない」

きつい口調のキラに、デュランダルは苦笑を漏らす。
だが、パイロットとして呼んだのでなければ一体、なんだというのだ?

「きみにこの子らを、育てて欲しいのだよ」
「……育てる?」
「そうだ。如何せん、この二機は開発を急ぎすぎてしまってね。複雑・高性能化した機構に、
 肝心のソフト面……OSが、対応しきれていないのだよ。レジェンドに至ってはドラグーン制御もままならん」
「……」

言いたいことはわかった。プログラムならば自分の専門分野でもあるし、興味深い。
けれどやはり、はいそうですかとは頷けない。
802134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/13(金) 14:54:10 ID:???
「……この際だから言おう。この二機のパイロットには、シンとレイを想定している」
「!?」

シンと、レイを。再び驚くキラの前を抜け、デュランダルはコントロールパネルを操作する。
するとどちらも鈍い鉛色だった二機が、それぞれのカラーリングに染まっていく。
レジェンドは、ダークグレーの、原型機と瓜二つの色に。そしてデスティニーは赤・青・白の
トリコロールカラーに。
だがそれよりもキラの目を惹いたのは───……、

「泣いて、いる?」

デスティニーの双眸の下に、血涙のごとくデザインされ引かれた、二筋の赤いラインだった。

「……そうだ。戦いによって奪い、奪われる悲しみ……それを終わらせてほしいのだ、この機体には」
「議長……」
「ロマンティシズムに浸りすぎかもしれんがね。この赤はその痛みの涙なのだよ。その意図で私がつけさせた」

戦いを終わらせるために戦う、苦痛の涙。
その言葉にキラは苦い思いを覚える。

「その涙を知る君に。ラウ・ル・クルーゼの暴走を知る君に、この二機を育ててもらいたい。
 デスティニーとレジェンドが。シンとレイ、若き二人が道を誤らぬように。だから、たのむ」
「……」
「キラ」

ラクスもまた、懇願するような視線を向けてくる。
無意識、キラはこれらの機体と己の業とを、心の天秤にかけていた。

「……わかりました。やります。3日でどれだけやれるかはわかりませんが」

完全に納得したわけでもないし、レジェンドの外観に対するわだかまりは依然ある。
しかし、シンやレイ。彼らが乗るというのならば、自分が手助けできるだけのことは
しておく必要があるのではないか。キラはそう結論付けていた。

 ****

「お疲れ様、アスラン」
「いや。ミーアこそ。いいステージだった」

カチン、とスパークリングワインの入ったグラスを軽くつきあわせて、乾杯。
一息に呷って、双方安心したように息をつく。
窓からはディオキアの夜景が美しい。

「アスランにそう言ってもらえると、嬉しいです。まだまだ、うまくやれてるって気がしないから……」

少女の顔はそのまま、ラクス・クラインだった。
ラクスの異母妹という触れ込みの少女──、ミーア・キャンベルその人である。
彼女とアスランは今、アスランの宿泊するホテルの部屋で、ひとときの語らいを楽しんでいた。
803134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/13(金) 14:56:59 ID:???
「そんなことはない。君はよくやってくれてる。衣装とキャラクターの違いがなければ、本当にそっくりだ」

アスランは素直に彼女のことを賞賛した。
彼女を元々ラクスの影武者として教え込み、仕立て上げたのは他でもない、彼自身なのである。
そのときはいささかラクスを演じさせるということに抵抗があったが、
こうして彼女が本当の名で表舞台に出てくることができて一安心といったところだ。

「ラクス様の妹をやるの、すごく楽しいです。こうして、色んな人と会うこともできるし」

爛漫に笑う彼女を見て、アスランは何故だかほんの少し心が痛んだ。
と同時に、昼間議長の言っていた『ロゴス』のことが脳裏をかすめる。
その名前と存在自体は幼少の頃にラクスの父、シーゲルから聞いていたので知っていたが。

(……やってることは奴らも俺達も、同じってことか)

どちらも世界を誘導し、自分達のよかれと思う方向に持っていこうとする。
ときにこういった、人を欺くような手段までも使って。

(だが、ベクトルが違う。私利のためにやっている連中とは)

あくまでも自分達がやっているのは、戦争を終わらせるため。
無辜の民たちのためだ。そのために手を汚しているに過ぎない。公益のためにやっている。

「どうしたんですか?アスラン」
「……いや。なんでもないよ」

俺達と奴らは、違う。
二杯目を注ぎ、アスランは再びそれを飲み干した。
酒の勢いだろうか、ミーアの肢体に目をやると、カガリと久しく交わっていないその身体が疼いた。
804134の人 ◆SdN5hSk1hY :2006/10/13(金) 14:58:15 ID:???
容量的に48話(24話Bパート)以降は次スレにて。
でわ。
805通常の名無しさんの3倍:2006/10/13(金) 15:46:12 ID:???
乙!
>「……ZGMF-X666S、『レジェンド』。ZGMF-X42S、『デスティニー』。共に工廠から出てきたばかりの機体だ」
つか開発早っ!!存在自体がもう公表されるか・・・・。
806805:2006/10/13(金) 16:19:52 ID:???
てか容量の問題があったか。確か500KB前後で終わりでしたよね・・・。
OK!ファインに決めるぜ!
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1160723817/
807358 ◆KILLER/duk :2006/10/14(土) 11:17:08 ID:???
埋めに入るか?
808定期上げ担当者:2006/10/14(土) 15:14:28 ID:???
>>807
埋めよう
809定期上げ担当者:2006/10/15(日) 09:09:24 ID:???
埋め
810通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 16:11:56 ID:???
OK!ファインに埋めるぜ!
811通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 20:25:47 ID:???
埋め
812805:2006/10/15(日) 21:26:57 ID:???
これで495KB、まだまだだな・・・・・。
ただ埋めるのは味気ないので勝手に「アム種」の個人的なベストシーンを挙げてみる。

俺的二位は「ジェナVS先生初戦」かな。
シーンの死の顛末を聞いたら、先生なら絶対ああやって鼻で笑うだろうし、それに対するジェナも、
ああいう怒り方をするに違いないと思う。
813805:2006/10/15(日) 21:31:53 ID:???
順不同だけど第三位は「13話クライマックスのジェナのユニウス砕き」
もう最初に出したら味気ないことこの上無いけど二転三転する戦闘に次ぐ戦闘の末、
アスランの一瞬の油断から招いた危機、溜めに溜めて焦らしに焦らした末の、

「はああああああっ!!撃!!」

見事な逆転劇でした。
814805:2006/10/15(日) 21:40:14 ID:???
そして俺的第一位は「第22話 ヘイト・ミー」
・・・・・・もう言葉も無いですね。知るべからざるものを知ってしまったやるせない怒りを銃では無く
拳で示すシンとそれを甘んじて受けるキラ・・・・。

因縁のある関係なのになんでこれが本編で描かれ無かったのか、と思うシーンが、人間的に
共感できるキャラとして見事に立て直されたキラのキャラと相俟って、一番光るシーンだと思いました。

皆さんは如何ですか?
このSSを語るに当ってよく話題に出るのはラクスのカップ麺だったりするのですがw
815通常の名無しさんの3倍:2006/10/16(月) 07:06:21 ID:???
・上に同じく、茄子vs先生
・キラとレイの会話
・政治家らしいカコイイユウナ
・ミリィの夢のトールとシーン
・戦闘全般
他にもいろいろ。

心情の細かな描写や、場面を思い描けるような戦闘描写が好きです
アム視聴者と種視聴者双方(ここの住人は大多数がどっちも観てただろうが)の琴線にうまーく触れてるとオモ
本編でもこうだったらなぁ、とか感じる
アニメで見られたら毎週興奮するだろうなあ
816通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 16:07:30 ID:???
    〃                 i,        ,. -‐
   r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈    /
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817通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 17:50:45 ID:???
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818通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 18:00:57 ID:???
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819通常の名無しさんの3倍

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            /  / {`ヽ|/ハ 、 、 \     ヽ
         /    ヽレ'´ ̄l l l 、 ヽ ` ー _l
           ! /    ト、  l ト、ヽ、ヽ. !ヽ  - 、ヽ
         |/ / l ! l }_ヽ_ ヽヽヽゝ┤人、ヽヽ lヽ l
        / / /| j /!| _`  ` `ーリ=.、`} j! !ト、l
          { { / { !l ノイテヾヽ    ´トノjハヽjイ /_ヽ}
          ヽV /l ト{ {l {. じ }      ヾーノ, /イl´j }!
         { {、ハ {! ` ゞ‐'‐        ̄  ノ/ ,イ `ヽ、
         ゝ|ハヽヽ            ー '1‐'    l
        /   ヽヽ=‐'     ´-`     /   ヽ  |
          |  l    ̄\    ー ニ ´  /     ヽ ´ ̄ `ヽ
     , -‐ ´|  l /    iヽ、        /l ヽ   _,      l
    i    j _j /     j | ` ー‐ '   l   ̄ {     ヽ  !
    l  /  ` ーi ― '  l           l  , ..、ヽ     j ノ ̄ ̄ヽ
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!  j ,    ! _ - ´     !       , -―|        /   ヽ  /ヽ
j、ノ'  _ ノヘ          l ̄ ̄ `ヽ      j        /     Y