もしシンじゃなくてマユが主人公だったら16

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1纏め人 ◆rw1maYUY1g
このスレは、機動戦士ガンダムSEED DESTINYの主人公がシンではなく妹のマユだったらという
二次創作SS小説そして妄想スレです。
必読事項↓
・マユ・アスカが主役で、運命キャラがメインです。
・概要抜粋型(短い)と小説型(長い)どちらでも可
・シリアス及びギャグ何でも可
・煽り荒らしは、スルーしましょう(重要)
・sage進行で、お願いします。
・作者叩きは、禁止
・「○○イイ!○○○イラネ」などの特定職人マンセーはあまりよくないです。
意見がある人は各職人様にアンカーをつけてレスしてみましょう。
その際
「○○○の部分が、○○○のようにおかしい」
「○○○のような書き方は気をつけた方がいいと思う」
等、言いたいところをできるだけ「丁寧に」書いてレスして下さい。
誠意ある質問には必ず誠意ある返答がある筈です。
質問は見やすいようにコテハンをつけておいてもよいかもしれません。
より良い作品・スレ作りにご協力下さい。
「面白い」って意見も、ただ「乙」とか一言で済ませるんじゃなくて、「○がよかった」「○に感動した」とか書き込むと、
物書きにとっては何よりの応援になります。
その作品にのめり込んでるなら、その作品でキャラが起こした行動自体に対して、叫ぶのもいいと思います。

・職人常時募集中
議論やスレでは言いづらい感想は、こちらでお願いします。
http://jbbs.livedoor.jp/anime/2892/

前スレ
もしシンじゃなくてマユが主人公だったら15
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1145797262/

その他関連スレ↓
新キャラメインでDESTINY学園開校7
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1141559512/
:【SS】新シャア板の職人相談室 2部屋目【イラスト】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1146137211/
まとめサイト兼過去ログ置き場
http://members.ld.infoseek.co.jp/rurukubo/mayukako.htm

絵板
http://bbs4.oebit.jp/mayuseed/bbsnote.cgi
2纏め人 ◆rw1maYUY1g :2006/05/26(金) 19:00:20 ID:???
まあ、マユを主人公にすると―― (パート1 710より)

1.子供だけど赤服。努力と才能と、周りのサポートで頑張る努力型の主人公という前作との差別化。
2.1.と付随して周りのキャラが主人公を面倒見ているので戦艦内の人間関係の描写が濃密になる。
3.種持ちとはいえ、決して天才ではないので時には失敗する。その挫折を乗り越えるクライシスと成長ドラマが主軸になる。
4.才能はあるとはいえ、子供。故に戦争というものを多角的に見えない。戦争の現実を直視することにより、視聴者にも問い掛けることができる。
5.戦争で家族を失った遺族側の視点で前作への問題提起。それにより改めて遺伝子操作やそれに伴う差別問題を浮き彫りにできる。
6.5.に並んで国家と国民の有り方、理想と現実。そして、享受できる平穏と犠牲となる存在、為政者の義務、前線で戦う兵士の悲哀などを生々しく描写できる。
7.死んだと思っていた兄との対面、思想の違いによる対立を生む戦争の悲劇。そして、マユという妹から一人の人間としての成長を描ける。
――こんな感じで激動の時代に巻き込まれた一人の人間とそれを取り巻く環境の変動を主軸にしたドラマが描けて面白いんだよね。
シンよりさらに人間的に未熟な分、周りの人間の意見を聞く――色々な視点・意見を知る――ことにより、
現実はそう単純なものではないってことが演出できるわけで。
3通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 19:20:22 ID:???
>>1乙ですー
4通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 20:00:33 ID:???
もう16かよ、ウラヤマシス
5通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 20:35:58 ID:???
5getおぉぉ!
>>1乙!
6通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 22:06:48 ID:???
>>1が―― >>1こそが乙なんだ!
7通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 22:31:25 ID:???
ブルデュエルにヴェルデバスターか……。
8通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 22:38:07 ID:???
何気にファントムペイン、ガンダム系MSのオンパレードだなw
ストライクMK-2、カオス、ガイア、アビス、
ストライクノワール、ブルデュエル、ヴェルデバスター…
9通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 23:15:35 ID:???
本編では腕しか見つけられなかった…なマユですが、そうなると生き延びた彼女は
片腕を失っている方が望ましいのでしょうか?どちらの腕か覚えていないので、
クローニング技術でもげた片腕を再建した、という方がしっくり来る気がするのですが。
パイロットをやらせるなら、五体満足の方が有利でしょうし。
10通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 23:21:45 ID:???
>>9
パイロットじゃないけどIIIマユは片腕のまま
隻腕は義手だけど
あくまで本編は本編としてみたほうがいい

マユの役割をシンがしてる話もあれば爆発そのものがなかったことにする場合だってある
11通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 23:31:11 ID:???
>>9
とりあえず、本編では右腕だった。
クローンによるパーツ修復は、本編ではカケラも出てない技術。導入するならゼロから要設定作成。
機械式の義肢なら虎が本編で使っている。
12ほのぼのマユデス。女の戦い序章。:2006/05/26(金) 23:48:55 ID:???
「えっとね、まだ私とお姉ちゃんがマユくらいだったころかな・・・。
お姉ちゃんは学校でマンガ研究部がなかったから絵本部に入ってたの。
そうしたら絵本部の中でお姉ちゃんみたいな人たちと普通に
絵本を書いていた人達の間で抗争が起こっちゃって・・・・・。
その時の普通に絵本の人達のリーダーがシホ先輩なの。」
メイリンからの説明を受けて黙り込む一同。
あほらしい。非常にあほらしい。
「ハイネ、早くかえって○神飛翔○モンベイ○やりたい。」
『アスラン、早くかえって都○復興デモ○ベ○ンやりたい。』
文句を言う一人と一体。
「文句言うなよ、お前らルナマリアと仲良いだろ?」
ハイネがため息をつきながら二人に言う。
「えー、ルナより若本だよー。地球皇帝だよー。」
『ルナよりハヅ○たんだよー。でも男キャラだったらア○ラッドも結構好きなんだよなー。』
「二次元から帰って来い。」
アスランが二人に突っ込む。そうこうしているうちルナマリアとシホが戦っている部屋の前に来た。
「・・・・マユ、主人公だからお前が責任を取って開けなさい、人気もこいのぼりだ。」
「それを言うならうなぎのぼりだよ。つーか開けたくない、いけ、シンハロ!」
『えー・・・・・。』
マユの命令に不満げな顔をするシンハロ。
「じゃないとこのまま強制キャラボイス穴子の刑よ、しゃべる言葉は『てけりり』限定。」
『開けさせていただきます、お嬢様。』
マユの謎の罰の宣告に態度を一変させシンハロは扉のロックを解除しようとする。
すると、中から聞こえてくる二つの叫び声。
「「ヒロインは私だぁぁぁぁぁぁ!!」」

マユ、覚醒。




13ほのぼのマユデス。女の戦い序章。:2006/05/26(金) 23:50:09 ID:???


「さー、いよいよ酷いことになってまいりました。」
「ゲン・・・・・現実逃避・・だめ。」
遠い目をするシンの服をくいくいひっぱりながら話すステラ。
目の前ではシホ、ルナ、マユの殴り合い。三つ巴である。
ちなみにイザークは巻き込まれたらしく隅っこに倒れ付していた。
「・・・おい、ゼロ。人外三人組とグレイシアは何処へ行った。」
「残りの二人はともかくジョーは人外じゃないと思うけど。あの四人は話が長くなりそうだから逃げた。」
ハイネの言葉に冷静に答えるゼロ。
全員がどうやって止めるか思案していると、突然扉が開いた。
「おやおや、一体何事かね。」
「・・・・・・・(私を差し置いてヒロイン争奪戦・・・・・許せない。)」
そこにはデュランダル議長と、ラクスモードを解除したミーアがいた。
「ぎっ・・・・・議長?!それにミーア・・・・?!何で議長と一緒にっ・・?!」
冷や汗を流しながら必死にハイネはごまかす。
「あぁ、彼女が館内で迷子になっていたので案内したのだよ。」
うまくごまかす議長、そしてそのまま言葉を続ける。
「それより、どうだね。ヒロインを決めるならば力ずくではなく、皆に決めて貰えばどうかね。」
この議長の一言により、『第一回ザフトヒロイン争奪戦』が繰り広げられる事となった!

とぅびぃこんてにゅう。
14通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 23:55:42 ID:???
マユが優勝してるところが想像できないのは仕様ですか?
159:2006/05/27(土) 01:05:52 ID:???
>>10さん、>>11さん、有難うございます。デス種終わってから大分立っていたので、
すっかり色々な事を忘れていました……。
とりあえず予告編チックに書いてみる事にしました。駄目そうなら即時停止。


《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 0 “はじまりの、はじまり”

 彼女には、右腕が無かった。
 彼女には、右腕を失った記憶が無かった。
 彼女には、彼女が彼女たる証が無かった。
「同調の具合はどう? こっちの調査だと、オールグリーンだったけど」
 ベッドに横たわったマユ=アスカに医者が話しかけてくる。マユは金属のフレームが剥き出しになった義手を見た。
 関節部分に信号が伝わって、人差し指と中指がゆっくりと曲がる。医者に顔を向けて、笑みを浮かべた。
「大丈夫です、先生。きちんと、繋がってます」
「そう…良かった。マユちゃんはまだ育ち盛りだから、義手の調整も頻繁にしなくちゃいけないのよ。軍の定期健診だけじゃ、スパンが短すぎるから」
「はい…」
 今世界中に溢れているだろう、戦災孤児。前の大戦で、君は君の家族を全て失ってしまったらしい、とプラントの福祉課に告げられた時、
マユは曖昧に頷く事しか出来なかった。家族を失った時見ただろう光景、音、全てが記憶から欠落していたからだった。戦争の影響か戸籍を確認できず、マユ=アスカという名前も、その時持ち歩いていた品から出てきたものだ。
 記憶障害が、悲惨な事故を忘れたい為に脳が取った防衛行動だと説明されても、やはり頷く事しか彼女には出来なかった。
思い出せないものは思い出せないし、それほど悲惨な記憶ならば思い出せない方が良いと、そう考えるしかなかったのである。
 これから先も思い出す事はないだろうと、そう思っていた。
「本当のところを言えば、訓練に戻るのは明日からの方が良いと思うわ」
「有難うございます……でも、隊長が厳しい方なので」
「みたい、ね。ちょっとした有名人よ、あの人は」
 ベッドから起き上がって空色の病人服を脱ぎ、傍らに掛けてあった赤の制服を手早く身に着けていく。
最後に訓練兵用のIDカードを胸元で留めた。選り抜きのエリートとは認められたものの、MSの搭乗回数はまだ10を越えていない。
今日は実弾を使用する本格的な演習を控えていた。
「では…失礼いたします、先生。御世話になりました」
 どこかあどけなさを残した笑みを浮かべ、マユは敬礼してみせる。
『Mayu Asuka:Jule Unit』と書かれたカードが室内灯を反射した。
16通常の名無しさんの3倍:2006/05/27(土) 19:14:42 ID:???
>>15
新人さん投下乙です。

ジュール隊なマユですか。本編も頑張って下さいノシ
17通常の名無しさんの3倍:2006/05/27(土) 19:48:57 ID:???
>>15
期待。


>>すっかり色々な事を忘れていました
とりあえず、遺伝子関連には注意したほうがいい。
189:2006/05/27(土) 21:32:35 ID:???
有難うございます。もう一つ前振りを…

Episode 0 “まどろみ”

「大切な人が、いたんだ」
「えっ?」
 シミュレーターの中で、シン=アスカはそう独りごちた。横合いでモニターを覗き込んでいたルナマリアが、呆けた声で聞き返す。
「いたんだよ」
「な、なに?いきなり」
 何処か遠くを見つつ、シンは無造作に操縦桿を動かす。人差し指がトリガーを押し込み、画面内の人型が弾け飛んだ。
「大切な女の子が、昔いたんだ。…ああ、いや、小さい男…弟だったかな?」
「……昔、って…シンが、オーブにいたころ?」
「そう」
 あっさりとした返答を聞き、ルナマリアは言葉に詰まる。シンがあの国でどんな経験をしたのかという事は、
当たり障りのない範囲で聞いていたからだ。
「……そ、その人って、あの…何時も持ってる携帯電話と関係があるの?」
「さあな」
「ちょっと……あたし、真面目に聞いてるんだけど?」
 半眼になったルナマリアを面倒くさそうに見返し、シンは手を振った。
「仕方ないだろ。それ以外は覚えてないんだ。大体これだって…」
 太腿のポケットから取り出したのは、半壊した携帯電話。カバーを開けて、スイッチを入れる。
 耳障りな電子音が上がった。
「こんな音声データじゃ、何も分かるもんか」
『はい、…ユでーす。でもごめ…さい、今……』
 金属を擦り合わせるようなノイズ交じりに聞こえるか細いメッセージ。
 画面も真ん中にヒビが入り、捲れ上がってしまっている。
「復元、できないのかな」
「ハードが此処まで壊れてたら無理だって。それに」
 暗転したモニターを見つめていたシンが、ゆっくりと目を閉じる。
「『大切な人』がどうなったのか、大体想像がつく。もう、良いさ」
「シン、ルナマリア、時間だ。移動しよう」
「あ、レイ。うん…解った」
「直ぐに追いつく。先に行っててくれ」
 シンの座っていたシミュレーターの向かいに、金髪の男が立っていた。
 彼に促され、何か言いたげだったルナマリアがシンから離れていく。そして、
一人残ったシンはゆっくりと天井を見上げた。
「大切な人の顔も、名前も、忘れてしまったけれども」
 脳裏に浮かぶのは青空。そして、翼を広げたモビルスーツ。
「忘れてない物も、ある……んっ?」
 鈍い痛みを覚えたシンは、不思議そうに自分の両手を見下ろす。
 気付かない内に握り締めていた両手の平に、赤黒い爪跡が刻まれていた。
19通常の名無しさんの3倍:2006/05/27(土) 21:44:22 ID:???
単発設定小話 「負け犬 -後編-」

〜営倉の床をじっと見つめ続けるマユ〜
マユ「・・・さっきのはちょっと言い過ぎね。・・・アスランさんだって・・・命かけてたんだもの。ここから出たら謝らなくちゃ」
〜営倉の扉が開き、明かりが差し込む〜
タリア「・・・・・・マユ・アスカ。捕虜脱走幇助容疑の件について一切の不問と処す。・・・・・・さぁ立ちなさい、マユ」
マユ「艦長・・・・・・私は・・・」
〜タリアが差し出した手をつかみ立ち上がるマユ〜
タリア「評議会の決定には従うことね・・・・・・。でも、いいこと?次はないわよ?」
マユ「・・・・・・はい。・・・申し訳ありませんでした・・・・・・」
タリア「あーだめだめ。謝ってはだめよ。・・・謝る前に期待されたことで答えなさい」
マユ「・・・っは。了解しました」
〜タリアに敬礼するマユ〜
タリア「よろしい。・・・っじゃ、外の空気でも吸ってきなさい」
マユ「はい!」
〜外にでるマユ〜
レイ「・・・・・・落ち着いたか?マユ」
マユ「レイ兄ちゃん・・・・・・ありがと・・・。やっとお兄ちゃんと話ができたわ」
レイ「・・・レイでいい。・・・会えたならいい。じゃあな」
〜立ち去るレイ。ミネルバの艦橋へ上がるマユ〜
マユ「・・・・・・」
アスラン「・・・マユ」
マユ「・・・・・・アスランさん。・・・昨晩は・・・ひどい事を言っちゃってごめんなさい・・・」
アスラン「・・・いや、もういい。俺も自分のことを棚に上げて偉そうなことを言ってしまった」
マユ「・・・・・・じゃあ、握手してください」
アスラン「握手?」
マユ「仲直りのしるしです。さ、アスランさんも手をだして!」
〜にこりと微笑みアスランに手を差し出すマユ〜
アスラン「はは・・・そうだな。仲直りのしるしだ」
〜握手を交わすマユとアスラン〜
〜しばらく水平線を眺めるマユとアスラン〜
アスラン「それで、お兄さんとは話できたのか?」
マユ「・・・兄妹の会話とは言い難いですが」
アスラン「そうか・・・」
マユ「兄は・・・記憶をなくしているようです。私のことも父や母のことも忘れてしまっているよう・・・」
アスラン「・・・つらいな。生きていたかと思ったら相手は記憶をなくしているなんてな・・・・・・」
マユ「でもわたしもあきらめません。兄の記憶はわたしが取り戻して見せます」
アスラン「ああ。それがいいだろう」
マユ「ええ・・・」

20通常の名無しさんの3倍:2006/05/27(土) 23:30:35 ID:???
age
21通常の名無しさんの3倍:2006/05/28(日) 01:15:13 ID:???
単発さん乙

おー、新作クルー!
何だか面白そうだ。期待してます。
22通常の名無しさんの3倍:2006/05/28(日) 02:43:31 ID:???
単発設定小話 「デストロイ」明けない夜編@

〜吹雪く基地〜
ネオ「これがそうか・・・・・・」
研究員A「ええ、シン少尉のおかげで完成できました。少尉はこちらには?」
ネオ「あいつはビクトリアにいる。宇宙に上がるんだ」
研究員A「・・・そうですか」
ネオ「なんだ?残念そうな顔して?」
研究員A「いえ。少尉であればこのMSの性能を全て扱いきれるように思えたものですから・・・」
ネオ「ふん、そんなことか・・・。それなら心配いらないぜ。ステラは優秀なパイロットだよ。ステラもこいつは十分に扱えるはずだ」
〜ネオは不機嫌な顔になり、ぼそりとつぶやく〜
研究員A「・・・すいません。出すぎた発言でした」
ネオ「いや、いいんだ。事実だからな。作戦開始はいつからだ?」
研究員A「明日6時です」
ネオ「わかった。こいつのサポートは俺とスティングでやる。他の部隊にはバックアップを指示しといてくれ」
研究員A「了解いたしました・・・」
〜明日、デストロイはベルリンを目指し、通り道の町々を破壊していく〜

〜アークエンジェル〜
キラ「マリューさん!!テレビ、見てますか!?」
マリュー「どうしたのキラくん?」
キラ「テレビ、見てください!連合が・・・都市を破壊しながら侵攻していると」
マリュー「え!?」
〜テレビをつけるマリュー〜
マリュー「これは・・・。ひどい、ただ破壊をしているだけ?・・・・・・これは、戦争なんてものではない・・・・・・」
キラ「マリューさん。行きましょう!・・・あれをほっておくことはできません!」
マリュー「カガリさんとアマギさんを呼んでくれる?緊急ミーティングを行います」
キラ「わかりました!」
〜アークエンジェルはベルリンを目指し移動してゆく〜

〜ミネルバ〜
タリア「なんですって!!連合が都市を破壊しながら侵攻しているですって!?」
メイリン「艦長!緊急通信がはいってます」
タリア「こちらへまわして!・・・・・・まったく、戦力不足だというのに・・・・・・」
アーサー「艦長、本部からは?」
タリア「出動命令よ!アーサー!」
〜各自室にて〜
マユ「・・・・・・連合が?・・・お兄ちゃん・・・・・・」
アスラン「な!?なんだあのMS・・・いやMAか?」
レイ「・・・・・・」
ルナマリア「なによ、あれ?あんな巨大なMS、どこにしまってあったのよ!?もうっ!」

〜ガーティ・ルー〜
リー「少尉。今から言っても勝敗がついたあとの到着となろう。大佐と軍曹たちを頼むぞ」
シン「ああ。必ずつれて帰ってくるさ」
〜ガーティ・ルーから発進するムラサメ〜

23通常の名無しさんの3倍:2006/05/28(日) 21:26:07 ID:???
>9氏
新作とりあえず乙。文章の形は結構好き。文頭スペースとかもちゃんと入ってるし。

で、新しい人が来るたびに同じこと言ってるんでいい加減押し付けがましいと思われる
危険もちらほらしてきた自分だが…懲りずに同じアドバイス(?)を。

『横書きの文章の場合、横軸での視線の移動が少ないとスムーズに読めるので
 一行が長くなるようであれば30〜40文字程度で改行を突っ込む事をお勧めする』

これ以外に特に言うべき点は見当たらなかったし、あくまでこれは俺個人の
主観に基づく「勝手な2ch小説マニュアル」の一部なので
従うかどうかは完全な自由意志であることを明記しておく也。
俺は「続き書いてください」に一票。
24通常の名無しさんの3倍:2006/05/28(日) 21:53:12 ID:???
何でそんなに偉そうなんだよ
25通常の名無しさんの3倍:2006/05/28(日) 21:58:32 ID:???
押し付けがましいが別に偉そうには見えん

というか、本格的な小説の書き方を押し付けてないだけ100倍マシ
269:2006/05/28(日) 22:13:37 ID:???
>>23
 有難うございます。ワードで書いた物を貼り付けているので、実際に投稿すると
おかしくなる部分が多数あります。出来るだけ直そうとは思っているのですが。
 改行ですが、なるべくそれでやってみます。

 本格的な小説の書き方は解らないですが、とりあえず読むに耐える物を
書き続けていきたいと思っています。
279:2006/05/28(日) 23:29:40 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 1 “日常”

「やああっ!」
 マユの乗ったザクウォーリアがビームトマホークを振りかざす。識別灯を光らせる十字の
ターゲットを熱の刃が叩き切り、『Destroyed』の表示が浮かび上がった。
「次!」
 トマホークを盾に納めた機体が、加速した勢いのまま向きを変える。
 突撃銃を両手に構えさせ、モノアイが輝いた。その先には低速で移動する第2のターゲット。
 漆黒の宇宙に緑の光条が煌いた。3連射の内1発がターゲットに当たって破壊する。
 それを確認した後、マユは戦艦の外壁で作った障害物に機体を滑り込ませた。
直後、通信が入る。2方向から回線が繋がれ、画面が分割された。
『もっと距離を詰めてからトマホークを出せ! あれでは良い的だぞ!』
「はい、隊長!」
『マユちゃん、偏差射撃を使うんだ。FCSの表示をよーく見てみろ』
「はい、エルスマンさん!」
『ディアッカって呼んで良いぜ? 可愛い女の子は何人でも歓迎さ』
『戯れるなディアッカ!墜とすぞ!?』
『んなピリピリすんなっての、イザーク』
「あ、あの、お2人とも…?」
 自分の教官である2人を交互に見るマユ。上手く仲裁しようとするも、何時も割って入れない。
『俺に意見するのか貴様! 自分の立場を…』
『だからそうやって直ぐに熱くなるなっての。これで白服とはねえ』
『貴ッ…!』
「あの……あ、ああ……」
 おろおろするマユの目の前で始まった舌戦。自分への本格的な指導は当分先だろう。
「……あー、あ」
 マユは音声通信をミュートに切り替え、溜息交じりに演習記録を読み始めるのだった。
28通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 16:20:10 ID:???
新人さんか
ここは賑やかでいいねえ
29通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 17:25:25 ID:???
投下がなきゃ過疎るとこまで過疎ってるよ〜
30通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 19:15:13 ID:???
>>27
投下乙です!
なるほど、イザーク隊所属のマユちゃんですか…斬新な設定ですね。
他作品とは、取り囲む人間が異なる環境の中、彼女がどのように成長していくのかが楽しみです。
お互い知らないままに、同じ軍に所属しているシンとの絡みもどうなってくのか想像付きませんね…続きが気になりますw
31通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 19:55:34 ID:???
できれば、単発さんやほのぼのみたいなタイプで無い限り
投下の際はある程度の量をまとめて落としていってもらいたい。
32通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 20:27:39 ID:???
一週間〜一ヶ月余裕で投下期間ができますが?
339:2006/05/29(月) 20:30:23 ID:???
>30
 読んで頂いて有難うございます。マユは赤服ですが、まだ15歳に満たないという
設定で、現在は訓練兵です。イザークとディアッカから指導を受けています。
 2人が指導しているのはマユだけなので、さながら家庭教師状態。
 特徴的すぎる2人の先生に挟まれて、日々訓練に励んでいます(笑)。

>>31
 了解しました。が、ある程度の量というのは具体的にはどれほどでしょうか?
指標となる字数を出して頂けると、此方も対応しやすいです。
34通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 21:32:08 ID:???
単発設定小話 「ウィンダム」明けない夜編A

〜デストロイと交戦中のアークエンジェルとフリーダム〜
キラ「・・・このMS・・・大きいのになんて早い動きを!・・・てっぇあー!!」
ステラ「・・・・・・あのMS・・・うるさい」
キラ「・・・え!?」
〜デストロイから腕が切り離される〜
ステラ「・・・ふふ・・・あんたなんか・・・そいつで十分よ。ネオは・・・?」
ネオ「ステラ!細かいやつは俺とスティングで殺る!お前はもっと大きいやつを狙えっ!!」
スティング「ハハハハー!一方的な破壊ってゆーのがこんなにも楽しいとはなっ!!ステラ!もっと破壊しろよっ!!」
ステラ「・・・・・・うん、わかった。じゃぁ・・・・・・後方の白い船を狙う。・・・・・・同時にネテルフェムも撃つからあったちゃだめよ?」
ネオ「了解だっ!!」
キラ「っく!なに、あの腕?五本の指先からビームを撃ってくるの!?速いけど・・・っつ・・・廻旋性能はこっちのほうがっ!!」
〜シュトゥルムファウストはフリーダムとムラサメを狙い、追いかけ回す〜
ステラ「ふふ・・・ふふふ・・・ははははは。そんなところにいたって・・・・・・見えているのに・・・。消えなさい・・・」
〜アウフプラールをはるか後方のアークエンジェルに照準を合わせろと同時にネフェルテムの各門にも適当に照準を合わせるステラ〜
チャンドラ「!!巨大MSの砲門がこっちに照準合わせてます!!艦長!」
マリュー「なっ!?あんなところからこっちを狙えるっていうの?」
ミリアリア「熱源確認!マリューさん!」
マリュー「斜線軸から離れなさい!回避ー!」
ノイマン「やってますがね・・・艦長!対ショック!!」
マリュー「総員!対ショック!怪我しないようにしっかりつかまってなさい!!」
〜アウフプラールはアークエンジェルをかすめ、ネフェルテムは市街をさらに破壊する〜
マリュー「っつ・・・現状報告!」
ミリアリア「・・・各部、報告してください」
ノイマン「くそっ!掠めたか!?」
ミリアリア「報告!各部死亡および重傷者ありません!軽傷者若干名」
マリュー「そう・・・なによりだわ。軽傷者には応急処置を!・・・敵は!?」
チャンドラ「侵攻速度に変化なし!」
マリュー「MS隊は?」
ミリアリア「フリーダム、ルージュおよびムラサメ隊とも敵と交戦中です!」
〜飛び回り、間をうかがうフリーダム〜
キラ「はっ!・・・・・・きた!マルチロック・・・これ以上はっ!!」
〜デストロイに向けてフルバーストするフリーダム〜
ステラ「・・・・・・なに?あのしょぼいの・・・そんなのあたるわけないのに・・・・・・」
〜陽電子リフレクターを展開させフリーダムのフルバーストを防ぐデストロイ〜

〜フリーダムのフルバーストの間に接近するウィンダム〜
ネオ「ったく・・・お前さんの相手はこっちだぜ!」
キラ「っが・・・!?後ろ?・・・紫のウィンダム?・・・指揮官機か!?」
ネオ「まだまだ遅れをとった覚えはないぜ!?ピンクのお姫様の騎士様よっ!!」
キラ「・・・・・・えっ?この・・・感覚・・・・・・そんな、はずは・・・・・・」
ネオ「俺は、シンよりもまだ強いぜっ!!せいっ!!」
〜ビームサーベルを打ち合わせるウィンダムとフリーダム〜

35ほのぼのマユデス。女の戦い第一章。:2006/05/29(月) 22:08:23 ID:???
『さぁやって来たぜ野郎どもぉぉぉ!美少女コンテストの始まりだぁぁ!』
高らかに宣言される声。飢えた野郎どもの咆哮。
『司会は俺!ディアッカ・エルスマンだ!グゥレイト!!』
はでな金ぴかスーツをきてマイク片手に絶叫するディアッカ。
「えー、そして実況は私ハイネ隊隊長ハイネ・ヴェステンフルス。解説はネオ・ロアノークさんです。」
ステージの横にある司会席にすわっているネオとハイネ。
一体ここはどこなのだろうかと言うと、ムセイオンの中にあるコンサートホールである。
ハイネがフェイス権限を使いその他色々な汚い手も使って館内に作り上げられた物である。
別に艦長もそういうのはどうでも良い人なんで黙認している。アーサーだしね。
『さーて、それでは出場さをご紹介しよう!
エントリーナンバー1!!ジュール隊にさく一輪の花、シホ・ハーネンフース!!』
わぁぁぁぁぁっと湧き上がる会場。
その片隅では・・・・・・。
 「あーもー早く終わってくれよ!!デモンベイ○が俺を呼んでんだ!!」
 「何よー、私はなんででちゃ行けないのよ・・・。差別よ・・・・。」
アキラはうがーっと叫び、グレイシアはぶちぶちと文句を言う。
『エントリーナンバー2!!可憐に燃え上がる赤、ルナマリア・ホーク!!』
 「メイリンは出ないの?もったいないと思うんだけど。」
アウルげスティングに話すと、スティングはため息をつきながら言う。
 「あの面子の中に混じって生きて帰れる自信がないらしい・・ま、正しい判断だと思うがな。」
『エントリーナンバー3!!連合から唯一参戦!!ステラ・ルーシェ!!』
 「ステラ出るの?!」
 「賞品のでっかい猫のぬいぐるみが目当てじゃないのー?」
驚くカルマにキースがいつもの調子で答える。
『エントリーナンバー4!いうまでもなくおっぱ・・・・・・・・・失礼しました、その長刀ひっこめてください。
ラクスさまのそっくりさん、でも私本物には負けないから!!ミーア・キャンベル!!』
 「大丈夫なんですか議長・・・・・。」
 「大丈夫だよ、ミーアは役者なんだ。というか彼女の元の性格とラクスの性格じゃ違いすぎるだろ。」
 「確かにラクスは風呂上りのビールなんて飲みませんね。カキピーを同僚から取り上げたりしませんね。」
余裕、というか油断だらけの議長に明後日の方向を見るアスラン。
36ほのぼのマユデス。女の戦い第一章。:2006/05/29(月) 22:09:34 ID:???
『エントリーナンバー4!最年少ザフトレッド!マユ・アスカ!!』

 「マユー!!がんばれー!!ステラもがんばれー!!」
きゃーっと騒ぐシン・アスカ。その隣のシンハロは何故か無表情だ。
 「・・・お前、どうしたんだよ。」
反応はない。すると、アキラがすたすたと歩いてきた。片手には小型モニター。
シンハロの長髪の中に混じっているプラグをがさごそと探し、それをモニターに繋ぐと・・・・・・。
 『アイオーン!!』
モニターに画像が映る。なにやらロボットもののゲームなのか黒いロボットが赤いロボットと戦っている。
 「オマエェェェェ!!フラゲしてあらかじめ自分にダウンロードしてやがったな!!」
アキラがガクガクと揺さぶるとシンハロの目に光が宿り、ニヤリと勝ち誇った表情をする。
 『いやぁ、ダディ最高だったよ。』
 「なんだと・・・・っ!!」
シンハロのセリフにアキラが本気でキレそうになる。
 『まさか西博士がなぁ・・・・・。』
 「お前マユの子守ロボットだろ!!ちゃんと見守れよ!!」
ついでにシンもキレそうになる。
 『ふ・・・・、何を言うかと思えば。愚問だなぁ、雑種ども!!』
 「おーい、ボイスがジュール隊長とおんなじになってるぞー。」

 『考えてみろ・・・・・・。マユが、負けるわけないじゃないか。』

満面の笑みでいうシンハロ。なんかこのまま朝日にとけていきそうな勢いである。
 「って・・・・!単なるエロゲーしたいが故の良いわけじゃねえか!このロリコンロボット!!」
 『シスコンサイボーグにいわれたくないわ!!それにこれはエロゲーじゃなくて15歳以上推奨だ!!』
ぎゃーぎゃー隅っこで取っ組み合いを始めるダブルシン。
 「後でマユちゃんに報告しとこう・・・・。」
アキラはぽつりと自分を裏切った親友への復讐を誓うのであった。
37通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 22:28:20 ID:???
>>33
まとめサイトを覗いて、他の長編職人さんのペースを参考にされたらいかがでしょう?
38通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 23:18:59 ID:???
>>33
ある程度話の区切りが付けば良いかと。
単発さんあたりは例外としても、3レス〜20以上までありますからね。
とりあえず少なくても3~5ぐらいを目安にしてみてはいかがでしょうか。
39通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 00:01:48 ID:???
久々にyoutubeで種死を見てみた。
しばらく見て思った。

「あれ?ハイネ隊は?」

そうかこいつら本編いないんだよなあorz溶け込みすぎだよ
40通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 08:37:54 ID:???
>シスコンサイボーグ
何気にハッとした
そうだよなー、体の半分近く機械化してたら最早サイボーグだよな
41通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 12:29:57 ID:???
隻腕マユはまだ腕と脚が一本ずつだからまだ大丈夫かな
42通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 13:09:23 ID:???
ほのぼのさん乙。
>いうまでもなくおっぱ・・・・・・・・・
セクハラwww
とりあえずステラに清き一票を
439:2006/05/30(火) 13:29:56 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 2-1“蠢動”

 アーモリーワン、最機密区画。正面ゲートに一台の軍用ジープが入ってくる。
「止まって。IDを提示して下さい。荷物の簡易チェックも行います」
「ほい。…此処に来るまで、3回くらい同じ事言われたよ。厳重なのは良い事だけどな」
運転していた草色の髪の男が通行証を手渡した。別の兵士が通行リストをチェックする。
別の兵士が同乗者と荷物を確認した。空色の髪の少年が屈託無く笑いかけ、何処か
ぼうっとした金髪の少女が軽く手を振る。3人とも整備兵の制服を着ており、一様に若い。
しかし兵士は気にした風も無かった。ザフトでは至極当たり前の現象だからである。
最後に、2つのスーツケースにスキャナーを近づけ、危険物の反応をチェックした。
「……技術スタッフの増員および物資の搬入、ですね。確認済です。どうぞ」
「ご苦労さん」
 分厚い鉄扉が左右に開いて、トラックが中へと入っていく。無人の通路を抜けて行く。
「偽造カードばれなかったね、スティング。意外とチェック甘いのかな?」
「3ヶ月かけてセキュリティを調べたからな。…それよりアウル、ステラ」
 スティングと呼ばれた男が、後ろの2人を振り返る。
「作戦、解ってるよな」
「オッケーオッケー、新型機の強奪だろ?」
「モビルスーツ、泥棒…?」
「ちがあぁう!」
 2人の言葉に絶叫するスティングだったが、直ぐに声を潜めた。
「頂くのはあくまでデータだけだ。何でお前らはいちいちそう……」
「だってさぁ、地味すぎね? 『非常用ツール』も使ってみたいし」
「ザフトの新型はダガーと違うぞ。機体のクセ掴む前に袋叩きにされるのがオチだ!」
「袋…袋に、詰められる、の?」
「そうかなあ? 結構いけると思うんだけどなあ」
「頼むぜ…ホント」
 痛み出した鳩尾の辺りを押さえつつ、スティングはハンドルを切る。
 長い通路を抜け、格納庫が姿を現した。3機のモビルスーツが、ライトに照らし出される。
 V字型のアンテナにツインアイという特徴的なフォルムを持つそれらを横目で確かめ、
スティングの声音が緊張を纏う。
「セカンドステージの…Xナンバー、か」
 パーキングエリアにジープを止め、ケースを持ったアウルとスティングが先ず降りた。
 ステラが後に続く。
449:2006/05/30(火) 13:31:58 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 2-2“蠢動”

「ん?交代……な、ぁっ…!!」
 3人は2秒未満で事態を『収拾』した。メンテ用の小ブースに入ったスティングが
持っていたケースを監視カメラの下に置く。その脇をステラが抜け、硬質ゴムのナックルで
整備兵の1人のこめかみを撃ち抜いた。そして、慌てて警報装置の元へ駆け寄ろうとした
2人目の首筋に小型の注射器が突き刺さる。麻酔銃を構えたアウルが短く口笛を吹いた。
「く…ぅ……む」
 パネルに這いずる兵士の口をスティングが塞ぎ、手をやんわりと押さえ、眠らせる。
 その状態で5秒間待つ。何も起こらないと解れば、スティングが大きく息を吐く。
「よし、ECMが効いてる。……始めるぞ」
 ナックルと麻酔銃を入れていたケースからケーブルを引っ張り出し、端末に繋いだ。
「ね、この2人、殺さないの?」
「バイタルサインを検知する警備用チップってのがあってな…ま、念の為だ」
 ケースからせり出したキーを叩きながら、端末の表示に目をやるスティング。
「それにデータの吸出しも3分掛からないし、効率良くいこうって話さ」
「ふーん、そう……」
 若干不満顔で頷くアウル。各所のLEDを光らせるケースを突付くステラ。
「よし、終わっ…」
 スティングがケーブルを抜こうとした瞬間、ブースが赤い光に包まれる。
「た…あぁ!?」
 けたたましいアラーム。端末画面を埋め尽くす『Intruders ALERT!!』の文字。
「うるさ、い…」
「警報! ちょっ…スティング、ミスった!?」
「俺じゃねえ!い…いや、俺だけど! マニュアル通りにやったぞ!?」
『セクション21! 其方で何があった! 応答しろ! 応……』
 音声をカットし、スティングは赤いキーを押し込む。重厚な響きと共に格納庫の隔壁が
あちこちで降り、この区画をシャットアウトした。
「セキュリティが改良されてたのか! 畜生…!」
「もう! 最初っから皆殺しで良かったじゃん!」
 整備兵達に向けて、アウルがスモークグレネードをまとめて投げつけた。
 元々1発ずつ使うように設計されたそれは、あっという間に格納庫を白く染める。
「スティング……」
「持ってきた武器、これで終わりだよ! どうするの、スティング!」
 2人に名を呼ばれ、スティング=オークレーは天を仰ぎ見た。
「隔壁はもって2分、スモークはもっと早く晴れる……どうすりゃ……」
459:2006/05/30(火) 13:36:22 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 2-3“蠢動”

コクピットの中で、スティングは『非常用ツール』を渡された時の言葉を思い出していた。

 緊急脱出用と言ったが、これを使う事になった時点で君らの命運は尽きたも同然。
恐らく生きては帰れまいが、死に際に足掻けないのも辛かろうと思ってね。

「死に際の……足掻き、か」
 溜息をついた時、通信画面にアウルとステラの顔が表示された。
『大丈夫、スティング……ステラが、ついてるから』
『落ち込むなってスティング。ミスはリカバーすれば良いじゃない』
「…お前は楽しそうだなあ? アウル」
『そ、そんなわけないだろ。残念だよ。作戦、半分は失敗だしさ』
「チッ」
 喜色満面のアウルに苦い表情を浮かべ、スティングは起動キースロットに填まった
卵形の機械を見遣る。
 非常用ツール。それは機動兵器のOSにハッキングを掛け、強制的に書き換える代物だった。
有体に言えば、初乗りの機体を乗っ取ってある程度意のままに操縦できるのである。
 しかし作戦中におけるこのようなスタンドプレーが成功する事など稀だ。
スティング達の運命はこの時点でほぼ決まったも同然だったのである。
「ZGMF-X24……カオス、か。この肩のは……機動兵装、ポッド……?」
『でさあ、スティング。もう大暴れして良いんだよね?』
「駄目だ」
『えー!』
「軍事施設のど真ん中でドンパチドンパチやったらどうなるか解るだろ!」
『じゃ、何! ビデオで見たアイツみたいにコクピット外せとか言うの!?』
「足止めに徹する。戦力だけ奪えば、俺達に有利な障害物になるしな」
『そういうのつまんないよ! 元々スティングの所為でこうなったのに…!』
「ああ、失敗したのは俺だ。だからミスはリカバーしなくちゃならない、な?」
 澄まし顔で頷き、頬を膨らませるアウルに薄く笑って見せた。
『……解ったよ。でも、貸しだからね』
「良いぜ。…っと、来た来た」
 メインモニターに『System Integration Completed』というグリーンの文字が浮かぶ。
「こっちは準備できた。アウル!ステラ! どうだ?」
『行けるよ!』
『ステラも……!』
 3機のツインアイが晴れ始めたスモークの中で輝き、機体がゆっくりと起き上がっていく。
PS装甲が起動し、3機の色をそれぞれ緑、黒、青に染めた。
「よし、やるぞ……!!」
469:2006/05/30(火) 13:38:23 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 2-4“蠢動”

 正面シャッター前でライフルを構えていたゲイツRは、その姿勢のままMAガイアに
両脚を切断される。浮き上がった機体の腕が虚しく宙を掻き、地面に叩きつけられた。
スラスターを噴かして僅かに浮き上がったアビスが両肩のアーマーを開き、ビーム砲を斉射。
斜め下に向けて放たれた熱衝撃破はアスファルトを砕き、守備隊に襲い掛かる。
 焼けた破片をマトモに浴びて視界を殺された数機をMAカオスが飛び越えた。
両側の機動ポッドを射出し、アスファルトの被害から逃れた1機の両腕を狙い撃ち、破壊する。
その肩を踏み付けて押し倒し、ポッドを再装着。その隣にMAガイアと、アビスが並ぶ。
「……どうだ、やれそうか?」
『なんか…動かす度に引っ張られる感じ……なんか、変』
『この機体さぁ、パワーだけはあるんだけど追従性がイマイチ……』
「前途多難だな……良いか、さっきも言ったが戦闘は最小限だ。一番近くの整備用
エアロックから宇宙に出る!」
『あのさ…思うんだけど……もうオレ達、見捨てられてるんじゃない?』
「……その時はガーティ・ルーを墜としてザフトと取引だ! 被害者面の演技を忘れるな!」
『ボクら、無理矢理戦わされてたんですぅ!って? 大丈夫かなあ……』
「ともかく、今は合流だけ考えて……!」
 3機が散開する。直後、大出力のビームが立っていた地面を撃ち砕いた。
「急ぐぞ!」
『ち、ちょっと待って!足遅いんだよこの機体! っああ、もぉ!!』
 後方に向けて牽制射を撃ち込んだ後、アビスはスラスターを全開して2機に続いた。

 ジュール隊母艦ボルテールのブリッジに、イザークの声が響き渡る。
「なにいぃ!? 何故そんな容易に……チッ…解った。急行する!」
 受話器を置いたイザークが、艦長と視線を交錯させる。軽く頷き、指示を飛ばす艦長。
「回頭! アーモリーワンに向けて最大戦速!」
「あ、あの…どうしたんですか、隊長。何か……あったんですか?」
 自分の演習記録ファイルを胸元に抱えたマユが、おずおずと上目遣いにイザークを見る。
訊ねられたイザークはしばし黙考したが、やがて静かに告げた。
「アーモリーワンが謎の部隊の襲撃を受け、新型機が強奪されたそうだ」
「…!?」
「パイロットスーツを着用し、MSにて待機しろ。良いな」
「は、い……」
 反射的に敬礼しつつ、イザークに言われた言葉の意味を頭の中で反芻する。
背筋を震えが走り、ファイルが床に落ちて広がった。

To be continued…
479:2006/05/30(火) 13:55:47 ID:???
<修正箇所>orz

2−1
「セカンドステージの…Xナンバー、か」→「セカンドステージ…か」
2−2
ケースを突付くステラ…→スーツケース型ECMを突付くステラ

 おかしいなあ、見直したはずなんですが……。
とりあえずある程度の量をという事で、まとめて落とさせて頂きました。

<次回>
Episode3"発露"
「マユ=アスカ、ザク、発進します!」
48通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 17:47:10 ID:???
おお、なんかSF読んでるって感じだ。
バイタルサインに反応する警報とか。
49通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 18:32:51 ID:???
うおー良い感じだ。映像が頭の中で再生される感じ。
まだ始まったばかりだけど、面白い。
これからにとても期待。
50通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 18:58:55 ID:???
投下時間がバラバラで被らないGJ
51通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 21:30:05 ID:???
>「作戦、解ってるよな」
>「オッケーオッケー、新型機の強奪だろ?」
>「モビルスーツ、泥棒…?」
>「ちがあぁう!」

なんか好きだなこういうのw
9氏GJ!
52通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 22:44:35 ID:???
ただの潜入→強奪よりなんぼもwktk
迂闊で残念なファントムペインワロス
53通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 23:16:33 ID:???
いいねぇいいねぇ! 期待できる新作キタヨー!!w
とにかく描写と、三人の掛け合いが自然かつ生き生きとしてるところがナイス。
すっきりとした文章でここまで表現できるのが正直羨ましい。 続き期待してるよー!!
54通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 23:17:21 ID:???
おお、本格派新人さんだ。
>>9
どの神とも違う独特の味。まじで面白い。超期待!
55通常の名無しさんの3倍:2006/05/31(水) 13:21:10 ID:???
何となくスパイアクション風味。ルパンとか007とかみたい。
かっこよくてGJでした。
56ほのぼのマユデス。女の戦い第U章。:2006/05/31(水) 21:38:01 ID:???
『えー、それでは第一種目は障害物競走だ!!館内に置かれたトラップなどを避けてゴールへたどり着け!!』
大きなモニターに映る並んだヒロインズの映像。
もちろん、全員体操服。そしてブルマ。
「・・・・つーかルナマリア、ニーソにブルマって・・・・・反則ですね。」
ハイネが何気ににやけ気味な顔でいう。たぶんこの顔でファンが三割は減る。
「とりあえず、全員ナイスブルマ。」
ぐっっと親指を立てるネオ。駄目おっさん二人組である。
一方観客席では・・・・。
『やべぇ!!アヴァロンだ!!固有結界展開?!ブルマインヘブン?!』
ひゃっほーいとはしゃぐシンハロ。
「マユの学校は体操服短パンだったからなぁ・・・・ふはははははは!!」
狂ったように笑うシン。よそ様のゲンやシンに謝って欲しい。
「・・・・アキラ、お前はブルマに興味はないのか?」
ダブルシンの恐慌に冷や汗を流しながら恐る恐るジョーがアキラに聞く。
「ん・・・、あぁ。俺ブルマとか興味ないから。むしろそーゆーのより家庭科の時間のエプロン萌え。」
いけない、自分は異世界に踏み込んでしまった。ジョーは冷や汗をだらだら流す。

 「俺さぁ・・メイドとかそーゆーのよりやっぱ着物なんだよ。メイドより女中さん?
 でもメイドはロングスカートなら守備範囲内。第一シンハロとは好みが反対なんだよねー。
 あいつはロリ好きで俺は年上の巨乳が好きで。
 あ、結局萌えキャラと好きなキャラは反対だから誤解すんなよ。
俺健気で強い女の子が好きだから。
まぁ、要するにライ○ーさんはエロカワイイってことですよ。でさ・・・・・・。」

いけない、いけない、いけない、これ以上耳にしたらきっとおかしくなる。
なんかきっと洗脳とかこんな感じなんだろう。頭がずきずきする。
あれ・・・なんだろう・・ながれぼしかな・・・あははははは・・・・・・。
「それでさやっぱり燃え・・・ガッ?!」
突然倒れるアキラが倒れる。その後ろには金属バットを持ったレイが。
「大丈夫か?ジョー。」
「え・・・・あ・・・・・・。」

ガゴンッ!!

「いだっ!!って・・・レイ・・俺、どうしたんだ?」
「気にするな、俺は気にしない。」
片手に釘バット、片手に頭部から血をだして気絶するアキラ。
ジョーは気にしない、気にしてはいけないことにした。
57ほのぼのマユデス。女の戦い第U章。:2006/05/31(水) 21:41:13 ID:???
『それでは!よーいスタート!!』
いっせいに廊下を駆け抜ける女子軍。
バックに炎。それぞれに竜とか虎とかそんな感じのものが見える。
やはりコンパスの違いかマユが最後尾だ。
しかし、彼女はどこから出したかトンファーを変形させ投げつける。
曲線を描いて飛んでいったそれは見事にルナマリアとシホ、ミーアにそれは命中する。倒れる三人。
そしてそのまま倒れた二人を踏みこえてステラとマユは先に行く。
「ちょっとマユ!何で私達には命中させるのよ!!」
怒涛の勢いで追い上げる三人、あっというまにマユとステラにならぶ。
「だってステラはぶつけたら死にそうだけどこの三人はデストロイと生身で戦って勝てそうだから。」
「「「あんたねぇぇぇぇぇ!!」」」
うっかり火に油をそそいでしまったマユ。
すごい勢いで第一の障害のあるMS格納庫のに向かった。
その瞬間。

ぴゅー・・・・。
ぴゅー・・・。
ぴゅー・・・・・。

三連続で聞こえる墜落音。
マユとステラも恐る恐る中に入っていく。
するとそこには・・・・。
「なっ・・・・・。」
「うぇーいv」
絶句するマユと笑うステラ。
そう、一本まっすぐ向こうの扉まで伸びるキャットウォーク。その周りには・・・・・!
何処で入手したかジュール隊隊長の写真(幼少時から現在まで)、801同人本(マイナーから大手サークルまで)、
聖闘士○矢グッズ(フィギュアからシンハロが金を使って作った○王ハーデ○編オリジナル声優のDVDまで)。
そんなお宝の数々を吊るした風船がぷかぷかとキャットウォークの外側に浮いているのだった。
「あ・・・・・v」
ステラは好きなキャラクターのぬいぐるみをみつけたのかそれを取ろうと手を伸ばす。
「んーっ!!」
精一杯体を伸ばしてぬいぐるみをとろうとするステラ。そしてようやくその手がぬいぐるみを掴んだ、その瞬間。

ぴゅー。

ステラも墜落。
「ふっふっふっふっふ!しめた!!」
マユは笑いながらキャットウォークを走る。
マユにとってジュール隊長のシャワー隠し撮り写真もケイアキ同人誌もよくできているフィギュアもかわいいぬいぐるみも眼中に無い。
「このまま・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」
マユは気づいてしまった。自分の横におっさんが金髪の青年に押し倒されている絵が表紙の同人誌があるのを。

ぴゅー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
589:2006/06/01(木) 00:00:56 ID:???
 感想有難うございます。アニメ本編ですとジュール隊の出番がほぼ無いので、
この先段々と原作との乖離が激しくなっていくかと……。
 …早速ファントムペインの所業を改変してしまったし、あのキャラとか
あのキャラの中身も変わると思います(当SSの命運は其処で尽きるかも)

 勢いだけで始まった話なので、流れ星の如く突然燃え尽きて終わるかも
しれません。その日まで、どうぞ御付き合い下さい。
59通常の名無しさんの3倍:2006/06/01(木) 00:30:21 ID:???
>>ほのぼの氏
ワラタ。とてもワラタ。
マ、マユゥゥゥゥゥ!!
60通常の名無しさんの3倍:2006/06/01(木) 01:03:07 ID:???
単発設定小話 「カオス」明けない夜編B

〜遅れて戦闘に加わるミネルバ〜
タリア「アークエンジェル・・・正義の味方も大変ね。レイ、ルナマリア、マユ。準備できてるわね?」
〜ブリッジメインモニターに各自の映像がでる〜
レイ「レイ・ザ・バレル。準備完了した・・・」
ルナマリア「こっちもOKです!」
マユ「コアスプレンダー、いつでもどうぞ!!」
タリア「よろしい!フリーダムが先行しているが、そんなものは無視していいわ。目標はあくまで巨大なMSよっ!」
〜先陣を切ってコアスプレンダーが射出され、すぐにフォースインパルスへと合体した〜
マユ「・・・マユ・・・いけるわよね?・・・わたしの手・・・震えているの?」

〜フリーダムと交戦中のウィンダム及びカオス〜
ネオ「ん!?・・・っちぃ!ザフトの連中も来やがったか!」
スティング「ひゃーはっはっはっは!!スーパーコーディネイターってもその程度かよっ!!」
〜ウィンダムとカオスは連携し、フリーダムを追い詰めていく〜
キラ「っく!この2機を倒さないと・・・あの巨大なMSまでたどりつけないってゆうの!?」
ネオ「ほらほら、どうした?キラ・ヤマト!?お前にステラを倒させやしないぜっ!!」
キラ「この感覚・・・嫌な感じはない・・・・・・ラウ・ル・クルーゼじゃない。でも、でも・・・そんなはずは・・・!?たぁっー!」
ネオ「・・・お前は俺をどちらに持っていってくれるんだ?ネオ・ロアノークか?ムウ・ラ・フラガか?」
〜カオスの援護を受けながらフリーダムとビームサーベルを幾度も重ね合わせるウィンダム〜
キラ「・・・例えあなたが生きていたとしてもっ!あの、あのMSは止めなきゃダメなんですよっ!!」
ネオ「っくっく・・・その捌き方、以前の殺さずの戦い方ではないなぁ。ステラには優しく接してほしいんだがなっ!!」
スティング「かぁーはっはっはっは・・・・・・ん?・・・あのトリコロール・・・・・・ネオっ!ザフトの連中がお出ましだぜっ!!」
ネオ「・・・やっと来たか」
〜フリーダムとウィンダム、カオスが交戦しているのを尻目にインパルスがまっすぐデストロイに向かっている〜
マユ「・・・フリーダム・・・・・・。だめ、だめよマユ。今はあの巨大なMSが最優先・・・」
〜自分に暗示をかけるマユ〜
レイ「マユ!俺とルナマリアがバックアップする。お前はあのでかいのに切り込め!」
ルナマリア「まったく。こんな無駄な破壊なんて・・・なにか意味があるのかしらねっ!そこっ!!」
〜ルナマリアのガナーザクウォーリアはインパルスに取り付こうとする連合のMSを一体一体撃ち落す〜

〜再び交戦中のフリーダムとウィンダム、カオス〜
ネオ「っむ!あいつら・・・。スティング!こいつは後回しだ!ステラのサポートに戻るぞ!」
スティング「っちぃ!しかたねぇな!!」
〜フリーダムを牽制しながらデストロイの両脇に戻ろうとするウィンダムとカオス〜
スティング「!フリーダム!!くっそっ。全速で追いかけてきやがる!ったく!めんどくせぇな!!」
キラ「この装備・・・ガンバレルと同じような武器か・・・。でも、君のポッドじゃ、僕を倒すことはできないよ!!」
スティング「なんだと!?・・・二つとも落とされただと?こいつー!!」
〜フリーダムに接近戦を仕掛けるカオス〜
キラ「・・・・・・このパイロット・・・あの3人と同じ感覚がする!?・・・まだ、連合は君たちのような人を使っているの?」
〜哀れみの捻をつぶやき、カオスの半身を切りつける〜
スティング「なっ!?ここまでなのかよ?・・・くっくっくぅ・・・・・・うがぁー!!フリーーーダムっ!!!」
〜カオスを地上にけり落とすフリーダム〜
スティング「なぁぁー!!なぜだ?なぜ俺は勝てない?・・・!!・・・っぐぅ・・・・・・」
〜地面に衝突するショックで気を失うスティング〜

61舞踏の人:2006/06/01(木) 21:38:17 ID:???
今から運命の舞踏13話投下します
ひじょーに難産でした…orz
62舞踏13話 1/20:2006/06/01(木) 21:40:06 ID:???

扉を開け、外に出るとそこは一面、青と白の混在する広大な海原だった。
ミネルバの甲板の上に足を踏み出すと、遮るもの一つない眩い陽射しが、こちら目がけて降り注いでくる。
少々きついほど眩しい真昼の陽光に、私は手の平で目をかばいながら空を見上げた。

…季節は十月。とはいえ、赤道に近いここにそんな時節は関係ない。
空は目の覚めるほど鮮やかな蒼で、水平線から沸き立つように伸びる雲は純白。
底知れなさを感じる藍色の海には、反射する光の破片と波から生まれた水泡が白い模様を織り成している。
まさに南国といった様相の…オーブの大海原に懐かしさを感じながら突っ立っていた私の視界に
仕事着のまま、飛び出していく少年少女たちの姿が入ってきた。



「やーっぱいつ見てもキレイね、地球の海って。 テレビで見るよりよっぽど迫力あるし!」
「うん、すごいよねお姉ちゃん! 建物も地面も、なーんにも見えない!」

甲板へ出たところで立ち止まっていた私の横を走り抜け
勢いよく甲板の縁に飛びついた、ルナ姉ちゃんとメイリン姉ちゃんが柵にかじりつきながら歓声を上げてる。
きゃっきゃと楽しげにはしゃぎ声を立てる少女たちの横で、軍服やツナギを着た少年たちも喜びの声を発してた。

「宇宙から見るとあんなにちっこかったのに、広いんだなぁ地球って。 どこまで進んでも果てがねーや」
「おい、ヨウラン!あれあれ!! 海の上でなんか飛び跳ねてるぜ!!」
「宇宙がこんなに青く明るい色になるなんて……ホント不思議だね、地球って」
「そうだな。 プラントや月都市にも青空を模した映像が投影されてるが、やはり本物には敵わんな」

海面で跳ね上がるシルエットと水飛沫を指差して叫ぶ、ヨウラン兄ちゃんとヴィーノ兄ちゃん。
真上に顔を向け、真っ白い太陽の眩しさに目を細めながら笑顔を浮かべているアゼルとレイ兄ちゃん。

なかなか勤務帯が合わなくて大変だったけど、ようやく全員の予定の空欄が重なったので
こうやって昼食と飲み物とおやつを持って、甲板でピクニック気分を味わうことが出来た。

今集まってるメンツは、全員アカデミー時代からの仲の良い友達。
彼らのうち誰かと一緒にご飯を食べる機会はあったけど、全員一緒ってのは随分久しぶりな気がする。
…おかしいな。 卒業してからまだ一月も経ってないってのに。
短い時間に長い長い間振り回されていたせいか、平穏だったあの日がすごく昔の思い出だったように思える。
63舞踏13話 2/20:2006/06/01(木) 21:41:02 ID:???

私がぼんやりと思い巡らせてる間に、みんなの話題と興味は目まぐるしく移り変わっていく。
全員左舷側の柵から身を乗り出しながら、何かを指差して騒ぎ立ててるので、私もそちらへと近づいていく。

「え、うそ、あれ羽クジラじゃね?!」
「よく見ろ、大きさが全然違うし、そもそも翼がないだろう。 あれはイルカだ」
「へーっ。 でもなんで、いちいち海面に上がりながら泳ぐのかしら?疲れるんじゃない?」
「ほらほら、こっちおいでー! サンドイッチあげるよー!」
「メイリン、ありゃ野生だから近寄ってこないって。 水族館で飼われてるのとは違うんだからな」
「……スナック菓子、食べるかなぁ?」

ミネルバから少し離れた海面を、まるで並走するように進行方向を合わせながら泳ぐイルカの群。
海上に踊る流麗なフォルムに、すっかり釘付けになってるみんなの姿を見てると、なんだか嬉しい気分になった。
想像なのだけど…プラントで生まれ育った人にとって、大きく異なる地球の環境は慣れないのではと思ってた。
逆に、地球からプラントに上がった私が、しばらくその環境変化に戸惑った経験があったから。

でもまあ、思ったよりみんな楽しんでるみたいで良かった。

イルカに向かって手を振ったり、携帯電話で写真を撮ろうとしているみんなの姿を見ながら、私はそう思った。

「ほらぁ、マユ! そんなトコいないでこっちおいでよ!!」
「あ…うん、今行く!!」

手招くルナ姉ちゃんの声で、思考の内から意識を引っ張り出された私はみんなの下へと駆け寄る。
ミネルバの甲板には、少年少女たちの賑やかさに誘われたかのように、海鳥の群も寄ってきていた。
人馴れしているのかさして怖がる様子もなく、手の届きそうな所まで近づいてくる白い鳥に、歓声が上がる。

「うわー、地球の鳥って結構大きいんだね」
「プラントには環境作りのために放鳥された、害の少ない小鳥しか生息していないからな」
「へー、なるほどなぁ……しっかし、ヘンな鳴き声だなぁコイツ。 猫みてー」
「ヴィーノ兄ちゃん、あれウミネコって名前なんだよ」 
「それってまんまじゃない! 昔の人って案外アバウトだったのねー」

すぐそばを飛ぶ海鳥たちを指差しながら、みんなは語らい、笑いあう。
その姿は、心底から地球を楽しんでいるように見えて、込み上げてきた嬉しさから自然と口元がほころんでくる。
64舞踏13話 3/20:2006/06/01(木) 21:42:07 ID:???

………あれ。でも、どうしてだろう。
何故、こんなに胸がジンと熱くなるぐらい嬉しいのだろう。 みんながここを気に入ってくれたことを。
――嫌気が差して捨てていった、私の母国の海を好いてくれることを。
納得がいかない感情が生まれていたことに気付いた私は、みんなの方から視線を外し、空を仰ぎ見た。
…もちろん、疑問の答えが書かれていないのは当然だった。この、能天気なまでに晴れ渡った青空に。


そんなもやもやした思いを抱えながら空を見ていた私の耳に、
不意に飛び込んできたのは間抜けな悲鳴と、激しい羽音。

「うわっ、ちょ、痛いッ。 助けてマユ、鳥が襲ってくる……あいたっ」
「ウハハッすげー!! 鳥ってコーンスナック食べるのかよ!!」
「海鳥は主に魚類を摂るはずなのだがな。
 恐らくは近隣を通る船舶の乗組員によって、習慣的に餌付けでもされているのかもしれんな」
「あははははっ!ちょっとーレイってばー、冷静に分析してないで助けてやんなさいよー!」
「みんなぁひどいよ! 笑ってないで助け……痛い、痛いってば、許してよぉ…」

スナック菓子の袋を手にしていたことが災いして、餌求める海鳥たちの標的にされているアゼル。
髪をぐいぐいと容赦なく引っ張られ、困惑と痛みに情けなく崩れた彼の顔を見て、私も思わず吹き出した。
腹の底から、こらえきれない勢いで湧きあがって来た衝動のままに、みんなと共に大きな笑い声を上げる。

まあ、本当は助ける方法、知ってたんだけどね。
後生大事に持ってないで、さっさと袋の中身を遠くに撒いちゃえばいいだけなのに。
けれども、息が苦しくなるぐらい笑いが止まらないもんだから、結局それを伝えることは出来なかった。


……解決されなかった疑問は、結局戸惑いに姿を変えて心の底に残ったのだけれど
今はそれを放り投げてでも、友達たちと楽しい一時を共有することの方がよほど有意義なことだろう。
そう結論付けながら、私はみんなと一緒に笑い続けた。 笑って笑って、疲れてへたり込むまで。
65舞踏13話 4/20:2006/06/01(木) 21:43:04 ID:???

同じ頃、ミネルバと共にオーブ目指して進み続けるオーブ軍所属艦艇、そのうち一隻の中で。
ミネルバから移ってきたカガリは、用意された個室に案内されると早速、現状を把握するための情報収集を始めていた。
アーモリーワンの襲撃から無人機部隊の討伐、大気圏突入とミネルバの辿った運命に振り回されていた彼女。
ゆっくり休める間もなく、疲労も溜まっていたであろうが、彼女はベッドに見向きもせずにモニターと睨み合う。


状況報告にカガリの元を訪れたトダカ一佐は、三時間前と全く同じ姿勢を取っている姿を目にし、
一向に休む気配の無い国家元首へと、困り顔を添えて進言する。

「カガリ様、少しはお休みください。 長旅でお疲れでしょう」
「うん? …ああ、トダカか。 そうも言ってられんさ、この現状。
 こっちがぐうすか寝てる間も、状況は刻々と、大きく変化していくんだ。 悪いが休んでいる暇はない」

入室の断りは何度か入れたのだが、直接言葉をかけたところでようやくカガリはトダカの存在に気付いたようだった。
部下の忠言についてはもっともなことだと、微かな笑顔見せながら頷き示したが、言葉の内容はそれを断るもので。
そう対応されてしまえば繰り返し説得することも出来ず、トダカは更に表情に皺を刻ませる。

「実際……とてつもない早さだ。 まるで今回の出来事が予定調和だったかのように、スムーズに事が進んでいる。
 軍からメディアへの情報公開も妙に早い上に、気前が良すぎる。 普通は上で散々揉めてから公開されるのにな…」

きし、と椅子の背もたれを軋ませつつ天井を仰ぎ見て、怪訝な表情のままカガリは呟く。
そして、そばに置かれたプリンターから吐き出されたばかりの書類…他所から転送されてきた資料を手に取った。


紙面には、大西洋連邦の現在の動向についての情報が、大まかに記されていた。
セレネ事件現場の映像公開、そしてその原因がザフトにあるという専門家及び文化人たちの意見。
それらのニュースは、真っ先にとある放送局から発信されている……大西洋連邦の電波塔と噂される所から。
そして、与えた情報によって世論が白熱し始めた頃を見計らったように、大西洋連邦は更なる動きを見せる。

――『世界安全保障条約機構』。

彼らはプラントの危険性と地球圏の安全確保を訴え、これに対抗するため、各国を団結せんとこの設立を呼びかけた。
この条約はプラント以外の全ての国家に向けて伝えられ、加盟するよう要請されている。
恐らくは自分の国、オーブも例外ではないだろう。
大西洋連邦とは、かつて敵対した間柄ではあったが、
外交面では一応水に流したことになっている。声ぐらいはかけるはずだ。


……だが、その割に国家元首に対して、本国からの連絡がないことをカガリは不審に思っていた。
現にこの情報も、前々から外交面で連携体勢を取っていたスカンジナビア王国からもたらされた物だ。
こちらから問い合わせるべきか、とも考えたが知らぬふりを貫いた方が無難かと思い、踏みとどまる。
66舞踏13話 5/20:2006/06/01(木) 21:44:08 ID:???

退室したトダカと入れ違いに、コーヒーカップを両手に持ちながら入室してきたアスランへと、カガリは書面を見せる。

「この同盟の決め事の中には、国家間の枠を超えての軍事的協力を行うという項目がある。
 恐らくはそうやって全ての国家の戦力を束ね、プラントへと戦争を仕掛ける気だ。
 ある程度の兵力を取り戻したといえ、大西洋やユーラシア、東アジアの強硬派国家だけでは勝つのは難しいからな。
 前大戦末期のように…いや、それ以上に地球国家を反プラントに染め、プラントに対抗するつもりだ」

深刻な面持ちでそう語り、娘は手渡されたコーヒーを一口啜る。
疲労を心配してか、いつもより砂糖を多めに入れられた暖かいコーヒーを口にしても、その表情は緩むことない。
そんな彼女を見つめながら、藍髪の青年は悲嘆するように表情を曇らせ、呟く。

「また……戦争になるのか。
 多くの人が死に、多くの物が壊され、誰もが傷付いたっていうのに…まだ、それでも繰り返そうとするのか?」
「人類全てが平和を望んでると信じたいが……悔しいことに、いつの世も争いを求める人間がいることは事実なんだ。
 今も、月を中心として宇宙軍が着々と開戦準備を整えてるらしい。 同盟の頭数が揃えば、すぐにでも始めるだろうな」

嘆きの言葉に、カガリは琥珀の瞳を眇めながら答える。
天井を見上げその彼方、遥か彼方にあるであろう月を睨みながら。

「そんな事態だけは起こしてはならないんだ。 そのためには、一刻も早く手を打たなければ」

固い決意の表情を浮かべながら、彼女はそう言った。
目の前のアスランに対してではなく、ただ自分のために。 自分の使命感を鼓舞させるために。


まるで一人、戦場に赴くかのような表情のカガリの横顔を見ながら、アスランはほんの少し寂しさを覚えていた。
アスランはかつて彼女に助けられた命で、彼女を出来うる限り守っていきたいと思っていた。
二十歳にも満たない若さで国を背負って立つ、危なっかしいほど頑張り屋な娘を支えていきたいと願っていた。

だが、どうだ。
再び荒れはじめてきた世界を前に、立ち向かおうとする彼女をどうやって守れる? どうやって支えられる?
カガリは周囲に不安を与えないように、普段通りに振る舞ってるように見えるが、それは虚勢だということを彼は知っていた。
今の彼女は、本当に切羽詰っている心境のはずだ。
普段なら、自分の漏らした不安に対して「大丈夫だ」と笑いの一つでも見せて、安心させようとするはずだから。
そして、勝算が低い勝負に出る時ほど、彼女は一人で飛び出していこうとするのだから。

そんな様相を見せる彼女は…はたから見れば凛々しく、頼りがいのある指導者のような印象だったろうが
アスランはその姿に危うげな強がりと、肩にかかるプレッシャーを必死に押さえ込んでいる印象を感じていた。
そして、もどかしい悔しさを痛感していた。
恐らく自分以外誰も知らない彼女の思いに気付きながらも、手助けする術一つ持たない己の無力さを。
67舞踏13話 6/20:2006/06/01(木) 21:45:12 ID:???

手にしたカップからの湯気が途絶える頃まで、互いに口開くことないまま動かない二人だったが
無言の空気を破って鳴り響いたコール音に、アスランは壁に据付けられた内線機へと歩み寄り、受話器をとる。

「――カガリ。 スカンジナビア側から連絡だ。
 例の件、こちらからも働きかける。 そちらは国論の取り纏めを急いでくれとのことだ」

彼が受話器を置くまで、その背中を少し疲れたような表情で眺めていたカガリだったが
告げられた内容に、そうか、と応えながら大きく頷く。
いつしか凛々しく引き締められていたその顔には、先ほどまでにはなかった感情が微かに浮かび上がった。
それは果てない暗闇の中で、小さくも確かに見えた光明を前にした、希望の色。

「あちらが腹をくくって下さったなら、こちらも動きやすくなる。
 他国が同意するか分からない状態で方針を発表しても、説得力がないからな」

すっかりアイスコーヒーへと変わってしまったカップの中身を、ぐいと仰ぎ飲み干した娘は
威勢付いた声でそう言いながら、引き締めた口の端を釣り上げて不敵に笑った。



先ほどまでの様子よりも、元気と勢いを感じられるようになったカガリの姿を、アスランは安堵の表情で見ていたが
ふと、なんとなしに部屋の隅に向けた視線の先にあった、完璧にベッドメークの施された寝台に気付き、眉をひそめる。

「……カガリ。 お前、ちゃんと休息は取ったか?」

ぼそりと、低めた声でアスランは問う。
その台詞が含む、不審げな響きにモニターに向かっていたカガリは、ビクリと身体を強張らせた。

「…………あ、ああ。 大丈夫だ、ちゃんと休んだぞ。心配性だなお前はー」
「今コーヒー飲んだのが休息だってのはナシだぞ」

不自然な沈黙と、不自然にどもった返答。 言い終わる前に、青年はすかさず一言付け加えた。
…図星だったのだろう。 カガリはえ、と言葉を詰まらせてから気まずそうに顔を伏せる。
68舞踏13話 7/20:2006/06/01(木) 21:46:39 ID:???

そんな彼女を見下ろしながら、それでも動かない彼女に嘆息しながら――彼は実力行使に出た。
背もたれから離れている背中と、ばつが悪そうに揃えられた膝の裏に手を差し入れると、その身体を持ち上げる。

「うわっ! なにするんだアスラン!! 降ろせ!!はーなーせーー!!」
「いいから寝るんだ! 今、根を詰め過ぎて帰ってから倒れたんじゃ意味ないだろ」

突然持ち上げられ、わあわあと喚く娘をまるで子どもを言い包めるようになだめながら、
アスランは彼女の身体を軽々と持ち上げ、大股でベッドへと足を運ぶ。

彼の予想は当たっていたのか、普段ならもっと暴れて抵抗するであろう彼女は、疲労のせいか口ばかりの抵抗で。
やっぱり、などと呆れを覚えながらため息を一つつく。
基礎体力作りを日課としているカガリの身体は、同じ年頃の女性の平均と比べれば筋肉質で多少重いのだろうが
それでも、自分が抱え上げられるほど華奢な彼女が、随分な無茶をしていることを思うとやるせなくなってくるのだ。

少しでも、一時間でもいいから寝かせようと思いながらベッドサイドまで辿り着いたところで
さっきまで騒いでいた娘がすっかり静かになり、顔を赤らめながら何事かをブツブツと呟いていることに気付く。

「……お前なぁ…デリカシーなさ過ぎるぞ」
「え…?」

カガリの非難の言葉、その意味を理解出来ずアスランは怪訝そうに目をしばたかせる。
相手が急にしおらしくなったのも、赤面する理由も見当が付かず…何があったのだろうとまじまじと見つめる。
――そこでやっと彼は気付いた。 彼女の身体を抱える体勢が、いわゆる『お姫様抱っこ』というものだったことに。
ついでに付け加えれば、抵抗する娘をそんな体勢でベッドに運んでいるという事実に。

「あっ、す、すまない!!」

急に感じた恥ずかしさと気まずさと申し訳なさから、狼狽の声を上げながら慌ててカガリから手を離す。
降ろす過程を省いて支えを失った身体はベッドの上に落ち、うわっという叫び声と、軋んだベッドの悲鳴が生まれる。
焦ったあまり、彼女をベッドの上に投げ落とした形になったことに気付き、アスランは重ねてすまないと声を上げる。

「……ともかく、少しでいいから寝るんだぞ」
「分かったよ。 二時間後に起こしてくれ」

落ち着かない心境をごまかすように、再び強く念を押す青年の言葉に対して
娘は掛け布団を引っ被り、彼に背を向ける形で横になりながらそう答えた。
会話のあとに、二人の間にすかさず割り込んできた気まずい空気。
それに背中押されるように、アスランは部屋を出た。 心配するように、時折ベッドの方を振り向きながら。
69舞踏13話 8/20:2006/06/01(木) 21:48:11 ID:???

それから時計の短針が四半分ほど進んだ頃。
オーブ連合首長国を構成する群島の一つ、軍事拠点の中核を成すオノゴロ島に存在するオーブ国防軍の軍港にて。
港の、海に面した側を大きく見渡すことの出来る位置に建つ軍施設の窓際で、数人の人物が集い、言葉を交わしている。
海面が乱反射させる陽射しが逆光となり、人物たちの姿はシルエットしか窺えないが、体格からして全員成人男性だろうか。
皆倣ったように、窓に向かって立ちながら外を眺めている。


彼らの視線の先に見えるのは、入港してくる三隻のオーブ軍艦艇、そして少し遅れて続く一隻の見慣れぬ戦艦。
それらを見ながら、男のうち一人が窓に背を向けつつ、大仰な溜息と共に言葉を漏らした。

「――全く、厄介なモノが来たものだ」

嘆くように頭を振れば、天辺の辺りがてらりと光る。
彼の傍らにいた影もまた、その言葉に追随するように頷いた。

「本当ですな。 まして、今は世界情勢が混迷している最中ですぞ。
 このような時期にザフトの船を迎え入れるなぞ、状況を理解していないにもほどがありますな」
「代表は何を考えておられるのやら……このご時勢、義理人情で政治を動かすとは」
「やはりじゃじゃ馬姫は、いつになっても変わりませんな。
 もう少し御自分の置かれている立場を、しっかり認識してもらわねば…」


微かな嘲りの音を含んだ笑い声を、慎ましやかに紡ぎながら二つの影は会話する。

彼らの背後、港に望む巨大な一枚板の硝子の向こうでは、優美なフォルムの艦が今まさに港に接岸するところであった。
70舞踏13話 9/20:2006/06/01(木) 21:49:20 ID:???

入港してきた濃灰色の戦艦とドックの間に、掛けられるタラップ。
渡された架け橋から、艦長であるタリアを先頭として多くの軍人たちが、列を成して港へと降り立つ。
ほどなくして、別のドックに入港した護衛艦からも降りてくる人影がある…カガリとアスランだ。
彼らはミネルバクルーらへと歩み寄ると、いくつか言葉を交わした後に共に歩いていく。
ドックの入り口に立つ、出迎えらしき一団の方を目指して。


迎えの一団を構成しているのは、オーブ政府において重要な役職にいることを象徴する、臙脂色のスーツを身に纏う人々。
恐らくは国家元首を迎えに来たのであろう彼らの間から、一人飛び出してくる人物がいた。

「カァガリぃぃーー!! 無事だったかーい!?」

奇妙なウェーブにセットされた紫苑の髪をなびかせながら、両手を大きく広げ全速力で走ってくる青年の姿に
アスランとミネルバクルーらは面食らい、思わずその場で足を止める者もいれば、ひきつった顔で後ずさる者もいた。
青年が叫んでいる名前の持ち主、カガリはといえば彼の方をきょとんとした顔で見ていたが
体当たり同然の抱擁を受ける直前に、すぃと横へ身をずらし、目標を失った手へと己の右手を打ち合わせた。

「出迎えご苦労、ユウナ」

一方的なハイタッチをしながらそう告げて。 娘は足早に一団の方へと歩いていった。
抱擁をさらりと避けられてしまった、ユウナと呼ばれた青年の方はといえば呆気にとられた表情で、
歩き去っていく娘の姿を、背中越しに見ることしか出来なかった。
彼に構う様子もなく出迎えの者たちの元へ近づいていったカガリは、彼らへと今帰ったぞ、と鷹揚に挨拶をする。

「お帰りなさいませ、代表。 ご無事で何よりです」
「留守中ご苦労だったな、ウナト。 予定より帰りが遅くなってしまったが、上手く取り纏めてくれたようだな」

集団の中から一歩前に歩み出て、恭しく頭を下げてきた禿頭の男へと、カガリは笑みを添えたねぎらいの言葉をかける。

「留守中の出来事についての報告は、後ほどいたします…まずは行政府までご足労願います」
「ああ、分かった。 私も色々と、皆に伝えねばならんことがあるからな。
 だが、すまんが先に行っておいてくれ。 恩人の彼らに、挨拶をしておきたい」

そう告げて、出迎えの者たちを帰した後、カガリはミネルバクルーたちの方へと戻り、タリアの前に立った。
71舞踏13話 10/20:2006/06/01(木) 21:50:22 ID:???

「艦長、今回は本当に世話になった。
 あの混乱の最中から、五体無事に脱出出来たのは貴方がたの尽力があったからこそだ」
「いえ、代表。 我々の方こそ代表の御助力と御厚意に助けられました。
 オーブ領海での航行を許してくださった上に、寄航まで許可していただけるなんて…」
「当然のことさ。 …しかし、この有様では貴軍の基地まで戻るのも大変だろう」

タリアと、握手を交わしたカガリはドックに接岸された艦体を見上げ、眉をひそめてそう言った。
ザフト軍最新式の新造艦として鳴り物入りの進宙式を向かえる予定だった、ローマ神話の戦女神の名を冠した戦艦。
しかし式典直前に、軍施設を襲い新型MSを強奪した謎の部隊を追撃する任務に就いたミネルバは
オーブ代表カガリ・ユラ・アスハの護送、そしてセレネ移民船団を襲撃した無人機への攻撃と次々に作戦を押し付けられた。


休む間もなく、駆け抜けるように戦場を渡り歩いた戦艦の装甲には、処女航海とは思えないほどの無数の傷が刻まれていた。
さらに、急遽大気圏突入を試み、その上無人機の妨害によって突入体勢を崩されたせいもあって
破損部分を中心に装甲は焼けただれ、防御性能は著しく低下している状態であった。

「ここで出来る限りの修理をしよう。 機材や資材はいくらでも提供するから、気にせずに使ってくれ。
 希望があれば人材も貸すが…外部の人間が介入すると色々と面倒だろう。見られたくない場所は自分らでやってくれ」

自分をここまで運んでくれた傷だらけの女神を見上げつつ、カガリはそうタリアに告げた。
確かに彼女の言う通り、ザフトの最新式戦艦の構造を軍以外の人間に見られることは不都合極まりないことで。
それを慮った上で、気前良く施設の使用と資材の無償提供を約束してくれた娘の懐深さに、タリアはすっかり痛み入った。
72舞踏13話 11/20:2006/06/01(木) 21:51:36 ID:???

「ありがとうございます。 それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」

深々とお辞儀をした女艦長に対して、カガリは満足そうな笑顔を浮かべながら、頷いてみせた。
そして、表情をきりと引き締めると低めた声で話す。

「…セレネの一件は、貴君らの奮闘によって多くの人々が命救われたと思っている。
 しかし、世論は悪い方向へと傾いてきているようだ……だが、最悪の事態だけはなんとか防がなければならない。
 もう、あんな不毛な大戦争を起こすわけにはいかない。 だから、私は私なりの方法で足掻いてみせる」

貴君らと刃を交えたくはないからな、と。
眉目を緩めてそう付け足してから、彼女はその場を離れて、迎えの者たちが向かったゲートへと歩き去っていった。

その一部始終を、口は開けっ放しながらも一言も発せないまま見ていた紫髪の青年、ユウナは隣にいるアスランへと問う。

「……カガリ、あっちで何かあったのかい?」

何故そう思ったのか、という言葉を加えない不明瞭な問いかけだったが、
アスランはその意図を理解していたかのように、さらりと答える。

「色々、あったんですよ。 それが今の彼女を突き動かしています」
「ふうん。 確かに気合入ってるよね。今までよりもずっと、堂々としてるように見える。
 ………でも、これからが大変だ。 心折れるようなことがなければいいんだけどさ」

え、と声を上げてアスランはユウナの顔を見上げた。
これから起こるであろう何かを、すでに知っているような口ぶりが引っかかって。
しかし、ユウナはつかみどころのない緩んだ笑顔を浮かべたまま手を振ると、何も言わずにカガリの後についていく。
残されたアスランは、若き代表に降りかかるであろう未知の困難を思いながら、呆然と立ち尽くしていた。
73舞踏13話 12/20:2006/06/01(木) 21:52:31 ID:???

彼から少し離れた場所で、同じように心ここに在らずな様子の娘がいた。
国の重鎮たち、そしてタリアに対するカガリの立ち振る舞いの堂々とした様子に見入っていたマユ。
その背中へと、静かに響く低い声が投げかけられる。

「戦っておられるのだよ、カガリ様は。 二度と戦争を起こさせまいと、政治の舞台でな」
「…トダカさん」

振り向けば視界に入った、こちらへと歩いてくる軍服姿の壮年の男。 その名をマユは口にする。
少女の隣に立ったトダカは、今は小さく見えるばかりのカガリの背中を見つめながら、言葉を続ける。

「あの方は君のことを気にしておられたよ。
 真っ向から言葉をぶつけられて目が覚めた。 もう、君のような思いをする国民を作りたくない、と。
 二度と国土を戦火に焼かせない。 なんとしてでもこの流れを食い止めると言っておられた」

そう語る男の、以前よりも刻まれる皺が多くなった横顔に浮かぶのは、誇らしげな表情。
自分の半分ほどしか生きていない娘の背姿を見送りながら、そんな表情を見せていた。

――これが、彼女の人徳なのだろうか。

かつて、いや今もずっと尊敬し続けているトダカが尊敬の眼差しを向ける、カガリの姿を共に見ながらマユは思う。
彼女が知る、戦前に見た男勝りなお姫様の姿と、その頃よりほんの少しばかり大きくなった礼服姿の国家代表。
記憶の中の映像と、現在進行形で視界に映る人物像とを重ね合わせながら、マユは考え込んでいた。

曖昧にしか分からないけど、何故か二年間の間に別人になったかのように何かが変わった彼女のことを。
直接言葉を交わした時に感じた人柄…今まで自分が想像していた彼女と、実際の彼女との大きなギャップのことを。
自分の中で形作っていた、戦争を引き起こした罪深き一族の人間という人物像と相反する姿に、マユは戸惑いすら感じていた。
そして、彼女自身はまだ自覚していなかったが、今まで憎悪の対象としてきたカガリに対する敵意も揺らぎつつあった。

「――そうだ、マユ君。 上陸許可が出たら私に連絡してくれ」
「え?」

考え込んでいたところで、突然トダカに声をかけられてマユは顔を跳ね上げる。
心ここに在らずな心境だったこともあり、彼が話しかけてきた内容の意図が飲み込めず、頓狂な声を上げてしまう。
菫色の瞳をぱちぱちと瞬かせる少女へと、男は穏やかな微笑みを向けながら口を開く。

「約束したろう。 いつか、この地を訪れた時は私の家に遊びに来てくれと。
 家内に君と会ったことを話したら、会いたがっていたよ。 腕によりをかけたディナーを用意して待っている、とな」
「……ありがとうございます、トダカさん! 必ず、連絡します」

二年前、プラントへの旅立ちの時…別れの間際に見た、優しい笑顔とそっくりの
…いや、あの時とは違って悲しみの色のない、嬉しそうな男の表情を見つめながら、マユはにっこりと笑った。
彼女の幼い顔にもまた、トダカと同じように再会を喜ぶ笑顔が花咲いていた。
74舞踏13話 13/20:2006/06/01(木) 21:53:52 ID:???

オノゴロ島の軍港から、オーブ執政の中枢である行政府に移動したカガリは
道中、車内にて首長たちからかいつまんで報告されていた、現在オーブが立たされている状況について思案していた。


想像していた通り、大西洋連邦はオーブに対しても新たに立てられたばかりの同盟への加入を持ちかけてきていた。
この同盟は、『セレネの悪夢』という前代未聞の大事件が起きたことを重く見た大西洋連邦が
原因を作った――あるいは事故と見せかけて故意に事件を起こしたやもしれぬプラントに対抗すべく、作り上げたものだった。
セレネ移民船団の中にオーブ国籍の人間がいなかったため、今回の事件はオーブにとって無関係とも言えたのだが
彼らは、これからも同様の事件…最悪、戦争が勃発する危険性を訴え、未然に防ぐべく手を組もうと提案してきたのだ。


自国の世論はまだ調べていないため不明だが――
地球上の国家の大多数が『世界安全保障条約機構』に賛同の意を示しているのが現状だった。
マスメディアの過剰な煽りもあってか、多くの地球人類が『セレネの悪夢』をプラントのテロ行為だと思っている。
再び戦争の火種を投げつけてきたのはコーディネーターだと、ナチュラルたちは声高に叫んでいた。
今、世界の大半が新たな騒乱の兆しに対して、強く警戒をしている。


特に、移民船団に乗っていた国民が死亡した国家は、ヒステリックなまでに反応し、
未だ事故の原因について詳細な発表がないプラント政府に対し、激しい糾弾を投げかけている。
道理のいくことだ。 多くの人が死んだという事実は、戦争に対する恐怖へと直結するに十分な要素。
誰もが二年前の戦争、あの未曾有の悲劇を思い出しながら嘆き、怒り、怯え、感情のままに叫んでいる。
75舞踏13話 14/20:2006/06/01(木) 21:54:55 ID:???

――だが、その流れに乗ることが果たして正しいのか?
カガリは真一文字に口を結んだまま、固く目を閉じて今一度自分に問いかける。
絶えず繰り返してきた、問いかけを。

彼女は自身の目で見てきた。 今のプラントを。デュランダル議長の人となりを。新たに創られていく兵器を。
ミネルバの格納庫を案内された時、彼女はザフトの新型機の前で、軍備増強を続けるデュランダルの方針を非難した。
だが、今冷静になって考え直せば……結局それはお互い様なのだ。兵器開発なぞ、オーブでも行っていることだ。
新たに開発されていた、地上戦に適応あるいは特化した新型MSやミネルバについても
地上に存在するザフトの拠点、カーペンタリアやジブラルタルの防衛用と考えれば、不自然な点は消える。

……もちろん、今のプラント政府の真意なぞ分からないのだから、本当は地球侵略のために開発されたかもしれないが。
あの、デュランダルという男が、能面のように生っ白い顔の裏にどんな一物を秘めているのか、計り知れないが。
それでもカガリには、かの事件をザフトの策謀と決め付けたくない理由があった。

それは、偶然巻き込まれる形になったカガリが目の当たりにしてきた、『セレネの悪夢』の一部始終。
デュランダルとの会談のために訪れたアーモリーワンが襲撃され、成り行きでザフトの新造艦『ミネルバ』に乗った彼女は、
彼らが移民船団を救うべく、無人機部隊相手に奮戦している姿を見ていた。
現場と上層部の思惑が、必ずしも一緒とは限らないことは分かっている。
だがそれでも彼女は、少しでも被害を抑えようと命懸けで戦っていた少年少女たちの姿を無視出来なかったのだ。

だから彼女は、作戦の完全遂行のため大気圏突入を行い、危険な海域に不時着したミネルバを自国の領域に招き入れた。
その行為がどういうことか、どんな不都合を招くかも理解した上で、連戦に疲れ切った勇士たちを迎える決心をした。
言わば、ザフトを匿ったようなもの。 これは十中八九、大西洋連邦から咎められるであろう行為だ。


無言で瞑目しつつ、思索を続けていたカガリだったが、やがて伏せていた瞼を持ち上げる。
以前から考え続けてきた――ここ数日の情勢変化を目にして決心したこと。
自分が考える、オーブの歩むべき道について、首長たちに伝えなければと思いながら。
76舞踏13話 15/20:2006/06/01(木) 21:55:57 ID:???

カガリと共にオーブに帰還した、アレックスことアスランは行政府に帰ると早々に、自分の仕事に取り掛かっていた。
現在、別室で首長らと会議をしているカガリの、次に控える執務を円滑に行えるように書類の整理をする。
秘書の職務の範疇なのだが、本来の役目である代表の護衛が必要ない場合は、デスクワークの手伝いをするようにしていた。
もちろん、詰所で昼寝していようが関係のない仕事をこなしていようが、給金に変動はないのだけれど
何もせずにボーっとしているのは性分に合わないらしく、アスランは秘書らと共に執務の準備を行っていた。

代表が目を通し、サインを記入しなければならない書類を種類別に重ね合わせ、クリップで留める。
そんな単純作業を繰り返すアスランの脳裏には、いくつもの思いが過ぎっていた。
現在の世界情勢。 この混乱の原因となった『セレネの悪夢』の、未だ判明しない全容。
これからのオーブの行く末。 世界中からの避難の槍玉に挙げられる形となった、プラントの運命。
楽観的な予想と結びつかないことばかり考えながら、アスランは表情を暗く、苦々しいものへと変える。

気がかりといえば――あのミネルバという艦のことも心配だった。
一旦はオーブに逃げ込んだものも、長く留まるわけにはいかない。
比較的近いカーペンタリア辺りにでも移動すべきだろう。
しかし、悪化の一途を辿る状況下で、無事にカーペンタリアまで辿り着けるだろうか。
進水式も行っていない、あの若い戦艦が。
記憶の中に残るクルーの面々を思い起こしながら、アスランは目を伏せた。
マユ…といったか。 彼らの中でもとりわけ幼いあの少女は、確かオーブ出身だと名乗っていた。
彼女はかつての母国に対して、いい感情を持ってないようだった。…正確には、国家を治める者に対してか。
凄まじい憎悪の眼差しでカガリを睨みつけていた表情を思い出して、アスランは小さく溜息をつく。
あの子は今、どんな心情なのだろうか。
偶然にも再び訪れることになった母国の姿と、それを治めるカガリの姿を見て…。

そんな、どこからも答えの帰ってくるはずのない不毛な問答を、ぐるぐると繰り返している最中、
ぽんと肩に手を置かれた感触で、アスランは我に返る。
驚き振り返れば、秘書の一人が後ろに立っていた。

「アレックス君、君宛てにメールが入っていたよ。 プラントから…みたいだけど?」
「え……?」

――プラントから、何故。 しかも自分個人のアドレスにではなく、行政府宛てに。
戸惑いを覚えるアスランに対し秘書は、君のパソコンに転送しておいたよ、と言い残して自分のデスクへと戻っていく。
謝辞をその背中に投げかけてから、アスランは早々にメールチェックをし、それと思われる新着メールを開いてみる。
真っ先に見た、差出人の欄――そこに記されていた名前に、彼は目を瞠った。
77舞踏13話 16/20:2006/06/01(木) 21:57:03 ID:???

「――以上が、大西洋連邦から打診されてきた書面の内容です。
 代表がお戻りになられるまで、回答は控えるとはお伝えしましたが、
 先方は、一刻も早く方針を決めて頂きたいとのことでした。
 …いかがなさいますか、代表?」

会議室の卓に、オーブの主要な権力者たちが頭を並べる中、書面を読み上げ終わった中年の男
オーブの宰相を務めるウナト・エマ・セイランは一巡皆の顔を見渡すと、
最後に上座に座る金髪の娘へと、伺いの視線を向けた。
それをきっかけに室内の全員から見つめられた娘……実質、オーブの最高指導者であるカガリ・ユラ・アスハは
机上に両肘を立て、組んだ手を口元に当てながら沈黙している。 固く固く、眼を閉じながら。
もちろん、このような場で居眠りをしているわけではない。 
身動き一つ、言葉一つ発しない彼女の身体からは、静かな気迫が漂う。

「……代表?」

長い、沈黙。 人々が息を詰める中、痺れを切らしたウナトが口を開く。
僅かに震えた部屋の空気に応じたように、娘は瞼を上げた。

「――そうして、全ての国を束ね上げ、此度の事件を口実にプラントへと宣戦布告をする……
 それが、大西洋連邦が描いた開戦へのシナリオだな」

最初は、独り言を呟くように小さく。 後半は断言するかのように大きく、強く。
そして顔を上げると、人々からの視線を受けながら言葉を続けた。 己が辿り着いた決断を。

「私はそのような馬鹿げた争いに参加する気はない。 同盟への加入は認めん」

78舞踏13話 17/20:2006/06/01(木) 21:58:08 ID:???

彼女の力篭った言葉は、水面に大石を投げ込んだかのように騒々しい動揺の波紋を広げた。
部屋に集う首長たちの間に沸き起こる、ざわめき。 誰もが隣人と顔を見合わせ、言葉を交わす。
大勢が一斉に話す、無秩序なざわめき。 誰が何を言っているのか判別するのは容易ではなかったが
そんな、何故、無茶な、などと否定的な音を含んだ言葉が少なからず混じっていることは、カガリにも分かった。
続きの言葉は、すぐには出さない。 彼らの動揺が少し収まってきたところで席を立ち、皆の顔を見渡す。

「文書によれば、この同盟は地球国家の安全を確固たるものにするため
 国家間の協力を強める目的で打ち立てられたとあった。
 だが、諸君らには裏に隠された意味を理解してほしい!
 この同盟は明らかに、プラントを危険分子とみなし、戦争を仕掛けるための員数集めを目的としている。
 …確かにこの一件は、少なからずプラントに非があることは確かだろう。
 しかし、だからと言って再び戦争を起こそうとする大西洋連邦の動きに、私は同調できない。
 オーブは同盟への不参加及び、開戦反対の意志を表明し、諸国にも冷静な対応を訴えていくべきだと考えている」

朗々と響く声で、カガリは己の考えを語り、人々へと訴えかける。
琥珀色の瞳に爛々と輝く意志の炎を宿し、彼らの顔一つ一つに言い聞かせるように眼差しを向けながら。
再び彼らの間に動揺が生まれるものも、娘に気圧されてか遠慮がちに小さな声が上がっている。
その中、微かに顔面を引きつらせていた禿頭の男が、それを破るように声を荒げた。

「しかし代表! この状況で、またもそのような曖昧な立場に立つのは危険です!
 オーブが孤立し、二年前のように国土を焼くことになるやもしれませんぞ!!」

宰相、ウナトが放った否定の意見に対して、幾人かの主張が肯定の意を示す。

「皆が危険を感じるのも無理もない。 だが、回避する手立てはある」

反対意見を受けたカガリは動じることなく、そう告げて反論を抑える。

「…そもそも、前大戦で我らオーブを含めて中立の立場に立つことを宣言した国家が
 最後までそれを貫けず、自分らの国土に攻め入られるような結果に終わったのには、原因がある。
 南アメリカ連邦が大西洋連邦に武力制圧されたのも、我が国が攻め入られたのも、中立国同士で助け合わなかったからだ。
 個々の力で、徒党を組む彼らに対抗できるわけがない。 だから、武力制圧されたり、あるいは恫喝に屈することになった。
 これを踏まえて、私は同じ考えを持つ国家と協力を結び新たな同盟を立て、連名で中立宣言を行う。
 もちろん、我らの同盟に加入した国家を脅かしてくる者には、同盟国全ての力を持ってして抵抗するつもりだ」

不敵にも見える笑みを添えながら、彼女は言う。
以前から胸中に抱いてきた考え。 かつて仲間たちと共に、世界中の戦場を見続けてきた娘が見い出した一つの道標。
自信に満ちた様子でそれを掲げるカガリの言葉に、所々から感嘆の声が聞こえる。
79舞踏13話 18/20:2006/06/01(木) 21:59:24 ID:???

それを耳にしながら、ウナトは唖然としていた。
自分達の描いた筋書きに反して――カガリが確固とした自らの考えを持っていたのだから。
彼女は今まで、宰相である自分に対してそのような考えの片鱗すら見せていなかった。
だから、今回の条約についても彼女が悩んでいるうちに、こちらが話を進めることが出来るとウナトは思っていたのだ。
予想外の展開に舌打ちでもしたい気分だが、今は彼女の提案に否定意見を出し、周りに賛同させないようにせねばならない。

「そ、そのような事、理想論に過ぎません!! 第一、その考えに他の国が同意するかどうかもっ……」
「大丈夫だ。 この提案は以前から、スカンジナビア王国より話を持ちかけられていたものだ。
 現在、各国に呼びかけているところで、赤道連合、南アメリカ連邦から同盟に参加するとの回答を受けているとのことだ。
 こちらの回答があり次第、連名で全世界に開戦反対の意志を表明するそうだ」

反論をすかさず封じられ、ウナトは顔面を強張らせ、ぐぅと唸り声を漏らす。

「ですがっ…もし、世界安全保障条約に同意しなかった我々に対し、連合が仕掛けてきた場合は!!」
「そのようなことになる可能性は確かにあるが、決して高いものではない。
 先の大戦で消耗した戦力も、まだ完全には回復させていない状態で、しかも本来の相手はプラントだ。
 プラントと我々を同時に相手にして戦争をするなんていう無茶を、進んで行うようなことはまずないだろう。
 我々の基本姿勢は、今回の戦争に対して静観することなのだからな。 こちらの同盟国に、手を出さない限りは」

なおも食い下がるウナトに対し、雄弁に言葉を返すカガリ。
狡猾な性格の自分の父親を相手に、怯まない姿勢で挑む姿を見ながら、ユウナ・ロマ・セイランは驚きを覚えていた。
今までの彼女は、その若さもあって宰相のウナトに都合よく言い包められることもあった。
オーブの首長を代表する人間としては、まだまだ未完成な所があったはずだ。

ところがどうだ。 プラントから帰って来た彼女は、見違えるほどの気迫を漂わせていた。
帰国時にアレックスが言っていた通り、強い使命感に突き動かされるかのように彼女は活発に動き、自らの考えを訴えかけている。
実際、ここに集う首長たちの中には彼女の言葉に動かされつつある者も少なくないだろう。
彼らの表情の一つ一つを眺め、観察しながらユウナはそう思っていた。
――しかし、それだけでは駄目だ。
熱弁振るうカガリの姿を、眇めた眼差しで見つめていた青年は発言するべく挙手をする。


「代表、貴方のご意見はよく理解出来ました。 …しかしその案には一つ、回避しがたい問題がありますね」

発言しだした青年へと、カガリを含め室内の者全員から視線が注がれる。
大勢からの注目を集めながらも、彼はいつもの飄々とした調子を崩さない。
面長な顔に含みある笑みを刻みながら、声の調子を強めることなく語り始める。


「貴方は他国と新たな同盟を築き、中立の立場を貫くことを宣言し
 加盟国へ侵攻する者には、同盟全ての力を持ってして抵抗するとと仰られましたね?
 そうなると、オーブ以外の同盟国が攻撃を受けた場合は、我々も軍を派遣し援護を行うということになりますよね。
 ――貴方は、その行為が我が国が掲げる理念…他国の争いに介入しないという誓いに背くことについて、どうお考えですか?」

青年の発した言葉に、娘の表情に緊張が走った。
80舞踏13話 19/20:2006/06/01(木) 22:00:40 ID:???

「っ、それは……それについては、確かに皆気がかりな所だろうが…だが私は、それでも……」
「貴方の亡きお父上、前代表で在らせられたウズミ様の唱えた理念に背くことになりますよね?
 大変なご決断かと思いますけど……本当にその理念を捨てる覚悟はおありですか? それを、お聞きしたかったんです」

先ほどまでの堂々とした様子から打って変わって、視線を落し、言葉に詰まるカガリ。
そんな彼女へと、ユウナは変わらぬ調子で畳み掛けるように問いを重ねる。 急き立てるように、追い詰めるように。


――痛いところを突かれた、と。 カガリは胸中で歯噛みしていた。
中立を貫くという考えに辿り着いた彼女が、ひた隠しにしていた一つの迷いを、見事に指摘されたことに。

他国を侵略せず、他国からの侵略を許さず、他国同士の争いに介入しないという、オーブが掲げ続けてきた信念。
自分の父が、己の命を賭してまで貫き通したその思想を、彼女は未だ捨て切れずにいた。
それが、自分の目指す道を阻害するものだということは十分理解しているのだが
それを捨てねば、皆に訴えかけた言葉の全てが中途半端な意味しか持たなくなるのだが

――それでも、死んでいった父が遺した意志を無視すること対するためらいはだけは、押し殺すことが出来なかったのだ。


悔しげに唇を噛み締めながら、ユウナからの問いに答えることなく押し黙る娘を前に、人々はざわめく。
恐らくその中には、大きな事を言っておきながらうろたえを見せる代表への、不満や落胆の言葉もあっただろう。
俯く彼女を遠巻きに見ながら、オーブの権力者たちは様々な表情を浮かべつつ相談し合っていた。

「…とにかく。 この状態では今回の閣議で結論を出すのはまず無理でしょうな。
 我々にも考える時間が必要です。 代表、ひとまず今回は閉会として、結論は次に回しましょう」

部屋に集う皆へ向かって、閉会を提案したのは動揺から立ち直ったばかりのウナト。
彼の言葉にカガリはうなだれたまま、わかった、とだけ答えた。
それを機に、閣議の進行を取り仕切っていた首長の一人が閉会を告げると、人々は列を成して会議室から退室していく。


やがて人の居なくなった会議室には、うつむき続けるカガリだけが取り残される。
…いや、そこにはもう一人留まっている人間がいた。
彼女の迷いを目ざとく見つけ、追求してきた青年が。
81舞踏13話 20/20:2006/06/01(木) 22:01:47 ID:???

どこか斜に構えたような、くだけた笑いを口元に刻むユウナはカガリの傍らへと歩み寄ると
彼女の耳元に顔を寄せ、そっと言の葉を落とし込む。

「カガリ、君は無理に動かなくていいんだよ? 
 僕や父上がついているんだからね。 そんなに一人で頑張らずに、僕らに任せてくれればいい。
 君はまだ若いんだし、女の子なんだから。 婚約者であるこの僕が、ちゃあんと守ってあげるからさ」

まるでぐずる子どもをなだめるように優しく、シロップのように甘たるい声で囁きかけながら、
うつむき続ける彼女の髪を、そっと梳きながら撫でる。

カガリはといえば、顔を上げることもなく言葉を発することもなく、心ここに在らずな様子で。
しばしその様子を黙って見つめ続けていたユウナだったが、
やがて、娘の頭をポンポンと叩くと、その場を離れ会議室を出ていった。


バタン、と厚い木製の扉が閉ざされる音。 今度こそ一人きりになったカガリ。

「……駄目だ、こんな事では…」

静まり返った空間の中、揃えた膝の上に乗せた手を固く握り締めながら、ただ一言呟いた。

――全ての悪因は、己が内の迷いを解決できないままだったからだ。
オーブが掲げる理念を捨てることに対してためらったまま、急いて物事を進めようとしたことにカガリは後悔を覚えていた。
閣議で大々的に知らせた自分の方針も、この失態のせいで危うげなものだと首長たちに伝わったかもしれない。
他国の協力を得てまで準備したオーブの新たなる道導が、自分の心の問題によって台無しになろうとしている。
そう思いながら彼女は、悔しさと己の浅はかさに対する怒りに身を震わせながら、きつく目を閉じていた。
このままの流れでは、間違いなくオーブは世界安全保障条約に加盟することになることだろう。
大西洋連邦が先導する、プラントに対する戦争に否が応でも協力せねばならない状況になることだろう。

「それだけは、あってはいけない…」

今、ここで立ち止まるわけにはいかない。 諦めるわけにはいかない。
なんとしてでも、一人でも多くの首長をこちら側の味方に付け、中立国間での同盟を築き上げねばならない。
カガリは、自分がしなければならないことを十分理解していた。
しかし、動けない。 胸中にあるたった一つのためらいが、突き立つ杭のように己の動きを封じ込める。
仮に、そのまま無理やり動いたとしても、人々の疑念を晴らすことは出来ないだろう。
先ほどと同じ、迷いの晴れない無様な姿を晒すだけの結果に終わるだろう。

父親が死してなお貫いた理念を、捨て去る覚悟がない限り。

閉じた瞼の裏側に、最後に目にした父親の姿が浮かぶ中、彼女は一雫、涙を落した。

「――貴方ならどうするのですか、お父様」
82あとがき:2006/06/01(木) 22:02:53 ID:???

超絶遅くなりましたがようやっと書けました舞踏の人です(フラフラ
オーブ編は特に難しい所なこともあって監督と脚本の間に色々意見のすれ違いが生じました…
(注:舞踏は二人組で製作しております)
冒頭部分のシーンは、そう言えば原作にはこんなのなかったなーと思い、入れてみました。
プラント生まれの彼らにとって、地球は新鮮に感じるはずだよなぁと想像しながら書きました。

そして微妙なラブコメシーン。 どう見てもアスカガ厨です。本当にあr(ry
……たまにはこういうのもやってみたかったのですorz

あと、作中では入れる場所がなかったのであえて書きませんでしたが
カガリが言い出した案はスカンジナビアからのものではありません。彼女が最初に提言したものです。
自分一人で考えたと言うとウナトから色々言われそうなので、そこはブラフというわけです。
…それにしてもユウナはキモくて書いてて面白いなぁ。(ぉ


カガリの目論見としては連名で開戦反対の意思を示し、各国に冷静な対応を訴え
大西洋連邦を中心とした主戦派の員数集めを妨害し、開戦を断念させようと考えていました

一国で反対の意思を示した所で黙殺されるのがオチなので連名にし
そして、同盟を組み勢力を大きくすることによって前大戦の様に侵略をされないように
しようと考えていました。


と、上手く話が進めばいいのですが当の彼女がまだ迷いを捨て切れていませんでした
この先どうなっていくかはご想像にお任せします

83通常の名無しさんの3倍:2006/06/01(木) 22:06:35 ID:???
今回も面白く読みました。
カガリが立派過ぎてまるで別人のようですw
中立を保つならこの比ではない努力が必要なわけで、等身大のまま頑張って欲しいものです。


後、10/20の最後の行の
>約束してくれた娘の懐深さに、タリアはすっかり痛み入った。
はちょっとおかしいんじゃないでしょうか。
感じ入った 辺りが妥当かと思います。
次回も頑張ってください。
84通常の名無しさんの3倍:2006/06/01(木) 23:14:22 ID:???
ttp://syobon.com/mini/src/mini22522.jpg_jJ7MlFbXK2FmPA4cgwcC/mini22522.jpg
ストフリとインジャもハイパーデュートリオンだそうだ。
85通常の名無しさんの3倍:2006/06/02(金) 00:26:00 ID:???
舞踏の人GJ
ミネルバの少年少女たちのはしゃぎっぷりに和んだ
ユウナのハイタッチには笑ったww
明るいままではいられないであろうオーブ編、続きも楽しみにしています
86通常の名無しさんの3倍:2006/06/02(金) 20:37:30 ID:???
ちょっと前々から考えていたネタがあったので、投下してみます。
ただ他の作品と比べるとかなり違うというか、なんというか……
それで少し迷っていました。
では、予告編みたいな物から。
871/3:2006/06/02(金) 20:38:22 ID:???
 とん、と軽い足音と共に、私は母国の土を踏んだ。
正確に言えば、空港のアスファルトだが。

「一年と半年ぶり、なんだ……」

 周りを見て、改めてそう実感する。
自分の記憶にあった風景とはまるで変わってしまったオーブ。戦争で焼けて、それを再建したからか、それとも……私の思い出の中で、美化されていたからなのか。
例え後者だとしても、それは当然だろう。いきなりあんな所へ連れ去られたら誰だって……!
いや、今はそのことを考えるのはよそう。せめて今だけでも、捨ててきた過去に囚われたくはない。
失った過去を取り戻すために、私はここに来たのだから。

 私の名前はマユ・アスカ。14歳で、コーディネイター。本来は学校にいかなくてはならない年齢だが、私はそういったことはしていない。
原因は二年前の6月15日、オーブと連合がついに戦うことになった日。その日まで、私には父さんも、母さんも、兄さんもいた。
だけど……

 長い間、ずっといなかった国。どうなっているか知ることさえ難しかった国。見慣れない風景も多く、まるで異国のよう。もっとも、一年半という時間の間に私が体験したことを考えれば、平和になったこの国で私が異分子となるのは当然かも知れなかった。
 そして、私に帰るところが無いのも……自然。

 住んでいた家には、違う家族が住んでいた。
役所では、父さんと母さんの遺体だけが確認されていた。
 戦争中の混乱で資料が散逸し、兄さんの足取りは全く掴めなかった。

 もう、宛てもない。
 ただ何かに期待して……現実から逃れようとするために歩いた。希望にすがるために歩いた。そうして、そこにたどり着いた。

「……慰霊碑」

 思わず、周りを見渡す。
 ……私は、ここを知っている。忘れるはずが無い。例えこんな風に、傷痕を綺麗に繕っても、あの荒れきった山道は忘れない。
 ここは、私が最後に、家族と一緒にいた場所だった。

882/3:2006/06/02(金) 20:42:12 ID:???
 ……蒼い翼の天使のようなモビルスーツが、砲を構えている。
 それが、私がオーブで最後に見たものだった。そのあと起きた爆発で、私は
意識を失っていた。……それでも、私は大した後遺症もなく生きていたのだが。
 今思えば、それが幸運だったか、不幸だったか判別はつかない。その後の生
活は、それまでの物と大きく変わってしまった。私の身柄が、「サーカス」と呼ば
れる組織に引き取られたからだ。
 「サーカス」とは、遺伝子の操作に失敗したコーディネイターの捨て子を貰い
うけ、兵士として育て上げる組織だ。最終的には、企業などに私兵として売り
渡す。私が「サーカス」に拾われたのは、技術の発達で遺伝子操作の失敗が
減ったこと、モビルスーツの登場で更にコーディネイターの兵士の必要性が
高まったことで、需要と供給がアンバランスになり、戦争によって孤児となった
コーディネイターも貰い受けるようになったかららしい。
 「サーカス」を抜ける方法も存在する。まず、「的」となるという方法。一人で
「サーカス」のメンバー五人を同時に相手し、勝利したら「サーカス」を正式に
抜けられるというものだ。当然、そんな事ができる者がそうそう出るわけでも
ない。知っている限り、これで抜けられた人物はただ一人だけだ。
 これも幸運か不幸か分からないが、私には才能があったようだ。たった
一年半で「サーカス」にいる人物の平均レベルぐらいにはなんとかたどり
着けた。しかし、それでも五人同時に戦って勝てるわけがない。となると
抜ける手段はただ一つ、脱走することだ。「サーカス」の構造は先に上げた
供給不足などで崩れてきていたのか、なんとか脱走に成功した。
 それでも、自分が元の生活に戻れるとは思えなかった。脱走者を増やさ
ないため、組織の構造を保つために、みせしめとして殺すために私には
追っ手が来ているだろう。それに何より……私はもう、何人も人を殺して
いるのだから。
 ……そうと分かっていても、ただ確認したかった。実は家族が生きている
という幻想を持ちたかった。

 だけど、そこに慰霊碑はあった。
 ここで一つの惨劇が起き、一組の家族が死んだと示すように。
 そう――私の幻想に、とどめを刺すように。

「…………っ!」

 思わず、涙が出る。
 「サーカス」で生活する中で、友達になった子もいる。その子を裏切ってまで、
自分の命を懸けてまで、まともな人生を送れないことも分かっていてまで、ここ
へ戻ってきたのに……!

「くっ……」

 涙を拭って、足を遠ざける。
 役所でアスカ家について調査したことは、すぐに追っ手に勘付かれるかも
知れない。この国に長居は無用だ。行く宛てもないし、そもそもどう生きれば
いいか分からない。だけど、むざむざ死ぬ気にもなれない。なら、早くこの国を離れなくてはいけない……。

893/3:2006/06/02(金) 20:43:33 ID:???
 こうして私は、何も取り戻せないままあちこちを転々とすることになる。
 アストレイ
「王道ではない」

 そして私は皮肉にも戦乱の中で……母国で愛用されているモビルスーツの名、
そのものの生活を送ることになっていった。

機動戦士ガンダムSEEDDESTINY ASTRAY M
90通常の名無しさんの3倍:2006/06/02(金) 20:46:11 ID:???
要するに、マユ版アストレイです。
とはいえ、デスティニーアストレイを読んでいないと分からない作品にするつもりはありません。
できるだけ本編のサブキャラを使って書いていきたいと思います。

後、二つ目改行ミスって字数がバラバラになりました……次はちゃんとします。
では。
91通常の名無しさんの3倍:2006/06/02(金) 22:25:56 ID:???
なかなか面白そうな新作乙です。
92通常の名無しさんの3倍:2006/06/03(土) 00:02:28 ID:???
ASTRAY M 乙です!すっげえ斬新な切り口ですね・・・カイトとは違った意味で
「自分を必要としてくれる人」探しを続けるマユでしょうか?
搭乗する機体が物凄く気になりますが・・・・・・カイトがザフト系MSに続けて搭乗
しているので
(ジンアサルト→ディンレイヴン→ザクファントム(ノクティルーカ)→テスタメント)
連合系のダガーとかウィンダムとかに乗るマユなんかも良いかも?
93通常の名無しさんの3倍:2006/06/03(土) 06:39:54 ID:???
単発設定小話 「インパルス」明けない夜編C

〜レイとルナマリアの援護をうけてデストロイに接近するマユ〜
マユ「このっ!近づけばあっという間だと思ったけれど・・・」
ステラ「・・・?あら・・・いつの間にかハエがよってきているのね・・・・・・?ふふ・・・そんなのでデストロイが倒せるとでも?」
〜インパルスを近づけさせまいと近接射撃をするデストロイ〜
マユ「こいつ・・・!後ろ!?」
ネオ「ザフトのお嬢ちゃん!デストロイから離れてもらおうか!!」
マユ「っつ!さっきフリーダムと戦っていたMS!?・・・速い!」
ネオ「強さってのはMSの性能だけで決まるんじゃないんだぜ!?」
〜器用にビームサーベルとビームライフルを使い分けるウィンダム〜
マユ「・・・強い・・・でもナチュラルなんでしょ?なぜこうも器用に戦えるの!?・・・たぁっー!」
ネオ「おっと・・・。ヒュー、やるねぇ・・・お嬢ちゃん」
マユ「避けた?こいつ・・・!」
キラ「どいてー!!」
〜インパルスとウィンダムの間に割り込むフリーダム〜
ネオ「!?フリーダム!!・・・スティングは?やられたってゆうのか?・・・・・さすが・・・というべきか」
キラ「この巨大なMSさえ止めさせてくれれば!」
マユ「キラ・・・ヤマトォォォ!相も変わらず自分勝手に戦ってくれる!!」
ネオ「デストロイには近づけさせんっといっただろう!フリーダム!」
〜フリーダムにビームを浴びせるウィンダム〜
キラ「っち・・・。あなたが・・・あなたが本当にあの人なら・・・僕らの邪魔はしないで」
ネオ「なんだなんだ?お前のやる気ってのはそんなものなのかよっ!本気にならないと俺は倒せんぞ!!」
マユ「・・・フリーダムに目標が移ったみたいね・・・?それなら、わたしは!」
〜再びデストロイに襲い掛かろうとするインパルスを制止させるウィンダム〜
ネオ「っちっち。お嬢ちゃんのことも忘れちゃいないんだぜ!?」
マユ「こいつ!?でも・・・そんな半端な攻撃っ!」
ネオ「そんなもの!」
キラ「いけない!」
〜インパルスとフリーダムはウィンダムをはさむようにポジションをとる〜
マユ「邪魔なカラスがっ!堕ちなさい!」
〜ウィンダムを正面から切りかかるインパルス〜
ネオ「っな、速い。?・・・!」
キラ「だめだっ!その太刀筋では殺してしまう・・・・・・間に合うか!?」
〜ウィンダムを背後から撃ち、インパルスの攻撃をそらすフリーダム〜
ネオ「っが!・・・フリーダムゥ!・・・!?いかん!」
マユ「たぁっー!!」
〜インパルスに切られ半壊するウィンダムから投げ出されるネオ〜
ネオ「ぐぁっー!」
キラ「ムウさん!!」

〜デストロイ〜
ステラ「・・・・・・ネオが・・・ネオが・・・・・・死んじゃった・・・の?そんなの・・・そんなのいやぁぁぁー!!」
〜攻撃目標をインパルスとフリーダムに定めるデストロイ〜

94通常の名無しさんの3倍:2006/06/03(土) 20:39:57 ID:aRnG1SFx
保守
95通常の名無しさんの3倍:2006/06/03(土) 21:10:17 ID:???
保守乙
969:2006/06/03(土) 23:10:48 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 3-1“発露”

 虚空の海をひた走るナスカ級高速戦闘艦。その向かう先に、巨大な砂時計が浮かんでいた。
「出撃割を発表する!」
 ボルテール格納庫。ザクウォーリアのコクピットで簡易調整を行っていたマユは、
機内に飛び込んできたイザークの声に小柄な身体を跳ねさせる。
『イザーク=ジュール! ディアッカ=エルスマン! ……以上!』
 自分の名前が呼ばれなかった事に一瞬安堵するマユ。直後、胸騒ぎが込み上げた。
『ハ、2人ね。素直に総員出撃って言った方が早いんじゃないの?』
『っるさい! ……せめて『アイツ』が研究所から戻っていればな……!』
「あ、あの……」
『あぁ、なんだ?』
 何時も不機嫌そうなイザークが銀髪を揺らし、マユを睨みつける。
「あの、私は……」
『演習ファイルを見直していろ。帰ったら反省会だ』
『そーそー。マユちゃんが出るまでも無いって。直ぐ片付けて帰って来るぜ』
「……はい」
 何処か余裕を感じさせる2人の様子を見て、マユは曇った笑みを浮かべた。
死ぬのは、嫌だ。特別に戦いたいわけでもないし、訓練兵の自分は極力危険を避けるべきだ。
特に赤服を着る身としては、個人の損失がザフトの損失に繋がる。理屈では、そう解っている。

 死ぬのは、嫌だ。けれども記憶を失い、存在の証さえ無かった自分に対し、まるで兄のように
接してくれた2人と離れ離れになるのは、役に立てないのはもっと嫌だった。
 特に2人は、これから戦場に行くのだ。これが最期の会話になるかもしれないと思うと、
胸の奥が締め付けられた。けれども、この状況で不平不満は許されない。
 右腕を持ち上げ、弱弱しく敬礼した。
「行ってらっしゃい、隊長…ディアッカ、さん」
『イザーク=ジュール、出るぞ! ディアッカ、フォローしろ!』
『了解。ディアッカ=エルスマン、発進する』
 最大戦速を維持するボルテールのハッチから発進する2機。その様子をモニターで
見送ったマユは、狭いコクピットで身を屈め、膝を抱く。
「行って……らっしゃい…」
 アーモリーワンの防衛ラインに幾つもの小爆発が咲き乱れたのは、その直後だった。
979:2006/06/03(土) 23:13:14 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 3-2“発露”

 アーモリーワンに強襲を掛けたダークダガーLを駆る特殊部隊は、健闘した。
交戦開始から20秒で初期の防衛隊を制圧。敵を大破させず、人の乗った『生きた盾』
を大量に生み出す事で、次々に押し寄せる増援を凌ぎ続けたのだ。
 しかし、地の利と物量の強みはやはり揺るがなかったのである。
「こっちは後何機だ!」
『隊長殿の機体を含め、7機であります! 3機を喪いました!』
「パイロットは!」
『脱出ブロックは全機分確保しております! しかし敵が多すぎて…!』
「全員生還が前提だぞ! 万一ザフトに捕まって物証が……ぐあっ!?」
 複雑な軌道を漂う残骸の隙間を、真紅の閃光が貫く。
キャノンパックを再装填していたダガーLの左腕がビームで千切れ飛び、手に持った弾倉
が爆発して機体が跳ね上がった。
『隊長殿! 今、援護に!』
「……来るな!」
 砂時計外壁に叩きつけられたダガーLが姿勢を取り戻しかけた時、既に勝敗は決していた。
砲口に光を残す長射程ビーム砲『オルトロス』を構えたガナーザクを後ろに従え、
蒼いスラッシュザクファントムが巨大なビームアックスをダガーLに突きつける。
『此処までだな! 武装を解除して機体から降りろ!』
「……その指示には、従えん」
 指向性のレーザー通信で入ってくる年若い男の声に答えつつ、ひきつった笑みを見せる隊長。
 各部出力は低下し、ビームカービンは既に銃身が焼きつき、無反動砲も弾が無い。
「かといって蒸発させられるわけにもいかん。フ……厄介な身の上でな」
『貴様……嘗めるなッ!!』
 コクピットにアラームが鳴り響いた。ビームアックスがハッチに食い込んだのだ。
「悪ガキのお守りで…あの世行き、か。やれやれ、ヤキが回っ…」
 その時、背中を向けていたアーモリーワンの整備用エアロックが内側から弾け飛んだ。
『なっ!?』
 爆炎と共に内部から次々に現れるMAカオス、ガイア、アビス。
『セカンドステージ…! チッ…食い止められなかったのか!』
 MAカオスのミサイルランチャーが、アビスのビーム砲が展開し、距離を開けた2機の
ザクに狙いをつける。
『かわせ、ディアッカぁ!』
『やれるもんなら……!』
 視界を塞ぐほどのミサイル、ビームの奔流が2機に襲い掛かり、閃光が宙域を染め上げた。
989:2006/06/03(土) 23:14:48 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 3-3“発露”

「…っ」
 防衛ラインで起こった何度目かの大爆発をモニター越しに見て、マユは細い肩を竦める。
あそこでイザークとディアッカが戦っているのだ。そう思うと震えが止まらない。
戦争では人が死ぬのだと頭で理解は出来ても、受け入れるには辛すぎる事実。
 ヘルメットのフェイスプレートを上げて、滲む熱い雫を手の甲で拭う。
「駄目だ……私…もっとちゃんとしなくちゃ……赤服、なんだから……」
『…聞いてくれ、アスカ君』
「あっ!? は、はい!」
 その時、通信モニターに艦長が表示された。慌てて目を擦るマユ。
『行動不能に陥っている友軍機を発見したのだが、此方の通信が届かん。救助を頼めるかね?』
 同時に、サブモニターが点灯してその様子が映る。岩塊や過去の戦争の残滓が漂う
デブリ帯に、両腕、右足、そして頭部の半分を失ったゲイツRが、戦艦のスクラップに
填まり込んでしまっている。
『勿論、君はこれを拒否できる。君はまだ訓練兵であり、作戦行動に対する…』
「やります。……いえ、やらせて下さい」
 艦長の言葉を遮り、目元を赤くはらしてマユはかぶりを振った。
 とにかく、動きたかった。何か作業をしないと、不安で押し潰されてしまいそうだったから。
「今乗っているMSパイロットは私だけの筈です。私に、行かせて下さい」
『……頼んだ。距離と障害物の関係上、カタパルトは使えない。ハッチを開けるぞ』
 その言葉を聞きつつ、マユはザクウォーリアを起動させた。各所のケーブルが外され、
格納庫の中でゆっくりと立ち上がっていく。
『座標データを送る。……くれぐれも油断するな。何かあれば、直ぐに帰艦するんだ』
「了解しました。マユ=アスカ、ザク、発進します!」
 格納庫の床を蹴ったマユ機が、光の灯らぬ長い通路を抜けて行く。そのまま宇宙空間へと
足を踏み出した。アーモリーワンとボルテールから現在位置を把握し、友軍機のポジション
をメインモニターに表示する。機体を其方に向け、ゆっくりとペダルを踏み込んだ。
「……レーダーの効きが悪い。デブリが、邪魔してるんだ…」
 頭に叩き込まれた知識を口に出して、平静を保とうと努める。無音の闇の中を滑るように
マユ機が移動する。
 そして7秒後、マユ機は破壊されたゲイツRに取り付いた。
999:2006/06/03(土) 23:16:55 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 3-4“発露”

「あの……助けに、来ました。無事、ですか?」
 ゲイツRの凹んだ胸部に触れて回線を開いたマユは、おずおずと言葉を発した。
モニターに変化は無い。ゲイツRの通信能力は、ほぼ完全に失われているようだった。
「あの……今からボルテールに帰ります。デブリを解体しますから……」
『逃げろ!』
「ひっ…」
 突然通信画面にノイズが走り、ザフト兵が映った。
「えっ…?」
『逃げろ! 俺を置いて艦へ戻れ! 直ぐに離れろ!』
 一言ずつ区切り、明瞭に発音するザフト兵。けれどもマユは動けない。
「ほ、放っておけません! 今助けます!」
『違う! これは罠だ! 敵が後方にいるんだ! 早く!!』
 直後、レーダーに光点が輝き、マユ機とゲイツRの直ぐ傍に砲撃が突き刺さる。
スクラップに残留していた推進剤に引火し、2機は艦体の爆発に呑み込まれた。

 省力モードで潜んでいたダガーLの無反動砲から煙が排出され、次弾が装填される。
「直撃を狙ったつもりだったが……外したか」
 スコープを上へ押しやったパイロットは、機体の各部をチェックする。
 僚機を横目で見つつ、レーダー上の敵艦を確認した。
『どうだ、新型はやれたか?』
「レーダーでは確認できませんが……恐らく」
『よし、後はあのナスカ級だ。あれを押さえれば、退路の確保は万全……』
 動き出すボルテールを見て、2機のダガーLがデブリに滑り込む。
「さっさと、片付けますか」

 怖い。怖い。怖い。アラームが、赤い警告灯が、推進剤の爆炎が怖い。
「あぁっ……あああぁーっ!!」
 顔をくしゃくしゃにして、マユは泣き叫んだ。腕の中から抜け、別のデブリに叩きつけられた
ゲイツRの残骸。その半分砕けたモノアイが自分を見つめている。ひび割れたコクピットハッチ
の中がどうなっているか解らない。爆風と破片からは庇ったつもりだが、保証などなかった。
「う、ううぅっ!……っく……ひっく……」
 泣きじゃくるマユの霞んだ視界の中で、ダガーLの航跡がボルテールに迫っていく。
CIWSの火線が2機を追うも、巧みにデブリの間を縫う彼らを捉えきれない。
「私…わたし、は……」
 爆発で煽られた機体を立て直す。機内のアラームが止まった。まだ、動けるのだ。
「私はあああぁっ!!」
 再び叫ぶ。今度は悲鳴ではなく、戦吼。スラスターを全開し、ボルテールへと翔んだ。
1009:2006/06/03(土) 23:19:43 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 3-5“発露”

「ッ! 新型が来ます!」
 先程マユ機に向けて砲撃したパイロットの声に緊張が混じる。
『仕留め切れなかったというのか!? 何という……!』
 ダガーLを猛追するザクウォーリア。太い噴射光が不規則な航跡を描いてデブリ帯を
駆け抜ける。迎え撃とうにも、ボルテールの弾幕が邪魔で満足に動けない。
『くそ! 先にMSを始末するぞ! ダメージを負っている筈だ!』
「了か……」
 その時、2機のダガーLが潜んでいたデブリに円筒が投げ込まれ、激しい閃光が迸った。

 閃光弾を投げ込みつつ、マユは盾に納めていたビームトマホークの柄を掴ませる。
「もっと近く……もっと速く……!」
 イザークの言葉が、表情が思い出される。無反動砲を背負ったダガーLが此方を向いた。
シールドの内部でトマホークを起動させ、盾の縁から輝きが漏れ始める。
「もっと近く……もっと速く……!近く、速くっ!!」
 無反動砲の砲口が一瞬光った時、マユの指先が操縦桿を弾いた。肩部と腰部のスリットが開き、
スラスター光が噴出す。機体が翻り、胸部を狙った砲弾が虚空の彼方へ消えた。
「うわあああぁっ!」
 抜き打ちの如く閃いたトマホークがダガーLの右肩に深々と食い込み、そのまま脇を抜ける。
 まだ終わらない。機体を振り返らせ、2発目のグレネードを掴み取った。
「これでえぇっ!!」
 トマホークを叩き込まれて仰け反った敵機の背部に投擲した。咄嗟の判断か、切り離された
敵のキャノンパックに炸裂弾が当たり、爆発。パックを失った方がデブリに
機体をめり込ませ、
バイザーの奥で火花を散らすと共に機能を止めた。残った片方が、最大速度で離脱を図る。

「ポイントチャーリーで緊急事態発生! 僚機を救助できん! 応援を……!」
 コクピットに飛び込んだ耳障りなロックオンアラームに、パイロットの表情が青ざめる。
「な、何だと……」
 たっぷり1秒以上のアドバンテージがあったにも拘らず、ザクウォーリアが
ぴったりと追随してきていた。砕けたショルダーアーマー、各所に走る火花、炎で曇ったモノアイ。
 そして、構えられたビーム突撃銃。必死に速度を上げ、機体を振って引き離そうとするも、
スラスターの性能差で抑え込まれる。
「化物、か……ッ!」
 為す術もなく、3連射されたビームがダガーLの右脚、左手、バックパックを撃ち砕いた。
1019:2006/06/03(土) 23:23:07 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 3-6“発露”

 致命傷を負ったダガーLが、鮮血のように推進剤を散らしながらデブリにしがみつく。
 バックパックの残滓が弾け、脱出ブロックが排出された。
そして機体の何処かから上がった火花に引火したか、唐突に燃え上がる。
宇宙に咲いた華の中で、機体が足掻く。その様子を見ていたマユの乾いた唇から声が上がる。
「あ……痛ッ…!」
 見下ろしたのは、右腕の義手だった。
「え、どうして……故障? こんな時に……!」
 燃え盛る炎。辺りに漂う瓦礫。そして、フラッシュバック。

 目の前に、1人の男性が立っていた。手を伸ばして近づこうとするも、動けない。
声を上げた。待って、と言っているのだろう。声は届かない。聞こえない。
 右手を振ろうとする。動かない。右手自体が、見えない。そして男が振り返った。
 黒い髪の色、紅い瞳が見えた瞬間、マユの意識は深い泥流に巻き込まれる。
目の前で幾度も黒と紅が交錯し、螺旋を描き深淵へと引きずり込まれていく。
 恐ろしくは無かった。その泥濘のうねりは、優しくて、暖かくて―
「……お、兄ちゃ……」
 大粒の涙を流しながら穏やかな笑みを浮かべたマユは、そのまま意識を手放した。

『マユ! マユっ! ……艦長!なぜマユを出した!』
『申し訳ない、隊長。他に、友軍を救う手が無かった。しかし良く無事で…』
『そんな事は良い! 病院船に連絡を入れろ! 緊急だ!!』
 右舷エンジンが中破したボルテールの傍に、3機のMSが集まっていた。
 イザーク機の右腕、頭部は無く、そして全身には夥しい傷痕が刻まれている。
ディアッカ機と共にアビス、ガイア、カオスと1分間余り交戦し、戦い抜いたのだ。
『大丈夫そうか? イザーク』
『俺が知るかぁ!!』
『へーへー……しっかし、やってくれるぜ……』
 両脚と左腕を失ったディアッカ機が、乏しい推進剤を使って周囲を見渡す。
マユが2機のダガーLを行動不能にした直ぐ後に、セカンドステージ3機と残存する
ダークダガー隊が此処を通過したのであった。幸い彼らの興味はボルテールに無く、
通り抜けざまに無反動砲1発とミサイルを浴びただけで済んだ。彼らは脱出ブロックを
回収した後、全速で宙域を離脱していったのである。
『面倒な事に……なんなきゃ良いんだけどな』
 自機を抜け出したイザークがマユ機のコクピットハッチに取り付く。その遥か彼方に、
地球の蒼が静かな輝きを放っていた。
1029:2006/06/03(土) 23:49:39 ID:???
to be continued...を入れ忘れる始末 orz

 というわけで、キリの良い所まで書きました。脱出ブロックなるシステムが
入っていますが、鈍くて脆いMS(特に量産機)には当然ついているだろうという事で、
本編設定を曲げて加えさせて頂きました。

<次回>
Episode4"軋む歯車"
「大佐、正直それはどうかと」
103通常の名無しさんの3倍:2006/06/03(土) 23:56:35 ID:???
かっこよかったよ、乙!
104通常の名無しさんの3倍:2006/06/04(日) 00:01:09 ID:???
Scars ofの作者さん乙です。MSの戦闘描写が分かりやすくて好きです。イザークの言ってた「アイツ」ってやっぱあの娘だろうなぁ。
105通常の名無しさんの3倍:2006/06/04(日) 01:54:02 ID:???
単発設定小話 「ミーティア」明けない夜 中だるみ編

〜各都市を破壊しながら連合が侵攻しているとの情報がはいったジュール隊〜
イザーク「ええいっ!本当にナチュラルト共は頭が悪いな!」
ディアッカ「イザーク・・・頭が悪いんじゃないさ。往生際が悪いのさ」
イザーク「はんっ!ナチュラル共と馴れ合って感化されおって!」
ディアッカ「・・・なんだと?・・・イザーク。お前上官だからって言っていいことと悪いことがあるぞ!」
〜イザークにつかみかかるディアッカ。そこにシホがやってくる〜
シホ「!ちょっと、二人ともなにやってるんですか!?」
イザーク「おう、シホ!こいつにいってやれ。ナチュラルのスパイだと!!」
ディアッカ「今度はスパイっていいやがったな?このやろう!!」
〜イザークの頬を握りこぶしで殴りつけるディアッカ〜
イザーク「ぐっはぁっ!!」
シホ「二人とも止めなさい!!せっかくノワールのストライクショートケーキを買ってきたんですから!!」
イザーク&ディアッカ「!!」
イザーク「それを早く言わんか!シホ!なぁ、ディアッカ?」
ディアッカ「まったくだぜ。部屋に入ってきたときにいってくれればイザークを殴らずにすんだだぞ」
シホ「・・・それって・・・わたしのせいなのですか?」
〜紅茶を用意し、ケーキを分けるイザークとディアッカ〜

〜エターナル〜
ラクス「こちらのMSは?」
マーズ「ザフトのサードステージMS開発のために作られたテスト機ですぜ」
バルドフェルド「マーズ。こいつはお前たちの3機だけなのか?」
マーズ「こいつら3機だけっすけどね。虎の旦那にはこいつを用意しましたぜ」
〜奥の扉が開き、四肢でたたずむMSが浮かび上がる〜
バルドフェルド「こいつは・・・ガイアか?」
ラクス「ガイアというと・・・ザフトが連合に奪われたうちの1台ですか?」
マーズ「こいつはガイアの設計を基に、このファクトリーで作ったんです」
バルドフェルド「・・・・・・すまんな。マーズ・・・・・・」
〜アイシャの顔を一瞬浮かべたバルドフェルド〜

〜プラント〜
デュランダル「忙しいところ呼び出して悪いね」
サラ「いえ。議長のお呼びでしたらどこかれでもすぐに駆けつけますわ」
デュランダル「それは嬉しいことをいってくれる。・・・さて、本題なんだが・・・」
サラ「・・・新型のテストなのでしょう?」
デュランダル「察しがいいね。頭のいい娘は好きだよ」
サラ「・・・・・・それはどうも」
デュランダル「・・・シュミレートで改善点をピックアップしてほしいんだ。こいつの」
サラ「!・・・これは・・・・・・ミーティア?」

完  ・・・引き続き明けない夜編は続く
106通常の名無しさんの3倍:2006/06/04(日) 01:59:42 ID:???
>>9
乙です
二人と、艦長と、もちろん作者氏のマユへの偏愛が
よく伝わってきた回でした。
おっとスレ的には褒め言葉ですよ
107マユ種のひと:2006/06/04(日) 07:39:54 ID:???
前スレ>613、>614、>615の続き

第四十五話
 地上。朝。折り重なりながらも、ぐっすりと眠る妙齢からやや上の女性達が一つの部屋を占める。その様子を見取ったコニールは、視線を、少し年下からずっと年下の子供達に囲まれる、茶色の髪のステラに向けた。
 子供の一人が、ザフトのすごいMSを見つけたから皆で観に行こう、と誘う。ステラは、それが多分、軍事機密に関わると考えて止めるように言った。しかし、その子供は、ザフトの人から今度は皆で観に来ればいい、と言われたことを告げた。
 他の子供達も観たい観たいと言い出したので、ステラは思い悩む。すると、コニールから、こっちの面倒は自分がみるから、一緒に行ってくるように言われた。ステラは難色を示すが、子供達は勝手にMSのところに行くとコニールに言われて、渋々同行を決めた。

 ヴェサリウスの格納庫。マユはレジェンドの応急処置が終わるのを待っている。その最中、イザークやディアッカ等のザクが戻ってきた。彼等の元に一刻も早く駆けつけたかったマユは、この帰艦が嬉しくも、驚きを以て見守っていた。
 イザークはその場で説明、あの後、フリーダムは全てドミニオンに戻り、後退した。しかし、諦めたとは思えない、恐らく機を窺っている。
 ブリッジから、アビーが他方の現状を伝える。方々でウィンダム隊の出現を確認、ザフト艦隊に攻撃を仕掛けながら、その中心、デスティニーとの合流を目指している模様。
 差し出がましいと知りつつ、アビーは進言、今の内なら、拠点付近の特機が率いる戦力を叩けるのではないか、と。しかし、マユは素っ気無く却下、今のヴェサリウスの戦力で問題の特機を倒すのは難しい。
 あのMSを知っているのか、ディアッカは尋ねた。ミネルバとアークエンジェルの戦力総掛かりでも無傷だった化け物、とマユ。そしてイザークが、個々に撤退の始まった今、味方の危機を減らすため、自分達が戦う相手はフリーダム隊であることを明確にする。
 ヴェサリウスの進路は二隻のドミニオンに向けられた。直後、七機の黒いフリーダムとStフリーダムの出撃を確認。艦内が眼前の脅威に備える中、レジェンドに飛び乗ったマユは遥か遠くを見詰め、貴方の思い通りに動かない、そう呟いた。

 ジブリールは、部下から受けた報告で凄まじい不快感を顕わにし、舞台袖でウロチョロする鼠が、と吐き捨てた。しかし、瞬く間に表情を整えて、ある人物との会談に臨む。その人物とは、プラント最高評議会臨時議長、アイリーン・カナーバだった。
 まずはアイリーンから握手を求め、ジブリールも応じる。大局を見据えた正しい選択をされた、とアイリーンの絶賛。ジブリールは否定し、ロゴスからの出向盟主が人徳のなさ故に地球を追われ、惨めに保身を計っただけ、と謙遜した。

 地上。ザフトの演習地。居並ぶカオスとアビスに目を輝かせる子供達、その子供達にこのMSがどれだけ素晴らしい物かを語るザフトの技術者。それから少し離れて、ステラが佇み、その隣にレイとルナがいた。
 レイは自己紹介と現・カオスのパイロットをステラに伝える。ルナもそれに習い、現・アビスのパイロットであることを盛り込んだ自己紹介をする。ステラも、名前だけ明かす。
そして、ステラから、これは大丈夫なのか、と聞いてきた。
 ルナは、ここでの演習は今日までで、明日からここに配備されるから、まあ、自分達の頼もしさを事前に喧伝していると思えば。それに、今更隠し立てする機体でもないから。一通り答えてから、ルナはステラに質問、あの子供達は何。
108マユ種のひと:2006/06/04(日) 07:40:48 ID:???
 コニールの家は今、夜中にザフト相手に仕事をしている女の人達の溜まり場になっている、それで駄賃を貰って仕事中の母親に代わって面倒を見ている子供達。あれが全部、と目を丸くするルナ。ステラは否定、数えると何人か余るから、多分、孤児も混ざっている。
 そんな大雑把でいいのか、ルナは改めて尋ねる。ステラの答えは、コニールとも話し合って決めたけど、追求して事実を明らかにしたら、その子を追い出さないといけなくなる、子供の親の有無は何となくわかるから、だから、そのままでいい。
 ルナは心配そうな眼差しを送る。察したレイは、マユが渡した金があれば当面の間は大丈夫だろう、とルナに語りかけた。すると、ステラはすごく言い辛そうに、そのお金はコニールのお父さんが全額持ち逃げした、と説明した。言葉を無くすレイとルナ。
 でも、父への恨み言、転じて世の男供への愚痴をつらつら並べるようになったお陰で、コニールはすぐに皆と仲良くなり、皆がコニールの家に集まるようになった、とステラは苦笑して語る。そして最後に、色々あるけど何とかやっている、で締めた。
 と、その時、目を輝かせた子供達がレイとルナに殺到、口々にインパルスの、マユ・アスカの話が聞きたいと言ってきた。向こうで謝る技術者。期待の眼差しを向けるステラ。レイとルナは目配せで意思確認、そして、最初の出会いは、で切り出した。

 無傷なMSが一体もないヴェサリウスの格納庫。整備士達は急ぎ仕事に取り掛かる。その整備士の一人に、邪魔だから退くように言われたディアッカは、去り際、特にひどく傷つき、シートが赤く染まったレジェンドを一瞥した。
 ブリッジ。アビーは周囲に敵の不在を確認し、味方の艦隊と共に何とか逃げ延びたことをイザークに報告。その後で、アビーはイザークに、マユを見舞いたい、と懇願する。しかし、イザークは突っぱねる、それは無事に帰還してからだ、と。
 マユは今、医務室のベッドで眠っていた。

 プラントのニュース。このほど行われた連合拠点を巡る攻防で、連合はMS強奪犯にしてコロニー破壊未遂のテロリストに協力を求め、見た目だけを真似て量産した似非フリーダムを投入してきた。しかし、我等のザフトは敵拠点に大打撃を与え、見事、凱旋を果たした。
 画面はその時の映像として、レジェンドの勇姿が映し出されていた。番組の評論家は、レジェンドのドラグーンはいずれ一般の武装となるザフトに対し、欠点の多い前時代の最新機・フリーダムに頼らざるをえない連合はまさに脆弱である、と断言した。
 プラント行政府。仕事の片手間で聴いたニュースを、エザリアはさすがに白々しいと感じていた。同時に、出撃前の、実子・イザークの進言も思い出していた。
 ジャスティスの一団はコロニーの破壊を狙っていた。目的は避難民を増やすこと、水も空気も住む空間も限定された、いわばプラントへの兵糧攻め。自分達はあの神出鬼没の敵に柔軟に対処できるだけの武装と権限がある。だから、次の作戦は見合わせて欲しい。
 エザリアも、できることならそうしたかった。しかし、無理だった。そして、自分が画策して立ち上げた現政権も、マユも、急速に自分の手を離れつつあることを思い知った。

 ジブリールを乗せ、月への帰路を行くシャトル。そのシャトルの傍ら、ミラージュコロイドを解いてデスティニーは現れた。単刀直入、ジブリールはネオに指令を下す。
 信じられない話だが、外部から何者かが月に侵入し、情報を奪い、現在逃走中だ。このため、不本意ながらアイリーンとの密談に応じ、譲歩しなくてはならかなった。これ以上、不本意な事態を誘発させないためにもファントム・ペインの総力を以て処理に当たれ。
 了解。ネオの返答が宙に消えると共に、デスティニーも消失した。
109マユ種のひと:2006/06/04(日) 07:41:37 ID:???
 プラント最高評議会の席で、アイリーンはジブリールとの密談の成果を語る。
 一部を除いて、連合の支配宙域を侵さなければ月の戦力は動かない。また月基地の地下にはサイクロプスがあり、もしもの時はその使用も躊躇しない。不戦については今後を見守るしかないが、サイクロプスについては基地再建から監視して集めてきた情報がそれを裏付けている。
 議会はどよめく。先の戦闘で底力が証明された連合の宇宙戦力との衝突回避と、月基地の占領が最終目標として密かに掲げられていた事実が、彼等にそうさせた。
 アイリーンは地球の情勢についても語る。現在、連合を牛耳るブルーコスモスの強硬派は、ユニウスセブン落下事件に触発され、あくまで外交として今回の戦争を終結させようとしたロゴスを排し、自らの手でコーディネーターを粛清しようと目論んでいる。
 前大戦を彷彿とさせるが、前大戦と違い、ロゴス排除の凶行と勝算なき戦争の継続で、連合内でも賛同者は少ない。むしろ、密かに是正を望む者の方が多いだろう。
 そして、アイリーンは提案する、連合本拠地であるヘブンズ・ゲートへの大規模降下作戦の実行を。またも議会はどよめくが、言の葉に乗るのは希望に満ちた憶測だった。
 そんな中、エザリアは鋭く言い放つ。ならば性急に動かず、連合の自滅を待った方が良い。我々は幸いにも、国民に現政権が消極的と責められる心配はない、ただの小競り合いをさも一大決戦と国民に誤認させてくれる、優れたカードを持っているのだから。
 アイリーンは答える。降下作戦の成否を分ける、月の連合戦力は確実に動かない。月の事実上の支配者でありながら、地球とも宇宙とも孤立しているジブリールは、殺されるか、もしくは降下作戦を黙認するしか、ブルーコスモスと無関係と証明する術はない。
 実際、降下したとしても、最悪、ヘブンズ・ゲートにサイクロプス設置の懸念もあるが、それを念頭に置いた上で立ち回れば前大戦のような損害はない。第一、事実上、連合が地球圏で孤立している以上、ヘブンズ・ゲートを失えば連合は終わりだ。
 逆に、時間を掛ければ苦境を打破するため、連合、いや、ブルーコスモスが核を使用する可能性もある。そうなったら、それこそ前大戦の再現になる。
 しかし、エザリアは食い下がった。そもそも戦争継続の発端であるデュランダル暗殺事件、その真相は評議会でも未だ憶測でしか語られていない。血のバレンタイン、ユニウスセブン落下事件、どちらも背後関係が明らかだったから戦争に踏み切れた筈だ。
 すると、アイリーンは笑った。暗殺者の正体はもう判明している。

 ヴェサリウス。私服のマユは、部下達全員の前で、入院している間中、ずっと考えた結論を告げる。ガーディ・ルーとの浅はかならぬ因縁の存在と、今はそれを語れない事情があることを説明、いつか全てを話すことを約束し、頭を下げた。
 そして、マユが恐る恐る頭を上げると、お祝いの花束を渡された。呆気にとられたマユだが、徐々に、年上の部下達が、自分の復帰を祝ってくれていると実感した。
 それからすぐ後、まだ全員がいる前で、マユは連行される。理由は、死んだ筈の実兄との、現在の関係について、であった。

ディアッカ「ま、俺達もガキじゃねぇし、マユが信頼できるかどうかは、今までの行動が教えてくれる、ってな」
イザーク「要するに、これからもよろしくお願いします上官殿、だ」
マユ「え、あ……、その、こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
110通常の名無しさんの3倍:2006/06/04(日) 10:20:11 ID:???
9氏乙!
インパルスとかガンダムに乗るマユばかり見てきたせいか
マユザクtueeeeeeeeeeeee!!!

マユ種のデスティニーはホント存在自体に威圧感あるなぁ。
ケタ違いの性能って言葉がしっくりくる。
111通常の名無しさんの3倍:2006/06/04(日) 11:52:51 ID:???
強すぎる主人公は萎えるが、強すぎる敵は燃えるね。
対決で主人公たちがぼろぼろになりながら、いかにして勝利を掴むか。
それが魅せ所になりますし。
112通常の名無しさんの3倍:2006/06/04(日) 13:20:41 ID:???
デスティニーの性能と外見は、かなり強いラスボスになれる要素があったのになぁ
113通常の名無しさんの3倍:2006/06/05(月) 13:39:40 ID:???
sageで保守
114通常の名無しさんの3倍:2006/06/05(月) 16:31:37 ID:???
>>111
種死は主人公シンで作りきった場合
乗り越えるべき壁=前作主人公on最強機体、
→いろいろあって共闘→和解という王道の流れになる。

…はずだった
115通常の名無しさんの3倍:2006/06/05(月) 20:11:12 ID:???
>>114
最後の「和解という王道」は同人アニメでもそうだったが…
王道どころか邪道に見えるのは何故だろう

あと中盤のお約束でライバルとの対決があるが、このスレ的にマユの相手は
シンonストライクMK-U
キラonフリーダムorキラ専用ムラサメ
どれがいいと思う?
116通常の名無しさんの3倍:2006/06/05(月) 20:14:39 ID:???
>>115
一部もうやっちゃった作品もあるし、違う見せ方の作品もあるが、
あえて言うとしたらシンonストライクMK-U
117通常の名無しさんの3倍:2006/06/05(月) 20:24:00 ID:???
マユVSキラの途中で乱入してきたシンがマユの危機に記憶を取り戻して
身を挺して庇うも爆死、再びマユVSキラ

っていう凄まじくベタな展開を昔考えた事はある。
118通常の名無しさんの3倍:2006/06/05(月) 20:45:01 ID:???
短編でいいので是非SS化を
119通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 00:33:08 ID:???
単発設定小話 「ムラサメ」明けない夜編D

〜フリーダムとインパルスに狙いを定めるデストロイ〜
ステラ「いやぁぁぁー!!お前は・・・お前たちはなんなんだ!?・・・くぅぁぁああぁー!」
キラ「っぐ。・・・攻撃の仕方が・・・めちゃくちゃだよ!」
〜シュトゥルムファウストがフリーダムとインパルスを追回し、近接用の火気で攻撃を続けるデストロイ〜
キラ「はぁ・・・はぁはぁ。ザフトのガンダム・・・僕も狙っているの?まるで1対2で戦ってるみたいだ」
マユ「・・・こいつは倒さなきゃならないけど・・・私は、私はあんたも倒したいのよ!」
〜デストロイを中心に攻撃を仕掛けつつフリーダムにも攻撃をするインパルス〜
ステラ「・・・落ちろって・・・・・・いってんだろぉがぁっ!!」
キラ「あぁっ!これ以上街を壊させやしないよっ!」
ステラ「このっ!カトンボが!!」
マユ「背面!がら空き!」
〜フリーダムの背に向かいビームライフルを撃つインパルス〜
キラ「!なにっ!後ろから!!いやっこっちか!?」
〜インパルスのビームを阻むようにフリーダムの背面を取るシュトゥルムファウスト〜
マユ「なっ!なんでそっちが邪魔するのよ!まったく!図体ばかり大きいわけじゃないでしょうに」
〜シュトゥルムファウストにインパルスが撃ったビームが当たる〜
キラ「・・・っはっは。きっと・・・偶然だろうけど・・・助かったよ!さぁ、今度こそ!」
ステラ「なに!?こっちが落とされた?・・・あのトリコロール!」
マユ「っち!・・・やっぱりそっちを先にやったほうがいいのかしら?」
〜スクリーンに映るデストロイにつぶやくマユ〜
ステラ「・・・お前から・・・・・・」
キラ「たぁー!!」
〜デストロイの胸部を切りつけるフリーダム〜
ステラ「っぐ!!・・・なにっ!」
〜フリーダムのビームサーベルはデストロイの胸部を切り裂きそこからはコックピット内が見える〜
マユ「!!あの人・・・ステラっていったっけ!?なんでこんなMSに!?」
キラ「もう一回!」
ステラ「・・・この・・・・・・コーディネイターどもがぁっ!!」
〜デストロイのありとあらゆる火器を開放するステラ〜
マユ「なっ!・・・敵も味方も、もう関係なしってゆうの?・・・じゃぁ・・・私があなたを眠らせてあげるわっ!」
キラ「これ以上は・・・殺したくはないっ。けど・・・けど・・・・・・なんであんたたちはぁー!!」
〜ビームサーベルを構え、デストロイに突進するインパルスとフリーダム〜
マユ「ハァッー!!」
〜フリーダムとインパルスのビームサーベルは同時にデストロイのコックピットを貫く〜
ステラ「・・・がはぁっ!・・・・・・そんな・・・コーディネイターど・・・もが・・・・・・」
キラ「はぁ、はぁ、はぁ。やった・・・・・・!」
〜フリーダムに構えるインパルス
マユ「これで邪魔者はいないわよ・・・さぁ!フリーダム!!」
キラ「・・・今、君との戦いに意味はないよ・・・・・・」
〜その場を離脱しようとするフリーダム。そこに新たな閃光が走る〜
マユ「きゃっ!・・・まだMSが!?」
キラ「・・・・・・ムラサメ?」
〜一機のムラサメがビームを撃ちながらインパルスとフリーダムに接近してくる〜
シン「ステラァァー!!」

明けない夜編 完  ・・・・・・次回、ステラ編へとそのまま突入
120通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 17:40:09 ID:???
ここの職人さんって他スレと掛け持ちしている人いるの?
121通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 18:10:01 ID:???
自分はかけもちしてませんね…今の状態で既に仕上がり遅くていっぱいいっぱいの状況ですから…
12286:2006/06/06(火) 19:25:04 ID:???
マユトレイ、完成しました。投下します。
>>120
ベタベタなまでに「王道」な話を一つだけ書いてます。
123通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 19:26:06 ID:???
 戦争は終わった。今は平和だ。戦いなんて遠い彼方。
 それが一般的な認識であり、普通の人はそう考えている。
 だが、そう考えていない人がいるから――傭兵に仕事が来る。

ガンダムSEED DESTINY ASTRAY M 第一話 「残党」

 コンソールを叩いて、レーダーを呼び出す。一通り確認した後、私は呟いた。

 「……敵影なし。機体状況オールグリーン」

 映っているのは、護衛対象の大型車両と殺風景な冬の荒野だけ。今のところ任務遂行に
問題はない。
 私は今、GAT-01「ストライクダガー」に乗っている。場所はヨーロッパの人里離れた土地。
依頼は護衛任務。補給物資を届けて欲しいというものだ。軍からの依頼ではない以上、
依頼人はテロリストの類だろう。
 この依頼を受けたのは、姿を晒さずに請けることができたため。傭兵として生きるうえ
で、私の年齢は大きな足かせとなる。弱冠14歳の無名の傭兵に依頼をする人はそうそう
いないだろう。「サーカス」出身だということを使う手もあるが、足がつくのは避けたい。
一度契約してしまえば後はこちらのものだ。文句を言われようと陰口を叩かれようと、依
頼を遂行すればいい。
 幸い今までは何の障害も無く進んでこれた。確か予定では、ここで依頼者が護衛を追加、
ここからの道案内をしてくれるはずだが……
 と、ここでレーダーに反応。黒塗りされたジンがモニターに映る。同時に通信が届いた。

「こちらサトー。依頼した傭兵と物資で間違いないか?」

 サトーと名乗る男はいかにも歴戦の戦士という感じのいかつい風貌の男だった。依頼主
が言っていた護衛で間違いない。パイロットスーツからすると、ザフト脱走兵だろう。

「ええ。今のところ、物資に損傷は無いよ」
「ん……? 子供、なのか?」

 私の声に相手は驚いたようだ。……当然の反応といえば、そうだろう。

「だから何? 今更契約破棄とは言わないよね?」
「……まぁ、よかろう。実力があるのなら構わんが、それにしても……」
「なに?」
「気にするな。独り言だ」

 サトーはそう言い捨てて、来た方向へジンを歩かせだした。ついてこい、というわけだ。
少し車両を先行させてから、私は出発した。サトーが前面を守り、後ろは私が守るという
布陣をとるためだ。



124通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 19:27:29 ID:???
 しばらく進んだが、依然敵影なし。しかし風景は少しずつ変わりつつある。平地だった
地形が段々と傾斜がつき始めた。サトーの話によると、山の上に廃墟と化した町があり、
そこに物資を運ぶのだという。

「……止まれ」

 サトーからの通信が入る。どうやら異変に感づいたらしいが……私には普通の山道にし
か見えない。レーダーには敵は映っていないし、MSの足跡やキャタピラの跡も無い。

「敵影や、それらしい兆候はないけど?」
「空からはそうは見えてはおらん。ディンから通信が来た。敵機を発見したようだ」
「え? ディンなんてどこに……」
「ワタリガラスだ、気づかれずに敵機を探知できる。車両は目的地へ先行させて、我らは
敵機を撃退する。よいな?」
「……了解」

 ワタリガラス――おそらく、ディンレイブンのことだろう。この機体は少しだけしか量
産されていないはず、なぜこんな残党軍が持っているのか。どうやら相当な人物が背後に
いるようだ。案外、依頼人を辿っていけばとんでもない人物にぶつかるのかもしれない。
 ともかく、今は任務だ。ストライクダガーにバズーカ(減衰率の関係上、大気圏内では
ビームライフルの威力は落ちる。電力も食うので、私は実弾を好む)を構えさせながらサ
トーのジンと共に来た道を戻る。大して歩かないうちに、レーダーが警告を出した。

「砲撃っ!?」

 咄嗟にダガーを跳ばせた。今までいた地点に、レールガンが着弾する。私より早く避け
ていたサトーが、敵機を見て呟いた。

「……ふん、ナチュラル共め。まだあのような物を使っているか」

 その言葉に釣られて見た先には……赤茶色に塗られたダガー。「サーカス」時代、私もあ
れに乗ったことがある。GAT-01D「ロングダガー」。コーディネイターと同等かそれ以上
の能力を有するパイロット向けに開発された高性能機。もちろん、ナチュラスにそんなパ
イロットはそうそういない。連合はこの機体を主としてソキウス――戦うために作られた
コーディネイターに配備したという経歴がある。サトーが憤慨するのも当然だろう。しか
し反乱などに対する不安から、ソキウスは全て処分されたと聞いたが……。

「……どのみち、強敵には違いないか」

 少なくともロングダガーを扱えるという時点で、相当なレベルのパイロットである事に
間違いない。それに、相手の素性なんて、傭兵の私には関係の無いことだ。

「散るぞ。敵はフォルステラを装備している以上、固まっていても利は無い」
「ええ」

125通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 19:28:46 ID:???
 サトーの指示を受け、私は左へダガーを走らせる。サトーのジンは右だ。同時に、二機
とも手持ちの武器でロングダガーへ攻撃をかけた。しかし……

「アイツ……速い!?」

 ロングダガーは大きな推力を持つバーニアを持つことで、その機体重量にも拘らず高い
機動性を誇る。だから、速いのは当然かつ普通のこと。だけど、あれはそういうレベルじ
ゃない。パイロットの判断と反応が的確で速い。
 機銃とバズーカの弾幕を避けながら、ロングダガーはリニアキャノンとミサイル、そし
てビームライフルを撃ちこんでくる。その狙いは的確だ。その上、たった一機なのにこち
らの火力を上回っている。……なら。

「勝ち目があるのは……接近戦!」

 リニアキャノンの砲がこちらを向くと同時に、ストライダガーを前へ跳ばせた。リニア
キャノンは音速より速い。そんな武器を避けるには、砲の向きで弾道を予測するしかない。
機体の下をリニアキャノンが通り過ぎると同時に、ミサイルが飛来する。弾速の違いを利
用した時間差攻撃だ。イーゲルシュテルンで素早く撃ち落としながら着地。ビームライフ
ルはジンへ向けて発射していたはず、武器を再発射される前に接近できる……!

「愚か者が……退けっ!」
「……えっ!?」

 サトーからの警告。そしてモニターに映っているのは、ロングダガーのシールド。
……まさか、投げた!?
 シールドは質量がある。だから、直撃させればバランスは崩せる。しかし、それ以上に
防御力を失うというデメリットが大きいから、普通はシールドを投げるなんて事はしない。
――だから、奇襲として成り立った。
 シールドはコックピットに命中し、私は激しく揺さぶられた。バランスを保てなかった
ストライクダガーは転倒する。意識が一瞬飛びかけながらもなんとか持ち直し、モニター
に目を向けた。映っているのは、こちらを向いているリニアキャノンの砲。

「ふん、手間を焼かせる!」

 思わず覚悟を決めた瞬間、脇からサトーのジンが躍り出ていた。リニアキャノンにシー
ルドごと左腕が吹き飛ばされてなお、ジンは真正面からロングダガーへ突進する。その右
手には既に重斬刀が握られていた。……いくらなんでも無謀だ。

「ちょっとっ!?」
「貴様はそこで好機を待て!」

 そう通信を返すと同時に、サトーのジンは跳躍していた。視界の外へ消える物を、目で
追ってしまうのは人間心理として当然だ。先ほどまでロックを合わせていた物なら尚更。
ロングダガーのゴーグルカメラが上を向く……

126通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 19:30:11 ID:???
「……そういうわけね!」

 サトーの意図……囮になるという考えを理解した私はダガーを起き上がらせるのももど
かしく、倒れたままバズーカを撃った。狙った通り、弾は頭部……フォルステラに守られ
ていない弱点に命中する。メインカメラが破壊され、ロングダガーの動きが途端に悪くな
った。同時にサトーのジンは軌道を変え、重斬刀を突き出しながら突っ込んでいく。だが
その瞬間、ロングダガーが光を放った。

「きゃっ!」
「閃光弾か!」

 許容量以上の光に、一瞬モニターがホワイトアウトする。機能が回復した時、残ってい
たのは廃棄されたフォルステラだけだ。……要するに、逃げられたらしい。




「サトーさん、だった? 一つ聞きたいんだけど」

 護衛任務は完了した。連合の機体と交戦してしまった以上、おそらくザフトの脱走兵で
あろう彼らは他にもしなくてはならない事ができたのだろうが、それは私の任務じゃない。
 帰還する前に、私は彼に一つ質問をした。

「……何だ」
「なんで私を庇ったの? あの状況下なら、私を囮にして接近戦を仕掛けた方が成功率は
 高いよ」
「ふん。そうしてほしかったとでも?」
「別に。でも、傭兵ってそうされてもおかしくない立場でしょ?」

 大した感慨もなく、私は言った。
 一般的には傭兵は碌な扱いをされない。あの有名な傭兵部隊・サーペントテールも、そ
の名の由来はそういった傭兵の扱いからだ。そんな傭兵をかばう、なんて行動をする人間
は滅多にいない。
 しばらく黙り込んだ後、サトーはゆっくりと話しだした。

「黄道連合、とは知っているか?」
「?」
「ザフトの前身と言える組織だ。俺はその組織で、パトリック・ザラの警護を担当していた。
 ……我が戦友、クリスティンと共にな」

 サトーの話すところによると、クリスティンは昔からずっと縁があった存在らしい。二人は
共にあらゆる任務を達成していき、黄道同盟がザフトという名に変わってもその縁は続いた。

「だが……奴は死んだ。ブルーコスモスのテロで俺をかばってな。
 死に際に頼まれたのだよ、家族を頼むと。俺はそれを了承した。……この写真だ」
127通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 19:31:31 ID:???
 サトーは一枚の写真を取り出して見せた。気のよさそうな男と、女の人が写っている。

「これには写っていないが、奴には娘がいてな。……貴様に似ていた」
「……その人たちは、今どこに?」
「死んだ。『血のバレンタイン』でな」
「……」

 沈黙が満ちる。しばらくして、感情を抑えたような声でサトーは言った。

「俺は連合の奴らなどとの和平を認めん。あのような手段で民間人を殺す奴らとはな。
 この身が尽きるまで戦う……誓いを守れなかった俺が、奴の魂を慰める方法など
 他にあるまい」

 例え抑えていても、その声からはにじみ出る物がはっきりと感じられた。
そして……最後に向き直って、サトーは別れの挨拶を言った。

「さらばだ、幼き傭兵よ。俺のつまらんエゴだが……貴様が死なん事を祈る」





とある海に面した豪邸。そこでは、一人の女がモニターに向かっていた。

「……驚いた。彼女が撤退させられるなんてね」

 そう呟く視線の先には、金髪の少女の画像。名前は「ステラ・ルーシェ」とある。
言葉とは裏腹に、その女の表情には笑みがあった。

「脱走兵はともかく、問題は傭兵の方。ふふ、サーカスにいた頃から見込みがあったそ
うだものね、彼女。手駒として使えば、意外と成長してくれるかも……」

 そうして、彼女は電話を取り上げた。一言二言伝えただけで、相手は彼女が誰かすぐ
理解する。

「ええ、確か人手が必要だったわね? 傭兵を雇わせなさい。名前? マユ・アスカよ。
 私の見込みに狂いはないわ。任せなさい」

――彼女の名はマティス。
地球連合軍特殊情報部隊を率いる身でありながら、独自の信念に基づいて動く女。
彼女の軌跡は、マユの軌跡に大きな影響を与えていく――
128通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 19:35:03 ID:???
投下終了。
こんな感じで本編の脇キャラを使って書いていくことになると思います。
ただ、イワンとかマーレはこのスレでも出てるからメインで使うかも……

アストレイ読んでいない人は、マティスについて「誰?」と思うかもしれませんが、
偉くて何か企んでる嫌な女という認識で結構です。
129通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 20:09:18 ID:???
おおおおおおっ!?
斬新な切り口のあとに小説版のコロ落ちかジオフロを思い起こさせる内容!
俺は新たな神の誕生を目撃しているのかッ!
130通常の名無しさんの3倍:2006/06/07(水) 00:21:57 ID:???
サトーさんええなあ・・・。それにしても、第三勢力として登場ってのは
今後の展開が予想にしくく、先が楽しみです。文章も読みやすいし・・・

超・GJ!
131通常の名無しさんの3倍:2006/06/07(水) 01:12:23 ID:???
いかにもアストレイ系の雰囲気がムンムンしてますな。
適度な泥臭さを感じさせる展開が(゚∀゚)イイ!!
132通常の名無しさんの3倍:2006/06/07(水) 18:32:56 ID:???
サトーが…深い…
133ほのぼのマユデス。女の戦い第3章。:2006/06/07(水) 23:40:36 ID:???
「なぁ、ハイネ。もうヒロインとかいいじゃん。ステラでいいじゃん。」
 「だめだネオのおっさん。変態だろうがなんだろうがヒロインはヒロインだから。」
結局最初の最初であっさり終了した勝負。
なんかあ実況とかするひまもなく終わった勝負を見て呟く二人。
 「貴様らぁぁぁぁぁ!!あの写真はどうやって・・っ?!」
 「え?エザリアに頼んだらあっという間にデータ転送してくれたぜ?」
 「なっ・・・?!貴様母上とどういう関係だ?!」
すみっこで今にも頭が爆発しそうなイザークとひょうひょうとしているジョー。
 『・・・・えー、気を取り直して次の勝負へ行くぜ!!次は歌とダンスで勝負だ!!』
変な雰囲気を吹き飛ばそうと必死にディアッカが進行させる。
そしてそのセリフに驚愕するマユデスメンバー。
 「・・・・・やばくね?ミーア。」
 「大丈夫。」
アウルの心配をよそにゼロは平然と答える。
 「ミーアちゃんのことだから昔のジャン○の歌でも歌うわよ。」
グレイシアの発言に皆の脳内に金ぴかの鎧をきて「ぺーがさすふぁんたじーそうさゆーめーだけわー♪」と熱唱するミーアが思い浮かぶ。
そして同時に首を振る。流石にそれはない。・・・・・・・たぶん。
 「と・・、ともかく危なくなったらどうする?」
スティングが心配そうに言うとシンハロははっきり言った。
 『ディスティニーを暴走させてごまかす。』
「「「「「「ひでぇ!!」」」」」」」

134ほのぼのマユデス。女の戦い第U章。:2006/06/07(水) 23:42:36 ID:???
 『はーい、それではまず一番最初に歌うのはシホ・ハーネンフースだ!!』
うぉーと興奮した男共の声が聞こえ、それに重なって聞こえるのは・・・・演歌だ。
演歌の前奏だ。なんかシホがセリフ言ってる。
そして、歌いだす。

演歌だった、そりゃうまいけど、演歌だった。
切々と浮気する旦那にたいする女房の思いを歌った演歌だった。ミスコンで歌う曲じゃない。
皆も想像して欲しい、学園のアイドルなんてモノじゃなくて良い、例えば好きな子でもかわいいクラスの女の子でもいい。
そんな彼女が文化祭のカラオケ大会に出るって言った。どんな曲を歌うかドキドキ。
そしたら演歌、演歌。きっといまのジュール隊の気持ちはそんな感じだろう。

 「うまいんだけどなぁ・・・。」
 「うまいんだけどねぇ・・・。」
歌い終わったシホが退場してから呟くハイネとネオ。二人とも心底微妙な顔をしている。

 『え・・・、えー次はルナマリア・ホークだ!!頼むぜぇ!!』
バカに明るい曲が流れて極彩のスポットライト。
そして、世界が崩壊した。
何人かが倒れる、一部は耳をふさぐ、一部は頭を抱える。アキラとシンハロは平然としている。
そう、シホ・ハーネンフースが演歌ならば彼女は『電波』。
アウルが隅っこで縮こまって耳をふさぐ。キースが泡を吹いて倒れる。
スティングは速攻で逃げ出し、ゼロは愛用の布を自分の頭にグルグル巻きにして音を遮断する。
 「うわ、すげー。ネクロノミコン超えたか?ルナマリア。」
 『寧ろ邪神?』
平然と電波ソングの中、語り合うシンハロとアキラ。
曲が終わってからの十分間はまだ瘴気が漂っていた。

 「・・・・・・・はっ!!」
 「おっさん、大丈夫か?!」
机の突っ伏して気絶していたネオをハイネは気遣う。
 「やべぇ、巨乳のねーちゃんが夢に出てきてさぁ・・・・・・。」
 「大丈夫そうだな、ほら、司会!!次々!!」
ハイネに促されてディアッカが進める。
135ほのぼのマユデス。女の戦い第U章。:2006/06/07(水) 23:44:03 ID:???
『えー、じゃあ今度こそ!!今度こそまともな曲頼む!!ステラ・ルーシェ!!』
そう言うと聞き覚えのあるポップな前奏が流れる。
 「おい・・、これって・・・。」
 「ミー・・・、ラクス様の!!」
ハイネとネオが言うと、舞台にトタトタと出てくるステラ。もちろん彼女に合わせた水色のハロもいる。
その格好は、ミーアのいつもの衣装だった。
 「ウハwwwwテラヤバスwwwwwwwww」
 「シン、鼻血でてるぞ。」
大興奮するシンにティッシュを渡すレイ。
 『しずかなーこのよるにー♪あなたをーまぁってるのー♪』
くるくる踊りながら歌うステラ。
 「なんつーか、ミーアとはやっぱ違うよなぁ。」
 「アレよ、癒しオーラよ。」
わいわい話す皆をよそにアスランは何やら怪訝な顔をする。
何やらじっとステラのそばで跳ねているハロを見つめている。
そして、何やら思いつくことがあるのかはっとする。
 「大変だ・・・・・・!!」
 「なんだよアスラン。いま良いとこだぜ?」
何やら慌てるアスランにアウルが不満そうに答える。
 「あのハロ・・・、多分この間からいなかった211号だ!!」
 「・・・・・・・・それで?」
怪訝な顔するアウルにアスランは深刻な顔で答える。
 「皆が知っての通り俺のハロにはそれぞれ特殊機能が一体ずつついててな・・・。」
 「いや、知らないから。初耳だから。」
 「それなんてスティッ○のイトコ?」
相変わらず深刻そうに話すアスランに次々に突込みが入る。
 「例えばピンクのハロには鍵開け、緋色のハロは自爆、ネイビーのハロには月光ちょ・・・・・いや、なんでもない。」
 「まて、なんて言いかけた。」
スティングが不振な一言を呟いたアスランに突っ込む。
 「それで・・、あのハロの特殊能力は・・・超音波だ。うっかり手荒なマネをして作動させたら・・・・・・。」
ステラの後ろには大きなスクリーン、さらに上にはスポットライト。
そして、踊っていたステラの足が軽くハロを蹴ってしまう。
ダンスには支障が無いが、何やらハロの目が点滅する。
 「ステラ!!」
シンが機械の足をフル稼働してステラの元へ近づく。
目の前にいる兵士を吹き飛ばし、文字どおり一直線にステラの元へ向かう。
そしてそのまま舞台の前まで来ると一気にジャンプで舞台へ上がり、無理矢理ステラを降ろす。
 『ナイスだ!!』
その間にコンピューターの制御を奪い取ったシンハロが非常用シャッターを閉め客席と舞台を隔離する。
ちょうどその上にいたディアッカは客席のほうへとぶっとばされる。
そして次の瞬間、シャッターの中から大量にガラスの割れる音が聞こえた。
136ほのぼのマユデス。女の戦い第U章。:2006/06/07(水) 23:45:24 ID:???
「ステラ!!」
「ごめんなさい・・・・・。」
アスランに怒られシュンとするステラ。
「どうして勝手に持ち出したんだ・・・、ステラはそんな悪い子じゃないだろ?」
アスランが言うとステラはうつむきながら呟いた。
「ステラも・・・ハロ・・・・欲しかったの。マユと・・シンハロとか・・ミーアちゃんと・・あかいハロとか・・うらやましかった。」
「だったら正直に言え。それくらいすぐに作ってあげるから。」
そう言ってステラの頭をなでるアスラン、和やかな雰囲気が流れる。
「わーたーしーのーでーばーん!!」
『うわー!!マユがバーサーカーだ!!』
その一方で暴れるマユ。それを皆で抑える。



「ネオのおっさん、修理費はファントムペインだよな?」
設備を壊され切れかけているハイネ。
ネオでさえ背筋に寒い物が走る。
「俺お気に入りの高画質巨大スクリーンにスポットライト・・・・・それにシンハロが強制介入したせいで
シャッターのプログラムもおかしくなってるみたいだし。壊した責任、ぜーんぶまとめて払ってもらうぜ。」
にっこり微笑みながらハイネは語る。たぶんこの場にハイネ隊がいたら本気で怒っていることを察しどうにかしてとめただろう。
しかし、ここには誰もいない。
ネオの断末魔がほのぼのとした空気にかき消された。
137通常の名無しさんの3倍:2006/06/08(木) 13:39:23 ID:???
ベルガギロスwwwwwwwwwwwwwwwww
ルナマリアwwwwwwwwwww
138通常の名無しさんの3倍:2006/06/08(木) 14:35:02 ID:???
緋色ナツカシス。今も種世界の平行宇宙のどこかで
無口な男を笑わせたり犬と戯れたりしてるんだろうか。

ピンクにも元ネタあるのかな…
139通常の名無しさんの3倍:2006/06/08(木) 15:37:35 ID:???
>ネイビーのハロには月光ちょ・・・・・
ちょwwアスランおまwwww
140通常の名無しさんの3倍:2006/06/09(金) 20:05:20 ID:???
>>118
117だが、考えてたところまでは文章に起こしてみたんで
需要があれば投下可能。どうしよう?
ホントに短編だけど…。
141通常の名無しさんの3倍:2006/06/09(金) 20:25:58 ID:???
>>140
このスレは、短編でも問題ありませんよ。
142通常の名無しさんの3倍:2006/06/09(金) 22:08:40 ID:???
>>140
とりあえず投下してみろ。まずはそれからだ。
143通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 10:08:45 ID:???
何事も経験だ!
144117:2006/06/10(土) 12:10:00 ID:???
了解した。
一番オイシイ所だけ先に書いてしまうが、各職人の皆様、許して。

とりあえず基本設定
・マユはザフトでインパルス搭乗、デスティニーシルエット装備
・シンは連合兵(立場的にはゲン?)デスティニー搭乗
・キラは原作どおりの立ち位置でストフリ搭乗、悪役っぽいかも
・マユVS記憶操作シンの戦闘があり、シンは敗れた後
・アスカ一家を殺ったのは間違いなくキラ
145117:2006/06/10(土) 12:14:48 ID:???
 ――おれは、敗れたのだ。
 中破した機体の中で一人、シン・アスカは思いを巡らす。デブリに当たらないよう、
マユが小惑星の影に隠していってくれたデスティニーの中で。
 デスティニーは最強の機体であるはずだった。所詮模造品に過ぎない、マユが駆るインパルスの
デスティニーシルエットなどとは性能の桁が違う。
 それでも敗れたのは、心のチカラにもっと大きな差があったから……。

 おれは憎しみの為に戦った。敵を滅ぼす為に戦った。殺すために戦っていた。
 だが、あいつは――マユはどうだ。おれを殺そうとはしていなかった。あの偽善者、
フリーダムの奴とは違う。マユは敵であるおれを『救うために』戦いを挑んできたのだ。

『もう私の知ってるお兄ちゃんじゃないんだね。でも、この世界のどこかで生きていてくれれば
私はそれでいい……それだけでずっと幸せ。私はひとりじゃないって、思えるから――』

 おれは、こんなに強くはなれない。愛のために戦う奴は、いつだって強い。
「……さすがは、おれの妹だよな」
 連合に施された記憶操作など、マユの渾身の叫びの前にはチリに等しい物だった。
彼は最も幸福だった故郷での日々を思い出し、その記憶を噛み締め、泣いた。

 血まみれのおれだが、愛情のために戦う権利は残されているだろうか。
「デスティニー、行こうぜ。これがお前の最後の仕事だ」
 操縦桿を握りこむ。左足と右腕、左翼、頭部を失った機体がぎこちなく始動する。
「……頼む、動け。動けぇーッ!」
 片一方になった光の翼が、開いた。デスティニーは悲鳴を上げるハイブリッドエンジンの
最後の力を振り絞り、妹と宿敵の待つ戦場へ飛び立つ。

 ストライクフリーダム。何と恐るべきモビルスーツなのか。
 インパルスはデスティニーシルエットによって辛うじて善戦している。フォースでも
ソードでもブラストでも、『彼』が相手では勝負にならなかっただろう。
 圧倒的な火力はマユに反撃の隙を与えず、格闘戦でも舞うような二刀流に対応できない。
悔しいがパイロットとしての腕でも、あちらの方が上だ。
146117:2006/06/10(土) 12:23:12 ID:???
 だが、コイツにだけは負けられない。最高のコーディネーター、キラ・ヤマト――
「……あんたは、私の両親を殺した」
 ドラグーンの包み込むような集中砲火を不規則な機動でかわし、Gに耐えながら声を絞り出す。
「それだけじゃなく、今またあの女に従って世界を混乱させようとしてる!」
 蒼く光る地球を背に、フリーダムは悠然と翼を広げドラグーンを呼び戻した。
 しばしの静寂。向かい合う二つの“ガンダム”。

「僕はね、ラクスのやってることが正しいかどうかは解らない」

「な……なら、なんで――」
 突然の告白に、マユは怒りのあまり言葉が繋がらない。
「この二年間というもの、自分たちの戦いを正当化するためのもっともらしい口実、
いわゆる『正義』を探し続けてた。でも、僕が大嫌いだったフリーダムにもう一度
乗るきっかけになったのは、筋の通った大義名分じゃなく、ラクスを守りたいという想いだった」

「開き直るつもり!?」

「――そうだね。僕が辿り着いた結論はやっぱり、戦う動機はいつも個人的なもので、
ラクスを守るためだったら僕はテロリストと呼んでもらっても構わない……ってことかな」
 その思いの一部分は理解できる。自分だって、兄のために軍機を侵したことはあった。
 それでもこの男は、何かが根本的にズレている。守りたいと言いつつ、その実彼自身が
ラクス・クラインに依存しているだけなのではないか――?
「やっぱ、あんたって最低。真理を見つけたつもりになって、そのくせやってることは
変わらず自己正当化で、自分に酔ってる。……ホント、話すたびに失望させられるわ」
 厳しい糾弾にも崩れないキラの微笑みが、逆に恐ろしく見える。
「残念だけど……この二年でもう一つ学んだことがある。人の人格を作るのは経験と環境で、
考え方の基礎になる部分が違ってる人とは、互いに譲り合うしかないんだ。でも」
 フリーダムの手にはいつ抜刀したのか、ビームサーベルが握られている。
「君に譲るつもりは無いんだろう?」

「当然」
147通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 12:30:39 ID:???
 インパルスも大剣を掴む。
「なら、ぶつかりあうしかない」
「どうやら、二年間を無駄に費やしたみたいね」
 二機は寸分の差もなく、敵に向かって突進した。

 一閃。振りぬく腕も見えず、フリーダムの剣が対艦刀を半ばから叩き切る。しかしそれは
マユにとって囮でしかなく、真の狙いはもう一本の剣による攻撃。既に横へ回り込んでいた
インパルスが大剣を振りかぶる。
 もう一方のサーベルで回転の勢いを乗せ、敵を切り裂こうとしたキラは、光刃が虚しく
虚空を切るまでマユの狙いに気付かなかった。
「! リーチが足りない……」

 サーベルを形成する磁場は、サーベル基部からそう遠くまで届かない。
 だが、実体剣にレーザーを通した対艦刀なら。
「――届くッ!」
 渾身の力で振りぬいた一撃。掲げたビームシールドもろともに、フリーダムの左腕を
はるか宇宙の彼方へ吹き飛ばす。
 そのまま回転し、青く輝く翼のミラージュコロイドが敵のカメラを惑わせている隙に離脱。
「どうよ、私にだって……」
 敵に一矢報いた。その高揚感が隙を生んだのかもしれない。言い終える前にインパルスは
激しく揺さぶられ、唐突にメインカメラが落ちた。
「被弾!? まだ、撃てる体勢じゃなかったはず――!」

 マユは先程の攻撃で、大剣の切先に神経の全てを集中していた。それは
攻撃力を極限まで高めていたものの、防御力を著しく削ぐ行為に他ならない。
彼女は気付かなかった。本体の死角となる左翼下部のドラグーンが一機だけ、
切り飛ばした腕の破片に紛れて飛び出していたことに。

 サブカメラに切り替えるまでの間に、また衝撃。今度は一本残った対艦刀が破壊されている。
そして敵は、完全に体制を取り戻していた。
148117:2006/06/10(土) 12:38:46 ID:???
「許せ、ラクスを守るためだ――」
 カリドゥス改 複列位相ビーム砲に光が集まる。

 殺られる……!

 そう思った瞬間に、赤い光がモニターを覆い尽くす。
「なに? この光……デスティニー?」
 フリーダムが放ったカリドゥスを、左手一本のパルマ・フィオキーナで相殺している。
その負荷に耐え切れず、まもなく左腕が爆砕した。そう、それは確かにデスティニーだった。
「お兄ちゃんっ!? なんでここに――なんで、私を――」
「マユ、おれは全部思い出したよ」
 連合の生体兵器ではない、シン・アスカという人間の声がそこにあった。
「さんざん酷いことして、ごめん。友達を殺して、ごめん。お前のことを思い出せなくて、ごめん。
謝っても許されないことだって解ってるけど、とにかく……すまなかった」
「もういいっ! もういいから、離脱して! 逃げて!」
 いまのキラ・ヤマトは、シンを殺してしまうだろう。
 フリーダムの翼が弾ける。ドラグーンがピタリと配置につき、デスティニーを包囲する――
「……マユ、お前の強さは敵を憎んでちゃ出せないよ。誰かのために、誰かを守るために戦うとき、
自分のために戦うときよりずっと……強くなれるんだ」
「わかった! わかったから、早く――」
 マユの必死の叫びを遮り、シンの静かな声が通信機越しに流れ出た。
「……だから、ヤツを憎んでちゃお前は勝てない。忘れるな、お前にはまだ……」
 ドラグーンの砲口が輝くさまが、まるでスローモーションのように見えた。
それなのに、マユは指一本動かせない。
「……帰れる場所がある。帰りを待ってる人がいる」
 放たれたビームさえ、残酷なほどのろかった。デスティニーには、コアスプレンダーのような
脱出機構がない。たとえあったとしても、彼は……。

 8つの火線が一点に集束した。
 上下左右から撃ち抜かれ、火を噴いて弾け飛んでいくデスティニー。無事であるはずのない
コックピットから最後に聞こえてきた兄の声は、不思議なほど穏やかだった。

「――人生の最後の瞬間に、お前のお兄ちゃんでいられて、良かった」

 ハイブリッドエンジンが爆発し、砕け散るデスティニーは巨大な火球へと転じた。

 少女は兄の言葉を反芻する余裕も無く、目の前で散った命の残光を眺めている。
「う……う、あぁ――」
 彼女は二度、家族を亡くした。一度目は二年前のオノゴロ、二度目はたった今。
たった今、この世界に残った最後の肉親がいなくなった。
 ――それらは全て、一人の男によって引き起こされた死。その男は、目の前にいる。

「……無理だよ、お兄ちゃん。こんな――」
 死んだように動かなくなっていたインパルスの翼に光が甦る。そして、マユの脳裏で
何かが音を立て、弾けた。
「――こんなことをされて敵を憎まない人なんて、いるはずがないッ!」
149117:2006/06/10(土) 12:44:56 ID:???
( ´・ω・`)
やあ。
ごめんね、ここまでしか考えてなかったから前代未聞の中途半端短編なんだ。
インパDシルエットの翼が青かったりっていうのはうろ覚えだから
オリジナル設定になってるかもしれない。
それでも上の文章で頭の中に何かを思い浮かべてくれれば幸いだと思う。

……キラ好きな人、かなりスマンカッタorz
150通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 13:17:15 ID:???
>>117
シン 「マユ、忘れないで。憎しみだけで戦わないで。それではラクシズは止められないぞ」
マユ 「お兄ちゃん」
シン 「悲しまないで、マユ。俺は孤独じゃなかったよ、いつでも。最後にはお前にも会えた。ありがとう」
アスラン 「キラ急げ!回想シーンが終わった時、あのインパルスがバーサーカーになって襲ってきたらどうするのだ!」
キラ 「それが、SEEDなるものだというのだな」

マユ 「ううっ・・・くっ・・・」
151通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 14:26:15 ID:???
最後の一行で一気にジョジョ化した気がするのは俺だけか?w
「こんなものを見せられて頭に来ねえヤツはいねえーーーーッ!」
152通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 15:15:37 ID:???
>>117氏乙!
長編にも挑戦してみては?
あと冒頭の部分読んでたら何故かアインハンダーがやりたくなったw

>>151
俺もw

キラ「最終ラウンドだ!いくぞ!」
153通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 15:25:31 ID:???
チェケダーン
154通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 15:45:22 ID:???
『自由』(ザ・フルバースト)、時よ止まれッ!
155通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 18:40:58 ID:???
>>149
どうしても続きがかけないのなら、他の人に代筆を依頼してみてはいかが?
156通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 18:49:51 ID:???
>>155
それはやめとけ
リアルの繋がりでの代筆ならともかく
ネットの繋がりでの代筆は難しいし結果的に荒れるだろう
157通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 21:32:12 ID:???
単発設定小話 「song's」超ショートショート編

■ignited-イグナイテッド-
〜強奪されたカオス、アビス、ガイアを取り戻すため発進するインパルス〜
マユ「やっと、やっと巡って来た!待っていたのよ、この機会を!!」
スティング「あぁ!?なんだあの飛行機はっ!」
アウル「なんだよ、あれ。聞いてないっての!」
ステラ「・・・未確認の・・・新型みたい・・・・・・」
〜カオス、アビスを牽制するインパルス〜
マユ「わたしは、わたしはまだ戦争していたんだから!!」

■Reason
〜岩石の封じ込みから脱出したミネルバ〜
マユ「・・・一応、お礼はしておきます。ありがとうございました」
アスラン「礼なんていい。こっちも命がかかってるからな。それにしても・・・まだ子供じゃないか」
マユ「わたしは特例でこの船に、そしてインパルスのパイロットになったんです」
アスラン「そうか・・・・・・デュランダル議長はなかなか見る目がいいらしい」
マユ「・・・・・・あなたも再び戦いはじめるんですか?」
アスラン「さあな・・・。オーブの動向しだいだと思うが・・・、お前は俺が動かないと不満なのだろう?」
マユ「当然です。この2年間の穴埋めをあなた方は行う義務があります」
アスラン「・・・・・・そうだな」

■PRIDE
〜ユニウスセブン落下直前にガーティ・ルーへと帰還したインパルス〜
シン「くそっ!システムダウンってなんだよ!」
ネオ「なんだなんだ?なに愚痴ってんだよ?」
シン「大佐!ちゃんとテストしないから敵のMSをやりそこなったじゃないか!!」
ネオ「だからテストも兼ねているっていったろ?」
シン「あーもう!だからそれが敵を落としそこなった原因だっていってるんだよ!」
ネオ「・・・ちゃんと動けばやれたんだな?」
シン「・・・当然だろ。俺の実力は大佐が一番わかってるだろ?」

■Life Goes On
〜ミネルバ、艦長室〜
タリア「ちゃんとグランマのいうことは聞いてる?」
子供「うん。ちゃんと聞いてるよ。僕ね、昨日友だちと魚釣りにいったんだ」
タリア「子供だけでいったの?だめよ。ちゃんと大人の人と行かなきゃ」
子供「ビギンズおじさんが一緒だから平気だよ!」
タリア「そう〜・・・」
〜通信終了後〜
タリア「・・・・・・マユ・アスカ・・・確かに優秀な兵士だけど。ギルバート、あの娘はまだまだ遊びたい盛りのはずよ・・・・・・」

完  ・・・・・・各曲のタイトルの意味にそって、描写していない隙間を埋めてみました。後編はまた別途・・・。
158ほのぼのマユデス。女の戦い第3章。:2006/06/10(土) 23:14:12 ID:???
「えー、これ以上やると艦が潰れそうなので場所を変えようと思います。」
「・・・・・・場所ってどこだよ。」
「電脳世界。」



『と、いうわけでサイバーバトルだぁぁぁぁ!!』
ディアッカが高らかと宣言する。
ここはミネルバにあるシンハロのサイバーポッドのある部屋である。
 『もー、急にいわれても大変なんだからさぁ・・・・。空間作成・・・・・・・隔壁作成・・・。』
シンハロが巨大モニターの前にあるコントロールパネルに自分をつなぎ、仮想空間を作っている。
さらに数十秒立つと青い光で作られた空間が作られ、そこにマユ達の姿が現われる。
 『えーっと、武器とかとにかくイメージしたものは何でもでてくる。自分達の想像力でどうにかしてくれー。』
シンハロがもうどうでもいいや、と言いたげにため息を吐きながら説明する。
 『それでは!!ガールズファイト、レディ、ゴー!!』
そうディアッカが言った途端ルナマリアが構える。
何やらぶつぶつ良いながら両手を上にかざし、一気に振り下ろす。
すると正面にいきなり魔方陣のような物が現われて、そこから二つの影が飛び出す。
 「なっ!!」
マユがその影の攻撃を出現させたトンファーで受け止める。
相手の武器は日本刀、そして敵は黒いコートをきた美青年だった。
 「・・・・・・っ!!まさか・・!○狗の血?!」
マユは同様しつつもトンファーを敵に叩き込む。敵は鏡のように割れて消えた。
 「そうよ!!ためして見たけどうまくいくとわね!!」
どうやらルナマリアは自分の妄想力をいかしてキャラクターを召喚する寸法らしい。
次々に魔方陣が現われそこから何人もの男性(全員美形)が現われる。
 「くっ!!画像がないから著作権を無視できる小説なのをいいことに!!」
拳銃をもったシホが毒づく。
159ほのぼのマユデス。女の戦い第3章。:2006/06/10(土) 23:16:13 ID:???
 「ふふふ・・、さぁ、行きなさい。とっととあんた達をかたづけて脳内妄想を現実にするんだから!!」
 『人の空間でBLを繰り広げるなぁぁぁぁぁ!!』
シンハロの叫び虚しくルナマリアは次々にキャラクターを繰り出していく。
王道ジャンプ系からエロゲーの男性キャラまでありとあらゆる腐女子の餌食になった人々が出てくる。
 「ゲートオブザベーコンレタス?!」
マユは呟きがら装備を変える、マシンガンだ。
それを連射して襲い掛かる敵をやっつける、が、喰らっても倒れないのが何人かいる。
 「くそっ、人外もいるのね?!」
シホも同じようにアサルトライフルを持っている。
どうやらルナマリアの呼び出すモノはもろいし動きはあまりよくないが設定は完璧らしい。
 「ゆるせない・・・・・・。」
何やらとある一画からもの凄いオーラが出ている。
最初はゆらり、としていたものが一気に燃え上がる。
 「・・・・・・・こんな形で少年マン○のキャラを呼び出すなんて・・・許せない!!」
ミーアが叫ぶ。その手にはサンライトハー○。アニメ化で再燃してきたらしい。
 「別にやおい妄想するのはいい!!」
そう叫びながら一気にルナマリアへ向かっていく。
 「とんでもない妄想をするのは構わない!!」
向かってくる敵をばっさりと切りまくる、もちろん臓物なんてぶちまけない。鏡のように割れていく。
 「でも・・・、こんな風に!!人形みたいに!!魂をなくすなんて許さない!!」

 「やべぇ、ミーアの奴本気だ・・・・・。」
ジョーが怯えた目でモニターを見つめる。
 「俺、プラントの皆様に全力で謝らなくちゃいけない気がするよ。」
カルマがため息ながらに呟く。微妙に涙目。

 「くっ!!変身!!」
そうルナマリアが叫ぶと彼女の服が変わる。
チャイナ服のようだが下はスカートだ。

 「・・・・GGの紗○?」
アキラが呟く。確かルナマリアの愛用キャラだったはずだ。

その服に変わった途端、急にルナマリアの動きが早くなる。おそるべし妄想力。
 「むむっ!!だったら私も!!」
そう言うとマユの服が変わる。オレンジを貴重とした服に海賊のような帽子。手にはいかり。

 「・・・・・・こんどはメ○かよ・・・。」
アウルがげんなりとした顔で言う。メ○はアウルの愛用キャラだ。ちなみにマユはソ○。

ぶつかり合う拳とイルカ。あ、鯨もでてきた。
すっかり置いてけぼりのシホ。向こうでマニアックな戦いを繰り広げる三人を遠くから見ている。
すると、うしろから地響きが聞こえてくる。
 「な・・・・何?」
そう思って後ろを振り向くと。

なにやらおっきな塊につかまった。
160ほのぼのマユデス。女の戦い第3章。:2006/06/10(土) 23:18:42 ID:???
「うぇーい♪うぇーい♪」
ごろごろと塊をころがすデフォルメされてちみっこいステラ。
ルナマリアが呼び出したキャラクターを吸収して大きくなった塊。
BGMはもちろん、らーららららーらーらーかたま○だましーいー♪

「あ・・・そうか。」
「はまってたもんねぇ、ステラ。」
スティングとキースが画面をみて微妙な目で言う。

「ちょ・・、ステラ・・・・。」
「反則・・・・でしょ・・・・・?」
「・・・・・・・逃げるわよ!!」

そう言ってステラの塊から必死に逃げる三人。
散らばれはいいものを一緒の方向へ逃げる。

「ステラ!ストップ!!」
「ステラ!!こんどクレープ奢るから!!」
「ステラ!!ジャン○まっさき最初にステラが読んで良いから!!」

「うぇーーーーーーい♪」
ご機嫌のステラは三人の事なんか気にしない。容赦しない。ごろごろと塊を全力でころがす。
そして、三人はお約束の「きゃー!!」とかそんなセリフとともに塊にまきこまれ星になった。


ぱっぱぱー♪


 『     マユデス星

     15m43cm70mm      』

1619:2006/06/11(日) 11:51:11 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 4-1“軋む歯車”

「艦長、左前方にて目標を視認しました。……ダミーです」
 オペレーターからの報告を受けたローラシア級の艦長は、小さく溜息をついた。
「やはりというか、何というか、か。モビルスーツ隊に破壊させろ」
「回収しなくてもよろしいのですか?」
「トラップの可能性が高い。それに、証拠も残っておるまい」
「了解しました。…やはり地球連合の部隊なのでしょうね、奴らは」
「連合とは現在停戦中だ。滅多な事を口にするな」
「ハッ……」
 若い白服の言動を咎めつつ、艦長は苦い表情と共にMS隊の作業を見遣る。
アーモリーワンを襲撃した部隊および、その母艦『ボギー1』を追跡すべく
ザフト艦隊は総力を挙げていたが、状況は芳しくない。
 まず奪われた新型とダガー部隊が撤退する間際に、アーモリーワンの防衛隊に向けて
対艦ロケット及び高出力のビームが撃ち込まれた。母艦かあるいは別のバックアップチームに
違いないという事で駆けつけてみれば、其処にはデブリに設置された、遠隔操作型の
砲台が置かれているのみだったのである。此処で大きく遅れを取った。
 その上、敵艦は高性能クローキングデバイス『ミラージュコロイド』を装備していた為、
レーダーでの補足も不可能。ならばと他の反応を探知した所、疑わしい航跡が5つも出た。
 其処から物量に物を言わせた虱潰しが始まり、現在に至る。
「これで……5つの内4つまでがネガティブ。当たりクジを引いたのは……」
「ミネルバ、ですね。新造艦の」
「うむ。ザフトきっての脚自慢だ。恐らくボギー1を補足出来るだろう」
 制帽を被り直し、艦長は破壊されたダミーの光に眼を細める。
「とんだ進水式になってご苦労な事だが……ま、グラディス艦長のお手並み拝見、だな」

 ヤキン・ドゥーエの戦い以降、益々密度を増しつつあるデブリ海。漂っていた残骸の一つが、
何かに突き飛ばされて流れていく。そして空間が揺らめき、ダークブラウンの船体が姿を
現した。横腹に書かれた『お客様の笑顔が、私達の喜びです』という赤い文字が光を反射し、
反対側の『長距離輸送はアムネシア通運を』というはげかかったペイントに
別のデブリが
当たって塗料を削り取る。エンジンを点火させ、瓦礫の海洋へと消えていった。
 『ガーティ・ルー』。地球連合所属の特務艦にして、アーモリーワン襲撃部隊の母艦である。
1629:2006/06/11(日) 11:56:37 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 4-2“軋む歯車”

「当たりクジを、引いてしまいましたな……」
 ガーティ・ルーのブリッジで指揮を取っていたイアン=リー艦長が、渋い表情でぼやく。
それを聞きつけた、グレーと赤で塗り分けられた仮面を被った男が雑誌から顔を上げた。
「補足されたのか? リー」
「その予定、です。放った測定ブイからデータを見るに、かなりの速度ですね」
 手元のハンディコンピューターを閉じ、イアンは作業着と宇宙服が一体化した民間用の
ノーマルスーツの首元を緩める。
 ブリッジクルーに制服を着ている者はいない。各々が持ち込んだような、統一性の無い
様々なスーツがあちこちで見かけられ、艦内は雑然としていた。
船体の外装、内装共に化学処理で古びた雰囲気を醸し出しており、さながらくたびれた
輸送船である。
「低温ガスを噴射する推進方法といっても、センサーに反応しない訳ではないのです。
案自体は数年前に考案されていた、クラシックな代物ですからね……」
「ダミーはバラ撒いたろう?」
「航跡を全て調べられればアウトです。時間稼ぎにはなりますが、完全ではない」
 艦長席のコンソールを開き、イアンは仮面の男を見た。その瞳に浮かぶのは猜疑心。
「欠陥のあったハッキングツール、アーモリーワンへの強襲を最初から計画してあったかの
ような装備。……『スポンサー達』はもう平和に飽きたのですか?」
「……さぁ?」
 口元から上を覆い隠す仮面の男と、実直を地で行く壮年の艦長。視線が交錯する。
「まぁ、良いでしょう。……ところで」
 軽く咳払いし、イアンは改めて仮面の男を眺め回した。
「大佐、正直それはどうかと」
「はっ? 何が?」
「……その仮面に、ライトパープルのアロハシャツとハーフパンツはどうなのか、と」
「い、いや、どうかって言われても」
 ネオ=ロアノーク大佐はヌード雑誌を閉じて、肩を竦めた。
「万一こいつが撃沈されて俺達の遺体が揚収された時に、身元が……」
「視界に入るだけで鬱陶しいので、着替えて頂けませんか?」
「おい……」
 ネオの口元から笑みが消え、席から立つ。向き直るイアン。
「何が不満だ。色か。丈か」
「全部」
「ほー……」
 互いの視線が火花を散らしかけた時、ブリッジの扉がスライドする。
「ネオっ!」
 まだ少年の物といって良い高めの声が飛び込んできた。
1639:2006/06/11(日) 11:58:08 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 4-3“軋む歯車”

「君達! 最適化ルームで待機するよう伝えた筈だが!?」
 イアンの厳しい声音に、アウルを追いかけてきたスティングが慌てて弁明した。
「お、俺はアウルを止めようとして! ステラは、走り出したアウルについてきて……」
「……解った。大変だな、君も」
 ブリッジに雪崩れ込んできた3人を順に眺め、イアンはこめかみを指で押さえた。
「有難うネオ! オレずっと信じてた! 絶対助けてくれるって!」
 2、3時間前と正反対の言葉と共にネオに駆け寄るアウル。両手を広げるネオ。
「アウル……」
 口元に笑みが浮かんだ。
「……とぅ」
「ッギャー!?」
 広げた腕をそのまま振りぬき、ラリアット気味に小柄なアウルを跳ね飛ばすネオ。
扉にぶつけた頭を両手で抱えて唸るアウルを他所に、続いてスティングの胸元を掴んだ。
「エライ事やってくれたな! 誰が新型機その物を持って来いって言った!?」
「あ、あれは渡されたハッキングツールがががが」
「問答無用ォ! しかも捨てずに持って帰りやがって! 生還率がグっと……」
 其処まで言い掛け、ネオはハっと顔を上げる。離れて立っていたステラが、哀しげに
自分を見ていた。
「……ネオ、怒ってる」
「あ……いやその」
「ステラ……悪い事、したの?」
 潤む瞳。滲む涙。スティングを投げ捨て、駆け寄って頭を撫で回すネオ。
「違う! 違うぞステラ! 俺は怒ってるんじゃない! ただ心配で、心配で…」
「ほん、と……?」
「本当だ! ステラはよくやった! ステラは偉い! よく帰って来た!」
「ち、ちょっと待て! 何だ、その扱いの差ぁ!!」
 指差して抗議するスティングに対し、ステラの髪を撫でるネオは平然と言い放った。
「ステラは、可愛い。お前らは、可愛くない。解るな?」
「だ、ダメ大人……」
「そうだこのダメ大人が! ロリコン仮面が!」
「まあ、フォローに向かった連中を全員生還させた事は褒めてや……おい今
何つったスティング! 何がロリコン仮面だ!」
「言葉通りではありませんか、大佐」
「リー!?」
 仮面越しに解るほどの愕然とした表情を向けてくるネオに背中を向けるイアン。
「しかし……実際大した物だ。第81独立機動群。通称……」
 幼稚園状態のガーティ・ルーのブリッジで、イアンは独りごちる。
「ファントムペイン、か」
1649:2006/06/11(日) 12:00:19 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 4-4“軋む歯車”

「ファントム……ペイン?」
「そう、幻肢痛といってね……無いはずの場所が痛むのよ」
 病室のベッドに背中を凭れさせたマユが、メタリックな光沢を放つ自分の右腕を見下ろす。
 フレームがむき出しになり、指先にゴム製のパーツが取り付けられた黒い義手。機能性のみを
追求したそれは、さながら肉が削げ落ちた人骨のようだった。
「原因はまだ解明されてないの。色んな説があるわ。ストレスから来るとか、神経断端……
つまり失った根元の神経、が刺激を受けて痛む、とか……」
 医師の指先が、義手の付け根を包む赤いカバーに触れた。
「後者の可能性はほぼ無いわ。義手に問題は無いし、調整した直ぐ後だし」
「じゃあ、ストレス……ですか」
「そう、ね。戦闘中に起きた事なら、再発も……」
 医師はそこで言葉を止め、マユを見た。
「……マユちゃんさえ望むなら、カルテを書いてあげられるわ」
「えっ?」
「傷病除隊という事にすれば、誰からも後ろ指を差されないはずよ」
「……」
「すごく、怖い思いをしたでしょう? これから平和に過ごせるの」
 医師の言葉に、マユはただ俯くばかりだった。

『これは議長からの要望でもあるのよ』
「喩え誰からの要望が絡もうと、その指示は承服できかねる」
 アーモリーワン司令部。スクリーンに映った女性の言葉に対し、イザークは首を横に振った。
『それに、マユ=アスカは訓練兵でありながら敵2機を撃墜し……』
「2機墜とそうが200機墜とそうが! 期間を終了していない者を……!
大体、ザフトは原則として義勇軍の筈だ!!」
『……大局を見て、ジュール隊長』
「ッ……」
 女性は溜息をつき、小首を傾げた。
『私だって彼女を正規兵に繰り上げるのは嫌よ。でも、状況は甘くない』
「解っている……つもりだ」
『もしあのボギー1に地球連合が関与していたら、停戦協定が崩れるかもしれない。
そして私達プラントの…ザフトの最大の問題は、物量なのよ』
「解っている……! そんな事は、理解している!」
『では……正しい判断をお願いするわ。兵を束ねる白服としての判断を……』
 暗転するスクリーンの前でイザークは銀髪を揺らし、下唇を噛み締めた。
1659:2006/06/11(日) 12:02:09 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 4-5“軋む歯車”

 当然の話だけれども、殺し合いは嫌いだ。それなのに、何故医師の提案に対し、
お願いしますと言えないのだろう。
 イザークが、ディアッカが気になるから? 彼らに申し訳ないから?
いいえ、違う。そんな綺麗な理由じゃない。言い訳は幾らでも出来るはずだ。2人にも、
自分にも。
 では、まさか自分は戦いを望んでいるというの? そんな筈も……無い。無いと、思う。
…………本当に?
「マユ、ちゃん?」
 医師の呼びかけに、マユはようやく顔を上げた。
「あの、その幻肢痛って薬とかで抑えられないんですか?」
「出来なくはないけれども、あくまで対症療法よ。それに……」
 その時、病室のブザーが鳴った。インターフォンに慣れ親しんだディアッカの声が届く。
『マユちゃん? うちの隊長がさぁ、呼んでんだけど……来れそう?』
「あ、はい! 今行きます」
 反動をつけてベッドから起き上がって、床に脚をつける。医師に頭を下げて、背中を向けた。
「先生、お世話になりました」
「……気を、つけてね」
 通路へと出て行くその小さな後ろ姿を見送った後、医師は机に突っ伏した。
「駄目だわ……軍医失格ね、私」

 オフィスに足を踏み入れたマユは、目の前に突き出された再生紙をまじまじと見詰めた。
「マユ=アスカ。現時刻をもって、訓練期間を終了とする」
 何時もの硬い声でイザークが文面を読み上げる。
「尚、ジュール隊は2時間後にボルテールでアーモリーワンを出航し、ユニウスセブン周辺の
哨戒任務にあたること。以上」
「……あの、訓練兵じゃなくなるって事は?」
 未だ状況が飲み込めていないマユが、しどろもどろにイザークへ問うた。
「お前の功績が認められ、訓練期間が切り上げられた。それだけだ」
 言った後、力の限り執務机を殴りつける。
「だが俺は認めていないッ! お前のようなヒヨコと肩を並べるなどというのは甚だ…!」
「解っています、隊長」
 言い終わる前に、マユは笑顔で応えた。
「特例処置っていう事、ですよね。これからも変わらず、御指導をお願いします」
「……い、良い心がけだ。その謙虚さを忘れるな。では準備しろ」
「はいっ」
 笑顔のまま敬礼する。黒い義手が微かなモーター音を上げた。そのまま踵を返そうとし、
立ち止まる。
「隊長……」
「な、何だ。まだ何かあるのか」
1669:2006/06/11(日) 12:04:10 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode 4-6“軋む歯車”

 確かに、自分は戦った。訓練兵の身でありながら、敵を2機撃墜した。
仲間を護るためだった。少なくとも、そう自分は思い込んでいた。しかし、思い出したのだ。
 トマホークで叩き斬った敵機にグレネードを投げつけた時に、逃げ出す敵を追い詰め、その背中にビームを撃ち込んだ時に、自分が浮かべていた表情を。
 眼を閉じれば、あの時感じた暖かい赤と黒が思い起こされる。静かな笑みが、浮かんだ。
「私が失くしたのは……記憶と右腕だけじゃ、無いのかもしれません」
「……?」
「あ、すみません。変な事言っちゃって! 急いで支度しますね!」
 部屋から駆け出し、ドアの傍で待っていたディアッカに手を振っていった。
笑顔で手を振り返すディアッカ。彼女の姿が通路の曲がり角に消えると、オフィスに入って
来る。
「……今度ばかりは、手を離せねえよな。イザーク」
「当然だ……!」

「構造解析が終わった。核攻撃で大破してはいるが、フレアモーターの取付け場所には
事欠かん。既にデブリに偽装して飛ばした。向こうでの作業開始は20分後だ」
「万事滞り無し、か」
「ああ。順調すぎるほどだ」
 頭上の蛍光灯が図面の乗った工具台を弱弱しく照らす、狭い室内。パイロットスーツを着た
3人の男が、静かに言葉を交し合う。
「順調すぎるか。確かに、モビルスーツとフレアモーターの調達はもう少してこずるかと
思っていたが……」
「ふん、我々の行動に乗じようという輩がいるのだろう、だがそんな事は問題ではない」
 その内1人が顔を上げ、拳を固めた。顔の真ん中に走った古傷は、一度見れば忘れないだろう。
「如何なる意思が介入しようと、最早我々の目的は揺るがん」
 鋭い、鋭すぎる視線が、2人を順繰りに見遣る。
「……さあ、最後の仕上げとかかろう。時が惜しい」
 傍らに置かれていたヘルメットをかぶり、フェイスプレートを下ろした。

To be continued…
1679:2006/06/11(日) 12:09:46 ID:???
<修正箇所>4-3
愕然とした表情を(×向けて ○見せる)ネオに背中を向け(×る ○た)イアン。

失礼しました……

<次回予告>
Episode5"想い出"
「さあ行け、我らの墓標よ……!」
168通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 14:13:45 ID:???
>>161-166
ステラテラカワユス(訳:GJ)

サブキャラの皆さんがいい仕事してますな。
この世界でヒーローは戦争ごっこじゃないとか言われたら
納得してしまいそうです。
ガーティールーも擬装まで…本当に芸が細かい。
169通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 17:52:27 ID:???
何もアロハシャツまで自分のパーソナルカラーにしなくてもいいのになぁネオwww
出てくるキャラが皆生き生きしてるのがいいな。GJ!!
170通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 20:05:08 ID:???
単発設定小話 「」ステラ編@

〜対峙するインパルスとフリーダムに割って入るムラサメ〜
シン「お前ら、デストロイに近づくんじゃねぇー!離れろ!」
キラ「君は・・・」
マユ「お兄ちゃん!!・・・いままでどこに!?」
シン「っち・・・コックピットがざっくりいってるのか!?」
〜デストロイのコックピットにへばりつくムラサメ〜
シン「生きていてくれよ・・・」
〜デストロイに乗り移るシン〜
ステラ「・・・ぅ・・・・・・」
シン「ステラ!!・・・くそやばいな。取り合えず・ムラサメに移さないと・・・」
ステラ「・・・・・・ぅぅぅ・・・だ、誰?・・・ネオ、なの?」
シン「しゃべんな。今は俺に任せておけ、ステラ・・・」
ステラ「・・・この声・・・・・・シン・・・?」
シン「!・・・ステラ・・・お前、俺の記憶が?」
〜ステラをムラサメのコックピット後部に移すシン〜
シン「狭くて悪いな・・・。次の反応は・・・スティングはあっちか・・・大佐の反応がないか・・・」
〜ムラサメに乗り込みデストロイから離れるムラサメ〜
マユ「・・・お兄ちゃん・・・・・・」
〜フリーダムから姿を現すキラ〜
キラ「・・・インパルスのパイロットの人。ここで争うのはやめませんか?」
マユ「あいつ!ぬけぬけと・・・もう!」
〜マユもコックピットを開ける〜
マユ「・・・ここで戦うのはやめてあげるわ。・・・お兄ちゃんのためにもね・・・・・・」
キラ「君は!・・・あの時、慰霊碑に来ていた子だね・・・・・・そうか、君がそのMSのパイロット・・・」
マユ「さっきのムラサメのパイロットはわたしの兄よ。・・・記憶をなくしてわたしのことも覚えていないけどね」
キラ「お兄さん?さっきのパイロットが?・・・どうして・・・・・・」
マユ「・・・全部あなたの・・・せいじゃない!パパもママも死んじゃって・・・お兄ちゃんの記憶もなくさせて・・・」
キラ「え!?僕が・・・?」
マユ「あんたが、オーブで大暴れしなきゃ・・・MSなんて乗っちゃいないわよ!」
〜コックピットに戻り、インパルスを発進させるマユ〜

〜ムラサメ〜
シン「くそ・・・大佐を探している暇はなさそうだな・・・。せめてスティングだけでも・・・!見つけた!」
〜地面にたたきつけられたままのガイアのそばに着地するムラサメ〜
シン「スティング!無事か!?」
スティング「・・・・・・っぅぅ・・・・・・だ、誰・・だ?」
シン「外傷はないな・・・。おい!返事をしろ!」
スティング「っつ・・・お前は・・・?・・・・・・」
シン「大丈夫そうだな・・・コックピットが狭くてな・・・今は・・・手の上で我慢してくれ」
〜スティングを手に乗せ戦場を離脱するシン〜
ステラ「・・・シン・・・・・・わたし・・・シンになにかひどいこと言った・・・?」
シン「ステラ・・・喋るな。その身体じゃ・・・」
ステラ「ううん・・・わたし・・・シンと・・・喋っていた・・・い・・・・・・」
シン「・・・ステラ・・・・・・」

171単発屋:2006/06/11(日) 20:07:08 ID:???
しまった、タイトル入れ忘れた・・・。
「空虚」でお願いいたします。
172通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 23:08:36 ID:???
単発屋さん、乙!!
ついに言ってくれたよ!!キラに対して「あの日の悲劇」を!!
いや〜他の方のも色々ありましたが、やはり直接言うとカタルシスがあってヨイ!
(でも、一番は隻腕さんのマユかな?「護るなら、全部受け止めなさいよ!!」は名台詞)

どうか、ステラに安らかな日を・・・
173通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 23:27:56 ID:???
久々に来たら何この素敵な流れ
ほのぼの、Scars、単発、どれもステラが可愛すぎ
174通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 00:52:00 ID:???
単発設定小話 「虚空」ステラ編A

〜戦場から離れた場所の湖に降り立つムラサメ〜
シン「おい、ステラ。外でてみるか?」
ステラ「・・・う・・・ん」
〜ステラを抱え湖のそばによるシン〜
スティング「俺たちは・・・負けたのか・・・・・・」
シン「ああ」
ステラ「シン・・・スティング・・・・・・っぐ、ごっほっごっほっ、ぐぅっ・・・」
〜咳き込むステラ〜
シン「ステラっ!」
ステラ「・・・・・・もらった・・・携帯・・・・電話ね・・・シンに・・・かえ・・・す・・・・・・」
シン「わかった、わかったから。喋るな」
ステラ「シン・・・・・・わた・・・し・・・の・・・・・・お兄・・・ちゃ・・・・・・」
シン「!?ステラ?・・・おい!・・・うそだろ?なぁ・・・おい。目を開けろよ!」
〜ぐったりしたステラを揺するシン〜
スティング「おい、やめろ。そいつは・・・もう死んでる・・・・・・」
シン「な、なんで死ななきゃならないんだよ・・・・・・。なぁ、目を開けろよ・・・・・・」
スティング「おい!そいつはもうダメなんだよ!さぁはやいとこガーティ・ルーに戻ろうぜ」
シン「・・・ステラも一緒にな・・・・・・」
スティング「馬鹿なこというな!死んだっていったろ?それに連れ帰ったところで何も役にはたたねぇよ!」
シン「・・・そういう問題じゃない」
スティング「そういう問題なんだよ!俺たちエクステンデッドはっ!!」
シン「・・・・・・」
スティング「役にたつからこそ生きていられんだよ!死んだらそいつはただの抜け殻だっ!」
シン「しかし・・・」
スティング「あんたは俺たちとは違う・・・だからそう考えられないんだ・・・・・・」
シン「お前・・・俺のことを?」
スティング「ああ、あんたがコーディネイターだってこと。それでも肉体強化を受けていること。記憶を失っていること・・・」
シン「・・・お前は俺を殺さなくても平気なのか?」
スティング「エクステンデッドにだって、ある種の分別は持ってる。それに味方だって刷り込まれれば危害は加えない」
シン「そうか・・・」
スティング「わかってもらえたなら、ステラはここで葬ってやってくれ・・・。アウルにはしてやれなかったからな」
シン「記憶・・・戻ったのか?」
スティング「・・・さぁな。頭に浮かんだことを口にしただけさ・・・」
シン「・・・・・・じゃ、俺は穴掘るから、お前は墓標になりそうなものでも拾ってきてくれ」
スティング「ああ・・・」
〜湖のほとりにステラを埋めるための穴を掘るシン〜

17586:2006/06/12(月) 01:22:13 ID:???
マユトレイ二話、投下します。

皆さん、いい作品ばかりですね……自分も頑張らないと。
1761/7:2006/06/12(月) 01:23:03 ID:???
 「サーカス」。
 「生体CPU」。
 ナチュラルの孤児にせよコーディネイターの捨て子にせよ、戦争の狂気は子を歪ませる。

SEED DESTINY ASTRAY M 第二話 「記憶」

「……誰でも考えるんだ、こういうこと」

 目の前で繰り広げられる光景――殺し合いをする子供達を見て、私は嫌悪を込めながら
呟いた。
 私が今来ているのは、ロドニアにある地球軍の研究所だ。任務は「生体CPUの成績評
価」。具体的に言うと、生体CPUとの実弾訓練だ。使う機体はむこうが提供してくれるし、
危険性の高さに見合うだけの報酬もある。しかし……

「……気分が悪いわ」

 まるで「サーカス」の様な……いや、それ以上に趣味が悪い光景だ。
 強化。解剖。処分。
 そんな処置を年端もいかない子供達に施して……どこが「蒼き清浄なる世界」なんだか。

「……馬鹿みたい。傭兵がこんな事を考えても、意味なんて無いのに」

 そう呟いて、私は目を逸らした。――目の前の光景から、それを考えることから逃げる
ように。
 そして、その先には奇妙な光景があった。

「……あれは?」

 青い髪の少年だ。表情は笑顔。その傍らには白衣を着た女性がいる。

「母さん、どうだった今の? これなら成績評価でも余裕で勝てね?」
「……ええ。きっとできるわ」
「だよな! 次もちゃんと見ててくれって!」

 どうやら親子らしい。あの研究員は、私が戦う生体CPUの母親ということ。
 ……馬鹿げてる。

「何が楽しくて……自分の子供をこんな所で育てるんだろ」

 ……ホント、気分が悪い。
 イライラしながら、病院のような廊下を歩いた。あてはない。ただ、捨てたい過去を思
い起こさせる、屑みたいな光景を見たくなかっただけだ。

1772/7:2006/06/12(月) 01:23:52 ID:???
 ただ適当に歩いていただけだったが、見える光景は変わりつつあった。
目の前にあるのは扉。窓から見えるのは庭園。要するに、この先は中庭だ。私は迷わず
扉を開けて、設置してあったベンチに腰掛けた。
 どうやらあまり手入れは行き届いていないらしい。雑草は生えているし、そもそもベン
チも微妙に錆びている。だが……人が人に対する手入れを繰り返すような場所よりは数倍
ましだ。
 しばらくぼんやりしていると、警戒の色も見せずスズメが数匹私に近づいてきた。ずい
ぶん人懐っこい。エサでも欲しいんだろうか?
 スズメが食べるような物があったかな、などと考えながらカバンを探っていると、突然
スズメが向きを変えた。そこには……先ほどの女性研究員が、パンくずが入った袋を持っ
て立っていた。私を見た彼女は、優しい笑みを浮かべて話しかけてくる。

「隣に座っても構いませんか?」
「……どうぞ」

 できるだけ普通に言ったつもりだったが、多少ぶっきらぼうになったのは否定できない。
 それに気づかなかったのかそれとも無視したのか、彼女は私の隣に座ってパンくずを撒
き始めた。スズメは慣れた様子でそれをついばんでいる。
 私達はしばらくずっと何も言わずに黙り込んでいたが、彼女の方から口を開いた。

「あなたが……傭兵なんですよね。生体CPUの試験をする……そんなにお若いのに」
「……ええ。それが?」

 多少、カチンとした。年齢のことはよく言われるが、よりにもよって自分の子供を改造
した奴に言われたくはない。

「お願いがあるんです……よろしいでしょうか?」
「負けて下さい、とでも言う気ですか?」

 無表情のまま、何の気遣いも無くはっきりと言ってやった。こんな奴が言うのは大方こ
んな言葉だろう、と予想して。
 だが、返ってきた言葉は全く違う言葉だった。

「いえ、逆です。どうか……勝ってくれませんか?」
「は、はぁ?」

1783/7:2006/06/12(月) 01:26:37 ID:???
「敵影1。センサーに異常なし。戦闘プログラム起動……」

 敵影1とは、もちろん生体CPUの乗るダガーL。MS訓練用施設の無骨な壁を背景に、
そいつははっきりとモニターに映っている。
 そう、今は成績評価の時間だ。
 私はダガーLのコックピットの中で、OSの最終調整を行っていた。慣れきった作業だ。
だから……あの研究員との話を思い浮かべるほどの余裕がある。


『聞いてしまったんです……もしあの子が私に勝てば、あの子は特殊部隊に配備されると。
その際に更なる強化を施して、私のことを記憶から消してしまうと。……兵器に、肉親
の絆など不要だそうです』

そういう彼女の声は、震えている。だが、私は同情する気になれなかった。

『そんな事が嫌なら、始めからこんなところに入れなければいいでしょう。
 自分の子をこんなところに入れた時点で、そんな事は予想……』
『違います!』
『!?』

 今までどこか穏やかな印象だった彼女が、いきなり大声を上げた。どうやら本人も自分
がそんな声を出したのが驚きだったらしく、俯きながら続ける。

『私は……あの子を兵器にするためにここに入れたわけではありません。
 あの子の死病を治すため……だったんです』
『……死病?』
『ええ……元々私は、とあるカレッジの有名な学者でした。医学関連の……
 しかし、ある時子供が病気に罹ってしまった……私が研究を進めても進めても、あの子
の病気を治す方法はありませんでした。
 その時、ここのラボから連絡が来たんです……あの子を救う手段があると。
条件は、研究成果の提供とメンバーへの参加……』
『…………』
『それを聞いた私は喜んでここに来ました……今となっては、馬鹿げた話ですが』

 そう言って、彼女は自嘲の笑みを浮かべた。とても空虚で、寂しい笑みだった。

『一度入った以上、抜けることは許されませんでした。……当然、といえば当然ですね。
 それに、もうあの子はここにある設備なしでは生きられない体です。私にできた事は、
 自分の知識を使ってあの子が殺されないように強化していくだけ……』

 そして、最後に彼女は泣きそうな顔で……頭を下げた。

『私のつまらないエゴだとは分かっています。間接的に私はたくさんの罪のない子供たち
 を殺しているのですから。……それでも、お願いします。あの子に……殺さずに勝って
 下さい。私は――まだあの子と別れたくないんです!』

1794/7:2006/06/12(月) 01:27:28 ID:???
「……本当に、つまらないエゴ。そんなので、傭兵に依頼をするなんて。
 殺さずに勝つなんて難しい依頼、タダで請ける馬鹿なんていないよ」

 そう呟いて、最後の調整を済ませる。私の機体も、ダガーL。武器はビームサーベルと
イーゲルシュテルンのみで、相手もそれは同じ。ハンデはない。

「それを請ける私は……馬鹿だけどっ!」

 それだけ叫んで、機体を前進させる。前進したのはあちらのダガーLも同じ。お互いに
スピードを乗せたサーベルを振り下ろした結果、サーベルが火花を散らせぶつかり合う。
機体も体勢も同じ以上、このまま押し続けても突破は望めない。素早く後退し距離を離す。

「……どうする?」

 「殺さない」という制約がある以上……狙う場所は限られる。狙うとすれば頭部か四肢。
だが、そうそうやらせてくれるパイロットでもないだろう。
 悩む私だったが、相手は気が長いほうではないらしい。再び突進してくる。
 再びサーベルを振った私のダガーLだったが、相手は予想だにしない動きを見せた。
サーベルをシールドで受けながら、モニターの下へ消えていく。本来地上では有り得な
い動き……しかし、自機がバランスを崩したことで私はやられた事を理解した。

「滑り……こんだ!?」

 そう、モビルスーツによるスライディング……予想し得ない、モビルスーツによる格闘。
バランスを崩し倒れようとする私のダガーLに、相手のダガーLがとどめを刺そうとサー
ベルをかざす。私は咄嗟の判断で、左腕のシールドを相手の右腕に突き立てた。根本から
動きを止められた相手の右腕は、シールドを裂くに止まる。その隙に、バーニアを吹かし
て体勢を立て直し、離れる。

「……まずいかな」

既に五分と五分では無くなった。シールドの有無だ。もちろん相手のシールドも損傷は
あるが、私の機体のシールドは真っ二つにされてしまった。このままでは、こちらが逆に
殺されかねない。

「……よし」

 スティレット・投擲噴進対装甲貫入弾を左腕で引き抜き、構える。これはアーマーシュ
ナイダーの改良型で、投げナイフみたいな物だ。右腕にはサーベルを構えたままなので、
二刀流の構えを取っていることになる。
 そのまま私はバーニアを全開にし、再び機体を突っ込ませた。相手は心持ちシールドを
前面に出している。こちらは投擲武器を所持しているのだから当然の反応だ。……そこが、
狙い。

「行けっ!」
1805/7:2006/06/12(月) 01:29:28 ID:???
 まだお互いのサーベルが届かない所で、左腕を振りスティレットを投げた「ふり」をし、
更に同時にエネルギー供給を切ったビームサーベルの柄を投げる。つまり、フェイントだ。
相手にサーベルをスティレットと誤認させ、投げた方面である頭部の前にシールドを構え
させるのが狙い。案の定、相手はシールドを構えた。
 スティレットなら、確実にシールドを破壊しただろう。ビームサーベルでも、穴を開け
るぐらいはできた。だが……それはまずい。なぜなら、シールドで隠され、視界も消えて
いる頭部が晒しだされ、視界も取り戻してしまうからだ。
 投げたすぐ後に、私は機体を相手の上へ跳ばせた。シールドが前にある相手は、私が跳
んだことに気づかない。恐らくはサーベルを振ってくると思ったのだろう、シールドを下
ろしながら後退したが……じゅうぶんスティレットの範囲内だ。

「そこっ!」

 相手の居場所が分からず混乱する相手に命中させることなんて、私には簡単だ。
 スティレットは頭部に命中し、爆発する。これで相手のメインカメラは潰れた。そのま
ま降下して、胴体を蹴り飛ばしマウントポジションを取る。
 そのままもう一本のサーベルをコックピットの上で構えて、私は告げた。

「チェックメイト。あなたの負けだよ」
1816/7:2006/06/12(月) 01:30:49 ID:???
 任務は終わりだ。私は報酬を受け取った。後は何もこの研究所に用はない。
 ……ただ、たった一つだけ、確かめたいことがあった。少しだけ時間を貰い、研究所内
を歩き回る。人探しだ。
 そして、彼女はそこに――中庭にいた。

「あ……」
「あなたの子供……どうなりました?」

 目的は完全に達成された。彼は負けたが、死んではいない。……なのに、彼女の表情は
暗い。……まさか、処分されたりとかしたんだろうか?
 私の顔から考えを読んだのか、彼女は首を振った。

「いえ、あの子は無事です。ただ……」
「ただ?」
「……やはり、私に関する記憶は消されることになりました。
 さっきの戦いで負けたのは、敵が見えない恐怖心から混乱したから……だから、『母さん』
 をブロックワードとし、私との記憶ごと恐怖心を封じ込めると」
「そんな!?」
「……いいんです。始めから、こうなる運命だったのでしょう。
 人の子供を殺すことに関わりながら、自分の子供だけは守ろうとする。
 そんなエゴが通用するはずは無かったのでしょう……」

 そうして、彼女は笑った。こんなに悲しい笑みを、私は見たことが無い。

「あの子は、この研究所から特殊部隊へ移されるそうです。……私との記憶を思い出させ
ないために、接点を完全に絶ちたいんでしょう。……すみません、あなたがせっかく私の
頼みを聞いてくれたのに……」
「……私に謝る必要は無いでしょ。それより……あなた、私を今は雇ってみる気はない?」
「え?」
「あなたの子供、記憶を消す前に必要な設備ごと誘拐しろって依頼なら……無料でやるよ」
「……!」

 ……我ながら、馬鹿なこと言ってる。
 私の言葉に彼女は驚いたようだったが……やがて、首を振った。

「……いえ、遠慮します」
「どうして? 無理だから?」
「そうではありません。きっと、それを行う過程で、ここにいる他の子供達が追撃に向かわ
されるでしょう。私の子供一人を救うために多数を殺すというのは、いけない事です。
 少なくとも……あの子が特殊部隊に行けば、他の子を殺すことは無い……」

 そういう彼女の目には……はっきりと、涙が浮かんでいる。
 ……罪の意識。
 たくさんの子供を殺してきたという意識が、彼女を縛り付けている。
 特殊部隊に行けば……より多くの人を殺すことになるだろうに。ただここにいる子供達
を死なせたくないという――そして、私に苦難の道を歩かせたくないという、狭いエゴで
こんな事を言っている。……でも。
 それをエゴだと否定し、彼女の想いを踏みにじることが、誰にできるだろうか――?
1827/7:2006/06/12(月) 01:31:46 ID:???
 そうして、私はその研究所から離れた。
 依頼主曰く、ここのことは他言無用、忘れろとのことだ。しかし……

「忘れないよ、私は」

 私はどんな手段を使ってでも、いつかあの親子を再会させる。
 「サーカス」の仲間は見捨てて逃げ出した私だけど……それでも、こういった事をする
奴らは許さない。いつか、それなりの力を手に入れて……必ず!
 こういう奴らのやる事を邪魔すること……それが、「サーカス」への私なりの復讐だ。
183通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 01:35:28 ID:???
投下終了。

生体CPUが誰か、っていうのはすぐに分かりますよね?
せっかく本編でもちらっと出たし、使わない手は無いと思いました。

さて、あとは誰が使えそうだろう……
184通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 18:06:32 ID:???
これはほんといいな。
マユトレイのファンになっちまったyp。
185通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 18:50:41 ID:???
マユトレイ乙!!
アストレイ同様に、本編で語り足りてないような部分や空白を埋めてってくれてる感じがイイね。
文も非常に読みやすい。 続き楽しみにしてるよー!
186通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 21:43:11 ID:???
単発設定小話 「ネオ」愛をください編@

〜ウィンダムのコックピットから放り出され気絶しているネオ〜
ネオ「・・・・・・」
〜アークエンジェルから降りてきたマリュー〜
マリュー「・・・凄惨な景色ね・・・・・・」
ミリアリア「ひどい・・・・・・こんなの戦争じゃないわ。虐殺よ・・・・・・」
マリュー「そうね。・・・!あそこに人が倒れているわ!ミリアリアさん、行きましょう」
ミリアリア「はい!」
〜倒れてるネオのそばまでくるマリューとミリアリア〜
マリュー「この服・・・連合の将官かしらね・・・・・・」
ミリアリア「そうかもしれませんね。もしもし・・・大丈夫ですか?意識ありますか?」
〜ゆっくりと仰向けにひっくり返すマリューとミリアリア〜
マリュー「仮面・・・ね?」
ミリアリア「・・・なにか素性をばれちゃまずい人なんでしょうか・・・・・・」
マリュー「取り合えずはずしましょう」
ミリアリア「こっちをこうかしら・・・あっと。外れました・・・・・・!この顔・・・」
マリュー「・・・・・・まさ・・・か。でも・・・あの時確かに・・・・・・」
ミリアリア「マリューさん!でも、この顔は間違いなく少佐ですよ!」
マリュー「いや、でも・・・・・・。と、とにかくこのままではまずいし、アークエンジェルまで運びましょう」
〜アークエンジェルに運ばれ、医療室のベッドに寝かされるネオ〜
マリュー「一通りのメディカルチェックをしておいてちょうだい。意識が戻ったら連絡を」
ミリアリア「はい」
〜医療室を退出するマリュー〜
マリュー「まさか・・・本当にあなただというの?・・・ムウ・ラ・フラガ・・・・・・」
〜再び医療室〜
ミリアリア「機械とマニュアルで素人でもできるとはいうものの・・・ふぅ。これでよしと。あとは結果待ちね」
チャンドラ「どう・・・?その人、本当に少佐なのかい?」
ミリアリア「チャンドラさん・・・。わたしはムウさんだと思いますよ。他人の空似とは思えません」
チャンドラ「顔にすごい傷跡があるけど・・・なんていうのかな・・・少佐と同じ独特な雰囲気があるね・・・・・・」
ミリアリア「そうでしょう!?わたしもそう思ったのよ」
チャンドラ「そうだよねぇ・・・でも艦長は疑っているんでしょ?」
ミリアリア「・・・死んだはずの愛した人が生きていたなんて・・・簡単には受け入れらないでしょうね。わたしも・・・」
チャンドラ「あ・・・ごめん」
ミリアリア「へへ。ううん、いいのよ。わたしはもう吹っ切れてるから・・・」
〜目元に涙を浮かべたミリアリア。ばつの悪そうなチャンドラ〜
ミリアリア「あ、結果でてきたわ!・・・・・・やっぱり・・・少佐と遺伝情報が一致してるわ」
チャンドラ「よし!艦長に知らせてくるよ!」
〜艦長室へ走り出すチャンドラ〜
ミリアリア「・・・意識が戻ったらっていってたのに・・・・・・」
ネオ「・・・ぅう・・・・・・っぐ・・・こ、ここは・・・?」
ミリアリア「!・・・意識が戻ったのね?・・・もしもし!わたしが見えますか!?」
ネオ「・・・・・・ああ。君は・・・ここは・・・?」
ミリアリア「ああ、ちょっと待ってください。艦長に連絡しないと・・・」
〜艦長室へコールするミリアリア〜
ミリアリア「艦長!意識が、意識がもどりました!」

完  ・・・・・・「ムウ」愛をください編Aへ続く。
187通常の名無しさんの3倍:2006/06/13(火) 03:24:06 ID:???
>>186
なにげに気体。
188通常の名無しさんの3倍:2006/06/13(火) 22:29:29 ID:???
マユ種、今読んだが面白い!!
話的にもつじつまがあってていいし、
マユのオーブでの家族死亡後の話が悲しすぎます。
なんか話が終局に向かっていくにつれて彼女が変わっていくのがまた悲しくて。
続きが楽しみです。
最後へのラストスパート、どうなっていくのか、期待しています。
がんばって。
今マユ種現在までを読み終えたのでこれから他の方の話も読んでみます。
189ほのぼのマユデス。mata,:2006/06/13(火) 22:54:49 ID:???
「認めるものかぁぁぁぁぁ!!ええいよくもこの完全無欠式正統派最強美少女ヒロインたるこの私が・・!!」
 『マユー、それ違うロリっ子。』
方向するマユ、結局優勝はステラがかっさらった。
おっきな猫のぬいぐるみを抱きしめてステラは幸せそうな顔をしている。
 「シンハロ、ディスティニーを起動させて。この艦ごとしずめる。」
 『うわぁ、マユ。目がホンキダヨ。』
 「大丈夫だ、マユ。」
暴走するマユの肩にレイが手を置く。
 「ほら・・、マユはあれだ・・・・・・。隠れ召喚獣。」
 「何その微妙な位置?!」
レイのフォロー(仮)に次々に皆が続く。
 「え・・・・、首領?」
考えこんだジョーが一言。
 「何の?!」
 「マユちゃんはあれだよ・・・・・、他の宇宙からきた邪神?」
アキラは即答。
 「にゃいあるら?!」
 「え?マユはRPGでいう挑戦用の最強ボスじゃねーの?」
アウルはさも当然かのように。
 「私はアルテ○ウェポン?!オメ○?!全て○超えし者?!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
スティングはなんともいえない目で見つめる。
 「いやぁぁぁぁぁ!!そんな目で!!そんな目でみないでぇぇぇ!!」



そんな風に騒いでいると、突然艦内に放送が響き渡る。
『コンディションオレンジ!!パイロットは出撃準備をしてください。』


190ほのぼのマユデス。また、動きだす。:2006/06/13(火) 22:55:58 ID:???
「・・・・・・・・・・・・・・何あれ?」
『コロニー・・・・・をぶった切った・・・・何?』
マユとシンハロがなんだろう?と言う顔をする。
目の前には巨大なコロニーの残骸がある。
それも、ちょうど筒状になるようにぶった切ったような奴が。
『・・・・・・・レジェンドのミラージュコロイドのセンサーに反応がある。・・・・・・怪しいな。』
レイが通信してくる。
「つーかシンハロ、そんなものもレジェンドに付けてたの?」
『うん、レジェンドなら大体の位置わかればドラグーン撃ちまくればあたるじゃん。』
「ずいぶんアバウトだね。」
そんな会話をしつつ、指示を待つ。
「ギルパーパー!!はーやーくー!!」
マユがだんだんとコクピットの機器を叩く。
シンハロやMSの耳には『痛いっ!!ちょ・・!主殿!!やめてっ!!そこはいた・・っ!!いたいいたいいたいたい!』
というディスティニーの声が聞こえただろう。
そして、通信機から
『・・・・・私はこれを危険物と判断する・・、よって・・・・。』
「「「「「「うぉっっしゃーーーーーー!!」」」」」」
議長の言葉を最後まで聞かずに行動を始めたのはハイネ隊だ。
「ひっさびさに暴れるわよーー!!」
ノリノリでビームナギナタを構えるミーア。
「こんなデッカイのなら俺の出番だな!」
ジョーが大量の武器を構えて言う。
「広範囲、高威力なら負けてないぜ!!」
アキラが剣に弓矢にと様々な武器をセットする。
「・・・・・・・鎖。」
「・・・・・・・爪。」
「・・・・・・・布。」
「・・・・・・・主にナイフ。」
沈痛な面持ちでそれぞれの武器を見る残りの人達。全員近距離、中距離の上、MS戦闘向けの武器だ。
ゆえに彼らは今回はガナーウィザードをつけている。
ちなみにそんなこと言うならミーアもガナーじゃんかと思うだろうが甘い。
ミーアは射撃ができない。アニメのルナマリアより酷い。
撃った弾は明後日の方向にいる味方に、訓練中は隅っこにいた教官すれすれに。
時空を捻じ曲げてると噂されるほどの命中力の無さなのだ。
ゆえに、彼女にけっして飛び道具を持たせてはいけない。そうしたら、まちがいなくハイネ隊は壊滅する。
191ほのぼのマユデス。また、動き出す。:2006/06/13(火) 22:59:05 ID:???
言葉を待たずに行動を始めたハイネ隊に一瞬呆然とするが、他の部隊も次々に攻め込む。

「貴様ら!!俺達もいくぞ!!」
「はいはい。」
「了解です!隊長!!」
ジュール隊が隊長を中心とする陣形で飛び散り、確実にコロニーにダメージを与えている。

「あいつらにいいとこ取られてたまるか!いくぞ!!」
「うん!」
「りょーかいってね!」
「OK!」
「解かってる!!」
ファントムペインのMSが攻撃する。
カオスの兵装ポッドが火を噴きアビスのカリドゥスが吼える。
ソードインパルスがエクスカリバーを構えて進み、その後ろでガイアとストライクMkUがビームライフルを放つ。

「・・・・・・はっ!!出遅れた!!」
マユがはっとすると既に皆活躍していた。
ガナーの扱いになれているルナマリアは確実に大ダメージを与えているし、アスランのセイバーもMA形体ですばやい攻撃を繰り返している。
レイのレジェンドはドラグーンでダメージの薄いところを集中攻撃していた。
『マユ・・・、戦闘でくらい目立とうよ。』
「うるさいなぁ!!行くよ!シンハロ!ディスティニー!!」
ディスティニーの瞳が輝く。
羽のフレアは勢いをまし、両手のビームシールドがサーベル形態になる。
「てぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
掛け声とともにコロニーの外壁を真っ二つに切る。
行き成り飛び込んだので他の皆から危ないだの気をつけろだのの通信が入ってくる。
しかし、マユは気にせずそのままくるりと回転して両手を構える。
「喰らえっ!!『咆哮』!」
マユの音声を認識したディスティニーのシステムが作動する。
パルマ・フィオキーナの出力が通常より高まり、大きな光の槍となってコロニーの残骸を貫く。
他の皆もマユに続いてそれぞれの武装の最大出力で攻撃する。

「タンホイザー標準!!撃てーーーっ!!」
ミネルバ、そしてムセイオンからほぼ同時にタンホイザーが放たれる。

そして、そのコロニーの残骸は真っ二つに割れた。
192ほのぼのマユデス。また動き出す。:2006/06/13(火) 23:01:08 ID:???
「・・・・・ふぅ、案外あっけなかったね。」
『まぁ、ロゴスも行き成りで対応の使用がないだろ。へたに警備をしたらこれのことバレるし、それにこっちはスター部隊だし。』
「スター部隊かぁ・・・。確かに音、このメンバーだったらコロニー落としだってできそうな気もする。」
『・・・・・・・・するなよ?』
「・・・・・・・・しないよ。」
久々の実戦を終えてマユとシンハロは軽口を叩く。
「それにしても実戦って久しぶりだったねー。」
『まぁほぼ敵はジブリールだけだしな。とりあえず世界は平和だろ。あー、あいつの名前きにいらねー。』
「何で気に入らないの?」
『・・・・・あいつのせいでとあるエロゲーがまともに出来なくなりました。』
「どうでもいいな、おい。それに本気でくやしそうに言わない。」
そんな会話を二人がしていると何やら通信がシンハロにはいる。
『あ・・、はい。私です。・・・・・・え?!あ、はい!わかりました!!』
何やら重要な通信なのかシンハロの口調がやたらと丁寧だ。だが、それだけではない。
それはあわただしい、それでいってわずかな絶望を含んだ声だった。
「・・・何?」
マユが聞くと、シンハロはゆっくりと言いづらそうに話した。


『サーペントテールからの通信だ。ここへ来る途中にこれと同じものを発見したそうだ。』
193ほのぼのマユデス。:2006/06/13(火) 23:06:07 ID:???
あとがきではひさしぶりです。
最近ハルヒのEDをマユデスキャラで脳内変換してしまいます、ほのぼのです。

久々に戦闘をかいたらまぁ、短い短い。
でも相手はコロニーですし、それにアニメの時よりかなりの大部隊、だからすぐに壊れる。
さて、次回もシリアスですが、それが終わったらまたいつもどうりバカをやります。
目的地はプラントなので、キャラの実家やら家族やら別荘やらフラグ立ちまくりです。
おたのしみに。
194479:2006/06/14(水) 01:04:51 ID:???
ほのぼのマユデスの後は、I and I and I!!
ほのぼの氏乙でありますー
195I and I and I(1/11):2006/06/14(水) 01:07:28 ID:???
未来に希望を持つ。
何かを目指して向かう。
それだけで、人は強くなれる。
でも、それは本当に正しいことなのかな。
それとも、間違っていても進めれば、それは正しいことになるのかな。
たとえ後悔することになっても、それでいいと、思ってしまうのかな。



〜I and I and I〜 第十五話「夢見る少女じゃいられない」



ミネルバに同乗しているマユにとっては、そう長くガルナハンにはいられない。
カズイ達との別れの時が刻々と迫っていた。
「俺達はガルナハンに残るよ」
「この騒動で怪我した人が結構いるし…」
それより何より、街にはまだ活気がない。
二人にはやり残したことがある。
それがわかっているマユは、ニッと笑って見せた。
「はい。それじゃあ、またいつか」
いつ会えるかなど、この戦況ではわからない。
だが、会える、会いたいという意思がある。
だから不安なく笑えた。
そんなマユに対して、カズイはどこか心配したような、しかし優しい表情を見せる。
「まだヴィアなら、俺が兄さんかな」
問いかけるような、また曖昧な言い方をしてみせて、そう言った。
196I and I and I(2/11):2006/06/14(水) 01:09:03 ID:???
「抱きつかれて、ヴィアが馴染めてないんだなってわかったよ」
ここで引き留めることも可能だろう。
引き留めてまた一緒に旅も続けることもできる。
言ってしまったら駄目なこともわかった上で、カズイはその言葉を紡ごうとしていた。
「ヴィア、良かっ…」
「平気です」
カズイが言い出す前に、マユが声を発する。
「逃げたしたいって思うことはないけど、ミネルバにいることが嫌になることはあります」
満面に笑っていた表情も薄れてはいくが、笑みを消すことはなかった。
「でもみんなの側にいたいって思うから、ヴィアのままでも……………平気です!」
長い沈黙の後、マユは空元気ながらもそう言い切る。
「コニールには、また絶対会おうって伝えてください。今はちょっと、顔合わせられそうにないから」
手を振ると、マユはミネルバに向かって走っていった。
最後に声をかけることもできず、サイとカズイは二人、立ち尽したまま。
「役立たずな兄さんだね」
カズイは苦笑して、サイに言う。
「ヴィアって、意志は強いけど、依怙地になる部分があるんだよ」
サイは静かにそういうとガルナハンの街に向けて歩きだした。
197I and I and I(3/11):2006/06/14(水) 01:10:31 ID:???
それに、カズイも続く。
「だから夢の中よりも、現実を選んだ。そういうことなんじゃないか」
そう付け足して、慰めるようにサイは返した。
兄から、娘が自分の手から離れた親になったような心境に、カズイはどこか物寂しく感じる。
ミネルバはガルナハンを離れ、ディオキアへ向かう。
そこには何が、待っているのだろうか。

様々な者達が初めて出会い、または再会することになるディオキア。
「みなさーん!ラクス・クラインでーす!」
ピンクのザクの手に乗り、ステージで踊り歌う少女が一人。
「ラクスさんじゃ、ないのに」
思わずマユは呟いていた。
マユの瞳にだけは、ラクスの姿をした彼女が、ミーアの姿形で見えている。
「マユ、どうかしたのか?」
「いえ…なんでもないです。シンさんはコンサート見ないんでしょう?」
「え?まぁ、呼び出しがかかるまで基地でも見て回ろうかなって」
「じゃあ私も!」
シンの背中を押して、マユは会場から少しでも離れようとしていた。
ラクスと似ても似つかない人物を、ラクスと呼び、声援を送るこの状況。
マユからして見れば、違和感以外のなにものでもない。
198I and I and I(4/11):2006/06/14(水) 01:12:16 ID:???
そんな場所から逃げ出そうとするマユを、遠くから一人の男性が見ていた。

ミーアだけではなく、デュランダルもディオキアに訪れている。
基地内の保養施設にて、デュランダルはレイを呼んだ。
デュランダルに呼ばれた部屋には、デュランダル本人と、一人のザフトレッド兵が待つ。
「元気そうで何よりだ、レイ」
「ギル…」
「活躍は聞いているよ」
デュランダルの優しい言葉に、レイは表情を緩ませ、思わず抱きついていた。
「よしよし、しばらく会わない内に随分甘えん坊になったようだね」
「す、すみません、ギル」
「夜に、またゆっくり話そう。今はまだ別に話すことがあるんだ」
頭を撫で、静かにレイを離すと、デュランダルはテラスに用意されたテーブルに着席する。
「先に紹介しておこう。ミネルバに配属になる、ハイネ・ヴェステンフルスだ」
「どうも」
「ハイネ…灰色の猫」
気のせいか、レイの眼光が鋭くなった。
それを察して、デュランダルに紹介されたハイネは溜息混じりに軽く笑って見せた。
「戦果を上げると、噂だけが先走りしてね。ミネルバもそうだろ?」
「え…いえ、まあ」
199I and I and I(5/11):2006/06/14(水) 01:13:45 ID:???
気さくなハイネの物言いに、レイは少々うろたえながら言葉を返す。
「ハイネはレイと初めて会うわけだが、何か感じるかね」
そんな二人を眺めながら、思わせ振りな聞き方で、デュランダルはハイネに尋ねた。
「感じるというのはアレですがね、そのまぁ、感受性は高いみたいだ」
濁すような、しかしはっきりとした言い方をして、ハイネは答える。
「そうか…」
うっすらと笑みを浮かべて、デュランダルはハイネを眺めた。
ハイネの視線がこちらへ向くと、わざと一度視線を合わせて、デュランダルはレイに視線を移す。
「それでレイ、ヴィアは、いやマユ・アスカだな。彼女はどうかね」
「戦闘中に、俺の思考の中に直接声が届いたような気がしました」
「ほう…それは興味深いな。後でまた詳しく聞かせてくれ」
マユの力に興味を示し、そしてマユの力を欲している。
レイもハイネも、そのことはすぐにわかった。
「レイ、ハイネ、君達の力は新たな世界には必要なのだ。そして、ヴィア…マユ・アスカ、彼女も」
その長くウェーブのかかった髪を軽く掬うと、デュランダルはまた笑みを浮かべる。
200I and I and I(6/11):2006/06/14(水) 01:15:45 ID:???
「議長、タリア・グラディスです。ミネルバパイロット達も一緒ですわ」
ノックと共に、廊下から声が聞こえた。
デュランダルは席を立ち、何食わぬ顔で出迎える準備を始める。
そんな彼を見ながら、レイとハイネは席を立つのだった。

「くしゅん!ん〜…誰か噂してるのかなぁ…」
デュランダル達の会談など露知らず、保養所のカフェでマユは一人シンを待つ。
デュランダルに呼ばれ、タリアやミネルバのパイロット達は揃って行ってしまった。
「相席、よろしいやろか?」
不意に声をかけられ、思わず顔を上げる。
コンサートのせいで人がいなく、閑古鳥が鳴くような、がらんとしているカフェだというのに。
「どうぞ」
「すんまへんなぁ。ワテのこと、見覚えありまへんか?」
「え……あぁ、ラクスさんのマネージャーさん」
前に一度プラントで、挨拶もせずに会っただけだが、特徴ある容姿は覚えている。
「キングT@KED@いいますねん、ごひーきに」
「タケダ、さん」
「ちゃうちゃう、T@ーKEーD@や。アルファベットで、Aは@ですねん」
(な、なんでわかったんたんだろ)
愛想笑いと苦笑いがあわさって、微妙を笑みを浮かべるマユ。
201I and I and I(7/11):2006/06/14(水) 01:17:18 ID:???
「すんまへんなぁ。実を言うと、ヴィアはんにお願いがありますねん」
深刻そうに言うキングに、マユの顔から笑顔が消えた。
「議長からヴィアはんのことは聞いてます。ラクス様、いや…ミーアはんのことですねん」
随分と思い詰めている様子だった。
デュランダルから聞いているということは、マユの目に映るミーアがどんな姿なのかを知っているということ。
それで何故、キングが悩んでいるというのか、その答えにはまだ繋がらない。
「ミーアはんとは、ラクス様の代役をやる前からマネージャーをやっとったんです」
「じゃあ、長い間一緒にいるんですね」
マユの言葉に、懐かしい思い出が蘇ったのか、キングの表情が和らいだ。
だがすぐに、深刻な顔に戻ってしまう。
「アイドルとしても歌手としても、プラントで人気といえばラクス様しかおらへん」
ラクスがプラントで人気なのは、マユも知っていた。
ミーアがこうして騒がれているのがいい証拠である。
テーブルの上に置かれていたキングの拳が、悔しそうに震えた。
「そんな中でプラントでデビューしても、ブレイクなんか期待できへんのや」
202I and I and I(8/11):2006/06/14(水) 01:18:54 ID:???
「だから、人気のあるラクスさんの姿をしている…そういうことなんですか?」
「ミーアはんが満足できればそれでええんです、それで…」
確信を突くマユの発言に、キングは動揺する。
「それにラクス様の代役は、議長から与えてもらはった重要な役割です」
社交辞令のように、付け加えられた一文。
それで自分に言い訳して、言い聞かせているのだろう。
「だからヴィアはん、ミーアはんのことはくれぐれも誰にも言わんといてください」
立ち上がると、キングは深く深く頭を下げて、マユに懇願した。
そんなキングに、マユも慌てて立ち上がる。
「い、言いませんよ。だから顔を上げてください」
「ホンマでっか!?いやいや、良かった。ヴィアはんがええ人で」
表情を一変させて、キングは狂喜乱舞しそうな勢いでマユの手を握ってぶんぶんと振り続けた。
「おや、マユ君じゃないか」
「あ、副長さん」
「じゃあワテはこの辺で。ヴィアはん、このことはくれぐれも、でっせ」
そう言うと、そそくさとキングは立ち去っていく。
キングの後ろ姿は嬉しさが滲み出ていた。
203I and I and I(9/11):2006/06/14(水) 01:20:26 ID:???
(ワタシは言わないけど…でもミーアさんは、きっと後悔するんじゃないですか?)
そんな後ろを見つめて、心の中でマユは問いかける。
誰かを装ってその人気を得ているのだとしたら、もし偽物だと知られたらその人気はどうなるのだろうか。
ミーアは、どうなるのだろうか。
「知り合いかい?」
アーサーの声で我に返る。
振り向き、何事もなかったかのように微笑んでマユは口を開いた。
「ラクスさんの、マネージャーさんです」
「なんだってぇ!?じゃあラクス様のサインを貰ってきてくれないかなぁ」
先程のキングより対応に困るアーサーに、マユの笑みは途端に歪む。
「あぁごめん。ちょっとたまに周りが見えなくなっちゃうんだよ」
「は、はぁ…そうなんですか…」
さほど興味もない。
早くシンが戻ってこないかと、マユは心の中で急かすのだった。
すると、そんな願いが届いたのか足音がこつこつと近付いてくる。
「シンさ…」
「ご期待に添えなくてすまないね、マユ・アスカちゃん」
期待していたマユの表情が崩れた。
現れたのは、ハイネだった。
「それに久しぶりだな、アーサー」
204I and I and I(10/11):2006/06/14(水) 01:22:11 ID:???
「ハイネ・ヴェステンフルス…まさか、ミネルバに配属になるパイロットって」
「ご名答。俺だよ俺。懐かしいなぁ、同じ隊になるなんて前の戦争以来か」
感慨深く言いながら、ハイネはアーサーの肩をぽんぽんと叩く。
話題についていけないマユは取り残されるだけ。
「三人は?元気にしてんのか?」
「終戦を折りに退役して、今はプラントにもいないって話は前に聞いたが」
「そうか。そりゃ残念だな。ま、アーサーはこれからよろしくっと!」
背中をばんと叩くと、笑いながらハイネは通路の奥へと消えていった。
「相変わらず…食えない奴」
背中をさすりながら呟いたその言葉は、意外にも鋭い。
「トライン副長!」
ハイネが現れた通路から、今度はルナマリアがやってくる。
続けてシン、アスラン、タリアが姿を見せた。
「アーサー、あなた何やってるの?」
「いやぁ、私も議長に挨拶しておこうかと」
「はあ…なんのためにあなたをミネルバに残したと思ってるの!」
「ヒィ!すびばせ〜ん!」
アーサーは元のアーサーに戻っていた。
だがマユは、アーサーの雰囲気が変わったことに気付いている。
205I and I and I(11/11):2006/06/14(水) 01:23:11 ID:???
「マユ、今日は保養所に泊まっていいんだってさ」
「へっ?」
「なんだよ、聞いてなかったのかよー」
「ご、ごめんなさい」
アーサーに気を取られて、シンの声も上の空になってしまった。
「保養所に泊まっていいから、マユも一緒に寝ようぜ」
「ふぇ!?」
「だって前は一緒に寝てたんだぞ」
胸がドキドキする。
妹だからというはわかっている。
シンは深い意味もなく言った。
だが、その言葉を受けた時の胸が高鳴りは、マユの中で一つの気持ちの確信に繋がる。
(好きなんだ…)
頬が熱いのがわかった。
この気持ちを落ち着かせようとしても、簡単には収まらない。
変に思われないか不安になって、マユは散歩に行くと言って保養所を飛び出した。

206通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 01:27:04 ID:???
III氏リアルタイム乙!
ハイネ登場キター!キングやアーサーなどの細かい人物描写が上手いですね。
そしてシン&マユの関係に異変がw
相変わらず先が気になる展開。今回も面白かったです。GJ!
207通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 14:58:53 ID:???
ちょwwwwwマユおまwwwww

wktkしていいのか…?
208通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 16:57:13 ID:qZlItkGa
うはwwwwwwwwwブラコンwwwwwwwww

俺はある意味待ち望んだ展開だが賛否両論呼びそうな悪寒www
209通常の名無しさんの3倍:2006/06/14(水) 21:09:26 ID:???
禁断の愛のフラグきたこれwwwwwwwwwwwwwww
210ほのぼのマユデス。幕間。:2006/06/14(水) 22:45:29 ID:???
 『おいおい・・・・・。』
 『これだけじゃないの?!』
ざわざわと周囲がざわつく。
 「どうするのよシンハロ!!」
 『えぇーい!なんでいっつも俺に頼るのだマユは!!』
 「なんの為に存在すんのよあんたは!!」
マユとシンハロがディスティニーの中で口論する。
 【あの・・、二人とも。早く対策をしないと大変なことになるかと・・・・。】
ディスティニーがおろおろと二人に話しかける。(もちろんシンハロにしか聞こえない。)
 『わかってるってば!!』
 「誰に対して言ってるの?!」
虚空に向かってる吼える犬を見る気持ちでマユはシンハロに言う。
 『くそぅ・・、まだ調整中だけどあれしかないか!!あぁ・・、でもなぁ・・・・。あの子はなぁ・・・。』
 何やら考え込むシンハロ。
 「もう!!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!核爆弾でもなんでもいいから早くしなさい!!」
 『うわぁ!いきなり物騒なこといったねこの子?!・・・・・じゃあ仕方が無い。ステラカモン。』
シンハロがディスティニーに手招きさせてステラを呼ぶ。
ステラがガイアごとこちらへ向かってくる。
 『うぇい?』
 【わう?】
ステラもガイアも同じように首をかしげる。
が、次の瞬間ディスティニーにがしっと腕を掴まれる。
 『え?え?え?』
 【う・・・・?わう?】
 『お持ちかえりぃぃぃっていうか、ステラ借りまーす!!』
そう言って最大出力で飛んでいくディスティ二ー。
 『うぇぇぇぇぇぇぇぇぇい?!』
 『わぅぅぅぅぅぅぅ?!』
ステラとガイアがやはり同じような悲鳴をあげて拉致される。
全員、あまりに唐突のことでよくわからない。
が、一人だけ行動可能な奴がいた。
211ほのぼのマユデス。幕間。:2006/06/14(水) 22:46:58 ID:???
 「ステラ・・・・・マユ・・・・・!!」
何やら急に叫びだすシン。
 【・・・・・若?】
ソードが無駄だとわかっていても思わず話しかける。

シンちゃんの脳内:

シンハロ、マユとステラ拉致→俺一人→あいつ両手に華→ですとろーい。

 【若・・・?なんか殺気立っているが?】
 「メイリン!! フォースに換装する!!」
血走った目でシンが言う。
 『え・・?何で・・・・?』
 「いいからぁ早くしろぉ!!」
 『はっ・・、はいぃぃっ!!』
涙目で答えるメイリン。
 【若!!落ち着け!!そもそもハロは恋愛感情とかそいいうのは多分まだそこまで感情プログラムが発展してないから大丈夫だ!!そもそも性欲をもてあますもなにもアイツにはない!!あー!聞こえぬのがもどかしい!!】
ソードが必死に言うが虚しく響きもしない。
 「うぉぉぉぉぉぉ!!」
そうこうしてる間にブラストインパルスに換装してしまい、ディスティニーとガイアを追って飛び立ってしまった。
 【ソード、世の中あきらめが肝心だぜ?】
 【お前の助言はいつも的確だ。】
ストライクMkUに回収されたソード(シルエット)。
たぶんMSなら彼に漂っている哀愁を理解しただろう。
212通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 00:29:24 ID:???
ほのぼのさん乙〜
久々の戦闘中のマユとシンハロに和んだ
ほのぼのの戦闘は予測できないから次回も楽しみww
213通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 06:46:39 ID:???
単発設定小話 「ムウ」愛をください編A

〜急いで医療室に戻ってきたマリュー。医療室に集まるアークエンジェルクルーの面々〜
マリュー「・・・意識は大丈夫なの?」
ミリアリア「ええ。はっきりしてましたから大丈夫だと思います」
〜ネオが横たわるベッドのそばの椅子に座るマリュー〜
マリュー「・・・ここはアークエンジェルという戦艦です。・・・・・・お名前を伺ってもいいかしら?」
ネオ「アークエンジェル・・・。俺の名前・・・・・・」
マリュー「どうしました?」
ネオ「あ、いや。俺は・・・ネオ・ロアノーク。連合の人間だ・・・」
コジロー「いや!あんた、少佐だろ!?なぁ、フラガ少佐なんだろ?」
ネオ「・・・俺はネオ・ロアノークだ。階級も勝手に下げないでもらいたいね。これでも大佐なんだがな」
コジロー「っく」
マリュー「コジローさん。ここはわたしにまかせてください」
コジロー「艦長・・・・・・。わかったよ。ここは任せるぜ」
〜医療室を出るコジロー〜
ネオ「・・・せっかくだから艦長さんと二人だけにしてもらいたいんだがな」
マリュー「・・・いいでしょう。みんな外してもらえるかしら?ネオ・ロアノーク大佐殿と二人で話をするわ」
ミリアリア「マリューさん・・・」
マリュー「大丈夫よ。さ、ブリッジへもどってちょうだい・・・」
ミリアリア「はい・・・・・・」
〜医療室に二人だけになるネオとマリュー〜
ネオ「・・・・・・ここのクルーは俺のことを知っているみたいだな?」
マリュー「そうね。あなたにそっくりな人が以前いたのよ・・・。前の戦争で死んだはずなんですが・・・・・・」
ネオ「・・・ふー。そいつの名前って・・・ムウ・ラ・フラガっていうんだろ?」
マリュー「あなた・・・」
ネオ「遺伝情報も一致したようだしな。・・・やっとムウ・ラ・フラガだって自覚できそうだよ」
マリュー「やはりあなたは、フラガ少佐なの?」
ネオ「・・・ああ。俺はムウ・ラ・フラガに間違いない。ねぇ、マリュー・ラミアス艦長?」
マリュー「・・・ムウ・・・ぅぅ・・・・・・生きていたの・・・ね・・・・・・」
ムウ「うわっと・・・おいおい・・・」
〜ムウに抱きつくマリュー〜
ムウ「・・・あんたのような美人に抱きついてもらって嬉しいんだけど・・・・・・」
マリュー「?」
ムウ「俺の中にはムウ・ラ・フラガの記憶もあれば、ネオ・ロアノークの記憶も存在しているんだ」
マリュー「二人分の記憶が?」
ムウ「うん。そして俺はムウ・ラ・フラガの全部をまだ取り戻してはいないらしい・・・・・・」
マリュー「でも私のことは覚えているのでしょう?」
ムウ「覚えてはいる・・・。しかし・・・今は記憶でしか思い出せていないんだ」

完  ・・・「ムウU」愛をください編Bへつづく
214通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 09:07:23 ID:???
ほのぼのさんのとこのステラが最近可愛すぎる…
ってかシンちゃん超短絡思考でクソワラタwwwwwwwwwww
215通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 21:54:38 ID:???

216通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 23:44:11 ID:???
糞スレだな、うん
これならエヴァ板のほうがおもしろいわ
217通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 00:09:29 ID:???
マユ
死亡
終わり
218通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 00:30:57 ID:???
>>216
>>217
どうした?学校でいやなことでもあったか?
こんなスレ荒らしてないで、相談に乗ってやるから言ってみ?
219通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 00:32:57 ID:???
スルーしてやれ
なんかむしゃくしゃしてたんだろ
220通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 00:59:38 ID:???
なんか嫌な流れになりそうだから、強引に話題を変えてみる。

沖田の声が鈴村さんだったからアニメ「銀魂」見始めた。原作も読んでみた。

それで思った。シンとマユも他人もしくは敵同士で出会っていたら沖田と神楽
みたいだったんじゃないかと。あの2人のあれは同族嫌悪にしか見えない。

少なくとも単発設定のシンと、ほのぼののマユが出会っていたら絶対ああなってたと思う。

「銀魂」わからない人がいたら、ごめんなさい。
221通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 18:58:13 ID:???
>>216
てんめぇぇぇぇぇ!食い殺すぞー!
222通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 20:11:21 ID:???
なんでスルーできないの?
わざわざ話題まで変えてくれた人までいるのに
223通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 20:23:05 ID:???
>>222
多分、別の意図を持っているからかと
224通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 20:52:27 ID:???
>>216
エヴァ厨乙
225通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 21:09:53 ID:???
>>220
沖田と神楽に兄妹を当てはめて妄想して和んだ。
でもシンはヘタレだけどな。ほのぼのマユが神楽並の怪力だったら、手が付けられんなあ。
226通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 21:21:06 ID:???
お留守番スレを見てきてくれ。
今どういう奴がきているか分かると思う。
マユ系スレだけを荒らしているのと手口の単純さから見るに前のコピペ君かも。
エヴァ板の人を巻き込もうとしている分(当然のように失敗しているが)、より性質が悪くなっているが。

まあ要するにスルー推奨。
相手するだけ無駄。
227通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 21:23:38 ID:???
単発設定小話 「ムウU」愛をください編

〜医療室に飛び込んでくるキラ〜
キラ「マリューさん!ムウさんが生きていたって本当ですか!?」
カガリ「っちょ、キラ!待てって!」
マリュー「キラ君!・・・はっ!?いや・・・これは・・・・・・」
〜抱きついていたムウから離れるマリュー〜
キラ「・・・?ムウさん・・・じゃないんですか?」
マリュー「いや・・・その・・・」
ムウ「俺はネオ・ロアノーク。連合の大佐だ・・・が、ムウ・ラ・フラガという記憶ももっているのさ」
キラ「ネオ・ロアノーク?でも・・・ムウさんの記憶を・・・・・・?」
ムウ「・・・ちょっとわかりにくかったか?」
カガリ「うむ、まったくなにを言っているのかわからん。もっとうまく喋れんのか?」
キラ「カガリ・・・君は黙ってなよ・・・・・・」
カガリ「なんだとー!お前、弟の癖に生意気だぞ!」
〜頭を叩こうとするカガリの腕をつかむキラ〜
キラ「・・・やめてよね。僕が本気をだしたら、カガリがかなうわけないだろ?」
カガリ「なにうぉー!!」
マリュー「やめなさい二人とも!捕虜とはいえ、この人は怪我人なんですよ!!・・・出て行きなさい!」
キラ&カガリ「・・・はい」
〜互いに掴み掛かったままの姿勢で退出するキラとカガリ〜
キラ「・・・・・・」
カガリ「・・・お前がちゃかすからだぞ・・・・・・」
キラ「・・・なんでカガリはいつも偉そうなのさ?」
カガリ「わたしのどこが偉そうなんだよ!」
キラ「ほら、まただ!上からしかものが言えないの!?」
カガリ「こいつー!言わせておけば!」
〜医療室の扉が開き、マリューが仁王立ちしている〜
マリュー「・・・いい加減にしなさい!!」
キラ&カガリ「・・・・・・はぃ」
マリュー「声が小さいっ!!」
キラ&カガリ「・・・はい!」
〜一目散に立ち去るキラとカガリ〜
ムウ「ははっ。っくっくっく・・・面白い姉弟だな」
マリュー「・・・ごめんなさい。・・・・・・ってなんでわたしが謝ってるのよ?」
ムウ「っぷ、っくっくっく」
マリュー「ええと・・・どこまで話しましたっけ?」
ムウ「え、ああ・・・えーと、そうそう。ムウ・ラ・フラガの記憶も持っているってところまでさ」
マリュー「そうでしたね・・・。まぁ先ほども言いましたがしばらくは捕虜として扱いますが、かまわないですよね?」
ムウ「当然の対応だろうな。・・・しかし、きついな。記憶があるのに・・・感情がでてこないってのは・・・」
マリュー「あなたがムウ・ラ・フラガであろうとするのであれば・・・わたしが全力であなたをサポートします・・・」
ムウ「・・・・・・まずはそこまで持ってくのが目標だな」

愛をください編 完
228通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 00:02:46 ID:???
単発さん乙……なんだけど……

マユから直接家族殺しの件を突きつけられたはずなのに、
キラがまったくそれを気にしてるように見えないってのは……
229単発:2006/06/17(土) 00:11:37 ID:???
>>228
自分でもわかってるんですが・・・その時その時の気分で書いているので・・・
話の前後の辻褄はあまり(ほとんど)気にしないで書いております。

まー今回はその突っ込みが来るだろうと思ってたので、辻褄を合わせた「ムウU改」愛をください編を
そのうち投下します。すいません。
230通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 00:46:35 ID:???
まあ単発というくらいだしねぇ
231ほのぼのマユデス。うまれかわる。:2006/06/17(土) 01:33:31 ID:???
「シンハロ!!確かにディスティニーの速度なら速いけど私達だけじゃ・・・・・・。」
『・・・・・・こんなこともあろうかととは考えてなかったけど最終兵器っぽいものを用意してある。つーかサーペントテールへの以来はそれだし。』
「マジで!?つーかあの人達が遅れたのあんたのせいか!!」
『ただ・・・、たぶんステラじゃないと乗れないし・・・・まだ全然中途半端だからぶっ壊れるかもしれないし・・・。』
「何それ?!もっと早く完成させなさいよ!」
『だって!プラントの設備でもっときちんとハード面を完成させるつもりだったし・・・・・・。
第一使える部品を無理矢理あつめて作ったからぁ・・・・・・。』
いじいじと話し続けるシンハロ。マユのいらつきは最高潮寸前。
「・・・・ステラがそれに乗った場合の危険性は・・・?」
『そう言うところはまっさきに調整しました。』
「・・・よぉし!!じゃあスピード上げるわよ!!」
もうこれ以上上げたら壊れる、というところまでマユは一気にスピードを上げる。
【え・・これ以上は・・・・・ちょっ!!いたいいたいいたい!!翼いたい!!】
『ディスティニー・・、ごめん。こんど新しい武器作ってあげるから。』
マジできつそうなディスティニーに涙ながらに言うシンハロ。
ちなみにガイアはステラごと良い具合にシェイクされている。
きっと中ではくるくるとステラが目を廻しているだろう。




「劾・・、依頼主はまだなのか?」
「こちらに向かってるとの事だが・・・・・。」
サーペントテールの二人は巨大な戦艦の前で依頼主を待っていた。
すると、もの凄い速さで熱源が迫ってきている。
「・・・・・・。」
黙って身構える二人、すると・・・・・・。
『うわぁぁぁぁぁ!マユ早い早い!!ぶつかる!!』
『うぇーい・・・・・・あたま・・・ぐるぐる・・・・。』
『わぁぁぁぁっ!!こんのぉぉぉぉぉ!!』
すると赤い羽根のついたMSが黒いMSをつれてもの凄い速さで飛んできた。
そしてサーペントテールのMSスレスレの位置で止める。
『 あー・・、危なかった。あ。』
ディスティニーがサーペントテールのMSを見る。
『えっとー・・、どうもー。依頼主のシン・ハォロ・アスカですー。』
気の抜けた通信がどうみても強そうなMSから聞こえてきた。
232ほのぼのマユデス。うまれかわる。:2006/06/17(土) 01:35:32 ID:???
「それで・・・・、最終兵器って何?」
「ステラ・・・さっき吐いちゃった・・・うぇ・・・・。」
まだ酔いが覚めないステラと人間バージョンの体に移行したシンハロの後を歩くマユ。
サーペントテールの二人には外で待機してもらっている。
『・・・・ここだよ。』
そう言ってシンハロが扉を開ける、そこには広大な空間が広がっていた。
そこにあったのは、たった一つのMS。
そう、それはたった一つで広大な空間を占領していた。
「これは・・・・・・・・デストロイ?!」
目の前でマユは驚愕する。
彼女達の目の前にあったのはあの、破壊しか生み出さないMSだった。
『ひどいなぁ、マユ。”デストロイ”なんて名前で呼ばないでくれよ。この子はデストロイじゃない。』
そう言うとシンハロが床を蹴る。無重力に近い部屋で体がふわりと浮く。
確かに、言われてみれば細部がデストロイとは違う。
『やぁ、調子はどうだ?見た所、まだ間接部がうまく動かないみたいだな。実は今日はお願いがあってきたんだ。』
シンハロは目の前のMSのカメラの前まで行きまるで子供に話しかけるかのように語りかける。
「ステラ・・・・・。」
マユは思わず心配そうにステラを見る。デストロイはステラにとってもトラウマのはずだ。
だが、ステラの顔に怯えは無い。ただ、呆けて目の前のMSを見てる。
「違う・・・。この子は・・・怖くない。」
ステラがぽつりと呟いた。
そう言うとステラも床を蹴ってシンハロの元へいく。
「この子、何て名前?」
ステラがシンハロに聞く。
すると、シンハロは少し困ったような顔をして答えた。
『実は・・、まだ決めてないんだ。俺がつけるとこいつどれも嫌って言うんだ。』
そう言うとステラは少し考え込む。
うーん、うーんと唸ると突然、何か思いついたようにシンハロに問いかけた。
「ねぇ?なんか・・・神様の名前でいいのないかな?」
その会話を聞いていたマユはピンと来た、どうやらガイアと関連づけた名前にしたいらしい。
『そうだなぁ・・・・、そうだ、デメテルってのは?大地の神様で豊穣の神様でもあるんだ。』
デストロイとはまったく反対の意味、豊穣の神の名前。
それは、このMSにふさわしいのだろうか?
「じゃあデメちゃんだね!」
ステラが笑いながら言う。
『・・・・、こいつもこの名前、気に入ったみたいだ。』
シンハロも満足げに微笑む。
「ステラ、大丈夫。この子なら・・・・・・一緒でも。」
そう言ってステラはデメテルに触れた。


233ほのぼのマユデス。うまれかわる。:2006/06/17(土) 01:36:39 ID:???
『ステラ、正直デメテルはポンコツだ。もっと後々改良を加える予定だったから。』
シンハロからの説明が通信される。
『何せデストロイの無事だったパーツをいろんなパーツで無理矢理ひっつけたんだ。それに、武装は外す予定だったから出力が落ちてる。
稼働時間はそんなに無いし、耐久力も無い。陽電子リフレクターもついてない。無理は絶対するな。』
画面にデメテルのステータスが表示される。確かに、破壊力はともかく後の数値はダスト同然だ。
だが、それでも自分はやらなければならない。知らなかったからと言って、自分の罪は消えない。
戦艦の上部分が開き、そこからコロニーの残骸が見える。
「ステラ・ルーシェ!デメテル!!でるよ!!」







ーーーー特別付録。ーーーーー
その頃のシンちゃんとフォースインパルス。

「あ・・、くっそっ!!なんかものすごくステラとあいつが仲良くしてる気がする!!マユの他にステラまで取られて・・・あの泥棒ハローーー!!」
【うわぁ、坊ちゃんがものすごくいやな方向にニュータイプ覚醒してる気がする。】


234通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 09:43:05 ID:???
>>228
まあ、ある意味原作準拠だなw
2359:2006/06/17(土) 10:02:06 ID:???
 こんにちは。Scars of...を書かせて貰っている者です。
……まとめサイトで他のSSを読ませて頂きましたが、何だか私が考えていた
ような展開が既に……いやほぼ全て網羅されてしまっているようですorz
 似た話がもう一度繰り返されるのもどうかと思いますので、更新停止したほうが
良いんでしょうか?
236通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 10:14:30 ID:???
>>235
ストーリーに似たところがあったとしても、
作者さんが違えば、表現の仕方や読者に伝わるものも違います。
ご自身の書きたいように書かれても大丈夫だと思います。
237通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 11:11:37 ID:???
PP書いてる者です。
25話目投下します。
2381/18:2006/06/17(土) 11:12:47 ID:???
地中海に浮かぶギリシャ領クレタ島。
彼の島には現在地球連合軍の基地があり、沖合いには艦艇も多数停泊している。
その中で……一際大きい空母クラスの艦が2隻あった。
両艦とも、ここユーラシア連邦に属する艦ではない。
一隻はユーラシア連邦と双璧を為す地球連合の大国、大西洋連邦の艦。
もう一隻は、このほど地球連合の同盟条約に加盟した小国、オーブの艦。
即ち、前者はJ・Pジョーンズ、後者はタケミカヅチ。
そのタケミカヅチのブリッジでは、若き指揮官ユウナ・ロマ・セイラン中将がマイクを握る。

『さあて、お楽しみの時間の始まりだ。二人とも、準備はいいかい?』

拡声器を使っているため、タケミカヅチ全体に響き渡るほどの音量で、指揮官の声は伝わる。
ブリッジから見下ろす彼の眼下には、タケミカヅチの広大な飛行甲板が広がる。
その甲板の上には、2機のMSが佇んでいる。互いにライフルを持ち、シールドを構えたまま……
一機はオーブ軍所属の可変型MS。

『キラ・ヤマト三尉、ムラサメ、いつでもいけます!』

ムラサメを駆る青年、キラ・ヤマトが拡声器を使い応答する。
彼のムラサメと向き合う形で佇むもう一機のMS。それは、緑色にカラーリングされた機体。
ムラサメと比べると厳つい顔の機体――混沌の名を冠するMS。

『こちら、スティング・オークレー少尉! カオス、準備OKだ! セイラン将軍、開始の合図を!』

カオスからは、スティングの威勢のいい声が聞こえる。
将軍、とは勿論ユウナのこと。
スティングの了解のサインに、将軍も頷く。
そして、開始の合図が下される。

『さあ、オーブ軍並びに大西洋連邦軍の諸君! これより両軍の親善試合、もとい模擬戦を始めるぞぉ!
 手の空いている者は、是非ご覧あれ! それでは……始めええエッッ!!!』

ユウナの合図にムラサメとカオスが宙に舞った。
ムラサメは一躍、飛行形体となり戦闘機の姿に変わる。少し遅れて、カオスもMA形体に。
ムラサメをカオスが追いかけるようにして、緒戦が訪れる。
かくして、キラ・ヤマトとスティング・オークレーの模擬戦が始まった。
2392/18:2006/06/17(土) 11:14:04 ID:???
模擬戦を見守るタケミカヅチのブリッジ。ユウナの隣に控えていた黒髪の少年が口を開く。

「セイラン将軍は……リング・アナウンサーに向いていますよ」
「そうかい? でも、残念だねぇ。飛んでいっちゃった。
 折角、タケミカヅチの甲板があるんだ。精々、派手に殴り合ってくれればいいのに……」

饒舌なユウナのアナウンサーぶりに、黒髪の少年――ゲン・アクサニスが軽口を叩いた。
それを受け流すように、ユウナも軽口で返す。
二人が眺める模擬戦は、まだ始まったばかり。だが、早くも2機を視認できる距離ではなくなっていた。

事の発端は、スティングの陳情であった。
予てから、前大戦でストライクを駆った英雄、キラ・ヤマトに挑戦したがっていたスティング。
彼は、上司ネオ・ロアノーク大佐に頼み込み、オーブ軍にコンタクトを取らせるに至る。
とはいえ、オーブ軍のトップが了承しなければ、実現しない話ではあった。
何せ、スティングとキラは異国の軍隊に属す者同士なのだから。
しかし、ユウナは二つ返事で話を受ける。
こうして、早速に準備が整えられ、スティングの念願は実現した……というわけだ。

「無理を言ってしまい、申し訳ありません」
「いやいや、お陰で大西洋連邦の精鋭の戦いぶりを、直に見られる。
 この程度のお願いを聞くのは、容易いことさ。中尉もやっていくかい?」
「いえ、自分は……結構です」
「そうかい? 君の戦いも見てみたかったのだけれど……それじゃあ、仕方ないな」

ゲンは非礼を素直に詫びる。この模擬戦はユウナの懐の深さが実現させたのだ。
いきなり『模擬戦をやらせろ』と頼んで、聞き入れてくれる指揮官などそうはいない。
それでもユウナの言葉は、リップサービスではなく真実。
連合の精鋭の力を直に見たいというのは、偽らざる彼の本心であった。
もっとも、それだけではない。

「ところでアクサニス中尉、開戦直後に鴉が歌姫を攫ったんだけど……知っているよね?
 お姫様は、ご無事かな? 彼女が帰ってこないと、ボクは困るんだよねぇ」
「……! 無事……だと思います」
「そうか! それは良かった。いや、何より……ハハハッ!」

ユウナは油断無く、ゲンを問いただすことも忘れていない。ちゃっかり、ラクスの安否も確認していた。
2403/18:2006/06/17(土) 11:14:50 ID:???
そんなユウナとゲンを、少し離れたところから眺めている人影が二つ。
オーブ軍のトダカ一佐とアマギ一尉である。

「トダカ一佐、あの二人……随分親しげではありませんか? 知り合いか何かですかね?」
「俺は知らんよ、そんなこと。
 それより、模擬戦を見なくていいのか? ヤマト三尉を応援するんじゃないのか?」
「あ……! 見ます、直ぐ見ます!」

トダカとアマギ。
二人は模擬戦を見るための双眼鏡を片手に、チラチラとユウナとゲンを見ていた。
とはいえ、やはり彼らのメインはキラの模擬戦。
すぐに二人は双眼鏡越しにムラサメとカオスを追う。
逃げるムラサメを追うカオス。ドッグファイトとも言える展開が繰り広げられていた。
冷静に状況を眺めているトダカ。が、対照的にアマギは熱っぽい。時々、応援の声が口から漏れる。

「ああッ! もう……! じれったい!
 ヤマト三尉、回り込むんだ! 後ろを取られちゃダメだよ!」
「………」
「大西洋連邦のヤツに負けたら、承知しないぞ!
 ホラ、さっさとその緑色のMSをやっつけてしまえッ!」
「おい、アマギ。格闘技を観戦しているんじゃないぞ。落ち着け」

大西洋連邦が嫌いなアマギは、つい感情的にキラを応援してしまう。
普段なら黙認するトダカでも、その大西洋連邦からの来客――ゲン・アクサニス中尉がいるのだ。
礼節は保たねばならない。暗にそう諭すトダカの声に、アマギも我に返る。アマギは、ゲンの顔色を伺いつつ言う。

「す、すみません。つい……
 でも、あの……第81独立機動群の連中って、何でこう……素顔を隠したがるんでしょう?
 あの仮面の大佐といい、今日来ているバイザーの中尉殿といい。変な部隊ですね、彼ら」
「……そうだな」

今度は小声でトダカに耳打ちするアマギ。
ネオは先日来た折、顔を仮面で隠していた。今日来たゲンもバイザーで素顔を隠す。
トダカには理由は分からなかったものの……一つだけ、言える事はあった。

「素顔を、見られたくない理由があるのだろう。あの中尉殿にも、な」
2414/18:2006/06/17(土) 11:15:45 ID:???
まったりと観戦している連中は兎も角……
空の上では、相変わらず激しい空中戦が繰り広げられていた。
カオスのコクピットで、スティングは叫ぶ。

「クソッ! 先輩、逃げてばかりは止めて、戦ってくださいよ!!」

ドッグファイト……と呼べば聞こえはいいが、彼らが使用できるのはペイント弾装填のライフルのみ。
緒戦で飛行形体になったムラサメを駆るキラは、追いすがるカオスを尻目に逃げの一手であった。
時折放たれるカオスのライフルを、ムラサメが避けるだけ。だが、キラは理由も無く逃げていたのではない。
模擬戦とはいえ、初めて戦う相手の出方を見るべく、彼はこれまでの時間を様子見に使っていたのだ。

『逃げてばかりって……無茶言わないでよ』
「模擬戦じゃないッスか!? ガチでやりましょうよ!」
『……やだ』
「そんなぁ!!」

ガチで戦うことをキラは拒む。拒んだ理由は二つ。
一つ目の理由はスティングの技量。
カオスのMA形体でのスピードは、ムラサメの戦闘機形体に劣らぬスピード。
キラは再三振り切ろうとしていたが、スティングはピッタリと背後について離れない。
もう一つの理由は、キラの技術者としての分析故。
スペック的に、ムラサメは軽量に設計されている。
空中での機動力を優先しているためだが、対するカオスをキラが見たところ……
ドラグーンを兼ねる機動兵装ポッドを背面に揃えたカオスは、どうみても中量級。
重量級MSのガズゥートやらに比べればマシであろうが、軽量級のムラサメでの近接戦闘は避けたかった。
そんなキラに、スティングはなおも食い下がる。

「何でですか!? ガチでやりましょうよぉ!!俺、上官に頭下げまくったんですよ!?」
『……仕方ないなぁ』

とはいえ、逃げてばかりでは埒が明かないのもまた事実。
意を決し、キラは打開策を練る。
近接戦闘のパワー勝負を避け、一瞬で相手を戦闘不能にする術を――

ややあって、キラはムラサメの機首をある方向に向ける。
その先に見えるのは、二隻の空母、J・Pジョーンズとタケミカヅチ……
2425/18:2006/06/17(土) 11:16:40 ID:???
ムラサメの動きを見て取ったスティングは狂喜する。

「やっとやる気になったか! そう来なくっちゃ!!」

スティングは思った。
キラはやはり自分に胸を貸してくれるのだと。
おそらくは、タケミカヅチに戻り、甲板の上で近接戦闘をしてくれる筈。
勇躍し、彼もカオスの機首をタケミカヅチへ向けた。

しかし、キラは一行に減速しない。
変わらぬスピードを保ちながら、J・Pジョーンズとタケミカヅチのいる方へと向かう。
その様子にスティングは訝しがる。

「どういう……つもりだ? 胸を貸してくれるんじゃ、ないんですか!?」

キラからの応答は無い。
そのまま、二つの空母を目指しムラサメは空を翔る。
やむを得ず、スティングも同様の速度を保ちながらカオスで追う。

キラはムラサメのコクピットで刻を待っていた。勝負に出る一瞬を――
模擬戦とはいえ、悪戯に仲間を傷つけるわけにはいかない。
かといって、相手の意にそぐわぬ形で模擬戦を終えるのも気が引ける。
だから、キラは行動に出た。一瞬で戦いを終わらせるために。

「――今だッ!」

キラはアクションを起す。
J・Pジョーンズとタケミカヅチに迫る直前、ムラサメを飛行形体からMS形体へ――!
ちょうどタケミカヅチの甲板の真上で、変形したムラサメがカオスに体を向ける。
減速したムラサメは、迎え撃つ体勢を一瞬で整えた。
対してカオスは――

「――なッ!?」

突然のことにスティングはうろたえる。慌てて減速しようとするが――それは、キラの狙い通りの行動。
慌てたカオスがMS形体に変化しようとしたところで、キラが再び動いた。
2436/18:2006/06/17(土) 11:17:27 ID:???
「そこぉッ!!」

キラは叫ぶ。
ムラサメのバー二アを全快にし、飛翔させる。
カオスの直上に躍り出たムラサメは、勢いをつけて回し蹴りを見舞う――!!

「な、なにッ!?」
『スティング、ごめんッ!!』

ただの回し蹴りではない。何トンもする金属の塊、MSが見舞う回し蹴り
衝撃と共にスティングの意識は奪われ、一撃は容易にカオスのコントロールを失わせる。
機体は蹴られた衝撃で、そのまま地に落ちた。スティングが悲鳴をあげる間もなく……

………

………

『そこまでッ!! 二人ともご苦労だった。オークレー少尉、大丈夫かい?』

ユウナ・ロマ・セイランの声が響き渡る。その声で、スティングは目覚めた。
モニター越しに目の前の光景が映し出される。
眼前に聳えるのは、ライフルを構えたキラの駆るムラサメ――

「け、蹴り飛ばされて、俺は……どうなったんだ?」

蹴り飛ばされた後の記憶は無かった。眼が眩み、何が起きたかも分からない。
衝撃はコクピットのショック・アブソーバーで軽減されているとはいえ、生身の人間には溜まったものではない。
軍人として常日頃から体を鍛えていて、かつエクステンデッドとして強化されている彼でも。
そんなスティングに、僚友ゲンが声を掛ける。

『キラのムラサメは、変形を減速するのに使ったのさ。
 動揺したお前が、慌ててカオスをMS形体にしようとしたところに回し蹴り。
 ご丁寧に、お前が倒れこむ場所まで計算に入れていた。今、お前がいるのはどこだ?』

ゲンの声で、スティングは我に返る。カオスがいるのはタケミカヅチの甲板の上。つまり……
キラは、カオスに蹴りを見舞う場所、カオスが地に落ちる場所――全てを計算に入れていたのだ。
2447/18:2006/06/17(土) 11:18:16 ID:???
スティングはようやく事態を飲み込んだ。
そして、仰向けに倒れたままのカオスを起そうとする。
彼が上体を起したところで、ムラサメがそれを助け起す。

『ごめん、スティング。大丈夫?』
「……ガチ勝負で、やられちまいましたね。
 まさか、俺が倒れこむ場所まで、カオスの相対速度まで計算していたなんて……
 最初から、こうするつもりだったんですか?」
『ただの、思いつきだよ。余りにも君が……その、隙を見せなかったから』
「マジかよ……? ……兎に角、完敗ッス。ありがとうございましたぁ!」

俗に言うところのお肌のふれあい、接触回線で会話が可能になる。
隙を見せない相手ならば、その隙を強引に作るまで――
キラの実行したことは、差し詰めこんな言葉で表現できよう。
先の大戦で、ただ一機のストライクでザフトのMS群を相手に戦ったキラ。スティングは思う。
連合軍人にとっては伝説のMS、ストライクを駆った者の実力は噂どおり……いや、噂以上であった、と。

タケミカヅチの艦橋――
アマギが手を叩いて喝采を上げている。彼だけでなく、ブリッジの全員が溜飲を下げていた。
艦橋だけではなく、艦内のいたるところからも、キラの勝利を讃える歓声が上がっていた。
オーブにとっては先の大戦で大西洋連邦に敗北を喫した面目躍如、といったところか。
ユウナも拍手をしようとするが、とっさに彼は思いとどまり……
隣に控えるゲンを見る。

「中尉、気を悪くしないでくれたまえ。どうにもうちの連中は……」
「嬉しいのでしょう? セイラン将軍も、私に構わず応援なされば良かったのに」
「……まぁ、応援したかったといえば、そうなのだが……」

歯切れ悪そうに、青年指揮官はゲンの顔色を伺う。
彼としても喜びたいものの、沸き返る周囲の様子にゲンが――
いや、大西洋連邦の者達が気を悪くしないか心配していたのだ。

「ま、実戦で勝てて何ぼだし。僕は……手放しでは喜べないよ」

ユウナは考えてから、やはり思いとどまった。
彼は仮にも一軍の将。行動には自制を払わねばならない、と心に決めていたのだ。
2458/18:2006/06/17(土) 11:19:09 ID:???
ゲンは艦橋を後にした。
自分がいることで、オーブ軍の喜びに水を差すことは避けたかったから。
が、何よりも、スティングの様子が気になっていた。負けて落ち込んでいなければ良いが……
そう思って、甲板へと足を運ぼうとした。
しかし、甲板に下りたところで、何やら騒ぎが起こっているのが聴こえる。

「ちょっと! 離して、離しなさいよ!!」

女の声――
一瞬、ステラかと耳を疑るが、彼女ではない。ステラとは違う、幾分甲高いのが声の主。
声のした方を見ると、女がオーブ軍の男と揉めていた。女の持っているカメラを、男が取り上げようとしている。

「離してよ! 別に、写真くらい撮っても良いでしょう!?」
「ダメだ! この模擬戦は、非公式のモノだ。フィルムを出しなさい。没収する!」
「ちょ……困るわ! 私、まだ見習いのペーペーで……こんなんじゃ、お給料貰えないの!」
「君も従軍記者だろう! 聞き分けなさいッ!」

どうやら、今の模擬戦を写真に収めた従軍記者を、オーブ軍人が見咎めたらしい。
非公式な撮影はバレない様にするのが常套手段なのだが、まだ女は若い。ベテランの記者とは程遠いようだ。
年のころは20そこそこだろうか。ゲンが見たところ、彼女は本当に困り顔。
仕方なく、彼は助け舟を出すことにする。

「……別に、俺たちは構わないぜ?」
「あ? ……って! アンタは、大西洋連邦の!」
「写真くらいは良いさ。
 民間に載るものなら困るが、軍の広報誌に売りつける分には、良いネタになるだろう?
 大体、その新米さんの腕なら、上手く撮れているとは限らない……だろ?」
「……ま、載せる段階で一応軍のチェックは入るんだけどな。
 写真の出来次第では、軍の広報が買ってやらないこともないが。
 正直、アンタたちとの関係が微妙だから気遣ったんだが、大西洋連邦の人が言うなら……見逃すか」

そのオーブ軍人は、結局ゲンの勧めを飲んだ。
軍の広報に載せるというのなら、その写真を没収するのは気が引ける。
何せ、非公式の模擬戦とはいえ、かつての敗戦国が戦勝国の軍を打ち破ったのだ。
オーブ軍人としては、悪い気はしない。
ゲンの助言で、その場は収まった。
2469/18:2006/06/17(土) 11:19:56 ID:???
カメラを持った女性記者は、その場が収まるやゲンに礼を述べる。

「助かったわ。ありがとう!」
「……で、アンタどこの記者さんなんだ? 新米を軍艦に乗せるなんて、御宅の会社はどうかしているぜ」
「あ! えっと……ここなんだけどね」

女性記者にゲンは所属を尋ねる。
新米を軍艦に乗せるなど、普通の新聞社ではありえないことだから。
彼女に不審を抱いたわけではないが、所属だけは一応確認しておくことにした。
女性記者が首からぶら下げているのは取材許可証を兼ねた記者カード。
ゲンはそれを覗き込み、読み上げ始める。

「ええと、アンタは……『オノゴロ・ディリー社所属 ミリアリア・ハウ』か?」
「ええ。そこに勤めているの。技術部、写真を撮る係りの……見習いなんだけどね」
「聞いたことない新聞社だな。どういうところなんだ?」
「……う〜んとね、まぁ、色々やっている会社なんだけど……」

女性記者――ミリアリア・ハウは、歯切れ悪そうに応える。
ばつが悪い感じで、しぶしぶ自分の会社について話しはじめた。

「オノゴロ・ディリーって、オーブでは有名なんだけどね。
 オノゴロ・タイガースっていうプロ野球チームの取材で食っている、小さな新聞会社よ」
「た、タイガース? 何だよ、そりゃ?」
「要は、ゴシップを兼ねた新聞を売っているところ。
 戦争になって、その会社から従軍記者を派遣しようとしたけど、誰も行きたがらなくて……
 だから、私が立候補したってわけ。でも見習いだから、お給料も出来高払いなの。お陰で、助かったわ」

ゲンにはよく分からないが、彼女はどうやら小さい新聞社の見習い記者らしいということだけは分かった。
改めてゲンは、甲板の先のほうにいる2機のMS――カオスとムラサメに脚を向ける。
……が、ゲンにくっ付くようにして女――ミリアリアはついてくる。

「……どういうつもりだ? 何故ついて来る?」
「お願いッ! 取材させて! 出来れば、あの緑のMSの写真も撮らせて!」
「ダメ。それやったら、今度こそフィルム取り上げて、海に放り込むからな。ついてくる分には、構わないが……」

女は不満の声を上げるが、ゲンはそれに構わずスティングの元へと向かった。
24710/18:2006/06/17(土) 11:20:45 ID:???
歩き続けるゲンは、直立しているカオスとムラサメの足元に辿り着いた。
見れば、キラとスティングはすでに機体を降り、歓談している。
そこへ、ゲンはやって来た。おまけと一緒に。
そのおまけの姿を、スティングが見咎める。

「ゲン、そっちの女の人は誰だ?」
「ああ、こっちのはさっき会った――」
「――ミリィ? ミリアリア! ミリアリア・ハウ!!」

ゲンが説明する前に、それは語られた。キラによって。
名を呼んだ相手を認め、ミリアリアも歓声を上げる。

「……嘘! キラ!? なんで? なんで貴方がここにいるのよ!?
 ムラサメに乗って模擬戦していたのって、キラだったの!?」
「君こそ! どうしてタケミカヅチなんかに!?」
「……ゲン、何だよ、あの二人は?」
「知り合い……みたいだな」

ゲンとスティングを差し置いて、キラとミリアリアは突然の再会に驚きを隠せない。
ミリアリアはキラに語る。戦後の彼女の在りようを。
まず彼女は、戦争を直に体験した者として、為政者が隠そうとする真実を他者へ知らせようと思い立ったこと。
そのためにジャーナリストを目指したものの、素人の夢が直ぐ実現する筈もなく……
結果的に、小さな新聞社の写真見習いに収まり、日々忙しい仕事をこなしていたこと。
開戦後に、従軍記者の話が来て『コレだ!』と思い……
半ば勢いでタケミカヅチに乗り込んでしまったことを。

「じゃあ、マリューさんから話は聞いてないの? ラクスのことは?」
「え? 何かあったの?」

忙しい新聞記者生活故か、マリューからの知らせもミリアリアには届いていなかったらしい。
キラはそのことを幸運に思う。これまでの複雑な話を、今の彼女に聞かせるのも気が引けた。
だからキラは、今はその事実を伏せていようと思った。ゲン達と事を荒立てたくはなかったから。
再会の喜びが終わるや、キラはミリアリアをゲンとスティングに引き合わせた。
細かい話は避け、かつてはアークエンジェルクルーであり、現在はジャーナリストであることだけ。
スティングはその事実に感嘆の声を漏らしたが、ゲンは……
顔には出さないものの、少しだけミリアリアに対する警戒心が芽生えていた。
24811/18:2006/06/17(土) 11:21:31 ID:???
その頃、ファントムペインの旗艦J・Pジョーンズでは――
司令官室にネオ・ロアノークとアウル・ニーダがいた。
ネオがこの部屋にいるのはいつものこと。しかし、アウルがいるのは極めて珍しい。
実は、アウルは今日スティング同様陳情に上がっていた。
その内容を聞いたネオは、部下の私心に訝しがる。

「ステラの休暇中の記憶を消すな……とは、どういうことだ?」

アウルが頼み込んだのは、ステラの記憶初期化の中止要請。
彼女に限らず、エクステンデッドは戦闘以外のことは全て忘れるよう、厳命されている。
戦闘に関係のないことでストレスを感じ、それが戦闘に影響を及ぼすことを避けるためであるが……
休暇から戻ったファントムペインのパイロット達は、今だ記憶の抹消は為されていなかった。
前日、ネオが全員の心身の再チェックを命じたからだが。

「確かに、俺はまだ最適化の指示はしていない。今日にもやる予定だったが」
「だから! その最適化を、思いとどまってよ! ステラだけでいいから!!」
「どういう……風の吹き回しだ、アウル?」

アウルの突然の申し出に、ネオは困惑した。
彼らエクステンデッドは常に従順であり、命令を拒むことなどこれまでにはないこと。
故に、ネオはアウルの真意を測りかね、再度質問を繰り返したのだ。
アウルは俯きながら、頭の中で話すべきことを、考えを纏めながら……語り始めた。

「休暇中、ゲンとステラ……デートしてたんだ」
「……で?」
「ホラ、ステラは……女の子だぜ?
 俺らは別にいいけど、アイツは……愉しい思い出とか、全部消しちゃったら……やっぱ、可哀相だよ」
「……ふぅん」

ネオは興味なさそうに返すだけ。だが――
内心、ネオはビックリしていた。あのソキウスのゲンがよりによってデートとは……
しかも、相手はエクステンデッドのステラ。
これまで、二人の仲をからかう事はあっても、それはゲンが余りに真面目な兵器であることを揶揄したもの。
もう少し力を抜けという意味合いで、ステラを介在させることで息抜きをさせようと思ったことはあったが。
寄りによって、休暇中にそんな仲になっていようとは……
ネオは、夢にも思わなかった。まさに、寝耳に水の出来事を聞かされたのだ。
24912/18:2006/06/17(土) 11:22:28 ID:???
だが、それ以上に意外だったことがある。
それは、アウルが頼みに来たこと。
彼は元来、他人には余り興味を示すことはなく、マイペースな性分。
その彼が、仲間のことで頼みに来る。ネオには、どう考えても尋常ならざる事態であった。
改めて、ネオはアウルに心境の変化を尋ねる。

「アウル……お前、ちょっと変わったな。何かあったろ?」
「何かって……何さ?」
「お前、他人には無関心なところがあったじゃないか。
 そのお前が、わざわざ仲間のことで頼みに来るなんて……どういう心境の変化だい?」

アウルは言葉に詰まる。
どうやら、彼にも思い当たることがあったらしい。
余り話したくはなさそうなアウルではあったが……頼みに来た手前、質問を遮ることなど出来様筈がない。

「あのさ、俺も……休暇中に女の子と知り合ったんだ」
「……へぇ」
「戦争が終わったら、会いに行く約束をしたんだけれど……
 もし、そのことを相手が覚えてなかったら、悲しいじゃない? だから――」
「――それは、お前も同じだろう?」

ネオは途中でアウルの言葉を遮る。
記憶の抹消――それはストレスをなくす一方、愉しい思い出も消すことになる。
アウルはそれ故、わざわざネオに頼み込みに来たのだが……
アウルの心境の変化が言葉どおりなら、それこそ本末転倒。
彼も、意中の少女と会うことは適わなくなるからだ。

「お前も、その子との思い出はなくなる。可哀相なのは、お前も一緒だ。違うか?」
「俺は、大丈夫。男だし。
 もし忘れちまっても、運がよければ思い出せるかもしれない。だから、大佐! お願いしますッ!」

今度は言葉だけでなく、深々と頭を下げアウルは頼み込んできた。
アウルにとっては、意中の少女とステラとを重ねてしまったのかもしれない。
意中の相手が自分を覚えていないことほど、男として悲しいことはない。
アウルは自分とゲンを重ねているのかもしれない。
ネオは、考えあぐねた挙句――『考えておくよ』と応えるのが精一杯であった。
25013/18:2006/06/17(土) 11:23:16 ID:???
「さて、どうする? 可愛い部下の頼みだが、困ったモノだねぇ……」

アウルを司令官室から遠ざけた後、ネオは一人思案に入った。
前日に行なわれたファントムペインのMSパイロット達の精密検査。
結果は、全員良好であり、とりわけステラ・ルーシェには精神的ストレスが検査に現れなかった。
スティングとアウルにも、ほとんどストレスは検出されず。とはいえ、記憶の初期化は規則で決まっている。
規則と人情の間で、指揮官の心は揺れ動く。

また、アウルの心境の変化も気になっていた。
ゲンを含めファントムペインの仲間意識は、少しずつ強固になりつつあると見てよい。
だが一方で、本来の兵器としての任務に支障が出ないとも限らない。
戦争であるから、作戦の進行に際しては仲間を切り捨てる場合も有り得る。
ネオとしては何としてもそんな事態は避けたいが、戦局はいつ具合が悪くなるとも限らない。
味方が不利になった場合に下される非常な決断――
深まった絆がそれに害を及ぼす可能性も否定できなかった。

「出来れば全員、愉しい思い出は残しておいてやりたいが……
 休暇中に深まった仲が、戦局次第で悪影響を及ぼすことも考えられる。さて、どうする? ネオ・ロアノーク?」

自問自答の時間が始まる。
アウルの変化は若干危険な兆候と思える。彼の場合、記憶は消さざるを得ない。
スティングは、キラ・ヤマトとの模擬戦後に何らかのストレスを感じている可能性がある。
二人とも、危険な因子を孕んでいる。やはり、最適化はせざるを得ない――
最後に残されたのは、やはりステラ・ルーシェ。

「ゲン、お前のせいだぞ。一体、どうしてくれるんだ?」

ネオはゲンの名を挙げ、ここにはいない部下を責める。
ゲンの場合はソキウスであるから、記憶の初期化はJ・Pジョーンズでは行なえない。
特別な処方が必要となるため、研究施設クラスの場所でなければ、なし得なかった。
すなわち、彼の場合は今日明日中の最適化は不可能。
そこまで考えて、ネオはある結論に辿り着く。ある意味、指揮官としては無責任な結論だが。

「……ったく、自分の女の面倒くらい、自分で見ろよ。 ん? ……そうか! いっそ、そうするか!」

果たして、どんな結論に辿り着いたのか。ネオはただ、口元を少しゆがめ、悪戯っぽく笑うだけ……
25114/18:2006/06/17(土) 11:24:02 ID:???
キラとミリアリアの再会に水を差された格好で、ゲンとスティングはタケミカヅチを後にした。
元々模擬戦目的で彼の艦を訪れたのだ。長居をする理由もなかったからでもあるが……
J・Pジョーンズに戻った二人は、格納庫でネオに迎えられる。

「よう。結果はどうだった?」
「ネオ、負けちまったよ」
「ああ? 仕方ないなぁ……ま、腕立て200で勘弁してやろう」
「げ! マジかよ……」
「あと、お前は晩飯食ったら、最適化だ。処置室へ向かえ。いいな?」

スティングはネオの最後の言葉には、無言で頷いただけ。
彼はこれから記憶を消されるのだ。休暇中の記憶を――
メイリンやマユと過ごした時間、キラを含めた仲間たちと過ごした時間を。
だが、これとて定め。スティングもそれは十二分に承知しているから、不平は言わない。

「ああ、それとゲン、ちょっと来てくれ。話しておきたいことがある」

実は、ネオにとってはこちらが本題。彼は部下を、他人に声が届かぬ場所、甲板に誘う。
先ほどまで悩んでいた、エクステンデッドに対する記憶の処置に関する話をする意図で。

時刻は夕方。西に傾きつつ陽を背に、二人の密談は始まる。
周囲に声を聞く者がいないことを確認した後、ネオは語る――アウルから頼まれたことを。
そして、今の自分の心境をありのまま伝えた。ステラの記憶を消すことを、現在苦慮していると。
突然の話に戸惑うゲン。が、彼に構うことなく、ネオは最後に伝える。上官としての決定を……

「面倒な話だな。だから俺は決めた。判断は……ゲン、お前に任せる! いや、任せた!」

そう……ネオは決めたのだ。ゲンに全てを委ねると。結論は単純明快――

「大体、お前の彼女だろ? なら、お前がフォローしろ。
 お前と仲良くなったことが切欠でステラの戦闘力が落ちるなら、お前がその分を補えば良い話だ。
 ……ったく、ハイスクールのガキじゃあるまいに。男女交際なんて、俺の守備範囲外だ。
 もし、お前が嫌だって言うなら、ステラの記憶を消すことになるが……それでもいいのか?」

無論ゲンとしては、首を縦に振るはずがない。折角ステラと仲良くなれたのだから。
一方、上官としての責任放棄も甚だしいが……ネオは、極めて単純明快な解決策を示し、満足げに笑っていた。
25215/18:2006/06/17(土) 11:24:54 ID:???
結局のところ、ネオは判断に困った挙句、ゲンに丸投げして遣したのだ。
ステラに自分との思い出を忘れて欲しくはない――その想いだけで、ゲンは頷く他なかった。
でも、その回答すら上官の予定通りの応え。ゲンは、ネオの掌の上で踊りを踊らされただけなのだ。
次第にその事実に気づき、ゲンは上司をバイザー越しに睨む。
その視線が、相手に気取られたわけではないが……上司はそれに応えた。

「不満なのかい?」
「……こんな判断の仕方でいいんですか? 大佐は、現場の指揮官でしょう?」
「そうだよ。俺はここの指揮官。だから、MS小隊長のお前に判断を委ねたんだ。
 お前がこれを機に更なる活躍をしてくれれば、万事めでたし。全てが丸く収まる。
 護る者出来た男は強い……っていうじゃないか?」
「……いい加減ですね」
「でも……その方が、ステラにとっては幸せだろう?」

ネオの最後の言葉――それだけは、一切の冗談を声色に乗せなかった。
また、それはネオの本音でもある。ステラに対する憐憫の情があったことは間違いない。
最も、平素から彼女だけでなく、兵器として生きねばならない部下全員の境遇に同情してはいた。
とはいえ、指揮官である以上、普段はそのような情を見せることはないが……
この時だけは、ステラが女の子であるということも手伝って、ネオの情の脆さが浮き彫りになってしまった。
そんな言外の意図を察し、ゲンは上官に改めて礼を述べる。

「大佐、ありがとうございます。このお礼は――」
「――礼はいいさ。実戦で返してくれれば。それより、もう一つ聴いておかなければならないことがある」

改まった口調で、ネオはゲンに問う。今度は彼本来の……いや、本性を出しての質問を。

「で、お前……ステラとどこまでいったんだ? 吐いてもらおうか。
 ……ま、応えにくい質問ではあるな。A,B,Cで聴こうか? どこまでやった?」
「へ? え、ABCって何ですか?」
「おい! 上官を謀るのもいい加減にしろよ? Aはキス、Bは胸、Cは……これ以上言わせるのか?」
「ちょ……! ちょっと待ってください! 俺は何も!!」
「いいか? お父さんは、Aまでは赦そう。だが、B以降は赦さん。
 Cなんてもっての他だ! もしCまで行っていたら……魚の餌にしてやる。さぁ、吐け! 吐くんだ、ゲン!!」
「お、お父さん? 何言ってるんですか! え!? ちょ、胸倉を掴まないで! く、苦し――!」

……やはり不真面目な上官。この後根掘り葉掘り、ゲンはネオから執拗なプライベートの尋問を受けてしまった。
25316/18:2006/06/17(土) 11:25:40 ID:???
「ったく、あのオッサン……! 俺はまだ、手しか繋いじゃいないっての!!」

ネオの執拗な尋問に折れ、結局全て吐かざるを得なかったゲン。
数十分に渡る尋問の末、ようやく介抱された彼は、一人になったところで悪態をつく。
やがて、甲板から格納庫に戻るところで……
腕立て伏せを終えたスティングと、彼と一緒にいたアウルを見つけた。
アウルはゲンを見つけるや、軽く手を振るが……スティングは俯き嘆いている。

「畜生! ああもアッサリやられるなんて!」
「念願叶ったんだから、素直に喜べばいいじゃん?」
「力の差があるのは覚悟していた。けど、もっと通用すると思ったのに……クソッ!」
「ま、これから差を縮めるしかないじゃん。頭、切り替えようぜ?」

キラの前では悔しさなど見せなかったスティング。
だが、時間が経ったことで敗北の事実に悔しさがこみ上げてきている様子。
そんな相棒を、アウルは慰めていたが、スティングはまだブツブツ言っている。
見かねたゲンは、仲間にある提案をする。

「そんなに悔しいなら、再戦を申し込めばいいだろう?」
「……! 再戦!?」
「そうだよ。強くなって、リベンジの機会があればすればいい。簡単なことだ」

ゲンの言葉に、スティングの表情は明るくなる。
タケミカヅチとの共同作戦が続く限り、また再戦の機会はあるかもしれない。
幸いユウナは理解のある人物だし、障害と呼べるものもなかった。
再戦の言葉に、スティングは歓喜の声を上げる。

「よし! 分かった、ちょっと頼んでくる」
「ああ、そうしろ……って、今から再戦するの? 本気かよ?」
「大マジだ。アウル、お前も来い。ゲンもだ」

唐突なスティングの申し出に、ゲンとアウルは呆然とするが……スティングは言葉を続ける。

「心配するなよ、MSは使わないから。アウル、ボールとバッシュ持ってこい。いくぞ! 再戦だ!」

最後の言葉に、アウルは意を察しニヤリとする。そして、再戦が幕をあける――
25417/18:2006/06/17(土) 11:26:30 ID:???
陽が沈む頃……
タケミカヅチの甲板の上、特設バスケットコートで再戦は行なわれた。
ステラを加えたファントムペインのパイロット4人は、タケミカヅチを再度訪れキラに再戦を申し込んだ。
キラと一緒にいたミリアリアを加え、3on3の試合が始まる。しかし、それはMSの模擬戦ではなく――

「ちょ、ちょっと待って! もうくたびれたよ……休憩にしない?」
「何言ってるんですか、先輩。まだ始まったばかりですよ?」
「も、もう疲れた……バスケの試合やるなんて、聴いてないよ!」
「キラ! だらしないぞ! ほら、ボール見てっ! パスカットしろよ!」
「ゲンまで酷いよ。ミリィも、何か言ってよ」
「わ、私も……もう体力の限界。降参、降参するわ」

開始から10数分。決着はあっさりと着いてしまった。
ファントムペイン3人組、アウル、スティング、ステラと……混成オーブチームのキラ、ゲン、ミリアリアの試合。
2年来のモルゲンレーテでのデスクワークで体力の落ちたキラと、生粋のナチュラルのミリアリア。
二人がバテたことと、点差で大幅に負けていたことで、凱歌はファントムペインに上がった。

「MS戦では負けちまったけど、バスケは一日の長あり……かな」
「スティング、1onやろうぜ」
「よし……やるか!」

スティングとアウルはまだ体力があるのか、二人で試合を始めてしまった。
ゲンは試合に負けた上に、まだ体力があり……キラに悪態をつく。

「バスケ、やったことないのか?」
「あるけど……学校でやっていた程度。普段はモルゲンの研究で忙しくて、体を動かす暇も……」
「記者さんは仕方ないとしても、キラ……体力は戻しておいたほうがいいぞ?」
「……了解。筋トレでも、やっておくよ」

ステラとミリアリアも休憩。それぞれゲンとキラの隣に座り……ミリアリアはゲンに話しかける。

「中尉さん、お願いがあるんだけど。あのさ……後で、みんなの写真を撮らせてくれない?
 ホラ、ここで遊んでいたのが同僚にバレたら拙じゃない?
 だから、兵士の休憩中の風景を撮影してた……ってことにしたいの。一枚、撮らせて!」

確かに、彼女は本来仕事中の身。無理を頼んで参加させた手前、ゲンも今度は断れなかった。
25518/18:2006/06/17(土) 11:27:16 ID:???
「はーい、ちょっと中央に寄って。端っこから中央に詰める感じで……そうそう、いい感じよ」

スティングとアウルのバスケの試合が終わるや、ミリアリアの撮影が始まる。
ゲンを中央に、右隣はキラ、左隣はステラ。最翼はスティングとアウルが入る。
全員軍服姿。一汗かいたからか、アウルとスティングは少し肌蹴ている。
5人揃っての写真撮影だ。

「ちょっと中尉さん? バイザーを外しなさいよ。
 折角の撮影会に、そんなもの着けて……無粋よ? ほら、外して外して! 後で、焼き増しして渡すんだから!」

ミリアリアに、ゲンはバイザーを取り外すよう注意を受ける。
すると、隣のステラがそっとゲンのバイザーを外し、自分のポケットに入れてしまった。

「……マナー、悪いって」
「あ、ああ……ごめん」
「あら? 中尉さんて、可愛い顔してるんじゃない? さ、写真撮るわよ! 皆、肩でも組んだら?」

ステラはいつも言葉少ない。が、その分発言に重みもあり……指摘され、ゲンは素直に謝る。
そして、ミリアリアの勧めで5人は肩を組んだ。ゲンの肩に、ステラの手が触れる。
その感触で、彼は思い出した。彼女の件で、まだ僚友に礼を述べていなかったことを。

「アウル、さっきは、その……ステラのこと、ありがとう」
「気にしないでいいさ。俺には俺の考えがあって、やったことだし。それより、カメラカメラ!」

礼を述べても、アウルは軽く受け流すだけ。
ゲンは心の中で再度礼を述べつつ……ミリアリアの持つカメラのレンズを注視する。
少しだけ、笑みを浮かべながら。
それを見たミリアリアは、漸くシャッターを切った。
後日、写真は5人に届けられ、彼らはそれを愛機の中に飾ることになるが……それはまた別の話。


翌日早朝、連合の軍偵から連絡が入る。ミネルバに動きあり、と。
彼の艦が向かうとすれば、ジブラルタル基地かスエズ運河。どの道、黒海を抜けることは間違いない。
報告を受けた連合・オーブ艦隊も、ミネルバを撃つべく、動き始める。
決戦の地に選ばれたのは、黒海から地中海へ抜ける海峡……ダーダネルス海峡。
やがて幕を開けるは、ダーダネルスの戦い――!
256通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 11:28:56 ID:???
PP書いてる者です。
こういう形での投稿は、たぶん最初で最後になると思います。
……続きまして26話目、投下します。
諸般の事情でスレを訪れる頻度が減っているため、こういう形となりました。
容量を食ってしまい、申し訳ありません。
2571/36:2006/06/17(土) 11:30:13 ID:???
地球連合軍クレタ基地――
沖合いに停泊する空母J・Pジョーンズで、ネオ・ロアノーク大佐は通信を受ける。
早朝にも関わらず、レーザー通信を用いて連絡を遣した相手は、ブルーコスモス盟主。

『ロアノーク大佐、随分と勝手なことをしてくれたな?』
「……何のことでありましょうか?」
『惚けてもらっては困る。エクステンデッドNo4、ステラ・ルーシェの件だ』
「耳が早いですな。エクステンデッドの研究員からの報告が、もう届いているとは……」
『ここを何処だと思っている? 私のいるイギリスと君たちのいるギリシャ。報告にタイムラグなど、殆どない』

モニター越しに映るのは、苦虫を潰したような顔のロード・ジブリール。
彼が連絡を遣したのは、配下の将ネオを詰問するためだ。
前日行なわれたエクステンデッドたちの最適化――記憶の消去。
しかし、その中にステラは含まれていなかった。彼女を最適化から外すよう指示したのは、他ならぬネオ自身。
が、そのことはエクステンデッドの研究員たちにすれば異常なこと。
常道を曲げてまで、ネオは不可解な指示を出したのだ。碌な根拠も示さぬまま……
伺いは直ぐに立てられ、ネオを飛び越してブルーコスモス盟主の元まで届けられた。

『エクステンデッドの扱いは、研究員の指示に従え……そう命令した筈だが?』
「状況が変わったのですよ、盟主。今彼女の記憶を消すのは、得策じゃない」
『ならば、その根拠を聞かせ給え! 返答次第では、君の立場も危うくなるぞ!?』
「根拠……か」

要領を得ないネオの回答に、ジブリールは声を荒げる。
エクステンデッドは漸くに実用化の目処が立ったばかり。扱いは慎重を要する。
然るに、ネオは独断で彼らに行なうべき処置をせず……ジブリールが憤るのも、当然といえた。
また、ジブリールと相対するネオの態度にも変化が見られていた。
いつもは忠実かつ有能な部下は、今日に限って態度を硬化させている様子。
そのことも、ジブリールにとっては不快であった。
そんな彼の心を知ってか知らずか、ネオは暫くの間を置いて応え始める。

「ゲンの様子が、変わってきているのですよ」
『アクサニスが? どうした? 何かあったのか?』
「出会った頃のあいつは、ナイーブさはあったものの、心身ともに兵器だった。しかし、今は違う」

ネオは、ブルーコスモス盟主に臆することなく……判断の根拠を明かし始める。
2582/36:2006/06/17(土) 11:31:01 ID:???
ゲン・アクサニス――
ロアノークがファントムペインに彼を迎え入れた頃から、彼は正真正銘の兵器であった。
どんな任務も卒なくこなし、開戦後もネオの期待に十二分に応えていた。だが……

「ムスリムに使いに行った頃から、アイツは変わった。
 戦争というものを直に知ったせいか、行動にも変化が見られます。
 ガルナハンでの一件、ご存知でしょう?」
『捕虜を逃がしたという、アレか……
 だが、アクサニスは思考する兵器だ。ザフトの行動と、独立運動派の行動。
 二つを鑑みれば、コーディネーターに乗せられ踊らされている連中を慮るのも当然だろう』
「それだけじゃない。ノフチーでの一件も、お耳に届いていると思います。
 ゲンは、現場の指揮官に食って掛かったそうですよ。
 ユーラシア連邦のイワン中佐らが行なった、あの――」
『――絨毯爆撃による、虐殺事件の話か?
 東ユーラシア一帯は、ロシア共和国の影響下にある。あの国が無茶をやるのは、昔からだ。
 それにアクサニスが腹を立てるのも、無理はない。私でさえ容易にやろうとは思わんよ、あんなことは。
 だが、それとステラ・ルーシェの件と何の関わりがある?』

ネオは語る。ゲンの変化を。
ムスリムでの一件以来、彼は少しずつ変化していた。
命令を受け戦うだけの兵器から、自らの動機付けで行動を起す軍人へと……
それらはジブリールも知るところであったが、彼はゲンのそのような変化は織り込み済みの様子。
余り驚くこともなく、ただ用件を――ステラへの最適化を避けた理由を明示せよと、部下に迫る。
ネオは、一呼吸置き……漸くに彼の本心を吐露し始めた。

「アイツは、ゲンは……ステラ・ルーシェと、どうもその……想いあっているようです」
『――!』
「いつからかは定かではありませんが、少しずつ兵器から軍人へと変わっていく過程で……
 明らかに人に近づいている。まぁ、人と交われば当たり前の話なのですが」
『……ならば、さっさとその娘の記憶を消せば済む話ではないか! 貴様、どういうつもりだ!?』
「戦うための動機付けを、アイツにやろうと思いましてね。
 正直、私はゲンが貴方のために死ねるとは思わない。
 所詮、貴方とゲンは使用者と兵器の関係だ。それ以上でも、それ以下でもない。しかし――」

更にネオは語る。
事の核心とも言える、ゲン・アクサニスとステラ・ルーシェの立ち位置について。
2593/36:2006/06/17(土) 11:32:05 ID:???
「惚れた女のために戦う。実に単純明快な話です。
 俺はね、盟主……人が戦う動機ってのは、植えつけられるものじゃないと思うのですよ。
 連合軍人の多くは、自分のため家族のため祖国のため……色んな動機で戦っている。だから――」
『アクサニスに、惚れた女のために戦えと? 下らん! そんな感傷は、兵器には不要だ!!』
「落ち着いてください、盟主。だから……人に近づきつつあるんですよ、ゲンは。
 恋人のために戦う。そんな人間は世の中大勢いる。男って生き物は、そういうものです」

憤るジブリールを宥めつつ、ネオは説得を試みる。
ゲンにこれまで以上の戦果を望むのであれば、これまで以上のモチベーションも必要となる。
とりわけ、ミネルバとの戦いにおいては。
連合は開戦から今日まで何度も刃を交えながらも、ザフトが誇る最新鋭戦艦を沈められずにいるのだ。
敵のシンボル的な存在を潰せば、一気に味方の士気は上がるし、敵の士気は下がる。
ネオとしても、ゲンが人に近づくことはあまり好ましいとは思えなかった。
が、何よりも戦果を求められるファントムペインとしては、やれる限りのことはやっておきたかった。
それが、危険な賭けだとしても。

『戦う動機を与えるだと? それは危険だ! 感傷に溺れ、弱体化することは考えないのか?
 仮に、仮にだ……ステラとかいう娘を庇って、アクサニスが被害を被ればどうなる? 貴様に贖えるのか!?』
「そのときは……仕方ないんじゃないですか?」
『し、仕方ないだと!? 貴様、任務を――!!』
「アイツがそんなことで死ぬのならば、所詮そこまでの運命だったということです。
 ま、俺はアイツがそんなことで死ぬタマじゃないと、思ってはいますがね」

ネオの主張。それは、ゲンに全てを任せるということ。
どの道、戦場に出れば誰もが死ぬ可能性を孕んでいる。敵に戦い敗れるか、味方の流れ弾で命を落すか……
様々な事象が戦場では起こりえるのだ。
運、あるいは運命というものが、その者の命を左右する――
ある意味では、悟りに近い哲学が、軍人であるネオにはあった。
ジブリールの指摘も最もではあるが、そんなことは先刻承知。
敢えて、ゲンを強化するための賭けに出たのだ。
しかし、ジブリールはネオの言葉をなお否定する。

『昔、私に似たようなことを言った男がいたよ。愛と憎悪……この相反する二つの感情こそが、人を高めうる。
 これらの感情を持つ人間は、尋常ならざる力を発揮する、と。だが、ナンセンスだ! 私は認めないッ!!』

声を荒げ、ブルーコスモス盟主は叫んだ。
2604/36:2006/06/17(土) 11:32:52 ID:???
『アレは……アクサニスは私のものだ!!
 私はアクサニスと契約したのだよ! 互いに命を預けた状態で、アレは誓った! 私のために戦うと!!
 それを……どうして、エクステンデッドの小娘如きにくれてやろうか!? 認めん……認めんぞ!!!』

双眸を光らせ、狂気を垣間見せながら……男は絶叫を続ける。

『現場の指揮は貴様に預けてある! だから、今度のことは多めに見よう!
 だが!! アクサニスは渡さん!!
 戦争が終わっても、アレにはやって貰わねばならん仕事がある。
 二度と……二度とナチュラルが、コーディネーターに畏怖せず生きられる世界を造るためにッ!!』

ジブリールは一気に言い切る。それは、盟主としての至上命令。しかし――
ネオは最後の言葉に違和感を抱く。何故、ゲンが役に立つというのだろう? 
ナチュラルがコーディネーターに畏怖せず生きるべく、エクステンデッドは生み出されたのではないのか?
必要とされるならば、エクステンデッドの筈。ソキウスでありコーディネーターであるゲンに何が出来るというのか?
様々な疑問が頭を駆け巡る中……
ネオの逡巡の間に、一息ついたジブリールは冷静さを取り戻す。

『すまない。熱くなりすぎたようだ』
「……い、いえ。こちらこそ、出すぎた真似を――」
『詫びはいい。君を司令にしたのは、私だ。君のミスは私のミス。この件は後日処理しよう。それより……』

先ほどまで憤怒の表情であったジブリールだが、もう普段の彼に戻っていた。
冷静になり、口元に笑みまで取戻しながら……彼は伝える。

『月経由で面白いものをそちらに送った。アクサニスへのプレゼントだ。そろそろ着く頃だろう』
「……それは?」
『見せれば分かる。アレならば、使いこなせよう。
 あと、君から届いていたエクステンデッドの……戦後の処遇についての上申書、読ませてもらったよ。
 戦後彼らを人間に戻すこと、考えてもいい。戦勝が前提の話だが。
 エクステンデッドに関する全ての記憶を消した上での解放なら、吝か(やぶさか)ではない」

前日、ネオからジブリールの元に、上申書が届いていた。内容は、エクステンデッドの戦後処理の問題について。
可能であれば3人を、戦後人として生かしてやりたい――それが内容であった。
ゲンは渡せぬといいながら、エクステンデッドには戦後自由を与える。
不可思議な話ではあるが、それがジブリールの伝えた『決定事項』であった。
2615/36:2006/06/17(土) 11:33:44 ID:???
――朝一番で、嫌な汗をかいたな。

体を伝う汗を感じる。ネオは通信が終わるや、シャワーを浴びたい気分に駆られた。
ジブリールは話が終わるや、「では、蒼き清浄なる世界のために」という決まり文句を残し、通信を終えた。
激昂しかけた上司に冷や汗をかきつつ、ネオは内心話が終わったことに安堵していた。

――ただ一度最適化を避けただけで、ここまで大事に発展するとはね。

ネオはそう思いつつ、炒れておいたモーニングコーヒーに口をつける。
朝起きて直ぐ炒れたものの、すでにそれは冷め……酷く拙いコーヒーになっていた。
彼はそれに舌打ちしながら、先ほどの会話を思い起こす。

――ゲンに何がある? 盟主は、なぜあそこまでゲンに拘る? 理由は何だ?

訝しいのは、ジブリールの態度。
ゲンとの契約とは何か? そして彼に何をさせようというのか?
疑問は尽きぬまま、ネオの一日が始まる。
定時の通信音が部屋に木霊する。艦橋からのコールだ。

『大佐、いらっしゃいますか?』
「ん、艦長か。いつもご苦労だな、もう起きているよ」
『先ほど、妙なものがクレタ基地に届いたという報告が。
 なんでも、ストライクMk-U用のパーツだそうですが、何やら装備部が……処置に困っているようでして』
「……早いな。プレゼントは、恋人にいの一番で届けたい……か? 盟主様よ?」
『……は?』
「いや、こっちの話さ。いいだろう、ゲンを送る。Mk-Uで運べば、手間も掛からん」

ネオは即断する。
盟主からのプレゼントの中身は、どうやら並大抵のものではないらしい。
そのことに、また疑問は深まるが……考えても詮無きこと。
頭を切り替え、ネオは本来の仕事――指揮官としての仕事に戻る。

数分後、ネオは起床したゲンをクレタ基地に向かわせる。
Mk-Uを駆り、J・Pジョーンズに荷物を持って帰ったゲン。
その荷の中身……
それが、味方をちょっとした騒ぎに陥れることになろうとは、この時のネオには思いもよらなかった。
2626/36:2006/06/17(土) 11:34:31 ID:???
時刻は8時近く。
ゲンはMk-Uを使い、J・Pジョーンズに荷を持ち込んだ。
荷は、長方形のケース、MSほどの長さはあろうかという代物。
その割りに幅は対してなく、ストライクの両手で持ち運べるほどであった。
長さが長さなので、人手で開封するのは手間が掛かる。
能率を考えて、空母の甲板の上での開封作業が進められた。
ゲンはMk−Uの手を器用に使い、ケースを開ける。

「……ったく、朝一番の届け物なんて、何だっていうんだ?
 腐るから早めに……って、それじゃ生もの、魚か。少なくとも、魚じゃないな、これは」

突然の労働に悪態をつきながら……サクサクとケースの留め金を外すゲン。
留め金といっても、長さ10メートルに及ぼうかというケースなのだ。MSでようやく開けることが出来る代物。
その荷を解き、中を見たゲンは――
僅かに残っていた眠気も吹き飛び、驚嘆の声を上げる。

「――こっ、こいつは……!!」


ちょうどその頃、ファントムペインの他のパイロットも様子を見に来ていた。
アウル・ニーダは、格納庫にストライクの姿が見えず、朝からゲンが動いていることを察知する。
甲板で何やらやっているようだと、整備の人間から聞くや、彼も甲板へ上がる。

「あ……ストライクだ。みっけ。 ん? 何だ? 何をやってるんだ?」

ごそごそとストライクは屈み込み、ケースらしき物体の開封作業の真っ最中らしい。
何が出るのか――
胸躍らせながら、アウルは様子を見ていたが……
中から出てきた“それ”を見たとき、彼は一目散に格納庫に戻ってきた。
スティングがカオスから降りてくるのを見るや、息を切らせながら彼の元へ向かう。

「ス、スティング!! ちょっと来て! 甲板に!」
「あん? どうした? 何かあったのか?」
「と、兎に角、早くっ!!」

強引に引っ張られるようにして、スティングも甲板に上がり――ケースの中身を目の当たりにする。
2637/36:2006/06/17(土) 11:35:17 ID:???
中身を確認したスティングは、堪えきれず叫んだ。

「――!? ちょ……! な、何だよアレはッ!?」
「だから、言ったじゃん! 凄いだろ!」
「た、確かに凄いが……アレは大きい。いや、大きすぎるッ!! 何なんだよ、アレは!?」

同じ頃、J・Pジョーンズの隣に停泊するオーブ軍空母タケミカヅチでも、隣艦の異変を察していた。
アマギが一目散に司令艦室に飛び込んでくる。ユウナ・ロマ・セイラン将軍の元に。

「ゆ、ユウナさま! 大変です!!」
「……ん? どうかしたのかい?」
「あ、あれ! 外を見てください!! 隣の艦、J・Pジョーンズの甲板の上ッ!!」
「どうしたの? 何かあるの?」
「ス、ストライクです! 黒いストライクが、J・Pジョーンズの上に!!」
「……ストライクなんて、そんなに珍しいのかい?
 カガリだって、乗っているじゃない? 大騒ぎするほどのことじゃ……」
「と、兎に角見てくださいッ!」

アマギに促され、ユウナは隣の艦を眺める。
甲板を見ると……確かに黒いMSがいた。甲板の上で、ストライクに酷似したMS――
ストライク自体は、カガリ・ユラ・アスハの愛機ストライク・ルージュを知っていることもあって、ユウナは動じない。
……しかし、その黒いストライクの持っているモノを認めるや、ユウナは歓声を上げる。

「――! 凄いッ!! アマギ、何だいアレは?」
「分かりませんッ! しかし、これはご報告せねばと思いまして」
「ふむ……デカイな。どうやら、剣みたいなものみたいだけど……バスタードソード? クレイモア?
 いやいや、形が全然違うな。あんなモノ、僕は生まれて初めて見たよ。フフッ、一体何だろうねぇ……?」

ユウナが見たのは剣。
剣というにはあまりに大きく、MSを以っても捌ききれるかは分からないほどの代物。
ただ、一見して尋常の兵器ではないことは分かった。
その兵器を手に持つ少年――ゲンの眼は、光り輝いていた。

「盟主!! アンタ、随分気の利いた贈り物をくれるじゃないか!?
 こいつは……すげえ! 気に入ったぜ!! 
 見ていてくれ、ステラ!! こいつでザフトを、あの白いMSを――両断にしてやる!!」
2648/36:2006/06/17(土) 11:36:05 ID:???
その頃、黒海沿岸トルコ領に位置するザフト軍ディオキア基地では――
休暇を終えたミネルバは、この日出航。当初の目的地、ジブラルタル基地へと向かう予定であった。
艦長タリア・グラディスは、出航を前にブリーフィングを行なう。
艦長室に呼ばれたのは副長のアーサー・トラインと、MS隊隊長ハイネ・ヴェステンフルス。
階級のないザフトでは、実質的な艦のコントロールを預かる副長と、攻撃防御の基点となるMS隊長。
この二人こそが、ミネルバの要とも言えた。二人を向かえ、タリアは会合を始める。

「本日午前9時を以ってディオキア基地を発ち、ジブラルタル基地へ向かいます。
 黒海を抜け地中海へ、そして最西端のジブラルタル。ちょうど、地中海を横断することになるわね」

彼女は私室のモニターに、地中海と黒海を納めるヨーロッパ南部の地形を呼び出す。
ジブラルタルまでの航路。それは海上航行による地中海横断。
更に、タリアはミネルバの航行ルートを呼び出す。横断といっても、数千キロに及ぶ行程。
しかし、ミネルバは旅行に行くのではない。あくまで戦争のための行軍……

「黒海の勢力図が、ザフトと連合が入り乱れているのと同様……地中海も問題が多いわ。
 まずはここ、ギリシャ領クレタ。連合の基地があるこのクレタ島は、敵の地中海における最大拠点よ」

タリアの示す地図は、地中海の中ほどを拡大し……クレタの島を映し出す。
連合の地中海における最大の拠点、そこはファントムペインの旗艦J・Pジョーンズのいる場所。同時に……

「先日、この基地にオーブ艦隊も入ったらしいわ。あの国とは戦いたくはないけど……
 彼らが私たちの航海を見過ごすわけがない。迂回路を取るにせよ、連合との戦いは避けられそうもないわ」
「……困りますねぇ。うちのアスランとマユ、大丈夫ですかね? どうなのです、ハイネ隊長?」
「う〜ん、休暇のおかげで二人とも大分マシにはなりましたが……」

オーブと戦う可能性は依然消えていなかった。
開戦前までオーブにいたアスラン・ザラ、オーブ出身のマユ・アスカ。
二人が戦闘に際し、本来の力を発揮できないのではないか――?
上級兵3人が抱いていた不安を、アーサーが指摘した。
ハイネはそれに対し、現状の彼らを踏まえて方針を説明する。

「アスランは正規兵、いざ戦いに及んでグダグダ言うヤツではないでしょう。戦ってもらいます。
 マユはまだテストパイロットですが……新米二人を含めて、あの3人組はディフェンス。前には出しませんよ」

アスランには積極的に戦ってもらい、マユには艦の防衛に回ってもらう。それがハイネの方針であった。
2659/36:2006/06/17(土) 11:36:54 ID:???
「……というわけで、お前等3人はディフェンス。
 ルナマリアはオルトロスで長距離援護、レイはブレイズで中距離援護、マユは……
 インパルスをフォースで出撃、ブリッジを狙ってくるハエどもを追っ払ってくれ。OK?」

ハイネはタリアとアーサーに話したことを、そのままパイロットのブリーフィングで伝えた。
新米3人はあくまでも艦の防御。攻撃はハイネを含めたベテランMSパイロット6名が行なうと。
ベテランたちとは――ハイネ、アスラン、ショーン、ゲイル、マーズ、ヘルベルト。
ハイネ、ショーン、ゲイルはグフに乗り込み、マーズとヘルベルトはバビを。アスランはワンオフ機のセイバーに。
オフェンス組みは、ヒルダ隊の2名を加える豪華布陣。

ハイネは内心、この布陣が組めたことを手放しで喜んでいた。
これならば、マユを積極的に戦闘参加させずに済むからだ。正規兵のアスランは兎も角……
若干13歳の、オーブ出身の移民の娘に、かつての同胞を殺せというのは酷に過ぎる。
温情采配であることは自覚していたが、戦局に影響がなければこれもあり。
出来れば、マユには手を汚さずに戦いを終えて欲しかった。
そのことに気づいたのか、マユはハイネに礼を述べる。

「……ありがとうございます、ハイネ隊長」
「ん、出来れば戦わせたくはないが、どうなるかは分からん。
 インパルスを遊ばせておく訳にもいかない。俺も……オーブと当たらないことを、祈っておくよ」

それはほんの短いやり取り……だが、幼い部下と歴戦の上司は意を通じ合っていた。
これでマユの件は解決。次はアスランだ。ハイネはアスランにも一言声を掛けるべく、彼の方を向くが……
彼は他の人間と話していた。相手はマーズ・シメオン、ヒルダ隊のベテランパイロットだ。
会話は和気藹々……とは進んでおらず、どうにも険悪な雰囲気。いや、話しているというよりも……

「おい! アスラン、お前俺のこと無視しているのか!?」
「い、いえ……そんなことは」
「なら、情報をもっと遣せ! もう一度聞くが……ガルナハンで俺のバビを潰しやがったオーブのムラサメ。
 アレに乗っていそうなヤツを、俺に教えろ! オーブのエースパイロット、知っている限り挙げてみろ!」
「でも俺は、代表の秘書のようなことをしていたわけでして、軍の情報に精通しているわけではありません」
「だあっ! 使えないヤツだ! もういい、シミュをやる! ついて来い!!」

まるで尋問。アスランは、マーズにオーブ軍の情報を遣せと迫られ、すっかり困惑してしまった。
おまけに、強引にシミュレーションに付き合わされることになり、格納庫に引っ張られていってしまう。
最後に縋るような眼でハイネを見つめるアスラン。彼に声を掛けようとしたハイネは、ただ苦笑して……見捨てた。
26610/36:2006/06/17(土) 11:37:52 ID:???
哀れなアスランは、ブリーフィング終了後にマーズとの模擬戦を強いられる。
模擬戦とはいえ、それはシミュレーションを介して行なわれる仮想訓練。
互いのMSのコクピットとコンタクトを取り、CG画像を介したシミュレーション訓練を行なうのだ。
そして、セイバーとバビ、2機の模擬戦は始まった。

互いに空中戦用のMSであるため、仮想の戦場に空が描かれた。
擬似的なホログラムは……雲ひとつない、現実感のない空。それがモニターに映し出される。
模擬戦開始直後から、先日のムラサメにやられた鬱憤晴らしとばかりに、マーズは猛攻を仕掛ける。
バビのビーム、ミサイルが次から次へとセイバーを狙う。
アスランは、それに防戦一方になってしまう。

「くっ……! いきなり全開ですか?」
『戦場で手加減するアホがいるか!? 模擬戦も実戦と同じッ! 俺はいつでも全開だッ!!』
「……! それは、そうですね……」

模擬戦といっても、コクピットには振動も伝わってくる。仮想の戦闘とはいえ、緊張感を出す演出は必要。
シミュレーションでそんな凝った機能も付いているのが、この時代のMSなのだ。
その振動を肌で感じ、徐々にテンションを上げていくアスラン。
しかし、体と心は裏腹。戦闘に入りながらも、彼は内心、別のことを考えていた。
マーズの一言に、ある人物のことを思い出していたのだ。戦場で、手加減をする人物のことを。

――いるんですけどね、そういうヤツ。俺も、昔はそんなアホなことをやっていましたけど。

頭に浮かんだのは、幼年学校時代からの親友のこと。
フリーダムという伝説のMSを駆った彼は、戦場で手加減をする人物であった。
アスランも、彼といるときはそんな戦法を取ることがあった。が、今は――

――俺の側にアイツはいない。安心して背中を任せられるのは、アイツだけだった。

そう。彼は今オーブの、モルゲンレーテ社にいる筈。アスランの隣に彼はいない。
最強の戦友がいたからこそ、かつてのアスランも戦場で手心を加えられた。今は、そのような状況ではない。
敵が来れば倒す。殺す。自分の背中を護る男がいないのだから、そうするしかないのが今のアスラン。

――待てよ? そういえばマーズは戦闘不能、殺されなかった。……まさか、アイツが?

マーズの問いに、思い当たる人物が一人浮かぶ。が、そんな筈はない。アスランはその考えを必死に打ち消した。
26711/36:2006/06/17(土) 11:38:39 ID:???
ミネルバがディオキア基地を発った頃――
ミネルバ出航の一報は、クレタ基地にも伝わる。
報告が入るや、ネオはすぐさま動き出す。タケミカヅチにも連絡を入れ、出撃の命令が下される。
空母J・Pジョーンズ、タケミカヅチ、そしてオーブ軍の護衛艦4隻。連合・オーブ軍の共同作戦が始まった。

「セイラン将軍、迎撃ポイントは予てからの手筈どおり……」
『黒海と地中海を繋ぐ海峡、ダーダネルスですね?』
「あの狭い海峡なら、ミネルバの動きを封じながら戦える。
 まさか、連中も我々がミネルバ一隻を狙っているとは思わないでしょう。
 クレタ近くならいざ知らず、黒海を抜けたところを狙われるとは……ね」
『先方は任されました。囮役、務めてみせましょう』
「頼みます。こちらも万全を期します」

最後の会合は、用件のみを伝え合う簡潔なもの。
ネオからの通信が入ったことで、タケミカヅチのブリッジに号令が響き渡る。
司令官ユウナ・ロマ・セイランの号令が――

「これより、オーブ軍はJ・Pジョーンズとともにダーダネルス海峡に向かう! トダカ一左!!」

指揮官とはいえ、ユウナは名目上の司令に過ぎない。
実際に艦を指揮するのは、艦長トダカ一佐。
ユウナが彼の名を呼ぶや、トダカは再度号令を下す。今度はオーブ軍全艦への通信で。
簡潔に目的地と戦うべき相手――ミネルバのことを伝え、トダカは最後に言った。

『待ち受ける敵は強力だが、オーブ軍人としての誇りを胸に……総員、状況を開始せよッ!!』

これで、戦場での主導権はユウナではなくトダカの物となる。
やはり、現場で頼りになるのは青年政治家ではなく熟練の軍人。
トダカの指揮の元、タケミカヅチを旗艦とするオーブ派遣軍はクレタを後にする。

「トダカ、政治的な判断以外には僕は口を出さない。全権を君に、任せるよ」
「……しかと、任されました」

最後にユウナは伝える。戦場での全権をトダカに委任すると。
こうして、連合艦隊は動き始めた。彼らが、目指すのは黒海と地中海を繋ぐ要衝、ダーダネルス海峡。
ダーダネルスでの決戦の時は、刻一刻と迫っていた。
26812/36:2006/06/17(土) 11:39:40 ID:???
J・PジョーンズのMSパイロットブリーフィングルーム。
ネオから4人のパイロットたちに伝えられたのは、作戦の要旨。

「陽電子砲を潰すのは、ゲン。あわよくば、ブリッジも潰してしまえ。
 やるときは、ストライクMk-Uの能力をフル活用しろ。あとは……言われなくても分かるな?」
「分かっています。けど、あの新しい武器を使う機会は……今回はなさそうですね」
「どうかな? 戦局はどう変わるか分からんのだ。
 一応、フライングアーマーにあの武器を置けるよう、スペースを作らせている。
 備えあれば憂いなし。いちいちJ・Pジョーンズに戻る時間もないだろう。常に持っておけ」
「……了解」

ゲンの役目はストライクMk-Uを使い、ミネルバのタンホイザーを潰すこと。
また、ジブリールから届けられた新しい武器も、今回の帯同することになった。

元々、ストライクMk-Uの装備はエールパックしか用意されていなかった。
ソード・ランチャーの各装備は、その有効性をキラが示したものの……
ストライクのデータに基づき、バスターダガーやソードカラミティなどバリエーションに富んだMSを連合が製造。
用途にあったMSを多数製造し、数で圧倒する。ワンオフ機には、最早心血を注ぐまい――
それらが、連合軍が採った方針であった。
Mk-Uはストライクの後継機として作られたが、ブリッツのミラージュコロイド機能も受け継ぐ偵察機でもある。
隠密行動が主の偵察機に、重火器も巨大な対艦刀も必要なかったのだ。

「アウルはアビスでミネルバを攻撃。ありったけの火力で、船底に穴でも空けてやれ」
「了解!」
「スティングはカオスを機動、空中戦だ。キラ以上の戦果を挙げて、驚かせてやれ」
「言われなくたって、そのつもりさ」
「ステラもガイアを機動、フライングアーマーを使え。海に落っこちないよう、気をつけろよ?」
「……了解」

今回はステラも出撃。
文字通り、総力戦になる筈……だったのだが、ネオはJ・Pジョーンズに残ることに。

「悪いが、オーブ軍との共同作戦なので、戦場でも連中とやりとりをせねばならん。
 というわけで、俺は今回ウィンダムには乗れない。一緒に戦いたいが、こればかりは……な」

ネオは司令官としての職責があったのだ。こうして、ファントムペインの布陣も整えられる。
26913/36:2006/06/17(土) 11:40:45 ID:???
ミネルバは、この日の午後には、ダーダネルス海峡を渡るところまで来ていた。
クレタ島を避ける迂回路を取るとはいえ、ジブラルタル基地までは約2、3日の行程。
黒海南部の国トルコがザフトの影響下にあることから、僅か数時間でここまで辿り着けた。
しかし、ここから先は地中海。連合の勢力圏内に含まれる。これより先は敵地……
そのせいか、ブリッジにも緊張感が漂う。

「メイリン、異常は?」
「あ、はいっ。 敵影はありませんが……たった今、スエズ方面軍から連絡がありました。
 クレタ沖には大西洋連邦やオーブを始めとした増援軍が来ており、注意されたし……とのことです」
「注意されたし……ね。
 言うは易しというけれど、マメに連絡を遣すくらいなら、こちらの増援要請にも応じてくれればいいのに」

タリアは、通信を遣した相手に悪態をつく。
ミネルバの戦力は充実していたものの、敵の勢力下を僅か一隻で通り抜けるのだ。彼女の不安は尽きない。
ジブラルタルへ向かうよう命令を受けたあとも、再三援軍を要請したのだが……
今回の戦争は、プラントの自衛権の積極的行使が目的。
降下部隊による本国からの増援が見込めない戦争なので、在地球ザフト軍は何処も戦力に余裕はなかった。
上層部は、ヒルダ隊を送ったのだから最早ミネルバにこれ以上の支援は出来ない――そう判断したのだ。

「困るわね、本当に」

元々、プラントの総人口は一億程度。
それで地球連合各国と渡り合うのだから、人手不足も慢性的なものとなっていた。
分かっていても、不安が消え去るわけではない。タリアは暗澹たる気持ちでいた。
そんな彼女を、メイリンの声が現実に引き戻す。今度の声は先程とは違う。警戒の色を孕んだ、高いトーンの声。

「か、艦長! レーダーに敵影! 海峡を出たところです!」
「――!! 数は!?」
「大型艦2隻と、中型の……護衛艦4隻!」
「本当に敵なのね? 所属は!? 」

メイリンは頷く。青ざめた顔で、縋るような眼でタリアを見る。
そして、絶望したような表情の少女は、呻くように上官に伝えた。悲痛な声と共に。

「……こんなのって、ないよ。信じられない……信じたくない。
 艦長……報告します。今連絡があったばかりの国……識別コード、オーブ。オーブ軍……です」
27014/36:2006/06/17(土) 11:41:56 ID:???
タケミカヅチのブリッジに、トダカ一佐の号令が響き渡る。

「MS隊、各機発進! ミネルバ攻撃はムラサメ隊のみ、シュライク・アストレイは艦隊の防衛に専念せよ!」

オーブ軍は2種のMSで構成される。一つはムラサメ、もう一つはM1アストレイ。
前者は戦闘機形体にもなり得る可変型MS。後者は前大戦から活躍するオーブの量産機だ。
MSの開発は、目まぐるしいほどの競争。ザフトも連合も次々と新型を作る傾向にある。
この時代、型落ち機のアストレイは、空中用シルエット――シュライクを装着することで機動性を発展させる。
辛うじて、前線の一翼を担っていた。トダカの命令は、そのことを考慮したもの。

「仕掛けは第81独立機動軍のMSが行なう! 各機、展開後は攻撃をあせるなよ!!」

タケミカヅチはあくまで囮。オーブ軍は囮役を務めるべく、意図的に攻撃を遅らせる手筈を整える。
トダカの号令に基づき、次々とムラサメ隊とアストレイ隊が発進する。
馬場隊長率いるムラサメ隊、5番機の中に、キラ・ヤマトもいた。
ムラサメは飛行形体での発進となる。

「キラ・ヤマト! ムラサメ、発進します!」

型どおりの発進シークエンス。
言葉を発した直後、弾丸のように空母タケミカヅチから、彼の乗るムラサメが放たれる。
引き絞られ放たれた矢のように……弾道を描いて、ムラサメはミネルバへと先行した。


その頃、ファントムペインのMS隊もすでに発進していた。
カオス、ガイア、アビスの3機が、先陣を切りJ・Pジョーンズから発つ。

「アウル! あまり攻撃をあせるなよ!」
「わかっている! 手筈どおり、Mk-Uが仕掛けてからだろ?
 そっちこそ、ステラと二人だけなんだから、十分注意してよ?」
「おう! 行くぞステラ!」
「……了解」

カオスと、フライングアーマーに乗ったガイアが飛び立つ。
水中用のアビスも飛び立ち、水中に入る直前にMA形体に変わり、水を切り裂くようにして潜行する。
しかし……Mk-Uの姿が見えない。あの黒き討伐者の名を持つMSは、一体何処へ――?
27115/36:2006/06/17(土) 11:43:01 ID:???
ミネルバのMS格納庫。ハイネ隊のMSも、次々と飛び立つ。
先陣を切り、緋色のグフ・イグナイテッドが発進する。

「起きて欲しくないことってのは、往々にして起きちまうものだな! クソッ!!」
『隊長、それってマーフィーの法則ですか?』
「ゲイル! てめぇ、帰ってきたら腕立て200だ!! いいな!?」
『ええっ!? 俺、何か拙いこと言いましたぁ?』
「悪いことは重なる……あの法則には、そういう話もあったからな。
 勿論、そうはさせないつもりだが!! ハイネ・ヴェステンフルス、グフ出るぜッ!!」

ハイネの発進に続き、古参の部下ショーン・ポールとゲイル・ラッセルのグフ二機が出撃する。

「よう、失言王のゲイル君。腕立て200オメデトウ」
「うるせぇ! 隊長め……八つ当たりもいいところだぜ」
「生きて帰れよ。でないと、お前の懲罰を見れなくなっちまう」
「……ケッ、軽くこなしてやるよ!」

ブルーにカラーリングされた一般兵用のグフ二機が、ミネルバから飛び立つ。
オーブのMSは、確認されているだけで20を軽く越えていた。後方には大西洋連邦のJ・Pジョーンズも。
30を越える敵がいる筈なのだ。比してミネルバのMSは9機。うちオフェンス組みは6機。
単純計算で、一人5機落さねばならない。
残りのオフェンス組み、マーズ・シメオンとヘルベルト・フォン・ラインハルトのバビが続く。

「ムラサメ……ムラサメッ!! 5機だろうが10機だろうが、落してやるぞおっ!!」
「落ち着け、マーズ。敵の方が、数が多い。奴等が逃げる道理がない。直ぐに殺せるさ」

殺す――
その言葉を聞いて、身の気がよだつ思いをしているのは、アスラン・ザラ。
最後にセイバーを発進させる彼の胸中は、暗澹たるものだった。

「殺さなければ、殺される。やるしかない、やるしかないんだ……」

オーブはカガリの治める国。プラントを追放された自分を受け入れてくれた国。
祖国プラントに戻りザフトに複隊したことで、その国と戦うことになってしまった。
オーブに対しては憎しみもなく、あるのは2年を過ごした地への郷愁くらい。
しかし、その郷愁も振り払うようにして……赤の騎士、アスランの駆るセイバーは発進する。
27216/36:2006/06/17(土) 11:43:52 ID:???
ミネルバの攻撃隊が艦を発った後、紅白の2機のザク。
そして、フォースシルエットを身に纏ったインパルスが甲板に降り立つ。だが……
3人のうち、誰も口を開こうとしない。
それもその筈。オーブとの戦いは、アスランだけが避けたかったわけではない。
最もそれを望まなかったのは、オーブ出身のマユ・アスカに他ならなかった。
彼女を慮り、ルナマリアもレイも、どんな言葉を掛けてよいものか見当がつかず……沈黙だけが流れた。
やがて、沈黙を破ったのは――3人の中で一番寡黙な男。

「マユ、無理をしなくてもいい。ルナマリアの隣で、艦の防戦にのみ努めればいい」
「「――!?」」

意外や意外。沈黙を破ったのは、レイ・ザ・バレル。
あまりに意外すぎて、ルナマリアは勿論マユも返答に詰まる。

「戦いたくはないだろう。とはいえ、インパルスに乗っている以上、出撃は致し方ない。
 が、積極的に戦う必要はない。戦争は大人の仕事、俺達がやる」
「レイ……?」
「ルナマリア、俺は何かおかしなことを言っているか?」
「あ、あまりに意外で……何か変なものでも食べた?」
「ここ数日、お前と同じものしか食べてないぞ。大体、ここはもう戦場だ。世間話をする場所ではない」

レイの言葉に驚いたルナマリアは、驚きの余り場違いな言葉を掛ける。
すでにここは戦場、冗談を言って良い場所ではない。

「大体、お前が言い出したことだろう? マユのことは……」
「……? ああっ、そうだった!」

レイの指摘で、ルナマリアは我に返る。
数日前、彼女はレイから、マユの兄代わりをやってくれと頼まれていたのだ。
つまり、彼はそれを実行してみたのだ。この時、この場所で。
それも、場違いといえば場違いではあるのだが。
それでも……一人の少女を緊張から救うことは出来た様子。間を置いてからマユは、少しだけ明るい声で応えた。

「……二人とも、ありがとう。私は、大丈夫だから」

つかの間の安息に浸るマユ。だが、戦局は――意外な形で、マユに決断を迫ることとなる。
27317/36:2006/06/17(土) 11:44:45 ID:???
緒戦、キラはムラサメを駆る。彼の周りに他のMSは居ない。彼は一目散に、ミネルバへと向かった。
馬場隊に所属しているものの、隊長の馬場一尉はキラに編隊を組むことを求めなかった。
キラは、軍に入ってから日が浅かったし、何より……
非公式にユウナから、フリーダムやストライクを駆った人物がキラだと聞かされていたから。
圧倒的な操縦技術を持っている筈の人間に、凡俗と組ませ長所をスポイルさせることもあるまい。
それが馬場の判断だった。故に、キラは自由に戦うことを赦された。とはいえ……

「敵が陽電子砲を持っているのなら、それを潰さなければ話にならない……ッ!」

作戦では、ファントムペインが先陣を務める筈。
しかし、カオスとガイアの姿は見えても、Mk-Uの姿は見えない。その事実がキラの不安を掻き立てた。
囮役のタケミカヅチは、万が一にも陽電子砲を撃たれれば潰える。
そうなれば、ユウナもトダカもアマギも……ミリアリアの命も奪われかれない。

「させない! そんなことはッ!!」

キラは、ミネルバの陽電子砲発射を阻止すべく、先駆けた。
たった一機でミネルバに迫る敵影。それは、ミネルバのMS隊からも容易に捉えられた。
マーズ・シメオンはその存在にいち早く気づき……狂喜する。

「来たッ! 来たアアアッ!!」
『マーズ? どうした?』
「アイツだ! あのムラサメだッ! たった一機でミネルバに切り込んでくる……アイツに間違いないッ!」
『……おい! 一人で何処へ行く!? 勝手なことは……!』
「うるせえぞ、ヘルベルト!! 借りを返すんだよ! アイツになぁッ!!」

復讐に燃えるマーズは、ただ一人バビを駆り、キラのムラサメへと猛進する。
やれやれと呆れながら……相棒のヘルベルトは、上官に随伴の許可を求める。

「ハイネ隊長、申し訳ありません。差し支えなければ、ヤツを手伝っても宜しいでしょうか?」
『差し支え? ありまくりだよ。ヒルダ姐さんがいないと、あの人はいつもこうだ』
「すまんねぇ、ハイネ君。悪いが、そういうヤツなんだ」
『さっさと撃墜して、一緒に戦ってくださいよ?』
「分かっているさ……行って来る」

アカデミーの先輩に当たる人物の暴走に、呆れ顔でハイネは黙認するほかなかった。
27418/36:2006/06/17(土) 11:46:03 ID:???
マーズの駆る、飛行形体のバビが攻撃を仕掛ける。
飛行形体のキラのムラサメに向けて、背部の航空ミサイルランチャーを放つ。
12連装のこのランチャーを一斉に解放する。小型ミサイルとはいえ、その数は膨大……

「へっ……! まずはその勢いを、止めさせて貰おうか!?」

ミサイルの初撃で、敵の動きを止めるのが狙い。
動きが止まったところを、アルドール複相ビームと、両手に持つライフルとガンランチャーで狙撃。
それで蹴りが付く筈……であった。
しかし、キラのムラサメは動きを止めず、そのまま直進してくる。

「正気かよ!? オーブの!!」

嘲笑するマーズ。キラの攻撃は、確かに一件無謀――
だが次の瞬間、ムラサメからバビのミサイルの方角に目掛け、何かが放たれた。
それが、バビのミサイルにぶつかるや……爆煙とともに、無数の銀の雨が周囲に降り撒かれる。

「銀の雨……!? 何だ!?」

マーズは困惑する。
銀の雨――戦場で、彼がこれを直に見たことはない。この時が初めてであった。
それが、キラにとっては最大の幸運となり、マーズにとっては最大の不幸となる。
ゆっくりと眼下の海に落ちていく銀色を眺めながら、ようやくマーズは我に返る。その雨の正体に気づいて――!

「これは……しまった!!! こいつは、チャフ!? チャフ・グレネードかッ!!」
『遅いッ!!』

声が聞こえる――若い、男の声が。
ミサイルの爆煙の中から、ムラサメが現れる。戦闘機ではない。既に、MS形体。
両の手にサーベルを握り締めたキラは、柄から伸ばした蒼い閃光をバビに振り払う。

「バ、バビがあッ!? ……お、お前は……お前は一体、誰なんだッ!?」

激震がマーズを襲う。またしても両の手を?がれ、武装を失い……マーズのバビは、再びキラに敗れ去った。
今度は、不意打ちではない。正面切っての戦いに、マーズは負けたのだ。
彼はただ、自分を一蹴した人物の正体を知ろうと……?がれた手を、ムラサメに向けて掲げるのみ――
27519/36:2006/06/17(土) 11:47:11 ID:???
崩れ落ちるようにしてマーズのバビは降下。
両の腕から煙を噴出しながら、辛うじて飛行――ミネルバへ後退して行った。キラは、その光景に安堵する。

「撃墜……じゃないよね?」

フラフラと逃げていくバビを見つめるキラ。今回は、相手の戦闘能力だけを殺げた。
常にこうできれば、相手を殺めなくて済む……そう思うキラだが、直ぐに次の戦闘は始まる。
マーズに勝利を収めたキラを、ビームの雨が穿とうとする。

「……!?」
『殺さず……か。大した腕だな。真意は解せないが、相棒を殺さなかったことには……礼を言うぞ、オーブの』

冷淡な声。言葉とは裏腹に、更なる光弾がキラを狙う。
キラは気づいた。ムラサメの背後を取られたことに。狙っているのは、この声の主――
モニターに表示されるアラート。ロックオンされていることを告げる警告音も、コクピットに鳴り響く。

『チャフ……良い手だ。宇宙育ちの俺たちの、盲点をついた策。見事だよ』
「……!」

先程キラが放った銀の雨の正体は、チャフ。
電波欺瞞紙とも呼ばれるこの装備は、レーダーによる探知を妨害するためのもの。
この時代、レーダー誘導のミサイルを逸らす手段となりえた。ただし、これは地球上に限られる。
即ち、宇宙育ちのザフト兵では、地球の空中戦を熟知している者はそういない。
だから、有効な手となり……マーズの敗北の端緒となった。

『だが……一度使った手は、二度も通用しないぜ?』

ヘルベルトの駆るバビが再び――キラを襲う。
先ほどとは違う状況、今度は後ろを取られた。
ヘルベルトのバビを引き剥がすべく、キラはムラサメを飛行形体に変化させる。
速力を生かし、敵が放つビームの雨から逃れようとするが……バビは離れず追撃してくる。

『お前と違って、俺はお前を殺す。よもや――恨むまい』
「……恨みませんよ」

キラは応じる。そして断を下す。この男は弱くない、倒して決着をつけねばならないと。
27620/36:2006/06/17(土) 11:48:10 ID:???
追撃するバビ、逃げるムラサメ――しかし一瞬の後、攻守は逆転する。

「オオオッッ!!」

キラは吼えた。戦うことに歓喜を覚えたのでもなく、自らを鼓舞するためでもなく。
ただ、己の体に加わる重力を堪えるために。口に入れたマウスピースを噛み締め、衝撃に備える。
一瞬の後、眼が眩むほどの加重が加わる――!

「クハッ……!」

辛うじて、キラは堪えた。
マウスピースからは血の味がし、体中の血液が逆流したような錯覚を覚えるが、意識は保つ。
そして、モニターに広がるのは、バビの紫色の機体。

その瞬間、ヘルベルトも絶叫していた。
彼は驚愕したのだ。突然目の前に、ムラサメの機体が現れたから――

「ば、馬鹿なッ!? 空中戦で減速しただとおッ!!」
『すみません!』
「な、何ッ!?」

謝罪の言葉と共に、キラは再びサーベルを抜き払う。またしても、バビの両の腕を断つ。
空中でストップ&ゴーを繰り返すなど、正気の沙汰ではない。
キラは、ムラサメの変形で機体を急停止させた後、今度はバビに向かい切りかかってきたのだ。
頑健なコーディネーターのヘルベルトでも、そんな戦法をやろうとは思わない。
大気圏内での戦闘、空中戦でのストップ&ゴー。
機体と掛かる負荷でパイロット自身が意識を失えば、その時点で……死ぬのだ。敵に撃たれて。
戦場で賭けに近いことをやろうとする若者――ムラサメのパイロットは何者なのか?
ヘルベルトも分からなかったが、唯一つ分かったことはある。それは、相手がまともな人間ではないということ。
煙を上げながら、ヘルベルトの駆るバビも後退する。
キラは相手が後退する様を見て、自らの勝利に気づいた。彼は再び叫ぶ。

「2機目……ダウン!!」

撃墜ではない。戦闘不能にしただけ。だが……
キラは相手の命を奪わなかったことに、またも安堵していた。
27721/36:2006/06/17(土) 11:48:56 ID:???
ハイネたちは瞠目する。一瞬にして味方2機が戦闘不能されたことに。
少なくとも、コーディネーターのベテランパイロットが2機で向かって、2人とも戦闘不能になるなど……
ハイネには想定外であったし、それは仲間もまた同じであった。驚愕と共に、ハイネは心情を吐露する。

「何だ……? 何だ!? あのムラサメはッ!?」

バビの火力はムラサメを遥かに凌駕していた。敵が勝っていたのは、速力だけの筈。
しかし、その速力を最大限に生かし、キラはマーズとヘルベルトを屠った。
ハイネには、キラのことは分からなかった。だが、これだけは言えた。

「間違いない……ッ! ヤツは……エースだッ!! 全員、気を引き締めろ!!」

ハイネ隊、彼のほかに戦えるのはショーン、ゲイル、アスラン。
だが、ショーンとゲイルは動揺から立ち直ってはいなかった。いつもなら、返答を返す二人が、黙りこくっている。
意外だったのだ。自分達よりもキャリアのある、アカデミーの先輩二人が、一瞬にして潰されたことが。
そして、彼らは確信する。あのムラサメのパイロットは、ナチュラルではないと。
自分達と同じ……いや、自分達をも凌駕するコーディネーターかもしれないと。

それは、アスラン・ザラも同じであった。
相手はおそらくコーディネーター。そして、相手を殺さない戦法を採る人物――
思い当たるのは、一人の青年。かつての戦友、最強の戦士の名を……ただ、呻くように呟くだけ。

「そんな……馬鹿なッ!!
 キラ……お前なのか? お前があのムラサメに、乗っているのか!?
 ……そんな筈がない、そんな筈は――!!!」
『アスラン!! どうした!?』

上官の声で、アスランは我に返る。
起こって欲しくないことは、往々にして起こるもの。悪いことは重なるもの――
ゲイルの言っていた、嫌な法則が頭を過ぎる。アスランは、最悪の考えを必死に否定しようと、大声で叫んだ。

「い、いえ……なんでもありませんッ!!」
『6機で戦う予定が、4機になっちまった。だが、後には退けん! いくぞぉ!!』

ハイネの号令のもと――
ミネルバの攻撃部隊は、敵MS隊に向けて戦いを挑む。
27822/36:2006/06/17(土) 11:49:46 ID:???
空を飛び、ミネルバへと向かうカオスとガイア。
キラの戦いぶりを目の当たりにしたステラとスティングは、呆然と彼の勝利を見ていた。

「キラ……すごいッ!」
「だな。あの模擬戦のとき……俺はああしてやられたのか。
 ザフトの連中には、同情するぜ。だが……!」

敵はザフト。残る4機のMSを落せば、戦局は連合に有利となる。
この機を逃す彼らではない。一気に前線に飛び出す。

「ステラ! 残りの4機が迫っている。キラを援護するぞ!」
「……了解!」

キラのムラサメに迫る4機のMS。3機のグフと赤いワンオフ機セイバー。
如何にキラでも、1対4では圧倒的に不利。仲間を助けるべく、二人はキラの元へ――
キラも自機のモニターでそのことを察知する。
ムラサメの左右にポジショニングしたカオスとガイアを見て、一息つきながら応答する。

『先輩、大丈夫ですか!? 機体に損傷は!?』
「ありがとう。大丈夫、今のところない。それより……」

キラは敵艦――ミネルバの様子が気になっていた。あの艦に陽電子砲を撃たれてはならない。

「敵の陽電子砲発射を、何としても阻止する! 一緒に来て!!」
『『了解ッ!!』

嘗てストライクを駆った連合のエースは……
二人の後輩とともに、一気呵成にミネルバに向かった。
だが、その前に4機のMSが立ちふさがる。
キラはその光景に舌打ちする。時間がない。間もなくミネルバは、タケミカヅチを射程に収める。
一度射程内に収めれば、すぐさま発砲するに違いないのだ。そうなれば、タケミカヅチは沈む。

「ゲン! 君は一体何処にいるんだ!?」

あの男がいれば、目の前の4機を相手にしても互角に戦える筈なのに――
そう思い、姿の見えないもう一人の後輩の名を叫びつつ……キラはムラサメの操縦桿を握りなおした。
27923/36:2006/06/17(土) 11:50:42 ID:???
ミネルバのブリッジ――
タリアも、2機のバビが戦闘不能にされたことに驚愕していた。

「マユと同等……あるいはそれ以上のコーディネーターのパイロットが、オーブにもまだいたのね」
「艦長ぉ! 冷静に分析している場合ですか!?」

いつもは驚くのはアーサー、諫めるのがタリアなのだが……今日は立場が逆転する。
タリアが驚きを口に出し、アーサーが窘めていた。

「艦長、これは拙いです! マユを……インパルスを前線に!!」
「その必要はないわ。貴方こそ、落ち着きなさい」

戦局が不利に傾いているにも関わらず、タリアは冷静そのもの。
だが、次の瞬間――彼女は指揮をとる。ミネルバを戦勝に導くための、命令を下す。

「アーサー! タンホイザー起動! 目標、オーブ軍旗艦タケミカヅチ!」
「は……はいいいッッ!!」

タリアは冷静ではなかった。ただ冷静さを装っていただけ。
自軍のMS二機を瞬時に戦闘不能にされたことで、内心怒りが渦巻いていた。
中立を掲げながら、已む無く参戦したオーブ。立場は分かる。だが、それとこれとは話は別。

「落とし前は、付けさせてもらうわ! アーサー、何してるの!? タンホイザーの激鉄を起しなさい!!」
「ハッ! 照準、タケミカヅチ!!」

ミネルバは、タケミカヅチをその射程内に収めようとしていた。
一撃で勝負をひっくり返す――それが、タリアの計算であった。
ゆっくりと、ミネルバの艦首に取り付けられた陽電子砲タンホイザーが、その姿を露にする。

敵艦が陽電子砲の発射体勢に入ったとき、キラにもその様子は伝わった。
ムラサメのモニターが警告音を発する。アラート警告音が、コクピットに木霊し、キラは異変に気づく。

「拙いッ!!」

舌打ちしてみたものの、キラとスティング、ステラはハイネ隊に阻まれ……
敵の防御陣形を突破することさえ、ままならかった。
28024/36:2006/06/17(土) 11:51:38 ID:???
オーブ軍旗艦タケミカヅチ――
ミネルバが陽電子砲発射体勢に入ったことは、彼の艦からも確認できた。
アマギ一尉が、その事実をブリッジに告げる。

「敵艦、陽電子砲発射体制に入りましたあッ!!」

彼は、現場の指揮官トダカ一佐の顔を伺う。
幾ら囮役とはいえ、万が一陽電子砲を喰らえば一たまりもない。アマギは上官に判断を請う。
トダカも、意を同じくし回避運動を採ろうと指示を出すが……

「いかんな……回避運動! 面舵――」
「――否ッ!! 全艦そのまま!! 陣形を乱すなッ!!!」

名目上の指揮官、ユウナ・ロマ・セイランがそれを阻む。
誰もがその言葉に驚愕し、ユウナの顔を見る。正気の沙汰ではない、敵は自分達を狙っているのだ。
この世界で最も破壊力のある、艦載兵器で。トダカは、その意を測りかね、ユウナを問いただす。

「お待ち下さい! このままでは――!」
「信じるんだ。必ず、敵の陽電子砲を……ファントムペインが潰してくれる」
「しかし! ヤマト三尉を含め、彼らは敵MS隊を突破できておりません!」
「……動いてはいけない! こちらが動けば、敵も動く。
 そうなれば、ファントムペインのMSは……ミネルバの陽電子砲を射抜けなくなる。
 トダカ、僕達はここに何をしに来たの?」

確固たる口調で、ユウナはトダカの要請を否定した。
オーブ軍がここに来た理由、それは大西洋連邦との協調関係を維持できるかどうかを探るため。
もし、ここでファントムペインがミネルバの陽電子砲を撃ち損じ、ユウナたちが死ねば……
それを口実に、大西洋連邦との同盟を切る覚悟が、オーブ首長会にはあった。
これは、ユウナたちにとっては賭け。派遣軍の命を賭した勝負――

「……わかりました。旗艦、そのまま。一歩も動くな」
「と、トダカ一佐あッ!?」

トダカの判断にアマギが悲鳴をあげ、彼らの真意を知らない部下達も悲壮感を露にする。
風前の灯のオーブ軍に、今――
ミネルバの陽電子砲が放たれようとしていた。
28125/38:2006/06/17(土) 11:52:26 ID:???
ハイネはガイアに対し応戦しながら、その刻を待っていた。
自由飛行の出来ないガイアは、フライングアーマーに乗りながらの応戦。
その様子を嘲笑するかのように、ハイネは叫んだ。

「悪いが、もう終わりだ。ミネルバはタンホイザーを撃ち、勝負は決まる。残念だったな?」

ガイアはライフルを矢継ぎ早に放つが、ハイネのグフはあっさりとシールドで弾く。
返す刀で、ビームバルカンを放つだけ。応戦は、それで十分だった。
ミネルバの主砲で、敵の空母さえ沈めれば、敵軍は後退を余儀なくされる。
ミネルバの任務はジブラルタル基地へ向かうこと。ここで敵を全滅させることではない。勝負は、もうすぐつく。

「自由飛行も出来ないくせに、頑張るな……今日は、アイツはいないのか? 黒いストライクのアイツは?」

ハイネは届かぬ声をガイアに掛ける。黒いストライクのアイツ――それは、ゲンのこと。
この戦闘が始まってからも、黒いストライクの姿は見えず。仇敵がいないのは残念だったが、今は天佑といえた。
だが……一つの考えが頭を過ぎる。

――なぜ、あのストライクはいない? ミラージュコロイドもある機体だ。

考えてみれば、おかしな話だ。あの黒い機体は、強奪された3機と一緒に行動していたはず。

――おかしい。ヤツがいれば間違いなく戦力になる筈なのに。何故いない?

そして、最悪の事態が頭を過ぎる。ミラージュコロイド、姿の見えない敵。

――いや、ひょっとすると……いるのか?

まさか。よもや……その考えに行き着いたとき、彼は大声を上げ、ミネルバに向かって叫んだ。

「しまったああぁぁ!! ミネルバ、ヤツは……黒いストライクは目の前にいるぞぉ!!!」

ハイネが絶叫したその時――照準を引き絞っていたミネルバ副長、アーサー・トラインはその引き金を引いた。
引き金を引いてから、タンホイザーが陽電子砲を発射するまでには数秒の間がある。
艦首が光り輝き、陽電子砲の一撃が放たれる、その直前……

何もないはずの空間から、一筋の閃光が艦首を穿つ――!!
28226/36:2006/06/17(土) 11:54:51 ID:???
――射抜かれたタンホイザー!!

その衝撃は、ミネルバ全体を激震させた。
艦首から艦尾に至るまで、艦橋、MS発射口、甲板……全ての世界が歪む。
MSに乗る者たちも例外ではない。マユ、ルナマリア、レイの3人は、その衝撃を懸命に耐える。

「キャアッ!!」
「……クッ!! 何なの!? マユッ! レイッ!」
「――チッ!! ヤツだ! あの黒いストライクがいるぞ!!」

その中で、レイだけは状況を悟っていた。
レーダーに感知し得ない敵。それは、ミラージュコロイドを装備した敵機に他ならない。
しかし、レイはかつて黒いストライク――ゲンの攻撃を察知したことがある。あの暗礁空域での戦いで。
が、この時は察知し得なかった。

「クソッ! 今の攻撃には……殺意がなかった!!」

以前ストライクMk-Uからの一撃を回避し得たのは、相手の殺意に反応したから――
今度のゲンの攻撃には、殺意がなかった。彼はあくまでタンホイザーのみを狙った一撃だった。
レイが察知し得なかったのは……

「殺意がなければ、反応することさえ出来ないとはッ!!」

攻撃を察知出来なかったことに、舌打ちするレイ。
だが、レイの鋭敏な感覚は、ゲンの次の攻撃を察知する。次の一撃は、艦橋を狙ったもの。
その攻撃を阻止すべく、レイはブレイズ・ザクファントムのミサイルポッドを解放する――!!

「そこかッ!!」

ミネルバの艦橋の前方、幾分かの高度をとった場所に、ミサイルは放たれる。
何もない筈の空間――そこにミサイルは着弾する。
爆煙の中を掻き分けるようにして、一機のMSが姿を現す。
漆黒の機体。彼の機体は、フライングアーマーに騎乗し、左腕にシールドを構えていた。
右手に持つのは、対艦ランチャー。タンホイザーを穿った得物。
遂にその姿を現した黒いストライク。
が、レイに察知されたものの、ファントムペインの目論見――タンホイザー潰しは、見事に成功したのだ。
28327/36:2006/06/17(土) 11:56:00 ID:???
作戦は見事成功。しかし、Mk-Uのコクピットでゲンは舌打ちしていた。

「クソッ! あのザク……! ディテクターでも付けているのかよ!?」

ミラージュコロイドを暴く装置――ミラージュコロイドディテークター。
CE73年には既に実用化されているものの、その配備数は極少。
が、最新鋭戦艦のミネルバには装備されていないとも限らない。
故に、レイのザクにそれが装備されているのではないかと、ゲンは勘ぐったのだ。

「もうこの手は使えないか……まぁ、いいさ!」

再度、ゲンは対艦ランチャーをミネルバのブリッジに向ける。今度は姿を現したまま。
速攻で仕留めれば良いだけの話だ。
だが、その攻撃は済んでのところで妨げられる。
目の前に白いMS、インパルスが現れた事によって――!

『ミネルバは、やらせないッ!!』
「――!?」

機体の背部、フォースシルエットからサーベルを引き抜いたインパルスが、漆黒のMk-Uを狙う。
ゲンは咄嗟に、Mk-Uを載せているフライングアーマーを後退させる。
切り裂かれる寸前のところで交わすが、サーベルの切っ先は僅かに早く……
爆音とともに、自機の右手にもつランチャーが破壊される――!

「――!! またお前かッ!?」

忌々しげにインパルスを睨みながらも……ゲンはMk-Uを後退させる。
攻勢だったとはいえ、既にミネルバの射程圏内。見れば、紅白のザクが互いの得物をゲンに向けている。
ルナマリアのオルトロス、レイのビームライフル――それぞれの光線が、Mk-Uを狙う。
それを機に、ゲンはミネルバの戦域より離脱を余儀なくされた。

「……まぁいいさ! 目的は果たしたんだ。 あと一歩のところだったが……
 だが、俺の攻撃を阻んだことを後悔することになるぜ? これから、お前等には地獄が待っているんだからな!」

ゲンの最後の言葉は負け惜しみではない。この時既に、ミネルバに迫る大群がいたのだ。
ハイネ隊と交戦するキラ達の後方から……この時を待っていた、連合・オーブ両軍のMSが迫り来る――!
28428/36:2006/06/17(土) 11:57:49 ID:???
全ては彼の計略どおりにことが運んでいた。
ネオ・ロアノークは、J・Pジョーンズのブリッジで微笑する。それは、酷薄な笑み――

「全軍、この機を逃すなッ! 一気に掛かれッ!!」

予てからジブリールから送られた増援部隊、中隊規模のMSウィンダムが飛翔する。
彼らが目指すのは、ザフト軍艦ミネルバ――!

そしてもうひとり、海中でこの機会を待っていた人物がいた。
アビスのコクピットで、アウル・ニーダは叫ぶ。

「ネオ! 俺も行っちゃうぜ!?」
『おう! 船底にでっかい穴をこさえてやれ!!』
「了解ぃ!!」

海中で待機していたアビスも、一路ミネルバに向かう。
水中魚雷を全弾、撃ちつくす用意は既に出来ていた。
目の前に広がるのは暗い闇の世界、海の底――
だが、アビスは、間もなく眼前に巨大な物体を捉える。それはミネルバの船底。

「アハハハッッ!! ボディが、がら空きだぜええッ!!!」

歓声と共に、アビスの魚雷がミネルバの船底を穿つ。
その衝撃はミネルバのブリッジにまで伝わり……タリアは、状況が危機的であることを悟る。

「メイリン! ハイネ隊を呼び戻して! 艦の援護を――」
「ダメです! 敵MS隊が展開しています!」

ミネルバのブリッジ、大型モニターに映し出されるのは数多のMS。
ウィンダムとムラサメ、そしてアストレイ。物量に任せた連合の総攻撃、それが今始まろうとしていた。
タリアは歯軋りしながらそれを見る。やがて、彼女は断を下す。

「このままでは艦が持たないわッ!! メイリン、スエズ方面軍に増援要請を!!」
「は、はいッ!!」

要請したとて、果たして間に合うのか――? 最悪の事態が、タリアの脳裏を過ぎっていた。
28529/36:2006/06/17(土) 11:58:49 ID:???
Mk-Uがミネルバの艦首を撃ちぬいた光景を、キラは呆然と見ていた。

「……最初から、このつもりだったのか!」

キラは欺かれていたのだ。ファントムペインに、ゲンに。
最初から、ストライクMk-Uのミラージュコロイドを活用した戦術を採るつもりだったのだ。
ユウナたちは、キラにはこの作戦を知らせていなかった。
馬場隊を含めた艦載機部隊には一応伝えたものの、キラには何も伝えていなかった。
必死で突破口を開こうとしたキラ。タケミカヅチを撃たせまいとした、彼の奮戦すら利用する。
それが、ファントムペインとユウナの仕組んだ計略だったのだ。

『お陰さまで助かったよ、キラ』
「ゲン!!」

キラは声を掛けてきた人物――ゲンの名を叫ぶ。若干の怒声を交えて。
その様子に、ゲンは肩をすくめ宥めに掛かる。

『おいおい、怒るなよ? 俺たちは、仲間なんだぜ?』
「最初からこうするつもりだったんだね?
 海峡を抜けた所で君はずっと待っていた。獲物を、ミネルバを待って――」
『ご名答。この作戦の鍵は、味方にも気取られぬようにすることさ。特に、お前には』
「……ボクは、何も知らされていなかった」
『そう仕向けたのさ。そうすりゃ、お前は必死になってミネルバの陽電子砲を潰そうとする。
 そうすることが、俺にとっては何よりの援護。お前が必死で戦ってくれたことで、敵の注意を逸らせたんだ』

キラは文字通り囮役。彼の驚異的な戦闘能力が、ハイネ隊の注意を惹きつけたのだ。
もしオーブ軍の誰もが、揚々と陽電子砲の発射を待ち構えていれば……
ハイネのような戦術家に気取られる虞があった。
そして、キラが2機のバビを瞬時に戦闘不能にしたことで、彼らはキラの駆るムラサメを徹底的にマークする。
結果、ミラージュコロイドの狙撃を敢行したゲンにとっては、何よりの援護射撃だったのだ。

『敵を騙すには、まず味方から……っていうだろ?』
「……恨みはしない。けれど、これは――」

――あんまりじゃないか?
そう言いたいのをグッと堪え、キラは再びコンセントレーションを高め……戦闘に入ろうとしていた。
28630/36:2006/06/17(土) 12:00:00 ID:???
タケミカヅチの艦橋――囮役を果たし終えたオーブ軍は沸きかえっていた。
アマギは、無事敵の注意を惹きつけたキラと、敵の主砲を潰したファントムペインに、手を叩いて喝采を送る。

「よしっ!! これで戦局は我等に有利になるッ!!」

彼だけではない。ブリッジの誰もが、勝利の端緒を得たことに安堵を覚えていた。
ただ一人、この人物を除いて。

「トダカ、何か気に入らないのかい?」
「……いえ、そういうわけでは」

一人、トダカだけは今だ警戒を解いていない。
ユウナは、相変わらず難しい顔をした現場の指揮官に、その真意を問う。

「どうしたのさ? 戦局は、俄然こちらに有利なのに……ムラサメ隊は、ミネルバを今にも潰そうとしているよ?」
「――上手く行き過ぎです。好事魔多しという言葉もあります。ゆめゆめ油断めされぬよう」
「……ふぅむ」

ユウナはトダカの、歴戦の兵としての力量を見た気がした。
このタケミカヅチでただ一人、今だ自軍の勝利を確信していないのは彼一人だろう。
見れば、馬場隊を始めとしたムラサメ隊は、次々とその砲火をミネルバに向け……
ブリッジのモニターの拡大映像で映されるミネルバには、いくつもの爆発が見て取れる。

「油断大敵……か」
「はい」

ユウナはトダカの真意を知ったことで、彼もまた兜の緒を締めなおそうと、胸中に警戒の色を強めていった。
その頃二人の会話に挙がったムラサメ隊所属――馬場一尉は、自軍の指揮を最前線で執っていた。

「各機、功を焦るな! 敵MSはファントムペインとヤマト三尉に任せろ!!
 我々の目標はただ一つ、ミネルバのみ!! CIWSの射程外からミサイルのみを叩き込め!!
 撃ち尽くした者から、タケミカヅチに帰還! 補給を受け再度ミサイルを放て!
 如何な兵の軍艦といえど、100の砲弾を浴びれば必ず朽ちる!!」

トダカ同様、先の大戦からの古参兵の一人、馬場一尉もまた手綱を緩めることはない。
彼を始めとしたオーブのムラサメ隊は、次々とミサイルを放ち……ミネルバを朱に染めた。
28731/36:2006/06/17(土) 12:01:12 ID:???
眼前の黒いストライクと刃を交えながら――ハイネ・ヴェステンフルスは己の浅はかさを呪っていた。

「畜生! コイツの存在に、何故俺は気づかなかった!?」

ハイネは気づかなかった。ストライクMk-Uの存在に。
が、彼を責めるのは酷といえよう。新たな強敵、オーブのムラサメに注意を奪われたのだから。
キラ・ヤマトの駆るムラサメ。圧倒的な操縦技術と戦闘能力を誇る彼に、ハイネは瞠目した。
いや、彼だけではない。隊の全員が目を奪われた。それが、最大の失態となるのだが……

「……やられたッ! 糞ッタレがあッ!!!」

目の前の敵への応戦に必死で、ミネルバを援護することすらままならない。ハイネは臍をかんだ。
それは、アスラン・ザラも同じ。目の前のムラサメに、必死に彼は叫び続けた。

「キラ! お前は、キラなのかッ!?」

セイバーはムラサメを追う。声の届かぬ相手に、呼びかけながら。
マーズとヘルベルトがキラの声を聞けたのは、緒戦だったから。
まだ戦闘距離を詰めていなかったタケミカヅチとミネルバの、電波霍乱に巻き込まれなかったが故。
互いの母艦が距離を縮め、ジャマーが有効範囲内になったことで、敵味方での交信はほぼ不可能になる。
声の届かぬ相手に舌打ちしながら……アスランの時は過ぎる。

圧倒的に不利な戦局は、ミネルバ本艦も例外ではない。
ムラサメ隊の砲火に、応戦するMS隊にも悲鳴が木霊する――!

「レイ! このままじゃ!!」
「分かっている! だが――!!!」

悲痛な叫びをルナマリアは上げる。
時間が経つにつれ、CIWSの砲火の網を抜けるミサイルの数は多くなる。
それに比して、ミネルバは被弾していく。二人の脳裏を、最悪の事態が過ぎる。
誰かが――
誰かが戦局を変えねば、このままミネルバは……

その時――
同じく防戦に回っていた白いMSが、ミネルバを離れ……矢のようにタケミカヅチへと向かう――!
28832/36:2006/06/17(土) 12:02:17 ID:???
引き絞られ放たれた矢の様に――一機のMSが敵陣に切り込む!
その光景はミネルバからも確認できた。
被害報告に賢明なオペレーターのメイリンは、その光景に瞠目する。

「マユちゃん!?」
「メイリン!? マユがどうしたの!?」
「インパルスが、タケミカヅチに向かっていますッ!! マユちゃん、応答して! どうしたの!?」

寝返り――!? マユの行動に、奇妙な考えがタリアの脳裏を過ぎる。
しかし、マユは降伏のサインを挙げることもなく、ただ只管に……
敵のMS隊の十字砲火を掻い潜り、タケミカヅチへと向かう――!!
疑心暗鬼になりかかった自分を、タリアが恥じていた頃、マユの声がメイリンの元へ届く。

『メイリン……! ソードシルエットを!! それと、チェストとレッグをそれぞれ私のところへ!!』
「マユちゃん!? どうするつもりなの!?」
『同じ戦法が二度通用するとは思えないけど……やらなきゃ、皆死んじゃう!!』
「でも! 相手は!!」
『そんなこと……分かっているわよぉッ! でも、やらなきゃ!! 私がやらなきゃ!!!』

マユは狙う。オーブ海戦における連合軍との戦いで用いた戦術を使い、敵の大将を。
即ち、それはタケミカヅチのブリッジ。敵の艦橋に取り付き、降伏を迫り……さもなくば――!
タリアは逡巡の末、彼女の顔色を伺うメイリンに応える。力強く頷くことで。
そして、数秒の後、ミネルバからソードシルエットが射出された。

迫り来る白い矢――インパルスの行動は、タケミカヅチからも捉えられた。
オペレーターが悲痛な声をあげる。

「敵、一線を抜けますッ!!」
「……トダカの言ったとおりだねぇ。好事魔多し、だ」
「各艦、防衛ラインを張れ! アストレイ隊も弾幕を張って応戦しろッ!!」

ユウナはトダカの指摘が現実化したことを嘆き、トダカは応戦の指示を出す。
ややあって、その指示は実行される。インパルス目掛けて、オーブ軍の十字砲火が炸裂する――
マユもそれを交わしきれず、若干の被弾をするが……
構わずに、彼女は突き進む。
タケミカヅチの艦橋へ向かって――!!
28933/36:2006/06/17(土) 12:03:22 ID:???
インパルスの突貫――それはゲンの視界にも入る。

「野郎……ッ!! やらせるかよッ!!!」

仇敵の狙いを察したゲンは、一路タケミカヅチへ進路を取ろうとするが……
目の前に緋色の機体――ハイネの駆るグフが立ちふさがる。
ハイネには分かっていた。マユの狙いが。この戦局を覆すには、敵の大将首を取るしかない。
そして、それはタケミカヅチのブリッジに他ならない。

「マユの邪魔は、させねえッ!!」

インパルスを阻もうとするゲンを、ハイネは機体のビームガンで狙おうとする――
が、グフとMk-Uの間に一機のMSが割って入る。それは、オーブのムラサメ。

『させんッ!!』
「何だ、テメェはッ!?」

突然の妨害に、ハイネはいきり立つ。空中で体当たりを喰らい、接触回線で相手の声が聞こえる。
先ほどマーズとヘルベルトを戦闘不能に追いやった機体ではない。耳に聞こえるのは、中年らしき男性の声。

『あの黒い機体、我が母艦を護ってくれようとしている! ならば、貴様の相手は私だッ!!』
「……このッ! 舐めるなよ! ナチュラル風情がッ!!」

声の主は、ムラサメ隊馬場一尉。
コーディネーターのパイロットは総じて若いもの。相手の年齢を察し、ハイネは馬場を罵った。
が、相手は罵声には罵声を以って応じてくる。

『若造が、利いた風な口をきくッ!! よかろう! オーブ軍人の意地、とくと見せてやろう!!』

空中で組み合う馬場のムラサメとハイネのグフ。
先の大戦を潜り抜けた、両古参兵の戦いは熾烈さを増し……
キラのムラサメはセイバーと、カオスとガイアは2機のグフと――それぞれ戦闘に没入していく。

被弾しながらも敵の本隊を叩こうとするインパルス、それを追うストライクMk-U.
あたかもそれは、タケミカヅチへと向かう白き矢と黒き弾丸。
やがて、運命の兄妹の邂逅は再び果たされる――!
29034/36:2006/06/17(土) 12:04:24 ID:???
インパルスは被弾していた。腕に、脚に、背中に――
激震がコクピットを襲うが、それでもなお、マユは突貫を止めようとはしない。
やがて……インパルスは、タケミカヅチを眼前に捉える。

「見えたッ!! フォース、チェスト、レッグ、離脱――ッ!!」

マユは被弾した箇所を持つ部位、フォースシルエットを脱ぎ捨てる。インパルスの腕部チェスト、下半身レッグも。
コア・スプレンダーのみになりながらも……タケミカヅチを目指す!
間近に艦影を捉えたとき、コア・スプレンダーの後ろから、何かが追ってくるのが見えた。
先ほど切り離した部位、新しいチェストフライヤー、レッグフライヤー。そして、ソードシルエット。

「換装体型に、固定ッ!!」

マユが叫ぶや、後ろから送られてきた部位がコア・スプレンダーを包み……MSの形をとる――!
ついに、タケミカヅチのブリッジの正面で、新しいインパルス――ソードインパルスが再誕した!!

タケミカヅチのブリッジ。クルーの目の前で大剣を構えるMS。
瞬時に再誕したインパルスを目にし、ユウナは呆れたように呟いた。

「……なんて物を作るんだ、ザフトは」

ブリッジの全員が同じ思いだった。被弾しながら……その腕を、脚を削られながらも突貫したインパルス。
普通のMSであれば、そこで力尽きる筈。だが――
目の前で、再びインパルスは息を吹き返したのだ。余りの光景に、ユウナも二の句が告げずにいた。
指揮官以下、呆然とするオーブ兵にその機体――インパルスから通告がなされる。

『降伏してくださいッ!! 降伏すれば、命までは取りませんッ!!
 直ちにミネルバへの攻撃を中止してくださいッ!! お願いしますッ!』
「……お、お願いぃ?」

マユの降伏を勧める声が聞こえる。あまりに間近であるため、ジャマーもこの距離では意味を成さない。
相手の声が、タケミカヅチのブリッジに響き渡る。が、マユの最後の言葉に、ユウナは呆けたように呟くだけ。
やがて、相手がまだ若い少女の声であることに気づいた指揮官は、事態を察し……
ここが戦場であるとは思えないほど優しい声で、マユに語りかけた。

「お、お願いされても困るのだけれどね」
29135/36:2006/06/17(土) 12:06:24 ID:???
ユウナは語る。あくまで優しい口調で。

「勇敢なお嬢さん、君は素晴らしい。そのMSも、実に見事な戦いぶりだ。
 君のお陰で……勝利を手に仕掛けたオーブ軍は、一転最悪の事態になってしまったよ」
『なら、投降してくださいッ!!』
「……気持ちは分かるよ。人を殺すなんて、したくないんだよね? でも、僕たちはそれが出来ないんだ」
『どうして……!?』

マユは悲痛な声を挙げる。敗北必死の指揮官が、降伏を拒む理由が解せなかったから。
そんな少女に、ユウナはなお語りかける。

「僕達は国の威信を掛けて戦っている。そして、国の命運も掛けてね。だから、降伏できないんだ」
『……面子のためですか!?』
「厳しいね。間違いじゃないけど……そういう、命令を受けているんだ」
『アスハにですか!?』
「カガリが? アハハハッ……!! 彼女はそんなこと、絶対に出来ない人間だ」
『なら、誰にそんな命令を――』
「――国家さ。国家の見えざる手が、そうさせるんだ。君が今、こうして戦っているように、ね」

ユウナの応えに、マユは瞠目する。国家の見えざる手――それは、酷く抽象的な言葉。
だが、マユが今己の行為を振り返ったとき、それは正鵠を射た回答とも思えた。
何故、オーブ出身の自分がMSに乗り、故郷の人間と刃を交えるのか?
ユウナの抽象論こそが、最もその状況を語りえる物であった。

ユウナの言葉に戸惑うマユ。しかし、次の瞬間――
聞き覚えのある声が、インパルスのコクピットに木霊する。ユウナよりも年嵩の男の声。

『その剣を振り下ろすのが、君の任務だろう。ならば、それを為したまえ』
「――!? ト、トダカ一佐!?」

かつての恩人トダカ――彼の声は、今マユが為さねばならないことを、冷酷に告げていた。
軍人であれ軍属であれ、やるべきことは同じ。国のために戦う。ただ、それだけ。
それでもインパルスの対艦刀を振り下ろせないマユ。少女の心は躊躇い、揺れ動く。だが、そのとき……
コクピットにあの男の声が木霊する――!!

『ハッ! 誰がさせるか!! そんなことをよぉ!!!』
29236/36:2006/06/17(土) 12:10:10 ID:???
ドンッ――!!!

タケミカヅチに、いや……海域全体に轟音が鳴り響く。
その声と音は、マユはインパルスを振り向かせる。ブリッジの前で構えていたインパルスの後ろ……
タケミカヅチの甲板の戦端部に、轟音を轟かせた者がいた。舞い降りたのは、黒いMS――!!

「……黒い、ストライクッ!!!」

マユはその招待を悟り、まだ名も知らぬ敵MSの名を叫ぶ。
黒いストライク――GATX105/U ストライクMk-U――ゲン・アクサニスが駆る機体。
だが、その機体はいつもとは違った。そのことにマユは程なく気づく。
フライングアーマーから飛び降りたその機体は、手に得物を持っていたのだ。黒光りする鉄塊を……

「あれは、剣……!? 対艦刀!?」
『違うぜ、お嬢さん』

冷淡な声で、答えが返ってくる。ゲンの声が――死んだ筈の兄、シン・アスカの声が。
フライングアーマーから飛び降り、屈みこんだ体勢で着地したMk-U。
黒い機体は、ゆっくりと立ち上がる。そして、鉄の塊の正体が露になった。
剣――それは、大剣。有史以来数多の剣が人の手によって生み出されてきたが、剣は大きかった。
とてつもないほどの長さ、MSの背ほどもあるその剣。
一見するとソードインパルスの対艦刀――エクスカリバーに近い大きさではあった。が、対艦刀ではないと、ゲンは否定する。

『こいつは、対艦に限定されねぇ! こいつは"全てを制するもの"――XM404グランドスラム!!
 お前を、ミネルバを、ザフトを……全てを両断する剣だッ――!!』

ジブリールからの贈り物――それは禍々しいほど巨大な鉄塊、実剣グランドスラム――!
マユが再びタケミカヅチを狙えば、この男――ゲンは、その隙に間違いなくインパルスを両断するだろう。
そのことを悟ったマユは、エクスカリバーを構え臨戦態勢を取る。
しかし、何よりも――マユは、この男を倒さねばならないと思った。兄とよく似た声の男。
この上なく不快だった。敵として現れた男が、死んだ筈の兄の声を騙る。不快さを堪えきれず、マユは叫ぶ――!

「その声で……その声で、喋るなあッ!!!」

地を蹴るインパルス。同時にストライクMk-Uも、タケミカヅチの甲板を蹴り、インパルスに向かう。
インパルスはエクスカリバーを、ストライクMk-Uはグランドスラムを振り上げ、互いに切り結ぶ――!

運命は、かくして残酷なまでの対決を二人に強いた。今幕開けるは、兄妹の死闘――!!

293通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 12:32:15 ID:???
PP戦記を書いてる者です。

最近少々忙しくなり、スレを訪れる機会が減っておりまして、一挙の投下となりました。
スレを覗く時間は減っても、何とか書き続けていますが……
なるべく小まめに……と思いましたが、25話はマユが出ていない話。
スレタイと余りにかけ離れた内容は心苦しく、同時投下することにしました。平にお赦しくださいm(__)m。

ちなみに6月20日を持ちまして、拙作をこのスレで書き始めてからちょうど一年になります。
所詮皆様のお知恵を拝借して書き始めた駄文、以降は私の妄想に過ぎないことは理解しております。
が、この機会を与えてくださったのはマユスレ。
無事大過なく書き続けてこれたことを、この場を借りてスレの皆様にお礼申し上げます。
今後とも拙作をよろしくお願いしますm(__)m
294通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 12:33:25 ID:???
・・・・・・まさかこんな所でPGストライクのあの獲物を活用するとは!!!
295通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 12:39:54 ID:???
黒いMk-Uに銀のグランドスラムの映えること。

だが「お願いされてもこまるのだけどね」なユウナに萌えたのはひみつだw
296通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 15:07:02 ID:JbGk4H5v
>>293
……土曜日の真昼間に、脳みその処理能力の全てを使い切ってしまった。
こんだけ文章が密集してるのに目が滑り出さない。凄すぎる。

ゲンがわざわざバイザー外した写真は、後に何かのイベントアイテムとなるのだろうか…?
297通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 15:13:43 ID:???
ラクス=ヒステリー2006.06.13.Tue
昨日の心理学の授業でフロイドのヒステリー性性格とかいうのをやったんですが、それがあまりにもラクスにぴったりで笑えました。

ヒステリー性の性格は
1.我が儘
2.自己顕示欲
3.小児的
4.非暗示性
5.態度が演出的
6.自律神経が不安定
7.反省力に乏しい

とからしいです。
1・2・5・7あたりが特にラクスにぴったりだと思うんですがどうでしょう?

あとは白々しいとか小才だとか頭よく見せかけてるだとか自己中心的だとか色々。

先生が言うことがほとんどラクスにぴったりだったんですがあんまり覚えてないんだ・・・。あまりにもぴったりすぎてラクスのこと説明してんじゃないかと思えるほどでした。
友人と笑いこらえるのに必死だったよ。

ちなみに対処法は我慢するか逃げるかの二つしかないそうです。
我慢する=カガリ、逃げ出す=アスラン
だったんだな・・・。頑張れ、アスカガ。

キラはほら、もうラクスと同類だから・・・。

あと今日大正文壇の話を聞いてて白樺派はクライン派だと思った。

能天気なまでの自己肯定

ってところがね。まさにって感じ。
金持ちのお坊ちゃんに多いらしいし。
快か不快かしかないって所も。
楽しければそれでいいらしいです。
所詮ラクスとミーアの区別もつかない連中ですから、クライン派って。(明らかに乳のでかさが違うのにな)

とりあえず馬鹿の集団?(別に私は白樺派が嫌いなわけではない。クライン派は嫌いだけど)

授業真面目に聞けって感じですね、私たち。
授業中にネタを探して楽しんでます。だって私90分も集中できなーい。

私たちかなりラクスに対して酷いですが、ラクスはもっと酷いことしてるのでこんなもん可愛いもんだと思いますよ。むしろこんなんで済んで感謝してもらいたいぐらいです。
298296:2006/06/17(土) 16:13:54 ID:???
すまん
俺が上げたせいか…。
299通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 16:55:26 ID:???
PGの剣か!
あのカコイイ剣をストライクMk-2が使う!
うーん、激烈燃え展!
続きがめちゃ楽しみ〜!
300通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 17:02:48 ID:???
>ユウナ「国家の見えざる手が、そうさせるのさ」、
>トダカ「その剣を振り下ろすのが、君の任務だろう。ならば、それを為したまえ」
オーブ軍人はいちいちカッコ良すぎだぜwwww
戦闘部分面白かったです。GJ!
301通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 18:37:08 ID:???
最初、タクティカルアームズだと思ってたら予想を見事に裏切られた!
でもこっちの方が絵になるから(゚∀゚)イイ!!
302通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 20:15:59 ID:???
>トダカ「その剣を振り下ろすのが、君の任務だろう。ならば、それを為したまえ」
これ、相手がマユだってわかってる上で言ってるんだよね。PP戦記マユのトラウマがまた一つ増えるのか・・・。
303通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 20:43:31 ID:???
単発設定小話 「ムウU改」愛をください編

〜沈黙する二人〜
マリュー「記憶でしか覚えていない・・・とは、どういうことですか?」
ムウ「ん、そうだな・・・知識として記憶しているといえばわかりやすいか・・・・・・」
マリュー「知識・・・ですか・・・・・・」
ムウ「そう。だからムウ・ラ・フラガの記憶には感情が入っていない状態なんだ。・・・思い出じゃないんだよ」
マリュー「でも・・・覚えているのなら・・・感情もそのうち戻るのではないですか?」
ムウ「ムウ・ラ・フラガには戻りたいとは思う。・・・だからこそ記憶のディスクを取り戻したんだからな。でも・・・」
マリュー「・・・?」
ムウ「今はネオ・ロアノークの記憶が主体なんだよ。・・・・・・ネオの記憶もなくしたくはない」
マリュー「それは、当然でしょうね。あなたはネオ・ロアノークとしても部下を連れて戦っていたのでしょう」
ムウ「ああ・・・・・・」
マリュー「一緒に戦った人とはどうしたって情が移ってしまうもの・・・・・・」
ムウ「あんたは・・・いや、マリューはそれでもいいのか?」
マリュー「あら、やだ。呼び捨てで呼ばれるのなんて久しぶりだわ・・・」
ムウ「・・・ああ、気を悪くしたのなら謝る。少しでも取り戻したくて以前の呼び方をしてみたんだが」
マリュー「気を悪くするだなんて・・・別にかまわないわ」
ムウ「そうか、ならよかった・・・・・・」
〜抱きついたままのマリューを身体から離すムウ〜
マリュー「あ・・・私ったら・・・・・・ごめんなさい」
ムウ「はは・・・そうか。本当に恋人同士だったんだな・・・」
マリュー「そうね」
ムウ「・・・・・・俺の・・・感情が戻るまで待ってもらえるか?」
マリュー「・・・ええ、あなたが望むように」
〜瞳を閉じ頷くマリュー〜
ムウ「ありがとう。・・・しばらくは捕虜として扱ってくれ。・・・いきなり復帰はみんな怪しむだろうしな」
マリュー「そうね・・・。当分、あなたの前歴が影を踏むわね」
ムウ「俺はその前歴を誇りに思ってる・・・・・・。ムウに戻ってもそれは許容してくれ」
マリュー「ごめんなさい。一方的な考えだったわ」
ムウ「すまんな」
〜医療室を出るマリュー〜
マリュー「みんな、まだ怪我が回復していないようだから。捕虜の尋問はまた明日行います」
ミリアリア「捕虜って・・・あの人、フラガ少佐なのになんでですか?」
マリュー「いいから。医療室は当分私のコードで鍵をしておきます。捕虜に用件がある人は私に申し出るように。以上よ、解散してちょうだい」
ミリアリア「・・・艦長」
マリュー「ミリアリアさん。キラ君は戻ってきたかしら?」
ミリアリア「え?・・・ええ。先ほど戻ってきましたが・・・・・・」
マリュー「?どうしたの・・・?」
〜ミリアリアにいぶかしむように振り替えるマリュー〜
ミリアリア「なんか・・・ずいぶん落ち込んでるようみたいで・・・・・・」
マリュー「?」

愛をください編完  ・・・・・・展開的には次回、「キラ」哀をください編
304通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 21:36:15 ID:???
でもVPS装甲をどうやって斬るんだろうか?
305通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 21:40:43 ID:???
306通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 22:14:00 ID:???
まぁ電池切れは狙えるだろう。そこでデュートリオン、とかな。

斬れてもいいと思うけど。デカい剣燃えるし。
エクスカリバーの先端から設定に無いビームが出たっていいじゃないか。それが燃えだろ?
307通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 23:05:10 ID:???
>XM404グランドスラム

全く存在を知らなかったのでググってみたが、マジでカッケエなこの剣は
種本編において、大剣使いといえば最早シンの事だしな
ようやく相応しい得物を手に入れたゲンの活躍にワクワクするぜ
308通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 23:30:15 ID:???
グランドスラムはコーディネイター(PPならブルコスか)の技術力で開発された
特殊金属で鍛えられており、金属の装甲でも斬ることができる。
そしてPS装甲は「衝撃に耐える」ことはできても「装甲そのものを斬られる」こと
には対応できない……と考えればいけるんじゃね?<グランドスラム
309通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 23:40:54 ID:???
超高振動とか実はメチャクチャ熱いとか、脳内で設定捏造してみるとか。
310通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 00:23:19 ID:???
もし斬れなくてもその衝撃だけで
パイロットにかなりダメージを負わせることができるんじゃないか?
311通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 00:56:45 ID:???
プロモビデオでジンをばっさり斬るストライクは燃えるよな!
312通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 01:00:37 ID:???
家にあるストライクMk-Uのプラモに持たせてぇ…>グランドスラム
でも、1/144サイズのグランドスラム、無いんだよなorz
ストライクノワールのフラガラッハでも改造して作ってみるか…

グランドスラムに隠れがちだが、キラVSオクレ兄さんの模擬戦も燃えた!
313通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 01:05:47 ID:???
相変わらずここは賑やかでいいね
314通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 02:43:50 ID:???
PP作者様、二話連続投下ありがとうございます。続きが気になるSS1、2位を争う作品なので
話が進むのは嬉しいことです。(ちなみに1、2位を争うもう一つは「影の少女」なのですが、
こちらは更新止まってるんですよね、残念!!作者様、続き期待している者がここに居ます)

「アクサニスは私のものだ!! 」に腐女子レーダーが反応したのは事実ですが、その後のジブリールの
発言に、そんな底の浅いものじゃないんだという伏線が垣間見えて、今後の展開に期待大です。

ところで、ゲンてあんなに簡単にバイザーはずしていいんですかね?(ルナの前でもはずしてましたが)
コーデネィターだと一目瞭然のあの赤眼をかくすためのバイザーだと思っていたんですが。

PPが映像化されたら嬉しいな、でも、あの紅瞳がバイザーで見えないんだよなと
残念に思っていた、シンの黒・白・赤のカラーリングが大好きな自分としては
最後まで秘密にしてほしいような、今後の伏線にしてしてほしいような複雑な気持ちです。

どちらにせよ、今後の展開を楽しみにしていますので、これからも続き楽しみにしております。

315通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 07:26:09 ID:???
ヤ…ヤベエよお!?
“アロンダイト派”の俺が“グランドスラム”に“浮気”しそうになっちまってる!?

                   !?
316通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 11:51:01 ID:???
アンリマユ・アスカ
317通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 11:55:13 ID:???
インドの神様だっけ?
318通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 12:19:25 ID:???
>>314
長い
腐女子去れ!
319通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 12:28:34 ID:???
>>318
やめてよね
本気でケンカしたら、君が腐女子に敵うはずないだろ

気持(文面は此処で途絶えており、呪われよ!という文字が
鮮血で書き殴られている)
320通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 12:28:49 ID:???
人の顔も見えんところで無駄に人種差別せんでも。
321通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 13:41:21 ID:???
反響を呼ぶだけ今回のPP戦記が面白かったってことさ。
隻腕も早く投下されんかねえ
322通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 14:19:07 ID:???
いいなぁ
俺も荒れるぐらいの作品が書きたいもんだ
323通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 14:29:02 ID:???
増長ってほどじゃないけど、少しゲンが浮かれ気味なのが気になる
ここから一度地に叩き落とされる前振りのような
324通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 15:47:24 ID:???
単発設定小話 「PPPK」あなたには功夫が足らないわ編

■PP
〜ガーティ・ルーへ帰還したシンとスティング〜
リー「少尉。ご苦労だったな」
シン「艦長・・・すまん。大佐は見つけられなかった。スティングに聞いた限りじゃ撃墜されたらしい」
リー「・・・そうか。仕方ないな。・・・帰ってきた早々に悪いがな、急いで宇宙へ上がる準備をしてくれ」
シン「スティングを休ませる時間もないのか?」
スティング「・・・シン。俺のことはいい。・・・はやいとこ宇宙へ上がってしまおうぜ」
シン「スティング・・・・・・。お前がそういうならいいけど・・・無理すんなよ」
リー「時間がないからな、軍曹にはもう少々がまんしてもらおうか」
〜医療室で上がるのを待つスティング。ブリッジに向かうシンとリー〜
リー「少尉。そこの席に座っていいぞ」
シン「ここは大佐の席だろ?俺はこっちの補助席でいいさ・・・」
リー「・・・大佐はもういない。MS隊の隊長としてそこに座ってくれればいい」
シン「わかった。・・・・・・俺は・・・ここで何もできなかった。なにも・・・守れなかった」
リー「少尉にそういう気持ちが生まれたなら・・・地上に戻った意味はあったというものだよ」
シン「・・・・・・気持ち・・・ねぇ・・・・・・」
〜自覚に欠けるシン。・・・そしてガーティ・ルーは宇宙へ上がった〜

■P
ミーア「・・・もう急なんだから!用意っていったて・・・竹田さん。サラさんは?」
タケダ「サラはんはなんや用事があるちゅうて、今回はこれませんねん」
ミーア「えー!なによ、ラクスの護衛じゃなかったの!?もうっ!」
タケダ「まぁまぁ、なにやら議長自らの依頼らしいぃてどうしてもはずせませんのやと。かんべんしたってな?」
ミーア「議長からの・・・そう・・・じゃぁ仕方ないわね」
タケダ「ささ、急いで急いで。荷物はようまとめてぇな、ほら寝巻きに下着に化粧ポーチに・・・」
ミーア「ちょ、ちょっとー!なに人のタンス勝手にあけてんのよ!ちょ触んないでよ!」
タケダ「そないなこといううてる場合ですか?はようはよう」
ミーア「だから、下着ぐらい自分でやりますって。さわんなよ!このエロジジイ!!」
タケダ「エ、エロジジイって!・・・・・・ま、ええか。」
ミーア「いいのかよ!!」
タケダ「さ、車に行くでぇー!・・・ああ、そうそうサラはんから伝言預かっとったわ。ほい」
ミーア「紙袋?」
〜開封するミーア〜
手紙「ピンクの毛染めを入れておきました。付け根の地色が最近目に付きます。手入れをサボってはだめよ。 以上」
ミーア「・・・・・・っちょ、そういことは気づいたそばで言ってよ!!」

■K
〜デストロイが暴れまわった都市を見回すキサカ〜
キサカ「・・・・・・アークエンジェルの被害はなさそうだな。連合も当分動けまい。・・・・・・やはりザフトが立ちはだかりそうだな」
サイ「キサカ一佐。出発準備できましたよ」
キサカ「ああ、ジブラルタルへ向かうぞ。・・・サイ、トノムラはどうした」
サイ「トノムラさんなら・・・むこうでいじけてますけど
トノムラ「・・・はぁぁ〜・・・・・・なんで俺アークエンジェルにのってないんだろう・・・・・・」

325通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 16:23:45 ID:???
PP戦記、お疲れ様です!何か全編凄い盛り上がりなんですけど・・・
二編同時投下が素晴らしい・・・凄い文章密度なのに。
キラVSスティングの模擬戦(ムラサメ=軽量・高機動、カオス=高密度火力・中量級
の構図が説得力満点。あと、キラのマニューバが「トップガン」観てるみたいですが、
「変形」というSFのファクターがこれほど違和感なく纏まるのは文章がしっかり構築
できているからでしょうね)
ネオの葛藤(というか最後ゲンに丸投げでしたがwww)
ファントムペイン、ミリィとのコンタクト(キラは再会)
ジブリールの執着(人間臭くて存在感バッチリ)
待望の新兵装、到着!(最初ノワールストライカーかと思いましたが^^;
グランドスラムを持ったMkUイメージして燃える!!)
冷静かつ渋い司令官してるユウナ(トダカ一佐も冷静に相手を観ている描写が
物凄くカッコいいです。あと、模擬戦でエキサイトするアマギ一尉萌え^^;)
ヒルダ隊二人VSキラ(PPさんのキラは「前大戦の英雄」として
物凄く貫禄があります。負債が主人公なんてアフォな選択しなきゃ、こんなに
カッコよくなるんですねえ・・・こっちの方は「キラ様」と言われても違和感ないかも。
で、遅れて登場したゲンに怒るのも「歳相応」で良いと思います)
黒いバビの両腕斬る白と蒼のムラサメ・・・キラの機体の仕様って
ビームサーベル×2なんですね(通常は右腰にライフルでサーベルは左のみ)
馬場一尉VSハイネ(やって欲しかったエース同士の対戦!やっぱこーいうのが
あってこそのガンダムですよ!www)
そして「黒い弾丸」MkUVS「白い矢」ソードインパルスのタケミカヅチを
舞台にしての剣舞(対戦)ヤバイぐらいテンション高いです!!
ブリッジに向かいながら、降伏を薦めるマユが痛々しいですが、そこもまた魅力ですね。

>>323さんのおっしゃる通り、次回で皆がそれぞれ地に叩き落されるような悪寒が
(ゲンとマユは言わずがなだし、キラとアスランも然り。単独行動のアウルに
対戦中の馬場一尉とハイネ隊の面々もですね・・・)
この場合、タケミカヅチの最期はどーなるんでしょう?
「ユウナ様、ご退艦を!」
「一尉、君たちも退艦しろ」
「ここで貴官らが死んだらオーブはどうなる!?」
「意地や誇りでオーブの盾を喪えば、誰が国民を護るのだ!?」
「後の責めは私が受けよう・・・・・・あの少女を戦場に赴かせたのは私の罪だ・・・」
トダカ一佐の台詞を色々予想・・・本編とさほど変わらないのにどれもこのオーブ軍
なら違和感が無い・・・ぶん殴りも無ければ、狂乱も無い静かな退艦。それを見守る
ボートとムラサメ。何か戦争映画のワンシーンみたいだ・・・今から涙腺が。
326通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 16:46:49 ID:???
容量食うから感想は短めに頼む
327325:2006/06/18(日) 16:59:16 ID:???
>>326
スマソ。PPさんのは密度が濃いせいか、長くなりがちだった。
前半はイランかったが、スルーしたくなかったんだ。忠告感謝。
328通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 17:14:19 ID:???
避難所にもスレがあるからよろしくねー
329通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 17:39:16 ID:???
まあスパシンだから腐が食いつくのも無理は無い
330通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 18:01:55 ID:???
>>329
終わった話題をいちいち引きずる癖どうにかならない?
331通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 18:33:53 ID:???
ええと、ご無沙汰の舞踏の人です。

今回はちょっと、小説そっちのけで描いた絵があるので持ってきました…

http://bbs4.oebit.jp/mayuseed/data/IMG_000029.jpg

舞踏版マユは流れをぶった切ってスパッツ派です。(ぉ
ロボ描けない人なので、背景のフォースインパルスは某プラモレビューサイトから拝借した写真を加工しましたorz

…しかし本編じゃそうでもないのに、このマユはツンデレぽく見えてくるのは何故だろうか…
332通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 18:48:34 ID:???
>>舞踏版マユは流れをぶった切ってスパッツ派です。

本来は、ミニスカがおかしいんですよね一応軍隊なんだし。
333通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 18:51:14 ID:???
まぁスパッツでも(ry
なにはともあれ多才で羨ましい限りです
334通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 19:00:28 ID:???
本来は、男キャラと同じ格好にしないといけないんだけど。

画力ないので書けません。
335通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 19:14:44 ID:???
>>331
乙です!後ろのインパルス見たことあったんで吹いてますwww
個人的にもミニスカよりスパッツは健康的でらしいと思いました。

ツンデレは隻腕版とアストレイM版、単発版にほのぼの版でしょうか?
(隻腕マユはキラやラクスに突っかかったり、ユウナを「バカ兄貴」呼ばわりしてるし
、アウルに対しての優しい言葉掛けたり想ったり、和解したキラと面と向かってなかったりw
・・・まごう事なきツンデレw)

マユ種版は大人びた軍人然(クーデレ?)、Scars of〜版は控えめながら前向き
舞踏さんのはPP版のマユに似てません?
336通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 20:11:44 ID:???
ほのぼの版は、ツンデレというよりキルデレ
337通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 22:20:07 ID:???
>>325
> 黒いバビの両腕斬る白と蒼のムラサメ・・・キラの機体の仕様って
> ビームサーベル×2なんですね
って、過去ログ13の「352 キラ専用ムラサメ(転載)」こんなイメージなのかな?
338通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 22:58:40 ID:???
339通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 23:24:05 ID:???
プラモ?
340通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 09:06:23 ID:???
PP作者さんGJ!

>「タンホイザーの激鉄を起しなさい!!」
ってフライフェイスの大尉殿からですか?
341通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 13:25:29 ID:???
>>9
本編を全く観ずにお話を書かない限り、ある程度展開が似てくるのは仕方ない。
でも、昔の名曲を今の人がカバーして新しいものを生み出したり
同じ曲を何度もいろんな人が演奏することにはちゃんと意味がある(と思う)。
おれは>>9氏の味付け・解釈によるマユ種死が好きだ。
判断はお任せしますが、個人的に続きをかなり楽しみにしてます

>>PP作者氏
二話連続投下お疲れ様です。
バスケシーンは貴重な日常の一コマ、原作はこういう風に使って欲しかったですね。
集合写真が切ない。

「XM404 グランドスラム」でぐぐったけど画像が見つからない…
お持ちの方はうpいただけませんか?
342通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 13:37:56 ID:???
グランドスラム ストライク
でぐぐる
343通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 14:45:37 ID:???
>>296
亀レスだけど俺予想出来てるかも…万が一当たってしまったら作者さんに迷惑になりかねんから言わんが
344通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 15:43:45 ID:???
>>342
thx!!
FF8でスコールが持ってるような刀かぁ

実剣なのでエクスカリバーと斬り結んだりは…無理ですよね
345通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 17:17:00 ID:???
単発設定小話 「キラ」哀をください編

〜アークエンジェルに帰還したフリーダム〜
キラ「ふぅっ・・・・・・」
ミリアリア「キラ!大変よ!!」
キラ「ミリアリア・・・ごめん、ちょっと休ませて・・・・・・」
〜フリーダムのつま先の上に腰を下ろすキラ〜
ミリアリア「・・・どうしたの?なんか、顔色悪いわよ?」
キラ「え?・・・ああ、いやなんでもないんだ。なんか疲れちゃってね・・・・・・。そういえば何か大変だって?」
ミリアリア「ああ!そうそう。キラ、少佐が・・・フラガ少佐が生きていたのよ!」
キラ「えっ!!ムウさんが!?・・・今どこに居るの!」
〜ミリアリアの顔を急に見上げるキラ〜
ミリアリア「い・・・今、医療室でマリューさんが尋問しているわ」
キラ「アークエンジェルにいるの!?・・・・・・そう・・・」
ミリアリア「・・・キラ、本当に大丈夫なの?さっきより顔色が悪いわよ」
キラ「え・・・いや大丈夫だよ。それよりもムウさんに・・・!っあっと」
〜立ち上がろうとしてよろけるキラ〜
ミリアリア「ちょっと!ぜんぜん大丈夫じゃないじゃない・・・休んでからにしなよ。ね」
キラ「・・・・・・うん・・・そうするよ」
〜ゆっくり立ち上がりロッカールームへ向かうキラ〜
ミリアリア「・・・・・・なにかあったのかしら?」

〜ロッカールームの椅子に腰を下ろすし目を瞑るキラ〜
キラ「・・・・・・あの少女・・・まさかザフトのパイロットだったなんて・・・・・・。それに・・・僕のせいで・・・僕のせいで家族をなくしたと・・・」
〜自分の両手をじっと見つめるキラ〜
キラ「僕が・・・僕が戦ったから・・・・・・お兄さんは記憶をなくして、お父さんとお母さんが死んだ・・・?
・・・・・・僕が・・・殺してしまったの?・・・まだ僕は、僕は・・・・・・」
〜身体全体が小刻みに震え、涙を落とすキラ〜

〜<ドンッドンッドン!!>ロッカールームの扉が叩かれた〜
カガリ「おい!キラ!!大丈夫か!ロッカーにはいってもう2時間もたつんだぞ!!」
ミリアリア「っちょっと、カガリさん!!そんなに強く叩かなくても・・・」
カガリ「キラの様子がおかしいっていたのはミリアリアじゃないか!?それにロッカーに2時間もいるなんておかしいだろ!」
ミリアリア「それは・・・そうだけど・・・・・・」
カガリ「おいっ!キラっ!!扉開けるぞ!」
〜カガリが扉に手をかけようとすると、扉はゆっくりと開いた〜
カガリ「キラ・・・おいっ大丈夫なのか?」
キラ「カガリ・・・・・・心配させてごめん。大丈夫だよ。ミリアリアにも心配をかけてごめん・・・」
ミリアリア「本当に大丈夫なの?さっきよりは顔色よくなったみたいだけど・・・」
カガリ「お前・・・泣いてんのか?」
キラ「・・・部屋に戻るよ・・・・・・」
カガリ「・・・・・・ああ」

3469:2006/06/19(月) 18:36:49 ID:???
 有難うございました。お言葉に甘え、しばらく続けさせて頂きます。
職人の方々のと似通った展開になってしまった場合、苦笑いと共に許して
頂ければ幸いです。

 一週間続けようか否か迷っていたので、リハビリがてら短い話を上げようと
思ったのですが……まとめての投下が基本でしたよね。止めときます(笑)
347通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 20:38:17 ID:???
>>344
タクティカルアームズみたいにラミネート装甲+対ビームコーティングしてりゃできるんじゃね?
348通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 22:25:47 ID:???
>>340
喋りすぎは命に関わるぞ
349通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 23:16:52 ID:???
グランドスラムって二本あれば幾つかのタイプに合体させられる設定が有ったな。
350通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 00:21:47 ID:???
>>348
((((;゜Д゜)))
351通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 16:51:47 ID:???
悪い、個人的にここに来てグランドスラムを出す利点が良く解らん。

全部実体剣でデカいから重いし取り回しも悪い。
刀身部分の重量は実質ゼロであるビームサーベルに太刀打ちできんのかね?長い武器は隙も大きいぞ。
通常、実剣がビームサーベルに勝るのはエネルギー効率だが、こんなクソ重そうな武器じゃ
サーベル使うよりエネルギー食うんで無いか。
対ビーム加工の敵を斬れる、ってんならシュベルトゲベールやフラガラッハでいいし…。
カッコ良さのために選んだなんて三流ラノベみたいな選択基準じゃないだろうけど。
俺もタクティカル・アームズかと思ったのよね。最初は。「これはただの剣じゃない」って言うから。
開けてみたらグランドスラム。これってまさしく「ただの剣」じゃね?

極端に軽量化されてるとか言う設定があったんならスマソ。
352通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 17:16:31 ID:???
こんなスレにまで設定厨が湧くとは思わなかった
353通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 17:22:25 ID:???
すぐに雰囲気悪くなるねー
354通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 17:23:29 ID:???
『カッコ良さを追求する三流ラノベ』的な判断基準以外で人型兵器を登場させる
理由があるなら聞いてみたいもんだ
355通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 17:33:42 ID:???
互いに大刀を向け合う二機のガンダムを想像してみろ
常人では不可能な軌道でベテランパイロットたちを一蹴するムラサメを想像してみろ
設定とかそんな些細なことは気にならなくならないか?
356通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 18:22:06 ID:???
まあ、最も設定を蔑ろにしたのは負債なんだが。
357通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 18:41:10 ID:???
設定設定と遡ると、そもそもMSの存在意義さえ危うくなるからな。
まあだからといって、全ての無理設定を同一視するのもそれはそれで危険だが。

とにかくだ。燃えシーンのためならある程度設定で無理したって構わないと、俺は思う。
今回のグランドスラム登場も、見た目とネーミングから威圧感バリバリなわけで、
それだけでただのビームサーベル出すより燃えるわけだ。
多少の無理があっても、燃える方を選びたい。
358通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 19:20:55 ID:???
グランドスラムの映像ならよつべにあった
ttp://youtube.com/watch?v=VKxwPvHg9yg&search=GUNDAM%20EVOLVE
359通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 20:01:03 ID:???
設定ってのは全部が全部「カッコ良さを追求する」ために存在するもんなんじゃないのか?
種死アヌメは、それが全くできてなかったから、あそこまで叩かれてたわけなんだけど
360通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 20:05:57 ID:???
>>358
マジでカッコよす
脳内でマーク2に置き換えて燃えた
361通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 20:15:38 ID:???
>>351
でかくて重くて取り回しも悪いのはエクスカリバーもそうだし
そんなに不利にならないと思われ。
糞重いっても本体より重いわけないし

ついでに、ビームサーベルみたいな重量のない武器は
スターウォーズみたいに手首の返しだけで振り回せばいいんだけど
ガンダムでは重量があるのと同じ斬り方をするから、
重くて長い方が不利、とは一概に言えず。
362通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 20:32:41 ID:???
タクティカルアームズにしたって、剣として考えた場合どうなんだろ?
刀身のど真ん中に可動部分が仕込まれてるから、強度的には最悪だと思うんだが。

実体剣としての信頼性で考えるなら、グランドスラムの方が上だと思うけどな。
363通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 20:51:22 ID:???
んなこと言ってもTAは実際に切りまくっているわけで。
オーブとジャンク屋脅威の技術力とグレイブヤードの技術によるものでしょう。
もともと趣味で造ったもんだし、剣にしか使わないわけじゃないからな。
364通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 21:01:13 ID:???
あれはラミネート装甲でできてる贅沢な武器でもある。
ビームシールドでもブチ抜くぜ。
365通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 21:01:55 ID:???
 ただ気になるのは、モビルスーツに片刃の大剣を操る柔軟性があるか?
という事。ジンハイマニューバ2型の斬機刀程度なら腕で振るえるかも
しれないけど、全身のバネを使って叩き切るタイプの武器はそうはいかない。
 凡百のMSパイロットが使っても、ただの鉄塊にしかならないだろう。非常に
特殊な出力調整が要求されるだろうね。

 まあ纏めると、「次の戦闘が気になってしょうがない!期待してます!」
という事で。
366通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 21:11:54 ID:???
>>365
つ150ガーベラストレート
367通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 21:14:11 ID:???
設定厨はスルーで以下よろしく
こんなんでグランドスラム引っ込んだら泣く
368365:2006/06/20(火) 21:21:02 ID:???
>>366
 あれは一発芸だろう。二番煎じが出た瞬間に冷める類だ。それにグランドスラム
とは全然違…

 まあ、グランドスラムが引っ込むのは此方としても悲しいので止めとこう。
中には気にする職人さんもいらっしゃるだろうから。
 馬鹿な話だよな。大事なのは見せ方なのにさ。
369通常の名無しさんの3倍:2006/06/20(火) 21:24:28 ID:???
設定にしかないグランドスラム二刀使っての合体剣登場。
370通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 01:28:25 ID:???
>>358の動画をmk-Uにしてみた。
枚数少ないけども残りは脳内補完で。

http://syobon.com/mini/src/mini23792.jpg
371通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 17:16:37 ID:???
予測はしてたが、疑問を投げかけただけで設定厨かよ。
「グランドスラムやめろ」なんて意味は俺のレスに1バイトも含んじゃいなかったが?
「遡ったらMSの存在意義が危うい」なんて煽りにしか見えないんですけど。
MSはガンダムの前提条件。グランドスラムはそうじゃない。
「カッコ良さのために出す」のは作者さんの方でしょ。それは当然の事だし構わないよ。
でも劇中のキャラ(仮にも軍人)が「カッコいいから」つって実用性の怪しい武器を戦場に持ち出したら
流石におかしいっしょ。「三流ラノベ」はこういうことを兵器でやるから三流なの。
でもPP作者さんとか明らかに三流じゃない。だからこその疑問。俺なんか間違ってますかー?
ほのぼのとかでやる分にはこんな質問しないし。

>>361
律儀に普通の剣と同じ振り回し方してるのは、まあ、演出?
(低能が脊髄レスつける前に言うが、サーベルの振り方とグランドスラムの有無は全く別の問題)
フリーダムがセイバーを殺ったアバンストラッシュは実体剣じゃ出来なさそうな動きだけどw
372通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 17:32:35 ID:???
>>371
まあ落ち着け
スレの雰囲気どんどん悪くなってるから
373通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 17:39:12 ID:???
喧嘩腰でレスしてる時点でプギャー
冷静さを欠いたら説得力が激減して敵だけが増えるのにねぇ
煽りだの低能だの言ってちゃまともな会話なんて無理ー
374通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 17:56:29 ID:???
>>373
自己レスってヤツかい?w
375通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 18:03:47 ID:???
職人の投下待ってる俺としては他所でやってくれとしか言いようがない
376通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 18:08:19 ID:???
>>374
違うわw
まあ設定厨じゃないにしろウザいな
こんなレスをしてる俺も
377通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 18:22:30 ID:???
>>371
確かに、剣をぶん回す速度だけでいうと ビームサーベル>>>>(重量の壁)>>>斬艦刀>実剣
なので、実はSスト・Sインパにはエピオンの大型ビームサーベルでも装備させた方が対MS戦は遙かに強いだろう。

あえて前時代的な長物を持ち込んだのは、ビームコートされた装甲を
破壊するために、質量を持って押し切るという要素が必要になったため。
その名が示すように、斬艦刀は本来 種2話のような使い方を想定していなかったと考えられる。

グランドスラムの場合はどうか?設定がわからんのでぐぐったところ
>PG STRIKE GUNDAMの発売にあたり新たにデザインされたオリジナル。
>エネルギーを消費しない巨大な刀剣。出生や本編で登場しない理由については強引な(?)設定が付属の解説書に記載されています。

深く考えたら負けな予感がひしひしとする。しかし、ここは敢えて作者氏の料理の腕に期待したい
378通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 19:39:00 ID:???
グランドスラムの刀身は陽電子製にすればよろしい。
379通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 19:41:45 ID:???
なんでそんなに設定にこだわるんだ?
380通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 19:55:29 ID:???
リアルな設定にこだわる俺素敵、なんでしょう
381通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 20:05:50 ID:???
どうして設定にこだわらないんだ?
382通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 20:07:51 ID:???
ほら変なのがわいた
議論は避難所へGO
383通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 20:38:04 ID:???
ザフトにビームコート持ちなんて居たっけ?
384通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 20:49:42 ID:???
少なくとも、旧フリーダム・ジャスティスとか、セカンドステージとかの
ザフトガンダムの連中はたいていビームコートされた盾を持ってる。
ザクのシールドもビームを防いでた。

それとも、シールドではなく本体にビームコートされてるヤツがいたかってことか?
385ほのぼのマユデス。ひとまず閉幕。:2006/06/21(水) 21:55:49 ID:???
 「ステラに手出しはさせないんだから!!」
マユはそう言ってサーベルを一閃しウィンダムを二機破壊する。
 「くそっ!!数が多い!!」
 「無駄口を叩いている暇は無い、いくぞ。」
赤と黒のザクと青いMSも次々にウィンダムやダガーを蹴散らしていく。
その向こうでは巨大な白いMSが閃光を放っている。
 「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
それは破壊。守るための破壊。一挙一動するたびにデメテルの間接部分から紫電がはしる。
目の前の巨大な残骸に確実にかなりのダメージを与えるが、それと同時にこちらにもダメージが来る。
 「くぅっ!!」
それに加えて警備に駆けつけたウィンダムが向かってくる。背中のドライツェーンで撃墜しようとするが回避される。
すると、それを緑のビームが打ち抜く。インパルスだ。
 『なんかよくわからないけど・・・・・・マユを攻撃してるなら敵だよな?!よし、倒す!!』
 「ゲン!!」
ステラが笑みを浮かべる。
 『ステラ?!なんでそんな機体に?!』
 「うぇーい・・・はなすと・・ながくなりますが・・・・・・。」
 『くそっ・・、あのポンコツロリコンロボットのせいだな!!あんな奴に負けてたまるかーー!!』
理由も聞かずに突然気合をだし次々にロゴスの機体を撃墜していくシン。
なんかディスティニーに重なってほくそ笑むシンハロの顔が見える。
 「ゲンー!!そっちの青いMSと赤いMSは味方のひとー!!攻撃しちゃだめー!!」
ステラははらはらしながらも攻撃を続ける。
シンが駆けつけたことによりステラに迫ってくる敵は大分消えた。
これなら攻撃に集中できる。
ステラはデメテルをMAからMSに変え、一気に止めを刺そうとする。
 「はぁぁぁぁぁっ!!」
イーゲルシュテルンからシュトゥルムファウストまでありとあらゆる武装を一気に発射する。
連合のウィンダムをまきこみ、イライジャのザクに少しかすり、それらの攻撃は全て残骸へと吸い込まれる。
だがそれと同時にデメテルの四肢が爆発し始める。
 「ステラ!!」
インパルスがデメテルのコクピット部分に向かって飛ぶ。
シンは速やかにインパルスのコクピットにステラをいれ、離脱する。
そして、次の瞬間、コロニーの残骸が割れた。
386ほのぼのマユデス。ひとまず閉幕。:2006/06/21(水) 22:01:38 ID:???

 「うぇーい、狭い・・・。」
 「ちょっ・・、ステラ暴れないで!あ、何かやわらかい物が・・・・。」
 【いだいいだいいだいっ!!コクピットは一番痛いんだから暴れるな!!】

騒がしいインパルスのコクピット。でも一番いたいのはフォースだったりする。

 「・・・・・このMSを回収するのもやるのか?」
 「依頼主がそう指示した、その上、料金も上乗せだ。やるしかないだろう。」

巨大MSの残骸の前の呆然とするサーペントテールの二人。

全壊するかと思われたデメテルは四肢が爆発しただけですんだ。
その後マユは皆に報告するべく先にディスティニーでミネルバへ向かっている。

 『うぅ・・・・、やっぱりまだ無理だったか。ごめんよデメテル。議長から修理費ふんだくるから。』
 「税金の無駄遣いはやめれ。つーかさー、シンハロよぉ・・・・。」
 『何?』
 「あいも変わらず戦闘になっても目立てなかったんですが・・・・。」
 『ほら、だってマユ・・・・・・優勝できなかったじゃん。』
 「え?!あれネタじゃなかったの?!そんなに重要なフラグだったの?!」
387通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 23:26:12 ID:???
設定とかどーでもいいじゃん
説得力なんて技量でどーにかなるんじゃないの?
388通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 00:14:42 ID:???
折角ほのぼの氏のお陰で流れが変わりそうだったのに、ぶり返すんじゃない。
しかもよりによって、強硬に反論されそうな適当な物言いだし。
半年ROMる事をオススメする。
389通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 00:17:03 ID:???
ビームコーティングはすぐ劣化して整備が大変だとどこかで読んだ。

あのぴかぴかの刀身でヤタノカガミよろしくビームを跳ね返したりしてくれ
>グランドスラム
390通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 00:37:13 ID:???
単発設定小話 「アカツキ」

〜オーブ領アカツキ島〜
エリカ「・・・・・・まったく・・・ウズミ様も厄介なものを残してくださるわね」
マーナ「まぁ、なんですか?また愚痴られているのですか?」
エリカ「マーナ・・・・・・カガリ様じゃなくて私のことばかりで申し訳ないわね」
マーナ「しかし・・・まぁ、何度見てもきらびやかですね」
エリカ「本当にそう思う?ヤタノカガミを装備するためとはいえ・・・目立ちすぎだと思うのだけれど・・・・・・」
マーナ「それでいいのですよ。派手なおかげでオーブ兵はすぐにカガリを確認できます。兵士達の士気も上がることでしょう」
エリカ「兵士にはそれでいいのでしょうけど。あの娘はずーと敵に狙われるわよ?」
マーナ「オーブ国民が全力でカガリ様を守ります。カガリ様には指一本触れることなどできませんよ」
〜やんわりとそして確信しているかのように言葉を放つマーナ。椅子に座りなおすエリカ〜
エリカ「・・・本当にこれにあの娘を乗せるの?」
マーナ「・・・ウズミ様の望みですからねぇ。でも、乗らないですむのならそれに越したことはありませんよ」
エリカ「キラ君にあげちゃったほうが、有効に活用できるのだと思うけれどね」
マーナ「それは違いますよ。シモンズ主任。・・・確かにキラ様が乗ればその場その場では有効でしょう。しかし・・・」
エリカ「しかし?」
マーナ「カガリ様が乗ればそれはオーブの象徴となり、より多くの民に希望を与えることができます」
エリカ「それはそうなのでしょうけど・・・・・・」
マーナ「主任・・・・・・」
〜腕組みをし、眉間にしわをつくるエリカ〜
エリカ「あの娘じゃオオワシはともかく、シラヌイは扱いきれないわ」
マーナ「ですから・・・・・・」
〜首を横にふるエリカ〜
エリカ「ウズミ様のことはよくわかっているつもりよ。・・・だからこれは技術者としての気持ちなんだけど・・・」
マーナ「はぁ・・・?」
エリカ「このMSの性能を一番引き出してくれるパイロットに乗ってほしいのよ。技術者としては、それが一番見てみたい」
マーナ「・・・・・・それは・・・わからなくはないですが」
エリカ「ふふ、そうね。趣味に走ってはいけないわね。でも戦争なんだもの・・・・・・有効に活用できるのが一番いいのだけど」
〜腕組みをほどくエリカ〜
エリカ「さぁて、仕事をつづけようかしら。完成までもう一息っと」
マーナ「・・・まさか、カガリ様がサハク家のようになると危惧しているのではないでしょうね?」
エリカ「そこまでは思わないわよ。あの娘が本当に平和な世界を築きたいって気持ちは十分に伝わっているもの」
マーナ「・・・・・・」
エリカ「でもね、私はあの娘がこのMSを使うのになにも抵抗を感じなかったとしたら・・・サハク家となにもかわらないわ」
マーナ「カガリ様は・・・心の底から戦争が嫌いでいらっしゃいます。武力に対しては常に抵抗を感じていらっしゃるでしょう」
エリカ「かもしれないわね。ふふ」
マーナ「さぁて、シモンズ主任が徹夜をなさるのなら、わたしはお夜食でもお持ちいたしましょう」
エリカ「悪いわね。助かるわ」

391通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 01:01:25 ID:???
>>ほのぼのさん、乙。
ステラをカッコよく救ってちょっと株を上げたゲン
…とは対照的に相変わらず目立てないマユ…どこまでも不憫な子…。・゚・(つД`)・゚・。
392通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 14:44:12 ID:???
あれ?
絵板にアクセスできない
393通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 17:11:16 ID:???
この作風なら確かに「カッコ良さのために」新兵器出しても許されそうだw
394通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 17:48:48 ID:???
ストライクMKUがノワールストライカーを背負ったらタイムリーかもなwww
395通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 19:16:53 ID:???
ノワストパックの試作品とか?
それはそれで見てみたいが、職人さんにリクエスト出すのはお門違いだからやめておくか。
396通常の名無しさんの3倍:2006/06/22(木) 20:38:42 ID:???
>>395
絵板にIWSPの改造版背負ったストライクMKUがあったけど
397通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 11:03:21 ID:???
隻腕マダー?
398通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 11:10:02 ID:???
書き手を急かすなよ。
399通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 18:05:33 ID:???
来たら来たでまた厨vsアンチの争いが
400通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 21:04:32 ID:???
そうやって煽るお前もアンチだよな?
純粋に作品を楽しみにしてる人もいるんだ。下らない誹謗中傷難癖やっかみ議論提起は避難所で頼むよ
401通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 21:58:27 ID:???
>>400
わざわざ角の立つレスを返すお前もな。
402通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 22:10:16 ID:???
さすが隻腕
投下される前から荒れるとは
迂闊にレスさえできない
403通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 22:32:14 ID:???
それだけ皆引き込まれてるんだろうな
404通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 22:36:22 ID:???
なんでもいいから、作品カムヒア!!。
「サーペントテールが来たぞー。全員並べー。」
ハイネの号令にハイネ隊やファントムペインが整列する。
まるで月曜日の朝礼のようにやる気が無いが、それでもきちんと並んで私語は慎む。
そして、シャーッと扉が開いた。
「失礼する、サーペント・・・・・。」
劾の言葉が途切れる。何故かイライジャが扉が開いた瞬間回れ右をしたからだ。
「どうしたイライジャ。」
「ごめん、ガイ。俺前世で勇者だったこと思い出したから魔王倒してくる。十分で帰ってくるから。」
「イライジャ、どんなお手軽な魔王だ。」
「時間が無いんだ!!こうしてる間に邪神の信奉者たちは・・・・・・ぎゃーーーーー!」
逃げようとしたイライジャの全身が鎖に縛られる。
「うふふふふふふー、何処に逃げるのかしらぁ?イラちゃーーん?」
その鎖の先にはグレイシアが。目がきゅぴーんと光っている。
そのままジャラジャラとグレイシアに引き寄せられる。
「あ・・あ・・・・・、その・・、おにいちゃ・・・・。」
「誰がお兄ちゃんだ!!」
イライジャは鎖に絡まったまま壁に叩きつけられる。
「ご・・、ごめんなさ・・・・い・・お姉ちゃん・・・・・・。」
「よろしい。で、こうしてあったんだから説明してくれるわよね?私に黙ってザフトを抜けたり・ゆ・うv」
微笑みながら言うグレイシア。いまだかつて感じたことのないどす黒いオーラが出ている。

「ぐ・・、ぐれいしあがこくりゅうはをますたーした!!」
「みーあもちつけ!!」
部屋の角ではちっこくデフォルメされたハイネ隊一同がガクガクと集まって怯えている。

 「・・・・・・うぅ・・・、うぇぇぇぇん!!うぇぇぇぇぇぇい!!グレイシアがこわいよー!!」
 「うわ!!ステラが泣き出した!!」
 「ほーらステラー、ペロペロキャンディやろうなー?金平糖のほうがいいか?」
いまだかつて見たことの無いグレイシアに泣き出すステラ、スティングが持っていたお菓子を差し出す。

 『マユ、目立つチャンス!!止めろよ!!』
 「無理!!!インポッシブル!!」
シンハロの言葉に流石のマユも首を振る

 「よーし、じゃあ私の必殺電波ソングで・・・・・。」
 「やめろルナマリア!!死人が出る!!」
こんな至近距離で聞いたら危ないとレイが必死に止める。

ちなみにアスランはおろおろしていたがしばらくして何か気づいたようにお茶を入れにいった。


 「すまないが、事情を聞かせてくれないか?」
そんなグレイシアに対しためらわずに話しかける劾。
すると、グレイシアは表情をきょとん、とさせてから再び笑って言った。
 「あぁ、そうですわね。私、グレイシア・ケリーと申します。この子・・イライジャとは同じ孤児院で育ちましたの。」

406グレイシア・ケリーの憂鬱。:2006/06/23(金) 23:10:31 ID:???


三者面談、それは古来より脈々と受け継がれる拷問である。
コーディネイターであろうがナチュラルであろうが学校に通っている限りはよけられない試練である。
だが、それに似た状況に置かれている成人男性、社会人(コーディ基準)がいた。
 「と、いうわけで・・・・・イライジャは黙って脱走同然にザフトを脱退して、こちらにはなんの連絡も・・・・。」
 「そうですか。」
よよよよ、と泣きながら語るグレイシアにアスランが入れた日本茶を飲みながら答える劾。
イライジャはグレイシアの隣で気まずそうに目をそらしている。
 「イライジャ、お前連絡くらいはいれなかったのか?」
 「だって・・、それは甘えになるかと思ったから・・・。」
劾の言葉に目をそらしたまま答えるイライジャ。
 「何が甘えるよ、迷惑かけるとは微塵にも思わなかったのね?傭兵を差別するつもりはないけど
 そんな危険な職業についているなんてマザーやシスターがどれだけ心配したか考えてみなさい。
 しかも一切連絡をよこさないなんて・・・・・。」
グレイシアがぎちぎちとイライジャを責める。
 「・・・っ!だったらお姉ちゃん達が俺に連絡を取ろうとすれば・・・・!」
 「・・・・・・あのねぇ、私みたいな緑服が傭兵と下手に連絡を取り合えば下手したらスパイ容疑よ?
 マザー達も戦争で孤児が増えて忙しいの!いい加減にしなさい!!」
グレイシアの一喝にイライジャは肩をすくめる。
 「・・・・・・このあとプラントにつくわ、そしたらイライジャ。あなたは一度私と一緒に来なさい。」
そう言うとイライジャは打って変わってはっきり反抗した。
 「それはできない!!もう次の任務が入ってるんだ!!」
グレイシアも負けじと言い返す。
 「わがままもいい加減になさい!!それくらい有給があるでしょ!!使いなさいよ!!そんなこというなら力づくで連れて行くわよ!!」
 「いいさ!!MS戦でお姉ちゃんが勝ったら言う事聞くよ!!」
二人の間に火花が散る。

それをお茶請けのせんべいを食べている劾を除いた残りのメンバーは呆然と見ていた。







407通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 23:54:26 ID:???
ほのぼの様乙!!

なるほど、以前マユデスふぁんたじーで、グレイシアがイライジャって名前の獣を使っていたのはこれに関係するんですかね?w
かつてないほど怯えている周囲も可愛いけど、平然としている劾も素敵だw
408通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 21:58:30 ID:???
保守
409通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 01:52:20 ID:???
うわっ続きが気になるw



流れとは何の関係ない話だけど、絵版の絵、全部保存されてたらうれしいんだけどな……
410通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 08:19:24 ID:???
単発設定小話 「マユ」スタンドアローン編@

〜デュランダルがロゴスへ宣戦布告をした頃〜
タリア「・・・ギルバート、あなたって人は・・・」
〜艦長室を出て、ブリッジに向かうタリア〜
アーサー「艦長・・・。いよいよわが軍が優位に立ちましたね!」
タリア「・・・そうね・・・・・・」
アーサー「・・・?どうか、しましたか?」
タリア「え?いえ、なんでもないわ。・・・アーサー、臨時のミーティングをしたいのだけどセッティングお願いできるかしら?」
アーサー「ああ、はい。すぐにセットしますが、各班の班長だけでよろしいですか?」
タリア「・・・パイロットは全員招集しておいてちょうだい。あとは班長だけでいいわ」
アーサー「は、了解しました」
〜通達を行うアーサー。シートに深く腰をかけるタリア〜
タリア「アークエンジェルを追えとはね・・・まったく、用心深さは変わらないわね」

〜ブリーフィングルームで臨時ミーティングが行われている〜
タリア「みんな忙しいところ悪いわね。命令が下ったので連絡しておくわ」
アーサー「・・・艦長?ジブラルタルに集結するのではなかったのですか?」
タリア「そのつもりだったんだけどね。議長の意向により、ミネルバは別行動に入るわ。・・・狙いは・・・アークエンジェルの殲滅」
アスラン「!っ艦長!それはっ!?」
タリア「連合の脅威はもう取り去ったし、あとは目障りな障害物を排除しようってところね。」
レイ「さすが議長はよく目が行き届いていらっしゃいますね」
ルナマリア「う〜ん・・・そうね。わたしもアークエンジェルを叩くのに賛成だわ。ミネルバはずーと独立した命令体系だったし、いまさら大規模な戦闘に参加してもね〜?」
アスラン「っく、しかしアークエンジェルは!!」
レイ「アスラン・・・アークエンジェル、フリーダムの今までしてきたことを思えば当然の帰結でしょう?」
アスラン「レイ・・・・・・」
〜愕然とした表情でレイに振り返るアスラン〜
タリア「はいはい。アスランをあんまり責めないの。いきなりアークエンジェルを襲うつもりはないわ。・・・でもねアスラン、チャンスは一回だけ。ダメだったら全力でアークエンジェルを叩くわよ」
〜アスランと目線を合わし忠告するタリア〜
マユ「レイ、さっきのシミュレーションの続きをしましょ。時間はそんなにないはずよね?」
レイ「そうだな・・・。艦長、私とマユはこのあたりで失礼してもいいですか?」
タリア「そうね、方針は伝えたしこの辺で一旦解散しましょう。各班長は班員に今のことを通達するように。別途詳細な打ち合わせをしましょう」
レイ「ありがとうございます、艦長」
〜部屋を出るレイとマユをおいかけるアスラン〜
アスラン「レイ!マユ!・・・シミュレーションって・・・一体なにのシュミレートなんだ!?」
マユ「フリーダムとの戦闘に決まってるじゃないですか。アークエンジェルで唯一強力なMSなんですから・・・・・・」
アスラン「マユ・・・お前・・・・・・」
マユ「そういえば、アスランさんには言ってませんでしたっけ?私の両親は・・・フリーダムに殺されたんです!!」
〜アスランをにらみつけレイと一緒にアスランから離れてゆくマユ〜

411通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 09:13:33 ID:???
>>409
まだ全ての絵は、残っておりますので個人で保存をお奨めします。
412通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 19:25:50 ID:09r6iZwW
ぬるぽ
413通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 19:33:03 ID:???
こっちみんな
414通常の名無しさんの3倍:2006/06/25(日) 20:18:47 ID:???
>>412
がっ
415通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 20:09:56 ID:???
単発設定小話 「ルナマリア」スタンドアローン編A

〜廊下をいらだちながら歩くアスラン〜
アスラン「キラ・・・カガリ・・・・・・なんでお前たちは・・・くそっ!!」
〜廊下の壁を叩くアスラン〜
ルナマリア「アスラン・・・・・・」
アスラン「ルナマリアか・・・。お前はシミュレートに参加しなくていいのか?」
ルナマリア「そんな・・・皮肉っぽく言わなくてもいいじゃないですか・・・・・・。アスランはどうしてここにきたのですか?」
アスラン「・・・どうしてだって?・・・・・・プラントが気になったからだよ。どんなに離れてもプラントは故郷だしな」
ルナマリア「嘘なんか聞きたくない!オーブが・・・カガリ・ユラ・アスハ代表のことを思ってなのでしょう!?」
アスラン「っ・・・・・・。スパイだっていいたいのか?」
ルナマリア「そうじゃない!そうじゃ・・・。でもあんなに動揺していては、だれもアスランを信用しなくなっちゃいますよ!!」
アスラン「信用なんて・・・もうないじゃないか。敵も倒せず、MSも失って・・・・・・」
ルナマリア「そんなに簡単にあきらめていいんですか?フェイスってそんなものなんですか!?」
アスラン「ルナマリア・・・」
ルナマリア「私はトップガンに選ばれたときに・・・嫌がらせをうけました・・・・・・」
アスラン「嫌がらせ?」
ルナマリア「ええ・・・。実力でとった赤服じゃないと、女だからたまたま選ばれたんだとか・・・でも女だからってゆうのはおかしいんです。
       私以外にも女性のパイロット候補生はいたんですよ。やっかみなんでしょうね?」
アスラン「つらかったか?」
〜アスランの問いに首を横に振るルナマリア〜
ルナマリア「いいえ。私が勝気な性格だってこともありましたが、かばって・・・というか勇気付けてくれた方がいたんですね。その方も
      アスランと一緒・・・フェイスだったんですよ。特務隊だから簡単に身分なんて明かしちゃいけないのに、その方はあっさり
      教えてくれたんですよ。女だからって萎縮したちゃだめだって・・・・・・」
アスラン「そうか・・・・・・」
ルナマリア「ええ・・・だからですね。フェイスに任命された人はいつでもちゃんとしていてほしいんです。ザフト兵すべての規範でいてほしい」
アスラン「・・・・・・俺にそうしろというのか・・・出戻りの俺に?」
ルナマリア「出戻りは関係ありません。ただ・・・私はフェイスは常にそうあってほしいと望んでいるんです。だから・・・アスランもそうあってほしい」
アスラン「・・・そうだな。でもな、俺の想いはそういうところじゃないんだ」
ルナマリア「アスラン」
アスラン「まぁ、愚痴っていても何も始まらないからな。俺は俺のできることをしよう」
ルナマリア「そんななげやりなっ!」
アスラン「お前もマユやレイのところにいけよ!フリーダムは・・・キラ・ヤマトは手強いぞ。たとえ不殺をまもったままだとしてもな」
〜アスランの自室前に着く〜
ルナマリア「わたしはそういうことを聞きたいんじゃなくてっ!ちょっと、アスラン!!」
〜部屋の扉が閉まる〜
ルナマリア「アスラン・・・あなたがザフトに戻って来た意味は・・・なんなのよ」
〜半泣きのルナマリアに背後から声がかけられる〜
メイリン「お姉ちゃん!」
ルナマリア「・・・ぐすっ・・・・・・なに?どうしたの」
メイリン「お姉ちゃん・・・泣いんてんの?」
ルナマリア「泣いてないわよ・・・で、なんかあったの?」
メイリン「冷蔵庫においてあったプリンがなくなってんのよ!」
ルナマリア「・・・ああそう。また買えばいいじゃない・・・いいわね、あんたは気楽で・・・・・・」
〜騒ぎ立てるメイリンの肩をぽんっと叩き歩き出すルナマリア〜

4169:2006/06/27(火) 17:25:56 ID:???
 プロットの再構成を重ねつつ、まだ続きが書けません。申し訳ありません。
とりあえず、前振りというか幕間というかを書いてみましたので、単発として
投下します。
4179:2006/06/27(火) 17:30:55 ID:???
《機動戦士ガンダムSEED Scars of…》
Episode “笑顔”

「今日は休みだって言ってたのに……」
「御免……けど、ユニウスセブンから3時間も掛からない場所だからさ。何かあったら直ぐ
帰ってこられるよ」
 公営住宅の一室で、男はネクタイを締めつつ傍らの女に詫びた。
「あの子も楽しみにしてたのよ? だって、今日は……」
「今日は……何だ」
 男の訝る声に、女は大きく溜息をついて肩を竦めた。
「2月14日よ、今日」
「……あっ! わ、解った。ここの日付が変わらない内に帰ってくるよ」
「ええ、そうして」
 まるで子供に注意するよう、腰に手を当てて身を乗り出していた女は、唐突に表情を曇らせた。
男の顔の真中を横切る大きな傷に、そっと触れる。
「……気を、つけてね」
「え、何を?」
「3日前に、地球連合がプラントに宣戦布告したでしょ?」
「ああ。……大丈夫だよ。ユニウスセブンは農業プラントだ。喩え戦争が始まったって、
標的になるのは一番後だ。そうなる前に避難できるさ。大昔の虐殺とは違う」
「けど……けど、ナチュラルは、私達コーディネイターを憎んでるって……」
 背広を羽織り、書類鞄を持った男が呆れたようにかぶりを振った。
「ナンセンスだ。それ、ブルーコスモスとかいう過激派の話だろ? 俺達コーディネイター
の中にだって、ナチュラルをあからさまに差別する連中もいるし。どっちもどっちだよ」
「そう、ね……そうなんでしょうね」
「今はギクシャクしてるけど、何時か上手くいく時が来るさ。先月まで一緒に仕事してた
俺が言うんだから、間違いないって」
「パパぁ……お仕事?」
 ふと聞こえたあどけない声に、男の動きが固まる。話している声で起きてしまったのか、
寝室のドアが開いて幼い少女が男を見上げていた。
「うん……ごめんな。でもお父さん、直ぐに帰ってくるから」
「本当? 約束よ?」
「ああ、約束する。絶対今日中に帰るからな。じゃ!」
 慌しく靴を履き、シャトルの時刻表に目を通していた男は、ふと自分の家族を振り返った。
 笑顔で見送る妻。妻に抱かれ、同じく笑顔を浮かべて小さな手を振る娘。
「……行ってきます!」
 ドアを開け放ち、サトーは人工光が差し込む公営住宅の通路を歩いていった。

 最後の、会話だった。
418通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 18:01:49 ID:???
>>417
やべ・・・。ちょっと泣けてきた
あの鬼の人の過去がこんなのだったと思うと
切ねえなあ、やっぱ。
419通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 18:13:20 ID:???
>>417 GJ
還ってこない大切な人々のことを想いながら、
その引き金が新たな悲しみを生むと知りながら、
男は人の業に身を委ねる。

その想い、受け止めろインパルス
420通常の名無しさんの3倍:2006/06/27(火) 19:28:54 ID:???
怖いよぅ、ママン
421通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 08:36:40 ID:???
>>417
こーいう人間描写が決定的に不足していたのが種なんだよな・・・プクダは
故・神田監督から何を学んだ?あちらの作品はどれもキャラ描写が丁寧で
(それこそ一話限りのモブまで)凄い共感できた。まあ、表現が地味ではあったが。

返す返すも若くしてお亡くなりになったのが悔やまれる。あの人がガンダムの
監督してくれたらどんなに救われていたか・・・

何はともあれ>>9氏、乙!!
422通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 18:42:46 ID:???
>>420
やば、誤爆したのに今頃気付いた。
423I and I and I(1/10):2006/06/28(水) 20:33:06 ID:???
恋という気持ち。
愛という気持ち。
あなたを想う、この気持ち。
それが、いけないことだということもわかっているけど。
でも、抑えられない。
弾け飛んでしまいそうで、崩れ落ちてしまいそうで…
それでもワタシは、あなたが好きです。



〜I and I and I〜 第十六話「恋する乙女じゃいられない」



保養所を飛び出したマユはとぼとぼと基地の中を歩いていた。
夕日が、帰るに帰れないマユを照らす。
未だ体は熱り、シンの顔やあの言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。
「はぁ…」
「はぁ…」
「ふぇ?」
「あら?」
同時に発せられた溜息に、互いに驚いて声を上げる。
通路の角から顔を出したのは、ミーアだった。
「ヴィアさん!」
「こ、こんにちは」
先刻のキングの言葉を思い出す。
「あの…」
「聞いてくださる!?アスランたらぁ、ディナーに誘っても忙しいからってぇ!」
マユが言い出したのを遮って、ミーアが喋り始めた。
まるでマユが何を話そうとしたかわかっているかのように。
「あぁ、そうだ!ヴィアさん一緒にディナー食べましょ!」
「えぇっ!?」
「前プラントで会った時はご飯一緒に食べれなかったし……ね?」
424I and I and I(2/10):2006/06/28(水) 20:35:23 ID:???
ウインクを最後に付け足して、ミーアはそう言う。
断るに断れず、マユは迷いながらも首を縦に振っていた。

保養所内のレストラン。しかも、VIPルーム。
そんな個室に通されて、マユは落ち着けないでいる。
「さ、座って座って。はぁ〜…コンサート疲れたぁ」
マユにそう勧めると、ミーアが席についた。
敬語も、礼儀正しい振る舞いも無くして、まるで普通の少女のようである。
いや、これがラクスではない、本来のミーアなのだろう。
「マネージャーもお節介よね。ま、そこがチャームポイントっていったら、そうなんだけど」
「じゃあ、もう聞いたんですか?」
「随分喜んでねぇ。もう心配せんでええで〜ミーアは〜んて」
ミーアも、マユの力については知っているようだった。
「別に、今はあたしがラクス様なんだし」
ミーアの一言が、マユの中で引っ掛かる。
「じゃあ、本物のラクスさんが現れたら?」
「え……?」
「ラクスさんがプラントに戻ったら…ミーアさんはどうするんですか?」
恐る恐る訊くマユに、ミーアも顔を曇られた。
ラクスをやっている自分がいるのだから。そう思って、考えもしなかった可能性。
425I and I and I(3/10):2006/06/28(水) 20:37:02 ID:???
だが、代わりとしてラクスを演じているだけなのだから、充分有り得る可能性だということを、今更ながらに思う。
何故、考えもしなかったのか。
「あたしが、ラクス…だから?」
呟くようにミーアが声を発する。
誰かに何かを言われたことを、うっすらと思い出した。
「ラクスという存在はみんなを導けるからって…だから私と共に世界を救おうって……」
そう言われた。
まるでラクスではなく、自分を必要としているかのように、刷り込まれた言葉。
「ラクスって何?」
「落ち着いて、落ち着いてください」
「ラクスってなんなのよ!」
部屋の中に、ミーアの声が響いた。
なだめるマユの表情も、心配して焦る。
「ラクスさんはラクスさんです。でも貴女はラクスさんじゃない、ミーアさんです」
「あたしはミーア…?でも、でもあたしの顔はラクス、声だってラクス……」
顔に手が触れる。
丸い瞳、小高い鼻、小さな口、ピンクの髪……
今の自分の姿は、ラクスで出来ている。
「違います!例えラクスさんの姿をしてたって、ミーアさんはミーアさんでしょう!?」
426I and I and I(4/10):2006/06/28(水) 20:39:27 ID:???
皆がラクスと呼んでも、鏡に映って見えるのがラクスでも、そこにいるのはミーア以外の何者でもない。
マユにそれがわかる、それが真実だと見える。
「ワタシはラクスさんのファンじゃない。ミーアさんのファンだから」
「あたしの…?ラクス・クラインじゃないミーア・キャンベルの?」
「声が似てたって、カバー曲を歌ってたって、ミーアさんの声はワタシにはわかるから」
「ヴィアちゃん…ヴィアちゃぁぁぁん!!」
一気に涙を溢れさせ、ミーアはマユに抱きついた。
本当は自信もないというのに、虚勢を張り続けていたミーアの中で、不安が爆発したのだろう。
泣き付くミーアの背中にそっと手を添えて、マユはミーアが落ち着くのを静かに待った。

「ごめんねヴィアちゃん、なんか急に泣いたりして」
「いいんです。人は泣きたい時には泣けばいいと思うから」
すっかり日も暮れ、夜も深くなった頃。
二人は保養所へと足を進めていた。
ミーアの瞳は少し腫れ、涙の跡がわかる。
「ちょっと落ち着いた。でもね、今はやっぱり、あたしはラクスかな」
星空を見上げながら、ミーアは呟く。
427I and I and I(5/10):2006/06/28(水) 20:41:26 ID:???
「今はラクスだけど、一人だけ、たった一人だけど、ミーアのファンがいる」
ミーアはそっと、マユの手を握った。
星空を見上げたまま、優しく笑うミーア。
そんなミーアを見て、嬉しそうにマユも笑う。
今ここにいるミーアは、他の何者でもないミーアなのだから。
「それじゃあ、あたしはアスランの部屋に行くから」
「あの、ミーアさん、アスランさんは…」
「知ってる」
プラントでのアスランとラクスの関係は、婚約者同士。
だがそれは、元々は親同士が決めたことで、そして今はアスランもラクスも別に想う人がいる。
「ミーアとしてアスランが好きなの。だから、アスランの婚約者のラクスじゃなくて、ミーアとして、ね」
ミーアはそう言うと、先に行ってしまった。
マユはミーアの言葉を、頭の中で繰り返す。
ミーアとしてアスランが好き。
それは、マユ自身に言えることだった。
妹のマユとしてではなく、ヴィアとしてマユはシンが好きだ。
そんな事を頭の中で巡らせながら、保養所に着く。
フロントでシンが泊まっている部屋を訊くと、マユは一歩一歩部屋へと向かった。
鍵は開いている。だが、部屋は暗かった。
428I and I and I(6/10):2006/06/28(水) 20:44:50 ID:???
寝室に行くと、既にシンは眠っていた。
待ち疲れてしまったのか。それとも、心配などしてもいないのだろうか。
どちらにしろ、彼はマユのことを、ヴィアとしては見ていない。
シンの寝顔を見ながら、マユはここにいるべき存在でないのだと、思い始めていた。

翌日、マユはディオキアの繁華街に足を運んでいた。
ミネルバのクルーには交代で外出許可付きの自由時間が与えられ、マユにも同様の許可が下る。
シンやルナマリアがマユを誘ったが、マユはそれを断り、一人でディオキアの街を巡っていた。
家族に会うためここまできた。
実際、血の繋がった兄とも再会できた。
しかし、マユの中では何も納得できていない。
記憶も戻らない。少しも思い出せてはいない。
シンの妹だという自覚も、マユの中では皆無だった。
「きゃっ!」
「うわっ!」
そんなことを考えながら上の空で歩いていたせいで、マユは誰かとぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい!」
「ってぇ〜…」
「お前、大丈夫か?」
尻餅をついたままぶつかった少年に謝っていると、ぶつかった少年とは別の少年が手を差し延べる。
マユはその手を取ると、ゆっくりと身を起こした。
429I and I and I(7/10):2006/06/28(水) 20:47:01 ID:???
「本当に、本当にごめんなさい!ぼーっとしてて」
「別に構わねーよ」
「スティング、何勝手に言ってんだよ!」
ぶつかった少年が立ち上がると、一緒にいた少年に声を上げた。
「あぁ?別に怪我したわけじゃねぇだろ」
「お前が勝手に決めんなってつってんだよ!」
「あの、ちょっと…」
喧嘩のようなやりとりに、マユはあたふたして二人の間を行ったり来たり。
「ステラが見付かんなくてイライラしてんのか?」
「話をはぐらかすなよ!」
「あの!!」
マユが叫ぶと、眉間に皺を寄せた二人の少年がマユを睨んだ。
「ア、アイスクリーム…食べに行きません?」
顔を強張らせながら、マユは笑って二人に言う。
突拍子のないその発言に、二人の少年は睨んだ顔を唖然とさせた。

二人の少年。
アウル・ニーダとスティング・オークレー。
二人を連れて、マユはディオキアで有名なジェラートショップにやってくる。
「じゃあ二人は、はぐれちゃった人を探してたんですね」
注文を終えると、マユはスティングにそう話しかけた。
「じゃあ誘ったの、いけなかったですか?」
「いや、別に。ステラ、あいつだって帰り方ぐらいわかってんだろ」
430I and I and I(8/10):2006/06/28(水) 20:49:50 ID:???
さほど興味もないのか、スティングがそう返す。
アウルは、店員がアイスクリームを作っているのを不思議そうに見ていた。
「なぁなぁ!なんだよこれ!?」
「アイスクリームだけど、食べたことないんですか?」
店員からアイスクリームを受け取ると、アウルとスティングに渡す。
「渦を巻いてるソフトクリームっていうのもあるんですよ。今日はこっち」
「へぇ」
「すっげぇうまそーじゃん!」
マユの説明に、やはり興味が無さそうなスティングと、早く食べたいと目を輝かせるアウル。
「溶けちゃうといけないから早く食べちゃいましょ」
「めんどくせー食べもんだな…」
三人はほぼ同時に、アイスクリームに口をつける。
口の中に広がる甘さ、香り、冷たさ。
「不味くはないな」
一言そう言うと、スティングはまた食べ始めた。
「……」
「アウル、さんは?」
一口食べただけで何も言わずに、アウルはアイスクリームを見つめる。
マユはそんなアウルを見ながら、じっと答えを待っていた。
「うまい!甘いし冷たいし、こんなの初めて食べた!」
「良かったぁ。何も言わないから、口にあわないのかと思った」
アウルの笑顔に、マユはほっとする。
431I and I and I(9/10):2006/06/28(水) 20:53:09 ID:???
本当に嬉しそうなアウルを見ると、マユも心が暖かくなった。
「あ!ほっぺたにクリームがついてるよ」
アウルの頬についたクリームを指で掬うと、マユはそのままクリームを口に含む。
「ほんとだ。甘くて美味しいね」
笑ってマユは言った。
その顔がアウルを照らす。
いつの間にか、アウルに対する敬語は無くなっていた。
こんな短時間に打ち解けられたのは、マユが心の隙間を埋めたからなのか。
「ワタシのも、食べる?」
「あ…うん」
持ったまま、マユはアウルにアイスクリームを食べさせる。
楽しそうなマユを見ていると、アイスクリームを口に運ぶアウルの顔が熱くなっていった。
何故、冷たいものを食べているのに、顔が熱くなるのだろう。
アウルは不思議に思いながらも、アイスクリームを食べ続けていた。

アイスクリームを食べ終えた三人は車に乗り込む。
「これ、スティングさんが運転するんですか?」
「そうだけど?」
「飛ばしてよ、スティング!」
「あ〜、わかったわかった」
驚くマユと、急かすアウル。
スティングはエンジンをかけると、車を走らせた。
髪がなびく。風が心地良い。
「気持ち良いだろー!?」
「うんっ!」
432I and I and I(10/10) :2006/06/28(水) 20:55:00 ID:???
風の音に掻き消されないように、二人は声を張り上げて言った。
マユとアウルは満面の笑みで、互いの顔を見る。
そんな二人に感化されるように、スティングも笑っていた。
そんな時、マユの携帯電話が鳴る。
こちらも風の音に消されることなく、マユの耳に届いた。
「ごめんなさい…はい、もしもし?」
ディオキア基地、ミネルバからの連絡だった。
「え?シンさんが!?ワタシは一緒じゃないです。はい、わかりました」
バックミラーから見えるマユの表情を察して、スティングが車を停める。
「ごめんなさい!ワタシ、急用ができちゃって」
「え〜…」
「ごめんね、アウル」
「わかった。でも、謝るのは無し!」
「え?」
「ヴィア、ずっと謝ってばっかりじゃん!」
「あ……うんっ」
アウルの言葉に、マユは頷いてしっかりと笑って見せる。
車から降りると、マユは手を振って走っていった。
次はいつ会えるかもわからない。
そんな約束もしていない。
だが、心が満たされ過ぎていて、そんなことを考える暇もなかった。

433通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 21:02:43 ID:???
VGJです!
んー、記憶喪失ならではの禁断の思いですか……
辛そうですね。
434通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 21:44:20 ID:???
III氏乙!
元のマユもたぶんシンが好きだったわけで…ヴィアがシンを好きになったのは記憶喪失のせいじゃないかもw
先が読めない展開で、いつも楽しんで読ませてもらってます。GJでした。
435通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 22:31:53 ID:???
何気にマユとミーアって大抵の作品で仲良しに描かれてるな。
しかもどれもさほど違和感を感じず、むしろいいコンビになってるのが不思議…
436通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 22:35:36 ID:???
存在なき者と存在が偽りであるもののコンビか・・・
437通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 22:44:42 ID:???
過去が消し飛んだ者と過去を捨てた(ようで捨てきれない)者、かな。
シンとミーアは一切の接点が無かったし接点が出来るような設定でもなかったから、アニメはあれで間違いではないだろうけど。
出会ってお互いのことを知っていたらどうなっていただろうねぇ。
438通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 22:10:06 ID:???
お絵かき掲示板にアウマユ絵きてるどー
439通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 23:38:55 ID:???
あれ凄すぎるんだが
440通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 05:01:27 ID:???
>>438-439
作者乙。
441通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 10:12:31 ID:???
>>440
見たの?
見てないならまず見た方がいい
442通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 20:11:09 ID:???
>>441
見てきた。だけど見た見てないが関係あるのか?
そもそも向こうでもコメント付けられるのにこっちに持ってくる理由がわからん。
44386:2006/06/30(金) 20:14:57 ID:???
マユトレイを書いてる者です。
現在規制に巻き込まれていてここに投稿出来ないので、代わりに避難所に投下してもいいですか?
444通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 20:24:44 ID:???
了解です投下どうぞ。
445通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 21:02:07 ID:???
マユトレイ掲載しましたので読みたい方は、避難所かまとめサイトへ。
446通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 23:38:58 ID:???
マユトレイ乙。
騙して悪いがち、ちくしょう・・・
447通常の名無しさんの3倍:2006/06/30(金) 23:41:46 ID:???
>>455
マユトレイ乙です!いやはや、まさかマユと「あの機体」を組ませるとは・・・
状況にもよりますが、このサイトの最強の組み合わせになるかも?
(火力ではマユティニーやマユストフリよりも劣っても運動性+特殊能力で上か?)

そーなると、マユがジェスと対立しそうな予感が・・・カイトとはどうなるんだろう?
心配だwww

更にカナードANDドレッドノートイータとの遭遇・・・何とも因果ですねえ。
物凄く続きが気になります
448通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 01:08:20 ID:???
マユトレイ乙です!
誤字報告:廃部→背部
ま、この作品の面白さの前には些細なことでしょう。
この作品ではアッシュはどのように登場するのか?
後編が、そしてそれ以降も実に楽しみであります。
449通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 01:44:20 ID:???
>>442向こうでもコメント付けられるというのは正論だが、ここで作者乙と煽る事はあまりにも軽率ではないか。
そもそも作者に対して失礼であるとは思わないのか。
もっとも、これが熟考に熟考を重ねての判断であったと言うのならば、何も言わないがね。 
450通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 01:55:25 ID:???
マユトレイすんごく続きが気になるなー
wktkしながら待ってます。
451通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 04:28:33 ID:???
>>449
あまりに唐突かつ不自然なレスだったから作者乙と突っ込んだまで。
もしかしてお前さんが作者本人?
だったら一応すまなかったと言っておく。
452通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 05:46:37 ID:???
>>451因みに傍から見ればお前の方が唐突かつ不自然だったよwあの絵は明らかに上手かったし
それを見てもいないのに批評とは、流石叩き煽りは厨房のお家芸だな!
453通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 10:52:17 ID:???
あれは釣りレス、スルーしる。
454通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 12:33:35 ID:???
うおおおおおおおおおおおお!

>>1-1001
作者乙
455通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 12:38:10 ID:???
耐性を持ちましょう
456ほのぼのマユデス。兄弟(仮)対決。:2006/07/01(土) 16:40:07 ID:???
ここは障害物のおおいデブリ帯。そこにいるのはオレンジの肩をもつザクと赤と黒のザクである。
 『えー、それでは始めます。審判は俺、ハイネ・ヴェステンフルスが務めます。』
二機からすこし離れた距離にいるグフが通信する。
マユ達も万が一艦に被害が無いように出撃している。
『用意・・・・・・。』
その言葉が放たれると二機のザクが構える。
赤と黒のザクはビームライフルを構え、オレンジの肩のザクは迎え入れるかのように両手を広げる。
『はじめ!!』
先に仕掛けたのはグレイシアだった。両腕からフィッシュ・ボーンが蛇のようにイライジャに襲い掛かる。
イライジャはそれを自慢のスピードで交わす。
そして大降りなグレイシアの攻撃の隙を突いてビームライフルで攻撃。
だが、グレイシアは鎖で攻撃した勢いを利用して肩のシールドで防御する。

『うーん、グラッドの武装って一対一には向いてないだよなぁ・・・。』
シンハロがディスティニーの中で呟く。
「グラッドってだれ?」
『あ、グレイシアのザクの名前。』
シンハロはマユの疑問に答えながら思考を続ける。
もともとグラッドの武装は直接的な攻撃よりサポートを目的としたものだ。
彼女(彼?)が敵を大量に拘束してる間に他のメンバーが一気に敵を倒すのが基本的なスタイルだ。
「シンハロ、もう一つ疑問があつんだけど・・・・・。」
『何?』
「なんでハイネお兄ちゃんはガンダムファイト、レディ、ゴーって言わなかったのかな?」
『・・・・・・・ザクだからじゃない?』
「そっか!!」
マユの質問に渋い表情でシンハロは答えた。
457兄弟(仮)対決。:2006/07/01(土) 16:41:22 ID:???
『くっそぉっ!!イラちゃんの癖に生意気よ!!』
『イラちゃんって呼ぶなよ!!俺はもうそんな年じゃないぞ!!』
『あらららぁ〜?十歳まで寝る時ぬいぐるみのにゃあ大佐がないと寝れなかったのはどこの子かしら?!』
『うるさいっ!!俺はもう傭兵なんだよ!!』
口でも戦いながら戦闘を続ける二人。
しかし口論ではグレイシアのほうが上らしく、イライジャの機体の動きが一瞬鈍る。
『貰ったわ!!』
その瞬間フィッシュボーンがザクを絡めとる。
間接部分に魚の骨のような鎖が絡みつきギシギシと機体を痛めつける。
PS装甲でない機体なら間接をこれでやられるだろう、そう、PS装甲でないなら。
『甘い!!』
イライジャのザクの黒の部分が赤い色に染まる。
そして、頭部ブレードで何とか右腕の鎖を切り、ほかの鎖をトマホークで切断した。
開放されたイライジャのザクの動きは微塵も鈍ってはいない。
『なっ・・、PS装甲?!』
『まったく、俺を舐めてるからだ。そもそも経験の差が違うんだよ。』
『・・・・・なんですって?』
グレイシアを出し抜いたことに気を良くしたのかイライジャは言葉を続ける。
『そもそもお姉ちゃん調子に乗ってたんじゃないの?エリート部隊に所属してるからって。
俺達傭兵はいろんな種類の任務を受けるけどお姉ちゃん達はそうじゃないだろ?
それに平和だった間も俺達は戦ってたんだ。腕が鈍っているお姉ちゃんとは違うんだよ。
お姉ちゃんみたいな力任せは特に・・・・』
イライジャの言葉が止まる。
『ふ・・・・ふふふふふふ・・・・・・あははははは・・・・・。』
グレイシアの怪しげな笑いが響く。
イライジャは知らなくて当然だが。ハイネ隊はエリート部隊という以前に特殊部隊である。
ザフトの色々な裏事情で平和な間も戦ってたりする。
まぁ、この程度の批判は普通に仲間うちでしてたりする。
が、相手はイライジャだ。昔から自分の後ろをついてきたかわいい弟だ。
そして、途中でプレッシャーに負けてザフトの事を何も知らないうちに脱隊したイライジャだ。
グレイシアの意思は決まった。

いっぺん殺そう、この調子づいてる弟を。


グレイシアの動きか止まる。
『デブリ戦で・・・・・・私と戦うことを後悔なさい!!』
その瞬間、グレイシアのザクが奇妙な動きをする。
鎖を長く出したまま踊るような動きを見せる。
もちろん鎖はイライジャにはあたらず明後日の方向へ伸びる。
『お姉ちゃん・・・何し・・・・?!』
イライジャはザクに出された反応を察知してよける。
間一髪、後ろから飛んできたデブリを避けれた。
『まさか・・・?!』
『くらいなさい!!私のデブリ専用必殺技「織姫」!!』
458ほのぼのマユデス。兄弟(仮)対決。:2006/07/01(土) 16:50:08 ID:???
『『『『うわわわわわっ!!』』』』
それぞれの機体から悲鳴が上がる。
あちこちからむちゃくちゃにデブリが飛んでくるのだ。
これでは避けるだけで精一杯で艦を守るもなにもありゃしない。
『くっ!!スティング!あれをやるぞ!!』
レイがスティングに通信する。
『あれって・・・・おいおい!ありゃ取っておきだって決めたじゃねぇか!!』
スティングが驚いた声を上げる。
『仕方ないだろ!!今使わずにいつ使う!!いくぞ!!』
レイの言葉と同時にレジェンドのドラグーンが全て発射される。
そしてスティングも兵装ポッドを射出する。
そしてある一定の間隔で皆の周りにドラグーンらを配置すると機体のキーボードで設定を変更する。
すると、ドラグーンや兵装ポッドからでたビームはバリアとなり周囲を囲んだ。
『すげぇ!こんなの何時考えたんだよ?!』
アウルがレイに通信してくる。
『ふ、ドラグーンのミラージュコロイドを応用した技だ。ただドラグーンの数が足りなかったのでスティングに協力してもらった。』
自慢げに話すレイ。
『それはいいけどどうするよ、あれ。』
ネオが緑の壁の向こうを見る。
暴走するグレイシア、泣きながら避けるイライジャ。あ、ハイネが巻き込まれた。
『たぶんグレイシアの勝ちじゃないかしら?』
ルナマリアがぽつりと呟く。
『てゆーか、審判巻き込んだら負けじゃない?』
一行は呆然としながらデブリの舞う戦場を見続けた。

459ほのぼのマユデス。兄弟(仮)対決。:2006/07/01(土) 16:52:07 ID:???
『くそっ・・、なんてめちゃくちゃなんだ!!』
イライジャが涙目で言う。きっとミネルバで生活したら三日と持たないだろう。
しかし、イライジャのウィザードはスピード自慢だ。気をつければまず当たらない。
勝機は必ずある。そう信じてイライジャは待つ。
彼女のザクは確かにパワーを強化してある、デブリを引っ張っても大丈夫だろう。だが・・・・・。

突然、デブリが飛んでこなくなった。

どうしたんだと思いつつも他の皆は周りを注意する。
すると、なにか光るものが浮いているのがわかった。
グレイシアのフィッシュボーンのかけらである。

 『なっ・・・?!』

グレイシアは驚愕する。
彼女はよくも悪くも頭に血が上っていた、それゆえ、鎖の強度までに注意がいかなかったのだ。
気がついたときには、目の前にビームライフルを構えたイライジャのザクがいた。

 『俺の勝ちだ、お姉ちゃん。』
46086:2006/07/01(土) 21:21:42 ID:???
規制が解けたので四話を投下します。
規制中にほとんど書いてあったわけですが……これなら三話と四話、今日まとめて投下すればよかった。
>>ほのぼの様
いつも乙です。
実を言うとこちらもちょっと見習ってギャグを入れた話を書きたかったのですが……
マティスのイメージが轟音を立てて崩れるものだったので没に。
いつか外伝の外伝みたいな感じで書きたいなぁ。
4611/9:2006/07/01(土) 21:22:34 ID:???
SEED DESTINY ASTRAY M 第四話 「誓約vs.勇者」

 私の目の前に現れたMS、ドレッドノートに乗る青年・カナードはイワンにかけられた
賞金が狙いだと言った。彼は機体に銃を構えさせて言う。

『教えてもらおうか。そうすれば見逃してやる』

 どうやら相当自信があるようだ。確かに只者ではないのは威圧感で分かる。だけど。

「……悪いけど」
『ん?』
「見逃してもらう必要なんてない!」

 こっちは既に戦闘準備を完了している。ガンダムからドレッドノートへウィルスを送付
しておき、話している間にモニターの映像などを偽の情報に書き換えておいたのだ。相手
が戸惑っている隙に素早くビームライフルを構え、撃つ。それで終わり……のはずだった。
 だが、ドレッドノートはあっさりとビームを避けた。

「……な!?」
『効かん!
 ダガーLが素通りしていった時にもう、オレはそのガンダムの能力を見切った。
 ウイルスはコロイド粒子を媒介とする。そして、コロイド粒子はビーム兵器の磁場安定
 にも使われる。ならば、ビームを展開するアルミューレ・リュミエールを広く機体全面に
 展開しておくことで……』

 そう言って彼は腰部のユニット・プリスティスをマウントさせている左腕を持ち上げた。
確かに……よく見れば光っている。
 それだけではない。機体全体がどこか揺らいでいる。おそらくは極限まで薄く、そして
広くビームシールドを展開しているためだ。本来ドレッドノートに有り得ない装備と、
本来有り得ないアルミューレ・リュミエールの使用法。だから気付けなかった。

『ウイルスの送信を断てる!』

 カナードが叫ぶと同時に、ドレッドノートはプリスティスと右腕の銃を撃ちこむ。ただ
のダブルトリガーではない。右腕の銃はハイペリオンと同じビームマシンガン。乱射して
動きを束縛して、マウントしたプリスティスのビームを目標へ撃つという戦法。

――避けきれない!

 そう判断すると同時にPS装甲の電圧を上げ、マシンガンが撃ちこまれるコースへ飛び
込む。普通PS装甲はビーム兵器には無力だが、電圧を上げればその限りではない。赤く
なったPS装甲はなんとかビームマシンガンを耐え切り、ビームの弾幕から脱出した。

『面白い装甲だ! だが盾もなしに俺のガンダムの攻撃から逃げ切れるか!?』
「くっ……!」

4622/9:2006/07/01(土) 21:23:20 ID:???
 本当は、トリケロス改という攻守兼用の兵器をテスタメントに付ける予定だったらしい。
だが、セットで付ける専用ストライカーパックがまだ未完成だったため、今回はノワール
ストライカーの飛行テスト(つまり実戦テストではない)を兼ねて任務をすることになり
ノワールストライカーに干渉するトリケロス改は外して出撃したのだ。
 今思うと、トリケロス改を付けてほしかった。この相手に盾無しで戦うのは無謀だ。

「不満言ってても……仕方ないけどっ!」

 次の攻撃が来る前に、素早く空に舞い上がってビームライフルを放つ。ドレッドノート
はアルミューレ・リュミエールを使って防御することもなく、避けた。ウイルスを防ぐため
に薄く展開しているため、防御に使うことはできないようだ。
 つまりお互いに切り札を封じてられている状態と言える。だが……

『無駄だ、無駄だ、無駄だ!』
「きゃあっ!」

 火力が違いすぎた。それも、相手が圧倒的に上。
 圧倒的なビームの嵐をなんとか避ける。だが、避けきれなかったビームマシンガンが
コックピットに強い衝撃を与え、思わず私は悲鳴を漏らした。
 ――相手は背部のツイン・ビームキャノンと、両腕にマウントしてあるプリスティス、
更にビームマシンガンを同時に連射できる。その火力はフリーダムと互角か、それ以上だ。
対する私のガンダムはビームライフルと二連装リニアガン×2。数は同じだけど、威力が
違いすぎる。あっちは四つのリニアガン全てを喰らったとしてもPS装甲で耐えられるが、
私のガンダムが防げるのはマシンガンだけなのだから。
 だからと言って逃げる気にはなれなかった。コイツはイワンを殺す気だ。止めないと。
なら――せめて勝ち目がある戦いを!
 ノワールストライカーの全砲門をドレッドノートの正面の地面一帯に撃ちこむ。派手に
上がった土煙が、数秒は相手の視界を奪ってくれるはずだ。バーニアを噴かして翼で空を
切り、左腕にフラガラッハ3・ビームブレイドを抜いて一気にドレッドノートへ接近する!
 ……だが、私は寸前で土煙の向こうにおぼろげに見た。
 完全に視野が奪われた状態にも関わらず、こちらへ砲を構えるドレッドノートを。

「……!!!」

 まずい。
 既に何発もビームマシンガンを受けた今のガンダムでは、当たり所次第ではマシンガン
さえ致命傷になりかねない。ましてやビームキャノンなんてくらったら確実に……!
 死の予兆に頭の中が真っ白になる中で……私の頭に浮かんだのは一つのイメージだった。

水面に『種』が落ち、そして割れる――

「させるもんかぁ!」

 咄嗟にフラガラッハを前に構えながら、機体の体勢を捻る。発射されたビームはフラガ
ラッハが発振するビームとぶつかり、コースが逸れる。二連装リニアガンが一つ持ってい
かれたが、本体は無事だ。
 そのまま機体の体勢を立て直し、捻った勢いを入れてフラガラッハを振り下ろす!
4633/9:2006/07/01(土) 21:24:09 ID:???
 相手はそれを避けることもせず、背部ユニットを変形させた。ビームキャノンではなく
巨大なビームソードが発振され、フラガラッハを受け止める。

「……これは!?」
『ドレッドノートH・ソードモード! 接近戦なら勝てるとは甘い考えだな!』

 そのままビームキャノン……いや、ビームソードを左手に持ち替えてドレッドノートは
切りかかってくる。ビームソードである以上柄が長ければ発振されるビームも強力になり、
柄の長さだけでなく刀身の長さも増加してリーチは大幅に伸びる。まともに斬り合えば
圧し負けるだけだ。だけど、柄の長いビームソードにもデメリットは確かに存在する。
エネルギーを多く消費すること、そして――
 ビームライフルを犠牲にしながらもビームソードをなんとか避け、手が空いた右腕にも
フラガラッハを持たせる。つまり、二刀流だ。
 そのままフラガラッハで敵の斬撃を防ぎつつ、今まで以上に接近を図る。敵の剣は巨大
だが、振るスピードはこちらと大して変わらない。柄の分しか重さがないビームソードは
刀身をいくら長くしても重さは増えないためだ。これはビーム兵器の利点。だが、ビーム
兵器特有の弱点もある。

『ちぃっ!』
「これでっ!」

 懐へ潜り込もうとする私のガンダムを振り払おうと、ドレッドノートはビームソードを
振る。それに対して私は素早くノワールストライカーに装備されたワイヤーを発射した。
ビームソードの柄がワイヤーに巻き取られ、斬撃の軌跡が逸れる。その隙に、懐に一気に
潜り込む。
 そう、ビーム兵器特有の弱点は柄の部分が実体剣同士での戦い以上に弱点になること。
柄が電子部品の塊である以上、柄が丈夫な構造になることは無い。そしてビームキャノン
をビームソードとして使用するドレッドノートはその長い柄の部分は武器として使えない、
つまり密着状態での取り回しが非常に悪いのだ。下手に振れば、自分を斬ってしまう。
 相手もそれを理解しているのだろう、ワイヤーごとビームソードを引っ張った。体勢を
崩そうというのだろうが、私はもう予想済みだ。右腕のフラガラッハで素早くワイヤーを
断ち、左腕のフラガラッハをドレッドノート目掛けて振り下ろす。アルミューレ・リュミエ
ールを使えず、自由に動かせる武器が右腕にあるビームマシンガンだけの相手にはもはや
防げない……!
 ……だけど、それは幻想だった。

『ふん、残念だったな』
「これは……銃剣ッ!?」

 左腕のフラガラッハが、ビームマシンガン上部から発生した光に止められている。
 まさか、ビームナイフが仕込まれていた……!?

「だから二刀流をせずに、マシンガンを持ち続けていたってわけ!?」
『そういうことだ!
 せっかくハイペリオンの支援をするんだったら、もう少しハイペリオンの武装について
 調べておくべきだったな!』
「コイツッ!」
4644/9:2006/07/01(土) 21:24:54 ID:???
 なら力ずくで押し切ろうと右腕のフラガラッハを振り下ろそうとしたが、無駄な足掻き
だった。それが到達する前に、ドレッドノートのビームナイフは左腕のフラガラッハの
実体剣の部分を両断した。
 まずい、と思った。
 相手はリーチの長い剣とリーチの短いナイフを併せ持っている。距離により使い分ける
というわけだ。密着状態でも離れていても駄目。相手のナイフがマシンガンと兼用である
以上、今更射撃戦に持ち込んでも負けるのはこっち。相手の技量も、半端じゃない。今の
私は今までにない程集中できているし、高い実力を発揮できているが……カナードはそれ
さえ上回っている。
 ……だけど。

『どうした? イワンの行き先を喋る気にでもなったか?』
「誰がっ!」

 残ったフラガラッハを両手で握る。
 今退く訳にはいかない。退けば、こいつとイワンが遭遇してしまう可能性が高い。
もちろん違う方向に引きつけながら逃げるという手もあるが、ドレッドノートの火力では
引き付ける途中でやられかねない。
 イワンでもこいつは絶対に倒せない……だから、戦わせちゃいけない。イワンが町から
完全に離れるまで、ここで私が時間を最低限稼がないと!
 敵のビームソードを避けつつフラガラッハを振る。距離関係はギリギリビームナイフが
届かない距離。そして、ビームソードのリーチの優位性が薄れる距離。
 かといって相手のビームソードのもう一つの優位性――強力な出力が薄れる訳ではない。
片腕で振っているにも関わらず、私のガンダムが両腕で振ったフラガラッハを受け止めた。
このまま押し合いをすれば、対艦刀タイプの剣であるフラガラッハの刀身が持たない。
だから押し合いをせず、剣と剣が触れたらすぐに違う場所へ連続して斬撃を入れる!

「たああああああっ!」
『チッ!』

 私が剣のぶつかり合いを避けている以上、お互い剣撃は避けるしかない。下へ来た斬撃
を足を上げて避け、同時に頭部へフラガラッハを振る。ドレッドノートはスウェーバック
でそれを避けながら、後ろを回り込みつつ剣を振り上げる。私はすばやく向きを変えて、
同時に距離を保ちながらそれを回避、胴体へフラガラッハを振った。だがドレッドノート
は華麗にステップを踏んで避ける。ほんの一瞬の攻防でお互いの位置関係が入れ替わった。
 そのままフラガラッハとビームソードで斬り合うこと数秒間に十数回。頭、腕、胴、足。
互いに様々な場所に斬撃を散らし、互いにそれをギリギリで避ける。だけど、限界が来た。
目の前に迫るビームソード。避けるのは間に合わない。受け流すこともできない。なら、
受け止めるしかない。フラガラッハとビームソードの鍔迫り合い。コロイド粒子が激しく
火花を散らす。

『まだ退かないのか? 大層な覚悟だ、いくら任務とはいえそんなに偽物の『英雄』を
 庇いたいのか?』
「なんですって!?」

 接触通信で入るカナードの声。通信が開きっぱなしだったため、さっきから既にやたら
うるさかったが挑発以上の物では無かった。だけど、今回は挑発以上の物だった。馬鹿に
した様子で彼は続ける。
4655/9:2006/07/01(土) 21:25:41 ID:???
『傭兵の中では噂が流れている……イワンの後ろには何か大きな組織がいると。
 大方お前はその組織に雇われて、何か任務をやっているんだと思ったが……
 そこまで必死になる辺り、偽者の『英雄』だと知らずにイワンに陶酔するただの馬鹿か?』
「……!」

 カナードの言葉を否定しようとしても、できない。
 そう……イワンが偽者の『英雄』だというのは、私が一番よく知っている。
 さっき、偽者である証拠を私が行ったばかりなのだから。

『まさか本当にただの馬鹿のほうだったのか? ならはっきり言ってやる。
 所詮奴は偽の情報で『人の想い』を集めた偽の『英雄』にすぎない。
 既にこんな噂が傭兵内で流れているんだ、いつか民衆もイワンの正体に気付くだろう』
「……私は」

 ……彼が偽りの『英雄』だって、分かってる。
 だけど、私は彼を見捨てる気にはなれない。なぜ?

――一年と半年。「サーカス」にいた日々。そこでの思い出。
――地獄のような場所で、私を助けてくれた彼。

 そう、理由は簡単なんだ。彼はサーカスの仲間だったから。彼は私に色々世話を焼いて
くれたから。かつて、シン兄さんがそうしたように――だから!

「本物の英雄かどうかなんて関係ない! 私は彼に借りを返す――」

 言うと同時に、バーニアを吹かした。ガンダムがフラガラッハごとビームソードを押す。

「それ以上でもそれ以下でもないし、必要ないッ!」

 そのままビームソードを一気に押し切った。ドレッドノートは後ろに弾かれて、フラガ
ラッハは勢い余って地面に突き刺さる。

「しまった!」

 ドレッドノートは自ら後ろに跳んだのだ。
 咄嗟に体勢を立て直しフラガラッハを構えるも、再び前進したドレッドノートはビーム
ソードを振り下ろし、フラガラッハは再び地面に叩きつけられた。私のガンダムの腹部に
はビームソードで付けられた傷痕がくっきりとある。だけど……

「浅いッ!」

 エラーを無視してそのままフラガラッハを振り上げる。流石に予測できなかったか、
ドレッドノートのマシンガンをナイフごと斬り裂けた。これで相手は密着状態での接近戦
には対抗できない。
 しかしこっちが接近するより先に、相手は右腕で私のガンダムを殴りつけた。こっちの
赤いPS装甲は相手の蒼いPS装甲より硬い。だが衝撃までは緩和できず、思わず後ろへ
後ずさる。
4666/9:2006/07/01(土) 21:26:33 ID:???
『ザコの分際で、オレのガンダムに傷を付けただと!?』

 激昂したらしいカナードの声が聞こえる。機体に何か思い入れでもあるんだろうか。
だけど、私にはそんな事を思いやるつもりも余裕も無い。
 相手がもう一本ビームソードを抜いたのを確認し、急いで後退する。キャノンとして
背部ユニットを使えない以上、火力の不利は縮まった。とりあえず一旦下がって間を取る
べきだと判断したのだ。もっとも、私のガンダムには遠距離用のビーム兵器はもう無い。
つまりあいつを仕留めるためには、接近戦をしなければならない。
 カナードもそれを分かっているらしく、再び砲撃戦型に変形する様子は無い。おそらく
ソードモードって奴でこっちの接近を待ち構える気なのだろう。キレてるくせに冷静な奴。

――おそらくは、次で最後。

 お互い言葉も無いまま、剣を構えて立つことぴったり12秒。
 フラガラッハを構えたままの私のガンダムが、リニアガンを放つ。狙いは相手のビーム
ソードの柄。同時に相手目掛けて一気に前進する。
 ドレッドノートはリニアガンを両肩で受け止めつつ、二つのビームソードを一気に振り
下ろした。相当な衝撃があるだろうに、それをうまく調整して振り下ろせる辺りは流石だ。
だけど、完全に衝撃の影響を無視できるわけじゃない。僅かな斬撃の軌跡のズレへ機体を
滑り込ませる。右腕を犠牲にしながらビームを潜り抜けると同時に、相手のビームソード
の柄を踏みつけた。これで相手は武器が使えない。後はフラガラッハを振り下ろすだけ。
……しかし。

「…………なッ!?」
『武器があれだけと思うのは早計だったな!』

 ドレッドノートはあっさり柄から手を離した。そして、両腕のアルミューレ・リュミエ
ール発生基部からは槍の形をした光が生み出されている。振り下ろしたフラガラッハは、
あっさりとその槍に貫かれて折れた。そのままもう一つの光の槍がこっちへ迫る……!
 とっさにコンソールへ指を滑らせた。私のガンダムは回避行動と共に、ある動作を行う。
避け切れなかった光の槍が深々と機体の脇腹に突き刺さり、モニターがブラックダウン。
同時に起こった激しい衝撃で、私の意識は闇へ落ちた。
4677/9:2006/07/01(土) 21:27:37 ID:???
「……ふん、終わったか。ここまでオレを手こずらせるとはな」

 PS装甲がダウンし、灰色になりながら地面へ倒れこむ敵のガンダムを見ながら思わず
オレは呟いていた。
 アルミューレ・リュミエールによる光の槍、リュミエールランスはとっておきの武器だ。
シールドを武器として転用する以上は、確実に仕留められるタイミングでしか使えない。
今回も、あれを避けられたらウイルスを送り込まれて負けていた。
 もっとも……避けられないタイミングで使った以上、そんなことは有り得ないのだが。

「後はイワンだな。バルサムの時のように、リュミエールランスを使えば簡単に……」

 呟きながらレーダーを見て、オレは愕然とした。
 ……レーダーが映っていない。

「まさか、あの一瞬でウイルスを……!?」

 慌ててOSを確認する。
 ウイルスに侵されたのはレーダー、バーニア操作のOSと、そして戦闘履歴。前二つが
駄目になっていてはイワンを追う事などできない。そして、戦闘履歴を抹消していれば、
データが無い以上ここで行った戦闘は無かったことになる。結果イワンの背後にいる組織
の存在を立証することもできない。
 ……つまり、あのガキは攻撃を避けきれないこと、ウイルスを防いでいたアルミューレ・
リュミエールの防御が解けたこと、そしてウイルスを送ってもリュミエールランスを防ぐ
のには間に合わないことを知るや、素早く戦闘の後のことを考えイワンを探せないよう、
そしてイワンが『英雄』でいられるよう置き土産を残したというわけだ。

「ザコの分際でやってくれる……。
 だが、火器を封じずに他の部分を封じた以上、死ぬ覚悟もできているんだろうな!」

 オレのガンダムにプリスティスを向けさせる。奴の脇腹には盛大な穴が開いているが、
コックピットからは大きくずれている。まだ生きている可能性は高い。トドメを刺そうと
コンソールへ指を滑らした瞬間……オレの手の上にもう一つ手が重なった。

『…………カナードさん』
「……なぜ止める、プレア」

 後ろに立つプレア――それが幽霊なのか自分の幻覚なのかは知らない――に声をかける。
プレアはゆっくりを口を開いた。

『彼女の『想い』は、本物なんだ――偽の情報になんか踊らされたりなんかしてない。
 僕は彼女の言ったことに心を動かされた。だから、見逃してあげてほしいんだ』

 そういうプレアの表情は、生前のそれと何も変わってはいない。おぼろげなだけで、
どこまでも穏やかな表情だ。
 そんなプレアの表情に、思わずオレも穏やかな笑みを浮かべてしまう。

「いいだろう。オレも熱くなりすぎていたしな」
『ありがとう……』
4688/9:2006/07/01(土) 21:28:22 ID:???
 そう言ってプレアは消えていく。
 オレもガンダムにビームソードを回収させ、その場を離れることにした。

「大した奴だ……プレアを動かすまでの『想い』か。
 プレアが言った以上は、オレもお前を見逃さなくてはな。
 今度会うときは味方であってほしいものだ、死なれるとプレアが悲しむ」


4699/9:2006/07/01(土) 21:29:08 ID:???
「テスタメント、回収した?
 え? ついでだから右腕はトリケロス改が付いたものに取り替える?
 そうね、やってもいいけど……それよりもまずウイルスよ。
 光波シールドでも防げないように改良して」

 あれから数日後。マティスは自室で事後処理に関する指令を出していた。
 テスタメントの修理、情報の処理、目撃者の消去……やることは山ほどある。そのまま
彼女は続けた。

「それより、イワンの背後の組織に関する情報はどれくらい有名なのか調査した?
 ……ええ、そう。分かったわ。近々どうするか伝えるから」

 それを言うと同時に回線が落ちる。
 彼女は笑顔でため息を吐いてイワンの写真を手に取った。

「予想以上に役に立ってくれたわね、イワン。
 そろそろ手を切らせてもらうわよ……あなたは活躍しすぎたの。
 それに私にはじゅうぶん手駒が揃った以上、扱いにくい『道化』はいらないのよ。
 あなたと同じ「サーカス」出身の、あなた以上に利用しやすい二人がいるものね……」

 言いながらマティスはイワンの写真を捨て、二つの写真を取り出した。
 その写真にはそれぞれ写っている人間の名前が書いてある。片方にはマユ・アスカ、
そしてもう片方にはイルド・ジョラールと……
47086:2006/07/01(土) 21:32:41 ID:???
投下終了。
とりあえず「試合には負けたが勝負には勝った」な感じで。
いくらなんでもカナードに勝つのは無理っぽいですし。

オマケ話として、初期段階ではカナードが「無駄無駄無駄ァ!」と叫ぶとか色々ネタを仕込んだりしてしました。
あまりにも雰囲気にそぐわないので変えましたけど。
471通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 22:14:11 ID:???
長編を、投下したい方へ。
今の容量でもまだいけますので遠慮なく投下どうぞ。
472通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 03:02:30 ID:???
イータにプリスティスは付いてないはずなんだけどオリ設定?
473通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 03:04:47 ID:???
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%A0#.E3.83.89.E3.83.AC.E3.83.83.E3.83.89.E3.83.8E.E3.83.BC.E3.83.88.E3.82.A4.E3.83.BC.E3.82.BF

>両腰にはプリスティス端末に「アルミューレ・リュミエール」の発生器を組み合わせた
>「アルミューレ・リュミエール・ハンディ」を装備
多分ドラグーンとして使えないだけで、手持ちとしては使えるんだと思われ。
474通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 03:24:16 ID:???
単発設定小話 「アークエンジェル」スタンドアローン編B

〜オーブへ向かう途中でザフトの猛攻を受けるアークエンジェル〜
チャンドラ「左舷後方より接近する敵艦っ!」
マリュー「まったく!やるといったら容赦ないわね!!右舷、弾幕は薄いわよっ!」
ミリアリア「艦長!ミネルバから通信入ってます」
マリュー「ミネルバから・・・?・・・・・・あけてちょうだい」
ミリアリア「はい」
〜ブリッジにミネルバの艦長タリア・グラディスの声が響く〜
タリア「アークエンジェルへ告げます。こちらザフト軍ミネルバの艦長タリア・グラディスです。
貴艦にもはや逃げ道はありません。速やかに投降することをこちらは提案いたします。
・・・投降されるのであればあなたがたの安全を保障いたします。これは最後通牒です。
抵抗を続けるようであれば我々は全力で貴艦を・・・潰します」
〜返信を送るマリュー〜
マリュー「お心遣い感謝いたします。ですが、我々にはまだなすべきことがありますゆえ投降は遠慮させていただきます。・・・お互いにスタンドアローンではいられない状況のようですからね」
〜通信を切り、マリューはブリッジを見回す〜
マリュー「さぁ、もう後ろに引けないわよ。全力でここから脱出するわよ!」
ブリッジ全員「はっ!」
キラ「フリーダム行きます!!」
〜アークエンジェルを守るために出撃するキラ〜

〜返信を受けたミネルバ〜
タリア「ふられちゃったわね。・・・・・・アスラン、手加減はしなわよ?」
アスラン「・・・・・・承知いたしました」
タリア「アークエンジェルを沈める!マユとレイに出撃命令を、ルナマリアには艦の護衛に。・・・他の艦に先をとられるんじゃないわよ!」
アーサー「はいっ!全速前進、アークエンジェルを捕捉します!」
マユ「インパルス、フォースシルエット出ます!」
レイ「ザクファントム、出るぞ」
ルナマリア「ザクウォーリア行きます!」
〜出撃するMS部隊〜
マユ「キラ・ヤマト・・・今度こそ、今度こそ私の手で・・・・・・」

〜フリーダム〜
キラ「・・・・・・マユ・アスカ・・・僕は君の家族を奪ったかもしれないけど・・・僕は、僕には・・・・・・」

完  ・・・・・・スタンドアローン編は「アスラン脱走」の回まで続く予定
475通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 13:52:59 ID:???
>>473
それ間違ってるぞ?アルミューレ・リュミエールの発生器を使えるようにしただけで、
プリスティスとは組み合わせていなしビーム砲も付いてない。
イータのイラスト見りゃ分かることなんだが……
476通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 14:23:29 ID:???
>>475
デストレイ一巻見れば分かるが、シールド発生させてる装置の周りにプリスティスっぽい物が付いてる。
プリスティス付いてた位置からパイプ繋がってるし、元のドレッドノートの左腕にはあんな形状の物はついてない。
それに、三巻でイータが左腕にプリスティスらしきもの(明らかにビームライフルじゃない)持ってビーム発射してる。
あと、四巻のイータ設定図では腰にプリスティスが付いている。
477通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 16:35:50 ID:???
>>476
>シールド発生させてる装置の周りにプリスティスっぽい物
それが新しく製作したアルミューレ・リュミエール・ハンディなんですが…
478通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 16:49:17 ID:???
そういやイータってビームマシンガンはだけでく、何故かアルミューレリュミエールハンディも
エネルギーをバックパックからパイプで供給してんだよな、直接腕から供給するようにすりゃ良かったのに。
479通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 17:23:03 ID:???
>>477
言い方が悪かった。
これだけプリスティスと似ているんだから、
プリスティスとA.L発生装置を組み合わせたのがA.Lハンディと思って間違いないだろってこと。
だからわざわざ腰からパイプで繋がっているわけで。
480通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 17:28:30 ID:???
>>479
似てるだけってその程度の理由で間違いないとは言えんだろ。
設定画見る限りどう見てもハンディにビーム砲なんて付いてないし、プリスティスとも全く形が違うのですが
481通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 18:25:23 ID:???
>>480
もういいや。
そんな自信あるなら逆にハンディがプリスティスじゃないっていう証拠出してくれ。
ハンディはロウによって新しく作られたってな感じの文言が載ってる奴とか。
イータユニットのことを指した文をA.Lハンディを指してるとかいって誤魔化すなよ?
こっちはウィキペディアっていうソースだしたんだから。何なら他のサイトも貼ってもいい。
貼れないならお前の考えは盛大な勘違いってことだから、こちら側はこれで最後にする。
……まさかとは思うが、Xアストレイの背中のドラグーンがプリスティスだと勘違いしてないよな?

そしてスレの皆様方、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
482通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 20:47:42 ID:???
これ以上続くようなら避難所でね
483通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 21:50:16 ID:???
そういえば種って名前被り多いな
マユに関してはマユラが先にいるし
484通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 22:06:05 ID:???
>>481
ハンディってプリスティスに比べて薄すぎねえか?
485通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 22:12:04 ID:???
486通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 22:13:43 ID:???
>>481
そんな勘違いする奴いるのかよwww
487通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 22:17:59 ID:???
488通常の名無しさんの3倍:2006/07/03(月) 00:18:01 ID:???
設定厨UZeeeee
在るとか無いとかどうでもいいよ。
俺が言いたいのは面白かった作者乙それだけだ。
489通常の名無しさんの3倍:2006/07/03(月) 00:44:20 ID:???
単発設定小話 「アークエンジェル」スタンドアローン編C

〜いろいろあって海上まで逃げ込んだアークエンジェル〜
マリュー「はぁ・・・キラ君はっ!?」
ミリアリア「フリーダム、敵MSと戦闘中!!」
チャンドラ「艦長!!敵熱源照準!・・・陽電子砲きますっ!」
マリュー「っちぃ・・・回避ー!」
ノイマン「やってますよっ!!全員ものにつかまってろ!!」
〜ノイマンの言葉と同時にアークエンジェルは機体を大きく反転させる〜
ミリアリア「っちょ、ノイマンさん!!」
ノイマン「舌かむぞ!黙ってろっ!」
〜陽電子を避けられたミネルバ〜
タリア「な・・・あれを避けるなんて・・・・・・。とんだ操舵士がいたものね。パルジファル、ウォルフラム間隔を置いて発射!」
アーサー「了解っ!」
メイリン「敵艦、回避行動。・・・えっ・・・・・・艦長!海中に潜ろうとしてますっ!」
タリア「なんですってぇ!?・・・っく厄介な船ね・・・・・・」

〜その頃、対戦中のフリーダムとインパルス〜
キラ「っく・・・君は・・・僕のことを恨んでるだろうか・・・・・・」
マユ「これだけ追い詰めても、これだけ危ないのに、あんたはまだ私のコックピットを狙わないのね!!まったく、いまさらなのよっ!!」
〜離れてはビームを打ち合い、接近してビームサーベルを交わすフリーダムとインパルス〜
キラ「!?アークエンジェル・・・ええい!」
〜離脱しアークエンジェルの救助に向かうフリーダム〜
マユ「っち、基本的な機動力は向こうが上ってことね。だったらこっちはこっちのやり方よっ!」
〜ミネルバに接近するインパルス〜
マユ「ミネルバ、ブラストシルエットを!あと、ソードシルエットをすぐに出せるようにしておいて!」
タリア「マユの言うとおりに!こっちもアークエンジェルをここで逃すわけにはいかないわよ」
メイリン「了解。ブラストシルエット、射出どうぞ」
〜ブラストシルエットに換装するインパルス〜
マユ「よぉし、料満タン!いっくわよぉ〜!!」
キラ「・・・はぁはぁはぁ。!まだ君が・・・・・・」
マユ「守ってばかりで少しは攻撃してきなさいよっ!それで、それでいっぱい、いっぱい人を殺しなさいよ!以前のあなたに戻りなさいっ!
   私がもっとも憎いのは、そんなキラ・ヤマトなんだからっ!・・・<シュパーン>・・・避けんじゃないわよ!むしろ自分であたりにきなさいよ!」
キラ「っが・・・このMS・・・君の家族を奪ったのは僕かも知れないけど・・・僕にだって」
レイ「マユっ!!頃合だ、仕上げにはいるぞ!」
マユ「わかったわ!」
キラ「後っ!?白いMS・・・・・・!?この感覚・・・いや、そんな・・・バカな。でもこの感覚はっ」
〜ブレイズウィザードから無数のミサイルが打ち出される〜
レイ「あなたは私たちを殺せない・・・でも、私たちはあなたを殺せるんですよ。ほら・・・もう追い込みましたよ!あなたも使えないアスランのように
  自分のしたいことが見えていないのでしょう!?だから今もそんなに愚かな行動しかできないで居る」
〜ミネルバへ通信するマユ〜
マユ「こっちも一気にかたをつけます。ソードシルエットを!」
メイリン「ソードシルエット、射出どうぞ」
〜ソードシルエットに換装するインパルス〜
マユ「これで終わりよ!」
〜まっすぐにフリーダムへ突進するインパルス〜

完  ・・・・・・スタンドアローン編Dへ続く
490通常の名無しさんの3倍:2006/07/03(月) 11:54:53 ID:???
>>470
お見事。としか言いようがない、いいバトルでした。
アストレイのキャラはあんまり知らないんですが、このSSを読む限り
面白そうな奴がいそうですね・・・。分からない人にもわかるように
上手くかけてると思いますよ。

GJ!でした
491通常の名無しさんの3倍:2006/07/03(月) 23:11:53 ID:???
age
492通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 19:14:00 ID:???
アストレイ三大人気キャラの一人ガルシア閣下があの仮面をかぶってスカウトになっていると予想。
493通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 20:57:11 ID:oaqTGilX

494通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 23:48:41 ID:???
ここの職人様達のSSにいつも燃えたり萌えたりしています。
妄想が高じてDVDジャケットを捏造してみました。
見て頂けたら幸いです。
ゲンがどう見ても10代じゃなかったりマユがタイトスカートだったりするのはご愛嬌(;´д`)
ttp://syobon.com/mini/src/mini24610.jpg
495通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 23:52:01 ID:???
>>494
アキトwww
496通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 23:55:07 ID:???
適切な言い方ではないけどパッと見は凄くそれっぽいw
GJ!!
497通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 00:43:28 ID:???
>>494
二人とも五体満足だけどカッコイイ!GJ!
498通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 01:29:41 ID:???
すごく…アキトです…w
499通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 08:51:29 ID:???
>>494
いいんじゃないですかwwwゲン(PP戦記版)もマユもめっちゃカッコいいし、
こーなるとバックに「黒いデスティニー」とか「蒼いデスティニーインパルス」が
観たいと思う俺が居ますwwwいや、どーにもマユとデスティニーってイメージ
結びにくいと言いますが・・・
そーいえば現在連載中の組み合わせとして(本編準拠組み合わせ除く)、
マユと運命(ほのぼの)、伝説(マユ種)、Sフリ(隻腕)、テスタメント(マユトレイ)
シン(ゲン)とストライクMkU(PP)、運命(マユ種)
キラとアカツキ(ほのぼの・隻腕)、自由カラーのムラサメ(PP版)
とありますが。
500通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 10:18:42 ID:???
凄く…マユの乳が大きい気がします…
501通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 17:19:01 ID:???
毎日お兄ちゃんを想いつつ(中略)してたら大きくなってしまったものと思われ。
502通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 17:30:01 ID:???
503通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 17:41:31 ID:???
504通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 18:16:32 ID:???
>>494
ちょwwwwテンカワ、お前wwww
ナデシコネタで一発書いても違和感ないかもしれないな、ゲンは
505通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 18:55:06 ID:???
「君の知っているシン・アスカは死んだ…」
こうですか?分かりません!
506通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 19:13:33 ID:???
>>505
違和感ねえwww
てか連合の制服似合ってるなー
507通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 21:40:43 ID:???
>>505
キラが舌なめずりをしてマユをさらうわけですね?
508通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:12:17 ID:???
PP書いてる者です。

>>494
素敵な妄想DVD絵、ありがとうございます。
お店にあったら間違いなく買います(ぇ
ナデシコ見たことないので分かりませんが、アキト君にそんなに似てるのか……
今度ナデシコも見ておきましょうかね。

では、お礼代わりに27話投下始めます。
スレ容量が微妙なので、前半だけ投下します。新スレが出来た暁には、後半を。
ギリギリ30kくらいで収まるとは思うのですが……
とりあえず、やってみます。
前回のラストと多少前後しますが、笑って許してやってください。


5091/16:2006/07/05(水) 22:13:24 ID:???
大西洋連邦イギリス領にあるロード・ジブリールの邸宅。
現地は、ちょうどティータイムの時間。広大な邸宅の、これまた広大な庭に、一組の男女がいる。
彼らは今、テーブルを挟んでお茶の時間を楽しんでいる……ようには見えない。
和気藹々とした雰囲気ではなく、どこかしらぎこちない二人。
二人のうち、男の方はこの館の主――ロード・ジブリール。
もう一人は主の客、もとい先日強引に連れて来られた女性――ラクス・クライン。
ジブリールは仕事中なのか、書類を読みながらお茶を飲んでいる。
ラクスは、主の顔を伺いながら……お茶に手を伸ばす。

ラクスは、強引にこの館に連れて来られたものの、着いてからの待遇は決して悪くなかった。
むしろ、真逆。捕虜としての待遇ではなく、客人として扱われていた。
軟禁されるわけでもなければ、監視がつくわけでもない。
ただ、ジブリール本人から、屋敷の外を歩くことは止めてくれと言われたのみ。
ラクスは屋敷の中で、自由ある生活を送ることが出来た。

しかし彼女は、この日突然館の主から呼ばれた。
これまで、一度ディナーに呼ばれた以外は、全く接触してこなかったジブリール。
彼の突然の呼び出しに、ラクスは内心驚きつつ、恐る恐る赴いたのだった。
そんな彼女とは対照的に、ジブリールは泰然としたもの。
仕事をしながらティータイムを過ごすことを詫びただけで、黙々と書類を読み耽っている。
……と、唐突に彼は口を開いた。

「ラクス・クライン……少し宜しいですかな? ご覧頂きたいモノがあるのですが……」
「……! は、はい……何でしょう?」

突然声を掛けられたことに、ラクスは驚きを隠せない。が、反射的に応じてしまった。
別段拒む理由もなかったからであるが……その言葉に、ジブリールは眺めていた書類を遣す。
その書類を一読するラクス。途端に、彼女の顔色は一変する。
書類には、数枚の写真がクリップで留められていたが……
そのうちの一枚に、彼女の最愛の人が映っていたのだ。キラ・ヤマトの姿が。

「キラ……!」
「……今の彼は、オーブ軍タケミカヅチ所属、キラ・ヤマト三尉。ムラサメに乗っているということです」

写真はキラがオーブ軍に入隊したときもの。写真のキラは、真新しい軍服を身に纏っていた。
しかし、ジブリールの説明は耳に入っていたのか……ラクスは愛しげにキラを見つめるだけだった。
5102/16:2006/07/05(水) 22:14:42 ID:???
ラクスがキラへの思いに耽けり、それが落ち着くまで正味2,30秒を要した。
その後、ラクスは我に返り、渡された書類と写真のうち……キラ以外の物へと目を向ける。
その中で、ラクスはある写真に目を奪われた。キラ以外に見知った者がいたのだ。
黒の連合軍服を身に纏った、黒髪の少年の姿――ラクスを攫った人物、ゲンに他ならない。
そして、その写真と一緒にクリップで留められていた書類にはあるMSの名前があった。
それは、ラクスも良く知る機体。討伐者の名を持つ機体。

「……! これは、ストライク!?」
「ご名答。キラ・ヤマトが駆ったファースト・ストライクの後継機――ストライクMk-Uです」

ラクスの声に、ジブリールが応える。写真に納まっていたのはストライク。
赤・青・白のカラーリングだったファーストに、外見はよく似ていたが……色が決定的に違った。
グレーを基調としたカラーリングに黒が混じり、胸部・背部・脚部は若干赤く染められている。
禍々しい色――それが、ラクスがMk-Uに抱いた印象であった。

「この人物は、私をザフトの特殊部隊から救ってくれた方ですね?」
「Genocider Enemy of Natural……ゲン・アクサニスという者です」
「そして……この方が、ストライクMk-Uに乗っている」
「はい。キラ・ヤマトの後継者として……ね」

ナチュラルの敵を掃滅する者――彼がキラの後継者、ストライクMk-Uを駆る者なのだ。
ゲンと、写真に写る黒いストライクを交互に見ながら、ラクスは一つため息をついた。
このゲンという者もかつてのキラ同様、地球連合軍に利用されている者に違い有るまい――
それが、ラクスが抱いた思いであった。

やがて、彼女は残る書類に目を通す。
それらは作戦報告書の一部であろうか。地中海方面軍、空母J・Pジョーンズ、第81独立機動群……
ラクスには見慣れぬ単語が並んでいるが、おそらくそれらは軍からジブリールに届けられる報告書。
今彼女がこうしてここにいる間にも、戦争は続き、戦火は拡がっている。
ラクスは今日二度目のため息をついた。
……と、その時、ラクスの目に妙なものが飛び込んできた。
それは剣。報告書の最後の一枚、それに留められた写真に納まっているのは――極大の剣。

「XM404……グランドスラム? この剣は、一体……?」

報告書には"for Strike Mk-U"の文字が。ラクスは、漸くそれがMS用の装備であることに気づいた。
5113/16:2006/07/05(水) 22:15:46 ID:???
ジブリールがラクスに軍からの報告書を見せたのは、キラの安否を知らせるため。
同志であり盟友、恋人でもあろう男の消息を知らせてやったのは、ジブリールにとってはほんの座興。
半軟禁状態の女性に、このくらいしてやっても良かろう――せいぜい、その程度の気持ちでしかない。
ゲン・アクサニスやストライクMk-Uといった他の書類は、あくまで余禄のつもりであった。

キラはオーブ軍にいる。彼は一応無事らしい。ラクスはそのことに安堵するものの……
かつては三隻同盟の盟主として、戦火を潜り抜けた女傑としての才も覗かせる。
黒髪の少年と、黒いストライク――この二つの資料をくまなく見て、戦況を分析することも忘れない。
報告書には、緒戦の戦果が記載されていた。主たる戦場は、ユーラシア連邦のヨーロッパ方面らしい。
ラクスはそのことを読み取るが……それらが精々。今の彼女に分かるのは、この程度のことであった。

しかし、その中で、興味本位で惹かれたモノがあった。
大剣グランドスラム――何故今更このようなモノが戦場に送られたのか?
ラクスは腑に落ちなかった。彼女の脳裏を過ぎるのは、キラの駆ったフリーダムの姿。
剣一本に比べれば、フリーダムのバラエーナ収束砲のような重火器を搭載した方が、効率は良い筈。
ラクスはその疑問を、直にジブリールにぶつけてみる。

「ジブリール卿、つかぬ事を伺いますが……
 報告書では、月からストライクMk-Uの元へ、この剣が送られたということですが……
 このような剣に、如何ほどの意味があるのでしょうか?」
「……む?」
「敵を倒すならば、ビーム砲のような重火器を多数搭載したほうが、はるかに効率が良い筈です。
 然るに、貴方が送られたのは剣一本。今更このような武器を持ち出すのは、些か――」
「――ま、時代遅れではありましょう」

あっさりと、ジブリールは非を認める。
大剣グランドスラム、それは嘗ての遺物――
彼の大剣は、前大戦の最中、ストライクのオプション装備として開発されていた巨大な実体剣。
打突・斬撃系のあらゆる戦闘に対応するのが目的で、運用試験結果は上々だった。
しかし、アーマーシュナイダーの装備が決定していたため、ストライクへの搭載は見送られる。
また、G強奪とヘリオポリスの崩壊により、剣の所在などが一切不明になってしまい……
開発計画自体が宙に浮いてしまったのだ。
が、ストライクの後継機開発に当たり、ジブリールはこの武器に目をつけた。
近年兵器開発は隆盛を誇り、ビーム兵器主体となった戦場。しかし……
一方では、ラミネート装甲を始めとした、ビームコーティングを施された兵器も登場。
今大戦では、ビーム兵器が万能とは言い難い状況になろう――それが、ジブリールの想いであった。
5124/16:2006/07/05(水) 22:16:56 ID:???
こうして、ストライクMk-Uやガーティ・ルーを建造させる過程で、グランドスラムも再建される。
あらゆる装甲を破壊するために、剣の質量を以って押し切る――
このコンセプトを元に、新生グランドスラム建造計画は進められた。
前大戦から二年の空白――その間、高められた兵器開発の技術の粋を集めて。
過重量の問題を解消するため、剣全体の軽量化を図り……
ビームコートされた装甲を断ち切るべく、刀身にラミネート装甲と対ビームコーティングを実装する。
但し、Mk-Uとガーティ・ルーの建造が優先されたため、グランドスラムの完成は大幅に遅れた。
最も遅れたことがプラスにも働く。軽量なレアメタルを火星人、マーシャンから入手出来もしたのだ。

「……マーシャン? 火星に住む者たちのことですか?」
「ええ。彼らは文字通り、火星一帯に共同体を築いている者達です。
 彼らは、地球圏にはない金属を持っている。マーズのレアメタルは、軽量にして強靭。
 連中は、地球圏の中立組織にコンタクトを取っている。どうやら、地球との交流を図っているようです」
「……それで、資材の一部を手に入れたと?」
「お陰で、最良の剣を作ることが出来ました。それは今、セカンド・ストライク――Mk-Uの手の内に」

マーシャンのレアメタルを主材料として、ストライクMk-Uと共にグランドスラムは再建される。
かくして、ゲンの元へと新生グランドスラムは届けられる。ラクスはマーシャンという単語に驚きはした。
……が、やはり腑に落ちないのはグランドスラムのこと。剣よりも、有効な武器は多くある筈だからだ。
相変わらず不審顔のラクスに、ジブリールは諦め顔でこう言った。

「ま、女性である貴女には理解できぬことでしょう」
「……私が、女だと不都合でも?」
「ええ。男という生き物は、剣というモノに憧れを抱きます。少年の頃から、ね。
 兵器としての有用性というより、根はもっと単純でしょう。詰まるところは……」

笑みを浮かべ、愉快そうにジブリールは応える。ラクスの次の反応を、内心楽しみにしながら。

「伊達と酔狂……といったところでしょうかな? 浪漫ですよ、浪漫」
「………」

片目を瞑りながら、茶目っ気を交えつつ……ジブリールは応えた。
実効性や有用性よりも、浪漫を念頭に置いてしまう。男とは、つまりそういう生き物なのだ。
女であるラクスには、やはり理解できないのか、彼女はキョトンとしたまま。
そんな彼女をジブリールは笑う。嘲笑でも冷笑でもなく、心底愉しそうに。そう、男だから――
ジブリールの想いを知らない筈のゲン。彼もまた、何の疑問もなくグランドスラムを受け入れていた。
5135/16:2006/07/05(水) 22:18:02 ID:???
地中海を照らす陽光。
燦然と輝くそれの眼下、二者は互いに剣を手に取り対峙していた。
ただし、それは人ではない。人をかたどった機械人形。機動兵器モビルスーツ――
2機のMSが剣を構えるのは、オーブ軍旗艦・空母タケミカヅチの上。
ザフト軍艦ミネルバ所属インパルスと、地球連合軍第81独立機動群所属ストライクMk-U。
エクスカリバーを正眼に構えるインパルス。
対するストライクは、グランドスラムをダラリと下段に構えたまま。
今正に剣を交えんとする両機。しかし……
眼前にそれらを捉えるタケミカヅチのブリッジで、ユウナ・ロマ・セイランは意外なことを呟く。

「アマギ一尉。敵艦ミネルバに連絡を取れるかい?」
「……はい?」
「ミネルバの艦長と話がしたい。出来るかな?」

ユウナの意図を解しかねたアマギは、鸚鵡返しに疑問系で返事をしただけ。
が、ユウナは彼に構わず、再度命令を下した。ミネルバと連絡を取れと。
突然問われたことに戸惑いながら、アマギは応える。

「……タケミカヅチもミネルバもジャマーを発しています。今現在通信を繋ぐことは困難かと。
 ですが……ジャマーを互いに弱めれば、通信がつくかもしれません」
「よし、取り次いでくれ。タケミカヅチのジャマーも弱めて構わない」

ユウナは一体何をやろうというのか――?
真意を測りかねるアマギだが、ユウナは仮にも一軍の将。命令を聞かないわけには行かない。
彼はすぐさま、指示通り電波妨害のジャマーを弱め、モールス信号を用いミネルバに連絡を取る。
信号は伝える。ワレ ツウシンノイシ アリ――と。

ミネルバにも容易にその信号は視認出来た。
先刻、マユ・アスカがインパルスを駆り、単身タケミカヅチに乗り込んだ。そこまでは良い。
だが、ミネルバは次の一手を打ちかねていた。
タンホイザーは潰されてもトリスタンとイゾルデは健在。接近して主砲を放つことは可能だった。
でも、そうなればマユをも巻き込みかねない。タリアは逡巡の末、モールス信号の意を汲み取る。

「アーサー、ジャマーの効力を弱めて! その後、オーブ軍と交信を!」

タリア・グラディスは副長アーサー・トラインに指示を出し、ミネルバはオーブと連絡を取る。
5146/16:2006/07/05(水) 22:19:06 ID:???
電波かく乱が止んだ戦場。ノイズは混じるものの、交信は可能となった。
ミネルバのブリッジの大型モニター。そこにユウナの顔が広がり、通信は始まる。

『はじめまして、勇敢なるザフト軍艦、ミネルバの皆さん。
 私はオーブ軍ユーラシア方面派遣軍司令官、ユウナ・ロマ・セイラン中将だ』
「……ミネルバ艦長、タリア・グラディスです」

丁寧なユウナの自己紹介に、タリアは仏頂面で応える。
今は戦時、しかも戦闘中なのだ。このような時に交信を取るのは、降伏勧告目的なのが通例。
しかし、今だミネルバは健在。降伏など出来よう筈がなかった。

「降伏勧告なら、お断りするわ。まだ、我が軍は戦えます」

毅然とタリアは断りを入れた。タンホイザーを失い、MS二機を戦闘不能にされてはいるが……
それでも降伏するには余りある戦力。ハイネ隊での挽回は可能であった。
現に、マユのソード・インパルスがタケミカヅチにまで乗り込んでいる。
故に、タリアは降伏勧告を突っぱねるつもりでいた。が、ユウナの言葉はタリアを瞠目させる。

『別に降伏して欲しいわけじゃない。していただければ、何よりではありますが』
「では、一体何を?」
『お宅のMSが、今タケミカヅチの甲板にいるんですけど……見えますよね?』

ユウナが申し出たのは、インパルスのこと。彼は何を言おうというのだろうか?

『勇敢なお嬢さんだ。素晴らしい。たった一人で敵陣に切り込むなど、大の男でも中々出来ない』
「セイラン中将、何が仰りたいのですか?」
『……あのお嬢さん、死にますよ。今、タケミカヅチのMS群は、彼女に銃口を向けています』

ユウナの言葉どおり、拡大映像がミネルバのスクリーンに写しだされる。
シュライク装備のM1アストレイが、インパルスに照準を合わせているのが。
一機ではない。10数機にも及ぶMSが、一斉にライフルを構え、マユを狙っている。

『あのお嬢さん、私が撃てと命じれば……死にますね。
 でも、勇敢な少女兵を嬲り殺しにするのは、オーブ軍の誉れに有らず。そこで提案があります』

ユウナの次の申し出――それは両軍の帰趨を左右する大事となる。
5157/16:2006/07/05(水) 22:20:11 ID:???
ユウナはタリアに話しかける。モニター越しに笑みを交えながら。

『一つ、勝負をしませんか?』
「……勝負?」
『今、あの白いMS……インパルスでしたか?
 あのMSと、対峙している大西洋連邦のストライクMk-U。両機に、決闘をさせませんか?』
「……!! 決闘ですって!?」

決闘――荒唐無稽とも思える申し出を、ユウナはした。
タリアは、オーブのセイラン家の長男ということは知っていた。
が、セイラン家とは実利に長けた政治家の家柄と聞く。
その家を継ぐ者が、こんな提案をしようとは……タリアは夢にも思わず、ただ次の言葉を待った。

『タケミカヅチとミネルバ、どちらも危機に瀕している。
 ミネルバは、多数のMSに囲まれていますし、我々はインパルスに刃を向けられている。
 これでは、下手をすれば両方潰えてしまう。これでは、お互い立つ瀬がないでしょう』

確かに、ミネルバはオーブ軍のムラサメと、大西洋連邦軍のウィンダムに囲まれている。
逆に、タケミカヅチはインパルスが取り付いているが……
インパルスが、撃墜されることを覚悟でタケミカヅチのブリッジを潰すことは可能。
いわば、千日手。両軍とも、手詰まりで、決め手を欠いた状態なのだ。

『そこで、提案です。タケミカヅチの甲板にいる2機のMS。
 二人に、決闘をしてもらいましょう。そして……互いの勝利に、自軍の全てを賭ける!
 インパルスが勝てば、オーブ軍は無条件で降伏します。逆に……
 あの黒いストライクMk-Uが勝てば、ミネルバの皆さんに降伏してもらいたい。如何でしょ?』

両軍の運命をとした一戦を、2機のMSに託す。
通常の戦闘では考えられないことを、ユウナは提案してのけたのだ。
タリアは、実直な軍人。本来ならば、このような提案を受け入れよう筈がない。だが……

「……良いでしょう。その提案、受け入れましょう」
「か、艦長!? 何を考えているんですかぁ!?」

抗弁するアーサーの声も虚しく、タリアは申し出を即断で受け入れる。
相変わらず対峙したままのインパルスとストライクMk-U。この二機に、一戦は託された。
5168/16:2006/07/05(水) 22:21:13 ID:???
……とはいえ、このような尋常ならざる決闘に疑義を挟まないものが、いない筈はない。
タケミカヅチでは、アマギが真っ先にユウナに食って掛かっていた。

「ユウナ様!? どういうことです!」
「……怒るなよ、アマギ」
「怒ります! これでは、無茶苦茶じゃないですか!!
 我々は今だ有利なのです! あのインパルスを、アストレイ隊で沈めれば済む話です!」

正論、全くの正論をアマギは唱える。確かに、そのとおり。
マユの駆るインパルスは、敵陣の真っ只中。周りから撃たれれば、撃墜は免れ得ない。
とはいえ、問題もあった。

「じゃあ、アマギの言うとおりにやったとしよう。その結果、どうなる?」
「……ど、どうなるって、そりゃ……」
「インパルス撃破の誘爆で、タケミカヅチは大損害を被るかもしれないね」
「……う! そ、それは……」
「あるいは、インパルスが撃墜されるのを覚悟でブリッジを沈めに来るかもしれない」
「……た、確かに。で、ですが!」

アマギはなお抗弁しようとするが、ユウナは手でそれを遮り……とどめの一言を放つ。

「よしんば、インパルスを無傷で撃てたとしよう。でもさ……
 あの勇敢な少女兵を、オーブ軍が寄ってたかって嬲り殺しにしたとあっては……拙くない?」
「………」
「戦場においては、士気こそがモチベーションとなる。
 ……気まずいよね。女の子を、大の男が寄ってたかって殺しちゃったら……さ?」

ユウナの言葉に、今度こそアマギは沈黙してしまった。
ユウナの言葉もまた、正論ではあった。
インパルス撃墜で、タケミカヅチは損害を被るかもしれないし、それは艦橋も例外ではない。
また、最後の言葉どおり……
たった一人の少女兵を、オーブ軍が嬲り殺しにするのは、如何にも気分が悪かった。
沈黙するアマギ。彼を取り巻くオーブの兵も、気持ちは同じだった。
それらを代弁するかのように、トダカは語る。彼の一言で、方針は固まった。

「……ユウナ様の、ご指示に従います。全軍に発令! 停戦、一時停戦だ!」
5179/16:2006/07/05(水) 22:22:56 ID:???
同じ頃、ミネルバも蜂の巣をつついたような騒ぎだった。
最も、騒いでいるのはただ一人。アーサー・トラインその人である。

「艦長! 何を考えているんですか!?」
「落ち着きなさい、アーサー」
「落ち着いてられません! マユに一戦を託すって……無茶苦茶ですよ!!」
「向こうがやるって言ってるんだから、やらせるしかないじゃない?」

アーサーの抗弁にも、タリアは耳を貸そうとしない。
抗弁を聞いている間にも、タリアは動く。最も、次の瞬間、彼女は、言葉とは裏腹のことをする。

「メイリン、MS整備班のエイブス班長に連絡! バビ2機の修理に掛かる時間は?」
「……は、はい! 先ほど連絡がありまして……この戦闘中には無理かと」
「スエズ方面軍からの増援は?」
「暗号通信で、たった今……近隣の空戦MS隊を送ったと、連絡がありました」
「OK。やれるわね」

タリアは、マユに一戦を託すといいながらも、次の手を打つ。
その言葉に、漸くアーサーも悟る。タリアの言葉は、別の意味を持っていたのだと。

「か、艦長……? もしかして……」
「当たり前よ、アーサー。時間稼ぎに、決まっているじゃない?
 仮にマユが勝っても、連中が降伏する保障もない。打つべき手は、打たせてもらうわ」

そう、全ては時間稼ぎのため。
マユの一戦を見守りながら、緒戦で増援要請をしたスエズ方面の友軍の到着を待つ。
タリアとて一軍の将。タダでミネルバを敵にくれてやる言われはない。
マユが勝てば重畳。もしも負けた場合には、決死の覚悟で弔い合戦を挑むつもりであった。

「アーサー! トリスタンとイゾルデ、起動させているわね?」
「ハッ、ハイッ! いつでも撃てますッ!」
「マリク! マユが勝つにしろ負けるにしろ、タケミカヅチは沈めるわ!
 敵に気づかれないよう、微速前進! トリスタンとイゾルデの射程圏内に入って頂戴!」

タリアは、操舵士のマリクに声を掛け、打つべき手を打つ。そして、裏の指示とは逆の……
表の指示も出す。すぐに、タケミカヅチ同様、ミネルバからも自軍に停戦命令がなされた。
51810/16:2006/07/05(水) 22:24:01 ID:???
ほぼ同時に、タケミカヅチとミネルバから停戦の発光信号が放たれる。
突然の停戦命令に、ハイネ・ヴェステンフルスは瞠目する。
停戦の信号弾の、膨大な光玉に目を奪われながら、グフのコクピットでハイネは叫んだ。

「停戦だとッ!? どういうことだッ!!」

疑問を抱きながらも、刃を交えていたムラサメと距離を取る。
相対していたのは、馬場一尉の駆るムラサメ。MS隊長同士の一戦は、一進一退。
緒戦でグフはヒートサーベルを、ムラサメはビームサーベルを抜き払っていた。
お互いに、狙うのは相手の火器。ハイネはムラサメのライフルを、馬場はグフのビームガンを。
そして、互いを斬撃が襲った。

結果は、ハイネはムラサメの右腕を断ったものの……馬場もグフ左手甲にある火器を破壊。
互いに遠距離の装備を奪われた状態で、再び切り結ぼうとしたところで、停戦命令が下る。
突然の異変。余りのことに、ハイネは勿論、馬場も瞠目していた。

「クッ……反射神経の差か! ライフルだけでなく、腕ごと持っていかれるとは!!」
『オッサン、命があることを喜びな!』
「ほざいていろ、若造が!」

ハイネと馬場は、互いに罵りあいながらも、剣を収めた。
そしてハイネ機にはミネルバから、馬場機にはタケミカヅチから電文が送られる。
その内容に、今度は二人とも大声をあげ疑義を呈する。

「なッ……! マユとストライクに一騎打ちをさせるだとおッ!?」
「馬鹿な! セイランの御曹司は、何を考えているッ!?」

互いに、電文の内容を声に出して嘆く。ベテランパイロットには、理解しがたい指示だった。
それでも、命令は絶対。上官が決めたことに、逆らうことは出来ない。
刃を収めた両機は、互いに部下のMSを招集しながら、軍を一時退く。
直ぐに再戦できる距離だが……一定の距離を保ち、両軍はにらみ合う。

残存、オーブ軍ムラサメは20余り。ハイネ隊は4機。
分の悪い戦いながらも、ハイネ隊は奮戦し、今だ一機の被害も出ていなかった。
キラに戦闘不能にされたバビ二機を除いての話だが。
51911/16:2006/07/05(水) 22:25:11 ID:???
MS隊を率いる者は、上官に疑義を挟むこともできなかった。だが……
上官ではなく、共同戦線を張る者、部下ではなく盟友の者にとっては、気兼ねする必要もない。
ネオ・ロアノーク大佐は、J・Pジョーンズの艦橋で声を荒げていた。
彼は、即座にタケミカヅチに通信を繋ぎ、ユウナを問いただす。

「セイラン将軍! これは一体、どういうことかッ!?」
『……これは異な事を申される。我々に先陣を任せたのは、貴公ではありませんか?』
「それはそうだ! しかし、我々に何の相談もなく――!」
『戦局は、刻々と動くものですよ。現状、互いに一歩も譲らぬ激戦。
 だからこそ、大軍同士では決着がつかない事もある。違いますか?』

先陣を任された以上、疑義を挟むのは止めて貰いたい――
暗にユウナはそう言って、ネオの諫言を遮る。だが、ネオとしては引き下がれる筈もない。

「それでも! 作戦の全権を、貴公に一任した覚えはない!」
『……それは、そのとおりだ。ならば、貴公らは貴公らで、動かれれば宜しい』
「……! 何だと?」

折れないネオに、ユウナはやれやれといった表情で話しかける。

『この一戦、オーブ軍とミネルバの間で交わされたものだ。つまり、裏を返せば……』

ユウナの顔から笑みが消える。そして、酷薄な声で、ネオに諭す。

『アナタ達は自由に動いて構わない。
 大西洋連邦の連中が何をしようと、我々は預かり知らぬところ。違いますか?」
「……我々に、ミネルバを撃てと?」
『私からは何も言えません。大西洋連邦に比べ、我々は吹けば飛ぶような小国ですから。
 ですから……やりたければ、やれば宜しいじゃありませんか? ねぇ、大佐殿……?』

笑みもなく、ユウナは言い放つ。オーブはオーブ、大西洋連邦は大西洋連邦。
タリアが時間稼ぎと応戦の準備を整える一方で、ユウナもまたネオをけし掛けていた。
互いに一歩も譲らぬ謀略戦。華々しい一騎打ちとは裏腹に、影では策謀が巡らされていたのだ。
最も、最後にユウナはネオに釘を刺す。これから始まる一戦の邪魔はするなと。

『ま、仕掛けるのは、ストライクとインパルスの決着がついてからにして欲しいものですが』
52012/16:2006/07/05(水) 22:26:03 ID:???
ユウナとタリアが互いに謀略を巡らしていたのは、ほんの2分ほど。
その間、対峙したままのインパルスとストライクMk-U。
マユ・アスカとゲン・アクサニス。にらみ合ったままの両者に、ユウナの声が朗々と響く。

「タケミカヅチとミネルバ、両軍の合意の元に裁定は下ったッ!
 これより、両軍の命運をかけた一戦を始めよう!
 インパルスが勝てば、オーブ軍は全軍武装解除、投降する!
 逆に、ストライクが勝てば、ミネルバが降伏する! 二人とも、分かったかい?」

朗々とした宣言の後、優しげな声でマユとゲンに語り掛ける。
その声に、マユは内心驚愕していた。
自分がタケミカヅチに突貫したのは、半ば自暴自棄。一か八かで降伏を迫ったに過ぎない。
しかし、それが功を奏し、一転しての決闘。信じられない思いで、マユはミネルバに通信を繋ぐ。

「艦長! 本当に良いんですか!?」
『貴女に、全てを託すわ。この戦、どの道私たちとって、圧倒的に不利だもの』
「……ありがとうございます! 精一杯、やりますッ!!」
『……死なないでね。怖くなったら、逃げてもいいのよ? 』
「逃げません! 戦いますッ!!」

タリアは嘘をついた。言葉とは裏腹に、タケミカヅチを撃つ準備を進めていたのに。
マユに慰めの言葉を掛けたのは、自責の念か。それでも、マユは健気に戦うという。
その言葉に、なおタリアは胸を痛めた。
一方のゲンも、ユウナとネオの両者に通信を繋ぎ、確認を取る。本気かと、問うたのだ。

『勿論、本気だとも。精一杯、戦ってくれたまえ』
「……セイラン将軍も、モノ好きですね。さっさと敵を片付ければいいのに」
『君たちと、今後も良好な関係を築けるかどうかの、テストさ。ここまでは上手く行っている』
「……テスト?」
『いや、こっちの話さ。それじゃ、頑張ってくれたまえ! またね♪』

ユウナの言葉に含みがあるのに気づきながらも、ゲンは操縦桿を握り締める。
話している間に、ネオからの連絡も入っていた。ネオからの通信は電文だった。
上官からの指示は、モニターに映し出された。『五分後に仕掛ける』――その文字で彼は悟った。

「ハッ! そういうことかよ! いいぜ……5分以内に、コイツを仕留めてやるよ!!」
52113/16:2006/07/05(水) 22:27:08 ID:???
ゆっくりと、ゲンはストライクMk-Uの歩を進める。彼の操縦で、黒い機体が歩き出した。
甲板の先端部に降り立ったMk-Uが、ブリッジ近くにいる白い機体インパルスに迫る。

一歩一歩、踏みしめるように歩く黒い機体は、マユにとっては圧倒的ですらあった。
パイロットスーツに身を包んだ少女は、滴り落ちる汗に不快感を覚える。
だが……それ以上に不快なことがあった。
先ほどから聴こえてくる男の声。それは、聞き覚えのある声。

『……逃げたけりゃ、逃げてもいいぜ? 今なら、まだ逃げられる』
「……! 誰が、逃げたりなんか!」

徐々に近づいてくる黒い機体。その威圧感で吹き出る汗は、ベットリとマユの肌を濡らす。
黒いストライクは、相変わらず手に持つ巨大な銀の剣――グランドスラムを構えていない。
強いて言えば、下段の構え。だが、構えているとは言いがたいほど無造作な仕草。
それは、自信がなせる業か、虚勢がなせる業か。
前者とも後者とも判断のつかないマユにとっては、徐々に恐怖感が募っていく。
そして、また――あの声が聞こえる。

『ユニウスセブンを砕くときに助けを借りたが、その借りは大気圏突入時で返したぞ』
「……貴方となんか、話したくないッ!」
『上等。これで、お前を……心おきなく殺せる』

間近に迫る黒い機体。"殺す"という単語と共に、恐怖感は倍増される。
臆していては負ける――そう思ったマユは、敵との距離を測ろうとした。
間もなく、敵はソード・インパルスの間合いに入る。だが……

――敵の間合いが、分からないッ!

心の中でマユは叫んでいた。少女は戸惑っていた。攻守何れを選択すべきか。
もしも、インパルスのエクスカリバーよりも敵の間合いが長ければ、敵に先手を取られる。
また、見たところ、ストライクの持つ剣は実剣。
本来なら、VPS装甲のインパルスは切られる筈がなかった。それでも……
ストライクは、その剣を持ちながらインパルスを両断しようと向かってくる。。
ならば、あの剣は、インパルスをも切れるかもしれない。
敵との間合い、敵MSの性能、敵の剣の持つ能力――それらは、疑心暗鬼となってマユを襲う。
だが、そんな疑心暗鬼を生み出したのは、紛れもなく徐々に近づいてくる黒い機体の威圧感。
52214/16:2006/07/05(水) 22:28:13 ID:???
マユが思い巡らす最中も、ストライクはインパルスに迫る。
間もなく、敵と刃を交える距離。マユはそのことを悟る。

――近いッ! もう直ぐ、ファーストコンタクト……!

自分から仕掛けるか否か。マユは躊躇った。
間合いに入ってくれば、即座に上段に構えたエクスカリバーを振り下ろすつもりだった。
しかし、敵の間合いが分からない。敵が先に動けば、防御を迫られるのは必然。
攻撃と防御。どちらを優先させるか。なおも、マユは戸惑う。

――やらなきゃ、やられる! 自分から、仕掛けなきゃ!

それは、極めて明確な答えであり、正答と言えた。だが、この場合は……
内心の動揺、迫る黒いストライクの威圧感に気圧されていた彼女には、それは当てはまらない。
敵との距離を測ることに必死の少女は、息が詰まる程の緊張感に包まれていた。

そして、それを見透かしたかのように……男の声が、マユのコクピットに響き渡る――!!

『オオオオオオオッッ!!』

それは、咆哮。獣染みたゲンの叫び声――!
その声は、容易に少女の判断を誤らせる。マユは動く。否、動かされてしまった。

「……ッ!!!」

ゲンの声に反応するかのように、インパルスは一歩を踏み出す。怯えたマユの挙動だ。
が――遠い間合い。まだ、エクスカリバーの射程内にストライクMk-Uは入っていなかった。

「……え?」
『戦場では、ビビったヤツが真っ先に死ぬ。士官学校で、教わらなかったのか?』

中途半端な格好で、ストライクの眼前に出てしまったインパルス。
エクスカリバーを振り下ろそうにも、そこにストライクはいない。もう半歩の距離。
だが、少女がその距離を縮める前に――敵は既に、下段から上段に剣を構え直していた。

『そして、お前は今から死ぬんだよッ!!』
52315/16:2006/07/05(水) 22:29:06 ID:???
ゲンの一声と共に、振り下ろされるグランドスラム――!
慌てて防御体制をとろうと、上段に構えたエクスカリバーを下ろすインパルス。だが……

ゴッ――!!

鈍い音が、タケミカヅチの甲板から海域全体に響き渡る。
インパルスの防御は、辛うじて間に合った。しかし、グランドスラムの剣圧全ては受けきれない。
響き渡ったのは、グランドスラムを受けきれず、肩口を切り裂かれたインパルスの装甲の音。
無残に切り裂かれた肩は、VPSさえも凌駕するグランドスラムの威力を物語っていた。

「き、切られたッ!?」
『チッ……! 良い反応をするな。 言った筈だぜ? 全てを両断する剣だとッ!!』

黒いストライクは、即座にバックステップした。再び、剣を振るうべく。

――切られた、VPSは効かない……そんな!

実剣でVPS装甲は切れない筈……内心、こうあれば良いと思っていた事象は、裏切られる。
実剣に見えたグランドスラムは、あっさりとマユの期待を裏切った。恐怖が、再びマユを襲う。
剣を振り被るストライクの姿、それに怯えるマユ。だが少女は、仲間の声に我に返る。

『マユ! 怯えるな!』
「……レイッ!?」
『相手の剣は、ビームサーベルほど軽量ではない! 受けようと思えば、受けられる!』

レイ・ザ・バレルの言葉に、マユは正気に返る。
グランドスラムは、決まれば一撃必殺となろう。だが、反面その振りも大きい。
レイの言葉に従い、即座に防御体制を取るマユ。
インパルスの出力を上げ、グランドスラムの衝撃に備える。

再び響き渡る轟音。しかし、今度はエクスカリバーで敵の剣を受け止めた。

『気休めにもならないが……恐怖を打ち破るには、勇気しかない! 頑張れッ!』
「は、はいッ!!」

マユの兄代わりになることを、ルナマリアから頼まれたレイ。彼はこの時、それを実践していた。
52416/16:2006/07/05(水) 22:30:04 ID:???
レイの言葉は、ゲンにも聞こえた。
怯える少女を縊り殺すことなど、彼には簡単――だった筈。
しかし、目の前に広がる光景は、それを否定する。
目の前にあるのは、エクスカリバーで斬撃を受けるインパルスの姿。

「どうやら、セコンドは優秀なようだな! クソッ!!」

舌打ちしながら、またもストライクはバックステップを踏む。
ただし、今度は間合いを広く開ける。
敵を恐怖させ押すことが出来るなら、強引な攻めも可能だろう。だが……
仲間の声に我に返った少女に、その手は通用しまい。ここからが、本当の勝負。
ゲンは距離を取りつつ、正眼にグランドスラムを構える。

「さて、どうする……お嬢さん?」

マユの駆るインパルスもまた、正眼にエクスカリバーを構える。
正確には、正眼ではない。両刃のエクスカリバーは、片刃しかゲンに向けられないからだ。
それでも、体勢を整え、攻撃の機会をうかがうマユ。
彼女のコクピットに、またも男の声が響く。

『怯えるのはやめたんだろう? 攻めてきたらどうだ?』
「……ッ!!」

マユは相手の意を察した。ゲンの言葉は挑発に他ならない。
歳相応に経験の浅かろう少女を、掌で弄ぼうとするのが言葉の真意――マユはそれに気づく。
敵の言葉に唆されてはならない。恐怖感を覚えてもならない。勇気を持って戦わねばならない。
そう思い、冷静さを取り戻そうと努めるマユだが……
先ほどから消えない不快感が、なおマユの心を苛立たせた。
それは、相手の声。ゲンの声は似ていたのだ。死んだ筈の兄の声に。
冷静にはなれないかった。こみ上げてくるものは怒りばかり。少女はインパルスを駆る。
勢い良くタケミカヅチの甲板を蹴り、白い機体が勇躍する。少女の激情と共に――!!

「その声で……その声で、喋るなあッ!!!」

エクスカリバーの斬撃を受けるストライク。
切り結ぶ両者、2機のMS。両機が奏でる斬撃の轟音が、周囲に木霊し続けた。
525通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:34:48 ID:???
んじゃすかさず新スレ立てに行って来るぜ
526通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:34:50 ID:???
PP書いてる者です。27話前半投下しました。
纏め人様のご指示通り、残り9kb。俺、GJ(ぉぃ
後半は28レス。即死回避にはなるでしょう(ぇ

……では、ちょっとだけ補足を。

マーシャンはアストレイの最新作で出てきました。
DSSCと交流があるようですが、ジブリはそこからレアメタルを流用したとお考え下さい。
中立組織のDSSCといっても、出資者はいる筈です。拙作ではジブリもその一人。
宇宙開発はロゴスにとっても無益なものではない。寧ろ、将来の利益になる可能性が高い。
軍産複合体である前に、ロゴスも商人なのですから。
……と、アストレイ新作に合わせて設定を捏造してみました。
拙作にとって吉と出るか凶と出るかは、今後のアストレイ次第な諸刃の剣ですが(ぉぃ


では、また新スレで。
527通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:37:33 ID:???
っと思ったが立てられんかった。チィ
っつーわけで、頼んだぞ↓
528通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:40:01 ID:???
ちょっと、やってみます。
529通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:46:37 ID:???
次スレ立ちました。

もしシンじゃなくてマユが主人公だったら17

http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1152106931
530通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:46:38 ID:???
531通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 22:49:44 ID:???
新スレ乙です!
5322/28:2006/07/05(水) 22:51:47 ID:???
ハイネ隊から一人離れ、ムラサメ隊の元へと向かうアスラン。
その光景もまた、容易に同僚からは視認される。ショーンとゲイルは、声を荒げる。

「アスラン!? おい! どこ行くつもりだ!?」
「隊長、アスランが……敵陣に!!」

部下の騒ぐ声に、ハイネは漸くその事態に気づいた。彼は、言われるまで気づかなかった。
眼下で展開される、インパルスとストライクの鍔迫り合いに、目を奪われていたからだ。
ハッとして、ハイネはグフのモノアイを、セイバーに合わせる。
赤い機体は、ブルーのムラサメに、少しずつ近づいていく。

「アイツ、投降するつもりか!?」
「隊長、どうします!?」

突然の事態に戸惑うハイネ。だが、彼は冷静だった。
投降するにしてはセイバーの挙動は不自然。武器は今だ持ったままだからだ。
何をしようというのかは、分からなかった。ただ、投降するつもりでないことは察する。

「……放っておけ。アスランには、アスランの考えがあるのだろう」
「「隊長!?」」

古参の部下二人の抗弁も虚しく、上官は新参の部下の勝手を赦した。ただし……
デュランダルから密命を受けていたハイネは、セイバーの通信帯域に、周波数を合わせる。
彼の脳裏を過ぎるのは、最高評議会議長の言葉――

『アスラン・ザラが、再び不穏な動きを見せた場合、始末は君に任せる』

万が一の事態に備え、ハイネはアスランの声を拾おうとする。
まさか、高々2年を過ごした土地に哀愁を覚え、離反するなどとは思えない。
だが……二年前の裏切りの前科は、今だ消えたわけではない。
部下を疑いたくはなかった。
それでも、常に最悪の事態を想定するのが、上級兵である自分の務め。
やがて、ハイネはアスランの声を拾う。
セイバーの通信周波数を、ようやく見つけることができたのだ。
部下は叫んでいる。悲痛な声で。短く、何度も何度も。
最初こそ、訝しがるハイネだが……やがて、部下が、誰かの名を呼んでいることに気がついた。
533通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 23:36:22 ID:???
PP書いている者です。27話後半で、一箇所訂正があります。23/28です。
纏め人様、お手数ですが、こちらと差し替えお願いします。(マユの台詞を抜かしてしまった……orz)


インパルスはフラッシュエッジを、ストライクはアーマーシュナイダーを。
互いに短い得物を持ち……相手を殺す機会をうかがう。
先に動いたのは、ダークグレー機体。ストライクだ。

「取って置きの、CIWSだ! 喰らいやがれッ!!」

頭部75mm対空自動バルカン砲塔システム、イーゲルシュテルン。
インパルスのCIWSと同じ機能を持つ、バルカン砲。
この期に及んで、ゲンはこの武器を使っていなかった。
ストライクは最後の最後で、使わずに取っておいた兵器を使う――!

炸裂音が木霊する。幾重もの弾丸が、霰のようにインパルスを襲った。
だが、インパルスの装甲はVPS。有効な攻撃とはなりえない……筈だった。
しかし、緒戦から補給無しに戦っていたインパルス。
マユの機体にも、限界は刻一刻と迫っていた。
コクピットに響くアラート。バッテリー残量が、底をつきつつあることを、警報は知らせていた。

「……バッテリーが!」

悲鳴に近い叫びを、マユは上げる。撃たれる衝撃にコクピットは激震に襲われる。
それでも、少女は意識を保ち、モニターを見ていた。
とっさに、インパルスは地に伏せる。屈伸運動を取り、屈み込み直撃を避けようとしたのだ。
必死の防御――だが、その瞬間をストライクは狙っていた。
その隙に、甲板に横たわっていた大剣、グランドスラムを握りなおす。
そして、握ったまま、構えなすことさえせず……
ストライクはインパルスに体当たりを敢行する――!!

「これで、終わりだッ!! 白いのッ!」

叫ぶゲン。ストライクの突貫に、インパルスは背面から仰向けに倒された。
形勢逆転――今、ストライクはグランドスラムを大上段に構え、インパルスを見下ろす。

「ああ……ッ!」

インパルスのコクピット。絶望の声を上げるマユ。
インパルスのCIWSはとうに尽きていた。そして……フェイズシフトも解ける。
最早、戦闘能力は皆無といえた。
力尽きたインパルスの中、マユは一人想う。
自分は、負けたのだ。
このまま死ぬのか――兄や父母、ユーリの元へ行くのか。
パイロットスーツを緩め、ヘルメットを取り……
マユは目を閉じ、最後の刻を待った。
534通常の名無しさんの3倍:2006/07/06(木) 02:58:05 ID:???
   〃´ ̄ヽ
   l 从ノハ ) 
   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  埋めぽっぽ
  (ノ (  )
     ゚ ゚

   〃´ ̄ヽ
   l 从ノハ ) 
   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  埋めぽっぽ
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535通常の名無しさんの3倍:2006/07/06(木) 02:59:25 ID:???
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   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  埋めぽっぽ
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536通常の名無しさんの3倍:2006/07/06(木) 03:00:24 ID:???
   〃´ ̄ヽ
   l 从ノハ ) 
   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  埋めぽっぽ
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   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  埋めぽっぽ
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   l 从ノハ ) 
   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  埋めぽっぽ
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   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  埋めぽっぽ
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   〃´ ̄ヽ
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   〃´ ̄ヽ
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   〃´ ̄ヽ
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537通常の名無しさんの3倍
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   l 从ノハ ) 
   ノ_ノ*‘ω‘)ハ  スレさんお疲れ様ぽっぽ
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