1 :
1:
それは、ラクロアに伝わることになる、もっとも新しい伝説の始まりだった──。
2 :
1:2006/04/20(木) 21:25:27 ID:???
──第一章 ラクロアの騎士
「ハルバートン閣下、彼らが我が国の新しい新鋭騎士達であります」
「おお、頼もしいものだ」
ラクロア城の王の間、女性の騎士長ラミアスが、ラクロアの王へ彼らを紹介した。
重騎士デュエル、法術士バスター、隠騎士ブリッツ、法剣士イージス、そして勇騎士ストライク。
「フッフフフッ」
「なんだ、デュエル?」
不気味に笑いだすデュエルにラミアスが剣を構えた。
「王の御膳で無礼であるぞ」
「無礼だと? 人間族如きの王が何だと言うのだ!」
なに? その瞬間、不思議な力に包まれたかと思うとラミアスの剣は弾きとんだ。
どうやら城一番の法術士バスターが何かを唱えたようだ。
何のつもりだ、と睨むをつけるラミアス、しかし、デュエルは己の剣を抜いて、それをラミアスへ向けて、答えとした。
「どうゆうことだ!?」
「はっ! これだけ見てもわからんとはな」
「さすが人間族って奴はお気楽だよな〜?」
デュエルとバスターが一変して悪態をつく。
「まさか、反乱か!? ……ハルバトーン閣下!!」
ラミアスが気付いた時には遅かった。
すでに隠騎士ブリッツがハルバートン王に忍び寄り小太刀を構えている。
「……そういうことです」
ブリッツは小さく吐くと、ハルバートンを一突きにした。
ぷしゅっー、首筋から噴出す血塵がラミアスに絶望を促した。
3 :
1:2006/04/20(木) 21:27:28 ID:???
「バカな・・」
「降服してください、これ以上は無意味です」
うなだれるラミアスにイージスが言った。その言葉は事実であろう。
王と、そして彼ら新鋭騎士を失い、まして敵に回したラクロアには、もうザフト帝国と戦うだけの力は無いと言える。
ザフト帝国は、MS族のみによる世界樹立をもくろむ、東方の大国の名だ。
「ま、降服したところで奴隷になるだけなんだけどなぁ、元隊長さんよ」
バスターがラミアスを小バカに言った。
彼はいままで彼女に対しストレスがたまっていたらしく、無抵抗のラミアスの頬を杖で殴った。
「フンッ、面倒だ、さっさと殺してしまえばいいだろう、それよりクルーゼ様を迎えねばならん」
そうだな、と呟くとバスターは何か詠唱を始めた。彼の杖がバチバチと放電する。何か強力な呪文を唱えるようだった。
──もうダメか、ラミアスが目を閉じようとしたその瞬間、ガキッッンッ! と音がして、バスターの杖が宙を舞う。
「何のつもりだストライク!?」
「もうやめるんだ……!こんなこと……!」
デュエルはストライクに剣を向けた、が間にイージスが立つ。
「ストライク、どうしたんだ、話し合って決めたはずだろう」
「……だからって、こんなの」
「俺達はMS族なんだぞ!人間じゃぁないんだ!」
そう言うとイージスはストライクを殴り飛ばした、デュエルの剣を制するようにして。
その時である、少女がこの場にやってきた。
「お父様……!? お父様!!?」
フレイ姫だ、ラクロアの王女である。
4 :
1:2006/04/20(木) 21:29:20 ID:???
「ちぃ、姫様のおでましか、……ブリッツ、殺せ」
「やめろぉぉっっ!!」
ガキッッンッ!!
「……何をするんです!」
「彼女は関係無い!!」
「ある!人間族の王女だぞ!」
「ずっと仕えてきたんじゃないかっ!僕達は!」
「だからだ!その女がどれだけMS族を虐げて来たのか!お前は知っているはずだ!!」
確かに、フレイ姫はMSをMSとも思わず奴隷のように扱ってきた。
しかし、それは違うのだとストライクは知っている。
彼女は、ただ行く当ての無いMS達を城で引き取ったのだ。そして働かせたのだ。
人ではなくわざわざMSを雇うのだから人以上に働かせねばならなかった、それだけだ。
「裏切る気か……!?」
「僕は、もともと、この城の騎士だァッ!!」
デュエルの剣先とストライクの剣先とが激しく衝突した。
互角──だと思った瞬間、ストライクの体が閃光に弾き飛ばされる。
バスターが ルフィラ の呪文を唱えたのだ。
「邪魔をするな!バスター!」
「おいおい、作戦が先だろう?」
バスターとデュエルが罵りあっている隙にストライクは立ち上がる。そして姫の傍へと駆け寄った。
「……立てますか」
「いやぁっ、いやあっ!」
「……落ち着いてください、……姫、僕は貴女の味方です」
姫のしなやかでか細い体を抱き上げると、ストライクは一目散に走り出した。逃げるのだ。
慌てて追いかけるデュエルとバスター。しかし、ラミアスが彼らの足にまとわりついた。血飛沫が奔った。
少しだけ遅れて、しかし、デュエルとバスターはストライクを追いかける。
5 :
1:2006/04/20(木) 21:30:23 ID:???
ストライクは必死で逃げた。しかし、その進路の先には、すでに塞ぐようにブリッツが立ちはだかっていた。
「……通しませんよ」
ストライクはブリッツに背中を向けた。しかしそれはブリッツから逃げるためではない。
抱きかかえた姫を守るためだ。後ろ向きになったままブリッツへ体当たりをかける。
ストライクの背中は、無残にも切り裂かれた。ストライクの赤いマントがひらひらと散った。
しかし、ストライクは倒れなかった。ブリッツを背中で押し飛ばすと、再び反転し、前進する。力の限り逃げる。
そのあまり気迫に、ブリッツはその後追いかけられなかった。
すぐに窓が見えた、計画が順調に進んでいるとすれば、すでに城内は危険だ。
この窓から外へ飛び出すしかない。
王の謁見場は城の3階にあった、つまりここも3階だ。MS族とはいえこれだけの傷を負って跳べる高さではない。
まして、姫を抱えているのだ。
しかし、彼に迷いは無い、窓へ到達すると一目散に飛び出した。
ドスンッ
姫は、ストライクの体いっぱいに抱きついていた。なるだけ衝撃が伝わらぬよう、足で地面を蹴り踏んだ。
あまりの負担によろけ倒れるストライク、それでもすぐに立ちなおすと、また走る。
ふと城を振り返ると、窓からこちらを見下ろすイージスの姿が見えた。
彼は、数刻だけ彼と視線を合わせ、また走り出した。言葉自体は交わさなかったが、それはつまり、さよなら、という意味だ。
全身傷だらけの騎士は、それでも姫を抱えて森へと逃げた。
6 :
1:2006/04/20(木) 21:31:33 ID:???
第ニ章 ラクロアの王女
──まるで夢のようだった、──それも悪い夢、──絶望的なほどの悪夢。
激しい物音がした、何か金属を床に落としたような音。
その後、悲鳴が聞こえた、怒声も聞こえた。私は部屋を出た。
私に母はいない、優しい母だったような気はするが、幼い頃だったのであまり覚えていない。
その母の部屋の隣に私の部屋がある。廊下を抜けて階段を下りると王の間があった。私の父の仕事場だ。
私はこの国の王女、ラクロアの王女フレイである──。
「はぁはぁ……はぁ……」
激しい息遣いが耳元で聞こえると、たまらず少女は大声をあげる。
「いやぁぁああっぁつぁぁぁっ!!」
「お、落ち着いてください! ……姫!」
少女があまりに暴れるものだから、ストライクはつい彼女を落としてしまった。
腰を打って痛そうにしている。ごめんなさいと謝った。
「あなたなに!?」
「ストライクです」
「知ってるわよ!!」
そう、知っている。──知っているのだ。
辺りに見えるのは森の木々、触れる地面には土と草。ここは自分の寝室ではない。
決して、夢を見ていたわけではない、いや、夢だとしてもまだ覚めてはいない。
「……落ち着かれましたか」
「ええ」
少女は立ち上がり気丈に答えた。
7 :
1:2006/04/20(木) 21:33:16 ID:???
「お父様は」
「……申し訳ありません」
その騎士は、本当に申し訳なさそうに謝った。
それが質問の答えということ、つまりは父は死んだと言うことだ。
「……そう」
どうして、どうして、どうして──。
しかし、傷だらけで、今にも倒れそうな騎士の姿が、彼女にその言葉を飲み込ませた。
「……終わりね、ラクロアも」
「そんなことは……」
「違うと言うの?」
言えない、言えなかった。
少女は絶望の笑みを浮かべていた、泣くことも出来ないくらいショックなのだろう。
ただひたすら気丈に、眼は虚ろに、微笑だけを浮かべて座り込んだ。
「……ラクロアには、伝説があります」
「伝説?」
それは、勇者が現われ魔王を倒すと言う物語、どこにでもある御伽噺。
ラクロアはその伝説の舞台でもあった、王女である彼女もよく聞き知った話だ。
だが、そんなものただの伝説に過ぎないと、それもよく知っている。
ザフト帝国に魔王サタンガンダムが現われてはや一年、しかし、勇者はどこにも現われなかった。
そして、今日、遂にラクロア城もザフト帝国の手に落ちた。
「……貴方が、勇者になってくれる? ……ふふ」
少女の眼はやはり光を失っていて、しかし、声はおどけていた。諦めの冗談。
「貴女がそう、望むなら……」
8 :
1:2006/04/20(木) 21:34:50 ID:???
星が流れた。まだ日も暮れきれぬ夕焼けの空。それでもハッキリと星が見えた。
少女は、絶望の笑みを消すと、バカを見るような冷酷な目で彼を見た。
「……出来るわけないじゃない」
そう思う、彼もそう思った。しかし、否定した。
「きっとなります、貴女を救う勇者に」
彼女は何も言わなかった、ただ俯いて、黙っていた。
でも、彼女の美しい赤い髪が微かに揺れているのがわかった。
ストライクがフレイ王女と会話したのは、たった一度切りの事だった。
あの日、彼は城の書庫に居た、そこへ彼女がやって来た。鳥を探しに来たと言う。こちらには来ていないと答えた。
「どうして貴方は騎士になったの?」
「僕はMS族ですから……」
「そう、でも、本当は本を読んだり書いたりするのが好きなんでしょう?」
「……はい」
「ふふ、早く平和になったらいいのにね」
ただそれだけの、たったそれだけの出会いだった。でも、それは暖かな出会いだった。
だから、彼は言った。
「……戦います、貴女もラクロアも、きっと救って見せます」
声が震えている、ゆっくりゆっくり紡ぎ出して行く。
「だから、笑ってください、……今は、泣いて下さい」
フレイは立ち上がるとストライクに向き直り、そしてゆっくりと歩み寄った。
「……そう、……なら、……私の想いは、……貴方を守るわ」
9 :
1:2006/04/20(木) 21:36:34 ID:???
二人に夜が迫っていた。
城下街にはおそらく追っ手が出ているだろう、とても普通の宿屋には入れないし、ストライクの自室にも戻れない。
北へ行ったところに港町がある。ルウムという。貿易が盛んな都市で当然、人口も多い。人間の数、だ。
城ではさきにルウムを落としてからラクロアに攻め入るつもりとばかり考えていた。
だが、実際は内部のMS族に反乱を促して先にラクロア城を陥落させた。
陥落とはいえ、王が死んだだけ、まだ完全に制圧が出来たわけではない。帝国はしばらくラクロアへ戦力を向け続けることになるだろう。
つまりは、ルウムに入ればとりあえずは安心できる、ということだ。
しかし、ルウムまではストライクの足でも一日、フレイの足で考えるなら数日はかかる。
とりあえず今晩はどこかで野宿するしかなかった。
「キャァァッ!!」
「姫ッ!! ……ジンゴブリンか!」
ジンゴブリン、それはラクロアの森に生息するモンスターである。
帝国に魔王サタンガンダムが現われて以来、世界各地でこういった怪物が出現するようになっていた。
ストライクは素早く剣を引き抜くと、一体一体切り裂いていく、手馴れたものだ。
それもそのはず、ストライクは騎士になるために、そしてなってからも、訓練を兼ねてこの森でジンゴブリンを相手にしてきた。
MS族は、人間の社会に置いては、騎士か奴隷か、この二択しかないと言っても良い。
奴隷と言っても、下働きや小間使いだけではない、当然、歩兵や突撃兵も含まれる。
ちなみに人間は砲兵や弓兵、法術士、騎兵などが多い。逆に言えば、それらを任されるMS族はほとんどいない。
そんな中、一部の優れたMS族だけは、騎士として多少の自由と権利を与えられる。
騎士は、主にガンダム族が多い。伝承的なこともあるが、ガンダム族は他のMS族と比べても身体能力が高いのだ。
ストライクもガンダム族の端くれである、歩兵にされるくらいならと、騎士を目指した。
才能か努力の賜物か、彼は張れて騎士となって今日に至る──。
最後の一匹を切り伏せると、ストライクは剣を治めた、その瞬間、姫の背後にジンゴブリンの姿が見えた。
ストライクは急いで姫に飛びかかり、かばう。
グサァッ
ゴブリンの、切れ味の鈍い斧がストライクの背中に刺さる。
ブリッツに付けられた傷がさらに広がった。体が千切れそうに思えた。
10 :
1:2006/04/20(木) 21:39:01 ID:???
不覚を取った、ただのゴブリンだと油断した。
よく考えれば、夜戦も、まして姫を連れての戦闘も初めてのことだった。
もっと気をつけるべきだった。
ストライクは素早く剣を抜く、倒れそうになった体をそれで支える。
「ハァッ!!」
ザンッッ!!
ジンゴブリンの断たれた胴が、空中で数回転すると地面に落ちた。
「はぁはぁはぁ……、……大丈夫です」
心配そうに見つめる姫に、聞かれても無いのにストライクは答えた。
はぁはぁはぁ……、
辺りを見渡すと一軒の小屋があった、とりあえずそこへ避難する。
どうやら、きこりの小屋らしい、と言ってもずいぶん使われてなさそうだ。
森にモンスターが出るようになったから放棄したのだろうか。
「……今日は、ここで休みましょう、……よろしいですか」
「ええ」
フレイは小屋を一望すると、しかし、それでも満足そうに返事した。
小屋に入るなり彼女は自分のドレスを豪快に破りだす、そして、それをストライクの止血とした。
「……姫、……ドレスが」
「ダメよ、……このまま眠りなさい」
「はい……」
酷く疲れていたストライクはあっさりそのまま眠りに落ちる。
そっと姫がつぶやいた。
「……今は、ね」
・・続く
1乙
このままピンク電波に犯されないことを願う
騎士ストライクの健全な成長譚にしてくれ
12 :
1:2006/04/20(木) 22:35:51 ID:???
──第三章 ラクロアの森
小屋の天井はまったく手入れをされていなくて、所々が剥げていた。
その隙間から差し込む朝の日差しが、彼女の眼を覚まさせた。
──良い朝だ。
雲ひとつなく空は青々と晴れ渡っている。しかし、昨日もそんな天気だったと思い出すと少々嫌な気分になった。
青空を見るたび思い出すことになるのだろうか……。
しかし、彼は言った。貴女を救う、と。ならば、それで良い。
フレイは、ストライクを起こさぬように静かに小屋を出た。
辺りを見渡す、井戸があった。しかし、小屋と同様、もう随分使われていないようだ。
バケツを落としてくみ上げるタイプではなく、レバーに圧力をかけて動かすポンプ式のものである。
フレイは井戸のレバーを漕ぎだした。
彼女は当然、井戸で水を汲むなんてこと初めてである。
小さい頃一度だけやろうとしたときに、してはいけないと教わった。
それが王政というものだからだ。
そんな窮屈な生活を退屈に思ったこともあるし、城を出てみたいと考えたこともあった。
しかし、こんな形で城を出ることになるとは思わなかった。
ギコギコギコ
何度かレバーを漕ぐうちに水が出てきた。最初は泥や苔を含んだ汚い水でガッカリしたものだが、
ずっと漕いでるうちに水が澄んできた、これなら飲めるだろう。
近くにあった桶に、これも少し汚かったので洗って、水を汲むと小屋へと帰った。
13 :
1:2006/04/20(木) 22:38:54 ID:???
ストライクの目が覚めると、まだ日も昇り切らぬうちに二人は小屋を発った。
道中、木の実や果物を探しながら、ルウムへ向かう。
なんとなく遠足のようだった。
時々、ジンゴブリンが襲ってきたが、ストライクはあっさりと切り倒していった。
おかげでフレイは隠れるのが少しだけ上達した。
しかし、いつまでも楽しい遠足は続かない。
森に、馬蹄と唸りが響く。騎馬『ナスカ』のものである。
ナスカはラクロアで一番足の速い品種の馬で、主に伝令官か騎兵隊の隊長クラスの愛馬となっている。
ラクロア陥落の報をルウムへ伝えに向かったのか、……それとも自分たちへの追手だろうか。
身を伏せ、音を殺しながら、ストライクは彼らを見た。デュエルだ。
バスター、ブリッツ、そしてイージスもいる。
間違いなく、自分達を追って来たのだろう。
彼ら四人もガンダム族だ。一人ずつと戦ったって勝てるかわからない相手なのに、
四人一度に相手に出来るわけが無い。
食料を探していたため、街道ではなく森を歩いていたのが幸いした。まだ気付かれていない。
身を潜め、彼らが去るのを待つことにした。
「グオオォッッ!!」
「きゃぁぁっ!!」
その時、ジンゴブリンが襲い掛かってきた。しまった、この森にはそういう敵もいるのだった。
通り過ぎようとしていた、デュエル達も、その悲鳴に気付いてこちらを向いた、不味い。
ストライクはサッとゴブリンを斬り伏せると、急いで姫の手を引いて森の奥へと駆けこんだ。
しかし、ナスカの足から逃げ切れるとは思えない。
「……こっちだ」
誰だ? 森の一点から声が聞こえた。誰のものなのか、姿はわからない。
しかし、ストライクはすがるようにしてその方向へ走った。
14 :
1:2006/04/20(木) 22:46:25 ID:???
声の先には、緑のボディのMS族がいた。
手には木造りだが上等そうな弓と、表は黒、中は赤の長マント。
彼はこちらの様子を確認すると、付いて来いと言った感じに歩き出す。
いつの間にか、周辺には霧が立ちこめていた。
そんな天気ではなかったし、そんな場所でもなかったはずだが。
ナスカの馬蹄が聞こえて来ない、撒けたのだろうか。
しばらく歩くと、彼の家らしき小屋があった。
小屋と言っても、昨夜世話になったきこりの小屋とは全然違う。
よく手入れされた、生活感のある、だから、彼の家だろう。
「……貴方は?」
「私は、妖精ジムスナイパーカスタム」
妖精と彼は名乗った。妖精? そういうものを聞いたことはある。
だが、彼はどうみても普通のMS族……とは確かに、どこか雰囲気が違うような気もする。
「フフ、信じられないのも無理はない、だが、私はもうこの森に千年は住んでいる」
「千年!?」
からかっている、様子ではなかった、では真実だろうか、しかし……。
いまはそんなことに拘ってる場合ではない。
妖精であろうがなかろうが、重要なのは彼が自分達を救った理由だ。
ザフト帝国の者じゃないとしても山賊ということもある。仮に妖精だとしても人間を敵視してない保障は無い。
肝心なのはそこだ。
「そう警戒するな、ラクロアの姫君とナイトだろう?」
「なぜそれを……」
「フフッ、鳥から聞いたのさ」
とり……、そんな漠然とした答えが、ストライクには何故か信じられた。
嘘をつくならもっとまともな嘘をつくはずだし、何より彼からは敵意を感じない、温かみすらあるようだ。
15 :
1:2006/04/20(木) 22:49:08 ID:???
「楽にするといい、……良い薬がある、傷の手当てもしてやろう」
そういうと彼は、姫へお茶を出し、ストライクの手当てもした。
彼がお茶を入れる間ずっと観察してみたが、何かを盛ったり不信な様子は無かった。
フレイは、そのお茶を啜るとほっとしたような表情を浮かべた。それを見てストライクもやっと安堵する。
「……ありがとうございます、助かりました」
「フフッ、構わんさ」
ジムスナイパーカスタムは妖精、厳密に言えばエルフである。
エルフである彼は歳を取らない。代わりに成長もしない。
本当に、レビル一世の時代からずっとこの森に住んでいた。
「ガンダムと、いう人を、知っていますか」
ストライクは彼に尋ねた。
千年住んでいるというのが本当なら、もしや知っているのではないかと思ったのだ。
「ああ、知っている」
「本当ですか!?」
「共に旅をしたこともある」
ストライクは感嘆とした。
「……どんな、人だったんです?」
「彼は勇敢な騎士だった、……君と同じにね」
そう言うと彼は笑みを浮かべた。
「そんな……、僕は……」
口篭もるストライクを励ますように、ジムスナイパーは続けた。
「ラクロアは、いやこのスダドアカワールドは、もう何度も闇に覆われことがある。
だがそのたびに、勇敢な騎士達が立ち上がり、そして戦った──」
16 :
1:2006/04/20(木) 22:52:19 ID:???
ジークジオン、ザビロニア、ザンスカール、デスペリオル、バロックガン。
時代の数だけ悪があった、そして、勇者もまた、いた──。
「若き騎士よ──、お前もまた伝説を目指すのなら神器を探せ」
「神器?」
「そう、三種の神器、その昔ガンダムが用いた伝説の武具だ」
名前は聞いたことがある、城の書庫で読んだ。
炎の剣、力の盾、霞の鎧。
だが、本当にそれらが実在するものか。
察したように、彼が続けた。
「ここから北西に洞窟がある、そこに炎の剣は眠っている」
数秒ほど沈黙が流れた。だが、ストライクは立ち上がると言った。
「……行きますッ」
見透かしていたようにフフッと笑うと、
ジムスナイパーカスタムは新しいマントと旅具をストライクへ与えた。
「……ストライク」
「姫、かならず戻ります、それまでここでお待ち頂けますか……」
「ええ」
姫は、ストライクの手の甲に、そっと口付けをする。
「……頑張ってね」
「は、はいっ!」
真っ赤な表情を隠すように、ストライクは小屋から飛び出していった。
もっとも新しい伝説の始まりであった──。
17 :
1:2006/04/20(木) 22:55:02 ID:???
──第四章 炎の剣
ストライクの足は軽かった。
昨日ブリッツとゴブリンから受けた傷は、もうほとんど完治したようだった。
ジムスナイパーカスタムの手当てのお陰だろう。
もしかしたら『妖精特製の特別な薬』みたいなものがあるのかも知れない。
ストライクは、軽快に洞窟へ向かった。
騎馬ほどではないにしろ、彼の足は速い、数時間もせぬうちに目的の洞窟へ辿り着いた。
暗闇の洞窟である。
と、言っても、洞窟なんて暗いのが当たり前ではあるが。
ここは坑洞や特定の怪物の住処というわけではなく、ただ広大に地下へ延びた洞窟だ。
ジムスナイパーカスタムから貰ったタイマツに火を灯すと、彼は歩き出す。
洞窟の中は春だというのにジメジメとしていて、壁には苔や小さな虫がたくさん張り付いてた。
バサバサバサッ
火に驚いたのか、コウモリが慌てて飛び出していく。
しかし、小さなコウモリだけではない、もっと巨大な生き物がストライクへ向かって飛んできた。
「クッ!」
とっさに回避したストライク、タイマツを向けて魔物の正体を確かめると、それはバビバットであった。
バビバットは、巨大なコウモリ型のモンスターでルフィーラに似た光線をクチから吐きだした。
なんとか攻撃をかわすものの、なかなか反撃には転じれない。敵が飛翔体だから剣では攻撃しにくいのだ。
狭い洞窟を、それでもバッサバサッと羽ばたいてバビバットは光線を吐いてくる。
ストライクは剣をしまうと、祈るように目を閉じた。呪文を唱えるのだ。
バスターやイージスには遥かに劣るが、ストライクだって一応初歩的な呪文を扱える。
念じると、集中した気を一斉に解き放つ。
「ムービルフィーラ!!」
18 :
1:2006/04/20(木) 22:59:33 ID:???
暗闇に一瞬強い閃光が走ると、天井で爆発が起こる。
ムービルフィーラは、ストライクが使えるなかでは最大級の呪文だった。
細い光の束が、バビバット目掛けて飛んで行く、しかし、外れた。暗闇だったこともあるし、未熟だったこともある。
天井が爆発した。
ガラガラと、岩塊が落ちてくる。その一発がバビバットに当たった。
自分も岩塊をかわしながら、それでもストライクはその隙を逃さなかった。
岩塊に打たれ落下したバビバットのボディに、剣を抜くと一閃させた。バビバットの体液が岩壁に飛ぶ。
動かなくなったバビバットを見下ろすとストライクは思った、やはり自分は呪文より剣のほうが向いてると。
歩く、行き止まりだった。仕方なく直前の二又まで引き返す。
もうこのパターンを何度繰り返したことだろう。
洞窟はいりくねっていた。
炎の剣があると言っても、いままで他の誰にも発見されてないんだから何か特別な仕掛けで隠してあるんだろう、と思った。が、
『特別な仕掛け』がわからない。
壁に手を当て、床を照らして、ときどき宝箱なんかも発見するが、ほとんど空だ。
でもときどき、ザムザザミミックが混じっていた。
箱の下部から突然ハサミを突き出して、こちらの足を狙ってくる。
しかし、慌てず落ち着いて、剣を箱に垂直に突き立てると、こちらより先に向こうが力尽きた。
十個目の宝箱を開いた、またカラか……。
その時であった、ドガンッと強烈な爆発が起きる。
「バズレイ!!」
その叫びは呪文だ。普通のモンスターは呪文は唱えない。
「メガバズッ!!」
ドッゴォッッンッ
ストライクは強烈な爆炎に包まれると落ちていった……。
19 :
1:2006/04/20(木) 23:03:40 ID:???
メガバズ、それはバズ系でも高位の呪文。
ラクロアでそれを唱えられる戦士はただ一人、法術士バスターのみである。
「あっはっは、ビンゴ♪ やっぱりこっちだったってわけだねェ」
バスターは機嫌良さそうに言った。
デュエルと、どっちが先にストライクを仕留めるか競争していたのだ。
デュエルは、ストライクはルウムへ向かうと踏み街道を固めたが、
バスターはその魔力を使って、ストライクの行方を透視していた。まさかである。本当にこんな洞窟にいた。
ストライクが立っていた地点は、メガバズの強大な爆発を受け、吹き飛んでいた。
天井も、壁も、地面も吹き飛び、ストライクの死体も埋もれているように思えた。
ちぃと吐くとバスターはフローミの呪文を唱えた。
これで現代で言うサーモセンサーのように物体を探知できる。
動いていた。ストライクらしき物体はまだ動いていた。
ちっともう一度吐きすてると、バスターは後を追った。
「はぁはぁ……ぅぅ……」
ストライクは、呻きを抑えながら洞窟を走っていた。
ジムスナイパーカスタムから貰ったマントのおかげだろうか、メガバズの直撃を貰ったわりには傷が浅い。
しかし、激しい衝撃で地面に打ち付けられて、土砂や岩に揉みくちゃにされて、ダメージは決して少なくない。
それでも、彼が生きているのは、彼の足元がたまたま空洞だったからだろう。
彼は必死に走る。
……どこへ?
入り口? 出口? いや、……炎の剣だ。
どこだよ……! 僕が勇者になれるって言うなら……見つけられるはずだろう……!!
「トリィ〜」
その時、か細い声が聞こえた。
20 :
1:2006/04/20(木) 23:07:25 ID:???
その声は、明らかにバスターのものではないし、モンスターの放つ不気味な呻きとも違って聞こえた。
目の前に、緑色の小さな小鳥が飛んで行く。
ストライクは夢中でその小鳥を追いかけた。
曲がり角の先にほのかな明かりが見えた。石造りの台座に赤い剣が刺さっている。
ふと、気付くともう小鳥はいなかった。
ストライクは剣の前に立つ、まるでブリティスに伝わる聖剣伝説のようだ。
聖剣ヴァトラスは、王なるものにしか抜くことが出来ないという。
ならば、この炎の剣は勇者にしか抜けないというのが道理だろうか。
ストライクは剣にそっと手で触れた。その瞬間、炎が全身を駆け巡るような感覚があった。
しかし、ストライクは手を放さなかった。
全身が焼ききれるほどの熱量に包まれる。
しかし、手は放さなかった。
逆にもっと力を込めて、一気にその剣を引き抜いた。
ブファァッ
白い煙が立ち込めた。すぐに晴れる。
ストライクの右手には剣があった。赤い刀身、柄には星飾り、紛れも無い、炎の剣だ。
不思議に、手のどこにもヤケドの後は無かった。
ドガンッッ!!
──爆発が鳴る。振り向くとバスターの姿がある。
「見つけたぜぇ! ストライク!!」
「バスター!!」
ストライクはバスターに剣を構えた、その瞬間、炎が奔った。
バスターが呪文を唱えたのではない、ストライクからバスターへ向かって炎が奔る。
炎の剣から火炎が奔ったのだ。
21 :
1:2006/04/20(木) 23:09:45 ID:???
ブォォッッオォッ!!
その火炎は、ぶ厚く熱い波となって押し寄せる。
バスターはとっさに壁影に隠れた。
──なんだいまのは、メガパームか!? まさかソーラ系の呪文か?!
しかしそれは違うと、すぐに考え直す。
ルフィーラも満足に使えなかったストライクがそんな高等な呪文を使えるわけが無い。
だが、目の前に炎の波が流れたのは事実。
バスターには自身があった、こと呪文にかけてならラクロア一と、自負していた。誇りがあった。
──魔法剣なのか!?
炎の剣の力に一番驚いたのは、誰でもなくストライク自信である。
しかも彼には、どっとした疲労感が襲っていた。
魔力か、それとも体力か、どうやら持ち主のそれを消費してこの剣は炎を放つようだ。
確かにこの威力ならバスターの呪文にも勝てるかも知れない。
だが、撃てるのは後一発か二発か──。
バスターの詠唱は早い、これだけ距離を取られていれば、接近戦に持ち込む前にやられてしまうだろう。
もっとも、接近さえ出来れば勝つ自信はあるのだが。
ストライクは炎の剣を一瞥すると覚悟を決めた。
──この剣で、彼を倒そうッ!
22 :
1:2006/04/20(木) 23:13:55 ID:???
「受けろストライクゥッ!! これが俺の最大呪文だァッ!!」
バスターは壁影に隠れたままそう叫ぶと、詠唱を始めた。
低位の呪文ならほとんど時間のロスもなく放てるバスターが、わざわざ隠れて詠唱して溜めている。
「閃光よ!我が前にある障害 撃ち貫き砕けッ!! ギガルフィーラッ!!」
バスターは、突如眼前に飛び出して呪文を放つ。
しかし、ストライクの方も準備は万全だった。剣に念じ、剣を振って、虚空を斬り裂く。
「火炎よ!彼なる邪悪を焼き尽き照らせッ! アグニオンッ!!」
ズガゴゴゴォォッッ!!!
閃光と灼熱が交差した瞬間、大気が炸裂した。
ストライクもバスターも互いに弾き飛ばされる。
わずかな時間、静寂があった。
しばらくすると音が蘇る、どちらかの体が崩れるようだ。
「ぐぅ・・れいと・・ぉ・・」
バタッ、黒焦げになったバスターが地に伏せた。
「はぁはぁはぁ・・・っ」
勇者に……、なれた……、のかな……。
声を発せず、唇だけ動かすと、ストライクはその場に座り込んだ。
そして、しばしの眠りに落ちたのだった。
・・続く
超GJ!
そして次に期待!!
・・・しかし炎の剣っつーか三種の神器は以前壊れたはずじゃ?
俺が知らんだけで復活してたのかな。
>>23 とりあえずこのスレにいるのが俺と1の人だけでないと知って嬉しい。
三種の神器と聞いて、元祖SDの組説コミックを思い出してしまった。
妖精ジムスナイパーとか通好みのところを押さえてくれるのがGJ!
炎はブラックドラゴンと融合
霞、力は改造されバーサル騎士の鎧になった
たしかこんな具合だったような
そういやあったな>バーサル騎士
ゼフィランサスの前例もあるしストライクもバーサル騎士にクラスチェンジするんだろうか。
>>25 確か力の盾がバーサルアーマーの肩アーマーになったんだったっけか?
>>26 種の換装システムを考慮するなら、単純クラスチェンジってよりは聖伝のエアマスター&レオパルドみたいな鎧を変える事に拠るフォームチェンジみたいな感じの方が自然じゃね?
その最高位がバーサルって感じみたいでなw
28 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 18:15:18 ID:Aju3m+4/
たぶん三種の神器集めてパワーアップしてフリーダムになるんじゃね?
あっそれだとイージスがどうなるんだろ?
wktkするな
予想はほどほどにしたほうがいいんじゃないか?職人さんも書きにくくなるだろうし
雑魚の一般兵は
ジン・ストライクダガー・M1か?
ジンはすでにモンスターで出てる。
>>31 でもゴブリンザクもいるけど戦士ザクもいるよ
オーブはラクロアとは同盟ってうわなにやめrysdl:あdかしゅじkぉsl;dklさ
34 :
1:2006/04/22(土) 22:26:05 ID:???
──第五章 旅立ち
ストライクの頬に冷たい風が触る。
やっと洞窟を脱出した時にはもうとっくに陽が暮れていた。
いままで暗闇の洞窟を歩いていたものの、やはり夜の森は危険だろう。何より道がわからない。
洞窟の傍の小さな岩場に腰を落すと、ストライクは朝まで休むことにした。
小枝を集め、そこへ手にしていたタイマツを投げ込んで、火を灯す。
焚き火の照らす光にかざして、ストライクは炎の剣を眺めた。
次は空へ掲げ、星明かりに照らしてみた。
最後に自分の目の前に引き寄せてみる。
この剣に誓おう、かならずラクロアに平和を取り戻す、と──。
しかし、神器はあと二つあった、力の盾、そして霞の鎧。世界を救うというにはこの三つが必要となるだろう。
とはいえ、まず一つ目を手に出来たということは、自分にはそれを成せる見込みがあるということだ。
そう思うとストライクは嬉しくもあれば緊張もした。
そして夜が明ける、射し示す陽光が、彼を行くべき道へ導いているようだった。
「……ストライク!」
ようやく小屋まで帰りつくと、一番聞きたかったその声が彼を出迎えた。
ラクロアの王女、フレイ姫がストライクを出迎えた。
追ってジムスナイパーカスタムも小屋から出てくる。
「剣は?」
ジムスナイパーのその問いに、ストライクは実物を掲げ答えた。
彼はフッと笑った、姫も笑顔を見せた。
35 :
1:2006/04/22(土) 22:27:21 ID:???
「これからどうするつもりだ」
お茶を入れながらジムスナイパーが尋ねる。
「力の盾と霞の鎧を……」
「残念だが、その二つはラクロアには無い」
え……、とストライクはジムスナイパーを見つめた。
彼がどこにあるのか知らないというのなら、自分にはとてもお手上げだ。
「フフッ、知らんとは言っていない、力の盾はオーブ、霞の鎧はザフトの領土内にある」
ザフト帝国は、言わずと知れた魔王サタンガンダムの君臨する敵国だ。
オーブ共和国は、ラクロア同様、ザフト帝国に反するユニオンの国だ。ラクロアとは海を隔てた向こうにある。
「ルウムからなら……」
ストライクの言わんことを理解して、ああ、船はあるだろう、とジムスナイパーは頷いた。
しかし、それはラクロアを出ることになる。ストライクにしても始めてのことだ。
だが、いまさら迷うことなどなかった。
「……お世話になりました」
ストライクの表情を見て、ジムスナイパーはフフフと笑った。
「なんですか」
「いや、随分変わったものだと思ってな、お前が家へ来たのはつい先日のことだというのに」
ストライクの瞳には、確かに先日にはなかった強い意思と覚悟というものが宿っているようだった。
「少し待て、その剣の鞘を用意してやろう」
36 :
1:2006/04/22(土) 22:31:32 ID:???
「外国へ行くの……?」
ストライクが小屋の外でジムスナイパーの作業を待っていると、フレイが聞いて来た。
はい、と答える。
「私も行くわ」
「何を言ってるんですか!」
「私も行くと、言ってるの」
そんなことはわかってる、ストライクは危険だ、と言いたいのだ。
「姫は狙われています、ここならきっと追っ手も来ません、だからここで……」
「イヤ」
彼女はきっぱりと言った。
そう言えばこの人は城では、わがまま姫で通っていた、と思い出した。
困った表情を見せるストライクに、姫はさらに続けた。
「行きたいの」
簡単なわがままならいくらでも聞いてあげたい、だが、これは彼女の命に関わることだ。
頑としてストライクは首を振った。しかし、彼女の瞳は曇らない。
いつもの、よく通る美しい高い声ではなく、低く重く鈍い声で彼女は言った。
「聞きなさい、騎士ストライク」
その威圧にストライクは思わず表を上げた。
「ラクロアの王女、……後継者として命令をするわ、私も連れて行きなさい」
有無を言わさぬ迫力があった。一介の騎士には無い迫力だ。
目の前にいるその人は、確かにただのわがまま姫ではなく、ラクロアの王女であると思えた。
彼女は身体的には足手まといだ。だが、オーブへ行くにしても、ザフトと戦うにしても、
ラクロアの王女という旗印は、確かに役に立つ物ではある。
だがだからこそ危険にもなる、けれどこの王女は、しかとその覚悟があるという顔をしていた。
だから、ストライクはそれ以上何も言い返せなかった。
37 :
1:2006/04/22(土) 22:35:41 ID:???
「……もうゆくか」
そう言うと、ジムスナイパーカスタムは二人に茶色いコートを手渡した。
ストライクにはさらに色々な旅具が入った鞄を渡す。そして、出来立ての鞘も。
受けとるとさっそくそれに炎の剣を収めた。
鞘は木製のようだったが、これはどんな高熱にも燃えることはないと説明してくれた。
さらに、一頭の馬も貸してくれた。ナスカほどじゃないにしても足の速そうな毛並みの良い馬だ。
これならルウムまで半日もかからないだろう。
ストライクは、姫に手を差し出した。やはり彼女も行くのだ。
彼女は城から着てきたドレスを脱いで、普通の町民が着るような服を纏っていた。
そして、ジムスナイパーから渡されたコートを羽織ると、ストライクの手を取って馬の後ろに跨った。
フレイは、乗馬をしたことはあるにはあったが、それは実戦的なものではない。しかし、気丈に言った。
「さあ、行きましょう」
「……はい」
ストライクにはもう迷いも無く、彼女の言葉に従うことにした。
それに彼女の言葉は嬉しかった。
ここでお別れにならなかったこともそうだし、自分が仕える人がどれだけ立派かとも誇れた。
ジムスナイパーにもう一度だけ大きく礼を言うと、二人は出発した。
森を走る、あまり馬を走らせるのに良い条件ではなかった、よく揺れた。
決して粗末ではないのだが、王馬の鞍に比べれば、この鞍はがさつな造りだった。
ストライクは姫に心配そうに声をかけたが、彼女はやはり気丈に言った。
「大丈夫よ」
顔は見えなかったが、その声は笑顔だと連想させる。
「まだ、これからじゃない、……なにもかも、ね」
38 :
1:2006/04/22(土) 22:38:16 ID:???
──第六章 ルウムの町
三時間ほど経った頃だろうか、二人の視界にルウムの町が見えた。
道中、なんどかモンスターに襲われたものの、追っ手らしき者には出会わなかった。
森の中を、それもラクロアからルウムの直通ではないルートだったからだろう。
それとももしかしたらとっくに引き上げたのかも知れない。
町が見えるとストライクはほっとして速度を落としたが、フレイは逆にさかせた。
やっとついた、と思ったときにはまだ到着とは言えなかった。町は城壁に囲まれていたからだ。
入り口を探しぐるっと回る。門と詰め所があった。
しかし、ストライクはそこの番兵達に囲まれた。事情を話してもわかってくれない、彼がMS族だからだろう。
「……道をあけよ、我はラクロアの王女フレイである、この者は我が近衛の騎士だ」
番兵達が不信な騎士に槍を構えていると、女が馬から下りてきてそう言った。
その女はラクロアの王女にはとても思えない身形だったが、フードを脱ぐと確かにただの町娘とは違う威圧と美貌があった。
処遇に困った下士官達は、急いで自分達の上官を呼びに行く。
「……衛騎士のフラガだ、ラクロアの姫さんだと?」
「フラガさん……!」
ストライクが言った、フラガは人間族ではあるが騎士の称号を持った衛騎士。
ストライクの先輩であり、面識もあった。
「おお? ストライクか? それにフレイ姫! ご無事でしたか」
フラガはひざまずき頭を下げた。自分達の上官のそのさまに下兵達もいっせいにひざまずく。
「……よい」
そういうとフレイはストライクににっこりと笑った。
彼女がいなければルウムにも入れなかったかも知れないと思った。
39 :
1:2006/04/22(土) 22:39:40 ID:???
二人は、町の中にある小さな砦に案内された。
下兵にコーヒーを指示すると、フラガははなしだす。
「いったいどうなってるんだ? お前たちは裏切ったと聞いていたが」
お前たち、はストライクやイージス達を指している。
「……僕だけは裏切らなかったんです」
「『仲間』を裏切ってか?」
「……はい」
フラガの言葉は、言い方は軽いが重かった。
「てことは事前に計画を知っていたってことだな、何故言わなかった」
「……僕が、そう決められたのは、ギリギリ、だったんです」
フラガは少し難しそうな顔をしてしばらく黙った。
何か答えが出たのか、再びクチを開く。
「お前を信用できない、と言ったら」
ストライクがスパイではない保障は無い。
確かにストライクはわざわざ姫を連れてきた、だが、姫をルウム攻略の餌としたとも考えられる。
ルウムは、ラクロア最大の要塞である。いまでは最後の要塞と言っても過言では無い。
ラクロアはこれまでザフト帝国の侵攻をここで食い止めてきたのだ。
すでにラクロア城を失った今、ここを落とされてしまえば、王国は完全に帝国の物となる。
「これを……」
そう言うとストライクは炎の剣を抜いてみせた。
「これは?」
「……炎の剣です、伝説の勇者ガンダムが使ったという」
40 :
1:2006/04/22(土) 22:41:34 ID:???
フラガはその剣をまじまじと見つめた。確かに普通の剣ではない。魔力のようなものを感じる。
そっと触れようとしたとき体に熱が奔った、思わず手を放した。
「……この剣に誓います」
ストライクは、静かに、しかし、強く言った。
「いいだろう」
フラガは笑顔で笑った。
ストライクとフレイもほっとした表情を見せた。
続けて事情も話す。
「なるほど、次は力の盾ねぇ、オーブに行きたいのか」
しかし、フラガは船は出せないと言った。
何故です、と食い下がるストライク。
「帝国の軍が岬に集まってる、いま出て行っても通れんだろう」
近々、大規模な攻撃をかけてくるつもりだ、と。
明日か、はやければ今夜──。フラガは少し悩んで、言った。
「いや、船は出そう、姫様をここで果たさせるわけにはいかんからな」
フラガは笑顔で言った。
それはつまりルウム陥落は時間の問題だから、という意味だ。
「でもそれじゃ……」
「心配するな、船は守ってやる、全戦力を注ぎ込めば船の一隻くらいは突破させられる」
41 :
1:2006/04/22(土) 22:46:24 ID:???
──作戦は明日だ。
そう言うと、フラガは今日は休むように二人に言った。
二人は、部屋でじっともしていられなくて、街をあるいた。
フレイは、ずっとまえにルウムへ来た事があったが、あのときは活気が満ちていてなんて楽しい街だろうと思えた。
しかし今の街は、戦時下であるために閑散としてる。ラクロアの城下より酷い、ここは常に最前線だったからだろう。
武器や砲塔を手入れしている兵士の中に、フレイは知った少女を見つけた。
「ミリィ? ミリアリア??」
「フレイ? フレイ姫??」
二人は喜び抱き合った。
「貴方どうしてこんなところにいるの!?」
「そういうフレイこそっ」
フレイは、番兵に見せた表情を、まるで別人と思わせるような笑顔で微笑んだ。
ストライクだって、彼女のこんな楽しそうな姿を見るのは初めてだ。
二人は学友だった、フレイは魔法を習いたいと王へだだをこねて、城の法術学校へ一時期入っていたことがある。
しかし基本的に地味な作業や努力が嫌いなフレイは何一つ呪文を覚えることはなかった。
魔法はもっと簡単で派手なものだと思っていたのに、フレイはいつもそう言ってミリアリアを困らせていた。
ミリアリアもまた法術の勉強をしていた、彼女は優秀で、フレイのわがままの相手をしながらも常に主席だった。
そして、高等法術を学ぶためにオーブへ留学に行ったはずだった。
「戦争でね、ラクロアに帰ってきたのよ」
彼女は明るく答えた、フレイは少し寂しそうにそう、と答えた。
「ラクロア城が陥落したって聞いて心配してたのよ? よく無事で」
「……うん、ストライクのおかげで、ね」
フレイはストライクを彼女に紹介する。
つられて彼女も自分の仲間達を紹介した。
「こっちからサイ、トール、カズィ」
三人は、口篭もらせながらよろしくと呟いた、『姫』と聞いて緊張しているのだろう。
42 :
1:2006/04/22(土) 22:48:56 ID:???
平和な時間はあっという間に過ぎる。
そして太陽が沈み始めた頃には、──それは完全に過ぎ去った。
「敵襲ーー!!」
突如、鐘と叫びが街に響いた。
初めてのことに何事かうろたえるストライクとフレイ、サイが言った。
「敵が来たんだ、二人は隠れて」
「貴方達は!?」
「私達は戦わなきゃ……!」
言い終えるより早く、ミリアリア達は自分らの配備場所へと走っていく。
フレイは思わずミリアリア達を追いかける、ストライクもフレイを追いかけた。
「手伝うわ!」
「なに言ってんの!お姫でしょあんたは」
フレイを安心させるようにミリィは笑顔で言った。
「ほら騎士さん! お姫を守ってね」
そう言うとミリィは、ストライクの元へフレイを突き飛ばした。
「ミリアリアー!ミリアリア……!」
その場に崩れ落ちるフレイに、ストライクは言った。
「砦に、一人で戻れますね……?」
「……ストライク」
……かならず、そう約束すると、ストライクは走った。
・・続く
GJ!
さあ次は誰が出るか・・・
GJ続きでうれしいです。
布教したいが粘着厨の流入が怖いし……どうしよう?
45 :
1:2006/04/23(日) 01:45:24 ID:???
──第七章 激突
ルウムの北の岬に、帝国の前線基地があった。
当初は、海からそのまま上陸しルウムを落すつもりだったのだが、あまりに抵抗が厚く、
陸軍運用のために帝国はルウムから少し離れたこの北の岬に基地を建造した。
怪しげな魔術でラクロア国のモンスターを誘導し、自軍の歩兵とする。
そして、機兵も発進させた。
ザフト帝国には、ほとんどMS族しかいないため人数が少ない。その差を埋めるのがこの機兵とモンスターだ。
機兵とは、旧暦以前にスダドアカワールドに存在していたと言われる超兵器の名で、伝承によればラクロアにすらそれは存在していたという。
しかし、古代神戦争と言われる戦いを最後にすべての機兵は姿を消した。
だが、ザフト帝国の占術士クルーゼがその機兵の開発技術を現代に蘇らせたという。
事実彼は人間にしてザフト帝国の幹部であり、帝国はその機兵を持って各国を制圧していた。
「機兵は何機でてる?」
「10は確認できます……!」
衛騎士フラガが見張り塔の兵に尋ねて呟いた。
「最大規模だな……、先制は空から来るぞ!弓隊を前に出せ!野砲隊は三次ライン!」
ブワッブワブワッブワッ!
不気味な羽音を立てながら、町の上空に飛行モンスターが迫っていた。
紫色の体と白い翼のディンバードの群れだ。
弓隊が必死で弓で射抜いていく、突如、稲妻がディンバードを襲った、『ファン』の呪文、法術隊の支援だった。
ラクロア軍は押していてるように見えた、しかし、それも当然、これらは先鋒に過ぎないからだ。
本隊や機兵が町へ接するまでの時間稼ぎ、ラクロア側の守備展開を少しでも遅らせようと言う算段で飛び込ませされたものだ。
46 :
1:2006/04/23(日) 01:47:28 ID:???
「サイ!」
「わかってる……!!」
ビュゥッ!
サイの放った矢は風を切って見事にディンバードを射抜いた。
しかし、サイは弓兵ではあるが弓隊ではない。
サイ、トール、ミリアリア、カズィの四人は、四人一組で戦車隊である。
戦車、と言ってもそんなに大層なものではない。
ただの荷車に砲塔を付けただけの、自走砲だった。
固定式の野砲に比べれば全然射程も威力も低いのだが、機兵とやりあうには最低これが必要だ。
それなりの機動力とそれなりの火力はある。名はメビウス。
ルウムには大型の設置野砲が二十門と、この車両が二十両ほどあった。
それでいままで敵を撃退してきたし、機兵とも戦ってきた。
「トール!早くしてよ!」
「やってるって……!」
メビウスは構造上非常に脆い。さらに撃つときには砲撃手も無防備になる。
敵の歩兵や騎馬はともかく飛行型モンスターは防衛線を越えてこのメビウスを狙ってくる。
それらからメビウスを守るために、各戦車隊に弓士や法術士を置いていた。
「手伝えることは?」
突然現われたストライクが言った。
「ちょっとあんた!フレイはどうしたのよ!」
「砦に帰るように言ったよ、……僕は戦わなくちゃ、彼女を守るためにも」
前線を見てくる、その残してストライクは城壁へ向かった。
47 :
1:2006/04/23(日) 01:51:13 ID:???
ドガンッドガンッ!
城の外でけたたましい爆音が鳴り出した。頭上を孤を描いて白線が飛んでいく。
砲撃が始まっている、ということは敵の本体が大分近いと言うことだ。
ストライクは急いで城壁に駆け上がりそれらを一望とした。
陽が暮れており、薄闇ではあったが、びっしりとモンスターの群れが見えた。
数百どころではない、千以上の数がいる。さらに『巨人』の姿も見えた。それが噂で聞く機兵であるとすぐにわかった。
機兵は二機一組で進んでいるようだった、前衛の一機は巨大なシールドを構えている。
町からの大砲がそのシールドに炸裂した、煙が晴れるとその機体は無事に行軍を続けていた。
その様子を見ていたフラガが唇を噛んだ。
前回まではそんな盾は無かったのだ、向こうもこれまでの戦いから学んでいるようだった。
敵の先端と防衛線との距離が千を切っていた。なのに、まだ撃墜できた機兵は一機もなかった。
「ゲイルの騎馬団は戦車隊を十個つれて西門から回れ!そろそろ来るぞ!法術隊は対機兵戦準備!」
歩兵モンスターの一団がいよいよ防衛線に触れた。激しい白兵戦が行われる。
命知らずのモンスターは、まさに突撃兵であった。
魔王サタンガンダムの魔力に彼らは操られているそうだったが、それを哀れむ余裕はラクロア軍には無かった。
ズガァッンッ!!
その時、一機の機兵が爆発して倒れこんだ。野砲の一撃が炸裂したのだった。
距離が近づいたためか、それともすでに数発貰っていたためか、シールドは貫通され砲弾が本体にめり込んでいた。
前衛の盾持ちが破壊され倒れてきたため、後ろに並んでいた機兵も歩行が崩れた。
そこへ次々砲弾が撃ち込まれると、二番目の撃墜となった。
しかし、他の機兵達はいよいよ防衛線に辿り着き、そして破った。
強力な機兵の力によれば、防衛線も城壁も簡単に破壊されてしまう。
開いたアナからモンスター群も防衛線の内側へと流れ込んでくる。
防衛線ならまだいいが、城壁まで突破されると、野砲も戦車もまたたくまに破壊されてしまう。
それは敗北だった。
「バズレイ!」 「メガファン!!」 「ムービガンッ!!」
法術隊の一斉放火だ。もう一機だけ機兵が崩れ落ちた。
48 :
1:2006/04/23(日) 01:54:15 ID:???
ストライクは、機兵の姿を一瞥すると、炎の剣を構えた。
炎の剣の威力なら大砲にだって負けはしない。おそらく機兵を破壊することも可能だろう。
この剣は、持ち主の魔力と体力を消耗して炎を吐く。
バスターへ放ったときの一発目とニ発目では明らかに火力も消耗も違っていた。
だから、ルウムへ来る途中に出会ったモンスターで実験をやってみた。
軽く振る、いや軽く念じてみる、するとパームの呪文にも劣る程度の小さな炎が出た、そして体力の消耗も少ない。
今度は少し強く念じてみる、メガパーム級の炎が出た、そして酷く消耗した。
つまりは、比例するのだ。
敵がたくさんいる以上一度に全力は使えない。
かと言って手加減しすぎれば機兵を貫けない。
ストライクは深呼吸すると、ゆっくりと右手に剣を構えた。
腰を引き、右半身を引き、剣を直角に目標に向けて、突きの型だ。
「ハァッ!!」
気合と共に剣を突き出した、剣から、一点に凝縮された炎が吹く。それはまるでレーザーのように。
パームというよりはルフィラ系のような炎の光線が、一直線に夜空に映えた。
ズッガァッンッ!! ブゥォオッ!!
貫かれた機兵が、炎をあげて崩れ落ちた。
はぁはぁはぁ……と、ゆっくり呼吸を整えるストライク、しかし思ったよりは消耗していない。
やはり一点に火力を集中させると言う発想が項を奏したようだ。振れば広範囲に、突けば一点に、そういう特性だった。
一瞬、戦場を奔った光の火線に、城壁にいた兵達はみな驚いた。
やがて機兵が燃え崩れ、それが味方の放ったものだと知るとみな歓喜した。
ストライクは続けて二機目、三機目と狙撃していく。
フラガもそんなストライクを見ると口許を緩めた。
一時はどうなることかと思ったものの、彼に船を出す約束もなんとか守れそうだ。
しかし、まだ安堵するには速かった。
「フラガ隊長! 港側からモンスターが!」
「リークの騎馬隊を回せ! 歩兵には防衛線を維持させろ!モンスターを町の中にいれさせるな!」
49 :
1:2006/04/23(日) 01:56:33 ID:???
「はぁはぁ……、これで四機……」
突きの型で撃った炎だったが、それでもさすがに四発はきつかった。
ストライクはすでにフラフラだった、しかし、まだ倒れるわけにはいかない。
城壁付近まで来た機兵はギリギリで法術隊が撃破して、ラクロア側はなんとか戦線を保っていた。
その時、ストライクのずtっと後方、町中で悲鳴と爆音が上がった。
「なんだ!?」
「これは……南門から敵の騎馬団が進入した模様です……!」
「ラクロア側からか!?」
フラガが伝令に怒鳴った、のが、ストライクにも聞こえた。
「こちらの騎馬は……!」
「ゲイル隊は遊撃に出ています、リーク隊は港側に……」
「おいおい砲を壊されたら持たんぞ!何人でもいい!遊んでる歩兵は至急こちらに回せ!」
「ハッ!」
南からこっちに来るって……町は……姫は……!
周囲には、砲弾の炸裂音が鳴り響いていたが、ストライクはフラガの声を聞き逃さなかった。
しかし、自分がここを抜ければ敵の機兵に城壁を突破されてしまう。
──どうすればいいんだ
その時、前方の戦場で複数の爆音が起こった。
遊撃に出ていたゲイル隊、メビウスの一団がついに敵の脇腹を陣取って砲撃を開始したのだ。
突然、脇を突かれ総崩れするモンスター群、盾持ちの後ろから狙われあっさり崩れる機兵隊。
そして横に注意を取られた瞬間正面からの砲火も入る。西と南からの十字砲火が形成されていた。
そのメビウスの砲撃音が、ストライクにはミリアリアの声に聞こえた。
──貴方はフレイを守ってね、と。
ストライクは城壁より飛び降り、駆け出した。
50 :
1:2006/04/23(日) 01:59:53 ID:???
町へ向かうにつれ飛行型ではないモンスターが増えてきた。
ジンゴブリン、クラブザウート、スケルトンシグー。
時間はかけていられない、ストライクは炎の剣を横凪ぎに道を明けると、再び走った。
はぁはぁはぁ──しかし、いまのは体力を食いすぎた。
とはいえ、放置すれば砲台を壊しにいかれるのだから倒すのが無駄というわけでもない。
しかし、自分が優先すべきは姫だ……。
逆に言えば敵の優先は砲台の破壊のわけだから、姫がまだ無事である可能性は十分にあった。
そのとき、建物の一角からスケルトンシグーが飛び出した。
全身真っ白でキャシャそうなモンスターだが、そのスピードは侮れない。
ストライクはスケルトンシグーの一撃を、とっさに左手で抜いた銀の剣で受け止める。
炎の剣を一旦手放し落とすと、そのまま右手も銀の剣の柄に沿えて、両手でもってシグーを両断した。
この銀の剣は、ラクロアの騎士にのみ送られる特別な剣で、この剣を持っていることは騎士の証明ともなるものだ。
見た目も美しく実用的でもあり、普通の兵が使っている鋼の剣より軽くて鋭いという優れものだ。
ストライクは炎の剣を鞘にしまうと、この銀の剣を右手に構え走り出した。
確かに炎の剣は優れているが、体力を消耗しすぎた。ここからは銀の剣で戦うしかない。
炎の剣は撃てても後一発、その一発は残った力を全部込めるというやり方で、本当に最後の一発になる。撃てば気を失うだろう。
いよいよフレイがいるであろう砦が見えた。
さすがに砦にはいくらか兵がいたらしく、モンスターに抵抗をしている。
「このおおっ!!」
その時、ストライクに向かって金髪の少女が斬りつけてきた。
少女と言っても鎧を着けている、騎士か戦士らしい。
「な、なに?」
「ここは私が通さん!」
どうやら敵と勘違いしているようだ。
51 :
1:2006/04/23(日) 02:02:17 ID:???
「僕は味方だよ……!」
「嘘をつくな!! ガンダム族は全部ザフトだろう!!」
「違う……!」
金髪の少女は、果敢に剣を振ってくる。
すでに体力を大消耗していたストライクは剣をかわした拍子に思わず倒れてしまった。
「貰ったァッ!!」
「──!!」
バッキッッンッッ!!
閃光が走ったと思うと、少女の剣が宙を待った。
「なんだ、ストライク、こちら側に戻る気にでもなったのか?」
「イージス……!」
ストライクを助けたのは、イージスのルフィーラだった。
金髪の女騎士は、もう一本さげていた剣を引き抜くと、怒りに任せイージスに斬り込んだ。
「……邪魔だ」
バズ、とイージスが小さく呟くと、少女は簡単に吹き飛ばされた。
「ストライク、もういいだろう、お前は俺達の……」
しかし、ストライクは、ゆっくりと立ち上がり少女の前に、守るようにして立った。
少女は驚いて叫んだ。
「お、おまえっ」
「……言ったはずだ、僕は、ラクロアの騎士だァッ!!」
52 :
1:2006/04/23(日) 02:05:03 ID:???
バズ、もう一度イージスがそう呟くと、ストライクの体も弾き飛ばされた。
「かはっ……」
「そんな体で、俺に勝てるわけが無いだろう」
ストライクはなんとか立ち上がった、が、銀の剣を捨てた。
しかし、それは投降の証では無い
左手に鞘を持ち、腰を落す。
抜刀術か?とイージスは思ったが、この距離なら間合いじゃないと知っていた。
だから、油断した。
「ハァァァッッ!!」
ブオォォォオッァワァ!!
ストライクが渾身に剣を引き抜くと、鞘から剣から炎が吹き出した。
一面が焼けつくされる、周囲にいたモンスターの大半が焼け死んだ。
イージスはとっさにバズの呪文で少し相殺させ、だが、それでも強烈な炎を浴び吹き飛んだ。
前後して、帝国軍に引き上げの合図が入る。本隊が壊滅的打撃を受けたので攻略を諦めたのだ。
イージスは立ち上がる、目の前には、砦を守るように孤をかいて燃え続ける炎があった。
「ストライク……」
そして、彼は立ち去った。
「おっおい!」
金髪の少女が、倒れこんだストライクを揺り動かす。
「おいっおまえっ!大丈夫かよっ!」
起きないストライクを、金髪の少女は仕方なく砦へ運び入れた。
・・続く
カガリたん登場!でもキラはストライクとキャラがもろかぶりなので出てきそうにないし、
メンデル関係とは無縁の予感……
そこらへんはルージュたんと廃嫡されたストライクの兄ハイペリオンに期待.
流浪の刀匠レッドとか傭兵騎士ブルーとか、外伝まわりも期待していいかな?
俺の予想は、あとからラクロアが敵になって、人工的に造られた騎士とかで
カラミティ・フォビドゥン・レイダーが出てきたり、ラスボスがプロヴィとか思った
ストライクはパワーアップしたらフリーダムでイージスがパワーアップしたらジャスティスは・・・、ないかもな
中々面白いねw
ただ、少し言わせてくれ
>>1 SDガンダム外伝の話は、『本編の流れと、必ずしも一緒にする必要はない。』と思う。
だから、『SEED本編とは違った、オリジナルな流れ』をして見ては?
それと、一つ提案なんだが・・・
物語全体を四つに分け、それぞれにサブタイトルを付けて見るのは如何でしょうか?
↑の事は、『SDガンダム外伝シリーズの伝統』なのでw
第一弾 新たなる伝説
000 プロローグ〜新たなる伝説〜
001 勇騎士ストライク BHP700
002 法剣士イージス BMP800
003 重騎士デュエル BHP650
004 法術士バスター BMP750
005 隠騎士ブリッツ BHP600
006 フレイ姫 BMP50
007 ハルバートン王 BHP80
008 衛騎士ラミアス BHP320
009 衛騎士フラガ BHP550
010 中級騎士ゲイル BHP280
011 下級騎士リーク BHP240
012 上級法術士ミリアリア BMP300
013 中級砲撃手トール BHP210
014 下級砲撃手カズィ BHP120
015 中級弓士サイ BHP260
016 女騎士カガリ BHP240
017 ラクロア弓兵隊 BHP450
018 ラクロア法術隊 BHP600
019 ラクロア騎馬団 BHP1200
020 ラクロア歩兵団 BHP1200
021 自走砲メビウス BHP800
022 大型野砲ロングスピア BHP1200
023 アークエンジェル号 BHP1000
024 モンスタージンゴブリン BHP150
025 モンスターディンバード BHP170
026 モンスタークラブザウート BHP200
027 モンスタースケルトンシグー BHP250
028 モンスターバビバット BHP220
029 モンスターザムザザミミック BHP300
030 モンスタータートルゾノ BHP350
031 モンスターキラーグーン BHP240
032 騎馬ナスカ BHP+100
033 白騎士ザクファントム BHP550
034 緑騎士ザクウォーリア BHP450
035 衛兵ダガーエル BHP250
036 機兵マニウバ BMP1600
037 機兵ハイマニウバ BMP2000
038 妖精ジムスナイパーカスタム HP350
039 謎の小鳥 HP ??
040 占術士クルーゼ BHP300
041 炎の剣 BMP+1000
042 炎騎士ストライク BHP2000
>>56 せめて炎の剣のストライクを"炎熱騎士"とか"轟炎騎士"とかな感じでもうちょっとヒネってやって欲しいとオモタ
いまさらながらに気付いたがこの話の五体のガンダムの能力って、
まさに騎士ガンダムVSアルガス騎士団というIFそのものじゃないか?
つまりさ、
勇騎士ストライク ・・・ 騎士ガンダム
VS
法剣士イージス ・・・ 騎士アレックス
重騎士デュエル ・・・ 闘士ダブルゼータ
法術士バスター ・・・ 法術士ニュー
隠騎士ブリッツ ・・・ 剣士ゼータ
・・・書いてみると微妙に違うかorz
編成とか要求される能力とかは似てると思うんだけどなあ・・・
ラスボスはキラと予想
凄い懐かしいw
いいなかこのスレ。
>>60 わかるわかる
鎧闘神では
サンドロック = アレックス
シェンロン = ゼータ
ヘビーアームズ = ダブルゼータ
デスサイズ = ニュー
だった
>>63 それは知らなかったな。
そうか、だからSDガンダムフォースではデスサイズが魔道士キャラだったのかw
重騎士デュエル+霞の鎧(アサルトシュラウド)という電波を受信しますた。
重騎士の時点でアサルトシュラウドじゃね?
たしかに。
でも折角ザフト領内に霞の鎧があるんだから一度はザフト側で使わせてみたいわけですよ。
力の盾をトリケロスにするとゴールドが持ってっちゃうし。
そういえば三種の神器と並ぶ初代騎士ガンダムのメイン武器、
電磁ランスは出さないのか?
70 :
1:2006/04/27(木) 17:39:26 ID:???
──第八章 船出
一陣の風が吹いた。
しかし、それでもルウムの町から血と硝煙の匂いが消えてなくなることは無かった。
昨晩の帝国の猛攻は、既の所で撃退することできた。とはいえ、その爪後は浅くは無い。数百の死者も出ている。
「体が動く者は手を貸せ、 昼には船を出すぞ」
この町の指揮官、衛騎士フラガが声を出す。
怪我の無い者だって昨晩の戦闘でクタクタだった、がそれでもフラガは作業を急かせた。
「……延期じゃないんですか?」
フレイに肩を借りて、なんとか歩いてきたストライクが尋ねた。
フラフラなストライクを見てフラガが苦笑しながら言った。
「お前さんは休んでいろ、船は出すさ、……延期してどうなるもんでもないしな」
両手を左右に広げ、お手上げといった感じのジェスチャーをしながらフラガは言った。
しかし、顔は笑っていたし、声も明るかった。
昨晩こそなんとかなったものの、すでにラクロア城を押さえられ、付近の村々も押さえられつつある。
補給の期待が出来ないのだ、兵員も、弾薬も、食料も、このまま戦えば減る一方。
それに対しザフト帝国側は、その領地を広げ、国力を高め、そして機兵の数も増えている。
時間が経てば経つほどにラクロア側は不利になる。だから、延期は出来ないのだ。
それに今日ならいくらか勝算もあった、昨日あれだけ戦った後だ、さすがに今日なら北の岬の帝国軍も疲弊しているだろう。
それならば、敵の制海を突破することも可能かも知れなかった。
ルウムは元々港町である、海にモンスターが増えてからは、通常の木船だけではなく、鉄製の戦艦も多く作られるようになっていた。
ザフトがいよいよラクロアに侵攻を開始した頃、その鉄鋼艦のほとんどは国に徴用され軍艦とされた。
ザフトの本国は、海を隔てたずっと向こう側の大陸にあった。
だから、制海権さえ譲らなければ侵攻が阻むことができた、そのため国はルウムに大規模な造船工場を建設する。
またその施設を防衛することも含め町の要塞化を進めた、さらに町の全周を城壁で囲む。この城壁はラクロア城には無いものだ。
数ヶ月の間、それらルウムの守りでラクロア王国は守られていた。
しかし、帝国側が水中用の機兵を投入すると、その戦況も一気に崩される。
ラクロア海軍の船は次々と撃沈されて、作っても作っても壊されていく。
そして、とうとう制海権を奪われ、現在に至る──。
71 :
1:2006/04/27(木) 17:45:27 ID:???
しかし、工部では制海権奪還のために、密かに新造鉄鋼艦を建造していた。
とはいえ、完成したのはたったの一艦。
大砲や戦車のほうに資源や人材を取られた上に、そもそもの補給物資も減っていたのだから、一艦完成したのだって奇跡のようなものである。
そのたった一隻の虎の子を、フラガはストライク達に譲るつもりなのだ。
昨晩の戦闘で見た炎の剣の煌きは、確かに希望を感じさせるものがあった。
フラガが知っていた──城で会ったことがあるストライクは、優柔不断で、どこか間の抜けてる男だったが、
ここにいる彼は、確かに騎士と呼ぶにふさわしい、立派な男だった。
だから、彼が行くというのなら、出来るだけの力を貸したかった。
さらに言うなら、この情勢の中一隻だけ完成できたのは、彼に渡すためだったんじゃないかと宗教的な考えにまで至ってしまう。
一緒に付いて行ってはやれない自分の代わりに──、頼んだぞ──。
アークエンジェル号。
それが、この白亜の鉄鋼船の名前である。
「あー、カガリ三級騎士、ちょっといいかな」
「……なんだ、フラガ上級騎士」
フラガは、金髪の少女──カガリを呼びつけた。
この少女は、昨晩ストライクに剣を向けたあの少女である。
「この船は、これからオーブへ向かうことになっている、同乗して頂きたいんだが」
「私はラクロアに救援に来ているのだ、ザフトを討っていないのに戻れるわけがない」
少女は凛として答えた、彼女はラクロアの騎士ではない、オーブの騎士である。
とはいえ、彼女の態度は非常に偉そうだった。というより不機嫌だった。
どうやらフラガの提案が、彼女の騎士の誇りというものにふれたらしかった。
「まぁまぁ、だからさ、もっと援軍を連れて来てくれないかなってこと」
何? と小さく吐き、少女はフラガを睨み付けた。
「な? 君にしか頼めないだろう?」
それは、本心ではない、確かにラクロアの国内で物資が賄えない以上、オーブに頼るしかないのだが、
オーブにだってそんな余裕があるとは思えなかった、それでも、彼女を言いくるめるためにフラガはそう言った。
自尊の強い女だった、君にしか、と言われれば喜んで受けてしまう。責任感も強い彼女は胸を張って言った。
「……わかった、任せろ」
あまりにわかりやすく、そして気持ちの良い彼女にフラガは思わず噴出した。
72 :
1:2006/04/27(木) 17:48:03 ID:???
「フーレーイッ♪」
「キャッ」
アークエンジェル号へは黙々と物資が搬入されていた。
フレイは、手伝うでもなく甲板の腰掛に座ると、その様子をじっと眺めていた。
そこに背中から声がかかる、手で目隠しをされた。
誰、と聞くまでも無い、しなやかな細い指は女性の物だったし、この軽快で暖かな声は平明だ。
それに、フレイはラクロアの王女であったから、彼女にこんなことをする人間は他にはいない。
「ミリアリア? ……もうすぐ、お別れね」
ミリアリアとは対照的に、フレイの様子は暗かった。
そういえば、オーブへ留学するお別れの時も彼女は明るかった、とフレイは思い出していた。
わざと明るくしているんだろうとはわかっても、わがまま姫であるフレイにはそういう態度は真似できない。
あの日も、酷く暗い表情でミリアリアを見送ったものだった。
「それがね♪ 違うのよ♪」
「……何が違うの?」
「さっきフラガさんに呼ばれてね、私はフレイの護衛をするようにって♪」
護衛……?と小さく聞き返す、意味がわかった瞬間、感染ったようにフレイも明るくなった。
「それって……」
「私もアークエンジェル号に乗るってことっ」
そう言うと、ミリアリアはフレイを抱きしめた、フレイも彼女を抱き返した。
控えて見ていたサイやトール達の顔が紅くなった。
「あー、ミリアリア上級法術士、ちょっといいか」
「なんですかフラガさん? 改まった呼び方なんてして」
「ちょっとな……、お前は姫と知り合いなんだよな?」
「ええ、まぁ」
「よし、では、お前に姫の護衛を任する、速やかにアークエンジェル号への乗船準備をしてくれ」
「ええ? でも、そしたら私達の戦車隊は……」
「ああ、あいつらも連れてっていいよ、メビウスも持って行け、……他にも必要なものがあるならなんでも言え」
「フラガさん……」
「姫を、頼んだぞ」
「……ハイッ」
と言うのが、十分ほど前のことだった。
73 :
1:2006/04/27(木) 17:50:07 ID:???
「何をしている、速やかに乗船の準備をするようにと言われたはずだ」
再開を喜ぶフレイらに、軍帽を深く被った女性騎士が叱りつけた。
すぐに謝罪すると、後でね、と残してミリアリア達は駆けていく。
フレイは一人その場に残された。
「姫は船室へゆかれてください、案内は……」
そういうと女性騎士は周辺を見渡したが、みなが作業に没頭しているようだったから、私がしましょう、と言った。
しかし、フレイは断った。迷惑をかけたくない、というのは建前で、こんなお堅い女性とは一緒にいたくなかったからだ。
だが、女性騎士からすれば、こんなところをうろうろされるほうが迷惑だったので、無理やりにこちらです、と呼びつけた。
女性は、王族も真っ青なぐらい規則正しく背筋を伸ばし、ピンッと立って歩いた。
騎士という生き物は大抵そういう歩き方をするものではあるが、彼女はそのなかでも特別キリキリとしているようだった。
わがまま姫からするならば、敵となるタイプである。
扉を開き、姫を中へ入れると、最後に女性が言った。
「紹介が遅れました、バジルール中級騎士です、以後、この艦の指揮を執らせて頂きます」
女性はハキハキと名乗った、言葉に一点の曇りも無い、練習でもしているのかと疑いたくなった。
それだけ勝手に名乗ると、女性は忙しく部屋を出た。
フレイはすこし憂鬱だった。
せっかくミリアリアもいる船旅なのに、あんな女性がいたのでは、あまり楽しくはならなそうだったからだ。
せめて城のラミアスくらいは愛嬌のある人が良かったと思った。
しかし、騎士としては頼りになりそうにも見えたので、少しだけ安心もした。
だが、部屋の小さな窓から外を眺めると、見える景色があまりに小さくて、やはり退屈な思いにかられた。
74 :
1:2006/04/27(木) 17:53:18 ID:???
ストライクは砦で治療を受けていた、年を老いた熟練そうな法術士から治癒の呪文を受けている。
傷は大分癒えていた。しかし、疲労までは完治しない。
そう言えば、ジムスナイパーがくれた秘薬の中に疲労を吹き飛ばすような薬があったことを思い出したが、
しかし、それは今は使わないことにした。いずれ、どうしても必要になることもあるだろうから、取っておくことにした。
いまは、ゆっくり体を横にして、休む──。
船出まで後数時間ある、起こしてくれると言ったから、少しだけ眠ることにした。
ブォッ ブォォォッッ!
汽笛が鳴った、大音量のそれにストライクは起こされる。
まさかもう出航か!?
ふと見ると、起こしてくれると言った老人は眠っていた。
ヲイヲイと呆れたが、それも無理もないことと思いなおし、自分に掛ってた毛布を老人に掛け直した。
この老人も、昨晩からずっとたくさんの人間を治療していたに違いない、例えそれで疲れて眠ったとして責められるものではない。
ストライクは急いで砦を飛び出すと港に走った。
「頑張れよ!」 「気をつけて!」 「頼んだぞ!!」
走るストライクに、町の人々が声をかける。
昨晩のストライクの戦いは町で噂になっていた。
そして、彼が勇者ガンダムの生まれ変わりであるとか、そういう願望みたいな所にまで膨らんでいた。
そんな声援が、何故か嬉しかった。
『何故か』というのはおかしいかも知れない。普通声援とは嬉しいものだろう。
しかし、いままでのストライクはそういうものが苦手だった、誰かからの期待とか、そんなものに応えられる自信は無かった。
今だってそうだ、自信は無い、……だが、何故か勇気が沸いた。
賭けられる希望の尊さを──彼は堂と受け止め、走っていった。
「遅いぞ! 何をやっていた!」
甲板から厳しい目つきの女性の騎士が、ストライクを怒鳴りつける。
彼は縮こまって謝った。
続く
GJ!
次回は水中機兵が登場か。
76 :
1:2006/04/27(木) 21:15:58 ID:???
第九章 海戦
ヴォォォッ
高らかに汽笛を上げてアークエンジェル号は出航した。
全長百メートルは優に超える、ラクロアの艦艇では最大の大きさの鉄鋼艦である。
貿易船を徴用し改良して使っていた今までの艦艇とは違い、この船は初めから戦闘艦として開発されていた。
船尾には大型の曲線野砲『ゴッドスピア』が二門、中央にはロングスピア級の大砲が四問、船首には主砲『ヴァトラスソード』が装備されている。
とは言っても、所詮は対艦、対モンスター用の装備に過ぎない。水中機兵相手にどこまで通じるかは未知数であった。
出航から少しの間は、平和だった。
フレイは自室を抜け出すと甲板へ上がる、しかし、その姿を見つけたバジルールが怒鳴った。
「姫、ここで何をなされているのです! じきに戦闘が始まります、船室へお戻りください」
フレイはばつが悪そうに返事もせず梯子へ引き返した。
少しくらいいいじゃない、なんて思えるようになったのは、彼女に余裕が出てきた証拠だろうか。
ルウムに入ってミリアリアと再開してからは、彼女は昔の明るさ、というか気性を取り戻しつつあった。
それなのに、狭い船室に帰り、一人ですることも無く佇めば、嫌な思い出が蘇ってしまう。
赤い絨毯を、まだ足りないのとでもいうのか、さらに赤が染み込んでいく。無残に崩れた父の体から、零れて、染みて行く。
そういうものを忘れるために自分は甲板へ行ったのだと、あの厳つい女に言ってやりたかった。
しかし、それは同情を乞うようでみっともない。
横暴と思われても、惨めと思われてはいけないというのが王族であった。
どれだけわがままを言おうと構わないが、情け無いことは決して言うなと躾けられている。
だから、どうしても甲板に上がるなら、風に当たりたい、という身勝手な理由しか有り得なかった。
しかし、そんな勝手な理由を押し通せる状況ではないとわかっている。
それで仕方なく、船室の小窓から海を眺めることにした。
小さな窓から見える海の景色は、ひたすら不易で退屈だった。
それでも、色が青かったから、落ち着けるような気がした──。
しばらくすると、ストライクがこの部屋を訪ねてくる。
大丈夫ですか、と彼は聞く、それはすべてをわかって言っているのだろうか。
大丈夫よ、とフレイは答える、と彼は笑顔を見せた。
「ご安心ください、この船も、姫も、姫のご友人も、……命に換えてかならずお守りします」
「……そう、期待しているわ」
「ハッ」
ストライクは、騎士らしく高らかな返事をする。
炎の剣を得てからの彼は、少しだけ騎士らしい自信と自覚というものが芽生えていた。
77 :
1:2006/04/27(木) 21:18:20 ID:???
ヴォォォッ
再び大きく汽笛が鳴った。すでにここは敵の領海だった、その上で鳴らすということは、戦闘開始という合図である。
バジルールが双眼鏡を眺めると、三、四隻の鉄鋼船の姿が見えた。
機兵は見えない、というか、機兵は水中を来るものだから、見えることは無い。
「雷撃弾準備! 砲手は各砲座に入れ! 本艦はこれより第一級戦闘配備を取る!」
バジルールの号令と共に動き出すクルー達。
ミリアリア達四人も急いでメビウスの準備をする。可動砲台として使うのだ。
ストライクは船首に行くと、敵船を見つめた、炎の剣で狙い撃つには若干遠すぎる気がした。
「勇騎士!何をしている!死にたいのかそこを退け!」
バジルールに怒鳴られ、ストライクは飛びのいた。
「ヴァトラスソードってッッー!!」
ヴァゴホッォォッンッ!
ストライクは急いで耳を塞いだが、それでも轟音が耳を突き抜けた。
ヴァトラスソードは、アークエンジェル号に装備している中でも最大口径の大砲である。
いや、帝国側にもいまの所はこれより大きい砲門は無い。
世界最大の射程と世界最大の破壊力、しかし、大きな欠点があった。
「うあぁぁぁあぁぁ」
船が揺れるのだ。
あまりの衝撃と反動に、酷く酷く船は揺れた。
しかし、その代価として、敵艦の一隻が炎に沈んでいった。
78 :
1:2006/04/27(木) 21:21:35 ID:???
だが、敵の艦は問題ではない。
海戦最大の敵は水中機兵である。これをどうにかしないとお話にならない。
水中機兵は、大砲で狙いをつけることができないうえ、魚雷なんてものもラクロアには存在しないから、
雷撃弾を水中に散布投下するという、なんとも原始的な対抗手段しかなかった。
ドガドガドガドガンッ
アークエンジェル号の周囲に細かい水柱が次々起こる、まるでお祭りのようにも見えた。
散布された雷撃弾が爆発していた。
水中機兵とはいえ、向こうにも魚雷なんて装備はない、攻撃手段は、接近して剣や爪で船体を斬り裂くというものだ。
だから、例え当たらなくてもこうやって雷撃弾を散布し続ければ、攻撃を受けることは無い。
今回のアークエンジェル号の目的は、残念ながら敵を殲滅し制海権を取り戻す、というものではなく、突破である。
突破してオーブへ辿り着くと言う一点だ。
だから、この戦法で間違いなかった。
その時、艦の目の前に、水中から機兵──フェムウスが出現した。
しかし、バジルールは不敵に笑う。
「……フッ、ヴァトラスソードってッッー!!」
ぽっかりと穴が開いた。
水中機兵フェムウスは、大きく胴体を貫通されると、左右に真っ二つに割れて沈んでいく。
しばらくして、左舷、右舷から大き目の水柱が上がった。おそらくは先の機兵の破片が爆発したものだろう。
ただでさえ主砲の反動で大揺れの甲板に、大粒の雨と波が降った。
その甲板でも激戦が繰り広げられていた。
敵の飛行型モンスター及び水生型モンスターの侵攻である。
ディンバードに加え、巨大な甲羅と爪を持ったタートルゾノ、三角ばったボディのキラーグーン。
甲板で騎士達や兵達が激戦を繰り広げていた。
79 :
1:2006/04/27(木) 21:24:27 ID:???
ストライクは炎の剣を引き抜くと、頭上へ向けてひと薙ぎ振った。
炎の波がディンバードを包んだかと思うと、黒こげの雨となって降り注ぐ。
ストライクはミリアリア達の傍で戦っていた。
姫の友人ということも勿論だが、それに彼らはメビウスを扱っているので、他の戦士達より守りが薄かった。
彼らのメビウスは果敢に水中機兵を狙撃する。
「トール! そっちだって!」
「そんな簡単には動かないんだよ! 射線に敵が入ったら教えてくれればいい!」
そんな二人のやり取りを聞いてストライクは思った。水中の敵の位置がわかるのか、と。
「これでも私は法術士よ?」
それがミリアリアの答えだった。透視の呪文が使えるという意味だ。
透視の呪文は結構高度な呪文で、法術士なら誰でも使えるというわけではないことから、彼女の優秀さが伺える。
ストライクは思った、その透視の呪文と組み合わせれば、炎の剣で水中機兵を狙撃できるのではないか、と。
炎の剣は、文字通り炎を吐く剣で、普通にやってもとても海中の敵には通用しない。
しかし、一点に集中させる突きの型なら、ある程度の深さまでなら貫けると考えた。
だが、突き、の攻撃範囲は狭い、闇雲に撃ったところで当てられるものではなかった。
だからストライクは甲板にあがってくるモンスター達の相手をし、機兵へは攻撃をしなかった。
だが、最大の強敵はやはり機兵である。
一機はアークエンジェル号の主砲で撃墜できたようだったが、
それ以降の敵機兵は警戒を示して海上には姿を現さず、水中から船底をひたすら斬り付けてきた。
幸い、船底の装甲はもっとも厚く、浮力もあるためにまだ貫通はされてはいない。
しかし、いつまでも攻撃を受ければ持たないだろう。
ストライクはミリアリアに提案を話すと、船員に雷撃弾の投下を中止させ、小船を一艘降ろさせた。
ストライクは階級で言えば中級騎士にあたるから、そういう指示も出来るのだ。
80 :
1:2006/04/27(木) 21:26:45 ID:???
「雷撃弾の投下はどうした!?」
バジルールが、水柱のダンスが止んだのに気付いて怒鳴りを上げた。
「ハッ、勇騎士殿が作戦があると……」
「騎士ストライクか」
バジルールも、ストライクの昨夜の戦闘での活躍は聞いていた。
が、彼女はもともとMS族を余り好ましく思ってはいない。それでもフラガに頼まれれば気持ちよくこの艦を引き受けた。
この艦と、この作戦を引き受けた以上、なんとしても上手くやってみせねばならない。
自分が姫を無事オーブへ送り届ける義務がある。
だから、勝手をされるのは気に入らない。
「雷撃を再開しろ!」
「しかし……」
「この艦の総指揮は私だ!」
「……ハッ」
ドガドガドガッ
沸き立つ波に小船が揺れる。
「すみません!バジルール様の命令で……!」
それでも兵士はストライク達の乗った小船に影響が少ないよう、投下は左右の舷側外回りだけにしてくれていた。
この艦の船員は昨夜の戦闘を見たストライクのファンが多いようだった。
小船が酷く揺れる、ストライクは自分も必死でバランスを取りながらミリアリアが倒れないように体を支えた。
作戦は、シンプルだ。
ミリアリアが透視して機兵の位置を教える、そこをストライクが狙撃する。
アークエンジェル号の甲板からでは視界も攻撃範囲も大きく限定されるため、この小船から狙撃することにした。
小船は、太いロープでアークエンジェル号と繋がっているだけで、オウルとかエンジンというものは無い。
81 :
1:2006/04/27(木) 21:28:49 ID:???
一撃目の炎は外れた。
ミリアリアの声に合わせストライクは狙いをつけたがタイミングが合わなかった。
このやり方には無理があると思った。指や声でいくら場所を指定しても限界があった。
──失敗か、と思ったときミリアリアが微笑んだ。
ドガンッ!!
閃光が炸裂する。ミリアリアのバズレイの呪文だ。
ストライクは、これを目印にしてニ撃目の火炎を放つ。
音が弾ける、煙が立つ、水蒸気が上がる。
火の針が、海を刺すようにして、突き込んでいく。次の瞬間、水柱が上がった。
水中機兵フェムウスの爆発だった。
小船は揺れに揺れたうえ、二人は大水をかけられた。
ずぶ濡れのミリアリアは、しかし、外ハネの萎えてしまった栗色の髪をブルブル振り払い雫を落すと、にこやかに言った。
「さあ次よっ!」
この作戦は上手くいった。
まさか水中の自分達が狙撃されると思っていなかったのだろう、無防備なフェムウスはわけもわからず撃墜されていく。
しかし、四機目のフェムウスが撃墜されたときに、彼らの隊長──白騎士ザクファントムは状況を理解した。
敵船の後部に何かいて、それが自分たちを狙撃していると。
一旦、攻撃を中止して敵船から距離を取った。
そして、敵船の遥か後方に出て浮上し、その何か、を確かめた。
見ると、敵船から紐繋ぎにされた小船が揺れている。その上には二つの人影があって、刹那、閃光が奔ったと思うと部下のフェムウスが爆発した。
何か、強力な法術士がいるのだと、理解した。
ギガルフィラ級の呪文なら、確かにそういうことも出来るのだろう。
だがそんな術士は滅多にいるものではないし、いままでの海戦でもこんなことは無かった、
だからと言って、それが油断した理由にはなっても、免罪にはならないとはわかっている。
彼は機兵隊の指揮官として、そういうこともわからねばならなかった。五機もフェムウスを失った後に気付くのは遅すぎるというものだ。
彼は機体に剣を構えさせる。剣と言っても、フェムウスのつるぎは、三叉の矛である。
正面の小船へ向かって突撃した。
82 :
1:2006/04/27(木) 21:33:40 ID:???
気付かれた。
そう思ったとき、白騎士ザクファントムは急いで機体を潜航させた。
小船の上の乗員がこちらを向いたのだ。
頭上の海面が、泡を立てて蒸発する、もう少し判断が遅れていれば直撃していたところだろう。
敵が透視の呪文を使え、水中のこちらの位置がわかるとしても、フェムウスが水中機兵であるというなら水中を行くべきだ。
しかし、水中からでは、こちらも相手の姿が見えない。
もちろん、船底は見える、だが、それだけだ。
さきほどの敵の一撃を回避できたのは、気付かれた、と気付けたからに他ならない。
ならば、海面を行くほうが逆に安全なのではないか、彼はそう考え、再び浮上した。
浮上した瞬間、敵は炎を放ち撃ってきた。
しかし、それは予想の範疇だ、絶対にそのタイミングを狙ってくるとわかっていた。
だから、いとも簡単に回避できた。
そして、敵の攻撃の瞬間も見ることが出来た。
法術士ではない、騎士らしき男が剣を突き出すと、その瞬間に炎が吹きだしていた。
知らないが、魔法剣というものか、そういう剣術だと理解した。
今は、それが何なのか具体的に突き止める必要は無く、そういうものが存在すると理解することが大事だ。
彼は機兵隊の隊長を務めるような騎士だからそういう判断も行えた。
小船へ向けさらに加速させる。
敵の火炎を回避するのは案外簡単なことだと思えた。
騎士が振りかぶった瞬間に機体の位置をずらせば外れるのだ。
大抵の者はこういう場合恐怖とか迷いとかいうもので体がまともに動かない。しかし、歴戦の騎士であったザクファントムにならそれが出来た。
冷静な判断というやつである。
この場合、向こうの小船の騎士のほうが冷静さを欠いているようだった。
このザクファントムのフェムウスの動きは、彼にとって予想外のことなのだろう。
無闇に、というほど酷いわけではないが、狙いをつければそのまま焦って炎を繰り出していた。
ザッバァァツ!
しぶきが立った、いよいよフェムウスが小船を射程に捕らえたのだった。
右腕を振り上げて、矛の三叉を小船に構えると、一気に振り下ろす。
しかし、その瞬間、炎が奔った。
いままでの一点に凝縮した槍のような炎ではなく、視界一面に広がる灼熱の波。
横薙ぎに放たれた灼熱の炎が機体を焼いた。
激しい熱がコクピットの中にまで溢れこむ。
「がはっげへ」
しかし、ザクファントムは、操作バーを握り締めた。
そして、渾身の矛を小船へと突き刺した。
83 :
1:2006/04/27(木) 21:37:42 ID:???
ザバッババッッアンッ!
ストライク達の小船はフェムウスの矛に貫かれた、船体が粉々に割れていく。
ストライクはとっさに剣を収めると右手でロープを掴んだ、そして左手でミリアリアの腕を掴む。
藻屑となった小船が、アークエンジェル号からどんどん放されていく。
このロープを放してしまえば、自分たちも同じ運命だ、とストライクは感じた。
ストライクは右手にロープをしっかり絡ませると、ミリアリアを掴む左手にも、さらに力を込めた。
そのとき二人に、海中からキラーグーンが飛びかかってきた。
ストライクは両手が塞がっていた、ミリアリアだって呪文を唱えられる状況ではなかった。
──やられる。
二人の脳裏に絶望が浮かんだ瞬間、グーンの脳天に木矢が突き刺さる。
甲板からサイが居抜いたのだ。モンスターは任せろ、と言った表情で二人を見ている。
「おいっ!大丈夫かよっ!! ……キサカ、引きあげろ!」
金髪の少女が叫びを上げた。
キサカと呼ばれた大男の騎士は、ロープを力いっぱい引っぱって、二人を甲板へ引き上げる。
──あと少し。
しかし、邪魔というもののは、得てしてそういうときこそ起こるものだ。
ザッバァァツ!
二人の背中の海が割れた。
全身焼け爛れたフェムウスが、それでも二人へ向けて三叉の矛を構えていた。
サイは矢を放ったが、半焼しているとはいえ、まるで機兵に通じない。
金髪の少女は怒鳴りをあげ、引き上げをせかせた、キサカだって力いっぱいロープを引いた。
しかし、間に合わない。
三叉が二人に触れる──寸前で、ミリアリアはストライクの手をほどいた。
「フレイのこと、……よろしくね」
一瞬のことだった、あっけに取られた。
ミリアリアは、自由になった両手を合わせ、素早く詠唱をした。
「風よ……! ここより吹きて、かの者を断てッ……! メガサーベッ!!」
84 :
1:2006/04/27(木) 21:40:12 ID:???
ブオォオォッォオォッォッ
風が巻く、真空と言うべき巨大な刃が、フェムウスをザックリと両断した。
風が、風が吹く。
穏やかな吹き返しがアークエンジェル号の甲板に吹いた。
すぐに両断されたフェムウスが爆発し、残骸が海へと浮かびあがる。
ミリアリアの姿はどこにも無かった。
呆然とするストライクを、キサカは甲板へ引き上げ降ろす。
しばらく、甲板に声は無かった。
水のしぶきと船体に触れる風の音が、ただ淡々とただ刻々と流れて響いた。
ザフトの攻撃はいつの間にかに終わっていた。
あのフェムウスが最後の物だったらしい。
しばらくして、静かになって、甲板にフレイが現われた。
彼女は、もしかしたら何か虫の知らせのようなものを感じたのかも知れない。
黙々と甲板歩き周り、ミリアリアの姿を探す。
そして、どこにもいないとわかって、ストライクの前に立った。
「守るって……、守るって言ってじゃない……」
何も返せない、……何も、返せない。
数度ストライクの胸を叩いて、泣き崩れるフレイの姿を、ただただストライクは見せ付けられた。
それは、何より響く絶望だ。
ああぁぁぁああぁぁあ
自分が立てた誓いが、どれほど無力なものかと、思い知らされる。
自分の持った力が、どれほど無意味なものかと、思い知らされる。
貴女を救いたいというストライクの夢は、このときに、叶わぬものとなったのかも知れなかった。
第一部、完、
おお、まさか二話掲載とは!乙!
第一部完かぁ。ザクファントムが出てきたって事は運命編も絡むのかな。
続き、楽しみに待ってるよー。
・・・SDガンダム外伝ってここまでハードなシリーズだったっけ?
このままだとVガンなみにバタバタ死人が出そうな気がしてならない。
今言えるのはただ一言。
乙です。
GJ!
今思ったのだがフリーダムをSDにするとスペリオルドラゴンに似てるなーって。
もしかするとストライクが大怪我負ったときにスペリオルドラゴンと同化するとか!?
そうなるとガンレックス編とちょっと被るかもしれんが。。。
霞の鎧に翼がついてると考えるのが妥当かしらん
似てない
芯にできる程度にしか似てない。
SDガンダム懐かしいな
小さい頃ボンボンで連載してたの読んでたっけな
そういえばスペリオルドラゴンの元って、
名前からするとセンチネルのS(スペリオル)ガンダムだよな?
スペリオルドラゴンの方の造型の記憶があやふやで、
変形(変身?)能力くらいしか共通点が思いつかんけど・・・
種系を騎士化した絵がどこかの絵掲にあったような気がするんだが。
記憶違いだったらスマン。
種のMSだとアカツキがスペリオルドラゴンに似てる気がする
金色なガンダムってだけじゃんw
まあ確かの百式よりかは似てるかも試練が・・・
ミトメタクナーイ
盾の形状とかナイトっぽい
バーサル騎士+ブラックドラゴン2のデザインをうまく統合した姿だからな→スペリオル
暁では気品美しさ優雅さ力強さ凛々しさそして何より
速さがたりない
あ、あなたは・・・!!!
ネ ロ ス さ ん
マジレスするとι(スペリオル)ガンダムとスペドラは黄金神話でスペリオルカイザーが出てくるまでは
デザイン上の関係はなかったはず。(二代目)頑駄無大将軍みたいに横井オリジナルじゃない??
>>92 双葉じゃないか?
良スレage
hoshu
100
保守
保守
保守
ここがスダドアカワールドですか?
俺も昔こーゆー話考えたけど、「闘士デュエル」は
呪いで「呪闘士シュラウド・デュエル」になってしまう・・・
とかだったな
ストライクは歌姫ラクスの祈りでフリーダムとして復活
守護鳥ハイマットリィを従える
まあ・・・ヒイロっぽく変身モノになってしまうがな
>>105 つか、
>ストライクは歌姫ラクスの祈りでフリーダムとして復活
鎧闘神戦記『 そ の ま ま 』じゃねぇか!
『ヒイロっぽく』とかじゃなくてさ!
騎士イージスが闇の皇帝ザフトレッドの力で魔獣リジェネレイトになる妄想。
で、その現場を見てしまい、ザフト帝国を裏切る竜騎士ジャスティス。
>>106 いや、俺の中でストライクとかフリーダムって人物名じゃなくて鎧の名前なんだわ。
コーディネーター族しか装備出来ない。んで鎧が新生する。
>>107 勝手な妄想だが、騎士ストライクの細胞(?)とかザフトが手に入れて
人造MS族(モンスターの一種?)としてアウトフレームとテスタメントとか…
後はザフトの近衛騎士インパルスが魔剣アロンダイトの力で
魔騎士デスティニーに変貌するとか。
運命悪役は断固反対
>>109 ・・・で、その魔剣アロンダイトの正体は、
姿を変えたジークジオンだったりするわけか。
>>110 そこで闇騎士MK-2、GP02、ルナガンダム、騎士エピオン方式ですよ。
後々に仲間になったり。
>>111 前にオリ武者スレがあったが、そこで
SDガンダムフォースの魔剣エピオンの別の時代での呼ばれ方が
魔剣アロンダイトとか種系ラクロアネタがあった。
>>112 >闇騎士MK-2、GP02、ルナガンダム、騎士エピオン方式
・・・ 断 固 反 対 !
騎士運命は主役でなきゃ!本編の扱いがアレだったんだしさッ!!!
・・・イイだろう?
・・・なぁ?
...orz
魔剣アロンダイトに乗っ取られて騎士フリーダムと決闘
魔剣の呪縛をなんらかで振り切って共闘なんてどうよ?
あくまでインパ、ディスティニーが主役って事で
悪の陣営を描くって言うのもありだろ?
このさい洗脳という手がありますが
後はFF4みたく、最初は悪の騎士として描いて、
後々に自分のありように疑問を抱いて、勇者として覚醒するとかは…?
問題はインパルス→デスティニーの順番なんだよな…
デスティニーはどう贔屓目に見ても聖騎士に見えんしorz
逢魔騎士デスティニー「だーれも知らない知られちゃいけーないー。デビルマンーが、だーれーなのーかー♪」
双剣士インパルス「(つд`)」
法術師レジェンド「気にするなインパルス。俺は気にしない」
鳳騎士セイバー「デスティニー、戦争はヒーローごっこじゃない!」
インパルスは赤い鎧の双剣士・青い鎧の闘士・緑の服の法術師の三つ子。
ファントムペイン戦の後に双剣騎士ガイアインパルス・槍斧闘士アビスインパルス・賢者カオスインパルスにパワーアップ。
最終戦を目前に一人、また一人と脱落していくインパルス達。
仲間達の心が折れそうになった時、満を持してスペリオルドラゴン光臨。
バーサル騎士デスティニーインパルスへと三身合体して復活。
これやると騎士デスティニーが滅茶苦茶影薄くなる諸刃の剣。素人にはおすすめ出来ない。
>>118 コンセプトに反するかもしれんが、騎士デスティニーは
インパルス三兄弟の父親か年の離れた生き別れの兄というのは?
>119
その場合、兄の方がいい。
父にするとどうみてもF90だからね。
121 :
1:2006/05/12(金) 22:06:27 ID:???
第十章 失意の船は
明り取りから木漏れ日が差し込んだ。
しかし、そんなものでこの城の闇が晴れることは無かった。
ラクロア城の王の間には、今は見知らぬ人間族の男が鎮座している。
その男は灰色の小気味の悪いマスクを着用していた。それがオシャレなのか顔を隠すための物なのかはわからない。
肩上ほどの、男性にしては長めの金髪を掻き上げながら、その男が口を開いた。
「騎士ストライクと王女フレイを逃がしたか」
「……申し訳ありません」
蒼い鎧のガンダム族のナイトが、彼にひざまづいて深謝した。
蒼い鎧のナイトは、重騎士デュエルである。そして、玉座に鎮座している男の名は、占術士クルーゼだ。
占術士クルーゼは、人間族でありながらザフト帝国の大幹部である。
重騎士デュエルは、寝返ったラクロア軍の代表者として彼に報告をしていた。
「法術士バスターはやられたそうだな?」
「……ハッ」
その名を聞くと、デュエルの胸に熱いものが蘇る。
法術士バスターは彼の騎士仲間であった。そのバスターは、同じく騎士仲間であったストライクに殺されたのだった。
(あの裏切者め……ッ)
もっとも、『ラクロア』を裏切ったのはデュエルであり、バスターであるのだが、騎士ストライクが騎士デュエルを裏切ったことには違いない。
デュエルには野望があった。
ストライク、バスター、それにイージス、ブリッツ、そして自分、この五人で成そうと誓いあった野望があったのだ。
だから、デュエルのこの怒りもあながち的外れなものではない。
「……追撃の許可をっ!」
唸るデュエルに、怪しい微笑を浮かべながらクルーゼが言った。
「フム、いいだろう、裏切った身内を許せないと言う気持ちは、よくわかるものだ」
ザフトに加担する人間族のセリフだな、と思ったがデュエルはそれを表情には出さなかった。
顔の大半はマスクで隠していても、口許のゆがみから自分が侮られているとわかったし、そもそも人間族というものも好きではないが、
それでも自分より目上の主君に対しては絶対服従というのが騎士である。
もっとも、それが嫌でラクロアを裏切ったわけであり、このままザフト帝国に下るつもりも無いのだが、
しかし、今はそういう感情は押し殺して承服してみせた。
122 :
1:2006/05/12(金) 22:11:07 ID:???
「フフッ、そう畏まるな、……私が乗ってきた艦を使うと良い、新型の機兵も積んである」
「は……?」
デュエルは呆気た。
クルーゼの突然の提案である、ありがたいことではあるが、そんな好意を受ける義理は無い。
『褒賞』はすでに貰っているし、クルーゼの艦や機兵と言えば、私物であり最新型のものである。
彼が善意ある人間だとは思わなかったから、何か企みがあるのだろうと考えた。
しかし、それが何なのかはわからない。
ラクロア城を明け渡したといえ、裏切者を出し、王女を取り逃がしてしまった。
ザフト本国の人間が、元ラクロアの騎士などを良く思うはずは無いのだから、そこに付け込んでくるものと思っていた。
だが、使って良いと言うなら、それを断る理由も無い。
どんな企みが裏にあるのかは知らないが、企みはデュエルにもあった。
クルーゼがラクロアに機兵製造工場を完成させた後、それを奪うつもりである。
計画の主軸となる騎士を2名を失ったが、
その時に、クルーゼの艦と機兵を自分側の戦力にすることが出来れば、容易に城を制圧できるだろう。
デュエルがラクロアを裏切ったのは、もちろん人間族を好まないというのもあるが、何より帝国に勝てるとは思えなかったからだ。
機兵のその威力をみれば誰もがそう思うだろう。
実際は、機兵に見かけほどの戦力は無い、大砲や法術で破壊することだって出来る。
しかし、白兵を主とする騎士にとっては想像以上に脅威のものであった。
自分の何倍もの大きさで、数倍もの大きさの剣で、人も壁も力ごなしに薙ぎ払う。
圧倒的な姿だ。
人は、巨人というものに憧れる。デュエルもそうだ。機兵に憧れた。
自分も乗ってみたかった。
そんなことが、この計画の発端であった。
ラクロアに機兵工場を建造させ、そのあとでラクロアを奪還し自分の国とする、その後で帝国も打ち滅ぼす。
五人で立てた計画だった。
そのうち二人を失いはしたが、計画を取りやめるつもりは無い。
ならば、好都合であった。
「……ハッ、お心を感謝します、かならず裏切者ストライクと王女フレイを討ち取ってみせましょう!」
デュエルは、クルーゼの申し出を快諾し、深謝した。
高速艦ヴェリサウス、そして、氷装機アサルトシヴァ、それがデュエルに与えられた戦力である。
これだけの物が貰えるのならば、この男にへつらうのも悪くは無いとデュエルは思った。
とてもラクロアの技術で製造できるものではない、これならばラクロアを売った甲斐もあるというものだ。
デュエルの想いを知ってか知らずか、クルーゼは相変わらず不気味な微笑みで言葉を吐いた。
「フフッ、期待している」
123 :
1:2006/05/12(金) 22:12:25 ID:???
青い空と、青い海の狭間に、白い双胴式の鉄鋼艦がゆらゆらと浮いていた。
両の胴に一本ずづ大きな帆が掲げられている。
帆を使わずスクリューで航行することもできるのだが、風があるときには帆も使ったほうが速度が出る。
白い船体に太陽の光がキラキラと反射して眩しく輝いた。
一面に見えるのは海である。
島も陸も無く、見えるのは雲くらいなものだ。
爽快な景色ではあるが、眺め始めて二時間もすればそれも退屈なものでしかない。
弓兵サイは、見張り塔から海を眺めていた。
遊んでいるわけではなく、監視である。
帝国の戦艦や、モンスターの群れなどが船に近づいてこないか、その目で監視していた。
そろそろ交代の時間である、しかし、トールがまだやって来ない。
(まぁ、仕方ないよな……)
何が仕方ないのか、それはミリアリアが死んだことに起因する。
ミリアリアとトールは恋人同士だった。
王女ほどにではないにしろ、トールも随分と落ち込んでいた。
仲間や友達が死んでいくというのは、最前線のルウムではごく当たり前のことではあった。
とは言ったって、辛いものは辛い、特に恋人となれば相当に辛いだろう。
だから見張り番くらいでいいのなら、いくらでも自分が代わってやるつもりだった。
「……悪い、遅くなった」
「トール……」
サイは何も聞かず見張り台をトールに譲った。
同情やお節介というものを美徳だとは思わなかったし、来たのならば任せたほうがいいと思った。
掛ける言葉が見つからなかった、というのが本音ではある。
サイはゆっくりと階段を下りて艦内に戻っていく。
ふと食堂に行く途中でカズィに会った。
「あ〜、サイ、ちょうど良かった、これから王女に会いに行かない?」
「……なんで」
「だって王女だよ王女っ!」
次の瞬間、サイの拳がカズィに炸裂し、吹き飛ばしていた。
124 :
1:2006/05/12(金) 22:14:28 ID:???
ストライクは一人、船室に篭っていた。
あの後、王女に何度も謝りに行ったが、彼女は何の言葉も返してはくれなかった。
過ぎた謝罪など所詮は言い分けでしかないとわかっている。
しかし、他の言葉も見つからない。
腐っていても仕方ないと、それもわかっている。
炎の剣を手に入れて、少しいい気になっていたのかも知れない。
もう少し冷静になっていれば、死なすことは無かった。
最後の一機のあの水中機兵には、五回も六回も攻撃を躱された。
水中ではなく、水上を突撃してきたあの機兵に、心を乱された。焦って不必要な攻撃を何度もしてしまった。
完全に自分のミスである。
どんな風に謝ったところで許されることではない。
だが、こうして自分を責め続けたところで何の意味も無いと、それもわかっているのだ。
わかっていても、わかっていても……、ダメだった。
心の何かが砕けたようだ。
何度想いを積み直そうとしても、またバラバラと崩れ落ちてしまう。
ストライクは、ただひたすら揺らぐ海を見つめた。
ドンッ!
船室の扉が思い切り開いた。
金髪の少女が声を張り上げて現われる。
「ちょっと私に付き合え!」
「え……」
少女は、強引に力尽くに、ストライクの腕を甲板へ引っ張っていった。
「何……?」
「剣の稽古をする、……相手をしろ」
どうして僕が、と言い返す間も無く、少女は切りかかって来た。
とっさに、ストライクは銀の剣を引き抜き、それを受け止める。
125 :
1:2006/05/12(金) 22:18:58 ID:???
「さすがはラクロアの騎士だな……!」
金髪の少女は、豪快に何度も何度も剣を振り下ろし、斬って来た。
しかし、その斬撃は、特別速くも重くもなく、ストライクは簡単に受け止める。
「どうした斬りかえして来いっ!」
「なんで……!」
「特訓だと言った!」
ガンッ! ガンッガキッンッ!
その少女の剣撃は、でたらめで何か技があるわけではなかったし、筋力という意味の力も無かった。
しかし、熱い何かが、魂とか気合とか、そういうものの篭りは感じられる。
それは今のストライクの剣には無い力である。
ガァッンッ!!
銀の剣が宙を舞い、甲板に落ちた。
少女の気迫に押されストライクは剣を弾き飛ばされてしまう。
少女の剣先が、ストライクの目の前に突き出された。
「どうした、ラクロアの騎士というのはそんなものなのか……?」
無言で剣先を見つめるストライクに、少女は続けた。
「ラクロアの騎士なんだろ!お前は! 炎の剣に選ばれた勇者なんだろうっ!!」
少女の言葉が、鋭くストライクを貫いた。
──そうだ、そうなんだ。
ストライクは、左手で腰の鞘を掴んだ、右手でその剣のグリップを握る。そして一気に引き抜いた。
赤い軌跡が奔る。
少女の持っていた剣は半分になって千切れ飛ぶ。切断部が融解していた。
炎ではない熱が篭った、真っ赤な剣が、天を指す。
千切り飛ばされた剣の上端がぐるぐると回って落下した。甲板に突き刺さる。
「……やるじゃないか」
ストライクの瞳に光が戻ったのを感じて、金髪の少女は微笑みをみせた。
・・続く
>>119-120 マルスガンダムやルナガンダムみてぇだなww
問題はマルスガンダムみたく味方→敵→味方と変わっていくのか、
ルナガンダムみたく敵陣営だが陰から味方するのか…
>>121 いつもながらGJです。
なにやらサイがかっこよくなりそうな感じがしますな。
>1
GJ!
>>121 GJ!第二部開始乙!
なんていうか実に読ませる文章だな、素直に感服
ほしゅ
バスターは生き返りますか?
132 :
通常の名無しさんの3倍:2006/05/16(火) 21:11:23 ID:8rsND/mE
ナイトガンダムSEED ASTRAYを別冊ボンボンでやってください。
>>132 刀剣マニアで東方の民の血をひく剣士レッドアストレイとか考えてた
東方の民の血って言ったけど
アストレイレッドフレームが天宮と関係深いキャラなのはお約束なんだろうな
>>134 てかいっそなんらかの理由で天宮から流れて来た本武者とかでも。
ずびばぜんずびばぜん、実は私アストレイ知りません、読んだことありません
とても美味しそうな設定ですが、多分出せませんごめんなさい・・
もしASTRAY書ける方いらっしゃるなら是非お願いしたいですね・・
名前だけならともかく性格やエピソードはちょっと、読まないと書けないと思うし、読めよと言われても困りますね・・
というかですね、ほしの先生のコミックすらも読んでません・・、というよりボンボン読者じゃなかったですね、コロコロも読んでませんが、、
妙に話が重いのもそのせいです、すみません、というかその指摘は爆笑しました・・すみません
ところで”轟炎騎士”ってネーミングは頂きました、といってもまだ使う機会ありませんが、、使います
それで筆者に語彙があまり無いため、ナタルさんやらキサカさんやらの○○騎士みたいな二つ名みたいなものを考えていただけると助かります
他にも、少し上でも出ていますが、いずれ出るであろうインパルスやらセイバー、フォビドンなんかのもですね、当選は劇中使用にて発表と代えさせて頂きます、とか言って見たり
とは言っても、話の進む速度が遅いので、出番がいつになるかはサッパリですが・・
最語にこのような自慰的な物をおもしろいと言ってくださる奇特な方に感謝します
そして、真のナイトガンダムファンの方は多分期待裏切っててごめんなさい
>>134 なんとなくブルーフレームはGアームズの世界から来た感じがする。
ゴールドフレームはラクロアのとある国の王族っぽい感じがするが。
ラクロアンヒーローズ
大いなる遺産
円卓の騎士
新SDガンダム外伝ストーリー
これしかナイトガンダム知らない俺が来ましたよ
武者鉢丸(はちまる)
イメージはレッドフレーム。鍛冶屋ロウに「ハチ、サポートたのむぜぇ!」と言わせる為だけにこの名前。
>>137 某双葉では赤が天宮、青がGアームズ世界、
金色がガンドランドから来た事になってるが
懐かしいな。個人的に機兵は出してほしくなかったかも。
ボンボンでやってた漫画、機兵ばかり出てくるようになってから冷めたからな。
ガンレックスまでは許せたけど、それ以降の神秘機兵だとかはちょっとな・・・
アマツランダー「まともにダンスも踊れぬ者よ。フィナーレだ!」
武者烈斗丸「終わるかよ。俺は天宮一悪運の強い武者だぜ!」
ж『と、いう状況だが、君はどうするね?』
ガンサーペントブルー『依頼の話では無いなら俺には関係ないことだ』
ってコレ騎士ガンダムスレに投下するネタじゃねーな。
アマツランダーじゃなくてアマツドランダーだな。
アルガス騎士団の馬って、アーガマだったのか・・・。
えーと・・・
スマン、このスレは双葉発祥で進行しているSDガンダム外伝SEEDとは
まったく別物の
>>1の創作なんだよな?
俺的には実際に沢山のカードを向こうで見れただけに
文章で見てもイマイチ感動が伝わってこねぇや・・
その保管庫とか探してみたが、消えてるんだが…
俺もその双葉のってのは見つけられなかったが
"SDガンダム外伝SEED"で検索したら似たような所があってワロタ
>その保管庫とか探してみたが、消えてるんだが…
実は復活したんだな
だからurlくれよ
あらすじ
あらすじじゃないよね
>>150 kazumi386.org/~nijigen/SD/hokan.htm
なるべくむやみに晒さないこと
何でも前に消えたのは変な子が沸いてきたとかで。
ていうか151みたいなのがあったのかww
ずばり今晒してるじゃねえか 前もこうやって潰れたの知らんのかい
>>153 おおお、すごいね
まるで本物みたいじゃないか
なぜかガンドランダーの匂いがする
ここ面白い
続きが気になるよ
職人さん頑張ってください!
>>151のところは正直ビミョー。
双葉発のところは絵は本物に比類するけど設定が私的にイマイチ。
ここの職人さんの話は面白いと思う。
パイロット組をバッサリ切ってガンダムだけにしてる思い切りの良さがGJ!
3種の神器を扱ってくれるところも初期の頃のファンとして嬉しい(機兵を倒す炎の剣!)。
これからもこの調子でがんがって!
贅沢は言わないが、あんまりキャラは殺さんでほしいな。
三種子の設定と絵はありだなと思ったが過去のを踏襲して活かすこっちの方が良いと言うのはあるね
俺がSDで一番燃えたのは先代シャッフルだし
>>151 変身ネタはやめてくれ
人型ばっか多くて正直嫌だ
162 :
通常の名無しさんの3倍:2006/05/24(水) 19:02:39 ID:LN+OE4ke
>>136 どういう設定で使うかは知らんが、インパルスは鎧騎士&三人兄弟しか思いつかないよw
これからもがんがって!
164 :
1:2006/05/24(水) 21:39:15 ID:???
第11章 オーブ
お元気ですか。
その手紙は、いつもそのフレーズから始まった。
遠い、海の向こうのペンフレンドへ当てた手紙である。
しかし、今は届かない。
見渡す海は荒れているようだった。
今日が特別というわけではない、ここ最近は、一年か二年くらい前からは、ずっとそんな風に荒れていた。
昔はもっと穏やかだったのに、と彼は思う。
オーブの国土は、大陸というほど広くは無く、島である、だから、城からでもよく海が見渡せた。
特に彼の寝室は城の高いところにあったから、晴れている日なら水平線さえも見渡すことが出来た。
その、海と空との境目を、じっと見つめながら物思いにふけるのが彼の日課である。
「この海のずっと向こうにザフトがあるんだよな……」
どれくらいの距離があるのだろうか、なんて考える。
平時なら船で一日という距離だ、しかし、それは現実感の無い答えである。
船に揺られてるうちに着くという経験を、足で歩く距離に換算することは難しい。
例え数字というものに直したとしても、それは同じことだった。
実際にその足で歩いてみないことには空想の域を出ない。
それは例えば、自身の手で船を動かしてみるということでも構わない。
そうして自分の手で測るということによって、現実感というものが初めて生まれてくるのだった。
しかし、生まれてこの方、そんな距離を自分で歩いたことの無い彼にとっては、
この海の大きさは未知数だった。
どれくらい広いのか、どれくらい遠いのか、見渡す限り海ならば、ずっと向こうまで海なのではないか。
そう思うのだ。
海の向こうにザフトの国があると、それは知っている。
実際に行ったこともある、彼の友人も住んでいる。
それでも、この果てしない空と海を永延と眺めていると、それが幻のように思えてくるのだった。
陽光を背に受けて、キラキラと光るカモメを眺めて彼は言う。
「鳥なら、飛んでいけるんだろうな……」
自由に飛ぶ鳥を羨ましく思う、と。
鳥には鳥の苦労があると、彼は思わない。
自分が世界一不幸だとは思わなくても、自分はどちらかといえば不幸な部類に入る人間だと、そう思ってる。
それが、彼であった。
165 :
1:2006/05/24(水) 21:56:12 ID:???
彼が幼い頃は、二つの国は友好国だった。
会談やパーティーの際には、彼もよく連れていかれたものだったし、彼の友人がオーブへ来ることもあった。
だから、二人はよく一緒に遊んだものだった。
二人とも、立場が立場だったから、他に『友達』はいない。
対等に、誰にも咎められることなく、打ち解けあえる、唯一の友達だった。
互いにそうだった。
いまでも彼は、その日々のことを思い出す。
友人の城に泊まったら、そのまま帰りたくなくなって居座って困らせたこと。
二人で森に入って迷子になって大騒ぎになったこと。
モンスターに追いかけられたこと。山賊にさらわれそうになったこと。
色々あった──。
何時の頃だったか、その友人の国に怪しい占術士が現われる。
それから友人の父がおかしくなった。
友人の父は、確かに怖い人だった。
森へ入ったときなんかは二人してすごい剣幕でしかられたものである。
しかしそれは心配によるものなのだ。優しさというものなのだ。
その当時こそは疎ましく思っても、後になればそうなのだとよくわかる。
だから、決して、悪い人だとは思わなかった。
戦争を始めるような人ではなかった。
しばらくして、友人の国では人間族よりもMS族が尊ばれるようになる。
そして、機兵というロボットの開発が盛んになった。
さらに共和国だった友人の国は帝国と名を改める。
魔王サタンガンダムが降りたのだと、噂にもなった。
いよいよ軍備が整うと、友人の国は、ザフト帝国は、各国への侵略を開始した。
それが、この戦乱の始まりである。
その時何があったのか、いま何が起きているのか、具体的なことはわからない。
彼から友人への手紙は、その日から途絶えたままだった。
166 :
1:2006/05/24(水) 22:02:35 ID:???
カン カン カン カンッ
城中には、渇いた鉄の打撃音が無数にこだましている。
オーブの城は、その城内を機兵の開発工場に改装して、急ピッチで機兵の開発を行っていた。
そこら中に出来損ないの機械人形が腰をおろしている。
そして何人もの工兵がそれを完成させようと勤しんでいた。
王子キラは、城の回廊を歩きまわりながらその様子を観察していた。
オーブは、ラクロアに比べれば随分と機械技術が発展している。と言ってもザフトほどではない。
オーブにも、正確に言えばオーブという国が建つ前のこの地方にも、その昔は機兵が存在していたそうだ。
その頃にはまだザフトとオーブを別つ海も無かったという。
大異変の前の、『伝説の時代』のことだ。
今はもう、その技術は伝わっていない。
その時、何が起こったのかは伝説にも記されていない。
幾つもの国が滅びて、文明が消えて、地形が変化して、だが、それでもすべての生命が滅びることが無かった。
ただそれだけが、今ここにある世界からわかる、結果である。
しかし、ザフトの機兵に対抗するには、どうしてもオーブ軍にも失われた機兵の力が必要だった。
そこでオーブ軍ではザフトから鹵獲した機兵の研究と解析を行った。
当初は酷く難航していたものの、ザフト側の内通者からの技術協力があり、なんとか試作機の完成にまで漕ぎ付けそうになっていた。
「こんなもので戦争をするんだ……」
キラは人事のように呟いた。
実際、これが動いていれば違うのだろうが、
ツギハギな装甲で、胸のハッチをぱっかり開いて腰を下ろしているこの出来損ないの姿は、無様であった。
かっこわるい、そう思う。
兵器にとってかっこよさとは重要な意味を持つ、士気に関わるからだ。
また敵に対して畏怖を与えることにもなる。
巨大人型兵器といえば、なおさらである。
だがこれでは、逆に敵に勇気を与えそうだった。滑稽なのだ。
こういうもので戦争をするということが、彼に戦争の現実味をますます忘れさせていく。
167 :
1:2006/05/24(水) 22:08:16 ID:???
帝国は地続きの国の制圧を終えると、いよいよ海の向こうにも手を出し始めた。
ラクロアやグラナダ、ブリティスである。
しかし、ザフトはオーブに対してはを仕掛けてこなかった。
代々、ザフトとオーブは友好国である。帝国側はそれを守ったのだ。
だから、オーブは中立の立場を取った。
古くからの友好だったと言っても侵略に加担することは出来ないし、
とはいえ、帝国側が攻撃してこないと言っている以上、こちらから攻撃を仕掛けることもない。
ブリティスやラクロアとも国交があり、帝国への攻撃要請もあったがそれは断った。
その時、オーブはどっちつかずの中立として、静観を決め込んだ。
それが間違いだった。
帝国は破竹の勢いでグラナダを制圧すると、遂にオーブにまでその牙を向けてきたからだ。
帝国がオーブに攻撃をしなかったのは、古くから友好だったから、ではない、
一度に多くを相手をするよりも、分けて制圧した方が効率が良いとかいう、そんな理由である。
制圧したグラナダの国土に、大規模な機兵工場を設営すると、それらを以ってオーブへの侵略を開始した。
オーブはもともと島国であったから、海軍の戦力には自信があった。
しかし帝国側が水中用の機兵を投入すると、オーブの艦隊は脆く崩れ去っていく。
もしもオーブが中立の立場などを取らず、
水中用の機兵を完成される前に帝国と戦っていたならば、スダドアカの歴史は違っていたのかも知れない。
しかし、そうはならず、帝国は着々と勢力を拡大していた。
オーブの敗北間近だった、オーブだけではない、ラクロアもブリティスも、
帝国の前にスダドアカワールドすべてが陥落するのも、もはや時間の問題に見えた。
168 :
1:2006/05/24(水) 22:11:03 ID:???
「兄様は何もわかっていらっしゃられない!」
彼女は、いつも彼を怒鳴った。
アグレッシブな彼女からすれば、惰弱な兄などは苛立つ存在でしかないのである。
もちろん惰弱な兄からすれば、そんな妹は鬱陶しいことこの上ない。
だが、キラはそのことを表情には出さない。
何故なら、余計に鬱陶しいことになるからだ。
だからそういう性分に対して、彼女は苛立っているのである。
くっきりとした勝気な目鼻立ちに、ライオンを思わせる勇猛な金髪、燃えるようなオレンジの瞳。
その少女は、性格そのまんまな快活な顔つきをしていた。
それは、少年とは真逆な性分であった。
「……カガリの言うこともわかるけど……」
どっちつかずの曖昧な返事は、さらに彼女を不快にさせる。
彼女は、余計にイライラと眉を寄せて、彼を睨みつけた。
彼女は、彼の妹ではあるが、歳は同じである。もっと言えば双子なのである。
しかし、似てはいない。
生まれたときに、彼が男だったから兄になり、彼女が女だったから妹となった。
けれど、本来はそれは真逆であるべきなのかも知れなかった。
順番が、というよりは、性別が、である。
彼は、本を読んだり、海を眺めることが好きだったし、
彼女の方は剣や騎士というものに憧れた。
それは、反動だったのかも知れない。
無理やりに武を教えられた少年は、自由時間に海を眺めることを楽しみにしたし、
無理やりに華を教えられた少女は、御伽噺で読んだ騎士に、なりたい、と憧れた。
結果、将来、国を継ぐべき王子のほうはナヨナヨと、
本来、淑やかであるべき王女の方は猛々しくなってしまった。
169 :
1:2006/05/24(水) 22:17:55 ID:???
「わかると言うのなら兄様からもお父様に進言して頂きたい!」
「……僕がクチをだすようなことじゃないし……」
「兄様はいずれはこの国をお継ぎになるのでしょう!」
それはそうだけど……、とキラは口篭もる。
「……カガリが継げばいいよ」
ついクチにだしてしまったその言葉は、それは絶対にクチに出してはならない言葉だった。
この国を次期に継ぐものとして、いや、兄として、男として、最低な言葉だった。
そのことに、言ってしまってから気付いたから、キラは自棄になって俯いた。
(殴られるかもしれない……)
そう思った。
彼女はそういうことをする女なのだ。
確かに、自分は殴られても仕方ないよなことを言ってしまったかもしれない、
しかし、妹に殴られるというのはあまりに情けなさ過ぎて泣けてきた。
……が、彼女は何もしなかった。
反駁の言葉すらも返ってこない。
ふと顔をあげると、彼女は思いつめたように俯いていた、それは自棄になったはずの自分以上に深刻な表情に思えた。
ああ、見限られたんだな……、そう思う。
でもそのほうが気が楽かも知れないと思うのが彼だった。
そのとき、少女は自分の腰に下げていた剣を鞘ごと外して、少年の前に突き出した。
「本気でそうお考えならば自害なさってください」
え……、と後ずさりする彼に、彼女はさらに続けた。
「……そうすれば私がオーブを継ぐことになるでしょう」
彼女の眼は真剣だった。
というよりも、いつだって彼女は真剣だ。本気なのだ。
だから、つくづく自分とは真逆なのだと、彼は思う。
そういう妹だから、いつか本当に自分を斬るかも知れないと思った。
この彼女が、こんな無責任な男にこの国を任せるわけが無いのだから。
しかし、この時は、何も言わずに剣をしまって、彼女は立ち去った。
170 :
1:2006/05/24(水) 22:22:52 ID:???
少しして、彼女は城を出て行った。
それもただの家出ではなく、自分に賛同する兵士を何人も連れて、帝国と戦うためラクロアへ行ったのだった。
そういう彼女の行動力を、キラは本当に尊敬している。
彼女は、とても正義感の強い女の子だった。
だから、侵略などを開始した帝国が許せないのだろう。
例え自分に直接的な害がなくても、ただのそれだけの理由で戦う女だった。
あいつはただ剣を振り回したいだけだと父は言うけれど、キラはそうではないと思っている。
彼女は確かに、単純でバカで無鉄砲な娘ではあるが、とても勇敢な女だった。
感情的過ぎることは欠点かも知れないが、そこに愛があるならそれで良いのだと、そう思う。
少なくても、真逆な人間よりは、良いはずだ。
そうは思っても、自分がそうなろうとは思わないのが彼である。
自分には無理だと思うのだ。
そこが彼と彼女の根源的な違いなのかも知れなかった。
彼は、友人の国、が大変なことになっているとわかっていても、
ひたすら届かぬ手紙を書くだけで、それ以上の何かをしようとはしなかった。
少し思っても、すぐ諦める。
ただ海を眺めて、無事でありますようにと祈って、それで何かをした気になって、今日を終えるのが彼の日課だった。
それが彼の毎日だった。
171 :
1:2006/05/24(水) 22:26:24 ID:???
そんな漫然とした変わり映えの無い彼の日々も、
しかし、世界にとってはちゃんとした時間として過ぎていく。
刻々と情勢は悪化していった。
その日、オーブの第五艦隊が壊滅する。
これによりオーブはその領海を維持できなくなってしまった。
この状況を打開すべく、オーブのウズミ王は自ら残存艦隊の指揮を取り、グラナダの機兵工場を攻略する作戦を立案した。
これは捨て身の策である。
成功すれば、敵の機兵や鉄鋼船の製造を大幅に減らすことが出来るうえ、
上手くやれば帝国の技術や工場の一部を奪取することも出来るだろう。
しかし、失敗すれば、オーブ軍はその全戦力の半数以上を失うことになり、もはやそれは敗北と同義である。
危険な賭けではあったが、このまま防戦を続けても味方の戦力は磨り減る一方、
それどころか敵の戦力は増していくのだから、他に打つ手は無かった。
結果として、作戦は失敗に終わる。
決死の電撃作戦は、艦隊の三分の一を犠牲にして、工場を制圧するところまでは上手く行った。
問題はその後だった。
想像以上に、グラナダの国はザフトの手に落ちていた。
期待していたグラナダ正規軍の残党やレジスタンスはほどんど存在せず、
その代わりに国中から掻き集められたモンスターの群れがオーブ軍を襲った。
さらにはオーブへの航路を、ザフト本国からの艦隊に塞がれる。
退路を断たれたオーブの艦隊は、次々と、次々と、殲滅された。
全滅だった。
無数に放たれた水棲モンスターの群れが、たった一人の生存者すらも逃さなかった。
それは、王を含めての全滅だった。
「ご出陣なされるのですか……」
「キラか、……ゆかねばなるまい、この一戦、負ければオーブを失うことになる。
もしもの、もしものときは、戦えとは言わん、……降服をしろ、……アスランくんが存命なら、お前なら上手くやれるかも知れん」
「父上……」
「フ……、そう呼んでくれるか」
「え?」
「いや、……お前とあの子は確かに私の子だ、……私の子だ。
……留守の守りはお前に任せる、あの子が戻ったら、カガリが帰ってきたら、……お前が叱ってやるのだぞ」
「……ハイ」
172 :
1:2006/05/24(水) 22:30:48 ID:???
その日の暁は、赤くて、金色で、火の色だった──。
風が吹く。
生暖かくて心地悪いその風が、一体どこから吹いたのか、キラにはなんとなくわかるような気がした。
両手を広げ、足を開き、全身でその風を受け止める。
しかしそれは、すらすらと、吹き抜けていく。
ほんのわずかでさえも、抱きとめることはできなかった。
この海の向こうに大陸があって、この空の向こうで戦争が起きていて、
それは理屈では分かっていても、幻だった。
目には見えなくても、手には触れなくても、確かにその風は心地悪く吹き抜けていく。
この向こうにも世界が存在しているのだと、ようやくわかる。
父も、妹も、友人も、この向こうで戦っているのだと、ようやくわかる。
分かってはいたことだ、そんなこと、最初から知ってはいたことだ。
しかし、痛みを感じたのは、これが初めてのことだった。
ちゃんとした現実として受け止めたのは、これが初めてのことだった。
涙が出た。
悲しいのか、悔しいのか、辛いのか、もしかしたら嬉しいのか、
理由なんてわからない、しかし、しかし、涙が溢れて止まらない。
力無く広げていた手の指を、ゆっくり、ゆっくり、閉じていく。
硬くなった拳を、テラスの壁面へ思い切り叩きつけた。
血が滲んだ。
何度も、何度も、血を滲ませる。
痛みが奔る、しかし、それはどうにもならないほどの苦痛ではない。
必要ならばいくらでも犠牲に出来る痛みだった。その程度のことだった。
確かに赤く染まった拳を、昇っていく朝日に掲げて、暁に重ねあわせる。
眼を閉じた。
風の音が聞こえてくる、波の音も聞こえてくる、それは声かも知れなかった。
涙があふれだしてくる。
彼は、拭うこともなく、涙を流しつづけた。
それは、種を芽吹かす雨のように、いつまでも、いつまでも、降りつづいた──。
・・続く
1氏乙!
なんだかこれからのキラの成長に期待を感じさせてくれる話だ。
似たところのあるストライクとどう関わっていくのかwktkが止まらない!!
キラの設定をオーブの駄目王子にしたのか
考えたね!
続きが楽しみだよ
間違ってもストライクとキラが合体!
フリーダムナイトだっ!
ってな展開はゴメンだ
なんていうかさ、本当に文章上手いよね…
話の組み立て方、キャラの使い方、造詣の仕方もそうだけど、地の文それだけでも引き込まれる良さがある、と思う
上手いよ職人さん、上手過ぎるよ〜!
でもウズミパパ死んじゃったのねん……orz
>>154-155 じゃあなんで言う前に警告しなかった
俺が言ってるのは非常に多くの人間が目にするようなスレで晒すなといってるだけで
こんな局地スレぐらいで問題あるのか。
いや待て、何でその決まり知らないんだよ
そもそも規模の大小の問題じゃない
なるべくむやみに晒さないこと
2chに晒した時点で局地も糞もあるか
お前の態度次第じゃ俺が他に晒すことだってできんだぜ?
もちろんやらないけどな
話題を変えよう。
今月のHJに騎士ガンダムが降臨したわけだが
>お前の態度次第じゃ俺が他に晒すことだってできんだぜ?
hosyu
184 :
通常の名無しさんの3倍:2006/05/30(火) 18:24:31 ID:6WTm29Ou
そこで機兵ムアルジの登場ですよ
機兵イラネ
ストフリが出てきたら、どう見てもスペリオルドラゴンだな。
アカツキでは
まあ個人的にはあれだけど
>186
ストフリはストライクのライバルで魔神剣士ストフリエルという
その正体は何と自由を愛してやまなかったはずの天空剣士フリーダムが邪神ダーク・フスクラーに操られた姿だったのだ!
そんな電波を受信した
スペリオルドラゴンはあえてノワールとか
つ【ラクスがスペリオルドラゴン】
>>189 いやだそんなのw
漏れもSDガンダム外伝SEEDを妄想したことあるな。
ガンダム5機がパトリックに仕える騎士で、ストライク以外がパトリックの暴政に反乱起こして、ストライクと皇騎士アスランが鎮圧に向かうっての。
んでストライクとアスランも後で離反して他の4人と一緒になって、パトリックを狂わせてた宮廷魔術師クルーゼや異星からの侵略者女神ラクスと戦うと。
ラスボスはラクスが作り出した戦闘能力だけならば神々をも凌駕する絶対戦闘生命フリーダム。
つーか、本編でもコイツが出てきてからキラがおかしくなってたし、種死でやってた事考慮するとどうしても敵になるな自由……
フリーダムは個体にしなくてもいいでしょ。
例えばストライクが神器をフル装備した姿とかバーサル騎士の鎧とか。
外伝シリーズの衰退時は主役級の粗製濫造も問題視されてたし。
やっぱり名前と姿は必要でしょ
でもどういう形で出すかは職人さん次第
>>188 >スペリオルドラゴンはあえてノワールとか
むしろ元々一つの人格だったのが光と闇の面に分かれて
闇の面であるノワールが光の面であるスターゲイザーと合体してスペドラになるとかどうよ
>>190 それのほうがもっと嫌だw
>種死でやってた事考慮するとどうしても敵になるな自由……
だからこそ騎士ではいい人にするべきだろ。
本編と違う部分があっても何の問題もないのが騎士クオリティ。
自分の脳内デス種騎士でも運命、自由、正義は完全に仲間として協力して戦ってる。
フリーダムが悪なんじゃない
負 債 が 悪 な ん だ 。
ねえ、妄想書き込むのはいいが
議論したら投下しにくくなるからやめようよ(´・ω・`)
スペリオルの闇の面とかもGでやった感じだしなあ
スペリオルドラゴンって浄化したんじゃないの?
鎧闘神が未完だから不明ってことになるな
漫画版のラストだとスダドアカが危ないって時に騎士ガンダムの姿でノコノコ出てきたな
199 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/01(木) 21:02:10 ID:cV/Gj2Bq
久しぶりに来てみたらキラが登場してるな。
キラのこの待遇ぶりを見るとかなり重要なキャラになると見た。
フリーダムとジャスティスは機兵としての登場になって、それに乗るのがキラとアスランになると予想。
200
HJでも騎士ガンダムとして雷に乗って天宮にやってきた迷惑神。
203 :
1:2006/06/02(金) 20:35:32 ID:???
第12章 慟哭の日
その盾は、如何なるものにも屈しない──。
その盾は、如何なるものにも砕けない──。
それは、この国のシンボルだった。
今は亡きウズミ王の寝室に、一つの盾が飾ってある。
それは、代々この国を治める者に受け継がれていく、伝統の盾だった。
十字型の輪郭に、十文字の金の星が刻まれている。
派手な装飾は他には無いが、それだけで十分に力強さを感させる盾であった。
キラは、いらない、と思っていたはずのそれを、ゆっくり撫でるようにして手に触れる。
木でも、石でも、鉄でもない、不思議な感触、不思議な温度。
温かくも冷たくも無かったそれは、しかし、ずっと触れているうちに熱を帯びていく。
指先から手の平に、肘へ、肩へ、胸へ、体全体へ、熱が流れていく。
”渡す者”がいなくなったその盾を、彼は自らの手で台座から外し取った。
酷く重かった。
しかしキラは、それを地面に置こうとはしなかった。
足を踏ん張り、歯を食いしばり、ゆっくりと頭より上まで掲げ上げる。
この瞬間に決意をした。
オーブを継ぐことを、そして、ザフトと戦うことを。
もしもの時は降伏をしろと言われている。
昔の彼なら迷わずそうしたはずだろう。
だが彼は、今にして、初めて父に逆らった。
そして誓った。
この国は、かならず自分が守り抜くと──。
その瞬間、盾の重さが引いていくような気がした。
”重くも軽くも無い重さ”になったその盾を、キラは自分のものとして、身に着ける。
盾は、身を守るための物ではあるが、護身具ではない。
これを持つということは、自ら進んで戦うという証だった。
204 :
1:2006/06/02(金) 20:44:01 ID:???
ウズミが指揮した艦隊は、全滅をしたとは言え、帝国に大打撃を与えたはずだった。
帝国は、しばらくはグラナダの機兵工場は使えない、そして帝国艦隊の戦力も大きく低下しているはずだった。
しかし、帝国軍はすぐに戦力を再編させてオーブへの侵攻を再開する。
帝国以上にオーブ側が疲弊していると、知っているのだった。
その報せを受けて、諦めたようにマユラが尋ねた。
「これからどうなさいますか……、キラ様」
「戦います」
サッパリと答えるキラに、「え……」と眼を見開くマユラである。
その答えが意外だったからだ。
そういうマユラの気持ちを、表情から感じ取るとキラは続けた。
「だって、黙って侵略されるわけにはいかないでしょ」
もっとも、ではあるが、やはり彼が言う言葉だとは思えない。
だからと言って、戦う、という言葉が彼の辞書にあったのかと思うのだ。
王子はお花が大好きで、虫も殺せない優男──というのは仲間のジュリがした勝手な妄想であるが、
あながち間違いではないとマユラも思っていた。
そう思わさせるくらいに、彼は”王子様”だった。
だから、マユラはいつまでも驚いた表情を消せなかった。
「変かな……?」
「い、いえ、キラ様がまともなことをおっしゃられたので……ぁ」
あはは、とキラは笑う。
侮辱だとは思わない、それが自分が変わったと示してくれる言葉であれば心地悪いものではなかった。
少しの間だけ笑みを浮かべて、しかし、すぐに緩めた唇を元に戻した。
そして、マユラが見たこと無いような真剣な眼差しでキラは言葉を紡ぐ、それは彼がする初めての命令だった。
「……軍議を開きます、みんなを集めてください」
「はいっ!」
205 :
1:2006/06/02(金) 20:50:27 ID:???
オーブから東に数キロと言ったところに島がある。
名はオノロゴ島。
ここは、ザフトとオーブの航路の中間に位置する島で、要塞だった。
オーブ防衛の拠点である。
ここを突破されればあっという間に本土まで上陸されてしまうだろう。
もっとも、すでに全艦隊の八割以上を失っているのがオーブ軍だったから、
例えこの島だけを守り抜いた所で、別な遠回りのルートを使われれば上陸を防ぐことは出来ない。
穴だらけの海域を抜けて、次々と帝国の部隊が進入して来ていた。
虐殺される人々。
オーブは島国だったから国境というものが存在しない。
侵略されるということに対して、国民達はあまりに無防備だった。
ここ数ヶ月、ずっと戦争していたとはいえ、ウズミがそれを海上で止どめていたから、実際に触れたのはこれが初めてのことだった。
守られてきた人々は、脆かった。
それは”キラ”にも言えることかも知れなかった。
火を放たれ、森を崩され、死体を積み上げられて、それでようやく、実感が沸いてくる。
キラは、剣を抜いた。
ずっと嫌いだったそれを引き抜いて、構え、帝国兵に突き立てる。
剣は、思ったよりも突き刺さらない。
迷い無く、躊躇い無く、突き立てたそれは、しかし、あまり進まない。
鈍い感触が指を通して頭の奥にまで伝導してくる。
その瞬間、しかし、臆することなくキラはさらに剣に力を込めた。
腕だけではなく、足も腰も、体全体を使って、押し刺していく。
敵が動かなくなっても、しばらくは剣を抜かなかった、……抜けなかった。
心臓が酷く鼓動している。
何秒ほど経ったのだろうか、敵の体がキラキラと発光するとそのまま霧のように消えていった。
モンスターやMS族は死ぬとその体は消えてなくなる。
それは、いま自分がやったことが、あたかも幻だったかのように、消えていく。
初めから何もなかったかのように、消えていく。
だが、わかる。
たとえ何も残らなくても、その手で確かにやったことだから、はっきりとわかるのだ。
まだ、その指にはしびれと温もりと、鼓動があった。
──確かに今、自分は戦った、──そして、殺した、──そして、守ったのだ、と──。
206 :
1:2006/06/02(金) 20:57:28 ID:???
しかしそれでも”その程度のこと”で戦況が覆ることは無かった。
少しだけ占領が遅れても、ただそれだけで。
少しだけ人が死ぬのが遅れても、ただ、それだけのことだった。
キラは剣を振る。
一体、一体、魔物を討ち減らしていく。
しかしそれは無駄な足掻きに見えた。
一向に良くはならない戦況、死んでいく同胞。
何もしなければとっくに国は滅んでいたろう、それは確かに事実なのだろう。
だとすればこの行為は意味のある行動なのだろう、それは確かに事実なのだろう。
……しかし、だがしかし、
それにどんな意味があるというのだろうか。
”たったそれっぽっちの事実”に、一体どれほどの意味があるというのだろうか。
結局、無駄で無意味な日々を繰り返しているに過ぎなかった。
それは、以前と何一つも変わらない。
怠惰だが平和だった日常を棄て──、戦う決意を決めて──、
それで一体何を変えられたのだろうか、何が変わったのだろうか。
炎が奔る。
一匹のモンスターが火炎をキラに向けて吹き放った。
しかし、”力の盾”は破れない。
微動だにすることなく、炎を弾く。
だが、”そのこと”に一体どれほどの意味があるというのだろうか。
そう、盾は、”身を護る道具”ではあるがそれだけだ。”人を守る道具”ではない。
”剣”こそが”人を救うための道具”ならば、それを振るわねばならんというのが騎士だった。
キラは”王”となったが、”騎士”にもなった。それは”男”という意味でもあった。
戦う、と決めたのだ。守る、と決めたのだ。救う、と決めたのだ。
自分より弱いモノを、自分に親しいモノを、自分の大切なモノを──。
戦って、守って、救うと決めたのだ。
それを成せぬ決意に、一体どれほどの価値があるというのだろう。
もう一度、変わればいい。
まだ、足りないというなら、もう一度。
まだ、変わらないというのなら、もう一度。
そう、何回だって、決意する。
変わるまで、決意する。そう決めたのだ。
強く、強く、この世界を変えるまで、もっと強く──。
207 :
1:2006/06/02(金) 21:02:11 ID:???
キラにしてみれば己の無力さばかりを示された戦況も、帝国からしてみれば違って見えていた。
本来なら、もうとっくにオーブの制圧は終えていなければならなかった。
想定の三倍以上の被害を出し、三倍以上の時間を食わされていた。
もちろん、それでも帝国軍が押している。
いずれオーブが滅びると言うのは、避けようの無い事実だった。
しかし、戦争はオーブで終わりでは無い。
帝国はこの後にブリティス、ラクロア、その奥のアルガスといった大国をまだまだ残していた。
だから、こんな小国相手に無駄に時間を費やす暇は無いのである。
そこで帝国は、いままで攻略を避けていたオノロゴ島の攻略作戦を発動した。
別に今まで落せなかったわけではない、落さなかったのである。
わざわざオノロゴを攻めなくても本土へ侵入できたし、無駄に戦力を使うことも無いという考えだった。
それが間違いだった。
オノロゴ島を基点に遊撃されて、無駄に戦力と時間を削り取られた。
確かに、オノロゴ島を攻めるには大きな戦力がいる。
残存するオーブ軍のほとんどがここに集結しているからだ。
だがだからこそ、ここさえ陥落させれば後が楽だと考えを改めた。
決戦である。
それは、オーブ側としても望むところだった。
本土で民間人の犠牲を出しながら戦うより、幾らもマシだった。
そして、この一戦にさえ、勝つことが出来たならしばらくは平和なんじゃないかと、希望すらもてた。
たとえ、帝国側が”オノロゴを余裕で蹂躙できる数”で攻めてくるとわかっていても──。
その日の前日は、帝国側の攻撃も無く、モンスターも現われず、海は穏やかだった。
そして、次の朝がやってくる。
昇る光が、海を青く青く輝かせた、そして、海に無数の黒点を浮かび上がらせた。
空に怒号と爆音がコダマして、戦闘が始まった──。
208 :
1:2006/06/02(金) 21:07:15 ID:???
鉄を吹きだす大砲『ロングスピア』は、どこへ撃っても命中をした。
もちろん、もっとも効果的である場所に狙いをつけたが。
しかしただの一発も外すことなく、帝国軍へ突き刺さる。
最初は海岸沿いに設置されていたその大砲も、時間を増すたびに奥へ奥へと押されていった。
たった四機の虎の子、機兵『エムワン』は、その大砲の運搬に使われた。
そういう意味では、存分に役に立ったと言えたのかもしれなかった。
本来なら、機兵なんてものは歩兵隊の先陣に立たせてモンスターを薙ぎ払わせたいと思うのが開発者ではあるが、
このエムワンをそういう使い方をすれば二分と持たないとわかっている、というのがオーブの技術者の有能さであった。
大砲を破壊させず、迅速に移動して使えれば、それは大きな戦果となる。
白兵戦というのは、それも出来なくなった最後に行えば良いと言うのが技師長エリカの考えだった。
それは、彼女が騎士ではないから生まれる考えなのかも知れなかった。
キラは、その提案を快く受け入れる。
他に出されたどの勇猛な意見より、もっとも合理的な運用だと判断したからだ。
恥や外聞ではない、見栄やプライドではない。
それが例えば、勇敢ではない戦い方であっても、それで何かを守れれば構わない。
そんなちっぽけなモノを犠牲にすることで、得られるものがあるならば、喜んでそれを取る。
それが例えば、どれだけ胸に刺さるものだったとしても、彼は頑として支払った。
すべては、この国を守るためなのだ、と。
敵の先陣がいよいよ陸地に上陸を始めて歩兵隊との激突を開始した。
機兵が無い分の前衛を、キラはその身をもって支えて戦っていた。
数百の斬撃を、炎を、雷を、力の盾で受け止める。
キラには剣技の才能があるにはあったが、それは自分の数百倍の数のモンスターを切り伏せられるほど圧倒的なものではなかった。
いま彼が立っているのは、力の盾のおかげである。
だがそれでも……、それでも足りなかった。
次々と自分を突破していくモンスター群、倒れていく仲間達、吹き上がる炎、昇る黒煙。
悲鳴が鳴っては枯れて、鳴っては枯れる。
手にしていたルナチウムの剣が砕けて、折れた。
とっさに、落ちている剣を拾い上げ、振り下ろす、しかし、それも折れる。
別な剣を拾う、しかし、ことごとく、ことごとく、折れていく。
向けられる砲火を、力の盾で受け止める、両手を持って受け止める。
衝撃が奔る。
しかし、力の盾は砕けない。
しかし、それに何の意味がある。いったい、どれほどの価値がある。
力の盾は傷つかない、それでも度重なる衝撃に、ついにキラの体は吹き飛ばされた。
209 :
1:2006/06/02(金) 21:13:42 ID:???
吹き飛んだキラは、焼け焦げた草の上にうつぶせになった。
血の匂いがする。血の匂いしかしなかった。
焦げた匂いもあるが、それだって血の匂いでしかなかった。
目を閉じる。
頬を、生暖かい水滴が流れていく。
それはあの日流したものと同じなのか、それはわからない。
ただ──、悲しいのか、辛いのか、もしかしたら嬉しいのか、やっぱり理由はわからない。
理由無く、涙という水滴が流れていった。
ああ、終わるんだ──と諦める。
もう、いいや──と諦める。
諦めることには慣れている、でも、どうしてだろうか、こんなにも涙という奴が止まらない。
これだけやって、それでダメだったんだから、もう十分なはずなのに。
なのに、初めて、こんなに悔しく思う。
……初めて、……生まれる、……不屈の、……心。
まだ、足りないというのだろうか。
まだ、変われるというのだろうか。
自分の弱さ言い訳にすることの無意味さなどは、誰より十分に知っていた。
だが、それでも、それでも、自分は弱かった。
剣を学び直し、覚悟を決め、力の盾もここにある。
……それでも、……それでも、力が足りない、
何も守れない、弱い──でも、諦められない、──嫌だという感覚。
キラは、自分の拳を地面へ突き立てて、そこに体重を乗せるようにして、体をゆっくり持ち上げた。
膝を立て、腰をあげ、立ち上がる。
ふらふらと、しかし、力強く。
目の前には、絶望な数のモンスター群。
しかし、
彼は立つ。
その時、天が震え、地が裂けた。
210 :
1:2006/06/02(金) 21:18:08 ID:???
『ロングスピア』二百発分に値する轟音が大気を揺るがした。
その砲弾が、一箇所にすべて着弾したかのように、地が割れる。
砕けた岩塊が、重さなど無いように宙に浮いていった。
次々と大地が割れて、砕けた塊が散っていく。
その粉塵の中にして、白い巨人の姿があった。
それは、たしかにMS族を数倍の大きさにしたような巨人の姿で、しかし、生命ではない。
それは、機兵である。
だが、『エムワン』やザフトの機兵とも違うように見えた。
輝いて見える。
崇高である、と言ってもいい。
純白と漆黒の混ざったボディに、蒼天の翼、ガンダム族を思わせる精悍な顔造り。
幻想的であった。
その機兵は、キラの目の前にして、静止する。
コクピットが開いた。
キラは迷うことなく、いや、何ひとつ思考もせずに、それに乗り込んだ。
暖かかった。
それだけで、正しいとわかったような気がした。
その機兵は風を鳴らして翼を開いた。
その風圧だけで数百のモンスターは吹き飛ばされる。
翼の一部を折り曲げて、炎を放つ。一射、十単位でぶっ飛んでいく。
剣を振れば、血が巻き上げられて、降り落ちた。
まとめて殺されたモンスター達が、いっせいに光となって消えていく。
キラキラと、キラキラと、それは美しかった。
しばらくして、帝国側の機兵が遊撃にやってくる。
彼らは一斉に砲撃を加えた。
閃光と煙が辺りを支配する、しかし、その爆光の中心から、炎が奔った。
次々と吹き飛ぶ機兵隊。
煙がすべて晴れた頃には、その場に残った機兵はただの一体だけだった。
それは、黒と白の、あの機兵である。
”黒と白のあの機兵”は”重くも軽くも無い重さ”になった力の盾を、構えていた。
相応の大きさに成ったその盾は、相変わらず傷の一つもつくことなく、輝いている。
壮観だった。
211 :
1:2006/06/02(金) 21:22:30 ID:???
粗方、眼前の敵を倒し終えると、キラを海の方へと機体を向ける。
海は、黒く淀んでいた。
オーブ側が『サイクロプス』を使ったからである。それは毒だった。
豊かな海を犠牲にして、しかし、水棲モンスターの半数はそれで葬られていた。
”毒の海”には無数の死体が漂って、パラパラと、光になって消えていた。
キラの標的は、帝国軍の鉄鋼船団──母艦である。
残念ながら、それらは”毒”では葬れない。
しかし、この”剣”でなら、葬れる。
その”空飛ぶ機兵”に帝国軍は恐怖した。
”飛行艇”なら二隻存在するが、”空飛ぶ機兵”などはザフト本国でも完成したという話は無いからだ。
そんなものをオーブ軍が使うとは、聞いていない。
飛行型のモンスター達が、壁にもならずに堕とされていく。
対空砲火の砲撃は、何発か直撃しているようだったが、まったくもって効いていない。
艦隊が次々と炎をあげて沈んでいく。
”毒の海”に飛び込まされた乗員達がまとめて光となって輝いた。たった一人も逃げられない。
黒い海に光が瞬いて、それはまるで星空だった。
「うはは……あははっは……」
呻き声にも似た笑いが、白と黒の機兵の中で響きわたった。
聖機兵、ガンフリーダム。
それが、この機体の名前だった。
彼の得た力であった。
彼は、確かに変わったのかも知れなかった。
確かに何かを変えれたのかも知れなかった。何かを守れたのかも知れなかった。
だがしかし、いったいそれに何の意味があるのだと、
いったいどれほどの価値があるのだと、
彼が彼の妹に問われるのは、少し後の話である──。
その日の間中は、彼は笑うことをやめなかった。
そして、涙を流し続けていた──。
沈む夕日は、暁に負けないくらい、赤かった。
・・続く
>>1 乙!聖機兵が来るとは思わなかったw
少しキラ王子が壊れちゃった気がしないでもないけどw
…やはりこの戦いの裏で、家族を亡くして「守るための力」を求めた少年が居るのかな…
おおお、なるほどなあ!
あれだけキャラ立てた騎士ストライクとキラ、そして未だ出ぬフリーダムをどう組み合わせるかと思ったら、
フリーダム=聖機兵とは思いもよらなかったよ!
これなら騎士ストライクとキラも両立できるよな。
>>1GJ!!
まだストライクと合流しないってことは
霞の鎧はアスラン王子か?
まあ、全部装着しちゃうと最強だからなぁ
その場合石板で強くなるのかな?
1さんはビデオ版も見てそうだけど(敵の死に方とか)
(言えないッ!GMヘンソンJrと「サンタじゃないッ!」ネタを期待してるなんて……)
>>214 ストライクに炎の剣
キラ(自由)に力の盾
と来てるからデュエルが着るかそっちの陣営にいくんジャマイカ
最後は一つになるのかな?
まあ期待
アスランはザフトだろうし、最初は向こうの陣営だと思って
そういえば聖機兵の名前に違和感があったんだけど
〜レックスじゃないのね、
フリーダムとレックス組み合わせた、カッチョイイ名前思い付かんけど
ガンレックス→ガンジェネシス→
ガンフリーダム→ガンジャスティスってことか
…RXの要素がないから〜レックスは変じゃないかって思うんだ。
ZGMF→ツゲムフとかズゲメフじゃ変だし。
ZGMFか
ゼルガメフィアフリーダム
ゼクトゲミフィアフリーダム
ゼルゲマフェルフリーダム
ゼンガムフィードフリーダム
カッコいい路線で考えてみた。
駄目だ、自分で考えといてワケ分かんねぇorz
ズィーガムフ…
ダメだ…。
ザンゲマダファック
型番からなら
ZGM”F-X10”Aの部分からフェクステン(F-XTen)、
ジャスティスはフェクスニン(F-XNine)
もしプロヴィデンスがでるならフェクスデス(13=Death)
とかどうよ?
ガンフリーダム出してんのに形式番号に則ろうとしてる奴は何なの?
225 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/03(土) 19:45:24 ID:QVldIqGE
>>224 妄想するのは自由だな
それを職人さんに押し付ける気なら出て行って欲しいが
>>223 ドイツ語で9は「ノイン」10は「ツェン」なので
ZGMF-X10Aの後半の「X10A」から考えるなら
フリーダム→エクスツェニア
ジャスティス→エクスノイニア
プロビ→エクス・デス・ドライツェニア
あるいは死神はドイツ語で「トート」なので
エクス・トート・ドライツェニアでもいいかも
ひどく今更な事を聞いてもいいか?
ムアルジはMRGから来てるのか?
気がつかなかった、10年以上も……orz
保守しときますね(はぁと
>>230 PCだからやっと見れた
何コレまさか自作なのか!?
233 :
230:2006/06/09(金) 13:46:14 ID:???
>>231 はい。ここの
>>1のストーリーに感銘を受けて勢いで描いてしまったものです。
現在PCでのネット環境が整っていないので携帯からアップしました。
>>232 お目汚し申し訳ありませんでした。もしよろしければダメな箇所を指摘して頂け
ると幸いです。
>>233 おぉぉおぉぉぉマジデスカ、良い
ただかっこ悪く見えるというのもわかります、顔つきというか目つきがちょっと情け無いというか弱そうに見えますね
しかし、そんなもんですよ、このスレのストライク殿は
これから段々凛々しくなっていくのだ、きっと、炎の剣Verとかはすごく勇ましくなってるんだ ← 書いてくれという催促ではない
ほんとですよ!?ほんとですよ!?もしも暇なら!?もしも暇なら!?誰だオマエは
先日作成したばかりのお宝フオルダにぶち込んでおきました、サンクス
ついでに
>>227サマ
めちゃくちゃカッコ良いですね、何と言う語感っ、ドイツ語っ!
むしろここではないどこかで使うためコソっとメモしときますた ←ココで使えよ
機会が機会がぁっ、でも、ナイトプロビんがドライツェニアに乗るという展開は使えるかも知れない、しかし、遠い・・・
「ガンフリーダム」、略するとまさしくガンダム・・・
字にしてみるとそうでもないですが、声に出して読み上げるととても良い音ではないですか?! ←読みあげるなんて恥ずかしいとか言うな
この名前は、これを書き出す前の、ずっと前に、ナイトガンダムSEEDを妄想したときに、思いついたというか、妄想された名前ですが、ついに出しちゃいましたね
というか
>>199様は予知能力者であらせられますか、安易ですか、ずびばぜん・・
ガンレックスはアレックスから来てると思ってた(恥)
しまった、長くなった、さようなら、しいゆう・・
235 :
1:2006/06/10(土) 21:53:21 ID:???
第13章 枯れ果てた空に
海上だと言うのに湿気を含まない渇いた風が、アークエンジェル号の甲板には吹いていた。
真っ白に塗られたアークエンジェル号の船体は、太陽の光をギラギラ反射して、海にぽっかり白を浮かべている。
対照するように、海は黒かった。
照りつける陽光を、蒼く反射せずに黒く鈍らすこの海のさまは異常だった。
騎士カガリはアークエンジェル号の左右に備え付けてある乗降リフトをくだり、海面に接して水を掬いあげてみた。
水が痛かった。
手触りに刺激があったし、死臭も感じる、しかし、色自体は透明だった、濁りも無い。
右手で少量を掬って、舌で舐めてみる。
「ガハッ」
カガリは呻きをあげて吐き出した。
その声を聞いて騎士ストライクが駆け寄ってくる。
「どうしたの……?」
「水が……おかしいんだ……ゲホッ……」
カガリの背中を摩りながら、自らも、その海の水を救い上げてみる。
確かに、異様な感触だった。
改めて海を眺望する。異様に静かだった。
空は雲ひとつ無く晴れ渡り、しかし、もう陸地も見えてきていると言うのにカモメの一匹も見当たらない。
よく考えれば、オーブの領海に近づいてからはモンスターが現われなくなっている、かといってオーブの戦艇がいると言うわけでも無い。
領海にモンスターがいないくらいオーブ側が勝っているのなら、接近するアークエンジェル号に対し何らかのアクションがあるはずだし、
巡視艇の一隻も出せないような戦況なら、海にはモンスターが溢れているはずだった。
どちらも無く、そして、黒い海。
オーブの領海はあまりに静かで、それは不吉の兆しなのかも知れなかった。
236 :
1:2006/06/10(土) 21:57:09 ID:???
衛騎士ナタルは悩んでいた。彼女はこの艦の指揮を任されている女騎士である。
ようやく辿り着いたオーブの国。
しかし、”出迎え”が一切無かった。素通りで本土まで入れたのだ。
それはもはやオーブ軍が壊滅しているということかも知れなかった。
首都に向かう前に、近場の陸地で露営する。
もう日も暮れていたし、いきなりアークエンジェル号で城へ出向くよりはまずは使者を出すべきだと考えた。
すでにザフトに抑えらているという可能性も含めて、偵察が必要なのである。
オーブの大地は、酷く焼け焦げていた。
海岸には、剣や大砲が打ち棄てられていたし、血の跡というものもたくさんあった。
しかし、妙である。
モンスターに襲撃を受けて、壊滅させられたとして、ならば、何故モンスターすらもいないのか。
ただただ静まり返った海岸に、しかし、久しぶりの陸地に、テントを張った。
城へ向かう班の編成がされる。
カガリがそちらに行くというので、ストライクは自分もそちらに参加する気でいたが、
船から降りて来た王女フレイの姿を目に留めると、ここに残るつもりになった。
城へは、カガリとナタルと、他に精鋭が数人。
他のものはここへ残ることになった。
「気をつけて」
「……ああ」
ストライクが”彼女”の不安げな声を聞いたのはこれが初めてのことだった。
アークエンジェル号での彼女はハツラツとしていたし、初めて会ったときの彼女も”酷く”勇ましかった。
”カガリ”であっても、こんな風に悄気たりするものかと思えば、可笑しくなる。
「……何がおかしい」
「ぇ……」
表情には出していないはずなのに、見透かしたようにカガリは呟く。
その声は、音としては小さいのに、確かに怒りを含んだ怒声だった。
顔を蒼くしながら、ストライクは笑って誤魔化した。
”そんな自分”を励ましてくれた彼女だから、”今の彼女に”に付いて行ってやりたいとは思っても、
しかし、王女フレイのことを考えれば、そういうわけにもいかないというのがストライクだった。
それは彼が”ラクロアの騎士”だからという理由かも知れなかったし、
ミリアリアを死なせてしまったという負い目による物かも知れなかった。
もしかするなら、もっと別の感情が働いていたということもあるかも知れない。
とにかくにして、ストライクはキャンプに残る。
237 :
1:2006/06/10(土) 22:00:31 ID:???
焚き火を呆然と見つめるフレイの横にストライクがやってきた。
しかし、彼女は振り向かない。
微動だにせずに、焚き火の火花を見つめている。
ストライクはそれを悲しく思った。
掛ける言葉が見つからない。
”あれ”から一言もクチを聞いて貰っていない。
だとしても、話しかけることをやめてはいけないと思っている。
だが彼女にどんな言葉を発しても、それが言い訳にしか聞こえないのだろうと思えるのが辛かった。
それでも、ストライクはクチを開く。
「……星が、……綺麗、……です、……ね、ははは……」
その、ありきたりだけれど、精一杯に捻り出した彼の言葉は、しかし、当たり前に無視される。
無言が、空間を制した。
沈黙は雄弁以上に物語る、その彼女の沈黙は、確かにどんな責め苦よりもストライクを苦しめた。
しかし、この場を離れてはいけないと、そう思う。
辛くても、意味が無くても、彼女の傍から離れてはならない。
その痛みが罰なら受け入れる。
彼女の心がもう一度開くまで、じっとで待つというのが償いとなるのかも知れなかった。
でも本当は、ストライクには、どこにも負うべき罪などというものは無いのかもしれない。
それでも、彼が彼女の笑顔を望むから、やはり、彼はここから離れなかった。
どれほどの時間が経っただろうか、
ストライクにはひたすら長くに思えても、薪の減り具合から見ればさほどの時間は経っていないのかも知れなかった。
その時、森の向こうの夜闇の奥が、燃えるように赤く光った。
ドドンッという衝撃音と、ザザンッという炸裂音が、木々の向こうからぼやけて聞こえる。
──敵襲、ではない。少なくても、ここに、ではない。
もっと遠くのほうで、もしかするならオーブの村とかが襲われているのかも知れない。
ストライクが赤闇の空を眺めてそう考えていると、フレイが突然立ち上がった。
そして、森のほうへと歩き出す。
「姫っ! 危険ですっ! どこへ!?」
とっさに静止するストライクに、振り返ることも無くフレイが呟いた。
「……私は、……貴方が、……守ってくれるんでしょ」
238 :
1:2006/06/10(土) 22:03:33 ID:???
その瞬間、ストライクの脳裏に無数の感情が沸き上がった。
驚き、喜び、不安、そういったものが次々と浮かんでは溢れ出していく。
ストライクは森へ歩いていくフレイの後を追った、しかし、彼女を止めなかった。
ただ只管に、背中を歩く。
それが、騎士として護衛として間違いだったとしても、彼女を危険に合わせる行為だったとしても、
けれども、ここで彼女を引き止めてしまえば、もう二度と、信頼して貰える事が無いような気がした。
この先に喩え何があったとしても、彼女の身は自分が守れば良い、それだけのことだ。
そう約束したのだ。
彼女の散歩一つを守れないで、何がラクロアの勇者なのか。
こんなちっぽけな彼女の我侭一つ叶えられないで、本当の願いを叶えられるはずは無い。
腰に抱いた赤い剣をぎゅっと握りしめて、ストライクは黙ってフレイの後に続いた。
二人が赤い光の下に辿り着いた頃には、轟音というものはやんでいた。
しかし、代わりに、バチバチと木々やテントが燃えている。
どうやらここは”オーブの村”ではなく”ザフトの設営基地”だったようだ。
無数のMS族の死体が転がっている。
少しすると、MS族の体はキラキラと星のように瞬いて消えていく。
しかしそんななか、一体だけ死体が残った、いや、死体ではなく、息があるということだろう。
傷だらけの体を、ぴくぴくと振るわせるそのMS族の騎士は、騎士の鎧には確かに帝国の紋章が刻まれていた。
藪からその様子を観察していたストライクは、しかし、フレイがその騎士の下へ歩んでいくのを見て、自分も慌てて飛び出した。
「姫……ッ!」
「……コイツ、まだ生きてる」
呻きしか上げられないその騎士を睥睨しながら、フレイが言った。
「……殺して」
フレイは、ストライクの方を振り返り、眼を見て、言った。
絶句するストライク。
「……出来ないの、……貴方もMS族だから」
「そんなこと……」
彼女の足元の、血を流し、息を切らせるその騎士を、一瞥だけしてストライクは俯いた。
239 :
1:2006/06/10(土) 22:05:42 ID:???
確かに敵だったとしても、これほどに瀕死で、無抵抗な相手に、トドメを刺すということは、
たとえばそれが”死を助ける”という行為になったとしても、しかし、ストライクは戸惑った。
甘い考えである。
それが元来騎士なんかには向いていないというストライクの性分なのかも知れなかった。
しかし、彼は、今、己の意思でここにいる。
彼女の騎士になろうと誓いも立てた。
ならば、剣を引き抜き、突き立てるべきであろう。
だが、出来ない。
何故だ。
柄にあてた指は震えて、握ろうとしない。
じゃあ、どうするのか。
手持ちの”エルフの薬”でも使って助けるのか。敵を。
そんなことは出来ない。
それは彼女への裏切りだ。
ならば、やはり斬るしかない。
それが彼女への忠誠だ。
それでも、指の震えが止まらない。
名も知らぬ騎士、ザフトのMS族。
いまさら、である。
既に何人も斬っている、同胞のバスターさえもその剣で命を獲った。
だがそれでも、今までは”仕方なく”斬って来た。
これは、そうではない。
自ら進んで命を奪う行為。
健在ならば迷わず斬れても、瀕死ならば斬れないというのは、偽善かも知れなかった。
そんなことが迷いの理由なら棄てるべきなのである。
だがそれでも指は動かない。
心の何かが「斬るな」と訴える。
何故──、その自問に答えるものは誰もない。
しかし、その訴えは、確かに熱として鼓動となって頭に響く。
思考にならなくても、確かに響く。
240 :
1:2006/06/10(土) 22:08:33 ID:???
”こんなちっぽけな彼女の望み”も叶えられないで──、
しかし、”こんな望み”の向こう側に彼女の笑顔があるのだろうか──、
あったとしても──、
”そんな彼女の微笑を”──、
自分は、笑って、受け入れられるのだろうか──。
それは、確かな言葉として紡ぐことは出来なくても、
確かに、頭の中に鳴り響く。
もしも、もしも、彼女が真に笑ってくれるなら、ここで喜んでトドメを刺すだろう。
しかし、そうはならないと思うから、迷うのだ。
だからこんなにも迷うのだ。
もしもここでトドメを刺してしまえば、彼女からの陳腐な信頼と引き換えに、もっと大切な何かを壊してしまうことになるだろう。
彼女の言い成りなるということが、彼女を救うことになるとは限らない。
逆らって、嫌われて、失望されたとしても、──その痛みから逃げてはいけない。
ストライクは、剣に当てていた指をそっと開いて、手を離していく。
そのサマを見て、フレイは目を見開いてストライクを怒鳴りつける。
「殺しなさいよッ! 敵なのよッ!」
ストライクは、しかし、彼女から眼をそらさずに、ゆっくり語る。
「……そんなことをしても、何も、帰っては来ませんよ」
「殺しなさいよッッ!」
「……”死なせてやる”という意味でなら、やります」
その”腑抜けた言葉”に業を煮やして、フレイは、ストライクの腰の剣を奪いにかかる。
柄に両手を重ねて、涙を瞳一杯に貯めて、引き抜こうとする。
しかし、剣は動かない、ストライクの手が、フレイの両手の上から剣を抑えていた。
フレイがどんなに力一杯に引っ張っても、その剣は抜けなかった。
両手を、全体重をかけても、ストライクは右腕一本で押さえつけた。
241 :
1:2006/06/10(土) 22:11:28 ID:???
「うっうっうっっ……!」
「……姫」
溢れる嗚咽、流れる涙、叩かれる体。
その刹那、二人の背後に、火柱が立った。
赤い灼熱のような火柱が、天から地へと突き刺さり、
ストライクは、とっさにかばうようにしてフレイを抱きしめ倒れこむ。
すぐに立ち上がる、フレイの前に出る、周囲を見る。炎に焼かれキラキラと消えていく光が見えた。
天を見あげる。
深淵の夜空に、ぽっかり穴が開いたように、白が浮かぶ。
それは人型にして、蒼い翼を持ち、羽撃たいた。
ズドンッズドンッドンッ!!
フレイを抱きかかえて、森へ逃げ込むストライク。
しかし、それでは、狙い撃ちにされる。
森へフレイを隠すと、自分は、平原へ出て迎え撃つ。
注意を取り全速で走りながら、炎の剣を引き抜いて、敵の火線を潜って、反撃を撃つ。
ヴヴゥォヴォォッッッ
天へと昇る火柱は、かの白が放つ火炎に負けぬ灼熱で、一閃にかを飲み込んだ。
(──やった)
というのは、ストライクの早合点である。
炎に飲み込まれたはずの塊は、しかし、炎を持って撃ち返してくる。
ズガンッズガンッ
吹き上がる土ぼこりを回避しながら、ストライクはもう一射、炎の剣を突き出した。
一点に凝縮された炎の波が、一直線に昇っていく。
しかし、”それ”に触れた瞬間に拡散した。
(──弾かれた?!)
242 :
1:2006/06/10(土) 22:13:19 ID:???
その”機兵”は空を舞っていた。
さらには、炎の剣の閃熱さえも通じない。
”射撃”に見切りをつけると、その機兵は着陸し、剣を抜く。
機兵用の大振りの大剣を、しかし、素早く、高速に振りまわす。
ストライクはかわしきれなかった。
普通、機兵の剣撃というものは、確かにパワーは人の数十倍でも、速度はそんなに早くは無いはずだった。
しかし、この機兵の剣撃は、機兵であってストライクの剣速をも上回る。
それでも何とか炎の剣で受け止めて、弾き飛ばされるだけ、にダメージをとどめた。
舞い上がる土ぼこりの向こうに、霞む視界の向こうに、白い機兵を睨みつける。
──負けられない、いま、負ければ、姫を守れない……ッ。
渾身の火炎を突き出した。
ブッファァッッ!
しかし、機兵の持つ、巨大な十字の星が刻まれたその盾に、彼の炎は阻まれる。
唖然とするしかないストライク。
それでも次の機兵の一撃をなんとか、弾き飛ばされるだけ、で防いでみせた。
とはいえ、限界である。
力いっぱい地面にたたきつけられるその体は、決して無傷ではない。
炎の剣による攻撃だって、既に許容消耗を超えている。
それでも、しびれる両腕に鞭打って、拳を硬く、剣を握り、立ち上がる。
「……ハァハァ……ハァハァッ」
白い機兵は、ゆっくりと、刻むように、歩み寄る。
大剣を振り上げて、振り下ろす──瞬間。
「やめて──!」
「姫……っ」
243 :
1:2006/06/10(土) 22:16:17 ID:???
ストライクの前に飛び出したのはフレイだった。
あまりに、自分が、情けない。
それでも、体が動かない。
剣を逆さに地面に突いて、寄りかかって立っているというのが精一杯だった。
そんなことが精一杯だった。
誓いも約束も、こんなにも簡単に、砕け散るものかと──、
それは、ラクロアをアークエンジェル号で旅立ったあの日にも感じた感情だったが、しかし、もう一度思い知らされる。
うわぁあぁぁあぁ……
それは叫びである。
屈服した乞いである。
眼を閉じた。
数瞬後起こるであろう現実が、あまりに自分に惨いものだとわかるから、眼を閉じた。
逃げたのだった。
しかし、時は止まる。
剣は、振り下ろされなかった。
その空白が体感ではなく実在だとハッキリわかるほどに時を隔てて、やっとストライクは眼を開いた。
「……キミは、ラクロアのお姫様……?」
「あ、あなた……、たしかオーブの王子の……??」
ストライクの視界に映ったのは、ぱっかりと開いた白の機兵のコクピットと、
そこから降りて来たと思われる一人の青年。
彼は、オーブ王国の紋章が入った絢爛な皮鎧を身に着けて、腰にはこれまた豪華な装飾の剣を差して、
確かに、王子様といった風貌で、立っていた。
キラ、と名乗ったその男と自分とのあまりの違いに絶望を感じながら、しかし、力無くストライクはその場にへたり込んだ。
絶望より何より、とりあえず彼女が無事でよかったと、安堵した。
・・続く
乙!いや、なんていうか凄いわ、ホントに。
うまく説明できないんだけど、貴方の文章は一気に「読ませる」力がある。
特に心情描写とか凄く丁寧だね。フレイの憎悪とその行動、ストライクの誓いと葛藤、全てが凄い説得力。
乙。GJだ。
やー、ずいぶんハードな予感がするがw
まぁ面白いんで良し。
あと
>>234を見て一言。
>>1ちょっともちつけ
うん、上手い。
フレイの困ったチャンぶりにも彼女なりの理由付けがちゃんとされてるから無理がないんだよな。
そして騎士ストライクvsキラ&ガンフリーダム!!
>>1よ、キラとハマーンの更新マダー?
そういやエールとかソードとかランチャーはどうなんだ?
249 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 19:27:07 ID:diHZ04bC
保守
する価値なし
>>235-
>>243 GJ!!!
すごい。よく書けてる。
・・・・・。
253 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 20:27:40 ID:wgDma6gi
保守
255 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 22:48:05 ID:wgDma6gi
保守
チンチンシュッシュッ!
おおぉぉ!おおぉぉおおおぉぉっ!
ハァハァハァハァ……、ハァハァハァハァ……
保存しました(謎)
瀕死の騎士を騎士インパルスと妄想した俺は負け組orz
フリーダムにやられる+オーブ=シン→インパルスとオモタヨ
とにかくGJだ!
>>257 ヤッパリ額の処理はそうなるよなあ
てか某桃姫っぽいフレイワロス
…この頭身バランス、もしや壱百五拾九氏か!?
なんでバレるんだ(汗
某所での外伝版SEEDに乗り損ねたのでココに根付こうかと画策
基本的には名無しっす
>>261 やっぱりそうだったかw
結構印象に残るバランスの取り方とラフ画のタッチからそうじゃないかな、と。
今回はさすがにキットベースで作れないデザインだな。
まず顔からして違うし…
263 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/15(木) 13:19:59 ID:4c3gEoKv
勃起上げ
コレは普通にいいな。
なんといってもポージングがアイキャッチのアレなんが良い
これから豪華装備になっていく様が想像できるよ
キットベースは無理だろう、顔のアレンジはカードダス風なら限りなく正解じゃない?
ストライクかわいいよストライク
っていうかフレイ姫、髪の色的にも分け方的にもむしろデイj(ry
これはすごい、色こそついないがふたばのに劣らんね
269 :
266:2006/06/16(金) 20:15:09 ID:???
なるほど、角が柔らかくなってる
ちなみにバスターのロッドは繋いで長い杖になる裏設定(だから左のは逆手持ち)
ハンマーっぽいから鈍器にもなるゾ
>>266 壱百五拾九氏またもやGJ !!
なんかヴァジュラとかの杵とか独鈷みたい>左杖
メインカメラガードがこんな風に処理されてるのは新鮮。
たいていはヴェルデバスターみたいに鎧の一部になりそうだしな。
あとストライク、耳の部分変えたらエックスって言ってもおかしくない顔してるよな。
色付いたら差別化できるだろうが。
>>266 バスター上手いなあ。
印象的な胸鎧だけ着けてあとはローブとして処理するところなんか外伝の魔法使い系らしくもあり、
面倒な股関節周りを描かなくて済むという実作業の上でも上手いやり方だと思う。
GJ!
272 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 20:17:55 ID:Bcu1A0Ym
携帯厨の漏れにも見せれ!
PC繋げ
次はvsイージスか?
しっかし結構いい感じの絵描きがいても盛り上がらないのは
見てる人数が少ない所為?
>>273 荒れるよりは良いさ。
>>257の中の人
ストライクの腰サイドからケツがどうなってるのか知りたい。非っ常に知りたい。
・・・薄いアーマーの上に布?
あと、上でキットベース云々って書いたけどBBのストライクの頭をちょっと大きく
(左右2ミリ、奥行き1ミリ、上面1ミリほど)すれば何とかなるような気がしてきた。
出来たら模型板の方に晒すかも。 か も 。
俺としてはこのくらいの落ち着いたふいんきが好ましいけどな。
今の腐陰気(何故かヤな変換になったw)がいい方に一票ノシ
あとは落ちないように気をつけて。
>274
腰骨(あるのか?)の上ぐらいで三角巾のような布巻いてる解釈で正解。
着色したときストライクらしい色分け出来るように腰部分に赤色がほしかったんだ
落ちさえしなければマッタリで良いよね。
そうですね。落ちない位でマッタリいきましょう。
279 :
1:2006/06/19(月) 23:41:52 ID:???
──第14章 邂逅
燃えるのではない、”燃やす”炎。
赤赤と、火柱が、剣から迸り、収束する。
風を薙ぎ、大気を揺らし、空を焼く、炎、一閃。
如何なるものも焼き尽くす、炎の、ツルギ。
しかし、それが破られた。
炎は、弾かれる。
触れた瞬間に、バラバラに。
盾に阻まれ、霧のように散らばって、跡形もなく消えていく。
込められた想いは、
振り絞った力は、
微塵もなく消えていく。
その巨体は天を舞い、騎士より疾く、圧倒的に、強く──。
漆黒の闇の中、白のボディに炎光を受けて、赤鈍く輝いて、そそりたつ。
高らかと翼を広げ、高らかと剣を振り下ろす。
培ってきた剣術も、養ってきた体力も、最強の剣でさえも、通じない。
ああ、勝てない。ああ、負ける。
逃げれない。守れない。
殺される。
”彼女が”殺される。
”彼女が”殺される。
「うあぁぁあぁぁあぅ……」
そこで、自分の上げた呻きに目を覚まされて、彼は悪夢から開放された。
ひうひうと、呼吸にならないほどに息を乱して、彼はやっと生き返る。
指を開いて、握って、感覚を確かめる。
柔らかな白いベッドが、しかし、じっとりと自分の汗に濡れているのがわかった。
ふと気付くと、音が聞こえていた。
反響してなんだかよくわからないその音は、しかし、少しづつ近づいて、少しづつ鮮明に、変わってゆく。
それは、声だった。
眼をパチパチとさせて、視界を探る。金色のぼやけた塊が、段々と人の形になっていく。
「おい……、大丈夫か……!」
「カ、ガリ……?」
280 :
1:2006/06/19(月) 23:43:57 ID:???
”ここはどこ”と言った表情のストライクに、カガリは答えた。
「モルゲン城だ、オーブのお城」
”自分の城”だから得意げに言う、ついでに言った。
「おまえはストライク、ストライクだ、……まさか忘れてはいないだろうなぁ」
唇を歪ませ、眉毛を吊り上げ、顔を近づけて言うカガリに、
「あはは」と笑い出すストライク。
多少腹立たしくも安心すると、カガリはベットの隣の木椅子に腰を戻した。
「まったく……」
ボロボロのストライクの右腕に触れて、呆れたように言う。
「こんなに傷だらけになって……」
一転して、言う。
「バカかおまえは」
さらに一転して、しかし、一転して、
「いっつも……、バカかおまえは……」
二度も言わなくても……、しかし、その言葉を不快だとは思わない。心苦しくは、思う。
触れられている右腕が熱いのは、怪我による発熱のせいだろうか。
ガンフリーダムに敗れたストライクは、そのガンフリーダムによってモルゲン城へ連れられていた。
互いに、相手が帝国軍だと勘違いして戦ったものの、本来は敵同士ではない。
だから、キラは”彼ら”を城へ連れてきた。
ここはオーブの首都、モルゲン城である。
ところで、よく見ればカガリの”姿”が可笑しかった。
なんと、ドレスを着ている。
ああ、もしかしたらカガリではなくカガリの双子のお姉さんか、
そういえば「おまえはストライクだ」とは言ったけど「私はカガリだ」とは言ってないものな。
言葉には出してないのに、不信の眼だけでそれを悟って、”騎士装束”を着ていないカガリが低く言った。
「私はカガリだ」
触れられている右腕が痛いのは怪我のせいだろうか。
281 :
1:2006/06/19(月) 23:46:45 ID:???
しかし、ストライクがそんな風に考えるのも無理はなかった。
あのカガリがドレス。
それも、薄緑の、春のような、グリーンのワンピースドレス。
ぶわっとしたロングスカートに、肩口が開いている、まさに女性の格好。
……似合わない、いや、よく見れば逆に似合っているか……・。
でも、似合わない、似合っていないわけではないが変だ、絶対変だ。
可笑しい、騙されてるんだ(何が)。
髪も、いつものようなボサボサではなく、しっかりと整えてあった。花まで挿してある、
しばしストライクが観賞していると、あのカガリの頬が紅くなった。
ついに、たまらず噴出すストライク。
その瞬間に、彼女の鉄拳が飛んだ。爽快な打撃音、うむ良い音だ、よく慣れているね、人を殴ることに。
感嘆しながらも目が罰になるストライクだった。
というか痛い、怪我人を(しかも重症を)殴るな、と睨むストライク。を、おまえが悪いと睨み返すカガリ。
負けて、ごめんと謝るのがストライクである。
素直な彼に、自分も一歩譲って謝ろうとするカガリ。
……怪我人だからな、……私も悪かった。
「……は、弾みだ、許せ」
眼を見ずに謝る、顔をそむけ、あさっての方向に声を出す。
なんと礼儀にならない謝り方だろうか。
しかし、その気持ちは、とてもよく伝わった。
どんな上品な作法も敵わない、彼女の、謝り方。
声をうわずって、頬を紅く染め、こちらをちらちらと見ながら、言うのだ。笑える。無理だ。ぶははは。
その瞬間ストライクの顔面に、もう一発鉄拳が叩き込まれたことは言うまでもなかった。
「ま、まぁ、それだけ大怪我してるんだ、いまさら少しくらい叩かれたって大怪我は大怪我だ」
体育会系特有のとんでも理論だった。
「と、とにかく私は”夕食”に行ってくる、
…………おまえは、大人しく寝ていろよ」
ストライクは何も言葉を返さない、否、返せなかった。
中指と薬指を折り曲げて、他の三本の指はぴんと立て、硬直しながら痙攣して、ぴくぴくとしている。
カガリは苦笑して、本当に小さな声でもう一度「……すまなかったっ」、それから部屋を後にした。
282 :
1:2006/06/19(月) 23:50:29 ID:???
カガリは、久しぶりの”スカート”をパタパタと引きづって歩いていた。
本当はこんなものを着たくは無いのだが、仕方ない。
勝手に出て行って、勝手に戻ってきて、その上頼みごとまであるのだから、これぐらいの格好はしてみせる。
と、意気込まなければスカートも履けないというのがカガリである。
足が重い、ふわりとしてるはずの足元が、しかし、どんな着込みよりも体を重くしている。
これは私の体の一部にはならない、とそう感じる感覚があった。
しかし、それは”こんなものに似合いたくない”という彼女の心理からくる感覚だった。
本能ではない。性的なものではなく、理屈的な嫌悪。
それは、彼女が母親を早くに失くしていることに起因する。
”女性の美しさ”に触れる機会が無かったからだ。
もちろん”女性”などは彼女の周りに他にたくさん居はしたが、しかし、彼女の心は惹かれなかった。
彼女は、”勇猛な父”に心を惹かれた。
憧れる。
それなのに、女らしくと求められる。
生来負けん気の強い彼女は、その狭間の中で、自分の心の方を推し通した。
何より、だらしない兄なんてものがいたから、彼女は外ではなく内側に男性というものを求めたのだった。
その”だらしない兄”とこれから”食事”をしようとしている。
留守中に父が戦死したことは、城へ到着してすぐ”アサギ”に聞いた。
その報せを聞いた時に彼女が泣かなかったのは、やはり彼女が”勇ましい”からだろうか。
衝突はしても、愛していた、大切な、父だった。
自分はたくさん悲しませたのではないかと思うと、胸が痛くなる。
だが、泣かない。
父は立派に戦い、立派に信念を貫いて、立派に散っていったのだと、わかるから。
だから、泣かない。
たとえ涙が流れても、それで決して嘆きはしない。
騎士らしく、剣を掲げて誓うのだ。
貴方の誇りは私が継ぐと──。
283 :
1:2006/06/19(月) 23:51:52 ID:???
父が自分に求めていたものが”王女”だったとしても、しかし、カガリはこの剣を降ろさない。
彼女は知っていた、この”白銀の剣”が、父の剣であることを。
カガリが城を勝手に飛び出した日、しかし、父がこの剣を自分に与えてくれたことを。
刻まれた獅子の刻印は、錆びれて朽ちて消えかけているのに、刀身は白銀だった。
一点の曇りも無く、細身で、軽くて、薄いのに、傷の一つもついていない、まるで刀身だけは新品のような輝きで、
しかし、握りと鞘はボロボロの歴戦の剣である。
それはただの老剣ではない、手にすると、熱く体に打つものがある。王の剣だ。よく、わかる。
持ち出した剣の中に、いつの間にか紛れていたこの一本。
たとえ正式ではなかったとしても、たとえ本意ではないにしても、認めてくれた証だった。
”剣を贈ってくれた”のだ。
だから、彼女は、この剣を降ろさない。
ドレスを着るのが悪いとは思わない。
けれど、自分には剣が似合うと思いたい。
父と、同様に。
「ふぅっ」
カガリは大きく息を吐く。溜め息だ。
スカートがあんまり重くて、疲れたからだ。
まだ、大広間までだいぶ距離があった。
裾を持ち上げ一気に走って行きたい気分になる。
だが、深呼吸をして気を落ち着ける。
城にいる間くらいは──な。
自分は、これからも騎士として生きていく。ならば、せめて、この刻だけは、父の望む娘の姿も悪くは無い。
カガリはゆっくりと、しかし、大きな歩幅で(そのせいで)パタパタと、歩いていった。
284 :
1:2006/06/19(月) 23:55:41 ID:???
久しぶりに会ったその彼は、確かにどこか昔と違って見えた。
あの彼が、自分の眼を見て言葉を言うのだから、妙、である。
「久しぶりだね」
「……ああ」
なんとカガリのほうが先に視線を外した。
俯いてる顔を凝視したことはあっても、真っ直ぐ見つめ返されたのは初めてだった。
しかし、生来負けん気の強い女のカガリは、顔を作りなおし、頑として見つめ返す。
コホンと一息吐いて、言葉を鈍くして、言う。
「……ああ、久しぶりだ」
白く長いテーブルの向こう、互いに凛として座している。
茶色い髪に紫の瞳、双子と言っても、性格も容姿も全然違うのがこの二人。
こうして二人で食事をするのは、本当に幼かった頃以来のことだった。
本当に幼かった頃は仲が良かったが、物心が付いた頃には離れていった。
カガリはハッキリしない男の子にイライラしたし、
キラはガサツで乱暴な女の子からは逃げ出した。
例えば、キラはちゃんばらを強要されて、カガリを殴れるわけなく一方的に叩かれて、
カガリにしてみれば少し棒が触れただけで泣き出されては面白も何とも無く、しかも、叱られるし、つまらない。
お花の観賞など、カガリがしたいわけが無かった。
というわけで、疎遠になっていった。
その頃、城ではカガリは女性らしくを強要されていたから、そのストレスでキラに酷く冷たく当たっていた。
情け無い男に対して、妬みや憎しみのような黒い感情が沸くのである。
自分が男に生まれたいとすら心底思っていた。
でも、そんなものに何時までも捕らわれないというのが彼女の勇ましさである。
そんなことを言っても仕方ない。と、前向きに諦める。
そして、”現在”から変えていく。
流れてきた流れを、塞き止め、押し切り、逆らって、捻じ曲げる。
王女になるはずだった運命を、見事にぶち壊して、城を出た。
しかし、そういうことはキラには真似できなかった。
嫌だとは思っても、逆らうことなく言うままに、王子として、しかし、情けなく育った、はずだった。
アサギに聞いた彼は、どうやらそうではないらしい。
自ら指揮を執り、機兵などを駆って、最前線で戦っているという。
昔の彼からすればありえない。
だが、そうなった、というなら、それは頼もしく、喜ばしいことだった。
285 :
1:2006/06/19(月) 23:57:08 ID:???
しかし、再会した彼は、確かに昔の彼とは変わっていても、
しかし、どこかがオカシく感じて、何かがオカシかった。
父とも、自分とも、違う。
ハッキリとはわからない違和感。
それは、熱の篭らない冷たい眼。
「何故、貴方があのようなものに乗っている、……のです」
兄上とは呼ばなかったが、敬語は使ってカガリが訊いた。
「いけない?」
「いけなくは……、ただ……」
カガリが知っているキラは、あんなもので戦争をできる男じゃなかった。
「似合わない?」
そう、それはまるで、誰かさんが着ているドレスのように。
似合わない。
「必要だって、ことだよ」
「……そうかも知れませんが、何故、そう思うようになったのです、”あの貴方”が」
率直な疑問でもあったし、皮肉もあった。
一体どうゆう心境の変化があったのか、まるでわからない。
キラはクチを緩ませて、ゆっくり、答えた。
「だって泣いてるだけじゃ、何も守れないでしょ」
その通りだ、と思うはずの彼の言葉が、しかし、何故かカガリは賛同する気分になれない。
何故だ。
何故、心を赦せない。
彼が立派になったのなら、喜ぶべきことなのに、喜べない。
286 :
1:2006/06/19(月) 23:59:11 ID:???
運ばれる料理にナイフを立てながら、互いの近況を報告した。
と言っても、私的な話は一切無く、淡白だ。
殺気までは無くても、暖かみの無い、殺伐さがある。
期待していた再会だったから、カガリは少し残念だった。
その原因が自分にもあると思えても、何をどうすればいいのかわからない。
「話はわかった、ラクロアか」
ナイフをコトンとテーブルに置いて、キラが言う。
何故か、微笑を浮かべるようにして、彼は続ける。
「ちょうど国内に残っていた帝国軍はほとんど駆除し終えたんだ」
半壊、いや、壊滅にまで至らされていたオーブ軍だったが、しかし、キラとガンフリーダムの活躍により戦況は一辺していた。
オーブ全軍の二十倍近いはずの戦力が、しかし、ただの一機の飛行機兵に打ち破られて、
もはや帝国は侵攻を一時諦めさせられていた。
キラは、それを機に攻勢に出るつもりだった。
まずは再建されつつあるグラナダの機兵工場を、しかし、カガリの話を聞き、攻めるのはラクロアからでも良いと考えた。
どうせ両方を潰さないとダメなんだから、だったら、ラクロアを先に攻めたって構わない。
カガリがそれを望むのなら、自分が叶えてやると言うのは気分が良い。
それに”彼女”だってそれを望むだろう。
ならば、叶えよう。
今の自分にはそれだけの”力”があるのだから。
不敵に、言う。
「わかった、任せて」
その優しくて頼りがいのある言葉が、しかし、カガリにはあまり心地よくは聞こえなかった。
その理由はやはりハッキリとはわからない。
ただ、漠然と、不安になる。
もっと、彼女が神経質だったなら、
例えば、今日の料理に”海産物”がまったく無いことを不自然に思ったなら、気付けたのかもしれなかった。
自分と、彼との、決定的な正義の違いというものに。
287 :
1:2006/06/20(火) 00:00:10 ID:???
夜は明けていた。
薄く青い空の下、ストライクは城のテラスを歩いていた。
風にあたりたかった。
そうやって現実に戻りたかった。
カガリが去った後のあの部屋は、とても静かで、静寂だった。
音一つ無い空間は、頭の声を響かせる。
またも、蘇る、悪夢。
思い出したくない、敗北。
それが逃げるという行為になったとしても、ストライクはその部屋から出たかった。
風に当たり、空を見上げ、朝鳥の声に耳を傾ける。
もしも彼が敵ならば、死んでいた。
殺されていた。
自分を、ではない、大切な人を。
殺されていた。
失っていた。
壊されていた。
何もかも、すべてを。
すべてを。
もしも彼が敵だったなら、もしも彼と同じくらい強い敵が現われたなら、
その時自分は、果たして勝つことが出来るのだろうか、
守ることが出来るのだろうか、
この先何があっても、という想いは、いとも簡単に砕け散り。
答えは既に出ているのかも知れない。
だから、部屋から逃げ出した。
圧倒的な力の差、途方も無い力の差。
「騎士ストライク、だよね……?」
その時、声が掛かった。
王子キラである。早朝なのに正装で、ストライクの前にやってくる。
複雑な思いで彼を見るストライク。
「カガリから話は聞いた、……力の盾、欲しいんだって?」
288 :
1:2006/06/20(火) 00:02:15 ID:???
はっとする。
力の盾──そうだ、それさえあればあの機兵にも勝てるかもしれない。
それは、甘い誘惑。
「でも、渡せない、……僕が使うから」
じゃあなにしにきたんだ、と言いたくなる彼の言葉だった。
力の盾さえあれば強くなれるのに、なんて考える無様な心。情け無い。
微笑んで、キラは言う。
「”炎の剣”と言うんだっけ、キミのその剣、僕にくれない?」
なにいってんだこいつ、と言いたくなる彼の言葉だった。
それを失ってしまえばきっともう戦えなくなる、惨めな自分。本当に情け無い。
微笑んで、キラは言う。
「”スダドアカを救う勇者が持つ剣”、僕にくれない?」
彼の瞳は据わっていた、薄く紫に滲む眼光。
絞り出すように紡がれる声は、震えて、しかし、力が篭っている。
覚悟ある声だ、覚悟ある眼差しだ。
真っ直ぐに、ストライクを、機先して、
「”僕に負けたキミ”が、一体何を守れるの」
さらに、続ける。
「”キミに勝った僕”が、スダドアカも、ラクロアも、”彼女”も、守るよ」
酷く冷たく、酷く重く、酷く鈍く。
刺さるように、押しつぶすように、投げかけられるその言葉は、しかし、ストライクに取っては甘いものでもあった。
”そうしてしまえば楽になる”。
彼がスダドアカを救ってくれるなら、彼が彼女を守ってくれるなら、
自分はもう戦う必要もない。
昔みたいに、ぼーっと、空を眺め、本でも読んで……それで、……それで。
どっちにしても”彼に負けた僕”じゃ、スダドアカも、ラクロアも、”彼女”だって、守れない。
だったら、炎の剣は彼に託して、
託して、
そのほうが、そのほうが……、良いに決まってる……、……本当に、本当に……。
289 :
1:2006/06/20(火) 00:04:58 ID:???
すべてを投げ出して、
すべてを彼に託して、
今までの出来事を、戦いも、出会いも、感情も、すべてを託して、
すべてを投げ出して、
違う。
そうじゃない。
そんなことじゃない。
最初からそんなもののために戦っていたわけじゃない。
関係無い。
ラクロアも、ルウムの人々も、アークエンジェル号のみんなだって、ミリアリアだって”関係無い”。
誰でもなく、自身の、湧き上がる、捨てられるはずも無い、心の衝動。
何時の時も、初めから”勝てる”と思って戦ったことはない。
それでも体が動くから戦った。
保障など何処にも無い、自信だってどこにも無い。
けれど、望むから、自分が望むから、
”勝ちたい”と思うから戦った。
たとえ、彼女が一生、振り向いてくれなくても、諦めない。
笑顔が戻るまで、諦めない。
ならば、やはり剣は棄てられない。
棄てたくない。
ここで、彼に託しても、ほんのわずかも楽にはならない。
だから、剣は渡せない。
たとえ彼こそが勇者であっても、渡せない。
傲慢で、我侭な、勝手な、衝動。
虚ろになったストライクの瞳は、しかしハッキリとした光を取り戻し、
拒絶の意思を持ってキラを凝視する。
それを突き崩すように、キラは言う。
「でも、キミに彼女が守れるの?」
290 :
1:2006/06/20(火) 00:06:17 ID:???
わからない。
もう一度戦って、勝てるのか。
でも、”守りたい”。
その想いは譲れない。決して、誰にも譲れない。
ならば、その想いを信じるしかない。
”期待”するのではない、”信じる”。
”すがる”のではない、”叶える”。それを”叶える”。
外ではなく、内側に。
あんな機兵が自分には無くても、力の盾がみつからなくても、
たとえ、炎の剣を失っても、もっと強大な敵が現われたとしても、
だが、戦う。
心ある限り、”守りたい”。
なら、戦う。
そして、勝つ。
勝たねばならぬなら必ず勝つ。
答えを、決めた。
勝手に、決めた。
計算式などは無視をして、成り立たぬなら計算式の方を捻じ曲げて、
答えを、決めた。
「……守ってみせる」
決して、砕けない。
決して、屈しない。
二度と揺らがぬだろう強い瞳。
キラは、諦めて背中を見せる。
「ま、いっか、炎の剣が無くても、僕にはガンフリーダムがあるんだし」
振り向いて、言う。
「お互い頑張ろうね、平和のために」
そして、立ち去った。
291 :
1:2006/06/20(火) 00:08:23 ID:???
残されたストライク、訪れる静寂、天を仰いで深呼吸をする。
空は明けきっていた。
大きく吸った息を、大きく吐き出す。
「……言っちゃった」
後悔など微塵してない顔で、
「でも、もう一度戦って、本当に勝てるのかな、あんなのに」
平然に言う。
あはは、と頭を掻いて伸びをする。
清々しかった。
「頑張るしかないな」
大きく吐いて、大きく吸い込む。
恐怖や不安も何もかも。吸って、吐いて、当たり前に取り込んで、一部に変える。
腰から銀の剣を引き抜いて、”型”を作る。
基本からの特訓。
そんなことでどれだけ強さが変わるのか、そういう問題ではない。
ただ、自分は騎士だから、剣を振る。
強くなりたいから剣を振る。
しばらく振ると、しかし、体に傷の痛みを思い出し、あの部屋へと帰ることにした。
大きなあくびをしながら、あの静かなベットへ潜り込む。
最後に一言だけ呟いて、眠りに落ちた。
穏やかな、調子で、「……守ってみせる」
彼の寝顔は、安らかだった。
・・続く
GJ
キラ黒いよキラ
1氏GJ!
根っこの部分は近いように思えるのにストライクに比してなぜキラはああなってしまったのか・・・
まさか炎の剣が力を使うと体力を消耗するのと同じく、力の盾にも何らかの副作用が?
>>277 なるほどサンクス
>>293 自分には本編の『やめてよね』の時みたいに『力』に溺れて変になっているようにも見える。
だから『力』の盾を持たせたキャラが王子なんじゃ?と深読みしてしまった。
黒キラGJ!
ヲレも『やめてよね』verに見える。
やっぱアスランと戦って凹んで、そこで騎士ストライクと心を通わせる流れになるんだろうか。
あんまり先読みするのもアレだけどw
待て、コレはキラ死亡フラグじゃないのか?
キラ敵フラグの気がしなくも無い
騎士インパルス主人公の続編の布石とか?w
ストライクの覚悟を試しただけかもよ
ってか感想はともかくネタ潰しになるようなことは止めようよ
天使の輪の件があってから種SSスレはフィルターかかって見えるが
このスレの
>>1は寡黙で逆に好感が持てる
話は会話文だけじゃなく地の文がマジでしっかりしてて
描写がうまいので楽しく見させてもらってる
過去ナイトガンダムシリーズと
ナイトガンダムSEEDの設定が混じって妙な違和感を感じるが
なんか初めのほうデスティニーの処理困る、みたいな書き込みあるけど
俺が考えた騎士SEEDはデスティニーはスペリオルみたいに騎士じゃなくて
”聖獣騎”みたいなちょっと騎士とは離れたイメージにしてる。
こんな妄想続けて二ヶ月・・・四部作ぐらいになってしまったorz
あと
>>1頑張ってくれ
魔剣士インパルス 「EXAMシステム……俺を惑わせるな!!」 魔機兵に翻弄される若き剣士
魔機兵アロンダイトディスティニー 魔機兵は魔剣士に付き従う……剣士の望む望まざるに関わらず…… 禁断のシステムを搭載した魔機兵
魔機兵アロンダイトディスティニー(隠し) EXAMシステム起動、アロンダイト魔力開放……魔機兵の眼が妖しく輝く…… 暴走し、敵味方関係なく破壊する
蒼騎士ジムブルーディスティニー 「惑うな若者よ。水鏡の心にてEXAMを御するのだ。」 インパルスを導く古強者
……なんとなく。
ディスティニーっつーたらEXAMだろうよ。
>>300 UC系混ぜると荒れるからオススメしない
>>279-291 ストライクがいい味出してるな
>>300 デスティニー≠ディスティニーだけどね
でも大剣を振り回す狂戦士ときたらベルセルクみたいな
ダークな世界観が似あってそうだ
>>304 イージスイージスっ!ヤッホゥッ!
ずびばぜん、ずびばぜん、一切描写とかなくって、、
ルウムの町襲撃したものは「重機兵マニウバ」&「重速機兵ハイマニウバ」です。
元ネタは「ジンハイマニューバ」で、まぁ、でっかいジンです、、
武器は、火器はなく、重斬刀オンリー、
マニウバのほうはでっかい盾を装備、ハイマニウバは上級 件 高機動機(マニウバよりは)で盾は無し
マニウバは深緑、ハイマニウバは鈍白色、少しハイマニウバのほうが格好良い、はず
ちなみにパイロットはそれぞれ緑騎士ザクウォーリア、白騎士ザクファントム、なはず
あとはご想像にお任せ・・・
水中機兵のほうは「潜水機兵ジーフェムウス」
元ネタは「ジンフェムウス」です
これは、ヤフーで「ジンフェムウス」で検索したらものすごいすごいものがありました、まさにこんな感じですねきっと
武器は三叉槍、というか、トライデント、かな
以上、曖昧な想像主でした、、
>>1は投下時以外の妙なテンションは何とかならんのかw
いやまぁ嫌いじゃねーけど。
>>1 性欲を持て余す
ってかなんだか
>>1が可愛く見えてきたぞ
すごいすごい、上はデスティニーだよね、下はなんだろ
>>311 フリーダムのつもりです
少ない線で表現&かっこよくするのムズカシス
魔装機神な匂いがするなぁ
>304のイージスもなかなかよいねーテンプルナイト風?
なにげにカガリがエロい
カード風に仕上げないかな〜
>>315 ゴテゴテするのは豪華で良いな。
ちと見難いがGJ。
323 :
1さん:2006/06/24(土) 02:52:40 ID:???
>>321 パチパチパチパチッ ←幸せだから手を叩いてる
良過ぎっっ良いっ
325 :
1:2006/06/24(土) 19:30:43 ID:???
──第15章 届くなら
赤い髪を靡かせて、背を張って歩く彼女の姿は美しかった。
透きとおるような薄い桃色のドレス。後ろ髪は結い上げてポニーテイル。
左右の髪はそのまま垂らしてふわふわと、しかしボリュームのある赤い髪。
白く細長い指を口許にあて気品ある笑みを見せる彼女、彼女の薄い蒼の瞳が爛爛と輝いて、もはや心が堪らない。
自分と同い年くらいの彼女。
どこかの”金の髪のガサツな女”とはえらい違いの彼女。
同じ”王女”と言っても……、本物の違いを、思い知らされる。
(あんな娘もいるんだ……)
ならば、”王子”というのも悪くはないかも知れない。
言葉をかわすこともなく、その手に触れることもなく、
パーティーに列席する彼女を、いつも遠目から見つめるだけだったが、恋だった。
不意に、”その彼女”が自分へ向かって歩いてくる。
胸が酷く脈打った。
高速に、血がたぎり、眼は充血し、頬は真っ赤に。ドキドキと、胸が、舞う。
「ちょっと、そこのボーイさん」
「ぇ゛……」
青褪める、引いていく、鼓動。しかし、
(えぇぇええぇぇえぇぇ……)
と、同時に再び赤く、顔は、赤く、染まりなおす。
(ボーイさんに見えるのか僕は……、見える……んだろうな……)
恥ずかしすぎる、逃げ出したい、だが、足すらも動かない。
ただこわばって、否定の言葉も出ずに、体と思考は痙攣して動かない。
そんな彼を歯牙にもかけずに、彼女は続けた。
「おしぼり」
「……は?」
「おしぼりっ」
「は、はいっ、……た、ただいま」
326 :
1:2006/06/24(土) 19:32:16 ID:???
彼女の言葉に気圧されて、やっと体が動き出す、ただし、おしぼりを探しに。
うつらうつら、うろうろと、しかし後ろの会話はハッキリ耳に入ってきた。
「ちょっとフレイっ、あれボーイさんじゃないわよ」
「へ?」
「あれってたぶんオーブの王子様」
「うっそっー、全然みえないっー、あんなのがー?」
グサグサと背中に突き立てられるナイフ達。
肋骨がバラバラに、内臓がグチャグチャに、今にも吐血しそうな、この感覚。
痛い、胸が、痛い。
思わず地べたに倒れ伏せる。
「ど、どうなされました? キラ様!」
「あ、アサギさん……」
ぱくぱくと、クチを開くが言葉はでない。
どうなされたのかだって? そんなこと説明できるわけがない!
彼の中の、ほんの一欠けらの見栄だった。
「あ、あの、あの娘に……、おし、おしぼりを持って行ってあげてくださいっ……、ぐすんっ……!」
そう言い残して彼は走り出す。
零れる涙を袖で拭って、走り出す。
あぁ、短い青春だった。
どうせぇぼくなんかぁっ……。
そうだ、確かに彼女に僕は不似合いだ。
王子と言っても不釣合い。
酷く、簡単に、諦める。
だから、彼女に不釣合い。
酷く、短い、恋だった。
あの時の鼓動はすぐに消え去って、胸の痛みも治まって、
完全に忘れなくても、遠い思い出になってゆく。
何も出来ず、何もせず、ただ見つめていただけの、
酷く、儚い、恋だった。
327 :
1:2006/06/24(土) 19:34:19 ID:???
「……眼が覚めた?」
薄くまだ青い陽光が、目覚めた彼女の瞳に射した。
彼女はゆっくりまぶたをあけて、体を起こす。
ふと、冷たい感触が手に触れる、微笑んで、彼がおしぼりを手渡した。
訳もわからずに、しかし、不快ではないから、彼女も微笑んで礼を言う。
「……ありがとう」
「うん」
窓の外には朝鳥の鳴く声が、のどかな世界を演出して。
白く、広く、柔らかな、大きなベット。運ばれてくる食事、温かな良い匂い。
ベットしか置かれていないこの部屋は、しかし、やたらと広く、絢爛で。
久しぶりの、朝だった。
「……クチに合うと良いんだけど、着替えも用意してあるから」
”彼”が手を傾けると、それだけで運ばれてくる豪華な洋服達。
ずらずらと並べられる。
さらに、侍女を指して、
「こっちはアサギ、なんでも言いつけて」
ハッと敬礼するのはただの侍女ではなく衛騎士のアサギである。
微妙にウェーブした綺麗なブロンド、その端正な顔立ちは侍女とも騎士とも思わせない、大人の女性。
彼女は同じ衛騎士の”ジュリ””マユラ”と共に、ウズミが幼きキラとカガリに付けた御守であった。
残念ながら彼女らは、二人の母親や姉といえる存在までには成りえなかったが、
それでも二人の良き理解者であり、二人が城でもっとも親しく、もっとも頼りにしている人物だった。
だから、キラはフレイに彼女を付けた。
「……ありがとう」
フレイは、もう一度小さくお礼を呟いた。
どうして彼はこんなにも親切にしてくれるのだろう。
けれど、その理由を問い詰めることは自分の首を絞めかねないとも感じるから、
だから、何も言わないなら、何も聞かない。
「あ、えと……」
そう、決めて、ゆっくり紅茶を啜っていると、彼がしどろもどろに切り出した。
「え?」
「取り返しますから、ラクロアは、かならず、ガンフリーダムで、僕が……」
啜った紅茶を小脇の机に戻して、首を傾け彼を見上げて、ゆっくりと唇を動かして、優しい声色で、
「……ありがとう」
328 :
1:2006/06/24(土) 19:39:31 ID:???
ふぅっ ふぅっ ふぅっ
風を斬る、疾き音。
ぶぉっ ぶぉっ ぶぉっ
風を薙ぐ、剛き音。
ふぅっ ぶぉっ ざぁっ ザガァッ
銀の剣が煌めいて、木組みのカカシがパタリと落ちる。
突き出した剣を一転させて鞘へと返す。
大きく息を吐き、呼吸を整える。
鞘へ剣を戻した時の「カン」という乾いた音が、耳に残響して心地よい。
いい汗を掻いた、と、そんな気分。
「うお、やってるな〜♪」
今日は終わりにしようと思った瞬間にやってくる彼女。
嬉しそうに、やってくる。
自分の剣を抜いて、言う。
「私も混ぜろっ」
いやだ、とは言わせない迫力で、というか、疑問ではなく命令で、というか、既に斬りつけて。
ストライクはあわてて剣を引き抜いて、あわてて彼女を受け止める。
鳴る金属音、散る火花。
先日の彼女はどこへ行ったのか。
いや、先日だってドレスこそ着ていても”このまま”だったか。
諦めて、ストライクは彼女と剣を打ち合った。
329 :
1:2006/06/24(土) 19:41:14 ID:???
彼女の剣は無駄に荒く、無駄に粗い。
力も無いのに剛剣で、むやみやたらに振り回して。
ストライクはひらりと身をかわし、足を引っ掛けすっころばした。
「痛ぁいっ」
「あはは」
「笑うなぁぁ!」
その瞬間、彼女は信じられない速度とパワーで、つるぎをブオンと振り回す。
笑えない、その剣先に、僅かでも触れていれば致死だった。
紙一重で回避して、しかし、足がもつれて尻餅をついてしまうストライク。
倒れたストライクの顔面に剣を構え、不敵にほざくカガリの顔は輝くようで。
「どうだ!」
両手を挙げて「参った……」と、情けなく言うストライクに、
うははははははと馬鹿笑いするカガリ。
しかし、一呼吸すると剣を収めて、ストライクの隣に腰を下ろす。
「……息抜きになったか?」
「え?」
立ち上がり、言う。
「根を詰めすぎるなよ」
そして、彼女は去った。
呆然とするのは残されたストライク。
えぇえぇ。
なんだか、ものすごく、悔しかった。
ほんとうに彼女に負けてしまった気がして。
ガクッと首を落とし、力を抜いてそのままに、地面に仰向けに体を崩す。
空が、青かった。
330 :
1:2006/06/24(土) 19:43:01 ID:???
数日して、アークエンジェル号は出航した。
オーブの旗艦、クサナギ号と共に。
目指すは、ラクロアの地。
「海か……」
幾度も眺めたその海は、やはり、今日も青かった。
旅立ちの日。
いつもとは違う、特別な日。
”国を出る”のは初めてだった。
もちろん外国へ行ったことはある、だが、”国を出る”のは初めてだ。
ずっと躊躇し、出来なかったこと。
次々と、変わっていく、”世界”。
一つ一つ、やってみれば実はそれほどに難しいことじゃなくて、辛いことでもなくて、楽いことでもなくて。
しかし、この”世界”には自分がいた。確かに此処に僕がいる。
もう、待たない。
一つ一つ、迎えに行く。
届かぬ手紙を書くことは、もうしない。
”僕”がいて、”キミ”がいて、”彼女”までがいてくれるなら、
もはや、”苦痛はないが変わり映えの無い日々”などに用はない。
この痛みは、値する。……値するから。……逃げ出さない。
少しだけ、奥の部屋で休む彼女の様子を窺って、再び海へと視線を戻した。
荒れる波間を、”力”で押し切るようにして、船はゆく。
・・続く
GJ!!
続き待ってました。ありがとう!
少しだけキラがまともになっていたなと。
ガンフリーダムに乗っているときがヤバゲだっただけに少しほっとした。
それにしても、この作品の女たちは強いな。
GJ!
カガリがやけに大物に見えるのはどうしたことだろうw
キラはまだ力厨だな。
これがどうやって凹まされるのかが見物だな。
「動け!ガンフリーダム!?
ガンフリーダム!!?何故動かない!!?」 じゃね?
むしろ圧倒的な力に敗北したならそれを超える力を求めて堂々巡りになりかねんので、
幾ら力があったところで無意味な事態にぶつかったほうが考え直すんじゃね?
考察は良いが余り先の展開を読みすぎるのも考え物だぞw
>>334 「動け!動け!動いてくれよ!今動かないと何にもならないんだ!」
>>337 グォォォォ!!!!!!
「ガンフリーダム・・・再起動・・・」
「すごい・・・・」
「まさか・・・・信じられません!!ガンフリーダムの稼動率が400%を超えています!!!」
「やはり目覚めたのね。彼女が・・・・・」
バキッ!! メキッ!! グシャ!!
「敵を・・・・食ってる・・・・」
「NJCを自らとりこんでいるというの!? ガンフリーダムが」
グウォォォォォォォォ!!!!
「私たちにはもうガンフリーダムを止めることはできないわ・・・」
それじゃもはやガンレックスもどきじゃなくてルーンレックスじゃねーかw
カガリがストライクっぽい全身鎧を着てストライクルージュ
という電波を受信しました。
342 :
1だっちゃ:2006/06/26(月) 14:13:21 ID:???
>>341 うあ、惜しい、ちょうど昨日ブリッツの出番の下書き終えちゃったw
けど、清書の時は多少考慮して書きますだ、忍者っぽくて良いですね
当方の妄想より随分深い設定があって素晴らしい
>>341 体型がちょっとガンダムフォースっぽい。
頭身が高いのか
>>341 ちょっと胴体でかい気がすると思ったら
腹から腰が大きすぎるからSDGF体型に見えるんだ。
ここの高さを詰めるとらしくなると思う。
あとスネの長さのうちにモモまで入れるようにするとか。
これの逆をするとBB戦士のキャプテン(SDGF)もCGモデルの形状らしく見える。
>>342 うp、うp!!
346 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 19:22:36 ID:Lnur/A84
マニウバ、アレンジの仕方上手いってかコレしかないって姿だ
うまいなー
349 :
1:2006/06/28(水) 20:43:03 ID:???
──第16章 青き海の激突
「敵襲ーーッ!!」
アークエンジェル号の甲板に、怒号とサイレンが鳴り響いた。
オーブを出航したストライク一行は、さっそくにしてザフトの海軍と遭遇していた。
広い広い海原で、しかし、半日もせずにばったりと出会っためぐりあい。
オーブからラクロアへ向かう航路で出会った敵ということは、
つまりはラクロアからオーブへ侵攻してきた艦隊だった。
ならば、逃げるわけにはいかない。見逃すわけにもいかない。
やり過ごすというわけには、いかない。
出会ったこの場で討ち滅ぼす。
衝突し、激突し、撃破して、
徹底的に踏み潰す、
踏み潰して、突き進む。
そうでなければ道など出来ない。
そうでなければ先へなど進めない。
こんなところでつまづいてはいられないから。
ラクロア奪還、いや、ザフト打倒への前哨戦。
欲しいのは、勝利。
圧倒的な、快勝。
立ちはだかる敵はことごとく踏み潰し、薙ぎ倒し、完全に、完璧に排除していく。
そうでなければ築けない。
そうでなければ守れない。
この手で、この力で、掴み取る。
もう、待たない。
僕が、やる。
それを出来る力を持つのだから。
350 :
1:2006/06/28(水) 20:46:12 ID:???
キラは、さっそくガンフリーダムのコクピットに入り、神経を繋ぐ。
冷たく、しかし、熱くもある端子が体を取り巻く。
”体が機体の一部になる”という感触。
瞬間、意識が青く染まった、まるで海に落ちたかのように。深く、深く、落ちていく。
段々と、段々と濃くなって、黒くなる。
黒く染まりきった意識は、段々と明るく、いや、薄く、白に、染まっていく。
薄く、薄く、遠く、消えていく。
瞬間、繋ぎとめた。
怒りを、悲しみを、
愛を、憎しみを、
重ねて、連ねて、鎖にして、雁字搦めに意識を繋ぎ止める。
そして、引き戻す。
頬に垂れた水分を拭い退け、足を一歩踏み出した。
揺れる地面──クサナギ号の甲板。
吹き抜ける潮風を、機体の中でしかし体に感じて、舞い上がる。
青く、映る、虚空へと、硬質の翼を羽打たいて、舞い上がる。
折れ曲がった翼の一部が炎を吐き出した。
鉄製の戦艦が、しかし、いとも簡単に燃え上がる。
青い海に、赤い火花が咲いた。
無数に広がっていく焔、戦いの始まり──。
351 :
1:2006/06/28(水) 20:48:05 ID:???
ザフト側の戦力は十二隻である。
グラナダ・及び本国からの艦隊を打ち破られた帝国は、ラクロア侵攻に当てていた戦力をオーブへ回してきていた。
その一団である。
これは連隊規模の戦力で、たった二隻で正面から戦える相手ではなかった。
あくまで、正面からは、だが。
アークエンジェル号側には、グラナダ・及び本国からの艦隊をたった一機で打ち破ったガンフリーダムがある。
上手く戦えば十分に勝機があった。
そのガンフリーダムが敵艦隊をある程度撃ち減らすまでは、アークエンジェル号はとにかく逃げ回る。
距離を取り、追いかけさせ、囮になる。
発進してものの数分で一隻沈める姿を見せられれば、そういう作戦を立案するのが指揮官のナタルだった。
思い気って艦を反転させ、逃げ回る。
逃げて逃げて逃げまわって、反撃の機会を待つ。
自分が不利な時には逃げ回り、自分が有利になったら攻め立てる。
それが勝利への常套手段である。
作戦は簡単に上手くいくはずだった。
アークエンジェル号の航行速度は、既存のどの船よりも速いのだから。
しかし、帝国側には一隻、既存ではない戦艦が混じっていた。
新型ではない、しかし、占術士クルーゼの特別艦、”蒼のヴェリサウス”である。
「何故あんなものがここにある……!」
グングンと追いついてくる、かの艦に、弾幕を指示するナタル。
しかし、撃破できない、速度さえも落とさせれない。
撃ち込まれる”ゴットスピア”の砲弾が、しかし、着弾まえに弾かれる。
「結界法術でも張っているのか……!」
”ヴァトラスソード”ならば……。
しかし、背中を見せたままでは、主砲は使えない。
しかし、反転すれば他の敵艦や潜水機兵にまで追いつかれる。
「騎士ストライク! 迎撃してみせろ!」
「……はいっ!」
352 :
1:2006/06/28(水) 20:50:56 ID:???
ブリッジを飛び出したストライク。
さっそく、アーエンジェル号の”尻”に立つ。
深呼吸をして、炎の剣を鞘から引き抜く。真っ直ぐに、突き立てて、撃つ。
ヴォホォッッ!
海を奔る赤い稲妻。
しかし、バリバリと阻まれる。白い壁。白い塊の壁。
炎に触れるとバリバリ音を立て、霧となって水となって、溶け落ちる。
「氷……?!」
遠めに見える、ヒョウのような白い破片群。
そして、甲板に見えた巨体。
「で、でっかいデュエル!?」
「ストライクゥッ!!!」
叫び、同時に、撃つ。
でっかいデュエルは、蒼白い一撃を放った。
海の上を、バリバリ奔る、氷の一撃。
しかし、ナタルは瞬間、艦を振らせ、直撃はさせない。
それでも右舷部に命中し、爆発、いや、氷結が起こる。
水飛沫さえも、空中で氷結し、静止する。
艦が揺れた、航行が鈍る、しかし、エンジントラブルというわけではなかった。
海が凍っていた。
”弾道がバリバリ凍りつき”、”蛇の背中ような氷の道”が、鎖のようにアークエンジェル号を引き止めた。
アークエンジェル号の速度が落ちる。
そればかりではない、”氷の道”の上を黒い人影が無数に走って来る。
艦に乗り込んでくるつもりか──。
「総員、陸戦用意!! ……ストライク! 何をやっている!!」
353 :
1:2006/06/28(水) 20:56:55 ID:???
ナタルの甲高い叫びの元に、ハッとして我に返るストライク。
そうだ。
何をやっているんだ……、こんなものは僕が断たなきゃいけないんだ……!
剣を反し、もう一閃、”繋ぐ、蛇”へと撃ち放つ。
しかし、またも阻まれた。
炎は、しゅわしゅわと、消えていく。
今度は”氷”ではない”水”に阻まれた。
”糶り立つ海”に阻まれた。
海が直立して、”氷の道”を守る壁となっていた。
またも、──無力。通じない。
「法術なのか……!?」
だとしても、打ち破る。それが何でも、打ち破る。
そう決めた、
負けてばかりはいられない。もう負けられないッ!
糶り立った海に、しかし、剣を戻して、再び渾身に、挑みかかる。
収束させた炎なら、そんなものだって貫けるはずだ──ッ!
「水よ……! その冷たき力を持って、我らを守れ……! ウォーターウォールッ!」
しかし、水もまた、収束し、立ちはだかる。
大量の海水が、収束して、球の形を成して、炎一閃を受け止める。
大きな熱と衝撃に吹き飛ぶ水は、蒸気となって霧と消える。
だが、炎もまた形を失くして消えていた。
依然連なる”氷の道”。
膨大に沸く霧の向こうに、人影が見えた。それはよく知っている人影で、
「……ストライク」
と、同時に、
「イージスッ!!」
・・続く
354 :
1:2006/06/28(水) 21:12:20 ID:???
──第17章 青き海の決闘
炎と水の衝突に、沸きあがる、霧、霧、霧。
かすみに見えた互いの姿。
想いに耽る間もなく、その瞬間、霧の中を、黒い塊が飛び出した。
黒い塊は、一瞬、銀の光を煌めかせ、斬りつける。
とっさの反応で受けとめるストライク。
響く、衝突刃音。
しかし、てごたえは余り無く、衝撃はふわりと軽い。
構えるが、既に敵の姿が無い。しかし、振り向くと、そこにいた──。
ブオンッ。
真空を刃が斬った。ギリギリで身をかわすストライク。
その、技、その、身のこなし、そして、黒いボディ、よく知っている。
「ブリッツ!!」
コツコツと、足音を鳴らし、姿を現して、澄まして言う。
「ええ、そうですよ、……ストライク」
ブリッツ、それはイージスやバスター同様、ストライクの元同僚であり、仲間だった騎士だ。
暗殺、隠密を得意とし、法術こそ使えないが、多彩な技と、仕込み武器を使う、隠騎士である。
彼は、騎士ではあるが、剣は持たない。
代りに右腕の黒盾に刃──ブレード──を仕込んでいる。
その盾を、ストライクに対し、直と構えた。
その盾は、ブレードだけではなく”槍”も仕込んであった、投射用の小型ランサーである。三連ランサーガン。
射程や威力は、”弓”や法術”に劣るものの、”引き”も”詠唱”もいらない分速く、躱せない。
不意を突くのが暗器ではあるが、ストライクはその存在を最初から知っている。
だからそれを逆手に取った、盾を構えて、ランサーを撃つ振りをして、注意を取った。
背後を、イージスが突く。
355 :
1:2006/06/28(水) 21:18:40 ID:???
ドガンッ
ストライクの背中が爆発する。
イージスの法術。
”自分”から意識が逸れた、その瞬間を、ブリッツは容赦なく踏み込んだ、
倒れ込むストライクに、刃を伸ばして斬りかかる。
「──とった!」
しかし、その瞬間、しかし、勝負が決まることはなかった。
銀のブレードは、銀のツルギに阻まれる。
ストライクのものではない、獅子の刻印が刻まれた、カガリのツルギ。
「なにやってんだ、バカッ!」
「カガリ……!」
さっそく、怒鳴る、彼女。
叱られた……、
何を、やっているんだ……、本当に、
こんなにも、簡単に、負けるところだった……、
見透かして、言う。
「そんなこと考えてる場合かッ!」
「え……」
銀の切っ先を、必死に、振り回して、必死に、制空する、カガリの姿。
本当に、何をしてるんだ……、僕は……。
いちいち思考を経由する覚悟などに、意味はない。
そんなことするための覚悟じゃない。
「……ごめんっ!」
それだけ言って、ストライクは、強く剣を構えなおす。
「あぶなかっしいからな」
「へ?」
「おまえはっ!」
「ははは」
よく言うよ、とはいえる立場でないのがいまのストライク。甘んじて、笑って誤魔化した。
しかし、これだけ濃ゆい霧の中で、
他のモンスターや兵士も上陸して来ている中で、よくも自分をみつけてくれたと思う。
こうして笑っていると、なんだか、気が晴れていくようだった。
356 :
1:2006/06/28(水) 21:21:14 ID:???
「黒い方は私が抑える! 紅い方はなんとかしろよ!」
「は?」
そう言って、走り出す彼女は、言って止まる女ではない。
それにここで後を追えば、また背中からイージスに撃たれてしまう。
ならば、彼女に応えよう。
彼女の信頼に、彼女がブリッツを抑えているうちに、イージスを倒し、それから後を追う。
多分、時間はほとんど無い。
だが、出来る。やる。
それでも彼女が身を呈して作ってくれたこのチャンスなら。
一体一ならば、負けはしない。
勝つ、たとえ相手がイージスでも、倒して、追いかける。
ストライクは豪快にツルギを振るった。
ルウムの時とは違う、何発かは撃ったが、まだ十分に体力があった。
まだ、炎の剣を存分に扱える。
バッハッァァツッ!!
しかし、放たれた炎は、またも水の壁に掻き消されて。
「水の法術……!」
そんなもの、イージスは使えなかったはずだった。
基礎くらいは出来ても、炎の剣を止められるほどのものを……。
「……その炎は一度見たからな」
空中に”水溜り”を湛えながら、イージスが言った。
海水を巻き上げて、吸い上げて、大きな大きな水球を空中に紡ぎ出しながら、続ける。
「……おまえは俺が倒す、ストライク」
357 :
1:2006/06/28(水) 21:24:33 ID:???
”水溜り”から発射される水弾、走って躱すストライク。
しかし、ここであまり時間は食えない。
カガリ一人でブリッツとそう長くは戦えるとは思えない。
ならば、”やるしかない”。
”やらねばならない”。
”やってみせる”。
ストライクは走るのをやめた、立ち止まる。
振り向く、また走り出す。
逃げない、イージスへ向かって走り抜く、水弾の雨を巧みにかわし、何発か命中しても一歩も引かず。
剣を盾には出来ない、この一撃は、勝つために。
腰に添えつけ力を溜める、振りぬく瞬間まで力を溜める。
水など熱と炎で吹き飛ばす、蒸気と換えて粉々に、微塵も残さず消し飛ばす。……水だろうとも、灼き尽す。
──それだけの炎を放ってみせるッ!
ブオオォォオオォォォッッ
巻き起こる、赤い、焔。
剣に、腕に、絡まるように、炎が巻く。
──いけえぇぇええぇぇっ!!
358 :
1:2006/06/28(水) 21:27:17 ID:???
──知っているストライクは弱かった。
そうじゃない。
優しかった。
優しすぎて、誰かに勝とうとなどしない奴だった。
そんなおまえが、いつから。
いつから、おまえがひとに勝てるようになった。
おまえが、何故そうなった。
いつも誰かの後を付いて、俺の後を付いて、ただ、笑って──。
そういう奴だったんだ……。
何故、変わった……!
何故、俺に剣を向ける。立ちはだかる!!
「MS族なんだぞ!!おまえは!!」
「それでも……っ!!」
……仕方ない。
それほどに、それほどまでに、
人間族のために、お前が俺とまで戦うと言うのなら、
ここで、”俺がおまえを倒す”。
”そんな炎は打ち消して、押し流すッ”。
イージスは、全法力を剣へ込めた、そして、掲げあげる。
引かれるようにして、海から無限に水が巻き上がる、頭上でひとかたまりになって圧縮される。
圧縮させて、撃ち放つ。
互いに、持てるすべての力を込めて──撃つ。
「水よ──! 彼なる不浄を圧っして潰せ──! ダイダルフレアッ──!!」
「突き進め豪炎──!! アグニオンッ──!!」
衝突する、大水球と大火閃。
しゅわしゅわ、ごうごう、音を起て、互いに消しあい、潰しあう。
焼けるほどの熱さを持った煙霧を巻き起こし、しかし、互いに消滅した。
ただ、ただ、霧だけが溢れ出し、広がっていく──。
音さえも、光さえも覆い隠して、霧が、二重に三重に、厚く重なる。
まるで、雲の中のように、世界が白く染まった。
359 :
1:2006/06/28(水) 21:30:34 ID:???
赤く光った。
白い、雲の中に、稲光のように、しかし、赤い光が、ごうごう光る。
全力を込めた一撃だった。
しかし、ストライクは倒れない、
足を踏ん張り、歯を食いしばり、剣を引き戻し、もう一度、もう一撃、炎を構える。
──もう一撃どころじゃない、必要なら、後二発だって三発だって、かならずこの手でもって撃ち出してみせるッ!
突き出された炎、さきほどに劣らない、強き、赤き、炎。
雲を破り、霧を壊し、雨を貫いて、火炎が奔る。
ボッハァッ──
雨となった霧を、しかし、再び霧に換えて吹き飛ばして、世界を晴らす。太陽の一撃。
大きく風が吹く、大きく吹きかえす。また吹いて、吹きかえす、そしてしばらく風が凪ぐ。
視界のどこにもイージスの姿は無かった。
消滅したのか、それとも海へ落ちたのか──。
大きな白い甲板には、ただ水溜りだけが広がって、太陽を照り返して輝いている。キラキラと、美しく。
だが、それどころではない。
何よりもカガリが先だ。
ストライクは、使い果たした体で、それでも力の限り、いや、限りを超えて、走っていった。
・・続く
リアルタイムでキタコレ
1氏毎度のことながらGJ!
イージスが得た力の種明かしはされるのか。
あの剣が怪しいが・・・
GJ!でっかいデュエルワロスw
ブリッツちょっとカマぽいイメージあるのは自分だけ?
>348炎の剣の展開方法がSEEDっぽくていいな
新作キテルー
でっかいデュエルワロタ
>>348 昔のデザインの方が『皆に語り継がれた伝説の武器』感が出て良いのではなかろうか?
(もちろん皆=カードダス世代とかという意味で)
スペドラ様から分離したにしてもデザイン的にはせいぜい
ナイトガンダム(再初期)→ナイトガンダム(銀狼の章ver)位の『解像度上げました』レベルの幅でしか変化しない、と。
>>351 蒼のヴェサリウス…
この間リヴァイアスを見ていたから青のインプルスを思い出してしまった
>>348 元デザインを尊重しつつ今風のパワーうPという事で個人的にGJ!
3種の神器、ストライクやキラが持ってる分には元のままで全然やない?
ただ全部装備してしまうと誰であろうと(機兵でも)フル装備のナイトガンダムと違いがわからん
元の形を維持して展開することで別物に見せてる案はおもしろいよー武装練金の槍っぽい
>>368 サンライトハート+か?
あれはイイ槍だった
>>368 サンライトハート+か?
あれはイイ槍だった
ああいうギミックの入った武器が見てみたいな
絵師タソカンガレ
でっかいデュエルが気になる
ヒント:大魔騎士w
インパが主人公だったら伝説の巨人がデストロイになりそうだな
つまりデストロイゴーレムと妖精ステラか。
イイな、それ!
>374
原作に準じると妖精はステラじゃないな
エルか風花辺り
妖精のイメージでいくとステラなんだけどな…
頭にお花咲かせて巨人の肩でくるくる回ってそう
妖精っぽさで言うと間違いなくそっちなんだが、あの域までいくと何も教えてくれなそうというか会話が成り立たなそうというか・・・
アルガス騎士団はどうなるだろ?
四人と言うとアストレイ連中(レッド・ブルー・ゴールド)に暁(シラヌイのバリアーで封印されるw)ぐらいしか思いつかねぇや
新連合4人だとウィンダムが封印の鎧っぽい物が無いし…
いっそのことダガー4人衆とかw(剣士ワイルドダガー・法術士バスターダガー・闘士105ダガー・騎士ロングダガー)
そいやオーブにはMS族はいないのか?
379 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/01(土) 22:36:32 ID:NR0u+hMk
つ後付け設定
アウトフレームでいいんじゃないのか?>アルガス4人目
封印の鎧はGフライトあたりで
>380
つ「戦闘中は荷物にしかならないバックホーム」
バックホームから鎖が伸びてがんじがらめ?
バックホームには武器弾薬とか
とても恐ろしいものが封印されてるとかでよくね
>>385 うぉ、カッケー!
兜にちょっと青味が欲しいかな?
バンダイまじでカードダスをリニューアルして出せ!
んで、ボンボンでカードバトル漫画やってくれ!
色つくといいな!GJ
モノクロだとエックスのナイトみたいにも見えたけどカラーだとストライクに見えるね
>386 何が何に勝ったんだ?
>>バンダイまじでカードダスをリニューアルして出せ!
>>んで、ボンボンでカードバトル漫画やってくれ!
その時は細井先生にカードダス少年団2をやって欲しいね。
カードダス少年団は、ボンガロ同様いろいろ突っ込みどころが多くて
つい笑ってしまうけど、ラストの五郎と上杉の真実の鏡の場面は素直に
良い場面だと思った。
>>389 んだんだ、俺もボールの話とか好き。
アルガス騎士団があのタイミングで登場するとことかは
すげー燃えたし。
2をやるならやっぱり
「くあぁぁーーっ!」
「ふ…おぉぉぉぉ…!」
「ひっこんでおれーっ!」
て感じの細井節全開でやってほしいなw
なつかしいな、オイ
カードだからSDキャラ達背中が真っ白なんだよな
あげときますね
古代文字みたいなフォントって康印体ってのでいいんかな?
>>389-391 そんな漫画あったのか、しかも細井雄二で……
遊戯王やデュエルマスターズの先を行っていた時代もあったんだな……
>>393 康印体も騎士の字に似てるが、古印体の方が近いぞ
ガンフリーダム、羽根あるんで初期状態からやたら強そうだ
神器である炎の剣に対抗してるイージスて、ひょっとして霞の鎧装着?
「霞」だけに、装着者に水系魔力うpの加護ありとか。
>>397 いや、敵から寝返って見方になったいわば外様の騎士に
そんな伝説級の代物を与えるだろうか?
騎士道なんかよく知らないが
『一度裏切った奴は何度でも裏切る(コミックHJ版G-unitより)』
訳で。
どうせ変態仮面の事だから魔獣化したりするようなろくでもない仕掛けが
してあるアイテムを渡したのだろうよ。
なるほど、スキュラ変化の伏線か。それもありだな。
デュエルもでっかくなったし。
ところで、「ザフト帝国」は、今からでも「ザフトニア帝国」に名前変わらんか?w
何そのザビ家コスモバビロニア
ザフタニアの方が語呂いい気がする。
>>398 >どうせ変態仮面の事だから魔獣化したりするようなろくでもない仕掛けが
>してあるアイテムを渡したのだろうよ。
双葉のやつ思い出した。
今だ保守
>1さんと絵師の光臨をwktkして待つ
いやきっとスタゲを鑑賞して新キャラの構想を練ってるのさ。
まさかラクロアまで取材のため休載って落ちじゃ…
あの・・前にデスティニーとかの絵を書いた物なんだが、このスレ
にまったくかすりもしないだろう
デス種系騎士絵あげてもいいだろうか?
前と一緒でノートの落書きレベルなんだが。しかも面影少ししか残ってないが
おうけい、おうけい、なんでもハッピー
羽?かマント、フォースっぽくて良い感じでてる〜w
>>410 インパのデザイン、正統的でかっこいいな
>>411 >>410 後々改良版うpします・・・インパらしさってのがわからん。
もっとでっかく書いた方が良いようだ。
タラちゃんの弟できちゃうってなんだ
dat落ちとかしないよな
まあMSVでも妄想しながら1を待とうか。
煌めく凶星はジンとデュエルダガーとM1のどれだろうとか。
三機揃って煌めく凶星隊でもいいな。
>>415 dat落ちはするぞ。
夏になって次から次へと新しいスレが建って押し出されちまう。
スレッド保持限界が745なんで645番目まで下がったら注意。
つう訳で保守。
捕手「ストラーイク」
保守?
421 :
407:2006/07/31(月) 15:49:15 ID:???
おおおお〜、いっぱい絵が来てる〜w
十人十色だね
個人的には2番目がいいな
夏だから食材の足早いんよね
こまめに保守
ラクス=カレンでOK
そんでもってマクロでOK
428 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 18:08:20 ID:MoLmwV53
顔や頭身のバランスは二人目が良しと思うが、
それ以外の全体的なデザインは三人目がヲレの好み。
保守がてら点呼 ノシ
ノシ
点呼は止めろって・・・3
点呼したって俺は反応なんかしないからなっ!フンッ!
ノシ 5
続きが来なくなってどれぐらいかな…
忙しいのか、書かなくなったのか
スレがある限り待ち続けるぜ
もし落ちたらどうする?
か、かけなくなった・・・ゆ、ゆびがうごかない・・・、しゅ、修行中ということで・・・、ご、ごめんなさい・・・、ばたんきゅ
生存確認!
気長にいけばよしー 締切あるわけでなし
>>435 生きてるうちは負けじゃない
あなたが帰還するまで此処を守るだけだ
良スレの予感
武者があっても良いと思う
ところで闇皇帝ってグフだよね?
武者は俺が妄想中
書かないだろうけど
>>438 違う。
決定稿には面影ないけど、元々はザク。
初期稿ではスリットのある口が三つあるデザインだった。
顔の両側にあるスリットはその名残。
それと映画『ダーククリスタル』の怪物。
モンスターモードの顔とか黒星剣とかはここに元デザインがある。
ソースは『機動戦士SDガンダムBB戦士コミックワールド』
>>441 携帯版のURLはるなってwあと、
>>1の日付と内容見れ。…って携帯かw
ストーリーも全然違う。
こっちは昔の外伝っぽいss(とイラスト)で
向こうは種本編準拠(クロボン、劇Ζ追加)のカードとあらすじ。
ムルさんとかは出てくるのかな?
家にあるアルガス騎士団のビデオ見たんだけどやっぱゼータ良いよ
アレックスは影が薄い
444 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/13(日) 00:27:39 ID:xrNR+lKa
そろそろ味方のMS族が欲しい
僧侶ガンタンクみたいなの
445 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/13(日) 07:34:03 ID:2bDhrAYs
兵士ストライク・ダガー
騎士ダガー
法術師バスター・ダガー
神父ダガーL
暗殺者NダガーN
暗黒戦士スローター・ダガー
戦士ウィンダム
浪人レッドフレーム
傭兵ブルーフレーム
ムラサメガルーター
ポビットレイスタ
サタンガンダムがラスボスならプロブィデンスは?
いや、ラスボスはジーク・ザフトだよ
初代と円卓しか知らない俺が言うんだから間違いない
ザフト・ノタメニ だと思うね
そこで逆読みですよ
ニメタノ・トフザ
ザフトレッドじゃダメですか?
そこでアナグラムですよ
ザフトノタメニ→メタノザニトフ
452 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 10:01:22 ID:0P9Lxzap
バスターやデュエルってアルガス騎士団みたいに最終的に仲間になるのかな
ナイトガンダム外伝で vsエルガイムやってたよな
妖魔帝エルガとか出てくる奴で
バスターはもう死んでるだろ
謎の仮面に取り付かれてヴェルデになって帰ってくると信じてる。
デュエルとバスターは出世変化できるよな。
イージスはジャスティスでもセイバーでもイケルし。
置いてけぼりのブリッツカワイソスw
ん?
じゃあ、ストライク暗黒化か?
個人的にはフリーダムよりストライクが好きなんで最後まで主人公やってほしい
ところで今までのシリーズで最も強かった敵勢力ってどこだろ?
規模ではザビロニア帝国なんだろうけど案外脆かった記憶がある
デスペリオルだろ
四人の裏切り,ストライクとフレイ姫,城を脱出
↓
妖精ジムスナイパーカスタムの導きにより炎の剣入手,バスターと交戦,バスター死亡?
↓
街に着く,そこで防衛戦,カガリと遭遇
↓
戦艦アークエンジェルでオーブを目指す,途中ザフトの襲撃を受ける,撃退するもミリアリア行方不明
↓
同時期,オーブにて防衛戦展開,機兵ガンフリーダム出現,ザフト撃退
↓
ストライク一行オーブ到着,ガンフリーダムと交戦,ストライク敗北
↓
アークエンジェルでラクロアを目指す,ザフトと交戦
こんなとこ?
騎士ガンダムって武者の世界から来たんだ
武者魔悪参=カタッツの子
騎士ガンダム=神様
サタンガンダム=ピッコロ大魔王
ネオブラックドラゴン=マジュニア
スペリオルドラゴン=神コロ様
>>1さんさえ良かったら
>>2さんの話の世界観を元に外伝を書きたいんですが良いですか?
書くのは個人の自由やないかい?
いっしょくたになるとややこしいけども
ラクロアに戻ったらフラガまた出るのかな。
そういや戦車メビゼロは無し?
機兵ダガーの製造マダー?
機兵ばっかは嫌だな
個人的には聖機兵以降は聖伝まで辛かった
強さはおいといてカッコよさは騎兵より騎士の方が上だよな
あいつらは目が無いから怖い
でも元祖も目無しシール付属だよな?何故に?
やっぱ機兵は目があった方が半生物感があって良い
半生か
476 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/24(木) 13:03:24 ID:FTSgoAyk
このスレのまとめサイトないの?
バーサルナイトが「(ユニ)バーサル(センチュリー)+ナイト」なら
種騎士は「コズミック・イラ+ナイト」になるのか?
バーサルナイトの由来を今はじめて知った
その名づけ方でいくとミキュラナイト?なんか微妙だなぁ
シンプルにコズミックナイトでいいか
銀河騎士?
小宇宙を燃やす騎士なのか
落ちられては困るのだよ
484 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 19:41:03 ID:wj9LsJwj
ならば保守
485 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/31(木) 18:52:37 ID:pVGYz5w/
落とさせるかー!
>1ひとりに頼るのは負担が大きいねぇ
なんかネタほしいなぁ
じゃあ暇つぶしに俺の騎士ブルーディスティニーの妄想でも聞くか?
いやそりゃ
>>1の足元にも及ばないけどさ。
溜まった妄想はどこに出せばいいの?
ってくらい妄想が激しくなってきたよ
溜まったならば吐き出すがいい
491 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/12(火) 23:31:36 ID:3rfEsogN
やはり職人1人では限界が…
じゃあ妄想を
小説とか無理なんでごめんね
プロローグ
ユニオン族と人間族…どちらが優れているか…
発端はそこからだった…
スタ・ドアガ・ワールドが誕生してから数万年
歴史を積み重ねてきた世界…
その世界に争いは尽きることなく歴史の中に戦争は多数存在した…
そしてこの時代にも…
第一章
現れた勇者
コスモス軍の本拠地
サザーランド地方ジョシュア城にどよめきがはしった。
敵であるユニオン族の青年が突如人間族の軍に志願したからである
そしてそれが全てを動かす歯車になろうとは誰も気付いていなかった…
騎士見習いストライクは騎士になる為
街に立ち寄った騎士団に同行する
しかしそれは人間の騎士団でこれから何が起こるか
薄々気付いていたストライクであった。
大天使の騎士団に同行していたストライクにユニオン族の騎士達が現れる
剣術士イージス,騎士デュエル,法闘士バスター,暗殺者ブリッツとそれを束ねる騎士シグーだった
4対1の圧倒的不利な状況を乗り切ろうと奮闘するストライクだったがイージスにつかまり
あやうくザフトに連れて行かれそうになるが騎士フラガと名刀メビウスゼロに助けられる。
なんとか人間達の勢力圏に到達した騎士団
補給をしつつ将軍ハルバートンと対談するストライク
そしてストライクは自分の目的を告げ,更に本拠地に向かう事を言う
ハルバートンは賛同しそのついでに賢者ヒビキに会う様すすめる。
そしてストライクは単独でヒビキに会いに行くのであった…
GJ!
この後「主天使の騎士団」とか出てきそうな予感。
最後はMSと人間が和解する形で終わるのかな?