【絶対可憐】長身女主人公でガンダム【身長差1cm】
無駄にでかい男女が主人公のガンダムを作ってみよう!
>1乙!
でもデカイのは女だけなんじゃないか?
主人公
http://o.pic.to/4u8j1 俺設定
名前:シェーナ・ボーン
年齢:24
身長:183cm
体重:63kg
職業:魔法使いw
性格:喧嘩っ早くて酒好き、無駄に知識が豊富(喧嘩も大好き)
短所:男扱いされるとキレる
長所:あっさりしていて後に尾を引かない
準主人公
http://l.pic.to/3sbkt 名前:シエル・ハクエイ
年齢:16
身長:159
体重:49
【設定】
・与えられた知識はあるが視野が狭い
・腕は確かだが不真面目
・身長のかなり事を気にしている
・左利き
・ファザコン。父親は戦闘機のパイロットでもう死んでいる。
・自分の機体のセッティングや調整は、毎日欠かさない
・父親はいわゆる「チョイ悪親父」で素行の悪い前線送りのエースだった。
その父親に憧れてるから前線へ。
・自信家、負けず嫌い
・稀代のツンデレ
「だんじょ」じゃなくて「おとこおんな」です、悪いw
つか制限ウゼェorz
準主人公(予定)
名前:シエル・ハクエイ
年齢:16
身長:159
体重:49
【設定】
・与えられた知識はあるが視野が狭い
・腕は確かだが不真面目
・身長のかなり事を気にしている
・左利き
・ファザコン。父親は戦闘機のパイロットでもう死んでいる。
・自分の機体のセッティングや調整は、毎日欠かさない
・父親はいわゆる「チョイ悪親父」で素行の悪い前線送りのエースだった。
その父親に憧れてるから前線へ。
・自信家、負けず嫌い
・稀代のツンデレ
主人公にしては年齢高すぎじゃないか?
あと魔法使いってのもよくわからん
>>6 >>3の設定はあくまで俺のオリキャラの脳内設定なので、
細かいところはこれから皆で修正していきたい所存。
魔法使いはその名残。
でも俺、今日はもう寝る。
184じゃ物足りない
193くらいあった方が威圧感あっていい
シェーナとシエルって名前似てないか?
男はワットでいいじゃん
別に一つの話をみんなで進めるわけじゃなく、同時進行でいろんな話が展開していく、ってのでいいんでない?
話の方向も決まってないからなぁ。
今日プロット投下されるみたいだから、
まずはそこから行こうよ。
だな
今からプロット投下する
却下・改変・採用、何でもござれ
ちなみにこれ、遊びで作ったやつの手直し品だから滅茶苦茶な部分もあると思う
じゃ、投下、いきま〜す
▼企画「機動戦史 ガンダム(仮題)」
▼趣旨
地球、ウイグルの少女イスラ・カマルがガンダムを拾い、落とし主側のミツル・ホルシードと敵対しながら交流していく。
▼舞台
地球〜L2あたりまで
ウイグル、月、月上空のステーション、各ラグランジュ点、地球上空のステーション
▼物語の梗概
共産中国の民族浄化政策の犠牲者である少女イスラが、空から振ってきたガンダム(コンテナ入り?)を拾う。
イスラは捕虜として捕らえられるが、ガンダムはセキュリティの都合上イスラ以外を受け付けない。そこで人民軍は協力を命令。
交換条件として、ウイグルの弾圧の即時中止。両者は合意(裏切るけどね)。
月側のガンダムの返還要求に取り合わない中国。戦闘になる。
度重なる戦闘で、互いの大切なものを失い、殺し合う。人民軍の裏切りで自分の村が戦場になる。しかし人民軍の裏切りだとは思っていない。
米中の利害一致で本格的に月への進攻を準備。イスラは乗り気。艦隊戦及び月MSとの戦闘。宙域戦闘数回。
密かに宇宙に避難していた家族同然の人たちと再会。真相を聞かされる。選択。ウイグル独立運動の激化。
上官(月に所属していたが、地球側のスパイ)と戦闘。かなり強敵。ミツルと刺し違える。
地球軍が建造した射出機からマイクロ・ブラック・ホールが月に撃たれる直前、身を挺して射出機を破壊する。
イスラ、ミツルの遺体と共に帰還(どこに、ってのはまだ未定)。
ウイグル、中国から独立(ここを書くかどうかも未定)。
▼主要人物
イスラ・カマル Isra Qamar
ウイグル人。虐げられてきた存在。手に入れた力が何たるかを瞬時に理解する。攻防の逆転。
無神論者。何かへの怒りで戦いに赴く。両親の影響で機械に強い。
イスラ=自由。カマル=月。
ミツル・ホルシード Mitsuru Khorshid
生得した低重力障害。虐げられるべき存在。努力。攻防の逆転。
生活の必然から軍属。その後、殺人を受け入れる。不真面目。煙草。
ミツル=光流=光の流れ。ホルシード=太陽。
アトロ・リウ Atro Liu
元COMSエースパイロット。1年前に失踪。現人民軍エースパイロット。
サイボーグ。ミツルの父が開発したシステムの発展系。敵。
機械との一体化によるありえない機動を駆使。イスラにMSの操縦を指導。
アトロ=暗い。リウ=劉=殺す。
イハン・エスキ Jihan Eski
イスラの母。ブラック・ホールの生成に関する論文を書いた。
軍属を拒否したために殺されている。
イハン=宇宙。エスキ=古い。
ユァン・ホルシード Yuan Khorshid
ミツルの父。月の、生体機械工学の権威。サイボーグ医学を確立させた。
直接接続によるコンピュータ制御の開発者。実験中の事故で死亡。
ユアン=源。ホルシード=太陽。
▼名前だけ
カマル・エレンディズ Qamar Erendiz
イスラの父。虐げられても尚自らを貫いた存在。
妻と子を守るために武器を取った平和主義者。人民軍に射殺されている。
カマル=月。エレンディズ=木星。
(ウイグルでは苗字の概念がなく、父の名前を苗字とする場合が多い)
コティ・ヴァルコイネン Koti Valkoinen
ミツルの母。娼婦で麻薬中毒。ミツルを生んだ後にクリニックで死んでいる。
コティ=家。ヴァルコイネン=白。
▼各設定
地球統一政府計画 PGUG; Project: Global United Government
米中戦争に際して、国際連合が名称を変えた組織。
改新版国連憲章をもとに、米中以外、従来の国連加盟国をそのまま引き継ぐ形で再編した。
しかし終戦後加盟した両国の発言力は依然として強く、両国からの影響力を受けた国々は何とかしてそれらを押さえようとしている。
なお、本編までに脱退した国や地域は、イスラム諸国(トルコ、パキスタン除く)、東南アジア、オーストラリア以外のオセアニア
月構造物同盟 COMS; Confederation Of the Moon Structures
月にある人工構造物の殆どが所属している政治組織。実質、月を一つの国家とする団体である。
地球統一政府計画(PGUG)には認可されていない政治団体で、テロ組織と銘打たれている。
しかし実際は民主政治が徹底している。イスラム諸国からの出資によって独立。同盟国にヘリウム3を輸出している。
PGUGから脱退した国の殆どはこれに加盟。
東トルキスタン共和国 Republic of Eastern Turkistan (Sherqiy Turkistan Jumhuriyiti)
本編開始時点で、国際的には「新疆ウイグル自治区」となっている地域がこれである。
国教がイスラム教であり、COMSへの加盟を強く望んでいる。
セレーネ・ガンダム Selene GUNDAM
COMSによって製作されたモビル・スーツ。CMSN-X-01b。
中東地域への輸送中に大気圏上で攻撃を受け、ウイグルに墜落。パイロットは死亡し、イスラに拾われる。
その後、中国人民軍の所有になり、同時にPGUGの戦力増強を促す結果になった。
各武器への電力供給システムがないため、各武器にはマガジン型バッテリーを装着する必要がある。
ヘリオス・ガンダム Helios GUNDAM
COMSによって製作されたモビル・スーツ。CMSN-X-01a。先に中東に下ろされ、実験中だった機体。ミツルが搭乗する。
セレーネと同型だが、各部の調整により遠距離戦向きとなる。
以上、プロット。
やたら現実的な描写が目立つし細かすぎな感のある設定だけど、
個人的にはこれくらい設定しといた方が書きやすかったりする。
ただ少なくとも、リレー小説には向かない話ではあるかな。
>>14みたく「同時進行でいろんな話が展開していく」方式なら、俺が書くし
あ、そうそう。少女、なんて書いちまってるけどイスラは巨娘だから、一応。
それとちょい追加
▼各設定
〈月蝕〉 “Defectus Lunae”
人工的にマイクロ・ブラック・ホールを発生させる、円形粒子加速器。
極小の物質を光速度の96%まで加速し、質量を上げる事によってブラック・ホールを作る技術が開発された。
それを軍事転用したのがこれである。半径は600m。地球低軌道上に設置。
因みに出資は中国、建造はアメリカが行った。
理論は、イスラの母のものを使っている。
ふむふむ。
一般公開するには非常に覚悟いりそうな内容だね。
興味はある。
これまでのガンダムって、俺の知ってる限りじゃ
「見ず知らずの人間にガンダムを託す」って形は
なかったと思うんだ。
で、なぜか
>>21読んでたらそういう話がちらっと浮かんだ。
序盤主人公周りの触りくらいしか思いついてないけど、
投下してみてもいい?
>2と>5はどうなるんだ?
プロット投下乙
>23
そいつらも出す予定
>3が主人公って事なのか?>5が何なのかはよくわからんけど
>>22 ガンダムを託す、ってわけじゃなく、
地球にガンダムを持ってく輸送機が落とされる
↓
ガンダム入りのコンテナが主人公の住居の近くに落ちる
↓
主人公、ガンダムを見つける「何、これ・・・?」乗れたので乗ってみる
↓
パイロットとして登録される
↓
「これ・・・動く・・・!」
↓
人民軍とCOMS軍が落下物(ガンダム)を探しにくる。戦闘状態に。
↓
ガンダム発見
↓
一応兵器としては使えるから、パイロットごと拿捕
↓
交換条件で、主人公は人民軍に協力
こんな感じの展開を想像してたり
>25
それでもいいな。
俺は今>5の準主人公をどんな風に絡めていくか今考えてる
ちなみに1話を書いてたり。
まだ日常描写のみだから、本当に冒頭の冒頭だけどね
赤ペン先生はいないのかね。
君がやればいい。
誰もその行為自体を非難したりはしないだろう。
ミナ様のスレかと思ったorz
まぁいいや、期待してます
1話ができたら投下する
目処は明日の5時半まで
投下後の処遇は任せるよ
>>33 お前は漫画を書いたほうがいいのかも試練w
つか上手いな。
>33
乙!
…で結局主人公、相方のプロフィール等はどうなったんだ?
>3と>5だろ
つか、159cmで49kgって、少し軽すぎじゃないか?
もう少し肉付きよくしても良いんじゃない?52kgか51kgぐらいが適量じゃないかと思う。
>37
じゃあ50って所かね?
リレースレが復活したみたいだ。
こっちもガンガレ!
応援するぞ!
>>34 ありがとう、なんか照れるw
しかし内容と展開はちんぷんかんぷんなのでは?
まるっきり説明してないし。
>>35 どもどもノシ
他の人がレスしてくれたけど、このスレ立てた時点での設定は
>>3。
>>5は俺とケコーンしちゃった人で、準主人公の設定。中身は一緒。
こっちのはこっちので独自プロフだったり
つーか身長のイメージだけであとは生い立ちなんかしか設定してねえや
絵は上手いのにウワアアァァァン!!とかノシとか言葉遣いがキモ過ぎる
イスラって名前の女キャラ、タイドライン・ブルーにいたな
まあどうでもいい事だが
>>42 ドレス、だな、それは。
上半身イメージはそんな感じ。下はパンツルックの方が巨娘感を出せるかも
ぶっちゃけ地味目のカッコで頭に布巻いてればそれっぽく見える
>>44 まじで? 俺の場合ムスリムの名前サイト(英語)にあったものを採ってきたんだけど…
変えた方がいいかな?
>>43 そりゃ悪かった。以後気を付ける。
>>45 ほうほう…今夜にでも試して見るよ。
>>32で描いた奴の簡単な設定(掘り下げた設定なんてない)欲しい人っている?
気になったんだがMSとかの設定は
元スレからひっぱって来るのか?
一話全部はちょっと遅れるかも。一応出だし投下
1〈月からきたもの〉
「――こうして、お爺さんとお婆さんは、末永く幸せに暮らしたそうです」
少女は本を閉じながら、噺を締め括った。
静寂が暫く続く。少女と対面しているのは16人の子供たちだ。その誰も、何の反応も示さない。締め括った笑顔が引き攣りかける。
少しして、男の子が「ねーねー、イスラねえちゃん」と手を挙げた。表情を戻して、イスラと呼ばれた少女は反応する。
「どうしたの、ヌーフ」
「月の都なんて、どこにあるの?」
屈託の無い質問に、イスラ・カマルは言葉を詰まらせた。
「バカだなー、ヌーフ、月の都はケプラー・クレーターにあるんだぜ?」
言葉を詰まらせた事に気付いていないのか、ヌーフの周りにいる子供たちが口々に喋り始めた。
「ホント?」
「嘘だー。セリムおじさんに教えてもらったよー。ティコ・クレーターだよ」
イスラは苦笑しながら子供らの議論を聞いていた。呆れつつも、こういう議論が子供たちの知性を育てる、という事を知っているので、彼女自身は加わらない。
「ねえ、イスラおねえちゃん、月の都ってどこ?」痺れを切らした子供が彼女に詰め寄る。
「さあ? あたしも分かんないな」むやみに答えを教えない。それが、イスラの教育方針だ。彼女が村の大人から色々学んだ時も、このやり方だったのだ。
「イスラおねえちゃんも分かんないの?」
「うん。イレムが探せばいいじゃん。もしかしたらカグヤヒメに会えるかもよ?」
「あ……。イレム、会いたい!」
「うん。そのためには、色んな事、きちんとやらなきゃね」
「あー! イレムずりい! おれも月の都行きたい!」
「ぼくもー!」
「アイセルも行く!」
「ほらほら、分かったから」そろそろ収拾が付かなくなりそうなので、イスラは手を叩いて声を張った。「月の都に行きたいんなら、毎日ちゃんと、セリムおじさんとか、大人の皆の言い付けをちゃんと守らなきゃ。悪い子は月に行けないよ」
子供たちの返事は毎回いい。今回もその元気な返事が聞けたので、イスラは満面の笑みで手持ちの本を本棚に仕舞った。
「じゃ、今日のお話はここまで。さ、遊んどいで」
その言葉を聞くや否や、子供たちは一斉に外に駆け出していった。心地良い疲労をため息に込めて、イスラは屋外に出た。
ウイグルの夜は早い。特にこの村のように小ぢんまりした盆地は、夜が早く朝が遅い。
イスラは村で色々な仕事を請け負い、報酬として食料品や嗜好品を貰っている。孤児院の子供たちの世話や教育も、その一つだ。彼女は村で唯一、ウイグル語、アラビア語、北京語、英語を繰る事の出来る人材であるため、何かと重宝される。
「じゃあ、セリムおじさん、また明日」
「ああ。気を付けろよ」
「うん。お酒、ありがとね。おやすみ」
「インシャー・アッラー」
イスラは軽く手を振って、視線を進行方向に向ける。そして長くまっすぐな木の枝で作られた鞭で、ロバの腰を打った。ロバ車は動き出す。
彼女の家は、村から西のやや遠い所にある。昼間は村にやってきて仕事をし、夜になると家に戻るのだ。
「今日は久々に、月見酒でもやろうかな」
今日の報酬に、イスラはセリムから一樽の果実酒を貰っていた。
(イスラム教では、飲酒を良くない事としているが、国によって様々である。ウイグルでは果実酒や焼酎などといったアルコール飲料の製造も行われている)
この日の月齢は13.6。月光は地面にはっきりとした影を落としていた。
鳥に余計な文字がorz
上のが正しい鳥
「対地角度、76。マダガスカル東方沖に落ちます」
低軌道に浮いている宇宙空母の管制が、上官に報告する。
地球赤道上空における宙域戦闘の演習中、地球と月の間の静止軌道にある最大の軍事ステーション〈アズラーイール〉から文書通信が入った。L3付近を航行する輸送機を捕捉したという。
標準暦(SA;Standard Almanac)49年になって数回、地球統一政府計画(PGUG)の宇宙開発機構が定めている往還航宙輸送機とは異なる型の輸送機が大気圏突入を繰り返している。
太陽活動の極大期に合わせて、月から物資を送っているのだ。着陸地点は殆どが中東で、月構造物同盟(COMS)の同盟国で何らかの動きがある事を物語っていた。そして、今回の輸送機発見である。
PGUGによる月政策の失敗から続く冷戦構造の中で、今現在代理戦争の起こっている地域に月はエネルギー面だけではなく、兵器の輸出でも戦争当事国を支援している。そのせいで、代理戦争は無駄に長くなってしまっているのが現状だ。
今回の輸送機も、恐らく月からの補給だろう。少しでも戦況を有利にするためには、補給を絶つのが定石である。演習中だった部隊には急遽、輸送機の撃墜が言い渡された。
演習の内容は、宇宙用のミサイルを目標に〈より集中して〉当てるか、というものであった。
宇宙用ミサイルは、標的となる物体に直接当てるのが目的ではない。当てた所で期待され得る衝撃波など殆ど発生しないからだ。宇宙空間で標的を破壊するには、質量と加速度を直接利用する他無い。
そこで宇宙用ミサイルは、標的にある程度接近した時点で中にある子弾をばら撒く方式が採られた。子弾は別に、規格物でなくても良い。金属片であったり、石ころであったりと、様々だ。
演習でやった事が早速活かされる、というのは、新兵にとって重大な経験である。その貴重な経験により、大気圏突入の直前、COMSの輸送機と断定され実際そうであった機体は穴だらけになった。そして対地角度76度で今まさに、大気圏に突入しようとしているのだ。
「作戦終了。各機、帰艦せよ」
何の滞りも無く、演習と実戦が終了したかに見えた。
しかしその指令の直前、最後の一機が宇宙用ミサイルを輸送機に向けて発射したのだ。発射直後の帰艦命令に、宇宙戦闘機の射撃担当員はミサイルの子弾発射機構を解除してしまう。加速直線運動でミサイルは輸送機に接近し、やがて衝突した。
輸送機に掛かる力が微妙に変化する。それまでほぼ直角に落下していた輸送機は、押される事で対地角度を浅くした。
遂に、その浅くなった対地角度のまま、輸送機は大気圏に突入した。空気の抵抗や熱により、所々が空中分解を起こす。
「どうしますか、艦長」
「放っておけ」初老の白人がモニタを見ながら言った。「COMSのスクラップを中央アジアのどこかにくれてやるだけだ」
「中国宙軍に入電しますか?」
「不必要だ。奴らも、なかなかいい〈目〉を持ってるからな」
月を見上げていたイスラは、月を貫くようにして過ぎ去る流星のようなものを見た。
「流れ星、かな?」
もしかしたら、スペース・デブリかもしれない。そんな情緒の欠片も無い思考をして、月から進行方向へと目線を戻した。
その瞬間、進行方向の先から爆発音が聞こえた。直前に何かが落ちたような光が見えた事から、衛星か何かが落ちたのだろうか、とイスラは思う。ロバの腰を今一度鞭で打ち、少し速さを上げる。
砂埃が巻き上げられているのが、遠くからもわかる。イスラは頭に巻いている布を解き、口と鼻に掛かるようにして顔に巻く。また、鞄からゴーグルを取り出し、目にかけた。
そして、砂の雲の中に突入する。軽い砂嵐の中に入ったような感じだった。しかし通常の砂嵐とは違い、風は一切無い。
道をそのまま進む。少しすると風が出てきて、砂埃が晴れてくる。月明かりは尚も全てを照らしていた。
砂煙の向こうにあったものは、黒い塊だった。とんでもなく大きい。ロバ車から降り、小銃を腰に構え、イスラは黒い塊を一周した。そうしていると、彼女はこれが全翼機である事に気付いた。
「宇宙船、だ……」
イスラは剥がれた外装から中に入った。そこはカーゴ・エリアで、船外にコンテナがし迫り出してしまっている。一切大きいものは、縦が20mはありそうだった。
「もしかして、開戦したのかな?」
目下で続いている、地球と月との冷戦。それが熱戦になったのだとしたら、大気圏内にスクラップになった宇宙船が落下してきてもおかしくはない。
そんな思考の最中、イスラはある違和感に気付いた。
船体が穴だらけなのにもかかわらず、カーゴ・エリアから迫り出しているコンテナには風穴のひとつも開いていない。
通常、宇宙船は大気圏往還能力の有る無しに拘らず、対デブリ・バンパーなるものがついている。平たく言えば、丈夫なのだ。
或る程度以上の質量、もしくは速度の物体が衝突しない限り、穴が開く事など考えられない。まして、中にあるものなど、土の塊に等しい。ではなぜ、破壊されていない?
イスラは警戒しながら、コンテナをくまなく調べた。デブリ片の衝突した後が所々に付いているが、穴までは開いていない。何週かして、拉げた搬入口を見付けた。小銃で鍵を破壊し、力いっぱい引っ張ってやっと、その扉を開ける事に成功した。
「何が入ってるんだろ……?」
鞄からハンドライトを取り出すと、それを点灯する。イスラはそこで、立ち尽くした。
目の前には、大きな赤い多角形が壁を作っていた。同じ形状のものが二つ。多角形の壁には、鈍角の凹凸が所狭しと並んでいた。
二つの壁の間には、人が入れるくらいの隙間がある。小銃は邪魔になるからロバ車の荷台に置いて、拳銃を持ってきてイスラはそこから、コンテナの中に入っていった。
段々、狭くなっていく。横を見ると、白くて丸みのある壁の間に、灰色の金属があった。
そのまま、彼女は狭くなる壁の間を進む。少し進むと行き止まりだが、上に上がれない高さではない。何より彼女は長身であった。イスラは手持ちのものを仕舞い、狭い壁をよじ登る。
上りきる。背を伸ばすと天井に頭をぶつけるので、前屈みで再びライトを点ける。すると彼女は、今まで奇妙な壁だと思っていたものが、もっと得体の知れないものである事に気付かされた。
「何……、これ……」
暗いせいで全容は見えなかったが、その上を歩いていると、今イスラが突っ立っているものが人型の機械である事を、彼女は見出した。
「何でこんなものが、落ちてくるのさ?」
この機械は大きな凹凸があり、非常に歩きにくい。イスラは足元に光を当て、一歩一歩確かめながら歩いた。
8歩目を踏み込んだとき、イスラはそこにラテン文字が書いてあるのを見付ける。
「英語……。えっと、〈外からのコックピットの開け方〉? これ、人が乗る機械なんだ」
手順どおりに、イスラは機械をいじっていく。
「パス・コードは……6桁か。まずは、〈0〉6つでいってみよう」
言って、彼女は〈0〉を6回押して、確定した。
ガコン、と音が鳴り、コックピットが音を立てて開いた。
「うそっ、開いちゃった!? まだ誰も使ってなかったの、これ?」
コックピットは大きく口を開け、あまつさえ中から光さえ漏れている。恐る恐る、彼女は中を覗き込んだ。シートしか見えない。白い背もたれを下にして、それだけが空間の中に存在している。
イスラは誘われるまま、人一人がやっと入れる大きな口に、足を踏み入れた。
* * *
「墜落予想地点は、中華人民共和国、新疆ウイグル自治区内の、カシュガル西方約100キロです」
「中国領内か。微妙な地域に落ちたな」
モニタを見て、1人の少年はため息をついた。
「周囲に集落は?」
「一昨年のデータですが、予想地点から半径10キロ圏内に、15ヶ所あります」
「実際にはいくつか減ってるな、確実に」
「……ホルシード曹長、明日、出るんですか?」
「いや、今夜半に決行だ。タジクから直接入る」ホルシードと呼ばれた彼は、カシュガル周辺の地形図から目を上げずに、返した。
「危険すぎやしませんか?」
「仕方ないだろ。向こうにこっちの軍事機密を漏らすわけにはいかないんだ。さっと行って、さっと帰ってくるしかない。そのために、モビル・スーツの機動力が要るのさ。それに、ヘリじゃあんな重いの、持てないしな」
「はぁ」
地形図から目線を上げ、曹長、ミツル・ホルシードは机の上のヘルメットを掴み、テントを出た。そのまま向かった先は、大きめのテントだ。そこに入るとミツルは、騒いでいた兵士たちを一瞥すると、壇上に立った。
「おーい、作戦説明、始めるぞー」
その声で、騒ぐ声は静まる。
「よし、えーっと、何度も聞いてると思うけど、今回の作戦は変な所に落っこちたものを回収するのが目的だ。
正直こんなに人数は要らないから、タジキスタン国境付近で、今から言う奴ら以外は待機していろ。えー、ミシェル、アレクセイ、ロベルト、アドルフ、あとデリック。
お前らはには国境を越えてもらう。実質俺の援護だけだから、そんな難しく考えない事。以上、説明終わり。質問は?」
「はーい」手が挙がる。
「あいよ、ロベルト」
「何で俺らなん?」
「選考基準は、弾幕張れる奴ら」
「ああ、了解」
「他、いる?」ミツルは兵士たちを見渡す。「いないな。じゃ、一時間後に作戦開始。呼ばれた奴らは移動中にちょっと打ち合わせるから、そのつもりで。んじゃ、解散」
「凄い……。これ、動いてる……!」
イスラは人工知能の指示に従って、発見した人型の巨大な機械を操縦していった。動きはたどたどしく、僅かしか歩けないが、それでもイスラは興奮していた。これは凄い!
ふと、モニタの端に見慣れたものを見る。
「あ……そうだ、アチカラ置きっぱなしだ」
アチカラとは、彼女が所有するロバの名前である。ロバはその首を、イスラの乗るもビル・スーツ、セレーネ・ガンダムに向けていた。
* * *
イスラがこの機体に乗り込んだのを人工知能が感知したのか、機体は勝手に起動した。
Welcome to CMSN-X-01b
Mobile Suit Type: GUNDAM System “Selene”
Confederation Of the Moon Structures
そんな表示とともに出てきた人工知能はイスラの名前と、操縦に用いる言葉を尋ねた。今現在、セレーネ・ガンダムのモニタに表示されている文字は全てアラビア文字であるし、人工知能の音声も、アラビア語だ。
イスラは驚いた。Confederation Of the Moon Structures、つまり〈COMS;月構造物同盟〉がこんな物を作っていた事に。そして疑問に思った。なぜ、こんな所に落ちてきたのだろうか、と。
しかしその疑問は、操縦方法を説明する音声にかき消されてしまっていた。イスラ自身、この大きな機械を操縦する事に、若干の興味を抱いていた事もある。
結局イスラは、流されるままに操作した結果、いつの間にか操縦していた。
* * *
「ねえ、セレーネ」
この機体の人工知能に、呼びやすいから、との理由でイスラはそう名付けた。
〈何でしょう?〉
「降りたいんだけど、どうすればいいの?」
〈起動を終了しますか?〉
「する」
〈了解。起動終了フェイズに――〉
途中で、音声が止まった。イスラは訝しく思い、今一度、名を呼ぶ。
「セレーネ?」
〈レーダーに反応。東方5キロに、物体群を感知〉
「えっ!?」
モニタに図が現れる。現在地のデータはGPSで取得したものだ。その円形の図の東側に、〈所属不明〉という文字が浮かび上がっている。
〈接近しています〉
* * *
「電波の発信を確認」
車輌の通信管制官が、各車輌に通信を入れる。電波の発信源は、宇宙から落ちてきたものの予想落下地点とほぼ合致していた。つまり、彼らの目的地と同一地点から、電波が発信されているのである。
「攻撃準備! もし月の奴らが先回りしていたら威嚇攻撃をしろ」
「了解!」
情報収集車輌に乗っているこの司令官は、一心に、モニタに噛り付いていた。
唐突に、通信が入る。
「宇宙軍からです!」
「繋げ」
「はっ!」
ノイズ入りの映像で、宇宙軍の観測員がモニタに現れた。
「どうした」
〈現在、タジキスタンを東に向かっている連中がいます。恐らく、COMSの兵力かと〉
「どのくらいの兵力だ」
〈輸送車輌5台です。イラン軍正式配備の攻撃可能なやつです〉
「……わかった。報告、ご苦労」
通信が切れる。思ったより、厄介な作戦だ。司令官は眉間を寄せる。
「目標地点まで、あと4キロ。依然として、電波が発生しています」
「通信電波か?」司令官は通信管制に詰め寄った。
「いえ。これは、レーダーの電波です」
「ならば連中は既に感づいているだろう。なぜ動かない?」
「動けないのでは?」
「それも1つの考えだな」
司令官は椅子に腰掛け、モニタを睨んだ。
* * *
「――というわけで、今出て行ったら間違いなく、中国軍に出くわす」
ミツルは監視偵察衛星の画像を示しながら、言った。
「まして、目標地点からはレーダー電波の発信源がある。いや、正確には〈あった〉。向こうが先回りしている可能性もあるから、電波の発生源を確実に潰さなきゃいけない。いわば、口封じだな」
「曹長」手を上げた兵士は、そのまま立ち上がった。「セレーネが起動している、っていう可能性は、却下ですか?」
「却下だな。セレーネのパイロットは確実に、大気圏突入時に死んでる。それに訓練も受けてない奴が、仮にAIのサポートがあったとしても動かせるとは思えない。もし万が一民間人がセレーネを起動した、ってんなら、マジ奇跡だぜ?」
集まった兵士は揃いも揃って頷いた。
「兎に角だ」ミツルは表情を改める。「時間がちょっと繰り上げになっただけで、作戦内容自体は変わらない。俺はセレーネを回収するし、その場に人民軍がいれば、支援の5人が片付けてくれ」
「分かった」支援の5人の1人、ミシェル・イブラヒムが頷く。他の4人も、彼に倣った。
* * *
イスラは急いで、彼女の住処にセレーネを移動させていた。とはいっても、走らせる事がまだできないゆえに、歩くしかない。その速度に、イスラはもどかしさを感じていた。
「セレーネ、あんた人工知能でしょ? 自律歩行できないの?」
〈操縦システムの補助しかできません〉
「くそっ! アチカラが置きっ放しなのに……!」
その速度で、巨大な人型は西に向かっていった。上空の月には、一筋の影が掛かっていた。
一話投下終了
戦闘シーンも何も無いから、全然ガンダムっぽくないな・・・
一応話のまとまりとしては、
>>48-49が村、
>>51が地球低軌道上
>>52はガンダムを発見するところで、
>>53はミツル側
>>54はイスラがガンダムに乗った所
>>55で中国人民軍が出て、
>>56でミツルの描写とイスラの描写。
今度から場面の転換の時には「 * * *」を付けるようにする。
すげえ見にくいなorz
<>より<>の方がわかりやすいんじゃないかと思った
改めてみてみると本当に見にくいな
<>でなくて〈〉をつかったのは、前者だと縦書きしたときに括弧にならないから
横書きオンリーだし、次からは<>を使うよ
>>59 なにで書いたかは知らんが、読んでもらう文章書くなら
改行くらいするべきだったな。
まあ乙。
>>60 ワードで書いた
ここまで文字が詰まるもんなんだな
読みにくスマソ
女性を主人公にすると
おもちゃが売れないとか言うのを
何処かのスレで見たけど
実際にどうなんでしょうね?
確かにそうだとおもう
いきなり過疎ったな。
65 :
通常の名無しさんの3倍:2006/02/09(木) 11:34:14 ID:JGEqjVVj
視聴者はある程度は主人公に自己投影するから
MS戦闘よりキャラ同士の絡みに目がいく女の子はプラモとかあんまり買わないだろ
なんでそんな話になってんだw
読ませてもらった。
そこまで長くなるならイスラのみに視点集中させて、
軍はちょいとだけ出して後続にまかせた方が
よかったんじゃないか?
絵描きの言う事だからアテにはならんかもしれんが。
今更ですが>48-56書いた人乙です。
軽く読んだんですが、あれだと.>3と>5のキャラは
どうなるんですか?
俺としては脇役として出して2話以降
書いてみたいのですが文章力が・・・orz
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン
スマソorz
ここってリレー小説スレだったのか
一応
>>21に弁明が書いてあるので参照してくれ
それと
>>3と
>>5だけど、俺の話で出せるだろうか…
ちょっと頑張ってみる
>>68 言及し忘れスマソ
イスラ描写のみ、ってのも一応考えてはいたんだけどね、話が単調になりそうだったから削って、場面転換を入れた
ちなみにイスラ視点で書くと、戦闘描写に心理描写が絡まって凄い事になりそうだったからやめた
第一話に戦闘描写は一つもないけどなorz
まあ、次からの描写は後続の人に任せようかと思う
乙ってくれた人&意見くれた人、dクス
>>69 逆に文章力を鍛えるために晒してみるのも一つの手だと思うけどどうかな。
……正直に言います。読んでみたいですorz
>>72 >戦闘描写に心理描写が絡まって凄い事
ちょっと心が躍ったw
そういうのって結構好きだ。
只今1話の挿絵っぽいものを1〜2枚描いてみようかと模索中。
それに伴いセレーネのデザインも思案中。
書いた人読んだ人それぞれ、その機体イメージを教えてくれると助かります。
むしろ誰か描いてくれると嬉しいです。
車両や基地・兵装などなど描けない物がてんこ盛りorz
>>73 マジ、ありがてぇ
俺はガンダムを描けないし、ましてどんなのかも全く想像できないorz
俺自身、種死からガンダムに入ったようなものだし
ただ、あえてデザインを考えてみると、背中にバランサーを兼ねたブースターを背負ってるストライクみたいなのがイメージかな
通常兵器は、空戦用のみだけどどっかにうpされてたはず
なんとはなしにサイバーフォーミュラの1話思い出した。
良く下がってるな
>>74 了解、なんとかがんばってみるよ。
まぁ描けてせいぜい元スレのαくらいなもんだから
あんま期待しないでおくれね?
>>70 どうもです。参考になります
とりあえず500冊ほど読んで勉強してきます
>>73 ぶっちゃけヘタレですんで
とても人様に見てもらえるようなものは……
でもそのうち納得できるものができたら
叩かれ覚悟で晒そうかと
>>74の人とかに先越されて無理っぽそうだけどw
挿絵がんばって下さい。……期待してますよww
セレーネ投下
どこがストライクだ自分。
http://o.pic.to/1917i これでよければこのまま色付けちゃうけど、
なにか付けたいものとかあったら言ってくれ。
サーベル付いてないよ、とか。
>>78 この場合言うべきことは一つ…お互い頑張りましょうw
80 :
通常の名無しさんの3倍:2006/02/11(土) 16:54:27 ID:GE5SuhlL
>79 V2じゃねーかよ!!!!!
確かにV2だな。
>>80-
>>81 お、当たりだ。
さすがにあの特徴的な胸持ってくるとバレるか。
それ以外は微妙にオリジナルなんだけどね。
ぶっちゃけそれを元にあれつけてこれ外してって
やろうと思ったんだがダメかな?(だから着色してない)
>>82 種シリーズしか詳しく知らないからダブルゼータとかはよくわからんが、少なくともそこまで巧く描けるのが羨ましい
>>82 をぉ……かっけぇww
V2?ZZ?
初代とZと種しか知らない(アーケードで出たやつ)俺にはわかりません
>>84見たら似てるけど……別にいいんじゃねぇ(オイ
胸とかちょっと変えてあげればわかりませんってw
とにかくGJ!
GJ
パトレイバーっぽいな。
>>89 サーベルはまだ置いといてくれないか?
実体剣を考えてるんだ。熱で対象をたたっ斬る感じのを
アンカーミス。自分にやってどうすんだorz
>>87
92 :
通常の名無しさんの3倍:2006/02/13(月) 12:13:31 ID:3GlMYRKP
そろそろageとくか
>>89 実体剣というとドムのヒートロッド(?うろ覚え)みたいな?
それともジンやシグーみたいな……あれは熱出ないか
そうなると一刀流ですか?
>>91 青かっけぇw
スッキリしてていいですねぇ
気になってたのですが ←のびる ってのはスラスターですか?
>>84みるとビームの羽根(?)に見えてしまう俺……
ところでシールドは無しですか?
ライフル&ソードのマガジン型バッテリーを裏につけとく……
ってZのMark.Uのパクリですけど
なんか聞いてばっかりだな俺
>>93 ジンとかシグーみたいな・・・? そう考えてもらえばいいかな、形としては
セレーネの容姿のディテールなんかは、続きのやつで投下する予定
ちょいと、自由に投下できる環境に置かれてないので、(1話投下は大学のパソから。今大学では今期の授業が終わってる)いつになるかはわからない。
何ならほかの人が投下してくれてもいいし、スレの趣旨としてはそっちの方が合致してるかも
ただ、投下するときは、宣言する
やばい種見てないからジンやシグーの剣がわからないw
調べてくるか…。
>>93 背中のあれはZやリ・ガズィのと同じもののつもり。
テイル・スタピライザーって平衡を保つ為のものだよね?
それ+メインスラスター使用時の方向調整も兼ねる、てところ。
なので使わないときはたたまれています。
…詳しくないからあまり深いところは考えて(ry
シールド他の装備は本編に出てきたら考えようかとw
>>94 まさかそんな所から書き込んでいたとは…。
そうだね、誰が書くにしてもまず宣言してもらった方がいいかも。
>>96 賛成〜
特にシェーナ・ボーンだっけ?女キャラ
俺の脳内ではミツルの上司として
第二話通り越して話が進んじゃってますがw
正直に言います。ああいうキャラ好みなんです…
あと俺は
>>3と
>>5の他に
>>32の四枚目にちらっと出てくるサングラス男も出したいです
またしても俺の脳内では
>>19にあった“アトロ・リウ”として
シャアやクルーゼみたいな(カリスマ性っつう意味で。偉さは別にして)
半サイボーグ&イスラにMSの操縦を教える上司(裏切った後は敵)
昔の同僚(この辺は微妙)であるシェーナと因縁を絡めてみたり…
みたいな感じで話が進んじゃってます
たしか前スレに絵がありましたよね…
設定考える方が楽だということに気づいてしまった俺
設定考えたらそれを繋げる文章をry
なんでもないです。
こいつだね、アトロ・リウ候補。
http://o.pic.to/4vyk 実は両手が義手で脳波を電気信号に変えるシステムが組み込まれてるとか
それを専用機の操縦桿代わりに取り付けられたパネルにセットすると
まるで自分の体のように自由にMSを操れるとか、別に普通の汎用機でも
十分すぎる戦力を持ってるとかごちゃごちゃ考えました。
>>32でやられたのは変な所から出たサーベルと汎用機による
反応速度の低下とか。艦落とされて激昂したってのもありかな。
上のプロットもどきを◆g67M1F1GV氏の設定に組み込んだ場合、
シェーナ(情報屋兼何でも屋?)がある人物(PUGUだがシェーナはそこまで知らない)に
ある地域の建造物調査を依頼され、行ってみればそこは中立国との国境付近。
山岳地帯を調査してたらなんとCOMS地上軍の基地を発見。
中の調査の為に忍び込んだが警備が思いの外厚く、MS格納庫に辿り着いた所で
シエル達に見つかり盛大に暴れるも拘束される。(一枚目)
場所は変わってPUGUからCOMSを叩くべくMS隊が出撃。(アトロは隊長で、司令官は母船にいる)
シェーナへ依頼した際荷物に付けた発信機が功をした結果。
突然の攻撃に浮き足立つCOMS。
指揮系統の混乱した状態で、数に差のある状況では圧倒的に不利。
山をくりぬく形で作られた基地は空爆によりなすすべもなく破壊されつつある。
そのどさくさに紛れて抜け出したシェーナは脱出のため唯一残っていたMS(ヘリオス?)に搭乗。
自らを助け未来を託して死んだ仲間を悼むシエルを回収して(他は脱出or交戦or死亡)
外へ飛び出す(二枚目)
ヘリオス(?)のテストパイロットであるシエルが思わず舌を巻く戦いぶりを見せるシェーナ。
運動性で相手に勝っていると判断したシェーナはCOMSのMSを護るべく奮戦。
しかし数が多すぎると思うや否や、脱出時に持ち出したビームランチャー(仮)の照準を
PUGUの母艦へ撃ち込みこれを撃破。(三枚目)
敵の足並みの乱れた所で逃げようとするが、アトロに捕捉されあわや両断かというところで
シエルが機転を利かせてサーベルを発生させ逆にアトロ機の腕を切断。
PUGUが破壊された母艦とアトロ機に機を取られた瞬間に即座に戦線を離脱する。
アトロは深追いはせず母艦の救助を先行するように指示。
自身も本部へ作戦失敗を電信した。(四枚目)
こういう感じになります。
なんかのっけから凄い人数が死んでる予感…
追記
イスラとシェーナのいる場所は全く違います。
んで
>>99の話はセレーネが落ちてくる数日前とかでもありです。
しかし誤字とか変な言葉とか多くて困るな、読み直してるのにorz
月曜には載せれそうです
ついに予告キタ――――(・∀・)――――!!!
やっぱり先越された……一応書いてはいたんだけど
途中まで“イスラは東に歩いている”などという壮大な勘違いをしており
それで位置関係がかみ合わずグダグダになってました…
って言い訳だなこりゃorz
今から期待して待ってますw
第一話よく読めよ俺…
>>101 おk、楽しみにしてるw
さて今日中に1話のイメージイラスト描ききれるかな…
ここまで歓待されるとは…
気合い入れなきゃな
イラ投下乙〜
んー……絵の状況がよくわからない俺wwスマソ…
つうか上手いっすね〜
>106
上手すぎwww
とりあえず乙
>>107-108 ありがとう、描いた甲斐があるよw
しかしまだまだ修行が足りないなぁ…口頭で補足すると、
・流星として落ちてきた輸送船
・戸惑いながらも操作するイスラ
・主人を得、それを護ろうとするセレーネ
のちゃんぽんという形。
んでちょっと月なんぞも付けて、「月から来たもの」という感じを
出したつもりでした。
精進します。
>>106すげえ!
俺もそのイメージイラストの1/10でも上手く描け(書け)たらなぁ・・・
閑話休題↓投下
セレーネ・ガンダムがイスラの住処に到達した。その建物は、山肌に埋まるように建っている、大昔に棄てられた人民軍の訓練施設だった。
「降ろして! アチカラを連れて来なきゃ!」イスラは腕置きを叩き、激昂する。
《駄目です。中国軍に発見されれば、あなたは確実に殺されます》
「それはそうだけど……!」
《あの場から立ち去る選択をしたのはイスラです。あなたはあなた自身の身を守らなければなりません》
「っ! 大切なものを棄ててまで、ホントにあたしは生きなきゃいけないの……?」
《……》
人工知能――セレーネ――はしかし、ウイグル語の呟きには一切答えなかった。変わりに、警報が鳴る。
《ヘリコプターが来ます。目視距離。撃墜しますか?》
「出来るわけ無いでしょこのバカ!」
しかしイスラには、妙案が浮かばない。
元はと言えば、データ的観測によって位置を特定されないためにレーダー電波を切ったわけで、目視されてしまえば、撃墜する他無くなる。
状況を理解した。今すべき事は1つだ。しかし、決断出来ない。決断してしまえば、今まで守ってきた生活と、今まで一緒にいた人々を、殺す事になってしまう。
「こうなる事を、もっと早くに悟るべきだった……」イスラは呟く。
どの道、彼女がこれに乗っているという事が分かれば、どの軍であっても、降ろしに掛かるだろう。
もし人民軍に捕らえられたのなら、機体を降ろされた後、彼女は口封じのために殺され、彼女の故郷であるあの村は《敵に与した村》として焼かれるだろう。
無論、村人は皆殺しだ。
イスラは村の人間から再三にわたって聞かされていた。
米中戦争があった昔、1人がアメリカ側に傾いた発言をしただけで、その村が焼かれたという。
地球統一政府計画の人権査察団による勧告を受けるまで、それは続けられた。
今もそれは同じで、少しでも月側に傾いた発言を聞かれようものならその村は焼かれ、村人は皆殺しにされる。
1年前そのようにして、自治区内で少なくとも14の村が消えている。
仮にCOMSに捕らえられた場合、どうなるだろう。イスラは考える。
敵国民として見做されるのがオチか。
接近する戦闘ヘリの映像を見て、イスラは思考を中断した。
誤字発見
変わりに、警報が鳴る。
↓
代わりに、警報が鳴る。
* * *
「うへぇ! 何だアレ!?」
戦闘ヘリコプターの乗員は2人いる。操縦手と攻撃手だ。
そのどちらもが、白と青と赤で彩られた人型の機械に見入っていた。月明かりを反射して、その機体は所々、美しく輝いている。
人型のそれは、西洋の鎧のようでもあった。少なくとも、古典で見るような形の鎧ではない。
顔があり、目が黄色く光っている。
背中からは二本の細長い円筒形が下方に突き出している。円筒は先端の少し上が締まり、そこから先端にかけて広がっている。スラスターだろうか。攻撃手は思う。
攻撃するか否か。それ以前に、こんな機械など見た事が無い。見た所、兵器のようなものは無い。もしかしたら、作業用機械なのかもしれない。
「管制、聞こえるか、どうぞ」
『こちら管制。感度良好、どうぞ』
「目標の標的判断をしてくれ、どうぞ」
『今、劉(リウ)上尉が向かっている。目標から距離を置きつつ、別命あるまで待機だ、どうぞ』
「了解、通信を切る。……あの変わりモン上尉が来るのか」
* * *
イスラは閉じていた目を開く。自然と、レーダーに目が行った。
「ヘリ7機、か」
確認するように、モニタに目を移した。今モニタは暗視のため、赤外線で光度を上げて表示されている。
ふと目線を移した先に、ひどく明るい場所が見えた。照明の明るさとは思えないほどに、広く光っている。気になってイスラは、言った。
「セレーネ、暗視モード解除」
《解除します》
暗視モードが解除され、コックピット内が一気に暗くなる。しかし、件の東側には、普段無いような光があった。赤い、赤い光が。
「東を……拡大」
その言葉に合わせて、東側を更に拡大した画像がウィンドウ内に表示される。
「拡大」
影がはっきり見える。
「拡大……」
建物の影が、赤い光の中に浮かんでいた。
「せ……セレーネ、あの建物は、どれくらい離れてる?」
《解析します》人工知能がそう言う。少しして、モニタに地図が表示された。《東に約8キロです》
地図に予想地点が表示された。そこは、イスラの故郷の村の東側。もしかしたら村の建物もいくつか巻き込まれているかもしれない。
イスラは顎を震わせ、言葉を紡ぐ。目は、ウィンドウから離れない。いや、離せない。
「……セレーネ、走れる?」
《制限を解除すれば可能です》
「なら、解除して」
《解除するためには完全な精神接続が必要です。脳波のみによる非接触接続では、解除出来ません》
「教えて。どうすればいいのか」
《ヴァイザーが座席の左側にあります。それを被って下さい》
ヴァイザーがある場所を光が照らす。そこに収納されているヴァイザーを彼女は取り出した。それには何本かコードが生えており、収納されているスペースの奥と繋がっていた。
イスラはヴァイザーを頭に取り付ける。何も見えない。
《しっかり固定して、頭からずれないようにして下さい》
「うん」
《一度テストをします。表示された点を凝視して下さい》
光の点が現れ、数秒で消えた。
《虹彩認識完了。画像表示》
その声と共に、ヴァイザーの中に光が広がった。ヴァイザーの中に浮かんでいるのは、コックピットが空中にあるかのような、そんな映像だった。
操縦桿や、その他の計器も浮かんでいる。イスラは息を呑んだ。
《頭皮からの電流を感知。精神接続、制限解除レヴェルにまで到達。解除しますか?》
「解除。早く」
《操縦制限解除。脳波、及び各部接続同調。単一方向回線、開きます》
「武器は?」
《頭部に20ミリ機関砲2門、上膊(二の腕)部に30ミリガトリング砲を各1門、収納しています》
「他に無いの?」
《残りは全て、コンテナの中です。尚、20ミリ機関砲は、6秒間の射撃の後に10秒間の冷却が必要です。30ミリガトリング砲は、3秒の射撃の後に15秒間の冷却が必要です》
「くそっ、厄介な武器!」
イスラは毒づく。そして北を向いていたセレーネ・ガンダムを、東に向けて動かし始めた。
* * *
「管制! 目標が動き始めた!」
戦闘ヘリコプターの中の人が報告する。月光に輝く巨大な人型は、道を東に進んでいった。始めは歩いて、徐々にその速度が速まっていった。
「目標が東に走ってる! 視認出来るか!」
『……視認した! 距離が縮んでる!』
「攻撃は!?」
『許可する!』
「了解!」
戦闘ヘリコプターから、対戦車ミサイル《ヘルファイア》が発射される。いくら目標の速度がヘリコプターと同じくらいだといっても、ミサイルの速度には到底及ばない。
しかし、目標は巨大な図体にもかかわらず軽やかなステップで《ヘルファイア》を避けた。
「くそっ! 何だってんだ!」
攻撃手は再び目標をロック・オンし、次々と《ヘルファイア》を撃っていく。しかしそのどれもが避けられるばかりで、一向に中らない。
本来、対戦車ミサイルというものは追尾性を要求されない。
いくら射程が延びた所で、戦車や装甲車など、地上を這いずり回っているものを目標にする限り、追尾などというコストの掛かるシステムをミサイルに搭載する事がどれだけ無駄か、議論するまでも無い事であった。
しかしアレは何だ。どのヘリコプターの攻撃手も、いや、操縦手も含めて、常識外れの動きをする巨大な人型兵器を恐れた。
* * *
「くそっ、ミサイル、うざいっ!」
イスラはセレーネ・ガンダムを前に進ませながら、ミサイルを感知するたびに機体を横に振る、という動作を続けていた。
走行の振動で身体に負担が掛かるし、操縦のために常に情報を得、それに応じて操縦桿を動かしたり、どんな動きで避けるのかを考えなければならない。
彼女自身にとって、それは思いの外負担であった。
《AH型の戦闘ヘリです。20ミリ3砲身ガトリング砲も装備しているので、注意して下さい》
「もう一回撃ってきたらね! でも今は、村に行かなきゃ!」
前方からも攻撃がある。ミサイルと、弾丸だ。ミサイルを頭部の機関砲で撃ち落とす。
胴体に数発の弾丸を食らいながらも、速度は維持していった。爆発の光が、機体を紅く染めた。
* * *
『曹長、セレーネが動き出しました!』
ミツルは送られてきた監視衛星からの映像を見て、舌打ちをした。
「了解した。……じゃあ皆、状況を開始するぞ」
『隊長、オレが賭けに勝ったんだから、支払い、忘れんなよ?』
「吹くなよ、アレクセイ。忘れちゃいないさ。兎に角回収が最優先事項だ。遅れるな」
ミツルを除く5人の声が、スピーカーの向こうから混じって聞こえる。
彼は今、ヘルメットを被っている。形状は、バイクのライダーのそれに酷似している。その外からは、顔を窺い知る事は出来ない。
しかし彼が見ているものは、空中に浮いているコックピットの映像だ。状況把握用のウィンドウが表示されているものの、景色は夜の新疆ウイグル西部に変わりは無い。月が、美しかった。
タジキスタン−中国の国境を越える。冷戦体制に入った時から常駐している国境警備隊に見付からないよう、幹線道路から外れたルートで領域を侵す。
XMスモークを噴出しながらの行軍なので、夜間に有効な赤外線解析による索敵には引っかからない。
衛星軌道からの可視光観測は夜間では使えないし、現状では唯一レーダーによってのみ、それは感知される。そして、既に感知されているだろう。ミツルは思う。
『目標地点移動中。距離は縮んでません』
なんつー、適応能力だよ。ミツルは次々に表示される情報を1つ1つ確認しながら、前方を睨む。
セレーネが一番国境に近付いた地点を過ぎ、少し走ると炎に包まれた物体と、巨大な黒い塊が見えた。黒い塊――それは、セレーネを運んでいたシャトルの残骸であった。
「本来の目標地点に到達。墓は暴かれた後だ」
セレーネ・ガンダムが起き上がった時に破ったものだろう。そして、あるはずのセレーネの武器がことごとく無くなっていた。それはもう、通常の兵装から予備の弾薬に至るまで。
近くに車輌の残骸がある事から、人民軍がもって行ったのだと推測出来た。
『管制、了解』
「さて、問題は本体だ。アレを止めて回収しない事には、どうにもならない。XMスモーク解除。最大出力で追いかける」
『了解だ』5人がそんな旨の返事をした。
* * *
「邪魔っ!」
目の前を飛ぶ戦闘ヘリコプターを、イスラは横から殴打した。機体が中央でに折れる。ヘリコプターはそのまま地面に墜ちていった。彼女は尚も、走り続ける。
《後方に移動物を感知。パターン照合。CMSL-W-D3『ストラティオーテース』5機、CMSN-X-01a『ヘリオス』。接近しています》
「敵? また!?」
《COMSのモビル・スーツです》
「持ち主まで……!?」
イスラは動揺し、セレーネの少し動きが鈍る。途端に側方に《危険》の文字が出た。咄嗟に避ける。
後頭部をミサイルが通り過ぎる。イスラは条件反射で右腕を動かし、ミサイルが発射された場所を射撃した。土煙が月光に光る。
一瞬、土煙の中から何かが飛び出した。脚であった。一瞬の事だったが、イスラの目はそれに釘付けられた。
声が出ない。
体が動かない。
思考出来ない。
あらゆる感覚の異常が、彼女を襲った。
《着信しました。音声通信です》
その声と《通信》の文字、そして鉦を激しく打ち鳴らすような音で、イスラは時を再び動かし始めた。
セレーネ自体は慣性で動いている。しかしピーク時の速度は既に無い。
「切って。通信なんてそんな場合じゃない!」
《通信切断》
セレーネの速度を再び上げる。若干速度を上げただけのように視覚出来るが、それは目線が高い所為であり、実際は時速80キロメートル以上出ている。
《目標地点まであと2キロ》
「もっと出ないの!?」
《これ以上は安全装置により、出ないようになっています》
「なっ……!」
装甲車を打ち抜きながら、彼女は絶句した。
* * *
「あ、切れた。月の女神はご機嫌斜めか? しゃあない、アマテル、強制的に繋げてくれ」
《了解》
「出来るだけ早急にな。相手の顔も見たい」
《はい》
ミツルは移動しながら前方を拡大し、ウィンドウ内だけを暗視モードにして、そこを見据えた。
* * *
「はぁ、はぁ、はぁ」
眉間を汗が流れる。イスラは村の西端にまで到達した。そして、そこで立ち止まる。
既に、村の東半分が焼かれていた。道端には、村の人たちの屍骸が横たわっている。互いが互いを知っている村だ。知らない人が死んでいる、というわけにはいかない。
「どう、して……?」
軍を動かすにしても、何らかの大義名分が要る。それが、《テロに対する先制攻撃》である。
現在の世界状況で国境近くに軍を派遣する事が、もしかしたら戦争に発展する要因になるかもしれないのだ。軍を動かす口実が必要なのである。
その大義名分は、元々前標準暦年間、アメリカがイスラムのテロ組織に攻撃を受けたとされている事件を皮切りに使用されるようになった。
(前標準暦年間とは、西暦2000年代に入ってから暦法が変わるまでの、テロによる破壊活動が戦争を引き起こし、また戦争の手段となりつつあった時代の事)
中国では、台湾やチベット、南モンゴル(内モンゴル)、そしてウイグルといった、国家分裂の火種を多く抱えてきた。特に米中戦争時、台湾がアメリカを後ろ盾に独立を宣言してからは、それが顕著に現れ始めた。
結局、台湾が聯合國(「United Nations」の中国語訳)――現在はPGUG――の直接統治権下に入ってからは次第に収まっていったが。
過激な独立運動は、殆どがテロやゲリラといった戦法で行われた。北京政府はそれを、物量で制圧した。
つまり、テロリストが1人でも存在する集落を、《テロに対する先制攻撃》という名目で徹底的に焼き尽くす作戦である。テロリストを匿った集落も同様だ。
新疆ウイグル自治区は中国領内で特にテロリストの討伐が盛んな地域である。
現地に土着する人々の殆どがイスラム教を信仰しており、厳しい監視下に置かれているから、反政府感情はどこよりも強い。
それに、国際的にテロリストに認定されている人間が潜在している事は、事実ではあるのだ。
ピカ、と、後方で何かが光った。しかしイスラは関しない。そもそも気付いていなかった。彼女の頬を伝う雫があった。
コックピット内に衝撃が走った。その振動で彼女は目を覚ます。ブザーが鳴り響いている。空中に《被弾》や《損傷箇所》といった文字と、その箇所を示す図が浮かび上がっている。
《機体背部に多数着弾。左スラスター使用不能。後頭部爆散。計器に異常。動作への影響が出ます》
「な、何? 何があったの?」
《背面にクラスター爆弾が着弾、爆発しました。現在機銃射撃を受けています》
イスラは後ろを見る。銃弾は車輌からだけではなく、人間からも来る。小銃で撃たれている。彼女は一度後方を睨むと、そのまま機体を揺らし、左側にステップした。
「――っ、キョズムディン・ヨカル(私の前からいなくなれ)!」
着地した瞬間、セレーネの30ミリガトリングが火を噴いた。応戦の銃弾を十数発受けながらも避ける。3秒の後、自動的に射撃が止まった。
次に頭部の20ミリ機関砲を右側だけ撃つ。命中した物体が空中に舞い上がる。射撃の間も、イスラは機体を動かし続けた。6秒で射撃が止まる。
続いて機関砲の左側。2センチ口径の弾丸がミサイル・ランチャーを貫いた。ミサイルが立て続けに誘爆する。これも6秒で止まった。
最後に左腕の30ミリガトリングを撃った。
3秒間の射撃で、攻撃は完全に止んだ。
「敵はまだいる!?」
《近傍の車輌群は沈黙しました。東からヘリが1機、西からモビル・スーツ6機が接近中です》
「等距離……。確実にヘリの方が早く来るのかな……」
イスラは呟く。目下の敵を殲滅した事で、若干心に余裕が出来ているのも確かであった。
「セリムおじさん……、皆……」どうか、無事でいて。
イスラは改めて、機体の損傷状況を確認した。少しして、唐突に、そして再び鉦を激しく打ち鳴らした音がした。
《音声通信、接続します》
「え……? 誰から?」
《CMSN-X-01a、『ヘリオス』からです》
レーダーに《ヘリオス》のいる場所が映し出される。西側のモビル・スーツ群の先頭。そこに、赤い光が点滅していた。
《通信接続》と、文字が出、ウィンドウに少年の顔が見えた。口にほぼ直角に描かれている傷が痛々しい。
『OK, connected finally.』
英語が聞こえる。1秒ほど遅れて、アラビア語の翻訳文が出てきた。
「セレーネ、翻訳文解除。英語なら分かる」
《解除します》
『Oh? Can't you speak English but Arabic? (ん? アラビア語の方がよかったかな?)』
「No, I can speak English too. I don't need your extra regard.(英語も話せる。要らない気遣いなんて無用)」
イスラはアメリカ英語で話しながら、ウィンドウを睨んだ。
『ああ、そう。こちらはCOMS軍所属のミツル・ホルシード曹長だ。君の戦いぶりに、正直驚かされた。素人じみた動きだが、何より的確だ。それに関しては、賞賛に値する』
ミツル・ホルシードと名乗った少年は淡々と語った。しかし薄く笑っている。
『しかし、わが軍の所有物を、COMS領域外に墜落したとはいえ無断で使用した件に関して、我々は君を厳罰に処す必要がある。他国の人間だからって、例外じゃない』
「……何をする気?」
『まず君は、乗ってる兵器ごと回収だ。そして、君が所属する国の正式な令状が発行されるまで、禁錮だ。一応、北京政府に働きかけるように俺から言っとくけどな』
「殺されろと、そう言うの? 弁明の余地が無いのは認めるけど、私にだって基本的人権がある」
『知らんよ。分かってるかな、人権なんて無視されて当然な事してるんだよ、君は。自国の軍を、他国の兵器を使って殲滅する。殺人じゃ済まないのは、火を見るより明らかだ』
言いながら、ミツルはイスラを睨む。その目は、モニタ越しにも分かるほどの殺気を放っていた。しかしその目も、長くは続かない。息を吐き、やはり薄く笑って、彼はまた口を開いた。
『それに、中華人民共和国が君みたいに突出したウイグル民族の人権なんて気にするか、甚だ疑問だね』
「……それは言うとおり」
『まあ、俺だって民間人に手なんて掛けたくないし、もし帰りたくないんなら、軍人としてなら登用してやってもいい。それだけの腕、無駄にするのは惜しい。君だって、こっちで迫害を受けてる側だろ?』
「……そう。でも――」
言い終える前に、警報がコックピット内に響き渡った。
《上空に航空機を感知。該当機あり。Tu-160爆撃機》
「爆撃機!?」
『何だってそんな西暦年代の骨董品が……』
反応はそれぞれ違うが、兎に角爆撃機が迫っている事だけは事実としてそこにあった。
《南からTu-160が1機。国籍コードは登録されていません。通信電波は遮断されています》
「あとどれくらいでこの上空に来る?」
《まもなく上空に到達です》
「ここから離れなきゃ。村が焼かれる。セレーネ、通信切断。暗視モード。走るよ!」
《了解。通信を切断します》
『ちょっ、おい! ……』
イスラはウィンドウから目を離し、白黒になって急激に明るくなる視界に目を瞬いた。
* * *
バッテリー残量 2/10
* * *
ヘリコプターの爆音が鬱陶しい。男はそう思い、聴覚機能を必要最低限の声が聞こえるように調整した。
輸送ヘリコプターの中には男のほかに数人の兵士が乗っている。その男以外の全員が、全身を軽量ボディ・スーツに包んでいた。
「爆撃隊は到着したか?」男は通信士に訊いた。そして聴覚機能の指向性を上げる。
「まもなく投下します。……投下のサインが出ました」
「よし。では、収まるまで上空待機だ」
「了解」
男は再び聴覚機能の指向性を下げた。
* * *
爆撃機から投下された目標追尾性の爆弾が、自重で落下し始める。
爆弾はそのまま加速をつけながら自由落下していく。
直後、目標となる白い巨人を月明かりに発見し、それを追尾するようにプログラミングされたコンピュータが作動した。
方向転換用の翼を巧みに動かし、常に《目》が目標を捕捉している状態にしなければならない。
目標はそれなりに速度を出している。自由落下のみで捕捉しきるのは、不可能だ。
しかしその短所を補って余りある成果を出しうる兵器でもあるのが、この爆弾の恐ろしい所である。
《高度1000m》観測可能な領域に8つの影。内1つは友軍の輸送ヘリコプター。
《高度900m》輸送ヘリコプターは見えなくなった。目標は現在移動中。
《高度800m》目標は現在移動中。
《高度700m》目標は現在移動中。
《高度600m》目標、進行方向を転換。
《高度500m》目標は現在移動中。
《高度400m》目標、進行方向を転換。
《高度300m》目標は現在移動中。一箇所にかたまっている6つの影が見えなくなった。
《高度200m》目標は現在移動中。
《高度100m》目標は現在移動中。一箇所にかたまっている6つの影の先頭を視認。
目標は現在移動中。追尾終了。起爆。目標との距離は、39m。
空気が膨張し、この夜の中で一切明るい光が生まれた。
* * *
「逃げ切れば……!」
追尾されている。
爆撃機から投下されたものだから、そして追尾するものといったら、爆弾くらいしかない。命中したら、もしかしたら死ぬかもしれない。イスラはその恐怖に、焦っていた。
《投下物との距離、50メ――
唐突に報告する人工知能の声が、大きな衝撃と共に途切れた。同時に、見えていた景色がブラックアウトした。
「セレ――!?」
その衝撃は、後ろから押されるそれに似ている。イスラはその感覚すらも意識する事無く、後頭部をシートに強打する。
「っあっ!」
機械が異常を起こす。次いで、前に押し込まれる力が彼女を襲った。しかし声が出ない。出せない。
全てが揺さぶられるかのような音が、身体に響き渡る。背中が熱い。そして、息が出来ない。
それら全てを感覚する暇も無く、イスラは漆黒の中に墜落ちていった。
* * *
「一応の作戦は、成功、って所か」
目と耳の部分を機械で覆っている男が、風に吹かれて呟いた。
彼の目線――顔を向けている方向――の先には、巨大な白い人型の兵器がうつ伏せになって倒れている。部分部分に穴が開いていたり、融解したりしていた。
「まさか燃料気化爆弾がここまで効くとはなぁ」
男は巨人兵器から目を余所に移した。その先には、めくれ上がってクレーター状になった地面があった。
爆心地である。空中で爆発したにもかかわらず、地面を抉るほどの衝撃があった、という事だ。
「報告します」男の横に、軍服の青年が直立した。「先程、わが国とタジキスタンとの国境を移動する大型車輌が監視衛星から光学観測されました」
「さすがはCOMS。逃げ足は速いな」
「国境警備隊への被害はありません」
「全く、良心的だ。白上等兵、報告ご苦労。キミも朝飯に行きなさい」
「はい。劉上尉はどのように?」
「朝日を見たら行くさ」
白と呼ばれた青年は劉に敬礼し、駆け足で戻っていった。戻る先にはテントと輸送ヘリコプター。
北京時間で6時を回った今が、軍の朝食時間だ。
東の空が白んできている。一方月は、その姿を西の地平近くにまで寄せていた。
長ぇ――――――っ!
うpしてから気付いたけどホント長いな
そして戦闘描写があまりにアホくさい・・・
やっぱガンダムの小説って読んどいだ方がいいかな
これで、一応メインキャラクターは揃い踏み。
つまり、イスラとミツルとアトロ(劉上尉)が登場した事になります
イスラはセレーネの中で意識を失い、ミツルは逃げ帰り、そしてアトロは朝日を見てから飯にありつく
意見、質問、その他諸々、何でもござれ
とにかく駄文、失礼致した
age
mage
>>123 すげー、力作乙。
背景描写が苦手な身としてはとても羨ましいw
ただちょっと提言させて貰うとしたら
たまにやたら短い所(例:
>>118)があるのでバランス配分と
句点のあとは改行した方が文章が見やすくなるってところくらいかな。
よかったら参考にしてみて。
>>123 (゚ Д゚ ;)…乙…すげぇ…
一気に全部読みましたよ…まだ半分も理解できてませんがw
すげぇっすね…
何つうかもう、すげぇってしか言えない俺ww虚しい…
なんかレベル高いっすねここ 絵師さんも上手いし
とても俺にはああ上手くは書けません(絵も小説も)
続きを書きたいって意欲だけはあるのですが
意欲だけじゃあ……どっかで鍛えてきますorz
いくつか聞きたいこともあるのですが
とりあえずもっかい最初から読んで理解してからにします
ガキはもう寝る時間…ノシ
>>126 ああ、短いところか
これもうpしてから気付いたんだけど、
>>117に続けるはずだったのを失敗したから仕方無しに、って感じなんだよ
あからさまな弁明だけど、そんな経緯で
>>118が短くなった
改行については、普通の小説のやりかた(意味ごとに改行)を踏襲しながら、それを崩さない程度に行変えしてる
まあ、ちょっと改行についても再考してみるよ
ものすごくどうでもいいことなんだけど…
ウイグル民族って慣習として、子供に悪魔のウンコとか羊の小便とかそういう名前つけるんじゃなかったろうか
>>129 幼名はそんな感じ
乳飲み子にはそういう汚い名前を付けて、魔除けにする
そこまで幼い登場人物が出てるわけじゃないから、大目に見といてくれ
正直、失念してたけどorz
この話のMSの平均全高って何メートルなんだろう?
>>131 俺の中では量産機16〜7m、ガンダム18m。
月側の兵器の名称は、セレーネ(厳密には「セレーネーΣεληνη」)、ヘリオス(厳密には「ヘーリオスΗλιοs」)との統一のため、全て古典ギリシア語を使う予定
ちなみにストラティオーテースΣτρατιωτηSは「兵士」の意味
一つ質問。
「〜しゃあない、アマテル、強制的に繋げてくれ」から
“アマテル”っつうのは、ヘリオスの呼び名でいいんですよね?
アマテル=天照=太陽=ヘリオス?
>>135 そうかとも思ったんだけどそれだと何か日系っぽい(?)し、
“生得した低重力障害”=月生まれ?のミツルが
そうヘリオスを呼ぶのかな、と
まぁ俺がこんなこと言うべきじゃないだろうけど
>>136 アマテルはヘリオス搭載のAIの呼び名
説明不足スマヌ
セレーネに女性性をもたせたのに対し、ヘリオスには男性性をもたせるためにアマテルにした
天照大神は女神だって一般に言われてるけど、男神であるという説もある
俺が男神説を支持してるからそうなったわけよ
ただ一般的には女神で通ってるから、中性的に見えるかも
>>132 イラストのセレーネが結構華奢だったから16〜7メートルくらいだと思ってたよ。
家にあるガンプラのジャンクでセレーネもどきでも組んでみようかな。使えるパーツが全然なさそうな気がするけど。
ぽしゅっとな
142 :
通常の名無しさんの3倍:2006/02/24(金) 11:51:42 ID:PfKcOvBI
ちょっとageますよ
143 :
139:2006/02/24(金) 14:08:15 ID:???
>>140 >>それでも元スレのαに比べればガタイ良くなってる筈なんだがorz
バランサー兼ブースター小さく感じたのとAIセレーネが女性的なんで華奢に見えたのかも。
16〜7メートルだと思ったのはXやクロボン系が好きだからっていうのもあるけど。
>>にしてもジャンクで組んだりできるってすごいね。
いや、こっちも半年前まではパチ組で今までやってきたのは合わせ目消しと延長工作と塗装くらい。
大掛かりな改造はほとんどしたことないから全然凄くないさ。
ジャンク漁ったけど頭と腰しか使えるのがない……これじゃモドキ以前にオリガンになってしまう。
個人的に>32のプロットは続きが見たいくらい気に入っているので、これからもSS書き師ともども頑張って欲しい。
自分で気に入らなかったのでヘリオス改修。
少しは男らしくなったかな?
http://n.pic.to/6jn5u >>143 プラモの改造なんて夢のまた夢さ…。
>これじゃモドキ以前にオリガンになってしまう。
元々セレーネ自体がオリガンだから問題ないよw
つーか「使えるパーツ」の定義が気になるな、
寄せ集めでも一応オリジナルとして描いた身としては。
とりあえず
>>32、
>>99は現行の話の設定では使えない事が判明しています。
しかもPUGU→PGUGだしな…ちゃんと読め自分orz
元スレからネタ引っ張って脳内妄想でもしてようかしらん。
そういや結局アトロってグラサン男でいいの?
微調整が必要な感じなんだけど。
>>144 >>122参照
アトロは顔面の、両耳とクルーゼマスク部分が機械になってる
頭蓋骨に固定してる………のかな
147 :
139:2006/02/26(日) 17:18:28 ID:???
>自分で気に入らなかったのでヘリオス改修。
男らしくなっていると思う。
>>20の設定だと遠距離戦向きに調整されるみたいだけど、
重武装化したり、撃った際の反動がきつい武器を使用するのでなければこの位がちょうどいいんじゃないかと。
あとはSS書き師さんの意見待ちかな?
>元々セレーネ自体がオリガンだから問題ないよw
いや、技術不足と妥協と挫折の末にもし完成しても、
「背中に羽のようなバーニアがついている以外共通点がまるでない別物」、
「ぼくのかんがえたせれーねがんだむ」になりそうだからどーしたものかと。
>つーか「使えるパーツ」の定義が気になるな、
>寄せ集めでも一応オリジナルとして描いた身としては。
いじくったり落っことしたりして壊したパーツを中心に、少しでも似てそうなパーツを物色している。
見つからなければパチ組みしてあるやつもバラしたりとか。技量不足ゆえあくまで「モドキ」。細かい違いは気にしない。
とりあえず手持ちの部品だけを使用してぱっと思いつくのが、
頭部、GP01かアレックスがなんとなく似ているような? 胸、フリーダムに胸の全面をパテを持って修正?
股間、上腕、太ももはガンダム。あとは? とこんな感じ。
……全然ダメじゃん。というかスネの両サイドの形状が特徴的だから流用出来るものが思いつかない。
>元スレからネタ引っ張って脳内妄想でもしてようかしらん。
いや、脳内妄想を是非現実のものに! 同時進行でいろんな話があるればスレも盛り上がると思うし。
自分は妄想だけは加速してるけどSSや絵は書いたことないから無理さ……
入試終了!これでやっと自由だ……受かればだけどww
やっぱ天照大神なんだ…女神なんすか?
俺の記憶では、アマノウズメのストリップ?で岩戸から出てきてるから
男神でいいのでは……って、ガンダムに関係ないか
ミツルとヘリオスが上がってるw相変わらず上手いっすねぇ
名前も日系…? うーん、まぁいいか
そしてガンプラ神降臨…正直うらやましい
作ってみたいけどゲーセンで金が無くなる俺orz
妄想と言わずに是非あなたもSSを…って俺が人に言えないかw
天照大神は、基本的には性別は女。ただし、前身(?)のような形で、
男としてあったけど、女神になってる。
どうでもいいだろうけど、月読(ツクヨミ)は性別不明。男論が強いが。
ガンダムを描ける人が羨ましいです、はい
明日にも第三話、載せれるかな
戦闘描写は一切なし!(しかもセレーネすら出てこない)
会話文が非常に多い!
などというものに仕上がったわけだが、本当にガンダムが書けるのか、我が事ながら不安でいっぱいです
今現在携帯から書いてるから、以上
またまた予告キタ――――(・∀・)――――!!!
すごいなぁ…一週間に一話ペースだ
期待してますよぉw
第2話のイメージがなかなか固まらずに模索中。
>>146>>150 だよねぇ。
グラサン男の初期案はそんな感じだったけど、
なんとなく違う気がしたのでこんな感じでどうだろう。
http://m.pic.to/6ba6z 綿密な設定組んでそれをきちんと起こせる腕が欲しいです、俺。
いやマジで。
というわけで続き楽しみにしてるよーw
勉強になるなるw
>>147 買Aレックスバレたーっ!
正直にいいます。
ベースはアレックスで胸にV2持って来てZの尻尾付けて
それをちょろっと描き直したのがセレーネです。
オリジナリティねーなホント…orz
でもせっかく組んだのバラしたりはもったいないので出来る範囲でいいよ?
立体化したセレーネはとても見てみたいけど。
>>148 ミツル=満って名前を付けた人がいる以上、少なくとも彼の傍には
日本に縁のある人がいた(いる)と思われ。
そういう人物がこういった昔話を出してきても不思議じゃないかなと。
あと天照は踊りというか祭の雰囲気に「何やってんだろ?」と岩戸をちょこっと
開けたら待ってましたと全開にされて無事太陽が姿を現すようになった、て
話じゃなかったっけ。
それから受験乙。果報は寝て待て!
妄想ネタはねぇ…楽しみにしてくれてるって人がいるのに申し訳ないけど
また上のアレみたいにダイジェストっぽくなりそうなわけで。
つまり導入部分がうまく纏まらない。
一番の原因は時代背景の設定不足なんだけど、考えようとすると頭がオーバーヒートを(ry
…長文失礼しました。
アク禁に巻き込まれて書き込めない
orz
154 :
通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 11:11:14 ID:wXyJaikE
携帯から無理して投下
「Li-ke-xing!」
そこの声と共に、イスラは何かが頭の外側を通過したのを感じた。
「Xing!」
曖昧な意識が次第に覚醒し始める。何故だか、風がとても冷たい。
「……Bu-xing. Nin-zen-mo-zuo-nu-liu-zhi-bei?」
――不醒。恁怎麼做女流之輩?(起きません。このアマ、どうしますか?)
(※「恁」は借用。実際の「任」の部分に当たるべき文字は「イ壬」)
その言葉を聞き取ったイスラは、頭を北京語に切り替える。起き掛けのため、とても緩慢な切り替えではあるが。
「もう一度水をかけろ。今度横たえて全身にだ。それでも起きなかったら、好きにしろ」
「分かりました」
イスラは自らが地面――とても熱い――にうつ伏せにぶつかったのを感じた。そして次の瞬間、言葉通りの事態が起こった。
水が全身にくま無くかけられる。
そして髪の毛を引っ張られ、次の瞬間には息が出来なくなっていた。
体が跳ねる。鼻腔と口腔に液体が流入する。頭の中からの激痛と急激に襲う恐怖に、イスラは暴れた。
「このっ! おとなしくしろっ!」
その声と同時に、彼女は腹への下からの物理的衝撃を受けた。胃と食道を何かが行ったり来たりする感覚に、イスラは更に手足をばたつかせた。その運動で、不意にイスラは呼吸の出来る状態に戻った。
腹に残る鈍痛と鼻腔内にある刺激に、彼女は涙目で噎せ返った。
身体が酸素を欲している。蹲りながらもイスラは、必死に呼吸を繰り返していた。その様子は、狭い池に大量にいる鯉の1個体を思わせる。
「あーあ、起きちまったよ。せっかくのチャンスを無駄にしたぜ、お前」
「文句言うなよ、孫(スン)。ってか俺は、こういう女はいたぶるに限ると思うんだ」
「マジかよ、この変態」
唐突に、嫌悪感がイスラの腹の中に湧き出る。或いは憎悪と言い換えてもいいかもしれない。
「起きたみたいだな」
感情の感じられない声に、イスラは苦悶の顔を向けた。
そこには人民軍の軍服を着た、大柄な男がいた。イスラではなく、イスラをま嬲った兵士達を向いている。
「では、尋問を始めようか」
その言葉で、大柄な男はイスラを眼中に収めた。
蛇に睨まれた蛙。或いは、虎に睨まれた兎か。
イスラはその視線に、身を震わせる。しかしそれ以外の挙動が出来ない。もし動けば、殺させる。
「私は人民陸軍の奉爽(フェン・シュアン)少尉だ。ああ、名乗らなくてもいい。貴様の名前は知っている、亢義蘇(カン・イースゥ)」
その言葉に、イスラは目を見開いた。亢義蘇。それは、イスラが「中国籍の人物」として名乗る時の名前、すなわち通名である。
イスラは一切の身分証明を携帯していない。それなのに、名前が分かってしまっている!? 彼女は奉と名乗る男を睨んだ。他方男は、それすらも気に留めない。
「まず、今我々がいる場所を教えておこう」
奉はそう言って、立ちはだかるようにイスラの視界を阻んでいた自身の身を退けた。
そして見えた光景に、彼女は身を震わせる。
「貴様の出身と目されている村だ」奉はイスラの目線を追いながら、言った。
生き残った全ての村人が、地面に座り込んでいる。周囲には、カラシニコフを持った人民陸軍の兵士が10人。そして、彼らの足元には新しい屍骸が数個。赤黒い色が砂に染まっている。
イスラはその端が引き千切れんばかりに目を見開いていた。
「貴様は敵対勢力の兵器を使って、我が人民陸軍の中隊を孅滅させ、あまつさえ多くの人民軍兵士を殺した。その罪は大きい。国家転覆を目論むテロだ。しかも国際的な影響力をも孕む」
イスラは、通信を繋げてきた月側のパイロット――ミツル・ホルシードといったか――の言葉を思い出した。
『分かってるかな、人権なんて無視されて当然な事をしてるんだよ、君は。自国の軍を、他国の兵器を使って孅滅する。殺人じゃ済まないのは、火を見るより明らかだ』
「後手に回るが、テロへの報復をしなければならない。貴様は本件にとって非常に重要な行為をした。死刑が望ましいだろう。そして、この村もそうだな、テロリストの温床となっている」
イスラは跳びあがる様に顔を奉に向けた。
「待て! この村は関係ない! 私は放浪者だ。偶々この村の近くを通った時にアレを見つけた、それだけだ!」
「さて、それはどうかな?」
奉はイスラの傍を離れ、座り込んでいる村人達の方に歩いていった。そして、
「……この村で、20歳代の人間はいるか?」
そう尋ねた。村人達がどよめく。
「待て! 何をする気だ!?」
1人の中年男性が立ち上がり、叫んだ。
勝手ながらちょっとここらで切り上げさせてくれ
携帯で長文打つのは骨折れまくり
もしアク禁解除されたら続きか、若しくは改めて全文投下の予定
途中でスマソ
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵。∴∵
∴∵∴∵:。∴∵∴∵∴: --─- ∴∵∴∵∴∵∴∵
∴∵゜∴∵∴∵∴∵ (___ )(___ ) ∴∵。∴∵∴∵ ゜
∴∵∴∵∴:∵∴∵_ i/ = =ヽi ∴∵∴∵。∴∵∴
∴∵☆彡∴∵∵ //[|| 」 ||] ∴:∵∴∵∴∵:∴∵
∴∵∴∵∴∵ / ヘ | | ____,ヽ | | ∴:∵∴∵∴∵:∴∵
∴゚∴∵∴∵ /ヽ ノ ヽ__./ ∴∵∴∵:∴∵∴∵
∴∵∴∵ く / 三三三∠⌒> ∴:∵∴∵:∴∵
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∵∴∵∴∵
∧∧ ∧∧ ∧∧ ∧∧
( )ゝ ( )ゝ( )ゝ( )ゝ ムチャシヤガッテ・・・
i⌒ / i⌒ / i⌒ / i⌒ /
三 | 三 | 三 | 三 |
∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪ ∪
三三 三三 三三 三三
なんか途中みたいだけど乙です
むしろ続きが気になる…
>>152 アトロでかっw
でも(・∀・)イイ!
さて……寝て待つとしますかww
>>155に誤字発見
「イ壬」じゃなくて「イ尓」だ
前者じゃ何も変わらねえorz
>>158 盛り上がってきそうで続きが楽しみだ。
早いとこアク禁解除される事を願う。
くぁ続きが気になるっ!
ちょこっとだけ設定考えたので垂れ流し
人類が宇宙への進出を開始して80年が経過した。
彼らは地球の衛星・月を第二の故郷とし、宇宙空間に擬似生活圏
「コロニー」を作るべく研究に次ぐ研究を重ねていた。
しかし生活を維持するだけでも必死な月の住人に対し地球側は
過剰な労働・搾取を強制し、彼らを疲弊させていった。
A.S.(Advance to Space:宇宙進出暦)82年―――
月の住人(ルナ・レジデント)達は自分達を支配する地球圏統一政府に対し
密かに集め製作していた武力を持って独立を表明。
以降8年間、冷戦状態となり一部の月縁の地以外地球と月との交信は
絶たれ、膠着状態が続いていた。
どう見ても1stです
本当にありがとうございましたorz
>>163 書いてみれば、いいじゃあないか
スレも活性化すると思う
>>165 頑張れ〜w
俺もしばらく暇だから何かやろうかな
でもまずは
>>158の続きを読んでみたい
何度も言いましたが期待してます
167 :
139:2006/03/01(水) 22:37:43 ID:???
うわっ、ちょっと来ないうちに3話が途中まで投下されている。
すごい気になるところで終わってるから続きが気になってしょうがないです。
>>152 やっぱり頭部はアレックスだったかー。
でもアレックスはすでに組んじゃっているorz。だけど頭部まで別ので代用すると完全に別物になってしまうし。
それにしても妄想ネタが徐々に実現化するようですね。
自分は仕事中に設定や描写ばっかり思いつくけど、いざ帰宅して文章に起こそうとすると全然書けなくなるよ。
>>148 受験お疲れ。いい結果だといいね。
でも、まだまだ未熟者の自分になんかに神なんて言っちゃ勿体無いって。世の中にはすごい人が沢山いるんだから。
SS……書いてみたいけど上で書いている通りなかなか文章に起こせないんだよね。
まずは第2話イラを完成させたい所存。
できれば今夜、ダメでも明日にはなんとか…。
俺もはっきりと設定や展開が浮かんでいるわけではないので
そこら中温いとこだらけになると思いますw
今夜続きを携帯から書くよ
どこまで書けるか定かじゃないけど
つーわけで、続き
《あらすじ「抗弁する女」》
人民軍に取り押さえられたイスラ。村を攻撃しようという人民軍の少尉。
村で20歳代の人間を出すように少尉は言う。
その言葉に、1人の中年男性が立ち上がり、叫んだ。
「待て! 何をする気だ!?」
1人の中年男性が立ち上がり、叫んだ。
瞬間、連続した大きな破裂音が乾燥した空気に拡散した。
男性が崩れる。その頭は左半分が歪に変形し、赤黒い液体が噴出していた。
男性であった屍骸はそのまま隣にいる女性に横たわった。衝撃で、引き裂かれ砕け散った部分から塊や液体が垂れ流れる。
イスラは、それをひどくゆっくりした時間の中で見た。
男性の顔面が赤黒く潰れる様も、そこから液体が噴出するのも、倒れた男性から何かが垂れ流れるのも、全てを見た。
十数秒間の静寂を破ったのは、子供の泣き声だった。それを意に介せず、奉(フェン)は再び口を開ける。その端は、ひどく歪んでいた。
「この村で20歳代の人間はいるか? いたら出てくるんだ。彼のようになりたくはないだろう?」
これが笑顔か。これが、人を殺す事と羽虫を潰す事に然したる違いを見出ださない人間の表情なのか。
イスラは先程から感じている吐き気を、一層意識してしまった。
村で20歳代の人間は少ない。112人の人口を持つこの村にあって、20歳代は10人だった。
昨晩のミサイルの墜落によって死んだ20歳代は2人。前に出てきたのは8人だった。
少人数の理由は、冷戦に入った標準暦(S.A.)23年から7年間、北京政府がウイグル人の人口を抑制するために、一斉に妊婦を強制中絶させた事があったからだ。
本来なら、標準暦23年から30年生まれの人口は、現在の2倍はあったはずなのだ。
「配れ」
奉が命ずる。兵士が前に出てきた人間の1人1人に、旧式の拳銃を配って回る。
それを見ながら、奉はイスラに近付き、彼女の顔面に蹴りを入れた。イスラは悲鳴を上げる。鼻血が流れ、顔を汚していく。そして奉は髪の毛を引っ張り、引き摺った。
イスラは抵抗をする気にもなれない。それは顔面を蹴られたからか、或いはそれが無駄だと知っているからか。
「今からが、貴様の出番だ」
奉は未だ、薄く嘲笑っている。
引き摺る奉と、引き摺られるイスラ。その2人は、8人の前で止まった。
「今配った拳銃には、銃弾が1発ずつ入っている。もし、貴様らがこの亢義蘇(カン・イースゥ)を知っているのなら、彼女を撃て。その場合、外しても構わん。もし知らないなら、自分の頭を撃て。こちらは、決して外してはならん」
その言葉に、イスラは蒼褪める。そして、叫んだ。
「だから、私はこの村の人間ではないと言ったろう! 何故無関係の人々を殺すんだ!?」
奉は振り返り、イスラの顔を踏み付け、彼女にしか聞こえないように言った。
「この村と関係が無いのなら、黙っていてもらおう。貴奴らが貴様の事を知っていれば貴様が死ぬし、知らなければ貴奴らが死ぬだけだ。我々に問題は無い」
踏み付けられているため、イスラは上手く口を動かせない。しかし、目だけは奉を捉え、動かない。
視線で人が殺せたらどんなにいい事か。イスラは後ろ手に縛られている右手を、血が滲むほど強く握った。
「早くしろ。あとが閊えてる」
奉はそう催促しながら、イスラから数歩離れた。
誰もが、手に持っている拳銃をどうしようか、思いあぐねている。1人が、銃把を握り直した。そしてアソセレス・スタンス(身体の正面に銃を構える撃ち方)で構える。銃口の先が、イスラ、ではなく、奉を向いた。
「――アッラーフ・アクバル!」
銃声は複数だった。青年は構えたはずの腕をだらんと下げ、そのまま前のめりに倒れた。
「言われた通りにしないと、こうなる」
イスラは屍骸から目を背ける。
他方奉は、1人1人の後ろに来て、「亢義蘇を知っているか?」と囁いていた。その囁きのたび、銃声が1回聞こえた。
青年たちが次々と、頭から血を流しながら地面と同化する。もう、動かなくなる。
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
最後の1人の後ろに、奉は立った。
「亢義蘇を知っているか?」
イスラとその青年女性の目が合った。涙を流しながら、それでも懸命に微笑おうとしている。手は、遠目に見ても震えていた。イスラが口を開きかける。しかし首を横に振り、それを止めた。
「インシャー・アッラー」
女性の最期の言葉は、よく言われる、アラビア語のフレーズだった。
「もし神が思し召せば――」。
「――また会えるだろう」という事か、「――あなたも死ねるだろう」か、それとも「――あなたはこれから生き抜いていく事だろう」、という意味か。
イスラは地面に頭を付け、泣き崩れた。
「銃を回収しろ」
その言葉に、彼女は現実に引き戻らせる。
兵士が屍骸の手から拳銃を抜き出し、銃弾をまた1発ずつ装填していた。
「次は10歳代だ。前に出ろ」
再び、光景は繰り返される。誰も、屍骸の位置を変えようとする者はいなかった。
20歳代の人数に比して、10歳代は多い。そこで、奉は10人ずつ出るように言った。そして同様に、1人1挺ずつ、拳銃が手渡される。
「質問は同じだ。亢義蘇を知っているか?」
イスラと同じ17歳の人は、彼女を含めず2人いる。当然、イスラと仲が良かった。その2人も、前に出る。
「何度も言ってるだろう! この村の人は誰も私の事を知らない! 頼むから、もう殺さないで!」
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「無関係の人間を殺して何になる!? 何で私を殺さない!?」
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「奉爽(フェン・シュアン)少尉! もう満足だろう!? もうやめて! 殺さないでよ!」
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「亢義蘇を知っているか?」――バァン!
「む、静かになったな」
次の子供に行かず、奉はその場でイスラの横に立つ兵士に話しかけた。
「あまりに五月蝿いんで、黙らせときました」
イスラは布を口に突っ込まれ、あまつさえ粘着テープで口を塞がれていた。兵士は何も無かったかのように、イスラから数歩離れた。
「亢義蘇を知っているか?」
奉も、何も無かったかのように質問を繰り返した。今度は少年だ。
周りの10歳代が皆頭か顎に銃口を付けているのに対し、彼はただ持っているだけだった。
「し……知るかよ……」
「そうか。なら、早く自分の頭を撃ちたまえ」
「……やなこった。こ、こんな死に方、出来るかよ」
「貴様は愚かだな。中華人民の風上にも置けない。まあ、漢人ではないから仕方が無いのかもしれないがな」
「ふざけんなよ、腐れ外道。人殺ししか能が無いくせに、漢民族主義掲げてンじゃねえよ」
「罵るしか能が無い貴様に言われたくはないがな」
「……莫ッ迦じゃねえの」
声が震えている。全身も同様に震えているから、威勢などあったものではない。しかし、右腕だけはしっかりと、拳銃を握っていた。
事は一瞬。少年は1歩後ろに退き、銃口を奉に向け、引金を引いた。
「少尉!」「ユミド!」
兵士の叫び。イスラの叫び。連続した銃声。
不協和音が、響いた。
少年と、奉が倒れていた。
しかし奉はもぞもぞと起き上がる。すぐに兵士が駆け付け、左肩に応急処置を施し始めた。
他方少年の頭からは何か赤く柔らかそうな固まりがはみ出ている。そして彼は、少しも動かなかった。
処置が終わるや否や、奉は言う。「さあ、続けようか」
「何やってるんだ、奉少尉?」
唐突に、奉の背後から声がした。
「あぁん?」
奉が振り替えると、そこには顔面の半分を機械が占めている男が立っていた。
今回はここらで勘弁してくれorz
話はまだまだ続くけどね
《雑談》
最近設定とかシナリオを少し深めるためにアラビア文字を独学で習得
北京語の発音(ってかピンイン?)も、なんとかなりそう
>>173 お疲れー。
一箇所だけ指摘させてくれぃ。
銃持ってるのにその子以外反抗しなかった点はともかく
口を塞がれてる筈のイスラが何故名前を叫べるん?
しっかし勉強家だなぁ…凄いよ。
他の国の言葉なんて俺ちーともわかりませんw
あ、
>>174、指摘d
マジで失念してた
「イスラの叫び」の所を「村人達の叫び」と脳内返還しといてくれorz
つーかアク禁解除されてる!
一気に続き投下
「何やってるんだ、奉少尉?」
唐突に、奉(フェン)の背後から声がした。
「あぁん?」
奉が振り返ると、そこには顔面の半分を機械が占めている男が立っていた。
「あっ、劉(リウ)上尉。これは失礼いたしました」
男は目と、そして耳の部分が機械に覆われている。所々、皮膚の下、頭蓋骨に接合していると思しき場所まで露出している。
「何をやっているんだ、奉少尉?」
「はっ! 亢義蘇(カン・イースゥ)の尋問であります!」
「尋問ねえ……」
劉上尉と呼ばれた男は奉の背後を見た。
「屍骸が少なくとも20、か。これが尋問なのか?」
「はい。我が漢人の力を新疆自治区に知らしめす事も兼ねておりまして――」
バァン!
奉が崩れた。太ももに、1つ穴が開いている。奉は地面に手を突き、劉を見る。劉は拳銃を奉の頭に突き付けた。
「な、何を……!?」
「任務外の事をするな! あまつさえテロへの報復や先制攻撃と称して不要な殺戮まで行い、他民族といえど犯罪者でもない無抵抗な中華人民に、貴様は銃を向けた! 自分のした事が分かっているのか! これが陸軍の流儀か!」
奉は何も言わない。劉は目の辺りが機械であるため、彼の表情を読む事は出来ない。奉は口元を吊り上げた。
「……陸軍所属でもないのに、大層な物言いですな、劉阿拓(リゥ・アートゥオ)上尉」
劉は拳銃の持ち方を変え、銃把で奉の顔面を殴った。
「この事は北京に報告させてもらう。『不必要な殺戮を無抵抗な人民に対して行った』、とな。亢義蘇の尋問は、こちらが直接行う。この隊の副長は誰だ!」
劉は声を張り上げる。すぐに、1人の兵士が駆け付けた。
「は、はっ! 副長の曹舷衛(ツァオ・シァンウェイ)六級士官であります!」
「隊を率いて、営地に戻れ。それと、少尉も連れて行き、コンテナの中に閉じ込めておくんだ。これは越権命令ではない。『專軍(ツゥアンチュン)』による、法規に則った措置だ」
「は……? あ、はい、了解しました!」
そこにいた兵士は、劉を除いて全てが奉の部下であった。やがて、劉以外の兵士がいなくなった。
「あ、銃回収させるの忘れてた……」
イスラは子供たちから拳銃を1つ1つ手渡される劉を、ただ呆然と見ていた。
「ああ、済まない、もうしばらくそのまんまでいてくれないか」
劉はイスラにそう叫んだ。イスラは、粘着テープも剥がされず、まして口腔内には布がまだ入ったままであった。
彼女は違う点に、目を奪われていた。
劉が現れた時、彼は大声で奉を責め立てた。その印象があったからである。
僅か数分で、その雰囲気が変わってしまっていた。怯える子供たちから――その風貌は怯えられても仕方無いとはいえ――拳銃を回収するその姿は、軍服を着ていなければ軍人であると断定出来ないだろう。
「こうなったのは、全てに於いて私の部下の失態だ。部下の失態は管理責任者たる私の及ばぬ所であり、私には然るべき補償をする義務がある。ただその前に、あなた方に言わなければならない」
劉は、漢人だろうか? イスラの頭をその考えが過ぎる。機械を顔面に埋め込んでいるその理由は、人種を特定されたくないから?
それにしても、漢人にしては、少数民族に対して高圧的な態度をとってはいない。その事に、イスラはもとより、村の人々も驚いていた。
「不要な被害を与えてしまい、本当に申し訳ない」
劉は直立し、そして頭を下げた。
誰もが、その言葉を疑った。今まで、漢人――劉と名乗るこの男がそうであるかどうかは分からないが――が我々ウイグル人に対して謝罪をした事があっただろうか? いや、無い。イスラは身震いを感じた。
その動作のあと、劉はイスラに近付き、粘着テープを少々荒っぽいが剥がした。口の中の布はイスラ自身が出した。
「……どうも、上尉」
「尋問しようにも、口を塞がれてたら何も聞き出せないからな」
そういう事か。イスラは思う。
「とりあえず、営地に来てもらおう。話はそれからだ。大丈夫、拷問なんかはしない。ただ、黙秘は適当じゃあないな。何か質問は?」
「……村の人達は、どうなるんですか?」
劉は顔を村の方に向けた。皆、一様に悲嘆に暮れている。劉は奉の仕打ちに、もう存在しない眉間を寄せた。
「これ以上の攻撃は、正直無意味だ。それに、統一政府の人権機関がこれ以上黙っているとも思えない。ただ、北京政府に補償を要請した所で、後々にまで回され、挙句にその要請の事実までもが抹消される確率は高い。補償は、僕個人の出費になるかな」
「そういう事では……」
「まあ、それについての話も、営地に戻ってからだ。あと、我々は君を逮捕しなければならないが、君が使える人材であるとの判断が下った場合、我々の組織に入ってもらう。君に、拒否権は無い。その事の詳細も話す」
その風貌に合わず、劉は紳士的であった。
「明日ここを発たなければならないが、弔う時間くらいは裂く用意がある。君があの村の出身である事は、もう分かっているからな。最後の別れになるだろうから、挨拶もその時に済ませるといい」
「……色々な配慮、ありがとうございます、劉上尉」
「必要な事をしたまでだ。改めて、僕は通名を劉阿拓、そして本名をアトロ・リウという。漢人とイタリア人の混血だ」
「……知っているとは思いますが、一応。通名は亢義蘇、本名は、イスラ・カマルです」
劉は一度頷くと、「ついて来るんだ」と言って、歩き出した。イスラも、それに無言でついて行く。劉の手には、まだ拳銃が握られていた。
* * *
「そうか――」リウ――劉――が、口を開く。「――それじゃあ、もう君以外に乗れないかもしれない」
今、イスラとリウは、テントの下で対面している。尋問という名目のため、イスラの手には手錠がかけられていた。「暴れる事は無いだろうけど、一応、形式上ね」とはリウの弁だ。テントの周りには誰もいない。リウが人払いをしたからだ。
リウは様々な事を、イスラから聞き出していた。聞き上手なのはイタリア人の血が混じっているからか。彼女はそんな事を思いながら、全ての経緯を話していった。
村から自宅に帰る時にCOMSのシャトルが墜落する瞬間を見た事、シャトルの中に巨大な人型の機械があった事、機械に乗ったら操縦出来てしまった事。
機械に搭載されている人工知能に《セレーネ》と名付けた事、セレーネが複数の機影を捕捉した事、村が爆撃を受けていたと思った事、操縦の制限を解除した事、人民軍の車輌を破壊した事。
COMSの機械――モビル・スーツ――が6機来て、自分を捕らえようとした事、爆撃機から爆撃された事、何があったかは分からないが、突然後ろから衝撃が来て、気絶した事。
一部始終を話し終え、いくつかリウから質問があった。
何故巨人兵器に乗ったのか、何故人工知能に名前を付けたのか、何故村が爆撃されていると思ったのか、COMSの巨人兵器から通信はあったか、通信をしてきたのは誰か。
それらの質問が終わると、また質問があった。
システムに、名前の他に何か登録したか。
イスラがそれに、網膜と、あとで知った事だが音声、そして指紋など、複数の生体情報を登録していた事を答えた。そして、先程の返事である。
「あたし以外、乗れなくなったんですか?」
「ああ。モビル・スーツには、とあるシステムが積んであるんだ。《Σ(シグマ)システム》といって、神経接合と人工知能による補助、そしてパイロットの操縦によって、モビル・スーツを動かすシステムなんだけど……」
「問題点がある?」
「普通は問題点になる事じゃない。基本的に軍用モビル・スーツってのは、ユンボみたいに誰でも操縦出来るものじゃなく、パイロットが最大限の能力を発揮出来るよう、専用機にしておくのが常だ。そうすれば整備も楽だし、自分の機体に愛着だって湧く」
「そこが問題なんですね。特に、あたしの場合」
「そう。民間人である君が、モビル・スーツに、しかもあれは新型のための試作機みたいだし、そんな大層なものに乗ってしまった。まして、操縦制限まで解除してたんじゃあ、登録を抹消するには、かなり骨の折れる作業が必要になる」
リウは話の1段落として、机に置いたジャスミン茶を呷った。
「あれに積んである人工知能は、『名前』ってのがネックになってるみたいでね、名前を付けられた人工知能は、グースの子供みたく、パイロットを絶対者と思考するようにプログラミングされてある」
「絶対者、ですか? 親ではなく? ムスリムにとっての、《アッラー》のような?」
「そう、そんな感じ。あとは、どれだけシステムに没入できるか、だな。そのせいで、人工知能とパイロットとの精神接続に適正が絡んでくる。だからこのシステムは厄介なんだ。もし初期状態に戻したら、人工知能がオシャカになるし」
リウは腕を組んでため息をついた。
セレーネは、多分女性だ。イスラは思う。音声は女性のそれだったし、機体の名前である《セレーネ》は古典ギリシア語で《月》という女性名詞であり、またギリシア神話に同名の女神もいる。彼女は確信した。そして居住まいを直し、口を開く。
「そろそろ本題に入ってもいいんじゃないですか? 前置きが長いです」
「そうだな。まあ、これまでの話で分かってもらえたとおり、君以外にあのモビル・スーツを操縦出来そうな人材が居ない。そこで、君を登用しようと思う。正式な決定は北京に到着してからだが、モビル・スーツ部門での登用だから、確実に君は僕の部下になる」
「それは、安心してもいい、という発言が裏にあるんでしょうか?」
「少なくとも、君の身分と身体は、保障しよう。拒否権が君に無い事は、説明済みだな?」
「はい。登用に関しては、あたしの方でも少し、安心してます。それで、厚かましいとは思いますが、交換条件を、飲んでくれますか」
「交換条件? 今更拒否、なんて言わないよな?」
「言いませんよ。条件とは、今後一切の、自治区やウイグル人への弾圧を、停止する事です。社会的弾圧、経済的弾圧、民族浄化政策、宗教政策、そして自治区運営からのウイグル人排斥、その全てをウイグルから取り除く事が、条件です」
「条件が満たされなければ?」
「その時点で、あたしは東トルキスタン共和国の独立を全面的に支援する存在になります」
テントの下を、乾燥した風が通り過ぎた。
「……今もそうじゃないのか?」
「あたしは、独立していようがしていまいが、ウイグル人が民主主義と基本的人権をちゃんと国家によって保障されていれば、こんな事は言いませんよ」
ウイグルだけではない。内モンゴル(自治区内では「南モンゴル」)やチベットにも、同様の動きはある。中国国内に於いて、少数民族は漢民族に居場所を奪われつつある。だからこそ、イスラの心からの願いがこれであった。
「分かった。僕から、現政権に請願しておくよ。勿論、君にもその請願書に目を通してもらうつもりだ」
「――そう。ありがとうございます」
「ああ。僕も、国内の民族問題はどうにかならないものかと考えていたんだ。実は僕は月の育ちでね、どの人種の人も対等な関係だった。そんな中で育ったからかもしれない」
「月で育ったんですか」
「ああ。大学卒業まで、月にいた。出身は成都(チョンツー)だけどね」
イスラは、何故漢人であると思しき彼がウイグル人の自分たちに対して頭を下げたのかを理解した。そしてもしかしたら、中国系の彼は月で差別を受けていたかもしれないのだ。
地球と月の関係が悪化し始めた標準暦20年代以降に、彼は学生だったのだろう。冷戦構造が20年以上も続いているという異常事態の中で、彼はどんな肩身の狭い思いをしてきたのだろうか。
イスラは気の滅入りそうなその思考を、ため息と共に排除した。
「兎に角、これで決まりだな」
リウは立ち上がる。釣られるように、イスラも立ち上がった。
「もう、村に戻っても構わない。ただ、これを付けてくれ」
リウはイスラの手錠を外すと、ツール・ボックスから輪状の機械を取り出した。
「これは、発信機だ。あのヘリから1キロ離れると警報が鳴り、1.5キロ離れると脱走したと見做され、兵士が飛んでいく」
リウの指差す方に、輸送ヘリコプターがある。村は現地点から約400メートル離れており、一番輸送ヘリコプターから遠い地点でも、1キロメートルまで距離があるわけではない。
リウは輪をイスラの手首に通し、取れないように固定した。
「この輪っかを取ろうとしても脱走だと見做されるから、そんな事は考えないように」
「大丈夫です。もう、決めた事ですから」
固定したのを確認して、イスラはリウに一礼し、その場に背を向けた。
* * *
村では、男が総出で遺体の埋葬を行っていた。
傍らには、彼らの家族達がいる。葬儀の礼拝が、各所で繰り広げられている。
ミサイルの墜落でモスクが破壊されているので、簡易式の葬儀をする他無かった。
「おおアッラーよ。あなたが生を授けられた者がイスラームに則って生き、 あなたが死を与えられた者が信仰を抱いたまま死ぬよう御配慮下さいますよう」
アラビア語で、ドゥアーを捧げる声が各所で上がっている。
遺体は沐浴を施され、白布に包まれる。そして顔をキブラ(メッカの方角)に頭を向けて埋葬されるのだ。
余りに多くの人が殺された。誰もが、多くの物を喪失ってしまっていた。
セリム・ムハマドは、身寄りの無い子供たちの親代わりに、埋葬に同伴している。そして6人目の埋葬を終えて、彼は1歩、墓穴から引いた。
「おじさん」
力無く、彼を呼ぶ声がする。イスラだ。セリムは振り向かず、口を開いた。横にイスラが来る。
「抵抗したんだ、ヌーフは。『アイセルを助ける』と言って聞かず、撃たれた……」
「あたしが、要らない事に手を出したばっかりに……」
彼女は膝を折り、土をかけられていく遺体に手を伸ばす。
「……ごめんね……。ごめんね、ヌーフ……」
布に、1つずつ染みが付いていく。その染みも、やがて土で見えなくなってしまった。
イスラにとっても、教え子のような子供たちを喪った事は大きなショックだった。それが仮令何人でも、気持ちは然して変わらない。
土をかけ終えた。イスラは盛られた土を撫でながら、言う。
「セリムおじさん、あたしね、人民軍に、協力する事になったの」
「――そうか」
「……交換条件を出したの。今後一切の、自治区やウイグル人への弾圧を、停止する事。本当に飲んでくれるのかは分からないけど、『YES』の返事だけは、貰えたから……」
「その、代わりなんだな?」
「……うん。あたしは、中華人民共和国を守る事で、間接的にではあるけど、ウイグル自治区を守りたい。ううん、守る」
「それがイスラ、お前のなすべき事だと、お前は思うのか?」
「今の所はね。他の選択をするにしても、あたしには余りにも自由が無さ過ぎるから……」
イスラは拳を握った。決心にしては、余りにも情況に流され過ぎている。彼女自身、望んだ事ではなかった。しかし、それが最良の選択である事もまた、事実である。
セリムはイスラの顔を見た。悔しさなのか、口元が歪んでいる。
「イスラ」
彼の声に、彼女は顔を上げる。涙で、頬が盛大に濡れていた。セリムは言い放つ。
「お前は聡明だ。今後、様々に世界を知っていくだろう。誰から何を教えられようと、私は構わない。それでも、私が繰り返し言ってきたウイグル人としての誇りだけは、忘れないでいて欲しい」
イスラは頷く。
「お前の事だから、道を踏み外す事は無いと思う。それでも、気を付けろ。お前は名のとおり、《自由》だ。だからこそ、常に自らの道を省みろ。私からの、最後の授業だ」
「ありがとう、おじさん……」
「他の所にも、行ってやってくれ。皆、会いたがってる」
「……本当はね、村に戻るのが怖かった。だって、あたしの所為で、こんなに犠牲者が出たんだから。どんな顔で会っていいのか、分からなくて……。今も、まだ怖い」
「それでも、会いに行くんだ。今しなければならない事は、人が死んだ事を理解する事だ。そして、何を思って死んでいったのか、残された人々が何を思っているのかを知り、これも理解する事だ」
「――分かった。いろいろ、ありがとうね、おじさん」
「ああ」
「あ、そうだ。今夜、大人達皆を呼びたいんだけど、教室、残ってる?」
「残ってる。使うんなら、使ってくれ」
「うん」
イスラは様々な人たちの埋葬に、立ち会った。埋葬が終わった家庭に同伴して、共に祈ったりもした。ムスリムでもない自分がそうする事を、アッラーが許してくれているとは思えないが。
生前の話。どんな人だったか、そして、残された人たちの気持ち。イスラはその全てを、受け止める。
時には誹りも受けたし殴られもした。それでもイスラは、行為をやめない。
そして1人1人に、夜にセリムの教室に行くように言って回った。話したい事があるのだ、と。
* * *
「今夜集まってもらったのは、他でもなく、今後の事です」
イスラは教壇に立ち、言った。
聴衆は皆、床に敷かれているマットに座っている。円座の中央には、軽い食べ物。そして各人の前には、果実酒が注がれている。
視線が厳しいな。イスラは思った。
「まず単刀直入に言うと、今後、自治区やウイグル人に政府から何らかの弾圧があるか、若しくは被害が出るまでは、武力活動を停止していただきたい。同様の声明を、ウイグルの各部族にも出す予定です」
聴衆がどよめいた。
「何でそんな理不尽な事を!?」そんな声まで聞こえる。
「今日、逮捕者として人民軍の上尉から、尋問を受けました。その時に、『あたしを登用する』という案が向こうから提案され、それに返す形で、あたしから『登用するなら自治区やウイグル人への一切の弾圧を停止する事』を条件として出し、受理されました」
どよめきが停止する。それほどまでに、インパクトのある発言だったのだ。
「その条件が守られなければその時点で、あたしは東トルキスタンの独立を支援する存在になります。だから、何事も無い限りは、武力を行使した運動はやめていただきたいんです。行使すれば、それは間違いなくテロになる。それだけは、避けたいんです」
「質問は、あるかな?」
教室の隅に寄りかかって押し黙っていたセリムが、言った。皆の視線が彼に集まる。
「私は、それで納得した。もし私がイスラの立場にあれば、やはりそうするだろう」
「おじさん……」彼女は驚いて、セリムを見る。
「イスラ、続けなさい」
「あ、はい。……あたしは、彼の部下になる道を選びます。それが今のあたしにとって、最良の選択だから。彼の所属である人民軍の上位軍事機関、あたしはそこに所属して中国を守る事になりますが、それがウイグルを守る事に繋がるのなら、あたしは務めを果たします」
静寂が、空間を包む。
1人が、手を挙げた。殺された子の、父親だ。
「いいか?」
「どうぞ」
「あんたは、中国が約束を守ると思ってるか?」
イスラは彼を見据えた。子供を殺される原因となった娘を、睨んでいる。あまつさえ、勝手な事を言っている。その声は、震えていた。
「いいえ」
「だったら「しかし!」男の言葉は、最後まで紡がれない。
「北京政府も、莫迦だらけの集団ではありません。皆さんは、巨人兵器を見ましたか?」
「ああ、見た」同じ様な声が、そこここで上がる。
「アレに乗れるのがあたしだけらしいんです。アレは、従来の兵器とは違います。高い機動性を持ち、様々に兵装を換える事が出来る。それに乗れる唯一の人間であるあたしに、利用価値が無いとは思えません」
自信、ではない。まして自惚れでもない。リウの言った事を要約すると、そうなるだけの事だった。
「罷り間違って全てが上手くいってしまえば、あたしは利用されるだけ利用されて、殺されるでしょう。そしてウイグルは、北京政府によって完全に乗っ取られる。政府には、弾圧をやってもらわないと困るんです。何も、弾圧がいい事であるとは思いませんが」
イスラは全員を見渡す。彼らとて、感情だけで行動するような者達ではない。
この時ばかりは、20歳代の人がいない事に安心してしまう。もし彼らがいればそれこそ、感情で動いて民族浄化の憂き目に遭うのは目に見えていた。
「決して、感情に流されて動かないで下さい。感情に行動を乗っ取られたまさにその時、あたし達は、ウイグルは滅びてしまうでしょう」
厳しい視線は、既に消えていた。
「……今夜はお集まりいただき、ありがとうございます。あたしは明日ここを発って、北京に向かいます。それ以降、会う事はもう、無いでしょう。それでは」
イスラは教室を出て行こうとする。その前に、立ち止まった。
「ああ、そうそう。もし何かあったら、あたしの家に避難してください。通信機器や保存用の食料があります」
今度こそ、イスラは立ち去った。
* * *
「じゃあ、おじさん、皆の事、宜しくね」
朝。村の外れに、村の人々の殆どが来ていた。イスラの後ろにはリウがいる。彼女の手には手錠がはめられていた。
「ああ。――イスラに、アッラーの導きあれ」
「うん。……ありがとう。皆も、元気でね」
彼女は、セリムに同伴した子供たちの頭を撫でた。
「皆さんも、どうか、健やかに。それでは、さようなら」
イスラは村人たちに背を向けた。頬を、光が伝った。
子供らの叫び声が聞こえる。声は輸送ヘリコプターのローター音にかき消されていく。
ふと、イスラは振り返った。ちら、と、村人たちが見える。子供らは手を振っている。
最後に見えたのが彼らで、本当に良かった。彼女は微笑う。
輸送ヘリの搬入口が、閉じた。
第3話がやっと終わりました
長かったよ、ホント
《豆知識》
中国人民解放軍(2000年以後)
●将官
上将
中将
少将
●佐官(中国語では校官)
大校
上校
中校
少校
●尉官
上尉 アトロ・リウ(劉 阿拓)
中尉
少尉 奉 爽
●下士官(中国語では士官)
六級士官 曹 舷衛
五級士官
四級士官
三級士官
二級士官
一級士官
●兵
上等兵
(陸軍・空軍)列兵、(海軍)水兵
>>183 祝アク禁解除!そしてGJ!
少々長かろうが読まされてしまう…表現上手いなぁ
一つ質問〜
劉ことアトロが言う『專軍』ってのは、
Zでいうティターンズみたいな組織なんですか?
陸軍じゃねぇって奉爽にバカにされてる?みたいですが…
下がりすぎてるのでage
>>184 お褒めにあずかり恐縮至極
ティターンズがわからない俺は種から入った輩だったり
《專軍》
中央軍事委員会とは別に組織された架空の上位軍事組織で、共産党直属。要は種のフェイスみたいなもの
特殊部隊でもあり、陸海空各軍の指揮・戦術顧問でもあり、各軍の監視機関でもある
その信条としては、「人民を守るための軍を目指す事」であり、共産党や総書記の護衛部隊では必ずしもない
各軍にあった特殊部隊を統合したもので、各軍とは別個に動く
また、標準暦年間に改訂された軍法を遵守し、それに則った姿勢で陸海空軍を指揮する
各軍の士官たちの監視も役目で、場合によっては将官でさえも、專軍による弾劾を受ける事になる。
だから「腐敗した(または下劣な)士官の一例」である奉は、專軍を目の敵にしている
こんな設定なのよ
>>186 わざわざ説明どーもです
そうかフェイスか…フェイス…
いまいちフェイス(つーか種)をよく知らない俺orz
でも專軍はわかりました…よ?w
いま有り余る暇をもって第四話を構(妄)想中です
三話がイスラ側onlyだったので、ミツルsideをメインでやりたいな、と
最初のほうはそれなりに書けるんですが続かない…
あらためてSS書くのって大変ですねww
遅くとも日曜までには形にできるかな…
と予告もどきをしてみたり
>>183 続き来てたー!w
ついにイスラは物語のスタートラインに立った訳か…
これからどんなストーリーが紡がれるのか楽しみだw
しかしアトロが事の他いい人だった…野性味溢れる野心家っぽく
描いてしまったなぁ…どーすっか。
>>187 俺もよくわかんないけどフェイスってザフト軍と別系統の独立部隊だったような。
連邦によるジオン殲滅部隊のティターンズとは似て非なるもの、みたいな。
むしろエゥーゴばっか追いかけててそんな印象欠片もないけどw
続き頑張れ! 待ってるよw
実は今まで描いてた奴がいきなり気に食わなくなって描き直してるorz
気分変えようとちょこっと字を書き始めたけど…どうなる事やら。
>>188 うーん…1stとZの知識だけじゃやっぱつらいっすよね…
せっかく暇なんだし種を無印から観直すことにします
描き直し頑張ってください。どう変わるのか楽しみだw
第四話、全力執筆中です。結局COMS側onlyになりそうです
しかも戦闘描写がまたもありませんorz
何か会話文ばっかりなので、只今状況描写を拡充中…
でも稚拙ながら伏線が(んな大層なものでもないが)敷いてあるつもりです
. ∧_∧
(´・ω・)
/ \
__| | | |_
||\ \
||\\ \
|| \\ \. ∧_∧
. \\ \ ( ) ほかに言う事ねーのかよサル
. \\ \ / ヽ
. \\ / | | .|
. \∧_∧ (⌒\|___/ /
( )つまんねーんだよお前 ∧_∧
_/ ヽ \ ( ) ギャハハ泣かすなよオメーら
| ヽ \ / ヽ、
| |ヽ、二⌒) / | | |
金曜までに第4話掲載予定
「日曜まで形にする」とは言いました。一応形だけはできてますが、
どうしたらいいか言ってください。
できればもう少し時間をかけて完成度を上げたい…
結局言うだけ言ってできなかった俺は負け組orz
>>193 まぁこればっかは本人に決めてもらわないとなぁ…。
とりあえず書くだけ書いておいたら?
かくいう俺はまるで2話イラの描き直しに手を付けてないわけだがorz
字を書くのは大変だよホント…。
>>193 勝手な言動スマソ
イスラ側とミツル側で、リンクはすれども別個の話にするとか、いかが?
とはいえこの案は俺の書いた方を優先させる形になるのだが・・・
もちそちらの作品を4話にするのであれば、俺が合わせる
《参考までに、年表》
S.A.18 宇宙開発機構と企業との癒着、汚職が発覚。アトロ出生
19 「嵐の大洋」ボイコット。月独立宣言
20 COMS成立
21 南側諸国、制裁被害
22 アトロ、家族と共に月へ。南側諸国、COMS加盟
23 冷戦突入
24 PGUG諸国、エネルギー問題に直面
25 月の介入により、南北経済格差が初めて縮まる
26 PGUG諸国、水素−重水素核融合が主流に
29 カムチャッカの核融合発電所で事故
30 ミツル出生
31 ユァン・ホルシード、実験中の事故で死亡
32 COMS、Σシステムの開発に成功。イスラ出生
33 COMS、モビル・スーツ開発に着手
34 イハン・エスキ、ノーベル物理学賞授与
35 イハン、中国への軍属を拒否、殺害
37 Σシステムのモビル・スーツへの応用方確立
40 アトロ、COMS軍属
44 PGUG、“月蝕”開発に着手。L3
46 ミツル、COMS軍属
47 COMS、ガンダム開発に着手
48 アトロ、COMSから離脱
49 開戦
>>195 …できるだけ書いてみることにします。
ただ、どうも手が進まない…構想自体は結構できてるのに
2話イラ頑張って…って人の事言う余裕も無いかも…
>>196 別個リンク案、そうしましょう。いやそうさせて下さいorz
元はと言えば割って入った俺が悪いのであって…
是非そちらを4話にして下さい。あと年表どうもです。参考になりました
暇とは一転、時間が欲しい俺。手が進まない…
198 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 09:54:37 ID:1RfiFunZ
定期あげ
保守替わりにちょっとずつ俺のネタ投下しようと思います。
ちまちま進めていく所存。
>>197 あんまり気を張らず楽しんでやればいいと思うよ。
――――A.S.(宇宙進出暦)82年
一部の研究者達が地球から新天地を構えるべく手近な天体である月へと移住し、
過酷な空間と戦いながらも安定した生活環境を整え第二世代が誕生してから20年。
その頃には地球は月に住まう住人(ルナ・レジデント)を軽視し、自らの利を求め
彼らに対して過剰な労働・搾取を強制し彼らを疲弊させていた。
それに抗うべくルナ・レジデントは密かに集め製作していた武力を持って地球圏
統一政府に向けて独立を表明。
以降8年間、冷戦状態となり一部の月縁の地以外地球と月との交信は絶たれ、
膠着状態が続いていた。
そしてA.S.90年、物語は始まる――――
乾季の草原を一台のフロート・バイクが砂煙を立てて走り抜ける。
砂にまみれる長い黒髪を気にすることなくなびかせて、その人物はゴーグル越しに自らの
進路を睨みつけていた。
「あっちぃー。ったくあんのクソジジィ、あんなだだっ広いとこ調べろなんざ…やる気あんのかホントに」
バイクに組み込んだレーダーをちらちらと確認しながら、このインドシナ共和国の東端……
かつて「ベトナム」と呼ばれていた国の南北の境い目、ハイヴァン峠へ向かって行く。
その人物―シェーナ・ボーン、情報屋兼便利屋である―はハイヴァン峠での探索を依頼されたのだ。
事は2日前に遡る。
かつてのタイを筆頭にした中立国・インドシナ共和国ベトナム領の一都市クアンガイ。
熱帯モンスーン気候区に該当するこの地域は現在乾季を向かえ、厳しい直射日光と暑さを容赦なく
そこに住まう存在(もの)達に与えていた。
この時期地上を移動する人間は少なく、大抵は地下に作られた施設を利用して移動したり余暇を
過ごす。人によっては地上にごく近い浅い箇所を使ってサンルームにしてしまう程だ。
ただし乾季にはこうして賑わうが、雨季は水没の危険があるためあまり使用されない。
さて、そんな地下街「ホアセン‐Y」―ベトナム語で「蓮の花」。かつての国花―のとある一角、繁華
街の更に奥まった場所にある一軒の酒場での出来事。
「地形調査ぁ?!」
店の奥、薄い扉で仕切られた部屋の中。ごく狭い室内で、素っ頓狂な声が響いた。
「そうです。貴方程の腕を持つ方にこんな依頼するのは気が引けますが、何分確実性を求めたい」
続いて初老の男性の落ち着いた声が聞こえてくる。
多少声を窄めているように聞こえるのは、恐らく気のせいではないだろう。
「っと悪い。そんで? こんなとこになんの価値があんの?」
一人は黒い髪を無造作に結い上げ、若干色素の薄い鳶色の瞳を輝かせたまだ歳若い人物。
一人はもうすっかり白くなった髪をきちんとまとめ、表情の読みづらい薄く色の入った丸眼鏡をかけた
紳士的な人物。
まるで対照的な二人が一つのテーブルを挟んで向かい合っていた。
「申し訳ないがシェーナさん、それは私からはお教えできません。しかし、貴方次第できっと判りますよ」
眼鏡の奥で柔らかく微笑む。
「……んだと?」
自分を試すようなその口調に思わず渋面を作る。
プロとして、そんな事を言われたらこの仕事を請けるしかないだろう―そんな様子が見て取れる。
そこへ
「報酬は3000万。必要とあらば資材も人手もご用意致しましょう」
最後の一押しと言わんばかりのこの言葉。
ただの地形調査にしては破格の報酬に、思わず目を丸くしてしまう。
「へぇ、随分大きく出たね。とは言っても…紙切れじゃ困るんだけど? ハイモンのじーさまよ」
「承知していますよ。前金として500万用意致しました。こちらで如何ですかな?」
ハイモンと呼ばれた老人は、相手の態度の大きさにまるで気分を害することなく足元に置いてあった
トランクの中から小さなケースを取り出すと、それををテーブルに乗せシェーナに見えるように開いた。
「―――――♪」
そこに現れた黄金色の輝きに思わず口笛を吹く。
掌に乗せられる程の小さな金の板。それがケースの中に3枚納まっていた。
「よぉっし、商談成立!」
この酒場のマスター、ジョージはこの店に相応しくない身なりの良い紳士が店を出てその姿を消したのを
確認すると、即座に「CLOSE」の札を掛けて彼らが話をしていた一室へと入っていった。
「おいシェーナ! 今回は随分地味な仕事みたいだな!」
案の定先程の叫び声は薄いドアを貫通し、彼の耳にも届いていたようである。
「へへ、意外とそうでも無いみたいよ?」
唐突にドアを開けて入ってきた大柄な男性に動じることなく何かを書き付けていた手を止めると、
その男を見上げてにやりと笑って見せた。
そして左手に持っていたペンでテーブルの上に置いたままのケースを指す。
「ほぉう、こりゃすげぇ」
中身を見たジョージは思わず感嘆の声を上げた。
「ハイヴァン峠を調べろってさ。まずは下調べに行くけど…その間にコレ届けといてよ」
今何かを書いていた紙を封筒に入れ、しっかり封印すると目の前の男に渡す。
「なんだ? こりゃ」
「あのじーさんがどっちの陣営かわかんねーからその保険」
「ふむ。内容はわからんが…警戒してるんだな?」
「当然じゃん、金持ってるみたいだし調べたいならいくらでも専門家に頼めるだろうにわざわざここまで
依頼にくるんだからさ」
言外に相手はあまり大規模に探索を行えない立場だという推測を伝える。
ここインドシナ共和国は統一政府にも月にも属さない中立国という形を取ってはいるが、実際には
アメリカ・中国を中心とした統一政府に圧力を加えられていた。
彼らに反抗しない事を前提に中立国となる事を許された、属国に等しい国なのである。
一般市民には大した問題は出ていないが、政治的・軍事的には立場の苦しさが如実に現れている。
中立国であるため統一政府に口を挟む事はできず、大国の圧力下にある為ロクに軍備も整えられない。
他の中立国とは雲泥の差だ。
この国自身にそういった背景がある為シェーナを初めとする便利屋・情報屋は、特に政治や軍に関わり
そうな依頼や情報を扱う際に相当の注意を払う。
下手な相手に迂闊な情報を与えると、自分ごと住んでいる場所を焼き払われる可能性があるからだ。
しかし情報には正確さが要求される以上、改竄や捏造をする訳にもいかない。
結局のところ信用と口コミで成り立っている商売なのだ。
「だが請けたんだろう?」
「そりゃあ。最近はあんまいい仕事もなかったからありがたいよ」
そういいながら席を立つ。
例のケースをしっかりしまい、硬貨を数枚男に渡すと、「じゃーな」と店から出て行った。
そして冒頭へと戻るのである。
短いけどまずはここまでー。
1−2は現在のんびり執筆中。
いろいろおかしい所はあると思うけど、フィクションという事で一つ。
あげ
/⌒ヽ
/ ^ ω^j、
_, ‐'´ \ / `ー、_
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
{ 、 ノ、 | _,,ム,_ ノl
\ \`ヽ-‐'´ ̄`冖ー-く ∧_∧
||\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ( ;´Д`) (オイ、あれコマンドーじゃね?)
||\\ \ / ヽ.
|| \\ / .| | |
. \∧_∧ (⌒\|__./ ./
( ´,_・・`)すげームキムキ \ ∧_∧
. _/ ヽ \ ( ) さすが、言うことが違うね
標準暦(S.A.)49年6月15日。
中華人民共和国新疆ウイグル自治区西部の都市、カシュガル西方約100キロメートル付近に大気圏外から落下物。その後、同地域で小規模な武力衝突発生。
同21日。
COMS行政府がPGUGを通じ、中華人民共和国政府に対して落下拾得物の返還を要請。中国政府に反応無し。
その後、十数回に亘ってCOMS行政府は中国政府に返還を要請しているが、明確な回答は無し。
そしてこの日、同年8月24日、20回目の返還要請がCOMS行政府により通達された。
『COMSは今回の声明に関して、[これ以上返還要請を無視し続けるのであれば、国際司法局への提訴や、他の手段の行使もあり得る]とも付け加え、地球・月間の開戦も危惧されています。以上、エジプト、カイロから、サビーナ・ハンバーラがお伝えしました』
支給されたB5サイズの情報端末――ラップ・トップ型コンピュータ――でテレビを見ながら、イスラは紙コップの中の茶を飲み干した。テレビの音声は、アラビア語だ。
『次のニュースです。2ヶ月前にタジキスタンとイランの合同軍が中国の領域を侵犯したという事件を受け、中国政府は、[軍事行為を他国の領土でする事を容認する両国を、今後中国への侵略する惧れのある国として危険視する]と述べ、……』
「あ、義蘇(イースゥ)」
「はい? ああ、黄(フアン)さんか。どうしたんですか?」
イスラは漢人女性、黄紋香(フアン・ウェンシァン)に話しかけられ、反応する。黄はイスラの所属する《專軍開発部特務第8局》――通称《特務8局》――の研究員だ。主にセレーネに積んでいる量子コンピュータの調整を担当している。
彼女らは今、食堂にいる。イスラと黄以外には誰もいないが、昼時を少し過ぎた空間には微かながら、人間のいた雰囲気が漂っている。
黄は盆に炒飯と麻婆豆腐を載せて、イスラの向かいの席に座っていた。
「義蘇はお昼食べた?」
「ええ、もう食べ終えました今は、日記を書いてる最中です。日課なんです」
「へーえ、日記なんてつけてるんだ。所で、今見てるのニュース?」
「ええ。アル=ジャジーラを」
「えっ? また何でそんな所のを?」
「だって中国国内のテレビ局は、どれも報道規制が敷かれてて、正しい情報が流されないんですよ。日本の衛星テレビ局なら、ちゃんと事実を伝えてるらしいんですけど、あたし、日本語は分からないから。他の衛星テレビ局のは、圏外ですし」
「ASEANのは戦争中だからダメだとして、オーストラリアは?」
「見てますよ。インドの英語局もそうだけど、英語よりアラビア語の方が聞き慣れてるから、アル=ジャジーラにしてるってだけで」
「ふうん……」
イスラは端末を黄に向ける。しかし、アラビア語の音声もアラビア文字も、彼女には理解不能の範疇のようだった。
イスラは黄の表情が、せめて映像から情況を推測しようとしているものになっている事に気付いた。
「北京語に同時に通訳しますね。えっと――」
『今日付けでCOMS地上理事国になったタジキスタンのメルフラ・アッバス代表は、記者団に対し、
[我が国を危険視したという中国を、更に我々は危険視しなければならない。中国による周辺国の見方が変わる時、本当の中央・東アジア和平、曳いては世界平和に繋がるのだ]
と述べ……』
アナウンサーの言葉に、黄は昼食を租借しながら頷いた。
「うんうん。さてね、通常の人民軍は、この事をどれくらい理解してるんだろうねえ……?」
「……全然理解してないんじゃないですか? その為の《專軍》ですし。それに共産党も、全く理解していないと思います」
「そうだよね〜」
北京政府の陰口を言い合いながら、彼女らはテレビを見る。既にイスラは、インドの英語話者向けの衛星放送にチャンネルを切り替えていた。アル=ジャジーラを同じ様な事が、報道されていた。
オーストラリア、シドニーで行われた国際マラソン(PGUG加盟国のみ)のニュースになると、黄は話題を変えた。
「セレーネの様子は、どう?」
「セレーネですか? もう、慣れました。友達と話しているようで、最近ではとても気が楽です」
「あの娘、イスラには容赦ないもんね。まあ、それだけ心を許せてるんでしょ」
「……人工知能に、《心》なんて表現、使っていいんですか? まして科学者が」
「うーん……、セレーネはね、《人工知能》というより、《人工意識》っていった方がイメージが伝わると思う」
言いながら、黄は最後の炒飯を口に運んだ。
「どう、違うんですか?」
「劉さんに教えてもらわなかった?」
「……ええ」
「まったく、しっかりしてるんだか抜けてるんだか……。《人工意識》ってのはね、機械に存在する人間と同様の思考能力、若しくはそれを持っている機械の事を言うの。《人工知能》は、人間の健常者と、一応コミュニケートが出来るものの事」
「《人工意識》は、《人工知能》に内包出来る存在なんですね?」
「そういう事。人工知能はただ話者と受け答えするだけだけど、人工意識は自分から意見も言うし、気に入らない事に悪口だって言うわけ」
「じゃあ」イスラは居住まいを直した。「セレーネは、人工知能から人工意識に進化した?」
2ヶ月前、確かにセレーネは受け答えしかしなかった。イスラが北京に来て、天津(ティエンチン)で1ヶ月ぶりにセレーネを起動した時、その雰囲気の変容に彼女は始終戸惑っていたのだ。
起動中、セレーネは訓練や点検に全く関係のない話題でイスラを困らせていたが、彼女はそれを改めて思うと、《色々な事を知っていて色々な事を知らない子供》を相手にしているように思えていた。
2ヶ月前は、ただのパイロットとオペレータだった。
「機械の《進化》、か。面白そうな研究になりそうな話題だね」
「セレーネは2ヶ月前、燃料気化爆弾の衝撃を受けました。その時コンピュータが、自己防衛策として通常ではあり得ないアップグレードを自らに施した、とか……」
「《進化》は別の環境に適応するために為されるものだけど、あの娘の場合は違いそう」
「……じゃあ、《進化》というより《突然変異》ですかね。衝撃でプログラムが狂って出来た自我なんです、多分」
「突然変異は、進化に付き物だよ。変異体は次の段階へ進化するための分岐の1つに過ぎない。セレーネは、人工知能の分岐の1つ、可能性の1つ、ってわけ」
「人工知能の突然変異種として、セレーネは自我を、心を手に入れた。……人工意識になった。あたしは、セレーネの《進化の可能性》に、立ち会ったんだ……」
イスラは感慨深く呟いた。胸元に右手を当て、そして微笑む。
その表情は本当に嬉しそうで――黄は、その表情から目を逸らした。
『臨時ニュースです』
その英語に、2人は同時に端末を見る。
『先程、中国が正式に、タジキスタンに対する宣戦を決定しました』
イスラは立ち上がろうとした姿勢のまま硬直し、黄は飲み干して空になった紙コップをテーブルに落とした。
『中国国会(全国人大)の席で李閏翔(リ・ヅゥンシァン)国家主席は、
[タジキスタンは我が中国の領域を侵犯し、あまつさえ現在西域をCOMS側に組み込もうとしている。中国は1つでなければならない。よって、それを阻害するものに容赦はしない]
と述べ、賛成の圧倒的多数で宣戦布告が可決されました』
全国人大――全国人民代表大会――では、PGUG所属以外のテレビ局にも報道の許可が下りたという異例の事態となった。
全世界に向けて発信されたその決定は、その日の翌日、8月25日に中国はタジキスタンに対して戦争を仕掛ける、というものであった。
タジキスタンは8月24日付けで、COMSの地上理事国に就任した。中国のタジキスタンへの宣戦決定は、つまりCOMSに対する宣戦という事態になり得るのだ。それを承知で、北京政府は敢えてこの日に宣戦を決定したのだ。
西域、新疆ウイグル自治区タジキスタン国境付近には、既に陸軍と空軍が展開しているようであった。
食道の入り口を壊すかの勢いで、リウが入ってきた。
「そこにいたか。政府がタジキスタンに宣戦を決定した!」
「劉さん……。リアルタイムで見てました」黄が正気に戻り、答えた。
「そうか。それで、僕たちにも辞令が下った」
イスラは少し遅れて、リウを見た。
「ウイグルに行くんですか?」
身を乗り出しつつ、彼女はリウを凝視する。彼の表情は、分からない。
「違う。宣戦決定の直後、ASEANが正式にCOMSに加盟して、同時に中国に改めて宣戦を布告してきた。
現在、南中国海に向かって敵艦隊が進行中。あと、広州軍区に向けてASEAN合同軍が進軍中。我々《特務8局》は、南中国海に展開する事になった」
南中国海――南シナ海――。中国の南東方、台湾の南方、フィリピンの西方、マレーシア、ヴェトナムの東方、インドネシア、ブルネイの北方にある海だ。
「そこに、あたしたちが?」
「そうだ。あんまりに急に決まったんで、今から準備しなくちゃいけない。セレーネは兵装ごと、直接天津から湛江(ツァンジァン)海軍基地に輸送機で送る。義蘇、君はセレーネの中に入って、いつでも起動出来るようにしておいてくれ」
湛江は、広東省南部の省直轄市である。そしてまた、中国海軍南海艦隊の司令部が所在する軍港都市でもある。
「殺し合うんですか、また?」
「そうならない事を祈るよ」
リウは足早に食堂を出て行った。祈りは届きそうにもないな。イスラはその背を見送る。
「私たちも、行かなきゃ」黄はイスラに目を向けて、言った。
端末の電源を切り、それを畳む。イスラは端末を持ち上げると同時に、黄の目を見た。
「――はいっ」
* * *
輸送機が立て続けに天津濱海国際空港を飛び立った。
現在、中国国内からの国際交通路は完全に寸断されている。国内線の航空路も、よっぽどの事がない限り、民間人は乗れなかった。
4番目に飛び立つ輸送機。それに、イスラたちは乗っている。勿論、セレーネ・ガンダムと共に。
輸送機は敵に遭遇する事無く、約7時間で湛江の海軍飛行場に到着し、素早く艦隊への荷詰めが行われた。
現在は午後5時半。COMSの艦隊はシンガポールを経由してASEAN各国艦隊と合流し、南中国海を北上する進路を取っている。
中国南海艦隊の出撃予定時刻は午後6時半。その時刻に出撃して敵艦隊と邂逅するポイントは、南沙群島(スプラトリー諸島)付近だ。
《やっほ、イスラ、おはよ》
セレーネ・ガンダムを起動するなり、イスラはそう声を掛けられた。面食らいつつ、彼女は口を開く。ヴァイザーを被っているため、まだ視界は真っ暗だ。
「実は今、夕方なんだけど。って、今から戦争始まるってのに、暢気な口調だね」
《そりゃどうも。あ、指紋と虹彩と音声を認識するから、とりあえず指、動かさないで》
「了解」
指紋……認証
虹彩……認証
音声……認証
アラビア文字が視界に入る。その丁度2秒後、視界が開けた。
《広州軍区と成都軍区が頑張ってるけど、押され気味だね》
「何の話?」
イスラは空中に出た――ヴァイザー内のイメージ画像――キーボードを叩き、実働プログラムの最終チェックに追われていた。
《ASEANと中国の陸戦》
「今からあたしたちが行くのは、南中国海。陸の事に構ってなんかいられないんだよ。プログラム最終チェック終了。システムをスリープ状態に移行。電気は節約しなきゃ」
一度、ヴァイザー内が暗黒に包まれる。しかし、ウィンドウが開いて《音声限定》というアラビア文字が出た。
《兵装の確認はしなくていいの?》セレーネだった。
「もうしたけど、不備があったの?」
《うん。プラズマ・ライフルを抜かしてた》
「ああ、あれ、射程が短いから、あんまり使えなさそうだったし、除外しといた」
《使えない訳じゃないんだから、リストに加えるくらいしたら?》
「……あんたがそう言うんなら、そうしとくよ」
《ありがと。お礼ってんじゃないけど、わたしがリストに加えとくから。イスラはゆっくり休んでて》
「――分かった。ありがとうね」
その言葉で、ウィンドウが消えた。
* * *
モビル・スーツの操縦は、操縦者の脳波や頭皮に流れる微弱な電流を機械が感知する事で、行われる。
ただ、それでカヴァー出来る動作が限られているため、操縦桿やフット・ペダル、スロットルなどの機械が必要になるのだ。
また、通常モビル・スーツに搭載されている人工知能は多くの場合、他機と共同で使用される。というより、一箇所にある人工知能を各機に繋ぐ、という表現の方が適切だろう。
月や地球にある一定の地点に設置された《拠点》となる量子コンピュータが各機に人工知能を提供し、並列計算によって各機個々に情報のモニタリングや敵の推定移動地点の表示、戦術のアドヴァイスなどを行うのである。
このシステムの欠点は、《拠点》からモビル・スーツが離れれば離れるほど、量子コンピュータの影響から逃れてしまう事だ。
《ガンダム》という試作機の場合はそれに当てはまらない。何故なら、機体に量子コンピュータが予め組み込まれているからである。そのため、《拠点》に関係無く行動する事が出来るのだ。
「だから、俺がかり出されてるってわけですね?」
ミツル・ホルシードはパイプ椅子に座りながら、COMSの迎撃艦隊旗艦・空母《シン》の操縦室にいる。因みに《シン》は、バビロニア神話に出てくる月の神の名前である。
「そうなる。《ヘリオス》は既に《プテリュクス》に装着済みだ」
余計な事を。ミツルは思うが、敢えて口には出さない。その代わり、脚を組みなおして大きくため息をついた。
「相手の兵力は?」ミツルの目が、艦隊指令、ウィリアム・グナイストに向いた。
「相当なものがあるだろうが、数で行けばこちらの方が多い。ただ、あの国の海戦力には謎が多いからな、気を引き締めるに越した事は無い」
ミツルは一度首を縦に振ると、後ろにいた兵にパイプ椅子を渡し、
「では、機体の最終チェックに行きますので、これで」
そう言って敬礼し、艦橋を出て行った。
* * *
午後6時32分。
南海艦隊旗艦・イージス艦《南昌(ナンツァン)》が湛江の軍港を出港した。
続いて空母《城月(ツェンユエ)》が出港する。これに、イスラたちが乗っていた。
邂逅予想ポイント到達まであと約6時間。そして、中国−タジキスタンの開戦まであと5時間28分となった。
「これがあたしの進んだ道だ。なら、ならなゃ……!」
背中に重力を感じながら、イスラは1人、呟いた。
暗黒に、日付と現在時刻だけが浮かんでいた。
今回は少し短め……か?
ついに開戦
そして初戦が海戦とは、おあとがよろしいようで
ちなみにサブタイトルは「喇叭」
「ラッパ」と読みます
. ∧_∧
(´・ω・)
/ \
__| | | |_
||\ \
||\\ \
|| \\ \. ∧_∧
. \\ \ ( ) ほかに言う事ねーのかよサル
. \\ \ / ヽ
. \\ / | | .|
. \∧_∧ (⌒\|___/ /
( )つまんねーんだよお前 ∧_∧
_/ ヽ \ ( ) ギャハハ泣かすなよオメーら
| ヽ \ / ヽ、
| |ヽ、二⌒) / | | |
.
216 :
139:2006/03/13(月) 03:02:04 ID:???
おお、しばらく見てないうちにjCOt2dXQRg氏も書き始めたんですね。
まだ序盤のさわり部分だからまだ何ともいえないけど、絵共々じっくり頑張って欲しいです。
こっちは設定考えているうちに「こんなのガンダムじゃねぇ」ってレベルになってきたので頭抱えてます。
ところでセレーネの3話4話読んでて疑問に思ったんだけど、この世界のMSの認知度ってどんな感じなんだろ。
2話に登場した人民軍のヘリのパイロットはMSの存在すら知らなかったようだけど、
3話のアトロの「モビル・スーツ部門での登用」といっている事から
少なくても專軍はMSの存在を知っているどころか、ある程度の運用すら出来ているみたいだし(月出身のアトロが特別詳しいっていうのもあるだろうけど)。
「軍の上層部は密かにMSを試験的に運用できる段階だけど下っ端連中は存在すら知らなかった」というのが、
3話までの中国人民軍のMSに対する認識なのかな。そこら辺が妙に気になりました。
>>216 それに関しては次の投下で判明する予定、実は
>>213 フリガナ付けるくらいなら始めからカタカナで書けばいいのに。
ども、一週間ぶりです。だいぶ増えてますね
ついにjCOt2dXQRg氏がSSを……やばい、先越されたww
俺も頑張らねば。
そしてg67M1F1GV.氏、第四話乙です
いつものように一つ質問
ヘリオスがくっついてる《プテリュクス》って、
後付の飛行ユニットみたいなものですか?
俺はこれ読んだときドダイにのってるグフが頭に浮かんだのですが
139氏……イザーク? …いえ、何でもないですw
MSの認知度ですか…
やばい俺疑問にすら思わなかったorz読み直してきます…
いまさらで何ですが、俺も晒そうと思います。
四話の最後にミツルがちらっと出てたので、そこまでの経緯ってことで
もしg67M1F1GV.氏がこの部分を執筆中でしたらすみません
まぁお気に召さなかったらシカトしてくれて構いませんのでwwでは…
「……しっかしよぉ」
缶コーヒー片手に男達が愚痴り合っている。
「いくらなんでもあの言い方はねぇっすよねぇ、曹長」
バンダナをした茶髪の少年。一人だけオレンジジュースを手にしているその彼に、
曹長、そう呼ばれた少年は安物の紙煙草を吹かし、窓の外を眺めていた。一人だけ輪から身を引いている。
「わざわざあんなとこまで出張ってったのは誰だっつーの。なぁ?」
「そうだぜ。大体何なんだあの女、偉そうにさ」
――女? ……彼女のことか?
ミツルが喧騒に耳を傾ける。
「いきなり頭ごなしに怒鳴りつけてさ。あーあ、ああいう上司ってやだなぁ」
「何でこうなったかぐらい知ってるくせに、何なんだよなぁ」
・ ・ ・
――あぁ、何だそっちか。
ミツルは壮大にため息をついた。
煙草の煙で誤魔化したつもりだったが、どうやら彼には気付かれてしまったようだ。
「ねぇ、聞いてんすか曹長? ため息なんかついてないで何か言って下さいよぉ」
そのバンダナの少年に呼ばれても、ミツルは彼に顔を向けない。
「そっとしといてやれよ、アドルフ」
男の一人が制した。空き缶を灰皿に煙草を吸っている。ミツルのものより上物だ。
「どうせ隊長はオレとの賭けに負けて凹んでるだけだって」
「アレクセイ……もうそれ何回も聞いた」
冷たい視線が男に刺さる。
「……冗談だっつーの」咳払いを一つ。
「まぁ、結果が全てだよな。……結局俺達は何も出来なかったわけだし」
男達が静まる。気まずい沈黙。
それでもミツルは彼等に顔を背けたまま、延々と続く砂の海を眺めていた。
イスラが別れに涙していた頃……
アフガニスタン西部を駆ける車輌群。
その中でも一際大きなものを、他の車輌が護るようにして、砂漠の街道を一路西へひた走っていた。
「いくら大事だからって、護衛付けすぎだろ」
一人がしみじみと呟く。テーブルの上の缶は微動だにしないし、窓の外の景色もあまり変わらない。
しかし、隣を走る車両を見る(天井を見下ろす)限り、相当な速度が出ていることは確かだ。
「……逃げやしねぇってのに」
セレーネが爆撃を受けた直後、管制から即時撤退命令が入った。
主張はした。だが結局、セレーネの回収は放棄された。試作機1機より稼動機6機。確かに妥当な判断ではある。
だがもしも、仮に俺が司令官――到底有り得ないが、もしそうだったとして――だったら、
同じ判断はできなかった。いや……しなかっただろう。
俺は、中国政府がセレーネを返してくれるとは思っていない。
これは、COMSの人間として。曲がりなりにも中国という国を知る人間として。
そして、一軍人としての……率直な意見だ。
現に撤退から半日もしないうちに、非公式ではあるが行政府はPGUGを通じ返還要請を通達したものの、
今までに中国側からの返答は無い。第一、PGUGがちゃんと動いたかどうかすら疑わしい。
やはりあの場で多少リスクを冒してでも、セレーネの回収を強行すべきだったんじゃないか……。
結果論かもしれない。だが、割り切ることもできず、頭から離れず、車中、ずっと悩ませられている。
国境付近で待機していた部隊と合流、そのまま営地へ戻るものと思っていたが、
補給と交代、そして兵の休養のため、COMSの拠点であるテヘランに帰投することになった。
だがそれが建前である事は明白だ。――つーか普通小隊一つだけ帰投させるなんてありえねぇし。
おそらく俺達は今回の失態の責任を問われることになるのだろう。
太陽を追うように、空いた街道を飛ばす一団。
ついさっきちょっとした交信があった。そして先程の喧騒があり、今に至るのである。
――ずっと考えているが、未だに疑問だ。あの女、何で……
「どしたんすか?」
「ん……いや」
アドルフの方を向き、ばつが悪そうに笑うミツル。
「……言い訳だよな、これじゃ」
「曹長ぉ?」
短くなった煙草を空き缶で揉み消し、彼等に向き直る。
「何でもない、忘れてくれ。それより、そろそろ国境越えるぞ」
「おぉイランか〜、久しぶりだなぁ」
「前線じゃロクなもん食えなかったしな」
さっきまでの気まずさから一転、またいつものように騒ぎ出す。――やれやれ、気楽な奴らだ……
「よ〜し、テヘラン着いたら旨いもん腹いっぱい食うぞぉ」
「発想が幼稚だな、アドルフ。俺は可愛いねえちゃん達と」
「それじゃ大して変わんねぇって」
「あぁん? じゃあお前は?」
「カジノでひと稼ぎさ」
――お前こそ変わんねぇって、アレクセイ。
またため息。今度は煙草の煙は無いが、話に夢中な彼等は気付かない。
「……言っとくけどなぁ」
呆れ顔でミツルが口を開く。
「お前ら、一応は覚悟しとけよ? わざわざ中央から呼び出し喰らうなんて、よっぽどだぜ?」
「まぁ大丈夫っしょ、悪いの隊長やもん」
悪びれもせず、男がしれっと言う。
「……しめるぞ? ロベルト」
「わぁ、冗談冗談」
笑いが起きる。なんだか悩むのが莫迦らしくさえ思えてきた。
改めて思う。――こいつらが部下でよかった。こういう雰囲気に何度救われただろう。だが……
「まぁ、でも……俺の責任っちゃあ、そうだよな」
新しい煙草に火を付け、また窓の外――さっきからあまり変わらない景色に目をやるミツル。
「あれ、本気にしちゃった?」
左から右へと流れる景色。
遠くでひどくゆったりと波打つように見える砂の海を見つめて、ミツルはぼんやりと呟いた。
「あれで女かよ、全く……」
西へ逃げる太陽、追う車両の一団。月は東に……まだ、昇らない。
* * *
『通信班から報告が来ました。今、イランに入ったそうです。おそらく日没前には着けるだろうかと』
「ふーん……ははっ、かなり凹んでたな、あいつ」
微笑む黒髪の女性。件の女士官である。
目の前のモニタには小窓が二つ。手前の一つには整備兵だろうか、技師のような男が映っている。
もう一つ……影に半分隠れたそれに映るのは、砂の海に浮かぶ鉄の塊。
『そりゃあ、あれだけ言われれば……あ、いえ、その』
「いいよ。確かにさっきは言い過ぎたな。ところで、用意は出来てるよな?」
『はっ、こちらの準備は万全です』
モニタの中で敬礼する機械油まみれの男。背後には層成すコンテナの山。
「なら、あいつ等が到着次第始めるから」
『了解です!』
「一晩で仕上げるよ……これから忙しくなるからね」
通信が切れる。女性が立ち上がった。かなりの長身だ。
「さあて、いよいよ戦争らしくなるな」
* * *
標準暦(S.A.)49年6月15日。
中華人民共和国新疆ウイグル自治区西部の都市、カシュガル西方約100キロメートル付近に大気圏外から落下物。
その後、同地域で小規模な武力衝突発生。
同日、ミツル・ホルシード曹長率いる機甲小隊、イラン首都テヘランに移動開始。アフガニスタンを経由。
翌16日。
機甲小隊、ヘラートを発つ。イラン入り。夕方、テヘランの首都基地に到着。
何だかんだあったが、無事テヘランに着くことができた。
手続きだとか何とかで、基地をスルーして都市税関へ。
そこから解放されるまで予想外に時間を喰ったが、門限までまだ大分あったので、自由行動を取ることにした。
各自別行動とはいえ、何かあった時に連絡を取り易いよう、二人以上で行動させている。
アドルフは繁華街を喰い歩くそうだ。デリックもついて行くらしいから心配は無いだろう。
ミシェルは何処に行くとは言ってはいなかった。まぁアレクセイが一緒らしいから、大凡見当はつくが。
その他の奴らも、それぞれ夕暮れの街に散っていった。
そして俺は……車に乗っている。憲兵と一緒に。
「やっぱ懲罰房行きかな、俺。なぁ、何か聞いてないか?」
「さぁ……自分達はただ、曹長をお連れするように、とだけ伺っております」
と、隣に座っている憲兵。手にはMP5。
――招待されるような待遇じゃあねぇよな、こりゃあ。
街の郊外、砂漠の中に忽然と立ち聳える基地。
着いたときにも夕日に赤く染まるのを見たが、夜はまた印象が違う。
東に浮かぶ月が醸す、月明かりに蔓延る暗々たるシルエット。
昼間見えるであろう青空との明確なコントラストによる表から突っぱねるような、単純明快な威圧感は無いが、
なんかこう、背後……背中から感じるような、えも知れぬものを感じる。
「ロベルトが言った通りになったな。ははっ」
「え……あ、煙草は遠慮してください。一応、禁煙ですんで」
ポケットから手を出しただけで止められる。さすが憲兵、ニコリともしない。
「……ちぇ」
仕方なく、手の中のくしゃくしゃになった箱をポケットに戻す。アレクセイめ、覚えてろよ……
車がさらに近づく。不意に、辺りが暗くなる。
月が、呑み込まれた。
背筋が冷える。――おいおい、さながら一寸法師だな。
さらに車は近づく。
眼前では、鬼……地獄の閻魔が、大口を開けて、ただ待っている。
覚悟を、決めた。――俺は、軍人だ。……あいつみたいに逃げたりは、しない。
「んー……でも、正直やっぱ怖ぇよな」
監視の目が逸れたすきに、一本口に銜える。えっと、ライターは……
「どうしたんです? ……あっ、ですから煙草は」
「針の剣、か」
「は?」
「……何でも無い。忘れてくれ」
「はぁ……」
午後10時。車両が基地に消えた。
月はすでに昇っている。東にぽっかりと浮かぶ月はしかし、ここからは見えなくなった。
一応、これで終わりです
時間かかった割にたいした出来じゃないな…
このあとの(俺の脳内構想の)流れとしては、
ミツル、例の彼女に接触(ヘリオス改良?)
↓
問答無用で「東シナに池」
↓
負い目もあり、仕方なくペルシャ湾から出航
↓
船内マターリ中宣戦布告
↓
ドダイでGO!
……と、なっとります。
ここも書きたかったのですが、なにぶん入学手続やら免取りやらで忙しかったのでorz
>>219 YES、《プテリュクスPteryx》は飛行ユニット
ガンダムを下に背中からくっつける
一応垂直離着陸機能付きで、空母からの発艦はこれを使う
正直、最大速度はマッハ0.85
兵装は、機体下部に収納されているミサイルと機関砲
. ∧_∧
(´・ω・)
/ \
__| | | |_
||\ \
||\\ \
|| \\ \. ∧_∧
. \\ \ ( ) ほかに言う事ねーのかよサル
. \\ \ / ヽ
. \\ / | | .|
. \∧_∧ (⌒\|___/ /
( )つまんねーんだよお前 ∧_∧
_/ ヽ \ ( ) ギャハハ泣かすなよオメーら
| ヽ \ / ヽ、
| |ヽ、二⌒) / | | |
>>228他
この板的に
「あんたって人はぁ――――!!!」と言うべきか
「厄介な奴だよ、君は!!」と言うべきか悩むな。
きっと今日…イラ投下できる筈……orz
シェーナ・ボーン って名前、使っちゃっていいかな?
もう使われてるけど…
上に参ります
>>212 正直セレーネの変わり様にぶっ飛ぶくらい驚いた。
即座に人型で妄想した。
ラッパは「開戦の音」って意味に捉えていいのかな?
あとイスラの服はアトロと同じ様な服でおけ?
疑問ばっかですまん。
>>216 俺のはだいぶ「ガンダムじゃねぇ」って話になりそうです。
今更と言えば今更かもだけど
>「軍の上層部は密かにMSを試験的に運用できる段階だけど下っ端連中は存在すら知らなかった」
なんの疑問もなくそう思っていた…。
ここはg67M1F1GV.氏の次作を待つしか!
>>226 うは、出てきたかw
なんというかミツルってば蛇に睨まれた蛙?
上司を上司と思わない、そんな彼らが好きです。
せっかくなので時間あったら続きを読ませて欲しいな。
>>233 >ラッパは「開戦の音」って意味に捉えていいのかな?
OK!
>あとイスラの服はアトロと同じ様な服でおけ?
どっちも普段は人民軍の軍服、かな
今イスラはパイロットスーツ
ただ従来のパイスーとは違って、どっちかってーと戦闘機乗りが着るみたいな感じをイメージしてくれれば
ハイヴァン峠は急傾斜かつ九十九折りになった、車で走るには幾分難しい峠だ。過去にはトンネルが
あり電車も通っていたが、地球と月との開戦後は幾度と無く戦火にまみれ、今ではその名残は崩落
したトンネルの出入り口と焼けてひしゃげたレールの一部のみとなっている。
だがその地に住み生活する人々にとって重要なライフラインでもあった海岸沿線の道路は彼ら自身の
手によって瓦礫が撤去され、なんとか交通手段として使えるよう復興されていた。
「あー、もうちょっと早く出ればよかったな。失敗した」
若干西に傾き始めた太陽を見て、ようやく峠の頂上まで到着しバイクから降りたシェーナは呟いた。
どちらにせよ今日はここで野宿する為の準備はしてきているが、やはり下調べ程度は本日中に
終わらせたいところだ。
見晴らしのいい高台から海を眺めつつどこから手を付けようか考える。
しばらく悩んでいると、後ろからエンジン音が聞こえてきた。どうやら大型車のようだ。
キキ――――ッ!
何故か自分のいるこの場所で停車したのを不思議に思い振り返ると、肌の程よく焼けた人当たりの
良さそうな男が窓から身を乗り出していた。
「どうした? バイクがイカレでもしちまったのか?」
どうもこんな所でバイクを降りて考え事をしていたのが気になったらしい。
思わず苦笑が漏れる。
「いや、そういう訳じゃない。休憩してたんだよ、いい眺めだなと思ってさ」
そう答えた途端、男は一度目を大きく見開いて驚いた様子を見せると盛大に笑って見せた。
「ハハハハハ! 確かにこんなきっつい坂登れば一休みもしたくなるわな!!」
「そういう事、気分いいぜ? あんたもどうだい」
「そうしてぇのは山々だけどよ、仕事中でな。こんな日中にうろついてんだ。熱中症とか気を付けろよ?」
「ありゃ残念。大丈夫、備えは万全さ。サンキュな」
「なぁにいいって事よ、じゃーな」
「ああ」
軽い言葉を交わすとそのトラックは再び走り始めた。
何とはなしにその姿を見送るが、すぐにその大きな車体はカーブに差し掛かって見えなくなる。
「……機雷とか撤去されてないって聞いてるけど、まずは海から行ってみるか」
薄暗い車内で男の声が響く。
「今目標と接触した。間違いなく連絡のあった当人だ」
『そうか……こちらの正体、バレてはいないな?』
ノイズ交じりの音声がその声に答えた。地質的にこの辺りは非常に通信が困難と言われている。
しかし彼らは多少のノイズこそあれど、きちんと会話を成り立たせていた。
「世間話をした程度だ、問題ない。あちらも単独で行動しているようだし」
『この辺りは溶岩に含まれた金属のお陰でそうそう探知の類はできんと思うが……』
「あぁ。たかが便利屋一人に見つかるようなヌルい保護はしてないだろ?」
『ひとまず安心と言った所か』
「だが油断はするな。仮にもこの道のトップクラスって話だからな」
『了解した』
そこで通信は終了した。
先程のトラックの運転手は、胸ポケットに入れていた煙草を取り出すと火をつけた。
「シェーナ・ボーンね……あんなガキがなんでそれだけの腕を持っているのか……」
煙を吐き出しながらの問い掛けに、しかし答える者は誰もいない。
シェーナはバイクに積んでいた荷物から、探索に必要と思われるものを取り出すと小さなバッグに
無造作に放り込み、それを腰に取り付けた。
最後にシート上に残ったゴーグルを手に取ると、耳に当たる部分で何かを調整しつつ装着する。
「よし、視界クリアっと。さすがにこの周囲に光学処理されたモンはなにもねーか。つまらん」
眉から頬にかけてをすっぽりと覆ったゴーグルは皮膚にぴったりと密着する形状をしている。
そしてこれはただ目を保護する為のものではなく、通常の人間の視界をCGで処理し内側に映し出す他、
不可視光や熱を捉えたり光学処理を施した対象に更に偏光処理を加え、元の状態を晒し出す事も可能だ。
「ったくこんなもんちょちょいっと造るんだからあの双子も大したもんだよな」
これを造った機械屋である自分よりも2〜3歳年下の相手を褒めながらシェーナはバイクに跨った。
目標は数m先の海――高さは優に10倍はあろうが。
「よし行くか!」
そして一気にエンジンを吹かし崖にその身を躍らせる!
ここから誰もいなくなった少し後、一人の人物が対向車線の向こう側から姿を現した。
スーツ姿のその男は、シェーナが姿を消した辺りまで近付くと呆然と海を覗き見る。
「……申し訳ありません、目標を見失いました」
力なく告げたその言葉を潮風が運んでいった。
「イ――――ィヤッホ――――――――ゥッッッ!!」
ほぼ垂直落下をしていたシェーナは海面まであと5mという所で逆噴射をかけた。
ズドンッ、となかなか穏やかでない音が海面に叩き付けられる。
もちろん市販のフロート・バイクにこんな機能は付いていない。
もし付いていて同じ状態で使ったとしても、乗っているのが一般人であれば掛かる力を上手く
流すことができずに車体に体を潰される結果になるだろう。
「こういうの市場に出回ったら面白いと思うんだけどなぁ」
市販品への安全性の配慮という言葉を完全に忘れた発言をしつつ、海面で通常走行に入った。
時折海面から岩が突き出しているので、超音波探索(ソナー)で下の状態を把握しながら緑とベージュに
覆われた山の横を軽快に走り抜ける。
余談だが、このフロート・バイクは市販の物を機械屋に持ち込んで出来る限り改造させた特別製である。
既に元あった形は失われていた。
崖下に降下してから40分が経過した。既にこの周辺を3往復目に入ろうとしている。
「特に異常は無いみたいだな……ハズレか? いきなり当たりってのが良かったのに」
今度は少し離れた場所から見てみよう。
そう思いつつ距離を取り、一度目元の汗を拭う為にゴーグルを外す。さっきから汗が目に沁みて痛い。
一頻り汗を取って水分を補給し、人心地ついた所で先程より少し遠くなった山を見上げる。
そのまま視線を下に下ろして――
「あれ?」
そこで違和感に気が付いた。ゴーグルを付け直してみる。
「あそこ……微妙に窪んでる……」
肉眼ではただの岩にしか見えず、打ち寄せる波すら弾き返されていたその部分を熱源探知モードで見て
みると、周囲と同程度には程遠い僅かな熱しか持っていない。
そして。
それまで水面下の岩を避けるために使っていたソナーをその部分に向けてみると、驚くべき結果が出た。
「よぉっし! やったね、いきなり当たりだ!」
偏光処理だけでは気付けなかった違和感の正体。
モニター上では、大きな洞窟がそこで口を開いていた。
周波数を変えた投影機を多重に用い、例えその一つが看破されても他の投影機の映像がその
フォローをしてくれる。
この海域は暗礁域が多く、また以前の戦争時にバラ撒かれた機雷が未回収のまま残っていて時折
岩肌で爆発をおこす。そんな場所には小型船ですら入り込むことは困難であり、逆に長距離からの
測定となると波や岩が邪魔で偽装を看破しきれない。
船からホバー・クラフトを出せばいいかもしれないが、それは蜂の巣をつつく結果になりかねない。
「わざわざ民間に依頼してきたってのはそんな理由かな」
赤外線サーチも有効にさせつつ岩肌にしか見えないその場所に近付く。
うっすらとその先に幾重にも重なった赤い線が見えている。
「ヘッ、警報かレーザーかしらねーけど。そんな高い位置にあっちゃ意味なくねぇ?」
フロート・バイクの最高部よりほんの数cm上に赤い網が広がっている。艦船の類なら確実に引っ掛かる
高度だが、波の満ち干きによる誤報への対策かシェーナのいる高度にはまるで網は広がっていなかった。
「さぁて、どんなお宝があるんだかね」
そして遂にその洞窟へと足を踏み出していく。
その光景を見るものがあれば、バイクが岩へと透り抜けて行く不思議な様子を見れた事だろう。
洞窟内は奥の方が明るくなっている。照明設備がきちんと取られていていくつか船舶も確認できた。
更にその先は岩肌ではなくコンクリートで固められている。管制室のようなガラス張りの部分や
人の出入りするドア、資材と思われるコンテナが運び込まれていく様まで見て取れた。
周囲に鍾乳石が多少ある所をみると、自然の洞窟に手を加えたのであろう事は簡単に予想できる。
「まるっきり工場かなんかだな。っつー事はこの辺に機雷があるってのはデマかヤラセか……まぁいいや」
洞窟の入り口部分と照明のある奥の間には少しの距離薄暗い場所がある。
海面に近い所から地面に乗り上げると、そこにバイクを隠した。
装備の確認をしつつこれからの計画を練る。
「依頼は地形調査……これもその一つだよな」
右腕を軽く押さえながら口元を引き勝気な笑みを浮かべる。
遠くで作業に従事している男達は、まだこの侵入者に気付いていない。
少しだけ話が進んだような気がする。多分。
∧_∧ モンゴル相撲で。
( ´・ω・`) ∧_∧
/ \ ( )やべぇ、ちょっと見たい・・・
.__| | .| |_ / ヽ
||\  ̄ ̄ ̄ ̄ / .| | |
||\..∧_∧ (⌒\|__./ ./
||. ( ) ~\_____ノ| ∧_∧
/ ヽ 年末の特番 \| ( u)
| ヽ \/ ヽ.いや・・・見たいか??
| |ヽ、二⌒) / .| | |
.| ヽ \∧_∧ (⌒\|__./ /
あげ
243 :
139:2006/03/19(日) 22:25:11 ID:???
SCAm0lHjhM氏も書き始めたのですか。そういえば
>>226を見るに何気に受験上手くいったぽいですね。おめでとう。
>>233 >俺のはだいぶ「ガンダムじゃねぇ」って話になりそうです。
こっちはjCOt2dXQRg氏と被らないよう設定をこねくり回しているうちに、
なんだかスパロボ系やGフォースみたいな感じになってきたので1からやり直しているorz
ところで気が早いかもしれないけどまとめHP、現段階では必要かな?
倉庫代わりにしようとして放置しているサイトがあるから凝ったのでなければ作るけど。
つか、いい加減鳥つけたほうがいいかな。あとで調べてこよう。
今週中には投下したい
>>243 まとめかぁ…あるに越したことはないかな。
もしよかったら頼むわ。
ちなみに俺は最近鳥付けるのなんとなく自主規制中。
それと俺のはガンダム言うよりスプ○ガンテイストな予感がびしばしとorz
>>226 言われて思い出したってのが情けないけどおめでとう!
自由を謳歌してくれw
>>244 おk、待ってる。
246 :
243:2006/03/21(火) 16:35:54 ID:???
早速公開してみる。
http://niigata.cool.ne.jp/ro974/twg/index.html SS何だけどレスにあった誤字の直しやセレーネ一話の<>を他の話の《》合わせて<>を《》にしたり、
便利屋稼業奮戦記の1-1と1-2を勝手に一つにまとめたりしているうちに原文と違うところで改行してしまっているかも。
要望あれば直して残りのSSも保存するつもり。あとイラストは許可取れたらUPしようかと思ってる。
>>245 なんとなくそれっぽい感じがしたけどやっぱりスプ○ガンか。
MSより生身のアクションシーンが多くなりそうな予感。頑張れ。
また一週間ぶりです。やっとPC繋がった…
g67M1F1GV.氏、説明どうもです。フォビドゥンのバックパック…か?
ドダイ(SEEDだとグゥル?)じゃないのが少し残念だったりw
第五話…彼女が出るんですか? 期待してます
おぉ、セレーネが走ってる走ってるww
jCOt2dXQRg氏、イラ&SS乙です。奮戦記も(・∀・)イイ!
あと、断りも無く“彼女”を俺の駄作で出してしまった…
(名前出してないにしろ黒髪だったり長身だったり)すみませんですorz
…なぜ自主規制を?
イザげほんげほん…139氏
まとめHP作ってくださるんですか? ってか出来てる!
あの、早速覗いて来たのですが一つ提案が
俺の駄作も載せて頂き大変有難いのですが、
g67M1F1GV.氏の本編とは分けた方がよろしいのでは…
3.5話なんてややこしいタイトルですが、サイドストーリー的な話だと思うので
入試の方は地方大ですが何とかなりました。どうもありがとうございます
さて、続きを考えよう……迷惑になりませんようにw
まとめ乙です!
現在海戦の描写にてこずっとりまして、その研究をしながら書いてます〜
今までアクション(しかもロボットもの)を書いた事が無いんで、試行錯誤の連続ですorz
微妙にプロットと違う展開になりそうで軌道修正に必死な件。
>>246 >>139さんかい?早い、早いよ!(まとめ作るのがw)
てか早々に作ってくれてありがとう!
>あとイラストは許可取れたらUPしようかと思ってる。
って俺の許可って事?それなら全然OK!よろしく!
あ、実は先程1−1で誤字発見。
「それをを」って検索かけると引っ掛かるので、「を」を
一つ削ってくれるとありがたいorz
>>247 セレーネ走ってる様に見えるか…良かった。
いやいやいや、むしろ使ってくれてありがとうって言いたいよ。
今後どう動いて行くか楽しみにしてるw
鳥消したのは…だって無くてもわかるじゃん?みたいな。
大した理由はありませぬ。
明日投下できるかなあ?
投下
イスラは1時間前に仮眠から起き、そして今まで、E=mC^2のm(質量)部分にいくつかの数字を入れて遊んでいた。ちなみにC(光速度)=299792.458とした。
m=52.2(イスラの体重)で計算し終える。
「……丁度、か」
時刻は23時55分――開戦まであと5分だった。
* * *
雲を照らす月を見ながら、空母のマストで煙草を吹かす男が1人。
「いいんですか? こんな所で煙草吹かしてて」
なおざりな口調に、ミツル・ホルシードは後ろを見た。いきおい、銜え煙草から灰が吹き飛んだ。風は強い。1人の女性が、そこにいた。短い髪が揺れている。
「アリシーアか。別に、第二次大戦中じゃあるまいし、問題ねえよ。それに、こんな月の明るい夜だ。もうバレてるだろ」
アリシーア・フォリー一等兵曹はミツルの隣に来ると、彼とは逆向きに、柵に寄りかかった。そしてポケットから煙草を取り出す。
「あんな事言ったお前も吸うんだな」
「もしかしたら最後かもしれないから、記念に、ね。曹長は?」
三日月――《新月章》と呼ばれている――1つと、黄色い横の太線1本。三日月の周りには白い細線で円が描かれている。COMS防衛軍宙域特殊守備隊《サキモリ》部隊の曹長を表す肩の階級章の金属部分、三日月に月光が当たり、光った。ミツルの肩章だ。
他方アリシーアの肩章は、三日月と、その下の黄色い横線が2分割されているものだ。ミツルのそれと同様、白い細線が三日月の周りにある。
彼らが着ているCOMSの軍服は、紺色の作業用軍装だ。儀礼をしているわけでもないしちゃんと着こなす意味も無いから、どちらも着崩していた。
右胸には黒地に白いラテン文字で《Mitsuru Khorshid》《Alitheia Forey》と、それぞれ名前がある。そして左胸には階級章がある。憲章と、デザインはほぼ同じであった。
「こういう月の明るい夜は、こうやって外に出て吸いたくなるんだ。記念も何も無く、ただこっちで出来た習慣さ」
「居住区で地球見ながら吸ってたのと、気分は同じじゃない?」
言いながら、アリシーアは笑う。
「いいや。……居住区の照明って、暗くなってもいいよな。そうすれば、多少は風情も出るのに」
「風情も何も、強引に喫煙所こさえたのは曹長でしょ? あるだけマシ」
「利用者が言うな」
ミツルは言いながらアリシーアに首を向け、右肘で彼女を押した。そして首を戻しながら、言う。
「それと、俺は死ぬ気、無いからな。お前も死ぬなよ」
少し面食らった顔をして、アリシーアはミツルを見た。首を戻して銜え煙草を摘みながら、彼女は微笑む。
「上官に『死ぬなよ』って言われる兵士が、一番死にやすいって知ってた?」
「俺は疫病神か。そんなジンクス、一昔前の戦争映画そのまんまじゃねえか。《オルニース》の操縦、お前出来る日と出来ない日の差が激しいんだ。兎に角、生き残れ。戦闘前のアドヴァイスとして、これ以上は無い」
「すっごい適当だね」
「お前の教官から、そう言うように言われてるんだ」
「誰?」
「シェーナ・ボーン大尉。俺にこんなトコに行けって言った張本人だ」
「えっ!? ボーン大尉? 元気だった?」
「元気も元気。リウ大尉がいなくなった時の雰囲気が嘘みたいだった。んで、ウイグルでの失態をこっ酷く怒られたよ。それで済んじゃうんだから、あの人には頭が上がらない」
ミツルは微笑いながら煙草の火を柵で揉み消し、携帯灰皿に入れた。アリシーアもそれに倣う。
「お前、もしかしてまだ吸うのか?」
「うん」
「そう。俺は行く。そろそろ、出撃だからな」
「分かってる。あと1本吸ったら、私も行くよ」
彼はそのまま去っていこうとする。
「ミツル」
アリシーアはそう、彼に声を掛けた。上官を呼び棄てるなど軍人にあるまじき行為だが、当のミツルは少し振り返るだけで何も言わない。何故ならそう呼んでも差し支えない間柄だからだ。但しプライヴェートのみではあるが。
「ありがとうね」
ミツルは左手を肩越しに挙げてそれに答え、今度こそ去っていった。
ふと、アリシーアは腕時計を見た。
「お。あと5分でタジキスタンと中国が開戦だ」
彼女は火種を柵に押し付けて消し、携帯灰皿に吸殻を入れてその場を去った。
* * *
「先行の潜水艦隊の上を敵艦隊、通過。空母4、強襲揚陸艦20、うち空母型17、潜水艦5、うち発電用2、巡洋艦15、駆逐艦22、フリゲイト艦19、戦闘支援艦3、音響測定艦2。マレーシア、ヴェトナム、タイ、インドネシア各海軍の艦も後続しています」
開戦から10分が経った。現在時刻は中国標準時00:10だ。
開戦したとはいっても、中国とタジキスタンである。戦場は、距離にして5000キロメートル強、西北西にある。最早異国の地での出来事に等しかった。
それでもリウは、戦場に近いイスラの出身の村を案じていた。恐らく戦場に極めて近い位置にある。果たして、無事でいられるだろうか?
所で今から彼らが戦う事になろうASEANは、去年から、領土問題で対立していた中国と、戦闘状態に入っていた。
中国からの影響から脱するためにPGUGでもCOMSでもない、《第三世界》という立場を採っていた。
世界最大のイスラム教国インドネシアはCOMSへの加盟を強く望み、アメリカの元植民地フィリピンの親米派はPGUGへの加盟を推進していたのだが、結局はCOMSに加盟する運びとなったのだ。
通信士はそのあとも、出撃している各海軍の艦を報告し続けた。COMS側の総数は、中国南海艦隊の約6倍。中国の海戦力を総合して当てたとしても、数で埋まる事は無いだろう。だからその分を、策で埋めなければならないのだ。
「艦載機の発艦を開始せよ」
00:13。最早旧式となった原子力空母《城月(ツェンユエ)》の艦橋から、その指令が下される。それに合わせて、発艦の準備が着々と進んでいた。
1機の殲31EM(Su-66MKK)戦闘爆撃機がカタパルトに引かれて発艦した。また、戦闘機が飛び立ったのを見計らって掃海ヘリコプターも発艦し始めていた。
予定ではあと10分で、敵艦隊が視認領域に入る。互いに既にミサイルの射程内に入っているが、COMS側に攻撃の気配は無い。中国側は既に、ミサイルの照準をそれぞれの敵艦に付けていた。
* * *
「セレーネ、そろそろ、やめない?」
イスラとセレーネは、入力された両軍の艦船データを元にセレーネが組み立てたシミュレータで艦隊戦を模式していた。
《何で?》
「何でって、もうそろそろあたし達の出撃だし。それに、正直艦隊戦のノウハウを知った所で、あんまりあたし達には関係無いと思うんだけど。仮にもあたしは《特殊歩兵》なんていうのにさせられてるんだし」
《甘い! イスラは甘い!》
「何が……?」
AI=人工知能(AC=人工意識)に糾弾されるのは、人としてどうなのだろう? そんな思いが彼女の脳裏に過ぎる。いや、人工知能だからこそ、糾弾するのか?
《艦隊戦でも何でも、ノウハウを知っとけば、次の行動に迷わずに済むじゃん。イスラはあらゆる戦闘の初心者なんだから、絶対迷うよ》
「迷わないために人工知能(あんたら)がいるんじゃないの?」
《そうだけど、向こうの弾は待ってくれないよ。助言聞いてる間に攻撃されたら元も子もないし、そうなる前に簡単なメソッドくらいは知っといた方が絶対にいいよ!》
イスラは何も言えない。
知る事こそ、戦闘に必要な事だ。見落とされがちだが、『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』という先人の言は、『兵法(或いは戦法)を知っている』事がその前提としてある。
その事に、イスラは気付かされたのだ。
なるほど、流石、どんな性格をしていてもAIなだけはある。彼女は一時停止状態になっているシミュレータを見て、ため息をついた。
《でもまあ、出撃だってんだったら、仕方ないね》
案外セレーネはあっさり引き下がった。その身の振りよう――「身」なんて無いのだけれど――に、イスラは少しく罪悪感に苛まれた。
「……今度、もう一度レクチャーし直してよ」
イスラはそう言って、シミュレータの現状を保存し、ウィンドウを消した。
《OK。今日の戦闘を踏まえた説明したげるから》
「それは分かりやすくなりそうだ」
《聞くためには、今日のこのあとの戦闘で生き残らなければなりません》
「うん。サポート、宜しくね」
《インシャー・アッラー(もしアッラーがそう思ったならね)》
「……こんな時にそんな笑えない冗談やめてよ」
今セレーネ・ガンダムは、空母の艦尾に陣取って片膝を立てている。艦載機は、第2陣を残して全て発艦した。
事情により今日はここまでorz
あしからず
256 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 00:59:00 ID:pCbb2jHA
投下再開
(
>>254の続き)
『義蘇、起動してくれ』(北京語)
リウから指令が届く。
「了解」
そう北京語で返すイスラは目を閉じ、通信を切ってから数秒かけて、深呼吸した。それは、これから自覚を持って人を殺すための儀式。間違った行動を省みるための時間を、先送りする儀式だ。
目を、開ける。
「セレーネ・ガンダム、自動発電機構停止。中央動力部起動」
そして彼女はおもむろに口を開き、早口に起動フェイズを開始した。
《発電機構停止。動力伝達。各部変電機構正常稼動。電圧正常。各動力機構正常。兵装接合部正常。単方向精神伝達正常。生命維持機構起動。各部冷却機構正常稼動。油圧正常。変圧機構正常。圧電変換機構正常。両スラスター正常。基本起動終了》
セレーネの声と同時に、空中――ヴァイザー内モニタ――に文字が表示される。それらに目を向け、イスラは確認した。
「確認。バランサー、タイプ『アリフ』で起動。動作制限解除」
《バランサー、タイプ『アリフ』起動。制限解除。左脚サスペンダー、負荷27%》
「確認。現在の運動を解析」
《前方24ノット、進行方向南方12度、重力64トン重、上下運動最大0.5メートル毎秒、左右運動最大0.02メートル毎秒。後方に偏向、水平マイナス2度。風向、西南西。風速7メートル》
解析された結果と共に、天気図、雲の画像、気温、湿度、月齢、現在時刻、潮汐状態、現在位置の緯度・経度など、雑多な情報が流れていく。
「確認。異常無し。直立時の負荷を解析」
《左足首関節に最大42%、右膝関節に最大43%、腰関節に最大36%、の負荷。直立時、前後最大4度、左右最大9度、上下最大0.4メートルの揺れをシミュレート。直立への直接的障害は無し》
「確認。バランサー、タイプ『サー』に以降」
《バランサー、タイプ『サー』に以降。負荷軽減》
「確認。起動フェイズ終了」
《終了。作動フェイズに以降》
直立時の各関節への負荷が、いつもより大きい。空母という、自律移動浮遊物体の上で立つ事になるからだ。
関節への負荷は、先述のとおりパーセンテイジで表される。負荷が50%を超えると、金属疲労が急速に溜まっていくとされている。そして100%でその部分が使用不能になるのだ。通常は75%までしか出ないように制限をかけられているのが現状である。
しかしこのパーセンテイジは、あくまで機械が人間に知らせるための指標に過ぎない。実際はもう少し無理が効くように設計されているし、材質もそうであるように選択されている。ただ、75%もの負荷が掛かれば、流石に問題は出てくるのだが。
『起動情況確認』そう、リウから通信が入る。『作動を許可』
「っ、了解」
イスラは声を震わせ、答えた。
* * *
陸上で運用すべきモビル・スーツを海上で運用するためのキットが、《ナウス》である。古典ギリシア語で《船》という意味だ。一体ごとに乗る、モータ・ボートのようなものだ。
では、COMSには海上で運用出来るモビル・スーツはあるのか? 否。その必要性が薄いため、建造されてはいない。海中運用など尚更だ。マニピュレイタとしての《手》の利点を差し引いても、むしろ海中運用にヒト型は適していない。
また、陸上で運用すべきモビル・スーツを空中で運用するためのキットが《プテリュクス》である。こちらは《翼》という意味だ。
空中で運用されるモビル・スーツは存在するのだが(オルニース。《鳥》という意味)、操縦が少々特殊なため、陸上で運用すべきモビル・スーツの操縦方法をそのまま適応して空中で運用してしまおうというコンセプトで《プテリュクス》が造られた。
余談だが、COMSの兵器名はその殆どが古典ギリシア語の一般名詞から採られている。複数形も、原語のそれを踏襲している。だから、例えば《ナウス》を複数にすると《ネーエス》と呼ばれるのだ。分かりにくい事この上ないが、定着はしている。
所でモビル・スーツは、戦況の確認や戦法の助言などをするためにAIと無線接続されている事は先述したとおりだ。そしてこの方式の問題点、つまり、《拠点》となるAI定着地から離れれば離れるほど、システムにタイム・ラグが発生する事も然り。
その問題点の解決のために造られた試作機が《ガンダム》で、AIが積んである事も記憶にあると思う。1機に《拠点》の機能を集約しているといっても過言ではない。
《ガンダム》運用の目的は他にもある。むしろこちらの方が本当の目的だったりする。《ガンダム》以外のモビル・スーツのモニタリングを1機で引き受けるのだ。言葉どおり、「《拠点》の機能を集約している」のである。
無論、《ガンダム》だって攻撃を受けるかもしれない。その時のために、この作戦では潜水艦に搭載されてあるAIをもモビル・スーツに繋げているのだ。《ヘリオス・ガンダム》のAIとも繋がっているので、同機が破壊されてもモニタリングに支障は出ない。
ちなみに《ガンダム》は、その建造に携わった主要研究者6人の名字の頭文字から採られている。《ガンダム》をもとにした量産機には、古典ギリシア語でネーミングされる予定だ。
今作戦で出撃するモビル・スーツは、
プテリュクス付きストラティオーテース
ナウス付きストラティオーテース
オルニース
プテリュクス付きヘリオス・ガンダム
の4種だ。
戦闘機等の通常兵器は、ASEAN諸国の海戦力が保有しているため、COMSの艦隊には積まれていない。モビル・スーツのみでの遊撃は、今回が初となるわけである。
モビル・スーツはCOMS防衛軍宙域特殊守備隊《サキモリ》部隊にのみ配備されている。だから決して数が多いわけではないが、その兵力はそれなりに期待されている。今回の戦闘が、今後のモビル・スーツ運用を左右しているのだ。
今、COMSの艦に曳航されているナウスのドックから、ナウス付きストラティオーテースが次々と離れていっている。空母からは、オルニースやプテリュクス付きストラティオーテースがカタパルトに引かれて1機また1機と飛び立っている。
中国南海艦隊は、前方10キロメートルにまで肉薄している。
そして戦闘開始の合図は、バック・アップの潜水艦轟沈の報であった。
* * *
第一撃は、海中での魚雷発射であった。
直下から48ノットのスピードで接近する騒音を押さえられた魚雷を探知するのは、容易な事ではない。仮令標的となった潜水艦に、ベテランの操舵技術を持つ乗組員がいたとしても、だ。
かくして、COMS派遣海軍のイクティオサウリア級潜水艦1隻が轟沈した。
中国が海上戦力より海中戦力を重点的に開発している事は、余り知られていない。というのも、海中戦力は一部を除いて極秘裏に開発されていたからだ。
偵察衛星から敵の戦力情況がある程度は観測出来る時勢である現在、秘密裏な兵器の開発は極めて困難だ。しかし、それを上手く逃れる術が存在しないわけではない。
想像に難くないかもしれないが、それは地下に工廠を建造する、という方法だ。米中戦争が勃発した標準暦直前、中国は各地にトンネルを掘っていた。材料を調達し、地下鉄道網で工廠に運び、そこで兵器を建造する、という計画だ。
この計画は聯合國(国際連合)の介入で中止になったとされている。しかし、聯合國がPGUGに改名し、中国が除名されていた期間、工事は着々と進んでいた。
中国が抱える問題の1つ、困窮農民を各地から雇用し、出稼ぎ職業の1つとして彼らに提供したのだ。人はすぐに集まった。
工事は順調に進み、中国がPGUGに加盟してからも、それは続けられた。標準暦49年現在、計画されていた線路網は全て完成している。現在はその路線を更に拡張していく計画さえあるのだ。
それを用いれば、潜水艦という大型兵器を極秘裏に開発・量産する事は容易い。
今作戦では、海上にある南海艦隊の艦船の倍以上ある37隻が海中を進んでいる。ゆっくりと、音を立てないように。
戦闘開始の合図となった魚雷は、そんな37隻のどれかが海面下約2400メートルの海底に設置した遠隔発射管から発射されたものだ。
* * *
「直立」
《直立》
イスラの言葉を、セレーネが復唱する。そして、まず前方に倒れるようにイスラは感覚した。いつ体験しても、この瞬間は慣れない。コックピットが空中に浮いているように視覚しているから、前のめりの時の恐怖はひとしおだ。
その後、左側に一瞬傾くが、すぐにそれも持ち直し、重力は下方に安定する。視点は高い。15メートルほどだろうか。右側の艦橋が少し小さく見える。
先程、敵の潜水艦が1隻沈んだ。5キロメートル前方では、既に両軍の戦闘機によるドッグファイトが繰り広げられている。
セレーネ・ガンダムに乗るイスラは、《手》に保持しているハンドガンを確認した。
M42MPC
11.43センチメートル
20/20
安全
慣性榴弾
型番、口径、装弾数、安全装置の状態、装填されている弾頭の種類。それらが、空中に表示される。
《20発》
ふと、声がする。セレーネだ。
「わかってるよ」
《じゃあ何で確認なんか》
本来装備品やコンピュータや機体の解析やデバッグ、点検を行うAIが、こんな台詞を吐いていいのだろうか? イスラはその事に、一抹の不安を拭えない。
「何かしてないとね、なんか、怖いから」
突然のビープ音と共にイスラの前方にレーダーが表示される。
《ストラティオータイ・ネオーン8機、ストラティオータイ・プテリュコーン9機、オルニートス8機、接近中!》
レーダーで前方の端に、計25個の光点が現れる。そのうち9個は急速にこちらに近付いていた。既に、各艦船から榴弾やミサイルしきりに発射される。
「情況を開始します」
イスラはリウに通信を入れた。
『許可。健闘を祈る。それと、死ぬなよ』
「――はいっ」
イスラは操縦桿を握り直した。
「セレーネ、目標の予測経路を計算!」
《ストラティオータイ・プテリュコーン各機の予測経路はこれ》
セレーネ・ガンダムを中心とした円に、何本か線が引かれていく。光点はそれぞれ、線に沿って移動していた。
「よし、各目標の予測到達ポイントに射撃。タイミングは任す」
イスラは操縦桿を動かし、ハンドガンを持った方の腕を前方に突き出した。親指で安全装置を外し、トリガーに人差し指を置く。空中に、敵機の位置を示す黄色い《×》の印が現れる。そのうちの1つが、赤い《※》印になった。
《撃って!》
イスラは力いっぱいトリガーを引いた。
* * *
戦闘開始から15分が経過した。
中国の艦隊は、海上を滑走して進むモビル・スーツ《ストラティオーテース・ネオース(ナウス付きストラティオーテース)》に翻弄されていった。
ウェーヴ・ピアサー(波浪貫通)船型のナウスは、船体抵抗の大幅な削減によりとんでもない動きが出来るのだ。
既に5隻沈没している。中国側の艦船も大口径の慣性榴弾――ミサイルの代替兵器――で応戦し、既にモビル・スーツ4機を墜とし、COMSの艦2隻とASEAN艦10隻を既に戦闘不能にしている。
空母《城月》は、数箇所被弾しながらも航行能力までは失っていなかった。ひとえに、セレーネ・ガンダムの働きがあったからである。セレーネだけで言えば、8機のモビル・スーツを海の藻屑にした。
唐突に、後ろからの空中戦用モビル・スーツ《オルニース》接近が報告される。イスラは弾丸の切れた銃倉(マガジン)を投げ捨て、素早くリロードし、《オルニース》に照準を付けて射撃した。
《オルニース》は空中を単体で飛行する能力を持つモビル・スーツである。とはいっても、ホヴァリングは出来ない。主翼に揚力を発生させて飛行する。形状は、ツバメのそれだ。
高速で巡航し、攻撃の際はその高度から一気に上昇、機体に折り畳まれている《腕》に装着されている――または《手》に持たれている――兵装でほぼ直上から対象を爆撃するという戦法が多く取られている。
イスラは専ら、その戦法が展開される以前、つまり巡航状態のオルニースを撃墜していた。今回の射撃対象のオルニースは、銃弾到達の直前に一気に高度を24メートルから210メートルに上げた。当然、弾丸は海面に衝突し、爆ぜた。
「《鳥》がいない! セレーネ、どうなってんの!?」
《上に注意して! っていうかもう遅い!》
「上!?」
イスラは首を上に向けた。次の瞬間、城月の甲板の各所から火が上がった。セレーネ・ガンダムにも3発被弾する。爆風で船体が大きく揺れ、セレーネ・ガンダムも吹き飛ばされる。気付けば、艦首にいた。
《つくづく、イスラって燃料気化爆弾に縁があるね!》
「ああ、もう! 冗談言ってる場合!? って、また燃料気化爆弾!?」
セレーネ・ガンダムは強く踏み込み、空母から一番近い、フリゲイト艦《温州(ウェンツォウ)》の後部甲板に乗り移った。同時に城月に第2波となる攻撃が降り注ぐ。辛うじて、艦橋はその形状を留めていたが、航行は素人目に見ても不可能だ。
「リウさん、大丈夫かな……?」
《イスラ! 通信! あと次来るから、また城月に戻って!》
「分かった。で、通信って誰から!?」
《ヘリオス・ガンダムから》
イスラの顔が、戦慄(おのの)いた。
今回は以上
間開いちまったけど、続きはまた近日中に
* * *
各兵器のつづり
オルニース : Ορνιs : Orniis
ガンダム : GUNDAM
ストラティオーテース : Στρατιωτηs : Stratiootees
セレーネ : Σεληνη : Seleenee
ナウス : Ναυs : Naus
プテリュクス : Πτερυξ : Pteryx
ヘリオス : Ηλιοs : Heelios
264 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 19:30:01 ID:Pg7pm+d2
良スレ
. ∧_∧
(´・ω・)
/ \
__| | | |_
||\ \
||\\ \
|| \\ \. ∧_∧
. \\ \ ( ) ほかに言う事ねーのかよサル
. \\ \ / ヽ
. \\ / | | .|
. \∧_∧ (⌒\|___/ /
( )つまんねーんだよお前 ∧_∧
_/ ヽ \ ( ) ギャハハ泣かすなよオメーら
| ヽ \ / ヽ、
| |ヽ、二⌒) / | | |
266 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 18:26:57 ID:PMBngHRr
保守
今日辺り便利屋1−3投下できそう。
……いつになったらガンダム出てくるんだろうね?
268 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 20:52:57 ID:RBJzkAtI
保守
思いも寄らない場所に思いも寄らない物を見つけて、シェーナの中にむくむくと好奇心が首をもたげてきている。
本来ならば一度態勢を整えるために出直すべきで、このまま大した武装も無しに突入するのは自殺行為だ。
それを判っていながら突入準備をするのは愚かだと言えよう。
「さて、堂々と忍び込むにはやっぱ変装が一番だよな」
しかしそこまで判っている筈の本人は楽しげだ。仕事半分興味半分と言ったところか。
「こんなとこにこれだけの設備整えてるんだからシロートなわきゃないし、となると服装も多少は……」
擬装用の投影機や停泊している船、そして工場らしき建造物。
それらから相手がなんらかの組織に組するだろうと考え、ならば一目でそうとわかる格好をしている筈と
当たりを付けたシェーナは、物陰に隠れたまま腰に付けていたバッグの中身を少々変更した。
ここから先、ゴーグルは付けられないので置いていく。
さすがに今いる場所は完全に影になっているので夜目が利いても少々薄暗いが、この程度なら大した問題はない。
およそ50〜60m先に見張り用と思われる小さな建物を確認していたシェーナは注意深く影伝いに近付くと、
姿勢を低くした状態で一気に走り出しその距離を詰めた。
建物の傍にはフロート・バイクが二台。
あの工場らしき場所までそこそこ距離があるので、これを使うのは納得できる。
なにか臭うと思いつつバイクに鍵が付いているのをチェックし、そこでようやく顔を少し上に向けた。
わずかに開いた窓からは白い煙が漏れ出し、室内もその煙が充満している。
何事かと一瞬焦ったものの、中から聞こえてきた笑い声でそれが煙草の煙であることに気が付いた。
「くっせぇ〜……煙草吸うなら換気くらいちゃんとしろよ、まったく」
中からはまるで煙など見えていないかのように明るい談笑の声が聞こえてきているが、少々他人より鼻の
いいシェーナには若干堪えた。
仕返しとばかりにバッグの外ポケットからピンの付いたライターの様な物を取り出し無造作にピンを引き抜くと、
それを窓の隙間から放り込む。
数秒後、小屋の中にいる彼らの声はいびきに変わっていた。
(……………! 煙が目に沁みるッ!!)
呼吸を止めて小屋に入ったシェーナは、ゴーグルを外していた事を激しく後悔した。
とはいえあまり効果時間の長い薬を使っているわけでもなく、そもそも自分の息が保たないので
涙の浮かんだ目を擦りつつ早急に行動を開始する。
眠っている男は二人。
一人は中肉中背ではっきりいってシェーナより10cmは背が低い。
もう一人は身長は合いそうだが横幅が倍近く違う。
だが、シェーナの読み通り二人とも似たような――つまり制服を着用していた。
(こんな記章は見たことないな……)
仕事柄ある程度の軍関係の知識は持っていたつもりだが、彼らの所属する組織はシェーナの知るものでは
なかった。だが、似たようなものをどこかで見た気がする。それが何だったのかは思い出せないが。
わずかな逡巡の後、靴と手袋とベルトは背の低い方、服は大きい方から拝借する事にすると、
手早く着替えその二人のIDカードと銃、通信機を取り上げて猿轡付きで縛り上げた。
恐らく目立つであろう長い髪は一度頭頂部で軽くまとめ直し、毛先をこぼして帽子を被る。
こうするとぱっと見にはショートにしか見えない。
最後に耳に通信機を取り付けて終了だ。
服があちこち余っているが、丈が合っているお陰でそれほどの違和感もなかった。
その上でポケットや靴の中にバッグの中身であった小道具を詰め込む。空きの多い懐にも入れてみたものの、
流石に全部は入りきらない。
残った物は諦めてバッグにしまい直し、自分の服と一緒に手近なデスクの引き出しに放り込んだ。
その際、ガンベルトの銃は自分の愛用のものに変えておく。他の2丁は片方だけ弾丸を抜きポケットにつめ、
もう片方を服の中からベルトに差し込んで予備にした。
ついでに彼らが手に持っていた(というより既に落ちていた)煙草を拾い上げて吸殻の山のように積もった
灰皿に突き刺す。中から煙が出ていたのには気付かない振りをした。
「ふあ〜、いつまでもこんなトコにいたら燻製になっちまうよ……」
4分足らずで身支度を整えて小屋から出てきたシェーナは、まず大きく深呼吸した。
潮の香りと共に酸素を吸い込む。一緒に服に付いていた煙草の臭いも吸い込んでしまい眉間に皺を寄せた。
しかしここで文句を言っていても時間が無駄になるだけだ、と思い直し停めてあったバイクに跨る。
もう一台は鍵を抜いてそれを海に投げ捨てた。これで中の男達が気付いても早々迅速な行動は取れなくなる。
「やれやれ……ま、仕方が無い。行くか」
通信機から誰かの応答を求める声が聞こえてくる。早速かと思いつつも電源を切るわけには行かないので、
とりあえずボリュームをオフにした。それでも引き返すという選択肢は考えない。
既にこの場に対しての興味と好奇心は心の8割を満たしていた。
この洞窟は奥に向けて緩やかにだが傾斜が高くなっている。
鍾乳石の類が地面にない所を見ると、入り口部分とは違い多少人の手が入っているのだろう。
先程から見えていた船の横を通過する。
船体には「SUN-FLOWER」と書いてあった。見た目はただの漁船に見えるが……。
「ただの漁船がこんなとこにいるわけねーじゃん、よくもまぁ化けたもんだ」
コンテナを降ろしそれを工場内に運ぶ、という作業を横目に見つつフロート・バイクが多数停車している場所を
見つけ、そこに停まる。
せっかく変装しているのだから下手に辺りを見回して他の人間に怪しまれる事もないさと思い、極力辺りを
見たい気持ちを抑える。
と、そこに3人ほど同じ制服を纏った者達近付いてくる。先頭に立っていた口髭を蓄えた人物が
声を掛けてきた。年の頃は40半ばか。
「君、今までどこに行っていた?」
年齢と口調から察するに、自分が今着ている服の持ち主よりも立場が上なのだろう。
不慣れな敬礼をハッタリで誤魔化しつつ言葉を返す。
「は、見張りの者に用があり多少時間をいただいておりました」
その答えを聞いた男は顎を撫でながらシェーナをじっと見つめる。あからさまになにか疑っている表情だ。
「彼らと連絡が取れん。君は何分前に彼らと会った?」
目を逸らさない。自分は何も知らない。そう思いながらもわずかに表情を動かし、怪訝な顔を作る。
大仰な変化は却って逆効果だ。
「それは本当ですか? 私は……確か15分程前に彼らと会いましたが、特に異常は見当たりませんでした」
「ふむ。ここに戻ってくるまで時間が空いているようだが?」
やはり疑っている。当然だ、自分は彼らを眠らせた張本人なのだから。
止むを得ずちょっと苦しい言い訳をする。
「えぇ……お恥ずかしい話ですが、少しこの波と船に見入ってしまいまして」
そう答えた瞬間、その男は破顔した。
「そうかそうか、その気持ち私にもわかるぞ。だがそれだからと言って仕事に支障を来たしてはならん」
後ろに立っていた男2人がその反応に慌てる。彼らもシェーナを疑っていたのだろう。
しかし運のいい事に、彼にとって嬉しい言葉をシェーナは弾き出したのだ。
「は、申し訳ございません」(なんだこのおっさん、海好きなのか?)
あくまで表情は動かさない。この程度の演技ならお手の物だ。
「うむ、彼らの様子はこちらで見に行こう。君は仕事に戻りたまえ」
「ありがとうございます、では失礼致します」
どうやら信用してもらったらしい。敬礼し、その場を離れようとするが……。
「君、歳はいくつだね?」
唐突な質問だ。慌てて振り返り姿勢を正す。
「今年で18になります」
予想外の質問だったので若干態度に地が出てしまった。だがそれを気にした様子は無い。
「そうか……若いな、励んでくれたまえ」
「は、それでは」
しみじみと呟くその男に改めて告げ、ようやくその場を後にした。
コンテナ搬入口の横に通用口のようなものがあるのでそこから中に入るつもりだ。
「それにしても……」
「どうなさいました? 大尉」
小屋の様子を見に行くためフロート・バイクを出していた男が口髭の男の言葉に気付く。
「どこかで見たような気が……いや、最近の若者は良く育つと思ってな」
「はぁ」
前半がよく聞こえなかったせいか首を傾げる。
彼らの疑念がやはり正しかったと明らかになるまで、まだ少し時間が必要だった。
今回はここまで。
やっと次で中に入れそうです。展開遅いなぁ……なんでだ?
また間があいてしまった…
g67M1F1GV.氏、第五話乙です!
彼女って…某黒髪長身男女さんのつもりで言ったのですが
まさかミツルの“彼女”が出てくるとは…アリシア(・∀・)イイ! ですね
んで、もはや恒例(?)の質問 1個め
負荷についての描写がありましたが、金属疲労が溜まる50%に対して
立ち上がるだけでこれだけ負荷ってかかるものなのですか? これって飛んだり跳ねたりとかすると…
まぁ50t以上ある鉄の塊が動いてんですからしょうがないでしょうけど
2つ目は最初の部下の五人組について。 彼らは今何処にいるのですか?
現在、勝手ながら彼らを使ったサイドストーリーを書いているので
できればまだテヘランをうろついてることにして頂ければ有難いです
無理なら別キャラで補完しますが…できないだろうなぁ…orz
3つ目は…第五話ってまだ続いてるんですよね?
戦慄くイスラにミツルがどんな啖呵を切るのか楽しみです(違う展開だったらごめんなさい…)
続き待ってますよ〜
>>273 奮闘記いいですねぇ〜 本編に負けず劣らず面白いです
展開遅いですか? 俺はそうは思わないですけど…
こちらにも質問〜
シェーナって煙草吸えないってことでいいんですよね?
煙草は20歳になってからで本編(24歳でしたっけ?)では吸ってるとか…
でも俺的には吸わないで欲しいです。勝手な意見ですが
もしそうだとミツルと愉快な仲間達との絡みで(バンダナ君以外は愛煙家…って俺の脳内設定ですが)
煙草で話が書けるかも…という勝手すぎる目論見があったり
奮闘記も続き待ってます〜
…さて、俺も頑張ろう
>>274 >立ち上がるだけでこれだけ負荷ってかかるものなのですか?
機械系はかなり想像で書いてるんで、実際問題よく分かってなかったりorz
まあ、重いからって事で、一応
>最初の部下の五人組について。彼らは今何処にいるのですか?
大丈夫。あいつらはこの作戦に参加せずに、中東でしごかれてるはずだから
>第五話ってまだ続いてるんですよね?
イエス。
>>275 煙草は20歳になってから・・・
こっちのミツルは19って設定だったり;
このところ纏まった時間が取れなくて絵が進まないぜぇorz
ちまちま書いてるせいでちょっと訳わかんなくなってきたけど
区切りがいいので
>>272までが1話ということで一つ。
必要ならタイトルは「探し物はなんですか」ってところかな。
次回は2−1となります。
>>275 そう? なんとなく遅い気がするんだけど気のせいかな。
1話終わってもガンダムのガの字も出てこないw
とりあえず便利屋はg67M1F1GV. 氏の話とは別物な方向で。パラレルワールドみたいな?
んで少なくともうちとこのシェーナは、嗅覚や味覚を損なうので煙草は吸いません。
酒はアホほど飲むけどウワバミなので問題なしw
>>276 >こっちのミツルは19って設定だったり;
16くらいだと思ってたよ……orz(それで煙草吸うと思ってる事に問題がある)
278 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 20:11:55 ID:B87QyfKg
保守
保守
次がいつになるかちょっと分からない状態になっちまいましたorz
完成ししだい、即投下させていただく事になるかと
とはいえ、暫しの遅れ、誠に申し訳ない
281 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/32(土) 10:19:14 ID:D6TRDp2S
保守
イスラ・カマルの成分解析結果 :
イスラ・カマルの38%はやさしさで出来ています。
イスラ・カマルの27%は白インクで出来ています。
イスラ・カマルの14%は歌で出来ています。
イスラ・カマルの8%はスライムで出来ています。
イスラ・カマルの7%は厳しさで出来ています。
イスラ・カマルの3%は祝福で出来ています。
イスラ・カマルの1%はビタミンで出来ています。
イスラ・カマルの1%は赤い何かで出来ています。
イスラ・カマルの1%はミスリルで出来ています。
ミツル・ホルシードの成分解析結果 :
ミツル・ホルシードの30%は愛で出来ています。
ミツル・ホルシードの27%は睡眠薬で出来ています。
ミツル・ホルシードの18%は祝福で出来ています。
ミツル・ホルシードの16%は鉄の意志で出来ています。
ミツル・ホルシードの8%は理論で出来ています。
ミツル・ホルシードの1%は鉛で出来ています。
>>282 おそろしいな、その二人の中身w
ソースあったら教えれww
ソースってかコレ。最近流行の成分解析。
http://tekipaki.jp/~clock/software/index.html ついでに
アトロ・リウの成分解析結果 :
アトロ・リウの71%はカテキンで出来ています。
アトロ・リウの28%は雪の結晶で出来ています。
アトロ・リウの1%は陰謀で出来ています。
シェーナ・ボーンの成分解析結果 :
シェーナ・ボーンの82%は花崗岩で出来ています。
シェーナ・ボーンの17%は情報で出来ています。
シェーナ・ボーンの1%は電波で出来ています。
ヘリオス・ガンダムで遊んだら全て利益で出来ていますとなった件。
>>280 じっくり腰据えていこう。
俺もまだ時間掛かるなぁ…どうしたもんか。
>>276 説明ども〜
ミツルってばまだ未成年なんだww
そうするとイスラは幾つなのですか? 本編中にあったようななかったような…
なんか大変みたいですが、こういう時こそマターリと…
焦って端折ると後で後悔しますし…俺が言えないですがorz
頑張ってください。いつまでも(dat落ちしないかぎり)待ってます
>>277 絵も手がけてらっしゃるんですから遅くはないですよ
パラレルワールドか…俺はてっきりシェーナがCOMSに入隊する前の話だと思ってました…
成分解析おもしろいっすねw
ネタ切れ感があったので少し遊んでたら、五人組の一人ですが
ミシェル・イブラヒムの成分解析結果 :
ミシェル・イブラヒムの94%はカテキンで出来ています。
ミシェル・イブラヒムの3%はツンデレで出来ています。
ミシェル・イブラヒムの3%はやさしさで出来ています。
…参考にさせていただきますwww
では本腰入れて書かせていただきます。…いつになるかわかりませんが
>>288 イラ投下乙です!
表情がいい…どう足掻いても俺はここまでは書けないっす…
なんでっつーと、えーと
>>277の『このところ……絵が進まないぜぇ』から
進まないってことはやってらっしゃるのかなー、なんて
プライベートは…ほんとは2ch見てるヒマなんかないぐらい
忙しいんすけどね〜orz
94%のカテキンよりもむしろ3%のツンデレに俺は笑いました
微ツンデレ…でもミシェルはツンデレにしたくないなぁ、なんとなく
実は今ツンデレキャラの書き方がいまいちわからなくて止まっています
まだしゃべってすらいないデリックあたりをそうしてみたいのですが…
何でもいいです、ヒントをくださいww
まぁ、ラスティみたいにしちゃうのもいいかな〜、なんて思ってたりw
290 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 14:47:49 ID:ez2tq4xl
保守
>>289 いい勘してるw
イスラの表情から「護る意思」とか「決意」とか感じてもらえると嬉しいな。
とりあえず今夜あたり便利屋2−1投下できるかも。
あちこち穴あるからわかんないけど。
なんとか危機を回避したシェーナは現在、通用口横にあるカードリーダーとその脇のパネルを睨みつけている。
「まいったな……暗証番号聞きだしておけばよかった」
そう、この扉はカードを通しただけでは開かなかったのだ。
すぐ近くに大きな入り口があるとはいえ、そこは人が多すぎて侵入者だとバレる可能性が高い。
大きな柱の影になっている事もあり、こちらを使おうと思ったのだが……とりあえず意味はないと思いつつ
カードリーダーに顔を近付ける。
――――ガンッ
その瞬間、勢いよくまるで狙ったかのように扉が開き、シェーナの顔面を直撃した。
「――――――――ッ!!」
その衝撃と痛みで思わず数歩たたらを踏んで蹲ると、扉を開けた赤髪の男が慌ててしゃがみこんで来た。
「わ、悪い悪い! 人がいるとは思わなかったんだ!」
恨みがましい目でその男を睨みつけつつも、男がつかえて扉が開いたままになっている事を確認する。
と、男がシェーナの落としたIDカードを拾い上げた。
「ほらこれ、お前のカードだ……ろ……?」
差し出そうとしながらそこに貼り付けられた写真とシェーナの顔を交互に見比べる。
無論シェーナの写真であるわけはない。
「……誰だお前は!」
「お前が誰だ!!」
ガッ!
「うわっ?!」
言うが早いか相手の顎に向けて右の拳を打ち出す。
座り込んでいたので打撃としては大したダメージにならないが、軽い脳震盪を起こさせるには充分な威力だ。
そのまま立ち上がり開いていた扉に飛び込む。
「ま、待て……!!」
「マーク、どうした?!」
平衡感覚を失ってふらついている男の声に気付いたか、作業場側から人が来た。
「し、侵入者だ……クソ、あのガキふざけやがって!」
「な……ここに外部の者が入り込んできたって言うのか!?」
「そうだ、早いとことっ捕まえないと大目玉食らっちまう! 警備はなにやってたんだよ!」
マークと呼ばれた男はなんとか立ち上がり侵入者を追おうとするが、先程殴られたダメージが足に残って
未だ言うことを聞かない。膝が抜けて倒れそうになった所を慌てて今やって来た淡い金髪の男が支えた。
一回り大きい男を支えたため、少々足元がふらつく。
「無茶するな、そいつは俺が追うから特徴を。お前は上に報告しておいてくれ」
「……すまんシエル。ひょろっとした男で耳にかかるくらいの黒髪だ。肌の色はお前に近い」
「わかった。後は任せろ」
あまり表情を変えず、しかしそう宥めながらマークを壁際に座らせると、シエルはどこへ行ったとも知れない
相手を追いかけ始めた。しかし彼には侵入者の行き先に確信に近い予感がある。
「侵入者が入り込んだと言うのなら……狙いはモビルスーツか!」
そしてシエルは一直線に格納庫へと向かっていった。
『……侵入者の特徴は以上だ』
「了解しました。救護は必要ですか?」
『いや、もう普通に動ける。問題ない』
通信はそこで終了した。このマークからの連絡で管制室は俄かに活気立った。
言うまでも無く先程峠から報告された人物がどうやってかこの基地へと潜り込んだからだ。
「ハーヴァティー少尉、例の便利屋がここに侵入した様です」
女性のオペレーターが上司にその旨を報告する。
「…………よくもまぁここを見つけ出した物だ。私はこれより大佐に侵入者の処置を伺いに行く。どうせ向こうも
直ぐに逃げられはしなかろうしな」
「はっ」
墨の様に黒くくせのある髪を軽く束ねた男は、この地域ではもっともよく見かけるチョコレート色の肌をしていた。
風貌も物腰もなかなかのものだ。さぞ異性に人気がある事だろう。
案の定というか、女性オペレーターの頬はわずかに赤く染まっていた。
向こう側で男性オペレーターがデスクに突っ伏した状態で「あれだけ言ったのに……」と嘆いている。
ハーヴァティーと呼ばれた男性が扉の向こうに姿を消した直後、再びコールが入った。
嘆いていた男が慌てて通信を繋ぐ。
「はい、こちら管制室、アジェニ・プルーター伍長です」
『ウィニッシュ・ロベル大尉だ。今警備室から連絡している』
「あ、わざわざ大尉の手を煩わせてしまって申し訳ありません」
本来なら自分達が確認に向かう所だったのを、大尉は快く引き受けてくれたのだ。彼はそれに感謝していた。
『なんのなんの、たまには動かんとな。ところでここの様子なんだが……やられたよ、二人とも気分よく寝ておる。
洞窟の入り口付近でフロート・バイクも発見した』
「……先程マーク・エルニッツ軍曹より侵入者の報告を受けました。長身で黒髪の、例の人物とか」
『あぁ、やはりそうか。我々も接触してな……すっかり騙されてしまった』
相手を目の前にしていながらまんまと逃がしてしまった不甲斐なさ。それが隠すことなくアジェニに伝わる。
彼の明け透けな所はこの基地に所属する多くの者から好ましく思われていた。
この性格のせいもあって、年齢の割に階級が低かったりもするのだが。
「現在ハーヴァティー少尉がオモング大佐に報告に行かれています。侵入者の処置はその際決定するかと」
『ふぅむ、了解した。こちらは二人が目を覚まし次第戻ろう』
「は、承知致しました」
会話を終了すると、アジェニはここからは見えない空を仰ぎたくなった。
トップクラスの便利屋の腕は彼の予想を遥かに超えていたからである。
カスタル・オモング大佐はこの基地を取り纏める司令官だ。
執務室で大量の書類に埋もれていた彼は部屋を訪れたハーヴァティーに入室を許可すると、敬礼する
彼に椅子を勧めようとしたが
「基地内に侵入者です、大佐」
ハーヴァティーはオモングに対面すると同時に用件を言って出ていた。
「ほう、侵入者か。なかなかやるな」
ペンを置いて両手を組みその上に顎を乗せる。三十代半ばだろうか、若くして基地司令の任を背負うその男は
左目から左頬にかけて古い傷跡を持っていた。
目線で「お前もそう思っているだろう?」と問いかけてくる。
「ふふ、大佐には敵いませんね。ですがそうとばかりは言っていられません。こちらがその侵入者の資料です」
そこに用意されていたのはシェーナの顔写真と簡単なプロフィール。
実はハイモンがシェーナと会う為にクアンガイに入った時点で、既にこの二人はマークされていたのだ。
しかしここに辿りつく事はあるまいと、オモングの耳にまでは入っていなかったのである。
「シェーナ? 侵入者はシェーナ・ボーンと言うのか」
「は、トップクラスの便利屋と調査されております」
それをみてオモングはなにやら考え込む。
(シェーナか……似ている、あの男に)
「如何なさいました?」
写真を見つめたまま考え込む上司に思わず声を掛けた。
「いや、この少年と話がしたい。なるべく傷つけずここまで連れてきてくれ」
「? ですが……」
「単独でここに侵入できる程だ、いい腕をしている。出来れば我々の力になって貰いたい」
「はっ! 承知致しました!」
ハーヴァティーは同じ事を考えていてくれたオモングに感謝すら感じつつ退室して行った。
オモングは机上に置かれた資料の写真を再び手に取ると、椅子に腰掛け物思いに耽る。
「ウルヴズ……あいつは生きているんだろうか……」
なんだか話が全然進んでない気がするなぁ…。
いつの間にかキャラ増えてるし。
地道にやろう。
いつかきっと終わるさorz
捕手
297 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 23:01:04 ID:Db8gb+Nb
保守
ほす
本編も投下しないでこんな事してる俺って・・・
◆g67M1F1GV.作品の登場人物の容姿
▼イスラ・カマル
長身。整った顔立ち。
ハネ無し真ん中分けストレートの髪で、背中にかかるくらいの長さ。貞子みたいな髪型。黒髪。
▼ミツル・ホルシード
165あるかないか。唇左側に交差して傷。
短髪。茶髪。
▼アトロ・リウ
175くらい?。
髪はハネはり真ん中分けで長め。こげ茶。
▼アリシーア・フォリー
160くらいか、それ以下。実はミツルよりひとつ年上。
右に分け目。ブロンド。肩に届くかそうでないかくらいの長さ。
▼シェーナ・ボーン
巨女。和田アキ子より高い? 右目を機械化。
ウェイヴのある茶色。常に髪を上げているので本当の長さは誰も知らない。もみ上げは長い。
▼ミツルの部下たち
任す。
…完全になめてました
予想より全然忙しいとこでした。大学orz
>>295 投下乙です。いい感じにキャラが増えてますねww
質問です〜
途中出てたシエルって、
>>5のシエルですか?
それと、この話って
>>32につながるのでは…
…今頃気づいたのかって言われそうだが…
古い話引っ張りだしてすみませんです
>>299 設定乙です〜
思ってたよりでかくないんですね、アトロ
イスラより頭一つでかいイメージでした…
175だとどっちが大きいんですか?
あと、シェーナの右目…
どんぐらいのものですか?
本編も期待してます〜
>>300 大学2年の俺から送る言葉
「頑張りすぎは体によくないよ」
閑話休題
シェーナの右目は目蓋に固定してある義眼で、一見して機械と分かる代物だったり
右は瞬きしないし、右だけ暗視装置、サーモグラフィ、その他各種不可視光のセンサでもある
身長は、
高い←アドルフ、シェーナ、ミシェル、イスラ、ロベルト、リウ、アレクセイ、ミツル、アリシーア→低い
って感じで
鳥忘れてた
303 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 11:46:31 ID:JrguQV/g
あげ
さげ
>>300 あんまり肩に力入れない方がいいよ。マジで無理は禁物。
とりあえず、実はあそこまでキャラ増やす予定は全くなかった^^;
質問については両方ともその通り。
ちょっと服とか変わるかなって程度で。
まあアレだ、つまりまだ1P目も完成してない事になりますorz
しかも今後の展開に繋ぐ部分で悩んでてしばらく投下は無理そう……
「ガンダム」「小説」っていう未知の世界に踏み込んじゃったもんだから
基本的な部分から調べなきゃいけないという情けない状態w
来週投下予定
期待してます。
さげ
過疎ってますな
保守
土日休みだったのにアク禁だったというグダグダっぷりorz
なんか忙しいの最初だけみたいでした、大学
これからマターリできそうです
>>301 アドバイス&解説ども〜
アドルフが一番でかいんすか…うーん…
>>305 そうでしたか〜ますます期待
マターリがんばってください
うーん、いい感じに過疎ってますね…
そのうち何か投下します
313 :
通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 16:58:23 ID:n06xKcWG
干し揚げ
明日、投下
残り5分の描写にやたら時間がかかってしまったわけだが、文章はへたれていると思われorz
ウイグルなんで中共のツケ払わされてんだろ…黄砂被害カワイソス
(
>>261の続き)
月と太陽。地球を中心にしたこの2つの天体は、数々の神話や伝説、悲劇や喜劇に語られた、人間にとって、いや、地球に住まう生物にとって最も身近な天体だ。
太陽は昼の光と熱、そして作物の実りをもたらす存在として崇拝された。
月は時の感覚と闇を照らす光、そして子孫繁栄をもたらす存在として崇拝された。
両者は基本的に、同時に存在してはいけないものとして語られている。
太陽が盛っている昼に、月は観測しようとしても出来ない。月が煌々と輝く夜空、太陽は観測出来ない。
神話では、両者が同時に存在し得ない理由を様々に語っている。
或るもの曰く、月が太陽に失礼を犯したから、太陽が怒って月と会わないようにしたから。
或るもの曰く、相思相愛の太陽と月が義務を果たさなかったため、神々によって引き離されたから。
また或るもの曰く、太陽が2つあっては明るすぎると考えた神々が片方に兎を投げつけて暗くし、別々に現れるようにしたから。
この戦場では、《ΗΛΙΟΣ(太陽)》と《ΣΕΛΗΝΗ(月)》が同時に存在してしまった。そして今、重なり合おうとしている。
太陽と月が同時に存在し、重なり合うという事がどのような現象を引き起こすのか、知らない諸君ではないと思う。
翼を得た太陽は、月に向かって飛んでいく。
蝕(しょく)されるのは、太陽か月か。それとも互いに蝕し合い、互いに消え去るか。
何も物語る事無く、喧騒の中、満月だけは静けさを保って夜を照らしていた。
* * *
「……マークしながら、繋いで」
ウィンドウが出現する。セレーネ・ガンダムは温州から城月に跳躍し、艦橋のすぐ横に甲板を砕きながら着艦した。フリゲイト艦も空母も大きく揺れ、空母はその波で脱出用のボートをいくつか転覆させた。
《繋いだよ》
新たにウィンドウが空中に出現する。そこには、いつか見た少年がいた。
『Oh, you takes that?(おっ、あんたが乗ってたのか?)』
向こうにもイスラの顔が見えているのだろう。少年は少し面食らっていた。
「ミツル・ホルシード……」
イスラはカメラに向かって睨んだ。その視線には少しの驚きが込められている。しかし視線の先に通信用のウィンドウは無い。イスラは会話しながら、空母《城月》に積まれているセレーネ・ガンダムの兵装を持てるだけ持とうとしているのだ。
『覚えてもらって光栄だよ。何だ、あんた、ウイグル民族なのに軍人だったのか』
「あの時はただの民間人だったけど、今は中国人民解放軍所属のNCO Class 1(一級士官)だから」
『NCO Class 1ってーと、Corporal(兵長)になるのか。とんでもない出世じゃん。反逆罪被告人が、2ヶ月ちょっとで4階級も昇進したなんてな。俺なんて4年軍人やっててSergeant First Class(曹長)止まりだ』
皮肉っぽく、ミツルは言う。いや、実際皮肉なのだろう。
イスラは接近戦用武器《サーモ=ブレード》を見付け、それを腰の装着部分に付けた。また、《プラズマ・ライフル》を発見し、壊れていない兵器がそれしかない事を見出すと、それを左手に持った。右手には未だにハンドガンが握られている。
「それで、そんな曹長がどんな意図であたしに通信を繋げてきたのか、訊きたいんだけど」
『簡単な事だ。あんたかどうか、確認するためさ。そういや名前聞いてないな』
「そんな事訊いてどうするわけ?」
『もしここであんたが死んだら、弔うくらいはするさ。これでも、2ヶ月で玄人の動きを習得したあんたの操縦技術を尊敬してる。もしあんたが生き残ったら、次の戦闘でも指名してやるよ』
ヘリオス・ガンダムはセレーネ・ガンダムから見た右側からマッハ0.6ほどの速度で接近している。あと10秒もすれば、セレーネの上空を通過するだろう。
名乗れば、向こうは何をするだろうか? 本当に、覚えておくだけ? それとも、その名前からあらゆる個人情報を引き出すだろうか。様々な懸念が頭を過ぎる。
「……亢義蘇(カン・イースゥ)」
だから、彼女はそう通名で名乗った。
『へぇ、ウイグル民族なのに、中国名で名乗ってるのか、イスラ・カマルは』
イスラはその瞬間、身震いを感じた。レーダー中心の光点が重なる。セレーネ・ガンダムの上を、ヘリオス・ガンダムが通過したのだ。攻撃は無い。
「名前……!?」
『顔の解析をかけたら出たんだ。イスラ・カマル。通名、亢義蘇。標準暦32年9月15日出生の17歳、俺より2歳年下。父親はカマル・エレンディズ。母親はノーベル賞授賞暦のある理論物理学者、イハン・ビルルネク。……どう? 間違ってる所、ある?』
ヘリオスは、セレーネの上空を旋回している。まるで、からかっているかのように。
「……大当たり」イスラはミツルとの会話で初めて、表情を出した。不適に微笑っている。「顔からここまで調べたなんて、大した情報収集能力だと思う。というか、名前を聞く意味が分からない」
『いや何、確認さ。量子コンピュータの並列計算を使っても、1月半かかった奴だしな。っと、苦労話はあとだ。今回の目的は、中国艦隊の戦力を奪う事だ。ここであんたと会えるとは思ってなかったけど、丁度いい。セレーネを破壊するか、拿捕させてもらう』
薄い微笑から一転、ミツルは無表情でそう言った。レーダーに異変。ヘリオス・ガンダムがセレーネ・ガンダムに急速接近していた。
イスラはセレーネを反転させる。そして、右手でヘリオスに照準を付けた。ほぼ同時に、照準が付けられた事を示すビープ音。
『無駄だよ(Y'can be futile.)』
「そう言えるあなたが羨ましいよ(I’m enviable you sayin’ so.)」
トリガーを引くのは、ほぼ同時だった。炸薬の燃焼時間の関係上、ハンドガンを持つセレーネからの攻撃が若干遅い。圧縮された液体水素と液体酸素の混合物を燃料にしたミサイルがヘリオスを装着したプテリュクスから発射される。
《ミサイル12発! あと6秒で到達!》
「6秒って……!」
イスラは右手を引っ込め、左手のプラズマ・ライフルを構えた。
5
プラズマは、物質に触れると急速にそのエネルギーを周囲に与えてプラズマ状態ではなくなってしまう。この兵器にも使われている高温プラズマは1〜数万ケルビン(絶対温度)にもなり、地球上のあらゆる物質を溶かしてしまう。
「ロック・オン解除!」
4
現在ではエネルギー拡散の対策として、弾丸となる装置でプラズマを生成させながら、それを対象に衝突させる方法が用いられている。これは月ではなく、最近中国が実験的に製造した兵器を応用したものだ。
「照準はマニュアル!」
3
今セレーネが持っているプラズマ・ライフル以外に、同種の兵器は無い。実用化が急がれたのは、セレーネ・ガンダムが中国の手に渡ったからだ。その弾丸はリニア・レールによって射出され、初速は音速を超える。
イスラは照準もそこそこに、左手のトリガーを力いっぱい引いた。
2
弾丸に衝突されれば、当然それは甚大な被害を受けるだろう。また弾道周辺も、超音速による衝撃波と拡散したエネルギーで焼け爛れ、被害が大きくなる。
銃身から弾丸が、約2万ケルビンの熱を放出しながらマッハ2.7で射出された。セレーネ・ガンダムとミサイル群の平均距離は、約100メートル。
1
音速の2.7倍。つまりそれは、1気圧中で秒速894.915メートルの事を表す。弾丸の質量は約180キログラム。半径15センチメートル、長さ45センチメートルの不恰好な弾丸は、速度と温度を得れば強力な破壊兵器に成り代わる。
衝撃波と熱で、大半のミサイルは空中分解した。弾丸は徐々にその速度を小さくしながら、緩やかな落下運動を行っていた。
0
衝撃波で進路を狂わされたミサイルが、あらぬ方向に飛んでいく。1発が城月の艦橋に衝突し、爆発。艦橋は脆くも崩れ去った。
ヘリオス・ガンダムは既に上空に退避している。セレーネがプラズマ・ライフルを構えたのを見て、パイロット、ミツル・ホルシードは追撃をかけず、退避を選択した。それは正しい選択で、自ら発射したミサイルはいずれも無残に墜ちてしまった。
発射された件の弾丸は、シンガポール海軍のフリゲイト艦《ストルワート》の艦首に衝突し、艦を半分吹き飛ばすほどの爆発を起こして消滅した。
『…How outrageous…』
イスラは英語の呟きを聞く。通信は繋がったままだ。
「無駄だったのは、そっちだったみたい」
彼女は尚も表情を変えず、言い放つ。とはいえ、件のイスラもその威力に驚きを抱いていた。思ったよりも長い射程――短射程表示の理由は恐らく、弾道の制御が極端に難しい所為だろう――であった事もある。
セレーネは残った空母の甲板を踏んで、最も近い艦、駆逐艦《青島(チンタオ)》に跳躍した。
「あたしにもね、目的がある」
艦尾の格納庫を潰しながら、セレーネは立ち上がる。それと同時に、イスラはそんな事を言った。
『……あ?』
「あなたは、中国艦隊の戦力を奪う事を目的と言った。同様にあたしにも、目的がある。中華人民共和国に対する脅威を、駆逐する事。あたしはあなたを、それと定める事にした」
言って、イスラは兵装を再確認した。
右手に握るハンドガン。装弾数は20発。残弾数は17発。
左に握るプラズマ・ライフル。装弾数は6発。残弾数は5発。現在砲身冷却中。
頭部にある20ミリ機関砲。両腕上膊の30ミリガトリング砲。2ヶ月使っていないから、蜘蛛の巣の1つも出来ていそうだ。
腰部左に装着しているサーモ=ブレード。明らかな接近戦用兵装で、高熱で物体を叩き斬る。
予備のハンドガン用弾倉は3つ。いずれも腰部右側に装備。
予備のプラズマ・ライフル用弾倉は1つ。これは腰部後ろに装備。
驚くほど、体の感覚が研ぎ澄まされている。今なら、自らの思うように動ける気がする。イスラは操縦桿を強く握った。
「行くよ、ミツル・ホルシード」
『……面白いな、あんた。それじゃあ遠慮は無用だな、イスラ・カマル』
互いの目を一瞬見詰めそして、通信は切断された。
一度しゃがみ、セレーネは強く跳躍した。《青島》の艦尾が海中に没する。
セレーネはそのまま、ミサイル駆逐艦《石家荘(シィチァツァン)》に着艦。予め捕捉していたヘリオスに、ハンドガンで3点バースト2回の銃撃をし、また次の艦に乗り移った。
飛行中のヘリオスに、銃弾はなかなか当たらない。当たったとしても、装甲表層で爆発するだけで内部への影響は余り見られない。発達した高性能爆薬(ハイ・エクスプローシヴ)の爆発でも、その装甲を破る事は出来なかった。
他方のヘリオスも、ミサイルの一斉射撃をセレーネに食らわす。しかし、ことごとくが避けられるか、或いは撃墜されていた。
プラズマ・ライフルを射撃。弾丸は石家荘の艦橋を潰し、虚空に消えた。
石家荘を離れ、セレーネは対するCOMSの艦船に飛び乗った。艦首の構造物は原型を留める事無く使用不能になり、勢い付いたセレーネが衝突した事で、こちらの艦橋も潰れる事となった。そこからヘリオスにハンドガンで射撃を与える。
ヘリオスからの攻撃で、セレーネがいたCOMSの艦が真っ二つに割れた。セレーネは1隻、2隻と飛び移る。飛び移りながら射撃する。途中でハンドガンが弾を切らした。セレーネは身体を捻り、プラズマ・ライフルでヘリオスの右翼を撃ち抜いた。
プテリュクスの両翼には、ミサイル・ランチャーが取り付けられている。弾丸が貫通する事によって、それ自体による破壊と衝撃波、熱、そしてミサイルの爆発で、プテリュクスは即座に飛行能力を失った。機体が左に傾き、失速する。
ヘリオスは翼を失った。プテリュクスからパージされ、ヘリオスは通りかかった揚陸艦に飛び降りた。甲板がひしゃげる。プテリュクスは海面に突っ込み、分解して爆発した。
その時セレーネは、既に中国艦に戻っていた。
同じ土俵の試合になった。いや、ヘリオスは強力な兵装が無いから事実上、追い詰められた形になる。
イスラはハンドガンをリロードした。《0/20》の表示が《20/20》になる。そして再び、ヘリオスを向いた。
情況は、中国軍に有利に働いている。既にプテリュクス付きストラティオーテース隊は全滅した。ASEAN各国の艦隊は、多くが潜水艦により沈められ、戦闘不能になった艦船は既に自国への帰還ルートに就いていた。
残るCOMS側のモビル・スーツは、ヘリオス、オルニース3機、ナウス付きストラティオーテース2機。残存艦船は、潜水艦5、空母2、駆逐艦6、フリゲイト11、コルヴェット12、揚陸艦4。
対する中国南海艦隊の残存艦船は、潜水艦35、空母1、駆逐艦4、フリゲイト8、コルヴェット5。
イスラは今、フリゲイト艦《馬鞍山(マァアンシャン)》に、ヘリオスは揚陸艦《イザヨイ》にいる。攻撃すれば、ヘリオスはほぼ確実に墜落とせる。
またしても、ビープ音が鳴った。今回は照準を付けられたのとは違うアラートだ。
《イスラ! あと10分で電池が切れる!》
「嘘っ!? ……まあ、いいか。これ以上黙ってても、埒が明かないし」
《どうすんの?》
「セレーネ、今のヘリオスの稼動可能時間は?」
《えっ? えーっとね、多分あと20分くらい。ヘリオスは実際問題、イスラほど動いてないし》
「そりゃそうか。飛んでただけだしね。もしかしたら向こうは、電池切れを狙ってるのかもしれないし」
《ああ、あり得るね》
「でもそれって、かなり癪じゃない? 何もしないでもこっちが戦闘不能になるのって」
《そこにいるだけで疲れてくるようなものだからね。私としてもかなり悔しいよ》
「なら……」
《ヘリオス、殺るしかないでしょ》
「うん。――で、何する?」
《逃げ回られたらこっちが持たないから、周りの艦から沈めていこう。逃げ場を無くしていって、隙があれば直接ヘリオスを墜落とす》
「よし、乗った」
艦隊は、方向を転換し始めた。両軍とも、現在の海域から西方、つまりインドシナ半島に近付くように舵を切った。南海艦隊はそのまま北上し、COMSの艦隊は南下する予定である。現海域で交差してから再び交差するまで、両艦隊は平行して航行する。
《問題点は、こっちの艦に乗り移られたら厄介だって事だけ》
「……だね。よしっ、情況開始」
イスラはプラズマ・ライフルを構え、ヘリオスに照準した。
モビル・スーツの兵装にも、ちゃんとリア・サイトとフロント・サイトが付いている。しかし実際の照準は、レーザー光線を対象に0.5秒間照射する事で行われる。ただ、レーザー光線は弾道と一致するわけでは無いので、最大1メートルの誤差は発生する。
動体への照準は、極めて困難な行動だ。動体が次の瞬間に到達するであろう空間点を予測し、そこに向けて射撃する。炸薬の燃焼時間、弾丸それ自体の速度、動体との距離、動体の速度、風向、風速など、あらゆる事象が関係してくる。
特に、このプラズマ・ライフルのように砲身の冷却を必要とする兵器は、連射が出来ないという致命的な欠点を持っている。だから、動体に命中させるには、スナイパー並の射撃の腕を持っていないと到底無理な相談なのだ。
万人がそのような技術を持ち合わせているわけではない。そのため、モビル・スーツによる射撃では、人工知能による補正が行われるのだ。ただ、それが万能であるわけではない事は、付け加えておく。
プラズマ・ライフルから超音速・超高温の弾丸が発射された。ヘリオスの選択肢は、6つある。右に逃げる事、左に逃げる事、上に逃げる事。動かない事、弾丸を撃ち落とす事、そして、下に逃げる事。タイム・リミットは、2秒。
射撃の直後、イスラは右側に跳躍した。隣の艦に降り立ちながら、ハンドガンを次の目標に照準する。COMSのコルヴェット(小型の快速戦闘艦)。イスラは操縦桿のトリガーを引いた。
揚陸艦《イザヨイ》は正面からプラズマに纏われた弾丸を食らい、前半が爆発した。ヘリオスは左に逃げるという選択をし、セレーネがそれを追って更に銃撃を浴びせるという形になった。
踏み台にされたコルヴェットは慣性榴弾を受けて艦首が爆散。ヘリオスは倒れ込むように、空母《クロワサン》の甲板に着艦した。
プラズマ・ライフルの砲身冷却時間は、20秒。まだ、あと10秒ある。3点バーストでの射撃が7回目を数えると、弾丸が切れた。次が最後の弾倉だ。
「3点バースト解除。単発に移行」
《単発に移行。それと、あと2分で艦隊が交差するよ。墜落とすなら、その時》
「よしっ」イスラは空になった弾倉をパージし、最後の弾倉を銃把に挿入した。
モビル・スーツ用ハンドガンの弾倉をパージすると、挿入口に電磁石を取り付けられた爪が出る。次の弾倉を挿入する際、その爪に弾倉を引っ掛け、そうする事で自動的に弾倉が挿入され、再装填が完了するのだ。
プラズマ・ライフルの残弾はあと2。各兵装をチェックし終え、イスラはヘリオスを見据えた。どうやら、空母で兵装したようだった。
「セレーネ、気を付けて。向こうも武器持ったから」
《うん。確認した》
「どんな武器?」
《74ミリ口径のマシンガンと、20センチ口径の榴弾ランチャー、あと、こっちも持ってるサーモ=ブレード。実はヘリオスって、頭部はともかく腕に兵装が付いてないから、こっちの方がちょっと有利なんだよね》
「でも、早々に空母を叩いとかないと、ってか沈めとかないと、補給されるよ。それは避けたいな」
《同感。じゃあ、ヘリオスは後回しで、まずは補給出来そうな艦を沈めるのを最優先ね》
「よし、じゃ、行くよ。補給出来そうなのは、そっちで捕捉しといて」
艦隊が交差する直前、セレーネが跳んだ。そして艦をいくつか踏み台にし、《クロワサン》に肉薄する。COMSの艦を1隻置いて、イスラは駆逐艦《珠海(ツゥハイ)》で止まった。COMSの艦まで、遠くて400メートルくらいでないと飛び移れない。
そろそろ、艦隊が交差する。
右手が構えられた。そして、慣性榴弾が1つ発射された。立て続けに、2発目も銃口を通過する。最初の狙いは手前、フリゲイト艦《ディセミネイティング・ムーン》の艦橋。2発目は、空母《クロワサン》だ。
慣性榴弾は、その名のとおり、初速の慣性のみで目標まで飛んでいき、目標表面で衝突して爆発する弾丸である。この弾丸は、発射から丁度1秒後にミサイルのような羽を展開し、ある程度は追尾出来るという特徴を持っている。
標準暦年間に入り、油田が相次いで枯渇した。最後の油田の採掘が停止されたのは、標準暦15年。その9年前にはOPEC及びOAPECが解体している。その影響は世界中に現れたが、兵器開発の面でもそれは大きかった。
既にモーター等の動力に置き換えられていた地上・海上のヴィークルはともかく、燃料の爆発を制御する事によって推力を得ている航空機は、その後の《シュヴィッターズ式推進機関》の開発が実現するまで、衰退せざるを得なかった。
しかしこの推進方式は、開発から四半世紀を経た現在でも高価であるため、ミサイルなどの消耗兵器には導入されなかった。その代わりとなる、慣性榴弾である。標準暦直前の中米戦争時から積極的に使用されるようになった。
従来の砲弾の延長であった慣性榴弾は、半世紀に亘る開発に次ぐ開発によって、追尾能力とある程度の機動性を手に入れたのだ。
慣性榴弾は《ディセミネイティング・ムーン》の艦橋を爆破し、《クロワサン》の手前200メートル付近で、CIWS(近接防御武器)に撃墜された。
セレーネはディセミネイティング・ムーンに飛び乗り、左腕を前に突き出した。リニア式銃口の先は、空母《クロワサン》。空母の航空甲板の上には、こちらに榴弾ランチャーの発射口を向けているヘリオス。両者に逃げ場は無い。
プラズマ・ライフルの射撃の直後に、頭部の20ミリ機関砲が火を噴いた。こちらの狙いは、ヘリオスが撃った慣性榴弾を撃墜する事だ。慣性榴弾には、追尾の性能はあっても回避の性能は無い。
プラズマを纏った弾丸は止まる間も無く空母の燃料電池を貫通し、艦尾右舷で爆発。ヘリオスの撃った慣性榴弾は、《ディセミネイティング・ムーン》に到達する前に撃ち落とされた。
ヘリオスは《クロワサン》が沈みかけている事を確認すると、少し助走して、跳躍した。距離にして700メートルはあろう。
それは滞空しながら、マシンガンで射撃する。セレーネは艦尾に避ける事で辛うじて直撃を免れたが、その射撃は正確無比であった。セレーネも、ハンドガンで応戦する。しかし、連射性能は言うまでも無く、マシンガンに分があった。
滞空して少しすると、ヘリオスはブースターを吹かした。翼が無いため揚力こそ生まないものの、滞空時間を若干延ばすくらいは出来る。
セレーネは右手に被弾し、手首から先の接続が断線した。急に力無く頭を垂れた手首に、イスラは焦る。しかし射撃は止まない。74ミリ口径の弾丸が、装甲を抉っていく。
イスラは初めて、後退した。そしてあと1歩で、海だ。後方の艦まで、約400メートル。追い詰められた。形勢は、ほぼ一瞬にして反転した。
ヘリオスがディセミネイティング・ムーンに降り立つ。その衝撃で、艦は大きく揺れた。
《着信だよ》セレーネが口を挟む。《ヘリオスから》
「繋いで」
通信用のウィンドウが開く。その中に、再びミツルの顔が出た。
『Chance came to give you tit for tat at last. And well done your stand play.(やっと、あんたに一矢報いるチャンスが到来したよ。それと単騎駆け、ご苦労さん)』
「Well, thanks.(そりゃ、どうも)」
『けどまあ、あんだけ俺を追い詰めといて、今はそのざまだな、あんた。ジョウシャヒッスイとは、よく言ったもんだな』
「何、その言葉」
『俺の爺さんの祖国に昔っからある言葉だよ。《偉ぶってたり強かったりする奴でも、いつかは必ずその勢いを失くす》って意味の日本語さ』
「へえ……、って事はあなた、日本人の血が混じってるんだ」
『名前からして日系だな。まあ、どうでもいいな。あんた、どうしてもこっちに与する気は無いんだな?』
「あなたとあたしの目的は、真っ向から対立する関係にある。そんな提案するなんて、ナンセンスだと思うけど」
『ごもっとも。じゃ、ま、デスマッチでも開始めますか?』
「そうだね。何を以って、試合開始にする?」
『《レディ、ゴウ!》でいいんじゃない?』
「じゃ、それにしよう」
通信用のウィンドウが、横に逸れる。イスラは改めて操縦桿を握り、呼吸を整えた。
Ready,
Go!
試合開始の合図と同時に、ヘリオスはマシンガンをセレーネに向けた。
しかしそれを予見していたイスラは慌てない。銃口を向け、照準を固定するまでに要する時間は約0.5秒。セレーネの解析によって、常に照準用のレーザー光線が出ている状態である事が判明している今、そのタイム・ラグを有効利用しない手は無い。
照準は目測のみでつけられた。目線の先は74ミリマシンガン。銃口をこちらに向けるのと同時に、セレーネ頭部左側の機関砲が火を噴いた。
20ミリ口径とはいっても、その弾頭は特殊である。いわゆる《フル・メタル・ジャケット》といわれる弾丸ではない。ここで使われている弾頭は、《アーマー・ピアシング》、つまり《徹甲弾》である。装甲を破るための弾丸だ。
この銃撃を食らえば、たとえ核融合の反応室の外壁とほぼ同様の構造をしているガンダムの装甲でも、無事では済まないだろう。ましてマシンガンの外装など、紙に等しい。
そんなわけで、ヘリオスのマシンガンは銃身を撃ち抜かれ、使用不能になった。しかしそこで怯むヘリオスでない事は、イスラも承知している。
ヘリオスは左手の榴弾ランチャーを構えた。そして今度は構えると同時に射撃。やはりタイム・ラグは如何ともしがたいらしく、今度、照準用のレーザー光線は発せられていなかった。
セレーネの頭部右側の機関砲からの射撃。1発目は辛うじて寸前で迎撃出来た。しかし立て続けに発射された2発目が、爆煙の中から出現した。
イスラは思わず、操縦桿から手を離して目の前にかざす。榴弾は右手に当たり、ハンドガンと右手首から先を吹き飛ばした。
《イスラ!》
セレーネが叫ぶ。自らかざした右手の指の間から、一瞬、ヘリオスが見えた。気力を振り出し、イスラは操縦桿に再び手を置いた。
ヘリオスは一気に距離を詰める。艦の全長144メートルというのは、モビル・スーツにとってひどく短い距離であった。マシンガンを棄てたヘリオスの腕が、セレーネの目前に迫る。
イスラはセレーネを1回しゃがませ、そのまま身を低くしてヘリオスに接近した。
セレーネは爆散した右手でコックピットのある部分を殴りに掛かる。しかしそれはヘリオスの右手に阻まれ、遂(おお)せない。だが策はある。セレーネの右側上膊部がせり上がった。そして、ガトリング砲による3秒間の射撃。
その射撃でヘリオスの右肘関節が行動不能になった。ヘリオスの右上膊がだらんと垂れる。セレーネはすかさず、右手をコックピット部分に向けた。
他方のヘリオスは、左手の榴弾ランチャーでセレーネの右腕を払い、慣性でそのまま右脚を軸に少し身体を横に向けながら、左脚を曲げる。そして、そのまま足を伸ばし、セレーネを蹴飛ばした。
右腕で衝撃を吸収したから辛うじて踏みとどまったが、右腕は胴部に衝突し、使い物にならなくなった。コックピット内のイスラは、胴体に走った横からの衝撃を受け、気絶寸前にまで陥った。
意識が飛びかけると、ヴァイザーから静電気程度の圧電が頭皮に流され、意識を保たせる。イスラは下に向いていた顔を上げた。
《右腕接触異常!》
「くそっ! 一番近い潜水艦に、浮上するように言って!」
ヘリオスは榴弾ランチャーを構える。発射とほぼ同時に、セレーネは頭部左の機関砲をランチャーの弾倉部分に撃った。発射された榴弾はセレーネの右腕上膊部で爆発。爆発の直前に左手はランチャーを離していた。
「それと、浮上と同時にこの艦を沈めるようにも!」
《了解! 30秒後に左側300メートルあたりに浮上! あと、オルニースが1機残存! 気を付けて!》イスラから見て左側の空中に、カウント・ダウンが表示される。
「分かった!」ウイグル語でそう言って、イスラは1歩下がる。そして左手を腰溜めに、プラズマ・ライフルを撃った。照準はマニュアル。残弾は1。弾はまっすぐヘリオスに飛んでいく。
ヘリオスの左手がそれの腰部に移動する。腰部に伸びる約11メートルの棒状物。その柄に、左手が据え置かれた。
瞬間、目一杯伸ばされた左腕。腕の先、手に握られている白刃が、文字通り白色に発光していた。ヘリオスのスラスターは一部融解し、大きく歪んでいる。
ミツル以外の誰も、何が起こったのか理解していなかった。ミツル自身でさえ、驚く事態である。
左手の逆手で持たれたサーモ=ブレードが、艦の甲板に突き立てられている。突き立てられた部分は、どろどろに融けていた。
彼らは数秒間、その時を止めた。
《イスラ! あと5分で電池切れだよ!》
そんな中、セレーネの言葉と同時に、電力の残量が表示された。イスラはそのウィンドウを消すと、左を向いた。あと5秒で浮上する。
イスラは両方の操縦桿を前に押し出した。セレーネは右足を1歩前に出し、ヘリオスは瞬時に身構える。しかしセレーネは1歩以上踏み出さず、左に跳躍した。
予定より3秒早く、潜水艦はその黒い艦体を海面に顕わにした。急激な浮上のため、その勢いは凄まじい。操艦の腕は確からしく、セレーネの着艦ポイントにどんぴしゃりと到達した。セレーネはその背に降り立つ。
潜水艦は大きく揺れ、セレーネはセイル――潜水艦上部の凸部――に背を寄せる事で、踏みとどまった。セイル後部がひしゃげる。
イスラはコックピットの中で、左を向いた。ディセミネイティング・ムーンの艦首から、水柱が2本上がっている。高性能爆薬の塊が爆発したのだから、無事で済む筈は無い。事実、艦首は爆発の直後、艦体から分離して沈んでしまった。
身を屈めていたヘリオスはしかし、周囲に飛び移れる艦艇がセレーネの乗っている潜水艦しか無く、まして少しでも飛距離を伸ばすために使用出来るスラスターでさえも、既に使用不能だ。
《オルニース接近! 後ろ!》
セレーネがアラートと共に叫ぶ。イスラは後ろを見て、それからレーダーに目を移した。
後方を示す位置から、高速でこちらに接近する黄色い光点がひとつ。光点の傍らに、アラビア文字で[アリフ、ワーゥ、ラー、ヌーン、ヤー、スィーン]の順で右から左に並んでいる。この表記での発音としては《ウルニース》か。
イスラが今見ているレーダーは、セレーネから半径500メートルを表す球状になっている。中心は当然、セレーネだ。最広域でセレーネから5000メートルの範囲を表示出来るが、それだと近傍のオブジェクトが見難いため、この領域になっている。
後方500メートル。いや、既に数秒経っているから、もうすぐ後ろだ。
アラート。照準された事を示す。
「っ! 306号潜水艦! 攻撃あり! 潜行して!」
イスラは潜水艦に指令を送る。それと同時に、ディセミネイティング・ムーンの後ろに展開していたCOMS籍の艦を見据えた。
――そういえば、ヘリオスと戦ってたとき、邪魔が入らなかった。
海水を注入して潜行しようとする潜水艦の甲板を少し走り、最後に強く踏み込む。目標の艦は、現在位置から800メートル。到達はギリギリか。
スラスターを吹かす。揚力は当然発生しないし、本来このスラスターは宇宙での活動を目的として設置されたものである。緊急用にシュヴィッターズ式推進機関は搭載されているものの、その推力は戦闘機はおろか、ペイトリオットに遠く及ばない。
オルニースから慣性榴弾がばら撒かれ、それらが海面で爆発した。一部、セレーネがいた潜水艦に当たったものもある。しかし潜行に問題は無いようだ。
距離が伸び、ピークだった高度が下がり始める。
「頭部機関砲、弾丸をエクスプローシヴ(炸裂弾)に再装填!」
そう叫び、イスラは祈る思いで、スラスターの出力を最大にした。
《装填完了!》
着地対象のフリゲイト艦《ワクシング・ムーン》の主砲、74ミリ連射砲が、セレーネを向く。CIWSは既に射撃体勢に入っていた。
「敵主砲にオート・ロック!」
照準用の表示が敵主砲に示される。ロック・オン。イスラは右のトリガーを引いた。6秒間の射撃。それより早くにCIWSは射撃を開始していたが、セレーネの装甲を貫けない。辛うじて、その左目を機能不能にする程度だった。
コックピット内では画面の右側が一瞬ブラック・アウトを起こしたが、すぐに機能を回復した。
「届け……っ!」
言いながら、イスラは左のトリガーを引いた。敵主砲は沈黙。射撃による着地点誤差、後方30センチメートル。
スラスターが悲鳴を上げる。緊急停止装置が作動し、ジェットが止まった。慣性で、セレーネは《ワクシング・ムーン》にまで飛んでいく。
セレーネは足から、ワクシング・ムーンの艦首左舷を破壊しながら、曲がりなりにも着地した。
《オルニースから攻撃! ミサイル12! 水平飛行中!》
「どうしろっての!?」
セレーネはワクシング・ムーンの艦橋を不恰好に飛び越える。ミサイルは艦首直上を通り過ぎ、海中で爆ぜた。セレーネは左手を上に構える。そして、ワクシング・ムーンの上空をオルニースが通過するまさにその瞬間、機体をプラズマ・ライフルの弾丸が貫通した。
煙を吹いて、オルニースは、中国艦に衝突した。イスラはそれを見届けない。接近してくる中国艦があるのだ。ミサイル駆逐艦《海口(ハイコウ)》だ。
「海口に通信、繋がる?」
《ちょっと待って……、出来ない。あれ、ヘリオスが乗ってるでしょ? 多分、艦の航行システムを掌握してる》
「そんな事が出来るの、このテの機体って?」
《メイン・コンピュータを破壊せずに押さえなきゃ無理だけどね。今のイスラじゃ、ちょっと厳しいかな?》
「アグズンニ・ジュム(うっさいなぁ)。さて、どうする? 残り時間ももうちょっとだよ」
イスラはレーダーを見た。《HAIKOU(※アラビア文字)》の下に、34ノットと表示される。距離は560メートル。刻々と、その数字は減っていく。飛び移れる距離だ。
アラートが鳴る。ヘリオスが飛んできた!
手にはサーモ=ブレード。白熱化した刃が、夜に輝いている。イスラはそれを、美しいと思ってしまった。昼を照らす太陽のような、雄雄しさ。空間に残る刃の軌跡。
美しいものを破壊するという事。その罪悪感は時に、強烈な麻薬にもなる。セレーネは左手を月に向けた。
ヘリオスの向こうには、月光。一筋の雲。一筋の輝き。引き金が、引かれた。
弾丸は、ヘリオスの持つサーモ=ブレードに衝突した。半ばから、折れる。いくら高熱で物体を切断するとはいえ、横からの力に弱いのは剣の仕様だ。折れた刃は急速にその温度を失って、海に落ちた。しかし、ヘリオスは臆しない。
「頭部、徹甲弾に再装填!」
《完了》と、文字が出る。ヘリオスのコックピットに照準し、両方のトリガーを引いた。徹甲弾がヘリオスの腹部に吸い込まれていく。装甲はひしゃげていくが、しかし破れない。
再び、セレーネの目前にヘリオスが降り立った。それから間を置かず、ヘリオスはセレーネに切りかかる。他方のセレーネはプラズマ・ライフルでその切っ先を受けようとするが、当然、切断されてしまった。
ヘリオスの剣は、リーチは狭いがその分振りは速い。セレーネの左手が腰のサーモ=ブレードに到達した。小指でそのスイッチが入れられる。腰のジョイントから刃が外れ、一気に熱を帯びる。
《出力83%》
セレーネのサーモ・ブレードは、ヘリオスのそれよりも柄が長い。それは、柄の先端に電池が付いているからだ。電池1個で、出力100%の状態を20分保てる。
ヘリオスの切っ先を、セレーネは辛うじて受け止める。火花が散った。逆手で持つ長物は、固定が効かない。力任せに剣を振るう。ヘリオスは退き、セレーネは順手に持ち直した。ヘリオスは逆手にする。
互いに、左手を構える。セレーネは重心を低くし、丁度、居合いを左手でやる要領で、構えた。ヘリオスはやはり重心を低くし、左腕はだらんと、下ろした。これが構えだ。
両者は同時に向かっていった。イスラが剣を振る。ヘリオスは受け止めるが、勢いのついた剣をその半分ほどの長さの刃で受け止めるのは辛い。ヘリオスは受け止めるのをやめ、そのまま突進。勢いがついて隙が出来たセレーネの懐に入る。
セレーネは瞬間、ヘリオスを蹴り上げた。予想外の反撃だったのか、ヘリオスはバランスを崩し、艦橋に倒れ込む。セレーネは腕を戻し、ヘリオスに飛び乗った。
左腕がせり上がり、剣先がヘリオスのコックピット位置を眼前に置く。ヘリオスは自らの剣をセレーネの剣に引っ掛け、その剣先をコックピットからずらす事に成功した。代わりに、既に使い物にならなくなっている右腕が犠牲になったが。
ヘリオスはサーモ=ブレードをセレーネの右足首に突き刺した。
《イスラ! 右足首異常発生! すぐどけて!》
アラートと同時に、セレーネが叫ぶ。イスラはセレーネの右足を下げる。そして剣を横に移動させ、そのまま切断しようとした。しかしヘリオスは、甲板を思い切り蹴って避ける。
セレーネはバランスを崩し、膝立ちの状態になった。そこに、ヘリオスが飛びかかる。長過ぎるセレーネの剣のため、その反応は遅れてしまう。右から、頭部に向かう斬撃。イスラが思わず差し出した右腕は、既に存在していなかった。
無論、フェイントである事は理解していた。しかし、それに気づいた時にはすでに左手が柄ごと切断されていた。柄で発生していたプラズマが爆散した。
今度はヘリオスがセレーネを組み伏せる番だった。折れた切っ先が、コックピットの寸前で止まっていた。
『デッド・エンドだ、イスラ・カマル』
いつの間にかヘリオスと通信が繋がっていた。向こうの顔は見えない。ミツルの声が、憎らしかった。
「……どう? 女に跨る気分は」
『ここまで気分が高揚しないのは初めてだ。折角、邪魔が入らないように配慮してやったってのに、台無しだ』
渋い口調だ。イスラはそう感じた。同時に、艦艇が自分に攻撃を仕掛けてこなかった理由も理解した。
『ここであんたを殺すと、結果的に、復讐になっちまうな。あんたが落とした最後のオルニース、あれに、俺の彼女が乗っていた。アリシーア・フォリーって奴だ』
ミツルの顔が表示された。ひどく、やつれていた。
『昔っからの馴染みでな、15ン時、俺が軍に入るって言ったら必死で止めんのに、ハイ・スクールを中退してそいつも軍に入ったんだ。そういや、俺の行く所にはいつも、あいつがいたな。もう、そんな事も、美しい思い出ってやつになっちまう』
イスラは、ミツルの顔を見ていられない。そうだ。今まで殺してきた人たちも、あたしと同様、元を辿ればただの人間なんだ。
彼女は後回しにするはずだった《自らの間違いを省みる行為》を、してしまっていた。
『他の奴らだってそうだ。ナウスに乗ってたポールは俺とポーカーやって、いつも負けててさ、絶対勝ってやる、って、出撃の前も言ってたな。ウォンチョルは、来月にも子供が生まれるって聞いた。皆、殺しちまったんだな、あんた』
「……あなたは、あたしに、何をさせたいの?」
イスラは俯いたまま、訊いた。
『どう償ったって、あいつらは戻ってこない。ここであんたを殺しても、意味は全く無いんだ。でも、でもな?』
そこで彼は、言葉を切った。イスラは、ヘリオスが剣の柄を握る力を強くしように見えた。イスラは、ミツルの映像を切った。声だけが、コックピットに響き渡る。
『痛かっただろうなぁ、悔しかっただろうなぁ、憎かっただろうなぁ……。あんたがそれを与えたんだ。ならあんたも、知るべきなんだよ。その、痛みやら苦しみやら、憎しみをさ……』
イスラは操縦桿を強く握り、せめて、安らかに眠るよう、祈った。それだけで済むとは、無論思っていない。でも、あたしには、やる事があるのだ。
「その痛みも苦しみも、憎しみも――」
イスラは表示に目を向けた。残っている兵装は、頭部の機関砲と、左のガトリング砲。次で、決めてやる。残り時間が、1分を切った。
「――今は、省みるべき時じゃない。省みたら、もう生きれなくなる。だから――」
イスラはキーボードを表示させ、頭部右の弾丸を炸裂弾に変更した。左側は徹甲弾のままだ。それを終えると、両手の操縦桿を、大きく動かした。
『何を……っ!?』
「――省みちゃ、いけないんだっ!」
トリガーを引く。照準はヘリオスの左手。頭部の機関砲が両方、火を噴いた。
ヘリオスの左手は大きく壊れ、サーモ=ブレードも柄が折れた。こちらもプラズマが爆散する。
引こうとするヘリオスを、セレーネは強引に、足を絡める事で阻止する。
そして、コックピットに左上膊が迫った。
3秒間の射撃。それは、武器を失った――まだ辛うじて頭部機関砲は残っているが――ヘリオスにとって、致命的な打撃だ。必死になってヘリオスは、絡んだ足を蹴散らす。セレーネは右足を上げて、そのままヘリオスを横に蹴った。
艦から、ヘリオスが落とされる。もう、掴むための手は無い。ヘリオスは左肩から、南シナ海に水没していった。
同時に、コックピットが暗黒に包まれた。
《動作不能。充電モードに移行。イスラ、……大丈夫?》
「……お願い、セレーネ……。今は、話しかけないで」
俯いたまま、イスラは言った。
* * *
太陽と地球との間に月が来れば、日蝕が起こる。
* * *
残存の艦に曳航され、COMSの艦、ワクシング・ムーンは、ヴェト・ナム沖を北上して、南海艦隊とともに湛江に帰港した。セレーネは中破。空母《城月》に乗っていたアトロ・リウ上尉も、怪我こそしたが、無事であった。
この海戦では、結果的に中国側が勝利した。第二次大戦以降、初めての殲滅戦であった。中国側の海上戦力にも大きな被害は出たが、潜水艦隊がある程度無事であったため、肝心勝利であった。それでも、イスラの顔は晴れない。
ワクシング・ムーンの、もう使い物にならないであろう甲板に座って、イスラは日の出を見ていた。セレーネは先ほどクレーンで吊られ、空港に送られていった。
「義蘇、僕らも、そろそろ空港に行こう。帰ったら、仕事がわんさか待ってる。セレーネの修理と整備、君の訓練、それと、海軍から余計な仕事を貰った。捕虜の尋問だ」
「……分かりました」
しかしイスラは立ち上がらない。
「君にも、その尋問を手伝ってもらう。君の担当は、えーっと、ウォンチョル・ネヴァライネン二等兵曹と、アリシーア・フォリー一等兵曹だ。詳しい話は、移動中にしよう」
「……はい」
やっと、イスラは立ち上がった。そして、昇る太陽を見ながら鼻を啜った。
「……二人とも、生きてて、よかったです」
「そうだな。さ、義蘇、僕たちが最後だ。とっとと行って、とっとと済ませよう」
リウが歩き出す。イスラも、それに続いた。
時間かかりまくって、どうもすんませんでしたorz
戦闘の描写、俺はもう苦手だな。心理描写のほうがはるかに書きやすい
まあ、例によって例のごとく、文句、質問等、受け付けとります
>>331 (・д・;) な、長ぇ……
力作ご苦労様です。そりゃあこんだけ長けりゃ時間かかりますね
まだ一回しか読んでないので、こんな事言うのは何ですが、一つ
セレーネとヘリオスの戦闘で、頭の中でイメージしづらい場面が幾つかありました。
セレーネがヘリオスに飛び乗るところとか…
じゃあお前はどう書くんだと言われれば反論出来ないですし、
俺の読む力が無いんだと言われてしまえばそれまでなのですが…
とまぁ、こんな俺のヘタレ具合ですんで、いつもの質問はまた後にさせてください。すみません
それに今、やっている事がありますので…
実は文章校正する時間が全然無かったから、いくつか変な表現とかがあるかもしれない
そーですか…
F1見てから読み直してみます
あと2〜3日で便利屋続き投下できたらいいなぁ…
なんか今回やたら時間食うorz
ho
長身にする意味ってある?
339 :
◆SCAm0lHjhM :2006/04/27(木) 21:18:54 ID:lINKNqFr
シェーナはわかるけどイスラはどうなんだろう……
まぁ、今さら……だな うん
それに俺が言うべきことじゃねぇな…
ガンダムと身長差1cmかと思った
別に長身じゃなくてもおれはいいと思ってるけど、もしかしたらそれでネタが浮かぶかもしれない
所で話は変わるけど、アリシーア・フォリーの名前を、アリーシア・フォリーに変更して戴きたい
というのも、俺はずっと「Αληθεια」の「ι」にアクセントが置かれてるもんだとばかり思ってたんだけど、
実際に古典ギリシア語のテキストで確認した所、実は「η」に置かれていた事が判明したから
現代ギリシア読みには長音が無いから、「ー」はその母音にアクセントを置いている事を示す
細かい事だけど、どうしても言及せずにはいられなかった
長文スマソ
日本語以外の言語を使える人がホントうらやましいです…
ドイツ語履修し始めたけど初歩的な単語すら読めねぇorz
>>古典ギリシア語のテキスト
やばい、欲しいかもww
今、戦艦の名前を決められずに悩み中なので
つーか、一ヶ月以上もかかっている俺って…
古典ギリシア語のテキストは、去年履修した授業で使った。面白かったよ
今でも愛用中。特に単語の活用を見るときは
まだ覚えきれてないのよねorz
全っ然話進んでないけどもういいや、投下しちゃえ!
言葉が浮かんでこないって嫌ねぇ……orz
ジョージはいつものように仕入れた酒や料理の材料の内容をチェックしていた。
開店までまだ充分時間がある。これから仕込みを始めるか。
――――キィ……
そう考えていた矢先、「CLOSE」の札を掛けている筈の扉が開く音がした。
「?」
訝しげに思いつつもカウンターの下から頭を覗かせる。
「御機嫌よう、マスター」
そこには二日前に来たこの店の雰囲気にはおよそそぐわない紳士、マッハムール・ハイモンがにこやかに立っていた
。
「まだ開店には早すぎるぜ?」
相手の姿を認めてジョージが立ち上がる。
カウンターに入っているせいもあってハイモンはジョージの胸ほどの位置だ。
「ああ、申し訳ないですがお酒を楽しみに来たわけではないのですよ」
「へぇ? ……便利屋の事かい?」
その言葉を聞いてハイモンの笑みが深まる。
「その通りです。さすが、話が早いですなぁ」
「あいつならここ2日ばかりちっとも姿を見せないぜ。あんたの依頼でもやってるんじゃないのか?」
「その事なんですが……」
先日の依頼の話が出た途端、ハイモンの表情が曇った。なにかあったのか、と思わずジョージの顔も険しくなる。
無言で続きを促すと、それを確認するように軽く頷いた。
「今回の依頼をキャンセルさせていただきたいのです」
「そりゃまた、どういうわけだ?」
「申し訳ないのですが、それはお話できません。つきましてはこちらからの契約破棄ですので、キャンセル料を
シェーナさんにお支払いしたいのです」
物腰は柔らかいが、その中に硬い芯がある事に気付いたジョージは追及を諦めた。
こういった人物はなにをどうした所で理由を話しはしない。第一薮蛇はごめんだ。
「んー…わかった、戻ったらシェーナから連絡させよう。連絡先を教えてくれ」
「ではこちらにお願いできますか?」
内ポケットから名刺を取り出して渡す。
そこには不動産会社の取締役社長の肩書きとその連絡先が印刷されていた。
「ああ、預かっておこう」
「ありがとうございます。では私はこれで」
来たときと同様に静かに店を出て行く後ろ姿を見送りつつ、シェーナの言葉を思い出していた。
――調べたいならいくらでも専門家に頼めるだろうにわざわざここまで依頼にくるんだからさ――
「調べる必要が無くなったのか、それとも……」
ぶつぶつと呟きながらも料理の仕込みの準備を始める。
手は慣れた作業を行ってはいるが、頭は今の老人との会話が気になって仕方がない。
ひょっとしたら普段と少々味が変わるかもしれないな、という考えが一瞬だけ頭の片隅にちらついた。
通用口から適当に角を曲がり適当な階段を上りながら走ってきたシェーナは、通信機のボリュームを上げながら
右も左も判らない状態で通路をうろついていた。
「やれやれ、せっかく変装したのにいきなりバレちまうとはねぇ。早いとこ見取り図でもゲットして退散するか」
先程の男を気絶させなかった事を後悔しながらも差し当たりの目標は管制室とした。が、どこをどう歩けば
目的地に辿り着けるのか判らず、ひたすら直進しているだけの状態だ。
下手に時間を掛け過ぎると捕捉される可能性が高くなるだけに、わずかながら焦りも見えてきた。
「おっと」
進行方向の角から二人組みの男がやってきた。逆方向に俯きながら顔を逸らし、出来るだけ見られない
ようにする。
「やっと一段落ついたな」
「まったくあんなジャジャ馬送りつけられて、量産するこっちの身にもなって欲しいよ」
「それだけ高性能って事じゃないか。まぁレベルダウンしなきゃ俺らにゃ到底扱い切れないけどさ」
「その性能をきっちり計測するのにどれだけ時間掛かったと思ってんだよ……」
しかし擦れ違う際聞こえた言葉につい興味をそそられてしまった。
「よぉ、随分お疲れだな」
「ん?」
軽い敬礼と砕けた口調に人好きのする笑顔。顔立ちが整っている事も相まって、男たちは油断し普通に対処する。
「まぁな、アイツのせいでここ3日ばかりロクに寝てねぇんだ」
「俺も。でもお陰でようやくベントゥスを作戦行動に乗せられるよ」
後から答えた男が後方――今彼らがやって来た方向だ――を示した。
当初の目的地とは違うが、これはこれで面白そうな話だ。
「そっか、悪かったな引き止めて。それならゆっくり――」
休んでくれ、と続けようとした言葉は館内放送で遮られた。
『各員に通達します。基地内に侵入者が確認されました。特徴は身長180cm程度の痩せ型、耳に掛かる程度の
黒い髪、肌は黄色(おうしょく)。警備員から制服を奪い着用している模様。司令権限により、発見次第直ちに
捕獲してください。射殺は不可との事です。繰り返します――』
同じ内容をもう一度繰り返して放送は終了した。
「うへぇ……俺もう部屋戻って寝たいってのに……」
「俺は寝る。誰がなんといおーが寝る。侵入者なんて他の元気な奴に回しちゃる」
「やだやだ、侵入者なんてさ」
「ホーント、勘弁して欲しい……」
シェーナの声に同意しようとした男が、言葉を途中で止めて声の主を改めて見返す。
自分よりほんの少しだけ低い身長、体型に合ってないのかだぼついている制服、サイドだけ伸びた肩に付かない
程度の黒い髪、焼けてはいるが自分よりもよほど白い肌。
今の放送の特徴そのままの人間が今正に目の前に立っている。
「…………な、なあ。悪いがIDカード見せて貰えるか?」
まさかこんな堂々と侵入者が自分の前に立つわけがないと思いながらも彼はカードの提示を求めた。
「えー、人の事疑ってるわけ?」
渋面を作りつつも胸ポケットを探る。その様子を見て思わず男の肩から力が抜けた。
「ほい」
そう言って差し出したIDカードを受け取ろうと手を出す――。
ドッ
突然、これまでのやり取りを眺めていた男が崩れ落ちた。
IDカードに気を取られた瞬間シェーナが鳩尾を蹴り上げたのだ。
「え?」
その事に呆然とし倒れた男に向き直った途端、彼は後頭部に衝撃を受けた。
急激に暗転する意識の中、「実は大当たりだ、おやすみ♪」と笑う爽やかな笑顔が見えたような気がした。
変な所で改行してる……orz
すんごい短いけど今回はここまでです……。
Tres bien!
ほしゅ
今週中の投下は無理っぽいorz
GW中に2話を終わらせる
と、言うだけならタダだ!
『……現在、わが海軍は敵の侵攻を食い止めるべく、南シナ海に向けて展開中である。
友軍であるASEANの艦隊と合わせれば、数の上ではこちらが勝るだろう。
だが、諸君は驕ることなく、個々の責務を全うし……』
――あーあ、遂に始まんのか……
携帯ラジオの電源を切り、イヤホンを適当に巻いて、ポケットに押し込む。
ちなみにこれはアレクセイからの借り物、と言うよりは“お下がり”だ。
機会があったから、あいつにだけは話した。
珍しく黙って話を聞いていたあいつは、別れ間際、これを俺に渡しながら、
『船旅は暇だろ? こいつでいろいろ勉強しろよ。俺に負けねぇようにな』こう言っていた。
「しっかし、何で一般放送で演説なんかやってんだ、お偉いさんはよぉ……」
暇だ。つまんねぇ。まともな番組はもう流れていない。テレビも特番ばっかだ。
何でか知らないが、この船の船員はゲイばっかだ。話が合う合わない以前に、話したくすら無い。
まぁ、まともな船じゃ無いのは海戦に参加してない時点で明白なのだが。
「つーか、形からしてまともじゃねぇじゃんよ」
……航空巡洋艦なのだそうだ。艦の前部は普通の戦艦、艦橋以後が空母。
全く、笑わせてもらった。どこのバカだよ、こんなの造ったのは……
標準暦(S.A.)49年8月24日。アラビア海。
穏やかな波に揺られ、東を目指す艦隊。
その中でも目を引く、中途半端な軍艦。これでも一応艦隊の旗艦なのだが、いかにも頼りなく見える。
整備員が走り回る後方甲板で煙草を吸う男が一人。
手摺に頬杖をつき、眺める目線の先には、彼が乗る航空重巡洋艦《ツヴァイ》にワイヤーで曳かれる小舟。
「まったく……サーフィンでもやれってのか? こいつで?」
その上には立て膝で構えるMS……ガンダムではない。シルエットがもっと無骨だ。
「海戦なんて専門外だが、頼まれちゃあしゃあねぇよなぁ」
艦隊は東へ……シンガポールへと向かっていた。
この艦の隣を進む中型の貨物船、その積荷の数個のコンテナ。
その中身をそこにいるであろう或る人に無事届けること。
これが、今回の彼の任務である。
彼は誰なのか、何故この任務を受けたのか。
ここまでの経緯を語るには、時を2週間ほど遡らなければならない。
* * *
8月10日午後10時半。COMS軍テヘラン基地。
一人、屋上で煙草を吹かす。
砂漠の夜とは言え、まだ軽く汗ばむほど暑い。時より吹くそよ風が心地よくほほを撫でる。
部屋を抜け出すのは日課になっていた。勿論、10時の消灯以降の勝手な行動は禁止されている。
もし見つかったら怒鳴られる位じゃ済まないのは重々承知だ。
だが、夜も更けぬうちから冷房も無い部屋で暑さを我慢して寝れるほど、俺達はまだ人間が出来てはいない。
軍人とは言え、小隊でも年上の方だった俺だってまだ二十歳そこらの若僧なのだ。
ある者は夜の街にくりだし、またある者は友人と夜明けまで騒ぐ。
食堂で残飯をあさる者や、女性兵の部屋に夜這う者、
暑さに耐えかねて、幾分涼しい地下の倉庫で、整備中のMSの傍らで眠る者……
そして俺は、屋上で一人、煙草を吹かす。
持って来た一箱が空になる頃には、夜も更け、丁度良く涼しくなっている。
特に何かを考える訳でもなく、ただ虚空を眺め、心を休める。あいつが言ってた"ゼン"ってやつだ。
「うぉ、やべぇ……クラクラする」
ただ、今日は少し目的が違うのだが。
軽い吐き気を堪えつつ空を見上げる。雲一つ無い、満天の星空だ。
眼下にはテヘラン市街の夜景。小高い丘の上の基地から見る夜景は絶景だ。
ここでプロポーズなんかやればそりゃあ上手く行くだろう。
……それでもしくじるってのは、口説くのが下手なんだぜ? ミシェル……
「あぁ、でも、これで月が出てりゃ満点なんだけどな」
空に月は出ていなかった。新月だったかな、今日は……
* * *
テヘラン。イランの首都であり、カブール、バグダードに並ぶ地球でのCOMS行政府の最大級都市でもある。
その豊潤な石油資源が枯渇して以降も衰えることなく、月の独立以前から交通の要所として、
またCOMS陣営に付いた後はヘリウム3の中継基地として、
延いては月と地球との中継地としてさらなる繁栄を見せている。
イランは基本的にイスラム国家ではあるが、夜更けのテヘラン市中心街
――ネオンが煌めく眠らない街――を歩く人々には、
ヴェールを被ったムスリムだけでなくキリスト教徒や仏教徒なども多く見られる。
月との交流などもあり、移民(合法・違法問わず)や難民が多数流入したため、
現在ではアメリカさながらの“人種の坩堝”となっているのだ。
「ん、結構いけるなコレ」
その坩堝を、茶髪の少年が行く。手にはコーラと、
「蒸したって言うから曹長が言ってた“マンジュウ”だと思ったけど、肉なんだ。いいね」
もう片方の手に持った白いかたまりを、人混みを歩きながらかじる。
「これで2個3リヤルなら安いなぁ」
リヤル……イランリヤル。特に月の介入の影響によるイランの経済成長によりその紙幣価値は高騰し、
現在ではUSドルとほぼ同価値となっている。
ちなみに、宇宙開発機構の汚職やその後の冷戦、それに伴うエネルギー問題などにより
USドルをはじめとするPGUG諸国の紙幣価値は軒並み下落した
(第二次世界恐慌とも呼ばれているが、これはあくまでPGUG諸国において、である)
が、核融合技術の定着により当面のエネルギー問題は解決され、
PGUG諸国の紙幣価値もUSドルやユーロ、人民元などを中心に、以前の水準に戻りつつある。
だがルーブルや日本円、パキスタン・ルピー、トルコリラなどといった紙幣には、
価値が戻るどころかその兆候すら無く逆に下落し続け、その国自体、または政府の対外信用を失墜させたり、
たとえ元の水準に持ち直してもその国内の経済に大打撃を与え、
経済復興に困窮する国を出すなど、恐慌の爪跡は大きく、
各国の紙幣価値ひとつを取っても南北の経済格差の縮小が顕著に見て取れるのである。
とはいえ、こんな形で格差が縮まるとは皮肉なものだが……
「そういえば、大丈夫かなぁ、みんな……」
人混みの中、突然立ち止まるアドルフ。
190cmの長身である上、着崩してはいるが軍服を着ている彼を、人混みは避けて流れていく。
「俺はなんとか抜け出せたけどさ……つーか、ありゃあねぇよなぁ」
人々より頭一つ大きい彼の周りには、いつの間にか半径1mほどの空間ができていた。
ぶつぶつ呟く彼を、一人のムスリムが怪訝そうに眺めながら歩いていく。
「何てったっけ、ああいうの……あぁ、“ウワバミ”か」
何かを思い出し、また歩き出すが、数歩でまた立ち止まってしまう。
後ろから来ていた青い目の金髪の少女が、いかにも迷惑そうに彼を避けた。
「……“ノンダクレ”だっけ? うーん」
中途半端だけど、今日はここで切ります
続きは…そのうちに
今回はけっこう長くなる予定……ですが
ネタはあるんだけど文を紡げない…orz
>>359 原案者も楽しみにしてるぜい
余談だけど、トルコはPGUGにもCOMSにも加盟してる希有な国であるという設定
物語中にイスタンブールを出す予定なんで、一応
ほかにも、PGUG本部は台北だったり、台湾、香港、ハワイ、アラスカがPGUGの直接統治領だったりと、確かまだ出してない設定がいくつか
ちなみにCOMSの、というか月で遣われる通貨の単位は、MS$(月ドル、ムーン・ダラー)
1MS$=0.8US$
日本は親ASEANなので(というより、標準暦直前の米中戦争で戦場になり、多大な被害を被った関係で両国と不和)COMS加盟を標準暦49年時点で検討中
朝鮮半島は中国領になり、朝鮮省となっている
とまあ、細かいところはこんな感じです
互いに頑張りませう
>>359 おなかがすいてきました、肉まんうまそうです。
さ、勢いだけで書いてるから細かい設定があんまりないぞ。
しかも語彙も少ないと来たもんだ。
どうする俺。
362 :
通常の名無しさんの3倍:2006/05/04(木) 23:52:22 ID:cwZdzFlB
そろそろあげ
363 :
通常の名無しさんの3倍:2006/05/06(土) 02:04:16 ID:cJozJAIK
あげ
「さーて、こうなった以上長居は無用……」
「っ! 皆いたぞ、こっちだ!」
ここまで来てようやく撤退の意思を固めた所で、先程目の前で倒れている二人がやってきた角から
また別の男の声と複数の足音が聞こえてきた。
仲間に声を掛けた男は腰のホルダーから銃を引き抜くと狙いをシェーナに定める。
距離にして5m。多少腕が悪くとも、まともに訓練を受けていれば充分当てられる距離だ。
「おとなしく投降しろ、抵抗すれば撃つ!」
しかし狙われている当人は飄々としたものだ。
「あれ、殺すなって言ってたじゃん」
肩越しに相手へ振り返るとそう嘯いて見せた。そんな事をしている間に角から他の兵士達も顔を出す。
「ふん、殺しはしないさ。大佐の所には生かして連れて行く」
「別に撃つなと言われているわけでもないからな」
「下手に動けば両手足が動かせなくなるぞ……?」
最初に出てきた男の他、2人がその左右で銃を構える。
(全部で7人か……見くびってんなぁ)
相手は自分を殺せず、尚且つ方向の定まった狭い通路内だ。いくら相手の数が多いとは言え、簡単に
囲む事も袋叩きにする事も難しかろう。
後付けでそんな理由を用意する。
(だって簡単に負けちゃったら可哀想じゃん)
男達の言葉すらもどこ吹く風で、もはや誰に対しての言い訳なのだろうか。
じっとこちらを見たまま動きを止めたシェーナに、中央で銃を構えていた男は相手が抵抗を諦めたものだと判断した。
「今の内に拘束してくれ」
「ああ、わかった」
残った4人の内2人が身柄確保の為にシェーナに向かう。
「しかしまぁ、こんな小僧にあっさりのされちまうとは情けねーなあいつら」
「案外あのキレーな面でたぶらかされちゃったんじゃないの?」
「げ、それやだな。あいつらそっちもいけちゃうわけ?」
「お前らな…………」
現時点で特にやる事のない2人が好き勝手に喋り始めた。思わず脱力気味に左に付いていた男が呟く。
……彼らの会話はシェーナの他人より少しばかりよく出来た耳にも届いていた。
「さ、大人しくしていろよ」
シェーナに近付いてきた一人がポケットから指錠を取り出すと、右手を取ってその親指に指錠を掛けようとした所で
その手が細かく震えている事に気が付いた。
「1人でここまで乗り込んできたってのは大したもんだが、ちょっとおいたが過ぎたな坊主」
自分の行動を後悔しているのだろう。そう思って放った一言は……実は起爆スイッチだった。
「……いい加減にしろテメェらぁ――――――――ッッッ!!!!!」
掴まれていた右腕で相手の胸倉を掴み引き寄せるとまずはそのままの勢いで正確に眉間に頭突きを入れ、
それに怯んだ隙に肩に手を付き膝を相手の鳩尾にめり込ませる。
「ぐっ?!」
完全に油断しきった所に攻撃を受けたため、思った以上の効果を得たようだ。
「なっ、こいつ!!」
もう一人の男が慌てて取り押さえようとするが
「遅ぇ!」
「かはっ……」
伸ばした腕をあっさり弾かれ肺の上から掌底をくらい一時的な呼吸困難に陥った。
そのまま肘を曲げて顎を打つと、男はなすすべもなく後ろへ倒れこんでいく。
「ちっ! 大人しくしろ! 撃たれた――」
「黙って聞いてりゃ誰が男だってんだ!!!」
――ガガンッ!
どさくさに紛れてその二人の腰から銃を引き抜いたシェーナは、それを銃を構えている3人――ではなく、
その後ろにいる手の空いていた2人に向けて『投げつけた』。それぞれこめかみと頬に命中する。
「うわっ!」
「がっ!!」
その声に思わず振り返ってしまった3人が再びシェーナに視線を戻した時、中央に立っていた男が見た物は
自分に繰り出される右の拳だった。
一人目を殴り飛ばし軸の左足の重心をわずかに変え、右手に立っていた男の首を狙ってハイキックを決める。
遠心力を得たまま軸を右足に移して姿勢を変えると左手の男に回し蹴りを見舞い、先程銃を投げ付けた2人の
延髄に手刀を差し込んだ。
「ったくどいつもこいつも……あたしのどこをどう見たら男に見えるんだっての」
ごくわずかな時間で兵士7人を打ち倒すと、パンパンと手を払い多少すっきりした顔をしてまるで無自覚な事を
言ってのけた。誰も答えられる状態ではないが、当然どこをどう見ても、という奴である。
「まあ来た所は塞がれてるだろうし、上行きの出口でも探すか。ついでにベントゥスって奴も見せてもらおう」
峠の洞窟を利用して、内側をくりぬいて作られたのであろうこの施設に上に出る出口がない筈はない。
そんな自分の勘を信じ、息一つ乱さずに彼らのやって来た通路を走り出す。
正直な所、なにが出てくるのか楽しみでワクワクしていた。
途中数回、2〜3人の兵士がシェーナの前に現れたがその悉くが銃を構えただけで碌な攻撃もできずに倒されて
いた。一応発砲されてもいたが、全て完全な威嚇だったのが相手の対応力の低さを物語る。
「ったく、明後日の方撃たれても怖くもなんともねぇって誰か教えてやれよな」
大体銃を向けるしか攻撃手段持ってないのか、と口の中で呟く。
確かに足にでも当たれば動きは取れなくなるが、胴体や頭に誤射することを恐れてか、そもそもまともにこちらに
銃口を向けていないのだ。それこそ多少距離があれば全く避ける必要のない程に。
「うげ、渡り廊下かよ」
言葉の通り、すぐ前方は通路と同じ幅の渡り廊下になっていた。その手前に左右に分かれた通路がある。
10m程度の距離だが、ここで前後を塞がれれば脱出は困難だろう。
「さすがにここ突っ切るのは無謀に過ぎるな」
そう思い、手近な階段を探そうと左の角を曲がった途端、床にしゃがみ込んだ兵士達が視界に入る。
瞬間、足元でなにかが爆ぜた。
「うわ?!」
思わず後ろに跳ねながら引き返そうと振り返れば、向こう側にも同様に兵士が陣取っているのが見える。
窓ガラスに自身の姿が写らない様にするために姿勢を低くしていたのだ。
「ここまでにしてもらおう」
「ちぇ、なんか袋の鼠って感じ?」
動くに動けずその場に立ち尽くす。
渡り廊下の先の建物にも恐らくこうやって人が潜んでいるのだろう。今通ってきた通路からも複数の人間が
動いている音がしている。彼らはここで確実にシェーナを捉える為に網を張っていた、という事だ。
そういった作戦を横から聞くために通信機を付けていたのだが――。
「んだよ全然コイツ役に立たねぇじゃねーか!」
少し考えれば判る事だが、侵入時に奪った通信機は現在凍結されている。今更その事に気付いたシェーナは
忌々しげにそれを外して床に叩き付けた。
そうしている間にも兵士達は少しずつ範囲の輪を狭めてくる。
どうも多少は頭の回る人物が指揮を取っているようで、先程までの出会い頭に殴り飛ばせばいい状況とは違う。
ここで初めてシェーナは腰に付けていた銃を抜いた。兵士たちの間に緊張が走るが、それでもじりじりと迫ってくる。
「ムサい野郎共に圧し掛かられるなんて真っ平ごめんだね!」
言い様、銃を窓ガラスに向けて撃ち放つ。と同時に、いつの間にか左手に握っていた小さなケースを放り投げた。
カッ!!
その瞬間強烈な閃光が場を満たし彼らの視界を遮ると、ガシャン、というガラスの割れる派手な音がした。
兵士達がようやく視力を取り戻した頃には、その場には僅かなガラスの破片と閃光を放った小さなケースしか
残ってはいなかった。
「あいてててててて……」
景気良くガラスを割って飛び降りたのはいいが、実質3階分の衝撃をつま先と膝に吸収させきれず転がることで
逃がしたため、帽子は吹き飛び髪はほつれ、足の裏は攣りかけ体中埃まみれになっていた。
一緒に落ちてきたガラスの破片をあまり浴びずに済んだのは運が良かったとしか言えないだろう。
「……下見ないで飛び降りたのは失敗だったな」
走りながら髪を解き、バンダナを額に巻き直す。せめて高度を計っていればもう少しマシな着地もできただろうが、
つい遠くに見えた白い巨体に見入ってしまいギリギリまで着地体勢を取っていなかったのだ。
好奇心が状況を優先する性格ははっきり言ってこの仕事にはまるで向かない物であるが、妙な所に良く回る頭と
身体能力の高さでこれまで数多くの危険を切り抜けて来た。
「この仕事終わったら移動すっか」
いくらなんでも顔をここまで出してしまうとこの近辺での仕事は難しくなる。
ここから離れなければ遅かれ早かれ行き付けの酒場のマスターにも迷惑がかかるだろう。
既に頭の中は脱出後の行動を練り始めている。ベトナムで培った数年間の信用を無に帰し、新しい地でまた同じ
仕事を始める事にはまるで躊躇がなかった。
「その為にもまずはあの白いのがなんなのか確認しねーと」
こちらに向かってくる兵士達――一人はサブマシンガンを手にしている――に発煙筒を投げ付け、一秒足らずで
半径3m程を覆った煙の真ん中を走り抜ける。
催涙筒も持ち合わせてはいるが中央突破が出来なくなるのでやめておいた。
残り30m程で例の白い巨体を乗せたトレーラーに辿り着く、といった所で先程の渡り廊下の先に繋がっていた
建物の前を走り抜けたシェーナはふと、右の視界にが広がった事に気付いて足を止める。
「こりゃまた……」
そこにあるのはシャッターの開いた状態の大きな建物、そして中には薄緑と白でカラーリングされたモビルスーツが
10体ほど並んでいる。大まかなパーツは流線を描き、背に大きなスラスター状の物を持っている。
脚にも大き目のスラスターを持っているようだ。形状こそ人型だが空戦を視野に入れて作られた物だろうか。
そうやって翼を畳んで控えているモビルスーツが奥に何列かに渡り並んでいる。
「これが……ベントゥス?」
その光景に半ば呆然と呟いたその時、パシュッという軽い音と共にシェーナの右太腿を何かが掠めて行った。
衝撃でバランスを崩し思わずその場に倒れ込む。
足に発生した熱とじわりと滲んできた赤に、ようやく自分が撃たれたのだと認識できた。
「ってー……油断しすぎだな、我ながら」
今まであまりにも相手に手応えがなさすぎた。それで気を抜いた挙句この様だ。
ついさっき発煙筒を投げて以降、誰も静止にこなかった時点で罠だと気付くべきだったのだ。
その表情にわずかに自嘲が浮かぶ。
視界の隅で何かが動いた。なにかと思いつつ視線を巡らせると、広く口を開けた隣の建物の入り口の陰から
たったいま発砲したばかりの銃を携えて一人の兵士が出てくる所だ。
「そろそろ遊びは終わりだ、シェーナ・ボーン」
シェーナを撃った張本人は、淡い金髪とやや鋭い褐色の瞳を持ったあまり歳の変わらない青年だった。
銃を向けたまま近付いてくる。
相手の若さには驚かない。能力の高い者に年齢は関係ないと考えているからだ。
「サイレンサーなんてずるくねぇ? つーかなんであたしの名前知ってんだよ」
むしろ自分の名が知られている事に驚いた。ので、傷口を押さえて上体を起こしながらそのままを尋ねる。
「……それを知りたければ大佐に直接聞くんだな」
(あのジジィやっぱタダもんじゃなかったって訳ね。くそ、後金ちゃんと貰えんのかな)
シェーナ・ボーンがここに来る事を知っていてこの扱いと言う事は、転じて彼らとハイモンは良からぬ関係である事を
示す。それはまた、この組織が統一政府に属するか月に属するかの答えにもなった。
統一政府の支配する表向きは中立国に、精巧な偽装工作をしながらこれだけの基地を作る組織。
「まさか」よりも「やはり」という感想を抱く。
今自分の着ている制服に付いている記章に見覚えがある筈だ、自分は幼い頃それを幾度となく見ていたのだから。
「立て。大佐がお待ちだ。それとも歩けなくなって運ばれた方がいいか?」
「そう、それ。なんでただの見学者相手にここの偉いさんが会いたがる訳?」
自分を堂々と『見学者』と言い切る面の皮の厚さに一瞬その眉間を撃ち抜きたくなったもののかろうじて押さえ込み、
代わりに表情を変える事なく傷ついている右足に銃を向ける。「動かないなら動けなくしてやる」という意思表示だ。
質問に答える気はないらしい。
いつの間にか彼の背後に数人の兵士が近付いていた。
差し当たり殺される心配はないだろう。ぼんやりと昔の記憶を思い出すにつれ、先程から彼らの言っていた
「大佐の元へ連行せよ」と言う言葉も気になり始めている。
――従うか?
傷は大した事はない。出血もほぼ治まった。土産は持てないがこれだけのものを発見したのだから充分だろう。
――逃げようか。
従うか逃げるか。それを決めるために、再び別口の質問をする。
「んじゃその大佐ってのの名前くらい教えてよ」
「……カスタル・オモング大佐だ」
「へぇ……」
古い記憶の中に、確かにその名前は存在した。軽く瞠目する。
「OK、話を聞きましょ」
怪我を思わせない仕草で立ち上がると、頭一つ小さい青年の肩をぽんと叩き、軽く笑って見せる。
彼に撃たれた事を既に忘れているような表情に一瞬呆気に取られつつ、それを表に出す事無くシェーナを後ろ手に
拘束すると、その周囲を他の兵士達と固めてオモングのいる執務室へ足を向けた。
なんとか2話完了――。
ようやくベントゥスの名前を出せた……時間掛かりすぎだってorz
GJ!
あげ
hosh
遅筆につき、暫らく待ってていただきたい
スマソorz
レポートが…orz
今更ベントゥスデザインしてるさ〜〜〜
なかなか固まらないorz
がんば!
す
扉が開いた。暗かった部屋に明かりが灯る。部屋の中央には、学校にあるような個人用の机が4つ並べられている。そのそれぞれに、折り畳み椅子が備え付けられていた。
暫くの北京語での男女の会話が終わり、3人の女性が入ってきた。
1人は、ヨーロッパ系。どこか少女めいた顔形で、肩に届くか否か位のブロンドの髪だ。何のオプションも無い服には、《專軍》と簡体字で書かれたワッペンが右肩に、背には《戰俘》とやはり簡体字で乱暴に書かれた布が縫い付けられていた。《捕虜》という意味だ。
続いて入ってきたのは、モンゴル系の女性。背がさっきの女性よりも頭1つ分高い。黒髪が長く美しい。ラップトップのPCとレポート用紙、それと筆記用具を持っている。先程の女性と同じ服だが、《戰俘》という布は縫い付けられていない。
最後の女性も、やはりモンゴル系だった。前2人の丁度中間ぐらいの身長だ。眼鏡をかけ、黒髪を後ろでポニー・テールに結っている。彼女だけ、スーツに白衣という出で立ちだ。手にはラップトップPCがある。
最初のヨーロッパ系の女性は、手錠をかけられていた。最後の女性がその手錠を外す。存外重い音を立てて、手錠が外れた。
「Shi-jiu-zuo.(使就座)」
長身の女性が、ヨーロッパ系の女性に言う。その女性はきょとんとする。言葉が通じていないようだった。長身の女性はジェスチュアで、座るように促した。
それから彼女も座り、ラップトップPCを自らの前に置いて、開き、電源を入れた。口を開く。英語で、それは発音された。
「Your healthness, honor, and fundanental basic human right are protected by article 13 to 16, part 2, and article 17, section 1, part 3, Third 1949 Geneva Convention. But you are obliged to reply fully my interrogation by article 17, that convention.
(ジュネーヴ第3条約第2編13条から16条、及び同条約第3編第1部17条の全ての規定により、あなたの健康、名誉、及び基本的人権は保護されています。また、あなたは同条約17条の規定に基づき、必要事項を答える義務があります)」
《Convention (III) relative to the Treatment of Prisoners of War. Geneva, 12 August 1949.(捕虜の待遇に関する協定(V) ジュネーヴ、1949年8月12日)》。
これは通称、《第3条約》とか《捕虜条約》と呼ばれている。1949年8月12日の国際会議で3番目に制定された条約で、捕虜に関するの事項が書いてある事から、そう呼ばれている。月は、標準暦19年の独立宣言と共に、この条約に署名した。
長身の女性が言った範囲の規定は、このように書かれている。(※作者訳。参考:防衛庁資料)
* * *
第2編 捕虜の総合的な保護
13条 @捕虜は常に時も人道的に扱われなければならない。抑留勢力による不法な行動または不作為等、あらゆる捕虜の死亡や健康への重大な危険を及ぼすような事は禁止され、またこの条約の重大な違反と見做される。
特にどんな捕虜であっても、身体の切断または医療的に必要な処置として正当であると認められず、且つその者の利益にならないどんな種類の医学的若しくは科学的実験も施してはならない。
A同様に、暴力的行為または脅迫、侮辱や公衆の好奇心から捕虜は常に保護されなければならない。
B捕虜に対する報復措置は禁止される。
*
14条 @捕虜は全ての状況に於いて、彼らの人格と名誉を尊重される権利を与えられている。
A女性は、性に帰属する全ての払うべき考慮を以って扱われ、またあらゆる状況で、男性への待遇と同等の利益を受けるものとする。
B捕虜は彼らが逮捕された時に共有している完全な文民的能力を保持する事とする。抑留勢力は捕虜という状態が強制する限りを除き、勢力領域の内外どちらでも、そのような能力が与える権利の行使を制限してはならない。
*
15条 捕虜を抑留する勢力は、無償で、彼らの扶養と彼らの健康状態によって必要とされている医療を提供する義務がある事とする。
*
16条 階級と性別に関するこの協定の条項を考慮し、また彼らの健康状態、年齢、若しくは職業上の資格を理由として彼らによって如何なる特権的な扱いを留保して、
全ての捕虜は抑留勢力によって人種、国籍、宗教的心情若しくは政治的見解に基づくあらゆる敵対的な差別、またはこれら同様の基準に基づくその他の差別無しに等しく扱われなければならない。
第3編 捕虜である状態
第1部 捕虜である状態の開始
17条 @全ての捕虜は尋問を受けている時、自らの姓、名と階級、生年月日、軍隊の番号、連隊の番号、個人の番号、または登録番号、若しくはそれらが無い場合、それらに相当する情報については答える義務を負う。
Aもし捕虜が故意に前項の規定を犯したなら、その捕虜は返報として階級と地位に応じて与えられる特権が制限され得る。
B各紛争当事勢力は、その管理下にある者で捕虜となり得る全ての者に対し、その氏名、階級、軍の番号、連隊の番号、個人の番号若しくは登録番号またはそれらに相当する情報及び生年月日を示す身分証明書(以下、ID)を発給しなければならない。
IDには更に、本人の署名若しくは指紋、またはその双方及び紛争当事勢力が自国の軍隊に所属する者に関して追加する事を希望するその他の事項を掲げる事が出来る。
IDは出来る限り、縦6.5センチメートル×10センチメートルの規格で二部作成するものとする。捕虜は、要求があった場合には、IDを呈示しなければならない。但しIDは如何なる場合にも、取り上げてはならない。
C捕虜からどんな種類の情報を得るためにも、これに肉体的または精神的拷問その他の強制を加えてはならない。返答を拒む捕虜に対しては脅迫、侮辱、または種類の如何を問わず不快若しくは不利益な待遇を与えてはならない。
D肉体的または精神的状態によって自己が何者であるかを述べる事が出来ない捕虜は、衛生機関に引き渡されなければならない。それらの捕虜が何者であるかは、前項の規定に従う事を留保して、全ての可能な方法によって識別しておかなければならない。
E捕虜に対する尋問は、その者が理解する言語で行わなければならない。
儀式じみた言葉の次は、ジュネーヴ条約17条の規定にある、お決まりの質問だった。
「What is your name?(名前は?)」
「――Alitheia Forey.(アリーシア・フォリー)」
「オウケイ、アリーシア。あたしはイースゥ・カン。よろしく」
アリーシア・フォリー。そう名乗った女性は、おずおずと頷いた。
「名前の綴りを教えて」
「A、L、I、T、H、E、I、A――アリーシア。F、O、R、E、Y――フォリー」
「アリシーア・フォリー、と」イースゥと名乗る女性は、1つずつ丁寧に、キーボードの文字盤を押していった。「階級は?」
「Staff Sergeant.(一等兵曹)」
「生まれた日は? 年から言ってって」
「29年、1月、4日」
「念のため訊くけど、イスラム暦、その他、標準暦以外の暦法は使ってないよね?」
「No.(ええ)」
「……、ああ、使ってないね」
(※英語で、否定的疑問で訊かれたら、その肯定には《No》を使う)
「えっと、じゃあ、軍に於ける所属と、登録番号を教えて」
「領域守備隊第5班。登録番号は、4-1-592315-31」
「えっと、基本的質問事項は以上。COMSの防衛局に、あなたが中国人民軍の捕虜になった旨を伝えといたから。じゃ、本題に入ろう」
アメリカ合衆国アリゾナ州南東部、フォート・ファチュカには、情報戦要員養成施設がある。そこで尋問術を学んだ者によれば、尋問を始めるにあたり、相手の出方を見るために、出来るだけ多くの選択肢を与えるよう、尋問官は曖昧などっちつかずの態度をとる方がいいらしい。
また、相手の恐怖心と警戒心と緊張を解き解すため、取り留めない日常的な話題から入るのが定石だ。
「あ、そうだ」言いながら、イースゥことイスラ・カマルは、机の中に仕舞ってあったメモ用紙とペンを取り出し、アリーシアの前に差し出した。「これに、署名して。フルネームでね」
「……何故です?」
「明日、あなたのIDを発行するんだけど、それにあなたの署名を書く必要があるの。今書いてもらうのは、あたしたち用の控え」
納得したのか、アリーシアはペンを持ち、キャップを外して、ペン先をぐりぐりと動かした。当初は出て来なかったインクが、少しして出始める。掠れていた軌跡が明確な実線を描き出すのを確認すると、彼女は紙からペン先を離して、そして再び紙に当てた。
線が描かれていく。線は記号を描き出し、記号は文字として機能し始める。文字とは、音を表す記号である。表音文字であろうと表意文字であろうと、その定義に変わりは無い。
ラテン文字で、彼女の名前が書き出されていた。
「さて、実はね、あなたはあたしよりも3歳、年上なんだけど……、口調とか言葉遣いとか、別に気にする事は無いよね?」
「……年下?」
「そう。今年で17歳。ちょっと複雑な理由でね、軍に所属してる」
アリーシアは左目に掛かった髪を手で梳いた。視線は、イスラから動かない。
それに気付いているのかいないのか、イスラは画面を一瞥してからアリーシアを向いた。
「じゃ、本題に入ろう。あなたの乗っていた兵器、あれは、何?」
「――オアニス(Ornis)です」
「その型番は?」
「――O-M4A12です」
「《オアニス》の綴りは?」
「――O、R、N、I、S。または、オミクロン、ロー、ニュー、イオタ、シグマ(ΟΡΝΙΣ)です。文字のまま読むと、《オルニース》になります」
「……ギリシア語、しかも古典語か。今度から、その読みで言ってくれる? 英語読みだと、スペリングがしばしば分からないから。それで、先の海戦で、他にどんな兵器が使用された? 勿論、COMSのだけど」
「――ストラティオータイ・プテリュコーン、ストラティオゥタイ・ネオーン、あとは、艦艇です」
「ストラティオータイ・プテリュコーン……」イスラはそう呟いて、PCのモニタを見た。「もしかして、それって複数形じゃない?」
「! ……そうです」
「単数主格で言って。どっちも」
「――ストラティオーテース・プテリュコスと、ストラティオーテース・ネオース、です」
「どんなの?」
「――ストラティオーテースは、地上用のモビル・スーツ――人型兵器の量産機です。それに飛行用ユニット、プテリュクスを付ける事によって、空中戦を可能にしたものが、ストラティオーテース・プテリュコスです」
「ストラティオーテース・ネオースは?」
「――ストラティオーテースに、海上運用ユニットとしてナウスを取り付ける事で、そう呼ばれます」
「なるほど。所で、こっちにあるデータには、さっき挙げてもらったものの他に、1機だけ、違うものが混じってたんだけど――」
言って、イスラは写真をアリーシアの前に差し出した。緑色の、非常に見難いものだ。或る1点に、短い矢印が表示されている。矢印の尾には、《未知的機体》とある。
「――これが、衛星から見たその赤外線画像。で――」
続いて、また1枚出した。
「――これは、こっちの艦が写したそいつの写真」
その1枚には、その兵器の正面が映し出されていた。フラッシュが焚かれており、ブレてこそいるが、少なくともそのカラーリングは確認出来る。ほぼ全身が曙色で、一部が白。日本の兜で《鍬形》に当たる部分は黄色い。そして目は、青く光っていた。
「さて、これは何?」
「――」しかし、アリーシアは答えない。
「黙秘は、この場合適当な行為じゃないよ。あなたの機体――オルニースの11号機は確か最後まで残ってて、この写真の機体との音声通信が何通か、記録されてる。これが、その通信の開始時間と通信継続時間」
イスラはファイルから紙を出し、アリーシアに差し出した。彼女の目の前に置かれたそれのタイトルには、《通訊記録 〜不明的巨人般兵器與女人戰俘的巨人般兵器〜》とある。簡体字の漢字だからアリーシアには分からないが、時刻と回数の表示は理解出来た。
「傍受された記録は、海の藻屑だけどね。さて、アリーシア、イエスかノーで答えて。あなたはこの機体を知っている?」
「――……ノー。この機体は、確かに見ました。でも、私には分かりません」
「今回初めて見たの?」
「――はい」
「通信の件は? どう説明するの?」
「――あの機体からの指示で行動するように言われているんです。だから、あれの詳細は知りません」
「でも、名前くらいは聞いてるんでしょ? 正式名称じゃなくても、仲間内での通称でもいいから、それだけは教えて」
「――《ヘリオス》。上官からそう聞かされています」
「《ヘリオス》……。《太陽》の意味ね?」
「――そうです」
「じゃあ、《月》は?」
「――《フェンガリ》という名前の兵器は、COMSにはありません」
《フェンガリ》とは、現代ギリシア語で《月》を言う際に一般に遣われる語である。
「《セレーネ》という名前は、無いの? COMSの派遣海軍の艦艇は、全て月の位相を艦の名前にしてるけど、月を本拠地にしている軍隊なら、《月》の名を冠する兵器があっても怪訝しくないよね。どう?」
「――……ありました。今は、もうありません」
「《COMSの兵器として登録されてあった》かそれとも、《もうこの世には無い》か。どっち?」
「――後者だと、聞いています」
「……そう。所がね、その《セレーネ》という名前の兵器が、実は2ヶ月ほど前、中国領内に落ちてきたの。容姿は、この《ヘリオス》とほぼ同じ。この海戦にも、出撃した」
「――そう、なんですか?」アリーシアは、表情を変えない。
「ええ。あなたが撃墜し損ねて、返り討ちにあったあの機体が、それ」
2人、互いの目を睨み合う。しかし、イスラを名乗る方は口元を少しく緩めていた。
今はここまで
続きは・・・・・・いつになるんだろう?
あけ
保守
>>385 旗と7話乙です
旗シンプルでいいですね〜
では久しぶりに質問をば
ここでイスラたちが着ている服ってのは、
jCOt2dXQRg氏の力作
>>343のと考えていいですか?
(あ、そういえば神話事典どうもでした。見てたらネタが浮かぶ浮かぶww
でもあえてドイツ語にした訳は追々と)
それとも正装(?)とは別物の作業着でしょうか
それとこの世界のMS乗りはノーマルスーツは着てるんですか?
ヘルメットはたしかバイザーでしたっけ…
質問だけですいません、この前の続きはまた今度で…
今月いっぱいかかるかもしれませんorz
女キャラ書くのって難しい……
あはは〜、一週間以上こいつらにかかりっきりになっちった…orz
前回の話に出てきたのはこいつです。
あんま流線型してねぇ…………。
http://imepita.jp/trial/20060521/527110 ネタバレするとこいつはガンダムを元に作られた量産機で
そのガンダム(名前は同じ)のデザインにしこたま時間を取られたと言う……。
しかもそっちは未だ描き終わってないorz
>>385 乙乙。
あんま急くのは良くないからまったりいこう。
……そういや所属軍ごとに旗って違うんだよな……ヤバイぞ俺の無知。
>>388 Zにも女キャラたくさん出てくるし、どういうつもりで
キャラ動かしてるのかとか考えながら見直してみるなんてどうだろう。
素人の浅知恵だけど。
>>388 服はそれでOK! 礼服は、というか礼服も、今の人民軍のそれを踏襲している形になるかな
パイスーは、地上用のと宇宙用のがあって、地上用のは今の戦闘機のパイロットみたいな感じ。他方宇宙用は、ノーマルスーツになると思う
両方とも背中に端子が付いてて、背もたれの器具と接続し、生命維持を行う
あとは今の宇宙飛行士が船外活動の時に着る下着(一見白い全身タイツ)をパイスーの下に着てるくらいかな、特筆すべきなのは
7話の既出部分に付け足しが出来たから、次の投下の際に改めて始めから投下する
お手数スマヌ
上の俺です
あと言及し忘れのヘルメットの件について
地上用がヴァイザーなのは本編にあるとおり
宇宙用のがノーマルスーツで、ヘルメットである事は想像のとおりだけど、ガラス部分をガンダム従来のそれより広くとってあると思ってくれれば御の字。っても、まだ出てないから今はあまり関係なさげ
以上です
>>61 ひどすww
ディアッカならまだわかるがw
393 :
↑:2006/05/23(火) 00:19:55 ID:???
誤爆スマソ
394 :
通常の名無しさんの3倍:2006/05/23(火) 11:52:02 ID:gIw+vNVS
上へ参ります
干し
そりゃないよ磯野
ほしゅ
ほ
今週中には投下したい
おぉ、来ましたね〜
じゃあ俺も近いうちに続きを…
…って言うだけなら…タダだし…orz
あげ
明日投下の予定
アク禁ですたorz
学校から投下します
俺も学校でwktkしてます
はじめから投下します
扉が開いた。暗かった部屋に明かりが灯る。部屋の中央には、学校にあるような個人用の机が4つ並べられている。そのそれぞれに、折り畳み椅子が備え付けられていた。
暫くの北京語での男女の会話が終わり、3人の女性が入ってきた。
1人は、ヨーロッパ系。どこか少女めいた顔形で、肩に届くか否か位のブロンドの髪だ。何のオプションも無い服には、《專軍》と簡体字で書かれたワッペンが右肩に、背には《戰俘》とやはり簡体字で乱暴に書かれた布が縫い付けられていた。《捕虜》という意味だ。
続いて入ってきたのは、モンゴル系の女性。背がさっきの女性よりも頭1つ分高い。黒髪が長く美しい。ラップトップのPCとレポート用紙、それと筆記用具を持っている。先程の女性と同じ服だが、《戰俘》という布は縫い付けられていない。
最後の女性も、やはりモンゴル系だった。前2人の丁度中間ぐらいの身長だ。眼鏡をかけ、黒髪を後ろでポニー・テールに結っている。彼女だけ、スーツに白衣という出で立ちだ。手にはラップトップPCがある。
最初のヨーロッパ系の女性は、手錠をかけられていた。最後の女性がその手錠を外す。存外重い音を立てて、手錠が外れた。
「Shi-jiu-zuo.(使就座)」
長身の女性が、ヨーロッパ系の女性に言う。その女性はきょとんとする。言葉が通じていないようだった。長身の女性はジェスチュアで、座るように促した。
それから彼女も座り、ラップトップPCを自らの前に置いて、開き、電源を入れた。口を開く。英語で、それは発音された。
「Your healthness, honor, and fundanental basic human right are protected by article 13 to 16, part 2, and article 17, section 1, part 3, Third 1949 Geneva Convention. But you are obliged to reply fully my interrogation by article 17, that convention.
(ジュネーヴ第3条約第2編13条から16条、及び同条約第3編第1部17条の全ての規定により、あなたの健康、名誉、及び基本的人権は保護されています。また、あなたは同条約17条の規定に基づき、必要事項を答える義務があります)」
《Convention (III) relative to the Treatment of Prisoners of War. Geneva, 12 August 1949.(捕虜の待遇に関する協定(V) ジュネーヴ、1949年8月12日)》。
これは通称、《第3条約》とか《捕虜条約》と呼ばれている。1949年8月12日の国際会議で3番目に制定された条約で、捕虜に関するの事項が書いてある事から、そう呼ばれている。月は、標準暦19年の独立宣言と共に、この条約に署名した。
長身の女性が言った範囲の規定は、このように書かれている。(※作者訳。参考:防衛庁資料)
* * *
第2編 捕虜の総合的な保護
13条 @捕虜は常に時も人道的に扱われなければならない。抑留勢力による不法な行動または不作為等、あらゆる捕虜の死亡や健康への重大な危険を及ぼすような事は禁止され、またこの条約の重大な違反と見做される。
特にどんな捕虜であっても、身体の切断または医療的に必要な処置として正当であると認められず、且つその者の利益にならないどんな種類の医学的若しくは科学的実験も施してはならない。
A同様に、暴力的行為または脅迫、侮辱や公衆の好奇心から捕虜は常に保護されなければならない。
B捕虜に対する報復措置は禁止される。
*
14条 @捕虜は全ての状況に於いて、彼らの人格と名誉を尊重される権利を与えられている。
A女性は、性に帰属する全ての払うべき考慮を以って扱われ、またあらゆる状況で、男性への待遇と同等の利益を受けるものとする。
B捕虜は彼らが逮捕された時に共有している完全な文民的能力を保持する事とする。抑留勢力は捕虜という状態が強制する限りを除き、勢力領域の内外どちらでも、そのような能力が与える権利の行使を制限してはならない。
*
15条 捕虜を抑留する勢力は、無償で、彼らの扶養と彼らの健康状態によって必要とされている医療を提供する義務がある事とする。
*
16条 階級と性別に関するこの協定の条項を考慮し、また彼らの健康状態、年齢、若しくは職業上の資格を理由として彼らによって如何なる特権的な扱いを留保して、
全ての捕虜は抑留勢力によって人種、国籍、宗教的心情若しくは政治的見解に基づくあらゆる敵対的な差別、またはこれら同様の基準に基づくその他の差別無しに等しく扱われなければならない。
第3編 捕虜である状態
第1部 捕虜である状態の開始
17条 @全ての捕虜は尋問を受けている時、自らの姓、名と階級、生年月日、軍隊の番号、連隊の番号、個人の番号、または登録番号、若しくはそれらが無い場合、それらに相当する情報については答える義務を負う。
Aもし捕虜が故意に前項の規定を犯したなら、その捕虜は返報として階級と地位に応じて与えられる特権が制限され得る。
B各紛争当事勢力は、その管理下にある者で捕虜となり得る全ての者に対し、その氏名、階級、軍の番号、連隊の番号、個人の番号若しくは登録番号またはそれらに相当する情報及び生年月日を示す身分証明書(以下、ID)を発給しなければならない。
IDには更に、本人の署名若しくは指紋、またはその双方及び紛争当事勢力が自国の軍隊に所属する者に関して追加する事を希望するその他の事項を掲げる事が出来る。
IDは出来る限り、縦6.5センチメートル×10センチメートルの規格で二部作成するものとする。捕虜は、要求があった場合には、IDを呈示しなければならない。但しIDは如何なる場合にも、取り上げてはならない。
C捕虜からどんな種類の情報を得るためにも、これに肉体的または精神的拷問その他の強制を加えてはならない。返答を拒む捕虜に対しては脅迫、侮辱、または種類の如何を問わず不快若しくは不利益な待遇を与えてはならない。
D肉体的または精神的状態によって自己が何者であるかを述べる事が出来ない捕虜は、衛生機関に引き渡されなければならない。それらの捕虜が何者であるかは、前項の規定に従う事を留保して、全ての可能な方法によって識別しておかなければならない。
E捕虜に対する尋問は、その者が理解する言語で行わなければならない。
儀式じみた言葉の次は、ジュネーヴ条約17条の規定にある、お決まりの質問だった。
「What is your name?(名前は?)」
「――Alitheia Forey.(アリーシア・フォリー)」
「オウケイ、アリーシア。あたしはイースゥ・カン。よろしく」
アリーシア・フォリー。そう名乗った女性は、おずおずと頷いた。
「名前の綴りを教えて」
「A、L、I、T、H、E、I、A――アリーシア。F、O、R、E、Y――フォリー」
「アリーシア・フォリー、と」イースゥと名乗る女性は、1つずつ丁寧に、キーボードの文字盤を押していった。「階級は?」
「Staff Sergeant.(一等兵曹)」
「生まれた日は? 年から言ってって」
「29年、1月、4日」
「念のため訊くけど、イスラム暦、その他、標準暦以外の暦法は使ってないよね?」
「No.(ええ)」
「……、ああ、使ってないね」
(※英語で、否定的疑問で訊かれたら、その肯定には《No》を使う)
「えっと、じゃあ、軍に於ける所属と、登録番号を教えて」
「領域守備隊第5班。登録番号は、4-1-592315-31」
「えっと、基本的質問事項は以上。COMSの防衛局に、あなたが中国人民軍の捕虜になった旨を伝えといたから。じゃあ、本題に入ろう」
アメリカ合衆国アリゾナ州南東部、フォート・ファチュカには、情報戦要員養成施設がある。そこで尋問術を学んだ者によれば、尋問を始めるにあたり、相手の出方を見るために、出来るだけ多くの選択肢を与えるよう、尋問間は曖昧などっちつかずの態度をとる方がいいらしい。
また、相手の恐怖心と警戒心と緊張を解き解すため、取り留めない日常的な話題から入るのが定石だ。
「あ、そうだ」言いながら、イースゥことイスラ・カマルは、机の中に仕舞ってあったメモ用紙とペンを取り出し、アリーシアの前に差し出した。「これに、署名して。フルネームでね」
「……何故です?」
「明日、あなたのIDを発行するんだけど、それにあなたの署名を書く必要があるの。今書いてもらうのは、あたしたち用の控え」
納得したのか、アリーシアはペンを持ち、キャップを外して、ペン先をぐりぐりと動かした。当初は出て来なかったインクが、少しして出始める。掠れていた軌跡が明確な実線を描き出すのを確認すると、彼女は紙からペン先を離して、そして再び紙に当てた。
線が描かれていく。線は記号を描き出し、記号は文字として機能し始める。文字とは、音を表す記号である。表音文字であろうと表意文字であろうと、その定義に変わりは無い。
ラテン文字で、彼女の名前が書き出されていた。
「さて、実はね、あなたはあたしよりも3歳、年上なんだけど……、口調とか言葉遣いとか、別に気にする事は無いよね?」
「……年下?」
「そう。今年で17歳。ちょっと複雑な理由でね、軍に所属してる」
アリーシアは左目に掛かった髪を手で梳いた。視線は、イスラから動かない。
それに気付いているのかいないのか、イスラは画面を一瞥してからアリーシアを向いた。
「じゃ、今度こそ本当に本題に入ろう。あなたの乗っていた兵器、あれは、何?」
「――オアニス(Ornis)です」
「その型番は?」
「――O-M4A12です」
「《オアニス》の綴りは?」
「――オミクロン、ロー、ニュー、イオタ、シグマ(ΟΡΝΙΣ)です。文字のまま読むと、《オルニース》になります」
「……ギリシア語、しかも古典語か。今度から、その読みで言ってくれる? 英語読みだと、スペリングが分からないから。それで、先の海戦で、他にどんな兵器が使用された? 勿論、COMSのだけど」
「――ストラティオータイ・プテリュコーン、ストラティオータイ・ネオーン、あとは、艦艇です」
「ストラティオータイ・プテリュコーン……」イースゥはそう呟いて、PCのモニタを見た。「もしかして、それって複数形じゃない?」
「! そうです」
「単数主格で言って。どっちも」
「――ストラティオーテース・プテリュコスと、ストラティオーテース・ネオース、です」
「どんなの?」
「――ストラティオーテースは、地上用のモビル・スーツ――人型兵器の量産機です。それに飛行用ユニット、プテリュクスを付ける事によって、空中戦を可能にしたものが、ストラティオーテース・プテリュコスです」
「ストラティオーテース・ネオースは?」
「――ストラティオーテースに、海上運用ユニットとしてナウスを取り付ける事で、そう呼ばれます」
「なるほど。所で、こっちにあるデータには、さっき挙げてもらったものの他に、1機だけ、違うものが混じってたんだけど――」
言って、イスラは写真をアリーシアの前に差し出した。緑色の、非常に見難いものだ。或る1点に、短い矢印が表示されている。矢印の尾には、《未知的機体》とある。
「――これが、衛星から見たその赤外線画像。で――」
続いて、また1枚出した。
「――これは、こっちの艦が写したそいつの写真」
その1枚には、その兵器の正面が映し出されていた。フラッシュが焚かれており、ブレてこそいるが、少なくともそのカラーリングは確認出来る。ほぼ全身が曙色で、一部が白。日本の兜で《鍬形》に当たる部分は黄色い。そして目は、青く光っていた。
「さて、これは何?」
「――」しかし、アリーシアは答えない。
「黙秘は、この場合適当な行為じゃないよ。あなたの機体――オルニースの11号機は確か最後まで残ってて、この写真の機体との音声通信が何通か、記録されてる。これが、その通信の開始時間と通信継続時間」
イスラはファイルから紙を出し、アリーシアに差し出した。彼女の目の前に置かれたそれのタイトルには、《通訊記録 〜不明的巨人般兵器與女人戰俘的巨人般兵器〜》とある。簡体字の漢字だからアリーシアには分からないが、時刻と回数の表示は理解出来た。
「傍受された記録は、海の藻屑だけどね。さて、アリーシア、イエスかノーで答えて。あなたはこの機体を知っている?」
「――……ノー。この機体は、確かに見ました。でも、私には分かりません」
「今回初めて見たの?」
「――はい」
瞬きが少し、激しくなった。そして、目のゴミを払うようにして、手を目の下にスライドさせた。
「通信の件は? どう説明するの?」
下唇を噛んで、アリーシアは机に乗せていた手を下に引っ込めた。服のズボンを引っかく音が一度。そして靴が一度、カツ、と音を立てた。
「――あの機体からの指示で行動するように言われているんです。だから、あれの詳細は知りません」
「でも、名前くらいは聞いてるんでしょ? 正式名称じゃなくても、仲間内での通称でもいいから、それだけは教えて」
彼女は一度目を閉じる。そしてゆっくり開けてイスラを見ながら、言った。「――《ヘリオス》。上官からそう聞かされています」
「《ヘリオス》……」イスラはPCで辞書を立ち上げ、《helios》と打った。「《太陽神》、ギリシア語で《太陽》の意味ね?」
「――そうです」
「じゃあ、《月》は?」
「――《フェンガリ》という名前の兵器は、COMSにはありません」
《フェンガリ(ΦΕΓΓΑΡΙ》とは、現代ギリシア語で《月》を言う際に一般に遣われる語である。古典ギリシア語だと、《セレーネ(正確にはセレーネー)》がそれにあたる。
《ヘリオス》は、古典ギリシア語の発音だ(正確には《ヘーリオス》だが)。現代語だと《イリョス》という発音になる。しかし、《イリョス》という発音ならともかく《ヘリオス》という発音で読まれた《ΗΛΙΟΣ》の文字は、確実に《セレーネ》に対応する。
アリーシアは再び、前髪を梳いた。目線をイスラの目から、写真に移す。
「《セレーネ》という名前は、無いの? COMSの派遣海軍の艦艇は、全て月の位相を艦の名前にしてるけど、月を本拠地にしている軍隊なら、《月》の名を冠する兵器があっても怪訝しくないよね。どう?」
「――……ありました。今は、もうありません」
「《COMSの兵器として登録されてあった》かそれとも、《もうこの世には無い》か。どっち?」
アリーシアは、目線を上に向け、今度は右に向いた。「――後者だと、聞いています」
イスラはキーボードを叩く。《query “have been enrolled or not be” -> eyes up and to right, last one -> lie》。《質問「登録されていたか、もう無いか」→目を上と右に、後者→嘘》
しかしイスラはその事に言及しない。
「所がね、その《セレーネ》という名前の兵器が、実は2ヶ月ほど前、中国領内に落ちてきたの。容姿は、この《ヘリオス》とほぼ同じ。この海戦にも、出撃した」
「――そう、なんですか?」アリーシアは、表情を変えない。
「ええ。あなたが撃墜し損ねて、返り討ちにあったあの機体が、それ」
2人、互いの目を睨み合う。しかし、イスラは口元を少しく緩めていた。
「何故、あなたは撃墜されたの?」
不意に話題とは関係の無い話を振られ、アリーシアは眼光を弱めた。
「何で撃墜されたのか、考えた?」
「――……いえ」表情が厳しくなった。
「そうだよね。じゃあ、今から考えてみよう。何で、あなたは撃墜されたの?」
「――敵の、あなた方の兵器に、攻撃を受けたからです」
「ううん、そうじゃない。《撃墜》って言葉は、《攻撃を受けた事》が前提となっている。あなたが言うべきなのは、《何故攻撃を受けたのか》。それだよ」
「――私の下方不注意……。それか、敵の射撃の性能がかなり高かった、か」
「まだあるんじゃない? そう、例えば、《敵を確実に破壊していなかったから》、とか」
「――そう、かもしれません」
「でも、あなたは敵を確実に破壊できると思って、攻撃した」
「――そうです」
「そこで、予想外の事態が発生した。あなたが予想し得ない事――。それが何たるか、教えて」
「――敵の動きが、予想以上に良かった事です」
「……続けて」
「――地上用モビル・スーツの開発コンセプトは、《戦車よりも機敏に動き、戦闘ヘリより汎用性のある兵器》です。モビル・スーツという兵器は、確かに機動性を重視した兵器です。でも、機敏な動きにも限界はあります。モビル・スーツってかなり重いんです」
「重いって、どれくらい?」
「――ストラティオーテースの場合、非装備時の重量は約50トン弱。新型のモビル・スーツはそれよりも一回りは大きいから、60トンくらいと仮定すると、その分ストラティオーテースよりも遅くなるはずなんです」
「確かに、10トンの差は大きいね」
「――でも、《セレーネ》は違っていました。1つ1つのアクションが、ストラティオーテースよりも確実に速いんです」
「《ヘリオス》の機動力は、どうなの?」
「――ストラティオーテースよりも、若干遅いです。ストラティオーテース自体が5年前に配備された機体だから、その分技術の進歩があるのは当然の事で、よりエネルギー効率のいいものになっている事に間違いは無いでしょう。でも、力量には限界がある」
「なるほど。有り得ないと思っていた機動力に、あなたは負けたわけか」
「――悔しいけど、そういう事になります」
彼女らは、一息置いた。イスラは居住まいを改める。そしてキーボードで先程の話の内容を少し打って、それから何箇所か、校正のためにバック・スペースを連打し、エンターを押した。それからイスラは、マウスを動かして何かを1回クリックする。
筆記具を取り出し、B5レポート用紙にラテン文字を連ねていく。
* * *
Lieutenant Colonel - Yusif bin Abdul al-Sharif
Major - Giambattista Davy, William Gneist
Captain - Richald Irving
First Lieutnant - Xishan Yuan
Second Lieutnant - Iannis Jacque-Yves Montherlant, Joseph Ringstroem
Sergeant Major - Gunter Konstantinovich Shchelgovskii
Master Sergeant - Edouard Armstrong, Luis Grieg, Mu'ammar al-Khaldun, Jalal bin Rumi
Sergeant First Class - Fritz Chavannes, Mitsuru Khorshid, Helena Tsvetaeva
Staff Sergeant - Paul Bihari Bose, Alitheia Forey, Victor Christoph Marcangelli, Dafu Guang
Sergeant - Antoine de Coubertin, Marco Johnson, Woncheol Nevalainen, Benjamin Sasaki
Corporal - Otto Arnold Holzenbein, Karl Julius Clausius, Hiroshi Mustafa Fujikawa, Gabriele Greene, Hunayn al-Mas'udi
(アクセント記号は省略)
* * *
28人まで名前を書き、次の行にPrivate Masterと書こうとして、イスラは手を止めた。これ以上書いても、無意味だ。彼女はアリーシアにその紙を差し出す。
「それは、あなたの機体から得た隊員の名前を、階級別に書いたもの。各階級の名前の順番は、ラスト・ネイムのアルファベット順だから」
「――それで、これをどうしろと?」
「うん。《ヘリオス》を操縦していた人が誰なのか――」イスラは持っていたペンを紙の上に置いた。「――教えてくれないかな」
アリーシアは目を見開きながら、硬直まった。
「《ヘリオス》は《セレーネ》に叩き落されて、南シナ海の藻屑になった。こっちの公式記録ではそうなってる。でもあたしは、あの機体とそのパイロットが死んでるとは思ってない。北京の本部に未報告の書類を見る限りはね」
「――どういう、事ですか……?」
目が、動いた。
「未報告の書類、中国海軍の潜水艦からの報告では、《ヘリオス》が着底したであろう付近から潜水艦と思しき影が東に去ったのを確認。その後の衛星写真の解析で、フィリピンのラオアグっていう街の軍港に、所属不明の潜水艦が停泊してるのを発見した。これが昨日」
モニタを見ながら、イスラは言う。
「ラオアグに到着した潜水艦は、奇妙な事に小型空母並みの甲板を持ち、しかもそれに何かが積んであった。シートが掛かってて衛星写真じゃ判別出来ないけど、包まれているものの全長は、16から18メートル。人型のものであるという事が判明」
アリーシアの目は、イスラから動かない。穴をも開けそうなくらいの眼光で、彼女は目の前の長身の女性を凝視していた。
「今の監視衛星ってのは高性能でね、上さえ見ていればその人の顔が結構くっきりと見えるものなんだよ。で、その衛星には、作業員とは明らかに違う服装で、というかあなたが逮捕された時点で着ていたものと同じものを着ていた人が映し出されていた」
これがその人物の写真だ、と言わんばかりに、イスラは写真を画面に立ち上げ、モニタをアリーシアに見せた。瞬間、少し呼吸が乱れる。
その写真には、担架で運ばれる人が映し出されていた。胸についている階級章は、黒い資格に三日月と、一本の黄色い線をあしらったものだ。
「周りにはフィリピン海軍の服を着た人しかいない。で、その人の胸の階級章を見る限り、階級はSergeant First Class(曹長)。つまり、フリッツ・シャヴァンヌか、ミツル・ホルシードか、ヘレナ・ツヴェターエヴァの誰かという事になる」
ミツル・ホルシードの名を出した瞬間、アリーシアの目が揺れた。瞬きが増える。
「見てのとおり男性だから、明らかに女性名であるヘレナ・ツヴェターエヴァの線は確実に潰える。だからあとの2人に絞られるんだけど……、ミツル・ホルシードは、あなたの関係者?」
アリーシアは顔を上げ、息を呑んだ。
「ミツル・ホルシード。月ファー・サイド、ツィオルコフスキー・クレーター市12区出身。あなたと同じだね」
「――……そうですね」
「同郷って事で、お互いに話したりはしないの?」
イスラはアリーシアの目を凝視する。彼女の瞬きは激しく、時々目を逸らす。唇が渇くのか、盛んに唇を舐めていた。
「――同郷と言っても、階層が違えば知り合いになる事はありません。他の階層は、街が違うようなものですから」
「ふぅん……」
イスラはモニタを戻した。少しキーボードを叩き、確定する。そしてふと、口を開いた。
「フアンさん、ちょっと、外に出てくれませんか?」
フアン、そう呼ばれた眼鏡をかけている女性は、イスラの顔を見た。
「いいの?」
「ええ。外でモニタリングしててください。少し、サシになりたいんです」
英語で話しているのは、意図しているからなのか。アリーシアには、イスラの真意が分からなかった。
フアンはそのままPCを閉じ、少し身の回りを片付けてから、部屋のドアを開けて出て行った。
「ミツル・ホルシードは、あなたが死んだと思っている」
フアンが出て行くのを見届けたイスラは、唐突にそう切り出した。
「――……今、何て、言いました……?」
「ミツル・ホルシードは、あなたがもう既に死んだものだと思っている。そう言ったよ」
静寂が、突き刺さった。
「ミツル君は?」そう訊かれたアドルフ・ヨハンソン上等兵は、その質問者を見上げた。スーツを着込んだ、長身の女性である。
「あ、大尉」
そこにいたのは、シェーナ・ボーン大尉だった。アドルフは病室のヴェランダで灰皿に吸殻の山を作っている人物を一瞥した。
「南シナの作戦から帰ってきて以来、ずっとあんなんですよ。何かあったんだろうとは思うんですけど、何も話してくれなくて」
「そりゃ、なぁ……」
シェーナはアドルフの横を通っていった。
「ああ、待ってください。人払いさせられてるんですよ」シェーナの歩みを止めて、アドルフが言った。
「へぇ……。あんた、上官の歩みを止めるのか?」
「え……、い、いや、直属の上官の命令ですから」
「……ま、別にいいんだけどね。ただ、あたしの方からミツルに話がある。通してくれないか」
「えっと……、訊いてみます」
アドルフは病室に入り、ミツルと2、3言交わすと、戻ってきた。
「いいそうです。ただ、説教は聴きたくない、と」
「あンの野郎、いい度胸だ」
シェーナは病室の扉を少し強めに開け、そして閉めた。
* * *
「ヴェランダとはいえ、病室で煙草をそんな大量に吹かす奴なんて初めて見たよ」
「なら、しっかり目に焼き付けといてください。もう見られる事は無いでしょうから」
「確かに。煙草飲みは今後、どんどん駆逐されるだろうしね。この際だ。禁煙でもしたらどうだ?」
「……どうしよっかなー……」
シェーナは病室のベッドに腰掛ける。
「確かに、イラク産は高いからな……」
「ミツル」
詰まった口調。初めて、ミツルは振り向いた。
「何スか」
「……覚悟は、してたんじゃないのか?」
静寂。
それ所か、動きは一切無い。海に面した病院だというのに、風の一陣も無かった。
「ボーン大尉、――」ミツルは煙草の火を柵に押し付けながら、正面を向いた。「――説教は聴きたくないと、言ったはずですが」
「ふざけるのも大概にしとけよ、ミツル・ホルシード」
シェーナは脇の下のホルスターから拳銃を抜き、スライドを引く。そしてまた、ポケットからサウンド・サプレッサを出し、銃口に付け、ミツルに向けた。撃鉄(ハンマー)が起き上がっている。
「説教なんて、私だってしたくない、面倒だ。だがな、《悲劇のヒロイン》気取りのヘヴィ・スモーカーには、説教なんて生温い」
言うが早いか、シェーナは引き金を捻った。パシッという音。ミツルの耳から血が出ていた。左耳の端が少し抉れている。
「お前は、私の生徒の中ではずば抜けていた。極めて優秀だった。それが今は何だ。死人のような目をしながら、ファックヘッドのような表情をしている。頭の中はさぞ、愛する女性の事でいっぱいなんだろうな、羨ましい限りだ」
ミツルはシェーナを睨む。しかし彼女は、意に介さない。
「おっ、死人から幾分かマシな目になったな」シェーナは銃口からサプレッサを外し、銃のセフティをかけてからホルスターに仕舞った。ミツルは表情を戻し、目を白黒させる。
「――さて、私はこれから日本に行かなければならない。向こうの軍人とのちょっとした会談だ。そろそろ行かないと、飛行機の搭乗に間に合わない。で、お前の見舞いはただの暇つぶしだ。それと、その暇つぶしついでに土産話を持ってきた」
薬莢を拾い、彼女はそれを上着のポケットに入れる。そして自らの鞄をあさり、A4サイズの紙を折らずに入れられる茶封筒をミツルに差し出した。
「……これは?」
「先の海戦で捕虜になった奴らのリストだ。向こうの特務軍事組織がメールで送ってきた。それを印刷したものだ」
「ああ、あの、Zhuangjunとかいう……」
「そうだ。ちなみに2ヶ月前に盗られたセレーネは、そこの所属になっていると見てまず間違いないだろう」
「……はい。そうです」
「よし。だがまあ、その話はあとにしよう。面倒だから端折って言うと、そのリストにお前の部下が15名載っていた、という事だ。アリーシアの名前もあった」
呆然。ミツルは自ら時を止めた。
「退院したら、溜まった書類の片付けをしろ。あと、始末書な。お前の隊はこのごろ、実戦に於ける成績が芳しくない。訓練をやり直せ、とのお達しだ」
言いながら、今度は小さめの茶封筒を渡す。《指令書在中》と書き殴ってある。
「訓練後、恐らくまた、中央アジアに派遣される事だろう。ウズベキスタンと中国の戦争は、まだ終わってないからな」
シェーナは身を翻し、病室の扉に手をかけた。
「今は何も言うな。ただ月に戻ってから、一度でいい、私のオフィスに来い。以上だ。作戦、ご苦労だった、ホルシード曹長」
言って、彼女は病室の扉を開ける。
「――アリーシアが生きていて、良かったな、ミツル。実は私も、ほっとしている」
ミツルははっと、顔を上げる。既にシェーナは病室から出たあとだった。
* * *
「何故、あなたがミツルを知ってるの?」
アリーシアは、自らが彼の知り合いであるという事を明かしている事すらも忘れ、目の前の女性が言った言葉を懸命に否定していた。
「まず、何から話そうかな」
目の前の女性――イスラ・カマル――は席から立って、ブラインドで閉じられている窓際に寄りかかった。
「まず、そうだ。あたしは、イースゥ・カンと名乗ったでしょ? あれ、通名。本名は、イスラ・カマル。聞いた事、あるはずだよ」
アリーシアは一度「イスラ・カマル」と呟き、目を見開いた。
「あなたが、そうなの? セレーネの、パイロットの……?」
「ご名答。2ヶ月前、あたしの目の前に真っ黒なシャトルが落ちてきた。中には、あなたたちが《セレーネ》と呼んでいるモビル・スーツが収納されていた」
「――それが、発端?」
「そう。あたしはそれを動かした。後で聞いたら、十分な訓練をせずにモビル・スーツを、まして新型のそれを乗りこなすのは、不可能に近いんだってね。そのせいであたしは、人民軍に協力する羽目になった」
アリーシアは言葉が出ない。
「興味持っちゃったもんなぁ……。あたしの父はね、機械に強かった。打ち捨てられた人民軍の機械を直しては、実際に乗せてくれたっけ」
イスラは微笑みながら語る。
「乗った当日、あたしは人民軍とあなた方の軍――COMSのモビル・スーツに攻撃を受けた。どちらも、《セレーネ》の回収を目的としていた。その時だよ。あたしが、ミツル・ホルシードと始めて話したのは」
アリーシアは体をイスラに向けた。
「あなたの名前が初めて出てきたのは、先の海戦での会話。あなたと彼が恋仲だって事も、幼馴染だって事も語ってくれた。あなたへの質問はね、アリーシア、ただの確認。あたしはある程度、真実を知っていた」
アリーシアは椅子から立ち上がり、イスラに向かって歩いた。そして両者、互いに対面した。
「――どこまで、知ってたの?」
「質問事項については、殆ど」
「私の名前も?」
「ええ」
「モビル・スーツの名前も、ヘリオスも?」
「当然。直接やり合ったからね」
「じゃあ、なぜ、こんな無意味な質問をしたの……?」
「あなたが嘘をつくかどうか、見極めるためだよ。案の定嘘はついたし、あなたはミツル・ホルシードとヘリオスの事を必死になって隠そうとしていた。でも、あなたの仕草を見ていれば、あたしじゃなくたってあなたが嘘をついているとわかるよ」
「……」何も、言い返せない。アリーシアは項垂れた。
「明日、あたしの上官があなたと面会をする。そのとき詳しい話がなされるんだけど、アリーシア、あたしたちに協力してくれない?」
「――協力?」
「そう。別に、月を攻撃するというわけじゃない。そりゃ、一応は敵対勢力同士だから《敵》って扱いにはなるけど、協力して欲しいのは、戦争を早くに終わらせるための根回し。あたしたち專軍(ツゥアンチュン)は、PGUGの台北本部からそれを仰せつかってるの」
「そうなんですか」
「早期終戦は、互いの願いでもあると思うの。だから、協力してくれないかな。まあ、返事は明日の説明を聞いてからでいいけど」
アリーシアはイスラの目を見た。そして、手を差し出す。
「……アリーシア?」
「一応、信じとく。でも忘れないで。騙したら、解放された次の戦闘で殺してやる、って」
「……」イスラは驚いた。まさか、手を差し出されるとは。憎まれる仕事だと思っていた。「わかった。肝に銘じとくよ」
互いに互いの手を握り合った。
「これから宜しく、アリーシア」
「こちらこそ、イスラ」
彼女らの笑顔は、しかし、まだ笑ってはいなかった。
長らくお待たせいたしました。以上、7話、《ΑΛΙΘΕΙΑ》でした
ちなみに《ΑΛΙΘΕΙΑ》とは、《真実》という意味であり、《アリーシア》のギリシア文字表記でもあります
《ΑΛΙΘΕΙΑ》は間違い。正しくは《ΑΛΗΘΕΙΑ》ですね
古典語読みは《アレーテイア》です
うぉ、やっぱレベル高ぇ…7話乙です
潜水艦か……その手があったか…
2つ質問〜
1、水圧でヘリオスは潰れないのですか?
まぁ、宇宙空間で運用できる事を考えると大丈夫なのかなぁ
2、曙色…
ttp://www.colordic.org/colorsample/2250.html…ですか?
……シャア…いや何でもないですww
あと話が変わる上に遅レスですが…jCOt2dXQRg氏、
>>389のVentusですが、
『ガンダムを元に作られた』って事は、当然ガンダムも…
しかも今までのイラストとデザインが違うものになるんですか?
苦戦してるみたいですが、期待してますよ〜
続き書いてない上に長々とすみませんです
また一ヶ月以上かかってるし……頑張れよ俺orz
424 :
通常の名無しさんの3倍:2006/06/08(木) 12:25:09 ID:veWz5ZKC
あぐ
age
保守
定期
ほし
あ
日
火曜市
だれもいない?
ノシ
保守
次の投下では、《ΑΛΗΘΕΙΑ》の続きからになります
御了承ください
あ
星光
保守
age
>>419の続き↓
* * *
アリーシアは留置所のベッドで、今後の事を考えていた。
敵対勢力に、協力を要請される。それは何とも不可解な事に思えた。
しかし、これは過去の戦争でも一般に行われてきた行為である。戦争(或いは戦闘)を早期に終わらせるための交渉には、捕虜が一役買っている場合が多かった。
そのすれ違い、または元から早期終戦を念頭に置いていない所為で結果的に長期の戦争になった例が、第二次大戦であり米中戦争であった。米中戦争に至っては、日本や朝鮮という第三国が主戦場になった所為で余計話が拗れた事も関係する。
そういえば今日は、協力の要請に関する説明があるのだ。それがいつになるのか、というのがイスラの口から明言される事は無かった。という事は、突然この部屋に私を呼びに来る。
彼女は少し身構えながら、左の胸ポケットをまさぐった。
「あ……。そうか、煙草、預けてたままだった」
アリーシアはニコチンやタールの分量が比較的少ない部類の煙草を吸っていた。だが量を多く吸っていたため、それが無い今は少し口元が寂しい。仕方無しに彼女は、朝食に付いてきて結局使えなかった割り箸を齧る事にした。
それにしても、暇だ。話し相手に困らなかった数日前までの自分が夢のようである。暇潰しに本を読むという習慣――ミツルのように――が無い彼女にとって、今という時間がひどい血行不良を起こしているように感じられた。
コンコンコン。
3度のノックのあと、鍵が開く音がする。そして、ドアが自重で蝶番の軋む音を立たせながら開いた。見た顔。イスラ・カマルがそこにいた。彼女の後ろには、顔の上半分が何かで覆われた人物がいた。その人の後ろには、カラシニコフを持った兵士が1人。
「Good morning, Alitheia. Slept well?(おはよう、アリーシア。よく眠れた?)」
「So, so.(まあまあ、ね)」
「ああ、そう。昨日言ったとおり、協力要請の説明をするよ」
イスラは兵士に何か言い、兵士は折り畳み椅子を2つ部屋の中に入れて、立ち去っていった。
「ここでやるの?」
「うん。今日は残りの捕虜のために、取調室が満杯でね。ここでやらせてもらうけど、いいよね?」
「……ええ。所で、イスラ、その人は……?」
アリーシアの目があからさまに、顔を覆っている人物に向いた。イスラが答える。
「あたしの上司。キャプテン(大尉。中国語だと上尉)・アートゥオ・リウだよ」
「――リウ?」
アリーシアが訝しげに、彼の顔を見た。
「……大尉(カペターニオス)?」
こういうのをデジャ・ヴュというのだろうか? 嘗ての上司に似ている雰囲気で、嘗ての上司と似た容姿をしている。
しかし、中国は16億人の人口を抱え、その内人民軍だけでも200万人はいる。《リウ》という姓をもつ軍人で、彼女が知る《リウ》と似ている人物がいるのは、当然かもしれない。それが偶然にも、ここに配属されているだけだ。
この人と大尉は似ている。だが明らかに異なっている部分がある。それは、やはり顔の上半分を覆っているものだ。頬骨のあたりから皮下に入り込んでいる部分がある。サイボーグだ。目や耳は明らかに機械だから、彼女はそう確信した。
「Well, Kapetanios.(カペターニオス、か)」
サイボーグの男が口を開いた。ああ、どこまで似ているのだろう。声なんか、そっくりじゃないか。
「Ah my old pseudonym. Long time no see, Staff Sergeant Alitheia Forey.(懐かしい呼び名だ。久しぶりだな、アリーシア・フォリー一等兵曹)」
「……大尉……? リウ大尉なんですか!?」
「O? Alitheia shi-fou-shi-nin-he-xiang-shi?(哦? Alitheia是否是恁和相識?;へえ? アリーシアとはお知り合いなんですか?)」イスラはリウに問う。
「Shi. Ta-shi-wo-de-zhu-li-dang-wo-shi-zai-yue-liang.(是。[女也]是我的助理當我是在月亮。;ああ。月にいた時の部下だ)」
「大尉!」アリーシアがリウに駆け寄った。「本当に……あの、アトロ・リウ大尉なんですか……?」
「ああ。僕は一年前、演習中の事故でデブリのひとつになったと思われていた、アトロ・リウだ」
「あたしが来る前、そんな事があったんですか」イスラは英語で2人の会話に入る。
リウが軍属に就いたのは、昨年、標準暦48年の事であった。それ以前の事は、標準暦18年10月21日に四川(スーチョワン)省は成都(チョンツー)で出生した事、25年に月に渡り、それからずっと月にいた事、しか分かっていない。
「そうだよ。まあ、昔話はあとにしよう。今は、プライヴェイト・タイムじゃない」
言って、リウは折り畳み椅子に腰掛けた。イスラもそれに続く。アリーシアはベッドに座った。
「概要は、イースゥ、いや、イスラから聞いたね?」
「早期終戦のための、根回し、ですか」
「そういう事だ。現在、COMSの援護によってタジキスタンとの戦争が長引いている。一進一退だ。それに、北ヴェト・ナムでの戦争も、やはり早くに決着を付けないといけない。南ヴェト・ナムへの支援も、ASEANとともに行われている事がわかっているしな」
タジキスタンは、中国領内での軍事行動の報復として、首都その他、軍事施設や幹線道路等を攻撃されている。
中国側の要求としては、現政権の解体と一定期間の中国による占領だ。当然飲めるものではないその要求に、タジキスタンが断固として抵抗しているのだ。月はCOMSの一員としてタジキスタンを援護している。
互いにゲリラ的な戦闘を行っているため、部分的かつ突発的な戦闘しか起こっておらず、戦争が長引いている現状である。なお、現在新疆ウイグル自治区の国境に近い地帯には、《第二砲兵》と呼ばれる弾道ミサイル群がタジキスタンの各重要地点を狙っている。
他方北ヴェト・ナムでの戦闘は、親中派の新革命軍(NRA)が首都・ハノイを占領し、一方的に《ヴェト・ナム人民共和国》への政権移譲を宣言した事がきっかけだ。
標準暦初頭には既に共産主義から離脱していたヴェト・ナム民主連邦共和国は首都をホー・チ・ミンに移し、北緯19度以北を独立領地とする《北》に対し、標準暦48年、国家転覆罪として軍を出動させた。
戦闘は、《北》を中国が、《南》をASEANが支援する形で行われた。物量に勝り、更に南軍よりも性能の良い兵器を使用しているため北軍はそのまま同地に居座り続けていたが、COMSの介入によりそれが一転した。現在、《北》の政府は地下に潜っている。
その情勢を覆そうとしたのが先の海戦であり、制海権は中国の手中にある。制空権は定まっていないが、陸路ではCOMSが主要幹線道路を封鎖している状態だ。だが北軍がハノイを奪還したため、再びの混乱が予想される。
「ヴェト・ナム情勢は、今は少し置いておく。…我々はタジキスタンに対して降伏を呼びかける一方、中国の軍部に対しても、あまり無理な要求を突きつけないように要求している。そして、アリーシア、君には、COMSへの交渉の糸口になってもらいたい」
「交渉の……?」
「そうだ。中央軍事委員会及び人民軍各司令官、タジキスタン政府、COMS行政府及び各派遣軍の司令官――これら3点に、早期終戦のための交渉を持ちかける」
そのうちの《COMS政府及び各派遣軍の司令官》への交渉の糸口を掴むのが、アリーシアに要請された事柄であった。
「タジキスタン政府には、主権保障条約の一部を拒否してもらう。そのための手続きも、こちらで行う手筈だ。COMSには、同条約の一部拒否を承認するように要請する。我が国の連中には、無理な要求を引っ込める事を要請する」
「最後の仕上げが、中国とタジキスタンの戦争をPGUG及びCOMSの仲介によって終結させる。PGUGのハト派が、そのための会場も用意してくれるそうだよ。COMSにはまだ確認とってないけど、近々その答えが出る……んですよね?」
イスラがそう、締めくくった。なお、主権保障条約とは、COMS加盟国が加盟時に批准し、同時に効力を発する軍事条約である。《月構造物同盟とその加盟勢力の主権を相互に保障し、防衛するためのイスタンブールにおける条約》が正式名称だ。
NATO、もしくはWTO(ワルシャワ条約機構)のようなものといっても過言ではない。
「そうだ。一応お偉方サイドに連絡を入れておくようにPGUGの外交部に通達しておいた。それに、一週間以内には軍の内部からもそういう声が出始めるだろう」
リウの表情は分かりづらい。未だに機械化された顔半分が気になって仕方の無いアリーシアは、少しでもそれを読み取ろうと、彼を凝視した。
「どういう事か、って顔をしてるな、アリーシア。手紙を出したんだ。宛先は、エリザベータ・レア・ボーン。……ああ、君らには、シェーナ・ボーンの方で通ってるんだったな。彼女に、同様の旨で手紙を出した」
「えっ? ボーン大尉に?」
「そうだ。彼女は現在の僕の動向を知る、君が知るまでは唯一の、月面人(ルナリアン)だ」
* * *
具体的な計画がそこで伝えられた。説明が終わり、将校という事で多忙なリウはそのまますぐに去っていく。その去り際、彼はアリーシアに言った。
「じゃあ、考えておいてくれ。僕ら專軍は君を利用はすれども、君自身に対する不利益な事をするつもりは無い。だから、安心してくれても構わない。君のIDは、午後にでも届けられるはずだ」
リウは自らの座っていた椅子を持って、独房を出た。女性が二人、残される。
「……ねえ、イスラ」
アリーシアが口を開いた。しかし、その声の方向性は全く定まっていなかった。
「――うん?」
「……リウ大尉って、ずるいね」
「――どんな所が?」
「選択肢を与えているようで、実はひとつの道しか提供してくれてないよ。……彼は」
リウの語り口に関しては、イスラも反感を持っていた。彼女も、アリーシアと内心は同じであった。
7話は以上。
ほんとのほんとに以上。
追加の話、すまぬorz
あげ
17.99bの大女が主人公のスレはココですか?
何モノよ、それ
449 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/05(水) 13:03:09 ID:d6R3nkPs
綾波レイの事じゃね?
突然だが点呼開始
452 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 21:59:59 ID:zjyCpsQA
あけ
453 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/09(日) 21:01:28 ID:JZWzshCj
あげ
定期
455 :
447:2006/07/11(火) 15:55:15 ID:???
スレタイに【身長差1cm】 ってあるもんだからさ、MSと
身長差1cmなのかと思っちゃったよ。
話が進まねえ
age
とりあえず、ルナマリアは170センチでもっと外人ぽく。
タリアは現状維持でいい。
シンは日系人っぽいから小柄に172センチでいい。
レイザバレルは180以上あるクルーゼと遺伝子同じだし北欧系なの
だからもっと体格はいいはず。16歳という年齢を考慮しても175センチは
なければ。
アスランは18歳でパトリックザラの息子でもあるし、シンより高く
ないといけないので、178センチくらいがちょうどいい。
キラも日系人で小柄だけど、18歳なので173センチくらい。
ラクスは168センチくらいでいい。向こうのアイドルもそれくらいの
身長だし。
で、ディアッカ、イザーク、バルト、フラガ、デュランダルも
現状維持で問題なし。誤差修正プラス2,3センチ程度でOK.
メイリンは小柄だから163センチくらいで。
フレイアルスター(16歳)はかなり外人っぽくして、167センチに。
ミリアリア(18歳)も完璧に外人っぽくして、168センチに。
ミーアは本物より大柄そうだから、170センチに。
とりあえず、ザフト出身のひとたち
ディアッカ180センチ、イザーク179センチ、バルト185センチ、
デュランダル183センチ、タリア175センチ、アーサー180センチ、
アスラン178センチ、シン172センチ、レイ175センチ、ルナマリア170センチ、
メイリン163センチ、アビ175センチ、シホハーネンフルス167センチ、
これくらいでいいだろう。
地球軍
ネオロアノーク183センチ、アウル173センチ、スティング179センチ、
ステラ169センチ
オーブその他
キラ173センチ、ラクス168、ミーア170、カガリ165センチ
とりあえず、新ガンダム主人公は草薙素子や中の人がシャーリーズセロン
みたいな長身ショートカット系美女で。175センチ前後でいいだろう。
年齢は16歳〜18歳。クールヘッドにホットハート、負けん気が強く、
勝気で男女同権意識が強く、セクシー。トゥームレイダーのような
むちむちぼんきゅっぼんであり、状況次第では色仕掛け下半身攻撃で
敵兵の戦意を喪失させ、そのすきにナイフ術で応戦するなどして
ピンチをしのぐ。MSの発進時には「○○、△△、いきます!」と
りりしい声で。戦闘中にキャーとかいわない。拳銃の扱いもうまい。
アサルトライフルでばりばりやるのが似合う感じ。もちろん性経験は
なくて、男女交際にはあまり関心がなく、人一倍、勉強や訓練にがんばる
エリート。しかし、ファッションには人一倍気を使っており、自己顕示
欲も高い。こんな感じでいいだろう。
って、スレ全部見てみると、たたごとではないな。
こりゃ、ヤバイじゃん。ホンモノじゃん。東大?
少なくとも、ウイグル語、中国語、英語、ギリシャ語の
知識があり、政治や軍事にかなり精通しているように思える。
ウイグリスタンと中国の戦渦、アラビア語OS、なんか
まさかこんな板で、近年の政治描写トレンドを織り交ぜて
中国語なんかにお目にかかれるとは思わなかった。、尋問の描写とか
きつすぎ。絶対アニメ化できないけど、これをガンダムの戦記として
描くのはかなり意義があることだと思うよ。
俺ももっと、国際政治や戦争や語学とか勉強しなきゃな。小説は
描けんが、ガンダムと国際情勢をからめて物事考えるのが好きだしね。
やっぱり、現実の国家や民族が主体となって登場すると、リアリティが
増すよな〜 本当に悲惨さが伝わってくる。シードも悲惨といえば
悲惨なんだけど、あれは政治描写がなさ過ぎるし、現実の国家や民族が
登場するわけじゃないので、あまり、悲壮感がないんだよな。
保守
>>463 お褒めに預かり光栄です。今後の精神的糧にして、がんばって書いていきます
まあ、書き込むくらいなら文章書いて投下しろ、という話なんですがねorz
ほしゅ
あげるよ
さげるよ
保守
何このキモいスレ
そしてこのアホっぽくてつまらんクソオナニー小説は
sage
473 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 08:57:56 ID:zmI19Fj1
474 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 10:20:30 ID:0C0C1ac7
だから、メイリンを主人公にしろと何度もry
475 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/27(木) 13:38:43 ID:nwI0f6iL
いいやミナ様だ
キャラを縦に伸ばしたくらいであの世紀の駄作が良作になることはない。
だがアイシャを主人公にして生き延びさせれば良作になったかもしれん
アイシャの身長知らんが
478 :
通常の名無しさんの3倍:2006/07/29(土) 13:00:26 ID:q7AGoReq
アイシャ・コーダンテ
身長187cm 体重67kg
保守
しつつ元いた職人の降臨に期待
いろいろ考えて、これくらいが妥当だと思うにいたりました。
デュランダル 183 キラ 173 ディアッカ 180
タリア 174 マリュー 170 イザーク 179
アーサー 179 バルト 185 ネオ 183
ハイネ 180 ラクス 163 スティング 178
アスラン 176 ミリアリア 167 ステラ 167
ルナマリア 168 カガリ 164 アウル 172
シン 172 ミーア 165
レイ 173 キサカ 188
メイリン 162
長身って、何センチ以上が長身の女の人なんだろ?
訂正。キサカとフラガのツーショトシーンを考慮。
ザフト オーブ・アークエンジェル ファントムペイン
デュランダル 183 キラ(18歳) 173 ネオ 183
タリア(女) 174 アスラン(18歳) 176 スティング 178
アーサー 179 マリュー(女) 170 アウル 172
シン(16歳) 172 バルト 185 ステラ(女) 167
レイ 173 ラクス(女) 163
ルナマリア(女)168 カガリ(女) 164
メイリン(女) 162 ミリアリア(女) 167
ハイネ 180 キサカ 192
イザーク 179
ディアッカ 180
ミーア(女) 165
長身の女性って、何センチくらいからと考えてる?
個人的には175センチくらいからが長身に分類できると思う
484 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 14:00:15 ID:v382NC/J
一番迷ったのはミネルバクルーの少年少女たちだ。16歳ならば女なら
ほぼ成長は止まっているが、男(特に毛頭)ならばまだまだ伸びる余地は有る。
レイザバレルは183センチのクルーゼと遺伝子が同じということだから、最終身長
180センチ前後になるまで、伸びると予想される。あと10センチ伸びるとして、
16歳時点で173という結論に落ち着いた。
また、作中で気になったのは、身長ではなく首の太さ。MSパイロットも基本的には
戦闘機パイロットと同じなので、あんな細い首では強烈なGに耐えることが
できずすぐに失神してしまう。もし、私が作画監督なら彼らを軒並み
太い首、鍛えられた肉体の戦士として描くだろう。人種の違いも強調して
シンアスカは日系人らしく、レイザバレル、ルナマリアは白人らしく描く。
シンアスカは、172センチで丸刈り(MSパイロットは原則丸刈り)で、
体型や見た目は高校の柔道部のような感じにする。
キラヤマトは最高のコーディネーターらしさを強調するため、18歳時点で
180センチ80キロアメフト選手のような筋骨隆々体系という設定を導入し、
顔も大和という言葉が似合うべく目の釣りあがり頬骨の出た丸刈り青年にする。
もちろん、首もごんぶとなので、フリーダムのキチガイじみた動きGにも
たえられる。
で、そんなキラヤマトについているラクスは163センチと小柄の白人にする。
むきむきごっつい丸刈り東洋人にかわいい小柄な白人美女という
組み合わせだ。現実的だろう?実際、そんなカップルはアメリカにいけば
見られるというし。
アスランは逆に、スマートな美青年らしさを出してもいい。18歳時点で
184センチ、80キロという肉弾戦にもっとも適したバランスで。
ただし、首はやはりごんぶとで、MSパイロットらしく髪も丸刈りか
クルーヘッド。ルナマリアは174センチにしてあるので、ちょうど
釣り合いが取れる・。
ディアッカはやはり黒人にして190センチがベスト。ネオロアノーク=
フラガは193センチということにしてみたが、どうだろう。
だが、MSパイロットにもっとも適した身体はどんなのかと考えたとき、
あまり長身はふさわしくないと思った。心臓から脳の距離が離れすぎていると、
すぐに失神するので、あまり長身でないほうがいい。
長身過ぎず、首が太くて短い。なおかつ、機敏に動けて、肉弾戦も戦える、
そんな需要をすべて満たすには、アスランはやはり176センチ程度、キラは
173センチ程度で十分だし、その身長の上で、首をごんぶとにして、
がっしりした体つきにすればいい。だが、しかし、最終身長がほぼ決まる
18歳時点でその身長では低い気がする。特に、アスランは白人なのに、
それではきつい。
中間を取って、アスラン180センチ、キラ175センチというのはどうだろう。
アスラン:180センチ75キロクルーカット美青年
キラ:175センチ75キロアメフト体型丸刈り である。
キラヤマトを目の釣りあがった頬骨でっぱり丸刈りアメフトにする理由の
ひとつには、彼らをミネルバの敵に描くためである。およそ誰もがファンに
なりたがらないような養子として描いて、ミネルバのにっくき敵、
テロリストの印象をより強くさせるためだ。
シンアスカは小野シンジのような容姿にして、美青年とは行かずとも
アンニュイで幼い感じも残る日系人キャラに。レイザバレルはやはり
丸刈りで、細身ではあるが、骨格の太い、首の太い当代サッカー選手
のような感じに。もちろん、美少年である。そんな感じのいい二人の
前に立ちふさがる 凶悪なごっついアメフト体型朝鮮顔キラヤマト。
最高だ。
設定画を書いてみた。upローダーがあればあげる。
あぷぷにあぷ汁
重すぎる。つながらん。
うぷろだ的なものはピクトしか知らない
職人の復帰を祈願保守
保守
age
保守
点検
保守
500
保守
保守
503 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 23:17:48 ID:EMiAoh5A
だが、0079から7年後の少年たちすなわちZでの彼らを見てみると、
カイ、シャアなどに顕著に見られる傾向として、
身長がかなり伸びている。当時に彼らが15,6歳の少年だとして、
22,23歳になるまでに伸び続けたということだ。
アムロはさほど伸びていないように見えるが、全体的にガンダム世界の
登場人物は晩熟型で成長が遅く、18歳ないし20歳まで身長が伸びる
という暗黙の設定があるように思われる。ならば、オフィシャル設定の
キラ170センチ、アスラン174センチ、レイザバレル&シン168センチ
という設定も問題視せずともよいだろう。
ただ、彼らが二十歳を超えた時点での最終身長を問題とするなら、
レイは同じ遺伝子のクルーゼと同じく180センチ程度には達するだろうし、
アスランも父親の身長からもう少し伸びると思われる。キラは元来小柄な
日系人だし、あまり伸びないと思う。
504 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 23:29:37 ID:EMiAoh5A
よって、SEEDでの戦争から7年後の23歳の時点でどうかと考えてみる。
キラとアスランは2年間での伸びが5センチ弱で18歳にいたったことから、
すでに急激に伸びる時期は過ぎていると思われる。なので、最終身長決定の
20歳前後まではちびちびとしか伸びずに、キラ:172cm アスラン:176a
といったところに落ち着くだろう。
シンは両親の身長の平均プラス12センチとし、視覚で判断に基づき
175センチ程度になるだろう。
レイは何度も説明したように、183センチのクルーズと遺伝子が同じなので、
やはり、183センチ程度。シンとのバランスも考えて180センチというので
どうだろう。
とりあえず、こんな感じに落ち着いた。
キラ:172
アスラン:176
シン:175
レイ:180
主人公日系人キャラにプラス5センチしたのが、相棒の白人系キャラの
身長というわけだ。
シークレットブーツでいいよ。