リレー小説でガンダムを作ろう 第1話

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人類が宇宙に本格進出し、月の表面に人類初の地球外都市を建造してから80年。
人々は地球軌道上に宇宙都市、「コロニー」を建造し、衰退しつつある自然環境の地球から宇宙(そら)へ移住していた。
しかし、80年がすぎようとしていたある日。搾取と圧迫に耐え切れなくなった月都市、そして一部のコロニーが地球統一政府に対し
宣戦布告と同時に武力蜂起を決行する。電撃作戦により月の表面都市、ならびに一部の宇宙基地を奪取に成功する。
この戦いで、それまで艦隊戦のみだった宇宙戦闘に、宇宙戦闘機が導入され、その実績を戦果で証明し、
地球軍と技術の差を見せ付ける戦いとなった。
やがて月・コロニー軍は宇宙戦闘機を発展させ、人型兵器、MSを生産する。
地上での機動性や火力を同時に得るためであり、人型故にパイロットに扱いやすいという利点が拍車をかけ、
月・コロニー軍は速攻で地上に侵攻し、拠点、基地を奪取、破壊して行った。しかし、なれない地上の重力と、
地球軍の必死の抵抗、さらには奇襲と速攻による兵の疲労の増大により、地球侵攻は勢いを失ってしまっていた。そうして半年がすぎた。
59A:2006/02/05(日) 14:24:34 ID:???
「地球ね…さてさて。どんな世界なんでしょ」
少年は地球軍の制服を着ている。これは裏ルートで手に入れた、ほぼ偽物の制服であった。
月・コロニー軍が戦争をしている以上、たとえコスプレだとしてもそういう関係のものは容易に手に入れられるものではなかった。
少年の今いる場所は、宇宙のとある城塞都市であった。ここに地球軍の基地があり、そこから不定期に往来する
輸送船に乗り込み、地球へ向かう。それが少年の算段であった。
少年の名はアーリー・コートラン。月都市で生まれ、育ち、親を早くに亡くし、細かい仕事で生計を立てていた。
時折少々金銭的に苦しくなったときには盗みも働いていたが、人を殺めたり、無駄に傷つけることはなかった。
堂々と基地入り口から入ろうとする。下手にびくついていては勘探られるからだ。警備兵が声をかけてアーリーを止めた。
「失礼。軍の証明カードを見せてもらいましょう」
制服だけで入れるはずは無い。当然だった。そしてあらかじめ、精巧に作っておいた偽造カードを提出する。
ここで機械にかけられては元も子もないが、いちいちそういうことはしない。そうアーリーはふんでいた。
その予想どうり警備兵はカードとアーリーを見、通ってよしとゲートを開けた。子供っぽそうな身長や顔つきは、個人差だろうと考えたのだった。
「へへっ。いくらセキュリティシステムが高性能でも、使う人間があーじゃね」
アーリーは軍施設の中を歩いていく。

そうしてアーリーは輸送船のドッグまでたどり着いた。そこに、声を掛けられた。
「ああ。そこの。ちょっと手伝ってくれますか?」
そこにいたのは、一人の青年だった。そしてアーリーはその人物を知っていた。
「地球軍の戦闘機エース、ワット・ウェイル少佐!?」
「お。俺って有名人ですか?は、ともかく、ちょっとこれ、輸送船の中までお願いしますね」
そういって、金髪のエースは、荷物を積んだ作業ポッドと少年を残し、立ち去ってしまう。
「…ん?これで中に入れるじゃん。苦労しなくて良かったぜ」
少年はすぐさま慣れた手つきでポッドを動かし、荷物を輸送船の中まで運んでいく。
そして、ポッドから降り、手ごろな場所を見つけるために艦内を回っていた。そこに、初老の男性が現れる。
「む。君は補充兵かね?こんな若者まで戦争に送らねばならないのか…」
「あ…は、はっ。アーリー・コートランです!!」
アーリーは敬礼を施す。初老の男性の制服とバッジを見ると、少佐であった。
「ああ。気楽にしたまえ。輸送船とはいえ、私の船はそう簡単に落とされはしない」
「あ。艦長殿でしたか…?」
「ふむ。イスラ・カマル少佐だ。安心してクルージングを楽しんでくれたまえ」
そういうと、初老の艦長、イスラは立ち去ってしまった。
「ふへー。あぶね。まぁ新兵に緊張させないための台詞だろうけど。俺はあいにくと新兵じゃないんでね」
そういってアーリーはまた艦内を回り始めた。
そうしているうちに、輸送船が発進する。目的地は地球。ケープタウン基地であった。
60B:2006/02/05(日) 14:25:21 ID:???
「あーあ。出てきちゃったよ」
MSのコックピットで、軍基地から発進した輸送船を確認し、まだ若い青年はため息混じりにそう口にした。
「シエル・アッシュロア少尉。文句を言わない。この作戦は…」
「ほいほい。補給を断って、敵を弱らせよう。ってことでしょ。耳たこっすよ」
今度はあくび交じりに答える。相手は上官。経験豊かな軍人であった。
「噂によれば地球軍もようやく本格的なMSを開発し始めたとかいうしなぁ」
今度は弱気な声が聞こえてくる。眼鏡をかけた、同期の同僚、ミツル・ホルシード だった。
「だ・か・ら?そんなの、一気に敵さんの頭叩けば終わるでしょうに。ねぇ。大尉?」
上官に振る。
「まだ備蓄の物資は大量にあるはずだ。今攻めても双方被害だけでるだけだ」
「ま、何でもいいですけどね。じゃ、早速行きますかね?」
軽薄な口調で、上官であり、小隊指揮官でもある大尉、ジャッジ・エッゾンに訊ねる。
ジャッジ大尉は「うむ」とだけ答えると、MSのバーニアを吹かした。
ジャッジの指揮官用ヴァッフ、シエルのヴァッフ、ミツルのヴァッフDの3機は地球軍の輸送艦をターゲットに見据えた。

「敵軍。MS接近。数3機」
オペレーターから報告が飛ぶ。イスラ艦長は直ちにMS・ブルボットの出撃を指示する。
一方MSデッキ。
「敵?ご苦労なことです。よし、ワット・ウェイル。ブルボット、行きます」
虚空の世界にMSが躍り出る。MSとはいえ、まだその性能はヴァッフのほうが勝っていた。
それを腕でカバーし、エースと言わしめたのがこのワット少佐だった。
ところが、ワットが出撃すると、シエルの乗るヴァッフが、急加速をかけ、発進直後のほかのブルボットを狙い撃ち、
撃破していった。ワットがターゲットをシエルのヴァッフに定めると、ジャッジ、ミツルの機体が輸送船を攻撃していた。
輸送船とはいえ、機動性と装甲は、簡単に落ちるほど悪くは無いが、迎撃武器が対空機銃と単装ビーム砲のみであり、
ヴァッフのマシンガンに押されていた。
そんな振動は艦内にも伝わり、隠れていたアーリーは舌打ちをする。
「ああ。乗った船がだめだったのかなぁ?何とかして脱出できれば良いんだけど…」
アーリーはすぐさまその場を離れる。
一方ワットはシエルの攻撃を回避しつつ、これ以上の損害を出させないためにも、残り2機に対し、攻撃を放っていた。
「っ!!流石に一対三は厳しいですね」
冷静に敵を見据える。援護がほしいところであった。
61Cここまで:2006/02/05(日) 14:26:11 ID:???
アーリーはMSデッキまでたどり着いていた。
「何か無いかな……っと!?」
そこには一機のMSがあった。
「何で出撃してないんだろ。ま、いっか。これ、いただき」
一気にMSのコックピットまで跳ぶアーリー。艦内は低重力なため、一度勢いよく壁を蹴ると、MSのコアまですぐにたどり着いた。
コックピットのハッチは開いていた。そこを、整備兵がアーリーを発見する。
「お、おい。そこのお前。何をやってるんだ?そいつは…」
「へへっ。悪いね。さぁ。道を開けないと轢いちゃうよ」
アーリーはシートに座り、コンソールを確認した。
「やっぱり。基本は作業ポッドと同じで良いみたいだ。あとはフィーリングで何とかなるでしょ」
アーリーはコックピットのハッチを閉める。そしてシステムを起動させ、スクリーンを展開する。
「ハッチ開けて。でないと…撃つよ」
すぐ横のビームライフルを持たせ、構えるアーリー。通信回線で脅しをかける。
そのことは整備兵が艦橋に通信をいれ判断を仰いだことで、艦橋に伝わった。
「αを!?」
イスラは驚愕の表情を見せる。少し思案するような顔を見せたあと、ハッチを開けるように指示する。
「マジですか?…ええい。ハッチ開けろ!!」
整備兵は艦橋からの指示を受け、やけっぱちになりながら、ハッチを開けるように言った。
開いていくハッチを見、その先の闇の世界を視野に入れ、アーリーは一つ身震いをし、前を見据えた。
「よし。いくぜ!!」
カタパルトに接続してあるわけではないので、前方向に跳び、そのままある程度まで出たら、バーニアを吹かし、船外へ躍り出た。
「α?一体誰が乗ってるんですか?」
ワットは出撃した機体を見て、そう言う。
「ほぅ…新型か……いいよ。やってみようか?」
シエルは出てきたαガンダムを見据えて、そうつぶやくと、その機体をロックに収めた………