2ゲット
まあ、マユを主人公にすると―― (パート1 710より)
1.子供だけど赤服。努力と才能と、周りのサポートで頑張る努力型の主人公という前作との差別化。
2.1.と付随して周りのキャラが主人公を面倒見ているので戦艦内の人間関係の描写が濃密になる。
3.種持ちとはいえ、決して天才ではないので時には失敗する。その挫折を乗り越えるクライシスと成長ドラマが主軸になる。
4.才能はあるとはいえ、子供。故に戦争というものを多角的に見えない。戦争の現実を直視することにより、視聴者にも問い掛けることができる。
5.戦争で家族を失った遺族側の視点で前作への問題提起。それにより改めて遺伝子操作やそれに伴う差別問題を浮き彫りにできる。
6.5.に並んで国家と国民の有り方、理想と現実。そして、享受できる平穏と犠牲となる存在、為政者の義務、前線で戦う兵士の悲哀などを生々しく描写できる。
7.死んだと思っていた兄との対面、思想の違いによる対立を生む戦争の悲劇。そして、マユという妹から一人の人間としての成長を描ける。
――こんな感じで激動の時代に巻き込まれた一人の人間とそれを取り巻く環境の変動を主軸にしたドラマが描けて面白いんだよね。
シンよりさらに人間的に未熟な分、周りの人間の意見を聞く――色々な視点・意見を知る――ことにより、
現実はそう単純なものではないってことが演出できるわけで。
纏め人様乙です!
二桁到達オメ
「ギギギギギギギ・・・・・。」
「どうした、ルナマリア。」
ここは宿舎の一室。マユの部屋である。
ここではアウル、マユ、レイ、ルナマリア、ステラ、ゲンがそれぞれの時間を過ごしていた。
まぁ、集合場所状態である。
「メイリンの奴・・・、スティングと今日はデートだって町に繰り出してんのよ・・・、ギギギギギ・・。」
レイは本を読みながらなるほど、と思っていた。要するにルナマリアはひがんでいるのだ。
「おのれメイリン・・。私がバカップルにバーストアタックをする会の会長だと知っての狼藉かしら・・。」
どんな会だ、というかじつはお前しか会員いないだろうとレイは突っ込もうとしたがやめておいた。
読んでいた文庫本に目を戻す。アキラから借りた物だがなかなか面白い。ライトノベルもバカにできないな、とレイは思う。
「おのれぇ・・・・、よし。レイ、ちょっと付き合いなさい。」
そう言うと、ルナマリアはレイの襟首を掴んで引きずる。
「ルナちゃんとレイ・・・どこいくの・・・?」
絵本を読んでいたステラが聞く。
「ちょっくらバカップルを撲滅してくる。」
「おい!!俺を巻き込むな!!!馬に蹴られて死んでしまうぞ!!聞いてるのかルナ!!」
レイの意見を無視して、ルナマリアはバタン、と扉を閉めていった。
レイの悲鳴が廊下から聞こえてくる。
「ふっふっふっふっふ・・、これで完璧ね。」
「なぁ、死んで良いか?」
不敵な笑みを浮かべるルナマリアにうつろな目のレイ。
ルナマリアの格好は胸にさらしをつけて、革ジャケットの男装。
足りない身長はごついブーツでごまかす。
反対にレイはもう・・ゴスロリの黒いドレス。
某世界最古の魔道書とか薔薇乙女とかも真っ青のゴスロリである。
「なんで・・この年で・・女装・・・っ!!」
拳を固めて奮わせるレイ。そうとうツライらしい。
「あ!!来たぞ!!」
口調まで完璧にしたルナマリアが影から通りをのぞく。
そこには私服姿のメイリンとスティングの姿があった。
「スティング、どう?初めてなんでしょ、クレープ。」
「あぁ、結構うまいな・・。ステラ達は好きそうだ。」
二人はクレープを食べながら歩いていた。
「・・・スティングってば何かにつけてステラ達って・・。」
ぶすっとなるメイリン。
「あ・・、いやその!これは癖っていうか・・何と言うか・・。」
スティングは大慌てで弁明しようとする。
するとメイリンはにっこり笑って・・。
「じょーだん!スティングがお兄ちゃんなのはしょうがないからねー。」
と、すました顔で言った。
「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ・・・・・・。」
「落ち着け、ルナ。ばれるぞ。」
壁を今にも砕きそうなルナマリアを押さえるレイ。
すると、スティングとメイリンはデパートに入っていった。
「あ・・・・!レイ!追うぞ!!」
「この格好でかぁっ?!チョット待て!!知り合いにあったら・・・。」
「黙ってろ!老け声!!」
「老け声?!結構気にしてるんだぞ!!!」
「あれー?ルナマリアとレイ?」
「何やってるの?」
「つーか、何だよその格好。」
聞き慣れた声に振り向くと、そこにはハイネ隊仲良し三人組がいた。
「・・・・・いやだーーー!!みーらーれーた!!死ぬーーーー!!」
レイは号泣しながら暴れる。
「わーわー!!ストップストップ!!」
急いで全員で抑える、そうでもしないと題名が「マユデスサスペンス劇場 フランス人形の悲劇!!」
に変わってしまう。
「はぁ・・はぁ・・・。三人は何でここにいるんだ・・・。」
落ち着いたレイが三人に聞く。
「何って、遊びに来たんに決まってるじゃん!久々の休暇だし、羽伸ばしておかなきゃ。」
カルマが目を輝かせながら言う。
「男三人で?」
「「「うるさい。」」」
ルナマリアの言葉に即座に三人が反応する。
「三人とも、中身はともかく外見はいいんだ。彼女くらいいないのか?」
中身はともかくって何だ、と言う思いを飲み込んで三人は話し出した。
「ジョーの場合はねー、彼女と付き合っても『お仕事』がバレてすぐ別れちゃうんだよねー。」
カルマのセリフにカチンときたのかジョーも言い返す。
「カルマは付き合うのはいいんだけど堂々と恋人らしく出来ないって理由ですぐにフラれるんだよな。」
キースは一人だけ安全圏にいるつもりらしく、ラムの瓶のふたを開ける。
「んでもってキースはー。」
「確か前の彼女には隠してたAV見つかって振られたんだよな。」
二人のセリフに一気にラム酒を吹くキース。
「ちょっ・・!なんでそれ知ってんの?!」
大慌てのキース。
「・・・・隠してたお宝ビデオ♪キミにぜーんーぶすーてーられ♪」
「そのまま本気で怒ってでていかーれた♪」
「「ちーがーう♪道を選んだ♪仲間内♪それでとーおしーてる♪」」
「うわぁぁぁぁん!謀ったな?!謀ったな二人とも!!」
どうやらアレは当てずっぽうに言っただけだったらしい。
「・・・いくか。」
「そうね・・・。」
大騒ぎする三人を置いて、ルナマリアとレイは尾行を続けることにした。
やばい、スティングとメイリンのラブラブシーン書くの凄く楽しい。ほのぼのです。
そう言ってる割にはちょっとしか書いてませんが。
どうも書いてる最中にそれぞれのシーンがアニメってよりギャルゲーっぽい
画面で想像してしまう。
出来る人は想像してみましょう。できれば某ほろーあくたらしゃーなノリで。
とりあえず、このデート編が終わったらそろそろ本編の流れに戻ります。
まぁ、今回のノリはラブコメっぽく書けたらいいなーと思います。
それでは。
ほのぼの乙!ルナマリアの鬼の顔が容易に想像できたよwいつも思うけどほのぼのレイはなんか本編よりも苦労人だな…だがそれがいい!頑張れレイ!テロメアきれるその日までw
でも「ぎぎぎぎ」ときくと「あんちゃーん。ぎぎぎぎぎ」を思い出してしまうお年頃。
新シャアのSSスレではここが一番元気だよな
1スレ目の時はとてもそんなに続くとは思わなかったのに…
マジこのスレに初期からいることが出来て感無量だ
素晴らしいSSを投下し続けてくれる職人達に本当に感謝
フッ、俺らしくもねぇぜ(⊃_ゝ`;)
俺は良くフレイスレに行ったりするけどさ
そこでも結構SSあったりするのな
でもここほどあるわけじゃないのよな
で、DESTINY学園スレにも行ってるのよな
そこはここくらい活気があるのよな
まぁ何が言いたいかというとだ
種死がもったいないってこった
作品アレだが設定はそこそこしっかりしてる、と
よぅし、寝るぞぉ
自分はこのスレのために種を見はじめた
SSが面白いのに元設定がさっぱりだと勿体無いから
だから自分の中ではこっちが本編
そんぐらい面白い惹きつけられる話を書いてくれる職人さんにマジGJと感謝
SSの方向性が書き手さんによって異なって面白いスレですなあ。
隻腕の後にほのぼのを読むとあまりのギャップにめまいがw
>>16 俺は隻腕で散った奴等がほのぼので幸せそうにしてるのを見ることで
欝を緩和している。つくづくいいスレだ・・・
もともとほのぼの出身なんだけどなぁ、隻腕のハイネ隊。
あぁでも出陣するときはほのぼの側でも覚悟決めてたんだっけ。
そうだよな、それが戦争だよな……。
何気に隻腕ハイネ隊で最後に残ったのがハイネ本人というのも涙を誘う。
原作ハイネも声が西川でさえなければもっと活躍して重要なポジションにつけたと思う。
西川だからこそのハイネ・ヴェステンフルスだから
ハイネの要素を持った別キャラなら
ハイネの場合、西川云々よりも負債の力量不足な気がするけどな
西川の演技は変に違和感もなく、なかなかよかったと俺は評価したい
・・・せっかくスレッガーの立場になれる男だったのに、、、残念だ
とりあえず普段言えないから言っておく。
纏め人様GJ!
あなたがしっかりしたまとめサイトを作ってくれているお陰で、このスレの今の繁栄はあるんだと思います。
もちろん職人のSSも大事だけど、纏め人様抜きにはこの2ケタ繁栄はなかったと思います。
今後も応援してますので、大変でしょうけれど頑張って下さい。ノシ
そうだな、俺も言っておこう、まとめ人さん乙です!
便乗するみたいで申し訳ありませんが、纏め人様、お疲れ様です。
良作投下のためのベースづくりが大変でしょうが、頑張ってください!!
まとめさん乙です!!
『アキラ、セキワンサントコノマユニアッサリヤラレタヨナー。』
つくてーん、つくてーん、とアキラの横で跳ねながらシンハロが言った。
二人も休暇と言う事でその手の店をめぐろうと話していたのだが、シンハロの体のメンテが終わらないので
まちぼうけを喰らっていた。
「いいんだよ、死んでも俺の物語はあそこで終わらないんだから。」
アキラは缶の紅茶を飲みながら言った。
『フーン、ナンデサ。』
ころころと転がりながら聞くシンハロ。
「決まってるだろう・・、俺はあの後サーヴァン○ととして聖○戦争に召喚されるからだよ!!」
『ナッ、ナンダッテー!!』
ババーンととアキラの後ろに雷が鳴ってる様子を想像していただきたい。
「そうさ・・、おれはサーヴ○ント『フェイカー』として呼ばれるんだ。」
うっとりしながら妄想を始めるアキラ。
「まったく、こんな弱そうなのが僕のサーヴァン○だって!!しかも宝具が使えない?!」
「いやー、あはははは・・・・。」
「なっ?!貴様何者だ?!私の剣をここまで模倣するなど・・・。」
「答えてもおそらく、あなたは私のことを知らないでしょう。しかし、私はあなたのことを良く知っている。
最強の○ーヴァント、セイ○ー、いや・・それともアルト・・。」
「貴様!!それ以上口を聞くな!!」
「マスター、友達は大事にしたほうがいいと思うけど?」
「うるさい!!どうしてお前にそんなこと・・・。」
「・・いやー、マスターの外見が俺の親友そっくりでさー。・・それに。
俺、友達少なかったから、マスターにそんな風になって欲しくなくてさ。」
「何やってるんだよ!!○宮!おいフェイカー!!助太刀しろ!!」
「オッケー!相手はキャ○ターか・・・・。よし、行くぜ坊主!」
「なっ?!慎○?!何でお前が!!」
「よぉ、久しぶり。アキラ。」
「え・・、嘘だ・・・・。何で・・・何でお前がこのタイミングで・・金ぴかの変わりにでてくるんだよ!!!」
「あー、やっぱアキラにはかなわないかー。あははは・・・
何言ってるんだよ!!俺だって・・ずっとお前に・・・・・・・・・・・。」
うつろな目で語り続けるアキラ。
『おーい、アキラ?メンテ終わったから行こうぜ。』
人型の身体に移ったシンハロが声をかける。
「はっ?!今タイ○ー道場でぶるまーに・・・。」
『うん、なんか大変なことになってるのはわかったから理想郷にでも投稿してこい、な?』
「えっ?!スティング私服ってそれしかないの?!」
メイリンが驚いた声をあげる。
「あぁ、まぁ滅多に出かけることもなかったしな。」
平然と言うスティング。
「だめだよ!!それじゃあもしこれから先戦争が終わったらどうする気?!仕方がないなぁ。私が見繕ってあげる。」
ふぅ、とため息をつきながら言うメイリン、だが何故かスティングじゃ驚いている。
「?、どうしたの?」
「いや・・、戦争が終わってからのことなんて考えられなかったからよ・・・。
そうか、終わっても・・・・まだ先があるんだな。」
嬉しそうな顔をしながら語るスティング。メイリンはその顔を見ると、ぎゅっと手を握る。
途端にスティングが真っ赤な顔になる。
「なななななななななななっ・・・・・。」
「ほらっ!そんな湿っぽい話はナシナシ!!行こう!!」
真っ赤になるスティングを引っ張りながらメイリンは男性服の階へと向かった。
「グーギーゴーグーギーガーゴーギー。」
「ルナマリア、警察を呼ばれるぞ。」
革ジャンの少年とゴスロリの少女。ルナマリアとレイだ。
「おのれ・・、レイ。ちょっくらザク持ってきて。」
「やめろ!最強最悪のテロリストだぞ、お前。」
レイが暴走しかけのルナマリアを何とか抑える。
「うぇーーい、ルナちゃんとレイみっけ!」
ステラがぱたぱたと歩いてきた。
「ステラ・・、一人でここに来たのか。」
「ううん、マユと・・アウルと・・ゲンと来たんだけどね・・・。」
「兄ちゃんたち代わってよー。」
「黙ってろ!!!」
ここはおもちゃ売り場のゲームの体験版が置いてあるところだ。
ふつーはお子様やら高校生やらおっきいお友達がいるところだが・・・・・・。
そこは黒髪の少女と水色の髪の少年に占領されていた。
「行け!!くじら!」
アウルの使用キャラである錨をもった少女がくじらを召喚する。
「うざったい!!がーんふれーむ!!」
マユの使用キャラである赤い服の筋肉質の男は地を這う炎を出す。
「いるか!!」
「ばんでーっと!りーぼーるばー!」
「シャチ!!」
「ぶっきらぼーに投げる!!」
ちなみに向こうのガシャポンコーナーではいい年した黒い髪に赤い目の少年がひたすら
女の子向けと思われる犬のガシャポンをやり続けている。
・・・・・そこはお子様が泣く阿鼻叫喚の図となっていた。
「ねぇ、このジャケットは?!」
「・・・なぁ、こんなに要るのか?」
次々に服を選んでいくメイリンにスティングは気を遠くする。
「そうだよ!普段着るのからお出かけ用まで・・、全部そろえなきゃ!
あ・・!そうだスティング!お金持ってきてる?」
メイリンは百面相のように表情を変えながらスティングに話しかける。
そして、スティングが取り出した財布の中身を見た途端、ツインテールが逆立った。
「・・・・?少なかったか?」
そこには・・、日本円にして福沢さんが百人ほどいたのだ。
「ちょっ・・、スティング?!なんでこんなにお金持ってきてるの?!」
「いやさ、ネオに『デートだったら金は大目に持っといたほうが良いぞー。』って言われて・・。」
「もーちーすーぎー!!・・はぁ、スティングも結構一般常識ないんだね・・・。」
メイリンは頭に手を当てながらため息をついた。
「ふふふふふふふ、ふーっふっふっふっふっふ・・・。血祭りじゃぁ!!」
「ルナマリア、子供の前でそれはやめろ。」
「私もう13だよ?!レイ兄ちゃん!」
「うぇーい!ステラ子供じゃないもん!」
「なー、アウル2アースダラーでいいんだって!貸してくれよ!」
「うっせぇなぁ!なんでガシャポンの犬のぬいぐるみに2アースダラーもだすんだよ!」
さらにメンバーは周囲に迷惑をかけていたマユ一行を回収してパーティを組んでいた。
「スティング・・楽しそう・・・・・。」
ステラはメイリンに振り回されるスティングを見てほにゃっと笑う。
「・・・ステラ、ステラもあーゆーのがしたいんだったら・・・。」
どさくさに紛れてステラの肩を抱こうとするシン。
「・・てれってれーてれてれー♪」
ルナマリアが急に歌を歌いだす。
「・・っ!この曲は!!逃げろ二人とも!バーストアタックが来るぞ!!」
レイが必死にルナマリアを止める。
「うわぁぁぁ!えーっとっ!ステラに「かばう」コマンド!!」
「お兄ちゃん!それゲーム違う!!」
「っておい!!ルナマリア本気だぜ?!」
・・・・・・そのあと六人はデパートを追い出されたそうだ。
だからあまり月ネタ使うな。
アキラが月厨だからな。仕方ないさ。
ほのぼの様
今回もラブコメ楽しませてもらいました。
よく考えたらスティング達は軍育ちだから常識かけてんですよねww
月ネタについては使うなとは言いませんのですが、元ネタがわからない自分にとっては今回はちょっと???でした。
わかりやすく説明しろとも言いませんが、元ネタわからない人も意識して頂けるとうれしいです。
>>26-28 うおお・・・GJ!
こいういうのほのぼのしてて、ええなあ。
>アウルの使用キャラである錨をもった少女がくじらを召喚する。
>マユの使用キャラである赤い服の筋肉質の男は地を這う炎を出す。
ちょwwwwwwギルテ○wwwwwww
てかアウルはイルカ呼ぶのかwwwマユはヴォルカwwwww
単発設定小話 脇話「アスランとカガリ」
〜オーブ、カガリ宅〜
カガリ「ったく、頭の固いジジイたちが!」
マーナ「まぁ〜お嬢様。そんな言葉遣いしてはいけません」
カガリ「・・・ああ、そうだなマーナ。気をつけるよ。・・・・・・ん、アスラン。帰ってたのか?」
アスラン「ああ、ちょっといいか?」
カガリ「?・・・ああ」
〜マーナ、アスランを不振な目でみつつ退場〜
カガリ「キラやラクスたちはどうだった?」
アスラン「ああ、施設の子供たちは導師含めて、バルトフェルドさんたちのところに移ったよ」
カガリ「そうか・・・」
アスラン「・・・・・・まだ、気にしているのか?あの娘の言ったことを」
カガリ「そうじゃない。・・・でも彼女の言ったことはやっぱりその通りあろうと思わされてしまったよ」
アスラン「ふぅ、家老たちは一筋縄じゃいかないか。しかし、お前はオーブの首長だ・・・負けるなよ」
カガリ「そんなことは言われなくてもわかっている!」
〜ドンッ!と壁をたたくカガリ〜
アスラン「やめろよ。・・・カガリ、俺はこれから宇宙に上がろうと思う」
カガリ「!?・・・アスラン?」
アスラン「今一番自由に動けるのは俺だけだしな。それに導師から依頼されたこともある・・・」
カガリ「マルキオ導師が?なにを頼まれたんだ?」
アスラン「・・・インパルスのパイロット・・・マユ・アスカについてだ」
カガリ「彼女がどうかしたのか?」
アスラン「・・・第一世代のコーディネイターの場合、だいたい25年前以降の出生記録は残っているんだ」
カガリ「そりゃあそうだろう。コーディネイターの処置施設はほんの限られたところにしかない」
アスラン「そう、地球上にある施設も何らかの形でプラントが絡んでいる」
カガリ「うん」
アスラン「マユ・アスカ、あいつの出生記録は普通と異なる調整をされていそうだ・・・」
カガリ「普通じゃないって?なんだそりゃ、キラじゃあるまいし・・・」
アスラン「・・・詳しいことはわからないが導師がいうには、そういうことらしい」
カガリ「で、お前は宇宙に上がるわけか?」
アスラン「そうだ」
カガリ「・・・・・・私の、私のサポートはしてくれないのか・・・?」
アスラン「俺がいなくても大丈夫さ。お前は強い・・・・・・カガリ、お前に預けたいものがある」
〜ポケットから指輪をとりだし、カガリの左手の薬指にはめるアスラン〜
カガリ「・・・・・・お前!?・・・こんなの、こんな渡し方って・・・ずるくないか?」
アスラン「俺の母親の形見だ。お前に預けておきたい・・・またここに戻るために・・・」
カガリ「アスラン・・・生きて帰ってこいよ?」
アスラン「・・・そうだな。生きるほうが戦い、だからな」
完
PP第14話です。例によって2話に跨る話で、今日は前編にあたるお話です。
更新ペースが落ちていますが、何とか年内にあと一話は投下したいです。
では、いつものように御目汚しを……
37 :
1/17:2005/12/18(日) 04:46:01 ID:???
ゲンとステラが汎ムスリム会議領から赤道連合にあるアンダマン基地に戻った二日後―
J・Pジョーンズに滞留するファントムペイン指揮官、ネオ・ロアノークの元に通信が入った。
しかし、その通信相手はロアノーク本人との連絡を望んでおり、艦橋は一時緊迫した状況となった。
大抵指揮官を名指しする通信は、彼らの直属の上司からの司令であった。
平時と異なる通信手段にネオも些かの緊張感を体に漲らせる―
「……通信は、俺の部屋に回せ」
それだけ通信兵に伝えると、彼は私室へと去った。
直属の上司はブルーコスモスの盟主ロード・ジブリール、恐らくは彼からのもの……
故にネオは他者の目を避け、私室へ通信を回すように指示したのだ。
部屋に戻るとすぐに彼は手元の小型モニターを点け、回線を開いた。
だが、彼の予想した相手とは異なる人物がモニターの向こうに居た。黒髪の女性が―
「……マティスか」
『お久しぶりね、ロアノーク大佐。アーモリーワン以来、ファントムペインは随分ご活躍のようね?』
マティス―
女性でありながら地球連合の中核国、大西洋連邦の諜報部を取り仕切る辣腕……
ファントムペインに対する大方の任務は、ジブリール本人ないし彼女から伝えられていた。
つまり、今回は彼女からの通達―という訳であった。
「……ミネルバの居場所、分かったのか?」
『相変わらず単刀直入な人ね。その件も伝えることになるけど……
まずは、貴方方が攫ったラクス・クラインの件から……ユーラシア経由で盟主の元へ送ったけど……
ザフトの軍偵の目をくらますために随分遠回りさせたけど、2日後には盟主の元へ届くわ』
「……で?」
『複数の襲撃者とザフトの最新鋭MSアッシュを6機も相手にしたのに彼女は無傷……大したものね?
アーモリーワンでの強奪成功とユニウス破砕の功績、それに今回の汎ムスリム会議への介入……
盟主はこれまでの貴方方の働きに大変満足なさっているわ』
「……世辞はいい。本題に入ってくれ」
諜報部からの連絡ということは、ミネルバの最新の動向が掴めたということである。
目下最大の敵であるミネルバ撃沈が自身の部隊の至上命令であり、ネオはその動きが何より気になった。
マティスは、社交辞令のつもりの麗句を遮り、事を急かす指揮官に些かムッとしたが……
そこは任務であり、彼女もその道のプロ―すぐに相手の望む本題に入ることにした。
『ミネルバの足取りだけど、4日前にペルシャ湾にあるマハムール基地に入港したわ……
そこで貴方方との戦闘で負った傷を癒しつつ、次の目的地へ向かう腹積もり……というところね』
「ジブラルタルか?」
『それは最終目的地。その前に幾つか寄る場所がありそうよ。
おそらくは最初にユーラシア連邦管轄の……ガルナハンのローエングリンゲートを狙う筈……
次にザフトが展開しているスエズ攻略に参加しながら、ジブラルタルへ向かう……といったところ』
「……チッ!内陸部に入られたらお手上げだな」
ネオは心底悔しそうに舌打ちした。
J・Pジョーンズは海上艦艇であり、内陸部に入り込める道理がないのだ。
38 :
2/17:2005/12/18(日) 04:46:49 ID:???
更にマティスは情報を伝えた。
ユーラシア各所で分離独立運動が活発化し、また裏でザフトがその運動を支援しているという。
ユーラシア連邦軍はその鎮圧に右往左往する羽目になり、彼らに増援を頼むというのは難しい。
大西洋連邦からの増援といっても、J・Pジョーンズからは大分距離があるため一朝一夕には困難。
現在ジブリールが各所に発破を掛けつつ、増援の手配を行なっているとのことであった。
マティスの一連の状況報告が終わり、ネオは深々とため息をついた。
「俺たちはどうすればいい?ここで足止めか?」
『足を止めておく必要はないわ。紅海からスエズ運河経由でミネルバの先回りをして頂戴。
J・Pジョーンズも一応最新鋭の海上母艦だから……その快足で今から一週間もあれば着くでしょう』
「おいおい、スエズ運河って……ザフトの攻略戦が始まってるんじゃないのか?」
『攻略を始めそうってだけの段階よ。プラントは自衛権の積極的行使の名目で駐留軍を動かしたけど……
準備に追われていてまだ本格的な作戦展開には至っていないわ。連合も防衛ラインを作る時間はある。
そうね……遅くともあと2週間後には始まるでしょうから、それまでに連合も準備をしなければね。
だからそれまでに……増援も一緒に地中海辺りまで送る必要があるのよ』
「増援の手配、大丈夫なんだろうな?」
『そっちは盟主が手配するわ。けど、貴方方と組む以上は……それなりの部隊を遣すでしょうね。
大西洋連邦の駐留軍からか……もしくは赤道連合、東アジア共和国……あるいはオーブかも』
「おいおい、あの国は……」
『あくまで可能性の話よ。一応彼の国も同盟条約に締結しているわ。圧力を掛ければ断れない……
最も、これだけ準備しておきながら……スエズ攻略戦自体がザフトのブラフって可能性もあるけど』
「ブラフ……だと?」
『諜報戦とはそういうものよ。常に先を読み、先手を打ったものが優位に立つ。
スエズ攻略……と見せかけてユーラシア連邦本国を切り崩しに掛かる可能性もあるわ』
ユーラシア連邦各所で分離独立運動が活発化しているが、戦前からザフトの影は見え隠れしていた。
分離独立運動はユーラシア連邦建国当初から存在していたが、あくまでデモ程度の規模でしかなかった。
が、2年前の大戦以来、武装闘争にまで発展するケースが頻発し、諜報部が調べを進めた結果……
武装する独立運動を資金面で後押ししていた企業等を洗ったところ、背後にプラントの企業が確認された。
『巧妙に資金ルートは偽装されていたけど、煩雑さをさけるため一部でダミー企業を使ったのが仇ね……
そこを辿って、プラントからザフトへと繋がったわけ。所詮歴史の浅いザフトの諜報戦はこの程度……
と、言いたいけど、戦争が始まってからは連中も情報操作を始めたから、正確な情報を掴むのは大変。
どの道、作戦がユーラシア連邦への攻撃に切り替わっても良いように、私たちも手を打ってるわ』
「分離独立運動ってのは、どこが活発なんだ?」
『ユーラシア西側……特にジブラルタルに近いエリアが凄いけど、問題はそれだけではないわ』
ユーラシア連邦は建国以来、所属の国同士での軋轢が絶えず存在した。
経済力のあるフランスやドイツを中心とした旧EU中核国と、多数の人口を抱えたロシアとの主導権争い。
前者にはユーラシア西側諸国がつき、後者には旧CIS(独立国家共同体)を始めとした国々がついた。
首都選定の時でさえ争いがあり、パリやベルリンといった街が候補に上がったが、ロシアサイドは猛反発。
結果、パリでもベルリンでもない、フランスとドイツの間にあるベルギーのブリュッセルに落ち着いたが……
巨大な連邦国家の主導権争いと共に、更に民族同士の違いから来る衝突もあり、内部はゴタゴタ続き。
つまり、ユーラシア連邦は建国以来、国としては一枚岩と言いがたい状況が今日まで続いていたのだ。
39 :
3/17:2005/12/18(日) 04:47:42 ID:???
『……というわけだから、ザフトがユーラシア連邦を崩しに掛かるのは当然。
もしユーラシアの独立運動が成就して、またあの国が小国に分かれてしまえば事実上の連邦制崩壊。
大西洋連邦と双璧を成す連合の一角が崩れるってことは……戦争の継続は―』
「難しくなる……そうなると、またなし崩しの和平……ってことになりかねないか」
『だからスエズ運河攻略がブラフの可能性も捨てきれない。
大西洋連邦を始めとした連合各国もそれに気づき始めているから、軍の派遣を検討している最中よ』
「で、俺たちはスエズ経由で地中海まで行けってことか」
『それはJ・Pジョーンズの話よ。MS隊には別行動を取ってもらうわ』
「何だと?」
『話したとおり、ユーラシア連邦管轄のガルナハン基地が次のミネルバの攻撃目標である公算が高いの。
あの基地は、幾度かハマムール基地からザフト軍が攻撃を仕掛けたけど、悉く失敗しているわ。
ガルナハンを落とせば、ユーラシア連邦を西側からだけでなく、南側からも切り崩せる……。
だから、基地の守備隊と共同して彼らを撃退して欲しい……可能ならばね』
マティスから伝えられた命令にネオは些かの疑念を抱いた。
可能ならば―その命令とは言いがたい指令に対して、どういう意図が隠されているのか。
不可解に思った彼は、諜報部のトップに対し問いただし始めた。
「可能ならば……ってのはどういう意味だ?それは盟主からの命令じゃないのか?」
『盟主からのご命令は、あくまでミネルバ追討……現状はそれだけよ。
けど、大西洋連邦軍司令部はユーラシア戦線の拡大を防ぎたいという思惑があるの。
盟主直属の部隊である貴方方には、いくら司令部でも命令を強制することは出来ない……
そういう訳で、私経由でこんな回りくどい手を打ってきたのよ」
「……ガルナハン基地にはミネルバをどうこうできるだけの戦力があるのか?」
『一応、MAゲルズ・ゲーとMS大隊が配備されているけど……
MS大隊は、旧式のダガーLが主戦力で最新鋭のウィンダムの配備は少数だから、些か頼りないわ』
「そんなところに大事な部下を……MSとパイロットだけで送れって言うのか?」
『司令部からの頼みよ。近くにいてすぐ動かせて……少数ながら精鋭部隊……
赤道連合に駐留している大西洋連邦のどの部隊よりも、貴方方ファントムペインが優れているからよ。
嫌なら断っても良いけど……軍からは嫌われちゃうわね』
司令部からの依頼―
ファントムペインはブルーコスモス盟主ロード・ジブリール直属の部隊である。
正確には、彼を中心としたブルーコスモス派の上級将官を中心として創設された特殊部隊である。
以前ファントムペインが立ち寄ったカリフォルニア基地司令官なども、その創設メンバーの一人であった。
しかし、原則的にはジブリールのみが指揮命令権を有するため、軍から直接命令を下すことはできない。
もっとも、時には"蒼き清浄なる世界のため"必要とあらば独自の判断で動くことができる部隊であった。
つまり……
「ガルナハンが落ちるのを、手をこまねいて見ていられないから……軍司令部は俺たちに動けと。
断るなら断るで良いが、以後盟主を介さずに俺たちファントムペインの言うことは聞きたくない。
この間のインド洋沖での戦いみたいに、近くにいる軍に協力を依頼することも憚られる……か」
『これからも軍に積極的に協力して欲しければ……ね?』
そこまで言われては、流石のネオも断るわけにはいかず、首を縦に振るしかなかった。
40 :
4/17:2005/12/18(日) 04:48:30 ID:???
「……というわけで、お前らにはこれからガルナハン基地まで行ってもらう。出発は今夕。
輸送機はこの基地の大型巡航機を使わせてもらう。夜陰に紛れてガルナハンに向かうが……
以後の指揮命令は向こうの基地の指示に従ってもらう。変な指示だったら無視してゲンが指揮を執れ」
マティスとのやりとりを簡単にネオが説明した後、今後の方針を伝えた。
だが、ブリーフィングルームに集められ、彼の指示を聞く4人のパイロットは訝しげ……
「何か質問はあるか?」
その問いかけに一人ずつ順に質問をしていく。まずはアウルが口火を切った。
「一緒に作戦行動するユーラシアのガルナハン基地の連中って、どんな奴等なんだ?強いの?」
「うーん、俺も彼らが戦っているのを見たことはないが、何度かザフトとやりあってるし撃退もしている。
そうそう酷い腕前じゃないとは思うが……連携に不安が残るから、お前等は原則小隊行動を心がけろ」
「……そういうのって、投げやりじゃない?」
「急な命令だし、俺たち大西洋連邦軍とガルナハンのユーラシア連邦軍とは指揮命令系統が違う。
俺が同行できればある程度強いこともいえるんだが、俺はJ・Pジョーンズを離れられない。
不本意だが、お前達の力量とユーラシア軍の力を信用するしかないんだ」
ネオからの答えに不満げなアウル。次に質問したのはスティング。彼はアウルより強い口調で質問した。
「……この作戦でミネルバに勝てる算段があるのか?
この間30機も投入して遂に落とせなかったミネルバだぜ?簡単に落とせるとは思えないが……」
「数は30に満たないが、ガルナハン基地には新型MAとMS大隊がある。
ミネルバを落とす期待をかけられるのは、基地に設置してあるローエングリンだ。あれを使えば……」
「もしこの作戦で勝っちまったら、その先はどうする?」
「そりゃあ……祝杯挙げて喜ぶさ。ま、勝てたら次はユーラシア戦線に向かう。
ジブラルタルかスエズか……いまザフトが展開している次の地域で闘うことになるだろうな」
勝てたら―その言葉に、ネオ自身勝利の予想には懐疑的な見方であることが伺えた。
ため息をつくスティング。友軍の支援に出向くものの、作戦の立案もできないが現地でのファントムペイン。
ユーラシア連邦の軍人達は、ミネルバがどれほど手ごわいのかさえ知らないのだ。
こんな状況では勝算があると言えるほうが可笑しい―ネオ自身内心舌打ちしていた。
スティングの質問への回答が終わったのを見計らって、ステラが質問をした。
「ネオは……どうするの?」
「ん……迎えにはいくさ。スエズ運河経由でJ・Pジョーンズを地中海に向かわせる」
「しばらく……お別れだね」
「そうだが、まぁ俺みたいな小うるさい大人がいないんだ。
作戦に成功したら休暇を考えてもいい。皆頑張ってくれよ。無事に……帰って来い」
そして、ネオは最後に残ったゲンに質問を促すが、彼は無言で上官を見やった。
まるで聞きたいことは3人が聞いてくれたから、もういいという風であった。
41 :
5/17:2005/12/18(日) 04:49:25 ID:???
赤道連合から提供された大型巡航機へMSを移送する間―
次々と運び込まれるMSの様子を、ゲンとネオの二人は眺めている。やがて、ゲンの方から口を開いた。
「大佐はこの作戦に……あまり乗り気じゃないんですね」
「ああ。作戦を回してきたのは大西洋連邦軍司令部さ。
彼らはユーラシア戦線の拡大を防ぎたくて、俺たちに遠まわしに命令を下してきた。
が、実際ユーラシア連邦とは国も違えば組織も違う。すぐに円滑な共闘体勢が作れるかは……疑問だ」
「でも、俺たちはどうするんです?ミネルバの連中は、ハッキリ言って手ごわい。
組んだこともない仲間と、一体どれほどの事ができるのか……正直俺は不安です」
「……言いたくはないが、やばくなったら逃げろ。責任は俺が取る」
ネオは、暗に基地が陥落する場合のことを想定していた。その消極的な考え方にゲンは疑問を抱く。
「……随分悲観的ですね」
「指揮官っていうのはな、常に最悪の事態を想定しなければならない。
ミネルバがガルナハン基地に向かうなら、相応の準備をユーラシアの連中もしなきゃならん筈だ。
けど現状連中が増援を派遣したって話は聞かない。下手をするとお前等だけが増援かもしれん」
「俺はどうすればいいんです?」
「そうだな……基本的には基地司令の命令か、現場のMS隊の責任者に従え。
ただし、そいつ等がお前達を使うに値しない人間であると判断した場合は……お前が指揮を執れ」
「良いんですか?」
「俺たちは独立機動軍……必要とあらば独自の判断で動ける部隊だ。
現場での判断はお前に任せる。その責任は俺が取るが……3人のこと、頼んだぞ」
指揮官の言葉に頷く。ネオが指揮を執れない以上、MS隊隊長であるゲンが責任者である。
アウル、スティング、ステラの3人のことを護りつつ行動し、戦わねばならない。
そんな決意を胸に秘めた彼を見透かしたのか、ネオは助言をする。
「気休めかもしれんが……ここまでお前はよくやっている。3人との連携も全く問題ない。
お前の配属前は不安で仕方なかったよ。俺はこの部隊の責任者、あの3人と一緒にいる時間もない。
年齢的に近いからかもしれないが、お前はあいつらのことを俺より理解しているから、不安は消えたよ」
「……褒めても何も出ませんよ?」
「……まぁいいさ。そんなお前に御褒美をやろうかな」
ついて来い―そう促したネオは、ゲンをつれて基地の格納庫に向かった。
目の前には黒い小型MS輸送機らしきものが4機並べられていた。
「今朝方着いた装備だ。元々は空中戦ができないガイアをフォローするつもりで持ってきたんだが……
装備部から無理言って譲ってもらった試作型MS支援空中機動飛翔体―通称"フライング・アーマー"だ。
見ての通りの代物で……連合版グゥルってところだ。空中戦になれば、こいつは使える筈だ。
このうち一機はお前のストライクMk-U用にカスタムしてあって、ミラージュコロイドも使える。
コロイドを散布できる時間は限られているが、要は使いようだ。うまく使ってくれ」
ささやかな御褒美―だが上官のさりげない心遣いが見て取れて、ゲンは幾分かの安堵感を覚えた。
42 :
6/17:2005/12/18(日) 04:50:59 ID:???
ファントムペインの4人のMSパイロットとそれぞれのMSを乗せた大型巡航機が発った頃―
ユーラシア連邦管轄ガルナハン基地司令は、二つの連絡を受けていた。
一つは……
「ファントムペイン?」
『大西洋連邦所属第81独立機動軍……その通称だ』
「増援のMSの数は……如何ほどで?」
『4機らしい』
「ハッ!たった4機の増援部隊ですか。連中の程度が知れますな」
『ミネルバとかいうザフトの最新鋭戦艦と何度もやりあっている部隊とのことだ』
司令官と話をしている男は、軍人ではなくスーツを着込んだ男。
その男とのやり取りの中で、司令官は軍では高位であるにも関わらず上司でもない男に遜っている。
ミネルバの名前を聞いても、司令官もスーツの男も取り乱す風でもなく、平然としているが……
「ミネルバ……ですか」
『軍偵の報告では既にマハムール基地を発ったらしい。明後日には着くだろう。それまでに……』
「ハッ!万全の対策を取って迎え撃ちます!
ザフトは我が基地の攻略に幾度も失敗しておきながら……懲りない連中です。
最高の矛ローエングリンと最高の盾ゲルズ・ゲーがある以上、負ける虞は……」
『……いや、全軍撤退の準備を始めてくれ』
「……は?今何と仰いました?」
『既に例のもの建造も10を超えた。
君たちは早急に、これまで集めた物全てを……バイコヌール基地まで持ってきて欲しい。
どのみちスエズ攻略戦が始まれば、我々ユーラシア連邦の軍だけで対処はできん。
大西洋連邦を始めとする同盟国の力を借りつつ……ユーラシア中央部への進行を食い止める』
「し、しかし!この基地は……いや、あのMSを使えさえすれば同盟国の手を借りずとも!」
『パイロットがいない……これは厳然たる事実だ。月から呼んだテストパイロットでさえ手に余る状態だ。
彼らが機体に慣れるのを待ちつつ、作戦を展開する。これは決定事項だ。基地は放棄して構わん』
「……首相も同じお考えで?」
『当然だ。最優先で、例のものを送ってくれ。あと……施設は破壊しろ。ザフトに使わせるのは癪だ』
基地司令は通信が終わると、見る見る顔が怒気で赤くなっていった。
「シビリアンがッ!どれほど苦労してここで……今日までアレを集めたと思っているんだ!
連中は……モスクワにいながらにして、何の苦労もせずアレが手に入ると思っていやがる!」
更に彼は、副官以下基地の主要な士官を緊急招集し、命令を伝えた。
「もうすぐ、ここにミネルバが来る!それまでに例のものを運び出せ!
それと、撤退の準備を始めておけ!いつでも撤退できるように……ただし!兵には気取られるな!
指揮に関わるからな……あとは、ゲルズ・ゲーとMS隊はいつでも動かせるようにしておけ!」
43 :
7/17:2005/12/18(日) 04:51:49 ID:???
夕刻に出発したゲン達一行は、翌日未明にガルナハン基地に到着した。
先日汎ムスリム会議が事実上の中立を宣言したため、必要以上の緊張を強いられることもなく……
悠々とムスリム領を通過し、カスピ海南部に広がるエルブールス山脈を越えることもできた。
山脈を越えたところにガルナハン基地がある―ゲン達は基地に着いて早々、基地司令室に出頭した。
「良く来てくれた。大西洋連邦からの増援が来るとは夢にも思わなかったよ。
だが、ここにはローエングリンもあれば、MS大隊もある。君たちの手を煩わせることはないよ」
丁寧な言葉遣いで労をねぎらったが、言葉とは裏腹に司令の表情は冷淡そのもの。
ファントムペインの到着を心から歓迎しているという風には見えない。
「ところで……ゲン・アクサニス中尉、君は一年前ユーラシア連邦の月基地に籍を置いていたようだが?」
「はい。モーガン・シュバリエ大尉に師事しておりました」
「ほぅ、それは心強い。ではその経験を買って……君たち4人には基地の守備をお願いしたい。
ローエングリンゲートとその周辺での防衛我が軍がやるが……その際、基地のMSが空でね。
最近は分離独立だのを掲げるレジスタンスが暴れているが……君たちに基地を護ってもらえると有難い」
ユーラシア連邦のエース、モーガン・シュバリエの名前を出したとき一瞬司令の眉が動いたが……
彼はファントムペインに対ミネルバ用の戦力としてではなく、基地の防衛を任せようと言った。
その言葉に、アウルとスティングはムッとした表情をし、対照的にステラはウンと頷いた。
ゲンはバイザー越しで表情は見えないが、声を荒げることもなく口を開いた。
「了解しました。では、その守備の任務に就くにあたって、司令に一つお願いがあります。
基地の守備に関する指揮権の一部を、我々に移譲願えないでしょうか?」
「……どういう意味かね?」
「敵が攻めてきた場合、司令はガルナハンのローエングリンで陣頭指揮を執られることと思います。
ですが、この時基地に異変が起きれば、司令の元にそれをお伝えし、指示を乞うまでの時間……
タイムラグが生じますが、緊急事態に際し、MSを動かせる我々が指揮を執ることでこれを回避できます」
「君は心配性だな。そんな事態は起こりえないと思うが……まぁいい。言い出した手前もある、任せよう」
「ありがとうございます」
司令室を出、大型巡航機に戻りMSのチェックを始めた4人。アウルとスティングはゲンに詰め寄った。
「どういうことだよ、あの司令官。まるで俺たちなんて要らない……って口ぶりじゃん」
「それに、何で守備の役目を引き受けた上に指揮権なんて要求したんだ?説明しろよ、ゲン」
ゲンは少し困った表情になり、内心やれやれと思っていた。
自分はいつもこうしてネオに接していたのかと思うと、上官の気苦労が知れるというものだ。
「あの基地司令、完全にミネルバを軽んじている。あるいは自軍の戦力を過信してるのかもしれないが……
どちらにせよ、俺達が前面に出て戦うって言っても、連中と上手い連携プレーなんて出来ないだろう。
だから、最悪の事態に場合に備えて手を打ったのさ」
44 :
8/17:2005/12/18(日) 04:52:36 ID:???
「退屈だよ〜街にでも行こうぜ?」
早朝に基地に着いたため、昼頃にはファントムペインの4人は完全に手持ち無沙汰になってしまった。
到着早々、MSや装備品のチェックなどやるべき仕事は全て終わっていたのだ。
アウルが言い出したことで、全員私服に着替えてガルナハンの街に繰り出すことになった。
基地から軍用ジープを拝借し、4人は街に出たが……街に入った早々、4人は呆然となる。
「なぁ……人がいないぜ?」
「何かあったのか?人っ子一人いないじゃないか」
「誰もいない……」
3人は口々にその様子を訝しがる。彼らが言うように、街は静まり返っている。
昼だというのに、人影が見えず、まるでゴーストタウンの様相だ。
「……聞いてみるか」
丁度目の前を基地のほかの軍用ジープが通りかかったので、ゲンが問いただした。
「この街は何でこんなに静かなんだ?何かあったのか?」
「……お前等、見ない顔だが?所属は?」
「大西洋連邦から来た第81……」
「ああ、今朝方着いた大西洋連邦の……なるほど、道理でそんなことが言えるはずだ。
外出禁止令が出されているんだよ。レジスタンス活動に身を投じる輩が増えてきてな。
俺たちも手を焼いているが、連中には気をつけろ。普通の市民を装っているから、見分がつかん。
だからこうして俺たちも警戒しているんだよ。お前等も……気をつけろよ?」
見れば、彼のジープにはマシンガンを持った軍人が数名乗り込んでいる。
これから待ちの各所で警戒に当たるのだろう。彼らは話している間にも周囲への警戒を怠ってはいない。
ジープが去ると、取り残された4人は、そんなユーラシア軍人が説明したこの街の状況を訝しがった。
「ゲン、レジスタンス活動って何だ?」
「アウル……知らないのか?」
「名前は知ってるけど、中身はよくわかんないんだよ」
レジスタンス―具体的には、侵略者や占領軍に対する抵抗運動をさす言葉である。
あるいは、権威に対し特定の目的を認めさせようとする組織的活動をさす場合もある。
大抵、レジスタンスという言葉は意図する、しないに関わらず政治的な色彩を帯びてくる。
これは対決する権威、政府、統治体制の正当性が見る者により変わってくる為である。
「つまり、この地方を支配するユーラシア連邦に対して、抵抗している連中のことだよ。
軍の撤退、ユーラシア連邦からの分離独立……あるいは自治権を要求するとか、そんなところか?」
「けどよ、ゲン。この土地は……ユーラシア連邦の土地じゃないぜ?」
スティングの指摘にゲンは瞠目する。あれっ……と思わず声に出しそうになるが、何とか堪える。
堪えたところでスティングに説明を促すと、彼は地図を持っていた。基地を出るときに持ち出したらしい。
45 :
9/17:2005/12/18(日) 04:53:22 ID:???
地図によるとこの土地はユーラシア連邦領ではなく、汎ムスリム会議領ということになっている。
地図の年号はCE73―古いものではなく、ここが間違いなくユーラシア連邦の領土でないことがわかる。
「……何でだ?どうなってるんだ?」
今度はゲンがアウルとスティングに聞くが、彼らも首を横に振るばかり。
終いにはステラに顔を向けるが、彼女もぷるぷると首を激しく横に振るだけである。
4人ともジープの上で途方にくれていたが……答えは意外なところから返ってくることになる。
「ここは汎ムスリム会議領だけど……会議がこの土地をユーラシアに売り渡したんだ!
お前達は余所者だろうから警告しておく!ここはもうすぐ戦場になる……早くこの街から出て行け!」
その声に全員が振り返る。見れば少年がジープの側に来ていた。
4人を睨みつけるように見た後、彼は走り去る。
「お、おい!」
ゲンはジープを飛び降り、少年を追った。先日まで自分が居た汎ムスリム会議―
会議の宗教指導者の一人をゲンは護衛し、彼の国は事実上の中立宣言をするに至った。
その国がこの土地をユーラシア連邦に売り渡した―?聞き捨てならない言葉に、彼は少年を追った。
ゲンは車を降り、少年を追っていくが……街の路地裏に入られ見失ってしまった。舌打ちするゲン―
だが、突然悲鳴が聞こえ、その方向に足を向ける。狭い通路を抜けると、軍人に囲まれた少年の姿が……
「おい、お前!外出禁止令は知っているだろう!?何故キサマは外に出ている!ああ!?」
質問というよりまるで恫喝―ゲンには少年を怒鳴りつける軍人の姿が、そう映った。
怒鳴っている軍人のほかにも、3人ほど銃器を構え少年を囲んでいる。
怯えた少年は答えることもままならず、ただ震えているだけ―舌打ちしてゲンは割って入る。
「そいつを外に出したのは俺だ。窓から俺たちを眺めてたんでね……
この辺で開いてる料理屋を案内してもらおうと思って、外に出てきてもらうよう頼んだんだ」
「ん……お前はさっき会った大西洋連邦の……」
よくよく軍人の顔を見れば、先ほどであったジープに乗っていた軍人であった。
ゲンは自分の招いた事態と説明し、詫びを入れることでその場を収めようとした。
「済まない……まだこの街に着いたばかりで、状況が分からないんだ」
「ったく、紛らわしい真似をされては困る!住人の外出も届出制なんだ……気をつけてくれ!」
少年に向けていた恫喝は行き先を失い、ゲンを厳しい口調で叱責し彼らはその場を去った。
フゥとため息をつき彼は少年に向き直った。
「危なかったな、小僧」
「こっ……小僧だと!?私は女だ!どこに目をつけている!?私は お・ん・な だ!よく見ろ!」
46 :
10/17:2005/12/18(日) 04:54:14 ID:???
少年―
さっきまでそう思っていた相手の顔をよく見ると……
「お、女の子!?」
「失礼な奴だなお前は!私は女!コニール・アルメタだ!まったく……」
ブツブツとゲンに文句を言いながら、少年と思われた少女は不満げにゲンを眺める。
そんなやり取りの間に、残りのファントムペインの3名もジープで側まで駆けつけてきた。
ゲン達一行は、コニール・アルメタの案内に従い街の料理屋に向かった。
嘘から出た信であるが、このまま少女を帰してしまっては再び尋問に掛けられかねない。
コニールもしぶしぶではあるが、彼らを街の料理屋へ連れて行く羽目になった。
料理屋に着くと早速に4人はメニューを開くが……土地の料理の内容が分からない。
名前は読めるがどんな食べ物なのか皆目見当がつかず、コニールが数分適当に料理を頼むことになる。
料理ができるまでの間、ゲンは目の前の少女に先ほどの件の仔細を聞いた。
「さっきの話の続きを聞きたいんだが……この土地が売り渡されたって、どういうことなんだ?」
「余所者に話しても分かってもらえるか分からないけど……助けてくれた礼だ。教えてやるよ」
コニールは、彼女の知る範囲と前置きした上で、この街の状況を語り始めた。
「……元々このガルナハン、いや、カスピ海の東と南側は汎ムスリム会議の領土だったんだ。
2年前の大戦で連合とザフトが戦争するようになったのを境に、会議はザフトに、プラントについた。
けど、マハムールに基地が出来たころから、ユーラシア連邦が圧力を掛けてきて……
一時汎ムスリム会議は主権を放棄して、ユーラシアに併合されちゃったんだ」
マハムール基地の存在は、当時のユーラシア連邦にとって脅威であった。
折りしも、開戦当初の戦いで世界最強と謳われた戦車部隊が、ザフトのMS部隊相手に連戦連敗……
ジブラルタルを奪われ、アフリカ戦線で完敗したユーラシアにとって、ザフトはこれまでにない脅威だった。
やがて、開戦当初は黙認していた隣国の汎ムスリム会議の行動も、捨てては置けない状況に発展する。
そんな中、ユーラシア連邦はロシアにいた部隊を派遣して、汎ムスリム会議を制圧すると脅しを掛けた。
プラントの技術は欲しいが、ユーラシアとの全面戦争は避けたい……会議にはそんな思いもあったのか―
やがて、会議は主権の譲渡という形で恭順の意を示して見せた。
「けど、ムスリム会議が主権をユーラシアに譲渡しても解決する問題じゃない。
当時はMSを持っていなかったユーラシア連邦に、マハムール基地を制圧できるわけがないだろう?
会議もそれを分かっていたから、裏でザフトと手を結び、表でユーラシア連邦に媚びへつらったのさ」
はき捨てるようにコニールは言った。
だが、そんな都合の良いムスリム会議の方針を、ユーラシア連邦が黙って見過ごす筈がなかった。
主権の譲渡と共に、カスピ海南部のムスリム会議領をユーラシア側に提供することを要求していたのだ。
やがてガルナハンに基地を作り、マハムール基地からのユーラシア本国への侵攻を止める拠点とした。
47 :
11/17:2005/12/18(日) 04:55:12 ID:???
コニールがこの街にユーラシア軍が駐留することになった経緯を話し終えた頃―
すでに料理はテープルに並べられ、各自食事に入ったが……コニールは話を続けた。
「でも、ユーラシア連邦がこのガルナハンを拠点にした目的はそれだけじゃない。
もう一つ……この街でしか採れない、あるモノが……あいつ等にとって必要だったんだ」
「あるモノ……?」
「……コレさ」
そう言うと、コニールは食事が並べられたテーブルに石ころを一つ置いた。
全員の目がその石に注がれる―だが、その石が何であるかは余所者4人には理解できなかった。
「その石は、レアメタル―希少金属さ」
レアメタル―先端産業には不可欠な希少金属を指す。
この時代、レアメタルは機動兵器であるMSやMA、艦艇の製造には欠かせない存在であった。
最も、単体として取り出すことが技術的に困難であり、採掘や精錬のコストも掛かる。
この石も、それだけでは何の役にも立たないものであり、精錬してこそ真価を発揮する物である。
「元々この街は、そういった鉱石を掘り出すことを生業とする鉱山街だった。
地球上のレアメタル採掘地は年々掘り続けられたことにより、減少傾向にあって……
レアメタルが多く含有されている山脈は、ユーラシア大陸には数えるほどしか存在しないんだ。
カスピ海南部に広がるエルブールス山脈もその一つ……だからあいつ等はここに基地を構えたんだ」
基地建設と並行して、ユーラシア連邦軍はレアメタルの採掘を始めた。
それに対し地元住民は反発したが、相手は大西洋連邦と並ぶ巨大戦力を誇る大国……
戦う術もなく、また彼らの祖国汎ムスリム会議の失態が招いたことでもあり、口を噤む他なかった。
戦後、汎ムスリム会議は主権を取戻すが、基地はマハムール基地対策のため無期限に残される。
歪んだ形でのユーラシア連邦軍による統治が、なお続くことになる。
「けど、ユニウスセブンが落ちた直後から……ユーラシア連邦はどんどん高圧的になっていった。
あれから直ぐに、基地保安の名目で俺たちの採掘権を取り上げて、鉱物資源を独占したんだ!
鉱山街から鉱物を掘ることを禁じられたから、大人たちは皆失業しちまった。
それでも皆で基地にデモとかして、何とか採掘再開を認めてもらおうと思ったけど……」
デモの参加者は、尋問の名目で基地内に何日も勾留されたり、暴行を加えられることもあったという。
そんな基地と土地住人との不協和音が、やがてこの地に抵抗運動の根を生やすことになったのだ。
しかし、ユーラシア軍がみすみす、自らの膝元でそんなことを見逃すわけがなかった。
集会を開いていたところに踏み込まれ、先導者たちを基地内に連行し、拷問を加えることもあった。
拷問に耐えられる人間など軍人の中にさえ、そうそういるものではない。彼らの活動は早晩露見した。
連行された者の口から活動が露見すると、徹底した弾圧が加えられた。
レジスタンスと分かればテロリストとして処刑されることさえあった。
「あいつらさえ来なければ、こんなことにはならなかったんだ!」
48 :
12/17:2005/12/18(日) 04:55:58 ID:???
絞り出すような声で少女は叫ぶ。その光景にゲンたちは沈黙する。
ユーラシア連邦とガルナハン基地周辺住民との軋轢―その事実は友軍であるゲン達にも重くのしかかる。
全員食事の手を止め、少女の心中を慮る。
「あ……すまない。余所者には関係のないことだったな。
ところでお前達、何者なんだ?私服で軍用ジープに乗る人間だから、基地で仕事をしているんだろ?
お前等みたいな若い軍人なんているわけないから、民間人だろうけど……何してるんだ?」
その言葉に全員気まずげに顔を見合わせる。
「あ、あはは……ほら、スティング」
「なっ!俺に振るのかよ?……ゲン、お前が答えろよ」
「ゲン……お願い」
アウルは苦笑いを浮かべながらスティングに話題を振り、スティングとステラはゲンに矛先を向けた。
まさか、自分達がユーラシア連邦と同盟関係にある大西洋連邦の軍人で、支援目的でここに来た……
とは言いがたい状況である。言ったとたんに、この少女との和やかな会食は暗転するだろう。
逡巡の後、ゲンは答えた。当たり障りのない答えを―
「俺たちは今朝方、大西洋連邦の巡航機に乗ってこの土地へ来た。
いろんな物資を運んできて、その荷運びが終わって街に出ようとしたんだが、そこでお前とあったのさ」
「へぇ、運送会社の人間か。こんな戦時下に大変だな」
「まぁ、手伝いみたいなものさ。余り長居することはないと思うが、ヨロシクな」
その後、ゲン達は一人ずつコニールに自己紹介をした。無論階級や本来の仕事は隠したまま……
和やかな会食が終わり、コニールを家まで送り彼らは分かれた。別れ際、コニールはゲンに言った。
「ここの基地は再三ザフトに攻められている。今までは失敗に終わっているが……
ザフトがまた攻めてくれば基地も……お前達も、早くこのガルナハンから消えたほうが良いよ」
「……ありがとう」
「折角の食事だったけど……後味悪かったな」
「外に出ようっていったのはお前だ、アウル」
「ねぇ……ゲン、あのお爺ちゃんは、コニールたちを見捨てたの?」
アウルとスティングは、やはりユーラシア連邦とコニールたちの軋轢にやるせなさを感じていた。
また、ステラはコニールの話から、先日会った汎ムスリム会議の宗教指導者の老人について話を向けた。
彼の老人は、先日まで亡命同然で大西洋連邦に逃れていた親連合派の人間であった。
故に、会議がザフトにつくと決めた頃には亡命せざるを得ない状況にあった筈―
「あの爺さんは、先日まで亡命同然で大西洋連邦にいて、先日やっと帰国したんだ。
これからどうなるかは分からないが……多分あの爺さんが見捨てる筈はないよ。大丈夫だ」
不安げなステラを慰めるが、ゲンもユーラシアの圧力をこの先会議が跳ねつけられるかは疑問であった。
49 :
13/17:2005/12/18(日) 04:56:47 ID:???
基地に帰ったゲン達―乗ってきた大型巡航機に戻るが……
基地の格納エリアには、先ほどまではその場所になかった筈の輸送機が数機存在した。
見れば、ユーラシア連邦の兵が次々とその輸送機に何物かを積み込んでいる。
ゲンはその様子を訝しがり、荷運びをしている兵に尋ねた。
「何を運んでいる?」
「……ああ、これは鉱物資源ですよ。この辺で採掘されて基地に保管してあった資源を粗方。
司令からの命令なんですけど、急になんで……いつでも運べるようにしておけって、言われたんです」
「この基地にはどのくらいの量があって、この辺りの鉱脈にはどのくらい残ってるんだ?」
「自分は鉱山技師じゃないので詳しいことは分かりませんが……ここ数ヶ月でかなり掘って相当あります。
けど、これらはまだ精錬されてるわけじゃありません。純度の高いものから順に移送する予定です。
まだ相当量眠ってるらしいですが、まだ掘れる場所はあるし埋蔵量もかなりあるんじゃないでしょうか?」
人の良さそうな若い兵士は、余所者であるゲンに対して知る限りのことを伝えた。
だが、ゲンはその兵士と分かれた後、彼の最後の言葉を反芻し、何事か黙考しているようであった。
「まだ相当量眠っている……か」
夕刻―ゲンは基地司令に頼み、ローエングリンゲートを見学させて欲しい旨願い出た。
司令は、基地の守備隊には必要ないことであると一蹴しようとしたが、ゲンは後学のためと懇願した。
折れた司令官は、MS大隊隊長を案内役に指名し、ゲンと二人でローエングリンゲートに向かった。
ゲンはストライクMk-Uを、大隊長はダガーLを基地から発進させた。
二人がMSを用いたのは、見回りもかねてであるが、何より基地からゲートまでそれなりに距離があった。
ジープで行けないこともないが、舗装されてない道を通る必要もあったため時間の節約が目的だった。
日が傾きつつある峡谷に、2機のMSが降り立つ……
『どうだ?このローエングリンゲートを見た感想は?』
「天然の要塞……ってところですね。峡谷に誘い込んだ上で、ローエングリンの一撃で相手を粉砕……」
『それだけじゃない。ローエングリンを守る鉄壁の盾……
陽電子リフレクターを装備した新型MA、ゲルズ・ゲーもある。が……これでミネルバを落とせるか?』
通信越しではあるが、大隊長の声からはまだ見ぬ敵への警戒心が伝わってきた。
司令官はローエングリンゲートと新型MAに全幅の信頼を寄せていたが……この男には油断がなかった。
それえを察したゲンは、大隊長を始めとする基地の人間のプライドを傷つけぬよう言葉を選び話し始めた。
「確かに堅牢ですが……過去幾度かザフトの攻撃が失敗している以上、対策は立ててくるでしょう」
『例えば……君ならどう攻める?』
「……俺がミネルバの立場であれば、時差を使って攻めます。そう、例えば……
囮のMS部隊を侵攻させてローエングリンを打たせる……それから、本隊でローエングリンを止めます。
ローエングリンの欠点は連射が効かない事―ミネルバの高機動の空戦用MSはその僅かな時間を狙う」
『そいつらは……基地のMA・MS大隊を突破できるのか?』
「基地のMAとMSで連中を撃退できるかもしれませんが……敵はエース級を何人も有しているようです。
ザフトの連中は元々多数の敵を相手にすることを恐れませんから、楽観は出来ません」
50 :
14/17:2005/12/18(日) 04:57:43 ID:???
すでに夕陽は沈みかけ、辺りの山々は紅く染まっていった。2機のMSは索敵をしつつ峡谷周辺を廻る。
異常もなく、大隊長はゲンに帰還しようと言ったが、その際ゲンは人影を見つけた―見覚えのある少女―
「大隊長は先に帰っててください」
『ん?どうかしたのか?』
「いえ……夕陽が沈むのを眺めてから帰ろうと思いまして」
『意外に風流だな。まぁいい、この辺は田舎だから綺麗な夕陽を拝めるが、あまり遅くなるな』
やがてダガーLは一機で基地に向けてバー二アを吹かせつつ帰還の途につく。
それを見送ったゲンは、先ほどの人影を追った。峡谷の岩場に隠れながら移動を繰り返している。
距離にして数kmはあろうか―その先で、人影は時折こちらの様子を伺ったりもしている。
何を思ったのか、ゲンはストライクを飛翔させ空中で停止した後、ミラージュコロイドを展開した。
「よし……帰ったな」
それだけ言うと、コニール・アルメタは先ほどまで岩陰に隠れていた自分の姿を曝け出した。
そして、一目散に掛けて行く―やがて、数km走った先の、坑道の入り口で足を止め中に入っていった。
その直後、ストライクMk-Uがミラージュコロイドを解きその姿を現す。
ゲンは坑道から離れたところでストライクを着地させ、その愛機から降りる。
やがて、コクピットに置いてあった愛用の拳銃を取り、坑道の入り口の前で待機した。
暫くすると、中からコニールがジープに乗り外に出て来る。彼女はゲンの存在に気づいていない。
ゲンはゆっくりと銃を構え、ジープの車輪目掛けて短く発砲した。
突然の事態に目を白黒させるコニール―だが、ジープに走りよったゲンに組み伏せられた。
組み伏せたところで、ゲンは銃を少女に突きつけ凄む。
「キサマ……何をしている?」
「ヒッ!れ、連合兵!」
「外出禁止令が出ているのにこんな時間に外に出てジープに乗る……さては、レジスタンスだな?」
「ああっ、いや、私はその……隣町まで病気の母に薬を買いに行こうと思って……た、助けて!」
「……さっきお前のお袋さんに会ったけど、ピンピンしてなかったか?」
「……え?」
訝しがるコニール―ゲンはそこまで言った後、ヘルメットを脱ぎ捨て素顔を曝け出した。
恐怖に怯えていた少女の顔が見る見る明るくなり、やがて今度は怒り始めた。
「おっ、お前ッ!ゲンじゃないか!」
「ハハハッ、驚いたか?さっき家まで送ったときお袋さんらしき人の姿が見えたからな。
嘘をつくなら、もっともらしい嘘をつくもんだぜ、小僧さん?」
「わ……私は女だ!……ったく!冗談にしても度が過ぎるぞ!」
「……冗談のつもりはないんだがな」
「……え?」
51 :
15/17:2005/12/18(日) 04:58:30 ID:???
ゲンはストライクMk-Uの前までコニールを連れて行った。少女の目は驚愕に見開かれる。
漆黒に染め上げられたストライクは夕陽に染まり、あたかも紅蓮の炎を纏ったかの様にさえ見えた。
やがてコニールはゲンに目を向ける。MSと同じ色のパイロットスーツを着込み、自分に銃を構えている―
「う、嘘だろ?お前……まさか」
「……自己紹介は二度目になるな。地球連合軍大西洋連邦第81独立機動軍所属……
この黒いモビルスーツ、ストライクMk-Uのパイロット、ゲン・アクサニス中尉だよ、お嬢さん」
「大西洋連邦……連合軍?お、お前!騙してたのか!?」
「騙してなんていないさ。俺はお前に軍人ではない、とは言わなかった筈だぞ?」
「……そんな!」
絶句したコニールは、膝を折り地に伏せ泣き出した。
まさか、昼間自分を助けた人間が、ユーラシア連邦の同盟国である大西洋連邦の軍人であろうとは……
「……夢にも思わなかったよ、お前が敵だなんて!」
「お前、レジスタンスだな?」
「そうだよ……分かったんだから、殺せよ!お前等連合はレジスタンスって分かったら殺すんだろ!?」
「……その前に、聞いておきたいことがある。お前はこれから何処へ行き、何をしようとしていた?」
その言葉に少女は瞠目する。慌ててジャケットのポケットに手を当てる―が、それはゲンに見咎められた。
コニールから上着を剥ぎ取ったゲンは、ポケットの中から黒い記録媒体を取り出す。
「見せてもらうぞ」
言うや、ゲンはストライクのコクピットに戻り、機体の端末に少女から取り上げた記録媒体を繋ぐ。
出てきたのは地形図―ガルナハン一帯の坑道や、各峡谷のスペースなど……
ローエングリンゲートのある峡谷のデータまで存在した。やがてゲンは再び少女の前に立った。
「……なるほどな。このデータを、大方ザフトにでも届けるつもりだったんだろう?」
「……! 何故分かるんだ!?」
「最初に会った時、お前は何て言った?
ここはもうすぐ戦場になるから、早くこの街から出て行け……確かそう言ったな?
民間人なら連合やザフトの動向なんて知るわけがない。違うなら、どちらかと?がりがあるってことだ。
あれだけユーラシア連邦を嫌ってたお前だ……ならば、可能性は一つだけ。ザフトと内通してる筈だ」
「さ、最初から私のことをレジスタンスって……」
「ああ、知ってたさ」
ため息をつき、ゲンは少女を見下ろす。先ほど咎められてポケットを探るなど、素人としか思えない。
こんな素人がレジスタンスの連絡役を務めるとは……コニールの失態ばかりは責められない。
こういう仕事は、大人の仕事の筈だからだ。―やがて少女は震える声で、絞り出すような声で言った。
「……殺せよ」
「………」
ゲンは無言で少女に銃を突きつけた―
52 :
16/17:2005/12/18(日) 05:00:27 ID:???
ガチッ―!
奇妙な鉄の音がコニールの耳に響き渡る。予想していた痛みもなければ、硝煙の匂いもしない。
目を閉じていた少女は、ゆっくりと目を見開く。目の前には銃を下ろしたゲンが居た。
「……残念だな。安全装置を外し忘れたから……処刑は無しだ」
「………」
「……生きてて良かったな?嬉しくないのか?」
「……ふざけんなあ!さっきは撃ったくせに!!」
暫くの間、コニール猛抗議にゲンは辟易する羽目になった。
落ち着きを取戻した少女にゲンは語りかけた。何故お前のような少女がレジスタンスなのかと―
「親父がレジスタンス活動をしていたんだ。採掘権を取り上げられて、失業しちまったから……
みんな困り果ててデモとかしたけど、弾圧されて、それからレジスタンスをすることになった。
けど、親父の奴、容疑を掛けられて捕まっちまって……だから私が代わりに!」
「けど、これはお前に任せる仕事じゃないだろう?」
「……女子供は小さいし、人目に付かないからだ。親父は捕まって以来、何週間も面会すら許されない。
親父だけじゃない。街の大人は何人も捕まってるし、レジスタンスって分かったら殺される。
ひょっとすると親父達も、もうこの世には……」
「銃を持ってるレジスタンスならまだしも、尋問や拷問では、そうそう殺すことなんてないだろう」
「何でそんなことが言える!?」
「事が明るみに出ればどうなる?ユーラシア連邦は国際的な非難を免れ得ない。
捕虜に対する拷問や虐待は禁じられている……もっとも、やるときはやるだろうが。
それでも、下手に殺せばその軍人の経歴に傷がつく可能性が高い。あまり無茶はしないだろう」
「そうだといいけど……」
帰るぞ―ゲンはそう言うと、ストライクにコニールを乗せた。
戸惑う少女を半ば無理やりに機体に押し込め、ストライクの手にジープを乗せてその場を跡にした。
コクピットの中で、ゲンはコニールを膝の上に載せる格好でストライクを操縦していた。
少女は赤面していたが、ゲンはお構いなしであった。おずおずと、少女は問いかける。
「……何で私を殺さなかった?」
「武器を持たない人間を殺す趣味はない。
それに……ザフトに踊らされそうなお前を見て、黙っていられなかったのさ」
「踊らされる?どういうことだ?」
「この辺りには、俺たちの乗っているMSを作るのに必要なレアメタルがまだまだ眠っている。
奴等の目的はお前達を助けることなんかじゃない。そのレアメタル―希少金属が目的の筈だ」
「そんな!彼らは俺たちを解放してくれるって言ってた筈だ!そんなこと……」
「……一時的には、な。けど、よく考えてみろ。
旧世紀の汎ムスリム会議領で産出されていた石油……その天然資源が枯渇したときどうなった?
石油利権争いに明け暮れていた昔の大西洋連邦やユーラシア連邦は潮が引くように居なくなった筈だ。
今度も同じさ。レアメタルが手に入る……だからお前達にザフトは救いの手を差し伸べた。それだけだ」
「………」
「常識で物を考えてみろよ。赤の他人のために無償で血を流したがる奇特な奴は……いやしないさ」
53 :
17/17:2005/12/18(日) 05:02:42 ID:???
基地に近づいた頃、再びコニールが口を開いた。
「……けど!それなら、力を持たない私たちはどうすればいいんだよ!
例えレアメタルが目的でも……それでも!俺たちはザフトに縋るしかないじゃないか!
汎ムスリム会議に訴えて出たけど、結局何も返事は返ってこなかった!
そんな中で、俺たちにどうしろって言うんだ!」
「………」
「……お前は凄いな。私とそう変わらない年なのに、こんなMSに乗って、強くて、力もあって……
レジスタンスにもなりきれない私みたいな弱い人間とは……大違いもいいところだ……はははッ」
笑い声とは裏腹に、少女の声には寂寥感が漂っていた。
少女の声に、何を思ったのかゲンは己の秘密―アウルやスティング、ステラも知らないことを話し始めた。
「俺は大西洋連邦の軍人だが、コーディネーターだ」
「……え?」
「俺の体も……俺自身のものではなく、軍の所有物だ。
戦闘用に作られたコーディネーター、最後の"ソキウス"―言うなれば生体兵器だ」
「……また、からかっているのか?」
「俺の両脚を触ってみろ。膝から下だ」
言われるままにコニールはゲンの両脚に手を触れる。
パイロットスーツ越しにではあるが、人のそれではない感触が手に伝わってくる。
「ぎ、義足?」
「……俺には過去の記憶がない。正確には過去2年より以前の記憶が……な。
脚を失ったときの記憶もない。恐らく軍の連中が消しちまったんだろう。それに……
作られたコーディネーターだから、両親のなんて最初からない。子供の頃の記憶もありはしない。
記憶があるのは軍に入ってから……文字通り、戦うために作られた、生きている"兵器"そのものさ」
「そんな……そんなことって!」
「お前が羨ましがった"力"……これが体制に何かを明け渡した代償に、力を得た者の禍福だ。
他の3人……アウルやスティング、ステラはナチュラルだが、俺みたいな境遇であることに変わりはない」
やがて二人を乗せたストライクはガルナハン基地に降り立つ―コニールがストライクから降りるとき……
「……今日のことは忘れてやる。お前の記録媒体は返してやる。
ジープは明日にでも取りに来い。パンクしたタイヤは替えておく。それと、さっき俺が話したことは忘れろ」
「……え?」
「お前が今日やろうとしたことは、全部忘れてやる。だから、俺が喋ったことも全て忘れろ。これでチャラだ。
もし誰かに今日の首尾を聞かれたら、連合兵に見咎められたんで引き返しましたって言えばいいだろう。
あとお前の親父さん達のことは……こっちでなんとかやってみるから、お前たちは下手に動くな」
戸惑うコニールを尻目に、彼女を連れたゲンは基地のゲートまで少女を送る。既に陽は暮れていた。
周囲は暗闇―コニールはゲンの最後の言葉が信じられず、だが心のどこかで信じたいと願った。
少女の一筋の光明は、やがて一つの結実をもたらす―
PP書いてる者です。
ガルナハンの位置ですが、よく分からなかったので多分イラクあたりだろうと思って書きました。
ユーラシア連邦の住民弾圧とかはチェチェン紛争と、若しくはイラクの旧フセイン政権下のクルド人問題。
このどちらか、あるいは両方をスタッフは本編で投影したかったのだろう……と思います。
両澤先生曰く「行間を読め」とのことですので、不肖私が拙文ながら想像で書いてみました。
ちょっと強引な展開になってしまいましたが……続きは次回、何とか上手く纏めてみたいです。
最後に、ご指摘いただいた点について
前スレで核エンジンは撃ってもそんなに爆発はしないのではとのご指摘を頂きました。
本編のインパルスvsフリーダムでやたらフリーダムが派手に爆発してたのは……気のせい?
う〜ん、この辺全く自分が分かってないので、再度お教え願えれば幸いです。
恐らく推進剤だとは思われるのですがフリーダムは良くわかりません
核動力場合考えられるのはロシア原発事故の酷いようなものと考えてはいるのですが
アクチューター及び兵器運用 = バッテリー もしくは核動力発電→一旦予備バッテリーへ→バッテリー
推進機構、推進剤、もしくは超電磁プラズマジェット。 爆発は前者の可能性
まああてにはならないでしょうが参考程度に。
夜分遅くお疲れ様です。
PP戦記乙です
なんかゲンがいいヤツだな、今回
PP戦記乙です。
政治が関わって随分複雑な様相を呈してますがすごく面白いですね。
自由の核エンジンの核爆発のことですけど、ぶっちゃけ核エンジンが破壊されても放射性物質が飛び散ることはあっても核爆発はフツーしません。
けどフィクションならではの嘘、ということもありますからね。
例えば核ミサイルが狙撃されて核爆発を引き起こす、というのも(無印種、CCA)ありますし、核融合炉にメガ粒子砲が直撃したら核爆発を起こす(F91、V)なんてこともありますんで気にしないでいいと思いますよ。
>>54 本編でフリーダム撃墜の時に爆発してたのは
陽電子砲によって対消滅した大量の海水だという説もあるのですが、どうですかね。
>>54 >>58の説で同じく聞いた覚えの在る事。
フリーダム撃墜時にはNJCはOFFになっていたらしいです。
(貫かれた時にキラがNJCのスイッチを押している描写あり)
よって核爆発は起きず…代わりに陽電子砲による対消滅の海水による
爆発により手足を吹き飛ばされた…
という説が在るようです。
PP戦記お疲れさまでした!ローエングリンゲート攻防戦の前章詩ですね?
政治的絡みが濃くて、話に付いていくので精一杯な私がいます・・・;
MS戦好きな身として、ネオからの贈り物、フライングアーマーがどう活きるかが
凄く気になります。順当に考えるとストライクMKU対セイバー用でしょうが・・・
>>54 本編の爆発は「タンホイザーによる水蒸気爆発」みたいです。
通常、核(水素爆弾)は原爆を劇鉄(起爆剤)として爆発します。
これは爆発時の力を拡大させるとともに、セット前の安全装置も兼ねております。
なもんで、本来なら核動力炉は核物質は出ても(拡散)、爆発はしません。
まあ、UCのミノフスキー・イヨスコ式核融合炉がどういった具合に核物質を
封じ込めているのか判りませんが(「それでも小型の核爆発が起こる」と
小説にはありますが)、CEの核動力炉はPMF発電によって、電力を
起こし、バッテリーに蓄電・放出しているので、推進剤に着火しない限りは
爆発はありえない筈・・・負債の糞頭ではアウトオブ眼中だろうが
具体的にUC核=そのまま動的エネルギーに変換・動力パイプかフィールドモーター
にて供給してるため、動力炉直撃=小型核爆発に対して、
CEのMSはバッテリー式である点から見て=原子炉から電力に変換・・・
のプロセスのため核爆発はないはずが・・・「演出」と言ってしまえばそれまでですねw
61 :
60:2005/12/18(日) 13:25:25 ID:???
>>60 に補足説明です。核融合炉は燃料に水素(ヘリウム3)を媒体にし中性子
の取り出しをしており、核爆発(キノコ雲)は起きませんが、
荷電粒子(ビーム)直撃による「封じ込めていた」水蒸気爆発は
有り得るそうです。(その際の運動エネルギーが小説版における
「小型の核爆発なみ」と推察)
そう考えると、種最終回の正義の自爆は当初から「想定してある」事に・・・
あれ?
ジャスティスは単機特攻し、離脱できなくなれば自爆するのがコンセプトだったんだろw
そんなことはない!それはアスランのコンセプトだ!
なんかあれだな、Xmas特別企画みたいのが欲しい季節ですね。。。
67 :
Hina:2005/12/18(日) 22:38:06 ID:???
PP戦記様、乙です
ようやく第3話完成です、後半がそこそこオリジナルになっています
メインキャラもそろいつつあるのでそろそろキャラ設定を公開します
第3話「ミネルバ発進、前編」
「インパルス、カオス、ガイアと戦闘を開始しました、アビスも接近中です」
メイリンの状況報告を聞きタリアはしばし沈黙し。
「メイリン、マユに通信を繋いで」
「はっはい」
モニターに映ったマユに指示を出す前に副長のアーサー・トラインが割り込む
「マユ、命令は3機の捕獲だぞ、わかったいるんだろうな」
捕獲を強調して命令を出すアーサー、しかし
「わかってますけど、あの3機相手に手加減してたらこっちがやられちゃいますよ!無理な事いわないでください!気が散るのでおじさんは黙ってて、通信終了!」
一方的に言いたいだけ言って通信を切るマユにアーサーはショックを受け
呟いた。
「お・・・おじさん・・・・私は・・・まだお兄さんなのに」
「アーサー!今はそんな事でショックを受けてる場合じゃないでしょう!全く、メイリンルナマリアとレイは?」
「インパルスより遅れて発進しました、到着まで後20」
「わかったわ、それからミネルバの発進準備も念のためにしておいて、議長にも通達、それからプラント外に敵母艦がいないかもチェックして頂戴」
「はっはい」
空気も読めずおじさん呼ばわりされショックを受けるアーサーを怒鳴りつける一方でタリアは3機のGの強奪が目的なら必ず近くに母艦がいると判断し確認を急がせる。
一方のガーティ・ルーでは内部に侵入した工作員から奪取成功の報告を受けネオは満足気にうなずくと
「坊主共を回収後、けつまくって逃げるぞ!」
「大佐、近くにナスカ級2隻がいます追跡されると困難ですぞ(けつまくるって・・・いつの時代の言葉だよこの仮面男は)」
リーは心の中でツッコミをいれつつあくまで冷静に状況を見て助言をする。
「わかってるよぉ、その為にエグザスを準備させたんだろう、出て露払いをしてくる、後の指揮はまかせるぞ、リー」
「了解です、どうかお気をつけて・・・」
「ふ〜、やれやれ」
リーは扱いにくい上官がブリッジから消えた途端、ため息をつくと。
「貴様ら!なにをボケッとしているか、ミラージュコロイド解除後、エグザスとダガーL部隊も発進、ナスカ級2隻を行動不能にした後撤退するぞ、時間は余りないのだ、急がんか!」
二人のやり取りをみて笑っていた部下を怒鳴りつけ、自分の役割に専念を始める。一方エグザスのコクピットでは
「今頃リーはブリッジで大声で怒鳴りつけてるだろうな、お堅い軍人はこれだから俺みたいに臨機応変でないと」
ネオは今ブリッジで起きているであろう惨劇を思い浮かべつつ愛機エグザスを発進させる
「ネオ・ロアノーク、エグザス出るぞ!」
その頃、ナスカ級戦艦ヴォルテールブリッジで、ジュール隊隊長イザーク・ジュールと副隊長のディアッカ・エルスマンはシホ・ハーネンフースと最後の挨拶をかわしていた。
「ジュール隊長、今までお世話になりました」
「こちらこそ世話になった、新造艦ミネルバでのMS隊隊長の任務しっかり務めてくれ」
「はい、でも私に務まるか不安で・・・」
「長年俺の下で働いてきたお前なら大丈夫だ、もっと自身を持て」
「は・・・はい」
「そうそうシホちゃん、キミなら大丈夫だって」
「ディアッカ!横から口を挟むんじゃない、まあ・・・その頑張れ」
「ありがとうございました、隊長、エルスマンさん、みなさんもどうかお元気で」
シホは涙を浮かべて別れの挨拶をすませる
長年ジュール隊で様々な活躍をしその功績を認められ、新造艦ミネルバのMS部隊隊長に任命された
最初は断ったシホだったがイザークからの薦めもあり部隊長になることを承諾したのだ、たまたま近辺が哨戒空域だった為、俺たちが送り届けてやる!とイザークが主張したのだ
部下にも自分に対しても厳しくそれでいて面倒見のいいイザークにシホをはじめとした隊員達は憧れ慕っていて誰も愚痴一つこぼさず従った。
「ジュール隊長、まもなくアーモリーワンです」
「わかった、周囲の状況を確認、異常は無いか?」
「周囲に艦影、熱紋反応ありません」
「よぉし、入港の準備にかか・・・」
イザークの言葉は途中で轟音にかき消される。
「何事だ!一体何が起きた?」
「何者かに攻撃を受けました、メインエンジン中破、敵MSいやMAです」
「何っ!レーダーに反応はなかったのか?」
「ありません、突然反応が現れました、後方にMSを確認、所属は・・・アンノウンです」
「馬鹿なミラージュコロイドで接近されて気が付かなかったのか!チィ、ディアッカ、出るぞ、デュエルの発進準備をさせろ」
オペレーターからの報告に驚きを見せたイザーク、だったが冷静に指示を出し自らも愛機のデュエルに乗り込み出撃しようとするがディアッカに止められる。
「おい、待てよ、イザーク!シホはどうするんだよ?」
「シホはミネルバへ向かえ!どうもいやな予感がする」
「え、ディープアームズでですか?」
「どういうことだよ?イザーク」
「忘れたのか?ディアッカ3年前俺たち元クルーゼ隊の初任務のことを」
「初任務って・・・オイオイ・・・まさか」
かつて自分たちが所属していた部隊の任務のことを思い出す、連合軍の最新鋭の機体を奪取した
「そのまさかだ、急ぐぞ!艦長、ヴォルテールは待機、後の指揮はまかせるぞ」
「オウ!」
「了解です」
デュエルのコクピットでイザークはシホに回線をつなぐ。
「こんな別れですまないな部下の扱いに気をつけろよ・・・イザーク・ジュール、デュエル発進するぞ!」
続いて
「またなーシホちゃん、次会うときはイザークとデートの段取りしといてやるよ、またなー、ディアッカ・エルスマン、ザク・ウォーリア発進する!」
「ふふ、隊長、エルスマンさんありがとうございます、私頑張りますね、シホ・ハーネンフース、シグー・ディープアームズ行きます!」
アーモリーワン内へ向かうディープアームズを守るようにMA、MSに向かっていくデュエルとザク・ウォーリア、プラント外でも戦闘が今始まろうとしている。
続く
後書き
全国のシホファンの皆様ごめんなさい><
本編のミネルバって新人ばかりでベテラン要員少ないというかいないですよね、
赤服といってもルーキーばかりだしそこでシホを隊長に(いつまでもイザークの部下なのも
どうかなと思ったので)してみました
Hinaさん乙
シホが隊長って新しいな
これでレナ・イメリアとミネルバが戦ったりすると面白いんだが
あとちょっと個人的な意見なんだが、シリアスな戦闘シーンで中途半端にギャグ挟むのは、緊迫感が削がれるのであまりお薦めできない
シリアスとギャグは、ちゃんとメリハリつけないと逆効果になると思う
単発設定小話 「マユとSEED」
タリア「アーサー!状況は!?」
アーサー「はぃい!本艦は・・・艦長!囲まれちゃってますぅ!」
メイリン「インパルスは敵MAと、ザクファントム、ザクウォーリアはミネルバ艦で交戦中!」
タリア「っちぃ。八方塞!?」
〜ザムザザーと交戦中のマユ〜
マユ「こいつ!?なんて固さなの!」
連合兵士@「隊長!このザムザザーってすっごいすね〜!」
連合兵士A「人型でありゃいいてもんじゃないっすね!」
連合隊長「こいつを量産すればザフトなんざ、屁でもねぇさ!」
連合兵士B「偉い人にはそれがわからんのですよ!」
マユ「固いし早いし、もう!なんなのよ!・・・しまった!・・・つかまれた!?」
連合兵士@「・・・!よし、とったー!」
連合兵士B「このまま海中に引きずり込め!」
マユ「ぐ、・・・きゃー!!」
〜海中に引きずり込まれるインパルス、気を失いかけるマユ〜
マユ「・・・う・・・・・・・・・おにいぃ・・・・・・」
(シン「・・・勝手に死んでろ!・・・」)
マユ「・・・・・・!?お兄ちゃん!?・・・<シュパーン>・・・・」
連合兵士A「・・・ひぃ。なんだこいつ!?・・・隊長!敵MSに逃げられました!」
連合隊長「なにぃい!ええい!早く追わんかー!」
〜浮上し、ミネルバに近づくインパルス〜
メイリン「!?艦長!インパルス、ダメージを受けてます!」
艦長「!?マユがやられたってゆーの!?」
マユ「やれてませんよ!メイリン姉ちゃん!デュートリオン照射を!それとレッグフライヤー、ソードシルエット射出!」
メイリン「・・・艦長!」
艦長「・・・マユの言うとおりに!」
メイリン「了解!デュートリオン照射。続けてレッグフライヤー、ソードシルエット射出!」
マユ「ルナ姉ちゃん、レイはMSをお願い!私はあのMAと戦艦を叩く!」
レイ「・・・了解した」
〜ザムザザーへ向かうインパルス〜
マユ「こんの〜!よくもやってくれたわね〜!!」
連合兵士@「ぐは!」
連合隊長「・・・くそ!人型にはかなわんということか!?」
マユ「よし!ひとつ!・・・・・ふたつ!・・・・・・みっつぅー!」
〜立て続けに戦艦を両断するインパルス〜
アーサー「あぁ、艦長!」
タリア「・・・・・・!?すごい・・・」
ルナ「マユ!?なんなの?」
レイ「・・・・・・やっと覚醒したか・・・」
〜続けて戦艦を強襲するインパルス〜
マユ「次!・・・えーい!よっつぅ!次!次!・・・いつっつぅ〜!」
連合仕官「・・・ザフトの白いやつは化け物か!?」
マユ「ラスト〜!沈めぇー!!もう!弱い人が戦場なんかに出てこないでよー!!」
完
Hina氏乙
内容についてはともかく、
イザークがザフトにはもうザクシリーズがあるのに、
何でわざわざデュエル(AS?)に乗ってんのか気になったな
厨臭いが、せめて後継機(デュエルU)とかデュエル改とかに乗るならまだ分かるんだが
一応彼、大隊指揮官だし専用機とかあってもおかしくないしな
76 :
単発屋:2005/12/18(日) 23:56:16 ID:???
一箇所修正します。
誤:メイリン「〜ザクウォーリアはミネルバ艦で交戦中!」
正:メイリン「〜ザクウォーリアはミネルバ艦橋で交戦中!」
すまん。
きみがこーのままー♪いなくなーってしまーうなーんてー♪」
アキラののんきな声が聞こえる。ここは町の大通りである。
アキラとシンハロは欲望のままに買い物をしていた。
ちなみにアキラの格好は普通にパーカーにジーンズ。シンハロは群青のコートである。
はたから見れば普通の若者・・それも結構いい部類に入るのだが。
・・・・・・・その会話と明らかにポスターとか入った紙袋が近づきがたいオーラをかもし出していた!!
「えっと、マウンテン・オーシャンには行ったから・・・。」
『あぁ、次は虎だろ、その後にK本で・・、あと万だらけ。』
おたくショップの名前を次々と挙げて悦に入る二人。
すると、その道の途中になにやら人だかりが。
「何々?」
どうやら銀行強盗らしい、銀行の周りはパトカーでいっぱいだ。
そして、どうやら人質になっているのは・・・・・どこか見覚えのある金髪の少女。
「・・・・・・・・・・・レイ?何のコス?」
『銀様じゃね?』
激しくコメントの間違ってる二人であった。
うぇーい・・・ステラ・ルーシェです。
えーっと、ただいまルナちゃん達と一緒にスティング達を・・・すとーきんぐしてました。
そしたら・・・デパートを追い出されちゃったので・・・・過ごしやすい銀行で待機しよーとしました。
すると・・びっくりびっくり・・・・。銀行ごーとーさんの登場です・・うぇーい。
と、言うわけで、ステラ達は人質です・・。
しかも・・レイが女の子と間違えられて・・・・・銀行ごーとーさんに連れて行かれました。
ルナちゃんいわく・・・きっとりょーじょくのそのに連れて行かれたそうです・・・。
と、いうわけでぶいてぃあーるスタート。
「うーん、人質が私達以外に・・・・銀行員の人も含めて結構いるなぁ・・・。」
「ちぇっ、それじゃ暴れられねーじゃん。」
物騒なことを言うアウルとマユ。
「レイ・・・あーでもレイ受はなぁ・・。」
明らかに勘違いしているルナマリア。
「ステラ!俺が守るから!」
一歩間違えたら暴走しそうなシン。
「・・・・・・・・・・お腹すいた。」
状況をまったく理解してないステラ。
そんなメンバーが、人質に取られてしまっているのであった。
「おい!この女の命が欲しかったらとっとと車用意しやがれ!!」
レイに拳銃を突きつけた犯人グループの一人が吼える。
レイは心底面倒な顔でじーっとしている。
「あ!メイリンとスティングじゃん!」
アキラは銀行の前にあった広場のベンチに座っていた。隣ではシンハロがパソコンに自分をつないでいる。
アキラはデパートから出てきた二人を見つけて、声をかけた。
「うわ・・・、すげぇ人だかり・・・。何かあったのか?」
スティングがアキラに聞く。
「あー、銀行強盗でー。なんか某薔薇乙女のコスプレをしたレイが人質に取られてる。」
『ついでに今銀行の監視カメラハッキングしたらマユにステラに・・あー、ルナもアウル・・・・ゲンの奴も捕まってるな。』
シンハロはハッキングした画面をモニターに移す。
「なっ・・・・・!あいつら何やってるんだ!!」
スティングは思わず駆け出そうとするが、メイリンに止められる。
「おい!離せメイリン!!」
噛み付くスティングにメイリンはがぁっっと反撃する。
「スティング落ち着いて!!今スティングが出て行ったら皆の命が危なくなるでしょ!!」
メイリンの言葉に落ち着くスティング。
『うーむ、今から無理矢理インパルスを来させて・・・あー、逆効果か。』
つーかこの間の事件から口聞いてくれないんだよなぁ、疾風のやつ、とぼやくシンハロ。
アキラはどうにか助け出せないかと考えている。
「ただいまの持ち物は・・、あ、マウンテン・オーシャンで買ったハルバートと・・・あとネタで買った看板。
だれかこの近くにいないかなぁ・・、電話電話。」
(・・・・・・早くこのおっさんをどうにかしてくれ。)
レイは心の中でぼやく。
臭いしうるさいし唾は飛んでくるしと最悪である。
すると、なにやら人だかりの向こうでピョンピョンと飛び跳ねる赤いツインテール。
(・・・・・・メイリン?)
それは間違いなく自分の同僚であるメイリン・ホークだった。何やら看板を持っている。
(くそっ・・・。見えない。)
レイは何とか看板を見ようと身体を乗り出す。
「おい!!こら大人しくしてろ!!」
男によりきつく絞められ、レイはとうとう切れてくる。
(中に他に人質はいるが・・、まぁいいか。どうせ何とかなるだろう、ステラ達がいるし。何より・・・・。)
非常にアバウトであるが、もう決断したらレイの行動は早かった。
本気を出して警察に気を取られている男の腕から逃げ出し、その腕を掴む。
そしてひねり上げ、踊るように回転し男を取り押さえる。
華麗な少女の姿をしたレイの姿は、まるでゲームの一シーンのようだった。
「何だ?外が騒がしいな・・、おい!見て来い!!」
主犯と思わしき男が下っ端に命令する。
しかし、その男が確かめる必要はなかった。
なぜなら、血まみれの男を引きずったゴスロリ少女がゆっくりと入ってきたからだ。
「・・・・・・・・人がせっかくの休暇なのに・・・・散々な目に遭ってるのに・・・・・お前らは・・・・・・!」
ごごごごごごごごごご・・・・とレイの後ろに黒いオーラが浮かび上がる。
「かまわねぇよ!やっちまえ!!」
しかし、犯人グループは懸命にもレイに攻撃しようとする。
が、それは突然走った銀色の軌跡に弾かれた。
「・・・・・・・おそい。もうちょっと早く来たらどうだ?」
『そう言うなよ・・。ここまで来るのに結構手間取ったんだぜ?』
そう言って巨大なハルバート(武装斧)を構えるのはシンハロだ。
「・・・・・・お前、そのでっかい斧はどうしたんだ?」
『え?あぁ、アキラとメイドのコスプレしようって話になってたんでさぁ、ネットでオーダーメイドしたのを取ってきたんだ。』
「メイドのコスプレにそのでっかい斧がいるのか?!」
漫才をしているようにも見えるが、この会話をしながらもシンハロは放たれた弾をことごとく無力化している。
「くそっ!!おい!!そこのガキども!!」
新たに人質を取ろうとマユ達のほうに近づくが・・・・。
「あは♪いっちゃえ♪」
バカに明るい声が聞こえたかと思うと、マユ達の方へ近づいてった男はぱたっと倒れる。
その男の首筋には注射器が刺さっていた。
なにやらピロリロリロリン♪なんて効果音と共にマユ達の前に立ちふさがる影が一つ。
「まじかる☆アキランただいま参上です♪人質を取るなんていけない子ですねー。お仕置きです!」
なにやらフード付きマントを被った魔女っ子と言うより本物の魔女と言ったほうが似合いそうなアキラがそこに立っていた。
「いっけぇ!!ケミカルEXプロージョン!」
アキラがマントから試験管を取り出し、投げるとその試験管が大爆発を起こす。
明らかに犯人グループは大暴走するシンハロとアキラとレイに気を取られていている。
すると、こそこそっと身を屈めながらスティングがやってきた。
「おい、この隙に窓から人質逃がすから手伝え。」
「うぇーい、スティング・・・・地味・・・・・。」
「うっせぇよ!ほら気づかれない内に!!」
確かにこれは地味だが重要な役割である。
呆気にとられている人質を・・、こそこそと逃がす。
メイリンが既に近くにいたハイネ隊のメンバーと連絡を取っておいたので、とりあえずスムーズに行った。
が・・・・・、問題はその後である。
「うぉらっ!!」
明らかに人間が振り回せない重さのハルバートで周りの備品ごと犯人をぶっとばすシンハロ。
「まだまだいくよー♪」
ノリノリで破壊活動&怪しい薬を振りまくアキラ。
「お前たちがいるからぁっ!!」
一連の不幸を全て犯人グループのせいにして、大暴れするレイ。
「私三人目!!」
「こっちは四人目だぜ!!」
「ステラ五人目!」
便乗して大暴れするお子様バーサーカートリオ。
・・・・・・後日、請求書を見てハイネとアスランは救護室に運ばれたそうだ。
ラブコメで終われなかった、ごめん■■。ほのぼのです。
・・・・うん、はい、もっとラブコメ期待してた人ごめんなさい。
でもね、ぶっちゃけラブコメの纏め方ってよく解からなかったんだ。
うん、でももっと他のところでがんばるから!修行するから!!
−−−−−逃げの次回予告。
ミネルバメンバーが招待された議長主催のクリスマスパーティー。
華やかな音楽、うまそうなご飯、お酒。
そして何より一応議長の養子であるレイ、マユ。
うまく猫をかぶれるのか?!
それなりに期待して待て!!
PP戦記作者様、Hina様、単発屋様、ほのぼの様、皆さん乙〜。
>>54 遅レスすいません。
ぶっちゃけその辺は本編でも「都合よく」曖昧にされてる部分なので、作者ごとに勝手に決めていいと思いますよw
ただ個人的な考察を言えば……
科学的な考察はともあれ、「撃墜されたら即100%核爆発」なんて兵器は、怖すぎて使い物にならないと思うのですw
MSという兵器の性質上、出せば撃墜される危険は避けられませんし、その時に味方に多大な被害を及ぼすようではとても。
実戦投入を考えずに作られた実験機ならともかく、制式採用された量産機においては、特にその辺は対策されているものかと。
……ま、それでも、「確率は低いが爆発の危険あり」「核汚染の危険あり」程度はあるかもしれませんが。
初めて来たんだけど
これは読むな時間の無駄っていう作品教えて
駄作は読みたくない
>>83 全部読まなければいいとおもうよ^^
チラシの裏にでも書いとけ、んなこといちいち書き込むな
>>83 駄作かどうかは自分で判断するんだ
面倒ならば教えてやる
全部駄作だ、もう帰って良いよ(´・∀・`)
>ほのぼの
自分、巻きますかスレ住人でもあるんで、今回のネタ禿ワロタw
一応、これからまだヘブンズ攻略戦があるんだっけ?
なんかあまりに平和だから、このままずっと馬鹿やってて欲しいと思ったw
亀レスだが
>>72 Hina氏乙
文章力や構成力はこれから身に付けていくしか無いさ
シホが隊長になる事で、どんな人間関係になっていくのか楽しみだ
個人的に期待度大な新人さんなんでこれからも頑張ってくれ
俺もSS書かない(書けない)からあまり助言できないが、
やっぱ他の職人のSSを読んで書き方を研究すればいいと思うぞ
PP戦記読み返して疑問に思ったんだが、
コニールは何で偶に自分のこと俺って言ってんだ?
PP書いてる者です。
>>88 ご指摘の通り16/17の最後と17/17の最初のところでそうなってますorz
コニールの一人称は”私”で統一する筈がシンの台詞と混同してしまったようです。
申し訳ありません、私のミスです。
管理人様、お手数ですが修正お願いしますm(__)m
>>55 >>57 >>58 >>59 >>60 >>82 皆様ご協力ありがとうございます。うーん、仮想世界の戦闘は難しいですね--;
お陰様で、何となく自分の中でのイメージみたいなものは固まってきました。
多分
>>82様の見解をそのままパ○らせて貰うことになると思います。
>>64 なるほど……ジ・エッジは作戦通りになったんですね。
参考にさせていただきます。
以下チラシの裏
以後飲酒しながらSS書くのは自粛いたします。
やっぱり素面のときに推敲し直さないとダメですね(ぉぃ
こんな私ですが、今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m
>>89 飲酒しながら書いてたんかいw
何はともあれ後編をめちゃめちゃ楽しみにしてます
>>89 おまいさんの続編を初めとするこのスレのSS
VOE
流離う翼
デス種学園
深夜のアニメ版黒猫
少し良くなってきたかもしれないエウレカ
これが俺の一週間の楽しみの全てだ
特にPPはこのスレで一番最初に読んだってこともあって思い入れが深いから毎回ハァハァしてるお
>>89 PP戦記毎回楽しませてもらってます。
一読者が言うのもなんですが、連載ペースなんぞ気にせずに
作者様の納得いく作品に仕上げてください。
と言いつつ後編が早く読みたくて仕方ないわけですがw
誰もいない、こっそり投下するなら今のうち。
今月は忙しくてなかなか続きを書けませんでした。orz
そしてやっぱり話が進まない……
95 :
1/9:2005/12/20(火) 04:25:56 ID:???
連合艦隊旗艦ヨークタウン――
「スカイアイより入電、目標は想定のコースを進みオーブ領海外へ出ました。
距離30で第1戦ラインに到達。 オーブ艦隊も領海警備のため展開しています」
「ダガー第一、第三中隊発艦完了、第二中隊も発艦準備を終了し予備兵力として待機中」
「スピアヘッド隊もいつでも出せるように準備急げ!」
艦の中枢たるCDCは刻一刻と迫る戦闘に向けて艦隊指揮に追われている。
その艦隊を統べる艦隊司令はモニターの海図を睨んだまま傍らの副官に話しかける。
「怖いぐらいに順調だな」
「はい」
モニターに映し出されているのは、作戦領域上空の早期警戒機から送られてくるリアルタイムの敵情報だ。
敵を示す赤いマークがオーブ領海を越え、味方の青いマークが徐々に包囲していく。
現在、連合艦隊は大きく二つに分けられている。
スペングラ―級MS搭載艦2隻を中核とする一群は敵艦へ左舷後方から、旗艦を含むもう片方の艦隊は敵艦の前面から接近していく。
目標はオーブ領海が壁となり、連合軍に挟撃される形となる。
96 :
2/9:2005/12/20(火) 04:27:11 ID:???
「“あれ”の準備はどうだ?」
「まだ調整に手間取っている様です。 なにぶん今だ試作段階のモノですから」
「早く終わらせろ。 調整が終わっても敵がいないでは話にならん」
司令はニヤリと笑う。
その顔は絶対の自信に満ちていた。
圧倒的な戦力差と周到に準備された作戦、どう考えても負けるはずは無いのだ。
司令の自信も当然のもの……
その時、モニターに赤い光点が一つ増えた。
「敵艦よりMS1機発進! ダガータイプです!」
「ダガータイプ? ザフト正規軍のものではないようですが?」
「大方傭兵だろうが……運の悪いヤツだ」
予想外の事だがたいした事ではない、作戦に影響は無い。
むしろザフトに雇われた哀れな傭兵に司令は同情してやる。
予定外なのは傭兵の方だろうから。
「艦隊前面にアンチビーム爆雷撒布。 MS隊は攻撃開始、敵のダガーLは叩き落とせ。
相手との距離に注意しろ、陽電子砲の射程ギリギリを維持するんだ!」
司令は部下への指示を出すと一呼吸いれる。
そして今度は命令ではなくCDC要員全員へと声をかける。
「よし行くぞ! 各員、訓練の成果を見せてみろ!」
Gundam Seed Injustice 第4話『オーブ沖海戦(前編)』
97 :
3/9:2005/12/20(火) 04:28:44 ID:???
戦場に飛び出したシンが見たのはミネルバを取り囲もうとする連合軍。
そしてミネルバを監視するかのように自国領海にとどまるオーブ艦隊の姿。
「MSだけでも20機以上……逃げる事も出来ないか」
2個MS中隊、計24機。
ほぼミネルバを包囲し、鼠も逃さない陣形でミネルバを沈めに優々と接近してくる。
絶望的な状況だ。逃げる事も出来ず、遅かれ早かれ袋叩きで殺される。
なんとも糞ったれな戦場だった。
「来た……」
発艦してきたシンに、ダガーL2機が編隊を離れて襲い掛かってくる。
連合MSはすべてシンと同じ、ジェットストライカー装備のダガーLだ。
もっともシンのダガーLは自分に合わせて改良してある。
OSをコーディネーター用に変え、装備も正規品とは違う。
大きな違いはその武装だ。
腰のビームサーベルを外し、側部腰アーマー形状を改良して各種グレネードを両腰に2個ずつ装備する。
さらに後ろ腰には予備のビームカービンを備え付けていた。
また両腕にハードポイントを付け、そこにビームガン、サーベル両用の隠し武器を装備しそのまま使用できる。
そしてそれらの武器の取り回しをよくするため、アンチビームシールドは一回り以上小さい。
このように武装面では連合軍所属機と全く違う、ただ機体性能自体はバランスを重視して手を加えていないのでオリジナルと差は無い。
「くっ!」
シンはダガーLがしきりに撃ち出してくる閃光を、機体を捻り回避する。
ダガーL2機は1機が牽制をしつつ、もう1機の射線へと次第に追い込む。
その1機も常にシンの死角に回り込もうとする相互に連携した巧みな攻撃だ。
シンもそれを分かっているので2機に手に持つビームカービンを撃ち込み連携を乱す。
もつれ合うように戦う3機のダガーL、性能が同じで正面から戦えば機数が多いほうが有利だ。
<アスカ機、ザクの発進が遅れています。 もう少し踏ん張ってください>
開きっぱなしの回線からMS官制の指示が聞こえる。
だが管制官の指示など多数の敵に囲まれ、援護も無いこの状況で全く意味は無い。
それに味方が1機や2機増えたところで何が変わると言うのか。
「この程度っ!」
ビームがシンのダガーLの装甲をかする。
まだ戦闘は始まったばかり……
98 :
4/9:2005/12/20(火) 04:30:20 ID:???
ハァ、ハァ、ハァ…………
荒い息、はち切れそうな位に鼓動する心臓。
時折
ズンッ!
ズンッ!!
と船体に響く爆発音。
「ザク、ブレイズウィザード装着完了しました! グゥルも後少しで!!」
「グズグズするな! 早くグゥルを準備しろ! 今外にいるのは1機だけなんだぞ!!」
そしてそんな格納庫の喧騒さえ耳に入らず。少女――
ルナマリア・ホークはただ1人愛機の狭いコックピットで怯える……
何も今日が始めての出撃ではない。アーモリーワン、ボギーワン追撃戦、そしてユニウスセブンでも戦った。
しかしそれらの時と今回は決定的に違う。
絶望的な戦力差、生きては帰れないだろう出撃……
まだ経験の少ない彼女が恐怖に竦むのも当然の状況。
<グゥル、カタパルト、発進準備完了。 ルナマリア機、発進準備に移ってください>
<…………お姉ちゃん……必ず生きて帰って>
ルナマリアをハッとさせる妹の声。
通信の最後に付け足したその小さな声は、死地へ赴く姉を思うメイリンの心痛。
「大丈夫よ! 連合軍なんかみんな私がやっつけちゃうんだから!!」
恐怖に振るえそうになる自分の声を必死に隠し、ルナマリアは答える。
99 :
5/9:2005/12/20(火) 04:31:42 ID:???
この世でたった2人の姉妹。
いつも自分を慕ってくれる妹に、自分の弱いところを見せるわけにはいかない。
ルナマリアはいつもメイリンにとって強い姉で在りたかった。
(生きたい! 私はこんなところで死にたくない! メイリンを死なせたくない!!)
胸の奥から湧き立つ強烈な衝動、それは潰れそうだった心を奮い立たせる。
『ルナマリア、大丈夫か?』
突然レイからの通信が入る。
通信モニターから見えるレイはいつもと変わらず無表情だ
こんな状況でも眉一つ動かさないその顔、いつもはつれなくて面白みに欠ける。
しかし今、そんなレイの態度になぜかルナマリアを安心させた。
そんな事で安心した自分が恥ずかしく、ルナマリアはそれを気取られないように軽口を叩いた。
「レイ、誰に言ってるつもり? 私を心配する前に自分の心配をしたら」
『大丈夫そうだな、それならいい。 ルナマリア、出たら俺と2人で組んで戦闘をする。
俺がインパルスで前に出る。 ルナマリアは後方から援護をしてくれ』
「分かったわ、任せて」
『それと…………』
「まだ何かあるの?」
そこでレイは一つ言葉を区切り、その仏頂面を崩し彼がめったに見せない穏やかな表情を浮かべる。
『必ず生き残れ、どんな生だろうと、生きているということはそれだけで価値がある。
明日があるということだからな』
ルナマリアは思わず唖然としてしまった。
表情もだがそのセリフは普段のレイからは想像できないものだったのだから。
だがルナマリアは言葉の意味を理解すると顔を綻ばせる。
「もちろんよ! レイ、あなたもね!」
そう答えたルナマリアに、レイは小さく微笑んだ気がした。
100 :
6/9:2005/12/20(火) 04:35:11 ID:???
「ぐうぅっ!」
シンは連合機2機からの執拗な攻撃を高速でのランダム機動で回避した。
ランダム機動の急上昇に急下降、急停止と急加速で強力なGがかかる。体が悲鳴を上げ、気を失いそうだ。
シンもただ回避している訳ではない。
常に相手に対して有利な位置へと回り込もうとしている。
連合機もその行動を理解していているから、彼らもまたシンを逃がさない為に高速での戦闘を余儀なくされる。
数的不利を補うため逃げながらの高速戦闘――
連合機はシンの思惑に乗ってくれた。
我慢比べ、後は相手パイロットより自分の体が持つ事と自身の腕前を信じるだけ。
「もらった!」
シンを追走していた連合機の1機が、高速機動に耐え切れず思わず安易な動きをしてしまった。
シンはその隙を逃さず、一撃でコックピットを撃ち貫く。
ダガーLは一瞬、身震いし爆散して海面へと消えた。
僚機をやられ優位を崩されたもう1機は、それでも落ち着いて戦法を変えた。
連合機はビームカービンを連射してシンとの距離を取ろうとする。
シンもその射撃を落ち着いて避けつつ、距離を離されないようにしながら隙を窺う。
逃げる連合機にシンが止めを刺そうとしたその時、シンは自分の背後にゾクリとした嫌な感覚を感じた。
慌ててスラスター、ブーストを全力で吹かし、機体を半ロールさせると横へと逸れる。
それとほぼ同時に、寸前までシンが占守していた空間をビームの閃光が駆け抜けた。
シンが振り返った先には、新たにダガーLが2機。
「なんて間抜けだ、俺は!」
僚機をやられた連合機は眼前の敵を手強い相手だと判断し、誘い込んで味方と包囲する事を選んだのだ。
敵にまんまと填められた。
前の敵に集中し、後方確認を怠った。
たったひと時だろうが敵が圧倒的多数である事を忘れかけていた。
頬をつたう冷や汗を感じながら、シンは自分の迂闊さを呪う。
101 :
7/9:2005/12/20(火) 04:36:14 ID:???
完全に包囲されていた、シンは先ほどの手は使えない。
<ザク、インパルス発進完了。 アスカ機は、そのまま単独での防空戦闘を続行>
「援護は無しか……チッ!」
予想通りだが無常な管制官の言葉。
シンは包囲した連合機からの攻撃を避け、あるいはシールドで防ぎながら考える。
連合機は絶えずにシンへ火線を送ってくる。連合軍らしい見事な連携。
だがただ1機、なかなか有効打を与えられない事に苛立ってか、ビームカービンを連射し無駄弾が目立つ機体がある。
最初に戦い、僚機を撃ち落したその相手だった。
「やってやるさ……」
感覚が研ぎ澄まされていくのが分かる。
今からやる事は賭け以外の何者でもない。何かへまをしたり、想定通りに行かなければお陀仏だ。
シンは口元が自嘲気味に歪むのを抑えられなかった。
その間にもシンを取り囲んだ連合機はしつこく回避する敵を撃ち落すべく、攻撃を続ける。
シンは3機の敵機の火線を回避するため、ロールをしながら上空へと逃れる。
一閃――
ついに連合機のビームがシンを捉えた。
当たった場所は右手に持つビームカービン、機体に損傷は無かったがビームカービンが誘爆してシンのダガーLは大きくバランスを崩す。
そのちょうど真後ろ、シンからは完全に死角になる位置にいた連合機パイロットは歓喜した。
たかが1機、しつこく逃げ回りあまつさえ僚機まで落としてくれたその相手が、無防備に背中を向けていたのだ。
残り少なくなったエネルギーを節約するためビームサーベルを抜き、一気に接近し切りかかる。
死角をつき、武器も持たぬ相手――
連合機パイロットは勝利を信じて疑わなかった。
102 :
8/9:2005/12/20(火) 04:37:36 ID:???
その時、連合機パイロットには何が起きたのか分からなかった。
切り伏せようと相手の目前まで接近した、まさにその時。
死角だったはずの敵が、まるで初めからすべてそ分かっていたかのように素早く振り向いた。
そして何も持っていなかったはずの腕からはビームサーベルが――
『なぜだ!』
連合機パイロットはその身をビームサーベルに焼かれ、意識が消えうせるその瞬間まで疑問を抱いたままだった。
ビームサーベルでコックピットを貫かれ、パイロットを失ったダガーLがゆっくりとシンの機体から離れて海へと向かって落ちていく。
その姿を最後まで見届けることなく、シンは後ろ腰から予備のビームカービンを抜いて荒い息を吐いた。
「ハァハァハァ……クソ! こんなこと、命がいくつあっても足りやしない」
わざと隙を作り、敵が釣られて飛び込んだところをカウンターで仕留める。
エネルギー残量が少なく、倒せない事に焦っていた敵は見事に罠にかかった。
結果はほぼシンの思惑通りに進んだ。
だが、わざと自身のビームカービンを撃ちぬかせることや、前も警戒したまま後ろの敵をギリギリまで引き付けること
神業とも言える技量、何か一つでも上手くいかないと失敗するそれは、シンの精神と労力を大きく削った。
またやれと言われて出来るものでもない。
103 :
9/9:2005/12/20(火) 04:39:26 ID:???
間抜けを叩き落とした後、シンはすぐに追撃が有るだろう事を予想して身構た。
だがいくら待っても攻撃が無く、逆に残っていた連合機2機はシンを一見すると離れて行く。
遠く、ミネルバに取り付いていた機や、同じく防空戦闘をしていたインパルスとザクの方の機体も離れて行くのが見えた。
「どういうことだ……?」
ミネルバ隊も引いていく敵に呆気に取られ追撃をしない。
いっとき、戦場に奇妙な静けさが漂った。
連合軍が圧倒的に押しているにもかかわらず、諦めた訳では無いことは戦っているシンにはよく分かっている。
それだからこそ連合の動きは不気味だった。
<12時方向、連合艦隊に正体不明機! MS隊は注意してください!!>
シンは思わず目を疑った。
遠くからでも確認できる。前方の連合艦より巨大な何かがせり上がってきたのだ。
MAだろうそれの登場はこれからが本番だという事を告げていた。
To be continued......
お目汚しすみませんでした。
本当は全部書いてから上げようと思ったけど、結局区切ってしまったorz
後編は今年中には上げたいと思います。
言い訳ばかりですみません。
拙い文章ですがお願いします('A`)
Injustice作者様GJ!
シンが強いね。ダガーLでここまでやるか!
でも次のMAはどーすんだろ。まるで先の展開が読めないw
ご自分のペースで頑張って下さい。
本編ではキラが鬼のように強かったが
これはシンが鬼のように強くなってるだけだな
ひいきする対象を変えただけの駄作
量産型で頑張るってーのはやっぱ燃え燃えッスね。地味に改造してるけどw
えーと、一つ突っ込み。
CDCではなくてCIC(Combat Infomation Center)では?確かにDC(Direction Center)って言葉もあるけど……
age
>>107 空母のCICにあたる設備は戦闘指揮センター(Combat Direction Center)
なので、CDCであってるはずです。
分かりやすくCICにしようかとも思いましたが、正しい方のCDCにしました。
「うげぇ・・。スーツ苦しい・・・。」
「我慢しろ、ジョー。ちゃんとしたパーティなんだからな。」
ネクタイを今にもはずしそうなジョーお兄ちゃんをたしなめるハイネお兄ちゃん。
そう、今日はギルパパ主催のクリスマスパーティなのである。
大事な作戦を前にどうかと思うが、楽しいからモーマンタイ。
ミネルバのメンバーも呼ばれていたのだが、何でもギルパパ曰く。
『せっかくのパーティに軍服ではつまらないだろう。』
とのことなので、全員正装。皆で服を探して大奮闘するしまつ。
ステラ達はハイネ隊の舞台衣装からちょうどいいのを見つけてきたらしい。
お兄ちゃんのスーツはなんとなく『入学式』っぽいけど、ステラのふわふわのドレスはそりゃぁもう愛らしい。これって萌え?
スティングのスーツはカッコいいのだが、アウルの野郎のタキシードはまるでピアノの発表会だ。
やーい、やーい、童顔。童顔。
「そう言うお前だって胸が小さいくせに無駄に露出度の高いドレス着やがって・・。」
「アウル、人の一人称につっこむのはマナー違反だとマユ思うよ。」
私の今の格好は背中の大きく開いたドレスだ。
ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!むーねーがーちーいーさーくーてー!!なーにーがーわーるーいーか!
『大丈夫だぞ、マユ。最近は胸は小さいほうが良いって人が結構いるから。』
シンハロのちっとも嬉しくないフォロー。
「うれしかないわっ!そんな限られた人種に好かれても!」
『でも、マユの存在意義のひとつってそれだと思うんだけど。』
「成長したら私の存在意義は減るの?!」
二人がギャーギャー騒いでいると、向こうの方から駆け寄ってくる影が一つ。
「アスラーン!」
ミーア・・ってここじゃラクスだった。淡い青のドレスを着ている。
「ミ・・・・ラ、ラクス!!」
アスランお兄ちゃんが抱きつかれて途端に真っ赤になる。
「あー!皆!!生ラクス様!」
「ホント?!えーっと携帯携帯・・。」
「こらっ・・、騒いだら失礼だろ・・・!」
騒ぐハイネ隊の皆、それを見た途端ミーアお姉ちゃんの顔色が変わる。
「アスラン、すみませんちょっとこっちに・・。」
そう言って私達から離れるミーアお姉ちゃん。
「あっ!!いなくなちゃった!ちぇっ!」
「まぁまぁ、きっと二人になりたかったのよ。そっとしときましょ。」
あくまでほのぼのとした会話を続けるハイネ隊の皆。
ちょっと胸が苦しくなった。
ーーーーーー三十分経過
・・・・・・・・あー、暇である。
とりあえずギルパパにひっついてお偉いさんに挨拶はしたが、それが終わったら暇である。
これは立食パーティで、まぁ大人はお酒を飲んでそれなりに楽しんでいるのだが、お子様はつまらない。
食べるにもお腹はもういっぱいだし(何気にまだ食べてるルナお姉ちゃんとステラって化け物?)
踊るにもぶっちゃけ社交ダンスなんてわからん。ウリナ○くらいでしか見たことないし。
・・・・・・スティングとメイリンお姉ちゃんは何やらバルコニーが開いてたのでそこに出たらしい。
二人ともー、そんなラブラブしてると死亡フラグがたちますよー。
そんなことを言いたくなったが無粋なので言わない。
「はぁ・・・。」
隣にアウルが座っていた。どうやらこいつも暇らしい。
「大人ってさぁ、分けわかんないよな。」
アウルの視線の向こうには大量に女性の電話番号やらを聞いてるネオ・・もといムウ・ラ・フラガの姿が。
あぁ、こいつただいま絶望中なのか。
「・・・・・オーブの元五大氏族のうちの一つにはさー、こんな言葉が伝わってるんだって。」
「?」
「そんな大人、修正してやる!!」
ーーーーさらに十分ほど経過。
ネオがアウルに連れ出されてから結構たった。
さて、次回は「マユデスサスペンス劇場 恐るべき子供達」か。
向こうではハイネお兄ちゃんが何やら人に囲まれてる。あぁ、そういやフェイスだった。
ようやくおっさんおばさん達から開放されたらしく、また一人になると今度は同年代の男の人が。
あー、もしかして同期なのかなー、そんなことを考えていると・・・・。
フライングかるま。そんな単語が浮かび上がる。
なんとそのハイネお兄ちゃんと同期と思わしき人にカルマがフライングアタックしたのだ。
急いで他のメンバーが駆けつけて、その人に謝り倒すわカルマをなだめるわ。
カルマは完全に酔ってるらしく何やら泣いている。
どれどれ・・・・・と、耳をすませると・・・。
「こら!!どうしてあんな事したんだ!」
「ハーイーネーがー!」
「ハイネが?」
「ハーイーネーがーはーかーらーれーちゃーうー!!」
「おい!お前と良く似た名前の人とハイネは違うから!坊やじゃないから!落ち着け!」
「坊やーは良い子だ♪ねんねしなー♪」
「歌うなのまねこ!!2チャンネラーの総攻撃でも受けてろ!!」
あ、そうかー。確かにこのシチュはそれっぽいなー。
特攻するんだ。ハイネお兄ちゃん。木馬に。
あれ?でも木馬がないから・・あー、あのでっかいMSに特攻するのか。
そして無駄死。
Injustice作者様乙です! 待ちわびてましたよー!!
今回の戦闘シーンは、丁寧に書かれながらもだらだらせず、テンポよく書かれてたと思いました。
そして、シンの緊張感溢れる様子がひしひしと伝わってきました!GJです!!
でも、本編のキラみたいな理不尽なほどの強さはないと感じましたけどね、自分は。
現に自分の心身の限界ギリギリな戦いっぷりでしたし。 窮地に追い込まれたりもしてましたしね。
援軍もなしに孤独に戦うシンの、他の作品にはない異質さに目を惹かれます。
これからも頑張ってください!
>>110-111 楽しそうで結構、結構。メイリンとスティングが仲良くしてるのが好きな俺がいる。
アウルもちょっとは救済されますようにっとw
ほのぼの作者様GJ!
こういう季節ネタは、ほのぼのならではって感じでいいですねw
ってか、オーブの元五大氏族は何を伝えてますかwww
つまらないSSはNGにするか
胸くそわるい
どうぞご勝手に^^
読みたくないものを読まないのは自由だわな、わざわざ言うことじゃない
フランスの作家ダニエル・ペナック曰く。読者の権利10ヶ条。
読者には、読まない権利がある。
飛ばし読みする権利がある。
最後まで読まない権利がある。
読み返す権利がある。
手当たり次第ジャンルを問わず読む権利がある。
どっぷりつかる権利がある。
どんな場所で読んでも良い権利がある。
拾い読みする権利がある。
声を出して読む権利がある。
そして、感想を書かず、読んだ後に黙っている権利がある。
ま、好きに読めや。媒体が本でなくネット上の掲示板でも、小説でなくSSでも、同じようなもんだろ。
ただ誹謗中傷する権利は、彼も認めちゃいないからさ。
新シャア板のSS系スレを流浪してきた嫌われ者の荒らしでも流れ着いたかねぇ
お前ら職人さんが投下しにくくなるから余所逝け
単発設定小話 「マユとアーサーのMS&MA考察」
アーサー「とゆうわけで。どうだろうマユ、第1クールまでの機体はなにが印象に残ってる?」
マユ「・・・・・・それよりも、単発って1クール分もやってないような気がします」
アーサー「・・・それは筆者が脈絡もなく思いつくままに筆を走らせているからだな」
マユ「ちゃんと描いてよ!」
アーサー「いや、筆者に言わせると基本的な流れはTV版どおりだから、異なる点をなるべく書こうとしてるようだよ」
マユ「そうなの!?・・・」
アーサー「大丈夫だって。ラストは各キャラをちゃんといくつくところへいかせるつもりらしいから・・・」
マユ「・・・(ほんとかよ?)」
アーサー「えー、コホン。閑話休題。・・・でどの機体が印象深いんだい?」
マユ「そうですねー・・・ザ、ザムザザー?・・・・・・かな?」
アーサー「こりゃまた・・・って、ぅおい!直近で出てきた機体ぃ!?」
マユ「そりゃぁね。私のSEEDを覚醒させるきっかけを作った機体だもの。当然じゃないですか?」
アーサー「ふむぅ。ま、いいか。ではザムザザーの特徴を」
マユ「はい!・・・ザムザザー、YMAF−X6BDは地球連合軍が開発した巨大なMA、その大きさは
インパルスガンダムの数倍もあり、現状存在する機動兵器の中ではもっとも大型の部類に入る。
爪や大型ビーム砲などその攻撃力は凄まじく、圧倒的な破壊力でザフトにせまる。・・・・・・・
と、公式HPに書いてありました」
アーサー「・・・まぁ確かにそうなんだけど、1点かかれていないことがあるね。わかるかい?」
マユ「えーと・・・・・・ああ、そうそう。陽電子リフレクター!」
アーサー「その通り!むしろこれが一番の特徴であるはずなんだよなぁ・・・」
マユ「タンホイザーをはじいちゃったもんねー。すごいよね、あのリフレクターって」
アーサー「公式HPを見ると陽電子リフレクターはゲルズゲーのほうに書かれているようだね」
マユ「・・・なんだかなぁ」
アーサー「ま、ま・・・・・・ほかの機体はどうだろう?」
マユ「・・・せっかくだからオリジナルでだしてるアプレンティスにしときます」
アーサー「ファントム・・・じゃないボギーワン所属の謎のMSだね」
マユ「ドラグーンを12基装備しるんでしたっけ?・・・数はともかく、じょうご型って描写してるよね?」
アーサー「うん、確かにそう描写してるね・・・」
マユ「・・・・・・ファンネル・・・・・使いたかっただけだろ?しかもキュベレイの・・・・・・」
アーサー「ええぇっ!そ、そんな、わけは・・・・・・つ、次いってみようかぁー!」
マユ「・・・(ち、逃げたか)」
アーサー「あとは、ど、どう?」
マユ「まだフリーダムでてきてない気がするんですけど・・・」
アーサー「フリーダム、フリーダムルージュに期待を寄せる・・・そんな時期が僕にもありました・・・・・・」
マユ「・・・・・・あんな国の代表はどうでもいいんです!もう!それよりも副長はないんですか!?」
アーサー「僕ぅ?僕はもちろんグーンに決まってるじゃないか!」
マユ「は・・・・・・?・・・出てきてないじゃん!だめよ、そんなの!」
〜ブリーフィングルームの扉が開く〜
タリア「アーサー!!あなたでしょ!?勝手にグーンを搬入したのは!」
アーサー「フォンドゥヴァオゥ!」
完
おおおお! これがハイネ隊ですか!!
これで彼らの活躍がより楽しく想像できるようになりますよw
…右端のゼロ君らしき人物に胸があるように見えるのは気のせいでしょうか!
気 の せ い で す 。
そんなハイネ隊に「実は女の子だった。」なんて美味しい設定は微塵もありません。
ただ「女の子だったらよかったのに」と言う無常な設定だけがあります。
>>118 なんだこいつw キモッwwww
最後の2文だけでいいだろそれw
お前固定になれよ。NGにぶちこんでやるからよw
とりあえず
つ旦~旦~旦~旦~旦~旦~旦~旦~旦~
オチャドゾー マターリ行きましょう
え〜。本来ならば20話、ベルリン戦となるはずのところ、なのですが……
以前言っていた、番外編を挟みたいと思います。
クリスマススペシャル、と言うにはちと風情もないのが、少し心苦しいのですが。
――時間は大幅に遡って、戦争の始まりの事件。
隻腕マユの第一話冒頭、街灯モニターの向こうで起こっていた、空の向こうの戦争のお話――
――アーモリーワンは、揺れていた。
MSが立ち並ぶ格納庫に、ビームが突き刺さる。機動させる間もなく、爆発するディンやゲイツR。
散発的な攻撃が「その3機」にも向けられていたが、それらは全て空を切り、あるいはシールドに防がれ。
すぐさま反撃を受け、ガズウートが立ち上がる途中で爆発する。
「なんで、あの3機が……!」
「誰が乗っているんだ!? まさか……敵!?」
逃げ惑うザフト兵が、その影を見上げて信じられない、といった顔をする。
そう、炎の中に立ち、堂々と周囲を睥睨する、この大破壊をもたらした張本人は……。
カオス。ガイア。アビス。
ここ、新たに作られた軍事コロニー、アーモリーワンで作られテストされていた、ザフトの新型MS――
PS装甲を備え、圧倒的な攻撃力を持ち。さらには、防衛態勢が整うよりも早い、一方的な不意打ち。
誰一人、この勢いを止めることなど、できそうにはなかった。
「簡単なモンだな、オイ!」
「……つまらない……」
「ねースティング、競争しねぇ? 何機倒せるか」
カオスのコクピットで、拍子抜けしたように不敵な笑みを浮かべるのはスティング・オークレー。
ガイアの中、暗い顔で吐き捨てた少女はステラ・ルーシェ。
アビスを操りつつ、嬉々として撃破数競争を持ちかけたのはアウル・ニーダ。
どの顔も、みな若い。
と――唐突に、彼らのところに、飛来してくるものがあった。ミサイルだ。
咄嗟に彼らは散開して避ける。避けながら、攻撃をしかけてきた者の方を見る。
それは――小さな、歪な形をした戦闘機。
「せ、戦闘機!? コロニーの中で!?」
「……なに、あれ?」
「き、聞いてねぇぞ、あんなの!」
彼らが唖然として見守る中、それは次々に空飛ぶ灰色の塊と合体して、腕がつき、足がつき、そして……
五体を揃えたモビルスーツの姿に、なる。
最後に、2本の剣を備えたバックパックと合体し、MSは赤と白に染め上げられる。PS装甲だ。
出現したそのMSはその巨大な剣を振り上げ、未だ動揺醒めぬスティングたちに斬りかかる。
そのパイロットの表情は、ミラー仕立てのバイザーに隠されて見えない。
しかしそれでも、隠し切れぬ喜びと狂気とが、声に滲み出る。
長らく待ち望んだこの機会に、我慢しきれずに、彼は叫ぶ。赤い目を光らせ、口の端に笑みさえ浮かべて。
「――また、戦争がしたいんだなッ! あんたたちもッ!」
――赤服の『狂戦士』、シン・アスカの、初陣である。
マユ ――隻腕の少女―― 番外編
第零話 『 怒れる瞳 』
――新造コロニー、アーモリーワン。プラント主導で作られた、天秤型宇宙コロニーである。
2年前に終結した、プラントと地球連合の間で争われた大戦。
その過程で――いくつかの宇宙コロニーが損傷し、あるいは破壊されていた。
それによって宇宙に溢れることになった難民の扱いは、連合・プラント双方にとって頭の痛い問題であった。
しかし頭の痛い問題であると同時に――そこにあぶれた優秀な人材、経験豊富な労働者は、宇宙開発上重要な存在。
上手く有効活用できれば、その価値は大きい。
そこで、戦後の復興計画の一環として、ここL4宙域に新たなコロニー群を作る計画が立てられたのだ。
アーモリーワンは、その計画の第1号である。
周辺にはいくつか建設途中のコロニーが浮かび、中には植樹も終わり大気循環の始まっているところもある。
だが今のところ、人が住んでいるのはここアーモリーワンのみ。それも2つある大地の片方だけであった。
新興コロニー・アーモリーワンは、また同時に、軍事コロニーでもある。
この新たなコロニー群を災害や海賊から守るためのザフト軍駐留基地が、まず最初に築かれたのである。
今はまだ、先遣隊として赴任した少数の軍人たちと、その軍人の生活を支える僅かな民間人しか住んでいない。
しかしいずれは基地の規模も拡大させ、街も大きくしていく予定であった。
――そんな開発途上にあるアーモリーワンが、この日はいつになく賑わっていた。
ザフト兵など限定された人々による試験的な運用を終え、本格的な難民受け入れを目前に控え。
プラント主催で、大々的な式典が行われることになっていたのだ。
実際に移住を予定している人々だけでなく、復興計画に関係した各国からの代表使節や、式典見物の観光客。
まだ真新しさの残る宇宙港は、アーモリーワン始まって以来の人出にごった返していた。
そんな宇宙港で、混雑を避けVIP用の通路を行く一団があった。
その中心にいるのは未だ年若い金髪の娘。ズボン姿だ。すぐ傍には大きなバイザーをした、髭面の青年。
2人の周囲を取り巻くように、SPらしき黒服の男たちが控える。
「……服はそれでいいのか? ドレスも一応持ってきているよな?」
「いいだろう? このままで」
「しかし……」
「そういう演出が必要なことがあるのは知っているがな、今日はむしろ、妙な第一印象は持たれたくない。
まずは議長に、ありのままの私を知って欲しいんだ。式典本番の時には、ちゃんと着替えるさ」
金髪の娘の言葉に、明らかに似合っていない髭を蓄えた青年は、肩をすくめて納得の意を示す。
彼らはこれから会うことになっている相手のことで、頭が一杯で……
――だから2人は、VIP用通路の眼下、込み合う一般用通路にいるその3人には、気付きもしなかった。
――アーモリーワンの市街。
真新しくまだ小さな街ではあったが、今日は人通りが多い。事情は宇宙港と一緒だ。
式典を間近に控えて多くの店が開店し、以前からいるザフト兵たちにとっても目新しいものが多い。
外から来た来客たちと合わせ、大勢の人々がウィンドウショッピングを楽しんでいた。
そんな華やいだ雰囲気の街の中を、歩く若い3人組。男2人に女1人。
パッと見た所、年齢以外に共通点はない。
どうやら目的らしい目的もないらしく、街の店を覗くともなく覗き、冷やかして歩いていた。
と――突然、その少女は小さく笑いながら、クルクルと回りだす。
歩く速度を少しだけ速め、踊るように、軽やかなステップを踏みながら。
金色の髪と白いスカートが、回転と共にふわりと広がる。
どうやら彼女、店々のウィンドウに映る自分の姿が楽しいようで。罪もなく笑いながら、回り踊る。
「……なあスティング、ステラはアレ、何やってんだ?」
「おおかた、『浮かれるバカの演出』……じゃねぇの?
お前もやれよ、アウル。バカの真似を、さ」
置いていかれた格好の男2人。青い髪のアウルは呆れた声を出し、緑の髪のスティングは皮肉な笑みを浮かべる。
確かに今のこのアーモリーワンの街は、そんな浮かれた人間をも許容するような雰囲気があった。
少女はなおも、踊りながら街を進む。いくつかの店の前を通り過ぎ、いくつかの横断歩道を渡って。
だが――いささかステラは、浮かれ過ぎていたようだった。
とある小路との交差点で、足早に出てきた人影とぶつかりあう。
「……あッ、すいません!」
「…………」
謝る青年。少女はその声にようやく相手を認識したのか、フラリと振り返る。
そこに居たのは、紙袋一杯に荷物を抱えた、浅黒い肌をした青年だった。
青年はもう一度軽くステラに会釈すると、そのままその場を立ち去る。ぼんやりと見送るステラ。
互いに、ちょっと出会い頭にぶつかっただけのことだ。すぐに互いのことなど忘れてしまった。
後にこの2人、再び顔を合わせることになるのだが……しかし、互いに互いをすっかり忘れていた。
捕虜と、捕虜を捕らえた戦艦の下っ端整備士。まあ、覚えていたところで、大した関係ではない。
紙袋を抱えた青年を見送った彼女は、少しだけぼんやりとその場に立ち尽くして。
ふと気付いて、後ろを振り返る。一緒に来た2人。少し遅れてついて来ているはずの、2人。
「……スティング? ……アウル?」
彼女は小首を傾げ、2人の名を呼ぶ。しかし答える者はない。
彼女の後方――大勢の人で賑わうメインストリートに、その2人の姿はなかった。
忽然と、消えうせていた。
「てめぇ――人のムネ揉んでおいてイイ度胸だな!? このラッキースケベ野郎が!」
「わざとじゃねぇって言ってるだろ!」
「や、やめてよシン。もうあたし、気にしてないから……!」
――アーモリーワンの街の一角。
開発途上のこの街は、メインストリートから横道1本入っただけで一気に人気が無くなる。
空き店舗に挟まれた狭い道で、4人は2組に分かれて向き合っていた。険悪な空気。
片方は、先ほどメインストリートで踊っていた少女と一緒にいた2人。スティングとアウル。
もう片方は、年齢としてはちょうど同じくらいだろうか、男女のカップル。黒髪の青年と、赤い髪の娘。
黒髪の青年は、緑の髪の青年に掴みかからんばかりの剣幕で。
赤い髪の少女は、顔を赤らめつつもそれを止めようとしていた。青い髪の少年はどこか楽しそうに傍観中。
金髪の少女が、浅黒い肌の青年とぶつかっていた頃――
こちらの2人も、別の路地から出てきたこの2人と衝突していたのだった。
しかもその際、うっかり、この赤い髪の娘の胸を掴んでしまうというアクシデント付きで……。
「ルナマリアが気にしなくてもな――俺が気にするんだよ!」
叫びながら、シンと呼ばれた青年は殴りかかる。
しかしその顔は、怒りというよりも、歪んだ喜びに満ちている。闘いの愉悦に酔った、歪な笑み。
どう見ても「彼女を辱められたのが許せない」というより、「良いケンカの口実を見つけた」といった雰囲気。
「別に減るもんでもねぇだろッ! このッ!」
「……なあスティング〜、俺も手伝おうか〜?」
「アウルはそこで見ていろッ! すぐに片付けるッ!」
スティングは、叫びながらもその拳を的確に捌く。平手で拳の軌道を変えて逸らし、反撃の貫き手を突き出す。
シンの耳スレスレを掠める、鋭い槍のような一撃。わざと外したのではない、シンが紙一重で避けたのだ。
2人はさらに拳や蹴りを繰り出し合い、捌き合う。街のケンカと呼ぶには高度過ぎる、スピーディな攻防。
一発でも当たれば大怪我は避けられないような連打。しかし互いに、一発のクリーンヒットも許さない。
ニヤニヤと笑いながら見ているアウル、はらはらしながらも見守るしかないルナマリア。
と――その攻防の最中、2人は同時に視界の隅にある人影を察知する。
一瞬にして攻撃を止め、息の合った動きで飛び下がる2人。距離を開けると同時に、その人影の方を向く。
2人が戦っていた路地に入ってくる第三者。治安維持のパトロールか何かなら、面倒なことになりかねない。
――そのように一瞬で思い至り、ケンカを中断したシンとスティングだったのだが……。
「スティング……? アウル……? 何やってるの……?」
それは――1人で先に行ってしまっていた、金髪の少女だった。
追いつかない2人を探しに、メインストリートを引き返してきたのである。
どうやらその少女はこの2人の連れらしい――
そのことは、シンとルナマリアにも容易に想像がついた。
シンは拍子抜けしたような表情を浮かべ、ルナマリアを庇うようにしながら、一歩下がる。
「――なんだ、ちゃんと『彼女』が居たのか。女に餓えて妙な真似したわけじゃ、なかったんだな」
「……! ち、違……!」
慌てて声を上げたスティング。その言い方では、シンの言葉のどこを否定したのか良く分からない。
だがシンは構うことなく。ニヤリと笑うと、言い放った。
「いいぜ。そこの彼女に免じて、許してやる。俺の気が変わらないうちに、さっさと失せろ」
「……! てめッ、何を偉そうに……!」
「スティング、諦めな。時間切れだぜ。そろそろ行かねーと。
そっちの兄ちゃん、機会があったら今度は俺とヤり合おーぜ! じゃーな!」
互角なケンカだったはずのシン。その尊大な態度に、スティングは再びキレそうになったが。
アウルが時計を見ながらスティングを促すと、舌打ち1つ残してその場を立ち去る。
アウルもシンとの再戦を望みつつスティングの背を押し、ステラは状況を理解しないまま、彼らに続く。
メインストリートの人波に消えていく彼らの姿を、シンは馬鹿にするようにヒラヒラと、手を振って見送る。
すっかり見えなくなってからようやく、ルナマリアは彼に喰ってかかる。
「……もうッ、シンったら何してんのよ! せっかくのデートなのに! 明日からしばらく遊べないのよ?!」
「――悪いがルナ、デートはここで終わりだ。急いで基地に帰るぞ」
「え? ど、どういうこと!?」
怒るルナマリアに、しかしシンはきっぱりと言い捨てて。ルナは目をぱちくりさせる。
シンはどこか、楽しそうな表情すら浮かべて呟く。
「あいつの闘い方、素人じゃない。それもスポーツ格闘技でなく、素手で人を殺す訓練を受けた者の動きだ。
俺だって、手ェ抜いてたわけじゃないんだぜ? アカデミーじゃ徒手格闘も1番だった、この俺が。
しかも、それを見ても顔色も変えない仲間が2人もいる。
こいつは――何か起こるぞ。それも今すぐに、だ」
「アイツ、どーやらシロートじゃなかったみたいだなー。ザフト兵かな?」
「ひょっとしたら、俺たちの『ターゲット』のパイロットかもな? だとしたらご愁傷様、だ♪」
「……仕事……」
スティングたち3人も、歩きながら黒髪の青年たちのことを少しだけ思い、互いの顔を見合わせて。
3人の顔が、一気に引き締まる。3人が3人とも、別人のように厳しい表情に。
彼らはいつしか街を抜け、ザフトの基地区画に近づいていた。
もうすぐ、戦いの幕が上がる。
――ザフトの基地区画にて。
周囲に多くの護衛と文官たちを引き連れながら、歩く2人がいた。
黒い長髪の男、ギルバート・デュランダル。プラント最高評議会の、現議長。
金髪の娘、カガリ・ユラ・アスハ。オーブ連合首長国、代表首長。
デュランダルのすぐ後ろには、金髪の赤服の青年。カガリのすぐ後ろには、髭と大型バイザーの青年。
明らかに他の護衛や文官とは別格のこの2人は、しかし黙り込んだまま静かに付き従っていた。
「……すごい基地だな。予想以上の戦力だ」
「ほう、お分かりになりますか、姫?」
「私も2年前は戦場に居た身だからな。こういうことは分かるんだ。
あの緑のは、新型の量産機か? 核エンジン搭載で一時期問題になった『999』と似ているようだが――」
「ご心配なさらずとも、アレはバッテリー機です。これもまた、今回の式典で一般公開する予定でしてね。
ZGMF-X999Aを、ユニウス条約に合わせて仕様変更した量産機『ザクウォーリア』。新たなるザフトの顔です」
「……着々と、軍備は整えているというわけか。ザフトもまた」
基地の中を、議長に案内されて歩きながら、カガリは呟く。
彼らの視線の先にあるのは、格納庫に収められ並べられた新型MS。左右非対称なシルエット。
「このザクも、この基地も、ここに集う兵士たちも。全ては『守るため』の力です。
このコロニー群とて、力なくば守りきれない。そのことは姫もご存知でしょう?」
「だがいささか、守るためだけにしては数が多すぎはしないか? 意図がよく分からぬものも多いし……」
うそぶくデュランダルに、カガリは不信も露わに睨みつける。
確かに――この基地に並べられたMSは、少しその数が多すぎた。
多すぎて、果たして本当に非常事態に即応できるのか? と訝しむくらいに、格納庫にぎっしりと。
しかもその種類が問題だ。空戦用のディンや陸戦用のバクゥ、ガズウート。水陸両用のグーンやゾノまである。
コロニー群の外から来る敵に対する備えとしては、いささか不適切な機体たち。式典用にしても数が多い。
「……まるで、地球との戦争を仮想した、大規模訓練場のようにも見えるぞ。この陣容は」
「ハハハ、これは手厳しいお言葉ですね」
「ユニウス条約でMSの保持数が制限されている中での、この数だ。気づくのは私だけではあるまい。
本気でボケ通すつもりなら、もう少し気をつけた方がいい」
笑って誤魔化す議長に、カガリは直截に警告を発する。議長は完全に白旗を挙げた格好で。
「そこまで言われてしまっては、降参するしかありませんな。
もちろん、こちらから平和を破る気はさらさらありませんが――しかし、有事への備えは必要なものです。
抑止力、という考え方もありましてね。我らが十分に強ければ、向こうも仕掛けてはこないでしょう。
そのようにして守られる平和も、あるのです」
「だからと言って……!」
「宜しければ、あと2つ3つ、我々の『とっておき』をお見せしましょうか?
明日の式典の際、同時に公開する予定の新型戦艦とMSです。
あれこそ、我らの『抑止力』としての力の象徴。是非、姫にはご覧頂きたい」
「新型の戦艦と……モビルスーツ?」
――ザフトの整備兵の服を着た男たちに手招きされ、3つの影が格納庫の裏を駆ける。
いささか場違いな、民間人風のいでたちをした彼らは、スティング、ステラ、アウル。
彼らは議長やカガリたちから建物1つ挟んだだけの距離を、駆け抜け、姿を隠し、周囲を見回す。
やがて彼らが辿りついたのは、1つの格納庫。
同じくザフトの整備兵の姿をした男たちが、彼らを招き寄せ、いくつかのスーツケースを渡す。
当然のような顔をしてそれを受け取り、無言で開くスティングたち。
中から出てきたのは、銃やナイフといった凶器の数々。ステラがゆっくりと、一際大きなナイフを抜き放つ。
3人は互いの顔を見合わせ、頷きあって。
彼らの目の前、格納庫のシャッターが、ゆっくりと上がっていく――
――基地の最深部、水路に面した大型のドック。
そこに鎮座しているのは、見慣れぬ大型宇宙戦艦。美しいフォルム。
「これがザフトが誇る最新鋭戦艦、『ミネルバ』です。現在、最終チェックの真っ最中でありまして。
明日の式典のイベントの一環として、この艦の進水式も行われることになっています」
「ザフト系とは思えぬデザインの艦だな……強いて言えばエターナルに近いか?
……ああ、各部の規格は、確かにザフトのものなのか」
架けられた橋を渡り、艦内に案内するデュランダル。周囲を見回し、鋭い目でその特徴を見極めるカガリ。
多くの護衛や文官はドックの側に残り、金髪の赤服の青年と、髭とバイザーの青年だけが後に続く。
「しかしコレ、全体の設計思想としては、むしろ連合のアークエンジェルを真似ているだろう?
あるいは、我が国のクサナギの影響もあるか。3陣営の優れたところを合わせた艦、とも取れなくもない。
……このミネルバ、設計に関わっているのだな。我らがオーブからの、亡命技術者たちが」
「さて、どうでしょう。その辺りは重要な機密ですので、『ノーコメント』としかお答えできませんが」
「今さら誤魔化さないでも良いよ。そこを責める気もないしな。だが……」
ブリッジに上がるエレベータの中で、カガリは隣に立つデュランダルを見上げる。
「私が今日ここに来たのも、議長との非公式な面談をお願いしたのも……全て、このためなのだ。
我が国でもヘリオポリスの再建計画がある。宇宙難民や亡命コーディネーターの帰る場所を準備している所だ。
だが――その彼らがこのような最重要軍事機密に関わってしまえば、帰るに帰れなくなってしまうではないか!
議長には、切に訴えたい。筋が通らぬ話であることを承知の上で、なお お願いしたいのだ。
彼らが帰国を欲した時に、それらの問題が障害にならないよう、何らかの手を打って欲しいと……ッ!」
「……難しいお話ですね。機密に関わった者の出国を認めぬのは、我らプラントだけの話ではありませんし……」
カガリの絞り出すような言葉に、デュランダルは温和な、しかし含むところのある笑みを浮かべただけで。
エレベーターはやがて停止し、ブリッジへの戸が開く。
「まあ、考えておきましょう。何が出来て何が出来ぬのかも、詳しく検討せねばなりますまい。
それより今は、ミネルバをご覧下さい。艦の性能、差し障りのない所は一通りお見せ致しますよ」
――格納庫は、まさに血の海だった。一方的な虐殺と襲撃。
ステラは無表情のまま大型ナイフを振るって血を払い、アウルは全弾打ちつくした両手の拳銃をほうり捨てる。
「じゃ、行くか」
「ここまでは計画通り、ってね」
「…………」
3人はそれぞれに、格納庫の中に横たわる3機のMSのところに駆ける。灰色の3機。
格納庫に散らばる死体や、負傷し呻き声を上げる兵士たちを顧みることもなく、次々にMSを立ち上がらせる。
ツインアイに、光が灯る。暗い格納庫の中、灰色だった3機に鮮やかな色がついて――!
――カガリとデュランダルがその一報を聞いたのは、格納庫で艦載MSの説明をしている時だった。
予定よりも搬入の遅れていた3機の艦載予定MS。そのことを訝しんだ、そのタイミングで入ったニュース――
彼らは格納庫に最も近い大型モニターのある部屋、すなわちMSパイロットの控え室に入る。
急いで通信回線を、情報の集中しているであろうブリッジに繋ぐ。
「タリア、いやグラディス艦長! 何がどうなっている!」
『……まだ状況は分かりませんが、どうやら何者かにあの3機が奪われたようです。
カオス・ガイア・アビスの3機が、格納庫ごと基地のMSを攻撃している、との情報が』
「…………!」
その報告に、色を失うデュランダル。分割表示されたモニターに、コロニー各所の被害状況が映し出される。
先ほど議長が自慢気に解説していたザクウォーリアたちが、パイロットが乗り込む間もなく撃ち抜かれる。
ディンが、バクゥが、戦闘体勢を取る間もなく撃墜される。
その、圧倒的な破壊をもたらしていた、3機のMSは――
「……『ガンダム』!? フリーダムやジャスティスのように、連合・オーブ系MSの技術を応用した機体か!
まさか議長、先ほど言った、『抑止力としてのMS』とは、これのことか!?」
その特徴的なツインアイとアンテナ類の配置。一瞬で見抜いたカガリが叫ぶ。
デュランダルには、言葉もない。下手な回答よりも雄弁な沈黙。
モニタの向こうでは、カオスはMAとなってディンを翻弄し、ガイアは四足獣形態でバクゥを手玉に取っている。
PS装甲の絶大な防御力と、ビーム兵器を主とした絶大な攻撃力。数の差などものともしない圧倒的な戦闘力。
「あの緑のは空戦仕様、あの黒は陸戦用か。青いのは、どうやら水陸両用か?
……確かにコレは、立派な『力』だな。
だが、強すぎる力は、それ自体が争いを呼ぶんだ!」
「ではアスハ代表は、力など最初から持たぬ方が良いと?」
「我々は誓ったはずだぞ! もう悲劇を繰り返さないと! 互いに手を取って歩む道を選ぶと!
そもそも何故、あれほどの力が必要なのだ! これでは、ヘリオポリスの二の舞に――」
「――流石、綺麗事はアスハのお家芸だなァ!」
怒鳴るカガリを遮ったのは、嘲笑混じりの悪意ある声。怒りというより、侮蔑の色。カガリは驚いて振り返る。
そこに居たのは――パイロットスーツを着込んだ、黒髪の青年。
紅い目が、馬鹿にしきった表情でカガリを見下ろす。口元に、不敵な笑みが浮かんでいる。
「シン! お前ッ!」
「や、やめなよ……」
慌てて声を上げたのは、議長の護衛の金髪の青年。
恐る恐る制止したのは、黒髪のシンの後から入って来た、紅い髪の女性パイロット。ルナマリアだ。
しかしシンは構わず、デュランダルに軽く一礼すると、通信モニターの方に向かう。
「タリア艦長。こちらも出た方が良くないですか?
とりあえず俺は、コアスプレンダーで待機しておきます」
『し、シン!? あなたまだ休暇中じゃ……』
「こんな状態で休暇も何もあったもんじゃありませんよ。では!」
シンはそれだけ言うと、再び議長に一礼して控え室を飛び出して行く。誰にも有無を言わせぬような素早い動き。
ようやく我に返った金髪の青年が、申し訳なさそうにカガリとデュランダルに頭を下げる。
「申し訳ありません、議長。この処分は後ほど必ず。
……それで、失礼を重ねてすみませんが、私も共に……」
「そうだな。彼の判断は適切だよ。レイ、君も着替えて出撃してくれ。
タリア、議長権限で緊急に要請する。ミネルバもすぐに戦闘態勢に入り、事態の収拾に当たってくれ。
あの3機は、可能ならば捕獲したい。不可能ならば、せめて破壊してくれ」
『……判りました。では、インパルスを出しますわよ? 宜しいですね?』
「ああ、仕方ない。今さら機密も何もないからな。噂に名高い『狂戦士』、存分に暴れさせてやれ」
完全にカガリを置いてけぼりで話を進める議長。
レイと呼ばれた金髪の青年は控え室から飛び出して行き、ルナマリアも議長に頭を下げると格納庫へ駆けてゆく。
未だシンからの暴言のショックの醒めぬ様子のカガリに、デュランダルは優しく声をかける。
「本当に申し訳ない、姫。
彼は――オーブからの移住者なのですよ。2年前の戦争をきっかけに、国を離れたコーディネーターで」
「!!」
「よもやあんなことを言い出すとは、思いもしなかったのですがね。
ただ彼は優秀でしたし、政情が落ち着いてもオーブに戻る気はないと言うので、最新鋭機を任せることに……」
「…………」
「先ほど姫が求められたのは、彼のような境遇の者の扱いについてでしょうが……
果たして、彼らは法を曲げてまで国に帰りたいと思っているのでしょうかね?」
デュランダルの説明に、カガリは言葉を失う。
髭とバイザーに顔を隠した護衛役の青年は、そのバイザーの下で、僅かに眉を寄せた。
――アーモリーワン内部で始まった異常事態。その様子を、天秤型コロニーの外側から見ている者があった。
しかし彼らの姿は、誰の目にも留まらない。禁忌の技術に隠されているのだった。
「……どうだい、連中は?」
「始まったようです。しかし少し遅れていますな。予想以上の抵抗に合っているようで」
戦艦のブリッジにて。艦長らしき男と、1人の士官が言葉を交わす。
変わった風体の男だった。
正規品ではない黒い制服。顔の上半分を隠す、ヘルメット状の仮面。溢れる金髪は、軍人としてはいささか長すぎた。
しかしそんな常識外れの格好をしていながら、つけている階級章は正真正銘、大佐のもので。
「じゃ、俺も出るわ。ダークダガー隊と一緒に」
「ロアノーク大佐、御自身が?!」
「元々そのつもりで『アレ』も持ってきたんだしな。イアン、指揮の方、しばらく任せるぜ。
ミラージュコロイド解除と同時に、港湾部を守るナスカ級を撃ってくれ。俺たちも攻撃を仕掛ける」
仮面の大佐は艦長に言い置くと、無重力の中で身を翻す。格納庫に向かう彼の口元が、不敵な笑みを浮かべる。
「しっかし、あの3人が苦戦するとはなァ。2年前の機体で、なんとかなるかねェ」
――薄い雲を抜ける。
ここまで登ってくると、この人造の大地が円錐形をしていることが良く分かる。
強化素材で作られた多層構造の『窓』、天秤型コロニーの円錐を形作る透明の壁が、かなり間近に見える。
隕石や小惑星の衝突も想定して作られているこの『窓』、見かけよりもよほど強靭だ。
戦闘の流れ弾が『窓』にも当たるが、対MS用のビームぐらいで破れるものではない。
眼下の円盤状の『大地』では、未だにザフトの基地区画が炎上している様子が見える。
奪われた3機のMSは、あらかた基地を破壊し終わると、逃走に入った。
逃走と言っても、ここは閉ざされた大地。ただ『外』を目指して走っても、透明の壁に遮られて終わりである。
だから彼らは『上』に向かって逃げた。大地から真っ直ぐ伸びた、大きなシャフトに沿って、重力に逆らって。
円錐形の頂点に当たる部分には、回転の中心軸と、そして外部と出入りする港湾部がある。
おそらくは、そこを突破しようというのだ。
「行かせるかよッ!」
追いすがるのは、ソードインパルスと2機のザク。赤いザクウォーリアと、白いザクファントム。
そう、ミネルバにいた3人である。他のザフトMSは、ここまでの戦いであらかた倒されてしまっていた。
切り立った巨大な山のような、壁のようなシャフトを、蹴るようにして登っていく双方のMS。
……いや、ここまで登ってしまえば、もう遠心重力はかなり弱くなっているらしい。
重く、空中戦向きではないアビスも、スラスター推力だけで宙を舞いながら、追いかける3機に攻撃を浴びせる。
インパルスとザクたちは素早く避けて、目標を捕らえ損ねたビームがコロニーのシャフトに突き刺さる。
「ちょっと、アンタたち〜ッ! 他人のコロニーだと思って、好き勝手を!」
「このままでは……! アーモリーワンが、持たないぞ!」
増えるコロニーの損害に、ルナマリアは怒りの声を上げ、レイもその顔に焦りを浮かべる。
先ほどから無数の流れ弾が、このコロニーのメインシャフトに当たってしまっている。
電気や通信など無数のライフラインが走り、また大地の重量を支えるメインシャフト。
その損害は、コロニー全体の命運にも関わる。自然と、ルナマリアたちの攻撃も控え気味になる。
その隙をついて距離を離し、さらに逃げていく3機。
巨大な円柱の周囲をグルグル螺旋状に登りながらの戦闘は、先ほどからずっとこんな調子だった。
「……だァッ! これじゃ、埒が明かないッ!
メイリン! ブラストシルエットをくれ! 一気にカタをつける!」
そんなジリ貧の状況に苛立ちの声を上げたのは、シンだった。
叫びながら投げた2つのビームブーメランはいずれも避けられ、シャフトに突き刺さって動きを止める。
彼は眼下の大地にいる母艦に対し、装備変更を要請する。
「ちょ、ちょっと、シン! こんなトコでブラストなんて使ったら……!」
「うるさいッ! そういうコッチの態度が見透かされているから、連中がつけ上がるんだッ!」
ルナマリアの制止も聞かず、彼はソードシルエットを排除する。赤から青に色を変えるインパルス。
こうなっては、母艦としても装備を与えないわけにはいかない。素のインパルスで勝てる相手ではないのだ。
無人航空機シルエットフライヤーが、巨大な2門の大砲を備えたバックパックを運んでくる。
ソードシルエットを外し、新たな装備にドッキング。黒いカラーリングになる。
「なんだあれ!? 装備を換えたぜ!?」
「……色……変わった……」
「ひょっとして、ストラカーシステムみたいなものなのか!? あれは……砲戦装備!?」
その様子は、逃げる3機も捉えていた。
装備とその特性に合わせ、PS装甲の強度と色を変えるVPS装甲。空中換装も可能な、シルエットシステム。
それらに驚く彼らに、巨大な2門の大砲が向けられる。
狙いの先は――垂直なシャフトの壁面を、重力を無視して駆け上がって行く黒い豹、ガイア。
「まずは……1つッ!」
シンの意図を咄嗟に察知し、赤と白のザクがガイアに牽制射撃を放つ。
2発のビームを避け、姿勢の崩れたところを、インパルスの太い2本のビームが撃ち抜こうと――
だが、その光の槍がガイアを捉えようとした、その瞬間。
緑の影が、その黒い体をかっさらう。
MA形態のカオスが、素早くガイアの身体を捕まえ、その射線から救出したのだ。
シャフトのすぐ傍にいたガイアを狙った2本のビームは、そのまま目標を捉えることなく直進して――
コロニーのメインシャフトに、斜めに突き刺さる。
数秒遅れて周囲に響き渡る、嫌な音。メリメリと、シャフトが悲鳴を上げ始める。
「シンのバカッ! コロニー壊してどーすんのよッ!」
「わざとやったわけじゃねぇッ! あんなの予測できるかよッ!」
罵声の飛び交うミネルバ陣営をよそに、強奪犯たちはさらに逃走を続けて。
その向かう先、港湾部のある中央ブロックが――突然、大きな爆発を起こす。
シンたちの頭上に降り注ぐ、大小取り混ぜた破片。
コロニー全体に大きな振動が走り、ダメージを受けたメインシャフトが、さらに崩れ、千切れてゆく。
「……こ、今度のは、俺じゃないぞ」
「分かってるわよ、そんなこと!」
「別働隊がいたのか!? 外部からの、港湾部への攻撃!?」
――コロニーの外でも、戦闘が行われていた。
ザフト戦艦に砲撃を加える、謎の黒い戦艦。黒塗りのダガーLたちが、防衛部隊のゲイツRたちに襲い掛かる。
ミラージュコロイド搭載戦艦と、その艦載MSによる奇襲攻撃――それは確かに効果的だった。
しかし彼らは、いささか頑張り過ぎたようで――。
ブリッジを撃ち抜かれたザフト戦艦が、フラフラとコントロールを失い、コロニーの港湾部に突っ込む。
港湾部の奥深く、通常は戦艦など入り込まないところで、それは大爆発を起こす……!
その爆発は――それ単独では、そこまでの破壊はもたらさなかったのかもしれない。
けれどもそれは、傷つき痛んだ天秤型コロニーにとっては、十分なトドメとなった。
やがてメインシャフトのダメージは臨界点を越え、遠心力で自壊していく。
強靭な『窓』も、それだけでは『大地』の莫大な質量を支えきれない。
次々に『窓』が割れ、大気が流出する。
支えを失った『大地』は、力のバランスの崩れから、大きくうねり、割れてゆく。
圧倒的な乱気流に、カオスも、ガイアも、アビスも、インパルスも、ザクも。
皆、戦闘どころではなく、真空の宇宙に吸い出されてゆく――!
新興コロニー、アーモリーワン。
その新たなる大地は、世界へのお披露目の式典を翌日に控えたこの日――崩壊し、消滅した。
崩壊の前に起きた襲撃騒ぎにより、多くの人々はシェルターに避難し、人命被害は意外と少なかったが……
誰もがユニウスセブンの悲劇を思い出してしまうような、大損害である。
あるいは――ヘリオポリスの、崩壊事件か――
――宇宙空間は……アーモリーワンがかつてあったその宙域は。
ただ、「混乱」の一言に尽きた。
コロニーの破片が無秩序に飛び散り、敵も味方も通信がロクに繋がらない。巨大な破片が周囲に漂う。
まるで、デブリ帯にいるかのような混沌とした状況。
壊れたのは2つの円錐の片方だけだが、重心のズレた残りの円錐も、軌道を見失い無秩序な回転を起こす。
L4のラグランジュ点から、回転しながら離脱していく。
あちら側の大地にはまだ居住者が居なかったことと、他のコロニーに衝突しなかったことはまず幸いと言って良い。
この軌道ならいずれ地球の周回軌道から外れ、外宇宙の彼方へと飛んで行くことだろう。
しかし、そんな混乱の中――なおも自分たちの任務を忘れぬ者たちがいた。
MA形態で飛ぶカオス。瓦礫を蹴りつつ駆けるガイア。両肩の盾をかざし細かいデブリの中を突破するアビス。
彼らは混乱の中、なおも恐れず外にいるはずの仲間のところへ向かう。
そんな彼らを、なおもしつこく狙う追跡者。
太いビームが2本、コロニーの残骸もろともに貫きながら、彼らに迫る。
紙一重で避けながら、彼らは毒づく。
「……! なんてしつこい相手だ!」
「くそッ、俺たちの乗るはずの『バス』はどこだよ?!」
「……手ごわい……」
これだけの残骸が散らばる中、さほど機動性がない砲撃戦装備で追いすがれるということ自体、只者ではない。
彼らは迎えに来てくれるはずの味方の艦を探しながら、必死で逃げ続ける。
一方、追うシンの側でも、この現状は望ましいものではなかった。
仲間のザクとは混乱の中ではぐれてしまい、ミネルバの現状も分からず。
3人がかりでも倒せなかった敵だ、彼1人で簡単に倒せる相手とも思えない。
それでも、せめて敵を見逃すまいと、必死で追いすがる。
と――そんなシンの視界の隅で、何かが光った。
直感的に、ブラストインパルスを急停止させるシン。彼の目の前を、鋭いビームが通り過ぎる。
「……新手ッ!?」
シンは周囲を見回すが、ビームの発射地点に、その火力に見合うだけの機影は見つからない。
あたりに漂うデブリに紛れてしまうような小さな影が、飛び去っていく。
その正体を見極める間もなく、別の方向から襲い掛かるビーム。
次々襲い来る多角的な攻撃。なんとかギリギリで回避しつつ、周囲を索敵し直す彼。
やがて彼は、全く別の方角に、その攻撃を仕掛けているとおぼしき新たな『敵』を見つけた。
それは――漆黒のストライク。その背に装備されたのは、これも漆黒のガンバレルストライカー。
2年前、同じような惨状を見せたヘリオポリスで初陣を飾った、あの伝説の機体の再来――!
「へぇ、あの新型。なかなかいい動きじゃないか。スティングたちが苦戦するのも、納得だ」
黒いMS、『ストライクMk−U』の中で楽しそうに呟いたのは――同じく黒い制服を着た、仮面の士官。
彼はカオスたち3機を守るように、インパルスの前に立ち塞がる。
「ネオ! 来てくれたのか!」
「コイツは俺が足止めする。お前らはガーティ・ルーへ向かえ。今、変更した合流座標を送る」
「……気をつけて……」
「アイツ、ストライカーシステムみたいなの持ってるぜ。注意しなよッ!」
ネオの言葉に、スティングたち3人はそれぞれに頷いて。彼らは一直線に飛び去ってゆく。
黒いストライクは1人でその場に留まり、なおもインパルスに攻撃を加える。
「なるほど――つまりはザフト製ストライク、ってことかい!?
では、その機体も頂くことにするか! 悪く思うなよ、ザフトのパイロット君!」
シンは、焦っていた。4基のガンバレルと1機のストライク本体に、一方的に翻弄され続ける。
通常の5対1、ならここまで苦戦したりはしない。多人数相手の戦いは、ある意味で彼が最も得意とするものだ。
しかし、この相手は。
どんな部隊よりも息の合った攻撃。完全に統一された1つの意思による動き。
そしてそれを担うのは、小型MAよりもなお小さなガンバレルと、PS装甲に身を包んだストライク。
有線式の遠隔操作は、無線のドラグーンよりも動ける範囲は小さいが、充電のために戻す必要もない。
延々と、神経を削るような戦いが続く。
「このッ! 連合の旧式がッ!」
叫びながら、両脇に抱えた大砲ケルベロスを撃ち放つが、いずれも命中しない。
逆にビームをかわしきれず、片方の大砲が爆散する。
体勢が崩れたところに、別のガンバレルが狙いをつけて――!
「畜生ッ!」
殺られる――とシンが思った、その瞬間。
別の方角から飛んできたビームが、まさにインパルスを撃たんとしていたガンバレルを、撃ち抜いた。
思わぬ乱入者に、ネオもシンも動きを止めてその相手を見る。
――両肩に翼のように盾を広げた、白いザクファントムが、両手でビーム突撃銃を構え、そこにいた。
「レイ!」
「すまない、遅くなった。支援するから、お前はストライク本体を」
混乱の中ではぐれていたレイは軽く謝ると、縦横無尽に走り回るガンバレルに銃を向ける。
トリッキーな動きを繰り返す3基のガンバレル、しかしその動きをレイは完全に読みきって。
続けざまにもう1つ、打ち落としてしまう。残り2機。
「な……! なんだ、こいつは!?
この白いボウズ、俺の『考え』を……読んでるのか!?」
思わぬ強力な援軍に、ネオは唖然とする。
最新の量産機、それも指揮官仕様とはいえ、目の前のザクはインパルスに比べ、性能も格も劣る。
なのに、何故……!? 何故、インパルスがあれだけ苦戦したガンバレルを、あっさりと……!
「どこ見てやがるッ!」
「!!」
そんなネオの思索は、急速接近したもう1機の敵に遮られる。
見ればインパルスは、破損し足手まといとなった砲撃戦パックを捨て、身軽になって襲い掛かる。
右手にビームライフル、左手にはいつの間に取り出したのか、折り畳み式のナイフを握り締めて。
ネオが身構えなおす間もなく――ストライクMk−Uのカメラアイに、フォールディングレイザーを叩き込む。
乱れる視界。潰されたメインカメラ。
状況を見失う黒いストライクに、インパルスは蹴りを入れて突き放し、右手のライフルでコクピットを狙う。
しかしネオも只者ではない。視界を失ったまま、咄嗟に左手の盾で機体の胴体を防御する。
アンチビームシールドの表面で、ビームが弾ける。
「ちぃッ! この辺が潮時か! 所詮、Mk−Uじゃこの程度か。
やっぱPS装甲は、重いばっかりで俺の性に合わないな。カメラとか狙われたら結局一緒だしなァ。
――イアン、聞こえるか!? 撤退する、拾ってくれよッ!」
ネオは通信に向け叫びながら、逃走に入る。
インパルスたちも追いかけるが、ネオは彼らに向け、分離させた黒いガンバレルストライカーを特攻させる。
2基のガンバレルを失いつつも、本体のガドリングと残るガンバレルの砲を乱射しつつ、無人MAが突っ込む。
シンたちも、流石に無視はできない。慌てて反撃を加え撃墜したものの、その時には黒いストライクは遥か遠く。
そして、黒い敵の向かう先には――
見たことのない、戦艦の姿。
大雑把なラインとしては連邦系の特徴が見えるが、過去の記録には一切載っていない未知の戦艦。
黒いストライクを飲み込んだその戦艦は、インパルスとザクに向けて砲撃を放ち……
既に残りのバッテリーに不安の出てきた2機は、それ以上近づくことができない。
アーモリーワン周辺宙域から遠ざかるその後姿を、ただ見ていることしかできずに――
「レイ! シン! 大丈夫!?」
「ルナか。ルナも大丈夫……か……!?」
そんな彼らに向け、飛び込んで来た通信。同じく混乱の中ではぐれたもう1機、赤いザクウォーリア。
彼女の方を振り返ったシンは、赤いザクの向こうに浮かぶ巨大な影に驚きの声を上げる。
――ザクウォーリアの後を追う格好で、進水式を控えた新型艦・ミネルバが動き出していた。
『シン、レイ、一旦ミネルバに着艦して。ミネルバで追った方が、早いわ』
「ミネルバを……動かしたのですか!?」
『あの状況で、アーモリーワンの大地に潰されるわけにも行かないですしね。
下ろすヒマもなかったから、議長と例のゲストも一緒よ。くれぐれも、さっきのような粗相のないようにね』
タリアは通信越しに、2人に釘を刺す。
ミネルバが、ゆっくりと格納庫の口を開ける。
『ルナマリア、先導はもういいわ。貴女も戻って。
艦載MSの収容を確認次第、本艦はこのまま正体不明の敵艦の追撃に入ります。
みんな、とんだ初航海になってしまったけれど、よろしくお願いね!』
――ミネルバ内、MSパイロット控え室。
インパルスはその分離合体機構の関係上、着艦後にせねばならぬ仕事が、少しだけ多い。
他の2人に少し遅れて控え室に戻ってきたシンは、彼を待っていたらしい1人の人物と出くわす。
カガリ・ユラ・アスハの護衛として、彼女にずっと付き従っていた青年――
「あなたは……?」
「アレックス・ディノ。昔プラントに居た事もあったが、今はオーブの人間だ」
シンの不審そうな視線に、彼はぶっきらぼうに答える。髭とバイザーのせいで、その表情は読みづらい。
「インパルス……とか言ったか、あのモビルスーツ。連合のストライクを思い出させる機体だな。
机上の論理では便利なはずだが、実際にあの換装システムを使いこなせる奴はそう多くない。
君も、赤服なのかな? あれだけの技量を身につけるには、相当訓練したはずだ」
「……一体、何の用ですか? 用事がないなら、これで失礼させて貰いますけど」
相手の意図が分からず、シンは慇懃な態度を取りつつも苛立ちを隠せない。
そんな彼に、アレックスは軽く笑う。
「ああ、大した用事じゃない。ただ1つ、ちょっと聞きたいことがあるだけだ。
君はどうして、カガリにあんなことを言ったんだ?
オーブ出身の君が、なぜアスハ家をそこまで憎む? 君の身の上に、一体何があったんだ?」
「何があったか、ですか……?」
アレックスのあけすけな問いに、ヘルメットを脱いだシンの顔が強張る。
彼は噴き出さんばかりの怒りを押し殺しながら、絞り出す。
「俺の家族はね……アスハの連中に、殺されたんですよ……!
奴らの空虚な、『理念』にね……!」
「こ、殺された!? いやしかし、そんなはずはないだろう?
『他国の争いに関与せず、他国に侵略せず、他国の侵略を許さず』――その理念が、殺したって!?」
アレックスは、シンの言葉の意図が分からず、問い返す。
至極最もなその疑問は、しかしシンの怒りに油を注いでしまったようで。
「……何も知らないくせに、何を偉そうに! プラントを捨ててオーブに渡った人間がッ!」
「!?」
「俺の家族は、2年前オノゴロの戦闘で死んだ! アスハの信念に、見殺しにされたんだッ!」
シンは叫ぶ。その紅い瞳でアレックスを睨みながら、絶叫する。
「……! まさか、あの戦いの時に……!?」
「避難中に飛んできた一発の流れ弾で、俺は全てを奪われたんだッ!
父の身体はバラバラで、母の身体は首も飛んでしまって!
妹に至っては……千切れた右手だけを残し、跡形もなくてッ!」
「し、しかし、それは……」
「だから!」
抗弁しようとするアレックスを無視し、なおもシンは叫ぶ。その想いを叩きつける。
「もう二度と、アスハなど信じない!
俺は、シン・アスカは――オーブなんて国を、許さないと決めたんだ!」
シンが去った後の、パイロット控え室。
1人取り残されたアレックスは、ベンチに腰掛け、うな垂れる。
ペリペリと付け髭を外しバイザーを取り、大きく溜息をつく。
「……俺たちは、どうすれば良かったんだ?
2年前、何をどうすれば、彼のような人間を救えたんだ?
なあ、どう思う、キラ……? どう思う、ラクス……?」
彼の呟きは、誰にも届かず。
アレックス・ディノならぬアスラン・ザラは、2年間繰り返した答えの出ない問いに、魂を彷徨わせる。
彼らを乗せたミネルバは、正体不明の敵を追いながら、デブリ帯の方へと向かって駆けてゆく――
『……このアーモリーワン崩壊の際、式典に出席予定だったオーブの特使も行方不明となっており……』
「うわー、大変だねー。見て見て、アンディ、マリア! 凄いよ、凄い!」
「やれやれ。こりゃエライことだなァ」
「……ヘリオポリスの一件以来ね、こんなことは……!」
オーブ本国。崖の上に立つ、大きな屋敷。
星降る空の下、屋敷の片隅には明かりが灯り。テレビのニュースの声が、外にまで漏れ聞こえてくる。
湯気を立てるコーヒーを啜るのは、片目の男。よく見ればその左腕と右足も義肢だ。
眉を寄せ、トラウマに耐えつつロケットを握り締めるのは、豊かな胸持つ若い女性。
そして、壊れ行くコロニーの映像に、無邪気な歓声を上げていたのは。
金属光沢を放つ右腕の、1人の少女。
3つの髪留めにまとめられた栗色の髪が揺れる。
分かり易くクルクルと表情の変わる、愛らしい顔。
「それよりマユ、そろそろ夕食にしようか。テーブルの上を片付けてくれ」
「はーい!」
「今日はあたしが料理当番よ〜。おかわり、あるからね〜」
彼女はまだ、団欒の中にあった。平和の中にあった。
2年前の戦争で全てを失い、しかしそれでも必死に生き延びて。
彼女は、笑いを、日常を、大切な家族を――取り戻しつつあった。
――少女は、まだ知らない。
屋敷の地下に眠る、そのMSを。
平和なオーブに忍び寄らんとする、悪意を。
そして、これからの自分を待ち受ける、その厳しい運命を――!
第一話 『 長手袋の少女 』 につづく
……というわけで、アニメ本編序盤の展開を駆け足で行ってしまいました。
この後、ミネルバとガーティ・ルーはデブリ帯付近で一戦交えるのですが、残念ながら省略。
あくまでこのお話全体は、マユが主人公ですからね。
・アーモリーワン
設定、微妙にオリジナル混ぜて掘り下げました。
式典の内容も、新型艦のお披露目だけじゃ弱いと思ったので。
人のいない移民前のコロニーは、カオス以下3機のテストには最適でしょう。
で、本編のお話の後半では出てこなかったので……思い切って、壊しちゃいました♪
・ストライクMk−U
このスレではある意味お馴染みのこのオリジナル機体。ガンバレル装備でネオの乗機として登場させました。
ストライクvsインパルス、という構図がやりたかった、というのは正直な動機ですが、それだけではありません。
まあその理由については、本編がもっと先に進んでから、改めて。
・ガンバレルストライカーU
設定画そのものは、元のガンバレルストライカーと一緒です。今回は機首も一緒に折り畳んで背負っていました。
変更点は、カラーリングをMk−Uと揃いの黒に変え、武装をビーム砲に確定させただけです。
(そういえばこれ、元のガンバレルの時点で、レールガンとビーム砲の2つの設定が混在してるんですよね……)
>まとめ人様へ
お手数ですが、この1話、まとめサイトに載せる際には、19話と20話の間に置いて頂けませんか? 1話の前ではなく。
読者は作者の意図に関わらず、好きな順番で勝手に読んでも良い、とは思っているのですが……
その一方で、「作者の推奨する一回目の読み方」としては、時系列順はちょっと避けて欲しいので。色々な仕掛けの都合上。
さて、次回は元の流れに戻って、20話ベルリン戦の予定です。
年内に投下する予定ですが、間に合うかどうか。
1月に入ってしまうと、少し忙しくなるんですよね……
お疲れ様です。
いやなんとまあ、コロニー破壊とは・・・思い切ったことをw
次回も楽しみにしております
隻腕キター!
予告されてましたアーモリーワン編ですね。
カガリがしっかりしていながらもやはり理念のせいで押され気味でしたか。
アスランの変調はここから来てたんですねー。それも踏まえたうえでのアスランの今後も楽しみです。
しかし、シン。凶暴で凶悪ですけどキレる男でカコイイですね。(キレてるけどw)
ベルリン編も楽しみにしてますが、時期も時期なんでお体にお気をつけください。
隻腕乙!
ベルリン編、ボナパルトにイアン艦長乗ってないかなー・・・。
ほのぼのの影響でてっきりアウルがラッキースケベだと思い込んでいた
まさかスティングだったとは…やられたw
因縁はやっぱりルナがラッキースケベされる展開だぜぇぇぇいっww
シンが嫉妬マスクではなく戦いスキーだったのがちょっと予想と違ったけど
スティングとシンが良い感じの喧嘩友達になる様子を幻視した。
最近の隻腕の展開…(';ω;`)
「・・・何なんだよ、俺に用って。」
ゲン・・もといシン・アスカは目の前の男に問いかけた。
ここはパーティ会場の中庭。人気がなく、外灯と月明かりだけが照らしている。
「・・・・・連合製戦闘コーディネイター・・と、言う事は、キミは『戦友』か?」
目の前の男は銀髪を月明かりに輝かせながら言った。
彼の名はゼロ・クライト。ハイネ隊の一員である。
「・・そうだ、おれは『ソキウス』だ。・・それが?」
シンは警戒しながら目の前の男の質問の意味を理解し、答えた。
「・・・・記憶の操作はともかく、洗脳は?」
続けて質問するゼロ。シンの質問に答える気はないらしい。
「特に、ナチュラルに危害を加えるなってのは相当言われたけど。」
さらにゼロは質問を続ける。
「・・・ナンバーは?」
「・・・・・・・わからない。」
正直にシンは答えた。だが、目の前の男は急に無表情な目に感情を表した。
「じゃぁ、これで最後だ。『命令する。死ね。』」
そう言うとゼロはシンに拳銃を突きつけた。
「なっ・・・?!」
あまりに唐突のことで困惑するシン。
だが、するとゼロがすぐに拳銃をしまった。
「冗談、つき合わせてゴメン。」
そう言って彼は背を向ける。
「な・・、何だったんだよ?!」
シンはゼロに怒鳴る。
「確認、・・・・・キミはソキウスじゃないよ。うん。キミがソキウスなんてこっちが困るし。」
意味深な言葉を残し、クスリと笑ってゼロは中庭を出て行った。
「・・・・・・・アレが素直クールか・・・・、じゃなくて!!アンタは何なんだ!!」
納得かいかず、再びゼロに怒鳴るシン。
すると、ゼロは振り返って答えた。
「全てのソキウスの統括者、プロトソキウス『ゼロシリーズ』、No.1
グゥド・ヴェイア母体男性タイプ。今現在ソキウスと呼ばれている存在の試験品。
それが・・・・ゼロ・ソキウス。」
そう一通り喋って、彼は本当に去っていった。
「ゴメン、ハイネ。俺抜けるわ。」
散々お偉いさんに揉まれてへとへとになっているハイネにジョーは告げた。
「あ・・、何?抜けられんの?」
そう言われるととジョーは宙に文字を書いた。
『O』
『R』
『G』
『Y』
「あー、『お仕事』な?・・・メンバーは?」
「歌姫の一派が多いな。あとMS開発部のお偉いさん、まぁ、あとは普通に。」
普通にってなんだよ、と言う言葉をハイネはごくりと飲み込んだ。
「ほんじゃ、いってきまーす。」
ジョーは背を向けて歩き出す。
「・・・・・・そのスーツ汚すなよ・・・・・・高いんだから。」
ハイネは自分のスーツ(結構高め)を着たジョーに呟いた。
「ん、努力はする。」
ジョーの頼りなさげなセリフに、ハイネは軽く絶望した。
「うぇーい・・・・つまんない・・・。」
「だよね、ステラもつまんないよね。」
マユとステラは並んで呟く。
「ネオ・・・・かえってこない・・・・。」
「・・・・いつのまにかシンハロもお兄ちゃんもいなくなってるし・・・。」
二人がそんな話をしていると、シンが戻ってきた。
「ゲン!!」
相変わらずの調子でステラはシンに抱きつく。
「うわっ・・!ちょっとステラ!」
行き成り抱きつかれてびっくりするシン。
「・・うわー、なにそのお兄ちゃんらしくない純情っぷり、さては次回の人気投票で高得点に入るつもりか・・・・、させるかぁ!!」
マユは勝手に解釈してシンに襲い掛かる。
「うわー!やめろマユ!ちょっと考え事してただけだって!!!」
「問答むよーう!私より人気のあるこの作品のキャラは滅ぼす!」
「他作品のキャラは狙わないのか?!」
「・・・いや、ぶっちゃけ、勝てる気がしない・・。精神的に。」
マユがシンをボコろうとした瞬間、腕を掴まれた。
『こらこら、マユ。こんな人前で殴る奴があるか。体育館裏に呼び出せ。』
機械を通したような声はシンハロのものだ。
マユはシンから離れ、シンハロと喋る。
「何処行ってたの?」
『あぁ、ハイネが注文してた製品が届いたからそっちに。』
マユは疑問に思った。シンハロに注文するものと言ったらMSの兵器などだ。
・・・・グフイグナイテッドの改造でもするのだろうか?
『・・それにしても。ハイネも親馬鹿っつーか部下馬鹿っつーか・・・。』
シンハロは呆れたように言う。おそらくセリフから察するに、ハイネ隊の新装備なのだろうか?
「・・そうだ、ハロえもん、つまんない。何か出してよ。」
『だめだよ、マユ太くん。こんな時くらいちゃんとしなきゃ。』
なぜか某ネコ型ロボットとダメ小学生風に話す二人。
「つまんないんだよー、なんとかしてよー。」
『んー、今は無理だけど・・・あ、じゃあ皆だけでクリスマスパーティしたら?
ポテチとかペットボトルのジュースとか、あとお酒とか持ってとんがり帽子かぶって。』
シンハロが手をぽん、と叩いて提案する。
「何その普通すぎるパーティ。・・・でも、楽しそうだな。」
『マユ、でもマユはコーディでも未成年だからお酒はダメだ。』
マユの目に怪しい光を感じたシンハロは真っ先に言った。
「ちっ・・・・。」
どうやら図星だったらしく、マユは舌打ちをした。
保守
隻腕おつ!
アウルとルナが生きてるーーー元気に喋ってるーー
ずっと楽しみにしてたエピソードですが、
19話の後にこれ読んだら逆に辛かったかもしんないww
でもGJ!アーモリーワンの壊しっぷりに惚れたwwww
159 :
Hina:2005/12/23(金) 01:50:23 ID:???
隻椀様、ほのぼの様乙です
世間ではクリスマス前なんですね、仕事が忙しくて第4話が途中で止まっています(汗)年内にかけるかなぁと不安です
第3話でイザークがデュエルに搭乗しているのは第4話で説明していますので
もうちょっとだけお待ちを
まとめサイトを見たんだが
そういやこのスレって始めは変態シスコンシンがツンデレ毒舌マユにハァハァするスレだったんだなw
いつの間にか逆になってるけどどっちも最高だな、このスレクオリティタカスw
このスレ、時々一般サイトとかでも名前を見るからなーw
神なる職人が多数集い、更新頻度もかなり高いからなー
一般サイトで紹介されてるってのは光栄かつ不安だな…
163 :
60:2005/12/23(金) 09:20:42 ID:???
隻腕第0話お疲れ様です!隻腕版アーモリーワンの強奪劇ですが、
カガリがカッコいいですね〜最終的には本編同様に言いくるめられてましたけど、
議長に引けを取っていないというか、説明お疲れ様ですw
しかし、アーモリーを破壊するとは思い切った事しましたねえ・・・後の伏線?
インパルスがソード→ブラストなのは、隻腕シンのデフォですね。流石狂戦士w
あと、ストライクMKUネオ仕様、普通にカッコいいですよ〜ザクが来るまで
インパルスを圧倒していた所とか、MSの性能差が戦力の決定的な差じゃない
事とか・・・本編で良いとこ観られなかっただった白ザクがここまで生き生きして
いるのもGJ!ベルリン編楽しみに待っています。
単発設定小話 脇話「ムウとスティング」
〜宇宙に上がったアークエンジェル〜
マリュー「ロアノーク大佐、状況はどうですか?」
ムウ「・・・艦長、俺はムウ・ラ・フラガだよ。まぁ、あんたとの思い出はまだ戻らないがな」
マリュー「いまはまだいいのよ。その辺はゆっくりいきましょう」
ムウ「そうだな・・・。しかしなぁ、またメビウスに乗れるとは思わなかったよ・・・<キピーン>む?」
〜突如現れるエグザス〜
スティング「・・・見つけたぞ!ネオ・ロアノーク!」
ムウ「エグザス?・・・シンか?いや、あの動きはスティングか!?艦長!敵と遭遇した。このまま戦闘に入る!」
マリュー「ムウ!?・・・すぐに応援を送るわ」
ムウ「いや応援はいい。こいつとは俺が決着をつけなければならない!」
〜交戦するエグザスとメビウス・ゼロ〜
スティング「わかってんだよ!お前がそのオレンジに乗ってるのはよ!よくも俺をだまし続けてくれたなー!!」
ムウ「回線オープンっと。・・・スティング!聞こえるか!?なぜお前がエグザスに乗っている!?」
スティング「ネオ!・・・なぜだと?そんなことをお前が聞くか!」
ムウ「スティング!もういいだろう!連合に・・・ロゴスに、ブルーコスモスにどのみち勝ち目はない!」
スティング「はっ!そんなこたぁどうだっていんだよ!誰が勝とうが俺に、俺たちには関係ないさ!」
ムウ「関係なくない!お前にも明日を選ぶ権利はあるんだよ!」
〜互いのガンバレルを展開させるムウとスティング〜
スティング「戯言を言うな!お前が・・・アウルを殺した!ステラを殺した!そして俺も殺すのかっ!!」
ムウ「だからお前だけでも生き抜くんだよ!なぜそれがわからん!?」
スティング「わかんねぇよ!コーディネイターであっても、シンの方が今はよっぽど信頼できるんだよ」
ムウ「シン・・・あいつ生きてたのか!?・・・そうか・・・・・・(まだ希望はあるぜ、お嬢ちゃん)」
スティング「勝手に殺してんじゃねぇよ!シンは俺にドラグーンを教えてくれた。俺に仲間を教えてくれた」
ムウ「シンが・・・?」
スティング「でもなぁ、俺だって何時までも三番手で終わりたくはないんだよ!・・・死ねぇっ!!」
ムウ「ちぃ・・・。スティングゥ!・・・余計に強くなりやがって・・・エンデュミオンの鷹をなめるなよ!」
〜エグザスのガンバレル1基を打ち落とすメビウス〜
ムウ「スティング!もう一回言うぜ!お前にも、シンにも自分で選択できる未来があるってことを知れ!」
スティング「未来だと!そんなものあるわけないだろう!」
ムウ「あるさ!」
スティング「ないっ!記憶を消され、肉体を強化され、薬なしでは生きていけない。俺たちに未来はない!!」
ムウ「スティング!」
スティング「なに!? 全基落とされた!?」
ムウ「スティング!投降しろ!お前ならこれから先も生きていけるはずだ!」
スティング「・・・なめやがってぇぇー!」
〜特攻をかけるエグザスの目の前にビームが一閃する〜
シン「スティング!その辺にしとけ。それの操作方法はだいたいわかっただろう」
スティング「シン!俺は練習するために・・・・・・」
シン「大佐!悪いな、スティングの練習につきあってもらって!」
ムウ「シン・・・」
シン「・・・スティングがいったように俺たちに未来はない。大佐も次にあったときは命はないと思ってくれ」
〜離脱するエグザスとアプレンティス〜
ステイング「・・・おれは結局三番手なのか・・・・・・」
完
とりあえずアル○ディアみたいなサイトでここを紹介するのは止めてほしい・・・る
なんか最近空気変わったと思ったら、あちこちで紹介されてんのか
■他サイトから来た人へ■
つまらないSSはNGに入れましょう
作者叩きは1日1人1回までですぞ
一回許すなよw
これから冬厨で溢れて荒れまくりの悪寒wwwwwwwwww
誰かなんとかしろwwwwww
>>169 他人任せかよwwww でもマジレスしてみる。
・徹底した煽り荒しのスルー。
頭のかわいそうな荒しを優しくさとすあなた。逆効果です。
・スレタイへの誘導。
荒しと意見(批判)は別物です。書き込む人も住民もその区別をつけましょう。
>>170 荒らしのスルーはもう少し徹底させたほうがいいかもな
このスレ反応する人多すぎw
奇形児を見たことはありますか? これは北海道の網走市であった話です。
古塚美枝さん(当時23) は、いわゆる売春婦でしたが夫がいました。
しかしその夫は働こうとせず、酒に溺れる毎日、そして酔うと必ず美枝さんに
暴力を振るいました。83年の夏、美枝さんは体調を崩し病院へ行きました。
原因は妊娠によるつわりなどでした。売春婦であった美枝さんは、
まず誰の子なのか考えましたが夫の子である事を確信し、
早く報告しようと急いで帰りました。しかし夫は自分の子とは信じず、
中絶を命じました。 それから5ケ月。結局美枝さんは中絶を拒み、
生むことを決意しましたが、夫は従わなかった事を不満に思い、
さらに暴力を振っていました。 そしてその日夫は美枝さんの腹部に
膝蹴りをしました。する と、美枝さんの股間からは溢れる様に血が流れてきました。
そして美枝さんは崩れ落ち、声にもならない 様なうめき声で唸りながら
........流産でした。夫は慌てて家を飛び出して行きました。何故?
それは生まれてきた子供が余りにも醜かったからです。目はあべこべに付き、
片方の目は眉毛の上に付いていました。鼻はだらしなく直角に曲がり、
口なんぞは縦向きに、しかも耳のつけねから裂け目の 様に付いていました。
動きもせず、ただこちらを眺めていました。 それからどうなったかは分かりません。
ただ、この話を聞いた人は最低3日間気を付けてください。
うしろで何か気を感じても振り向いて いけません。
それはあの子があなたを眺めているから。 10分以内にこれを
掲示板の5箇所に貼らなければそのままあの子は離れて行きません。
お気を付けて。
冬厨の冬季大攻勢だ!各自配置につけ!
危うく釣られるところだったよ
アーモリーワン第二番港湾ブロックは、コロニー外部に露出する形で増設され、軍事艦船を主に扱う。
普段であれば、多くのザフト艦が停泊しているのだが、現在は、
ミネルバを含めて数隻の艦影が見えるのみである。ここ最近、
地球連合軍に因るプラント領域の侵犯が頻発した事から、ザフトは大規模な哨戒を行っていた。
ユニウス条約の破棄が現実味を帯びる中で、地球連合に対する牽制としては過剰な軍事行動である。
地球連合に先制攻撃の口実を与えてしまうとの指摘も少なくなかったが、それでも、
民意を酌んで挑発に乗らざるを得ないのがプラントの実情だった。
アーモリーワンに駐留するザフト第七番艦隊も、戦力の大半を哨戒に投入し、
艦載機を受領する為に寄港したミネルバでさえ、支援に駆り出していた。飾り気の無い通路を抜けて、
到着ロビーに足を踏み入れた二人を、落ち着いた雰囲気を持つ女性が迎えた。
「シホ・ハーネンフースです。ジュール議員の滞在しているホテルへご案内しますので」
「ああ、どうも、アーサー・トラインです。よろしく。で、こちらが――」
アーサーの言葉を遮り、マユはシホに訊ねる。
「イザーク議員はいつからアーモリーワンに?」
「昨日です。今回の件については、ジュール議員自らが話されます」
「あれっ?」
きょとんとして、アーサーが声を上げ、マユとシホは彼に視線を移す。
「あー、そっか、うん」
しかし、アーサーは勝手に納得した様子で、何度か頷いて見せた。マユは徹底抗戦論を支持しており、
それを主張する強硬派の政治家であるイザークとは、良好な信頼関係を築いている。
ザフトには階級が存在せず、肩書きがその人物の地位となるが、
フェイスと呼ばれる特務員に任命されると、多くの権限が与えられる。そして、数少ないフェイスに、
マユは史上最年少で選ばれた。だが、この異例の人事は、
イザークが彼女をフェイスに推さなければ行われなかっただろう。
いかにも秘書に見える――事実としてイザークの秘書なのだが――シホと顔見知りでもおかしくはない。
「…………」
「…………」
「……あっ?」
少しの沈黙の後、彼女達は歩き出し、それに気付いたアーサーが慌てて追い掛ける。
お久し振りです。書き込むペースについては、改善するべく善処します。
メリクリ〜
>>174 俺様だよ
俺がここで一番高学歴なんだからお前らは俺に従えよゴミ
選ばれた未来を見たが、主な変更、追加として、
・アスランがレクイエム破壊後にキラを追いかけメサイアへ
・ヒルダ、ディアッカはダメージを受ける映像追加(本編はなかったよな)
・ラクスからザフトへ休戦勧告
・ラクス、プラントからの要請でプラントへ戻る
・シンとルナを月面へ迎にいくアスラン
・オーブの慰霊碑にシン献花。そばにルナ、メイリン、アスランが居る
後ろからラクスとキラ参上。そしてシンとキラ握手で仲直り?
・それぞれに違う方向へ帰るカップルたち
(キラ・ラクス、シン・ルナ、アスラン・メイリン)
・ラクスがイザークを従えてプラント帰任(女帝か!?)
・オーブとプラントは休戦を確認(連合はどこいった?)
・・・こんなもんかざっくり思い出すと。。。
さて、職人様達どう調理するか・・・
16 名前: 通常の名無しさんの3倍 [sage] 投稿日: 2005/12/25(日) 05:23:58 ID:???
本日のまとめ
・50話で起こったことは変わりなし(議長撃つのはレイだし台詞の電波度は相変わらずだし)
・モブシーン5分だけで種死の大体が分かってしまう。改めて薄さを実感
・OPはヴェスティージ。
・OPの出来はMAD以下。ただし教祖様のエロ新規作画あり。
・本編の新規作画はそれなり。
・ただし戦闘に関しては、雑魚戦以外の新規作画なし
・ドムの眼帯女被弾。
・ディアッカ被弾。まだ生きてたような気がするがその後たいした出番なし。
・アスランがレクイエムからメサイアへボソンジャンプ。種時代のキラワープと比較して短距離ではある。
・アスラン、対話シーンに出現。タリア「貴方『達』は逃げなさい」と台詞改修。キラでは絡みが薄かったからか。
・キラとアスラン、レイを見殺しにするのは相変わらず。アスラン、かつての仲間ならつれて帰れアホ。さすが過去を吹っ切った男。
―ここからエンディング―
・ラクス様の停戦案を受けザフト全軍撤収。
・オーブとプラント停戦協定。握手してるのはカガリと見知らぬ誰か。
・場面変わってオーブ、8話のシン-キラ接触シーンの慰霊碑にたたずむシン、アスラン、ルナマリア、メイリン。カガリはハブ。
・キララク登場。初めてお互いの自己紹介。
・キラから握手の申し入れ。「どれだけ吹き飛ばしても・・・僕らはまた花を植える」
・「戦おう、僕らと」「・・・はい」←シン撃墜の瞬間、とはいえまだ救いはあるか・・・平和活動するって言ってるし・・・いや駄目だ駄目だ駄目だ
・EDはアスラン&メイリン、キラ&ラクス、シン&ルナマリアが別々の道を帰る。これからの暗示だと信じたい。あんな奴らとつるむなシン。
・その後は種からの総集編がきみのーすーがーたーわー
・カガリ、結局台詞ないままオーブ首長として新しい一歩を踏み出す絵。こりゃ進藤が逆らったっつーのはマジっぽいな・・・
・ ラ ク ス 様 プ ラ ン ト 議 長 に
大変お目汚し失礼いたしました。ここからは種死の原作でお楽しみください
ttp://www.imgup.org/file/iup135968.jpg ttp://www.imgup.org/file/iup135970.jpg
・・・あぁ、そうか。
これがしのはらの抱いた感情か・・・
ていうかシホ....('A`) なんで出るんだよ...
当方見られない地域。
やはり相当な斜め下な結末ですね。
お兄ちゃん完全なる敗北ですか、職人様この斜め下な結末を変えて
欲しいです。
しのはら氏に再開して貰うか?歌姫の復讐・・・・・・
>>183 やめるんだ。憎しみの連鎖は何も生まない。
同人版に復讐することよりも、同人版を超える職人さんたちを応援しようぜ。
>>186 新参者だからしのはら氏がどんな人かわからん、詳細キボン
しのはら氏は負債を憎むあまり、自らも暗黒面に取り込まれてしまいますたw
そういやインパルスがフリーダムに被ってパルマが止められなくなるシーンでお兄ちゃんが「マユっ!」て言ってたな
あれを見るのは苦痛だろうが確認してみるのもいいかもよ
このスレを読んでるとTV版の家族爆散のOPがつらい
単発設定小話 「マユとメイリン」
〜自室で報告書をまとめるマユ〜
メイリン「マユ!マユ!みたみたみた!?」
マユ「・・・メイリン姉ちゃん、どうしたのよ?そんなに慌てて・・・」
メイリン「!見てないの!?TVつけて!」
マユ「あの・・・報告書まとめないと・・・」
メイリン「そんなのあとにして!とにかくTVつけてよ!もう、すっごいんことになってんだから!」
マユ「はぁ・・・ぽちっとな・・・・・・」
TV「・・・本日オーブで催されていたカガリ・ユラ・アスハ オーブ代表首長とセイラン家の
ユウナ・ロマ・セイラン宰相補佐の結婚式でカガリ・ユラ・アスハ オーブ代表首長が
MSに攫われました。・・・さらったMSはフリーダムガンダムと思われアスハ代表の・・・」
マユ「っ!フリーダム!?・・・まさか・・・修復したってゆーの?」
メイリン「フリー・・ダム?なにそれ?それよりもマユ!すっごいロマンチックよねぇ・・・」
マユ「は?・・・え?」
メイリン「きっとあのMSのパイロットはアスハ代表の想い人なのよ・・・ああ、私もそんな風に愛されたい・・・」
マユ「・・・・・・あの、メイリン姉ちゃん?そんな馬鹿な話じゃないと思うんだけど」
メイリン「んもう!マユは夢がないわねぇ・・・。だめよ、女なんだから恋をしつづけないと・・・」
マユ「(なんだこいつ?)・・・戦時下なんですが・・・」
メイリン「そう!そんなときだからこそよ!」
マユ「・・・でアスハ代表どこにいるんだろう?」
メイリン「・・・(これだからお子様は)さぁ?いろいろなニュースをまとめると、どこかに船があるんじゃないかって」
マユ「船?・・・アークエンジェル?それともエターナル?・・・まさか?」
メイリン「でもさ、あのユウナって人も気の毒よねぇ。みた?あのアスハ代表がさらわれたときの顔!」
マユ「はは、そうね・・・すっごい間抜けな顔してたわね・・・(この人なんで軍にいるのかしら)」
メイリン「そうそう。もう馬鹿ウケよねぇ。そりゃ花嫁にも逃げられるわけよねぇ。きゃはは」
マユ「メイリン姉ちゃん・・・」
メイリン「なに?」
マユ「あの、報告書まとめたいから・・・もういい?」
メイリン「ああ、そうね。じゃ私いくね。・・・マユ!これからフリーダムは要チェキよ!」
マユ「・・・うん、またね」
〜部屋をでるメイリン、うなだれるマユ〜
マユ「・・・・・・チェキって・・・これだから年増は・・・・・・あ、通信が・・・」
〜ルナマリアから通信が入る〜
ルナ「マユ!今すぐブリッジにきて!」
マユ「敵なの!?ルナ姉ちゃん?」
ルナ「違うわ。アスラン・ザラがミネルバに着艦許可を求めてるの・・・」
マユ「アスランさんが!?」
完
機動戦士ガンダムSEED DESTINY 著・高山瑞穂
通称ボンボン版、高山版、原作版
種死などという言葉が当てはまらない名作
d
>>185 それはそうとサイト乙wwメリークリスマス!
>>195 高山先生版は旧種時代から、骨太なストーリーだからな。
兄貴が普通にかっこいいし、キラもアスランも全然電波じゃない。
更にいえばストーリーと人物描写が丸投げじゃない
ただ、腐女子受けはしないかな?昔のジャンプ臭い
選ばれた未来、その終わり方は、しかし材料としては美味しいな……と書いている人間が呟いてみるテスト
こういう材料を見たから
余計にもっと、納得がいく終わり方を書いてみたいと思うわけですよ。
…その意味ではいい燃料かw
>>199 200
もしなにかの作者様なら、是非上手に調理をお願いします。
202 :
舞踏の作者:2005/12/25(日) 23:29:59 ID:???
本編の仕上がりがままならない状況下ですが
なんか小ネタの番外編を思いついたので、投下いたします(汗
なんつかもう、乙女万歳。
203 :
1/5:2005/12/25(日) 23:30:45 ID:???
その日、戦闘を終えて帰艦したマユは、疲れにふらつく足どりのまま真っ先に自室へと歩いていた。
ずるずる、ずるずると、疲労を足枷にしたような歩みでようやっと部屋までたどり着いた彼女は
シャワーを浴びることもなく、汗で蒸れた制服を脱ぐこともなく、とさっとベッドの上に倒れこんだ。
歩いていた時から半ば伏せられていた目が、間もなく完全に閉じられ、マユの意識はまどろみに沈みゆく。
その先で、彼女は会ったのだ。
舞踏閑話 ― 少女たちのお茶会。―
「ん……あれ? ここどこ?」
ふと目を開くと、マユは真っ白い場所にいた。
壁のない、だだっ広い空間。 夕暮れ時の雲のように、微かに桃色の差す空。
裸足の足裏に、ふかふかとした頼りない感覚を与えているのは、下一面を埋め尽くす雲だった。
気付けば、全く見覚えのない場所にいるうえに、しかもなぜか着ている物は愛用してるパジャマだったり。
うー?と不思議そうな表情で首を傾けるマユ。 兎にも角にも、じっとしてても何も始まらない、と歩きだした。
現実離れしていて、まるで童話の中のように綺麗な場所なのだけど。
なんだか、見渡してもとりわけ目に留まるものがない、のっぺりとした空間に辟易する。
はふ、とつまらなさそうなため息をついたマユ。
その足先が、なにかぐにゃっとした物を踏んだ。
「うひゃ?!」
女の子らしかぬヘンな悲鳴を上げ、驚き足元を見ると
水色の、丈の短いプリーツワンピースを着た金髪の少女が、地面に丸まって眠りこんでいた。
「あれ…ステラぁ?」
彼女に見覚えのあったマユは驚きの表情でしゃがみ込み、ふにふにと彼女のほっぺをつつく。
うぅん、と小さく声を上げてゆっくりと菫色の眼を開いたステラは、ぼーっとしていて
たっぷり三十秒以上の間を置いてから、傍らに座るマユの顔へと視線を移した。
「……マユー…」
寝ぼけた声で自分の名前を呼んだ彼女へと、マユはにっこりと笑い、おはよーと言った。
204 :
2/5:2005/12/25(日) 23:31:37 ID:???
「けどさステラ。 なんであんなとこで寝てたの?」
「わかんない…」
目を覚ましたステラと一緒に、マユはてくてくと歩いていく。 行く当てもなく、てきとーに。
「でも、また会えてよかった! ステラともっと、色々お話したかったんだー」
「うん。 ステラもマユと会えて嬉しい」
何処に行くのかも分からないけど、こうやって話しながらぶらぶら歩くのもいいかも。
…そういえば士官学校に入学し、ザフトに入隊して以来こんな風に過ごす時間はあまりなかったかもしれない。
そんな思いをめぐらせていたマユの耳に、元気な声が飛び込んできた。
「あら、マユじゃない!」
「ほんとだー! ねぇ、こっちおいでよ!」
これまた覚えのある二人分の声に、少女は驚き、口を開けた。
その視線の向こう。 無造作に置かれた白いティーテーブルに着いていたのはルナマリアとメイリンだった。
「お姉ちゃんたちもここにいたんだね」
「うん、なんでか知らないけどね。 気がついたらこのテーブルに座ってたというわけよ」
「ホント、ヘンなとこだよねーここ。 夢の中か、天国みたい!」
マユの言葉に、それぞれ答えるホーク姉妹。
ちなみに、彼女たちの格好もなぜか寝間着。
ルナマリアはシンプルな無地のパジャマ姿だったり、メイリンは丈の長いネグリジェだったり。
そんな二人の言葉を聞きながら、マユは考えていた。 もしかしてこれは、メイリンの言うとおり夢なんじゃないのかなと。
けれど同時に、そんな事はどうでもいいのでは、とも思っていた。
「ねぇねぇ。あなた、マユの友達?」
「うん…名前、ステラ」
「ステラかぁ。 私はルナマリア。 マユの姉貴分ってとこかな」
「あたしはメイリン! 同じくマユのお姉ちゃんだよー」
いつの間にやら言葉を交わし、仲良さそうな雰囲気になっているステラとルナマリアたちを見てると、そう感じるのだ。
「ま、とりあえず。立ってないで二人もここ座りなさいよ」
ルナマリアがコツコツと指先で叩き示した席に、彼女らも着席することにする。
205 :
3/5:2005/12/25(日) 23:33:17 ID:???
「でもさぁ…ここどこだろ? 分かんない場所でこんなにくつろぐってのもどうかなぁ、って思うんだけど」
「んむ? いいんじゃない、居心地は良いんだしさ。
それに、そんなこと言ってたらマユ、あなた旅行できないわよー?」
マユの呟きを聞き、頬張っていた苺のミルフィーユをミルクティーで飲み下し、そう言ったのはルナマリア。
「うん。 ここ、ふわふわしてるしキレイなとこ。 ステラは怖くないと思う」
同調示し、頷くステラ。紅茶のシフォンケーキに生クリームをたっぷりつけて口へ運び、幸せそうに顔をほころばせる。
「まーまー、マユものんびりしちゃえばいいんだよ♪」
白磁のティーポットを傾け、紅茶を淹れながらメイリンはマユへと笑いかける。
「ほらほらマユも食べよ! ここのお菓子なんでもおいしいんだから!」
「えっと、それはいいんだけど…それどこから出してるの?!」
ソーサーごと紅茶のカップを押しやりながら、色とりどりの焼き菓子が乗った皿を置く彼女へと、マユはつっこむ。
なにせ、このテーブルの上にある茶菓子は全部、メイリンがどこからともなく取り出してきたものだったから。
「どこって…ほら、テーブルがあることだし、お茶とお菓子でもあるといいなぁ…って思ったら出てきたのよ。
欲しいのを頭の中で思い描いたら……ほら!出てくるし♪」
そう言いながら、テーブルの下に入れていた手を引き抜くと、
その手に乗っているのは、アツアツのアップルパイにアイスクリームが添えられた皿だった。
「そんなむちゃくちゃなぁ……ああでもこれって乙女の夢の体現かも」
奇妙な状況に呆れはするが、それでも周囲に漂う甘く香ばしい芳香と、目の前に並ぶ幸せそうな表情にはかなわなくて。
結局、マユもお菓子の誘惑に負け、焼きたてのショートブレッドへと手を伸ばしていた。
206 :
4/5:2005/12/25(日) 23:35:40 ID:???
「あー食べた食べた! 一週間分ぐらいは食べた気分ー♪」
もうギブアップ、と言わんばかりにぐたーりと身を反らし、椅子の背もたれに寄りかかる少女たち。
すっかり満足したその様子を見て、透明な給仕が片付けをしていくかのように
テーブルの上に広げられていた菓子や食器類が、次々と姿を消していく。
最初は不審がっていたマユも、食べ始めたら止まらなくなったらしく、満たされた腹を撫でながらふにゃりと幸せ顔。
「ねね、とりあえず小休止してさ。一時間後に再開といかない?」
「えーっ!お姉ちゃんまだ食べるの!?絶対太るよー…ってかいいかげん太ってよぉ!」
「へ? な、なによそれ! 太ってってどういうことよ??」
「…これ以上甘いモノを食べるとなると、ちょっと味覚を変えるためにしょっぱいの欲しいなぁ…。
あ、ステラ、お菓子沢山食べた? 満足できた?」
「うん、すごくおなかいっぱいー。 ステラね、こんなにおいしいの、こんなに食べたことなかった」
キャイキャイとかしましく、テーブル囲んで明るい声を上げている娘四人。
しかし、まだ甘いものへの欲望は尽きることないのか、次に向けての準備の算段をしている中、
コロンと音を立てて、いずこからかテーブルの上に降ってきた、ピンク色のまん丸い物体。
『ハロ!ハロ! テヤンディ!朝ディ!! 起キンカィ!!起キンカィ!!』
奇妙なボール型のロボットが、愛嬌のある声でたいそう口の悪い物言いをしたのを、聞いた途端。
がばっ。
「…………あれ?」
布団を跳ね上げ、飛び起きたマユの前には白いテーブルもピンクのまん丸も、友達もいなくて。
しばし首を捻った後、今までの夢のような出来事が、本当に夢だったと気付いたのだ。
207 :
4/5:2005/12/25(日) 23:36:40 ID:???
……けれど彼女は、その結論を何度か疑う。
「あれ、ルナ姉ちゃんもうごちそうさま?
Aランチの後は『自家製プリンのおまかせアイスクリーム添え』を食べるんじゃなかったっけ?」
「うーん…いやさぁ? なーんか満足しちゃってんのよ。なんでか知らないけど」
「私もなんだよねー。なんていうか、生クリーム分が十分補充されてます! って感じなのー」
娘三人で昼食を共にしているとき、出てきた話題。 それがどうにも、自分の夢と合致していて。
マユは不思議に思いながらもそれを口に出さず、ランチの付け合せのレタスをもしゃもしゃと含んだ。
そして、彼女は知るよしもないのだが、同じことはもう一人の参加者にも起きていて。
「あれー…デザートは?」
「ランチにゼリーがついてたじゃないか、ステラ」
「ううん、違うの……もっとふわふわしてて、とろーっとしてて、甘いの。
『しふぉんけーき』とか『みるくれーぷ』とか…そういうの」
「へ? なんだそりゃあ。 お前どこでそんなの食べたんだ?」
「…………どこかなぁ。 覚えてない…」
少年二人と共に昼食を取っていたステラは、なにか物足りなそうに呟きながら、しょんぼりとうつむくのだった。
…てなわけで、ヤマもオチもない話でした、はい。
この話を考えたのは、もしもステラが、敵とは知らずホーク姉妹と出会っていたらどうなっていたかな、ってのがあります。
きっと彼女たちなら仲良し四人組になれるんじゃないのかな、と思うわけです。
まぁ不思議な夢ですが、四人とも同じ夢を共有してたのでしょう、なぜか。
以上、失礼いたしました!
愛知組の俺が死ぬほど癒されました。乙。
さぁお前ら絶望しろ
大丈夫、ゲンはそんな奴とは違うから
結局、女帝降臨ENDか……
大丈夫、既に暗殺が成功しているお話も……
……やっぱ生きてるのかな、アレ
>>179 おいNEET、俺のふりしてんじゃねぇよwwwwwwww
>>165 ファントムペイン戦記が紹介されててワロタw
ついでにサルベージage
>>211の上から5番目なんて完全に銀河帝国だな。
今見終わったが・・・・・やっぱこんなもんだな。
とりあえず次回作はしてほしくないな。シンはもうラクス教に入信しちゃったみたいだし。
きっとあれは壮大な伏線なんだよ!
次回作ではクライン朝地球帝国、帝国軍士官シン・アスカの前に
仮面でその素顔を隠した黒髪の女性が現れるんだよ!
>>220 きっとその女性の片腕は義手なのですね。
その展開なら次回作見るw
で、その彼女は黒いハロを連れていて、性格黒くて、最初は男装してて……
……っていくつ混ぜるんだよオイ
>>223 で、実は生きていたオーブ元首の夫は人が変わったように善政を敷き、なおかつ義と情に生きるナイスガイな訳か。
>>220 「お兄さま、貴方は堕落しました」?w
そこまで徹底して色々パクリたおしてくれるんなら、俺は種シリーズのファンになっても良い。
最終絶叫計画辺りを楽しむノリで。
しのはらー!帰ってこーい!今漏れたちはお前を必要としている!
自演乙^^
しのはらイラネ
いるよ
同人種死はとんだ茶番だった
一刻も早く、神々の新作でこの痛みを癒したい
マユって年齢いくつなの?_
種死の小説によると、享年9歳ってことになってる?
だから「もしシンじゃなくてマユが主人公だったら」の設定を公式の方から持ってくるんなら
マユの年齢は11歳ってことに
若いなぁ・・・・赤い人に求婚されそうだなぁ(´・∀・`)
職人がいてくれたからこのスレの今がある。
職人がいなかったら、このスレはここまで良スレにはならなかった。
だから漏れはしのはら氏含めた全職人を大切にしたいと思っている。
スマソ、疲れてるみたい
本放送初期の頃ってステラ=マユ説もあったよなw
ステラは11歳には見えないがww
確か種のエルちゃんは享年12歳だったはず……
マユ 9歳
エル 12歳
……なんだこれは?
ブライトやキシリアの年齢とかな、ファーストの頃からの伝統だ。
プル
プルツー
共に享年10歳だな
>>237 嘘みたいだろ・・・この声で二十歳なんだぜ・・・ハマーン様
マユの年齢(マユ種より)
>マユ「マユ・アスカ、13歳!階級はありません!
今日一日だけの配属ですけど、よろしくお願いします!」
当スレは、13歳が支流のようです。
>>236 マユのほうがエルちゃんより年上に見えるよ・・・
まあ、職人様の方で年齢は弄ればいいと
>>234 そういうことで、どすか
>>239 ,. ''" ``ヽ、
/ ヽ、
f´ , 、_ ヽ
,ノ { ン'':. ̄:.V! い }
! .r''.:;へ:::.__;ノL、リ ( 私とともに地球圏を粛清しないか?
!_ .!:::ノ 'フィ ヘ
゙ーヘ! `,.-‐ ,.r== 、 ヽ、
心、 /‖ L べ`
r=゙ッ ̄レ'"‖
なんか空気変わったなぁ…
と書いてみるテスツ
そういうレスでスレの空気を悪くするのは荒らしの常套手段。
ID板にならないかなぁ……。
いつから荒れるようになったのorz
「やぁ、みんなメリー・クリスマス。」
その瞬間、全員の空気が凍った。
クリスマスパーティー、しっちゃかめっちゃかやってテンションが上がりまくり、現在夜9:30。
そんな中、急に扉を開けて入ってきたのは。
・・・・・・真っ赤なサンタ衣装を着たプラント評議会議長、ギルバート・デュランダルだった。
「レイ兄ちゃん!」
「了解だ!!」
マユはレイの手を踏み台に高くジャンプし、そのままデュランダルにとび蹴りした。
「何やってんだぁ!あんたって人は!!」
「ギル!!また仕事をサボりましたね!!」
「いぅ・・、いいじゃないか!クリスマスだぞ!!少しくらいハメをはずしたって!!」
息子と娘からの厳しい言葉に涙するデュランダル。
その姿を全世界ネットで映したらおそらく世界がロゴス側に移るだろう。
『え・・・・?何議長来てるの?』
「アキラ、なんでお前酔うと日本語しか喋れないんだ。アスラン通訳。」
「え・・・・?何議長来てるの?」
「うわ・・・、これ週刊誌に売ったら高く売れそうな風景だな・・・。」
「ねぇ、こっちのウィスキーも開けるよぉ!」
「のまねこ飲みすぎよ!!もうウーロン茶で我慢しなさい。」
「あーかーいーすーいーせーいー!!」
「カルマー、しっかりしろー。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ゼロ、生きてる?」
「うぇーい!うるせぇぞスティ坊!黙ってみてがれぇ!」
「ステラ姐さんすてきー!」
「ひっく・・ひっく・・・・めいりーん・・・。」
「よしよし、ステラ怖いねー、スティング。」
「卍解!!ざんげーつ!!」
「星の声が聞こえる・・・・・!!」
・・・・・・その他の人々は酔っているようだ。
『・・・・・・・・・うぅ。』
シンハロは隅のほうに寄っている。
この間マジカルインパルスのことを怒られたのが堪えたらしい。
,. ''" ``ヽ、
/ ヽ、
f´ , 、_ ヽ
,ノ { ン'':. ̄:.V! い }
! .r''.:;へ:::.__;ノL、リ ( ぇえい!それみたことか!地球の引力に魂を引かれた人間はいずれスレを滅ぼす!
!_ .!:::ノ 'フィ ヘ だから私はマユちゃんを保護すると宣言した!!
゙ーヘ! `,.-‐ ,.r== 、 ヽ、
心、 /‖ L べ`
r=゙ッ ̄レ'"‖
「で、何の用で来たのギルパパ。」
「もし遊びに来たとかだったら蹴りますよ。」
「ふっ・・、流石私の子供、そろってツンデレだな。」
デュランダルの言葉に先ほどの協力攻撃を再びする二人。
ダンッ ピョーン ゲシッ ぐふっ!! いぐないてっど。
「ぐっ・・、冗談だよ・・。今日はプレゼントを渡しに来たんだ。」
そうデュランダルが言った瞬間、マユとレイの顔が爽やかな笑顔になる。
「何だぁ!早く言ってよギルパパ!」
「そうですよギル!そう言ってくれれば攻撃なんかしないのに!」
さわやかな白さすずらんの香り♪なノリで笑う二人。
「ははははは・・・・・、じゃあ二人とも着いて来てくれ。」
デュランダルは涙しながら呟いた。
「・・・・・うわぁ・・・。」
「ずいぶん・・、権力を利用したプレゼントですね、ギル。」
二人の目の前には最新鋭MSがあった。
一つは太陽を背負ったようなMS、かたや羽を持ったMS。
「レジェンド、ディスティニー、どうだい・気に入ってくれたかな?」
自信満々に言うデュランダル。
「名前がかっこわるい。小学生みたい。つーか、あたしそもそも運命って言葉嫌い。」
「・・・・なんていうか、たいしてプロビデンスと代わらない気がします、ギル。」
二人の言葉にキャットウォークの隅っこでサンタ服でいじけるデュランダル。
「ひどいなー、父さんがんばって二人にあげれるように圧力かけたのになー。」
なんか布団があったらもぐりそうな勢いである。
だが、そこにさらにハプニングが。
「議長!!酷いです!!俺を差し置いて二人にMSなんて!!」
泣きながら走ってきたのはハイネだ。もちろん酔っている。
「俺だってフェイスなのに・・・、機体は既に量産されているMSの先行量産期・・・。」
そのまま泣き崩れるハイネ。
「あの夜のことは嘘だったのね?!酷い!!所詮俺とあなたはそう言う関係!!」
かんっぺきに酔っているハイネはとんでもない言い回しで叫ぶ。
「ギルパパ・・、まさか・・・・・。」
「ギル・・、ルナマリアの書いている本みたいな事を・・・・?」
「ちがーう!!誤解するなぁ!!」
完璧に誤解する子供達。苦労するお父さん。
その後、何とか酔いの覚めたハイネ隊がハイネを回収するまで、その騒ぎは続いた。
総集編?ナチュラルに忘れてKH2やってました(笑顔)。ほのぼのです。
何とか・・、年内にはヘブンズいく予定です、はい。
オマケ 機動戦士ガンダムSEED D&D
ラクス・クラインによって統一された世界、それは、暖かくて優しい世界に見えた。
「・・・・はぁ、あんな歌姫が世界を支配するってどーよ。」
『アー、アレダ。タブンオヤジサンノイシヲヘンニリカイシタンダロ、アノピンク。』
歌姫と対極をなす黒い髪の少女とハロ。
「なっ・・?!ザフト軍から脱走者?!誰だ!!」
「それが・・・・ハイネ隊・・・オレンジショルダーです!!」
今は亡き、隊長と『妹』のために世界を敵に回す者たち。
「ねぇ、どうします。僕たちもちょっかい出しちゃいましょうか?プレアくんもやってますし。」
「そうだな、正直いって、あんなミリィは見たくない。」
亡者は生者のあり方を嘆く。
「・・・・・・・泣いてもいいのですよ・・。」
『男のくせに・・・・泣かないでよ!私が守ってあげてるんだから!!』
操り人形は何を思うか。
機動戦士ガンダムSEED D&D
第一話 「鎖を引きちぎりしもの」
真なる自由を掴め!ガンダム!
冗談です。ごめんなさい。
運命と伝説。クリスマスプレゼント扱いかい。
そらハイネも泣きたくなる罠。ろくでなしのおっさんだw
マユは運命がお嫌いかw
とうとうほのぼのにこの2機が導入か〜。
……なんか酔っ払いたちの会話がワケわからんw 酔って性格豹変してるの混じってるっぽいから余計にw
ほのぼのさんは、攻撃自由と無限正義とアカツキはどう扱うのだろうか?
ほのぼの版凸はマユの兄No3だからな〜(もちろん、1,2はシンハロとゲンw)
無限正義をどう料理するかに期待したい。攻撃自由と暁は・・・
ほのぼのではパイロット二人とも揃って影が薄いよねww
257 :
256:2005/12/27(火) 00:17:55 ID:???
訂正、1がシンハロ、2がレイで3がゲン。凸は4だな。
そういえば、ほのぼの版のオーブは今どうなってるんだ?
確かカガリが「給料アップ+ユウナ凹り放題」で全軍買収して撤退させたはずだから、簡単にオーブに帰国できているはずなんだが
ゲンって誰?
そんなのアニメに居た?
9スレ目>347、>348の続き
第三十五話
アークエンジェルのおかげで難を逃れたジブリールは、ユウナの手厚い歓迎を受けていた。その席で、不慣れな土地で兵達が体を壊していなければ救援にかけつけられた、とユウナは謝罪する。
ジブリールは、ユウナの不手際で掛け替えのないものを手放したことへの怒りを示す、その一方で異国の地で苦しむオーブの兵を思えば厳しく言えないと明言する。ユウナは恐縮し、自分達も独自に動いて件の掛け替えのないものを探し出しましょう、と申し出た。
その時だった、ジブリールがユウナに対して明らかな嫌悪を滲ませたのは。しかし、それも一瞬のこと、ジブリールは優雅に、それを取り戻す役目を担うに相応しい者はこの世に一人だけで、その者はもう使わしていると述べ、ユウナの申し出を丁重に断った。
マユが受けた指示は、ステラを連れ、指定された場所に、誰にも報せずに一人で、インパルスに合体した状態で赴くこと。マユは時間を気にした、ちょうど今ぐらいに、ミーアのコンサートが始まる。正直、行きたかった。
その道中、ステラは自分だけ降ろして、マユはミネルバに戻るように言い続けていた。このような秘密の接触はマユにあらぬ疑いを掛けるという考えからきていた。しかし、マユにはそれがただ耳障りで、その苛立ちを怒鳴り声にして叩き付けた。
ハイネを殺して、オレンジ・ショルダー隊のみんなを殺して、ミネルバのみんなを殺しかけたステラは、本当はこの場で殺してやりたいけど、我慢している。だから苛々させないで、と。そして最後に、あの時、助けるんじゃなかった、そう吐き捨てた。
ステラは何も言えなくなった。マユは胸が痛くなった。
ガーディ・ルー、ブリッジ。ネオはつまらなそうに呟く。傍らにはリー。
携帯電話で捕虜脱走の強要と指南、出した条件は無理難題、地域全体の危機に関わる核の存在も臭わせた。にもかかわらず、どうして、ここまで破綻なく旨くいってしまうのだ。
それは妹君が優秀なのだろう、とリー。ネオは頭を振って、運がいいだけだ、と言う。リーはもう一言、それでもステラが戻ってくることは喜ばしいでしょう。ネオは、それには答えず、アビス、カオス、ガイア、ウィンダムの用意を指示した。
マユが指定を受けて来た場所、そこにはアビス、カオス、ガイア、ウィンダムの四機が並び、その前にネオが佇む。マユはそれを視認して、合体、フォースインパルスガンダムとして場に降り立つ。
インパルスから降りたステラは、一目散にネオに駆け寄って、抱きついた。後から降りたマユは、その光景に思わず微笑んだ。しかし、自分が微笑んでいることに気付くと、ハイネや死んだオレンジ・ショルダーのみんなを思い出し、ごめん、と呟いていた。
マユとネオ、二人は向かい合う。ネオは仮面を外した、紛れもなく兄だった。
しばらく見詰め合って出たマユの第一声は、折角の再会だけどあまり嬉しくない、だった。どちらかが昔のままなら、すんなり喜べた、という兄の意見に、マユも同意した。苦笑する二人は、家族四人でいたあの頃は、遥か遠い昔の出来事と思い知らされた。
閑話休題。兄は、マユに強要したステラ脱走幇助の真の目的が、ジブリールから要請されたマユ・アスカの保護にあることを告げ、マユに同行を求める。マユは即答で断った。
すると、ネオは再び仮面を被り、マユにインパルスに乗るように言った。そして、インパルス共々マユを殺すと宣言した。この宣言に驚いたのはマユで本人はなく、ステラであり、アウルやスティングだった。
何故と問い詰めるステラを制してネオは語る。ジブリールがマユを手に入れたがっている、全てを知ればロゴスもきっと興味を示す、その動きが知れればプラントも口封じをしてくる。マユに未来はない、ならばいっそのこと自分の手で。
そう言われてマユは、連れてこいといわれた人間を勝手に殺していいのか、と他人事のように言う。ネオは答えた、ジブリールは何より劇的な結末を好む、と。マユはすんなり納得した。生き別れた兄妹が出会ったその日に殺し合う、悲劇には違いない。
本気の兄と、それを理解した妹は淡々とMSに乗り込む。戸惑うステラは、感情に流されるままネオに詰め寄った。ネオは、マユが敵であること、敵を殺せないことが何を意味するのかと問うと、ステラは、これからマユと殺し合うことを受け入れるしかなかった。
ステラの取り乱しようを眺めたマユ、同時にアウルとスティングの顔を思い出す。インパルスに火を入れながら、マユは、これから戦う人の顔をよく知っていることに気付いた。この、どうにも現実感のない状況で、マユはこの戦いにある目標を見出した。
五機、散開。
最初に仕掛けてきたのはウィンダム、応じるインパルス。兄妹の間でビームの応酬が始まってすぐ、カオスがそれに加わった。カオスのガンバレルも含めたビームの重圧はインパルスを空へと逃がしてはくれず、地面近くに縛り付ける。
このよくない状況を抜け出したいと思うマユに、アビスのビームの束は襲ってくる。上と横からの猛攻、インパルスは辛うじて潜り抜けるが、そのインパルスに四足のガイアが並走し、体をぶつけてきた。何とかそれも受け流し、インパルスは体勢を立て直す。
現状の確認。敵の攻撃をかわし損ねて、ビームライフルの銃口がやられた。ガイアの追突で、抜き掛けていたビームサーベルを一本手放した。今のような連携をあと二回もされれば、確実にやられる。
ウィンダムが再び口火を切るべくビームライフルを構えたところで、インパルスはビームライフルを投げつけ、バルカンで破壊。爆発したビームライフルはウィンダムを遮った。この一瞬にインパルスがつけ込んだのはウィンダム、ではなくアビス。
インパルス、真正面から突進。アビスが全身のビームを展開。インパルス加速、アウルが引き金を引く瞬間、地面を蹴り、ほんの少しだけ浮き上がってビームを全て飛び越えた。
勢いをそのままに向かってくるインパルス、迎撃に繰り出されたビームランスを紙一重でかわし、すれ違いざまのビームサーベルがアビスの首を刎ねる。着地したインパルスは一回転、さらにアビスの両太腿を切断。二回転、インパルスの回し蹴りがアビスを蹴り飛ばす。
飛来するアビスの胴体を、ステラは思わずガイアで受け止める、マユの狙い通りに。ガイアに突撃するインパルスを空から見据え、スティングは胆を決めた。ガイアが攻撃された瞬間、諸共インパルスを撃ち抜くべく、ライフルを構え、ガンバレルを展開した。
まさにその時、インパルスはカオスの方へ向き直り、アビスよりくすねたビームランスの投擲。狙い澄ました所を狙われたカオスによける間はなかった。
オレを捨てろというアウルの叫びで、ステラは我に返る。ガイアはアビスの胴体を捨て、応戦の構えを見せるが遅く、インパルスの体当たりを許してしまう。少し距離をとり、変形してやり過ごそうとステラは考えたが、ガイア自身が変形を拒絶した。
可変部分の、装甲の薄い部分に、インパルスの対MS用ナイフが滑り込んでいた。ステラが呆然としてガイアが止まった一瞬を逃さず、インパルスの蹴りはナイフをより奥深くへと捻り込み、ガイアは力なく膝をついた。そして、インパルスはウィンダムと向かい合う。
ネオは、まだ動けるガイアを使って、アウルとスティングの回収をステラに命じた。ステラが了解すると同時に、ウィンダムはインパルスにビームを撃ち込んだ。インパルスは飛び上がり、バルカンで応戦した。頭上の兄妹の戦いを目の当たりにして、ステラは震えていた。
バルカンを、ビームを、シールドで弾きながら、かわしながら、激しく、鋭く、中空を飛び交う二機のMS。ついに、バルカンの、ライフルの、弾が尽きた。二機、ほぼ同時に、一直線に、最高速度で突っ込んだ。
インパルスとウィンダムはシールドを構えた状態でぶつかり合った。粉々に砕け散るシールド、その向こう側で、どちらもビームサーベルを構えていた。両者がくりだした突きは寸分たがわず重なり、サーベルの柄は爆ぜ、粒子の力に二機のMSは弾き飛ばされた。
言われた通りにガーディ・ルーへアウルとスティングを届けたステラは、そこで全てを見、そのままガイアで飛び出した。
大地に立つインパルス、マユは自分自身に苛立だった。インパルスはまだ戦えるのに、自分は何度も気絶しそうになって情けない、と。あと、ワン・アクション、次を成功させれば、誰も殺さずに追い払うことができる、とも思っていた。
ウィンダムはビームサーベルを抜刀、決着のため、切り込んでくる。インパルスもまた密かに応戦の準備を整えていた。そこに割って入ったガイアは、ウィンダムを阻んだ。
ステラは、マユには逃げるように言い、ネオには人を殺せなくなったと言った。ステラが助けに入ったことが信じられないマユ、一方のネオはステラの告白を静かに受け止めた。
次の瞬間、ウィンダムの構えたビームサーベルの切っ先がガイアに向けられる。ガイアに抵抗はない。咄嗟に、インパルスは最後の武器であるナイフを投げつける。ウィンダムがナイフを弾く間にガイアを押しのけ、インパルスは拳を叩き込んだ。
マユは何故ステラを殺そうとしたのかと怒りに震える。ネオもまた怒りに震え、エクステンデッドは兵器、人を殺せなくなった兵器の末路はマユにもわかるだろう。その答えはインパルスの鉄拳、最早、問答無用。それは、ネオも望むところだった。
振るわれるウィンダムのサーベル。しかし、それはシールドの破片を握り込んでいたインパルスの右手に弾かれる。
同時に密着、インパルスのバーニアは火を噴き、前に踏み出した右足が体を固定、インパルスの全身を前方へと押し出す力は、ウィンダムに触れた左手を通り、衝撃となってウィンダムを貫通した。その衝撃の通り道には、ネオのコックピットがあった。
吹き飛んだウィンダム。左腕を突き出したままのインパルス。マユ、ネオ、どちらもボロボロだが、執念が二人の意識を繋ぎ止める。何としても、目の前のコイツは倒す。
ネオに通信が入る。ザフトが動いたが故の撤退命令。逡巡するネオに、通信を代わったリーに、遅れれば本当に核を使わなければ突破できない状況になると説得され、ネオは折れた。
引き上げるウィンダムと、離陸するガーディ・ルー。追おうとするインパルスを止めたのはガイア。兄妹で殺し合わないで、みんなを見逃してと懇願するステラに、マユの怒りも萎んでいった。
そして、ここには傷つき、壊れた四機のガンダムだけが残った。
ネオ「あの時、お前を助けなければよかった」
マユ「‥‥‥私だって、あの時、死ねばよかったと、何万遍だって思ったよ」
マユ種キター!
>>259 新しく来た人か?
まあ過去ログ嫁、って話なんだが、軽く説明しておくと。
ゲンってのは、マユ主人公でシンが生きていた時に、シンが連合で名乗る仮名。
SSメインでなく、設定妄想が多かった時代に出てきた話。
で、これを取り入れてSS書いてる職人も結構いる。採用するか否かは書き手に委ねられてる。
……『選ばれた未来』、酷い内容だったそうで。こちらは放送されない地域に住んでるわけですが。
でもまぁ、見た人のレポートとキャプ詰め合わせで、大体の感じは掴めました。
いくつか、材料としては面白い絵がありますねェ……w
というわけで20話です。
ロゴス糾弾とスエズ陥落の勢いに乗り、東欧からドイツ、北海に至るエリアを占めることになったザフト側。
しかし連合側はデストロイの実戦投入を前倒ししてそれに対抗します。
デストロイに焼かれてゆく街々。ザフトは機動力と戦闘力を兼ね備えたミネルバ隊を、急遽派遣することに……。
――激動の時代をいくつも潜り抜けてきた古都に、雪が舞う。
ついこの間までは、ユーラシア連邦の重要な都市だったこの街。
今は、ドイツ方面の反連合レジスタンスの一大拠点であり、ザフトの支援部隊が駐留する街。
古き時代の街並み残す古都、ベルリン。
何故か人影絶えたその街の中。雪を頭に肩に被りながら、街頭の公衆通信端末に向かう人物があった。
ツナギのような動き易そうな上下の上に、これまた実用的なフード付きの外套。
重ねた衣類の上からも、その豊かな胸が良く分かる。
「……ええ。だから、このベルリンも戦場になりそうなの。
合流は取り止めましょう。ちょっとそれどころじゃないわ。
私? 私は――もうちょっと留まってみるわ。
フリーダムも一緒に来るなら、あの子とも会えるかもしれないし――」
彼女の言葉は、遠くから伝わる振動に遮られる。はッとなって通りの向こうに目をやる彼女。
テレビ電話の向こうでは、突如途切れた言葉に、1人の青年が心配そうな声を上げていた。
『どうしました?! マリューさん! マリュー艦長!?』
「――どうやら、予想よりも早く来ちゃったらしいわよ。
もし私に何かあったら、貴方は貴方の判断で動いて頂戴。いいわね、サイ君?!」
『ちょ、ちょっと、艦長……ッ!』
通信画面の向こうで慌てるメガネの青年をそのままに、彼女は電話を切る。
街に向けゆっくりと迫り来る巨体、そしてその傍に控えるモビルスーツ。
マリュー・ラミアス、あるいはマリア・ベルネスと呼ばれていた彼女は、厳しい顔でその影を見上げる。
雪が舞い狂う寒さだというのに、彼女の額に汗が浮かぶ。
「これは、私たちの責任よ。
覚悟も何もないあの子を、戦場へと送り出してしまった、私たちの……!」
見上げるような、黒い巨体のデストロイ。それを守るように空に留まる、フリーダムとカオス。
蒼い翼を広げる死の天使を見上げながら、無力な生身の人間1人、ギュッと拳を握り締める。
「既にもう、取り返しはつかないのかもしれない。カガリさんも亡き今、意味なんてないのかもしれない。
けれどせめて、マユちゃん、貴女だけは、私が……!」
マユ ――隻腕の少女――
第二十話 『 交差する刃 』
2人の意識は――明かり1つ見えぬ暗闇の中にあった。虚空の中に、2人の体だけが浮いている。
「……ねぇ、ステラ?」
「なに、マユ?」
「ステラって好きな人いる?」
「な、なんで、そんな、こと……」
「ふぅん。その様子じゃ、居るんだね。ネオ? それともスティング? あるいはラボの誰か?」
「……その……ス、スティ、え〜っと……」
マユは質問を重ね、ステラを顔を赤らめて言葉に詰まる。
マユの態度は、好奇心と野次馬根性剥き出し――では、ない。むしろ、やけに淡々とした態度。
「もう告白した?」
「……まだ…………」
「なら、ちゃんと言わなきゃダメだよ。あたしの見たところ、スティングもやぶさかじゃないと思うし」
「…………」
「……なぁ、お嬢ちゃん方」
「なぁに、ネオ?」
「そーゆー会話はさ、回線使わず2人きりの時にやってくれ」
「あれ? 聞こえてた?」
「あのなぁ、最初っから全部俺たちにも筒抜けだッ! あと時と場合を弁えろ! 戦闘中だぞ!?」
2人きりの世界に、急に割り込んで声を荒げたのは、ネオ・ロアノーク。
少女2人の意識が――暗闇の世界から、急速に現実に引き戻される。
――そこは、戦場だった。魂も凍るような雪景色に包まれた、戦場だった。
半ば無意識のまま引き金を引かれたデストロイの攻撃が、押し寄せるバクゥとガズウートをまとめて吹き飛ばす。
女の子同士の会話をしながらも振るわれたフリーダムのビームサーベルが、迫るディンを次々と斬り落とす。
ウィンダムもカオスも、それぞれに圧倒的多数の敵を相手にしている真っ最中で。
ベルリンの街が、血と炎に赤く染まる。
「でもさ、ネオ。ネオも聞き耳立ててたんでしょ? スティングも」
「……戦いながら突っ込めるか、そんな話題ッ!」
「スティング〜? 聞こえてたなら分かるよね〜? 女の子から先に言わせちゃうなんて、最低だよ〜?」
「うるせぇッ! 黙って戦えッ! 文句なら後で聞くッ!」
呆れるネオ。明らかに照れて動揺し、そして怒るスティング。耳まで真っ赤に、言葉も出なくなってしまったステラ。
確かにそれは、戦いながら――人を殺しながらするような話題では、なかったのだが。
ただ1人、平然とした態度で薄っすら笑みすら浮かべ、マユは口の中で呟く。誰にも届かぬ、小さな呟き。
「そうだよ……言えるうちに、言っておかないとさ。
あたしたちみたいに、言えなくなってから気付いたんじゃ、遅いんだから――」
ベルリンの街、吹雪の中で、激闘が続く。
デストロイの圧倒的な火力、そしてフリーダムたちの戦闘力の前に、ザフトの大部隊が街ごと壊滅させられてゆく――!
「――ベルリン、見えました。既に戦闘が始まっている模様。光学映像入ります」
ミネルバのブリッジ内に、緊張が走る。
モニターに大写しになるのは、燃えるベルリンの街と、その中央に鎮座する巨大な影。
どうやら駐ベルリン部隊は街に散らばり抵抗を続けているらしい。
「新型巨大MS、フリーダム、カオス、ウィンダム、ムラサメ4機、熱紋確認。
前線司令部……応答ありません。相当な被害が出ているものと思われます」
「前線の部隊への呼びかけを続けて。市街戦は避けたいわ。せめて、街から離れるようにと――」
タリアは焦る。こんな状況で戦い続けていれば、街の被害はどこまで広がるか分かったものではない。
ザフト兵たちは街を障害物として利用しているようで、そのことはザフトと現地人の関係を如実に示していたが……
しかし、デストロイの火力は、その障害物もろともに、ザフトのMSを吹き飛ばしてしまう。
はっきり言って、盾にもなっていない。ただひたすらに被害が増えるだけだ。
最も――ミネルバの任務は、街を守ることではない。あの巨大MSを、倒すこと。
「メイリン、シンたちを出して。戦闘に入るわよ!」
――シンを乗せたコアスプレンダーが、専用エレベーターでゆっくりと上がっていく。
パイロットスーツ本体とは色合いの違う、紅いヘルメットを被ったシン。引き締まったその顔が、今はよく見える。
『――シルエットはフォースを選択。カタパルト推力正常。コアスプレンダー、発進どうぞ!』
「メイリンの指示聞くのも、これが最後か――今まで、ありがとな。
シン・アスカ。コアスプレンダー、行きます!」
中央の専用カタパルトからは、コアスプレンダーを先頭にインパルスのパーツが次々と吐き出されてゆく。
左右のカタパルトに、セイバーとグフが歩みを進める。続いて待機するのは、白いザクと、無人のグゥル。
『セイバー。グフイグナイテッド。両機カタパルトエンゲージ。発進どうぞ!』
「了解だ。今度こそ、決着をつける!
アスラン・ザラ。セイバー、発進する!」
「お姉さんの分まで、みんなで仇取ってくるぜ。待っててくれよ!
ハイネ・ヴェステンフルス、グフ、行くぜッ!」
『続いて、ブレイズザクファントム。支援用グゥル。進路クリアー。発進どうぞ!』
「メイリン、最後までオペレートをしっかり頼むぞ。
レイ・ザ・バレル。ザク、発進する!」
『艦載MS、全機発進確認。皆さん……無理しないで……!』
次々に4つの影が打ち出され、最後に飛び出した白い影は、空中でグゥルの上に着地して。
メイリンの搾り出すような声に見送られ、4人の男たちは、強大な敵に向け、飛んでゆく――
「……ザフトの援軍が来るぞ! ミネルバだ!」
「またあいつらかッ……!」
もちろんその発進の様子は、マユたちの側でも察知できていた。
元々ベルリンに居たザフト軍をほぼ蹴散らしてしまった彼らは、休む間もなく新たな敵に向き合う。
「ステラ! お前は、ミネルバを落とせ! 母艦さえ潰せれば、おそらくこちらの勝ちだ!」
「うん……」
「スティング、マユ、俺たちはあの連中の足を止めるぞ! デストロイに近づけるな!
ムラサメは、デストロイの近くに待機していてくれ。俺たちを抜ける奴がいたら、頼む」
「分かってるぜ!」
「了解です、大佐」
「…………」
「……お〜い、マユ? 分かってるか? 返事しろ!」
「……あ、ネオごめん。うん、ちゃんと分かってるよ」
ネオの指示が飛ぶ中、マユだけは返事がなく。少し間を置いて、慌てたような返事が返ってくる。
ネオは溜息ひとつつくと、改めて気合を入れる。
「しっかりしてくれよ、フリーダム。この間のように、頑張ってくれよ。
じゃ――いくぞ、みんな!」
――ネオに注意された、そのマユは。
『……ザザッ……ちゃん、マ……ガガッ……聞こえ……ザザーッ……』
どこからか混線したらしい無線、ネオたちとの正規の回線でない声に、ちょっとだけ注意を乱されていたのだが。
通信機の設定を操作し、そのノイズをシャットアウトする。
元々ひどいノイズ交じりの通信だ。女性が誰かを呼んでいるようだ、としか分からない。
なんだかほんのちょっとだけ気にはなったが、結局無視する。
目の前には、ミネルバのMS隊。今度は、余計なことを考えながら蹴散らせるような相手ではない――!
「……マユちゃん! マユちゃん、聞こえる!? ああッ、もうッ!」
その足元、ベルリンの街の中。
打ち捨てられた古いビルの一室で、通信機を弄っていたのは、ツナギ姿のマリューだった。
さきほど、一瞬だけ繋がりかけた感触はあったのだが、また届かなくなってしまったようで。
Nジャマーの電波影響が強い戦場では、軍用ではない無線通信は最初から厳しいものがある。
彼女は焦りを滲ませて、ベルリンの空を見上げた。既に戦いは始まってしまっている。
この位置からは、ウィンダムと向き合うインパルスの姿しか見えない。
「せめて――彼女たちに、街から離れるように言わないと! このままじゃ、街の人たちにさらに被害が――!」
――雪の舞う街の遥か上空、2つの影が視界を遮る濃い霧の中で戦っていた。
いや、これは霧ではない。分厚い雪雲の中だ。雲の中、稲妻が遠くに走るのが見える。
MA形態のセイバーと、ハイマットモードのフリーダム。
たまにセイバーがMS形態になり、2門の大砲を撃ち放つ。時折フリーダムがフルバーストでセイバーを狙う。
しかし互いに互いの足を止めるには至らず、機動力で逃げられてしまう。
どちらも、火力はある。機動力もある。
しかしその2つの力は、どちらも変形によって使い分けるために、同時に発揮することができない。
フリーダムには中間形態であるハイマットフルバーストもあったが、これはいささか機動力と命中率が犠牲になる。
互いに、高機動形態では相手を制しきるだけの攻撃力がなく、高火力形態では敵を捉えきれない。
有利な位置を取り合い、競いながら戦ううちに、いつしか2機は高く高く上昇していて――
――突然、2機の視界が晴れる。
蒼い空。どこまでも広がる雲海。眩しいほどの太陽。
いつの間にか2機は、雲を越える高さまできてしまっていた。
吹雪が舞い狂う地上とはまるで別世界の光景。一瞬止まる攻防。
その機を逃さず、MS形態のセイバーが平手を突き出し、フリーダムに静止を訴える。
フリーダムは反射的に銃を向けたものの、そのままこちらも静止する。
「……少し、話したいことがある。そちらのフリーダム、乗っているのは『セイランの娘』だな?」
「……だとしたら何よ!?」
突然入った通信に、マユは声を荒げて。通信画面の向こう、セイバーのパイロットはヘルメットを脱ぎ、その顔を晒す。
「俺の名は、アスラン・ザラ。あるいは、こちらの名を名乗った方がいいかな。
『アレックス・ディノ』と名乗り、かつてカガリの傍にいた人間だ」
「――!!」
「キミもセイランの人間として考えれば、分かるはずだ。コーディネーターとして考えれば、分かるはずだ。
キミはこんなところで、こんな殺戮に手を貸しているべき人間ではない!」
アスランは、言葉に迷いながらも、切々と訴えて。その叫びを受けた、マユは――
――厚く垂れ込めた雲の下でも、激しい空中戦が繰り広げられていた。
武装も装備も、実によく似た2機。フォースインパルスと、ジェットストライカーのウィンダム。
「――ああもう、腕上げやがったなァコイツ。ストライクモドキめ!」
「この動き……アーモリーワンの時の、黒いストライクか! 面白い!」
時に街の建物をこするくらいの低空飛行をしながら、互いにビームライフルで撃ちあう2人。
しかし互いに、有効打がない。いずれも避けられ、あるいは盾に防がれる。
標的を捉え損ねた流れ弾が、次々に街の建物に突き刺さる。
「……インパルスね。ちと反則だが……ズルい手を使わせてもらうか。心理戦も戦争のうち、ってね♪」
ネオは呟くと、遠くで戦闘中のデストロイの巨体をチラりと眺める。
思い出すのはステラが戻ってきたあの時の様子。恐らくは軍規に違反してまで、彼女を返しに来たインパルス。
ネオはベルリンの街の上を駆けながら、通信機のスイッチを入れる。
「おい、聞こえるか、インパルスの坊主ッ!」
「!?」
「この前、ウチの部下がお世話になったそうだなァ! その礼に、特別に教えてやる!」
「こんな時に、何をッ!?」
目の前の敵の意図が分からず、戦いながら疑問の声を上げるシン。
ネオは、構わず叫ぶ。デストロイを指しながら、シンに向けて告げる。
「アレに乗っているのはな――ステラだ! ステラなんだよ!」
「!!」
その衝撃の事実に、一瞬動きを止めるインパルス。
まさに、狙い通りの反応。ネオはニヤリと笑って、間髪入れずにビームライフルの引き金を引いて――!
同じく、街の上空で。
カオスは――厳しい戦いを強いられていた。
しつこいほどに追い縋り、剣や鞭で打ち掛かってくる、オレンジ色のグフ。
カオスの逃げるルートを塞ぐように射撃をしてくる、白いザク。
他の2組がほぼ互角な状況なのに対し、この不均衡な闘いだけは、カオスは守勢に回らされていた。
「ちくしょうッ! なんで俺だけ、2対1なんだよ!」
スティングは思わず愚痴っぽい叫びを上げる。
あるいは状況が違えば、カオスの速力で一旦振り切って、仕切りなおす手もあったのかもしれない。
しかし、今はそれはできない。いや、彼も一度は、それをやりかけたのだが。
カオスが逃げる、と見たこの2機は――それを幸いとばかりに、デストロイに接近しようとしたのだ。
今のスティングの仕事は、デストロイに敵を近づけないこと。これでは本末転倒だ。
慌てて彼は、2機の前に立ち塞がって――こうして変わらぬ劣勢を、強いられている。
「だがな……ここを通すわけには、いかないんだよ!」
思い出すのは、つい先ほどの、マユとステラの会話。
ただひたすらにコーディネーターを憎み、奴らを倒すためならいつ死んでも良いと思っていた昔とは、もう違う。
ステラだけではない。ネオも、マユも。ここまでの戦いの中で、彼の中にも失いたくないモノが生まれていたのだ。
そう、アウルの時のようなことは、もう二度と、決して――!
「……状況は?」
「どのMSも、動けないようです。駐ベルリン部隊は、ほぼ壊滅かと……」
「……分かったわ。本艦はこれより、あの巨大MSに攻撃をしかけます!」
「えぇぇぇぇぇッ!?」
この状況に、ミネルバ艦長タリア・グラディスは決断を下す。悲鳴を上げる副官のアーサー。
ミネルバのMS隊は、いずれも強敵を相手に膠着状態に陥っていた。
残る戦力は、このミネルバ自身。
「ブリッジ遮蔽、トリスタン、イゾルデ起動。各ミサイルランチャーは、対艦対要塞戦用弾頭を選択。
敵はモビルスーツと言うより、手足のついた戦艦のようなものよ。そのつもりで!」
「トリスタン、イゾルデ起動。パルシファル、装填完了」
「では、微速前進。これより、対艦戦に――」
部下の報告を受け、命令を発しかけたタリアの言葉が、途中で凍りつく。
モニタの向こう、デストロイの巨体が、周囲の敵をあらかた片付けて、ゆっくりと向きを変える。
円盤の上に備えられた、非常識なまでに長く巨大なビーム砲。それが上下2連、左右2組、合計4門。
タチの悪い冗談のような巨大砲が、ミネルバの方を向き、狙いを定める。
「――回避! 急速回避ーッ!!」
攻撃をしかけようとしていたミネルバは、タリアの絶叫を受け、慌てて回旋する。
一瞬遅れて放たれる、4本の閃光。
それらはつい先ほどまでミネルバがいた空間を貫いて、虚しくそのまま直進し……
遠くで、とてつもない大爆発を起こす。爆風が、ミネルバの巨大なボディを揺らす。
着弾点には、呆れるほど巨大なクレーター。蒸発させられた積雪が、もうもうたる湯気となって舞い上がる。
「あ、あんなの喰らったら……!」
「喰らわないようにするのよ! こちらからも反撃、急いで!」
動揺したまま、ミネルバから放たれるミサイルとビーム。
しかし戦艦の主砲の攻撃さえ、黒い巨体の前に出現した光の壁に遮られる。ミサイルが突っ込み、虚しく爆発する。
ミネルバの攻撃は、その余波でただ街を破壊しただけに終わって――
「あ、あれって、オーブ沖やガルナハンの時のモビルアーマーと同じ……!」
「……そのようね。でも、だからって引けないわよ!」
デストロイの、円盤状の縁にズラりと並んだビーム砲が、ランダムにビームを撃ち放つ。
回避しきれなかった何発かが命中し、ミネルバにも激しい振動が走る。悲鳴の上がるブリッジ。
空中戦艦としても破格の機動力と防御力、そしてタフネスを誇るミネルバだったが……これでは、ジリ貧だ。
彼らの視界の隅では、膠着していたMS同士の戦いにも、新たな変化が見られていて――
灰色の空の下、向き合うインパルスとウィンダム。
――何かが砕け散るような音が、響き渡る。焦点の合わぬ紅い目が、限界まで見開かれる。
そこに浮かんだ色は――歓喜。困惑でも後悔でもない、歪んではいるが純粋な喜び。
「――ハハハハハッ!
そうか、そうなのか! アレに乗っているのは、ステラなのかッ!」
「……!!」
ネオの「ズルい手」。戦闘中に、敵が助けた相手の存在を教えることで、動揺を誘う卑怯なやり口――
だが必ず当たる、と思ったその射撃は、あろうことかインパルスの抜き放ったビームサーベルに、打ち落とされる。
飛んできたビームをビームサーベルで相殺する――原理的には可能でも、ほとんど人間技とは思えぬ神業。
「そうか、あいつは、アスハは馬鹿正直に『約束』を守ってくれたかッ! こいつァ傑作だッ!」
「や、『約束』、だと……!?」
カガリとシンの間に交わされた詳しいやりとりまでは知らないネオは、相手の様子に困惑する。
狂ったような笑いを上げるインパルスのパイロット。その様子に、思わず動きを止めて――
――そして、その間隙を突かれる。ネオの作戦とは、ちょうど逆の展開。
瞬間移動したかと見間違うほどの、急速接近。ウィンダムと口付けするかと思えるほどに迫った、インパルスの顔。
慌ててネオは咄嗟に突き放そうとするが、もう遅い。至近距離で、インパルスのビームサーベルが振るわれる。
大きく切り裂かれた紫のウィンダムは空中でコントロールを失い、落ちていく。
「ならば、約束を果たしてやる! またこの俺が、倒してやる!
ルナの分まで――そのケンカ、買ってやるぞォッ!」
そのままネオは、成す術もなくベルリンの街に墜落して――しかしシンは、もはや彼に対する興味を失っていて。
哄笑を上げるシンは、その紅い目を舞い狂う雪の向こう、デストロイの黒い巨体に向けた。
ウィンダムにトドメを刺す間も惜しむように、インパルスは翼を広げ、巨神に向けて駆けていく――
「――ネオ! くそッ!」
遠くにその光景を見たスティングは、苛立ちの声を上げる。
目の前を掠めるグフイグナイテッドのビームソード、テンペスト。肩を掠めるザクファントムのビームトマホーク。
カオスは相変わらず、2機を相手に苦戦中。あのネオも倒されてしまったし、このままではステラが危ない。
スティングは、一気に勝負に出る決意を固める。
「コイツら、数が多いからって、調子に乗りやがって……!
だがな、こうすれば、2対3だッ!」
スティングの叫びと共に、カオスの背中から2つの影が飛びだす。
カオス最大の特徴である、機動兵装ポッド。連合のガンバレルやザフトのドラグーンの流れを汲む、遠隔操作兵器。
無線式だから動きを束縛するものはないし、大型バッテリー搭載だからドラグーンよりも稼動時間が長い。
ビーム砲だけでなくマイクロミサイルも備え、攻撃のバリエーションは大いに広がっている。
ただしこの機動兵装ポッド、カオス本体に装着されている時は、本体のバーニアの1つとして働いている。
そのため、兵装ポッドを射出してしまえば、MS本体の動きは格段に落ちてしまう。
特に、空中に留まるためにもその推力を利用している重力下での空戦では、その影響は大きい。
だからこそこれは危険な賭けであり、またスティングの最後の切り札だったのだが。
分離された2基の兵装ポッドが、それぞれ独立した生き物のように宙を走り、ザクとグフに狙いを定める。
事実上、手勢が増えたようなもの。対応などできるはずない、そう思っていたスティングだったが――
――空中に、思念が稲妻のように走って。
白いザクが振り返りざまに撃った一発のビームが、あっさりと片方の兵装ポッドを貫き通す。
真後ろから、相手の不意を突くはずだった兵装ポッドが、一発の攻撃を放つ間もなく爆散する。
「なにッ!」
「……ふん、この程度か。お前のやりそうなことは、このワタシには、容易に想像がつく!」
驚くスティングに、哂うレイ。
いつも控えめで落ち着いていて、一歩下がっている印象のあったレイだったが……この表情を見たら、皆驚くだろう。
大いなる自信と相手への侮蔑に満ちた、悪意の表情。一人称までいつの間にか変わっている。
「大方、ドラグーン2機で精一杯なのだろう、カオス! 空間認識能力のレベルが違うのだよ、ワタシとはね!」
「くッ……畜生ッ!!」
スティングは叫ぶ。残る1機の機動兵装ポッドが、全てのミサイルを放出しながら、ザクに迫る。
直後、これまた撃ち抜かれる兵装ポッド。しかし同時に、無数のミサイルの中のたった一発が、グゥルに直撃。
「ちぃッ……! 分かっていても避け切れんか、ザクの性能では……!」
「ザマぁ見やがれッ……!」
フラフラと墜落していくザクとグゥル。快哉を上げるスティング。
しかし、そんな彼の目の前に、色鮮やかな影が飛びだした。
もう1機の敵、ハイネ・ヴェステンフルスの、グフイグナイテッド――!
「だが、この戦いは……俺たちの2人の、勝ちだッ!」
「――!!」
兵装ポッドを全て失ったカオスの身体を、振るわれたビームソードが切り裂いて。
胸元から火花を散らしながら、スティングのカオスは、真ッ逆さまに堕ちてゆく――
はるか上空――雲の上、天上世界のような、何もない空間。
抜けるような青空の下でも、激しい戦いが行われていた。
と、言っても――片方が片方に一方的に斬り付け、片方が逃げ回っているだけだったのだが。
「やめろフリーダム! キミの力は、フリーダムの力は、こんなことに使うものではないんだ!」
アスランは叫ぶ。叫びながら、セイバーを後退させつつ、盾で身を守る。
一方のマユは、攻撃だけを考えているかのような、狂ったような斬撃を加え続ける。
アスラン・ザラの告白。アレックス・ディノと同一人物であるという告白。
それは――まさに、マユの逆鱗に触れる一言だった。絶対に許せぬ態度だった。だから、叫ぶ。
「何も知らないくせに、何を偉そうに! オーブを裏切ってザフトに渡った人間がッ!」
『何も知らないくせに、何を偉そうに! プラントを捨ててオーブに渡った人間がッ!』
それは――どこかで聞いた台詞。いつか聞いた怒りの言葉。
アスランの脳裏に、誰かの叫びが重なるように響き渡る。
「俺のことは憎んでくれていい、軽蔑してくれてもいい! だが、この闘いは!」
「あたしの家族は、2年前オノゴロ島で死んだ! フリーダムに、見殺しにされたッ!」
『俺の家族は、2年前オノゴロの戦闘で死んだ! アスハの信念に、見殺しにされたんだッ!』
アスランの声を聞く素振りも見せず、一方的に攻撃を続けるマユ。
再び蘇る、誰かの叫び。その既視感の正体に思い至ったアスランは、はッとする。
「パパの身体はバラバラで、ママの身体は首がなくて!」
『父の身体はバラバラで、母の身体は首も飛んでしまって!』
「お兄ちゃんなんて、クレーターだけ残して跡形もなくて!」
『妹に至っては……千切れた右手だけを残し、跡形もなくてッ!』
「あたしも、右手を奪われたッ! 今でも痛むのよ、もうないはずの右腕がッ!」
かつてシンの語った言葉が、一つ一つアスランの耳に蘇る。
二人の叫ぶ顔が、オーバーラップする。全く同じ、2人の表情。
思い出すのは、白い長手袋に包まれた右腕。事情を聞くに聞けない雰囲気があった、あの右手。
――なぜ、気付かなかったのか。なぜ、誰も辿りつかなかったのか。
全てのパズルのピースが、アスランの中に揃う。
何度もニアミスを繰り返してきた運命が、ようやく一つに繋がる。
彼の脳裏に、恐ろしい推測がよぎる。それはもはや、疑いの余地ない確信。
「お、お前……お前たちは、まさか……!」
「『だから!」』
そして――そんなアスランの動揺を、セイバーの隙を、見逃すマユではなく。
記憶の中のシンと、目の前のマユが、アスランの中で唱和する。
マユの中で、何かが砕け散り、眩しいほどの光が溢れ出す。
『もう二度と、アスハなど信じない!』
「もう二度と、オーブは焼かせない!」
『俺は――シン・アスカは、オーブなんて国を、許さないと決めたんだ!』
「私は――マユ・アスカは、オーブを脅かす可能性を、許さないと決めたのよ!」
「やめろ、駄目だ、お前達は――!」
雲の上、蒼い翼を広げた死の天使が、ユラリと剣を振るう。幻惑するような動きで、かつ、目にも止まらぬ速度で。
アスランの叫びは、閃光のように駆け抜けたビームサーベルに、無慈悲にも断ち切られる。
セイバーの、腕が、足が、首が、翼が、一瞬のうちに斬り飛ばされて――
一瞬遅れて落下を開始したセイバー身体が、雲の海に沈んで、天上世界から消え失せる。
『こんな悲劇は、俺たちだけで、十分なんだ……!
俺を最後に、二度と起こさせては、いけないんだ……!』
アスラン自身がかつて放った、血を吐くような叫び。誓いの言葉が、虚しく脳裏に木霊する。
底なしの雲の中、終わりのない落下に、アスランの意識は掠れていく――!
堕ち行くセイバーを見送ったマユは、しばし無言のまま。
焦点の合わぬ目で、セイバーの消えた雲を見つめていたが。
やがてゆっくりと、フリーダムは翼を畳み、自由落下に入る。
一番シンプルな、地上への帰還方法。灰色の世界を落下しながら、次の敵を探す。
「インパルスと、グフと、ミネルバ。よし――」
心を決めた彼女は、落下しながら翼を広げて。さらなる加速をつけて、新たなるターゲットへと――!
――ベルリンの街の中。狭い路地を、MSのボディが滑っていく。
撃墜されながらもギリギリで姿勢を制御して行った不時着。石畳と機体が擦れて、耳障りな音と火花が散る。
やがてそのボディは、打ち捨てられた古いビルに突っ込み、激しい振動と土煙を上げてようやく止まる。
「……イテテ。やれやれ、手ひどくやられちまったなァ」
ビルに半ば埋まったウィンダムの残骸の中、頭を掻いていたのは仮面の大佐。
パイロットスーツのヘルメットを打ち捨て、歪んだコクピットハッチを蹴り開けて、外に這い出す。
まだ街では戦闘が続いているらしい。遠くから伝わる振動の度に、ビルの天井からパラパラと破片が落ちる。
さてどうしたものか、とネオが思案した、その時――
「――そのまま動かないで、連合のパイロットさん」
硬い声が、ネオの背後からかけられる。撃鉄の上げられる、小さな金属音。
一瞬で状況を理解した彼は、ゆっくりと両手を挙げて、静かに振り返る。
そこには――ツナギ姿の女性が、小型拳銃を両手に構え、ネオの方に向けていた。
その姿を一目見ただけで腕前が分かるような、そんな的確な構え。
「――ほぅ。これはこれは。ベルリンのレジスタンスか何かの一員なのかな、お嬢さん」
「茶化さないで。変なことをしたら、すぐに撃ちます!」
彼女は、厳しい表情で目の前の連合士官を睨みつける。
黒い、非正規品の制服。奇妙な仮面。大佐の階級章。そして何故か、どこかで聞いたことがあるような声――
「そのモビルスーツ、通信機はまだ生きているのかしら?」
「……ああ、多分な。なんだ、誰かと連絡取ろうってか? 他人に銃を突きつけて」
「貴方には関係のない事よ。そこをどいて」
コクピット近くに立つネオに、その場を開けるよう指示を出す彼女。
しかしネオは、素直に動こうとはせず、そのヘルメット状の仮面に手をかける。
「やれやれ、勝手な話だねェ。こっちの都合は無視かい?」
「変なことはしないように、と言ったでしょ! 本当に撃つわよ!」
「マリュー・ラミアス。元連合軍少佐、アークエンジェル艦長。……今の肩書きは知らんが、そうだよな?」
「!!」
どうやら自分を知っているらしい男の口ぶりに、マリューは驚いて。
その隙に、男は仮面を外し、素顔を晒す。傷がいくつも走るその顔に、ニヤリと笑みを浮かべる。
「……あ、貴方はッ!?」
「まだアンタは、脱走兵として手配中の身のハズなんだけどねェ。何やってんだい、こんなトコで?」
気さくに語りかけるネオに、しかしマリューは呆然として。
有り得ないものを見たかのように、その身体は震えだし。両目から、涙が溢れ出す。
小型拳銃の重量さえ支えきれず、マリューの腕が下がる。そんな彼女に、ネオはゆっくりと歩み寄って――
「どうした、マリュー? 俺の顔に、何かついてるかい?」
「嘘……! 嘘よ、だって、貴方は……! 貴方は、もう死んだはz……!」
優しい笑みを浮かべて近づいたネオは、素早くマリューの鳩尾に、拳を叩き込む。
信じられない、という表情のまま意識を失うその身体を、ネオが優しく受け止める。
「――まさか、こんなとこで出くわすとは思っちゃいなかったんだが。
さて、コイツはどうしたモンだかなァ」
かつて、ムウ・ラ・フラガと呼ばれた男そっくりの素顔を晒したまま。
ネオはぐったりしたマリューの身体を担ぎ上げ、その場を立ち去る。
後に残されたのは、手からこぼれ落ちた小型拳銃と、ヘルメット状の仮面。
なお続く激しい戦闘に、半壊したビルは震え続ける――
――あの人が来る。
狂気にも近い殺意を剥き出しにして、あの人が来る。
何度も戦った人。強い人。怖い人。
アウルを殺した人。ラボのみんなを殺した人。私を、殺そうとした人。
ネオまで倒して、私のところにやってくる。
怖い。怖い。怖い。
あのミネルバでさえも逃げ惑うしかない、デストロイ。私の新しい鎧。でもコレに乗っていても、なお怖い。
MS越しにも、あなたの顔が分かる。あなたの浮かべている表情が分かる。
――笑っている。
戦いを、殺戮を、味方の被害さえも、あなたは笑って楽しんでしまう。
私とは、まるで違う人。怖いから、怖いのから逃げたくて戦っている私とは、全く違う人。
あの日――ミネルバから連れ出すために抱きかかえてくれた、あの力強い腕。
どうしてその同じ手で、彼は私に銃を向けられるのだろう。
分からない。分からない。分からない。
……スティング、スティングはどこ?
いつも、思っていることの半分も言えない自分。諦めて、黙り込んでしまう自分。
ふと気がつくと、何を言いたかったのか、自分でも忘れている自分。
でもマユにも言われた。それじゃダメだと。言わなきゃダメだと。
「スティ……!」
あれは何だろう。あれは何だろう。
オレンジ色の影に着られる緑色の塊。落ちていく緑色の塊。動かない緑色の塊。地面に追突する緑色の塊。
あれは……あのシルエットは……!
「いやぁぁぁぁぁぁッ!」
――あの人が来る。怖い人が来る。インパルスが来る。
スティングはいない。ネオもいない。マユもどこか行っちゃった。
デストロイを守るために控えていたムラサメも、あの人に落とされていく。どれもたった一撃で、倒される。
……死ぬ? 死ぬの?
みんな死んじゃうの? あの人に、殺されちゃうの?
「……みんな、死んじゃう?
……ああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だいやだいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤd
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
――デストロイが、立ち上がる。異形の怪物が、巨大な巨人へと形態を変える。
その両手から、その胸元から、狂ったように打ち出される無数のビーム。
ほんの4発の射撃でムラサメ隊残党を瞬殺したシンも、その勢いが止まる。
両手の指先、それぞれ5門。前腕部にも1門ずつ。胸には3つ、顔にも1つ。16門のビーム砲の連続乱射。
インパルスを捉え損ねたビームが、そのままその背後の街並みを焼き払ってゆく。
しかし――冷静に見れば、その射撃は案外散漫だ。数は無闇に多いが、どれも分かり易すぎる攻撃ばかり。
シンは未だ焦点の合わぬ目のまま、1つ1つ丁寧に、最小限の動きで避けながら、さらに接近をかける。
「――ステラッ!」
そんなインパルスに、真上からもビームの雨が降り注ぐ。流石に接近を止め、これもまた丁寧に回避するインパルス。
見上げれば上空には――翼を広げたフリーダムの姿。眼下のインパルスに次々と撃ち掛ける。
デストロイとフリーダムの2方向からの集中砲火に、今のシンでさえも回避だけで手一杯になる。
「――ふりぃだむぅぅぅぅぅぅッ!」
その一方的な局面を、さらに破ったのは――空を駆けてきた、オレンジ色の影。
翼を大きく広げ、空中のフリーダムに盾で体当たりをしかける。そのまま押し切るように遠ざかる2機。
「ハイネッ!?」
「シンッ、お前はあのデカブツを! 悪いが彼女の仇は、譲ってもらうぜッ!」
ハイネは、そのまま遠ざかり――頭上からの砲撃の途絶えたシンは、改めて目の前のデストロイを見上げた。
ビームサーベルを抜き放って、シンは不敵な笑みを浮かべる。
「――フリーダムッ! 貴様だけはぁッ!」
「クッ!」
デストロイから大きく引き離すことに成功したハイネは、叫びながらフリーダムに斬りかかる。
元より剣技に長けたハイネだったが、今マユを圧倒しているのは技量というより、むしろ荒削りなその気迫。
あのマユに反撃すら許さず、恐るべき速度の連続攻撃を叩き込む。
「キースも! ジョーも! カルマも! アキラも! グレイシアも! ゼロも! 皆、いい奴だったんだッ!
バカで、お調子者で、どうしようもない連中だったが……大切な仲間だったんだッ!」
「…………」
「これが――割り切れるかよッ! 割り切ったりして、たまるかよッ!
俺はそこまで、大人じゃねぇッ! 大人じゃなくて――構わねぇッ!!」
それは、かつて彼がアスランに語った言葉とは、180度逆の叫び。虚飾を全て剥ぎ取った、ハイネの魂の叫び。
右手から放たれたスレイヤーウィップが、フリーダムの身体を拘束する。両腕ごと胴体を締め上げ、自由を奪う。
ハイネのグフは、左手で鞭の突端を握り締め、片足をフリーダムの胸にかけ、完全に捕まえてしまった。
この超至近距離では、フリーダムのレールガンも翼のビーム砲も、相手に向けることができない。砲身が長すぎる。
「き・さ・ま・だ・け・は・あ・ぁ・ぁ・ぁ・ぁ・ッ!」
「!!」
そのままの姿勢で、ハイネはスレイヤーウィップの超高周波振動を開始させる。紅く光り始める鞭。
フリーダムが、そして捕まえているグフ自身もが、激しい振動に晒される。
本来これは、こういう形で使うような武器ではないのだ。自らの身をも削るような、決死の攻撃。
激しい振動に、フリーダムが、グフイグナイテッドが、それぞれ悲鳴のようなアラームを鳴らす。
だが――マユは、慌てなかった。動揺の色を、見せなかった。
暗く俯いたままだったその顔が、ゆっくりと上げられる。
その瞳に宿るのは――暗い、怒り。
「……何を、今さら」
「!?」
「それが――どうしたって言うのよッ!」
フリーダムの翼が、束縛を免れていた10枚の翼が、改めて広げられる。
自由にならぬ両腕のまま、かろうじて自由になるその手の指が、紅く光る鞭を握り締める。
そして、縛り上げているグフごと、引きずるようにして――!
「何を……今さらァッ!!」
「な、何ッ!」
「散々アンタらも殺しておいて……何を今さらァ!!」
拘束されたまま、フリーダムは最大出力で、飛ぶ。ベルリンの街を掠めるように飛んでいく。
空中で姿勢が入れ替わり、下側に回されたグフの身体が――次々に、建物に叩きつけられていく。
逃げようにも、今さら逃げられない。グフの鞭は前腕に収納式。自由に捨てられる構造には、なっていない。
「グハッ、うおッ、や、やめッ……!」
「あんたたちは……どいつもこいつも、何を今さらッ……!」
ベルリンの街は、フリーダムが駆け抜けた後そのままに、どんどん建物が壊れてゆき。
グフの身体は、叩きつけられる度に装甲が凹み破片が飛び散り、ボロボロになっていく。
やがて、ついには鞭の方が耐え切れなくなって、ブチ切れる。
両腕が自由になったフリーダムは、しかしなおもグフを許さずに。その頭部に露出したパイプを、握って捕まえる。
なおもそのままの勢いで、建物に叩きつけてゆく。
「……! ……!!」
「あたしはッ……今さら、止まるわけにはいかないのよッ!」
グフの足が飛ぶ。腕が飛ぶ。翼が千切れ飛ぶ。
声も出なくなった橙色の塊を、フリーダムは最後に、建物が途切れた空間、開けた広場に叩きつける。
広場の真ん中にあった、大きな噴水。その尖った突端が、グフの脆くなっていた胴体を貫き通して――
昆虫採集の標本のように串刺しになった「グフだったもの」は、一瞬遅れて、爆発した。
――ビームサーベルが、コクピットハッチに振り下ろされる。
デストロイは、その巨体に似合わぬ反射神経で後ろに飛び下がったが、それでもなお避け切れない。
中までは届かなかったものの、掠めたサーベルの突端が、その分厚いハッチを切り裂いて。
雪の混じった冷たい風が中に吹き込み、ステラに襲い掛かる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
ステラは叫ぶ。目を見開き、滝のような涙を流し、壊れきった表情のまま、なおも戦い続ける。
ステラの心を責め苛むのは、過去のトラウマ。ブロックワードで封じられていた思い出。
2年前のパナマで遭遇した、大殺戮劇。
心に傷を負った少年少女ばかり集められた、ロドニアのラボの過酷な訓練と手術の日々。
崩壊するアーモリーワン。連合兵に蹂躙されるガルナハン。後からニュースで知った、オーブ艦隊の壊滅。
そして――目の前の、焼き尽くされてゆくベルリンの街並。
ステラが経験してきたあらゆる地獄絵図が、渾然一体となって彼女の精神を責め立てる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
彼女はなおもトリガーを引く。
目の前の幻影を打ち払うように。インパルスを薙ぎ払うように。この世の全てを吹き飛ばすように。
けれど、その度にベルリンの街だけが壊れてゆき、その光景が彼女のトラウマを刺激する。
どこまでも終らぬ苦しみ。止まることのできぬ悪循環。
「――辛いんだろ」
――不意に、その幻影が掻き消える。ステラは思わず、はッとする。
声が聞こえる。いつか聞いた声。優しい声。同時に、怖い声。
ああ――これは。
「ステラは、生きてることが――辛いんだろ。辛いことばかり、思い出してしまうんだろ」
通信画面の向こうで、微笑む青年。赤いヘルメットの中に、彼の顔がよく見える。
それは本当に、優しい微笑みで。本当に、柔らかい表情で。
「だから――俺が救ってやる。ステラを、辛いことから、守ってやる」
「あ――!」
青年の言葉に、デストロイの動きが、止まる。
ステラの壊れた顔に、歓喜の表情が浮かぶ。インパルスのパイロットの顔にも、同じく歓喜が満ちていて。
「俺が――お前を、今ここで、解放してやる!」
舞い散る雪の中――無防備に両手を広げたデストロイに、ビームサーベルを構えたインパルスが身体ごと突っ込んで。
その胸の中央に、光の剣が、深々と突き刺さる――!
――雪降る古都に、照明弾が上がる。赤と緑の光の玉が、灰色の街を鮮やかに染める。
ミネルバからの、撤退信号。
見れば――街の向こう、地平線の彼方に、蠢く影が見える。
デストロイに先払いをさせていた、連合軍の本隊。圧倒的なまでの数の、MSの群れ。
彼ら連合側の援軍が到着すれば――傷つき、艦載MSの多くを失った今のミネルバに、勝ち目はない。
デストロイを倒したインパルスが、ミネルバに向けて身を翻す。エネルギーが切れ、PS装甲がダウンする。
片足を失い、何やら灰色の塊を抱えた白いザクも、ブレイズウィザードの推力を最大にして、ミネルバに飛び乗る。
「インパルス、ザクファントム、セイバー、回収しました。グフイグナイテッドの帰還は、絶望的です」
「――分かったわ。本艦はこれより撤退します。軍司令部に連絡を取って。
あの巨大MSは倒したけど――これは、私たちの負けね。ベルリンの街も、守りきれなかった」
声を震わすメイリンの報告に、タリアは溜息をついて。
もはやベルリンの街は、跡形もない。どこまでも破壊された廃墟が広がっているだけ。
満身創痍のミネルバは敗北感を胸に抱いたまま、その身を翻す。
先の見えない逃避行が、始まる。
――連合軍が、廃墟の街に入ってくる。
抵抗などほとんど有り得ぬこの廃墟に、ちょっと多すぎるほどの兵隊があふれる。
連合軍の、東欧地域に対する再侵攻は、この街だけでなくあらゆる戦線で行われていた。
遠からぬうちに、ヨーロッパに広がったザフト勢力圏は、磨り潰されるようにして消滅することだろう。
連合軍に着実に制圧されてゆく街の中で。
フリーダムは、大地に大の字に横たわったデストロイの近くに立ち尽くしていた。
機体を降りたマユは、壊れたハッチをこじ開けて、ステラの身体を引っ張り出す。
――全ての力を失ったステラの身体は、少女の手にはずっしりと重く。
脈を取るまでもなく、もう死んでいると一目で分かってしまうような、そんな血の気の失せた身体。
外から見えるような大きな傷はなく、まるで彼女は眠っているようにも見えて。
デストロイの装甲の上、動かぬステラを膝枕するように抱きかかえながら、マユは小さく呟く。
なお降り続ける雪を見上げ、心の底から不思議そうに、呟いた。
「……なんでかなぁ……なんで、ステラ、こんなに幸せそうに……」
少女の問いに、答える者はなく。
安らかな表情を浮かべた少女の亡骸に、雪が静かに舞い積もる――
第二十壱話 『 終着点 』 につづく
……ふぅ。ようやく、ここまで来た、って感じです。
初期の構想とは異なる展開が結構あったりして、自分でも驚いていたりします。
書いてる最中に、時折何か心の内側で囁くものがあって、発作的に変えたりするわけです。
でも不思議なもので、大抵の場合は最初に考えていた展開よりも良くなるわけで。
・ネオの素顔
カガリには見せていましたが、視聴者に対してはこれが初公開。
と言っても、まあ絵としては本編と変わりありません。髪の長いムウの顔に、横に走る傷跡が何本か。
・ハイネ
この人は、いい意味で「いつまで経っても悪ガキ」な人なんだと思います。で、そんなところが魅力で、みんなに好かれると。
本編でアスランに語っていた言葉も、半分くらいは彼自身が常に自分に言い聞かせているようなことなんじゃないかと思います。
これで今年の投下分は終わりです。
1月からはいささか忙しくなる予定なので、来年は投下頻度は下がると思います(それ見越して今年頑張ったんですが)。
2週に1度くらいのペースで投下できるといいな……。
ではみなさん、良いお年を……。
神が連打で来たのでとりあえずGodJobと言っておこう
マユ種は戦闘描写が巧すぎ。簡単に脳内で映像つきで再生されるな。
隻腕は・・・アスラン・・・ハイネ・・・
インパルスが「救う」っていうのはアニメ版でも可能性の一つとして考えられるもんだったが、使うか。
これまででしっかり積み上げたぶんの重さが圧し掛かってくる。良い重さだ。
携帯で何気にアクセスしたらなんと…!
GJです!
とうとう兄妹だったことが判明したりハイネが散ったり……
来年も期待しております。
これで和解フラグが立ちましたね。
和解……できるかぁ?
まあ、するもしないも今俺が言える事は唯一つ!
良い 仕事
G o d J o b !
遂に兄妹の関係に気付いた人間が現れましたね
今後の展開に大期待です!
隻腕シンが良いなあ
正直、最初は「こんな基地外になっちまって…」と嘆いていたのだけど、
ここまで20話+α、戦いをずっと見てるうちにいつの間にか気にいってた
特に、SPで絶望して、ガンソードで癒された今では、善だろうが悪だろうが揺るがずに一つの道を突き進む奴ってのが無茶苦茶格好良く思える
兄妹だと知ったら衝撃受けるかもしれんけど、隻腕シンには「その程度の事実」で揺れないで欲しいかな
・・・・なんだか書く意欲が出てきた。
GJ 俺は俺の物語を書くよ。
隻腕キター!
イヤー、よかったよかった。
一つ前にアーモリーワン編を持ってきたから多分凸とマユの会話で気付くかなーと思ったんですけど、ほんとに気付いたね。
今後の凸の葛藤が楽しみです。
しかし、隻腕の凸はいい位置にいるなぁ。
優しい死神、という感じのシンの殺し文句(文字通りですが)もよかったですよ。
1月からは忙しくなられるそうで、投稿頻度が落ちるのは残念ですがリアルのほうが大切なのでそっちのほう、頑張ってください。
『はい、という訳でマユとレイがMSを乗り換えることになったので会議を始めたいと思います。』
ホワイトボードにシンハロが書き込む。
今現在、会議室にはパイロット組がいる。
『ちなみにレイのブレイズザクファントムはルナのザクウォーリアが居なくなって絶望してるので注意してください。
インパルス達はマユに捨てられたと思い込んでヒッキー状態です。話しかけても答えてくれません。
そこらへんを考慮してお願いします。』
おいおい、そんな精神不安定なんかい。と、全員が突っ込みたくなった。
『ちなみにインパルスに登場した場合、試乗まで時間がかかります。
あのコアスプレンダーが合体する時に打ち落とされないのは俺が制御してうまく合体してるから、
そのシステムをコアスプレンダー自体に組み込まなきゃなんで。
レイのザクファントムはハイネ隊の皆向けかな?あー、でもアイツ何気にグゥル乗るの下手なんだよなぁ。
まぁ、いいや。質問は?』
非常に不安な内容ばかり話してシンハロは話を止める。
「はーい、ししょー。」
アキラが手を上げる。
『どうした弟子一号。』
シンハロもノリノリで答える。
「どうしてレイのザクファントムはルナのザクウォーリアが壊れて落ち込んでるでありますかー?」
『あぁ、あの二人(?)、恋人だったから。』
シンハロの言葉の瞬間、非常に重い空気に包まれる会議室。
『いやぁ、あの二人本当にラブラブでさぁ、他のMSにもいいカップルって良く言われててー。
戦争が終わったら復興作業とかに使われたいとか話してたなぁ・・・。
ルナリア・・あ、これルナザクの愛称ね。で、ルナリアが廃棄処分にしたほうが良い、って言われた時、
俺にもう号泣しながらどうにかしてジャンク屋に回してくれっていってきてさぁ・・・。』
全員、その会場に居る全員がルナマリアを・・・・・・な目で見つめる。
「なっ・・、私は悪くないって!!手を下したのはフリーダムでしょ!?」
『あー、ルナリアもそう言ってたなぁ・・・。どうかルナマリアを恨まないでって。』
・・・・・・どうやら、ルナのザクは本人よりむっちゃいい子だったらしい。
皆の視線に耐え切れなくなったルナマリアは、叫んだ。
「わかったわよ!私がレイのザクに乗るわ!!乗れば良いんでしょう?!」
かっこよく宣言するルナマリア。しかし。
『はい、じゃーけってーい。』
あっさりホワイトボードに「ルナマリア レイレイ」と書くシンハロ。
おそらくレイレイとはレイのザクのことだろう。たぶん。
『レイ・ザ・バレル専用ブレイズザクファントム』
を縮めた物だと皆は思った。
「え・・・?私謀られた?!インパルスに乗るチャンス・・・・失った・?」
『いや、今の話本当だけどさー。あの二人今もメール交換してるし。』
「え・・?!何?MSってそんなことしてるのあのっ・・ちょっとー?!」
ルナマリアの魂の叫びを無視して、皆は次の議題に移った。
なにこの人間味溢れるMS達。
腹抱えて笑ったよ、ほのぼのGJ!
ていうかマユ種と隻腕の後に読むと空気の落差が凄いw
ほのぼのは物語が進んでもこの空気を維持してくださいー
マユ種新作キター
お互いの正体ばれ遂にきたー
アニメで是非見てみたい戦闘シーンでした。
「インパルスは俺のモンだ!!」
「マユのMSは渡さない!!」
鞭がしなやかに飛び、ナイフが銀色の軌跡を描く。
・・・・・ひじょーに子供っぽい理由で本気の殺し合いをしてるのはハイネとシンである。
ハイネはガンダムタイプのMSに乗るため。シンはマユの乗っていたMSに乗るため、戦いを繰り広げていた。
「ゲンー、お前が勝ったらストライクは俺が貰うぞー。」
「いいよ!!」
ネオの言葉に蛇のように喉元にせまった鞭を交わしながら答えるシン。
その他の人々はテーブルでバリケードを作って避難している。
シンハロの奴はどこかに言ってしまって、もうどうしようという感じである。
マユはめんどいから戦いたくないし、ハイネ隊の面々もハイネの鞭術の凄さは知っているので
出来るだけ入りたくない。
しかし!そんな状況を突破する、一つの流星が!!
「けんかだめー!!」
フライングすてら。
シンに思いっきりフライングアタック。
ハイネも呆気に取られれた隙に取り押さえられる。
「ハイネ、わがままいわないの!!!」
「いーやーだー!!ガンダムのるー!!」
「だめだグレイシア!!既にハイネは幼児退行している!!」
じたばたじたばたと暴れるハイネ。
「おい!!馬鹿やってるんんじゃない!!」
「マユの全ては俺のものだ!!」
「おーい、スティング。精神科医呼べ。」
ネオとアウルに取り押さえられながらももがくシン。
『ふぅ。』
がちゃり、と扉が開き、シンハロが帰ってきた。
『何々ー?プロレスごっこー?あ、そうそう。インパルスにどっちがいいか聞いてきたよー。』
・・・・・空気を読む機能が壊れているのだろうか?あっさりと話し続けるシンハロ。
『シンのほうだって。パイロット。』
ちゃららーちゃーちゃーちゃっちゃちゃー♪(お好きな勝利のテーマを)
「いやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ortなハイネ、勝利のポーズのシン。
「はははは・・・これで!!これでマユのシートは!!」
狂ったように笑うシン。
「あれ?確かコアスプレンダーのコクピットはシンハロが壊しちゃったんじゃ?」
『あー、そうだ。あれからマユ座ってないし。』
「ゲンー、約束どおりストライクは貰うぞー。」
「え・・?!おい!!あんたらって人はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
隻腕が凄いのは分かる
だが何故か激しく鬱になるんだがどうしてだ??
||
∧||∧
( / ⌒ヽ とりあえず吊ってみるか…
| | |
∪ / ノ
| ||
∪∪
;
-━━-
>>298 吊りたいのは俺だよ…
こんなん見た後書けないよ…
>>299 大丈夫、俺はコメディタッチで種をぶち壊してみせるから!
まあその前に一緒に
||
∧||∧
( / ⌒ヽ 吊ってみるか…
| | |
∪ / ノ
| ||
∪∪
;
-━━-
シリアスじゃ無理だ、畑違いで俺のディスティニーを!
吊るっていうのはあまり良い意思表示とはいえない。
言葉を使おうぜ。
それでも吊りたいっていうならせめて↓のAAを使おう。
そのAAはちょっと生々しいんで。
∧||∧
( ⌒ ヽ
∪ ノ
∪∪
わかった…
自爆してくる…
他職人のみなさんも、頑張ってくれぇ
職人個人の世界を作ってくれれば無問題
隻腕のアスカ兄妹の殺し愛が楽しみ。
>>303 確かに「感想」を書くべきだったな、スマソ
そいえば、同人アニメ版でステスティハイネが死んだ時は
「西川やっぱ時間取れなかったwwwwwww」 「ムラサメなんかにやられてやんのwwwプケラwwwww」 「ステラ脂肪やっぱキタ━━(゚∀゚)━━ !!」なんて騒いでたんだよな俺…
当たり前だが隻腕じゃとてもそんな気にはなれないわ
PP戦記書いてる者です。
話の流れをぶった切って申し訳ありませんが、15話目投下させていただきます。
SPがあった関係で、なぜか拙作もSP並みの増量になってしまいました。スレを埋める勢いですorz
先に謝っておきます。ごめんなさい。というわけでいつものようにお目汚しを……
310 :
1/33:2005/12/27(火) 21:39:03 ID:???
ゲンがガルナハン基地に戻った時分は、既に夕刻を過ぎていた。
基地の警備兵から現地の人間であるコニール・アルメタを連れていた事は、当然見咎められた。
昼に会った時から少女に、夕陽を見るための案内役を頼んでおり、街を抜け出すよう諭していた―
そんな苦し紛れの嘘をついていた。
基地の警備兵は不審がったが、相手は、臨時とはいえ基地の守備の任を受けたMS隊長。
また、祖国ユーラシア連邦の同盟国大西洋連邦の軍人で、わざわざ遠方から自軍の支援に来た尉官……
そんな人間に面と向かって文句を言うことも憚られたため、ゲンはそれ以上詰問を受けることはなかった。
とはいえ、昼間彼と一緒に居た人間相手には、そんな嘘はすぐに見抜かれてしまう。
とりわけ、この男―スティング・オークレーには……
「昼間、そんな約束は取り付けていなかった筈だろ?何であんな嘘をついたんだ?」
「……夕陽を見に行ったのは本当さ。けど、偶然あの娘を見つけちまった。
以前坑道に残してきたジープを取りに行くって言ったから、監視も兼ねて同行した……それだけだ」
「外出が届出制なら届け出れば良いだけの話じゃねぇか?ひょっとするとあの娘は……」
「……まさか!あんな子供がレジスタンスか何かなんて……冗談だろ?」
「……だと良いがな」
危うく図星を突いてくるスティングの指摘に、一瞬ゲンもドキッと胸が高鳴った。
こんなときバイザーを着けている事は何より助かる。相手に視線や表情を気取られる心配がないからだ。
些かの疑念を残しているスティングを置き去りにするように、ゲンは早足でそのその場を後にする。
夕食後、ゲンは基地司令室を訪れた。ローエングリンゲートを見学させてくれた礼を述べるために……
彼らファントムペインをあまり快く思っていない基地司令ではあるが、礼は欠かせなかった。
「ローエングリンゲートを見た感想は……どうかね?」
「堅牢の一言に尽きます。流石、幾度もザフトを撃退しているだけのことはあります。
あれなら、ザフト軍最新鋭戦艦ミネルバであろうとも……十分に撃退できるだけの戦力と思えます」
「そうだろう!ハハハッ……」
ゲンが率直に褒め称えたことで、忽ちにして基地司令の声は明るくなった。
堅牢の一言に尽きる―ゲンは本心から思っていた。ミネルバをも退かせるかもしれないと―
だが、勝負は戦力だけで決まるものではない。蓋を開けてみなければ分からないのだ。
基地の戦力とミネルバの戦力は、ゲンの見たところ五分五分。五分五分の勝負で有利なのは……
最初に先手を取った方である。ミネルバがどのような布陣で臨むか―その一点に勝敗が掛かると思えた。
「ところで司令官、もうひとつお教え願いたいことがあるのですが……」
「ん?ローエングリン以外に、まだ興味のあることが?」
「はい。この土地のレジスタンスのことです」
「……む」
「我々大西洋連邦はユーラシア連邦の事情はよく存じませんが……
貴国西側で起こっている分離・独立運動を始めとして、この土地も反乱分子が蠢いていると聞きました。
巨大な連邦国家である貴国の事情は察するに余りあるものがありますが……
奴等は何故そのような活動に身を投じるのか、疑問が残ります。差し支えない範囲でお教え願います」
311 :
2/33:2005/12/27(火) 21:40:05 ID:???
沈黙が時を刻む―基地司令は暫しの黙考の後、口を開いた。
「ユーラシア連邦は、君の祖国大西洋連邦とは、同じ連邦国家でも元となった国の数が違う。
アメリカ、カナダ、イギリス……南アメリカ合衆国が独立してからは3カ国が大西洋連邦を形成している。
それに対し、我がユーラシア連邦は、小国を入れれば30にもなる国家から形成されている。
歴史、文化、民族、宗教……多種多様だ。過去に国々が対立した歴史もあり、中々一筋縄にはいかん」
いくら小国を入れた連邦国家でも、国土や人口の大小、経済力、軍事力等で歴然とした差が生じる。
そして、それに伴って発言力にも差が生じてくるため、挙国一致体勢などは作るべくもないのが実情だ。
それでも、建国当初は明確な建国理由があった。即ち、大西洋連邦と肩を並べる発言力の保持である。
大国アメリカをベースとする大西洋連邦と対するには、旧EUの経済力と大国ロシア連邦の連合が必要―
故に、言い方は悪いが、周辺各国もそのお零れに預かろうとユーラシア連邦の威勢に付くことにしたのだ。
こうして大西洋連邦と肩を並べる超大国、ユーラシア連邦は形成されていったが……
「時が経つにつれ、そんな建国の経緯など人は忘れてしまうものだ。とりわけ、西側の小国の連中は……
問題は経済だ。経済的に豊かだった旧EU圏の中でも、特に経済力に富んだ国々が文句をつけるのさ。
富める国はその経済力に応じて、脆弱な国にも連邦国家として予算の再配分に応じなければならない。
経済力で一流国、二流国、三流国と格差がつけられ、政策決定でも連邦内の国家の経済力が物を言う」
大西洋連邦と肩を並べる政治的発言力を欲して作られたユーラシア連邦も、次第に齟齬が生じ始めた。
やがて、富める国々では、ユーラシア連邦から脱退し、大西洋連邦に加盟しようとする動きまで出始める。
そんな矢先、プラントが独立宣言をし、地球連合に対し宣戦を布告することになる。
「プラントの独立は、戦争という軍事的側面だけで測るわけにはいかん。
宇宙に住むコーディネーターの独立は、内心独立を欲していたユーラシアの国々にショックを与えた。
連邦国家の中において、各国の国民の中に眠っていた愛国心というヤツが疼きだしたのさ……」
ザフトがユーラシア連邦の西端ジブラルタルを制圧し、そこに基地を置きはじめてからそれは顕著になる。
ジブラルタルに近い国々から、徐々にユーラシア連邦からの独立を求め始めるようになった。
「だが、独立を認めればどうなる?我がユーラシア連邦は早晩崩壊するだろう。
そうなればプラントの思う壺だ。地球連合の双璧となっていた連邦国家のうち、一方が潰れることになる。
おまけに、ユーラシアがバラバラになれば、政治的発言力も分かれた国々の力……小さなものになろう」
ユーラシア連邦の西側諸国数国が独立を望み始めた頃、東側では逆にそれを警戒するようになった。
元々ロシアのような一部の国を除けば、貧しい東側諸国と豊かな西側諸国という構図が存在していた。
東側諸国は、自国の経済力と政治的発言力の低下を懸念し、連邦政府内で独立を望む国々を牽制した。
また連邦政府も、各国が先の戦争で受けた痛手から立ち直っていないことを理由に独立を認めなかった。
先の大戦で自国が戦場となり、国力を消耗したユーラシア連邦には経済的余裕はなかったこともある。
諸般の事情で独立運動は、連邦政府の方針として取り締まらざるを得なかった。
「私個人としては、ユーラシアの各国が独立を望むこと自体は、それはそれで構わないと思ってはいる。
しかし、その独立運動がプラントの後押しによって拡大しているとすれば、心穏やかではおれんよ」
312 :
3/33:2005/12/27(火) 21:41:16 ID:???
プラントの独立は、精神面でユーラシア西側諸国の独立を後押ししてはいた。
だが、プラントは事実上の独立を勝ち得たユニウス条約締結後、更に物資面でも後押ししていた。
ユーラシア軍諜報部の調べでは、西側諸国の独立運動家たちを背後から支援していた組織があるという。
その組織の内偵を進めた結果、背後にプラントの企業が確認された。
「プラントを独立国家とするならば、これは立派な内政干渉に値するよ。
一つの連邦国家を解体させようと暗躍しているのだとすれば……な。以降、政府の方針も固まった。
独立運動を叫ぶ者は、プラントやザフトと連携し国を揺るがす者として、内乱罪で裁くことになったのだ。
開戦後は、プラントは独立国家ではなくテロ国家と見なされたため、加担者は相応の責めを負わされる。
今は……外患誘致罪に問われるな。そんな有様でゴタゴタ続き……というのがわが国の実情さ」
司令官は一度自嘲気味な笑みを見せる。憂いとも諦めともつかぬ表情と共に……
些か喋りすぎたのか、基地司令は口を噤む。暫しの沈黙の後、今度はゲンが話を切り出した。
「司令は……私たち大西洋連邦の人間のことは……お嫌いなんですね?」
「……分かるかね」
「何となく……ですが」
「嫌いではないが、本心を言えば、我々の国は我々ユーラシア軍人の手で護りたいというのが本音さ。
だが……悔しいが、ジブラルタルを始めとするザフトの各駐留軍は強力だ。独力で勝つのは難しい。
真に、口惜しいよ。友軍とはいえ、他国の軍の力なしでは国も護れんとは……」
「しかし、今は……」
「分かっている。だから、矜持は隠すよう努めている。それでも……昼間は嫌な思いをさせたか?」
「……少しだけ、部下の機嫌が悪くなりました」
「……ははは、それは悪いことをしたな」
基地司令の言葉の端々には、大西洋連邦に対抗意識を燃やすユーラシア連邦人の気概が感じられた。
もっとも、彼は一人の軍人として正確な現状認識ができており、信頼するに足る一面を垣間見せてもいた。
それを見て取ったゲンは先の質問をぶつけた。彼が本心で話せばこれから先の話も切り出し易いからだ。
「今のお話で、ユーラシア西側の国々で独立運動が発生する理由は分かりましたが……
それでも、この地でガルナハンの人々から鉱山の採掘権を剥奪した理由が分かりかねます」
「……!君は……それを誰に聞いた?」
「街で昼間食事をしたときに聞こえてきた話です。採掘権を奪わなければ彼らは……」
「……それは政治的問題で、我々軍人は関知していない」
和やかな会話は一転して緊張した雰囲気に包まれた。ゲンは、拙かったかと思ったが後の祭り―
気まずい沈黙が流れるが、ゲンが謝罪する前に基地司令のほうが話を切り出した。
「……もっとも、これでは寝覚めが悪かろう。友軍が地域住民を弾圧していると思われては……な。
いいだろう。わざわざ遠方から駆けつけてくれた礼もまだだったな。これから君に話すことは私の独り言。
モーガン・シュバリエの弟子である君だから話すことだ。それを心に留めて……聞いて欲しい」
313 :
4/33:2005/12/27(火) 21:42:18 ID:???
ユニウスセブン落下後、戦争の足音が聞こえ始めた頃……
ユーラシア連邦では、先の大戦の最中に凍結されていた計画が再開されることになった。
「それがユーラシア連邦の自主生産MS開発計画だ」
先の大戦の最中、モーガン・シュバリエ大尉らが発案したMS開発計画。
モーガンらは、所属する戦車大隊がバルトフェルド隊のMS群に完敗し、MSの時代の到来を予感した。
しかし、当時ユーラシア連邦の上層部はその提案を却下され、日の目を見ることはないかに思われた。
それでも軍の一部は計画を強固に支持し、ユーラシア連邦某国の黙認の元、建造計画を進めたが……
当時いち早くMS開発を進めていた大西洋連邦が、MSダガーの量産に成功してしまった。
その余波を受けた格好で、再びユーラシアの自主生産MS開発計画は潰えた。
「が、いつまでも大西洋連邦に頼ったままではいられん。現にユーラシア連邦では未だにダガーLが主力。
ウィンダムの配備も、大西洋連邦から随分と送れて配備される予定だし……これでは戦争にならない」
ユニウスセブンの落下で戦争への危機感を募らせた軍の一部は、再びユーラシア連邦某国を動かした。
元々計画が潰えた後も、協力企業アクタイオン・インダストリーが私企業レベルで技術改良を進めていた。
そのため、再開された計画は異例の急ピッチで進められることとなる。だが、それでも問題はあった。
「MSを建造するにはユニウス条約という壁があった。あれはMS保有数を制限するものだったが……
条約は、その制限を現実のものとするために、MSを生産するための希少金属の保有量を定めたのだ」
予てから予定されていたMS建造に加え、新たなMSを開発・建造するのは物資面で困難さを極めた。
だが、開戦でユニウス条約が失効した以上、希少金属の開発は領土内であれば自由に可能となった。
ユーラシア連邦軍は連邦内の某国の力を借り、その影響下の地域で希少金属の採掘を大急ぎで始める。
「その国の影響下にあって希少金属鉱山があったのが、ここガルナハンの鉱山地帯だったというわけだ。
ガルナハンは元々汎ムスリム会議の領土だったが、彼の国が先の大戦で親プラント国となったから……
意趣返しのつもりで、住民から採掘権を取り上げ、大急ぎで希少金属の回収にあたったのさ。
ユニウス条約が失効し、他国の目を気にすることもなくなった。我々はその実行役……損な役回りだよ」
「……貴方方を後押しする国とは何処です?」
「独り言だと言った筈だが?まぁ……東ユーラシアの某国とだけ言っておくよ」
司令は、今度は深々とため息をついてみせる。彼とて地域住民と諍いを起こすのは本意ではないのだ。
だが、自主生産MS開発計画という大望のためには、後押ししてくれる某国の意こそ重要となってくる。
軍人である彼には、その意に従う他なかった。それでも、ゲンの質問は拒んだものの、ヒントはくれた。
内心ゲンは苦笑しつつ、その国の名を推し量っていた。
(そこまで言ったら同じでしょうが、司令官殿。大方、ロシアあたり……でしょうがね)
更に司令官は、愚痴交じりに指令の内容を漏らし始めた。
「おまけに、この基地を放棄しろとまで言ってきた。もっともタダでここをザフトにくれてやる気はないがな」
「……放棄?では、いずれこの地から引き上げるということですか……」
「いずれ……そうなるだろう」
「……それならば司令、この基地で捕らえられている現地住民を……解放していただけないでしょうか?」
種死をマジメに見てたのは第一クール前半だけだったな
もう誰かが死んでもどうとも思わなかったし、ミーアの時なんて大爆笑したぞ
ともかく俺は2週に1度だろうが2ヶ月に1度になろうがいつでも待ち続けるぜ隻腕作者殿!!
315 :
5/33:2005/12/27(火) 21:43:42 ID:FZSB8yD+
一か八か―意を決してゲンは、自分が最も切り出したかったことを伝えた。
もし、この基地司令がガルナハンの住民との軋轢を快く思っていないのならば、あるいは―
だが、その申し出は即時却下されることとなる。
「……出来るわけがない!やつらはレジスタンス……いや、テロリストだぞ?それを……」
「しかし彼らがレジスタンスになったのは貴国の占領政策にあります。採掘権を奪わなければ彼らは……」
「二度同じことを言わせる気か?それは政治の問題だ。軍の関知するところではない!」
部屋の空気は、先ほどの気まずさよりも、更に気まずい―というより険悪な空気に変わる。
実は、基地司令自身最も気にしていることでもあり、悔やんでいるのが自軍の占領政策であったが……
相手が武器を持ったレジスタンス―テロリストであれば、捕まえる以外なかった。
「連中はザフトと手を結ぼうとしていたのだぞ?」
「……それは、どうして分かったのですか?」
「レジスタンスの中心人物を尋問し、聞き出したのだ」
「拷問……の間違いでは?」
「……!」
「明日、基地守備隊MS隊長として捕虜収容施設を見学させてもらいますが、宜しいでしょうか?」
「却下だ!」
「ザフトがこの基地まで侵攻してきた折、収容施設近辺に着弾があったとしましょう。
その際、逃げ出したレジスタンスがそのまま逃走してくれれば良いですが、もしそうでなかった場合……
例えば、ザフトの動きに呼応して基地内で闘争行為に及んだ場合、それでは責任を負いかねますが?」
「……収容所を見てどうする?」
「捕虜に虐待の疑いがあれば、私から連合軍司令部に報告し、沙汰を待つことになります」
「……君は私を脅しているのか!?」
「とんでもない。ただ、近々基地を放棄するのなら彼らを解放したほうが良い……そう言っているのです」
ゲンは敢えて基地司令にカマをかける。その言動に流石の司令も気色ばむが……
さらに恫喝に近い言動に、今度は司令の顔は色を失う。
「……何故、君はそんなことを言う?我々の祖国同士の友好関係に波風立たせたいのか?」
「逆です。波風を立たせたくないから言うのです」
「何だと?」
「これは仮定の話ですが、ユーラシア西側の独立運動やこの地のレジスタンス運動……
共通して見えるのは、ザフトの影です。奴等はこの機会に地球軍を混乱させるつもりかもしれません。
しかし、もしも……もしもこの状況の作出そのものがザフトの狙いだとすれば……」
「……状況の作出だと?」
「先の大戦ではナチュラルとコーディネーターの争いが、大戦の構図となっていました。
ですが、数で劣るコーディネーターが戦争で勝つのは難しい。彼らも第三者の力を借りねばなりません。
例えば、一部のナチュラルがコーディネーターと組んで、地球連合軍と戦おうとしたら……?」
「……ザフトが独立運動を支援するのはナチュラルの味方を得るため……ということか?」
「もしも、ザフトの狙いが連合の混乱ではなく、状況を作出することが目的であるとすれば……あるいは」
先日汎ムスリム会議の宗教指導者の老師に教わったことをそのまま……ゲンは自分の言葉で話した。
もっとも、彼自身その老人の言葉に納得するものがあったから、語っていたのだが。
316 :
6/33:2005/12/27(火) 21:45:01 ID:???
だが、老練な指揮官にはそれもすぐ看破される。
「……君ほどの年齢の人間が言うことではないな?誰の受け売りかね?」
「……ある老人から教わったことです」
「ふむ……なるほど。我々がレジスタンスを弾圧すればするほど、それはザフトに好都合……か。
彼らが弾圧された者を解放すれば、コーディネーターは労せずして味方を得ることが出来る」
「すぐにザフトは抑圧された者達の英雄になりますから。それも……連合に反抗的な者達を」
思い当たる節もあったのだろう。基地司令は暫くの間押し黙り、黙考した。
数分も経った頃、彼は再び口を開いた。
「しかし……やはり、ユーラシア軍人としては……レジスタンスを赦免するわけにはいかん」
「………」
ゲンは無念さを胸に秘め俯く。何とか知り得た限りの知識を用い、基地司令を説得しようとした。
最初にユーラシア連邦西側の独立運動の話を向けたのも、その腹積もりがあってのことであった。
一応司令はゲンの話に理解はしてくれたが、コニールとの約束は果たせずじまい……そう思われた。
しかし、司令は次に意外な申し出をしてくる。
「だが、大西洋連邦の軍人がこの基地で何をやろうと……指揮命令系統が違うので何も言えん」
「……?」
「例えば……青臭い大西洋連邦の青年将校が、偶然我が軍が捕虜に虐待を加えている事実を知る。
酷く青臭い彼は義憤に駆られ、基地の司令官を脅しつけ、捕虜釈放の命令書を書かせる……とか、な」
「……その青臭い軍人は、自分ですか」
「私は、自分の手を汚さんで正論を語る人間は嫌いだ。損な役回りだが……やれるか?」
「……やります」
言うや、基地司令はデスクの引き出しから一通の命令書を取り出す。
捕虜釈放の命令書は1分もしないうちに出来上がった。それを司令はゲンに手渡す。
「ザフトがここに攻撃を仕掛ける前に……釈放を済ませろ」
「……ありがとうございます」
「しかし、君はいいのか?その年齢で中尉の地位……これまでのキャリアを溝に捨てるかもしれんぞ?」
「……構いません」
「全く……師に似ているな。シュバリエ大尉も処世術が下手で、本来ならもっと偉くなっている筈が……
部下からは信頼されているが、上官に平然と意見を述べるものだから、上層部に煙たがられていた。
士官学校を出て、齢50近いのに未だに大尉だ。君も……近いうちにそうなるかもしれんな?」
「大尉は……そうだったんですか」
「下手をすれば査問、降格、強制除隊もあるかもしれんぞ?それでも良いのか?」
「……相手が人間ならば、そういった処遇も可能でしょうが自分は"兵器"です。
"Genocider Enemy of Natural"はナチュラルの敵を殲滅するための兵器だから、査問もありませんよ」
その言葉に訝しがる司令官をそのままに、礼を述べた後ゲンは司令室を後にした。そして一人呟く―
「"自分は兵器です"……か。そんな俺にも……まだこんな感情が残っていたとはな」
317 :
7/33:2005/12/27(火) 21:46:13 ID:???
呟いた後、ゲンは一人これからのことを考えていた。
基地司令は何とか説得できたが、今の会合の内容を基地の全員に説明するわけにも行かない。
司令の筋書きは「青臭い大西洋連邦の青年将校が犯した、脅迫まがいの釈放」というもの……
聞けば、誰もがゲンを白眼視するかもしれない。だが、彼はそれも覚悟の上での行動であった。
同時に、本来兵器であるはずの自分が―戦闘用コーディネーター"ソキウス"である筈の自分が―
これからやろうとしていることは、兵器にあるまじき行為……思わず苦笑いがこみ上げてくる。
「まぁいい、やるだけだ」
翌日早朝―ガルナハン基地は騒然となっていた。理由は突然の捕虜釈放―
そしてそれを司令官に強要したとされる、大西洋連邦から来た軍人の話題で……
曰く、大西洋連邦から来た士官が、ユーラシア軍が捕虜を虐待していたことに憤ったらしい―
曰く、その憤った士官は、義憤に駆られ基地司令官にこの事実を指摘したらしい―
曰く、困惑する司令官を尻目に、「これは軍機違反である」と騒ぎ立てたらしい―
曰く、その上司令官にこの事実を司令部に報告すると言い出したらしい―
曰く、それが嫌なら捕虜釈放の命令書を書けと司令官に迫ったらしい―
――釈放理由は、レジスタンス活動が敵国プラントの軍、ザフトに唆されたことと判明した故のもの。
また、汎ムスリム会議において中立宣言が採択された為、この基地も段階的に撤退が検討されている。
汎ムスリム会議で決定された中立宣言に従い、ガルナハンの住民もこれに従い行動することを望む。
宣言に背き、ザフトに協力をするものは、以後外患誘致の罪でこれまで以上に厳しい罪を問われる。
撤退後、ガルナハンの支配は元の汎ムスリム会議に一任されるが、軽率な行動は慎むよう願いたい――
こんな通達が捕虜に伝わった。真相とは程遠い出鱈目な理由ではあったが、一応の体裁はつけられた。
だが、基地のユーラシア軍の兵士にとっては、余所者に自分達のやったことを全否定されたようなもの。
誰もが心穏やかではいられず、その矛先は当然ゲンに、また援軍で来た仲間達に向けられた。
スティングなどは、昨日のゲンとコニールのやり取りを垣間見ていたため、真っ先に事情を察した。
「おい、ゲン!これはどういうことだ!?」
「……すまない」
「すまない……じゃねえだろ!どういうつもりで捕虜を釈放させた?基地中その話で持ちきりだぞ!」
「悪かった」
「そうじゃなくて、理由を説明しろ!理由を!」
「………」
「言いたくないなら当ててやろうか?大方昨日の小娘にでも唆されたんだろ?何を考えてる!?
考えても見ろ!相手はレジスタンス……テロリストだぞ!それを野放しにしちまうなんて……
ユーラシアの軍人じゃなくてもおかしいと思うぜ!?いや……お前はどうかしちまってる!狂ってる!」
「……最後のは酷いな」
「酷くない!これでも控えめに言ってるほうだ!俺たちの身にもなれ!」
ゲンは言われて気づいた。ある意味で、ゲンの起こした騒動の最大の被害者は仲間である彼らだ。
アウル、スティング、ステラは、何の落ち度もないのにゲンの不始末で白眼視されてしまっている。
流石にゲンも気が引けて、3人を集め事情を説明することになった。
318 :
8/33:2005/12/27(火) 21:47:15 ID:???
ゲンがアウル、スティング、ステラの3人を集め事情を説明し始めた頃―
地球連合に属する赤道連合にある、ニューデリー空港に一人の青年が到着していた。
青年は戦闘機を駆り、母国から単身この地を訪れていた。
「流石に赤道連合……赤道直下の国だ。暑いな……」
パイロットスーツに身を包んだ青年は、ヘルメットだけを取り外し汗をぬぐう。
茶色の髪に端正な顔立ち……軍人らしからぬ素顔が、ヘルメットの下から現れる。
青年はこの国の気候のことを呟きつつ、機体の通信機を使い基地に駐留する赤道連合軍と通信を繋ぐ。
「こちらオーブ軍、第一機動艦隊旗艦タケミカヅチ所属……」
『ああ、さっき連絡があったヤツだな?ん……たった今認証コードは確認された。
補給予定ってことだが、機体に異常があれば修理するよう命令を受けている。何かあったら言ってくれ』
「いえ、ありません。このまま行けます」
『先遣部隊だって?大変だな。本隊はまだ国を出ていないんだろう?』
「はい。自分は先遣隊……といっても一人だけですけど。これから、友軍の部隊と合流する予定です」
『場所はどこだい?』
「ええと……汎ムスリム会議領で、ユーラシア連邦軍が管轄しているガルナハン基地です」
『ガルナハン基地!?
あそこは対ザフトの最前線基地だぞ?うちからも大型巡航機を提供したが……大変だな。気をつけろよ』
「はい……ありがとうございます」
青年は、年上の士官に丁寧に礼を述べたが……言葉とは裏腹に心の中は暗澹たるものであった。
彼は、つい先日まで軍人ではなかった。一介の技術者として会社勤めをする平穏な毎日を送っていた。
それが、突如暗転する。愛する者を奪われ、その女性を返す条件に戦場に赴くことを強要されたのだ。
それからは苦悶の日々が続いた。嘗ての歴戦の勇者である彼でも、戦争への嫌悪感は消えない。
だが、それでも彼は戦うことを選んだ。愛する者を失いたくないから―
「バルトフェルドさんが言ってたバイザーの黒髪の男……彼に会えばラクスの手掛かりが……」
愛する者を奪った男―唯一の手掛かりは、盟友から伝えられた外見のみ―
青年は、おそらくは連合の軍人であろうその人物に会って、問いただすつもりであった。
何故男は、彼の愛する者―ラクス・クラインを奪い、なお自分に戦場に戻ることを強要したのか―?
補給は20分ほどで完了した。嘗て最強と言われた戦士は再び戦場へと戻る―
『補給は今完了したが、休まず行くのか?』
「はい。どうしても急がなきゃならないので……だから、行きます」
『そうか……でも、死ぬなよ……オーブの。今滑走路を空けさせる。少し待ってろ』
赤道連合の軍人が言うや、たちまちに滑走路が開かれ、彼が飛翔するための道が開かれる。
「ご厚意、痛み入ります!ムラサメ、発進します!」
短く、だが誠意の篭った挨拶を伝えた後、戦闘機は空へと飛び立った―
319 :
9/33:2005/12/27(火) 21:48:17 ID:???
「……と、言うわけだ。みんな、済まない」
ゲンは、昨日からの経緯を全てアウル、スティング、ステラの3人に伝えていた。
コニールがレジスタンスであることも、彼の父親がユーラシア軍の捕虜となっていたことも……
基地司令からユーラシア西側の情勢を聞き、彼と意見を戦わせたことも、釈放の同意があることも……
ただ一つ、彼がコニールに語った自分の正体―それだけを除いた全てを語った。
ゲンが話終わって最初に口を開いたのはアウルだった。
「要するにさ、ザフトの連中はナチュラル同士を争わせたい筈……ってゲンは思ってると。
で、それを阻止するためには、独立運動やレジスタンス運動を弾圧するのは良くないって思ってる。
だから、この基地で捕まってたレジスタンスを解放した……ってことでしょ?」
「まぁ……そうなるな」
「なら、良いんじゃないの?俺たちの敵はザフトだし、俺……弱いヤツに興味ないから」
「……助かるよ」
アウルの思考では、自分より弱い相手は戦うに値しない相手―よって、彼は至極単純にゲンを肯定した。
そんな彼にゲンは礼を述べる。そして次に口を開いたのはステラだった。
「私は……ゲンが良いなら、それで良い」
「……ありがとう」
これまた、アウルよりも至極単純にゲンに同意した。
だが、最後に残ったスティングだけは、頑としてゲンの意見に反論した。
「俺は……やっぱり反対だ。俺たちは軍人だぜ?軍の命令に従うのが筋だろう。
この基地の司令官だって現状はしっかりと認識しているし、捕虜にもそう無茶なことはしてない筈だ。
レジスタンスが殺されたって話も……そりゃ、武器もって基地を脅かせば殺されも仕方ないだろう。
そんなユーラシア軍の方針に背いてまで捕虜釈放なんて……ゲンのやるべきことじゃないだろ?」
「それは……」
「大体、ザフトとの関係以前に、ゲンはあのコニールって小娘が可哀相で、捕虜釈放に動いたんだろ?
何故俺たちはここに来た?任務はこの基地を守ることだけ……軍務に私情を挟む時点で、間違ってる」
スティングの言葉は全くの正論である。ゲンが、コニールの姿に心動かされたこともない訳ではなかった。
全く反論する術を失ったゲンは、ただ黙り込むしかないかなかった。
「大体、あのレジスタンスの小娘を見た時点で、撃ち殺しておけば良かったんだ。何で殺さなかったんだ?」
「……俺は」
「当ててやろうか?あの娘が可哀相だったから、殺さなかったんだろ?」
「……それもある。けど、それだけじゃない。俺は……ナチュラルを殺せないんだ」
「……何だよ、そりゃ?」
スティングの知らない事実―ゲンはナチュラルを殺せない"兵器"であった。
"ナチュラルのために戦え、ナチュラルを殺すな"それが兵器としてのソキウスの行動原理。
あの時―コニールを見咎めた時、彼女を殺すという選択肢もないではなかったが、彼は殺せなかった。
その至上の命令が存在したが故に……
320 :
10/33:2005/12/27(火) 21:49:51 ID:???
「皆には話してなかったが……俺は強化されたとき、二つの至上命令を受けている。
俺のこの力は……ナチュラルのために使い、決してその矛先をナチュラルに向けてはならない。
そして、俺はどんなことがあっても、ナチュラルは殺してはならない……そう厳命されている」
ゲンの言葉に皆押し黙る。3人もゲン同様に連合のブルーコスモスによって心理操作を受けている。
だが、3人はあくまでもナチュラルであり、コーディネーターであるゲンとは受ける命令が違う。
ただ軍の命令に従うことだけを厳命されているのが3人。それ以上を要求されているのがゲン―
「俺たちはそんなことは言われてないが……お前がそんな命令受けてたんじゃ、仕方ないか」
ゲンは、一応は新型エクステンデッドとして3人には認知されている。
故に、スティングは彼だけ特別の命令を受けていると誤解し、それ以上追及しなかった。
それでもスティングは、なお心に引っかかることがあったようで、ゲンへの言葉を続けた。
「けどよ、ゲン。お前……これから先もこんなこと続けていくのか?」
「……これから先?」
「これから先、転戦していけば……ここガルナハンであるような話は幾らでも転がってるだろう。
例えば……あのコニールって娘以上に不幸な人間が、これから五万といるかもしれないんだぜ?
お前はこれから先もずっと、そいつらを助け、ナチュラル同士が争わないよう骨を折っていくつもりかよ?」
スティングが示唆したのはこれから先の話―
例えば、ユーラシア西側で独立運動が盛んな地域にファントムペインが向かった場合……
独立運動に参加する人間の中には、連合から弾圧されている人間は数多くいるかもしれない。
また、ここガルナハンのようにレジスタンス活動を展開し、捕らえられ収監されている人間もいるだろう。
そんな人間を、これから先も助けていくつもりか―?そうスティングは問うたのである。
「……分からない。ただ……」
「ただ……何だよ?」
「俺は……先日ガルナハンで宗教指導者の老人に会って、この地で基地司令に色々話を聞いて……
戦争の裏側……ってヤツが見えてきた気がするんだ。俺は戦うことが任務、それしかできないけど……
戦争を終わらせない限り、俺たちは永久に戦わなきゃならなくなる。そうなれば、皆いつかは力尽きる。
だから……できることなら、戦争の火種になりそうなものは……全部潰したいんだ」
「……馬鹿言え。戦争なんて国と国との争いだぞ。個人レベルでどうこう出来る問題じゃねえだろ?」
「それでも……何もしないよりマシだ」
ゲンの出した答えはスティングの現実論の前には、些か頼りない論理ではあったが……
それでも、スティングもゲンの言葉に、自分たちのことをも慮っての行動であることは理解していた。
ややあって、再度スティングは口を開いた。
「ところで、ナチュラルは殺せない……って言ったけど、ナチュラルから銃向けられたらどうするつもりだ?」
「……殺さないようにするよ」
「それこそ……お前がやられるぞ?ま、その時は俺らが助けてやるからよ……けど、一つだけ約束しろ。
以後今回みたいに俺たちに何の相談もなしに動くのは……やめてくれよ。俺たちは、仲間なんだからな」
スティングの最後の言葉に、アウルもステラも頷いて見せる。その光景に、ゲンは救われた気がした。
勝手な行動を窘めつつ、自分の身を案じてくれる仲間の言葉に―
321 :
11/33:2005/12/27(火) 21:50:59 ID:???
その頃―エルブールス山脈中央部にまで迫ったザフトの攻撃部隊では……
ザフト軍最新鋭戦艦ミネルバの中、一人の男が呟いていた。
「遅いな……」
ハイネ・ヴェステンフェルスは一人、誰も居ないブリーフィングルームで佇んでいた。
予定であれば、この地に潜む攻撃部隊に、ガルナハンのレジスタンスのメンバーが合流する筈。
そして、ザフトにガルナハンローエングリンゲートの攻略方法を伝える……予定であった。
しかし、時刻を過ぎても相手は現れず、既に予定の時刻より2時間もオーバーしていた。
また、到着の遅延を知らせる連絡も入っていない状況―
「……もう時間だ。我々だけでやるしかないか」
彼は意を決した。フェイスである彼はローエングリンゲート攻略の要―MS部隊の指揮官であった。
ブリーフィングルームの大型モニターの前に立ち、ゲート周辺の地形図を見て取り、作戦の立案に入った。
一見して狭いゲート前の通り道、そして開けたところに出たかと思えばそこは陽電子砲の射程距離内……
峡谷の地形を利用した見事な敵の布陣―どう攻めるか―?
「手伝ってやろうか?」
突如、彼の後ろから女性の声が聞こえた。部下のルナマリアでもマユでもない声……
驚き振り返るハイネ―彼の前には旧知の女性が立っていた。隻眼の女パイロット、ヒルダ・ハーケン―
「ヒルダ姐さん!?……じゃなかった、ヒルダ隊長!お久しぶりです!」
「元気そうだねぇ……おっと、今じゃフェイスさまだったっけ?昔みたいに気軽に声も掛けられないね」
「冗談でしょ?ところで……いつ地球に降りたんです?他のお二人は?」
「つい先日さ。今はラドル隊に同行している。二人も来てるよ。
もっとも……ヒルベルトもマーズも与えられた新型機の調整で忙しいけどね。
空戦用の新型機らしい。追っ付けミネルバのブリーフィングには参加する予定だけど、今は私一人さ」
「なら……今日は気持ちよく勝って、皆で飲みますか!」
「……そう願いたいけど……実際、勝てるのかい?」
談笑していたヒルダだが、最後の言葉を言った際には軍人の顔に戻っていた。
ヒルダは、ハイネにとってはアカデミーの先輩に辺り、かつては大いに世話になっていた。
そんな先輩相手であるから、彼は包み隠さず今の状況を説明してみせた。
「……なるほどねぇ。難攻不落の要塞が相手。敵は幾度もザフトを撃退したユーラシア連邦の猛者。
今回は援軍としてミネルバや私たちも来たけど、肝心のレジスタンスの情報提供者が来ないとはね……
ザフトだけで作戦を展開しなきゃならないから、ハイネ隊長は困ってる……ってところ?」
「……恥ずかしながら」
「ラドル司令から……レジスタンスとの連絡が取れない場合の作戦もあるって聞いた。今……
その万が一のためにヘルベルトが準備してるから……このままだと、あいつの手を借りることになるね」
「何です?その作戦ってのは?」
「多分、お前は好かない作戦だろうが……ラドル司令も相当切羽詰ってる。形振り構わずやるだろう」
マハムール基地司令、ヨヒアム・ラドル―彼の立案した作戦は、数刻後ハイネを驚愕させることとなる。
322 :
12/33:2005/12/27(火) 21:52:13 ID:???
数時間後、マハムール基地司令ヨヒアム・ラドル以下ラドル隊のメンバーがミネルバに赴いた。
また、ヒルダ隊ヘルベルト・フォン・ラインハルトとマーズ・シメオンの二人も駆けつける。
ハイネ隊を含め、総勢20名以上のパイロットがブリーフィングルームに詰め掛けた。
ハイネは、ラドルから目配せを受けると、首を横に振った。レジスタンスと連絡は取れていないと―
それを見たラドルは頷くと、ミネルバの内線を使い、MS整備班長マッド・エイブスを呼び出した。
訝しがるハイネを他所に、ラドル司令は朗々と語りだした。
「これより、ガルナハンローエングリンゲート突破作戦を説明する。
本作戦はローエングリンゲートの壊滅を目的とするものであるが、これまでの作戦では歯が立たない。
即ち、敵のローエングリンとMS隊の二つを相手にする際のタイムラグが我々には致命傷となるからだ。
ローエングリンを攻めればMS隊に阻まれ、MS隊を攻めればローエングリンに焼かれる……。
この悪循環でこれまでの作戦は失敗した。よって、今回の作戦では、まず敵の動脈を絶つ必要がある」
言うや、ラドルはエイブスに目配せし、司令官に代わり彼が壇上に登り、話し始めた。
「まず、敵の最大の兵器、ローエングリンを打破する必要があることは自明です。僭越ながら……
ミネルバMS整備班長マッド・エイブスより、火力プラント破壊作戦の概要を説明させていただきます」
火力プラント―ガルナハンのみならずユーラシア連邦に送電される電力の供給源の一つ。
当然、ガルナハンのローエングリンも、この火力プラントに陽電子砲発射のための電力を頼っている。
火力プラントからの送電ラインを潰せば、ローエングリンの出力は大幅に低下する筈であった。
上手くいけば、敵はローエングリンを放つことすらできなくなるかもしれない。
「送電システムのうち、高圧送電ライン2箇所に同時に負荷をかけると、回線が一時的に断たれます。
その際、別ラインからローエングリンに自動的に電力供給するよう安全対策がなされていますが……
そのラインに一方向での電力供給を促すことで、過負荷の連鎖が起こり、数分でガルナハン一帯は停電を起こします」
エイブスは、ブリーフィングルームに火力プラントの一帯の見取り図を映し出す。
CG映像で投影されたローエングリンへの送電ラインのうち、3箇所が赤く点滅している。
どれもローエングリンから遠く離れた、基地に程近い火力プラントの送電ライン―
「つまり、この3箇所を潰せばローエングリンは起動不能か、大幅な出力低下を避けられません」
誰もがその作戦に耳を疑う。
火力プラントからローエングリンまでの送電ラインを断つ―それは単純な作戦に思われよう。
だが、今日までそれを実行できなかったのは、何よりガルナハンの峡谷を越えられなかったことにある。
火力プラントからの送電ラインは、ローエングリンゲートのある峡谷の向こう側にあるのだ。
また峡谷にはローエングリンとMS隊がおり、ザフトは彼らを破れず今日まで敗れていたのだ。
火力プラントからの送電ラインを潰すには、何より峡谷を越えねばならない―本末転倒な作戦……
集められたパイロット全員がそう思い驚愕していたが、ラドルはエイブスに代わり言葉を続けた。
「敵の目をくらまし、峡谷を越え、ラインを断つ……この作戦を可能にするのはそんなMSとパイロットだ。
ヒルダ隊所属、ヘルベルト・フォン・ラインハルト!この作戦の成否は君に掛かっている、頼んだぞ」
323 :
13/33:2005/12/27(火) 21:53:59 ID:???
ラドルから名を呼ばれ、四角いメガネを掛けた男―ヘルベルトが席を立ち敬礼する。
「ハッ!お任せを!」
ハイネはその男を知っていた。ヒルダ隊所属、ヘルベルト・フォン・ラインハルト―
先の大戦からの古参兵で、服装は一般兵の緑服であるが、実力は並みのレッドを凌ぐ程の腕前である。
マーズ・シメオンと並び、ヒルダの元で力をつけた人物で、豊富な戦歴と実力はハイネも一目置いていた。
また、彼はアカデミー時代のハイネの先輩に当たる人物で、色々と可愛がられもしたのだが……
それはさておき、ラドルの話を纏めにかかる。
「ハイネ隊長とヒルダ隊長、君たちの部隊はMS隊の殲滅とローエングリンの破壊を頼みたい。
送電ラインを潰しても、肝心のMS隊を抜き、ローエングリンを潰せないと話にならないからな。
我がラドル隊は、その援護にあたる。作戦開始は本日15:00、各員それまで所定の位置で待機!」
ブリーフィングが終わった後、ハイネはラドルに耳打ちする。
「火力プラントからの送電ラインのデータは何処から?」
「……諜報部から回ってきたものだ。出所はユーラシアの電力会社、火力プラントを作った会社からだ」
「信用できるんですか?」
「地元の人間、レジスタンスほどではないが……諜報部が送ってきたものだ。信用するしかあるまい」
「ヘルベルトには……何を使わせるんです?目くらましのタネは?」
「レイヴンを使わせる。彼ならやれるだろう」
レイヴン―その言葉にようやくハイネは納得がいった。確かに目くらましとしては最適なMS―
だが言葉と裏腹に、司令の顔は冴えなかった。今度失敗すれば指揮官としての器を問われかねない。
また、ローエングリンを止めても、肝心の敵MS隊を崩せなければ、勝利を収めたことにならない。
2段構えの作戦といえば聞こえは良いが、指揮官である彼は2度胃の痛くなる思いをするのだ。
ハイネにとっても、彼の心中は察するにあまりあるモノがあった。
やがて人気のなくなった部屋にハイネ隊とヒルダ隊だけが残された。
彼らはこの作戦のもう一つの要―ローエングリンゲート突破の役目を負っていた。
これから、彼らはその役割分担を決めねばならなかった。まず、ハイネが口を開いた。
「マーズ・シメオン、貴方の乗るMSの機種は?」
「バビだ。新型だが……クソッ!ヘルベルトの野郎、美味しいところを持って行きやがる」
彼は、僚友であるヘルベルトに重要な任務が与えられたことが悔しいらしい。
だが、ハイネは旧知の間柄でもある彼の愚痴に構わず、仕事を続けた。
「隊を二つに分ける。空戦主体のMSを持つパイロット……
俺、アスラン、ショーン、ゲイル、マーズの5人。地上戦の部隊は……ヒルダ隊長、お願いできますか?」
「OK」
「では……地上戦の部隊は、ヒルダ隊長とルナマリア、レイ……そしてマユ、4人でやって貰う」
レジスタンスとの連絡が取れない不測の事態はあったものの、ミネルバの布陣は着々と整いつつあった。
324 :
14/33:2005/12/27(火) 21:55:09 ID:???
対するガルナハン基地でも、ミネルバ接近の報は伝わっていた。時刻は昼をすぎたところ……
昼食を終えた兵士達は、次々と所定の位置に就き、防衛体制を整えようとしていた。
そして、今まさに基地のMS大隊が基地から飛び立とうとしているところであった。
ストライクMk-Uに乗り込んだゲンの元に、基地MS大隊長が回線を開く。
『よう、大西洋連邦の。他所様のところに来て、好き勝手やってくれたそうだな?』
「……申し訳ありません」
『本当に悪かった……なんて思っちゃいないんだろう?』
「……いえ、そんなことは……」
『ま、どの道お前等の信用は地に落ちているから……お前の本心なんてどうでもいいさ。
ただ、仕事だけはキッチリやってもらうぞ。俺たちは基地を空にするから、護れるのはお前等だけだ』
「最善を尽くします」
『助かる』
大隊長は、それだけ言うとMS隊を伴い基地を発った。彼に率いられ次々とダガーLが空に飛び立つ。
ゲンは、敢えて自分の行為―捕虜の釈放を司令官に迫ったことを咎めなかった彼に、内心感謝していた。
信用が落ちたというのは客観的な事実であり、言葉に悪意は篭っていなかった。
それに好き勝手やったというのも、また客観的な評釈であろう。
そんなゲンを、言葉どおり適当に窘めた当の大隊長は、愛機ダガーLの中で呟いていた。
「若いな、あの小僧……」
壮年のこの男も、基地司令同様にガルナハン住民とユーラシア軍の軋轢を憂う一人である。
だが、通常実直な軍人というものは上の命令には逆らわないものであったし、彼もまたそうであった。
そんな中感情に訴え捕虜解放に走った人物とされる人物は、彼には若さゆえの無謀としか映らなかった。
それでも、彼にとっては先ほどの言葉どおり、それ自体はどうでも良いことであった。
基地を護りに来たのだから、ゲンは基地の守備をすればすれば良いだけの話……
戦うのは自分達ユーラシア軍の役目―
しかし、一方で彼は今度の戦いを楽観視してはいなかった。
彼の率いるMS大隊も当初こそ30機以上のMSを有していたが、今は30を切っていた。
度重なるラドル隊との戦闘は、ザフトを退けていたものの自軍の損傷も少なからずあった。
今はダガーLの数も総勢24機にまで減っていたし、MAゲルズ・ゲーを入れても25機……
今度の相手はコーディネーターの優秀なパイロットを多数有するミネルバ……
不安を抱きつつも、彼らはこのガルナハンを護らねばならない。
一時はゲン達ファントムペインの力を借り、共に前線で戦おうとも思ったが、彼はそれをしなかった。
ゲートの守備に特化した自分達と、あくまで攻性の部隊として組織されたファントムペイン……
攻性のファントムペインがゲートの防衛に向いているとは、到底思えなかった。
だからこそ、基地司令も彼も自分達だけでミネルバを迎え撃つことにしたのだ。
彼は不安を振り払うべく、自らを鼓舞するように部下に檄を飛ばす。
「全員よく聞け!間もなくこのローエングリンゲートにザフトのクソ虫どもがやってくる!
クソッタレの宇宙人どもには、何度挑戦してもユーラシアの鉄壁は破れないってことを教えてやれ!!」
325 :
15/33:2005/12/27(火) 21:56:16 ID:???
時刻は14:40―作戦開始時間まであと20分と迫っていた頃のミネルバ……
マユ・アスカはルナマリアやレイと共に、本作戦の新しい自分達の上官ヒルダ・ハーケンの前にいた。
「フォーメーションは私のドム・トルーパーが前衛、サイドはルナマリアとレイが固めて、後ろはマユだ。
どんな作戦を立ててもこっちの期待通りに事が運ぶことはほとんどない。現場においては臨機応変。
第一のターゲットはあのゲテモノMAだが、マユ……お前はオーブ沖で似たようなのとやったんだろ?」
「……は、はい」
「あのゲテモノには陽電子リフレクターが付いてる筈だが、どうやって倒したんだい?」
突然の問いかけに、マユは言葉を失う。
オーブ沖で待ち構えていた大西洋連邦軍との戦いで、彼女はMAザムザ・ザーを撃墜していた。
だが、彼女はどうやって自分が敵MA落としたのか、あまりよく覚えていなかった。
必死で戦ううちに、気づいたら倒していた―そんな感覚だった。つまり、答えに窮していたのだ。
詳しく覚えていないマユは困惑してルナマリアとレイに視線を送る。それを察したレイが応える。
「敵MAはビームを弾きますが、実体のある武器は弾くことができないようです。
あの時、マユは敵MAに接近し、インパルスのビームサーベルで相手を貫きました」
「なるほどね……」
澱みなく、しかも敵の詳細な能力まで看破したレイの答えに、ヒルダはただ頷いた。
彼女にとっては誰が答えようと同じこと……あくまで、敵を倒すための作戦立案にのみ集中していたのだ。
やがて、彼女は自らが考案した作戦を披露した。
「敵MAに接近するためには距離を詰めなきゃ話にならない。
当然敵もこっちの接近には警戒するだろうから、遠距離・中距離時の戦闘は弾幕の張り合いだ。
ルナマリアとレイはザクをブレイズ装備で起動、マユは火力のあるブラストインパルスで出撃してもらう」
「「「了解」」」
「それとマユ、お前は少し残れ」
一人残されたマユは、先ほど上官の質問に即座に答えなかったことを咎められるのか不安に思っていた。
だが、彼女の危惧とは全く逆のことをヒルダは申し出た。
「マユ、お前は私の後ろに就け。ドムはビームシールドを展開できるから、多少の攻撃ではビクともしない。
私はお前の盾になるから、お前は言われたとおりに戦え。私が撃てと言ったら撃つ、それだけでいい」
「……え?」
「済まないね。お前みたいな子供を戦場に送るのは心が痛むが……私にはどうしようもない。
上官として、お前に何としても生き残れって言うのは簡単だけど、実戦では何が起こるか分からない。
だから、これが私に出来る精一杯だ。せめて私の目の届く場所に居て戦え。前の敵からは護ってやる」
プラントの成人年齢は15歳。マユはまだそれに満たない幼年学校の生徒であった。
それを慮ってか、ヒルダ・ハーケンは自らが少女の盾になると言った。
その心情はマユも何となく理解しており、ただ感謝するほかなかった。
少女はその感謝の意を同性の上官に伝えた。胸を張り敬礼し、言葉を紡ぐ―
「ありがとうございます。精一杯戦いますから……隊長もお気をつけて」
326 :
16/33:2005/12/27(火) 21:57:30 ID:???
そんなマユとヒルダのやりとりを、二人の男が見つめていた。
「おい、今のを聴いたか?」
「聞いたぜ。あのヒルダ隊長が……あんなことを言うとは。俺、初めて聞いたぜ」
「だな。ビックリだ」
ヘルベルトとマーズの二人である。
長年ヒルダの元で務めている彼らでも、そんな優しげな上官の言葉は終ぞ聞いたことがなかったからだ。
意外そうに顔を見合わせ、互いに首を横に振る。ありえないことだ―と。
「……天変地異でも起きなきゃいいが」
「それよりお前、そろそろ出撃じゃないか?先行するんだろ?」
「……そうだったな。行ってくる」
「チッ……!美味しいところを持っていきやがる」
マーズに促され、ヘルベルトは与えられた機体に向かって駆けて行く。間もなく作戦開始時間―
与えられた機体―空中戦用MSディンに乗り込み、彼は誰に言うともなく呟いていた。
「あの隻眼の女傑、ヒルダ隊長が……子供相手とはいえあんな優しい言葉を掛けるとはねぇ……
こう……いつもと変わったことが出撃前に起きるってのは、あまり縁起が良いことじゃねえんだがな。
ま、あの隊長があんな優しい面も持ち合わせていたってことは……隊長も人の子ってことか」
『木の股から生まれたわけじゃないんだ!当たり前だろう!』
「……た、隊長!?」
突然、機体に彼の上官ヒルダの声が木霊する。機体の回線が開いていたのだ。
コクピットの椅子から転げ落ちそうになるのを堪え、彼は上官相手に弁明を始めた。
「い、いや、今のはですね、言葉の綾というか何と言うか……」
『御託はどうでもいいんだよ!さっさと出撃しないか!このマヌケがッ!!』
「は、はいッ!」
『いいかい、よく聞くんだ。お前が上手くやれるかどうかで、ローエングリンを潰せるか否か決まる。
しくじったらタダじゃ済まさないから……よく覚えておきな!』
「りょ、了解であります!」
言うや、ヘルベルトの乗るディンは、発進シークエンスも待たずに勢い良く発進する。
こうして、なし崩し的にローエングリンゲート破壊作戦は開始された。時刻は丁度15:00―
「き、聞こえてたのか!おっかねえ!」
ヒルダ隊は女傑として知られるザフトレッドにしてエースパイロット、ヒルダ・ハーケンが率いる。
女性ながらザフト創設時―それまで地元のヤクザのような無頼漢の集まりだった頃のザフトを知る人物。
その頃から、荒くれ者を向こうに回して、彼らを従わせるだけの力量をもった女性でもあった。
そんなヒルダは、ザフトに入隊してからも持ち前のエネルギッシュな指揮能力で彼らを圧倒した。
つまり―ヘルベルトとマーズは、彼女に従うことを強要された元荒くれ者の片割れであった。
327 :
17/33:2005/12/27(火) 21:58:27 ID:???
「……遅いな」
ローエングリンゲートの司令部では、ガルナハン基地司令が一人敵の動きを訝しがっていた。
敵の予想到達時刻はとうに過ぎていた。訝しがる司令官―だが副官は一笑にふす。
「敵は、我が軍のローエングリンに怯えているのではないでしょうか?」
「馬鹿を言え。最新鋭戦艦のミネルバまで持ってきていて、怯えることなどあるはずがない」
「はぁ……しかし、では何故来ないのでしょう?」
「……何かあるのだろうな」
「何か……とは?」
「じきに分かる」
副官の言葉を真っ向から否定する。敵が予想到達時刻を過ぎてこないということは、そこに何かある。
たとえば、ユーラシア軍が思いもつかぬような作戦を練っているのかもしれない。そう司令が思ったとき―
「司令!ローエングリンの送電ラインに異常が!」
「何処だ?」
「基地近くの高圧送電ラインが一箇所……いや、もう一箇所!映像回します!」
火力プラントのセキュリティシステムと、ローエングリンの司令部との回線が繋がれる。
司令部の大型モニターに、異常個所―送電ラインから火花が飛び散っている光景が映し出される。
だが、その周囲には何も映っておらず、一見それはただの事故に思われたが……
基地司令は異変を察し声を荒げる。
「敵だ!!」
「は……しかし、監視システムは万全です。周辺には敵影も人影も……」
「何もないのに二箇所の送電ラインが、このタイミングで切れることがあるかッ! 一番近い隊は!?」
「基地に残っている大西洋連邦の……」
「すぐに向かわせろ!大至急だ!!」
その命令は即座にゲンの元に伝わる―司令部の通信兵はすぐにファントムペインと連絡を取った。
「送電ラインで事故だと?」
『はあ、司令は大至急向かえと……何でしょうね?』
「……ッ!!馬鹿か!?敵に決まってるだろう!?」
『し、しかし敵影も人影も……』
「ミラージュコロイドがあるだろうが!敵の狙いは送電ラインを断って、ローエングリンを阻止することだ!
送電ラインが断たれると非常用に切り替わるんだろう?その切り替えを阻むポイントは何処だ!?」
『……!い、いま地図で表示します!』
ようやく事の重大さを呑み込んだ通信兵は、大慌てでポイントを特定し、ゲンに位置を知らせた。
基地からほど近いところに、それはあった。ゲンはストライクMk-Uを駆り、すぐさま発進させた。
「スティング!俺は火力プラントの送電ラインに向かう!あとはお前に任す!
間もなく敵が強襲してくるはずだ! アウルとステラはスティングの指示に従え!」
328 :
18/33:2005/12/27(火) 21:59:39 ID:???
「一度入り込んでしまえば……脆いものだな」
ヘルベルト・フォン・ラインハルトは人事のように呟く。
彼は単身火力プラント近くにまで潜入していた。彼の乗るディンの特殊な能力によって―
ディン・レイヴン―RAVEN―Reconnaissance Attack adVanced Electronic iNstllation―
特殊電子機材搭載の偵察・攻撃用MSである。特殊電子機材はミラージュコロイド関連機器の事を指す。
つまり、ミラージュコロイド機能を備えたディン―文字通り鴉の如く漆黒に染め上げられた機体であった。
本来隠密行動専用の特殊部隊が持つ兵器であるが、本作戦に際しラドルが手に入れた機体であった。
ヘルベルトはこの機体の特性を生かし、単身敵の目をくらまし火力プラントまで潜入していたのだ。
「あと一つで……終わりだ」
彼は二つのポイントを潰し、最後のポイントに向かった。
ここを潰せばガルナハンのローエングリンゲートは、その能力を失うか、能力の大幅減退は避けられない。
その機動力を生かし、すぐに最後のポイント上空まで達し、狙いを定める。だが―
「……敵MS反応?……これは……ストライク!?」
寸前で作業は中断される。ゲンの乗るストライクが、間近まで迫っていたのだ。
ディン・レイヴンは今だミラージュコロイドを解いていない。やがて、ヘルベルトは舌なめずりをする。
「ハハハッ!いいぜ、来いよ……黒いストライク!確かお前もミラージュコロイドを使える筈だろう?
面白い!なら俺が……眼に見えないところからの攻撃を、神の目線からの一撃をくれてやるよ!
今までお前がやってきたことだ!楽しみだなぁ……お前を殺すのは!!」
「間に合ったか!」
ゲンもまた最後の送電ラインポイントに到達した。幸いにして敵影はない―
エールストライカー装備のストライクを、ゆっくりと地に付ける。敵はミラージュコロイド能力を備えている。
ならば、本当にこの場に来ていないのか、あるいは身を潜めゲンを待ち構えているのか―二つに一つ。
「……やってやるさ!」
ゲンは意を決し、ストライクを半身で盾を構えさせ、ライフルを構え周囲を警戒する。
同じ場所に止まらず、数秒おきに機体を移動させることも忘れない。
だが、そんなゲンの様子をヘルベルトは楽しそうに眺めていた。
「芸がないな、ストライク!まぁ、対処法としたらそんなモンしかねえだろうがよ。
ま、こっちもあまり時間がない。あと2分したら攻撃開始だ。それまで精々神経張り巡らせて消耗しな!
そして……時間が過ぎたらジ・エンドだ。ハハッ……アハハハハハッ!!」
ゲンにとって、それは生まれてはじめての経験―見えざる敵との戦いが幕を開けた。
329 :
19/33:2005/12/27(火) 22:00:40 ID:???
10秒……20秒……30秒……
ゲンにとって、それはただ数えるより遥かに長い時間であった。まるで、何十分も経ったかのような感覚―
「クッ……!どこだ?何処にいやがるッ!!」
極度の緊張感がゲンを包む。彼には確信があった。敵はすぐ近くにいる―
肝心要の送電ラインを攻撃した気配が全くない。手際よく峡谷を越え、火力プラントまで来た相手だ。
それを考えれば、敵は間違いなくこの場に潜み、ゲンを狙っている筈であった。
やがて、この場所に来てから一分が過ぎる―
ゲンは、あるいは敵が本当にないのではないかと思いたくなる。だが、そんな筈はない。
敵はゲンが警戒を解いた瞬間を狙ってくるだろう。敵の存在と同時に、ゲンはそのことも確信していた。
何故か―?それは、嘗てゲンというパイロットが常にそうしてきたからだ。
暗礁空域での戦いでも、ユニウスセブンでサトーの乗るジンを貫いた時も……
常に相手の気が緩んだ瞬間を、自分が狙い済まし仕留めてきたからであった。
「俺は……今までこんなことをやってきたのかッ!」
見えざる敵からの一撃―即ち、神の目線からの一撃を見舞ってきた自分を振り返る。
そして、自分のやってきたことに改めて寒気を覚える。形容しがたい悪寒と恐怖……そして緊迫感。
それらは少しずつゲンを蝕んでいく―
「時間だ。ストライク、悪く思うなよ……」
2分が過ぎ、ゆっくりとヘルベルトはストライクに照準を合わせ始める―
「……ん?あれは……」
ヘルベルトが照準を合わせた正にその時―
ゲンは、機体のモニターが遠くに動くものを感知しているのに気づいた。こちらにやってくるジープ……
遠くからジープが走ってくるのが見える。そしてそれに乗っている人物は、彼の知る人間であった。
「コニール!?あいつ、何をやってるんだ!?」
拡大映像に映っていたのは、昨日であったレジスタンスの少女コニール・アルメタであった。
突然の闖入者に気を取られたゲンは、期せずして彼女のほうにストライクの機首を向ける。
ストライクのバー二アを吹かすべく、ペダルを踏み込み、彼女の方角に向かった。警告をするつもりで―
だが、その時―
狙撃手ヘルベルトから放たれた閃光がゲンを襲った―
330 :
20/33:2005/12/27(火) 22:01:43 ID:???
「何いッ!?」
ビームライフルを放った直後、ヘルベルトは絶叫していた。放たれたビームは、ストライクを掠めただけ―
ゲンがコニールに気を取られ動いていなければ、彼はそのビームの一撃の餌食になっていただろう。
類まれなる運の良さは、ゲンに生きるチャンスを与えた。そして反撃の機会も―
「そこかッ!!」
ビームを放ったことで、身を隠していたヘルベルトの位置は特定された。
今しがたビームを放ったと思しき空間に、ゲンはストライクのビームライフルを向ける。
ピンポイントで当てるつもりはなく、4発、5発と五月雨式に乱射した。どれかが敵を捉えればよいのだ。
そして、そのうちの一撃が見えざる敵―レイヴンを捉える―
「ちいッ!腕だけかよッ!」
ディンレイヴンのライフルを持っていた腕は無残に吹き飛ばされた。やがて……
何もなかった空間から漆黒のディンが姿を現す。だが、ディンでストライクの相手は務まるはずもない。
ディンは所詮、前大戦時の機体に過ぎない。連合の新型機ストライクMk-U相手には荷が重過ぎる。
踵を返し、ヘルベルトは撤退を開始した。MA形態になると、一目散にその場を離れる。
「何でアイツは避けられる!?化けモンかよ!クソッタレがあッ!!
クソ……クソおッ!!だが、任務は果たさせてもらうぞ、このクソッタレのストライクがあッ!!」
去り際彼は置き土産を残していった。胸部6連装ランチャーを全開にし、最後の送電ラインポイントを潰す。
これで彼は本来の任務を果たし終えたが……彼の心には形容しがたい敗北感しか残ることはなかった。
ゲンは、それを舌打ちしながら見ているほかなかった。送電ラインと己が身を同時に守ることなどできない。
彼もまた敗北感を味わっていたのだ。やがて、敵が去っていくのを確認した後、コニールの元へ向かった。
「何しに来た!?」
「何しにって……お前、捕虜を解放してくれたんだろ?親父たちから聞いたよ。
大西洋連邦のから来た人間が捕虜解放に尽力してくれた……って。だから、その礼を言いたくて……」
「……そんな理由でこんなところまで来たのか?」
「わ、悪いかよ!?」
「当たり前だ!今は戦闘中だぞ!この……!」
馬鹿野郎―!そう罵ろうとしたが、彼女がいなければ、間違いなく自分はあのMSに撃ち抜かれていた。
寸前で回避できたのは、コニールの存在なくしてはありえないことであった。彼女に助けられたのだ。
故に彼は言いかけた言葉を呑み込んだ。やがて、ゲンは司令部に通信を繋いだ。失態を報告するため―
「……こちらゲン、敵はミラージュコロイドを使用したディン一機……送電ラインの確保には……失敗した」
言い終わるや、彼は乱暴にストライクの操縦桿を拳で殴りつけた。
331 :
21/33:2005/12/27(火) 22:02:41 ID:???
「そうか……」
報告を受けたガルナハン基地司令は、ゲンを責めることなく呟くだけだった。
送電ラインを潰す―確かに理にかなった方法である。だが、詳細なデータなくして敵は実行できない筈―
敵は火力プラントそのものを狙ったわけではなく、的確なポイントだけを意図的に潰してきたのだ。
おそらくは、味方の軍、あるいは火力プラントで働く何者かが情報を漏らしたに違いない。
「何を考えて情報を漏らした!売国奴が……ッ!」
苦々しげに、それだけを搾り出すような声で呟いた。だが、呪いの言葉を吐いても状況が変わらない。
彼は、今自分ができる任務をこなすよう、頭を切り替えた。
「ローエングリンの充填率は!?」
「先ほどまでの間にある程度の蓄電はできました!第一射目の充填率は71%で可能です!」
「第二撃以降は!?」
「それが……出力は大幅に低下し、本来の2割程度しか……」
「送電ラインの修理に掛かる時間は?すぐに復旧できるのか?」
「この戦闘中には……とても……」
ローエングリンは最初の一撃しか有効な威力を発揮しない。その事実に司令官は愕然とする。
だが、できることをやるしかない。彼は即断で方針を決めざるを得なかった。
「基地にいる連中に知らせろ!全軍撤退!繰り返す、全軍撤退!
用意してある輸送機に全員乗って……バイコヌール基地まで撤退せよ!この基地は放棄する!
だが……その前に!MS隊に伝達!撤退までの時間を稼がねばならん!これより総力戦だ!
ローエングリン起動!連中が峡谷に来たところに放て!MS隊は弾幕を張れ!時を稼げ!」
司令部にいた全員が耳を疑う。だが、ローエングリンを撃てないゲートに防衛能力はない。
予めシビリアンから出ていた撤退命令に従い、司令官が隠密裏に実行させていた撤退準備……
それはこのときにこそ威力を発揮していた。数十分も時を稼げば、撤退は完遂できるかもしれない。
故に、基地司令はそれを全軍に通達したのだ。また、彼は司令部の人間に伝えた。
「貴様らもだ!ザフトのクソ虫どもに、ローエングリンの一撃をくれてやったらここを離れろ!
副司令!後の指揮はキサマが執れ!お前が撤退の責任者だ!やれるな!?」
「ハッ!」
「よおし!ローエングリンは私が預かる!威力は小さくとも……二撃以降もくれてやる!」
その言葉に、再び全員が耳を疑う。敵中の真っ只中、ローエングリンに残る―司令は死を覚悟していた。
しかし、司令官は悲壮感は全く表に出さず、寧ろこれからの戦闘を楽しむような素振りさえみせている。
皆、彼の心中を図りかね、呆然としていた。そんな司令部の人間を司令官が怒鳴りつける。
「何をしている?ボサッとするな!敵は目の前だぞ!?」
司令の檄に、全員が戦う者の目に戻っていく―かくしてガルナハン撤退作戦は始まった。
332 :
22/33:2005/12/27(火) 22:04:31 ID:???
ゲンもまた、その撤退命令を聞いていた。彼は、コニールにもそのことを伝えた。
「……良かったな。お前の大嫌いな連合軍はこの地を去る」
「……え?」
「撤退命令が出た。俺たちも逃げることになる。お前の望んだとおりになった……ってわけだ。
どうした、喜ばないのか?昨日あんなに連合を嫌って……出て行けって叫んでただろ?」
「………」
少女は、気まずそうにストライクから降りてきたゲンを見上げる。
連合の撤退は彼女の何よりも望んだこと―だが、何故か彼女は浮かない顔……
「わ、私は……連合にもお前みたいなヤツもいるって分かって……
連合にも良いヤツと悪いヤツがいるって分かったから、その……お前は良いヤツだろ!?
捕まってたレジスタンスを全員解放してくれた!だから……感謝している」
「……そうか」
少女の感謝の言葉に、ゲンはただ一言呟いただけ。
彼はそのままストライクに乗り込み、そして、別れ際言った。
「覚えておけ、戦争する人間に良いヤツも悪いヤツもいない。良いヤツは……戦争なんてしないさ」
「……!でも、お前はみんなを……!」
「俺には俺の目的があってやったことだ……気にするなよ」
「……ありがとう」
「礼は要らない。貸しは……もう返してもらったからな」
そこまで言った後で、ゲンはストライクのコクピットのハッチを閉めた。
やがて、ストライクはコニールがその場から離れたのを確認した後、バー二アを吹かし空へ舞い上がった。
そして、ゲンはストライクの通信を、スティングの駆るカオスに繋いだ。
「スティング、基地はどうなってる?」
『……ネズミの引越しだな。火力プラントからは技術者が総出で、基地からは兵隊がぞろぞろと。
皆して輸送機に乗り込んでる。撤退の準備はしてあったのかな?随分手際が良いぜ』
「そうか……なら、俺のフライングアーマーを使えるようにしておいてくれ」
『おい……逃げるんじゃないのか?』
「逃げるが……その前に撤退を手伝う。MS隊も逃げてくるだろうから、その援護に行く」
『馬鹿言え!戦闘は始まってるんだぞ!?』
「だから行くんだ。早くフライングアーマーを起動させておいてくれ!」
ゲンは、空戦に特化したMS支援空中機動飛翔体―連合版グゥルの名を挙げる。
彼の機体の航続能力を鑑みれば、ストライクの性能と相まって活躍が期待できるからだ。
スティングの声が聞こえなくなったことを確認した後、彼はコクピットの中で叫んだ。
「司令官、捕虜釈放の命令書を書いてくれて感謝する!
アンタが書いてくれてなきゃ、俺は今頃この世にいなかった……だから、借りは返すぜ!」
333 :
23/33:2005/12/27(火) 22:06:10 ID:???
ミネルバのMS部隊は、ラドル隊ともどもローエングリンゲートを攻撃した。
だが、阻止したかに思えたローエングリンの第一射は放たれ、戦局は一時的に混乱した。
それでも、熟練のハイネ・ヴェステンフェルスなどは、それが最初で最後の一撃と見て取った。
「ヘルベルトは任務を達成した!あの一撃で最後の筈だ。あとはガス欠……
今がチャンスだ!全軍全力であのMS隊を潰し……そしてローエングリンゲートを潰す!」
彼の号令の元、ミネルバ隊の猛攻が始まった。
空中からはグフ・イグナイテッド3機とセイバー、そしてマーズの駆るバビ……
地上からは、ヒルダのドム、ルナマリアとレイのザク、そしてマユの乗るインパルスが攻撃を仕掛ける。
かねてからの予定通り、MS隊はMAゲルズ・ゲーを集中して狙っていた。
「ザフトの攻撃目標は……ゲルズ狙いか?ダガー隊!ジェットストライカーのミサイルで弾幕を張れ!」
その動きに、ガルナハン基地MS大隊長も呼応するかのように指示を出す―
激戦の火蓋は切って落とされた。
その頃、ゲンは基地に戻りフライングアーマーにストライクMk-Uを乗せていた。
アウルはアビスを起動し、スティングはカオスを、ステラはガイアを起動させて、その成り行きを見守る。
やがて、ゲンが飛び立とうとするとき、スティングが声を上げた。
「俺も行く!フライングアーマーを!」
「あ、スティングずるい!俺も行くぜ!フライングアーマー出すよ!」
「ステラも……行く!」
釣られるようにアウルもステラも名乗りを上げるが、ゲンがそれを制した。
「ダメだ!下手をすれば敵中に取り残される可能性がある!
そうなったら、逃げ切るのは難しい。俺のストライクならミラージュコロイドで逃げ切れるが、皆は……」
「けど、一人じゃ……無茶だ!」
「大丈夫だ。俺はザフトの連中にやられたりしないから……皆は最後までこの大型巡航機を護ってくれ。
今から時間を稼いで基地のMS隊をつれてくるが……彼らのことを頼む」
「MSの積載能力は限界がある。全部は……」
「なら人だけでいい。最後まで残って……彼らを助けたいんだ」
「そこまでする必要があるのかよ?」
「ある……これは俺のミッションだ」
最後まで抗弁するスティングを説得しつつ、彼は機体をフライングアーマーに乗せ飛び立った。
「戻れなくても追いつくから……俺の戻りは気にするな!基地の連中を頼んだぞ!」
基地から次々と輸送機が脱出していく。撤退作戦が始まった。
だが、それとは真逆の方向にストライクは向かう。文字通り、ゲンは友軍の撤退を助けるべく死地に赴いた―
334 :
24/33:2005/12/27(火) 22:07:01 ID:???
ローエングリンゲートは猛攻にさらされていた。
ゲート周辺に無数のミサイルが着弾し、MS隊はその応戦に追われていた。
頼りの陽電子リフレクターを持ったMAゲルズ・ゲーですら、リフレクターを展開したまま、防戦一方……
彼らの戦力が不足していたわけではない。ハイネ隊、ヒルダ隊の連携が奏功していたのだ。
空中、陸上両方からの攻撃は、必然的に基地MS隊の注意を散漫なものとした。
エース級の連携の取れた攻撃の前に、次々ダガーLは撃破されていく―
「これほどとはな……さながらエース級だけで編成された部隊だな、ミネルバは。強すぎる……
あの大西洋連邦の小僧が言っていたことは本当だった。味方は……あと何機残っている?」
大隊長は呟き、応戦しつつ味方の残存兵力を確認する。
既に味方は半分をきっていた。MAゲルズ・ゲーを合わせても、12機しか残っていない。
「潮時か……全員退け!峡谷まで退くんだ!狭い峡谷なら時間を稼げる!」
大隊長の指揮の元、MS隊は後退を始めた。そして、その様子は司令部からも確認できた。
ローエングリンゲートのある峡谷の山頂は、すでにザフト軍のミサイル群で削られていた。
その峡谷の中にある司令部には、基地司令ただ一人が残っていた。
『司令官、申し訳ありませんがここまでです。MS隊……撤退します』
「大隊長……スマンな。こんな負け戦で」
『司令も脱出を……』
「部下を死に追いやって脱出か?笑わせるな」
『……後ほどお供します』
「フン、勝手にしろ……だが部下を巻き込むなよ?」
『心得ております、では……』
大隊長からの通信―二人にしか分からない会話はそこで終わった。
基地司令は最後に残ったエネルギー全てを使い、ザフトに一撃をくれてやるつもりだった。
そんな彼の元に、再び通信が入る。ゲンからの通信が……
『司令!』
「おお、青臭い大西洋連邦の士官殿か!……さっさと脱出しろ。敵は目の前だぞ」
『冗談じゃない!今行きますから脱出を!』
「……できんよ。部下を死なせておいて、自分だけ逃走か?後の手筈は副官に任せた。
お前も人の上に立つ者なら自覚しろ。部下を死なせておいて自分だけ逃げるような指揮官にはなるなよ」
『……しかし!』
「MS隊はまだ戦っている。彼らが戦っているうちは、逃げるわけにはいかんのだ。聞き分けてくれ」
『……!では、これより我々ファントムペインが……殿(しんがり)を務めさせていただきます』
「……ハハハッ!面白い!借りは作らんというわけだな!すまんな、小賢しい中尉殿……頼んだぞ」
『これより……残存のMS隊と合流します。司令、捕虜釈放の命令書を書いていただき、感謝します』
ゲンからの通信もそこで終わった。司令官は自嘲気味に呟く。一つの決意を秘めて―
「基地を放棄か……司令官としては無能の極みだが、それでも最後に……一撃をくれてやる」
335 :
25/33:2005/12/27(火) 22:08:03 ID:???
「大勢は決したな」
マハムール基地司令、ヨヒアム・ラドルは満足げに呟いた。
彼の部隊の力ではなくミネルバのハイネ隊と増援のヒルダ隊の力ではあったが……
敵MS隊が撤退を始める様は、ローエングリンゲートの前に煮え湯を飲まされたラドルとしては―
「素晴らしい光景だ!はははッ!
ラドル隊に告ぐ!これよりローエングリンゲートに侵攻する。援護はもういい!
敵の撃破はミネルバの連中にやらせろ……宿願の、ローエングリンゲートの撃破をするぞ!」
当初の予定と異なり、ローエングリンは一射目以降を発射しなかった。
故に、ミネルバのMS隊は敵MSの撃破にのみ集中し、ラドル隊が遠方から彼らを援護していた。
そして、同時にローエングリンのある峡谷山頂部にもミサイルの雨を降らせていたが……
ようやく、打倒の見通しが立ったことで、ラドルは自隊の全部を峡谷内に進軍させた。
その光景はローエングリンの基地司令部からも見て取れた。
ガルナハン基地司令は冷笑を浮かべ、敵将の迂闊さを眺めていた。
「無能な将を持つと部下は気の毒だな。折角の勝ち戦で命を散らすことになる。私も人のことは言えんが」
彼はゆっくりとローエングリンの照準を、迫るレセップス級に合わせた。そして―
「ゲートより高熱源反応!これは……ローエングリンです!!」
「馬鹿な!?あれはもう撃てない筈ではないのか!!かっ、回避だ!回避ー!!」
ラドルの叫びもむなしく、ローエングリンの刃は僚艦のレセップス級を穿った。
今しがた勝利を確信していたラドルは、青ざめた顔でその光景をただ見入るだけだった。
そんな一連の様子を、セイバーを駆るアスラン・ザラは罵っていた。本来他人を罵ったりはしない彼だが―
「馬鹿な!何故ラドル隊長は旗艦をと僚艦を敵の射程圏内に入れたんだ!まだ戦闘は終わってないぞ!」
彼ほど温厚な男が怒りをあらわにするのだ。
ローエングリンは撃つ気配がそれまでなかったとはいえ、最も警戒すべき兵器であることに変わりはない。
「クソッ!ローエングリンを……仕留める!!」
敵MS隊の掃討に力を注いでいた彼は、踵を返しローエングリンまで飛んだ。
すぐさま彼の砲台に迫り、フォルティス・アルムフォタスの両ビーム兵器をローエングリンに突きつける。
その光景は司令部からも容易に確認できた。
「来たか……ザフトの。お前が私の死か……やってくれ」
セイバーの放つ閃光に穿たれたローエングリンは、その誘爆で司令部もろとも紅蓮の炎に包み込んだ。
336 :
25/33:2005/12/27(火) 22:09:03 ID:???
司令部からの通信が途絶えたことで、MS隊にもその異変は伝わった。峡谷で応戦するMS隊だが……
更に数は減り、MS7機とMAザムザの計8機しか残っていなかった。大隊長も、限界を悟った。
撤退しようにも撤退する術がない。投降という手段もあったが、乱戦状態では降伏することすらできない。
せめて部下だけは逃がしたいという思いはあったが、それも難しい……
「万事休す……か」
だが、その時―迫っていた敵MSに異変が起きる。
ハイネが指揮する空戦MS部隊に、さらにその上空から無数のビームの雨が降り注いだのだ。
「何だ!?新手か!?」
慌てて動きを止めるハイネ隊―だが、モニターに新たな敵の存在は記録されていない。
訝しがるハイネ―だが、彼には嘗て見えざる敵との戦闘経験があり、その答えに行き着いた。
「まさか……ミラージュコロイド状態での狙撃か!?
全機峡谷から離れろ!密集するな!ヤツがいる!黒いストライクが……ヤツが俺たちを狙っているぞ!
各機、ツーマンで背中合わせ、動きつつ守備体勢を取れ!警戒しつつ、それでも動きを止めるなよ!!」
『隊長、ご無事ですか!?』
「中尉!お前だったのか!」
『敵は動揺しています!今なら脱出できます!
早く基地まで移動してください!俺たちの乗ってきた巡航機がいます!』
「助かった!全機基地まで急げ!」
ゲンの声に、大隊長は喚起の声を上げる。これで部下達の命は助かる―次々と離脱するダガーL……
だが、そんな光景は攻めるザフトにも容易に視認できた。
『ハイネ隊長!奴等逃げますぜ!?』
「分かってる!だが逃げる敵を撃つな!ヤツがいるんだ!その隙に撃たれちまう!」
『くそっ……それにしても、なんでストライクのヤツは今頃になってミラージュコロイドを使い出したんだ!
どうせなら、この間のインド洋での戦いで使えば良かった筈でしょう!?』
「大方……高温多湿のインド洋じゃあ、コロイドの視認値が上がっちまうから使えなかったんだろう」
ハイネは、ショーンとゲイル―二人の古参の部下からの問いかけに答える。彼の推測は当たっていた。
コロイドは所詮粒子である。水中でコロイドが使えないのと同様に、高温多湿帯では使用が制限される。
この地に来て、初めてゲンのストライクは本来の狙撃手としての能力を発揮していた。
しかし、一向に次の攻撃をしてこないストライクに、ハイネは相手の心中を慮った。
「味方を……逃がす気か。味な真似を……やってくれるぜ」
だが、最後に一機のダガーLとMAだけがその場に残っていた。
やがて、このガルナハンローエングリンゲートを巡る、最後の攻防の幕が開ける―
337 :
27/33:2005/12/27(火) 22:10:10 ID:???
最後に残ったのは、大隊長の乗るダガーLとMAゲルズ・ゲーのみ……
3人が乗り込んでいるゲルズ・ゲーのパイロットのうち一人から、大隊長機に通信が入る。
『逃げないんですか、隊長?』
「……お前らこそ、なぜ逃げない?」
『このデカ物は足が遅すぎる。逃げるには向きませんぜ?おまけに巡航機にも詰め込めませんから』
「俺は逃げん……覚悟は出来ているのか?」
『当然です、あとの二人も同じですよ。せめて最後に……ユーラシア軍人の意地を見せてやりますよ』
一つ、大きくため息をつき……やがて、大隊長はゲンに通信を繋いだ。
「聞いての通りだ、中尉……君も撤退しろ」
『……今ならまだ逃げられます!機体なんて捨てちまえばいいでしょう!?』
「今撤退すれば、巡航機が敵に追われることになる。部下も乗る機体だから、それは避けたい。
君のMSストライクならば、脱出する巡航機の力になれる。だから、君が彼らを護ってくれ」
『そんな……!』
「今日までの戦いで、20名以上の部下を失ってきた。
だから、今生き残っている部下は、確実に逃がしてやりたいんだ。そのために……協力してくれるな?」
『………』
「頼むぜ、青臭い士官殿」
『……行きます』
ゆっくりと……ハイネ達に悟られぬよう、ゲンは踵を返した。
それを見て取った大隊長とゲルズ・ゲーのパイロットたちは、最後の戦いを始めた。
『俺たちも、行きますか』
「ああ、最後の戦いだ……健闘を」
『お互いに……ね』
突如、猛然とゲルズ・ゲーが起動する。そして、地上部隊のヒルダの駆るドム・トルーパーに組み付く。
同時に、陽電子リフレクターを稼働させ、一気に潰しに掛かる。ゲルズ・ゲーのパイロットは吼えた―
「さあ!ザフトのクソ虫ども!戦闘再開だ……始めるぞ!」
「誰がクソ虫だい!?」
「お前だよ、クソ女!ザフトは人手不足のようだな!女子供まで戦場に借り出すとはなあ!!」
「……ッ!言ったな!後悔させてやる!」
接触回線で互いの声が聞こえ、ゲルズ・ゲーのパイロットの声にヒルダも反応する。
ドムもまた、スクリーミングニンバスを展開し、互いにビームの干渉波を散らしながら潰しあった。
バッテリー機体ながら、重量級MAであるゲルズ・ゲーと核エンジン搭載のドム・トルーパー……
拮抗する両者の力は、周囲にビームの干渉波を撒き散らし、その光景に皆が慄然とする。
そして、そのゲルズ・ゲーの向こうから一機のMS―ダガーLが跳躍する。それに乗る大隊長が叫ぶ―
「我々ユーラシア軍人の意地を見ろッ!!」
338 :
28/33:2005/12/27(火) 22:10:58 ID:???
ゲルズ・ゲーとドムの均衡が破れる―
背後から躍り出たダガーLはビームサーベルをドムに突き立てた。
ドム・トルーパーの黒い巨体の胸部を、大隊長の駆るダガーのサーベルが貫く―
「ヒルダ隊長おッ!!!」
ドムの背後にいたインパルスを駆るマユが絶叫する。
ヒルダの愛機ドムは、スクリーミングニンバスの展開を止め、その場にズンッと音を立てて倒れこんだ。
「よくも……!よくも隊長を!!」
マユには、力なく倒れこむドムを目の当たりにし、ヒルダが死んでしまったように思われた。
怒りが少女を支配する―インパルスは手に持つ長槍デファイアントジャベリンをダガーLに突き立てた―
その動きに、ドムの両脇にいたザクを駆るルナマリアとレイも呼応するかのようにヒートホークを引き抜く。
そして、いまだ健在のゲルズ・ゲーに最後の一撃を見舞った。
峡谷での戦闘は終わりを告げた。敵の姿は既に遠く、ストライクもその姿を消している。
ハイネ隊は周囲に警戒しつつ、ドムの回収を始めようとしたが……
マユがまっ先にインパルスを駆け下り、ドムの元へ向かった。
「隊長!ヒルダ隊長!」
叫びながらドムのコクピットのハッチを強制解放する。
周囲にビームの粒子が散っていたため、ロックの取っ手部分からパイロットスーツ越しに熱が伝わる。
が、マユはそれに構わず、ヒルダを救うべく、ハッチを開いた。
「隊長!」
「ああ……マユかい?やられちまったよ……」
「い、今助けますから!」
力ない声ではあったが、ヒルダは生きていた。
マユが見たところ、取り立てて外傷があるわけでもなく、致命傷を負ってるようには見えなかった。
「そんなに情けない声をあげないでおくれ。怪我は大したことはないみたいだ」
「何処を……やられたんですか?」
「右脚……かな。潰れちゃいないようだけど、骨はイッちゃったみたいだ」
「ごめんなさい……私が、もっと早く敵の動きに反応していれば……」
「仕方ないさ。黒いストライクがどこから狙ってくるか分からなかったからね。それよりマーズは何処?
あの馬鹿……自分の隊長がやられたってのに、顔も出さないなんて。薄情な部下だねぇ……」
ヒルダは、ストライクの狙撃を警戒し反応が遅れたマユたちを攻めなかった。
もっとも、変わりに姿の見えない部下を訝しがっていたが……その言葉にマユもマーズの姿を探す。
だが、周囲にはハイネ隊しかおらず、マーズの駆るバビの姿は何処にも見えなかった。
339 :
29/33:2005/12/27(火) 22:12:01 ID:???
基地MS隊が最後の戦闘を終えた頃―
スティング達の乗る大型巡航機は既に生き残りのMS隊を連れ、基地を飛び立っていた。
損傷の激しいダガーLは放棄せざるを得なかったが、パイロット6名とダガーL2機は乗せられた。
やがて、後から追いかけてきたフライングアーマーに乗ったストライクMk-Uと接触を果たす。
ストライクのコクピットにスティングからの通信が入る。
『……ゲン!無事か!?』
「ああ……だが、大隊長とゲルズ・ゲーのパイロット達は……」
『そうか……だが、感傷に浸ってる暇はないみたいだぜ。ゲンの後から敵影!
照合……ライブラリ該当機種有り!AMA-953……ザフトの新型MS、バビだ!低空から来るッ!』
「クソッ!こっちのバッテリーはもう残り少ない!クレイバズーカを用意してくれ!
スティングもカオスを出す準備をしてくれ!空中戦になる!巡航機に近づけさせるな!」
『へっ……!やっと出番か!準備はとっくに出来てるぜ!』
連戦による消耗で、既にストライクのバッテリーは限界に近づいていた。
それでも空中戦が出来るMSでなければ、迫り来る敵―空戦用MSバビに対応できない。
舌打ちしつつもゲンは対応策を練り、空戦の出来るストライクとカオス2機で応戦することを決めた。
「よくもヘルベルトとヒルダ隊長をやってくれたな!逃がしはしねえぜ!」
バビのコクピットで、逃げる敵の大型巡航機を追うパイロット―マーズ・シメオンは叫んだ。
先ほどミネルバに帰還したヘルベルトの乗るディンは損傷、ヒルダもドムを破壊され彼女も手傷を負った。
おめおめとこのまま引き下がれない―その想いが、単身での追撃戦に彼を駆り立てることとなった。
やがて、彼のバビのモニターに、逃げる巡航機の姿が映し出される―
「見つけた!二人の仇は……倍返しで返してもらうぞ!!」
ガルナハン撤退戦の最後の戦闘が始まる頃……ガルナハン基地に向かう機影が一機あった。
ザフトとの接触を避ける為、基地の北側からカスピ海経由で迂回路を取った戦闘機の姿が……
「ガルナハンコントロール!ガルナハンコントロール!
……依然応答なし……か。既に戦闘が……始まっているのか?」
戦闘機―ムラサメを駆る青年は、応答しない基地に訝しく思う。
だが、彼が向かっている基地が既に陥落しているとは彼は知る由もなかった。
それでも他に彼の行く当てはなかったし、ムラサメの燃料も残り少なくなっていた。
「……どの道、行くしかないね」
青年は覚悟を決め、基地の方向へ機首を向けた。
340 :
30/33:2005/12/27(火) 22:13:29 ID:???
ゲンの駆るストライクは、フライングアーマーごと巡航機のハッチに機体を滑り込ませる。
そして、彼は更にストライクにクレイバズーカを持たせ、再度出撃の準備を始める。
そんな彼に、アウルとステラが指示を請う。
『俺たちはどうすりゃいいの?』
『ステラも……どうすればいい?』
「巡航機からは出ないで……ハッチから応戦してくれ!」
『『了解』』
言うや否や、ゲンはスティングの駆るカオスと共に、巡航機から飛び出した。
「MSが出たか!」
その姿はマーズからも容易に視認出来た。彼はストライクとカオスの存在に狂喜した。
空中戦では、数の不利はあれど、圧倒的にバビの方に速度の利はあった。
経験豊富なマーズは、状況が決して自分に不利ではないことを確信した。
だが、突如彼の元に通信が入る。ヨヒアム・ラドルから―
『マーズ、聞こえるか?』
「ラドル司令……何の用だ?これから戦闘に入る。邪魔しないでくれ」
『邪魔をするつもりはないが、一つ命令がある。その巡航機は落とすな』
「……何だと?敵が乗ってるんだぞ!どういうつもりだ!?」
『ストライクとカオスがいるなら、無傷で確保したい。あるいはアビスもガイアもいるかもしれん。
アーモリーワンでの失態を、この機会で全て取戻せるやもしれんのだ」
「巡航機は沈めず、航行能力だけ殺げ……ってことか?」
『そうだ』
「……了解だ、クソッ!」
舌打ちしながらマーズはバビをMA形態にし、戦闘態勢に入る。
上官の勝手な都合に苛立つが、元をただせば奪われた3機のMSは全てザフトのもの。
ストライクを除けば、元はプラントの財産であり、ザフトの強力な戦力となる筈だったのだ。
「チッ……!やりゃあ良いんだろう?やってやるよ!!」
航行能力だけを殺ぐには、ブリッジを潰すしかない―マーズは、腹をくくり戦闘に没入していった。
丁度その頃、ムラサメのモニターからも大型巡航機が捉えられた。
「この反応は……赤道連合の巡航機?ニューデリーで聞いた……赤道連合の機体か」
ムラサメを駆る青年は訝しがったが、彼はこの時点で基地に異変があったことを確信する。
機体は北に向かう―赤道連合に戻るなら逆方向だからだ。青年は、最大戦速で、巡航機の方角に機首を向けた。
341 :
31/33:2005/12/27(火) 22:14:37 ID:???
ゲンとスティングは、マーズの駆るバビと戦闘に入った。
一段と速いスピードで、戦闘機のような形に変化した異形のMSが迫る―
「来やがったぜ、ゲン!」
「ああ……あのMSは変形した……MAかッ!!」
ストライクはクレイバズーカを、カオスはビームライフルを矢継ぎ早に放つ。
大型巡航機を落とされれば、彼らは脱出する術を失う―その先に待つのは投降か死か……
だが、決死の思いで応戦する2機を―必死に弾幕を張る二人を、マーズは嘲笑う。
「それで……応戦しているつもりか!笑わせるなよ!」
空中戦に特化したMAバビの空中でのスピードは、セイバーと比べてもそう劣るものではない。
彼は快足を飛ばし、あっさりとゲンとスティングの弾幕を回避する。狙いは、大型巡航機のみ―
「やらせるかよ!」
迅速なマーズの動きに、スティングは背部の機動兵装ポッドを切り離し、ドラグーンを起動させる。
しかし、その動きすらベテランのマーズには見切られていた。
「甘いなあぁッ!!」
突如バビはMS形態に変化し、左右に動き回りつつドラグーンのビームを回避する。
カオスの機体のデータは既にマーズも熟知していた。その性能の高さも、武装も、空戦能力も……
ポッドはバー二アを務める兵器―それが切り離され、機動力を殺がれたカオスをマーズは見逃さない。
カオスのビームを回避するや、バビのアルドール複相砲を起動させる。
膨大な光の束がカオスを襲う―
「……ッ!」
スティングは、辛うじてカオスのシールドで受けるが、シールドは砕けカオスは後方に弾き飛ばされる。
その姿に、マーズは冷笑を浮かべ追撃を試みるが……黒い機体が視界に入り、追撃を遮る。
クレイバズーカを抱えたストライクが、動きを止めたバビに襲い掛かった。ゲンが吼える―
「そこおッ!!!」
3発、4発とバズーカを放ち、そのうち一発がバビを捉えた―
頭部のモノアイが砕け、一時的にバビの視界は遮られたかに見えたが……
すぐさま予備のモノアイが稼働し、砕けたモノアイの変わりにバビの"眼"が復活する。マーズは嘲笑した―
「散弾ではなあッ!!!」
クレイバズーカは所詮実弾であり、その上散弾である。ピンポイントで相手の急所を捉えねばならない。
ゲンは、敵のメインカメラを砕こうと試み散弾で捉えはしたが、新型のバビはその弱点すら克服していた。
342 :
32/33:2005/12/27(火) 22:15:34 ID:???
ストライクとバビの攻守が交代する。
マーズは、バビのビームライフルを構え、ストライクを落としに掛かる。
ストライクが先に攻撃したのと同様に、4、5発を纏めて打ち込み、一発がストライクのバズーカが砕ける。
飛び道具を失ったゲンには、もはやなす術がなかった。
「残念だったな!」
しかし、マーズはストライクに追撃を見舞わず、機動力を生かし大型巡航機に迫る―
彼の目的は、あくまで無傷で奪われたMSとストライクを捕縛すること……マーズは己が任務を遂行した。
ファントムペインの最後の砦は、巡航機のハッチから応戦していたアウルとステラだけであった。
「来たぜ!」
「……うん!」
アウルはアビスの胸部にあるビーム砲カリドゥスを、ステラはガイアのライフルを放ち弾幕を張るが……
マーズのバビは、低空から回り込むように大型巡航機を通り過ぎる。
ハッチからは下部は死角になるため、二人は攻撃を阻まれた。
そして巡航機の前面に飛び出したバビは、巡航機のコクピットに狙いを定める―
「ブリッジだけを潰せば……機体は!」
ストライクとカオスを振り切り、最後の砦のアビスとガイアの攻撃も届かぬところにバビはいた。
ファントムペインのパイロット達全員が、最早なす術のない状態にまでマーズは追い込んでいた。
勝利を確信し、バビの左手に持っていた航空ガンランチャーを構え、照準を取る―
「終わりだ!!」
だが、マーズの駆るバビの背後から―
突如として一機の戦闘機が向かってくる―
その戦闘機―ムラサメを駆る青年は、マーズの動きを見て取り、叫んだ―
「させるかああッッ!!!」
戦場にいた誰もが我が目を疑う―
突如として現れた戦闘機がMSに変形し、ビームサーベルでバビの両の手を切り裂く―
更に、返す刀でバビの背面にあるバーニアの一部も両断してみせる―
自分が何をされたかも分からず、マーズは飛行能力が大幅に低下したバビのコクピットで叫んだ。
「馬鹿な!?こいつは……オーブのムラサメ!?クソッ、出力がでない……離脱するしかないのか!!」
降下して行くバビを何とか低空で持ちこたえさせるのが精一杯―マーズは戦場から離脱する他なかった。
343 :
33/33:2005/12/27(火) 22:19:34 ID:???
ゲンはストライクのコクピットで、スティングはカオスのコクピットで―
突然現れた戦闘機が変形し、バビを切り裂いたのを確認していた。
スティングは、今だその光景が信じられないという風に、呟いた。
「戦闘機がMSに変形して……敵のMSを倒したのか?」
ゲンもその光景は信じがたいものだったが、その戦闘機がオーブのムラサメであったことに驚いていた。
「ムラサメ……オーブもユーラシアに派兵したのか」
二人が、それぞれの言葉で状況を察したとき―
ストライクとカオスのコクピットに、一人の青年の声が響き渡る。
『大丈夫ですか?』
軍人とは思えないほど優しげな声で、相手はゲンとスティングに声を掛けてきた。
戸惑う二人―だが、スティングが困惑しつつも応える。
「あ、ああ。お陰さまで助かったぜ。ところで、アンタどこの部隊の人間だ?」
『あ……まだ名乗ってなかったですね、ごめんなさい。』
青年は詫びる必要もないのに、咎められてもいない非礼を詫び、所属を名乗った。
『ボク……じゃなかった、自分はオーブ軍第一機動艦隊旗艦タケミカヅチ所属―』
オーブ― タケミカヅチ― その言葉にゲンも聞き入る―
『馬場隊ムラサメ5番機に搭乗している……キラ・ヤマト三尉です。巡航機に着艦の許可を―』
後の言葉はゲンには聞こえなかった。ただ、彼はストライクの操縦桿を握り締め、心の中で叫ぶ―
(戦場に……戻ってきたのか、キラ・ヤマト!)
名乗った直後、キラもまたストライクの姿を見つけ、ムラサメの操縦桿を握り締める―
嘗て自分が駆り、アークエンジェルと共に戦場を駆け抜けた愛機と同じ外観を持つ機体―
ただ、その機体と嘗ての愛機との相違は、その機体が漆黒に染め上げられていることであった。
そして、その姿を間近に見たとき、キラもゲン同様に叫んでいた。
「あれは……まさか……ストライク?……Mk-Uかッ!?」
西に真紅の夕陽が沈みかける―
そんな中、白いムラサメと黒いストライクは対照的に陽の光に染まっていた。
キラ・ヤマトとゲン・アクサニス―
光と影が交わるとき、大いなる運命の扉は開かれる―
ガルナハンローエングリンゲートを巡る攻防戦……それは更なる激戦への間奏曲―
PPスゲー! リアルタイムで読みました!
いつ出るかと思ってたキラがここでこう来るとは……!
ガルナハンの連中がみんなイイなぁ。GJ!
GJ
てかキラはアム(ry
346 :
314:2005/12/27(火) 22:27:13 ID:???
うああああああああああああああああああああ
なんで俺がカキコしてる時によりによってPP戦記が投下されてんだああああああああああああああああ!!!!!!!????
PP作者並びにスレ住民の皆、大変申し訳ないorz
マユが久々に登場してちと嬉しかった
こっちはまだまだ死者があまり出てないが、これから徐々に出てくるんだろうな・・・ザクグフ(((((;゜Д゜)))))ゲルググ
しかし年末に大作が続々連投されて、相変わらずこのスレの凄さを実感したぜ
とにかくPP戦記作者乙!来年も楽しみにお待ちしております
今年も残りわずかですが、四作品も投下とは嬉しいです。
各作者様、お疲れ様です。
それにしても、キラがムラサメ良いですね。
PP書いてる者です。
ガルナハン編は適当に書くつもりでしたが……気づいたらこんな量にorz
エンディングテーマはGackt様の”君がまっているから”で(ぉぃ
いやね、SP見ちゃったんですよ。38話以降見てなかったのに……気になっちゃって……
……あとはもう”ZT星を継ぐ者”をひたすらDVDで見てる自分がいたわけですよ。
>>345 ブラン様リスペクトということで今回のラストは勘弁してやってくださいm(__)mマーズじゃ役不足ですがorz
ZT見た時点で、もうキラとシンはこういう展開にしようと心に決め(以下略
SP見た後にDVD見まくったら、もうこれはやるしかないなと……
>>348 纏め人様いつもご苦労様です。
このスレに書き込み始めて半年になりますが、今後ともよろしくお願いしますm(__)m
それでは皆様、良いお年を……
PP乙!リアルタイムで読んでたけどやっぱあんたの作品はキャラが人がすごく生きてるわ
で最後のほうの戦闘の弁明はありますかな?wwwwwwwだいたい「クレイバズーカ」の時点でおかしいなとwwwwwwww
「散弾ではなぁ!」じゃないっつーのwwwwwww
なんですか今日のミラクルなスレの流れは(*TдT)
やっぱりここのスレの底力はスゴイなぁと感じた瞬間でした。
今からじっくり各作品を読ませていただきます!!
職人の皆々様、非常に乙でした!! ありがとうございます!!
何だ今日の流れは!
隻腕読む
↓
ハイネorz
↓
と思ったらPPキタ――(゚∀゚)―――!!!
↓
しかも凄くZだ―――!!!
ご無沙汰してます(汗
マユ種作者様、隻腕作者様、PP戦記作者様、ほのぼの作者様、他職人様いつも乙です
今年中に自分も投下できるように頑張りますorz
PPの連合軍兵士はちゃんと人間をしている。
最近は隻腕を読むと嫁補正が恋しくなる。
どんなにうつてんかいでも
きらきゅんがしゅつげきして
ふるばーすとしたらなおるよ!
ハ_ハ
('(゚∀゚∩ なおるよ!
ヽ 〈
ヽヽ_)
>>355 そっちへいっちゃ駄目だ!こっちへ戻って来い!!
そうか・・・・そうだったんだ・・・
そういう誘惑に負けた者の成れの果てが嫁の姿だったんだ
そう、嫁とは悪魔の進化体
俺達も油断すれば嫁のようになってしまう
嫁・・・・恐ろしいウィルスだ!
>>355 たくさんの空気キャラを生むことになるぞ!
PP戦記乙! 毎度素晴らしい文章だ!
てか、ゲンの「私は兵器ですから」
に激しく既視感(何故か一発変換できない)
その昔、KOS-MOSというアンドロイドがおってな……(以下略
>>355 俺達からキャラの死まで奪うつもりか!!
PPも名前付きキャラが死に出したらエラいことになりそうだよな……
やっぱり嫁補正が欲しくなるか?w
嫁補正でも連合三人組みは死んでるわけだが。
そうか、キャラの死の重みに耐えられずに、あんな薄っぺらな殺し方になったんだな、連合3人組……。
隻腕、さりげにマリューの今後が気になる。この展開OP映像準拠なのね。
PP戦記の方も、マリューとか今どうしてるんだろ
>>362 女帝降臨かよ……
しかし音楽が妙にマッチしてるなw
>>366 隻腕の魔乳は凛々しい大人の女って感じで好きなんだよな
まあやたらと胸を強調する描写はどうかと思うがw
ムウマリュ厨のリウですら、そこまで強調してなかったしw
,lllllllllll、:::::;_:::::::::::::;llllllllll!゙l;il|;;;;;::::;'ll;;;;;::;;;ll;;:::::::::::::;;;;,lllll";;l!′ : : : : : : : :: : : : :;;,ll!゙;:;,llll!゙:::::: : ;;;;;::: ::;,lllllllll|
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゜::,,illlllllllllllllll" : ::: ::::::::::;,lllllllllllllllllllllllll;;;;;;;;;;;;;;: : : : : : : ;;;;;、;;;;;;;,llllllllllllllll::;,;:::::::;″;llllll゙,illllllllllllllllllllllll|
創作の暗黒面を学びなさい。そして私と共に負債に仕えるのです
このスレの職人たち、ヨーダ級も居るからなぁw
漏れはクローントルーパーですが何か
そういえばどっかのスレで
ベイダー(シン)どころかモール(アスラン)にティラヌス(キラ)まで生きてる完全な状態で帝国を手に入れたんだから
パルパティーン(ラクス)は笑いが止まらないだろう
とか言ってたな
イザークはグリーヴァスあたりだろうか(´д`)
思うに
>>355が言う嫁補正とはキラキュン登場による延命措置かと
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!わっ・・、私がミネルバの二番艦の艦長に?!」
「「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええっ?!」」」」」」」」
クルーが集まっての配属の変更の知らせ(若いクルーが多いので全校集会状態)に衝撃が走った。
あの、軍人らしくなくて、へたれで、よく会議に遅刻する、のーてんきなアーサー副長が・・・・・・・。
ミネルバ同型艦、「ムセイオン」の艦長に選ばれたのだ!!
「ちなみにムセイオンにはハイネ隊が配属され、その代わりにアビス、ガイア、カオス、ストライクMkU、ディスティニー、レジェンドが入ります。以上質問は?」
ハイネ隊のメンバーは壮絶に絶望した表情になる。
「・・・・・・・シンハロ、おれのゲームのセーブデータ・・。」
「あ、俺のティーカップコレクションもいい?」
「・・・・・僕の秘蔵のウィスキーも・・・。」
次々に自分の宝物を託しはじめるハイネ隊。
「なんだなんだ!!皆そんなに私の艦に乗るのが嫌なのか?!」
「・・・・・・・・シンハロ、本当に大丈夫なのか?」
『大丈夫大丈夫、レジェンドとディスティニーはこれでだいぶ面白い機体になったぞ。』
レイはシンハロの言葉に不安を抱きながらも改造されたレジェンドを見る。
「おー、なんかカッコいいねー。」
マユは能天気なコメントをする。
『まず、レイのレジェンド改・・・「レジェンド・ホロウ」の説明をするぞ。』
「「ホロウ?!」」
ホロウと聞いて飛び込んでくる二人の人物、アウルとアキラだ。
『・・・・・あー、二人とも、ホロウっつっても決して悪霊でもなく
虚ろな揺り籠でもなく。』
「「ちぇー。」」
アキバ系と死神代行はすごすごと下がって言った。
『えーっと、レジェンド・ホロウはドラグーンについていたビームを少し減らしてその代わりにミラージュコロイド発生器をつけたんだ。
隠れたところからびゅんびゅんっと!!無敵臭くない?!』
ぐっと拳を握り締めながら語るシンハロ。
「と、言う事は防御面が不安になるな。」
レイはノることなくシンハロに突っ込む。
『うぅ・・、まぁ、その辺は・・・がんばれ。』
「おい。ちょっとまて。」
『じゃあ、マユのディスティニー改「ディスティニー・ブロークン」の説明は・・・・、まぁ、実戦でするか。ぶっちゃけ説明しにくいし。』
「無視するなよ!!不安すぎるぞ!!」
微妙に涙目で訴えるレイ。
「ちゃんと説明してよシンハロ!!死ぬって!」
レイの心配ではなく、自分の心配をするマユ。
『ぶー、じゃあレイは置いといてこの機体の説明をするぞ。
このディスティニー・ブロークンはまぁ、マイナーチェンジ版だ。
ビームシールドを両手につけて、さらに調整でビームサーベルになるようにした。
あと、手のひらビームを改造してミラージュコロイドにより打ち方を変えれるようになったぞ。』
「打ち方?」
シンハロの説明がよく解からなかったのかマユは聞き返す。
『あぁ、まず片方ずつのほかに両腕を合わせて二つ分どかーんとか
グフみたいにマシンガンとか、曲がるとかまぁその他もろもろ。』
シンハロの説明にマユはんーっと考え込み。
「よくわかんないからやっぱ実戦で。」
『ん、りょーかい。』
「それでいいのか?!」
レイの突っ込みが悲しく格納庫に響いた。
「・・・・・・・・・・v」
ゼロは相変わらずの調子だが、彼と長くいたものなら相当上機嫌だと言う事がわかるだろう。
犬でいうならばしっぽを振り千切れんばかりに振っている状態だ。
それもそのはず、ようやく彼は自分らしい戦い方ができるからだ。
ゼロのザクが積み込まれる。
それは、白金に輝く布に包まれていた。これが、ハイネからの「プレゼント」である。
『シンハロに頼んで開発してもらったんだ、特殊ワイヤーで作ってあるんだとよ。ビームもそこそこ跳ね返せて、強度もある。
しかもしなやかで肌触り(?)は最高!!
これがただいまなんと・・・・。』
「っ!!」
ゼロはぶんぶんと頭をふる、回想がいつの間にかテレフォンショッピングになっていた。
「ゼロ、大丈夫ですか?」
普段と口調は違うが聞きなれた声に顔を上げるとアキラがいた。
何やら紫のバイザーをかけている。
「そっちこそ、新しいのは大丈夫?コンペションから落ちたMSのデータで作ったんでしょ?ジョーが仕入れた。」
ゼロはアキラに聞く。
「えぇ、問題ありません。グゥルもまぁ、多少はジャジャ馬になりましたが乗りこなせますし、螺旋剣の方も使えそうです。
ただ、やはりあの・・エネルギー消費が激しい物ばかりなので・・・・
サポートお願いします。ゼロ。」
一応ゼロのザクはあのマント(仮)で戦うのがメインになったとはいえ、まだサポートの役目を忘れていない。
以前よりはだいぶ減ったがまだ万能ワイヤーは装備したままである。「・・・・・・がんばろうな、ゼロ。」
素の状態に戻ったアキラが言う。
「うん。」
そっけないが、力強い声で、ゼロはそれに答えた。
「ジョーのグゥル、ずいぶんゴテゴテになったねぇ・・。」
「キース、そう言うお前のザク、何にもかわってないじゃねーか。」
「僕のザクは目に見えないところで大改造したのー。グゥルもじゃなくて連合のフライトパックを付けれるように改造してもらったしぃ。」
「俺のザクは見かけはかわってないけど装備は前の倍なんだー。」
キース、カルマ、ジョーがわいわいと会話する。
「グレイシア、大丈夫か?」
「大丈夫よハイネ。調子はばっちり。新しいシステムの方も完成したし。
そっちこそ平気?インパルス取られたのがずいぶんショックだったみたいだけど。」
いたずらっぽく笑うグレイシアに、ばつの悪そうな顔をするハイネ。
「・・・・ガイア、がんばろ。」
ステラは愛機を静かになでる。
「・・・・・・行って来ます、母さん。」
アウルはミネルバに置かれた私室に、胸のロケット置いていく。
「もうっ!!スティング!システムチェックはちゃんとやらなきゃだめでしょ?!」
「いや・・、メイリン。その・・・・・・。」
激昂するメイリンに戸惑うスティング。
「・・・・・・え?何?今日は俺がネオとセットなの?」
「俺は本日の選べるランチか?!」
一気にシリアスをぶち壊すゲンとネオ。
「おい!!ラクス様の護衛だぞ!!気合いれていけぇ!!」
「ジュール隊長、そのはっぴはやめてください。」
「イザークは会長だからなぁ・・・・、ファンクラブの。」
ジュール隊は地上に降りる。任務は議長共に前線に赴くラクス・クラインの護衛だ。
「ラクス様。」
「あ、今行きますわ。」
ミーア・・・・『ラクス』はパソコンを使う手を止める。これから彼女は議長と共に前線へと赴く。
次回、ほのぼのマユデス。 『天を裂く』
「誰も・・・誰も死なせないんだから!!」
結局、ヘブンズは年内にかけませんでした。
理想を抱いて溺死してます。ほのぼのです。
さて、ちょっと帰省するのでしばらく書き込みできませんort
まぁでもノートPCで番外編をこっそり書くかもしれません。
来年もほのぼのマユデスをよろしくお願いいたします。
>>379 ほのぼのさん今年の分全部こめて乙〜。
ほのぼのさんの機体はおもしろいから新しい機体も楽しみですな。ネタではない「アーサー艦長(笑)」も期待ww
>「誰も・・・誰も死なせないんだから!!」
・・・期待しちゃうぜそのセリフ
今思った
このスレの方々は皆切磋琢磨し互いを高めあっている
こんな良いスレを何で一から見れなかったのか、リアルで参加できなかったのか後悔している。
んで早めによいお年を、そしてあけましておめでとう。
●ムセイオン
現代の“Museum”という語は,このムーセイオンという語に由来する。
もとギリシア神話で詩歌・文芸を司るとされる,ムーサ(英語では,ミューズ)姉妹神とかかわりのあるものをさす。
ムーサイ(ムーサの複数形)は学問・芸術の神として尊重されたため,プラトンやアリストテレスの学園も,学員たちがムーサイを崇めるところであった。
ムーセイオンとしてよく知られているのは,プトレマイオス1世によって設立された,エジプトのアレクサンドリアのそれである。その設立には,アリストテレスの弟子であった,ファレロンのデメトリオスも貢献したと想像される。
それは学員たちが共同生活を送りながら,学問的研究をすすめる研究機関であり,図書館や天文台も並設されていた。プトレマイオス朝の諸王や,ローマの皇帝たちの保護を受け,数学・天文学などの科学研究と,古代の書物の文献学的研究において,卓越せる成果をおさめた。
これが元ネタかw
なんか知れば知るほどアーサーの艦にそぐわな(r
>まず片方ずつのほかに両腕を合わせて二つ分どかーんとか
・・・かめ○め波?
またはヘル&ヘブン
まあ両手同時撃ちは初期構想ではあったと言うし。
アニメ本編での運命の出番が少なすぎた&扱い酷すぎたせいで出番なかったけど
でも両手撃ちをやって活躍してもかめはめ波のぱくりとか言われて叩かれるんだろうなあ・・・不憫なMSだ
両手撃ちは元ネタからさっすると石破(略)ではないかと思われ
次回作では運命にも腹ビームがついて、両手のパルマと組み合わせてメイオウやるよきっと
何と戦うつもりだw
やはりアレか、宇宙クジラか
宇宙鯨はグノーシスの一種かと思っていた
機動戦士ガンダムSEED DESTINY "MAYU" ASTRAY 略してマユトレイ
2年前、オノゴロ島でジャーナリストに救われた少女。
やがて少女は、彼の助手として真実を見極める戦いに身を投じる……
……や、ふと頭を過ぎっただけ。誰か書いてくれないかなぁw
こちとら別の連載中だから……w
再会早ッ!
しかもそれが隻腕シンだと大爆笑。
狂犬が一気に丸くなるw
漫画版ブレイブストーリー読んでて思ったけど
隻腕シンはミツルに良く似ている…気がする。
性格は正反対かも知れないが、妹の死に少なからぬ影響を受けて修羅の道に身を落とす。
ミツルは妹のそっくりさんと、シンは本人とそれぞれイベントがあってまた心境に変化が生じると言うか。
まあ隻腕シンはマユの生存を知ったからといってそこで丸くなるようなヤツでもないように思えるw
>>391 ハイッ!やります!
・・・といいたいところだが忙しくてなぁ。
早く4月にならんかな・・・
>>393 まあ再会したらしたで、いきなり兄妹大喧嘩を始めたりとか・・・なんで兵隊なんて危険なことやってるんだこのバカ兄貴みたいな・・・
>>391 どちらかというとユンに拾われれば……結局Gフライヤー運んだ時に会う可能性が高いか?
>>397 生きているマユを見て感極まったシンは感動の涙を流しながらマユに突撃。
「マユー! 生きて、生きていたんだなー!うおおー!」
「うおおー、じゃないわよ!」
「ぐふいぐないててっど!?」→ドロップキックが顔面炸裂。
「何とち狂ってこんなところでMSに乗ってる訳!?」
「どむとるーぱー!?」→追撃のニードロップ。
「あの優しくてヘタレなお兄ちゃんはどこにいったの!」
「いんふぃにっとじゃすてぃす!?」→止めのキャメルクラッチ。
「その折れ曲がった歪な精神、叩きなおしてあげるから!」
「すとらいくふりーだむ!?」→駄目押しのチョークスリーパー。
「……シン、どうなってるの?」→引いてるルナマリア。
「どうやらシスコン病に冒されているようだな」→ため息をつくレイ。
「赤服もああなってしまうと形無しよね……」
「そうだな」
ボコボコにされて、それでも嬉しそうなMなシンを見て嘆く二人であった。
再会してもかつて知っていた兄の、妹の印象とはかけ離れてしまっているため、そうとは知らずに殺しあう可能性が特大・・・
何かの予告編…ジャンク屋とすばらしい職人様に触発されて書いたブツ
――記憶に残るのは…
携帯電話を取りに行ってくれた大好きな兄…
とっさにあたしを突き飛ばしてくれたお父さん…
すぐ後に目の前が真っ白になって…そして暗くて息苦しい闇…
そして…、あたしを助け出してくれたジャンク屋のギルドのみんなの顔…
――ザフト、アーモリーワン
「すぅ…すぅ…」
MS格納庫――
がらがらと音を立てて格納庫の扉が開く
続いてぞろぞろと入ってくる男たち
「お、居たぜ。やっぱりお嬢は此処だったな」
格納庫の奥に眠るレイスタやジンといったMSの群れの中
予備機として運ばれている一見戦闘機にしか見えない最新機
そのシートで安らかに眠る栗色の髪の少女がそこに居た…
「まったく。新しい機体と見るや自分が整備するってきかねぇんだもんな」
リーダー格の男の苦笑いに周りの男たちも続く
周りが煩かったのかつなぎ姿の少女はゆっくりと目を開けた…
何かの予告編…そのニ
「インパルスを!パイロットは!?」
「それが、MSを強奪された際、死亡が確認されました…」
――強奪されるMS。パイロットが居ない最新機
「このままじゃ…、みんな壊されちゃう…、止めなきゃ!!」
「おい、お嬢!!そっちは危険だ!!」
――守りたい思いが故に飛び立つ小さな翼
「こうなったら仕方がないわ。レッグフライヤー、チェストフライヤー射出して!」
「この子の合体用のパーツ!?どうして!?」
――翼は四肢を手にし…
「貴方たち!また戦争を繰り返したいの!?」
「子供だと!?ふむ…しかし…あのインパルスの合体を一度で成功させるとは…」
――歴史の表舞台へと引きずり出される…
「ルナマリア。貴女がインパルスに乗りなさい」
――進んだ時計は巻き戻せない
「シン…、また連合のお偉いさんからの命令だ…」
「ネオか…、良いぜ…。次はどんな仕事なんだ…?」
――揺れ動く世界で…
「ラクス・クライン…。貴女がどうしてこんなところに居るの!?」
「私は…」
――運命の暴風は…
「――――フリーダム…」
――少女をどこへ導くのか…
…多分続かない。
隻腕マユの「伝えられなくなってからじゃ遅い」とかそんな感じの台詞、アウルのことか。
(´_ゝ`)ほんの一瞬、マユが真性のブラコンだったのかと思った
あーつまんね
職人がんばれよ
転載
>Q.デスティニーやストライクフリーダムの“光の翼”って一体何なんですか?
>何か役に立つんですか?
>A.“ものすごい出力”であることの視覚的な表現です。
>理屈は特殊設定の森田さんに聞いてみます(苦笑)
>武器として役に立つものではありません。
なんで武器として使えないんだよ、特に運命の翼。
>>407 >武器として使えない
あれ?マユ戦記ラストで月基地内部切り裂いたりしてたような…(うろ覚え)
>>408 ま、そのあたりは職人方々で弄ればいいわけで
ついでに運命のはミラコロ散布するから展開中はテスタメントのウイルスもふせげるはず
お、何だその使えそうな設定は
初耳だぜ
ただミラコロ分身は最大出力時に発動
そろそろ上げとかないと・・・
別に下にあるスレから掃除されるわけじゃないぞ。
レスがない、過疎スレが優先的に掃除される。
マユと男祭りを見始めた俺が来ましたよ
男祭り!!(笑 隻腕か!
あれほど映像として想像して、爆笑した回も珍しいよなw
マユ戦記のカガリは格闘技好きそうだ
「・・・・・レイ兄ちゃん、ギルパパは?」
「紅白の司会だ。」
「審査員じゃなくて司会なの?!あの人!!」
「うぇーい、ハイネ達は?」
「出てるのよ、あの人たち。」
「おい、アウル、スティングはどうした?」
「・・・・・・メイリンとデート、遊園地のイベントに行くって。」
ここに入るのはレイ、マユ、ルナマリア、ステラ、ネオ、アウル、アスランである。
こたつに潜りながらみんなで紅白歌合戦鑑賞である。
「お!!始まった!!」
「○リエ赤組なんだー。」
「あ、ハイネだ!!ハイネー!!」
「ラクスもいるな。」
今こそこそと投稿するSSを書いているんだけど、ウィキペディアってすごく重宝するな
兵器の詳細なスペックや派生系もきちっと書いてあるしな。 見てて驚くこともある
人物関連の項目も、ロンド姉弟あたりの記述で目から鱗でまくり。 一見を薦める
「うわっ!!この始めの歌手歌下手だな!!」
アウルがせんべいをかじりながら言う。
「・・・確か紅白って歌のうまい歌手が出るんじゃなかったか?」
アスランが緑茶を手に疑問を声にする。
「いや、所詮人気だよ、アスランお兄ちゃん。」
「お、氷川○よしじゃないか。」
「ウィン○って昔友達が騒いでたけど、人気あるの?」
マユがため息をつきながら言う。
「最近のジャニーズは質が落ちてきたと思うわ、私。」
ルナマリアもため息をつきながらいう。
「うぇーい、ねおー、みかんの白いところ取ってー。」
みかんをぼろぼろと向きながら言う。
「こら、スティングに栄養があるから食べろって言われてるだろ。」
ネオは熱燗をちびりちびりとやりながら言う。
「仮面ライダ○だ!!」
「伏字になってないよ!!お兄ちゃん!!」
マユとシンがいつもの漫才をする。
「愛地球○!!」
「キッコ○どこだ!!」
「いたいた!!」
「行きたかったなぁ・・・・。」
次々と歌そっちのけできぐるみに集中する。
「うわっ!!この女一人だけ歌下手だなー。」
アウルは先ほどからダメだしばかりしている。
「あー!ラブマシー○!!」
ステラが興奮して話す。
「・・・・・モー○。って歌唱力の差が凄いな。と、いうかこんなにメンバーがいるんだな。」
「ネオ、卒業生もいるんよ。」
ネオに突っ込むマユ。
「「「「アフー!!」」」」
一斉にかけ声をあげる全員。
「これ、カラオケでレイ兄ちゃんがよく歌うよねー。」
「「「「「マジ?!」」」」」
明かされる衝撃の事実。
「ショタっ子ハァハァ・・・。」
「ルナちゃんがー!!」
暴走するルナマリアに怯えるステラ。
「ボビ○だらけだ!!」
「○けぼのだらけだ!!」
男子陣は爆笑する。
紅白ではなぁ!
・・・と思いつつ、ほのぼのいつも乙
「ういー、すっきりしたー。」
トイレから帰って来るマユ。
「遅い、ゴスペ○ーズ終わったぞ。」
「えぇー?!」
レイの言葉にショックを受けるマユ。
−−−−−−−−−−−−−−−−MS格納庫
【旦那、お嬢の所にいなくていいですかい?】
疾風の声がシンハロに響く。
シンハロはラジオを格納庫に持ち込んで、聴いていた。
【せっかくの年末だぞ?】
【そうだ!お嬢さんのところに行けよ!!】
インパルス達が次々に言い出す。
「・・・・いーんだよ、だって、ルナリアは残念だけど、皆でそろって年が越せるんだ。
俺達機械にとってはそれが・・・・とても幸運なことだから・・、な?」
そういって、シンハロは冷却用水の入った杯をくびりとやった。
「○じなーにゃ・・・・ハァハァ・・・。」
「ルナちゃんがまた怖いーー!!」
またもや暴走するルナマリアに怯えるステラ。
「・・・・・・・・・・演歌って同じメロディーだな。」
「聞いててつまらないな。」
「若い俺達にはわからないな。」
ネオを冷たい目で見ながらレイ、シン、アウルは言った。
「あまいろのー長い髪をー♪」
ステラがノリノリでテレビに合わせて歌う。
「ステラは歌がうまいなぁ・・・。」
シンはステラの頭をなでながら言う。
一言で言うならデンレデレ。
「これ、ジュ○ター歌った人じゃん。」
ルナマリアがビールを注ぎながら言う。
「よく今年も出れたよなー。もう一発屋でだめだと思ったよ。」
ネオが熱燗をさらに飲みながら言った。
「・・・・・・・はっ?!」
マユは寝ていたらしく、今気がついた。
「マユ、寝ててもいいんだぞ?」
レイが毛布を持ってきたところらしい、立ちながら言った。
「やだ!今年こそ最後まで起きて・・・行く年来る年みるんだから!!」
マユはまだまだお子様なところがあり、遅くまで起きていられない。」
「はっ!やっぱお前ガキだな!」
アウルが喧嘩腰に言う。
「・・・・・ふん、大人ぶって無理に『俺』って言ってるやつに言われたくないわね。」
マユも負けじと言い返し、アウルが真っ赤になって言い返す。
「なぁっ!!誰に聞いたんだよ!!」
「お兄ちゃんが話してくれたもんねー。」
喧嘩をいまにも始めそうな二人。
「二人とも、レイ○だぞ。」
「「うわーい、レイ○だー。」」
レイの言葉にあっさりと喧嘩をやめる二人だった。
「・・・・・・・・・・。」
「アウル!!アルテマウェポ○を取り出すな!!」
プラネ○リウムが流れた瞬間、アウルが剣を取り出す。
「確かこれパクリ疑惑があるんだよねー。」
ルナマリアが言う。
「プロモはともかく、メロディーはちょっとパクリ?って感じはするけどな。」
シンも緑茶をすすりながら言った。
「・・・・・・・・。」
詩の朗読に、その後歌われた曲に皆なんとも言えない気持ちになる。
自分達は悲劇を生み出す、生み出した側の人間だ。
だからこそ、しっかりそれを自覚しなければならない。
全員はしっかりその言葉を胸に刻んだ。
「世界に1つだ○の花キター!!」
ニュースでテンションが下がっていた所に燃料投下、一気にテンションが上がる。
「「「「「おーんりーわーん♪」」」」
一部酒が入ってるせいかみんなで合唱する。
そして、中間審査の発表。
「おー、ほぼ互角だ!!」
「白組がんばれー!!」
「赤組まけんなー!!」
「うひょー!!」
ネオが声を上げる。
「・・・・・・・・む。」
ステラが思いっきりネオをつねる。
「いだだだだだだだだっ!!」
「・・・嫉妬するステラ萌えv」
ネオに嫉妬するステラに萌えるシンであった。
「ヤンク○だー。」
「○くせんか。」
マユははしゃぐ、対照的にレイは落ち着いている。
「ごくせ○ってアニメになったんだけどあんまり話題にならなかったわよねー。」
「きしょいーーー!!」
「ダンサーきしょい!!」
「ハイネもびっくり!!」
浜崎○ゆみのバックダンサーのあまりの露出度ときもさにびっくりする。
「きよしも衣装すごいねー・・・。」
「ふん、男は味が出てなんぼよ。」
さて、誰のセリフでしょう?」
正解は上がアウル、下がステラでした。
この二人も酒を飲まされて完璧に性格が変わっている。
「うまいなぁ、きよ麻呂。」
「ゴリ○キター!!」
「芸が細かいなー。」
ゴリ○のダンスに感嘆して。
「ねお?懐かしい?」
「「「「「懐かしい?」」」」」」
「お前ら!!そこまで俺はおっさんじゃない!!」
子ども達の悪意があるのかないのか解らない言葉にきれるネオ。
−−−−−−−−−−−−−ピキ−ンッ!!
「キーッ!!のまねこなんかー!!」
「アキラ落ち着け!!」
「レイ兄ちゃん?」
「・・・・・何でもない。」
カガリ「デカいだけではヒョードルには勝てんか…」
・・・・・・・ドキドキワクワク。
ド派手な衣装に全員ドキドキしながら画面に食い入る。
RPGのラスボス並みに派手な衣装はもう衣装の域を超えている。
「ーーーーーハイネ来たー!!」
「皆がんばれーー!!」
ハイネ隊の一部のメンバーが衣装を着て楽器をもって待機する。
次々に騒ぎ出す皆。
だが、次の瞬間言葉を失う。
・・・・・・・・ダースベイ○ー・・・?
次の瞬間、ドカーンと壁が割れ、ハイネが謎の機械にのって現れた!!
「ハイネ!!落ちる落ちる!!」
「もこもこー。」
「腕が寒そうだな。」
次々に叫びだす。
「つーかクローン兵士従えてるよ!!」
「すげーやハイネ!!」
「大出世だな!!」
テンションが最高調になった時。
「ぶっ・・・・!!」
「うわっ!アスランが鼻血吹いた!!」
興奮しすぎたのが鼻血を吹いてしまった。
結局、それに慌ててその後の曲はしばらく無視していたそうな。
カガリ「さて…王者となるのはシウバかアローナか…フフフ」
いつからここは実況スレになったんだ・・・・・・。
まぁ大晦日で職人さんも忙しいだろうってのは分かるけど。
>>423 >「うわっ!!この女一人だけ歌下手だなー。」
石○さんのことか
○川さんのことか━━━━━━━ !!!!!
さて大晦日に暇な俺の登場です。職人と呼ばれるにはまだまだ至らないですが…
ようやくユニウス戦です。書いてて改めて思いましたが、文章まとめる能力ないですね俺。
年をまたぐか!?投下行って見ます。
平和な世界で生きられるなら。きっと誰もが、かつてはそう願った。
長い時間をかけて、怒りと憎しみはこの世界に蓄積されて。
それは間違っているのかもしれない。けれど彼と彼女の魂には、どこまでも正しい声。
落ちていく世界の中で。
少女の叫びは、確かに、届いた。
PHASE-06 落ちていく世界の中で
「作戦を確認するぞ」
"ミネルバ"パイロットアラート。白いパイロットスーツを着込んだレイ・ザ・バレルの言葉に、全員が頷いた。
今は既に全員パイロットスーツ姿だ。皆神妙な面持ちで彼の言葉に耳を傾ける。
「俺たちはジュール隊が運び込んだ"メテオブレイカー"を使用しての破砕作業の支援を行なう」
地球への落下コースに入ったユニウスセブンの破砕作業。
始めメイリンからこの話を聞いたとき、マユは背筋が凍りついた。
立て続けにこう事件が起こっては、疑わざるを得ない。そう――
何か巨大な意志が、再び世界を混乱に陥れようとしている。
そんなことばかり考えてしまう。
そんなはずない。誰だって、平和に生きられる世界がいい、と自分に言い聞かせながら。
恐ろしくなってその考えを振りほどこうとしていた矢先に、アスハに会って。
今は少し落ち着いたけれど―――あの、アレックスという青年と話したおかげだろうか?
とにかく、強奪部隊とMSたちの動向も気になるが、今はこの任務に集中するしかない。
手元のディスプレイに表示された機械"メテオブレイカー"は、MSの全高の三倍ほどだろうか。
正直、こんなものであの巨大な構造物を破壊できるのか、と少し不安になってみたりもする。
隣に立っていたルナマリアが、肘でこちらをつんつんと突付いて、小声で話し掛けてきた。
「ねぇねぇ、ジュール隊って言ったらさ。ザフト伝説の狙撃王、ディアッカ・エルスマンに会えるかも…」
「静かにしろ、ルナマリア。…俺たちは二つに分かれて作業を行なう。俺とルナマリア、そして残りだ」
咎められて少し頬を膨らませたルナマリアを見て、マユは苦笑した。
「俺とルナマリアはB-7ブロック、マユたちはF-4ブロックに向かってくれ
装備はザク各機はガナー、インパルスはブラストでいく。質問はないな?」
レイが全員の顔を見渡す。どうやら誰も異論はないらしい
話を切り上げると、彼は真っ直ぐにエレベーターに向かった。
ルナマリアが「なによアイツ…」なんて呟いているが、まぁ、自業自得と言えなくも無い。
「(……)」
マユは先刻の出来事を思い出す。アレックスと名乗った青年。
不思議だった。あの青年に、どうしてあんなにも自分のことを話す気になれたのだろう。
正直、アスハの従者というだけで、彼の事はあまり気に入らなかった。なのに、どうして。
「(……そっか)」
似ていたんだ。
あの人の柔らかな表情が―――お兄ちゃんに。
そう思うと、「居場所が無かった」というウソをついて正解だと思えた。
―――自分でここにいることを選んだと、言わなくて良かった。
「どうかした?」
心配したルナマリアが、こちらを覗き込んだ。マユは作り笑いをして、大丈夫だよ、とだけ答える。
エレベーターに向かうと、シュウゴが隣に並んできた。デイルは相変わらずぼーっとしたままだ。
「(ねぇ、シュウ…)」
「(ん?)」
誰にも聞こえないぐらい小さな声で、マユはシュウゴに話し掛ける。
彼は大体何を言われるか解かっている様子だったが、あえてマユの言葉を待った。
「(さっきはごめんなさい)」
やっぱり、とでも言いたいかのように、彼は小さく笑う。
「(気にすんな。俺も少し、スッキリした)」
おどけてみせているが、やっぱり少し苛立っているみたいだ。無理もない。
これから向かうユニウスセブンには、彼の母親が眠っているのだから。
四人が乗り込むと、エレベーターが動き出す。デイルは俯いたまま、何か考え込んでいる様子だった。
「デイル、いけるんだな?」
「ん…あぁ、ワリ、だいじょぶ、任せとけ」
シュウゴの問いに慌てて答えるデイル。ルナマリアは溜め息をついて、彼の背中をバシバシと叩く。
「あのねぇ…あんた、戦場に出てもボーッとしてたらケツ蹴り上げるからね」
「うっへぇ、おっかねぇの…」
そういってデイルは笑ったが、やはり覇気が無い。
皆無理してる。マユはなんとなく暗い気持ちになって、俯いた。
エレベーターがデッキまで下りると、四人はそれぞれの機体に向けて歩き出す。そこで―――
<状況変化。ジュール隊がアンノウンMS部隊と交戦中。各員は対MS戦闘の―――>
突如響いた艦内放送に、マユは硬直する。
モビルスーツが…?
「まずいことになった」
いつの間にか現れたレイが、無表情なままで告げる。
何があった、と問うような表情を向けるルナマリアとシュウゴに、レイは頷いて答えた。
「ジュール隊の破砕作業が何者かによって妨害されている」
やっぱり、とマユは思う。
誰かが動かしたんだ…ユニウスセブンを。
地球に、落とす為に。
寒気がする。そんな恐ろしい事が、あってたまるか…ずっとそう信じていたのに。
いや―――信じたかったのに。
シュウの拳が、強く握り締められていた。肩が小さく震えている。多分…怒ってる。
「とにかく、俺たちも対応に出るぞ」
レイはあくまで冷静に告げる。
「マユとデイルがアタッカー、俺と…シュウゴがアシストに入る。ルナマリアは狙撃ポイントの確保を優先」
「……」
抜けたショーンの穴を、元々アタッカーだったシュウが埋める事になった。
ショーンはもう、いない。その事実がまた湧き上がってきそうになり、マユは大きく頭を振る。
「質問は無いな。では各員、気を抜くなよ」
レイはこうしている間も惜しいと言わんばかりに、自分のザクへと向かう。
「まさか、人の手でやられたものだったなんてね…」
「…どうだっていいさ、止めることにゃ変わりねぇ。シャキッとしろや、お前ら」
ルナの呟きに、デイルが返す。シュウゴは深呼吸すると、笑ってデイルの頭を小突いた。
「お前には言われたくねぇよ…よし、俺たちも行こう」
「ははっ、同感」
少し調子が戻って来た。暗い気持ちのままやったって、上手くいきっこない。
きっとやれる。誰が相手だって、絶対にユニウスセブンを止めてやる。
だがこの時、マユはまだ気付いていなかった。
同時刻、"ガーティー・ルー"ブリッジ。こちらにも既に、"ユニウスセブン"が動き出したという情報は入っていた。
「やれやれ、なんでこうも…って、いつまでふてくされてんだ、ゲン」
「出撃できるまで」
ゲンはムスッとした表情で、ブリッジの一角に立っていた。
漆黒のノーマルスーツを着込んで、ヘルメットを手元であそばせている。
「おいおい、命令違反したのはお前だぜ?こんだけの処置で済ませてやってるんだ、感謝してくれよ」
仮面の男、ネオ・ロアノークのその言葉に、ゲンはますます不機嫌顔になる。
「…大体、アレはどうするんだよ。本部に着くのが遅れるし…
…もし、もしもだ、俺たちが失敗したとしたら、それこそ宇宙の藻屑だぜ?」
ネオは顎に手を当てて、考え込む仕草を見せる。ゲンはバイザーの奥から鋭い視線を送る。
「自分もアクサニスの疑問は気になります、大佐」
普段滅多に口を挟まない艦長のイアン・リーが、珍しく話し掛けた。
「さぁ〜てね。アレ自体、鬼が出るか蛇が出るか解からんようなもんだしなぁ」
「どちらが出ようと、既にこっちのものだ」
「言うねぇ、ゲン。ま……俺個人の意見で言うと、だな…」
ネオはニヤリと笑って、ゲンを見る。
「どうしても押えておきたいもんがあるんだろうな…ユニウスセブンに」
仮面の奥のその感情は、やはり見抜くことは出来なかった。
どういうことだ、と訊こうとした所で、MSデッキから通信が入る。
『カオス、ガイア、アビス、全機発進準備できました!』
「よぉーし、しっかりやってくれよ!」
ネオが景気よく言うと、モニターにスティングのコクピットが映し出された。
『今回は休んでろ。任せとけ、俺たちが絶対止めてやる』
「スティング…頼む」
続いてアウル、ステラのコクピットも映し出される。
『ゲンと出るといっつも撃墜スコアトップ持っていかれるんだよ…今回は僕が貰うぜ!』
アウルは嬉しそうにしながら、こちらに向かって言い放った。ゲンはやれやれと言った様子で肩を竦めて見せる。
『ゲン、ネオ…行ってくるね。…ねぇ、ゲン』
「ん?」
『帰って来たら…トランプのルール教えてね?』
ステラの奴、何を言うのかと思いきや。ゲンは苦笑して、わかったよ、とだけ答えた。
「よーし、MS隊各機発進!ガーティ・ルーも微速前進!」
ネオの指示が飛ぶ。それに応えて、モニターのスティングはその眼光を鋭く変える。
『スティング・オークレー、カオス、発進する!』
スティングの駆るカオスに続いて、2つのスラスター光が宇宙へと飛び出していった。
「(……母さん)」
絶対に来る事は無いと思っていた。嘆きの墓標―――ユニウスセブン。
血のバレンタイン…たくさんの命が漆黒の宇宙に散ったあの日、母の魂はどこへ行ったのだろうか。
コクピットで機体を立ち上げながら、シュウゴはぼんやりと考える。
母さんだけじゃない。ショーンだって…おじさんや、おばさんだって―――
―――シンだって。
死者はどうなるのか。誰にも解からない。それでも自分は、ずっと答えを求めている。
そして訊きたい。自分はあれで良かったのか。
自分は、これでいいのか。
「兄貴、か……」
自分は醜い。アイツの代わりだと自分に言い聞かせて、いつまでマユの傍にいるつもりだ。
マユがザフトに入るのを反対しなかったのだって、彼女を否定できなかったんじゃなくて―――
「……ッ!」
違う。俺は、そんなことの為に彼女といるんじゃない。
余計な事を考えるな…集中しろ。地球がヤバいんだ。今やれるのは俺たちしかいない。
『各機、聞こえますか?』
ブリッジからの通信。メイリンが少し困ったような表情で続けた。
『本作戦において、オーブからの"協力者"である
アレックス・ディノさんに、ミネルバ隊と一緒に出撃してもらいます』
『……は?』
モニターに映るデイルが素っ頓狂な声を上げた。ルナもマユも、レイですら目を丸くする。
『ちょっ、ちょっとタンマ!どういうことよ、メイ!?』
『アスハ氏の随員であるアレックス・ディノさんが、協力してくださることになりました。ゲイツRで出撃します』
ルナマリアの問いにも、メイリンは困った表情で答える。彼女自身混乱しているのだろう。
『…アレックスさん…?』
「マユ…どうした?」
『え?あ、いや、えへへ…なんでも』
あの野郎。話す事はないと言ったのに、マユにひっついて行きやがったな。
シュウゴが舌打ちすると、今度は別のモニターが開く。
『どうしようもないだろう。アレックスさんのアシストにはマユとシュウゴが就け』
「は?マユも?」
レイはわけもなく言ってのけたが、それでは戦力のバランスが崩れてしまう。たまらず反論する。
「マユまで下げてどうすんだよ。決定力に欠けるぞ」
『元々俺たちゃオールラウンダーだ。それに今回は防衛戦だぜ?攻め込むわけじゃねぇんだ』
『それにオーブの人間に死なれたら困る…ってこと?』
デイルが至極真っ当な意見を言って、ルナマリアがそれに付け足した。
「あぁあぁ、解かったよ…くそっ、なんなら俺がゲイツに乗るか」
『無茶言わないでよ、民間人にザクは無理でしょ』
マユが苦笑する。確かに、ただの民間人にこの機体を扱うのは不可能だ。そもそも―――
「第一、ちゃんとモビルスーツ乗れんのかよ?その…アレックスさんとやらは」
『さぁな……っと、来たぜ』
モビルスーツ隊発進一分前の放送と同時に、格納庫に人影が入ってくる。
深紅のパイロットスーツを身に纏ったその姿は―――不自然なほど、板についていた。
『…なるほど、ね』
ルナマリアも気付いたのだろう。小さく呟くと、モビルスーツのセッティングに手を戻す。
「経験はアリか…なんとかなるかね」
「あぁ、大変、だ」
薄暗い室内。広大な空間に、モニターの明かりだけがぼんやりと白く。
おどけた口調で男が言うと、モニターの向こうの老人は顔をしかめる。
『軽口を叩いている場合か…アレが落ちれば、地球がどうなるかぐらい』
「わかっていますよ、もちろんね」
男は膝に抱えた猫を撫でながら、ワイングラスをゆっくり傾ける。
「それでもアレは落ちてくれた方が都合がいいんですよ…色々と」
『…本当に上手く行くと思っているのか?』
先ほどとは別の老人が、男を睨みながら言った。
「行きますよ。私には駒が居ますから…とびきり優秀な、ね」
『その自信がどこから来るのかは解からんがな…手を誤るなよ、ジブリール』
男―――ジブリールと呼ばれた人物は、ワイングラスを掲げて言い放つ。
「もちろんですとも。蒼き清浄なる世界のために…」
『モビルスーツ隊、発進願います…あのぅ』
オペレーターの赤毛の少女が、何か言いたげにこちらに呼びかけてきた。
「何か?」
『いえ、その…気を付けて、くださいね?』
「…あぁ、ありがとう」
アレックスは微笑むと、機体をアーム下部まで操作する。
この"ゲイツ"の操縦系統は、ジャスティスと似通っていた。なんとかいけそうだ。
『アレックス・ディノさん』
突如通信が入り、アレックスは慌ててモニターを見る。
映しだされていたのは、先ほどの少女と一緒にいた少年―――暗く、冷たい目をした、あの少年だった。
「あ、あぁ、そうだ。君は?」
『自分はシュウゴ・ミハラです。本作戦では俺のザクとマユのインパルス、デイルのゲイツRと行動してください。いいですね』
何…?
「…インパルスのパイロットの名前、もう一度教えてもらえるか?」
『は?どうして…』
「たのむ」
『…マユですよ。マユ・アスカ。さ、発進しますよ』
やっぱり…マユ・アスカ。あの子だ。
じゃああの新型に乗っているのは、やはり―――?
『発進後はインパルスが先導します。遅れないで下さいよ…シュウゴ・ミハラ、ザク、出ます!』
紫色のザクが発進する。続いてアレックスのゲイツもアームに持ち上げられて、カタパルトへと移動。
機体の脚部とカタパルトが接続。アレックスは眼前のレールと宇宙を見据えて、ぼんやりと考える。
「(……ただいま)」
俺の戦場…俺はようやく帰ってきたよ。
『ゲイツR、アレックス機、発進どうぞ!』
「…ア……」
けれどその名を名乗るには、まだ少し勇気が足りなかった。
「……アレックス・ディノ、ゲイツ、発進する!」
「急げっ、モタモタしてると間に合わんぞ!!」
そう言った次の瞬間にも、"彼"は機体を大きくひねり、背後から迫ったジンを長大なビームアックスで叩き斬る。
「(チィッ…この数、そう長くは…)」
彼―――イザーク・ジュールは舌打ちすると、愛機をメテオブレーカーの一基へと急がせた。
『イザーク、コイツらとんでもないぜ!?このままじゃユニウスセブンが…』
同僚のディアッカ・エルスマンが解かり切ったことを言うので、イザークの苛立ちはさらに募る。
ユニウスセブン市街跡上空。
そこかしこで爆発が起こり、イザークはひっきりなしに周囲を見渡していた。
「そんなことは解かっている!クソっ、ミネルバはいつになったら…!」
『とにかく、俺は狙撃ポイントを確保する!シリーとレンダを三番に回すからな!』
ディアッカからの通信が切れる。
イザークは手近にいたザクのパイロットに二、三指示を出すと、ビームアックスを抜き放ち、再び機体を移動。
「(よく統率された動き…頭を潰せば)」
地を這うように高速道路跡を滑空していたイザークのザクファントムの前に、2機のジンが飛び出してきた。
「邪魔だッ!!」
2機の間をすり抜け、機体を弾丸のように回転させながら、ビームアックスを一閃。
一瞬で2機のジンはただの鉄塊になり、地面にくずおれてから爆散する。
イザークは機体を上空へ飛ばすと、周囲へと視線を張り巡らせた。
「…やはり市街にはいないか?俺一人で炙り出すしかないか」
他の機体はメテオブレイカーの設置、及び護送で持ち場を離れられない。
全体への指示は、俺には勿体無いほど高い実力を持つ副官に任せておいた。
あと一機でも増えてくれれば大分楽になるというのに。ミネルバはまだか…!?
「…えぇい、クソッ!」
接近警報。機体の動きを止めてしまっていたらしく、3方向を包囲されている。
イザークは一瞬で肩のビームガトリングを敵の一機に向け、ビーム突撃銃をもう一機に。
発射。
二機が爆散するが、残る一機の銃口はしっかりとこちらに向いていた。
その一機が、横合から現れた光の柱に叩き潰される。
『間に合いましたね!』
幼い少女の声。そうか、この娘が例の…
新たに機体が4機現れる、ザクが1機、ゲイツが2機に―――
『遅くなりました!グラディス隊所属、マユ・アスカ以下四名です!』
インパルス、か。
「まったくだ…いいか、事態は切迫している。一秒の余裕も無いことを忘れるな!」
現在の状況、予測される敵の配置。手際よくイザークが説明していくと、通常色のザクのパイロットから通信が入る。
『それなら敵の頭を潰した方が良いかと。回せる機体は?』
その声を聞いて、イザークは思わず目を丸くした。
忘れるものか、この声は…
「ア……ッ!?」
そこまで言いかけて、慌てて言葉を飲み込む。そういえば彼は今偽名を名乗っていたはずだ。
「…機体を回すほどの余裕は無いぞ。ザクとゲイツ両機は指定したメテオブレイカーへ、インパルスは俺について来い!」
『了解!』
紫色のザクと、ゲイツが指定されたポイントへ移動を開始する。イザークは一瞬迷って…
・
「そこのゲイツ、お前もついてこい!」
アレックスのゲイツを引き留める。
疑問符を浮かべるマユを他所に、アレックスは「やはり」とでも言いたげに笑うと、その指示に従った。
その何もかも見透かしたような態度…やっぱり、どうにも気に入らない。
「…思ったよりヤバそうね」
ユニウスセブン郊外跡、廃墟群の陰に隠れて、赤と白の二機のザクが潜む。
遠くに見える砲火、敵のMSはジン…戦況はこちらの想像以上にまずいことになっているらしい。
『構わん、俺たちは』
「レイ、やっぱアイツらのとこ行ってあげて。私は大丈夫だから」
どうやら上空から予測した通り、この辺りは敵の警備もないようだ…思う存分、集中できるというわけだ。
『しかし』
「いいから!自分の身ぐらい、自分で守れるってば」
『…わかった、頼む』
正直不安な部分もあったのだろう。レイはろくに迷いもせずに、ルナマリアを置いて飛び立った。
ショーンの戦死は、戦力的にかなりの痛手になった。それに加えてアレックスさんが参入して、レイも戸惑っているのだろう。
それは不安になってもしょうがない…
「(違うじゃん、バカ…)」
ショーンが死んで本当に痛いのは、戦力なんかじゃない。
心だ。心が痛いから、不安になる。
いつもバカみたいに陽気なあのデイルが、あんなに泣いてた。
あの子はアカデミーの頃から私がよく面倒を見ていたが、あんな顔は初めてだった。
心が痛い。でもこれは多分、いいことなんだと思う。
どれだけ強くなりたいと思っても、この痛みは忘れたくない。
「…ハッ、いかんいかん」
ぼーっとしてる場合じゃない。
狙撃ポイントの確保、友軍との連携。やることは山積みだ。
ルナマリアは両の頬を叩くと、深呼吸してから機体の移動を開始した。
敵はジン、敵はジン、敵はジン…
その事実が、重圧となってマユに圧し掛かる。
即ち―――敵は、コーディネイター…!
『大丈夫か?』
こちらの不安を感じ取ったのだろうか。アレックスさんが声を掛けてくれた。
「すみません、大丈夫です…あの」
『ん?』
「アレックスさんは…どうして来てくれたんですか?」
『……イザーク、まだ見つからないか?』
無視されてしまった…そのことによって、マユの中の疑問がまた大きくなる。
先ほども突然の奇襲に対して、軽々とジンの射撃を回避した後、たったの2射で逆に撃墜してしまった。
それに加えて、"あの"ジュール隊の隊長を呼び捨てに。まるで、昔からの戦友であるかのように。
アレックス・ディノ…一体何者なのだろうか。いや―――
―――そもそも彼は、本当に"アレックス・ディノ"なのだろうか?
『待て、いや…来るぞ!12時!』
突如イザークが叫ぶ。12時の方向に、熱源が3。
「(新型?いや…ジン!?)」
漆黒の装甲に、紫の鎧を纏った姿。脇にはMSサイズの太刀を装備している。
この3機…違う、他の機体とは性能も―――気迫も。
モニターの向こうの3機が抜刀した。
それを見るや否や、イザークとアレックスは左右に動き、マユは"ケルベロス"ビーム砲とライフルをそれぞれ展開する。
照準、一斉射。
敵機は肩や脚を吹き飛ばされながら、尚インパルスに迫ってきた。
「あ……っ!?」
すれ違いざまに、一箇所を狙った2連撃。肩部VPS装甲に深い傷が刻まれる。
加えて右手に構えていたビームライフルまで斬りおとされた。姿勢を崩しながらシールドを掲げて、それの爆発を防ぐ。
『マユッ!』
「ッ…!」
衝撃に揺れるコクピットの中で、マユは歯を食いしばる。
ドジった。あの程度の攻撃も予測できないなんて、十分に考えられる動きだったのに―――
『市街地の外まで誘き出せッ!』
イザークが叫ぶと同時に、敵機が反転して再び迫って来た。
回避運動を取ろうとしたマユだったが、思わずその手が固まってしまう。
"考えられる動き"?―――本当に?
こいつら、死ぬことを恐れていない―――?
『動けマユ、死ぬぞ!』
インパルスとジンの間に、アレックスのゲイツが割り込んできた。
シールドから展開したビームサーベルで斬りかかると、敵のジンがそれに応えるかのように刀で受け止める。
背後から迫った2機のジンが逆制動をかけると、その眼前をイザークの放ったビームガトリングの驟雨が駆け抜けていく。
なんて、強い。
「アレックスさんっ!」
マユは"デファイアント"ビームジャベリンを抜き放ち、投擲する。
ゲイツと鍔競り合っていた一機が、素早くシールドを掲げてそれを弾いた。全く無駄の無い動き。
だがその一瞬の隙を突いて、アレックスのゲイツがタックルをかける。
敵機がバランスを崩すと同時に、最大出力でスラスターを噴射、離脱する。
「ごめんなさい!」
『構うな!誘い出す、ついてこい!』
"ジン・ハイマニューバー2型"のパイロット―――サトーは、今しがたの光景に思わず息を飲んだ。
「(ザフトにもまだ、骨のある男がいるようだな)」
それと同時に嬉しくもなる。かつての自分を思い出し、自嘲気味に唇を歪めながら。
冷静にこちらの連携を断ってきた青いザク、一瞬で機体を離脱させたゲイツ。
そしてすぐ傍に友軍機がいるにもかかわらず、迷わずビームジャベリンを投げた新型機。
『どうするサトー、追うのか?』
僚機のパイロットに話しかけられて、サトーは雑念を振り払う。
「追うぞ。アリューゼたちをポイントC-8に集結させろ…あの新型、ここで叩く」
『そうこなくちゃな…しかしなんだ、義理立てかい?』
「あの男のおかげで俺たちはこうしてここにいる。もう間に合わん、どの道コイツは落ちる。俺たちの勝ちだ」
『あとは心中ってわけか…アンタ、ってか、俺たちらしいな』
通信が切れる。サトーはコクピットの片隅に貼ってあった二枚の写真を見る。
ハイネ、ヒルダ、マーズ、ヘルベルト…駄目な教官ですまない。
アラン、クリスティン…俺も今、逝くぞ。
「欺瞞の大地に突き刺され…この剣が、世界を変える」
拳を強く握り締め、サトーは一人笑みを浮かべた。
設置率79%。届いたメッセージを見て、デイルは舌打ちした。
「…急げよな」
横から出現したジンの一機を、ビームアックスで斬り伏せる。
どうしてだ。
どうして俺は、こいつらを倒すことに戸惑いを覚えるんだ。
『デイル、そっちは大丈夫か?』
「ん、あぁ…シュウてめぇ、俺がこんなザコにやられるか」
『はは…全く、キリが無い』
そうか。
俺は落ちて欲しいんだ。このユニウスセブンに。
ショーンを奪った奴らが憎くて、憎くて…地球の奴らを。
―――殺してほしいんだ。
酷い裏切りだった。
マユも、レイも、ルナもシュウも、皆一生懸命コイツを止めようとしてるのに。
俺だけこんな、醜いことを考えてる。
『インパルス、及びアレックス機が敵の本隊と交戦に入りました。フォースシルエットの換装に―――』
ミネルバのアビーから通信が入る。マユたちが敵の本隊と?
これを落とそうとしてる奴らの、リーダーと…?
「ハーネンフース副隊長」
ジュール隊所属の、指揮を執っていた少女に通信をつなぐ。
この娘だって、俺と大して変わらない年なのに。
『…どうしました?』
「すんません」
デイルは一言だけ残し、通信をカットする。
スラスターを噴かすと、機体を上昇させ、市街の方向へとゲイツを飛ばした。
ユニウスセブンは農業プラントだが、中核となる市街地には高層ビルが立ち並ぶ。
高速道路に沿って市街地を抜ければ、長閑な牧草地帯が広がり、途端に視界が開ける。
『あと少しだったんだがな…!』
イザークが唸る。アレックスのゲイツが油断無くライフルを構え、マユはケルベロスを展開する。
現在自分たちを囲む機体の数…7機。
それら全てが、紫の鎧を纏ったカスタム型のジンだった。
『待ち伏せをかけられるなんて、ここまで読まれていた…?』
アレックスの呟きに対して、マユは答える事ができない。
見事な手並みだった。こちらの行動を全て読み、行き先に戦力を集結させる。
後は取り囲んで、一網打尽というわけだ。
「(でも…まだよ、まだ諦めない。こんな奴らに…負けてたまるか!)」
ジンの一機が突然動いた。それに合わせて、全ての機体が銃口を―――
「ジュール隊長っ!!」
敵の狙いは、イザークのザクファントム。マユは"デリュージー"レールガンを照準して、発射する。
命中。
敵機の左腕が吹き飛んだ。だがやはり敵は怯まずに、真っ直ぐザクファントムに突っ込む。
『コイツっ!!』
イザークがビームガトリングを発射。正面からそれを受けた敵機は、ズタズタに引き裂かれ―――
―――引き裂かれながら、イザークのザクファントムにしがみついた。
「自爆!?」
『イザークッ!』
一瞬だった。
目にも止まらぬ早業で、アレックスのゲイツが1機ジンを撃ち抜き…
イザークのザクファントムにしがみついたジンを、タックルで巻き込んだのだ。
『アスラァンッ!!』
「え?」
敵機が爆発する。それと同時に残る5機のジンが一斉にビームカービンを発射。
―――アスラン?
アスラン・ザラ…?
イザークのザクファントムの右腕が吹き飛ぶ。バランスを崩したところに、左脚への直撃。
「ジュール隊長、逃げて!」
ロック警報。敵の銃口がこちらに向く。マユは素早くバーニアを噴かして、機体を沈ませる。
発射。ブラストシルエットへ直撃。慌ててパージすると、爆風に背中から機体を叩かれる。
「ぐっ…!」
負ける。このままじゃ。そう思った刹那。
上空からの射撃が、敵の一機を撃ち抜いた。
「やっぱりテメーらかよ、これをやったのはぁっ!!」
アウルは激昂して、トリガーを引いた。眼下のジンが撃ち抜かれ、地表に叩きつけられて爆散する。
『落ち着けアウル、こいつを止めるのが先だ!』
「わかってる、でも!」
スティングのヤツ、冷静ぶりやがって。こいつらは地球にコレを落とそうとしてるんだぞ!?
だってあそこには…あそこには―――!!
『おいおい、合体野郎までいやがるぜ!?』
スティングが驚きの声を上げる。アウルは視線を巡らせて、"敵"の姿を確認する。
いた。
前回はなかった、黒色の装甲。背中に何も背負っていないが…
「どの道、ブッ潰す!」
ジン各機のビームカービンを防ぎながら、全砲門を展開。
『ステラ、お前は下から回れ!俺とアウルは上から叩く、当たるなよ!』
『わかった…』
発射。
2機のジンが爆散。合体野郎――アビスにデータがあった。たしか、インパルスだったか――は避けた。それが益々、気に入らない。
まぁいい、こいつでケリをつけてやる。
アウルはビームランスを引き抜くと、直下のインパルスへ機体を突っ込ませた。
「ジュール隊長、離脱して!」
『しかし…!』
「足手まといです!…アレックスさんは私が!」
『…頼む!』
ザクファントムが離脱しようとする。ジンの注意は強奪部隊に向いていたが、カオスがイザークのザクの進路を防ごうとした。
援護に入ろうにも、こちらはアビスに狙われている。今まさにこちらに―――
マユはインパルスのサイドアーマーから"フォールディングレイザー"対装甲ナイフを引き抜き、頭上でクロスさせる。
激突。
重力が小さいとは言え、凄まじい衝撃が走る。
もともと構造上あまり頑丈じゃないインパルスでこんな荒業…保つのか。
「…この……ッ!?」
視界の端で、アレックスのゲイツが立ち上がった。右腕を丸々損失しているが、それ以外は無事のようだ。
「ぐッ!!」
今度は横薙ぎにアビスが槍を振るう。機体がなぎ倒されそうになり、マユは素早くインパルスを立て直す。
イザークはカオスを相手に、防戦一方になっていた。
ガイアはジン2機を翻弄しながらも、決定打は出せずにいる。
「(カオスをなんとか…!)」
アビスが迫る。マユはフォールディングレイザーを投擲し、高く跳躍する。
アビスがそれを打ち払い、再びインパルスに照準を向けようとしたところで―――
ビルの陰から飛び出してきた純白の機体に、思い切り蹴り飛ばされた。
『俺が時間を稼ぐ』
「レイ!」
レイだ、レイが来てくれた!
彼は瞬く間にビーム突撃銃をアビスに照準すると、三点射する。
アビスはシールドでそれを受け止めると、返しと言わんばかりに胸部のビームを発射。
レイはビルの壁を蹴り、MSとは思えぬ流れるような動きでそれを回避。轟音を立ててビルが崩れていく。
『アレックスさんと市街地を出ろ、ルナマリアの援護が入る。油断するなよ』
「うん!」
カオスの注意がレイに行った瞬間に、ジュール隊長は離脱できたようだ。
マユはインパルスを上昇させると、アレックスに通信を繋ぐ。
「アレックスさん!」
『すまない…大丈夫だ、動ける』
ゲイツを狙ってカオスが動くが、レイのザクのミサイルがそれを遮った。
隙を狙って、ゲイツがこちらに飛んでくる。マユは彼を庇うように、高速道路の終わりを目指す。
レイが2機―――いや、ガイアも含めた3機を相手にしながらこちらへ後退してくる。
あのジンの部隊は全滅したのか?
援護しようにもこちらの武装はバルカンとナイフ一本。アレックスのゲイツは、時折振り返って牽制のためにレールガンを放つが、当たるはずも無い。
「(見えた…!)」
道の向こうで、高層ビルがピタリと消えていた。その先に広がる開けた荒地へ―――
抜けた。
遠くに廃墟群が見え、近くに――破棄されたのだろうか――大きく傾いたメテオブレイカーが一基。
強奪部隊からの射撃の雨をギリギリの所で避わしながら、アレックス機を庇う。
遅れてレイが飛び出し、続いてアビスが飛び出そうとしたところで―――
遠方からの狙撃が、彼らの間の空間を貫いた。
『グゥレイト!いい腕してるな嬢ちゃん!』
「そりゃどうも…!」
ルナマリアは吐き捨てると、再びオルトロスの照準を合わせる。
彼女のザクに装備された特別なセンサーが、敵機の動きを捉えて離さない。
「無駄無駄…落ちんのよっ!」
仇討ちなんて、ガラじゃないんだけど…落とし前はキッチリ、ね。
『よっしゃ、俺も手伝うぜ』
「ご自由に、私が全部いただきますけど!」
緑色のガナーザクに乗った青年―――ディアッカ・エルスマンが笑い、オルトロスの砲口を上げる。
『見てな、これが狙撃の真髄ってヤツ』
ビームの奔流が次々と戦場を駆け抜ける。冷徹な意志をもって、敵の動きを追いながら。
『ハァ、ハァ…』
アレックスもすっかり息があがっている様だ。だがここまでくれば、もう勝ったも当然だろう。
<FORCE-SILHOUETTE――System Connect Permission>
<設置率100%、破砕開始>
「よし…!」
マユはゲイツを置いて、インパルスを上昇させる。
敵は3機ともルナ…と誰かの狙撃相手に手一杯のようだ。今の内に…!
フォースシルエット接続…完了。
機体装甲が青基調のトリコロールに変色する。
「(今度こそ、チェックメイト!)」
敵機はオルトロスのビームを避けながら、それでも執拗にレイのザクを狙っていた。
マユはビームサーベルを引き抜いて、それの援護に向かおうとしたところで…
ユニウスセブンの表層が明るく照らし出される。
「…撤退、信号?」
尚止まぬ狙撃を掻い潜りながら、3機が宇宙空間に上昇していく。
スラスター光が小さくなったところで、ようやく"狙撃主"たちはそれらを追うのをやめた。
『限界高度が近い。俺たちも撤退するぞ』
轟音と共に、ユニウスセブンが大きく揺れた。
地表はひび割れ、砕けた岩塊がゆっくりと大地から離れて行く。
「うん…あ」
1つだけ残っていたメテオブレイカー。それを動かそうと、アレックスのゲイツが必死にスラスターを噴かしていた。
「アレックスさん!?これ以上は…!」
『駄目だ、少しでも小さく砕かないと!』
レイがそんなアレックスを、メテオブレイカーから引き離そうとする。
マユは一瞬迷って―――やがて提案した。
「レイは先に戻って。私はアレックスさんとあれだけ起動させてから戻る」
『しかし』
「大丈夫だってば。ほら、急いで!」
『…わかった。くれぐれも気を付けてな』
「うんうん!」
レイを追い払うと同時に、スラスター光が次々とユニウスセブンから離れていくのが見えた。
残っているのは私とアレックスさんぐらいだろうか。なんだか妙な気分だった。
「アレックスさん」
『…そっちを頼む』
「アスラン、さん?」
『マユ…それは』
「大丈夫です、言いませんよ。誰にも」
アレックス―――いや、アスランは以外そうな顔で、マユを見ていた。
偽りの名を名乗る以上、それ相応の何かを彼は背負っているのだ。
救国の英雄と謳われるアスラン・ザラ。そんな彼がオーブにいる。
気に入らなかったが、彼にとっては"それ"こそが正解なのだ、多分。
そろそろ大気圏の摩擦熱が来る頃だ。
フォースシルエットだからこそ、ギリギリまで作業ができる。
そう考えると、マユはまたこの"力"が誇らしく思えた。
「さ、これだけすませて、私たちもさっさと」
直撃。
どこからか放たれたビームがメテオブレイカーを大きく穿ち、爆発する。
「なっ…!?」
『マユ、無事か!』
市街から現れた1つの機影。
鎧を剥がされ、片脚を失った漆黒のジンだった。
「やらせはせん…」
サトーは唸る。
突然の乱入で、アリューゼやグリフ、ガリィまで失った。
これ以上、失うものなど無い…!
「我らの想い…これ以上、やらせはせんぞぉっ!!」
両手でしっかりと太刀を握り締め、突撃する。
視界が赤い。血のせいか。それとも―――
俺の目には、もう焼かれる世界が映っているのか。
ゲイツが飛び出してきた。温い。そんな動きで、この俺を止められると思っているのか!
一撃の元にゲイツを叩き伏せ、戦闘不能にする。ビームサーベルを2本引き抜いた新型が、激昂して迫ってきた。
「温い、温い、温いわぁ!!」
一閃。
ビーム発生器を斬り落とした。敵機はそのサーベルを放り投げ、残る一本で突撃してくる。
何故だ、貴様は…!!
「何故笑うか!貴様らはぁっ!!」
激突。最期の咆哮。
「軟弱なクラインの後継者…やつらの作り上げたこの欺瞞だらけの世界が、本当に正しいか!?」
敵を圧す。意志の力をぶつけるかの如く。
「偽りの世界で笑う、貴様らの存在は間違いだ!我が娘の眠るこの墓標で以て、世界は変わるのだ!!」
『…ふざけないでよ……!』
底冷えのするような声。だがそれは確かに―――幼い、少女の声だった。
「な……!?」
『ふざけないでよ、このバカッ!!』
今度は逆に、こちらが圧され始めた。サトーは歯を喰いしばる。
こんな少女を、戦場に…!?
『嘆き続けることなんて、できっこないのよ!偽りだっていいじゃない、皆笑えるなら…!』
「貴様のような小娘がッ!」
『大切なものを失って、笑えるようになるまでどれだけかかると思ってんのよっ!?』
「知った風な口を聞くかぁっ!」
『知ってるから言ってるんでしょうがぁーっ!!』
太刀の中腹が、ビームの熱で融解した。
振り下ろされる閃光、サトーはそれを受け入れながら、折れた太刀の切っ先を刺し出す。
俺がお前を、この歪んだ世界から解放してやる。
『マユーッ!!』
その声が聞こえると同時に、脇からの衝撃がサトーを襲い―――
彼の意識は、そこで途絶えた。
ボロボロになりながらも、アスランのゲイツはインパルスのすぐ傍まで来ていた。
「…デイル!?」
今聞こえた声は、確かにデイルだ。じゃあ、自分を助けてくれたのは…けれど、何故?
『マユ、急げ!』
既に周囲の空間は赤く燃えている。早くしなければ、本当に地球へ落ちてしまう。
アレックスのゲイツの手を取ると、マユは真っ直ぐデイルの元へ向かう。
「(デイル…デイル…!)」
生きなきゃダメだよ―――?
自分の声が蘇る。なんで、どうしてこんなことを。
いた。
「デイル、良かった…」
『来んな』
レールガンがこちらに向けられる。
『このまま…死なせてくれねぇかな?』
「…ふっざけんなぁっ!!」
マユが叫ぶ。デイルはそれでも、嗚咽が止まらない様子だった。
「なんでそんなこと言えるわけ!?死にたいから死ぬ?そんな選択、許されると思ってんの!?」
『マユ、いいんだよ。ショーンがいないんだ…ありがとう、俺は』
「いいわけ無いから言ってんでしょうが、このバカ!バカ!」
マユは自分が泣いているとも気付かずに、なりふり構わず叫び続ける。
「私の家族、オーブで死んだ!ビームで滅茶苦茶、死体なんて微塵も残らなかった!!」
『マユ…!?』
「それでも私はここにいる!皆がいてくれるから!デイルがいるから、私はここで笑えるの!」
『……』
「だからお願い…!一緒に、帰ろう…!?」
『わかったよ』
「え…?」
以外なほどあっけなく、デイルはこちらに従った。
『お前の強さ見てたら、情けなくなっちまった…俺、ショーンの分も生きれるかな?』
「…知らないわよ、バカ。自分で考えて」
機体を少し、ゲイツに近づける。もうすぐで手が届く。
『はは、わりぃ…マジ、ごめんな。うし、そんじゃいっちょ』
ザッ
「?」
雑音が通信を遮る。
「デイル?」
ボンッ。
突如、デイルのゲイツの脇腹が音を立てて爆ぜた。
「ッ…!!」
一拍遅れて、粉々に四散する機体。
衝撃に揺られながら、マユは咄嗟にアスランのゲイツを庇う。
タンホイザー発射のメッセージが、少し遅れてインパルスに届いた。
年明けてしまった…トロトロしててすんませんorz今年初投下?いただいてしまった…
恐らく今作品書いてらっしゃる皆様の中で一番遅筆で稚拙な自分でありますが、今年も頑張りたいと思っています。
スレの住人様方、職人様方、今年もよろしくお願いしますm(_ _)m
>>460 明けましておめでとうございます&乙でした
いえいえ、自分の方が稚拙ですよorz…できる限り早く投下したいんですが
スレ住人及び各作品の職人方、今年もよろしくお願いします
新年明けましておめでとうございます。
スレ住人の皆様及び各作品の職人様、今年もよろしくお願いします。
今年もまとめHPの更新まめに、行いたいと思います。
2/7で、このスレは2年目に突入です。
>1 名前:通常の名無しさんの3倍 :05/02/07 19:49:04 ID:xzY2az3I
>どうなっていただろう
みんなあけおめー。
昨年もGJでしたー。うぇーい。
稚拙な作品はNG推奨な
いちいち叩いて荒らすなよ
でも、この板ってIEで見てる奴多そうだよな。
なに、マターリ行きましょうや
つ旦~
>>466 いただきます、そして新年おめでとうございます
職人様、今年も頑張ってください、そしてまとめ人様、新年早々の更新、乙です!
このスレも1年ですか、早いものですね
あけましておめでとうございます。
神職人の皆様に、わずかながらお年玉です。
>>465 結構2ch外から紹介されて見に来る連中が多いみたいだからな…
>>468 お年玉?
2chの機能使いたいだけじゃんお前
出て行けよ
>>470 まあまあ、年始からカリカリしなさんな
つ旦~ドゾー
>>460 今まで時間の関係でスルーしてたんだが……普通に面白いな。
どうしてくれるんだ。また読む作品が増えてしまったぞw
このクソ忙しい時期にww
ただ宇宙なのに「轟音を立ててビルが崩れていく」ってのはどうかな。真空ですよ。
新年明けましておめでとうございます
運命の舞踏 7話が完成したものの
張り切りすぎて話が長くなってテキストサイズで40半ばとかなり大きいサイズになったので
現容量で入るかどうか分かりません orz
新作は新スレに移行してから投下します
>>475 まだいけると思いますよ。
もし途中で切れても、なんとかまとめます。
477 :
舞踏の人:2006/01/01(日) 19:44:58 ID:???
纏め人さんレスありがとうございます
それでは投下を開始します
そこは、まるで艦が大きな海原に浮いているのではと錯覚するぐらい、眼下の地球が大きく見える宙域。
母なる大地の重力を振り切り、星を包む大気のヴェールをくぐり抜けたばかりの一隻の戦艦が航行している。
蒼い星の一部を影絵のように切り取る、漆黒を基調としたカラーリングの戦艦。
――かつて、連合の不沈艦と謳われたアークエンジェル級の3番艦『ケルビム<智天使>』
大天使と主天使の、更に上に位置する天使階級を名に冠したその艦は、
先ほど地球から打ち上げられ、大気圏離脱を終えたばかりだった。
地球へと背を向け、離れる方向に航行していく黒の船。 その元へ、二隻のアガメムノン級が横手から接近してくる。
やがて、ケルビムの後方に付き従うように軌道を変える二隻の戦艦は
ケルビムと共に宇宙に上がってきていた、打ち上げ用ポッドから出てきたMS部隊を収容していく。
「僚艦ディラキエル、エネディエル共に合流完了」
「各艦のMS収納完了を確認」
「ケルビム、全システム異常ありません」
「各員、周囲の警戒を怠らないようにね。
何もないとは思うけど、用心するに越したことはないわ」
ブリッジのほうぼうから聞こえる、クルーからの報告の声。
それを聞くのは、中央に位置する艦長席に座る人物。
規則正しいウェーブを描く、豪奢な金髪を腰の辺りまで伸ばした色白の女性で。
おっとりとした青い瞳が穏やかな印象を与える、若く見目麗しい彼女は、紛れもなくこのケルビムの艦長であった。
丁寧な口調で皆へと指示を出した後、彼女は自分の座る席の斜め後方、設置された座席に座っている人物を見やる。
「大佐。 大気圏離脱及び僚艦との合流、完了しました」
しかし、大佐と呼ばれた人物…黒い軍服を纏う、黒髪の男は固く目を閉じたまま、何も答えない。
はたから見ればその態度は、居眠りしてると思われて普通だが、彼が起きていることは確かだった。
口元をへの字に曲げ、眉をしかめさせ、不機嫌そうな顔のまま寝る人間はそういないだろう。
「…いいかげん、機嫌を直してください」
無言の男を、困ったような苦笑いで見ながら、言葉をかける女艦長。
しかし彼、壮年期に入って間もない年頃に見える男は、相変わらずの不機嫌顔で。
足を乱暴に投げ出し、心の壁を作るがごとく腕を組む男は沈黙のままだ。
「休暇中に突然召集されたのは、みんな一緒です。
…なのに、大佐だけですよ? 子どもみたいにふくれたままなのは」
「………………
………あ゙ーっ、くそっ!
わーったよシャーナ、こんな任務とっとと終わらせて帰るぞ!」
それこそ拗ねる子どもをやんわりなだめ、たしなめるような台詞。
ついには、いたたまれなくなったかのか大きな声で一度吼えると、そうまくし立てた。
だが、名を呼ばれた女艦長…シャーナ・ラーミエル少佐は、彼の言葉に困惑の表情をみせる。
「ええとー…とっとと、ですか。
申し訳ありません。 まことに言いにくいことなんですが…」
「な、なんだ……?」
本当に言いにくそうな、恐縮した様子で曖昧に苦笑うその表情に、黒髪の男は嫌な予感を感じた。
問いかけに答える代わりに、タタンと押されたコンソールのキー。
僅かに間を置いて、ブリッジ前方の正面モニターに軍服に身を包んだ青年の姿が映し出された。
その、柔和なようで……彼を知る者にとっては、青酸カリでも入っているのではと思ってしまう、含みある笑顔を前に
黒髪の男は、怒りとも恐怖ともつかない顔色のまま、表情を凍らせた。
それは、特殊作戦軍所属ケイ・サマエル少将…彼らの上司である人物からの、ビデオメッセージだった。
『ラガーシュ・イゾルデ大佐、そして『シュヴァルツヴィント』の諸君。
休暇中に突然呼び出してしまって、すまなかったね。
さて、君らには地球に降りる僕の護衛を頼んでいたけど、少々予定が変わっちゃってね。
僕の艦を地球軌道上まで護衛したあとは、アルザッヘル基地へ向かってくれたまえ。
そこで『ファントムペイン』と合流し、彼らが強奪した新型機のデータ吸出しが完了し次第
彼らと、その戦利品を乗せてキャリフォルニア基地へ帰還してくれたまえ。その後の作戦予定は追って伝える。
……以上、よろしく頼んだよ?』
最後に、念押しするかのようなケイの笑顔を残して、映像は途切れる。
その内容をあらかじめ確認していたシャーナは、映像が流れてる最中、何度も男の様子を心配げに見ていたのだが
「あ、あっんのクソガキぃ……い」
途中から力無くうつむき、ふるふると肩を震わせていた彼は
突然、席から立ち上がり。 怒りに引きつった形相で天井を仰いだ。
「…帰れねぇじゃねえかよぉぉぉっっ!」
映像の中で、ラガーシュと呼ばれていた黒髪の男、艦の指揮官の叫び声に、
ブリッジのクルーは、辟易したように顔をしかめたり、あるいは耳をふさいでいる。
「大佐、落ち着いてくださいっ」
「ええいっ、お前もあいつの言ってたこと聞いただろ!
自分の護衛ついでに、またアルザッヘルへ行ってトラック代わりになれだぁ??
しかもそれが終わっても休暇にゃあ戻れんのだと!? ふざけんじゃねえええっ!」
マシンガントークどころか、ファランクスばりにやかましく騒ぎ立てる上司を、
シャーナは周りの者と共に、押さえにかかる。
…まぁ、彼らも怒りを表面に出さないだけで、本当は不満に思っているのが事実だったのだが。
やいのやいのと騒いでいる指揮官が、先ほど口走った通り
ケイからの命令には、護衛プラスアルファの終了後、次の作戦に向けて待機するようにと言う内容が含まれていた。
普段、多忙なこの部隊は他の兵士たちよりも休暇が少なく、今回の一週間の休暇も、実に4ヶ月ぶりのものだった。
ところが、そんな貴重な余暇さえ、あの未成年らしき青年の配慮ない命令によって潰されたのだから…。
「しかし艦長…あの、サマエル少将って一体何者なんですかね?」
なんとか上司を司令席に押さえつけ、静かに…とはいっても未だに怒った犬のようにぐるると唸り続けているのだが
とりあえず落ち着かせて席に座らせた後、クルーの一人が不思議そうにシャーナへと尋ねた。
彼、ケイが自分たちの上司になったのはつい半年ほど前で。
それまでは全く噂すら聞かなかった、異様なほどに若い将官について、疑問を抱いてる者は少なくなかった。
「うーん…なんでも、以前アウグスト閣下の側近を勤めていたみたいなんだけどね。
ブルーコスモス内でも、重要なポストにいるらしいわ。 盟主様のお気に入りでもあるし」
「あ、あの若さでですか? よほど良い家柄じゃないと難しいでしょう、そんなの」
頬に指当て、微かに首を傾げながら彼女が答えた内容に、驚きを見せるクルー。
どう見ても、17、8歳ぐらいにしか見えないというのに、
彼がブルーコスモスの幹部だなんて事は、にわかには信じられなかった。
「ううん? 家柄も全く無名…それどころか、偽名とすら言われてるんだから」
「……おまけに、俺たちの『同類』だ」
会話に混ざってきた、不機嫌そうな低い声。
その内容に驚き、周囲の者は言葉の主であるラガーシュの方を見た。
「それ…本当ですか?」
「嘘言ってどうすんだ。 確かにあいつの地位を考えりゃあ、ありえねぇと思うだろうがな。
だが、あの仕事風景を見てりゃあ馬鹿でも実感するさ。
あいつは明らかに『普通の規格』から外れてる」
先ほどまでとは打って変わって、低く呟かれる言葉。
どうやらその事実はシャーナも初耳だったらしく、疑問の声を上げていた。
そこまで語ると、定位置に着け、とばかりに顎で指す仕草で会話を断ち切る男。
困惑の表情を隠せないままだったが、クルーたちは再び己の担当するモニターへと向き直った。
「んで、少将サマとの合流ポイントは?」
「月外周、ポイント92です。
先方はアガメムノン級ウィルソン、以下五隻の編成とのことです」
コンソールの画面に伝達されている内容に目を通しながらの女艦長の言葉。
それを聞いたラガーシュの顔は、露骨なまでにしかめられる。
「……4隻も御付きを従えといて、まだ俺らの護衛が必要なのかよ」
「はい。 ですから大佐、どうか冷静に」
再び同じような騒動を起こしかねない空気に、クルーたちは辟易した表情を見せていたが
「……っ?!
艦長! 地球軌道ポイント67付近の宙域で、SOSが確認されました!」
「ポイント67っ……そこって、セレネへ向かう移民船団の集結ポイントだわ!」
通信オペレーターから、緊迫した語調で伝わってきた情報。
それを耳にし、即座にその場所で起きる予定だった事柄と結びつけた女性は、指示を仰ぐべく後ろの男へと振り返る。
「大佐!」
「分かってる! 全艦、最大戦速でポイント67へ急行、MS部隊も全員出撃準備!
何が起きてるか分からねぇからな、索敵は特に注意し、出来るだけの情報を集めろ
少将サマにはお迎えにあがれねぇって、適当に電文打っとけ!」
オペレーターの報告を聞いた瞬間から、常に鋭い印象を纏う貌に緊張を張り詰めさせていたラガーシュは
勢いよく席を立ちながら、クルーへと矢継ぎ早に指示を飛ばす。
そして、皆がそれぞれ指示を行動に移し始めるのを確認すると、身を返し、ブリッジの入出口へと向く。
「後の艦隊指揮は任せた。 俺もウィンダムで出る」
「了解しました。 お気をつけ下さい」
短な言葉で指揮権の引き継ぎを行った彼は、シャーナの見送りを背に受けながらブリッジを出た。
「親父っ、出撃って…何が起きたんだよ一体!」
格納庫へと向かう通路を進んでいたラガーシュの元へ、後ろから飛んできた声。
彼が振り向き見れば、後方から追いついてくる青い士官服を着た少年の姿。
まだ、ハイティーンに入ったばかりに見える、幼さ残す黒髪の彼は、男の前に立ち、問いかけの眼差しを向ける。
「今、セレネへ向かう移民船団からのSOSが確認された。
単なる航行事故か、あるいは何者かに攻撃されてんのか…詳細はまだ分からんが、これから救援に向かう」
「そんな……セレネの船団が、なんで襲われるんだよ…。
あれには、戦争難民が大勢乗ってるってのに……」
呆然とした様子で呻く少年。 信じられない、と言わんばかりに目を見開かせながら。
「まだ襲撃されたと確定したわけじゃねぇ。
が、どんなトラブルが起こるか見当も付かない作戦だ。 気ィ引き締めていけよ!」
「了解!」
自分の上司であり、親でもある彼の言葉に、少年は力強く返答しつつ敬礼した。
同じく、予想ポイントへと急行するミネルバは、ジュール隊の指揮するナスカ級2隻と合流する。
ブリッジ内、艦長席を立ちながら敬礼をするタリアは、真正面のモニターに映る銀髪の青年と対面していた。
「ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。
貴艦の迅速な応援に感謝します」
『ジュール隊隊長、イザーク・ジュールであります。
お互いに協力し合い、最悪の事態の阻止に尽力いたしましょう!』
指揮官たちの名乗りあいが終わるのを確認して、口を開いたのはタリアの隣に立つ金髪の娘。
「イザーク、久しぶりだな!」
『アスハ代表、お久しぶりです。 事情は議長から伺っております。
大変な災難に遭われたようですが、ご無事なようでなによりです』
「…なーんかカタいなぁ? お前。
一緒に戦った仲じゃないか、もっと楽に話せよ!」
『んっ、ごほんっ……いや、一応立場というものがあるだろうが…』
屈託ない様子で話しかけてくるカガリの言葉に、
イザークは困惑したように視線を明後日の方へ向け、咳払いをしながら語調を変える。
『あっれー?なんでいるの姫さん? ってか、久しぶりだねぇ!
元気してた? アスランとはヨロシクやってるかぃ?』
『…っおいディアッカ! 勝手に割り込んでくるな、邪魔だ!』
相手側のマイクが拾った、少し離れた場所から聞こえる陽気な声。
それと共に、イザークを押しのけるように横手から浅黒い肌の青年が、ひょろりと上半身を覗かせた。
にんまりと、白い歯を見せる懐こい笑みを見せながら、ひらひらと手を振ってるのはカガリに向かってなのだろう。
端に追いやられたイザークは大声で怒鳴りながら、負けじと彼を再び画面外に追いやろうと、肩で押している。
『いいじゃんかーイザーク? かつての戦友に挨拶するくらいさぁ。
…んで、姫さんなんでミネルバに?』
「っははは、相変わらず元気そうじゃあないかディアッカ。 私の方は見てのとおりだ。
少し、色々とトラブルがあってな? 成り行きでミネルバにお邪魔している。…アスランも一緒だぞ」
ひょうきんな振る舞いを見せる彼を前に、屈託ない笑い声を上げるカガリ。
にまりと活気溢れる笑み浮かべながら、彼女が口にした言葉に画面向こうの二人は声を上げた。
『なっ、アスランだと?! あいつ、よくもおめおめとプラントにっ…!』
『おーっ、もしかしてアスラン、姫さんの御付きでもやってるのかい?』
「ん…まぁそういうとこだな。
今回は議長の取り計らいで、あいつもMSで出してもらえることになった。
言い合いならまだしも、過ぎた喧嘩はしないようにな?」
『い、言われずとも…』
その名を聞き、声を荒げたイザークだったが、カガリに念押しの言葉を言われ、
苦虫を噛み潰したような顔で目を逸らし、ぶつぶつと呟く。
彼の様子を見ながら、可笑しげに目を細めていたカガリ。
やがて、その表情を引き締めたものに変化させると、彼に向かって言う。
「今回の作戦…出来れば、MSで出撃する事態にならない方がいいんだがな。
だが、もしもの時はよろしく頼むぞ」
『分かっている。 身内の不始末だ。俺たちが絶対に阻止してみせる』
『そそっ。 俺らにまかせときなって、姫さん! あんたの分も撃ち落してきてやるからさ!』
「ありがとう。 心強いぞ」
姿勢を正し、力強く言い切るイザークの姿に、カガリは将らしい勇ましさを感じ、
彼の隣でおどけたように敬礼をするディアッカの、以前と変わらない自然体な様子を見て、嬉しそうに笑顔を見せた。
その後、指揮官同士で交わされる今後の打ち合わせ。
戦闘における互いの役割分担。 敵の動きについていくつかの予想を立て、それに沿った作戦の検討。
それらの話し合いが大体まとまりかけた頃に、その報は、来た。
「艦長! 地球軌道ポイント67でSOSを確認しました
セレネ移民船団からのものです!」
「ッ…もう始まったの!?」
苦い表情で呻くタリア。 全速力で急行していた甲斐もなく、既に戦火は開かれてしまった。
しかし、後悔している暇は一瞬たりともない。 即座に皆へと指令を伝える。
「MS部隊はいつでも出れるように出撃準備を進めなさい!
メイリン、ポイントへ向かっている途中の援軍へSOS確認を伝えて!
…急ぐわよ。 護衛艦隊が持ちこたえてる間に!」
彼女の指示の元、各々が緊張の面持ちで自らの役目に向かい始める中。
カガリは立ち尽くしたまま、ぎゅうと拳に力を篭めていた。
――当たって欲しくなかった。こんな予想。
ただの杞憂で終わっていれば、どれだけ良かっただろうか。
それならば、こちらの願いを聞き入れてくれた男へ、いくら詫びを入れても構わなかったのに。
…そしてもう一つ、彼女が悔しく思ったのは。
このような事態を目の当たりにしながらも、何も出来る事がない自分。
自らが持つ『価値』に気付いてしまい、以前のように戦場の只中へと飛び出すことが出来なくなった自分の事だった。
―ポイント67 セレネ移民船団集結ポイント―
月面に作られた新造都市『セレネ』へと向かう、世界各地からの移民たちを乗せる船の群。
それらを護衛するために編成された護衛艦隊。
その旗頭たる…アガメムノン級エイブラハムの艦橋内は、悲鳴交じりの報告に満たされていた。
「ネルソン級ジェイムズ、フェルドが大破!」
「敵MS、更に6機の戦闘宙域侵入を確認
これでもうっ…宙域内に存在する敵MSは33機です!」
「艦隊のMS部隊、損壊率は60%を超え…既に半壊状態!
対して、敵の損害は軽微な模様!」
思考の暇も与えず、矢継ぎ早に伝えられる情報は、どれも絶望的な内容で。
護衛艦隊のうち、沈んでいないのは半数以下。 頼りのMS部隊も次々と落とされ、追い詰められている状況。
それらの前で、司令官は事実を受け止めれようもなく、ただ頭を抱え込んで絶望と恐怖に目を見開いていた。
明らかに思考能力の限界を突き抜けた極限的な状況。
打開策など思いつくはずもないが、その被害状況だけは克明に理解できて。
「一体……一体これはどういうことなんだ!
これはただ、地球から月へと哀れな宿無したちの引率をするだけの任務ではなかったのか?!」
がちがちと歯が浮くのをなんとかこらえながら、怨嗟にも似た呻き声を上げる司令官。
彼が口にしている内容は、実際の作戦と一字一句たりとも間違った部分はなかった。
――ただ、何処かの誰かの悪意によって、立ち向かいようもない障害物を差し向けられることさえなければ。
護衛艦隊の出航直前、突然プラントから打診されてきた『警告』。
暴走した無人機の群が、船団集結ポイントに現れる可能性があるという情報。
それを耳にした彼を含む上層部は、プラントが自らさらけ出した醜態に、皆揃って失笑していた。
警告が訴える危険性よりも、今も昔も敵対関係を続けているプラントの無様なミスの方が、彼らにはよほど重要な情報だった。
…仮に、本当に暴走部隊が現れたとしても、そのような欠陥プログラムの元に動く機体なぞ、
取るに足らない存在だろうという考えが上層部にはあっただろう。 無論、司令官自身にも。
それでも一応、警戒配置に付いたものも何者かが現れる気配は一向に無く。
プラントが伝えた情報を、誤報だったのだろうと判断し、安堵しきっていたその時。
それらは、デフリの海の中から現れた。
前大戦で沈んだ戦艦の残骸に潜んでいた、ザフト製のMSで編成された一個中隊が、
突如横合いから、護衛艦隊へと奇襲を仕掛けてきた。
最も近い位置にいたネルソン級の一隻が、横腹を撃たれる形で真っ先に沈められたのを皮切りに
次々とデフリベルトから飛び出し、護衛艦隊を含む移民船団の行く手を阻むように、扇状に展開されていく多数のMS。
一糸乱れぬ迅速な行動で展開を完了させたそれらは、各々近くに存在する護衛艦へと攻撃を開始する。
同時に始まった、多方面からの攻撃に護衛艦隊はMS部隊を分散させ、対処を試みるものも
たかが人工知能、と侮っていた暴走機たちは想像以上の能力を有していたのか、次々と撃破されていく護衛部隊。
戦況は時間経過と共に、明らかに最悪のものへと転げ落ちていく。
「…せめて船団を下がらせろ!
このままでは取り付かれてしまう上に、戦闘の邪魔だ!」
「し、指示はしていますが…
船団が密集しているため、思うように身動き取れずにいる模様です…」
「ええいっ…何をやっているか!」
司令官の動揺を露わにした怒声に、通信士が蒼ざめた表情で答えを返す。
その言葉に傍らのコンソールを拳で叩き、のろまな移民船団へと侮蔑を吐き捨てる司令官。
だが、彼の命令している事自体が無理があるもので。
移民船団の現在位置は、大気圏からさほど離れていない場所で、後退し過ぎれば地球の重力に引き込まれる可能性がある。
その上、多数の船が進む事も出来ず退く事も出来ず、車の渋滞のように密集している状態だ。
下手すればお互いの接触事故すら起きかねん状況下で、そのうえ至近での戦闘。冷静に行動できるはずも無い。
そして、たとえ船団が無事に後退できたとしても
この絶望的なまでに不利な戦況に、劇的な変化が起こりようはずも無かった。
忌々しげに唸り声を上げながら、どう動くべきかと頭を悩ませる司令官。
彼の耳に、索敵を行っていたオペレーターから絶望的な報告が届いた。
「………っ?!
艦長! せっ、船団後方より…敵MS部隊の接近を確認! その数、27機」
「なっ……挟み撃ちだと?!」
その言葉に愕然とし、司令官は悲鳴に近い叫び声を上げる。
――完全に、退路を絶たれた。
戦力に余裕が無く、前方の敵へのみ集中させていたため、後方にMS部隊は一切配置していなかった。
護衛艦も、ネルソン級が2隻存在するするだけだ。
「ええいっ、誰でもいい! とにかくそちらを援護しにっ……」
もはや大局を見る作戦も何もなく、
ただ、その場のトラブルに収拾をつけようとする思考の元、司令官は指示を放とうとした、その時。
彼らの眼前にある、大型モニターのほとんどを埋め尽くした一機のザクの姿。
敵機に、艦橋の目前にまで踏み込まれたという事実をブリッジ内の人々が理解する前に
エイブラハムの艦橋部は、ザクの携えたビームランチャーによって溶かされ、砕かれ、そして蒸発した。
頭部と呼べる位置と機能を兼ね備えた箇所を失ったエイブラハムへ、周到なことに機関部へも閃光の一撃を与え
粉々に爆散していく獲物へと背を向け離脱し、ザクは速やかに別の方向へ向けて加速していく。
次に優先されている攻撃対象、既に仲間たちの手によって守りを奪われ、
丸裸の状態で、行き場を失っている移民船団へと。
――船団のSOS信号を受信し、現場へ急行している途中のミネルバ。そのブリッジ内。
クルー皆が固唾を飲み、口を閉ざしている中、索敵担当のバートが強張った表情で口を開く。
「移民船団を確認…光学映像を回します」
彼の声と共に、正面スクリーンへと映し出される、彼方の映像。
そこには、無造作にへし折られたように、幾片にも砕かれた何隻もの戦艦と
原形を留めないまでに千切れ果てたMSの破片が散らばる、凄惨な光景だった。
――そして今なお、惨劇は現在進行形で。
護り手を完全に失った民間船たちが、無人機の群によって周囲を包囲され、退路も無い状況。
情無き兵器たちは、攻防いずれの術も持たない船へと、携帯火器による砲撃を注ぐだけに飽き足らず。
逃げ出そうと進み始めた船の行く手を遮るように、前方を飛び回る威嚇行為で進路を変更させ
同じく逃げようとしていた、他の船の針路上に出るように追い込むという行動にも出ていた。
…それはまさに、阿鼻叫喚の地獄絵図と呼ばれるものだったろう。
その場に満ちる思念は、恐怖や絶望といったものばかりで。
マイナスの感情と恐慌化した集団心理に背を押され、民間船の群は完全に統率を失い
互いに行く手を遮り、外壁の表面を摺り合わせ、己が身ともろともに相手の外壁を砕く。
その、彼らの混乱と対照的に、冷徹なまでに統制取れた動きで行動する無人機たち。
威嚇射撃や近接武器による攻撃、そして相手の針路が乱れるように仕向けられる巧みな飛行によって
まるで、自動車同士の玉突き事故そのものな状況が今まさに、彼らの手により作り上げられていた。
「……くっ…間に合わなかったか!」
ブリッジ内のクルー全員が、眼前の光景に驚愕し、言葉を失くしている中
後方の、オブザーバーシートに着いていたカガリは呻きながら、肘置きに拳を打ち下ろしていた。
自分で予期していた中でも最悪のケースが、今まさに目の前で発生していて
その事実を凝視する琥珀の瞳は大きく見開かれ、絶望に震えるように揺れる。
「まだです! 全ては沈んでいません! 止める事は出来ます、代表
MS部隊発進! ジュール隊と連携し、一刻も早く敵を撃退しなさい!」
彼女に対してだけではなくブリッジ内全ての人間、そして自らに喝を入れるように声を上げたのは艦長であるタリア。
飛ばされた指示に、はたと我に返ったメイリンは速やかに、待機中のパイロットたちへのアナウンスを開始する。
『MSパイロット各員に通達! 本艦はこれより戦闘宙域に突入します
ザクはレイ機より順にカタパルトから発進してください!』
「……最悪の予想が当たったか」
赤色のヘルメットに内蔵されたスピーカーから聞こえてくる、管制官の声を耳にしながら、藍髪の青年は低く呟く。
彼、アスランが纏うパイロットスーツは因果なことに、以前自分が着ていたものと同じ、ザフトレッド仕様のデザイン。
最初にそれを渡された時、彼は思わず面食らったのだが、
予備として置いていたパイロットスーツに、これの他サイズの合うものがなかったと聞き、納得する。
現在、ミネルバに配属されているパイロットは誰も自分よりも小柄で、合うはずもないのだが
この艦に搭載される予定だったとされる、強奪された三機に乗る予定だった
ベテランのザフトレッドたちのものだとすれば、可能性はあると得心したのだ。
…しかし、久しぶりにこれに身を包むと、気分が引き締まってくるもので。
目を閉じ、天井を仰ぎ、身体の中に残る空気を全て吐き捨てるように、深く息をつくと
開いた双眸には静かな闘志が燐光のように宿り、憂いの表情も掻き消える。
先ほどまで考えていた、最悪の事態への恐れも薄れ、限りなく無心に近い状態になる。
――既に事は起きた。ならばそれを嘆く暇などない。
今は少しでも多くの人を守るために、一心不乱に戦うしかないのだ。
手馴れた様子で、自らの精神のコンディションを整えたアスランは、カタパルトへと向かうべく、鉄の足で一歩を踏み出す。
『インパルス発進スタンバイ、モジュールは『フォース』を選択…』
耳元に伝わるメイリンのアナウンスを聞きながら、マユはコアスプレンダーのコクピット内で厳しい表情を浮かべていた。
今回で彼女は、三度目の実戦を経験することになる。
一度目はアーモリーワンへの襲撃者の追跡。
しかし、強奪された三機の新型機を含めて、全て逃がしてしまう結果となる。
二度目は襲撃者…ボギーワンと名付けられた所属不明艦への追撃。
しかし、地球連合軍の大演習艦隊に阻まれ、それ以上追撃することが出来ず、遠回りで追う羽目となった。
そして三度目の任務は、襲撃を受けている船団を助け、被害を最小限に抑えるという内容で。
敵は自軍の開発した無人兵器の暴走部隊。 護る対象は、地球から上ってきた移民船団。
カガリからの話によれば…その移民船団は、前大戦で焼き出された難民たちを月都市へ移住させるためのものだという。
戦争に巻き込まれ、家や家族を失った人々……その境遇は、自分と全く同じものに感じられて。
そんな人たちが、新しい生活を取り戻そうと新天地へ向かっていた船が、あろうことか襲撃されている。
マユはその事実に激しい怒りを覚えていた。 何故、何故彼らが再びそんな目に遭っているのかと。
同じように家族を失った自分は、それでも優しい人たちに出会い、助けられ、
家族を得て、友人を得て、あの時に比べると信じられないほど幸せに生きているというのに。
「死なせない…死なせないよ!」
操縦桿を掴む手に、きりりと篭められる力。 小さく呟かれたのは、己を奮い立たせる言霊。
『射出システムのエンゲージを確認。 カタパルト推力正常…進路クリアー。
コアスプレンダー発進、どうぞ!!』
「マユ・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」
メイリンの指示に導かれ、カタパルトへ移動した戦闘機は、乗り手の声と共に滑走路上で加速する。
ミネルバからの全機発進と同時に、随伴するジュール隊のナスカ級2隻からも、
ザクやゲイツRといったMSの発進が完了される。
一刻を争う事態。 皆、互いに言葉を交わす余裕も無く、目の前にある一方的な殺戮のフィールド目指し突撃する。
彼らの襲来に、移民船団へと攻撃を仕掛けていた『レギオン』たちは気付き、同時に攻撃の手を止める。
その空白…『群』の思考は短いもので。 十秒にも満たぬ間を置いた後、再び動き始める。
半数きっちり、数を二手に振り分けられた部隊。
一方はは襲来者の阻止及び排除へ。 一方は先ほどまでと同じ行動を取る。
「…機械ぶぜいに、俺たちも見くびられたもんだな」
ギリと歯を軋ませながら、忌々しそうに吐き捨てたのは、MSのコクピットシートに座するイザーク。
艦隊指揮を艦長に任せ、愛機のスラッシュザクファントムを駆り、自らも戦闘宙域に飛び出したのだ。
彼は激しい憤りを感じていた。自分らのことを、部隊の半数を向ければ大丈夫と判断したであろう、無人機たちに対して。
コンソールのキーを叩き、イザークは自分の指揮下にあるMS部隊へと通信を送る。
「各部隊に通達。遺憾なことに敵の詳細なスペックは公開されていない。
相手を侮るなよ! 十分に注意し、複数で連携を取って対処しろ!」
『えっ、マジかよぉ!? まさか、こんな事態になってまで軍事機密とか言ってんじゃないよナァ?』
「…そのまさかだ!
まったく、上は何を考えているんだ! この期に及んでデータの出し惜しみなどっ……!」
伝えられるくだけた返答、相棒のディアッカからの不満の声に、イザークは憤りを隠すことなく吼える。
彼は軍本部よりミネルバ援護の命を受けた時に、これから戦うであろう敵の情報公開を求めた。
これは指揮官として至極当然の要求だったろう。 相手は未知の兵器とはいえ、自軍で開発されたものなのだから。
部下を少しでも危険な目に合わせないようにと、レギオン搭載機の詳細なデータ提供を求めたのだが…
いくつもの手順を踏んだのか、随分な時間をかけて返ってきた答えは、NOだった。
とにかく『レギオン』については、軍の最重要機密に位置しているため一切のデータ公開は無い、と。
その言葉が、彼の感情により油を注いでしまい、今のような激昂状態になっているのだろう。
「…今分かっている情報によれば、あれらには『隊長格』がいることは確かなんだ
それを潰せば簡単に状況を収めることが出来るというのに……なのに、何を考えているんだ上は!」
彼が言うように、事態の迅速な収拾にはホストコンピューターに代わり無人機を指揮しているであろう存在
臨時状況における『レギオン』たちの隊長を務める役割を与えられた機体が、一機存在しているのだ。
それを破壊すれば、命令系統を失った彼らは機動停止するか、そうでなくてもこちらに有利な状況になるはずなのだが…。
しかも相手がどのような機種によって編成されているのか、どのような装備をしているのか、それすら分からない状況。
そんな詳細の分からない敵と戦うことを、部下たちに強いるという危険性に、彼は苛立ちを覚えていた。
かくして『レギオン』部隊と、ミネルバ隊、イザーク隊との戦闘の火蓋が落とされる。
敵部隊は数機のザクを有しているが、残りはジンやシグー、ゲイツといった旧式機で構成された30機の部隊。
対して、こちら側の戦力はミネルバから5機、イザーク隊は2中隊24機…計29機の編成。
数はほぼ互角な上に、大半をザクで構成するこちらの方が、『レギオン』部隊よりも有利なものかと思われた。
しかし、その予想を覆すに十分な要素を『レギオン』たちは有していた。
「くぅ……早いっ!」
インパルスを駆るマユは、相対するゲイツの動きを追いかけながら、歯噛みしていた。
互いに一定の距離を保ちつつ、相手の側面を狙うべく、あるいは相手に側面を取られないように描かれる螺旋回転。
相手を真正面に捉えたまま横移動するインパルスが放つ射撃を、敵は縦横に機体を揺することで回避する。
急制動に急加速、そして上昇下降を織り交ぜて火線から逃げるランダムな動きに、翻弄されながら、少女は戸惑う。
明らかにそれは、強烈なGを伴う危険な回避行動だというのに。 相手はそれを何度も繰り返しているのだ。
――それこそが『レギオン』の強み。 乗り手を必要としないことで可能になった、高機動操縦。
マユはその無理のある動きに翻弄されながらも、七発目の射撃でようやくゲイツの胴を穿ち、爆散させる。
「っはぁ、はぁっ……」
緊張と疲労による汗の玉を額に滲ませながら、マユは荒く上がった息を整えるべく、目一杯に空気を吸い込む。
型遅れの機体を用いながらも、ここまで戦える『レギオン』の戦闘技術は、並みのものではなかった。
コンピューターに組み込まれた多くのパイロットの戦闘データと、
無人機ゆえに可能となった、機体性能をギリギリまで引き出した常識外れの高軌道が、それを作り上げた。
ホント、なんてモノを作ってくれたんだろうと。 マユは胸中で毒づいていた。
しかし…今はそんなことを考えている暇は無い。
「――次っ!」
荒い呼吸をなんとか整えた少女は、休息が足りないと悲鳴を上げる身体に鞭打ち、新たな敵を求めて再び駆け出す。
「ったく、デフリ戦は成績良くないんだけどね!」
ガナーザクのコクピット内で独り言つルナマリアは、両手で抱え持つ巨大な砲を取り回しながら、戦う。
つい先刻作られたばかりの、戦艦やMSの破片によって成るデフリの海に見え隠れする敵を追いながら。
相手は型遅れのジン。 彼女が持つオルトロスならば、一撃で破壊できる相手なのだが…
なにせ周囲は逃げ回るのに格好な遮蔽物が多い上に、ジンの動きは信じられないほど俊敏だ。
これを倒せたとしても、敵の数は多いと聞く。 無駄玉の許せない状況下で、少女は顔をしかめさせる。
彼女の前を飛び交い、浮遊物から浮遊物へと移って移動していく相手を狙い、銃口を小刻みに動かしながら、彼女は待つ。
敵が自分へ刃を向けてくる瞬間を。 回避から攻勢に転じる瞬間の隙を。
――来た。 戦艦のブリッジブロックに隠れていた敵が姿を現し、こちらへと真っ直ぐ突撃してくる。
幸い、相手は近接武器の重斬刀のみを装備してる様子で。 自分を攻撃できる間合いまでの距離はそれなりにある。
「来たわねッ!」
物陰から飛び出してきたジンへと一発、二発。 着弾点をずらし立て続けにオルトロスを放つ。
――しかし、相手はそれを読んでいたのか。 弾丸が如く突撃しながら、機体をぐるりと一回転させた。
結果、胴へ当たるはずだった弾は僅かにずれ、片腕と頭部を破壊するだけに留まる。
本来ならばそれだけでも、相手の動きを止めるに十分な損傷だったろう。 …相手が人間だったなら。
だが、相手はその損傷をものともせず、速度を落とすことなくザクへと肉薄する。
両手持ちの砲を用い、射撃に専念していた彼女がそれに対応するのは、もちろん困難なことで。
容赦なく振り下ろされる、黒い刃を前に動くことも出来ずに、絶望に凍りつく。
――瞬間。 二機の間に割り込んでくる緑の影。
肩のシールドを用い重斬刀の一閃を阻み、シールドを捻ることでジンの刀を掌から弾き飛ばす。
敵の武器を奪えば、後は一方的なもので。
乱入してきたザクは脚部を跳ね上げ、ジンの腹に強かな蹴撃を与え、無理やりに距離を開ける。
そしてすかさず、手にしていた突撃銃を構え、コクピット部分を撃ち抜く。
……その、一連の鮮やかな手際を、ルナマリアは先ほどの絶望から抜け出せない様子で、ぼんやり眺めていた。
『――ぉぃ……大丈夫か? 返事をしろ』
「…ぁっ? は、はい! 大丈夫です、アスランさん」
自分を助けてくれたザクから伝わってきた青年の声に、ハッと我に返ったルナマリアは慌てて返事する。
『いいか。 こいつらは無人機だ…自らの被害をまるで気にする相手じゃない。
胴以外を狙った攻撃では怯まない。 確実にコクピットなり機関部を狙い、確実に仕留めるんだ』
「りょ、了解」
モニター端にその姿を映す青年からの言葉に、ルナマリアはどもりながらも頷く。
画面の彼は、彼女の姿を一瞬心配そうな眼差しで見ていたが…それ以上何も言わずに通信を切ると
鉄の身を翻し、混戦の様相を見せる宙域へ向けて飛び去っていった。
「……あれが、アスラン・ザラ……ザフトのエース…」
あっという間に離れていく背姿を、少女は呆然とした様子で見送っていた。
――戦況は当初の予想を覆し、圧倒的に不利な方向へと進んでいた。
特にジュール隊は出撃経験の浅い新兵も少なくなく、『レギオン』搭載機の並外れた行動を前に
対処しきれずに一機、また一機と撃破され、均衡していた戦力差は開いていく。
「くそっ! いいようにやらせてなるものかァァ!」
手にした長柄の武器、ビームアックスを振りかざし、
部下の機体へとシールド内蔵のガトリング砲を向けていたシグーを薙ぎ払いながらイザークは吼える。
シグーの胴を鮮やかな袈裟斬りに両断し、即座にその場を離脱し、味方を襲う敵へと襲いかかる。
獅子奮迅の動き…見ようによっては無謀な突撃にもとれる戦いぶりを繰り広げる
彼のスラッシュザクファントムをサポートするのは長大な砲を抱え持つ、ディアッカのガナーザク。
背後へと回ろうとするジンの背を正確に撃ち、撃破する。
『このまんまじゃあマズイよなぁー、イザーク。
敵はまだ、半数も減ってないってのに』
「分かってる! だから俺たちがやらねばならんのだろうが!」
ディアッカからの通信に、秀麗な面を歪ませながらイザークは言う。
そう、こちらへ差し向けられてた30機以外にも、船団を襲う残り半数は未だ健在。
なんとしてでも目の前の敵を倒し、一刻も早く船団への攻撃を止めさせなければいけない現状だ。
さしものエースパイロットにも、疲労の色が見え始めていたその時、横手から飛来する一機のジン。
僅かに反応の遅れたザクファントムへと、M68キャットゥス無反動砲を向ける。
青年は自分の失態に舌打ちしながら、なんとか直撃だけ避けるべくその場を離れようとする。
…しかし、砲撃は来なかった。 背後から飛んできた一条のビームに、機動停止するジン。
その閃光の形状はオルトロスのものではない。 驚きの表情でイザークがそちらを向くと
『無事か!? イザーク!』
聞きなれた、それでも久方ぶりに耳にした声はビームを放った主…ザクからのものだった。
「アスラン! 貴様今まで何処で何をやっていたんだァッ!」
『ちょ、ちょっと待て、今はそんな事を話してる場合じゃない。
…それに、俺がオーブにいるってことは以前カガリから伝えられてただろう?』
以前、自分がザフトにおけるライバルと決めていた男、アスランの登場に思わずイザークは怒鳴ったが
伝えられてきた、素っ頓狂に驚いた声と、彼の告げる内容を聞き、声量を僅かに下げる。
「…分かっている。 今は一刻も早く船団の脅威を払わねばならない。
シホ、お前はウィッジの小隊の援護に回れ!
ディアッカは俺について船団の方へ来い。 アスラン、貴様もだ!」
『あいよっ、任された!』
『了解しました、ジュール隊長。 …どうかお気をつけて』
『分かった、イザーク。 お前の指示に従おう』
「…フンッ! 当然だ民間人!」
己の部下からそれぞれ返ってきた言葉、そして本来部外者であるはずの過去の戦友の言葉に
イザークは憎まれ口を吐きながら、それでも心強い援軍の登場に口の端を上げつつ、ブースターを吹かせ速度を上げる。
そして、彼の先導に続きディアッカのガナーザクと、アスランのザクも駆け出す。
未だ無防備な身体に攻撃を受け続ける移民船団と、その襲撃者たち目がけて。
敵との交戦を開始したMS部隊を、固唾を飲んで見守るのはミネルバのブリッジクルーたち。
彼らはその場を動かず、ただ戦況を見守り、帰還してくる機体を収容する役目のほか、今は出来ることはない。
なにせ、相手はMSだけなのだ。 艦砲射撃をしてもそうそう当たるはずもなく、絶対撃つわけにはいかないのだ。
下手をすれば…自分らが救うべき民間船を盾にされるのがオチなのだから。
せめて、こちらへも手を差し向けてくれれば攻撃の術はあるものも
はじめから『レギオン』たちは戦艦に見向きもせず、こちらのMS部隊と船団への攻撃のみを行っている。
不利な戦況だというのに、こちらには支援のしようがない。 その状況に誰もが、歯がゆい思いを抱いていただろう。
居たたまれなくなるような沈黙の空気。 それが突如、切り裂かれる。
「ブルー18、マーク7チャーリーに連合艦隊を確認
アガメムノン級が2隻と……アークエンジェル級が一隻です!」
「ッ?! なんですって!」
バートからの報告はあまりに唐突かつ、衝撃的な内容で。
移民船団を挟んで、自分たちとは反対側から現れた3隻の地球連合軍戦艦。
しかも、その中に含まれているアークエンジェル級は…過去にザフトが何度も痛手を受けている戦艦だ。
だが…2番艦『ドミニオン』は前大戦で沈んでおり、1番艦アークエンジェルについても戦後行方知れずのはずだ。
「あ、アークエンジェル級だと?!
まさかあれまで再び建造しているのか!」
タリアと同じく、その報告に驚きの声を上げたのはカガリ。
やがてメインモニターの一角に映し出された映像の中心に見える、特徴的な形状の艦を見て、愕然とする。
それは、色は違えども彼女がよく知る戦艦と瓜二つで。
カガリはそれを見て、怒りを露わにする。
「一体……何処まで軍備を強化すれば気が済むんだ、連合は!」
ダンとシートを叩きながら、歯噛みする娘。
しかし、彼女の反応とは違い、タリアは一瞬表情を明らませるとメイリンの方へと振り向く。
「メイリン、向こう側との連絡はつく?」
「……可能です! 少し待ってください!」
艦長から下された指示に、メイリンは相手の位置を確かめてから頷き、コンソールを操作し始めた。
支援?
一方、件のアークエンジェル級『ケルビム』のブリッジ内では。
眼前に繰り広げられる、一方的な殺戮劇にクルー全員が言葉を失っていた。
ブリッジ中央に位置する艦長席に座するシャーナも、悲嘆するように柳眉を下げ、瞳を細める。
『あのMSども………なんて事をしやがるんだ、ザフトめ!』
愛機のモニターに映し出される、ブリッジから転送映像を見ながら、ラガーシュは拳をコクピットシートに叩きつける。
痩せぎすの相貌に浮かぶのは、激しい怒り。 睨み殺さんばかりの視線を、空間を蹂躙するMSに向けながら。
移民船団へと攻撃を仕掛けている部隊は、識別コードを発していないものも、
それらはジンやゲイツといった、ザフト製のMSばかりで構成されていた。
一見すれば、ザフトの手によるものだと考えるのが普通なのだが…
「大佐、我々以外にも救援部隊がいるようです。
しかしこの識別は…ザフト軍です!」
『は? なんだと…』
オペレーターからの報告を伝え聞き、怪訝な声を上げるラガーシュ。
「ザフト所属コードの戦艦三隻と、
その艦載機と思われるザフト識別のMS部隊がアンノウン部隊と交戦中です。」
『どういうこった…仲間割れか?』
不可解な事態を聞き、眉根を寄せながらモニターの中で指揮官は唸る。
…そして、奇妙な出来事は続くもので。
「大佐、前方のザフト艦より通信がはいってます…私が応対してもよろしいでしょうか?」
『あ? …分かった、お前が相手しろ、シャーナ』
「はい、それでは…」
部隊の指揮官から許可を受けた女艦長は、コンソールを操作し、相手との回線を開いた。
操作から少しの間を置いて、メインスクリーンに白い軍服姿の女性が映し出される。
『ザフト軍所属ミネルバ艦長、タリア・グラディスです』
「こちらは大西洋連邦軍所属ケルビム、艦長のシャーナ・ラーミエル少佐です。
グラディス艦長、一体どのようなご用件でしょうか?」
所属を名乗る女性へと、自分も同じように名乗ったシャーナは、彼女へと用件を問う。
『現在、セレネ移民船団を攻撃中の部隊についてです。
あれは我が軍のテスト中に暴走した、無人MSです。現在ザフトの総力を持って攻撃していますが…
相手の数が多く、処理しきれないために被害がより拡大する恐れがあります。
そこで、貴艦に鎮圧へのご協力をしていただきたいのです』
タリアの語る説明に耳を傾けながら、シャーナは自分の前にあるコンソールの画面に映る男を見る。
モニター越しに彼女の視線に気付いたラガーシュは、無言のまま一つ、頷いてみせた。
「…我々もセレネ船団のSOSを受けてここへ急行しました。
その、暴走の経緯など気になる点は多いですが…事は一刻を争います。共に協力しましょう」
『感謝します、ラーミエル艦長。
なお、暴走機体は全て我が軍の識別コードを出しておりません。
混乱した戦場での識別は、困難なことかと思われますがお気をつけていただきたいです』
「了解しました。 我が部隊も速やかに出撃させます。御武運を…」
ミネルバとの通信が途切れると、シャーナは再びラガーシュへと告げる。
『大佐、お聞きの通りです。 ザフト軍識別の部隊は、現在のところ味方ですので、お気をつけ下さい』
「分かってるさ…無駄弾を撃ってる余裕なんざねぇ。 心配するな」
一連の会話を、腕組みしながら静かに聞いていた男はそう答えると、傍らのコンソールに指を踊らす。
僚艦を含む艦内全域、及び艦載機全て。彼の統括する部隊『シュヴァルツヴィント』全員に対して音声通信を送る。
「いいかぁ野郎ども! これから俺たちが相手するヤツらは、間違いなく地球人類の敵だ
無力な移民船団を群れ成して襲う、文字通り血も涙も無い、ただの糞以下の機械どもだ!
一切の遠慮はいらねぇ…容赦無用で撃ち砕け スクラップも残らぬ塵に変えてしまえ!
どうやら今回の事件に噛んでるらしいザフトからも、殲滅部隊が来てるようだが気にするな
いいな? 全て俺たちでブッ潰すんだ! 地球の敵は、俺ら地球の人間の手で排除する!」
『イエッサー!』
『やっちまいましょうぜ大佐! あんなオンボロ機械どもなんて!』
それは高らかに響き渡る、士気高揚の言葉。
指揮官の声に呼応するように、そこかしこから飛んでくるクルーたちの気合の声。 雄叫び。
それはMSパイロットたちのみならず、ブリッジからも、モビルスーツデッキからも、艦の機関部からも生まれる。
『了解っす、大佐。
無人のMSなんて、ふざけたモン作ってトラブル起こしてやがるザフトの鼻を明かしてやりましょうぜ』
ラガーシュの愛機に隣接するMSから伝わってきた声は、
MS部隊長を務める青年、ヴァルアス・リグヴェート少佐のものだ。
「おし……じゃあ出撃だ。
シュヴァルツヴィント! 全機、吶・喊ッッ!」
ラガーシュの言葉を皮切りに、次々と射出されていくMS部隊。
異様なことに、それらは全て漆黒基調のカラーリングを施されたもので。
宇宙空間の暗闇の中で、その輪郭はおぼろげなもので機体の判別がつきにくいが
もしもその全容を見ることが出来れば、特徴的な姿からすぐに判別できるだろう。
ダガーシリーズよりも鋭い、バイザー型のメインカメラ。 せり上がった肩部。 細身の体躯。
――GAT−04 ウィンダム。 それがかの機体が冠する名。
大西洋連邦を中心とし、ダガーLの後継機として開発された新型MS。シュヴァルツヴィントはそれらを主力としていた。
移民船団のいるポイントへと向けて飛び立つ群の中、
先陣を切るのはアクセント程度に真紅を差したカラーリングのウィンダム。
そこから、全部隊に対して通信が送られる。
「全機に通達。 無人機の連中は識別コードを発してない。
ザフトの識別出してる奴らは、今回は味方だ。 間違えて撃つなよ?」
旗頭を掲げるように、群の先に立つ機体を駆るのは指揮官であるラガーシュ当人だった。
彼の元へ、一機のMSが群から飛び出して近寄ってくる。
これもまた、他と同様に黒に塗装されているが…機体は全く異なるもので。
かつて、少数生産され名だたるエースパイロットたちが愛用したとされるMS、ソードカラミティ。
それを駆るのは、ラガーシュの片腕であるヴァルアス少佐だった。
自分の傍らに寄ってきたその姿を見て、男は乗り手へと語りかける。
「ヴァル、一番槍はお前に任せる。 俺はあいつのフォローに付いておく」
『了解。 …しかし、ちと過保護じゃあないすか? 大佐。
あいつだってやれば出来るヤツだと思いますがね』
「俺から見りゃ、まだまだヒヨっ子さ。 危なっかしくてしかたねぇ。
…そりゃ、才能があるのは認めるがな。それは戦場でしか磨けねぇものだ。 そして、死んだら元も子もない」
返ってきた青年の言葉に、ラガーシュはバイザーの奥で微かに苦笑っていた。
ケルビムのMSカタパルト…出撃の手順の関係で、他の部隊よりも少し遅れて、出撃せんとする機体が一機。
そのコクピットに座る少年は、初めての宇宙での実戦に、緊張感を覚えながら発進を待ち構える。
『ストライクmk−U発進準備。 装備はストームパック』
彼の乗る機体。 それは先の大戦で活躍した、GAT−X105ストライクの後継機として開発されたMSで。
新型のストライカーパック『ストーム』の試験に用いられ、その後シュヴァルツヴィントへ渡されたものだった。
その背部に、対艦刀が固定された大型のブースターパックが装着され
同時に左手にも、ビームガトリングをマウントしたシールドが装備される。
『ストームパック装着完了。 ストライクmk−2、発進どうぞ!』
『無茶しないでね。 新兵は任務よりも、まずは生還することが大事なんだから』
「ありがとう、シャーナさん。 いってきます」
管制官のオペレートの後に伝わってきた、艦長の柔らかな声に彼は深く頷き、敬礼を返す。
そして、真っ直ぐ正面を睨み据える。 開きつつあるシャッターの彼方に見える、チラチラと輝き走る戦火を。
――あそこに。 何の罪もない、戦争の被害者たちを襲っている奴らがいる。
バイザーの奥に隠れながらも、なおその鮮やかな色彩を宿す真紅の瞳が、怒りに眇められる。
「絶対に止める…一人でも多くの人を守ってみせる!」
己の胸中に渦巻く言葉を取り出し、確かめることで鼓舞されていく彼の心。
かつての自分には――恐らく、何を守る力も無かった。
それゆえ、欠けた身体と命以外の、それまで持っていたはずの『全て』を失ってしまったのだ。
いたであろう家族も、それらを焼き付けていたであろう記憶すら、彼にはない。
――代わりに、新たにもたらされたのは悪夢。
周囲を包む炎、黒煙、爆風、瓦礫の山。 そして、その中に佇む、死の使いが如き蒼い翼のMS。
恐らく、それが全てを失った瞬間。 彼はその悪夢にいつもうなされ、怯え続けていた。
けれどやっと――自分はここまで来た。
力を得ることで、全てを奪った、理不尽な暴力の恐怖を克服するために。
そして、空っぽのまま打ち捨てられ、死にかけていた自分の命を救い。
胸の空白を埋めるモノ。人の暖かさを、居場所を、家族を与えてくれた人たちに報いるために。
仲間たちはその思いを受け止めてくれて、自分に多くの事を教えてくれた。 戦う術、守る術、そして生きる術を。
特に、養父であるラガーシュは本当に親身になって自分に接してくれた。 厳しくも優しくも。
そうやって手に入れた力を――ついに使う時が来た。
かつての自分と同じ境遇…立ち向かいようのない暴力の前に、命もろとも全てを奪われていく人々。
何よりも、そんな人々を守りたかったから…自分はここまで来た!
「シン・イゾルデ、ストライクmk−U、行きます!」
彼の声と共に、ストライクmk−Uはカタパルト上を滑走し、虚空へと身を躍らせる。
そして、絶望と恐怖が支配するフィールドへ向けて、背中のブースターを吹かし、飛び込んでいった。
506 :
あとがき:2006/01/01(日) 20:28:54 ID:???
戦闘描写にブリッジ内描写と、苦手分野の場面ばかりに埋め尽くされて息も絶え絶えだった舞踏の人です(長っ
今回は最長の作品になりますね…制作期間も、もっとかかるもんだと予想されていたのですが、
ここで投入された燃料…無印種&種運命のサントラにより、種割れできました!(ぉ
ううむ、戦闘描写の時に聞くと非常に燃えます。あなどれませんこれ。
さて、今回はオリジナル部隊、しかも大規模なのを出すというオリジナル色満載の内容でしたが
ちょっと目立ち過ぎじゃないだろうか…でも初登場なのでこれくらいやっていいものかしらんと試行錯誤してました。
皆様からの反応が気になるところです…
ちなみに今後、彼ら及びファントムペインにスポットが当たることもたびたびあると思います。
そしてもう一つ、ついに出てきたシンについて。
他の作品とは異なるものを書いてみたいと思い、このような立場にしてみました。
一風変わった環境に置かれたシンが、どのように成長していくのか。これも物語の根幹としたいところです。
舞踏GJ!
新型AA級ですか!うーん、燃える展開ですなぁ。
無人機ならではの非情っぷりがエグイ。じわじわと……ですか。
よもやシンが出てくるとは思いませんでしたが。
なにはともあれ、新年早々いいものを投下していただきありがとうございます。
スレの終わりにいいものを見れてよかったです。
今、486Kだから丁度いいじゃないの
>>460 アスランのゲイツはやっぱり赤いの?ねぇねぇ
511 :
256:2006/01/02(月) 12:57:14 ID:???
舞踏乙!
戦闘描写が良くて、バトル好きな私には至福のひと時でした!
黒で統一されたMS部隊というとCVのブラックバンガードを思い出す俺は
おっさんなのか?w
そして、最後に出たストライクMkUとシン!!やっぱり燃える!!
ファントムペイン版や隻腕シンとは違った活躍、期待します!
しかし、シンとケイが同じ陣営か〜これは面白くなりそうな予感・・・
こっちも面白い……orz
読む作品が四つに……
舞踏の人乙です
オリキャラに関しては、個人的には同人アニメ版みたいにヤリすぎなければ問題ないと思ってます
オリジナル展開な上にキャラ数もかなり多いので、上手くまとめきれるかが懸念ではありますが、見事風呂敷を畳めれば名作になる予感がします
がんばってください
単発設定小話 脇話「ファントムペインとインド洋」
〜インド洋、ガーティ・ルー内会議室〜
ネオ「よし揃ったな。じゃあ作成会議始めるぞ」
ステラ「うぇ〜い」
ネオ「・・・ステラなぁ、その気の抜けるような返事はやめてくれよ」
ステラ「・・・ごめんなさい・・・・・・」
ネオ「よし。じゃ気を取り直して・・・諸君!我々は先ほどザフトの船、ミネルバを確認した」
アウル「へぇ、やつらもこの海域にいるってことか・・・」
ネオ「うむ。で、宇宙での借りをそろそろ返さないとと考えているわけだが・・・」
スティング「・・・ネオ。やつらはミネルバだけなのか?」
ネオ「さっすがスティング、リーダーはやっぱ違うね。やつらは地球のザフト軍とすでに合流しているようだ」
シン「ふーん・・・俺とスティング、アウルにステラっと・・・ちょっと戦力不足か?」
アウル「シン、ここは海だぜ。やっとアビスの本領が発揮できんだよ。戦力十分さ!」
ネオ「アビスにはもちろん大活躍してもらうがな。今回はせっかくウィンダムの大隊を借りることができたんだ」
スティング「へぇ、じゃぁあまり雑魚にかまわなくてもいいんだな?」
ネオ「そうゆうこと。でもスティング。今回はアウルに主役をゆずれよ?」
アウル「そうそう、これまでシンとスティングばっかだったもんね。今回は俺がしゅ・や・く!」
ステラ「・・・ステラも主役してない・・・・・・」
アウル「・・・ガイアは微妙だからなぁ。まぁサポートも立派な仕事だよ?」
ステラ「・・・仕事・・・・・・わかった。ステラ、サポートする・・・・・・」
ネオ「うんうん、いいねぇこの雰囲気。チームって感じがするなぁ」
シン&スティング「ああ、そうかい・・・」
ネオ「すねんなよ、二人とも。ああそれとなシン、お前はこれから別行動だ。」
シン「!?ハァ?別行動?・・・なんでだよ!?」
ネオ「上からの命令さ。これからすぐにロシア経由でベルリンまで飛んでくれ」
シン「大佐の上って一人しかいないじゃないか・・・くそ、せっかくインパルスと決着つけれると思ったのに」
アウル「っくっくっく。さすが人気者は忙しいね」
スティング「今回は俺たち3人に任せておけよ。メインデッシュは残らないけどな!」
ステラ「・・・シン、風邪・・・ひかないでね?」
シン「おぉうい!もっとこう、シン行くな!とか残ってとかないわけ?・・・なんか俺のけもんじゃん!」
ネオ「まぁまぁお前にはオーブ謹製ムラサメをやるから。な、今回は我慢しろよ」
シン「え?アプレンティスは?」
ネオ「お前がシステムチェックさぼるからいまだ調整中だ!」
シン「いや、もらったものはすぐにチェックしたぜ?まだ調整中ってことはないだろう!?」
ネオ「問題は他人事じゃなくて、お前自身のことなんだよ。・・・要するにお前と機体の相性の調整がまだ
不完全なの。システム系は成績優秀だったろ?移動中に自分の思うとおりに修正しとけってこった」
シン「・・・・・・へいへい・・・・・・」
〜出発するシン〜
シン「で、なんでまた偵察型なの?」
ネオ「ちっちっち。よ〜く見ろよ。背中の円盤の淵を・・・・・・」
シン「ん〜・・・・・・ネフェルテム・・・か!?」
ネオ「あれのテストもしといてくれよ・・・」
ステラ「・・・・・・シン、がんばって・・・」
シン「・・・ステラ・・・ありがとうな。見送りにきてくれて」
完
保守カキコ
ヒトイネ(爆笑)
みんな次スレに行ったからだよ
たかだか10レス前くらいちゃんと読めや
518 :
通常の名無しさんの3倍:2006/01/05(木) 09:19:06 ID:R62JzUbT
ume
あの悪趣味なメッキを剥がしただけで、かなりまともに見えるな
個人的にストライクMkUはIWSPあたりで落ち着いて欲しいかな
そんなことより、普段感想書いて下さってる皆さん。ちょいと聞いて下さいな。
資料にしようと思って休みの間に種デスのビデオ借りてきて見たんですよ。種デス。
戦闘シーンだけチェックしようと思って。
……激しく創作意欲が萎えますた orz
いや、だからこそ、書いているという側面もあるんですが……なんというか、久しぶりに見て「当てられた」感じで。
もうちょっと毒気が抜けるの待って書かないと、なんだか悪い方向に引っ張られてしまいそうです……
きらきゅんがしゅつげきしてふるばーすとしても、なおらないよ! 別の病気になるだけだよ! (゚∀゚)
他の作者様の作品、じっくりゆっくり時間かけて読んで、毒抜いてきます……。
>>522 内容を確認するだけなら小説にしといた方がいい、マジで
心理描写はともかく事実関係や設定は、一応全部公式のはずだからさ
あの本編は本気で死ねる
漫画版でも駄作にとりわけ強い耐性を持つMARスレでさえ死人が続出したほどだ
どんなに自画自賛しても二次は二次、と。
二次でも一次でも惨事でも、良いものは良い 悪いものは悪いさ
種は素材は悪くないんだよ 全部が悪いわけじゃないんだよ どっか重要なとこが狂ってるけど
優れた部分もあるからこういう二次もでてくるんでないの
種死はあれだな、雨降って土砂崩れって感じだな
固まらなかったとゆーか、固められなかったとゆーか・・・
・・・・・・たった今「今日の出来事」で種の曲使われてたなw
まあ曲だけはいいからな
本当にアニメで唯一褒められるとこ
曲か・・・好きな曲は「ミッション開始」、「覚醒シン・アスカ」、「キラ、その心のままに」だな
「悪魔との契約」だっけ?
デスティニーとレジェンドが初めて登場した時の曲。
あれは素直に格好良い曲だと思った。
曲しか良いと思わないアニメの板になんでいるの?低学歴さん
>>529 あれはあれで好きだが、やはり歌詞つき専用曲が欲しかった
くそ、ヴェスティージ・・・
連合好きの自分は「戦略進展せず」と「始まりが故」にがお気に入り
これSS執筆中はこれよく聞いてる
設定とかは良いのあったりするからこそ
種、種死と関わらず素晴らしいSSが生まれてくるんだよなぁ
料理人の腕が良いとここまで美味しくなるというのに
握った拳の強さで砕けた
願いに血を流す掌
果てない翼と鎖はよく似て
重さで何処にも行けずに
失くすばかりの幼い眸(ひとみ)で
人は還らぬ星を偲(おも)う
掲げたそれぞれの灯を命と咲かせて運んで往くことが運命
耀(かがや)き刻む
誰もが優しい刻(とき)の痕跡(きずあと)
終わって泣いても代わりを作って
総ては忘れる為に在る…?
明日が空から降る羽のような醒めて切ない幻でも
夢中で傷つく事を「イキル」と云うなら消えない君だけが真実
残して此処に
眩しく儚い僕等の痕跡(あと)を
掲げたそれぞれの灯を命と咲かせて
運んで往くことが運命
耀き刻む誰もが優しく
夢中で傷つく事を「イキル」と云うなら消えない君だけが真実
残して此処に
眩しく儚い僕等の痕跡(あと)を
「キラの歌」ねぇ・・・
,. <`ヽ、 `丶、ヽ>、 /∨ | : ┃┃
/ __ `ヽ `ヽ  ̄ ヽ /7 / | :::.. ┃┃
// /へ \ > > へ 〈 ヽ // / /^! .:::::::... ┃┃
// く ヽ//// / へ\\ i // / / / ::: ┃┃
i〈 `丶、__// // \\`!'ノノ / / ..:::::... ┃┃
,.. -‐-L `丶、__/ // / \ ヽ V{ {. / ::::. ┃┃
〔 `丶、 く く く ◇ > 〉{ .::: ... } .::: ┃┃握った拳の強さで砕けた
ヽ、__/TT>-、 `丶、ーゝ_\ \_/ / !`丶、 .::::::::/ .::::::... ┃┃
_∨/彡Y⌒ヽ、、 `丶、 ̄ ̄ ̄ / ヽ::/ ┃┃ 願いに血を流す掌
/ r{ / { 入 ヽ三>-、_ー一'′ ____,ノ'´ ┃┃
r┘ | }‐''"´ヽヽ〈{  ̄ 大_け¬ ̄.:: r┘┃ _ ┃┃果てない翼と鎖はよく似て
ノ レス ゙L」 .:: ∨/ / ┃ _/ l ┃┃
./ |V >、 ! / _」 ̄ ┃ // |r┐ ┃┃ 重さで何処にも行けずに
l ヽ_」 |ヽ、 ハ、 __,Y/ ┃ 〃' i' l : ┃┃
! \レ'」ヽ 丶、 ┬'/ _/// / / :::...┃┃ 失くすばかりの幼い眸(ひとみ)で
ヽ `ヽ ハ'フ〔「 ` ー一' / f'/「/ / ! .:::::┃┃
ヽ 「⌒〈 _| ,. -‐'′ /ノ l l / | ...:::::::┃┃ 人は還らぬ星を偲(おも)う
\ 丁、/↓/ i ..:::::::: | ..::::::::┃┃
\ /◇ヽレ′ | :::: ..::::| .::┃┃
{\/ ハ /  ̄ ̄ \::::/ ...::::┃┃
|ヽ.// } j { `{ . ..::::┃┃
|〉 / / / / / ̄ヽ〈\_」 } :::┃┃
|ハヽ∨ ノ,ノ ヽヽ. r┘ .::::┃┃
|ハ ∨ { / === V / ....:::::...┃┃
_,... ------- 、__
_, イ//r‐‐<テ三三三`ヽ、
,∠,rこ二二二、 ̄\:ヽ二二:.:.:ミト、 ニ_|_
/://(Tト、:.:.:.:.:. ̄≧、ヽヽ \ミト、ミト、 ニ !
/://:.:./ハヘ:.ヽTト、:.:.:..:ヽ¬Eヘこヘ:.ヽ:ミト、 □ |
_////:.:.:.:l:.!:.:.ヾ:.:..:.:ヽ:.「:.ヽ:.:.ヽ:.ヽ:.:.「カレヘ、:.:.:.ト、 ―┬―
,....''´::::://,イ7!:.:.:.:.:!:l:.:.!:.:ト、:.:.:.:l:ト、:.:.ヽ:.:ヽ:.ヽヽ:.⌒!ヽ、:!厂! | |二|二| |
l:::::::::::::l l:':.:ハi:.:.:.:.:.N:.:.!:.:.い:.:.:.:!ト、:.、:.:.\:ヽ:.:',:',:.:.:.ト、 V /´\ | |_|_| |
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l:::::::::::::l |:.:.!个ハト、:.:.!:.:.:ヽ:.:.:.:.:ヽリ:.:.ヽ:.:.ヽヽ:.:.l:!:!:.:l:.:.:!:.|:! l::::::::::::::::| フ |二|二|
l:::::::::::::l |:.:.!:.l:.!:.:い:.:l:ト、:.:ヽ:.:.:.:.:\:.:.:ヽ:.:.',:.',:.:九:.:!:.:.l:.:!:! !::::::::::::::::! ) !‐‐!‐┤
l:::::::::::::!ハ:ヽト!:.:.ト、:ヽ:.:.ト、::三ト、:.\:.:.ヽ:.!:.!:l:.ハ:!:.:.l:.:!:! !:::::::::::::::' '^ー―――
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