シンは仮面ライダーになるべきだ

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898仮面ライダー運命 第三話
白み始めた都会の空に、黒点がぽつぽつと浮かび上がる。
黒点達は、カァカァと声をあげ、冷えた空気を切って飛んでいる。
いつもと同じ風景のはずだった。
違うのは、自分自身。
体中がぞわぞわして、まるで虫が這いずりまわるような感覚。
背中が痛い。骨が皮膚を突き破りそうな感じがする。
睡魔が襲ってくる。徹夜明けのせいだろうか?
意識を失う直前、数日前にすれ違った、ピンクの髪をした少女の歌を思い出した。
なんだったか。たしかこんな歌だった。
「ほ……し…の…ふる…ば…しょ…で…」
何故そんなことを思い出し、何故それを口に出したのか。
それを知ることはもう、彼にはできなかった。

「さて、まずはウィルスの特徴から。いいかしら、シン?」
しかめっ面で座っているシンの前で、ルナマリアがボールペンで掌を軽く叩いている。
『ザフト』に入ると決めてから、2日後。
ルナマリアに呼び出され、シンは彼女の部屋に来ていた。
床にダンベルやら鉄アレイやらが転がっており、壁には空手や合気道などの賞状がかけられている。
正直、あまり女の子らしい部屋とは思えない。
目の前のテーブルには、結構な厚みをもった白い大きな封筒が置かれている。
「ウィルスの特徴は、『頼る』、『増える』、『変化する』、『隠れる』、『渡り歩く』。『Rウィルス』も、細胞分裂に頼って増殖し、ゲノムを変化して宿主細胞のゲノムに入り込む。
そして次から次へと感染することで渡り歩く。『Rウィルス』の場合、空気感染することはないから、一気に『感染体』が増えることはないわけ。
ちなみに正式名称は『ラビアート・ウィルス』よ。ここまではいいかしら?」
「・・・・・」
眉根を寄せ、不満気な表情でシンがルナマリアを見る。
「じゃあどうやって感染するのか?これは、『感染体』の特徴とリンクしてるわけ。さっき渡した資料の中にある写真を見て」
言われてシンは、手元に置かれた封筒から、何枚かまとめてある写真を探し、渋々といった感じで取り出した。
写っているのは、金属質の皮膚を持つ怪人―――――『感染体』達の姿。先日ルナマリアが倒した『ジン』や、シンが倒した『ゲイツ』の写真の他に、見たこと無い怪人、あるいは明らかに人型でないものも写っている。
「『感染体』の特徴の一つに、身体の一部が剣や爪のような、鋭利な刃物の形状をしていることがあげられるの。その刃物で傷つけられた場合に、ウィルスに感染すると推測されるわ。だから……」
写真を見つめているシンの頭に顔を近づけ、険しい表情を作る。
「生身で戦おうなんて、間違っても考えないように、って聞いてるの!?」
「聞こえてるよ!大声だすな!!」
眉間に寄っていたシワをさらに深くし、ルナマリアに怒鳴るシン。
「こんなことより、『キラ』と『カガリ』のこと教えろよ!俺がなんのためにお前等の仲間になったか、わかってるだろ!?」
「なに言ってるの!『感染体』から人々を守るのも、あたし達の仕事でしょ!?アンタも、そのつもりで「ザフト』の一員になったんじゃなかったの!?」
「それもあるよ!だけどそんなの、片っ端からぶっ潰してけばいいんだろ!!俺が本当に知りたいのは―――――」
「たった一匹倒しただけで、いい気にならないの!『インパルス』の力だって、使いこなしてるわけじゃないでしょ!?」
「なんだよ!俺がいなきゃ死んでたくせに!!」
「何ですって……!」
「とにかく、こんな話続けるんなら、俺は帰る!」
封筒を床に叩きつけ、力任せにドアを開けて部屋の外へ出て行くシン。
「こら、待ちなさい!……もう!なんなのよ、あの子は!!」
899仮面ライダー運命 第三話:2006/03/15(水) 23:25:25 ID:???
(ったく、ようやく手がかりを掴んだと思ったのに!)
家の2階にあるルナマリアの部屋を出て、階段をのしのしと下りていく。
その時だった。
下りたすぐ先にある玄関のドアが、ガチャリと音を立てて開いた。
「ただいまー!……って、あれ?」
大声を張り上げて中に入ってきたのは、赤い髪をツインテールに結った、やや幼い顔立ちの少女。
どことなくルナマリアに似ている気がした。
「……」
「……あ」
一瞬固まる、場の空気。
そしてドアに背中をくっつけ、赤毛の少女が叫んだ。
「ど、どろぼー!?」
「違う!!俺は―――――」
即座に否定するシン。弁解しようとしたが、うまく続かない。
ドアに張り付いたまま、シンに疑惑の眼差しを送る少女。
「俺は、その……」
「シーン!せめてこれもって帰りなさい!」
少女の突き刺すような視線に困惑していると、上の階からルナマリアの声が聞こえてきた。
シンと少女が同時に、資料が入った封筒を手に持って駆けてきたルナマリアを見やる。
「あ、お姉ちゃん!泥棒よ、どろぼー!!」
「違うって言ってるだろ!」
少女がルナマリアに叫び、シンが少女に叫ぶ。
「あらおかえり、メイ。―――――その子は泥棒じゃないわよ。あたしの後輩」
「えっ!!」
「後輩…?」
『メイ』と呼ばれた少女は素っ頓狂な声をあげ、シンは低い声を漏らす。
やがて、結った髪を揺らしながら、少女がシンの前までパタパタと駆けてきて、申し訳なさそうに頭をさげた。
「ごめんなさい!いきなり泥棒扱いなんてしちゃって、ホント、ごめんなさい!!」
「いや…別に、そんなに謝んなくてもいいよ。捕まったわけじゃないし」
ぺこぺこと何度も頭を下げる少女に、素っ気なく言うシン。
そして、封筒を片手に階段を下りてきたルナマリアが、少女の横に立って言った。
「シン、この子はメイリン。あたしの妹よ」
「妹?」
そういえば、あまり興味がなかったため、ルナマリアの家族構成について聞いていなかったことを思い出した。
「メイリン・ホークです。どうぞよろしく」
満面の笑みを浮かべ、ペコリと頭を下げるメイリン。
「…シン・アスカだ。じゃあな」
対するシンは素っ気ない態度のまま、ドアを開けて出て行く。
「あ、待ちなさいって!これ持って帰れってば!!」
ルナマリアが資料の入った封筒を持ってそれを追いかける。
「う〜ん……なんか、触ると爆発しそうな人だなあ」
中に残されたメイリンが、ぽつりと呟いた。
900仮面ライダー運命 第三話:2006/03/15(水) 23:26:49 ID:???
「シン!ちょっと待ちなさいってば!!」
彼を追いながら、何回「待て」と言ったのだろうか。
正直言い飽きた頃、ようやくシンは止まった。
「まったく…ほらこれ、『感染体』と『インパルス』に関する資料。ちゃんと目ぇ通しておきなさい」
シンの前に回りこみ、胸元に封筒を押し付ける。
ルナマリアの顔を睨みつけ、それを受け取るシン。
「……なによ」
「お前、妹がいたのか」
「それがどうかした?」
「両親は?」
「…いないわよ。それがなに?」
「なんでこんな危険な仕事してるんだ?」
「どういう…意味?」
「もし、お前に何かあったら、一番悲しむのはあの子だろ!?なんで…なんでそばにいてやらないんだよ!?」
まただ―――――。
初めて会ったときに感じた、シンの殺気。
あのときほど強烈ではないが、ルナマリアは肌にチリチリとした感覚を覚えた。
どうやら家族の話になると、他人事でも熱くなる性質のようだ。
「……あんたが口出しすることじゃ、ないでしょ!」
シンから目を逸らして言い放つ。
シンはしばらくルナマリアを睨んでいたが、やがて彼女の脇を通り過ぎながら、こう言った。
「しばらくは俺一人で戦う。お前は妹のそばにいろ」
901運命作者:2006/03/15(水) 23:37:06 ID:???
第三話Aパート

平成っぽくいこうと思い、あえて「仮面ライダー」という単語はださないで行こうかと

書いてて気付いたが、種死のサブキャラの性格がいまいち掴めてないかも・・・・
いやだからってメインが掴めてるなんて自信もないが

読み直して気付いたが、俺の書く話は戦闘シーンが短すぎるうえに地味だとわかった。
ちょっと長くすることから始めてみるわ。
902通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 23:43:38 ID:???
>>901
パーフェクトハーモニー乙

てかルナさん あんた
>>「あたし、の名前・・・・勝手に、省略、しないで」
って言っておいてそれかw
903仮面ライダー運命 第三話:2006/03/16(木) 15:08:43 ID:???
(なんなのよ、偉そうに!)
シンの言葉が頭を巡り、ルナマリアは不機嫌に歩く。
(言われなくたってわかってることを、まったく!!)
苛立つ気持ちを抑えられず、道端に重なっている落ち葉を蹴って散らす。
不意にポケットの携帯電話が鳴った。
画面には見覚えのある電話番号と『レイ』という名前。
「もしもし?―――――もう、大変よ!あたし一人じゃ、手に負えないわ、あの子!
―――――え、ホント?―――――いいわ、あたしが取りに行くから。場所は?
―――――うん、わかった。すぐ行くわ」
かけてきた相手との通話を切り、すぐさま別の相手に電話する。
数秒後、よく知っている声が、電話の先から聞こえてきた。
「もしもし、メイ?ちょっと急用ができて遅くなるから、夕飯は自分で作って食べてくれる?
―――――え?いやそんなんじゃなくて、仕事の関係よ。
―――――そういう話は、また今度ね。戸締りしっかりしときなさいよ。じゃあね」
ポケットに電話をしまい、進路変更して歩き出すルナマリア。
そして、シンが最後に言った言葉を思い出し、心の中で叫んだ。
(一人で戦えるわけないでしょ!)

自分のことを、頭がいい人間だと思ったことはない。
少なくとも学はなかった。だからといって、『バカ』と言われて腹が立たないわけではない。
自室に戻ったシンは、ルナマリアから渡された資料に目を通しながら、そんなことを考える。
(なんでこう、回りくどい言い回しやら、わざわざ難しい言葉選んで使うんだ?)
いい加減かったるくなってきたが、「一人で戦う」と言った以上、敵のことと自分のことをよく知り、少しでも有利にな状況を作らなければならない。
我慢して読み進め、ルナマリアの部屋で教えてもらったことの他にわかったのは、
・『Rウィルス感染体』が最初に現れたのは、オノゴロ島事件よりさらに半年前。
・『感染体』に傷つけられたとしても、死んだ肉体が甦り、『感染体』になるということはない。
・『ジン』や『ゲイツ』は、『感染体』の中では弱い部類である。
・感染した場合、自我を失って変身し、人を襲う。どんな形に変わるかは、不特定。
・『Rウィルス』のワクチンの作成には成功していない。
(『感染体』関してはこんなもんか・・・・これが全部正解ってわけでもないんだろうけど)
他に書かれているのは、人間より遥かに強いこととか、長々とした推測や仮説などであり、あまり理解できるものでは無いので、適当に読み流す。
『インパルス』に関する資料には、スペックやら武装の威力やらが回りくどく書いてあるようだ。
一番興味を引いたのは、専用のバイクが開発中ということ。『スプレンダー』という名称らしい。前面ガラスがモニターになるとある。
(ま、こんなところかな…)
少し身体を伸ばし、目をこする。
こんな長文を読んだのは初めてなので、正直疲れた。
何気なく、中古で買った小さなテレビのスイッチを入れる。
聞くともなしに、ニュースを聞いていると、ビルやマンションの屋上で、変死体が多数見つかっているとのこと。
(……ひょっとして)
そう思った直後。
甲高いアラーム音が部屋に鳴り響く。
ベルトと一緒に受け取った、『IPレーダー』―――――『感染体』を探知する端末が鳴っている。
有効範囲は半径5kmほど。
素早く手にとり、位置を確かめ、ヘルメットを抱えて部屋を飛び出す。
バイクに飛び乗り、レーダーが示す場所を目指した。
904仮面ライダー運命 第三話:2006/03/16(木) 15:09:41 ID:???
走っている間にも目標は移動していたらしい。
思ったよりも時間がかかってしまった。
(この辺のはずだけど…学校!?)
目標の位置を確認し、シンは焦った。
まさか―――――幼い子供達が、『感染体』の被害にあっているのか。
「くそぉっ!!」
バイクから飛び降り、レーダーを握り締めて校内へ走る。
時間は既に夕方なので、生徒が残っている気配はない。
『感染体』の反応は上の階から。
(やっぱり、さっきのニュースは―――――!)
一気に駆け上がり、屋上に出る。

夕陽に照らされる2つの影を、シンは見た。
そのうち1つは、体中から流れた血液で、アスファルトを赤く濡らし、倒れている。
格好を見る限り、警備員だろうか。
周囲の地面が細かく抉れているのが見えた。
もう一つ―――――ある程度は、シンが予想していた姿。
紫色をした金属の装甲に覆われた、重厚なフォルム。
錐体の形をした顔に光るのは、やはり紫色の瞳が一つ。
背中には左右に張り出したような、一対の翼。
黒光りする両腕は、銃ような形状をしている。
資料にもあった『感染体』―――――『バビ』とかいったはず。
翼が鋭い刃になっているとか。
奥歯を噛み締め、その紫色を睨みつける。
左拳を腰につけ、右腕を斜に伸ばして叫ぶ。
「変身!」
少年が放つ光が、空気を白く染める。
光が収まり、現れたのは、白の戦士『インパルス』。
その姿を紫の瞳に捉えたバビが両腕をあげ、弾丸をばら撒く。
跳びな退きがら、腰に装備されている光線銃を抜き、インパルスが応戦。
発射された3条の光線が空気を焼いて伸びる。
1発はそれたが、2発がバビの装甲を叩く。
続けて連射、装甲が焦げたバビが後退する。
追い討ちとばかりに、インパルスがさらに引き金を引いた瞬間。
バビが地面を蹴って飛んだ。
そのまま滑空し、インパルスから離れていく。
905仮面ライダー運命 第三話:2006/03/16(木) 15:11:27 ID:???
「逃がすかよ!」
駆け出して、逃げるバビを追うべく、屋上から飛び降りる。
校庭に着地し、同時に空を見上げる。
赤く染まった空から、紫色の怪鳥が一陣の風となって、高速で向ってくる。
身体をひねって直撃をさけるインパルス。
空気を裂いて通過したバビが向き直り、再び加速。インパルスを襲う。
背後から駆け抜ける一撃。背中を打たれ、白い戦士が地面に伏せる。
立ち上がった直後、紫に光る翼が正面から突撃してくる。
よけきれず、衝撃をうけてよろける。
(ちくしょう……!)
空中で嘲笑うかのように旋回するバビを睨みつけ、光線銃を乱射。
しかし、飛行スピードを速めたバビに、ことごとく回避される。
旋回をやめた疾風が、再び駆けてくる。
再び光線銃のトリガーを絞る。
先ほどと同じく、わずかに軌道をずらして回避。翼がインパルスを打つ。
―――――まずい。一撃のダメージは大きくないが、このままでは……。
焦る気持ちを募らせ、体勢を立て直す。
バビが旋回し、こちらを向く。
来る。と思ったその時だった。
「シィィィィィィン!!!」
不意に聞いたことのある叫び声が響く。
声のほうを見ると、赤毛の女を乗せたバイクが、高速で突っ込んでくるのが見えた。
(ルナ!?)
「でぇぇぇい!!」
前輪を持ち上げ、インパルスに突撃するバビに突っ込み、跳ね飛ばした。
激突されたバビが吹っ飛びながらも地面スレスレを滑空し、墜落を免れる。
ルナマリアのバイクが、ズザザザ、という音と砂埃をあげながら停止。
「シン!あんたのよ!!」
写真で見たバイク―――――スプレンダーとか言ったか?白い流線型のボディをしている。
「ルナ!なんで来たんだ―――――」
「いいから乗りなさい!」
駆け寄るインパルスを一喝するルナマリア。
「それから、『インパルス』のことなんだけど―――――」
「下がれっ!」
何か言いかけたルナマリアを、インパルスが突き飛ばして遮る。
離れた2人の間を、バビが風を切り裂いて駆け抜ける。
即座に光線銃を構えて撃つが、高速で飛びまわるバビに当てることができない。
906仮面ライダー運命 第三話:2006/03/16(木) 15:13:29 ID:???
2、3歩たたらを踏んで立ち止まり、ルナマリアが叫ぶ。
「変身!」
赤く輝く戦士、ガナーザクに姿を変えたルナマリアが紫の怪鳥を睨む。
一方、スプレンダーに飛び乗ったインパルスは、ガナーザクに光線銃を投げて渡す。
「お前が当てろ!」
ガナーザクに言ったインパルスがバイクを走らせる。
白い影が、校庭内を縦横無尽に駆け回り、赤い戦士も走り出す。
バイクに乗ったインパルスが機動力を活かしてバビを撹乱、ガナーザクがバビを狙い撃つ。
沈みかけた夕陽が照らす校庭に、光の筋と暴風が駆け巡る。
乱射される光線をよけつつ、鋼鉄の鳥がさらに加速。両腕から銃声をあげ飛び回る。
狙いなど定まってはいないが、ばら撒かれる弾丸の雨に、2人の戦士が動きを止める。
その隙を突いて、バビがガナーザクへ突撃。赤い装甲を叩く。
―――――こんなスピードじゃ当てられないわよ!
そう思ったガナーザクが、銃を捨てて左腕のシールドを構える。
「ルナ!?」
インパルスが叫ぶ。
それには構わず、ガナーザクはシールドでバビの突進をなんとか受け流す。
「止まるな!!……あたしが引き受ける!やるのはあんたよ!!」
切り裂くような一撃を防ぎながら、ガナーザクが叫ぶ。
「なに言ってるんだ!」
「いいから―――――グゥッ!走れ、シン!!あんたを信じる!!!」
シールドを通して、衝撃が伝わってくる。腕が痺れるようだ。
(ルナ!)
バイクを加速させ、ガナーザクに飛びかかるバビへ突進するインパルス。
しかし、遅い。シールドで弾いた直後に白い疾風が抜ける。
舌打ちして、方向転換。再び加速するが―――――外れる。
2人の思惑に気付いたのか、腕の銃でインパルスを牽制しながら、ガナーザクに突撃するバビ。
インパルスが駆け回り弾丸をよけ、ガナーザクもどうにか一撃をやりすごす。
(シン、早く!)
ビシリ、と音を立て、シールドにヒビが入る。
(もっと―――――もっと、速く!)
そう思った瞬間、『スプレンダー』が振動するような音をあげる。
そして、インパルスの白い装甲が青く輝き始めた。
(な、なんだ、これ!!)
白い戦士が、青く変身し―――――背中に赤い翼が形成された。
同時に『スプレンダー』がキィィィンと鳴った。
その直後、前面ガラスのモニターに文字が浮かび上がった。
907仮面ライダー運命 第三話:2006/03/16(木) 15:14:42 ID:???
『STINGER』

「ス、ティ、ン、ガー?」
「きゃあっ!」
聞こえてきた悲鳴に、はっとして顔をあげる。
見えたのは、シールドを砕かれバランスを崩したガナーザク。
とどめとばかりにバビが加速。
(ルナ!!!)
「うおおおおおーーーっっっ!!!」
瞬間。
空気を突き抜ける音を立て、青い炎を纏った『スプレンダー』が、凄まじい勢いでバビに突撃。
切り裂く疾風を、輝く彗星が砕き、貫いた。

「これでおあいこね」
「……」
変身を解き、バイクをひいて家路に着くシンに、ルナマリアが言う。
ちなみにシンが乗ってきたバイクは、ルナマリアが引き取るらしい。
「わかったでしょ?一人で戦うなんて、無理なの。あんたも、あたしもね」
「…なあ」
「ん?」
「さっきの戦闘中、『もっと速く』って思ったら、装甲が青くなって、羽が生えた。あれは、なんなんだ?」
「あ、それなんだけど……ごめん!」
立ち止まって頭をさげるルナマリア。
「実は、あんたに渡した資料、抜けがあったの」
「はあ?」
「あの青いインパルスね。名称は『フォースフォーム』っていって、ノーマル状態と比べてジャンプ力や機動力があがるの。
それに呼応して、『スプレンダー』もパワーアップするわけ。他にも、インパルスは違う形態に変身できるんだけど……
その辺の資料、渡すの忘れてた。ごめんなさい」
ぽかん、と口を開け、シンはルナマリアを眺める。
やがて、ルナマリアを睨み、叫んだ。
「何考えてんだ、お前!そんな大事なこと!!」
「だからごめんって!!」
謝るルナマリアに舌打ちして、シンは歩みを速めた。
「……ま、いいよ。どっちにしろ、こいつがなきゃ勝てなかった」
『スプレンダー』をちらりと見る。
その背中を見て、ルナマリアは「やけに素直だな」と思った。
が、次の一言でそれは撤回される。
「でも『ありがとう』なんて言わないからな。―――――『おあいこ』だから」
―――――この子は・・・・・!
可愛げないってものがない。
そう思いながら、ルナマリアはシンの後についていった。