シンは仮面ライダーになるべきだ

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739仮面ライダーSEED
第7話『紅の仮面、その名はジャスティス』

インパルス、フリーダム…そして突如として現れたジャスティス。
三人のライダーは意匠を凝らして創られた彫像のように、ピクリとも動こうとしない。
いや、正確に言うのならば動けないのだ。
数分前までの激闘に割り込んできた、この真紅のライダー…。
その四肢から伸びている、赤く鈍い輝きは鋭い刃となり、睨み合う両者の急所へと突きつけられている。
その切っ先は彼らが少しでも妙な動きをみせようものならば、瞬時に紅色の血の華を咲かせるに違いない。
…故に彼を境にして対峙する両者は微動だに出来ないでいるのだった。
更にこうして一見、何の動きもない様に見える状況であっても、
その場にいる三人は互いの動きに目を光らせ、プレッシャーを掛け合っていた。
今、我が身に向けられているこの刃から逃げ延びられたとしても、今まで対峙してきた相手はそれを見逃さないだろう。
つまり彼らは現在、三すくみの膠着状態に在った。
何で、なんでアンタがここに…くそっ。
シンにとってこの乱入者はどうやら見知った存在だったのか、内心彼に問い掛けたい言葉がいくつもある様だった。
しかし、そのどれもがこの場にそぐわないような気がし、口にする事を躊躇わせる…故に彼は沈黙を守り続ける事に徹していた。
「…もう、やめるんだ二人とも!!」
不意に制止を訴える悲痛な叫びが静寂を突き破る…果たしてそれはジャスティスから発せられたものだった。
「はぁっ?…いきなり出てきて何言ってんですアンタは!?」
あまりにも唐突すぎる言葉にシンは先程までの自制心を忘れ、つい地を出してしまった。
そして勢いに任せ、身を乗り出そうとする。
「でなければ俺は…お前達を討たねばならない!!」
迫るシンを押し止める様に、ジャスティスは自らに課せられた任務を口にしながらも、
手にした刃をインパルスの胸元へ突きつけた。
くそっ…目の前にあいつがいるのにこれじゃあ、手も出せやしない。
声に出す事なく愚痴をつくインパルスとは対照的にフリーダムは身動き一つせず、
ジャスティスの出方を窺うかの様に至って静かなものだった。
その不可解な態度を推し量る様に、ジャスティスはしばし沈黙すると、再びその先を口にし出した。
740仮面ライダーSEED:2006/02/17(金) 17:43:46 ID:???
「シン、そしてキラ…お前達もコーディネーターだろう、なら!!」
「アスラン?君も僕を…ラクスの邪魔をするって言うの…?」
と、そこまで沈黙を保っていたフリーダム…キラと呼ばれた人物が、
ジャスティスの言葉を途中で遮った。
両者は互いの名を何のてらいも無しに呼び合う仲らしかったが、今の口調には若干の苛立ちが見て取れる。
「っ…そうじゃないキラ、しかし!!」
シンにとっては聞き慣れぬ女性の名と供に、アスランと自らの名を呼ばれ、
彼は軽く狼狽した様に見える…その隙を見逃す程、彼が相手にした二人のライダーは甘くはなかった。
ババッ!!
両者は一瞬で後方へ飛び退くと構えを執り、戦う意志をみせた。
こう同時に距離を空けられては打つ手がない。
ジャスティスは紅い仮面の下でギリリと自らの失態に歯を噛み鳴らす。
それを知ってか知らずか、フリーダムは背中の翼を翻し空中に飛び上がると、再び光の雨に似た絨毯爆撃を行った。
「チッ、くそっ…!!」
「やめろ、止めるんだキラ!!」
大地を揺るがす轟音の最中、二人は降りしきる砲撃から我が身を庇いながら思い思いの言葉を吐き出す。
そんな二人にフリーダムは短く、一瞥をくれると蒼翼を広げ悠然とその場から
立ち去っていった…。

クソ…今日こそ皆の敵を討てると思ったのに、俺はまた…!!
シンはあっさりと退いた仇敵の背中に自らの復讐がまたも失敗に終わっただけでなく、
その瞬間まであった自信までもが音をたて、崩れさるのを感じていた。
「キラ…お前は。」
…シンが悔しさに身を震わせていると同時にザフトが放った刺客、
仮面ライダージャスティスは既に去ってしまった友の名を小さく呟いていた。
「わざわざこんな所にまで来ておいて、アイツを見逃すなんて…ふざけてんですか!?貴方って人は?」
その軟弱ともとれる態度にシンは身勝手とは知りつつも、自らの苛立ちをぶつけずにはおれなかった。
「俺は…馬鹿だからな、それよりもシン。」
ジャスティスはシンの挑発めいた言葉を軽く受け流すと、彼にクルリと背を向け横顔で語り出す。
「一度、お前と二人きりで話がしたい…明日の日暮れに市の記念公園で待っている。」
「なっ…勝手に決めないで下さいよ、ちょっと!!」
「…続きは明日、会った時にしよう。じゃあな。」
それだけ伝えるとシンの抗議の声には耳を貸さず、
彼もまた近くに停めてあったバイクに跨るとその場を立ち去った。
741仮面ライダーSEED:2006/02/17(金) 17:46:36 ID:???
シンは砂埃をあげ次第に遠ざかる、ジャスティスの姿を見つめながら今回の一戦を通し、
フリーダムを確実に仕留めるには更なる修練を積まない限り、自らの復讐は果たせない様に感じていた。
ならばもう一つの巨大な敵、ザフトの動向を探る事が出来るかもしれない彼の提案は現時点では最善に思える。
「くそっ…何なんだよ、一体…。」
シンは変身を解除しながら悪態をつくと、明日指定された場所へ赴く事を心に決めていた。
「オイオイ、何なんだよアイツは!?ライダーってお前とあの羽付きだけじゃなかったのかよ?」
そこへ少々、興奮した面持ちのディアッカが急ぎ足でやって来た。
その浅黒い肌は心持ち、紅潮している様に見える。
「しかもお前、あの紅いのと戦うどころか…随分喋ってたみたいだけどさ。もしかして知り合い?」
予想外の出来事に興奮しているかに見えたディアッカはしかし、肝心な部分においては冷静だった。
くっそ…このガン黒探偵、イタいところ突いてきやがるぜ。
などと口に出さず皮肉を言うと、シンは彼の疑問にこう一言だけ答えてやった。
「アイツは…俺が組織いた短い期間、俺の教官役だった男さ。
名前は…アスラン・ザラ、ザフト最高幹部パトリックの息子だよ…。」
742仮面ライダーSEED:2006/02/17(金) 17:49:01 ID:???

『…報告は以上だ。現在、ダガーの総配備数は予定されていた数値の95%のところまで到達している。
まぁ、上々といった処だな。』
携帯電話の向こう側から、僅かなノイズと電波を交え、届いた何者かの声が車に篭もった空気の中へと消えていく。
と、車道の端に停車してあったこの薄暗い車内を
ほんの一瞬だけ、隣を横切った車のヘッドライトが明るく染めあげた。
そこには…淡い水色のスーツに身を包んだ酷薄そうな男が座席に背を預けている。
彼は勿体ぶるように、フゥ…とわざとらしい溜め息を電話の相手に聞かせてやると、
挑戦的にハッパをかけにいった。
「はいはい、了解です…こちらもね。例の計画がそろそろ動き出しそうなんですよ。
 だから、テストはくれぐれも怠らない様に…して下さい。ね?」
どうやら両者は何らかの情報をの交換を行っている様だった。
そして、敢えてこんな場所で電話越しにそれを行っているという事は、
少なくとも車中の人物にとってこのやり取りが、あまり表沙汰にしたくないものである…という事を語っていた。
『無論だ…近日中にダガー中隊の運用試験を執り行う、その準備は出来ているのだろうな?』
「えぇ、勿論。相手はそうですね…ジンではデータとして不充分でしょう?
 最新型の改造人間を都合しますよ。」
『上出来だ、では日時は追って伝える…朗報を期待しているぞ。』
「了解です…それでは。青き清浄なる世界の為に。」
「青き清浄なる世界の為に…。」
秘密結社めいた不可思議な挨拶を最後に、この密談は終了したようだった。
軽くリラックスするためか、ハンドルにもたれかかった男の顔を対向車線から伸びてきたライトが照らし出す。
その独特のにやけ顔は…ザフト最高幹部の一人、ムルタ・アズラエルその人のものに相違なかった。
743仮面ライダーSEED:2006/02/17(金) 23:54:35 ID:F/lYpZ1h
下校の時間を迎え、浮き足立つ学生だからこそ義務付けられている掃除の時間は苦痛でしかない。
だから、ルナをはじめとするシンのクラスメート達も他愛もない話に花を咲かせながら
やる気なさ気に箒を左右させる真似をするだけだった。
「…っと。皆、ごめん俺、先に帰らして貰うわ。」
昨日、ジャスティスが指定してきた時刻までそう時間はない。
シンは手にしていた箒を床に投げ出すと鞄を手にし、教室から出て行こうとした。
「ちょっとシン!?まだ終わってないわよ!!」
一人だけ抜け駆けしようとするシンを許すルナマリアではない。
彼女はチリトリを押さえる為にしゃがんでいたが、
サッと立ち上がると教室を出る寸前だったシンの前に仁王立ちになった。
「いや…その、ちょっと約束があってさ。先生にはウマい事言っといてくれよ、じゃっ!!」
「あっ!!ちょっとシンったら…あ〜、もう!!」
あっという間に自分の脇をすり抜けたかと思ったら、
シンの後ろ姿は既に廊下の角を曲がり切り、もう見えなくなっていた。
ルナマリア は自らの怒りを体で表すかの様にプリプリと頬を膨らませ、
腰に手を当てみせる。
「授業中、何か悩んでる様に見えたけど…気のせいだったのかしら?」
今日1日でシンはふとした瞬間にどこか浮かない表情をしていたように思う。
そう言葉に出してしまうと、ルナは彼のあのエスケープが非常に気掛かりな物に思えてきた。
「大方、この間言ってたデートの相手とまた会うんじゃない?
 …全く羨ましいよなぁ。」
と、ルナの意図せずにこぼれ出た独り言を聞いていたのか、
教室の隅に移動してあった机を元に戻していたヴィーノが声をかけてきた。
その口振りは、友人に彼女が出来た事を喜ぶようでも有り
また、先を越された事に腹を立てている様にも聞こえた。
「あいつに彼女ねぇ…どんなコなんだか。」
黒板消しを手にしたヨウランはと言えば、どこか半信半疑な様子だ。
やがて二人はガヤガヤとまだ見ぬシンの彼女について、
あれやこれやと喋りだした。
確かに…気になるわねぇ。
二人の憶測とも妄想ともつかぬ話を聞いているうちにルナはどうしても、
その彼女とやらを見てみたくなってしまった。
もちろん、友人として気掛かりではあるものの…そこは年頃の少女、
こういった話題にはがぜん興味を惹かれるものがある。
結果、彼女はシン同様に二人に掃除を押しつけると
シンのあとを追うべく学校を飛び出していったのだった
744仮面ライダーSEED:2006/02/17(金) 23:55:39 ID:???
広い公園内の中央に設置された時計台が、
規則正しいリズムで時報のメロディを奏でている…。
数度、繰り返されたそのフレーズの回数が午後6時の訪れを園内にいた二、三人ほどの来訪者に告げていた。
茜色に染まったアスファルトの上では、すっかり長くなってしまった
影法師たちがその存在感をアピールしている。
そんな長々と伸びた木陰に隠れる様にして、一人の青年が立っていた。
広々とした額を中心に左右に分けられた髪型、
端正なつくりの甘いマスクは女性に儚い夢を見させそうな雰囲気があった。
彼こそ仮面ライダージャスティスに身を変え、
昨日シンの前に現れた男…アスラン・ザラだった。
「…来たか。」
そう呟いた彼の視線の先にはバイクから降りて、こちらに向かって歩を進めているシンの姿があった。
思い詰めたような顔をした彼に向かって、アスランもまた近付いていく。
やがて、二人は公園中央の広場にある噴水を中心に向かい合った。
「シン…久しぶり、だな。」
「昨日、会ったばかりだと思いますがね…。」
互いに言いたい事は山ほどある様だったが、
彼らが口にしたのはどこかズレたものだった。
元々、二人は敵対し合う関係にある…だからこうして会話を交わす事さえ本来ならば有り得ないものであった。
アスランはシンの言葉にそうだな…、と短く答えると、
昔と少しも変わらぬこの少年の言葉遣いに苦笑した。
だが、そうした郷愁的な部分を振り払う様に彼は一瞬、瞼を閉じると
カッと見開き、秘密結社ザフトの一員としての顔に戻り本題を切り出した。
「シン…やはり、ザフトに帰るつもりはないんだな。」
「当たり前でしょう…誰が好き好んで、自分を改造しやがったところへ戻るって言うんです?」
そう怒気荒く、眉を吊り上げるシンの顔に
アスランは説得が無駄足に終わるのを感じ、再び目を閉じる。
「仕方ない。ならば、せめてお前は俺の手で…。」
そう言うと、アスランは羽織っていた黒いジャケットの前を開く。
そこにはシンの持つインパルスのベルトとは異なった形状のものが在った。
745通常の名無しさんの3倍:2006/02/17(金) 23:57:59 ID:???
新作キターーーーーー!!

今回もGJ!
746仮面ライダーSEED:2006/02/17(金) 23:58:09 ID:???
「なる程、再手術で移植し直したってワケですか…。あん時はベルトを付ける事を嫌がって、
オレに色々、忠告してた癖に今じゃあ、組織に忠誠を誓ってるって事とはね…ハッ!!」
「シン、お前の好きに思えばいい…だが俺は―。」
「そうやって、誰かの言葉に調子を合わせて…っ!
アンタって人は何にも変わっちゃいないんだな!!」
アスランの自分を気遣う様な口振りに怒りが爆発したのか、
シンの口から堰を切ったように言葉が溢れ出す。
そんなかつての弟子を眺めるアスランの眼差しは冷静そのものだった。
しかし、その様な落ち着き払った態度はシンの様な
頭に血が上りやすい性格の持ち主にとっては逆効果でしかない。
「アンタには聞きたい事が山ほどあるんだ…だから力づくで聞かせてもらうっ!!」
本来ならば、ここでジャスティスとぶつかっても何の得策もない事はシンにもよく分かっている。
しかし、この釈然としない怒りを堪える事は未だ若い彼には困難な事であった…。

『変身!!!!』
重なり合う叫びが、白と紅の眩しい輝きを呼ぶ。
その光芒が収束すると、そこには抑えきれない闘志を全身から漲られせているインパルス。
そして、一切の気配を断ち切ったかの様に無言で立ち尽くすジャスティスの二人のライダーの姿が在った。
「うおぉぉぉっ!!」
雄叫びをあげながらインパルスの足が地を蹴り、一直線にジャスティスを目指し突き進んでいく。
その光景は闘牛師が操るヒラヒラとした赤い布に惹かれ、猛進する牛の姿ようでもあった。
しかし、ジャスティスはその勢いに気圧されてはいない様だった。
彼は自らの体をフワリと宙に舞わせると、その体に拳を奮わんとしていたインパルスの
勢いのつき過ぎた背中を蹴り上げ、その後方へ着地した。
ズサァァァッ!!
無防備な背には、例え充分に加減した加撃であっても有効打となりうる。
だからシンは受け身も取れず、無様に地を這いつくばるしかなかったのだった。
「シン、教えた筈だぞ…悪戯に突っ込むだけではカウンターのいい的になるだけだと!!」
「うるさい、教師ツラすんなぁっ!!」
今や敵となったかつての師に、アドバイスという形で塩を送られている事実がシンのプライドを傷つける。
シンはそんな屈辱を打ち破ろうと鋭く吠え、四つん這いの態勢から驚異的な跳躍をみせた!!
そのまま空中で身を捻ると、その身に回転をくわえながらジャスティス目掛け、急降下していく。
747仮面ライダーSEED:2006/02/18(土) 00:01:13 ID:???
「回転力を活かしたいい攻撃だ…だが!!」
空を切り裂くドリルにも似たインパルスの必殺の蹴りを見ても、
アスランにはまだ余裕がある様だった。
彼は頭上を睨み上げながら、両の肩アーマーに取り付けられていたブーメランを取り外す。
ジャスティスは右、左とタイミングを計りながらエモノを勢い良く放り投げた。
ガスガスガス…ッ!!
ギュルギュルと回転しながら空を駆け上がっていく二つの円運動は
インパルスにぶつかり、その勢いを失って主の手元へ戻っていく。
しかし、勢いを失ったのはブーメランだけではない。
シンの蹴りもまた、先の衝突によって回転力を奪われていた。
このまま突き進めば、先のような無様な結果が見えている。
そう判断したシンは口惜しさがあるものの無理やりにその軌道を変え、
ジャスティスから少し離れた所へ着地した。
「畜生、畜生…全く歯が立たないっていうのかよ…!!」
「シン、お前の負けだ…大人しく降参するんだ。
それでも…向かってくるなら、俺は!!」
両者は共に目立ったダメージがないものの、
戦闘開始の時点から冷静なままのジャスティスに比べ、インパルス…シンの心境はボロボロになってしまっていた。
それもそうだろう、たった二度ではあるものの、全力を込めて放った必殺の一撃は
いとも簡単に退けられてしまったのだ。
更にこれが一番ショックな事だが…シンはどうやら、手加減をされているらしかった…。
もはや、勝負は決したかに思われた…しかし、
「こんな事で…こんな事でぇ、俺はぁぁぁぁぁっ!!」
萎えそうになる自分の気力を再び、燃え上がらせるべくシンは叫んだ。
そしてその叫びが彼の体へ、フォームチェンジの深紅の輝きを与える。
すぐさま、ルビー色の光の向こうからソードインパルスの猛々しい姿が現れた。
「…馬鹿野郎。」
この期に及んでも、その闘志を失わないシンを前に、
ジャスティス…いやアスランは哀れむ様に、慈しむかの様にそう一声呟くと背後を振り返る。
「来いっ…ファトゥムっ!!」
ブゥロロロロォッッ!!
748仮面ライダーSEED:2006/02/18(土) 00:03:06 ID:???
すると…ジャスティスの呼び声に応えるように一台のバイクが低い排気音をあげながら、その場に現れた。
その外観はバイクと言い切るにはやけにゴテゴテとしたものであり、
妙な違和感を感じさせる。
「ハッ!!」
ファトゥムというらしいバイクへジャスティスは後方へジャンプし、
素早く飛び乗ると、轟々と唸りを挙げるエンジンを解放させ、
インパルス目掛けその車体を突っ込ませた!!
「体当たりかっ!?」
ジャスティスはバイクの堅牢な装甲に覆われたボディーを活かした突進を狙ってくるに違いない。
そう判断するや、シンは手にした二本のエクスカリバーを顔の前で交差させながら握り締め、
半身だけを相手に見せ構えを執った。
狙いはすれ違いざまの一撃…ただ、それだけである。
アスラン…俺はアンタを倒してみせるっ!!
そう心の中で必勝を念じているうちに、ジャスティスが駆る重戦車の如きバイク…ファトゥムはグングン迫ってきている。
グォンッッ!!
急速に天を向かされた前輪が悲鳴をあげた。
シンは攻撃のくる事を直感し、十文字に構えた双剣をその剛碗で振るう!!
「なっ…!?」
しかし…その一閃はビュゥと音をたて、ただ空を切っただけだったのである。
バイクの座席上にいる筈のジャスティスの姿は忽然と消え失せていた。
馬鹿な…オレは見ていた筈だ、このシートに座ったアイツの姿を!!
有り得ない出来事に困惑するシンは改めて自分の横を通り過ぎ、
停まっているバイクの姿を凝視する。
!?
その車体は、先程までやたらと肉付きの良かったボディーがやけにスッキリとしたものになっていたのである。
シンはふと、空を仰ぐ…そこには槍の先端を思わせる楔型の物体が
自分を目指し、物凄い勢いで落下してきていた!!
その上には消えたかに思われたジャスティスが
サーフィンに乗る様に足を掛けているではないか。
あの装甲は…どうやら、外装だったらしい。
外装は座席を中心にして、瞬時に分離すると主をその背に乗せたまま
空中で今、見ている携帯へと変化したのだった。
「ファトゥムキャノンっ!!」
ギュォアアァァアッ!!
ジャスティスがそう叫ぶやいなや、一発の弾丸となった外装はニトロでも積んでいたのか更に加速する。
その一撃はインパルスの双剣の防御を交い潜ると、彼の体にその強力な刃を突き立てた!!
ぐっ…ちっ、く…しょぉ…。
シンは深い闇に心が吸い込まれていくのを感じながら…気を失った…。
749仮面ライダーSEED:2006/02/18(土) 00:04:15 ID:???

シンが目を覚ますと、そこには変身を解除し自分を見下ろすアスランの視線があった。
「くっ、完敗ってワケですか…あ、痛っ。」
無理に立とうとした瞬間、胸の奥を鈍い痛みが襲った。
どうやらこれは骨の一本や二本はイッてしまっている事を覚悟せねばならない様である。
…気絶してしまったからか、自分の姿も元のものへと戻っていた。
「無茶をするからだ…。」
そう言われながら、ついさっき迄殺すくらいの勢いで戦っていた相手に肩を貸されては何も返せる言葉もなかった。
「アスランさん…アンタはあのフリーダムの事、名前でよんでましたっけね、
知り合い…なんですか?」
不意に忘れていた仇敵の事が頭をよぎり、それがそのままポロリと口から零れ落ちた。
「ん、あぁ…あいつはキラ・ヤマト。俺の幼友達ってやつかな。」
今は色々あって疎遠だけどね…と付け足すアスランの横顔は何の他愛もない少年の様にシンには感じられる。
そうですか、まったくいい友達だよ…アンタのキラ君は…さ。
シンは彼の無邪気さに何も知らないことの幸福という概念を感じ取るのだった。「何だぁ〜やっぱりデートなんかじゃないじゃない。」
背後から聞こえてきた、よく聞き知った少女の声に
シンは思わずビクッと我が身を震わせてしまう。
そこにいたのは…そう、シンの彼女見たさにあとをつけて来たルナマリアだった。
そんな彼女の瞳がシンに肩を貸す見知らぬ優男を捉えた瞬間、
その表情が劇的に女らしいものへ急速に変わる。
「えっとぉ、シンのお知り合いの方…ですかぁ?」
その言葉使いもいつもの自然なものとは違う、ネコを被ったようなものに変わっていた。
キョトンとした顔のアスランの横で、
シンは深いため息が出てくるのを堪えられそうになかった…。



              つづく