シンは仮面ライダーになるべきだ

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115仮面ライダー種(SEED)

「無事かっ!?」
「え…あ…は、はい。」
化け物の一撃からルナマリアを庇った姿勢のまま、振り返る事なく謎の白い戦士が言葉をかけてきた。
いまいち事態を呑み込めていない彼女は適当な返事を返す事しか出来ない。
「よし…たぁっっ!!」
二体が組み合った姿勢がそのまま永遠に続くのではないかとルナマリアが思った瞬間、戦士は裂帛の気合いと共にすくいあげる様な蹴りを放った!!
爪先がグシャッという嫌な音と同時に化け物の脇腹に突き刺さる、襲ってきた苦痛を堪えれないのか、化け物はその場に膝を着いた。
「え…ちょっ、キャッ!!」
その間に戦士は後ろにいたルナマリアを抱きかかえると後方へ大きく跳んだ、そして柱の陰にゆっくりと彼女を下ろす。
息がかかる程の距離だ。自然とその容姿が目へと入ってくる。
彼が身に纏った鎧のようなそれは、ウェットスーツのような部分に胴や頭部を覆った何かしらの金属と思われるもので構成されているようだった。
胴体と肩が蒼い以外は全身は雪のように真っ白であり、最も特徴的なのはその頭部で口や目を模した様なその顔は人間さながらだった。さらにその額からは武者の鎧の様なツノが四本生えていた。
「…すまない、他の二体に手こずって、ここへ着くのが遅れてしまった。」
「そんな、助けてくれた事には変わりないわ…でも、あなた何者?」
思いがけない謝罪の言葉を前にルナマリアは気にかかっていた疑問を口にした。
白亜の戦士は一瞬、躊躇うように沈黙したあとこう一言、答えた。
「俺はインパルス…仮面ライダーインパルスだ。」
116仮面ライダー種(SEED):2005/10/10(月) 05:32:58 ID:???

「仮面ライダー…イン…パル…ス。」
その名を小さく反芻するルナマリアは何か妙なものを感じていた、まるで突然、他人から違う名で自分の事を呼ばれた様な違和感…。
「さぁ…早くここを離れるんだ、あいつは俺が何とかす…」
そう言おうとした瞬間だった、耳を閉じたい程の轟音と供に二人が背にした柱が真っ二つになる!!
「チッ…ジンめっ!!」
そう吐き捨てるとライダーはいきなりルナマリアを突き飛ばした、飛ばされた当の本人は勢い余って尻餅をついてしまう。
「フン…女を庇おうという魂胆か、このミゲル・アイマン…舐められたもんだ。」
崩れ落ちた柱の残骸を跨いでライダー曰く、ジンがその姿を現した、さっきのダメージは既に回復し切ったようだ…ドスの効いた文句を口にする余裕が出てきたらしい。
ジンは柱を切り捨てたせいで刀身にこびり付いた錆を一振りで振り払うと、再びライダーと対峙した。
…一触即発の空気が周囲に漂い始める…。
117ガノタ仮面 ◆7esDekmmXY :2005/10/10(月) 06:11:17 ID:???

「どうした、何をしてる!?早く行くんだルナっっ!!」
尻餅を着いたまま固まっているルナマリアを見かねてライダーが叫んだ、その言葉で彼女は我に帰えった…慌てて階段を目指し、ひた走っていく。

今…彼は知らない筈の私の名前を呼んだ…それにあの声、どこかで?
階段を転がり落ちるように進みながら、ルナマリアはそんな考えを頭によぎらせていた…彼女の階段を降りる音が残された二人のもとに届く、それを聞きながら…ジンは愉快そうに喋りだした。
「フッ、あの女を追い回していれば貴様が出てくると踏んだのは正解だったな…女は貴様を仕留めてからじっくり料理してやるさ。」
そう吐き捨てると、ジンは腰に吊されていたマシンガンともライフルとも付かない形状の銃を手にした。張りつめた緊張感がさらに高まっていく…。
「大した自信だな…流石はパーソナルカラー持ちといったところか…しかし」
ライダーはジンのオレンジのボディーを見やり、ポツリと呟いた…そして片手は開いて前へ出し、残った拳をギュッと握ると両足を開いて構えを執り、こう続けた。
「…ジン如き、量産型ユニットで俺を止められると思うな…来いっっ!!」
「っ…貴様ぁ!!俺を二度もコケにするとは!!…組織の失敗作め、この黄昏の魔弾が貴様を仕留めてやるっっ!!」
ライダーの挑発めいた言葉に激昂したジンが手にした銃の引き金を引く。
その銃声を合図に、いよいよ闘いの火蓋は切って落とされた。
118仮面ライダー種(SEED):2005/10/10(月) 07:00:56 ID:???

ガガガガガガッッ!!
矢継ぎ早に銃口から放たれる弾丸をライダーは右へ左へ華麗に避ける。
その度に辺りはもうもうと粉塵をあげる瓦礫の山へと変っていく。
「どうしたどうした!!逃げるだけで精一杯かインパルス!?アハハハハハっ!!」
それを見たミゲル・アイマンと名乗る男は駐車場のどこかに潜むライダーに向かって嘲笑を浴びせてみせた…しかし実際のところ、彼は一向に自分の銃撃が当たらない事に焦りを感じ始めていた。
しかも巻きあがる粉塵のせいでライダーの姿を捉える事が困難になりつつある。
ミゲルは焦りに震える手で弾丸の装填を行おうとした、と。
ヒュンッ!!
突然、粉塵を切り裂く様にして、何かが向かってくるのが彼の視界に映り込んだ…とっさに銃をその方向に向けてめくら撃ちする。
カチッ…カチッカチッ。
弾倉が空になった事を告げる音が虚しくこだましている。
ところで先程飛んできたものの正体はと言うと、それはミゲルが放った銃撃で床から剥がれた拳ほどのコンクリート片だった。
今は弾丸が命中して粉々になってしまい、その原型を留めてはいない。
まさか…囮!?
ミゲルがそれに気付いたか、気付かぬ間に突然、鈍い衝撃が彼の体を襲った。
119仮面ライダー種(SEED):2005/10/10(月) 07:28:05 ID:???

「ぐぅっ…!!」
何時の間にか接近していたライダーが、近づくやいなやその拳をミゲルの横っ面に叩き込んでいる。
…ピシリ。
その衝撃でジンの頭部の装甲にヒビが入ったようだ。
「はぁぁぁぁぁっっ!!」
しかし、ライダーの攻撃はそれだけでは終わらない。続けざまにジンの体を処構わずに殴り、蹴っていく。その猛攻に耐え切れずミゲルは腕の中にある剣を抜き、振り払おうとした。
ガッ!!
それを狙っていたのか、ライダーは自分を狙って突き出された刃ごと両手でジンの腕をつかむと、力任せに近くの壁目掛けて投げ飛ばした!!
ドガァァァンッ!!
「う、うぅ…。」
ジンが壁に派手にぶつかったのを見届けると、ライダーは短距離ランナーのスタートティーングポーズさながらにしゃがみ込んだ…その緑の瞳に力強い輝きが灯る…そして!!
「くらぇっ!!インパルス…」
ヨロヨロと立ち上がろうとするジン目掛け、一直線に走り寄り、スピードを乗せたまま一気に飛び上がる!!
「キィィィィックゥッッ!!!!」
その叫びが終わらない内に、ライダーが放った必殺の蹴りが見事ジンに命中した。
「お、おのれぇぇぇっっ!!」
その衝撃に耐え切れないミゲルのジンは壁ごと吹っ飛び…そして地面目掛け、力なく落ちていった。
120仮面ライダー種(SEED):2005/10/10(月) 07:54:10 ID:???

「…終わったか。」
一人、残されたライダーが誰に言うともなしに呟いた。
ヒュルル…。
壁に穿たれた穴から冷たい風が吹き込み、首にしたマフラーを揺らす。
「あいつだって…被害者みたいなもんだ、俺と同じさ。」
漏れ出たその呟きはひどく暗く、そして哀しい声色をしていた。
と、ライダーの体から小さな光がいくつも生まれては消えていく…やがてそれが収まると、そこには高校生とおぼしき少年がひっそりと立っていた。
「組織を…あいつらを潰さなければ第二、第三の犠牲者が出る…俺がやらなきゃ。いや、俺しか出来ないんだ…。」
何時の間にか、俯いていた顔を力強くあげる、艶やかな黒髪が揺れた。
その瞳は自らの決意で深紅に燃えていた。
「ごめんよ…ルナ、俺のせいであんな目に合わせちまって…でも待っててくれ、いつかきっとお前達のところに還るからな。それまで…サヨナラだ…。」
そう言うと、少年はいや…今や改造人間となってしまったシン・アスカはその場を立ち去った。

…シンの往く先に安住の地はない…いつ、何時であろうと組織の刺客が送り込まれてくるからだ。
だが…彼は組織を壊滅するその日までたった一人で戦い続けるだろう…。
戦え仮面ライダーインパルス、負けるな仮面ライダーインパルス!!




      つづく