2ゲット!!
3getting
4さま
オッツォ!!!
5
長編は、ここに投入お願いします。
雑談や、小ネタは前スレで。
すいません立てるのはやすぎでした。
7 :
しのはら:2005/09/05(月) 22:45:30 ID:???
私からも乙!
まとめ人乙!
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ___
( ´∀`)・・・ イェイ!(*´∀`) (゚∀゚*)/ / イェイ!
( ) (つ□と) .| | /
| | | .| | l_ Φ _| |
(__)_) (__)_) ..|_|(__つ
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ___
( ´∀`)パクリ? ハァ?(゚Д゚* ) (゚Д゚*)/ / オマエガナー
( ) (つ□と) .| | /
| | | .| | l_ Φ _| |
(__)_) (__)_) ..|_|(__つ
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ___
(;´Д`)・・・ イェイ!(*´∀`) (゚∀゚*)/ / イェイ!
( ) (つ□と) .| | /
| | | .| | l_ Φ _| |
(__)_) (__)_) ..|_|(__つ
モナー他たくさんのAAが、使えなくなりますわた。
詳しくは
ttp://www.nomaneko.net/ ttp://yu-net.info/swfup/viewswf.php/0613.swf tp://grassroots.hp.infoseek.co.jp/
(c)avex/わた
乙
『と、言うわけでうちの隊員もきたことだし、親睦を改めて深めようと思ったんだ
けど・・。お前らさ。みんなでゲームするつったら何?』
そう言う風に書いてあるプリントを見てアスランは悩んでいた。
ハイネが企画している「チキチキミネルバ親睦ゲーム大会」のアンケートである。
どんなゲームがやりたいのかクルー全員(艦長は怒るのでわたしてない)に
プリントを渡したのだ。
しかし、アスランは困っていた。彼はTVゲームなんてほとんどやらない。
昔、キラと少しだけ、ラスティと少しだけ。
つまり二年間はまったくゲームには触れていないと言う事になる。
(ゲームって言っても・・・FFとDQの名前くらいしか知らないぞ?)
アスラン、あなたはそんなんだから友達ができないんですよ。
なんとなくニコルが天国でそんな痛烈な一言をいった気がした。
しかし、アスランはアンケートをしっかり読んでいなかった。
『そうそう、特に希望の無い奴は出席のところに○だけつけといてくれ。』
プリントの隅に書き足しの手書きでそう書いてあるのを・・。
ちなみに主なアンケート結果。
『マリオパー○ィ』
『サクラ○戦コラムス』
『ぷよぷ○』
『いただき○トリート』
『人生ゲー○』
『ギルティ○ア』
『エアガイ○』
『カービ○のエアライド』
『レーシングゲームならなんでも』
『ポーカー』
『アッガイかわいいよアッガイ』
集計したハイネ隊隊員が頭を抱えたのは言うまでも無い。
1さん乙。
とりあえず
>『サクラ○戦コラムス』
>『アッガイかわいいよアッガイ』
これを選んだのが誰か気になる。
>>12 予想
>『サクラ○戦コラムス』
アーサー
>『アッガイかわいいよアッガイ』
マッド・エイプス
こんばんは。
ファントムペイン戦記の第7話です。
前回の話の続きですが、少々長い上にヤマがないorz
お目汚しかと思いますが、お付き合い願いますm(__)m
15 :
1/13:2005/09/06(火) 21:11:27 ID:???
『やれやれ……こんなところに一人で残るなんて、お前もよくよく馬鹿だな』
聞き慣れた声―
懐かしい兄の声―
だが兄は二年前に死んだはず―
ではこの人物は一体誰―?
ゲンの声を聞き、マユ・アスカは動揺した。
そんなマユの動揺など露知らず、ゲンはマユに声を掛ける。
『おい、お前』
「は…はいっ!」
ゲンの言葉に反応し、慌ててマユは我に返った。
『ボーッとしてないでそっち側をちゃんと押さえろ。砕きに来たんだろうが』
見ればインパルスはマユ同然に動きを止めていた。
メテオブレイカーは2機のMSで押さえつける必要がある。
インパルスが動かなければゲンのストライクMk-Uがいる意味がない。
言われてすぐにマユはインパルスの両手をメテオブレイカーに掛けた。
程なくしてメテオブレイカーは動き出し、破砕作業が始まった。
『…あとひとつの大岩の方も砕くぞ!』
「は…はいっ!」
ゲンの側にもうひとつのメテオブレイカーが漂っている―
自分と全く同じ考えで、この男はここに残っていたのか―
先日の戦闘で漆黒のストライクの存在を聞かされ、先ほどまでは敵と思っていた。
だが、今のところ敵意はなく、自分を手伝ってくれている。
"Genocider Enemy of Natural"だからナチュラルを護るのか―?そんな疑問も頭に浮かんだ。
しかし、何よりも彼の兄にそっくりのゲン声が、マユの心に不思議な安らぎを与えていた。
振り返ると、先ほどの大岩が割れようとしている。
もうひとつの大岩も割れば被害は大分防げるだろう―
そう思ったマユはストライクMk-Uにピッタリと就いていった。
やがて、もうひとつの大岩にもメテオブレイカーを打ち込むことに成功した。
これが上手く割れれば被害は最小限に防げるかもしれない―
そんな思いをマユは抱いていた。
16 :
2/13:2005/09/06(火) 21:12:22 ID:???
「一体どうなってる!?」
ガーティ・ルーの艦橋でネオは声を荒げていた。
任務終了後に帰還する手筈のゲンが、いつまでたっても戻ってこない―
既にゲンより後に発進したカオス、ガイア、アビスの3機は帰還している。
ならば当然ゲンも戻ってきて良いはずであるが…
「何故戻ってこない!ガーティ・ルーの位置は教えたんだろうな!?」
苛立った指揮官は通信兵を問いただす。が、困惑した表情で通信兵は彼を見返す。
「こちらの位置座標は何度も送っています!けど応答すらありません!」
悲鳴に近い声で答える通信兵。間もなくガーティ・ルーも大気圏に突入する距離にある。
突入か、離脱か―ネオは判断を迫られた。
だが、その直後ガーティ・ルーはユニウスの異変を知る―
「2つに割れたユニウスのうち一つが…更に割れました!」
ユニウスの動きを見守っていたクルーが声をあげる。
すでにユニウスの先端は大気圏に突入しようとしている。
そんな中で割れる―まだ作業をしている人間がいるのか―?
「……あの大馬鹿野郎が!」
大気圏に捉まることを覚悟でユニウスに残り破砕作業を行なう―
応答がないということは、応答できない状態にある、つまりユニウスにいるということか―
ネオは直感的にゲンがやっていると判断した。
「大佐、本艦も間もなく大気圏に捉まります!ご決断を!」
艦長イアン・リーは最早猶予はないと告げた。
だが、逆に言えば突入してもガーティ・ルーは問題ないとの裏返しでもある。
無論、大気圏を突破するだけでなく、周囲の破片に気を配らねばならないが…
それでもリーは、突入に反対せず、ネオに判断をゆだねた―そして指揮官は断を下す―
「好き勝手やってる癖に…とは言ったが、好き勝手やれと言った覚えはないぞ!
全MS及びMAを固定しろ!機関最大!これより本艦は大気圏に突入する!
対空監視要員は警戒を!通信でゲンの呼び出しを続けろ!
ローエングリン起動!ゲンの回収と最終破砕作業を並行して行なう!」
17 :
3/13:2005/09/06(火) 21:13:13 ID:???
「インパルスが戻っていないですって!?」
同じ頃、ザフト軍新鋭戦艦ミネルバのブリッジでもタリア・グラディス艦長が声を荒げていた。
つい先ほど、最高評議会議長ギルバート・デュランダルをボルテールに移乗させた。
これからミネルバは大気圏突入し、主砲による破砕作業を行なう手筈―
が、インパルスのテストパイロットであるマユ・アスカは未帰還―
「間もなく大気圏に突入します!」
副長のアーサー・トラインが決断を迫る―
主砲による破砕作業は必然的に多数の岩盤を撒き散らす。
大気圏に突入中のMSにとっては、フェイズシフト装甲のインパルスであっても危険を伴う。
運良くボルテールかルソーに行っていれば良いが…
そんなタリアの思いは直後に裏切られる―
オペレーターのメイリン・ホークがユニウスの異変を告げたのだ。
「艦長!二つに割れたユニウスの一方が…更に割れます!」
この状況でまだ破砕作業を行なっている者がいる―
大気圏突破能力のないザクでは不可能な荒業を行なう者―
それは、マユ・アスカがまだユニウスに残っていることを告げていた。
「メイリン!マユからの応答は!?」
可能ならばミネルバ収容後に破砕作業を行ないたい―
それがタリアの本音であったが…
「ありません…。ユニウスの戦端は大気圏に突入しています。
そのための電波障害の影響で……通信はおろか、位置さえわかりません」
最早収容も不可能な状況―
だが、一人のパイロットとプラントの明日を天秤にかければ迷う余地はない。
被害を最小に食い止めなければ、再び戦端が開かれることになりかねない。
苦渋の決断をタリアは迫られた―
「これより本艦は大気圏に突入する!並行して主砲、タンホイザーによる破砕作業も行なう!
破砕の際、岩盤の破片に警戒せよ!」
18 :
4/13:2005/09/06(火) 21:14:01 ID:???
ユニウスの大気圏突入が始まっていた。
マユとゲンは、もう一機のメテオブレイカーを打ち込み、作動させた。
メテオブレイカーは振動と共に埋まり、間もなく打ち込み終わった。
だが、割れない―
『そんな…』
「チッ…」
マユは落胆し、ゲンは舌打ちした。
メテオブレイカーは本来数機を打ち込み破砕するものである。
マユもゲンもユニウスの破片の総量から打ち込む位置を計算し、打ち込んだのだが…
ユニウスの余りの質量で、もう一方の大岩は割れることはなかった。
間もなくインパルスもストライクMk-Uも大気圏に飲み込まれ、機体の自由が利かなくなる。
あるいは打ち込んだメテオブレイカーに、更に何らかの衝撃を加えれば割れるか―?
逡巡の末、ゲンは賭けに出た。
「おい、お前。少し離れろ」
ゲンはマユに指示を出し、インパルスを遠ざけ、予備の推進剤タンクを切り離す―
大気圏突入に必要な分だけ機体に確保してあることを確認し、メテオブレイカーの脇に置く―
そしてストライクMk-Uの頭部バルカン砲を放った。
「砕けろぉ!」
弾丸を撃ち込み、推進剤タンクを爆破させる。
直後に砲弾は推進剤に引火、メテオブレイカーを衝撃が襲う。
次の瞬間、ゲンは岩に辛うじて亀裂が入ったのを確認した。
「これでいい…上手くすれば大気圏突入時の衝撃で割れてくれる」
安堵と共にゲンはインパルスの元へと向かった。
どのみちもう打つ手はないのだ。大気圏突入時にどうなるかは運任せ―
だが、その前にゲンは一つ確認しておきたいことがあった。
「ザフトのお嬢さん、お陰で地球は最悪の事態は免れそうだ。礼を言おう。
が、ひとつ気になることがある。良ければ質問に答えて欲しいんだが…?」
19 :
5/16:2005/09/06(火) 21:15:29 ID:???
ゲンの言葉にマユ・アスカは瞠目した。
この男は自分の兄、シン・アスカでないか―?
自分の声を聞いて、妹であると認めたのか―?
だが、そんなマユの淡い思いは裏切られることとなる。
『お前、これからどうするつもりだ?』
「……」
現実に引き戻される―
ゲンの指摘は少女の心を現実に戻した。
言われて気づいた。
相対する漆黒のストライクの機体は既に赤く染まっている。
もう間もなく彼女の乗るインパルスも大気圏に突入するのだ。
眼前のモニターの機器も警告を発している。
大気圏への突入は避けられない。
が、ゲンに指摘されるまでの間、マユは何も考えずにユニウスに残っていた。
目の前でユニウスが地球に落ちる―
ユニウスが落ちればまた大勢の人が死ぬ―
もう誰も死なせたくない―
これ以上自分のような人間を増やしてはならない―
そんな思いが彼女をユニウスに残していた。
だから、マユはユニウスを砕いた後のことを何も考えていなかった。
現実に引き戻され、慌てて思考を巡らす。
フェイズシフト装甲のインパルスなら突破は出来よう。
だが、その後はどうする―?
大気圏突入は可能でも、その後減速する手段はない―
この場合、母艦が近くにあれば着艦できようが、この状況ではミネルバに帰りつけるか―?
そこまで考えてマユはゾッとした。
自分がやったことは、地球の大勢の人を救えるかもしれないが、自殺行為に限りなく近いもの―
今更インパルスのコントロールマニュアルを参照するが、やはり解決策など見つかりはしない。
困り果てたマユは、おずおずとゲンに問い返した。
「あの……これからどうしたら良いんでしょうか?」
20 :
6/13:2005/09/06(火) 21:16:44 ID:???
「……」
少女の問いかけにゲンは言葉に詰まった。
実のところ、ゲンもマユ同様に、衝動的にユニウスに残っていた。
ゲンにもシン・アスカだったころの記憶は、深層心理に若干だが残っていた。
知らず知らずのうちに、故郷に住む者たちの身を案じてこのような行動に出たのだ。
だが、洗脳を受け記憶を操作されている本人は知る由もない。
残ってユニウスを砕きはしたものの、ガーティ・ルーも地球に下りてくる保証はない。
降りてきたとしても、砕かれたユニウスの破片に遮られてコンタクトをとれるかは分からない。
ゲンは、少女に問いかけながら自らも大気圏突入後のことを検討していた。
仮に突入できたとしても、母艦がなければ海面に叩きつけられ機体は四散するだろう―
選択肢の一つとして、コアブロック式のコクピットを戦闘機として分離させる方法があった。
この方法なら、機体は失うものの、自身の安全は何とか確保できよう―
あとは最寄の連合の基地にコンタクトを取るだけ―
しかし、これはストライクMk-Uの本体を捨てることになる最終手段。
愛着のわいた機体でもあり、できることなら避けたい手段であった。
そこで考え付いたのが、目の前の少女を利用する方法だ。
投降するふりでもしてミネルバに着艦さえできればこっちのもの―
着陸か着水か、戦艦が地上に降りさえすれば、あとは逃げるだけ―
Mk-Uの能力ならコロイドを展開すれば目くらましはできよう―
あわよくば…そんな期待を膨らませていたのだが…
少女の様子だと、どうやらミネルバとのコンタクトを取れるかどうかも怪しい。
恐らくは自分同様、ろくに考えもせずユニウスに残っていたのだろう。
呆れながらも、自分も同じ考えであったことに頭を抱える。
やむを得ず、少女の乗るMSに思いをめぐらす。
確かアウルとスティングがこのMSのことを『合体野郎』と呼んでいた―
腕と体と脚がそれぞれ戦闘機になっていたと言っていたか―?
「コアブロック形式の機体ならコクピットだけ戦闘機になるだろう?
なら大気圏突入後は、機体は放棄して脱出しちまえばいい」
もっとも地球の拠点が少ないザフトでは、救助を待つのも大変だろうが―
そんなことを思いながらもアドバイスはしたが、敵である少女に助言してやる筋合いはないのだ。
ただ、ユニウスの破砕を手伝ってくれた礼代わりにはなろう―
そんなことをゲンは思っていた。
21 :
7/13:2005/09/06(火) 21:17:46 ID:???
やがてMk-Uのモニターが警告を発してきた。
間もなく大気圏に突入するという合図だ。
「おしゃべりはここまでだ。時間だぜ」
Mk-Uもインパルスも既にユニウスから距離を置いている。
既にユニウスの大半は大気圏に飲み込まれている。
間もなく彼らも突入するのだ。
だが、見ればインパルスの動きがおぼつかない。
Mk-Uよりも早く既に大気圏に飲み込まれようとしている。
見ていられずにゲンは更に助言をせざるを得なかった。
「摩擦熱による機体のオーバーロードに注意しろ!
機体の冷却機能を活用、それと耐熱防御!フェイズシフトを切らせるな!
突入後も極力機体を減速させろ!減速できなきゃ分離もできないぞ!」
『は…はいっ!』
マユの声に舌打ちする。
なぜ自分は目の前の敵に助力をしているのか―
本来なら大気圏突入でインパルスが燃え尽きてしまえば儲けものだが…
このときもゲンの深層心理が影響していたのだが…これも彼には知る由もなかった。
実の妹が目の前の少女とは知らずに―
一方のマユも目の前の男を不思議に思っていた。
ゲンの予想通りマユはインパルスの操作に手間取っていた。
非凡な才能を見せるマユ・アスカでも、地球の引力は初めて味わうものだ。
機体の大気圏突入のための姿勢制御に精一杯で、それ以上は手が回らなかった。
しかし、ゲンの助言ですぐにコントロールパネルからやるべきことを悟った。
それと同時に彼女はゲンの言葉に、再び先ほどまでの疑念を強めた。
やはりこの男は自分の兄ではないのか―?
言葉は乱暴だが、的確な助言で自分を助けようとする―
本来なら敵同士のはずなのに―
だが、兄なら自分の声に気づくはず―
「貴方は……誰なんですか?」
22 :
8/13:2005/09/06(火) 21:18:41 ID:???
「またその質問か?
アレックスといいお前といい、ザフトの連中はそんなに敵が気になるものなのか?」
ゲンは半ば呆れながらマユの質問を受けた。
本来軍人であれば、軍の指揮の下、敵と認めたものは殲滅する以外ない。
それなのに、ザフトの連中と来たら自分のことを二度も問いただす―
大気圏突入に備え、計器類に目を配りながらも、その質問にウンザリしていた。
「おしゃべりは終わりだって、言ったはずだがな」
特殊部隊のファントムペインが、自らの素性を明かせよう筈もない。
だが、幸か不幸か状況がそれを遮る―
目前のユニウスの破片が突如インパルスとMk−Uを叩く。
突如ユニウスの破片が砕け、シャワーのように細かい破片が2機を襲った。
「何だ!?エネルギー反応!?」
ゲンが前方を注視すると、大気圏の熱とは違う反応を認めた。
戦艦クラスの陽電子砲の反応が二つ。
一方はミネルバとしても、もう一つは―?
「ガーティ・ルー!降りてきたのか!?」
「Mk-Uの補足は出来ないのか!?」
ネオ・ロアノークはブリッジで声を荒げていた。
破砕作業の最中、懸命に通信兵が位置の特定を急いではいたのだが…
「大気圏突入時の電波障害で、位置は掴めません!」
せめてゲンの位置さえ分かれば、陽電子砲を撃つ箇所も変えられようが―
このままではローエングリンの砲撃に彼を巻き込みかねなかった。
舌打ちしながらネオは第二射のローエングリンを用意させる。
「第二射発射準備に入れ!通信は続けろ!何としてでもゲンとコンタクトを取るんだ!」
23 :
9/13:2005/09/06(火) 21:19:47 ID:???
同じ頃、ミネルバもタンホイザーの第二射の準備に入っていた。
また、タリア・グラディス艦長もネオ同様に身内のパイロットの心配をしていた。
「インパルスの位置は把握できないの!?
金属反応でも何でも良いから、チェック急いで!」
が、副長のアーサー・トラインはすぐにその命令を遮る―
「金属反応なんて…ユニウス自体が金属を多分に含んでいるんです!
だいたい、この状況じゃ大気の摩擦熱でわかりゃしませんよ!」
なんとか破砕は続けている―
このまま砕けば被害は最小限に抑えられる―
そんな最中、唯一マユ・アスカの安否だけがタリアの気がかりであった。
「艦長!エネルギー反応です!」
オペレーターのメイリン・ホークの言葉にタリアはハッとする。
「インパルス!?位置は?」
だが、返ってきた答えは、彼女の期待したものとはかけ離れていた。
「いえ、違います…陽電子砲の反応です!
ミネルバと隕石をはさんで反対側の…戦艦クラスの陽電子砲の反応です!」
メイリンの言葉に耳を疑う。
この場にミネルバクラスの戦艦がいるとでもいうのか―?
とっさにボルテールとルソーの各戦艦の名が浮かぶが、ナスカ級に陽電子砲などない。
一体誰が―?
しかし、目下のところ破砕が最優先事項である。
「対空監視を厳重に!陽電子砲発射位置の特定も急いで!」
破砕作業、インパルスの捜索、陽電子砲の発進位置の特定…
いくらなんでもこれは無理な命令―
そんなことを考えながらも、命令せざるを得ないのが指揮官たる者の勤め…
頭を抱えたくなる気持ちを抑え、指揮を続けていた。
24 :
10/13:2005/09/06(火) 21:21:10 ID:???
「くっ…!これが地球の重力か!」
ミネルバとガーティ・ルーの陽電子砲の煽りを受け、臨戦態勢に入った。
無数の破片に阻まれ、既にインパルスの位置すら掴めない。
機体の姿勢制御で精一杯の状態であった。
その先に彼が見たもの―
赤く染まる地球が青く変わっていく―
それはMk-Uが大気圏を突破しつつあることの表れでもある。
そして機体に地球の重力が加わった。
大気圏突入時とは異なる衝撃が体を襲い、ゲンは胃からこみ上げる不快感を抑えた。
「アイツは…大丈夫なのか?」
知ってか知らずかマユ・アスカの身を案じるゲン。
一方その頃、マユも地球の重力の洗礼を浴びていた。
「……っ!」
急に体が重くなり、重力をその身に受ける。
プラントにも重力はあるが、地球のそれはやはりプラントのものより重い。
女性で、しかもまだ若いマユの体格では、ゲンよりも不快感は大きかった。
だが、その不快感はすぐに消える。
彼女にとっては、これは故郷への帰還でもあったのだ。
「地球……帰ってきちゃったんだ」
二年前オーブから大洋州連合へと渡り、更にプラントへと渡った。
故郷で家族を失い、生きるために軍幼年学校へと入り、インパルスのテストパイロットに―
まさかこんな形で地球に帰ってくることになるとは…
感慨にふけっていたが、そんなマユは直後に現実に引き戻される。
『こちらミネルバ!インパルス応答願います!』
ミネルバのオペレーター、メイリンからの通信が入る―
この時点でゲンに相談して得た、機体を放棄するという手段は潰えることとなった。
メイリンの声に安堵したが、彼の助言が意味を成さなくなり、マユは心の中で少し残念に思った。
25 :
11/13:2005/09/06(火) 21:22:26 ID:???
『中尉、大した身分になったモンだな?』
ガーティ・ルーもミネルバと同じように、Mk-Uとの接触に成功していた。
もっとも、通信が繋がると、すぐにネオの皮肉が耳に入った。
どうやらゲンの身を案じて、共に破砕作業をしながら地球まで来てしまったらしい。
本来なら今頃は月基地に向かっている手筈だったのだが―
『命令違反の懲罰、覚悟しておけよ?』
「一応、俺は地球を救ったヒーロー……って言い訳は無理か。
それにしても労わりのない職場だぜ」
『何か言ったか?』
「いえ、別に」
それでも、自分のために地球まで降りてきた母艦のクルーに、心底感謝していたが―
「これで、地球まで降りてきた甲斐があったというものですな」
ガーティ・ルーの艦橋で艦長イアン・リーはネオに話しかける。
地球まで来たのはゲンを回収するため―
彼とコンタクトできなければ彼らの地球への帰還は徒労に終わるのだ。
それにしても大気圏突入の混乱の最中、よくも無事でいたものだとリーは感心する。
だが、それと同時に一つの疑問が浮かぶ。
なぜ彼はこうも生き延びられるのか―?
数多くの困難な任務をこなし、ユニウスの岩盤とともに大気圏に突入してもなお無事―
「…運命をねじ伏せる男とは、こんな強運を兼ね備えているものですか?」
「だから言っただろ?アイツのは強運なんてモンじゃない。
これからも俺達の任務の中で、アイツは俺達を導いていくのかもな」
だが、会話を状況が遮る―
「拙い……8時の方向、距離12000にミネルバ!」
共に大気圏に突入したミネルバとガーティ・ルーの接触を通信兵が告げていた。
すぐにネオは副官のリーと善後策を検討する。
「振り切れるか?」
「ご冗談を。ガーティ・ルーの性能を舐めてもらっては困りますな。急速潜行準備!
Mk-Uの回収が終わり次第潜るぞ!あとはカーペンタリアで地球帰還の祝杯を挙げる!以上だ」
26 :
12/13:2005/09/06(火) 21:23:27 ID:???
「ボギーワン!?なんでヤツがここに!?」
ミネルバにもガーティ・ルーとの接触の報は入っていた。
副長のアーサーは驚愕と共にその状況への疑問を口にする。
「陽電子砲を撃ってたのは、あの連中……そういうことよ」
艦長のタリアがそれに応じる。
ユニウス破砕作業現場にカオス・ガイア・アビスがいたことから、彼らがいても不思議ではない。
しかし、陽電子砲まで兼ね備えた戦艦となると、相手は地球連合軍以外ありえそうもない―
そんなことを考えながらも彼女は次々と指示を出す。
「相手がやる気なら戦闘になるわ!
対艦、対MS戦闘用意!ブリッジ遮蔽、コンディションレッド発令!」
直後に大気圏突入を終えたばかりのミネルバクルーは、蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。
もっともそれは杞憂に終わるのだが…
「艦長!ボギーワンが……着水後に潜行しました!」
「何ですって!?」
いち早くミネルバの存在に気づいたガーティー・ルーは着水後、即座に潜行した。
これにより、ミネルバは地球降下後の戦闘という事態は免れた。
だが、タリアはその動きの素早さと艦の能力に瞠目する。
「ミラージュコロイド、陽電子砲、それに潜行能力……
まるで持てる限りの技術力を戦艦に与えた……そんな感じね」
相対する敵の力に彼女も驚きを隠せなかった。
ボギーワンの反応が消失した後、警戒態勢が解除され、クルーは安堵感に包まれる。
が、その中でマユ・アスカだけは別の感情を抱いていた。
先ほどまで破砕作業を共に行なっていた黒いストライクのパイロット―
死んだはずの兄、シン・アスカと同じ声の男―
一度は共に地球を救おうとしたが、現実には彼が敵であることにかわりはない。
マユからの問いかけにも彼は応答しなかった。
返らなかった問いを少女は反芻する。
「黒いストライクのパイロット……。貴方は……一体誰なの?」
27 :
13/13:2005/09/06(火) 21:24:37 ID:???
「で、そのザフトの新鋭機と一緒に破砕作業をしていたってわけか」
ガーティ・ルーに収容されたゲンは、艦橋に呼び出された。
そしてユニウスでの一部始終の報告を、指揮官のネオに行なっていた。
当然話は破砕作業の件に及び、インパルスとの共同作業の説明をせざるを得なかった。
「…状況が状況で、戦闘ができなかったのは分かるが、あまり敵と馴れ合うな」
アレックスとの一件もあり、上官から一応の注意はされた。
だが、意外なことに説教はこれだけであった。
命令違反の処分はカーペンタリア寄港後に下される、とだけネオは言い渡した。
部屋に戻って休むよう指示を受けたゲンは、ネオの指摘を反芻していた。
何故あの時、自分はあの少女を撃たなかったのか―?
相手がザフトの新鋭機である以上、大気圏突入時の助言も不要だったはず―
なのに自分はあの少女を助けようとした―
内心と行動との不一致をゲンは不思議に思っていた。
そんなゲンを仲間が迎える―
「よう、ヒーロー。お帰り」
艦橋から自室への道すがら、ゲンを待っていたスティングが声を掛ける。
「でも、一人で先走りって、感心できねーよ?」
アウルは持っていたドリンクをゲンに放り投げる。
言葉とは裏腹に、飲み物を持ってくる心遣いがゲンには嬉しかった。
「……これからは、気をつけろ…って言えってスティングが……」
何故か締めにステラからお説教を受けた。
指示をした当人であるスティングは、作戦失敗とばかりに苦笑いをしている。
しかし、そんな様子がゲンには微笑ましかった。
自分の居場所はここであることを認識させられる―
「ただいま。これからは気をつけるよ」
同時に先ほどまでの少女への想いは消え失せる。
敵なら殲滅するだけ―それが俺達ファントムペインの使命―
思い直したゲンは、3人と共に休息に入る―これからの戦闘に備えて。
ユニウス・セブンの落下からしばらくの後、地球連合はプラントへの宣戦を布告する。
そして、彼らファントムペインは、歴史の表舞台に登場することとなる。
いつもGJ!
良いねぇ・・・
今回もスバラシイクオリティ!
いつもGJです!!
揚げ足取りみたいで悪いが突っ込んでおく。
カーペンタリアはザフトの基地。
まあそれは置いといて、GJ。
>>27 GJ!
なんだけど欲を言わして貰うと新三馬鹿をもっと目立たせて欲しいな
ほら本編の扱いがあれだったでしょ・・・・・・・
ファントムペイン戦記作者様投入お疲れさま
次からは地上編の展開ですが、本編どうりですか?(AA組をどうするか?)
それともオリジナル展開でしょうか?
age
ファントムペイン3人組死亡→ゲン復讐鬼に
生存→ハッピーエンドへ
てな流れですかね?
どちらにしろ楽しみだ。
35 :
しのはら:2005/09/07(水) 08:04:26 ID:???
二十一話投下です 少しの間お目汚しを・・・
ファントムペイン作者様乙!
36 :
しのはら:2005/09/07(水) 08:16:26 ID:???
デスティニーの強奪、エクステンデッドの脱走はジブラルタル基地を混乱の極みに陥れた。
部屋から出たマユはとりあえずメイリンの部屋へと向かった。
メイリンは自室のパソコンから情報を集める。定かではないものの、デスティニーが強奪され医務室のステラが連れ出されたという。
メイリンの制止を振り切ってマユは格納庫へと向かい、警備兵を説き伏せてグフに搭乗した。インパルスはマグネット・コーティング及び改修が加えられているため使えない。
「くそっ、いいところだったのに・・・」
議長から直々に連絡を受けたアレックスは情事の半ばで呼び出され、レジェンドのコクピットに収まっていた。
デスティニーの強奪は防がねばならない。
「アレックス・ディノ、レジェンド出る!」
37 :
しのはら:2005/09/07(水) 08:27:55 ID:???
グフは基地から逃走するデスティニーに追いつく。
「この泥棒、返しなさい!」
威嚇射撃が海面を撃ち、デスティニーは急機動で回避する。
「マユ、やめろ!」
ネオ、いや兄の声だ。マユは再び衝撃を受ける。
「お兄ちゃん?なんでそんなことするの!」
マユはデスティニーの牽制攻撃を回避しながら、ネオに呼び掛ける。
恐らくステラを連れ出したのは彼らだろう。
「俺はシンじゃない、ネオだ!」
アロンダイトを引き抜き、襲いかかるネオ。グフは間一髪避け、ヒートロッドで反撃、左手のライフルを破壊する。
マユは兄を責めた。
「ステラをどうする気なの?あの子は・・・」
「高い金かけて作った生体CPU、貴重なOSだ」
マユは怒り、剣を抜いて切りかかる。ネオはステラを機械扱いした。人間をなんだと思っている!?
38 :
しのはら:2005/09/07(水) 08:37:31 ID:???
グフとデスティニーの性能は明らかにグフの分が悪い。だがネオの躊躇とマユの覚醒が戦いを互角にしていた。
赤く塗られたレジェンドが戦いに介入する。
「マユ、そいつには撃墜命令が出ている。落とす!」
「ま、待って!」
「黙れ!お前が殺されるぞ」
ハイネのことが脳裏をよぎる。ここは戦場なのだ。殺せなければ殺される、それだけがルール。
レジェンドがドラグーンをキャノン代わりにして撃ち、デスティニーを跳ね飛ばした。
「お兄ちゃん・・・」
マユは困惑していた。彼は本当に兄なのか?
レジェンドが左手にサーベルを持ち、デスティニーと鍔迫り合い。
アレックスは躊躇しない。かつて彼は躊躇した故、ニコルを殺された。そしてハイネも。
加勢すればネオを倒せる。背後がガラ空きだが、向こうはマユが自分を撃てないことを利用しているのだ。
39 :
しのはら:2005/09/07(水) 08:54:14 ID:???
レジェンドのライフルがアロンダイトを撃ち、爆発させた。マユは意を決してヒートロッドをデスティニーに射出。ビーム砲に絡みつき、誘爆を招く。
「武器はいくらでもあるんだ!」
デスティニーは残像を残して突撃、すれ違いざまに光の翼でグフの両手を切り裂き、レジェンドの火力をかいくぐってグフの頭を右手で潰す。
グフは海面に落ちていく。
「マユ、もしお兄さんが生きていたら・・・君に軍を抜けてほしいと思うだろう」
そう残し、デスティニーは彼方へと消えていく。
マユは呆然としたまま海面へと落ち、レジェンドにスレスレで抱きかかえらえた。
「ごめんなさい、アレックスさん・・・」
「気にするな。世の中にはどうしようもないことがたくさんあるんだ。これもその一つだよ」
40 :
しのはら:2005/09/07(水) 08:55:26 ID:???
投下終了です 保守がてらにでも見てくださいな。
前スレでレスくれた人、どうもです。ではノシ
age
このスレってSS形式ありですよね?以前にも小ネタ投下してみたりしてたんすけど。
ちょっと連作書いてみような、と思ってまして…
GJ!
目の色はシンと同じなんだなw
>42
作品投下どうぞ
>43
もうファイル流れていました
誰かしのはらに反応してやれ カワイソス
いや、まだ流れとらんぞ。
それよりGJだから直リンはやめれ。
しのはらタン乙!
兄妹対決はせつないものがありますな。
50 :
42:2005/09/07(水) 21:12:37 ID:???
良いみたいなので、投下させて頂きます。
あとメインとサブ合わせて2人か3人ほどオリジナルキャラクター出しますが、気に入らなければスルーしてやってください。
文章書くの苦手なもので、欲望に負けて書いてしまった感のあるものですがよろしくお願いします。
とりあえずテーマは「全ての"生"に意味があり、全ての"死"に意味がある」でやっていきたいと思います。
あんまりハードな展開にはしないつもりなので、暇つぶし程度にかじってやって下さい。
炎は焼き尽くす。南海の宝箱の、宝珠を一つずつ。
揺ぎ無いと。そう信じていた「当たり前の輝き」を。
少女はただ願った。世界の安息を。
少年はただ祈った。少女の無事を。
優しいその指が、"終わり"に触れるとき
世界が、加速する
PHASE-00 世界の始まり
「マユ!頑張ってぇっ!」
お母さんの叫び声が聞こえる。無理だよ、もういっぱいいっぱいなのに。
C.E.71。地球軍の理不尽なオーブへの侵攻。
炎に焼かれるオノゴロ島を、少女は家族とともに駆けていた。
少女――栗色の髪と、すみれ色の瞳を持つ少女――マユ・アスカは、一瞬黒く光る何かを視界の端に捕らえた。
「マユッ!!」
大好きな兄の叫び声と共に、突然身体が強い力に押し付けられる。
突風に煽られた後、顔を上げると、兄――シン・アスカの顔がすぐ近くにある。
どうやら自分をかばってくれたらしい。膝が少しヒリヒリしたが、そんなことは言っていられなかった。
「大丈夫か?」
「うん」
短いやり取りを終えると、父が自分を立たせてくれた。
マユはスカートに付いた砂埃を払い落とし、持ち物をチェックする。
「大丈夫……目標は軍の施設のはずだ。こっちまでは」
あれ?マユの携帯が……ない。
ポーチから落としたのだろうか?マユは何気なく、脇に広がる斜面を見下ろした。
ドンッ
「えっ……?」
突然背後から突き飛ばされた。ゆっくりと落下していく身体が、自分のものではない様に感じられる。
視界の端に映った父は、何かを叫んでいた。母は頭を抱えていた。兄は自分を突き飛ばし、2人に向き直る。
その背後には、青い翼を持った死の天使。
そして次の瞬間、機械仕掛けの死の天使は翼を翻し、急上昇する。
一拍遅れて、マユの大切な全てを、炎と光の渦が飲み込んだ。
「う……ぅっ……」
熱い。
身体ごと痛覚以外の全ての感覚が吹き飛ばされた気がした。起き上がろうと思っても、力がはいらない。
「…ユ…マユ……!」
やっと聴覚が戻って来た。誰かが自分の名前を呼んでいる声が聞こえる。
「くそっ…シン!」
しかし声の主は、すぐに離れていってしまった。
「君、大丈夫か」
次に、視覚が戻って来た。
目を開くと、軍服を着た男がこちらを覗き込んでいる。マユは右腕に激痛を感じたが、無視して頷いた。
男の肩を借りて立ち上がったマユは、信じられない光景を目にする。
「お兄ちゃん……?」
ない。
さっきまで、マユが立っていた斜面が、爆風で抉られていた。
いや―――あった。
そこに広がる、自分の家族"だった"ものと血で描かれた地獄絵図。
「シン……シン……ッ!!」
聞き覚えのある声が、兄の名を一生懸命呼んでいた。
マユがそちらに目を向けると、オレンジ色の髪の少年が、遠くの大きな岩の傍にしゃがみこんで狂ったように叫んでいた。
―――あの血の海の中に、お兄ちゃんが?
「お兄ちゃんッ!!」
マユが絶叫し、男の支えを振りほどいて走り出す。
だがそれに気付いたオレンジ色の髪の少年が、すぐに立ち上がってマユに駆け寄った。
「ダメだ、マユ!行くぞ!」
「離して、離してよ!シュウッ!!お兄ちゃんっ!!」
オレンジ色の髪の少年――"シュウ"と呼ばれた少年が、マユの身体を抱き留めて離さない。
「シンはいない!早く、船に!」
どうして?どうしてなの?どうしてウソをつくの?
お兄ちゃんはあそこにいる。あの岩の下に。
私がお兄ちゃんのこと大好きなの、知ってるくせに。
お兄ちゃんに、ただ会いたいだけなのに。
どうして、会わせてくれないの?
「伏せろっ!!」
軍人の声が聞こえた。更なる爆撃が、オーブの軍港を抉る。
シュウはマユを抱えて身を伏せる。
マユはつい先刻、同じことを兄にしてもらったことを思い出し、絶叫して身を捩る。
イヤだ。
お兄ちゃんじゃなきゃ、イヤだ。
「コイツを頼みます!俺はアイツ……を…」
シュウはマユを男に押し付け、先ほどまで自分――"彼"がいた岩の所に戻ろうとした。
ない。
更なる爆撃で、斜面の地形が更に変わっていた。
"彼"がいた岩は粉々に砕け、血の池は蒸発してなくなっていた。
「……いやぁぁぁあぁぁあぁぁぁーっ!!」
マユの絶叫。シュウは彼女の小さな身体を抱きとめると、引きずるように避難船に向かう。
ちくしょう。
「いやっ!離して!お兄ちゃんが死んじゃうよ、シュウ!!離してよっ!!」
ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。
悔しさで涙が止まらない。なんであいつが。なんでこいつが。
「離してええぇぇぇぇぇぇぇーっ!!」
ちくしょう…っ!
ポケットの中の携帯を落とさないように注意しながら、シュウはマユを抱きかかえるように避難船へ向かった。
マユの絶叫が止む。シュウは進みながら、懐中のマユの様子を窺う。
どこを見ている…空…?
すみれ色の瞳が恐ろしいほどに見開かれ、食いしばる歯から彼女の悔しさが伝わってくる。
シュウは彼女の視線の先を見て、目を細めた。
機械の天使たちが、終わることなき死と破壊を撒き散らしながら、踊り続けていた。
主題は「DESTINY Side-C」で行きます。Cの意味は…各々の妄想にお任せしますw
とりあえず、内容はなるべく本編に沿わせながら、オリキャラによる微修正とドラマの追加、みたいな感じで行きたいと思います。
職人様方、スレの皆さん、どうぞよろしくお願いします。
∧ ∧…ギリギリ
(|| ゚д゚)ヘ_∧
(つ´゙( ) <貴様は……なんてものを…
| 'ヽ、 ノ
ヾ ィ゙ , O)
~"(_)、__)
age
wktk
59 :
しのはら:2005/09/08(木) 16:45:21 ID:???
第二十二話投下です
新職人さんよろしくです
60 :
しのはら:2005/09/08(木) 16:57:37 ID:???
ギルバート・デュランダルを始めとしたプラント最高評議会では今後の動向について議論が交わされていた。
ベルリン攻防戦の後プラント側は地球連合政府にスカンジナビア王国を通した和平協議を申し入れた。
だが連合はそれを却下し、さらなる抗戦の意を表した。
地球連合の裏にロゴス、そしてブルーコスモスの影があることを知るプラント側はブルーコスモス派最大の拠点であるヘブンズベースの制圧作戦を決定した。
ジブラルタル基地にはヘブンズベース攻略のため、世界中から戦力が集結しつつある。オーブ軍空母艦隊、ロンド・ミナの義勇兵部隊が次々に入港していく。
マユは転属を願い出た。彼女はもう、自分の運命に抗う気力が残されていなかったのだ・・・。
元々マユはインパルスの重力下試験を行うために派遣されたのだから、ミネルバにいる必要はなかった。
自室に置き手紙を残し、マユは逃げるようにミネルバを降りた。
「みんな・・・ごめん」
61 :
しのはら:2005/09/08(木) 17:08:15 ID:???
ヘブンズベースでは悪魔の兵器が産声を上げていた。
地球連合の大量破壊MSデストロイである。最終調整を終えた機体にステラが乗り込む。
ステラはもう何も覚えていない。アウルの死もマユとの出会いも。体は薬物の過剰摂取でやせ細り、見るからに痛々しい。
ネオはそんな彼女を見て、己の大いなる矛盾を感じずにはいられなかった。
「妹の無事を願う人間が、同じ年頃の少女を殺人マシンにしているなんてな・・・」
複雑な表情を浮かべるネオの前で、デストロイは飛び立っていった。
マユがいなくなったミネルバに突如として緊急警報が鳴り響く。トップレベルの警戒態勢だ。
メイリンが焦った様子で報告する。
「正体不明の巨大MSがジブラルタル基地への侵攻を開始、既にヨーロッパ方面軍にはかなりの被害が出ています!」
ミネルバを始めとしたザフト全軍は巨大MSの迎撃に発進した。敵は巨大MSだけでなく、ベルリン戦の残党もいるらしい。
62 :
しのはら:2005/09/08(木) 17:29:23 ID:???
基地の格納庫でインパルスに向き合っていたマユ。
「本当にありがとう。お疲れ様、インパルス」
マユは自分の愛機に思いを巡らせた。思い出が蘇り、ふと目頭が熱くなる。
その場を立ち去ろとした時、警報が鳴った。パイロットたちがそれぞれに機体に飛び込んでいく。
しかしマユは目を背けた。あれほど充実した時間を過ごしたMSのコクピットが、今では忌々しく感じる。
(もうモビルスーツには、乗らない)
マユに女の声がかけられた。声のした方を見ると、威圧的な長身の美しい女性。オーブ影の軍神、ロンド・ミナ・サハクだった。
63 :
しのはら:2005/09/08(木) 17:30:40 ID:???
投下終了です
今月のダムA見てミナ様とマユの交錯をやりたかったとですorz
ではノシ
しのはら乙age
ミナ様キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!
しかし、しのはらマユ種ってかなり登場人物多いな
本編はキャラ多すぎて扱いきれなかったのが破綻の原因のひとつなので、二の轍を踏まないかと老婆心
しのはらタソには是非とも本編を追い越すスピードで書いて欲しい。
67 :
しのはら:2005/09/09(金) 08:04:30 ID:???
>65 敵司令官や軍医は名前だけなんで。四馬鹿はあまり出さないようにしてます
>66 できるだけ早めに更新したいと思います
68 :
しのはら:2005/09/09(金) 08:05:36 ID:???
第二十三話投下です
明日は総集編orz
69 :
しのはら:2005/09/09(金) 08:18:09 ID:???
「お前は出撃せんのか?」
マユはミナの雰囲気に圧倒された。今まで会ったどんな人間にも勝るプレッシャーを感じる。
「・・・はい」
「なぜだ?お前の仲間は戦っているのだろう?」
「私はもう、モビルスーツには乗らないって決めたんです」
マユは緊張を押し殺して言った。息苦しく、手が震えていた。
それを聞いたミナは微笑する。氷のように冷たい笑みだ。
「怖いのだな?」
「違います!」
「嘘を言うな。余は全てわかる」
マユは怖かった。戦場に出て自分と同世代の子供も戦い、兄と命のやりとりをすることが。
「あのっ・・・」
マユは自分でもわからないまま、ミナに全てを話した。家族の死、戦友との別れ、仲間たちのことを。そして兄シン・・・いやネオ。
70 :
しのはら:2005/09/09(金) 08:32:36 ID:???
ミナは黙って聞いていた。切れ長の目がわずかに歪む。
「余にも弟がいた。もうこの世界にはいないが」
「えっ・・・」
ミナは語る。弟のギナは馬鹿な男だった。破壊と暴力で多くの命を奪い、自らの過信で死んだ。
「だが弟は心からオーブという国を愛していた。その意志は私に受け継がれている」
「何が言いたいんです?」
「物事は様々な側面から見なければならないのだ」
ミナは語る。弟の行為は一方から見ればただの破壊だったが、違う一面から見れば国を思ってのことだと。
「恐らくはお前の兄も同じだろう。そうでなければ、お前は今ここにいない」
マユは衝撃を受けた。今まで考えたこともない意見だ。
「それに、絶望の中から人を救う方法もあるはずだ」
ミナはマユの肩に手を置き、優しく笑った。
71 :
しのはら:2005/09/09(金) 08:39:59 ID:???
マユの中では決意が揺らいでいた。
(絶望の中から人を救う方法もある)
ミナは背中を向けた。
「余は強制しない。自分で答えを出し、行動すれば良い」
「あのっ・・・」
呼び止められたミナは止まり、振り返った。
「ありがとうございました!お、お礼はまた・・・」
「必要ない」
「えっ?」
「もう頂いている。マユ・アスカ」
パイロットスーツを着、再びインパルスのコクピットに収まるマユ。
もう少しだけ、運命に抗うことにした。ミナが話を通し、格納庫の扉が開いていく。
「マユ・アスカ、インパルス行きます!」
72 :
しのはら:2005/09/09(金) 08:41:22 ID:???
というわけでマユミナですた ミナ好きの皆さんスマソ
ではノシ
>>59-63>>68-72 GJ!
俺自身マユ好きでミナ好きでもあるんで、凄く良かったです!
この調子で他のアストレイキャラとの絡み等も見てみたい感じがします!
やはりミナ様は最高ッスね
マジでオーブ元首になってくれません?
age
「・・・どうするよ、こんな統一感のないゲームばっかでて・・・。」
アキラが頭を抱えた。
「アキラ、没になったのはもっと凄い。」
そう言ってゼロがアンケート用紙の入っている箱を持ってきた。
『アンジェリー○』『FF7』『斬魔大聖デモンベイ○』
「もうみんなでやれるゲームじゃねえじゃねえか!!
最後の奴なんてここのクルー結構アウトだよ!!なんで機神咆哮のほうじゃないんだ!!」
「アキラ、そういう問題じゃないでしょ・・・?」
グレイシアはため息をつきながら呟いた。
「どうする?ハイネ?」
ジョーがそう言ってハイネの方を向くと、ハイネはほーこたんのCDを聞きながら
居眠りぶっこいてた。
「「「「「起きろぉぉぉぉぉぉ!!こんのボケ西川ぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」
「うっ、うわぁぁぁ!!しのはらさーん!!ミナ様の一人称は『私』ですよー!!」
ハイネはハイネ隊の協力プレイでぼこされた。
「で、皆、とりあえずこの中で持ってるゲームを言って欲しいんだ。」
ハイネはジャムおじさんみたいな顔で言った。
「ハイネー、俺『サクラ○戦コラムス』 もってまーす。初代ですか?2ですか?」
アキラが手を上げる。
「いや、そこまで詳しいこと知らないから。他には無いかー?」
「ハイネー、俺『人生ゲー○』も『ぷよぷ○』 も持ってまーす。セガサター○ですけど。」
「またお前か!!てゆーかセガサター○?!」
「まだ我が家では充分現役ですよ?データふっとぶけど・・。」
「聞いてねぇよ!!」
こうして会議は泥沼に入っていく・・・・・。
「マユ!!何処に行く!!」
「離してレイ兄ちゃん!!今日、ニホンのイケブクロの大○浪漫堂にいかないと
誕生日クーポンが!!」
「離してメイリン!!私はネオロマのイベントに行くの!!」
「お姉ちゃんもニホンに行こうとしない!!」
『俺!アーカムシティ言ってくる!!アルたーん!!』
「ハロ!!お前もか!!」
>76 ワロタ ミナ様の一人称「余」じゃなかったか?最近のダムAは余だったが。
教えてエロイ人
『ト、イウワケデエロイヒト?ガオシエマスヨ。』
「エロい人と呼ばれて出てくるとは流石だな、ハロ者。」
『ウム。トイウワケデASTRAYノコミックスヲダシテキタ。ミテミルゾ、レイジャ。』
ーーーーアストレイちぇっくちゅうーーーーーーーーー
「読み終わったな。」
『あぁ。』
「まて、何故急に人モードだ。」
『カタカナは読みにくいだろう?レイ者。』
「まぁ、確かにそうだが・・・。」
『はい、じゃあまず初代アストレイ三巻、Xアストレイ二巻、アストレイR四巻だしてくださーい。』
「出したぞ。」
『じゃあ、初代は136P、Xアストレイは143P、アストレイRは76Pを開いて、ミナ様を見て見ろ。』
「・・・・・全部私だな・・・。」
『ちなみにギナ様も私だった。』
「つまり、ダムAは?」
『・・・・・・あれだ、外なる神々の陰謀。』
「そこまでスケールがでかいのか?!」
『イメチェンとかさ!!いろいろあるのよ!!ミナ様も!あははははははは!!』
「あ、こら!!結局解決しとらんじゃないか!!まてハロ者!!」
>>78 ワロスw
俺もミナ様の一人称は普通に「余」だと思ってた
違和感ねえし
個人的に、「それも私だ」ネタからめて欲しかったw
フゥハハハハハーやはりミナ様は最高だぜぇフォーーーーー!
>>しのはら氏
GJ!自分、しのはら氏のファンです。やっぱアストレイキャラはいいなぁ…
>>ほのぼのマユデス作者様
ハイネ隊濃すぎw GJ!
とりあえず何もないとアレなんで、PHASE-00から出てたキャラの説明でも。
シュウゴ・ミハラ
コーディネイター。赤味がかったオレンジの髪と、瞳を持つ。現在17歳。愛称は"シュウ"。
本人はプラント出身だが、名前がオーブ系なのは父親がオーブ出身でプラントに移住したため。
母は"血のバレンタイン"で死亡。その後父とオーブに移住するも、侵攻戦の折に生き別れになる。
シンの親友で、オーブで彼の最期を看取ったが、その時のシンの言葉がある種の"呪縛"になっている。
マユとともにプラントに渡り、現在はミネルバに所属。薄紫のカラーリングの専用ザクウォーリアのパイロット。
そんでは、第1話投下行きます。
かつて望んだのは明日。今望むのは昨日。
戻れぬ時に、全ての人は想いを馳せる。
戻れぬと知りながら、いつか清算できることを。
現在(いま)という時の中で、少女は何を見る。何を聞く
その幼い瞳に、何を宿す。
PHASE-01 ロアー・オブ・ペイン
一隻のシャトルが宇宙港に進入すると、少年は深い溜め息をついた。
彼の名はアレックス・ディノ。
現プラント議長、ギルバート・デュランダルとの会談を望むオーブの"姫"の随伴として、
このザフトの軍事コロニー"アーモリー・ワン"へやってきた。
再び安定を取り戻しつつある世界。それこそが彼が望み、目指してきた世界。
だから彼はこうして、かつての自分の居場所に戻って来た。
「(俺も歳をとったかな……)」
まさかコロニーの外観を見ただけで、こうまで感傷的な気分になるとは思っていなかった。
横にいる"姫"をちらりと見遣ると、彼女は苛苛した様子で指を叩いていた。
無理もない。これから会談する相手の立場を考えると、自分まで胃に穴が空いてしまいそうだった。
「うわっ!!」
同僚のメカニックであるヴィーノ・デュプレの運転する車の助手席で、
ルナマリア・ホークは素っ頓狂な声を上げた。
「はぁ〜…なんかもう、めっちゃくちゃ」
危うくモビルスーツに車ごと蹴り飛ばされそうになり、彼女はシートにしがみついた。
彼女がうなだれると、ヴィーノは小さく笑う。
「しょうがないよ…初めての奴も多いんだしさ。ミネルバの配備、どこだと思う?」
「う〜ん…月軌道じゃないの?あ、レーイ!!」
ルナマリアは同僚のレイ・ザ・バレルの姿を認め、そちらに大きく手を振る。
レイはその声に気付き、申し訳程度に手を掲げ、ちょいちょいと振ってみせた。
その仕草がなぜかおかしくて、ルナマリアは小さく噴き出してしまった。
細い指が、ピンク色の携帯電話を弄っていた。
噴水の周囲にあるベンチの一つに座った少女は、次々とディスプレイに映し出される画像を見て微笑む。
これはお兄ちゃんにクッキーを作ってあげたときの。
これは家族で公園にキャンプに行ったときの。
少女は一心不乱に携帯電話を弄る。
と、何かの拍子に脇に置いていた買い物袋が倒れ、中身が転がり出てしまった。
「あっ!」
少女――マユ・アスカは慌ててそれを拾いに行く。
転がった缶――ルナに頼まれたものだ――はやがて、洋服屋の外壁に当たって止まった。
周囲からくすくすと小さく笑い声が聞こえる。マユは顔を真っ赤にして、やっと追いついた缶を拾い上げた。
ドンッ
「いたっ!」
突然何かがぶつかってきて、マユは尻餅をついた。
痛むお尻を擦りながら、彼女はぶつかってきたものを確認する。
妖精のような、人形のような、可愛らしい少女だった。
その不思議な美しさに見惚れていると、少女は立ち上がって尋ねる。
「ごめんなさい……大丈夫?」
「え?あ……はっ、はい!大丈夫です!」
マユは慌てて立ち上がり、そそくさとその場を立ち去ろうとする。
すると、少し遠くで声がした。
「おーい、ステラァー!」
「スティング……」
背の高い、緑色の髪の男がやってきた。その背後には、青い髪の小柄な少年。
「すまなかったな、大丈夫か?」
こちらを見ていたらしく、スティングと呼ばれた少年が謝罪する。
青い髪の少年は、ステラと呼ばれた少女に嫌味を言っているようだ。
「あ…はい。こっちこそ、すみませんでした…」
そういうと、スティングが軽く手を掲げ、三人は去っていく。
可愛い娘だったな…
マユはぼーっとして、しばらくその場に立っていた。
現オーブ国家元首――カガリ・ユラ・アスハは、苛立ちも露わに呟く。
「明日は新型艦の進水式と言ったな…そんな日にこんな場所でとは、恐れ入る」
恐れを知らぬ言葉に、取り巻きの人々が――アレックスですら、冷や汗をかく。
「申し訳ありません。"姫"」
カガリがその発言にムッとしたのを見て、アレックスは慌ててフォローする。
「内々、かつ緊急にとお願いしたのはこちらなのです…姫」
「わかってるさ、すまなかった」
本当に分かっているのか……今彼らが相手にしているのは、プラント評議会議長ギルバート・デュランダルだというのに。
「それで、こちらの用件は飲んでもらえるのか?」
やはり、分かっていないようだった。アレックスは溜め息が出そうになるのをグッと堪える。
「かつて国を焼かれ、散り散りになったオーブの民……我々はそれを人道的立場で"保護"しただけですよ」
彼の言う事は真理だ。そして保護された多くの人々は、今の暮らしを手に入れ、プラントでその能力を発揮している。
「分かっている!ただ私は、オーブ戦の折に流出したわが国の技術の、軍事的利用をやめていただきたいと言っているのだ!」
カガリの言う事もわかる。他国の争いに介入しないことがオーブの理念。
要するに彼女は、父が死を持って守り抜いたその理念を、貫き通して欲しいだけなのだ。
「(だが……まだまだ甘い)」
気持ちだけは真っ直ぐだ。だがそれこそが本当に、国を追われた者達にとって最良の選択なのか?
アレックスはふと、デュランダルに目を遣る。カガリの無礼な発言に、腹を立ててはいないだろうか。
彼はその頬に微笑を浮かべ、アレックスを見ていた。
「何してんだ?」
突然頭に手を乗せられて、マユはびくりと身体を強張らせる。
「ぼーっと突っ立ってるなよ、危ないぞ」
「分かってるよ…」
背の高い少年が、自分の背後に立っていた。
待ち合わせの時間に遅れてきたのはそっちだと言うのに、何故こんなに偉そうなのかとマユは思う。
「ショーンとデイルは?」
「あいつらなら先に戻ったよ…ほら、さっさと来い」
そういうと少年はマユの手を引いて、公園の入り口に停めてあった車へ向かう。
マユは手を引かれながら、彼の顔を見上げて言った。
「ちょっとマーレさんの所に寄っていきたいな」
「……アレのことか?」
荷物を車の後部座席に積みながら、少年が聞き返す。
マユがうん、と答えると、少年はバタンとドアを閉めて、マユに向き直った。
「分かった。でも明日も早いんだ、あんま長居するなよ?」
マユの肩をぽん、と叩くと、彼は運転席に乗り込む。
「うん!」
マユは回り込んで助手席に座る。エンジンがかかり、車が走り出した。
「用事が終わったら呼べ。迎えに行くから」
「シュウ…ごめんね?」
少年――シュウゴ・ミハラは、ふっと笑った。
「謝ることないさ…冷蔵庫でプリン冷やしておくから、早めにな」
マユの顔がパァッと明るくなる。それを見て、シュウゴは微笑んだ。
これでいい。いや、これでいいわけがない。
でも少なくとも、"俺"という存在はこれでいい。
"俺"は"アイツ"の、代わりでいい。
「粗末なもんだな…ザフトもさ」
ザフトのつなぎを着た少年が、小さくぼやいた。
帽子からはみ出た黒い艶のある髪に、漆黒のバイザー。体格は小柄だったが、その声は氷のように低く、冷たい。
少年は"仲間"に目配せする。スティング・オークレー、アウル・ニーダ、そして――ステラ・ルーシェ。
三人とも無傷なようだ。辺りに散らばる死体の山と血の海を見て、少年は不快感を禁じえなかった。
いつ見てもダメだ。特に、血は。
それは彼の深層心理に根付いた"記憶"からなるものだったが、そんなことには気付くはずもない。
なぜなら彼には、過去の記憶がないから。
彼は血を見るのが苦手だ。だから、代わりに"あるもの"が得意になった。
『ゲン、行けるぜ』
ヘッドギアに通信が入る。スティングの声だ。
少年――ゲン・アクサニスはコンソールをチェックして、"機体"のハンガーに掛けられた外部ロックを次々に解除していく。
「アウル、ステラ、どうだ」
『OK、情報通り』
『いいよ……』
弾んだ声と、無関心な声。ステラの方はスイッチが入ったな、とゲンは内心苦笑した。
ゲンが振り返ると、三機の巨人がゆっくりと立ち上がる。"カオス""ガイア""アビス"。ザフトが極秘で開発していた、新型のMS。
ゲンは何故かそれらのシルエットに、既視感と不快感を同時に覚えた。
「…よし、パワーロックをオープンしろ。俺は撤収する」
『りょーかい…そんじゃ、ひと暴れと行きますか!』
「はしゃぐなよアウル。足元すくわれるぜ…スティング、後は頼む」
『任せとけ。バスの時間には遅れないさ』
三人の中では一番頼りになるスティングに後を任せると、ゲンは退却の準備を始める。
ここからは時間との勝負。最悪の場合、危険を冒して手に入れたこの3機すら失いかねない。
立ち上がった三機が、それぞれ緑、青、黒のカラーリングに色付いていく。
突然。
辺りに警報が鳴り響く。ゲンが入り口に目を遣ると、小さな少女が身を翻して走り去った。
入り口に設置したあった警報装置を鳴らされたらしい。気を抜いていたか?……いや。
ちょっと待て――何故あんな少女が、こんな軍の施設に?
『ゲン……』
ステラが不安げな声をあげる。
まぁいい…遅かれ早かれ、いずれはばれることだ。3機がこちらの手の内にある以上、最早問題ない。
「大丈夫だ、ステラ。気を付けてな」
『うん……ゲンも気をつけてね……』
自分は"これ"さえ持ち帰ればいい。指示された通りに。そこから先は、俺は知らない。
"D-plan phase0"と書かれたディスクを懐に仕舞い込むと、ゲンは急いで格納庫を出た。
「だがっ!強すぎる力は、また争いを呼ぶ!!何故それがわからない!?」
遂にデュランダルに食って掛かったカガリの肩を、アレックスは苛立った様子で押さえ込む。
彼女が国を愛しているのは解かる。同じように、国民を愛しているのも解かる。
だが、これではダメだ。こんな態度のままでは、手に入るものも手に入らない。
「いいえ、姫」
アレックスが思考に耽っていると、デュランダルはわけもなく言い放った。
「争いが無くならぬから、力が必要なのです」
その一言に、アレックスは言い知れぬ感覚を覚える。
ビーッビーッ!
「!?」
「なんだ!?」
突如響き渡った警報に、辺りが騒然となる。
そして次の瞬間、爆風で格納庫の一つが内側から吹き飛んだ。
「なっ…!?」
アレックスは絶句する。格納庫から現れた"もの"は、彼の傷痕にそっと指を這わせる。
「あれは……ガンダム……!」
カガリが震える。彼女も思い出しているのだろうか。あの苦い、戦いの日々を。
アレックスは、このような事態にも関わらずそんなことを考えていた。
「はぁっ…!はぁっ…!」
マユは走る。"ミネルバ"へ。"力"の在処へ。
同僚を訪ねて目にしたものは血の海と、人だったものと、黒い少年。
どうしようもできなかった。目の前でたくさんの人が死んでいるのに、どうしようも。
あのときと同じ。守れない、助けられない。
力が無いから。いや―――
「マユッ!」
低い声で叫びかけられてマユは足をとめた。
「レイ!」
赤いバイクに乗ったレイ・ザ・バレルが、彼女の近くで停車する。
「後ろに乗れ、ミネルバまで送る」
「うんっ!」
力ならある。私には、"あの子"がいる。
マユがバイクの後部座席に飛び乗ると、レイはバイクを急発進させた。
戦いを望む者なんて…皆消えてしまえばいい。
私と、"あの子"の力で。
以上、第1話投下終了です。お目汚し失礼しました。
どうにも文をまとめるのが苦手でして…無駄に長くなってしまって申し訳ない。
戦闘は第2話以降で。
>88 乙
このスレ見てるとホント負債殺したくなってくる
>>88 GJ!!
どさくさに紛れてマーレの名前が出てきたところに好感持ったw
91 :
しのはら:2005/09/10(土) 14:48:56 ID:???
第二十四話投下します
ミナ様の反響が大きかったのに驚いてます
92 :
しのはら:2005/09/10(土) 15:01:52 ID:???
大量殺戮兵器のある種極限だな、とアレックスは感じていた。
ヘブンズベースから発進したデストロイはザフト軍防衛ラインを次々に突破し、ジブラルタルへと接近していた。
殺到するMS部隊は蹴散らされてしまい、踏み潰されていく。
タンホイザーも弾く陽電子リフレクターに、レセップス級を一撃で沈める武装を誇るデストロイ。
ミネルバは三隻同盟ヤマト隊ドムと合流した後、デストロイの阻止作戦を開始した。
だが歴戦のパイロットが束になってかかっても、傷一つ与えることができない。
「この化け物を潰すにはどうすればいいんだ、キラ!」
「自分で考えろアレックス!」
レジェンドの固定ドラグーン攻撃を浴びても、リフレクターは破れない。
その間にもザフト軍MSは面白いように撃墜され、被害が拡大していった。
93 :
しのはら:2005/09/10(土) 15:15:45 ID:???
空域に到着したマユはリフレクターの内側から奇襲し、発生器を破壊した。すかさずドムのビームバズーカが追い討ちを加える。
「イン・・・パルス?殺す」
ステラはデストロイを人型に戻した。そのおぞましいフォルムにマユは戦慄したが、怯むことなく向かっていく。
火線の合間をわずかに縫って懐に入り、デストロイのインコムハンドを切り落とす。
コクピットにサーベルを突き立てようとした時、デスティニーが間に割り込んだ。
「ステラ、油断するな!マユ、お前・・・」
兄の口から出たステラという言葉。死を怖がっていたあの強化人間の少女がこの悪魔を操縦しているのか?
「わかった、ネオ」
混線している通信からステラの弱々しい声が聞こえ、マユは怒りを露わにした。
「お兄ちゃん、ステラは人間なんだよ!?兵器じゃない!」
「俺を兄と呼ぶな、マユ!」
レジェンドとルナマリアのザクファントムが割って入り、デストロイの胸部ビーム砲を破壊した。
「お兄ちゃん、私の大好きだったお兄ちゃんに戻れ!」
「黙れ!」
インパルスとデスティニーは剣を交え、激しく交錯した。
94 :
しのはら:2005/09/10(土) 15:36:51 ID:???
「うぇーい!」
兄弟の間を太いビームが貫く。
「ネオを殺そうとする奴は私が殺してやる!」
「ステラ、私だよ!マユだよ!」
マユ必死の呼び掛けも、ステラには聞こえていなかった。ステラに残されたのは人殺しの能力、ネオへの偏愛。そして死への恐怖。
「ステラ、私がわからないの?ステラ!」
「無駄だ、そいつにはわかりゃしねぇ!ただの殺人マシーンだ!」
カオスから通信が入った。マユは彼を知っている、ボナパルトで出会ったスティングという青年だ。
「何もかも忘れてるんだ!」
「嘘!」
「嘘じゃないんだよお嬢ちゃん、これが現実・・・」
次の瞬間、赤いドムが放ったビームがカオスのコクピットを貫いた。キラ・ヤマトだ。
「敵となれ合ったら死ぬぞ!」
非情なキラの言葉に、マユは自分が戦場にいることを実感させられた。
損傷激しいデストロイと、地球軍は撤退した。死のみを残して・・・。
95 :
しのはら:2005/09/10(土) 15:38:21 ID:???
投下終了です
ほのぼのマユデス作者様&SideーC作者様、他職人様乙です
ではノシ
>しのはらさま
このスレ初の、破壊登場ですね。
>SideーC作者様
ゲン・アクサニス(これはあの人ですか?それともオリキャラですか?)
各職人様へ
これからの本編は、新キャラ達にとっては最悪の展開のようなのでうまく
補正希望。
あとミネルバとルナマリアとレイの生存希望。
シンは本編よりは救われる結末で。
>>96 ゲンさんはあの人です。
過去スレにあった「アクス・ア・ニース」のネタを勝手に拝借して組み合わせました。
ネタ出しされた方、申し訳ありませんです。
>>94 >「うぇーい」
いや、別に文句を言うわけでゎないけどさ…
age
100get
ハイネ隊の会議は熾烈を極めた。
アキラが一人おたくっぷりを披露し、ジョーは暴れ、ゼロは高速思考で
どうすればいいかずっと考えてしたし、グレイシアはもうどうでも良くなって
自室へと帰って言ったし、カルマは居眠り、キースは飲ま飲まウェーイ。
そして、そんな超狂気の混沌の中から出てきた結論はこれだった。
『もう中止だよ、馬鹿隊長。つーかなんでこんなに統一感ないんだ?』
「えーなんでー?」
子供のようにプリプリ怒るハイネ。
「おい、なに萌えキャラぶってんだ。」
「大体、こんな個性が強すぎるやつらでゲーム大会とかしたら乱闘起こるよ。」
「昔、ハイネもやったしね。」
「ハイネ、割り切りましょう、でないとまっぷたつですよ。」
「うわーーーーん!!皆がいじめるー!!ほーこたーーん!!」
ハイネが幼児化して文句を言われてる時、グレイシアはミネルバのクルーに
ゲーム大会の中止の知らせを伝えた。
「・・・・・何か、あったんですか?」
「えぇ、まあ聞かないでちょうだい。」
そう言ってグレイシアは頭痛をおさえるように頭を抱えた、
「・・・・中止なんだ・・・・。」
マユはにぎやかなのが大好きな子だ。学園祭にはりきって当日風邪を引くタイプだ。
それゆえ、今回のことは相当楽しみにしていたらしく、非常に落ち込んでいる。
「・・・・・・・・・。」
それを見たグレイシアは一瞬考え込んだ。まぁ、世の中子供に弱いのは
古今東西人種関係なくごく一般の人間なら当然である。
「お嬢ちゃん、ちょっと付き合ってくれる?いいもの見せてあげる。」
そう言ってグレイシアはウインクをした。女性にしか見えないのがありがたい。
遺伝子操作にちょっと感謝。
マユはハイネ兄ちゃんの部下なので、悪い人ではないだろうと思いついていくことにした。
後ろでレイが「マユがたべられるぅぅう!!」とかハロが「おとめはぼくにこいしてるぅぅ?!」
とか叫んでるけど気にしないことにマユはした。
>>101 >「おとめはぼくにこいしてるぅぅ?!」
ハロはアキラ級のヲタだな
しのはらマユ種のキラはやけに勇ましいつか、なんか軍人っぽい
そういえばこの作品のキラってどんな立場なんだっけ
決して主役を食わない立場
名前だけ同じの性格も立場も思想も違う人
>Side-Cのひと
GJ!
かなり書き慣れてますね。文にリズムがある。
続き期待してます
しのはらマユ種ってこのスレではどんな評価?
>103 ザフトの支援組織? 三隻同盟軍のパイロット
ちなみに声は古谷徹w 凸は大塚明夫
>>107 俺はサクサク読めるし、予想できない展開が楽しい
age
自分の中の熱が冷めないうちに、新シリーズ投下してみます。
長いですがご容赦下さい。では
↓
112 :
1/12:2005/09/11(日) 13:25:18 ID:???
CE71年6月15日、オノゴロ島――
オーブ連合首長国は、連合軍による攻撃を受けていた。
沖合いに居並ぶ戦艦。襲い来るストライクダガー。迎撃するM1アストレイ。
閃光と爆音が飛び交い、あちらこちらに火の手が挙がる。
オーブは、揺れていた。
そんな激しい混乱の中で。
山の中、港に向け避難する家族の姿があった。
先導する兄。幼い娘の手を引く母親。後ろを気にする父親。
眼下の港では、避難用の船に、一般市民が列を成して乗り込み始めていた。
さらに急ぐ一家。
と、栗色の髪の少女のポーチから、ピンク色の携帯電話が転がり落ちる。
転がり落ちる携帯電話を、取りに行こうと手を伸ばす少女。引き止める母親。
一家が足を止めた、まさにその頭上で――
白いガンダムが青い翼を広げて一旦停止し、すぐさま角度を変えて飛び去る。
そしてその直後、目も眩む光が、ガンダムのいた虚空を、そしてその先にいる家族を飲み込んで――
――オノゴロ上空。
遠景では、その爆発はありふれた戦場の光のひとつに過ぎない。
そこで起こった血しぶきも、悲鳴も、何もかも――戦っている者たちには、見えはしない。
あちこちで敵味方のMSが破壊され、爆発する。流れ弾が、山肌に着弾してクレーターを穿つ。
一家の頭上を通り過ぎたフリーダムは、足元の悲劇に気づきさえせず、激しい空中戦を繰り広げる――
113 :
2/12:2005/09/11(日) 13:26:40 ID:???
2年後、再びオノゴロ島。
かつての惨劇の場は、復興の槌音響く再開発地域と化していた。
焼け野原が整地され、新たなビルが建つ。クレーターが埋められ、公園になる。
何機ものレイスタやワークスジンが、金属的な足音を立て作業に従事する。
戦場の傷は未だ癒えきってはいなかったが、順調に進む復興に、人々には笑顔が戻りつつあった。
そんな工事現場のひとつで――1機の作業用MS、ワークスジンが、黙々と作業をしていた。
貯水槽らしき大きなタンクを抱え挙げ、ドシン、ドシンと工区内を歩く。
と、そこに入る一つの通信。
『おーい嬢ちゃん。ストップ、ストップ!』
『え? あたし、何かミスしましたか?』
ノイズ交じりの中年男の怒鳴り声に、同じくノイズ交じりの少女の声が答える。
貯水槽を抱えたまま、ワークスジンが困惑したように振り返る。
『あー、違う違う。
嬢ちゃんのせいじゃねぇが、なんでもこの後に使う資材が届いてないんだとよ。
今それ運んでも、中途半端になっちまう。だからとりあえず、作業中止だ』
『いつ頃届くんですかぁ?』
『午後になるって話だ。だから嬢ちゃんは上がってくれていい、ちと早いが昼休みだ』
『わっかりましたー!』
元気のいい返事と共に、ジンのコクピットが開き――まだあどけなさの残る少女が顔を出す。
後ろでひとつ束ねた栗色の髪。Tシャツにサスペンダー付のデニムジーンズ。
何故か右手だけ、肘上まで覆う長い白手袋。
太陽の下、にっこりと笑う。
マユ――隻腕の少女
第一話 『長手袋の少女』
114 :
3/12:2005/09/11(日) 13:27:32 ID:???
「午後からは普通に作業あるからなー! ちゃんと帰ってこいよー!」
「はーい、分かってますよー、マードックさん!」
背中にダミ声を浴びつつ、少女はマウンテンバイクで作業場を飛び出す。
ジグザクに漕ぎながら、ダンプカーを避け、レイスタ(作業用アストレイ)の股をくぐり抜け。
眩しいくらいの陽射しの中、復興工事の続く再開発地区を出て、買い物客で賑わう旧市街区域に入る。
ウィンドウショッピングを楽しむ人々の間を擦り抜けるように、自転車を走らせる。
平和な街の、日常の光景。
街中でダダを捏ねる幼い子供、叱る親。親子連れに視線を止めた少女の表情が、少し寂しそうに歪む。
『……続いて、アーモリーワンで起きた襲撃事件の続報です。
この事件の際、現場に居合わせたオーブ政府の特使が行方不明になっており……』
街頭の大型モニターには、エンドレスで流される遠方のニュース。
大画面にはコロニーを揺るがす激しい戦闘が映っていたが、見上げる市民の表情は完全に他人事。
少女も少し足を止めて映像を眺めていたが、興味も薄そうに再びペダルを漕ぎ出す。
少女の自転車がその場を去っても、構わず報道映像は続く。感情の篭らぬ、単調なアナウンサーの声。
ノイズ交じりの映像の向こうに映るのは、『ガンダム』たちの姿。
『カオス』『ガイア』『アビス』、そして……『インパルス』。
平和を甘受するオーブの人々を、画面越しにツインアイが睨みつける――
街を抜け、緑豊かな山道に入る。溢れんばかりの自然。
潮風薫る海沿いの、断崖絶壁の上に通された坂道を、少女は立ち漕ぎで上っていく。
額に健康的な汗が滲む。少女の横を、車やトラックが何台も通り過ぎる。
少し振り返れば、眼下には海に面した立派な街。さっきまで働いていた再開発区域も見える。
さらにその向こうには、大きく弧を描いて天を指すマスドライバーも。
やがて――岬の上に立つ一軒の屋敷が視界に入る。少女の目的地。
立派な作りのその門を、少女はマウンテンバイクを押しながらくぐる。
115 :
4/12:2005/09/11(日) 13:28:50 ID:???
「たっだいまーッ! ……って、おっといけない」
「ちと最近、南米から豆が入ってこなくねぇ。これも独立戦争の影響かね……」
勢いよく帰宅を告げようとした少女は、部屋の中、電話している男の様子に慌てて口をつぐむ。
片目の潰れたその男は、視線だけ少女に向けて微笑むと、再び電話に集中する。
少女は静かに椅子に腰掛け、男の商談が終わるのを待つ。
「……ああ、『バナディーヤブレンド』は俺もイチオシの商品だからな。
じゃ、手に入り次第また連絡する。いつもありがとさん」
電話を終え、男は受話器を置くと椅子ごとクルリと少女に向き直る。
「ごめんねアンディ。お仕事邪魔しちゃった?」
「いや、構わんよ。どうせ半分遊びみたいな仕事だ。それよりマユ、今日はもう終わりかね?」
「なんかね、また資材の搬入が遅れてるんだって。だからちょっと休憩」
「最近多いねぇ。こっちもコーヒー豆の入荷が滞ってるようだしな――」
娘ほどにも見える少女に答えながら、アンディと呼ばれた男はコーヒーを入れ始める。
サイフォンがゴポゴポと音を立てる。少女はテーブルに肘をつき、その様子を飽きもせずに眺めている。
と、別の扉から、若い女性が顔を出す。
「あらマユちゃん。もうお休みー?」
「いえ、また午後から。マリアはモルゲンレーテ行かなくていいの?」
「あたしも今日は午後からよ。造船課は今ちょっとヒマでねー。大きい仕事終わったばかりだから」
マリアと呼ばれた女性は、くつろいだ格好で豊かな胸元にロケットを揺らしつつ、マユの隣の椅子に座る。
母と子、と呼ぶにはいささか年齢の近い2人の前に、湯気を立てるマグカップが一つずつ置かれる。
「このブレンドは販売も検討している新作でね――是非お嬢様方の忌憚のないご意見をお聞きしたい」
「アンディ、ミルクちょーだい。あと砂糖も入れるー」
「あぁ、こら! いきなり混ぜものをする奴があるか、まずは薫りを楽しんでから……」
「いいじゃないの。まだマユちゃんにはブラックは早いわ。あ、わたしにもミルク頂戴」
「くぅ〜、嘆かわしい! 君たちには大地の生み出した芸術品、コーヒー豆に対する尊敬の念が足りん!」
大げさな身振りで嘆いてみせる男、呆れつつも笑って見ている2人。
奇妙な距離感を保ちつつ、温かみのある擬似家族の団欒――
116 :
5/12:2005/09/11(日) 13:29:42 ID:???
団欒の光景を窓の外に引けば、重厚な造りが美しい大きな屋敷。
さらに引けば、緑の木々に彩られた絶景の岬。
もう少し引けば、繁栄を取り戻しつつある市街も画面に入る。
戦争の傷跡ももう見えぬオノゴロ島の全景。
青い海に散りばめられたエメラルドのような群島、オーブ連合首長国。
国境など引かれていない、ありのままの島々と大陸の輪郭。
薄く雲のかかる、青く美しい地球――
そして遠くに地球を望む、星の海の中――
巨大な浮遊物の上から、地上を見下ろす影があった。
赤く禍々しいモノアイ。角が突き出したような頭部。増設された装甲とスラスター。
サムライブレードを腰に下げたそのMSは、ジン・ハイマニューバ2型。
「……偽りの平和を貪る偽善者どもめ。我らの怒りと悲しみ、忘れさせてなるものか。
あと少し、あと少しで……我らの宿願、叶う時が来る」
彼が立つのは、復興などあり得ぬ凍てついた街。空気も重力もない死の廃墟。
前大戦の緒戦で滅びた人工の大地、ユニウス・セブン。
その上に立った黒いジンが、遥か遠く、蒼く輝く地球を睨み付けている。
「まずは……地上の同志たちよ。
済まぬが我らの露払いとして、先に逝ってくれたまえ――
我々も、遠からず諸君らの所に向かおうぞ! この嘆きの大地と共に!」
顔に疵持つ男の叫びに呼応するように、その背後で十数のモノアイが輝く。
そう、既に宇宙では仮初めの平和は破られ、止まっていた時が今再び動き出さんとしていた――
117 :
6/12:2005/09/11(日) 13:31:01 ID:???
昼食も終わり。
マユは自分の部屋のベッドに、布団も被らず横になっていた。厚いカーテンの隙間から陽光が差し込む。
チラリと時計を見て、嫌々起き上がる。体の右半身は見えない。憂鬱そうな横顔。
一緒にベッドに横たわっていた、白い棒状のものを左手でとりあげ――
暗い部屋にカチャカチャと、何か留め金を留めるような音が響く。
白い手袋に包まれた右手が掲げられ、確かめるように何度か開いたり閉じたりする。
マユは出かける前に、再びリビングを覗く。マリアとアンディは何やら楽しそうに談笑している。
「……あたし、そろそろ行くけど……マリアさんは?」
「あっ、いけない! もうこんな時間!」
オートバイのヘルメットを片手に、急いで立ち上がるマリア。アンディは名残惜しそうな表情。
それを見ていたマユは、ボソッと一言。
「……アンディとマリアってさ。……結婚、しないの?」
「えっ!?」「いぃっ!?」
マユの唐突な問いに、2人は驚いて顔を見合わせる。そして赤面。
「いや、あのねマユちゃん、わ、私たち、そもそもそういう関係じゃないし……」
「まあそのアレだ、大人には色々と事情というものがあってだな……」
見るからに動揺しつつも必死で否定する二人に、マユは肩を竦めた。慌てる素振りや表情まで似てきている。
マユは2人から視線を逸らすと、リビングの隅、棚の上にある2つの写真立てに目をやる。
片方は、マリアと金髪の男。背景はどこかの艦内だろうか。2人とも連合軍の制服を着て、笑っている。
片方は、アンディと黒髪の女。ぴったりした服の女が、ザフト制服を着崩した彼に寄り添い、微笑んでいる。
なおもアウアウと言い訳を続ける2人をその場に残し、マユは家を出る。
自転車に跨ろうとして、ふと思い出したように懐からピンクの携帯電話を取り出し、ある写真を表示する。
黒髪の少年が今よりも幼い顔つきのマユとじゃれあって、舞い散る紅葉の下、笑っている。
「……右手、痛いな……。また、ピリピリしてる……」
マリアやアンディと居る時とは、対照的な暗い顔で。
マユは携帯電話を仕舞い右腕を一撫ですると、自転車に跨り、のろのろと坂を降り始める。
118 :
7/12:2005/09/11(日) 13:32:03 ID:???
ゴポリ……。海の中で、水音。
マユのマウンテンバイクが、海辺の下り坂の途中でバイクに追い抜かれる。
片手を挙げ「おっ先〜♪」というマリアの声に、マユは必死の形相で自転車を漕ぎ始める。
しかし自転車でバイクに追いつけるはずもなく。見る見る離され、少女はガックリと肩を落とす。
そんな、平和な光景も――視線を、真下に移していけば。
断崖絶壁の岩場の下、穏やかに波打つ海面のさらに下。
密かに海中を、動く影。その数、実に十数体。
暗い水の中、モノアイが点灯する……。
オーブ軍の監視所に、突然警報が鳴り響く。
ウトウトしていた監視兵は、ねぼけ眼を擦り、その詳細をチェックする。
「なんだぁ……海中センサーに反応?!
って、何でこの距離まで入り込まれてるんだよ!?」
マユの自転車が、さっき登っていった道を逆戻りする。
平和な市街。人々の笑い声。大道芸人が道の真ん中で様々な芸を披露する。
マユの表情も、思わず和らぐ。誰もこの平和が乱されるなどと思ってもいない。
自転車はそのまま、再開発地区の方へ――
国防本部に、監視所から一報が入る。
「……水中にMSらしきアンノウン多数だと!? いったいどこから!?」
「至急、行政府に連絡しろ! 指示を仰げ!」
「M1部隊を急がせろ! ムラサメもすぐに発進だ!」
「アンノウンの確認急げ! どこに向かってる!?」
管制室に、報告と指示の叫びが乱れ飛ぶ。
既に臨戦態勢には入っていたが、2年ぶりの実戦、しかも敵の目的も狙いも不明。混乱は避けられない。
「市民への通知や避難指示は、どうしますか?!」
「まだアンノウンの目標も分からん、それに……」
将校はモニターを見上げ、苦々しげにつぶやいた。
「もし、今すぐ攻撃されたりしたら――とても全市民の避難など、間に合わん……!」
握り締められた手に汗が滲む。
モニタ上の光点は、刻一刻とオノゴロ島に接近してくる――
119 :
8/12:2005/09/11(日) 13:33:00 ID:???
自転車が工事現場に滑り込み、急ブレーキ。少女は身軽に飛び降りて、仕事場に駆け込む。
「すいませーん、少し遅れましたー!」
「ばッかやろゥ! もう作業始めてるぞ、さっさとしろ!」
「はーい、すぐにジンで出まーす」
「全く、かん……じゃなかった、マリアさんの頼みだからバイトさせてやってるのに。
もし使えないようなら、誤魔化してやってる年齢バラして、容赦なく蹴り出すからなー!」
背中を追いかけるマードックの罵声も馬耳東風。マユは笑顔のまま、自分のジンに乗り込んだ。
――それは、何の前触れもなく。
突如、その頭上を、轟音と共に影が通り過ぎる。
「何!?」「何だ!?」
「軍の訓練か!?」
マードックも作業員も、ジンに乗り込みかけたマユも、みな頭上を見上げる。
そこには――建設中のビルを掠めんばかりに飛ぶ、シュライク装備型M1アストレイの編隊。
そしてその先頭の一機が洋上に出たところで――爆発する。
波の合間から放たれた数条の閃光が、M1に襲い掛かったのだ。
海面から、ニュッと海坊主のように顔を出す、丸い頭――
「な、なんだありゃぁ!?」
「ザフト軍の……水陸両用MS!?」
一気にジャンプし、次々に水中から飛び出してたのは、可変式の水陸両用MS、アッシュ。
それは、周囲の巻き添えも何も気にすることなく、ビームとミサイルを乱射して――
マユたちの日常が、一瞬にして戦場に塗り変わる。
――戦闘が始まったのは、再開発地区だけではなかった。
人々が集まり賑わいを見せる旧市街の上空でも――
街から離れた、岬の上に立つ屋敷のすぐ近くでも――
再建されたばかりの、オーブが誇るマスドライバーの傍でも――
オーブ軍と、謎のアッシュ部隊との交戦が始まっていた。
アッシュの数は決して多くはなかったが、なにぶん深く侵入され、また広く分散している。
どれが陽動でどれが本命か判断つきかね、また市街や市民への被害を恐れ、オーブ軍の対応は遅れていた。
120 :
9/12:2005/09/11(日) 13:34:45 ID:???
――その報告を、一人の青年と一人の老人が、行政府の中心で聞いていた。
複数の場所の映像が、壁面を埋め尽くすモニタに同時に映し出される。
「……だからボクは言ったんだよ。コーディネーターなんて信用ならない、ってね。
カガリはバカさ。わざわざプラントまで行って連中のご機嫌取ったって、これだもの」
「で、この事態、どうするつもりだ、ユウナ?」
「どうもこうも、戦うしかないでしょ、父上」
青年は肩をすくめると、芝居がかかった口調で部下たちに言い放つ。
「カガリがお忍びでプラントに出発する時、後を頼まれたのはこのボクだ。
首長代理ユウナ・ロマ・セイランの名で全軍に通達。侵入者たちをさっさと排除しろ、ってね。
街ならいくら壊れても再建できるけど、マスドライバーや軍の施設は面倒だからな。
そっちの方を重点的に守るよう、指示しておいて」
「しかし、それでは市民の被害が――」
躊躇う部下に、青年は薄ら笑いさえ浮かべ、平然と応える。
「仕方ないさ。長期的なオーブの国益を考えたら、優先順位は明らかだよ。
もし犠牲者が出たら、TVの前で涙でも流して、遺憾の意でも表明してやるさ♪」
そしてユウナは、誰にも聞こえぬ声で付け加えた。口元だけを自嘲的に歪めて。
「それに――ボクの仕事は、市民に嫌われることでね。
たとえ蛇蝎の如く嫌われようと、この国を、カガリを守り抜くのが、ボクの使命――」
一方、岬の上の屋敷の中――
マユに『アンディ』と呼ばれていた男もまた、地下室らしき部屋で複数のモニタに向き合っていた。
そこに映し出される映像は、まさにユウナが見ていたのと同じもの。オーブ軍の展開の様子も映る。
男は苦虫を噛み潰したような表情で、立ち上がる。ギリッ、と右膝が不快な金属音を放つ。
「『アレ』を使わざるを得んかな。
しかし――果たして俺に乗りこなせるかどうか」
屋敷の門に、一台のバイクが滑り込む。甲高い音を立てて急停止。
フルフェイスヘルメットを外したその顔は――マユに『マリア』と呼ばれていた彼女。
急ぎ引き返してきた彼女は、こちらも厳しい表情で、屋敷の中に駆け込んでいく。
121 :
10/12:2005/09/11(日) 13:36:19 ID:???
マユのいる工事現場は、半ばパニックになっていた。
次々に持ち場を放棄して逃げ出す作業員たち。しかし再開発地区にシェルターは少ない。
逃げ場を捜し求め、右往左往する。
さほど遠くもないところで、上陸し始めたアッシュとM1アストレイが戦闘をしている。
双方のビームの流れ弾が建設中のビルを掠め、さらなる混乱を招く。
そんな中――マユはジンに乗ったまま、その戦闘を眺めていた。逃げ出す素振りも見せない。
「おい嬢ちゃん! さっさと避難するぞ!」
足元からマードックの怒鳴り声が聞こえるが、マユは動かない。
いや――奇妙に醒めた、微妙に焦点の合わぬ目で、戦闘の様子を観察し。
「……動かないで!」
一言叫ぶと、コクピットハッチを閉じる。そのままワークスジンが身構えて。
世界が、スローモーションのようにゆっくりと動く。
アッシュにコクピットを貫かれたM1アストレイが、上空でコントロールを失って――
片翼のシュライクでフラフラと、歪んだ螺旋軌道を描いてマードックたちの頭上に迫り――
まるでその不規則な軌道を読み切っていたかのように、ワークスジンがM1を蹴り飛ばし――
間一髪、M1は誰もいない工区の片隅に叩き込まれ――爆発する。
一瞬の間に行われた、的確過ぎる反応。武道の達人のような動き。
唖然とするマードックたちに、マユはスピーカー越しに叫ぶ。
『マードックさんたちは、早く逃げて!』
「逃げろって、嬢ちゃんはどうするんだ!」
『あたしは……放っておけない! こんなの黙って見てられないよ!』
「あ、おい、待てって!」
マードックの制止の言葉も聞かず、ワークスジンはスラスターを吹かし戦場に飛び出していく。
残された彼は、その場で頭を抱え込む。
「ああもう、あの子に何かあったら、『艦長』にどう言い訳すりゃいいんだよ!」
122 :
11/13:2005/09/11(日) 13:37:18 ID:???
「「3、2、1!」」
どこか軍事基地を思わせる、硬質な雰囲気の部屋の中――
マリアとアンディの声が、唱和する。
巨大な扉の両端で、掛け声に合わせて鍵が回される。
何かが噛み合うような音が響き、音を立てて扉が開いていく。
「――でも、これを使ってしまって良いのかしら」
「――まあ、俺たちだけの判断で開けていいものかどうか、迷うがね」
扉の奥に鎮座する巨大な影を見上げながら、二人は躊躇いの言葉を口にする。
「だが、この国の姫様も、ウチの歌姫も。こういう時のためにコレを用意してたんだからな」
「そう……でしたわね。彼女たちと連絡がつかない以上、仕方ないのかも――」
と、その時。大きな音と共に、二人のいる部屋にも振動が走る。近くに大重量が着地したような衝撃。
二人は顔を見合わせると、扉の向こう側――まるで何かの工場のような区画に、急ぎ入っていった。
同時刻――
屋敷にめり込むように落下し、煙を上げていたのは――首を失ったマユのワークスジンだった。
コクピットハッチが開き、転がるように少女が降りてくる。
「参ったなぁ、家を守るつもりで来たのに、逆に壊しちゃった」
壊した石壁を見上げ、大きく溜息をつくマユ。しかしその口調には、あまり悲壮感も恐怖心もない。
ジンと建物の被害は少なくないというのに、マユ自身は怪我ひとつしていないようだった。
と、そこに、大きく重いモノが着地する音と振動が響く。
「やば、あいつら来ちゃった!?」
慌てて少女は、破れた壁の隙間から室内に逃げ込む。
放棄されたジンの上に巨大な影がさし、モノアイが光る。
鎌のような鉤爪の間に挟まれていたのは、ワークスジンのもぎ取られた頭部。
――これで、アッシュの顔面にジンの足跡が残ってさえいなければ、さぞかし怖い構図だったに違いない。
123 :
12/13:2005/09/11(日) 13:38:41 ID:???
「確か、地下の一番奥がシェルターって言ってたよね……
二人とも、ちゃんと避難してくれてればいいんだけど……」
二人の安否を心配しつつ、マユは入り組んだ屋敷の廊下を駆ける。
工事現場を飛び出したところで、岬の上の屋敷に迫るアッシュの姿を見つけ。
思わず駆けつけ蹴り飛ばしたまではいいが、武装のない旧式MSで最新鋭MSに勝てるはずもなく。
いやむしろ、首を飛ばされただけで脱出できていること自体、驚愕すべきことだった。
マユは階段を駆け下り、地下に入る。
そこは――クラシカルで優雅な地上部分とは対照的な、冷たく機能的な通路。
まるで宇宙船の艦内のような、直線的で装飾のない機械的な空間。
雰囲気の変化に驚きもせず、少女は通路を駆ける。
先程アンディがいた、モニターが沢山ある情報処理室。
ゲームセンターの体感マシンのような、MSシミュレーター。
小さいけれども充実した、射撃訓練場。
民間人の邸宅にはおよそ相応しからぬ数々の部屋を、少女は振り返りもせずに通り過ぎる。
上ではまだアッシュが暴れているのか、時折衝撃と共に天井からパラパラと破片が舞い落ちる。
通路の行き止まりには、小さなエレベーター。
赤いボタンを叩いて扉を開けると、マユはそれに飛び乗った。
辿り着いたところは――広く、ガランとした空虚な部屋。
人の気配はなく、ただ反対側の壁面に巨大な扉。その両脇には、それぞれ鍵の刺さったコントロールパネル。
扉は今や大きく口を開けており、さらに広い空間と繋がっているようだった。
「アンディ……? マリア……? どこにいるの……?」
流石に不安そうな様子を隠せず、恐る恐る暗がりに呼びかけるマユ。
キョロキョロと周囲を見回しながら、扉の向こうに広がる闇に足を踏み入れる。
124 :
13/13:2005/09/11(日) 13:39:30 ID:???
カッ。カカッ。
唐突に、乾いた音を響かせ照明が点灯し――薄暗い空間が、眩しいほどの光に満たされる。
「ま、マユちゃん!?」
「マユ!? 何でここに!?」
光に照らされた少女の姿に、部屋の隅で作業していたマリアとアンディが驚きの声を上げる。
だが――マユは応えない。応えられない。
その眼は見開かれ、視線は眼前に立つモノに釘付けで。
ふるふると震える唇から、絞り出すような声が漏れる。
「な……なんで……」
見間違えるはずもない。忘れられるはずもない。
2年前の「あの日」の記憶が、マユの脳裏にフラッシュバックする。
逃げる一家、飛んでくる流れ弾、無惨な死体、遠くに転がる小さな手。
頭上を飛び去る、10枚の翼を広げたシルエット――!
マユの左手が自分の右腕を握り締め、凄まじいまでの力が込められる。
少女の爪が白い手袋を破き、金属光沢を放つ素肌が露になる。
「なんで……これが……」
涙さえ浮かべてキッと睨みつけたのは、『ガンダム』の顔。
4本のシャープなアンテナ。バランスの良い体格。背中に畳まれた巨大な翼。
灰色一色のディアクティブモードでも分かる、独特の姿形。
それは間違いなく、前大戦末期にザフトで開発され、三隻同盟軍で獅子奮迅の働きをした――
ZGMF−X10A、フリーダム。
「どうして……こんなものがここにあるのよッ!!!」
少女の絶叫が、屋敷の地下の格納庫にこだまする――
第二話 『蒼き翼の天使』 に続く
うわいきなり失敗、13分割したのに、間違えて分母を12と書いてしまった(吊
……ってわけで、第一話はオリジナルなイベントからです。
いや本編にあったイベントと繋がってはいるんですが。てか本編が見逃してる問題ですが。
設定変更点・留意点など
マユ・アスカ
岬の上の屋敷に居候中の少女。年齢を誤魔化し、作業用MSで復興工事に従事している。
彼女が今の状況になった経緯、MS操縦を学んだ経緯は、いずれ後ほど……。
なお、今回種割れはしてませんので要注意。ただし視聴者にソレを思い出させる目つきはしてます。
アンディ・バルディ
コーヒー小売店『タイガーコーヒー』を経営している。と言っても店舗は持たず通販のみ。
岬の上の屋敷を住居兼店舗兼倉庫としており、一日中家にいる――
というより、家に居ることのできる仕事を選んでいる節がある。
どうやら秘密を抱えているようだが……(って、読み手のみなさんにはバレバレでしょうがw)
ちなみに偽名は適当。「劇中で『適当』という印象を受けるだろうな」という名前をあえて創作。
彼の『変装』のセンスを考えたら、この程度のふざけた名前で平気で生活していそうだ、ってことで。
マリア・ベルネス
胸の大きさが目立つ、モルゲンレーテの女性技術者。
やはり、秘密が多い(まあこっちもバレバレだが)。ちなみにこの偽名は本編でも使われていました。
コジロー・マードック
工事現場で働いている。マリアとは旧知の仲らしい(っていい加減白々しいかな?)
偽名は……まあいいでしょこの人は。有名人でもないし。
アッシュ部隊
本編では未だ明確な説明がないが(果たしてちゃんと説明されるかね?)、たぶん本編とは所属違います。
おそらく今回一番の設定変更点。彼らのオーブ攻撃の目的については、第二話以降で。
岬の上の屋敷
本編で、ラクスが暗殺者の襲撃を受けた、あの家。アンディやマリアだけで住むには少し広すぎる家。
と言っても、微妙に位置が変わってます。間取りや設備も少し変えています。
第一話は、以上です〜。
>>112-
>>125 そういう切り口で来たか! 新鮮でGOOD!
ぶっちゃけ面白かったので続きを楽しみに待ってます
127 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 13:56:18 ID:dSD75i08
これはおもしろいっすね!
>>112-
>>125 GJ
今までの中で一番好きかも。
今後の展開に期待大
少し読んでみたが、とても面白い。
「スティング主人公でオリジナルの話作ろうぜ」スレ並みだ。
ここにもネ申が居たとはw
>108 アスラン「性欲をもてあます」
そして職人乙
>>112-125 うおぉ、すげぇ…IFモノ本格派ですね。GJ!
どうも自分には想像力が不足しているらしく、IFものには向いてないのかも…とか思いつつ書くのは楽しいです。
他の職人様方に追いつけるように、がんばって見ます。
んでは、第2話投下行きます。
混迷の戦場に、三体の獣が放たれる。
牙と、爪と、感覚を、極限まで研ぎ澄ませ。
焼け、焼かれよ、その身朽ちるまで。
救いを求める声は、己の耳にすら届かない。
照らし出すは魂の響、奏でるは焔の旋律(しらべ)
戦場に、衝撃の音が鳴り響く。
PHASE-02 衝撃の音
「そろそろ、だな…」
アーモリーワン近海、漆黒の空間が、微かに揺らめく。
戦艦"ガーティー・ルー"ブリッジ。仮面の男は、ひたすら待っていた。
「何度目になりますかな…その発言も」
「おいおいリー、別にそこを突っ込まなくてもいいじゃないか」
リーと呼ばれた男が軽く笑うと、仮面の男――ネオは軽薄そうに言う。
「俺だって…心配なんだよ、あいつらが」
心配――そんな言葉を使う権利が自分にあるのかと、ネオは自嘲する。
「心配、ですか…やれますよ。スティングとゲンがいる」
「おいおい、アウルとステラは頼りないってか?」
ネオが軽く肩を竦めてみせると、リーは再び軽く笑う。
「……これは……ロアノーク大佐。来ましたよ、ゲンです」
待ち望んだ報告。通信士のもとへ寄り、通信機の向こうの"相手"に呼びかける。
「うまくやったか、ゲン」
『まぁな。ディスクの所在は報告通りだった。軽かったぜ』
冷たく、低い声が返ってくる。ネオはほんの少し安堵した後、更なる報告を待つ。
『次いでアレだ。ザフトの"セカンドシリーズ"三機の強奪にも成功』
ブリッジに歓声が上がる。ネオも思わず顔が綻ぶ。
「よくやった。お前はすぐに戻って来い」
『了解。待ってろ、ネオ』
通信が切れると、ネオはブリッジクルーを見回す。彼らは全員、たった一つの指示を待っていた。
「よーし、行こう諸君!…慎ましくな!」
「くそったれ…!」
ルナマリアがハンガーに到着すると、赤い機体と薄紫の機体は瓦礫の下敷きになっていた。
駆け寄ると、メカニックたちが必死に撤去作業を行なっている。
「コックピットさえ開ければ、動かせればいい!」
鋭い、凛とした声で叫ぶと、周囲は慌しく動き出す。
「ルナ!」
声のした方に振り返ると、こちらに向けて私服の少年が駆け寄ってくる。
「シュウ!」
「うわ…酷いなこれ、まともに動けるのかよ」
シュウゴは自分たちの愛機を見てつぶやく。ルナマリアは苦々しい表情で返答した。
「わかんない…中身がやられてなきゃ良いけど」
それを聞き終えるより早く、シュウゴは近くの通信機に飛びつく。
「ミネルバ……ミネルバ、聞こえるか?メイリン!アビー!」
数秒遅れて、赤毛の少女――メイリン・ホークがディスプレイに映った。
『お姉ちゃん!シュウ!』
「メイ!…現状報告を、どうなってるの!?」
『あ、はい!第六ハンガーの新型が何者かによって強奪、現在ロンド隊とフェーン隊が交戦中です!』
ルナマリアは思考を廻らせる。"何者か"――愉快犯がこんなことをするはずがない。
海賊か、あるいは……だが、シュウゴの思考は別の所にあった。
「(第六ハンガーだと…!?)」
そこは新型の調整の為に、マーレさんがいた所―――即ち、マユが向かった所だ。
『ルナ、シュウ、聞こえるか!』
通信席に割って入ってきたのは、ミネルバ副長アーサー・トラインだ。
『司令部からは新型との交戦権が出ている。ただし、"撃墜はするな"!』
「なっ……」
ルナマリアは絶句する。何を言っているのだ。下手をすれば、命だって落としかねないというのに。
『我々はその命令に従うしかない!――他に質問は!?』
アーサーの苛立った様子が気に入らなかったが、シュウゴはあえてそれを押し殺す。
「マユとレイの位置は?」
『それはこちらでもうキャッチしています』
次に画面に映ったのは、副通信士席に座るアビー・ウィンザー。
『2人はこちらに向かっています。ルナとシュウは時間を稼いで…』
シュウゴはほっと胸を撫で下ろす。その時、瓦礫の撤去作業を行なっていた場所から、声が上がった。
撤去完了。即ち――ルナマリアの機体が起動できる、と。
ルナとシュウゴは目を合わせると、こくりと頷く。ルナが愛機に駆け寄り、コクピットに飛び込んだ。
『シュウ』
アビーから声が掛かる。ルナマリアの愛機――"ザク・ウォーリア"が立ち上がり、シュウゴのそれを覆う瓦礫を退け始めた。
『"インパルス"も出撃許可が出ました……マユのサポート、お願いね』
「…OK、任せろ」
そう言って軽く敬礼すると、シュウゴは自身の機体のコクピットに駆け上がった。
アレックス・ディノは焦っていた。
カガリを連れてシェルターに行くはずが、誘導していた兵士が目の前で炎に飲み込まれてしまった。
「くっ……なんで…なんでこんなこと…!」
腕の中でカガリがうめく。当然だ。この火種は、再び世界を焼き尽くす焔になりかねない。
父が遺した負の遺産。彼の呪縛は、今でもアレックスを縛り付けて離さない。
だがどうすればいい?今の俺は力を捨てた。あの時のように、世界を誤った方向へ向かわせないための力など――
「大丈夫だ……カガリ」
この時、アレックスの中に本当に小さな、"力"を求める心が芽生えた。
アウルは湧き上がる笑いを堪えられずにいた。
自分が少し"コイツ"を弄ってやるだけで、敵はあっけなく爆散する。
楽しい。楽しい。目標の宇宙港がとても近く感じる。あそこに到達する前に、もっともっと暴れたい。
「あっひゃっはぁっ!!なぁんだよこれ、最高じゃねーかぁ!!」
ジリジリと宇宙港に向かう機体の中で、アウルは叫ぶ。
『ゲンにも言われただろう、アウル!あまりはしゃぐな!』
「わかってるよスティング、バスには遅れないからさぁ!」
飛来した"ディン"を、"アビス"の火線が捉える。ろくな抵抗もできないまま、敵機は錐揉みして爆散した。
『何……?』
ステラの呟き。と同時に、赤と紫の機体が接近してきた。
「なんだァ!?」
全ての火器を放つと、二機は急速で回避する。それを認めたアウルは、はしゃいでいた気持ちを切り替えた。
『気を付けろ、奴らはやるぞ!』
スティングの鋭い声が飛ぶ。なるほど、今までの木偶人形とは違うらしい。
そうでなければ、暴れ甲斐がない。
タラップを駆け上り、コクピットに飛び移る。既にレイのザクファントムの発進シークエンスはスタートしているようだ。
彼女はパネルを弄り、機体を立ち上げる。モニターが息づき、エンジンが心拍を打つ。
平和の為の力。私が何より求めた力。力の無い者を救う力。
そして――あの驕り高ぶった機械の天使たちを引き摺り下ろし、等しく死を与える為の力。
「行こう…インパルス!」
恐れることなんてない。私たちの力は、誰かを救えるんだから。
<インパルス、発進スタンバイ…>
エレベーターが上階に上って行く。コクピットの中で、マユは驚くほど落ち着いた気持ちでいた。
<モジュールはソードを選択、シルエットハンガーは二番を解放>
遂にやってきた。この"力"を行使する日が。
<射出システムのエンゲージを確認。カタパルト、推力正常>
カタパルトの先にプラントの青い空が広がる。美しい景色に立ち上る黒煙が、マユの怒りを煽る。
マユはシートに深く身を沈める。両足で踏ん張り、スロットルを固く握り締めた。
<コアスプレンダー、発進どうぞ!>
次の瞬間、自らが機体の一部となり、マユの駆るコアスプレンダーは弾丸のようにミネルバを飛び出した。
宇宙港を背にして、赤と紫のザクは抵抗を続けていた。
援軍にやって来たディンやジンも、アビスの圧倒的な火力の前に虚しく散っていく。
『ルナ、大丈夫か!?』
「かなりキツいけどね…なんとか!」
人工重力の影響を受けないプラントの中心部で、5機の機体が激しくぶつかり合う。
カオスがシュウゴのザクに対して機動兵装ポッドを射出する。
『……ッ!』
次々と打ちかけられるビームを、シールドで防ぐので精一杯のようだ。
だがルナマリアも他人の心配ばかりはしていられない。こちらはこちらで二機を同時に捌かなければならないのだから。
「(早く来てよ……レイ!)」
アビスが放ったビームに、ルナマリアは機体の脚部を貫かれた。
バランスを崩したところに、MA形態に変型したガイアが急速で接近してくる。
「えぇい!」
ビームトマホークを展開し投げつける。突然の挙動に、ガイアは跳び退って回避した。
その隙にビーム突撃銃を構えなおし、アビスに三点射。素早く機体を上昇させる。
「ちくしょう…!」
シュウゴは苛立つ。
敵の機動兵装ポッドによるオールレンジ攻撃が、少しずつこちらを追い詰めていく。
高出力のビームがMA形態のカオスから放たれ、それを回避すると、ミサイルの雨が彼を襲う。
シールドで辛うじてそれらを防ぐも、右肩のアーマーが吹き飛ばされた。
カオスは兵装ポッドをマウントし、距離を取る。ヒット&アウェイ……奪った機体の特性をもう熟知している?
反応速度、戦闘センス、狙いの正確さ……こいつらは、ただの海賊じゃない。だが、これほどの力は……
『シュウッ!!』
気を抜いた一瞬の隙に、カオスが急速で接近していた。ビーム突撃銃を連射するが、全て最小限の動きで回避される。
「くそっ!」
ビームトマホークを引き抜こうとした瞬間、カオスのクローがシュウゴのザクを捕らえた。
両肩を鋏み込む形で、機体の自由を奪う。肩のアーマーを吹き飛ばされた右腕が、異常な唸りを上げ始める。
ふとモニターを見ると、下方でルナのザクがガイアに腕を斬り落とされていた。
終わりか。こんなところで…約束も守れずに。
死を覚悟した次の瞬間、機体が衝撃に揺れた。
その背にミサイルを撃ちかけると、カオスはバランスを崩してシュウゴのザクを解放した。
ガイアとアビス相手には、レイのブレイズザクファントムが弾幕を張る。
敵機の動きを封じた所で、損傷の激しいルナマリアのザクは後退していった。
「(あとは…!)」
マユは手元のパネルを素早く叩き、"合体"シークエンスを進める。
レッグフライヤーとの相対軸合わせ。誘導レーザー照射。ドッキング――完了。
続いてチェストフライヤーとの相対軸合わせ……ドッキング、完了。
機体に魂が宿る。機体前部を覆っていた両腕が展開し、あるべき場所に戻る。
シルエットフライヤー、ドッキング解除。誘導レーザー照射……ソードシルエット、ドッキング完了。
機体に焔が宿る。装甲表面が深紅に色づくと、マユはそのまま"インパルス"を加速させた。
エクスカリバー対艦刀を双方ともに展開。両手に構えると、フルブーストで真っ直ぐにガイアに突撃する。
「なんでこんなこと…!」
マユはその言葉に、怒りと、呪いを乗せる。
二機のザクがそれぞれインパルスを援護するように動き、油断なくビーム突撃銃を構えた。
「また戦争がしたいの!?…"あなたたち"はッ!!」
漆黒のノーマルスーツに身をつつんだゲンは、宇宙港の脇にある扉の前に辿り着くと"面白いもの"を見た。
撤退途中の三機のセカンドシリーズに対して、"同型"の機体が立ち塞がったのだ。
「おいおい、なんだよあれは」
彼は呟き、真っ暗な通路に入っていく。既に使われなくなった連絡通路は、どこか薄気味悪かった。
「トラブル発生、か……」
通路の先は、気密シャッター。つまりこの扉の向こうは、漆黒の宇宙というわけだ。
ノーマルスーツのシールを確認すると、彼は気密シャッターを開放する。
すぐ脇には"敵"の軍艦があり、すでに周囲を警戒して出航した艦もある。だが彼は、全く臆せず宇宙空間に飛び出していく。
と――彼の姿が突然消えた。いや、ちがう。そこに"存在するはずのない"コクピットの中に彼はいた。
「通信コードAKUSA570901、ゲン・アクサニス…聞こえるか。ネオ」
数秒送れて、真剣な声が返ってくる。
『おいおい、以降の通信は傍受される恐れがあるって言ったろ』
「まずいぜネオ、トラブルだ」
『何……?』
相手の声がますます強張る。ゲンは淡々とした様子で――しかしどこか落ち着かない様子で話を続ける。
「情報に無い新型だ。そのせいで時間食ってる…ミスったな、ネオ」
『……時間に余裕がないな』
「ギリギリまで暴れたい奴らなのさ。そんぐらい分かってたろ」
ネオが舌打ちすると、ゲンはコクピットのパネルを弄り始める。
『……解かった、解かったよ。確かにこれは俺のミスだ。とりあえずお前は一回戻れ。いいな?』
「……あぁ、大変だ、ネオ」
通信の相手が黙り込む。何故かそれが愉快で、ゲンは唇の端を醜く歪めた。
「"俺"も"トラブル"だ」
そう言うと、ゲンは一方的に通信を切る。コクピットの中の計器類の数値が見る見る上がっていく。
"機体"を立ち上げたゲンは、バイザー越しに漆黒の宇宙を睨む。
「さぁて…いくぞ、"ストライク"…!」
かつてそれを駆った者こそ、自分の最も忌むべき存在だとも知らず、ゲンは笑う。
漆黒の空間が、染みだすように色づく。
やがてそこに、灰と黒のツートンカラーの機体――ストライクMk-2が現れた。
以上です。お目汚しスマン。
本当は戦闘もっと詰め込もうと思ったんですが、どうも容量がアレになってしまい…
次はマユvs黒い人、レイvsネコミミミモードやりますんで。あまり期待せずにお待ちください。
>>112-124 生き延びて逞しく生きるマユが目に浮かぶようだ。乙!
マユ種をIFとするとこちらは本編の裏?
>>133-137.
本編や他の職人さんの話をなぞるだけなら
オリキャラの出番がない希ガス
映像と同じモノを詰め込むとテンポが死ぬので
書くところと書かないところは選んだ方がいいかも
次も期待してます
現在連載中
マユ種
マユif
マユ戦記
影の少女
DESTINY Side-C
マユ−隻腕の少女−
ファントムペイン戦記
ほのぼのマユデス
マユ種外伝
各作品の作者様いつもお疲れ様です。
>>マユ−隻腕の少女−
よろしくお願いします。
(誤)>>マユ−隻腕の少女−
(正)>>マユ−隻腕の少女− 作者様
失礼しました。
はい、黒マユ投下です。
少しオリジナルガンダム&オリジナルキャラ出してみたり。
マユがすごく怖いけどついてきて・・・。
廃コロニー・ユニウスセブン。
今までただ静寂のみがあったそこが、急激に騒がしくなっていた。
「ブースターの取り付け急げ!巡視艇は破壊したな!?
気取られる前にケリを付けるのだ!」
素早く指示を出していくサトー。その表情に迷いはない。そこへ新たな報告が入る。
「隊長、例の物が届きました!」
「うむ、分かった」
「しかし・・・隊長、一つ疑問があるのですが」
報告した男が、不安げな顔をしてサトーに問いかける。
「我々にこんなMSとあんな人形のようなパイロットを渡して・・・あの男はいったい何を考えているのでしょう?
新型のテストをしたいなどと言っていますが、それなら他にも方法があるのではないでしょうか?
いったい何を考えて・・・」
「黙れ、オキタ」
そんな男を、サトーは一喝した。
「あの男の目的など、どうでもよい。我々は我々の為すべきことをするだけだ。わかったな!」
「は、はっ!」
その語気に気圧されたように、オキタと呼ばれた男のジンは持ち場に戻っていく。
それを確認して、サトーはため息を吐いた。
「それを言いたいのは私のほうだ・・・だが、今さら引き返す事はできんのだよ」
そう言って彼は送られたMS、リファインドブリッツとそのパイロット、茶髪で紅い目をした少年をモニター越しに見つめた。
機動戦士ガンダムS-DESTINY 影の少女
「どうか落ち着いて聞いてほしい、姫。
ユニウスセブンが地球に向かって進行中である、という報告を受け取った」
議長が発した言葉に驚くミネルバクルー、そしてカガリ。
更に議長はミネルバにユニウスセブンの破砕作業に加わり、その後カガリをオーブまで届けろ―――オーブが残っていたらの話だが、と命じる。
その言い方にキレるカガリだったが、議長にあっさり論破される。アスランに援護を求めようとするも、彼はもういなくなっていた。
アスランは廊下でルナマリアと話し込んでいた。目的はマユについて詳しく聞くため。
始めは楽しく話すルナマリアだったが、しつこくマユについて深いところまで聞こうとするアスランにイライラしてくる。
そしてカガリが狙われたという危機感から、早く情報を得たいとアスランも焦っていた。
結果、口喧嘩になる。
「いい加減やめて下さい!あの子は普通の子です、そんなに気にすることなんですか!」
「普通の子が軍に入れるわけないだろう!」
「努力しただけです、死ぬほど!親がいないあの子の気持ち、分かるんですか!?」
「じゃあ君は分かっているって言うのか!」
「分かりますよ!私だって親、いないんだからっ!」
言ってルナマリアは去っていった。しばらく呆然としたアスランは、言い過ぎたと後悔する。
サロンでは、マユ、ヴィーノ、ヨウラン、アビーの四人がユニウスセブンの話で持ちきり。
マユがしばらくしたあと、唐突に爆弾発言をした。
「いっそ落ちたほうが手っ取り早いんじゃないの?
間違いなく敵の連合もよく分からない立場のオーブも消えて、困らずに済むしね」
唖然とする三人。マユはそれを見て冗談だよ、と慌てて付け足す。
レイに極秘で指令を渡した後、迎えに来た艦でアーモリーワンへ戻る議長。
それを確認した後、ミネルバはユニウスセブンへ向かった。
しばらくしてユニウスセブンで破砕作業を行っていたジュール隊から通信が入る。
15機ほどのジンとアンノウンに襲われ、破砕作業を妨害されているとの事だった。
急いで対MS用装備に切り替え、出撃するインパルスとザク。
その途中、レイはマユに接触通信で議長からの指令を伝える。
それはRF(リファインドの略)ブリッツのデータ採取、ザクとジンが戦う様子の録画という指令だった。
「ふぅん・・・じゃああたしは敵を殺さなくてもいいんだ?オーブを助けなくても?」
「元から助ける気などないのだろう?」
レイの言葉にくすりと笑って、マユは通信を切る。
一方、ルナマリアはユニウスセブンを暗い表情で見つめていた。昔のことを思い出しながら。
「父さん、母さん・・・住んでたこれを壊さなくちゃいけないの・・・?」
彼女の両親が眠る、無機質な大地。その大地にビームが当たり、爆発する様子を見て思わず目を背けるルナマリア。
そこへジンが襲いかかる・・・が、そのジンはブレイズザクのライフルに撃ち抜かれた。
「ボーッとするな!死にたいのか!?」
叱咤したのは艦長の許可を貰って出撃したアスランだった。さっきの事が尾を引いているルナマリアは、怒りをぶつける。
「あなたに何が分かるっていうんですか!?このコロニーは・・・」
「俺の母だって、ここに眠っているさ。・・・君の親と同じくね」
「!?」
「タリア艦長から聞いたよ。君がユニウスセブンで両親を失った事は。
・・・だから砕かなくちゃいけないんだ。母上はここをこんなことに使われるのをきっと望んじゃいない!
君の親だって、そうだろう?」
そう言って、アスランは敵へ突っ込んでいく。ルナマリアも慌てて後を追った。
イザークとシホはアンノウン―――RFブリッツをくい止めていた。
「くそ、何なんだこいつは!?強い・・・姿こそブリッツだが、この動きはまるで!」
思わず前大戦で戦ったストライクを思い出すイザーク。
更に悪いことに、ジンがメテオブレイカーに近づいているとの報告が入る。
イザークは覚悟を決め、シホもメテオブレイカーの防衛に加わるよう命じる。
シホはいくら隊長でも1対1ではやられてしまうと反対するが、イザークは更に強く命令を繰り返す。
だが、そこへアスランとルナマリアのザクが応援に駆けつける。
イザークはアスランに驚きつつも、シホの代わりにアスランとルナマリアに破砕作業の援護を頼むのだった。
マユはジン四機を同時に相手にしていた。しかしインパルスは回避に専念し、攻撃する様子はない。
「うざったいなぁ・・・さっさとメテオブレイカー壊しに行けばいいのに。
それとも、わざわざ攻撃してあげてないのを攻撃できないって勘違いしてるの?
せっかく任務じゃないから見逃してあげようとしてるのにさ」
それに答えるかのように、一機のジンが抜刀して斬りかかる。しかし、その右腕はインパルスに撃ち抜かれた。
更に左腕、右足、左腕、頭部。順番に撃ち抜いたあとくすりと笑って、残りのジンに通信を繋ぐ。
「どうする?あなた達もこうなりたい?邪魔しないんなら見逃してあげるけど?」
答えはジンがインパルスの前から逃げていくことで示された。それを見てマユは満足げな笑みを浮かべる。
「せいぜい頑張ってよ?落ちて貰ったほうがあたしは嬉しいんだから。さて、任務に集中しようっと」
そう呟いて、モニターをRFブリッツに向ける。ちょうどシホのザクが片腕を撃ち抜かれたところだった。
一方アスランとルナマリアは破砕作業を進めさせる傍ら、それを妨害するジンと戦っていた。
二人が加わったことで、戦闘は優位に働きつつあった。
ついに限界行動ぎりぎりで、ユニウスセブンは二つに割れる。
少し複雑な顔をするルナマリア、素早く次の作業に取りかかるアスラン。
だがそこで、突如サトーのジンから戦場全体に向けて通信が入る。
「我らコーディネイターにとって、パトリック・ザラの唱えた道こそが、唯一正しい道なのだ!
それをこの墓標は示している!何故分からぬか!」
その声に戦場のほとんどのMSが動きを止める。ユニウスセブンの事件は、今だコーディネイターの中で悪夢として語られる事件だから。
それを破ったのはアスランの全体通信だった。
「違う!パトリックはただ、妻の仇を討ちたくてあんなことをしただけだ!そんな道が正しいものか!
それに、パトリックの妻はそうは思っちゃいない!
レノア・ザラはナチュラルの友人をたくさん持って、大切にしていた!」
「なぜ分かる!」
「俺が二人の息子だからだっ!」
その声に怯むサトー。その隙を見逃すアスランでは無かった。
苛烈な攻撃にサトーのジンは中破し、撤退を図る。
だがそこに現れたのは、レイのザクだった。
「あれを見た物を消す・・・それが俺の任務だ」
レイが呟くと同時に、ザクファントムのビームアックスがサトーのジンを両断した。
そしてレイは二人に限界行動のため帰還を提案し、自らも艦に戻っていった。
ザクとゲイツRが帰還していく様子を見て、RFブリッツはミラージュ・コロイドを展開、消えた。
こうなっては機体が小破しているイザークとシホに打つ手はない。シホと共にヴォルテールに帰還する。
完敗したことを悔しがるイザーク。だが一方、シホは帰還していくインパルスに目を向けていた。
「あのMS、ずっとこっちを見ていたみたい・・・戦闘に参加する余裕はありそうだったのに、どういうこと?」
タリアはMSを全機収容後、大気圏に突入しながらタンホイザーを発射し、ユニウスセブンを砕くことを決める。
危険だと反対するアーサーの意見を、どうせオーブにカガリを送り届けなくてはいけないのだと反論して退けた。
他の三人より先にミネルバに戻ったマユは一人で宇宙用テラスに行き、ミネルバのタンホイザーがユニウスセブンを砕いていく様子を曇った表情で眺めていた。
「そのまま落ちちゃえばよかったのに・・・」
その呟きは、誰にも聞かれることは無かった。
これで終わり。
次はミネルバオーブ行ってアスランがプラントに戻って、といった感じで。
本当は今回でオーブ行くとこまで書くつもりだったけど・・・。
148 :
しのはら:2005/09/11(日) 19:56:57 ID:???
第二十五話投下します
職人の皆様乙
149 :
しのはら:2005/09/11(日) 20:05:33 ID:???
デストロイの攻撃でザフト軍は大きな損害を受けたが、その士気は健在だった。ザフト軍は弔い合戦の合い言葉で大いに盛り上がり、ヘブンズベース攻略作戦を開始した。
一方のヘブンズベース内部ではデストロイの修理が急ピッチで進められ、ステラの再調整が行われていた。
ステラの体力や精神の問題から、「使用できるのは残り一回」という答えが出、これまでにない薬物投与が繰り返される。
「マユ・・・ネオ・・・わからない・・・」
ヘブンズベースに迫るザフト軍艦隊。だが数はさほど多くなく、オーブ艦隊の方が大規模だ。
作戦はパナマ戦と同じく、MS部隊が目標地点を制圧、グングニール2で基地を制圧するというものだ。
150 :
しのはら:2005/09/11(日) 20:20:04 ID:???
ミネルバから次々にMSが飛び立っていく。
インパルスとレジェンド、ドムは攻撃の中心として。ルナマリアは艦上で待機し、対空戦を行う。
マユはステラを絶望の中から救う方法を反芻した。
「ステラを・・・殺すしかない」
ゾノ、グーン部隊が地雷原で動きを止め、ランチャーやキャノン砲搭載ダガーの十字砲火を浴びせ、ユークリッドが艦船を血祭りにあげていく。
「動けない敵を撃って、それで勝ったつもりか!?」
レジェンドが立て続けにダガーを葬り、ユークリッドに風穴を開ける。
「墜ちなさい!」
アレックスザクのパーツを流用してザクファントムとなったルナマリアの機体。オルトロスが三機のウィンダムを貫く。
「ヤマト大尉、あの四つ足をやりましょう。ナチュラルのセンスは素晴らしいね!」
「平和のために人を殺すか」
「二人とも問題発言はやめてくれ。ジェットストリーミングアタックだ!」
先頭がスプレッドビームで目をくらませ、二機目がバズーカでゲルス・ゲーのリフレクターを破壊、キラのドムがサーベルでトドメを刺す。
「ビンゴォ!」
「他愛無かったな」
「次行くぞ!みんな」
「コクピットは外さないようにお願いしますよ、ヤマト大尉」
151 :
しのはら:2005/09/11(日) 20:30:50 ID:???
基地司令は水際での撃退が失敗したことを察し、デストロイの発進準備をさせる。
「司令、デストロイの修理はまだ四割しか終了していません!」
「ロアノーク大佐、こちらのMSは既に六割を失っている」
基地内部からデストロイが現れ、ザフト軍を焼き払っていく。
「お前ら・・・お前らがぁ!」
ステラに施された調整は常軌を逸脱し、彼女は自分で考える力すら残されていなかった。
「やめてーっ!」
マユがステラの前に出、必死の通信を試みる。
「ステラ、私だよ!マユだよ!」
「マユ・・・死ね!」
口のビームが放たれ、インパルスの右腕をもぎ取った。
「マユ!」
キラとアレックスが加勢、破損している胸部ビーム砲に連携攻撃を叩き込む。
「ステラ・・・」
剥き出しになったコクピット。そこには機械の一部と化したステラの姿があった。
マユはインパルスをデストロイに肉薄させ、コクピットを開いた。
「ステラ、私だよ?あなたを守るって言った・・・」
152 :
しのはら:2005/09/11(日) 20:32:10 ID:???
投下終了です
マユはこのまま最後までインパルスに乗せたいとです
他職人様、お互い頑張っていきましょう
ではノシ
>>黒マユさん
オリジナルキタコレ
「洗練された」ブリッツはどんなのなんだろ?GJ!
>>しのはらさん
GJ!ジェットストリー「ミング」アタックはチョトワロタw最終的なストフリと隠者のパイロットが気になるな!ワクテカしてますよ!
今日はdでもない豊作だなw
職人の皆様乙。まとめ人様も乙。
特に新作の隻腕マユ、こういうやり方もあったか・・・・!
職人さん乙。
ところで最近見ないがマユ種の作者どうしたんだろ。
156 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/12(月) 01:03:19 ID:oPJj/CnR
>112〜125
素晴らしくGJです!あの、もしかしてこの物語だとマユが自由に乗るの?
age
>112-125
アルティメットオモシロス
っつーか、リアルで背筋がゾクゾクしますた。
「ここのエリア、使ってないみたいだからうちの部隊が貰ったの。」
グレイシアさんは色々な物を見せてくれた。
なんでもハイネ隊はハイネ兄ちゃんの活動のサポートもしているらしく、
簡単なスタジオや撮影所などを見せてくれた。
「どう?グゥルを改造してに乗せたりして簡易で持ち運びができるのよ。」
すごい。これだけの施設をハイネ兄ちゃんのためだけに作るなんて・・・。
ハイネお兄ちゃんは好かれてるんだなぁ・・・。
「で。ここがとっておきの部屋v」
そう言ってグレイシアさん扉を開けると、そこはたくさんの衣装があった。
「うわぁ・・!これ全部ハイネ兄ちゃんの?」
「ううん。ここには元々劇団として活動してた時の衣装もあるわ。」
「劇団?!ハイネ隊って劇やってたの?」
「そう、8人でね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・八人?
「あのー、ハイネ隊ってハイネ兄ちゃん入れて七人じゃ・・・・。」
「あ・・・・・。」
しまったと言う顔するグレイシアさん。
「・・・・仕方ないか、いいわ。話してあげる。」
そう言って、グレイシアさんは私をガラスケースに飾ってあるドレスの前
まで連れてきた。ガラスの靴があるところからシンデレラの衣装だろう。
「この衣装は・・、私達の部隊にいた女の子が着てた物なの・・・。」
その子はね、うちの部隊の紅一点でとってもいい子だったの。
MSの格闘戦はそれは強かったわ、昔からニホンの・・・・ナギナタだった
かしら・・・?それを習ってたんですって。
たぶん、親御さんが顔をコーディネイトしない主義だったのね。
顔を他の子に比べてぱっとしなかったわ、でも、それを補って有り余る程の
魅力があの子にはあった。
何時も平和を願ってて・・、戦闘が終わった後の戦場に花をまいたりしてたわ。
ラクス様の大ファンでね、よくファンクラブの雑誌を見せられたりしたわね。
演技も歌もうまかったの。どうせ自分達の趣味でやってる劇団だから
スポットライトなんて浴びられなくて軍艦の中でおひろめしたりとか
その程度だったけど、それなりにファンもいたのよ?でも、他の女の子
が調子乗ってるとかいじめてたらしくて・・・・・。
え?その女の子たちはって?なんかアキラがそうとう懲らしめたらしいわ。
いやー、あの時のアキラの表情って言ったら・・、あのにぎやか三人組も
引くほどの気迫で・・。あらいやだ、脱線しちゃたわね。
ここの衣装もあの子がね「スポットライト浴びれないならせめて衣装は!!」
って言ってて私達もそれくらいは・・って張り切った結果がこれ。
で、その活動が認められてなんと議長に公演してくれって頼まれたの。
演目はその子が好きな『シンデレラ』この衣装はあの子が着てたの。
生まれて初めてちゃんとした舞台でスポットライトを浴びて・・・。
とっても輝いてた。嬉しそうだった。でも・・・・・・・・。
まさかその後あんなことになるなんて、考えもしてなかった。
>112-125の作者様
この作品ではキラやラクスはどう扱われるのですか?
恐らく両澤キャラよりかなり毒が抜けている事でしょうが
もうGJです
「どうなったんですか?」
私は純粋な疑問で聞く。
「いなくなったの。」
「え?」
「いなくなったの、失踪して行方不明。」
公演が終わった二日後、遊びに行ったのよ。どっきりさせようと思って
電話しないでね。
そして言ってみたらいないのよ。あれ?と思ってドアノブを引いてみたら
開くのよ。どうしたのかなって思ったら家の中はからっぽで・・・。
ただ、ガラスの靴がリビングの中央においてあるだけだった。
そう、グレイシアさんは語った。
「皆必死で探したわ・・・・。友達、親御さんの所・・・どこにもいなかった。」
つらそうな声を吐き出すグレイシアさん。
「それから、私達は劇団をやめた。その代わり、ハイネがデビューして
資金集めをした。これだけ目立てばあいつも黙ってられないだろう、
それにあいつが戻ってきた時金があればちゃんとしたスポットライトを
浴びせてやれるって・・・。」
・・・・普段、あんなに明るいハイネ隊に、こんな過去があるなんて
思ってもみなかった・・・・。
「あの、その女の人ってなんていう名前なんですか・・?」
次の瞬間、私はあたまを殴られたような感覚に襲われた。
「ミーア。ミーア・キャンベルよ・・・。」
ミーアかよ!!
とベタなつっこみをしてみるしかしGJ
ほのぼの路線捨てたのかな?
と思いつつ途中で気づいてワロタw
顔をコーディネートしない主義ってw
別路線、自分でも不安だったのですが……
どうやら何とか好評なようなので、調子に乗って続き投下。
↓
166 :
1/14:2005/09/12(月) 21:53:34 ID:???
「どうして……こんなものがここにあるのよッ!!!」
涙を撒き散らし叫ぶマユに、マリアもアンディも俯いて答えられない。
その空間はどう見てもMS専用の格納庫。『フリーダム』は立位で整備用スペースに納まっている。
シェルターの床面から大きく掘り下げられた構造で、マユの目の前からMSの胸元に向け橋が渡されている。
同じ高さに巡らされた回廊の端、コンソールパネルに向かっていた2人は、言いにくそうに口を開く。
「これは……その、あのね、マユちゃん……」
「まぁ、とにかく落ち着いて聞いてくれ、マユ……」
「これが落ち着いていられるわけないでしょう!」
二人の煮えきらぬ態度に、マユはヒステリックな叫びを上げる。
物凄い形相で、目の前のガンダムを指差す。
「どう見たってこれは『フリーダム』だし、
どう考えたってこの家はこのために作られたようなもんじゃない!
あたしの……マユの『右手の事』も知ってたのに、ずっと黙ってたってことなの!?
マユのこと、ずっと裏切ってたの!? ねぇ!?」
珍しく怒りも露に、2人をなじる。見せつけるように掲げられた右手の、白手袋の破れ目から覗く金属光沢。
何について『裏切った』と言い張るのか判らぬが――後ろめたい事情でもあるのか、2人の態度は弱々しい。
「ちゃんと説明してよ! どうしてコレがココにあるの! 一体何者なのよ2人は!」
「これは……その、ラクスさんの提案で、カガリさんが……」
「何でそこであの無神経女の名前が出るのよ! 何でそこでお姫様の名前が出るのよ!」
歯切れ悪く答えるマリアに、さらに噛み付くように言葉を被せるマユ。
もう火に油を注いでしまったようなものだ。今にも掴みかからんばかりの剣幕。
いや、そのままの勢いなら、間違いなく掴みかかり、殴りかかっていただろう。
167 :
2/14:2005/09/12(月) 21:54:20 ID:???
が……そのやりとりを遮るように。
再び激しい振動が格納庫を襲う。大きな爆発音。マユも思わず頭上を見上げ、責めなじる言葉が途絶える。
振動が収まった時、静かに口を開いたのはアンディだった。
「……その位にしておけ、マユ」
先ほどまでの『申し訳なさ』はどこへやら。彼は一つしかない目で、マユを睨み付ける。
強い意志の篭った視線、コーヒー屋の主人らしからぬ迫力。マユは一瞬で『呑まれる』。貫禄の差。
「悪いが今は、それどころじゃない。今は――アッシュの始末が先だ」
「アッシュ……?」
「さっき、落ちてきたジンに乗ってたのはマユだな? なら見たはずだ、あのMSだよ。
ザフトの新型だ――って言っても、正規の軍の命令で動いてるかどうか、怪しいモンだが――
早く止めないと、せっかく直した街が焼け野原になるぞ」
「焼け野原って……」
「どうもオーブ軍は、マスドライバーを中心に防衛線を張ってるようだからな。街を守る気がまるで見えん。
おまけに、避難勧告も遅れてると来た。このままじゃ、市街戦の煽りで死人がたくさん出るぞ」
「………ッ!!」
息を呑むマユを横目に、アンディはパネルの操作に戻る。
格納庫の天井、何重にも閉ざされた隔壁が次々と開いていき、発進ルートを確保していく。
「戦闘に横から割り込む形になるが、コイツで俺が守ってやらんとな。
でないと、マユみたいな子がまた――」
「マユちゃん! 何してるの!」
背を向けパネル操作を続けていたアンディの言葉は、マリアの悲鳴に掻き消される。
振り返れば――カンカンカン、と音を立て、フリーダムへ渡された橋を駆ける小柄な影。
「なっ!? マユ、駄目だ! お前は……!」
「帰ってきたら、全部しっかり説明してもらうからねッ!」
二人の制止の声も振り切って。
マユは大声で言い捨てると、開かれていたコクピットの中に踊りこむ――!
>>160 あのスカートから折りたたみ式の薙刀取り出して、
OPのあの一回転で悪人どもを切り伏せるミーアが浮かんだ
169 :
3/14:2005/09/12(月) 21:55:47 ID:???
暗いコクピットの中。
フリーダムの起動画面が灯り、マユの顔を照らし出す。
「操縦系統はザフト系、出力正常、異常無し。全部、シミュレーターと同じ。
うん、これならやれる……! あたしにもできる……!」
計器類を確認する彼女の前に、大きくザフトのシンボルマークが映り、OS名が表示される。
Generation
Unsubdued
Nuclear
Drive
Assault
Module
「………??
ガ・ン・ダ・ム……?」
目の前に並ぶ文字を拾い、思わず呟くマユ。
そのまま、彼女はギュッと操縦桿を握る。どこか楽しげに、不敵な笑みを浮かべる。
「『フリーダム』なんて名前より、こっちの方がよっぽど語呂がいいじゃない。
いくわよ、『ガンダム』……! 今度こそみんなを、ちゃんと守って……!」
呆然と見守るしかないアンディとマリアをよそに、『ガンダム』のツインアイがギラリと輝く。
灰色の姿のまま、力を溜めるように膝を曲げ。
翼を広げ、バーニアを吹かし、勢いよく頭上の通路に飛び出していく――!
マユ ――隻腕の少女――
第二話 『蒼い翼の天使』
170 :
4/14:2005/09/12(月) 21:56:43 ID:???
――岬の上に建つ立派なお屋敷、だった残骸の上で。
1機のアッシュが、なおもワークスジン、だったものに執拗に攻撃を加えていた。
……と言っても、もはやそれは原型すら留めてはいなかったのだが。
アッシュの顔面には、スタンプのように足跡がくっきりつけられている。
「こいつめ、こいつめ――!」
「もうよせって。それより、ちょっと移動した方が良くないか? オーブ軍が来ない」
なおも暴れるその機体に、近づいてきたもう1機が声をかける。
確かに――2機は派手に『民間人の邸宅』を破壊しているというのに、M1アストレイは近づきもしない。
この高台の上からは、軍の展開の様子が手にとるように分かる。
「どうやら連中、よりによって市民を見捨てて、マスドライバーの守りを固めてるらしい――
もう少しこっちに惹きつけないと、本隊が『目標』まで到達できんぞ」
「でもよォ、民間人のナチュラルなんぞに蹴り入れられて、黙っていられるかってんだ。
パイロットは中に逃げ込んじまったしよォ! 殺し損ねたぜ、クソッ!」
「この国じゃ、別にナチュとは限らんだろ。ま、コーディネーターだとしても許しちゃおけんがね。
それに――この有様じゃ、とっくに下敷きになってるさ。
万が一生きていても、どうせ『あの作戦』が発動すれば――」
怒りの収まらぬ様子の男を、もう1人が物騒な言葉で宥める。
確かに豪奢な建物はあらかた崩れてしまい、いまや瓦礫の山と化している。
中に逃げ込んだところで、到底助かるとは思えない――それこそ、軍用のシェルターでも備えていない限り。
「……わかったよォ。もうココはいい。死体を確認できねぇのがシャクだがな。
ウサ晴らしに、街中にでも踊りこんで、派手に殺しまくるかね――」
ようやく気が済んだのか、足跡付きのアッシュは立ち上がり、街の方に向き直る。
2機が並んでその場を飛び立とうとした、その時。
瓦礫の山の一部が吹き飛んで――1つの影が、彼らの頭上に翼を広げる――!
171 :
5/14:2005/09/12(月) 21:57:42 ID:???
「――キャァあァァァァ!」
マユの悲鳴が狭いコクピットに響く。シミュレーターではありえない凄まじいGに、顔が歪む。
勢い余ってはるか上空に飛び出したフリーダムは、2つ3つその場で回転し、翼を広げてようやく止まる。
「全く――なんて出力なの、この子は!」
暴れ馬のような圧倒的なパワー。翻弄されるマユ。
と、そこに、ピピピピ……と警告音が鳴る。
「え、何、これ?
って……ロックオン、されてるの?!」
慌てて彼女が視線を下にやると、2機のアッシュの背中から、無数のミサイルが放たれて――!
盾を構えるヒマもなく、未だ灰色のままのフリーダムが爆炎に包まれる。
「やったぜ、畜生が! 驚かしやがってよォ!」
「所詮は2年前の型落ちMSだ。ましてや乗り手がトーシロじゃあ――」
頭上を見上げる2機のアッシュは、フリーダムの撃墜を確信し、笑いあう。
流石に相手を確認した時には驚きもしたが、上空でジタバタする姿は素人丸出しで、戦闘態勢も取れてない。
あまりにも容易くロックオンし、あまりにも容易く全弾命中できた、のだが――
――爆煙が晴れるよりも先に、煙を突き破って閃光が空から降り注ぐ。
驚きの声を上げる間もなく、2機のアッシュの腕が、足が、ミサイルポッドが――吹き飛ばされる。
「なぁっ!?」
比喩でも何でもなく、文字通り達磨のような格好になり、崖下の海面に転落していく2機。
2人が太陽の中、逆光の中に見たものは――
間一髪で展開したPS装甲の防御力、無数のミサイルの直撃にも耐え抜く恐るべき悪魔。
蒼い翼を広げ、2つの眼に力強い光を宿した、白い天使の如きMS――。
172 :
6/14:2005/09/12(月) 21:59:55 ID:???
オーブ国防本部。
防衛とMS発進にあわただしい現場に、新たな一報が入る。
「街外れの岬の上空に、新たなMSが出現! 当該するオーブ軍部隊、ありません!」
「なんだと!? 敵の新手か? どこから来た!」
「いや、まさに『出現』したとしか、表現のしようが……」
「熱紋照合、出ました、これは……『フリーダム』です! 敵水陸両用MSと、交戦中の模様!」
「はぁ!?」
あまりに突拍子のない乱入者に、国防本部もざわめき立つ。
新たな指示を出すよりも先に、事態の方が動いていく。
「所属不明の『フリーダム』、市街の方に移動します! 速い!」
「『フリーダム』の識別信号を確認、どうやらオーブ軍の信号を出しているようです。
所属部隊のコードは……!! ちょっ、こ、これって!?」
「何……!? アスハ家専用のロイヤルコード!?」
「『フリーダム』旧市街区域で敵MSと交戦中! 前線の部隊が本部の判断を求めています!」
「ソガ一佐、ご指示を!」
判断を求められた上官は、一瞬難しい顔で迷いを見せたが――すぐに決断を下す。
「よし。暫定的な処置と断った上で、『フリーダム』を友軍と見なすよう、前線の部隊に指示。
『フリーダム』との交信、まだ繋がらないか?」
「ダメです。どうやらあちらはチャンネルを合わせていないようです」
「全回線を使って呼びかけを続けろ。誰が乗っているのか確認したい!
それから前線の部隊には、現場の判断で連携・フォローするようにと!」
「はッ!」
「行政府のユウナ殿・ウナト殿にも連絡! こちらの対応を伝えた上で、指示を仰げ!」
前の大戦で本土防衛戦にも協力し、凄まじい戦果を上げた『フリーダム』の伝説。オーブ軍に知らぬ者はない。
心強い援軍の出現に、国防本部の士気が上がっていく……。
173 :
7/14:2005/09/12(月) 22:01:12 ID:???
人々が逃げ出し、無人のゴーストタウンと化した街の中。
見る者もいない街頭モニターに、オーブ軍とアッシュの交戦の様子が映し出される。
『これは映画ではありません! これは映画ではありません!
本当に、今まさにオノゴロで起こっている映像です!』
先程までのニュースと同一人物とは思えぬほど、上ずって冷静さを欠いたキャスターの声。
彼の興奮とは裏腹に、画面の中に展開される映像には、アーモリーワンの事件と同レベルの迫力しかない。
一斉に放たれた5条の光にアッシュの手足が吹き飛んで、達磨と化したソレをM1と戦闘ヘリが撃ち抜く。
あまりにスマートな闘いぶりに、台本でもあるのかと疑いたくなるような殺陣。
ただ1つ違うのは――絶え間なく続く爆音と破砕音が、直接街の空気を揺るがしているということだけだった。
高速で飛び回るフリーダムのコクピット内。画面上に複数の円がフラフラと揺れる。
ピピピ……と音を立て、それらが同時に焦点を合わせる。フリーダムの誇る多重ロックオン。
3つの円は、それぞれ綺麗に3機のアッシュの中心に合わされている。
「もらった、今度こそっ!」
マユの叫びと共にトリガーが引かれ、フリーダムのビーム砲が、レールガンが、ライフルが、一斉に火を噴く。
それらは吸い込まれるようにアッシュたちの身体を襲い……手を、足を、ミサイルポッドを、撃ち抜き壊す。
「……あれぇ?」
不思議そうな声を上げるマユ。だが第二射を放つ前に、体勢の崩れたアッシュにM1アストレイが襲い掛かる。
フリーダムが同時に数機の敵の動きを止め、M1がトドメを刺す。傍目に見れば絶妙のコンビネーション。
しかし、どうやらマユには不満なようだった。
「この子、照準ズレてるのかなァ……さっきから一発も真ん中に当たんないよ。
もう、しっかりしてよね、『ガンダム』」
ぶつくさ言いながらもフリーダムはさらに戦場を飛び、街中に残ったアッシュを探しに行く――
この短時間の間に、マユはこのフリーダムを、完全に乗りこなしていた。
174 :
8/14:2005/09/12(月) 22:02:03 ID:???
――静かに、波の音が規則的に刻まれる。遠くでカモメが鳴いている。
戦場の気配も硝煙の匂いも程遠い、静かなで自然豊かな島で――
桃色の髪の娘が、10人ほどの子供達の手を引き、砂浜を歩いていた。
ワイワイ騒ぐ子供達の周りを、ピンク色のハロが何やら叫びながら跳びまわる。どっちが煩いか分からない。
娘は子供達を引率し、浜辺に立つ家に近づいてドアを開ける。
子供達が自発的に大部屋に向かって駆けて行くのを確認すると、彼女は1人、海を臨むベランダに回る。
静かに揺れる無人のロッキングチェア。ちらりと確認すると今度は食堂へ。
――つけっ放しのTVの前に、彼女の探していた人物は座っていた。
「……こちらに、いらしたんですの?」
「ああ……」
言葉少なに、返答する青年。視線をTVに向けたまま、振り向きもしない。
TVの中では、オノゴロ島の戦闘。街頭モニターで流されていたのと同じ、リアリティの薄い映像。
フリーダムの射撃は百発百中の精度でアッシュの手足をもいでいく。
そしてバランスを崩したアッシュに群がり、確実に潰していくオーブ軍――
「また、戦争になるのですか?」
「……たぶんね」
「フリーダムは、どうしましょう? あなたの『剣』でしょう、あれは?」
「……あれは、あのままでいい」
「必要ない、と?」
桃色の髪の娘の問いに、青年は顔を上げた。
彼は不思議なほど穏やかな表情で、呟く。
「きっと、今は僕よりも必要としている子が、あそこにいるから……」
その顔は――どこか、憑き物が、重荷が降りたような、すっきりしたもので――
175 :
9/14:2005/09/12(月) 22:03:38 ID:???
もはや、アッシュ部隊が全滅するのは、誰の目から見ても時間の問題だった。
街を挟んで、マスドライバー側に展開していたオーブ軍。反対側から襲撃したフリーダム。
挟み撃ちされた格好の侵入者たちは、奇襲の効果も薄れ次々に撃破されていく。
さらに、オーブ軍の増援が続々と到着し――既に、勝敗は決したかのように見えた。
増えていくM1アストレイ、減っていくアッシュ。
戦力バランスが逆転する中、マユのフリーダムは、いつしかアッシュへの攻撃を止めていた。
攻撃が胴体に当たらないから、ではない。そもそも「アッシュを倒すこと」はマユの目的ではない。
ある意味、それよりも大変な仕事に彼女は専念する。
街の中、取り残され孤立したアッシュを、数でも勝るM1がグルリと包囲する。
そして容赦なく集中攻撃を浴びせるのだが……
残念ながら、外れるものも多い。標的を逸れ、あさっての方角に飛んでいく。
それが誰もいない海の方に向かうなら、マユも動かないが――内陸の、市民が逃げ出した方向だったその時は。
盾を構えたフリーダムが、急スピードで飛んでいく。
逃げ遅れた親子を襲うビームの奔流を、間一髪突き出されたシールドが遮り、守り抜く。
腰を抜かしたお年よりに迫る砲弾を、PS装甲のフリーダムが手を伸ばして受け止める。
助けられた市民の中には、まるで天使でも見たかのように両手を合わせ拝み出す者もいたが、マユには省みる余裕すらない。
「ハァ、ハァ……!
きっついわね、コレ……!」
一瞬たりとて集中力を途切れさせることができず、右に左に飛びまわり。急加速・急停止の連続。
マユの額に、玉のような汗が浮かぶ。さっきまで普通に戦っていた時より、よほど消耗が激しい。
何故、こんな戦い方をするのか――いやもはやこれは、戦闘ではない。戦闘などと呼べる行為ではない。
記憶が鮮やかに蘇る。穏やかで呑気な女性の声と、激しい少女の怒りの声。
『キラは、みなさんを守ろうとして……』
『『皆さん』って誰よ! 一体どこの誰を守ってるつもりだったの、あなたたちは!
そんなに守りたかったって言うなら……避けたりしないで、全部受け止めなさいよ!』
「……でも、あたしは諦めないからッ! 『アンタたち』と違って、言い訳なんてしないからッ!」
自分自身を励ますように叫ぶと、『ガンダム』は目標を外れ迷走するミサイルにバルカンを浴びせかける。
176 :
10/14:2005/09/12(月) 22:04:45 ID:???
そんなマユの奮戦を、遠くから眺める人影が2つ。
――フリーダムが飛び出した、岬の屋敷跡。うずたかく積みあがった、瓦礫の上。
「才能ある、とは思っちゃいたが……まさか、これほどまでとはねぇ」
「あの子、あんな無茶な戦いかたを……!」
双眼鏡を手に戦闘を見守るのは、もちろんあの2人。
通販専門コーヒー豆店店主、アンディ・バルディと、モルゲンレーテ造船技術者マリア・ベルネス。
少なくともそう名乗り、その名前と肩書きで2年の年月を一緒に過ごしてきた2人。
「思い出さないかね? 俺と君が出会った、あの戦場を」
「え?」
「どこか、似たところを感じるんだがね……もちろん、戦い方や目的とするところは、かなり違うようだが」
「似てるって……まさか」
「ああ――あの頃の、『狂戦士(バーサーカー)』君さ。
他の事が見えなくなってしまう必死さといい、的確過ぎる反応といい、そっくりじゃないか。
『敵を倒す』という執念を、『人々を守る』に逆転させると、あんな風になるんじゃないかね――」
「そう……かしら……? わたしは逆に、全く違うタイプの『天才』だと思うけど……」
どこか楽しげに語るアンディに対し、いまいち同意できない風のマリア。
意見の一致を見ないまま、アンディは双眼鏡を下ろして瓦礫の山を降り始める。
「さて――マユには悪いが、そろそろ俺たちも潮時だ。とっととズラかるぜ、『マリュー・ラミアス少佐』!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、あの子は、マユちゃんはどうするの、『バルドフェルド隊長』!」
「悪いがどうにもならん。少なくとも今はな。お姫様が宇宙(そら)から帰ってくるまで、簡単には手出しできん」
『帰ってきたら、全部しっかり説明してもらうからねッ!』
「まあ、それに――マユの方も簡単には『帰って』来れないだろうからねぇ。
その辺、分かった上で出ていったのかね、あの子は?」
脳裏に蘇ったマユの叫びに、アンディ――『アンドリュー・バルドフェルド』は苦笑する。
彼らの頭上を、前進翼を持つ独特の形状の戦闘機が、編隊を組んで飛んでいく――
間もなく、幕引きの時間だ。
177 :
11/14:2005/09/12(月) 22:06:31 ID:???
失敗に終わりつつある戦場で――
襲撃部隊のリーダー、ヨップ・フォン・アラファスは、しかしまだ諦めてはいなかった。
既に彼のアッシュは両手を失い、ミサイルは撃ち尽くし砲塔は曲がってしまっていたが――
機能停止に見せかけ道路に横たわったまま、チャンスを伺う。
やがて、孤軍奮闘していた最後の1機のアッシュが、動きを止めた時――
戦場に安堵の空気が漂い、緊張が解けるのを、彼は見逃さなかった。
素早く視線を巡らし、『ターゲット』へのルートを確認する。
「オルア――クラブリック――死んでいったわが同志たち。今、使命を果たすぞ!」
――最後の1機のアッシュが、四方八方からM1アストレイのビームサーベルに貫かれ、ガクンと力を失う。
もはや戦場に立っている敵はいない。撃たれ斬られ手足を失い、地面に無為に横たわるものばかり。
激戦の終結に、戦場はホッとした雰囲気に包まれる。
が――ただ1人、マユだけが。ただ1機、フリーダムだけが。
なおも空中にホバリングしながら、戦場を睥睨し、緊張を解いていなかった。
「……何が、目的だったの? 何を、したかったの?
まさか、ただ暴れたかっただけ、なんてことないよね……?」
空から俯瞰で眺めれば……オーブ軍の動きと現状が一目瞭然。
マスドライバーを守るべく、強固に作られていた防衛線。
それは残り少なくなったアッシュを狩り立てて、いつの間にか崩れ、穴が空き、乱れていて。
M1たちの後方に取り残された1機の腕なしアッシュが、軋みながら立ち上がる――!
「……いけない!」
アッシュのモノアイが、ギロリとマスドライバーを睨み付ける。
その根元、レール上には、この一連の騒動で待機を強いられた民間シャトルが載ったままで――
178 :
12/14:2005/09/12(月) 22:08:19 ID:???
両腕を失い、丸い胴体に足だけ残った無様な有様で、マスドライバーに向けて駆け出すアッシュ。
異変に気づいたM1たちが振り返り、反射的にビームライフルを向けるが――撃てない。
なぜなら、標的の向こう側には――
「くそ、今撃てばマスドライバーまで傷つけてしまう!」
仕方なくビームサーベルを抜いて追いかけるが、距離がある、不意を打たれた、時間がない。
これでは追いつく前に、マスドライバー基部に到達される――
「しかし、武器も何もないはずなのに――」
「まさか、自爆でもする気か!?」
「でも、なんでマスドライバーを――!」
そう、ヨップたちの本当の狙いは、自爆さえも作戦に入れた、マスドライバーへの破壊工作。
街で暴れたのも民間人の家を破壊したのも、全てそのための陽動。1機でもマスドライバーに近づくために。
……ユウナの冷酷かつ適確な采配により、その作戦は予想以上に厳しいものとなっていたが――しかし。
「災いの天蓋よ……今、その憂いを除いてやる。安心して、我が頭上に落ちて来るがいい!」
ヨップは天を仰いで絶叫すると、最後の距離を、大きく跳躍し、マスドライバーへ、民間シャトルの方へと――
空中を舞うアッシュの中で、彼の指が自爆スイッチの上にかかり――
――追いすがるM1部隊が諦めかけた、その時。
彼らを追い越し飛んでいく1つの影。
『フリーダム』。
十枚の翼を広げ、急降下しながら、全速力で。
「……させるかぁ!!」
少女の絶叫と共に、民間シャトルに向けてフリーダムの手が伸ばされ。
しかし、僅かに距離が、時間が速度が足りず。
それは――マユには知る由もないが、2年前、軌道上で避難民のシャトルに手を伸ばすストライクの構図にも似て。
シャトル内にいる親子が、幼い眼を見開き、フリーダムを見上げて――!
「……勝ったッ!」
179 :
13/14:2005/09/12(月) 22:09:51 ID:???
眼の下の隈が際立つその顔に、ヨップは満面の笑みを浮かべ。
自爆スイッチを押し込んだ――まさにその瞬間。
空中で、アッシュに激しい衝撃が走り。
「……なッ!?」
それは投げつけられたフリーダムのシールド。質量ある飛翔物との衝突に、アッシュの跳躍の軌道が変わる。
さらにそこに、軌道変更で生じたわずかなロスで追いついた、フリーダムの飛び蹴りが迫り――
自爆スイッチが押されてから、自爆装置が作動するまでの一瞬の刹那に。
アッシュの丸いボディは、もはやマスドライバーを巻き込めぬ距離にまで蹴り飛ばされ。
ヨップ・フォン・アラファスは、己の敗北を理解することなく、空中で爆死した。
――今度こそ、本当に終った戦闘。
動きを止めているアッシュを、M1アストレイがなおも取り囲み、機能停止していることを確かめる。
小銃を下げた歩兵がコクピットをこじ開け、乗っていたパイロットがみな自害している姿を確認する。
守り抜いたマスドライバーのすぐ隣、民間シャトルを見下ろし誇らしげに立つフリーダム。
シャトルの窓越しに手を振る幼い少女の姿に、疲れ果てたマユの顔にも笑顔が浮かぶ。
「やった……あたし、やったよ、お兄ちゃん……。
今度は『ガンダム』が、ちゃんと守ってくれたんだよ……」
誰に聞かせるわけでもなく、虚空に報告する。頬を、一筋の涙が伝う。
その、フリーダムの上を――通り過ぎる複数の影。
機首方向に伸びた前進翼を持つ、見慣れぬ大型戦闘機。
それは、空中で素早く人型のシルエットになり――
次々と、フリーダムを取り囲むように着陸する。
「こ、今度は何!?」
再び登場した見慣れぬ機体に、慌てて身構えようとするマユのフリーダム。
だが、疲れきったマユよりも、可変MSたちの方が素早かった。
フリーダムが武器を構えるより翼を広げるよりも早く、ビームライフルを突きつける。
周囲も上空も同型の可変MSに固められ、逃げる隙はない。
180 :
14/14:2005/09/12(月) 22:10:36 ID:???
と、戸惑うマユに、スピーカー越しに声がかけられる。
『こちらはオーブ軍ムラサメ隊隊長、馬場一尉。
フリーダムのパイロット、抵抗せずに、降りて来て頂きたい!
……我々も、できれば恩人に銃を向けたくはないのだが――
任務ゆえ、そして非常事態ゆえ――ご無礼をお許し頂きたい』
ムラサメ――それは、未だ一般には公開されていなかったオーブ軍の最新鋭制式MS。
馬場と名乗った軍人は、丁寧な、しかし有無を言わせぬ迫力で、マユに投降を求める。
夕日の差し始めた、戦場跡で。
フリーダムのコクピットから、ゆっくりと座席が上がってくる。
ムラサメ、M1アストレイ、国防本部、そして行政府。
直接間接に無数の視線が集中する中、姿を現したのは――まだ、あどけなさの残る、一人の少女。
軍人にはとても見えぬ、サスペンダー付きのデニムジーンズ。後ろでひとつにまとめた栗色の髪。
なぜか右腕だけが、肘まで覆う白い長手袋に覆われて――
「誰だ……!?」「子供!!」「女の子だぞ」「誰なのあれ?」「子供がフリーダムに……!?」
見ていた者たちの間に、ざわめきが走る。そしてその正体を問う声に、答えられる者はいない。
謎の少女は、強い意志を目にみなぎらせ、眼前のムラサメを真っ直ぐ見つめている――
誰もが少女の素性に首を傾げる中――ただ1人、歓声を上げている者がいた。
行政府の暗いモニタールームの中、膝を打って立ち上がる。
「……これだ! この子だよ、父上!」
「どういうことだ、ユウナ? この小娘をどうすると?」
静かに問うウナトに、ユウナは自信たっぷりに指を振ってみせた。
「この子こそ――今のボクらに必要な存在だ。
ボクたちは、この子を『手に入れる』必要がある。フリーダムと共に、ね」
第三話 『辿りし道』 に続く
以上〜。
>まとめ人様
こちらこそよろしくお願いします。
>他職人の方々
皆さま乙です。それぞれ異なるマユinザフトを楽しませてもらってます。
こちらはまぁ、反則的な変化球のようなモノなので……
>156様
はい乗りましたw 早速乗りました。
OPがもしあるなら、マユと自由はセットで画面に出てくることでしょう。
>161様
まあ、その辺は見て下さい、としか……。今回少し顔出しましたけどね。
とりあえず、「本編のままが良いとは思ってない」とは言っておきます。
個人的に「初期状態(に視聴者に与えられた情報)」はさほど酷くない、と思うんですよね
設定・補足
マユ
恐らく「マユ強杉」との感想が出るかと思います……我ながらそう思う(吊
ただ、ある程度強くあって貰わないと仕方ないので。
「弱いけど皆に好かれるマユ」が好きな方にはゴメンナサイ。
ちなみに――単純に「キラを越えた」とは思わないよう、念のため釘刺しておきます。
強さってのは、単純な不等号で語れるものではない、と私は思ってますしね
アッシュ部隊
キャラの外見は、ラクスを暗殺に来た部隊の容姿・装備のままです。
繰り返しますが思想や所属が(おそらく)本編と変更されています。
あと、ヨップが口にした二つの名前は、本編にも出てきた部下らしい者の名前です。
ロイヤルコード
勝手に命名したが、要するに「アスハ家ゆかりの者が乗っている」ことを示す識別コード。
本来、マユが乗ることは想定されていなかったため、この識別コードが設定されていました。
第三話は今週末以降になるかも。気長にお待ちください。では。
よーし物凄い勢いでGJだ。確かにマユ強杉だが、納得のいくような回収がされるなら別に問題ないさ。
やっぱり虎はアッシュのこと知ってるのね・・・これも本編でノータッチだったしなぁ。なにやってんだ嫁。
ヨッピー・・・えらい格好良くなっちゃってお母さん嬉しいわ・・・
うおぉ、すげぇすげぇよホント……
戦闘描写お上手っすね。パクリにならない程度にお手本にさせて頂きます(待て
フリーダムの不殺フルバーストは設定されたものだったのか!
不殺は吉良の「腕」で常に微調整されてたんじゃないか?ミサイルとか、狙うときは狙えてるはずだし。だてにスパコディじゃないさ。隻腕に出てくる吉良はフリーダムのこと知ってるみたいだったし、誰かが乗ることがあっても言いようにわざとずらして設定してある…希ガス。
その辺は作者様のみが知るw
マユ世界の、ラストバトル候補
1運命VS攻撃自由(キラ)(ミーティア付き)
主人公VS前作主人公の戦い、まずミーティアをどうつぶすか?
2運命VS?(シン)
兄妹対決、せつない戦いになりそう。
3運命VS伝説(レイ)
元同僚との戦いだが、なんかいまいち。
4運命VS無限正義(凸)
凸との因縁がない(多分)なのでいまいち
2か1がいいな。
>185 しのはらマユ種は間違いなくシンと戦うな てか展開早いw
わざと照準をずらす設定のせいでマユは・・・
こんだけの戦闘やっても、誰も殺してないっぽい
このユウナ、マジでいいわ
若くして辣腕、冷酷、しかし国を想う気持ちもちゃんと持ってる
本当の意味での政治家っぽい
続きが楽しみでしょうがない
/⌒ヽ
/ ´_ゝ`) すいませんが、ちょっと自爆しますよ・・・
| /
| /| |
// | |
U .U
>>165-181激しくGJ!ただ一つだけ言いたいことが。
髪の毛、一つしばりじゃシホになってしまうジャマイカw!とオモタ
じゃあどうする?髪型
デフォの2年前のマユの髪、言葉で表現するとどうなんだろ
194 :
156:2005/09/13(火) 00:33:26 ID:ETky3K13
>隻腕の少女作者様
GJGJですよ!!ていうかマユがカッコよすぎ・・・
でも、嫁脚本の自由再動なんかより遙かにカッコいいっす!
さりげなく馬場一尉も出てるし、アッシュ部隊も何気に本編より軍人ぽい・・・
一体ココには何人神がおわすのやら・・・
>ほのぼのマユデス作者さま
なんと!?ミーアとハイネが元同僚とは!すげ〜変化球ですが、GJですよ!
グレイシア姐さんも良いキャラしてるし・・・やべぇ俺もハイネ隊に入りたくなった
195 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/13(火) 00:36:35 ID:ETky3K13
>>165-181 素晴らしくGJ!
マユの強さはあれぐらいでないとかえって話が成り立たなくなりますから、
全然問題無いと思いますよ。
むしろM1と阿吽の連携したり、疲労困憊したところをムラサメに包囲されたりと、
一人で何でもやってしまう嫁脚本のキラなんぞより遥かに見ごたえがあります。
続編、大いにワクテカしてますw
197 :
しのはら:2005/09/13(火) 08:07:54 ID:???
第二十六話投下します
かなりキリマンジャロ入ってますorz
198 :
しのはら:2005/09/13(火) 08:17:10 ID:???
「やめろ、マユ!」
「死にたいのか!?」
キラやアレックスの制止を無視して、マユはコクピットを開いた。
立ち上がり、自らの姿をステラに見せた。
「ステラ、私だよ」
「・・・マユ」
ボロボロになったデストロイの動きが止まる。
死闘が繰り広げられる中、二人だけの静寂。
「来てくれた・・・マユ」
ステラの顔に儚い笑みが浮かぶ。彼女も立ち上がり、自らの姿を見せた。
「ステラ、もう大丈夫だよ。一緒に行こう?」
明るい未来は望めないだろう。だが殺人マシンとして消耗されることに比べれば、幾分はマシな気がした。
「・・・だめ。ステラ、行けない」
199 :
しのはら:2005/09/13(火) 08:33:56 ID:???
ステラは涙を流す。もううっすらとしか考えられない。
「ステラ・・・もう人間じゃない」
これが現実。もはや自分は兵器、暖かい世界に戻ることなどできない。
ステラは優しく笑い、マユに語りかける。
「・・・殺して」
デストロイは全ての防備を解除した。
「ステラ、何をしているんだ!」
キラのドムと戦っていたデスティニー、ネオがこちらに向かってくる。
「ステラ、やめろ!」
光の翼を展開し、インパルスに突撃する。
「お兄ちゃん!?」
「ネオ、やめて!」
悲劇が始まった。対艦刀が降り降ろされ、インパルスを切り裂く。
シールドを破壊され、無防備の機体をデスティニーが突貫。
「やられる・・・!」
その時、デストロイがインパルスを庇った。対艦刀が頭部に突き刺さる。
「ステラ!」
マユとネオの悲鳴が共鳴した。
200 :
しのはら:2005/09/13(火) 08:44:55 ID:???
泣かないで。
そう聞こえた瞬間、デストロイが大爆発を起こした。
「離れろ!」
レジェンドがインパルスを引っ張る。核融合炉はメルトダウン寸前、へブンズベースからザフト軍MSが退避していった。
「ステラァァァァ!」
泣き叫ぶマユの前で、核爆発の光が広がっていく。ヘブンズベースで抵抗していた地球軍が光に包まれ、基地と共に消滅した。
マユはただ泣き続けた。ステラを絶望の中から救うには、殺すしかなかった。わかっていたことなのに・・・!
レジェンドとドムに支えられ、インパルスはミネルバに収容される。
キラはフレイを、アレックスはニコルを思い出していた。
「人はいつだって、同じことばかり・・・」
「そうだな、キラ」
201 :
しのはら:2005/09/13(火) 08:46:28 ID:???
投下終了です
Z好きのみなさんすみません
他職人のみなさん、頑張っていきましょう
ではノシ
age
>>166-180 萌えた…いや、燃えた。G!J!!!
特にすごいのが、各話の締めを読んでいると
Reasonが空耳のごとく聴こえてくるところ…
遠くー離れてーてーるー想いー♪
>この子、照準ズレてるのかなァ……さっきから一発も真ん中に当たんないよ
ちょとワロタ
>>159-162 総集編で日記を語らせるんじゃなくて、
こういうのが見たかった…ああミーア
どうしよう…
>>165-
>>181を読んでたらフリーダムのプラモが欲しくなっちゃったw
誰か絵師様、赤服マユだけでなく隻腕マユのイラストもキボン
誰もしないからしのはらに乙
しのはらさんがやったのはオマージュ。
負債がやってるのは劣化コピー。
これでFA?
>>208 FA。ステラのこういう最後もアリだな。
これからゲンがどうなってくのか非常に楽しみ…しのはら氏GJ!
しのはら版にゲンは登場しない件について
もしシンじゃなくてマユが主人公だったあスレだからべつにシンは死んでてもかまわないはず
しまったしのはら版はネオだった……orz俺の馬鹿
>>しのはらさま
ステラの最後、ZはいってますけどGJ!
破壊は、再登場しないほうが良いと思います。
2クール目終了お疲れ様。
次回の投下で、マユ種さんの話数(27話)に並びます。
とりあえず完結まで頑張って下さい。
注;もう時間軸なんかしるもんか。
「えー、こんにちは。マユ・アスカです。」
「ルナマリア・ホークです。ただいま、艦長の命令によりアスランさん
ストーキング中であります。」
「別の方向からハイネ隊の仲良し三人組さんも追跡ちゅうであります。」
なんかテレビ番組のキャスターになったつもりで話す。
建物の屋上の上から手を振ってくれるカルマさん。
ま、ケロロ口調だけど。
「あ!!」
「どうしたの?!」
アスランお兄ちゃんの方を見てルナお姉ちゃんが声をあげた。女の人だ。
「うぁー、すごいねー。フラグたちまくりだねー。」
ハイネ隊の人たちはなにやらケータイで写メしまくってる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・こわぁっ!!無言の恐怖ですよ?!
「で、あちらではディアッカにあったんだが・・・・・。」
「は?」
・・・・あぁ、ディアッカ・・。お前は一体何をしたんだ?
俺は町で偶然ミリアリアと出会った。彼女はいまカメラマンをしているらしい。
「ごめん、遅くなった!!」
男性がこちらに近づいてくる。
「もう!サイったら遅い!!」
「サイ?!」
「久しぶりだね、アスラン。」
「そうか・・、ミリアリアの手伝いか・・。」
「そ。事務仕事とかはサイが手続きをしたりしてくれてるの。」
ミリアリアはサイと組んで仕事をしているらしい。
「ん・・・?ということは・・・・まさか!!」
俺は自分の頭に浮かんだ物に戦慄した。
「はははは、俺達付き合ってるんだ。」
そう言ってサイは恥ずかしそうに笑った。
・・・ディアッカッ・・・ディアッカッ・・・・ディアッカァァァァァッ!!
どうやらさっきの女の人には恋人がいるらしい。
ルナお姉ちゃんはほっとしている。
いったんアスランお兄ちゃんが泊まるホテルをチェックし、その隣のホテル
に宿泊することになった。
「で・・・?そちらから何か聞こえた?」
今は部屋で作戦会議をしている。
「点々と・・何せあの店こんでたからなぁ・・・・。」
「ご飯美味かった!!」
「はいはい、お菓子あげるからカルマ君はだまっててねー。マユちゃんもはい。」
私はキースさんからもらったカステラをもふもふと食べる。
「しかし、アークエンジェル・・キラ・・・などの単語からおそらく
この後接触するかもしれないね・・。」
「ふぁーふへんじぇふっふぇあふふぁんふぁふぉっへは?」
「カルマ、食ってたら言え。」
このカステラ大きいなぁ・・・、しかも卵たっぷりで美味しい・・・。
「じゃ、このまま追跡を続けるってことで・・。」
「そうね。」
もふもふもふもふもふもふ・・・・・・。あー、本当にこのカステラうまいわぁ。
「ふぃふふぃふぁっはらふぃへふばにかへれふふぉ?」
「マユ、あんたも食べてから話しなさい。」
でぃあっかぁぁぁぁ!
てかサイ、ちゃっかりお前ってやつぁ……!
>203
その幻聴聞いたの、俺だけじゃなかったんだ
職人諸氏、グッジョブです!
相変わらずテンポダルダルですが、第3話行きます。
とりあえずアーモーリーワン編終わったらあらすじ形式に切り替えてみた方いいかなと思いつつ、
まぁとりあえずこれ含め残り2話はこの形式で行こうかと。お付き合いくださいませ。
揺れる紫の瞳は、かつて自分を収めた鞘。
燃える銅の瞳は、かつて自分を鍛えた熱。
守るため、と願った剣は、奪う為に振るわれる。
帰るべき場所を知らず、憎むべきものも知らず。
黒と偽りに覆われた深紅の瞳は、真実さえ見失う。
PHASE-03 黒の剣
『遅いぞっ!』
助けてあげたのに何様だ。シュウゴの怒鳴り声を聞き流しながら、マユはインパルスをガイアに突っ込ませる。
「えぇぇぇぇぇいっ!!」
右のエクスカリバー対艦刀を縦に一閃。ガイアは辛うじてそれをシールドで受け止めたが、大きく姿勢を崩した。
追撃。左のエクスカリバーを横一文字。ガイアは更に身を屈めそれを回避すると、反動で大きく後ろに跳び退る。
『マユ、命令は捕獲だぞ』
アーサーから通信が入る。こんなときにまで何を言ってるんだこの人は。
マユはガイアの放ったバルカンの雨をVPS装甲に受けながら、フラッシュエッジを抜き放った。
「分かってますよ、そんなことっ!」
投擲。ブーメランは孤を描きガイアに接近するが、横合からのビームがそれを撃ち落とす。
「……ッ!」
カオスが接近。だがその前方を白い閃光が駆け抜け、カオスは急制動をかける。
『迂闊だぞ、マユ!敵は一機じゃない』
「分かってるってば!!」
レイの駆るザクファントムだ。彼はカオスの操る機動兵装ポッドによる三次元攻撃を相手に、互角以上の戦いを見せつける。
「大体、なんでこんなことになったんです!?こうも易々と…!」
マユは毒づく。撃ち掛けられるガイアのビームをシールドで防ぎながら、地を這うように接近。
『おしゃべりしてる場合か!最悪落とせ、じゃなきゃ死ぬぞ!!』
アーサーの反論を遮るように、シュウゴが怒鳴る。彼のザクはアビス相手に、片腕で必死の防戦を繰り広げていた。
言われなくたって、そんなことは分かっている。マユはイラつく。落とせない、落としたい。
エクスカリバー対艦刀をアンビデクストラス・フォームすると、一気にガイアとの距離を詰め――
『シュウゴ、お前は下がれ。その腕じゃ足手まといだ!』
振り上げる。その太刀筋を見切ったと言わんばかりに、ガイアは回避。
「…まだよっ!」
そのまま無理に姿勢を捻り、連撃。だがガイアはそれすらも予測していたと言わんばかりに、易々と避けてみせる。
強い。
『……悪い、頼む!』
シュウゴのザクが離脱していく。それを追撃しようとするアビスに、レイがカオスの攻撃を避けながら挑発するようにビームを撃つ。
最初は連合だと思った。でも――コーディネイターでも、ここまで機体を扱うことはできない。
強すぎる。一体なんなの、こいつらは。マユの背筋を、戦慄にも似た感覚が駆け上った。
「アビー、外は!?」
"ミネルバ"ブリッジ。艦長のタリア・グラディスは叫ぶ。
「哨戒に出ている"パブロ"、及び"ラピュータ"からはそれらしき艦影は見当たらないと!」
「MS隊は!戦闘はどうなってるの!?」
「ルナマリア機とシュウゴ機が小破、現在こちらに向かっています」
タリアは逡巡する。ここでどう動くべきか。
「艦長、まずいですよこれ。このまま逃げられたら…」
「そうはさせないわ……絶対に」
ブリッジ後方のエレベーターのドアが開いた。タリアはこんな時に誰だと振り返り、衝撃を受ける。
「議長……!?」
そこに立っていたのはプラント評議会現議長――ギルバート・デュランダルであった。
「酷いわね、これ……」
乱れていた呼吸もようやく落ち着いてきた。ルナマリアは愛機を"ミネルバ"へ向かわせながら、地上を見下ろす。
引き裂かれたアスファルト。燃え上がるMSの残骸。そして、死体。
「まずいな、急がなきゃ」
一人呟きながら、ルナマリアは状況を整理する。
こちらの被害、避難エリア指定、コロニー外の索敵の報告、などなど。
「ん?」
ふと、モニターが何かを認識する。
「人……?」
拡大すると、それが2人の人間であることがわかった。
ここはもう避難エリアに指定されているのに。逃げ遅れたのか?
ルナマリアはゆっくりと機体を着陸させる。すると相手もこちらを認めたようで、片方を庇うように男が正面に立つ。
「そこの2人、止まって。大丈夫ですか?」
外部スピーカーをオンにして、優しい口調で話し掛ける。こちらを警戒しているのだろうか?
男が口を開いた。
「こちらはオーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハだ――恐らく議長がおられるであろう、ミネルバに連れて行って欲しい」
『スティング、バス行っちまうぜ!?』
「解かってると言ったろうが!」
スティングは焦っていた。撤退できないことへの焦り。時間が足りないことへの焦り。
そして……今まで戦ったことのない、強敵への焦り。
何故だ。俺たちの戦闘力が劣っている…?
真っ白い新型がこちらにビームを撃ちかける。スティングはそれを回避すると、カオスをMA形態に変型させた。
「そぉらぁっ!!」
突撃。すれ違いざまに相手の左腕を、脚部のビームクローで斬り落とした。
白い機体がバランスを崩す。そこにアウルが胸部のビーム砲を叩き込むが、紙一重で回避される。
『あぁっ、もう!』
アウルが毒づく。ステラはもう一機の相手をしているが、同様に落とせないらしい。
こいつだってもう、パワーが――
『港に突っ込め』
突如繋がった通信の声に、スティングは驚きを隠せなかった。
「ゲン…!?お前、撤退したはずじゃ!」
『どうでもいい、港に突っ込め…時間がないんだ。俺が尻拭いしてやるよ』
その言い方が気に入らなかったが、こちらももう限界だった。スティングは鋭く叫ぶ。
「ステラ、アウル、港に突っ込め!後はゲンに任せるぞ!!」
『…しゃあねぇなぁ。行くぞ、ステラ!』
『まだ…戦える…!』
尚も戦い続けようとするステラに、ゲンは通信を入れた。
『ステラ…大丈夫だ。背中は俺が守ってやるよ』
『…守、る……?』
ステラが攻撃をやめ、回避に専念し始める。先刻までの様子からは想像もできないほど、穏やかな顔だった。
『あぁ。だから先に戻って、ゆっくり寝てな』
『うんっ!』
ガイアが新型にビームを撃ちかけ、反転して急加速する。
その様子を見たスティングとアウルも、同様に撤退を開始した。
「撤退する……!?逃がすもんか!!」
相対していたガイアが、急に撤退を始めた。マユは追跡しながらライフルの照準を定める。反撃が無ければこれくらい…!
カオス、アビスも次いで撤退を始めたが、まずはガイアだ。向こうの二機はレイが何とかしてくれる。
ガイアの機影がロックカーソルの中心に定まっていく。射角誤差修正、照準―――
ピピピピピピピピ!!
「(ロックされた!?)」
マユは機体に急制動をかける。次の瞬間、敵の目指す宇宙港の入り口から音速を超える弾丸が飛来する。
あんな距離から!?マユが姿勢を回復させると、敵機はそこへ突入していった。
逃げられた……いや、まだだ。
『来るぞマユ、構えろ!』
レイの焦った声。三機と入れ違いで、凄まじい速度で黒いMSが突入してくる。
「……っ!」
あれは…そんな。ありえない。データベースで見たことがある。あのMSは……
"GAT-X105 ストライク"……!?
『マユッ!!』
一瞬反応が遅れたところに、敵は容赦なくビームの雨を叩き込んできた。ビームガトリングだ。
拡散する弾丸はシールドとこの装甲では防ぎきれない。オマケに敵は――
「(速い……!)」
急速で接近する敵機に相対して、マユはエクスカリバーの連結を解く。
「レイはあいつらを追って!……メイリン、"フォースシルエット"を!」
レイは一瞬の迷いもなく宇宙港へ向けて機体を飛ばす。突如呼びかけられたメイリンが焦った様子で発進シークエンスを開始した。
気付いたストライクがガトリングをザクに向けたが、マユはビームライフルでそれを遮る。
「あなたの相手は私っ!」
その叫びに応じるように、相手が両腰からビームサーベル抜き放った。
出港も出来ずに座礁した戦艦の残骸の脇を抜け、ザクファントムは宇宙空間に飛び出した。
いた―――3つのスラスター光。それらを追ってレイは漆黒の空間を突き進む。
「……!!!」
悪寒。背筋を冷たい舌で舐め上げられたような感覚がレイを襲う。
弾かれたように機体に制動をかけると、進路上に数条の光の矢が降り注ぐ。
これは。
レイはほとんど直感に突き動かされるように機体を駆った。一拍遅れて、次々とビームが撃ち掛けられる。
空間そのものを掌握した戦闘――間違い無い。これはドラグーン、もしくはガンバレル。それに属する武装だ。
この感覚、やはり自分の中には"あの人"がいるのか。レイは不敵に笑う。
望むところだ。
この武器を操ると言う事は、向こうも"そう"なのだ。まさか自分と"彼女"以外に生き残りがいたとは思わなかったが。
レイは先の三機のことを頭の中から閉めだし、集中する。
ブレイズウィザードのスラスターを全開。サイドアーマーに装着されたスタングレネードを放置。
ビームに貫かれたグレネードが爆散する。閃光が周囲の空間を照らし出し、レイは視線を廻らせる。
「(アレか…!)」
赤紫の、サメの様なシルエットのMA。向こうも姿を確認されたと判断したらしく、突然猛スピードで突っ込んできた。
これはフェイクだ。レイは焦らずに、機体を宙返りの動きで制御する。機体の真下を貫く閃光。
ビームが撃ちかけられた方向を割り出し、慣性に身を任せたままビーム突撃銃を三点射。片腕のハンデを感じさせない動きで一基の"ガンバレル"を撃墜する。
続いて本体が放ったレールガンを、レイはシールドで防ぐ。即座に半身を捻り、背後に迫ったもう一機を撃ち貫く。
いける。
ガンバレルの数は減ったものの、更に容赦ない射撃が放たれる。それらを身を縮めて、最小限の機動とシールドでやりすごす。
全身のスラスターを駆使して、サーベル状にビームを展開したまま接近してきた一基を蹴り飛ばした。
本体は、残りは何基だ――レイが気を抜かずに周囲を見回すと、宇宙が再び明るく照らし出される。
「(信号弾だと……?)」
敵艦は見つかっていないはず…いや、そうか。そう考えれば全て辻褄が合う。
彼の予想したとおり、赤紫のMAが撤退する先――何も無いはずの空間が、陽炎のように揺らめき始めた。
ミネルバに着艦したシュウゴはコクピットから飛び出し、汗を拭ってからラダーを使って降りた。
格納庫の隅の方に人だかりが出来ていたが、彼は気にとめず駆ける。
「ヨウラン!今すぐ腕の交換できるか!?」
整備クルーの少年――ヨウラン・ケントは赤いザクの上から叫び返す。
「馬鹿言うな、ルナのザクだってヤバいんだよ!インパルスとは違うんだ!」
「……あぁ、くそっ!」
イラついて軽く床を蹴り飛ばす。そこで彼は自分が私服だったことに気付き、待機室に戻った。
扉を開けると、紅いパイロットスーツに着替えたルナマリアと、緑のパイロットスーツの男が2人。
「シュウ!大丈夫だった?」
こちらに気付いたルナマリアが声をかける。続いて二人の男たちも軽く手を掲げてみせた。
「片腕やられて、レイに足手まといって言われたさ…どうなんだ?お前のザク」
「左腕と右足やられた……もう、滅茶苦茶よあいつら。なんなのあの強さ……」
シャツを脱ぎながら話を聞いてると、片方の男がシュウゴにタオルとドリンクを手渡す。
「そんなん強いのか?例の新型」
彼の名はデイル。ミネルバに所属するゲイツRのパイロットで、MS隊のムードメイカーだ。
「サンキュ…ヤバいぜあれは。パワーが段違いだ。インパルス見てればわかるだろ」
「しかし、アレはこちらでもわざわざパイロットの選考を行なったんだぞ?そう簡単にいくものか」
冷静に分析するのはショーン。2人は"赤"でこそないが、エースパイロット級の腕を持っている。
特にこの2人は、ここの能力こそ凡庸なものの、抜群のコンビネーションを誇る。
アカデミー時代も、誰かが2人を"ツイン・バード"などと揶揄していた。
「話は後、とにかく俺も着替えてくる。後は…」
<コンディションイエロー発令、各員は持ち場にて待機してください…>
突然の艦内放送に、4人は凍りつく。
ミネルバが、発進する…?
援護に来た友軍機が次々と爆散する。マユは冷酷な意志をもってその"隙"をも狙うが、当たらない。
モニターが矢継ぎ早に現況を報告するが、マユにはそれを気に留める暇もなかった。
強い。速い。目の前に立ちはだかる黒いストライクは、今まで見たこともないほどの強さ。
性能、技術。どちらも負けてる。この子が、私が。マユは悔しさに下唇を噛む。
「なんなのよっ!」
苛立ちながら投げつけたフラッシュエッジは、弾幕の前に撃ち落される。
来る。敵がビームサーベルを抜き放ち、急接近。マユはエクスカリバーを再び構え、敵に相対した。
激突。シールドで敵のサーベルを受け止めるが、こちらの対艦刀もキッチリと防がれている。
頭部のバルカンを乱射するが、敵は全く意に介さない。
スロットルにかかる抵抗が緩まり、敵が一瞬ふわりと距離を取り―――
「!!」
至近距離からのレールガンの直撃。VPS装甲が拾いきれなかった衝撃が、脳髄まで響く。
「ぐぅっ……!!」
あまりに一方的だ。このままじゃ、やられる。
マユが絶望したその瞬間、ついにモニターの端に待ち望んだ報告が現れた。
<FORCE-SILHOUETTE――System Connect Permission>
来た!
マユは機体ストライクに肉薄させ、エクスカリバーで斬りかかる。
相手はそれをシールドで防ぐが、もう片方のエクスカリバーの"みね"を、エクスカリバーに叩き付けた。
増加されたパワーに、ストライクが姿勢を崩す。
油断するな。予想通りにレールガンを撃ち掛けられたが、ギリギリで機体前部を掠めるに留まった。
「お返しっ!!」
急上昇。ブーメランのように、2つのエクスカリバーを投げつける。
片方はシールドで弾かれたが、もう片方は相手の右腕を奪っていった。
その隙にマユは機体を制御して、"軸"を調整する。雲間を割って、白と黒の戦闘機"シルエットフライヤー"が現れた。
「インパルス、あいつを落とすよ……!」
マユは薄々気付いていた。あの黒いストライクは、いずれ世界の"敵"になる。
ここでなんとかしなくちゃ、いずれ代価は――たくさんの人の命で、支払うことになりかねない。
そんなの嫌だ。力のない人は…普通に暮らしている人たちは、守られるべきなのに。
既に武装を失ったバックパックをパージすると、戦闘機の後部がはずれ、誘導レーザーを出してインパルスの背部に吸い寄せられる。
お願い。私に"力"を貸して…!
機体がロックされる。同時に、フォースシルエットが接続された。装甲が青に変色する。
敵の砲口が火を噴く。だがそれより一瞬早く、インパルスは爆発的なスピードで加速した。
ビームライフルを抜き放ち、連射する。いける。このスピードなら、遅れはとらない。
戦闘に集中する余り、マユは"ミネルバ発進"の報にも気付かずにいた。
装備を換装した?ゲンは軽く上唇を舐めて、機体を駆る。
右腕損壊、左肩損傷。先ほど対艦刀による重撃を受けた左腕も異常を告げる。
更にシールドに内蔵されたビームガトリングにも異常発生。ゲンはイライラして指を叩いた。
「この野郎」
スピードが上がっている。あれは恐らく、"エールストライカー"に準ずる装備。
『ゲン、いい加減にしたまえ。離脱するぞ』
何度目になるか、リーの低く押し殺した声。しつこく通信してくるから回線を開いてやったらこれだ。
だが――それも止む無し、か。
所詮は"ストライク"の贋物……だがこの性能、一筋縄では行かない。侮っていた。
ゲンは全砲門を開き、一斉射撃する。敵機はそれを避わしたが、余波を避ける為に大きく軌道を逸らした。
「あばよ、"兄弟"」
フルブーストで緊急離脱。相手はジリジリと距離を詰めるものの、いかんせん差がありすぎる。
決着はいずれつけてやる。俺の、この手で。
背後から撃ちかけられたビームライフルの射線を避わすと、ゲンは機体を宇宙港へ突入させた。
以上です。以前テンポのことをご指摘いただきましたが、なかなか改善できないまま…申し訳ないです。
長かったアーモリーワン編も次で終わらせる予定です。そっからはできる限り切っていこうかと。
でもそろそろ学校のテスト期間なので、月の終わりまで来れないかもしれません…
楽しみにしてくださってる方がいたらこれまた申し訳ない。なんか謝ってばっかの俺ウザいな。
では、お目汚し失礼しました。
夜中にGJ!ツイン・バードはいいね!これならユニウスセブン落とすときの展開変わりそうだ!だがちょっと突っ込むところが・・・
ストライクMk-2のビームサーベルが「腰」?
・・・まあオリジナルだからいいか!
228 :
しのはら:2005/09/14(水) 08:03:58 ID:???
第二十七話投下です
いつの間にか2クール終わりましたね・・・
>他職人様 いつもGJです、頑張っていきましょう
229 :
しのはら:2005/09/14(水) 08:19:35 ID:???
ヘブンズベースの壊滅でブルーコスモス派は大きな打撃を受けた。
デュランダル議長は巧みな情報操作を行い、「ブルーコスモスは地球を汚染する悪魔の存在」的イメージを定着させることに成功する。
世界各地で反ロゴス・ブルーコスモス撲滅運動が始まった。ブルーコスモス盟主ジブリールはロゴスの老人たちを残し、単身月基地へとその身を移すのだった。
ヘブンズベース戦で勝利に貢献したミネルバは本国へ帰還するため、一路カオシュンへと向かっていた。
「しかしヤマト大尉も忙しいですよね。休みなしで次の戦場なんて」
「仕方ないよお姉ちゃん。あの人たちはそういう部隊にいるんだから・・・」
懲罰部隊とも言われる三隻同盟は戦場の便利屋として、世界各地を転戦している。
「こっちは休暇だからいいわよ。久しぶりにお母さんにも会いたいし」
家族の話をしていたルナマリアたちの前にマユが現れた。
マユは無理に明るく振る舞い、ジュースを買って部屋に戻る。
「お姉ちゃん、マユ何かあったの?」
「この間の戦いでインパルスボロボロにして、整備主任に怒られたのよ」
ルナマリアは嘘をついた。
230 :
しのはら:2005/09/14(水) 08:34:35 ID:???
マユは自問自答していた。
「私は正しかったのかな・・・?」
見知った仲ではない。ステラとは少しの接触があっただけだ。
ただマユはステラを救いたかった。それだけの話。
「いいか?入るぞ」
アレックスが部屋をノックして、マユは慌ててベッドから飛び降りた。
敬礼するマユを制して、アレックスは部屋に入ってきた。
「少し話がしたいんだが・・・。君が良ければ」
二人は部屋を出、デッキへと登る。
「この間の強化人間、君とはどんな関係だったんだ?差し支えないなら話してほしい」
マユは包み隠さず話すことにした。マユはアレックスを尊敬している、軍人としても、人間としても。
231 :
しのはら:2005/09/14(水) 08:44:18 ID:???
アレックスは黙って聞いた。
「自分を正当化しないと、自分を守れなくなる」
アレックスはアスラン・ザラという男のことを語った。
親友を撃つことをためらって仲間を死なせ、平和への盲信から軍を脱走してザフトを撃ち、何も止められなかったと。
「君は正しいことをしたんだ、マユ」
「・・・でも」
「それを考えるのは戦争が終わってからでいい。今は生き残り、明日を迎えるにはどうすればいいのかを考えるんだ」
アレックスの言葉には、ずっしりとした重みがあった。
「少なくとも、俺はマユが正しいことをしたと思う」
「ありがとうございます、隊長」
その時、艦内に警報が鳴る。
マスドライバーに固定されたミネルバに、地球軍残党が襲いかかってきたのだ。
232 :
しのはら:2005/09/14(水) 08:45:21 ID:???
投下終了です
凸がスネークみたいになってますスマソ
ではノシ
朝から乙
何このカッコイイ凸…いやアレックスかw
アニメと違って、しのはら版はネオが依然敵として健在だから、どうなるか楽しみだ
やっぱ「アレックス」の名と「アスラン」の名は上手く使い分けて欲しいもんな、乙
しのはらの見てふと思った。
本編には生き残って明日を迎えるっていう感が無いんだよな。
30機に包囲されても「数ばかりごちゃごちゃと」で済むし、
エクステンデットも第一話からどんどん弱体化。
最後は何の苦も無く破壊ごと一刀両断。
機体が損傷しても、相手が不殺だったりするからピンチ感0。
本人達は敵も味方も精神疲労すら0ですこぶる元気。
たまに悩み事抱えても、「俺間違った事してませんからね。」
「やっぱりこんなのは許せないよ。」であっさり解決。
そりゃ、盛り上がりもせんわ。
>>219-225 GJ!テンポ悪くなかったよ。
今後ストーリーにどんな味付けされるのかワクテカして待ってます
そういえばストライクMk2(だよね)の武装って
どこかに既出だっけ?
>>229-231 こういう前作からの成長が見たかった。
ローエングリンの前あたりか?出戻りをなじるシンを
質問返しで煙に巻くアスランに酷くがっかりした思い出
age
「ハイネ!!中の人がテレビにでてるわよ!!」
グレイシアが談話室に飛び込んできた。
「なにぃ?!中の人が?!」
ハイネは飲んでいた紅茶の缶を握りつぶす。
「ゼロ!!ハッキング開始!!艦内のありとあらゆるモニターで中の人を
映すんだ!!」
「了解。」
パソコンをすばやく取り出すゼロ。
そして目にも留まらぬ速さで艦内ネットに侵入する。
「アキラ!!現在の中の人は?!」
「あー、残念、あるある探検隊ネタは終わっちゃいました。」
携帯テレビで現状報告する。
「ちっ!!せめてヴェステージだけでも・・・・。」
「何やってるかーーー!!」
なんとネット侵入に気づいたアーサーがハイネに鉄拳を喰らわせた。
すごいぞアーサー!!!戦闘以外では結構やるんだね!!
でも、軍人さんとしては二流だね!!
頭から煙を出して倒れるハイネ。
「あかん!西川くんが気絶してもーた!!」
「そう言うオチかいっ!!」
しのはら版に神楽っていたじゃん
結構好きだったのにもう出ないのかなorz
>>239 諸刃の剣だが、ほのぼのはこういう
「わかる人にしかわからない」ネタがあるのがいいw
一体ここの何%があれ見たんだとwww
前スレって中途半端なとこでdat落ちしたのか?
age
ファントムペイン書いてるものです。
第8話投下なんですが、その前に……
>>30ご指摘どおり、修正点が……
リーの喋ったところは
×→カーペンタリア ○→カリフォルニア
で続けさせていただきます。
>>32 話自体はオリジナル展開です。
大まかな戦闘の流れ(インド洋、ダーダネルス、ベルリン、オーブなど)は同じですが。
AA組み大暴れは避けますです。
246 :
1/9:2005/09/15(木) 22:15:20 ID:???
ユニウスセブン落下の数日後―暗室の中、ロード・ジブリールは佇んでいた。
眼前には大型モニターが設置してあり、更にそのモニターの中にいくつもの画面が映し出される。
衛星中継による各地の世情が、その複数の画面に映し出されていた。
『酷いものだな』
『パルテノン神殿が吹っ飛んでしまったわ』
モニターが切り替わり、二人の老人の声が聞こえる。
この場所ではない―おそらくはジブリールと同じような部屋をその老人達も持っているのだろう。
やがてモニターの全てが切り替わり、各画面に人の顔が映し出された。
今から始まるのは、軍需産業複合体ロゴスの会議―
「これでわかったでしょう?奴等コーディネーターの本性というものが」
全ての画面に、ロゴスの主要メンバーの顔が揃ったことを確認し、ジブリールは声を発した。
これから始まるのは、表向きは商人同士の会合―だが、その商人とは死の商人たち―
彼らは厳然たる力を地球各国の政治に及ぼしており、彼らの意向は政治家をも動かす。
ロゴスが、政治家の選挙資金を始めとした金銭を賄い、その他国策にも強い影響力を持っているからだ。
世界の行く末を占う会合が、これから始まろうとしていた。
「所詮ユニウス条約など形骸に過ぎなかった……それを奴等は示したのです。
既に各国のブルーコスモス派の政治家連中は、開戦の方針を固めております。
後は皆様のご意向次第……」
ジブリールは、あくまでロゴス次第との姿勢を見せたが、ブルーコスモスもまた政界に影響力を持つ。
ロゴスの傘下に入ってるブルーコスモスだが、実際各国の趨勢は開戦に向けて動き出していた。
如何にロゴスといえども、その趨勢を覆すことは困難であるし、またそのようなことは決してしない。
彼らは軍需産業複合体であることから、戦争については概ね寛容な姿勢を見せるものであった。
『各国の被害情報が今も手元の入ってくるが、被災者は増えるばかり……
最終的にどのくらいの被害があるのか……想像もつかんわ』
『1000万単位の被災者は、覚悟せねばなりますまい。人々の心は……やはり復讐心に駆り立てられよう』
『戦争は避けられませんな』
"やむを得ない"という発言はするものの、彼らロゴスメンバーの頭の中は既に別のことで埋まっていた。
戦争でもたらされる利益とそれを生むための投資の額……目まぐるしい程の損得勘定が為されていた。
それらを見透かしたようにジブリールは言葉を紡ぐ。
「では、この度のユニウスセブン落下事件によるロゴスの意向は……
開戦しても構わない、という方針で宜しいですな?」
247 :
2/9:2005/09/15(木) 22:16:13 ID:???
『待ちたまえ、ジブリール』
だが、ジブリールが会合を取りまとめようと発言した直後、意外なことにそれを制する者がいた。
ジブリールを含め、他のロゴスメンバーは一斉にその声の主を画像で追い求めた。
老人―というにはまだ若い男、金髪に若干の白いものが混じった髪……
一見して名士とわかる服装と、その眼光に些かの鋭さを湛えながら……
ジブリールはその声の主のことは以前から知っていたし、ロゴスメンバーもまた十二分に知る顔だった。
彼に言葉の続けるよう、丁重にではあるがジブリールは促す。
「……これは……アズラエル様。ご不興な点でもございましたかな?」
ブルーノ・アズラエル―
前ブルーコスモス盟主ムルタ・アズラエルの実父にして、軍需企業コングロマリッド社会長。
アズラエル財閥総裁にして、現大西洋連邦国防産業理事としてロゴスに厳然たる影響力を持つ人物。
末席の人間の発言ならまだしも、ロゴスの中心に位置する彼の発言に、全員が傾聴しようとする。
『君は……戦争が始まるとして、どこに落としどころをもっていくつもりかね?』
アズラエルの発言は、この会合の本旨からは若干外れていた。
実際のところ、ロゴスは政治に介入する力を持っていたものの、政治について彼らは門外漢である。
政治や戦争の本題は、政治家や軍人といった人種に任せ、必要とあればその強権を発動する―
それがロゴスという組織であったが、彼は組織の大綱を知りながら敢えてその質問をした。
ジブリールはアズラエルの意図は理解していた。政界、財界、軍に強い支持基盤を持つブルーコスモス。
ロゴスは言わば財界の盟主ではあるが、政界と軍はブルーコスモスの意向が強く反映される。
地球側の戦争の趨勢を担うブルーコスモスの意向が、即ち地球の方針ともなる。
『ジブリール、君はブルーコスモス盟主になったとき、コーディネーターの殲滅を唱えた。
だが、この戦争で彼らを本当に攻め滅ぼすつもりなのかね?それとも……
それが叶わぬ場合、どこに落としどころを持っていくつもりなのか、聞かせてもらいたい』
ジブリールは逡巡した。
この点、ブルーコスモスの中でも意見が分かれていたのだ。
旧来からコーディネーターに対する意見は、殲滅を唱える強硬派と融和を唱える穏健派に二分された。
後者は、融和を唱える穏健派と言えば聞こえはいいが、要は殲滅に賛同しない者たちの総称である。
中には先の対戦前の状態、即ちプラントを植民地化し、連合各国の利潤の糧としようとする者もいた。
逆に、ナチュラルとコーディネーターとの不和を憂い、相互理解を図った上での同化を唱える者もいた。
そんな穏健派でも、ユニウスセブン落下事件については、開戦止む無しという意見が多数を占めた。
ただし、開戦の是非と終戦のための落としどころは、その二派閥の主張は、やはり異なるものであった。
殲滅を唱える者と、プラントを再び植民地、あるいは連合の保護国にしようとする者とに分かれていた。
今だジブリールでさえも組織の統一見解を纏め上げることに苦心していた。
248 :
3/9:2005/09/15(木) 22:17:46 ID:???
「あくまで……現時点での話ではありますが」
ジブリールは慎重に言葉を選びながら、二派の見解の相違を、アズラエル他ロゴスメンバーに説明した。
ただし、あくまで統一見解が纏まっていないだけで、それは大した問題ではない、とも付け加えた。
「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる……そういうものです」
そう前置きした上で、ジブリールは自らの見解を示した。要約すればこうである。
地球連合各国の主だった政治家には開戦の意思はあるものの、目下のところは被災者の救援に忙しい。
だが、それが終われば、被災した者達、またその同胞達は自分達の置かれた現状を考えるに違いない。
なぜこうも理不尽な事件に巻き込まれねばならないのかと―ユニウスセブンは何故落ちたのかと―
即ちその想いの矛先は、やがて憎悪を伴ってコーディネーターへと向けられるであろう。
その憎悪で、殲滅にしろ、あるいはそれが叶わぬとも、プラントの現状勢力の維持はさせまい。
ロゴスは、開戦後の状況によって手立てを考えれば済むことであると。
それを聞いたロゴスのメンバーは賛同の声を上げる。
『確かに、あの砂時計を作るのに、我々ロゴスの中にも出資した者が大勢いる』
『忌々しくも先の大戦で独立など許したが……できるなら出資した元は取りたいですな』
『殲滅ともなれば連中も必死になるだろう。上手い落としどころが見つかると良いが……』
この点、ジブリールが慎重に、言葉を選びながら説明した甲斐が現れていた。
性急なプラント本国の殲滅は、それらに出資したロゴスの利を帳消しにするものである。
彼らロゴスは、ブルーコスモスのような思想集団とは違い、利にさとい軍需産業に携わる者達である。
ロゴスにとって重要なのは思想よりも利潤―彼らが開戦に賛同しやすいよう話を仕向けたのだ。
開戦し、なおもブルーコスモスの強硬派が殲滅を唱えても、ロゴスがそれを阻止すればよいだけの話、と。
しかし、そんなジブリールとロゴスのメンバーをよそに、なおもアズラエルは疑問を口にした。
『強硬派の代表者である君が……意外な話だな。
例えば……連合の月基地には、前々から対プラント用の核ミサイルが多数用意されていると聞く。
君なら開戦と同時にそれを放とうとする……私はそう考えていたのだがね?』
再びブルーノ・アズラエルが口を開いた。
確かにジブリールの話は、ロゴスにとって都合のよい話ではあったが、反面矛盾するものだった。
ブルーコスモスの盟主で、強硬派の筆頭でもあるジブリールの平素の言動からすれば、意外であろう。
強硬派の対コーディネーターの施策として、最も単純かつ明快なのはアズラエルの主張した方法である。
即ち、開戦と同時にプラント本国への核の一斉攻撃―これではプラントは国力を維持できる筈もない。
核攻撃さえ成功すれば、早晩政権もザフトも崩壊することは疑いなかった。
普段の行動とは矛盾するジブリールの物言い―だからアズラエルは疑問を口にしたのだ。
今度もジブリールが答えるまでに若干の間があった。
しかし、その沈黙は逡巡ではなく黙考であった。再び言葉を選びながら、彼は説明を始めた。
249 :
4/9:2005/09/15(木) 22:19:10 ID:???
「アズラエル様、貴方はユニウスセブンの落下の件、如何様にお考えで?」
始めは疑問文で切り出したジブリールだが、それは相手の答えを聞くための発言ではなかった。
すぐにジブリールは言葉を続けた。確かにアズラエルの言う方法も、殲滅の手段としては有効である。
だが、その後はどうするのかという問題が残る。即ち、撃ちもらしたコーディネーター達のことである。
地球におけるザフト軍の拠点は、ジブラルタル、カーペンタリア、アフリカの3箇所に存在する。
仮に核攻撃でプラント本国を攻め落としても、ザフトの残存勢力はある程度残ることになる。
地球では核を撃つこともできず、また彼らの頑強な抵抗にあうことは必定である。
更に彼らはユニウスセブンの首謀者どもと同じように、復讐に走るだろう。
失うものがない人間の怖さは、先日そのテロリストどもが十二分に示したのだ。
「核を撃つことがあるとすれば……状況が殲滅以外考えられなくなったとき……
かつ、それは地球上に点在するザフトの主力を宇宙に追いやった後の話になりましょう」
既にファントムペインからもたらされた情報は、ロゴスのメンバーの手元にも届いている。
ゲンが撮影したユニウスセブンの状況を納めた映像と、指揮官ネオ・ロアノーク大佐の報告書を添えて。
また、同じ情報が地球連合の主だった国々の政治家たちにも渡されていた。
それらの情報を考慮に入れた上でのジブリールの判断であった。
そしてジブリールは会合の総括に入った。
「では、ロゴスの皆様の統一見解は、開戦止む無し……ということで宜しいですな」
誰も口を挟むものは無く、その後会合は閉幕した。
次々とメンバーが回線を閉じモニターを後にする中、最後までブルーノ・アズラエルだけが残った。
やがてアズラエルは徐に口を開いた。
『ジブリール、君は盟主就任の際、あくまでも"殲滅"に己の命をかけると言ったな?
私はその言葉を信じて、君を息子の後の盟主に推薦し……君は盟主になった。
恩を着せるわけではないが、あの言葉に偽りはないだろうな?』
「ご冗談を。ロゴスの老人どもの手前、あのような言葉で締めざるを得なかったのですよ。
連中は利にさとい。利益になると分かれば、相手がコーディネーターでも取引する連中だ。
そんな連中に、ブルーコスモスの理想など説いたところで……時間の無駄しょう?」
『……ならいい。だが、既にデュランダルは甘い言葉を吐きながら被災国に擦り寄っている。
開戦しても事態が好転せぬ場合、君の処遇を含め検討することになるが……良いな?』
アズラエルの言葉は真実であった。デュランダルは、事態を沈静化させるべく直ぐに手を打った。
被災国にいち早く救援物資や救護要員を派遣し、被災国に協力的に振舞った。
だが、それも既にジブリールの知るところであった。笑みを湛えてジブリールは答える。
「ご安心を、アズラエル様。私の本意は、あくまでもコーディネーターの"殲滅"です。
……なぁに、勝って見せますよ。その上で我々の理想社会を創ろうじゃありませんか?」
250 :
5/9:2005/09/15(木) 22:20:16 ID:???
ユニウスセブン落下から一週間が過ぎた。
太平洋に降り立ったガーティー・ルーは、潜行後、身を潜めつつ連合勢力圏内を目指した。
目的地は、地球における大西洋連邦の最重要拠点の一つ、カリフォルニアベース―
太平洋防衛の最大の拠点となるこの地は、古くからこの国の防波堤を担っていた。
約五日ほどの航海の後、ガーティ・ルーは彼の地に着いた。
基地に着いたガーティ・ルーのクルーを、カリフォルニアベースの基地司令自らが出迎えた。
この基地司令、ブルーコスモスの強硬派であり、またファントムペイン創設にも携わったらしい。
言動に派手さはなかったが、我がことのように彼らファントムペインの作戦行動を褒め称えた。
また自らガーティ・ルーに乗り込み、強奪した3機のGと作戦に携わったストライクMk-Uを確認した。
そして、指揮官ネオ・ロアノーク大佐とガッチリ握手し、こう言った。
「……よく困難な任務を遂行し、無事帰りついた。……君達は国の英雄だ」
正規軍のエリートともなれば、得てしてファントムペインのような特殊部隊を嫌うものである。
本来の正攻法ではなく、あくまで非公式に作戦行動をする―失敗したら後が無い者達。
時には汚れ仕事も引き受ける彼ら―ましてやエクステンデッドという得体の知れない者達を連れている。
軍の一部の者しかファントムペインを知らないとはいえ、あまり好まれないのが彼らであった。
だが、この基地司令は違い、ファントムペインがこなした数々の任務を知り、正当な評価を下していた。
「この奪った3機のGの性能を解き明かせば……ザフトの最新鋭の技術を手に入れることができる。
この3機は、おそらく現時点でプラントの最高水準の技術が導入されているはずだ。
君たちは……たった一隻で、敵艦隊を沈める以上の働きをしてくれた。感に堪えない」
更に、強奪に携わったアウル、スティング、ステラを引き会わせるよう求めた。
エクステンデッドについても基地司令は知っていたが、実際の彼らの若さ、というより幼さに瞠目した。
軍隊であるから多少の非道外道は承知の上のこととはいえ、自軍の行いにこのときばかりは心を痛めた。
しかし、それも一瞬のこと―すぐにガーティ・ルーの修理を始めることを告げ、己の任務を始めていた。
そんな基地司令だが、帰り際、もう一機のMSストライクMk-Uに目が留まった。
ふとパイロットの所在が気になり、ネオに問いただした。すると、ネオは逡巡の後こう告げた。
Mk-Uのパイロット、ゲン・アクサニス中尉は命令に違反したため、一週間営倉入りであると。
基地司令は仔細を問いただした。ゲンはユニウスセブン破砕のため、一人ユニウスに残った。
が、その行為は命令違反であり、そのためガーティ・ルーは地球に降下する羽目になった。
最後までユニウスを砕いた功績は兎も角、勝手な行動で艦を危険に晒した罪は罪―故の営倉入りだ。
「彼こそ……国の誇りだ」
記録の上では、ゲンはこのカリフォルニアベース出身の新型エクステンデッドということになっている。
基地司令のゲンへの一言は最上級の褒め言葉であったが、彼はオーブで拾われたコーディネーター。
何よりも彼が忌み嫌うコーディネーターであり、記録の上では存在しない筈のソキウスであるのだが……
彼が真実を知れば、どのような言葉を残したであろうか。
二日後、処分の解けたゲンは、何も知らず、また何の報奨もなく軍務に戻った。
251 :
6/9:2005/09/15(木) 22:21:30 ID:???
ゲンは処分の解けた日から軍務に復帰した。
彼は愛機ストライクMk-Uを伴い、基地のMS演習エリアに呼び出された。
ファントムペインに課された指令は二つ、一つはガーティ・ルーの完全修理、そしてもう一つは……
「任務に戻って……いきなりコレかよ!」
『泣き言を言うなよ、ゲン!任務だ任務!』
「だからってスティング……二対一はないだろう!」
『ゲン……うるさい……』
漆黒の機体、ストライクMk-Uが宙に舞う―そしてそれを緑色の機体―カオスが飛翔し追撃する。
地上からは、ストライクとはもう一機の黒い機体―ガイアが名前の通り大地を蹴りMk-Uに迫っていた。
艦のクルーとは別にパイロットに課された任務、それは強奪した3機のGの重力下でのテストであった。
水中用のアビスは、別に水中用MSとのテストが行なわれていたが、その他2機は同時にテストをされた。
その相手は営巣から解き放たれたゲンであった。営倉の暗い部屋からやっと抜け出したものの……
「これじゃあ……営倉のほうがいくらかマシだぜ!」
悲鳴に近い声を上げながらゲンはMk-Uを駆った。
嘆きの理由は目の前のカオスとガイアであった。本来宇宙戦用のカオスは、重力下でも遜色なく動く。
地上戦用のガイアは、Mk-Uが機動力重視のエール・ストライカー装備にも関わらずゲンを追い詰める。
正面から2機を相手にするのは得策ではない。さし当たってガイアを振り切ろうとしたものの……
「犬に変形するなんて……聞いてないぞ!くそおっ!」
MA形態のガイアは変形時、バクゥのような四肢を地に付けるフォームをとる。
地上戦を想定すれば、もっとも機動力の増す形態であるだけに、Mk-Uを以ってしても振り切れなかった。
逃げ回るだけじゃ埒が明かない―明らかに劣勢ではあったが、ゲンは逆転への策を練っていた。
そんなゲンを見て、スティングは挑発を試みる―これは彼の作戦ではあったのだが……
『隊長さんよ!逃げてるだけじゃ埒が明かないぜ?
月で最初に戦ったときは……確か俺達3人をまとめてやっつけたが……ありゃあ、マグレか?』
「……!」
『悪いが俺たちだってあの頃のままじゃない。
それに……どうやら俺たちも、Mk-Uと同等の性能の機体を手に入れたらしい。
いつまでのアンタの後を追っかけてるだけじゃ……ないんだぜ!』
「……チッ……そうかよ!」
丁度ゲンも案が閃いた―ガイアを振り切れないのなら、最初にカオスを撃つしかない。
しかし動きを止めれば、当然地上からガイアが援護射撃をしてくるだろう―動きを止めずにカオスを倒す―
意を決したゲンは機体の推進力を最大限に利用し、重力に逆らう―グングン漆黒の機体は上昇して行く。
それを見たスティングも意を決し追撃する―宇宙ではなく、ここは地球―空に逃げ場など無いのだから。
"追い詰めれば必ず倒せる"―そう追撃者は読んでいた。
252 :
7/9:2005/09/15(木) 22:22:51 ID:???
スティング・オークレーは何とも形容し難い高揚感に包まれていた。
理由は、自らが強奪し与えられた機体、カオスの持つ性能への期待感。
機動力テストのため、十八番のドラグーンシステムによる遠隔攻撃は禁じられ、アドバンテージはない。
が、その最大の利点を失っても、現にステラの乗るガイアと共に隊長機を追い詰めている。
これが実戦であればどうだろうか?仮に宇宙戦闘であれば、逃げるMk-Uをドラグーンで捉えられよう。
また、地球の重力下における空中戦でも、エール装備のMk-Uとの機動力の差はほとんど感じない。
"ドラグーンさえ使えれば隊長であるゲンを倒せる"―確信に近かった。一対一でも負ける気はしない。
「やれる……!」
ステラは地上に残ったまま……カオスとMk-Uは上昇を続ける。今の状況は一対一に限りなく近かった。
ここでドラグーンを使わずに倒せば、自らがファントムペイン最強と言えよう―そんな思いを抱いていた。
上昇を続けてもここは地球―いつかは上昇が止まるときが来る―"それがゲン、アンタが負けるときだ―"
やがてモニターがMk-Uの上昇が止まったことを告げた。限界高度の到来―スティングは勝ちを確信した。
だが、その直後、スティングの両目は驚愕に見開かれる。目の前のモニターが警告音を発していた。
MSの急速接近の警告がコクピットに鳴り響く。ゲンは上昇を止めると同時に機体を逆走させた。つまり……
「逆走だと!?冗談じゃねぇ!体当たりでもするつもりか!?」
彼は、ゲンを仕留めようと自機が構えていた模擬戦用のペイント弾装填のライフルを撃つことさえ忘れた。
ここは地球である。体当たりでもされてパイロットがコントロールを失えば、地面に叩きつけられかねない。
危機を察知し、盾を構え退避運動に入る―だが、予想していた衝撃は無く、盾に着弾があっただけ―
モニターを見ればそのままゲンは凄まじい勢いで降下して行く。"一体何をするつもりだ―?"
スティングは疑問を抱いたが、すぐにその答えは判明する―ターゲットを変えたのだ。狙いはガイア―
盾を構え降下しながら、ゲンはMk-Uの模擬用ライフルを放つ。
突然の襲来に驚いたステラも応戦しようと自らもライフルを構える。が、ゲンは一向に減速しない。
迫るゲンのMk-Uの機体とぶつかれば間違いなく無事では済まない―やむを得ず退避に入る。
その攻撃と防御の一瞬の隙を、ゲンは見逃さない―動きを止めたステラの機体に弾丸が着弾する。
ペイントが四散し、黒の機体が赤に染まった。この時点でステラは撃墜された扱いになる。
しかし、問題はこの後、ゲンは自機の動きを止めねばならない―体勢を立て直し、バー二アを吹かす。
重力下の地球である以上、ゲンを降下してきたGが貫く―
「グッ……!」
口から内臓が飛び出すのではないか―そう錯覚するほどの衝撃を体に覚える。
並みのパイロットであれば、この時点で意識を失っても不思議ではない。それほどの衝撃であった。
目がくらみ、予め口に含んでいたマウスピースから血の味がし、内蔵が悲鳴をあげる―
「……ッ!!くはっ……!!」
声にならない呻き声を上げたが、それでも何とか意識は保った。
すぐに機体のコントロールを取り戻し、頭上のスティングに備える。
253 :
8/9:2005/09/15(木) 22:24:16 ID:???
『よぉーし、そこまでだ。ご苦労だったな。ゲン、スティング、ステラ、全員戻って来い』
突如、指揮官ネオ・ロアノークからの通信が入る。2機の機体の性能把握は悉く終了したのだろう。
もともと模擬戦とはいえ、カオスとガイアの性能把握、データ収集が目的だったのだ。
本来ならばここまでやる必要はないのだが……それでも実戦さながらの模擬戦を展開した。
観戦していたカリフォルニア基地司令も、ファントムペインの訓練の凄まじさにため息を漏らした。
逐次モニターで様子を見ていたが、とりわけ彼の目を引いたのは、ストライクのパイロット、ゲンであった。
下手をすれば命を失いかねないような行動を平気で取る―ユニウスでも恐らくそうだったのか。
エクステンデッドの能力と、その向こう見ずな勇気に対し、彼は脱帽するしかなかった。
「ショックアブソーバが付いてるっていっても……やっぱりきついな」
機体を降りたゲンだが、まだ吐き気をもよおした後のような、苦々しい味が口の中に充満していた。
模擬戦の途中にスティングが言ったとおり、機体ごとの性能差はほとんど無きに等しかった。
月で実弾装備の訓練を行なったとき程ではないが、かなり追い詰められていたことは間違いない。
やがてカオスから降りたスティングが目の前にやってきた。
「まただ……仕留めたと思ったら、アンタは予想外のことをする。
何でだ?何であんな無茶をやろうとする?ユニウスの時だってそうだ。平気でアンタは命を投げ出す」
「……落ち着けよ、別に自殺願望なんてありゃしないさ。
俺はただ、月基地でモーガン・シュバリエ大尉に教わったことを実行してるだけだ」
捲し立てるスティングを宥めつつ、ゲンは質問に答える。
「一体何を教わったっていうんだ?」
「状況を利用しろ、相手の心を読め……それと命を粗末にするな、この3つさ」
「命知らずが……よく言うぜ。これで、負けるのは二度目か……クソッ!」
「別に、お前を撃墜したわけじゃない。撃墜したのはステラだ」
見ればステラもガイアから降りてきていた。すぐに二人のところにやってくる。
彼女は、撃墜されたせいか落ち込んでいたが、それを見たゲンが頭を軽くなでる。
まるで、気にするなと慰めている風だ。先ほどまで激戦を演じていた人間同士にはとても見えない。
"敵わねぇよ……"そう言い残し、その場を去る。
後からゲンとステラが声を掛けるが、既に彼の頭は別のことで一杯だった。
「一時優位に立つのは何の意味もない……どうやって最後に勝つかを考えないと……
状況を利用しろ、相手の心を読め……か。命を粗末に…って最後の言葉だけは信じられねぇがな」
呟きながらスティングは、自分なりにこの経験を先に生かそうと努めていた。
間もなく開戦するらしい―すでにそんな噂がカリフォルニアベースを駆け巡っていた。
254 :
9/9:2005/09/15(木) 22:25:35 ID:???
模擬戦の翌日、地球連合各国は新たな同盟条約を締結した。
また、同時にプラントに対しユニウスセブン落下事件への保障と賠償、その他政治的要求がなされた。
事件で蒙った被害の賠償、犯人の引渡し、現政府の解体、連合監視団の派遣、ザフト軍解体等等……
とてもプラント政府が飲めるはずの無い要求であった。
賠償要求には応じるが、犯人グループは死亡、その他の要求には応じられない―
プラント政府からはそのような回答がなされた。回答への再回答はなされなかった。
その後、地球連合を代表し、大西洋連邦大統領ジョセフ・コープマンにより宣戦が布告された。
ガーティ・ルーは開戦前に既に月に到着していた。
だが、その中にファントムペインのパイロット達の姿はない。彼らは今だカリフォルニアベースにいた。
イアン・リー少佐以下には月軌道艦隊の支援命令が、ネオ・ロアノーク大佐以下には別命が下された。
即ち、旗艦セント・ジョーンズに乗り込み、地球で対ザフト軍への作戦行動を展開することであった。
朗々とネオがそのことを伝えるが、彼の目の前にはゲン、アウル、スティング、ステラの4名しかいない。
あとは、エクステンデッド用の研究員らがガーティ・ルーを降り、行動を共にすることになっていたが……
「まぁ、俺を入れて5人だが……これからもヨロシクな!」
例によって軽めの訓示が行なわれた。5人は互いに笑みを浮かべる―
そして、ネオにより最初の任務が下されたが、それは4人のパイロット達を大いに驚かせるものだった。
目的地はオーブ、作戦行動は要人の確保……もとい……
「大佐、これ、一体どういうことです?ファントムペインはいつから人攫いになったんだ?」
「そう文句を言うなよ。盟主の大切なゲストなんだから……」
また例によってゲンにのみ極秘任務が与えられた。
だが、今度はアウル、スティング、ステラは羨ましがりはしない。
アウルは苦笑いしながら、スティングは哀れみのような視線を送り、ステラは訝しげな表情をしている。
「……有名人でしょ?サイン貰っといてよ」
「今回ばかりは……ババを引いたな、ゲン。ご愁傷様」
「ゲン……誘拐するんだ」
仲間からの同情を受け、ゲンは恨みがましい視線―といってもバイザー越しにだが―をネオに向ける。
「やりますよ。しかし、彼女は……本物なんですか?」
「らしいよ。まぁ、俺の知ったことじゃない。兎に角、連れて来いって言われたんだ。やるしかないだろ?」
投げやりな上司の言葉から、この任務へのやる気の無さが感じられる。
だが命令である以上、やらざるを得ない。ゲンも投げやりに愚痴を言う。
「ったく、何で俺が……ラクス・クラインを攫わなきゃならないんだよ」
トンでもねぇ展開キタコレ
アズラエルパパもジブリもいい感じに黒いし戦闘描写は相変わらず上手い。
これをGJといわずして何を褒めればいいんだ?
ところでカオスのはドラグーンじゃなくて機動兵装ポッドだったような
>>ファントムペイン戦記作者様
投入お疲れ様です。
>リーの喋ったところは
>×→カーペンタリア ○→カリフォルニア
>で続けさせていただきます。
この部分は、数日以内に修正します。
オリジナル展開期待しております。
相変わらずGJだ!
どのキャラもいいが、今回はやはりジブリがMVPだな
盟主にふさわしい権謀術数の持ち主にしあがってて良い
ファントムペイン戦記、相変わらずすげぇ! GJ!
政治劇と戦闘、両方こなすんだもんなぁ。
こんなに迫力ある模擬戦、見たことない。今後にも期待!
>>254 おおー燃える!そう来るか!
次回が楽しみですわ
ゲンとスティングのライバル(?)関係が好きだ
アウルはまだ目立った見せ場がないが、それは先の楽しみに
ファントムペイン、すごいですねぇ。個人的に大好きです。
他職人の皆様も、GJです。
少し、予定よりも早いですが……隻腕マユ、第三話行きます。
262 :
1/14:2005/09/16(金) 00:10:58 ID:???
コズミック・イラ70年……。
地球連合軍によるユニウスセブンへの核攻撃、『血のバレンタイン』の悲劇。
この事件を契機に、地球連合軍とザフト軍は全面戦争に突入した。
長引く戦争は両軍の過激化を招き、やがて世界を二分していく。
長らく中立を保ち、また中立を標榜してきたオーブ。
しかしその『中立』という態度こそが、焦る連合軍にとっては許しがたいものとなり――
CE71年6月15日、ついに、連合軍によるオーブ侵攻が開始された。
――沖合いに居並ぶ戦艦。襲い来るストライクダガー。迎撃するM1アストレイ。
閃光と爆音が飛び交い、あちらこちらに火の手が挙がる。
オノゴロ島は、揺れていた。
そんな激しい混乱の中で。
山の中、港に向け避難する家族の姿があった。
先導する兄。幼い娘の手を引く母親。後ろを気にする父親。
眼下の港では、避難用の船に、一般市民が列を成して乗り込み始めている。
さらに急ぐ一家。
と、栗色の髪の少女のポーチから、ピンク色の携帯電話が転がり落ちる。
「あー! マユの携帯!」
「そんなのいいから!」
「いやー!」
崖下に手を伸ばす少女。引き止める母親。足を止める父親に、引き返してくる兄。
――と、少女は、何かの気配を感じ、ふと顔を挙げた。
こちらに駆けてくる兄の向こう。落下するように近づく一機のMS。
それは、一家の頭上で羽根を広げて、急停止。
鋭角に進路を変えて飛び去った、その瞬間――
閃光が。巨大な砲を背負った重MSの殺意が。衝撃が。
翼持つMSのいた場所に、そしてその先にいた一家の方に、飛んできて――
263 :
2/14:2005/09/16(金) 00:11:49 ID:???
「……それで? 君のご家族は?」
「両親は……バラバラで。お兄ちゃんは……クレーターだけ残して、跡形もなくて。
遠くに……あたしの腕が、転がってて……」
日の暮れたオノゴロ島の、軍施設の一室。
警察の取調室にも似た、殺風景な部屋の中で。マユは促されるままに己の過去を語っていた。
マユと向き合い、目の前で話を聞いているのは、白髪交じりの髪もダンディな優しい老紳士。
軍服をきっちり着こなし数多くの勲章をつけてはいたが、高圧的な雰囲気は全く感じられない。
慈愛に満ちた微笑みに励まされ、マユはさらに言葉を続ける。
少し離れた机では、無口な兵士が黙々と会話を記録している。
「……結局、あたしは乗るはずだった避難船に、乗り損ねました。
発見されたのは、1日目の戦闘が終わった後で……」
「ふむ……」
「……後から聞いた話ですが、命が助かったのも奇跡、みたいな怪我だったそうです。
半分生き埋めになってたのが、かえって良かった、って。
手を押しつぶした岩が、逆に出血を押さえてくれた、って。
でも、手術まで時間が経ちすぎたから、千切れた手は諦めるしかなかった、って……」
辛い思い出がありありと蘇り、マユは俯いて震えだす。
尋問役を勤めるオーブ軍人・トダカは、小さな肩をポンポンと叩き、慰める。
蛍光灯の照明の下、白手袋を外された右手――金属の輝き持つ精巧な義手の上に、涙が落ちる――
マユ ――隻腕の少女――
第三話 『辿りし道』
264 :
3/14:2005/09/16(金) 00:12:41 ID:???
「どういうことだ、ユウナ・ロマ・セイラン! フリーダムを束縛したとは――」
「キミにどうこう言われる筋合いはないよ、キサカ。ボクは自分の仕事を果たしただけだ」
「しかし、カガリが不在の今、こんな――!」
「それより、ちょうど良かった。後ほど正式な命令は回しておくけどさ――
レドニル・キサカ一佐。キミに大至急取り掛かって欲しいことがある」
「大至急――だと?」
「キミが艦長やってるあの艦(ふね)、クサナギね。いつでも出れるようにしておいて」
「……クサナギを? 一体何のために?」
「それはボクにも分からない。今は見当もつかないが――きっと、遠からず必要になるハズさ。
だから頼むよ、すぐにでも宇宙(そら)に上がれる準備だけは、しておいてくれたまえ――」
――オーブを脱出するクサナギの映像――それを少女が見たのは、病院のベッドの上だった。
回収され、緊急手術を受け、目が覚めて――病室のテレビで、流されていた実況。
なおも続く戦闘をよそに、煙の尾を引いて宇宙(そら)に上がっていく一本の剣。
自分たちを見捨てて、逃げる兵。捕まって飛んでいく、フリーダムとジャスティス。
ベッドの上に起き上がり、TVに視線を向けた、そのままの姿勢で。
左手が、右肩から順に腕をなぞり――包帯を越えて、途中で止まる。
それ以上、なぞりようがない。右腕が、途中から、ない。
改めて厳しい現実に直面した少女の顔には――しかし、動揺はない。
驚きもない。哀しみもない。怒りもない。悲嘆もない。笑いもない。喜びもない。
なんにも、ない。
感情全てが鈍磨しきった様子で、ボーッとTVの映像を眺めている――
「マユ・アスカ、先の大戦で両親を失った戦災孤児、ね――。
痛々しい話だけどさ。どっかの施設で引き取れなかったの? そういう子って?」
「記録の上では――国立病院を退院後、孤児院に収容されています。
ただ、どうやら本人が脱走してしまったようですね」
「ふーん。ボクたちが頑張っても、そーゆー子が出ちゃうのは仕方ないのかねェ。
ボクらだってそれなりに、福祉政策とか施設の建設とか、養子縁組の斡旋とかやってるのに」
「ユウナ様が責任を感じられる必要はありませんよ。恐らく彼女の方に問題があったのでしょう。
なにしろ彼女を受け入れたというマルキオ導師の孤児院。悪い評判は聞きませんから――」
265 :
4/14:2005/09/16(金) 00:13:26 ID:???
――オノゴロ島の戦闘から、1ヶ月後。
表情を失った少女は、盲目の導師の祈りの庭にいた。
周りの子供達がはしゃぎ、笑い、遊んで走り回る、そんな海辺の孤児院で。
一人その輪から離れた彼女は、ベランダの縁に腰掛け、黙って海を見つめている。
彼女の隣では、座る者もないロッキングチェアが、風が吹くたびキィキィと音を立てる。
死人のような無感動な顔で、ただ左手にピンクの携帯を握り締め、海を眺める隻腕の少女――
そんな彼女を、盲目の導師は離れたところから見守っていた。閉じられたままの目で。
顎に手を当て、何やら思案する。
……ある日の夕食の後、導師は少女を呼び寄せる。
相変わらず人形のように無表情な彼女に、導師は棒状の何かを差し出す。
それは――小さな義手。神経接続技術を応用した、精巧な最新技術の塊。
導師に呼ばれて出てきたジャンク屋らしき男が、カチャカチャと弄り、少女に合わせて微調整を施す。
やがて――新たな腕は、少女の右手の断端にしっかりと取り付けられ。
驚いて目を見開く少女の前で、手を開き、閉じ、肘を曲げ、伸ばし。
生身の腕と同じように動くソレに、取り囲む子供たちから歓声が上がる。
自分の意のままに動かせる、新しい右手。
ようやく、少女の表情が――口元だけが微かに緩み、小さな笑みを形作った。
「……緊急記者会見の準備、できてる?」
「もう既に。あとはユウナ様だけです」
「最新の被害報告、見せて。何人死んでる?」
「現時点では、軍人が14名、民間人が3名。まだ少し増えるかもしれません」
「案外少ないね。フリーダム様のお陰かね」
「あの、それですがユウナ様。あの機体については、どう発表なさるおつもりで?」
「オーブ軍ってトコだけ認めて、詳しい話聞かれたら軍事機密と言って逃げるさ。
フリーダムに関する緘口令、ちゃんと全軍に行き渡ってるよな?」
「ええ。しかし、少数ですが民間人にもパイロットを遠目に見た者がおります。
軍の中でも、その正体を詮索する声が絶えません。
市民に知られるのは、時間の問題かと」
「ナニ、ほんのちょっと時間稼ぎができりゃ、ソレでいいさ。
さて――それじゃ、精一杯カメラの前で、情けない涙を流してきますかね♪」
266 :
5/14:2005/09/16(金) 00:14:52 ID:???
――やがて戦争は佳境を迎える。
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦。それは、長き戦争の勝者を決める、最終決戦。
双方、禁断の大量殺戮兵器を持ち出し、互いの殲滅を図る。
プラントに襲い掛かる無数の核ミサイルを――フリーダムが、ジャスティスが、打ち落とす。
そんなTVの向こうの戦争に、孤児院の子供たちは歓声を上げ――
盲目の導師は、哀しげに首を振る。
そして、TVに群がる子供の輪から、少し離れたところで――
ドン!
突如テーブルに叩きつけられた鉄の拳に、TVに夢中だった子供たちも思わず振り返る。
そこには――思わず言葉を失うほど凄まじい形相で、義手の少女が拳を震わせていた。
ようやく笑いを取り戻したばかりの彼女が、初めて露にした怒りの表情。焦げつくほどの憎悪。
次々と核ミサイルを落としプラントを守るフリーダムを、焦点の合わぬ瞳で睨みつけ。
怖がる子供たちの視線など気にもとめず、口の中でブツブツと呪詛を呟き続ける。
「……れなかったのに……んでアイツらだけ……『フリーダム』……
……あたしたちは……マユたちのことは……守ってくれなかったのにッ……!」
「フリーダムと言えば、初の『ニュートロンジャマーキャンセラー』搭載核動力MS。
事実上、エネルギー補給を必要としない最強のMSとして有名だが……
国際法・国際条約の専門家であるキミに、少し尋ねたい」
「はぁ」
「あのフリーダム、さ。我々オーブが保持したとしたら……ユニウス条約的に、どうなる?」
「ユニウス条約の有名な条項の一つ、『NJCの軍事利用の禁止』ですな。
しかしこの条項、実は『穴だらけ』と指摘される、実に頼りないものでしてな……」
「どういうコトだい?」
「全ては条約締結の直前に、ジェネシスのプロトタイプがジャンク屋組合の手に落ちたことが原因。
その経緯については色々な噂を聞きますが……ともかく、この事件が条項を複雑にしました。
世界最大のゴミ処理業者にして技術者集団、ジャンク屋組合。プラントも連合も敵にしたくない相手。
結局――この条項の対象を、『連合軍・ザフト軍に限る』としてしまいました」
「それじゃ、ボクたちは?」
「そう、オーブ、スカンジナビア、コペルニクス……『中立』を掲げる国家・都市は、対象外です。
傭兵やジャンク屋も対象外。もっとも、どちらかの軍に肩入れすれば、たちまち対象とされますが……。
ともかく、各国の感情や世論は抜きにして、法律論に限って言えば何の問題もありません」
267 :
6/14:2005/09/16(金) 00:16:07 ID:???
――それは、戦争終結のニュースからしばらくして。
その若い男女は――孤児、と言うには大きすぎる二人は、宇宙(そら)から降りてきた。
穏やかな笑みを浮かべた、桃色の髪の娘。口数少なく、目の焦点も合わぬ疲れきった様子の青年。
桃色のハロが、その周囲を飛びまわる。
「ラクス・クラインと申します。みなさん、よろしくお願いしますわね」
「……………」
「そして、こちらがキラ・ヤマト。……ほら、キラ。ご挨拶して。
ご覧の通り、キラは少し疲れていらしゃいまして……
彼の心の傷が癒えるまで、わたくしたち2人、こちらでお世話になりたいと」
『テヤンデイ! 逆ダヨー! オマエモナー!』
「……あらあら? いけない、お世話をするのは、わたくしたちの方でしたわね?」
挨拶すらロクにできない青年、一人ボケる娘、突っ込むのはピンクのハロ。
多くの少年少女が笑顔で2人の英雄を迎える中――ただ1人。肩を震わせる少女が。
「なんで……なんでアンタたちがこんなとこに来るのよ!」
「え?」
それは――金属の義手をつけた少女。栗色の髪の少女。
キョトンとする娘に噛み付くように、少女は叫ぶ。三箇所で結わえられた長い髪が揺れ動く。
「何が『心の傷』よ、何が『こちらでお世話』よ!
どうして、あなたたちが、癒されなきゃならないのよッ!」
「あ、あの……え?」
「大声張り上げて! フリーダムで暴れて! そりゃアンタたちは満足かも知れないけどさァ!
『平和にしたのは自分たちだ、だから休ませろ』ってェ!? ふざけんじゃないわよ!!」
少女の剣幕に、圧倒される桃色の髪の娘。
それは、逆恨みにも、言いがかりにも近いものだったが、そこに込められた怒りと苛立ちは本物で――
「でもキラは、みなさんを守ろうとして……」
「『皆さん』って誰よ! 一体どこの誰を守ってるつもりだったの、あなたたちは!
そんなに守りたかったって言うなら……避けたりしないで、全部受け止めなさいよ!」
大声で怒鳴り散らすと、少女は2人に背を向け駆けていく。
まるで、「こんな連中と一秒でも一緒にいるのは耐えられない」とでも言わんばかりの態度で。
残された娘は、何かもの言いたげに少女の背に手を伸ばしかけ――うなだれる。
その隣の青年は、虚ろな瞳に、少しだけ力が、意志の光が湧き上がっていて――
「――そうだね。ぼくたちは、被害者じゃない。もう立派な、加害者でもあるんだ――」
小さな、誰にも届かぬ小さな独り言が、その唇から漏れ出て虚空に消える――
268 :
7/14:2005/09/16(金) 00:17:11 ID:???
「――首長代理! あのフリーダム、ロイヤルコードを使っていましたが……何者です?!
アスカ家の関係者ですか? ひょっとしてキラ様のような、知られざるカガリ様の妹君とか?」
「それについては、追って発表するよ。まだガマンしてくれたまえ。
それより、アマギ一尉。キミに頼んだ分析、どうなってる?」
「はっ、順調に進んでおります」
「宜しい。で――彼女の操縦。どう見るね、アマギ一尉?」
「才能はあります。しかし……天性のセンスと直感に頼りすぎです。基礎がなってない」
「それって、使えないってこと?」
「まあ――例えばこれが、わが軍のパイロット候補生の試験だったなら、落第です。
戦闘中に、通信機のスイッチを入れ忘れているなんてのは、もう論外ですし――
動きにも無駄が多く、武器の選択は不適切。キックなどに頼らず、ビームサーベルを抜いて貰わねば。
回避の技術も、見るに耐えません。PS装甲でなければ、おそらく5回ほど死んでいます」
「そうかなぁ。素人目には、強いように見えたけど」
「確かに強いです。ただそれはケンカに強い、というだけであって、戦争向きの技術ではありません」
「ああ――なるほどね。そのたとえは秀逸だ。ウォリアーであってソルジャーでない、か。
それで、どう? この子を鍛え直したとしたら――使えそう?」
「それは……おそらく。基礎を学び直して頂ければ、素晴らしいパイロットになるでしょう」
――マルキオ導師の孤児院を飛び出したマユは、一人、オノゴロ島を彷徨っていた。
何か目的があったわけではない。誰か頼れる相手がいたわけではない。
ただ、あそこにはもう居たくなかったし――
もう一度、自分が一体何を失ったのか、確かめたかったのだろうか。
――アスカ家の暮らしていた、小さいけれど美しい一軒屋。
モルゲンレーテのラボに近いから通勤がラクだ、と父が笑っていた家。
ガーデニングに凝った母のせいで、半ばジャングルみたいな印象のあった庭。
それらは――朽ち果てたストライクダガーの残骸に潰され、崩れ落ちていた。
――近所の公園の地下にあった、緊急避難用シェルター。
アスカ家のあるエリアの第一避難場所として指定され、安心を約束してくれるはずだった空間。
そこは――入り口が流れ弾で壊されて、アスカ一家が辿りついた時には入れなかった。
そのことはマユも既に知っていたが、今は瓦礫が一部撤去されている。
どうやら、中に閉じ込められた人たちは、救助してもらえたらしい。
ほんの少しの時間差で、分岐した運命――
269 :
8/14:2005/09/16(金) 00:18:05 ID:???
「――で、キミが代わりに乗ったとして……同じような動きができるかね、馬場一尉?」
「やれ、と命じられれば、それは出来るだけの努力は致しますが――
正直なところ、あの少女ほどに乗りこなせるかと言われれば、自信はありません」
「キミよりもあの子の方が腕がいい、と? オーブ軍の誇るエースの君が?
なんかアマギ一尉と言ってること違うなァ」
「いえ、パイロットの腕の差、と言うより――フリーダムという機体が、クセが強すぎるのです。
おそらくM1やムラサメ同士で腕を競えば、自分の方が上でありましょうが――
自分には、あれだけの火器を同時には扱えません。あれだけのパワーを御しきる自信がありません」
「ふーん、そういうモンなのかね。ボクみたいな素人には、強けりゃ強いほどイイように思えるけど。
つまり何かな、あの子とフリーダムは個性的な者同士、とっても相性がイイってわけか」
「そのようにご理解頂ければ」
――あの日、一家が走った、山の道。
第一避難場所のシェルターはもう入れず、近場の他のシェルターは満員で――
仕方なく、他の島へ出る避難船目指して走った、あの日。
道はやがて、立ち入り禁止の看板で遮られ――その向こうには、惨劇の現場。
既に血の跡も父母の遺体も残ってはいなかったが、ほとんどあの日のままに残されていた。
マユの腕を奪った巨大な岩塊、マユの腕を止血して彼女を救った巨大な岩塊も、そこに鎮座したままだ。
――あの日、マユが乗り損ねた避難船の停泊していた桟橋。
そこは既に日常を取り戻し、今や軍用船でなく商用の貨物船が何隻も停っていて。
忙しく働く男たちは、迷い込んだ小柄な少女のことなど、省みもしない――
――もう、行くべき場所もない。帰る場所もない。
日が暮れて薄闇に包まれるオノゴロ島で、彼女は目的もなく朽ち果てた街を彷徨っていた。
歩き疲れて、路地の片隅に座り込む。建物の壁に背を預け、虚空を仰ぐ。
生きる気力全てを失ったような彼女に――怪しげな、2人組の影が近づいて――
「しかし、あの子の右手。あれホントに機械なの? 何かまだ信じられないんだけど」
「私も驚きました。あれは現在の医療の最先端を行く代物です。
ジャンク屋ギルドの医療機器部門が発表したばかりのもので――たしか、腕一本で家一軒余裕で建ちます」
「へぇ〜。よく買えたもんだね、そんなモノ」
「恐らくマルキオ導師の力でしょうな。彼はジャンク屋にも太いパイプを持っていますから。
何でも、MSの手足の技術を応用したとかで――義手だけでなく、義足も商品化されてるとか」
270 :
8/14:2005/09/16(金) 00:19:17 ID:???
――戦争で荒廃したオノゴロの街の、人通りも絶えた裏通り。街灯もまばらな薄闇の中。
少女の悲鳴が、無人のビル街にこだまする。
「返してェッ! マユの右手、返してェッ!!」
「へ〜ぇ、こいつァ立派なモンだ。高く売れそうだぜ」
「あんま暴れんじゃねぇ! 煩いようなら刺しちまうからな」
「ひッ……!!」
義手を奪われ、必死に暴れていた栗色の髪の少女は、目の前に突き出されたナイフの輝きに身をすくめる。
見るからにガラの悪い、二人組。一人はナイフ片手にマユを羽交い絞めにし、一人は義手をもてあそぶ。
……敗戦と荒廃は、かつて「世界で最も安全な国」と呼ばれたオーブでも、治安の悪化を招いていた。
「こんな高価なモン、隠しもせずにブラブラしてるから悪いんだよ!」
「良く見りゃこの子、結構かわいくねぇか? 結構イイとこのお嬢ちゃんかも」
「あァ? 何お前、ロリコンだったの? こんくらいのが好み?」
「いや俺はもっと胸あった方がいいけどよォ。でもこの子も金になると思わねェ?」
ナイフを突きつけ、「再び」少女の腕を奪い、あまつさえ自分を売り飛ばす相談まで始める強盗2人。
拘束されたマユの目に、涙が浮かぶ。
孤児院を逃げ出した自分への後悔と、理不尽過ぎる世界への憎悪とがごちゃ混ぜになって。
治りかけた精神の傷に、再び亀裂が走る。心が、バラバラになる。
泣き笑いのような表情で、虚ろな瞳で、狂気の世界に、堕ちて行きそうに――
「……やれやれ、この国も堕ちたものだね。ちょっと散歩しただけで、こんな現場に出くわすとは。
こんな連中が野放しになってるようじゃぁ、一時の北アフリカ戦線にも劣るね」
「……その子を、離しなさい。そして奪ったものを返してくれるなら……見逃してあげるわ」
はッ! とマユの精神が、深淵の縁から戻ってくる。
強い意志の篭った2つの声。いつの間にか路地に入ってきた、2つの影。
コート姿の片目の男と……ツナギ姿の若い女性。
それが、マユ・アスカと、アンディ・バルディ、マリア・ベルネスとの出会いだった。
「マリア・ベルネス――モルゲンレーテ造船課B所属の技術者。
アンディ・バルディ――通販コーヒー店『タイガーコーヒー』経営。
……っと、言われてもねぇ。こりゃどう見てもさァ」
「あの屋敷に住んでいた2人の素性については、その資料の通りです。
どちらも2年前、戦争終結後にこの国に移住してきて、正規の市民権を得ております」
「そんなこと言ってもさ。この経歴、偽造なのは見え見えじゃん。その辺見抜けなかったの、移民局は?」
「いや、それが……この2名、審査の場において、ちょっと無視できない書類を提示しまして」
「何だよ、そりゃ?」
「実は……カガリ様の署名の入った、身元の証明書で――」
「……分かったよ。もう全部分かっちゃったよ、クソッ!
全くカガリはこういう工作下手なクセに、頑張っちゃって。露骨過ぎるよ。
だいたいさ、何なんだよ、この『アンディ・バルディ』ってふざけた名前は! 偽名になってないよ!」
271 :
10/14:2005/09/16(金) 00:20:10 ID:???
――雲が晴れて、路地に差し込む月明かりの下――その2人は、静かに近づいてくる。
自信に満ちた表情で。見知らぬ少女を助ける、という強い意志を目に込めて。
「な、なんだよお前らは! 関係ねェだろ! ひっこんでろ!」
「これが、あながち無関係でもないんだよねェ――
俺たちも、別に君たちみたいな連中に好き勝手やってもらうために、戦争してたんじゃないんだ」
「あたしたちはね。『そういう子』が胸張って生きていけるように、頑張ってたのよ。お分かり?」
乱入してきた2人の「正義の味方」が引かないのを見ると――強盗2人も、目の色が変わった。
彼らとて、腐った生き方ながら生活が掛かっている。この程度で引いていたら、強盗などやっていられない。
「刺されたいか、ゴルァ! 戦争帰りだか何だか知らねェが、残った目も抉られたいか!?」
「そいつァ困るねェ。まだ色々と見たいものは残っているんだが」
強盗の脅しもなんのその。男は小さなナイフなど気にも留めずに、大胆に間合いをつめていく。
強盗は一瞬ひるむ様子を見せたが、しかし覚悟を決めると、ナイフを容赦なく突き出して――
「い、痛ェ! な、何仕込んでやがるんだ、その腕に!」
「別に、な〜んにも。ただ腕を刺されるのも勘弁だねェ。これも1本しか残ってないんでさ。
ついでに、足の方もスペアがないんで、遠慮しておきたいところ、だ!」
男は、左拳であっさり刃物を受け止め、打ち払うと、重たい蹴りを強盗に放つ。
鳩尾に右足を叩き込まれた強盗は、ハンマーで殴られたような衝撃を受け、その場にうずくまる。
……片目の男の、左腕と右脚もまた、少女の義手と同じような金属光沢を放っていた。
「ちょ、調子に乗るんじゃねェぞ!」
裏返った声で叫ぶのは、残されたもう一人の強盗。
懐から出した大型拳銃を、義手義足の男に向ける。
「い、いくら鉄の手足だってよォ! こいつにはかなわな……」
強盗の震える声が、終らぬうちに。
軽やかな銃声が響き――拳銃が、手の中から吹き飛ぶ。
「そんなもの出されちゃったら――次からは、手加減できなくなっちゃうけど?」
撃たれた手を押さえうずくまる強盗に、もう1人の女が半ば楽しげに告げる。
女の手には、いつの間にか取り出された小型拳銃。
ほとんど狙いもつけずに撃ったのだろうに、恐ろしい命中精度だ。格が違う。
「さぁ――お嬢ちゃん、立てるかな。
頼むから、こんなことで世界に絶望したりしないでくれよ。
君たちのような子が、これからの未来を作っていくんだからな」
腰を抜かして逃げ出す強盗2人を横目に。
片目の男は、奪い返したマユの右腕を、座り込んだままのマユに差し出した――
272 :
11/14:2005/09/16(金) 00:21:10 ID:???
「しかしユウナ様、それは……前例にありません!」
「一言目には『前例にない』二言目には『前例ではこうだ』……
軍人は考え方がカタいねェ。何が問題なの?」
「まず年齢です。いくら何でも、若すぎます」
「それは――大丈夫。他には?」
「パイロットとしてお使いになるのなら、規定により尉官以上の階級を持たねばなりませんが……
士官学校に入れ教育を施すのに、最短でも2年ほどかかります。とても、今すぐというわけには」
「それも――大丈夫。他には?」
「何より……兵が納得しません! よほど特別な立場か、何らかの前例がなければ――」
「なんだ、そんなことか。それなら――大丈夫。立派な『前例』があるからね」
「……はぁ!?」
「オーブ兵なら、誰もが知ってる『前例』さ。大丈夫、誰にも文句は言わせないよ」
――それは、マユ・アスカの知らぬ、過去の一幕。
2人に助けられ、屋敷に連れてこられて、疲れ果てて眠った後にあったお話。
「……はい。分かりました。ではこちらで何とか……」
声を潜め、どこかと電話をしているアンディ。静かに部屋に入ってくるマリア。
彼女は椅子に腰掛け、アンディの電話が終るのを待つ。受話器が、静かに下ろされる。
「……あの子は、寝たのかね?」
「ええ。よっぽど不安だったのね、ずっとわたしの手を握ってて――やっと寝てくれたわ」
「仕方あるまい。あんな目に会ってはな」
アンディは椅子に腰掛け、溜息ひとつ。
すっかり冷めてしまったコーヒーに、口をつける。
「……あの子な。どうやら導師に預けるわけには、いかないようだ」
「どうして?」
「なんでも……他ならぬ導師の孤児院から、逃げ出しちまったんだと。
オノゴロの戦いで両親を失った孤児だそうで……『守ってくれなかった』キラ君を憎んでいるらしい。
ウチの歌姫と大喧嘩して、それっきり、だそうだよ」
「でも……じゃあ、どうすれば……。わたしたちだって、彼らと無縁ってわけじゃないし……」
「まあ、しばらく様子を見て、時機を計って話すしかないだろうな。
ここでバラしたりしたら、すぐにでも飛び出して、またクズ野郎どもの餌食になりそうだ――」
アンディ・バルディ――かつて『砂漠の虎』と呼ばれた男は、冷たいコーヒーをすすり、溜息をつく――
273 :
12/14:2005/09/16(金) 00:22:12 ID:???
「ああ、危ないですからヘルメットをお被り下さい。もう崩れないとは思いますが」
「いやはや、凄い設備だねェ。軍の基地も顔負けだ」
「まったくです。そこにあるのは最新のMSシミュレーター、わが軍にも納入されているものです。
あちらには、全自動式のシューティングレンジ。どんな射撃訓練にも対応できます。
こちらは、国防本部もかくやという情報処理端末で――どうやら軍のネットに繋がっているようです」
「で、トドメが一番奥の格納庫、か――いやはや全く。この屋敷の所有者はどうなってる?」
「今は書類上『アンディ・バルディ』となっていますが……記録を辿ると、アスハ家に行き着くようで」
「あーはいはい。やっぱりね。元からあった隠れ城、を改造したのかね――」
――それは、穏やかな日々。
笑い声の絶えない、岬の上の屋敷。
毎日バイクで仕事に出て行くマリア。一日中、電話とコーヒーと格闘しているアンディ。
掃除・洗濯を一手に担うことになったマユ。でもちょっと買い物だけは大変で。
坂道で転んで卵が割れて、卵抜きのカルボナーラに3人揃って眉をしかめたり。
――それは、自信を取り戻すための訓練。
マリアが教えてくれた、銃の扱い方。
アンディが教えてくれた、MSの扱い方。
コンピューターの扱い、サバイバルの心得。ナイフ格闘に素手格闘。機械弄りにコーヒーの淹れ方。
それらは全て、「一人でも生きていける」という自信を育ててくれて。
「……ねぇ、なんでこんなものがこの家にあるの?」
「まあ、俺たちも秘密が多いからねェ。下手に詮索すると、後戻りできなくなるぜ?」
――それは、自立への第一歩。
マリアの紹介で、勤めることになったビル建設現場。口うるさいマードック主任。
少女は社会を知り、モノを作る喜びを知り、額に汗して稼ぐことを知り。
作業用とはいえ、実物のMSを手足のように動かせる楽しさ。
右手の義手を隠す、白い手袋にもやがて慣れ。
日に日に、少女の顔に、笑顔が戻っていく。
274 :
13/14:2005/09/16(金) 00:22:58 ID:???
「……というわけで、ボクの考えたこの計画。父上はどうお思いになられます?」
「――まあ、女の子だからな。後々面倒なことになることもあるまい。
いずれ成長すれば、他の使い道も出てくるだろうし――」
「そいつァ良かった。では、そのように」
「待て、ユウナ。1つ確認したいが――あくまでこれは、セイラン家のためなんだろうな?
間違っても、あの子に同情したとか、そんなことは――」
「ボクがそんな慈善家に見えますかね? ま、可哀想だとは思いますが――ボクは冷静ですよ」
――それは、ある満月の夜。豪奢な屋敷の、立派なベランダ。
月を眺めてコーヒーを啜る男の後ろに、パジャマ姿の少女が静かに歩み寄る。
「……どうした、お嬢ちゃん。寝付けないのかい?」
「右手が……痛いの……」
「そうか。でも仕方ないな。鎮痛剤も効きにくいからなぁ、コイツは」
アンディの左手は、袖から下がなく。
マユの右袖は、中身を欠いて潰れて揺れる。2人とも、寝る時まではつけていない。
2人は並んで、月を眺める。欠けるところのない、真ん丸な満月。
それは悔しいくらいに、静かで、綺麗で。
「アンディも……痛むの? その――左腕。
マリアさんと戦争した時の怪我だ、って聞いたけど――」
「まあな。だからこうして、月を眺めてる。
痛みはするが、不思議なことに、憎しみとか怒りとかは湧かなくてね。
お互い、殺して殺されて殺しあったが、相手を憎んでたわけじゃないからな――」
「あの写真に写ってた、女の人も――?」
「ああ。俺を庇ってね。いい女だったよ。
それでも、マリュ……マリアを憎む気には、何故かなれない。
最も――アイツが帰ってくるというなら、残る手足をくれてやっても惜しくはないんだがな」
淡々とした言葉。マユに聞かせるというより、自分に言い聞かせるような、男の言葉。
憎しみと嘆きを乗り越えた、大人の言葉。
「この、幻肢痛(ファントムペイン)って奴はさ。
本当に痛みを感じているのは、手足じゃなくて、俺たちの心なのかもしれないな――」
傷口を撫でつつ、呟く男に。親子ほども離れた少女は、静かにうなづく。
満月が、2人を、そしてその2人を窓越しに見守るマリアの顔を、静かに照らしている――
275 :
14/14:2005/09/16(金) 00:24:02 ID:???
夜が明けて。
朝日に、傷跡残る街の様子が照らされる。
建設途中で、崩れたビル。道の真ん中に残る、クレーター。
完全に動きを止めたアッシュが、オフィスビルの前に頓挫している。
しかし、人々の顔に、嘆きの色は少なく。
「仕方ねぇなぁ。また直さなきゃなんねぇ」
「でも、大丈夫さ。前の大戦と比べたら、このくらい」
小鳥の囀りの中、人々が起き出した朝の町で。
まだ見る人もまばらな街頭モニターが、昨日のフリーダムの大活躍を、再び映し出す――
――ちょうど、その頃。
留置所のような硬いベッドから叩き起こされたマユは、一人の青年と向き合っていた。
仕立ての良いスーツ。線の細い身体。ビシッと決めてるつもり……らしい髪型。
徹夜疲れを顔色に感じさせないのは、流石だが――男の薄化粧は、マユとしては少し頂けない。
一言で言えば、二枚目を狙い過ぎて三枚目に踏み込んでしまった、という雰囲気の青年。
「……というわけで、君の世話をしてくれていたあの2人、昨夜から行方不明でね。
どこに消えたのか、とんと見当もつかない。まあ、失踪ということで処理することになると思うが――」
弁舌爽やかに滔々と語る青年。その空虚な自信が、かえって言葉から説得力を奪っている。
マユは疑いに満ちた目で、目の前の青年を睨みつける。
「――それとこれは言うまでもないことなんだが……
民間人が軍用MSで戦闘に介入する、ってのは、重大な罪でね。
このままじゃ、残念ながらキミの処罰は避けられない。
もう少し年が上なら、志願兵として軍に編入する方法もあるんだがねェ……」
「……で、あたしにどうしろって言うの?」
「おやおや、結論を急いじゃいけない。キミのことは調べさせてもらったよ、マユ・アスカ。
幸か不幸か、どうやらキミは、天涯孤独の身らしい。ならば――」
窓から差す朝日の下、青年は爽やかに微笑み、芝居がかかった口調で両手を広げる。
「このボク、ユウナ・ロマ・セイランの、『妹』になる気はないかね?」
第四話 『運命の兄妹』 につづく
しまった、途中分数表記間違えた orz
あと、今回、MS戦闘の新規作画ありません。次回も厳しいかなァ……。
今回は、あまり語るべき変更点はありません。
今回は結構な難産でした。半分くらいまで書いたのを、一旦全部リセットして書き直してます。
構成としては、マユ回想パートと、ユウナ調査パートがサンドイッチされてます。
長さにズレが大きすぎるなぁ。文章量の見極め、まだまだ修行が必要なようです。
>ユニウス条約
なんか本編もコレで押し切るつもりみたいですけどね。
いや不備ある条約・紳士協定に過ぎないような条約は現実にも珍しくもないが、せめてお前らツッコめと。
>マユの髪型
え〜っと、過去のマユのように、前でも2箇所、結わえてあるのは同じです。
後ろ髪は、「工事現場で働いてる」ってことで、邪魔にならないように結ぶポイントを上げたのですが……
もし、昔の髪型が良いようなら、今後の話では元に戻します。
でもあの髪型、どう言えばいいのかなぁ……。
次回は、少し「話数の切り方」に悩んだお話です。やっぱり難産になりそうな気配。
時間かかるかもしれませんが、気長にお待ち下さい。では。
277 :
しのはら:2005/09/16(金) 00:27:50 ID:???
第二十八話投下です
職人様方乙です
GJ!リアルタイムで拝見しました!!
ユウナの会話とマユの回想、場面の転換が目に見えるようでした。
ユウナ反則カッコイイww
リアルタイムで読ませてもらいました、乙!
ユウナが素晴らしいね、ホント
本編では人形同然の魔乳や虎にも、こっちの方には好感が持てる
続き、期待しとります
>>276 GJ!!ユウナが良いな。
打算と本心織り交ざって政治家って感じがして面白い。
ザッピングも本編より上手い。
一つだけ気になった事言わせて。
>どういうことだ、ユウナ・ロマ・セイラン! フリーダムを束縛したとは――
拘束の方が良かったも。
282 :
しのはら:2005/09/16(金) 00:41:04 ID:???
マスドライバーによる射出をタリアは諦めた。
射出までの時間は長い。その間敵に狙われたら、ひとたまりもなかった。
インパルス、ザク、レジェンドがミネルバから発進、地球軍へと向かっていく。
「宇宙人はおとなしく宇宙に帰りなさい!」
レイダーに乗ったレナ・イメリアのバスターダガーがインパルスを火力で圧倒し、熟練のデュエルダガーがザクを翻弄する。
「この機体、バスターの量産型?」
「噂のインパルス、性能差なんて勝利には繋がらないわ!」
「ケッ、大して強くもないクセに赤かよ?」
ビームを撃ち込んでも、装甲剥離でルナマリアを翻弄するデュエルダガー。
性能差を戦術でカバーするやり方に苦戦を強いられていく。
283 :
しのはら:2005/09/16(金) 00:52:35 ID:???
カオシュン基地の警備隊も出撃するが、ベルリン攻防戦の影響でその数は少ない。
バスターダガーのミサイルが放たれ、回避するインパルス。
「そんなミサイル当たらないよ!」
「まだ若いわね・・・」
ミサイルの射線を読んだレナの先読みビームがインパルスの右腕を溶解させ、追い討ち。
「戦闘は先を読んで行うものよ!」
「年増は黙って!」
マユは上半身を切り離し、ボトムアタック。
「メイお姉ちゃん、ソードシルエット!チェストフライヤー!」
しかし空中で合体しようとするシルエットをレナは叩き落とした。
「空中で合体するなんて、お子様ね!」「負けない!」
落下していくインパルス、マユが覚醒した。
機体を分離してコアスプレンダーになり、バスターダガーのビーム砲を破壊。
284 :
しのはら:2005/09/16(金) 01:02:53 ID:???
「ブラストシルエット!」
射出されたブラストシルエットがレイダーからバスターダガーを落とす。
先ほど切り離した上半身と下半身が合体、ブラストインパルスへ。
「年寄りは家に帰りなさい!」
「子供が何を!」
空中で双方のビームが交錯し、激突。
バスターダガーが海面へと落ち、レイダーが助ける。
劣勢に立たされていたザフトにオーブ軍が加勢し、地球軍を駆逐していく。
カガリ・ユラ・アスハらだ。
地球軍は戦力損耗を避け、撤退した。
だが彼らの執念はあるプレゼントをミネルバに送った。
マスドライバーが被害を受け、使用不能になったのである。
285 :
しのはら:2005/09/16(金) 01:04:07 ID:???
投下終了です
職人様、頑張っていきましょう
お、しのはら乙
サックリ読めるお手軽感覚が、しのマユ種の持ち味だな
レナ強す
神々降臨age
おお、今日は豊作だな
神々GJ!
age
『ふっふふーん、あはーv』
「うるさいぞ、ハロ。」
今、レイとハロは任務を受けて謎の施設へ向かっている。
ハロは人間の姿になって単独でインパルスに乗れて上機嫌だ。
「まったく・・、本物の『シン』もそうなのか?」
『いや・・、俺のデータとかだと変に大人ぶってる・・・まぁ、あれくらいの
年頃の男の子にしては結構落ち着いてたかな?』
「そうか。」
『それこそ・・レイ。お前はどうなんだ?』
ハロの言葉に動きが止まるレイ。
「どういう意味だ?」
少々殺気をこめて問い返す。
『あー、レイ。俺がさ、いままでのエースパイロットについてちょっと
研究してることは知ってるよな?それにはMSの動きも研究してたんだけど・・・・。
レイの動きと・・・『ラウ・ル・クルーゼ』の動きが被るんだよね。』
ハロが言った瞬間レイはビームライフルを放った。ハロはそれを盾で受け止める。
『あっぶねぇ!!落ち着け!!誰にも言わないし、言ってないよ!!』
「何だと・・・?」
ライフルを突きつけたままレイは呟く。
『いいか?!俺の第一優先は『マユ』!!そしてマユが守ると誓った対象!!
んでもって第二優先が『議長の命令』!!
下手に喋ったらマユ達に危害があるし!何より俺にはなんのメリットもない!!
俺には『マユに危害を加える物意外には危害を与えられない』っていう
プログラムもされてる事はレイも知ってるだろ?!』
ハロがそう叫ぶとレイは静かにライフルを下げた。
『まったく、アレだね。君のーすがーたーは♪僕ににーてーいるー♪』
「何だと?」
『だってさ、レイはクルーゼのクローンで、俺は『シン』の代用品。
たんに材料が有機物か無機物かの違いでその存在は似てると思わないか?』
「・・・・・遅れる。急ぐぞ。」
『はいはい。』
それから先、二人は会話をしなかった。
でも、所詮はほのぼのですから・・・。
−−−−−−−inロドニアのラボ
「あぁっ?!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ?!!!!!」
『やっぱりレイは三人目だったのか!?』
「違うわぁ!!このお前なんてコンだろ!!コン!!」
『俺はあんなナンパぬいぐるみじゃねえよ!!』
ほのぼのさん、毎日ってのがすごいなw
質問なんだけど…「マユが主人公」であれば他には特に制限何も無いの?
>>292 ないっぽいよ。
最初は、シンのポジションにマユ置きかえた話ばっかだったけど(それはそれで今後も読みたいけど)、
シン生きてる話とか、ギャグに走る奴とか、色々出てる。
隻腕マユもあるしな
絶対にしのはらは四馬鹿嫌いだよな、キャラ改変が凄い。
だがアムロ風キラ、明夫ボイス凸はなぜか好感持てるw
住人はどう思ってるのかな?
296 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/16(金) 23:13:55 ID:h2LOnRmY
>>276 凄すぎる・・・ユウナが凄いカッコいい!?なんかこれならジブにもギルにも
タメはれるのでは?しかし、マユがユウナの「妹」って声優ネタ狙いですか?^^;
私的にはバカ受けでした!!
>マユがユウナの「妹」って声優ネタ狙いですか?^^;
声優や他のアニメに疎い自分に説明キボン
>>295 俺はしのはら種ではカガリが一番好き
出てきていきなり凸にマラ掴みかましたときは爆笑したw
つかあいつら十代とは思えないほどキャラが濃いんだが
「どっかに無人島はないか?」って台詞が最高だった
>>297 数年前、シスタープリンセスというヒロイン全員妹というヒロイン全員〜のはしりのギャルゲーがあって、
ユウナの中の人はそれのアニメ版の「お兄ちゃん」をやってた。
>298 キャラの濃さが三倍はあるよなwキラがウザくない上かっこいいし
age
一つ聞くが、概要抜粋型(短い)と小説型(長い)でどっちが好き?
マユは、任務から帰ってきて、医務室にいた。
それはなぜかというと・・・・。
−−−−−−in夕暮れの海辺
『じゃあ、なんで本物の彼女が殺されそうになるの?』
『なんだって?!』
アスランたちの会話を岩部からこっそり聞くマユ達。
並んだ姿はプレーリードッグのようである。
「え・・・・?それどう言うことだよ!!(小声)」
「おい!!写真がとれないだろ!!(小声)」
「あれが・・・フリーダムのパイロット?(小声)」
ばれないように、しかしよく見えるように近づくハイネ隊爽やか三組、もとい三人組。
「ちょっ・、押さないでよ!(小声)」
前にいるルナマリアが文句を言うが、次の瞬間。
「キャーーーーーーーッ!」
なんとマユが崖から落ちてしまったのだ。
「マ・・・・・ッ!」
「伏せろ!!見つかる!!」
ルナマリアはジョーによって伏せられた。しかし、その時見事に頭が岩に当たって気絶する。
『げぶらっ!!』
キラの上に何かが落っこちてきた。
『マユ?!』
盗聴器からアスランの困惑する声が聞こえる。
『大丈夫か?!』
アスランは急いでマユを抱き上げる。
『見せろアスラン!』
カガリがマユを見る。彼女は幼い頃からさまざまな教育を受けた来た。
その中には簡単な医学知識も含まれている。
『・・・・大丈夫。気を失ってるだけだ。ただ、軽く頭を打っている。
医者に見せたほうがいい。アスラン、話はもうやめだ。ミネルバに戻れ。』
カガリはアスランに告げた。
『カガリ・・!』
『・・・・お前の言ったこと、よく考えてみるよ。その子のこと、よろしくな。』
カガリは明るい顔でいった。ちなみにキラはまだ倒れているが、ミリィも気にしていない。
そんなこんなで、マユは現在医務室にいる。
記憶も見事にアスラン達の会話の所だけ抜けている。カステラの味は良く覚えていたが。
「・・・・もう頭もクラクラしないのに・・・。」
彼女が医務室にいる理由にはもう一つあった。
ミネルバはただいま、地球連合の施設、『ロドニア・ラボ』の調査中なのだ。
>>302 どっちも可。
それぞれの形式でしかできないことがあるからな。
ファントムペイン戦記とか隻腕少女とか、内容抜粋したら逆にツマランだろう。
ほのぼのを超長編でやったらキレ味落ちるだろう。
そういうことだ。
文の長さを決めるところから、表現は既に始まってる。形式決めたところから、表現は始まってる。
>>304 どうも。
ちょっと次スタイル変えて投稿しようと思ってたんだよ。
>298 本編よりしのはら版の方が名セリフあるよな
凸の「お前のことは隅々まで知っているはず」とかルナマリアの「赤点の赤じゃない」とか
age
308 :
しのはら:2005/09/17(土) 19:19:28 ID:???
第二十九話投下です
本編・・・(゚听)イラネ
309 :
しのはら:2005/09/17(土) 19:38:36 ID:???
オーブ艦隊と合流したミネルバは一路オーブへと向かっていた。
カガリ・ユラ・アスハの好意とプラントーオーブ間同盟から、マスドライバーの使用を許可されたのだ。
艦内ではオーブ軍人とミネルバクルーの、一時の交流が行われていた。
オーブ軍人たちは自分と親子ほど年の違うマユがインパルスのパイロットということに驚いたが、すぐに打ち解けた。
和気あいあいと交流を楽しむクルーを離れ、アレックスとカガリは展望台にいた。
かつて恋人同士だった二人、戦後二人は違う道を歩み、今に至っている。
「お前さ、変わったよな」
「変わった?昔と同じだろう」
「私には、そう見える」
カガリは少しだけ寂しげな表情を浮かべ、窓の外を眺めた。
310 :
しのはら:2005/09/17(土) 19:50:04 ID:???
「あの頃に戻りたい」
カガリは語る。政治家として無能な自分は軍人として生きる道を選んだ。大戦が終わった後、本土を戦場にしたアスハ家は国際的に非難され、今でこそ沈静化したが国民からも憎悪されたのだ。
だからカガリは政界を退いた。
サハク家の後ろ盾を手にしたセイラン家が政権を握り、地球連合から脱退したことには憤りを感じるし、理念に反しているとも思う。
「一人の兵士になって生きていくつもりだ。私は」
アレックスは、カガリが死に場所を探していることを察した。
「だが・・・」
「安心しろ。私はまだまだ死ぬつもりはない」
カガリは快活に笑う。
「それに・・・」
「それに?」
アレックスの股間を握り、白い歯をむき出す。
「お前の分身は握り心地がいいんだ」
311 :
しのはら:2005/09/17(土) 20:03:00 ID:???
「アレックスさん、カガリ准将、パーティーには出ないんですか?」
展望台に入ってきたマユは、カガリがアレックスの股間を握る姿を見て絶句してしまう。
「何してるんです・・・隊長」
アレックスは額に脂汗を浮かべながら答える。
「何、一種のコミュニケーションだ」
「コミュニケーション!?」
「ああ、これはオーブ流のスキンシップだ」
カガリが手を離し、アレックスは窓に手をつく。
「スキンシップというのは冗談だ、マユ。私とアレックスのしか通用しない意志疎通の方法だよ」
「意志疎通!?」
マユが唖然とし、カガリは腰に手を当て笑う。
その頃オーブでは、ミネルバを始めとした艦隊に対する攻撃隊が発進を開始した。
オーブに逃れたジブリールはセイランと結託し、政権を奪取していた。
だがそれを、誰も知らない・・・。
312 :
しのはら:2005/09/17(土) 20:04:44 ID:???
投下終了ですノシ
カガリのマラ掴み好きな人いたんだ・・・
地上編はそろそろ終わります
レイがクローンね、マユ世界はその設定はどうなるんだろうか?
マユ及びミネルバクルーなら、それでも仲間として受け入れるような気がする。
レイ「俺の残り少ない命お前達に捧げる。」
マユなら「小さな事ね」で済ませそうな希ガス
各お話のマユごとにかなり違ってくる気が。
黒マユならそのトラウマとか色々とチクチク弄りそうで楽しいw
しのはらさん、他職人の皆様、乙です。
……難産になるだろうと思ってたら、ポコッと生まれてしまった感じですw
こうなると、色々とイメージできてる次の話が、かえって心配になってきたり。
>>280 >束縛→拘束
確かに言われてみれば。
できるなら差し替えたいところですねぇ、その部分は。指摘サンクスです。
途中、ラクスのセリフも、小さい「っ」が抜けてるのがあったりして……。
ちゃんと推敲しなきゃダメですねぇ。
と、自戒しつつ。
第四話、行きます。
↓
317 :
1/13:2005/09/17(土) 20:24:57 ID:???
穏やかな日差しが差し込む、屋敷の一室で――
「『兄ちゃん』」
「にいちゃん」
「『兄様』」
「にいさま」
「『お兄様』」
「おにいさま」
「『兄上』」
「あにうえ」
何やら、青年の発声を、少女のソプラノがリピートしている。
仕立ての良いスーツ姿の青年と、フリルで過剰なまでに装飾されたドレスを着せられた少女。
「うーん、こういう古風なのも捨てがたいなぁ。『兄君』」
「あにぎみ」
「これは硬すぎか。じゃあ気さくに、『兄さん』」
「にいさん」
「うーん面白味がない。ロリ系で行くかな? 『お兄ちゃま』」
「……おにいちゃま」
「流石にこれはやり過ぎか。基本に戻って、『お兄ちゃん』」
「…………」
楽しそうに言葉を選ぶユウナ。
着慣れぬフリフリの衣服に埋もれるように座る少女は、無感動な声で復唱していたが……
とうとう、俯いて黙り込んでしまう。
「ん? どうした? ホラ繰り返して、『お兄ちゃん♪』って」
「……これって、確か――礼儀作法の、言葉遣いのレッスンのはず、でしたよね?
セイランの名に恥じぬ存在になるために、って」
「そうだよ。それが何か?」
「で――これのどこが『礼儀作法』なのよ!
さっきからいったい、何やらせてんの、アンタは!」
飄々と答えるユウナに、とうとうブチ切れるマユ。
しかしユウナはその剣幕に怯えることもなく、嬉しそうに身をクネクネとさせる。
318 :
2/13:2005/09/17(土) 20:25:55 ID:???
「だぁってぇ♪ せっかく可愛い妹が出来たんだから、どう呼んで貰うかは大事な問題じゃない♪
男の ロ・マ・ン、ってやつ? ウフフ♪」
実に嬉しそうに、満面の笑みで身悶えするユウナに、マユ・アスカ・セイランはげんなりした表情で。
ジト目で『新しい兄』を睨みつつ、低い声で言い捨てる。
「アンタなんて、『バカ兄貴』で十分よッ」
張り手の音響く屋敷の窓から外を見れば、穏やかな日差しがさんさんと照りつけ。
空は雲ひとつない青空。鳥たちのさえずりが心地よく響く。
何の憂いも感じられない、平和な雰囲気――
――が、視線を空へ、その向こうの宇宙(そら)へと向けてみれば。
星の海の中――不穏な雰囲気に包まれた、巨大な廃墟が。
浮遊する死の大陸の中心、巨大なシャフトの残骸に、チカチカと光るフレアモーター。
設置作業を急ぐ、MSの姿。
やがて、一機の黒いジンが片手を上げると――それらは一斉に、火を噴いて。
巨大な大地が、ゆっくりと動き出す。
蒼く輝く、地球を目指して。
長き平和を破らんと、ゆっくりと――
世界は、今まさに破滅に向かわんとしていた。
世界は、まだ――その危機を、知らない。
マユ ――隻腕の少女――
第三話 『運命の兄妹』
319 :
3/13:2005/09/17(土) 20:27:12 ID:???
「――ユウナさま、そのお顔は?」
「気にしないでくれたまえ。それより、何か動きはあったかい?」
廊下を足早に歩きながら、秘書官に問うユウナ。
さきほどマユと遊んでいた時とは、別人のようにキリリとした表情だったが――
頬にくっきりと赤い手の跡が残ってるため、イマイチ締まらない。
思わず笑いそうになるのをこらえつつ、しかし秘書官も流石プロ。
きっちりと、ユウナに命じられた調査の報告をする。
「まだ、全ての情報が出揃ってはいないのですが――
わが国の事件の後、立て続けに、世界中の主要な宇宙港で同様の事件が起きています。
ギガフロートは航行システムを破壊され漂流中。
ヴィクトリアは襲撃MSの自爆により、マスドライバーのレールの一部が欠損。
他にも、襲撃の事実を隠蔽しているらしいところもありますが……
何らかの損傷を受けているのは、間違いないようです」
そう――ユウナたちが事件の後処理に追われ、またマユを尋問していた、その間に。
世界中で同時多発的に、事件は起きていたのだった。
ある場所では、同じようにアッシュの群れが襲い掛かり。
ある場所では、ハイジャックされたシャトルが管制塔に突っ込み。
ある場所では、廃棄されたはずのミラージュコロイド搭載機、ディン・レイブンが忍び寄り。
そして――ユウナのような采配も、フリーダムのような救世主もなかったそれらの場所では――
「やっぱり、襲撃犯はザフトなのかね?」
「確かに、使われたのはザフト系MS、なのですが……ザフト軍の地上基地も襲われております。
プラントは、ザフト内部にテロリストが潜伏していた可能性も含めて調査中、と」
「やれやれ、呑気なことだね。調査なんてしてる間に、次のイベントが始まっちゃうよ?」
「それは、どういう……」
やけに自信たっぷりに予言するユウナに、秘書官は思わず立ち止まる。
ユウナは頬に手形をつけたままの顔で、格好良く指を振る。
「キミも、首の上に載せてるのが頭なら、自分で考えてみたまえ! 何、簡単な推理さ!
もっとも――このボクをもってしても、次に何が起こるのかは、まだ予想もつかないんだけどね」
320 :
4/13:2005/09/17(土) 20:28:26 ID:???
――ちょうど、同時刻。地球の裏側で。
「キミの首の上に載せているのは、いったい何かね? 簡単な話だよ、自分でも考えてみたまえ!
もっとも――このワタシをもってしても、次に何が起こるのかは見当もつかぬのだがね――」
まさに同じようなことを電話に向かって喋る、一人の男がいた。
中性的な容貌。細い体。酷薄そうな目。エキゾチックな服。
無数のモニタが並ぶ広い部屋の中央、ゆったりした椅子に身体を沈ませ、膝の上の猫を片手で撫でる。
――大西洋連邦では知らぬ者なき、ロード・ジブリールその人だった。
大西洋連邦国内のテレビ・ラジオ・新聞などを軒並み押さえ、絶大なる発言力を持つメディア王。
大西洋の世論を自由に操り、巷の噂では大統領の首さえ自在にすげかえられる、と言う。
彼のメディアグループはいささか反プラント・反コーディネーターに偏っていたが、その言説には説得力があり。
大西洋連邦全体の空気を、ブルーコスモス寄りに傾ける大きな要因の一つになっていた。
そして――今。そんな彼が注目していたのが――
「そうだ、例の宇宙港連続襲撃事件だよ。ザフトのMSが使われたことを、ちゃんとアピールしろ。
デュランダルの奴が留守にしている間に、叩けるだけ叩いておくんだ!
あの男は――内容は空虚なくせに、妙に演説だけは上手いからな。喋らせると面倒だ――!」
世界中で起こった、宇宙港連続襲撃事件。
それを、彼のメディアは被害を強調し、襲撃犯の非道さを強調し。
ザフト軍基地の被害については、自作自演を疑うような論調で視聴者を誘導して。
――少しずつ、しかし着実に、世界の世論は動きだしていた。
ジブリールは、クラシカルな装飾の施された受話器を一旦置くと、改めて別の回線に繋ぐ。
「――オーブ支局かね? ロード・ジブリールだ。
被害を受けた街の取材もいいが――大至急、マスドライバーの方にも取材クルーを回すんだ。
そのまま、24時間体勢で張り付いていたまえ。必ず、近いうちに大きな動きがある。
セイランの坊やが人並みの知性を備えているなら、既に手を打っているだろうからね――」
指示を出し終え、ジブリールは大きな溜息をついて椅子に沈み込む。
猫を撫でながら、誰にとも無く小さく呟く。それは……祈りの言葉。
「全ては、蒼き清浄なる大地のため、さ……」
彼の視線の先のモニタ上には――オーブ市街を守り戦うフリーダムの姿。
彼はその鋭敏な嗅覚で直感していた。今後の世界情勢、鍵を握るのはこの小国だ、と――
321 :
5/13:2005/09/17(土) 20:29:26 ID:???
カチャ……カチャ……。
広い食堂に、食器がぶつかる微かな音が響く。
大きすぎるテーブルに、向かう者は2人だけ。背後にはメイド達が控えていたが、みな無言で。
昼食には豪華過ぎる料理の並ぶ食卓は、しかし冷え切った空気に包まれていた。
「……物を食べる時に、音を立てるな。いったい君はどんな教育を受けてきたのかね」
「は、はい……すいません……」
上座に座る男の、静かながらも凄みのある声に、ドレスに埋もれた少女は萎縮する。
ウナト・セナ・セイラン――つい数時間前から、マユの『義父』となった男。
しかし彼は、バカながらも親しく接してくれる『義兄』と違い、決してマユに心許してはくれなかった。
あくまで「モノ」を値踏みするような目で、マユを冷たく突き放す。
「ユウナの判断には、文句を言いたくはないがな――
曲がりなりにもセイランの名を名乗る以上、それに相応しい存在になって貰わねば、困るのだよ。
それができぬと言うのなら――牢獄なり処刑台なりに戻って貰うことになる。心苦しい話だがな」
「……はい……わかって……ます………」
ウナトの厳しい言葉に、マユは意気消沈する。マユの脳裏に、今朝のユウナの言葉が蘇る。
『オーブの有力氏族の間にはね――その子弟が若いうちに、軍に入隊させて社会勉強をさせる慣習がある。
と、言っても、既に形骸化した風習でね。もう誰も真面目にやっちゃいない。
名簿上登録されてるだけで、軍服に袖も通さぬ者も少なくない。何もしてないのに、肩書きだけ幹部さ』
『が――この慣習を利用して、年も若いのに 前線で指揮取って MS乗って 戦っちゃった奴がいる。
今の国家代表、カガリ・ユラ・アスハさ。2年前の大活躍は、君も聞いていることだろう』
『あれが――良き『前例』となる。アレがあるから、誰も文句が言えない。
君が『セイラン家の人間』になれば、軍への入隊も階級の問題も、処罰の問題も全部解決さ――
君は今後もフリーダムに乗り、この国を、罪なき市民を守っていくことができる』
あれは――確かにマユの身を案じてくれての、ことだったのだろう。
他にも思惑があるとは薄々感じつつも、ユウナの提案を蹴るという選択肢は、マユには残されていなかった。
そのことは、まあ納得するしかないこと、なのだけれども。
今まで見たこともないようなご馳走を口にしてるのに、全く味気ない。卵抜きカルボナーラの方がまだマシだ。
控えるメイドたちも人形のようで、豪華なシャンデリアも眩しいだけで。
マユは、居心地の悪さに身じろぎする。
ユウナは――バカだけど、嫌いじゃない。裏もありそうだけど、イヤじゃない。
でも、この家は、セイラン家というものは、どう頑張っても好きになれそうにない――
322 :
6/13:2005/09/17(土) 20:30:40 ID:???
と、その食堂へ。
バタン! と扉を開け、息せき切って駆け込んできた者がいた。
「ウナトさま! 大変です!」
「……食事中だぞ。よほどのことなんだろうな?」
ウナトは太り気味の身体を揺らし、口元をナプキンで拭きながら入ってきた男を睨みつける。
事務員風の男は姿勢を正して報告する。
「さ、さきほど発表されたところによりますと……
デブリ帯に漂っていた、ユニウスセブンの残骸。これが地球に落下するコースに入ったとのことです!
わがオーブも、もし直撃されれば島一つ消滅、直撃を避けられても津波の被害はとんでもないものに……!」
「なに!?」
思わず立ち上がるウナト。うなだれていたマユも、思わず顔を上げる。
見上げた天井、その上の青空、さらに上の宇宙に――隠し切れぬ悪意が、その牙を剥き出しにして――
その一報は、オニギリを咥えつつ復旧作業の指示を飛ばすユウナの所にも。
モニタ越しに情報操作の指示を飛ばすジブリールの所にも。
何も知らない一般市民の所にも。
穏やかな島の孤児院で、子供達と平和に暮らす2人の所にも。
どこかの街の裏通り、安宿に潜伏し世情を伺う、アンディとマリアの所にも。
等しく、絶望が届けられる。
天が落ちてくる。
備えも何もない世界の上に、圧倒的な質量が降ってくる。
それは大気圏で燃え尽きることはなく、空気抵抗で予測困難な落下コースを描き。
海に落ちれば、未曾有の大津波を。
陸に落ちれば、成層圏まで届く粉塵を。
落下する場所次第では――その、双方を。
逃れようもなく、地上にもたらして。
予想される被害は計測不能。
環境・経済・人命・農業・産業・軍事、ありとあらゆる面での壊滅的打撃。
まさに、比喩でも何でもなく。
文字通り、世界が滅びかねない――
323 :
7/13:2005/09/17(土) 20:31:59 ID:???
――各国は素早く対策に取り掛かった。この危機の前に、敵味方などない。
これが人為的な事件であれ偶然の事故であれ、地球への直撃など避けねばならぬ。
本拠を宇宙に置くプラント政府とて、事情は同じ。
地上にはまだザフトの基地が残されているし、地球との経済的関係も大きなものがある。
だが――世界中が危機感を抱いているにも関わらず、有効な手立てが、ない。
地球連合軍・ザフト軍共に、その大規模艦隊はタイミング悪く地球の裏側に位置しており、とても届かない。
月面やコロニー、プラントから発進させたとしても、これも遠くて間に合わない。艦隊編成の時間もない。
たまたま、近くにいた艦船として――
ザフト軍の新鋭艦・ミネルバと、その補給・修理に来ていたナスカ級高速戦闘艦2隻が、デブリ帯にいたが。
彼らとて追いつけはしても、ユニウスセブンほどの質量をどうにかできる装備は、用意していない。
取り急ぎ彼らが調査に向かうことにはなったが、その報告を待てるほど事態には余裕はなく――
実はもう一つ、方策は考えられた。ユニウスセブンの方から『近づいてきてくれる』宇宙の拠点。
他ならぬ、『地球』からの工作部隊の発進。
破片の落下による環境汚染を考えれば、核攻撃はできないが――しかし、他にも方法はいくらでもある。
だがしかし、それさえも、例の連続宇宙港襲撃事件の被害で、実行できない。
連合もザフトもジャンク屋組合も、動けない。手持ちの戦力を、上げる手段がない。
ただ1箇所――海に浮かぶ小国、オーブ連合首長国のマスドライバー、新生カグヤを除いては――!
「――と、いうわけで。カガリ不在の今、大変なことになったわけだけど――
蒼く美しい地球の命運は、ボクたちオーブ軍の双肩に掛かることになった」
事態の深刻さとは裏腹に、軽薄な声がブリーフィングルームに響く。
演台に立って話すのは、ユウナ・ロマ・セイラン。
彼自身、『名簿に名前を載せていただけで袖も通したことがなかった』軍服を身にまとい。
居並ぶ軍人たちの前で、思い切り芝居がかかった口調で作戦を語る。
「我々はこれより、君たちオーブ軍の精鋭と我が愛する妹の手により守られた、この新生カグヤを使って、
改修が済んだばかりのクサナギを宇宙(そら)に上げ、この事態に対応することになる」
大型スクリーンに映し出されたのは、前の大戦でも活躍した宇宙戦艦、クサナギの姿。
ただし――従来、3つに分離して運用されていたそれは、全部揃った姿でマスドライバー上にある。
つい最近、モルゲンレーテの手で改修を受け――分離・合体の手間ない宇宙との往還を実現したのだ。
「ユニウスセブンへのアプローチだが……時間的に、推進器を取りつけ進路を変えている余裕はない。
ゆえに、細かく粉砕し、大気圏突入時の摩擦で焼却・処分する方法を取る」
324 :
8/13:2005/09/17(土) 20:33:00 ID:???
「……大丈夫なのか?」
「プラントが許すわけが……」
「議長は何と……」
「――この件については、既にプラント評議会の代理人の承認を得ている。大丈夫さ」
ザワザワと揺れる会議室に、ユウナは自信を持って答える。
プラントのコーディネーターたちにとって象徴的意味の大きなこの遺跡。休戦条約も結ばれた悲劇の地。
砕いて消し去ってしまうのは、感情論として大きな抵抗が考えられるのだが……
議長がとある事情で不在の今、ユウナはその舌先三寸を駆使してプラント側の了承を取り付けていた。
「粉砕のために使う道具は、このメテオブレイカー。地中深く穿孔した後、自爆して岩盤を破壊する。
本来、コロニー等に接近する隕石を砕く道具で、地上のオーブには必要ないものだが……
モルゲンレーテの工場で製造され、搬出を待っていたものが10基ほどあった。これを徴用し、利用する」
「これって……MSで設置するんですか?」
白手袋に包まれた小さな手を挙げ、質問したのは……オーブの白い軍服に身を包んだマユだった。
女性用の一番小さなサイズの軍服を急ぎ仕立て直したものだったが、それでも少しブカブカな印象がある。
ユウナは嬉しそうに、スクリーン上に大写しになったメテオブレイカーを指して説明する。
「そう、その通りだよマユ・セイラン三尉。察しがいいねェ。さすが我が妹。
ここのハンドルを握れば、MSのコクピットから操作できるそうだ。
位置さえ決めてやれば、操作は全てオートで行われる。難しい土木作業の知識は必要ない」
「工事用のドリルや杭打ち機と、仕組みは一緒ですねー。あたしも何度か現場で使ったことが……」
「うぉっほん!」
余計なことを言いかけたマユを、ユウナのわざとらしい咳が遮る。
義兄の視線に、自分の失敗を悟り肩を竦ませるマユ。工事現場の経験など「お嬢様」が誇ることではない。
周囲の軍人はいまいちそのやり取りが理解できず、ポカンとしている。
ユウナはそれを取り繕うように、大声を張り上げ、場を強引にまとめた。
「さぁ――時間はないぞ。あとは宇宙に行って、ザフトのミネルバと協力しながら臨機応変だ。
これが人為的なテロの場合、テロリストによる妨害もありえるが――みんな、信頼してるからね♪」
……どう考えても、ユウナの最後の言葉は余計だったし場にそぐわぬものだったが。
オーブ軍人たちは任務の重大さに、士気も高く準備に取り掛かった。
325 :
9/13:2005/09/17(土) 20:33:53 ID:???
「こうなることを、予測してたのか?」
「まぁね。とはいえ、あんなものを落としてくるとは思いもしなかったが」
搬入作業で慌しいクサナギを、並んで眺めながら。
出発を控えたレドニル・キサカと、見送りに来たユウナ・ロマ・セイランは言葉を交わす。
「気づいたきっかけは――襲撃してきた、あのMSさ。より正確に言えば、その部隊規模だ」
「規模?」
「ボクはね――考えたんだ。あいつらが、何をしにオーブに侵入してきたのか。何が目的なのか。
発見の一報があった時点からすぐに推測を初めて……敵MSの数が確定したところで、理解した」
彼らの目の前で運び込まれるメテオブレイカー。MSの身長をも超える、巨大なドリル。
今回の作戦の、鍵を握るアイテム。マスドライバーとクサナギがあればこそ、宇宙(そら)に上げられる工具。
「あの程度のMSの数では――たとえ、あの距離まで潜入できたとしても、大したことはできやしない。
国防本部や行政府を落とすのは、流石に無理だし――街を破壊したところで、得るものなど何もない。
できるのは――せいぜい、マスドライバーにちょっとしたキズをつけること、くらいさ。
あの侵入経路から手が届く重要施設と言ったら、あれくらいのものだ」
「……それで、あんな指示を?」
『市民よりもマスドライバーを守れ』……
そんな非道な命令がありながら、意外なまでに少なかった市民の被害。
最初から、襲撃者たちの陽動を見抜き、本命を見抜いていたのなら……なるほど、確かに。
「それも、連中の戦力では、大した破壊はできない。
せいぜい、そうだな――自爆やらミサイルやらが当たっていたとしても、完全修復まで数日ってとこか。
間違っても、マスドライバー全体を崩壊させるような真似は、できるはずもない」
「確かに……その通りだ」
「ならば犯人たちは、その数日の間、マスドライバーが使用されなければそれで十分だったのだ――そう推理した。
何かは知らないけれど、使われたら都合の悪い事情があるのだ、と。
その数日の空白を得るために、十数機のMSを、そしてパイロットの命を、投げ出すだけの価値がある、と。
別の言い方をすれば――あの襲撃は、あれで終わりじゃない。必ず近いうちに、『続き』がある。
そしてそのときは――地上でなく、宇宙(そら)が舞台になるだろう、とね」
「そこまで考えての、クサナギ発進準備、か。
予め用意してなければ、この準備とて間に合ったかどうか……」
「まだ安心するのは早いよ。たぶん、次が『本番』だ。キミたちの腕の見せ所だ。
再度の攻撃がなかったってことは――クサナギ程度の戦力が来るのも、覚悟の上ってことなんだろう。
……これが天災などであるものか。きっと、犯人たちの『本隊』が待ち構えてるハズさ」
理路整然たるユウナの推理。実戦経験豊富なキサカも、脱帽する。
326 :
10/13:2005/09/17(土) 20:34:58 ID:???
「でもね――ボクにできるのは、相手の動きを読んで策を練るまで、さ。
その策の成否は現場のみんなに任せるしかないし――実際、先の防衛戦も危ういものだった。
ボクの可愛い『妹』がタイミング良く暴走してくれなければ、どうなってたことか。
持てる最大の戦力を投入し、君たちを見送った後は――ボクにできることは、何も残っちゃいない」
溜息と共に漏れた、ユウナの本音。
その言葉に、ある未解決の疑問を思い出し、キサカはハッとする。
「そういえば、あのフリーダムの少女、あれは本当にお前の――」
「キサカ一佐! 全MSの搬入、終りました! こちらに来て下さい!」
「――だってさ、キサカ」
キサカの疑問は部下によって遮られ。ユウナは話は終わりだ、とばかりに背を向け手を振る。
「お互い、積もる話はあるだろうけどさ――とりあえず、この仕事を終えてからだ。
事態の方は、待っちゃくれないんだからね」
立ち去るユウナ。何か言いたげな視線で見送るキサカ。
彼の表情は雄弁にこう語っていた。「しまった、またフリーダムのことを聞きそびれた」と――
しかし、今はそんなことに拘ってる余裕もないのもまた事実で。彼も急ぎ、自分の艦に向かう。
出港直前のクサナギの中。MS用のハンガーの中で。
マユは、搬入されたフリーダムを見ながら、懐から携帯を取り出す。
ピンクのそれを開き、表示させたのは――黒髪の少年の写真。
澄んで真っ直ぐな目をした、明るい少年の笑顔。曇りひとつない表情。
「お兄ちゃん……」
それは、あの悲劇で失ったマユの兄。優しい兄。陽気な兄。頼りになる兄。
遺体の一欠けら、遺品の一つも残さずに、飛んできたビームの中に蒸発した兄。
だから、この携帯の中に残された写真は、彼を偲ぶ唯一の絆で――
「お兄ちゃん……マユを……世界を、守って……!」
胸に抱きしめれば、兄の霊が自分を守ってくれるような気がする。もっと頑張れる気がする。
そう――たとえ新しい『兄』が出来たとしても。自分の名前が変わっても。
後にも先にも、彼女が『お兄ちゃん』と呼べる人は、たった1人――
327 :
11/13:2005/09/17(土) 20:35:44 ID:???
――やがて、全ての準備が整い。
クサナギ改が、マスドライバーのレールの上をゆっくりと滑り出す。
オーブのみならず、世界中の視線を浴びながら、剣の如き戦艦が走り出す。
軍人は敬礼し、市民は手を合わせて祈り。地上に住む全ての人の希望を乗せて。
マユとオーブ軍が守り抜いたマスドライバーを走り抜け、今、宇宙へと飛び出す――!
尾を引いて天に昇るクサナギの中で。
マユは、その窓から小さくなってゆくオーブを見下ろす。
彼女の脳裏に、病室で見た2年前の映像がオーバーラップする。
今度は。今度こそは。今度もまた。
この美しい島々を、守るために――!
――その、クサナギが向かう、空の上では。
2機のナスカ級を引き連れ、矢のような形の戦艦が急ぎ駆けていた。
ザフト軍最新鋭多目的戦艦、ミネルバ――
アーモリーワンの襲撃事件から、そのままMS強奪犯を追っていた、激動の艦。
そのブリッジでは――
艦長席よりもさらに上座、艦隊指令などを座らせるスペースに、3人の人間がいた。
一人は、現プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル。
一人は、現オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ。
そして一人は、そのカガリの護衛役である、アレックス・ディノ。
「……先ほど、連絡がつきましてね。姫の母国・オーブから、クサナギが来てくれるそうです」
「クサナギが!?」
「メテオブレイカーも積んできてくれるそうですし……これで、何とかなるかもしれません」
アーモリーワンの事件の場に居合わせ、なし崩し的にミネルバで飛び出してしまった、この2人。
どちらも一国のリーダーでありながら、国を揺るがす重大事に、本国に居られないという非常事態。
それが、2人に焦りをもたらし――近かったとはいえ、VIP自らがこんな現場に乗り出すことになってしまった。
現場に行ったところで、一国の長にできることなど何もないと言うのに――
「しかし、ユニウスセブンを砕くことになるとは……もっと他の方法はなかったのか、ユウナめ……」
「あなたが心痛められる必要はありませんよ、姫。
確かに不幸な成り行きですが……プラント市民の反発、きっと私が宥め押さえて見せると、お約束しましょう。
決して、尽力して下さったオーブの皆さんが恨まれるようなことには、致しませんよ」
自分たちの立場も状況も考えず。
カガリは他国の市民の気分を心配をし、デュランダルは根拠なき約束を口にする――
328 :
12/13:2005/09/17(土) 20:36:33 ID:???
そのミネルバ内、MSパイロット控え室にて。
赤い髪の娘が、うんざりしたような声を上げる。
「あーあ。なんであたしらが、地球の連合とかを守らなきゃいけないのかしらねぇ」
「……文句を言うな、ルナマリア。これも任務だ」
「って言ってもさァ」
ふてくされる少女に、突っ込みを入れるのは金髪の青年。
整った顔に、無感動なまでの冷静さを湛えた、落ち着いた雰囲気。
「このまま、地球潰してくれちゃった方が手っ取り早いと思わない?
アーモリーワンの一件にしたって、向こうだってやる気なんだろうしさァ」
「……そういうわけにもいかんだろう。我々プラントとて、地球抜きではやっていけん。
それに今回のこの件、我々の仕掛けたもの、などと邪推されても厄介だしな」
「あーあ、レイはいっつもそうよね。確かにアンタの言うことは正論ですよ。
ねぇ――アンタはどう思うの? 今回の件?」
ルナマリアと呼ばれた娘は、レイと呼んだ男の『まっとうすぎる』正論にうんざりして、矛先を変える。
控え室で黙って外を眺めていた、黒髪の青年に、話題を振る。
「………俺の知ったこっちゃない。どうでも、いい」
「どうでもいいってことはないでしょう?! 地球が滅びるか滅びないかの、瀬戸際なのよ?」
「それも、どうでもいい。ただ……」
「ただ?」
「落ちるなら、『あの国』の上がいい。
『あの国』が滅びるなら、あとは死のうと生きようと、どうなってもいい」
「あーあ、アンタいっつもそれよね。そんなに自分の生まれた国が嫌いなわけ?」
「…………」
暗い口調で、淡々と滅びの欲求を口にする青年に、ルナマリアは肩をすくめる。
そして、ふと思い出したように一言。
「あ、でもさ……さっきメイリンに聞いたんだけど。
地球から上がってくる『援軍』って、アンタの大嫌いなあの国の艦(ふね)らしいよ?
別に、この艦にいるお姫様を迎えにきたわけじゃないらしいけど。
えーっと、前の戦争でも大暴れした、そう、クサナギって艦とかで」
「……クサナギ!?」
329 :
13/13:2005/09/17(土) 20:37:34 ID:???
黒髪の青年の目が、憎悪に染まる。それまでの鬱な雰囲気が、一転して真っ赤に染まる。
その、顔は……
「また、偽善を口にして、自分たちだけ地球から逃げ出したのかよッ……!」
「ちょッ、あたしに怒鳴っても仕方ないじゃない、シン!」
「あいつらは……オーブは、いっつもそうだ! あの国はッ!!」
――それは、失われたはずの顔。悲劇の中に消えたはずの少年。
澄んで真っ直ぐだった瞳は、2年の間に憎悪に歪み。
笑いの絶えなかった口元は、2年の間にめっきり口数を減らして。
すがるべき過去を持たぬ魂は、過去映す鏡を掴みそこねた手は、ただ苛立ちだけを握り締め――
悲劇の地、ユニウス・セブンを挟む格好で。
大気圏脱出用ブースターを切り離したクサナギと、2隻の僚艦を連れたミネルバが、向かい合う。
これからの運命など知る由もなく――
栗色の髪の少女が。
黒髪の青年が。
共に、近づく死の大地を、見つめている――
第四話 『 怒りの空 』に続く
以下、蛇足でしょうが、設定弄ったりしてる部分について
>クサナギ改
あの分離システム、かえって非効率的だと思うのは私だけでしょうか?
というわけで、分離合体なしに往還できるように改装したことに。
まあ後で使うから、ってのもあるんですが。なお、脱出時に小さな追加ブースターは付きます。
>ジブリール
「メディア王」設定は、オリジナルです。アズラエルと違って「本業が何なのか」が不明瞭だったので。
いずれ、その設定に負けぬ頑張りを見せてくれる……はずです。
私の腕次第だなァ、その辺は……。
>デュランダル議長
予め断っておきます。この話で、一番ワリ喰ってしまうのは議長かもしれません。
まあ、本編のように急にブチ壊れることはないかと思いますが……全般的に能力の低下は免れないかと。
とりあえず、もし声優を一人だけ交代できるなら、彼の声優はシャア以外の人にやって欲しいです。
あまりにもシャアのイメージに引き摺られ杉。視聴者も、そして作り手も。
>ミネルバ組
ルナマリアは、キャラ背景が弱かったので『色々なことに無自覚なプラントの女の子』の延長線、としました。
別にアンチナチュラルではないけれど……という。性格面はさほど弄らないつもりですが。
レイも、たぶん本編とは違う設定・違う背景になりますが、現時点じゃまだ言うべき点はなし。必要になったらまた。
ヨウランやヴィーノのような端役キャラは……出てこれるかどうか疑問……。
>>296-297>>299 私も声優については詳しくないので……そうか、お兄ちゃんはユウナでしたか。
今回冒頭のネタも、実はそれ知る前から用意してたんですが……これも運命ですかねw
では、また次回。
>>330 来た来た来たきたきたーーーーーーーーーーーー!
もうね、ユウナかっこよすぎwwwwwwwでも姫は相変わらずなんだなwwwwwwお前ユウナの爪の垢煎じて飲めと
ほんと描写うまいね貴方は、議長は本編でも単なるスケープゴートになってるから能力低下しても毒が抜けていいと思うよ
GJ!ゆっくり休んでくれ
隻腕少女書いてる者です。
今見直したら、単純なミスがひとつ。
>>321 ウナトのミドルネーム、「エマ」でしたね。
なんで打ち間違えてるんだろ……「セナ」ってむっちゃ語呂悪い…… orz
>>315の書き込みを見て頭の中でいろんなマユが会議室で対談してるのが
浮かんだ。
>>マユ―隻腕の少女―作者様
以下の部分は、まとめサイトでは修正しました。
>束縛→拘束
あと今回投稿されたものは第4話で、次回は第5話です。
>>他の作者様へ
誤字脱字などの修正は、指摘下さればいつでも修正します。
>>議長
池田秀一氏でもっているようなキャラですね。
果たしてこのスレの議長の運命は?
>>本編
早く終わってください。
気になるのは、ミネルバの連中のみですから。
しのはら版で凸の股間を握るカガリを見たマユの脳内・・・
すげすげーすげー!やっぱアンタすげー!
冒頭のシーンは声に出して笑いましたww
シンも出てきたし、いいな原作と立場同じでも暗さの強いシン
黒マユ完成。
今まで概要を書く、いわば次回予告的なスタイルでしたが
今回は時間があったので小説スタイルです。
今までよりあんまり黒くない。
オーブ官邸ではセイラン親子が善後策を講じていた。
「我がオーブもある程度の被害を受けたか…これでは、民衆もザフトへの制裁を望むだろう」
ウナト・エマ・セイランが悩ましげに言った。
「困った物だ、オーブのルールは常に何よりも自国の安全を優先する…他国の争いを脇で見ながら発展する。
そのための裏工作をするのがセイラン家であり、サハク家なのにねぇ。仕事が増えそうですね、これじゃ」
ユウナ・ロマ・セイランが独特のしゃべり方でのんびりと言った。
「そうだ…せっかくそれを勘違いしたウズミの馬鹿者が死んでくれたというのに。
ギナも死んでしまうし、先が思いやられる…」
「まぁまぁ父上。連合に対しては表面上だけ取り繕えばいいのですよ。
僕らにはプラントへの切り札があるでしょう?議長殿がお喜びになる、とっておきのプレゼントがね」
そう言って、ユウナはモニターの電源を入れた。
そこには暗い監獄と、そこにいる少年が写される。
彼の名前はシン・アスカ。
だが、彼の顔には、何の表情も浮かんでいない。まるで、死んだ魚のように。
機動戦士ガンダムS-DESTINY 影の少女 オーブでの一幕
ミネルバは、何の障害もなくオーブ近海までたどり着いた。既に入港許可も出ている。
カガリはひとりその甲板から、自分の国を眺めていた。
「帰ってきたのか…何もできずに!」
思わずそう愚痴を垂れる。先ほどまで艦内で見ていた放送を思い出したのだ。
ミネルバ艦内のテレビに、一人の男が映っている。
「ご覧下さい!この惨状を!」
ブルーコスモス新盟主、ロード・ジブリールが地球の各地へ向けて演説を行っていた。
彼の背景に写る写真には、ユニウスセブン落下による被害を受けた人々の写真が映し出されている。
「世界各地で、このような事を見ることができます…それほどの悲劇です!
被害者は十万を越えるとの報告すら入っています!なぜ、このような事態になったか!
それは、あの宇宙(そら)にコーディネイター共がいるからです!」
ジブリールは最後の一行を大声で、かつ腕を突き上げながら言った。
「このような惨劇を引き起こした奴らを、放置して置くわけにはいきません!
奴らはいつでも地球を滅ぼせるのです!こちらが殺らなければあちらが…」
そこまで聞いたところで嫌になって、カガリはその声が聞こえない場所へ逃げ出した。
大西洋連邦、ユーラシア、プラント。諸国を巡った結果がこれだ。
「このままじゃ、またザフトと連合が戦うことになってしまう…」
「そんなこと、心配してる場合ですか?」
「え?」
声がしたほうを振り向くと、マユが挑戦的な目つきで立っていた。
「オーブにだって破片はいくらか落ちたんでしょう?そっちを心配するのが筋じゃないんですか?」
「な、マユ?そりゃ、そっちだって心配だけど…」
「それに、オーブだって今回は中立というわけにいきませんよ。被害を受けたんですから」
「だ、だけど、オーブはいつだって中立で…平和の形を示して」
カガリはとまどっていた。当然だ。
彼女はマユは明るい、普通の女の子だと思っていた。マユに疑念を持っていたのはアスランだけだ。
こんな厳しい言い方と目つきをする子だとは思っていなかった。
「世界平和のほうがオーブより大事ですか。あなた達にとって、オーブは何なんです?
世界を平和にするためのモビルスーツと兵士の生産工場ですか?」
「ち、違う!世界が平和になればオーブも平和だろ、だからオーブはいつだって中立で・・・」
「そうやって、連合にまたやられるんですか?あたしのような、孤児を量産するんですか?
どこまでも無能ですね、あなた達親子は」
「お、おまえ!」
カガリが怒りのあまり顔を紅潮させたが、マユは涼しい顔で続ける。
「オーブ一国平和にできない無能に、世界が平和にできるわけないでしょう。
理想を語りたいなら…いえ、『騙』りたいなら宗教でも作ったらどうです?」
「!!!」
「マユー!?どこ行ったのー!?」
カガリがそれに反論しようとした瞬間、遠くからルナマリアの声が響く。マユは思わず舌打ちした。
自分の本当の性格は、ルナマリアには見せられない。本当はこの馬鹿女にも見せる気は無かったが、あまりに腹が立ってついやってしまったのだ。
「ふぅ…あたしもまだまだ子供ね。じゃ、さよなら」
明らかに子供の姿でそう言って、マユは立ち去った。
カガリにできることは、ただそこで呆然と立っていることだけだった。
ミネルバはオーブの港に入港し、カガリとアスランはオーブへ戻っていった。
「やっと…といったところかしら。これからも大変でしょうし…」
そうぼやきながらもタリアは艦長席で伸びをした。ブリッジには彼女とアーサーを除いて誰もいない。
クルーの大半には休息のため自由行動を与えているが、彼女は艦長である以上そうそう艦を離れるわけにはいかないのだ。
ため息を吐きながらも副長のほうを見ると…席で居眠りをしていた。
「…アーサー。居眠りしてないでちゃんと」
「艦長?あの、いいですか?」
いつのまにかブリッジに入ってきたルナマリアが、所在なさげにタリアに話しかけた。
「ん?どうしたの」
「マユと一緒に行こうと思ったんですけど部屋にいなくて。少し艦内カメラの記録を見てもいいでしょうか?」
「ああ、それなら私がやるわ。ただじっとしているのも飽きたしね…どうやら射撃場にいるみたいよ」
「ありがとうございます、艦長!」
そう言って走り出すルナマリアを見て、タリアはため息を吐いた。
「ホント、マユに入れ込んでるわねルナマリアは。
死んだ妹の代わりを求めるのは彼女の勝手だけど…戦場では少し危ないんじゃないかしら?」
「…行かない」
「えー、行こうよ!せっかく故郷に戻ってきたんじゃない!」
ここはミネルバの射撃場。マユはここで一人、射撃練習をしていた。
ルナマリアは一緒に遊びに行こう、と提案したのだがマユはそれを拒否したのだ。
「故郷だから、行かないの」
そう言ってルナマリアを振り向かず、射撃練習を続けるマユ。
その態度にルナマリアは少しムッとした。
「なんか最近、怖いよマユ。どうしたの?」
「…どうもしてないよ」
「なら行こうよ」
「行かない」
「行こうよ!ね、面白いところ案内してよ!」
「…分かったよ、行くよ」
マユはため息を吐きつつ、折れた。一つの条件を出して。
「そのかわり、私に付いてきて。一つ確認したいしたいことがあるの」
「…くそっ!」
イライラしながらカガリは廊下を歩いていた。何もかもが腹立たしい。
ユウナのヘラヘラした態度、ウナトの偉そうな態度、マユの賢しい態度。そして…自分の無力さ。情けなさ。愚かさ。
拳を握りしめながらアスランの部屋の前に立った。愚痴でも聞いて貰おうと思ったのだ。
「おい、アスラン、いるか?」
「カガリ?ちょうどいいところに来た。見せたい物があるんだ」
「え?見せたい物?」
そう言ってカガリは部屋に入る。アスランはパソコンの前に座って手招きしていた。
「これを見てくれ」
「これは…デュランダル議長からのメール?」
『お久しぶり…というには、日が経っていないかな。
ともかく、用件だけ言おう。
ユニウスセブンの落着で、地球ではブルーコスモスを支持する者が多数出ているようだ。
更にまずいことに、新型MSの強奪、条約違反のミラージュコロイド使用艦の出現でザフトの世論まで過激になっている。
ユニウスセブンを落としたザラ派テロリストを支持する声まで出てきているのだ。自然、ザラ派も台頭しつつある。
そこで、君の力を借りたい。
パトリック・ザラの息子である君が演説をすれば、ザラ派に大きな影響を与えることができる。
既にこちらに来ているラクス・クラインと共に演説すれば、その効果は更に絶大だ。
君の立場は分かっている。だが君の故郷のために、プラントに住む一個人としてよい返事を願う』
「ラクス!?ラクスがプラントに来てたのか!?ずっと行方不明だった!」
「ああ…らしいな」
興奮するカガリ。当然だ。ずっと行方不明だった友人が見つかったのだから。
だが、アスランの表情は対照的に重い。
「どうした?アスラン。行く気になれないのか?」
「いや、行きたいさ。父の残した置き土産を俺が消せるんならそうしたい。
プラントの内情も知りたいし、ラクスにも会いたいしな…キラもいるかもしれない」
そう言いながら、アスランはマユの姿を思い浮かべた。彼女の裏に、何か後ろ盾があるとすれば…
それはプラントだけではない、世界の危機だ。それを探るのもいいかもしれない。しかし…
「だが…オーブは連合と同盟を組むことに決まったんだろう。俺がプラントに行っていいのか?」
「な、なんで知ってるんだお前!?」
「ユウナに聞いたよ。まだ君が不満だったら俺が説得しろだとさ」
「あ、あいつ!」
憤慨するカガリだったが、アスランはやはり冷静だ。
「確実に疑われるだろう。下手をすれば連合に攻められかねない…」
「ああ、それは問題ないよ、アレックス」
「な、おまえ!?」
二人が振り向いた先に、開けっ放しだったドアから入ったユウナが立っていた。
「あいつ呼ばわりとはひどいねぇ、カガリ。
それはさておき、アレックス。ちょうどザフトにプレゼントしたい物があるんだよ。
そこで民間機に偽装したシャトルを用意したんだが…君もそれに乗せてあげよう」
「ザフトにプレゼントォ!?」
「…何のつもりだ?連合との同盟を推進したのはセイラン家だろう?」
「そりゃあもちろん、ザフトとのパイプを残しておくためさ。
こうすれば連合が勝ってもザフトが勝ってもオーブはいい待遇を受けるだろう?
理想を語るだけじゃ、国は守れないからね」
素っ頓狂な声を上げたカガリと疑わしげなアスランの視線を気にもかけず、いつも通りの軽い調子でユウナは答えた。
「ただし乗る場合、積み荷は絶対に見ないという条件付きだがね。どうする?」
「おい、どうするんだ?」
「俺は…」
マユとルナマリアは、ある豪邸の前に来ていた。
その豪邸は規模こそ大きいものの庭は草が荒れ放題であり、主がいないことを物語っていた。
「ねぇ、マユ…ここって?」
「あたしの『元』家」
「え!?」
驚くルナマリアをしり目に、マユは指紋照合式の鍵を開けてその家に入っていく。
ルナマリアは戸惑いながらも、マユに続いた。
「中は思ったより荒れてないのね。やっぱりみんなアスカ家の一族を捜してたのかしら…馬鹿らしい」
マユは笑みを浮かべて言った。そんな人々を嘲笑するかのように。
「マユ…あなたって、実は結構なお嬢様だったの?」
「結構な、なんて物じゃないよ?なんせ…アスハ家とは親戚関係にあるんだから」
「え、ええ!?」
また驚くルナマリア。マユはため息を吐いた。
「昔、オーブに兄弟がいたそうよ。
そしてその片方は政治家としてオーブの建国に尽力し、片方はモンゲレーテの原型の会社の幹部として尽力した」
「それが…アスハ家とアスカ家?」
「ええ。二つに別れた時点で名字を変えたらしいよ、ご先祖様は。もっとも一文字しか違わないけど。
その後もアスハは公の主導者として、アスカは民の主導者として活躍していった。
そんなわけでこの二つの家はしょっちゅう政略結婚したそう。私のお兄ちゃんも、カガリと婚約する案が持ち上がってたんだから」
「へぇ。でも何でそんな家が…その…」
「こうなったか、って?簡単よ。政府の命令でアストレイシリーズを密造したのが、連合にばれちゃったの。
アスカ家はその責任をとらされて、モンゲレーテをやめさせられた。
アスハ家は復職を約束したけど…それが命取りになったのね。
オーブが攻められたときアスカ家は、モンゲレーテ社にあるシェルターに入ろうとした。実際入れるはずだった。アスハに許可を貰っていた。
だけど、モンゲレーテ社に入れなかった。社員じゃないからって。理由は知らないけど、政府の手違いかな。
ともかく、あたし達は他のシェルターに走るしか無かった…そして」
「い、いい!いいよ、マユ、もう!ごめん、聞くべきじゃなかったよ…」
暗い顔で話すマユを見て、ルナマリアは慌てていった。
「別に気にしなくていいよ。あたしだって前にルナ姉ちゃんの親や妹が死んだときの話を聞いたし、これでおあいこだよ」
「だけど…私とマユのケースは全然違うよ…」
「…そう。だから来たくなかったんだ、こんな国。許せないもの。
私は家族みんなが死んだあと、できるだけの資金を持ってザフトに移住して、金を使って軍に入れさせた。
自分の身を守れるように。誰もあたしを傷つけられないように」
そう言うマユの目は、冷たかった。ルナマリアにできることは、ただその場に立っていることだけだった…。
これで終わり。
次回はキラ&ラクス登場。
この2人は本編と別設定になってるので、そこに結構スペースとられるかも。
>335 今回はコメディだったが次回は修羅場だなw
> >>本編
> 早く終わってください。
まとめの人ヒドスwwww
本編を擁護するわけじゃないけど、
一応、本編あってのこのスレですからね。
346 :
しのはら:2005/09/18(日) 08:49:52 ID:???
第三十話投下します
他職人様乙&GJ!
347 :
しのはら:2005/09/18(日) 08:58:52 ID:???
ミネルバに接近する二十機のムラサメ。黒と白に塗り替えられ、対艦ミサイルを装備していた。
「ムラサメ隊からこちらへの連絡は?」
メイリンが何度も呼びかけるが、全く音沙汰無い。
タリアは不信がり、一応MSに待機命令を出した。
「タリア艦長、私が直接行ってくる」
「了解しました。マユ、アスハ准将の護衛を」
カタパルトからインパルスと赤いムラサメが飛び出す。
モニターでその様子を見ていたアレックスとルナマリアは他の誰よりも早く異常に気付いていた。
「出迎えに来る機体がどうして対艦ミサイルを積んでる!」
348 :
しのはら:2005/09/18(日) 09:07:32 ID:???
オーブ軍本部。
ユウナ・ロマ・セイランは判断を決めかねていた。
「カガリを撃てというのか?」
確かにセイラン家はジブリールと結託し、政権を奪取した。オーブの条約離脱で煮え湯を飲まされたジブリールは「必要な犠牲」としてミネルバ及びカガリの抹殺を要請したのだ。
「攻撃隊は準備完了です。ご支持を」
ユウナの背中に悪寒が走る。
ジブリールとの契約は大事だ。だが未来のオーブを背負える唯一の存在を殺すことなど・・・。
ユウナは自分の不甲斐なさを呪った。
自分は後ろ盾がなければ、何もできない。
「ご決断を」
視線が痛いほど突き刺さった。
ユウナは大きく息を吸う。
「攻撃開始。ミネルバ及びカガリ・ユラ・アスハの存在を消滅させろ」
349 :
しのはら:2005/09/18(日) 09:17:35 ID:???
ムラサメ隊が編隊を二つに分けた。
一隊はミネルバに、もう一隊はカガリに襲いかかった。
「危ない!」
迫り来るミサイル、マユが間に入った。すぐに二機は反撃を開始する。
「どうなってるんですか!?」
「あのセイランのもみ上げ野郎だ!」
レジェンドとザクファントムが加勢、ミネルバへ放たれる対艦ミサイルを落としていく。
「左舷にミサイルが突き刺さりました!」
「不発弾ですかね、艦長」
「違うわ。時限弾頭よ」
機関部にミサイル命中、ミネルバの味が遅れ始めた。
オーブ艦隊は全く攻撃を受けていない、つまり目標はミネルバだけだ。
「オーブ艦隊司令トダカ一佐に伝えて、本艦は一時後退します!」
350 :
しのはら:2005/09/18(日) 09:18:41 ID:???
投下終了です
あと二話あたりでストフリ出てきます
ではノシ
そーいやさ。
ステラの正体が、改造されたマユ、って説。一時期あった気がしたが。
その設定で誰か書かないかなー。
しのはら乙
なんかドロドロしてきたな
age
>>351 え?
ステラの正体って改造されたアサギじゃないの?
355 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/18(日) 14:19:59 ID:46FkuoeY
>隻腕の少女作者さま
GJ!!ユウナが超カッコ良いですよ!無理に背伸びしてないし、
「等身大」の魅力と「先を読む洞察力を持つ」指揮官としてのカッコ良さが
渾然一体で人物像に厚みがあります。しかし『シスプリ』を知らずに『お兄ちゃん』
を書き上げるとは・・・やはり『運命』でしょうね^^;
最後に・・・『ミネルバのシン』が少女にどのような変化をもたらすのかは・・・
こう御期待!!ですね?
「・・・・・・・・・・。」
マユはもの凄い不機嫌だ。
おそらく、ラボの調査に置いてけぼりにされたせいだろう。
しかし、あんなところをとてもじゃないがマユに見せるわけにはいかない。
オレは艦長と相談してとりあえずどんな施設だったかをマユに説明するだけ
にしておいた。
しかし・・、それにしても不機嫌すぎである。
腕に抱かれたシンハロがミシミシいってる。
『ダレカー!!ヘルプミー!!』
嗚呼、哀れなハロ。しかし今はあの施設のせいでかなりブルーなのでだれに助けて
くれない。
「やったー!!ドムドムキャンペーンに当たったーー!!ブラックショルダー!!」
いや、一人ブルーじゃないやつがいた。アキラだ。
なにやら調査の時基地から来た輸送船に荷物が届いたらしい。
「あー、ACも届いたし・・・・。今日は運がいいなぁ!!」
・・・・・いや、むしろあの施設のことを考えないように必死らしい。
「マユちゃん、アドチルみる?確かFF好きだったよね?」
アキラはそう言って届いた映像ディスクを見せた。少しマユが反応する。
「・・・・・・見る。」
「うん、じゃあ皆でみよっか。」
そう言ってアキラがプレーヤーを持って来ようとすると、突然警報がなった。
『コンディションレッド発令!!アビス、ガイア、カオスがこちらへ向かって
きています!パイロットは各自急いで搭乗してください!!』
「ネオが・・・悪い事にザフトがって・・・。」
それを聞いた瞬間、アウルの顔つきが変わる。
「母さん!!」
アウルは格納庫の方に向かう。
「アウル!!」
急いで俺達は追いかけるが、普段よりアウルは早く走る。
「母さん・・!!母さん・・・!!」
アウルは自分がブロックワードを言っていることも忘れていた。
いや、正しくはブロックワードによる縛りが薄くなっていたのだろう。
走るアウルの胸には、二つのロケットが輝いていた。
「ハッチを開けろ!!!開けないと吹き飛ばすよ!!」
「ステラのセリフー!!」
スティング達が追いついた頃にはアウルはアビスに乗っていた。
そして、とうとう格納庫の壁を打ち破って出撃してしまった。
「ちっ!!俺達が後を追う!!ゲンは残っててくれ!!」
「何で?!」
スティングに反発するゲン。
「お願い・・・・ネオ・・・守って。」
「うん、解かった。」
しかし、ステラの声にあっさり承諾する。
「これね・・、お守り。ゲン持ってて。」
そう言うとステラは銀のロケットをゲンに渡した。。
「ステラ・・。」
「ステラ、帰ってくるよ?」
寂しそうな顔をするゲンにそっと触れるステラ。まさしく狗と飼い主。
そして、ステラはスティングと共に出て行った。
あれ・・、なんか俺が一番ヒロインっぽくないか?
ゲンは思わず自分に心の中で突っ込む。そして、ステラのロケットを開けた。
すると、そこには楽しそうに笑う三人と一人の少女。
「・・・・・・・・・・俺だけ仲間はずれだ・・・・・。」
おい!!マユはどうした!!マユは!!
byゲンの中に少し残っている『シン』
転載。
>236 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/18(日) 19:35:14 ID:???
>402 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2005/09/17(土) 14:07:04 ID:???
>こんなん作ってみたが、どこに上げたらいいのかわからんので、ここに上げてみる。
>
ttp://sakuratan.ddo.jp/up/src/up0483.zip >パスは「3baka」
>358 み、見れないorz
どんな画像?
>>358 なんでここに張るのか分からんが、激カッコイイなw
マジでカオスのプラモ欲しくなってきた。
マユ主人公スレでもこういう系統の技術持った方はいないんだろうか……
いや、居ても今度はマユの元画像が限られるか……。
>>360 ファントムペイン3人を主人公的に魅せてくれてる動画
絵は既にあるモノの切り貼りなのに、曲と合っててマジかっこいい
>361 トンクス
しのはらタソルナマリア主人公スレ進出おめ
363 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/19(月) 00:19:32 ID:is/OBDxl
>しのはらさま
GJですよ!凸の股間を握る姫様がもう最高!!思わず想像してしまいました^^;
本編の姫様もこれくらい男勝りなら充分魅力的なのだが・・・
364 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/19(月) 00:19:47 ID:j50Z1021
MADか・・・作り方は知ってるが、以前晒された(よな?)マユ主人公的MAD以上のを作る自信はないし材料も無い。
まあマユで作るのは辛いだろ、そもそも材料が少なすぎるし
age
>>338-342 もうちっとだけ無闇に黒いマユで引っ張ってほしかったかも、
名字が似てる理由を解釈したのは面白い
本編は何も考えてないだろうし
>363 すっかり股間握りキャラだな、カガリw
なんだかんだで好き
>369 しのはら版カガリに激しく萌える俺ガイル
カガリタソマラ掴んでくれ(;´Д`)ハァハァ
『−−−−−♪』
あの連合のパイロットのことでマユが落ち込んでいると言うのに、ハロは
上機嫌だ。どうやらアビスらがこちらに戻ってきたかららしい。
『みんな、揃うのは久しぶりだな♪』
「楽しそうだな。」
アスランがそんなハロを見て声をかけた。この二人(?)は機械のことでよく
話が合うので本編のシンとアスランより遥かに仲が良い。
『そりゃあそうですよ。今まで離れ離れになってた兄弟がようやく再会できたん
ですから。』
そう言ってセカンドシリーズを見渡すハロ。
「・・・まるでMSに心があるみたいな言い方だな。」
『・・・・まぁ、俺は機械ですから、なんとなく機械の『言葉』みたいなのが
わかるんですよ。』
ハロはそう言ってMS達に話しかけた。
『セイバー、そんなに怯えなくても大丈夫だって。皆いいやつだから。
そりゃあお前は一人だけテスト期間がなくて他の奴らと面識がないけど・・・・。
インパルス、お前が仲介してやれよ?あ、アビス。インパルスをいじめるなよ?
お前らそんなに仲は良くないけどさ・・・。あー!!笑うな!!グフ!!』
まるで本当に会話してるかの用に話すハロ。いや、本当に話しているのかもしれない。
アスランはそんな様子をみて思った。
今までの自分の愛機はどうだったのだろうと。
兄弟であるストライクと戦わされ、最後には自爆したイージス。
そして仲間を裏切り、やはり兄弟と戦い自爆したジャスティス。
そう思うと、少し切なくなった。
『あ、あの人?あれだよ・・、噂の『自爆のアスラン』。おいおい、そんなに怖がるなって』
・・・・え?何?異名までついてるの?
アスランは心の中で呟いた。
二つ名吹いたw
「・・・あんたが、連合のエクステンデッドだったんだ・・。」
マユは眠るアウルを見て呟いた。
「ん・・・。」
「あ、気がついた?」
マユが気がついたアウルに話しかけると、その瞬間飛びかっかてきた。
しかし、その瞬間、またアウルはやってしまった。
ラッキースケベ、再び。
「何回やれば気が済むのよーーーー!!あんたは!!」
マユの攻撃!!
「なっ!!何回って何の事だよ?!」
アウルはマユのことを忘れている!!
「何ですって・・、人の胸を二回も触っておきながら・・・。」
「触ったって胸だって解からねえよ!!」
シュゥゥゥ・・・・・・・パリーン。
「ミギャァァァァッァ!!誰か助けてーーー!!」
「自業自得だよねー。ステちゃん。」
「ねー・・、ルナちゃん。」
ステラとルナマリアがクスクス笑った。
「ステラてめー!!何馴染んでんだよ!!スティングー!!」
「上司は仮面だし・・・、アウルもステラもゲンもちっとも言う事聞いて
くれないし・・・・っ!!」
「解かるよ・・、俺の昔も上司も仮面だったし、部下も言う事なんかこれ
ぽっちも聞いてなかった・・・・。」
「アスラン!!」
「スティング!!」
スティングは同じ苦労人であるアスランと親睦を深めていた。
「誰か助けろよ!!もう嫌だー!!げぶらぁっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・(種割れ中)。」
アウルはこの後パンチでマユのことを思い出したとかなんとか。
久々に保守、昔の(AA略
しのはらマダ〜
377 :
しのはら:2005/09/20(火) 16:48:31 ID:???
第三十一話投下します
過疎ってるorz
378 :
しのはら:2005/09/20(火) 17:01:37 ID:???
ムラサメ隊から攻撃されたミネルバとオーブ艦隊は領海を離れた。
オーブの修理艦がミネルバに応急処置を施している間、タケミイカズチに通信が入った。
ユウナ・ロマ・セイランである。
「こちらはオーブ首長国連邦首長、ユウナ・ロマ・・・」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよこの野郎!」
カガリは手に持っていたボトルをモニターに投げつけた。
トダカやアマギは一瞬眉を潜めたものの、彼女の行動には納得していた。
「さっきは危うく殺されかけたよ。どういうつもりだ?゛代表首長殿゛」
ユウナは毅然とした態度で言う。
「我が国は大西洋連邦と再び同盟条約を締結します。カガリ・ユラ・アスハ准将はそれに反対する危険分子であり、今の世界情勢を作り出した張本人だ」
カガリは呆れを通り越して、笑みすら浮かべていた。
「ユウナ、お前はコメディアンの才能があるらしい。本当に一人では何もできない男だな」
「何だと!僕を侮辱するのか?」
「最初は父親、次はサハク、今は誰だ?当ててやるよ、ジブリールだ」
379 :
しのはら:2005/09/20(火) 17:23:59 ID:???
ユウナの顔に焦りが浮かび、呂律が回らなくなる。
「何を言ってるんだよカガリ?」
「とぼけるなよクソモミアゲ」
カガリは語った。世界中の反ロゴス討伐運動の中逃げ出したジブリールの行方はなかなか掴めなかった。
しかし一週間ほど前にサハクからジブリールがオーブにいるという情報が入り、ジェスやミリアリアといったジャーナリスト、傭兵からもその知らせは入ってきていた。
「決め手になったのはジェスとかいうカメラマンが撮った写真だ」
カガリはオーブ兵に護られているジブリールの写真を取り出す。
「あの男、顔に似合わずやり手だな。誰かと違って」
ユウナは取り乱し、回線を切る。カガリはそれを見て、苦渋の表情を浮かべた。
「事実だったとはな・・・。トダカ一佐、オーブ全域に対する警戒は怠らないでくれ」
最後に彼女は感情を押し殺すように言う。
「ロンド・ミナに連絡。゛攻撃する自由が必要だ゛と」
380 :
しのはら:2005/09/20(火) 17:26:08 ID:???
今日時間ないのでこれだけ・・・
マユ出てないorz
>ほのぼのマユデス作者様 ハイネ隊の名前を使いたいんですが・・・
「おい!!お前ら!!今をときめくしのはらさんが名前を使いたいってよ!!」
ハイネの言葉に全員食べていたうどんを吹いた。
「えぇっ?!しのはらさんが?!」
口にワカメをつけたまま話すカルマ。
「ああああああああ!!なっ、何かの間違いじゃないのか?!」
ジョーは歯にねぎが挟まったまま騒いだ。
「いや、本当だ。てゆーかお前ら名前だけだぞ。お前らの性格そのまんま
使えるわけないだろ?」
と、いうわけでしのはらさんどうぞ!!
382 :
しのはら:2005/09/20(火) 19:29:56 ID:???
>381 >ほのぼのマユデス作者様 ありがとうございます
最終決戦(予定)の月で登場させたいと思います
>371 しのはら版カガリは井上喜久子ボイスなんだよな・・・
ザ・ボス
しのはら版はあっさりしてるんだが、一つ一つの台詞に妙な切れ味がある
○月☆日
連合のエクステンデッドがうちに来た。
薬がないと生きていけないのだが、こないだ見つけたラボからこっそり
かっぱらってきたので大丈夫。
扱いについては下手に機密情報をはかせようとするよりマユ・アスカなど
に自然に聞き出してもらうと言うことをハイネ・ヴェステンフルスが
フェイス権限を使って決めた。アスラン・ザラもこれを承認。
それについてのレポートをまとめる。
『スティング・オークレー』
リーダー格、それゆえ苦労も多くアスラン・ザラと仲が良い。
結構礼儀正しいのでミネルバクルーの信頼も得ている。
が、機密情報は決してもらさない。
あだ名は『オクレ君』
薬の汚染度は弱。
『アウル・ニーダ』
やんちゃ坊主。子供っぽいところはあるが、戦闘能力には目を見張る物がある。
なにやらマユ・アスカといい雰囲気。これからわくわく。
薬の汚染度は中。
『ステラ・ルーシェ』
萌えっ子。天然。甘い物が好きな普通の少女のようだが身体的な戦闘能力
はこの中でトップである。なにやら声がハイネ・ヴェステンフルスの
好きな声優と似ているらしく、しばしば餌付けしようとしている姿が見られる。
薬の汚染度は強。要注意。
とりあえず、本日の報告はここまででソキ・・・・おっと。
では。
しのはら版カガリは十年ほど経ったら、ヘルシングのインテグラのようになってそうだな。
>386 とりあえず本編に比べれば安心してオーブを任せられる
ま、オーブ首長としたら、キラに
「オーブが無事なら、それでいいの?」って言われたときに
「オーブ首長として答えよう。YESだ」
ぐらいは言ってのけないと話にならんのだがな。んでもってルージュでAAとサヨウナラでオーブに逆戻り。
っつかそもそもユウナとの結婚も黙って受け入れるか「国と結婚してるから」ぐらいのことを言うかしないと・・・あぁぁ脚本がマズいんだよ種死!嫁!
しのはら版を最初から呼んでたら神楽っていうオリキャラ出てた
どう思うよ
>「オーブ首長として答えよう。YESだ」
何その元首みたいなカガリ
むしろ、しのはらカガリ対黒マユがみたいw
「このままじゃ、またザフトと連合が戦うことになってしまうか…」
「そんなこと、心配してる場合ですか?」
「ん?」
声がしたほうを振り向くと、マユが挑戦的な目つきで立っていた。
「オーブにだって破片はいくらか落ちたんでしょう?そっちを心配するのが筋じゃないんですか?」
「ふ、そんな一時的な被害など多寡がしれている。戦争は継続的なものなのだ。中立といえどその被害は甚大なものになる」
「でも、オーブだって今回は中立というわけにいきませんよ。被害を受けたんですから」
「オーブはいつも中立で平和の形を示している、とでも言わせたいのか?この私に」
カガリは自虐的に嘲笑する。
しかしマユにはその嘲笑が許せない。
「なるほど、つまり最初からオーブの国民の平和を守る気は無いと、
オーブという『名前』を守っているだと、そういうことですね」
「これは手厳しいな。名はその存在を示すものだ、といったところか。」
「そうやって!舌先三寸で話をはぐらかして、騙して、戦争に負けて、あたしのような孤児を量産するんですか?
どこまでも無能ですね、あなたは」
「そうかもな・・・・・・。」 カガリは一呼吸おいて叫んだ
「だが!無能だとしても、ペテン師と罵られようとも!私は自分に出来る事に全てをかけるだけだ!・・・・・・それが」
「マユー!?どこ行ったのー!?」
カガリが言葉を続けようとした瞬間、遠くからルナマリアの声が響く。
「ふ……私もまだまだ子供ということか」
「それはお互い様でしょう。ではあたしは行きますね、『准将』殿」
マユはそういい残してルナマリアの方に去っていった。
パッチワークで作っちゃった。今は反省している。
>391 しのはらカガリはトレーズ閣下並の大物だからなw
そしてGJ!
この件についてのやりとりは、むしろ黒マユと隻腕マユでマユマユ対決して欲しいところだw
も少し隻腕の方が進まんと形にならんけど
>392 しのはらカガリにはマラ掴みという最強武器があるしな
同じ馬鹿でもしのはら版はすがすがしい
個人的に、しのはら氏のその行為だけは受け入れられない俺がいる、悪ノリ杉という気がして
てか放映できんだろそんなものw
>395 つヤザン
>395 負債版の方が放送できん
「・・・・・平和だなぁ・・。」
アスランは、グリーンティーを飲みながらしみじみ言った。
「まったくですね。」
そういって同じようにグリーンティーをすするレイ。
ちなみに後ろではスティングとハイネが歌合戦をしている。
『一年に一度のスペシャルデイ♪』
『生足魅惑のマーメイド♪』
なんかオーラがすさまじいが、アスランとレイはそれを必死にシャットアウト
してる。
「でさー、虎の○に予約にいったらさー。公式通販でまたサイドサイドマテリアル
付くっていうじゃない。もーがっかりでさー。」
『俺なんか直接自分をネットにつないで予約したぞ。』
「おっ!!流石アンドロイド!!ところで飛翔まだかなぁ?」
アキラとハロがなんかつらい会話をしてるがアスランとレイはやはりそれを
必死にシャットアウトしてる。
ギュワワワーーーーンッ!!
「お、お前筋いいじゃねぇか。」
「マジ?!」
「うん、初心者なのにここまで出来るのはコーディネーターでもそういないよ。」
「ほんとにすごいねー、アウルは。」
むこうでは爽やか三組・・じゃなかった爽やか三人組がアウルにギターを
教えている。ちなみに騒音はそうとうなものだ。
それもアスランとレイは必死にシャットアウトしている。
そんな静かな夜で待っていたい二人に安息は訪れなかった。
みんなー!!」
向こうから走ってきたのはステラだ。しかし、いつもの彼女とは少し違う。
彼女が着ていたのは・・・メイド服だ。
「ステラァ?!何着てんだお前?!」
アウルは思わずステラに駆け寄る。
「あのね・・、グレイシアがお洋服いっぱいみせてくれて・・・着ていいって
いったから・・・。」
そう言ってくるくる踊るステラ。
「ステラ似あうよねー。」
そう言って出てきたのはマユ。彼女が着てるのは・・セーラー服だ。
『マユゥ?!』
駆け寄るシンハロ。
「どうー?シンハロのデータにはあるっけ?私の受験について。」
『もっちろん!確かマユ。小学校受験でセーラー服の学校受けたんだけど
落ちちゃったんだよな・・・。』
シンとして思い出を語り始めるシンハロ。
「楽しそうねー。」
「お姉ちゃん・・、恥ずかしい・・・。」
そう言って出てきたのはルナマリアとメイリンだ。二人ともチャイナドレスだが、
メイリンは白のミニスカ。ルナマリアは赤にスリットだ。
「おー、孫にも衣装だなー。」
「ちょっとジョー?!それってどう言う意味よ?!」
「メイリンちゃん、恥ずかしいならスパッツとかはけば?」
「お姉ちゃんが許してくれなくて・・。」
「何それー?姉妹間セクハラ?」
爽やか三人組が姉妹に話しかける。
さて?ハイネ隊で一番騒ぎそうなアキラはどうしたのだろうか?
「ぐっ・・・・・!!」
「アキラ、アキラ。」
アキラは萌え死んでいた。
ぱしぱしと無表情のままアキラをビンタしている。気付けのつもりらしい。
いや・、どんどん強くなっている。ただのうさばらしか。
『アキラ!!』
おたく仲間のハロが駆け寄る。
「俺はね・・、ランサーのコスプレがしたかったんだ。」
『したかったって何だよ!!諦めるのかよ!!』
「うん、ランサーのコスプレは筋肉がついた方がいいから、俺みたいなやせひょろ
なおたくには無理だったんだ。」
『なら、安心してくれ。アキラの夢は・・・・。』
「理想を抱いて溺死しろ。」
『「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ?!」』
なにやら共有結界もとい自分達の世界にこもっていた二人(?)はハイネの一言で撃沈した。
え?今のセリフにどんな効果があったの?と言う顔をするその他の人々。
「教えてやる、これがバカを止めるということだ!!」
どこからか出した伊達眼鏡を光らせカメラ目線でハイネは言った。
「え?ハイネお兄ちゃんもそっちの趣味があったの?」
「いや、昔の後輩に好きな奴がいて、そいつに借りてたりしたんだよ。・・・・戦死しちまったけどな。」
「・・・誰なの?」
「ん・・、ミゲル・アイマン。ほら、黄昏の魔弾。」
「ミゲルーーーーっ?!」
マユとハイネの会話にアスランは絶叫した。
>ほのぼのマユデス
ていうか、前から思っていたけどこの板で何人が分かるんだよ、そのネタw
まあ俺は全部分かりますが。
色々な意味で境界線上を突っ走るあなたさまの作風をネットの彼方から無責任に応援させていただきます。
がんがれ。
403 :
しのはら:2005/09/21(水) 22:17:22 ID:???
第三十二話投下します
>ほのぼのマユデス作者様 いつも乙です いつかコラボやってみたいですw
>>401 「理想を抱いて〜」はスティングに言って欲しかったぜ。でもGJ!
405 :
しのはら:2005/09/21(水) 22:29:35 ID:???
「猫好きは宇宙へと上がる」
ミリアリア・ハウから一報が入った。
セイラン家の内通者からも連絡があり、艦隊でもシャトル発射の動きを掴んでいた。
カガリはタリアと協議した。タリアは一時的だが、今回のオーブ動乱を仲裁するザフト軍指揮官となっていた。
「とは言っても、ザフトの戦力は本艦一隻のみです。とてもじゃないが、オーブ軍と渡り合うことはできません」
「無論承知しているよ艦長」
カガリは立案した作戦を説明する。
「内通者からの情報によれば、敵のムラサメは輸出型のやつだ。正規軍の大半は今回の事件には関与せず、ブルーコスモス派が引き起こした」
カガリは笑って付け加える。
「全然中立じゃない」
再び作戦について話し始める。
「マユ、大気圏離脱の経験は?単機で」「二十五回です」
「違う。実際にだ」「三回・・・」
「それだけあれば立派だ。セックスも三回やれば身につく」
406 :
しのはら:2005/09/21(水) 22:38:36 ID:???
作戦はこうだ。
カガリとムラサメ隊が敵ラインを突破、議事堂とシャトル発進口を制圧する。ミネルバMS隊は敵のムラサメを抑え、もしシャトルが発進した場合はストライクブースターを装備したインパルスが追跡する。
インパルスは各部にストライクの設計が生かされ、一部のオプションが利用できる。
作戦が開始され、艦隊からMSが飛び立っていく。
「あの、アスハ准将」
「なんだマユ」
「・・・ディノ隊長とは、どんな関係だったんです?」
「無人島で熱い一夜を過ごし、互いのアレを舐めあった仲だよ」
赤面するマユに、カガリは言う。
「今となっては思い出したくもない忌まわしい歴史だ。それより、シャトルが飛び立った時は頼むぞ!」
「・・・はい!」
407 :
しのはら:2005/09/21(水) 22:46:12 ID:???
「私は何も約束していない」
「はっ?」
「いや、何でもない。シャトルを出してくれ」
シャトルに搭乗を済ませていたジブリールはさらりと告げた。
「しかし、セイラン親子を待たなくてよろしいんですか?」「たかだか七光り政治家が二人増えた所ではな。せっかくうるさい老人たちが核で消滅したのに、かなわんよ」
シャトル内に警報が鳴り響く。
モビルスーツが接近してきたのだ。
「・・・ネオ」
シン、いやネオはアイマスクを外し、シャトルを出ていく。ジブリールは彼を呼び止めた。
「高い金をかけて作った人形を三つも壊されたんだ。働いてくれ、シン?」
「私はネオですよ、お忘れ無く」
408 :
しのはら:2005/09/21(水) 22:51:13 ID:???
投下終了です
カガリはオーブ編で出番終わりになるとです
ではノシ
マユ ミネルバ内の自室にて
シンハロに、記録されている家族の想い出をみて涙。
写っている画像
両親を含めたアスカ一家の食卓の風景。
転んで擦りむいて泣いているところに手を差し伸べるシン。
泣きつかれた妹をおぶって歩くシン。
父と母と兄とマユが、四人で集合写真。
他にもいろいろな画像有り。
最近加わった物は、ミネルバのクルー達。
ルナマリア、メイリン、レイ、ヨウラン、ヴィーノ他
PS
他スレみて思いつきました。
記録装置をシンハロに、しました。
しのはら版のデスマユの絵柄は原哲夫。
主にカガリノせいで。
あとここで聞いていいかどうか分からんのですが無印種のときに
オーブの難民はどこに避難する予定だったのでしょうか?
>410 小林源文とかもイイ!
マジレスするとスカンジナビアくらいしか浮かばん。あとはプラントな?
しのはら版のOP曲決めるなら何にする?
エロい絵師、誰かしのはらにイラストを・・・
>>410 たぶん、オーブ領内の他の島。
攻撃受けてたのはオノゴロに絞られてたらしいし(後付けだけど)
>「戦乱に生きた女性たち」
>彼女たちのデスティニー
>ラクス「ついにカリスマ歌姫復帰へ」・・全世界に向け平和をアピール
>カガリ「一国の宰相としての道を歩み始める」恋よりも祖国再建を選択
>メイリン「アスランのためにすべてを捧げる」真の敵をしり戦いを決意
>ルナマリア「妹を失い、シンに癒しを求める少女」よりどころなき心をシンに託す
>ミーア「ラクスとしては生き抜けなかった悲劇」偽者になりきれなかった少女
>タリア「マリューーとの女艦長同士の死闘」軍人としての職務を遂行
マユも含めてうまく、改変できないでしょうか?
ラクスとカガリは、カット可
age
ところでしのはら版のルナマリアザクはファントムのパーツを使っているらしいが、どんな形なんだろうか
あとマグネットコーティングワロタ
age
『と、言う訳で今回もきましたよ・・と。』
「呼ばれて何のに出てくるとは流石だな、ハロ者。」
『まぁ、そう言うなレイ者。今回の疑問は『オノゴロの避難民ってどこに
いったんだよ?』だな。と、言う訳でデストレイカモーン』
ミネルバ型の置物からデスティニーアストレイが射出される。
『はい、確かユンの回想のシーンを出してくれ。一巻にある。』
「作者の手元にないのですまないがページは各自で探してくれ。」
『ここでジャンク屋のおっさんが言ってるな。『生き残った人は本土へ向かった』って。』
「うむ。つまり、この事から恐らく本島へ向かったのだな。」
『まぁ、あくまで推測だから、当てにしないでくれな。』
「ところで、このミネルバの置物どうしたんだ?」
『あぁ、金出してジャンク屋組合に作ってもらった。オーダーメイド。』
「何?ハロ者は金を持っているのか?」
『失礼だな、こう見えてもシン・アスカ名義でキチンと貯金もしてある。
株もやってるぞ。』
「いくら貯まってるんだ?」
『あぁ・・、大体三百億アースダラー・・。』
「結婚してください。」
『するか!!』
>419 キタ━━(゚∀゚)━━!!
しのはらとのコラボキボン!
>>412 しのはら版なら、戦国BASARAのOPにもなってるcrosswiseを推してみたい。
>>415 「戦乱に生きた女性たち」
彼女たちのデスティニー
マユ「手にした力、その重さ、背負いて初めてそれを知る」…少女が負うには重すぎる荷物、だが彼女は決して投げ出さない。
マリュー「答えを探して、長き航海は終わらない」…平和とは何のか?艦と共に終わる事の無い旅を続ける艦長。
ラクス「歌姫は再び歌う、戦場という名の舞台にて」…戦う事、戦い続ける事を決意し、歌姫は静かにステージに上がった。
カガリ「女性ではなく政治家として、伴侶となった国と歩む」…父の選んだ道、先人達の選んだ道、彼女もまた歩き始める。
メイリン「愛する人を追い、共に長き道のり進む」…理想を求めて歩く人、その傍らで彼を支え励ましていく。
ルナマリア「今度こそ失わない、厳然たる決意を胸に」… もう一人の妹を守るため、傷ついた心を休ませることなく立ち上がる。
ミーア「素顔を失い、名を失い、それが全てを奪い去る」…自己とは自分の全て、それを失った時彼女は全てをなくしていた。
タリア「母として軍人として、その責務を全うする」…軍人として戦う事、それが彼女が母として選んだ道。
AA組みが何か美化されてるけど、本編を出来るだけ素直に受けとった形で書いたのでご了承の程を。
ルナマリアはこのスレ初期のマユのお姉ちゃん案でいってます。
「ところてんには黒蜜だろ!!」
「ふざけないで!!ところてんには酢醤油よ!!」
ここはミネルバの食堂。アウルとマユが騒いでいるが、皆気にしていない。
この二人の対立はいつものことだ。
マユはうどん派だがアウルはそば派、マユはつぶあん派でアウルはこしあん派。
マユの初代ポケモ○は赤でアウルは緑。マユはカレーに醤油はでアウルはソース派。
サクラ大○をやればマユは帝都花組派、アウルは巴里花組派である。
「いつもよくやるわよねー。」
ルナマリアはデザートのハイネが作ったプリンを食べながらいった。
前までミネルバにデザートはなかったのだが、ハイネが。
『デザートを導入しろ、できないなら俺達が作る。』
というフェイス権限を発動したので、いまでは大体ミネルバの食事には
ハイネ隊が作ったデザートがついてくる。
「・・・・・・・v」
ステラはグレイシアの焼いてくれたクリームたっぷりのチョコシフォンにご満悦だ。
ちなみにところてんはきちんと天草をつかってアキラが作ったものである。
「てめぇ!!これだけ言っても解かんないなら・・。」
そう言って構えるアウル。
「上等!!かかってきなさい。オーブ総合格闘技大会、飛び入り参加の部優勝の腕前。見せてあげるわ。」
マユもそう言って構えた、ちなみにこの飛び入り参加の部は年齢を問わなかったりする。
食堂のアウルとマユの周りにはなんとも言えない濃厚な闘気がただよう。
「こら。女の子相手に何やってんだ。アウル。」
「マユもだ。まったく、そんなくだらない事で食堂を壊す気か?」
そこにきたのは苦労人コンビ、スティングとアスランである。
大人の余裕でアウルとマユを抑える。
「フーーーーーーッ!!」
「キシャーーーーーーッ!!」
・・・・二人ともケモノのように威嚇しあっている。
「ねー、どーする?って、キース!!またお酒?」
カルマがキースに話題を振るとすでにそこには真昼間からビールを飲んでいるキースがいた。
「あ〜、何?あの二人?じゃ、あれだよ、あれだよ。あれ。」
「あれじゃ解かねぇっつの。」
完璧に酔ってるキースに突っ込むジョー。
「『お題カラオケ?』」
キースの言いたいことを理解したのか一般人には聞きなれない単語を出すゼロ。
「そう!!それそれ!!」
バンバンとテーブルを叩きながら言うキース完璧に出来上がってる。
「あー、お題カラオケね。それならいいかも。」
アキラはガトーショコラを見て、思わず「ソロモンよ!私は帰ってきた!!」と言いたくなる
衝動を抑えながら言った。
「よし!!じゃあ、そこのお二人さん、あ、皆いた方がいいな。ブリーフィングルームまで
後で来なさい。」
ハイネはそう威嚇しあう二人に言った。
>421 神無月の巫女やシャッフルのもいいな
なんか上手く話がまとまりません……。
戦闘シーンがイマイチ……。
>424 どの作品?
隻腕デス。
話数の区切り方から見直すべきですかねェ……。
正直、今夜投入するつもりだったんですが。実に苦戦中。
>426 ガンガレ 待つぞ
またーりよろ>隻腕作者氏
>>426 時間かかっても
納得いくものを
書いてもらえれば
待つ方も本望
430 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/23(金) 10:10:02 ID:f79Y/bP5
>隻腕の少女作者さま
また〜りと待っています。焦らないで・・・
このスレで一番進んでるのって何?
ファントムペイン戦記と思う
そういや、最初のマユ種はどうなってしまったのだろう
アレックスとハイネが、AAからマユを奪還しにくるところで止まってるが
>432 あ、話の進行状況。最もクライマックスに近いやつ
一晩眠って起きたらもう筆が進む進む。
ワンアイデア追加で一気に形になりました。
少し愚痴って脳みそ切り替えたのが良かったのかもしれないです。
そして――外の青空見て少し落ち込む私。
せっかくの休みなのに、半日以上潰して何やってんだろう、ってw
というわけで第五話投入です。
↓
436 :
1/14:2005/09/23(金) 15:34:01 ID:???
CE71年6月15日、ついに連合軍によるオーブ侵攻が開始された。
――沖合いに居並ぶ戦艦。襲い来るストライクダガー。迎撃するM1アストレイ。
閃光と爆音が飛び交い、あちらこちらに火の手が挙がる。
オノゴロ島は、揺れていた。
そんな激しい混乱の中で。
山の中、港に向け避難する家族の姿があった。
先導する兄。幼い娘の手を引く母親。後ろを気にする父親。
眼下の港では、避難用の船に、一般市民が列を成して乗り込み始めていた。
さらに急ぐ一家。
と、栗色の髪の少女のポーチから、ピンク色の携帯電話が転がり落ちる。
転がり落ちる携帯電話を、取りに行こうと手を伸ばす少女。引き止める母親。
一家が足を止めた、まさにその頭上で――
白いガンダムが青い翼を広げて一旦停止し、すぐさま角度を変えて飛び去る。
そしてその直後、目も眩む光が、ガンダムのいた虚空を、そしてその先にいる家族を飲み込んで――
――1人の少年が、山肌を転がり落ちる。
崩れる土砂と一緒に、転がる岩々と一緒に。
少年はなんとか受身を取り、避難船待つ港の近くまで来てようやく止まる。
「……うッ………」
頭を振りながら、よろよろと起き上がる少年。擦り傷以上の外傷はない。
ハッとして、少年は自分の落ちてきた崖の方を振り返る。
「父さん……? 母さん……?」
惨劇が、そこにあった。
それはかつて両親だったモノ。ばらばらに千切れ飛んだ残骸。
父の足が。母の手が。良く分からない肉塊が。
溢れる血が、土に黒いシミを広げていく。
「父さん……ッ!! か、母さんッ……!!」
思わずその場に泣き崩れかける青年。
数秒前には想像すらできなかった日常の終わりに、心は砕けかけ……
それでも彼はもう1人、忘れてはならない者を思い出す。
437 :
2/14:2005/09/23(金) 15:36:56 ID:???
「マユ!? マユはっ!?」
血走った瞳で周囲を見回した彼は、土に埋もれるようにして伸びる手を見つける。
見覚えのある袖口。何かを掴もうとするように広げられた右手。
その先には――彼女が拾おうとしていた、ピンク色の携帯電話が転がっていて。
「マユッ、マユッ! 今助けるからな、しっかりし――」
生き埋めになった彼女を掘り出そうと、素手で土を掻き分け、小さな手を引っ張った彼は。
途中で、言葉に詰まる。
その腕は――腕だけ、だった。
あまりにも軽く、土砂の中からすっぽ抜けた手。
その場に尻餅をついた彼は、ただ呆然と、それを見つめる。
無惨に断ち切られた切断面から、滴る血。
少年の手の中から妹の一部だったモノがこぼれ落ち、地面に転がる。
「あは。はは。ははは。ははははは……」
とうとう、限界を超えて。目を見開き、虚ろな笑いを漏らし始める少年。
その背後に、焦燥を滲ませる兵士たちが駆け寄る。
「何やっているんだ、キミ!」
「早く乗船したまえ!」
少年を捕まえたのは、避難民の乗船支援をしていたオーブ兵たち。
彼らの任務は、1人でも多くの一般市民を助けること――もちろん、生き残った市民を、だ。
「離せ、離してくれッ! マユ、マユッ!!」
「キミの命まで、失うわけにはいかないんだ! わかってくれ!」
「また弾が飛んできたら、船も危ない! さっさと脱出するぞ!」
色鮮やかな携帯に伸ばしかけた少年の指は、すんでのところで届かず。
狂ったように暴れる少年は、屈強な兵士2人掛かりで引きられていく――。
――その時、どうして少年に想像などできよう。
妹が、生きているなど。腕1本失ってなお生きているなど。
両親の、希望などカケラも持てない身体を見てしまったというのに――
438 :
3/14:2005/09/23(金) 15:38:11 ID:???
――暴れる少年を無理やり載せて、避難船が桟橋を離れた後。
少年が膝をついた所から、少し山側にカメラを振れば――巨大な、岩塊。
山が崩された時に吹き飛んだソレは、少年の視線を遮る形で。
その後ろには――半ば生き埋めになった、栗色の髪。
「……ッうぅ………」
意識を取り戻し、薄く目を開けるが、少女は土砂の下から這い出せない。
かろうじて動く首を、回して見れば――
離れたところに散らばる、父母だったモノ。
さきほどの騒ぎで少年が放り出していった、自分の腕。
目にも鮮やかな、携帯電話。
しかし、そのショックを受け止めるだけの気力も体力も、その時の少女には残っておらず。
一言残して、再び意識を失う。
「シンお兄ちゃん――――」
――その時、どうして少女に想像などできよう。
兄が、生きているなど。まだ息のある自分を置いて行ってしまったなど。
両親の、希望などカケラも持てない身体を見てしまったというのに――
2機の白いMSが、激しい戦いを繰り広げ飛び去っていく。
翼を広げたフリーダムが、エールストライカーを装備したストライクが。
今なお少女の埋まる悲劇の現場の上を、今なお少年泣き叫ぶ避難船の上を――
マユ ――隻腕の少女――
第五話 『怒りの空』
439 :
4/14:2005/09/23(金) 15:39:07 ID:???
空の上で、ミネルバとクサナギが向かい合う。姿勢制御し、寄り添うように位置を取る。
両者のブリッジ同士で、通信が繋がる。互いの艦長が、真剣な顔で敬礼を交わす。
「……ザフト軍ミネルバ艦長、タリア・グラディスであります」
「オーブ軍クサナギ艦長、レドニル・キサカ一佐だ」
「今回の協力、心から感謝申し上げます」
「こちらこそ。さて、失礼ですが時間がない。手早く作戦の確認を――」
「キサカ! 来てくれたか!」
と――その画面に、割り込むように声を上げる人影がひとつ。
嬉々として声を上げる国家代表に、思わず驚くキサカ。
よく見れば傍には、護衛のアレックスと、プラント評議会議長ギルバート・デュランダルの姿も……
「カガリ!? 議長も! なぜミネルバに!? いやなぜこんな場所に!?」
「アーモリーワンの事件の後、成り行きでな。
たまたま襲撃犯を追ってデブリ帯に来ていて……そのまま来た。わたしも、議長も」
「それにしたって……!」
流石に言葉を失うキサカ。
アーモリーワンの一件の際、一時行方不明となり、その後無事が伝えられ……
非常事態の連続に、キサカ個人はカガリの動向を把握する余裕はなかったが。
まさか、こんなとこに出張ってくるとは――しかも、議長も一緒にとは。
「それよりキサカ、クサナギの戦力は? わたしも状況を把握したい」
「あ……ああ。メテオブレイカーにスペースを取られたので、MSはあまり乗せれなかった。
設置及び護衛に、ザフト軍のみなさんの力を借りることになるだろう。
こちらの戦力は、メテオブレイカーが10基、汎用のM1が3機、宇宙用のM1Aが3機。
そして……フリーダム1機」
「「フリーダム!?」」
予想もしてない機体名に、カガリとアレックスの声が唱和する。慌ててカガリが問いかける。
「パイロットは誰だ!? キラか!? それともトラ……じゃなかった、バルディか?」
「……そのどちらでも、ない。
乗っているのは……ユウナ・ロマ・セイランの、妹君……だ、そうだ」
「「はぁ!?」」
議長の前だということも忘れ、思わず2人は疑問の声を上げる。
「ユウナに妹なんて……居たっけ!?」
440 :
5/14:2005/09/23(金) 15:40:03 ID:???
「「フリーダム!?」」
その驚きは――そのまま、ミネルバのMS格納庫にも伝わる。
発進を待つパイロットたちの声が、期せずして重なる。
「なんでそんなモノがあの国にあるのよ?」
「あの戦争で破損したものを回収したか、それとも真似て作ったレプリカか……
オーブの技術力なら、どちらでもありえる話だな。味方としては、心強い」
「全く相変わらず、無茶苦茶な国だな! 恥知らずにも程がある!」
オペレーター、メイリン・ホークから伝えられたニュースを聞いた反応は3人3様で。
単純に驚くのはメイリンの姉、ルナマリア・ホーク。冷静に分析するレイ・ザ・バレル。
そして、怒りを露にするのは――何故かMSでなく、小型戦闘機のコクピットに収まる青年。
「詳しい事情は、こっちでも分からないんだけどね――例の『お姫様』も驚いてたし。
乗ってるのは、『セイラン』とか言ったかな? なんか名門のお嬢様らしいよ」
「セイラン家が名門なものかよ! 占領下で連合に尻尾振ってのし上った、成り上がりだッ。
そんなとこの娘持ってくるなんて……人気取りの売名行為以外の、何だって言うんだよ!」
吐き捨てるように言い捨てると、青年はヘルメットのスイッチを押す。
ミラー加工されたマスクが降り、その不機嫌そうな表情が完全に隠れる。
ちょうどその頃――その『お嬢様』は。
オーブ軍の整備員と一緒に、宇宙服と格闘していた。
宇宙服。そう、パイロットスーツは、軍服のように簡単に仕立て直すわけにもいかず……
軍用正規品でサイズの合うものがなかった彼女は、当座の代用として市販の宇宙服を与えられていた。
「……これ、邪魔くさいなぁ」
「マユ様専用のパイロットスーツは大至急作らせておりますが、今回はこれで我慢して下さい。
これでも市販品では最も軽量、最も性能の良いものなんですよ、マユ様」
「まあ、首から下は別にいいんですけど」
様づけで呼ばれることに違和感を感じつつも、彼女は思わず愚痴を漏らす。
確かに、首から下はパイロット用スーツにも匹敵する薄さで、操縦にも影響なさそうなのだが。
渡されたバケツのようなヘルメットに、げんなりする。
「なんかこう、見るからに肩がこりそうなのよねェ」
愚痴りつつ、円筒形のヘルメットを被り――宇宙線対策のスモークフィルムに、その顔が隠れる。
441 :
6/14:2005/09/23(金) 15:41:11 ID:???
ザフトのマークの代わりに差し替えられた、オーブのマークの起動画面。
その後に続くのは、これは変わらぬGUNDAMの文字。
黄色い画面に顔を照らされ……
「マユ・アス……じゃなかった、マユ・セイラン、『ガンダム』、行きます!」
クサナギのカタパルトから、フリーダムの身体が射出される。
大きなGに、少女の顔が歪み……一瞬の後には、星の海の中。
「……うわぁ……!」
眼前に大きく広がるユニウスセブンの廃墟、その光景に――少女は、言葉を失う。
凍りついた街。ひび割れた平原。踊るように天に伸びるシャフト類。虚空に浮かぶ大地。
それは――冷たく、荒れた光景ながらも、感動的で。不謹慎ながらも、芸術的で。
まるで、シュールレアリズムの絵画に飛び込んだような風景に、しばし魅了される。
クサナギ、ザフト艦双方から、それぞれ続々とMSが吐き出される。
M1アストレイがメテオブレイカーを抱えて飛び出し、合流したゲイツRと共に2機で1基を運ぶ。
護衛・支援を命じられたフリーダムのマユは、その隊列を少し離れたところから眺めていた。
と、その時。
ミネルバから――MSにしては小さすぎる影が、飛び出してくる。インパルスの、コアスプレンダー。
「え? 戦闘機……!?」
驚く彼女の目の前で。
その戦闘機は次々飛び出してきたパーツと合体し、一機のMSとなる。
最後に、2本の巨大な砲身パーツを背中につければ……それは、ブラストインパルス。
「へぇ、合体するんだ……って、キャッ!!」
ドッキングシーンに目を奪われていたマユは――少し、反応が遅れた。
合体を終えたブラストインパルスが、フリーダムを掠めるように超至近距離を通り過ぎたのだ。
反射的に避けようとフットペダルを踏み込むが……強すぎるスラスター出力に、コントロールを失う。
「キャァアあぁア!?」
無重力の宇宙空間で、スピンを始めるフリーダム。三半規管を揺すられ現在地を見失い、マユはパニックに陥る。
回転を止めようと慌ててスラスターを吹かすが、それは回転方向を複雑に変えるだけで。さらなる混乱。
青い翼を広げ、コマのように回転しながら、MSの隊列から離れあさっての方向に――!
442 :
7/14:2005/09/23(金) 15:42:04 ID:???
「誰か助けてェ……ッ!」
マユが悲鳴を上げる。漂流の恐怖。身も蓋も無く絶叫する。
と、その機体が――がっし、と受け止められて。
赤い腕がフリーダムの回転を止め、ふんわりとその身体を隊列の方に戻す。
「大丈夫?」
「……え、ええ、ありがとうございます……」
通信画面越しに微笑んでいたのは――赤い髪も鮮やかな、女性パイロット。
フリーダムを助けてくれたのは、赤い専用カラーも目に眩しい、ガナーザクウォーリア。
「ひょっとして、宇宙は初めて?」
「は、はい、MSでは……。シミュレーターは結構やったんですけど……」
「慌てなくても大丈夫だからね。スラスターは吹きすぎない。姿勢制御はオートに任せて。
スピンしちゃうと厄介だから、マニュアルで動く時はちゃんと重心のバランス取ってから。ね?」
赤いザクのパイロットは、フリーダムがバランスを取り戻したのを見ると、手を離し自身も隊列に戻る。
マユは『優しいお姉さん』の指導に感謝しつつ、おっかなびっくり翼を広げ、再びユニウスセブンを目指す。
「……何、あんな素人助けてるんだよ。放っとけ、あんな奴」
「いーじゃない。今は仲間なんだしさ」
ザフト−オーブ軍混成工作部隊を先導しながら。ユニウスセブンの上空に入りながら。
赤いザクと、ブラストインパルスは言葉を交わす。
「それよりアンタ? ワザとあの子脅かしたでしょ? あんな危険な飛行してさァ」
「あんなので驚く方が悪いんだ。あの程度の奴を乗せてる国が悪い」
「あーあ、アンタって相変わらず性格歪んで――」
「「!?」」
軽口を叩き合う2人は、急にはッと口をつぐむと――
両者揃って、眼前に盾を構える。
一瞬遅れて、その盾を叩く無数の散弾。眼前の、何もない所で急に起こった爆発。
メテオブレイカーを運ぶ1組のゲイツとアストレイが、防御が間に合わずまともに被弾し、爆散する。
ユニウスセブン外周部、チカチカと光るそのセンサーは。
無人で自動作動する、悪意のトラップ。MSサイズの、クレイモア地雷――!
443 :
8/14:2005/09/23(金) 15:43:33 ID:???
「――来たか、偽りの平和に笑う者たちよ! 我らが敵!」
そのトラップ作動の光を、ユニウスセブン中心部から眺めていたのは。
黒と紫の装甲を持つ、数機のジン。運動性を強化された、ハイマニューバ2型。
彼らこそ、この一連の事件の犯人であり――あの地雷を設置した者でもある。
「……サトー隊長! 侵入者の動き、止まりました!」
「それでいい。手間をかけ設置した甲斐があったというものだ。
さあ、侵入者どもよ! せいぜい、たっぷりと悩め! 躊躇しろ! 命を惜しめ!
貴様らが考え戸惑う分だけ――我らの悲願、達成に近づく!」
ユニウスセブンの外周付近に、散らして設置した無数のトラップ。
散弾を撒き散らすクレイモア地雷に、ワイヤー作動式のグレネード。槍ぶすまのように飛び出す剣。
上空からの接近も、シャフト残骸に設置したトラップが対応し、迎撃する。
それらは、決して敵を倒すためではなく――敵の動きを、止めるためのもの。
これ見よがしなダミーも織り交ぜて、2重3重にトラップを設置し、相手の判断を迷わせる。
これがもし十分な時間があれば、地道に潰され侵入ルートを見つけられ、突破されるのは間違いないが……
今、この場においては、時間こそが全ての鍵。
ただ時が経てば、それだけでサトーたちの勝利が確定する――
そしてこのトラップ地帯を突破せねば、ユニウスセブンの破砕などとてもできはしない。
サトーたちは第一段階の首尾の良さに、にんまりする。
と――その時。
しばらくの沈黙を破り、再びトラップの爆発の振動がサトーたちの足元を揺らした
「懲りない奴らだ。何重にも張り巡らせたこの罠、通れる所など――」
言いかけたところで――再び、爆発。
爆発。また爆発。続けざまに作動するトラップの振動が、着実に彼らに近づいてくる。
「何だ!? 何が起こってる!?」
「まさか、奴らも――命を捨て、真正面から突破にかかったというのか!?」
彼らは顔を見合わせる。
確かに、地雷原を突破する一番簡単な方法は、『誰かに踏ませる』ことだ。死の行進だ。
踏まれた地雷は、もう爆発しない。一度作動したトラップは、もう障害にはならない。
だがそんな方法、兵士が何人いても、命がいくつあっても足りはしない――
444 :
9/14:2005/09/23(金) 15:44:42 ID:???
――また、爆発。
ビル外壁に仕込まれていた指向性爆薬の爆風に、真横に吹き飛ばされる。
2年前の大戦の英雄、天下に名の知れた最強MS『フリーダム』が――無様に地面を転がる。
「無茶だフリーダム! もうやめろ!」
「……大丈夫ッ……! PS装甲オールグリーン、まだまだやれますッ……!」
よろよろと立ち上がったフリーダムが、後ろから追いついたM1アストレイの手を振り払う。
ザフト・オーブ両軍のMSが見守る中、また中心に向けて十数歩進み、爆発に巻き込まれる。
「あの子、あんな無茶して……!」
「だが、確かに合理的で、しかもフリーダムにしかできない仕事だ。
自分の役割、しっかり分かっている」
思わず涙ぐむ、赤いザクのルナマリア。淡々と評価する、白いザクのレイ。
インパルスの青年は――不機嫌そうに黙り込んだまま、その乱暴過ぎる『地雷除去』を眺めている。
そう、誰もがトラップの山を目の前に躊躇していた時――1人飛び出したのが、マユだった。
避けもせず、まともにトラップを喰らい、しかしそのことによって後の安全を確保して。
PS装甲と核エネルギーの組み合わせがあってこその、荒業。確かにフリーダムにしかできぬ芸当。
それでも、コクピットの中は酷いことになっているはずだが――少女は泣き言1つ言わずに。
周囲の制止も聞かず、独り地雷原を歩く。少女の口元から、一筋の血が流れる。
彼女の通った後に――1本の道ができる。
と、そのフリーダムが、キョロキョロと周囲を見回して。
どうやら、トラップ地帯を突破したらしく――少し動き回っても新たな罠が作動しないことを確認し。
後ろを振り向き、後続に手を振る。
「どうやらあそこまでのようだな。有難い」
「ほんと、マトモに通ろうと思ったら、いくら時間あっても足りないものね――って、危ない!」
思わず、ほっとしかけた皆の顔が、凍りつく。
こちらに向け、手を振るフリーダムの、さらに後方。
音も無く気配も無く、黒と紫のジンが忍び寄り。
過酷な地雷原突破に疲れきったマユは、それに気付かず。
ハイマニューバ2型が、ビームカービンを、無防備なフリーダムの背中に向けて、突きつけて――!
445 :
10/14:2005/09/23(金) 15:45:41 ID:???
ビームの閃光――そして、爆発。
「キャァッ!?」
思わずマユは悲鳴を上げる。
事態の飲み込めない彼女は、慌てて周囲を見回して。
ようやく――理解する。
遠くに2門の大砲を抱えるインパルスと、背後で撃ち抜かれた黒いジン。
ずっと傍観者に徹してた彼が、紙一重のタイミングで、まさに撃たれる寸前のフリーダムを救ったのだ。
インパルスはそのままマユの作った『道』を突進し。
迎撃のため、次々と姿を現すジン・ハイマニューバ2型の中に、単身突っ込む。
「ようやく出てきやがった……撃っても許される、俺達の、『敵』ッ……!」
――インパルスのパイロット、シン・アスカが軍に入った理由は、単純だった。
『行き場のないこの怒りを、誰恥じることなく『敵』にぶつけたい』
ただ、それだけだった。八つ当たりの暴力を、合法化される場を欲しただけだった。
それは確かに、何の後ろ盾もない移民の少年にとって、数少ない生きる道ではあったが……
彼の暴力への志向、それはかなり常軌を逸したもので。
アカデミーの同級生とケンカになり、文字通り半殺しにしたこともある。
実戦派で知られるナイフ格闘術の教官を、『手加減しきれず』本当に刺して重傷を負わせたことも。
MSに乗れば、遠近を問わず攻撃技術はアカデミー1で。
何度も懲罰を受けながらも、その優秀さに何度も特別に赦されて。
しまいには――素行点以外は全てトップでアカデミーを卒業、見事に赤服の栄誉を得て。
ついた仇名は数多く。
『狂犬』『フレッド殺し』『血染めの赤』『暴力装置』『オーバーキル』『黒髪のジョーカー』
そして――『狂戦士(バーサーカー)』。
今やトレードマークともなった、ミラー加工のヘルメットも。
同級生だったルナの、「シンの戦闘中の顔、ちょっと怖すぎるよ」という言葉に応えてのことで。
敵よりも、むしろ味方にこそ恐れられる、激怒に狂った最凶戦士。
青年は――あの日、全てに絶望した少年は。
今なお胸の奥に燻り続ける怒りだけを、己の原動力として――
446 :
11/14:2005/09/23(金) 15:46:27 ID:???
「ハハハハハハハ! 旧式の分際で、生意気なんだよォ!」
狂ったように哂いながら戦場を駆ける、インパルス。
嬉々として、圧倒的多数の敵を蹴散らし、暴れ回り。
重たい大砲を抱えていながら、敵の攻撃はギリギリで回避し、敵の動きを先読みして撃ち抜く。
マユは――遅まきながら、理解する。
そう、彼は決して、危機にあったフリーダムを救おうとしたわけではない――
単に、ようやく姿を現してくれた『解りやすい敵』に、我慢できずに襲い掛かっただけ。
そんな彼を、赤いザクウォーリアと、白いザクファントムが追いかけ、援護する。
「1人で出過ぎよ! 背中を守る側のことも考えなさい!」
「思ったよりも敵が素早い。ブラストよりもフォースの方が効果的だ。援護してやるから、換装しろ」
文句を言いつつ、そして指示をしつつ。
絶妙な連携で敵を圧倒し、激戦の最中に空中換装を実行する。
高機動装備にシフトしたインパルスは、今までの重砲撃戦から一転、目も回る高速戦闘に移行する。
全く対照的な戦闘スタイルなのに――どちらも板についたように、馴染んでいる。
あらゆる局面に対応できる、才能溢れるオールラウンダー。どんな役目もこなせる『黒髪のジョーカー』。
「これが……ザフトの『赤服』の力……!」
鬼気迫る戦いぶりに、マユも、オーブ軍兵士も、圧倒される。
自惚れるわけではないが、自分たちにも多少の自信はあった。訓練を重ね、アッシュも倒した。
だが――目の前の3機の繰り広げる、戦闘は。即興ながらも無駄のない連携は。
格が、違う。
「敵は彼らに任せて、こちらは作業に入るぞ! フリーダムは、我々の護衛を!」
「りょ、了解!」
M1アストレイに声をかけられ、マユはフリーダムの操縦桿を握り直す。
メテオブレイカーを抱えて移動するゲイツとM1に、寄り添って飛ぶ。
……インパルスのパイロットの『声』に、後ろ髪を引かれつつ。
「……ちょっと、似てるけど……でも、そんなハズないよね……。
ザフトなんかにいるはずないし……それに、お兄ちゃんはあんな乱暴じゃない……!」
447 :
12/14:2005/09/23(金) 15:47:25 ID:???
――それは、まさに混戦。
戦場は、混沌としていた。
怒りに任せて暴れまわる、フォースインパルス。
同じく怒りを滲ませ、捨て身の攻撃を仕掛けるハイマニューバ2型。
その合間を縫って、メテオブレイカーの設置に走るM1アストレイとゲイツR。
テロリストのジンは、メテオブレイカーを目指して突撃してくる。
フリーダムが翼を広げ、盾を構え攻撃を受け止め。
返す刀で、全武装フルバーストでその腕を、足を、頭を吹き飛ばすが。
手足を失い胴体と翼だけになっても、なお突進を止めない。
設置されたメテオブレイカーに、体当たりを敢行しようと――
「何中途半端なことやってるんだ! お前は!」
そんな、完全に戦闘力を失いなお諦めぬジンに――駆けつけたインパルスが飛びかかる。
もはや抵抗もできぬ相手を、ビームサーベルで貫き通す。
「殺すしかないんだよ! こいつらは!」
「分かってる! 分かってるわよ、そんなこと!」
泣きそうな声で抗弁するマユに振り向きもせず、次なる獲物を求めてインパルスは飛び去る。
残されたフリーダムは、メテオブレイカーが地中に潜っていくのを確認し、その後を追う。
「あたしだって……仕方ないと、分かってるのに!」
その2機を遠くに見る、赤と白のザクは――
「あの子、本当に宇宙は初めてなの!? 全然、硬さがないじゃない!」
「恐ろしい適応力だな。フリーダムを任されているのは、伊達ではないということか」
見慣れたインパルスの戦闘力よりも、むしろマユの戦いにこそ注目していた。
つい先程、ルナマリアが『指導』した女の子は、完全に無重力のコツを掴んでいて。
少女の言葉が嘘でないなら、それは恐るべき学習能力の現れで――
「間違っても、敵には回したくないものだな。
それに、あの戦闘パターンは――」
何事にも動揺しそうにない金髪の青年は、嘆息しつつ、己の目の前の敵に銃を向ける。
ひょっとしたら、彼だけが――この混乱の戦場で、冷静に全てを観察しているのかもしれなかった。
448 :
13/14:2005/09/23(金) 15:48:52 ID:???
もはや――戦況は覆しがたいものになっていた。
サトーたちテロリストの奮戦にも関わらず、その戦力差は埋めがたく。
用意していた数々の罠も、もはや役には立たず。
彼らは各個に分断され、撃破され、数を減らしていく。
メテオブレイカーも、何基か撃ち抜き、壊したが。
その多くは乱戦の中、地中に向けて潜行し。
いくつかは現場の判断で、予定と異なる地点に打ち込まれていたが――
やがて、虚空に浮かぶ大地が、自然にはありえぬ地震に、激しく揺れ始める。
岩盤にヒビが入り、広がっていく。
地割れが、大地に走り、ビルを飲み込む。
ランダムに走る亀裂が、隣の亀裂と繋がり、やがて大きな一本の線となる。
激しい振動に、重力なき大地の上、粉塵が舞い上がる。
前例にないほど大量に投入されたメテオブレイカーは、その役目を存分に果たして。
巨大なユニウスセブンが、真っ二つに割れる――
それは、実にダイナミックな光景で。それは、実に信じがたい光景で。
ある意味、それは美しい光景で。
敵も、味方も。MSも、戦艦のブリッジも。
誰もが、その圧倒的な光景に、思わず戦闘の手を止め、黙り込む――
時が止まったかのような、一時。
「クククッ……ハハハッ……アーハッハッハッハッ!」
それは、唐突に。
沈黙を破ったのは……1つの笑い声。
赤いザクが慌てて声の主に近寄り、心配そうに様子を伺う。
「ちょ、ちょっと、どうしたの!?」
「ハハハハハッ! これが、笑わずにいられるかッ!」
それは――インパルスのパイロットの哄笑。
表情を隠すミラーバイザー越しにも、それは明らかに、狂気を滲ませた笑いで。
「オーブの連中め、頑張り過ぎだ! ルナも自分で計算してみろ!
あいつら――自分で自分の国を滅ぼしやがった!」
449 :
14/14:2005/09/23(金) 15:50:52 ID:???
――ほぼ同時に。
彼の気付いた「そのこと」に、クサナギもミネルバも、ようやく到達していた。
「これは……このコースは!」
「まさか! いくらなんでも……!」
メテオブレイカーの作動により、大きく2つに割れたユニウスセブン。
その片割れは、割れた反動で進路が変わり、突入コースを外れ外宇宙に飛んでいくと計算されたが。
残る半分は、逆にさらなる加速を得て――
「このスピードだと……予定よりも早く大気圏に突っ込むぞ! 破砕が、間に合わん!」
「それに、このコースだと――落ちるのは、オーブ直上!」
2つに割っただけでは、まだ足りない。大気圏で焼き尽くすには、さらに砕かねばならない。
だが、この破片の高度とスピードは、そのために必要な作業の時間を許してくれなかった。
のんびり作業などしていたら――もろともに、大気圏に突っ込むことになる。
M1アストレイに、ゲイツRに、大気圏を突破する性能など、ない。
そして、落着予想地点は。
よりにもよって――奮戦するクサナギの母国、オーブ連合首長国。
空気抵抗による多少のブレはあれども、その領内のどこかに落ちるのは間違いない。
その被害は、想像するだに恐ろしい。
このままでは、成す術なく、ユニウスセブンの半分は地上に落ち。
大地は未曾有の大災害に襲われる。
オーブは壊滅し、地球環境の被害は甚大で。
彼らのここまでの努力が、徒労に終る――いやむしろ、オーブにとっては薮蛇に――!
誰もが、その最悪のシナリオに呆然とし――ただ1人インパルスのパイロットが哂う中。
一本の蒼い矢が、地球に落ち行く半円目指し、微塵の迷いもなく突進する。
インパルスの至近距離をかすめて彼を仰け反らせ、しかしニアミスにすら気付かず全速力で飛ぶソレは――
「フリーダム!」
「戻れセイラン三尉! 帰れなくなるぞ!」
制止の声を振り切って、マユ・アスカ・セイランのフリーダムが、ただ1人絶望の大地へ――
第六話 『 流星群 』 につづく
450 :
15/14:2005/09/23(金) 15:51:52 ID:???
物語の区切り方を見直したために、少しサブタイトル(怒りの空)とズレてしまいました。
前章終了時のプランでは、ユニウスセブンが大気圏突入始めるまで書くつもりだったんですが……。
実際、難産でした。はい。
実はこれ3回ほど、ゼロから書き直してます。
特に戦闘。普通にケンカしたらザフト・オーブ側が強いのが当たり前なんで、物語になりません。
本編スタッフも苦労したろうなァ……などと余計な同情もしたりして。
あと、イザーク・ディアッカ両名のファンの皆さん、すいません。
そういうわけで、ただでさえ強い主人公チームをこれ以上強化するわけにも行かず、彼らの出番はまだ先です。
いずれ必ず彼らの出番も作りますので、ご容赦下さい。
>まとめ人様
修正&間違い指摘、ありがとうございます。いつもいつもご苦労様です。
次はたぶん連休明け。ひょっとしたらもっとかかるかもしれません。では。
乙です
乙乙。
しかし、隻腕バージョンのシンはアンデルセンばりにヤベエw
ナイフのフレッドを刺すなー!w
乙ですー
狂ってるシン、ここまでイッちゃってるといいな
でもマユの存在に気付いたら彼どうなるんだろう
GJ!!
しかし、シン凄ぇな
某スーパーコーディネイター失敗作に匹敵するはっちゃけっぷりだw
黒マユ投下です。
今回は別設定&別機体なキラ&ストライクフリーダム登場+オーブで暗躍するマユ&レイのお話。
ラクス出るとこまで書けなかった。
>>隻マユ作者様
そっちのシンの方がうちのマユより黒いかも。負けた・・・。
エターナルU。
かつてザフトの物だったこの艦は、今は逃亡した少年少女達の物となっていた。
「間違いないと思いますよ。カナードさんが手に入れた情報ですし」
桃色の髪をした少女、メイリン・ホークが念を押した。
「となると、行かなくちゃいけないんじゃないの?やっぱさ」
黒肌金髪の軟派そうな青年、ディアッカ・エルスマンがまるでおつかいにでも行くような調子で言う。
「簡単に言うわよね、あんた。かなり難しい任務になるわよ?ザフトに気付かれる前にやらないと」
茶髪の少女、ミリアリア・ハゥがたしなめる。
「でも、僕たちはいかなくちゃならない。これ以上デスティニープランの犠牲者を増やすわけにはいかないからね」
茶髪でアメジスト色の瞳を持つ少年―――キラ・ヤマトが言った。
「総員、第二種戦闘配置!モビルスーツ、最終チェックを急がせて!
僕はストライクフリーダムで出るよ、メイリンは艦長代理頼むよ!」
「え、でもあれって未完成ですよ?サーペントテールの皆さんの改修が上手く行ってるかも分かりませんし…」
「短時間の戦闘なら大丈夫さ」
機動戦士ガンダムS-DESTINY 再会
「プラントへ、帰るのか…」
アスランはシャトルの中から地球を見ながら呟いた。それにはオーブがぽつんと写っている。
「プラントへ行くんなら、それなりに覚悟しておいた方がいいんじゃないかな、アレックス?」
「覚悟?どういうことだよ!」
ユウナの言葉にカガリが食ってかかった。だがアスランは冷静に答える。
「いくらパイプを残すと言え、それは裏の話。
表向きはオーブとザフトは敵対関係になるんだから、いったん言ったら戻るのは困難…そう言いたいんだろう」
「さすがはザラ議長のご子息だね。よく分かってる」
ユウナが笑顔で褒めたが、嫌味にしか聞こえない。
それを無視してアスランはカガリの方を向いた。
「カガリ、君がどうしても行くなって言うなら俺は…」
「いや、いいよ。行け。ずっといなくなってたラクスだっているんだし、それでプラントの主戦派が収まるんだったら嬉しいしな。
…そのかわり、条件がある」
すねた顔で、それでもどことなく心配そうにカガリはいった。
「まず、戦争が終わったら絶対帰ってくること。それと、一回でいいからラクスをオーブに来させることだ」
「なんでラクスまで?」
「ずっといなくなって心配かけたんだ。ぶん殴ってやらなきゃ気がすまないだろ!
お前も心配かけたらラクスと一緒にぶん殴るからな!」
その言葉にユウナは大爆笑し、アスランも思わず笑ってしまった。
458 :
2/5:2005/09/23(金) 18:18:28 ID:???
「全く、カガリらしいな」
思い出し笑いしていると、シャトル内に突如警報が走った。
アスランは急いでシャトルのキャプテンに呼びかける。
「いったいどうしたんだ!?」
「宇宙海賊だ!前後を囲まれた!」
「なにっ!?」
それと同時に、シャトルの目の前に一機のモビルスーツが立ちはだかる。
アスランはその姿を見て驚かざるを得なかった。
「フリー…ダム!?」
そんな彼に追い打ちをかけたのは、通信機から流れるそのモビルスーツのパイロットの声だった。
「無駄に命を奪いたくはない。積み荷を渡せば見逃す。
…ただし、拒否するというのなら強引に奪わせてもらう!」
その声は、まさしくキラ・ヤマトの声だった。
一方、マユとルナマリアはオーブ最大のデパートで買い物中だった。
もっとも買うのはルナマリアばかりで、マユはくだらなさそうにそれを見ているだけだったが。
「ねぇ、マユ!これいいと思わない?」
「いいんじゃない?」
「この服も可愛いよね〜」
「うん、そうだね」
「このアクセサリーもさ〜」
「…あのさ、あたし他に寄りたいとこあるからここで買い物してて」
いらいらした顔をしてマユが言った。そんなマユにルナマリアは心配そうな声を返す。
「一人で大丈夫、マユ?迷ったりしない?」
「馬鹿にしないで。たかが買い物で迷うなんて、子供じゃあるまいし」
「何なら一緒に…」
「いい。すぐ済むことだから一人でいい」
「…そこまで言うならいいけど」
しぶしぶ、という感じでルナマリアは言った。
459 :
3/5:2005/09/23(金) 18:19:24 ID:???
フリーダムに乗っているのがキラだと気付いたアスランは、シャトルの通信機に走った。
「こんな所で何をしているんだ、お前は!?」
「アスラン!?何で君がそれに…」
「それはこっちのセリフだ!前の大戦のあと、みんなお前を捜していたんだぞ!
そんな物に乗って何をしている!」
叫ぶような調子のアスラン。だがそれに答えるキラの声は、氷のように冷え切っていた。
「人助けさ。それも、僕と同じ境遇の人間をね。
…アスラン、君はそのシャトルが何を運んでいるのか知っているのかい?」
「シャトルの荷物とお前がやっていることに何の関係があるって言うんだ!」
「あるさ。それも密接に。そのシャトルには…」
「おい、キラ!敵だっ!」
キラの通信機ごしに、シャトルの後ろにいた黒いザクのパイロットの声が聞こえた。
その声もまた、アスランのよく知っている声だった。
「ディアッカ……!!?おい、キラ!どういうことだ!」
それに対応する声はない。突然現れた謎のモビルスーツにより後ろにいたザクが半壊、フリーダムは戦闘に入っていた。
そしてその相手のモビルスーツの姿は…
「ユニウスセブンでイザークと戦っていたブリッツか!?どうなってるんだよ、いったい!」
思わず壁を殴りつけるアスラン。もう彼にはどうしてこうなっているのか理解不能だった。
一番早く立ち直ったのはシャトルのキャプテン。素早く指示を出した。
「よし、今のうちに逃げるぞ!方向修正急げ!」
「だ、だが!?」
とっさに異を唱えようとするアスラン。
「俺の任務はあくまであんたと荷物を送ることだ、あいつらの調査は含まれていない。
調べたきゃあんたがプラントで調べてくれ。俺は巻き込まれて死ぬのは御免だ」
「くっ…」
見事な反論。事実だった。アスランは黙るしかない。
何も分からぬまま、シャトルはその場を離れていった。
460 :
4/5:2005/09/23(金) 18:20:23 ID:???
「シャトルが!?くそっ!」
キラは思わず拳を握りしめた。せっかくここまで来たのに…!
だが、敵はまだいる。ディアッカを見捨てるわけにはいかない。キラは気持ちを切り替え、ビームライフルをRFブリッツへ放つ。
しかし、RFブリッツのトリケロスはそのビームをあっさり曲げた。
「こいつ、連合のガンダムと同じ装備まで追加したのか!?…ならっ!」
ストライクフリーダムの背部ユニットが持ち上がり、アルミューレ・リミュエール―――全方位ビームシールドを機体の周囲に展開する。
そしてビームサーベルに持ち替え、ブースターを噴かして接近を図る。もちろん、そのままただで接近できるはずもない。
RFブリッツがビームやランサーダートを放った。いくつかは直撃コース。
しかし、それらは全てアルミューレ・リミュエールに防がれた。
そのまま一気に接近するSフリーダム。だが、ビームサーベルを振り上げた途端RFブリッツが消えた。
「くっ!またミラージュコロイドか…」
急停止し、回りを探るキラ。
全方位をカバーするアルミューレ・リミュエールを展開していれば、隠れたまま攻撃されても防げる。
「攻撃が出てきたところを撃てば!」
そう思いながら見渡す…その瞬間、何か光った。
とっさにSフリーダムをのけ反らせる。その前をビームで光った槍が通過した。
「バリアを貫通した!?」
素早く後退するSフリーダム。しかし、警告が入り、同時にアルミューレ・リミュエールが消えた。
「エンジンが強制停止!?くそっ!」
その一瞬の隙に、槍が向かってくる。
かろうじて回避するも、槍と機体とを繋ぐ糸に触れた左腕が切り取られる。
「糸にもビームが張られているのか!」
思わず歯がみするキラ。勝ちを確信したか、RFブリッツが姿を現れた。
「まだだ!主電源を予備バッテリーに切り替えれば!」
素早く操作し、ロックも無しに目視でフルバーストを放つ。背部ユニットから発射したビームがRFブリッツの左足を奪い去った。
すぐさまRFブリッツは素早く後ろを向いてその場を離脱、その途中でミラージュコロイドを展開して消えた。
「撤退した、って考えてよさそうだ。ディアッカ、無事?」
「なんとか、な…」
通信機からは少し弱々しい声がした。見ると負傷している。二人掛かりということを考えると完全敗北した、と言っていい。
思わずキラは「くそっ」と毒づいた。だが、そんな余裕はない。素早く頭を切り換える。
「ザクの腕でフリーダムの右手を掴んで。ザフト正規兵に見つかる前にエターナルに戻るよ」
「ああ…シャトルは?」
「見失ったよ。今頃ザフトの…議長の手に入ってるさ。僕をずっと閉じこめていたあいつの手にね…」
キラが忌々しそうに言った。
461 :
5/5:2005/09/23(金) 18:21:10 ID:???
一方、オーブ官邸の応接間ではウナトが珍客をもてなしていた。
「あなたがザフトの特殊士官…でよろしいか?」
「ええ」
金の長髪の青年…レイ・ザ・バレルが冷静に答える。
「これを。オーブからのもう一つの手みやげだ」
「ディスク…なんのデータを?」
「サハクが開発した、コロイド技術を応用し機体エネルギーを吸収する特殊装置のデータだ。
そちらが欲しがっているとい聞いた物でね。
またおまけとして、あなたの艦を狙ってオーブへ向かっている連合艦隊のデータもお付けした。
もっともいかんせん時間が無かったため、モビルスーツの種類や量は分からないが…」
「いえ、それだけで結構です。ありがとうございます。貴国の好意は議長へお伝えしておきましょう」
「ありがたい。これからも、オーブはプラントの味方ですぞ」
それだけ聞いたのち、レイはディスクを受領してその部屋を出る。
そして無表情なまま吐き捨てた。
「あくまで『ザフトが勝ったら』味方なのだろう…狸が。まあいい、保険は既に掛けてある」
「ここがこのビルの空調管理施設ね」
一人、換気用ファンが大量にある暗い部屋に立ってマユは言った。
その顔には血の滴らしき物が数滴付いている。
「来る途中で見つかっちゃうとはあたしも未熟だな。ちゃんと事故死に見えるよう処分したから問題無いけど。
さて、任務をしようかな」
そう言ってマユは懐から密封されたシャーレを取りだした。
「みんなが降りた後一人でこっそりミネルバから降りて気付かれないように任務を遂行する予定だったのに、
ルナ姉ちゃんったらしつこく付きまとってくるし。気持ちは嬉しいけど、迷惑だよ」
ぶつぶつ言いながらシャーレの中の粉をファンに向けて散布するマユ。
そんな彼女に答えるのは換気扇の重苦しい音だけだ。
「ま、結果は変化しなかったから文句無いか。うまく馬鹿アスハにまで感染してくれるといいんだけど」
そうして彼女はくすりと笑った。復讐と嗜虐の快感を合わせた、暗い笑みで。
オリジナル設定集
・モビルスーツ
ストライクフリーダム・サーペントテール仕様
エターナルUと共に奪った未完成MSをサーペントテールが完成させたもの。
新型エンジンが搭載されているが調整不十分のため、一定時間以上使用すると熱暴走により強制停止する。
そのため電力はバッテリーとのハイブリッド式を採用している。
また奪った際には背部の翼が付いていなかったため、カナードが自機の予備部品として入手していた
ハイペリオンの背部ユニットを貰い受け、代わりに装備している。
リファインドブリッツ(未完成)
謎の新型MS。ニュートロン・ジャマー・キャンセラーを装備している。
武装はブリッツにあった物だけでなくフォビドゥンのゲシュマイディッヒ・パンツァーと同じ効果を持つ特殊トリケロスを持つ。
腰部には有線ガンバレルの技術を応用した特殊な射出式の槍が装備されている。
まだ未完成で、背部のコネクタ部がむきだし。
次こそ別人となったラクスを出せるといいな・・・。
GJ!
こっちのストライクフリーダム、かなりの欠陥兵器ジャマイカ!
いや、黒マユは、隻腕版シンとは別の黒さがたまりませんよw
白い粉って、アンタw
隻腕、黒、どちらもGJ!!
>>隻腕作者様、黒マユ作者様
投下ご苦労様です。
>>433 前スレより
>266 名前:マユ種のひと :2005/08/05(金) 13:13:08 ID:???
>申し訳ありません。急用のため、先週から今までパソコンにも触れない有様でした。
>「マユ種」の続きは来週の月曜日か火曜日に数話分まとめて投下します。
続き待ってます。
>>こんな最終決戦希望
運命大活躍! マユ及びミネルバが、話の中心にいて欲しい。
ラクシズマンセーは勘弁、やつらは純粋に敵ならいいけど。
あとシンも、救いが欲しい。
隻腕見て思ったんだが、主役から降ろしたならいっそのことここまでやれば良かったんだよな。>シン
『はい。とーいうわけで始まりましたぁ!!ひゅーひゅー!!』
『ハイネ隊名物お題カラオケの時間です。』
マイクをもったアキラとゼロが言う。
ここはミネルバのブリーフィングルーム。しかし、今は戦闘前ではないので
パイロットスーツを着た人は誰もいない。
しかし、その代わりにミラーボールにスポットライト。さらにモニターには
『お題カラオケ大会!!』という文字が躍っている。
『司会は私ゼロと。』
『アキラが務めさせていただきますぅv』
アキラの微妙な口調はおそらく某ゲームのキャラのつもりなのだろう。
バックのモニターには黒猫が表示されている。
『では、ルールを説明させていただきます。
まず、紙を引きそこに書いてあるお題にあった曲をお互いに歌ってもらいます。
そして、それを評価します。』
『普段はカラオケ屋でやるんですけどぉ、今回はハロにカラオケ機能が
ついてるそうなのでそれを使いますぅ!ちなみに一度聞いた曲は何でも
カラオケバージョンに出来る機能がついてるので歌いたい曲がある人は
CDとか持ってきてくださいねぇ。』
ハロのカラオケ機能。ザフト脅威の科学力の無駄遣いである。
ちなみにハロは体にケーブルをつけこの部屋自体とリンクしてある。
『それでは、早速お題を引きましょうか。』
『前ハイネ隊でやったら『韓流』ってでて結局冬ソナ合戦になったり
したりしたこともあったですねぇ・・。』
そして、紙がひかれる。
ダラララララララララララララ・・・バンッ!!
『でましたぁ!!ゼロ、何ですかぁ?』
『・・・・・・アニソン。』
『あ、ちなみにルールとして持ち歌は禁止です。
つまりスティングさんなら『破滅へのロンド』、ハイネなら西川といったぐわいに。』
『それでは!!みなさぁん!!自分の歌いたい曲を選んでくださぁい!!
あ、デュエットとかもOKですよぉ!』
ーーーーー選択中
ルナマリアの場合
(・・・・よし、これなら・・。)
ステラの場合
(・・・・漢字・・・読めない。)
マユアンドアウルの場合
(負けてたまるかぁ!!)
・・・・・・・結局、思考回路は同じ二人であった。
『はい、じゃあまずは一番は始めは・・・アスランさんですね。』
『それじゃ!!いきましょう!!アスラン・ザラで「あんなに一緒だったのに」!!』
・・・・・・・ミネルバ、崩壊の危機。
耐えられる!
この良作ラッシュを呼んだ今の俺なら種死本編ラスト二話にでもドンと故意だ!
というか作者様方本当に乙です。
泣いて笑って燃(萌)えてガクブルして。
見ているだけでストレスが溜まるとか、そんなことは無い正しい時間の使い方を出来ますた。
職人様GJ!
てかしのはら版宇宙行くんだな・・・
>470 行きそうだな てかしのはら版強引すぎ
だがそれがいい
朝起きてふとマユの話を思いついた。今大筋まとめ終わったんだけど…1話投下してみてもいい?
小ネタでも長編でもマユがでていればOK
>>473トンクス
では1話目投下してみまつ。
まだマユでないけどマユが主人公の話だからちょっとの間ご辛抱を
カモンベイベ
月、連合軍アルザッヘル基地。その一角に命令待ちをしている戦艦が一隻。
新造艦といった面もちの、その艦のメインブリッジで----いかにもベテラン、という風な連合の白服を着た男が艦長席に深々と腰を掛けている。
背後のドアが開く。
「失礼。艦の新しい乗組員が来たみたいですよ。」
「そうか。ありがとう。」
言われて男は立ち上がり、軽く返事をして前を歩いている仮面をつけた男に促されながら通路を歩いてゆく。
艦の外への入り口に着いたところで老兵は気付いたように呟く。
「そうだ、[彼ら]も一応ブリッジに呼んでおいてくれ。初顔合わせのはずだ。意味はなくともな」
「はいはい、っと」
仮面の男を見送ると外に出る。外に立っていたどこか幼さの残る黒髪の少年は、男に気付くと慌てて敬礼をする。
「お、おはようございます!本日付で貴艦ガーティー・ルーに配属となりました、パイロット兼生体CPU調整技士、セネカ・レビュナス特務大尉であります!
宜しくお願いします!」
緋色の眼の少年はそう名乗った。
PHASE-01〜序曲〜
艦内に入り歩きながらセネカと老兵は話し始める。
「…こちらは挨拶、まだだったな。私はガーティー・ルー艦長、イアン・リー少佐だ。突然の召集、すまなかったな。こちらこそ宜しく頼むよ」
「いえ!自分こそこのような場に呼ばれて光栄です。独立機動群に所属できるのは一部の人間だけで、それに選ばれるのは軍人にとって名誉なことですから」
互いに謙遜する2人。第一印象はまずまずといったところか。
「さて。艦を案内せねばな。乗組員も紹介しよう。まずはファントムペインへようこそ、だな」
一通りの案内を終えブリッジに来た艦長とセネカ。ブリッジでは先程の仮面の男と少年2人に少女1人。
「来たぞ。ほらみんな、ご挨拶だ。」
そう言って挨拶を促す仮面の男。端の緑の髪色の少年から順に応える。
「スティング・オークレーだ」
「アウル・ニーダ」
「ステラ…ルーシェ」
最後に仮面の男が名乗る。
「で、俺がこいつらのまとめ役ネオ・ロアノーク大佐だ。よろしくな、坊主!」
「セネカ・レビュナス特務大尉です。こちらこそよろしくお願いします」
挨拶もほどほどに明日の任務のブリーフィングを5時間後に行うことを告げ各々自室に戻ってゆく艦長と大佐。
扉が閉まる。
残された彼ら。何故か向かいあったまま動こうとしないセネカ。おもむろに話しかける。
「…元気か?」
スティングが返す。
「…おかげさまでな。こうして3人ともピンピンしてるぜ、ヘタレコーディネーターさま?」
「へぇ?エクステンデッドの癖に俺のこと覚えてやがっ…ぐぇ!」
「覚えさせたのはテメーだろうがコノヤロー!また会えると思ってなかったぜ!セナ!」
スリーパーホールドをかますスティング。
「ズディング!ぐるじい…」
「へっ!2年もたったのにおめーは相変わらずネボケたツラだな!」
照れ隠しなのかボディを叩きまくるアウル。
「ゲホッ!やめ…」
「セナ!久しぶり!」
右腕に抱きつきながらも嬉しそうにその腕に逆間接を決めるステラ。
3人の熱い祝福を受けセネカは配属初日にして医務室に運び込まれる羽目になったのは言うまでもない。
ブリッジの扉が開く。
「おう、来たか、坊主…なんだ?お前らもう仲良し子よしか?」
セネカは3人に取り囲まれている。
「はは、まあ、こうゆうのを調整するのが私の仕事ですから…ご安心下さい」
力なく笑って答えるセネカをネオがおかしそうに笑う。リーは怪訝そうな顔をしている。第一印象は一発で消し飛んだことだろう。
「…ウォホン!では全員揃ったようですしブリーフィングを始めます」
翌日---。所変わってこちらはL4プラントアーモリーワン。そこにはオーブ国家元首、カガリ・ユラ・アスハの姿があった。
「分かってるなカガリ?決して話を急ぐなよ。順序よく、だ。」
そう隣で注意する男。
「分かっているさ。アスラ」
「アレックスだ。本当に分かってるのか?」言葉を遮りため息をつく---アレックスと名乗る男。カガリもイライラした感じで答える。
「大丈夫さ!順序よくだろ?突然切り出しても流されるからな!順序よく、順序よく、順序よく…」
そこに近づいてくるプラント評議会議長ギルバート・デュランダル。
「お待たせしてすまない、姫。」
「議長〜!あなたはいったいどーゆうおつもりですか!?」
「まったく…またダメだ」
アレックスのため息の数は増えるばかりだった。
そのころ空港には先程の3人の姿が。
「へぇ〜これがプラントねぇ。」
「スゴい…キレイ」
「おい、アウルもステラもフラフラすんなよ!俺たちの目的は」
「まあまあ!そう堅いこと言うなよ!せっかく小遣いも頂戴したんだし時間まで後3時間ちょい。のんびり敵地視察と行こうぜ?」
そう言って誰の物とも知れないキャッシュカードをスティングに投げつける。いつの間にすったのか。
眉間に皺を寄せじっくり考えたスティングの答え。
「ったく…しゃあねぇな。少しだけだぞ?」
「よっしゃ!先ずは腹ごしらえじゃん!適当な店まで競争してビリのやつは全員分オゴリな!ドン!」
走り出すアウル。
「は?勘定はこのカードでやるんだから関係な…」
「スティング…ビリ」
ステラまで走って行く。取り残されたスティング。ビリ。彼の最も嫌いな言葉だ。
「待てコラァー!!」
安い挑発と知りつつも走り出すスティングだった。
中心街で買い物を楽しむ少女が2人。いや1人。
「お義姉ちゃん…私たちそろそろ帰らないと。レイさんに怒られちゃうよ…。私もインパルスの調整したいし…。ねぇ帰ろうってば…。」
黒髪の落ち着いた感じの少女が彼女の精一杯で必死にもう一方の少女を説得している。
「待ってよ、ユキ。プラントでの最後の買い物のよ?しばらく戻ってこれないかもしれないんだから色々買っとかないと…」
と、紫色の髪の活発そうな感じの少女は全くとりあわない。
有りがちな光景に普通なら目を逸らしてしてしまうだろう。
が、彼女らはどこか普通と違う。…服だ。軍服を着ている。それも赤い軍服。
何も知らない人が見れば女の子だから赤だ、と思ってしまうだろう。
しかし赤服とは軍学校で好成績残して卒業した者、すなわちザフト軍におけるエリートを表す。
その赤服を女の子が着ているのだ。なんとも不思議な光景である。
しかもどちらも感じは違えどかなりのもの。否が応でも目がいってしまう。
背の低い少女は視線を感じてか徐々に赤面してゆく。「ルナお義姉ちゃん…私、先行くから…!」感極まって、ついに堪えきれず1人走り出してしまった。
「ちょっと!待ってってば!もう!」
しかたなく後を追うように店を出るルナと呼ばれた少女。
その瞬間目が眩んだ。
「「ィッター!」」
不注意にも入り口をでてすぐ、水色髪の少年とぶつかってしまったのだ。
「イッターイ!!ちょっとあんた!どこみて走ってんのよ!」
「んだと〜?テメーこそ突然走って出てくんじゃねーよ!このアホ毛!」
「なんですって〜!?」
2人の口論をよそにユキはさっさと行ってしまい、後ろから緑髪の少年と金髪の少女も追い抜いてゆく。
「アウル…ビリ?」
「テメーで競争言っといて負けんなよ〜」
「なっ!待てお前らぁ〜!」
水色髪の少年も後を追って走って行く。
「何よ、アイツ…。少しは謝りなさいよ…!…でも少し…」
イイ男だったかも。そう思ってしまった見境のない自分に、少し自己嫌悪になりながらもユキの走った方向に走り始めるルナだった。
それからしばらくして---。基地ではカガリ達が施設を見学…せずにカガリが一方的に議長まくし立てていただけだった。施設には目もくれず、カガリはただひたすら主張している。
「オーブの難民を返せ」、「力は戦いを生むだけだ」と。しかし議長も反論する。「あくまで人道的保護であった」、そして「争いがなくならぬからから力が必要なのだ」と。
一瞬たじろいだカガリ。ため息をつくアレックス。
「そ!そんな、パラドックスみたいなこと話しても仕方ないだろ!とにかく早急に」
言いかけたその時、事件は起こった。
格納庫ではスティングがMSの中でキーボードを叩いていた。
「よしできたぁ!OSのインストール完了!どうだ!?アウル?ステラ?」
「OK!情報通り!」
「いいよ…」
「よし!行くぞ!適当に馴らしてサインがあったら帰艦する!機体に傷をつけるなよ!立ち上げろ!」
3機のGがその身に色彩を帯び、動き出す---。
突然の衝撃に身構えるルナ。爆発の方角には基地があるはず…
「…『ガンダム』…!?」
ユキがそう読んでいたOSを搭載した機体。それが今、基地を破壊している。どうして動いているのか。誰が動かしているのか。
止めなくては。ルナはすぐに自分の愛機のある場所に向かって、走り出す。
その時、ユキは既にコアスプレンダーの中にいた。この機体だけの特殊な機能の調整をしていたのだ。
副艦長の通信が入りMSを破壊せずに止めろ、と言われ驚いた表情を見せたユキだがすぐに冷静になる。
その後すぐのユキの同僚のパイロットらしい男、レイ通信の内容のせいだろう。
「聞こえるか、ユキ。敵はこちらの最新鋭MS3機を乗っ取り、更に倉庫に残ったザク等、基地内のSステージ機は全て発進を妨害されている。
おそらく今まともに敵と戦えるのはミネルバに機体を置いた俺とお前とルナマリアだけと考えていいだろう。肝心のルナマリアもまだ到着していない。その上敵はかなりの腕を有している。十分に気をつけろ」
「わかった…!」
メイリンから発進のアナウンスがかかる。
<<ユキ・シラトリ、コアスプレンダー発進スタンバイ。全システム機動を確認しました。発進シークェンスを開始します>>
高まる鼓動。それを抑えるように、ネックレスを握りしめ、目を閉じ、ネックレスに向かって静かに語りかける。
「見ててね、マユ…私、絶対に世界を…!」
少女は目を開く。奪わせない。もう何も奪わせはしない。
<<…路クリアー。コアスプレンダー発進、どうぞ!>>
「コアスプレンダー、ユキ・シラトリ、出ます…!」
機体は加速、そのままプラントの空に飛び出して行く--。
投下終了。作品らしきものを書くのは初めてなのでミスが多いと思うし文も拙いですけど読んでいただければ幸いでつ。
セリフ(特に連合3人とセネカ)に不可解な点があると思いますが、それは後々わかるようにしてありますので今はサラッと流しといて下さい。
書くとしたら次回はユニウス編は軽くすっ飛ばしてさっさとマユを出そうかと思います
ではノシ
>471 行きそうな雰囲気だよな
しのはら版インパはストライクのデータ使って作られたのか
>485 オーブからの技術提供だと思われ
それなら無理ないよ
>485 マジ!?
保守
職人の皆様方……。
お願いだからラス2話は本編見ないで書いてくれ。マジで。
あんな腐った展開に引きずられないでくれ。
490 :
しのはら:2005/09/24(土) 19:37:09 ID:???
第三十三話投下です
新職人様よろしくお願いします 頑張りましょう
491 :
しのはら:2005/09/24(土) 19:55:36 ID:???
影のオーブと呼ばれるアミノメハシラ。三隻同盟軍大尉キラ・ヤマトはソキウスに案内され、新たなMSの元へ案内されていた。
キラはストライクフリーダムを見、思わず口元に笑みを浮かべた。
「全く素晴らしい。バカの妄想が具現化したみたいだよ」
「それはミナ様ですか?大尉」
「いやいや、考えなくてもわかるはずたよ」
キラはパイロットスーツに着替え、コクピットに乗り込んだ。
デュランダル議長からの命令により、キラはオーブのミネルバと合流する任務を受けていた。
「ヤマト大尉、我々は自分で考え行動することができません」
「同情するよ。こっちもピンクの電波に上手く乗せられたんだから」
「しかし大尉は、自分で考え行動できる人間です。だからこそミナ様はあなたに自由を手渡した」
三人のソキウスは微笑する。
「ご武運をお祈りします」
「・・・ありがとう」
ハッチが開き、無限の宇宙が広がっていく。
「キラ・ヤマト。ストライクフリーダム、出るぞ!」
492 :
しのはら:2005/09/24(土) 20:08:34 ID:???
ミネルバににムラサメ隊が低空侵入、対艦ミサイルが殺到する。CIWSがそれを次々に落とし、ルナマリアザクとオーブ軍ムラサメがミサイルを阻止した。
レジェンドはカガリを議事堂まで護衛した後シャトルへと向かったが、そこでムラサメの妨害に遭う。固定ドラグーンでムラサメを貫くが、数の劣勢は覆せない。
議事堂に強行着陸したカガリのムラサメは護衛を伴って内部に侵入した。
ユウナは軍本部ではなく、ここにいた。
「カガリ、どうしたんだ・・・」
カガリはユウナに強烈なパンチを浴びせ、すぐさま軍本部へと向かった。
「私が聞きたいよ」
シャトルがマスドライバーを駆け上がっていく。
レジェンドも手が出せない。
「マスドライバーを潰したら国際問題になる。マユ!」
493 :
しのはら:2005/09/24(土) 20:18:50 ID:???
「マユ・アスカ、インパルスブースター出ます!」
インパルスが射出され、天空へと駆け上がっていく。
だが重量の問題から射程距離にはなかなか入らず、追いついた頃には宇宙へと到達していた。
「落ちなさい!」
その時、シャトルから何かが飛び出してきた。
マユはすぐさまブースターを切り離す。
「閣下はやらせない!マユ」
「お兄ちゃん!?」
ディステニーの斬艦刀がブースターを切り裂き、マユは間一髪でそれを避ける。
「なんでお兄ちゃんはジブリールを庇うの!」
「お前にはわからないことだ、マユ!」
切りかかるネオ、マユは間合いととって避けた。
ネオがもう一度切りかかった時、高出力のビームが空間を裂く。
「なんだ!?」
ストライクフリーダムだ。
「こちら三隻同盟軍大尉、キラ・ヤマトだ!」
494 :
しのはら:2005/09/24(土) 20:20:29 ID:???
投下終了です
ストフリの登場は逆シャアのν初登場をイメージしてくれればorz
ではノシ
他スレに、あったものを改変してみた。
護ると決めた。
そのためならば、もう迷わない。
仲間の想いと決意を胸に、少女は空へと羽ばたく。
光り輝く戦場の中で、マユが最後に出した答えは。
次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY
「最後の力」
自らの運命、掴み取れ、デスティニー!
↓元ネタ
>520 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 21:06:30 ID:???
>護ると決めた。
>そのためならば、もう迷わない。
>友の想いと決意を胸に、彼は空へと羽ばたく。
>光り輝く戦場の中で、シンが最後に出した答えは。
>次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY
>「最後の力」
>自らの運命、掴み取れ、デスティニー!
496 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 21:45:00 ID:4yMKY0UG
>しのはらさま
おつです。しかし、ストフリがアメノミハシラ謹製とはGJ!!
ソキウスと話すキラも本編より人間くさくて良い!
確かにこういう「人間」キラなら★には無理ですね。
古谷さんヴォイスで読み進めるが吉に納得
>しのはらさま
そ・・・・ソッキーが!!ソキウスが・・・・。
嗚呼、今日Gジェネでソキウス燃え(萌え)してたので・・余計に・・。
とにかくGJです。
三年わかめ組!徹先生!
「あー、久しぶりだなー。仁瑚瑠。」
「そうですねぇ、徹先生。なんせ作者がすっかり登場させるの忘れてたんですから。」
なぜかマユとレイとルナマリア達ミネルバ正規メンバーは教室にいた。
ドラマで見た事のあるニホンという国の教室だ。
「はい、というわけで始まりました。教えて!徹先生の時間です!!」
「わーぱちぱち。あ、ところでなんでこの人たちここなんです?
普通なら『ラスティとミゲルのオールナイトプラント』じゃないですか。」
「あー、あっちにハイネ隊行ってるから平等に分担。
ちなみに連合三人組は『ドミニオン道場』に行ってる。」
「解かりました。じゃあ、先生今日の講義をどうぞ!!」
「よし、いいかー。お前ら。お前らの敗因はアスラン・ザラに歌わせた事だ。
その威力はもうジェネシス級だぞ?ジェネシス。」
「そうですよねー、僕もアスランとカラオケに行った時こっちに来そうになりましたし。」
「ミゲルとラスティも二人とも顔を真っ青にしてたからなー、この話題出た時。
まぁ、とにかく今後一切アスラン・ザラには歌わせるなという事だ!!
「はい、ではまた今度気絶したときに!!」
「「さよーならー。」」
「放課後の教室!!!生徒との禁断の関係!!年下攻め!!」
ルナお姉ちゃんがそんなことを叫びながら眼を覚ました。
「大丈夫?お姉ちゃん?一番最後まで気絶してたけど・・・。」
「えぇ、大丈夫よ。マユ・・。ふふ・・、これで次の新刊は大丈夫ね・・・。ニコトル・・・。」
いや、新刊とかとよりルナお姉ちゃんの頭のほうが大丈夫なの?
「「「「「我ーら輝くー♪緋色ーの戦士ー♪」」」」」
いまはカラオケ大会は再開されたばっかだ。
仕切り直しのためにハイネ隊の皆が替え歌を歌っている。
ちなみに眼を覚ました時の状況は凄かった。
皆ぐったりとしているし中には廃人になりかけている人もいた。
シンハロもそうとう辛かったらしく『シデンショウクラワセラレタカトオモッタ。』
と、言っている。『シデンショウ』ってなに?
「「「「ひかーりあれー♪いざ進め!!我らハイネ!ヴェステンフルスたーい♪オーイエー♪」」」」
ハイネ隊の皆の歌が終わり、次々とみんなが歌っていく。
「ひっこぬかーれて♪たたかーって♪食べーられてー♪」
ステラは『○クミン』の歌を歌った。なぜか、この歌を聴いたスティングの
顔を寂しげだった。
「シャーッタチャンスは一度ーだけ♪僕のここーろまどーわすー♪」
あいかわらすルナお姉ちゃんはテニプリの曲だ。
『さぁさぁ♪赤組は盛り上がってますねぇ!』
『では、次にマユ・アスカさんで。「前へ」です。』
振り返れば 思い出は優しくて
前をみたら 残酷な現実で
逃げ出したい気もする 王子様に迎えにきてほしい気もする
もう二度と戻らない時を求めてる自分がいる
そんなのは・・・嫌だから。
さよならするわけじゃない 自分の足で踏みしめるだけ
自分の中にしまうだけ・・・・・。
前へ 思い出 捨てるわけじゃないから
前へ 残酷も 君となら受け止められる
君は 怖いの でも大丈夫だよ
君と僕ならどんな場所へも飛んでゆける
さあ、未来へ歩こう
ハイネはその歌声に酔いしれた。
いまどき、ここまでまっすぐ歌える奴もめずらしい。
最近は歌詞なんかよりメロディばっか聞いてる奴らが多い。
しかし、このマユの歌は歌詞を聴かずに、理解せずにはいられない歌だった。
(やべぇな・・。ライバル登場ってやつ?)
ハイネはそんなことを考えながら微笑した。
アウルはうとうとしていた。
もちろん、マユの曲はきちんと聴いていた、しかし、それでも眠くなった。
その感覚は・・・・そうだ、あれに似ている。
(母さん・・・・。)
自分の母と共にいる時の感覚に。
アスランは苦笑していた。
彼女と自分の差に。
しかし、それは歌唱力の差ではなく、彼女が歌で表した彼女の有り方だ。
(俺は・・、こんな風にはなれないからな・・・・。)
アスランはそんな事を考えながらメロディに身を任せた。
カラオケ大会の様子をこっそり見ていたタリアはあきれた。
まったく、重大な会議をすると言っておきながら監視カメラまで改ざんして
何をやっているんだか・・と。
しかし、気がつくとそれぞれの歌声に引き込まれていた。
(若いわね・・・・・。私は、あんな時代をどこおいて来たんだろう?)
タリアは羨望のまなざしで彼らを見た。
ついにストフリが登場したなマユ種スレに
みんな、どう思う?
ホント本編はありえない程ウンコ街道を脇目も振らずひた走ってますね。
職人様たち、色々なものが削がれてるでしょうが負けないで下さい。
本編の素材使ってるのを喜んで見てるくせに、本編批判は簡単にするんだな。書いてる人が違うからいい、とか単純に面白いから毒づきたいんだろうが。
何を言いたいのかよく分からんが、あの本編を単純に面白いと思える人ばかりだったら
何個も立ってるifスレがこういう形で盛り上がるような事はないと思う
ほのぼのマユデスは良いね。
まさにタイトルどうりというか癒されます。
コンセプトがはっきりしている話は読みやすい。
>>503 >本編の素材
本編自体がパクリや引き写しのオンパレードですが何か?
話のこと考えてると眠れない…こんな時間に書き出してしまいました第二話です
タイトルの不備、失礼しましたorzマユ-ANOTHER・DESTINY-でよろしくお願いします>まとめ人様
ありがとうございます!未熟者ですがよろしくお願いします>しのはらさま
そのほかの職人様もよろしくお願いします!
オノゴロ島。その北部にある美しい邸宅の中で。
「…はい。やはりこちらの予測通り。かの部隊は間違いなく動いているようで。…ええそうです。あれも明後日中にはおそらく…。実際の画像もご覧になりますか?」
なよっとした感じの男が調度品に彩られた部屋で電話の応答に追われている。敬語混じりの言葉から話す相手の地位の高さが伺える。
「そうですか。ではお送りしておきます。…ちなみに例の件のお返事は?…そうですか、それはありがたい。必ずや我々オーブもそちらのご期待に答えてみせましょう。
ええ、アークエンジェルもフリーダムも、そのパイロットもいまだオーブに。心配入りませんよ。
奴らが来た時の対処作もすでに手もうってあります。…いえ、宣言はその後で。戦争が始まるのは間違いないことでしょうから。焦る必要はありませんよ。
時期をみてまたこちらから…。はい、それでは、大統領。ええ、『新の』青き正常なる世界のために。」
おかれた受話器はようやく男に解放されたことを喜んでか、せいせいしたと言わんばかりにガチャリと大きな音をたて、さっきとはうって変わって沈黙する。
「ふぅ…」
ため息をついた男…現・オーブ連合首長国宰相、ユウナ・ロマ・セイランは呟く。
「青き正常なる世界のために、か。全く、どっちが異常なんだか?」
マユ-ANOTHER・DESTINY- PHASE-02〜崩される平和〜
それから数日後。
オーブ近海の孤島。夕暮れの海岸で子供達がなにやら戯れている。鬼ごっこをしているようだった。無邪気に駆け回っている彼ら---その中に1人だけやや年の離れた栗色の髪の少女。
「マユお姉ちゃーん、マリューおばさんがご飯出来たって。みんな集めて、ってー」
丘の上から少年が声をかける。
「そっか、ありがとー!さっ、みんなーご飯だって!お家に帰ろっか?」
「「はーい!」」
何人かの子供を残してほとんどの子供達は素直に家に帰って行く。残った何人かの対応に向かうマユ。
「やだよー!まだ遊びたいよー!」
「僕も!」
ワガママをいう子供達。マユがこうゆう子供達に言う言葉はいつも決まっている。
「もー!そんなこと言ってると君達の分のご飯、お姉ちゃんが食べちゃうぞ?」
極めつけは
「それに〜夜になったらお化けがでちゃうぞ〜?」
「「…ヤダー!」」
いつも通りいっせいに家に向かって走りだす少年達を見送ってニッコリと微笑むマユ。…そして振り返り浜辺に残り座り込んでいる最後の人影に近づいてゆく。
「…もう、暗くなっちゃいましたよ?キラさん?」
「…うん。…わかってる。」
「戦争のこと…ですか?」
「…うん。また始まるのかな、って。そう思うと…少し嫌な気分になるんだ」
「また…戦うんですか?」
「わからない…でもこうして僕達は安全に暮らしているけど、影で怯えながら暮らしている人達もいる…。それなのに僕ができるのはできるだけ早く戦争が終わるように…」
戦うことだけ。
マユは知っていた。
彼はかつて、ただの工業カレッジの学生だったということ。
それが偶然にもそこで開発された新型MS「ストライク」に乗ったことで運命が変わっしまったということ。
その後もパイロットを続け幾戦かを経てかつて友達だった者と本気で殺し合って死にかけたということ。
そこをプラントの歌姫ラクス・クラインに助けられたということ。
それでも戦争を止めようと必死に努力したということ。
その途中、自分が住んでいた国を守ろうとして戦ったということ。
しかし守りきれず、その国から逃げ、宇宙へ昇ったということ。
その戦いで自分の家族はとうとう自分を残して1人もいなくなってしまったということ。
それは、もしかしたら----彼、キラ・ヤマトのせいかもしれない、ということ。
だが今の彼女にはそんなことはどうでもよかった。
私は生かされた。なら死んだ父や母、兄の分まで生きるだけ。
そう考えていたから。恨みや憎しみからはなにも生まれない。それがここ、マルキオ導師の孤児院での生活で唯一学んだことだった。
しかし同時に彼女はときどき考えしまう。
もし---仮にもし自分が孤児院に入ることなく生きていくことになったら。もしかしたら復讐心にかられ、
おかしくなって、何かとんでもないことをしでかしていたのではないかと。そしてそれがもしかしたら今後起こりうるかもしれない。
それが今のマユの問題だった。
--イヤだ。戦争は嫌いだ。自分は今の生活が好きだ。ここにいたい。ここでみんなに囲まれてずっと平和に生きていたい。そのためならなんだって---。そう思った瞬間だった。
(…な・ん・だ・っ・て?何でもするの?)
…するよ。なんだって
(他人を不幸にすることでも、何でもするの?あなただけ幸せならそれでいいの?)
…そんなこと!
(でもそーゆうことよ。生きることって。隠す必要ないわ。…それに)
…それに?
(あなたなら出来るじゃない…あなたには、その『力』がある---。)
「…ユちゃん。マユちゃん?」
我にかえるマユ。頭がフラつく。
「は、はい?」
「寒くなったし、みんなのとこに帰ろうか。」
「…はい」
突然、心に映し出された不愉快な何か。気分は悪かったが…それほどでもなかった。それよりは夕飯のメニューの方がむしろ気になるぐらいで。
家に入ってゆく彼ら。それを遠方の船から監視する男。通信機で何者かと話している
「ターゲットは屋内へ移動。…しかし歌姫の姿は確認できず。…OVER」
<<了解した。一石二鳥とは行かないものだな…。まあいい。作戦は予定通り行う。シークレットオペレーション:ENGEL・WITH・DIRT。作戦を開始する。ザフトのために。…OVER>>
「ザフトの…ために」
そう言って通信機の電源を切った男、クレイブ・ドットの腕は、小刻みに、震えていた。
家の中では子供達に交じってマユも食事をとっていた。マユは食べながらずっと考えていた。これからの自分達のことを。
料理を残さず食べ終え、
「バルトフェルドさん」
マユはちょうど自分の真後ろにいた、食事もとらずに椅子に座りテレビを見ている男に話しかける。コーヒーを飲んでいるようだった。
「んー?どうした?」
「バルトフェルドさんはどう思います?」
「何がだね?」
分かっていながら知らないフリをしているようだった。だいたいテレビを見ていて気づかないわけがない。
そんなわざとらしい態度が気に入らなかったのか、マユも若干感情を高ぶらせる。
「ユニウスセブンのことですよ…!」
「あああれか。あれがどうかしたかね?」
「はぐらかさいで下さい!あれが落ちたんですよ?間違いなくまた戦争が始まりますよね!?あなたはなんとも思わないんですか!」
八つ当たり気味に言うマユ。
「思ってどうなる?」
「思いがなかったらなにも出来ないじゃないですか!」
「…あっても同じさ。同調しても同調しない敵と戦う。反対しても同調しろと攻撃される。態度を示さなくても攻められたら戦うしかない。
わかるか?どう足掻いても戦うしかないんだ。それが戦争」
キラはこのとき、ある光景を思い出していた。二年前、自分に銃を向けるバルトフェルドとその時言われたこと。
どちらかがその命尽きるまで戦い続けるしかない。
そして…ラウ・ル・クルーゼ。
彼もまた争いを肯定していた。
戦う。
それしかなかった。戦争を生き抜いた彼がその果てに辿り着いた究極にして最悪の真理。
斬られれたらこちらはそれより強く斬り返す。前の大戦もそのようにして終結したのだ。いずれ彼女も同じ真理にたどり着く--。そんなことを考えていた。
しかし彼女の答えは違った。
「なら…約束すればいいじゃない!もう戦わないって!戦うのがイヤなのはみんな同じのはずでしょ!誰かが言わなきゃ!戦争は終わらない!」
「戦争はボードゲームとは違う。子供の約束みたいにはいかんのだ。それに戦争したいやつはいないわけじゃない」
「そんな言い訳!」
そのときだった。不意に開く玄関のドア。
何かが投げ込まれる。
「伏せて!」「ちっ!」
いち早く反応するキラとバルトフェルド。次いで炸裂音。
「キャ!」
思わず悲鳴を上げるマユ。耳が痛い。なにも聞こえない。突然体が持ち上がる。煙の中を走ってゆく。
「なに?どうなってるの!?」
自分を抱えていた者は止まり、自分を下ろしたかと思うとマユの体は滑り出す。
「ちょっと!?」
「そこで大人しくしてて!」
今度はハッキリ聞こえた。キラだ。そしてようやく滑っていた体が止まる。
「イタタタ…、…ここ、どこ?」
射撃訓練用のスペース、いくつも並ぶパソコン。それに…正面には余りにも有名なMSが二機。
「あれは…フリーダムに…ストライク!?やっぱりバルトフェルドさんは…。」
MSに続いて彼女を驚かせたのはパソコンに映し出されている映像。
「島にMSが!?嘘でしょ!?それに…なんなのコイツ等!?」
特殊部隊らしき者達が次々と孤児院の中に侵入してゆく。
子供達の恐怖に歪む表情。泣いてる子供もいる。必死に応戦しているキラ達。しかし状況は非常にまずいようだ。
「どうしたら!?」
マユはとっさに手近にあった銃に手を伸ばす。そして構え、引き金を引く。…しかし一向に撃てる気配がない。
「なんで!?なんで弾がでないの!?」
安全装置など知る由もない彼女は、壊れたと思い込んだのか、そのままピストルを投げ捨て…
「戻れないし、やっぱり…乗るしかないよね!?」
MSに駆け寄るマユ。
「フリーダムの方が強いかな…でも操縦難しそう…」
(フリーダムがいいわ。)
「……」
フリーダムに飛び移るマユ。シートに飛び込む。途端に何故が体の芯から懐かしさがこみ上げ、力が抜けてゆく。
(この感覚…私、MSに乗ったことが)
「…あるわよ、何度も」
ポツリと呟き、独りでにキーボードを叩きOSを確認し初めるマユ。
(あれ…?なんで!)
「あんたは中に引っ込んでて…私がやるから。もう何も奪わせない。あいつらも…私の敵!」
突然語調を変えたマユ。
PS装甲を展開、瞬く間白色が機体を包む。フリーダムの両脚部に力が込められ、機体は急速上昇する。フリーダムは左の腰からビームサーベルを抜き取る。
「行くわよマユ!MSの使い方!しっかり思いだしなさい!!」
投下終了。
まーたワケワカラン展開になってる、とお思いの方も多いでしょうが…すいませんもうしばらくこんな感じて不可解なとこが増えそうですorz
俺から言えることは一つだ。
つ[テキストエディタ(メモ帳でいいぞ)に書いてから張ろうぜ]
投下完了まで2時間近くかかってるじゃないか。
ファントムペイン第9話目です。
気づいたらdでもない長さに……orz
>>255 ご指摘の通りなんですが、そのまま続けさせてください。
表現上ポッドじゃ締まりませんので……ドラグーンの発展系らしいですし……
眼をつぶってやってくださいませ。
518 :
1/21:2005/09/25(日) 07:47:34 ID:???
開戦の数日前、オーブ首長国連合首脳会議―
代表首長であるカガリ・ユラ・アスハは頭を悩ませていた。
理由は、大西洋連邦から迫られている、新しい地球連合への参加及び同盟要請であった。
ユニウスセブン落下事件の後、各国は、暫くの間数千万に上る被災民への対応に追われた。
が、その傷も癒えぬ内、大西洋連邦が呼びかけた同盟条約が各国を駆け巡った。
内容は、ただの同盟ではなく、明らかにプラントとの戦いに備えた軍事同盟―
中立を掲げるオーブに取っては、受け入れがたい条約ではあったが、会議は肯定派が多数を占めた。
「代表、お気持ちは分かりますが……我々は今、誰と痛みを分かち合わねばならないのか、お考え下さい」
五大氏族の中でも最年長であり、最も実力のあるウナト・エマ・セイランが逡巡するカガリを促す。
カガリの気持ち―先の大戦で大西洋連邦から宣戦を布告され、父ウズミ・ナラ・アスハを失ったこと―
そして、この条約に締結すれば、死して父が護ろうとしたオーブの中立性が侵される虞があること―
それらが彼女が同盟条約に反対する理由であった。しかし、状況はそのような想いを酌んではくれない…
「だが……このままでは再び連合とプラント、世界は二つに分かれ争うことになる!
我々オーブの中立の理念はどうなる?このままでは……再び戦火がこの国を包むことになる!」
「もう包まれてますよ……とっくにね」
カガリが反論を示した直後、それを真っ向から否定する意見を出したのは、ユウナ・ロマ・セイラン。
ウナト・エマ・セイランの息子であり、現在カガリを補佐するこの人物は、同時に彼女の婚約者でもあった。
だが、実際は二人は心を通わせた中ではく、中立を維持しようとするカガリと、大西洋連邦よりのセイラン。
この会議だけでなく、アスハ家とセイラン家は、昨今の政策決定の場でしばしば対立することもあった。
今は対立関係にある二人のやりとりは続く。
「代表、ユニウスセブンの一件、もう一度思い起こしてください。あのテロリストどもの標的は?
地球を破滅させることでしょう?既にオーブの中立性は侵されている……これは厳然たる事実です」
「しかし、プラントの現政権の手先ではなく、テロリストだ!政治的思惑で行なわれた行為ではない!
現にプラント政府は賠償要求には応じる構えを見せている!戦争をする必然など何処にも無い!」
「では、その言葉を被災国の人間に言えますか?"お前達は運が悪かっただけだ。我々は関係ない"と。
今回はたまたまオーブは津波による被害だけで、被災者も数えるほど……だからそう言えるのでしょう?
もし、あの大きな岩がオーブを穿ったとき、"プラント政府は関係ないから仕方が無い"と言えますか?」
「そ……それは」
理詰めで迫るユウナに対し、まだ年若く感情が先走るカガリでは論客の相手足り得なかった。
ふぅ……とため息をつくユウナ。だが彼も悪戯に目の前の国家元首を軽んじているわけではない。
如何にすれば彼女を説得できるか―彼はその方策を頭の中で練っていた。再びユウナが口を開く。
「代表、本題とは外れますが……現時点でのわが国が状況を確認しましょう」
519 :
2/21:2005/09/25(日) 07:48:58 ID:???
ユウナが手元のパソコンを弄くる。
各首長の手元の同じものにあるグラフが表われ、棒線グラフの列が表示された。
グラフは2本セットで伸びており、天をつくほどの勢いの線と、その右に申し訳程度に伸びる線があった。
「手元のグラフは過去10年間のオーブの食料自給率です。
左側は、現在同盟条約に参加している大西洋連邦、ユーラシア連邦他、各国からの輸入された食糧。
そして……悲しいくらいちっぽけですが、右側が我々オーブの生産食料です」
赤道直下に位置する南海の島国、オーブ―
この国は技術立国としては華々しい成功を収めているが、反面その国土の狭さから食料は外国任せ。
ユウナは更に説明を続ける。オーブが連合各国からの食料を止められれば、物価が高騰することは必然。
さらに、国民の危機感は煽られることは必定で、国内企業への有形無形の影響も懸念されるであろう。
もちろん、有事に備え国内にも食料は蓄えてはいるが、輸入が止まればオーブへの影響は計り知れない。
それらの説明が終わった後、今度は別のグラフが出てくる。今度は2本の棒線ではなく一本の棒線の列…
「さて、次に、自慢ではありませんが、我がオーブ国営企業モルゲンレーテが稼ぎ出した外貨です。
いやはや、この国の大きさで、これだけの額を稼ぐのは些か驚きですが……ここにも問題があります」
次の瞬間、一本の棒線が一つの線で隔てられた。2:8程度の割合で一本の棒線が分けられる。
ユウナの説明では、上がプラントや大洋州連合で稼がれた外貨、下が連合各国との取引で得られた外貨。
オーブの今日の繁栄は、プラントではなく、地球各国との取引によるところが大きいのは明々白々である。
また、プラントはコーディネーター国家であり、人材的不足は無いため、年々割合は低下しつつあると。
「大戦の折、大西洋連邦から宣戦布告はされましたが、ユーラシア連邦、東アジア共和国は不参加でした。
が、今回の同盟条約ではすでにそれらの国々も加盟しております。オーブが同盟条約に不参加で……
さらにプラントに協力する敵性国家とみなされ、輸出入が止められた場合……早晩わが国は崩壊します」
オーブが中立を宣言した場合、これらは現実となる問題、しかも避けては通れない問題である。
また、彼の説明では、同じ中立国のスカンジナビア王国もこの同盟条約に参加する意向とのことであった。
このままではオーブ地球で孤立化するだろう、それがユウナの主張だった。
「確かに理念は大事です。わが国の誰もがそれは知っています。
ですが、今やその理念よりも、明日の国民の生活という避けては通れない問題が現実にあるのです。
仮に中立を宣言しても、プラントや親プラント国の大洋州連合が助けてくれる保障はありません」
戦争云々ではなく、現実にオーブに残された選択肢はひとつしかありえない。
会議の閉幕直後、カガリ・ユラ・アスハも同盟条約への締結を認めざるを得なくなった。
520 :
3/21:2005/09/25(日) 07:50:00 ID:???
「……カガリが、大西洋連邦に向かった!?」
同盟条約締結に向けた会議の翌日、ユウナの元に一方が飛び込んできた。
先日の会議の後、放心状態だったカガリに一言二言声を掛けて元気付けようとしたが……
国家元首がこの非常事態に気を病むのは拙いと、朝一番でアスハ家を訪れたものの……
特使アレックス・ディノをプラントへ渡らせ、自らは夜中に大西洋連邦大統領に会おうと向かった―
それがアスハ家の用人から伝え聞いた事実であった。
「同盟条約がダメなら……今度は両国首脳に会って戦争をとめようってか?無茶苦茶だよ!」
ユウナが叫んでいた頃、大西洋連邦大統領、ジョセフ・コープランドも同じようなことを叫んでいた。
「オーブの代表が間もなく到着だと!?何をしに?アポイントの要請はあったのか?」
「申し上げにくいのですが……アポなしの上に、目的も判然としません。ただ会いたいと……」
コープランドに問いただされた秘書官も、どうしたものかという表情だ。
ユニウスセブン落下事件の被害は大西洋連邦をも穿っていた。フィラデルフィアとケベックは壊滅。
彼は事後処理のため、また被災民への激励と復旧活動の視察を兼ね、フィラデルフィアを訪れていた。
その激励演説を終えたところでカガリ来訪の一方が到着した。
アポイント無しでも国家元首を軽んじることはできない。
「全く……この忙しいのに一体なんだと言うんだ?兎に角DCに回せ。私も今から行く」
突然の会談は首都ワシントンで行なわれることになった。
通常、国のトップ同士の会談ともなれば、大々的なニュースになるし、マスコミも群がるものだが……
突然の来訪のため、幸か不幸か取り立てて騒ぎにもならず、会談は極秘裏に行なわれることとなる。
略式での会談が始まった。カガリの要旨は、兎に角開戦を避ける手段は無いかというものであった。
オーブが連合各国とプラントとの仲立ちをしても良い、何としてでも戦争を避けたいのだと。
コープランドは呆れた。ただそのためだけにわざわざ来訪したとは……
これがオーブでは通例なのかと、頭が痛くなった。だが、彼は気を取り直し、現在の状況を語りだした。
「ユニウスセブンの落下事件……彼の隕石が火の矢となり、フィラデルフィアとケベックが崩壊しました。
国民の意は、世論調査でも開戦派が9割近くにまで達しています。民主国家としては国民の意こそ全て。
私としても、できることなら戦争は避けたい……が、国民のために働くと宣誓した手前、できないのです」
相手がまだ年若い少女とはいえ、仮にも国家元首。コープランドはあくまで丁重に要請を拒んだ。
先日ユウナが彼女に示したのと同じ理屈、即ち国民のためという台詞がカガリの頭を殴りつける。
が、戦争となればその国民こそ傷つく―そう言って翻意を促すカガリだが、返ってくる答えは同じであった。
521 :
4/21:2005/09/25(日) 07:51:01 ID:???
会談はごく短いものであった。
非公式の上、コープランドには予定が詰まっていたため、時間を多くは避けなかった。
コープランドは、自らに非は無いものの、その非礼を詫び、せめて空港まで見送ると申し出た。
彼はこの後ケベックに向かうとの事で、その道すがら両者は同じ車に座ることとなった。
「何のおもてなしもできず、まことに申し訳ない」
切り出したコープランド、だが当のカガリは先日の会議後と同じく放心状態であった。
コープランドは目の前の少女思う。大統領制を敷く大西洋連邦とは異なり、首長制のオーブ。
前政権下のこととはいえ、先の大戦ではオーブを焼いた負い目もあり、彼は年若い元首を慮った。
突拍子も無い行動を呆れたが、ただ平和を望む目の前の少女―
先の大戦で彼女の父を殺したのは我が祖国―
ふとコープランドは先日の一報を思い出した。
ブルーコスモス盟主、ロード・ジブリールから言い渡された、"ロゴス、開戦認可"の報。
穏健派のジョゼフ・コープランドは、就任当初の公約でプラントを含めた地球圏統一を訴えていた。
軍需産業複合体の排斥をも狙っていた彼だが……支持基盤の政党内にも強い影響力を持つロゴス。
大統領である彼にとってもその排除は敵わなかった。
戦争は避けたい―その想いはカガリと通じるものがあった。
だが、それを遮る壁は、二人の首脳の前に厳然と聳え立っていた。想いを同じくするものならば……
彼は意を決し、ある行動に出た。幸い今は車中……会談は終わり、声が外に漏れる虞は少ない……
「代表……貴方はロゴスというものをご存知ですか?」
帰りの機内―
カガリ・ユラ・アスハはコープランドから聞かされた話を振り返っていた。
先ほどまで放心状態であった彼女とはまったく別の顔、まるで戦場に赴くような顔を彼女はしていた。
軍需産業複合体ロゴス―
古来より存在し、常に戦争の影にあり、利潤を追い求める組織。
その構成は現在も不透明なままで、中心人物のうち幾人かは分かるものの、全体像は依然として不明。
しかし、彼らは大西洋連邦だけでなく、各国の政治に影響力を及ぼし、その排斥は困難を極める。
ブルーコスモスとともに、今回開戦することを強固に推し進めようとする者達。
カガリは、その若さゆえロゴスへの怒りが表情にありありと出ていた。
ふと機内から空を見れば夜―あの夜空の向こうにはプラントがある。
今頃はアレックス・ディノが、自分の代理としてギルバート・デュランダルと会談に臨んでいるはず―
コープランドが平和を望んでいることは分かった。あとはデュランダルと想いが同じならば……
最悪戦争になっても、あるいは早期の終結は可能かもしれない。
今のカガリにはそれが唯一の望みであり、救いであった。
522 :
5/21:2005/09/25(日) 07:52:26 ID:???
宣戦が布告された数日後、ユウナ・ロマ・セイランは自邸の一室にいた。
既に時間は夜。海に程近い邸宅には潮風が入り込んでいる。
「これは……現実なのか?」
ユウナは一人モニターの映像に見入っている。
先日、オーブ領海を出たところで、ザフト軍艦ミネルバと地球連合艦隊の一戦が行なわれた。
この戦いで、地球連合軍は、僅か一隻と搭載機3機のMSに対し、戦艦6隻を失う大敗を喫していた。
オーブ軍は様子を逐次モニタリングし、連合のMSウィンダムとMAザムザ・ザーのデータを収めていた。
更にはミネルバ大勝のきっかけを作ったザフト新鋭MSインパルスの戦闘データを……
「まるで……化け物じゃないか?」
インパルスの姿を見た彼の素直な感想である。これほどの力をザフトが持っていたとは……
ふと彼はバルコニーを見やる―レースが靡き、風が潮騒を運んでくるのが分かる―
だが、彼には別の気配が感じられた……鳥や動物ではない―人の気配―
「……どなた?」
仮にもセイラン家の邸宅である。警備は厳重であるし、関係者以外立ち入ることはできない。
しかし、現に黒い人影が姿を現し、バルコニーからこちらを見てる。
「物取り……にきたわけじゃないよね?誰か知らないけど、入ってきたら?」
ユウナは更に不審者に入ってくるよう促した。ここは3階―警備の目を掻い潜ってくる以上、只者ではない。
物取りにしては手が込みすぎているし、暗殺でもする気ならとっくにやっているだろう……
だが、ユウナは用があるなら入って来いと言った―細面の外見とは異なる豪胆さを彼は秘めていた。
それを聞き、黒髪の少年―バイザーをかけた少年が、音も立てずに部屋に入ってくる―
「……アメノミハシラから?それとも……」
「卿からの命令で来た。これを……」
バイザーの少年、ゲンは大小2枚のディスクを投げてよこした。
大きいのはMSのOSサイズ、もう一枚は……すぐさま小さいディスクをユウナは手元のパソコンに挿入する。
やがて文章がディスプレイに映し出される。途端にユウナの眼が鋭さを増す―
この場にカガリがいれば、さぞかし驚いたであろうほどの眼光―
文書が一読されたころには、そのディスクのデータは自動的に消去されていた。
523 :
6/21:2005/09/25(日) 07:53:22 ID:???
パソコンの電源を切り、ふぅとユウナはため息をつく。読み終えたときは既に元の目付きに戻っていた。
「相変わらずだね、盟主は。用心深いことこの上ない。で、例のものはちゃんと用意してくれた?」
手元のOSサイズのディスクをひらひらとさせる。この中には約束のものは入っているのか―?
意を解したゲンは無言で頷くが、ユウナは不満げに呟く―
「あのさ、この中身を専門家に見せて、納得できないようなら……さっきの話もご破算になるけど……?」
バイザー越しで表情は見えないが、ユウナの目には不満げに映った。が、直ぐに少年は答える。
「オーブの技術者連中の腕が確かなら、恐らくそのOSは満足のいくモノに仕上がっているだろう。
ご希望に沿う形で、モノは構成されているはずだ……もっとも俺の腕を信用することが前提だが……」
「ふぅん……君がねぇ。……じゃ、信用しよう」
先ほどの不満げな様子が嘘のように、意外なほどあっさりユウナは引き下がった。
同時に、用は済んだとばかりにゲンがバルコニーへ戻ろうとする―が、それをユウナが制する。
「どうせなら、正面玄関から堂々と帰ったら?見送るけど?」
「悪いが……うちは礼儀作法に厳しくてね。それに……知らない人についていくなって言われてるんだ」
「なら……せめて名前くらい教えてくれよ?住居侵入で訴えるとき、名前がないとねぇ?」
「……八咫烏(ヤタガラス)さ。ま、アンタのおふざけに付き合うほど、暇じゃない」
言うや否やゲンはバルコニーを駆け飛翔した。驚いたユウナが慌てて見下ろすが、既に誰もいない。
ホントに飛んだのか―?そうユウナが疑いを抱くほど、彼の姿は掻き消えていた。
だが、音も無く、ただ潮騒が漂うだけ……
「八咫烏ねぇ……確か神話で、ご先祖様をこの地に導いたって言うけど……
それに……戦勝を運ぶ伝説の鳥って話だったか……コードネームか何かか?ま、どうでもいいけど」
こちらも言うや否や、先ほどのことは既に忘れた様子。
直ぐにユウナは携帯を取り出し、どこかへ連絡をする。
「モルゲンレーテの技術部?ヤマト研究員は帰った?あ、そう。
じゃあさ、明日義理のお兄様が君を迎えに行くって伝えて。うん、ちょっと見て欲しいものがあってね。
ああ……そうだね……夕方ごろになるかな?そうそう、晩御飯でも食べながら、ってね」
話が終わると、彼は室内のソファーに身を投げ出た。OSのディスクを弄りながら呟く
「これで……一応の手札は揃った。やれるだけのことはやっている。あとは情勢がどう転ぶかだな」
524 :
7/21:2005/09/25(日) 07:54:31 ID:???
セイラン邸を後にしたゲンは、今回の作戦のパートナーに通信を送る。
周辺を海に囲まれたオーブ―連合に加盟したとはいえ、その主権を侵すことは理に反する。
故に、彼らファントムペインの旗艦セントジョーンズは、オーブ領海の外で待機せざるを得ない。
単独行動のゲンを支えるのは、海を渡りオーブまで共に来た戦友―
「こちら八咫烏……セイレーン、聞こえてるか?」
『……なぁ、そのわざとらしいコードネームで呼び合うの、止めにしない?』
アビスのコクピットでアウル・ニーダは、相棒へ文句をつける。
通信コードは通常の連合のコードとは異なるものを用いているが、万が一傍受されるとも限らない。
念のため、所属を気取られないようコードネームで呼び合ってはいたのだが……アウルには不満らしい。
『……ま、任務だから仕方ないけどさ。で、何?』
「……決行は明日だ。"共犯者"と連絡が取れた。後はお姫様を連れてくるだけさ」
『へぇ……上々じゃん。じゃ、今日は引き上げるよ。そっちは今日も泊まりか……大変だね』
「もう慣れたさ。明日は予定通り頼むぜ」
『了解』
通信を終えた後、アウルはアビスをセントジョーンズへと向けた。
既に戦時下であり、オーブ軍も臨戦態勢には入っているはずなのだが、監視の網にかかることもない。
気味の悪いほどの順調さ、旗艦とオーブを苦も無く行き来できる状態をアウルは不審に思った。
あるいは、連合とオーブで今回の計画は内密に話が出来ていて、手はずも整えられているのか―?
だが、もしそうならわざわざアビスで出向き、こうしてゲンと連絡をつける必要もないはず―
不可解に思いながらも、何か彼の知らないところで状況が動いているのは分かった。
「ま、俺には関係ないけどね」
状況を理解はしても詮索はすまい―
兎角彼ら特殊任務に就く人間にとっては、ときに知らないところで手筈が整えられることもある。
たとえば、アウルたちがアーモリーワンでカオス、ガイア、アビスの強奪のときもそうだ。
事前に潜入した者達が手筈を整え、彼らはその手順に従い任務を遂行するのみ。
自分達の知らないところで物事が進む不可解さはあっても、それを表には出さない。
手筈を整える者達がいるならば、それを確実に実行する者達もいる―それが彼らファントムペイン―
「……でも、こういう任務は……退屈なんだよね」
割り切ってはいても時に愚痴もこぼす。ゲン、スティング、ステラの模擬戦の際、彼は一人別行動だった。
アビスのデータ収集のため、一人だけ大西洋連邦のフォビドゥン・ブルー隊を相手にしての模擬戦―
結果は、プラントの最新鋭の技術を盛り込まれた彼の愛機アビスに凱歌が上がった。
加えて相手は旧式の上に、パイロットもエース級の腕を持った相手ではなかった。
腕がなまって仕方が無い―今回も、プラントのお姫様を乗せて運ぶだけの簡単な任務―
だが、明日の任務が、彼が望む"退屈しない任務"へと変貌することは、今の彼には知る由もなかった。
525 :
8/21:2005/09/25(日) 07:55:22 ID:???
同じ頃、ザフト軍カーペンタリア基地―
基地司令の部屋では、司令官と突然の来訪者との会話がなされていた。
「いきなりやって来て、アッシュを6機貸せ……か」
訝しげな顔をする司令官とは対照的に、相対する長身痩躯の男は鷹揚に頷いた。
受け取った命令書には、最高評議会議長ギルバート・デュランダルのサインも付してある。
断るわけにも行かず、かといって最新鋭MSを戦力から裂かねばならない事への不満は残る。
アッシュの手配書を作成しながら基地司令は呟く。
「例によって機密かもしれんが……何が始まるのか教えてくれたら貸しやすい―」
「―特殊任務につき、ご容赦願います」
司令の言葉を遮る形での即答―予想通りとはいえ、些か司令にも忸怩たる想いは残る。
彼ら特殊部隊の人間は、たとえば独立の指揮権限を有するフェイスとは真逆に位置する組織である。
名前の上では同じ"特務"に就くものでも、いわば彼らは裏の世界の人間―汚れ役であった。
しかし、時としてその権限はフェイスと同等の力を有することもある。それが今このとき発揮されていた。
命令書一通で基地司令ですら関与し得ない有様―やがてMSの手配書ができ、司令は男に渡した。
「どこでそれを使うかは知らんが……こっちに迷惑はかけんでくれよ?」
「ご心配なく……この辺りでは使いませんから」
それだけ言うと、男は足音すら立てずに部屋を出て行った。部屋の外には待機していた部下達がいた。
そのうち一名に手配書を渡し、男―ヨップ・フォン・アラファスは厳かに語った。
「決行は明日の夜、上陸部隊は俺を入れて8名、後詰のMS部隊は6名で行く。
……分かっているとは思うがいつもどおり、我々の任務に詮索は無用だ。全てはプラントの明日のため。
状況次第で如何様な任務に切り替わっても、その命令を確実に遂行することだけを考えろ」
命令と訓示が済むと、一人ヨップは残された。
佇みながら、ポケットから取り出した今回の作戦対象者の写真を見やる。
「ラクス・クライン……明日がキサマの命日だ。せいぜい最後の夜を楽しんで過ごすんだな」
写真には、プラントの歌姫と謳われたラクス・クラインが収まっていた。
吐き捨てるように言った後、彼もまた己が任務の準備へと戻っていった。
526 :
9/21:2005/09/25(日) 07:56:28 ID:???
翌日―
オーブオノゴロ島、アスハ家の別宅で今はマルキオ孤児院となっている家屋では……
「お兄ちゃん、今日もお仕事?」
「最近ぜんぜん遊んでくれないじゃん」
「今日は日曜だよ?お休みなのにお仕事?」
マルキオ孤児院の子供たちは不満顔。文句を言われている茶色の髪の青年は困った顔。
やがて、その青年は傍らにいる少女の顔をうかがう。どうしたものかと―
「あらあら、これではキラがお仕事にいけませんわ。
今日もどうしても外せないお仕事なので……皆さん、またにしましょうね」
少女のとりなしで子供たちもしぶしぶ引き下がる。
子供たちのいうとおり、今日は日曜であり、本来なら青年も休みのはずなのだが……
「ゴメンね、ホントに。この埋め合わせは必ずするから」
そう言うと青年は車に乗り込む。傍らの少女は、子供たちに聞こえないような小声で青年に話しかける。
「戦争の……影響ですの?」
「うん……新しいOSの調整が忙しくて。本当は……あまり乗り気はしないんだけど」
「帰りは?」
「多分、夜になると思う。皆、ゴメンね」
再度、少女と子供たちに謝って車を走らせる―青年の名はキラ・ヤマト。傍らの少女は……
「あ〜あ、行っちゃった」
「ねぇ、ラクスお姉ちゃん、海に行こう」
「今日は何して遊ぶ?」
ラクスと呼ばれた少女は青年が見えなくなると、振り返り子供たちに微笑みかける。
青年が仕事続きで子供たちの遊び相手は連日彼女が務めていたのだ。
「わかりましたわ。でも……その前に朝食の片づけをしてから、ね?」
宥めるように語りかけ、少女は子供たちと供に孤児院へと戻っていった。
527 :
9/21:2005/09/25(日) 07:58:45 ID:???
ラクス・クラインは、朝食の片づけが終わると、約束どおり浜辺に出かけた。
だが、その姿を遠くから一人の少年が見ていることを、彼女も子供たちも気づいていない。
「やれやれ……お姫様は今日も子供たちとお遊戯か」
ここ数日、彼女の動向を監視していた少年―ゲンは肩をすくめる。
本当に彼女があのラクス・クラインなのだろうか―?そんな疑いさえ抱き始めている。
情報によれば、先の大戦をたった3隻の戦艦を率い収めたというプラントの歌姫。
しかし、彼から見れば、今のラクスはただの若い保母さんといった感じの少女に過ぎない。
「さっきのが……キラ・ヤマト。休日出勤とは大変だな。俺達ほどじゃないが」
ゲンはラクスと共にいた青年の顔も確認していた。
キラ・ヤマトも、ラクス同様に監視対象ではあったが、彼も連日早朝に出かけ、夜遅くに帰る。
彼もまた3隻同盟に所属し、最強と謳われたフリーダムを駆ったという青年。
が、ゲンには彼もまたただの好青年にしか見えず、本物かと疑いたくなっていた。
「ま、どのみち決行は今夜なんだ。やるしかない……か」
オーブ国営企業モルゲンレーテ社―
ここはオーブ産業の最大の担い手であり、同時にこの国を世界でも有数の技術立国ならしめている。
キラ・ヤマトは車を駐車場に止め、技術部に向かおうとしたが、それを呼び止める二人の人物がいた。
「よう、少年。おはよう」
「……バルド……じゃなかった、アンディさん。おはようございます」
「おはよう、キラ君。はぁ〜、やっと休めるわ……」
「徹夜ですか?マリ……アさん」
「……使い分けって難しいわね。人のいないところでは元の名前でもいいけど。
ご覧の通り徹夜よ。戦争が始まって、造船課でも当初の予定を前倒ししていろいろ作ってるわ。
お陰でお肌はガサガサ……これから帰って休むけど」
アンドリュー・バルドフェルドとマリュー・ラミアス―といっても今は別の名前だが―の二人。
彼らもキラ同様モルゲンレーテ社のスタッフとして働いていた。徹夜明けの二人は流石に精気がない。
「これから仕事かい?」
「ええ」
「無理しない程度に頑張ってね」
二人は流石に眠気が勝ったのか、キラの相手も程ほどに車に乗り込む。
二人と別れたキラは、彼の職場―モルゲンレーテ社の技術部門へと向かっていった。
528 :
11/21:2005/09/25(日) 08:00:07 ID:???
だが、キラが技術部門についたころ、課内は大騒ぎであった。
なにやら祝杯を挙げている連中までいる。不審に思ったキラは、課内の人間を捕まえ問いただした。
「何かあったんですか?」
酒が入っているのか、喜んでいるだけなのか、上気した顔の同僚はキラの手を掴み握手を求めた。
そして大仰に手を握りながら、左手でキラの肩を叩き喜びをあらわにした。
「ヤマト研究員!君が作った新しいOSが完成したんだよ!凄いよこのデータ!完璧だよ!」
「えっ!?そんな……完成って……」
「なんでもユウナ様がどこかでテスパイロットを見つけたらしくてね。
そのパイロットがデータを入れたらしいんだけど……これなら実戦で使える!オーブを護れるよ!」
「……ユウナさま?ユウナさんが……どういうことです?」
「ああ!そうだった。ユウナ様が君に会いたいそうだよ。内線で連絡してくれってさ」
キラの問いにもそこそこにしか答えず、研究員は次に出社してきた人間を掴まえ同じ事をやり始めた。
しかし、そんな彼の様子も既にキラの目には入っていなかった。課内の電話を掴み、ダイヤルする。
相手は件の男―繋がるや否や掴みかからんばかりの勢いで相手を問いただす。
「ユウナさん!完成したってどういうことです!?」
『こらこら……"おはようございます"だろ?日曜の朝から元気だねぇ』
「アレは……完成するはずがない……いや、完成しちゃいけないOSなんだ!どうしてそれが!」
『……でも、それを完成させちゃった人間がいるんだ。残念だったね。
ま、詳しい話は夕方にでもしよう。僕はこれからまた首長会議でね。終わったら電話するよ、じゃあね』
それだけ言うと、ユウナ・ロマ・セイランは一方的に電話を切った。
後には受話器を握り締めたキラがひとり残された。課内の人間が騒ぎを続ける中、彼は一人蒼白―
「どうして……完成するんだ。
僕は……オーブの戦争への参加を止めるために……あのOSを作ったのに……!」
通話を終えたユウナは、鼻歌交じりで公用車へと向かっていった。
彼を待つのは父親であり、現オーブの実質的な統治者であるウナト・エマ・セイラン。
「ふん♪ふん♪ふん♪」
「なんだ、ユウナ?ずいぶん楽しそうじゃないか?」
「お父様、これが楽しまずにいられますか。やっと切り札が揃いましたよ。例のOS、完成しましたよ」
「本当か?いつ使えるようになる?」
「ま、微調整も含めれば……一月もすれば全軍に配備できますよ。これで、オーブを護れます」
最後の一言を発したユウナの顔は、父ウナトが驚くほどの鋭い目をしていた。
だが、それも一瞬で、すぐにいつものニヤけた表情に戻っていたが―
529 :
12/21:2005/09/25(日) 08:01:52 ID:???
夕刻、キラとユウナはセイラン邸で会食を始めようとしていた。
しかし、キラの表情は蒼白で、ユウナの表情をまともに見ることも出来なかった。
キラはあの後、自らの手で"完成したOS"を精査した。事実、彼の作ったOSは完成していた。
本来なら完成するはずのないものが―
「……どうやって、あのOSを完成させたんですか?」
「ま、僕の友達が協力してくれてね。優秀なパイロットも貸してくれて……お陰さまで完成したのさ」
飄々と答えるユウナ。蒼白な顔でキラはユウナを問いただし始めた。
「あのOSは完成するはずがなかった。実戦データを入れなきゃ使い物にならないからだ。
それがどうして完成してるんですか?あれは……何度も何度も戦場を潜り抜けて来たデータです!
どうして……どうしてあんなものを完成させたんですか!?」
「模擬戦レベルじゃ完成しないモンね、あのOSは……。だから頼んだのさ、実戦をやる人間にね」
ユウナは顔面蒼白なキラを尻目に語りだした。キラの作ったのはナチュラル用の最新型のOS―
本来、抜群の身体能力を持つコーディネーターと異なり、反射神経で劣るのがナチュラル。
MS戦の戦闘でもそれは如実に現れる。MS操縦においても、コーディネーターとの差は明白。
同じMSに乗せても、両者が戦闘をすれば、余程の能力のナチュラルでなければ対抗できまい。
それを補うためにナチュラル専用のオペレーションシステムが存在する。
コーディネーターとの差を補い、パイロットをサポートするための専用のオペレーションシステム。
だが、その作成は決して容易ではない。なぜなら、OSは人の動きを補うためだけのものである。
コーディネーターのパイロットと互して戦えるだけの、動きを覚えさせる必要が出てくる。
最初に本格的なナチュラル用OSを作成したのは、他ならぬキラ本人であった。
大戦の最中、偶然にもストライクに乗り込んだ彼は、ナチュラル用の学習型OSに自らの動きを覚えさせた。
やがてそれはコピーされ、ムウ・ラ・フラガを始めとしたナチュラルのMSパイロットをサポートするに至った。
今回キラが作成した最新のOSもナチュラル用学習型OS―
しかし、それとて基本動作以外は碌にデータが入っておらず、そのままでは使い物にならない。
故に、実戦に必要なデータを入力するべく、連日オーブのパイロットが模擬戦を行なったのだが……
M1Aアストレイを始めとしたMSの模擬戦くらいでは、必要なデータは入手できず、完成が遅れていたのだ。
いや、遅れていたというより―
「君が意図的に模擬戦に参加せず、完成を遅らせていたともいえるがね」
「でも……!あのOSで戦争をするなんて……!僕はオーブを戦争に参加させないために……
そのために以前より高性能のOSにして……データ収集が容易に行なえないようにしたのに!
戦争で……オーブの人がよその国の軍隊と戦って、人を殺すなんて、僕には耐えられません!」
やれやれとユウナは顔をしかめる。そして笑みを浮かべ、キラを諭すように語り掛けた。
「僕はね……世界中の人間が戦争で死んでも、オーブの人々が無事なら、それで構わないと思ってる。
だから、悪魔とも手を結び……アレを完成させたのさ。アレでオーブを護れるとすれば、安いものさ」
530 :
13/21:2005/09/25(日) 08:02:51 ID:???
深夜のマルキオ孤児院―
ラクス・クラインは一人自室で眠れぬ夜を過ごしていた。
キラの言い残した新型OSの話―嘗ての彼の説明によればオーブを戦争に参加させないためのOS―
普段なら、遅くなるなら電話の一本もあるのだが、今だ彼からは何の連絡もなく、帰ってきた気配もない。
そのOS絡みの作業でここまで遅くなるということは、あるいは実用化の目処が立ってしまったのか―?
自らの予感は確信に変わりつつあった。ベッドの中でそんなことを考えていたとき―
ガタン―
どこかで何か動く音―ラクスは不思議に思い、部屋の扉を開ける―
子供たちが遊んで物を動かすことはあるが、今は深夜である。音の主は子供たちではない。
自室の本棚から本を一冊取り出す―だがその中から出てきたのは小型の拳銃―
部屋を出て辺りを見回すが、何もない。やがて居間のほうまで出向いてゆく……
一通り眺めたが、異常はない。風の音かと思い、自室へと戻ってきた。
だが、自室に入ったところで異変に気づく―目の前に誰かがいる―男が―
同居しているマルキオ導師やバルドフェルドではなく、若い男。
「キラ……ですの?」
返事はなく、彼女が拳銃を構えようとしたそのとき、男は素早く彼女の腕をひねり上げる。
次の瞬間、男のもう片方の手が彼女の口をふさぎ、あっという間にラクスは抵抗の手段を失った。
殺される―そう思った彼女であったが、男の声が否定する。
「大人しくしてろよ……殺すために来たわけじゃない」
男はラクスから拳銃を取り上げると、彼女の口を塞いでいた手も離した。ラクスはそれを見て騒ぎもしない。
それを確認した後、男は奪った拳銃をラクスに渡し、自分の手で部屋の明かりを点けた。
ラクスの目の前に現れたのはバイザーの男―ちょうどキラ・ヤマトと同年代の少年。
「カナーバの手のものですか?」
「……残念ながら、違う。ブルーコスモスの盟主からの招待で、迎えに来た」
一瞬ラクス・クラインの顔が安堵とも苦悩ともつかない顔に変わる。
だが、バイザーの男の申し出を、逡巡するでもなく彼女はあっさりと受け入れた。
「ブルーコスモス……お断りするわけには、参りませんわね?」
「ああ。取り急ぎ着替えてくれないか?寝間着のまま連れて行くのは具合が悪い」
「……わかりましたわ。でも……殿方に着替えを見られるのは、些か……」
「暗視モードに切り替えてある。赤外線モードだから、体の線しか見えないよ」
準備が宜しいことで―そう嫌味を言いながら、拳銃をしまいこみ、ラクスは着替えに入った。
531 :
14/21:2005/09/25(日) 08:03:48 ID:???
ゲン・アクサニスは、ラクス・クラインの意外とも言える素直さに驚いていた。
警告を発した後に何らかの抵抗を見せれば、気絶でもさせて攫っていく予定であったが……
そんな邪な計画が水泡に帰すほどの従順さであった。同時に自分のやっていることを振り返る。
突然夜中に女の部屋に来て、連れて行くから支度をしろと言う人間―まるで夜這い、誘拐魔……
任務の経過報告をネオにするとき、絶対に指摘されるであろうその言葉を考え、頭が痛くなった。
彼を尻目にラクスは指示通り、普段着に着替えたばかりか、旅行用のバッグを取り出し荷造りを始める。
「……何やってるんだ?」
「何って……2,3日で帰してくれるかわかりませんし、生きてここに戻れるかもわかりませんから。
人から宛がわれた物を使うのは抵抗がありますし、せめて用意できるものは私の手で……」
ゲンは暗視モードから通常の視界に切り替え、様子をつぶさに見る。
まるで自分を敵視していない。同時にゲンの頭に一つの疑問が浮かび上がる。
「……殺されるかもって思うなら、なんで抵抗しないんだ?」
「私が抵抗したりすれば、一緒に住んでいる孤児院の子供たちに被害が及ぶかもしれません。
そんな事態だけはどうしても避けたいですから……それに……」
「それに……?」
「いつか、このような日が来ることは、覚悟しておりましたから。
でも、まさかプラントではなく、ブルーコスモスの盟主からご招待に預かるとは思いませんでしたわ」
プラント―?
この少女はプラントの歌姫ではないのか―?プラントの政敵にも狙われているのか―?
ゲンがそんな疑問を抱いた直後、部屋に異変が起きる。突然部屋の明かりが消えたのだ。
「……あら?お仲間がやってらっしゃるのですか?」
「いや……そんな指示はしていない。それに……ここに来るのは俺一人のはずだ」
ゲンは部屋の明かりを再度点けようとするが、点かない。
ラクスの仲間がやっているとしても、それならば彼女が逃げも隠れもしないのは不自然―
暗視モードに再び切り替え、耳を澄ます―部屋の近くに気配はないが……
『ハロ!ハロ!キケン!キケン!』
戸外から突然機会の電子音声が響き渡る―ガードロボットが動き出した。
やがて異変を察知した住人達が動き始めた。部屋に突然女性が飛び込んでくる―
「ラクスさん!侵入者……って貴方は!?」
言い終わる前に声の主―マリュー・ラミアスは拳銃を突きつけられる。
532 :
15/21:2005/09/25(日) 08:04:55 ID:???
「待って!その方を撃ってはなりません!」
凛とした声がゲンを制止する。歌姫の名に違わぬ美しい声が部屋に響き渡る。
だが、事態はそれだけで終わらない。もう一人、アンドリュー・バルドフェルドも部屋に飛び込んできた。
「キサマは!?」
バルドフェルドは、拳銃をマリューに突きつけるゲンに銃を突きつけようとするが、それもラクスが制す。
「バルドフェルド隊長!この方は違います!」
「違う……だと?」
訝しげな顔のバルドフェルドは、怪訝な顔をしてラクスを見返す。
その隙にゲンはもう一丁の拳銃をバルドフェルドに突きつけた。2丁の拳銃を、一つずつ相手に向ける。
左手に握られた拳銃はマリューへ、右手に持つ拳銃はバルドフェルドへ―
突きつけられたバルドフェルドは、それらの拳銃が連射式の強力な銃であることに気づいた。
「どういうことだ?あのロボットの声は何だ?」
「……足音は、一人の人間なら反応しないようになってます。
キラが……家に戻ってくるときに反応しては困りますから。ハロが反応したということは……
この家の外に、複数の人間が来ているということになりますわ。貴方のご友人でなければ……」
ラクスが言い終わる前に銃声が響く―部屋の窓ガラスが割れ、全員がとっさに地に伏せる。
舌打ちしながらバルドフェルドは窓から外を見やるが、暗くて何者がいるのか分からない……
そして、ゲンも窓辺に近づき暗視ゴーグルで外を見る―複数の……8人の人影が確認できた。
だが、この作戦に他の連合の人間が参加しているとは聞いていない。となると……
「どうやら、俺の同業者が来たようだな。最も連中は殺しが目的らしいが」
「……そのようですわね。バルドフェルドさん、マリューさん、お二人は子供たちを護って下さい!」
ラクスの指示に二人は被りを振る。
「ラクスさんはどうするの!?」
「……彼等を引き付けます」
「まて!それは無茶だ!」
「無茶でもやるしかありませんわ。貴方、一緒に来てください」
二人に反論の余地を与えず、ゲンにまで指示を送る。
連合の手のものではないということは、おそらくは彼女が最初に疑ったプラントの手のものか―?
目の前の少女をジブリールの元へ届けるのが彼の役目である。舌打ちしながらも、ゲンは断を下した。
「チッ!……くそっ!手伝ってやるよ!」
533 :
16/21:2005/09/25(日) 08:06:40 ID:???
ラクスと二人、居間まで来たゲンは、窓辺で応戦を始めた。
敵はマシンガンを所持しているのか、手数が多く、とても反撃できない。
また、連射式とはいえ短銃に過ぎない彼の得物の不利は明白。それに人数も―
「ツーマンセル、二丁かよ……やっかいだな」
ツーマンとは"2人1単位"の意―
警察、軍事組織等による作戦行動の際、作戦遂行の円滑化の観点からこの方式が採られることが多い。
冷徹な見方をすれば、1人が死んでももう片一方が生きていれば全体としての作戦成功の可能性は上がる。
言い換えれば、目的達成のためには多少の犠牲は厭わないということでもある。セルともなれば4人一組。
それが8人で二組もいるのであるから、相対するゲンとラクスの状況は危機的である。
ゲンは手元の武器を確認する―拳銃2丁、あとは照明弾の類があるだけだ。
照明弾は本来信号弾代わり―ファントムペインに異変を知らせるためのものだが……
連中の射撃精度からして、彼と同じ暗視ゴーグルを用いていることは明白。ならば……
「お姫様、連中の注意を引き付けるって言ってたが、何か手があるのか?」
「私には……この声しかありませんわ」
「ならそれでいい。連中の銃撃を数秒でいい……止めてくれるか?」
「承りました」
言うやラクスは叫んだ。己の凛とした声が屋敷、戸外にまで響き渡る―
「撃つのをお止めなさい!欲しいのは私の命でしょう!?
ここには私とは何の関わりもない孤児院の子供たちがいます!私が今から出て行きます。
その上で、殺すなり生け捕るなり……お気の済む様になさればよろしいでしょう」
「フン……それがキサマの答えか」
プラントからの襲撃者、ヨップ・フォン・アラファスは吐き捨てるように呟いた。
彼には生け捕る気など毛頭ない。また、命令も暗殺であってそうする義務もなかった。
「女が出てきたところを狙え。蜂の巣にしてかまわん」
冷徹に言い捨て、全員が銃を構える―が、次の瞬間彼らに異変が起きる―
バシュッ―
何かがラクスの声のしたほうから放たれる―そして、激しい閃光が炸裂した。
534 :
17/21:2005/09/25(日) 08:07:39 ID:???
その光を見た襲撃者から一斉に悲鳴が上がる。
「ぐあああああっっ!!」
「眼が……眼がぁ……!!」
襲撃者全員が悲鳴をあげる―彼らはゲンの予想通り暗視ゴーグルを用いていた。
それが仇となった。熱や光に敏感に反応する赤外線センサーは、時として強烈な光に脆弱である。
ゲンが放った信号弾は、文字通り彼等の目を一瞬にして奪い去った。そしてゲンが跳躍する。
軽々と室外に飛び出し、彼等の側面に渡りながら2丁の拳銃を乱射する。
狙いなどはいい―ありったけの弾を撃ち連中を殺せばいいだけの話だ―そうゲンは意を決していた。
ツーマンセル形式の相手を一人ずつ殺すのは得策ではない。時間が経てば彼等の眼も戻る。
そうなれば再び窮地に立たされるのは明々白々―故に今が千載一遇のチャンスなのだ。
撃たれた襲撃者は悲鳴をあげて地に伏せる。ゲンが弾を撃ちつくした頃には勝負がついていた。
「終わったか……」
息を切らせゲンは様子を見る―暗視モードに切り替え、人方の熱量を探る。
本来なら8体あるはずの熱量が一体足りない―一人逃がしたか―舌打ちして居間の方を見やる。
ラクス・クラインが外に出てきていた。彼女は撃たれて倒れている人間の元に向かう―
ゲンもそれを追って行く。やがて倒れている一人の男の前に二人は立った。
「まだ、この方は息がありますわ」
「……だから何だ?手当てでもしてやれっていうのか?」
「……お願いできませんか?」
「できるわけないだろ?大体俺達は……」
言いかけたところで倒れていた男が動く―とっさにゲンはラクスを庇う。
「願い下げだな……欲しいのは貴様の命だ!」
息も絶え絶えの男が叫び、懐から榴弾を取り出しその引き金を引く―付近一帯に榴弾が炸裂する―
ラクスを抱えとっさに離れたゲンは、彼女を庇いながら地に伏せていた。そしてゲンは少女を罵る。
「……馬鹿が!任務に失敗すれば死あるのみ……それが俺達だ!」
背中に痛みが走る―どうやら榴弾の破片が彼の背中を傷つけたようだ。
ゲンは舌打ちしながら体を起こす―目の前の少女が盟主の"客人"でなければ殴っていたところだ。
彼等特殊部隊は、彼の言葉どおり任務に失敗すれば死があるのみ―
幾度も死線を潜り抜けた彼にとっては、彼女の見せた優しさなどは唾棄すべきものであった。
憤ったゲンを見て、俯きながらラクスは体を起こす。彼女もまた身をもって彼等の意図を知った。
535 :
18/21:2005/09/25(日) 08:08:36 ID:???
それでもラクス・クラインは残りの者の生死を確かめようとした。
だが、ゲンの雑な狙いでも、残りのものの命を奪うには十分だったようで、一人も生きてはいなかった。
俯くラクスであったが、傍らのゲンは呆れながら、それでも文句は言わず、ただ唾を吐き捨てた。
「……傷ついた者に、優しくしてはいけませんか?」
「アンタは……破壊と慈悲の混沌だな。少なくとも俺達にそんなものは不要だ」
自らもまた傷ついていたゲンだったが、それでも背中の傷は少女に見せない。
こんなものを見せてまた不要な優しさなど見せ付けられた日には反吐が出る―それが彼の本音だった。
一人その場から逃げ延びた男―ヨップ・フォン・アラファスもまた毒づいていた。
「何とも狡猾な女だ!照明弾を用いて……我々の眼を潰すとは!」
だがラクス本人が考えたにしては上出来すぎる。撃ってきた人間はアンドリュー・バルドフェルドか―?
が、こんな手口は特殊部隊出身でなければ考えつきはしない。即ち彼ではない―一体何者だ―?
彼の体にもゲンが穿った銃弾が刻み込まれていた。それでも彼は任務を続行した。
「こちらウィザード0、ウィザード0。
聞こえるか?01、02、上陸部隊は任務を達成できず!後詰を出せ!」
『……ウィザード01から06、起動します。後はお任せを』
「すまん……頼む!」
「おっそいなー」
アウル・ニーダは、予定時刻になってもゲンからの連絡がないことを不審に思った。
アビスのコクピットで彼は今日も待っていた。かれこれ数時間コクピットの座席に座りぱなし……
そんな彼のコクピットのモニターが異常を発する―移動するMS郡をアビスは捉えていた―
「UMF/SSO-3、アッシュ?何コレ?ザフトじゃん」
見ればMS群はゲンとの合流ポイント近くに向かっている―今はゲンと連絡も取れない。ならば―
「……退屈してたんだよね、ずーっと。最新型のザフトの量産MS……へへっ、格好の獲物だね」
言うや否や休眠モードのアビスを戦闘ステータスに切り替える。不測の事態に備えていた彼の出番。
元々お姫様の運搬役くらいで満足できる性格の人間ではないのだ。海妖―セイレーンが動き出す。
「さぁ、アビス!いこうぜ!」
536 :
19/21:2005/09/25(日) 08:22:34 ID:???
ラクスは相変わらず遺体の側に佇んでいた。
襲撃者達の冥福を祈るかのように、何事か言葉を捧げている。だが、そんな状況も長くは続かなかった。
「チッ……拙いな。来やがった」
異変を察知したゲンがバイザーの望遠モードで遠くを見やる。
なにやら見慣れないMSがこちらに向かってくる―連合ではない、ましてやオーブでもない。
「おい!ぐずぐずするな!逃げるぞ!」
「待ってください!まだ家の中には子供たちが!危険を知らせないと!」
冗談ではない。彼女一人ならまだしも、他の子供たちまで面倒は見切れない。
それでも彼女は家に戻ろうとする。シェルターの中に避難しているであろう子供たちの下へ。
しかし、そんな彼女をゲンは制止する。
「もどってどうなる!シェルターなんてMSの前には無意味だ!」
「それでも……!」
なおも彼女は食い下がる。が、そんなやりとりの間にも6機のMS-アッシュは迫り来る。
万事休すか―この状況からはゲンですら打開策など見当たらない。人がMSに勝てる道理がないのだ。
が、突然迫り来るアッシュのうち一機が爆散する。そして、もう一機も爆風に飲み込まれる―
やがて、彼の見覚えのあるMSが海面から飛び出し、空に舞い上がった。天佑とはこのことか―ゲンは叫んだ。
「アビス!!アウル!来てくれたのか!?」
「ごめんねぇー!遅くなってさあぁ!!」
アビスのコクピットでアウルは謝罪の言葉を発した―だが、それはゲンに向けての言葉ではない。
状況はよく分からないが、目の前のMSは人家を襲おうとしている。そこがラクスの住居かは問題ではない。
彼等も自分と同じように退屈してこのような所業に及んだのだろう―そんなことを勝手に想像していた。
ならば彼が取るべき方法はただ一つ―
「待ちくたびれたんだろう!?遊んであげるよ!!これからねぇ!!」
537 :
20/21:2005/09/25(日) 08:24:36 ID:???
海中から躍り出たアビスの動きは速かった。空中で肩の3連装ビーム砲を放つ―その時点でもう一機。
更に着地した瞬間に、アビスの持つビームランスがアッシュを穿つ―貫かれたアッシュは昏倒する。
初撃の奇襲とあいまって、この時点で6機中4機を撃破していた。
「馬鹿な!何故アビスがここに!?」
「知るか!兎に角撃て!近づけさせるな!!」
残った二機は必死の抵抗を試みる―だが、放つミサイルはフェイズシフトに阻まれ効果がない―
ビーム兵器を用いようとした頃には、すでにアビスは彼等の眼前に躍り出ていた。
一機のアッシュをランスで串刺しにし、帰す刀で実体刃を持つランスでもう一機をなぎ払った―
アビスが現れ勝負がつくまでの間、僅か30秒程度―瞬時に勝敗は決した。
「あれ……もう終わり?早すぎるよ〜」
己の早業でやっておきながら、相手の無策をなじるアウル。が、彼のお陰でゲンとラクスは事なきを得た。
その直ぐ後、ゲンは、別室にあったラクスの荷物を持ってきて、そのまま彼女をアビスに乗せた。
アウルは初めて見る歌姫をまじまじと見ながら、それでも彼は好奇心からか快く乗せてやった。
ゲンがラクスを乗せるのを手伝い終わり、やがてアビスに背を向けて去ろうとする。
だが、そのゲンの姿を見たとき、ラクスは彼の背中が血にまみれていることに気づいた。
やがてアビスは水中に姿を消した。そのコクピットの中でラクスはアウルに問いただした。彼の名は―?と
「ゲンだよ、ゲン。Genocider Enemy of Naturalってのが正式な名前らしいけどね」
機密にも関わらず、アウルは名を明かしてしまった。最も名を明かしたところで足がつくものでもないが。
その名前を頭の中で反芻しながら、ラクスはユニウスで初めてキラ・ヤマトと会った時のことを思い出した。
あの時、キラも身を挺して自らを護ってくれたか―そう思いながら、誰にともなく彼女は呟いた。
「……あなたで二人目ですわ、ゲン」
「馬鹿な……アビスが何故ここに?何故連合が彼女を連れ去る!?」
ヨップ・フォン・アラファスは一人茫然自失、破壊されたアッシュを見て愕然とうなだれた。
「どうやら、連合にも彼女を必要とする人間がいるらしいな」
「……!キサマは!?」
「サヨナラだ、暗殺者君」
声の主を振り返ったヨップ―だが、その彼を一人の男が手持ちの拳銃で撃ち殺した。
最後の暗殺者を殺したのは、アンドリュー・バルドフェルド―砂漠の虎―その人であった。
「悪いが、俺は……歌姫ほど優しくないんでね」
538 :
21/21:2005/09/25(日) 08:26:25 ID:???
「いいのか?」
バルドフェルドの背後からゲンが声を掛けた。彼の手には油断なく銃が握られているが。
「歌姫は、自身の意思でお前の主人のところへ行ったんだろう?俺が口を差し挟む余地など……ない」
平然と砂漠の虎は応じる。訝しげにゲンは問いただす。
「あんた等の担ぐ御輿じゃないのか?死んだらどうする?」
「あの人はお前の思っているほど愚かではない。今日のような日が来ることも覚悟していたよ」
「なら、何故逃げない?どこか人のいないところへでも……」
「このご時世、どこに行ってもお前等連合か、ザフトの眼は光っている。所詮、それは徒労だ」
砂漠の虎はひらひらと手を振り、ゲンに早く行けと促す。
自分はこれから夜が明けるまでに襲撃者の死体の掃除をせねばならないから、邪魔だとも言った。
ゲンはこの男が自分を撃つ気がないことがわかった為、ゆっくりと下がっていった。
最後に一言、あるメッセージを残して……
「キラ・ヤマトに伝えろ。彼女を取り戻したければ、戦場へ戻れとな」
「……戻す気があるのか知らんが、一応伝えておくよ」
砂漠の虎は気のない返事で返すだけであった。
同刻、セイラン邸では、ユウナ・ロマ・セイランがマルキオ邸の急報を聞いていた。
だが、その報告を聞いても彼は、眉一つ動かしはしない―
「邪魔が入ったようだが……あの烏君なら上手くやっただろうね」
それだけ呟くと、彼は私室に向かった。
彼の私室ではキラ・ヤマトが安らかな寝息を立てて眠っている。
会食の際、キラの皿には強力な睡眠薬が混ぜてあった―この家の主人の意思で―
「さて、これで君という最後の切り札がそろったわけだよ、弟君。
ジブリールは何を考えているのか分からないが、君を僕の元に残してくれて感謝するよ。
さぁ、これからこの国のために、オーブの未来のために……僕と一緒に戦おうか、キラ・ヤマト」
微笑みながら眠るキラに微笑みかけるユウナ―
キラはまだ何も知らず眠り続ける―やがてこの国を戦火が包むことになるとも知らずに―
>>518-538 ファントムベイン戦記作者さん乙。
それぞれの登場人物の描写がしっかりしてて(・∀・)イイ!!
ユウナとカガリもそれぞれの方法でオーブを守ろうとしてるのってのもいい。
>>ファントムペイン戦記作者様
投下お疲れ様。
>>マユAD作者様
改めてよろしくお願いします。
>>次スレ
今の時点で、452Kですので様子を見て新スレかテンプレ用意します。
470K〜を目安にします。
541 :
しのはら:2005/09/25(日) 10:06:43 ID:???
>540 まとめ人様、いつもお疲れ様です
こちらの話はあと少しで終わります
か……神だ。俺はいわゆる神を見たのか。
>ファントムペイン戦記
激乙!
ついに、ついに来たぜぇー!!
開始以来待ち望んだアウルの活躍が!!
つか、ラクス暗殺事件をここまで面白くできるとは凄い
>>518-538 ファントムベイン戦記作者様、今回も面白かったです!
ジブリールの元へ赴くラクス、ジブラクガチンコ対決到来?
いよいよ戦場に引きずり出されるキラ、
・・・もしかしてゲンとキラが対プラントとしては同じ陣営になる可能性ありですか?
もしそうだったらマユ&ミネルバはどう挑むのか?
今後の展開が楽しみです!
545 :
まとめ人:2005/09/25(日) 13:54:46 ID:???
>ファントムペイン戦記作者様
良かったです、ラクス襲撃自由復活の悪夢話をうまく改変してくれるとは
正直凄いです。
これで、AA連中はテロリストではない形で純粋に敵として参戦できますね。
ユウナも良かったです、敵役はこうでないと。
ゲンとキラの共闘みてみたいです。
次も期待しております。
別パソからの投稿なので、トリナシです。
>「アンタは……破壊と慈悲の混沌だな。
ラクスというキャラを一言で言い表した至言だと思った
もっとも同人アニメの方のラクスはどのあたりに慈悲があるのかさっぱりわからんが
547 :
255:2005/09/25(日) 14:33:43 ID:???
今回もGJだぜ。
ドラグーンについては要らん心配だったな。すまなかった。
しかしナウシカね・・・あのピンクはそんなタマじゃな・・・げふんげふん。貴方のラクスならおそらく足りるでしょうけど。
>541 ガンガレ おまいのやつが一番クライマックスに近い
もうカガリのマラ掴み見れないのか・・・
『で、どうなってるね?ネオ・ロアノーク?こちらではデストロイが量産され
初めているのだが・・・・。』
ジブリールの言葉にネオは困惑した声でいった。
「えーと・・・。それがですね。うちのガキ達が家出しちゃいまして・・・。」
『なにぃっ?!貴様!!年頃の少年少女の扱い方を間違ったな?!』
「いっ、いえ。けっしてそのような事は・・・・。」
『だまれ!!貴様の事だ・・・・。きっとあの女のエクステンデッドに手を出して
他の奴らぼこされたのだろう?』
挑発的に言うジブリール。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
『おい!!否定しろ!!否定!!まぁ、いい。あのソキウスはどうだ?』
するとネオはだらだらと汗を流しながら・・。
「えーっと・・、引きこもりになっちゃいまして・・。」
『何ぃ?!』
「なんか大量に食料をかっぱらって部屋に立てこもってしまいまして・・。」
『えぇい!!この役立たず!』
まったくもって、その通りである。無能大佐。
ーーーーーーーーーーーーーーーーそのころのゲン。
『うぇーい。ステラ・・です・・。いま・・・電話に出られないから・・
ピーの後に・・・メッセージを・・・うぇ〜い・・。』
「・・・・ステラ。」
・・・・・ステラの携帯をいじっていた。
おい!!本編のお前とおんなじ状態になってどうするんだよ?!
byゲンの中にわずかに残ってる『シン』
ファントムペイン戦記
第8話 カオスVSストライクマーク2のドッグファイト
第9話 アビス、アッシュ隊壊滅
次回は、ガイアに見せ場?
551 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:09:49 ID:???
迷惑も顧みず3話目投下です
>>516 すいません書いてる間にまた書き直し始めちゃって…以後ないようにします
>>ファントムペイン戦記作者様
マジでスゴすぎです…自分もこれぐらい文才があったらなぁorz
552 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:14:55 ID:???
「マリューさん!」
激しい銃撃戦の最中、キラ・ヤマトは叫ぶ。
「この襲撃の狙いはおそらく僕だけだ!敵を引きつけます!その隙に、とりあえず子供達を連れてシェルターへ!」
泣き叫ぶ子供達をほおってはおけないキラ。
「キラ君!…でも!」
「いいから早く!」
そういってマリュー・ラミアスを促し、キラは敵に語りかける。
「投降します!銃を収めて下さい!お願いします!」
硝煙と火薬の臭いが薄まる。
「…ラクス・クラインも出せるか」
「彼女は…ここにはいません!」
そう答えながら僅かに外を覗く。敵の姿は確認できない。
「くっ!」
再び銃撃。
キラは考えた。狙いにはラクスも含まれている。ならやはり敵は自分達の戦争への介入を恐れているもの。
犯人は誰だ?連合?ザフト?それともただのテロリストか。分からない。誰に恨まれてもおかしくないようなことを自分達はしてきた。平和の為に戦ったはずなのに。なぜ--場違いな疑問。すぐに身を掠める銃弾で現実に戻される。
それよりも今は現状の打開。しかし…状況最悪だ。こちらは拳銃3丁、相手の全体数は掴めない。迂闊に動けば銃弾の雨。
仕方なくキラもシェルターへ逃げ込む。
「くそったれ!まずいぞ、これは…」
悪態をついているバルトフェルド。
「どうしたんです!」
「少年、フリーダムがない!」
「えっ?」
そのとき島全体に震動が走った。
一瞬にして天井をビームサーベルで刻み、盾を構えてそれを吹き飛ばし島の上空に舞い上がる天使。一回転して停止、排気。翼を広げる。
そしてキラは驚愕する。シェルターの中にはマユの姿がないことに。
「まさか!?」
マユ-ANOTHER・DESTINY-PHASE-03〜「選択」〜
553 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:20:22 ID:???
突然の揺れに驚き孤児院を襲撃した部隊の隊長、クレイブ・ドットも外に出る。そしてそれを目撃する。
「フリーダム!?バカな!!」
先程の銃撃戦では弾筋から判断しても、情報通り3人しかいなかったはず。ならば、今あれに乗っているのは--。
いや、いいだろう、それは。撃墜すればいいだけの話だ。しかしそこには確信に近い、些細な疑問が残った。
前大戦時最強のMSと、ザフトの最新鋭MS5機。どちらが上か。いや考えるまでもない--。
「MS部隊、作戦変更だ!発進してフリーダムを落とせ!破壊してもかまわん!」
<<了解。アッシュ隊、起動します。地上部隊は一時、撤退して下さい。>>
島に上陸し目標のフリーダムに早速ミサイルを撃ち放つアッシュ。それも1機ではない、5機のミサイルが雲霞のごとくフリーダムに襲いかかる。
その中の少女が叫ぶ。
「きたわね!いくわよ!よく見てなさい!」
(何を!?)
少女は自分に向かって語りかける。
「MS戦のセオリーよ!」
降り注ぐミサイルを一身に受けるフリーダム。凄まじい爆炎。
「やったか…」
クレイブは安堵にも似た声を漏らす。所詮は旧式。最新鋭機のましてや5機に勝てるはずなど--。そう確信しかけた矢先。
「まずは敵の虚を突く!」
爆炎の中から赤い閃光が2線。2機のアッシュの胸部を貫いた。
「なに!?」
パイロット達に動揺が走る。それは機体の動きにも顕著に現れた。慌てて両腕を構え直し、フリーダムがいた場所にビームを撃ち始める3機のアッシュ。
「そしてヒット&アウェイ!」
煙の中から現れたフリーダムは素早く抜刀、複雑な軌道を描きながら接近。通り過ぎ様に、一閃、ニ閃。2機のアッシュの胸部を斬り裂いて飛び去るフリーダム。
554 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:26:06 ID:???
「武装を最大限に活かす!」
装備していたラミネート・アンチビームシールドを敵に向かってブーメランのように投げつける
「クソ!」
それをビームで弾き返そうとするアッシュ。
「当たれ、当たれぇ!」
恐怖のためか上手く狙いが定まらない。ようやくビームがシールドに当たり軌道を変えた頃には--
「よし、やっ…な!?」
シールドが弾き飛ばされたその裏にはすでにフリーダムが眼前まで急速接近していた。ビームサーベルをアッシュの腹に深々と突き刺し、それを逆袈裟に振り抜く。
「ウワァァ!」
爆発を起こすアッシュを蹴り、再び上昇し浮遊するフリーダム。シートに座るは少女は至って冷静にこう言った。
「ふぅ。こんなもんかしら?どう?参考になった?」
しかし少女の中のマユは全く見ていなかった。
(…ねぇ)
「ん?」
(言ったよね?さっき。私が何度もMSに乗ったことあるって。でも私…こんなことしたこと、一度もないよ?私には子供の頃から…)
「あんたじゃないわよ。あ・た・し。あんたの中のあたしがやってたの。あんたの体でね。それに…くっ!」
(どうしたの?)
「タイムリミットみたい…失敗作の限界かしら…?戻るわよ」
「え?」
再び体がマユのものになる。襲いくる疲労感。それでもなんとか体の感触を確認する。マユの指示通りに動く手足。それはマユ本人と、そしてフリーダムにも言えることだった。
操作レバーをつかむ。
「動かし方が…分かる。…なんで?いつ覚えたの?それにさっきのは…」
戸惑いながらも、マユはみんなの身を案じ、島まで帰還する。
555 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:28:40 ID:???
敗北の将、クレイブ・ドットは、アッシュ部隊全滅の確認の後、部下を船に集め、武器を回収した後、そのまま部下全員射殺した、血まみれの小型船を運転しながら1人、考えていた。
今回の任務の不可思議な転末を。
一つにラクス・クラインの件。
殺せと命じてをおきながら、いないと報告した時のあの応答の態度だ。事前に調べて、「居る」とこっちに言っておきながらあの反応では明らかにおかしい。
普通なら激昂するか、中止を言い渡してもおかしくない。感づかれていた、そう考えるのが妥当だからだ。
つまり始めから調べてなどしていなかったか、本当に知らなかったのか。それともいないと知りつつ偽ったのか。
しかしいずれにせよ特殊部隊に曖昧な意図の任務はありえないだろう。
二つ目にフリーダムを操縦していた人間について。
あれはキラ・ヤマトなのか。彼はフリーダムを強奪し、乗り換えた後は不殺を通していたと聞く。
前大戦の最も大規模な地球降下作戦、オペレーション:SPIT・BREAK時のイザーク・ジュールなど赤服も含む多数のパイロットの奇跡的な生還はあまりにも有名な話で、
作戦に参加せず本国にいた人間にすら知れ渡っていたのだ。
「不殺の天使」。その彼がアッシュのパイロットを皆殺しにした。返り血を浴びた天使が頭から離れない。あれは完璧に殺す気でいた攻撃だ。
全機体、コクピットを一撃でやられていたのだから。それに…あの卓越した腕前。
556 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:34:31 ID:???
自分は経験こそ短いが、何度もMSにテストパイロットとしても、戦闘員としても乗ったことはあったし、
それは決して、例えば赤服にさえも遅れを取るものではない。そう自負していた。間違いなくあの機体、いやパイロットの強さは、そうそうお目にかかれるものではない。解答としては考えを変えたか、彼と同等の力を持った者がまだいたのか、あるいは---。
ザフトにとって最も最悪のシナリオ。オーブで新型のOSが開発され誰であってもあのキラ・ヤマトと同等程度の力を発揮できるようになった、か。
大戦時のオーブの主力戦闘機、M1アストレイのOSを開発したのは彼だという。ならさらにその上をゆく物を開発できてもおかしくはない。十分に現実味を帯びた話だった。
しかし今更そんなことはどうでもよかった。そんなことよりもっと大切なことがある。
どのみち、自分は失敗したのだ。還れば折檻されるだろう。ことによっては消されるかもしれない。そんなことを思い、彼は笑った。
ならば罰を受けに帰る必要もない。部下は全員処分した。後はこの船を消せば事故に見せかけおさらばできる。
地図を確認し、目的地に着いたことを確認した彼は機関室にC4を仕掛ける。
大事な「商品」をアタッシュに詰めこみ、タイマー式の自動航行装置を作動させて船を降り、男は闇の中に、消えた。
557 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:41:05 ID:???
孤児院の前でフリーダムを止める。くたくたになって降りてきたマユを取り囲む子供達。
「マユ、カッコよかったよ!」
「マユ姉スゴーイ!」
「マユ姉ちゃんボクにも乗り方教えてー!」
何とも言えない反応。どう答えていいか分からずオロオロしていると
「マユちゃん!!」
キラの声。
「どうして君はあんな無茶を!君は死ぬ気か!!」
やっぱり…どやされた。
「…ごめんなさい…」
「謝って済む問題じゃない!死んだら…どうにもならないんだぞ!?君の言う平和だって叶えられない!
君が死んだら悲しむ人がいっぱいいるのに!それなのになんであんなことを平気で!」
嘗てのストライクに乗った自分と同じ、考えなしの行動に激怒するキラ・ヤマト。それを宥めるマリュー・ラミアス。
「まったく…。それにしたってよく乗れたものね。昔のキラ君みたい…」
「…マリューさん!!」
「ご、ごめんなさい!失言だったわ…」
そこに割ってはいる「砂漠の虎」。
「ま、まあまあ!落ち着け。今回のことは、とりあえず置いとこうや?それより、これからの方が問題だ。」
…確かにそうだった。またここにいては敵のいい的だ。どこかに逃げなければ。
マリューは提案する。
「とりあえず…オーブに戻った方が良さそうね。状況が変われば「あれ」が必要になるかもしれないし…」
「そうだな。それに戦争が始まっちまったらまた歌姫の身も心配だろ?」
ラクス。確かに心配だ。彼女は自分たちのように襲撃を受けてはいないだろうか?いまだ宇宙に残る彼女。
連絡を取って無事を確認したい。
「まぁ、とりあえず!オーブに帰ろうぜ?な?」
振られたマユも
「う、うん。そうだよ!帰ろうよ!」
と声の調子を上げてこう答え、頷く。出来ればこのことはすぐにでもみんなに忘れて欲しかったかから。
しかしそんなマユの変化を、誰よりも鋭い観察眼で捉えていたのは他でもない、アンドリュー・バルトフェルドだった。
558 :
マユAD:2005/09/25(日) 20:42:26 ID:???
投下終了です。やっぱりどうしてももたついてしまうなぁ…
559 :
しのはら:2005/09/25(日) 21:03:46 ID:???
第三十四話投下します
職人方GJ!
560 :
しのはら:2005/09/25(日) 21:15:20 ID:???
「フ、フリーダム!」
マユは思わず近づいてくる機体を見つめた。
「なんでフリーダムがここにいるんだ!」
インパルスに背を向け、ネオはフリーダムに襲いかかった。
ネオは少しだこ安堵した。
(いいところに来てくれたよ・・・)
アグニとカリドゥスが同時に火を噴き、交錯する。
ディステニーは光の翼を展開し、フリーダムに切りかかる。キラは一閃を避け、ためらわずにインコムドラグーンを解き放った。
「なんだと!?」
「俺はニュータイプじゃないがな。いい時代になったよ!」
四方からのビームがデスティニーを狙い、その全てがコクピットに照準を合わせていた。
「達磨にするのはやめたんだ。どうせ死ぬからな!」
「俺はまだ死なない!死ねない!」
シンは覚醒し、ビームの網をかいくぐってフリーダムに肉薄した。
561 :
しのはら:2005/09/25(日) 21:27:03 ID:???
ビームシールドで防御しながら、キラはネオの強さを体感していた。
「スーパーコーディネーターなんて、嘘だな」
「ほざくな!また正義の味方気取りか」
キラはライフルを連結させ発射、デスティニーの翼をえぐる。
インコムを積極的に利用し、デスティニーを攻め込む。たがネオの卓抜した技量はキラを上回り、劣勢を互角に持ち込んでいた。
「ヤマト大尉!」
「下がれマユ、お前が勝てる相手じゃない!」
「いっつも他人を見下して、大尉は!」「どうも。マユはシャトルを、ジブリールを!」
シャトルへ突撃するインパルスを遮ろうとするネオにキラが立ちはだかり、火力でデスティニーを攻める。
「インコム、行け!」
ワイヤーがデスティニーを絡めとり、身動きを取れなくしたが、ネオは光の翼でワイヤーを一掃した。
「所詮コンピュータ制御じゃあな!フリーダム!」
562 :
しのはら:2005/09/25(日) 21:37:39 ID:???
マユはシャトルまであと少しのところに到達したが、ミラージュコロイドを解除した戦艦に進路を阻まれ、ダークダガーに翻弄されてしまう。
「シャトルが!」
シャトルが戦艦に吸い込まれていく。マユの放つビームはダガーに阻まれる。
ビームサーベルで切ろうとしても、ダガーのバズーカがインパルスを行かせない。
シャトルの回収を確認したネオは恥じることなくその場を後にした。
デスティニーは戦艦を守りながら、宙域を去る。
キラは深追いしなかった。
「あんな奴が連合にいるとは・・・。それに、俺は主人公じゃないしな」
マユの元に向かおうとした時、緊急連絡が入った。
キラは驚愕する。
「ユニウス・セブンが?」
563 :
しのはら:2005/09/25(日) 21:39:40 ID:???
投下終了です
ではノシ
564 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/26(月) 00:31:10 ID:UhfK86t4
>マユAD作者様
おつです!しかし、マユが二重人格とは面白い切り口ですね。
表マユが「素直な良い子」で裏マユは「シンの女の子版」と解釈
するべきでしょうか?
>しのはら様
攻撃自由VS運命の戦闘GJ!!ドラグーンがインコムで兵器ぽいのが
また良し!!でも、キラが・・・18歳には見えません^^;
二重人格、構想中やつとかぶっちゃた……orz
>563 乙 相変わらずキャラ濃いなぁ・・・
>>565 なに、マユがフリーダム乗るのも被ってるしw、だからってAD版がツマランわけでもない。
面白けりゃいいんだよ、面白けりゃ。
素材の被りより、料理の仕方だ。
ってわけでその構想も見せて欲しいw
第二人格というと
……フリーダムガンダム・イド?
>>568 そういえば最終形態はストフリみたいな形の光の翼生えてたな。紅いフリーダムもなかなか
スパロボやってて昔の記憶が蘇ったんだが、テッカマンブレードのマスカレードって曲がゲンに合ってる
>566 いいねぇしのはら版 パロディとオマージュが良く効いてる(毎回)
>570 キラアムロだがな
本編に比べてすごくイイ!
ほしゅ
573 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/26(月) 21:14:42 ID:iBfcoDd/
フリーダム・イドとは?
マユに撃破希望MS
1 攻撃自由
CMで、煽りながらなかったので是非
2 無限正義
シンがやられたら、是非撃破希望
3 アカツキ
これも撃破希望
ラクシズ関係は、全部撃破希望
しのはらに一言
お前の一番好き
>>575 まあラクシズがそれぞれの作中でどれだけゴミのように扱われようとスレ住人は誰一人文句は言わんだろうがw
ただそれをやっちゃうと、結局は俺たちが最も憎む負債のオナニーと同じになっちゃう可能性大なんだよな
ここの神々はそれをちゃんとわきまえて、公平にキャラを扱っている点が素晴らしい
いや、しのはらのぶっちゃけぶりは、あれはあれで好きだがw
実際、素材としては悪くなかったんだがな……元三隻同盟軍の連中。
少なくとも、それぞれのキャラの初登場時点ではまだ期待が持てた。
そっから先、色々と明かされるにつれ、呆れていく一方だったけど
『・・・・・アノー・・・。』
カラオケ大会が白熱し、司会の癖に乱入してノリノリで
『機○咆哮ッ!デモン○イン!!』を歌っている時にシンハロはおずおずと切りだした。
「なんだ、アキラの奴がはっちゃけて自分が歌えないのが不満なのか?」
アスランがシンハロに聞く。
『ジツハサ・・、ソトニカンチョウガイルンダケド・・・・・。』
ピシッ!!
ハロの言葉に思わず全員石になった。そして首を入り口の方へ向けて見ると・・。
「さて?いつまで『重要な会議』が続くのかしら?」
頭に怒りマークがついているタリアがいた。
「そっ・・、総員退避ー!!」
ハイネはそう叫ぶと壁をたたく、するとその壁が回転した。
「あ!!ハイネお兄ちゃんずるい!!ハロ!!」
マユが合図するとシンハロの眼が光る。
そして、マユとシンハロの立っていた部分の床が沈んだ。
「あーっ!!マユちゃんずるい!!ゼロ!!」
「了解。」
アキラが言うとゼロはどこからともなくぶら下がってる紐を引っ張った。
すると・・・。
ガコーーーーーーーンッ!!
・・・見事に金ダライがタリアの上に落ちた。そのままパタッと失神する。
「・・・あれー?ゼロ?確かスモークが出るんじゃ・・・。」
「間違えた。」
アキラの突っ込みに反論することもなく答えるゼロ。
「・・・・・・・逃げろーーーー!!」
そう叫んでハイネ隊とミネルバクルーは逃げた、ただ呆然としている
スティングとアスランが残された。
・・・・・・・・・・・さようなら、スティング、アスラン。
>577 しのはらのぶっちゃけぶりにはエネルギーを感じるw
・大塚明夫ボイス凸
・アムロ化キラ
・マラ掴み姫
・三隻同盟→懲罰部隊
ざっとあげてコレ。あと何かある?
俺はラクス様こそラスボスの威厳と、強さを兼ね備えた種キャラだと思ってんだが……
ラクス様が「この世界は私のものだ!逆らう奴は皆殺し」なんてキャラならマンセーできる!!
だれか書いて〜
>581 しのはらならイカした基地外になるんだが・・・
俺的にはラクスがヒトラーの尻尾だったら燃える。
知性とカリスマと狂気を兼ね備えたキャラ。
>580 つウィンダムに負けそうになるガンダム
つ種版ヤザンの神楽
「いやー、こうしてこっそりしてると修学旅行を思い出すなぁ・・。」
「いや、そんな青春の思い出に浸ってる場合じゃないないから、ハイネ。」
しみじみとするハイネにジョーが突っ込んだ。
ここはミネルバでもほとんどのクルーが存在を忘れている『開かずの倉庫』
だが、実際はシンハロが自室としてこっそり使っているだけなのだが。
「じゃーさー、何か話しようよ。怪談?」
カルマがのりのりで言う。
「えー、怪談はありきたりでしょ?」
しかしその案はルナマリアに却下されてしまった。
「そういえばさ、こないだスパイ物の小説よんでさー。コードネームがかっこよかったんだー。」
アキラがそんな話題を口に出したで話題はコードネームへと代わって言った。
「あれだよなー、ステラは『わんこ』。」
「そうだね、ステラは『わんこ』だね。」
「ステラ・・・わんこ好き・・・。」
ステラは搭乗機と性格から『わんこ』だろう、という話になった。
「アウルはあれだな、『ていだ郎』。」
「何でだよ?!」
「いや・・、『苺』だろう・・。」
「だから何でだよ?」
結局アウルは声優ネタで終わった。
「『西川』。」
「『西川』だね。」
「うぇーい。『西川』。」
「うわーーん!!皆が西川って言うーー!!」
所詮ハイネは西川である。
「アレか・・ルナマリアは『あほ毛』以外思いつかない。」
「レイ、何よそれ?ケンカ売ってるの?」
「ごめん・・、ルナお姉ちゃん・・。」
「マユ?!あんたまで?!」
ぶっちゃけ、作者もこれ以外思いつかなかった。
「レイは・・『マーズ』とか?」
「いや・・・、『ザフト軍の白い悪魔』。」
「それは苗字だろ?やっぱ『三人目』だろ。」
「違うよ!!レイ兄ちゃんは『ベルバラ』!!もしくは『オスカル』!!」
「・・・・・・・・・・・。」
レイはアニメやマンガキャラしか取ってもらえなかった。
「じゃあ、アスランは『凸』だな。」
「うん、それしかないね。」
「賛成ー。」
満場一致でアスランのコードネームは決まった。
「じゃあ・・・スティングは・・・・・『エロボイス』・・。」
「だなー。あの声はエロい。」
「そうよね、でもそれと本人の誠実な姿のギャップがたまらないわね・・・。」
「私もそう思います・・・・・・、グレイシアさん。」
スティングがルナマリアとグレイシアに狙われている事が発覚した。
「マユは・・・・なんだろう?」
「『勝利の女神』とか?」
「・・・『つるぺた』。」
シュゥゥゥ・・・・パリーーン。(マユ、種割れ)
アキラがブロックワードを言ったせいでマユのは決まらなかった。
>584 神楽タンもう出ないの!?俺好きなのに・・・
ステラは殴るわルナマリアをアホ毛と呼ぶわでw
>>586 ブロックワード吹いたw てかそれがいいのに
>>581 何つーのかなあ、あれってさ一種の神(人外)キャラだろ。
種から考え直すと本気で恐ろしいぞ。
・ただの前議長の娘(民間人)なのに新型MSの格納庫に顔パスで入れる。
・父親茂るよりも厳重に警護され、ザラパパは裁判無しで殺そうとするほどの焦りぶり。
・カナーバはデュランダルがクライン派の考え支持するとしたので議長に推薦。
・議長は偽者を用意してまで、自分の意見をラクス様が支持しているとアジテーション。
・ザフトの皆様は軍規とか命令以上に、ラクス様が本物かどうかに拘る。
・いくらMSが個人所有できる世界とは言え、新規開発までやっちゃう資金力と技術力。
・一声かければどこからともなく、ザフト、連合構わず戦力が集まる。
番外
・凸がキスをねだられた時に逃げたのは本能的に危険を察知した為。
キラきゅんは女好き逆手に取られて今や蟻地獄に陥っている。
この点においては凸は唯一キラに勝ったとも言える。
>587 神楽タンがAAやラクシズを蹂躙すると考えていた時期が私にもありました
>590 このスレで神楽はどういう風に思われていたんだろう?
>>589 種デスで出てきた部分を除いて、茂パパのラクスへの想いをフォローすれば、ここまでひどくならなかったと思う
てか種デス開始時ならまだなんとかなったよ
ち、ちくしょう、初代スレから全部過去ログ読んだら夜が明けてしまった…orz
マユ種クソオモシロス。
最初のあらすじだけ書いてある感じのもあっさりめで好きだったんだが、
あんなかんじででも是非復活してもらいたいなぁ。
>577 しのはらタソの四馬鹿嫌いは凄まじいと思われ キラの初登場でわかった
>>582 そういえば、しのはら版にはラクスもエターナルも出てこないな
今までしのはら版のラスボスはネオかジブリだと思っていたが、もしやこれは伏線!?
>596 今更ながらしのはらキラの容赦なさに気付いたよ(負債版とは別の)
会話中のオクレ兄さん後ろから撃ってあぼんさせるとは・・・。
>597 しのはらキラは不殺をしないと作品内で言ったからな
「不殺はやめたんだ!どうせ死ぬからな!」
ヒデェw
599 :
しのはら:2005/09/27(火) 18:38:56 ID:???
明日三十五話投下するので、今日は各MSについて説明を・・・
インパルス
本編とほぼ同じですが、オーブとの密約で手に入れた三機のストライクのデータにより作られた「ザフト版ストライク」
コアスプレンダーを内蔵しているが、使用されることはまずない。
レジェンド
プラント総力戦体勢「ディスティニープラン」により完成した一騎当千のMS。プロヴィデンスと基本設計を共有しており、性能には大差ない。
それでも基本能力とアレックス・ディノの技量により、多大な戦果を残している。
カオスから得られたデータを利用したコンピュータ制御ドラグーンを装備し、わずかな訓練で使用可能
ザク(ルナマリア機)大破したアレックスのザクファントムのパーツを使用し、改修されたMS。
シールドを追加され、角も装備された。
デスティニー
ザフト総力戦体勢「デスティニープラン」の旗頭となる機体で、フリーダム打破をコンセプトに開発された。
インパルスのデータがふんだんに利用されており、あらゆる戦局に対応可能である。
一号機はジブラルタル基地に送られたが、ネオにより強奪、連合に渡ってしまう。
逃走の際武器類を全て失ったため、武装は連合製のものを利用している。
600 :
しのはら:2005/09/27(火) 18:58:43 ID:???
ドム・トルーパー
次期主力MSの座をザクに譲った後、試作三機が三隻同盟軍に送られた。
キラ・ヤマト大尉を始めとした部隊が試作三機を駆ってアフリカ及びヨーロッパ戦線で活躍し、これに着目した現場から必要の念が高まり、正式採用となった。地上だけでなく宇宙にも少なくない数が配備され、「太った殺人鬼」の異名で地球軍から恐れられた。
キラ・ヤマト大尉の活躍を聞いたザフト兵はそれにあやかり、機体を赤くする人間も多かった。
デストロイガンダム
MSにおける大量殺戮兵器の頂点を目指した機体。
数え切れない数の兵装に陽電子リフレクターを搭載し、攻防ともに常軌を逸した能力を誇る。
撃破された場合は最後の手段として、核エンジンを自爆させる戦法を取ることができ、事実ヘブンズベースはこれで壊滅した。
ストライクフリーダム
前大戦で大破したフリーダムをオーブが回収し、密かにロンド・ミナがアメノミハシラに移管したものを修理、改造したもの。
三隻同盟軍の旗頭となるために開発され、試験はソキウスが担当した。
プラント総力戦体勢「デスティニープラン」発動後はザフトも開発に協力し、コンピュータ制御ドラグーンシステムの派生インコムを八基搭載するに至る。
ジブリール捕獲作戦の際には目標の拘束こそ失敗したものの、性能で勝るデスティニーと戦闘、終始圧倒した。
この時の戦いをパイロットだったキラ・ヤマト大尉は「まるで自分が主人公になったようだった」と後に語っている。
601 :
しのはら:2005/09/27(火) 19:01:41 ID:???
投下終了(?)です
本編のMSはなんで出たのかわからないので設定を妄想してみますた
ではノシ
>601 なんと説得力のある設定だ・・・
しのはら版は強烈キャラばかりに目が行くが、MSや世界設定もキチンと作ってあるよな・・・ ジェスやミナ様みたいにちゃんと外伝に繋がるエピソードもあるし
俺は最初、量産機が活躍していたのも嬉しかった
>605 サクサクストーリーかと思いきやオデッサにドム出てきたりしたしなw嫌味のないオマージュが結構好み
マユ・アスカ 表の主人公
歴代主人公達と同様悩み苦しみ成長する、決して無敵ではない。
シン・アスカ 影の主人公
強敵超えるべき壁、対称的な存在。
だと思う。
厨機体満載のマユ種をやりたいと思ってチャレンジしてるけど
話の構成とか考えると全然まとまらない…
ここでやってる職人さんたちはほんと凄いなと改めて実感した
キラの「まるで自分が主人公になったようだった」クソワロタ
>>607 陽のマユと陰のシンで良いバランスなんだと思っている
陰と陽が太極になることをちょっと願っていたりする
しのはら13まで読んだ。全米が泣いた
畜生、俺の心の琴線にジャストミートしたぜ…
AA組の連中の行動を本編そのままにするとどうしても叩くような内容になってしまう……
>611 詳細キボン
>>612 更に言えば、悪目立ちしすぎでミネルバ霞むしな。
対抗して必死でレイやルナマリアのキャラ立てやると、
そこだけで恐ろしいテキスト量になるし。
俺はオーブ戦の部分だけやろうとして投げた。
ED映像はマユで始まってシンで締めてほしいなあ
LIFE GOES ONとかREASONとか
そんで君は僕に似ている、は二人で締める
>>614 もういっそラクス様をはっちゃけ突き抜けたラスボスにしようか考え中
>>616 最悪の善意、振り払え! ディステニー!!
ってところですか。
>>612 とりあえず、AA組がそのままの動きをできない仕掛けは打っておきました。
てか、一番大事なオモチャ取り上げましたw
他にも仕掛け打ってますし、なんとか良い方向に動いてくれれば……
本編を忠実になぞって再構成する場合にはAAの存在をどうするかが難しいね、
AAなりの正当性というか戦う理由を持たせてあげたいんだけど・・・
>>615 君僕はこのスレいるとマユシンの歌にしか聞こえなくなったよ
>>618 オモチャってフリーダムのこと?
さてはAAを取り上げたな…
>611 感想キボン
622 :
通常の名無しさんの3倍:2005/09/28(水) 08:15:13 ID:+mzEg/zu
>しのはらさま
お疲れ様です。
>599〜601
こういう設定集ってすっごく燃える。ところでデスティニーが
一号機ということは複数存在するというという伏線?
>「まるで自分が主人公になったようだ」
バカ受けっす^^こっちの物語なら本編と違った意味で充分主人公なのでは?
(何気にZのアムロぽいし。もちろん姫も)
>622 プラント総力戦態勢「デスティニープラン」なるほど、こんな使い道があったか
ドムはリック・ディアスのオマージュねw
age
埋めるんだ
シン 168cm 55kg
ルナマリア 164cm 46s
メイリン 160cm 45s
ステラ 163pの43s
ミーア160p 47s
マユ(13歳)は、150cm位?
胸は、ぺったんこかな。
そ の 時 マ ユ が 発 動 し た
ほのぼの版では種割れてるな、ここでw
ファントムペイン書いてる者です。
>>544 一応濃いジブラクとシンキラ共闘を用意する予定です。
最終的にどうなるかはわかりませんが……
>>547 ご指摘通り、ナウ○カ漫画版にインスパイアされ(以下省略
本編見る限り何を考えているのか分からない人でしたので……
それとなくナウシ○っぽいイメージで書こうと思います。
上手く料理できるよう頑張りまする。
書くペース遅いですが、今後ともご笑読いただけると幸いです。
630 :
544:2005/09/29(木) 01:14:14 ID:???
>>629 レスをくださってありがとうございます!
そういう展開の予定なんですね。楽しみに待っています!
>>ファントムペイン作者殿
暗視ゴーグルの設定について
近年使用されているのは「第三世代型」。簡単に説明すると
第一世代型
そこまで明くるくない。
第二世代型
結構明るくなった。
第三世代型
弱点である、強い光を克服。突然の明かりも自動調節するためまぶしくない。
なので、最新装備を使う特殊部隊にはあの技は効かなかったりする。あげあし取りスマソ。
余談だがカラーの暗視ゴーグル(第四世代)の開発も進んでいる。
さすがにね…銃とかなら少しくらい古くても、信頼性とか使い慣れてるとかはあるが…暗視ゴーグルじゃぁね。命取りになる。
>>631 そういえば何かの話で暗視ゴーグルを使ってたドイツ軍の狙撃兵が
片方の目をつぶっていて電池が弱くなってきた暗視ゴーグル外して
つぶっていた方の目で狙いをつけていたシーンがあったな。
あれは第一世代型か・・・
いや、スレとは関係ないんだけどさ・・・