カガリ達がオーブの理念守る気がない件について2

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224通常の名無しさんの3倍
297 通常の名無しさんの3倍 sage 2005/07/09(土) 12:54:55 ID:???
「いたぞっ! ユウナ・ロマ・セイランだ!」
ユウナの背中へと、武装したオーブ兵の無数の銃口が向けられる。
ゆっくりと振り返るユウナの目は、武装兵を掻き分けて前へ出ようとするカガリの姿を捉えていた。
「ユウナ!」
「いけません、お退がりください!」
武装兵を振り切り、カガリはユウナの眼前へと躍り出る。
「カガリ、帰ってきていたのかい? 迎えも出さなくて、すまなかったね」
飄々としたユウナの仕草に、カガリは憤慨してユウナの胸倉を掴み上げる。
「お前、どうしてこんな所にいるんだ! 外はザフト軍が押し寄せている、戦闘中なんだぞ!」
「司令部は優秀な参謀官たちに全権を任せてるよ。あ、君達に制圧されちゃったかな?
ともかく、僕は他にやることがあるんでね」
「やることだと…?」
カガリの腕の力が緩むと、ユウナは操作盤を叩いて背後の金属扉を開放した。
ゆっくりと開かれていく扉の向こうには、一機のモビルスーツがハンガーに固定されている。
だがそのハンガーには、豪奢ではないにせよ力強い威厳のある細工が施されており、
ここがただの格納庫ではないことを示していた。
カガリはモビルスーツへ駆け寄り、その体躯を見上げて叫ぶ。
「何だ、これは!?」
「アカツキ…オーブ製のモビルスーツだ。三年前、きみのお父上が開発させていたものさ」
横へ立ち、同じようにアカツキを見上げるユウナ。
「父さまが…?」
視線をずらすと、アカツキの肩部装甲には、オーブの紋章が刻み込まれていた。
後々から書き足したのではなく、設計段階からあの紋章はあそこにあったのだろう。
「ど…どうしてもっと早く出さなかった!? 昨日今日の話じゃない、これがあれば父さまだって…!」
「昨日今日の話なんだよ。制御系に欠陥があってね、つい先日改修が終了したところさ」
「そ、それだってこの戦闘には間に合ったはずだ! なぜ出さない! なぜ!」
「出るんだよ。僕が乗る」
平然と言い放つユウナに、カガリは一瞬ほうけた顔をしてしまった。
ユウナは武官ではない。いや、軍人ですらないのだ。まかり間違っても、前線に出て戦う人物ではない。
「なにを驚いているんだい、カガリ? このアカツキはオーブの象徴となるべき機体だ。
国家の代表でもない者が、軽々しく乗っていいものじゃあないのは当然だろう?」
「お前が乗る必要はない! 私が――」
「ウズミさまの娘であるだけで代表になれたわけじゃないのは、きみ自身がよく知っているはずだろう?
正規の手続きをとって帰国を表明しておいで。もっとも、今はどこの役所も閉まってると思うけど」
「お前ぇぇぇっ!」
怒りに任せた正拳が、ユウナの顎をとらえた次の瞬間。
足を踏ん張り、倒れるのを免れたユウナはカガリの腕を掴み、今まで見せた事のない厳しい表情を露にした。
225通常の名無しさんの3倍:2005/07/19(火) 04:26:00 ID:???
298 通常の名無しさんの3倍 sage 2005/07/09(土) 12:56:18 ID:???
「きみのやっていることは、オーブへの侮辱だ!
オーブは理想国家なんかじゃない、自国さえ焼かれなければ全世界が滅びようとも構わないという、独善的な国なんだ!」
「お…お前こそ侮辱じゃあないか! 父さまの掲げた理想は…」
「そうだ! きみのお父上は国を愛し、理想を掲げ、そのもとへ集おうとやってくる民をいっさい拒むことはなかった。
決してきみたちのように、勝手に考え出した理想を誰にも彼にも無差別に広げて満足しているような男ではなかった!!」
声に吹き飛ばされるかのような錯覚を覚え、カガリは一歩退く。
「どくんだ、カガリ。僕は民を守る選択をした、ならばこの命が燃え尽きようとも最後まで力を振り絞り…みんなを、守る」
アカツキから下がったワイヤーロープを手に取るユウナ。その背中に、鋭い声が突き刺さった。
「待てっ、ユウナ!」
「泣き言なら、聞かないよ」
ユウナはワイヤーロープを僅かに収縮させ、これが最後であることを示した。
「ユウナ、私はお前の言葉を聞いて心がぐらついている。かと言って、軽々に自分がまちがっていたと言うことはできない。
私がなにをしてきたか、これからなにをすべきか、そして今までのことをどうするべきなのか…
私はバカだからすぐには考えがまとまらない、けど…これぐらいなら私にだってわかる、今はオーブを守らなきゃいけないんだ」
カガリはユウナに近づくと、ワイヤーロープを掴んだ。
「操縦は私の方がだいぶ慣れている。それに私はうまく軍の指揮をとれないんだ、お前にやって欲しい」
「勝手な言い草だね」
「承知の上だ。今この瞬間だけでも、私をオーブの代表と認めてくれ! 最善の手段をとりたいんだ!」
一瞬にも永遠にも感じられる間ののち、ユウナはワイヤーを握る手を離した。
そして、破顔するカガリの目の前に人差し指を突きつける。
「きみの名にかけて誓うんだ。このアカツキはオーブのためにある、と」
「わかった。カガリ・ユラ・アスハの名にかけて、誓う」
それは、オーブ氏族においてどんな書類よりも神聖で厳粛な誓約だった。
ユウナはそれを聞き届けると、振り返って武装兵へと叫ぶ。
「司令部へ戻り、指揮をとる! 護衛をしろ!」
「ハッ!」
数分前まで殺気立って銃を構えていた男達は、オーブ兵へと戻っていた。
ユウナが格納庫から出ると同時に、奥の巨大な扉が音をたてて開き始める。
空が、見えた。ザフトのモビルスーツ、オーブのモビルスーツ、そして火線が飛び交う空。
「カガリ・ユラ・アスハ! アカツキ、出るぞッ!」