や…レイ!お前のベッドはとな…りっ!っんぁ!

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606ヽ(`Д´)ノ派 ◆seQ0Fb1MvE
場面:35話、アスランと言い合いをしてレイに引きずられていったあと

 殴られた頬をさすりながら、レイに手を引かれて歩くシン。視線は後方のMSデッキへ鋭く向けられていた。
「くそっ、いったいなんだってんだよ。俺が何したって言うんだ。ヒーローごっこじゃないんだろ!?戦争は……」
 シンの愚痴は止まりそうに無い。ふとレイが足を止めてシンに向き直った。
「腹が立つのはわかるが……少し頭を冷やした方がいいな」
 は?とシンが反応する前に、するりと綺麗な両手がシンの頬を捉えた。そして有無を言わさず口づける。
 男らしい堅い唇の感覚に一瞬思考が止まるシン。しかしレイの舌がその口腔に侵入しようとしたところでようやく動き出した。
「なっ…何をするんだ、レイ!」
 レイを突き飛ばし、唇を袖でぬぐう。レイは別段驚くでもなく、いつもの表情でシンを見ていた。
「今までそうしたいと思っていた。それを実行しただけだ」
「ふざけんなっ!議長がいないからって、俺で性欲処理しようってのかよ!」
「まさか」
 レイは通路の端にあったパネルを操作して扉を開いた。中はパイロットスーツのロッカールーム。ここなら人も来るまい。
 強い力でシンを部屋に連れ込み、扉を閉める。
「レイ、おまえ……」
「ずっとおまえを見ていた。だからあのエクステンデットを逃がす手伝いもしたし、フリーダム攻略の手伝いもした」
 レイの腕がシンを捉える。シンは思いがけない親友の告白に頭の芯がしびれたようになってしまっていた。
 ただ、大きく目を見開いてレイを、そして彼の後ろに見えるロッカーを見ていた。
「シン、強くなったな……」
 今まで見たことも無いほど優しい笑みを浮かべ、レイがシンを抱きしめる。
 そしてもう一度口づけようと手が、顔が迫ってくる。その時、見開かれているだけだったシンの瞳に光が戻った。
「やめろ……っ!」
 腕を振り回し、レイを拒絶する。
「お前はアスランじゃない……っ!」
 口走ってからシンははっと口を抑えた。今まで隠してきた本心だった。
 言い争いをするのは、もっと自分をわかって欲しかったから。
 厳しい意見を言うのは、彼にもっとしっかりして欲しかったから。
 皮肉や嫌味を言うのは自分に興味を持ってもらいたかったから……
「そうだな。俺はアスランではない」
 以外にレイは冷静だった。うろたえるシンをいつもの視線で見つめていた。
「お前がキラ・ヤマトでないのと同じにな」
607ヽ(`Д´)ノ派 ◆seQ0Fb1MvE :2005/07/02(土) 02:37:29 ID:???
「お前がキラ・ヤマトでないのと同じにな」
 静かな言葉は、それだけでシンの心に突き刺さった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 シンは目を大きく見開いてその場に崩れ落ちた。硬く握り締めた拳で床を叩く。
「ちくしょう!なんなんだよあいつは。アスランだってセイバー台無しにされたんだろ!
 それなのに敵じゃないとか、殺す気がなかったとか……」
「アスランの幼馴染だそうだが……恐らくそれだけではないな」
 アスランのキラへの執着は常軌を逸している。そこから友情以上の関係を推測するのは、レイでなくても簡単な事だろう。
「なんであんなヤツなんだよ!なんで俺じゃないんだ!なんで……」
 床を殴りつづけるシンに、レイはしゃがみこんで顔を上げさせた。案の定涙が頬をぬらし、目を赤く染めている。
 手の甲で頬をぬぐってやりながら、レイはまっすぐにシンを見つめた。
「何を……レイ……?」
「意地を張るのは勝手だが、時に折れる事も必要だ。人の駆け引きとはそういうものだ」
「な、何言って……」
 状況が飲み込めずぽかんとするシンに、さすがのレイも溜息をついた。
「手遅れになってからでは遅いと言っている。もっとはっきり言った方がいいか?しっかりアスランに想いの丈をぶつけて来い」
「え、な、そんな」
 思わず頬を染めるシン。今まで突っ張り通した意地を今更曲げる事も戸惑う。
 そんな感情にうろたえる親友に、レイは最後の忠告をした。
「今回のアークエンジェル撃墜命令で、アスランの反ザフト感情は臨界点まで来ているだろう。
 彼が前大戦でザフトを脱走した事は知っているな?」
「つまり、またザフトを脱走するって事か?」
「可能性は高い。彼の性格を考えればな」
「……つまり、そうなる前に行動しろ、ってことか」
「そうだ」
「けど、いいのかよ。お前さっき……」
 さっき自分に好きだと告げた事はどうでもいいのだろうか?敵に塩を送るような真似をして……
「気にするな。どうせお前は戻ってくる。心配はしていない」
 どういう意味だそれは?シンは口にしようとして飲み込んだ。レイの精一杯の強がりに思えたからだった。
 レイは微笑を浮かべながら入り口をあごで示した。
「なら、早くいけ。後悔する前にな」
「わかった。……ありがとう、レイ」
 シンは勢いよく立ち上がると、扉を抜けて走り去っていった。
 その背中を、レイはいつもの無表情に戻って見送っていた。
 シンがアスランの中のキラを超える事はまず無理だろう。放っておいても彼は戻ってくる。自分の下へ。
 しかし、それを少し悲しいと、シンを応援している自分がどこかにいる。複雑な心境で、レイもロッカールームを出た。
 シンには悪いが、今回のアスランの態度は議長に報告しなければならない。
 レイはそのまま自室に戻り、報告書の作成に取り掛かった。