最近、オルガだけではなくクロトやシャニも本を読み出した。いい傾向だ。
なんの本を読んでるんだろう。ちょっと見てやれ。
「初心者のための『株ってなに?』塾」
「株で儲けろ!」
「中国株に乗り遅れるな!」
・・・。
「あっ!何見てんだよヴァカー!」
「人の本を勝手に見るな!」
「盗み見うざ〜い」
お前ら。なんだこの本は。
「一・億!あるんだぜ!このままじゃ悔しいから、もう一度儲けてやるんだ!」
「ムルタのおっさんにもう一度挑戦してやるんだ!」
「億万長者〜」
あのなぁ!株は危険なんだぞ!
株板とか見てみろ!悲惨だぞ!
「大丈夫だよ!僕達は失敗しないもんねー!」
「勉強してるし、心配いらねぇよ!」
「心配無用〜」
もう勝手にしろ・・
2日後、3人がパソコンを3台買ってきた。
「よし!まずはこことここだ!」
「了・解!」
「任して〜」
━━2時間後
「よし!今だ!買え!」
「買い!買い!買い!」
「空売り〜」
━━8時間後
「よし、今日はこれぐらいにしとくか」
お前ら、結局どうだったんだ?
「好・調!かなり儲けたよ!」
「ぐふふ〜」
あ、そう・・
━━3ヶ月後
ところでお前ら、株のほうはどうなんだ?
「ああ、うまくいってるぞ。確か今10京円ぐらいかな」
ふーん、10京円・・・・・・はぁ!?
ちょっと待て!嘘だろ!?
「本・当だよ!見る?」
そう言って預金通帳の山を俺に見せるクロト。
ほ、本当だ・・お前らどうやって・・。
「教えな〜い」
「まあ、黙って俺達のことを見ているんだな」
「楽・勝!」
その頃ムルタ邸では。
「ふっふっふ、世界は全て僕のもの・・・どうしましょうかねぇ、この資産。
何に使おうかな〜」
100階のマンションから120万円のバスローブを羽織り、300万円のワインを飲んでいた。
「買いだオラァ!」
「ファイテン!ファイテン!」
「好!好!」
相変わらずやってるな。どこの株だ?
・・・中国株?韓国株?
「今が最安値!買っとかなきゃな!」
ほう、そうなのか。どのくらい買うんだ?
「全韓国株の50パーセント!全中国株の30パーセント!」
・・そんなに買えるわけないだろ!
「買えるも〜ん」
その時、テレビでは、丁度6時のニュースの時間だった。
「今日のトップニュースは、韓国と中国についてです。」
「最近、韓国株と中国株が物凄い勢いで高騰。
韓国株平均は30万ウォンの値をつけています」
な、なに?・・まさか。
「その中でも最大の株主が、オルガ・サブナック氏、クロト・ブエル氏、シャニ・アンドラス氏の3人です。
3氏は、韓国株の35パーセント、中国株の15パーセントを買い占めています」
なにィ!?
「これにより、韓国と中国は空前の好景気となり、市民は喜びに湧いています。
それでは、ソウル市民の皆さんの声を聞いてみましょう」
「この半年間で、1ヶ月の給料が30%も増えたんだ!」
「もう大忙しよ!テレビを買ってエアコンを買って・・
本当にあの3人には感謝してるわ!」
「はい、本当に皆さん嬉しそうですね。では、その3人のインタビューもご覧ください」
なっ!?
「え〜、まあ、日中、日韓友好のためにですね、これからも頑張っていきたいと・・」
「友・好!」
「よろしく〜」
こいつら、心にも無いことを・・いつも「中国氏ね」とか言ってる癖に。
さらに半年後。3人は、買いと売りを繰り返し、巨額の富を得ていた。
世界の株式のおよそ50%が3人の手の内にあると言われ、
韓国株平均は10億ウォン、ニューヨーク平均株価は1000万ドルまでに高騰。
世界中が好況に沸き、「新世紀超好景気」と言われていた。
「いやあ、3人に薦められて株を始めてみたんですけど、一気に資産が倍になりましたよ!」
とはニコル。
「やあ、株っていいもんだね。おかげで外車が7台も買えたよ」
とはキラだ。
あの3人、結構人の役に立ってる・・のか?
だが、それは俺の大きな勘違いだった・・・。
ある日。
ん?3人とも、何パソコンをジッと見てるんだ?
「よーし、もうちょっともうちょっと・・・」
「そうそう、上がれ上がれ・・」
「もっと・・・もっと・・・」
・・・なんなんだ、一体。
そして、次の瞬間。
「売りだオラァ!!」
「売・却!!」
「売り売り売り〜」
ダカダカとキーボードを叩き、一斉に株を売り始める3人。
な、何が起こったんだ!?
3人の顔には、邪悪な笑みが浮かべられている。
お、お前ら、何してんだ。そんなに売ったら・・
「望むところさ」
「わかってる!」
「まだまだ売り〜」
・・・・・・。
ムルタ邸。
「ふう、今日の仕事も終わりか。まったく、議員連中もうるさいなあ。
やれ、国防費を削れだの、やれ福祉費を上げろだの・・
ん?な、なんだこれ・・
う、うわああぁぁぁあぁ!?!?か、株が!?株が下落してる!!
か、買わなきゃ。急いで買わなきゃ!
も、もしもし。買えるだけ株を買え。今すぐだ!」
そう言った後、パソコンに座り、自らも株を買い始めるムルタ。
「下がらせてなるものか・・僕は勝つんだ・・・そうさぁ!いつだって・・・・」
数日後。
「い、今入ってきたニュースです。全世界の株が下がり続けています」
緊張した面持ちで原稿を読み上げるアナウンサー。
「これは、全世界の株式のおよそ50%を保有している3氏が一斉に株を売ったことが原因と思われており、
世界のどの株式市場でも売りが殺到しています。
韓国では、平均株価が2ウォンにまで下落しており、市民はパニックに陥っています。現地から中継です」
「はい、ソウルです。いまソウルは恐慌状態になっており、
市民が集まり、3氏の人形を燃やすなどといった行為があちこちで起きていま・・」
「クロト、パック・ユー!俺達の生活を台無しにしやがって!」
「あいつらのせいで私達家族は滅茶苦茶になったのよ!
借金が8000万ウォンもあるのよ!あいつらの首を引っ掻いてやりたいわ!」
「え、えー、現場からお送りしました」
「ケッ!」
「面・白!」
「いい気味〜」
い、いい気味って、何がしたかったんだ、お前ら!?
「おっさんへの復讐だよ!」
なにい!?
「おっさん、今ごろ頭抱えて泣いてんだろうな〜アヒャヒャ」
お前ら、そんなことのために世界を無茶苦茶に・・。
ムルタ邸。
「ああ・・そんな・・・・・・僕の・・・僕のお金が・・・・僕のお金がああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ムルタの資産は下がりに下がっていた。
「畜生・・畜生!あの3人めぇ・・・」
━━数日後
「ちょっと!居るんでしょ!?出てきてください!あなたたちのせいで僕は、僕はあぁぁ!!!」
「居るのはわかってるんだ!出てきてくれ!」
ドアの外には、ニコル、キラ、ディアッカ、アスランなど皆が押しかけている。
ど、どうするんだよ、お前ら・・
「関係ないね!僕達はまた儲けたし!」
「これでもう一回世界を俺達のものにするんだ!」
「はっぴ〜」
はっぴ〜ってお前ら・・
と、その時、拡声器で拡大された大声が響いた。おっさんの声だ。
「キミ達!ここは包囲されている!無駄な抵抗は止め、すぐに出てきなさい!」
「なんだぁ?俺達は何も悪いことはしてないぜ?」
「何言ってんだ?おっさん」
「うざ〜い」
「キミ達には国家反逆罪の疑いがかかっている!今すぐに出てきなさい!」
「「「はぁ!?」」」
国家反逆罪?なんのことだ?
「いいがかりつけんな!」
そう言って、ドアを開けるオルガ。
「おや、やっとドアを開けてくれましたか。それでは逮捕といきましょうか」
次々と警察官が上がりこんでくる。
「な、なに勝手に入ってきてんだよ!止めろよ!」
ガチャ
3人の手にはめられる、手錠。
「「「なっ・・」」」
「ふふふ、このほど法律を変えましてねぇ。国家反逆罪に問われる者には、
『国家を少しでも不安定にした者』という項目も追加されたんですよ!」
「なにぃ!?そんな、バカな!」
「卑・怯!冤・罪!」
「うざあぁぁぁいっ!」
「どんなにあがいても無駄ですよ。さあ、行きましょうか。あ、そうそう。
たぶん、キミ達の資産も全部没収ということになるでしょうねぇ」
「そ、そんな・・と、常俺、助けてくれ!」
「支・援!要・請!」
「なんとか言ってよ〜」
た、助けてくれって言われても・・
「何をあがいてるんです。行きますよ」
そう言って、連れて行かれる3人。
皆の罵倒を背にしながら、3人はパトカーに乗りこんでいった。
俺は・・・俺はどうすればいいんだ・・・・・・。
いや、それだけなんだけどさ。