化け物だ・・・
奴は・・・・化け物だ・・・・
爆炎の中から現れる機体、それはキメラを庇ったV2だった
「なんだあれは?艦艇用大型ミサイルを防いだだと?」
「大丈夫かお前!怪我はないのか!?」
『ミゲルさん!?』
「その様子だと怪我は無い様だな、っつーかこの機体一体何なんだよ!勝手に動きやがってまったく操作を受け付けない!」
『樹里!大丈夫なのか!?』
「ロウ!」
レッドとキメラが触れ合う、しかしそれをブルーが制する
『お話している時間は無いようだ、メビウスが上がってきたぞ』
アルテミスから発進する20機以上のメビウスがMSを包囲するように動き出す
訓練だけはしているようで、その動きにはぎこちなさはないものの、実戦を知らない物の動きだった
「ええい!傭兵!さっさとその赤いやつを引っ張ってこい!そうすればジャンク屋どもの命は助けてやろう。」
『くっ―――』
周りは既に囲まれて、逃げ出す事も出来ない
どうしようもない
「劾、考えがある、一口乗らないか?」
接触回線で話しかけるロウ
その言葉に驚く劾だが、
『わかった』
数瞬の考えの後、ロウのレッドフレームを曳航するブルーフレーム
アルテミスに向ってレッドとブルーが向ったそのすぐ後
「よし、あの二機を撃墜しろ!」
『!! 話が違うぞガルシア!!?』
「何時?どこで?何時何分何十秒地球が何回回ったときだね?」
『貴様ぁーーー!!!』
「あいつらはだいじょうぶだ、俺の考えが正しかったら・・・・絶対に大丈夫だ」
「第一、第二小隊で仕留める!」
一斉に放たれるメビウス主兵装のリニアレールガン、
V2ABはキメラを抱えたまま回避行動をとる
右へ下へ左へさかしまへ
攻撃しようにもキメラを抱えている為に武装は使えない、そしてその高機動故にパイロットが耐えられなくなってきた
するとV2がその場にとどまりキメラを庇うように前に出る
「さあこれでおしまいだよ」
『くそ!さっきから・・・俺の言う事を聞きやがれこのMS!!』
目の前にはまたもやアルテミスから放たれる大型ミサイル
『畜生!』
爆炎に次ぐ爆炎
「さあ、これでもう跡形も無く消し飛んで・・・・何!!?」
爆炎が晴れた
その煙の中をゆっくりときりもみしながら躍り出るV2アサルトバスター
「む・・・無傷!!?」
メガビームシールドはキメラの前に浮遊、シールドビットを開放し、キメラを包んで守っていた
ゆっくりと進むV2
突如顔が上がり、人の目に当たるデュアルセンサーがギンッと光る
背中の巳のフスキードライブユニットが展開、光が収束した後
全長一キロメートルの光の翼が神々しく羽ばたいた
機体を震わせ、羽ばたきながら
豪 と 加速するV2
「な、何をしている! 撃ち落せ!!!」
あまりの光景にあっけにとられていたメビウス部隊がはっと気がつき、一斉に攻撃を開始する
リニアカノンを連射しながら迫撃するメビウス
うち一機が有線誘導ミサイルを発射、それに続き他のメビウスもミサイルを発射する
それをV2は急上昇、急下降で弾幕を容易くかわすと再び上昇。
ビームスプレッドポッドを展開
拡散メガ粒子を放射する
「『ビ、ビーム兵器だと!!?』」
搭乗するミゲルは我が目を疑う、
このような小型機がビーム兵器、しかも高出力な拡散タイプを実装している事に
ガルシアも我が目を疑う
ついさっき完成した様なビーム兵器の完成形をこの目で見せられたのだ
連合のストライク、そして拿捕した赤い機体とはまるで比べ物ならない
ビームスプレーを避けきれず爆砕するメビウス。
V2はハーフループに上昇した後旋回
後部から弾が飛び交い、動くV2に当てようとするが、早すぎて捉えきれない
『全機に告ぐ、あの機体をなんとしてでも拿捕せよ』
「じょ、冗談言ってんじゃねえよ! あんな早い奴捕まえられるかってンだよ!」
「それにMSにはメビウス5機であたってもやっと対等に戦える、だがあれは一個大隊は必要だ!」
後方にいる敵機にリアアーマーと脹脛部分にあるマイクロミサイルポッドを射出、
ズダダダダダダダダダダダダと次々と発射されてゆくマイクロミサイル
放出後右旋回をかけ、敵の中に突っ込んだ
次々と襲い掛かるマイクロミサイルを回避するメビウスたち、反撃しようにも次々と飛んできて回避するしかない
その一つ一つは死角から的確に飛んでくる、
それはナチュラルには絶対かわせないタイミング
メビウスが次々と落とされてゆく
「な・・・なんて威力・・・ぐ・・・傷が開いて・・・・――――」
高機動による回避行動につぐ回避行動で傷が開き、気を失うミゲル
それでも尚戦う事をやめないV2
必死にミサイルをかわすメビウスの一機にV2が突撃
気がつくメビウス、しかし目の前、間に合わない
右手に持ったメガビームライフルの銃身で横殴りにメビウスをぶん殴った!
「ぎゃあ!!? な、ななななな何が起こったんだ!!?」
弾き飛ばされ、意識が飛ぶメビウスのパイロット
そして何もわからないうちに
V2が反転、メガビームライフルの銃身に収束するメガ粒子、
I フィールドで形成される極長のメガビームソードで横薙ぎに切り裂かれるメビウス
「ま・・・マリ――――」
「これ以上は駄目です! 撃墜許可を!! ぎゃあ!!」
「ショーホー!?ショーホーーー!!!」
「あ、悪魔だ!アレは翼を持った白い悪魔ザーーーーーーーー」
次々と途絶えるメビウスの通信を青ざめた顔で聞く副官
「拿捕は中止!射線を空けろ!ビーム砲で仕留める!」
「何を血迷っている貴様!あんな物すぐにでも捕まえられるだろうが!」
「この惨状を見てわからないのですか!アレは捕まえられません!破壊するしかないでしょうが!」
「貴様・・・軍法会議ものだぞ!」
「構いません! ビーム砲!一斉射撃!撃て!撃ちまくれ!!」
「射線を空けろ!アルテミスの主砲で仕留めるそうだ!」
次々とその場から離れるメビウス達
そのメビウスがいた宙域を 大出力の大型ビームが貫く
ビームは真っ直ぐ進み吸い込まれるようにV2に直撃した・・・したのだが
直撃した瞬間真っ白に包まれ、大型ビームが次々と弾かれる!
ビームを弾いたV2、その周りに空電現象が起き、何事もなかったかのようにそこにV2が存在
「ビームが弾かれるだと!!?そんなバカな!!?」
その場にいた者は例外なくあっけにとられた
ただV2を除いて
突如V2はサイドアーマーのヴェスバを分離、
するとヴェスバは自らの意思を持ったように動き回る
一部光の翼が翳め、機能不全になったメビウス達を目なき目で睨んだ
そしてV2の回りをせわしなく飛んだかと思うと
メガビームキャノン
メガビームライフル
ビームライフル
マルチプルミサイルランチャー
マイクロミサイル
ビームスプレーポッド
そして浮遊するヴェスバ
その全ての意思なき サツイ が発射された
幾十幾百幾千幾万幾億
そのセカイをただただビームで埋め尽くした
それは光の中必死に逃げるメビウスを屠り、アルテミスの一部を消滅させ、生命のない真空を光で覆った
遠くから見たらとても綺麗な花火が上がっていただろう
だがその一つ一つは全て生命の死
とても儚く
とても美しい
その儚い生命、死に際の命の光を浴びて V2は漆黒の闇に浮かび上がっていた・・・・。
その後。
アルテミスは沈黙、無事帰ってきたロウと動けないレッドを曳航してきたブルーとイライジャジン
海賊船たちも無事だった、無差別に行われた光の奔流は実は緻密に計算された攻撃であり
海賊船とホーム、樹里キメラ、レッドとブルーを収納したドッグにはまったく当たらなかった
その後ホームは空域を急速離脱した
「まったく、ひでぇ目にあったぜ・・・」
「そういえばミゲルさんは?まだ礼を言ってないのに・・・」
「ああ、彼なら再手術で医務室に直行よ、当分養生してないと駄目ね・・・」
次回
「・・・・教えてもらおうか、この機体は一体何なんだ?」
ホームで補給を受ける劾がロウに聞いた
「詳しい事はまだよくわかったないんだが・・・こいつには核が積まれているらしい」
「あのMSのデータが欲しかったら今の準備では完全とは言えない」
「ええ!!? こ、こんなところであの翼を開放するの!!?」
了