西川 (最終話を見つつ)お、これですよMETEOR。
うちのファンのみんなが、初めて発進する3週間くらい前から騒いでたんですよ。
「今、ミーティアって言ったよね?」って。
福田 2つ出てくるから、当初は片方をMETEOR、片方をINVOKEにしようって言う話もあったんですけど(笑)。
歌を元ネタにメカを作ったのは初めての経験ですよ。
曲(「Meteor-ミーティア-」)も作中でかけさせてもらったし。
この曲を聴いた瞬間、フリーダムが地球に降りるところで使おうとイメージが決まっていました。
西川 ごく初期からインタビューなんかで強調していたことなんですけど、これはタイアップではない、と。
コラボレーションである、と。
まさしくそんな感じで仕事ができたのがうれしかったですね。
福田 でも初めてお会いしたときには、僕はいったい何を言われるんだろうと不安でした。
そしたら「今度のガンダムは、いつですか」と。
西川 (笑)。言った言った。
福田 何月の何日からオンエアですけど……って答えたら、
「そうじゃない、どの時代のガンダムですか、宇宙世紀じゃないんですか」。
聞いた瞬間、ああこの人は本当にガンダム好きなんだなあと(笑)。
西川 そうですよ。
だからこそ最終回に出てくるこの、サイコミュ兵器にしびれるわけですよ。
福田 今の子はサイコミュ知らなかったりするみたい。
おもしろいギミックだし、いいものだったら使おうということで使わせてもらってます。
西川 なるほどね。
ファースト以降、いくつもガンダムがあって、でもやっぱり超えられない壁があったじゃないですか。
でも今回のは自画自賛じゃないですが、ファーストから現代にうまく橋渡ししている。
リスペクトしながらも十分遊んでいるところがおもしろいと思うんですよ。
だって確信犯じゃないですか。
これってできるようでできなかったことじゃないですか。
4本足のMSが出てきた時点でもう魅力たっぷりだったんですけど、ストライクルージュもいいですよね!
ここで赤い機体が一種のパロディになってるじゃないですか。
ゲームの「シャア専用ガンダム」とかああいう不条理への(笑)。
福田 西川さんが言ってた「イヤな女」は最後どうでした?
西川 フレイですか(笑)。
相変わらず卑怯なところが最後までありましたけど、おかげで話がおもしろくなりましたよね。
僕はもっと早く死んじゃうかと思ったんですよ。
拉致されちゃって、いつ死ぬんだろう。
拷問でも受けるんじゃないかと。
いやあ最後までよく生きてた。
福田 西川さん、桑島法子さんの演技にすごい感心してましたよね。
西川 そうそう。
アフレコ現場に遊びにいったときに、ちょうど桑島さんが抜き録りしてたんですよ。
サイの胸に顔を押し付けて泣き崩れるというときに、手の甲を口に当てて、顔を伏せている感じを表現されてたんですよ。
プロの技だ、すごいなーと思ったら監督がサラ〜と
「それは後で処理しますからやんなくていいです」。
それを聞いて、なんて人だ、せっかく工夫して表現してるのに(笑)。
福田 (笑)。ナタルとフレイの2人をやってるのがすごいですよね。
西川 そうですよ。
フレイがドミニオンに行って2人きりになったときとか、どきどきしましたよね。
だめだよ、いっしょにいちゃだめだよー!
「志村うしろうしろー!」みたいな感じだったわけですよ。
あれはねー、僕の中では、何とも言えない満たされた気持ちになりましたね(笑)。
福田 あ、このシーン(キラとフレイの魂の邂逅シーン)。
これをララァと見るかミハルと見るかでガンダムオタク度がわかりますね。
ララァと思う人はちょっと甘い(笑)。
西川 ああー。
僕の中では、ちょっと「イデオン」に近いかなあという感じもした。
精神的な部分で。
福田 (スクリーンを指差し)これね、2人が会話しているように見えるんだけど、フレイの声はキラには聞こえていないんです。
キラは受け答えをしていないんです。
自分の思いをしゃべっているだけ。
西川 ああー、そうなんですね。
今言われて気づいて鳥肌立ちました。
福田 死者との対話というのはやっぱりありえないわけだから。
そういう最低限の部分は押さえておこうかと。
ラストシーンの、トリィが飛んでいる宇宙も、通常描いている宇宙とはちょっと違って、色のあるイメージ的な処理にしているんです。
なんでかっていうと、これは現実じゃないかもしれない。
もしかしたらキラは死んでるかもしれないし、これは魂の入り口なのかもしれない。
西川 なるほどね。
気持ちよくは終わらせないぞという感じになってますよね。
最後に「終」とか「Fin」とかもつかないし。
さらっとCMに入って、上戸彩さんがにこやかにDVDの宣伝とかするシュールさが斬新で(笑)。
こりゃ何かあるぞ、はっは〜続編かぁ? みたいなね。
答えがこうなんですと言い切らないし、いいところがまだ残っている。
福田 今回は最初から言い切らないつもりでした。
停戦協議に入りますとか言っているけど、停戦したとは言ってない。
そう言ってしまうと嘘くさいですよね。
もうひとつ可能性として、双方が破滅兵器を撃ち合って本当に人類が絶滅するというプランもありました。
今回のラストも実はそれと紙一重なんですけれど。
西川 これが終わりなんだという言い方をしなかったということは、逆に言えば問題は全部そのまま残っていて、
実際の世界がそうであるようにいつまた火がつくかわからない。
福田 宗教同士のいさかいなんて紀元前からやってますからね。
連綿と続く怨嗟がある以上、簡単に終わるわけはないと思います。
西川 うちにも姪っ子とか甥っ子がいるんですけど、彼らもいわゆるドンパチだけじゃない部分を感じ取ってくれているはずだと思うんですよ。
福田 子供って、わからないなりに心に残るものは結構あるものですよね。
それは大人になってからわかればいい。
年齢を経れば感じ方や考え方は違ってくるし。
ただ、子供のときに見たものは後に大きく影響するので、嘘はやめようと。
将来ぶつかることになる問題の一端をのぞかせるようなものは必要だろうと。
西川 ちょっとびっくりしましたよ。
まだ4つか5つの甥っ子が本当に興味を持って作品を見ているので。
だってすごく難しいテーマじゃないですか。
僕が見ても、ちょっと疲れるくらいの神経を使うんですよ。
彼らもやっぱり何かを感覚的に感じ取っているんですよね。
ただメカニック的なかっこよさとかだけじゃなくって。
福田 年代によって感じ方が違ってもいいと思いますしね。
小学生の子がフレイを見て、このお姉ちゃん嫌いと思うのは自然な感情だと思うんです。
ああいう子になっちゃいけないねというのは子供としてあると思う。
でも、うちの上の子が、フレイが死んだときに涙ぐんでたんですよ。
どうしてフレイが死んで悲しいのか。
人が死んだからっていうだけじゃないらしい。
そういうのをある程度、受け取っていたみたいで、どうやら子供なりに難しい話にもついてきているみたいです。
西川 今回のSEEDは、本当に世代別にいろんな楽しみ方がありましたもんね。
僕らみたいに重箱の隅をつつくような人間は、ムウはやっぱりスレッガーだとか。
ほらやっぱりかっこつけて死んだよ、とかね(笑)。
福田 女から指輪もらったら死んじゃうよとかね(笑)。
西川 それにガンプラのCMじゃないけど、幼稚園とか小学校くらいのお子さんをおもちのお父さんが見ていて
「最初のガンダムはこんなだったよ」みたいに受け渡しをしている感じがすごくよかった。
福田 僕もときどきおもちゃ屋さんに行って、お父さんと子供が一緒にガンプラを買っているのを見てほほえましいなあと思いました。
「お母さんはあの子がいいなあ、ほら頭が緑色の子」とかも言ってて(笑)。
ガンダムで家族が平和になる(笑)。
西川 僕も久しぶりにガンプラを見て、今のはよくできてるなーと感心しましたよ。
昔は自力でたたなかったのに。
そういうのも単純にびっくりしましたよ。
福田 でも本当に、ファースト世代が親になって、その子供がガンプラを作るというように、ひとまわりローテーションしたんだなというのを今回は実感しましたね。
西川 僕は「ファースト世代としてここに触れちゃいかんだろう」というところにあえて触れまくってできたのが「SEED」のこの形だと思うんですよ。
「仮面の男を安易に出すべからず」とか「ライバルが赤いのはまねしちゃいかん」とか、そういう意識が従来あったのをあえてやった。
それは知らなくて無防備にやっているのではなく、知っているからできる。
いうなればジャズとかプログレッシブ、コンテンポラリーミュージックで、セオリーを知っているから無茶ができるという部分にすごく近い。
新しく入ってきた人たちも、それまで知っていた人たちも「ああ、いいじゃん」と思えたのは、そこに到達できたからではないかと。
福田 なるほど、そうかもしれないですね。
西川 これが中途半端だと、たぶんムズがゆくなって終わったと思うんですけど、ここまでズケズケと記憶にあるものを侵していかれると、適応するしかないじゃないですか(笑)。
それに、今あの時間帯で、人が争う戦争物をぶつけてくる心意気がすごいと思いますよ。
福田 僕は西川さんからエネルギーをもらってつくった気がします。
歌だけじゃない、思いから来るパワーを感じた。
それがないと人は動かないんだなということを学ばせてもらったし、西川さんがそう来るなら俺も本気でいこうじゃないかと腹がすわった。
その意味でも、本当にコラボレーションだったなと感じますね。
対談は以上です。
福田監督は9・1分けに迷彩柄のシャツという素敵ファッションでした。
ちなみに来月には嫁インタビューもあるそうな。